ひと夏のbaseboll

1 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 14:05
そのまんま野球モノです。
更新ペースは遅いです、ヘタレなもんで。(藁。
sageでやりますんでよろしくおねがいします。

2 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 14:16
「しまったーーー!!やってもうたーーー!!」

四月八日、午前七時四十五分。

「なんやねんマジでこの地図のわかりづらさ!!怒るでほんまにしかしマジでほんまにしかし・・・」

「ゆうてる場合かーーー!!」

一人の女教師が商店街を走り回る。
右手にはこの日のためにわざわざなんとか言う有名デパートで買った新品のブランド鞄。
左手にはこの日のためにわざわざ頂いた学校までの地図。

しっかし東京ゆうもんはなんでこんなに道がたくさんあんねん!?
これ絶対人を迷わすためにわざとつくったやろ!?
ああ、もう始まってまう!

くっそー、チャリ買っとけばよかったーーーー!!


あ、でもうちチャリ乗られへんわ。


3 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 14:33
お、運のいいことに女子高生はっけーん。
あの子に聞いてみよか。
これもうちの日ごろの行いのたまものやな。

「なあ、ちょっとええか?」

なんやねん、そないびびらんでもとって食ったりせんわい。

「な、なんですか?」

「ちょっと道聞きたいんやけどさ、この学校ってどういけばいいんや?」

できるだけ呼吸を整えてからしゃべる。
その娘は地図を見るとすぐに答えた。

「え、あ、ああはいその高校でしたらこの道まっすぐいって左曲がれば標識がありますよ。」

なんやちっちゃい娘やなぁ。
こらとって食いたいわぁ。
とかゆうてる場合ちゃうねん。

「ありがとさん、また今度あったら御礼させてや!!」

そうそう、こーゆーとこはきっちりしとかんとね。



4 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 14:42
「いえいえ、どうぞおかまいなく。」

その子はそのまま商店街に消えていった。

うーん、あら絶対いい女になるわ。
うちの勘がゆうてる。
間違いない。

「おっと、こんなんしてる場合やないって・・・おう!後十分しかないやん!!」

再び走り始めるその女の後ろで微笑む先ほどの女子高生。
おもむろに携帯を取り出して話し始めた。

「うん、今行ってるとこ。
 なんかね、知らない人がうちの学校の場所聞いてきたからとりあえずだましといた。
 え?うん、わかってるって。
 うん、またあとでね。」

その女子高生は春の風に自慢の金髪をなびかせ颯爽と歩いていった。



「いや、いきどまりやん!!どないせーっちゅうねん!!」
5 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 14:45
第一話              






                   新任教師、中澤裕子です
6 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:01
「ちょっとあんた、初日から遅刻とかなってないわよ」

私が教室に入って席に着くと、後ろから声をかけられた。
いったい何がなってないんだか。

「こう・・・もっと私のように春の木漏れ日の中、ゆったりと小説を読みながら静かに校門をくぐり・・・」

「・・・圭ちゃん、軽くよだれがでてるよ。」

「・・・だしてるの。
 それより矢口、今日も朝からやったの?」

圭ちゃんはちょっとロマンチストなとこがあると思う。キモい。

「だってこれないとおなかが減ってしょーがないもん。」

鞄からさっき盗ってきたカロリーメイトを取り出す。

「んでそれを盗ったとき声をかけられたから焦ってバレたとおもったわけ?
「・・・あいかわらずすばらしい洞察力で。」
「ありがと。でも人を騙すのはよくないわ。」
「・・・気をつけまーす。」
「まったく・・・バレて部活禁止とかになったらどーすんのよ。」
「活動とかしてないじゃん」

圭ちゃんは一呼吸おいてから言った。

「部室に入れないと困るのよ。」
7 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:09
「矢口〜、圭ちゃ〜ん、行くよー!」

クラス委員から声をかけられてやっと気づいた。
すでに教室に残っていたのは私と圭ちゃんの二人だけ。

「まったくだるいわね、始業式なんて。
 どーする?矢口でる?」
「・・・今日まだ石川きてないから部室開かないよ?」
「え!?マジ!?後藤はきてたの!?」
「まだ来てなかったよ。今日はこないんじゃない?」
「ならいいけど・・・後藤今度こそ石川にキレるわよ。この前の見たでしょ?
 いちお、石川に連絡してあげたほうがいいわよ?」
「・・・・・うん」

「おーい、はやく〜〜」

クラス委員の二度目の呼びかけに、私たちは重い腰をあげて、体育館へと足を向けた。
8 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:16
「え〜、それでは続きまして本年度から本校に就任なされる先生方を紹介したいと思います。
 皆さんステージをご覧ください。向かって左側から・・・」

退屈だ。
なんで学校というものは何とか式とかが好きなんだろう。
だれも聞いてやしないのに。

私は隣の空席を見る。

圭ちゃんはさっきカオリと二人で出て行った。
矢口も誘われたけど、なんとなく断った。

「・・・え〜、それでは一人づつ挨拶していただきます。
 それでは・・・中澤先生からお願いします。」

9 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:28
「え、え〜と、な、中澤裕子と申し上げます、う、受け持ちは英語、あと・・・えっと、年は三十路、あ、聞いてないですか?
 あはは、えー、受け持ちは英語です。よ、よろしくおねがいしましゅ・・・」
「そ、それでは次の先生おねがいします」


・・・か〜、や、やってもうた〜・・・!!
だめやねん、うちにがてやねんこんなん。
くぅ〜、昨日ちゃんと練習したんやけどな〜・・・

「それでは次に移りたいと思います。つづきまして・・・」

矢口は口が塞がらなかった。いやびっくりして。
あ、あれが教師〜!?
だって金髪だしカラコンだし遅刻してたし、そうだ、矢口今朝違う道教えたよね?
じゃあ夢だ、うんきっとそうだ、そろそろ圭ちゃんが起こしてくれて、それから辻と加護連れて部室でお茶会だ、そうだそうだ。

「矢口、どーしたの?」

・・・だよね、現実逃避してただけだよね。はぁ・・・。
10 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:38
私はさっきの一部始終をみんなにはなした。

