推理「告白大作戦」
- 1 名前:いこーる 投稿日:2004/03/24(水) 08:55
- あいののCP おとめ組
アンリアル 推理
設定が某寸劇と似通っているように感じられるかもしれませんw
推理ですのでネタバレは厳禁で・・・・・・
答えがわかっちゃった人もこのスレ内では内緒でお願いします。
ネタバレにならないレスはいただけると
大変な励みとなります。
皆様の感想お待ちしています。
- 2 名前:いこーる 投稿日:2004/03/24(水) 08:56
-
「告白大作戦」
- 3 名前:いこーる 投稿日:2004/03/24(水) 08:56
- この小説はフィクションであり、
物語に登場するいかなる個人、団体も実在のものとは一切関係がありません。
小説内のできごとは全て虚構です。
作中に登場する「ハロプロ」なる集団は
モーニングのみが不在であとのメンバー約30名は健在という
架空のアイドル集団です。
- 4 名前:・・・ 投稿日:2004/03/24(水) 08:56
- 純情可憐なおとめの恋は、
なぜか
なぜだか
なぞだらけ
- 5 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:57
- 今日は私の親友の話を書こうと思う。
中学校の同級生で名前は辻希美。通称のの。
今はこの街の東にある私立おとめ学園の一年生。
私はこの街の西にある私立さくら学園に行っちゃったから、
今は別々の高校に通っている。
中学のときみたく、毎日会えないからちょっぴりつまんないけど、
ときどき会うと超大声で
「あいぼ〜〜〜〜〜ん」
ワッサワッサと手を振ってくるのでうれしいやら恥ずかしいやら。
このコの声、まさに腹の底からって感じでよく響くから
周りの人はびっくり仰天。
「ののはいい声してるから歌手になればいいんだよ」
とか言ってみたこともあったっけ。
「あいぼんだって声かわいいじゃん」
「え?本当?」
「アニメ声」
おいおい・・・・・・。そりゃなんのネタだよ。
- 6 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:57
- で、話の続き。
ののにはちょっと変な癖がある。
クイズ大好き
なのだ。
面白いことがあるとすぐクイズにしてしまう。
この世のありとあらゆるものはクイズでできていると言わんばかりに
なんでもかんでもクイズクイズ。
そのクイズ、ジャンルもバラバラで
「私にはチャームポイントがあります。どこでしょう」
なんてのもあれば(ちなみに答えは八重歯らしい。
私は「変なしゃべり方」と答えてしまってたっぷりとくすぐりの刑を受けた)、他には
「ハロプロのシングル曲でタイトルの文字数が3文字以内の曲は何?」
とかいう妙にマニアックな問題まである。
答えは「GET」「愛の力」「常夏娘」「雪景色」「香水」。
このときはやっぱり、ののはアイドルに憧れてるのかな?と思ったりした。
その日もののは
取れたてのクイズと両手いっぱいのお菓子を持参して
私の部屋にやってきた。
- 7 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:57
- ののが部屋に来てしばらくは普通に話していた。
高校生になって勉強が難しくなったとか、
それぞれの学校で新しい友達ができたとか。
私たちが一袋目のポテトチップをたいらげて、
キャンディ(今日のキャンディは棒付きのでかいやつ)をなめようとしたとき、
「癖」が始まった。
「あいぼん、クイズ出すね」
「え〜〜〜またぁ?」
私はちょっとうんざり。だって会うたび会うたびクイズに答えてるんだもん。
それが今年で4年目ですよ。このままじゃあたしゃクイズ王になってしまう。
ってなれないか・・・・・・。
「今日のクイズは面白いよ!」
ののは歯を見せてにか〜っと笑った。
・・・・・・。
この笑顔に弱い。
「わかった。いいよ」
ついOKしてしまうのだ。
いいや、今日は時間もたっぷりあるし。
しかし、
今日のクイズはマジで時間がかかった。
- 8 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:58
- 「のんの高校でね・・・・・・」
「のん」て言った。このコは自分のことを「のん」っていう。
「綾瀬川君に一目惚れしちゃったコがいてね」
綾瀬川君なら中学が同じだったから私も知っている。
確か男子校に行ったんだっけ?
かっこよかったから一目惚れするのもわかる気がする。
「問題。今、綾瀬川君は誰と付き合ってるでしょう?」
「は?」
マテ。
わかるかそんなもん。
「ちょっとのの?」
「ん?」
「綾瀬川君はその、一目惚れしたっていうコと付き合ってるの?」
「さぁどうでしょう?」
またにかーっと笑う。ののは一人で楽しそうだ。
「私の知ってるコ?」
「ん?知らないコだよ」
おいおい。
これでわかったらあたしゃ天才だよ。
ののがサトラレでもなきゃわかるわけがない。
- 9 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:58
- ののはキャンディをくわえてかばんをガサゴソやりだした。
そして一冊のノートを出す。
「これは日記です。はいっ」
私はノートを受け取って中を見た。
++++++++++++++++
6月1日
今日も綾瀬川君と同じ電車に乗れた。
もう彼の乗る電車はばっちり覚えてる。
3両目2つめのドアからいつも乗ってくるの。
でも、向こうは私のことなんて知らない。
私はちょっと離れたところから眺めているだけ。
++++++++++++++++
- 10 名前:―ののは謎々― 投稿日:2004/03/24(水) 08:59
- 「へぇ。ののに日記をつける習慣があったとは・・・・・・
って人の日記かい!」
ああ、すっかり突っ込み型になってしまった私。
「そう。借りてきたの」
「いいの?勝手に見せて」
「大丈夫。許可とってあるから」
いいのか?
ののは構わずしゃべり続ける。
「いい、その日記に書いてあることは全部本当のことです」
「そりゃわかるよ」
それともこの日記にはブタが降ってくるとか書いてあるのか?
「それと、これからのんが話すことをヒントに、
綾瀬川君と付き合ってる人を当ててね」
なるほど。そういう趣向ね。
「わかった」
「よーし。じゃクイズ開始!」
キャンディを持ったままののは話し出す。
このとき私は、ののに推理小説もどきの
難解なクイズをめいいっぱいふっかけられることになるとは
予想もしていなかった。
- 11 名前:いこーる 投稿日:2004/03/24(水) 09:00
- こんなノリで書いていきます。
週1ペースで更新しますので
よろしくおねがいします。
- 12 名前:とみこ 投稿日:2004/03/24(水) 09:23
- おもしろいです!頑張って下さい〜
- 13 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/24(水) 13:10
- おもしろそうですねぇ〜w
続きも期待してます。
- 14 名前:みっくす 投稿日:2004/03/24(水) 14:10
- おお、いこーるさんの新作だ。
おもしろそうですね。
続き楽しみにしてます。
- 15 名前:いこーる 投稿日:2004/03/31(水) 13:23
- 更新します。
本小説は読みやすさを考え
会話文中は基本的にインデント、1字空けで書きますが
以下、ののによる証言が物語の半分くらいを占めます。
全部にインデントつけていては容量がもったいないので
証言が長文にわたる場合に限り、会話文インデントを省略いたします。
その場合は「 」を『 』と書きます。
『 』はこの会話文はインデントなしという意味です。
- 16 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:24
- 「まず、容疑者が7人」
容疑者とは不穏な言い方。
最近ののは推理小説でも読み始めたのだろうか。
私は推理ものとかが好きでたまに読んだりするけど、
このコに薦めたことはない。
だって、こんなクイズ魔が推理小説の影響受けたら
クイズがややこしくなるばっかりでしんどいから。
- 17 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:24
- 「飯田圭織先輩 3年生
恋愛研究会部長にしてただ一人の部員。
ときどき宇宙と更新するボケ女王でもある。
石川梨華先輩 2年生
のんたちの相談にのってくれた人。
甲高い声。
のんたちと同じ中学だったからあいぼんも知ってるでしょ?
藤本美貴先輩 2年生
梨華先輩の友達。
突っ込みが早い。
辻希美 1年生
私。
小川麻琴ちゃん 1年生
のんと同じクラスのコ。
超真面目でガリ勉。
田中れいな 1年生
のんと同じクラスの友達。
猫を飼ってる。
道重さゆみ 1年生
のんと同じクラスの友達。
綾瀬川君に告白しようとしているコ」
- 18 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:24
- 人物紹介終了。
途中余計な情報が2,3入ったがだいたいのところはわかった。
「ののと小川さん、田中さん、道重さんは同じクラスなのね?」
「そう」
「なるほど、そういう設定ね?」
「何?設定って・・・・・・」
「いや、なんでもない。続けて」
- 19 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:25
- 『私とれいなとさゆみの3人で話してたときのこと。
れいなってのが恋バナ大好きで、すぐに恋愛トークをしたがる。
で、その日はさゆみの好きな人は誰だ?って話になった。
「さゆ、好きな人おる?」
「え?・・・・・・えっと」
私も面白くなって
「あー!いるんだ。誰?誰?」
と身を乗り出しておおはしゃぎ。
さゆみの口から出たのが
「綾瀬川君っていう人・・・・・・」
綾瀬川君と同じ中学だった私はびっくりした。
綾瀬川君は知ってるよね?隣町の男子校に行ってる。
さゆみは通学電車でたまたま近くになった人のことが気になって、
毎朝時間合わせてその人と同じ電車に乗るようにしたんだって。
名前もわからなかったんだけど、
どうやらその人は綾瀬川君というらしい。
それで、今では夜も寝られないほど大好きなんだってさ。
- 20 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:25
- れいなが言う。
「告白しないの?」
さゆみは顔を真っ赤にして。
「ええ?だって、向こうはこっちのこと全然知らないし・・・・・・」
「いいじゃん。ずっと見てましたって言えば」
「でも、どうやって会ったらいいか・・・・・・」
そこで私は立ち上がってさゆみの肩をつかむと
「まかせとけ」
って言った。
「のんは綾瀬川君と同じ中学なんだよ」
「そうなん?」
と聞くのはれいな。
「うん。だから連絡先とか調べられるよ。
この高校の2年生で石川先輩っているんだけど、
確か友達で綾瀬川君と幼なじみの人がいるって・・・・・・」
- 21 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:26
- 「じゃあ、のの、石川先輩に聞いてみて」
ってれいなは言うんだけど肝心のさゆみは
「いいよ。私、告白なんてできないよ・・・・・・」
弱気。
私は
「平気だって。やっぱりこういう気持ちはしっかり伝えないと」
励ます。
れいなも
「そうだよ」
と言った。
- 22 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:26
-
「でも・・・・・・」
さゆみはなかなか決心しない。
あんまり待っていると日が暮れちゃうから私は
「じゃ、今から石川先輩のところ行ってくるから」
といって教室を出て行ってしまった。
梨華先輩の教室について約束をとりつけることに成功。
翌日放課後、
私たちは自分の教室で待っていればいいらしい。
そのとこをれいなとさゆみに告げて、
「じゃあねー」
その日はお開きになった。
- 23 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:26
- 次の日の放課後。
私たち3人は机を囲んでおしゃべりしながら
先輩を待つ。
窓の外ではソフト部が練習中。
「そういえばうちの学校って変な部活あるんだよ」
「えー何?れいな」
「恋愛研究会」
なんじゃそりゃ。
聞いてみると恋愛のことなら何でもお任せとか
自称する怪しい人がいるらしい。
「のの」
トントンと肩をたたかれたので振り返ると
そこには梨華先輩とそのお友達が立っていた。
梨華先輩が隣の人を紹介する。
「このコが綾瀬川君の幼なじみの・・・・・・」
「藤本です。よろしく」
「よろしくおねがいします」
3人そろって藤本先輩にご挨拶。
「ののです」
「れいなです」
「さゆみです」
- 24 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:27
- と自己紹介。
そのとき
ガラガラガラ
大きな音を立てて教室の前の扉が閉まる。
続いて
ガラガラガラ
大きな音を立てて教室の後ろの扉がしまる。
うちの学校の扉、
ガラスの覗き窓がついてる普通の扉なんだけど
建てつけが超悪くって、
開け閉めしようとすると絶対に音が鳴ってしまう。
扉を閉めたのは
「あーもう。うるさいったらない。勉強の邪魔だわ」
クラス1のガリ勉少女。小川さんだった。
「ねぇ、あなたたちも静かにしてくれない」
とか私たちにも絡んでくるし。
- 25 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:27
- 私は
「勉強なら図書館でしな!」
って思いっきり言ってやった。
小川さんは図書館へは行かず
大人しく机に戻った。
こっちはさゆみの幸せがかかってるんだ。
勉強どころじゃないでしょ。
ちなみに今教室内には
私、れいな、さゆみ、梨華先輩、藤本先輩、小川さん
の6人しかいない。
で、梨華先輩と藤本先輩が輪に加わる。
れいなは藤本先輩に聞いた。
「綾瀬川君の連絡先、わかるんですか」
「うんわかるよ」
「さっすがー」
続けて梨華先輩
「告白の手筈も整っているわよ」
といった。
すごい早い展開・・・・・・。
まるでドタバタコメディだね。
- 26 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:27
- 一番びっくりしてたのが
「へ?」
さゆみ。
目が点になっている。
そんなさゆみを置いて藤本先輩は続ける。
「今日、早速告白よ」
「ええ!?」
これには私たち3人ともびっくり。
いくらなんでもそりゃ早すぎだ。
「そんな・・・・・・私、告白なんてできません」
とまどうさゆみ。
「大丈夫。さゆみは心配しないで」
早速私たちの名前を覚えた藤本先輩、力強いお言葉。
でも、本人はかなり不安そう。
「無理です。私なんて・・・・・・」
「ダメよ自信なくしちゃ。
自信を持ってあきらめなければ夢は叶うのよ!」
藤本先輩。熱血派ですか・・・・・・。
- 27 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:28
- しかし、今日告白はいくらなんでもかわいそうだ。
私たちも不安を訴えると梨華先輩。
「そう言うと思って、強力な助っ人を用意したわ」
「誰ですか?」
聞いたのはれいなだった。
「あの有名な恋愛研究会の部長にして唯一の部員、飯田先輩よ」
「えーーーーーー?」
さっき話してた怪しい人じゃないか。
しかも私が気になったのは
「梨華先輩?ひょっとして飯田先輩ってあの?」
「飯田圭織先輩よ」
街一番の変わり者、飯田先輩。
そうか、恋愛研究会の怪しい人って飯田先輩だったのか。
飯田先輩は直接会ったことはないけど
かなりヤバい人だという噂。
なんでも、しょっちゅう宇宙と交信していて
会話をしていても意識がどこにあるのかわからないという
あぶない人らしい。
- 28 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:28
- 「飯田先輩って本当は宇宙人って噂だよ」
私は言う。
「そうなの?」
れいなは聞く。
「うん。時々UFOに乗って通学してるらしいよ。
超能力も使えるんだって。
なんかねぇ、そうとう変な人らしいよ」
「ちょっと・・・・・・のの?」
「怒ると髪の毛逆立ててパワーアップするっていうし」
「ねぇ・・・・・・のの?」
「私、あの人とは関わりたくないかなぁ」
「ののってば!」
れいなに揺すぶられて
私はフッとわれに返った。
れいなの表情を見るとやばそうな雰囲気。
私はちょっと不安になった。
なにかまずい展開になりそうな予感・・・・・・。
- 29 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:28
- その時、背後に気配を感じた。
「宇宙人で悪かったわね!!」
私の耳元に甲高い声が響いた。
「ぎゃーーーー・・・・・・いっ・・・・・・先輩ぃ」
このときは無茶苦茶びっくりした。
心臓が止まるかと思った。
悪い噂はするもんじゃない・・・・・・。
あわてた私
「私・・・・・・宇宙人ってだーいすき!」
とか、必死でフォローするし。
「ごめんなさいごめんなさい」
私はひたすら謝りまくった。
本当、怖かったんだから。
まじ、
なんでこんなことになっちゃうの?
って感じだよ。
- 30 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:29
- でもって
ガラガラガラ
教室の扉の開く音がしたので見てみると、
もう飯田先輩が教室の外・・・・・・。
「やばっ。怒らせちゃった」
私はあせった。
だって飯田先輩はさゆみのために来てくれたわけでしょ。
なのに私、宇宙人とか言ってさぁ。
あの時は飯田先輩がそのまま帰っちゃったら
どうしようかと思ったよ。
梨華先輩が入り口まで走っていって、飯田先輩の手を取って
何か話をしていた。
梨華先輩はぺこぺこと頭を下げまくる下げまくる。
「ごめんなさい梨華先輩」
私は誰にも聞こえないようにささやく。
しばらくすると梨華先輩は飯田先輩を連れて戻ってきたから
よかったけどね。
本当ほっとしたよ。
- 31 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:29
- そんな風で
私は飯田先輩と初対面直前に最悪のびっくり仰天体験だったのだ。
あっ・・・・・・日本語おかしい?
「あれ?ドア・・・・・・」
私はとんでもないことに思い当たった。
飯田先輩が入ってくるときはドアの音がしなかったのだ。
さっきも言ったけど
うちの教室のドアはものすごく立て付けが悪くて
開け閉めするときにすごい音がする。
だから、いくら話に夢中になってたとしても
ドアを開けたら気がつくはずだ。
実際、
小川さんがドアを閉めたときだってみんな注目してたし。
小川さんがドアを閉めた後
私が「飯田先輩宇宙人疑惑」について話してるとき
ドアの開く音はしなかった。
だからあの時ドアは開いてない。
ドアも開けずに、
なのに飯田先輩が入ってきたとしたら、
それはもうミステリーでしょ。
- 32 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:30
- 「ひょっとして、飯田先輩・・・・・・テレポート?」
ボソッとつぶやく私。
やっぱり宇宙人だったのかな?
って私は思った。
ちなみに、
私たちの教室は4階でベランダがない。
うちの学校の4階は全部1年生の教室なんだけどね。
だから窓から入ってこられるはずがない。
あとは例の、開け閉めしたら絶対音のなるドア
以外に出入り口はなし。
でも
音はしなかった。
ドアは開いてない。
「密室だ・・・・・・」
あの部屋はほとんど密室状態だったわけ。
ドアは開けられるけど、開けると音がしちゃう。
視線の密室ならぬ「耳の密室」だ。
「密室だったのに、先輩はどうやって・・・・・・」
さて、ここであいぼんに問題。
飯田先輩はどうやって教室に入ってきたでしょう?』
- 33 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:30
- ののはそう言って私の顔を見て
ちいちゃくなったキャンディをなめた。
「あいぼん。クイズだよ!」
「ちょっと待って。
クイズは綾瀬川君が誰と付き合ってるかじゃないの?」
「まぁいいじゃん。こっちも考えて」
クイズにクイズをはさまれるとは、
ややこしいことこの上ない。
頭がこんがらがるからやめて欲しいのだが、
ののはクイズを出すと
私が何か答えるまで許してくれない。
長い付き合いで思い知らされた。
「あいぼん?」
ののが唇をへの字に曲げる。
いい加減なにか言わないといじけそうだったので
とりあえず適当に答えてみる。
「そうだなぁ
1. ののがドアの音を聞き漏らした。
2. 飯田先輩が潤滑油をもっていて音を消した。
3. 実はドアが自然と開いてしまった。
とか?」
- 34 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:31
- 「ブー!」
はずれてしまった。
ってそりゃ私もあり得ないと思うもん。
まず、聞き漏らし。
これについては
おとめ学園の教室のドアがどれほどすごい音がするか
私にわからない以上なんともいえない。
ののが違うと言っているのだから
ドアの音は、聞き漏らさなかったのだろう。
それに立てつけの悪い扉に潤滑油ごときでは
音は完全に消せない。万が一消せたとしても
何のためにわざわざそんなことをしたのか
というか、
なんで飯田先輩がそんなものを持っているのか
説明できない。
ドアが自然と開いてしまったというのも、
立て付けの悪いドアに限って
そりゃないだろう。
- 35 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:31
- 私はキャンディをひとなめして確認する。
「のの。さっき教室内には6人しかいなかった
って言ってたよね?」
「うん」
「ってことは予め、飯田先輩が教室のどこかに
隠れていたってわけじゃないんだね?」
「うん。飯田先輩は隠れてなかったよ」
だとすると・・・・・・
「わかった。ドアを開けてないってことは
教室の外からでっかい声で怒鳴ったんだ。」
「ブー。声は耳元で聞こえました」
「隠し通路があった」
「ないよー。密室ものでそれやっちゃ
大ブーイングだよ」
やっぱりこのコ、私の知らないうちに
推理小説とか読んでるのかもしれない。
まったく、
薦めたやつはどこのどいつだ。
おかげでこんなややこしいクイズに
付き合わされる私の身にもなって欲しい。
- 36 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:32
- 但し、
最近ののがどんな本を読んでいるか知らないが
ののが出すこの手のクイズは答えを聞くと
なんだよおい!
って突っ込みたくなるようなものが多い。
くだらないというかなんというか・・・・・・
キャンディーがなくなりそう。
そろそろ、真面目にいこうか。
っとその前に
「のの?これ私が正解したら
明日買い物付き合って。
バッグ探してるの」
「買い物?いいよ!」
「で、アイスおごってね」
「むぅ」
交渉成立。
ののはクイズの相手が欲しいから、
断らない。
- 37 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:32
- 私は考える。
密室・・・・・・密室?
違う違う。
問題は飯田先輩がどうやって部屋に入ってきたか、だ。
そもそもののが出すクイズ。
いっちゃ悪いが、そのレベルでいくなら
密室なんて難しく考える必要はないのかも。
「ねぇのの」
「ん?」
「ののは、扉が見えない角度に座ってたの?」
「うん。そうだよ」
「他のコは?れいなちゃんとかは、扉見えてたのかな?」
「そう。のんと向かい合っていたから、
れいなとさゆみには扉は見えていたはず」
「先輩たちは?」
「梨華先輩と藤本先輩はのんの後ろにいたから、
振り返らないと扉は見えない」
「まぁとにかくそれなら、
飯田先輩テレポートっていうのはないよね?
れいなちゃんとさゆみちゃんは一部始終を見ていたんだから、
人が突然現れたりしたら、驚愕仰天びっくりちゃんちゃんだよ」
「なるほど・・・・・・あいぼん、頭いいね」
そうか?
- 38 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:32
- 「だから、ののと梨華先輩、藤本先輩だけがトリックを見てなくて、
他の人たちには見えてたんだ。そうでしょ?」
「んーーー、それは違うかな?」
「違うの?」
「逆だね。れいなやさゆみには『見えなかった』の。
のんだけがびっくりしたってのは合ってるけどね」
「どういうこと?」
またヒントになるんだかならないんだか微妙なことを言う。
・・・・・・
- 39 名前:―飯田先輩テレポート― 投稿日:2004/03/31(水) 13:33
- ののはキャンディーをパク。
口から棒だけが出てきた。
あ、なくなった。
「!」
分かった。
「のの、分かったよ」
「ええ?早くない?」
「へへ、わかっちゃったもんね」
わかってみて改めて
くだらねぇ……。
「じゃー言ってみて」
「はいはい。いまお答えしますよっていきたいとこだけど・・・・・・」
「けど?」
「解答編は次回更新のときね!」
「あいぼん・・・・・・何いってるの?」
- 40 名前:いこーる 投稿日:2004/03/31(水) 13:34
- 以上、問題編でした。
解答編は約1週間後にUP予定。
答えがわかっちゃった人は内緒でお願いします。
- 41 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/01(木) 00:56
- 更新お疲れサマでっす。
むぅ、わかったような・・・わかんないような・・・。
ていうか他の答えが見つからないw
次回を待ちます。。。
- 42 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:44
- 「さて、解答編でございます」
「あいぼん?どうしたの?」
「読者の皆様、お待たせいたしました」
「おーい」
ののがため息をつく。
「あいぼん、ネットのやりすぎだよ。大丈夫?
今、あいぼんはのんと話してるんだよ」
「あっごめんごめん」
私はわれに返った。
「で、クイズの答えだね?」
「そう」
立て付けの悪いドア。
音がしなかったのに
ののは背後から声を聞いた。
「飯田先輩はどうやって教室に入ってきたか?」
ののはもう一度クイズを言う。
「あいぼん。本当に分かったの?」
- 43 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:44
- 「わかったよ。
飯田先輩は
テレポートしたわけでもなく
通り抜けフープを使ったわけでもなく
ましてや密室トリックですらない」
密室トリックというなら
いくらかは思いつく。
隣の教室の窓からこっそりと入ってくることだって
かなり危ないが、室内に共犯者がいれば不可能ではない。
ただし
「飯田先輩が壁抜けの術なんて使わなきゃ
いけない理由なんてどこにもない。
泥棒じゃない。
教室に用事があるんだから普通に入ってくれば
いいんだよ」
こそこそ入ってくる必要はない。
入るときは必ずドアを使うはずだ。
「でも、ののは背後に声を聞いた。
確認するけど、この背後の声、
教室の外からでっかい声で
怒鳴ったような声じゃなかったんだよね」
ここも確認。
- 44 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:45
- 「違う。耳元で聞こえたの」
OK。
「飯田先輩はトリックを弄していない。
これが今回の推理の大前提」
「ふむ」
「それなのに、なぜ密室が成立したかというと
飯田先輩以外の人間があるトリックを使ったからだ」
「あるトリック?」
それは
「ののが私に仕掛けた叙述トリックだ」
「叙述トリック……」
ああ、
このコはそんな推理用語知らずに
クイズを出していたのか。
「ののが語った内容は全て真実。
だからウソはなかった。
ただ、ウソはなくても断片的に事実を隠すだけで、人を騙すことはできる。
聞き手の勘違いを逆手にとってね。
それが叙述トリックだ」
「……」
「私はのの視点で語られた物語しか知らない。
視点が限られているから謎でもなんでもないものが謎に見える。
これがれいなちゃん視点の物語だったら
つまらない勘違いだったことに気づいたはずだ」
- 45 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:47
- 「あいぼん……講義はいいから早く答えを」
「ののはこういった。
『飯田先輩が入ってくるときはドアの音がしなかったのだ』(>>31)
厳密に言うなら『入ってくる』ときに音がなることはない。
音がするのはドアを『開けた』ときだもん。
もちろん飯田先輩が自分の手で開けたのなら入ってくるときに
音がしたってことになるけれど、そうじゃないんだね。
教室の中の誰かがトイレに行くためドアを開けた。
あるいは教室外の誰かが用事があって入ってきた。
『でもって
ガラガラガラ
教室の扉の開く音がしたので見てみると、
もう飯田先輩が教室の外・・・・・・。』(>>30)
これは飯田先輩がドアを開けたんじゃない。
他の誰かがドアを開けたとき偶々、
『飯田先輩が教室の外……』ってことなんだよね?」
「そうです。
ドアを開けたのはトイレに行こうとした小川さんでした」
了解。
- 46 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:48
- 「でもあいぼん。
のんはその『ガラガラガラ』より前に耳元で
『宇宙人で悪かったわね!』っていう声を聞いているんだよ?」
「それ以前は音がしていない以上ドアは開いていない。
ドアが開いてない以上、飯田先輩は教室に入ってきていない。
ののは耳元で声を聞いている。
論理的な結論は、
耳元でした声は、飯田先輩の声じゃない
そういうことになる。
ののは『飯田先輩の声がした』とは一言も言っていない。
そこがこのトリックのミソだ。
ののはこう言ったよね。
『私の耳元に甲高い声が響いた。』(>>29)
甲高い声っていえばさ、梨華先輩じゃん。
のの、最初に人物紹介のところで梨華先輩のこと
甲高い声って紹介してたもんね」
私はそこで一旦話を区切る。
「あいぼん・・・・・・よく覚えてるね」
- 47 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:49
- 私は得意になって話を再開。
「だから、あのときの声は梨華先輩。
梨華先輩はせっかく自分が飯田先輩にお願いしたのに
ののが宇宙人だとか、関わりたくないとか言ったから
怒鳴ったんだよね?
『宇宙人で悪かったわね!!』
って。
それを飯田先輩の声だと勘違いしたののが
びっくりして後ろも見ずに謝りまくったんでしょ?」
聞く。
ののは、こくんとうなづいた。
話を再開。
「飯田先輩はそのときはまだ、
教室に向かって歩いてる途中だった。
で、ののがごめんなさいとか宇宙人大好きとか
言ってる間に到着した。
そのとき偶然、小川さんがドアを開けた。
それが、ガラガラガラって音だったんだよね?
あのガラガラガラって音は
飯田先輩が帰ろうとしたときの音じゃない」
「うん、違う」
- 48 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:49
- 「そのあと
梨華先輩は飯田先輩のところまで行った。
梨華先輩は飯田先輩を引き止めに行ったんじゃなくて
出迎えに行ったんでしょ?」
そういうとののは
下を向いて
「そうなの。
のんはてっきり
梨華先輩が謝りに行ったのかと思ったよ」
「だから、飯田先輩は
ドアが閉まってる間に教室に入ったんじゃない。
ののが勝手に飯田先輩が後ろにいるって思っただけ。
れいなちゃんやさゆみちゃんには『見えなかった』
ってのはそういう意味。
飯田先輩は声がしたとき教室にいなかったんだから。
というわけ。
だから問題なんだっけ?」
「飯田先輩はどうやって教室に入ったか?」
「教室に入ったのは一回だけだから、
正解は
梨華先輩に連れられて
これが解答です」
- 49 名前:―飯田先輩テレポート 解決編― 投稿日:2004/04/07(水) 21:50
- 私は話し終える。
「さっすがあいぼん!大好き!!」
答えを当てられてののは嬉しそう。
このコ。自分のクイズを真剣に考えてもらえるのが
嬉しいらしい。
かわいい・・・・・・。
「さぁ、のの。アイスおごってもらうからね!」
「えーーーダメだよ。まだクイズの途中だよ」
なにをいうかこのやろう。
せっかく正解したのに・・・・・・。
かわいくないっ。
私は次のお菓子に手を伸ばす。
―飯田先輩テレポート 終わり―
ののクイズはまだまだ続きます。
- 50 名前:いこーる 投稿日:2004/04/07(水) 21:51
- 以上です。
ところどころレス番号にリンクしてますが
参照箇所、ということです。
次はもうちょっとまともなトリックで書きたい……
- 51 名前:いこーる 投稿日:2004/04/07(水) 21:52
- >>41
はいこうなりました。
ご期待に応えられたかどうか
自信はほとんどないです;汗
が、これからもよろしくお願いいたします。
- 52 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/08(木) 16:02
- 更新お疲れ様です。
見事にハズレましたw
次こそは・・・の精神で次回も楽しみにしてます。
- 53 名前:いこーる 投稿日:2004/04/10(土) 21:27
- つなぎというわけではないですが
ちょっと(ほんとにちょっと)更新します。
- 54 名前:コーヒーブレイク「ののが出題した過去問」 投稿日:2004/04/10(土) 21:27
- 中学3年生の12月の話。(つまり2002年12月)
学校の帰り道。
雪が降っていたので私もののも傘をさしている。
風が冷たくて体がガチガチいってしまう。
そんな中
ののがこんなクイズを出してきた。
問題
「キッズを除くハロプロのメンバーで出身地が一番南にあるのは誰?」
南・・・・・・
微妙に気分が暖かくなるクイズだ。
これは公表されているデータの範囲内での問題らしい。
キッズはこの時点では出身地はおろか
生年月日すら発表になっていなかったから
これは除く。
さてさて・・・・・・
- 55 名前:いこーる 投稿日:2004/04/10(土) 21:28
- 注:
本小説はアンリアル小説ですので、ここでのハロプロは
架空のハロプロになります。
モーニングのメンバーは小説内のキャラとしてで登場していまして
ハロプロにも同姓同名がいるとやりにくいので
モーニングを除いて考えてください。
だから問題としては
モーニング及びキッズを除くハロプロメンバー
と考えていただければよいと思います。
・・・・・・というか簡単ですね。
この後、こんなややこしいハロプロが登場するのは
コーヒーブレイクだけですので本編だけを読まれている方は
スルーしていただいて構いません。
- 56 名前:いこーる 投稿日:2004/04/10(土) 21:34
- >>52
どうもです。
クイズ感覚で楽しんで頂けて嬉しいです。
次こそは……私も面白い推理を書くぞ!と意気込んでいきます。
- 57 名前:コーヒーブレイクの解答 投稿日:2004/04/13(火) 20:43
- 「でもさーのの。メンバーの出身地って
都道府県までしかわからないんでしょ?」
「そうだよ」
「それじゃあ微妙な位置関係がわからないじゃん」
「それでも答えはわかるの!」
私とののは坂道を下りだした。
・・・・・・寒い。
私は寒さに耐え切れずに、
ののにぴったりとくっついた。
ののもくっついてくる。
「つまり、思いっきり南の人がいるってことだね?」
「そう」
「ふふふっわかったよ!」
私は言った。
「答えはミカちゃんです」
- 58 名前:コーヒーブレイクの解答 投稿日:2004/04/13(火) 20:43
- 傘が、邪魔だった。
私は傘をたたんで、ののが持っている傘に入れてもらう。
「あったかいよ、のの」
2人ともコートを着ていたし、
そんな簡単に体温が伝わるはずがないのだが
そんな気がした。
「あいぼんも、あったかい」
私は、遠い海の向こうにある
常夏の楽園のことを想像した。
冬の寒さなんて知らない
暖かい島のことを。
でも・・・・・・
私もののといっしょに傘を持つ。
手は冷たい。
でもののと手を握り合っていたおかげで
少しは冷たくなくなった。
・・・・・・冬にしかないあたたかさだってある。
二人は離れられそうになかった。
- 59 名前:コーヒーブレイクの解答 投稿日:2004/04/13(火) 20:44
- ―コーヒーブレイク、終わり―
本編続きは近日更新。
- 60 名前:いこーる 投稿日:2004/04/13(火) 20:44
- とうわけでした。
- 61 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:33
- 瓶詰めのラムネ菓子を取るのの。
私はチョコクッキーをボリボリはじめる。
「で?さゆみちゃんの告白はどうなったの?」
『そうそう、話の続きね。
飯田先輩が言い出したのは
実際に綾瀬川君と会う前に
告白シュミレーションをしたらいい
ってこと。
そうすれば
本番でも緊張せずに告白できるというわけ。
でも、私たち
寸劇とかやると設定に凝りだしたり
キャラ作りをしだしたりと
止まらない。
- 62 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:33
- 「ネコ役は誰?ネコ役!」
「なんですかネコって?」
「じゃあ私、通りすがりのモデル役!」
「私は運転手さんがいい!」
もう、なんの練習だかわけがわからない。
しかも役者が足りないとかで結局
「なんで私まで・・・・・・」
小川さんまで巻き込む始末。
ふざけまくって
まともな練習ができたころには
時間がずいぶん経ってしまった』
いつになったら告白シーンがでてくるのだろう。
ひょっとしてこの話、今日いっぱいかかったりする?
でも、楽しそうにベラベラしゃべりまくるのの。
私は片耳でなかなか進まない話を聞きながら
さっき受け取った日記を読み始めた。
日記の日付はとびとびで
毎日、書いているわけではないようだ。
書きたくなったら書くといった感じ。
- 63 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:34
- ++++++++++++++++
6月8日
私の気持ちとは関係なく、
強引な辻さんによって先輩たちまでが
教室にやってきて大騒ぎになってしまった。
飯田先輩は
「告白は綿密なシュミレーションの後で行います」
とかよくわからないことを言い出すし。
しかし、シュミレーションとはいえ
同性を相手にしたラブシーンはやりにくい。
告白したのされたのってのを女の子とやるなんて。
なんだかんだで楽しかったからいいけれど。
でも、楽しい後が大変だった。
だからシュミレーションの話はこれでおしまい。
この日記に書かなきゃいけないのは
もっと大事なこと。
結局私は
綾瀬川君の前で泣いてしまった。
泣かないって思ったのに、
私はなんだかんだで弱い。
こんなことで泣いてちゃ
恋愛なんて無理なのかな?
でもせっかくのチャンスだもん。
逃がすわけにはいかない。
++++++++++++++++
- 64 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:34
- ののはラムネをボリボリかじりながら
話を続ける。
『飯田先輩は本当にすごかった。
告白するのにトランシーバーを用意して
戦闘配置まで決めてるなんてちょっと普通じゃない。
トランシーバーが全部で6つ。
これらをさゆみ以外の全員が持って、
各配置から司令の飯田先輩に
状況報告をする。
藤本先輩は屋上配置。
屋上から全体の様子を伝える係。
梨華先輩は校門の配置。
綾瀬川君がうちの高校に着いたのを
いち早く知らせる係。
- 65 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:34
- れいなは体育館裏A配置。
のんは体育館裏B。
この2人はさゆみが体育館裏で告白してる最中に
邪魔が入らないように両端を見張る係。
小川さんは小道具班。
タイミングを見計らってネコを出す係。
で、このネコをきっかけに2人は仲良くなっちゃおうという
すごいんだか単純なんだか意味不明の作戦。
飯田先輩は司令本部。
教室で各人に司令を出す。
- 66 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:34
- 16:00
私はトランシーバーを握っていた。
トランシーバーなんて生まれてはじめて持った。
トランシーバーから梨華先輩の声がする。
「綾瀬川君、校門通過」
続けて藤本先輩の声が、
「綾瀬川君、A側から体育館裏に向かっています」
「A側ね?れいな!」
司令塔、飯田先輩の声に続いてれいなの声。
「はい!」
「A側から綾瀬川君が行くから、隠れて」
「了解」
私はB側なので何もすることがない。
しばらくそのまま待機していた。
普通の速さで校門から体育館裏まで
3分もかからないだろう。
私は携帯を取り出して時計を見る
16:03
そろそろだ。
- 67 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:35
- 私の頭の中はさゆみの恋の行方でいっぱい。
ああ、あのコはどんな告白をするのだろう。
「やっぱり私・・・・・・言えない」
さゆみの声がする。
私は壁に体をつけて覗こうとするが、
木が邪魔でさゆみのいる場所が見えない。
私はトランシーバーに向かって
「れいな、そっちからさゆみの様子見える?」
と聞いた。
「こら!勝手に会話するな」
飯田先輩の声が聞こえるけどれいなは
「ちょっと待って・・・・・・」
「ちょっと、勝手な行動はしないで!」
「あっ・・・・・・さゆ。泣いてる」
れいながそういった。
私は
「泣いてる?泣いてるの?」
言ってさゆみの方に駆け出す。
- 68 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:35
- 「飯田先輩!ののが出て行っちゃいます」
藤本先輩の声がする。
「こら、のの。司令を守りなさい!!」
無視。
「さゆみー!どうしたの?」
さゆみのところへ行くとさゆみは
座り込んでシクシクと泣いている。
向こうかられいなも走ってくる。
私はさゆみの肩に手を置いて。
「さゆみ、どうしたの?」
聞いた。
さゆみは
「私・・・・・・告白なんてできない」
と言った。
小川さんも駆けつけてくる。
- 69 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:35
- 私とれいな、小川さんの3人でさゆみの肩を抱いて
必死に慰めた。
「大丈夫だよさゆ」
「泣くことじゃないでしょう」
「元気出してくださいよ」
先輩たち3人がやってきた。
「まったく、配置を放棄して駆け出すなんて、
何やってんのよ!」
飯田先輩が私に怒鳴った。
「だって、さゆみ。泣いてるんですよ!」
私は抗議する。
「ほうっておけませんよ!」
さゆみは、まだ泣いている。
「ああ、もう。これじゃ計画が台無しだわ。
計画通り告白すれば絶対に上手くいくのに。
いい?あななたちは私の司令どおりに動いていればいいの。
あなたわかってるの?私の戦歴に泥を・・・・・・」
「うるさい!計画が何?司令が何?
さゆみの気持ちを無視して、先輩。
さゆみの幸せ考えてるんですか?」
- 70 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:35
- 私は大声でそう言ってやった。
そのとき小川さん
「あのー。綾瀬川君はどうしましょう・・・・・・」
と言った。
藤本先輩は
「今日のところは無理ね」
と言う。
「私が話します」
小川さんはそう言った。
「それより、のの!
これは幸せになるための作戦よ!
