「小さき世界」の探偵達
- 1 名前:模倣作家 投稿日:2004/03/21(日) 17:18
- あの問題作「小さき世界」の続編です。
あのハロー女学院の謎が続々出てきて、その内幕がしだいに明らかに
なっていくはずですが、もそかしたら謎が深まるばかりという展開に
なるかもしれないので、期待しないで読んでいただければ、訳が分か
らなくなることまちがいないでしょう。
前作と登場人物などの設定は矛盾ないよう気をつけておりますが、
また誤字脱字なども気をつけておりますがどうも多いようなので、
おかしな点などありましたら、どんどん指摘してください。
田中れいなから観た話ということで進行します。
「小さき世界」
http://mseek.xrea.jp/moon/1061461069.html
- 2 名前:1.はじまり 投稿日:2004/03/21(日) 17:22
- 私は田中れいな、この春でハロー女学院高等科二年級になる。
本名は麗奈なんだけど、つんくと呼ばれる院長先生が、
「うらなってみたら、縁起が悪いみたいだから、ひらがなでれいなに
しなさい」なんていわれて、学院内ではれいなということになって
しまっている。
こういうことめったにないそうなんだけど、先輩方に何人かいる。
大学二年の里田先輩は本名は舞だけどまいということになっている。
同じ乗馬部のあさみ先輩は本名は木村麻美だし、その姉で今年度から
教員となったアヤカ先生は本名は木村絢香だそうだ。
木村姉妹と同じような例として、斉藤姉妹がいる・・・
妹は単にみうなとなっとった。姉は本名そのままなんになぜ?
あっそれからみうなさんは、苗字を書く時、斎藤と書いてたような・・・
以前は本名とまったく違った名前にされとったひとが数名くらいいた
ごたるけど、みんな学業不振で中退してしまって、その後はそういう
ことは、なされなくなったげな。
他にもこの学院にはおかしなこと、謎がいろいろあって、何か明らかに
したいなと想っていた。
- 3 名前:1.はじまり 投稿日:2004/03/21(日) 17:24
- そんな時ボランティア部『慈育楠』部長矢口先輩から話があるからと
呼ばれた。
「突然でなんだけど、オイラにちょっと協力してくれない?」
「いいですけど・・・」
「オイラ『慈育楠』やってんの知ってるよね。ちょっと問題があって、
別働隊を創りたいんだよね、あなた名義で。」
「どういうことです?」
「簡単に言うとあなたがリーダーになって、何でもいいからクラブを
創って欲しいの」
私は断ろうと思ったけれど、ふとある計画を思いついて、
「矢口さんどんなんでもいいんですよね?」
「学院に届けるからあまり変なのはだめだけど、つんくのおやじが
承知してることだからたいていのことなら・・・」
「わかりました、引き受けましょう」
「メンバーは中等科三年級の夏焼と一年級の鈴木で決ってるから
そこんとこ、よろしく!」
何だよそれ?でもよかもん、こっちには考えがあるちゃけん。
- 4 名前:2.探偵の出現 投稿日:2004/03/29(月) 14:47
- 私と中等科の夏焼と鈴木で結成した謎のクラブ『あぁ!』は
一度活動費をもらったきりで、その後学院から何も援助を
受けていない。
それも活動費の大部分は矢口先輩が取っていってしもうた。
どうもあの院長先生は何か企んでいるようで、この一年半
くらいの間にいくつかクラブを認可したけど、ほとんどが
一度しか活動費をもらってないようだ。
さらにこのごろは歴史ある『タンポポ』や『富士クラブ』
にさえ活動費を支出してないようである。
それはそれとして、学院の謎というか秘密を解く鍵は、
図書館の閉庫図書にあると思う。以前後藤先輩がそれを
探ろうとして、下の級とトラブルになったことがあるので
慎重にしなければ・・・
- 5 名前:2.探偵の出現 投稿日:2004/03/29(月) 14:54
- そういうこともあって『あぁ!』は学院の歴史を纏める
ことを目的としたんだが、やはりというかまだ閉庫図書に
たどりついていない。
でも保田先輩・・・じゃなかった保田先生だ。この春大学を
卒業して、学院に助手として採用されたんだ。
そしてアヤカ先生も同じく卒業したけど、成績優秀という
ことでいきなり正式な教員として採用されたようだ。
そういえば安倍先輩は成績優秀ということで、大学三年課程
終了で助手になったらしい。名目的には大学四年ということ
らしいけれど・・・
逆に村田先輩は助手に採用されなかったので、留年したとか、
どうも来年は採用されるようだけど・・・
保田先生は図書館担当なので、頼みこめば閉庫図書を少しは
見せてもらえそうなので、何か分かるかもしれない。
- 6 名前:2.探偵の出現 投稿日:2004/03/29(月) 14:57
- それにこのごろ「名探偵コナン」にはまっている紺野先輩からも
情報が得られるかもしれない。でもこの人くらい不思議な噂が
ある人も珍しい。
昔「ドラゴンボールZ」に憧れて、空手を習い茶帯をとったとか、
普段は穏和だけど本気で怒ると相手を半殺しにするほどだとか、
頭の中のほとんどが食べ物のことでいっぱいで、その上好き
嫌いが激しくて、寮の食事を自分の好物だけになるよう裏工作
をしてたとか、そのおかげで自分の好物を食べれなくなった
辻加護両先輩は他の学年級の寮を襲っては、食事を強奪する
ようになったとか・・・
- 7 名前:2.探偵の出現 投稿日:2004/03/29(月) 14:59
- ただ辻先輩は中等科以上は全員寮生活のはずのところを自宅の
部屋以外では一睡もできないと主張して、毎日リムジンで通学
しているのだが・・・うそつきだとは、口が裂けても言えない。
彼女の耳はうさぎ並みにすごくて、自分の悪口を聞きつけては、
懲らしめに廻っているらしいので、慎重にも注意を。
そげなことはどがんでもいい、ちょっと気になることがあっと
です。大学の聴講生の市井さんが、何か謎を解く鍵を持って
いると思うとるんですが、このごろ姿を見とらん。
学院をやめたという話を聞いたが、どうなんだろう。
- 8 名前:2.探偵出現? 投稿日:2004/03/30(火) 15:04
- いろいろ気になることはあるけど、何かに絞って調べたほうが
いいなと思った。そこでまず数年前に平家先生と石井先生が
退職され、卒業後も学院に残るはずの戸田鈴音さんが別の教育
機関に就職されたという話の裏にあるものを探って逝こうかと
考えていた。
図書館の閲覧室でそんなことを考えていると、入り口のところ
で安倍先生の姿を目にした。ふとある噂を思い出した。
「安倍先生って時たま意外に本人の前で毒舌を吐くらしいよ。
なんでも石井先生が助手になられてすぐくらいに
『石井さんって先生だったんですね。てっきり事務員さんかと
思ってました』て言ったらしいよ。
それから久しぶりに前田先生が教員会議に戻ってこられた時には
『前田先生って円華学園の先生じゃなかったんですね』
みたいなことを言ったらしいよ。」
- 9 名前:探偵の出現? 投稿日:2004/03/30(火) 15:07
- 人は見掛けによらないのかも・・・
妹の麻美さんはそんな姉が恐くて、別の学校に行ったとか
聞いたことあるし・・・
などと想っていた。
そしてこれからどうしようかと考えを纏めようとしていた。
しかし考えはなかなかまとまらない。
ふとひとつの噂が頭に浮んだ。
『慈育楠』と『あぁ!』に代わる中等科を中心とした新しい
クラブができるらしいというのだが、本当なのかな?
そうだとしたら動き辛くなるなと想ってみる。
- 10 名前:3.迷探偵だったりして・・・ 投稿日:2004/04/05(月) 15:12
- あの噂は本当だったようで、高等科一年級の清水を中心にして
『つぶつぶ工舎』という学院内の問題解決を推理するクラブを
結成したみたい。
この8名は推理好きで、これまで事件発生と騒いでは、それを
解決?してきたみたいだけど、ふだんの行動を見ているとまとも
に推理できる頭脳を持ってるようには思えない。
だいたい問題解決の推理発表の時、机に突っ伏してしゃべっちょ
るんやが、どうもメモとか読んでそうに見えるんやが。
ちょこっと調べてみるとその場面には、ほとんど中等科と初等科
の生徒しかいなかったようである。
- 11 名前:3.迷探偵だったりして・・・ 投稿日:2004/04/05(月) 15:14
- 裏で操っているのは、その中の誰かだとしたら、彼女達の助手を
している初等科三年級の萩原舞かなと・・・でもいくら頭脳明晰
とはいえありえないよね。
何も現場にいるとは限らないよね。範囲を広げて考えてみよう。
まず大学三年級の矢口先輩は・・・『名探偵コナン』に憧れて、
コスプレしてたようだけど、いくら小さいとはいえ「身体は
こども、頭脳はおとな」てやり続けるのは辛いだろうし、
『ワンピース』に乗り換えてようだし・・・
あとはうーん・・・誰もが疑わしいなぁ・・・
ちょっと気に懸るのは大学一年級の吉澤先輩だ。
このごろ考え込んでて暗い顔をしてる。今まで曇のない明るい
ところしかみてないので・・・気になるなぁ。
- 12 名前:4.ひとみの奥には 投稿日:2004/04/07(水) 14:13
- 吉澤的にはちょっと困ったことになっている。
あの人に会わなければとよかったさえ思っている。
私の芸術性は兄から影響を受けたものだ。
それでこのハロー女学院に入ったんだ。本当はもっと本格的に
芸術を学びたかったんだけど、中学の成績が悪くて、ここの
高等科に進学したんだ。
首都圏から入学してくる子らは、芸術系の学校だと知ってるけど、
地方からの子らは・・・田舎っぺと言ってやりたいんだけどね、
一般的なお嬢様学校だと思ってるのも少なくないみたい。
典型的なのが「札幌のシティーガール」を自称しているやつで、
親の都合でこちらに来て、ここの中等科三年級に編入したみたい。
この間抜けは、授業が始まってようやくおかしいって思ったようだ。
編入試験の時点で一般的なお嬢様学校でありえない体力測定で
気づくよね。
しかし彼女は一般科目では歴代一の好成績を挙げている。
今までずっと学年ダントツである。英語以外はほぼ満点に近い。
ただ英語だけが平均点どころか半分いけばいいという状況なのは、
どういう頭の構造になっているのだろう?