「はぁ?そんな教師あり?」
「でもそしたら矢口の金髪もなんも言われなくなるんじゃない?」
「あ、そっか。じゃあラッキーじゃんオイラ。」
「そんな簡単にいくもんだべか?教師っちゅーのは自分のこと棚に上げるやつがおおいべさ〜」
「・・・なっち、なまりまくってる。」
「あ、いっけね、ごめんごめん」



「てゆーかさぁ、部室なんで開いてないの?」



私たちはその一言に凍りついた。

「ご、後藤・・・いつからそこに?」
「いつでもいいじゃん。それより石川は?」
「・・・あ、そ、そーいえば風邪ひいたってよ!四月に馬鹿だよね〜!」
「・・・ならいいや、後藤帰るね」

11 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 15:46
そういって後藤は教室からでていった。

「・・・あっぶねー・・・ちょっと矢口、今日後藤来ないんじゃなかったの!?」
「んなのしらないよ、たぶんっていったじゃん」
「石川どーすんのよ、絶対キレてたわよ!?」
「だからしらないってんじゃん!!」
「なによあんた、そもそもあんたがちゃんと・・・」


圭ちゃんの言葉をさえぎるように教室のドアが開くとさっきの先生がはいってきた。


「こらー、なにやってんねん、席つかんかい!」
12 名前:新任教師、中澤裕子です。 投稿日:2004/03/14(日) 16:02
「じゃあとりあえず出席とるで〜。
 先生も早く名前覚えたいからちゃんと返事してやー。」

うちは結構人の名前とか覚えんの得意なんやで?
え〜っと一番からやから・・・

「ねえねえ、先生、それより先に先生の話してよ〜!」

ん?なんやねんそんなうちに興味持ってしまったか?
まあしゃあないなぁ、裕ちゃんかわいいから。

「ほなら最初にうちの自己紹介しよか。
 さっきもゆうたけどうちはある事情で関西のほうからこの学校にきたんや。
 みんなは二年生やし、この学校のことよくわかってるやろうから先生にもいろいろおしえてや。
 あ、あとうちのこと先生や思ってくれへんでもええで。なんか堅苦しいのは嫌いやし。
 みんなと年も近いしな。」

その自己紹介を聞くとみんな笑い出した。

お、ええでええで、出だしは絶好調や。
みんな明るい子やし、なかようなれそうやわ。
今日からがんばるで!もうあんなことせえへんようにするで!
ファイト、裕ちゃん!


私立朝比奈学園高校二年九組。
うちはぜんぜんこのクラスのことを理解してないまま、勝手にこれからのことを想像していた。
13 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 16:04
まあこんな感じで進んでいきます。
文章下手なのはお許しを。
ちなみに6期メンは出てくるかどうか微妙です。
あとsageでやるとかいいながら下げ方がわからない。(藁。
勉強してきます。
14 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 17:02
ルーキーズ
15 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/14(日) 17:31
問題児が多そうなクラスですね。
面白そう、続き期待。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 23:14
面白そうなの発見。
また〜り待ってます。
17 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 21:15
おもしろくない。
今日はきっと運がない日なんだろう。
そー言えば朝からいいことがない。


きっとこの先生が私の担任になるなんて、よっぽど私は神様から嫌われてるんだろう。

「どーする矢口?今からLHRらしいよ?」
「・・・めんどくさい。とりあえず部室いこーよ。」
「鍵は?石川来ないとあかないよ?」
「じゃあおとなしく教室にいる?」
「・・・しまってたら屋上ね。カオリとなっちは?」
「うちら今からラーメンでも食べ行ってくるよ。てゆーかもう帰るかも。」
「そ。辻加護は?」
「みつかったらおごらされるから逃げるべ。」
「・・・まあいいや、じゃまたあしたね。」
「んー、ばいばーい」

やれやれ、新学期早々たいへんそうだなぁ。
18 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 21:27
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

時刻は午前十一時半。
その女はすこし丈の短いスカートを翻しながら走っていた。

どうしよう、寝坊しちゃった。
きっと後藤さんが来てたら怒ってるわ。
ほんとは鍵係なんてやりたくないのに。

入学してからいつの間にか私のポジションは決まっていた。

それは野球部の栄光あるポジションではなく、鍵係という違う意味でのポジションが。

いつからだろう、こんなことになったのは。
後藤さんが野球部に入ったときから?
先輩たちが福田さんをリンチしたときから?
それとも・・・最初から野球なんて興味がなかったから?

・・・やめよ、ほんとはそんなことどーでもいいから。


私は、ただ、野球がしたい。それだけ。



19 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 21:42
いろんなことを考えながらとっくに閉まってしまった校門を乗り越える。

矢口さんぐらい足が速かったらな。
きっとあんな性格だったなら、鍵係なんて呼ばれることはなかっただろう。
いっそのこと今までの石川梨香を捨ててしまって矢口真里になってしまいたかった。

教室に行く前にとりあえず部室に鍵を開けに行く。


西校舎の裏に入ると部室が見えてくる。
色あせた木の看板に記された『野球部』の文字を見上げて石川はもの思いにふける。

中学の時も私って買出し係っていわれてたっけ。
はは、なんか係りばっがりだね、しかも野球なんて全然関係ない。
私も練習してたんだよ?
もう守備なら誰にも負けないよ?
なんで?なんで私は今野球をしてないの?
私は・・・・

「遅いんだよ石川。」


私が考え込んでいる間にいつの間にか後ろに人が立っていた。
20 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 21:49
「や、矢口さん?」

私は後ろを振り向かずにたずねた。

「なにやってたんだよ、部室はいれなくてこまったんだぞ」

どうやら矢口さんのようだ。よかった。

「す、すいません、今日ちょっと寝過ごしちゃいました・・・」
「部室はいれないと時間つぶれないんだよ授業わかんないし。しっかりしてよ。」
「すいません・・・」

矢口さんはため息をひとつついた。

「・・・まぁいいや、後藤には適当にいっといたから。感謝してよ。」
「は、はい!あ、ありがとうございます!!」
「うっさい。とりあえず圭ちゃんとかよっすぃーとかよんできて。」
「は、はい!」
「だからうっさいって」
21 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 22:07
「たぶん圭ちゃんとかはまだ屋上いるから。よっすぃーは来てるなら辻加護とどっかにいるよ」
「はい、探してきます!」
「うっさいからはやくいっててば」