その場の感情に流されてちゃ
幸せはつかめないのよ」
「でも・・・・・・」
「でもじゃないわ。計画性のない恋愛なんて
上手くいくわけないでしょう。
しっかりとした計画に基づいて告白しないといけないのよ」
さゆみはまだ、れいなに抱かれて泣いてる。
梨華先輩は、こちらを不安そうに見ている。
- 71 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:35
- 私は
「飯田先輩・・・・・・」
小さな声で聞いた。
「恋、したことありますか?」
飯田先輩はびっくりした顔をして
「私には、付き合ったことのある彼が何人もいるわ」
言った。
「彼氏がいるか聞いてるんじゃないです。
先輩は、恋をしたことがあるんですか?」
飯田先輩が止まった。
「何を言って・・・・・・」
「どんなに告白が上手くいっても、
何回いいところでデートしても、
そんなの恋愛じゃない!」
「じゃあ、何が恋なのよ?」
- 72 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:36
- そのとき、
小さな声が聞こえた。
「恋って・・・・・・」
さゆみだった。
座ったまま、
ベソかいたまま
さゆみは言った。
「わけわかんなくって、
理由なんかなくって、
痛くって、温かくて、
気持ちがぼんやりと、
つかみ所がないけれど
でも、素敵・・・・・・」
さゆみは立ち上がる。
「みんな、ありがとう。
協力してくれて・・・・・・。
私、もう一度頑張ってみます。
私、もっと強くなります。
今度は、計画とかなくても告白できるように」
- 73 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:36
- さゆみがそういったので
私たちの喧嘩は終わった。
その日はそれでお開き。
私はさゆみに謝った。
結局私、自分が面白くっていろいろやってただけで
さゆみのこと、ちゃんと考えてなかったから。
大切なのはさゆみの気持ち。
次、また協力したいからこれからもがんばろうって
私はさゆみにそういった』
ののはそこで、一息ついた。
「のの・・・・・・すごいね」
正直私はびっくりした。
ののがクラスメイトのために
上級生と喧嘩をしたということに驚いた。
ののなりの恋愛論。
そう、格好いい人と付き合うからいい恋ってわけじゃないし、
なにもかも上手くいくのがいい恋なんじゃない。
もっと
気持ちの問題なんだよね。
- 74 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:36
- 私はののが話しているのを聞いてちょっと感動した。
このコは、クイズとお菓子さえあれば
あとは適当なのかと思っていたが、
私の知らないところで親友は成長したらしい。
それは
嬉しいようでもあり
さびしいようでもあった。
「で、続きは?」
私はののに聞いた。
「あっ・・・・・・そうそう、変なことがあったの」
ちょっとマテ
脱線は勘弁してくれ・・・・・・。
そんな私の気持ちをよそに
ののは話を再開する。
- 75 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:37
- 『次の日のこと。
その日は私が高校に入って以来始めての
短縮授業だったの。
早く学校が終わるのって嬉しい。
授業が終わってからも3人で話そうってことになった。
でも、
私だけが掃除当番。
東棟階段の掃除。
おとめ学園の校舎は
南北棟と東西棟が真ん中で交差していて
上から見ると十字架の形をしている。
真ん中を基準にそれぞれを
東棟、南棟、西棟、北棟って呼んでるの。
階段はそれぞれの棟の先端についているから
中央の交差点から階を移動するのは、ちょっと面倒。
へんな校舎でしょ?
北棟のさらに北側には記念館なる丸い建物がある。
だから空からおとめ学園を見るとちょうど
♀の形になっているの。
それで
階段掃除をちゃっちゃと終わらせて
私は教室に戻った。
- 76 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:37
- のんたちの教室は東棟の階段側、
つまり十字架の一番右端にある。
だから階段からは近い。
「あれ?」
教室に入るとれいなが泣いてる。
「れいな、どうしたの?」
「目にゴミが・・・・・・」
ズルッ。
私はこけた。
昨日あんなことがあったばっかりだから
れいなにも何かあったのかと思ったらゴミかい!
コントでもやらないようなベタなボケだよ。
ふぅやれやれって感じ。
「痛ぁい・・・・・・ねぇさゆ、どこにゴミ入ってる?」
れいなはさゆみに言った。
「ちょっと待って・・・・・・んーーーよく見えない」
なんかバカバカしくなっちゃった私はふっと
教室のドアについてるガラス窓を見た。
- 77 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:37
- あれ?っと思うと
つーーーっと藤本先輩が教室の中を見ながら
右から左へと通過した。
こっちを見ていたから教室の中に入ってくるかと思ったら
扉はちっとも開かない。
「ねぇ・・・・・・藤本先輩だよ」
私は2人に声をかける。
でも、
「痛いよぉ・・・・・・」
「動かないでよぉ」
2人はまだ目のゴミをとるのに夢中。
「藤本先輩はどうして入ってこないんだろう?」
って思った私は
さっき藤本先輩が通過した扉のところまで行って
ガラガラガラ
廊下に出た。
さっき藤本先輩は右から左へ行ったから
左向け左をして廊下の先をみると
ショートヘアの女生徒の後ろ姿が見えた。
- 78 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:37
- 「あっ・・・・・・藤本先輩!」
私は追いかけようと駆け出した。
後ろ姿は中央交差点まで行って右に曲がっていった。
「先輩、待って」
私は追いかける。
でも結局、廊下を右折して北棟に行くと、
後ろ姿は見えなくなってしまった。
「どうして行っちゃったのかな?」
私の声が聞こえなかったはずないのに。
私はしばらくその場に佇んでいた。
「教室・・・・・・帰ろ」
仕方がないので、私は教室に戻ろうと
くるっと
回れ右をした。
すると目の前には
!
「のの」
藤本先輩。
- 79 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:38
- 「にえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
とんでもない奇声は私。
びっくりして大絶叫をしてしまった。
「いつの間に後ろに?」
「ん?美貴はずっと後ろにいたけど」
「だって先輩。さっき教室の中を見ながら廊下を歩いてましたよね?」
そう、右から左、つまり西へ、校舎の交差点に向かって
確かに藤本先輩は歩いていた。
私はその後で廊下に出ていったのだ。
だから、藤本先輩が後ろにいるはずがない。
それなのに
「うん?なんのこと」
とぼける藤本先輩。
さっきも言ったけど
おとめ学園の校舎は十字型。
真ん中の交差点までは曲がり角がない。
だから私に気づかれずに後ろに回りこむなんてのは
不可能なの。
なのに藤本先輩はいつのまにか私の後ろにいた。
不思議でしょ?
- 80 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:38
- 「ひょっとしてどっかの教室に隠れてました?」
教室に隠れて私が通り過ぎるのを待つ。
で後ろから出てきて私を脅かす。
それならあり得る話だよね。
「何言ってるの?そんなことするわけないじゃん」
私は信じなかった。
隠れられそうな教室を私は一つ一つチェックする。
「あっ・・・・・・鍵かかってる」
次
「ここも・・・・・・」
次
「ここもダメ」
次
「あっ・・・・・・ようやく開いた!藤本先輩、ここに隠れたんでしょう」
って思ったら
「れいな、ゴミとれたよ!」
「はぁ痛かったぁ。ありがと、さゆ」
・・・・・・。
元いた教室だった。
- 81 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:39
- 「どうして・・・・・・そんなはずないのに」
呆然と立ち尽くす私。
一体何がどうなってるの?
っとここで、あいぼんにクイズ。
このミステリーの真相は?』
まただ・・・・・・。
「もうのの!クイズにクイズを挟まないでよ!」
私はいい加減うんざり。
「えーーー、考えてよぉ」
「もう・・・・・・」
とはいっても私にはもう答えはわかっていた。
簡単なこと。
これはクイズというには大したことのない話だ。
そうだ・・・・・・
私は意地悪をしてやろうと思った。
答えがわからない振りをしてじらしてやる。
- 82 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:39
- 「ひょっとして、おとめ学園の西棟と東棟、無限ループゾーンだったとか?」
「なんじゃそりゃ?」
んなこたない。
あっそう。
「藤本先輩が分身の術を使った?」
「んなわけないでしょ!!」
そりゃそうだ。
「ののは、もちろん答えを知ってるんだよね?」
「え・・・・・・そりゃあ、まぁ・・・・・・えっと」
知らないらしい。
このコはたまにこういうことをする。
答えのわからないクイズを出すというのは
明らかに反則なんだけど。
ののは自分の怪奇体験の謎を私に解いてもらおうとしているのだ。
それにしても
「のの、わからないの?」
「むぅ」
そんなに悩むような問題じゃないと思うけど。
- 83 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:40
- 「ののがボケっとしてる間に北棟の階段を大急ぎで下りて
3階からもう一度、東棟へ行く。
それで東棟の階段を上って再び4階に来れば
ののよりも後ろにまわれる・・・・・・」
「いや・・・・・・ちょっと佇んでいたけど
そんな時間はなかったよ」
「後ろの扉を通過した藤本先輩は
ののが出て行ったタイミングで前の扉から教室に入り込む。
で、ののを背後から追いかけた」
「ごめん、言ってなかったね。
のんが藤本先輩を見たのは
教室の前、つまり中央階段よりの扉。
だから今のは違う」
じゃあ、これならどうだ。
「藤本先輩が鍵を持っていた!」
「あっ・・・・・・そっか」
ののはポンと手を叩く。
「そうか、そんな簡単なことだったのかぁ・・・・・・」
このコはもうちょっと頭を使うことを
したほうがいいかも知れない。
さっきはののが成長したのに驚いたけど
こういうところは全然変わらないなぁ。
- 84 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:40
- 「あのねぇのの。そんなわけないでしょう」
「なんで?」
「藤本先輩はなんのために鍵なんか持ってたのよ」
「だから、のんをびっくりさせようとして隠れてた・・・・・・」
「ののが、藤本先輩を追っかけていくって藤本先輩は知ってたの?」
「え?」
「その時はののがたまたまドアの方を見てたから、
藤本先輩が通ったのに気がついたんでしょう。
ひょっとしたら誰にも見られないで
通り過ぎてたかもしれないじゃん。
だから、藤本先輩にはののが
追いかけてくる保証なんてなかった。
それなのに、なんでかくれんぼするために
鍵なんか持ってるの?」
「じゃあもともと教室に用事があったとか?」
「4階はみんな1年生の教室なんでしょう?
2年生の藤本先輩が用事があるってのがおかしい」
「むぅ」
仕方がない、解説してしんぜよう。
「のの?」
「何?」
「私が答えられたら、アイス3段にしてもらうからね」
「マジッすか?」
「いい?」
- 85 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:40
- 「んーーー」
渋るのの。
「じゃあ、答えてあげない」
私はぷいとあっちを向く。
「あーーーー」
慌てるのの。
結局奢らないくせに・・・・・・。
そう、こういう賭けをしてもなんだかんだで
結局奢ってもらったことは一度もない。
だからこそ、私は
遊びでいじめてしまうのだ。
ホンキでやってたらマジ、いじめだもん。
ののにそんなことはしない。
ののはラムネ菓子の瓶に口をつけて
瓶ごとひっくり返す。
ざらざらーーーー。
瓶を戻すと口に入りきらなかったラムネ菓子がまた
ざらざらーーーー。
- 86 名前:―藤本先輩分身― 投稿日:2004/04/16(金) 20:41
- ふぅ。
「しょうがないなぁ。教えてあげますか」
「お願い」
お願いのポーズ!
「・・・・・・」
かわいかった。
まったく私はののに弱い。
では、解答は次回更新にて・・・・・・。
- 87 名前:いこーる 投稿日:2004/04/16(金) 20:41
- 以上です。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 23:45
- おとめ学園だからあの人はないとして……、
まさかママティ? なわけないかw
- 89 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/17(土) 00:44
- 階段使ったと思ったのに..._| ̄|○
- 90 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:47
- ということで解答編。
廊下を通り過ぎたはずの藤本先輩。
ののが追いかけていったらいつの間にやら
後ろにいた。
「これは、すごく簡単な話なんだよ」
「そうなの?」
「でも、簡単に言っちゃつまらないから
探偵っぽく理屈で解説します」
「ええ?何それ」
「このスレは推理ものなんだから」
「だから、あいぼん!それはネットでしょう。
ここは現実なの。もう・・・・・・」
私は推理を披露する。
「まず、問題は藤本先輩らしき人が
2人もいるってことだよね。
ここから片付けましょう。
2人ってのは
ののが追いかけていったショートヘアの後ろ姿。
それから
ののに後ろから話しかけてきた藤本先輩。
この両方が藤本先輩じゃおかしいもんね。
さぁ偽者はどっち?」
ののに聞いてみる。
- 91 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:47
- 「ショートヘアの後ろ姿?」
「そう、その通り。
さすがに話しかけてきた方は人違いじゃないもんね。
ののは後ろ姿を見て藤本先輩だと思い込んだ。
でもそれは人違いで、
でも本当の藤本先輩は後ろにいた。それだけ。
何も難しくないでしょう?」
ののは、
「でも・・・・・・」
と言う。
「でも、のんは教室の中で東棟から
中央交差点の方に歩いている藤本先輩をみたんだよ。
あれは絶対本物だよ!」
「それも簡単に考えればいいんだって。
ドアの横を通過した藤本先輩がドアよりも
後ろにいたんだから、答えは
藤本先輩は一旦ドアの横を通って
すぐにドアの影に隠れて戻ってきた
そういうことになる」
ののは、目が点。
- 92 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:48
- 「はぁぁ?」
「それしかないでしょう。
ワープでも分身の術でもないのに
ののが教室を出たとき後ろにいたってことはさぁ」
「でも・・・・・・普通、そんなことしないじゃん」
そう。
普通に考えれば
歩いている途中に後戻りなんてしない。
でも、
「でもね、のの。
どんなにありそうにないことでも
他のあり得ないことを全て消去した結果、
一つだけ残った可能性は、
それが真実なんだよ」
それは、
推理小説の出発点ともいえる
基本的な原則。
「それしかないんだから、
信じられなくても、真実なんだよ」
「確かに・・・・・・
unlikely but possible
(ありそうもない しかし 可能なこと)
だけど」
- 93 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:48
- ののは考え込んでしまう。
「でもさあいぼん。
なんで藤本先輩は一旦通ったところを戻ったの?」
「それはね、考えてみて。
身をかがめて覗き窓の下から通るのはなんのため?」
またののに聞いてみる。
「中の人に見られないようにするため?」
「そう、藤本先輩はののたちに見つからないように
こっそり教室の中の様子が見たくてドアにぴったりくっついて
窓から様子を窺っていたんだよ」
「それじゃまるで・・・・・・覗きみたい」
ののは言った。
「そうだよ。藤本先輩はののたちの教室を
覗こうとして戻ってきたの」
「ええ?」
ののは再びびっくり。
自分ひとりが答えを知っているのは
思ったよりも楽しいかも。
私はののがクイズ好きなのがなんとなく
わかった。
「なんでそんなこと・・・・・・」
- 94 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:48
- 「さてクイズです!
その時教室ではなにが起こっていたでしょう」
調子に乗った私は
ののにクイズを出した。
いつものお返し。
「えっと・・・・・・のんとれいなとさゆみが話してて」
「そのとき、れいなちゃんとさゆみちゃんは?」
「れいなの目に入ったゴミをとってた」
「目のゴミを取るときってさぁ、こうやって」
私は右手をののへと伸ばしてほっぺたをそっと持つ。
で、親指で左目をあっかんべぇさせた。
「こうやって見るでしょう」
「うん」
「で、目の中を覗き込む」
「うん」
「で、この体勢を私の後ろから見たら
どう見える?」
「?」
ののは答えない。
「わからない?」
「うん、わかんない」
- 95 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:49
- 仕方がないので、
私は、
顔を近づけて、
唇と
唇を・・・・・・
「うわぁ!」
ののはびっくりして思いっきり仰け反った。
「あ・・・・・・あいぼん?」
「あははっ、ののかわいい」
「いま・・・・・・キスしようとした?」
「もうちょっとだったのにぃ」
そこでののはポンと手を打つ。
「あっ・・・・・・そっか」
「わかった?」
「藤本先輩の角度からは、さゆみとれいなが
キスしているように見えたんだ・・・・・・」
- 96 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:49
- 「そう、それでびっくりした藤本先輩は
こっそりとドアのところまで戻ってきて
中を覗いてたってわけ。
そこへ、藤本先輩を追いかけようとしたののが
扉を急にガラガラガラーーーっと開けた。
藤本先輩は後ろにとびのく。
でも、藤本先輩は左の方へ行ったと思い込んでるののは
そっちにいたショートヘアの人を
藤本先輩だと勘違いしてしまった。
で、追いかけた。
藤本先輩は自分が探されているとわかったから
ののを後ろから追いかけてきたってわけ
以上。
推理終了」
話し終えた。
ののはなにやら力が抜けてしまったみたい。
- 97 名前:―藤本先輩分身 解決編― 投稿日:2004/04/23(金) 23:49
- 「また、のんの勘違いだったのかぁ」
「うーん。ちょっと注意力が足りませんなぁ」
「あーーこの!」
あいかわらずののはののだ。
話の途中で難しい英単語が登場したので、
私はかなりびっくりした。
ひょっとしてのの、
勉強してる?
でも、やっぱり
私の好きなののだ。
どんなに成長しても
それは変わらないんだろう。
ラムネ菓子の瓶が空になった。
―藤本先輩分身 終わり―
亜依の謎解きは続きます。
- 98 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/24(土) 23:41
- 更新乙です。
くっ、、、そこまでは読めなんだ・・・。
ん〜、中々完全勝利とは行きませんな〜。。。
次回こそは・・・ってコトで続きも楽しみにしてますw
- 99 名前:コーヒーブレイク2「ののが出題した過去問」 投稿日:2004/04/25(日) 11:07
- 私とののは中学校の帰り道に
よくシェイクを飲みに行った。
中学3年生の8月。(つまり2002年8月)
その日は新作の抹茶味シェイクを2人で注文した。
抹茶味のシェイクにはあずきが入っていた。
ののはフタを外してストローでシェイクを
かしゃかしゃ(分身の術ではない)とかき回している。
かき混ぜながら私にクイズを出してきた。
問題
「ハロプロメンバーの名前でしりとりをします。
同じ人を何回使ってもOKというルールにすると
ある2人のメンバーだけでしりとりがクルクルと
ループしてしまいます。
さてそのメンバーとは誰?」
クルクルとループ。
ののはストローをクルクル。
- 100 名前:コーヒーブレイク2「ののが出題した過去問」 投稿日:2004/04/25(日) 11:07
- 私はかき回すのが面倒でそのままシェイクを飲む。
抹茶の甘みが口の中に広がってなんともいえない美味さ!
「のの。それはあだ名はダメなの?」
「ダメ!ちゃんとした芸名です」
「そう・・・・・・」
さてさて・・・・・・
注:
しつこいようですが、この小説のハロプロには
モーニングがありません。
したがって
加護亜依→石川梨華→加護亜依→石川梨華・・・・・・
のループは正解になりません。
それ以外にもう一組。名前がループする2人が答えになります
- 101 名前:いこーる 投稿日:2004/04/25(日) 11:11
- >>89 飛べない鳥様
はいどうもです。
結果はこんなかんじでしたがいかがでしたでしょうか。
>階段。実はその可能性に思い至ったのは更新直前なんですw
フォロー間に合ってよかった。
>>88
なるほど……予想外の着眼でこちらがびっくりしました。
面白いです。
>>98
88の方と同一でしょうか。
こちらも完全勝利されないようにない知恵絞って
次を書いていきますのでよろしくおねがいします。
- 102 名前:コーヒーブレイク2の解答 投稿日:2004/04/29(木) 11:50
- ののはシェイクを飲まずにまだかき回している。
いい加減飲まないとぬるくなるぞ・・・・・・
「えーっと・・・・・・だれだぁ?」
「ふふふっ、降参?」
「まだまだ・・・・・・。えっと」
ののは、いたずらっぽく微笑む。
バチャ!
「あーーーーー」
ののがかき回していたシェイクがはねた。
そして、ののは鼻先にシェイクをつけてしまった。
「のの、子どもみたい・・・・・・」
「うっ・・・・・・うるさいなぁ」
「やーい、子ども子ども」
!
わかった。
「ののわかったよ、答え」
「ん?わかった?」
「2人でしりとりがループしちゃうメンバー。
萩原舞→石村舞波→萩原舞→石村舞波・・・・・・
- 103 名前:コーヒーブレイク2の解答 投稿日:2004/04/29(木) 11:50
- これが正解でしょ?」
「その通り!正解です」
ののは鼻にシェイクをつけたまま言う。
もう、
しょうがないんだから・・・・・・
私は、
ののに近づくと
鼻の先っちょを
ペロ
なめた。
「わっ!」
顔を真っ赤にするのの。
「やだ、あいぼん。恥ずかしいよーー」
ののは照れ隠しに私の右腕をバシバシ叩く。
私も恥ずかしくなってしまった。
その日はそれ以降、会話はなし。
2人で黙々とシェイクを飲んで帰った。
ののと手をつないで帰った。
- 104 名前:コーヒーブレイク2の解答 投稿日:2004/04/29(木) 11:50
- <コーヒーブレイク2 終わり>
- 105 名前:いこーる 投稿日:2004/04/29(木) 11:51
- 本編をお待ちください。
- 106 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:49
- ののは話を脱線させてばっかりで
中々、先に進まない。
目的、忘れてないだろうか。
「のの、最初のクイズ覚えてる?」
「覚えてるよ。
綾瀬川君が誰と付き合ってるか?
だよ」
一応、わかってはいるようだったが、
だったら早く、さゆみちゃんの
告白の話を聞かせて欲しい。
私は結構、野次馬。
このとき私は
さゆみちゃんの恋の行方が気になって
仕方がなかった。
「あいぼん。ココアもらっていい?」
「ん、いいよ。私の分も持ってきて」
私の家だけど、
どこに何があるかののはほぼ完璧に把握している。
ののは部屋を出て行った。
- 107 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:49
- しかしののがいないと話が進まない。
私はののが借りてきた日記を読む。
++++++++++++++++
6月15日
もう、あれから一週間が経つ。
私はどこか気持ちの整理がつかないまま
一週間をすごしてしまったみたい。
今日
恋愛研究会の部室に呼び出された。
部室まであるなんて(部員一人のくせに)。
梨華先輩がみんなにコーヒーを出す。
話は
次の告白作戦についてだった。
辻さんの意見
「体育館裏で大丈夫ですか?
この前のこともあるし、
さゆみ。別のところがいいんじゃない?」
それには梨華先輩も
「この前、失敗したところじゃ嫌だよね。
私も別の場所がいいと思います」
と賛成したので結局は
その意見が採用された。
- 108 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:49
- 飯田先輩は
「じゃあ次のステージは記念館の
バルコニーにしましょう」
そういった。
夕日の見えるバルコニーで
いいムードの中、告白。
という作戦らしい。
告白・・・・・・しちゃうのかな?
綾瀬川君、何て返事するだろう?
私の心は落ち着かない。
決行は明日らしい。
はぁぁ
憂鬱で眠れそうもない。
++++++++++++++++
- 109 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:50
- この日記は日付がとびとびで
断片的なことしかわからないのだけれど
脱線だらけで進まないののよりは
ましに思えた。
ののがアイスココアを2つ持って
部屋に戻ってきた。
ののは話を再開する。
仕方がないので聞くことにする。
「6月15日。
のんたちは恋愛研究会の部室に呼び出された。
っていうか何で部室なんてあるの?ってのに
まずビックリしたんだけどね。」
「すごいよね。部室があるなんて?」
「なんか、給湯室のとなりが倉庫になってて
飯田先輩がそこを無理やり部室にしちゃったんだって」
はぁ・・・・・・そうですか。
飯田先輩というのはよほど奇人のようだ。
「給湯室も部室もかなり狭いんだけどね」
「そりゃ・・・・・・」
あんまり広い部屋を使ってもしょうがないだろう。
部員が一人では。
- 110 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:51
- 『で、のんたちはその狭い部室に集められた。
7人だよ、7人。入るの大変だったんだから。
集められたのはもちろん
さゆみ、れいな、私、梨華先輩、藤本先輩、
そして
「なんで私まで・・・・・・」
小川さん。
で、召集したのが飯田先輩。
「本日の作戦会議を開始します」
飯田先輩はそういうと・・・・・・
「確か給湯室にコーヒーがあったかな?」
といったので
「私がいれてきます」
と藤本先輩が立ち上がった。
- 111 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:51
- ちなみにそのときの席順だけど
長方形のテーブルを囲んで、
一番ドア側に藤本先輩、
そこから時計回りに
梨華先輩、飯田先輩、
一番奥のお誕生日席にさゆみ。
続けてれいな、私、小川さん
で藤本先輩のところに戻ってくる。
藤本先輩が部屋を出て行くと、飯田先輩が話を再開。
「さて、次の作戦だけど、
体育館裏に小道具を仕込んでおきます」
「待った」
私は意見を言う。
「体育館裏で大丈夫ですか?
この前のこともあるし、
さゆみ。別のところがいいんじゃない?」
さゆみに聞いた。
さゆみは
「ん・・・・・・」
下を向いてしまう。
- 112 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:51
- 梨華先輩も
「この前、失敗したところじゃ嫌だよね。
私も別の場所がいいと思います」
と言ってくれた。
飯田先輩は考える。
「でもねー、それ以外でムードのある場所って言ったら」
沈黙。
・・・・・・。
そのとき
カサカサコソコソ・・・・・・。
変な音がしたと思ったら
「きゃーーーーーーーーーー!!」
飯田先輩が妙にかわいい声で跳び上がった。
「ゴキブリーーーー!」
元倉庫の部室。
ゴキブリが発生するらしい。
で、飯田先輩はパニック。
宇宙人のくせに・・・・・・。
- 113 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:52
- 飯田先輩の両隣が梨華先輩とさゆみだった。
2人とも
「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
「助けてーーーーーー」
事態は混乱を極めた。
まったくゴキブリなんて平気じゃんねぇ」
ののはそこで話を切って私の方を見た。
ののも私も虫は全然平気なタイプ。
みんな同じ生き物だし。
私は、自分の通っているさくら学園にいる
小っちゃな先輩のことを思い出した。
この先輩は虫が死ぬほど苦手で
ゴキブリを見るといつも
ギャーギャー騒ぐ。
まあ、苦手な人は本当にダメみたい。
「でね」
ののが話を続ける。
『その声を聞いて駆けつけたのが
藤本先輩だった。
どこからか丸めた新聞紙まで持って来ている。
- 114 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:52
- で、
「梨華ちゃん!逃げて!!」
サッと梨華先輩の手をとると、
部屋の外へと逃がした。
このときの藤本先輩はかなりカッコよかった。
藤本先輩が部屋に入る。
後から聞いた話だけど、藤本先輩は
梨華先輩の声を聞いてすぐにゴキブリだって
わかったんだって。
梨華先輩だけさっさと避難させたの。
でも藤本先輩は梨華先輩が逃げた後、
すぐに部屋に入ってきちゃったから
「藤本!!どいて!」
「先輩ー。いやぁぁ」
出るに出られなくなってしまった
飯田先輩とさゆみ。
藤本先輩はゴキブリを探すのに一生懸命で
話を聞いてない。
- 115 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:52
- どうやら藤本先輩、
梨華先輩を救うためだけに登場したようだった。
美しいのか迷惑なのか微妙な友情だ。
いくら梨華先輩のことが好きだからって
他の人のことも考えた方がいいと思う。
反対側の席にいたれいなと私と小川さんはポカン・・・・・・。
藤本先輩はゴキブリを発見。
そーっと近づいて
バチンッ
カサカサコソコソ
逃げられた。
「きゃーーーー」
再び部屋はパニック。
ゴキブリはそのまま部屋の外へ出て行ってしまった』
- 116 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:53
- 興奮気味で話すのの。
おーい、さゆみちゃんの告白はどうなった?
まったく脱線話が多すぎる。
私はうんざり。
ののは
アイスココアをちょいと飲んで
話を再開。
『ゴキブリがいなくなったから
部屋はとりあえず落ち着いた。
すると部屋を覗くように梨華先輩が
「ミキティ、コーヒーいれたから運ぶの手伝って」
と藤本先輩を呼んだ。
「オーケー」
呼ばれた藤本先輩が部屋を出て行く。
残った私たちは作戦会議を続行する。
- 117 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:53
- 「じゃあ次のステージは記念館の
バルコニーにしましょう」
記念館ってのは北棟の先っちょにある例の丸い建物。
記念館は丸いんだけど
上から見ると◎の形をしている。
1階部分の方が大きくて、半径15メートルくらい。
2階はちょっと小さくって半径12メートルくらいなの。
のんがクリスマスにつくるアイスケーキの
1段目と2段目みたいな感じで
横から見ると凸の形になってる。
1階の方が大きいから2階にはバルコニーがある
ってわけ。
そこのバルコニーが告白の舞台となった。
夕日が沈む時間帯をねらって
綾瀬川君を呼び出す。
バルコニーから一緒に夕日を見ながら
さゆみが綾瀬川君に好きです、って言う作戦。
ロマンチックでしょう。
小川さんが質問。
「あそこって大きな木がありますよね?
夕日が沈むところちゃんと見えるんですか?」
- 118 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:53
- 記念館の西側には大きな桜の木。
確かに夕日を見るにはちょっと邪魔かも。
「角度を計算しておきます。
見える位置は必ずあるはずよ」
飯田先輩は自信満々にそういった。
次にれいなが質問。
「あの、おとめ学園って一応女子高ですよね。
警備員さんはいないことが多いから敷地内には
簡単に入れますけど、
記念館の2階まで綾瀬川君を呼んじゃって
大丈夫なんですか?」
「れいなは1年生だから知らないでしょうけど、
あの記念館はいつも無人なのよ。
造りがおかしいから不便で誰も使わないの。
大体、学校には講堂もあって体育館もあるんだから
変な丸いホールなんて使われなくなって当然でしょう」
じゃあ、何でそんなものを建てたのだろう。
て思っていたら飯田先輩がその疑問を察したように
答えてくれた。
「うちの理事長が、校舎を上から見たときに
おとめ学園のシンボル『♀』に見えるように
っていう理由だけで造っちゃった建物だからね。
実用性は皆無なのよ」
- 119 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:54
- 「そこを使っちゃっていいんですか?」
「鍵は入手しておくから」
この先輩の行動力には感服する。
もっと他の事に使ったらいいのに、
とは言えないけど。
そのとき隣の部屋から声がする。
「もう、梨華ちゃん!お盆があるじゃん。
わざわざ美貴を呼ばないでよぉ」
「だってぇ・・・・・・」
「まぁそんな梨華ちゃんかわいいけどね」
「え・・・・・・?やだぁミキティってば」
変なカップル・・・・・・。
すぐに藤本先輩は戻ってくる。
藤本先輩は右手に自分の分のコーヒーを持っていた。
カップにはマドラーがささっている。
このまま飲むのだろうか?
つづけてお盆を持った梨華先輩が入ってきた。
お盆がテーブルの上に置かれると
それぞれの手が伸びて
紙コップを取った。
- 120 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:55
- 私も紙コップを一つ取ると
コーヒーをぐびっと飲む。
「ん?」
コーヒーは甘かった。
そして、ぬるかった。
「おいしい」
私はコーヒーには砂糖を2杯入れないと飲めない。
しかも超猫舌。
おかげでこのコーヒーは飲みやすかった。
たぶん梨華先輩が砂糖を2杯入れたんだろう。
で、
作戦会議が再開。
「それじゃあ、各人の配置を決めます」
全員がうなづく。
- 121 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:55
- 「校門配置は・・・・・・」
「はいっ。私やります」
れいなが立候補。
「じゃあ、校門配置はれいなね。次は屋上だけど・・・・・・」
「じゃ私が」
梨華先輩が挙手。
「えっと、じゃあ記念館入り口は?」
「はーい」
私が挙手。
「じゃあののお願いね」
そこで
私は手を下ろして
紙コップを手に取った。
コーヒーを
ぐびっ
- 122 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:55
-
!!!!!!!!!!!!!
- 123 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:55
- そのとき私に異変が起こった。
「にがーーーーーいっ!」
甘かったはずのコーヒーがめっちゃ苦い。
何?
何で?
って思ってたら。
「のの、それ私のコーヒーだよ」
間違ってれいなのコーヒーを飲んじゃってた。
「すごいね、れいなブラックコーヒー飲めるの?」
「うん。いつもブラック」
「へぇ。私なんか砂糖2杯入れないと飲めないよ」
そこでれいなは私のコーヒーを持って、飲んでみた。
「うわっ。あまっ!こんなんコーヒーじゃない!」
変な顔をして
すぐにコーヒーを置いてしまった。
- 124 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:56
- その後、れいなはずっと変な顔をしている。
どうしたのだろうと思ったら。
「先輩、トイレ行ってきます」
そういった。
で、立ち上がりながら私の肩をツンツンした。
これは、私に一緒に来いという合図。
「先輩、私も・・・・・・」
私も一緒に席を立って廊下に出た。
廊下に出るとれいなが声を小さくして
言った。
「のの、おかしいよ・・・・・・」
「何が?」
「梨華先輩はなんで私がブラック飲むって知ってるの?」
「え?」
れいなはトイレに行きたかったのではないらしい。
私にそのことを話したかったようだ。
- 125 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:56
- 「私は梨華先輩にコーヒーの好みなんて言ったことないよ」
「そうなの?」
「うん」
「じゃあ、のんのコーヒーだけ
砂糖が入っててあとはブラックだったのかも」
「え?」
「みんなブラックだったんだよ」
そういうとれいなは考え込む。
「梨華先輩はののが砂糖2杯入れるって知ってるの?」
「んーーー知ってたような知らないような・・・・・・」
でも、砂糖2杯入りのコーヒーを持ってきたんだから
知ってたのだろうと、私は思った。
「のんが甘党だって知らなきゃ、
砂糖2杯も入れて持ってこないよ。
普通の人って砂糖2杯も入れないでしょ?」
「うん。確かにあの甘さは砂糖2杯は入ってたよね。
1杯じゃあんなに甘くならないし・・・・・・」
「だから、きっとのんの好みだけ知ってたんだよ」
「で、他のみんなはブラックだった?」
私は
「それしかないじゃん」
って言った。
- 126 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:56
- でもれいなは考え込んでしまう。
「やっぱり・・・・・・おかしい」
そうして、話す。
「思い出して。
梨華先輩はコーヒーをお盆にのせて持ってきたんだよ」
「うん、覚えてる」
「ののはどうやってコーヒー取った?」
私は思い出しながら言った。
「いっぱいコップがある中から適当に・・・・・・え?」
「おかしいでしょ?」
確かにおかしい。
れいなは興奮して早口でしゃべる。
- 127 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:57
- 「仮に梨華先輩はののが甘党なのを知っていて
砂糖2杯入りのコーヒーを作ったのだとするよ。
他のコーヒーはブラックで持ってきたとして
それなら私のコーヒーがブラックだったのは
納得できる。
でも、
梨華先輩はみんながどのコーヒーを取るのか
わからなかったんだよ。
ののはたまたま甘いコーヒーを取っただけ。
あらかじめ、ののが飲むことになるコーヒーにだけ
砂糖を入れておくことなんてできない」
そのとおりだ。
「だからのの。梨華先輩は何らかの方法でののに目的のコーヒーを
無意識に取らせたんじゃないの?」
れいなは怖いことを言った。
「それって・・・・・・催眠術?」
「かもしれないし、心理的な誘導をしたのかもしれない」
- 128 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:57
- 「心理的な誘導って?」
「例えば、コップの配置を考えてののは性格からいって
絶対このコップを取るだろうってのがあったとか」
そんなのは・・・・・・
「のの。例えばののは、真ん中のコップを取らなきゃ
気がすまない!みたいな癖ってある?」
そんなのはない。
それに
「ないよ。だいたい、そんな面倒なことするなら
最初っからのんにコップを渡せばいいんだよ」
「確かに・・・・・・」
そこで2人は黙ってしまった。
するとドアがあいて
「どうしたの?」
梨華先輩が出てきた。
そこで私たちはことの真相を知ることになったんだけど
その前に、あいぼんにクイズ。
この後梨華先輩は、このことをどう説明したでしょう?』
- 129 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:58
- そういってののはココアをズイーっと飲んだ。
私もストローでココアを飲む。
「梨華先輩は、砂糖を入れ間違えましたって言ったんでしょう?」
「正解」
即答。
「楽チンだねぇ。
心理トリックでないことはののとれいなちゃんの会話で
ほとんど証明されちゃったしね。
特定の人に甘いコーヒーを飲ませることができない。
そうなると砂糖2杯入りのコーヒーをつくらなきゃいけない理由がない。
だからその気がないのに砂糖を入れすぎちゃった
としか考えられないよ。
これは偶然に偶然が重なった変な事件だよね。
砂糖2杯入りのコーヒーを梨華先輩は
間違えて作っちゃった。
それを偶然ののが取った。」
「・・・・・・うん」
「別に梨華先輩はののに甘いコーヒーを飲ませようと
したわけじゃなかった」
「うん」
- 130 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:59
- 読者の皆様。
どうしてバラす?
とは思わないでいただきたい。
梨華先輩が語った真相は
なんのことはない。
本人も気がついていなかったのだ。
梨華先輩も知らずに砂糖2杯入りのコーヒーを作ってしまった。
それだけのこと。
心理トリックでもなければ催眠術でも、もちろんない。
あそこにいたメンバーは藤本先輩を除いて全員
無作為にコーヒーを取った。
どのコーヒーを取ったかはすべて偶然の産物。
こんなクイズで次回更新までひっぱるのは申し訳がないので
先に答えをバラしてしまったのだ。
どうか許していただきたい。
- 131 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 19:59
- 「梨華先輩が慌てていて
砂糖をビンごとザバーっとひっくり返しちゃったんでしょ?」
「ん……」
おや?
違うのか?
「あれ?
そういえばおかしいなぁ」
ののはそう言って首を傾げてしまう。
「ちょっとのの。
どうしたの?何がおかしいの?」
「あのね、給湯室にあった砂糖はシュガースティックだったの」
「シュガースティックって、紙の筒に入った砂糖ってこと?」
「そう」
「じゃあ、ののが飲んだコーヒーは正確に言うと
砂糖2杯ではなくシュガースティック2本分の砂糖が入ってたんだね?」
「うん。そういうこと。
だから容器をひっくり返して
砂糖がいっぱい入っちゃったわけじゃないんだよ」
シュガースティックならそんなミスは起こらない。
- 132 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 20:00
- 「でも変だよ。いくら梨華先輩がそそっかしくたって
スティック2本分も砂糖入れるなんてさぁ」
「確かに……」
容器に入った砂糖ならば
分量を間違えて入れてしまうこともあるだろう。
だがシュガースティックというのは
1袋でコーヒー1杯分の砂糖が入っているのだ。
それをわざわざ2杯分も入れるなんてミスは
普通なら起こらないだろう。
「これは……謎だねぇ」
「謎だ」
「では気を取り直してあいぼんに問題です。
のんが飲んだ砂糖2杯入りのコーヒーは
どうして作られたでしょう?」
「おいおい……その謎はののにも答えがわからないんでしょ」
「うん」
そういうのはクイズと言わない。
ののはそのへんの区別がついていないのだろうか。
出題者が解答を知らないんじゃクイズにならないではないか。
- 133 名前:―梨華先輩催眠術― 投稿日:2004/05/06(木) 20:00
- 「でも」
私はののに言った。
「わかったよ」
「ええ?」
「どうして甘いコーヒーができたのかわかったよ」
「本当?」
「うん」
ののはココアをズイー・・・・・・
「ちょっとのの!ストローあるんだから使いなよ」
「んー、めんどくさい」
まったく、世話のやける友人。
「じゃあ、砂糖2杯コーヒー事件の経緯については
次回更新にてお話することにしましょう!」
「あいぼん・・・・・・どこ見ていってるの?」
- 134 名前:いこーる 投稿日:2004/05/06(木) 20:01
- 以上。問題編でした。
- 135 名前:いこーる 投稿日:2004/05/06(木) 20:19
- 話の都合上、
コーヒーの好みは勝手に決めてしまいました。
- 136 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:54
- では解決編といきましょう。
ののは砂糖が2杯入ったコーヒーを取った。
でもコーヒーをいれた梨華先輩は
ののに砂糖2杯のコーヒーを渡す予定はなかった。
無意識のうちに作られたコーヒー。
「だからさぁ、梨華先輩はたぶん
みんなの好みを考えてコーヒーを入れたんじゃないと思うよ」
私は言う。
「だって1人1人に渡さずにお盆ごとテーブルの上に置いたんでしょう。
ってことは誰がどれをとってもよかったんだよ。
で、ののはれいなちゃんのコーヒーがブラックだったから
みんなのコーヒーがブラックだったって考えたんでしょ?」
ののは
「うん。そう」
うなづいた。
- 137 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:55
- 「でもさぁ、私は思うんだけど、
みんな女子高生でしょ?
