finale

1 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:25
あやみき
シリアスです。
2 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:29



髪の毛も
輪郭も
声も
手も
足も


笑顔も




君の存在も、すべてがいとおしい


────────────finale




24時間、私が君を想っても、
君は1分すら、いや、1度も想わないのかもね


一方的に想うのが、良いのか、悪いのか
その答えがなくてもいいと思う
だって止まらないのだから
抑えきれないのだから
もう少し
もう少し
君を想わせて
感じさせて
3 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:31

水曜の6時
この時がすべてなのに
今だけは独占していられるのに
胸が痛いのは何故だろう

「ふっ…ん…ぅ」
「かわいいね」

冬だというのに、こんなに暑いのは
君がこんなに近くにいるからだね

「い…ァあ…っ」
「我慢しなくてもいいよ」

その言葉にチクリと胸が痛んだ。
どうして
なんで


優しくするの

「あーーーーっ…ん」
この瞬間は大嫌い
だって君との時間に終わりを告げてしまうから
4 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:34

一分前に時を戻して、そのまま時間が止まってしまえばいいのに

「亜弥ちゃんほんとかわいいね」
「え」
寝そべっている少女は、困惑した表情をして体をおこす。
「ふふ、鈍感だねぇ」
大きな瞳で、上目遣いに顔を覗き込んでくる少女は
とても無防備であった。
「…そんなとこが好きなんだけどね」
ショートカットの少女は、ニコリと笑みを浮かべる。
眩しいくらいの、優しい微笑み。
彼女の名は藤本美貴。
「はぁ…」
大きなあくびをしながら、ポケットから何かを取り出した。
「美貴ちゃん!!煙草は駄目だよ!!身体に悪いよ!!」
勢いづいて、拳を握る。
5 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:35

「あぁ、ごめん」
軽く頭を下げたが、心から謝っているとは思いにくい
口調だ。その様子から、罪悪感は全く感じとれない。
「もう吸っちゃ駄目だよ…まだ未成年なんだし」
「はーい、今後一切吸いませーん」
煙草をポケットにしまうと、突然立ち上がった。
「じゃあ、また明日ね〜。亜弥ちゃーん」
「美貴ちゃ…」
美貴は、相手の返事を待たず、部屋を立ち去る。
残された少女は、重い溜息を吐く。




彼女の名は松浦亜弥。
6 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:38


床には、服が散乱していた。
亜弥はそれを拾うと、ベットに腰掛けた。

「美貴ちゃんの…ばかぁ」

独りの少女の虚しい叫び。
この部屋には、返事をしてくれるはずの張本人はいない。
わかっていても、その事実に、じわりと涙が込み上げてくる。
今日もずっと我慢していた。強ばっていた体が開放されて、
涙が出る。




こんなことをいつまで続けるんだろう
7 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:40

長いこと終わりのない夢を見ているようだ
身体を重ねれば重なるほど、思いは募って
それとは裏腹に罪悪感が溢れて
この身体は彼女の前では素直で
心が拒んでも、身体は正直だ
彼女しか私にはない
彼女が手に入れば

そうすれば、この心は満たされるのだろうか
ぽっかりと穴の空いた心は隙間なく満たされるのか
彼女にとって私はどんな存在なんだろう。
ふと疑問に思う。
友達
親友
恋人

どれも違うよね
友達でもないのかもね
ただの「おもちゃ」
そんな事ははじめからわかっているのに
いざ考えると、やっぱり辛いね
高望みはするつもりないけど
してしまう
口に出しては言わないけれど、私を好きになってほしい
私はそれ以上に君を愛せる自信があるから
だから──────
8 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:41


「………来てない」
何度問い合わせても、無駄な行為。
美貴ちゃんがメールを送ってくるわけがない。
なのにどうして、心の奥で期待しているんだろう。
身体が冷えてゆく。
ついさっきまで、あんなの温かかったのに。
香りはまだ身体に残っているのに、温もりは
簡単に消え去ってしまう。


私と美貴ちゃんは、身体でしか繋がってない証拠だね


もう終わりにしよう
こんな関係には終止符をうつしかない
9 名前:remo 投稿日:2004/03/22(月) 18:58

更新終了
更新ペースは遅いと思いますが、気合入れて頑張ります。
10 名前:名無し飼育 投稿日:2004/03/23(火) 00:59
切ないっすね。
続き期待してます。
11 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:38


亜弥は学校が嫌である。
理由は一つしかないのだが─────


「おはよーーー!!!」
眠気も覚めそうな、トーンの高い声。
「おはよう…」
「亜弥元気ないね〜。どうしたの?」
亜弥の事を心配してか、顔を覗き込む。
彼女の名は石川梨華。
亜弥とは、幼い頃からの友人だ。
「昨日あんまり寝てないだけ…大丈夫だよっ」
「いっぱい睡眠とらないと身体に悪いよ〜」
「…そーだね」
梨華の話もあまり頭に入っていない。
今はただ、身体が重い。
教室に向かうまでの廊下は、地獄へ向かう道のようだ。
このままずっと廊下が続いてればいいのに。




「おはよーーー」



その声に
振り向きたくはない
けれど立ち去るのは不自然すぎる
彼女からは逃れられない


こんなとき私は無力だ
12 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:40


「美貴ちゃん、おはよ!!今日は遅刻せずに来たね」
梨華は丁寧に挨拶する。
亜弥は俯き、黙り込む。
「うん、今日は早起きしたんだ…それより亜弥ちゃん?」
自分を呼ぶ声。
視線が痛い。


私を見ないで


「……な、に」
力を振り絞って出した声。
自分でも分かるくらいに、間抜けな声だ。
「体調悪いの?そんな顔してたら、かわいい顔が台無しだよ」



ウソツキ
そんな事思ってもないくせに
13 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:45


「亜弥ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど」
「じゃあ、先に教室行っとくね」
そう言い、梨華は行ってしまった。



お願い、行かないで
二人にしないで


今、美貴ちゃんの話なんて聞きたくない



梨華が教室に入ったのを見届けると、亜弥に詰め寄った。
腕を掴むと、亜弥の耳元に口を近づける。
息が耳に当たってくすぐったい。
「っ……」
「亜弥ちゃん…昨日も可愛かったよ…」
その言葉に、くらりと、眩暈がする。
14 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:51

あんなに昨日は求めていたのに
今は声すらも聞きたくない

「今日も昨日のところで…いいでしょ?」
「…っだめ、今日は…」
亜弥が拒むと、掴んでいた腕をさらに強く掴んだ。
「いっ…た」


心は拒んでいても、身体は拒否しようとしないから
その手を、振りほどけない


「どうして?」
「……今日は用事があるから…」
「ふーん…じゃあまた週末にね」
不満が残るのか、唇を尖らせていた。
亜弥の腕を開放すると、亜弥を見つめる。
「?」
少しの沈黙の後。
軽く唇に口づけた。
「!?」
突然の事態に、亜弥は驚きを隠せない。
「な…美貴ちゃ…」
「あは、じゃ、お先」
そう言い美貴は教室に向かった。
一瞬のその行為を、誰も見ていなかったのが幸いであった。


美貴ちゃんは卑怯だね
香りだけ残して去ってしまうんだもん
悔しい

またその香りを欲して、求めてしまう
15 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:52


あの日、あの場所で、君と出逢ったのは、運命と言えるでしょうか
ただの偶然でも   嬉しかったの
目に映るもの   すべてが歪んで見えて   
自分が息をしているのも不思議だっ
もう私にはなにも残っていなかった
すべてを捧げたから
そんな時、君がいたから
こうして今生きている
でも最近思うのは

君とこんな形で、出逢いたくなかった


生まれ変われるなら  次は別の形で出逢いたい
16 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:55


ただ身を任すことで   生きていられるなら
楽しんでいられるなら   もう何だっていい


──

────

─────────

すべての授業が終了する。
それは亜弥にとって、束縛から開放されたようなものだ。


帰り道、商店街を通って帰る。
笑ってる人
幸せそうな人
泣いてる人
怒ってつ人

いろんな人の一面が伺える
何も気にすることはない
ただ歩くだけ
ここは何も変わらず、受け止めてくれる
何も言わないし、拒否されることもない
17 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 01:57

「ねぇねぇ、君一人?」
いつもとなんら変わりない帰り道。
商店街に到着するまで、あと200mといったところだった。
「……なんですか…」
「俺ら暇なんだよねー、何か奢るから遊ぼうよ」
若い少年三人組だった。
まったく知らない。
「………」
以前にこんな事はあったが、商店街内の出来事であったため、
周りの人が助けてくれた。
生憎、この場所にはなったく人気がない。
女一人の力で男三人に適うはずがない。
仕方なく、亜弥は無視して、商店街を目指すことにした。
「ちょっとー無視?遊ぼーよ」
男の一人が亜弥の腕を掴んだ。強く強く。
その瞬間、美貴の顔がよぎった。


美貴ちゃんと同じ事されてるだけなのに
怖い
気持ち悪い
吐き気がする
いや  いや   いや
18 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:00


「いや!!放してっ!!」
無我夢中で振りほどこうとしたが、他の男にも掴まれて
どうする事も出来ない。
「君かわいいね〜何して遊ぼうか」
少年三人は顔を見合わせ、高笑いした。
冷たい風が頬に当たる度、鳥肌が立つ。
恐怖で涙が溢れ出た。
怖くて抵抗も出来ない
抑えられている腕が、震え出す。
声も出ない。




キモチワルイ
キモチワルイ

タスケテ
オネガイ


ダレカ
19 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:04

「ちょっとあんた等、何してんの」
「「「???」」」
男三人は、頭上にハテナマークを浮かべる。
その声に動きは止まり、亜弥を掴む力が緩む。
後ろを振り返る。
「その子嫌がってんじゃん、放してやりなよ」
そこには金髪に近い髪の色をした少年が
腕を組み立っていた。
「なんだおめぇ、関係ねぇだろ」
「…あんた等、M高の生徒だろ」
腕を組み、大きな瞳で睨みつける。
青く輝き、吸い込まれそうな瞳に、
亜弥は不謹慎ながらに見とれてしまっていた。
「なな…なんだおめぇ!!」
「学校にチクってもいいのかなぁ、厳しいんだろ?」
鼻で笑いながら、ニヤリと微笑む。
鋭い瞳は、男達の慌てようを見逃さない。
男達は焦った様子で、またも顔を見合わせると、亜弥を開放した。
「こ…今回は許してやるけど、次はただじゃおかねぇからなぁ!!」
「そうだ!!どうなっても…知らねぇぞ!!」
可笑しな捨て台詞を吐いて、商店街と反対の方向に逃げ去った。
青い瞳の少年は、その言葉にカチンときたのか、
「上等じゃ!!やれるもんやらやってみぃ!!」
と叫んだ。
20 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:07


