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- 1 名前:extra 投稿日:2004/03/16(火) 01:52
- 森板で書いていたextraです。また短編になるとは思いますが、若干長めの
話を書くと思います。よろしくお願いします。
少しだけ更新ペースは遅いですがまたーり進行で行きたいと思います。
またリクエストも受け付けますので。
- 2 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:53
-
- 3 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:54
- 「いい加減に仕事してください!」
事務所と呼ぶには、簡素すぎるマンションの一角にある部屋からは小川麻琴の泣きそうな声が響く。
「いや、仕事をしてって言ってもないでしょ。実際」
ソファから面倒くさそうに立ち上がるのは、ここの主であり吉澤ひとみである。
「仕事は来るのに、それを断っているのは吉澤さんじゃないですか!?」
「だって、猫を探してくれだの、娘を探してくれだの。そんなんばっかじゃん」
「立派な仕事です!!」
小川の必死な様子に吉澤は髪をかき上げ、タバコに火をつけるだけ。
- 4 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:55
- この事務所は、表向きには探偵事務所となっている。
しかし、それは表向きにすぎない。
実際は、警察が解決できない難事件を引き受けることなのだが、なんせこのご時世。
特に部外者の協力が必要なほどの事件は起こることは早々ない。
「暇なんは、平和って事でいいんじゃないの?」
「生活が出来なくなることは全く平和じゃないです!いいですか!?どんな仕事でも次は引き受けてください!」
吉澤は小川にはいはいとばかりに手を振る。
「いいですか!?今からチラシを配ってきますから。誰か来たらきちんと対応してくださいよ!!」
小川は怒り爆発の様子で部屋を出て行く。
- 5 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:55
- 「あれじゃ、誰もビラは貰ってくれないよ。」
吉澤は煙を吐き出し、少しだけ肩をすくめる。
- 6 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:56
- 来客者は待てど待てど来ない。
「きちんと対応しろってたって誰も来ないじゃないの」
そう呟き、いつもの定位置であるソファに行き、テレビを点ける。
まだまだ小川が帰ってくることはない、小川が帰ってくる頃にデスクで難しい顔をしてれば大丈夫だろ。
テレビを点け、いつものようにチャンネルをパチパチ変える。
「う〜ん、昼間はおもしろい番組はないね〜。奥様じゃないからかな?」
テレビは永遠ともいえるくらいに、主婦向けの情報番組を流し続ける。
- 7 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:56
- ガチャとドアの開く音。
- 8 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:56
- 小川が帰ってくるには少しばかり時間が早い。
吉澤は少々溜め息をつく。
こんな時間に来る訪問者は面倒な人に決まっている。
なんてたって、今はランチの時間。その時間にわざわざ人を訪ねてくるわけだ。
しかも、こんな事務所に。
- 9 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:57
- 「相変わらず、仕事もせずに怠けているみたいね」
久しぶりとも言えるアニメ声に聞こえない程度の溜め息をつく。
「これは、これは、キャリアの石川さんじゃないですか?」
キャリアを少しだけ声を大きくして言うのはわざと。
「そこまで怠けているなんてギネスものじゃないの?」
相手も負けてないな。吉澤はニッコリ笑顔でやっと振り返る。
ソファの後ろには、神経質すぎるほどにきっちりとスーツを着て、腕を組んでいる女の人。
- 10 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:57
- 「石川さんこそ、わざわざこんな場所に来るなんて暇なんですか?」
「違うわ。仕事よ」
石川は、カバンから茶封筒を出す。
「仕事を頼みに来る態度じゃないね。相変わらず。」
吉澤は小さくそう言い、手渡された茶封筒を手に取る。
吉澤が書類を見たのを確認して、石川は吉澤の前に腰を下ろす。
- 11 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:58
- 吉澤は文字を読むのは嫌いである。
何でも文字を見ると瞬間的に眠りにつくとかつかないとか。
今回もそれは同じで、すぐに文字ばかりの書類を投げ、茶封筒の中に入っている写真を手に取る。
相変わらずな吉澤の仕事ぶりに石川は眉をひそめる。
- 12 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:58
- できれば、絶対に頼りたくない人間の1人。
あまりにも仕事ぶりが適当すぎる。
それがどうして警察がこんな人間1人にこんな重大な事件を頼るのか分からない。
- 13 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:59
- 石川が余計な考えをしている間に吉澤は写真も放り投げる。
「久しぶりの仕事だと思いきや変態の相手ですか?」
吉澤はニンマリ笑う。
- 14 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:59
- 「吉澤さん!!って、いらっしゃいませ…」
吉澤がいつものように惰眠を貪っていると思ったのか、小川は怒鳴りながら入ってきたが、すぐに石川の姿が
目に入り、営業用の声になる。
吉澤はバカと小さく声に出し、肩をすくめる。
石川もその声に反応して、小川を視界に捉える。
- 15 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 01:59
- 「あなたにも人を雇う余裕があるなんてね」
「えぇ。おかげさまで。小川、こちらは捜査一課からわざわざ来てくれたキャリアの石川さん。」
「そ、捜査一課!?」
「そ。んで、昔のことをネチネチと引きずる人。」
吉澤のこの言葉に石川はキッと睨みつける。
「あー、お茶入れてきます…」
少しだけ険悪な雰囲気が流れた部屋から逃げるために小川はキッチンに逃げる。
- 16 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 02:00
- 「言っておくけど、引きずってなんてないから」
「そうですか。んじゃ、その態度の変化はきっと気のせいなんでしょう」
ニッコリと笑い「昔のことは置いておいて、さっさと仕事を始めましょう」
反論が出かけていた石川だが、『仕事』という言葉に反論を飲み込む。
- 17 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 02:00
- 「小川〜。ちょっと出かけてくるわ!」
キッチンで紅茶を入れてるであろう小川に声をかけ、かかっている薄手のコートを着て外に出る。
- 18 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 02:00
- 「んじゃ、ここで。何か分かったら連絡します」
笑顔を絶やさず本心が読めないところは変わっていない
「私も付いていくわ。本当は嫌だけど、上からそう指示されているの。」
私のその言葉に少しだけ肩をすくめる。
「キャリア様の監視つきですか。随分、信用がないのね」そう言って歩き出す吉澤。
「当然でしょ。普通はこれは門外不出なんだから!って、どこに行くのよ?」
「現場」
- 19 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 02:00
-
- 20 名前:extra 投稿日:2004/03/16(火) 02:02
- とりあえずここまででどんな話かを掴んでいただければ、こちらとしては儲けもんです。w
- 21 名前:コナン 投稿日:2004/03/16(火) 03:45
- ハード系かな?面白そうな話ですね。
いしよし大好きなので、よろしくお願いします。
- 22 名前:extra 投稿日:2004/03/16(火) 13:56
- >コナンさん
そうですね。ハードな感じになると思います。少しだけグロい表現も出てきてしまうのですが…。
私もいしよし好きです。w
やっぱり甘い方がいいですかね?
- 23 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:56
-
- 24 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:57
- 着いたのは、小さな廃工場。
「ねぇ、石川さん」
「なに?」
「そんなにビビらなくても…」
吉澤の背中にぴったりくっついて石川。
「ビビってなんかないわよ!!」
あまりにも説得力のない石川の様子に半分諦めたのか、背中に石川をつけながら吉澤は中に入って行く。
- 25 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:57
- 殺人現場の前に来ると、吉澤は丁寧にお辞儀をした。
そして、いつもの笑顔に戻る。
「石川さん、これ以外に何か殺人なかったかなぁ?」
「は?どうゆう意味?」
「だから、これ以外に最近何か事件って起こらなかった?」
「例えば?」
事件なんて山ほどある。具体的な例を言ってくれないことには答えようがないのも事実。
「例えば、今回みたいに腹部から内臓だけを取り出し、中に内臓の代わりに白いワンピースとかね」
石川は写真を思い出し、口を押さえる。
あまりにも生生しすぎる写真だった。
- 26 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:58
- 「ないわよ!」
「あっそう。んじゃ、これが始まりだ」
吉澤の顔に笑顔はなく、少しだけ眉をしかめてはっきりとそう言った。
- 27 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:58
-
- 28 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:58
- ねぇ、愛するという事はどうしてここまで難しいの?
私は愛しているから殺すの。
でも、最近は殺すために愛するようにも思えてきたわ。
私の全てで貴女を埋め尽くしたいだけ。
ただそれだけ。
- 29 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:59
-
- 30 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:59
- 工場では、石川が背中に張り付いて動くどころか、まともに話もできなくなり、カフェに移動する。
「キャリアさんは、600円も払ってコーヒー飲むわけですね〜」
吉澤はウェイトレスが置いていったメニューを眺めながら言う。
「キャリアじゃなくても、飲むわよ。」
「経費で落とせるからじゃなくて?」
「そうゆう冗談は嫌いだわ」
石川のその言葉に吉澤はポンっとメニューを投げ、「コーヒー2つ」と笑顔でウェイトレス声をかける。
- 31 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 13:59
- 長い時間をかけて、やっと出てきたコーヒーを前に吉澤は飽きれ半分
「高いくせに時間もかかるってわけね〜」
「いちいち、いちゃもんつけないの。恥ずかしい真似はしないで。それでさっきの話だけど。」
「もう仕事の話?せっかくデートみたいなのに」
ニヤニヤとした笑顔を浮かべる吉澤。
「殺人現場に行くデートなんて死んでも嫌。それでさっき『始まり』って言ったわよね?」
吉澤はポッケからくしゃくしゃになったタバコを取り出し火をつける。
- 32 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:00
- 「言ったね。」
「それはどうゆう意味なの?聞き捨てならないわ。」
「まぁ、ただの推測。もう少し様子を見ましょう。」
「様子を見るって!!!」石川は思いっきり机を叩く。
「まぁまぁ、周りが見ていますよ?」
「…どうゆう事よ?様子を見るって殺人を黙認するって事なわけ?」石川は、髪を触りながら話す。
「今の段階では推測。あくまで吉澤の独断と偏見です。警察の方は独自に捜査をすればいい」
「なによ、それ」
「吉澤は動かないってだけ。そうだな、1週間くらいかな?」
- 33 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:00
-
- 34 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:02
- 「や、やめて!!」
「愛しているの。]
だからね?もっともっとその綺麗な目で私を蔑んで。
もっともっとその艶っぽい唇で許しを乞うて。
その瞬間、私は世界中の誰よりも貴女を「愛しているの」
口の中で何度も呟き少女は包丁を振り下ろす。
部屋中に響く声と広がる赤い血液。
愛しいものの前にいるかのように鼻歌を歌い続ける少女。
- 35 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:02
-
- 36 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:03
- 「ほう。もう行動に出ましたか。」
吉澤の声に反応して、小川は吉澤が見ている新聞を覗き込む。
「『女性の変死体発見』ですか?」
「イエース!ザッツライツ!!」
小川の頭を軽く撫で、立ち上がる。
「さぁて、出かけてきます。もう少ししたらうるさい奴が来るだろうし。」
「あのキャリアの人ですよね!?いいんですか?」
「いいの。いいの。監視付きとか面倒。」
そう言って、コートに手をかける。
- 37 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:03
- 「面倒で悪かったわね。」
コートに手をかけたままうなだれる吉澤。腕を組み、そのまま睨む石川。
「よ、吉澤さん。お客さんです…」
小川のその声で吉澤は上体をあげる。
- 38 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:03
- 「いやぁ、さすがキャリアさん、行動が早いですね」
「まさか1人で出かける気だったわけじゃないわよね?」
「えぇ、もちろん。石川さんと行動を共に出来るなんて嬉しすぎて涙出てしまいます」
ニッコリと微笑み合う二人の間でうろたえる小川。
「黙って付いてきて。一言も余分な事は話さないで」
「了解。」吉澤はわざとらしく口に手をあてる。
- 39 名前:perfect 投稿日:2004/03/16(火) 14:04
-
- 40 名前:extra 投稿日:2004/03/16(火) 14:04
- 本日はここまでで。なかなか話が進まなくてすいません。
- 41 名前:レオナ 投稿日:2004/03/16(火) 15:48
- 更新お疲れ様です。
森板すばらしい作品ばかりだったんで。
今回も期待してます。
どんな、いしよしも最高!!
- 42 名前:プリン 投稿日:2004/03/16(火) 16:16
- (・∀・)イイ!です。
お疲れ様です。
いしよしが大好きなので。
更新頑張ってくださいね。
待ってますからw
- 43 名前:extra 投稿日:2004/03/17(水) 14:00
- >レオナさん
ありゃ?森の方も読んでいてくださったのですか?感激です
すばらしいなんて恐れおおいです。w
>プリンさん
いしよしいいですよね!というか、すごく書きやすいCPでもあります。w
妄想をかきたてる2人なのでしょうか?w
私がただの妄想癖なのか…w
待ってていただけると嬉しいです。
- 44 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:01
-
- 45 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:01
- 「一般市民に死体を見せるなんて警察もオープンになったもんだ」
死体を前にして、それでもこんな軽軽しい言葉を口にする。
「それでこれは同一犯の犯行でいいわけ?」
「石川さん、どうして背中を向けているわけ?」
死体を見たくないのか石川は背を向けたままである。
「うるさいのよ!質問の答えは?」
「まぁ、同じかな?背格好も同じくらいだね。
違うのは、目玉がないことと、腸を引っ張り出されて左肩から右膝にかけてぐるぐる巻かれてた発見されたくらい?」
「…よくご存知で。」
「新聞の見出しくらいは目を通すよ。場所変えましょう。石川さん、このままじゃどんどん顔色が黒くなるし」
そう言いながらゴム手袋をはずし、笑顔で石川の肩を叩く。
「黒くなんかないわよ!」
- 46 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:03
- 「目玉に内臓。さて次はどこだろうね?石川さん♪」
「…知らないわよ」
前に来たカフェで石川はやっと落ち着いた気分になる。
その時にこんな質問。しかも、確信犯。
「死体でそんな状態なんてね。これだからキャリアは」
片眉を上げて石川をまっすぐと捉える。
「なれないだけよ。そのうち何でもなくなるわ」
「そのうちね…。ね?カンニバルって知ってる?」
「なによ、いきなり」
「仕事の話」
そう言い、吉澤はコーヒーを口にする。
- 47 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:03
- 「人食嗜好よね」
「うぅ、にがい。格好つけてブラックなんか飲むもんじゃないな」
人に質問しておいて、この態度。
「カンニバルがどうしたって言うのよ!?」
「今回の犯人です」
サラっと爽やかな笑顔。
「は?何を根拠に言ってるのよ!」
「まぁまぁ、そんなに眉を上げなくても」
「貴女の態度が気に入らないの。」
「まぁ、吉澤は石川さんの怒った顔も好きだからいいんだけど。」
その言葉に石川は音がたつようにわざと強くカップを置く。
「話を始めて。そうゆう冗談も嫌い。」
「嫌いなことがなかなか多いようで…」
吉澤は肩をすくめ、通りに目をやる。
- 48 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:04
- 「石川さん、今、恋人とかは?」
「は?何が言いたいの?」
「いいから。愛している人がいないかいるのか答えてくれる?」
「仕事が忙しくてそれどころじゃないわ。」
「ほう、じゃ、少し前を思い出そう。石川さん、独占欲強いよね?」
キッと石川が吉澤を睨みつけ、吉澤は軽く手を上げる。
「まぁ、そんな顔しないで。ね?愛しい人を1人占めにしたいって思うのはおかしなことじゃないね?」
石川がうなづくのを確認して吉澤は笑顔になる。
「次は脳みそがない死体が見つかるよ。そうだな。例えば、石川さんのようなエリートのね」
「は?何を言ってるの?」
「う〜ん。もしくは、手足かな?」
吉澤は自身の手をじっと見詰め、その後に自身の手のひらを石川に向ける。
- 49 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:05
- 「石川さんは考えたことはない?」
「何をよ。」吉澤の今までの言葉に半ば消沈気味の石川。
「例えば、愛している人の愛しているパーツが欲しいって。この人のような目になりたいわ。石川さんのようなあごが欲しいわってね」
「…殴られたい?犯人は愛している人の最も気に入ってもっと愛している部分、取り出した臓器や眼球を食べてるって言いたいの?」
「さすがキャリアさん♪」
「その呼び方やめて。」石川は口に手をあてる「…普通じゃないわ」
「だから、最初に変態って言ったじゃない?」
吉澤はタバコを火をつけずに咥えたままの状態で首を少しだけかしげる。
- 50 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:06
-
- 51 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:06
- ギッギッギッ
足と手を切り取りましょう
ギッギッギッ
そして、素敵な私の出来上がり
ギッギッギッ
安心してね、ゆっくり煮込み貴女の骨まで食べるから
ギッギッギッ
嬉しいでしょう?私と一緒になれるのよ
ギッギッギッ
ギッギッギッ
ギッギッギッ
鼻歌は突然止まる
「お気に入りの白いワンピースだったのに、赤くなってしまったわ」
- 52 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:07
-
- 53 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:08
- 「でも、それだけじゃ犯人は特定できない。」吉澤の言葉に石川はうなづき、やっとタバコに火をつける。「それで現場検証は?」
「犯人特定に繋がるものは何も。ワンピースもあまりに量産されすぎてる。犯人が来た形跡はないの」
「そう。じゃあ、役立たずの国家権力様に1つ教えてさしあげましょう。」
「役立たず!?」
吉澤は少しだけ驚いたような仕草をする。またそれが石川の癪に障る。
「別に石川さんが役立たずなんて一言も。ねぇ?」
「言ってるようなものじゃないの!」
「犯人は女だよ。」
「はい?女?そんなわけはないわ。」
「どうして?」
「貴女の推理でいけば、この後は手足を刻むのよね?それを女性一人でできるとは思えないわ。」
「それが男だと言う理由?」
「そうよ!十分、現実的だわ。」
- 54 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:08
- 吉澤は軽く指で机をカツカツと叩く。
「もし、男が犯人であれば、最初に内臓なんか持っていくかな?」
「は?」
「それに、男であれば、性的行為をした跡が残ってもいいんじゃないかな?カンニバルは死体に欲情するみたいだし。
しかも、愛している人を殺しているという前提だよ?今は。興奮しないわけがない。」
石川はひじを突き手のひらを額にあて、大きく溜め息をつく。
- 55 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:09
- 「分かったわ。女性としましょう。」
石川は少しだけの間、目を閉じ考えていたようだが、今は顔を上げ吉澤の顔をしっかりと見据える。
「仮定ですか?」
「今の段階ではね。」
さっきとまるで同じように今度は吉澤が石川の真似をして溜め息をつく。
まるで茶化しているような態度に石川は眉をしかめる。
石川の反応に満足したのか吉澤は冷め切ったコーヒーを口に含み、眉をしかめまた小さく舌を出す。
- 56 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:09
-
- 57 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:09
- 早く、早く時間がないわ
急がなきゃ、貴女を愛しているのは私だけ。
貴女を煮込めば私と貴女は1つになれるの
なんて素敵。なんて神々しい。
貴女の骨まで煮込んであげるわ。血は食後のワイン代わりにしましょう。
きっと喜んでくれるわ。
少女は白いワンピースに身をつつみ、人混みを走る
- 58 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:09
-
- 59 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:10
- 吉澤は3本目のタバコに火をつける。
「キャリアの石川さん。この地域で被害者と同じ年代、同じ背格好。その上、真面目な子を探してくれない?」
「は?」
「もしかして、あの石川さんが『どうして?』なんて疑問を抱いているって事はないよね?」
「同じ年代、同じ背格好までは分かるわ。どうして真面目?」
吉澤は溜め息なのかタバコの煙なのか息を吐き出す。
「はぁ。石川さんってキャリアだよね?」
「それが何?」
「現場では全く役に立たない勉強をしてきた頭でっかちさんなわけだよね?」
「…喧嘩売ってるの?」
「まさか!ただ全部吉澤に聞くんじゃなくて、少しはその知識を使って考えてみたら?」
「時間の無駄よ。早く言って!」石川が強めに声を出すと、吉澤は耳をふざぐ仕草。
- 60 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:10
- 「白いワンピースに今回の腸を引きずり出す。それなりの道具が必要だとは思わない?」
「まぁ…。包丁だけではね。」
「って事は、こうゆう犯人って秩序型だって習わなかった?」
吉澤の言葉に石川は下唇を噛む。
「秩序型って人間嫌いだけど社交的にみせ知能は高く、かなり計画的に犯行を行うのよね?」
「さすが歩く教科書だ!」パンって手を大げさに叩く。
「…殴られたい?」
「吉澤はMじゃーない。しかし、石川さん、肝心なことも忘れがち。それだけでは今回は秩序型だとは決められない。」
「何よ?」
「白いワンピース。メッセージじゃないかな?」
- 61 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:10
-
- 62 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:10
- 家に帰って、早く煮込みましょう。
コトコトコトコト
今回は骨もあるから、時間がかかるわ
コトコトコトコト
煮込んでいる間は、話をしよう
グツグツグツグツ
それで少しづつ完璧になってる私を褒めてもらわなきゃ。
グツグツグツグツ
貴女はいつもみたいに髪を撫でてくれるかしら?
コトコト
貴女は笑ってくれるかしら?
コトコトコトコトグツグツグツグツ
少女は天使のような笑みを浮かべ、帰宅を急ぐ。
- 63 名前:perfect 投稿日:2004/03/17(水) 14:10
-
- 64 名前:extra 投稿日:2004/03/17(水) 14:11
- 本日はここまで。
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/17(水) 14:45
- 凄い。
続きがスゴク楽しみです。
- 66 名前:レオナ 投稿日:2004/03/17(水) 16:29
- 更新お疲れさまです。
次回も、がんばってください。
よっちゃんと、石川さんもがんばってね〜。
- 67 名前:extra 投稿日:2004/03/18(木) 09:44
- >65さん
楽しみにしていただけて光栄です。こんなに長いものを書くのは初めてですので
お見苦しい点もあるかと思いますが、最後までお付き合いください。
>レオナさん
応援ありがとうございます。
これからどんどんよっちゃんと石川さんを頑張らせるつもりです。w
それでは本日の更新です
- 68 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:44
-
- 69 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:44
- カフェを出て、石川の車の中。運転をしている石川はまだ腑に落ちないと言った顔。
「やっぱりおかしいわ。」
信号が赤に変わり、停車したところで石川は吉澤を見ず、ハンドルを見て呟く。
「どの辺が?」
「愛する人を殺すなんておかしいわ」
吉澤は窓を開ける。青になり動き出した風が吉澤の前髪を上げる。
「だって、そうでしょう?愛する人を食べているわけでしょう?」
「うん、そうだね。」
「やっぱりおかしいじゃない」
「食すことで自分の中に愛しい人を取り込み、一体化をしているとしたら?」
「え?」
「って、前〜!!前!!!」
- 70 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:45
- 少女は切り取った手足を愛しく抱え、家に入る。
なんの変哲も無い。少しだけ郊外にある古いマンション。
玄関も綺麗に掃除がしており、そこには季節の花が彩っている。
「ただいま」少女は嬉しそうな声をあげ、冷蔵庫を開ける。
首から上だけで目を見開いている髪の長い女性は沈黙を続ける
- 71 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:45
- 「し、死ぬかと思った…」
石川のよそ見により、目の前の車に衝突をしかかった。
「運転中におかしな事を言うからでしょ!?」
心臓を押さえ、窓に頭をもたせている吉澤は目を細め、片眉を上げる。
「おかしな事を聞いてきたのは、石川さんでしょうが。」
「運転中に話して良いこととダメなことってあるわ」
「すぐ結論を急ぐ石川さんの割りにおかしなことを言うね」
「黙って。昔の話をされるのは嫌なの」
「冗談と同じくらいに?」
「大嫌い」
「それは失礼しました」吉澤は風で乱れた前髪をかき上げる。
- 72 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:46
-
- 73 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:46
- 泣いたり、迷ったりしないから
そう二度と挫折なんてことはしない
だって、私は貴女と1つになれるんですもの。
嬉しいでしょう?
ねぇ、愛しているの。殺す瞬間に貴女の目に私が映るそれだけが私を絶頂に迎えてくれるの。
貴女を手に入れた瞬間に私は貴女への愛を失うわ。何て刹那的な愛。
でも、私はその一瞬を欲するの。貴女と私の気持ちが重なり合う瞬間。
その後は貴女は私に取り込まれて永遠。
- 74 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:46
-
- 75 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:46
- 追突しそうになったことをきっかけに運転を吉澤が変わる。
それが気に入らないのか何も喋らないで窓から走る景色を見ていた石川。
「あ、安倍さん。」
「なに?!」ブレーキを踏み、車を停車させ石川の方を見る。
「あの子。」
「はい?あの子ってどの子よ?」
「ほら、あの白いエプロンつけて髪はボブ。」
店先で包丁を研いでもらっているらしく、店の主らしき人と仲睦まじく話している。
「あら?かわいい♪知り合いさん?」
「知ってるもなにも。いつもお弁当届けてくれるのよ。仕出し屋さんね」
「ほう。石川さん、ここで降りるわ。」
「ちょ、ちょっと!」
「それから明日はオフをちょうだい。あの子をデートに誘うから♪」
ウィンクをして車から降りる吉澤。
「は?ちょっと待ちなさいよ!!」
「久しぶりに吉澤好みの女の子なの。じゃあね」
軽く片手を上げて、吉澤は車をとめながら道を渡る。
「…最低っ!女のくせに女ったらし!!」
- 76 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:46
-
- 77 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:47
- 包丁も研いでもらったわ
また料理ができるの
- 78 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:47
-
- 79 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:47
- 「石川〜。お昼どうするの?」
久しぶりに署内で過ごす石川。
「安倍さんのところですか?」
「当然でしょ?」そう言いネコ目の上司保田は石川にメニューを渡す。
「私、日替わり弁当でいいです」
「あら?今日は食べるのね?」
「一日中会議ですから。こうでもしないと体力持ちません。」
石川がわざとらしく肩を落とすと、保田は大きく笑い石川の背中を強く叩く。
「午後もキリキリ行くわよ!!」
「はぁ…」背中の痛さを噛みしめ、午後に対して本当に憂鬱な気分になる。
- 80 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:47
-
- 81 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:47
- また私の愛すべき人が見つかったわ。
容姿端麗、頭脳明晰。
健康な肌の色。
意志の強い目。貴女に決めたわ。
貴女のその声を私のものにしたいわ。
私だけに言葉をくべればいいでしょう?
そうね。首を切り落として、声帯をミキサーに入れましょう。
あの綺麗な肌は枕カバーにでもしましょう。そしたら、いつでも肌を感じられるわ
- 82 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:48
- 貴女を愛している
- 83 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 09:48
-
- 84 名前:extra 投稿日:2004/03/18(木) 09:49
- ものすごーく短いですがこの辺で。
展開が速いような気がしますが大丈夫でしょうか?
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/18(木) 13:05
- 更新、お疲れ様です。
う〜ん、すごい面白いです。テンポの良さがいいなと思っています。
いしよしの過去に何があったのかも密かに気になる・・
次回も更新が楽しみです。頑張って下さい。
- 86 名前:レオナ 投稿日:2004/03/18(木) 18:26
- よい展開だと思いますよ〜。
>>85
自分も、過去気になりますね〜。
次回も、がんばってください。
- 87 名前:extra 投稿日:2004/03/18(木) 20:47
- >85さん
テンポの良さですか?それは嬉しいですね!
ありがとうございます。調子にのって本日2度目の更新です。
楽しんでいただけると幸いです
>レオナさん
よい展開ですか?そう言っていただけると嬉しいです。
2人の過去ですが、どうなんでしょうね?w
作者にも曖昧にしか分かりません。
- 88 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:48
-
- 89 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:49
- 「お待たせしてすいません!」安倍の元気な声が部署に響く。
「いいのよ、待たされた分、料理も美味しくなるってものよ」保田は料理を受け取りお金を渡す。
「そう言ってもらえると嬉しいべ」ニッコリとまるで天使のような微笑。
石川は自身の弁当を受け取るために立ち上がる。
「梨華ちゃん、久しぶり。ずっといなかったべ」弁当に手を伸ばすと安倍に声をかけられる。
「えぇ、ちょっと出てることが多かったんです。あ、そう言えば」
「なんだべ?」不思議そうに石川の顔を見てくる安倍。
「昨日、背が高くて金髪で最低な冗談を言う人にナンパされませんでした?」
「いや、なかったけど…。あ!それってスラっとしてて、少年みたいな女の子かい?」
予告通りにきちんと声をかけている吉澤に飽きれる。「そうです。」
「道は聞かれたけど、それ以外のことは何もないべ。あれはナンパだったの?」
「道ですか?」
「そう。駅を教えて欲しいって。道順教えたら丁寧にお辞儀と握手して行っちゃったべ」
手振り、身振りで話す安倍。
- 90 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:49
- 「何考えてるんだろう。」弁当を手に持ち空を見上げる。
「まさか梨華ちゃんの恋人かい…?」
「まさか!!やめてください!あんな奴、大嫌いなんですからっ!!!」
「そ、そうかい。すっごい否定するね」突然の石川のアニメ声に部署内は静かになる。
「なぁ〜に言ってるの!学生時代はそれは『よっすぃ〜!よっすぃ〜!』って追い掛け回してたくせにね〜!」
少し離れた場所から保田がお茶を飲みながらわざと大きな声で言う。
「保田さんっ!!!!」
慌てる様子の石川。
その石川を能面のような表情で見つめる安倍。でも、それは誰もが見過ごしてしまう程度の一瞬。
すぐに天使のようないつもの笑顔で保田と石川のやり取りを聞いている。
- 91 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:50
- 「あ、梨華ちゃん、今日日替わり弁当だべ?」
石川と保田の掛け合いが落ち着いたところで安倍は声をかける。
「えぇ、そうですけど。」
「ラッキーだべ。」
「何がですか?」すごく嬉しそうに笑う安倍につられて、石川も微笑みを浮かべる。
「今日はすごく良い肉が少しだけ入ったんだべ。それで少しだけ入れてるってわけ。」
「何!?それは本当なの!?」普通にからあげ明太を頼んだ保田が叫ぶ。
「本当だべ。梨華ちゃん、ラッキーだね」
「はい!」
保田に向かって小さくピースサインをすると、保田は小さく溜め息をついて自分の弁当をものすごい勢いで口に運んでいる。
- 92 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:50
-
- 93 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:50
- 愛している貴女が私の愛してた人を取り入れるなんて…
今までにない快感に体が震えてしまう
その綺麗な唇はどんな言葉を私に投げつけてくれるの?
その綺麗な声はどんな味なのでしょう。
- 94 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:50
-
- 95 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:51
- 「小川〜!!!肩揉んでくれないかなぁ?」
久しぶりに事務所でゆっくり過ごす吉澤。
事件については考えないで過ごそうと思っていたのだが、テレビや新聞で嫌ってほど流れてくる。
「嫌ですっ!今はチラシ作ってるんですからっ!!」
「またっ?またチラシ作ってるのか!?」
ソファから状態を起こし、小川を探すと、パソコンの前に座りレイアウトをしている様子。
「本当、お前を尊敬するよ」
「それでしたら、今回が終わったら仕事してください。仕事!」
「何言ってるの?今回のギャラで当分食って行けるでしょう?」
ソファにあごを乗せ、小川の背中に向かって言う。
- 96 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:51
-
「吉澤さんっ!!今は不景気なんですっ!公的機関が前のようにお金を出すわけないでしょう!?」
「え!?そうなの!?っていうか、腹減った…。小川なんか買ってきて。」
「吉澤さんっ!私は仕事してるんですよっ!?」
「いいじゃん。よしざーは、お前が紺野に会える口実を作ってるの。紺野、弁当屋でバイトしてんだろ?」
「…行ってきます。」
「はいはぁ〜い!!」
嬉しそうに手を振る吉澤。悔しそうに耳まで赤くしながら財布を握り締めている小川。
「キャリアの石川さんは、きっと経費で昼間っから良いもん食べてるんだろーなぁー」
グーっと背伸びをして、吉澤はまたソファに転がる。
- 97 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:52
-
- 98 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:53
- 石川は会議を終え、くたくたになり署を出ると、目の前の花屋に安倍が立っていた。
「安倍さん?」
「梨華ちゃん。仕事終わったの?」
「はい。今さっき。あ、お昼ご飯すごく美味しかったです」
石川の言葉にすごく嬉しそうな表情になる。
実際のところは、羨ましいそうに見てくる保田に負けて、例の肉は食べていない。
「でしょ?あれは本当に特別なんだから。そうだ!梨華ちゃん、これから予定はある?」
「予定ですか?」
「うん。まだお肉が残ってるから、なっち、梨華ちゃんにご馳走するべ!」
「本当ですか?」
「うん!なっち、1人で食べるのは寂しいべ。一緒に食べるっしょ?」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃいます。」
これから家に帰って、炊事をするのも面倒と感じていたし、保田が絶品と絶賛していた肉を食べていない石川としては好都合な誘い。
「行くっしょ!」そう言い安倍は石川の手を握る。
最初は違和感を感じたが、いつもの人懐こい安倍を知っているだけに振りほどくこともできずに手をつないで歩く。
- 99 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:53
- 「吉澤さーんっ!弁当買って来ましたよ!」すごく嬉しそうに小川が弁当を抱えて入ってくる。
「おぉ、早かったな。もっとイチャイチャしてくるかと思った。」
髪をかき上げ、吉澤は上体を起こす。
「イチャイチャなんてしませんよっ!!」真っ赤になって小川が反論するが、どこ吹く風。
吉澤は小川から弁当を取り、中を物色し始める。
「おい、どうして2種類同じ物を買ってくるんだよ!」
「あー、それはですね、紺ちゃんが今日は日替わり弁当がお勧めだよって言ったからです!!」
自慢気に指を立て胸を張って話す小川の頭を殴る。
- 100 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:54
- 「お勧めじゃねーよ!!おかずが多すぎて嫌いなの!これがメインってもんがないじゃんかよぉ…」
怒ったり、泣きそうになったり忙しい吉澤に小川は殴られた頭を撫でながら「ありますよ!メイン!」
「はぁ?どれだよ。フライ・かぼちゃ・いも…。どれだって言うんだ!言ってみやがれ!」
吉澤は空腹のせいもあり、小川の両頬を思いっきり引っ張る。
「ひゅらいれす」
「あーん?フライ?これ?」
弁当の中に入っているフライを凝視するが何の変哲もないフライ。
「そうです!それはですね、なかなか手に入らないすっごい美味しいお肉を使ってるんです!
しかも、そのフライは今日限定なんですよっ!」
「すっごい美味しいってお前食べたの?」
「はい!味見させてもらったんです!もうすっごく柔らかくて美味しくて、これは吉澤さんにも食べさせたいなぁーって!」
多分、今、小川が犬であればシッポでも振っていると考えると、吉澤はつい笑ってしまう。
- 101 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:54
- 「よしよし、良い子だ。」そう小川の頭を撫でる。
小川が嬉しそうに吉澤の隣に腰をおろし、弁当を手に取る。
そこまで大プッシュのフライから2人とも口に運ぶ。
「やっばいくらいに柔らかいですね〜!って、吉澤さん何してるんですかー!?」
フライを口に入れ、数回噛んだだけでティシュに吐き出すという奇行をする吉澤。
「小川よ〜。紺野の弁当屋って何て名前?」
「どさんこ弁当ですけど…」
そこまで聞くと吉澤は立ち上がり、かけてあるシャツを取りTシャツの上に羽織る。
「出かけてくる!それから弁当は全部捨てろ!」
「え?え?」
状況を把握できない小川を置いて、吉澤は事務所を飛び出す。
- 102 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:54
- TRUUUU TRUUUU〜♪
- 103 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:55
- 「梨華ちゃん、携帯鳴ってるべ。」
石川のバックの中から音がもれる。着信者を確認して石川はマナーモードに切り替える。
「出なくていいの?」
「えぇ。業者みたいですから。」
「ハイテクな世の中だべさ。」
「そうですね。」
「もう少しで料理できるからテレビでも見て待ってるっしょ?」
「はい。」
- 104 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:55
- そうは言われても、安倍の部屋は異常なほどに白で統一されていた。
白は精神を落ち着ける色と言うが、これでは逆にものすごい居心地の悪さを感じてしまう。
そして居心地の悪さを相乗しているものはキッチンかの異様な臭い。
「安倍さん、この臭い何ですか?」
「へ?あー、天井のかびからの臭いみたいんなんだけど、なっちにもよく分からないべ。」
安倍がキッチンから少しだけ顔を出し、石川に笑みを見せる。
石川は笑おうとしたがうまく笑えず、うなづくだけ。
- 105 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:55
- 「あー!もう!あの女、電話に出やしない!!」
走りながら吉澤は何度も石川に電話をかけているのだが、出る様子が全くない。
「あのおばちゃん、苦手だが仕方ないか…」
吉澤は走ることを止め、電話をかける。
- 106 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:56
- TRU…「はい!保田!」
「…出るの相変わらず早いっすね…」
「吉澤じゃないっ!どうしたの?」
「保田さん、どさんこ弁当を今すぐ調べてもらいたいんです。」
「どさんこ弁当を?」
「へ?知ってるんですか?」
「知ってるも何もうちに毎日仕出ししてくれてるわよ。」
「そうなんですか。なるべく早くお願いします。」
「理由は?」
「弁当に人肉使ってます。それから石川さんは?」
「それは正気で言ってるの!?もし、調べて何も出てこなかったら、あんたのこと殺すわよ!」
「はいはい。それで石川さんは?」
「あー、あの子、帰ったわよ。あんたのとこに行ったんじゃないの?」
「そうですか。じゃあ、とりあえず、もうよしざーは弁当屋の近くにいるんですよ。保田さんだけでもすぐに来てもらえます?」
「5分で行くわ」
- 107 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:56
-
- 108 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:56
-
安倍の笑顔を見て、急に石川は頭がクラクラしてくる。
疲れからの眠気なのか、どうなのか。
石川はもうまぶたを開いておくこともできなくなっていた。
- 109 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:56
-
- 110 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:56
- 「保田さん!」
「あんた、私を呼び出すなんて偉くなったもんよね!」
「しょうがないでしょ?こっちだってしぶしぶですよ!!」
「…言うわね。」
吉澤は肩をすくめ、あごで店を指す。
「行くわよ。」
- 111 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:57
-
- 112 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:57
- まるで眠り姫のように目を閉じている石川の姿を安倍は舐めるように見つめる。
- 113 名前:perfect 投稿日:2004/03/18(木) 20:57
-
- 114 名前:extra 投稿日:2004/03/18(木) 20:57
- 次回で完結させていただきます。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/18(木) 22:16
- 続きが気になる…!
毎回更新が早くて一読者としては嬉しい限りです☆
作者サン、無理せずガンバッテくださいませ(・∀・|
- 116 名前:コナン 投稿日:2004/03/19(金) 05:20
- 更新お疲れさまです。
展開速くて素晴らしいです!2日ほど来なかったら!!