女子高生7人のコーヒーをいれますってとき
全部ブラックで作るかなぁ?
普通だったら砂糖1杯くらい入れるんじゃないの?」
これは私の偏見だろうか。
私なら相手が女の子でコーヒーの好みがわからなければ
とりあえず砂糖を1杯は入れる。
「私はそう考えたの。
ひょっとしたらみんなのコーヒーには砂糖1杯が
入ってたんじゃないかって。
だとすると問題はすっと簡単になる。
本当はみんなのコーヒーに砂糖1杯を入れるはずだった。
でも、梨華先輩は間違えて
れいなちゃんのコーヒーに入れる砂糖を
ののが飲んだコーヒーの方に入れちゃった。
それで、ブラックコーヒー1つと、
砂糖2杯入りコーヒーができちゃったってわけ」
ののは、
ほえっ?と間抜けな返事をした。
- 138 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:55
- 「そうか・・・・・・そんな簡単なことだったんだ」
「そうだよ。それを取ったのが偶然
ブラック派れいなちゃんと甘党ののだったってだけ」
「すごい偶然」
そう。
偶然が重なりすぎたのだ。
推理小説の世界でこういうのを
「ご都合主義」
といってやってはいけないことになっている。
偶然が重なりまくった事件なんて
考える方はしんどくてたまったもんじゃない。
だから、
読者の皆様には
コーヒーを取ったのは偶然なのだということを
前回の更新のときにバラしてしまった。
そうしないと
考えが先に進まないから。
「でも・・・・・・」
ののは聞いてくる。
- 139 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:55
- 「どうして、そんな間違いが起こったの?
普通だったら砂糖を入れたコーヒーと
まだ入れてないコーヒーくらい区別するじゃん」
いい質問だ。
「そうだね。確かに普通の状況なら間違いなんて起きないよね。
さてここで問題。コーヒーをコップに注いだのは誰でしょう?」
「へ?梨華先輩じゃないの?」
「ちょっと思い出して。ののが飲んだコーヒーはぬるかったでしょう?」
「うん」
「どうしてコーヒーがぬるかった?」
「そりゃ・・・・・・注いでから時間が経っちゃったから・・・・・・あっ!」
ののはポンと手を打つ。
これ、親友の癖らしい。新発見。
「ゴキブリ事件」
「そう、ゴキブリが出て大騒ぎになっている間に
コーヒーは冷めてしまったの。
ってことはコーヒーを注いだのは梨華先輩じゃなくて?」
「藤本先輩」
「そういうことになる」
ここで一息。
- 140 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:56
- 「藤本先輩は全員分のコーヒーを注いで砂糖を入れている途中で
ゴキブリ退治のために給湯室を出ていった。
それで、後の作業を梨華先輩が引き継いだ。
ここで梨華先輩はどこまで砂糖を入れたのかわからなくなっちゃったんだ」
「でも・・・・・・わからなかったら聞けばいいじゃん」
「多分だけどね、わからなかったんじゃなくて
どこまで入れたかがわかる目印はあったんだと思うよ。
でも梨華先輩はその目印を読み違えたの」
ののは
「目印?」
首をかしげた。
「コーヒーの入れ方ってみんな同じに思えるけど
意外と人によって違うもんだよね。
こういうのって個人の癖が出る」
例えば、
ののはアイスココアにストローをさしておきながら
飲むときにはストローを使わずに直接飲んでしまう。
私から見たらストローが邪魔そうで落ち着かないのだけれど
本人は平気らしい。
- 141 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:56
- 「藤本先輩は・・・・・・」
私は話を続ける。
「マドラーをさしっぱなしでコーヒーを持ってきたでしょう?
私はそういうの落ち着かないんだけど、
藤本先輩は気にしない人なんだ。
マドラーがコップにささっていようがいまいが
ほとんど気にならない。
私はコーヒーをまとめていれるとき
砂糖を入れてマドラーでかき回すでしょう。
その後一旦、マドラーを引き上げて皿の上に置くの。
んで次のコーヒーに砂糖を入れてマドラーを入れて・・・・・・」
「えー?それじゃ面倒くさいよ。
かき回したらすぐにマドラーを次のコップにさして
それから砂糖入れたほうが早いじゃん」
「それじゃ落ち着かないの」
「変なの・・・・・・」
- 142 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:56
- 「たぶんね、藤本先輩はののと同じで
マドラーがささっていても頓着しない人なんじゃないかな。
だから、かき回したら次のコップにマドラーをさす。
それでまた砂糖の袋をあけてサラサラって・・・・・・。
でも、梨華先輩は私と一緒で
マドラーは絶対、砂糖を入れた後にさす人だったんだよ。
藤本先輩は砂糖の入ってないコップにマドラーを入れて
作業をしていた。多分2番目か3番目くらいのコップにね。
そのときゴキブリ事件が発生する。
藤本先輩はマドラーをそのままにして部屋をでてしまう。
入れ替わりに入ってきた梨華先輩は
コップにマドラーがささっているのを見て
ああ、このコーヒーにはもう砂糖を入れたんだって勘違いした」
「それで・・・・・・砂糖を入れずに・・・・・・」
「そう、次のコーヒーに砂糖を入れてしまった。
こうして、れいなちゃんの飲んだブラックコーヒーができたの」
「でも・・・・・・」
ののは次の疑問。
- 143 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:57
- 「それでブラックコーヒーができたのはわかったけど、
のんが飲んだ甘いコーヒーはどうしてできたの?」
「それはね、
砂糖はスティック状の紙筒に入っていたんでしょ。
藤本先輩は最初に7人分の砂糖を出しておいたんじゃないかな?
梨華先輩は知らずに一つとばして砂糖を入れちゃったから
当然、砂糖は一つ余ってしまう。
ああ、困った。どこかでとばしてしまったらしい。
どうしよう。マドラーも動かしちゃったからこうなると
どのコーヒーに砂糖を入れ忘れたのかもうわからない。
そこで適当にえいって」
これは後でののが梨華先輩に確認したことだが
真相はこうらしい。
- 144 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:57
- 藤本先輩はコップを一列に並べて作業をしていた。
梨華先輩が給湯室に入ったときには
マドラーは左から2つめのコップにささっていた。
梨華先輩は2つめのコップには砂糖が入っていると勘違いし
3つめから順に入れる。
最後まできて砂糖が1つ余ったことに気がついた先輩。
それでも、
梨華先輩はマドラーのささっていたコップには
砂糖が入っていると信じて疑わなかった。
それで、藤本先輩の性格からして
列の途中から作業を開始したのだろうと
とんでもない結論を出してしまった。
一番左のコーヒーには砂糖が入っていないだろう。
ここに入れてしまえ。
結果、砂糖2杯の甘いコーヒーができた。
「そうかー、そういうことだったのかぁ」
ののは謎が解けてほっとした表情。
- 145 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:57
- 「でもさー」
「うん?」
「梨華先輩、藤本先輩とあんなに仲良さそうだったに
そういう癖とかってわからないんだね」
コーヒーの入れ方のような日常瑣末なことほど、
近くにいる人間にも気づきにくい。
「仲良くなっても、知らないことはあるんだね」
ののがそう言う。
「なんか・・・・・・さびしいね」
私は思わずそう言った。
別にお互いに気づかないことがあってもいいと思うけど、
「私は、ののについて知らないこととか、あるのかな?」
「そりゃ・・・・・・」
何か嫌だ。
「教えて!」
「へ?」
「いろいろ、教えてよぉ」
「そんな、癖なんてのんでもわからないよ。
無理だよ、あいぼん・・・・・・」
- 146 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:58
- 「ふん!」
あっ。
私、いじけそう・・・・・・。
私はいじわるく言った。
「アイスは5段にしてもらうからね」
「え?聞いてない」
「言ってないけど、でも5段アイスを食べるんだからね」
「むぅ」
8段まであと一息。
クイズが終われば明日はののとデートだ。
「ふふん」
「あいぼん何にやけてるの?」
楽しみだ。
明日はいっぱい遊ぼう。
いっぱい買い物しよう。
いっぱい食べよう。
いっぱい笑おう。
「さーて、残りのクイズ片付けますか」
私は伸びをして
そう言った。
- 147 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:58
- ―梨華先輩催眠術 終わり―
- 148 名前:―梨華先輩催眠術 解決編― 投稿日:2004/05/13(木) 20:59
- 亜依の謎解きはまだまだ続きます。
- 149 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:29
- 夏休みの暑い日。
私立さくら学園。
今日は補習日。
国語の補習を受けるためだけに
わざわざ学校に来なきゃならないという切ない日。
私はチャイムが鳴ったので伸びをして
帰り支度をはじめた。
「加護ちゃん」
声がしたので前を見ると
「あさ美ちゃん!」
同じクラスで最近よく話す紺野あさ美ちゃん。
「補習長かったねぇ」
「でもまあ一教科だけで助かったよね」
「芋羊羹一緒に食べよう」
「いもようかん?」
「そう、美味しいんだよ!」
そう言ってあさ美ちゃんが私の前の席に座る。
あさ美ちゃんは鞄をよいしょっと机に置いた。
- 150 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:30
- 「あれ?あさ美ちゃん、
補習の時は学校指定の鞄じゃなくていいんだよ」
「うん、知ってる・・・・・・」
「それじゃ大きすぎるじゃん。
ほら、私なんてトートバッグ」
「あっかわいー」
私はあさ美ちゃんに質問する。
「ところであさ美ちゃん。コーヒーっていつかきまぜる?」
「いれた後」
そりゃ・・・・・・
入れる前にはかきまぜないでしょ。
「ごめん、私の聞き方が悪かった。
コップが7つあってそれぞれにコーヒーをいれます。
砂糖も入れてください。マドラーは1つ。
あさ美ちゃんならどういう手順で作業する?」
さてさて
このコはどうやってかき回すのか。
- 151 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:31
- 「んーっと」
しばらく考えてあさ美ちゃん
「先に砂糖を全部入れちゃう」
そう答えた。
「へ?」
「だから、かきまぜるのは後回し。
まず7つのコップ全部に砂糖を入れちゃうね。
その後順番にかきまぜていく」
「なんて・・・・・・合理的」
「え?普通じゃない?」
でも、それだとかき回す前に
砂糖が下に溜まってしまって
念入りにかき回さないといけなくなってしまう。
- 152 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:31
- 「あれ?・・・・・・芋羊羹がないっ!」
あさ美ちゃんは鞄をガサゴソやり始めた。
「なんで?ちゃんと入れといたのに・・・・・・」
私もひょいと鞄を覗いてみる。
中には
ノート一冊と
カバーのかかった国語の教科書一冊。
ペンケース。
空のビニール袋。
以上。
芋羊羹はかげも形もなかった。
「なんで?」
さてさて・・・・・・
- 153 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:31
- 「あのさぁ、あさ美ちゃん。
あさ美ちゃん図書館から本借りてた?」
「・・・・・・うん」
「文庫本が2冊くらいとハードカバー数冊?」
「ハードカバーが4冊と、文庫じゃなくて新書ノベルズが2冊
ってなんで知ってるの?」
新書というのは文庫本が少し縦に長くなったサイズの本だ。
「それをそのビニール袋に入れて持ってきたんだね?」
「そう・・・・・・」
やっぱり・・・・・・
なんて間抜けなコ。
「加護ちゃん、シャーロック・ホームズみたい」
いや、これはそこまですごくないんだけど・・・・・・
「本を借りていたと思ったのは
あさ美ちゃんの鞄の大きさを見たから。
教科書とノート一冊入れるのにその鞄は大きすぎる。
だから本を持ってきて返しちゃったのかな?って思ったの。
でさぁ、あさ美ちゃんは教科書にまでカバーをかけるくらいだから
本は相当、大事に扱う人だよね?」
「うん・・・・・・神経質なくらい」
- 154 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:31
- 「でも大きい鞄に、ハードカバーと新書みたいに
大きさの違う本をまとめていれると、移動している間に
動いちゃって、本が曲がっちゃったりする。
だからなるべく隙間ができないように
ぴっちり並べて持ってこないと不安だよね?」
「うん」
「しかも重たいハードカバーが4冊も入った鞄に
芋羊羹を潰れないように入れなきゃいけない。
かなりの工夫が必要だね。
例えば
ハードカバーで新書を板ばさみ。
つまり、
ハードカバー、新書、新書、ハードカバーの順に並べて
凹の形を作る。
でその窪んだ所に羊羹を入れてピッタリ直方体にする。
あとは袋に入れておけばちょっとぶつかったくらいじゃ
本もずれないし羊羹も潰れない」
「思い出した。そう、そうやって持ってきたの」
あさ美ちゃんは顔を青くして言う。
「今日、司書さんがいなくて図書館が閉まってたから
返却ボックスに・・・・・・」
「返却ボックスって返す本をポストみたいなのに
入れておくやつだよね?
そこに袋の口を持っていって中身も見ずに
バサバサ入れたんじゃない?」
- 155 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:32
- 「そう・・・・・・ってことは羊羹は?」
「返却ボックスの中」
「ふぇぇ。私の芋羊羹」
詰めが甘い。
そこまで大切に本を持ってきたのなら
返却ボックスに一冊ずつ入れたらいいのに。
「今日、補習に遅刻しそうで急いでたから」
「じゃあ、補習が終わってから本を返せばよかったのに」
「だって教室5階だし、重かったから」
私のまわりには
ドジなコが多いんですが
なぜですか?
誰か教えてください・・・・・・。
「ふぇぇ」
- 156 名前:お茶でも飲みながら 友情出演・紺野あさ美 投稿日:2004/05/20(木) 20:32
- <お茶でものみながら 終わり>
- 157 名前:いこーる 投稿日:2004/05/20(木) 20:32
- 以上になります。
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/25(火) 22:43
- 以前から読んでました。なんかまったりしてて好きです。
続き楽しみにしてますんでがんばってください。
- 159 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:54
- 私はりんごを剥いて部屋に持ってきた。
ののと2人でりんごを食べる。
しばらくののは黙っていた。
私は日記を読む。
++++++++++++++++
6月16日
―朝―
今日は
告白大作戦の決行日。
記念館の2階で沈む夕日を見ながら告白。
でも
天気が微妙・・・・・・。
綾瀬川君は
どんな表情で告白を受けるのだろう。
本当は先に電話をしてしまいたいけど
やっぱり
今日、
記念館で彼がなんていうのかが知りたい。
- 160 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:55
- 私の幸せはちゃんと守られるのだろうか。
それとも・・・・・・
ダメダメ
ネガティブになっちゃだめだ!!
全ては今日、
決定する。
++++++++++++++++
この日の日記は朝と夜に分かれて書いてある。
告白の結果は?
私は夜に書かれたページを開こうとした。
しかし
「あいぼん。続きを話すよ」
とののが言ったので一旦
日記を読むのを止める。
- 161 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:55
- 『6月16日。
ついに記念館で告白大作戦。
各人、配置につく。
藤本先輩は記念館階段配置。
綾瀬川君が階段を上って
さゆみのところに行くのを見届ける係。
梨華先輩は屋上配置。
屋上から全体の様子を報告する係。
れいなは校門配置。
綾瀬川君がうちの高校に着いたのを
いち早く知らせる係。
私は記念館入り口配置。
さゆみの告白中に
他の人が記念館に入らないように見張る係。
小川さんはお天気係。
天気に常に気を配る。
飯田先輩は司令本部。
教室で各人に司令を出す。
- 162 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:55
- 配置完了。
17:30
いよいよ作戦がスタートした。
「綾瀬川君、校門通過」
トランシーバーかられいなの声がする。
「綾瀬川君、記念館へ移動中」
梨華先輩が屋上からの様子を報告。
「かなり黒い雲が出てきていますが、
夕日は見えます。夕立にだけ注意してください」
小川さんが天気を報告。
って、夕立に気をつけろっていわれても・・・・・・。
そのとき、
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
本当に夕立になった。
私の配置は濡れない所だったから平気だったけど
屋上配置の梨華先輩は悲惨だったみたい。
一気に辺りはどしゃ降りになった。
- 163 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:56
- 「あっ」
私が前を見ると
綾瀬川君が雨から逃げるように
小走りにこっちに近づいてくる。
「来た」
私は入り口を離れ、
渡り廊下の柱のかげに身を隠す。
綾瀬川君は記念館に入っていった。
私はトランシーバーで報告。
「綾瀬川君、記念館に入りました」
「了解」
「飯田先輩!」
トランシーバーから梨華先輩の声。
「どしゃ降りです。配置を離れて避難します」
「わかりました」
続けて小川さんの声がする。
「どしゃ降りです」
「わかってる。そんなことまで報告せんでいい!」
- 164 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:56
- 「梨華先輩!さゆみはどうしてますか?」
私は梨華先輩に聞いた。
「えっと・・・・・・さゆみちゃんはここから見えない。
建物の中に入っているみたい」
「了解」
「じゃ、私は撤収します」
そのとき、
雨が上がった。
本当に一瞬の夕立だったみたい。
「石川?屋上に戻って」
「了解。これから屋上に戻ります」
私は入り口配置に戻って
建物の中に入ると扉を閉めた。。
ここで、他の人が通らないように見張る。
トランシーバーから藤本先輩の声がする。
「綾瀬川君、階段に到着しました。
さゆみもバルコニーに戻ってきたようです」
「天気良好」
条件は、整った。
- 165 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:56
- さゆみは、
バルコニーの西の大木から少し外れた位置にいるはずだ。
綾瀬川君はもう、到着しただろうか。
私の心臓は高鳴った。
「さゆみ・・・・・・ちゃんと言えるかな・・・・・・」
私はボソッと自分の不安を声に出してしまう。
私は記念館の中にいる。
トランシーバーが音を立てる。
小川さんの声。
「夕日が沈みます」
綾瀬川君はいいタイミングでさゆみと会っているはずだ。
私は待った。
ひたすら待った。
さゆみは何て言って
綾瀬川君は何と答えるのか。
気にしながら、
ただただ待機していた。
トランシーバーは沈黙を守っている。
時間が過ぎていく』
- 166 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:57
- ののはそこで一息ついた。
私は手に汗を握りながら告白大作戦の結果を聞いていた。
「すごいね・・・・・・」
「うん。のんは本当に心臓がでてくるかと思ったよ」
私は、ある言葉を口にした。
「晴れ 通り雨 のち ・・・・・・」
最近、さくら学園で流行っている不思議なジンクス。
晴れ、雨、のち、好き。
この順番は恋が叶うという。
「それで・・・・・・さゆみちゃんは?」
「うん、続きを話すね」
ののが話を再開。
『私は記念館の入り口で待っていた。
すると、階段を下りてくる音。
綾瀬川君だった。
私は隠れるのも忘れて立ち尽くす。
目が合った。
- 167 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:57
- 「あっ・・・・・・辻さん?」
「綾瀬川君。久しぶり」
「・・・・・・」
私は、何でいるの?とは聞かなかった。
だから、綾瀬川君は気づいたと思う。
私がさゆみの告白を見守っているということに。
綾瀬川君はそれ以上何も言わずに
私の横を通り過ぎ
扉を開けると
記念館の外へ出て行った。
その表情からは何も読み取れなかった。
トランシーバーから飯田先輩の声がする。
「作戦終了」
告白大作戦は、終わった。
そのときトランシーバーから梨華先輩の声。
「のの?扉の外に出てみて」
私は言われたとおり記念館を出た。
「のの?足跡があるの見える?」
- 168 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:57
- 私は下を向いた。
そこで
発見した。
入り口から校門に向かって一直線に伸びた足跡。
これは綾瀬川君がつけたものだろう。
それと
もう1つ
「なにこれ・・・・・・」
記念館の入り口から円周をたどるようにぐるっと足跡がついている。
「変な足跡があります」
「ねぇのの、屋上からじゃ見えないんだけど、
その足跡、木の下で途切れてない?」
「え?」
私は渡り廊下から
外に出た。
ぐにゅっという感覚があった。
見ると私の靴が泥濘にちょっとだけ沈んでいる。
足を上げると、
私の足跡が残っていた。
どうやらさっきの雨で地面がぬかるんでしまったようだ。
- 169 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:58
- 私は足跡を追う。
足跡を消さないように注意しながら。
その足跡は記念館の南側から外周をたどって
西側の大きな木の下まで続いていた。
そして、
「うそ・・・・・・」
ちょうど大木の真下。
足跡はぴったり両足をそろえて付いているものを最後に
そこから先は
「足跡がなくなってる」
なかった。
記念館は○の形をしている。
校舎との渡り廊下がある南側。○の下部分から足跡がスタート。
それが時計回りにぐるっと進んで
記念館の西側、○の左に来たところで途切れているのだ。
トランシーバーに向かって話す。
「なくなってます。足跡が途切れてます」
「のの!そこを動かないで」
飯田先輩がそう言ったので私はその場で待機。
- 170 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:58
- そのうちに全員が集まった。
まず藤本先輩。
それから、さゆみ、小川さん、れいな、飯田先輩、最後に梨華先輩。
全員でその奇妙な足跡を覗き込む。
飯田先輩が言う。
「これ・・・・・・ひょっとして誰かが告白を立ち聞きしていたんじゃ・・・・・・」
「うそっ?」
さゆみが泣きそうな顔をそう言う。
私は飯田先輩に
「関係ないかも知れないじゃないですか」
と言った。
さゆみの告白が盗み聞きされていたなんて
かわいそうだ。
「でも、足跡がつくとしたら雨が上がってからでしょう。
雨が上がったのはついさっき、さゆみが告白する直前よ。
その後、ここを誰かが通ったのよ」
「私は屋上に戻ってすぐ足跡を発見した。
そのとき周囲に怪しい人はいなかった」
梨華先輩がそう説明した。
- 171 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:58
- 「そういえばさ」
藤本先輩が言う。
「れいなの靴、随分汚れてない?」
「え?」
全員の視線がれいなに集中する。
確かに、
靴だけでなく靴下にまで泥が飛び散っている。
他の人たちの足元を見ても
そこまで汚れている人はいない。
「まさかれいな・・・・・・配置を放ってここまで来たの?」
「ちょっ・・・・・・ちょっと待って」
れいなが弁解する。
「私は飯田先輩が集合をかけた後で、渡り廊下を通ってここに来ました」
「本当に?」
飯田先輩が疑うように言った。
「本当です」
言ったのは、小川さんだった。
「れいなちゃんが渡り廊下を通ってこっちに来るのは見てました」
- 172 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:59
- 渡り廊下は北校舎と記念館を結ぶ通路で屋根も壁もない。
そこをれいなは通ってきたという。
記念館でさゆみの告白を立ち聞きするためにここまで来たとして
足跡を残さずに再び渡り廊下まで引き返すことができるだろうか。
「というか・・・・・・」
私は、ずっと気になっていたことを言う。
「この足跡の人・・・・・・どこに行ったの?」
「え?」
全員が今度は私に注目した。
「ここまで歩いて来て、ここからはどうやって消えたの?」
「・・・・・・」
沈黙。
「それは」
藤本先輩が発言した。
「上に逃げたのかも」
「上?」
- 173 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 20:59
- 私は反論。
「地面からジャンプしたって木の枝には届きませんよ。
背の高い飯田先輩が立ってもまだ枝まで遠い。
この枝の高さ、3メートル以上あるんじゃないですか?」
「そうじゃなくて、記念館の壁を登ってバルコニーに逃げたのよ」
私たちは壁を見る。
壁には何もついていない。
人がよじ登れるような取っ掛かりもないし
もちろんジャンプして届く高さではない。
「この壁をどうやって登ったっていうんですか?」
「バルコニーからロープのような物を垂らしておけば
それを使って登れるでしょう。登ってからロープは
回収すればいい」
小川さんが発言。
「それはおかしいんじゃないですか?
ここまで足跡をつけて歩いてきたんだから犯人の靴は
泥だらけですよ。そんな靴で壁を登ったら、
壁に何かしらの跡がついちゃいます」
壁に、そんなものはなかった。
「じゃあ木の枝からロープを垂らしておけば・・・・・・」
- 174 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:00
- 「違うよミキティ。そういうことじゃなくて、
ロープを使ったっていうのはそもそもおかしいの。
なんでそんな面倒なことをして逃げなきゃいけないの?」
梨華先輩も反論に加わる。
「そりゃ・・・・・・足跡を残さないように」
「ここまで足跡をつけてきたのにですか?」
これは私。
梨華先輩はさらに言う。
「だいたい、あらかじめロープを垂らしておくってことは
告白大作戦がスタートするよりも
前に準備をしていたことになるでしょう。
でもその時点では、誰も夕立がいつ降っていつ止むかなんて
わからなかったんだよ。
夕立が止むのがちょっと遅れたら足跡は全部流れてた。
なのに足跡を気にしてロープを準備しておくわけがない」
梨華先輩はそう説明した。
そういうことで言えば、誰も大掛かりなトリックは
弄していないということになる。
夕立が降って地面がぬかるむという状況事態、
誰にも予測がつかなかったことなのだから。
- 175 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:00
- 私は足跡を見た。
ここで、途切れている足跡。
誰も道具を準備できなかった。
私はここまで歩いて来た犯人が
宙に浮いてそのまま空の彼方へ
飛び去っていく姿を想像した。
「謎は解けた」
飯田先輩がそう言ったのでみなが注目する。
「私がおとめ組リーダーとして
この状況を解決させます!」
何だ、おとめ組って・・・・・・
それにあんたがリーダーと誰が決めた!
私は突っ込みたくなったのを抑える。
「犯人はここまで足跡をつけてきた。
その足跡がここで終わっているということは、
犯人は、ここから立ち去っていない
そういうことになる」
- 176 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:00
- 全員、あぜん・・・・・・。
「つまり、のの!あんたが犯人よ」
「はぁぁ?」
「あんたは石川と協力して、さも足跡が最初からあったように
私たちに思い込ませた。本当は最初に足跡なんてなかったのよ!
それであんたは足跡をつけながら
ここまで歩いて来て、みんなが集合するのを待っていればいい」
宇宙人め・・・・・・。
何を言いやがる。
「あのー・・・・・・私の足跡、こっちですけど」
「へ?」
「あのね先輩。これ革靴の足跡でしょう?
私はスニーカーをはいてるんです。
こんな足跡つかないですよ」
「あっ・・・・・・」
とんだ迷探偵。
「まったく、時間の無駄遣いだから
変なこと言わないでくださいよ!」
「いや・・・・・・」
藤本先輩がまたしゃべる。
「無駄遣いでもなかったかも」
「え?」
- 177 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:00
- 「ののが言ったとおり、これは革靴の足跡だわ。
この中で革靴をはいているのは?」
藤本先輩はそういった。
飯田先輩はスニーカー。
梨華先輩もスニーカー(ピンク)。
藤本先輩もスニーカー。
小川さんもスニーカー。
私もスニーカー。
さゆみもスニーカー。
革靴なのは・・・・・・
「れいな、やっぱりあなたでしょう!」
れいなだけが革靴だった。
- 178 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:01
- 「そんな・・・・・・だって私が渡り廊下にいたのを
小川さんが見てるんですよ。
ここから足跡をつけずに戻れるわけがない」
「う・・・・・・」
藤本先輩はやっぱり沈黙してしまった。
私は言う。
「れいな。ひょっとして空飛べる?」
「そんなわけないでしょう!ナイツじゃあるまいし」
古い・・・・・・。
そこで私たちの謎解きは迷宮入りとなってしまった。
ということであいぼんにクイズです。
この足跡はどうやってついて、犯人はどこへ行ったでしょう?』
ののは出題した。
これは・・・・・・
難しい。
- 179 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:01
- 「のの」
「ん?」
「ののは答えを知ってるんだよね?」
「知らない」
ガクッ
そういうクイズは止めて欲しい。
私が謎を解かなかったら、答えがわからないなんて。
今夜、気になって寝られないではないか。
「足跡は記念館の外周で途切れていたんだね?」
「そう・・・・・・」
「じゃあそこから木に跳び移ったんじゃない?」
「だから、枝がすごい高くて垂直跳びじゃ届かないんだってば!」
「そうじゃなくて・・・・・・
木の根っこがある方へ横方向にジャンプをした。
そういうこと。
でも無理か・・・・・・そこから動けないもんね」
ののは
「んーーー」
と考え込む。
「確かに・・・・・・木のところまで行ければ
そこからはアスファルトだから校舎の方に行けるけど・・・・・・」
- 180 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:01
- 「え?ちょっと待ってのの。
例の木から校舎までは足跡つけずに行けるの?」
「うん」
「じゃあ木までジャンプすれば
足跡つけずに戻れるじゃない」
「でも、無理じゃないかなぁ。のんでも届かないと思う」
「木は足跡からそんなに離れてるの?」
「うん。かなり遠いよ」
「でもれいなちゃんのジャンプ力が超すごかったら」
ののは言う。
「あのコ、究極の運動音痴なんだよ。
のんで届かないところをれいなが跳べるわけがない」
ののは中学の頃は1、2位を争うスポーツ少女だった。
ののが届かない距離を他の人が跳べるとは思えない。
ということはこの答えは違うのか。
私はりんごに手を伸ばして食べる。
「あいぼん、頑張って」
「そんな・・・・・・」
無責任な。
自分が考えてわからないからって
私に謎解きを押し付けないで欲しい。
- 181 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:02
- 「お願い!アイス7段にするから」
「7段?」
それは・・・・・・
「頑張る」
私は気合を入れて考える。
まず重要なことを確認しよう。
「犯人はれいなちゃんで間違いないの?」
「んーーーわからないよ。
革靴はれいなだけだって言っても
他の人が靴を履き替えただけかもしれないし・・・・・・」
「そうか」
もう少し条件を絞ろう。
「のの、犯人はおとめ組7人の中にいるの?」
- 182 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:02
- 「おとめ組って・・・・・・。
でも、その後みんなで確認してみたけど
他の生徒がいた可能性はかなり少ないんだよ。
雨が降るまでは梨華先輩が屋上から
様子を見ていたわけだし、
入り口にはのんもいた。
梨華先輩が屋上を去って、
のんが記念館の中に入った後で
犯人は歩いて行ったことになる。
そんなタイミングよく動けるのは
今回の作戦を知っている人だけだと思うんだよ。
というかそもそもさゆみがそこで告白してるって
知っているのはのんたちだけだし」
「綾瀬川君の足跡は校門に向かってたんだよね?」
「うん」
じゃあ、
「クイズの答えは7人の中で絞っていいね?」
「うん」
- 183 名前:―れいな空中浮遊― 投稿日:2004/05/27(木) 21:02
- りんごをかじる。
りんご・・・・・・りんご・・・・・・。
真っ赤なりんごを頬張る・・・・・・
「りんご・・・・・・」
「りんごちゃんって誰んとこの犬だっけ?」
突然ののがそんなことを言う。
りんごちゃん・・・・・・
!!
そうか、そういうことか。
7段アイスはもらった。
「のの、次の更新で解答発表するよ」
「わかったの?」
「わかった、だからちょっとだけお待ちください」
「・・・・・・」
- 184 名前:いこーる 投稿日:2004/05/27(木) 21:02
- 以上です。
- 185 名前:いこーる 投稿日:2004/05/27(木) 21:04
- >>158
レスありがとうございます。
以前から読んでいただいたようで恐縮です。
雰囲気を気に入っていただけて嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
- 186 名前:めかり 投稿日:2004/05/27(木) 22:27
-
初めまして、いつも楽しく読ませて頂いてます。
名探偵あいぼ〜ん、続き楽しみにしていま〜す♪
- 187 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:08
- 「はいはい、解答編でごじゃいます!」
「待ってましたー!!」
夕立の後の記念館の外。
途中で途切れた足跡。
足跡をつけずに移動できたものはいない。
「とりあえず、犯人はれいなちゃんだと思うよ」
「そうなの?やっぱり革靴だから?」
「うん、そうだね」
「じゃ、足跡はどうしたの?」
「お答えします。
犯人はどうして記念館周辺にいたんだと思う?」
私は聞いてみる。
「さゆみの告白を盗み聞きするため?」
「そう、そのとおり。
でもさぁ、高いバルコニーの上で告白しているのを
1階の外側から聞き取れるかなぁ?」
「あっそうか。足跡のついてたところからじゃ
さゆみの声なんて聞こえないかも」
「声、小さいコなの?」
「うん」
- 188 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:08
- それならば
「なら盗み聞きするなら、
もっと近いところまで行くんじゃない?
例えば、木の上とか」
「たしかに・・・・・・」
「枝が高いところにあるといっても、幹にしがみついて
登っていくことくらいはできるんでしょ?」
「できるよ。コブとかもあるし」
「でさぁ、藤本先輩は、犯人が上に逃げたって推理したよね。
でも、ロープも何も準備がない状況で上には逃げられない」
私はりんごを持つ。
「地上にあるものは皆、重力には逆らえないんだから。
ラブラブエンジェルじゃあるまいし」
「あいぼん、懐かしい」
私たちが学芸会で演じた天使だった。
閑話休題。
「つまり、人は下から上に移動することはできない。
でも、上から下に落っこちることはできる。
そうだよね」
私は手に持ったりんごを
ゆっくりと下ろした。
- 189 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:09
- 「そりゃ、木から落ちるだけなら猿でもできる」
ことわざの解釈がおかしいが
それは放っておくことにする。
「だからさ。足跡が消えたんじゃなくて
木の枝の上にいた人がバランスを崩して例の
両足揃ってる足跡のところに落ちてきた
そういうことになる。
ただ、運良く足から落ちたから
両足そろえて着地したってわけ。
足跡が途切れてたんじゃなくて、
そこから足跡が始まってたんだね。
で、落ちちゃった犯人は見つからないように
反時計回りに渡り廊下の方へ戻ってきたんだよ」
「え?」
下から上ではなく、上から下。
渡り廊下から現場ではなく、現場から渡り廊下。
「じゃあ、全部逆だったってこと?」
「そうだよ」
- 190 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:09
- 「でも・・・・・・」
ののは納得いかない様子。
「ダメだよあいぼん。
足跡には向きがあるんだよ。
のんたちが見た足跡は、
渡り廊下から木の下へと進んでた。
あいぼんの推理どおりだったら
足跡の向きは逆になってないとおかしいじゃん」
ののが反論。
「なら、犯人は後ろ向きに歩いたんだ」
「はぁぁ?」
ののは口を大きく開けて、あぜんとする。
「なんでそんなことするの?
別に殺人事件じゃないんだから
そんなふうに不可能状況を作り出す意味がない」
話が推理小説じみてきた。
まぁこのスレは推理ものですが・・・・・・。
- 191 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:09
- 「思い出して。犯人はなんで木の上にいたの?」
「さゆみの告白を覗くため」
「ならさ、
たとえ木から落ちて逃げようとするときでも
バルコニーの上の2人のことが気になるでしょう」
「うん」
ののはうなづく。
「犯人はバルコニーの上を見ながら移動したんだよ。
だから後ろ向きに進んだ」
「さゆみたちの方を
気にしながら後ろにさがっていったの?」
今度は私がうなづく。
「そう、そういうこと。
後ろ向きに歩くのって怖いけど、
記念館の壁に手をかけながらゆっくり後退していけば
転ばないで歩けるしね」
「あっ・・・・・・」
ののはポンと手を打った。
「それで壁沿いに足跡がついてたんだ」
「そうです」
- 192 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:10
- ここで一息。
「じゃあ、犯人は?」
「犯人はやっぱりれいなちゃんです」
「どうして?」
「犯人は自分の配置を離れて木の上にいたことになるけど、
梨華先輩に見つからずに木の上まで移動できたってことは
雨が降っていたときにそこまで行ったことになるよね?」
「うん」
「つまり
告白を盗み聞きするためには綾瀬川君が校門をくぐってから、
記念館の2階に着くまでの間に、
木に登っていないといけない。
全速力で木の下まで走って
枝まで3メートルもある木に登るんだから、
その間、話をしたりする余裕はない。
木に登っている間は
両手がふさがっちゃうしね。
トランシーバーを使ってなにか話したりできるわけがない。
つまり犯人は
綾瀬川君の到着から、一言もトランシーバーで会話してない
そういうことになる。
- 193 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:10
- そういうことになる。
だから、頻繁に会話をしている
飯田先輩、梨華先輩、小川さんは犯人じゃない。
ののも違う。藤本先輩とさゆみちゃんは記念館の中にいた。
だから、
木に登れた人はれいなちゃんだけなんだよ」
「・・・・・・」
「それにね、ののは犯人が靴を履き替えたかもって言ったけど
たぶんそういうことはない。
梨華先輩が言ってたように
今回足跡がついたのは偶然なんだよ。
雨がいつ止むかみんな知らなかった。
というか、木から落下するなんて予測できるわけがない。
足跡を残してしまったのは完全にアクシデント。
だから、靴を最初から2足用意できた人は
いないと思う」
- 194 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:10
- 「でも・・・・・・れいながなんで盗み聞きなんてするの?
さゆみと仲がいいんだから後で教えてもらえばいいのに」
「だって気になるでしょう」
「そりゃ、さゆみの告白は心配だけど、
でもいくらなんでも・・・・・・」
「そうじゃなくてさ
さゆみちゃんがなんて告白するかも気になるけど、
れいなちゃんが気になったのは綾瀬川君の返事なんだよ。
告白の返事からいろいろなことがわかるでしょ。
付き合っている人がいるのか、
好きな人がいるのか、
彼女が欲しいと思っているのか・・・・・・。
好きな人の考えてることだったら気になって当然だよ」
「まさか、れいな。綾瀬川君のことが?」
「好きなんだと思うよ。しかも相当ね。
運動苦手なれいなちゃんが
どしゃ降りの中を木の下まで走って
雨で湿った木によじ登って
落下する危険があるのに枝の先まで這っていった。
そうまでして彼のことが知りたかったってことは、
れいなちゃんは綾瀬川君のことがすごく好きなんだよ」
- 195 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:11
- ののは呆然としてしまう。
「だって・・・・・・れいなはさゆみの告白に協力してたのに」
「れいなちゃんびっくりしただろうね。
さゆみちゃんが自分と同じ人を
好きになっちゃったって知ったときは。
れいなちゃんは複雑な気持ちだったと思う。
友達の恋は応援してあげたい。
でも自分も同じ人を好き。
れいなちゃんは自分の気持ちを隠したまま
さゆみちゃんを応援することに決めたんだ。
だけど、気になる。好きな人のことだもん。
それで告白を覗いてしまった」
これは好意的な解釈だ。
ひょっとしたら、れいなちゃんはさゆみちゃんに
告白を勧めながら、心の中ではさゆみちゃんが
失敗することを願っていたのかもしれない。
「れいな・・・・・・辛かったんだね」
「のの?」
- 196 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:11
- 私はののを見た。
!?