数分間の出来事で事態がよく飲み込めない亜弥。
開放されてほっとしたのか、その場に座り込んだ。
もう大丈夫なのに、震えが止まらない。
涙は再び溢れ出た。



モウダイジョウブ   ダイジョウブダカラ




青い瞳の少年は、男達が消え去ったのを見届けると
亜弥に歩み寄ってきた。
「もういなくなったから安心して」
「ぅっ……ふ…っ…」
「我慢しなくてもいいよ、もう大丈夫だから」
青い瞳の少年は、泣き止まぬ亜弥を抱きしめた。
21 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:08




強く、優しく。




こんな優しく抱きしめてくれる人が、これまでにいただろうか
心地良いこの腕の中に   もっと早く辿りつきたかった
何も考えたくないの    何も見たくないから
だから、だから、涙が止まるまでは─────このままでいさせて

22 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:10


「さっきは…本当にありがとうございました」
「いいよ、困ってるかわいこちゃんほっとけないタチなんで」
落ち着きを取り戻した亜弥は、青い瞳の少年と商店街内の喫茶店
に入店した。
「ジュースまで頂いてしまって…すみません」
「あははー、いいのいいの、気にしない」
その少年は、話してみると、どこにでもいる極普通の少年だった。
出逢って間もなく、よく分からないが、明るくて、心の優しい人
なのだろうと想像がつく。



その彼を見て、別の影を思い出した。
遠い昔の…今は亡き幻影を。
23 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:12


「……あの名前を…」
「あぁ、ひとみって言うんだー。自分は?」
「…亜弥っていいます、松浦亜弥」
「かわいい名前だね、よろしく亜弥ちゃん、俺の事は何とでも
呼んで!!」
にこっと微笑む。
さっきとは違う、優しい一面が垣間見えた。
亜弥もその笑顔につられて、にこりと微笑んだ。
「突然だけど、その制服、Y高校だよね?」
「はい…?」
「Y高に知り合いがいるんだけどさぁ、男遊びが激しくて」
ひとみは話を続ける。
「好きな人が出来たけど、禁断の愛?になっちゃうーとか言って」
ひとみは手振り身振り、身体を動かし表現する。
亜弥はくすりと失笑した。
「ほんと意味わかんねーやつで。で、亜弥ちゃんは好きな人とか
いないの?」


─────スキナヒト



───アノヒトハモウイナイ───
24 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:16


脳裏に浮かぶのは…。
頭がパンクしそうに
痛い  痛い  痛い


「っ……」
「え、ご…ごめん!!」
あまりに突然すぎて、立ち上がって詫びる。
ひとみがたてた音に、他の客の視線が一気に二人に集まった。
「す…すんません…」
周囲に頭を下げると、音を立てないよう、席に着いた。
「聞いちゃいけなかった…?」
「違うっ、違うんです…ごめんなさい。嫌なこと、思い出しちゃった
だけなんです…」
途切れ途切れに、言葉を発した。
「そっか…びっくりした…」
「本当にごめんなさい…。好きな人は…今はいません」
亜弥は軽く頭を下げて詫びた。
溢れ出た涙を、服の袖で拭った。肩はまだ震えている。
「そっか…」
まだ他の客は、黙ってこちらをちらちらと見ている。
「別れ話か?」などと口々にする者もいる。
「あ!そうだ、メアド教えてくんない?」
静まり返った場の雰囲気を戻そうと、ひとみは話題を変えた。
「俺のも教えるよ!!何かあったらメールちょうだい!!」
25 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:21


あんな事があって、助けてもらって
いっぱい迷惑かけちゃったなぁ
今度メールで謝っとこう

───────

────

───

「…もう寝よう」
寝間着に着替え、布団に入ろうとした時であった。
携帯の着信音。すぐ途切れたので、メールのようだ。
「こんな時間に誰…」
時計の針はもう二時を指していた。
眠い目をこすり、机の上の携帯を手に取る。
ディスプレイには一件のメールが表示されていた
26 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:23



愛しの亜弥ちゃんへ笑

「「美貴だよぉー♪こんな夜遅くにごめんね。
明日は学校行かないから、先生になんか聞かれたら
よろしく伝えといて下さい。
ところで、亜弥ちゃん、明日の夕方空いてない?」」

27 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 02:30

更新しました。
この物語の中で、吉澤さんは男の設定です。

>>10 名無し飼育さん
感想ありがとうございます。
更新量は少ないですが、頑張りますのでよろしくお願いします。
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/23(火) 02:42
また設定があまり見た事無さそうでいい感じですね。
あやみきとの事で期待しております。
29 名前:dada 投稿日:2004/03/23(火) 03:22
松浦さんと藤本さん、吉澤さんそれぞれとの関係がどうなっていくか楽しみです。
30 名前:名無し飼育 投稿日:2004/03/23(火) 16:18
この三人の設定はすごいワクワクします。
続き期待してます。
自分も藤本さんに求められたいっす…(爆)
31 名前:プリン 投稿日:2004/03/23(火) 19:09
更新お疲れ様です。
すごく好きですwこういうのw
3人の関係が気になりますねぇ。

次回の更新待ってます!
頑張ってくださいな!
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/23(火) 19:47
おお!結構面白いです。
ちょっと黒い(?)藤本さんはいいですね。
あやみきファンなんであやみきになるかどうか楽しみしてます。
33 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:18


はぁ  はぁ  はぁ


息が白く滲む
もう少し
もう少し



「亜弥ちゃーん、こっちだよ〜」
帽子を深く被り、携帯片手に手を振っている。
遠くからでもわかるくらい、ニコニコしている。
「…美貴ちゃん、、」
全力で走って来た亜弥は、荒い息を繰り返す。
「じゃあ、さっそく行こっかぁ」
へとへとの亜弥をお構いなしに、強く腕を掴む。
「ちょっと…美貴ちゃん、どこ行くの?」
「え、そんなの決まってんじゃん。ホ・テ・ル」
34 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:22


美貴は、自分の左側に位置する建物を指差した。
外観の派手さで、はっきりとわかる。
ラブホテルであった。
「そ、そんなの聞いてないよ!!大切な話があるって言うから…」
「大切な行為だよ」
まったく知らない場所を待ち合わせ場所に指定されて、
確かに小さな疑問をおぼえた。

──まさかこんなことになるなんて

「あたし達が会ってすることなんて一つしかないじゃん。
そんなにあたしが嫌?」
美貴は寂しげな顔をして見せた。


   それ以上、亜弥は何も言わなかった。


───そんな顔しないで
嫌いにならないで
35 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:23

───────

「はっ…ぅん!だ…っ…めぇ」
開かされたままの脚。付け根がジンジンする。
「何が駄目なの?」
亜弥の股間に顔を埋めながら、問う。
「や……あっ…」
その言葉を無視し、行為に専念する。
蕾に歯を立てると、亜弥の身体は跳ね上がった。
美貴は亜弥の感じる所を把握している。
それをわかって、わざとポイントを外す。
「いぁ……み…きちゃ、ん、ぉねっ…がいぃ」
泣きそうな、か細い声は、今にも途切れそうだ。
「なぁに」
「もぉ…だ…め…お願い」
「どうして欲しいの?言わなきゃわかんない」
強い口調。
「…めて」
「聞こえない」



「…な…めて…っ…」
36 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:27


「よく言えました、イイ子だね」
軽く頭を撫でると、亜弥の蕾を強く舌で吸った。
「っん…あぁ…ん!!」
亜弥の蕾は熱を帯びていた。
舌のざらざらとした感触が、亜弥の身体を一層熱くさせた。
「ぅ…はぁ…んっ…」
愛液が溢れ出す。夥しい量の愛液は、シーツに大きなシミをつくる。
「やっぱかわいいね」
亜弥の唇を塞ぐ。柔らかな唇の感触を楽しみながら
指を二本、一気に亜弥のナカに静めた。
「あぁっ!!?痛…っ!!ふぁっ…」
狭い亜弥のナカで、美貴の指が蠢く。
そして、奥へ奥へ、進んでいく。
「ぁ…んっ…痛っ…痛い…よ…!」
あまりの痛みに、亜弥は目に涙を浮かべる。
脚をばたつかせ、逃れようとする。
「やぁ…あぁっ…いた…ぃ」
「……っ…」
美貴は小さく舌打ちすると、ベットの下に落ちていた
亜弥の制服のネクタイを拾った。
「…み…きちゃ…!?」
37 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:30


亜弥の手を高く上げると、ネクタイで手首をキツク縛った。
少しの力じゃとれないくらい、キツク、キツク。
「…なんでこんなこと…っ!!」
「亜弥ちゃんが騒ぐからだよ」
無表情の美貴は、再び亜弥のナカに指を沈める。
「あぁ!!…っ…ゃ…んぁ」
指が動く度、グチュっと淫らな音がする。
「や…ぅん…!!はぁっ…ぁあ…」
荒い呼吸。
それを耳にし、興奮を憶えた美貴は、もう一本、指を加えると、
更に激しく動かした。
その都度、亜弥の愛液は溢れ出る。
「ぁっ…ぅ…ふっ…ゃ」
だんだんと痛みは和らぎ、亜弥は抵抗しなくなった。
「いやらしいね、ナカすっごく濡れてるよ」
その音は激しく、止まることはない。
少しの指の動きでも、淫らな音は止まず、
亜弥は羞恥に顔を赤面させる。
「ふ…ぁも…ゃ!!あぁ…っっ」
亜弥の表情から、絶頂に近いことが伺えた。
「もうイッていいよ」
美貴は満足げに微笑む。
そして、奥を強く指で突くと、亜弥は絶頂に達した。
38 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:33


「………っん…」
重い身体を起こす。
「あれ…」
亜弥は行為のあと、疲れて眠ってしまったのを思い出した。

─────あ、美貴ちゃんは……?