- 13 名前:4.ひとみの奥には 投稿日:2004/04/08(木) 14:22
- おっと道からそれてしまった。
私がハロー女学院で芸術を磨いていこうという波長に合ったのは、
まずは後藤・・・ごっちんだった。
その彼女を通じて、保田先輩、藤本、松浦、そしてあの人と知り
あった運命のその人、市井さんからいろいろと芸術論を聞かされた。
私は兄からの又聞きの話などをした。そして仲良くなった。
でも何か分からないけど、市井さんはハロー女学院をやめてしまった。
後からごっちんは言っていた、
「学院のおかしな点を正すために秘密に調査をしていたことがバレて、
やめさせられたんだ」
それが本当のことなのか調べようということで、ごっちんと活動を
開始したんだけど、なぜかすぐに院長先生の知るところとなり、
数ヵ月の登校禁止処分となり、高等科二年級を留年することになって
しまった。そして二人とも特待生だったんだけど、ごっちんだけが
その待遇を剥奪されてしまった。
それで私はそのことに積極的に行動しなかったんだけど、ごっちん
は藤本や松浦と何やら密かに動いていた。それがある事件の発端に
なったようだけど、今はどうでもよい。
- 14 名前:4.ひとみの奥には 投稿日:2004/04/08(木) 14:24
- 市井さんは高等科を辞めた後、独学で大学入学資格の取得を目指し
てたみたい。そしてうちの学院と関係深い大学に入学するだろうと
思っていた。
そこにはごっちんの弟の祐樹が通っていた。
ごっちんは留年が決った時、
「あ〜これで弟と同じ学年になってしまったよ、カッコ悪いなー」
みたいなことをぼやいてたなぁ。
彼のおかげで同じ学園のソニンと呼ばれている運動神経の抜群の人に
知り合って、芸術論を戦わせてたんだ。
まあこういう流れだから、芸術を研究実践している兄とこれらの人が
親しくなったのも当然だよね。まあそういうことで市井さんが兄の
直樹と親密な関係になったのかもしんない。
- 15 名前:4.ひとみの奥には 投稿日:2004/04/08(木) 14:27
-
結局市井さんは中澤先生の尽力もあって、聴講生としてハロー女学院
に戻ってくることになった。
ごっちんはかなり喜んだけどその喜びは長く続かなかったんだ。
トラブルメーカーの祐樹が大きな問題を起こして、ついに退学になった
んだ。姉としてかなり落ち込んでたみたいだった。
私も励ましてたんだけど、やっぱ市井さんが一番だと想ったから、市井
さんの家に行ったの。その時知ったのね、直樹兄ちゃんとラヴラヴだ
ということを・・・
ごっちんも知らなかったんじゃないのかな。
そして当然のように市井さんは妊娠して、結婚ということになっちゃった
というわけ。
このことごっちんが知ったらすごいショックだろうな、話づらいよな、
でもすぐに知られてしまうよな・・・
- 16 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/10(土) 18:13
- 「れいな何考え込んでんの?」
さゆが声を掛けてきた。
「ちょっと調べたいことがあって、調べてたら分からないことが多くて・・・
ところでさゆはどうしてここに?」
「ちょっとね。例の特別講座の指名を受けちゃって、そこで調べることが
あってね、ウフ」
「へえー、さゆでも図書館で調べることもあるんだ!」
「馬鹿にしないでよ!いくら天才でも調べることはあるのよ、ウフ」
何が天才だよ、授業にようやくついてってるくせに。
まあ予習も復習もしない、授業中に何もしなくても、赤点をとって
いないのだからある意味・・・
あ〜、さゆはまた自分のかわいさを自慢しだしたよ、ヤバイな〜。
ここにえりがいないだけマシかな。えりはさゆだけにかわいらしさの
ライバル心を持ってるから、ふたりでかわいらしさ合戦をしだすから
たまらないよ。
一番かわいいのはれいなに決ってるんだから。
やっと気が済んだみたい、
「じゃーね、バイチャーオ」
「バイバイ」
まったくわけわからないね。
- 17 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/10(土) 18:18
- ふと机に目をやると見知らぬノートがあるのに気づいた。
さゆが忘れたノートだ、見回したけどどこにもいない。
表紙には「道重さゆみ」と丸文字で書かれていて、名前の後にはなぜか
ハートマークのシールが貼ってある。
何だろう・・・でも中を見るのはよくないねと思いながら、裏表紙のほうを
開くとそこに「Mの女神?」と小さく書かれてある。
『Mの女神』って、何なんだろう?Mって何? 頭文字だよね!
モーニング?娘。?メロン記念日?ミニモニ。?美帆?美和?三佳?みちよ?
前田?真里?ミカ?真希?村田?めぐみ?雅恵?松浦?美貴?まい?
まさか舞美?桃子?雅(みやび)?茉麻?村上?愛(めぐみ)?舞波?舞?・・・
道重?みうな?三好?ではないよなあ、と考え込む。
ふと女神も頭文字はMだと気づく。もしかしてMMということか?
するとモーニング娘。か村田めぐみ、それとも村上愛。
いやミニモニ。もそうかなと考える。
- 18 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/11(日) 17:29
- 次に表紙の裏を見る。そこには小さな文字で何か書かれてある。
その昔、太陽神派と星神派の対立があった。
これは単に太陽を神とするのか星々を神とするのかという
対立なのではない。
なぜなら昼間は太陽以外見えないからである。
夜間において、太陽の光を反射して輝く月か、それとも
自ら光を放つ星々なのか、どちらが夜を支配する神に
ふさわしいのかということである。
何だこれは?わかんないよと頭をひねっていると
さゆが戻ってきた。
- 19 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/12(月) 17:12
- 「さゆ、これ忘れ物だよ」とノートを差し出すと、
「れいな仲見たでしょ?」と言うから、
「表と裏のところだけだよ」と応える。
「そのへんくらいしかまともに書いてないんだけど」
確かに他は落書き程度の絵しかなかったみたい。
思い切って「それでちょっと聞きたいことが・・・」
「人のを勝手に見て、どういうこと?」
さゆは私を睨みつけるけど全然恐くないよ。
対抗してこちらも睨むと
「まっいいか。このの「Mの女神」ていうのは、例の特別講座で
音楽評論のテキスト、この「Mの黙示録」に出てくる案内役の
キャラクターなんだけど?
えっ「?」をなぜつけたかって?
ありえない設定だから・・・それ以上説明できない。
分からないなら読んでみたら」
と本を押し付けてくるが、興味がないので、
「Mて何かの頭文字?」
と質問してみると、首を傾げてるだけだ。
それで先程考えてたことを話してみると
「メロン記念日の「記念日」て、英語表示だと"Memorial day"だと
思ってたんだけど、アルバムタイトルから"Anniversary"なんだ
よね。でもMは"music"じゃないのかな。」
- 20 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/12(月) 17:16
- 「こっちの文章は?」
「あっこれね・・・講義の中で聴いた話から小説みたいなのの
出だし部分を思いついたので、書いてみただけ。
えっその講義の内容?
えっと簡単にいうと、今はアイドル不毛時代なのね。つまり
夜の時代ということ。そんな時代においてどのようにアイドル
を出していくかということよ。
アイドル全盛の昼の時代と同様な方法でソロ歌手を中心にやって
いくのか、それともまったく新しい方策を模索していく、たとえば
ユニットとかグループという集団の形を主体として売り出していく
のかということなんだけど・・・わかった?」
首を横に振ると
「だよね。・・・その時はビビっときたんだけど、その先が続かなかった」
- 21 名前:5.推理大作戦 投稿日:2004/04/12(月) 17:17
- その後特別講座のことについて話をしたけど要領を得なくて、わからん。
ようやく理解できたのが、「Mの黙示録」の著者である冨澤とかいう有名な
教授から教えを受けてるということ。
最初はミカ先輩が直々に教わってたそうだ。その後中澤先生にもついて
もらって松浦先輩が教えてもらい、一年くらい前からさゆが受けてる
ということであった。
でも一番わからんのは、なぜさゆが選ばれて特別講座を受けてるかと
いうことだが・・・
- 22 名前:模倣作者 投稿日:2004/04/13(火) 14:11
- >>18 についての補足説明
太陽神は「たいようしん」と星神は「ほしがみ」と読みます。
ちょこっと逝き詰ったので、「ボツネタUPスレ」から
遣わせていただこうかな。
- 23 名前:6.稲葉先生の奇妙な夢 投稿日:2004/04/13(火) 14:13
- 稲葉貴子は最悪の目覚めだった。
何とも後味の悪い夢も見てしまった。
稲葉貴子は縛られてベットに寝かされていた。
周りは暗黒の闇に包まれていた。
頭に何か機械が取付けられてるようだ。
頭の中から声が聞える。
「あなたは吉澤ひとみとなるんだ」
次の瞬間、吉澤として意識が薄れていく。
・
・
・
呆然とする。
吉澤ひとみが目を覚ますと、辺り一面に広がる砂、砂、砂。
そして後ろに倒れた石川梨華を見つけ駆け寄った。
その頬をぴしゃぴしゃと叩きながら吉澤は思考する。
砂漠? だって私達、確か任務を受けて……。
思い出せなかった。何があった?
ざらり。
目の前5メートルの距離で小さな砂山が崩れる。
- 24 名前:6.稲葉先生の奇妙な夢 投稿日:2004/04/13(火) 14:15
- 吉澤はびくっ、とそちらに視線を向けた。
砂山の中から立ち上がったのは――あどけない少女。
体中に着いた砂を払いながら、きょろきょろと辺りを見回してる。
吉澤は思う。ひょっとして彼女も、私達のようにここに連れて
来られたのだろうか?
「ひゃぁー。なっち死ぬかと思ったよ」
口の中の砂を吐き出しながら彼女が言う。
なっち、が彼女の名前なのだろうか?
「あの、あなたは…」
「って言うかねぇ、ここどこ?」
吉澤の言葉を遮ったのは目の前の少女では無い。胸の中の石川だった。
突然天からの声。
「お早う。3人共起きたようやな」
声のするほうに顔を向けると、空には満天の星。声はどこから?
- 25 名前:6.稲葉先生の奇妙な夢 投稿日:2004/04/13(火) 14:17
- 「空を見ても見えへんで。衛星は遥か遠くに浮かんでるからな。
ちなみにこっちからはカメラで君達の顔に着いた砂粒までよう
見えてるで」
「ここはどこですか!そしてあなたは誰です!」
吉澤の叫びが谺する。
「私は中澤裕子、でそこは砂漠。ちなみにそこは朝になったら
気温が60度を超すからな、君達まず死ぬで」
中澤は飄々とした声のまま続けた。
「相手を倒してや。勝った方だけそこから助けてやるで」
それを聞いて吉澤と石川が顔を見合わせた。
殺しあう? 梨華ちゃんと? ひとみちゃんと?
石川がふるふると首を振る。瞳が涙目になっている。
「安心しぃ。戦うのは石川&吉澤ペア対安倍なつみや」
2対の瞳が持ち上がる。
呆然とした顔の少女の姿を捕らえていた――。
- 26 名前:6.稲葉先生の奇妙な夢 投稿日:2004/04/14(水) 13:34
- 会話の無いまま、時間が静かに過ぎて行った。
朝日が顔を出すと途端に温度が上がりだす。
吉澤の額にじわりと汗が浮かぶ。
石川はもう息を荒げている。
「おいおい。まだ30度やでぇ。半分も行っておらんでぇ。
助かりたいんやろ。お前なら簡単やないか」
中澤の言葉に反論する元気もなくなり、それどころか
悪い考えがすっと頭の中を通り抜けて行く事もある。
気が付くとポケットの中のナイフを掴んでいる自分に気づき、
吉澤はぶるんぶるんと頭を振った。
しかし。
――モウ、ゲンカイ。
倒そう。
吉澤が立ち上がる。
ごめんね、相手が悪かったね。私と梨華ちゃん『ハンター』だから。
ちょっと「普通」と違うんだ。ごめんね、私達だけ助かっちゃって。
ほぼ同時だった。
- 27 名前:6.稲葉先生の奇妙な夢 投稿日:2004/04/14(水) 13:37
- 安倍なつみは立ち上がると、ふっと消えそうな微笑みを浮かべると
鈴の鳴るような声で囁いた。
「ごめんね。なっちもう限界。恨みは無いんだけどさ、ごめんね」
吉澤は目を見張る。
今、何が起きた? この子の手のひらからカタナが出て来た?
