花に嵐
- 1 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:37
- 始めまして、RH+といいます。
初めてSEEKで書かせて頂きます。
リアルでいしよし、シリアスです。
週一、週ニでの更新を目指して頑張ります。
- 2 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:38
-
あたしは自分が倖せだとか不幸せだとか、そんなこと少しも考えずに生きてきた。
だって精一杯生きていく以外あたしには出来なくて、それを知ったところで虚しいだけだと気付いていたからだ。
だから、あたしは何となく生きてきた。そこそこ必死で。勿論、振り返ったりもせずに。
語弊があるかもしれないけど、それがあたしがあたしであるための最後の一線だったと思う。
巧くやれる術だって身に付いたし、たいせつなものだって守れてるつもりで居たし。
あたしは少しも傷つかない。そのための「何となく」だった筈だった。
- 3 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:38
- ――でも、あたしの大切な人は泣くんだ。
あたしを傷つける全てのものに怒り、辛いね、ごめんねって泣くんだ。
あたしは痛くも辛くも何とも無いのに、あなたはあたしのために泣く。
…それを見ると、「何となく」生きてきた筈のあたしの心は凄く苦しくなって、
あなたを泣かせるその辛さに死んでしまいたくなる。
だから、言ったんだ。
- 4 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:39
- 「一緒に死のうか」
って、冗談みたいにして。何気ない、明日の天気を尋ねるような気楽さで。
そしたら、あたしの一番たいせつな人は、明日は晴れだよって応えるみたいに
「うん」
って、頷いた。
その目は、あたしが好きになったあなたそのものの目をしてた。
- 5 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:39
-
――ねぇ、あたしは今まで自分が倖せなのか不幸せなのかなんてこと、考えずに生きてきたって言ったね。
あたしは――こんなこと言ったら不謹慎かな。…その、あたしの一番たいせつな人の答えを聞いて――、
…あぁ、倖せだったんだって気付いたんだ。今更。
案外月並みなんだけど。でも、この人となら死ねる、って。そんなくだらないこと本気で。
死ぬのは怖いことだ。何処に行くのかも知れない。その先、ひとりきりになってしまうのかもしれない。
でも、あなたは笑った。
あなたはずっと利口な人だからその行く末を、あたしよりずっと解っていたはずなのに。それでも。
少し自惚れてもいいのなら、あなたはあたしのことを世界で一番愛してくれていたと本気で思う。
あたし、きっとあなたが居なければ、死んでいるのと同じだったから。
…だからあたしはあの時、あなたと恋をしたことをけして後悔してないよ。
- 6 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:40
-
梨華ちゃん。
たとえ、さよならだけが人生だったとしても。
- 7 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:40
-
「心中みたい」
「心中じゃん」
「怖い?」
「りかちゃんは」
「怖くない、よ」
「嘘」
「…ひとみちゃんだって、声震えてる」
「…寒いだけだって」
「…うん、ちょっとだけ、寒いね」
「ね、りかちゃん」
「ん」
「…やっぱなんでもない」
「何よぅ」
「…今さ、何考えてる?
- 8 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:41
- 「誤魔化したでしょ」
「誤魔化してないよ。で?」
「…ひとみちゃんのこと」
「うわ、きしょいなぁ、もう。恥ずかしいこと言わないでよ」
「だって、倖せだって思う一番のことなんだもん。笑顔になる」
「今から死のうっていうのに?」
「…そうだよ」
「…あたしもりかちゃんのこと考えてるよ」
「…怖い?」
「…怖くない」
- 9 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:41
- 「ね、私たちのすることはきっと間違いなんだろうね」
「うん…きっと、凄く迷惑かけることになると思う」
「私たちのこと、すぐに忘れてくれたらいいのにね」
「何で?」
「大好きな人たちが苦しいの、やじゃない」
「そうだね…皆うちらのこと愛してくれてた」
「うん」
「…ね、うちらばかだね」
「…うん」
「…ねぇ、りかちゃん」
「うん」
- 10 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:42
- 「うち、あの、その…」
「うん」
「…うち、死んでも、生まれ変わっても。もう一度りかちゃんに出会いたい。
出会って、恋をしたいよ」
「…うん。私ももう一度ひとみちゃんに出会って、どんな姿でも、どんな世界でも、
またひとみちゃんに人でなしの恋をする」
「うん…うん」
「泣かないでよぅ、ひとみちゃん…」
「りかちゃんだって…泣いてるじゃん」
「これは嬉しくてだからいいの」
「そんなの、うちだってそうだよ…」
- 11 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:42
-
指先は痺れるほど冷たかったのに、あなたとを繋ぐ部分だけがじんじんと熱かった。
眼下にぽっかりと広がる昏い海が本当に、本当に怖かったのに、それでも逃げ出さなかったのは
その熱と汗ばんだ手のひらがあったからだ。
多分、こんな結末を迎えるためにあたしもあなたも生まれたんじゃない。