辺りを見渡すと、美貴の姿はない。

─────帰っちゃったか…仕方ないか、いつもの事だし

「…私も帰らなきゃ」
時計の針は10時を指している。
急いで帰宅の仕度をしようと、ベットから抜け出した。
「あ、亜弥ちゃん、起きたの?」
「……美貴ちゃん、帰ったんじゃなかったの…?」
「うん」
美貴はバスローブを身につけていた。
どうやら風呂上りのようだ。
「あー、気持ちよかった。あれ、もしかして帰るの?」
「うん、もう10時だし…」
服を身に付けながら、亜弥は言う。



「亜弥ちゃん、お願い、帰らないで」
39 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 21:36


「でも、もう夜だし…帰んなきゃ…」
「お願い…今日だけだからっ!!」
美貴は手を合わせて、亜弥に頼みこむ。
上目使いにこちらを見ている。


─────そんな顔されたら断れないよ




美貴ちゃんにそんな事を言われたのは、はじめてだった
美貴ちゃんの様子から、何かある事は分かるけど、敢えて聞かないことにした

   
       美貴ちゃんが私にそうしてくれたから
40 名前:remo 投稿日:2004/03/23(火) 22:15


更新しました。短いです。えろです。

>>28 名無飼育さん
ありがとうございます。今後ともよろしくおねがいします。
>>29 dadaさん
楽しんでいただけるよう、頑張ります。ありがとうございます。
>>30 名無し飼育さん
ありがとうございます。期待に答えれるよう、頑張ります。
>>31 プリンさん
好きといっていただけて、とても嬉しいです。ありがとうございます。
>>32 名無飼育さん
ありがとうございます。藤本さんを真っ黒(?)にしたいので頑張ります。
41 名前:プリン 投稿日:2004/03/24(水) 14:49
更新お疲れ様ですw
美貴たん・・・黒い。
真っ黒ですね。まさに。
あぁぁよっちゃんが気になるよぉ。

次回の更新も頑張ってください。
お体にお気をつけてw
待ってますよぉ〜。
42 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/25(木) 23:58
藤本さんの気持ちが届く事を願ってます。
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 22:00
まだまだ始まったばかりなのでこれからどうなっていくのか、
想像、もとい妄想が色々と膨らんでしまいます(w
よっちゃんさん好きなんで今後どう動くのかも気になってます。
次回更新、楽しみにしてます。
44 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:24


亜弥は、両親には友達の家に泊まる、と了承を得た。
「じゃあ、おやすみなさい」

電気を消すと
長い沈黙がはじまる。


────もう美貴ちゃん寝たかなぁ


美貴が隣で寝ているのが、なにかとても緊張する
目を閉じて脳裏に浮かぶのは、美貴のことばかり。
「ねぇ…亜弥ちゃん、もう寝ちゃった…?」
そんな時、美貴の声が聞こえた。
「…起きてるよーー。」
「良かったー」
美貴は身体を亜弥の方に向ける。
「なんか眠れないなー、寒いし」
「そうだね」
そんな他愛の無い会話を交わしていると、急に美貴の
表情が変わった。
「去年の、さむーい日だったよね」
45 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:27


─────え


「亜弥ちゃんと出会って」



「でも亜弥ちゃんと出会えてよかったなぁって思うよ」



「……?亜弥ちゃん泣いてるの?…」



「いいんだよ、思いっきり泣いても。我慢しないで
あたしはずっとここにいるよ…消えたりしないから」


    ズットソバニイルヨ
46 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:30


────運命の歯車が狂い出したのは、去年の冬のことだった。



キエタ
モウイナイ

フレルコトモ   ハナスコトモ  デキナイ
ワタシノセイ   ワタシガワルイ


ワタシモイカナキャ
ヒトリジャカワイソウダモノ
47 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:33

美貴ちゃんと出逢ったのは、忘れもしない、
寒い、寒い冬の日だった。
あの日の私は、葬儀を抜け出した。
あんな場所にいられなかった。
だって私はこうして
何不自由なく呼吸しているのに
あの人はもう
目をあけない
息をしない
冷たくなって
この目で、追う事も出来ない



ワタシノセイ
ワタシガ



カレヲコロシタ
48 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:35


すべてを忘れてしまいたかったから
私も   あの人と同じ場所に行くべきなんだ
どうせいつかこの命は尽きるんだから

この命を、今にでも
終わりにしてしまいたかった

頭が割れそうなくらい痛くて
目の前は真っ暗で
自分は壊れてしまってんだと思った
未来も
幸せも
笑うことだって出来なくなる
私は表情をなくした人形になる
それくらいの天罰を受けるべきなんだろうけど
耐えられない  こんなの

だから、私も彼の元に行こうと思った
49 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:39

息をしない彼は
私を恨んでいるに違いないって
私が  私が  悪いから

何も持たず、ハダシであの場所を飛び出して、
夜の街を途方にくれていた。海へ行こうとした。
海に沈めば誰にも気づかれず、彼の元まで行けると思ったから。
けれど、その途中、街で変な連中に絡まれた。
そんな私を、助けてくれた。それが美貴ちゃんだった。
美貴ちゃんは、まったくの他人で、はじめは警戒した。
でも、泣きじゃくる私を
黙って抱きしめてくれた。
何も考えれなくて
少しの恐怖も、すぐに消え去った。

だって
もうその腕に縋りつくしか道はなかった。
私に、手を差し伸べてくれる人なんて、もう現れないだろうから

優しくて、暖かな、腕の中に。
50 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:42

それから、あの出来事が落ち着いてきて
いろんな話をしたね
美貴ちゃんも…あの出来事は知っていた。
彼を知っていたらしくて。
あの頃、美貴ちゃんと話すのはすっごく楽しくて
このまま時が止まればいいのにって、何度思ったか
いっぱい泣いて  その分沢山笑った
私のこと、よく考えてくれた
私を受け入れてくれて
本当に嬉しかったの

でも、今思うと
甘えてばかりで
自分の意見ばっかり言って
美貴ちゃんの話なんて聞けなかった
自分の居場所が見つかったんだって
勘違いしてたの
ずっと美貴ちゃんといたかったの
そうすれば辛いことなんてないと思ってた
涙流すときは
もう一人じゃないって
美貴ちゃんだって辛いのわかってたのに
自分のことしか頭になかったの

ずっと束縛していた
このまま一生
私だけのものだって

美貴ちゃんを1番わかってなかったのは、私だね
51 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:46

楽しい時間は、そう長く続かなかった
あんなに脆く崩れてしまうなんて
未だに私は、夢を見ているようだから
あれは夢だって信じたいの



その日、美貴ちゃんがなんの予告も無く、私の家に突然来た。
そんな事ははじめてだったから、すごく驚いた。
何を言っても返事をしない。
明らかに、美貴ちゃんの様子がおかしかった。
どうする事もできず、家に入れることにした。

それは────
私の部屋に入った途端の出来事だった。
52 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:47

美貴ちゃんは、ベットに倒れこんだ。
話かけても、やはりなんの返事も無い。
遊び疲れてるのかと思い、布団を掛けてあげようと、近づいた。
すると美貴ちゃんは、私をベットの中に引きずり込んだ。
強い力で。
何かの遊びだと思った。
だから抵抗しなかった。


なのに


それからのことは
よく覚えていない
強い力で制圧されて
いつもの美貴ちゃんじゃなかった
怖くて
どうすることもできなかった

目の前が真っ暗になって
訳が分からなくて


その日から
身も、心も、すべて支配された
53 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:49

あの悪夢を

夢に見るようになった
美貴ちゃんと身体を重ねる度、思い出すの
あの日のこと
よく覚えてないっていうのは
嘘だよ

全部覚えてるけどね
思い出したら
いけない気がするの


あの日は 何も   何も
なかった事にしようと思ったの

美貴ちゃんは家にこなかった
私は美貴ちゃんと会わなかった
メールだってしなかった
すべて否定すれば
楽になれるでしょう
全部、我慢すれば
美貴ちゃんが傍にいてくれるのなら
何でも我慢できるよ

だって、私にとって、美貴ちゃんはなくてはならない存在
なんだもん
54 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:52


私はこんな関係やめようと思ってるだけで
結局言い出せない
それは
断ち切ってしまえば
もう美貴ちゃんの傍に
いることは出来ないって
わかってるから


でもいつまで、こんな事は続けるのか
美貴ちゃんが私に飽きるまで…?
いつか来る   そんな日が
はじまりがあるなら、終わりがあるもんね


でも、終わりが来るまでは
ずっと一緒にいたい
55 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:57

─────


「……っ」

温かい日差しが、亜弥を照らす。
あまりに心地良くて、もう少しこのままで居たかったが、
目が冴えてしまい、渋々起き上がる。
「あ…っ」
小さくあくびをして、背筋を伸ばす。
まだ少し眠気の残る目を擦る。
そして、昨日を思い出す。
美貴に抱かれて、泣いて、そのまま眠りに着いた。
そして、出逢った日を思い出しながら─────

「…あれぇ…美貴ちゃん…」
隣で寝ていたはずの美貴がいない。
布団から出て、バスルームの向かうが
美貴の姿はない。

「…あ」

ベット付近のテーブルに気が付いた。
テーブルの上には、鍵とお金と手紙が置かれてあった。
急いで書いたのか、手紙の字は荒い。
56 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 15:58

「「Dear→亜弥ちゃんへ
昨日はありがとう!!どうしても亜弥ちゃんといたかったんだぁ。
今日は、用事があるから先に帰るね。ごめん。
亜弥ちゃんを起こそうと思ったんだけど、気持ちよさそうに
寝てるから起こしちゃ悪いかなぁと思って。
あ、でも今日学校じゃん!!(現在9時半)
あぁーーごめん。もうどうせ遅刻だしね。
私は今日も学校休みます。
じゃ、またメール送るからね。
               from→美貴たんより♪」」
57 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:00

美貴からの手紙を貰ったのは、初めてだった。
短い内容でも、とにかく亜弥にとっては嬉しいことだった。
手紙の事ばかり考えながら、返る仕度をした

──────────

─────

───

ホテルを後にすると、我に返った。
美貴からの手紙の事しか頭になく、この後の事を
考えていなかった。
今から学校に行くのは面倒だった。
この場所から徒歩では、かなりの時間を要する。
今、家に帰っても親に何を言われるか分からない。

頭を悩まし、ホテルの前で佇んでいた。


「あれ…亜弥ちゃん!?」

後ろの方で声がした。
振り向くと、そこには、
「ひとみ…くん?」
「あはは…」

ひとみが笑うのも無理はない。
隣に女性を連れて、ホテルから出てきたのだ。
58 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:03

ひとみの連れの女性は、用事があるらしく、帰って行った。
ひとみは深刻そうな顔をして、亜弥を喫茶店へ誘った。
丁度、お腹の空いていた亜弥は、喫茶店で昼食を
食べる事にした。

「亜弥ちゃん、信じて!!あれはね、あの子の愚痴を
聞いてあげてたんだ!!」
先ほどから、何度も弁論する。
その表情から必死さが伺える。
亜弥も何度も、頷くのに、ひとみは止めない。
「ほんとにほんと!!だから……っ」
そこで会話が止まる。
ひとみは何か言おうとしたのに、言葉を発しない。
先ほどから、何故ひとみが必死なのか
亜弥は訳がわからない。
「…ひとみくん?」
「……ところでだけど、なんで、あんな所にいたの?」
ひとみは聞きずらそうに俯いて尋ねる。
亜矢も言いようがない。
女の子とあんな所に一晩中、一緒に居たのは事実でも
流石に言えない。
しかし、何か答えないと、変に思われてしまう。
少し間を空けて、答えた。
59 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:07