ののが目に涙を溜めている。
「れいながそんな気持ちだったなんて、
のんは全然気がつかなかった・・・・・・」
目から
涙が
落ちてきた。
「のんはバカだ・・・・・・。
友達の気持ちに気づかないで
勝手に盛り上がって。
すぐ近くでれいなが苦しんでいたのに」
「のの・・・・・・」
私はののに近寄った。
肩を抱き寄せる。
「のんはバカだ・・・・・・。
何も知らない。
あいぼんはすごいよね。
何でもすぐにわかっちゃって。
名探偵さんだね・・・・・・」
「のの、そんなこと言わないで!」
- 197 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:12
- ののは大粒の涙をポロポロと流す。
私は激しく後悔した。
私のしたことといえば、
れいなちゃんが必死に隠していた想いを得意になって暴きたて、
知らなくてもいい事実をののに突きつけ、
悲しませただけ。
親友の苦しみ一つわからないで何が名探偵だ。
「のの・・・・・・」
私はののをギュっと抱きしめた。
ののは私の肩でひっくひっくとしゃくりあげている。
「のの、もうクイズ止めよう」
私は嫌だった。
自分が謎を解くことで、
親友の悲しみが無駄に増えるのはもう嫌だ。
- 198 名前:―れいな空中浮遊 解決編― 投稿日:2004/06/03(木) 21:12
- 「ダメ」
「のの!」
「お願いだから、最後までクイズに答えて。
最後のクイズはのんも答えを知ってるから」
「でも・・・・・・」
「いいの。
クイズは、あいぼんに解いて欲しいんだよ」
ののは私の耳元で、
泣きべそをかきながら話す。
「あいぼんに解いてもらったら
のんはすっきりするから。
のんはもう答えを知ってるけど、
あいぼんが解いてくれたら嬉しいな」
「・・・・・・わかった」
「アイスは8段だよ!」
「頑張る」
私が謎を解くことで
親友の悲しみがなくなるのなら
私は喜んで推理をしよう。
「よーし」
ののは泣き笑い。
「それじゃ最終問題だ!」
- 199 名前:いこーる 投稿日:2004/06/03(木) 21:13
- 以上になります。
- 200 名前:いこーる 投稿日:2004/06/03(木) 21:14
- >>186 めかり様
はじめまして。
お読みいただきましてありがとうございます。
探偵あいぼん、私もかなり気に入っております。
今後も活躍を見守ってやってくださいませー・
- 201 名前:―最後のクイズ― 投稿日:2004/06/10(木) 20:41
- 『足跡の問題はとりあえず迷宮入りとなって
私と、れいな、さゆみ、小川さんの4人で
一緒に帰った。
帰り道。
私はさゆみに聞いた。
「綾瀬川君、何て言ってたの?」
「うん・・・・・・」
さゆみは下を向いてしまう。
「さゆみ?」
「綾瀬川君ね、付き合ってる人がいるんだって・・・・・・」
「そうなんだ・・・・・・」
そうして沈黙。
みんな黙っていた。
私も、
さゆみも、
れいなも、
小川さんも。
- 202 名前:―最後のクイズ― 投稿日:2004/06/10(木) 20:41
- さゆみはひょいとみんなの前に出ると
こっちを振り向いた。
そして
ぺこりとお辞儀する。
「れいな、のの、小川さん。
みんな、協力してくれて本当にありがとう」
そうして、
さゆみはお辞儀をしたまま頭を上げない。
「うっ・・・・・・」
さゆみは泣いていた。
「さゆみ、泣かないで」
私たち3人がさゆみのもとに駆け寄る。
「私・・・・・・やっぱりダメだったよ」
- 203 名前:―最後のクイズ― 投稿日:2004/06/10(木) 20:42
- 「でも、誰なの?付き合ってる人って」
私が聞いた。
さゆみは
「それは、聞いてない。
ただ、今はその人のことが大切なんだって・・・・・・」
「そっか」
こうして、さゆみの告白は終わった。
おそらく高校生になってはじめての恋愛だったと思うけど、
それは、はかなく散ってしまった。
私はれいなを見た。
小川さんを見た。
さゆみには
仲間がいる。
恋に破れた心を必死に助けようとしてくれる仲間がいる。
だからきっとすぐに
立ち直れる日が来ると思うんだ』
ののは話を終えた。
さゆみちゃんの切ない恋物語。
私は顔も知らない、さゆみちゃんのことを思った。
ひたむきに恋をした女の子のことを思った。
- 204 名前:―最後のクイズ― 投稿日:2004/06/10(木) 20:42
- 私は日記の続きを読んでみる。
++++++++++++++++
6月16日 夜
私は今、部屋に戻って
制服から着替えるのも忘れて
この日記を書いている。
綾瀬川君の言ったこと。
それは、
すごく嬉しいことだった。
私は綾瀬川君の彼女なんだ。
今、日記を書いていてようやく実感が湧いてくる。
私は自分の幸せを噛み締めている。
今夜は眠れそうにない。
綾瀬川君・・・・・・好き。
++++++++++++++++
私は日記を閉じた。
ののは、最終問題をもう一度言った。
「問題
綾瀬川君と付き合っているコは誰?」
お答えしましょう。
次回更新をお待ちください。
- 205 名前:いこーる 投稿日:2004/06/10(木) 20:42
- 短いですが以上です。
- 206 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 00:23
- いよいよですか。
メル欄に答えが書きたくてたまらない(当たってるかは不明
- 207 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 00:43
- 木曜で終わっちゃうのかな〜?
なんだか寂しい...
シリーズ化してくれないかな〜。
- 208 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:42
- さて、綾瀬川君の彼女は誰か。
「お答えします。
これに正解したらのの、ちゃんとアイス奢ってよ」
「わかってるよ」
ののはうなづいた。
私は推理を開始する。
「まずは関係のない人を除外します。
ののは違うよね。ののは消去」
「ちょっと待って。なんで私は違うの?」
「浮気は許しません!」
「えっ・・・・・・」
ののは動きを止めた。
「ちょっとあいぼん、何言ってるの?
別にのんとあいぼんはそんなんじゃ・・・・・・」
私は、
「私はののが好きなんだから」
言った。
- 209 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:42
- 「え?・・・・・・あいぼん」
ののが私を見る。
私はののを見つめる。
しばし
沈黙。
「ぷっ・・・・・・」
私は吹き出してしまった。
「なんつって!」
「あーーーこらっあいぼん!だましたな」
私はあははっと笑った。
ののはぷーーーっとほっぺたを膨らます。
「びっくりしたよーー」
「ごめんごめん。でも、これでお互い様だからね」
「何が?」
「ののだって私をだまそうとしたでしょ?」
「何の話?」
- 210 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:46
- 「そりゃ、日記に書いてあることも本当だし
さっきからののが話してたことも全部本当のことだろうけど、
でも、
ところどころ情報を隠されたら
いくら事実を話していたって誤解しちゃうよ」
断片的に事実を並べるだけで人はだませる。
さっきそんな話をした気がする。(>>44)
「6月8日。
さゆみちゃんが体育館裏で泣き出しちゃったという話を
ののから聞いたとき私は勘違いしちゃったよ。
だってののが
あたかも綾瀬川君がその場にいるかのように話すんだもん。
実際にはトランシーバーから『綾瀬川君、校門通過』という
梨華先輩の声がしただけで、
綾瀬川君はまだ到着してなかったんでしょ?」(>>66)
ののは黙っている。
私の推理がどこまで合っているか試しているのかもしれない。
- 211 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:47
- 「いい?ののはこう言ったんだよ。
『飯田先輩が言い出したのは
実際に綾瀬川君と会う前に
告白シュミレーションをしたらいい
ってこと。』
それから
『まともな練習ができたころには
時間がずいぶん経ってしまった』(>>61,62)
とも言ってたよね?
で、トランシーバーから梨華先輩の声で
『綾瀬川君、校門通過』
って聞こえたのが16:00。
放課後に合流して
たっぷり時間かけて告白の練習してるのに
16:00ってのは時間が早すぎる。
これは告白本番じゃないでしょ?
- 212 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:50
- おとめ学園が何時まで授業してるのか知らないけど、
短縮授業でもない普通の日は、
15時過ぎまで授業するでしょ?普通。
ののは翌日が今年はじめての短縮授業だって言ってる。(>>75)
ってことは、その日は平常の時間割だったはず。
それからホームルームがあって放課後。
で、みんなが合流して告白シミュレーションをたっぷりとして
16:00?
早すぎるよね。
この16時に始まったのは告白本番じゃなくて
告白シミュレーションだったんだ。
さゆみちゃんが体育館裏で泣いちゃったのは
綾瀬川君が到着するよりも前、
告白シミュレーションの途中で泣き出した
そういうことになる。
告白の練習をしていたら不安になっちゃったんだね。
それでさゆみちゃんは泣いちゃったってわけ。
そういえばののが
『トランシーバーなんて生まれてはじめて持った。』
とか言ってたね。
そのときが本番だったとしたら練習のときは持ってなかったの?
てことにもなるしね」
- 213 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:51
- ののは黙っている。
「あやうくだまされるところだったよ。
告白本番の話じゃなかったなんて普通考えないじゃん。
それに・・・・・・」
私は日記を手に取る。
「ののは、これが誰の日記かも教えてくれなかったじゃん」
「え?あいぼん知りたい?」
「もういいよ、わかってるから」
私は日記をののへと差し出しながら言った。
「これ、小川さんの日記でしょ?」
- 214 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:53
-
私は窓から外を見る。
もう、日が暮れかけていた。
早いこと謎解きを終わらせて
今日の「目的」を果たしてしまいたい。
「ののはおとめ学園の1年生だ。
一番下の学年だよね。
で、れいなちゃん、さゆみちゃん、小川さんが同学年。
ここが設定のミソだと思う」
「設定?」
「日記では、ののを呼ぶときに『辻さん』って言ってるんだよ。(>>63)
ののにはまだ後輩なんていないのに、
『辻さん』なんて呼ぶってことは、
同じ学年であんまり仲良くない人
に決まってるじゃない。
私はそこが気になってののが話すのを注意して聞いていた。
- 215 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:56
- 飯田先輩は『のの』と呼んでる。(>>68)
梨華先輩も『のの』と呼んでる。(>>23)
藤本先輩も『のの』と呼んでる。(>>78)
れいなちゃんも『のの』と呼んでる。(>>21)
さゆみちゃんも『のの』と呼んでる。(>>202)
小川さんだけが、『のの』って呼んでいないんだ。
それで私は、この日記を書いたのは小川さんなんだって思ったの。
小川さんだけは、それまで友達じゃなくって
告白大作戦でようやく友達になったみたいだもんね」
不思議なことに、
私はののが話すときの口調、話し方、表情などから
なぜだか、れいなちゃんとさゆみちゃんがののよりも
後輩なんだと一瞬、思い込んでしまった。
なぜかはいまだにわからない。
でも設定上、
れいなちゃんとさゆみちゃんはののと同い年。
- 216 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:58
- 「それがわかってから、
いろいろ勘違いしていたことに気がついた。
まず6月8日の日記だけどこう書いてあった。
『結局私は
綾瀬川君の前で泣いてしまった。
泣かないって思ったのに、
私はなんだかんだで弱い』(>>63)
さっき話したけど、さゆみちゃんは
その日、綾瀬川君に会ってないんだよね。
だからこの日記がさゆみちゃんの日記じゃおかしいよね。
さゆみちゃんが告白の練習中に泣き出してしまって
告白作戦は延期になった。
でも本当はこの日、告白する予定だったわけだから
藤本先輩か誰かが綾瀬川君を呼び出してるはずだよね。
で、その日は告白できないってことになって
綾瀬川君にそのことを連絡する役割は
小川さんが引き受けた。(>>70)
- 217 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 18:59
- でもなんで小川さんが、
綾瀬川君の連絡先を知っているんだろうね。
ひょっとしたら小川さんは
綾瀬川君に連絡なんてしなかったのかもしれない。
さゆみちゃんの告白は延期になったけど、
綾瀬川君はおとめ学園に向かっている。
もし小川さんが綾瀬川君に告白したいと思ってるなら
これはチャンスだ、と思ったんじゃない?
小川さんはみんながいなくなってから
こっそり体育館裏に戻って綾瀬川君にアタックしたんだよ。
それでOKをもらえたんだ。
小川さんは告白が上手くいって嬉しくて泣いてしまった。
『こんなことで泣いてちゃ
恋愛なんて無理なのかな?
でもせっかくのチャンスだもん。
逃がすわけにはいかない』
こう日記には書いてあるけど、
確かにチャンスだよね。
好きな人と付き合うことになったんだから。
- 218 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:00
- その後の日記も、読み直してみると
私がすごい勘違いしていたことがわかったよ。
この日記は
さゆみちゃんが自分の告白の結果を気にしているんじゃなくて、
さゆみちゃんが自分の彼氏に告白するのを、
小川さんが不安に思って書いたものなんだね。(>>107,108)
小川さんは確かに綾瀬川君と付き合うことになったけど
彼の気持ちがどこまで本物なのかわからない。
さゆみちゃんに告白されたとき、
ちゃんと自分と付き合っていると言ってくれるだろうか。
小川さんは不安でたまらなかっただろうね。
あとは
6月16日の日記を見れば
小川さんが綾瀬川君と上手くいっている様子がわかる。
ということだから
最終問題の解答は
小川さん
そういうことになる」
- 219 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:00
- 以上、推理終了。
「のの?これで合ってる?」
私はののを見た。
ののは
「お見事!正解です!!」
そう言った。
「さすがあいぼんだ。やっぱりすごいね」
ののは、めっちゃ笑顔で私に抱きついてきた。
「でさ、のの」
「ん?」
「一つ気になってることがあるんだけど」
「何?」
「藤本先輩は小川さんの気持ちを知っていたんだよね?
そうでないなら綾瀬川君への連絡を
小川さんに任せたりしないでしょ?
藤本先輩は綾瀬川君の幼なじみなんだし
小川さんが綾瀬川君の連絡先知っているのも
それなら納得できる」
- 220 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:01
- 「うん。
藤本先輩は前に図書館で小川さんと知り合ったんだって」
「ひょっとしてさぁ、
記念館でさゆみちゃんが告白しているとき、
れいなちゃんだけじゃなくて
藤本先輩も盗み聞きしてたんじゃない?」
「うん。そうみたい。
小川さんの気持ちを知っている藤本先輩は
綾瀬川君がどう答えるのか聞いて
小川さんに教えてあげようとしたんだって」
「飯田先輩は?」
「あの人は、あんまり人の気持ちとか考えてないから。
あの人にとっては、告白もゲームみたいなもんだった。
だから小川さんがどう思っていようが知らないんだよ。
でもね、
梨華先輩は、小川さんと綾瀬川君のことを
藤本先輩から聞いていたみたい」
え?
「それじゃあ・・・・・・」
- 221 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:01
-
・・・・・・なんてこと。
藤本先輩も梨華先輩も
綾瀬川君に彼女がいることを知っていた。
「さゆみちゃんの味方は
ののだけだったってこと?」
「そうだね。そういうことになる」
そんなの・・・・・・
「みんなでさゆみちゃんの恋を応援してたんじゃなかったの?」
「違うみたい。小川さんもれいなも綾瀬川君が好き。
藤本先輩と梨華先輩は小川さんの味方。
飯田先輩はさゆみのことなんて考えていないし・・・・・・」
なんということだ。
1つの恋を成功させようと協力していた7人。
そんな私の思い描いていたおとめ組は脆くも崩れた。
実際には、
3人の想いがぶつかりあって、
さゆみちゃんやののが知らないところで、
綾瀬川君には彼女ができていた。
藤本先輩たちはそれを知りながら
さゆみちゃんの告白を応援していたというのか。
- 222 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:02
- 「そんなの・・・・・・ひどい」
「あいぼん!そうじゃないんだよっ!」
ののが、これまでにないくらい大きな声で言った。
「のんはずっとさゆみの応援をしていたから
他の人たちのことをひどいって思ったけど違うんだ。
小川さんだって真剣に幸せを求めていた。
先輩たちはそれに協力しただけ。
れいなだって、一生懸命に
自分の気持ちと戦っていたんだよ」
偶然、同じ人を好きになってしまった3人の運命。
おとめ組は蓋を開けてみると、
暗い人間関係が見えてくる。
「純情可憐なおとめの恋」なんて言い出した奴は誰だ!
ちっともきれいな恋なんかじゃない。
おとめたちは自分の恋を叶えようと
必死に
だましあい、
出し抜きあい。
おとめたちだって純粋な恋を楽しんでいるわけじゃない。
- 223 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:03
- いや、違うか。
恋というのは本質的に
暗く、身勝手なものなのだ。
だからこそ人は願う。
せめて
おとめたちには、素敵な恋をして欲しいと。
なんだか、やるせない。
「ねぇのの?」
「何?」
「歌おう。明日、カラオケ行って歌おう」
「え?」
私は、歌いたかった。
ののと2人で思いっきり歌いたかった。
「いいけど・・・・・・」
「のの。これからいっぱい歌おうよ。2人で!」
- 224 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:03
- 恋に苦しむ女の子がいた。
恋に泣いた女の子がいた。
せめて
歌の中ぐらいは、
素敵な恋があっていいじゃないか。
これから2人で
恋を謳歌したい。
恋の喜びをめいいっぱい歌いたい。
日本中のおとめたちが、素晴らしい恋にめぐり合えるように。
「私たちが、恋の面白さ、楽しさを歌い続けようよ」
「うん」
・
・
・
・
- 225 名前:―亜依は謎解き― 投稿日:2004/06/17(木) 19:03
- これで、ののクイズはひとまず終わり。
お菓子もなくなってきた。
「ねぇのの?」
「うん」
私は鞄をがさごそする。
「あいぼん。何探してるの?」
「はい、これ!」
「えっ?」
「今日は何日?」
「6月17日・・・・・・」
ののは17歳。
今日は、これまでののが
こうして生きてこられたことをお祝いする日。
そして、これからもののが
元気でいられるようにお祈りする日。
「ハッピーバースデー!のの!!」
推理「告白大作戦」 ―完―
- 226 名前:いこーる 投稿日:2004/06/17(木) 19:05
- 以上になります。
- 227 名前:いこーる 投稿日:2004/06/17(木) 19:09
- >>206
こうなりました。
当たりましたでしょうか?
ここまでお付き合いいただきましてありがとうございます。
楽しみながら読んでいただけたら作者は嬉しいです。
>>207
寂しいだなんて嬉しいお言葉……。
でシリーズ化ですが
実は構想中です(そのために長編板立てたのですし)。
といっても推理って書けないときほんっとに書けないので
どうなるかはわからないですがもし続けられることになったら
またよろしくおねがいします。
ここまでお読みいただきました皆様ありがとうございます。
- 228 名前:いこーる 投稿日:2004/06/17(木) 19:10
- 辻さんお誕生日おめでとうございます。
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/19(土) 00:14
- お疲れ様でした。
シリーズ化の予定だったんですね。嬉しくてたまりません。
書けない事もあるとは思いますが、まったり待ってますんで気楽に執筆してください。
そうそう、つい最近メモリーラックローテーションも読みました。
他にいこーるさんの作品があればぜひ教えていただけませんか?
- 230 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/19(土) 13:47
- >>227 当たりました!
お疲れ様でした。
- 231 名前:いこーる 投稿日:2004/06/24(木) 21:56
- レス返しのみ。
>>229
どうもありがとうございます。
他の作品ですか?あるにはあるのですが
ここや森の「メモリーラック・ローテーション」とは
だいぶ毛色の違うものばかりなのでお気に召すかどうか微妙ですが……
金板「逃避行」「ボーダーレス」
紫板「トータル・タートル」
があります。もしよろしかったら。
シリーズに関してもせっかくなので前向きに考えています。
あいぼんのライバル探偵登場、とかいろいろ構想はありますが
形になるまでしばらくお待ちください。
>>230
当てられてましたか!
ちょっと悔しいですw。ありがとうございます。
これからもよろしくおねがいします。
- 232 名前:いこーる 投稿日:2004/07/01(木) 19:26
- 短編更新します。
自信なし作品ではありますが(オイ)
- 233 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:27
- 暖かい風を浴びながら
私とののは歩いていた。
のんびりゆっくり。
話をしながら。
「そうそう、あいぼん綾瀬川君の彼女覚えてる?」
「うん。前にののが話していた人でしょ」
名前は確か…………
「綾瀬川君ね。すぐに別れちゃったんだって」
「ええ?どうして…………」
って私は彼女の顔も知らないし(名前も思い出せない)
どれくらい仲良かったかも知らないからなんとも言えないのだが。
- 234 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:27
- 「やっぱりさ、ライバルが多いからやりにくいんだよ」
「そういうもんなの?」
「周りの人の中に2人の幸せを願ってる人が少ない。
みんなに喜んでもらえない気持ちって
持ち続けるのは大変なんじゃない?」
確かに、それはそうかも知れない。
歓迎されない想い。
祝福されない幸せ。
せっかく両思いになれても辛いだろう。
「でも、ロミオとジュリエット効果ってのもあるじゃん」
「何それ?」
「禁じられた恋は燃え上がるってこと。
みんなに秘密で恋をするのって
いつ見つかるかドキドキでしょ。
ドキドキが多いから燃えやすい」
「そういうもんなの?
でも、やっぱりのんは恋人できたらみんなに認めてもらいたいなぁ。
学校公認のカップル…………きゃーーーステキ」
あんたんとこは女子高だ。
うちもですが…………。
- 235 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:27
- 「この坂の上かぁ……駅から結構あるね」
「疲れたね」
今日は、とある高校の文化祭。
電車で30分、駅から徒歩20分のこの場所へ
私とののはやってきた。
「よし、後ひと息!」
私たちは校門の手前にある急坂を登る。
急坂は急で(そりゃそうだ)一歩進むたびに
はっはっ、と呼吸をしなくては登って行けない。
坂の上に到着した頃には
「ふぃぃぃ。疲れた」
疲れ果ててしまった。
汗がびっしょり……。
「あいぼん……遠いよここ」
「うん、そうだね」
「もう疲れちゃった。帰ろう」
え?
着いたばかりですぞ親友。
「まだ目的を果たしてないじゃん」
そう、はるばるここまでやってきたのには
理由がある。
- 236 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- 「その……安倍先輩って人の司会は何時から?」
「えーっと、わからない」
この高校には、私の通っている私立さくら学園から
転校してしまった安倍なつみ先輩、通称なっちが通っている。
今日、文化祭のイベントでそのなっちが司会をするらしい。
そこで、昔お世話になった恩返しにと、
私は応援に来たのである。
「ええ?時間知らないの?」
ちなみに、別の高校に通っているののは
なっちのことを知らないから私の付き添い。
さっきから文句ばっかり……。
「校門のところで真里先輩と待ち合わせしてるから」
「え?真里先輩も来るの?」
「昨日電話で話したじゃん!覚えてないの?」
「むぅ」
- 237 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- 私と同じ私立さくら学園に通う矢口真里先輩。
こちらは中学も同じだったのでののもよく知っている。
「あっ、ほらのの、いたよ。真里先輩」
私が手を振ると真里先輩は
「おーーーーー!加護、辻!!」
かなりなリアクションで私たちを迎えてくれた。
「わーーー、真里先輩だぁ!」
「どわぁぁ」
ののは急に元気になって真里先輩にタックルした。
おかげで小さな真里先輩は後方にふっとぶ。
「もう。変わってないな辻!勉強してる?」
「へへへ」
してません先輩、私が保証します。
- 238 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- 私も真里先輩のところに行く。
「よし、行くぞ」
「はい!」
「はーい」
3人そろって校門をくぐって中庭に向かった。
中庭への移動中に、真里先輩がイベントの要旨を説明してくれる。
「これからこの高校の恒例行事、
ベストカップル賞の発表があるんだ。
これは、今年もっともラブラブなカップルを
生徒たちが投票して決めるんだけどね、
今年はおいらの友達が有力候補なんだって!」
この高校は共学。
「先輩の友達?」
「そう、おいらと同じ苗字の人たちでね、
すごく仲が良いんだよ!
2人が全校生徒に見守られて幸せを誓う。
ね、素敵でしょ」
- 239 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- 「素敵!」
「いいですね。で、その司会をなっちが?」
それを私が聞いた途端、
真里先輩はふと立ち止まった。
「うん……。大丈夫かな、なっち」
「心配ですね」
私も同意。
「何で心配なの?」
のの1人が、腑に落ちない様子。
「そっか、辻はなっちのこと知らないんだね」
「はい」
「なっちはね、人前で話すとき、
もうセリフをかみまくるかみまくる。
でもなっちは司会とかスピーチとかやりたがるんだよね。
さくら学園にいたころはまわりのみんなも、
なっちがセリフをかむことをよく知ってるから
絶対なっちには任せないんだけど、
こっちには転校してきたばかりだから
みんな知らないんだろうね。
この大事なイベントの司会をなっちが任されてしまったってわけ……」
- 240 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- そんな話をしている間に、中庭に到着した。
中庭にはステージが設えてある。
文化祭の間だけの特設ステージなのだろう。
そしてその前には
「すごい……」
実に数百人の生徒達が集合しているではないか。
「本当に大きなイベントなんですね……」
「そうだよ。ここの文化祭のメインイベントなんだってさ」
こんな中で真里先輩の友達が、
ベストカップルに選ばれたりしたら
「きゃー!なんかここで選ばれた2人、すごくハッピーですね」
「そう。これは超大切な行事なんだよ。だから……」
「なっちが心配……」
そのとき……
スピーカーから音楽が流れてきた。
- 241 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:28
- 「あ、なっちだよ」
「本当だ」
なっちがステージに登場。
私が隣を見るとのの
「かわいい……」
なっちに見とれている。
そう、なっちはかわいいのだ。
でも、
「もう、のの!」
となりに私がいるというのに
他の女に見惚れるなっての。
ちょろっとジェラシー。
スピーカーからなっちの声がする。
「はい、皆さんお待たせしました。
いよいよ今年のベストカップル賞の発表でーす!」
- 242 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:29
- マイクを持って満点の笑顔でしゃべるなっち。
この笑顔がみんなを和ませる。
そういうことにかけてなっちは天才。
あれされなければ……
「ここで、今年最もハッピーなカップルが
えられ……選ばれるわけです」
あっ
早速かんだ……。
「私も結果をまだかっ、確認していません」
私も真里先輩もののも冷や汗。
頑張れなっち。
「結果はこのふうちょ……封筒の中にあります」
まただ……。
- 243 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:29
- 「先輩。あれ……」
「やばいね。テンパってる」
なっちの顔からさっきまでの満点笑顔がかげを潜め、
苦笑いが広がっていった。
こうなるとかなり危険。
徐々に意味不明のセリフが増えていく。
「ベストカップルに選ばれた方は
この壇上まで来てください。
この場で賞状とトロフィーをジュショ……
あれ?
しょうしょうをじゅ……
えっと、
賞状とトロフィーを授与いたします」
客席がざわつき始めた。
なっちは……顔色を失って
完全にパニック。
それでもなんとかイベントを進めようと必死になっているのが
私たちの位置からもよくわかった。
会場も、
そんななっちを見守ろうと思ったのか
次第に
静まっていった。
- 244 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:29
- 「それでは、たたた……ただ今より
え……せんこうかっ。
じゃない……
選考結果の発表を致します」
なっちは、
封筒を開ける。
「真里先輩の友達……選ばれるといいですね」
「うん……」
私たちはなっちの次の言葉を待った。
会場も、なっちの次の言葉を待った。
しかし……
「ちか、はろー?」
なっちの口から出たのは
そんな言葉だった。
- 245 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:29
- 再び
会場がざわつく。
「あちゃーーー」
真里先輩は額に手を当てて苦い顔をしていた。
「また、やっちゃった」
「また……?」
ののが不思議そうな顔をしたので
私が説明してやる。
「なっちね、テンパっちゃうと
どんどんわけがわからなくなって
最後には意味不明の言葉をしゃべっちゃうの……」
「そんな……」
会場内には『?』が飛び交っていた。
「あれ何語?」
「なにあのコ。大丈夫?」
「転校生じゃない?なんであんなのに任したのよ?」
収拾がつかなくなってきた。
なっちを見ると今にも泣きそうになっている。
- 246 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:30
-
私は
腹の底から思いっきり叫んだ。
「なっち!漢字だよ!!ちゃんと見てーーーーー!」
観客は一斉に私のほうを振り向いた。
……。
私は会場全部の注目を集めていた。
「あはっ……あはは」
もうこうなったら
苦笑いするしかないじゃない。
- 247 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:30
- しばらくすると観客は、再び前を向きなおしていく。
「加護?漢字って何?」
「真里先輩。さっき友達が同じ苗字だって言ったけど
真里先輩の友達のカップルって
両方とも真里先輩と同じ苗字なの?」
「うん。そうだよ」
「片方は完璧に同じで、もう片方は漢字だけ違うんじゃない?」
「うん」
「大丈夫。先輩の友達は選ばれてます」
「なんでそんなことわかるの?」
「心配ないです。はじめさんとかおりさんが
今年のベストカップルですよ」
「加護、おいらの友達のこと知ってるの?」
「知らないけど……」
- 248 名前:―ちかはろー― 投稿日:2004/07/01(木) 19:30
- 「ふふふっ、真里先輩。あいぼんがこういう顔してるときは
全部わかってるときなんですよ」
ののが得意そうに(なんでキミが得意げ?)
真里先輩に言った。
「全部って」
「じゃーここで真里先輩にクイズ。
今、あいぼんは何を考えてるでしょう?」
勝手に人の脳みそでクイズするな!
「ちょっとのの!」
「あいぼん。答えは次回更新のときね」
それ……私のセリフ。
- 249 名前:いこーる 投稿日:2004/07/01(木) 19:31
- 以上になります。
簡単すぎ……というかくだらなすぎな気が……
- 250 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/02(金) 21:18
- お〜!!!更新されてる〜。
いや、楽しいですよ。自信もってください。
実は229なんですが、紫と金の方にも遊びに行きますね。
また読んだらそちらで感想レスさせていただきますね。
- 251 名前:―ちかはろー 解決編― 投稿日:2004/07/08(木) 20:52
- 「じゃー解答編ですよー」
「はーい。待ってました!」
「でもねのの、今回は説明することもないよ」
「何で?」
「そもそもこれは有名な元ネタがあるんだよ。
わざわざ小説にするようなものじゃない」
「は?」
今回は私の口から語ることは特にない。
答えは、もうすぐなっちが読んでくれるだろうから。
「なっちはやっぱり今回もしくじってたけど
でたらめなセリフを言ったわけじゃないんだよ。
封筒の中にある選考結果をちゃんと読んだつもりだったんだ。
ただ、字が汚かったのか、なっちの見方が悪かったのか……
たぶん後者だと思うけど、なっちは読み間違えちゃったんだよ
知香・ハローって」
私はなっちの方を向いた。
「加護。なっちは?」
「ほら、笑ってる。もう大丈夫」
真里先輩もののも、なっちの方を向いた。
- 252 名前:―ちかはろー 解決編― 投稿日:2004/07/08(木) 20:53
- 「答えはなっちの口から聞こうよ」
なっちはマイクに向かってしゃべりだした。
「大変失礼致しました。
今年のベストカップルを発表します」
皆が注目する中、なっちは今度こそ堂々と
真里先輩と苗字が同じ2人の名前を読み上げた。
「矢口香さん。
八口一さん。
この2人に決定しました。皆さん拍手で祝福してください!!」
盛大な拍手が湧き起こった。
真里先輩はガッツポーズ!
私もののも、祝福され幸せを誓い合う2人の登場を見ていた。
- 253 名前:―ちかはろー 解決編― 投稿日:2004/07/08(木) 20:54
- 「なんかいいね。こういうの」
ののが言った。
私も
「素敵……」
言った。
みんなに見守られながら好きな人と結ばれる。
こんな幸せは誰にでも訪れるものではない。
誰からも祝福されずに終わった恋もある。
私は、最高のスタートを切った2人の幸せを願った。
頑張って楽しい恋をして欲しい。
そう願った。
- 254 名前:―ちかはろー 解決編― 投稿日:2004/07/08(木) 20:54
-
―ちかはろー 完―
- 255 名前:いこーる 投稿日:2004/07/08(木) 20:55
- 以上になります
- 256 名前:いこーる 投稿日:2004/07/08(木) 20:56
- >>250
ありがとうございます……
自信……持てるといいですが;
またよろしくおねがいしまーす。
- 257 名前:おって 投稿日:2004/07/11(日) 01:10
- 連載2つもしていて、凄いと思います。
自分は勢いで何本もやりだして今ひーひー言っていて(汗)
ちなみに230です。
- 258 名前:↑ 投稿日:2004/07/11(日) 01:26
- すみません、3本でしたね。
- 259 名前:いこーる 投稿日:2004/07/23(金) 22:15
- >>257
ありがとうございます!
いやぁ私も複数スレで参ってます。
一つなかなか第二部に入っていませんし
頑張って書いてはいますが。
これからもどうぞよろしくです。
- 260 名前:いこーる 投稿日:2004/07/23(金) 22:16
- 連載を再開します。
あいぼんにライバル探偵出現!といった感じの
- 261 名前:・・・ 投稿日:2004/07/23(金) 22:16
-
「奇天烈キッズ探偵団」
- 262 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:16
- 子どもってのは大人の目から見ると大概、変だ。
大人なら絶対しないであろう行動を臆面もなくやってのける。
大人なら絶対変人扱いされるような行動でも
子どもたちがやるとどこかほほえましかったりする。
子どもというのは大人社会では黙認された異分子なのかもしれない。
ただ、
そんなふうに子どもってのは変なものだと了解していても
やはりちょっとヤバイなこいつら、と思えるような子どもたちがいたとしたら
心底…………引く。
私はこの前……
奇天烈な子どもたちと関わってしまった。
- 263 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:17
- その日はさくら学園が半日授業で午後はお休みだったので
私は部屋でくつろいでいた。
そこへ
ピンポーン
誰かが呼び鈴をならした。
「はいはーい」
誰かと思って扉を開けると
やったら甲高い声が聞こえてきた。
「あなた、アイボンさんですね!」
ちょいと見下ろすとまだ小学生かな?中学生?
微妙な年頃の女の子がいた。
「あの……あいぼんはあだ名だから『さん』つけないでいいんだよ」
「アイボンさん、私たちと勝負してください!」
「は?」
なんか痛いぞこのコ。
- 264 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:17
- まず、
人の話を聞いていない。
私の親友がかなりマイペースなのでこういうのは慣れているが。
次に
「私たち」というがキミ、1人しかいないじゃないか。
それから
勝負ってなによ……
最後に
声のトーンもうちょっとさげてくれ。耳が痛い。
ということで私は親切にもそれを全て教えてあげることにした。
- 265 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:17
- 「キミねぇ、マイペースなのはいいけど年上の人に話があるんならまずはそっちが名乗り出るべきであって、ついでにいうと私たちっていうけど、どこに仲間がいるのよ一体、ああそれから勝負勝負ってなに勝負ですか?わたしゃいっとくけど足遅いから運動は嫌だから特技ったってモノマネくらいしかないもの。で、あんた声かわいいねぇ。もうちょっと落ち着いてしゃべってくれない?」
「む……」
相手は
身構えた。
いつでも戦闘できそうな態勢だ。
ってなぜ構える?
「すごい饒舌……アイボンさんやりますね。
こりゃマアサちゃんと連れてこないと……」
「まーさ?まーさって名前なの?」
- 266 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:17
- ところでこのコ、よく見ると結構かわいい。
釣り目気味で鼻がツンと上を向いている。
「私は桃子っていいます。それではまた」
というと桃子ちゃんは
「あ……」
行ってしまった。
「……」
なんだったんだ一体?
わけわからん。
まぁいいや。
変なコはいなくなったし部屋でくつろごう。
30分後
変な子どもは5人になって戻ってきた。
- 267 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:18
- 「アイボンさん!」
しゃべったのはさっきの桃子ちゃんだった。
仲間がいる……。
全員、ドラクエのパーティのように
縦1列にならんでいる。
1人、私より背が高そうな女の子。
1人、幼稚園生並に背が低い女の子。
1人、茶髪で目がくりっとした女の子。
あと1人……
「加護ちゃん!」
「おお、亀ちゃんじゃないか!」
私の同級生の亀井さんだった。
子どもに違和感なく混じってますよ亀ちゃん。
高校生にまでなって……。
- 268 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:18
- 「亀ちゃん偉いねぇ。子どもと遊んであげてるんだ」
「うん。このコたち、面白いんだよぉ」
ちなみに亀ちゃんは子どもたちの隊列の最後尾に立っていた。
班長は先頭で引率は最後尾。
もっとも行列に適したポジションである。
ただ5人縦1列というのは傍から見ていて
ずいぶんあやしい集団のようにも思えるが
恥ずかしくないのだろうか?
背の高い少女がしゃべりだした。
「アイボンさん、私たちと勝負をしてください」
背の高い子はさっきの桃子ちゃんと同じことを言った。
- 269 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:18
- 「あーーーあのぉ。ね。
勝負っても何勝負だかわけわからないし、
だいたい……キミたち、誰?」
「1つの発話で2つの質問とは探偵らしからぬ。それがアイボンさんの芸風ですか。
了解いたしました。本来ならば1問1答にさせていただいているのですが、
今回は特別出血大サービスという名目で2問同時にお答えいたします。
まず勝負というのは、名探偵と名高いアイボンさんと我等キッズ探偵団の
推理合戦に他なりません。
次の質問ですが、これについては1人づつ自己紹介をするという形で
回答にかえさせていただきます。ということで以上。回答完了です!」
「な……」
なんだなんだこのコは……。
亀ちゃんを見ると楽しそうに
「ね!マアサちゃんの語り。すごいでしょ!」
はしゃぎ出しそうな勢い。
確かにすごい。
すごく……ヤバイ気がする。
- 270 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:19
- 「ねぇ亀ちゃん。悪いこといわないからさぁ
あんまり変な子どもと関わらない方が……」
と私が言いかけたとき
「じゃーーーーーーーん!!」
「わっ、ビックリした」
一番小さな子が大声で叫んだ。
「それでは自己紹介しまーす」
「いや、あのそんな勝手に……」
そんな私の声が届くはずもなく
子どもたちが列を崩したかと思うと
今度は横一列に整列した。
キミたち1列フォーメーション好きだなぁ。
- 271 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:19
- 自己紹介スタート。
まずは声の高い桃子ちゃん。
「思考担当、桃子です」
続いて、茶髪の目のくりくりしたコ。
「捜査担当、雅です」
背の高い饒舌少女。
「語り担当、茉麻です」
そして、
「じゃーーーん!ちびっ子担当、舞です」
なんだそりゃ……。
「引率担当、えりっぺでぇす!」
ああエリザベスよ、お前まで……
「我等、キッズ探偵団!!!」
5人でポーズをとった。
決まってるのか間抜けなのか判断つきかねる微妙なポーズだった。
- 272 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:19
- 「質問!」
私が声を発すると
「また質問ですかぁ?」
不満そうに言ったのは……
舞ちゃんだった。
にくったらしい。
プニュプニュのほっぺつねっちゃうぞこのやろう。
「あのねぇ、わたしゃ名探偵なんて名乗ったことはないんですけどもね」
「それは私が教えてあげたの」
「か……亀ちゃん?」
「れいなから聞いて……あぁ、れいなは知ってる?」
聞いたことのある名前だ。
「おとめ学園の……」
「あーーーはいはい。ののが話してたコだね」
「そう、ののちゃんがいっつも話してるんだって。
自分の親友は名探偵だーって」
のの……。
恥ずかしいからやめてくらさい。
あっ、微妙にのの口調になってしまった。
- 273 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:20
- 「で、亀ちゃんはその、れいなちゃんから聞いたの?」
「そうそう。そしたらさぁ、この子たちが探偵ごっこやるっていうから
じゃあいい人紹介したげるってことで加護ちゃんのとこに来たってわけ」
「そんな……」
私まで子どもの遊びにつきあわなきゃあかんのですか……。
「あのね、私はののがクイズ出してくるからそれに答えてるだけで
別に好きで探偵やってるわけじゃないのよ。
だから悪いんだけど他あたってくれるかな?
えっと確かおとめ学園に宇宙人がいたと思うから紹介してあげるよ。
飯田先輩って人なんだけど……」
そこまで話して私は気がついた。
キッズ探偵団が、戦闘態勢をとっている。
全員上目遣いで私を睨んでいる。
私なにか悪いことしましたか?