石川は小さく返事をして螺旋階段を駆け上がっていった。

ほんっといちいち忙しいやつ。

矢口は哀れみに似た感情を抱きながら部室のドアを開けた。

・・・まぁこれなら無理もないか。
あいつとよっすぃーぐらいだもんなぁ、野球したがってるの。

部室のなかにはなんでもあった。
テレビ、麻雀、ソファーベッド・・・
ほとんどは矢口が『拾って』きたものだ。

きっと・・・うちらのせいなんだろーな。


うちの学校は全員がなんらかの部活に所属しなければならない。
でも、別になんとなくで入ったわけじゃない。
最初はそれなりにやる気もあった。
中学でやってたから自信もあった。
グラウンドに響く声、バットが空気を切り裂く音、ボールがグローブに吸い込まれる音・・・。
すべてが大好きだった。楽しくてしょーがなかった。



でも・・・でも、平家先生が死んでから野球部は・・・いや、うちらは変わってしまった。



でも・・・でも、平家先生が死んでからこの野球部は変わってしまった。
22 名前: 投稿日:2004/03/26(金) 22:10
すいません、ペース遅いですね、がんばります。
>名無し読者さん
あまり期待しないでください、おそいんで。(藁
>名無し飼育さん
以下同文(藁
23 名前: 投稿日:2004/04/01(木) 12:43
「ローン!!メンタンピン、三色、ドライチハネ満!!」
「うっそやー!自分早すぎやって!!」
「またよっすぃーの一人勝ちじゃんかよー」
「すいませんね〜うちが強すぎるから」
「あ、こいつむかつく。」
「のの、はやくだしなよ!」
「・・・うう〜・・・ハコです・・・・」
「のの弱すぎやっちゅ〜ねん!あんたまたよっすぃーに借金やろ?」
「だって・・・だって・・・」
「ま、まあいいじゃんね?ほら泣かないの辻!よっすぃーも今回はもういいでしょ?ねっ?」
「う、うん!辻、ほら気にしないで!今までの分払ってくれればそれで・・・」
「おい!吉澤!!そーゆー問題じゃねーよ!!」
「す、すんません!」
「てゆーかあんたらうるさいよ・・・」

午後十二時過ぎ。
今日は始業式だったのでちらほらと下校する生徒も見え出した。

「あ、もう終わったみたいよ。これからどーする?」
「矢口はもう帰るよ。なんか疲れたし。」
「つじはー、いいださんのおうちにいきます」
「あ、うちもいくー」
「吉澤は?」
「あ、えーっと、り、梨香ちゃんと買い物です」

・・・わかってるよよっすぃー。
別にうちらは何も言ったりしないよ。
言う権利すらもってないし。

「・・・そっか、じゃあ今日は解散ね。矢口、帰るわよ。」

きっと圭ちゃんもわかってる。

「じゃ、みんなおつかれ〜」
「さよならー」

圭ちゃんが部室のドアを開けようとしたけど、圭ちゃんがドアノブに触る前に向こう側からドアノブが回った。
24 名前: 投稿日:2004/04/01(木) 12:58
さかのぼること一時間ほど前。

「え?あらへんのですか?」
「う〜ん・・・ないと言うより活動してないっていったほうが早いかもね。」
「なんでまたそんな・・・」
「私に聞くよりも本人たちに直接きいてみたらどうですか?先生のクラスには野球部の子達がいらっしゃるようですし。」

いや本人にきけたらあんたんとこにきてるわけないやろ。
LHRの時間から野球部の連中はきえてまうし。
どないせーっちゅーねん。

「そうですか、ありがとうございました。」
「いえいえ、野球部には気をつけてくださいね。」

なんやねんあいつ。ちょっと気に食わんやつやわ。

・・・でも正直気になることがある。

あ、うちは野球部の顧問やろおもうてんねやけどね。
うちもいちお少しはできるんやでー、少しやけど。

んで、そうそう。
あの野球部の矢口・・・って子は今朝うちがあったやつやってん。
んでうちは一回騙されてるわけやろ?
なーんかちょっとひっかかるってゆーか・・・
別に騙す必要はないわけやん?
それこそ他人やし。
なんかあの子は世の中何も信じてない・・・ってそらいいすぎか。
でもなんか抱えてる気がすんねんなあー。
勘やけど。あ、でも裕ちゃんのはあたるんやで?

まぁええわ、とりあえず今日は様子見や、部室までいってみよか!
25 名前: 投稿日:2004/04/01(木) 12:59
プチ更新。
またあとで更新します。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/01(木) 18:58
bollって綴りにはなんか意味あるの?
27 名前: 投稿日:2004/04/06(火) 01:21
「なんやねんみんなおるやないか〜!帰った思ったやんか〜!」


・・・なんで・・・いきなり?

「ちゅうかみんなうちのクラスやないの!?一時間目から全然おらんかったやないの!」
「・・・・・・・」

・・・当たり前だよね。答えるわけないじゃんか。
あ〜あ、いきなり新任教師から説教か・・・。

「まあええわ、まだ一発目で裕ちゃんもみんなのことようしらんし。
 ・・・え〜っと、とりあえずみんなおらへんかったから聞いてないとおもうけどうちが今年から野球部の顧問になったからな!よろしく!」

・・・矢口は開いた口が塞がらなかった。
は?・・・あんたが顧問!?