「…い、一回行ってみたくて、昨日は一人で泊まったの」
とっさに出た、嘘だ。
我ながら無茶苦茶な理由を言ってしまった。
「そ、そっかぁ…、あぁ良かった」
ひとみは内心、不信に思いながらも、胸を撫で下ろす。
俯いていた顔を上げる。
何が「良かった」なのかわからない亜弥は、目を丸くする。
「そういえば、亜弥ちゃん、今日学校は?」
制服姿の亜弥を見て、不思議に思ったようだ。
「面倒くさくて、今日は休もうかと…。あ、ひとみ君は?
高校生だよね?」
ふと思う。
ひとみの年齢も、学校も、住んでいる場所も知らない。
「うん。夜間の学校に通ってんの。
実は、俺ね、小説家になりたいんだぁ」
「そうなの??なんか意外だなぁ。」
「そう?結構真面目なんだよー。優しいしぃ。」
二人は目を合わせて笑い合った。
亜弥は、正直な所、ひとみがそんな大きな夢を持っているなんて
想像がつかなかった。
「小説書く時間が欲しいから、夜間に学校行ってるんだけど、
朝、昼間はバイトして、夜は学校でさ、最近は
あんま書いてないんだけどね。」
ひとみは、注文していた、ハンバークを、美味しそうに食べ始めた。
60 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:09

「でもすごいよ。そんな大きい夢持ってるなんて。どうして小説家に
なりたいの?」
亜弥も、注文していたグラタンを口にし始めた。
ひとみは口をもごもご動かしながら言う。
「昔、何の本だったか忘れたけどすっごい面白い本を読んだんだ。
その主人公の生き方に憧れてさぁ。自分のしたい事を自由に出来たら
幸せだなぁって。そん時、夢なんてなかったけど、
俺も、小説を書いて、沢山の人に共感してもらえたり、
人生の教訓にしてもらえればなればいいなー、なんて。」
その話をしてるひとみの瞳は輝いていた。
照明によって照らされるひとみの金髪も、更に輝いて見えた。
「憧れちゃうな…。私、夢なんてないから…」
亜弥はグラタンを口にする手を止めた。
亜矢には夢がなかった。元々あった夢は、
随分前に、跡形も無く、消え去った。
亜弥の落ち込んだ様子に気づいたひとみは、ニコリと笑った。
「まだ亜弥ちゃん若いんだし、これからきっとやりたい事が
見つかるよ。諦めたりしたら駄目だよ。自分で動かなきゃ
何も始まらない」
ひとみの言葉には、説得力があった。
亜弥はこんな相談をしたのも始めてだし、
こんな相談の答えを聞くのも始めてだった。
自分の話を親身になって聞いてくれて、亜弥はさぞかし嬉しかった。
自然と笑みが零れる。
「ありがとう。頑張るね」
61 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:17
それから暫く、時間を忘れ、会話に夢中になっていた。
ひとみといると、亜弥はずっと笑顔だった。
今日は自分でも不思議な位、自然と口から言葉が出る。

ひとみといると、心は落ち着いて
もっともっとひとみを知りたくて


このままずっと笑っていたかった


「あ、俺、そろそろバイト行かないと」
ひとみは腕時計を見て言った。
亜弥は胸がチクリ痛んだ。

───この感じはなに?
「そっかぁ…」
亜弥が浮かない顔をすると、ひとみは、頭を軽く撫でた。
「また遊ぼうね、亜弥ちゃん」
ひとみが笑う。
すると、亜弥も笑う。
一緒に微笑む二人は、まるで不思議な魔法にかかったようだ。
62 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:19

二人は、一緒に喫茶店を後にする。
「じゃ、また……、ん?」
ひとみが別れを告げようとした時。


「ふざけんな!!」

商店街の入り口付近から、怒鳴り声がした。
声の様子から、女性のようだ。
周りの客も、その様子に気づいて、騒ぎ出す。
しかし、誰一人近づこうとはしない。
この地域では、最近、何故か別れ話の喧嘩が多い。
住人も、毎度ながらの喧嘩には呆れ果て、「また喧嘩だ」
と言って誰も止めようとはしないのだ。
この喫茶店の位置から、怒鳴り声の付近まで、だいぶ距離がある。

しかし
視力の良い亜弥にはすぐわかった。
直感も合わさって、頭の中で、一致する。


あの姿は   
美貴ちゃん
63 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:20
「美貴ちゃんっ!!」
亜弥は、一目散にその声の方向に走る。
人を避けて、入り口を目指す。
ひとみは一瞬動揺したが、亜弥を追いかける。
「美貴ちゃんっっ!!」
「!!?」
亜弥の大きな叫び声に、目を見開く女。
それは正しく、美貴だった。
「な、に…してるの」
亜弥は息を切らしながら、言う。
「………」
美貴は無言のまま、男掴んでいた手を放した。
そのまま美貴は亜弥を見つめる
男は、美貴が力なく、突っ立っているのを見計らうと
とんでもないスピードで、走り逃げた。
「なっ!!」
美貴が気づいた時には、もう遅い。商店街に逃げ込んだ。
すでに、人込みに埋もれ、姿は見えなくなってしまった。
美貴も追いかけよとはしなかった。
そんな緊迫した雰囲気が漂っている中、
ひとみがやっと亜弥に追いついた。
「はぁ、はぁ…亜弥ちゃん、はやっ…」
ひとみは息を切らしている。
亜弥の肩を掴むと、腰を低くしている。
立っているのがやっとという感じだ。
その姿を見て、美貴は何か驚いている。
そして言葉を発した。
「ひとみっ!?」
「…はぁ、…あっ、美貴!?」
ひとみは顔を上げる。
そして互いに顔を見合わせた。
64 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:22
「まったく、びっくりしたよ」
美貴は珈琲を啜る。
辺りは、その香りで、いっぱいになる。
「つーか、何で亜弥ちゃんと一緒にいるワケ?」
「…ちょっと、いろいろあって知り合ったんだ。
それよりさっき、お前何してたんだ?」
「あたしはー、亜弥ちゃんと同じクラスなの〜」
「へぇ〜。…って、だから、何があったんだ!?」
先ほどから、会話に亜弥の入る隙間はない。
二人はどうやら知り合いらしく。
ひとみは突然、「話し合おう」と言い出した。
そして喫茶店に、再び来店した。
バイト先には、休むと連絡を入れていた。

そして、今に至る。
65 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:23
亜弥は、下手に会話に入る訳にもいかず、只見ているだけだ。
二人の会話には止まる気配すら感じられない。

「もー、うっさいなぁ。喧嘩だよ、喧嘩」
美貴が面倒くさそうに言う。
「あの男と、どーゆー関係なんだ!?」
「元カレ」
「またお前遊んでんのか!!何股もかけたのか!?」
「違う。大分前に、一日だけ付き合った男」
「それで何があったんだよ!!?」
「突然呼び出しやがるから、何かと思えば、やらせろって。
都合のいい事ばっか言うから、腹が立って、一発殴りました」
「仕返しとかされたらどーすんだよっ」
「あの男にそんな事出来るわけがないね」

まるで二人の会話は、反抗期の娘と、娘を叱る父のようだ。

「だからっ!!私は何も悪くないの!!」
「お前なぁ!!」
二人は睨み合う。長い長い沈黙。
そして、ひとみが隣に目をやる。ようやく、亜弥の存在を
思い出した。
「あ!!ごめん、亜弥ちゃん!!!」
「いいよ…。ところで…、二人はどういう関係なの?」
亜弥が尋ねる。すると、ひとみが答える。
「俺らね、小学校時代からの友達なんだ」
66 名前:remo 投稿日:2004/04/02(金) 16:39
更新しました。誤字の多い小説ですみません。
感想、ありがとうございます。

>>41 プリンさん
藤本さんは、これからも腹黒くなってもらう予定ですので、
よろしくお願いします。
>>42 名無し飼育さん
藤本さんの為にも、松浦さんには頑張って頂きます。
感想、ありがとうございます。
>>43 名無飼育さん
想像(?)して下さってありがとうございます。吉澤さんには沢山、
動き回ってもらうつもりです。今後もよろしくお願いします。
67 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 02:54
「そうなんだぁ」
失礼だが、気が合いそうにない二人だなぁと、思った。
しかし、そんな事を言えるはずもなく、口を塞いだ。
「そんな親しくないけどね」
美貴が、つまらなそうに言う。
その言葉に、ひとみが美貴を睨む。
しかし美貴は、ぷい、と左を向いて、窓にをやる。
「いつもお前の相談に乗ってやってたのは誰だ」
「知らない」
「昔は素直でいい奴だったのに、いつからこんな風に…」
「もうっ!!昔と今は違うの!!いつまでも子供じゃないんだから!」
大きな声で、強く怒鳴った。
一瞬、その場が静まり返る。
「……お前もう派手に遊んでないだろうなぁ?」
「遊んでない。大体、私遊んだことないし」
「何股もかけてただろ」
「そんなの一回だけじゃん」
「あの頃は…、あんな事もあって荒れてたのわかるけど」
「その話はやめて」
ひとみは口を噤む。
またも、静まり返る。ひとみと亜弥は俯いてしまい、
険悪な雰囲気が漂う。
68 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 02:57
そんな事はお構い無しに、
「はぁー」
美貴は溜息を吐く。
そして、ポケットから煙草を取り出した。
煙草を一本口に咥えると、ライターも取り出した。
カチッ、カチッと、数回ライターを鳴らす。
火がボゥっとつく。
その様子をボーっと亜弥は見ていたが、煙草の煙りを
感じ、我に返った。
「ちょっ…美貴ちゃん、駄目だよ!!」
「へっ?」
ブチっ、と頭の中で何かが弾けた。
───ずっと溜めていた、何かが弾け飛んだ感覚
「……こないだも駄目って言ったじゃんっ!!私のおじいちゃんは、
煙草の吸い過ぎでガンになって死んじゃったんだよっ!!」
美貴のとぼけたような返事に、亜弥の怒りが爆発した。
亜弥は、テーブルに手をつくと大きな音をたて、立ち上がった。
テーブルに置いてある、三つの飲み物が音を立てて揺れる。
その音に反応した、他の客の視線を集めてしまった。
69 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 02:58

「もう人が死ぬのは見たくないの!!こんな若いうちから吸ってちゃ
早死にしちゃうじゃない!!…そんなの………」
亜弥は突然、涙を流した。大粒の涙が、テーブルに零れ落ちる。
突然の涙に唖然とする二人。
「「あ、やちゃん、!?」」
二人は同時に声を発した。
美貴は急いで、灰皿に煙草を押し付けて火を消す。
「ご、ごめん…」
「亜弥ちゃん、落ち着いて、ひとまず座ろ?」
戸惑う美貴に対し、ひとみは亜弥をとりあえず着席させようとする。
「わたし…、わたし…っ」
二人の懸命の宥めを振り払い、亜弥は鞄を手に取ると
何も言わず、その場から走り去る。
「あ、…亜弥ちゃんっ!?」
ひとみは立ち上がり、亜弥を追いかけようとする。
しかし、

「行っちゃ、だめ!!」
意外にも、美貴が引き止めた。
70 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:00