吉澤は石川を抱えたまま後ずさる。
その顔には、笑みが浮かんでいた。
次の瞬間、目の前が暗くなる。
稲葉貴子として目を覚ます。
恐い夢とは感じなかったが、何か気味が悪い。
・
・
気分の悪いまま教職員宿舎を出る。
といっても学生寮の一角にあるようなもので、独身の稲葉にとって
学生時代と同じような住まいであった。
きょうは木村絢香から高等科二年の田中から研究レポートのため
協力を頼まれて、一緒に話をして欲しいと言われていたのを思い
出した。
でもこの夢のおかげでそういう気にならない。
どう断ろうかとか考えながら学校へ向った。
- 28 名前:7.謎が解けるのか? 投稿日:2004/04/18(日) 17:25
- 「田中!話つけといたから」
保田先生から声をかけられる。
「ありがとうございます。でーいつ誰から話を聞けるんですか?」
「まったくあんたは・・・
放課後に図書館の司書室で、稲葉先生とアヤカ先生がしてくれる
ことになってるから」
・・・
放課後、図書館に向かう。
学院の歴史とか謎とかを保田先生に聞いてみたんだけど、よくわか
らなくて・・・
気軽にそういう話をしてくれそうな稲葉先生とアヤカ先生を紹介
してくれたのだ。
司書室の扉を開けるとアヤカ先生がいて、
「稲葉先生何か体調が悪いらしくて、きょう来れないんだって。
私の知ってることでよければ、話してあげるから」
と言われた。
- 29 名前:7.謎が解けるのか? 投稿日:2004/04/18(日) 17:28
- 当たり障りのないところから聞いてみることにした。
「よろしくお願いします。
まずうちの学校って、学年間の交流があまり盛んじゃないです
よね。それって何か理由があるんですかね?」
「そうね、うまく言えないけど、芸術に関する考え方からかな。
芸術というのは「まね」から入ると考えてよいのかもね。
だけど伝統に縛られ、それを継承するということが大きくなると
それはもう衰退していると思うの。
常に新しいものを求めていく精神が必要なの。
つまり先輩後輩の関係はあまり強くなってはだめだということ、
伝統というものが大きくなるから。
ハロー女学院は一学年一学級なのだから、黙ってても世代間の
交流はできるわけだから、同じ学級の中で切磋琢磨するほうに
力を入れるべきとかんがえたわけね。」
- 30 名前:7.謎が解けるのか? 投稿日:2004/04/19(月) 15:50
- その後いくつかの質問をしたけど、アヤカ先生自身よく
知らないことが多かったようで、
「うまく応えられなかったみたいで、ごめんね。
あなたの疑問の解決の助けになるかもしれないので、
この本貸してあげるよ。」
とアヤカ先生は私に古ぼけた本を手渡した。
薄汚れていてしかも文字がかすれていて、表題が何である
か読めなかった。
ざっと目を通してみたが、訳の分からない芸術論ばかり
だったが、ある部分が気になった。
- 31 名前:7.謎が解けるのか? 投稿日:2004/04/19(月) 15:53
- ・・・
若き天才芸術家松井秀一郎は二つの実験的研究グループを
結成す。堀内誠らと『シャッターズ』として活動し、その
一方寺田光男らと『乱』として活動していた。
その後、經塚泰誠が『乱』に加入し、寺田は『QP』の
畠山俊昭と出会ってから、寺田が主導権を握るようになった。
そして寺田が中心となって、『QP』『乱』『シャッターズ』
が連合して『Q乱ズ』を結成する。
それから十年後研究成果を実践すべくハロー女学院を設立した
のである。
・・・
この人たちって誰?
と一瞬考えたが、名前から推測すると、松井秀一郎とはどうも
学院の理事で五年くらい前に追放されたしゅう教授とか言われ
てた人では?
すると堀内誠って人は、同じく理事で学院長の腰巾着と噂され
てるまこと教授ってことかな?
- 32 名前:7.謎が解けるのか? 投稿日:2004/04/19(月) 15:55
- そうすると經塚泰誠と畠山俊昭というのは、それぞれ同じく
理事でこのごろかげの薄くなったたいせー教授とはたけ教授
のことだろう。
すると寺田光男はつんく学院長ということになるのかな?
などと考えながらその後を読み進める。
・・・
学院設立の出資者の代表である山崎直樹の運営方針に松井は
異議を唱えて、和田薫などの策略でスキャンダルをでっち
上げられて、身を引くこととなった。
・・・
山崎って理事長じゃなかったっけ、そして和田ていうのは
事務長だっけな?と思ったけど、この後のページが切り取ら
れている。なんだよ、これ?
- 33 名前:8.夢診断 投稿日:2004/04/24(土) 12:38
- 稲葉はこないだ見た奇妙な夢のことについて、飯田や村田や安倍に
話をして、意見を聞いていた。
飯田が宇宙との交信で解明しようとする。
村田があの世との交信で解明しようとする。
安倍が母なる大地との交信で解明しようとする。
三人はそれぞれ交流して、意見をまとめた。
そして次のような結論を導き出した。
「稲葉さんが吉澤になってしまうというのは、何か負い目がある
じゃないのかな。
それから砂漠というのは、心が荒れ果ててるってことを意味して
るんじゃないかな。
吉澤と石川がペアになってるというのは、稲葉さんがこの二人を
特別な関係だと思ってるんでは、無意識かもしれないけど。
それから中澤さんについては、宇宙からの監視ということから、
押さえつけてる存在ということね。そして・・・」
飯田と村田は安倍の顔を見る。
- 34 名前:8.夢診断 投稿日:2004/04/24(土) 12:40
- 安倍はちょっとほっぺをふくらました感じで、
「まあ自分の事について解析するというのは、何か変な感じなん
だけど、他人の口から発表されるより自分で語るほうがいいかな。
なっちは稲葉さんにとっては、よっすぃーや梨華ちゃんと対立する
人物だと思ってるんじゃないの。
そしてなっちはふたりの弱みを握っているけど、どうにかなるって
思ってるような感じかな。
そして裕ちゃんは、なっちとよっすぃーや梨華ちゃんとを平等に
見てると思いたいけど、なっちよりに立っていると感じてるって
とこかな?」
それに対して、稲葉は考えてみる、
「吉澤には負い目なんかないよ。ただ紗耶香にはちょっとね・・・」
市井紗耶香にたいせー教授のゼミを取るように薦めたし、それが
学外での交流につながったし、それで市井が学業を途中で断念せざる
えなかったことに関連してるといえるだろう。
そのことに吉澤の兄が大きくかかわっているので、吉澤が気にかけて
ることは容易に推測できた。
- 35 名前:8.夢診断 投稿日:2004/04/24(土) 12:42
- 「それよりなっちのことはねー」
稲葉は三人に同意を求める。
言わなくてもわかる話である。吉澤と石川が対立してる相手といえば、
辻と加護のほうだろう。
確かに安倍は辻と加護を非常にかわいがっていたけれど、それで対立
関係になるとは思えない。
それと稲葉は中澤に対して頭が上がらないことは事実であるし、
中澤は辻と加護の学級担任ではあるけれど・・・
それに安倍が吉澤や石川の弱みを握っているなんてありえない。
結局この奇妙な夢はまともに解明されることなく、謎のままになって
しまうのであった。
- 36 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/04/27(火) 15:30
- 「田中さん、もういいの?」
アヤカ先生に借りてた本を返しに行っててた。
「ええ、一週間あれば十分ですよ。ていうか訳の分からない
ことが多くて、あんまり・・・」
「あっそうなんだ。私もあまり興味がなかったんで、そんなに
読んでないんだけどね。」
「ところでこの本どうしたんです?」
「実はね、大学生の時ずっと図書館の仕事の手伝いしてて、
その時廃棄図書の中にあったのを見つけて、おもしろそうだ
なと思って、密かに持出してきたんだ。」
「そうなんですか・・・ところであの乗馬クラブって本当は
ちがうんですってね。」
「あっそのへんも読んだんだ。私もそこに書いてあること
くらいしか知らないんだけどね。
妹なら入っているから、詳しいこと知ってるんだろうけど・・・」
確かにそうだけど・・・
この本によると乗馬クラブは本当は「農芸クラブ」といって、
農業と芸術の融合を目指して設立されたのだそうだ。
- 37 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/04/27(火) 15:32
- 田中義剛理事のバックアップもあって、一番活発に動き
出したそうだ。しかし活動を始めた直後に、副部長の
柳原尋美さんが交通事故死して、なぜかその責任を感じて
しまった部長の小林梓さんが心労によって学院をやめて
しまったそうである。
このあたりのことをアヤカ先生に質問すると
「さあ、そのへんのことは妹が入る前だから、よくわから
ないけど、ただ柳原さんと小林さんがいなくなってから
事質戸田鈴音さんだけになったようね。それで戸田さんの
好みの乗馬だけしかやらなくなったようね。
その後よ、うちの妹が入ったのは。」
アヤカ先生はそのあたりのことを話した。
彼女がハロー女学院高等科に入学した時、父親は仕事で
海外へ。それに母親もついていくことになったから、
妹の麻美さんは小学五年生だったんだけど、苫小牧の
祖父母の元で・・・大草原の小さな家ってかんじだった
らしい。ブリーダーをやってたそうで、麻美さんは
そこで犬ぞりに出会ったんだって。
- 38 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/04/30(金) 15:42
- 「そういえば先生は高等科の時にハワイに留学したんですよね?」
「そうね、もともと個人的というか、親がむこうで手続きして、
いざいかんとする時に、学院側からバックアップするからと
いう話になって、なぜだか学院が計画したこになっちゃってて、
相手の高校から4名がうちのほうに留学するという話にまで
発展してしまったのね。
私はむこうで1年間留学したことになるかな。」
そういえば、ミカ先輩はその時留学してきて、そのまま学院に
定着しているんだよね。
噂では日本国籍で、本名もミカ・タレッサ・トッドではなく、
黒澤美馨だというのである。
ところがカリフォルニアの大学に合格したというので、この
夏アメリカに行くと聞いて、彼女はやっぱアメリカ人かと思う
一方で、こちらで大学三年になっているのに、わざわざむこう
の大学に入り直したのだろうと思うところもある。
- 39 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/05/03(月) 15:23
- そんな時に稲葉先生が部屋に入ってきた。
とっさにアヤカ先生はあの本をカバンの中に滑り込ませた
のを見逃さなかった。それであの本について口にするのは、
まずいのだと感じた。
「どないしたんや」稲葉先生の眼が私を捉える。
「あっ田中もおったんか」少し表情が曇ったように思えた。
それをアヤカ先生も察したようで、
「私じゃわからないことが多くて・・・稲葉先生お願いしますよ」
と微笑みかける。
そして私の肩を押す、
「田中さん、質問をどうぞ」
それに励まされて、いくつか質問するけど、稲葉先生ははっきり
しない応答ばかり。
- 40 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/05/03(月) 15:26
- そして稲葉先生はこう言った、
「田中が知りたいことの原点は、ハロー女学院の創立当時のことに
あると思うんで、そのあたりのことを話するわ。
創立当初からいるのは、今では中澤先生と私くらいやね。後あなたが
知ってるところなら、学院長先生かな。
私も中澤先生も大学の研究課程に入ったんやなー。
あっそうや、研究課程いうんは、大学院にする予定で準備段階として
設立したんやけど、いろいろと基準とかクリアできんやったり、経営
方針が変ったりして、すぐに廃止されたんやけどな。
そやからまぁ厳密に言うとハロー女学院卒業とはちゃうんやけどな、
卒業いうことにしてるんや。
- 41 名前:9.学院の過去は暴かれるのか? 投稿日:2004/05/03(月) 15:30
- 私はその前から芸術活動してたんやけど、中澤先生はビジネスの世界
で活躍してて、その時にエンターテイメントにも関わってたそうや。
そういうことで二人とも学院長に勧誘されて、形式的な試験を受けて、
研究課程に入ったんや。
その時大学に入学したんが、平家先生やったなー。
あんたも知とるやろ?・・・あっ知らんか、三年前やからなー。
あんたは高等科からやったか・・・」
延々と稲葉先生は昔話を続けたけど、あまり情報を得ることはできなかった。
- 42 名前:模倣作家 投稿日:2004/05/08(土) 15:10
- 今後の展開が思いつかず、ただいま思案中。
ラストはだいたい決めてるんですが、
そこにどう持っていくかが・・・
しばらく更新できそうにないことをとりあえずお知らせします。
- 43 名前:模倣作家 投稿日:2004/05/17(月) 14:39
- このままではどうにもならないので、ゴリゴリ進むのら!