28 名前: 投稿日:2004/04/06(火) 01:33
「なんやねんみんな変な顔して。ここ野球部やろ?間違ってないやろ?」

「先生間違ってないけどちゃんとノックしてよ。今から着替えるとこなんだから。」

・・・さすが圭ちゃん。かわし方も心得てるようで。

「おお、そかそか、悪い悪い。じゃ、うちも今から着替えてくるから先でといてや。」

そうゆうとあいつは部室から出て行った。

「・・・てゆーかどーするんすか?」
「どーするもこーするも帰るわよ?」
「そーゆーことじゃなくてあの先生が顧問になったこ・・・!!」

言った瞬間、圭ちゃんが加護の胸倉をつかんだ。

「・・・忘れた?うちらの先生は平家先生だけだよ。」
「・・・圭ちゃん、離してあげなよ。」

矢口が言うと圭ちゃんは手を離した。

「・・・矢口、帰るわよ。」
「・・・みんなも早く帰ったほうが良いよ、じゃね。」

そうして、矢口と圭ちゃんは一足先に帰路についた。
29 名前:加護と辻 投稿日:2004/04/06(火) 01:51
「いった〜、保田さん手加減無しやもんな〜」
「大丈夫?跡できてるよ?」
「うっそマジで?あ〜もう!後で絶対やり返したる!」
「う〜ん多分無理。」

ぐっ・・・!そっか、保田さん強い上に容赦無しやもんな。
勝てるわけないか。
いや、待てよ、保田さんが寝てるときとか・・・だめか、寝てるとこ見たことないや。
そんならいっそ罠を・・・

「でもさ、あの先生きたらののたちまた野球できるのかな?」

・・・たく、ののはいっつも後になってから考え出すからな〜。

「ええか、のの。保田さんやないけどうちらの先生は平家先生だけや。ほかの先生は誰も助けてくれへんやったやろ?
 先生なんかそんなもんや。それにうちらがまた野球やるとか平家先生に申し訳ないやろ?」

ちょっとかっこつけて言わさしてもらうとうちとののはあの日から野球を封印した。
絶対ボールもさわらへんし、野球道具なんかもってのほかや。
そうすることで平家先生少しでもうちらの思いを届けたいと思ってる。

「うん・・・そうだよね、平家先生に悪いよね。ごめんね、変なこと聞いて。」

ののはそういって少しさびしそうな顔をしてちょっと笑った。

・・・ののは最近になってまたこんな顔するようになってきた。
やっぱうちらのせいなんやろか。
ののにはずっと笑っててもらいたいなんてうちのわがまま・・・やな。


うちは夜空に浮かぶ星を見上げてみた。
・・・なんかちょっと汚かった。
30 名前:吉澤と石川 投稿日:2004/04/06(火) 02:11
「梨香ちゃ〜ん、もう帰ろうよ〜」

よっすぃーったらそんな情けない声だしちゃって。
スタミナ不足は致命傷だぞ?

「え〜まだ元気だよ〜!」
「てゆーか梨香ちゃんの体力の問題じゃないから。」

気がつくとすでにあたりは真っ暗だった。

「ほら、もう帰るよ。暗くなったら梨香ちゃんすぐこけるでしょ。あ、いつもか。」
「ちょっと〜!それどーゆー意味よ〜!」
「はいはい、ちゃんとグローブもちなよ。」

私は週に一回、こうしてよっすぃーに練習に付き合ってもらってる。
よっすぃーはなんだかんだ言いながら毎週ちゃんと来てくれる。
ほんとによっすぃーには助けられてばっかりだ。

「ねぇ、梨香ちゃん、あの先生ってさ、どんな先生なのかな。」

・・・よっすぃーは突然自分好みの質問をぶつけてくる。
そんなの私にもわかるわけないじゃない。

「いや、なんとなくさ、平家先生みたいじゃない?しゃべり方とかもそうだしさ、なんか・・・雰囲気とか?似てるって思わなかった?」

う〜ん、そうなのかな〜?
よくわかんないや。まだ話したこともないし。

「どっちにしても・・・もう野球できないのかな?」
「それは・・・それこそわかんないよ。」

・・・そうだよね。私一人でがんばったところで意味ないもんね。
でも・・・・でも。

もう一回だけ、甲子園目指してみたいな。
31 名前:中澤 投稿日:2004/04/07(水) 18:30
「おっそいな〜、なにやってんねん」

裕ちゃんさっきからもう三十分以上まってんでー。
そろそろ練習はじめなやばいんとちゃうか〜?
まだ春やし暗くなるで〜。
しゃーない、裕ちゃんがちょっと呼びいったるか!

「お〜い、まだか〜・・・って、あら?」

いやいや、おかしいやろ。
さっきあんないっぱいおったやないか。

「かくれんぼしとるひまないで〜?そろそろ始めなやばいんとちゃうん〜?」

別に新任歓迎パーティーとかいらへんで〜?
そんなに歓迎されたら裕ちゃん照れてまうわ〜。

「なにやってんの?」

ほ〜らきた!
うちクラッカーとかは嫌いやねん、うるさいし。
まあでもやってくれるもんは拒むわけにいかんしな〜!

「なにやってんの?部外者が勝手に入っていい場所じゃないよ。てゆーかあんただれ?」

・・・それにしても失礼な奴やなー。
まさかドッキリか?そーやな、ここで振り向いたらケーキがでてくるんやな。
うん、そーやそーや間違いない。

32 名前:中澤 投稿日:2004/04/07(水) 18:45
「なんやー、自分らまだ練習はじめんのか〜?」

ここでクラッカーがなって、うちがびっくりして腰抜かしたとこでみんながでてきて先生これからお願いしますみたいな雰囲気になってそんで・・・

「は?練習?なにいってんの?てゆーかだれだっつーの。」

なんや、ちがうんかい。

うちの予想に反して立っていたのはたった一人の少女。
鮮やかな茶髪は矢口とはまた違う色気を感じた。

・・・とりあえず自己紹介しとこか。
うちの本能がそういってる。

「あっと、うちは中澤裕子っつって今日からこの学校の先生になったんや。
 んで同時にこの野球部の顧問にならしてもらったんや。
 それにしてもみんなどこいったんや〜?今日から練習やっていったんやけどなー。」


「・・・来ないよ。くるわけないじゃん。てゆーか野球部に顧問なんていらないから。早く出てってよ。」

・・・なんやねんこいつ。こいつも野球部なんやろか。
まあただ前任の平家先生?がおらんくなったからすねてるだけやろ。

「まあそういわんと仲良くやってこうや。平家先生がおらんくなったのはショックやろうけど・・・」

つぎの瞬間うちに飛んできたのは言葉や態度ではなく、拳だった。

バキッ

「あんたに何がわかんだよ!うぬぼれんなっ!」
33 名前:中澤 投稿日:2004/04/07(水) 18:50
うちはあっけにとられて今しまったドアを見つめていた。

なんやねんあいつ・・・。
いきなり殴りよったで?いちお教師やっていってんのに・・・。
ちゅーか力強・・・めっちゃいたいやん。
いや、てかなんであいつ急にキレてんねん。
あ〜それにしてもいったいわ〜。
今日はもう練習せんみたいやし、帰ろ・・・。


・・・どーなってんねんここの野球部は・・・。

34 名前: 投稿日:2004/04/07(水) 18:51
一話終了。
ミス多数。
反省。
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/08(木) 06:38
なかなか面白そうですね。
がんばってください。
ちなみに ×梨香 → ○梨華 です。
36 名前:石川梨華 投稿日:2004/04/08(木) 15:48
やっちゃった〜、また遅刻しちゃった〜!
今日も部室の鍵あけてない・・・!