こんなに、凄い事になっていたのね!!ヽ(`Д´)ノ
面白くて早く続きが見たい、気になるです。
いしよしは甘めでしょうか?(期待w
- 117 名前:85 投稿日:2004/03/20(土) 00:14
- 更新、お疲れ様です。
何だか読んでるこちらがドキドキして来る展開ですね。
(時折出て来るアノ人の言葉がすごくコワイです・・)
何気によしまこ師弟関係(?)がツボですw
ホワっとして和みます。
次回も楽しみです。
- 118 名前:extra 投稿日:2004/03/20(土) 06:41
- >115さん
初めまして。
いやいや、どうもありがとうございます。
更新の方はマイペースでやっていますので、心配ご無用。w
マイペースで喜んでいただけるのは実に嬉しいです。
これからも遊びに来てください。
>コナンさん
早く続きが見たいだなんて、ものすごく嬉しいです。
いや、不安もあり書き出したものでしたので、嬉しさはひとしきりです。
いしよしについてですが、ノーコメントということで。w
>85さん
アノ人は、やりすぎかなと内心ドキドキしています。
まぁ、アンリアルなのでこれでいいやと暴走気味でもあるのですが。w
それでは、始めます。
- 119 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:42
-
- 120 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:42
- 「いらっしゃいませ!って、吉澤さん?」
「こんばんわ。紺野。店長さんは?」
「え?さっきのお弁当何か悪かったですか…?」
吉澤は表情が固くなってしまっている。そんな吉澤を後ろに下げ保田は笑顔を作り話し掛ける。
「いいえ。私たち、古い友人なの。それで今日は食事に行く約束をしていたの」
「…はぁ、というか、どちらの?」
「「どちらの?」」
「はい、飯田さんと安倍さんどちらのですか…?」
紺野の不思議そうな顔。吉澤と保田は顔を見合わせる。
- 121 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:43
- 「えっと、店長は2人?」
「今は安倍さんですけど。少し前まで飯田さんも一緒だったんです。それで飯田さんは絵の夢が諦められなくて出て行ってしまって」
「そう。それで、今、なっちはどこにいるの?」
「もう帰りました。」紺野の言葉をきっかけに吉澤は動き出す。
「保田さん、ここは任せました!」
「あんた!家分かるのー!!」保田が叫ぶと吉澤はピタっと止まり振り返り小さく舌を出す。
「保田さん、メールで送ってください。」
「まったく…」携帯を取り出し、吉澤にメールする。
「どうも!!」吉澤は手を上げてまた走り出す。
『キリキリ行きなさい!〇〇市…町〜』
- 122 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:43
-
- 123 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:43
- 石川が目を覚めるとベッドの上だった。安倍が運んでくれたのだろうか。
石川はあの小さな背中を思い浮かべ申し訳ない気分になる。
ベッドから出てやっと石川は自分の異変に気付く。
今、石川が身にまとっているのは真っ白のワンピース。それ以外は下着も全てなくなっている。
- 124 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:44
- 「ど、どうゆうこと…?」
「起きた?」
石川がたてた物音に反応してか隣の部屋から白いエプロン姿の安倍が顔を出す。
「これは…?」
「あぁ、それ、なっちが大好きだった人が一番似合うって言ってくれたワンピースなの。
なっちって白が似合うでしょう?」
「…はぁ」石川が聞きたいのは、このワンピースを着ている理由なのだが安倍は気にせず話を続け少しづつ石川に近づく。
「大好きだったじゃない。なっちは愛してたのに…」
安倍の目がいつもと違い虚空を見ていることに石川の心臓は心拍数をあげる。
- 125 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:44
-
- 126 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:44
- 「ぬあ!ここどこだ!?」保田からのメールを受けたものの番地しか書いていない。
目印になる建物もない状態では方向音痴の吉澤は混乱におちいる。
「絶対にこの辺のはずなんだけどなぁ…」頭を掻き、住所が書かれている電柱を探すものの見つからない。
「やはりナビ付き携帯に変えるべきかなぁ。にしても、キャリアさん電話に出れよ!!!」
石川の車にはナビがついている。それさえあれば迷うこともなかったと思うと、電話に出ない石川に対して怒りを覚えはじめる。
「がーっ!!むかつく!!!!」
- 127 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:44
-
- 128 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:44
- 「紺野さんでいいのかしら?」
「は、はぁ…」
「私はこうゆう場所から来たの。」保田はカバンから手帳を出す。
「け、警察!?」
「ええ。ちょっとだけ中を調べさせてもらってもいいかしら?」
保田の言葉に紺野はただただうなづくだけ。
保田は紺野がうなづいたのを確認して厨房に入る。
「綺麗に片付いてるじゃない?」
保田は棚という棚を端から見てまわるが死体らしきものはない。
- 129 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:45
- 「ねぇ?紺野さん、冷蔵庫はここだけなのかしら?」
「えっと、地下に貯蔵庫が…」
紺野は小さなドアを指差す。
「失礼するわ」
- 130 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:45
- ドアを開けて飛び込んできたものは逆さに吊るされ肋骨から性器までを裂かれている人の皮。
天井から吊るされている。ものすごい死臭に保田は吐き気すら覚える。
奥の方にも何体か塊がころがっている、無数のハエやうじがむらがっているのを見ると死体だと判別できた。
「壮絶ね…」電気をつけようと、壁に目をやると何枚か写真が貼ってある。
中年の女性の後姿に、安倍と髪が長く目が大きい人の2ショット、そして、他は全て白いワンピースを着せられた体の一部分をなくした女性たち
- 131 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:45
-
- 132 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:46
-
「私が愛していたのに、香織は私から離れて行こうとするの。どうして?もう置いていかれるのは嫌」
安倍は何も映していない目のまま石川の肩をつかむ。
小さな体からの力とは思えないほどの強い力に石川の顔はゆがむ。
ゆがんだ石川の顔とは正反対に安倍はいつものように天使のように微笑む。
「だからね、なっち香織が逃げられないようにしたの。もちろん、梨華ちゃんも逃がすわけにはいかないの。だって、なっち、梨華ちゃんのこと愛してるの。ずっと一緒にいたいの」
天使というよりは狂気の色が除々に安倍に浮かぶ。
「なっちね、梨華ちゃんのその肌が好きよ。それに声も好き」
安倍は赤く口を開き、石川の鎖骨の辺りに歯をたてる。
ひきちぎれるような痛みに石川は声を出すこともできない。
安倍に噛まれた部分が熱を持ち、血が溢れているのが分かる。
- 133 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:46
-
- 134 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:46
- 『お尻の小さな女の子ぉ〜♪』
吉澤の携帯が全開にキューティハニーを流す。
「う〜ん、こんな事態にこの着メロはないよなぁ…。はい。」
「あんた出るの遅い!!それでなっちの家には着いたの!?」
電話に出るなり怒鳴られ吉澤は耳から携帯を離す。
「…保田さん。いや、まだ迷ってます。」
「あんた!どうしてこんな時にまで方向音痴なの!?」
もう耳に携帯をつけることはなく、携帯と向かい合って話す吉澤。
「いや、そんなことを言いましても。よしざーも好きで迷ってるわけじゃ…」
「もう何でもいいわよ!私も向ってるから!あんたはその辺の民家に行って場所を聞いて来なさい!」
「保田さん、例の見つかったんですね?」
「当分、肉は食えないわよっ!」そう言って保田は一方的に電話を切る。
吉澤は片眉を上げ、携帯をしまい、周囲を見渡す。
吉澤の目に入ったのは、綺麗に花が並んでいるマンション。
- 135 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:46
-
- 136 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:46
- 保田が安倍の家に着き、外から様子を見ると花は埋まっているのだがそれは手入れをされてはいない。
「様子がおかしいわ…」
保田はインターフォンを押す。さきほど、地下の貯蔵室で見た光景がリフレインされ手が震えているのが保田自身分かり、苦笑いを浮かべる。
「こんなのは初めてよ…」
- 137 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:47
-
- 138 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:47
- ピンポーン♪
- 139 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:48
- 安倍と石川の世界とは全く異質の音が2人の耳に届く。
石川に覆い被さるようにしていた安倍は上半身を起こし、玄関の様子をうかがう。
口についた石川の血液を舐め、安倍は立ち上がり玄関に向かう。
石川はただ放心状態で逃げることもできなかった。安倍の目によって捕らえられてしまっている。
「はい、どなたでしょう?」安倍がドアを開ける音が聞こえる。
- 140 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:48
-
- 141 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:49
- 「警察です、開けてもらえませんか?」
保田の言葉に対してドアから顔を出したのは、不機嫌そうな顔をした青年。「何の用だよ」
「ここは、なっ、いや、安倍さんの家では…?」
突然の予想しない展開に保田も混乱してしまう。
「安倍?知らねーよ。」青年は顔をあからさまにしかめ、ドアを閉めてしまう。
住所を確認してみても保田に間違いはない。
安倍はどこに帰ったと言うのだ?
正常な思考にしようとするが先ほどの衝撃が大きすぎて何も浮かんでは来ない。
目をつぶり、閉じられたドアに額をつける。「落ち着くのよ…」声に出し自身に言い聞かせる。
- 142 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:49
-
- 143 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:49
- 「新聞の勧誘だったべ」
安倍は眉をしかめながら部屋に入ってくる。安倍が入ったと同時に部屋の空気が一瞬にして変わる。
「なっちの大切な人を紹介するべ。今までの人には会わせたこともないのよ。梨華ちゃんは特別」
安倍は石川が寝ている枕もとに腰をかけ、石川の黒い髪を撫でる。
石川の体が強張り、震えているのを確認すると、口元に微笑を浮かぶ。
「香織とはね、ずっと一緒だったの。なっちがお母さんに捨てられても、香織はそばにいてくれた。私にとって香織が全てだったのに…」
今までの表情のない目が怒りの目に変わっていく。
- 144 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:50
- 「前にね、なっち。傷ついた鳥を拾ったの。羽を痛めていて飛べなくなった小さな鳥。懸命に介護をして、小さな鳥は羽ばたけるようになった。
なっち、嬉しくて、籠から出しては肩に乗せたり、手のひらにのせてかわいがっていたの。でもね、香織ったらうちじゃ飼えないって言い出すの。ひどいと思わない?」
石川の髪を撫でいた手に力が入り、髪が引きちぎれそうな感覚を覚える
「でも、香織にだけは嫌われたくなかったの。香織がいなくなるなんてそんな事は考えられなかった。だから、なっち、その鳥を扇風機に投げ込んだの。」
部屋中に舞う白い小さな鳥の羽。
「なっちが飼えないのであれば、他の誰にも飼わせない。」
安倍の目の中には悲しみなのか怒りなのか複雑な色になっている。
石川の髪から手を離し、安倍はゆっくり立ち上がり部屋から出て行く。
安倍の背中を見送り、石川はなんとか震えを止めようとするが意識すればするほど震えは大きくなる。
このような事態に陥ったら、冷静でなければならない、安倍を刺激するようなことはしてはならない。
そう分かっているのだが、石川は今すぐにでも叫んでしまいたいくらいの気持ちになっている。
- 145 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:50
- 部屋に舞う白い羽
扇風機に絡まる小さな塊と赤い雫
そして、リアルな鎖骨の痛み
その全てが石川を襲い、震えとなって表面化する。
- 146 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:51
- 戻ってきた安倍の表情は穏やかで静かな笑みを浮かべている
「紹介するわ。私の最愛の人、香織。」
安倍が腕の中に愛しいそうに抱いている目を見開いている髪の長い女性の首。
- 147 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:51
-
- 148 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:51
- 『お尻の小さな〜♪』
民家を探しているのだがマンションばかりの光景に飽き飽きしていた吉澤に保田から電話が入る。
「保田さん、着いたんですか?」
「いないのよ…」
「はいぃぃ?」
「なっちの家のはずなのに、なっちがいないの。」
「保田さん、とりあえず落ちつい」
「イヤーーーーーーーー!!!!」
- 149 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:52
- 静かな一体を引き裂くような悲鳴。
「よ、吉澤!?」電話越しの保田にも届き、狼狽した声を出す。
「あとで掛け直します」
吉澤は一方的に電話を切り、腕をだらんと下げ、目を閉じる。
吉澤の携帯は場違いな音楽を鳴らし続けるが吉澤はぴくりとも反応しない。
音楽が鳴りやみ、吉澤はゆっくり目を開け、先ほど来た道を振り返る。
「あのマンションか」
- 150 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:52
-
- 151 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:52
- 石川にはもう耐えることができなかった。
石川の叫びに安倍は嬉しそうな声を出す。
「梨華ちゃん、香織に失礼な真似はしないで。香織は、梨華ちゃんに会えて喜んでいるのに。ねぇ?香織?」
愛しいばかりに目を細め、首しかない女にキスをする。
石川の体には電流のように『恐怖』という感情が流れる。
- 152 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:53
- 「でも、香織はあの日からなっちを無視してるべ…。こんなにも愛しているのに。…なんで?何で?なんで!?」
安倍の表情には、もう正常と呼べるものは1つもなかった。
愛しく抱いていた首を、床に叩きつけ、何度も何度も踏みつけた。
「何で!!何で!!」肉の塊が落ちる音、踏まれ崩れて行く醜い音…。
もう見ることも聞いていることさえも石川の『正常』を奪っていってしまう。
- 153 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:53
- 原型がわからないほど、踏みつけたあと、安倍は溜め息をする。
「でも、もういいの。なっち、香織より梨華ちゃんのことを好きになれそう。」
安倍の目に石川が映る。
石川は震えながら、ただ首を横に何度も何度も振ることしかできない。
「ね?梨華ちゃんはなっちを置いていかないでくれる?なっちを1人にしないでくれる?」
石川を見ているのか、虚空を見つめているのか安倍は肉きり包丁を手にゆっくりと石川に近づく
「なっち、1人になるのが怖い。いや。ね?どうしてそんな目でなっちを見る?なっちは、ただ梨華ちゃんを愛しているだけだべ?」
石川の鼻先と安倍の鼻先がくっつくかくっつかないかの距離。
- 154 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:53
-
- 155 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:53
- マンションに着いた吉澤はポストを確認する。
『安倍』の文字は一切見当たらない。
「ここからの声で間違いはないと思うんだけど…」もう一度確認している吉澤の目の中に飛び込んでくる「K.IIDA」の文字。
「なるほど、そうゆう事か。」
吉澤は部屋の番号を確認し、階段を上る。
- 156 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:53
-
- 157 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:54
- 「ずっと、ずーっと。なっちが愛してあげる。」
はっきりとした笑顔を浮かべ、肉きり包丁で石川の頬を軽くなぞる。
痛いと言うよりは、熱い。
頬に出来た細い傷を安倍は丁寧に舐める。
「梨華ちゃんは、なっちのこと愛してる…?」
「愛しているわけないっしょ?」
突然、入ってきた2人以外の声。
- 158 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:54
- 「だれ!?」安倍が振り返るとドアにもたれ、口にヘアピンを咥えた吉澤が立っている。
「こんにちわ、安倍さん」
「どうやって入ってきたの!?」
吉澤はピンを口から取り、ポンッと床に投げる。
「なかなか倒錯的な部屋ですね」ニッコリと笑顔を浮かべ安倍を見る。
吉澤が笑顔でいられるという事で、安倍は少しだけ不快になる。
見つめあい何も言い出そうとしない吉澤と安倍。
- 159 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:55
- 「なっちの邪魔をする気?」肉きり包丁を握る安倍の手にグッと力が入る。
「邪魔かー。自分がやっていることが正しいとでも?」
吉澤は少しだけ顔を傾ける。
吉澤が今していることは、確実に安倍を刺激している。
「よ、よっすぃ」絞るような石川の声。刺激をしている吉澤を抑えるために声を振り絞る。
「あーれ、また懐かしい呼び方で♪」吉澤は石川の方を向き、場違いの声を出す。
吉澤の視線がそれたことによって安倍の顔に余裕が戻る。
- 160 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:55
- 「よっすぃ?あぁ、あの時、なっちに道を聞いた子。」
「お世話になりました」吉澤は笑顔で安倍を見る。
「なっち、あの時、目を見て思ったんだ。貴方、なっちと同じ人だって」
余裕を取り戻した安倍は包丁で壁をなぞりながら、吉澤に近づく。
「そうっしょ?あなたもこうゆう事でしか愛せないんでしょ?」
吉澤の腕辺りの服を刃でなぞる。
「ここまで変態じゃないですよ。」吉澤は笑顔を崩さない。
「嘘。きっと胸の中には、時限爆弾が入っているはず。チクタクチクタク」
吉澤は笑顔という無表情のまま「チクタクチクタク」と繰り返す。
- 161 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:55
- チクタクチクタク
チクタクチクタク
- 162 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:56
- 「ね?分かるでしょう?だから、邪魔しないで。なっちは、愛している人にいなくならないで欲しいの」
腕の辺りをなぞっていた刃は、今は吉澤の胸の辺りをなぞる。
「とのことですけど、いかがでしょう?キャリアさん♪」
石川は言葉に出すことが出来ず、ただ首を横に振る。
- 163 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:56
- 「ん〜、結構なことをしてくれたみたいですね。」
「愛していただけよ。分かるでしょう?」
包丁の刃は吉澤の喉下で止まる。
「分からないこともないですけど、共感はできないですね。」
「どうして?」
「でも、感謝しています。石川さんに白のワンピースはよく似合う」
吉澤の目が細めたことによって、吉澤の顔に表情が生まれ、それに反応した安倍に一瞬の隙ができる。
吉澤は安倍の手を掴む。
「ただそれだけですね。ってなわけで、正義のヒーロー見参」
安倍から取り上げた包丁が吉澤の手の中で踊る。
- 164 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:57
- 「肉きり包丁ね。肉を切り裂くのに最も適していますね」吉澤は刃の部分をじっくり見る「その上、よく手入れされてる」
「返して」
「愛情を表現するのに、大切な道具ですものね」
吉澤は刃をそっと親指でなぞる。床には吉澤の血液が浸る。「間違っている。」
「間違ってる?なっちが?」
「えぇ。少なくてもよしざーよりは間違ってますね。」
血が滴る親指を小さく出した舌で舐める。
「香織も同じことを言ったわ」
「そうでしょうね、安倍さん以外、みんな同感してくれますよ。」
安倍は赤い口を剥き出しにし、吉澤の肩に噛み付き食いちぎる。
あまりの光景に石川は目を閉じる
くちゃくちゃ安倍の口の中からの音。
- 165 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:57
-
- 166 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:58
- 「吉澤っ!!」部屋に飛び込んできた保田の目に映ったのは、異常な光景だった
ベッドに寝かされて白いワンピースの一部が赤くなっている石川
包丁を手で遊びながら、肩から赤い肉を剥き出しにし、それでも笑顔の吉澤
真っ赤な口からくちゃくちゃ音をたてている安倍
「どうです?よしざーのは?」
「最悪の味。」
「でしょーね。」満足そうに吉澤は笑う。
「なっち!!」保田は震える声で叫ぶ。
「圭ちゃんまで来ちゃったべ。ね?圭ちゃん、なっち間違ってる?なっちはおかしい?なっちは異常?」
保田に向けられた狂気と呼ぶのにふさわしい安倍の顔。
「…そうね。」
「圭ちゃんまでそう言う。」安倍は大きく舌を出す。
「なっち!!」
その瞬間に異常なまでの白い部屋に倒れこむ安倍。
- 167 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:59
-
- 168 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:59
- ―なっちは、ただなっちでいるだけで愛してくれる人を探してたのに
- 169 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:59
-
- 170 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:59
- 「痛い!中澤さん!まじで痛いって!!」
「我慢しー!!」
吉澤は病院で怪我の手当てをしてもらっている。消毒液をつけられ、涙目の吉澤。
「まったく、けったいな事件が起こるもんや」
「けったいですけど、純粋ですよ」
吉澤の言葉に中澤は顔を吉澤の傷から顔に向ける
- 171 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 06:59
- 「どの辺がや?」
「倒錯してて自己完結なとこ。」包帯を巻かれた自身の腕を軽くなぞる吉澤。
「なるほどな。少しの間は無理はやめとき。」
吉澤に背を向け、カルテを記入する。
「石川さんは?」
「隣で診察されとるわ」クイっとあごで隣の診察室をさす。
「お世話になりました。」吉澤は丁寧にお辞儀をし、立ち上がる。
「ええわ。これが仕事やし。1週間後にまた傷の様子見せ―よ」
「忘れなければ」吉澤は笑いながらそう答え診察室を出る。
- 172 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:00
-
- 173 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:00
- 「送りますよ、キャリアさん♪」
診察室の前の椅子に座った吉澤が出てきた石川に声をかける。
「…その呼び方やめて。」
石川の言葉に肩をすくめる吉澤
「気分は?」
「最悪」
石川の言葉に吉澤は小さく笑い、軽く石川の肩を抱き歩き出す。
- 174 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:00
-
- 175 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:00
- あの事件の傷が癒えそうな頃。
吉澤の事務所からはいつもの声が。
「吉澤さんっ!!もう傷は治ったんでしょう?仕事してください!仕事っ!」
「あのねー、まだまだ安静にしてなきゃいけないって言われてるわけ」
ソファに寝転がり、顔に雑誌をかぶせたまま吉澤はうんざりした声を出す。
「チラシの効果で、依頼がたくさんあるんですよ!?」
「チラシね…」吉澤は顔から雑誌を取り、上体を起こす。
「そうです。この小川の頑張った成果です!!」
よしよしと小川の頭を撫でる。
- 176 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:01
- 「猫探しくらいお前がやれ」
吉澤はそう言ってまた寝てしまう。
「吉澤さーんっ!!!」
「あー、うるさいっ!」そう言った吉澤の顔に茶色の封筒が置かれる。
「いいご身分ね」小川の隣に頬にガーゼをあてた石川が立っている。
茶色の封筒と石川を見比べる吉澤。
「仕事よ。」
「あぁ…せっかくの休暇が…」
- 177 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:02
-
- 178 名前:perfect 投稿日:2004/03/20(土) 07:05
- to be continued…!?
- 179 名前:extra 投稿日:2004/03/20(土) 07:06
- 一応、これで完結です。
もし、皆さんが許していただけるのであれば、番外編や続編を書きたいと思っています。
その前にいくつか息抜きで全く違うものを次回は書く予定です。
どっちやねん!w
なんていわずにこれからもお付き合いいただけると嬉しいです
- 180 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/20(土) 08:46
- (・∀・|続編期待☆
いしよしの関係が気になって気になって…(笑
更新はマイペースなんですか!?スゴヒです。次回も楽しみに待ってます☆
- 181 名前:コナン 投稿日:2004/03/20(土) 09:03
- 更新お疲れさまです!
いい!!怖いけど!!凄い事になってたけど(怖
苦手なスプラッタ系でしたが、面白く読めました。
よしざーさん(迷探偵?)、かっけーかったし自分としては満足です。
小川キャラも最高っす!
是非!続編、番外編、希望です!!
その時は、甘い〜いしよしをきぼーんします。♪(*/∇\*)キャ♪
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 09:15
- なんだ。このおもしろさ!すごいよ、作者さん!一気に読ませてもらいましたが、すごくイイ!
- 183 名前:85 投稿日:2004/03/20(土) 12:38
- 更新、お疲れ様です。
怖いんだけどすごく面白かったです。引き込まれました。
(実はよしざーさんが一番怖いのかなとか思ってますw)
よしざーさんもいしかーさんも謎が多いキャラですよねぇ。
キリキリする保田さんもカッコイイw
続編&番外編、是非読んでみたいです。
その前に次回は全く違うテイストですか?これもまた楽しみです。
- 184 名前:extra 投稿日:2004/03/21(日) 00:38
- >180の名無し読者さん
いしよしの関係についてはもう少しだけ焦らさせていただきます。w
期待せずに待っていてください。
これからもマイペースでいきますので、よろしくお願いします♪
>コナンさん
楽しんでいただけたみたいで私も嬉しいです
小川は続編でも多分、チラシを作り続けるかもしれませんね。w
>182の名無し飼育さん
初めまして!
一度に読んでいただけて嬉しいです。結構、疲れましたでしょう?w
良かったら、近いうちに続編を出しますのでよろしくお願いします☆
まだ少ししか書いていないのでもう少しかかってしまいそうですが、待っていてください
>85さん
こんなふざけた世界に引き込まれていただいたようで。ありがとうございます。
キリキリする保田さんとチラシばっかり作っている小川さんは私のお気に入りです。w
よしざーさんといしかーさんについては、もう少しだけお待ちください
それでは、短く全く違う話ですがよろしくお願いします。
- 185 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:39
-
- 186 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:40
- 「梨華ちゃん、海へ行こう!」よっすぃの電話はいつでも突然。
「よっすぃ。今は朝の3時なの。」
「うん、知ってる。」
「それでね、私、さっき収録が終わってやっと帰ってきたの」
「うん、お疲れ。」
「それで、どうして海なの?」
電話からはよっすぃが少しだけ考えてる空気が流れてくる。
- 187 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:40
- 「梨華ちゃん、思い出作ろう。」
「はい?」思い出ってなに?疲れてにぶっている頭で必死に考える。
思い出?私たち、別れるの?何かした…?
「ののとあいぼんと梨華ちゃんとあたしで海に行こう!!」
- 188 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:41
-
- 189 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:41
- 春がもう少しという時期によっすぃが立てた海に行く計画。
私は寝ぼけた頭のままで、でも、どうしてだか嬉しくなってOKしていた。
新しいワンピ―スを着ていこう。それからよっすぃの大好きなベーグル、2人の大好きなお菓子。
バスケットにいっぱい入れて行こう。
きっとよっすぃは遊び道具をいっぱい持ってくるに決まってる。フリスビーにビーチバレーに。
カメラも忘れないようにしなきゃ。
- 190 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:41
-
- 191 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:41
- 「なんかわくわくしてきたのれす」
「ほんまや!海なんて久しぶりやで!」。
2人を間に挟んで私達は電車に揺られる
「2人ともあまり話すと気付かれちゃうよ?」
よっすぃの顔はいつもより少しだけ優しい顔。優しい声。
2人の顔も最近緊張しているような落ち着かない顔だったけど、今はすごくリラックスしてる。
あいぼんは、ののと話しているのによっすぃの腕を持ったまま。
ののは、時々私の顔を見てニッコリ笑う。
穏やかな永遠に続くかのような時間。
1時間少し電車で揺られて私たちは海に着く。
「「「海だーーーー!!!」」」
- 192 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:42
- 駅から少しだけ歩いて、見えてきた砂浜に向かって私以外の3人は走り出す。
私は3人の背中を見つめて、3人が砂浜に残した足跡を1つずつたどっていく。
これは、よっすぃ。これは、あいぼん。これは、のの。
じくざくに歩く私を3人が大きく手を振って呼ぶ。
「「「梨華ちゃん!早く!早く!」」」
だから、私は足跡をたどるのはやめて、私は私の足跡を残す。
- 193 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:42
- それからは、もう遊んでばかり、笑ってばかり。
ころがって、じゃれあって、水まみれになって。
新しいワンピースが汚れてしまうなんて気にもならなかった。
ずっと私たちは笑っていたと思う。
例え、つまらないことでも大げさに笑ってた。
何がおもしろいなんて分からないけど、4人でいることがすごく楽しくて嬉しい。
- 194 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:42
-
- 195 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:43
- 「ギブアップ!」よっすぃが早々に倒れこむ。
その上にののが乗っかり「よっちゃん、情けない!キャプテンのくせにぃ!!」
チャームポイントの八重歯を見せてののが笑う。
「ひーちゃんは、ののやあいぼんみたく子供じゃないからねー」うりゃと言ってよっすぃはのののお腹をくすぐる。
「やだー!!よっちゃん、くすぐったいー!!」
そんな光景を見ながら隣で一緒に見ていたあいぼんが私の顔を覗き込んでくる。
「なんや、梨華ちゃんも疲れた顔してるやん」
「そうかな?」
「昨日も遅くまで仕事やったんやろ?」
「まぁ、うん。」
「よっすぃと少し休んどき。のの連れて飲み物買うて来る!」
あいぼんは笑顔でののを呼び、走っていく。
- 196 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:43
- その背中を見送って、まだ寝転がっているよっすぃのそばに行く。
「疲れたの?」そう言ってさっきののののようによっすぃにまたがる。
さすがに足は揃えてるけどね…。
「うーん、心地よい疲れかな?」よっすぃが目を細めるので、私はよっすぃの髪に指を通す。
「今日は海に連れてきてくれてありがとう。」
「付いてきてくれてありがとう。」よっすぃの髪を撫でていた私の手によっすぃの手が触れる。
「ね?今日の梨華ちゃんはずいぶん大胆だね。」
「ののもしてたじゃない?」
「まぁ、梨華ちゃんとののじゃやってることが同じでも、ちがく見える」
よっすぃはニヤっと笑う。
「何言ってるの。」よっすぃの胸の辺りを軽く叩き立ち上がる。
よっすぃはまだ立ち上がろうとしないでクスクス笑っている。
全くエロ親父みたいなんだから。
- 197 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:44
-
- 198 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:44
- 少し離れた場所から聞こえるののとあいぼんの声。
その声を聞いてかやっとよっすぃが体を起こす。
「愛しい我が娘たちが帰ってきたみたいだね」
「よっすぃの中ではまだ小さい子だもんね」
「梨華ちゃんの中でもでしょ?」よっすぃは立ち上がり私の横に立つ。
また少しだけ背伸びたかな?よっすぃを少しだけ見上げなきゃならなくなってる。
「でも、卒業しちゃうんだね」
「うん。よっすぃは心配?」
「まぁ、そりゃあね。すっごく心配だよ。でも」
「でも?」
「あの2人なら大丈夫ってすっごく思ってる」
「うん」
よっすぃの言葉で少しだけ涙が出そうになる。
「泣くのはまだ早い。うちの子供たちは敏感なんだから。」ポンポンと後ろから頭を撫でられ、よっすぃはかぶっていた帽子を私にまぶかにかぶせる。
「離れてどうにかなってしまう関係じゃないよ。」
「…分かってる」分かってるけど…。
- 199 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:44
- 「よっちゃーん、これでいいの?」缶ジュースを自慢げによっすぃに見せている。
「はい、よくできました。」よっすぃも優しく笑ってののを撫でる。
「えへへ」
「なんやねん!のの、それはうちが教えてやったんやで!!」あーあ、またヤキモチやいちゃって。
「はいはい、あいぼんもありがとう」そう言ってよっすぃは2人まとめて抱きしめる。
「2人とも愛してるぞー!!!」
「うちもー!」「ののもれす!!」
そんな3人を帽子に隠れてみている私。よっすぃみたいに強くならなきゃだめだよね。
「私はよっすぃよりも2人のこと愛しているわよっ!!」帽子を脱ぎ、2人に向かって手を広げる。
「「「キショ!!!」」」
…ちょっとショックじゃないの…。何よ、キショイって。私だってよっすぃみたいな事したいのに。
- 200 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:45
- 「なーんて、マイハニー、カモンベイベー!!!」よっすぃが大げさに手を広げる。
「キショイ梨華ちゃんのこと、ののも愛してますよー!」「うちもや!」
憎めない3人。
ずっと一緒にいたい3人。
よっすぃがいたから頑張ってこれたって思ってたけど、きっとよっすぃだけじゃ私はダメだったかもしれない。
ののとあいぼん。この2人もいてくれたから頑張れたんだ。
よっすぃ、ごめんね。でも、この2人なら許してくれるでしょう?だって、よっすぃだってきっとそうだもんね。
- 201 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:45
- よっすぃは私の腕を持ち、強引に引き寄せ、3人の間に入れる。
「3人とも愛してるぞー!!!」さっきの言いなおしのつもりなのかよっすぃはきつく私たちを抱きしめる。
私たちは苦しいのに笑顔でよっすぃを3人で抱きしめ返す。
- 202 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:45
-
- 203 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:45
- 話はいくらしても尽きることはなくて、ずっとずっと話すことができる。
だけど、日が傾きかけた頃にあいぼんが寂しそうに言う。
「もう帰る時間ちゃうの…?」
よっすぃはその言葉で腕時計を確認する。
「うん、そうだね。いくら暖かくなってきても、寒くなるし。帰ろうか?」
よっすぃが服についた砂を払いながら立ち上がるので、私も同じ動作で立ち上がる。
だけど、ののもあいぼんも動き出そうとしない。
- 204 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:46
- 「おーい、どうした?このままじゃ風邪ひいちまうぞー!」
よっすぃはぐしゃぐしゃと2人の髪を撫でる。
「よっすぃ、梨華ちゃん…、うち、ほんまは怖いねん…」あいぼんが消え入りそうな声で呟く
「ののも…」
あいぼんは頭に乗せられたままのよっすぃの服の袖を掴む。
ののもそれにつられてか私のスカートの端を弱い力で掴む。
ハッとしてよっすぃを見ると、よっすぃは嬉しそうな顔をしている。
どうして?何で嬉しい顔しているの?
私の視線に気付いたのかよっすぃは少しだけ眉を上げる。
- 205 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:46
- 「知ってるよ。」よっすぃの穏やかな声に2人は反応して私たちの方を向く。
「「知ってる…?」」
「おまえら無理してるんだもん。父ちゃんは悲しかったよ」
よっすぃは嬉しそうに話始める。
「安倍さんの卒業のすぐ後だもんな。不安になってるとか怖さとか出せないよな。偉いよ、二人ともすごく大人になった。」
よっすぃは2人を交互に見る。
「でもね、あたしたちくらいにはいいんじゃないかな?不安や怖さを言っても。ののやあいぼんの不安くらい受け止めるくらい取ってあるつもり」
よっすぃは自分の胸を叩く。「ここにね。それで梨華ちゃんのとこにもきっと。」
よっすぃは優しい目で私を見てくる。私は静かにうなづく。
「最初は4人でスタートして、気付いたら15人もいて、それでいきなり2人になっちゃうんだもん。不安を感じるのは当たり前だよ。」
「でも…うちが泣くわけにはいかん…」
「ののだってこれからリーダーなのれす…」
2人の気持ちが痛いほど分かる。ただでさえ、安倍さんの卒業で混乱しているメンバーに余計な心配をかけさせたくなかったんだよね。
小さかったはずの2人は笑顔でいることを決めたんだ。
- 206 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:46
- 「あたしは、この4人でいる時は加護亜衣と辻希美といるつもりでいるよ。娘。のあいぼんやののじゃなくて。個人として。一番の仲間として。
あたしや梨華ちゃんがお前らが不安をぶつけてきて、困るとでも思う?」
2人は肩を揺らしながら、言葉にならない声で首を振る。
「分かってるじゃない。不安になったら言う。怖かったら言う。何もしてあげられないかもしれないけど、こうやって楽しく過ごすことはできる。
今日は楽しかった?」
うなづく2人。
「じゃあ、また来よう。ののやあいぼんが卒業した後も、いつか来るあたしや梨華ちゃんが卒業した後もこうやってまた4人で来よう」
「ほんまやな…?」しゃっくりをあげながらあいぼんがよっすぃを睨む。
「ほんまです」ニッコリと微笑みあいぼんを撫でるよっすぃ。
「梨華ちゃんも約束してくれる…?」ののが涙目で私を見る。
「約束するよ。」私はハンカチを出してののの頬を撫でる。
- 207 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:47
- 「さぁ、帰ろう?みんな薄着のままだから風邪ひく」そう言うよっすぃに続き今度は二人も立ち上がる。
- 208 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:47
-
- 209 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:47
- 少しだけ距離を置いて、よっすぃとののが前を歩き、その後ろを私とあいぼんが歩く
「な?梨華ちゃん。よっすぃってやっぱりパパみたいやな」
ののと手を繋いでいるよっすぃの後ろ姿を見ながらあいぼんがおもしろそうに言う。
「パパ?」
「うん、それで梨華ちゃんはママやな」
「産んだ覚えはないけどね。」
でも、なんだかしっくりくる表現。
「梨華ちゃん、最近、服の趣味よーなったな。もううちがおらんでも大丈夫や」
「え…?」
「うち心配やったんやで?梨華ちゃんの服」ニヤニヤ笑いながら私をからかうのはいつものあいぼんの顔。
「もー!心配なんかされなくても大丈夫です!」
「何言うとるねん!ほんまにむちゃくちゃな選び方するやん!でも」
「なによ?」
「今日の梨華ちゃんはかわええし、綺麗やと思う。」あいぼんは照れているのか声が小さくなる。
「…ありがと」
「いいえ。」あいぼんはそのままよっすぃの方に走っていき、背中に飛び乗っている。
- 210 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:47
- なんだか本当に大人になったって思ったけど、まだまだかわいいあいぼん。
照れ隠しに走っていく背中は少しだけ頼もしくなったけど、まだかわいいまま。
私もあいぼんを追って、よっすぃのところへ行く。
- 211 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:47
-
- 212 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:48
- 「今度は山に行きたいれすね〜」
「あ!いいね!マウンテン!」
「よっすぃ、富士山に登るとか言いださんといてな…」
未定なままの未来を嬉しそうに話す3人。
「ね?梨華ちゃん、山って言ったら富士山だよね?」思っていたことを先に却下されよっすぃは少しだけ不満そう。
「よっすぃ。限度ってものがあるでしょ?ののが言いたいのは、ハイキング。」
登山になっちゃうじゃない
よっすぃは私の言葉に首をかしげながらまだ不満そう。
さっきはすごく頼れた横顔は今はかわいい横顔。
色んな表情を持っているのね。
- 213 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:48
- 「なーに、ピンク色の雲を出してんねん!」
「ほんとなのれす!!」
「「ほえ?」」
「しゃーないわ!梨華ちゃん、よっすぃ返したるわ!」
「しょうがないのれす。よっすぃに梨華ちゃん返すのれす!」
2人は私たちの手を取り、繋がせる。そして、2人は私たちの前に並んで仁王立ち。
「Wは最強!娘。なんぞには負けへん!」
「負けないのれす!!」
- 214 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:48
- よっすぃは、「おぉ」なんて不敵に笑い、「だってさ。梨華ちゃん。」私に向かってウィンク。
「負けないわよ!私だって、そんな簡単に負けるわけにはいかないもの!」こぶしを作って力説。
「だそうな。ってなわけで、あたしたちも本気の本気。すっげー全力で頑張っちゃうんで。Wも気合入れて頑張らないとね〜」
よっすぃは、嬉しさをこらえるように顔を作って言う。
もう、口元に笑顔が溢れちゃってるよ?
- 215 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:48
- 「ほんなら、勝負やな!」
「勝負なのれす!!」2人は小さな手で私たちに向かってこぶしを突き出す。
「そうだね。ついでに何か賭けようか?」よっすぃと私は小さなこぶしに自分たちのこぶしを付ける。
「次のピクニックの荷物持ちって言うのは?」
「おぉ!梨華ちゃんのくせにナイスアイディアやな!ついでに弁当も全員分作ることにしよーや!」
「そうれすね!お菓子も!!!」嬉しそうに笑い合う2人。
でも、待って。梨華ちゃんのくせにって・・・・?
- 216 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:49
- 「よし!それで決定や!ますます負けるわけにはいかんわ!あー、でも、梨華ちゃんの弁当か…」
「ののは、焼きそばでいいのれす!トイレの臭いさえしなきゃ!」
「おいおい、お前ら。それじゃ梨華ちゃんの料理がまずいみたいじゃないの!?」
あぁ、さすが愛するダーリンは、強く否定してくれるのね?
「梨華ちゃんの料理はまずいんじゃなくて、個性的なんだ!!!」
- 217 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:49
- 「よっすぃ!それフォローになってないわ!!!」
「ほんまや!」あいぼんは今度はののの手を取る。「ほな、帰ろうか?」笑顔で私たちを見る。
「そうだね、帰ろう。」
「もー!!!人の話もたまには聞いて!!!」私が叫んでみても3人は笑って流している。
- 218 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:49
-
- 219 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:49
- 電車に乗り込んだ途端に3人は眠りについてしまう。
本当に子供みたいな3人。
飽きれているのに、目は細く笑顔になってしまう。
このままずっと一緒にいれればいいのに。
思っているけど、誰も口にしないこの言葉。
多分、全員、この言葉を口にしてしまったら、寂しくなってしまうのを分かっている。
こんな言葉を口にしても、どうにもならないって分かってる。
今までそう思っていたけど、よっすぃは違ったみたい。
こんな言葉はよっすぃの中では存在しなかったのね。
ずっと一緒なんだもん、これからも。
- 220 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:50
- 桜が咲く日にピクニックに行きましょう
夏になったら、今度は水着を持って海に行きましょう
秋はみんなで焚き火をして、冬は雪が降った日に雪合戦。
- 221 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:50
- ずっとそうやって4人で出かけましょう。
いつかは、絶対にバラバラになってしまい、自分の道を歩かなくてはいけないけど、たまにはこうして4人で寄り道して休憩しましょう。
3人の気持ちよさそうな寝息に私も目を閉じる。
- 222 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:50
- おしまい
- 223 名前:海へ行こう!! 投稿日:2004/03/21(日) 00:50
-
- 224 名前:extra 投稿日:2004/03/21(日) 00:52
- 四期マンセーってな感じの話を書きたくて、ただそれだけです。w
どうしようもないですね。
拾いものですが、私の妄想をかきたててくれたものです。
この話のイメージとでも思っていただけると嬉しいです。w
ttp://popmint.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/uplog/up0236.jpg
- 225 名前:extra 投稿日:2004/03/21(日) 01:02
- いしよしを結構期待されていたのを忘れていましたので、短いですし、甘いかも分からないですが
いしよしを…
- 226 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:03
-
- 227 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:03
-
なんとなく、なんとなくだけど。
たまに感じる二人の温度差。
ねぇ?愛しの石川梨華さん。あなた、仕事に恋をしていませんか?