でもあんまり前進できません。
- 44 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/17(月) 14:41
- 「なるほど・・・
なるほど・・・
そうか・・・」
院長先生の声が聞える。
とりあえず盗聴機はなんとかやってるみたい。
矢口先輩の作ったものだからね。
だけど相槌ばかりで内容わからないね。
- 45 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/17(月) 14:42
- ・
・
・
- 46 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/17(月) 14:43
- 清水佐紀はベッドに寝転ぶとこれからどうしようと考える。
どちらにしても矢口先輩と紺野先輩には相談しなくては・・・
それから萩原舞にも意見を求めなくては、と思ってる。
それにしても通称「ぶつぶつ」の活動がメチャ忙しくて、目が廻る。
それにしてもこのクラブ何やってんだろう?
部長のわたしでさえよく分からない。
歌って踊って推理してるんだけど・・・
筆頭顧問の夏まゆみ教授には、ほとんど会ったことないしね。
先輩方の話によると非常に厳しくて怖いそうだ。
でもカッコよくて憧れてる人もいて、真似して筋肉モリモリの
身体をめざして、本館のトレーニングスタジオで筋トレして
いるらしい。
道重さんは「あんなことやってたら、カワユイから遠ざかるばかり
だからやめたがいいよ。女の子はカワユイが一番!
でも目立たないと何もならないよ。だからあなたも大きくなりな。
あっ・・・でも矢口先輩より小さければ、それはそれでいいかも。
そのまま成長しないのもありだよ。」
て言ってたけど、私はすでに・・・
- 47 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/21(金) 13:25
- それより問題はハロー女学院のあちことで不穏な動きがあると
いう噂。そういえば田中さんはこのごろ何か調べてるみたい。
田中さんといえば、こないだ聞きかじりの芸術論を得意げに
語ってたなとその場面を想い浮べる。
・
・
- 48 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/21(金) 13:27
- 高等科二年と一年の代表はまもなくある文化祭について
話合っていた。
三年級はものすごい芸達者が揃っているので、二年・一年
合同で抵抗するしかないだろうということになったのだが、
「やっぱ大学一年級以外には、対抗できるクラスはないよね」
との新垣里沙の発言で静まり返ってしまう。
田中れいなが静けさに耐えられないように
「この二クラスで力を合せればどうにかなるよ」
と言うものの、清水佐紀から
「田中さん、そんな気休め言わないでくださいよ。
新垣先輩の言う通りなんですから」
と言われてしまう。
- 49 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/21(金) 13:28
- 田中は自分に対しては「田中さん」で、新垣に対しては「先輩」
なのか不満であった。
確かに自分は高等科になってから入学してきたのに対して、
新垣と同じように清水らは中等科からいるわけだから、「先輩」と
呼べないわけで、このハロー女学院ではそういう伝統になって
いるから、なかなかそれに反論するのは難しいのである。
- 50 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/23(日) 14:21
- ちょっとムカっときた田中はアヤカ先生から貸してもらってた
あの本に書いてあった芸術論を思い出して、
「文化ていうか芸術というのは、ひとまねをすることじゃ
ないんだよ。
そんなの単なる芸能なわけで、独自の表現というか個性を
出していかなきゃいけないのよ。
個性ってさ、その人が元々持ってる特性のように思われてる
けど、芸術での個性というのは、そんなんじゃなくて、模索
して獲得していく感性みたいなものだそうよ。
何か思いつけば、いいものができると思うんだけど・・・」
とは言うものの、それから先の具体案があるわけじゃないから、
「それで?」で終わってしまったのである。
- 51 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/23(日) 14:24
- まあそんなこんなしているハロー女学院の文化祭なのだが、
お嬢様学校のワリには、体育会系のノリで体力勝負という
感じになっている。
特にスポーツ好きの中澤裕子が責任者になってからその傾向が
強まっている。
こないだは運動嫌いは保田圭くらいだから調子こいで、学生と
教職員の合同でフットサルチームを結成したけど、まともに
練習しないから連勝連敗中だよ・・・
問題はこんなことではない。事件が発生したのは、こんな文化祭
が終わったあとのことであった。
- 52 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/25(火) 11:30
- 文化祭のダシモノで競いあったのは、やっぱり大学一年級と
高等三年級だったわけで、去年の遺恨もあってかなり燃えて
たんだけど、今ではそんな事どうでもよくなってしまった。
事の発端は矢口真里が制作した盗聴機が学院のいたるところに
設置されてたのが、発覚したことであった。
飯田圭織と村田めぐみが宇宙からの電波の研究のために、
矢口に作らせた受信機を初めてふたりで作動させた時に、
たまたま盗聴機の電波を受信してしまったのだ。
それが自分達の会話だったものだから、見つけることが
できたわけだ。
それでふたりは、保田圭、安倍なつみ、斉藤瞳、大谷雅恵、
そして矢口を呼んで、盗聴機捜索大作戦をおっぱじめたんだ。
- 53 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/25(火) 11:32
- この時の矢口の焦りようは大変なもので、心の中では
「あんなに自分のいない時に扱うなと言っておいたのに・・・
しかしあのふたり、機械音痴だとおもっていたのに、取扱説明書
もなしにどうやって・・・」
と考え込んでしまった。
自分が作ったのがまだばれてないにもかかわらず、どうやって
ごまかそうかと考えるあまり、挙動不審なのを飯田に見抜か
れてしまう。
「かおりとむらっちゃんはどうしてわかったんだろう?」
とつぶやいたのを聞き逃さず、
「わかったんだろうって、矢口!やっぱりあんたが・・・」
飯田が矢口を睨むと思わず、
「いえ、作ったのはわたしだけど、仕掛けたのは・・・」
と言ったもんだから
「誰よ?いったい誰よ!答えなさい!」
と追求される。
- 54 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/29(土) 15:59
- 保田や斉藤は猪口っとびくついたのを、安倍は見逃さなかった。
「あれ、そこのふたり、おかしいんじゃねえのかい?」
「めっそうもございません!」
とふたりは否定するものの、その焦り具合からうそついてんのは
まちがいない!
結局矢口は保田、斉藤の他に紺野ら数人のために盗聴機をかなりの
数を作ったと白状した。
保田や斉藤は辻や加護を監視するために高校三年級の寮のロビーに
設置したことを告白した。
それをふまえて、飯田、安倍、村田は紺野、清水、梅田に事情を
聞こうということになった。
しかし紺野と清水はどこかに雲隠れしてしまい、ようやく梅田を
とっ捕まえて問いただすと、
「里田先輩にたのまれて・・・」とだけ答えるのがやっとの状態。
それで里田を探すのだが見つからない。
- 55 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/29(土) 16:04
- どうも上のほうが絡んでいるのでは、と三人は考えた。
ここはつんく院長にとりあえず報告して様子を見ることにした。
それでつんくに盗聴機がかなりの数仕掛けられていたこととまだ
他にもあるかもしれないと話をするとそれに対して、
「あっそうか、なるほど・・・そうかもしれんな。
スパイごっこがはやっとるらしいから、ありうると思っとったわ」
というつんくの発言に、
「これはゴッコ遊びではありません!犯罪行為ですよ!」と村田の反論。
「そんなおおげさな、まあ盗聴機いううても、市販品をちょっと
手を加えただけやろ。盗聴機つくった矢口には、あすやさしく
説教するし」との発言に、村田は卑らしい感じが顔に出ている
のを見て、つんくを睨んだ。
- 56 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/05/29(土) 16:06
- そんな時に扉が開き、中澤と稲葉があらわれた。その後ろには
矢口がいるようだ。
「院長先生、盗聴の話は承知しましたよ。この問題は対処を
まちがえると人間不信がひろまりますから、慎重にやらないと
まずいですよ」と中澤は発言して、自分にすべて任せるほうが
よいという感じに話を進めようとするけれど、村田は学院生に
年齢的には近い自分のほうがいい主張して、論議は進めど結論
は出ずという事態になってしまう。
- 57 名前:模倣作家 投稿日:2004/06/05(土) 16:29
- ここのところ、仕事が忙しくて、疲労のために何ら創造的な
ことを考えられない状態なので、1ヵ月ほどROMします。
- 58 名前:模倣作家 投稿日:2004/06/12(土) 09:59
- 1ヵ月ほどROMの予定が・・・
仕事を失ってしまって、閑人に逆戻りだよ(泣)
去年同様「課税最低限」を下回る方向で爆走中!?
ということで、まもなく復帰する予定だけど・・・
今回ちょっとショックが大きくて・・・
- 59 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/06/14(月) 15:29
- 院長室での議論の最中にすでに盗聴の話は学院内に知れ渡って
いて、ちょっとした騒ぎがおきてるようで・・・
学院本館のロビーでは、田中が紺野にかみついていた。
「私の部屋に盗聴機を仕掛けて、盗み聞きしてたでしょう?」
「ええ、でもあなたが一人でいる時は、『一人ゴト』の訛ってる
ことがわかったくらいだし、それも誰にも言ってないし・・・」
「なんば言っとるとですか!
そげなこと許さるることじゃなかとですよ!
犯罪行為じゃ・・・」
「ほら、そんなに怒らない。完全に訛ってますよ。
何も訛ってるのが、悪いと言ってるわけじゃないけど。
首都圏出身というだけで『シティーガール』ぶってるような人が
嫌いなだけなの。
あの吉澤先輩なんて田畑に雑木林しかないところで育ったくせに・・・
そういうことわかるでしょ?」
- 60 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/06/14(月) 15:31
- 「話をごまかさんでください。
自分のやったことの責任逃れをするつもりでしょ?
