ゴーストライター
- 1 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:46
- ここでは初めて書きます。リアルか、非リアルかはあなた次第(謎)
登場人物はプロローグでは少ないですがどんどん増える予定です。
- 2 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:47
- プロローグ
一体誰が、あたしが娘。の曲を作っていると思っているだろう。多分一人もいないだろうな。いや、絶対。
あたしが一番不似合いだし、世間もまさかメンバーが曲なんて作れるとも思っていないだろうし、あたし自身
なんであんな曲作っているのかも分からない。ていうかもはや病気だ。
始まりはほんの偶然。何年前の事だろうか。パソコンで手に入れたmidi作成のソフトを友達から貰って、
自分たちが歌うような曲を試しに作ってみた。コードだって未だによく分からない、全然な素人だったけど、
作っているときはなんだか楽しかった。仕事の合間を縫って、携帯でメロディーを作ってみたりして。
梨華ちゃんに「何やってるの?」って聞かれた時は焦ったっけな。
ちょうど1曲出来て、友達にも今日仕事終わったら送ろう、って思っていたらあたしはスタジオ内でつんくさんを
見かけた。いや、見てしまったというべきかな。なんだか凄い苦しそうな顔をしていて、頭を抱えて必死な顔をしていた。
もしこのとき目が合わなければ、あたしは今こんな事していなかったんだろうなー、今更仕方がないけれど。
- 3 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:49
- 「ど、どうしたん・・・ですか?」
あたしは慎重に言葉を選ぶように訪ねた。相当精神が不安定そうな顔をしていて、
目が合わなければ・・・と余計に悔やんだ。
「・・・・・・・・・・・・・。」
つんくさんは何も言わなかった。ただ虚ろな目をして、あたしの事にまだ気がついて
いないようだった。
「つんくさん?」
あたしは名前を試しに呼んでみた。ここでようやくあたしの存在に気がついたらしく、
返事をくれた。
「お、おう・・・お前か・・・。なんや・・・どないした?」
話すこともやっとなくらい精神的ショックを受けている様子で、あたしは何て言って
いいのか少し迷った。
「いえ、あたしは別に・・・・。つんくさん、大丈夫ですか?疲れた顔、してます。」
なるべく言葉を選んだつもりだったけれど、きちんと選べていたかは自信がない。
つんくさんは言った。
「俺はもうだめや・・・・。」
いきなりあたしの肩に手を置いて、すがりつく様に声を絞り出した、その姿を見て、
あたしは何かしなきゃ、と思ってしまった。
「話、聞きます・・・。」
あたしはそう言うと、泣きそうなつんくさんを無理やりスタジオの個室に押入れ、
椅子に座らせ、机を囲んだ。
- 4 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:50
- 曲が出来へん、つんくさんはそう悲痛な声で言った。何言っているんですか、この人は。
新曲の「恋愛レボリューション21」だってあゆに負けたけど売り上げ良好、全然いい調子
じゃないですか。中澤さんが脱退して9人っすよ、これから頑張り所なのに、
何言ってるんですか!色々言いたかったけど、ここで言ったら本当につぶれそうだし、
失礼かな、と思ったあたしは何も言わなかった。そして、ふと思い立って自分の作った曲を
聞かせてみた。
聞き終わった所で、あたしは言った。
「あたしだって作れるんですから、全然大丈夫っすよ!」
これが言いたかっただけだった。でもつんくさんの反応は、あたしの考えていたものとは、
あまりにも異なっていた。
「行けるで・・・・・。」
「はい?」
失礼ながら、こんな聞き返ししかできなかった。瓢箪から駒だっけ?そんな感じだった。
つんくさんはいきなりあたしの手を両手で包み、縋る様な目で言った。
「これ、俺が作ったことにさせてくれへんか?」
「はい?!」
さっきよりも大きな声を上げてしまった。訳が分からない。理解出来ない。
「これ、アレンジして、直したりして、新曲にしようや!!でもやっぱ、お前の名前で出すより、
俺の名前で出した方が、皆にもええやろ。な?な?ゴーストライターってやつや!かっこええで?」
- 5 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:52
- かっこええ。その言葉は何度もあたしの脳内を木霊した。そしてかっけーへ脳内変換。
あたしはいとも簡単に心を動かされてしまった。
「かっけーんすか!?」
「せや!!かっけーで!!」
「行きます!!ワタクシ吉澤ひとみ、やらせていただきます!」
かっけーの言葉で完全に興奮しきっていたあたしは、勢いで承諾。すぐにつんくさんと
アレンジについて語りだした。音楽について、詳しい事はよく分からない。
でもやる気でそれをカバーしてやる!歌詞はつんくさんがほとんど書き換えて落ち着き、
冒頭と梨華ちゃんの台詞等、色々つけてもらい結局共作という形になった。
こうして出来た曲が、『ザ☆ピース』だった。
あたしは皆には分からなかっただろうけど、今までで一番気合を入れた。自分で作った曲なのに
あのパート割りはちょっと泣けるけど、精一杯頑張った。あたしとつんくさん以外誰も知らない、