- 228 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:04
- 別にいいんだ。会う時間が減ってきても、テレビをつければ梨華ちゃんに会えるわけだし。
声が聞きたくなれば、CDでも流せば梨華ちゃんの声が聞くことはできるし。
でもさ、あたしだけの梨華ちゃんじゃないじゃない?
悲しきかな、二人の温度差。
あたしは、もっと梨華ちゃんと一緒にいたい。
あたしだけの梨華ちゃんでいてほしいし、それ以上に梨華ちゃんを感じたいわけで。
好きだったら、当たり前の感情なんだろうけど、なんだか言葉にできないのは、あたしのプライドが邪魔するから。
- 229 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:04
- 今、あたしが持っている感情はすごくすっごく女々しい。
あたしは、こんなことを言うようなキャラじゃない。
もっと、ドーンっと構えていていられるようなのが理想なのに。
理想と現実は、こんなもんか…。
そして、テレビの中の愛しの石川梨華さんに声をかける。
「ねぇ?あたしのこと覚えてる?」
- 230 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:04
-
- 231 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:04
-
どんどん綺麗になる梨華ちゃん。
どんどん不安になるあたし。
- 232 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:04
-
- 233 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:05
- テレビの中の梨華ちゃんは色んな表情。
くるくる変わる梨華ちゃんの表情から目が離せない。
笑ったり、怒ったり、少しだけ落ち込んでみたり、忙しい梨華ちゃんの表情。
「まったく…。そんな顔あたし以外に見せるなよ」ひじをつき、手のひらの上にあごを乗せて、少しだけ口を尖らせている。
- 234 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:05
-
- 235 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:05
- そんな時に感じる後ろからの気配。
テーブルに映る影。
すぐにでも振り返りたい衝動になるけど、ここは気づかないふり。
- 236 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:06
- 「よっすぃ〜♪」あたしの背中におぶさる形の梨華ちゃん。
「おかえりなさい。」あたしの声ってば、ぶすくれてるの丸出し。寂しかったみたいな声出しちゃって…。
「帰ってきたわけじゃないのぉ。着替え取り来て、すぐに行かなきゃ。」
梨華ちゃんは、あたしの頬に自分の頬をなすりつけてくる。
「お忙しいようで。」
「う〜ん、怒ってるの?」
「別に。」
梨華ちゃんは悪くないけど、寂しいってうまく表現なんてできなくて、ぶっきらぼうな態度になってしまう。
梨華ちゃんは整った眉を八の字にして、あたしの横顔を見てる。
その視線が少しだけ居心地が悪くて、あたしは口を開く。
- 237 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:06
- 「次はいつ会える…の?」
その言葉に梨華ちゃんの八の字だった眉は徐々に元に戻っていく。
「明後日には戻ってくるよ!」
「じゃ、待ってます。」ペコリと頭を下げるあたし。
梨華ちゃんはあたしの横からあたしの膝の上に移動する。
「ね?よっすぃ、ギューってしてくれる?」上目使いのおねだり。
梨華ちゃんが頼まなくても、あたしは反動的に抱きしめていたと思う。
細い梨華ちゃんの体が折れちゃうんじゃないかって思うくらいにキツく抱きしめる。
- 238 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:07
- 「よっすぃ、私のこと、好き?」
梨華ちゃんの質問に黙ってうなづくと、梨華ちゃんは強い力であたしを抱きしめ返してくる。
- 239 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:07
-
- 240 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:07
- 「うしっ♪石川、充電完了です!!」
梨華ちゃんはそう言って、敬礼のようなポーズをしながら立ち上がる。
「よっすぃは?よっすぃは充電完了できた?」
あたしの顔を覗き込んでくる梨華ちゃん。細い腕を取り、もう一度あたしの腕の中に。
「あと、半分くらいで充電できそう。」ニヤっと笑うあたし。
「欲張り。」梨華ちゃんも少しだけ笑い、あたしの髪に綺麗な指をとおす。
梨華ちゃんがあたしの頭を少しだけ引き寄せて、触れるだけのキス。
「完了?」梨華ちゃんの目は少しだけ悪戯な色が映ってる。
「ん、もう少しかな?」たぶん、あたしの目にも。
もっと、もっと。
梨華ちゃん不足だったあたしを満たしてくれるには、まだまだ足りないよ。
- 241 名前:恋人は誰ですか? 投稿日:2004/03/21(日) 01:07
- おしまい
- 242 名前:extra 投稿日:2004/03/21(日) 01:08
- う〜ん。微妙ですね…。精進いたします
- 243 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/21(日) 01:23
- えー!?全然いいですよ!
私もこんなふうに充電するんで
すごく親近感湧いちゃいましたっ!
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/21(日) 07:49
- 海へ行こう!!最高でした。
もう、朝からうるっときちゃいました。
4期の絆っていいですねえ(TT)
- 245 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/21(日) 14:08
- ゴチソーサマですた(・∀・)いいねぇ甘々☆
思わずニヤニヤしながら読んでしまいました。
焦らされれば焦らされるほど楽しみが大きくなると言うものですわ!!
extraさんについていきますドコマデモ。。。
それでは次回まで待ってます☆
- 246 名前:extra 投稿日:2004/03/22(月) 02:24
- >243の名無飼育さん
初めましてでいいんでしょうか?どちらにしても読んでいただいてありがとうございます。
同じように充電ですか?羨ましい限りです。w
私の作品に親近感を感じていただいて嬉しく思います。
また遊びに来てくださいね!
>244の名無し飼育さん
初めましてで大丈夫でしょうか?同じ挨拶になってしまいますが、読んでいただいてありがとうございます。
四期いいですよね!今日のハロモニでもよしざーさんといしかーさんが2人のどちらを選ぶのかでソワソワしてしまったextraです。w
朝からウルッとしていただき申し訳ない気持ちもありつつ、ニヤニヤしています。
また、遊びに来てください。
>245の名無し読者さん
再び遊びに来ていただき、嬉しく思います!
ニヤニヤしていただきましたか?もう嬉しい限りです。
これからも名無し読者さんに付いてきていただけるように頑張りますので見捨てないでください。
そんなこんなで本日の更新です。
perfectの続編です。期待を裏切ってはないか不安ではありますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
ではでは。
- 247 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:24
-
- 248 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:25
- 『ねんねんころりよ こずえのうえで
かぜがふいたら ゆりかごゆれる』
- 249 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:25
-
- 250 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:25
- 「石川さんさー、何でここにいるわけ?」
吉澤が昼寝から目を覚ますと、楽しそうに話す小川と石川。
「吉澤さんっ!そんな言い方ってないと思います!わざわざ石川さんが遊びに来てくれているんですよ!?」
「いいのよ、麻琴。たまたま近くに来たから寄っただけだし。」
「でも、石川さんっ!!」
小川は真剣な顔をして、石川の顔を見ている。
「はいはい、すいませんでした。おい、小川!コーヒー。」
「吉澤さん、本当に分かってるんですか!?」
「…コーヒー」
小川はブツブツ言いながらキッチンへ向かう。
吉澤は寝癖のついた髪をかき上げながら、タバコに火をつける
- 251 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:25
- 「で?本題は?」
- 252 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:26
-
- 253 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:26
- 「愛ちゃん、もう課題は済ませたの?」
「はい、お母様。」
穏やかな団欒。
不自由というものがないような生活。
誰もが羨ましがるような家庭。
母と子は、高級カップで高級な紅茶を飲む。
しかし、狂気はその家庭の背後に迫っていた。
- 254 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:26
-
- 255 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:26
- 「相変わらず、勘がするどいことで。」石川は吉澤の出す煙を手で追いやる。
「まぁ、石川さんが何の用もないのに、ここに寄るわけはないでしょ?」
吉澤はわざと石川に向かって、煙を吐き出し、石川が眉をひそめたのを見て、ニッコリと微笑む。
「タバコ、やめたら?」眉をひそめたままの石川。
「う〜ん、石川さんがピンクをやめるなら、考えてみてもいい」
「外へ行きましょう。」石川はそう言って、淡いピンクのコートを手に取り立ち上がる。
吉澤は大きく溜め息をつき、キッチンの方に顔を向ける。
「小川ー!!ちょっくら石川さんとデートしてくるわー!!」
「デ、デートですかぁ!?コーヒー、もう入りますよ!?」
目をまん丸にして、小川がキッチンから顔を出す。
「お前、飲んでいいよ。んじゃね」
吉澤はTシャツの上にパーカーを羽織り、立ち上がる。
- 256 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:26
-
- 257 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:27
- 「イヤ!やめて…!助けて!何でもするわ!!」
泣き叫び、許しを乞う母親の喉元に振り下ろされる光る凶器。
繰り返し、繰り返し、振り下ろされる凶器を前に母親の喉元からは空気が漏れる音。
「ヒュー ヒュー」楽しそうに空気が漏れる音を真似する黒い影。
- 258 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:27
- ヒューヒュー
ヒュンヒュン
- 259 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:27
-
- 260 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:27
- 「デートって何?」
車に乗り込んでの、石川の第一声。
「自然な嘘だとは思わない?小川が疑うようなものではないでしょう?」
不機嫌丸出しの石川に対して、笑顔の吉澤。
「言ったでしょう?「「そうゆう冗談は嫌いなの」」2人の声がハモる。
「…最低ね」石川はエンジンをかけ、車を走らせる。
吉澤は満足そうな笑みを浮かべ、シートに身を沈めた。
- 261 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:28
- 「今日の明け方に通報があったわ」
「殺人?」
石川は前を向きながら、静かにうなづく。
「それで?具体的なことを言ってくれなきゃ、さすがのよしざーも何もできませんが?」
石川は吉澤のその言葉を待っていたかのように、胸ポケットから1枚の写真を取り出し、吉澤に渡す。
キレのいい口笛。
「これは、またファンキーな写真をお持ちで。」
吉澤の反応に、一瞬写真を間違えたかと思い、横を見るが写真に間違いはない。
- 262 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:28
- 寝巻き姿の中年の女性が、めった刺しにされている。
顔面も刺されたようで誰だか判別できないただの肉の塊になっている。
- 263 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:28
- 「母親が殺された後、娘は、強姦されたわ」石川の声が薄っぺらいものとなる。
「ほう、それで通報者は?」写真をピラピラと振る。
「娘よ」
「ファンキーだ。」吉澤は少しだけ肩をすくめ、窓の外を凝視する。
- 264 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:29
-
- 265 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:29
- 「あの子よ。」
吉澤が通された部屋は、マジックミラーの裏側の部屋。
16,7歳の少女が何もないがらんどうの部屋にきちんと座っている。
「名前は高橋愛。17歳よ。父親は商社の重役で母親は華道の先生。
あの子も学校ではいつでもトップクラスの成績。学校以外にもダンスや音楽を習っているわ」
「つまりは、エリート一家と。」
吉澤が声を出した瞬間に、見えもしない、声も聞こえないはずの部屋にいる愛がこちらを見る。
「勘もいい子みたいだ。」片眉を上げ、あごで少女を指す。
石川はうなづきも反応もせずに話を続ける。
「事件の後遺症か、全く言葉を発しないわ。」
「まぁ、強姦された上にあんな母親の姿を見ればね。」
「見たんじゃないわ。見せられたの。」
「はい?」
「母親の遺体の前で強姦されたのよ」怒りと悲しみを抑えたような石川の声。
「父親は?」少女を凝視する吉澤。
「消息不明。全力で捜索してるわ。」
「それだけ分かっていて、どうしてよしざーを呼ぶ?」やっと石川の方を見る。
「あの子の言葉を取り戻して欲しいの」
- 266 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:29
-
- 267 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:29
- 『ねんねんころりよ こずえのうえで
かぜがふいたら ゆりかごゆれる
えだがおれたら ゆりかごおちる
あかちゃん ゆりかご みんなおちる』
- 268 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:29
-
- 269 名前:family 投稿日:2004/03/22(月) 02:30
-
- 270 名前:extra 投稿日:2004/03/22(月) 02:31
- とりあえず、今日はここまで。
『』に使われているのは気付いた方もいるかと思いますが、マザー・グースからの引用です。
よろしくお願いします。
- 271 名前:ちゃみ 投稿日:2004/03/22(月) 05:54
- 固ゆで卵な雰囲気で良いですね。
静かに見守ります。
- 272 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/22(月) 07:28
- 探偵よっちゃん待ってました!!
しかし、extraさんのせいで続きが気になり毎日スレを覗かなくてはいけなくなりました。
なんとかしてください(笑
- 273 名前:extra 投稿日:2004/03/23(火) 11:27
- >ちゃみさん
初めまして。読んでいただきありがとうございます!
いやいや、そんないい雰囲気は出せていないですよ(汗
これからも良かったらカキコんでください。
>名無し読者さん
待っていてくれましたか?!w
それは嬉しい限りです。毎日スレを覗いてくれいているのであれば期待に
応えなくてはいけないですね、基本的に朝から夜中の更新ですから、その時に
覗きに来てください!w
- 274 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:27
-
- 275 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:28
- 「よしざーは、カウンセラーじゃない。精神科医でもない」
ポケットからタバコを取り出し、火をつける。
「分かってるわ。」
「じゃあ、頼む相手を間違ってることにも気付いてもいいんじゃないの?」
「全部試したわ。でも、どれも失敗。そうじゃなきゃ、貴方には頼まない。」
吉澤は口にタバコを咥えたまま、眉をあげる。
「随分な言い様だね。」
「貴方はあの子の気持ちがわかるでしょう?」
吉澤はタバコを灰皿に押し付ける。
「よくご存知で。」
- 276 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:28
- 「事件前のあの子についてわかっていることは?」
吉澤は少女を見つめたまま、部屋のソファに腰をおろす。
「優等生。先生にも生徒からも人気はあり、生徒会長をしているわ。社交的で聞き上手。」
吉澤はこぶしを作り、眉間につける
「それにあの容姿。ボーイフレンドもたくさんいたみたい。ただ裏では評判の良くない子達とも付き合ってたらしいわ」
「…母親は?」
「教育熱心な母親よ。PTAとかにも積極的に参加してるし、地域でも中心的な存在」
「問題の父親は?」
「最初にも話したけど、商社の重役。でも、最近の不景気で業績が落ち込み、責任を感じてたみたい。それが原因かどうかはわからないけど、つい最近鬱病を診断されているわ」
「鬱病ねー。薬は?」
「レンドルミン・トリプタノール・デパス。犯人は、父親で間違いないわ」
「妻を殺し、自分の愛娘を強姦ね。なかなか立派な父親だ。」
キッと石川は吉澤を睨みつける。
- 277 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:28
- 「あの子の証言が欲しいの。」
「強姦されたんだよね?精液を検査した方が早いんじゃない?」
吉澤は眉間からこぶしをはずし、膝の間の空間でグーパーを繰り返す。
「検査を拒まれたわ。無理もないけど。」
石川はそこで今日初めて少女の方を見る。
じっとマジックミラーを見る愛。その目は漆黒の黒が浮かんでいる。
「時間の制限はなし。これがよしざーからの条件。OK?」
石川は愛から視線をそらせずにただうなづく。
- 278 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:28
-
- 279 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:29
- 『この世の どんな悪いことにも
なおす手だては あるかないかどちらかです
もしあれば 見つかるまでさがすこと
もしなければ 気にしないこと』
- 280 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:29
-
- 281 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:29
- 「やぁ、初めまして。」
部屋に入ってきた吉澤の声に反応し、ゆっくりとマジックミラーから吉澤に視線を移す。
「ここ座ってもいいかな?」少女の前にある椅子を指差すと、少女はまばたきをする。
吉澤はそれに対して、笑顔で返し、腰をおろす。
その様子を石川は腕を組み、固唾を飲んで見守る。
「タバコすってもいいかな?」ポケットからタバコを出し、愛の目の前に出す。
目の前にタバコを出されても、特に反応はせずに首を横に振るだけ。
吉澤はマジックミラーの方を見て、正確に言えば、石川を見て、肩をすくめる。
- 282 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:29
-
- 283 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:30
- 「始まったのね。」石川の後ろからの声に振り返ると、保田が両手にコーヒーを持って立っていた。
「はい。」
「どう?」コーヒーを手渡され、その温もりを掌の中に感じて石川は少しだけ安心した気になる。
何が石川を不安にさせていたのかは分からない。ただ、ふとそう感じた。
石川は緊張をしていたのだ。
「吉澤、簡単に引き受けてくれた?」
石川の隣でコーヒーを飲みながら、保田はマジックミラーの向こう側を見ている。
「いいえ。保田さん、どうゆうことなんですか?」
石川はコーヒーを机の上に置き、保田の方を向く。
「何が?」
「吉澤さんには、あの子の気持ちが分かるって。」
「吉澤さん?!よっすぃでしょ?石川はっ!」びっくりしたように猫目を大きくする。
「…保田さん。」
「冗談を言う場所じゃないわね。吉澤のことは、吉澤に聞きなさい。私から言うことじゃないわ。」
あごで吉澤を指す。
「安倍さんが言ってたんです。吉澤さんと安倍さんは同じ目をしてるって。同じ人種だって」
「その名前は出さないで!」石川が話している途中に保田は大きな声で出す。
石川はビクっと体が反応してしまう。それが分かったのか保田は笑顔を作るが、上手く笑顔を作れてはいない。
「少し時間が欲しいの。あの事件の話をされるとまだ少しだけ混乱しちゃうのよ」
「…すいません」
- 284 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:30
-
- 285 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:31
- 「ねぇ?人間と動物の違いは何だか分かるかい?」
吉澤は机に肘をつき、掌を頬にあてながら話始める。
愛が首を横に振ると吉澤は優しい笑みを浮かべる。
「言葉と想像だよ。想像をし、それを言葉という形にして表現する。まぁ、言葉だけとは限らないね。文章や歌でも伝えることができる。それが人だよ」
小さく愛はうなづく。
「だが、君は言葉を出さない。このままでは、君の伝えたいことはよしざーにはわからない。でも、よしざーの伝えたいことは分かるね。これは不公平だ。だから、2人の間にルールを作ろう」
じっと吉澤の目だけを見ている。
「YESなら1回」
コンっと吉澤は机を叩く。
「NOなら2回」
コンコンっと吉澤はまた軽く机を叩く。
- 286 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:31
- 「いいかな?」
コン
- 287 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:31
- 「理解が早くて嬉しいよ。じゃあ、始めよう」
コン
- 288 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:32
- 「君は高橋愛さんでいいんだよね?」
コン
「君は言葉を失った?」
コンコン
吉澤は反応にニッコリ笑う。
- 289 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:32
- 「じゃあ、言葉を捨てたのかな?」
- 290 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:32
-
コン
- 291 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:32
-
部屋に残るは静寂
- 292 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:33
-
- 293 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:33
- 「はぁ。疲れた…」
部屋を出てきた吉澤は目の前にあるベンチにドカっと腰をおろし、頭を垂らす。
「お疲れ様。」
石川はコーヒーを手渡そうとするが反応がない。
「ちょっと。」
「あ、ごめん。どうも」吉澤はやっと顔を上げ、コーヒーを受け取る。
「で、どう?」吉澤の横に腰を下ろす。
「慣れないことはするもんではないと実感。あのさ、石川さん、あの子のIQって分かるかな?」
「IQ?」
うなづく吉澤。
「調べておくわ。」
「うん。それで手足にいくつか切り傷が見えたけど。」
「強姦の時のよ。」
「そっか。んじゃ、よしざーは帰宅します。」
コーヒーを飲み干し、空になったカップをゴミ箱に投げる。
弧を描いて、ゴミ箱に入る。
「ナイスシュート!!ってか。」
- 294 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:33
-
- 295 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:33
- 誰もいなくなった部屋で少女は口を開く
「お母さん…、お父さん…」
- 296 名前:family 投稿日:2004/03/23(火) 11:34
-
- 297 名前:extra 投稿日:2004/03/23(火) 11:34
- 更新終了。読みづらい点はあるかと思いますがよろしくお願いします。
- 298 名前:85 投稿日:2004/03/24(水) 02:21
- しばらく来ない間に、新作始まってたんですね。更新、お疲れ様です。
「海へ行こう!!」、すげ〜イイ!です。泣きました・・
時に親子、時に同志、時にライバル。
これはもう、ヨンキーズにしか出せない空気感だと思います。
黄金の4期はいつまでも健在です!
そして、吉澤探偵事務所(勝手に命名w)の続編、来ましたね。
(今度もまた、意外な人をキーパーソンに持っていらしたんですねぇ・・)
「perfect」と繋がっていくのかな?次回も楽しみにまってます。
- 299 名前:extra 投稿日:2004/03/24(水) 15:44
- >85さん
四期は本当にいいですよね。最近になって、自分はいしよしヲタではなく、四期ヲタではと思ってみたり…。w
辻・加護の卒業は本当に悲しいです。w
話によって、誰かとこの気持ちを共感できればと思って書いた話ですので、85さんのレスを見て嬉しく思いました!
『吉澤探偵事務所』という命名いいですね!!w
これからそれを使わせてもらってもいいですか??
- 300 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:44
-
- 301 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:45
- 「ただいま。」吉澤は帰ってくるなりベッドに倒れこむ。
が、しかし、吉澤に飛び込んできたのは柔らかい布団の感触ではなく…
「吉澤さんっ!おかえりなさい!!」ニヤニヤした小川。
「…なんでここにいるんだよ。」
「どうでした!?デート!!!」
目をランランに輝かせ、布団からモゾモゾと出てくる。
「デートだぁ!?」
「うへぇ!?石川さんとデートしてきたんじゃないんですか!?もしかして、フラれちゃったんですか!?」
吉澤はグイっと小川の左頬をつねる。
「…大成功だよっ!!さっさと自分の部屋に行け!!!」
ポーンっとベットから投げ出される小川、シュンとなり、部屋を出て行こうとすると
「あ、ちょっと待て。」吉澤はベッドにうつ伏せのまま声をかける。
小川は嬉しくなり、ニコニコで振り返る
- 302 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:45
- 「いいですよ!いいですよ!この小川の胸で失恋の痛手を癒せば!!!」
タタっとベッドに駆け寄り、また吉澤に蹴りを入れられる。
「し…しどいです…」
「失恋なんかしてねーっての!!」
「じゃあ!何ですか!?何で小川を呼んだんですかぁ!?」
蹴られたお腹を押さえながら、小川はピッと吉澤を指差す。
「お前さ、親が死んだらどうする?」
「は、はいぃ!?」
- 303 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:45
-
- 304 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:45
- 「IQ160…。勘がいいどころじゃないわ。」
石川は届けられた資料を前にこれ以上言葉を繋ぐことができない。
石川は立ち上がり、少女の部屋へと行く。
マジックミラー越しに見る部屋は豆電球だけで横になっている愛が起きているのか寝ているのかは判別できない。
石川がジッと見ていると、愛はゆっくりと起き上がり、石川を見る。
あまりに自然な動きで石川は、マジックミラーではないのではないかと不安になり、確認をするがスイッチはマジックミラーを機能させている。
しかし、愛と石川は確実に目が合っている。
手に汗がにじみ出てくるのが分かる
愛はゆっくりと石川に向かって笑みを見せる。
石川の全身が緊張をする。
見えないはずの向こう側にいる愛が確実に石川に笑みを見せた。
- 305 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:46
- 「突然、何を言い出すんですか?」小川は、先ほどの顔とは違い、真剣な顔になる。
「いいから。どうする?」
小川は腕を組み、う〜んっと唸りながら顔を上下にしてみたり、左右に傾けたりを繰り返し
「泣きます。それも大泣きです。」
「泣くか…。すっかり忘れてた。」
吉澤は起き上がり、先ほど脱いだばかりのパーカーに袖通す。
「ちょ、ちょっと!吉澤さん、どうしたんですか!?」
「出かけてくる!」
財布と免許を確認して、ドアに手をかける。
「ど、どこに!?」
ドアに手をかけたまま止まる吉澤。
「石川さんのところに、夜這い。」
「えっ!えーーーーーーー!!!」
- 306 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:47
-
- 307 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:47
- 緊張で動かなくなった体を理性で動かし、なんとか自分のデスクに戻る。
「石川、まだいたの?」
半分、電気の消えた部署内で保田は資料を睨んでいた。
「あ、保田さんもですか?」
「えぇ、ちょっとね。ところで、これは本当なの?」
「愛ちゃんのIQですか?」
石川が近づきながら聞くと保田は小さくうなづく。
「本当です。」
「これは最近、それとも小さい頃?」
幼い頃にIQがずば抜けている子は多い。だが、成長をするにつれて、ずば抜けたIQは落ちて行き、平凡な大人になるという例も多い。
「最近です。去年、高校入学時のIQです。」
「そう…」
保田は資料に穴が開くのかと思うくらいに凝視を続ける。
「今日の吉澤とあの子のやり取りのビデオあるわよね?」
「はい。」
「見せてもらえるかしら?」
- 308 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:47
-
- 309 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:47
- 少女は、暗闇の中で息をする。
「ヒュー ヒュー」
笑い声が微かに混じったように息をする。
- 310 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:48
-
- 311 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:48
- 「保田さん!」部屋に飛び込んでくる新米のような刑事。
「なによ?そんな声出さなくても聞こえる」
保田は、ドアの方は見ず、吉澤と高橋のやり取りを食い入るように見ている。
「す、すいません…」
頭を大きく下げるも、反応をしない保田に代わって石川が返答をする。
「どうしたんですか?」
石川に声をかけられ、少しだけホッとした表情を見せるがすぐに真顔に戻る。
「検死の結果、凶器が分かったんです。」
「そう、それで?」今度は保田が反応をする。
「ドライバーです。」
「ドライバー?!」保田はここでやっとドアの方を見る。
「はい、ゴルフのではなく、工具のです。」
石川は保田の方を見るが、保田に表情はなく、ただ親指の爪を噛み続ける。
- 312 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:49
-
- 313 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:49
- 吉澤は外に出て、携帯をかける。
「はい」受話器越しに聞こえてくる、石川のくぐもった声
「聞きたいことがあるんだけど、今は大丈夫?」
受話器越しにガチャガチャと音が聞こえる。
「どこに行けばいいの?」
「いつもデートしている場所」
「…デートをした覚えはないわ。」
「なるべく、早くね。それから、1つ聞きたいんだけど。」
「何?」
「あの子は泣いた?」
「はい?」
「いや、親が死んで涙を流したかどうかが知りたい。」
「泣ける状況じゃないでしょ?父親が母親殺して、自分は強姦されたのよ?」
「泣いてないってか。」吉澤は上を見上げる動作をする。
「変なことを聞くのね。」
「いや、いい。何でもない。とりあえず早く。」
「どうしてそんなに焦ってるの?」石川が階段でも下りているのか心地の良いヒールの音が聞こえる。
カツカツカツカツ
「カツカツ。石川さんに早く会いたいだけ♪カツカツ」鼻歌まじりに言う吉澤
切られた電話
「ツーツーってか」
切られた電話をできるだけポケットの奥にしまい吉澤は歩き出す。
- 314 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:50
-
- 315 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:50
- 「待った?」石川が店に入った時には、すでに吉澤は奥のテーブルに座り、タバコをふかしていた。
「大丈夫、今、来たところって言えばデートっぽい?」
眉をしかめる石川にニッコリと笑う吉澤。
「用件は?」
「さっき言ったじゃない?石川さんに会いたくなったんだってば」
「…早く言って」
「IQ」
石川は先ほどの資料を吉澤に渡す。
吉澤は紙の端を持ち、興味をなさそうに見る。
「異常な高さ」
吉澤はいつものようにポンっと紙を投げる。
「えぇ。」石川の元に運ばれてくるミルクティー
「あ、頼んでおきました。コーヒーの飲みすぎは胃に悪いらしい」
ニッコリと微笑む吉澤に石川は頭を軽く下げる。
「こんなに高いのに、今までほっとかれるとはね。」
「ほっとく?」
「石川さん、最初によしざーがあの子について聞いた時はこれには触れなかったでしょ?」
吉澤は投げ出された紙をあごで指す。
「そうね…」
「どうしてでしょう?」タバコの箱を手の中で遊ばせる。
「関係ないじゃない。事件とは。」
「まぁね。でも、それだけじゃない。あの子は隠してた。意図的にね」
石川はミルクティーを口に運び、少しだけかしげるような仕草。
吉澤はそれ以上何も言うことはなく、ただタバコを手の中で躍らせる。
石川はカップを置き、一息つく。
- 316 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:50
- 「それから犯行に使われた凶器が分かったの。」
「そう。それで?」
「ドライバー。」
驚いた顔で吉澤は石川を見る。
「ど、どうしたの?」
「今、何て言った?」
「はい?」
「だから、凶器だよ!凶器!」
「ドライバーだけど…」
吉澤は口を手で覆う。
「石川さん。」
「なに?」
「父親は、もう死んでる。いや、殺されてる」
- 317 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:51
-
- 318 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:51
- 『ちいさな娘がいたってさ
おでこのまんなか かわいい巻き毛
いい子のときはとてもとてもいい子
だけどわるい子のときはぞっとする』
- 319 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:51
-
- 320 名前:family 投稿日:2004/03/24(水) 15:51
-
- 321 名前:extra 投稿日:2004/03/24(水) 15:52
- う〜ん、もう先が分かってしまうような展開ですね…。
まぁ、分かってしまっていたとしても最後までお付き合いください
- 322 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 16:57
- どきどき・・たのしみだあ・・更新まってますよ
- 323 名前:プリン 投稿日:2004/03/24(水) 17:57
- お疲れ様です!!!!
ドキドキですね・・・w
続きが気になるところです。
次回の更新待ってます!頑張ってください。
- 324 名前:85 投稿日:2004/03/24(水) 23:30
- 更新、お疲れ様です。
毎回サクサク進んでいてとてもうれしいです。
いやぁ、先が分かってるようで分かってないです、実は・・
この先もすごく楽しみですよ。
クールな中での小川助手がイイですねぇw
(実は癒しキャラなのかも・・吉澤探偵事務所の看板娘。ですかね?)
次回も楽しみです。
- 325 名前:extra 投稿日:2004/03/25(木) 06:40
- >322の名無飼育さん
初めましてでいいんでしょうか?読んでいただきありがとうございます。
しかも、続きを楽しみにしていただけるなんて!!
また遊びに来てくださいね。読みづらい点等ありましたら改善するようにしますので言ってください
>プリンさん
続き気にしていただいてすごく嬉しいです!
物語もあと少しなわけですが、十分に楽しんでいただけるように頑張りますので、お付き合いください。
>85さん
もう、サクサク進むだけが取り柄ですので。w
楽しみにしていていただけるという言葉にすごく励まされます。
最近、自分の文才の無さに嫌気がさしてしまってきているので(T_T)
小川さんについては、チラシを作っても仕事をしてくれないし、お茶は一度も飲んでもらってません。
よく愛想を尽かさないと作者も感心している名看板娘です。w
- 326 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:40
-
- 327 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:41
- 「どうしてそんな事が言えるの?!」
「落ち着いて。石川さん」
「犯人は父親のはず。殺されているわけがないわ!!」
「石川さんっ!」石川の目の前に手を出し、ニッコリと微笑む。
「家。高橋の家は分かる?」
吉澤の手によって、発言を止められた石川は不機嫌そうにうなづく。
- 328 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:42
-
- 329 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:42
- 黄色いテープで張り巡らされている立派な家。
「んー、豪邸だ。」吉澤は車から降り、家を見上げる。
そして、おもむろにテープを上げ、家の中に入っていく。
「ちょ、ちょっと!!!」慌てて石川も吉澤の後を追う。
家の中で異質とも言える和室の真ん中に白い線で人型が描かれている。
周りには血痕が微かに残っている。
「んー、ここが殺害現場ね。」吉澤は腕を組んでそれを見ていたかと思うと、部屋を出てどこかへ行ってします。
「ちょっと!どこに行くのよ!!」
石川が叫んでも吉澤は振り返りもしないで手を上げるだけ。
「こんなところで1人にしないでよ…」
石川は自分の体を抱きしめるように立つ。
ただ人型を見ていると、石川の頭の中には血まみれの肉の塊がリフレインする。
目を閉じ、唇をかみ締める。
- 330 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:42
-
- 331 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:43
- 「よっと。怖かった?」石川の肩にあごを乗せ、吉澤がからかい口調。
「…怖くなんかないわよ!どこに行ってたの!?ここは現場なの!あまりウロウロしな・・って、なにそれ!?」
振り返った石川の目に映ったのは、バーベルを持っている吉澤。
「ちょっと確かめたいことがあるわけ。」吉澤はバーベルを畳に思いっきり打ち込み、剥がす。
「何してるのっ!?」
「いいからいいから。」半分くらいまでめくれた畳を吉澤は覗き込む。
「結構な血だ。」
床の下は真っ黒に染まる血痕。それにむらがるウジ。そして悪臭。
石川はこみ上げてくる吐き気に口をおさえ、その光景から目をそらす。
「何が分かるのよ」
「いやね。畳の上で殺されると血が染みこんでしまって、どれだけの出血か判断できないわけ。それでね。」
「出血なんて、どうでもいいじゃない…」
「高橋の気持ちを理解するためには必要。」
吉澤は舌を出し、唇を舐める。
「さーて、次は父親探しだ」バーベルをまるでまごの手のように使い、ポンポンと肩を叩く。
「石川さん、学校へ行こうか?進入の許可ってすぐに取れるかな?」
石川は携帯を取り出す。
- 332 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:43
- 「どうして学校なわけ?」
先ほどの影響で石川の顔色は真っ青になり、運転できる状況ではないため吉澤が代わりに運転をする。
「んー、なんとなくかな。家が嫌い。学校では人気者。」
「学校が好きだってこと?」
「好きとは違う、あの子は『好き』なんて感情はないよ」
「何を言ってるの?」
「そのうち分かる。さぁ、行きましょう」
2人の前にそびえる真っ黒の影を背負った校舎。
- 333 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:44
-
- 334 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:44
- 保田は1人廊下を歩く。
目指すは、あの部屋。
もう夜遅い、あの子はもう寝ているかもしれないと分かってはいるが気になってしょうがなかった。
愛がいる部屋の横に入り、鏡越しに覗くと愛は保田の方を向き、簡易ベッドに座っている。
「ど、どうして…?」
愛がいる部屋は防音である、保田の足音を聞いたと言ってもそれは不可能なはず。
しかし、愛は確実に保田を待っていた。
保田が息を飲んだことが聞こえたのか愛はゆっくりと手を上げる。
5本の指がきっちりと空に広がったのを確認して、ぐっとこぶしを作る。
まるで虚空にある何かを握りつぶすような動作。
保田は愛の手に目を奪われている。しかし、視線を感じて愛の方を見ると、愛は白い歯をむき出して笑っていた。
- 335 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:44
-
- 336 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:45
- 学校に入り、警備員に挨拶をし、鍵を受け取り中に入った2人。
「いしかーさーん。」
吉澤の困りきった声。
「なによっ!?」
「いや、怖いなら無理して前を歩かなくても」
石川が吉澤の前を歩いているのだが、石川の手には吉澤のパーカーの端。
「怖がってる!?私が!?」
「はい。」
「怖がってなんかないわよっ!」
しかし、確実に伸びている吉澤のパーカー。
「石川さん、よしざーは、結構このパーカー気にいってるんですよ」
吉澤は無理やり石川の手をパーカーから離す。
「…性悪。」
「いや、そうじゃないでしょ。はい。」
吉澤は石川に自身の手を差し出す。
「は?何!?」
「いやいや、決して石川さんの手に触ってみたーいとか下心ではなく、石川さんは何かを引っ張りたい。よしざーは、パーカーは引っ張られたくない。この方が合理的」
ニッコリと笑い、吉澤は石川の手を取り、歩き出す。
「…合理的だったらしょうがないわよね」
「はい、しょうがないです」
- 337 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:45
- 「生徒会室はどっこかなぁ?」
学校案内図を見ながら、吉澤はタバコを咥える。
「ここは、学校よ!」石川は吉澤の口からタバコを奪い取る。
「そうでした。」
沈黙のまま、懐中電灯の心細い灯りを頼りに廊下を歩く。
高橋の学校は、校舎が3棟つらなっている。全てが3階建てになっていて、吉澤と石川が目指している生徒会室は一番北側の校舎の3階の端。
「聞いてもいい?」
「なぁに?」
「どうして、父親が殺されているなんて思うの?しかも、あの子が犯人みたいな言い方よね?」
「う〜ん。おかしいとは思わない?」
「何が?」
「凶器だよ。凶器。ドライバーで人を殺せるなんて思う?」
ドライバーによって、めった刺しにされた母親。
「着いた。まったく、無駄に広い校舎だこと。」
マスタキーを使い、吉澤は生徒会室とプレートの付いた部屋に入っていく。
- 338 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:45
-
「ちょっと!その凶器とあの子、どう関係があるの?」
「石川さん、結論を急ぐのは良いことじゃぁ〜ない。」
黙れの合図なのか、吉澤は自身の口の前に人差し指を立てる。
それに反応して、石川は口を閉じる。吉澤は石川に向かって一度微笑みを見せ繋いでいた手を離す。
吉澤は部屋の中を一周し、1つのドアに手をかける。
「書庫ね…」
- 339 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:46
-
- 340 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:46
- 保田の体は言うことを聞かなくなっていた。
自分が今までしていた判断が全て間違っていたことを悟る瞬間でもあった。
高橋は声を上げ笑いながらゆっくりと立ち上がる。
そして、寸分も狂いもなく、鏡を挟み、保田の目と鼻の先に立つ。
「アハハハハハハ」
動けない保田。
無表情のまま、笑う高橋。
- 341 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:47
-
バンっ!!!
- 342 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:47
- 音を立て、高橋は鏡にへばりつく。
目をこらして、保田を睨んでいるようにも思えるその行動。
鏡におでこ、両手をつけ、保田を舐めるように見ている高橋。
保田は体を反射的にひいてしまう。
「ヒュー、ヒュー…」
- 343 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:47
-
- 344 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:48
- 書庫の中に浮かぶ人影。
「誰かいるわ…」石川は懐中電灯で人影を照らす。
「なーるほどね、こうゆう事か…。」吉澤はゆっくりと中に入っていく。
あまりの無防備さに石川は止めるために吉澤の腕をつかむ。
「何してるの!?」抑えてある石川の声。
「問題ないよ。相手に攻撃の意志は全くない」石川の手をほどく。
そして、吉澤は書庫内の電気をつける。
石川からは、椅子に座っているスーツ姿の男性の下半身が見える。
「だ、だれ!?」
「高橋さん。」
吉澤は男性の目の前にある椅子まで歩いていき、腰かける。
吉澤が離れたことによって、石川の視界には全てが映し出される。
「首がない…」
- 345 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:48
-
- 346 名前:family 投稿日:2004/03/25(木) 06:49
-
- 347 名前:extra 投稿日:2004/03/25(木) 06:50
- 短いですが、今日はここまで。
もう、本当に語彙は少ないし、表現力のない文で申し訳ない限りですm(__)m
- 348 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/25(木) 09:51
- 少し来なかった間にこんなに話が…。
続きが気になります。(・∀・|ドキドキワクワク
extraさん、私はすっかりあなたのファンです。
次も待ってます☆
- 349 名前:プリン 投稿日:2004/03/25(木) 12:53
- お疲れさまです!
更新待ってました!今回もすごく(・∀・)イイ!