- 274 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:20
- 「いくのよマイマイ!」
亀ちゃんがビッと私を指差した。
「ラジャー」
舞ちゃんは私の足元までトコトコと歩いてくる。
そうして
「びぇぇぇぇぇぇぇ。いじめるーーーー」
泣き出した。
「え?……はい?……何?」
他の子たちは、相変わらず上目遣いで私を睨む。
これじゃ……
私が泣かしたみたいじゃないか。
「ちょ……わかった。わかったから。
一緒に探偵ごっこしようね。だから泣かないで」
- 275 名前:―邂逅です― 投稿日:2004/07/23(金) 22:20
- 舞ちゃんは私が一生懸命頭を撫でてやると
ピタッと泣き止んだ。
すると茉麻ちゃん。
「受けて立ちましょう!!」
マテ。
ふっかけてきたのはそっちだ。
こうして、
私はキッズ達と推理合戦をすることになってしまった。
まぁいいや暇だし。たまには子どもと遊ぶのも面白いかも。
しかし、
こいつらの探偵能力は想像を絶するほど高かった。
- 276 名前:いこーる 投稿日:2004/07/23(金) 22:22
- 以上です。
それでも濃い本格推理を目指したいいこーるでした。
- 277 名前:めかり 投稿日:2004/07/23(金) 23:56
- 更新オツカレでっす。
ガンバレあいぼん!負けるなあいぼん!
子供達に力の差を見せつけてあげるのれす♪
- 278 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:34
- 「この度、アイボンさんに挑戦していただく謎は
宝捜しです。宝捜しは探偵の基本中の基本ですから」
私はキッズ達に連れられて歩いていた。
道中、茉麻ちゃんが延々喋り続けている。
このコ、えらい推理マニアだ……。
「ポーも宝捜しを手がけられています。『黄金虫』で」
それは語弊がある。
「ポーが探したんじゃないけどね……」
「言葉の綾ですよ。アイボンさん、そういうセンスないですか?」
ああ、うるさい。
ちなみに茉麻ちゃんのマニアトークはしばらく続きます。
読者の皆さん、面倒ならこのコの講義はスルーしてください
講義をとばして読んでも物語はつながりますから。
- 279 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:34
- 「まあいいですけどね。彼が取り組んだのは暗号読解でした。
無意味に見える記号の羅列を丁寧に読み解いていって
宝のありかを見事探し当てるのです。
昨今、横行しているような1つの法則で簡単に読めてしまうものとは
わけが違います。1文字1文字が全てなんらかの記号に置換されているため
その一つ一つを順々に考察していかないと暗号の真意にたどり着けない仕組みです」
「それは乱歩の言う……」
「代用法です。暗号の基本中の基本。
優れた暗号ミステリはみな代用法の暗号が登場します。」
それは偏見だろ。
「文字一つ一つをランダムに変換する代用法こそ、論理的に解かなくてはなりません。
置換法は法則にしたがって順番を入れ替えただけ。
寓意法は小難しい表現で意味をとりにくくしているだけ。
やはり推理合戦に向いているのは代用法の暗号でしょう」
「ほうほう、そりゃ人形も踊り出すってもんだ」
「『踊る人形』も暗号読解ものとしては秀逸ですね」
- 280 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:34
- 「でもさぁ、英語とかなら代用法の暗号は解けるけど
日本語でそれって難しいんじゃない?」
「確かに仰るとおり、日本語は構造的に代用法の暗号は解きにくいです。
分かち書きがありませんから。
英語なら文字を記号変換しても、単語と単語の間にスペースがあきますから
どこからどこまでが1つの単語かすぐにわかります。
日本語のように、単語の間を区切らない言語の場合そういったヒントがありません。
記号が羅列してあっても、どこまでが1つの単語なのかわからないから
推理の進めようがないですよね。
やはり代用法は分かち書きのある言語に向いているのでしょう」
もちろん日本語でも文節ごとに分かち書きをすることがある。
コンピューターで漢字表記のできなかった初期のRPGなどでは
まほうつかいは じゅもんを となえた。
みたいに分かち書きがされている。
- 281 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:35
- 「ところでアイボンさん。アイボンさんが好きな暗号ミステリはなんですか?」
「『英国庭園の謎』」
「なるほど。そうですか」
「茉麻ちゃんはなにが好き?」
「私はやはりあれですね。
最近日本ですぐれた暗号読解ものの推理といえば
といってももう最近ではないですが、有名な推理漫画の中の……」
「ああ、あれ?代用法だったっけ?」
「分類でいうと……えっと……」
「いや、その話はやめておこう」
ネタバレになってしまう。
「ひょっとしてキミたち。その漫画の影響受けてる?」
「……」
絶対受けてるだろ!
今の子どもが探偵ごっこをやりたがるとしたら
ほぼ間違いなくその漫画の影響だ。
- 282 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:35
- 「で、少年探偵団に対抗してキッズ探偵団ってわけね」
「あんなものと一緒にしないでください!!」
突然
私の前を歩いていた桃子ちゃんが怒鳴った。
「あれは結局1人で捜査・推理してるじゃないですか。
探偵団というからには、協力・分業こそが重要なんです!」
「桃子ちゃん……なに怒ってるの?」
協力・分業こそが重要?
意味がわからない……。
「ねぇ亀ちゃん。助けてよ、このコたちと話してると疲れる……」
「逃げるんですかアイボンさん!」
逃げてねぇじゃねぇか。
- 283 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:35
- 「はいはい……。で、今回はどんな推理をすればいいの?」
私は茉麻ちゃんに聞いた。
「舞ちゃんがお誕生日にもらって以来
ずっと大事にしているぬいぐるみの隠し場所を探すんです」
「ぬいぐるみ?それを……誰かが隠したの?」
「そうです。愛理ちゃんに隠してもらいました」
「愛理ちゃん?」
「愛理ちゃんは雅ちゃんのお友達です」
そこで
前を歩いていた雅ちゃんがこちらを振り返って説明する。
「今朝の話です。
私は舞ちゃんから宝の入った袋を受け取りました。
それを愛理ちゃんに預けたんです。
私たちがこうしてアイボンさんの家に来ている間に
愛理ちゃんが舞ちゃんの家のどこかに宝を隠しているはずです」
「なるほどね。それで愛理ちゃんが隠した宝を私たちが見つければいいのね?」
「そうです」
なんだ、かわいい遊びじゃないか。
変な子どもたちだと思ったが、やっていることはほほえましい。
- 284 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:36
- 「愛理ちゃんは塾があるから、私たちが行くころにはもういません」
ってことは、
出題者なしで宝を探さなきゃいけないわけか……。
「着きました。ここが舞ちゃんのお家です」
そこは
一戸建ての家だった。
たいして広くはないが2階建て。
ごく普通の住宅といったところだ。
舞ちゃんがポケットから鍵を取り出して扉を開けた。
「あれ?お家の人いないの?」
「出かけてます」
え?
それじゃあ愛理ちゃんはどこから外に出たんだ?
まさかよその子が鍵を持ってるわけないし
家の人がいないなら愛理ちゃんは外に出た後、鍵を閉められないじゃないか。
- 285 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:36
- 「さすがアイボンさん。面白いことに気がつきますね。
でも残念。これは密室でもなんでもないです。
愛理ちゃんが塾に行くまではお家の人がいたんですよ」
と言った。
なるほど、そんな簡単なことだったか。
カチャリ
扉が開いた。
私たちはぞろぞろと中に入っていく。
玄関は狭かった。
これ……2人がすれ違うのも厳しいんじゃないだろうか。
仕方がないので私たち6人、縦に並んで中へ入っていった。
「おおなるほどこれが1列フォーメーションの理由か」
「そうです。玄関が狭いので自然、縦に整列してしまうんです」
「てことはキミたち、ここから縦1列で私の部屋まで来たってこと?」
「はい」
はずかしーなオイ!
- 286 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:36
- 玄関にインテリアらしきものは特になく
電話ののった棚が端にちょこんと置いてあった。
壁には何も貼っていない。
「あれ?」
と声をあげたのは桃子ちゃん。
「愛理ちゃんヒントを置いてくんじゃなかったの?」
玄関にはそれらしきものは何もなかった。
「困ったなぁ」
ヒントもないのに人の家を探し回るわけにはいかない。
そのとき
私はとんでもない能力を目の当たりにする。
「桃ちゃん。壁に画鋲穴が……」
私の背後から雅ちゃんが声を発した。
桃子ちゃんと私は、壁まで近寄って
雅ちゃんの指差したあたりを注意深く観察した。
- 287 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:36
- 確かに、
何も貼っていないはずの壁に1つだけ、
画鋲でさしたような小さな穴があいている。
「雅ちゃん、そこからこの穴が見えるの?」
「はい。捜査担当だから目はいいんです」
「す……すげぇ」
あまり明かりのない玄関で、
一瞬にしてこの画鋲穴に気がつくとは
このコ、どういう目をしているのだろう。
ただくりっとしているだけではないようだ。
桃子ちゃんは言った。
「さて、染みひとつない壁に画鋲穴……」
私も急いで桃子ちゃんの思考をトレースしてみた。
この家には、壁にものを貼る習慣がない。
神経質なくらい、壁をきれいな状態に保っている。
その中にある画鋲穴にはずいぶんと違和感がある。
つまりそれは……
- 288 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:37
- 「茉麻ちゃん」
桃子ちゃんが茉麻ちゃんを手招きする。
呼ばれた茉麻ちゃんは桃子ちゃんのところまで歩いていって耳を貸した。
コソコソと桃子ちゃんが茉麻ちゃんになにかを告げる。
話が終わると茉麻ちゃんが
「ヒントの場所がわかりました。説明します」
言う。
「え?わかったって推理したのは茉麻ちゃんじゃなくて桃子ちゃんでしょう?」
「そうですけど……」
「なのに説明するのは茉麻ちゃんなの?」
「語り担当ですから……」
語り担当って要するにスポークスマン(マンじゃないけど)ってことだろうか。
それだと雅ちゃんはともかく茉麻ちゃんは全く推理に関わっていないことになる。
- 289 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:37
- 「アイボンさんがどのような探偵観をお持ちか知りませんが
探偵には大きく3つの仕事があります。
捜査・推理・そして適切な場面で真相を説明する『語り』です。
考えるだけが探偵じゃありません。
話に聞くとアイボンさんは安楽椅子探偵。つまり捜査もなにもせずに
ただ真相を見抜く力に長けているだけのようですが、
それでは実際の探偵はつとまりません」
「だから……私はののが出したクイズにしょうがなくつきあってるだけなんだって。
別に探偵じゃ……」
そこで私は口を噤んだ。
舞ちゃんが既に泣く準備をはじめていたのだ。
やばいやばい。この嘘泣き名人に泣きつかれてはたまったもんじゃない。
- 290 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:37
- 「いいやなんでもない。で、推理を聞かせてよ」
「わかりました。普段は何も貼っていない壁に画鋲の跡があるということは
この家の事情をあまり知らない人間が画鋲で何かを貼ろうとしたということです」
「知らない人?」
合いの手は亀ちゃん。
「それって……」
「もちろん愛理ちゃんのことです。
愛理ちゃんはヒントの書いた紙をこの壁に画鋲でとめようとしました。
しかし、この家では壁に画鋲でものを貼る習慣がない。
愛理ちゃんは家の人に注意されてしかたなくセロテープで紙をとめることにしたんです。
でもテープの貼り方がまずかったのでしょう。紙は落っこちてしまったのです。
その、電話ラックの後ろに」
- 291 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:37
- 捜査担当の雅ちゃんが歩いていく。
電話ラックの後ろに手を伸ばして
「あった!」
1枚の紙を拾い上げた。
「ほう……」
「ね!加護ちゃん。このコたちすごいでしょ!」
亀ちゃんがむっちゃ楽しそうにそう言った。
なるほど、その能力……なかなか侮れない。
こりゃ本腰入れて推理といきましょうか。
雅ちゃんは紙を桃子ちゃんに渡した。
桃子ちゃんは一瞥して、
私に紙を見せた。
- 292 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:37
-
+++++++++++++++
勳麗四季
↓▽↑<●#↓⇔◆←<↓ ◇⇔*→●→<▽↓
>←<←>↓▽#↑<☆↑
←△△↑←<↓ *↓⇔△↑↓
▽⇔△←↑▽↑▽▽→ >←▲←
>↑←▽#↑<<↓ ↓☆→#↑<↓
▽⇔△⇔→<↓ ☆←△←▼↑○←<↓
<↑△↑<← ↑*⇔
+++++++++++++++
- 293 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:38
- な……なんだこりゃ?
B5サイズの紙に鉛筆で書かれた記号の羅列。
記号は丁寧に書かれていて整っている。
愛理ちゃんとやらは字が上手なようだ。
これってやっぱり……あれですか。
「アイボンさん、今日の対戦メニューは暗号読解です」
桃子ちゃんが私を見た。
暗号読解……。
ののから名探偵と評される私にも得手不得手がある。
暗号は、正直言って苦手分野だった。
にんじん以上に苦手だったりする。
しかも……
紙を手にしてから
桃子ちゃんの目つきが
オーラを放ちそうなほど鋭くなった。
このコの推理。どのくらいすごいのだろう。
- 294 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:39
- しかし……
「よ……よし!勝負だ!」
気迫で負けてはならない。
大きな声で言った。
かくして私、加護亜依VSキッズ探偵団の推理合戦はスタートした。
- 295 名前:―茉麻ちゃんの講義です― 投稿日:2004/07/29(木) 22:39
- 親愛なる読者様へ
愛理ちゃんの言語知識は標準的な日本の小学校4年生の常識の範囲内であり、一般の小学4年生と同等であります。従って考慮すべき言語は限られています。
尚、亜依の言語知識はリアリティを無視しかねないほど豊富です。
以上を踏まえていただければ暗号は読解可能なはずです。
さてさて……
- 296 名前:いこーる 投稿日:2004/07/29(木) 22:39
- 以上です。
- 297 名前:いこーる 投稿日:2004/07/29(木) 22:40
- >>277 めかり様
どうもありがとうございます!
レスいただけると本当嬉しいです。
勝負の行方をお楽しみいただけたら幸いです。
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 14:04
- うげー難しい
毎回、解けずに苦労していますが、今回も...
- 299 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:13
- 私たちは玄関から動こうともせず
愛理ちゃんが残したという暗号文に向き合っていた。
暗号読解か……。苦手分野だ。
っていうかこれ、まじ難しいぞ……
考えの取っ掛かりが何もつかめない。
暗号読解探偵の祖、ウィリアム・ルグラン曰く
「私が最初に執るべき手段は、
一番多く出てくる字と、
一番少ししか出てこない字を
突き止めることであった」
ということで
ここは定石どおりに進めていこう。
「舞ちゃん、書くもの貸して」
- 300 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:13
- それぞれの字の出現回数は以下の通り。
↑=14
↓=13
←=13
<=13
▽=9
⇔=7
△=7
→=5
>=4
#=4
*=3
☆=3
●=2
○=1
▲=1
▼=1
◆=1
◇=1
記号は18種類
- 301 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:14
- ルグラン先生によれば英語の場合、字によって使用頻度にはかなりのばらつきがあるらしい。
一番使う字は「e」
それから
「aoidhnrstuycfglmwbkpqxz」
という順になるという。
しかしこれ……英語じゃないよなぁ……
英語やスペイン語だと私はお手上げだ。
ではこれが日本語であった場合はどうだろう。
日本語50音。小さい文字や濁点までいれると
かな表記に必要な文字は50ではすまない。
しかし記号はたったの18種類しかない。
つまり
これは仮名ではない。
そういうことになる。
- 302 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:14
- 「18……18……18……」
「加護ちゃんてまだ16じゃなかった?」
年の話じゃないです亀ちゃん……
18……18……
「あ!ひょっとして」
日本語の母音が「aiueo」5種。
子音が「kgsztdnhbpmyrw」14種。
合計19種類!
1つくらい使わない文字があってもおかしくはないだろう。
これはローマ字だ。
- 303 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:14
- 次に使用頻度を見る。
↑=14
↓=13
←=13
矢印系の文字がやたらと登場している。
↑
←
→
↓
⇔
矢印はちょうど5種類。
つまり
矢印は母音
そういうことになる。
オーケー。ここまでは簡単。
- 304 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:15
- だが、ここからが難しい。
ローマ字表記だとすると、その様式がわからないのだ。
日本語のローマ字表記には、ヘボン式と訓令式の2種類がある。
ヘボン式は英語話者が発音しやすいように「シ」を「shi」と書いたり
「チ」を「chi」と書いたり「ツ」を「tsu」と書いたりする。
一方訓令式は、母音と子音の関係が規則正しい。
サ行の表記は「sa・si・su・se・so」だし
タ行の表記は「ta・ti・tu・te・to」となる。
このどちらの様式で書かれているかがわからなければ、
ここから考察が進まなくなってしまう。
のっけから行き詰まりか……
「亀井さん、亀井さん」
「なぁに桃ちゃん」
「この漢字、何て読むんですか?」
桃子ちゃんが暗号文の上に書いてある漢字を指差した。
「勳麗四季」と書いてある。
「なんだろう。クンレイシキ、であってるのかな?」
「ありがとうございます」
クンレイシキ……訓令式!
この漢字は暗号を訓令式で読みなさいというヒントだったのだ。
これがわかればどこかに取っ掛かりがあるはずだ。
私は暗号を睨んだ。
どこからか時計の針の音が聞こえてきた。
- 305 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:16
- 訓令式ローマ字表記一覧
ア a イ i ウ u エ e オ o
カ ka キ ki ク ku ケ ke コ ko ガ ga ギ gi グ gu ゲ ge ゴ go
サ sa シ si ス su セ se ソ so ザ za ジ zi ズ zu ゼ ze ゾ zo
タ ta チ ti ツ tu テ te ト to ダ da ヂ zi ヅ zu デ de ド do
ナ na ニ ni ヌ nu ネ ne ノ no
ハ ha ヒ hi フ hu ヘ he ホ ho バ ba ビ bi ブ bu ベ be ボ bo
マ ma ミ mi ム mu メ me モ mo パ pa ピ pi プ pu ペ pe ポ po
ヤ ya ユ yu ヨ yo
ラ ra リ ri ル ru レ re ロ ro
ワ wa ヲ o
ン n
キャ kya キュ kyu キョ kyo
シャ sya シュ syu ショ syo
チャ tya チュ tyu チョ tyo
ヒャ hya ヒュ hyu ヒョ hyo
リャ rya リュ ryu リョ ryo
ギャ gya ギュ gyu ギョ gyo
ジャ zya ジュ zyu ジョ zyo
ヂャ zya ヂュ zyu ヂョ zyo
ニャ nya ニュ nyu ニョ nyo
ビャ bya ビュ byu ビョ byo
ピャ pya ピュ pyu ピョ pyo
ミャ mya ミュ myu ミョ myo
- 306 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:16
- まず目を引くのが子音の重なっている箇所だ。
一行目に「<●#」とある部分は矢印を含まない3文字だから
子音が3つ並んでいることになる。
訓令式では基本的に子音が3つ連続することはない、
ただし、「ん」を書くときは「n」1文字だからその後ろに
拗音「シャ・シュ・ショ」などが続けば子音は3つ並ぶ。
「感謝」=「kansya」 (nsy)
というふうに。
つまり3重子音の最初の1文字は「n」ということになる。
「<」=「n」
ついでに訓令式での拗音は「子音+y+母音」である。
だから「●#↓」の部分の「#」は「y」である。
「#」=「y」
よし、少しずつわかってきたぞ……。
- 307 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:16
- 「ねぇ」
「なんですかアイボンさん」
桃子ちゃんは暗号から目を離さずに言う。
「愛理ちゃんってのは何年生?」
「4年生です」
小学4年生が1人でこの暗号を考えたというのか。
愛理ちゃんというコはどういう頭をしているのだろう。
そのとき、私の電話がなった。
「もしもし?」
「あいぼん、今どこ?」
「のの?ちょっと今大変なんだって、こっち来てよ」
私は自分の居場所をののに説明して電話を切った。
私は再び暗号へと向かう。
しかし
そこで再び詰まってしまった。
全然考えが進まない。
私は桃子ちゃんを見る。
桃子ちゃんは暗号に集中。
このコはどこまでわかっているのか。
- 308 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:17
- 「ねぇねぇ」
亀ちゃんが桃ちゃんをツンツンする。
「この暗号さぁ、途中でスペースが空いてるけどこれは何?」
桃子ちゃんは顔もあげずに
「それは分かち書きです」
といった。
このコ……。
明らかに私より先まで読めている。
ローマ字だから当然分かち書きをするだろう。
漢字も使わずに文をずらずら書いていくと切れ目がわからないから読みづらい。
だからローマ字文では文節と文節の間をスペースを空けて書く。
まずい……。
今のは私が桃子ちゃんからヒントをもらったようなものだ。
そこまで余裕なのかこのコは。
- 309 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:17
- 落ち着け。
文節ごとの分かち書きということは、
各文節の最後のひらがなは「てにをは」つまり格助詞などだということ。
「てにをは」などのつっくき言葉が入っているはず。
日本語で格助詞とされているのは
「の・が・と・に・を・へ・から・より・で・や」の10種類。
特徴として
ウ段音の文字が1つもない
ということ。
「てにをは」の中には母音が「u」の文字がないのである。
暗号文をみる。
文節の最後、つまりスペースが入る直前だけ見ると、
矢印の中で「⇔」が極端に少ない。
文節の最後は「てにをは」がつくことが多いのだから
「⇔」=「u」
そういうことになる。
- 310 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:17
- ここまでわかっている範囲で一旦書き出してみよう。
↓▽↑n●y↓u◆←n↓ ◇u*→●→n▽↓
>←n←>↓▽y↑n☆↑
←△△↑←n↓ *↓u△↑↓
▽u△←↑▽↑▽▽→ >←▲←
>↑←▽y↑nn↓ ↓☆→y↑n↓
▽u△u→n↓ ☆←△←▼↑○←n↓
n↑△↑n← ↑*u
こう書いても、まださっぱりわからない。
次の手がかりはどこだ……。
- 311 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:18
- 桃子ちゃんの声がする。
「雅ちゃん。ちょっと来て!」
もう読めたのか……。
私は焦って暗号を解きにかかる。
子音「y」の後ろの母音に注目する。
すると「y」の後ろは必ず「↑」か「↓」となっている。
日本語のヤ行は「ヤ・ユ・ヨ」の3種類だけ。
「yi」と「ye」はない。
「⇔」が「u」だともうわかっているのだから
「↑」と「↓」のどちらかが「a」でどちらかが「o」だ。
次に文節の最後の書き方を見る。
「n↓」という書き方が文節の終わりだけ数えて6箇所。
これは「な」と読むか「の」と読むか。
くっつきことばのなかに「な」はない。
- 312 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:18
- くっつきことばのなかに「な」はない。
「○○な ○○な ○○な ……」
これじゃおかしな文だ。
でも
「○○の ○○の ○○の ……」
こういう書き方をしている文ならおかしくない。
つまり
「↓」=「o」
「↑」=「a」
となる。
「雅ちゃん。舞ちゃんの机の引き出しを調べてみて」
「了解」
なんだ……?
どう読める?
何が読めた?
桃子ちゃんには暗号が読めたのか?
- 313 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:18
- 私はもう一度、わかっている範囲で書き出した。
o▽an●you◆←no ◇u*→●→n▽o
>←n←>o▽yan☆a
←△△a←no *ou△ao
▽u△←a▽a▽▽→ >←▲←
>a←▽yanno o☆→yano
▽u△u→no ☆←△←▼a○←no
na△an← a*u
急げ……。
- 314 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:19
- 「a*u」
ここは「aru」、「ある」と読むしかないだろう。
「*」=「r」
すると
「rou△ao」
これは「roukao」、「廊下を」と読める。
「△」=「k」
それなら
「nakan←」
これは「nakani」、つまり「中に」だ。
「←」=「i」
残った母音もこれでわかった。
「→」=「e」
でもって
「▽ukueno」
は「tukueno」、「机の」。
「▽」=「t」
- 315 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:19
- otan●you◆ino ◇ure●ento
>ini>otyan☆a
ikkaino roukao
tukiatatte >i▲i
>aityanno o☆eyano
tukueno ☆iki▼a○ino
nakani aru
「桃ちゃん!こっち来て!!」
……急げ
- 316 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:19
- 「☆iki▼a○ino」
これは「hikidasino」、「引き出しの」。
「☆」=「h」
「▼」=「d」
「○」=「s」
「otan●you◆ino ◇ure●ento」
これは……何だ?
!!
「otanzyoubino purezento」
「お誕生日のプレゼント」
「●」=「z」
「◆」=「b」
「◇」=「p」
残った「>」だがおそらく
「>」=「m」
だろう。
- 317 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:19
- otanzyoubino purezento
minimotyanha
ikkaino roukao
tukiatatte migi
maityanno oheyano
tukueno hikidasino
nakani aru
お誕生日の プレゼント
ミニモちゃんは
一階の 廊下を
突き当たって 右
舞ちゃんの お部屋の
机の 引き出しの
中に ある
暗号が
全貌を
現した。
- 318 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:20
- 私は廊下を走って突き当たりを右折した。
部屋の中には、探偵団の5人がいる。
雅ちゃんは、袋を持っていた。
……。
完敗だった。
「いやぁ、桃子ちゃんすごい!あの暗号よく読めたねぇ」
と私が言う。
心底、感心していた。
「各記号に白と黒があるのに気づいてからは早かったですね」
「え?」
「○と●。◇と◆。それに▽と▼。これがセットだと考えればいいんですよ。
○は「サ行」で●は「ザ行」。▽は「タ行」で▼は「ダ行」ですよね。
つまり黒記号は濁点「゛」を表してる。
◇が「ハ行」で◆が「バ行」だと思っていたんですけど◇は「パ行」だったんですね。
そこだけ引っかかりました」
音声学的には「パ」の有声音が「バ」となる。
日本語の「ハ」は「パ」とも「バ」とも発音の仕方がまるで違う。
だから◇が「p」、◆が「b」という対立は適切なのだ。
- 319 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:20
- それにしても……
「そっかぁ。そうやって考えればよかったのか」
「え?アイボンさん、これ知らないで解いてたんですか?」
いやお恥ずかしい。
ローマ字だからアルファベットでばかり考えていた。
それで濁音、「゛」という観点には気がつかなかったのだ。
「アイボンさんすごいですね。他のルートで解答にたどりつくなんて」
「いや、でも私の負けだよ。桃子ちゃん、キミすごいよ」
桃子ちゃんは、手に持っていたメモを私に見せてくれた。
それを覗き込んだ私は
桃子ちゃんの発想に改めて感服してしまった。
メモにはこんなことが書いてある。
- 320 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:20
- あ
↑
い←う→え
↓
お
○=さ ●=ざ
▽=た ▼=だ
<=な
☆=は
◇=ぱ ◆=ば
>=ま
#=や
*=ら
あ……結構規則正しいのねこの暗号。
どうでもいいけどこの暗号
「W」だけが登場していない。
「W」は用無し。
……畜生。
- 321 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:21
- 「ミニモちゃんーーー」
舞ちゃん手を伸ばしたので雅ちゃんは舞ちゃんに袋を渡した。
茶色い、飾り気の全くない紙袋。
口がホッチキスで止めてある。
舞ちゃんがそれを器用に開けた。
そうして
中を見た。
「え…………?」
舞ちゃんの手から袋が離れた。
ミニモちゃんを入れたまま。
袋は
ゆっくりと落ちていき
パサッ
床に着陸した。
- 322 名前:―愛理ちゃんの暗号を解きます― 投稿日:2004/08/09(月) 10:21
- 「う……うぇぇぇぇぇ」
舞ちゃんの声が
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ。わぁぁぁぁぁぁん」
耳をつんざく。
耳を塞ぎたくなるような悲壮な泣き声だった。
雅ちゃんが駆け寄って袋の中からミニモちゃんを取り出した。
「ひどい……」
「誰がこんなこと……」
全長10p程の
ミニモちゃんのぬいぐるみは
後頭部がばっくりと裂けていて
中からは綿がとび出していた。
- 323 名前:いこーる 投稿日:2004/08/09(月) 10:21
- 以上です
- 324 名前:いこーる 投稿日:2004/08/09(月) 10:23
- >>298
毎回考えていただいているのですね。嬉しいです。
今回のはちょっとやりすぎたかもです;汗
亜依も大変だったかと……
- 325 名前:298 投稿日:2004/08/09(月) 21:54
- 誰がこんなひどい事を!!!
- 326 名前:めかり 投稿日:2004/08/10(火) 02:46
- 更新おつです
おーっと次の事件が・・・
今度は負けるな!
名探偵あいぼん
- 327 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:55
- 愛理ちゃんが隠したという宝物。
ミニモちゃんのぬいぐるみの後頭部を
誰かが破いてしまった。
亀ちゃんがつぶやいた。
「どうして愛理ちゃんがこんなこと……」
「ちょっと待って」
桃子ちゃんが言った。
「雅ちゃん、この袋が愛理ちゃんに渡されるまでの経緯を教えて」
「それなら」
答えたのは雅ちゃんではなく茉麻ちゃんだった。
「私が一通り聞いているから説明するよ」
「そう?じゃあお願い」
そんな伝言ゲームみたいなことで大丈夫だろうかと思ったが、
茉麻ちゃんの説明は言葉が小賢しいのを除けば的確に内容が
伝わりそうだった。
- 328 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:55
- ののとは大違い。
ののは説明が下手だ。
国語の先生から主語が足りないと言われ
数学の先生から論理が足りないと言われ
社会の先生から協調性が足りないと言われ
理科の先生からヘモグロビンが足りないと言われ
体育の先生から気合が足りないと言われる程にひどい。
しかも、無理やりクイズにしようと大事な説明を故意に省いたりする。
おかげで聞いているこっちはもう大変。
それに比べたら茉麻ちゃんの説明は聞きやすいかもしれない。
- 329 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:56
- 「それでは説明をはじめ……」
ピンポーン!!!!
茉麻ちゃんは出鼻をくじかれた。
ピンポピンポピンポーーーーーン!!!!!
玄関まで行ってみると
「やあ、あいぼん!」
ののが立っていた。
「なにがあったの?」
私は一通り状況を説明した後
ののを引っ張って舞ちゃん部屋まで連れて行った。
ののは破れたぬいぐるみを見て
「ひどい……」
言った。
「誰がこんなことを……」
「しーっ、今から茉麻ちゃんに状況を聞くから」
「了解」
- 330 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:56
- 茉麻ちゃんは咳払いをして
話し始めた。
『舞ちゃんは今朝までに宝捜しに使う宝を用意して置くように
桃子ちゃんから言われていました。
ぬいぐるみにしようというのは決まっていたのですが、2つのうち
どちらのぬいぐるみにしようか悩んでいたのです。
舞ちゃんが大切にしているぬいぐるみは2つありました。
1つはミニモちゃんのぬいぐるみ。問題の破かれていたぬいぐるみです。
もう1つは普通の熊のぬいぐるみ。
この2つは形も大きさもよく似ているためどちらを使っても宝捜しには問題ありません。
舞ちゃんはとりあえず2つを両方とも紙袋に入れて置いたんです』
私は手を挙げて質問した。
「その袋ってのがこれ?」
床に落ちたままの袋をさす。
「そうです。その袋は市販のミニモちゃんを買ったときに一緒についてくる袋です。
熊さんの方はやはり買ったときについてきた袋に入れておきました。
どちらもよく似ていますけど……」
- 331 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:57
- 「熊の袋は今はどこにある?」
雅ちゃんが
「私が持ってます」
言った。
「オーケー。続けて」
『学校にいってからも舞ちゃんは考えていました。
それで放課後、雅ちゃんに相談したんです。
雅ちゃんは一緒に舞ちゃんのお部屋まで来ました。
雅ちゃんは
「どっちでもいいじゃん」
と言い、適当に袋を取りました。
袋がよく似ていたので雅ちゃんは何が入っているのかわかっていませんでした。
で、取ったのはミニモちゃんの方ですね。
残された熊のぬいぐるみは雅ちゃんのカバンの中です。
そうして2人で今度は愛理ちゃんのお家へ行きます。
愛理ちゃんの家は舞ちゃんの家の向かいなのですぐなんです。
- 332 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:58
- 愛理ちゃんの家の目の前まで行くと舞ちゃんが
「袋の口を閉じたほうがいいかな?」
と雅ちゃんに聞きました。
「じゃ、ホッチキスでとめよう」
雅ちゃんはカバンからホッチキスを出すと
紙袋の上の方をポスターを巻く要領でクルクル巻いて
真ん中をバチンととめたのです。
そうして愛理ちゃんに袋を渡しました。
そして3人一緒に舞ちゃんの部屋に戻ってきました。
ちょうど3人で部屋に戻ったときに
私と亀井さんが舞ちゃんの家に到着しました。
私が愛理ちゃんに宝捜しの話をすると
愛理ちゃんは
「じゃあ、ヒントを玄関に置いておくから」
と言いました。
- 333 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:58
- そのとき
アイボンさんの家から桃子ちゃんが戻ってきて
私たちも一緒に行くことになったので
愛理ちゃんを残して私たちはアイボンさんの部屋に
出かけていったわけです』
それで、その後は
私が目撃した通りというわけか。
了解。
「あいぼんに問題です!」
「のの?」
ののがいきなり話しだした。
「ミニモちゃんを傷つけた犯人は誰でしょう?」
「のの!遊んでる場合じゃない!!」
「むぅ……」
- 334 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:58
- 「その前に」
と言った雅ちゃん。
「現場検証をします」
捜査担当の雅ちゃんが立ち上がった。
「これがガイシャですね……」
「外車?」
「のの!黙ってて。被害者のことだよ!」
雅ちゃんはミニモちゃんのぬいぐるみを
丹念に
ただし無駄なくてきぱきと
観察する。
「ほつれた糸が、首の付け根あたりからだらんと伸びてます。
本来はこの糸がミニモちゃんの後頭部をつないでいたんですね。
針の穴に縫い直した形跡はなし。
それにしてもこれ、綿つめすぎですね。
破れたところからわんさか飛び出してます」
雅ちゃんは信じられないくらい早口ですらすらと状況を報告する。
- 335 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:58
- 「ねぇねぇ」
しゃべり出したのは亀ちゃん。
「状況を聞いているとやっぱり怪しいのは愛理ちゃんじゃない?」
「どうして?」
「袋は、舞ちゃん→雅ちゃん→愛理ちゃんという順番で渡されている。
で雅ちゃんに渡すまでは舞ちゃんが持っていたわけだし、その後は
ずっと雅ちゃんが袋を持っていたことになるよね」
「待って」
ののが口を挟む。
「舞ちゃんが学校に行ってる間は?
その間にぬいぐるみを持ち出すってのは……」
「だめだのの」
「なんでよあいぼん!」
「ミニモちゃんぬいぐるみを使うと決まったのは
学校が終わって雅ちゃんが来てからなんでしょ?
そうだよね雅ちゃん」
雅ちゃんはうなずく。
- 336 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:59
- 「私はどっちでもよかったし、中身は確認しませんでした。
さっき暗号読解が終わってようやく袋の中を見たんです」
「ほらねのの。宝探しに使うぬいぐるみは直前に決まった。
あらかじめ持ち出してなにかするなんて意味がない」
「じゃあ、もう一つの熊のぬいぐるみも被害にあってるかも」
ののはとんでもないことを言い出す。
雅ちゃんは慌てて鞄の中から袋をとりだした。
「この袋が、熊のぬいぐるみの入った袋?」
「そうです」
雅ちゃんは袋を開けて見せてくれた。
茉麻ちゃんの言うとおり、
ミニモちゃんと形も大きさもよく似たぬいぐるみだった。
「よかった、こっちは無事みたい」
ぬいぐるみに不審な点はなし。
「となると……」
「愛理ちゃんが袋を受け取った後しか、犯行の機会がないことになるね」
と、亀ちゃんはまとめた。
- 337 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 10:59
- 「あるいは……」
「のの?」
「はじめからミニモちゃんがターゲットだったか……」
「え?」
「だから、宝探しの邪魔をしようとしてぬいぐるみを壊したんじゃなくてさ、
最初からミニモちゃんだけを狙っていたんなら、
雅ちゃんが来る前に犯行可能なわけで」
「無理だと思います」
そう言ったのは桃子ちゃんだった。
「舞ちゃんのいない間に、
舞ちゃんの部屋に入るなんてできるわけないじゃないですか。
家の人に怒られちゃいますよ」
「そっか、さっきまではずっと家の人がいたんだもんね」
「家の人の目を盗んで入るってのは」
「あの狭い玄関でそんなことができると思いますか?
しかも舞ちゃんの部屋は廊下の奥ですよ」
「それに……」
「あいぼん?」
「そんな不法侵入みたいなことしてぬいぐるみを壊すなんて
いたずらにしてはやりすぎだ。
単にいたずらしたいだけならそんな危険な方法をとらなくてもいい」
「むぅ」
つまり
舞ちゃんと雅ちゃんが来る前の犯行は不可能
そういうことになる。
- 338 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 11:00
- でも
その後はずっと雅ちゃんが袋を持っていたわけだから
他の人が袋を触ることなんてできない。
「やっぱり愛理ちゃんが……」
「ちょっといいですか?」
雅ちゃんが袋を凝視しながら言った。
「その……袋なんですが、ホッチキスの跡が一箇所あるだけで
不審な点はありません。針を1回抜いてとめなおした形跡もありません」
「は?」
雅ちゃんは愛理ちゃんに袋を渡す前にホッチキスで口をとめた。
そう、茉麻ちゃんが言っていた。
「雅ちゃんは愛理ちゃんに袋を渡す前にホッチキスをとめました」
桃子ちゃんが言う。
「つまり愛理ちゃんには袋を開けることはできなかった」
「そうだね。そういうことになる」
- 339 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 11:00
- 「ふふふ……」
みると、ののが楽しそうに笑っている。
「困ったねあいぼん。不可能状況だ。
雅ちゃんが来る前には犯行不可能。
雅ちゃんが渡してからも犯行不可能。
さて問題です!犯人は一体だれ?」
「不可能じゃありません。答えはわかってます」
桃子ちゃんがそう言った。
「桃ちゃん?」
すっと
茉麻ちゃんが桃子ちゃんのもとに歩いていった。
桃子ちゃんはまた、なにかを耳打ちする。
うんうんとうなづく茉麻ちゃん。
- 340 名前:―事件の状況を整理します― 投稿日:2004/08/14(土) 11:00
- どうやら
推理がまとまったらしい。
桃子ちゃんの思考が
茉麻ちゃんへ送信されていく。
「わかった」
茉麻ちゃんが言う。
送信が完了したようだ。
あとは
発表されるのを待つのみ。
次回更新時、桃子ちゃんの推理を披露。
しばしお待ちあれ。
- 341 名前:いこーる 投稿日:2004/08/14(土) 11:00
- 以上です。
- 342 名前:いこーる 投稿日:2004/08/14(土) 11:02
- >>325
どうも、新事件でございます。
私、フーダニット(犯人当て)小説ってむっちゃ苦手なんですが
形になるといいなぁ
>>326
いつも応援ありがとうございます。
あいぼん活躍の場はあるのか。
ご期待くださいませ。
- 343 名前:298 投稿日:2004/08/14(土) 15:35
- ..ぬいぐるみをなおしてあげてください
- 344 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:28
- 茉麻ちゃんが桃子ちゃんの推理を語る。
「桃ちゃんが暗号を解いて雅ちゃんが引き出しから袋を取り出したとき
袋はホッチキスでとまったままでした」
皆がうなづく。
「だから愛理ちゃんがミニモちゃんの後頭部を切り裂くことはできない。
そして、雅ちゃんが来る以前にぬいぐるみを切ることのできた人物もいない。
つまり袋が閉じられる前にミニモちゃんを破ることができたのは
雅ちゃんしかいない。
これが結論です」
「え?」
雅ちゃんは驚いた表情で立ち尽くしている。
手が、わずかに震えていた。
- 345 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:28
- 「ちょっと待って……私は舞ちゃんとずっと一緒にいたよ。
気づかれずにミニモちゃんを破ることなんてできない!」
「確かに袋を手にしてから雅ちゃんは舞ちゃんとずっと一緒にいた。
でも、舞ちゃんは常にその袋を見張っていたわけではない。
口をホッチキスでとめたのは愛理ちゃんに袋を渡す直前。
それまでになら、ミニモちゃんを取り出して傷つけることができた」
「でも……」
雅ちゃんは必死で反論する。
「いくらなんでも袋を開けてぬいぐるみを切ったりしたら
気がつくんじゃない?ねぇ舞ちゃん」
「……」
「舞ちゃん?」
舞ちゃんは、
無言で雅ちゃんを見上げている。
気がつくと
キッズたちの間に距離ができていた。
雅ちゃん1人に向かい合う桃子ちゃん、茉麻ちゃん、舞ちゃんの3人。
- 346 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:29
- 「私が舞ちゃんの目を盗んで袋を開ける機会なんてなかった!」
「あったんだよ!」
茉麻ちゃんが一際大きな声で言った。
沈黙。
キッズは3対1だった。
亀ちゃんは、
黙ったまま両者の中点をとるような位置で立っている。
引率担当はどちらにも加担していない。
私は、ものすごく居心地が悪くなった。
舞ちゃんのぬいぐるみが壊れた。
壊れたものは仕方がない。
それなのにこの子どもたちは
何をごちゃごちゃと話しているのだ。
そんなことは些細な問題なのに……。
- 347 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:29
- 「……いつ?」
「この家の玄関は狭い。2人で横に並ぶことができないくらい狭い。
それを上手く使えば、舞ちゃんに気づかれずにミニモちゃんを切ることが
できます」
「どうやって?」
「あの狭い玄関を出るときにはどうしたって縦1列にならなきゃいけないでしょう。
縦に並んでいるときなら、
後ろにいる人が何をしているのか見ることはできない。
だから舞ちゃんは雅ちゃんがミニモちゃんを切ったのに気がつかなかった」
「そんな……」
雅ちゃんは
目に涙を浮かべている。
私は
気分が悪くなった。
この子たちにとって、舞ちゃんの苦しみは
探偵ごっこの材料でしかないのか。
純粋な子どもだからこそ持っている
身勝手さ、
残酷さ。
どうして私はここにいるんだろう。
こんなところに来たくなかったのに。
- 348 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:29
- 「確かに……確かに私は舞ちゃんの後で玄関を通ったよ。
でもどっちが先に通るかなんて予想できないじゃん。
ミニモちゃんを切る準備なんてできないじゃん!」
「歩く速度を上手く調節すれば、舞ちゃんが先に行くように
誘導することはできるでしょう。
それに仮に前に立っちゃっても大丈夫だったはず。
だって
後ろに立った舞ちゃんの目線からは雅ちゃんの背中しか見えないんだから。
どっちにしたって舞ちゃんの目を盗んでミニモちゃんを切るチャンスはあった」
時間が止まったような沈黙が訪れた。
時計の音だけが響いてくる。
亀ちゃんが
何かを言いたそうに口を開いたが
すぐに閉じた。
彼女としてはこの場をなんとかしたかったに違いない。
だが、亀ちゃんは
雅ちゃんをどうかばったらいいかわからないでいる。
嫌な場面だ……。
子どもの喧嘩なんて立ち会うもんじゃない。
もう、
帰ろうか……。
- 349 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:30
- そう思ったとき
「問題です!!」
ののが叫んだ。
「のの!それどころじゃ……」
「雅ちゃんが犯人だとしたら、動機はなんですか?」
「え?」
全員の目が、ののに集まる。
「キミたち探偵なんでしょう?