という秘密主義がすごくかっけーな、と思えて密かにニヤリとしたりして、変な噂がメンバー内で
飛び交っちゃって大変だったりもした。自分が作っただけに、コンビニで滅多に買い物をしないのに
オリコンを買ってしまった。あの時は確か特にごっちんに怪しまれたな。
「珍しいね、1回の買い物に100円くらいしか使わないのに。」
まあごっちんが使いすぎなわけで。あ、話それたね。雑誌を開く瞬間なんか凄い緊張しちゃってやばかった。
で、1位なのに変に喜んだもんだからまた変な目で見られちゃって。
- 6 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:52
- あ、ここまでの話信じてないね?本当なんだから。ここからなんだよ、問題は。
つんくさんがやっていることがいかにかっけーくて、大変だという事を思い知らされた。
ここからの話も書きたいけれど、それはまた次回ということで。
- 7 名前:おって 投稿日:2004/03/25(木) 22:54
- 今日はここまで。読んでいただければ嬉しい限りです。
レスを頂けるともっと嬉しいですけど。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 00:57
- まだはじまったばかりですんで、とりあえず一言
「今までにないパターンですね、期待してます」
とだけ
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 01:18
- 新作乙です。
楽しみにしてます。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 07:15
- なんとなくおもしろい気がしてみる
- 11 名前:おって 投稿日:2004/03/26(金) 21:41
- >>8 今までにない斬新なものをと模索して勢いで作ったので
自分でもこのまま話がどう広がるか分かりません(汗)
>>9 どうもです。「楽しみにしてます」と言われると
プレッシャーが・・・。皆さんが楽しめるような作品に
出来ればいいですね。
>>10 そう言っていただけると助かります。自分の主観で見て
いると他人にどう写るかが分かりにくいので・・・。
実は他の場所(m-seekではありませんが)でも別の名前で
書いてたり・・・。何2つも書いて調子乗るなと思われた方、
おっしゃる通りでございます。ただ書きたい衝動を抑えられなく
なりまして・・・。名前は細工がしてあるのでもしかしたら
ここ以外も読んでいる人には分かるかもしれません。
更新って何日に一回ぐらいが望ましいですかね?
- 12 名前:9 投稿日:2004/03/26(金) 23:51
- 軽率な発言申し訳ありません。
自分の場合、更新は一週間に一回で
良いかと思います。
- 13 名前:おって 投稿日:2004/03/27(土) 00:30
- >>12 (9) >軽率な発言申し訳ありません。
いえ、別にそんなつもりで言ったんじゃないんで
気になさらないでください。
週一ですか。分かりました。じゃあ来週の木曜更新
予定にします。
- 14 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:26
- 更新します。
- 15 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:29
- 1.Mr.moonlight
つんくさんは持ち直したのか知らないけど、あれからミニモニも出るし、
ごっちんのソロも出るし、EE JUMPも出るし、5期の最終オーディションの
課題曲はあややの新曲起用、って感じでいつもと代わり映えないラッシュが
続いていたから、あたしはもはや自分が曲を作ったという事実さえも忘れそうに
なっていた。なんていうか、燃え尽き症候群?ようは達成感から脱力していた。
そんなとき、つんくさんに呼び出されて、あたしはレコーディング以来、
つんくさんのスタジオに足を踏み入れた。
あたしがスタジオに入ると、つんくさんは待ちわびていたかのような顔で
嬉しそうにあたしに近づいた。なんていうか、こう言っちゃ悪いけど気味が
悪い。つんくさんはこの間のような表情で言った。
「まだ出来へん・・・・。」
あたしは当然の返答をした。
「ミニモニもごっちんもEE JUMPもあややもどう説明して
くれるんでしょうか?」
こんな高圧的な態度が取れたのは、あたしがこの時点でもう既につんくさんを
上の人として見ていなかったからかもしれない。しかしつんくさんは
とんでもない返答を更に返してきた。
「あれはストックや。」
- 16 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:31
- 「ストック?!」
なんと、そんな事が!?あたしは思わず思いきり声をあげてしまった。
つんくさんはそれに驚いて一歩退く。
「せや、『恋レボ』が出来る前までの曲や、全部。」
んな阿呆な・・・。ん?という事は。あたしは作る気が全くなかったから、
ここで退くわけには行かなかった。つんくさんが退いた分、そしてもう一歩分前に
出ると、あたしは言った。
「じゃあなんで娘。の曲はストックないんですか?」
「あるにはあるんや・・・・アルバム曲が。」
それを聞いた途端、あたしは口を一旦開けて、閉じた。ここであたしがなんとか
押し切ったとして、アルバム曲をシングルとして出したらどうなるだろう?