密かにいしよしなんかあったり・・・・w
extraさんは甘々いしよしの方が書きやすそうですが(笑
こういういしよしもまたいいですよねw
自分の場合はいしよしならすべてよしなんですけどね(ヲイ
次回の更新も待ってますね。
頑張ってください。
- 350 名前:すかっしゅ 投稿日:2004/03/25(木) 22:46
- すっげぇ。本トにはまりますよコレ。
- 351 名前:extra 投稿日:2004/03/26(金) 10:10
- >名無し読者さん
私のファンですか?!いや、勿体ない言葉ですが受け取らせていただきます!w
残り少しですが、楽しんでくだされば幸いです!w
>プリンさん
本当にさりげなくいしよしです。w
もっと絡ませたいんですけどね、いかんせん、あまりからませますとうちのいしかーさんは不機嫌になりますので…。w
まぁ、あとで甘いの書かせて発散させていただければと思っています。
>すかっしゅさん
初めまして!いや。ハマっていただけたら幸いです。結構、好みの別れる作品だとも思っています。
その上、駄文なわけですから。w
でも、すかっしゅさんのように楽しいと言ってくれる人がいる間は、このシリーズを書こうとも思っていますので
良ければ、お付き合いください。
では、本日。
- 352 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:12
-
- 353 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:12
-
- 354 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:12
- 高橋は保田が体を引いたことが分かったのか、ゆっくりと鏡から離れる。
スピーカーから聞こえてくる徐々に大きくなる高橋の笑い声。
「アハハハハハハハ」
保田は耳を抑える。
耳を抑えても保田の頭の中ではエコーし、高橋の笑い声は響いている。
鏡に残る高橋の両の手跡。
「クスクスクス…」高橋は指を噛み始める。まるで小さな子が指をしゃぶる仕草のように。
だが、17歳の高橋がやると、それはいささか現実離れをしている行為にも見えた。
高橋は一通り指を舐めたかと思うと、微笑みを浮かべ、歯で爪をはがす。
「な、なに…?」
高橋の白い細い手が赤く染まっていく。
大きく舌を出す。舌の上には、先ほどまで高橋の一部であったはずの爪がまったく異質のもののように乗っている。
- 355 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:12
-
- 356 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:13
- 吉澤と石川の視界に映ったのは、首のない男性がきちんと椅子に座っている光景。
大量の芳香剤のせいか、悪臭がない。
臭いがないせいか、あまりに現実感がない。
「ここで父親と話をしていた。」
「え?なに?」
「ううん、何でもない。石川さん、この人、おかしな部分がいくつもあるね」
何を言い出すと言うのか?今の段階で十分すぎるほどにおかしな光景。
「何を言ってるの…?」
「首と一緒に指もない」吉澤はゆっくりと石川の方に振り返り、手をひろげる。
- 357 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:13
-
- 358 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:13
- 高橋は微笑みながら、ゆっくりと同じ動作を繰り返す。
指を舐めては、爪をはがす。
はがす はがす
はがす
「だれ…誰か!誰か!!!!」保田は大きな声で叫ぶが防音のため誰も来る気配はない。
- 359 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:13
-
「誰…誰か来なさいよ!!!!!」
- 360 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:14
-
- 361 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:14
- 「ほいさっさ。保田さん、どういたした?」ドアを開ける音によって、保田はやっと高橋から目を離す。
「吉澤!!早く!早くあの子を止めて!!!」保田のただ事ではない状況に吉澤は眉をしかめ、高橋の方に目をやる。
「なーるほど。ついに本性見せたりってか。石川さん、保田さんをよろしく」
吉澤は部屋に入っていた半身を出し、吉澤の後ろに立っている石川の肩を叩く。
そして、吉澤は隣の部屋に入っていく。
- 362 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:14
- 「高橋さん、こんばんわ」
吉澤の声にゆっくりと振り返る。
「こんばんは、吉澤さん」
笑みを浮かべ高橋は声を出す。
「とりあえず、座りましょうか?」
吉澤は椅子をさし、高橋を促す。高橋は肩をすくめ腰をおろす。
- 363 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:14
-
- 364 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:14
- 「保田さん!保田さん!!」
吉澤に肩を叩かれ、中に入ると保田は文字通り崩れ落ちていた。
耳を抑え、尋常じゃない震え。
「…石川…、あの子、普通じゃない…」
ガクガク震えながら話す保田。
「…保田さん。父親が見つかりました」
何も言わずにただ何度もかぶりを振る保田。
石川は、震える保田にどうすることもできずにただ見ていることしかできない。
そんな石川と保田の部屋のスピーカーから吉澤と高橋の声が流れてくる。
- 365 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:15
-
- 366 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:15
- 「お父さんに会ってきたよ」
吉澤の穏やかな声。
「そうですか。父はきちんと対応してくれました?」
高橋は自身の血によって、真っ赤になっている口に微笑みを浮かべる。
「なかなか紳士的だった。」
部屋の中には、高橋の血の匂いが充満している
「吉澤さんは、騙せないと思っていました。」高橋はゆっくりと話始める。
「それはなかなか光栄だ」
「ねぇ?吉澤さん、私、完璧だったでしょう?」
「うん。よく周りを観察したんだろうね。」
「えぇ。私は特別ですもの。周りを見て、『普通』を学びました。」
高橋はニッコリ微笑み、吉澤もそれと同時に微笑む。
- 367 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:15
-
- 368 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:15
- 「ど、どうゆうこと…?」
スピーカーから聞こえてくる吉澤と高橋のやり取り。
石川には、理解ができない。
演じていた?傷ついたふりをしていたということ…?
足元にいる保田は、まだ耳を押さえ、目をつぶっている。
「保田さん…」
保田さんをここまでにしてしまうなんて、あの子は一体…?
- 369 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:15
-
- 370 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:16
- 「ねぇ?お父さんは、お母さんと一緒に殺したんだよね?」
吉澤の言葉に高橋はひょいと肩をすくめる。
「分かります?」
「もちろん。1人で大の男をあそこまで運ぶのは不可能だからね。いくら君でも超能力は持っていないだろう?」
「超能力ですか?持っているかもしれないですね」クスクスと高橋は笑う。
「どうだった?まだ生きている父親の首を切るのは?」
高橋の顔から笑いが消え、目を大きく見開く。
「どうして?生きていたなんて?」
「父親の指がなかったからね。あれは、首を切ろうとする時に抵抗したんじゃないかなって。」
吉澤はグーっと背を伸ばし、手を頭の後ろで組む。
- 371 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:16
-
- 372 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:16
- 『あたまはごろんとベッドのしたに
てあしばばらばらへやじゅうに
ちらかしっぱなしだしっぱなし』
- 373 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:16
-
- 374 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:17
- 「言い訳のように聞こえるかもしれないですけど、あーでもしないと父は死なない。ううん、まだ父は死んでいない。なんて可哀相な人。そうは思いません?」
吉澤は軽く眉をあげ、口の端を少しだけ歪ませるだけ。
「吉澤さんの言うとおり、母親と一緒に父を殺しました。父が母と話している時に私が後ろからハンマーで殴ったんです。」
「ハンマーね」
「殴られた父の声を聞いた時に、私の中で何かが弾けたんです。ずっと私を征服したつもりでいた父のね。」
吉澤は何も言わずに、話を続けての合図なのか手を高橋に向かって差し出す。
「何度も何度もハンマーを頭に振り下ろしたんです。そしたら、ハンマーが父の頭蓋骨にめり込んじゃうんですよ?」
おもしろい話をするように話す高橋。
- 375 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:17
-
- 376 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:17
- 石川は隣の部屋でまるで現実感なく、2人の話を聞いていた。
安倍の時とは、全く違う異質感。
楽しそうに話す高橋は、スピーカーがなかったら、姉に今日学校であった楽しかった話をしている様に見える。
高橋の目はしっかりしている。安倍のように虚ろにもなっていない。
「正常なのが普通じゃない」ハッと隣を見ると、保田が虚ろな目で立っていた。
もう耳はふさいでいない。
「…保田さん。」
「正常なのよ、あの子。」
- 377 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:17
-
- 378 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:17
- 「それで?」
「ハンマーを引き抜かなきゃいけなくて、母と2人でやったですけどね。すごい力が必要なんです。父はここまで来てもまだ生きてるんですよ」
高橋は、身振り手振りで話をする。まるで今、父親の頭にめり込んだハンマーを引き抜いているかのように。
「やっと抜けたと思ったら、血です。」
「ほう。」
「血だらけ。すごい血。そこらじゅう血だらけ。噴火みたいに噴出してくるんですよ。すごくないですか?」
バーっと手を上げる高橋。
「すごいね。」吉澤は笑みを浮かべる。
「ですよね。吉澤さんは分かってくれると思ったんです。初めて会った時から」
「うん。」
「ここからですよ?父の血が私の手にかかった時に、今までに感じたことのないくらいの昂揚感です!!!」
興奮した様子で話す高橋。
「昂揚感ね」
「えぇ、父の血がついた私の手が熱いんです。だから、首を切りました。父の手が上がってきて、間違って指まで切ってしまいましたけど。」
ニッコリと微笑む高橋。小さなミスをしてしまったかのように小さく舌を出す。
- 379 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:18
-
- 380 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:18
- 石川は吉澤と高橋の様子を見ているはずなのだが、スピーカーの声に反応してしまってなのか、高橋と父親の様子が浮かんでくる。
赤い、赤黒いだけの光景。
血の海にひたって沈黙している高橋の父。
それを見ている母子。
目を閉じ、頭を振り、その光景を消そうとするが、そうすればするほどにリアルに浮かんでくる。
- 381 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:18
-
- 382 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:18
- 「父はね、もう薬で狂っていたんですよ。だから、死なせてあげようって。でもね、父は死なないんです。死ねないんです。哀れでしょう?あまりにひどすぎる。吉澤さん、あの人を死なせてあげてください」
乞うような高橋の態度。
吉澤はゆっくりと微笑むだけ。
「お父さんは、狂っていたから殺したと。んじゃ、お母さんは?お母さんは殺す必要はあったのかな?」
吉澤の質問に高橋は、微笑む。
「忘れられなかったんです。父の時の昂揚感。それにね、あんなのが母親だっていうのも嫌だったから。」
「立派な母親って話だけど?まぁ、父親もね。」
「立派?吉澤さん、本当にそう思います?」
吉澤は首を少しだけかしげる。
「ただの売女。そう売女ですよ。父以外に足を開いているんですから。それを気付かれないなんて思っているんですもん。売女の上に救いようのないほどのバカ女。」
「へぇ。浮気ね。なかなかやるもんだ。だから、ドライバーで衝動的に刺したと。」
「えぇ、気に入らなかったんです。あの女に母親面されるのが。だからかな。あーでも、ただ昂揚感を味わいたかっただけかも」
高橋はねっとりとした舌を出し、2〜3度唇を舐める。
「それで、母親の性器をめった刺しにして、自分の出生を否定。」
「ビンゴ!!!」高橋は手を叩き、嬉しそうに笑う。
「あの人たちは、私を貪るんですよ。これでもか、これでもかってくらいに。良い親のフリをして。そして、意味のない言葉しか言わない。『勉強』とかですね」
- 383 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:19
-
- 384 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:19
-
『おかあさまがわたしをころした
おとうさまはわたしをたべてる
にいさんねえさんおとうといもうと
テーブルのしたでほねをひろって
つめたいいしのおはかにうめる』
- 385 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:19
-
- 386 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:20
- 「それで母親の前で自慰行為をしたのはどうしてかな?」
「母親だけじゃないですよ?」
「両親の前で自慰行為をしたのはどうして?」
吉澤の質問に高橋は手をあごにあてて、考えた様子。
そして、口の端を上げて笑う。
「性的欲求が抑えられなかったのと、見せてあげたんです。あんたが産んだ子はここまで成長したよって」
「見せるね。性的欲求は分かるが、何で見せる必要があるのかな?」
「だって、最後くらいいいかなって。親って子供の成長は愛しいし、見たいものでしょう?」
「確かに。」吉澤はパンパンと手を叩く。
「ねぇ?吉澤さん、私、死刑かしら?」
「どうだろうね。よしざーは、裁判官じゃないからわからんよ。」手を広げ、首をかしげる。
「吉澤さんのこと、好きですよ」
高橋は血だらけの手で吉澤の手に触れる。吉澤は避けることも逃げることもせずに高橋の目を見る。
「だって、くだらないことを言わないから。理由を聞かないんですもの」
「理由?」
「はい、だって、人を殺すことに理由は必要じゃないでしょう?あいつらは、中身のないガラクタだったんですもの。1人、2人死んでも、何の影響もないし、世界が変わることもないです」
「そうかもしれないね」
高橋はゆっくりと後ろを向く。
「刑事さん、早く高みの見学なんかしてないで、手錠をかけてください」
- 387 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:20
- 「高橋愛。殺人及び死体遺棄で逮捕します」保田は高橋の目を故意的に見ないようにして手錠をかける。
吉澤は肘をついて、口元に微笑みを浮かべながらその光景を見ている。
「吉澤さん」高橋を前を向いたまま。
「なんでしょう?」
ゆっくりと吉澤の方を見る高橋。その顔には、相変わらず微笑みを浮かべている
「なんでもないです。良かったら、たまに話をしに来てください」
「うん。時間があればね」右手を上げ、ヒラヒラと振る
保田が高橋の背中を押し、高橋は部屋から出て行く。
- 388 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:20
-
- 389 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:21
- −吉澤さん、自分が死ぬ時ってどんな音が聞こえるんでしょうね?
父は血が噴出す音を聞いたのでしょうか?
もし、私が死ぬ時、私から血が噴出す音が殴られた音が 私が崩れていく音を聞けるとすれば、これ以上の幸せはないです。
- 390 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:21
-
- 391 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:21
- 吉澤は、また手を上に伸ばし、背筋を伸ばす動き。
「リジーボーデン 斧を手にして
父さんを40回 めったうち
われにかえって 今度は
母さんを41回 めったうちってか」
「なにそれ?」吉澤の後ろから石川の声。
「マザー・グース。リジーボーデンっていう尊属殺人犯を皮肉った歌かな?」
「リジーボーデンは、確か殺人容疑だけよ?犯人ではないわ。」
吉澤は椅子から立ち上がり、石川の正面に立つ。
「おいしいベーグルのお店を見つけたんです。石川さん、ご一緒にどうですか?」
「お断りします。私はこれから書類作成しなきゃいけないの。」
吉澤は大げさにがっかりしたフリ。
「今回の報酬は、いつもの口座に振り込んでおくわ。」
「了解、よしざーは、別に石川さんの熱いキッスでもいいですけど?」
キッと石川が睨む。吉澤の肩を叩こうとする石川の手を吉澤は体を引き逃げる。
「じゃあ。また。」
吉澤は小さくお辞儀をして警察署を後にする。
- 392 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:21
-
- 393 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:21
-
- 394 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:22
-
「見ろ!!小川!!!」
吉澤に外から呼ばれ、小川が外に出てくると黒光りしたジープが。
「な、なんですかこれ!!!!」
「買っちゃった!!」小川に向かってブイサイン。
「1つお尋ねしますが…」
「うん。何?」吉澤は小川と同じ視線になるために背中を少しだけかがめる。
「買うためのお金は?」
「あぁ!それは今回の報酬で!!!」ニッコリと微笑む吉澤、ワナワナと震える小川。
「いい加減にしてくださーい!!!!」
ガンっと思いっきり車を蹴飛ばす小川
「お、おい!お前、何やってんだよ!!」
「こんなもの!こんなもの!!!」制止しようとする吉澤を振り切り、何度も何度も車を蹴飛ばす。
「おい!凹んでんじゃねーかよっ!!!」
「知りませんよ!!」ハァハァと肩で息をしている小川。
「買ったばっかなのにぃ…」吉澤は小川によって凹んでしまって部分を指で撫でている。
しかし、只ならぬ殺気を感じ振り返ると、ブロックを持ち上げている小川
「ちょ、ちょっと待て!それはさすがにシャレにならん!!!」
小川の手を抑える。
「止めないでください!シャレで終わらすつもりは毛頭ないですっ!」
「止めるわい!!!!」
- 395 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:22
- 「相変わらず、ここは騒がしいのね」
腕を組み、飽きれ顔で石川が立っている。
「いしくぅわさーん」石川の胸に飛び込む半泣き状態の小川。
「ど、どうしたのよ?」
「もう!吉澤さんには愛想が尽きました!!!お里に帰らせていただきますっ!!!」
小川は吉澤に指を指す。
「あー、はいはい。セイセイするわ。あ、帰ってくる時はお米持ってこいよ!」
「持ってきませんよっ!!!」ダーっと事務所の中に入っていく小川。
「いいの?」石川は眉を八の字にして吉澤を見る。
「いいの。いいの。3日もすれば戻ってくる。」吉澤は全く気にした様子もなく、あぁと声を漏らしながら先ほど付いた傷を撫でている。
- 396 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:22
- 「んで、今日は?」
「高橋さんの実刑が決まったわ。」
「そう。」
「それで、今回のお礼に食事にでもどうかしら?」
吉澤はここでやっと石川の方を向く。
「…まじ?」
「えぇ。本当よ。明後日の夜8時に青山通りにあるレストランを予約してあるの。これが地図」
石川から差し出された地図を確認する。方向音痴を熟知しているのか石川が渡した地図はきちんとポイントが書いてあり分かりやすいもの。
「もう石川さんがよしざーを食事に誘うなんてないと思ってた。」
「そうね、でも、今回は吉澤さんのために予約したから必ず来てね?」
上目使いの石川。
「…はい」
- 397 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:22
-
- 398 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:23
- その日の吉澤の異様な気合には感心させられるものがあった。
いつものような適当な服装ではなく、勝負服。
そして、時間よりも少しだけ早めに指定されたレストランに着く。
「いらっしゃいませ」
「石川で8時に予約してあると思うのですが」
「お連れ様はもうお待ちしております。どうぞ」
ボーイにエスコートをされ、通されたは個室。
「早いね、石か…」
「吉!!遅いわ!!!」
「や、ヤッスー…」
「全く、今日はあんたに色々聞きたいことがあんのよ!もう一晩中飲むわよ!!」
「騙された…」吉澤は額に手をつけ、頭を下げる。
「何、ぶつぶつ言ってんのよ!早く座りなさい!あ、ボーイさん!!ワイン追加ね〜!!!」
- 399 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:23
-
- 400 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:23
- 「麻琴ちゃんいる?」
「あれ?石川さん、どうしたんですか!?」事務所に入ってきた石川に小川は驚いたのを顔いっぱいに出している。
「あ、本当に3日なんだ。」
「何ですか??小さくて聞こえないですよぉ!!」小川はクネクネとしながら石川に近づく。
「何でもないわ。ここの電気がついてたから寄っただけ。」
「えぇ?でも、吉澤さんの書置きに今日は石川さんとデートって書いてありましたよぉ?」
吉澤の乱雑に書いたのバレバレのメモを見せてくれる。
「何か勘違いしてるんじゃないかしらね?」
「う〜ん、吉澤さんならありえそうですね。そうだ!私、お米持ってきたんですよぉ!!」
後ろにあるものすごい量のお米。
「年貢を納めるみたいね…」
「もう何言ってるんですかぁ?ご飯、食べて行きません?すごく美味しいからきっと石川さんびっくりしますよ!!!」
嬉しそうにニコニコと笑う小川につられて、石川も微笑む。
「そうね、ごちそうになろうかしら。」
「はい!じゃあ、少しだけ待っていてくださいね!!」
小川は本当に嬉しそうに笑いながら、腕まくりをしてキッチンに行く。
- 401 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:23
-
- 402 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:23
- 「保田さん、もう飲めません!」
グラスを手でふさぐ吉澤。
「何言ってんの!?夜はこれからよ!!キリキリ行くわよ!!!」
ボトルを片手に叫ぶ保田。
「…勘弁してよ」
吉澤は、肩を落としつつ、自分のグラスにワインが注がれていくのを見ることしかできない。
「あー、今日のお酒は本当に美味しいわ〜!!!!」
- 403 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:24
-
- 404 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:24
-
- 405 名前:family 投稿日:2004/03/26(金) 10:25
- to be continued…?!
- 406 名前:extra 投稿日:2004/03/26(金) 10:27
- 高橋編終了です。
お付き合いいただきありがとうございました。
さーて、次はどうしよっかなぁ…?w
- 407 名前:プリン 投稿日:2004/03/26(金) 10:59
- お疲れ様です!
すごく面白かったですよ!
こういうのもなかなかいいなぁ〜wと。
extraさんの小説、もう大好きです!
これからも頑張ってくださいね。
次回の更新待ってます!
誰なんだろうなぁwドキドキw
では。頑張ってくださいましぃ〜。
- 408 名前:85 投稿日:2004/03/26(金) 15:39
- 更新、お疲れ様です。
ん〜、コワイんだけど、ついどこか惹きつけられてしまう世界観なんですよねぇ。
好きです、こういう感じ。
常に何かのボーダーラインにいるよしざー探偵と石川さんの距離感も今までにない感じで新鮮でイイです。
(そして貢ぎ物の小川助手に笑わせてもらってますw)
次は個人的リクとして、松浦さんか亀井さんにご登場願えれば・・なんて思ってます。
(勝手に言ってるだけですけどw)
次回も楽しみにしてます。
- 409 名前:- 投稿日:2004/03/26(金) 18:26
- 更新ありがとうございます。
いやーおもしろい。
さかのぼって『光』も読ましていただきました。
振り幅がすばらしい!!!
いろいろ構想がおありでしょうし、もう考えてられると思うのですが、
吉澤の過去。石川との関係。楽しみにしています。
あと小川ちゃんに癒されてます。
- 410 名前:HS 投稿日:2004/03/26(金) 18:33
- 更新、お疲れ様です。
extraさんの小説、最高です。参りました。
それぞれのキャラが生きてて素晴らしいです!!
個人的なリクエストといたしましては、
敢えて、吉澤さんが仕事に出ている間の小川さんの行動なんかを
見てみたいですね。
次回も楽しみにしております。
- 411 名前:extra 投稿日:2004/03/28(日) 00:07
- >プリンさん
いやぁ、大好きなんて照れます。w
って、自分のことではないですね。w
面白かったと言っていただき、大変嬉しく思います。もうその言葉のためだけに書いているようなものですから。
これからもよろしくお願いします(^^ゞ
>85さん
いやぁ、惹きつけられていただけましたか?ありがとうございます!
非日常的なことなので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです。
リクエスト了解いたしました!
ただ、どんな形になるのかは約束できませんのでお許しを。w
>−さん
初めまして。「光」を読んでくださったのですか?
お恥ずかしい限りです。見苦しい点もあったかと思いますが、まさに処女作ですのでお許しを。
振り幅と言いますか、もう色んなジャンルに手をつけたいばっかりなextraであります(^_^;)
これからもそう言っていただけるような作品を出していけたらと思っています。
毎日とは言いませんが、マメに更新をするようにしていますので、暇な時にでも遊びに来てください!
>HSさん
初めまして!いや、参ってくれましたか?w
嬉しい限りです。
小川さんの番外編は手をつけ始めています。本編と平行して書いていますので、本編が落ち着きましたら
お見せできると思いますので。待っていてくれると思います。あ!内容とかはあまり期待しないでくださいね?w
また、遊びに来てくれると嬉しいです。
皆様のレスに励まされながら、ついに第3弾ですね。
番外編を先に出そうか迷ったのですが、本編の方が書き進んだのでこちらから…。
楽しんでいただければ光栄です。
- 412 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:08
-
- 413 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:08
-
- 414 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:09
- 「何でせっかくの休日にこんな場所に貴方といなきゃいけないわけ…?」
不機嫌丸出しの石川にニコニコ顔の吉澤。
「いや、この映画、ずっと見たくてさー」
「そう。それはよかったわね。1人で楽しんで。」
帰ろうとする石川の腕を吉澤はパンフレットを見ながら掴む。
「あーあ、石川さんに騙されたのは辛かったな…」
「べ、別に私と食事なんて言った覚えはないわよ!」
「勇んで行ったら、ヤッスーだもんなぁ。もうあの次の日とか胃袋が空ッぽになるくらい吐いて、その上、胃袋まではきそうだったなぁ…」
「…行けばいいんでしょ?行けば!!!」
半ば、やけくそと言う感じに吉澤の腕を掴み返し、歩き出す石川。
「そう、こなくっちゃ♪」嬉しそうに吉澤は口笛を吹き、腕を引っ張られる。
- 415 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:09
-
- 416 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:09
- 怠慢な警察一同様
深紅の雨を…
MgEuKrBeN
GeN
- 417 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:09
-
- 418 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:10
- 「なにこれ?」保田は眉をしかめ、封書と部下を交互に見る。
新聞と雑誌の切り抜きで作られた文章。
「今日、ここに届いたんですよ。」困り顔の新人刑事。
「愉快犯?それにしても、この英語の羅列は何?」
保田はコンコンと机を爪で叩く。
「とりあえず、保田さん、よろしくお願いします。」
「あぁ、はい」保田はその文字の羅列を見たまま手を上げる。
保田は封書を丁寧に中にしまい、あくびをする。
「最近の犯罪に触発された目立ちだかり屋さんってとこかしら?」
- 419 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:10
-
- 420 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:10
- 「あ、もしもし。…うん。ごめんね!もう少しで行くから…うん…うん。分かってるって。うん…じゃあ、また」
肩にかかるかかからないかくらいの髪の少女が楽しそうに携帯電話で話しながら、人混みの中に消えていく。
- 421 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:10
-
- 422 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
- 「ね?石川さん、すごーくおもしろかったでしょう?」
泣いてしまいハンカチで目頭を抑えている石川の顔を覗き込む吉澤。
石川と鼻がくっつくかの距離。
「近すぎ」吉澤の顎を手でグイと上へあげる。
吉澤は石川によって、あごを上げた姿勢になり、そのままの状態で石川を見る。
「次はどこに行きましょう?」ニッコリと微笑む吉澤。
「はい?帰るわよ!」
「もう!今日は割り切ってよしざーとデートしてよ?」
「何言ってるの?前は私がいくら誘っても…」石川は出てくる言葉を飲み込む。
「あれ?昔の話をされるのは嫌いじゃなかった?」
「嫌いよ!!」
「んじゃ、行きましょう!!」吉澤は石川の手を取り、歩き出す。
石川は吉澤に手を掴まれたことにハッとなったようだが、下唇を噛み、何も言わずに吉澤の後ろを歩く
- 423 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
-
- 424 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
- ・・・・3・2・1
存在するものを壊す音 大勢の人の叫び声 泣き声
「ばいばーい」楽しそうな少女の声。
- 425 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
-
- 426 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
- 「今の音…」吉澤は歩いてきた方向を振り返る。
「事故じゃないかしら?」石川もつられて振り返る。
「せっかく楽しい一日になりそうだったのに」吉澤は額に掌をあてる
「は?何言ってるの?」石川はわけがわからないと言った表情で吉澤を見る。
「爆破だよ、これ」吉澤は音のした方向へ走る。
「爆破!?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
- 427 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:11
-
- 428 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:12
- 「保田さん!渋谷駅で…!!!」
コンビニ弁当を食べている保田の元に息をあらげた刑事。
「なに、渋谷駅で何があったの?」
「テレビ見てください!!!」リモコンを取り、電源を入れる。
- 429 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:12
-
- 430 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:12
- 「ど、どうゆうこと…?」
石川の目に入ったのは、赤い炎をあげている渋谷駅。
蜘蛛の子を散らすように飛び出してくるパニックに陥っている人。
そして、ものすごい悪臭。
吉澤は何も言わず、ただその光景を見ている。
「たす、たすけて…」足を半分失った女性が虚ろな目で走っていく人たちを止めようとする。
「見えない!どうして!?」目にガラスの大きな破片が刺さり、血を流している女子高生。
ただ泣き叫ぶだけの子供…
「熱い!熱いんだ!!!」顔の半分が炎でただれてしまっている中年の男性がこちらに向かって走ってくる。
そして、石川の肩をつかむ。
「熱い…熱い!」
ものすごい力で肩をつかまれ揺さぶられる石川。
目の前で言葉を発している人であるはずの物体。近くで見るとただれた皮膚が目をふさいでいる。
「石川さん」吉澤は石川の手を引く。
「どこに行くんだ!俺も連れてってくれ!!置いてかないでくれ!!!」叫び吉澤の足元に膝まづく。
「もう少ししたら、救助が来ます。」
- 431 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:12
-
- 432 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:13
- 「以上、爆発のあった渋谷駅からです」
アナウンサーの興奮を抑えるような声でテレビはスタジオに切り替わる。
保田は何も言うことができなかった。
ブラウン管越しのせいとも言えるのだが、あまりに今映し出された光景は現実感がなかった。
「保田さん!」
「…分かってる」
保田は自身のデスクの上にある封書を手にする。
「石川と吉澤はどこにいるの?」
- 433 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:13
-
- 434 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:13
-
吉澤は石川の手を引き、小さな公園に辿り着くと、頭を抑える。
「どうしたの?」
「頭が割れそう…いてぇ…」頭を抱えながら、ベンチに座り込む吉澤。
「だ、大丈夫?」
もし、今の吉澤の状況が先ほどの爆発に由来しているものだとすれば、何かしらの毒薬も爆発に含まれていたという事になる。
それは取り返しのつかない事態になることを意味していた。有毒ガスがあれば、爆破によって間接的な被害者が大勢出てしまう。
石川は背中に戦慄を覚える。
- 435 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:13
-
- 436 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 00:13
-
- 437 名前:extra 投稿日:2004/03/28(日) 00:14
- はい、こんな感じでございます。
それでは、また次回の更新の時に。
- 438 名前:すかっしゅ 投稿日:2004/03/28(日) 08:47
- 新しいの来た!
- 439 名前:プリン 投稿日:2004/03/28(日) 13:31
- 更新お疲れ様です!
すごく面白い!よっちゃん!大丈夫かぁ・・・
心配ですなぁ。
いやぁ。でもホント面白いです。
extraさんの小説も大好きですが、extraも大好きです(/▽\*)
これからも頑張ってください!
次回の更新待ってます!
楽しみだなぁ〜♪
- 440 名前:なち 投稿日:2004/03/28(日) 14:18
- 今日発見して一気に全部読みました!!
マジ引き込まれる〜(・∀・)イイ!!
続き楽しみしてます♪
- 441 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 20:18
- 感想って何書いていいかわかんないので…
いつも楽しみにしてます。
- 442 名前:extra 投稿日:2004/03/28(日) 22:24
- >すかっしゅさん
えぇ、なんとも早いことに第3弾目です。w
楽しんでいただけるとこれ幸いでございます。
>プリンさん
告白キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!
嬉しい限りでございます。w
これからも頑張りますので応援よろしくお願いいたします!
>なちさん
初めましてですね!
いやぁ、一気に読んでいただけましたか?お疲れの事だと思います。w
引き込まれるなんて嬉しいですね。
これからもよろしくお願いします。暇な時にでも来て読んでくださいませ。
>441の名無飼育さん
初めましてですね。
いや、楽しみにしているとでextraには十分な言葉です。
ありがとうございます。
レスは短い長いに関わらず本当に励みになります。
これからも良かったら読んでください。
では、本日です。短いですが…。
- 443 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:25
-
- 444 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:25
-
- 445 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:25
- TRUUUU TRUUUU
「石川!どこにいるの!?」
「保田さん、今は渋谷に…」
「巻き込まれたの!?」電話越しの保田の声にも焦りが見える。もう警察には通報がいったという事に安堵をする。
「いえ、私は大丈夫なのですが、吉澤さんが」
「吉澤!?吉澤がどうしたの?」
「頭痛がひどいみたいで。」
電話越しに警察署内の騒々しさが聞こえてくる。
「今から私も現場に行くわ。」
- 446 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:25
-
- 447 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
- 誰もいない渋谷駅前のスターバックス。
1人の少女は携帯を片手に、表を見下ろす。
「全部壊れてちゃえばいいのに…。うん、うん…。亜弥ちゃんもそう思うでしょ?」
- 448 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
-
- 449 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
- 保田が現場についた時は、ものすごい報道の数とやじ馬が救助をさまたげてはいたが、ブラウン管越しで見た時よりもパニックは収まっていた。
「今回もまたヘビーだわ。」処置を受ける人の列はとどまるところを知らない。
頭から血を流しながら、インタビューに答えるサラリーマン。
処置を受けている人を携帯のカメラで楽しそうに撮影している女子高生。
なんとかその人混みの中に石川の姿を探そうとするが、あまりにも人が多すぎる。
「保田さん!!」後ろから微かに聞こえる石川の声。
振り返ると人混みにもみくちゃにされている石川。
「吉澤は?!」
「公園に。」石川が示したのは、渋谷駅近くにある小さな公園。
保田は近くにいる刑事を呼び、吉澤を連れて帰るように命じる。
そして、小さく深呼吸をし、目をするどくする。
「石川はここで私の手伝いをして。」
「…はい」
2人は先ほど黄色いテープを貼られた渋谷駅に入っていく。
- 450 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
-
- 451 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
- 「吉澤さんっ!?」
刑事によって、部屋に連れて来られた吉澤は意識がない状態。
「頭痛がひどいみたいで…」
「頭痛ですか!?」
「えぇ。ただ病院の方が怪我人を優先していますので、ベッドを確保することができないんです。とりあえず、痛み止めを打ってもらい、今はその影響で眠っているだけなので」
元から白い吉澤の顔が今は更に白くなっている。いや、青いと言った方が表現としては正しい。
「わ、わかりました。ありがとうございます」
ベッドまで吉澤を運んでもらい、小川は深深と頭を下げる。
刑事は小さく頭を下げ、事務所を出ていく。
「吉澤さぁ〜ん…」
青い顔の吉澤からの反応はない。
- 452 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:26
-
- 453 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:27
- 渋谷駅構内は、変わり果てた姿になっていた。
消火活動が終わったあとでされ、白煙がどこからか上がり、爆発で吹き飛ばされたと考えられる肉の破片がコンクリートや地面にへばりついている。
石川も保田も口をハンカチで抑え、中を見てまわる。
爆発は、JR渋谷駅改札前の切符売り場の辺り。
習慣のせいでこの辺りが切符売り場だと判断できる。
「保田さん、テロでしょうか…?」
「深紅の雨を…」保田は小さく口にする。
「え?」
「今日、届いた手紙の内容よ。それがこの爆破を意味するものなのかは、まだ判断はできないけど。」
視線を落とせば、爆発のせいなのか人の影のようなものが地面に自己主張をするように残っている。
保田は下唇を噛みしめる。
- 454 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:27
-
- 455 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:27
- その日の夜から吉澤はものすごい高熱を出した。
苦しそうな声を漏らす吉澤。
「吉澤さん…」
タオルを変えても、変えてもすぐに熱を持ってしまう。
小川は寝ることも忘れ、看病をするが吉澤の様子は一向に良くはならない。
- 456 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:27
-
- 457 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:27
- 夜になっても署内の電話はマスコミや一般からの電話で鳴り止むことはない。
永遠のようなベルの音。
「保田さん、これですか。」
石川は保田に手渡された紙を見る。
「えぇ、どう思うかしら?」
「深紅の雨が血を現しているのは分かるのですけど。ただ、この下にある英語の羅列が…」
「そうなのよね。それが渋谷を示しているとしたら、犯罪予告。」
保田は親指の爪を神経質に噛む。
- 458 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:28
-
- 459 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:28
- 「うん…。分かってる。でも、これは始まりにすぎないんだよ?うん…。そうだね。うん…。亜弥ちゃんが好きだよ…」
少女は小さい声で愛を囁きながら、渋谷の喧騒を歩いていく。
左手は強く握り締めているのか白くなっていく。
- 460 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:28
-
- 461 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:29
- 「麻琴ちゃん?」
吉澤の様子を見に来た石川。
「石川さん…」
心配と悲しみで疲れきった顔をしている小川。
「吉澤さんの様子は?」
小川はそのままの状態で首を横に振る。
「そう。」
「元気だったんです、すごく。朝とかも、いつも通りだったし。」小川の途切れ途切れの言葉。
泣いてしまっているのか石川からは表情が見えないため判断はできない。
「麻琴ちゃん。吉澤さんは、大丈夫。きっと最近の疲れが一度に出ただけ。」
そう言って小川の頭を撫でるが、言っている石川自身、これは慰めに過ぎないことは分かっていた。
吉澤は元気だったのだ。
それなのに、あの爆破を境に倒れてしまったようなもの。
原因は爆破に由来していると考えずにはおれない。
「はい。」小川は振り返り、無理やりに笑顔を作る。
「吉澤さんのことは、私に任せて、石川さんは、捜査頑張ってください!!!」
無理やりに作った笑顔が痛々しいが、石川もここは笑顔を作りうなづいて吉澤の元を後にする。
- 462 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:29
-
- 463 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:29
- 小川が心配そうに見ている中で吉澤は少しだけ体を動かす。
眉間には皺が寄ったままだが、意識は取り戻したように見えた。
「吉澤さぁーーん!!!」まさに泣きつくといった様子の小川。
「んあ…。吉澤さん?あー、よしこのこと?」吉澤は頭を抱えながら、上体を起こす。
「へ?よしこ??」小川はすっとんきょんな声を出す。
「ってことは、君が小川ちゃんかぁ。」
「小川ちゃん!?吉澤さん、どうしたって言うんですか!?」
吉澤はゆっくりベッドから立ち上がる。
「さぁー、どうしちゃったんだろうね?」ニッコリ微笑む吉澤なのだが、目は笑ってなく、まるでガラス玉のように見える。
「…吉澤さん?大丈夫なんですか…?」
不安そうな顔を隠せない小川。
吉澤は軽く首をかしげる。
「寝てるんじゃない?」そう嘲笑うように言い部屋を出て行ってしまう。
「ど、どこに行くんですか!?まだ寝てなきゃ…」
しかし、小川はそれ以上言葉を繋ぐことはできない。吉澤の目に小川は映っていない。
- 464 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:29
-
- 465 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:29
- 「保田さん、爆発の原因がわかりました。」
保田の近くでパソコンを睨んでいた刑事が一枚の資料を保田に手渡す。
「なに?」
「市販されているものではなく、犯人が作成したものです。それがものすごい出来らしく詳しい物質とかは今は判断できないと」
「有毒ガスとかは?」
「それは反応がないみたいです」
保田は何度もうなづく。間接的な被害の報告はまだ来てないにしても、吉澤が気にかかっていたのだ。
「それじゃあ、化学に詳しい人間を集中的に絞っていきましょう」
保田の合図で署内の人間が動き始める。
- 466 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
-
- 467 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
- 「あれ?おまえ、傷ついちゃってるの?」
吉澤の前には、蝶がもがくように地面を這っている。
「助けてあげるよ」
吉澤はそう微笑み、蝶を踏み潰す。
「生にしがみつくのは、みっともないよ。」
吉澤のスニーカーのわきから流れる黒い液体。
吉澤は口笛を吹きながら、軽快した足取りで歩いていく。
- 468 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
-
- 469 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
- 騒がしく人が動き回る部署にゆっくりと体を揺らしながら吉澤が入ってくる。
「吉澤さん、具合は大丈夫なの?」
眉を八の字にして石川が吉澤の走り寄る。
「あれ?梨華ちゃん、久しぶりだね〜。まだ、よしこの事、追っかけてるんだ?」
見下すような視線。
吉澤と石川の身長差では、このような視線になることは仕方のないことなのだが、普段の吉澤であれば視線を合わしている。
「え…?」言い知れぬ違和感が石川を襲う。
「んあ!圭ちゃん、はっけ〜ん♪」
保田がゆっくりと立ち上がり、石川の前に立つ。
「後藤…?」
「さっすが、圭ちゃん。すぐに分かってくれた♪」吉澤は目を細める。
- 470 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
-
- 471 名前:sun 投稿日:2004/03/28(日) 22:31
-
- 472 名前:extra 投稿日:2004/03/28(日) 22:32
- ん〜、文章が本当に下手ですね。鬱になる…。
次の更新では、もう少し上手く書けるように努力いたします。
よろしくお願いします。
- 473 名前:ガイ 投稿日:2004/03/29(月) 00:16
- 最初から読んでいましたが、初めて書き込みします!
この小説、ホントハマってしまいました。
独特の世界観がとてもすばらしいです!
毎日覗くのが日課になりつつあります(笑)
続きも期待してますので、頑張って下さいね。
- 474 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/03/29(月) 01:39
- 初めまして。すっごいおもしろいですね。
2人はもちろんですが、マコのポジションがいっそうひ〜ちゃんを引き立てていいです。こんこんはまた出てくるんでしょうか?
次回も楽しみです。
- 475 名前:プリン 投稿日:2004/03/29(月) 12:50
- 更新お疲れさまです!
告白キタ━(゚∀゚)━!!だなんてw
大好きですから、頑張ってください。
いやぁ。この先どうなるかなぁ・・・w
ドキドキハラハラです。
次回の更新待ってます!