探偵さんならちゃんと動機も説明してくれなきゃダメだよ。
動機もわからないのに友達を疑ったりして、最低だね!」
「のの……」
「あいぼん!なんでさっきから黙ってるの?
ちゃんと犯人を考えてあげなよ!!」
ののが怒鳴った。
「……」
- 350 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:30
- 違うんだのの。
私は……このコたちと違って絶対に探偵になれやしないんだ。
だって私は、
謎解きなんて大嫌いだから。
真相を知って、
人間関係に溝ができて
誰も得をしない。
この世の中には解かない方がいい謎がいっぱいあるんだ。
「私は……探偵なんかじゃない……」
「あいぼん?」
今の私は
何から考えていいのかさっぱりわからない。
今日は絶不調だ。
茉麻ちゃんから状況を聞いても
説得力のある筋書きが浮かんでこない。
- 351 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:30
- でもわかってる。
このままじゃいけない。
このままこのコたちの関係がギクシャクしたままで放っておいていいはずがない。
私は……
どうすればいい?
「あいぼんに問題です」
「?」
「犯人が誰であっても考えなきゃいけないことです。
なぜ犯人は、ぬいぐるみを破る必要があったのか?
それを考えたらいい」
- 352 名前:―桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/08/20(金) 21:31
- のの。
キミはひょっとして私を助けてくれているの?
「……」
よし。
ののがそう言うのなら
私の出番だ。
キッズたちの仲直りを手伝ってあげよう。
私は、子どもたちを見回す。
「まず、今の推理は間違いです」
「え?」
次回に続く。
- 353 名前:いこーる 投稿日:2004/08/20(金) 21:31
- 以上です。
- 354 名前:いこーる 投稿日:2004/08/20(金) 21:32
- >>343 298様
はい、綿が出まくっていて
簡単には縫い直せないんです;汗
しばしお待ちを……
- 355 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:36
- 「桃子ちゃん。残念だけど今回のキミの推理は間違ってる」
桃子ちゃんは
私を見たまま動かない。
「どこが違うんですか?
雅ちゃんになら犯行のチャンスがあった。
確かに動機はわかっていませんけど……」
「動機の話はひとまず置いたとしてもだ……」
「?」
「やっぱり雅ちゃんに今回の犯行は不可能なんだよ」
私は雅ちゃんを見た。
「雅ちゃん、泣かなくてもいいよ。
私は君がやったんじゃないってわかってる」
- 356 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:36
- 「私の推理のどこが違うって言うんですか?」
「いい?桃子ちゃん。ぬいぐるみを切り裂いたってことは
何か刃物を使ったってことだよね?」
「……そう、ですね」
「確かに、舞ちゃんの死角をついて袋を開けるチャンスはあった。
でもぬいぐるみを切るための凶器がないと、犯行は成立しない」
「だから……多分、持っていたんじゃないですか?
ハサミなりカッターなり」
「んで、その凶器をどこへやったの?」
桃子ちゃんは
「……」
反論できない。
「いい?例えばカッターを持っていれば
人から見られないようにぬいぐるみを切ることができる。
でも、誰にも気づかれずにカッターを捨てるとなると
これは無理なんじゃないかな。
ぬいぐるみを持って愛理ちゃんを呼びに行った後は、
雅ちゃんもずっと誰かと一緒にいた。
みんなの目を盗んでカッターをどこかに捨てることなんてできないよ。
ゴミ箱にいれても道に捨てても音がしちゃう」
- 357 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:37
- 「でも……」
桃子ちゃん反論を再開させた。
「ハンカチなどに包んで捨てれば音はしない」
「ハンカチ落として……一緒にいた君たちが誰も気がつかなかったって言うの?」
「その……可能性はゼロではありません」
「だとするとここから私の家まで来る間に捨てたってことになるけど……」
「どうしてですか?アイボンさんのところからここに戻ってくる間にも
チャンスはあったんじゃないですか?」
「それはダメだ」
私はみんなを見回した。
私を注目している。
「あのとき雅ちゃんは、私と茉麻ちゃんよりも前を歩いていたんだ。
そこでハンカチをわざと落としたりしたら私か茉麻ちゃんが気づく」
「確かに……そうですね。ならアイボンさんの家に行く途中で……」
「そのときは亀ちゃんが一番後ろにいたんじゃないの?
私の家に来たときは君たち縦1列に並んでたじゃない」
「……確かに」
- 358 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:37
- 「ね?雅ちゃんには凶器を捨てる機会なんてないんだよ」
「ねぇあいぼん……」
ののが私をツンツンする。
「今もまだ、凶器を持ってるってことはない?」
「……」
みんなが雅ちゃんを見る。
「雅ちゃん」
亀ちゃんが言った。
「カバンの中……見せてくれる?」
「はい」
雅ちゃんのカバンをチェック。
ホッチキスやら定規やらが入ったペンケースとマンガ本一冊。
ハンカチ。
それから、例の熊の茶色い袋。
肝心の凶器は、
どこにもなかった。
- 359 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:37
- 念のためポケットの中身も見せてもらったが
ぬいぐるみを切り裂くことのできそうなものは一切出てこなかった。
「アイボンさん」
「何?桃子ちゃん」
「捨てても気づかないようなものが凶器だとしたらどうですか?
小さくて目立たないカミソリの刃とか、カッターの刃だけとか」
「そんなもの普通持ち歩かないでしょう?
雅ちゃんは舞ちゃんの部屋に来てはじめて
ミニモちゃんを宝捜しに使うことを知ったんだよ?
というかそれはギリギリまで決まってなかったんだ。
あらかじめそんな不穏な凶器を用意しておくわけがないじゃない」
「そっか……」
私は一呼吸置いて話を再開する。
「それからののが言っていた動機だね。
人のぬいぐるみを壊さなきゃいけないような動機ってなんだろう。
私には……残念だけど思いつかない。
単なるいたずらかも知れない」
- 360 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:38
- 「のんは、余計なことした?」
「うんにゃ……、ののがああ言ってくれたおかげで考えがまとまったよ。
人のぬいぐるみを破る理由がわからない。
でも、私には今回の事件の動機ならわかるかもしれない」
「え?」
亀ちゃんが、不安そうに私を見た。
「動機があって、なおかつ
袋が閉じられる前にミニモちゃんを破ることのできた人物」
私は
その人物の前まで歩いていって
しゃがみこんだ。
「君にならそのチャンスがあったよね?舞ちゃん」
- 361 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:38
- 「へ?」
大きな目が私を見据えた。
「私が?」
私はうなづく。
「加護ちゃん!」
亀ちゃんが大きな声で聞く。
「なんで舞ちゃんが?」
「舞ちゃんなら、雅ちゃんに袋を渡す前に
いくらでもぬいぐるみを切り裂くことができた。
朝のうちに切っておくこともできるし
ひょっとしたら前の晩にもう切っていたのかも」
「……」
亀ちゃんは答えない。
私の言ったことを考えているのかもしれない。
「……確かに……そうかもしれないけど。
自分でやったのならなんでぬいぐるみを発見したときに泣いたりしたの?」
「この子は嘘泣き名人。
自分が犯人だと悟られないために泣くくらいわけないでしょう」
- 362 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:38
- 「あいぼん、動機は何?」
「そう……そうだよ加護ちゃん。
なんで舞ちゃんがお気に入りのぬいぐるみを破いたりするの?」
「そこなんだけどね。
舞ちゃん……君は本当にミニモちゃんが好きだったの?」
「何言ってるの?加護ちゃん。そんなの決まって……」
「決まってるってどうしてわかるの?
子どもの気持ちが全部わかることなんてないよ。
せっかくお誕生日にもらったプレゼント。
周りの大人はみんな舞ちゃんがこのぬいぐるみを大切にすると信じて疑わない。
本人がどう思っているかなんて考えない。
私もそうだったから言うけど、察しのいい子どもならわかるよ。
自分がプレゼントを大事にすることで
周りの大人が喜ぶだろうってことくらい……。
だから子どもは、ぬいぐるみが大切なふりをする。
でも、いつかそれが邪魔になるんだよね。
新しいぬいぐるみが欲しくなっておねだりをすると言われるんだ。
『前に買ってあげたのがあるでしょう』
って。
前にもらったのはそんなにお気に入りじゃないのに、
みんなが喜べ喜べって期待するからしかたなく大事にしていただけなのに、
そのせいで本当に欲しい物は買ってもらえない。
なら……壊してしまえばいい」
- 363 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:39
- 子どもだからこそ知っている苦労。
大人がよかれと思ってやったことをむげにできずに
我慢をしなくてはならない。
「ただ、わざと壊したんじゃダメだ。
怒られて終了になっちゃう。
だから
犯人が誰かわからない状況でぬいぐるみを破る必要があった。
それで今回の宝捜しが選ばれたってわけ。
これが私の考えた動機です」
子どもたちは、
舞ちゃんのもとに集まってきた。
さっきまで彼女たちを隔てていた溝は
解消されたようだった。
後のことは、
自分たちでなんとかするだろう。
私の出番は終わり。
- 364 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:39
- 「これにて一件落着かなぁ……」
「あいぼん?」
「ほれ、見てみ。みんなが舞ちゃんを気遣ってる。
私はさ、このコたちのチームワークすごいと思ったよ。
だから仲間割れなんてしてほしくない。
ずっと仲良くしていてほしいって思ったんだ。
そうじゃなかったらこんな面倒な推理はお断りしてましたよ」
私は伸びをした。
「あー、子どもと遊ぶのはいいけど
このコたちはちょっと疲れるねぇ」
私はスタスタと部屋を出て行く。
「ちょ……ちょっとあいぼん!
事件は結末まで見届けないと」
私は
「結末?」
ののに振り返った。
- 365 名前:―亜依の推理です― 投稿日:2004/08/27(金) 11:39
- 「私は事件なんてあんまり興味ないんだよ。
たださ、子どもたちが仲間同士で疑い合うなんて見てられないじゃない。
だから他の可能性もあるよって提示しただけで、
真相を知りたいと思ったわけじゃないの」
「……」
正しい探偵のありかたなんて知らない。
キッズたちの憧れの探偵アイボンさんは面倒くさがりのダメ人間です。
でも……
子どもたち。
大人になって知恵をつけて、
いろんな能力をいっぱいいっぱいつけたらさ。
優しさを忘れちゃいないかどうかを確認してほしいな。
「のの、帰ろう!」
お姉さんはそう思います。
- 366 名前:いこーる 投稿日:2004/08/27(金) 11:40
- 以上です
- 367 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:38
- 「アイボンさん!」
せっかくカッコよく決めて立ち去ろうとした私を桃子ちゃんが呼び止める。
下手ハケ失敗……。
「私の推理……聞いてもらえませんか?」
「推理?」
「さっきの私の推理は間違っていました。
雅ちゃんが刃物でぬいぐるみを切り裂いたんじゃない……」
桃子ちゃんは一瞬下を向く。
そうして、
私を見た。
「私は、さっきあることに気がつきました。
それで私の推理が完全に間違っているとわかったんです。
そして、アイボンさんの推理も間違っていると」
「え?」
私の推理ミスに、
桃子ちゃんはもう気がついたのか。
- 368 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:39
- 「アイボンさん、わざと間違えましたね!
舞ちゃんがやったのなら誰も責めない。
喧嘩にならない。
私たちを仲直りさせるためにアイボンさんは嘘の推理をした!」
私は、
小さくうなづいた。
「でも、それで濡れ衣を着せられた舞ちゃんはどうなるんですか?」
「そのうち……キミが気づくだろ?桃子ちゃん。
桃子ちゃんの推理は超すごい。
桃子ちゃんなら舞ちゃんの無実を証明できるはずだ。
冷静になれればね。
雅ちゃんを疑っていた桃子ちゃんはとても冷静じゃなかった。
そんなんじゃダメなんだよ。
私が部屋から出て行ってから、桃子ちゃんは真剣に考えたはずだ。
舞ちゃんの無実をなんとか証明しようって。
雅ちゃんを落としこもうとしていたときの推理を捨てて
本気で謎と取り組むことができたんじゃない?」
そう、
私は子どもの喧嘩を、
子どもたちの手で解決してほしいと思った。
- 369 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:39
- 「アイボンさんは……」
桃子ちゃんは、
意外なくらい低い声で
囁くように、
私を打ちのめす一言を放った。
「お節介ですね」
私は
立ち尽くす。
私がお節介?
「確かにアイボンさんは私たちのことを思って
ああいうことをしたんでしょう。
でも、言いたいことだけいって
優しさを見せるだけ見せて、
あとは知らん顔なんて無責任すぎる!」
「……」
「お願いです。私の推理を聞いてください」
ののが、私の袖を引っ張る。
「あいぼん。お節介ついでにもうひと親切だよ。
聞いてあげよう」
「……わかったよ。ごめん」
私はののに引かれて部屋へと戻っていった。
- 370 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:40
- キッズ探偵団の5人。
新しい推理はやはり茉麻ちゃんの口から語られる。
「さきほどの桃子ちゃんの推理は間違いでした。
それから、アイボンさんの推理も間違いです。
それは、糸の問題です」
「糸?」
「そうです。ミニモちゃんのぬいぐるみの後頭部を縫った糸は
ほつれて、だらんと伸びていました」
確かに、雅ちゃんがそう言っていた。
「刃物で後頭部を切ったのだとしたらこうはならないはずです」
カッターで切り裂くなら、
縫ってある糸は複数箇所切れる。
- 371 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:40
- 「刃物で切ったのなら糸はもっとブチブチに切れているはず。
そうではなくて、糸は一箇所だけが切れてほどけてしまっていた。
つまり
糸は自然にほつれていったのです。
ミニモちゃんぬいぐるみは綿が必要以上に詰め込まれていました。
なにかのきっかけで糸の一箇所がプツンと切れる。
すると中の綿が、糸の切れた部分に無理な力を加えて
糸はするするとほどけていったのです。
誰かが故意にこんなことをするはずがない。
後頭部を切り裂くつもりなら一気に切ればいいんです。
わざわざ一箇所だけ切り離してあとは自然にほどけるのを待つなんて
効率の悪いことを犯人がするはずないんです」
茉麻ちゃんはここで一呼吸。
その場の全員が、今の説明を理解するのを待つ。
語り担当は聞き手を納得させる術を完璧に心得ていた。
「つまり……」
亀ちゃんが聞く。
「これは、事故だったってこと?」
- 372 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:40
- 「そうです。きっかけはなんだっていい。
もともと糸が弱っていたんでしょう。
雅ちゃんが運ぶ時にどこかにぶつけてその衝撃で糸がほつれたのかもしれない。
愛理ちゃんが引き出しに隠す前に、どこか狭いところに隠そうとして
無理な力がかかったのかもしれない。
直接の原因はわかりません」
茉麻ちゃんは最後の言葉を放った。
「この事件に犯人なんて最初からいなかったんです」
- 373 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:41
- 私とののと亀ちゃんは一緒に舞ちゃんの家から出た。
外はもう薄暗くなっていた。
「いやぁ、私の完敗だわ。亀ちゃん、あのコたちすごいね」
私たちは歩き出す。
風邪がちょっぴり冷たい。
「アイボンさん!ノノさん!」
後ろから声がしたので振り返ると
キッズたちが4人、横一列に並んでいる。
「今日は遊んでくれて、ありがとうございましたー!」
桃子ちゃんの声を合図に
「ありがとうございましたー」
一斉に深々とお辞儀をした。
- 374 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:41
- 「おう、またねー!」
私たちは大きく手を振る。
子どもたちは舞ちゃんの家へと戻っていった。
「礼儀正しい子たちやねぇ」
「あのコたち……」
亀ちゃんがつぶやく。
「結局全部、自分たちで解決させたね」
「うん」
「私はもう、必要ないかなぁ」
「何を言う、引率担当。
亀ちゃんだって立派に役割を果たしてるじゃない」
「え?」
といっても私も上手く説明できない。
「いや、気づいてないんならいいけどね。
あの子たちには亀ちゃんが必要だよ」
「そうかなぁ……」
- 375 名前:―再び桃子ちゃんの推理です― 投稿日:2004/09/03(金) 21:41
- 空気だ。
そう思った。
亀ちゃんの気の抜けたしゃべり方が
探偵団のテンポを上手く和ませている。
なんにでも一生懸命なあの子たちには
こういうふんわりさんが必要なんだろう。
「それにしても……」
「ん?」
「子どもというのも、なかなか侮れないのれす」
「あいぼん……似てないよ」
キッズ恐るべし。
将来は私たちのよきライバルになっているかもしれない。
そんなことを思った。
- 376 名前:いこーる 投稿日:2004/09/03(金) 21:42
- 以上です。
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/05(日) 22:54
- やった〜、初めて当たった♪
でも前回の更新分で外れたかと思ってた...いやあ、いろんなところで読者を裏切ってくれるんで楽しいです。
ほのぼのしてるし、良い作品ですよね。
- 378 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:42
- 「でも残念だったなぁ」
ののがそんなことを言った。
「何が?」
「あいぼんが暗号解くところ、見たかったな」
いや、
私。暗号は好きでない。
「見なくてよかったよ。
私、桃子ちゃんに押されっぱなしだったんだから。
それにしてもあんなすげぇ暗号久しぶりに見た」
正直、
某推理漫画の暗号より激しかったんじゃないだろうか。
- 379 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:42
- 「そういえば加護ちゃん」
亀ちゃんが聞いてきた。
「さっきキッズたちと漫画の話していたけど、
加護ちゃん、あの漫画読んでる?」
「昔は夢中になって読んだけどね」
「今は読んでないの?」
「最近は読んでないなぁ。
またワイヤーか……って思うことが多くって」
「そうなんだ。好きな話はどれ?」
「レモンティーのやつ」
純粋フーダニットは推理の基本。
「へぇ……。私はね、ピアニストの話が好きだなぁ」
「ピアニスト?ああ、孤島の連続殺人?」
「そうそう」
「のんは新幹線で爆弾探すやつが好き!」
元ネタわからん読者の人はごめんなさい;
- 380 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:43
- 「それにしても愛理ちゃんすごいよねぇ」
「あんな暗号を数分で作っちゃうなんてね」
「そんなにすごかったの?」
「そりゃあ……」
…………。
私の歩幅が段々と短くなっていって
「あいぼん?」
止まった。
歩行がとまったのは
脳が一気に働き出したことの代償。
「なんで今まで気がつかなかったんだろう」
「あいぼん。どうしたの?」
茉麻ちゃんは
この事件に犯人なんていないと言った。
糸は自然にほころびていった。
なるほど、
それなら犯人は……
- 381 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:43
- 「犯人が……わかった!」
「え?」
ののと亀ちゃんは同時に声をあげた。
「誰?」
「誰なの?」
「……」
私は黙り込む。
考えを整理したい。
もし犯人がそうだとしたら、
これは不可能状況になってしまう。
犯行は不可能。
いや待てよ。
本当に不可能なのか?
動機は……なんだ?
動機がわかれば、からくりも……。
私が立ち止まったまま黙ってしまったので
ののも亀ちゃんも困った表情をしている。
そこへ
- 382 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:43
- 前から足音が聞こえてくる。
女の子が1人、トコトコと歩いてきた。
今日は子どもに縁があるなぁと思っていると
「あ!亀井さん、こんばんは」
ペこりとお辞儀をして、行ってしまった。
「愛理ちゃん……」
「え?今のが愛理ちゃん?」
亀ちゃんは振り返った。
私たちも振り返る。
愛理ちゃんは道を曲がるところだった。
- 383 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:43
- そのとき
突然
「待ちなさい!!!」
亀ちゃんが
走り出した。
それを見て逃げようとする愛理ちゃん。
しかし、
愛理ちゃんが駆け出す前に
亀ちゃんの右手が愛理ちゃんの腕をしっかりとつかんでいた。
「ミニモちゃんを返して!」
亀ちゃんは愛理ちゃんと何事か、
小さな声で話した。
そして
私たちに向かって
「ごめん私、この子の家に行くから
先に帰ってて」
そういうと愛理ちゃんの手を引いて行ってしまった。
残された私とのの。
- 384 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:44
- 「さすが引率担当。
あの子の顔を見ただけで真相を見抜いてしまったよ」
「へ?」
ののは納得いかない表情。
「あの子が犯人なの?」
「そう」
「なんで?」
私は歩き出した。
「待ってあいぼん。のんにも教えてよ!」
ののが私の腕をむんずと掴んでぐいぐい引っ張る。
「痛い痛い!ののは力強いんだから加減してよ。
わかった、話します」
「お願い」
真相発表
- 385 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:44
- 「愛理ちゃんの作った暗号には、ミニモちゃんっていう言葉があった」
「ふむ」
「愛理ちゃんはなんで袋の中身がミニモちゃんだってわかったの?」
「え?」
「いい?舞ちゃんはよく似た袋を2つ用意していた。
ミニモちゃんと熊のぬいぐるみは袋の上からじゃまるで区別がつかないんだ。
袋を持っていった雅ちゃん自身にも、袋の中身がどっちだったか
わからなかったんだから」
「愛理ちゃんが中身を見たんじゃないの?」
「でも袋の口がホッチキスでとまっていた」
「じゃあ、残っていた袋の中の熊を見たんだ。
それで消去法で、こっちはミニモちゃんだろうって……」
「熊さんは雅ちゃんのカバンの中。
愛理ちゃんには見る機会がない」
ああ、やっぱりいいなぁ。
ののが質問をしてくれると私もすらすらと説明が出てくる。
- 386 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:44
- 「愛理ちゃんが袋の中身を知るためには絶対に
ホッチキスを外して開けるしかなかったんだよ」
「でも袋にホッチキスをとめなおした形跡はなかった」
「そうだね。だからこれは不可能状況なんだ」
「……確かに」
雅ちゃんは愛理ちゃんに渡す前に袋を閉じた。
袋はホッチキスを外さないと中を見ることができない。
引き出しから出てきた袋には、
ホッチキスをとめなおした跡はなし。
「愛理ちゃんは袋を開けることができないはず。
それが今回の推理の出発点だった。
でも、その前提が間違っていたんだ。
愛理ちゃんは袋を開けていたはずなんだよ。
そうじゃなきゃあんな暗号はつくれない」
「でも、どうやって……」
- 387 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:45
- 「雅ちゃんの閉じた袋と、引き出しにあった袋が同じだと考えるなら
それは不可能状況ということになる。
でも
愛理ちゃんが、まったく同じ種類の袋をもう1つ持っていた
と考えれば、この謎は解決するよね」
「そんなことが……」
「充分考えられる。
あの袋は市販のミニモちゃんが入っていたもの。
ミニモちゃんを買った人なら、誰でも持っているものだったんだよ」
「え?……ていうことは愛理ちゃんも、同じぬいぐるみを持っていたってこと?」
「そういうこと。
で、引き出しにあったミニモちゃんは、
舞ちゃんのものではなくて、愛理ちゃんのぬいぐるみだったんだ。
仮に暗号を作るのに参考にしようとして袋を開けたのだとしても
そのままホッチキスなりテープなりでとめなおせばいい。
わざわざ家まで戻って家にあるほうの袋を使うことはない。
でも……
確認になるけど引き出しから出てきた袋に開けた形跡はない。
だから絶対、愛理ちゃんは袋を取り替えているね。
なんでそんなことをする必要があった?」
- 388 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:45
- 「つまり、袋だけ取り替えるのは不自然なんだね。
そうじゃなくてぬいぐるみごと入れ替わっていたんだ」
「そう」
「なんで愛理ちゃんはそんなこと」
「桃子ちゃんが推理したとおり、後頭部が裂けていたのは事故だった。
愛理ちゃんは自分のぬいぐるみか、
あるいは人から借りたものだったのかわからないけど
うっかり後頭部を破いてしまったんだ。
最初は小さな傷だったんだろうね。
でも綿をつめすぎたぬいぐるみはその小さな傷から
どんどん糸がほつれてしまった。
なんとかして元に戻さなきゃいけない。
でも綿の多すぎるぬいぐるみは簡単には縫い直せないよね。
そしたら、舞ちゃんがまったく同じきれいなミニモちゃんを自分にあずけて
どこかに行ってしまった。
愛理ちゃんは家まで急いで戻ると、破れたミニモちゃんと袋を持って戻ってくる。
そうして入れ替えたのがバレないように袋の口をホッチキスでとめて隠したんだ」
- 389 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:45
- ののは
「じゃあ、舞ちゃんのミニモちゃんは?」
聞いた。
「まだ愛理ちゃんが持ってるはず」
ののはポンと手を打った。
「それでさっき亀井ちゃんはミニモちゃんを返してって言った」
「そう。
今ごろは亀ちゃんがなんとかしてるでしょう。
亀ちゃん、抜けてるようでいてしっかり子どもたちの面倒見てるもんね。
彼女に任せておけば悪いようにはならないよ」
「ふーん」
- 390 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:45
- そのとき、
ののは
「あっ……ごめん電話だ」
携帯を取り出した。
「はい、もしもし」
『もしもし、のの?』
受話器の声が大きいため
隣にいる私のところまで声が聞こえてきている。
『今日、絵里と会ったんだって?』
「亀井ちゃんでしょ?うん。会ったよ」
誰だ?
『となりに探偵さん、いるの?』
「いる」
ののは私に受話器を渡した。
- 391 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:46
- 「もしもし?」
『あ、はじめまして。おとめ学園のれいなです』
「あっ、あなたが……」
『なんか今日は絵里に付き合ってくれたみたいでお世話かけました』
「いえいえ、とんでもない」
『で、さっき絵里から連絡があって探偵さんに伝えてくれって
愛理ちゃんはぬいぐるみを返しました。
破れたぬいぐるみは私が修理します。
だそうです。よくわかんないけど』
「いや、よくわかった。ありがとう」
『それじゃ、今度一緒に探偵ごっこしましょう!』
「断る」
私は受話器をののに返した。
『きゃーーー探偵さんと話しちゃった!!』
……。
のの、変な噂を流すなよ。
- 392 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:46
- 「じゃあれいな。また明日ね」
『うんじゃーね、バイバイ!』
通話終了。
「やっぱり亀ちゃん、さすがやねぇ」
「うん。れいなもいい友達持ってるよね」
子ども思いのいいお姉さんだ。
面倒がってばかりの私とは全然違う。
「あ、うちもいい親友持ってるで」
「どうした?関西弁……」
「うるさい」
今日は痛感した。
私は、ののがいないと調子が出ない。
いつもいつも
問題です!
て、クイズを出してくれるこのコがいないと
私の思考回路は上手く機能しないようだ。
- 393 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:46
- 「ねぇのの!」
私たちは手をつなぐ。
「帰るぞ!」
「おう!」
協力、分業をモットーにしたキッズ探偵団。
でものの。
私たちだって、名コンビだよね。
これからも
ずっと一緒にいてくれよ!
私たちは手をつないだまま歩き出した。
- 394 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:46
-
とまあ
思い返してみるだけでも頭がこんがらがりそうな話だ。
読む人も大変だっただろうけれど……。
私はこの事件について
考え直したことがある。
あれは「キッズ対あいのの」の推理合戦なんかじゃない。
お互いの考えに刺激されて、推理が進んで行ったのだ。
私たちとキッズの初の共同作業。
それがあの事件の持っている意味なんだと思う。
ひょっとすると
あのコたちにはまたどこかでお世話になるかもしれない。
そのときは一緒に仕事しようぜ、キッズたち!
―――双方ともスタンバイOKです。
- 395 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:47
-
―奇天烈キッズ探偵団 完―
- 396 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:47
- あとがき
作者の語りなんて本来不要なわけですが……
告白大作戦の続編として、
再び長編にチャレンジしました今回の「奇天烈キッズ探偵団」
いかがでしたでしょうか。
今回は
あいぼんのライバル役を登場させよう、というところから出発したわけですが、
いい年こいて、探偵を自称してあいぼんをライバル視するやつがいたら
あやしすぎる。絶対に嫌だ!
だけど
探偵ごっこを子どもがするという設定ならいいだろう、ということで
誕生しました、キッズ探偵団。
彼女らの分業体制はモデルというか元ネタと思しきものがいくつかあります。
だから完全オリジナルというわけではないです。
- 397 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:48
- ところでキッズは15人でスタートを切ったわけですが
最近Berryz=キッズみたいな風潮もあり
確かにBerryzはキッズの活躍の結晶みたいなものだけれど
その礎にはハロプロキッズ15人の下積み期間があったはず。
キッズ探偵団のBerryzメンバにこだわらない人選はそんな理由によります。
愛理ちゃんの暗号
前半の暗号読解は、作中何度か登場する「某推理漫画」の暗号を越えるつもりで
取り組みました。言語構造の知識をベースに推理を進めていく『黄金虫』の日本語版
を書いてみたかったので、かなりややこしい推理になってしまいました。
展開は結局「某推理漫画」とそっくりになってしまったのは
作者の創造力の乏しさ故です;汗
舞ちゃんのぬいぐるみ
後半の方は「ザ☆ピース」の推理版を目指しました。
「まだ続くのかよ!」と突っ込みたくなった読者さんがいたとしたら
作者は大喜びです(オイ。
ただ残念なのが、ほのぼのした話を書こうと心がけながら
人間関係の闇だったり、人の悪意だったりが毎度登場してしまうこと。
これも推理(しかも本格気取り)というジャンルの宿命なのでしょうか。
しっかし……フーダニットむずかしー!
- 398 名前:―亀ちゃんの直感です― 投稿日:2004/09/10(金) 20:50
- >>377
どうもです。
本当にいろんなところで裏切れてたら幸いです。
ほのぼの雰囲気も維持できるように頑張っていきたいです。
……続くのか?
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/10(金) 21:13
- ぬいぐるみが、なおりそうでなによりです
Berrys=キッズですか...Berrys+タンポポ4代目=キッズになるような気が
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 15:43
- ( ^▽^)<400ですホイッ♪
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/18(土) 11:17
- いや〜、良いですね。
> 人間関係の闇だったり、人の悪意だったりが毎度登場
でも登場人物が高校生以下なんでそれほどドロドロは感じませんし、
それを埋めるだけの人の優しさも感じられるお話だと思います。
続編も楽しみにお待ちしております。
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 21:16
- 推理小説って娘。小節以外で読んだことなかったんですが、いこーるさんの作品を読んで興味をもちました。
なんかいろいろな推理小説読んでみようと思います。
- 403 名前:◆b178UfAo 投稿日:2004/09/22(水) 14:20
- 川VvV从推理が楽しいです
- 404 名前:いこーる 投稿日:2004/11/13(土) 21:31
- 作者です。
突然ですが、私的事情により、これより三週間ほど
更新することができなくなってしまいました…
よって、しばらくの間スレを放置する形になります。
お待たせするのは大変心苦しいですが、どうかご了承
いただけたら思います。
それでは。
- 405 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/25(木) 19:08
- WコンDVD見ながら待ってるで〜
- 406 名前:いこーる 投稿日:2004/12/02(木) 12:19
- お待たせいたしました。
ののが新たなクイズを持ってまいりまして
連載の再開となります。
解答提示の前にメル欄回答を解禁しますので
……とりあえずまったりお楽しみいただけたらと思います。
- 407 名前:いこーる 投稿日:2004/12/02(木) 12:20
-
謎かけ担当の辻希美と
謎解き担当の加護亜依
二人合わせて……
- 408 名前:いこーる 投稿日:2004/12/02(木) 12:20
-
Wクエスチョン
- 409 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:21
- 絵里は校門にできた大きな水溜りを回避して
記念館の受付に向かって歩いていた。
すでにダンスパーティの開始時刻を30分も過ぎてしまっている。
受付には1人の女の子が座っていた。
女の子の胸には名札がついていて「小川」と書いてあった。
「貴重品はここで預けてください」
そう言われたので携帯と財布、定期入れを預けた。
そうして絵里は会場に入っていった。
記念祭に来るのは初めてなので、ちょっと緊張してしまう。
大丈夫。借り物だけどドレスだって着ている。
ドレスと靴をれいなの母親から借りていた。
ドレスは巨大な傘のように見えるスカートが足元まで伸びたもの。
靴はハイヒールだった。
しかし
借り物のドレスと靴を着用するのに思いのほか時間がかかってしまった。
家を出るときにはもうパーティが始まる時刻となっていた。
本当は走りたかった。
だがれいなのお母さんが貸してくれた靴は踵が高くてとても走れなかったのである。
記念館に入ると短い通路がある。
右側に1つだけ扉があった。扉には「階段」と書かれている。
正面には絵里の身長の2倍はありそうな大きな扉。
これがホールへの入り口である。
絵里は扉を開け、にぎやかな舞踏会場へと入っていった。
- 410 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:21
-
シンデレラ失踪事件
- 411 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:21
- 「むかーしむかし、ある国に
シンデレラというそれはそれは怠け者の女の子がいました」
怠け者かよ!