私は絶対ゆるしませんから!」
「ご立派だわー、私が見込んだだけのことはある」
と紺野は嬉しそうな顔をするので、田中はますます血が昇っていく
のが、自分でも分かったので、深呼吸をして落ち着こうとするけれど
うまくいかない。
「いったいどげなつもりですか?
自分は正しいことをしとると思っとるんですか?
あ〜ほんなこつ、グラグラすー!」
睨み付けた顔を身体ごと背を向ける。
紺野の潤んだ瞳から一筋の涙。
「ごめんね、特待生なのを意識しすぎたみたいで・・・」
と田中を後ろからそっと抱き締める。
田中は少し抵抗するそぶりをみせるけれど、かまわずそのまま
抱き締め続ける。
- 61 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/06/14(月) 15:32
- 静かになったので、話を続ける。
「あなたも特待生よね。
みんな勘違いしてるの、最近わかった・・・
特待生と優待生の違いって、サポートの受け方なのよね。
特待生は全員一緒に特別カリキュラムを受けてるよね。
優待生は個人とか小人数でそれぞれのメニューで受けてるんだけど、
その回数はかなり少ないみたい、松浦先輩以外は。
だから後藤先輩が優待生に移行した時、吉澤先輩はランクダウンした
と怒ってたわけよね。
特待生から外れるのが、恐かった。
大学三年級の菊池亜衣先輩のように能力があるような人でも、特待生
や優待生に選ばれなければ、才能を伸ばす機会がないと感じてる。
だから矢口先輩を通して、院長先生から院内の調査を頼まれた時、
断れなかった。」
と打ち明けた。
- 62 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/06/15(火) 10:59
- 「そやけど、なぜ・・・」
田中は振り向いて、紺野の顔を見る。
「ふたりとも臭い芝居してんの?」
しばらくふたりのやり取りを見ていたらしい柴田は声をかけた。
「何も芝居などしてませんよ!」
田中はおこった顔をするが、その発言など無視して、柴田は紺野
に問い掛ける。
「紺ちゃん何やってんの?
最初のほうから聴いてたけど、うまく嘘を真実で包めてたわね」
「私は嘘なんて言ってませんよ」
紺野は少しだけ柴田を睨み付ける。
- 63 名前:10.推理対決?! 投稿日:2004/06/15(火) 11:00
- 「まあ、そうカリカリしないの。
名探偵ゴッコの黒幕があなただってことは、バレてるわよ。
舞ちゃんに裏の名探偵役やらしてることは、誰でも分かるよ。
上級生の須藤、熊井、徳永とかは、操られてるふりをして、
操ってるというような器用なことはできないし・・・
するとヤグタンか紺ちゃんくらいしかいないわけよね。」
自慢気に柴田は話をする。
「柴ちゃん、調子に乗って抜け駆けしたわね」
「リカチャン、いつの間にこんなところに?」
石川が怒ったふりした顔で立っていた。
- 64 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/19(土) 15:08
- 「いつの間にじゃないわよ、まったく。
私に隠れてみんなコソコソ何をやってんだか・・・」
「でも石川先輩は風紀委員でも何でもないでうよね」
との紺野の発言に対して、
「私はみんなが間違った方向に進んでいるようで、心配して
いるのよ。それなのになぜこんなこと言うのよ!」
と石川は涙ぐむ。
「リカチャンうそなき止めてよね」
「柴ちゃんひどい!ののとあいぼんじゃないんだから!
本当に心配して泣いてるのよ!」
「悪かった、悪かった。
でもね、ムキになっても始まらないから、落ち着いてよ。」
「私はいつでも落ち着いてるわよ!」
・・・・
- 65 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/19(土) 15:09
- 柴田と石川のやりとりは延々と続いているのを見て、何かバカ
バカしくなった紺野と田中は顔を見合わせると、その場を去って
いった。
柴田と石川は互いの悪口を言い合っているのが、いつの間にか
他人の悪口に変っていた。
そして互いに共感して、確かめ合っているうちに、すっかり
仲直りする。
そして今度の休日にショッピングに行こうということになって、
口論の原因となったふたりも誘おうということになった。
ところがふたりがあたりを見回すと、紺野と田中の姿が見えない。
それで柴田と石川はふたりの悪口を言い始める。
紺野は優柔不断だとか、田中は独断専行で独り善がりだとか
言っているうちに、一番独り善がりで廻りが見えてないのは、
道重だということに決定した。
それから学院のモットーである「一緒懸命」の精神が失われている
と同感しあった。
そうやって話の続きをゆっくりするたねめ、学生ラウンジへ向った
のであった。
- 66 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/24(木) 13:56
- 一方、紺野と田中はわだかまりを残しながらも、紺野が謝罪
したこともあって、
「なんちゅうやっちゃ」
と田中は思いながらも、とりあえず許したのであった。
それにしても盗聴機事件の波紋と波乱があちらこちらに
でてきていた。
安倍、飯田,村田は学院長室での論戦には負けたものの、
自分達で独自に問題解決のために行動する許可を学院長
から了解を得たのであった。
「まずは斉藤姉妹か木村姉妹から話を聴くべきかな」
と安倍はふたりに確認すると、
「どうかな?なっちがそう思うなら、それでいいじゃん」
みたいな返事。これでうまくいくのか?
- 67 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/24(木) 13:57
- 他方、中澤と稲葉はたまたま学院にいた前田を見つけて、
「いいところにいた。ちょっと手伝ってくれへんか?」
と無理矢理仲間に引き入れる。
そして矢口が紺野や清水を連れてくるのを、職員室の奥の
特別会議室で待つことにした。
中澤の頭の中では、萩原の身柄も確保したほうがいいかなと
思ったりしていた。
そのころ学生ラウンジでは、保田と斉藤姉妹に木村姉妹、
それに里田が顔を見合せながら、コーヒーを飲んでいた。
みんな今日の出来事の展開についていけないという表情が
みてとれた。
そこに呑気に柴田と石川が入ってくる。
「そこのラヴラヴなおふたり、こちらに」
と捕まってしまう。
そして盗聴に関係した人間の行方を尋ねられたが、この
ふたりなかなかの曲者で、
「そんな漠然とした話では何とお答えしてよいか・・・」
とぬかして、話をはぐらかしてしまう。
- 68 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/25(金) 17:57
- そんな時に藤本と松浦がラヴラヴな感じで入ってくる。
「美貴タン、盗聴機があちこちに仕掛けられてんだって?」
「亜弥タン、私達の秘め事も誰かに聞かれてるかもよ」
「う〜ん、ちょっと恥かしいけど、美貴タンとラヴラヴなのを
みんなに知ってもらいたいから、いいもん(ハート)」
「そうだね、あの瞬間に誰かみたいにアニメ声だしたら、
恥かしいけどね」
ふたり見詰め合いながら爆笑する。
次の瞬間、誰かの視線を感じて振り向くと、石川が睨み付け
ながら、こちらに向って来ている。
あわててふたりは、
「何もあなたさまの事を言ったのではございません」
とごまかそうとするが、さてうまくいくのでしょうか?
- 69 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/25(金) 17:58
- 一方、矢口は紺野を探していると、中等科一年の岡井に
出会った。
「ちぃーちゃん、こんちゃん見かけなかった?」
「矢口先輩!わたしより小さいのに「ちびちゃん」と呼び
かけるのおかしくありません」
「ちがうよ!「ちさと」を略して「ちぃーちゃん」と呼んだ
んだよ。それにしても頭に来るなぁー!
背が高くなったからといって、自慢しあがって!」
矢口が怒り狂いそうな感じを察して、
「紺野先輩ですか?さぁ・・・
でも辻先輩や加護先輩が探してたようですよ」
と言ってみる。
- 70 名前:11.めでたしめでたしで終わるはずが・・・ 投稿日:2004/06/25(金) 17:59
- 「そうか、じゃあ清水とか嗣永とかは知らないか?」
「さぁ・・・ただおりんとゆりりんが寮に外泊届を出して
たから、もういないかもね」
「あいつらもいっしょか?」
「たぶん」
「なら萩原は?」
「もう帰ったでしょう、初等科の授業はとっくに終わってるから」
「そうか、ちょっとだけつきあってくれない?」
「デートですか?先輩!」
「ちがうよ!裕ちゃんにこのこと説明しなきゃいけない
んだけど、ここんとこ信用なくしてるからさ」
「でもわたしもそろそろ帰宅しなくちゃいけないんで・・・」
「自宅から通ってるのか。でも少しくらいはいいだろ」
と強引に連れて行く。
- 71 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/06/26(土) 13:36
- 中澤は頭を抱えていた。
「どうもガキを相手にするのは苦手やな」
岡井から話を聞いたのだが、機嫌が悪くてまともに話をする
ことなく、終わってしまった。
矢口には田中を探してこいと命じたのだが、見つからないと
言って、同級の新垣を連れてくる。
ちょこっと話をしてみると、元気な受け答えに普通の人なら
好印象を持つところだが、中澤は捻くれてるのか、よい子
ぶってる感じがして、気に食わないよう。
「田中が盗聴に関わっているようだが、何か知らないか?」
と尋ねてみると、必要以上に慌てふためいてシドロモドロに
なってしまう。
- 72 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/06/26(土) 13:38
- 稲葉はとなりにいて、その様子がおかしくて笑いを堪える
のに苦労していたが、中澤の質問に舞い上がっている新垣を
落ち着かせるため、質問を代った。
それでほとんど関わっていないことを聞き出した。
稲葉は中澤の変な興奮を鎮めると、前田や矢口を加えて、
今後の方針を話した。
矢口が「学院全体がケイタイの圏外だから、広大な敷地で
人探しは大変だよ」とぼやく。
前田も「情報を得ることができなければ、何もできません
よ」と言う。
それに対して稲葉は
「情報がたくさんあっただけでは、何もならない。
あの紺野のように英単語を多く知っていても、まったく
英語を操れないようなこともある。
要はどう利用できるかですよ」
「確かに暗記力だけではどうにもならないことがあるな」
と中澤は的外れな同意をする。
- 73 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/01(木) 16:14
- でも中澤はおかしくなったわけではない。
限られた頭脳で考えていたのであった。
盗聴に関係した者が揃って見つからないというのは、
どういうことだろう?
矢口が嘘を言っているのだろうか?
いや、あの感じでは、大きな嘘は言ってないだろう。
それにしても情報が少なすぎて、分からない。
まずは紺野がどこに行ったかである。
学院内にいるのだろうか?
そうだ!
外泊届けが出てるか確かめてみよう。
- 74 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/01(木) 16:16
- 職員室の書類ラックの鍵を開け、探し始めた。
ふとクラブ活動申請書に目がいった。
何気なく見るとクラブ名には、諜報部とある。
何だ!これは?
顧問教師名は空白、部員名には大学二年級の石川梨華と
高等科二年級の道重さゆみの名がある。
そして備考欄には、緋文字で「期間限定」と書いてある。
いったいなんなんだ!これは?
その次のも眼に入る。
クラブ名は恐竜研究会とある。
顧問教師名は空白、部員名には高等科三年級の辻希美と
加護亜依となっている。
顧問教師名が空白というのが気になる。
何か策略が進行しているのだろうか?