売り上げダウンとかそんなレベルで済むのだろうか?いや、だからと言って
あたしがまたあんな曲作れるとは限らない訳で・・・。しかも『恋レボ』と
比べて売り上げ落ちてるのは明らかだし。
「吉澤、お願いや・・・。せや、出来高制でどや?」
「出来高制?」
出来高ってあの、よくプロ野球とかで言う、あれですか?
「売り上げ1万枚につき、ベーグルとゆで卵1個、おごるで。」
脳内計算が始まる。『ザ☆ピース』は今の所56万枚ってオリコンに書いてあったな
(あれから毎週欠かさず購入)つまりこのままいくと60万くらい・・・。
それでベーグル&ゆで卵60個おごってくれるって?!
「やります!!!」
よくよく考えてみるとこのときの契約、めちゃめちゃケチい。でもこのときは
なんかお得な感じがして思わず引き受けていた。
- 17 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:33
- とは言うものの、何を作れというのだろう。あたしは仕事に行く前に、
ソフトをいじくりながら悩んでいた。前回はただ勢いで作っただけだったから、
楽しかったけど、こう、最初から仕事だと分かっていると、浮かぶものも
浮かばない。しかもよく考えたら新メンの事も考えると分けやすい曲に
しないとパート訳が凄く大変だ。つんくさん、いつもこんな風に試行錯誤
しながら作ってたんだ。かっけー!・・・・んな事言ってる場合じゃなかった。
考えないと。
あたしは必死に考えた。考えて考えて考え抜いた、自分なりに。
でもやっぱこの前とは作る姿勢が違いすぎたのか、全然何にも浮かんできや
しなかった。ここまで来てあたしはベーグルとゆで卵に釣られた事を後悔していた。
「あ、やば!仕事じゃん!」
時間が立つのは早い。結局何も出来ないまま、あたしは仕事場へと向かった。
- 18 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:35
- 「安倍さん。」
あたしはテレビ局の近くで、あたしの前を歩いていた安倍さんを呼び止めた。
安倍さんはこっちを振り向くと、少しだけ悩んだ後に、笑った。
「あ、よっすぃーか!男の子みたいで分からなかったべ!」
「そうですか?」
あたしもつられて笑った。確かにこのときのあたしの格好は、男っぽい
服装だった。というかそう言う服ばっかりだし、普段。
「そうだべ。宝塚の男役だべ。」
『宝塚』この言葉があたしの心に妙に突っかかった。興味が湧いたからかよく
分からないが、この感情を処理すべく、あたしは安倍さんに宝塚の話題を
持ちかけた。そして話し続けるうちに、ピンと来た。ビンゴ!!曲はミュージカル
とか宝塚とか、そんな感じのノリで行こう!で、当然男役、センターは安倍さん
御用達のあたし!あれ?調子乗りすぎ?でも一番適任だなぁ、と自分で思った。
- 19 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:37
- 一度案が浮かぶと出来るまではとんとん拍子で行くものだ。楽しくて仕方が
なかった。とりあえず自分をセンター、男役でその風景を浮かべ、曲を作った。
台詞とかもあった方がいいなぁ、それはつんくさんに考えてもらうとして・・・。
徹夜で曲を作った次の日、あたしは仕事の合間を縫って詞を考えた。
詞の方は大変だ。ミュージカルっぽさを殺がないようなものにしたい。
でもつんくさん色をきっちり出さないとゴーストとは言えない。作詞構想を
練り始めて4日目の朝、あたしは仕事が早かった為6時に起きていた。テレビを
つけると懐かしの「セーラームーン」が。あたしは主題歌の『ムーンライト伝説』
という名前を見てふと思った。
「ムーンライト」って響きいいなぁ。もろた。
あれ?いいのかな?