時刻は十時半。


今日も後藤さんが来てませんように・・・。
37 名前: 投稿日:2004/04/08(木) 15:49
第二話



                  本当の私
38 名前: 投稿日:2004/04/08(木) 16:05
少しさかのぼって時刻は九時半。


「ねえねえ、梨華ちゃんまだきてないの?」
「しらないよ、どしたの?」
「いや〜、梨華ちゃんいないと部室あかないんだよね〜」

あいつ・・・昨日言ったばっかなのにまた遅刻してんの?

「ったく、つかえないわね〜あいつ。ど〜するカオリ?屋上いってタバコ吸おっか?」
「う〜んそうだね、屋上いこっか。」
「矢口はど〜する?」
「う〜ん、いいや、やめとく。今日金がないから買ってないもん」
「さすがに自販機のものは矢口にも盗れないかい?」
「なっち・・・それっていやみ?」
「んなことないべさ〜!じゃあ矢口も気が向いたらきなよ〜!」

・・・それにしても・・・石川、今日こそ、ほんとにやばいかもよ。

そう思った矢口の携帯には後藤からメールが入っていた。


「なんで部室開いてないの?」


39 名前: 投稿日:2004/04/08(木) 16:07
第二話開始。
名無し飼育さん>
はい、やっちゃった後に気付きました。(藁。
ゆっくりですがまあみてやってください。
40 名前:本当の私 投稿日:2004/04/18(日) 18:04
ハア、ハア、ハア・・・

やばい、もう十一時・・・!!

石川はすでにしまっている校門に足をかける。

ああ、もう・・・!
なんで私ってこんなにドジなんだろ?
早くあけなくちゃ・・・。


しかし部室の前で待っていたのは矢口でも飯田でもなく、後藤だった。
石川は一瞬ためらったが逃げ出すわけにもいかなかった。

「・・・あ、あの・・・ご、ごめんなさい!」
「・・・・・・・」
「き、昨日ちょっと夜遅くまで起きてて、それで・・・」


「馬鹿じゃない?」


気がつくと、石川は保健室にいた。
41 名前:中澤 投稿日:2004/04/18(日) 18:13
あ〜なんかほっぺがまだ痛いわ〜。
ものっすご本気で殴ったなあ、あいつ。

それにしても・・・うちなんかあかんことゆうたかなあ?
やたらキレとったみたいやけど・・・。
まあ、とりあえず今日後藤にきいてみるか。


「カオリー、ちょっとまちなさいよー!」


お、なんや?あれはたしか・・・保田や、保田圭!
ふふふ、さすがうちや。
もう完全に名前は覚えたで!
やっぱそーゆーとこから生徒の立場にならんとな。
う〜ん、裕ちゃん最高!

じゃなくて。

なにしとんねんあいつら。
今から授業やで?
まあおおかたさぼるつもりやろうけど。

・・・しゃーない、ここは裕ちゃんがビシッといったるか。
野球部のこともいろいろきいときたいしな。



うちは階段を屋上へとあがっていった。
42 名前:飯田 投稿日:2004/04/18(日) 18:30
「んん〜、きもちいい〜!」

やっぱねー、カオは屋上とか大好き。
なんかこんな狭いとこでもひろくひろーくなれる気がする。
あ、もちろん心がね?
あ、あの雲かわいいー。

「なっち火ぃある?」
「あるよ、はい。」

・・・あ〜あ、全然わかってないわあいつら。

「ちょっと圭ちゃん、なっち。あんたたちこの空みて何も思わないの!?」
「んん〜?今日雨かな〜?ってかんじかな。」
「え、なっち傘もって来てないよ。カオリもってきてる?」


もういいや。馬鹿だこいつら。

「持ってきてないよ。なっち、火。」
「はい。え〜、じゃあ降る前に帰ろうよ〜!」
「傘なんか置き傘盗って帰ればいいじゃん。」
「あ、そっか。なっち気付かなかった。」
「バカ?」
「あ〜カオリそれは言いすぎだべ!」
「だってふつう気づくよね、圭ちゃん。」
「・・・・」
「圭ちゃん?」
「ん?ああ、ごめん、なんて?」

なんか圭ちゃんがぼーっとするなんてちょっと意外。
カオリなんかかんどー。

43 名前:飯田 投稿日:2004/04/18(日) 18:49
「どーしたの?なんか考え事?」
「ん?ちょっとね。気になることがあってさ。」
「あの教師のことでしょ?」


あ〜、そっか、カオリ全然気付かなかった。
なっちってたまに鋭いよね〜。
ちょっとむかつく。ちょっとだけ。

「・・・・・あいつ、野球部の顧問続けるかな?」

は?圭ちゃん、言ってる意味わかんない。

「いや、今までにも何人か顧問やろうとしたけどさ、すぐやめたじゃん?うちらのこと知ったら。」

あ〜、そーゆーことね。やめるでしょ、すぐにでも。

「・・・そーだよね、しかもうちら暇じゃないし。野球なんかやってる暇ないもんね。」
「そうそう、いろいろやることあるもんね。」
「毎日忙しいしね〜。」

そう、いろいろ。高校生は忙しいんだから。


その時、扉が開く音がした。


「こらー、なにやってんねん!」


うちらはタバコをもったまま振り向いてしまった。

44 名前:保田 投稿日:2004/04/18(日) 19:10
不覚。不覚だったわ。
まさかこの私がこんなヘマをやらかすなんて。
こんなのもう言い訳のしようもないじゃない。

「まったく・・・今授業中やないんかい。」

あーあ、謹慎か。

「あんたら今タバコ吸ってたやろ?」

ち、結局教師とかみんな一緒だ。
どうせこの後は説教に決まってる。

「まぁ好奇心を持つことはいいことやと思うしな。今度はもっと見つからんとこでやるんやな。」

・・・うそでしょ?そんなんでいいの?