本来の目的を思い出し、外泊届けを見てみるが、紺野の
名前は出ていない。
今日の夜は間違いなくいることが分かった。
- 75 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/02(金) 17:23
- そんなころ、学生ラウンジでああだこうだと言い合っていた
十名は、こんな所にいつまでもいたら、中澤に見つかって
厄介なことになってしまうと学生会室に移動した。
それを安倍、飯田、村田、大谷の四名は突き止めて乗り込ん
で行った。
しかし妙に盛り上がってる雰囲気に戸惑ったが、とりあえず
盗聴問題の情報交換をしようと話を切り出した。
それでそういうことになったのだが、互いに秘密にしておき
たいことが多い上に、知りたいことを相手に問いただすこと
ばかりするものだから、話は進まない。
- 76 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/02(金) 17:24
- かなりの間考え込んでいた保田は、ふと何か閃いたみたいで、
「何か話が煮詰まったみたいだね。
ちょっと用事を思い出したので、失礼するね」
と出て行ってしまう。
木村絢香は
「圭ちゃんほとんど話聴いてなかったよね?
何か企んでるんじゃない?」
「そうね、確かに怪しいわね」
と安倍や村田も同意する。
それで誰かに跡を附けさせようという話になって、一番
年下の斎藤美海に決った。
立ち上がろうとする美海に姉の瞳が袖を引張って呼び止め
ようとする。
それを見咎めて村田は、
「ひいちゃん、何か企んでるわね」
と言うと、それに対して
「村っちゃんは疑い深いんだから。何もないわよ」
とごまかす。
- 77 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/02(金) 17:27
- その時突然、飯田は
「今思い出したんだけど・・・
里田さー、高等科一年の梅田に頼んで盗聴機仕掛けたらしいね」
と問いただす。
里田は一瞬たじろいだが、観念したように口を開く。
「矢口さんから盗聴機を手に入れることができるって聞いたん
だけど、直接面識がなかったんで、石川さんを通じて、えりか
ちゃんから手に入れたわ。
あるところに自分で仕込もうと思ったけど、まだやってないわ」
「梅田を紹介したような気がするけど・・・」
と石川はあいまいな返答。
「だけど私に直接頼めばよかったのに、なぜ回りくどいことをしたのよ?」
「矢口さんに知られたくなかったし、リカチャンおしゃべりだから・・・」
「ひど〜い!里ちゃんそういう風に見てたんだ、私の事!」
- 78 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/02(金) 17:28
- 「うるさい!それよりまだ仕掛けてないというのは、本当?」
飯田は石川を一喝すると里田を睨む。
「嘘じゃありません」
とポシェットから小さな箱を取り出す。
「でもどこに仕掛けるつもりだったの?」
と安倍が尋ねる。
「まだ実行してないんで、それは勘弁して下さいよ」
「だめだよ、さっさと白状しなさいよ」
「未遂なんだから許してあげなさいよ」
大谷がとりなすものの、
「真相究明が必要だから」
と譲らない。
そのまま双方ともああだ、こうだ、と言い合って進展しない。
- 79 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/05(月) 18:21
- その頃みうなは保田を追って、学生会館のロビーに来ていた。
「保田先輩!」
保田の前に大学三年の菊池亜衣と二年の三好絵梨香がいた。
「特待生や優待生だけで秘密の会合をやってるようですが・・・」
「そんなのやってないわよ」
「でも盗聴機のこと、我々一般の学生には何も知らされてませんよ」
「それは・・・公式発表の前にどこからか洩れたのよ」
「それが何ですか?」
「うるさいわねー!
まだ全体を把握できてないのよ。
そんなに気になるなら、附いてくれば」
ということで、二人は保田に連れだって、高等科二年の
寮に向った。
- 80 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/05(月) 18:23
- その寮のロビーでは、新垣、亀井、田中、道重が、三年の
小川と何やら話しこんでいるようであった。
「よっ、元気か!あれ、小川こんなところで何してんだ?」
「保田先輩、何してんだではないですよ。
そちらこそ何しに来たんですか?」
「ちょっとね、調べてるんでね。
小川も田中に何か聞きにきたんだろう?」
「まあ、そういうところですね。
保田先輩はこんちゃんの行方を捜してるんでしょ?」
「まあ、そういうところだね」
「それならここにいる誰も知らないですよ。
ののとあいぼんも少し前まで捜してたようですけど。
私はあの二人がここに調べに来たか、聞いてたんだけど」
田中が後を続けて、
「きょうは会ってません。
それより石川先輩から盗聴機の話を聞いたんですけど、
私に伝えるように言ったのは、保田先輩だったんですか?」
- 81 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/05(月) 18:24
- 急に聞かれたので、保田は思わず頷いた。
「やはりそうですか?
こんちゃんはあの二人が、定例の「お泊り会」ということで、
外泊するのを知ってるから、しばらくしたら自分の部屋に
戻ってくると思いますよ。」
との小川の話に、保田は少し考えていたが、入口の方に
声を発した。
「そこにいるのは、みうなかな?隠れてるの判ってるから」
その声に反応するように、みうなが柱の影から姿をあらわした。
- 82 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/05(月) 18:25
- 保田はそれにほとんど目もくれずに、小川に質問する。
「辻と加護は自分の意志で捜してると思う?」
「多分、中澤先生か矢口先輩に頼まれてやっていると思います」
「そうよね、私はみうなと裕ちゃんのところに乗り込む
けど、小川に頼みがあるんだ。
学生会室に行って、圭織とかにそのこと話してくれない?
高等科二年の皆さんとそちらのおふたりさんはどうします?」
亀井と道重は「興味がないから自分の部屋に戻ります」
新垣と田中は何事か耳打ちしあった後、
「後で結果を教えていただければ、それでいいです」
菊池と三好は何やらひそひそ話した後、ジャンケンをすると、
三好は「保田先輩に附いて行きます」
菊池は「小川と一緒に飯田先輩のところへ」と言う。
「わかった、それじゃ新垣と田中には、後で伝えるね。
菊池と小川、頼んだわよ」
と言うと、保田はみうなと三好を引き連れて出て行く。
「裕ちゃんのいるところなんてお見通しよ」
- 83 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/05(月) 18:27
- そのころ学生会室ではちょっと大変なことになっていた。
話をしているうちに石川がかなり早くから盗聴機事件の
ことを知っていたことが判明した。
石川は保田の約束もあるので本当の事を言えるはずも
なく、世界情勢の話などでごまかそうとする。
それに安倍や飯田はつっこもうとするが、その前に松浦が
「石川先輩いろんなことよく御存知ですね」
などと感心する。
それで村田はあきれて
「松浦、パソコン買って、ネットに接続して情報収集した
方がいいよ」
「でもコンピュータウイルスがこわいから」
「めったに感染しないから、そんなに心配する事ないよ」
「だけど染ったら死んじゃうかもしんないんだよ」
「たしかに最悪PC逝かれちゃうけど・・・
もしかして人に伝染すると思ってない?」
「伝染しないの?」
「何言ってるの!貞子みたいなことあるわけないじゃん」
松浦大いに恥をかいてしまう。
- 84 名前:修正事項 投稿日:2004/07/08(木) 15:56
- >>82 の上から2行目
修正前
「多分、中澤先生か矢口先輩に頼まれてやっていると思います」
修正後
「多分、中澤先生か矢口先輩、
あるいは安倍先輩か飯田先輩に頼まれてやっていると思います」
- 85 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/08(木) 15:57
- こんな場面のところに菊池と小川はあらわれた。
二人の話を聞き、飯田は
「リカチャンは圭ちゃんをかばってたわけね」
と一人納得していると、村田は
「そんな事どうでもいいよ。問題は裕ちゃんたちが何を
考えてるかよ」
との発言。すると安倍は
「それよりは圭ちゃんの考えてることを知りたい」
と言う。だけど木村、斉藤、藤本などは、
「カオリやなっちが裏で何やってるか分からないのに」
と思いながらも、言葉にはしなかった。
それぞれ好き勝手に喋りだして、騒々しくなってしまう。
- 86 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/08(木) 15:59
- 一方特別会議室では、中澤、稲葉、前田、矢口が顔を突合
せていた。
というか前田は
「こんなところで、ああだこうだとやってても、どうにも
ならないよ。
わたしは円華学園で用事もあるし」
と出て行こうとするのを、中澤は
「また逃げようとするの?
あなたはいつもいいところだけ参加してるやないの!
籍だけハロー女学院の教師という感じやし。
わたしはこれでも一応教頭という役職やから、あなたの
ワガママをする許しませんから!」
と強い口調になっていた。
「その教頭先生に一言」
ノックもせずに保田が入ってくる。
- 87 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/08(木) 16:00
- 「圭ちゃんの礼儀知らず!」
と言う矢口を無視して、
「裕ちゃん、あなたが辻、加護に何か指示したでしょ?」
「何か指示したって、どういうこと?
私は二人の担任やからいろいろ生活指導とかもやってるし」
「とぼけないでよ!
あの二人に盗聴事件のことで、何か調べさせてるでしょ?」
「それやったらカオリやなっちのほうが怪しいとちゃうか?」
「だからそれを確かめるために聞いてるんだから」
と保田は後ろにいる三好とみうなに同意を求めるような視線。
それに対して中澤は
「それより二人がクラブ活動の申請書を出してるの知ってるか?」
「えっ」
「あんたも知らんみたいやな。
それなら石川と道重のほうも知らんやろな」
保田は訳が分からなくなっていた。
- 88 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/09(金) 15:59
- 中澤は続けて話す。
「私も少し前まで知らへんかったんやけど」
と職員室から持出してきた例の申請書を保田に示す。
「誰がこの裏にいるかやけど・・・」
中澤は考え込む。
ふと三好は「電話を借ります」と受話器を取る。
学院内の構内電話は、LANというかイントラネットに
繋がったIP電話になっているのだが、今は関係ない。
大学二年級の森菜苗美に電話をする。
ひそひそでよく分からないが終わりのほうは、
「そうね、それがいいかも・・・
菊池先輩にも伝えといて」
というような会話。
するとみうなも
「私もお借りします」
と高橋に何事か電話をする。
- 89 名前:12.小説だから終わるべくして終わる 投稿日:2004/07/09(金) 16:00
- 「・・・こんちゃん、帰ってきてる?