きっと二人とも困ってるよね
ごめんね
でも、止まらなかったの
いっぱい辛い思い出が蘇ってきて
つい涙が零れて
大切な人を失いたくないから


お願いだから、もう誰も居なくならないで

71 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:01

────

騒いだ事もあり、店長から注意されたが、きちんと謝っておいた。
店内の雰囲気も、元に戻った。

「なんで止めたんだ?」
「だって、店長さん怒ってたし、一人で謝んのもなんかなーって」
新たなコーヒーに、ミルクを注ぎ、かき混ぜながら、美貴は言う。
「お前…」
呆れたような声のひとみに、美貴はあっけらかんな顔を
して、コーヒーを啜る。
いったん、コーヒーカップをテーブルに置くと、
重い溜息を吐く。
「それにしても、亜弥ちゃんに悪いことしちゃったぁ」
その顔には、いつもの笑顔はなく、いつになく暗い表情を浮かべる。
「でも、なんで突然泣いたんだろう…」
ひとみは不思議そうに顔を歪ませる。
「………亜弥ちゃんね、あの事知ってんの」
すこし間を空けて美貴が答える。
「…?…あの事?」






「アイツが…死んだこと」
72 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:03

────────

────

亜弥は、自宅に着くと、すぐにベットに入った。
目は赤く腫れ、身体が妙に重い。

泣き虫な自分に嫌気がさした。
人に迷惑かけてばかりで、何も人にしてやれない。
アノ人にだって、何にも出来ずに見ていただけで。
自分は全く進歩してない。
身体が成長したって心は弱くて、人に頼ってばかり。
自分はいつか、誰かの為になれるのだろうか


誰かに、好きって言ってもらえるのだろうか
不安で胸がいっぱいだ
73 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:05
何時間寝ただろう。わからない。
薄暗い明かりの中、目が覚めた。
途中、親に起こされたが、起きなかった。
ベットサイドのテーブルに、夕食と、風邪薬が置かれてある。
帰るなり寝てしまい、起こしても起きない娘を心配して、
親が置いたのだろう。
「心配かけてごめんなさい」と心の中で何度も唱える。
壁に掛った時計に目をやると、
時計の針は、ちょうど夜中の4時を指していた。

コツン、と頭に何かがあたる。
携帯電話だった。帰ってきて、充電するのを忘れていた事に
気がつく。しかし、ベットから充電機の位置まで行くのも
面倒くさい。どうにもこうにも体が重いのだ。
そして何気なく、携帯を開く。
ディスプレイには、受信メール三通と表示されている。
三通の内、二通は、今日学校を休んだ事を心配した
友達からだった。

最後の一通は……
74 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:06


「「亜弥ちゃん
今日は正直、ビックリしました。でも、美貴を大事に思って
るんだって事がわかりました。それで、いろいろ美貴から
亜弥ちゃんの話を聞いたんだ。
あの事件…知ってるんだね。実は、俺も知ってるんだ。
あんまり思い出したくないだろうけど、どうしても
聞きたいことがあるんだ。
明日の夕方5時、今日の喫茶店で待ってます。   ひとみ」」
75 名前:remo 投稿日:2004/04/03(土) 03:07


少しですが、更新しました。
76 名前:プリン 投稿日:2004/04/03(土) 14:39
更新お疲れ様でしたぁ。
美貴たんにはこれからも腹黒くなってもらうんですか・・・
ひえぇ・・゚・(ノД`)・゚・。
でも、楽しみに待ってますね♪
77 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:47

消えない
消えない


私の犯した罪は
死ぬまで消えない
償うしかない
この話はしたくないけれど、私は逃げたくない
人になんて言われようと
消えないの  忘れられないの
もうどうしようもないの
だから逃げない
どうせ、真実は変わりはしないんだから


絶対逃げない
傷つくことを、恐れない。
78 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:50

「…来て、くれたんだね」
昨日と同じ窓際の席で、ひとみは待っていた。
飲みかけのメロンソーダを机に置く。
その顔に、笑顔はない。
「うん」
鞄を隣の椅子に置くと、亜弥も椅子に腰掛ける。
暫し、黙り込んだ二人だが、
ひとみは真剣な顔をして、ゆっくりと口を開いた。
はじめて見るひとみの真剣な顔に、亜弥はゴクリと息を呑んだ。
「初めてここに一緒に来た時、彼氏居るって聞いて、亜弥ちゃんが泣いたのは、
アイツを思い出したから?」
「昨日泣いて帰ったのも、アイツを思い出したから?」
亜弥は頷けなかった。思い出したことは確かだ。でも、『彼氏』
ではなかったから。
「俺ね、アイツの友達だったんだ。学校は違ったけど、
すごく仲良かった。でも未だに、なんでアイツが…自殺したか
わからない。あんなに近くにいたのに…なんで助けてやれなかったのか」
ひとみは、顔を顰めると、悔しそうに、唇を噛みしめる。
拳を握る力が、時間を追うごとに強くなっている。
79 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:55

ひとみくんも自分と同じ気持ちなんだ
悔しくて
苦しくて
胸が締め付けられる
その様子を見ていて、胸の奥が、焼けるように熱くなるのを感じた。
あの時と同じ。心臓がバクバクいって、飛び出しそう。
目尻が熱くて、今にも涙が出そうだった。
でも、自分に言い聞かせた。


『絶対に泣かない』
80 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:57


「アイツと俺と美貴の三人でいつもつるんでたんだ。本当に楽しかった。
あの頃は、何も考えず、今が楽しけりゃいいやって。
でも今頃になって思うんだ。何でもっとあの時間を大切にしなかったん
だろうって。後悔しても遅いんだけどね。
何でもさ、なくしてから気づくんだよ。
大切な物ほど、時が経つと、意識しなくなって、なくしてから
それがどれだけ自分にとって大きな存在だったか…気づく
………ごめん、俺ばっか話しちゃって。聞きたい事っていうのは
亜弥ちゃんはアイツの事好きだったの?」





「…っ…好きだったよ、大好きだった」
81 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:58


本当に久しぶり。
皆、この話をするのは避けるの。
特に私のいる場で。

なんでって?
それはきっと、皆同じ気持ちだから。
罪悪感を抱いてるのでしょう。
私を哀れんでいるの?
哀れみならいいの
どんなに貶されたって
どんなに罵倒されたって

耐えれるよ

でも、同情なんかいらない
だって、この気持ちは私にしかわからない
誰にもわからない  知ってほしくもない
深入りしないで
どんなにそこを掘り返しても、答えは見つからないよ
答えはすべて、私の中にあるの

犯人は私だから
82 名前:. 投稿日:2004/04/21(水) 23:59

────────

─────


冬があけたら、春が来る
四月には心機一転して、心を入れ替えようと思った
なのに
私の心に春は来なかった
まだ信じられないの
表面で強がってみせても
私の内面なんて誰も知らない
どんなに泣いても、どんなに叫んでも気づかないんだから
勝つことができる確信はなかったけれど
心のどこがで大丈夫だって思って
この恋だけはすべてを失っても、成功させたかったの
今は本当にすべてを失った気分だよ


この世から消え去りたいくらいに
83 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:00


今から4年前────

「あたしも!!」
「まじで!?お前もかよ…」
放課後の教室は恋の相談室であった。
仲の良い女子ばかりが集まって、口々の自分の想いをぶちまける。
鬱憤晴らしの、娯楽の一つだ。
「で、亜弥は誰なの?」
「へ!?あ…」
好きな人の名前なんて、一日中心の中で巡ってるのに
いざ、口に出すとなると、言い辛いものがある。
「そんなん言わんでも、皆知ってるやろ??」
「…あぁ〜、亜弥は眼鏡君に夢中だもんねぇ」
自分でもわかるくらい顔が熱い。
自分の好きな人のことがここまで知れ渡っているとなると
照れくさいものだった。
84 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:02
その彼とは、中学校の入学式の日、亜弥惚れた相手だ。
小学校が同じで、何度か同じクラスになった事があった。
その当時は無に等しいほど、接点がなかった。
名前しか知らない、内面がわからない人間であった。
唯一知っている事は、どこかの会社の社長の息子であるということ。
少々言葉は悪くなるが、小学生の頃はどうでもいい存在であった。
その頃の亜弥は、彼に興味はなかったし、彼も亜弥に興味がなかっただろう。
でもそれが一転した出来事が入学式である。
初めての制服に身を包み、緊張の中、中学校へ辿り着いた。
そして、クラス発表。
亜弥は、小学校からの仲の良い友達と一緒のクラスになれれば
ぐらいにしか考えていなかった。
張り出された紙には、仲の良い友達数人が記載されていた。
ほっとして、同じクラスの男子の名前を見てみた。
そこには小学校から接点のない彼の名前が記載されていた。
ふーん程度にしか思わなかった。
そしてその場を後にしようとしたとき。
気づかなかったが、その彼もまた、慣れない制服に身を包み、張り出された紙を
眺めていた。
85 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:03
一瞬、誰だかわからなかったが、すぐに気が付いた。
まったく関わりのなかった【彼】だと。
当の本人は心機一転を狙ってか、ヘアースタイルが全く変わっていた。
誰だかわからなかったのも無理はない。
亜弥はその場に足を止めた。
ゴクリと息を呑む。
こんな出会いはないと思っていたが、自分に言い聞かせる。
私はこの人が好きになった、と。
理由は、顔である。とてもあっさりとしていた。
自分は、容姿より性格重視していたはずなのに
顔を選んでしまったことがいたたまれるが、仕方がなかった。
亜弥が初恋は、小学一年生の時。
その恋にはことごとく破れた。
その思い出は、いまでも鮮明に覚えている。
その人の顔が亜弥の好みであった。
でも段々と、その人の内面が分かってくるに伴い
亜弥はその人が、自分と性格が合わない事を実感した。
そして幼くして、男は容姿より性格という亜弥の方程式が出来た。
その方程式はずっと変わらないものだと信じていた。
それから六年、ずっと恋愛なんてしていなかった。
86 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:04
理由は自分でもわからないが、恋愛する気になれないからだと推測する。
芸能人を好きになる事もなかった。
どんな性格かなんて、ブラウン管を通してじゃわからない、
などと子供ながらに大人びた考えをしていたからである。
大きくなったら、性格の良い優しい男性と結婚して、子供を産んで、
幸せな家庭を築く。それが亜弥の夢。
今恋なんてしなくたって、大人になったら幾らでも出来ると思っていた。
それなのになぜ…、と自分でも思ったが
単刀直入に顔が好みだから。
人間、人を好きになるのは普通のこと。
だから亜弥は、特に理由もなく、顔で人を好きになってしまった事を
考えるのはやめにした。
あの方程式が崩れる日が来るなんて予想はしていなかったが。
どんな小さなことも、深く考えてしまうが自分の悪い所だと痛感し、
直そうと試みることにした。
好きになったものは仕方ない!とプラス思考に考えることにし、
いつか自分に明るい彼との未来が来ますように…と願うようになった。
同じクラスになれば、毎日嫌でも顔を合わせることになる。
亜弥は運命の神様に心から感謝した。
87 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:05
彼と同じクラスにしてくれてありがとうございます、と。
席も近く、亜弥にとってはパラダイスだった。
クラスにも慣れ、友達も増え、恋の話に花を咲かせる。
だが、亜弥の好きな彼はあまり男女ともに、好かれていないようだった。
理由は自己中だから、金持ちだから偉そうにしてるとか様々だった。
自分の短所を挙げられてるのではないが、好きな人が
そんな風に思われているなんて思うと、胸が痛んだ。
制服にも慣れ始めた5月初旬。
彼はサッカー部に所属している事を五月になって、亜弥は知った。
真面目に考えて、自分は彼の何を知っている。
ただ顔が好きで。それだけの事。
入学して一ヶ月。話したこともない。
でも彼と付き合いたいなんて、自分勝手なのにもほどがある。
行動しなくてはなにも始まらない。前には進めない。
自分のことくらい自分でしなきゃ。
亜弥は行動に出る事にした。
運の良いことに、その日、サッカー部の練習試合が行われることが判明した。
早速亜弥はグラウンドに向かう。
グラウンドには、情報を聞きつけた沢山の女子が、少しでも
いい場所を陣取ろうと、悪戦苦闘していた。
サッカー部の男子は人気があるという噂は耳にはしていたが、
流石に争いが起こる程人気があるとは予想妥にしていなかった。
亜弥は揉みくちゃにされるのを避けるため、争わなくても観戦
出来る場所を確保した。
88 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:06
試合のスタートを表す笛が鳴り響く。
声援は予想を大きく上回るものだった。驚きを隠せずにあたふたする亜弥。
その日は絶好のお天気日和。太陽はグラウンドを激しく照らす。
今日という日は、心地良く過ごせる、最高の試合日だとも言えるであろう。
周りに負けじと、亜弥は声を張り上げて応援した。
しかし気が付いた。彼は試合に参加していない。
ベンチにもいない。どういうことだかサッパリわからない。
なぜ、どうして、と疑問ばかりが頭を過ぎる。
これでは見ている意味もないと、その場を離れる事にした。
後日、噂で聞いた話によると、彼はサッカー部をやめたらしい。
理由は、自分には才能がないとわかったから、らしい。
亜弥の中で、少しだけ、彼に対する想いが薄れた。