だけどあたしもあなたも、お互いに出会うために生まれたんだと思うから。
それでも、きっと今が一番倖せな時だと想うから。
- 12 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:42
- ねぇ、りかちゃん。
何もかも忘れてもう一度生まれ変わってもあたし、もう一度思い出す。
ねぇ、りかちゃん。りかちゃんさえ良ければだけど。
あたしのこと、もう一度想いだして?今みたいに――好きって言って。
そしたらキスをするから。倖せを分け合うようなキスをするから。
「じゃあ、またね」
「おやすみなさい」
- 13 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:43
- あたしたちは手を離さなかったと思う。
昏い水の底に叩きつけられても、あたしは確かに痺れるような指先の熱を感じていたと思う。
――だからだろうか。
あたしが目を覚ました時に、指先にじんわりと温もりが残っているような気がしたのは。
だからだろうか。
その指の先に誰も居ないことを――不自然に感じたのは。
- 14 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:43
-
花に嵐
- 15 名前:RH+ 投稿日:2004/03/24(水) 19:46
- 今回の更新終了です。
名前欄に入れるのを忘れましたが、ここまでがプロローグです…。
よろしければ感想などよろしくお願いします。
- 16 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/03/24(水) 20:34
- 面白いです。はやくも続きが気になります
期待してますのでがんばってください
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 21:48
- やばい!
填まった♪続きが早く読みたいです。
- 18 名前:プリン 投稿日:2004/03/25(木) 13:03
- お疲れさまです!
はじめまして。いしよし大好きなプリンです(何
甘々が大好きなのですが、こういうシリアスも何気に好きですw
次回の更新待ってます!
頑張ってくださいね。では。
- 19 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:33
-
まなうらに翻る白が眩しくて、あたしはゆっくりと目を開いた。
うららかな陽光が目を灼く。見知らぬ天井があたしの上に広がっていた。
思わず翳した腕はやけに重たくて、ふと気が付けば何やら点滴の管が蛇のように腕に絡み付いているのが目に入る。
驚いた拍子にあたしが腕を引いた所為だろう、かしゃんと点滴の袋の釣り下がる金具が音を立てる。
そうしたら、うとうとしていたらしいその先の椅子に座る人影がはっと顔を上げた。
「よっすぃー…?」
お母さん、と言いかかった言葉は喉で止まる。
聞き慣れない声だ。声の主はすぐに立ち上がってあたしの隣に立ち、まるで壊れ物を扱うような手つきであたしの手を取った。
その手を視線で滑らかになぞりながら思う。ここは何処だろう?尋ねなければ。
そしてできることなら水を―――。
- 20 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:34
- ―――不意に、あたしの腕を水滴が打った。
驚いて、まだ光に慣れぬ目を上げる。ぼやける視界の先には背の高い女性が、その風体に似合わぬほど幼い表情をしていた。
大粒の涙が言葉と共にあたしの額に落ちる。そして、あたしはその人が泣いているのだと漸く気が付いた。
「目が覚めたんだね…良かった…石川も無事だよ。ね、ゴメンね…カオリはよっすぃーと石川のリーダーなのに」
目をそばめて、ぼろぼろと涙を零し続けるその人を見る。あたしの手を撫でさするその手も、何処か幼く拙い。
どうしてあげたらいい?あたし、一体何したの?この人に。
まるで大人とは思えない彼女の仕草は、あたしの混乱を誘うには十分過ぎるくらいだった。
「あ…」
話を、しなくては。あたしは声を上げようとして、乾ききった喉に阻まれる。
弾みでニ、三度軽く咳き込むと、カオリと自称した女性はその大きな目であたしの目を見つめた。
- 21 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:35
- 「そうだよね、五日も意識不明だったんだもん、喉乾いてるよね。ちょっと待ってて、水貰ってくるよ」
”カオリ”は名残を惜しむようにそっとあたしの手を離すと、返す指先で濡れた頬を拭う。
「でも、とにかく。…本当に良かった」
それこそ輝くような満面の笑みを残して、彼女は部屋を出て行った。
ドアが閉まり、静寂が戻る。
あたしはようやく光に慣れ始めた目を凝らして、扉の向こうを見た。
混乱している。もしくは、これはきっと夢なんだ。
そうじゃなきゃ、この状況は一体何なのか一切説明がつかない。
- 22 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:35
- あたしは、見知らぬ白い天井を見る。規則正しく落ちてゆく点滴の管を見る。
ベッドサイドの棚の上にある、色とりどりの花を見る。その隣の写真立てを見る。
写真では、沢山の煌びやかな衣装の女の子達が、嬉しそうに、楽しそうに笑っている。
あたしの知らない人たちが、笑っている。
…あたしは空恐ろしくなって、ゆっくりとそれらから視線を外した。
点滴の管を引っ張らないように気をつけながら、そっと体に力を込める。
どうやら起き上がれない訳でもなさそうなことを確認する。
時間をかけて体を起こすと、それでも体が異様に軋んだ。よく見れば腕も脚も包帯でぐるぐる巻きだ。
痛みがある。夢じゃない?