・・・そうなんだ、了解」
みうなは中澤に向って
「紺野さんは寮に戻ってきてるようですが」
との発言。
「そうか、わかった」
と中澤は返事をするが、まだ考えがまとまらない模様。
ようやく正気を取り戻した保田に稲葉が何事かささやいた後、
「もう夕食の時間やし、一度解散ということでいいよね、裕ちゃん?」
「そうやな、そうしよう」
「圭ちゃん、夕食後にもう一度ここに集合という事でいいやろ?」
と稲葉は野洲だを見ると、保田は
「すこし遅くなるかもしれないけど、安倍や飯田たちを連れてくるわね。
三好とみうなはどうする?」
「参加しますとも」
と二人の返事。
- 90 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/15(木) 15:44
- 中澤、稲葉、前田はこじゃれた洋食屋で食事をし、しこたま
酒をかっくらた後、学院に戻った。
三人はほろ酔いで戻るとすでに木村絢香と斉藤瞳が待っていた。
「裕ちゃんたちはお酒飲んでんの?」
「飲んで悪いか?毎日飲んでるでー!」
「でもこれから重要な話があるんじゃ?」
「飲まずにはいられない感じなの。それに酔ってないしね」
「どこが?」
「ここが!」
と頭を差す指がフラフラしている。
- 91 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/15(木) 15:46
- しばらくすると保田、安倍、飯田、村田、大谷があらわれる。
「これでこっちは全員そろったみたいね」
との保田の発言に、
「こっちってどういうこと?これで全員か?」
と中澤はかみつくが、村田は平然とちょっと嫌みなくらい自満気に
「裕ちゃん、落ち着いてください。
他の人たちは学生会室に来てますから、ご心配なく」
「二ヵ所に別れてどないすんねん?」
と中澤がすごんでも、
「だからこれですよ。LANで接続して、テレビ電話で会議が
できるんですよ。」
と言われてしまう。
- 92 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/15(木) 15:47
- 木村がカメラの調整をしながら
「二ヵ所に別れてるから、大勢の人が参加できるんですよ」
ということで、学生会室の様子が映し出される。
「裕ちゃん!元気?」
テレビの中で矢口が手を振っている。
「アホか?さっき会ってたやろ!」
中澤ムカついてるみたい。
そんな中澤を無視して、稲葉は矢口に尋ねる。
「そっちは誰がいるの?」
「えーと、あさみ、みうな、リカチャンに柴ちゃん、そして
菊池さんに里田、藤本、松浦、三好、吉澤、高橋、小川、
紺野ってとこかな。
あっそうだ、教頭先生!学院内のいくつかの場所では、無線
LANが設置されてるの知ってました?
それでIP電話の子機でケイタイみたいに使えるようになって
るんだってさ」
と矢口は発言する。
- 93 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/16(金) 16:30
- 「なんやてー!」
中澤は驚く。
向こう側では矢口に促されて松浦が口を開く。
「中澤さ〜ん、このトランシーバは、学院長先生の直属の
事務員さんから構内での緊急連絡用にということで、
今年の初めに渡されたんです。
他にはのんちゃんかあいぼん、つぶつぶクラブキャプテンの
佐紀たんが持ってると思うんですけど」
次に紺野の発言、
「今日の放課後すぐにののとあいぼんから
『私達これから外出するんだけど、今日は何か大変なことが
起こるみたいだから、これ持ってて』
って渡されたんです」
「それからこれは教室とロビーくらいでしか使えないです」
と松浦が口を挿む。
- 94 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/16(金) 16:31
- 「石川!謎のクラブ活動の申請について説明してくれる?」
保田に促されて石川の発言、
「これは学院長先生直々に頼まれたんですけど、
実際は何も活動してないんです。
それよりよっすぃーから興味ある話が」
「あの〜、今日の放課後寮に戻ってすぐに、ごっちんの
ところに電話があって、
『学院のCFを撮るんで一緒に来てくれないか』
と言われて、横浜の中華街に行ってるみたいです。
高等科一年の梅田えりか、矢島舞美、中等科三年の
村上愛あたりも一緒に行ってるらしですけど・・・」
と吉澤が話すとそれに続いて紺野は
「後藤さんと一緒に行ったのは、めぐたんだと思いますよ」
という発言。
「なるほどね、根源はつんく院長みたいね」
と中澤は考え込むが、結論など出るはずがない。
「なんで中華街でCFなんやろ?」
稲葉はそこにこだわっていた。
「それは単なる口実ですよ」
柴田は主張する。
それからああだこうだと議論したが、結局何の結論も出ること
なく、その日は終わった。
- 95 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/21(水) 12:56
- 翌日の昼過ぎに戻ってきた学院長を中澤と村田と安倍は、
問い詰めようとするが、つんくはこうとぼけてた。
「何や、いろいろややこしい話やな。
言うとくけど、おれは何も企てとらんでぇー」
「それなら一つ一つ答えてってもらいましょうか。
無線LANの内線IP電話機ですけど?」
「それか?・・・それはその、あれだよ・・・
そう!こちらで適当に選んで、モニターとして使って
もらってたんだよ」
「まあ、いいでしょう。これはあまり使えなかったみたい
ですから。
次はクラブ活動申請書について説明してください」
と例の書類のコピーを示す。
- 96 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/21(水) 12:57
- 「これか?・・・それはその、なんだよ・・・
そう!ちょっと複雑な経緯があるんだよ。
環境問題取組モデル校に立候補したんやけどね、
指定されへんかったらカッコ悪いやろ。
それで内密にということで、諜報部にしといたんや。
それから平家が辞めてから、学院内にまとまりがなくなった
というか・・・
そうやな、平家ほど慕われた教師はおらんかったしな。
そんなわけで後藤や吉澤などに、学生から見た教師の評価を
仮にやらせてみたわけや。
まあそういうことに関する予算的措置に利用したちゅう
ところもあるしな」
- 97 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/21(水) 13:00
- 「それじゃ恐竜研究会のほうはどうなんですか?」
「辻加護とはこないだ食事した時、太古の歴史に興味がある
ということで、それならそういうクラブを創ったろうという
ことになったわけや」
「そうですか?これはもう一方の当事者に聞けば分かりますから。
それから学院のCFを急遽撮影するのは、どういうことです?」
「急に決めたわけやない。そういう話が以前からあったのを
知ってたんとちゃうか?」
「でも日時や場所、それに内容も未決だったですよね。
なぜきのう急に実行したんですか?」
「それはいいアイデアが閃いたからや。
思いついたら即実行せにゃいかんのや!それが芸術やからな」
こういう風にああいえばこういうという感じで、ごまかされて
しまうというか、屁理屈でうやむやになってしまうのである。
- 98 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/23(金) 11:20
- 中澤たちの連絡を受けた稲葉と保田は、辻と加護に恐竜
研究会について尋問をした。
それに対して
「こないだ食事に誘われて、このごろ興味あるものは
ないか、みたいなことを質問されたから、適当に答え
といたけど・・・」
とその時の異常な厭らしいつんくの目付きを思い出して、
背筋をゾクゾクさせられた感覚が再現させられて、互いに
眉をひそめあった。
「その後に連絡とかは?」
「それに関しては何も」
「それ以外には何かあるの?」
「う〜ん・・・・」
互いにどうしようという表情で見詰め合う。
- 99 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/23(金) 11:22
- 「きのうの放課後だっけ?
いや授業の終わりかけに、例の無線のやつ、そこに院長先生
からメールが来てたんだ。
内容はね、えーと・・・
これ英数字とカタカナしか出ないから、よくわかんないけど、
『これから大変なことが起きそうだから、外泊届けを出して、
学院内から姿を消しといたほうがいい』
みたいな内容だった。
あっそれからこの無線のやつは紺ちゃんに渡すように指示
されたよ」という話。
それから別に矢口は去年の教育実習で担当したクラスの
梅田と矢島からつんくに関することを聞いたようだが、
特に得る物はなかったようだった。
- 100 名前:13.これで本当に問題解決?! 投稿日:2004/07/23(金) 11:24
- その後、中澤と稲葉が、つんくに食違っている部分の
説明を求めると
「人の記憶はあいまいなことが多いからね」
ですませてしまう。
こんな風にああだこうだやっているうちに、何が問題で
あったのか、うやむやになってしまう。
だけどもたがいに芸術のために一緒に懸命に努力して
いこうということを確認しあって、ともに進んで行こう
ということは分かり合えたようであった。
田中はこのことを振返ってこう思うのであった。
何にもいっちょん問題は解決しとらんやなかね!
何でこげなことで分かり合えるとやろ?
何も変っとらんとに、すべて解決したごたる風に
思っとるんやろね?
おとなのすっことなすこと理解でけんわ!
- 101 名前:模倣作家 投稿日:2004/07/23(金) 11:32
- なんとか強引ではありますが、終わる事ができて
うれしく思っております。
途中から作者の意図に反して、違った方向に進んで
しまい、終わりの見えない戦いを強いられて、途方に
暮れておりましたが、自我の内なる力に導かれ励まさ
れて、この度ようやく完成の運びになりましたのも、
ひとえに神の見えざる手を克服したおかげであると
肝に銘じておるところであります。
終わりよければすべてよし、ということで完成の
あいさつとさせていただきます。
読者の皆様方におかれましては、このような訳の
分からぬものを静かに呼んでいただきまして、
誠にありがとうございます。
今後続篇など書くかどうかわかりませんが、その
時はどうかよろしくお願いいたします。
- 102 名前:[番外]こんなことでは終われない!! 投稿日:2004/07/27(火) 16:47
- こんなあいまいな終わり方でよいのかと不満を持っているのは
田中だけではなかった。
誰もが多かれ少なかれ不満を持っているのは、確かである。
そのなかでも不満に思っていたのは、紺野あたりかもしれない。
その紺野は同級の小川と一年下の級の新垣、それに今では唯一の
初等科の優待生である三年の萩原と学生ラウンジでオシャベリ
していた。
「電話の盗聴もありえたよね?」
と新垣がふと尋ねると
「可能性はあるんじゃない。でも矢口先輩では無理だと思う」
と紺野は発言する。
「公衆電話には仕掛けられてないと思う。
電話会社が定期的にメンテに来てるから」
「まこっちゃん、なぜそんなこと知ってるの?」
「数年前の学院祭で、石川先輩と松浦先輩とあいぼんが、
模擬店みたいなのをやろうとした時に、そこの部屋全体を
ピンクにしてしまおうということになったよね。
それで学院長先生に直談判した時、電話機もそうするという
ところで、公衆電話なら電話会社の所有だからとかどうの
こうのとかいう話をきいてたから・・・」
というあやふやなわりに自慢げな小川の発言。
- 103 名前:[番外]こんなことでは終われない!! 投稿日:2004/07/27(火) 16:48
- それまで黙ってそのやりとりを聞いていた萩原は、ここで口を開く。
「ところで先輩の皆さん、あいまいな決着でもっとも得を
するのは、誰でしょうか?」
「そうだね〜、やはり学院長先生じゃないかな」
「何か企んでそうですね」
「どういう得をするんだろう?」
「なんだろう・・・」
一同そこで考え込む。
「でも盗聴の黒幕は学院長先生だと思う」
と紺野は発言する。
「そうかな?」と萩原は首を傾げる。
「中澤先生に実権を握られるのを恐れてだと思うなー」
と紺野は自信なげに発言したのだが、特に誰も反論しなかった。
- 104 名前:[番外]こんなことでは終われない!! 投稿日:2004/07/27(火) 16:49
- しばらく黙っていた新垣がここで発言する。
「それより私が気に懸っているのは、紺ちゃんと舞ちゃんの
探偵ごっこのことなの。
トランシーバで、ミーヤたちを騙したというか、彼女達を
誘導してたように思うんだけど?」
「私がそういうの使ってるの見たことある?」
「ないと思ってた、少し前までは。
だけどよく見てたら、イヤホンしてたことが多かったし、
制服にピンマイクつけてるように思えるの」
「単なる推測でしょ?」
「そうね、音楽聴いてるだけかもね。
でも無線LANのことがあるから・・・」
「何か企ててると想うわけね。
・・・でも人を疑うって、悲しい事ね」
- 105 名前:[番外]こんなことでは終われない!! 投稿日:2004/07/27(火) 16:50
- そのやりとりに小川が入ってくる。
「人を信用できないなんておしまいかもね。
だけど疑惑をそのままにしておくことは、不信を増大させる
だけだよ。明らかにして真実を知らなくては・・・」
「だけど人は知らなくてもよい事を知ってしまうと、不幸に
なるといわれてますよ」
と萩原が言うと、
「疑問に答えないとそれは疑惑になって、その人は信用を
失ってしまうよ」
と新垣は言い返す。
- 106 名前:[番外]こんなことでは終われない!! 投稿日:2004/07/27(火) 16:51
- 「それからすると教育実習が矢口先輩と保田先輩しかまともに
おこなっていないのもおかしいよね。
そして去年ちょこちょこ見かけてた前田先生が、今年は
ほとんど来られていないのも、何かあると思う」
と小川が言い出す。
「それに新しい芸術をめざすと、その評価をめぐって
疑念が生じるからね」
と紺野の発言。
そこからああでもない、こうでもないと議論が始まる
のだが、何か分かるはずもない。
どうやら秘密をそのままにしておきたい人のほうが多い
みたいである。
- 107 名前:模倣作家 投稿日:2004/07/27(火) 16:52
- 一度終わらしたのだが、どうも自分の内なる心が納得できずに、
内なる力に揺り動かされて追加したのですが、余計収まりの
悪いものになってしまったよう。
本当に小説って難しいものですね。
- 108 名前:ついでのおまけ 投稿日:2004/09/04(土) 16:07
- その後つんく学院長は、特待生とか優待生という名前は
ナウくないと言って、特等生と優等生に改名したのだが、
たいして変ってないように思う。
ついでにその候補ともいうべき上等生を創設して、試験して
31名を合格させた。
しかしその試験の時のスローガンが
「めざせ未来の特等生or優等生!!」
っていうのはどうかしてる。
盗聴騒動に反省した結果がこれか?これ以外名にも改まって
いないし・・・
などと思っている初等科三年の萩原舞でありました。
「学院の正義はどうなったんだ?」
とお嘆きの先輩諸子も今では学院長を正すことができず、
諦めているのを見ると口先で改革を叫ぶ教頭先生と同じだな
と思う。
でも問題なのは「こうして日々が過ぎ去って逝くなんだよ」
などと悟ったようなことを言うだけで、何もしない傍観者なの
かもしれない。
- 109 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/13(月) 16:26
- 学院恒例の「招待入試」といわれている推薦入試の時期である
といっても在校生にとっては関係のないことで、もっぱらの
関心は続々催される学校行事のことばかり。
そんな慌ただしい日の中で辻はふと思った事があった。
何か目先の興味に心を奪われているような気がした。
それに誰かに操られている感じもした。
紺ちゃんの言っていた事を思い出した。
『どうしてもおとなに騙されちゃうんですよね』
そうなのだ、つんく学院長や中澤先生などに騙され煽られ
続けてた気がする。
いつまでも暴走してはいられない。
このままで生きていたくない。
でもどうにもならない。
私を見つめる視線をたどっていくと、あいぼんの笑顔があった。
誰にも話せない事、彼女には打ち明けてた。
あなたはいつも答えてた 『その翼、閉じないで』
そうだ、頬杖をつくのは今日でやめよう!