どうして、そんな風に諦めてしまうんだろう、と。
89 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:08
塾の帰り道は、普段は通らない道を通る。抜け道だから。
その日も、普段通り通ろうとしたのだ。抜け道には、小さな公園がある。
見るつもりはなくとも、目に入る。
ブランコとベンチしかない、質素な小さい公園。
その日の公園には人がいるようだった。
結構遠くからでも、声が聞こえる。
女の子と、男の子の声。
夜の8時。
普段、公園には人はいない。
これまでに、その公園で人を見かけたことは一度も無かった。
亜弥は気味が悪くなって引き返そうと思った。
しかし。その声には聞き覚えがあったのだ。
まさしく、彼の声だった。
自転車ごと、少し公園から離れた大きな木に隠れる。
確かに彼だった。でも、もう一人の少年と少女は知らない。
亜弥は暫く、眺めていた。
三人は、走り回ったり、お菓子を食べたりして騒いでいる。
暗闇でよく見えないが、彼は学校では見せた事のない
ような笑みを浮かべているようだった。
90 名前:. 投稿日:2004/04/22(木) 00:13
学校ではあんなに声を張り上げて笑ったりしない。
とゆうか、彼はいつも教室では一人でつまらなそうな顔をしている。
はじめて見た彼の笑顔は、作りものなんかじゃなく、本当に遊びを楽しんでいる
と確信できる決定的な証拠に思えた。
彼の笑顔は自分に向けられたものでなくとも、自然と笑みが零れる。
彼の笑顔が好きで、ただ見ているだけで良かった。
少しの「好き」が大きな物に変わって行く。
好きになれば、相手の苦手な部分も見えてくる。
でも亜弥は「好き」の想いが強く、彼のすぐに諦めてしまうという
苦手な面は「好き」に埋もれて、完全に消え去ってしまった。

彼に対する想いは、膨らむ一方だった。
91 名前:remo 投稿日:2004/04/22(木) 00:18
更新しました。

>>76 プリンさん
感想、ありがとうございます。すごく励みになります。
藤本さんには、激黒になってもらいます。
真っ黒な藤本さんの作品が読みたいですね。
92 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:19

彼の笑顔を見ていたいのだ。
先日見た笑顔は、自分に向けられたものではない。
どうしても、自分のために笑って欲しい。
好きだから。
勇気を出して、毎日のように彼に話し掛ける。
しかし、反応は薄い。
彼は、全く学校で笑わない。
あの日の公園での笑顔はどこに行ってしまったのか。
あまりに考えすぎて、夜眠れない日もあった。
家で毎日のように泣いた。
自分は彼の求める相手じゃないのか。
どうしたら笑ってくれるの。



───どうしたらいいの?
93 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:23
どうして相手に、これほどまでに無いものを求めてしまうのか。

そんなこんなで二ヶ月の月日が流れた。
まだ亜弥は諦めていなかった。友達は、「あんな男ほっときなよ」とばかり
言う。
でももう人の目は気にならなかった。自分のことなんて何とでも思えばいい。
この二ヶ月で亜弥は強くなった。どんなに彼に相手にされなくても
「嫌い」と言われるまでは諦めないことにしたのだ。
相手にされない辛さはわかった。
だから、この辛さを乗り越えれば、楽しい未来が待ってる、
と考えることにした。
そうでもしないと、自分が壊れてしまいそうだった。
自分の欲しいものは自分で手に入れるしか術はないのだから。

二ヶ月と二週間経った頃。
亜弥の一途な想いを時間をかけて理解したのか、
彼は積極的に亜弥の話に乗ってきてくれるようにった。
そして、彼は自ら亜弥に話し掛けたりするようになった。
少しずつ、心を開いてくれた。
94 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:26


休みの日には、遊ぶようになった。

はじめて一緒に行った遊園地。
はじめて手を繋いでみた映画。

誰が見ても、交際してるとしか思えない状態だった。
クラスでも話題の二人になった。
うざったいひやかしも、辛くなかった。
彼が笑ってくれるなら、それで良かったから。


────しかし、そんな小さな幸せは長続きしなかった

ある日彼が言った。
「俺たちは友達だよな」、と。
95 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:30

確かに口に出して、「付き合おう」なんて言わなかった。
けれど、亜弥は付き合ってるものと思っていた。それは大きな勘違いだった。
証拠があるわけではないが、彼は自分のことが「好き」だと確信していたのだ。
それが、今、全くそんな事は有り得ないような言い方をしている。
何か悔しかった。自分に気があるような素振りを見せておいて
一体何を考えているのか。

でも、好きで好きでたまらなくて、言ったのだ。すぐさま、その場で。
ずっと好きだった。付き合ってくれ、と。
でも彼は頷かなかった。
条件があると言い出したのだ。
96 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:31


「卒業式までに、俺好みの女になってくれたら付き合う」というのが
条件であった。
自分勝手すぎる。どれだけ自分がいい男だと思っているのだ等
本当に理解に苦しむ。
しかし、その当時の亜弥は彼しか見えていなかった。
彼がすべてだったのだ。


勿論、OKした。


誰が聞いてもおかしな話ではあったが、亜弥はやる気満々であった。
      ゼッタイ    アキラメナイ
97 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:35

期限までに、絶対彼好みの女の子になるんだ。


それからの亜弥は、毎日が正念場であった。
いつどこで彼が自分を見ているかわからない。
学校には薄い化粧に、膝上の短いスカートで通うようになった。
化粧は自分をよりよく見て欲しいから。
脚は見られていると細くなると聞いたことがあったから。
中学二年生。彼とクラスが離れた。
この年は、男子から告白される事が多かった。
それは非常にありがたい事であり、嬉しくもあった。
いつも元気で、笑顔でいるのが、男子から人気のある要因であろう。
しかし亜弥の目には、彼以外の男は見えていなかったのだ。
学年1かっこいいと噂されている男子からの告白も、
丁寧にお断りするのであった。
それは彼の耳にも入っていることだろう。
それを聞いて、何か反応をくれないか待ち侘びていたのに。

中学二年生の一年間、彼と会話は交わさなかった。
この一年、彼は何の反応も見せてくれなかった。
辛かった。胸が張り裂けそうだった。
98 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:38

中学三年生。この年は、彼と同じクラスになった。心から嬉しかった。
三年になると、進路を決めなくてはいけない。
亜弥は近くの公立高校に進学したいと希望していた。
ある程度、受験勉強に励む毎日。
しかし、オシャレには余念がなかった。
髪の毛のセットには、毎日30分費やした。
どんなに朝眠たくても、学校で彼の顔さえ見れば、元気が出た。
どれもこれも、彼のため。
自分を好きになってもらうため。
そんな中、彼の情報を耳にした。


彼は私立の名門高に進む。
99 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:40


離れ離れになってしまう。
なんとなくは、予感していた。それが現実になった。
亜弥のダメージは大きかったが、それを乗り越えたら、幸せになれる気がした。
だからマイナスに考えるのをやめた。
高校が別れるだけだ。永遠の別れじゃない。



高校が別れたって、彼と一緒にいれるならそれでいい
100 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:41

そして、忘れもしない二月のこと。
彼と、久しぶりにまともな会話をしたのだ。
緊張して、うまく話せない。
どうにかこうにか、2月14日に約束を取り付けたのだ。
彼の眩しいくらいの笑顔を見た公園で。
この日に、亜弥はすべてを賭けていた。
三年間の集大成。
すべて。私のすべてを彼に捧げる。
三年間の頑張りを、彼はどう評価してくれるのだろうか。



でも、すべてがうまくいくはずなんてなかった。
101 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:44
2月13日
14日の前日である。
前日ともあり、学校へ行くにも緊張していた。
気持ちが高ぶって、よく眠れなかった。久しぶりに早起きしたのだ。
普段より早めに登校する。
学校の門を潜ると、普段通り教室へ向かう。
しかし何かが違っていた。廊下ですれ違う人の視線は、
すべて亜弥に向かってのものだった。
その光景を不思議に感じながらも、教室に入ったのだ。
入った途端、クラスメイトの顔は引き攣った。
亜弥を見て怯えている様子だった。
扉の前で首を傾げる。仲良しの友達も、亜弥から目を背ける。
そして、自分の席に着こうとした時。
正面にある、黒板が目に入った。
そこには…

亜弥の対しての罵倒の数々。
大きく汚い字で、書きなぐってある。
それを見た瞬間、意識が揺らぎそうになった。
102 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:47