「シンデレラはいっつも宿題を忘れていました
その日も宿題を忘れたシンデレラは
お母さんの命令で部屋で勉強しなくてはなりません。
シンデレラはひどく悲しみました。
だって今日はお城でダンスパーティがあるのですから」
学校行ってるのか。
そりゃ裕福だこと。
「お友達もみんなダンスパーティに行ってしまいました。
シンデレラはどうしてもダンスパーティに行きたくなりました。
こっそり行くことも考えました。しかし無理そうです。
お友達はみんな、シンデレラが家で勉強しなくてはならないことを知っているのです。
黙ってパーティに行って友達の誰かがお母さんに告げ口をしたら大変。
だからシンデレラはパーティに行きたくても行くことができませんでした」
- 412 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:22
- ほうほうと聞きながら私は枕元に置いてあったホットレモンを取った。
飲むと温かいすっぱい味が喉を通る。
その間もののは
ずっとシンデレラストーリーを話し続けている。
「それにパーティに着ていくものもありません。
普段着ではそれこそ友達に見つかってしまいます。
シンデレラはため息をつきました」
私はけほけほと咳き込んだ。
熱はだいぶ下がっている。
しかしややだるい。
風邪を引いて1週間が経っていた。
最初のうちはうんうん唸ったりげっほげっほ咳き込んだりで
どう考えても明らかに明白に絶対的なレベルで面会謝絶状態。
- 413 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:22
- しかし5日目くらいから症状が治まり出すと私は
寝てばかりの生活にうんざりしはじめていた。
そこでわが親友ののに対して毎日メールで
暇だ退屈だ虚無だ絶望だと訴えまくったもんだから
「じゃあ記念祭の後にお見舞いに行ってあげるから」
と言ってくれたのだ。
記念祭というのは
ののが通う私立おとめ学園と
私の通う私立さくら学園とが合同で開催するダンスパーティ。
ダンスパーティと言っても両方女子高なんですけどね。
毎年結構盛り上がる。
しかも昨日まで続いた雨がぴったり止んで
今日はいい天気だ。
絶好のイベント日和だろう。
そんな中ののは来てくれるのか。
ああ持つべきものは愛すべき親友。
- 414 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:22
- しかし
お見舞いにともらったミックスナッツ(なぜ?)と
ホットレモンを平らげているうちに(食欲だけは回復済みだった)
ののがクイズをはじめたのだ。
題して
「シンデレラ失踪事件」
まだ風邪が完治していないわけで
あんまりややこしいクイズに答える気力はなかった私だが
「あいぼんに解いて欲しいんだよ」
例の無邪気さ100%の笑顔に
「わかった、いいよ」
ついついOKしてしまったのだ。
- 415 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:23
- 『そんなときでした
「シンデレラや」
と呼ぶ声があります。
出てみると近所の叔母さんでした。
「かわいそうなシンデレラ。
パーティに行きたくても着ていく服がないのね。
よしわかった。私のを貸してあげよう!」
叔母さんはそう言ってドレスと服を貸してくれました。
ドレスはスカートの部分が花のようにふんわり広がった豪華なもの。
靴はシンデレラが履いたことのないようなハイヒールの銀色に輝く靴でした。
「いってらっしゃいシンデレラ。
ただしドレスは今日の12時までに返してちょうだいね」
そういって叔母さんはシンデレラを送り出してくれたのです。
シンデレラはとても喜んで言いました。
「叔母様!このことはみんなに内緒にしておいて」
「ああ、わかったよシンデレラ」
そうしてシンデレラは
パーティ会場に出かけて行ったのです』
- 416 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:23
- なんか
魔法使いが普通の叔母さんになっていたり
ガラスの靴が銀色のハイヒールになっていたり
シンデレラとは随分と設定が違うのだが、
その辺スルーしておくべきか……。
わたしはぐじゅぐじゅとはなをすする。
「あいぼん大丈夫?」
「ん……平気」
久々にののに会えて
少なからず私は元気になっていた。
『じゃー続きね
所変わってパーティ会場。
王子様は退屈していました。
「もうダンスなんてつまらないな。
かわいいコがいるわけでもないし」
ぶつぶつと言いながら座っています。
「抜けだしちゃおうかな」
- 417 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:23
- しかし
パーティ会場には出口が一つしかありません。
その出口である大きな扉を通り抜けることができても
そこから玄関扉まで一直線の廊下が1本あるだけです。
玄関には見張りが立っていますから抜け出すこともできません。
「また倉庫で遊んでいようか」
去年のダンスパーティのとき
王子様はやはりパーティ会場から脱走しようとしました。
しかし
玄関には見張りがいたので
手前の倉庫に入って時間を潰していました。
「よし、倉庫に行こう。
あそこで遊んでいよう」
そう思って王子様は立ち上がりました。
そのとき
「おや?あのコは……」
王子様は
豪華なドレスを身にまとったシンデレラを見つけました。
王子様はシンデレラへと近づいてダンスを申し込みました。
シンデレラは顔を赤らめてうなづきました。
- 418 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:24
- そして2人は踊りました。
シンデレラのダンスはぎこちのないものでしたが
王子様が上手くリードをして楽しく踊りました。
王子様は
「ねぇキミの名は?」
と聞きました。
「わたしは……」
そのときです。
12時を告げる鐘がパーティ会場に響きました。
「いけない!私、もう戻らないと!」
そういうとシンデレラは出口に向かって駆け出しました。
「あ、待って」
王子様は追いかけます。
しかしシンデレラは走って行ってしまいました。
- 419 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:24
- 王子様はたった一つの出口を通って廊下を走ります。
途中、廊下でおしゃべりをしている女の子が3人いました。
王子様はその3人の傍らを通って玄関まで行くと
見張りにたずねました。
「いま、女の子がここを通っただろう?」
すると見張りは
「いいえ。パーティが始まってからは誰もここを通っていません」
と答えました。
そこで王子様は廊下で話をしていた3人の所まで戻ってきました。
しかし3人の中にシンデレラはいません。
再び見張りに向かって
「絶対にここを通ったのだ。君は見落としていたんじゃないか?」
そう言うと王子様は玄関の外に出て
門に向かう階段を降りて行きました。
「おや?」
王子様は途中で奇妙なものを発見します。
- 420 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:24
- 「これは銀色に輝く靴」
階段の脇の茂みに一足の靴がおいてありました。
「これはあのコの靴かも知れない」
そう思った王子様は
家来たちを集めてこの靴の持ち主を探させました』
ののがずっと話している。
その間、私は問題を先読みしながら考えていた。
きっと
見張りに目撃されずにどうやって城を抜け出したか
問題にするつもりだろう。
会場からの出口は一箇所。
全ての人間はここを通る。
そこから玄関まで一本道。
玄関扉には見張りがいた。
見張りに目撃されずに
姿を消す方法は……
思いつくもので2つ。
- 421 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:24
- 『家来に靴の持ち主を探させにやったあと
王子様は会場に戻ってきました。
そうしてパーティはお開きになったのです。
30分後
靴の持ち主が見つかりました。
王子様は喜んでその持ち主の家まで行ったのです。
しかしそこにいたのはシンデレラではなく叔母さんでした。
その証言。
「確かにその靴はシンデレラに貸したものです。
あのコってばドレスだけ返してくれたのでどうしたのかと思っていたら
靴は落としてしまったのですね。
でもこうして無事に戻ってきてよかった」
叔母さんはそういいました。
- 422 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:24
- 「シンデレラはここにいるか?」
「はい、もう戻ってきております。
しかし王子様、あのコがパーティに行っていたことは
家の人に内緒にしていて欲しいのです」
そういって叔母さんは王子様に事情を説明しました。
そのとき
「そうか、わかったぞ。あの見張りの言っていたことは正しかったのだ!」
王子様はそう言いました。
さてここであいぼんに問題です。
シンデレラはどうやってお城から抜け出したでしょう?』
予想通り。
問題は密室状態のパーティ会場からいかに脱出したかだった。
「あいぼん?わかる?」
「うーん、実は聞きながら2つの説を考えてた」
「へぇ、さっすが」
しかし
「でもダメ。違うっぽい」
- 423 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:25
- それを聞いてののはにかーっと笑った。
私が困っているのがよほど嬉しいらしい。
にくったらしい……。
わたしはけほけほと咳き込んだ。
ののが背中をさすってくれる。
「おおきに」
「どういたしまして。
ホットレモンおかわりいる?水分とった方が……」
「うん、欲しい」
「わかった。でもクイズが先ね」
「え?」
このコ何を考えているのでしょう。
看病よりも病人にクイズ答えさせるのが先ですか。
「あんなぁのの、うち風邪引いてんねん」
「知ってる」
「結構まだ辛いねん」
「じゃあさっさとクイズやっちゃおうよ!」
ふぅ
私はため息をついた。
風邪で頭が上手く働かない。
普段ならこのくらいのクイズ
即答できるはずなのに……
- 424 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:25
- 「じゃああいぼんの考えてた2つの説ってのを教えて?」
「1つ
実はパーティ会場から逃げ出してはおらず
人の中にまぎれてしまったというのがその方法」
「ふむふむ」
「でもこれはダメ」
「どうして?」
「靴が外にあったから。
会場から出ていないならどうしてシンデレラの靴が外にあったのか
それが解決しない」
話の途中では
この説はいけるかな?と思っていた。
実は靴がシンデレラのものではなかったとすれば
それでよい。
しかし
「叔母さんが確かにシンデレラの靴だと言っていた。
シンデレラが中にいるのに靴だけが外にワープしたんじゃおかしい」
- 425 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:25
- 「もう一つは?」
「廊下は1本道だとは言っても
途中に部屋がある。
玄関の手前に倉庫があったとのの言ってた。
倉庫から逃げ出したというのがその方法」
「倉庫に人が通れるような窓はないの!」
「うん、そうだろうね。
そうでないなら1年前に王子様が倉庫から外に逃げてるはずだもん」
再びけほけほやる。
「あいぼん平気?」
「平気じゃないからホットレ……」
「しょうがない答えは後でいいよ。
ホットレモン作ってくる」
そういってののは出て行った。
「ありがとう」
とっくにののがいなくなった部屋で
私はそうつぶやいた。
- 426 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/02(木) 12:26
- しかし
なんだって突然「シンデレラ失踪事件」なんでしょう?
それと
お城の作りが気になる。
会場から玄関まで倉庫があるだけで後は一直線というのは
記念祭の会場であるおとめ学園記念館と同じ構造ではないだろうか。
倉庫の代わりに階段があった気がするけど。
「ねぇあいぼん、ホットレモンなくなっちゃったから買ってくるね」
「ああ、すまんね。ありがとう」
そうしてののは外に出て行った。
それからしばらくして
私の携帯がなったのだった。
- 427 名前:いこーる 投稿日:2004/12/02(木) 12:27
- 以上です。
月に2・3度は更新できるかと思います。
- 428 名前:いこーる 投稿日:2004/12/02(木) 12:32
- 大幅遅れのレス返し;滝汗
>>399
キッズやBerryzに関しては興味もあるので
今後も小説という形でいろいろ扱っていこうと思います。
>>400
( ´D`)<おめれとーなのれす
>>401
そーですか、ありがとうございます。
なるべく暗くならない話を心がけています。
>>402
私は逆に推理しか読まない偏った人間なのですが
最近は手軽に読めるものもたくさんありますし
いっぱい読んでください。
>>403
( ´D`)<ありがとー。クイズも楽しいのれす。
>>405
ありがとうございます。
WスタンバイDVD見ながら書いてました〜
- 429 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/09(木) 02:00
- こんな面白いスレあったとは・・・
一気読みしました
桃子好きなんで、キッズ探偵団嬉しかったです(笑
- 430 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:11
- れいなは麻琴に詰め寄っていた。
「ほんまに誰も通っやなかの?絵里来なかった?」
「そのコの顔は知らないけど……誰も通ってないって!」
「そぎゃんはずなか!ホールからこっちに出ていくのを見たもん」
「知らないってば」
2人とも顔がくっつきそうな距離でにらみあっている。
「れいな、れいな。落ち着いて。
方言出まくってる!」
とさゆみが後ろから引っ張った。
「小川さんがウソつくはずないよ。ウソつく理由がないもん」
「だけど……」
「もしかしたら、ホールの中にまだいるかも知れないよ」
「靴が外で見つかったのに?」
「……」
そのときホールの入り口が開いて
希美が出てきた。
「あれ?れいなとさゆみ、どうしたの?」
「それが聞いてよ」
と言ってれいなは希美に経緯を話し始めた。
- 431 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:11
- 話を聞くと希美は
「とりあえず、もう一度ホール探してみる?
麻琴は誰も見てないんでしょ?」
麻琴はうんうんとうなづいた。
希美とれいなとさゆみの3人は一旦ホールに戻った。
広いホール内を分担して探していく。
しかし
「やっぱりどこにもいないよ……」
結局絵里は見つからなかったのだ。
そうこうしているうちにダンスパーティは終了となった。
会場にいた生徒たちが足早に出口に向かっていく。
「みんな何を急いでるの?」
とさゆみが聞くと希美が
「このあと中庭でバンドのライブがあるんだよ。
みんないい席で観たいから走ってるんだ」
と答えた。
「ちょっと2人とも、そんなことより絵里が!」
「そうだった……」
- 432 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:12
- ふと、希美が聞いた。
「ねぇれいな、亀ちゃんに電話してみた?」
「……あ」
れいなはあわててポケットを探った。
「あれ?携帯ない!」
「預けたんじゃないの?」
「……そうだった」
「ちょっとれいな落ち着きなよ!」
れいなはバタバタと
麻琴のところへ戻っていって携帯電話を受け取った。
すぐ、ダイアルする。
すると
ピリリリリリリ
呼び出し音がすぐ近くから聞こえる。
ピリリリリリリ
「近いよ」
ピリリリリリリ
「ちょっと誰ですかぁ?携帯預ける時は電源切ってくれなきゃ」
麻琴がそういって袋をぶんぶん振り回していた。
- 433 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:12
- 「それ、絵里のだ!」
れいなは麻琴から袋をひったくると中を開けた。
中には携帯と財布、定期入れがあった。
「置きっぱなしかよ……」
れいなはがっくりと肩を落とす。
「ねぇれいな、階段は見た?」
「見てない」
「念のため見ておく?」
「そうだね」
3人は階段を登った。
階段のてっぺんには美貴が立っていた。
「あ、藤本先輩!」
「ねね、絵里見ませんでした?」
「……誰?」
「そっか先輩、絵里知らないんだ?」
「うーん。でもここは誰も通ってないよ。
私パーティはじまってからずっとここで電話してたから」
「そっか」
- 434 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:13
- 3人は受付に戻ってくる。
「受付の前を通ってない。階段にも行ってない。ホールにもいない……。
なのに、なんで絵里はいないの?なんで靴だけが外にあるの?」
「ねぇれいな……靴が見つかったのってどこ?」
と希美が聞くので
3人は記念館の入り口を外に出た。
さゆみが入り口の脇にある茂みを指差す。
「そこの中に隠すように置いてあったの」
「へぇ……不思議だね。
麻琴は誰も外に出てないって言ってるのに
靴だけがこっちに来てるなんて……」
「でしょ?おかしいでしょ?
2階にも行ってないって藤本先輩が言ってるし、
出口は他にないのに……」
「まるで密室だね」
「うん。消えるはずのない状況で亀ちゃんがいなくなった。
どっちかっていうと『人間消失』ものだね」
「のの、探偵さんみたい……」
「あーこんなときあいぼんがいてくれたらなぁ……」
- 435 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:13
- 希美はしばらく空を見つめて
「そうだ!」
言った。
「のんあいぼんに聞いてみるよ」
「大丈夫なん?風邪なんでしょ?
絵里が行方不明なんて行ったら心配しちゃうんじゃない?」
「だから、絵里ちゃんの名前は出さないで状況だけ教えればいいんだよ」
「でも、記念館から人が消えたなんて」
「じゃ場面を別のところに移してクイズみたく聞けばいいんだ。
じゃ、行ってくる」
と言って希美は駐輪場の方へと駆け出した。
2人は後を追う。
しかし希美の足は速く
2人が駐輪場に着いたころには既に
「行っちゃった……」
希美はいなくなっていた。
- 436 名前:シンデレラ失踪事件 −問題編− 投稿日:2004/12/09(木) 22:14
- れいなは仕方なく駐輪場を眺める。
昨日、雨だったせいかところどころに水溜りができている。
「あーーーーーーーっ!」
れいなは指差しながら大声をあげた。
「何?れいなどうしたの?」
れいなは深呼吸をしてからさゆみを向いて言った。
「れいなの自転車がなくなってる」
- 437 名前:いこーる 投稿日:2004/12/09(木) 22:18
- 少量ですみません。
問題編更新だけでもと思いまして……
次回探偵編、その後に解答編となります。
>>429
ありがとうございます!
面白いと言ってもらえると本当にうれしいです。
>桃子好きなんで、キッズ探偵団嬉しかったです(笑
キッズご存知でない方もいるみたいで正直不安だったのですが
キッズ好きの方がいらっしゃって私もうれしいです。
今後もキッズ探偵団にはどこかでご登場いただきたいと思います。
- 438 名前:いこーる 投稿日:2004/12/09(木) 22:20
- 補足
今回更新分
場面は数時間前。おとめ学園の記念館
です、前回の亜依の部屋から時間がさかのぼっています。
- 439 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:52
- <亜依の電話が鳴ったところの続きから>
電話は真里先輩からだった。
「加護、大丈夫か」
「あんま大丈夫じゃないです。
今ののがこっち来てて……」
「辻が行ってるのか。よかったじゃん」
「それが……」
私は真里先輩に
ことの顛末を説明した。
「突然クイズっていつものことじゃないの?」
「そうなんだけど、風邪引いてるときまで……」
「きっとさ、辻も加護が寝込んでて寂しかったんだよ」
「だからっていきなりクイズだなんて」
「加護……さ」
突然真里先輩、
改まった口調で話し出した。
「加護はやっぱり辻のクイズ癖……嫌?」
ののはクイズ大好き少女。
思いつくたび思いつくたび何でもクイズにして出してくる。
そう、まさに癖だ。
- 440 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:52
- 「嫌じゃないけど会うたび会うたびクイズだしてくるんだもん。
いい加減うんざりしてくる。
それにこっちだって具合悪いってのに……」
「辻……寂しがりやだからさ」
「え?」
「加護がいないときいっつも言ってるんだよ。
あいぼんならどう考えるかな?
あいぼんならなんて言うかな?
ってそればっか言うんだ。あいつ……」
「……のの」
「だからさ、クイズが好きっていうよりね
加護と思考を共有できるのが嬉しいんだと思うよ」
「真里先輩……」
私は受話器を握りなおす。
「ん?何?」
「記念祭で……何があったんですか?」
- 441 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:52
- 「……加護、どうして」
「ののが出してきたクイズの舞台が記念館とそっくりなんですよ。
だからひょっとしたら今日の記念祭で何かあって
それを題材にクイズにしてるのかなぁって……」
「ははっ、さすがだね。
実は……」
そう言って
真里先輩は事件の一部始終を教えてくれた。
今日記念祭に参加していた亀ちゃんこと亀井絵里ちゃん。
そこへパーティの途中で突然電話が入った。
ディスプレイを見て亀ちゃんが会場の外へと走り出したので
どうしたのかと、れいなちゃんとさゆみちゃんで追いかけた。
しかし会場を出て一本道を走り受付まで行っても亀ちゃんは見当たらない。
受付の小川さんに聞いても「そんなコは通ってない」と言う。
しかし会場の外の茂みから亀ちゃんのものらしき靴(ハイヒール)が発見された。
はてさて一体何がどうなったんでしょう?
「で、その事件を聞いた辻が加護に聞けばわかるはずだといって
会場を出て行ってしまったってわけ」
「なんだ、じゃあ真里先輩はののがここにいること知ってたんですね?
それでどうだったんですか?亀ちゃんは何て言ってるんです?」
「さっき戻ってきたけど詳しいことは聞いてない」
なんだ。
せっかく答えを聞いちゃおうと思ったのに。
- 442 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:53
- 「そっか。ちょっと聞いてもいいですか?」
「何?」
「亀ちゃんは自分の意思で失踪したんですか?」
「うん」
「例えば受付の小川さんが共犯でウソをついていたとか……」
「いや、そんなことはない。
失踪は亀井1人でやったことみたいだよ」
「記念館って確か出入り口のところに階段があって
2階バルコニーに出られるんですよね?」
「そっちもね、階段のぼったところに美貴ちゃんが立ってたんだって。
で、誰も2階には来てないって言ってた」
そうか。
それじゃあお城の倉庫と事情は同じか。
唯一の出入り口に受付が立っていた。
目撃されずに外に出ることはできそうもない。
「亀ちゃんが受けた電話って誰からだったの?」
「さぁ……」
「その人から連絡を受けて慌てて出てっちゃったってこと?」
「うん、そうみたい」
……。
「なんとなく、わかったかも……」
- 443 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:54
- 「へぇ、加護やっぱすごいねぇ。
ほんじゃ辻によろしくな」
「はいはーい」
真里先輩は電話を切った。
真里先輩、答えを聞きたがらなかったけどそれが普通だよな。
だって亀ちゃんの無事は確認できてるわけだし
人間消失なんて騒ぐほどのことじゃないんだろう。
「あいぼーん、ただいまぁ」
そのときののがコンビニの袋を片手に帰ってきた。
「おかえり」
「ねね、答えわかった?」
ののはかさこそと私のベッドに近づいてきて
うれしそうに聞く。
「うん、わかった」
私はそう言った。
「まじ?教えて教えて!」
「よろしい、教えてあげよう。
ただし答えは次の更新の時ね」
「あいぼん何言ってるの?」
- 444 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:54
- <れいなが自転車の紛失に気づいたところから>
れいなは走って駐輪場を探し回る。
「ない……やっぱりない」
「れいな鍵かけといた?」
「……かけてない」
さゆみはしばらく
何かを考えるしぐさをした。
「ねぇれいな」
「何?」
「自転車さ……絵里が持っていったんじゃない?」
「え?」
「だって絵里、靴履いてないんだよ。
そのまま外に出て行くなんて危ない。
だかられいなの自転車を持って行ったんだよ」
「そんな……言ってくれたらよかったのに」
「きっとね、急いでたんだと思う。
だって貴重品も受け取らず靴も脱ぎ捨てて行くくらいだから」
- 445 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:54
- 「……絵里」
れいなは駐輪場を見渡す。
ところどころに水溜りが残っている。
その中に
!
「ねぇさゆ!あれ!」
水溜りからすーっと一筋の跡が伸びていた。
「タイヤの跡だ」
「れいなの自転車の跡?」
「うーん、たぶんそうだと思う」
「追っかけよう!タイヤの跡をたどれば絵里の行方がわかるかも」
「うん」
「私、自分の自転車取ってくる」
さゆみは駐輪場の奥へと走っていく。
れいなはタイヤの跡を追って走り出した。
- 446 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:55
- しばらく走っていくと
跡は消えていた。
れいなは止まって
薄れていくタイヤの跡を見た。
「れいな?どうしたの?」
「さゆ……タイヤの跡が切れてる」
「……ほんとだ」
「きっとタイヤが乾いちゃったんだ……」
れいなは下を向いた。
「……絵里」
絵里は何をそんなに急いでいたのだろう。
自転車を勝手に持ち出すほど……何を。
あの電話はなんだったのだろう。
「絵里……急いでた……」
れいなは
顔を上げた。
「そうだ……」
- 447 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:55
- 「れいなどうしたの?」
「さゆ!確か校門のところに大きな水溜りがあった」
「うん、あったと思う」
「そこまで行ってみよう!
きっとタイヤの跡が見つかる」
「どうしてわかるの?」
れいなは興奮気味に説明する。
「絵里すごく急いでたんでしょ?
そういう人は
水溜りなんていちいちよけない。
やけんそこからまたタイヤの跡が見つかるはず」
「わかった、れいな後ろ乗って」
「うん」
れいなはさゆみの両肩につかまって
後輪のステップに立った。
「行くよ!」
さゆみは猛スピードで自転車を進める。
風が2人の髪を乱した。
- 448 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:55
- 校門まで来ると
水溜りから1本のタイヤの跡が外に伸びていた。
「間違いない……これは絵里がつけたタイヤの跡だ!
普通の人だったらここはよけていく。
こんな水溜りをよけないで行くのは急いでいる人だけだもん」
「よし、この跡を追いかけてくよ!」
「うん」
さゆみは跡に沿って自転車を進めた。
途切れたら次の水溜りまで慎重に探す。
跡を見つけたらまた自転車でとばす。
その繰り返しを続けた。
さゆみは汗だくになりながら必死に自転車を走らせた。
そして
タイヤの跡は
一軒のスーパーの駐輪場へ。
「あった、れいなの自転車」
れいなは自転車をとび降りると駆け出した。
さゆみは後ろから汗をかきながら追いかけてきた。
- 449 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:55
- 「絵里、スーパーに用があったのかな?」
2人はスーパーに入っていく。
入り口が1つ、レジが1つのこじんまりとしたスーパーだった。
棚は3列ある。
コンビニ規模の店だ。
れいなはレジにいた若い男に声をかける。
「すみません。ぞろーっとしたドレスを着た女の子来ませんでしたか?」
「いや、そんなコは来てないよ。午後からずっとここで店番だったけど。
そういや店長もどこ行ったのかなぁ……バイト1人じゃきついってのに」
さゆみが追いついた。
「さゆ、絵里来てないって。午後からずっと見てないってことは……」
「パーティ始まってからは絵里が来てないってことか」
2人は外に出る。
「どこ行ったんだろ……こんなとこに自転車置いて……」
れいなはさゆみを見た。
「あっ……」
- 450 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:56
- 「さゆ?」
さゆみは
じーっと一点を見つめている。
「れいな、あれ……」
そう言って
さゆみはあるところを指差す。
れいなも指の先を目で追った。
「あれ?」
「うん」
バス停だった。
「絵里、バスに乗ったんじゃない?」
「えぇ?」
「上手く時間が合えば、自転車より早いでしょ?
絵里は自転車をスーパーに置いてバスに乗ったんだよ」
「……」
れいなは納得できない。
何が、ということではないがなんとなく
それは違うという気がするのだ。
- 451 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:56
- 「なんか……違うっぽくない?」
「自転車がここに置いてあったのにスーパーにはいなかった。
バスに乗ったとしか考えられないよ」
さゆみはそう言うと
1人でスタスタとバス停に歩き出した。
仕方がないのでれいなも追いかける。
れいなは考える。
バスに乗った方が早い。
もし目的地が遠い場所なら、当然そうだ。
絵里の目的地を自分たちは知らない。
ここに自転車が置いてある以上
バスを使ったと考えるのが妥当なのかも知れない。
さゆみは時刻表を見ていた。
「ねぇれいな。駅行きとさくらタウン行き、どっちだろうね」
「行き先が2つあるの?」
「……うん」
それでは追いかけようがないではないか。
- 452 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:56
- れいなは時刻表を見た。
そして笑った。
「ははっ、さゆ。駅しかないって」
「ええ?」
「ほら」
と言ってれいなは時刻表を指差した。
「さくらタウン行きは午前8時〜10時と夕方6時からしか走ってない。
絵里に乗れたはずがないもん」
「そっか。じゃあ駅だ。
駅ってことはそこから電車かなぁ?」
「それじゃあ追いかけられんけんね」
「あるいはバスじゃなくってタクシーだったりして……」
「まさか、お金かかるよ」
そのとき
駅行きのバスがやって来た。
「れいな乗ろう」
バスに乗ろうとしたさゆみを
「あっ!」
れいなは引っ張って止めた。
- 453 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:57
- もう片足をバスに乗っけていたさゆみは引っ張られて
背中かられいなにもたれかかった。
「わっ、急になに?どうしたのれいな?」
れいなは手にさらに力を入れて言った。
「絵里バス乗ってない!」
「なんで?」
バスの扉が閉まった。
「あーっ閉まっちゃった!
れいな、絵里がバスに乗ってないってどうしてわかるの?」
「だって絵里
お金持ってないもん。
財布も定期入れも預けっぱなしだった」
「あ!」
「絵里は財布も持たずに出てきた。
絵里の今日の格好はパーティ用のドレスだったでしょ?
ポケットに小銭が入っているとは考えにくい」
「そっか……それじゃあ」
さゆみは
再びスーパーの方を見た。
- 454 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:57
- 「でもスーパーにはいなかったって言うし」
れいなは首を振った。
「いや、レジの人が見てないだけかも……」
「え?でも入り口あそこしかないよ」
「お客さんはね!」
そう言って
れいなはスーパーに走っていく。
入り口には入らず建物の裏のほうへ。
「絵里はこっちに用事があったんだ」
れいなが指差した先の扉には「関係者入り口」と書いてあった。
- 455 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:57
- れいなとさゆみがドアを開けようとしたところで
絵里が出てきた。
「絵里!」
「え?……れいな、さゆ……どうして?」
「バカ!」
バシ
れいなは絵里を殴った。
「えらい心配したんだ!
なんしてたの!?」
「ちょっとれいな……落ち着きなよ」
絵里は下を向いて言った。
「ごめん。突然電話入って
こっち来なくちゃいけなくなって……」
- 456 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:57
- 絵里は涙目になっている。
さゆみは絵里に駆け寄って言った。
「いいよ、いいよ。
それより絵里」
絵里が顔を上げる。
「どうやって記念館から出ていったの?」
- 457 名前:シンデレラ失踪事件 −探偵編− 投稿日:2004/12/16(木) 18:58
- かくして
れいなとさゆみは絵里のもとにたどり着き
亜依はクイズの解答に至りました。
しかし亜依のもとにある情報だけでは
失踪の動機までを把握することは不可能です。
亜依の解答はあくまで希美のクイズ
「シンデレラはどのように城から出ていったか」
のみを説明したものであることを明記しておきます。
- 458 名前:いこーる 投稿日:2004/12/16(木) 18:59
- 次回解答編です。
読者のみなさま、メル欄回答ありにしますので
答えのわかった方、メール欄に答えを書き込んでください。
とかいってレスすらつかなかったらどうしよう……
1週間後に更新予定です。
- 459 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/21(火) 03:57
- 始めまして。この推理小説読ませていただきました。
自分も、推理系小説書いていますが、この作品は一つ一つが短編集みたいになっていて
非常に読みやすくて、内容も面白いものばかりで、読んでいて飽きません。
いや〜〜〜〜、いつもいいところで更新が終わっちゃって、次回の更新をいつも
首を長くして待っています。
早く答えが知りたいです。
ではでは、次回更新待ってます。
- 460 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 18:52
- 矛盾点は否めませんが、一応可能性が一つ見えたのでメル欄に書かせていただきます。
解答編楽しみに待ってます。
- 461 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:51
-
「へ?どうやって……て」
絵里はきょとんとした表情で言った。
「普通に出口から出たよ」
「え?」
「何?どうしたの?」
「だって小川さんが誰も通ってないって……」
「えー、知らないよぉ」
- 462 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:52
- 私はののを見て言った。
「さてクイズの解答だね」
「そう、シンデレラはどうやってお城から出ていったか」
1つ咳払い。
「解答はこうだ
シンデレラは堂々と玄関扉から出ていった」
「は?」
ののが固まった。
「だって見張りがいた」
「うん。その見張りの前を堂々と通って行ったんだよ」
「ええ?まさかあいぼん」
突然、ののが上目遣いになった。
疑わしげな眼差し。
「シンデレラが透明人間だったとか言わないでよ!」
「ははは、言わない言わない」
- 463 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:52
- 私は軽く笑った。
―亀ちゃん透明人間―
いいサブタイトルかもしれない。
「じゃあどうして?
どうして見張りは誰も通ってないって言ったの?」
「聞かれたときは通ってなかったんだよ」
「え?」
「シンデレラはお忍びでパーティに来ていた。
なるべくクラスメイトとは顔を合わせたくなかった。
さてここで思い出してみよう。
シンデレラが会場を出ていったとき廊下には3人の女の子がいた。
この中にシンデレラが会いたくなかった人がいたとしたら
とっさにどこかに隠れようって思うのが自然だよね。
シンデレラは一度、倉庫の中に隠れることにしたんだよ。
だから
王子様が追いかけてきたときシンデレラは倉庫に隠れていた
そういうことになる。
- 464 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:52
- 気づかない王子様はそのまま見張りのとこへ行って聞く。
『いま、女の子がここを通っただろう?』
ってね。でもそのときはまだシンデレラは通ってなかったんだよ。
その後もシンデレラはしばらく動けなかった。
女の子たちがいたからだ。
結局パーティがお開きになってみんなが帰り始めたのにまぎれて
シンデレラはお城を抜け出したってわけ」
私はここでひと息ついた。
そのすきにののが質問する。
「それって、あいぼんがさっき言ってた説?」
「そう、実はまだ会場から抜け出してはいなかったって説」
「でも……あいぼん言ったじゃん。
会場から出ていないならどうしてシンデレラの靴が外にあったのか
それが解決しない。
って。
今の話だとシンデレラが倉庫にいる間に
王子様が外で靴を発見したことになる。おかしいよ」
「実はそのときの私の考えが間違ってたんだ」
- 465 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:52
- 風邪でまいっていたのだろう。
私はどうかしていた。
「じゃああいぼん、どうして靴だけが外にあったの?」
「シンデレラはお城の中にいた。
シンデレラの靴は外で見つかった。
結論は
シンデレラは靴を履かずにパーティに出席した
そういうことになる。
つまり最初から靴は外にあったんだよ」
「何だって!?」
ののはもう一度固まった。
「まさか……そんなこと……」
「城内はきっと絨毯が敷いてあるよね?
どこの国だか知らないけどさ。
だから靴なんかなくても歩けるし踊れる。
ちょっとぎこちないかもしれないけどね。
それに案外、他人の靴なんて見ないもんだよ。
ましてシンデレラは
スカートの部分が花のようにふんわり広がったドレスを着ていた。
周りはシンデレラが裸足でも気がつかなかったんだよ」
- 466 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:54
- 「待って待って、シンデレラはどうして靴脱いでパーティに出たの?」
「……さぁ。借り物の靴でしかもハイヒールでしょ?
足が痛くなりそうだよね」
私は興味ないという風に首をかしげた。
ののは
何かを考える仕草をする。
「んー、確かにそれなら説明できるなぁ」
「何が?亀ちゃんの失踪?」
「あ……」
ののが三度固まった。
「あいぼんなんで知ってるの?エスパー?」
「そ、エスパー」
「えぇぇぇぇぇ!?」
「なんてね。
真里先輩から聞いたんだよ」
「なんだー」
- 467 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:54
-
「じゃ絵里、れいなたちが追いかけてったとき階段のところにいたの?」
さゆみの質問に絵里はうなずいた。
「すぐに外に行ったんじゃないんだ」
「階段の、途中のところで電話に出てた」
「それで藤本先輩も見てなかったのか……」
「そうだね。で私が会場に入る前に隠した靴を2人は発見した。
で私がもう出て行ったものと勘違いしちゃったんだね」
「でも本当は私とれいなが小川さんに聞いたとき絵里はまだ……」
「外には出てなかったの」
「ねぇ」
それまで黙って話を聞いていたれいなが口を挟んだ。
「靴を最初から履いてないのはわかったけど
なんでそんなことしたの?」
絵里は
「ほらっ」
とスカートを捲り上げて自分の足を見せた。
- 468 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:55
- 「ハイヒールなんて初めて履いたから
あっちこっちが痛くなっちゃった。
こんなんじゃ踊れないもん」
「それで茂みのところに隠してパーティに?」
「うん。そうじゃなきゃ会場から走って出て行くことなんてできない。
借り物の靴なのにひどいって思ったでしょ?」
「……いや、そういうわけじゃないけど」
「私、れいなとかさゆとかと踊るのすっごく楽しみにしてたんだ。
靴が痛いから踊れないなんて嫌だった……。
スカートが長いからきっと裸足でもバレないだろうと思って
靴を隠して会場に入ったんだ。
でも……結局、急用が入っちゃった」
「そういえば絵里」
「ん?」
「あれ、誰の携帯だったの?」
「え?」
「絵里の携帯、受付にあったやん」
「うん。これは預かり物。近所の舞ちゃんの。
舞ちゃん、一輪車教室に通ってるんだけど
舞ちゃんの両親が出かけちゃってたから私が連れてった。
そのとき預かったまま持ってきちゃってたんだ。
このドレス、内側にポケットあったからさ。
着るときに慌てて自分のと間違えて入れちゃったみたい。
鞄に自分の携帯入っているの気づかないでそのまま受付に預けてた」
- 469 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:55
- 「それじゃ、あの電話は?」
「うん、舞ちゃんから」
「絵里、ディスプレイ見て青い顔してたけど……」
「違う違う。携帯出したら自分のじゃなかったからびっくりしたの。
しまった、舞ちゃんに返さなきゃって。
舞ちゃん、自分の電話番号は覚えていたけど
お母さんの携帯番号はこの電話のメモリに入れてて
連絡取れなかったんだって……」
「そっか……」
「はぁぁ、せっかくみんなと踊れると思ったのに」
絵里はがっくりとうなだれた。
「絵里!」
さゆみが絵里の手を取った。
「今から私の部屋来ない?」
「え?」
「踊ろうよ!ちょっと狭いけど。ね、れいな」
「うん!」
れいなが絵里に微笑みかけると
絵里にもやっと、笑顔が戻った。
- 470 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:55
- 「それじゃお大事にねあいぼん!」
「おう、来てくれてありがとねー」
「ううん。のんもさ」
ののは部屋のドアを開けながらこっちを見て言った。
「ずっと会いたいって思ってたから」
「のの〜……」
私は涙声になってベッドから飛び起きる。
「あ……あいぼん大丈夫なの?」
私は走って
ののに抱きついた。
「だめ。風邪のせいで涙腺弱くなった……」
こんなささいな気づかいで涙ぐんでる私の背中に
そっとあたたかい手が添えられた。
「こらっ、ちゃんと寝てなさい!」
「……はい」
- 471 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:55
- わたしはしゅんとなってベッドに戻る。
「しっかり治して!」
「うん」
「しっかり治してよ……」
ののは満点の笑顔で言った。
「また一緒に遊び行きたいからさ!」
「おう!」
そうしてののは帰っていった。
お見舞いといいながらクイズクイズとなんやかんや、
ほんっとにぎやかだこと。
ののは私の部屋に
ミックスナッツとホットレモンと変なクイズと
元気とあたたかさを残して帰っていった。
- 472 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:56
- よーし、さっさと風邪を治して
ののと遊びに行くぞー!
ねぇのの、
「また来てよね。
元気になるからさ……」
私は誰にともなくそうつぶやいて
ベッドの中にもぐりこんだ。
- 473 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:56
-
―シンデレラ失踪事件 完―
- 474 名前:シンデレラ失踪事件 −解答編− 投稿日:2004/12/23(木) 18:59
- >>459
はじめましてー。
短編集というか謎が錯綜する複数の事件を扱う頭がないもので;汗
それで短編になるんですよ。
今回はこんな感じになりましたがいかがでしたでしょうか。
>>460
はてさて、この解答で納得いただけたか
結構不安です。
次回もよろしくおねがいしますね!
- 475 名前:いこーる 投稿日:2004/12/23(木) 19:00
- ここまでお付き合いいただきましてありがとうございます。
次回は「白雪姫毒殺事件」を予定しております。
こうご期待。
- 476 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/23(木) 20:04
- 当たったー。
なるほど、疑問も全部すっきり行きました。
毒殺事件も期待してます。
- 477 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/28(火) 22:46
- お疲れ様でした。
成る程、事件の謎が全て解けました。難しいですな〜〜。
次回は白雪姫、しかも毒殺ですか?ってか誰か死ぬんですか?
シンデレラといい、白雪姫といい、昔話になぞられた事件は面白いです。
次回更新も待ってます。引き続き頑張って下さい。
- 478 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/07(金) 23:46
- ん〜・・・いつもながら当たらん。。。
次回はいつになく物騒なタイトルですね。
更新お待ちしております。
- 479 名前:いこーる 投稿日:2005/01/08(土) 11:14
- 本年もよろしくおねがいします。
それとレスありがとうございます。
>>476
どうもー、次もあててくださいね。
くそっ、今度こそ騙して……無理だろうな。
よろしくおねがいします。
>>477
ありがとうございます。
いや、白雪姫は生き返るからご心配なく。死にません。
実は昔話になぞらえたタイトルでシリーズ化しようかと考えたこともあったんです。
また思いついたらやるかもしれません。
>>478
物騒なのはタイトルだけの予定ですからご安心ください。
あくまでこののりでやって行きたいと思います。
それでは
Wクエスチョン The other Case
どうぞ。
- 480 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:16
-
白雪姫はりんごを8つに切って7人の小人と食べました。
みんな美味しそうに食べました。
でも倒れたのは白雪姫だけでした。
なぜでしょう?
- 481 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:16
-
白雪姫毒殺事件
- 482 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:17
- 38.5℃
また熱が出てきたみたいだ。
私は薬を飲んでりんごジュースを飲み干すと布団にもぐりこんだ。
ののがお見舞いから帰っていったその数時間後。
「へっくしょん!」
私の病状はまた悪化してきてしまった。
そこへ
ピリリリリリリリ
携帯がなった。
ピリリリリリリリ
「はいはい」
ピリリリリリリリ
携帯を取る。
ピリリリリリリリ
ののからだ!
- 483 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:17
- 「もしもし」
「あーあいぼん起きてた?」
「寝るとこだった」
「すごいのすごいの!」
「何?どーした?」
「りんご食べて腹痛になったって話知ってる?」
相変わらず
説明の下手なコだこと。
「はぁ?」
「タウンニュース見てない?」
「見てないよ」
こちとら38.5℃のホットな女だぜ。
地元新聞なんて読む元気はありません。
「ねね!すぐ見てすぐ!」
ののが急かす。
よほどのことなんだろうと思って
私はベッドから降りてタウンニュースを手にとった。
- 484 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:18
- 「ああ、あったあった」
「あったでしょ?」
<りんごで腹痛?>
センスのないヘッドラインの記事が載っていた。
事件の概要はこうだ。
地元のハロプロ幼稚園に通っている男の子が午後、腹痛に襲われる。
ほぼ時を同じくして、同じ幼稚園に通っている女の子も腹痛に襲われた。
たまたま2人同時にお腹をこわしたのだろうと思っていたらなんと
700メートル離れた所にあるベリーズ幼稚園でも2件
同じような腹痛が起こっていた。
4人のお弁当に共通して入っていたおかずはりんご。
はてさてりんごでお腹をこわしたのでしょうか。
とまぁそんな記事にしてもしなくてもいいような内容だった。
- 485 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:18
- 「さっきれいなから聞いたんだけど、この事件の犯人が見つかったって」
「おめでとう。よかったね。じゃおやすみ」
「わーっ待て!切るな!」
「なによもう」
「あいぼんに問題です。
この事件の真相はなんだったでしょう?」
やっぱり。
ののはクイズを出したかったのだ。
私の親友ののはクイズ大好き少女。
見聞きしたものをなんでもかんでもクイズにして私に解答を求めてくる。
「あんなぁのの、うち風邪ひいてんねん」
「お大事に……」
じゃなくて
「くだらない用事で電話してくるな!!」
私は電話を切った。
- 486 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:18
- ん?
ののは今「犯人」と言っていた。
ということはこれは人がやったことだったのか。
でも
一体どういうことなのだろう。
「犯人」というからには単にりんごが腐っていたということではない。
4人の園児。
しかも2つの違う幼稚園に通う
多分お互いに関係のない4人の園児のりんごに毒でも盛ったのだろうか。
なぜ?
なんのため?
ま、いいや。
私には関係ない。
1分後にまた電話がかかってきた。
- 487 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:19
- 「もしもし」
「あいぼん!ごめん切れちゃった」
「いや切ったの」
そういうと受話器の向こうでののが
ぎゃーぎゃー騒ぎ出した。
「あーうるさいうるさい」
この分だとクイズに答えるまで解放してくれそうにない……。
風邪だってのに。
「ちょっと待って、考える時間をちょうだい」
「どのくらい」
まぁこの程度のクイズなら……
「5秒」
- 488 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:20
- 記事に書いてある内容で腹痛の原因は推測可能だろう。
ののは黙る
1.2.3.4.5
「チン!」
なんだよチンって……
「よーし答えを聞かせて」
「はいはい、わかりましたよー」
- 489 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:20
-
「思考担当 桃子です!」
「捜査担当 雅です!」
「語り担当 茉麻です!」
うちらキッズ探偵団!