頑張ってくださぁ〜い♪
- 476 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 14:58
- …最後の圭ちゃんのセリフ
もう頭の中で「????」ばっかりです。
更新待ってます。頑張って下さい。
- 477 名前:85 投稿日:2004/03/29(月) 17:24
- 更新、お疲れ様です。
ん〜、今回は今まで以上にまったく先が読めない展開です。
それぞれの過去はやっぱり複雑な何かがありそうですね。
小川助手もてんてこまいですねぇw
それと、もしやリクに応えて下さいましたか?嬉しいです。
ドキドキハラハラしつつ、続きをお待ちしてます。
- 478 名前:extra 投稿日:2004/03/29(月) 19:14
- >ガイさん
初めましてです!書き込みありがとうございます。すごく嬉しく思っています。
もう自分の世界に走りすぎな気もあるのですが、そう言っていただくとかなり嬉しいです!
しかも、日課になってるとは!w
ガイさんの大切な時間を使ってみていただけるなんて、涙が出てくるほど嬉しいです!w
これからも頑張りますので、また書き込みしてってください!
励みになりますので!
>ヨッスィのタマゴさん
初めまして!
おもしろいと言ってもらえてすごく嬉しいです!
まだまだ足りない部分がたくさんありますが、一層楽しんでいただけるように努力いたしたいと思っています。
小川さんについてですが、いつもあんな登場の仕方で申し訳ない気持ちも半分ありますね。w
こんこんは、どうなんでしょうか?リクエストであれば書きますよ〜!
>プリンさん
お!?大好きだなんて。w
小説がですね。w
extraとしましても、収まりつくのかハラハラドキドキであります。w
まぁ、首を長くしてお待ちください。
>476の名無し飼育さん
伏線を引きすぎたせいですね。
徐々に明るみになっていくとは思いますので、しばらく…。
更新、楽しみにしていてくれてありがとうございます。
応援がかなり励みですよー!!!本当にありがとうございます。
>85さん
そうですね、今回はいつも以上に話をつめすぎたかなっと思っています。
ですが、もう時期すっきりさせなくてはと思っていますので。少々お待ちを。
えぇ、今回は松浦さんを絡ませてみました。w
では、これ以上語るとネタバレになりかねませんので、あとは本編で…。
たくさんのレス、本当にありがとうございます。
もう開いてみてびっくり、涙ちょちょぎれのextraであります!w
そして小川さんの人気の高さにはちょっと予想外です!w
こんなところで、本日の更新です。
- 479 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:15
-
- 480 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:16
-
- 481 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:16
- 「後藤、久しぶりね。」保田は吉澤にソファを勧める。
「んあ、久しぶり♪いやぁ、圭ちゃんが変わってなくて、ごとーは嬉しいよ」
目を細める吉澤。
石川は何がどうなっているのか全く理解ができない。
ただ、吉澤の様子がおかしい。
「まさか再会をするなんて思ってもみなかったわよ。」
「ごとーも。しかも、楽しそうな事も起こってるみたいだし♪」
吉澤はあごで保田の後ろにあるテレビを指す。
「でも、残念だねー。今回はよしこは協力してくれないよ?だって、ごとーのよしこだもん」
吉澤は片眉を上げ、口元を歪ませる。
保田は小さく息を吐く。
保田がため息をしたことに吉澤は嬉しそうに笑い膝をポンっと叩いて立ち上がり、グッと保田の眼前まで行き、ヒラヒラと手を振る。
「じゃあね。また遊びに来るね。」
そして、ゆっくりと振り返り、吉澤は軽く石川の肩を叩き、耳元で囁く。
「せっかく、忘れられるようにこっぴどくフッてあげたのに。」
- 482 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:16
-
- 483 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:16
- 少女は日記を片手に地図を広げる。
「次はどこだっけ…?」
日記を指で辿り、ある一定の場所で止まる。
「うん、新宿だ」
広げた地図の新宿駅の部分に大きくバツをつける。
- 484 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:16
-
- 485 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:17
- 「保田さん、一体どうゆう…?」
「吉澤のもう1つの人格よ。後藤真希。冷酷にして残酷。」
保田は吉澤が出て行ったドアを睨んだまま。
「後藤真希…。」
「石川、今は捜査に集中しなさい!」保田は厳しい視線で石川を見る。
石川は戸惑いを覚えながらも、深くうなづく。
- 486 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:17
-
- 487 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:17
- チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ
「待っててね。美貴が綺麗な世界にしてあげる。亜弥ちゃんがいつも笑っていられるような世界にしてあげる」
チッチッチッチッチッチッチッチッチッ・・・・・
- 488 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:17
-
- 489 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:18
- 「石川、爆弾犯のプロファイルは分かる?」
「えっと、男性が多いです。それから、今回は私たち警察に強く恨みを持っていると思います。それから、それなりの知識がないとあの程度の爆弾を作ることは不可能。」
「そうね。ただ警察に恨みを持っている奴なんて山ほどいるわ。」
「…はい」
保田はデスクを爪で小刻みに叩く。
「保田さん!!例の封書が!!」息を荒げながら封書を手渡される。
- 490 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:18
-
- 491 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:18
- 怠慢な警察一同様
たくさんの涙を知ればいい
MgCdLaRhOBeN
GeN
- 492 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:18
-
- 493 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:18
-
「ただいま〜」
「吉澤さん!!」眉を下げた小川。
「だから、よしこじゃないって。」小川の頭を2〜3度叩く。
「…じゃあ、誰なんですか…?」
「よしこの片割れ。ねぇ?そんなことよりもさ、ごとー、お腹減っちゃった。なんか作ってよ」
吉澤はソファに横たわる。
小川は混乱してしまう。行動はいつもの吉澤と変わりはない。でも、目に全く精気がない。
ただボーっと立ったままの小川。
「ね?お腹すいたって言ってるの。」
ギッと小川を睨む。
「…はい。」
小川は問い詰めたい気持ちを抑え、キッチンへ消えていく。
- 494 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:19
-
- 495 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:19
- 「保田さん、また英語の羅列が。」
「これを解読できれば、犯人を絞りこむことも簡単なのに。」
「確かに。そうは思いますけど、解読が。」
保田はアルファベットとひらがなをあてはめていく。
「Aをあ、Bをい。基本的な暗号解読じゃないかしら?」
「でも、アルファベットは26字しかないんですよ?」
保田は石川を無視し、書き出していく。
「す き う え し あ つ く そ い お せ」
「余計に暗号になっちゃったじゃないですか…」
力ない石川の声
保田はボールペンを自身の眉間につける。
「こうゆうのは苦手よ。」
- 496 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:19
-
- 497 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:21
- コンコン
「なに?」ぶっきらぼうな声で藤本はノックに返事をする。
「美貴ちゃん、明日は…」困ったような表情を浮かべる母親。
「分かってる。明日は行くよ」
美貴の返事に母親は大きく安堵の息をつく。
「良かった。亜弥ちゃん、もう一周忌なのよね…。亜弥ちゃんのご両親がね、美貴ちゃんに会いたいって。ほら、告別式もお通夜も美貴ちゃん行かないから」
藤本はゆっくり振り返り、母を睨みつける。
「分かってるって美貴言ったよね?行くって美貴言ったよね?」
「そうね。美貴ちゃんはちゃんと行くわよね」
母親の力ない声に藤本は立ち上がる。
「うるさいんだよ。出てけ。」
- 498 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:21
-
- 499 名前:sun 投稿日:2004/03/29(月) 19:21
-
- 500 名前:extra 投稿日:2004/03/29(月) 19:22
- 更新終了。
毎回、短くて本当にすいません
- 501 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 19:44
- 吉澤さんにもそんな秘密が…
短いなんてとんでもないっす。
毎回楽しみにしてます。
- 502 名前:ガイ 投稿日:2004/03/30(火) 01:05
- ホント短いだなんて・・・
毎日更新しているのですから凄いと思いますよ。
何だか段々物語が深く進行してますね。
この先もかなり楽しみにしております。
- 503 名前:extra 投稿日:2004/03/30(火) 06:52
- >501の名無し飼育さん
良かった。
今、ちょっと考えてる点がありまして、短いながらマメに更新とまとめて更新とどちらがよろしでしょうか?
楽しみにしていただき嬉しいです。これからも応えられるように頑張ります!
>ガイさん
おはようございます。
深く進行しているのか、いないのか作者自身困惑している点もありますが、楽しんでいただければ幸いです。
この先はどうなるのか、よろしければ、話と一緒に暗号の解読にも挑戦してくださいませ。w
それでは、朝早くから失礼して、更新をさせていただきます。
- 504 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:52
-
- 505 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:53
-
- 506 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:53
- 「うわっ!!」
キッチンから聞こえてくる小川の声に吉澤は立ち上がりキッチンを覗く。
「どうした〜?」
キッチンに充満する髪を焼いたしまった時のなんとも言えない嫌な臭いに吉澤は顔をしかめる。
「あ、ボーっとしたら髪に火がついちゃって…」
小川は髪を手に取って吉澤に見せる。
眉をしかめて、頭に手をやり、何も言わない吉澤。
「…吉澤さん…?」
「…だから、よしこじゃない…」頭を抑えたまま、吉澤はうずくまってしまう。
「え、え!?どうしたんですか!?」
「痛い…!」
そう小さく呟いたかと思うと吉澤はガバっと立ち上がり、小川の横にある包丁を奪い、自身の腕に刺す。
小川の目の前に飛び散る赤い液体。ぱっくりと開いた赤い肉。
吉澤は黙って自身から流れる血を見つめていたかと思うと、ふっと力が抜け倒れてしまう。
「よ、吉澤さん!!!!!!!」
- 507 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:53
-
- 508 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:53
- 小川の電話でただ事ではない様子を受け、石川は吉澤の事務所に飛び込んでくる。
「石川さん!吉澤さんが、吉澤さんが!!!」
冷静さを失ってしまった小川が石川の腕を持つ。
「麻琴ちゃん、落ち着いて!」
石川は小川の肩を持ち、しっかりと視線を合わせ厳しい声を出す。
小川の体が一瞬ビクっと反応をする。
「吉澤さんはどこにいるの?」
先ほどとは打って変わり穏やかな声を出す石川に小川はキッチンを指差す。
小川をソファに座らせ、石川は1人キッチンへ行く。
腕から血を流し、倒れこんでいる吉澤。
石川はすぐさま自分の着ているシャツを脱ぎ、吉澤の腕に縛りつける。
石川の動作に、吉澤の体が小さく反応をする。
- 509 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:54
-
「ん…」吉澤が腕を抑えながら状態を起こす。
石川は息を飲む。
「いってぇー。何でこんなに腕が痛いんだよ!!って、石川さん?」
「…よ、吉澤さん?」石川の声は自然と震えてしまう。
「はい?よしざーですけど…」
石川は吉澤の首に腕をまわし、抱きつく。
「え?え?石川さん…?」
- 510 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:54
-
- 511 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:54
- 「吉澤さん…?」
石川と並んでキッチンから出てきた吉澤に小川は恐る恐る声をかける。
「何そんな顔してんだよ?」吉澤はいつもの優しい笑みで小川の髪をくしゃくしゃにする。
吉澤の優しい笑みに反応して、小川は目頭が熱くなる
「吉澤さぁぁぁーん」立ち上がり吉澤に抱きつく小川。
「おいおい、お前までどーしたよ?って!!!!」吉澤は小川の頭を持ち思いっきり引き剥がそうとする。
「鼻水が服につくじゃねーかよ!!!小川!今すぐ離れろ!!!」
「あぁぁん!小川ってもっと呼んでくださぁぁい!!!」
「気持ちわるいんだよ!お前はっ!!」
吉澤の長い腕によって、小川は頭を抑えられ、吉澤から引き離される。
頭を抑えながらも、なんとか吉澤に近づこうとジタバタする小川。
- 512 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:54
- 「麻琴ちゃん、吉澤さんを少しだけ借りてもいいかしら?この腕、やっぱり病院で診てもらった方がいいから。」
石川の声にやっと小川は動きを止める。
「そんなにひどいんですか…?」
「しーんぱいすんなっ!!何でもねーよ!しかし、お前もいくらよしざーがムカついたからって刺すなよ?」
吉澤はニヤニヤしながら、小川の頬をピタピタと叩く。
「私が刺したんじゃないですよっ!!」
小川の声に吉澤は軽く肩をすくめて、優しく頭を撫で事務所を出ていく。
「麻琴ちゃん、また連絡するから。」石川は吉澤の後を追うために少しだけ急いで小川に言う。
「石川さんっ!」
玄関のところで石川はゆっくりと振り返る。
「ありがとうございました。」ペコリと頭を下げる小川。
- 513 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:55
-
- 514 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:55
- 「あーまじで痛いし!!!」病院ではなく、警察の医務室で治療を受ける吉澤
「はい!完了!!」石川はパンっと吉澤の腕を叩く。
「いてぇーーー!!!」半分涙目のまま吉澤は石川を睨む。
「泣かないの。」
「何で病院じゃなくて、ここなんだよ。」吉澤は医務室に並ぶ警察関連のものを指差す。
「時間がないの。」
「何の?」吉澤は眉をしかめる。
「犯罪予告が来てるのよ。」
「なるほど。寝ている間に色々あったみたいだね」
吉澤の声に石川は深くうなづく。
- 515 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:55
-
- 516 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:55
- 「あぁー!!全くわかなんないわっ!!」
保田はまだ暗号文と睨みあっていた。
それと平行して、プロファイルから犯人も何人かに絞り込まれていた。
「どうも、保田さん。久しぶりですね。」
吉澤の声に保田は振り返る。
「吉澤、今日は吉澤なのね?」
「はい?よしざーはいつでもよしざーです。」
ニッコリ微笑み、保田の近くまで来て封書を見る。
「容疑者は何人かに絞り込まれてるわ」保田の言葉に吉澤はうなづく。
「石川さん、容疑者って今はどこに?」
吉澤は振り返る。
「取調べ室にいるわ。」
「んじゃ、ちょっくら顔拝んできます」吉澤は封書を置き、石川の肩を叩く。
石川と吉澤が出て行くのを見送りながら、保田は気付く。
「吉澤!その腕はどうしたの?!」
吉澤は振り返り、ヘラっと笑う。
「さぁ?気付いたらこうなってました。」
- 517 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:56
-
- 518 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:56
-
取調べ室は3部屋並んでおり、その中に1人づつ入っている。
まず右端の部屋に吉澤は入っていく。
その中にいるのは、金髪の関西弁の男。
「一番の容疑者。寺田よ。」
「ほう。」石川の話を聞いているのか聞いていないのか吉澤は興味深そうに寺田を見る。
取調べ室の中で寺田は、落ち着きのなく少しだけイライラしているのが分かる。
何度も足を組みなおしたり、髪をかき上げたりしている。
「本人は、犯行を認めてないみたいだね」
「えぇ。全面的に否定をしているわ。ただ爆発がある少し前に渋谷にいたのは事実だし、アリバイを言わない。それに過去に痴漢で逮捕されて、職も家族も失っているの。警察を恨んでいたといてもおかしくない。」
「なーるほどね」
吉澤は腕の傷をさする。
「…痛いの?」
「いや。全然。次の人も見せてもらえる?」
- 519 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:56
-
- 520 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:56
- 全員、見終わったところで吉澤は廊下のソファに腰をおろす。
朝がもうじきやって来るのを外で鳥が伝え合っている。
「よーく、爆弾犯をプロファイルしてるね。」
吉澤はニッコリと石川に微笑みかける。
「どうかしら?」
「まぁ、間違ってはないよ。爆弾犯に男性が多いのも確か、全員逮捕歴があるっていうのもうなづける。ただ年齢の設定が大きく間違っている」
「どうゆう事?」
吉澤は肩を少しだけすくめ、石川が持っているコーヒーを1つだけ受け取る。
「警察に恨みがあるだけであれば、渋谷駅を最初に狙うなんてあり得ないってこと。」
「意味がわからないわ」
「渋谷に固執した思いがなけりゃ爆破の場所に選ばない。間違いなく、よしざーなら霞ヶ関を狙うね。」
「確かにそうかもしれないけど、渋谷は人が多くいるわ。」
「人が多くいればいるほど、目撃される可能性が増える。リスクは大きいよ。その点、霞ヶ関ならばね。」
石川は唇を噛みしめる。
「暗号の解読は?」
「保田さんとあと数名がやっているわ」
吉澤はゆっくりと立ち上がり、保田のいる部屋へと向かう。
「石川さん、時間がないよ」
- 521 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:56
-
- 522 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:57
-
「う…!やめて!!亜弥ちゃん!!!!」
真っ暗な部屋の中で藤本はベッドから起き上がる。
そして、自身の額に触れると、ありえないくらいの汗。
着ていたTシャツも色が変色をしてしまっている。
「またあの夢…。」藤本は枕に顔をうずめる。
肩が大きく揺れ、すすり泣く声。
「いつも助けることができない…。本当にごめん…。ごめん、亜弥ちゃん…」
- 523 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:57
-
- 524 名前:sun 投稿日:2004/03/30(火) 06:57
-
- 525 名前:extra 投稿日:2004/03/30(火) 06:58
- えっと、短いけどマメな更新とまとめての更新。
皆様、どちらがお好みでしょうか?
- 526 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/30(火) 08:03
- 更新乙です!
今、一番楽しみにしている小説なので
私は短くてもマメな更新の方がいいですね。
- 527 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/30(火) 11:37
- おもしろい!
どちらでも、続けてくださればOKです。
- 528 名前:六の目ダイス 投稿日:2004/03/30(火) 12:08
- 更新乙です!
自分的にはマメな更新の方がいいです。
- 529 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/30(火) 13:05
- めっちゃ引き込まれます!
うぉぉ続きが気になる…
- 530 名前:プリン 投稿日:2004/03/30(火) 13:28
- 更新お疲れ様ですw
よっちゃん・・゚・(ノД`)・゚・。
どうなるかと思ったけど、よかったよかったw(何
今回もなんかハラハラドキドキって感じっすw
次回の更新も頑張ってくださいね。
プリンはいつまでも待ちますよぉ〜w
- 531 名前:85 投稿日:2004/03/30(火) 14:25
- 更新、お疲れ様です。
自分はサクサク更新されてるとやっぱり嬉しいです。
量が多いのももちろん嬉しいんですが、少しずつでも前に進んでるのが何より嬉しいですね。
今回もなかなか難事件ですが、石川さんがちょっとずつ変わって来ているような・・
続きが楽しみです。
- 532 名前:ガイ 投稿日:2004/03/31(水) 00:11
- 本日も更新お疲れ様です!
いつもと同様に今日も作者様の世界に引き込まれてしまいました。
私も短くてもマメな更新の方が良いですね。
作者様のペースでまったり続けてください。
続き待ってます。
- 533 名前:extra 投稿日:2004/03/31(水) 04:55
- >526の名無飼育さん
おはようございます!今、一番楽しみにしている小説ですか!?
ありがたい言葉ですね。すごく嬉しいです。
これからもこの小説をよろしくお願いいたします。
>527の名無飼育さん
おはようございます!
いやいや、おもしろいだなんてまた嬉しい言葉を…w
内容に不安はあるのですが、そう言ってもらえると本当に助かるというか、また書こうという気になれます。
ありがとうございます。これからもなにとぞよろしくお願いいたします。
> 六の目ダイスさん
おはようございますと初めまして!ですね!
こんな作品を読んでいただき本当にありがとうございます。
また時間がある時にでも、チラっと覗きに来てください!
- 534 名前:extra 投稿日:2004/03/31(水) 05:03
- >529の名無飼育さん
おはようございます!
引き込まれていただけましたか?嬉しい限りです。
これから先も引き込めて次を楽しみにしていただけるように頑張りますので!
また遊びに来て、足跡残して行ってください。
>プリンさん
おはようございます!
よしざーさんの本質については、今はチラっとと言う感じに触れてみました。
また後で深く書いていこうかな?とも思っています!
待っていただけるという言葉、すごく嬉しいですよー!!
>85さん
おはようございます。
そうですね、石川さんは少しづつ変わってきているかもしれないですね。
まぁ、一緒に何回も事件を乗り越えてきていますので、何か心境の変化でもあったのかもしれないですね。
もう登場人物が暴走している小説で、ほぼ書きなぐり小説ですので、作者にもこの先どうなるのか…w
>ガイさん
おはようございます。
引き込まれていただけましたか?
もう出す度、出す度、不安ばかりの作品です。
これからも付いてきていただけると嬉しいです。
たくさんのレス、本当にありがとうございます。
なにぶん、文で気持ちを伝えるのが苦手なextraです。
上手く言葉が伝わっているか不安な部分がありますが、皆様のレスで本当に次もがんばっちゃお!って気になります。
心からありがとうございます。
んなわけで、しみったれた話は置いておき、本日早朝更新です
- 535 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:03
-
- 536 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:03
-
- 537 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:04
- 「犯人について、分かってることは?」
「化学にかなり精通しているわ。自作の爆発物。警察を要しても、爆発物の特定はまだできていないくらい。」
「…それだけ?」
吉澤の返事に石川は困ったような顔をする。
「封書から指紋とか唾液とかは?」
石川は首を横に振る。
吉澤は肩をすくめ、封書と睨み合う。
- 538 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:04
-
- 539 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:04
- 藤本はゆっくりと立ち上がり、鏡と向かい合う。
「ひでー顔。」
自身の顔を見て、少しだけ笑ってしまう。
「亜弥ちゃんに怒られちゃいそうだ」
藤本はそう小さく言い、洗面台に溜めた水に顔を入れる。
目を閉じている藤本。
水の音が藤本を少しづつ覚醒をさせる。
そして、自身で作り上げた暗闇の中に光を見つけ、ゆっくりと顔を水の中から上げる。
「そう言えば、まだ亜弥ちゃんの声聞いてないなぁ」
- 540 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:04
-
- 541 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:04
- 「保田さん、今、何時ですか?」
封書との空間が短くなっている保田に声をかける。
保田はビクっと体を反応させる。
「ね、寝てなんかないわよ!!!」
「いや、そんな事は聞いてないです。今は何時ですか?」
「あぁ…!えっと、朝の4時よ。」
「始発が動き出すな…。」
吉澤はこぶしを眉間につける。
「え?何?」
吉澤の小さく呟いた声に石川が反応をする。
「保田さん、新宿駅を完全包囲してください」
「は?!」まだ寝ぼけているのか保田の反応は鈍い。
「保田さん、寝ぼけてる場合じゃ…」
「吉澤さん、何?」眉をひそめている石川。
「次は新宿駅だよ。」
吉澤はコンコンと封書を叩く。
- 542 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:05
-
- 543 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:05
- 黒い額縁で囲まれた松浦は、松浦が一番かわいく見える服で、眩いばかりの笑顔。
藤本はそれを目を細め見つめる。
周りの神妙な面持ちとは、正反対の藤本の表情。
周りは藤本を見て見ぬふりをして、流れていく。
「亜弥ちゃん、もう少しだけ待っていてくれる?」
藤本は松浦を見つめながら小さく呟く。
「綺麗な世界に美貴がしてあげるから。」
藤本は目を閉じ、虚空に手を差し出す。
広げた掌を徐々に握り締める。そして目を開ける。
「いってきます」
- 544 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:05
-
- 545 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:06
- 「どうゆう事?」
「暗号が解けたってとこかな?」
吉澤は背もたれに寄りかかり、ギッギッ音を鳴らしながら、体を動かす。
保田がそれにいち早く反応をする。
「吉澤っ!暗号の解読法がわかったのね!?」
「う〜ん、まぁ、簡単な暗号だったしね」吉澤は前髪にフッと息をかけ浮き上がらせる。
「それで…?」石川の表情は硬い。
「暗号解読の説明よりも、まずは新宿駅を包囲してください」
ニッコリと吉澤は微笑み、立ち上がる。
「分かったわ、ただし、今回、吉澤は現場には行かせない。」
保田の言葉に吉澤は目を丸くして保田を見る。
「理由はわかるわよね?」
「さぁ?」
「また、頭痛で倒れられたら困るのよ。」保田は自身のジャケットを取る。
「ふーん。んじゃ、吉澤は警備会社にでも行きますわ」
吉澤は意味深な笑いを浮かべ、ゆったりと歩いていく。
「石川、吉澤を頼むわよ」
石川はうなづき、吉澤の後を追う。
「はぁ、こんな時間に新宿に行くなんて何年ぶりかしら?」
保田はグイっと背を伸ばし、自身の両頬を叩く。
- 546 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:06
-
- 547 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:06
- 電車に揺られながら藤本は目を閉じている。
「ガターンゴトーン」
口元に微笑を少しだけ浮べ楽しそうに口ずさむ。
「亜弥ちゃん、笑ってくれるかなぁ…?」
目を閉じ、藤本の手は虚空を彷徨う。
「まだ、早いか。」何かを抑えたような藤本の声。
車内に無機質なアナウンスが流れ、到着地に着いたことを藤本に伝える。
藤本は目を開け、スーツの人並みに流されるように電車を降りる。
- 548 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:06
-
- 549 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:07
- 吉澤は27台のモニターの前に石川と肩を並べて座る。
「これはなかなか大変だね、石川さん♪」
吉澤はニッコリ笑い、隣でモニターを睨んでいる石川を見る。
「よそ見しないで。」
「いや、無理でしょう。いくらなんでも。」
「あのね!!!」石川が吉澤の方を向き、何かを言いかけた瞬間に吉澤の目は1つのモニターに捕らえられる。
「あら、かわいい子だ。」
「はい?!こんな時に何を言ってるの!?」石川は眉をしかめ、吉澤が微笑を浮かべながら見ているモニターを見る。
喪服で紙袋を持っている少女。
「あの子が着ていると喪服って感じがしないね。」
吉澤は小さく口笛を吹く。
- 550 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:07
- 『吉澤!本当にここなんでしょうね!?』スピーカーから保田の声が入ってくる。
小型マイクを使い、吉澤と石川のいる場所と新宿駅は繋がっている。
「えぇ、多分、そうだと思いますよ」
保田に答えながらも、吉澤は未だに先ほどの少女に目を奪われている。
石川は眉をしかめ、吉澤を睨む。
『あんたね!!多分じゃ困るのよ!!新宿駅にいる半分は警察よ!?』
「それは頼もしい。」
吉澤は片眉を上げ、小さく笑う。
1台のモニターから喪服の少女が消え、数秒後、別のモニターに入ってくる。
「吉澤さんっ!いい加減にして!」石川が吉澤に向かって怒鳴る。
今は多くの人の命がかかっている仕事をしていると言うのに、吉澤の態度はおかしすぎる。
「石川さん、見て。」
怒鳴られているのに、大した反応もなく、石川の肩を叩き、1台のモニターを指差す。
- 551 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:07
-
- 552 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:08
- 藤本は見られているような気配に視線を上げる。
カメラがジーっと藤本を見ていた。
「監視カメラね…」
藤本は、カメラに向かって右手の中指を立てる。
「くたばれ、クズ」
- 553 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:08
-
- 554 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:08
- 「なかなか、威勢がいいと思わない?石川さん」
「…あの子、さっき紙袋持ってなかった…?」石川が画面から目をそらさずに言う。
「そう言えば…。やべっ!!」吉澤が立ち上がる。
「保田さん!!聞こえますか!?」石川がマイクを使い、新宿駅にいる保田に声をかける。
『なによ!?吉澤と喧嘩してのとばっちりは嫌よ!?』
「すぐに南口の改札近くに向かってください!!!」石川の尋常ではない叫ぶような声。
『は?何?』
吉澤は石川の後ろから石川の口を押さえ、マイクを奪う
「犯人が動きました。すぐに向かってください。時間がない。」
- 555 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:08
-
- 556 名前:sun 投稿日:2004/03/31(水) 05:08
-
- 557 名前:extra 投稿日:2004/03/31(水) 05:10
- 以上でこざいます!
更新ペースは今までどおりマイペースという事でよろしくお願いいたします!
さぁて、やっとこの話が動き出した!気がする…
- 558 名前:プリン 投稿日:2004/03/31(水) 12:39
- 更新お疲れ様です!
毎日更新されてるのですごく嬉しいですw
おぉ!かなり話が動き出したぁw
続きがかなり楽しみだぁ♪
次回の更新頑張ってください。
(○^〜^)<Myペース♪Myペース♪
- 559 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:52
- 初めまして!毎回楽しみに読ませてもらってます。新しい感じの話ですね!石川さんと吉澤さんの微妙な絡みがいいです!どうやったらあんなふうに書けるんですかって突っ込んどきます。
それでは、更新頑張って下さいね!
- 560 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/31(水) 13:00
- 初めまして。
暗号を解いてみたので報告に参りました。
と、言っても一ヶ所分からない点もあるんですが・・・。
メル欄の方に暗号でこの作品の感想を述べときますw
これからもがんがってください。
- 561 名前:85 投稿日:2004/03/31(水) 13:53
- 更新、お疲れ様です。
今回のこの人、結構最近気になってる人なので嬉しいです。
ハマってるなぁ、この設定は・・
自分も今、ようやく解読出来ました(メール欄合ってるかな?)
頭痛かったですw
どうぞマイペースで進めて下さいね。
- 562 名前:ガイ 投稿日:2004/04/01(木) 00:27
- ど〜も!
更新お疲れ様です。
今日もばっちりハマってしまいました。
話が動き出したと言うことで、私の期待は膨らむばかりです。
では、続き待ってまぁ〜す!
- 563 名前:extra 投稿日:2004/04/01(木) 13:28
- >プリンさん
いやぁ、やっとですよ!よしざーさんが化けてしまうから話が横道にそれてしまったり…。w
なんとか、本筋に戻れましたので、よしざーさんではなく藤本さんをお楽しみください。w
>559の名無飼育さん
初めまして!レスありがとうございます!読んでいてもらえてすごく嬉しいです。
突っ込みいただきました!w
いや、作者自身、ここまで続くとは思ってもみなかったんです。
だから、毎回の更新のたびに短編な勢いで書いています。w
これからも時間があれば、足跡残していってくださいね!
>名も無き読者さん
初めまして!
正解です!多分、一箇所分からない点はこちらのミスかと思います(汗)
本当に申し訳ない限りです。
あ!感想かなり嬉しかったです。また遊びに来てください!
>85さん
ハマってますか?w
それは嬉しいですね。ファンの方には失礼極まりないキャラ設定かもしれないのですが…w
それから解読正解です!!頭痛くしてしまってすいません。w
はい、これからもマイペースでいきますのでよろしくお願いします!
>ガイさん
ガイさんの期待を裏切らないといいのですが…。(汗)
これからもハマっていただけるようなものを書くように努力しますね!
若干、二日酔い気味のextraであります。誤字脱字がありましたら、突っ込んでください!
川VvV)/ <確認してから更新しろよっ!
ってなわけで、本日の更新です。
- 564 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:29
-
- 565 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:29
-
- 566 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:29
- 『着いたわ!どこに向かえばいいの!?』
保田は南口に着き、周りを見渡す。どこを取っても今は怪しくとしか映らない。
「落ち着いて、石川さん。まだ時間はある」吉澤は石川の口を押さえていた手を緩め、耳元で囁く。
ユルユルと力なく座り込む石川。
そんな石川に吉澤は肩を叩くと、我に返ったように目をしっかりとし、モニターの前に座る。
「保田さん、ゴミ箱とトイレを集中的に探してください」
『分かったわ』
「それから見つかったら、すぐに電源を落として。」
『電源!?そんなの私に分かるわけないでしょ!?』
「犯人が近くにいるって事は、時限爆弾です。赤い線と青い線が後ろを開ければ見えると思います。」
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ!』
「保田さんも落ち着いて。いいですか?その線の奥に白か黄色の線があります。それを先に切ってください。』
『白か黄色ね!!』
「えぇ。保田さんに賭けますよ。保田さんがよしざーを現場に入れてくれなかったんですからね」
吉澤はわざと明るく声を出す。
『プレッシャーかけるんじゃないわよ!』
- 567 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:29
-
- 568 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:29
- 石川はモニターで喪服の少女を探す。
「石川さん、少しは落ち着いた?」吉澤はニッコリと笑い、後ろから石川の顔を覗き込む
「邪魔しないで。」石川は27台のモニターを1つづつ切り替えていく。
「あの子は、あそこ。」吉澤が指をさす。
まだ東口に向かい歩いている少女が映し出される。
「まだ駅構内にいるって事は、時間がある。」
吉澤はそう笑い、椅子に腰をおろす。
「ねぇ…」石川はモニターを見たまま声を出す。
「んー?」
「さっき、あの子は何て言ったの?」
吉澤は違うモニターを無作為に変える。
「『くたばれ、クズ』」
石川はハッとなり、眉を八の字にしたまま吉澤の方を向く。
吉澤は火をつけてないタバコを口に咥え、片眉を上げる。
- 569 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:30
-
- 570 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:30
- 『吉澤!トイレで見つかったわ!』保田の嬉しそうな声がスピーカーから響く。
吉澤は眉を八の字にしている石川に向かって、肩をすくめる。
「保田さん、ご苦労さまです。それで電源は?」
『完璧よ!私って天才かもしれないわね!線を切った途端に動きを止めたわ!』
「保田さん、凄いですね!」保田の嬉しそうな声につられたか、石川も先ほどとは違う声になる。
そんな石川を見ながら吉澤はタバコに火をつける。
『それから、爆弾と一緒にメッセージも入っていたわ』
「どんなのですか?」石川がスピーカーの音量を少しだけ上げる。
『『ばいばーい』よ』
吉澤の手からタバコが落ちる。
「ちょっと!吉澤さんっ、危ないでしょ!?」石川がそれを拾おうとする。
- 571 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:30
- 「やられた…」
「え?何?」
石川が不思議そうに吉澤は見上げた瞬間にスピーカーから響く爆発音。悲鳴。
「トラップだったんだ…」
一部のモニターは、砂嵐に変わる。
- 572 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:31
-
- 573 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:31
- 「バイバーイ」
藤本は手を上げ、タクシーに乗り込む。
- 574 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:31
-
- 575 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:31
- 『吉澤!石川!聞こえる!?』
爆発音の後に保田の声が入る。
「大丈夫です。保田さんは?」
『私は大丈夫よ。今の音は何!?』
「保田さん、落ち着いて聞いてください。」吉澤はゆっくりと話す。
『早く言いなさい!』
「東口で爆発です」
- 576 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:31
-
- 577 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:32
- 石川は吉澤と保田のやり取りを聞きながら、ただ砂嵐のモニターを見ていた。
砂嵐だったモニターに突如として、人の首だけが映り込む。
見開いた目から血を流し、口は大きく開いている。
頭皮が爆発の熱によって溶け、髪が皮膚にへばりついて垂れ下がっている。
「イヤーーー!!!!」
- 578 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:32
-
- 579 名前:sun 投稿日:2004/04/01(木) 13:32
-
- 580 名前:extra 投稿日:2004/04/01(木) 13:32
- 短いですが、本日はこの辺で…
- 581 名前:プリン 投稿日:2004/04/01(木) 16:07
- 更新お疲れ様です!
おぉ!すごい展開だぁ!
ドキドキだなぁ・・・w
激しく続きが気になりますっ!!!!
次回の更新待ってます!
楽しみだなぁ〜♪
- 582 名前:ガイ 投稿日:2004/04/02(金) 00:45
- 本日もお疲れ様でした。
いや〜、もうホント毎日がわくわくでたまりません!
そして今日はエイプリルフール・・・、朝からまんまと騙されてしまいました。
と私の馬鹿話は置いといて(笑)
次回もじっくり待ってます!
- 583 名前:85 投稿日:2004/04/02(金) 00:59
- 更新、お疲れ様です。
う〜ん、こう来ますか・・
一筋縄ではいかなそうなところもリアルに被っているようなw
この人の過去もまた闇がありそうですね。
そして、髪の毛チリチリの小川助手が出ないと寂しく感じてしまう自分がいますw
まったりと続きをお待ちしています。
- 584 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/02(金) 11:20
- 更新お疲れ様であります。
まさか・・・とは。
意表を付かれました。
続きも楽しみですw
- 585 名前:extra 投稿日:2004/04/02(金) 16:47
- >プリンさん
いやぁ、激しく期待ですか?w
嬉しい限りです。この先も予想できる展開を裏切り続けられるようにします!
って、悪い裏切り方じゃないといいのですが…。w
>ガイさん
そう言えば、エイプリルフールでしたね!
私もまんまと騙されました。w
良かったら、教えてください!!w
>85さん
お!?予想裏切ることできましたでしょうか?w
もし、できたのであれば嬉しいです。
小川さんは、今頃はよしざーさん復活に安心して、お茶を飲んでいるかちらしを作っていると思います。w
ぶっちゃけ、一番書きやすい小川さん。
他はどうもクセを作りすぎて…w
>名も無き読者さん
暗号解けたみたいですね!
楽しんでいただければ幸いです。
続きを楽しみにしてくださってありがとうございます!期待裏切らないように、予想裏切れるようにがんがります!!