あ、でもつんくさんだって数々の悪事を働いているからその方が「ぽさ」が
出るか。そしてCM中にセコムのCMで長嶋さん発見。
「ミスターもいいなぁ・・・。くっつけよ。」
こんな安易な決め方で「Mr.moonlight」というタイトルは完成してしまった。
その後もセーラームーンをそのまま見ていると、その種類の多さから男役を
若干増やそう、という方向に自分の中でまとまった。男が何人かいて、
何にしよう・・・。バンド?
あたしヴォーカルじゃん?!何故かあたしは朝から超ノリノリだった。
- 20 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:38
- あたしはすぐに空想、いや妄想?を始めていた。バンド、「Mr.moonlight」
は大人気バンド。ある夜、そのヴォーカルよっすぃ〜が女の子と出会って
恋に落ちた。
「今夜は踊ろう」
よっすぃ〜は女の子を誘う。でもそこはビッグバンド、一緒にいられる時間は
限られている。
24時間一緒にいたいのに、それでは仕事にならない。
恋は急に進まない、各駅停車・・・。
「これで行こう・・・・・。」
歌詞の構想も完璧に決まった。サブタイトル、愛のビッグバンドなんてかっけー!!
よっし!あたしは気合を入れ直すと、歌詞を改めて考え始めた。
「でも『愛の』なんてつけちゃってるから冒頭でなんかつけないよな〜。」
そんなことを思いながら、あたしは色々試行錯誤したが、どうもAメロのノリの
いい曲調に上手く乗ってくれなかった。
「じゃあ冒頭になんか増やすか〜。」
そんな軽い気持ちで「愛をください」の部分を作ってしまった。作ったときに、
あ、これ新メンに歌い回しさせたら面白いんじゃないの?なんて思いながら。
- 21 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:40
- いくら調子が良くても、2番の歌詞になると流石に少し苦しくなってくる。
人生について語っちゃってるし。あたしはそんな人生について語れるほど
大人じゃなかったけど、とりあえずそれっぽい事をまとめていった。で、
皆さんも少しは違和感感じたでしょう、2番のBメロ。ここで謝りましょう、
ごめんなさい。
ついてでにお母さんもごめんなさい。
ひとみ、あんな変な歌詞書いちゃって。
「ぶちゅっ」って効果音じゃん!おっと、作ったのはあたしか・・・。
ここら辺になるともうあたしはつんくさんが乗り移ったように詞を書いていた
ような気がする。気づいたら出来てた、って感じで。でも見た瞬間は自分でも
ちょっと退いた。ハンバーグとかも、かなり安っぽい歌詞だな〜とか思ったけど、
トランスが解けたあたしには歌詞を作り出せる力がなかった。
・・・にしても改めて見てみると凄い歌詞だなぁ。
- 22 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:41
- 「・・・これ、ホンマお前が一人で作ったん?」
つんくさんは驚いた顔をしていた。
「はい!」
あたしは自信を持って答えた。何故だか胸を晴れる気持ちになっていたからだ。
もうこの時のあたしはノリノリでバリバリ!って感じだったから。
「で、ここの辺りに、いっちょ台詞をつけたいんすけど・・・。」
歌詞カードを指差しながら、あたしは言った。二人で相談しながら台詞を
つけ終わると、つんくさんはあたしを見て聞いてきた。
「こんな感じにしたんやから、自作自演やろ?センター自分か。」
「はい!あたし以外いないっす!」
ここまでくると、ちょっと調子乗りすぎてる気もしたけど、あたしは拳を
グッと握って声をあげた。
「よっしゃ、アレンジはアレンジャーに任せるから、仕上がり、楽しみにしてろや。」
つんくさんは嬉しそうに言った。その笑顔はやけに意味深だったけれど、
あたしは乗りすぎて周りがよく見えていなかったから、気がつかなかった。
- 23 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:42