- 23 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:36
-
こんな世界は――――
「ホラ矢口、急いで!よっすぃー目ぇ覚めたんだよ!!」
「マジで!?これでやっぱり寝てたりしたらおいら、マジで怒るからね!」
――――知らないのに?
- 24 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:37
- バタン、と騒々しく扉を開けて、二人の女性が入ってくる。
水を持った先ほどの長身の女性、そして対照的なほどひどく小柄な女性だ。
あたしは、その二人の顔を真正面から始めて見て――そして――電源が落ちたかのように思考が停止した。
「ホントだ!よっすぃー大丈夫なの起きて!?」
「そうだよ、辛くない?」
「カオリ、水は?」
「あ、そうだ。はいよっすぃー、飲んで。大丈夫?ひとりで飲める?」
- 25 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:37
- コップに注がれた水を渡されるのを機械的に受け取る。
あ、ちゃんと同じ空間に存在してるんだTVじゃない。夢の中で、TVの中から物を貰える技術が発展してなきゃ、だけど。
…なのに現実味が全然無い。
一口、コップの水を飲み下す。うっすらとカルキの味。飲みなれた味。あたしの知ってる、味。
…ここは現実、だ。
「どうして…」
- 26 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:38
- 言葉に詰まったあたしを、二人は優しい目で見る。
小さい手が、あたしの手にそっと重なった。
「仕事なら大丈夫だよ。急遽一週間オフになったんだ」
「一度、皆で病院来たんだよ。さすがに全員は目立つから、一昨日からはそれぞれでこっそり来てるの」
「…石川は、まだ目が覚めないんだけど。でも、きっとすぐ覚めるよ」
「石川はよっすぃーより図太いからね、大丈夫」
二人の優しい笑み。TVの中で見ていた人たち。
髪が長かったり短かったり。少し違うようだけど間違いない。
- 27 名前:ACT1 投稿日:2004/03/31(水) 02:38
-
「…どうして、モーニング娘。の二人がこんなところにいるんですか…?」
二人の笑顔が、凍りついた。
- 28 名前:RH+ 投稿日:2004/03/31(水) 02:43
- 今回の更新は終了です。
キリがいいところで切ってしまったので、少し短めです。
>>16さん
有難うございます、精一杯頑張りますのでどうぞお付き合いよろしくお願いします。
>>17さん
有難うございます。できるだけ早く更新していきますのでよろしくお願いしますね。
>>18
はじめまして、プリンさん。私もいしよし大好きです(w
これからもシリアス展開ですが、頑張りますのでよろしければお付き合いくださいね。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:06
- 久々の期待作でっす!
応援させていただきます(><)
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/09(日) 20:21
- 書き出しから印象的で雰囲気ある作品ですね。
シリアス展開だということで、この先が楽しみです。
- 31 名前:RH+ 投稿日:2004/05/16(日) 22:22
- 長らく放置していて申し訳ありません…。
諸般の事情でこの小説を書くだけの余裕が取れず、もう少し放置になると思います。
放棄だけはしたくありませんので、どうかスレを残して頂けると幸いです。
本当に申し訳ありません。
どうかよろしくお願い致します。
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 19:11
- ho
- 33 名前:名無しっ子 投稿日:2004/08/18(水) 11:02
- 頑張って下さい^^
楽しみにしてます〜☆
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 12:23
- ho
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