それでは、本日。
- 586 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:47
-
- 587 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:47
-
- 588 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
- 爆発から数日経っても全てのマスコミは、新宿駅の映像を流し続ける。
血だらけになりながらも、倒れている母と思われる女の横で泣き叫ぶ小さな子供。
体をひきずりながら救助の元へ向かう人たち。
保田は警察署で精気が抜けたようにその光景を見ていた。
- 589 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
-
- 590 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
- 「保田さん、犯人は特定できました。すぐに動きましょう。」吉澤は保田の頬を軽く叩く
「そ、そうね…」保田の目にはまだ力がない。
「保田さん…」石川はただそんな保田に声をかけることもできない。
「ダメだ。石川さん、先に行こう」吉澤は石川の腕を持ち、歩き出す。
- 591 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
-
- 592 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
- ビデオに映し出された少女から割り出した住所へ向かう吉澤と石川。
「…ねぇ?」助手席に座った石川が自身の手を見つめながら吉澤に声をかける。
「はい?」
「私たちのミスよね…?」
石川の脳裏には、火だるまになっている人、体中にガラスが刺さっている人が浮かぶ。
そして、耳の奥からは、大勢の人の叫び声、泣き声が未だに聞こえてくる。
「うーん。ある意味では。でもね、石川さん。暗号には新宿駅としか書いてなかった。2つの爆弾を仕掛けてくるなんて、誰にも予想できなかったことだよ。」
「でも…」
「石川さん、半分の命は救えたんだよ?」
石川はグッと手に力が入る。
吉澤はその様子をただ横目で一瞬見ただけで、それ以上は何も言わなかった。
- 593 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:48
-
- 594 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
- 「それから、もう1つ。」石川は顔を上げ、今度はしっかりと吉澤を見る。
「なに?」ちょうど信号が赤に変わり、吉澤もきちんと石川の方を向く。
「…吉澤さん。どこに向かってるの?このまま行くと埼玉なんだけど…」
「うへっ!?」
「向かうのは、港区よね…?」
吉澤は鑑識に貰った住所を確認して、小さくうなづく。
「この!方向音痴!!!」
「…すいません」吉澤は背中を丸め、小さくなる。
「どうしたら港区目指してて、埼玉方面に走れるわけ!?」
「…才能かな?」
「運転、代わりなさい」
「…はい」
- 595 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
-
- 596 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
- 「亜弥ちゃん、あと少しで終わりそうだよ」
藤本は自分のベッドに喪服のまま寝そべり、左手の甲を顔の上に乗せる。
そして、右手で自身の右隣にあるはずの愛しいぬくもりを探す。
「亜弥ちゃん…」
藤本の声は震えていた。
- 597 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
-
- 598 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
- 予定よりも大幅に遅れ、石川と吉澤は目指していた家に着く。
「平凡ながらも楽しい我が家って感じかな?」
吉澤は車から降り、『藤本』と表札のついた家を見上げる。
石川は吉澤の背中を強く叩く。
「このロスに逃走されてるかもしれないのに、余裕の発言ね。」
軽く吉澤を睨む石川。
「逃げやしないよ。」
吉澤は小さく笑い、インターフォンを押す。
- 599 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:49
-
- 600 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:50
-
「はい?」出てきたのは、気の良さそうな中年の女性。
「こんにちわ」
「こんちわー」
硬い表情の石川と笑顔の吉澤。
「どなた様ですか…?」
一瞬にして、顔が険しくなる中年の女性。
「えっと、私たち、け…」言いかけた石川の口を吉澤は手でふさぐ。
「美貴ちゃんの友達なんです!最近、元気ないなぁーって思ってたんで、様子見に来たんですけど、います?」
ニッコリ微笑む吉澤。
しかし、未だに中年の女性の表情は険しい。
「美貴ちゃんの友達ですか…?」
「えぇ!そりゃ、仲良し3人組ってくらいで!ね?美貴ちゃん」
いつの間にか中年の女性の後ろに立っている藤本。
- 601 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:50
- 「お母さん、それ美貴の友達のあゆみとりさ」
藤本の言葉に吉澤は一瞬だけ目を細める。
「自己紹介遅れました!あゆみでーす」ピースサインの吉澤。
石川は眉をしかめたまま、吉澤を見る。
「ほら、りさちゃんも挨拶して!」
吉澤は微笑んだまま、肘で石川をつつく。
「…りさです。初めまして。」
石川が挨拶をすると、吉澤は笑いをこらえているのか手の甲を口につけ、横を向く。
「何してるの?上がりなよ、…あゆみちゃんにりさちゃん。」
藤本は表情を一切変えずにそう言って、先に階段を上がっていく。
「んじゃ、お母さん、失礼しまーす!」
笑顔で挨拶をした吉澤。
「…おじゃまします」
石川は腑に落ちないといった顔のまま、藤本の部屋へ向かう。
- 602 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:50
-
- 603 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:51
- 「それで何の用?」
藤本はベッドに腰をおろす。
「おまわりさんなんでしょ?」
「この人はね。よしざーは、違うよ。」吉澤はニッコリと笑う。
「別にあんたがおまわりでも何でも構わないけど、何の用か聞いてるの。」
藤本の目が鋭くなり、石川の背中に冷たいものが走る。
「んじゃ、単刀直入に。警察に恨みでもあるの?」
吉澤は断りもなく、ソファに腰をおろし、藤本と同じ目線になる。
藤本は吉澤の言葉に一瞬目を大きく開いたが、また目を鋭くした。
「本当に単刀直入だね。あんたも立ってないで座れば?」
石川は小さくうなづき、吉澤の隣に腰をかけた。
- 604 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:51
- 「ねぇ?1年前のストーカー事件覚えてる?」
藤本は吉澤と石川の後ろを見ている。
「女子高生の?」
石川の言葉に藤本は小さくうなづく。
「何で助けてくれなかったの?」
藤本の声は興奮を無理やり抑えつけたような声。
「何でって…」
「あの子…亜弥ちゃんは何度も警察に相談に言ってた。それなのに、何で?何で亜弥ちゃんがあんな目にあわなきゃいけないの?!」
「それはさ、警察のシステムってやつかな?」
吉澤は石川を睨んでいる藤本に向かって、わざと軽い声を出す。
「は?システム?あんた、何言ってんの?」
「警察は警察でしかない。それで、君が守ってやることはできなかったわけ?」
藤本は枕を床に叩きつけ、立ち上がる。
「あんたに何が分かる!?」
「分からないから聞いてる。教えてくれるの?」
今にも吉澤の胸倉を掴みそうな藤本。
吉澤は手を差し出して、座るように促す。
「亜弥ちゃんを1人にしたのは、確かに美貴だよ。美貴があの時、ちゃんと亜弥ちゃんが家に入るまで見送れば…」
藤本の手は力の行き場所がなくなってしまい、こぶしにし握り締める。
- 605 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:51
-
- 606 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:52
- 亜弥ちゃんが美貴の前からいなくなってしまった日
亜弥ちゃんにかかってくる非通知も治まって、少しだけ安心してて、亜弥ちゃんの笑顔が美貴の心を暖かくしたんだ。
そう、それだけ。
今、思い出せるのはそれだけ。
でも、美貴、亜弥ちゃんの笑った顔が上手く思い出せないよ。
思い出せるのは、携帯で繋がった亜弥ちゃんの泣き叫ぶ声と男の荒い息遣い。
- 607 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:52
-
- 608 名前:sun 投稿日:2004/04/02(金) 16:52
-
- 609 名前:extra 投稿日:2004/04/02(金) 16:53
- 次回、完結させようかと思っております。
いや、無理かな?とりあえず、完結に向けて頑張ります!!
- 610 名前:六の目ダイス 投稿日:2004/04/02(金) 16:58
- 更新乙です。
とうとう完結!?まつーらさんはストーカー被害にあってたんですね・・・。
- 611 名前:85 投稿日:2004/04/02(金) 18:37
- 更新、お疲れ様です。
>>610
これは内容そのものズバリになってしまってますよぉ。
後から読む方々にネタバレになってしまうので、もう少し間接的な
表現の方がいいのでは・・?何か余計なお世話かもしれないですけど。
本題ですが、はぁ〜、何ともやりきれなさが残りますねぇ・・
3作品とも人間の本質を突いてくる感じで、深く考えてしまいました。
次もまったりとお待ちしています。
- 612 名前:プリン 投稿日:2004/04/02(金) 20:04
- 更新お疲れ様です!
待ってましたぁ!
おぉ・・・次回完結・・・w
ドキドキ・・・w
完結に向けて頑張ってください!
ま、できなくても自分はいつまでも待ちますから♪
頑張ってくださいね!
- 613 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/02(金) 20:38
- 連日更新お疲れ様です。
次回で完結ですか・・・。
ワクワク、ドキドキ・・・。
果たしてどうなるのか!?
指を咥えて次回を見守りますw
- 614 名前:六の目ダイス 投稿日:2004/04/02(金) 20:41
- 作者さん、85さんすみませんでした。
- 615 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/02(金) 21:02
- お久しぶりです!自称ファンの名無しです。
今回の話もかなりツボです。。。
いしよしの過去とか、今回の話ももちろん…
ますますextraさんの小説に魅せられてしまいます(*^^*)
- 616 名前:ガイ 投稿日:2004/04/03(土) 01:16
- こんばんわ!
今日もお疲れ様です!
いいんですか?言っちゃいますよ・・・
相当不謹慎な嘘だったんですけど・・・
辻ちゃんが事件に巻き込まれたっていう嘘でした。
おかげで朝からハラハラしてしまいましたよ。
ホントじゃなくて良かったぁ!
作者さんはどんな嘘をつかれたんですか?
- 617 名前:extra 投稿日:2004/04/03(土) 06:09
- >六の目ダイスさん
いやぁ、気にせんでください!
私の方は大丈夫ですので。また遊びに来てくださいね!
>85さん
これから読む人のことを考えていただきありがとうございます!
ネタバレとかは難しいところですね(汗)
やっぱり人間って悲しいです…w
私の小説で深く考えていただきとても嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
>プリンさん
もう待っててくれるなんて嬉しすぎです(T_T)
もうね、待っててくれる人がいる限り、マイペースでしかも、短くて、行き当たりばったりの小説ですけど
書き続けますよぉ!
>名も無き読者さん
ワクワクドキドキしていただけました?
今回もしていただけると嬉しいです!
また、感想聞かせてくださいね?ダメ出し上等ですので!!略してDD上等!w
>名無し読者さん
お久しぶりです!
元気にしてましたか?今回の話もツボに入ったようでかなり嬉しいです!
魅せられていただけたということで、もう、レスを読んだ時に一人で口ずさんでいました、ジュディオング。w
>ガイさん
それは、朝からソワソワしちゃう騙され方でしたね!
私は、朝から友達の電話で起き、「娘。に合格した!」とのこと!
もう、電話越しに土下座をして、なにとぞ石川さんに会わせてくれ!だの。
21歳で娘。はきつくないか?大学どーすんだ?とマジで話込み、
結果、お前のマネージャーになる!と高らかに宣言をした石ヲタの私でした。w
朝から失礼して更新です!
- 618 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:09
-
- 619 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:09
-
- 620 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:10
- 「あいつは、完全に変態だったのに。それなのに、警察は精神障害で逮捕しなかった。」
藤本は腰をおろし、石川と目を合わせて睨む。
「亜弥ちゃんが、美貴に助けを求めて電話してきたんだ。普通は切るはずなのに、美貴が聞いてるの分かってて、そのままレイプした。」
藤本は携帯を手に取って、目の前でスクロールをする。
藤本の携帯には、「松浦亜弥」の履歴が一件のみ。
- 621 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:10
-
- 622 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:10
- 「まぁ、石川さんを睨んでもね。この人が担当したわけじゃないし。」
吉澤は肩をすくめる。
「へぇ?あんた、知らないんだ?じゃあ、教えてあげるよ。」
藤本は立ち上がり、石川の目の前に立つ。
部屋に広がる緊張感。
「電話越しで亜弥ちゃんが叫ぶのが聞こえたよ。『やめて!助けて。助けて!』ってね」
藤本は口元を歪ませる。
「美貴、頭、真っ白になっちゃってさ。だんだん、男の荒い息も聞こえるわけ。アレしてる時のね」
藤本は左手で石川の頬に触れる。
「で、そのあと、聞こえてきたのが、聞いたことのないような叫び声。なにあれ?って感じ。」
藤本の手は冷たいのに、石川はその部分が火傷をしたように熱く感じる。
「腹を裂かれた時の声って、あんな声なんだね。聞いたことある?」
石川の背中に、汗が流れる。
- 623 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:10
-
- 624 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:10
- 「保田さん、犯人の確保へは?」
「石川が行ったわ。」
保田の視線はまだテレビから離されることはない。
「そうですか」
「あのさ、犯人の子。犯罪履歴はあるの?」
「全くないです。」
「そう。化学の専門家か何かなの?」
「いえ、それも。大学に通っていますので、知識はなくはないとは思うのですが…」
「そう。ありがとう」
保田は下唇を噛みしめる。
- 625 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:11
-
- 626 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:11
- 藤本は、石川の腹部を指でなぞる。
「まっすぐに裂かれてて、そこに精液が入ってんの。意味わかる?」
藤本は嘲笑い、指を手にかえ、石川の腹部を殴る。
「亜弥ちゃんのお腹でヤッてたんだよ」
眉をしかめ、うずくまる石川。
「ねぇ?それであのバカなんて言ったか分かる?」
うずくまる石川の上で手をひらひらと振る。
『あの綺麗な子は、処女のまま死んだんだ。綺麗なまま死ねて幸せだ』
- 627 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:11
-
- 628 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:11
- 腹を裂かれ、腸を引きずりだされ、自身の内部に精液を注がれた少女。
全ての時間が止まったその空間で少女の手の中で携帯だけが生きている。
- 629 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:11
-
- 630 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:12
- 吉澤はスッと立ち上がり、藤本の手を掴み上げる。
「よしざーとしては、どんな理由があろうとも話をしている時の暴力は嫌いだな」
藤本は吉澤を睨み、掴まれた手をふりほどこうとするができない。
「それで、そんなバカを野放しにしている警察に代わって、世界を綺麗にしてくれたってわけだ?」
「亜弥ちゃんのためにだよ、警察の代わりにじゃない。」
吉澤は眉を少しだけ上げ、首をかしげる。
「…藤本さん」
石川の声で吉澤は藤本の手を離す。
石川は殴られた部分を押さえながら立ち上がる。
「そんなことでは、世界は綺麗にはならないわ」
しっかりとした真っ直ぐな視線で藤本を捕らえる。
「別にいい。美貴と亜弥ちゃんだけいればいいから」
藤本は少しだけ微笑み、石川に両手を差し出す。
「逮捕します。」
藤本の手にかけられる銀の錠。
しっかりと繋がったのを確認すると、また藤本は小さく微笑んだ。
- 631 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:12
-
- 632 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:12
- 「石川、お疲れ様。」
署に戻ると保田はそう肩を叩き、藤本を連れていく。
警察署の前には、逮捕を聞きつけた報道が溢れている。
それを石川と吉澤は並んで、上から見ていた。
「あの子は、終わらない悪夢の日々を終わらそうとしてた。」
吉澤が小さく呟く。
「え?何?」
「世界を綺麗にするんじゃなくて、悪夢を終わりにしようとしたんじゃないかなって。」
石川は吉澤の目をしっかりと見る。
「どうして?」
「あの子の携帯をね、見たんだ。そしたら、着信は事件の時のみ。発信は何度もある。特に爆破した時に再三に渡って愛しい彼女の携帯にかけてる」
吉澤は、手に携帯をもっているような仕草。
「確認をしてたのかなって。」
「そう。そうかもしれないわね。」
石川は視線を吉澤から下に移す。
両腕を掴まれ、署から出てきた藤本に降り注ぐ光と声。
顔を隠すかどうか保田が聞いた時に、それを拒んだ藤本はしっかりと前を見ていた。
「やっぱり、あの子は威勢が良くてかっこいいな」
吉澤は興味深そうに声を出す。
- 633 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:12
-
- 634 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:13
- 「行くわよ」
保田の声に藤本は何の反応もしない。
ただ真っ直ぐ前を見ているだけ。
保田は小さく息を吐き、藤本の手を引っ張ると、藤本はそれを振り解く。
そして、着ている喪服のボタンをはずし、口にふくむ。
「ばいばい」
藤本の顔は悲しさと穏やかさの混ざりあっている。
「ちょ!!!」
保田が藤本に手を伸ばそうとした瞬間に「カチッ」と無機質な音が聞こえ、藤本の頭が吹き飛ぶ。
保田の顔をスーツを藤本の紅い血が赤く染めていく。
- 635 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:13
-
- 636 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:13
- 静寂
藤本を捕らえるカメラだけがジーッという音を立てて、
首から上を失った藤本の体は力を無くし、ゆっくりと倒れていく。
- 637 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:13
-
- 638 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:14
- − なんだよ、美貴の血、赤黒いじゃん。ピンクだったら、亜弥ちゃんが喜んでくれそうなのに。
亜弥ちゃん、ごめん。
美貴、亜弥ちゃんのこと、すごく好きなのに、亜弥ちゃんを守れなかったし、亜弥ちゃんのために綺麗な世界にすることもできなかった。
せめて、美貴から飛び散るものがピンクなら良かった。
- 639 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:14
-
- 640 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:14
- 「強引な悪夢の終わらせ方だ…」
口に手をあて、吉澤は呟く。
- 641 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:14
-
- 642 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:14
-
- 643 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:15
- 「これ、ほんまに自分が知らんうちにできた傷なんか?」
中澤が包帯を吉澤の腕に巻く。
「えぇ、でも、全く知らないってわけでもないですけどね。」
吉澤は巻かれていく包帯を目を細め見つめる。
「心当たりはあるんや?」
「えぇ、相棒の意志表示かなって」
中澤は巻かれた包帯を確認して、吉澤の目を見る。
「相棒ね。」
「えぇ。そう言えば、中澤さんの飲み相棒は?」
吉澤は口を綻ばせる。
「大変やったでー。もう、浴びるように飲んでたわ。飲んで忘れなきゃいけないとか大声で叫んでな」
「保田さんらしいですね」
「そやろ?多分、あいつの給料が一晩で飛んでいったわ」
中澤は嬉しそうに笑い、カルテに記入する。
- 644 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:15
- 「石川にちゃんと礼言っておきや。完璧な処置やで。あの子」
「そうですね。言っておきます。気が向けばですけど。」
吉澤は肩をすくめ、笑い立ち上がる。
「相変わらずのひねくれやな」
「お互い様でしょ?」
吉澤の言葉に中澤は目を細め笑う。
吉澤は頭を下げ、診察室から出て行こうとする。
「そや、あんた、暗号解けたんやろ?教えてや!」
吉澤はゆっくり振り返り、虚空を見上げる。
「水兵、リーベ、僕の船ってやつです。」
「七曲、シップスってやつか。えらい懐かしいな」
吉澤は何も応えず、ニッコリ笑い出て行く。
- 645 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:15
-
- 646 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:16
- 「吉澤さん!ひどいです!!」
半べその小川。
はさみを持ったまま苦笑いの吉澤。
「いや。だって、お前からよしざーに頼んだわけじゃん?」
「吉澤さんが、自信満々に上手いとか言うからじゃないですか!?」
「うーん。」
腕を組み、吉澤は首をひねる。
小川は鏡の前で悪戦苦闘。
- 647 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:16
- 「こんにちわ」
石川が手にケーキの箱を持って中に入ってくる
「石川さ〜ん!これ見てくださいよ!!」
小川は振り返ると、石川はつい噴出してしまう。
「石川さんまでひどいですよー!!!」
「小川!」
吉澤の真剣な声に小川は吉澤の方を睨み振り返る。
「今の小川は、金太郎みたいでかわいいぞ!!」
グッと親指を立てて、小川につきつける。
「かわいくないじゃないですか!?」
「えっと、ちびまる子ちゃんみたいでかわいいと思うわ。」
石川が小川の後ろから、小さな声で言う。
「石川さんまで!!かわいくないですよーー!!」
床にうずくまり、泣きじゃくる小川。
目を合わせ、眉を同じように八の字にしている吉澤と石川。
「ケーキでも、食べない…?」石川の遠慮したような声。
「そうだ!ケーキだな!うん、今日は特別によしざーがお茶を入れちゃうぞ!!」
吉澤は腕まくりをして、キッチンに逃げる。
「ちょっ!!私も手伝うわ!!」石川も吉澤の後を追う。
- 648 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:16
-
- 649 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:17
- 「ちょっと、逃げるなんてずるいじゃない!原因は貴方でしょ!?」
石川は吉澤の肩を叩く。
「いや、予定ではトレンディで素敵な髪型になるはずだったんだよ」
「…なってないじゃない」
石川は飽きれたように息を吐く。
「うーん。流行先取りとでも言っておけばいいかな?」
吉澤は手にカップを3つ持ち、石川に向かって差し出す。
「それ、絶対無理。見てみなさいよ」
吉澤と石川は並んで、キッチンから部屋を覗く。
後ろ姿の小川
「ありゃ、完璧に金太郎カットだな…」
「せめて、ちびまる子ちゃんって言いなさいよ…」
2人の声に反応して、小川は顔を上げる。
「2人ともひどいですっ!も〜、これだったら、火に焼けてチリチリのままのが良かったですよ〜!!」
そして、また顔を床につけ、うずくまる。
困り顔の石川と吉澤。
「よし!決めた。このまま逃げよう!」
吉澤は、ガスを止め、上着を掴み、石川の手を取り部屋から走っていく。
「ちょ、ちょっと!!!」
「吉澤さんのバカーーーー!!!!!!!!」
- 650 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:17
-
- 651 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:17
-
- 652 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:18
- TO BE CONTINUED…!?
- 653 名前:sun 投稿日:2004/04/03(土) 06:22
- お粗末さまでしたm(__)m
皆様、良い週末をお過ごしくださいませませ!
あ!それから、最初に暗号解読のレスいただいた名も無き読者様!
リクエストに答えますので、もし、これ見ましたらご一報を!
- 654 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/03(土) 11:10
- 更新お疲れ様です。
え?え?リクエストですか?
暗号解読にそんな特典がついてたとは・・・。
リクエストというとCPのでしょうか?
- 655 名前:85 投稿日:2004/04/03(土) 11:28
- 完結、お疲れ様です。
リクに応えていただいて嬉しかったです。
また気になる終わり方ですねぇw
刹那的で虚無的、本当に思い切りここの世界にはまってしまっています。
ある意味、一番の被害者は保田刑事と小川助手かな?と思ってみたりw
(一家に一人欲しいです、小川助手w)
完結早々、続編を希望してしまうおねだりな読者がここに約1名・・
- 656 名前:プリン 投稿日:2004/04/03(土) 14:25
- 朝から更新お疲れ様でしたぁ。
悲しいよぉ・・゚・(ノД`)・゚・。
なんかもう嵌ってしまって。
抜け出せませんね。うん。
素晴らしい小説だと思いますですw
作者さんももっちろん素晴らしいです!
続編( w゚Д゚)wキボンヌ!!でござるw(マテ
- 657 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/03(土) 23:41
- 更新お疲れさまです。
どんな悲しい事件でもマコのおかげで最後は笑ってしまいます。
しかし、金太郎とは想像しやすくて…
マコと圭ちゃんのキャラが本当にすばらしいです。現実のキャラとあまり変わらないからでしょうか?
- 658 名前:レオナ 投稿日:2004/04/04(日) 16:16
- 完結お疲れ様です。
甘々な、いしよしもいいですけど。
こんな、雰囲気も最高です。
これからも、がんばってください。
- 659 名前:ガイ 投稿日:2004/04/05(月) 00:03
- 更新お疲れ様でした。
お互い娘。ネタでやられましたね。
娘。ネタだとどうしても信じちゃう自分が悲しいっす。。。
あ、完結おめでとうございます。
小川さんの今後も読んでみたかったり・・・
むしろ小川さん視点で!
なんて贅沢言ってすみません。
気が向いたら考えてやって下さいな。
それではまた次回まで
- 660 名前:extra 投稿日:2004/04/05(月) 07:14
- >名も無き読者さん
えぇ!もう何でもいいですよ。「〇〇を主役で」でも、「このCP」ででも。
期待に応えられるようなものを書けないかもしれないですけど、こんな人の小説が見たいでしたら
言ってください。
>85さん
そうですね、小川さんはいつでも無条件に二次被害にあっている気がします。w
なんだかんだ言ってよしざーさんが被害に合うことは少ないですからね。
ハマっていただき嬉しいです。ドンドン嵌っていただけると嬉しいですね。
いや、こんな世界に嵌ったら大変かな…?w
>プリンさん
お褒めいただきありがとうございます!
こんな倒錯して、ファンの人に殺されそうな小説ばかり書いているのに嬉しい限りです(汗)
抜け出さないでいただけると嬉しいですわ!w
>ヨッスィのタマゴさん
そうですね、小川さんと保田さんに関しては、ほとんど何も考えずに書いています。w
金太郎も勢いです。w
小川さんのファンの方に殺されますね(汗)
これからも良かったら読んでください。
>レオナさん
お久しぶりです。
最近、甘いいしよしが書けなくなってしまっています…(汗)
なので、こうゆう雰囲気になってしまいますが、お付き合いいただけてるようで嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
>ガイさん
本当そうですね。もう娘の1次に合格したって聞いただけで、一晩酒を飲み交わしました。
しかも、おごってしまうような私です。w
小川さん視点ですね!シリアスにならないかもしれませんが、小川さんのキャラ的に…。w
お待ちいただけるのであれば書きますよー!!!
- 661 名前:extra 投稿日:2004/04/05(月) 07:16
- そんなわけで本日の更新ですが。「sun」の前の話です。
どちらを先に出すか迷った作品ですが、あとにしてみました。
「sun」の続編ではなく、前編です。よろしくお願いします。
- 662 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:16
-
- 663 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:17
-
- 664 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:17
- 幸せってどんなものなんですか?
どんな形をしていて、どんな色をして、どんな香りなの?
- 665 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:17
-
- 666 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:17
- 「美貴たん、まただよぉ〜」
松浦は眉を八の字にして、携帯のディスプレイを背を向けて寝転がっている藤本に見せる。
ディスプレイを黒く染めている無数の『愛している』の言葉。
藤本は上体を起こし、携帯を手にとる。
「全く、相当暇人だね。」藤本は携帯を睨む。
「最近、なくなってきたと思ってたのになぁ…」
松浦はうつむき、真っ白のシーツをそっと掴む。
「警察に、相談したんでしょ?」
藤本の言葉にうなづく、松浦。
藤本はそっと松浦に手を伸ばす。藤本の長い手が松浦の髪をそっと撫でる。
「美貴たん、くすぐったいよぉ」
松浦は目を細め、藤本の首筋に鼻をつける。
「亜弥ちゃんの匂いがする。」
「美貴たんは、美貴たんの匂いがするよ。あたしの好きな匂い」
- 667 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:17
-
- 668 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
- 愛している 愛している 愛している
愛している 愛している 愛している
愛している 愛している 愛している
アイシテイル アイシテイル アイシテイル
狂うほどに君を愛している
抱き合う2人の横で携帯がひそかに息をし、体を振るわせる。
- 669 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
-
- 670 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
- 「んじゃ!まつーらは帰りまーす!」
松浦は、絡めてある藤本の手から上手く逃げる。
「え?何で?泊まっていけばいいじゃん」
虚空を彷徨う藤本の手。
「だーめ!最近、ママがうるさいんだもん!」
頬を膨らませ、上目使いに藤本を睨む。
「そっか。じゃあ、送るよ。」立ち上がる藤本。
「うん!」
嬉しそうに藤本の腕に松浦は自身の腕を絡ませる。
- 671 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
-
- 672 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
- 部屋を出ようと藤本が歩き出すと、松浦が付いてこない。
振り返ると、携帯を睨み、困惑の表情を浮かべる松浦。
「亜弥ちゃん、どうした?」
藤本が顔を覗きこむと、松浦は慌てて携帯をカバンにしまう。
「何でもなぁーい!早く帰って来いってメール」
作ったような松浦の笑顔。
目の中に浮かぶ動揺に藤本は気付かない。
「不良娘。」藤本は松浦の笑顔につられて、微笑み、松浦の髪を撫でる。
「目つき悪い美貴たんに言われたくないよぉ!」
気付かない藤本にホッとしたのか松浦は、いつもの笑顔で鼻の先を藤本につける。
「目つきは関係ないでしょ!?」
「ほら、悪くなってる!」
松浦は藤本の眉間に指を添える。
- 673 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:18
-
- 674 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:19
- 外に出ると、二人の周りを春の匂いが包む。
「春の匂いするけど、やっぱりまだ寒いね。」
藤本は、自身の腕を手でさする。
「そう?美貴たんは、寒がりなんだから!」
松浦が藤本の背中を叩く。
「痛いって!」
睨む藤本。
松浦は嬉しそうな表情のまま、藤本の頬にキスをする。
「え?何?」
自身の頬を押さえ、目を大きくする藤本。
「美貴たんのホッペがね、あたしの大好きなピンクになってるんだもん!」
ニヒヒと笑う松浦。
「ったく。年上、からかうんじゃないよ」
照れ隠しに睨んでも、松浦は嬉しそうに笑うだけ。
- 675 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:19
-
- 676 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:19
- 「美貴たん、ここでいいよ。」松浦は左手を軽くあげる。
「へ?何で?家まで送るよ」
「寒がりな美貴たんがかわいそうなんだもん!」
「…寒くないし」
「うそつき。鳥肌たってるよ?」
松浦は藤本の腕を指差し、藤本は慌てて腕を隠す。
「美貴たん、だぁーい好きだよ!」
カバっと松浦は藤本に抱きつく。
「うん、知ってる。」
「なにそれぇー?」
笑いながら藤本から離れる。
「じゃあね!美貴たん、また明日☆」
ウィンクをしてみせる松浦に肩をすくめる藤本。
松浦はまたニヒヒと笑い、大きく手を振り歩き出す。
藤本は軽く手をあげる。
松浦の背中が徐々に闇に溶け込んでいく。
「…美貴も亜弥ちゃんが好きだよ」
松浦の背中に向かって、小さな声で呟く藤本。
- 677 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:19
-
- 678 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
- 愛している アイシテイル あいしている
綺麗な君。
かわいい君。
ねぇ?その目に僕を映してくれたら、君は目の中にどんな目をともす?
ねぇ?その口で僕を蔑む?
愛のことばを言ってくれる?
愛している アイシテイル アイシテイル
暗闇の中で1つだけの光。
機械音が辺りを支配する。
- 679 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
-
- 680 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
- 松浦は1人帰る中。不気味な気配を感じていたが、気付かないふりをする。
気付いてしまえば、その恐怖に飲まれてしまう。
カバンから小さな振動が伝わってくるが、それさえも松浦は気付かないふりをしていた。
自身の影を見つめながら、ゆっくりと歩く松浦。
ポータブルMDから流れる場違いな音楽。
怖さを半減するために、松浦は小さく音楽に合わせ歌を歌う。
ゆっくりと着実に松浦に近づいてくる影。
松浦がその影に気付いた時は、もう自身の影と並んだ瞬間だった。
鈍い音が松浦の体に響く。
- 681 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
-
- 682 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
- 部屋に戻ってきた藤本の目に入るハート型のピアス。
「ったく、また忘れ物。」
藤本はそれを手に取り、目の前でユラユラと揺らす。
「本当に亜弥ちゃんはピンクが好きだよね」
まるでピアスが松浦かのように話す藤本。
「…明日、渡せばいいっか。」
ピアスに対して、首を少しだけ傾かせ、ピアスをカバンの中にしまう。
「そろそろ家に着いた頃かなぁ〜?」
藤本はいつものように寝転がり、携帯を手にする。
- 683 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:20
-
- 684 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:21
- 息が出来ないほどの痛みを抱え、松浦はうずくまる。
「どうして、無視するんだよ…」
何かを抑えこんだような男の声。
松浦は、腹を押さえたまま見上げると、顔は月の光によって隠されてしまう。
松浦にジリジリと近づいてくる男。
恐怖に震える体で立ち上がり、走る松浦。
走りながら、手探りで携帯を探す。
「…追いかけっこかい?」男は不気味に笑い、松浦を追う。
- 685 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:21
-
- 686 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:21
- 逃げる、逃げる、逃げる。
綺麗な髪が僕を手招きしている。
逃げないで愛しい人。
僕が抱きしめてあげるから。
追いかける 追いかける 追いかける…
さぁ、手を伸ばし、綺麗な君の髪に触れよう
- 687 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:21
-
- 688 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 07:21
-
- 689 名前:extra 投稿日:2004/04/05(月) 07:22
- ってな、具合です。短い話ですが、お付き合いください。
- 690 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/05(月) 11:38
- おわっ!何やらコワめのお話が・・・。
で、リクエストですか・・・。(←切替早
ではごっちん主役とか言ってみてもよかですか?
ジャンルとかはお任せしますんでw
ていうかmindが気になってしまって。。。(汗
- 691 名前:extra 投稿日:2004/04/05(月) 18:52
- >名も無き読者さん
ごっちん主役ですね!了解いたしました!
どんな形になったとしても許してくだされm(__)m
リクエスト初なのに、私で期待を裏切らないと嬉しいです。(汗)
んなわけで、今日2度目の更新です。
- 692 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:52
-
- 693 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:52
-
- 694 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:52
- 藤本の携帯が震え、藤本は自身が眠りについていた事に気付く。
「あぁ、美貴、いつの間にか寝ちゃってたんだ。」
少しだけ開いた目をこすり、ディスプレイを確認すると予想通りの人
「家に着いたかな?」
藤本はゆっくりと発信のボタンを押し、電話に耳をつける
いまだに顔をうずめてあるシーツからは、微かに松浦の匂いがして、藤本はくすぐったいような気持ちになる。
- 695 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
-
- 696 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
- 「ねぇ?君も僕が好きなんだろう?」
追い詰められた松浦は首を左右に振り続ける。
「恥ずかしがらなくてもいいんだ。どうか、君の心に聞いてみてくれないかな?」
男はそっと松浦に手を伸ばす。
声も出せない状態で松浦は首を振り続ける。
松浦の手の中で携帯が震え続ける。
「ねぇ?携帯鳴ってるよ。出ないの?」
男は松浦の手から携帯を奪い、通話のボタンを押す。
『もしもし、亜弥ちゃん?』
遠くに聞こえる藤本の声。
「呼んでるけど。どうする?」男はニヤっと笑う。
『もしもーし!おーい!!』
- 697 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
-
- 698 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
- 綺麗な君の指に光るものを見つけた。
誰から貰ったの?
僕以外の人に永遠を誓った?
どうして?どうして?
こんなのおかしい、狂っている…
- 699 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
-
- 700 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
- いくら耳をすましていても、藤本の耳に入ってくるのは、雑音のみ。
藤本は携帯のディスプレイを見つめる。
「電波はあるよなぁ?もしもーし!!」
藤本は首をかしげ、携帯を切ろうとする。
『…たん!美貴たん!!!』
尋常ではない松浦の声が藤本に届く。
「亜弥ちゃん!!?」
『ゲームオーバー』男の乾いた声が響く。
「え…!?」
次に藤本の耳に聞こえるのは、鈍い音。そして、松浦の叫び声。
- 701 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
-
- 702 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
- 「ダメだよ。僕以外の名前なんか呼んだらダメ。」
男は微笑みながら松浦に棒を振り下ろす。
悲鳴のような叫びのような声を上げ、倒れる松浦。
鈍い音は永遠に続くかのように、暗闇に響く。
頭から血を流し、気を失い倒れている松浦。
男は松浦の口元に携帯を持っていく。
- 703 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
-
- 704 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
- 「亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!…亜弥!!!!!」
祈るように電話越しに叫ぶ藤本は完全に自分を見失っていた。
藤本の耳に届く、微かな息遣い。
『喋れるわけないっか?その口は僕のためだけにあるんだもの』
嬉しそうな男の声。
『やめて!やだ!!たんっ!美貴たんっ!!』
藤本には松浦の声が遠くに聞こえる。
- 705 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
-
- 706 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:54
- 意識を取り戻した松浦の目に入るのは、月灯りによって光るナイフ。
薄い笑いを浮かべた男。
「やめて!やだ!!たんっ!美貴たんっ!!」
「どうして?どうして、他のやつの名前なんか呼ぶんだ…?」
ナイフの刃とは逆側でそっと松浦の頬を撫でる。
男の顔は、目が潤んでいる。
『亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!!亜弥!!!!どこにいるの!?』
叫ぶような藤本の声。
「…うるさい」
男は松浦の腹を裂く。
- 707 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:55
-
- 708 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:55
- 『ギャーーーーー!!!!!!!!』
「な、何…?」
聞いたことのないような声の質。
松浦の声だと認識するには、藤本の頭の中は混乱してしまっていた。
何か熱いもので胸を締め付けられている感覚が藤本を襲う。
カチャカチャ…
ベルトをはずす音。
藤本は携帯を力いっぱい握る。
「何してんだ!!!やめろ!亜弥ちゃんに触れるな!!!」
- 709 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:55
-
- 710 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:55
- 「ハァハァ…すごい、すごい赤い。綺麗、綺麗だ…」
熱にうなされたような男の声。
松浦は体を裂く痛み、熱に意識が遠くなりながら、その声を聞く。
頬に暖かいものが流れる。
「…ゃだ…。もぅ…やめて…」
絞りだすような松浦の声。
抵抗をしていた手足は今はダランと冷たいアスファルトの上。
『やめろ!やめて!お願いだから!やめて!!!!!』
乞うような藤本の叫び。
「…美貴…た…」
薄れゆく意識の中で藤本の声が松浦に届き、頬に伝う暖かいものはとめどなく溢れていく。
「ここまできて、他のやつの名前呼ぶの?女同士だろ?変だ」
男は松浦の手の中の携帯を奪う。
少しだけ抵抗をする松浦の微かな力。
- 711 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:55
-
- 712 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
- 「…お願いだから…もう本当にお願いだから…」
藤本は顔に手をあて、自身でも分からなくなるほどに混乱をしていた。
『あんた変ですよ、あんた変ですよ、あんた変ですよ、あんた変ですよ あんた変だよ…』
藤本の耳に届く、永遠に続く男の声。
- 713 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
-
- 714 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
- あんた変ですよ、
あんた変ですよ、
あんた変ですよ、
あんた変ですよ
パチン…
- 715 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
-
- 716 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
- 松浦の内部にねじ込まれる異物に、もう反応をしないアスファルトの冷たさを吸収していく松浦の体。
「すごい!すごいよ…すごい綺麗だ…あぁぁぁぁ…」
腰を動かしながら、男はナイフで松浦の光る薬指を切り取る。
鈍い音、骨がくだける音…
松浦と藤本は引き離される。
松浦の横で携帯はまだ息を続け、松浦の何かを伝えようとした口は小さく空間を開けたまま携帯に向かう。
- 717 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:56
-
- 718 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:57
-
次に藤本が気付いた時には、青白い顔をした母親に揺り起こされた時だった。
何かを言いづらそうに、瞳を揺らす母親に藤本は全てを悟る。
母親が何かを言っているのだが、藤本の耳には届かない。
手に握られたハート型のピアスがその力に負けて砕ける。
ふと、藤本が視線を移動させると母親が置いていったのか見覚えのあるピンクの封筒。
「…亜弥ちゃん?」
気だるさが抜けない手を伸ばし、封筒を手に取る。
封筒を開けた藤本の手元に零れ落ちる細く小さな物体。
藤本はゆっくりとそれを手に取る。
- 719 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:57
- ナンダコレ…
コレッテ、キノウ、ミキニフレタモノ ミキガフレタモノ
カランという音を立て、物体から赤く染まってしまい光を失ったリングが落ちる。
- 720 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:57
-
- 721 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:58
- 藤本の中で何かが音をたてる
「あ″ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
藤本は部屋中にあるものを片端から壁に投げつけ、壊していく。
ベッドにかけられているシーツをはぎ、振り回す。
皮肉にも、松浦の匂いが藤本の鼻に届き、藤本は物が壊れバラバラになっている部屋に倒れこむ。
「亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!…」
狂ったように叫び続ける藤本。
- 722 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:58
-
- 723 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:58
- ガラン ガラン ガラン ガラン
- 724 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:59
- 自分が壊れていく音を聞いたことはありますか?
世界が音を立てて壊れていく…
壊れていくのは、世界?それとも、自分自身?
もうどっちだっていい…
- 725 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:59
-
- 726 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:59
-
- 727 名前:mind 投稿日:2004/04/05(月) 18:59
- …end
- 728 名前:extra 投稿日:2004/04/05(月) 19:00
- えっと、「mind」→「sun」という感じです。
「sun」の中で藤本さんについてあまり触れなかったので書いてみました。
- 729 名前:ガイ 投稿日:2004/04/06(火) 00:26
- 更新お疲れ様です。
小川視点を書いてくれるんですか!?
もういつまでも待たせていただきますよ!!
今回は何だかとても悲しい気分になってしまいました・・・
ホント切ないっす・・・(T∧T)
あ、次回も待ってますね〜
- 730 名前:extra 投稿日:2004/04/06(火) 08:41
- >ガイさん
小川視点というか小川主役という感じで勘弁してくださいますでしょうか?
今回は、もう本当に松浦さんのファンに申し訳ないという限りです。
リクエストが松浦さんでしたのに、こんな形になってしまいすいません。
そんなわけで、今回です。
今回は吉澤探偵事務所からは全く関係なく、いちごまで。
初めて書くいちごまですので、痛いと思いますがよろしくお願いします
- 731 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:41
-
- 732 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:41
-
- 733 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:42
- 愛しているなんて言葉が一番信じられない。
そんな言葉は欲しくない。
ただそばにいて私のことを抱いて、抱いて、抱いて。
愛の言葉を私に伝えるために、いちーちゃんの口があるのなら必要はない。
その口は存在は私に数え切れないくらいのキスをすること。
抱いて。
言葉よりも温もりが欲しい。
- 734 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:42
-
- 735 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:42
-
優しい貴方は、いつでも優しい嘘をついた。
私はただそれを信じるふりをし続けた。
欲しいのは、そんな嘘なんかじゃない。
- 736 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:42
- 「さようなら」
引き止めて欲しくて、言った私のウソにいちーちゃんは穏やかにうなづく。
「ごとーがそうしたいのなら、そうすればいいよ。きっとそれが正しいんだと思う」
穏やかな笑みを付けて、いちーちゃんの言葉は私の心をえぐる。
- 737 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:43
- 忘れたくても忘れられないあの笑顔が何度もリフレインする。
1人で街に出かけると突然降りだした雨。
別れた時と同じような雨
街は色とりどりの傘でどんよりとした空とは対照的に鮮やかになっていく。
街行く人たちは、傘で顔を隠すように早足で歩いて行く。
誰がどんな顔をしながら歩いているのか判別つかないくらいなのに、私は気付いてしまう。
大好きだった、追い続けたシャンとした後ろ姿。
- 738 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:43
-
- 739 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:43
- 「いちーちゃん!」思わず声を出していた。
いちーちゃんは私の声に気付き、ゆっくりと振り返る
そして、あの日と変わらぬ笑顔のままゆっくり私に向かって歩いてくる。
「久しぶりだね、ごとー」
傘もささずに、ただいちーちゃんの笑顔に目を奪われていた私にいちーちゃんはそっと私を傘に入れてくれる。
「偶然だね。買い物?」
私との再会にもいちーちゃんは動揺することなく、2人でいた時と変わらぬ優しい話し方。
歩幅が違う私のためにあの時のようにゆっくりと歩いてくれる。
いちーちゃんの右肩が雨に濡れて色濃くなっていく。
そして、私の目に入る。いちーちゃんの左手に光るもの。
- 740 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:44
- 「どこかでお茶でもしようか?」
私は黙って首を振る。普通に声を出そうとしても出なかった。
「そう。あ、雨が上がった?」
いちーちゃんは、光る右手を傘の外に出す。
雲の切れ間からの太陽にいちーちゃんの左手も負けないように輝いている。
私はただ目を細めるしかできなかった。
喉の辺りに熱いものがこみ上げてくる。
- 741 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:45
- 「いちーちゃん、いい恋してるんだ?」
私の質問にいちーちゃんは私を見ないで「うん。まぁ。いい恋かどうかは分からないけど。幸せだよ」
「そう。」
「うん。」
『幸せだよ』と私に正直に言ってくれるいちーちゃんを好きだと思った。
いちーちゃんは、雨が上がったのを確認して、傘を閉じようとする。
「いちーちゃん。」私は閉じようとしているいちーちゃんの手を握る。
「どうしたの?」
「お願い、傘は閉じないで」うつむく私。
こんな顔見られたくなかった。立ち止まったままの情けない私なんて見られたくなかった。
「…うん」
晴れているのに傘を差したままあてもなく歩く私たちはきっと滑稽。
- 742 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:45
-
- 743 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:45
- 「いちーちゃん、バイバイ。」いちーちゃんの方を見ないで走り出す。
いちーちゃんは何も言わない。ううん、いちーちゃんの声は私に聞こえてこない。
- 744 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:45
-
- 745 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:45
- ねぇ?いちーちゃん。
ごとーといちーちゃんは一緒にいて、何かいちーちゃんに与えることができたかな?