と3人はポーズをとった。
残りの5人がぽかんとした表情で見上げている。
- 490 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:22
- 「あんま……かっこよくないよ」
と苦笑いの佐紀。
「探偵ごっこ?それよりさ、ゲームやろうよ!」
と冷たげな友理奈。
「ゲーム!ゲーム!ゲーム!」
完全無視を成し遂げた梨沙子。
「ねぇちなこは?」」
はなから聞いてない舞波。
3人は
浮いていた。
<この場面は
亜依と希美が電話で話したよりも半日前の千奈美の部屋>
- 491 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:23
- 今日は千奈美の部屋に遊びに来ていた。
家の人がみんなおでかけするので自由に使っていいとのことだった。
仲間が8人も揃ったのでずいぶん窮屈ではあったが
みんなでわいわいと楽しかった。
「ねぇ桃、探偵ごっこだめだって」
「よーしここはうちらの能力を見せつけてやろう!」
桃子は椅子の上に立ち上がる。
「諸君!」
桃子が叫ぶ。
一堂しんと静まって注目した。
「さっき舞波が千奈美ちゃんを探してたね?
私たちの推理でちなこの居場所を見事推理して……」
「キッチンでりんご剥いてるよ」
梨沙子があっちあっちと指差している。
「ちょうど8人だから8つにわけて食べようって」
桃子はがっくりと肩を落として椅子から降りた。
- 492 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:23
- 7人で待っているとエプロン姿の千奈美がやってきた。
りんごがのった皿を持っている。
「はいはいお待たせしましたー」
「きゃーちなこエプロンかわいい!」
桃子は
「りんご剥くのにエプロンかよ!」
ぼそぼそとつぶやいた。
皿の上にはりんごが
「あれ?足りないよ?」
7つしかない。
千奈美はへへっと笑って
「私はもう食べちゃった」
と言った。
- 493 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:23
- みんなの手が皿にのびて
無作為にりんごを取っていく。
「桃ちゃん食べないの?」
雅がりんごをしゃぐしゃぐやりながら聞いてきたので
桃子は皿に1つだけ残っていたりんごに手を伸ばして
「おいしい」
食べた。
千奈美が皿を片付けると
友理奈の意見が採用されゲーム大会となった。
変なゲームだった。
殺人事件が起こったり
悪霊に襲われたり
超能力者がでてきたり。
大量の蜘蛛に襲われるシーンが気持ち悪くて
桃子は画面から目をそらした。
- 494 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:23
- しばらくしてのことである。
千奈美が腹痛を訴え出した。
「いたたたたたたっ……」
お腹をおさえてうずくまってしまった。
「ちょっと横になって休んだら?」
佐紀がそう言って千奈美を寝かせた。
千奈美は苦しそうにしている。
「ねぇ」
雅が千奈美に聞く。
「なにか変なもの食べた?」
千奈美は首を振る。
「さっきのりんごしか食べてない」
「じゃありんごでお腹こわしたのかな?」
と梨沙子がつぶやく。
- 495 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:23
- 「ちょっと待って。りんごはうちらも食べたじゃん」
桃子が立ち上がって反論した。
「だから千奈美ちゃんのりんごだけ腐ってたんじゃない?」
「腐ったりんごくらい見ればわかるでしょう?
それに
うちらが食べたのは千奈美ちゃんと同じりんごだった。
1つのりんごを8等分して食べたでしょ?
それなのにどうして千奈美ちゃんだけお腹こわすの?」
「そんなの知らない。
でもりんごしか食べてないならりんごが腐ってたんだよ!」
「ちょっと2人とも!」
佐紀が梨沙子と桃子を順番に睨む。
「大きな声出さないで!ちなこが寝てる」
「ごめん……」
友理奈が
「うちら部屋をでてよう。
7人も看病してたら落ち着かないでしょう」
そう言ったので
佐紀と舞波を看病に残して
あとのメンバーは台所に移動した。
- 496 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:25
- 「それにしても変だよ」
桃子が言う。
「1つのりんごを8等分した。
どうして千奈美ちゃんだけお腹こわすの?」
「テレビみたい」
そう言ったのは茉麻。
「え?」
「おなじ大判焼きを夫婦で2つにわけて食べたら
夫だけが死んでしまったって話。
一昔前に流行った刑事ドラマ」
茉麻が言っているのは
2枚目俳優演じる警部補(のちに警部に昇格)と
まぬけな部下のコンビが活躍するドラマだ。
「あれ今川焼きじゃなかったっけ?」
友理奈が聞く。
「さぁ、なんだっけ?」
- 497 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:25
- さらに茉麻は続ける。
「推理小説でいう『毒殺』ものだね」
「毒殺?」
「誰が食べるかわからないようなものに毒が盛ってあった。
一見無差別殺人みたいだけれど犯人は確かに標的を殺した。
さてどうやって毒を標的にだけ飲ませることができたのか?
そういうジャンルの謎解きを『毒殺』ものっていうんだ」
「茉麻ちゃんフェル博士みたい」
と友理奈が言った。
「フェル博士は密室講義だよ」
「じゃあ、そらち……なんとかって」
「空知はアリバイ講義。鳴海雄一郎はダイイング・メッセージ講義」
「……マニアック」
「ねぇ茉麻ちゃん」
桃子が聞いた。
「推理小説ではこういう場合、どんなトリックがあるの」
「いろいろあるんだよ。
例えば皿やフォークに毒が塗ってあった」
「でも……」
- 498 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:26
- 桃子が反論する。
「今回はみんな手で食べてたよね。
まさか手に毒を塗っておいたなんてこともないだろうし」
「ねぇ桃ちゃん」
雅が横から聞いてきた。
「千奈美ちゃんは本当に手で食べたの?」
「え?」
「だって私たち誰も千奈美ちゃんがりんごを食べるとこ見てないじゃん」
桃子はうなづいた。
千奈美がりんごを持って部屋に入ってきたとき
すでに千奈美のりんごはなくなっていた。
―――「私はもう食べちゃった」
そう言っていた。
「千奈美ちゃんだけはフォークか何かを使ったのかも」
桃子は首を振った。
- 499 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:26
- 「考えてみてよ。
なんで千奈美ちゃんは先にりんごを食べたの?」
「えっと千奈美ちゃんはりんごを剥いててそのついでに……」
「私もそう思う。
剥いてる途中につまみぐいしたくなってパクって食べたんだ。
それなのに
わざわざフォークを出して食べるかな?
千奈美ちゃんは私たちにもフォークなしでりんごを出した。
つまり手で食べることに抵抗感とかないってことでしょう。
そんな千奈美ちゃんがつまみぐい程度でフォークなんか使わないよ」
雅は納得したようにうなずいた。
「茉麻ちゃん他には?」
「2つが混ざると毒になるような物質を別々の食品に入れておく。
被害者だけがその2つを食べた。足し算トリックだね。
逆に2つを食べると毒が消えるようにしておいて
みんなが2つを食べたのに被害者だけが
片方しか食べなかったっていう引き算トリックもある」
- 500 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:26
- 「足し算っていっても千奈美ちゃんはりんごしか食べてないから違うね。
こんなところでウソをつくこともない。
それから引き算トリックも他のみんなが食べて
千奈美ちゃんだけ食べなかったものなんてのもないから
これもやっぱり違うよね」
「わかった!!」
友理奈が立ち上がって言った。
「わかった。わかったよ」
「何?」
「茉麻ちゃんの言っていた引き算トリックだよ」
「だからそれは……」
「桃ちゃんさっき
千奈美ちゃんだけ食べなかったものはない
って言ってたよね。それでこの説は違うって」
「うん」
「でもそうじゃなかったら?」
「え?どういうこと。うちらりんご以外にはなにも食べてないじゃん」
「そう。そのとおり。だから
千奈美ちゃんはりんごを食べなかった
そういうことなんだよ」
- 501 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:27
- 「はぁ?」
みんなの目が見開かれた。
「千奈美ちゃんがりんごを食べるとこを誰も見てない。
千奈美ちゃんがそう言っていただけだ。
でも本当は千奈美ちゃんは食欲がなくてりんごを食べなかったんだ」
「じゃあ、なんで食べたなんてウソをついたの?」
「千奈美ちゃんの家のりんごを千奈美ちゃんだけが食べないなんて言ったら
みんなが気を使っちゃうでしょう。
だから千奈美ちゃんは自分はもう食べたってウソをついたんだよ。
だから生ゴミ入れを見れば食べてないりんごが入っているはず」
「ふぅ……」
雅が大きくため息をついた。
「で?
そのりんごに解毒剤が入ってて食べた私たちは助かったけど
りんごを食べなかった千奈美ちゃんが腹痛?
おかしいよ」
「なんで?」
- 502 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:27
- 「じゃあそもそも千奈美ちゃんは何で腹痛になったの?
引き算トリックってのは2つの食品のうち1つだけ食べた人物に
毒が回るっていうトリックでしょう。
でもりんごを食べてないとしたら千奈美ちゃんは
何も食べてない
ってことになるじゃん。おかしいよ」
「……」
雅に反論され友理奈は黙った。
桃子は宙を見つめている。
しばらく
沈思黙考。
- 503 名前:白雪姫毒殺事件 −問題編− 投稿日:2005/01/08(土) 11:27
- ……。
そして
口を開いた。
「ねぇ雅ちゃん」
「何?」
「生ゴミ……探そっか」
「え?」
続く。
- 504 名前:いこーる 投稿日:2005/01/08(土) 11:29
- 今日はここまで。
しっかしあんまり白雪姫じゃないですね。
登場人物8人てのとりんごってだけ……
次回探偵編
- 505 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/08(土) 19:07
- お疲れ様です。
今回はキッズメインのお話ですか?林檎を食べて腹痛、これまた本格的で難しい
問題になりましたね?(でも、死んではいませんよね?一安心。)
一昔前に流行った刑事ドラマ(古○任○郎)は自分もかなりはまってました。
あれって最後、鯛焼きだったって言うオチだった・・・・・・、いえいえなんでもありません。
ちょっと加護辻の事件も気になりますが、早く続きが読みたいです。
次回更新頑張ってください。
- 506 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 00:57
- おー!ベリーズ探偵団(?)が始まってたのか!嬉しいなぁ
文章も読みやすいし話も面白いし、感服です
いつも犯人当たらないんですが、いつも続き楽しみにしてます
- 507 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 19:32
- 遅くなりましたが更新おつです。
やっぱりわからん。。。
ところでWのミュージカル、(不思議少女探偵キャラ&メル」、どっちかと言うと推理する役
あいぼんのようでこの小節を思い出しました。
関係者が読んでる・・・なんてことはないですよね〜。
- 508 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:07
- 「けほけほ」
「あいぼん大丈夫?」
「大丈夫じゃないからクイズはまたこんど……」
「じゃーさっさとクイズ終わらせちゃおう!ね!」
ね!じゃねぇよ。
「確認事項があります。YES/NOで答えて」
「OKだよあいぼん」
私は受話器を握りなおしてまた話し出す。
「腹痛の原因は間違いなくりんごである」
「YES」
「4人のほかにりんごで腹痛になった人はいない」
「YES」
このとき実はもう一人
徳永千奈美ちゃんという小学生も
同じ原因で腹痛をおこしていたのだが
この時点では私もののもそれを知らなかった。
千奈美ちゃん腹痛の事実は私の推理に関わらない。
- 509 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:08
- 「犯人は4人の園児をターゲットにしたわけではなく人を無差別に困らせようとしていた」
「……ちょっと違う」
「へ?違うの?」
「んとね、4人を狙ったわけじゃないってのはYESだよ」
「じゃあどこが違うのよ!」
「ノ―コメント」
このやろう。
「けほけほ」
まぁ
これでクイズの答えはほぼ固まった。
- 510 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:08
- 「なぁのの。これから答えを言うよ」
「うん」
「本格推理小説によくある
読者への挑戦状を挿入するとしたらここだろうね」
「そうだね。
必要な情報は与えられた。真相やいかに?
ってやつだね」
「今回のクイズで言うなら
園児たちは何が原因で腹痛になったのか?
それを考えよ!ってとこかな」
……りんごだろ?
とか突っ込まないように。
- 511 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:09
-
<場面は再び千奈美の家へ>
雅は台所を探していた。
友理奈が千奈美はりんごを食べていない説を唱え
生ゴミをチェックすればわかると主張した。
それを受けてか、あるいは別の理由でか
桃子が生ゴミを探そうと言い出した。
こうなると生ゴミ探しは
捜査担当である雅の仕事である。
雅は思う。
自分の役割は思考担当の桃子に必要なデータを提供すること。
リンカン・ライムの目鼻となって現場検証をするアメリア・サックスだ。
- 512 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:09
- まず流し台のシンクを確認する。
三角コーナーは置かれていない。
シンク以外の場所に移動したのかと思ってあちこち探してみた。
りんごを切ったであろう包丁とまな板が置いてあった。
スポンジたわしが2セット、食器用とシンク用だろう。
2つ並んだ直方体の物体は牛乳パック。
あと流しの周囲にあるものといえば
食器用洗剤とハンドソープくらい。
三角コーナーはどこにもなかった。
「ねぇ、この家三角コーナーがない!」
すると梨沙子が
「うちも使わないよ」
と言う。
「どうするの?」
「流すところに全部入れちゃう」
「え?流すところって排水口?」
梨沙子はうなずいた。
- 513 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:10
- 「それじゃ排水口が詰まっちゃうじゃん」
「スイッチを入れるとね、生ゴミが全部なくなるんだ」
ははぁと雅は手を打った。
梨沙子の家の台所には生ゴミ粉砕機が備わっているのだ。
排水口に生ゴミを入れると粉々にして処理してくれる。
雅は梨沙子がさきほど台所のことを「キッチン」と言っていたのを思い出した。
そういう高度なシステムを持ったものは「台所」よりも「キッチン」と呼びそうだ。
雅は念のため排水口を開けて確認したが
通常の排水口だった。
粉砕機のような高級な装置はない。
「あれぇこの家、どこに生ゴミ捨ててるんだろう?」
「ないの?」
「うん」
- 514 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:10
- 「ゴミ箱見た?」
「え?」
雅は梨沙子を見る。
「燃えるゴミの中に入れちゃってるとか」
「臭くなっちゃうよ」
「だからビニール袋に入れて口をしばるとか」
「エコじゃないなぁ」
と言いながら雅はゴミ箱を見た。
しかし生ゴミはない。
「たまたまここんとこ生ゴミが出なかったんじゃない?外食続きで」
「梨沙子ぉ。少なくともりんごの皮はあるでしょう?
さっきちなこが剥いてたんだから」
「そっか……じゃ他の部屋は?」
「ええ?」
雅は驚いた。
台所以外の場所に生ゴミを置く家なんてあるだろうか。
「あるわけないじゃん」
「そーお?じゃあ肥料にしてるんじゃない?」
「うーん、それらしい道具がないよ。
鉢植えもないし……」
- 515 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:10
- しかし
こうなると生ゴミは一体どこへいったのだろう。
ちょっとしたことなのだが
台所の使い方は家によってかなり違う。
千奈美の家のキッチン・ハビットがつかめれば
生ゴミの場所がわかるはずだ。
桃子の知恵を借りようかと雅は一瞬思った。
いや、
捜査担当だからって頭を使えないわけじゃない。
現場で証拠品を嗅ぎ分けるには
すぐれた観察力と分析力。
自分にだってできる、と雅は気合を入れる。
雅はどこかひっかかるものを感じた。
どこか、
自分が見たものの何かが気になるのだ。
りんごを切ったであろう包丁とまな板。
スポンジたわしが2セット。
2つ並んだ直方体の物体は牛乳パック。
食器用洗剤。
ハンドソープ。
- 516 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:11
- 直方体?
雅は牛乳パックに目を向けた。
パックは確かに直方体だった。
「ねぇ梨沙子、牛乳パックの上って三角だよねぇ」
「うん……あっ、このパック上をつぶしてある」
牛乳はふつう冷蔵庫に入れる。
ここに出ているということは
飲み終わった牛乳パックなのだ。
「飲み終えたパックが2本も上を潰して置いてあるということは……」
雅はパックを開けた。
パックの中にはりんごの皮が入っていた。
「桃ちゃん!あったよ!」
- 517 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:11
- 「牛乳?」
「そう、このパックの中に入ってたんだ」
「へぇ……」
「牛乳パックっていうとリサイクルする家が多いけどね
そのときは開いて乾かして重ねて出す。結構面倒なんだよ。
だからこの家では使用済みのパックを生ゴミ入れに使ってたんだ」
「エコじゃないなぁ」
「私もそう思う。
でもビニール袋に入れて燃えるゴミに出すよりはいいんじゃない?
パックは紙だから燃えるゴミだし」
「ありがとう雅ちゃん」
桃子はパックの中からりんごの皮を取り出していった。
桃子は皮を一枚一枚並べていく。
レモン形というにはやせすぎの
どちらかというと笹の葉状のりんごの皮が
ぜんぶで11枚。あとは種と芯があった。
「りんごはないね。千奈美ちゃんはりんごを食べたんだよ」
梨沙子がそう言った。
- 518 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:11
- 「そうだね。千奈美ちゃんはやっぱりりんごを食べていた」
桃子はうなずくと
「……証拠は揃った」
小さくつぶやいて
それから
「まあ、ちょっと来て」
茉麻を呼んだ。
「桃ちゃん?ひょっとして腹痛の原因わかったの?」
「うん、わかった」
桃子は小声で
茉麻に何かを伝えていった。
茉麻は
「佐紀ちゃん!舞波ちゃん!」
佐紀と舞波を集める。
- 519 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:12
- 「ここからは
語り担当の私が説明します」
一堂が茉麻に注目した。
「推理小説でいう読者への挑戦状ってやつだね」
そして茉麻は
漫画の決まり文句を言った。
「謎は全て解けた、犯人はこの中にいた!」
- 520 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:12
- 「……犯人じゃないから」
桃子はちっちゃく突っ込んだ。
「……しかもセリフちょっと違うから」
重ねて突っ込んだ。
茉麻は気づかずに続けた。
「じっちゃんの名にかけて!」
「……お前誰なんだよ」
三度突っ込んだ。
- 521 名前:白雪姫毒殺事件 −探偵編− 投稿日:2005/01/15(土) 13:12
-
かくして
キッズ探偵団は千奈美腹痛の謎を解き
亜依も園児腹痛事件の解答に至りました。
亜依には化学・薬学等の専門知識はありません。
したがって彼女が毒物の正体を言い当てることは当然不可能です。
また亜依のもとにある情報では犯人の名前までを指摘することは不可能です。
亜依の解答はあくまで腹痛の原因を説明したものであることを明記しておきます。
- 522 名前:いこーる 投稿日:2005/01/15(土) 13:13
- 次回解答編です。
4人の園児、ならびに千奈美の腹痛の原因は何か?
読者のみなさま、メル欄回答ありにしますので
答えのわかった方、メール欄に答えを書き込んでください。
- 523 名前:いこーる 投稿日:2005/01/15(土) 13:17
- >>505
古畑さんの扱っていた事件て
ずいぶん本格向けの題材だったんですよね。
自分もかなり好きでした。
>>506
ありがとうございます。
白雪姫だと8人必要ででは彼女らの出番だろうと
ご登場いただきました。
これからもよろしくおねがいします。
>>507
あいぼんが探偵役ですか。
まぁ2択でどっちといえば加護さんの方がはまりそうですね。
ミュージカルも楽しみになってきました。
- 524 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/17(月) 23:02
- お疲れ様です。
おわ〜〜〜、またも良い所で終わっちゃっいましたね。
う〜〜〜〜ん、今まで結構読んできているのに、未だにカラクリが分かりません。
メル欄解答ありでも、答えが思い浮かばなくちゃどうしようもありませんね。
次回更新まで、気長に足りない頭で考えます。
- 525 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/18(火) 02:47
- FD@?JDW
JETE QKDH 9YW@EJR
- 526 名前:展開 投稿日:2005/01/18(火) 17:13
- こんにちは はじめまして
一気にここまで読ませていただきました。
毎回のあいぼんの大活躍!!のののフワフワしたところも!
本当に楽しみにしています
しかし、今回の謎も自分には難しいくて orz
桃ちゃん、あいぼんの活躍をまつしかない!!!!
- 527 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:23
- 「じゃーあいぼん、いよいよ解答編だね。
4人の園児の腹痛の原因は何?」
「オーケーお答えします」
私は
一つ咳払いをして続ける。
「こういう事件は難しいよね。
シャーロック・ホームズもこういう変哲のない事件の方が難しいと言ってる」
「そうなの?」
「うん、怪異や謎があればそこから解答を探すことはできる。
でもどこが謎なのかわからないような事件は
そもそもどこから考えたらいいのかわからないから難しいんだね」
「うーん、確かそうかもな」
「だから、まず不思議に思うこと。
それができれば事件は解ける」
いや、私謎解きは嫌いですよ。
クイズ魔と四六時中一緒にいるせいで答えを出すのが早くなっただけで……
- 528 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:24
- 「お弁当のりんごを食べて園児たちは腹痛になった。
この事件で私は不思議に思ったことがある」
「不思議に思ったこと?」
「そう。お弁当のりんごって普通りんご丸々一個は入れないでしょう?」
「そりゃそうだ。大きすぎる」
「1/8サイズ、大きくても1/4サイズだよね」
「うん」
「ここに疑問点がある。それは
残りの部分を食べたときはどうして腹痛にならなかったのか
ってことだ」
ののは「ほぇ」っと間抜けな声を出した。
「ちょっと想像してみよう。
朝、子どもに持たせるためのお弁当を作る」
「うんうん」
「でりんごを切る。仮に1/8サイズとしておこう」
「うんうん」
「じゃあ残った7/8はどうするか?」
「え?」
「まさか残りの部分を捨てたりはしないよね」
「そうだね。切っちゃったなら食べるだろうね」
- 529 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:24
- 「そう」
私はちょっと間をあけて説明を再開する。
「たぶん朝ごはんに食べる。
りんごってのは切ったあとで放置しておくと変色しちゃう。
だから普通切ったらすぐに食べる」
塩水に浸しておけば変色は防げるが
そもそも塩につけた時点で味が変わってしまう。
特別な理由がないのなら
りんごは切ったら時間を置かずに食べた方がいい。
「お弁当にりんごを入れたのなら
その前後に残りのりんごを家族が、
あるいは本人が食べてるんじゃない?」
「うん、確かにそうだ」
「それなのに
腹痛になったのはお弁当のりんごを食べた4人だけ」
「確かに変だ……」
「……」
- 530 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:24
- ……変だ。
りんごじゃなくてののが。
「どうしたのあいぼん?」
「ののさんや、キミは答えを知っているんだよね?」
「うん、もちろん」
「それでどうしてそんなに驚いたり疑問に思ったり……」
まさか私に合わせてくれているのだろうか。
「いや、犯人を知ってるだけで
あいぼんみたいに謎解きをしたわけじゃないから……」
「ああ、そう」
途中式を理解せずに解答だけを丸暗記したわけね。
閑話休題
「つまり今回腹痛になる条件は
お弁当のりんごを食べた、ということだ」
私は「お弁当」のところを強調して言った。
- 531 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:25
- 「さてのの。
お弁当のりんごと家で食べるりんごの違いは?」
「……味?」
違います。
「味は一緒だよぉ」
「ええ?なんか違う気がするよ」
「そうじゃないんだ。
お弁当のりんごにはついていて
そうでない場合はついていないものってなに?」
「お弁当にだけついてるもの?」
「ヒント。お弁当ではウインナーをタコの形にして入れる」
「うん、のんもよくやるよ。
あとのんはりぼん型餃子とか……」
「関係ないから!」
「……ごめん。
で?お弁当のりんごの何が特別なの?」
こいつヒント何もわかってないじゃん。
- 532 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:25
- 「とにかくタコさんウインナーって
食卓じゃあんまりやらないよね。
そういう飾りはお弁当ならではって感じだ。
タコさんウインナーだけじゃない。
お弁当でよくやる飾りといえば
うさぎさんの形をしたりんご
だね」
「うさぎさん?」
「そう。皮を長い耳みたいにしてお弁当に入れる。
よくやるでしょう?」
「うん……あっ!
お弁当のりんごについてて
食卓のりんごについてないものって……」
「そうです。
りんごの皮だ。
園児たちはりんごの皮を食べたために腹痛になってしまったんだよ」
- 533 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:25
-
「謎は全て解けた、犯人はこの中にいた!」
茉麻はそう言って
牛乳パックを指した。
「牛乳パックの中?」
「パックの中にあったのって……」
茉麻はうなずいた。
「そう、りんごの皮だ!
千奈美ちゃんを腹痛で苦しめた犯人は
りんごの皮だったんだよ」
「ええ?」
「今回の事件の疑問点は
8人でりんごを食べたのにどうして1人だけが腹痛になったか?
そういうことだったよね。
その解答は単純。
千奈美ちゃんだけ食べたものがある
私たち7人は食べてないものがね。
それで千奈美ちゃんだけがお腹をこわした。
ね、簡単でしょう」
- 534 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:25
- 「つまり……」
佐紀が横から発言した。
「千奈美ちゃんだけ食べたものってのが、りんごの皮だったわけね」
「そう。
だから千奈美ちゃんは『りんごしか食べてない』って言ったんだよ。
皮も食べたなんてわざわざ言わないもんね」
「ちょっと待って……」
友理奈が手をあげて質問する。
「千奈美ちゃん、どうしてりんごの皮なんて食べてたの?」
「まさか……皮だけを食べたんじゃないよ。
切ったりんごを皮付きのまま食べた。
そういうことだ」
「はぁぁ?」
全員
桃子と茉麻以外の全員の目が点になる。
「だって、ちなこ皮を剥いてたじゃない」
と梨沙子が聞いた。
- 535 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:26
- 友理奈もそれに加わって言った。
「そうだよ。部屋に持ってきたとき皮が剥いてあった。
ちなこのりんごだけ皮がついていたなんておかしいよ」
うんうんと梨沙子がうなずいた。
友理奈が続ける。
「8等分したりんごの1つにだけ皮がついてた?
そんな器用な剥き方できるの?
ていうかなんのためにそんな剥き方したの?」
茉麻は一堂をゆっくりと見渡す。
そして説明をはじめた。
「キッチン・ハビットだよ」
「え?」
「台所での作法は家ごとに結構違う。
でも私たちは
当たり前すぎてそういうことに気づかないことが多い。
私の家ではね、
やかんに水を足すとき蓋を開ける手間を省いて
注ぎ口から水を入れるんだよ」
へぇっと佐紀が言った。
- 536 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:26
- 「私はつい最近までそれが当たり前だと思ってた。
でも多くの家では蓋を開けて水を入れてるって聞いて
ちょっとびっくりしたんだ。
我が家のキッチン・ハビットだね。
生ゴミを牛乳パックの中に捨てるのは
千奈美ちゃんの家のキッチン・ハビット」
茉麻はもう一度みんなを見回して言った。
「雅ちゃん、冷蔵庫にりんごまだあるかな?
取って」
「え?勝手に使っちゃっていいの?」
「あとで代わりを買ってくるから」
「わかった」
雅は茉麻にりんごを投げる。
「さて、
それでは徳永流りんごの切り方を実演します」
そう言うと茉麻は
まな板の上にりんごを置いて包丁を持った。
- 537 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:27
- 「友理奈ちゃんだったらどう切る」
「えっとまずりんごを持って皮を剥く。
りんごをくるくる回しながら」
茉麻はうなづいた。
「たぶん私たちみんなそういう切り方をしている。
でも徳永流は違うんだ」
茉麻はりんごのてっぺんに包丁を入れ
「え?」
縦に2等分した。
「千奈美ちゃんはこういうふうに
皮付きのまま2つに切った。
そしてもう一度」
茉麻はりんごを90°回転させると
再び真ん中から縦に切った。
まな板の上には4つ
三日月形のりんごがのっている。
- 538 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
- 「これで4等分。
種をくりぬいて……」
茉麻は斜めに包丁を入れながら
芯と種を取り除いた。
4つのりんごは舟のような形になった。
「皮ついたままそこまで切っちゃうの?」
と友理奈が聞いた。
「うん。
で、ここで皮を剥く」
茉麻は4等分の1つをとって
ちょうど舟の先端あたりに包丁を入れる。
そうしてすーっと反対の先端まで
刃を滑らせて皮を剥いた。
「ほらっ」
茉麻は皮をみんなに見せた。
「あっ!」
- 539 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
- 「笹の葉の形になった」
「そう。こうやって剥けば
パックに残っていた皮と同じ形になるんだよ。
この作業を刃の位置ずらしながら3度繰り返す」
しゅるしゅるとりんごの皮が剥けていって
3枚の笹の葉状の皮ができた。
「あとはこれを真ん中から切る」
茉麻は包丁を入れてりんごを半分に切った。
「これで私たちが食べた1/8サイズのりんごになるわけね。
実際やってみると結構簡単だよ。
こっちも」
茉麻は次のりんごに手を伸ばして同じように皮を剥く。
皮が6枚になる。
そしてりんごを半分に切る。
「こっちも」
次のりんごも剥く。
皮が9枚。
りんごを半分に切る。
- 540 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
- 「さて」
と言って茉麻は最後のりんごに手を伸ばした。
「ここで千奈美ちゃんは手順を間違えてしまった。
こういうふうに」
茉麻はザクッとりんごを半分に切った。
「皮を剥く前にりんごを1/8サイズにしてしまった。
仕方がないのでここから皮を剥く」
茉麻はりんごの片方を持って
皮を剥いた。
さきほどよりも若干細い
笹の葉状の皮が2枚。
「ほらっ」
茉麻はみんなにまな板を見せた。
全員の目が集まる。
「あ!」
「すごい!」
- 541 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
-
まな板の上には
笹の葉状の皮11枚。
皮を剥かれた1/8サイズのりんごが7つ。
皮をつけたままの1/8サイズのりんごが1つ。
「ここまで小さくしちゃうと
皮を剥くのが面倒になってきた。
もーいいや、残りの一つは自分が食べる分だし
皮つけたままで食べちゃおう!」
茉麻はりんごを食べる振りをした。
「というわけで
千奈美ちゃんだけが皮付きのりんごを食べてしまった。
私はいつも皮を最初に剥いちゃうけど
千奈美ちゃんは普段からこうやって、小さく切ってから剥いてたんだよ。
だから千奈美ちゃんの食べたりんごだけ皮がついてた」
「なるほど、そういうわけだったのか」
友理奈がほぉとうなずいた。
- 542 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
- 「ちなこ大丈夫かなぁ」
「お部屋、見てみようか」
「うん」
7人が部屋に戻ると
「ちなこ?起きたの?」
千奈美が座っていた。
下を向いている。
佐紀が駆け寄って聞く。
「大丈夫?まだお腹痛い?」
「ううん……もう平気」
「よかった」
千奈美は下を向いたまま。
「どうしたのちなこ?」
「みんな……ごめんね」
「え?」
「せっかくみんなで遊んでたのに
私のせいでつまらなくなっちゃったね」
「そんなことないよ!」
- 543 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:28
- そう
友理奈が言った。
「ちなこが寝てる間
うちら探偵ごっこしてたんだ。
結構おもしろかったよ!」
ねー、と
友理奈は桃子を見た。
桃子にはわかった。
友理奈が千奈美を励まそうとしている。
「うん、おもしろかったよ」
桃子も笑ってそう言った。
友理奈がさらに言う。
「よーし、ちなこも復活したことだしゲームやろう!」
「えー、あのゲーム怖いからやだー」
「じゃあ他のやつやろう」
「やろうやろう!」
彼女たちはゲーム大会の前に
コントローラー争奪戦でたっぷりと時間を費やしたのだった。
- 544 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:29
-
私は受話器を握りなおして話を続ける。
「たぶんね、お店に並んでいたりんごの皮には
この4つ以外にも変なものが塗ってあったんじゃないかな?
ただ普通に食べるときは皮を剥くから腹痛にはならない。
これは4人の園児を狙ったのではないんだよね」
「そう、その通り」
「でもののはさっき私の
『犯人は4人の園児をターゲットにしたわけではなく人を無差別に困らせようとしていた』
という質問に対して『ちょっと違う』っていう微妙な返事をしてた。
どこがちがうのか」
私はけほけほと咳をした。
構わず続ける。
- 545 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:29
- 「違っていたのは質問の後半部分だったんだよね?
犯人は『困らせよう』としたわけじゃなかったんだ。というか
犯人に悪意はなかった。
ただちょっとしたいたずらで
りんごの皮に変なものを塗ってしまったんだよね?」
「そう!その通り。
あいぼんすごい!」
「そういういたずらをするってことは
犯人は小さな子どもだった。
そうでしょう?」
そうでしょう?はちょっと誇らしげな口調で言う。
「正解!ばっちり正解!!」
やったー。
「ということでのの!
明日もお見舞い来てね」
「え?」
「いいでしょう!クイズに答えてやったんだから」
「あーはいはい、わかりました」
絶対来てよね。
寂しいんだから……
- 546 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:29
- 「ところでその犯人は何を塗ったの?」
「なんかね、ニスを塗ってたんだって」
「にすぅ?」
「うん。りんごにつやが出て光るからって」
なんとめちゃくちゃな。
そんな理由で店のりんごを……
「スーパーの子どもだったんだ。
最近ニスを発見して面白がっていろいろ塗ってたらしいんだよね。
最初は部屋のものとかだったんだけど、
とうとうお店のりんごにいたずらしちゃったってわけ」
「食べ物に塗ったらやばいってことくらいわからなかったの?」
ニスなんて大変じゃないか!
ものによってはキシレンやらトルエンやら
嗅いだだけで気持ち悪くなる物質が含まれてる。
皮に付着していただけだったから吐くことにはならなかったわけだけど……
そんなものを子どもが手にできるなんてどういう管理をしてるんだ!
「きっとそのコさぁ
りんごを皮付きで食べたことなかったんだよ。
だから皮を食べる人がいるなんて知らなかったんだ」
「でも、お弁当のりんごを見ることくらい……」
「そのコ、お母さんいないんだって」
……。
- 547 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:30
- 「だからウサギさんりんごをお弁当に入れてもらったことないんだよ」
「そうだったのか」
だからっていたずらが許されるわけではないが
そのコにもしっかり育って欲しいとか
柄にもないことを考えてしまう私。
これも風邪のせいだろうか。
「りんご切るときに気がつきそうなものだけどね」
「うん、だから4件ですんだんじゃない?」
「いや、4人も気づかなかったなんて……」
そこまで言って私は黙った。
りんご剥くなんて当たり前すぎて無意識にやってる。
うっかり洗い忘れることもあるのかも知れない。
薄くニスが塗ってあったって
見ただけではわからなかっただろうし。
「でのの、なんでそれをののが知ってるわけ?」
「さっき言ったじゃん。
れいなから聞いたの」
「れいなちゃんはなんで知ってたの?」
「亀井ちゃんから聞いたんだって」
「亀ちゃん?」
なんか、今日は亀ちゃんの名前をよく聞く。
- 548 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:30
- 「うん。亀ちゃんの近所の小学生で舞ちゃんっているでしょう?
最初あのコが疑われてたんだって。
で店の人が怒って
『保護者を連れてこないと警察を呼ぶ』
て騒ぎ出したらしいんだよね。
でその時、なぜか舞ちゃんの携帯を亀ちゃんが持ってて
亀ちゃんのところに連絡が入ったの。
舞ちゃん自分の携帯の番号は知ってても
お母さんの番号は携帯のメモリに入れちゃって覚えてなかったみたい。
で亀ちゃんが保護者の代わりに舞ちゃんを引き取りに行った。
亀ちゃんが着いたときにはもう誤解は解けて真犯人はわかってたみたい。
いくらなんでも舞ちゃん小学3年生だもん。そんないたずらしないよねぇ」
そっか。
そういう事情だったのか。
「れいなたち、亀ちゃんをスーパーまで追いかけていったらしいよ」
「へぇ……すごいな」
- 549 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:30
- 「というわけでした」
「なるほどー」
こうして
今日のクイズは終了した。
「ねぇあいぼん」
「うん」
「ありがとね。それと……」
「ん?」
「ごめんね、変なクイズにつきあわせちゃって。
風邪引いてるのに……」
のの……、
そんなことで気を使うなんて
らしくないぞ。
「気にするなよ。
楽しかったで」
「本当?」
「じゃー明日もクイズ持っていくからね!」
「げほっ!げほげほっ!!」
激しく咳き込んだ。
- 550 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:31
- 「ああ、うちはもうだめや」
「あ……あいぼん?」
「アイスがないと死んでまうわ」
にやり
「てことでのの、
クイズいらないからアイス買ってきて!」
受話器の向こうでぎゃーぎゃー騒ぎ出したのを聞いて
私は電話を切った。
もう一度熱を測ってみた。
36.8℃
「……下がってる」
- 551 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:31
- 薬が効いてきたか。
「ううん。違う」
きっと
ののが電話してくれたからだ。
楽しいおしゃべりができたからだよ。
「ありがとな」
ぽそっとつぶやいて
幸せな病人は布団にもぐりこんだ。
- 552 名前:白雪姫毒殺事件 −解答編− 投稿日:2005/01/22(土) 10:31
-
―白雪姫毒殺事件 完―
- 553 名前:いこーる 投稿日:2005/01/22(土) 10:32
- Wクエスチョン
シンデレラ失踪事件
告白大作戦連載当所から構想のあった作品。
いつかは書こうと思いながらも短編で使うのがもったいなくてここまできちゃいました。
白雪姫毒殺事件
須藤流のやかん使用は面倒なときに使います。でも結構こぼれるからイクナイ
それに対して徳永流の皮むきは実用的です。というか私はこの剥き方しかできません;汗
- 554 名前:いこーる 投稿日:2005/01/22(土) 10:32
- 推理の中に一つの作品で持ち越した謎を他の作品で解決させる連作があります。
中には『金閣寺の惨劇』や『Wドライブ』みたいに
2つのうちどちらから読んでも、もう一つ読めば驚きが!
みたいなものもあってそういうのをやってみたいなと思いました。
一つ一つの事件は独立しているんだけど
「ほぉここで関連していたか」と唸るものを目指しました(そんなたいそうなものにならんかったけど……)。
さて今回も事件解決はれなさゆとキッズにまかせっきりで
亜依の推理はまったく役に立っておりません。
亜依の推理はあくまで希美を喜ばせるためだけに機能します。
たぶんこれからも……
- 555 名前:いこーる 投稿日:2005/01/22(土) 10:39
- >>524
どうもありがとうございます!
私も推理はよく読みますが毒殺物はそこまで……。
だからあまり得意ではないんですが
どうだったのかな?
>>525
PETEW@R
6?W@S4B@X@EJR
>>526
はじめまして。
一気に読んでくれたんですね。
ありがとうございます。
あいののキャラもこんな感じが好きなんですよ。
- 556 名前:いこーる 投稿日:2005/01/22(土) 10:40
- ながし
- 557 名前:いこーる 投稿日:2005/01/22(土) 10:41
- ・・・
- 558 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/23(日) 04:39
- 更新お疲れ様です。
林檎の皮に薬品が引っ付いていた、ですか。いや〜〜、全く分からなかったです。
うちでは、徳永流の向き方なので、中々思いつかなかったです。
加護ちゃんには早く完全に風邪を治してほしいです。
次回もどんな物語になるか楽しみです。
- 559 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/23(日) 16:42
- ↑読もうと思ったのに・・・・。ネタバレしないでください。
作者さんが流した意味無いじゃないですか。
- 560 名前:いこーる 投稿日:2005/01/23(日) 18:13
- じゃ流しておきます
- 561 名前:いこーる 投稿日:2005/01/23(日) 18:13
- もう一度
- 562 名前:展開 投稿日:2005/01/29(土) 13:34
- 今回も面白かったです
そんな小さな言葉にヒントがあったとは!!!!
うまい!!、そしてやられました!
次回作も楽しみにしています。
- 563 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/08(日) 17:40
- hou ?
- 564 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/08(日) 17:41
- ki?
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