確かめたい! 今までの行動の意味を・・・
- 110 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/13(月) 16:30
- その辻を見つめる加護。
なぜふさぎ込んでいるの?
私達の行動がいくつもの微笑みを引き裂いてしまったから?
・・・・・
学院で聞えるささやきが耳元をかすめる。
私達は争うために生れてきたんじゃない、
絶え間ない優しさを求めてただけ・・・
夢はただ願って叶うものじゃないから、
そうだ!行動しなくちゃ。
真実を置き去りにして、当てもなく座っている訳にはいかない。
のんちゃんの瞳は何を映しているの?
汚れない心が教えてくれる。
- 111 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/13(月) 16:33
- 風が冷たいのは誰も悪くない、悪くないんだ!
誰かの考えを押し付けるのはやめてよ!
少しづつ輝きが失われてしまうよ。
私達は争うために生れてきたんじゃない、
絶え間ない優しさを求めてただけ・・・
一人になるために街を歩きたい、
たったひとつの夢が見えるから。
たどりつきたい、踏み出す音が聞える場所へ。
たどりつきたい、悲しい現実を越える場所へ。
ずっと変わらないままでいるねと言われ続ける生き方・・・
夢を追いかけるなら、たやすく諦めちゃだめだよね。
自分の生き方は他人に決められたくない。
のの、二人で飛び立てるよね、鳥が空へはばたくように。
いつか飛んでいけるよね、自分達の翼だけで・・・
- 112 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 13:02
- 道重さゆみはこのごろ新聞を毎日読むようになった。
世界情勢を知らなかったから学院の変ないざこざに巻き込ま
れたと思ったのだ。絵里は関係ないよと言ってるけれど。
今朝届いた新聞を目にする。
今日はどんなテレビがあるかな?
・・・
特番ないし、いつも通りでOK。
その次をめくると目に飛び込んできたのは、「刑執行」の大きな文字。
本文を読むとたくさんのこどもを殺して死刑判決を受けた
人が処刑されたのね。
そういえばどれくらい前の事かな、アヤカ先生がおっしゃっていた
「ある理由から自殺できない人がどうしても死にたくて、
たくさんの人を殺して死刑になろうとしている」ことだ。
- 113 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 13:03
- 私が知らない作家の先生が
「死刑囚の思い通りになってむなしい」
とコメントしているけれど、そんな感じがする。
その下にあるどこかの大学教授先生の話は、法律的には
そうなんだろうけど、冷たい感じでかわいくない。
でも本文と照らし合わせてよく読んでみると、死にたいと
思ってる死刑囚は早急に殺してしまって、まだ生きたいと
再審請求をしている者は生きさせてやればいいということ
みたい。
謝罪のことばとか「本人が後悔し、いさぎよく刑を受けよう
とする態度」なんかより「死なせてもらえてありがとう」という
感謝があったのだろうか?
なければ「人でなし」よね。
でも私は人に殺されたことはないし、ましてや人を殺した
事がないので、よくわからない・・・
考え込む道重が時計に目をやると、もう登校の時間。
あわてて飛びだして行く。
- 114 名前:模倣作家 投稿日:2004/09/15(水) 13:04
- _| ̄|○ < 終わらせたいと続けたいの気持ちの攻めぎ合いで
これでFINになるかどうか、決ってません。ゴメン
- 115 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 16:19
- つんく学院長は院長室の大きな椅子にふんぞり返って、左右に
椅子を廻しながら、何か考え事をしている様子。
しばらく前までは考えていたのだが、今はただボーとしてるだけ。
突然扉がノックされ、はっとして我に帰る。
返事をすると秘書が決裁書類を持って入ってくる。
秘書という名の理事長のスパイに促されて、書類に承認の印を押す。
頭の中では「さっきは秘書何を考えていたんだろう?」が漂って
いるのであった。
そうだ!盗聴問題の真相究明のことだった。
うまくごまかし煽り立てたので、中澤と稲葉は対立している。
そして両者はそれぞれ真相究明のために調査団をつくらせるように
させたので、双方が足の引っ張り合いをして、まともな結果報告は
できないだろう。
中澤は安倍、後藤、松浦を中心に活動し、飯田、藤本などがサポート
すると言ってたな。
- 116 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 16:20
- 稲葉は保田とともに来て、石川、三好、岡田を実動部隊として調査
すると言って、三人を紹介してたな。
・・・・・
その時岡田の顔を見て、
「えらい緊張してるようやな。
そんな泣きそうな顔をせんでもええで。リラックスしよう。」
と言ったら、本人はますます困ったというかおになるし、まわりは
笑いを堪えてるような・・・
う〜ん、ああいう顔をされると弱いんや・・・
いかん、いかん。変な方向に逝ってしまうところやった。
そういえば木村絢香が言ってたな、
「宗教は問題を起こす要素があるものです。
極端なのは『理想実現のためには、人を殺すことも仕方ない』
みたいな。そこまでいかなくても『自分の生命を守るためなら
人を殺してもいい』とか『自分自身を殺すことは、他人を殺す
より罪深いことだ』というようなことが内在してますよ。」
そんなものかなと思っていたけど、教育理念にもそういうことが
あるかもしれないと考えた。
理事とか役員はウザイものだ。
教育現場のことなどわかってないし・・・
- 117 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 21:09
- 新垣は学生ラウンジでロイヤルミルクティーを飲みながら、
スケジュール帳を眺めていた。
紺ちゃんからは
「そんなにぎっしり予定を入れてると、予定外のことが
起きたらパニクルーになるんだよ」
なんて言われたけど、そう言うあなたも同類じゃない。
でも対人関係って重要だから、マメに付き合いをしていか
なくちゃだめだと親から言われている。
そうすることによって、人を思いやる心ができてくるって。
学院のみんなはそこが欠けてるのよね。
だから他人に疑惑の目を向けるんだと思う。
でも自分のやってることが、正しいのかなと思ってしまう、
他人はそう思ってないだろうけど。
あややは「自分らしく生きればいいのよ」って言うけれど、
その自信はとこから来るのだろう?
- 118 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 21:11
- 本当の勇気は自分らしく素直に生きることかもしれない。
でもこんなに不調和な環境にいると何か情緒不安定に
なってしまう。
あっこれは後藤さんが言ってたように
「あるがままの心で生きれぬ弱さを誰かのせいにしてる」
ってことかな?
でも「あるがままの心で生きようと願うから傷ついて
しまうんだ」とも言ってたな。
それって「知らぬ間に築いてた自分らしさという檻の中
でもがいている」ということ?
「どうすればいいのだろう」とか「どうしなきゃいけない
のだろう」とか考えるのはやめよう!
アヤカ先生も言ってた、
「愛は奪われたり、与えたりするものじゃない。
気がつけばそこにあるものだ」ってね。
つんく先生も言ってた、
「人の生き方というのは、一生かけて見つけ出して行く
ものだ。そのために一緒懸命に見つけて行ける仲間を
さがしなさい」ってね。
- 119 名前:その後の顛末みたいな・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 21:13
- それにしても保田先生はどうして教育実践だけで、芸術
発表をする研究実践ができないのだろう。
その力はあると思うんだけど、学院本部に認められてない
のは、なぜだろう。
自分で外部と交渉して、発表なさっておられるようだけど、
どうしても限られてしまう。
好きなことで実力を発揮できないなら、平家先生とかの
ように学院から離れるのも・・・
まったく学院で発表できないわけじゃないので、それで
満足してるのかな?
おかしいね。自分の事で精一杯のはずなのに、他人事に
まで気に懸るなんて・・・
人はひとりでは生きられないんだよね。
だから他人のことでも気になってしまう。
自分自身のこともきちんとできてないのに、人にいろいろ
意見してしまう。
ひとりで立っているべきところで、人に寄りかかってしまう。
人間って、人生って、何だろうね。
- 120 名前:模倣作家 投稿日:2004/10/06(水) 15:25
- いろいろ考えましたが、これで完了といたします。
続くものだと期待していた方には、どうもすいませんでした。
ワガママお許し下さい。
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