いちーちゃんを幸せにすることができたのかな?
何もできなかったかもしれないよね。
わがままばかりで困らせちゃったし。
でも、それでも、ごとーは、…後藤真希は市井紗耶香が大好きでした
- 746 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:46
-
- 747 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:46
- 今日が雨でよかった。
少しだけ貴方の肩が触れた私の部分が熱い。
この熱さに少しだけ見えるはずのない未来を夢見てしまったことを許してくれるかな?
今度また偶然に会う時も雨が降っていたらいい。
突然の雨の突然の再会。
貴方の背中に向かって最後の告白。
- 748 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:46
-
- 749 名前:雨 投稿日:2004/04/06(火) 08:46
-
- 750 名前:extra 投稿日:2004/04/06(火) 08:47
- もうね、本当にすいませんとしか言えません。すいません。
ってなわけで、短いですので、もう1つ。
本編「吉澤探偵事務所」の番外編という事で…
- 751 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:48
-
- 752 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:48
-
- 753 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:48
- 「すいません…」
留守番中の小川の元に届く、頼りなさそうな声。
「うへ?」入り口の方を見ると、小川がバラまいたチラシを手にした女の子。
「もしかして!!!!」小川はダッシュで入り口に近づく。
「え?え?」小川が近づいてくることに少し戸惑う女の子。
「お客さまですかぁぁぁー!?」
鼻と鼻がくっつくくらいで叫ぶ小川。怯える女の子。
- 754 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:48
-
- 755 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:49
- 「あっと、さっきはごめんなさいです。嬉しくて興奮してしまったんです。はい」
小川は丁重にお茶を出す。
いつもは吉澤が寝ころがっているソファの真ん中に申し訳なさそうに小さく座る少女。
「あ、大丈夫です!それでお願いがあって来たんですけど…」
「えぇ!もうなんなりと!!!」
「猫を探して欲しいんです。」悲しそうな顔をして話し始める少女。
「ね、ネコですかぁ…?」
「はい、お願いできませんか…?」乞うような少女の目。
しかし、猫探しでは吉澤に断られるのが目に見えている。
「う〜ん…」腕を組み、小川は首をひねる。
「すごく大事にしてた猫なんです。すごく心配で…」
目にはもう涙が浮かんでいる。
- 756 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:49
- 「引き受けます!!!」
小川は少女の手を握り締める。
「本当ですか!?」
「えっと、その代わり、吉澤さんじゃなくて、私ですけど、いいですか?」
申し訳なさそうに言う小川に少女は本当に嬉しそうに微笑む。
「はい、よろしくお願いします!」
その言葉を待ってましたとばかりに小川は腕まくりをする。
「この小川!責任持って、探し出してみせますっ!!!」
「はい!」
「それで、名前は?」
「亀井絵里です。」
「えっと、絵里ちゃんね。それで毛並みは?」
メモに取っていく小川。
「…えっと。それ、私の名前です…。猫はれいなって名前です…」
「あぁぁ!!本当ですか!?すいません、すいません!本当にすいません!えっと、れいなちゃんですね」
大急ぎで書き直す小川。
困ったような笑みを浮かべる亀井。
- 757 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:49
-
- 758 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:49
- 小川の初仕事が始まる。
- 759 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:49
-
- 760 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:50
- 紺野が事務所に顔を出したとき、小川はなにやら難しい顔をしながら、机とにらめっこをしている。
何かを思いついて、すごく嬉しそうな顔をしたと思ったら、次はものすごく落ち込んでみたりと…。
忙しく百面相を繰り返している。
「麻琴?」
「うわぁぁ!あさ美ちゃん!!どうしたの?」椅子から飛び上がって、驚く小川。
「どうしたのって。少し前に来たんだけど、気付いてくれないんだもん」
「ごめんなさい」素直に頭を下げる小川。
紺野は少しだけ顔を覗かせて、小川が百面相していた相手を見る。
「毛並みは黒。れいなちゃん。赤の首輪に見知らぬ人には警戒心旺盛。でも、度胸はある。ってなにこれ?」
紺野が不思議そうな顔をして、小川を見ると、また今までにないくらいの難しい顔。
- 761 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:50
- 「探し猫なんだけどさ。」
「ふーん、依頼?」
「うん。だけど、どうやって探していいか分かんなくて」小川は難しい顔のままボリボリと肩の辺りを掻く。
「写真とかないの?」
「あるよ。はい。」小川は紙の下に置いてあった写真を紺野に手渡す
「本当に黒猫だね。それで雑種なの?」
「博多猫。」
「は?なにそれ?」
「飼い主さんがそう言うんだもん…」困ったような顔の小川。
紺野は大きく溜め息をつく。
「もうじゃあ、私も手伝うよ。」
紺野の言葉に小川は本当に嬉しそうに笑う。
- 762 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:50
-
- 763 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:51
- 「いい?猫探しをするには、まず猫のことを知らなきゃいけないの」
何度もうなづきながら、真剣に話を聞く小川。
「猫の行動範囲とか知ってる?」
「…知りません」
「…猫の行動範囲は、約500メートルって言われてるの」
「ってことは、亀井ちゃん家の近くにいるって事!?」ガバっと立ち上がる小川。
その腕を抑える紺野。
「い、痛いです、あさ美ちゃん…。」
「人の話は…?」
「最後まで聞きます…」大人しく、椅子に腰をおろす小川。
- 764 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:51
- 「それから、保健所と警察、それから清掃局に電話をしてみて」
「警察に清掃局!?保健所は分かるけど、何で?!」
「麻琴、本当に探す気ある?」紺野の背中からは怒りにも似たオーラ
「は、はい!もちろん、がってん承知!!!」
「警察には遺失物として届出がある場合があるの。それから、清掃局は、事故にあってないかを確認。」
「じ、事故!?」小川の顔から血の気が引いていく。
「ありえなくもないし、もし、確認して届いてなかったら安心もできるでしょ?」紺野はあえて穏やかな口調で話をすすめる。
小川は下を向き、何度かうなづく。
「じゃあ、確認をして、探しに行こう!!!」
小川はこぶしを高くあげ、叫ぶ。
- 765 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:51
-
- 766 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 08:51
-
- 767 名前:extra 投稿日:2004/04/06(火) 08:52
- 更新終了でございます。
短い話になりますが、お付き合いください。ではでは。
- 768 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/06(火) 11:16
- 更新乙でございます。
いちごま・・・切ないねぇ。。。
でも良かったですw
そして小川さん主役、おもしろそうですね〜。
続きも期待してます。
- 769 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/04/06(火) 11:43
- 小川さん面白いですw
亀井ちゃんとか可愛い子だったら吉澤さんも動くかもですよねw
次もがんばってください
- 770 名前:プリン 投稿日:2004/04/06(火) 13:29
- 更新お疲れ様です!
『mind』の方は・・・・゚・(ノД`)・゚・。
悲しくなってきますね・・・
あやや・・美貴たん・・辛かったんだろうね・・・。
亀井ちゃんキタ━(゚∀゚)━!!
嬉しい限りですよ♪ホント♪
これからどうなるかなぁ・・wドキドキw
次回の更新待ってます!
頑張ってくださいね!
- 771 名前:extra 投稿日:2004/04/06(火) 19:53
- >名も無き読者さん
本当にあんな形になってすいませんm(__)m
本編で書こうとも思ったのですが、なんせ本編で後藤さんは…(汗)
良かったと言われ、ホッと一息です。w
>769の名無し飼育さん
小川さんは、本当に書いていても癒し系です。w
次回もよろしくお願いします。w
>プリンさん
テンション下げてしまったみたいですいませんm(__)m
無償にあやみきが書いてみたくて…w
衝動的なものです。
小川さん主役の今回の話も付き合っていただけると嬉しいです
んなわけで、今日はバイトが休みなので2度目の更新
- 772 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:53
-
- 773 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:53
-
- 774 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:54
- 「警察にも清掃局、保健所にも連絡はないっと。」
小川はメモに書いてある文字に赤いペンでバツ印をつけていく。
「麻琴…。その格好はなに…?」
「ほえ?」
「だから、その猫耳と猫の手みたいな手袋は何!?」
紺野は小川の全身を指を指す。
「あぁ、これ!よくね、吉澤さんが言ってるんだ。何かを探す時は、そのものの気持ちを理解しなきゃって!」
自慢そうに猫の手を紺野に見せる。
「吉澤さん…」
こぶしを震わせる紺野に首をかしげる小川。
紺野はキッと顔を上げ、小川の猫グッツを奪う。
「うわッ!あさ美ちゃん、何するの!?」
服はそのままなのに、下手な演技で自分の体を隠す小川。
- 775 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:54
- 「脱がせてないし…。大体、必要ないでしょ!?その格好で歩き回れるわけないでしょ!?」
「なんで?」
純粋に聞き返してくる小川。
溜め息を吐くことしかできない紺野。
「目立つから。猫、驚いて逃げるし…」
「うーん、いいと思ったんだけどなぁ?」
自身の腕をボリボリ掻きながら小川はまた首をかしげる。
「いいから!もう猫がいそうなところに行くよ!」
不思議そうに首をかしげている小川の腕を引っ張り、二人の猫捜索は始まる。
- 776 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:55
-
- 777 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:56
- 「あー!ちくしょー!!負けた!負けたぁー!!!」
パチンコ屋から大声をあげ、出てくる吉澤。
「本当に貴方って人は仕事をしない人なのね…」
後ろからの呆れたような声に吉澤は首を後ろに曲げる。
「石川さんじゃん。」
曲げていた首を元に戻し、今度はきちんと振り返る。
「仕事サボって、パチンコだなんて良い身分ね」
石川はパチンコ屋の方に一瞬顔を向ける。
吉澤は軽く肩をすくめる。
「出稼ぎって言ってよ?仕事がないんです。ところで石川さんはここで何してるの?」
吉澤は胸ポケットからタバコを取り出し、咥える。
「ちょっとね」
「勤務中にパチンコ?」
「そんなわけないでしょ!?」
石川の反応に吉澤は満足そうに目を細め、火をつける。
「ねぇ?石川さん、お金のないよしざーにご飯奢って♪」
- 778 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:56
-
- 779 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:57
- 「亀井ちゃんの家から500Mだとこの辺までだよね?」
小川は地図を見ながら、周りの景色を把握していく。
右手には猫じゃらし、左手に地図の小川は難しそうに顔をしかめる。
「路地とかから探してみよっか?それと何か隅っことか」
紺野の右手にはお徳用バックのにぼし。
「うーん、そうだね。むしゃむしゃ」
紺野の右手からにぼしをつまむ小川。
「って、何食べてるの!?」
「いや、意外に美味しいよ、あさ美ちゃんもどう?」
首を傾け、にぼしを紺野の目の前に差し出す。
「…真面目にやれっ!!」
くの字になる小川の体。
「…了解しやした…」
体をくの字に曲げたまま、紺野にブイサインを出す小川。
- 780 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:57
-
- 781 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:57
- 「あー、美味かった〜!ね?石川さん、ここのベーグルは最高でしょ?」
嬉しそうにお土産ようのベーグルを抱える吉澤。
「…そうね」
財布を覗きこみ、言葉にならない溜め息をつく石川。
「いや〜、ご馳走になった上にお土産まで。本当にありがたや、ありがたや」
ベーグルの入っている袋を掲げて、石川を拝む真似をする吉澤。
「いいの、気にしないで…」
石川は小さく手を上げる。
チリン♪
音につられ足元を見る2人。
- 782 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:58
- 「おー、これは真っ黒だなぁ?!まるで…。w」
「今、何を言おうとしたか当ててみましょうか?吉澤さん♪」
目だけ微笑んでいない石川に、満面の笑顔で返す吉澤。
「いいや。何も言おうとなんてしてません。なぁ?」
足元でゴロゴロ鳴いているものを抱き上げる吉澤。
「ベーグル欲しがってるんじゃないの?」
石川も吉澤の腕の中の猫を覗き込む。
「うーん、真っ黒さん。いくらなんでもそれは無理だよ」
眉をしかめる吉澤。
「それ、どっちに言ってるわけ?」
顔をしかめる石川。
- 783 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:59
-
- 784 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 19:59
- 「いない…」
赤く染まる空を背景に肩を落とす小川。
紺野は小川の肩を2〜3度叩く。
「きっと、テリトリーとは別の場所に行っちゃったのかもしれないね。明日は、範囲広げてみようか?」
紺野の言葉に小さくうなづく小川。
「ほら、これでも食べて元気だして」
紺野は袋いっぱいのにぼしを差し出す。
「あさ美ちゃん、ありがとう。でも、それは食べ飽きちゃったよ…」
小川は深刻そうな悲しそうな顔をして、紺野が差し出した袋を優しく押し返す。
「って、食べてるなよっ!?」
- 785 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:00
-
- 786 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:00
- 「ただいまぁ…」
吉澤の声に小川は顔を上げる。
「もう!どこに行ってたんですか!?って、どうしたんですか?その顔!?」
吉澤の白い頬についた赤い3本の線。
小川の言葉に吉澤は自身の手を頬にあて、少しだけ顔をしかめる。
「やっぱり、目立つ?」
「目立つってもんじゃないですよ!!何があったんですか?」
「石川さんに引っ掻かれた。」
「はぁい!?」
目を大きくする小川。
「ミニの方だけど。」
「はぁ?ミニ石川さんですかぁ?」
小川の言葉に吉澤は深く頷き、冷蔵庫からペットボトルを出す。
- 787 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:00
- 「おーい、小川ー。ちょっとおいでぇー」
キッチンの方から吉澤の甘い声。
小川の脳裏によぎる嫌な予感。悪寒。
「…な、なんですか…?」
おそるおそるキッチンを覗きこむ小川の頬を満面の笑みで思いっきり引っ張る吉澤。
「い、いひゃいへふよ!!」
「なーんで、冷蔵庫がダシの匂いで充満してるんだYO!」
冷蔵庫の中のたくさんのにぼしが香ばしい匂いを放つ。
「ひょれはれすね…!!」
「言い訳無用!!」
思いっきり引っ張られ、離される小川の頬。
「吉澤さん!ひどいですっ!!」
「ダシを出すのは、お前だけで十分だっての!!」
吉澤はミネラルウォーターを片手に自身の部屋に入ってしまう
「…聞きたいことがあったのにぃ…」
小川は赤くなった頬を両手で押さえ、吉澤の部屋のドアを睨む。
- 788 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:01
-
- 789 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:01
- 「麻琴行くよー」
通勤ラッシュで人が押しつぶされそうになっているような時間に紺野は事務所に来る。
「ほえ!もうちょい待ってて!」
小川の声のあった方向を紺野が見てみると、なにやらたくさんバックに詰め込んでいる様子の小川。
「何の荷物?」
不自然に多すぎる荷物を差す紺野。
「んー、猫の遊び道具でしょ?それから猫缶に、猫じゃらし。地図に懐中電灯…」
「分かった。」
長くなりそうな小川の説明を紺野は区切る。
「ほえ?」
「とりあえず、早く行こう?今日は昨日よりも広範囲になるから時間もかかるわけだし。」
眉をひそめる紺野。
「うん、そう思って、おにぎり、あさ美ちゃんの分も作っておいたから!」
両手にこれまた大きいおにぎりを嬉しそうに持つ小川。
- 790 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:01
-
- 791 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:02
- 「おーい、小川ー。コーヒー」
寝ぼけた目のまま、黒のTシャツにグレイのスウェットで寝癖の頭を掻きながら部屋から出てくる吉澤。
「って、おーい!小川ーー!ぴーまこー??」
呼べども、呼べども、いつもの声は吉澤には返ってこない。
「まだ寝てるんかいな!怠け者めっ!」
吉澤は自分のことは棚に上げ、小川の部屋を思いっきり勢いをつけ開ける。
「いつまで惰眠を…っ!!ってあれ??」
勢いをつけ、顔もわざと作り開けた小川の部屋は空っぽ。
「買い物かいな?」
部屋から出て行こうとする吉澤の目に入る小川の机の上にある箇条書きのメモ。
吉澤は大して興味もなさそうにそのメモを取る。
「ほう。なるほど。」
ニンマリと笑い、いそいそと自分の部屋に戻っていく。
「こりゃ、楽しそうだ♪見逃す手はない!!」
- 792 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:02
-
- 793 名前:first 投稿日:2004/04/06(火) 20:03
-
- 794 名前:extra 投稿日:2004/04/06(火) 20:04
- これにて、更新終了です。
- 795 名前:85 投稿日:2004/04/06(火) 21:00
- 更新、お疲れ様です。
暫くご無沙汰の間に、いつの間にかサクサク進んでいて嬉しいです。
どっぷりハマッてますよw
「mind」、せつなくて苦しいですね。
自分のリクなのですが、正直予想以上の内容でした。さすがです。
それと「first」、イイ感じですねぇ。
(何気に第2希望を叶えて下さっているのが嬉しいです)
助手が主役を食っちゃってますがw 助手の初仕事をじっくり楽しませていただきます。
- 796 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/06(火) 23:25
- マコとこんこん、おもしろいですね。
なんかより一層マコがへタレな気がします。
- 797 名前:ガイ 投稿日:2004/04/07(水) 00:49
- あわわわわ・・・
作者様!私のリクエストに答えてくれてホントにありがとうございます!
小川主役でも全然構いません!
むしろ嬉しい限りですYO〜!
他にもいろいろ人が出てきて楽しいっす!
もう次回が楽しみで楽しみで(笑)
- 798 名前:extra 投稿日:2004/04/07(水) 13:03
- >85さん
お久しぶりですね!「mind」「sun」共に気に入っていただけましたでしょうか?
今回は、要望の多かった小川さんなんですけど、あまりの書きやすさに作者も驚いています。w
本編のイメージとは全く変わってしまっているのですが、楽しんでいただければ幸いです。
>ヨッスィのタマゴさん
おもしろいと言っていただけてすごく嬉しいです!
ん〜、小川さんについては、やっぱり年上の人といる時は甘えてもいるけど、それなりに背伸びもしているのかなぁと。
紺野さんといる時は、等身大の小川さんって事でヘタレでも許してやってください。w
>ガイさん
いやいや、お礼言われるほどのもんじゃないです、はい。
もう、本当に書きたいものをただ書いているというだけですから。w
駄文かもしれないですけど、これからもお付き合いいただけると嬉しいです。
んなところで、本日。
- 799 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:03
-
- 800 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:04
-
- 801 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:04
- 「あさ美ちゃーん。」
大きすぎるカバンを下げ、小走りの小川。
紺野は、黙々と道に写真入りのポスターを貼っていく。
「こんなもんでいいかな?」
パンっと手を一度叩く紺野。
「あー。白黒だとまるで分からないねぇ〜。」
隣で口を開けたまま、ポスターを見上げる小川。
紺野は座った目で小川を見る。
「さゆの方がかわいい…」
紺野の反対側からうっとりとした声が聞こえる。
「「はい?」」
2人で振り返ると、両手を頬に添え、ポスターを見ている少女。
「さゆの方がかわいいよね?」
ニッコリと笑顔を向けたまま、小川にジリジリと近づく少女。
「う…、メ、メイビー…」
引きつる小川。
- 802 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:05
-
- 803 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:06
- 「あんた、何してんの?怪しすぎ…」
電柱の影に隠れ、小川の様子を伺っていた吉澤は振り返る。
「あれ?保田さん」
「あれ?じゃないわよ。あんた、何してんのよ。しかも、何?その格好!?」
保田は顎で吉澤の全身を差す。
「変装ですよ、変装。」
そう言いながら、サングラスをはずす吉澤。
「いや、不自然だし。その帽子にサングラス。まるで犯罪者。」
保田は吉澤がかぶっていた帽子を取り、手でまわす。
「そうすか?」
「えぇ。完璧に。職務質問しようかと思ったらあんただし。」
大げさに溜め息をつく保田に吉澤は顔をしかめ、口を尖らせる。
「ひでー。」
「あんたね!!そんな格好で!電柱に隠れて!若い子見てたら誰だって不審に思うわよ!!!」
「って、保田さん、声でかいって!!!!」
吉澤は保田の口を押さえる。
「はふ!ふんふふふ!!」
「はい?」
吉澤は首をかしげ、保田の口を押さえている手を離す。
「いきなり、何すんのよ!!」
目くじらを立てる保田。
しかし、吉澤はジッと保田を凝視。
「あの子は、完全に陶酔しちゃってるし。保田さん、よしざーに協力してくれるよね!?」
保田の手をガシっと掴む。
「あんた!たまには人の話も聞きなさいよっ!!!」
- 804 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:06
-
- 805 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:07
- 「さゆったら、かわいいでしょ?」
「「はぁ…」」
いささか疲れた顔の紺野と小川。
「だからね、さっき変なフランス人にナンパされちゃったの♪」
小川と紺野は顔を見合わせ、紺野は軽く小川の肩を叩く。
「あのぉーですね、今、私たち、忙しいんですよぉ?何で、この辺で…」
手を上げ、そそくさと逃げる小川と紺野。
「ちょっと待って」
小川の服のすそを掴む少女。
「な、なんでしょぉ…?」
「さゆ、かわいい?」
上目使いで小川を見つめてくる少女。
狼狽し口が開けっ放しの小川。
そんな小川を睨む紺野。
「と…とってもかわいいです」
乾く口でなんとかその場をしのごうと必死の小川。
- 806 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:07
-
しかし、道重の視線は小川の先を見ている。
「あ!あの時のフランス人!!」
道重が指を指す方向には、保田の腕を持ち、移動しようとしている吉澤の後ろ姿。
「吉澤さぁんっ!?」
- 807 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:07
-
- 808 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:08
- 「…は、ハロー…」
ゆっくりと少しだけ笑顔を引きつらせ、吉澤が振り返る。
「あれ?アメリカ人?」
首を傾ける道重。
「「いや、日本人だしっ!!」」
紺野と小川、声を重ねて突っ込むが、肝心かなめの道重は顔をこぶしにした手の上に乗せて不思議顔。
「…あんた、あんな若い子に手出してたの?国籍偽ってまで…」
横目で吉澤を睨む保田。
「いや、手なんか出してないっす!!」
慌てて、自身の顔の前で手を左右に振る吉澤。
「吉澤さん!こんなところで何してるんですかっ!?しかも、ナンパまでしてたんですかっ!?」
先ほど、道重に押され気味とは正反対で吉澤に近づき捲し上げる。
「あーっと。保田さん!ほら?例の事件のことで署に早く戻らないと!!」
小川に胸倉を掴まれながら、顔を保田に向け、懇願の目をする吉澤。
保田は少しだけ眉をしかめ、小さく息を吐く。
「そうね、未成年に手を出した変態の事件よね。」
「だから、違いますって!!」
吉澤は背伸びをしながら胸倉を掴んでいる小川の手をやんわりと離す。
- 809 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:08
-
- 810 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:09
- 「吉澤さんっ!!」
「うるさいんだよぉ!お前はぁー!!よしざーは、これから保田さんと署に行く忙しい身なの!じゃな!!」
吉澤は小川の頭をぐりぐりと力任せに撫で、保田の腕を持ち、その場から焦るように去っていく。
「もう!!吉澤さんっ!!」
その場で地団駄を踏む小川。
「それで、さゆをナンパしたあの人は、フランス人?アメリカ人?」
首をかしげる道重。
「日本人です。」
呆れ顔で溜め息と混ざったような紺野の声。
- 811 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:10
-
- 812 名前:first 投稿日:2004/04/07(水) 13:10
-
- 813 名前:extra 投稿日:2004/04/07(水) 13:12
- 短いですが、今日はこの辺で。
話が進まないなぁ…。本当にすいません。
- 814 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/07(水) 16:21
- 更新お疲れ様です。
紺ちゃんがツッコミっていうのも新鮮でいいですねw
Mさんのキャラもいいかもしんない・・・ww
続きも期待してます。
- 815 名前:プリン 投稿日:2004/04/07(水) 20:51
- 更新お疲れ様ですw
ちょっと時間を空けていたら大量更新キテタ━(゚∀゚)━!!
紺ちゃん&マコ(・∀・)イイ!
シゲさん・・・w
面白いキャラばっかだなぁ〜w(ぇ
次回の更新も待ってます!
自分のペースで頑張ってくださいね♪
でも、毎日更新してあるのですごく嬉しいですよ♪
- 816 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/07(水) 23:59
- 更新お疲れ様です。やっぱりシゲさんはこういうキャラになりますね。
ひ〜ちゃんは顔は白人系ですが、中身は日本男児です。
- 817 名前:ガイ 投稿日:2004/04/08(木) 00:09
- 更新お疲れ様で〜す。
もう完結するまで付き合わせていただきますよ!
ホント今回も面白いですね〜。
まこっちゃん頑張れ!
続き期待してますね。
- 818 名前:extra 投稿日:2004/04/08(木) 07:35
- >名も無き読者さん
本当に紺野さんの突っ込みは・・・・w
なんだか想像すればするほど、変ですね(汗)
キャラ設定はきちんとしなくちゃですm(__)m
>プリンさん
いつも気にしていただいてありがとうございます!
もう、本当にマイペースでやっていますよー。
なので、更新量にムラがあることは見逃してください(^_^;)
>ヨッスィのタマゴさん
そうですね、道重さんは本編で使おうか迷っていたのですが、キャラを活かすために番外編で使いました。
吉澤兄貴ですね!w
でも、本当にHEY×3の男前っぷりには驚きました!
>ガイさん
ありがとうございますm(__)m
今回か次回で完結かなぁと思っています。番外編ですので、長々書くのも変な気がしてしまって。(汗)
んな、わけで、あと少し小川さんに付き合ってください。
ではでは、本日の更新です。
- 819 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:36
-
- 820 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:37
-
- 821 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:38
- 「あーあ!せっかく、ヒントをあげようと思ったのに!」
保田の車に乗り込んだ吉澤が掌を額にあてながら、残念そうな声を出す。
「あんた、何考えてるの?」
保田の言葉に吉澤は掌をはずし、ニッコリと微笑む。
「かわいい弟子の初仕事の邪魔かな?」
「悪趣味ね。」
吉澤は片眉を上げる。
「それで、どこに行ったらいいわけ?」
「石川さんの家でお願いします」
小さく頭を下げる吉澤。
その頭を保田は軽くはたく。
「高くつくわよ?」
保田はエンジンをかけ、車を走らせる。
- 822 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:38
-
- 823 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:39
- 「ねぇ?2人が猫を探している人?」
道重は上目使いをしながら聞く。
上目使いに、また動揺をし、口が開いたままの小川。
紺野はそんな小川の腕を軽くつねる。
「いてっ!!」
涙目で紺野を見る小川。
「そうだけど、何で?」
そんな小川を無視して、紺野は道重の方を見る。
「やっぱりそうなんだぁ。やだぁ、さゆってかわいいだけじゃなくて、勘もするどいかも!」
嬉しそうに手を叩く道重。
上がろうとするこぶしをなんとか理性でとどめる紺野。
「あのねー、猫って昼間より夜探した方が効果的って知ってる?」
道重は紺野の震える様子にも小川の涙目にも気にせず話を始める
- 824 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:39
- 「そ、そうなの!?」
道重の鼻の先まで近づく小川。
「うん♪」
普通なら引くであろう小川の大接近にも負けず、笑顔の道重。
「ありがとう!すごく役に立ったよ!!」
道重の腕をぶんぶん振り回し、握手をかわす小川
「ううん。さゆってかわいくて、しかも、優しいの。」
ニッコリ笑顔で手を離す道重。
「うん!うん!かわいい!かわいい!!」
小川も笑顔になり、何度も繰り返す。
紺野は2人の様子を横で見て、本日何回目になるか分からない大きな溜め息をつく。
- 825 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:39
-
- 826 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:40
- 「いっしかわさぁーん、あっそびましょー!!」
石川の家の前で大声を出す吉澤。
「あんた、普通にインターフォンを使えばいいじゃないの…」
「わざわざ部屋の前まで行くのが面倒なんです。」
眉をしかめる保田に吉澤は笑顔で応える。
すると、上から窓を開ける音。
「それ、やめてって言ってるでしょ!?って、保田さん?」
「ね?別に問題はないでしょ?」
ニッコリ笑う吉澤。
「問題は石川が出てくる点ではないと思うわ。」
吉澤に負けじと大声で応対してきた教え子兼部下に保田は額に手をあて、呆れることしかできない。
- 827 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:40
-
- 828 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:41
- 「夜までどうしよっかぁ?」
道重が去った後、2人は公園のベンチに座り小川が作ってきたおにぎりを食べている。
「とりあえず、残りのポスター貼って、それから聞き込みかな?」
紺野は指についたご飯つぶを口に中に含みながら言う。
「なるほど。しっかし、れいなちゃん、2日も外ほっつき歩いて大丈夫なのかなぁ…?」
小川は心配そうに、自分の足元に視線を落とす。
「んー、完全な家猫ってわけでもなかったんでしょ?」
「家猫?」
紺野の言葉に不思議そうに目を大きくする小川。
「あのね…。家猫って言うのは、家の中だけで飼われている猫ってこと。散歩とかはあっても飼い主同伴。」
「…聞いてないです。」
申し訳ないとでも言うように眉を下げる小川。
「…すぐ聞いてこい。」
紺野はピッと指を立たせ公園の出口を指す。
- 829 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:41
-
- 830 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:42
- ピンクの上下という完璧な部屋着で外に飛び出してくる石川。
「ど、どうしたんですか?何かあったんですか?」
吉澤だけならまだしも、保田も一緒にいるという事で完全に仕事の顔になっている石川。
「何もないわよ、あたしはただの付き添い」
保田はあごで吉澤をさす。
「石川さん、ミニは?」
「は?ミニ?」
頭が混乱しているのか石川は眉をしかめる。
「うん。ミニ石川さん。」
「…もしかして、猫のこと言ってる…?」
不機嫌の色が石川の顔を染めていく。
「石川、猫なんて飼ったの?」
保田がさも意外そうな顔で石川を見る。
「そうそう、迷子の迷子の黒猫ちゃん♪」
ニッコリと笑う吉澤。
石川が眉をしかめたことに気付かないのか、それとも確信犯なのか吉澤は言葉を続ける。
「それにしても、今日の石川さんの格好も個性が光ってるね〜。」
そして響く痛快な音。
- 831 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:43
-
- 832 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:43
- 「すいません、わざわざ来てもらっちゃって」
小川は亀井にお茶を出し、深深と頭を下げる。
「いえいえ、外に出ていましたから」
亀井も小川につられてか頭を下げる。
携帯で亀井に連絡をしたところ、亀井も外に出ていて、ちょうど中間が事務所という事で落ち合い現在に至る。
小川は一度深呼吸をする。
「あのですね、それでれいなちゃんの事なんですけど…」
小川が話終わらないところで、亀井は身を乗り出す。
「見つかったんですか!?」
「いや…、あのですね。それがまだでして・・。すいません」
小川は汗を流しながら、頭を下げる。
「そうですか…。私の方こそ焦ってしまってごめんなさい」
亀井も頭を下げる。
「いや、私が悪いんで…。」
「いいえ。私が焦るから…」
いや、いいえと永遠に続くようなやり取りに紺野が口を挟む。
「それで、れいなちゃんは家猫だったんですか?」
- 833 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:44
-
- 834 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 07:44
-
- 835 名前:extra 投稿日:2004/04/08(木) 07:45
- 中途半端だ…
まぁ、いっか。
次回ラストかな?お付き合いください
- 836 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/08(木) 10:20
- 更新おつでーす
最近は2chブラウザ使う人多いだろうからみんなメル欄見てると思いますよ
- 837 名前:85 投稿日:2004/04/08(木) 11:25
- 更新、お疲れ様です。
ゴロッキーズがイイですねぇ。かなり個性的な面々です、うむ。
「少年探偵団」を彷彿とさせるこんまこに和み、怪しいシゲさんに笑わせていただいております。
見守るよしざー探偵も優しげで素敵です。(某所の兄貴スレ思い出しましたよw)
こういう「明」の部分が強く出ると、どうも闇の部分も惹かれてしまいます。
次回も楽しみです。
- 838 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/08(木) 16:40
- 更新乙彼です。
メル欄見てる人の数は僕も気になってたりします。
メチャクチャ多用してるんで。。。w
次回ラスト、楽しみにしてます。
- 839 名前:すかっしゅ 投稿日:2004/04/08(木) 18:08
- ちょっと紺野さん怖いっすよね(笑
がんばれ小川さん!
- 840 名前:extra 投稿日:2004/04/08(木) 20:17
- >836の名無飼育さん
これは初めましてでいいんでしょうか?
教えていただきありがとうございますm(__)m
これから多用させていただきます!
>85さん
初挑戦のゴロッキーズです。(汗
キャラ設定に困惑しております、はい。w
今回も楽しんでいただけると幸いです。
>名も無き読者さん
メル欄は、結構みんな見てくれているみたいですね!
楽しみにしてもらい、ありがとうございます。期待を裏切らないと嬉しいです!
>すかっしゅさん
本当、そうですよね。w
書きながらも、紺野さんの部分は首をひねる部分が多いです。(汗
んなわけで、スタート!!
- 841 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:18
-
- 842 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:18
-
- 843 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:19
- 「ただいま〜」
間延びした声で吉澤が事務所に入ってくる。
その声に反応し、入り口を見る3人。
「おっと、お客さん?」
吉澤は見られていることに多少居心地の悪さを感じたが、笑顔で対応をする。
「吉澤さん、お邪魔しています。」
「いやいや、何もないけど、ゆっくりしていってよ」
吉澤は腕の中のがさごそと動く袋を持ち、自分の部屋に行こうとする。
「って、君は?」
吉澤に先ほどから熱い視線を送っている亀井。
「あ、亀井絵里って言います!ふつつか者ですが…」
「どうも。小川の友達?」
亀井とは別の熱い視線を送っていた小川の方を向く吉澤。
「依頼主です。ナンパしないでくださいねっ!!!」
吉澤は肩をすくめる。
- 844 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:19
- 「ナンパとかするんですか…?」
亀井が目を潤ませながら、吉澤の顔を見つめる。
「しませんよ。でも、君みたいにかわいい子だったらしちゃうかもね。」
ニッコリと吉澤。
「吉澤さんっ!!!」
小川が立ち上がろうとするのを紺野が制する。
「あさ美ちゃんっ!?」
「麻琴落ち着いて。ところで、吉澤さん、その頬の手跡は?」
紺野は、小川を無視し、吉澤のバンソーコーとは、逆の頬にくっきりついた赤い手跡を指差す。
「石川さんからの理解して女の子アタック」
自身の頬を撫で不敵に笑う吉澤。
「またミニですか?」
やっと吉澤の赤い手跡に気付いたのか心配そうな声を出す小川。
「いーや。オリジナル。よしざーは、ちと寝るから出かけるならきちんと戸締りしとけよ」
吉澤はガサゴソと動く袋を抱え、自身の部屋に入っていく。
- 845 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:20
-
- 846 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:20
- 外が段々と夕闇に染まっていく中、亀井を送りがてら再び捜索に繰り出す二人。
「えっと、本当に今日中にはれいなちゃんを捕獲しますから!」
別れ際、グッとこぶしを掲げ、亀井に宣言をする小川。
「麻琴…。捕獲じゃなくて、保護って言って」
掲げた手をやんわりと戻す紺野。
「あーー、すいません!本当にすいません!!」
きっちり90度で何度も頭を下げる小川。
その小川につられて、「いいんです。大丈夫です」と繰り返しながら頭を下げる亀井。
- 847 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:20
-
- 848 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:21
- 「いってっ。」
吉澤はかすかな痛みに目を開ける。
頬にあたる鋭い爪。目の前にある野生を思い出した目。
「おい、ミニ。よしざーが何かしたかぁー??」
吉澤が上体を起こすと、猫はしっぽで吉澤の頬を撫でながら吉澤に背中を向ける。
鳴いた声は、吉澤に甘えているとは言えない声。
「ミニ、お前は石川さんには懐いているくせに、どうしてよしざーには、そんな態度?」
目の前をすり抜けていこうとするしっぽを掴む吉澤。
吉澤の行動に反応して、猫は目を鋭くして振り返る。
「なんだよ、その目。本当にお前は勝気だねー。」
吉澤は嫌がるのも気にせず、ズルズルとしっぽを引っ張り、持ち上げる。
向き合う形で抱き上げられ、不快な声で鳴く。
「でも、よしざーは勝気な子も好き」
不快な声にも動じずニッコリ微笑み、唇を尖らせる。
猫は自慢の鋭い爪を振り下ろす。
「いってーーーー!!!」
- 849 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:22
-
- 850 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:22
- 「いない、いない!いなぁーい!!」
路地に空き地の土管の中、小さな外灯の近く、ゴミ捨て場。
どこにも猫の姿は見当たらない。
「麻琴、こんな時間にそんな大声で叫ばないの」
少しだけ疲れた表情を浮かべる紺野。
「うぅ…だってぇ…」
小川は今にも泣き出しそうになる。
「ま、麻琴!?」
「だって、亀井ちゃん、れいなちゃんがまだ見つかってないって言った時、すごく悲しそうな顔になったんだもん。だから、少しでも早く見つけ出して笑って欲しいのに…」
涙をこらえているのか、悔しい気持ちからなのか、小川は下唇を噛みしめる。
小川の肩が小さく震える。
「私は…、困った人を助けたいのに…。余計にがっかりさせちゃってる…。こんなんじゃ失格だよぉ〜」
小川の顔はもうすでに下を向いてしまっている。
「…麻琴」
うつむき震えをこらえている小川に紺野はどんな言葉をかけていいのか浮かばなかった。
ただ黙ったまま、紺野も自身の足元を見ることしかできない。
- 851 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:22
-
- 852 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:22
- 〜♪
暗闇の中を微かに口笛が響く。
それに続く鈴の音。
- 853 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:23
-
- 854 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:23
- 小川は音に反応して、ハッと顔を上げる。
「あさ美ちゃん、今、聞こえた!?」
「え?何!?」
「鈴の音!!」
小川は音の方向へ走り出す。
紺野はそれをただ見ていることしかできない。
暗闇の中に小川の背中が消えていく。
「ま、麻琴ーーー!?」
- 855 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:23
-
- 856 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:24
- 次の日、石川が吉澤を訪ねると、部屋の中には、嬉しそうに猫を抱える亀井と亀井の腕の中で幸せそうにあくびをする黒猫。
「本当にありがとうございます。」
嬉しそうな亀井の声。
「いいえ、大したことじゃないです。」
小川の満足そうな顔と声。
テーブルの上に肘をついて顎を支えながら、素知らぬ顔でタバコを吸っている吉澤。
石川は、吉澤の隣に腰をおろす。
「ねぇ?あの猫って…」
石川の言葉に吉澤は口の前で人差し指を立てる。
- 857 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:24
- 「これ、あのお礼です」
亀井は空いている片手でバックを探り、かわいい封筒を出す。
「いや!いいんです!私は喜んでもらえるだけで!はい」
オーバーアクションでそれを断る小川。
- 858 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:25
-
「…そうゆうことね?」
石川の言葉に吉澤は片眉を上げ応える。
- 859 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:26
- 「でも…そうゆうわけには…」
受け取ってくれない小川に困惑の表情を見せる亀井。
「本当にいいんです。亀井ちゃんの嬉しそうな顔を見れただけで半人前の私は満足なんです。こんな私に大切なれいなちゃんの捜索を任せてくれてありがとうございます」
逆に頭を下げる小川。
「えっと、亀井ちゃん、麻琴はこーゆー人だから。」
紺野は、頭を下げた後照れたような表情で笑う小川を指差し言う。
猫が2回目の幸せそうなあくびをする。
- 860 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:26
-
- 861 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:27
- 「貴方の助手は、いい性格してるわね?」
石川が横にいる吉澤を見ると、吉澤は満足そうに微笑む。
「自慢の弟子ですから」
そう言って、2〜3口しか吸っていないタバコを灰皿に押し込む。
「ねぇ?吉澤さん」
石川はタバコを押し込んでいた吉澤の手に触れる。
「なんでしょう?」
「口止め料、お願いね」
悪戯に笑う石川。
「吉澤さん、私にもよろしくお願いします。」
いつの間にか吉澤の後ろに立っている紺野。
「うわっ?なんだよ??」
「麻琴には、黙ってますから♪」
「はぁ??聞いてた?」
「気付いてました」
石川に負けないくらいの悪戯な笑顔で吉澤の空いている方の手に触れる。
- 862 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:27
-
石川と紺野は微笑み合い立ち上がる。
「みんなー!今回の麻琴ちゃんの活躍に感動した吉澤さんがご飯ごちそうしてくれるってー!」
「お、おいっ!!」
石川の口をふさごうと立ち上がる吉澤。
「しかも、高級お寿司です!」
紺野は人指し指を自信満々と言った様子で立たせる。
「本当ですかぁぁ?吉澤さぁーん、嬉しいですぅーー!!」
半べそで吉澤の首に絡まってくる小川
「あの私もいいんですか…?」
遠慮がちに聞いてくる亀井に紺野と石川は大きくうなづく。
- 863 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:28
- 「なんでこうなるんだよ…」
両手を石川と紺野に掴まれ、首には小川が巻きつき、逃げられないと悟った吉澤は力を失い、ガクンと椅子に腰を落とす。
- 864 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:28
-
- 865 名前:first 投稿日:2004/04/08(木) 20:28
-
- 866 名前:extra 投稿日:2004/04/08(木) 20:30
- お付き合いいただき感謝します。
次からは平常営業かなぁ?