- つんくさんが、自分が作った曲のように皆に聴かせて説明するのを見て、
なんかちょっとだけ悔しかった。でもそこはゴースト=かっけー理論を
思い出して心を落ち着かせる。そうやってあたしがほとんど話を聞いていないと、
つんくさんは言った。
「今回センターは吉澤、お前で行くで。男役や。」
「え?」
あたしはてっきり歌録りで決める、とか言って皆のやる気を出させると思って
いたから、ちょっとこの発言には驚いた。
「はい!」
あたしは笑顔で返事した。最初から分かっていたこととはいえ、こうやって
改めて言われると、なんだか嬉しかった。この簡易ミーティングみたいなのが
終わった後、梨華ちゃんに話しかけられた。
「よかったね!」
こう言ってくれたのは、自分に男役は無理と分かったからだろうか。
「うん。」
てか自分で決めたんですけどね。そんな事絶対言えないけど。
「一緒に歌の練習しない?メインの人がいると練習しやすいし。」
一緒に練習、珍しい提案だった。これにはおそらく、女役の一番手に狙いを
定めている梨華ちゃんの決意の表れなのだろう。あたしはとりあえずOKした。
- 24 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:44
- 2日後、練習は何故か4期メン全員でやる事になっていた。ののとあいぼんは
完全にノリで来た感じ。仕事なのに、いいのか?それで、とはあくまで言わない。
「凄いよっすぃー完璧やん!」
センターだからパート多いし台詞もこっぱずかしいのに完璧にいきなりこなして
しまったため、拍手喝さい。あたしはアホ丸出しに照れた。
そりゃねぇ、
分かりますよ、自分で作ったんだから。
「負けてられないね!」
残りのパートを賭けて、3人は必死だ。そんな3人を見て、心の中で謝った。
ごめん。
この曲はかなり特殊な曲なため、予めつんくさんとパート割大体を決めてしまって
いたのだ。だから今回はどう頑張っても・・・。でもこのライバル心、競争心
こそが、グループ原動力となっていくんだな、としみじみ感じた。
- 25 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:46
- 発売1週間が過ぎると、あたしの手元にはベーグル&ゆで卵30個分の
お金が転がり込んできていた。どうやら前回とほぼ同じ初動。いいスタートを
切ったといえる。そんな中、曲が売れると共に絶好調になっていたあたしに
ストップをかけるような話を、ある娘は話し出した。
「最近つんくさん曲調変わったなぁ。」
あいぼんが、ふと呟いた。
「え?そ、そう?」
あたしは落ち着こう、落ち着こうと思って余計に焦ってしまった。バレる事は
絶対にないと思うけど、それでも妙に意識してしまった。
「今回特にな。いきなりあんなミュージカルやで?宝塚?正味な話、
ちょっとあほか?思うたし。」
あほですか・・・ははは・・・・。
少しショックを受けた。
「あたしは楽しかったけどなぁ〜。」
だよね?だよね?梨華ちゃんはやっぱ話が分かるよ、うんうん。
あたしの心の中では若ガッツがリング上で世界チャンピオンとして
ガッツポーズをしていた。でも梨華ちゃんはこう付け加えた。
「変なのはもともとだもん。」
ガッツと具志堅とセットの・・・なんて名前だっけ?あ、そうそう、
輪島公一。その人がチャンプ防衛失敗の映像が見えた気がした。ようは
あたしが変なのを作っているからバレはしないらしい。でももう流石に
終わりだろう。あたしはまた平穏な暮らしがくるな、と訳の分からない
感慨に耽っていた。元から全然普通でもなんでもない生活なのに。
とりあえず歌っているプッチの新曲と、聴いているタンポポ、ミニハムず、
あややの新曲が、そんな気分にさせていた。ああ、やっと復活したか、と。
でも売り上げは精彩を欠いていたのがやけに気になった。タンポポなんて、
ダンシング夏祭りの売り上げと変わりませんよ?