───誰がこんなことを…
教室の中は静まり返る。そこで、仲良しの友達が、亜弥に歩み寄ってきた。
亜弥の目の前に立つも、何か苦しそうな面持ちでこちらを見ている。
亜弥が「これは、誰が…?」と尋ねると、友達は渋々口を開いた。
その話は、1番聞きたくないものだった。

黒板の罵倒の数々を書いたのは、亜弥の大好きな彼だと言うのだ。
証言者は大勢いた。皆が見ている前で、堂々と書いたらしい。
消していないのは、先生が消したらいけないと言ったから。
亜弥のクラスの担任は、彼の親を呼びつけて証拠を
見せる為に残しているらしい。
亜弥には見せないようにしたかったらしいが、
予想に反して今日、亜弥は普段より早くに登校してしまった。
もう少し遅ければ、教室前で待機した生徒が、亜弥を別室に連れて
行くつもりだったらしい。

でももう遅い。
103 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:49

犯人は、彼だと言うことを信じれなかった。
嘘だと言って欲しかった。何かの悪い夢だと。
そんな彼は、教室の隅っこで窓の外を眺めている。
誰も彼に近づこうとはしない中、亜弥は彼の元へゆっくりと向かった。
少し涙が出た。制服の袖で強く拭って、頬を叩く。
友達は、「行くな」と言うが、反対を押し退けて彼のほうへ向かう。

これは私と彼の問題なのだから。


彼に言った。

「どうしてこんなことするの?」
104 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:50



「お前が、大嫌いだから。世界で一番大嫌い。
お前のする事、言う事、全て気持ちが悪い。顔も見たくない」


「この世から消えてしまえ。」



────音もなく、何かが崩れてゆくような気がした。
亜弥はその場に倒れこんだ。その日の記憶は、ここで途切れてしまっている。
105 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:54

14日は、涙に明け暮れた。
公園に行けるはずもなく。

数日間、毎晩のように悪夢に魘された。彼に「大嫌い」と何度も言われる夢。
彼を思い出す度、あの出来事が、フラッシュバックするのだ。
亜弥が学校を休んでいた間、心配した友達が、何度も自宅に尋ねてきて
くれた。彼と彼の両親も、謝罪に来たらしいが、亜弥は顔を合わさなかった。
後に、彼の両親からの謝罪と事の原因を、亜弥は自分の両親から聞いた。
「受験前で、ムシャクシャしてやった。」
彼はそう言ったそうだ。
どんな理由でも、泣いてしまうのは目に見えていた。

精神的にきつくて誰とも話したくなかった。
数日間は学校に行かなかった。
友人は、亜弥の1番欲しい言葉をいとも簡単にくれるだろう。
でも、そんな言葉はいらない。
106 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:55



悪夢に魘されても、涙が出ても
あんな酷いことを言われても、彼の声が聞きたくなった。


彼の口から「嘘だよ」と聞きたかった。




───全部嘘だから、もう泣かないで、と。
107 名前:. 投稿日:2004/04/30(金) 23:59

数日後、学校に向かった。

教室に入るなり、クラスメイトは亜弥を囲む。
彼のことには触れないようにしてくれている。
なのに、彼が気になって堪らなかった。
ちらりと教室の隅っこに目をやる。彼はそこにいた。
数日見ていないだけで、随分やつれてしまった気がする。
目の下のクマが、やけに目立つ。
数人の男子が、妖しげな笑みを浮かべ、彼に寄って行く。
彼の真後ろで、彼に聞こえるように彼の悪口を言った。
笑いながら去っていく男子たち。
彼は机に平伏せた。
その時の彼は、泣いているように感じた。

あんなに酷いことをされても、自分はまだ彼が好きだ。
泣いている彼を、黙って見ているのは辛かった。
108 名前:. 投稿日:2004/05/01(土) 00:02

教室は冷たい空気に包まれている。膜でも張られているかのよう。
誰も彼と話そうとしない。
元々彼は一人で居る事が多かった。誰とも話さないで帰る事もあった。
しかし、一週間そんな状態が続くなんて事はなかった。
なのに今回は、もう一週間が経過した。
授業で当てられても、無言。
以前はシッカリと答えていたのに。
体育の授業でグループを組むことになっても、彼は本当に一人ぼっちだった。
以前は人数が足りないグループの子が一緒にやろうと声をかけてくれていた。
でも、今は違う。人数が足りていなくたって彼に声をかけない。
受け身なだけの彼が悪いのかもしれない。自分で行動に出ないのだから。
結局は先生が、入れてやってくれと声をかけていた。
でもあまりの周りの急激な態度の変化に、亜弥は嫌気がさした。
彼に聞こえるように悪口を言っているのを聞いたのは、一度だけ。
暴力を奮ったりしているのは見なかった。


───これはなんなの
109 名前:. 投稿日:2004/05/01(土) 00:05

彼をクラスにはいない存在にしていた。
無視じゃない。彼が誰にも話しかけないのだから。
その原因は、亜弥に酷いことをしたから。
亜弥の知らぬ間に男女一致団結してしまったようだ。
とにかく亜弥はほっといて欲しかった。
どうして自分と彼の問題を部外者がとやかく言うのか。
亜弥が何もしないから、自分たちが仕返しをしてあげようとでも
思っているのか。クダラナイ親切心はまったく不要だった。
そんな暇があるのなら、勉強してろと言いたかった。
でも、そんな事を思っても、亜弥は何も出来なかった。どうしようもなかった。
彼と関わることが、怖かった。
まだ彼が気になる。でももう見ているだけで、満足だ。
あんなに好きで、今でも少し好きだ。自分でも認める。
でも、もしここで告白してうまくいっても、あの出来事は一生残る。
それが二人の距離を遠ざけるだろう────
110 名前:. 投稿日:2004/05/01(土) 00:06


卒業も近い、2月の下旬。
亜弥のクラスで、とんでもない出来事が起こってしまった。
取り返しのつかない、重大な出来事。



担任は、重い口を開いた。
その言葉を聞いた途端、亜弥は目の前が真っ暗になって、
またそこで意識をなくした。




「「「彼が、自殺した」」」
111 名前:remo 投稿日:2004/05/01(土) 00:06
更新しました。
112 名前:プリン 投稿日:2004/05/01(土) 13:07
更新お疲れ様です!
待ってましたよw

こんな過去が・゚・(ノД`)・゚・。
頑張れぇ・゚・(ノД`)・゚・。

次回の更新も待ってますw
いつまでも待つんで頑張ってください!
113 名前:ぁーぃ☆ 投稿日:2004/06/17(木) 04:01
まぢ切なぃってか。泣
苦しぃ(>_<)
よしこ…かっこぃぃ。
続き、読みたぃっす!
114 名前:remo 投稿日:2004/07/08(木) 21:20
遅くなってすみません。生きてます。
はやく更新出来るよう、出来る限り努力します。
感想ありがとうございます。大変励みになります。
>>112 プリンさん
過去の大きな出来事って、案外引きずるもんですよね。
松浦さんには大いに頑張って頂きます。
>>113 ぁーぃ☆ さん
シリアスが好きなので、そう言って頂けて嬉しいです。
乏しい文体ですが、また読んで頂けたら光栄です。
115 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:25
自殺現場の自室には、「もう勉強なんてしたくない」
と記された紙が発見された。
前々から彼は悩んでいたようだ。
自殺の数週間前から様子がおかしかったらしい。
虚ろな目をして、声をかけても返事をしない。
家庭教師に殴りかかる。テキストを破る。
親に物を投げつける。そして自室に篭りっきりだった。
彼の両親は見た事もない彼の姿に、不安を感じていたらしい。
病院に相談していたそうだ。
受験前なら誰でも不安や焦りを感じる。
イライラして、勉強に集中できない。
そしてあまりにイライラするので、亜弥に強く当たった。
亜弥につっかかった事も、自殺に結びつく一つの原因とされた。


受験生特有の悩みに、彼は耐えることができなかったのだろうか。
116 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:27




名門高を受けるだけに、周りのプレッシャーが重みとなって、
精神的にも身体的にも衰弱して、自分ひとりじゃ
自分を支えきれなくなった。


そして最終的に自殺の道を選んだ。


他に思い当たる原因もなく、彼の自殺原因は
「受験からくるストレス」と判断された。
117 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:30

葬儀には大勢の人が葬列していた。
社長の息子だったから、会社関係者なのだろうか。
何もわからない。彼を好きなだけで、
家庭の事は何も知らないのだから。
私にはすべてのものが、歪んで見えていた。
泣きすぎて、目が開かない。
葬儀中も、一人で大きく嗚咽した。
クラスメイトも、突然の惨事には口を噤んでいた。
イジメはなかった──
彼らは口を揃えてそう言う。教師も、同じことを繰り返す。
【自分は何もしてない】
イジメという、イジメはなかったのかもしれない。
けれど、彼の存在をないものにしていた。
自分がされたら、のことを考えたら寒気がする。
イジメではなくとも、存在を否定されるなんて
あってはならないことだ。
118 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:33




みんな自分を守ることに精一杯で、彼の死に涙を流すクラスメイトは
自分くらいしかいなかった。

しかし、一人息子を失った親族の悲しみは激しいものだった。
雄叫びをあげる者、大声で泣き叫ぶ者、種類は様々だった。
葬儀後、彼の母は自殺を図ったらしいが、
気がついた付き人によって死は免れたようだ。
119 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:35
全部私のせいだ。
私が原因で、彼は苦しんでいた。クラスメイトの彼を見る冷たい瞳。
私は黙って見ていた。
見てみぬふりをしたのだ。なんて卑怯な人間なんだ。
根本的なところから後悔した。
私が彼を好きになったのがいけない事だったのではないのか、と。
彼がなんと言われていても、傷つくのが怖くて近づかなかった。
助けれたのも、守れたのも、私しかいなかったのに。
彼が私に罵倒を浴びせたのも、何か訳があったんだ。
受験のストレスもあるだろうけど、きっとそれだけじゃない。
本当に彼は優しい人なんだよ。だから何かあったに違いない。
でももうわからない。
この世にもう居ないの。この瞳に映し出せないの。
声も、笑顔も、温かな指も


もう全部ないの
120 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:36



全部、全部、私のせいなんだ。
私がすべて悪い。私に非があった。


私も出来るなら、天国へ行ってしまいたい。
でもそれで彼は私を許してくれるのだろうか。
そんなので償いきれるのだろうか



私は、私は────
121 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 21:59




本人がいない所で、真実は見出せない。
真相は、闇に葬られた。彼の切なる願いとともに…。



122 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:01


────

────────

「……」
亜弥はすべてを話し終えると、俯いて黙り込んでいる。
唇を強く噛みしめて、拳に力を込めて。
「…亜弥ちゃん、もう自分を責めないで」
ひとみは消えそうな小さい声で言う。
その言葉に亜弥をさっと顔を上げた。
「それは、亜弥ちゃんが悪いんじゃないよ。
何も言わずに死んでったあいつが、どうかと思うよ」
「でもっ…、私のせいなの…私が悪い…私が…」
亜弥は言い聞かせるように、自分を責める。
眉間に皺を寄せて、強く強く。自分を認めようとしない。
「……あいつは、逃げたんだ。亜弥ちゃんのせいじゃない」
亜弥の言葉を否定して、ハッキリと言葉にした。
「我慢の出来ない、ただの子供だよ。
自殺の原因が何であれ、あいつは現実逃避したんだ」
ひとみは大きな目を見開いて、冷たく言う。
亜弥もまた、同じように目を大きく開いた。
ひとみの言葉にキョトンとした表情を浮かべ、
亜弥はひとみを凝視する。
123 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:04