「お、怒んないの?」
「ん?ああ、うちも高校のとき吸ってたしな。でもあんたら野球部ならやめといたほうがええんちゃう?」

「・・・先生、野球部の顧問続けるの?」
カオリがいった。

「ん?あ、そうや、あんたらなんで昨日こんかったん?練習せな甲子園いけへんで?」

こ、甲子園!?なにいってんのこの人!?

「・・・先生、いい加減なこと言わないで。うちらはうちらでやるから。もう野球部にかかわらないで。」
「なんや、後藤もそんなんゆうてたなあ。なあ、なんかあったんなら話してくれな先生も・・・」

バキッ

「いい教師面してんじゃねーよ!!うちらだってほんとは・・・!」
「ちょっ、カオリ!殴ってどーすんのよ!」
「に、逃げるべさ!!カオリはやく!!」


「ちょ、ちょっとまち・・・!」

後ろで先生の声が聞こえたけど、うちらは聞こえないふりして走っていった。
45 名前: 投稿日:2004/04/18(日) 19:10
更新しました。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/18(日) 22:01
面白い
47 名前:矢口 投稿日:2004/04/18(日) 23:08
今日は朝からいいことないと思ってた。
こーゆーときって矢口の勘は恐ろしく当たる。

「ほんとに何もしらないんやな?」

矢口はこの校長が大っ嫌い。
明らかに矢口たちを辞めさせようとしてるのがわかるもん。

今この部屋には矢口と中澤とこのウザい校長。
なぜかカオリたちのとばっちりを受けてる私。
カオリたちが先生を殴ったとかゆう疑いをかけられてるんだけど、当の本人たちは逃亡中。
それで運悪く教室にいた矢口が捕まってしまってるわけだ。
そして圭ちゃんから「あとよろしく。」とか言うメールが入ってた。

「しらないっていってんじゃん。そんなに矢口たちが邪魔なわけ?」
「・・・真実を話してもらいたいだけや。」
「さっきから話してるっつーの。ぶっ飛ばされたいの?」
「・・・ち・・・中澤先生、なんかゆうてくださいよ。」

あ〜、めんどくさい。説教はさっさとしてよね。


「あの〜・・・いいづらいんですけどこの傷は今朝学校に来るときぶつけてしまいまして・・・殴られたわけやないんですよ、はは・・・」


「な・・・!!」

校長もだけど・・・矢口も驚いた。
なんで?明らかに殴られた傷じゃん。
しかもごまかす必要ないのに。

「な、なにをゆうてるんや!ぶつけただけでそないな傷が・・・!」

そりゃあ校長も突っ込むでしょ。

48 名前:矢口 投稿日:2004/04/18(日) 23:20
「校長先生。」

なんか迫力あるけど少し優しい声。

「確かに彼女たちは不良かもしれません。でもそれはきっと私たち大人や教師のせいなんです。
 今子供たちに堂々と夢を語れる子がいますか?することがないから悪いことをしてしまう。
 子供たちは理解者を求めてるんです。そして同時にやりたいことを共に見つけてくれる大人を。
 私たちがそれになるべきじゃないんですか?子供たちを排除したところでなにもかわりません。
 大事なのは私たちが本気で生徒と共に歩むことではないでしょうか?」


その言葉を聞いて矢口は・・・ちょっと感動してしまった。
なんだか平家先生に似たものを感じてしまった。

「矢口、もう行ってええで。」
「え?ほんとに?」
「ああ、時間とらして悪かったな。ちゃんと授業はでるんやで?」
「ああ、う、うん。」



・・・・やっぱ今日は最悪な日だ。矢口もおかしくなってる。
49 名前:狐。 投稿日:2004/04/18(日) 23:21
ダブル更新。
名無し飼育さん>シンプルな感想ありがとうございます。
        暖かく見守ってやってください。
50 名前:石川 投稿日:2004/04/25(日) 13:06
「大丈夫?」

今、私の横では矢口さんがちょっとあきれたようなカオで私を見てる。

「あ、はい、なんとか・・・」
「あんたもあほだね〜、二日続けて遅刻するなんて。」
「えへへ、ちゃんと起きようとはおもってるんですけどね」

私は自分でも無理だと思いながら笑ってみた。

「・・・後藤をあんま怒らせないほうがいいよ。」

矢口さんは何も言わなかった。
51 名前:部室 投稿日:2004/04/25(日) 13:21
「圭ちゃん、カオリどこいったの?」
「今日は帰らせたわ。ただの謹慎ぐらいだったらいいけどね・・・」

できれば謹慎であってほしい。
いきなりカオリがいなくなるのはさびしすぎる。

「ええ〜、飯田さんなんかやったんですか〜?」
「あのバカ、中澤を殴ったんだよ。」
「ええ!?そんなん普通退学やん!?」
「処分はいつ出るの?」
「今矢口が聞きにいってる。先に石川のとこよってくって。」
「え、石川ど〜したの?」
「・・・ちょっと後藤がやりすぎたのよ。」

言ってしまったあとでしまったと思った。
部室には微妙な雰囲気が流れ、辻と加護も急に静かになった。
早く矢口が来てくれることを願った。

52 名前:保田 投稿日:2004/04/25(日) 13:42
数分後、やっと矢口がきてくれた?

「どーだった?カオリの処分。」

矢口?どーしたの、難しい顔して。

「たぶん・・・処分無しだと思う。」

「なっ・・・!ほんとに!?」

いやいやそれはないでしょ!?
だって仮にも先生殴ってるんだよ!?