- 867 名前:85 投稿日:2004/04/08(木) 21:32
- 完結、お疲れ様です。
本編とはまた違って、時間がほのぼのと流れていくような感じでした。
晴れた日の雲を追いかけているような・・(意味不明)
まったく、よしざー探偵は変なトコロで鈍感ですねぇw
自分も最近、密かに亀井ちゃんイイなと思ってます。(現実でもよしざーさんに熱い視線を送っていそうですがw)
次回も楽しみにしております。
- 868 名前:すかっしゅ 投稿日:2004/04/08(木) 21:56
- 更新乙です!
おがーさんやったぁ!
- 869 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/09(金) 00:22
- たまにこんなほのぼのした事件もいいですよね。
マコは立派なへタレ助手です。吉澤師匠と違うのは、こんこんの方が鋭いというか、役に立つというか…
次回もがんばってください
- 870 名前:ガイ 投稿日:2004/04/09(金) 00:58
- 更新お疲れ様でした!
もうとても良かったです!
まったりした空気の中での物語だったので、癒されました。
次回も楽しみに・・・したいのですが、明日から一人暮らしをするので、当分の間PCとお別れしなくては・・・
自分用のPCもあるのですがまだ手元に届かない上に環境が整っていないのでネットが出来ません・・・
でも、今回完結を見届けれて良かったです。
次はいつになるか分かりませんが、早期復活を目指したいと思っております。
作者様、頑張って下さいね。
それでは、また〜
- 871 名前:extra 投稿日:2004/04/09(金) 07:09
- >85さん
気が合いますね〜。亀井ちゃん、推しです!w
しかし、本当に久しぶりのまったり小説でお見苦しい点もあったかと思いますが
お付き合いいただいたこと、嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
>すかっしゅさん
小川さんの応援、ありがとうございました。
もうなんとかかんとか見つけることができて、作者もホッとしています。
次回は、小川さんは少ないかもしれないですが、今度は主役のよしざーさんの応援よろしくお願いします。
>ヨッスィのタマゴさん
もう本当に山のない話で申し訳なく思っていますm(__)m
小川さんは、勘は鈍いですが、行動に移すのは早いです。w
的外れで大体紺野さんに怒られていますが…。w
まだまだ吉澤さんを超えられそうにないですね。
>ガイさん
祝!一人暮らし!!
私の方の天気は晴れているのですが、ガイさんの方はいかがでしょうか?
新生活をいい天気で迎えられていると良いですね。
自分ですべてをやるのは、大変ですけど、楽しいとも思います。頑張ってください。
時間に余裕ができ、環境も整いましたら是非また遊びに来てください。
待っています。
では、新作で。
- 872 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:10
-
- 873 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:10
-
- 874 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:11
- 「おう、吉澤、久しぶりやな」
病室に入る吉澤にかけられる懐かしい声。
「久しぶりです。平家さん」
ニッコリ微笑み、平家の前に置いてある椅子に腰掛ける吉澤。
「最近、来ないから、みっちゃん寂しかったんやで〜?」
ニヤニヤと笑いながら振り返る平家に吉澤は眉を少しだけ上げる。
「頻繁にこんな場所来たくないですよ。」
「自分、言うよーになったなぁ。」
ペンを指で遊びながら、平家は笑う。
「自分では正常だと思うんですけどね。」
吉澤は腕に巻かれた包帯を撫でる。
「どしたんや?」
「知らない間に自分でやったみたいです。」
吉澤の言葉に平家は眉をしかめる。
「相棒の意思表示だと思うんですけどね。」
「相棒っていうと、後藤か…」
吉澤はニッコリ微笑む。
「最近、あの夢は?」
「全くって言うほど、見ないです」
「そか…」
- 875 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:11
-
- 876 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
- 『平家メンタルクリニック』
石川は保田に言われ、渋る吉澤を無理やり車に乗せ連れてきた。
この前のことで石川自身、吉澤の変化には驚いた。
全くの別人格が吉澤を支配し、行動をしていた。
ふざけているなんて軽軽しく言える状態ではなかった。
石川は心配そうに淡い色で描かれた看板を見上げる。
- 877 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
-
- 878 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
- 「なぁ?吉澤はどう記憶してるんや?例の事件をな」
吉澤はうーんと言いながら、首をかしげる。
「実際、途切れ途切れにしか覚えてないのが事実です。赤いってだけかな?」
平家は指でまわしていたペンを止める。
「赤いね。」
「えぇ。それくらいです。それ以外は何も。誰がどこにいたのかも覚えてないです。」
肩をすくめ、笑顔を見せる吉澤に平家は小さく息を吐く。
「薬どないしよか?」
「いらないです。」
笑顔のまま立ち上がる吉澤。
- 879 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
-
- 880 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
- 車の窓をノックをする音に我に返り、石川は顔を上げる。
「待った?」
ニッコリ微笑み、吉澤は車の中に乗り込む。
「少しだけね。」
吉澤がいつものように微笑むので石川は安心する。
石川の言葉に吉澤は少しだけ眉を上げ、いつものようにシートに体を沈める。
2人の車の横を親子連れが歩いていく。
吉澤は少しだけ視線をそちらに移す
「それで、この車はどこに向かってるの?」
行き先も言わずに走り出した車の中で吉澤は首をひねる。
「児童施設。」
前を見ながら、きちんとした発音の石川。
「はぁ?!」
- 881 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:12
-
- 882 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
- あの時の言葉に縛られている。
もがけば、もがくほど、その言葉の鎖は今以上の力で縛り付け苦しめる。
- 883 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
-
- 884 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
- 「何でまたそんな場所に?」
顔をしかめる吉澤。
「ここから近いの。それで、ちょっと気になってね。担当した事件の子がいるから。」
石川は話しながら、下唇を噛む。
「ふーん。ついでって事?」
「言葉が悪いわ。」
吉澤の膝を軽く叩く石川。
吉澤は叩かれた膝を少しだけ見つめ、シートにより深く身を沈める。
「着いたわ。ここよ」
「あーら、本当に近いでやんの!」
吉澤は上体を起こし、窓の外に見える赤い屋根を見つめる。
- 885 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
-
- 886 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
- 自分が自分で生まれてきたことを後悔なんかしていない
でも、ふと、誰かになってしまいたくなる
自分じゃない何かになりたくなる
- 887 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:13
-
- 888 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:14
- 石川が挨拶をして、ドアをあけると、小柄な目鼻立ちのはっきりしたかわいい女性がエプロン姿で2人を迎える。
「久しぶり、なかなか来れないでごめんね」
石川とその女性が挨拶をしている間、吉澤は暇そうに入り口に飾られた子供たちが描いたであろう絵を眺める。
「いいの。いいの。忙しいの分かってるから。」
気さくそうに笑う女性。
吉澤は笑い声につられて、女性の方に視線を移し、小さく頭を下げる。
「…よっすぃー?」
「はい?」
突然、呼ばれた名前に吉澤はしっかりと女性の顔を見る。
「もしかして、柴田?」
吉澤に飛びつく柴田。
「うわっ!本当によっすぃー?もうすっごい久しぶりぃ!!」
あまりのことに呆気に取られる石川
吉澤の笑顔がいつもより優しく石川の目には映った。
- 889 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:14
-
- 890 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:14
- 乾く 口の中がどうしようもないくらいに渇く
そして、大勢の人間が指をさし、あの言葉を繰り返す。
渇く、異様に口の中が渇いて仕方がない
呪縛から逃げられない
- 891 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:14
-
- 892 名前:empty 投稿日:2004/04/09(金) 07:15
-
- 893 名前:extra 投稿日:2004/04/09(金) 07:16
- こんな感じです。
次の更新は月曜になると思います。
もちろん、時間があれば土日もします!
ではでは。少し早いですが、良い週末を!
- 894 名前:85 投稿日:2004/04/09(金) 12:52
- 更新、お疲れ様です。
う〜ん、導入部ですでにググっと引き込まれまくりです。
この人も実は好きなんです、最近。(DD気質なのかもw)
続きが気になりますが、まったりお待ちしています。
extraさんも良い週末を。
- 895 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/10(土) 11:17
- 更新乙彼サマです。
惹かれますねぇ〜w
続きが楽しみです。
- 896 名前:extra 投稿日:2004/04/12(月) 02:26
- >85さん
良い週末は過ごすことが出来ましたでしょうか?
私は桜花賞で痛い目に合いました。w
今回の話も楽しんでいただけると嬉しいです。
>名も無き読者さん
惹かれていただけましたか?
いや、実際、作者も誰をキーパーソンにしようか悩んでいる状態でして。w
本当に行き当たりばったりな話ですけど、。お付き合いください。
では、では。本日。
- 897 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:27
-
- 898 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:27
-
- 899 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:28
- 「いやぁ、本当に驚いたよ」
通された応接間で柴田がお茶を2人の前に置く。
「うん、まさかこんなところで柴田に会うなんて思いもしなかった」
吉澤がタバコを取り出し、柴田は灰皿を出す。
「2人は知り合いだったの?」
いまいち、2人の関係と今の状況を把握できていない石川。
「うん、まぁ、そんなとこ」
煙が天井に向かって上がっていく。吉澤はその軌跡を目で追う。
「あ、それよりもね、梨華ちゃんに相談があるんだけど。」
柴田は石川に体を向ける。
- 900 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:28
- 「相談?」
「そうそう。施設で飼育してるうさぎがね、殺されちゃって…」
声をひそめる。
「野犬とかじゃないの?」
石川の言葉に腕を組み、納得のいかない顔の柴田。
「とりあえず、夜、この辺のパトロールしてもらうことってできる?」
「うん、それは大丈夫だよ」
石川が微笑みを作ると、柴田も微笑む。
「やっぱりね、子供がいるから。野犬にしても危ないからさ」
自身の髪を触りながら、話す柴田。
外から聞こえる子供の声に吉澤は目を閉じ、巻かれている純白の包帯に触れる。
- 901 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:29
-
- 902 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:29
- お前は普通じゃないと誰かが叫ぶ。
お前は何も持っていないと、他の誰かが叫ぶ。
失うものもない 怖いものもない 欲しいものもない 与えることものなどない
お前はおかしいと大勢の誰かが叫ぶ
- 903 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:29
-
- 904 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:29
- 子供の顔を見てくると出て行った石川。
ドアが閉まる音に吉澤はゆっくりと目を開ける。
柴田は立ち上がり、吉澤の前に立ち、吉澤の柔らかい髪に指をとおす。
「ごっち…、…真希は元気?」
吉澤は目を細める。
「うん。元気。」
「そう。」
柴田は吉澤の頭を抱えるように抱き寄せ、自分に引き寄せる。
「久しぶり」
くぐもった吉澤の声、柴田は吉澤の髪に鼻をつける。
- 905 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:29
-
- 906 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:30
- 確実に外とは、隔絶をされた部屋。
昼間だと言うのに、カーテンが引かれており太陽の光を避けている。
少女は、静かに覚醒をする。
ゆっくり体を起こし、自身の機能が正常に動いているかを確認していく。
指の1本、1本を確認のように動かす。
「…あかんなぁ。」
笑いをかみ殺したような声を出す。
- 907 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:30
-
- 908 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:30
- 石川は部屋の中に入り、一人の少女の後ろにしゃがむ。
「久しぶり、元気にしてた?」
石川の声に反応して、ゆっくりと振り返る少女。
「その声は、梨華ちゃんれすか?」
「なかなか来れないでごめんね。元気にしてた?」
「はい!ののは、元気にしていたのれす!」
石川は目を細め、少女の髪を優しく撫でる。
「久しぶりの梨華ちゃんの匂いなのれす」
焦点の合わない少女は、嬉しそうな声を出す。
- 909 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:30
-
- 910 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:31
- 世界が止まる
現実が夢を支配していくような感覚。
いや、逆かもしれない。
夢が現実を支配していってる。
- 911 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:31
-
- 912 名前:empty 投稿日:2004/04/12(月) 02:31
-
- 913 名前:extra 投稿日:2004/04/12(月) 02:32
- お付き合いください。
- 914 名前:プリン 投稿日:2004/04/12(月) 18:53
- 更新お疲れ様です!
おぉw新作っすねw
どんな展開になるのか・・ドキドキw
よっすぃ〜誕生日おめでとぉー!!!!
大好きだぁ!愛してるぞぉ!
19歳ですかぁwやっと梨華ちゃんと同じだねw
これからもカッコ可愛く頑張ってほしいです♪
次回の更新も待ってますね!
楽しみだなぁ♪
- 915 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 18:57
- おっ!あの人が出てきた
もう一人のあの人はどんな感じなんだろうか期待です
- 916 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/13(火) 01:07
- よっすぃと柴ちゃんの関係が気になります。
続き大期待ですw
- 917 名前:extra 投稿日:2004/04/13(火) 09:15
- >プリンさん
昨日は、吉澤さん、生誕祭でしたね!
桃板のいしよし短編小説エロなしバージョンの方に短編で『いしよし』を書いておきました!
良かったら、ここと合わせてご覧になってください!
>915の名無飼育さん
期待していただきありがとうございます!
なんだか今回は、いつもに増して色んな人が出てきちゃいましたね。
読みづらい点があれば、言ってください!
>916の名無飼育さん
よしざーさんと柴田さんの関係は、徐々に明らかにしていくつもりですので、
まったりとお待ちくださいな!
今回もレスありがとうございます!
では、本日の更新。
- 918 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:16
-
- 919 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:16
-
- 920 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
- ドアの開く音に吉澤と柴田は不自然に体を離す。
「…っと、邪魔した?」
関西弁が少しだけ混ざったような声。
「あいぼん。ののちゃんに会いに来てくれたの?」
柴田は、故意的に何でもないような声を出し、少女に近づく。
「そう。会いに行ってもええ?」
「もちろん。」
視線を柴田から吉澤に移す加護。
視線に気付き、吉澤が加護の方を向くと、加護の視線は柴田に戻される。
「じゃあ、行こうっか?」
柴田は微笑み、加護の肩に手をかける。
引き寄せられた体に加護は小さく拒否反応を見せる。
「よっすぃー、ちょっと行ってくるね。」
小さな拒否信号に柴田は気付かず、そのまま笑顔で部屋を出て行く。
吉澤は肩眉を少しだけ上げる。
- 921 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
-
- 922 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
- 目を閉じると、浮かんでくるイメージ。
『お…まえ…あskはy4あgだwhrでゃkg…な…んか』
途切れ途切れのイメージ。
もう上手く組合すことすらできない。
吉澤は、頭を振り、イメージを消し去る。
「懐かしいなぁ。」
吉澤はダランと手足を投げ出す。
「うん。…少しだけ似てるかもな」
吉澤の口元が歪む。
- 923 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
-
- 924 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
-
石川と話をしていた辻が急に立ち上がる。
「どうしたの?」
「あいぼんが来るのれす!!」
嬉しそうに入り口のドアを見ている辻。
石川は耳をすませるが、全く足音や話し声は聞こえない。
「ののちゃ「あいぼん!!」
辻が声を出したと同時にドアが開く。
石川は呼びかけようとした手を下げることもできずに辻を見る。
「遅うなってごめんなぁ」
加護は辻が待っているのを驚かず、そのまま辻に近づく。
加護は一度だけ石川に視線を移すが、それ以降石川の存在はないものとして振舞う。
無視しているのではなく、加護の世界に石川は実際に存在しない。
- 925 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:17
-
- 926 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:18
-
「石川さん、帰ろう?」
吉澤がドアを少しだけ顔を覗かせる。
空気は一瞬にして変わる。その空気の変化に吉澤は眉をしかめる。
「あ、うん」
石川のスカートの裾を引っ張る微かな力。
「ののちゃん?」
「また来てくれますか?」
「もちろん。」
石川は辻の頬を撫でる。
「石川さん。」急かすような吉澤の声。
「よっすぃー、どうしたの?何か用事でもあるの?」
柴田に声をかけられ、吉澤は眉間に出来た皺に気付く。
「ちょっとね。」吉澤は眉間に2本の指をあてる。
- 927 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:18
-
- 928 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:18
- 「どうしたの?」
車に乗り込んでも、依然として吉澤は何かを考えているような表情。
「んー、ちょっとね。ね?石川さん。あの2人は双子か何かなの?」
石川の方は見ず、横の窓を見ている吉澤。
「2人って。ののちゃんとあいぼんのこと?」
「名前は知らないけど、さっきの子供」
「血縁関係は全くないわ。私も最初見た時は姉妹か何かだと思ったけど。でも、どうして?」
石川が吉澤の方に顔を向けても、吉澤は石川を見ない。
「別に。似てるって思っただけ。ね?飼育小屋に行ってみない?」
吉澤はガラス越しに石川の目を見つめる。
- 929 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:18
-
- 930 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:18
- 「のの、また夢を見たんれす。」
焦点の合わない目。彷徨う辻の手を加護は強く握る。
「…うん。待ってて。」
加護は空いている方の手でカプセルを取り、体内に取り入れる。
飽くなき口は 渇いて…
飽くなき夢が 現実を支配する
不完全な世界でもがくことは 無意味なのかもしれない。
- 931 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:19
- 「やっぱり野犬じゃないよ」
吉澤は親指を自身の上唇にあてる。
「どうして?」
石川の言葉に吉澤は飼育小屋の中に一歩踏み出す。
そして、地面につけられた血に触れる。
「血が一箇所に集中している。」
「どうゆうこと?」
吉澤は立ち上がり、石川の方を呆れた顔で見る。
「何よ?その顔。」
眉をひそめる石川。
「元々こんな顔です。」
吉澤は溜め息をつき、ひざについた土をはらう。
「石川さんは、うさぎ。よしざーは、野犬。」
「は?」
片眉を上げる石川に微笑む吉澤。
- 932 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:19
- 「気持ちいい眠りの中の石川うさぎ。スースースースー。そこに忍び寄るよしざー犬。」
ゆっくりと吉澤は石川に気付く。
「敏感な石川うさぎは、よしざー犬に気付く。はい、どうする?」
右手を石川の前に出す。
「…逃げるに決まってるじゃない。」
「OK。逃げる石川うさぎ。もっちろん、お腹がペコペコのよしざー犬は追いかけます。そして、まずは一噛み。ガブっ」
効果音付きで吉澤は差し出していた右手を石川の肩に置く。
「飢えてはいるけど、狡猾に狙う。さぁ?石川うさぎは?抵抗しますか?しないで諦めますか?」
「抵抗するに決まってるじゃない」
石川は吉澤の手を払い、一歩後ろに下がる。
「つまり、そうゆう事。」
石川を指差し、払われた手をフラフラと揺らす。
- 933 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:19
-
- 934 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:20
- 本当の自分が目覚めていく
耳の奥で誰かが囁く。
オマエ ハ ナンダッテ デキル
- 935 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:20
-
- 936 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:20
- 「野犬じゃないことは分かったわ」
車に乗り込み、吉澤はまた外ばかりを見ている。
石川はそれ以上は何も言えず、運転を続ける。
「妙な空気だったよね。」
吉澤は姿勢を整え、シートに体を沈める。
「どうしたの?急に。」
「石川さん、あんなに敵意剥き出しにされて気付かない?」
「は?」
吉澤は、目を閉じる。
「警戒じゃなく、敵意。圧倒的なものだよ。」
吉澤の言葉に石川は眉をひそめる。
「何に言ってるのか分からないわ。」
吉澤はゆっくり目を開け、口元だけ微笑む。
「石川さんらしい。」
- 937 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:20
-
- 938 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:20
- 「あはははははは!!!!!!!」
黒い布を頭からすっぽりかぶり、血に染まる小さな両の手をダランと下げる。
目の前には、首のない真っ黒な犬。
ダランと下げられた小さな手に掴まれている犬の首。
動く 動く 世界が動く
うちを中心にして世界が動く
児童施設のフェンスに串刺しされた物を言わぬ犬の首。
- 939 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:21
-
- 940 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:21
- 「厄介なのは、あの子たちが大人が侵入することを極度に拒んでいること。」
ファミレスの駐車場に車を停めた途端、今まで黙っていた吉澤が小さく言葉を吐く。
「え?」
「子供独自の不完全な世界にもルールはあるし、断りもなく進入してくる輩には、制裁も存在するよ」
「どうゆうこと…?」
「石川さん、小さなモンスターの出現かもしれない。」
吉澤は口元に微笑を浮かべ、車から出る。
車を出て、ファミレスの入り口とは別方向に歩いていく吉澤。
「ちょっと!どこに行くの!?」
窓を開け、石川が叫ぶ。
吉澤は振り返ったりはせず、軽く手をあげただけでフラリと歩いていってしまう。
吉澤は石川が追ってこないのを確認し、携帯を取り出す。
「柴田、今から行ってもいいかな?」
- 941 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:21
-
- 942 名前:empty 投稿日:2004/04/13(火) 09:21
-
- 943 名前:extra 投稿日:2004/04/13(火) 09:24
- そろそろ、スレッド移動の準備しなきゃですねー。
中途半端にこちらが切れてしまいそうなのが悩みどころ。
まったりお待ちくださいませ。
得意の短めマメ更新でいきます。w
- 944 名前:85 投稿日:2004/04/13(火) 18:40
- 更新、お疲れ様です。
遅くなりましたが、桃の短編拝見いたしました。いやぁ〜、すっげぇ可愛かったですw
雰囲気が違ってまたイイですねぇ。うん、さすがはいしよし!
そしてよしざーさん、お誕生日おめでとう!
さてこちらは・・
いよいよ来ましたか、いつかは来るかなと思ってましたが・・
何というか、ある意味今までで一番ゾクっとしてます。ジワっとした恐怖です。
次回も楽しみにしています。
- 945 名前:ガイ 投稿日:2004/04/14(水) 00:03
- お久しぶりです!
ようやくネットの出来る環境となり、晴れて復活となりました。
今まとめて読んだのですが、新作の方もかなり気になりますね・・・
今週は大学の方も比較的楽なので、度々お邪魔すると思います。
これからも楽しみにしてますね〜!
頑張って下さい!
おっと、よっすぃ〜誕生日おめでとう!
- 946 名前:extra 投稿日:2004/04/14(水) 08:44
- >85さん
桃の方も見ていただきましたか?ありがとうございます。
生誕祭だし、たまには甘いのでもと思ってチャレンジしたのですが、失敗でした。w
こちらの話も楽しんでいただけると嬉しいです。
>ガイさん
お久しぶりです!それから、おかえりなさい!
まとめて読んでいただけたのですか?
お疲れ察しいたします。w
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
ではでは、本日。
- 947 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:45
-
- 948 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:45
-
- 949 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:45
- 「ありがとう、あいぼん♪」
「いーや。気にせんでええで。」
加護は穏やかに微笑む。
ヨーグルトの容器に入った真っ赤な液体を辻は口に含む。
真っ赤に染まる辻の口元。
「…これだけなのれすか?」
辻の目に加護は映らない、加護は下唇を噛みしめる。
「足りん…?」
加護の言葉に静かにうなづく辻。
「分かった。」
立ち上がる加護の足を掴む辻。
「あいぼん、笑えれば全ては良いことになるのれす」
口だけに笑いを浮かべる辻。
加護は、知らぬ間に口の中いっぱいになった唾液を飲み込む。
- 950 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:45
-
- 951 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:46
- 「どうしたの?忘れ物?」
柴田は嬉しそうに吉澤の袖を持つ。
「ん、ちょっと聞きたいことがあってさ。」
吉澤はそれをさりげなくほどく。
柴田の顔に少しだけ悲しみの色が映り、吉澤は小さく息を吐く。
「…それで、聞きたいことって?」
「うん。あの石川さんと話していた女の子とその友達のこと。」
吉澤は柴田から視線をそらし、壁に無造作に貼られている絵を見る。
「…梨華ちゃんに聞いた方が早いんじゃない?」
自身の手を見つめる柴田。
「ねぇ?あの子。目が見えてないよね?というか、潰されてる。」
吉澤の言葉に顔を上げる柴田。
「母親に潰されたのよ。」
- 952 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:46
-
- 953 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:46
- 獲物はあの女。
大切な仲間を傷つけたあの女。
携帯を耳にあてる加護。
「そうや、あの家の前に20分後に集合やで。」
- 954 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:46
-
- 955 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:46
- 「母親に?」
吉澤は眉をしかめる。
「そう。母親を見るあの子の目が煩わしかったって理由。」
吉澤はソファの背もたれにもたれ、首を曲げ、上を見上げる。
「その理由は、あの子たちは知ってる?」
「知らないと思うけど。」
吉澤は目を閉じる。
「今、母親は?どうせ精神鑑定で何かしら診断されたんだろう?」
「ここから、30分くらいのところに住んでる、ねぇ?そんな事よりも…」
目を閉じ、上を見上げている吉澤の横に移動する柴田。
柴田は吉澤の頬に手を沿え、自分の方をむかせる。
- 956 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:47
- 「もう会えないと思ってたの。」
吉澤は、ゆっくりと目を開ける。
「それは、どっちに?」
柴田は目を閉じ、吉澤の唇に自身の唇を寄せる。
吉澤の貪るような接吻。
吉澤はそれをただ無機質な目のまま受け入れている。
息をつくために少しだけ離れた柴田を見つめ、吉澤は目を細める。
「これは、どっちに?」
吉澤の質問には答えず、再び唇を寄せようとする柴田、それを避けるように立ち上がる吉澤。
「また…ね?」
吉澤は口元に笑みを浮かべ、部屋から出ていく。
自身の唇に指でそっと触れたあと、下唇を血がにじむほど噛む柴田。
- 957 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:47
-
- 958 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:47
- これは、『狩り』。
小さい獲物で満足できなくなったら、もっともっと大きい獲物を。
加護は、ラムネのケースから錠剤を取り出す。
- 959 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:47
-
- 960 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:47
- 吉澤が施設から出てくると見慣れた車が目に入る。
「あれま?よしざーのことはお見通し?」
片眉を上げ、車の前に立つ石川に近づく。
吉澤が近づいてくることに気付いた石川は顔を上げ、何かを言おうとした口を閉じ、眉をしかめる。
「・・・最低ね。」
「はい?」
「唇に柴ちゃんがつけていたグロスが付いてるわ。」
眉を軽く上げる吉澤。
「否定もしないのね。」
石川は腕を組み、眉をしかめたまま吉澤から視線をずらす。
「考えることは、個人の自由だからね。ところで、さっき何か言いかけたよね?」
吉澤は目にかかる前髪をかき上げる。
「裏に串刺しにされた犬の首があったわ」
「…ほう。」
吉澤は口元に笑みを浮かべる。
「野犬じゃないわ。」
「うん。石川さん、ちょっと乗せてってもらいたい場所があるんだ。」
吉澤は軽く石川の肩に手をのせる。
- 961 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:48
-
- 962 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:48
- 小さな一軒屋の前に集まる携帯をずっといじっている大人とは言えない少女。
「ガキさん、早いな」
歩いてきた加護。
加護のポッケで携帯が振動する
『件名:無題
本文:貴女が遅いんです』
携帯を確認した加護は微笑む。
「相変わらずや。ほな、ちょっと手伝ってや。」
加護は黒い布を新垣に手渡す。
- 963 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:48
-
- 964 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:49
- 「こんにちわー」
今までの声とは全く違う質の声。子供が出す無邪気な声。
「…はい。」
加護が声を出して、しばらくしてから疲れたような中年の女性が出てくる。
「こんにちわー」
笑って挨拶をする加護に訝しげな顔をする女。
「どなたでしょう?」
女の言葉に加護は急変する。
「知らんはずないやろ?なぁ?」
加護の横で黒の布を頭からかぶり、携帯をいじり続ける新垣。
- 965 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:49
- それは、あまりに異様な光景だった。
無表情でどこを見ているか分からない少女と黒い布をすっぽりかぶった同じような体型の少女。
「これから、味わったことのない快楽を味あわせたるわ」
黒い布をかぶった新垣が笑っているのか、小刻みに肩が揺れる。
女は恐怖を覚え、ドアを閉めるが、少しの隙間に加護は足を入れる。
「自分、アホか?これは『狩り』やで?逃がすわけも逃げれるわけもありえへん」
口元を歪ませる加護。ドアによって、視界からはずされている右手には、光るナイフ。
黒い布をかぶった新垣は、携帯を見たまま体を前後に揺らし続ける。
- 966 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:49
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- 967 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:49
- 「どこに向かえばいいわけ?」
車に乗った後も石川は顔をしかめ、吉澤の方は一切見ようともしない。
「辻のお母さんが住んでいる場所。石川さんなら、知っているでしょう?」
石川の方を向き、にっこりと微笑む。
「…行ってどうするわけ?」
「行けば分かります。」
吉澤は自身の唇に触れ、柴田の跡を手で拭う。
「…柴ちゃんとはどうゆう関係なわけ?」
運転をしている石川の表情は硬い。
「気になるんだ?」
不敵な笑みを浮かべる吉澤。
- 968 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:50
- 「…別に。」
「そう。別にキスなんて大したことじゃない。それによしざーは、してない。」
吉澤の言葉に目を吊り上げて石川は吉澤の方を向く。
「唇にグロスつけておいて言う台詞じゃないわね。」
吉澤はニッコリと微笑み、石川に軽いキスをする。
「これがよしざーのキス」
吉澤の言葉に石川は我を取り戻し、吉澤の頬を叩く。
「さいってい!!」
石川に叩かれた赤い頬を手で押さえながら、吉澤は笑いをかみ殺す。
- 969 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:50
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- 970 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:50
- 血の海に倒れる、喉切開、声帯の露出された女。
加護は血の入った小瓶を手の上で投げ、受け止めるという単純な動きをしながら女を見つめる。
携帯を見ている新垣は、今度は大きく肩が震えている。
「なぁ?ガキさん、笑っとらんで、頭にかぶってるもん貸しーよ」
加護は、新垣がかぶっている布を取り、血に汚れた手を拭う。
「えらい興奮したわなぁ?」
新垣はただ前後に体を揺らす。
「自分、うちより落ち着き無いわ。気持ち分からんではないけど。」
加護は、呆れたように新垣を見つめ、ナイフを再度手に取る。
「さぁ。最後の仕上げしとこーか?」
加護は、女の顔にナイフを刺す。
- 971 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:51
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- 972 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:51
- 「ここよ。」
車中、石川は一言も発しなかったが、小さな一軒家に着き、やっと言葉を発する。
「サンキュ。どうする?一緒に来る?」
車を降りようとする吉澤。
「…行くわ」
石川の言葉に吉澤は目を細める。
- 973 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:51
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- 974 名前:empty 投稿日:2004/04/14(水) 08:51
-
- 975 名前:extra 投稿日:2004/04/14(水) 08:52
- 新しいスレを立てましたら、こちらで告知しますので。
よろしくお願いします。
まさか、こんなに長くなるとは…。w
- 976 名前:プリン 投稿日:2004/04/14(水) 19:39
- 更新お疲れ様です!!&お久しぶりですm(_ _)m
なんか・・・分かったような分からないような(w
一体何が・・・!?
続き激しく気になるところです♪
新スレもうちょっとですねぇ〜w
ガンバですっ!!
次回の更新待ってますよ!
ラストスパートに向けて頑張ってくださぁ〜い♪
- 977 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/14(水) 19:39
- 更新お疲れサマです。
あいやぁ〜・・・、こいつぁまた凄絶ですなぁ。
でもそれに惹かれてしまう自分がコワイw
次スレも楽しみに待ってます。
- 978 名前:ガイ 投稿日:2004/04/14(水) 23:54
- 更新お疲れさまです。
中々まだ謎だらけですなぁ・・・
気になってきになって毎日が楽しみです。
あ、新スレまでもう少しですね!
頑張って下さい!
- 979 名前:85 投稿日:2004/04/16(金) 13:56
- 更新、お疲れ様です。
少しずつ謎が解けて来ていますね。
でもまだ薄闇の中にいるような、頭の中がボンヤリしているような感覚です。
あの人もこの人も謎めいてるなぁ・・
次回も楽しみです。
- 980 名前:extra 投稿日:2004/04/16(金) 21:35
- >プリンさん
お久しぶりです。もう本当になぞを作りすぎて、自分でも何がなんだか…。w
うまくまとめていきたいと思います!w
>名も無き読者さん
いや、私はこんなん書いてる自分が怖いです。w
いつもこんなことを考えているわけではありませんので、あしからず!w
>ガイさん
はい。なぞだらけと言うかなんというか…。w
全員の真相を出してしまったら、いつ終わることやらと言った感じです。
もう一番純粋なのが、いしかーさんです。
書きやすい。小川さんが書きたくなってる今日この頃であります。
>85さん
ガキさん、怖くしすぎたと作者も思っております。
眉毛に触れずにガキさんを書いてみせるというのが、今回の話のテーマです!w
ガキさんの動向に注目してください。眉毛と使ったら、負けたと思っていただいて結構です。w
では、更新。
- 981 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:36
-
- 982 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:36
-
- 983 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:37
- 『件名:無題
本文:やりすぎ』
新垣からのメールを受け取り、加護はニヤついた顔のまま新垣を見る。
「ガキさんだってえらい興奮したやん?」
新垣は加護の方は絶対に見ない。
加護は不敵に笑い、フェンスの上を器用に歩く。
「なぁ?これは、のののためやないで。うちの快楽のためや」
その隣を歩く新垣からの反応はない。
「そうや。ガキさんにもう1つお願いがあんねん」
軽くフェンスから降り、新垣の前に立つ。
「気に入らない奴がおる。警告出しといてくれるか?」
『件名:無題
本文:いいよ』
- 984 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:37
-
- 985 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:37
- 大人の皆さん。
限度を超さぬ快楽なんて、快楽と言えますか?
一度知ってしまった今以上の快楽は、クセになる。
- 986 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:37
-
- 987 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:37
- 「すいませーん!」
玄関から声をかけても、反応はない。
「留守なんじゃないの…?」
石川が不安そうな顔で吉澤を見る。
吉澤はドアノブに手をかける。
「…開いた。」
きしむ音をあげながらドアは開く。
「あーあ…。遅かったか…」
ドアを開けた途端に吉澤は眉をしかめ呟く。
「何?」
「血の匂い。」
吉澤は石川を一瞬だけ見て、部屋の中に入っていく。
- 988 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
- 呆気に取られた石川だが、急いで吉澤のあとを追う。
部屋の入り口で吉澤は止まる。
「石川さんは、見ない方がいいよ。」
淡々とした、いつもと変わらない吉澤の声。
「…何を見てるの…?」
吉澤の背中に向かい、声をかける。
「笑っている女の人。」
「は!?」
石川が吉澤の背中越しに部屋を覗き込む。
部屋の中には、体中を何十箇所にわたり切り刻まれ、口の端から耳まで引き裂かれ、いまわしい笑みを浮かべている女。
- 989 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
-
- 990 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
- ワラエレバ スベテハ イイコトニ ナルノレス
- 991 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
-
- 992 名前:empty 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
-
- 993 名前:extra 投稿日:2004/04/16(金) 21:39
- えっと、次の準備ができ次第、ここに書き込みます。
短いのは、話のキリを考えた結果です。本当に許してください。
では、また。
- 994 名前:85 投稿日:2004/04/17(土) 01:38
- 更新、お疲れ様です。
今回のお話、春だと言うのに妙にうすら寒さを感じてしまいます。
純真というものは反面で残酷なものでもあり、なんだかいろんなことを思ってしまう今日この頃・・
ガキさんの描き方がすごく新鮮ですねぇ。
次回もじっくりとお待ちしています。
- 995 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/17(土) 15:38
- 更新乙です。
・・・怖ッ。
でもますます惹かれますw(爆
次も楽しみにしてます。
- 996 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/17(土) 16:13
- 何というか、新井素子を思い出しますね
- 997 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/18(日) 21:35
- すっごく面白いです!!!
次も待ってますよぉ〜
できれば番外編などで昔の学校の時のを
書いてもらいたいです・・・
ずうずうしいかもしれませんけど要望ということで・・
- 998 名前:extra 投稿日:2004/04/18(日) 22:59
- 森板の方に『zeroU』というので引っ越し完了いたしました。
良ければ、おこしくださいませ!!
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1082296181/
- 999 名前:extra 投稿日:2004/04/18(日) 23:05
- >85さん
最初は、ガキさんをここまで怖くする予定はなかったのですけどね。w
子供は、純真という怖さをもっていますよね。大人では太刀打ちできないような。
話を書く意図を分かっていただけるとすごく嬉しいです!
>名も無き読者さん
あはは!怖いですか!?w
だとしたら、作戦成功です。文章だけで恐怖を伝えるのは…と最近思い悩んでいたところもありますので、
かなり励まされました!ありがとうございます。これからもよろしくお願いします!
>996の名無飼育さん
新井素子さんというのは、SF作家の方でしたよね?
この人の作品自体は読んだことがないです。ごめんなさい。
機会があれば、手に取ってみます。書き方が似ているという事でしょうか?
>997の名無飼育さん
おもしろいと言っていただきありがとうございます!
いや、嬉しい限りです。
それからリクエスト受け付けました!
今の話が終わり次第、取り組んでみますので、少々お時間いただけますでしょうか?
たくさんのレス、本当にありがとうございます。すごく励みになります!
板を移動しますが、これからもよろしくお願いします。
- 1000 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/20(火) 00:22
- 1000ゲット(・∀・)!!
- 1001 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
- このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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