「誰にだって、悩みはあるんだ。いっつもニコニコと笑っている人
だって、大きな不安を抱えているもんだよ。
辛いことを乗り越えて、人は大人になるんだ。
我慢を知らなきゃ、成長できない。
なのにあいつは逃げたんだ。無言のまま…。
残された者の気持ちなんて考えてなかったんだよ」
短く言葉を切って言い終えると、ひとみは魂が抜けたかのように
大人しくなった。
────虚ろ気な瞳に、何を映し出しているのか
「なんか俺、偉そうな事言ってるね…。
あいつに何もしてやれなかったのに」
ひとみは、反省の色を浮かべる。寂しそうな顔に、
無理矢理笑顔をプラスして。
後悔しても、悔やみきれない。
124 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:07

今、こんなに後悔ばかりなのだ。
だから時間を戻せるなら、自分を犠牲にしてでも生き抜いてもらう。

長い沈黙を、二人ともどう話を切り出せばよいのかわからない。
そんな時、俯いたままの暗い顔を上げて、
ひとみが勢いよく口を開く。
「──……もう、責任を押し付けあったりするのはよそうか」
「…?」
「あいつのことは、あいつしかわからない。
もう、どうにもならないんだ。
あいつはもういないんだから。
でも、俺たちは生きないといけない。明日に期待を募らせて。
それに、亜弥ちゃんには笑ってて欲しいから」
ひとみの言葉が胸に響く。
カラカラに乾いた喉に、キンキンに冷えた冷たい水が流れ込むような
そんな感覚。
ひとみの言葉が心に染みて、目尻が熱くなる。


「…俺、亜弥ちゃんが好きだよ」
125 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:09


「え?」
「好きだよ」
事の事態を、中々理解できない。
頭の中が錯乱して、言葉が紡げない。
「えっ、あ、のっ!!わたし、わ、た…し」


その言葉が、心から嬉しかった。
そう思うのは、ひとみを好きだからだろうか。
126 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:11
「だから、付き合って欲しい」
率直にひとみは伝える。
「でも、なんで…」
「亜弥ちゃんの全てを受け入れたい。全部知りたいんだ。
友達からでいいから…。亜弥ちゃんはどうなの?」


顔は真っ赤だろう。汗がじわりと滴り落ちる。


ここで本当の気持ちを伝えなきゃ。
心の奥で気になってた。
こうして数回会っただけなのに、好きって言われただけで
胸が高鳴る。


私の中で、いつの間にか大きな存在になってたんだ。

「わ…たしも、好き……好きだよ」
127 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:13
私たちは付き合うことになった。
友達から、だけど。
そう、私はひとみが好き。

誰よりも。
逝ってしまった彼よりも。
勿論、美貴ちゃんよりも。

きっと、ひとみと付き合えば辛いことは全部、忘れられる。
楽しい思い出に塗りかえれる。


きっと、きっと。

今の私は誰よりも幸せだ。
誰にも負けないくらい。
128 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:14

ひとみと付き合うんだ。
だからもう美貴ちゃんと、あんな事は出来ない。
全部、美貴ちゃんとは終わりにするんだ。

すべて話して、理解してもらわなきゃ。
129 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:14
大事な話があると伝えると、いつものホテルに来るよう言われた。

「亜弥ちゃん、その辺に腰かけて」
美貴は亜弥を招き部屋に入れると、コーヒーを手渡した。
亜弥はソファーに腰をかける。
美貴も座ったところで、本題に入った。

「あのね……私」
「うん」
「こんな関係、もう終わりにしたいの」
亜弥がそう言うと、美貴は顔色一つ変えず返答した。
「なんで?」
「好きな人が、できたの…」
「ひとみでしょ」
130 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:17
亜弥は美貴から視線を逸らす。
そして、美貴の顔ををまともに見れずに小さく俯く。
気まずい雰囲気の中、美貴が口を開く。
「ひとみから聞いたの。付き合うんなら仕方ないね」
美貴が理解を示してくれた。こんなスムーズに行くとは
思ってもみなかった。
内心ホッとした思いでいっぱいだった。

────しかし次の瞬間、美貴は亜弥の前に立ちはだかった。
亜弥が不思議そうに見つめると、にこりと微笑んだ。
そして突然、亜弥の手首を掴む。
「っ!?」
ポケットから何かを取り出す。
亜弥は反射的に、逃れようとする。
しかし、遅かった。

「私を裏切るから…悪いんだよ」
131 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:20
淡々と話す美貴の声に、恐怖を覚えた。
怖くて身体が動かない。抵抗できない。
亜弥はされるがままに、両手首を手錠で固定された。

そして、そのままベットに連行された。

「美貴ちゃんっ!!いや、怖い!!」
亜弥の声を無視する。まるで聞こえていないかのように。
美貴は、亜弥をベットに押し付けると、その上に馬乗りになった。
そして、ベットの横にあった物体に手を延ばす。
この体勢では、美貴が何をしているか、亜弥にはわからない。
「…美貴ちゃ…ん…!?」
亜弥の声は虚しく響くだけ。
なにか、後ろで音がする。
「ちょっ…美貴ちゃん!!何してるのっ!?」
なんと美貴は、亜弥の服を背中側から鋏で裂いていた。
ピンク色のトレーナーはあっと言う間に真っ二つに裂かれてゆく。
132 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:23
鋏で服を切る音は止まらない。
「いやっ!!美貴ちゃん!!」
亜弥が何を言っても、美貴は返事をしない。
それに対し、亜弥もキツクは言えなかった。
相手は自分を拘束して、凶器を手にしている。
こんな状態で文句をつけたら、何をされるかわからない。

そんな恐怖の中、
服を裂く音は、ピタリと止んだ。

息苦しそうな亜弥を上向きにさせると、寂しげに笑った。

そこから決して亜弥に自由を与えなかった。

拘束したまま。どんなに亜弥が拒否してもやめない。
美貴は狂ったように、微笑む。
その笑顔は、狂気に満ち溢れていた。
133 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:25
「ねぇ、してみたいことがあるんだ」

恐る恐る趣旨を訊ねてみた。
それは、カメラ撮影だった。録画すると言うのだ。
そのカメラは、長時間撮影が出来るタイプだった。
そして、亜弥を撮影しはじめたのだ。
ゆっくり、舐めるように。
撮影は予想を遥かに越える程辛かった。
視姦されるのがこんなに苦痛だとは思ってもみなかった。

「っ……ぁ」
「撮られてるだけなのに、感じてるの?」
亜弥は唇を噛んだ。止まらない自分の声に、苛立ちはじめる。
「亜弥ちゃんの可愛いココもシッカリ、撮ってるよ」
キュッと、亜弥の蕾を摘む。薄い茂みの奥から、ジワリと
愛液が流れてくるのが、自分ではっきりと感じ取れた。
ジワリとシーツ伝う。
134 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:27
────いつになれば終わるのか。両手は手錠で塞がれたまま。
トレーナーは無残にも切り裂かれ、原型を留めていない。
スカートはホックの部分を引き千切られ、布地が真っ二つに
なっている。下着も無理矢理に脱がされた。

「っ…」
美貴は、亜弥の脚を片手で掴みながら、もう一方の手で
その秘所を撮影し続ける。
指で広げると、暖かな液が溢れ出る。
その瞬間も、カメラは逃さない。シーツに染み込む様子も
きちんとカメラにおさめる。
亜弥は、恥ずかしさのあまり、脚を閉じようとする。
しかし、美貴によって阻止される。
そして、ぐいぐいと美貴は亜弥の秘所に顔を近づけていく。
亜弥はその行動を察知すると同時に、高らかな声を上げた。
135 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:31
「ひッ……ぅぁぁぁあ!」
ぴくぴくと小さく呼吸を繰り返す亜弥の秘所を舐め始めたのだ。
ソコは、抵抗とは裏腹に愛液がどんどんと溢れ出し、
まるで美貴の行為を好いているようだ。
その部分を、舌全体を使い丹念に舐め上げる。
美貴の唾液と亜弥の愛液は融合して、淫らなリズムを奏でる。
耳に響く淫乱な音がやけに大きく聴こえる。
亜弥は耳を塞ぎたい一心で、手錠を上下に動かして逃れようとする。
頬は真っ赤に蒸気し、火照った身体を愛撫する美貴の
行為に流されるままだった。
唇を噛んで、漏れる声を抑える。
「ッ…は…ぅッ」
必死で声を堪える亜弥の姿を目の当たりにして、
美貴はにんまり笑顔を浮かべる。
そして、ここぞと待ち構えていたかのように、赤く充血した蕾を
強く吸った。
136 名前:. 投稿日:2004/07/08(木) 22:34
「ぅ……ッッ!!ゃ、やあ…あぁぁぁッ!!」
あまりに大きな快感に耐え切れず、亜弥は腰を捩る。
その声に満足したのか、美貴は一層力を込めて舐める。
わざと淫らな音をたてて吸ってやると、また新たな愛液が
シーツにシミを作る。
唇が蕾に擦れ合う度、亜弥は腰を跳ね上がらせる。
「ゃッ…やだぁあぁぁッッ!!」
自分の恥ずかしいところを刺激されて、大きく喘いでいる。
羞恥のあまり、涙が溢れる。
「自分から腰振るなんて厭らしい子だね。こんなんじゃまだ
足りないんでしょ」
そう言って、舌を丸め、亜弥の中に入り込む。
脚を固定して、思いっきり突いてやる。
「…ん…はぁ…んんっっ」
沸騰したように熱いその中で、舌が溶けてしまいそうだ。
熱い粘膜を舌で摩ると、直接口の中に愛液が流れ込んできた。
亜弥の味をジックリと嗜むと、舌の届く範囲を乱暴に突く。
舌の動きは一定の速さを保って、グチュグチュと、音をたてる。
137 名前:remo 投稿日:2004/07/08(木) 22:36
えろだけですが…。更新終了です。
138 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/19(日) 22:39
保全
139 名前:名無し 投稿日:2004/10/26(火) 21:08
もう続かないんですかね?
続きが気になります。
140 名前:名無し 投稿日:2004/11/11(木) 21:31
待ってます!!

Converted by dat2html.pl v0.2