「なんか・・・中澤は自分で転んだっていってた。だから校長も処分しようがないんだと思う。」
「なんでそんなこと・・・」

そーよね、絶対おかしいわ。
私たちをやめさせようとしてるわけでもないし、びびってるわけでもない。
だとしたら・・・


「やばいかもね。」


後藤の一言に一瞬時間が止まった。

「多分中澤は私たちに本気で野球させようとしてる。いや、もっと言ったら私たちを変えようとしてる。」

そう、そうなのよ。
そうとしか考えられないのよ。

「でも・・・うちらが変わるわけないじゃん?」
「いや、石川とかよっすぃーはすでにやばいかも。」

こんなこと初めてだわ。
・・・違った、平家先生の時と・・・

「なんか・・・平家先生の」

あ、バカ、矢口・・・

「いって、なにすんだよ後藤!」

案の定後藤の蹴りが矢口に入った。

「意味わかんないこといわないで。もいっかい石川やってみよっか。」
「な、なに言い出すのよ後藤!!」
「石川やったら中澤もそろそろ気づくでしょ?その後どうでるか見たいんだよ。」


後藤の狂気じみた笑いに誰も何もいえなかった。
53 名前:矢口 投稿日:2004/06/19(土) 12:48
なぜ止めなかったんだろうか。
私の胸は後悔で締め付けられた。

その日のうちに後藤は「計画」を実行した。

「ただむかつくから」

それだけいって後藤は石川を殴った。何度も。
見慣れてる光景のはずなのに私は多少の吐き気を覚えた。

よっすぃーは、知らない。

中澤の底をみる。
後藤が言った言葉だ。
平家先生がいなくなった後から後藤は変わった。
子犬のような笑いは消え、狼のような強さだけが残った。

そうだ、もうあのころは戻らない。

矢口は自分が少し嫌いになった。
54 名前:石川 投稿日:2004/06/19(土) 12:58
痛かった。耐えられなかった。
あまりの理不尽さと助けてくれなかったみんなときてくれなかったよっすぃーと。

――――――――またなにもできなかった自分に。

私は小さいころからよくいじめられた。
でもなにも言わなかった。言えなかった。

でも平家先生に出会って変わった。
いや、変わった気になってただけなのかな。
だって今はまたあのころと同じ。

今度こそ決めた。
もうグローブは捨てよう。

ボロボロになった体をひきずって学校を後にした。
55 名前:中澤 投稿日:2004/06/19(土) 13:11
「は?石川が?」

うちはほかのクラスの先生からそれを聞いた。

「どうせサボりだと思ったからほっときましたけど。いちお知らせておきます。」

いや、石川はそんな簡単にサボるやつちゃう。
短い間やけど石川は毎日ちゃんと出席しとった。

なんかあったんか?

そう思ったとき突然声をかけられた。

「先生、梨華ちゃん知らない?」

吉澤だった。

吉澤もしらへんっちゅうことは・・・間違いないな。

「ああ、吉澤、先生ちょっと石川探してくるから次の時間はちょっとおくれるってゆうといてくれるか?」
「え?なんかあったんですか・・・ちょっと先生!」

吉澤の言葉は背中で聞いた。

うちは野球部をちゃんと動かしたい。
そのためには石川が必要なんや。

うちはまったく検討もつかない石川を探しに校門を出た。
56 名前: 投稿日:2004/06/19(土) 13:12
すいません、ちょっとパソコンの調子が悪かったみたいです。
57 名前:*O 投稿日:2004/07/18(日) 00:47
面白そうです。
頑張ってください。
58 名前:中澤 投稿日:2004/08/16(月) 12:59
あ〜もうっ!わかるわけないやろっ!!


中澤は走っていた。
一応、家にも行ってみたが帰ってきているはずも無く、さっそく当てをなくしてしまった。


にしても・・・なんやねんあの親は。


「・・・しりません、生徒の管理は学校側がきちんとやってもらわなくちゃ困ります。」


だけやもんなぁ。そら石川もぐれるっちゅうもんやで。

・・・きっとあの子は今助けを求めてる。
59 名前:中澤 投稿日:2004/08/16(月) 13:09
・・・あかん、息切れてきたで。
闇雲に走り回ってもしゃあない、考えろ。


−−−−−−−−−わからん。


まだ一ヶ月もたってない相手をどーやって・・・・・


「や、矢口?」
「あんたにわかるわけないでしょ、石川の居場所なんか。・・・ったくもう。」
「いやあんた授業・・・」
「河川敷。」
「は?」
「河川敷のグランドだよ、たぶんそこ。いなかったら知らない、じゃあね。」
「あ、おい、まってや!ちょ、・・・矢口!」

それだけかい!
なんやねんあの娘も・・・。
個性強すぎやっちゅーねん全員。

「あ」

そや、石川んとこいかな。
え〜っと、河川敷やったな。
よっしゃ!いくで!



河川敷ってどーいくねん?
60 名前:中澤 投稿日:2004/08/16(月) 13:18
「ちょ、中澤先生!待ってください何でウチの・・・!」
「えーやないかちょっと貸してや!そんなんよりほんとにこの道まっすぐでええんか!?」
「あ、はい、んでつきあたりを右に・・・」
「ほなさいなら!」
「あ、ちょっと先生!」
「授業でてへんかった罰や!今からでも出ときっ!」

吉澤のやつ・・・ちゃっかりさぼりくさって。
まあええわ、おかげでチャリも手にはいったわけやし。

・・・あ。

ウチチャリのれへんってゆうてるやん!!

「・・・吉澤。」
「はい?」
「返す」
「なにを・・・ってちゃんとスタンド立ててくださいよぉ!倒れる!倒れるってマジで!」

61 名前:中澤 投稿日:2004/08/16(月) 13:20
あーもうっ、二度手間やんいろんな意味で!



「石川・・・まっとれよ!グラブ捨てんのはまだはやいで!」
62 名前: 投稿日:2004/08/16(月) 13:21
更新。
次は夜にでも。
63 名前:石川 投稿日:2004/08/16(月) 19:10
つかれた・・・。
なにやってんだろ、あたし。
グラブ捨てにきたつもりが結局一人で練習しちゃって。
あんなにおもしろかったのにな・・・。


石川は土手の草むらに寝そべった。
青く香る草と、空を流れる雲が心地よかった。


さっき殴られたとこが痛い。すごく。
平家先生、約束守れませんでした。
みんなで描いた甲子園って夢は、あまりにも遠くて見えなくて。



平家先生とみんながいたら・・・いけそうな気はしてたんだけどな。


石川は立ち上がってグラウンドを横切り、川の前で立ち止まった。

そして、


さよなら・・・私のすべて。


グローブを、



投げた。
64 名前:本当の私 投稿日:2004/08/16(月) 19:22
そのとき後ろからものすごい勢いで走ってくる足音がした。
金髪をなびかせ、スカートをたくしあげ、裸足で走ってくる女教師は。


「な・・・・中澤せんせ・・・!」


飛んだ。


「あんたは・・・・あほかーーーーー!!」
「な・・・・!!」


一面に飛び散る水しぶき。
中澤裕子は確かに・・・飛んだ。いや、跳んだ。


「せ、先生!だいじょう・・・!」
「ぶっはぁ!!あ、やば、これ死ぬで!マジ死ぬで!ふかっ!深いって!」


中澤は泳げているのかどうかもわからないほどもがいていた。
石川は理解できなかった。
他人のために川に飛び込む先生と、なぜか安心している自分に。」


「ちっくしょ、あ〜これあかんわ、マジクビかもしれん。ちゅーか今日スカート白やん。パンツ透けてへん?なぁ?」


石川はすがりたかった。
野球部を救おうとする金髪に。私を救ってくれたピアスに。


「・・・ふふ、先生のなんか誰も見たがんないですよー」


久しぶりに笑った。先生相手に。



・・・・涙が出そうになった。
65 名前:本当の私 投稿日:2004/08/16(月) 19:39
そのまま私たちは土手の上に腰を下ろした。
あいかわらず雲は流れている。


「ほら、あんたのや。」
草むらの上に黒いカタマリが放り投げられた。


まぎれも無く私のグローブだった。
少しほころんだ網目も、よっすぃーと一緒に書いた名前もそのままで。


「よかった・・・・よかった・・・!!」

気が付くと私は泣いていた。


「なぁ・・・そのグラブ、あんたの夢そのものちゃうんかい」

隣を見るとさっき渡した私の体操服を着ている先生。
青のカラコンは空よりもずっと澄んでいて、みとれてしまうほどだった。


「あんたら高校生に言わせればウチの言葉なんか戯言にしかきこえんやろーけどな。
 毎日毎日クソつまらん大人に振り回されて・・・いろんなもんから目をそらしてしまっとる。
 けどな、そんなんじゃあかんねん。クソつまらん大人はつっぱねてしまってええねん、自分のやりたい夢もって毎日意地はって生きてかなあかんねん。
 ・・・そしたら周りの大人たちもきっと認めてくれる。あんたみたいな素敵な夢持ってる子供がおんねんで?うちらがときめかんはずがないやろが」

「・・・・!!」

涙が止まらなかった。
あんなにさけずまれてきた私の夢を褒めてくれた。
私を必要としてくれた。

「・・・・やって・・・・も・・いい・・・んですか・・・?」

震えた声でもう一度言う。

「甲子園・・・目指していいんですか・・・?」

中澤先生は、笑った。



「つれてったる。」
66 名前: 投稿日:2004/08/16(月) 19:40
更新です。
57さん>
よかったらこれからも読み続けてください。
67 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/19(木) 21:20
やっとか・・・。

なんつって。
始めまして。
ずっと更新されるのを待っていたもので・・・。失礼しました。
取り合えず更新されたことで、ホッとしてます。
色々と大変でしょうが、頑張ってください。
68 名前:本当の私 投稿日:2004/08/20(金) 15:16
太陽が一番高くに上っているところだった。
ぽかぽかした春の陽気はこの明るい先生をさらに美しく輝かせていた。


・・・きれいだな。

単純にそう思った。
今までにも先輩たちの優しい心遣いや同級生の笑顔に励まされたことは何度かあった。
でも、この先生は心のそこから私の力になってくれようとしている。
少しも根拠はないが、そんな気にさせてくれる光を持っていた。
太陽のように。


「なんや、化粧はがれとるからあんまみんといてくれる?そら確かに格好はマヌケやけども。」


だはっと笑ってこぼれる笑顔はそれだけで私の心を満たしてくれた。


私・・・見つめちゃってた・・・。

今さらながらに恥ずかしさを覚えた私はてれかくしのためにまだ濡れたままのグラブに手を通した。
中はまだ水が少し残っていて気持ち悪かったが、感触は間違いなかった。
私のだ。長年一緒に白球を追いかけた友とはまた違う「相棒」。
毎日手入れを欠かさなかった相棒が、冷たい闇と記憶の中にうずもれなかったことがうれしくて、また少し泣きそうになった。


69 名前:本当の私 投稿日:2004/08/20(金) 15:26
「なぁ・・・そろそろきいてええか?」
先生はいつのまにか濡れたタバコを取り出して火をつけようとしていた。
「なにを・・・ですか?」
私はそのしぐさに見とれないよう声を出した。

「そやなぁ・・・ま、いろいろききたいことはあるんやけど・・・そんなに時間もないしな。
 とりあえず聞きたいのはあんたらの野球部になにがあったかゆうことがききたい。」

私はなんと答えたらいいかわからず、首を傾げた。

「もっとわかりやすく言えば・・・平家先生ってだれやねん。」

・・・この先生ならきっと大丈夫だよね?よっすぃー?

私は野球部に封じられた過去を話してみることにした。
70 名前: 投稿日:2004/08/20(金) 15:28
更新です。
67さん>すいません。(w
なにせパソコンの調子がちょっと・・・。
っていいわけです。(w
これからも読んでください。
71 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/21(土) 07:01
お疲れ様です。
そして、レスありがとうございます。
もちろん、楽しみに待ってます。
いきなり、なれなれしい書き込みをしてすみませんでした。
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 02:16
だんだんいい感じになってきたのれす
日々の楽しみにするれす
73 名前:あじあ 投稿日:2004/09/22(水) 12:08
今日、見つけました。
まだまだ序章って感じですが、とても面白かったです。
次の更新も楽しみにしています
74 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/16(土) 20:22
首を長くしてまっておりまする!!
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 20:01
ま、のんびりいきましょう。

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