- 26 名前:おって 投稿日:2004/04/01(木) 02:48
- 2曲作った事によってあたしの売り上げへの反応は過剰なものとなっていた
のかもしれない。妙な焦りを覚えた。冷や汗を背中に感じながら、また来るかも
しれない宣告の準備をすべく、曲について考えた。・・・・・あ、やっぱ眠いや・・・。
この日、結局あたしは寝てしまった。その後も何度か作ろうかな、と思って
ちょっと考えたりしたけど、なんでか必ず眠くなってしまって駄目だった。
とりあえずそれは、つんくさんが作ってくれると信じていた、
という事にしておいてあげてください。
今夜はここらへんで、失礼します。続きはまた次回で。
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/01(木) 12:27
- 結構おもしろい気がしてみる
- 28 名前:9 投稿日:2004/04/01(木) 18:04
- 更新お疲れ様です。
- 29 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:07
- 2.We’re ALIVE
「また頼むわ。」
「いい加減にしなさい!!」
「いや、ツッコミが欲しい訳やなくて、ホンマや・・・。」
つんくさんは咽の奥から絞り出しているみたいな悲愴な声。
よくまあここまで堕ちたもんだなぁ、と思わずにはいられない姿。
でもあたしはいつも通り攻め立ててみた。
「ひ〜な〜ま〜ちゅ〜りぃ〜い♪」
「ストック。」
「桃色の♪」
「ストック。」
むぅ、手強いぞこりゃ。でもこの人は追及されるだけの曲を発信している
わけで。手を緩める気はなかったので行ける所まで行くことにした。
「王子様♪」
「根性。」
いやその根性こっちにも出せよ。答えるの早いし。
「ぴったり♪」
「ストック。」
あ、これは根性じゃないのか。
っておい何納得してるんだひとみ!次の手を考えろ!
いかにしてこの城を崩すのか。諦めるのが一番楽な気がするけど・・・。
でもあたしは皆を欺く事に対して、もうかっけーという感情は
抱いていなかった。むしろ今の現状に思い悩むくらい。
あたしもつんくさんもこれでいいのだろうか?ていうかつんくさんには
プライドってもんがないんですか?この感情を全てぶつけて捲くし立てた
結果、
「分かった。なら聴いてみい。お前とどっちが上か。」
- 30 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:09
- 実際に聞いてみた、
なんておじさんの声がどこかから聞こえてきた。
(いやこの時は聞こえなかったけど。今振り返るとね)
1曲、つんくさん曰く根性で作った作品を聴き終わると、あたしは
開口一番、暴言を吐いた。
「アルバム曲ですか?」
「・・・・・・・・。」
その一言だけでつんくさんは死んだ魚のような目をして、頭を抱え込むと
ミキサーにかけられてるんじゃないかってくらい頭を振り回した。
あまりにもずっとそれを続けるもんだから、あたしは思わず口を
開いてしまった。
「分かりました。作ります。」
「ホンマか?!」
聞くが否や顔をこっちに向けてくる。でも髪の毛がヒドイ状態で
とても人には見せれないような顔。言っちゃったはいいんだけど、
このままじゃいたちごっこだよな・・・。そう思ったあたしは、
「ただし条件があります。」
そう言って微笑む。これにはあたしの不満という感情が濃縮されていた。
- 31 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:10
- ベーグル&ゆで卵を50個貰って大分後に気がついた事だけれど、
シングル1枚、つまり2曲作詞作曲場合、印税が売り上げの10%、
入る。つまり1曲作ったあたしは5%もらえるはず。でもあたしに
入った金額はせいぜい10000円。2500万円が、
ベーグル&ゆで卵50個になっちゃったのだから笑えない。
「Mr.moonlightに関してはもういいです。許します。でも、次から、
5%分の印税のうち、2%、銀行に振り込んでいただきます。」
なんか凄く汚い話をしているようだけど、汚いのはつんくさんの方。
あたしはむしろ被害者なのだから、これくらい言っていいはず。
むしろ、本来なら一銭も入らないはずなのだから感謝してもらいたい
くらいだ。
「で、それに加えて、今回は共作で行きましょう。」
いくらあたしが今の所ヒットメーカーとなっていても、あたしにだって
限界がある。一人で作るのもそろそろ苦しいのだ。だから、
「このままあたしに頼って、どうなったって、責任は取れませんよ?」
強い目で見て言う。だけれどつんくさんは、作ってくれるという事に
対してホッとしているのか、どこか嬉しそうな顔をしていた。
- 32 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:12
- つんくさんと二人で曲を作っていて思ったのが、あたしが作るとメロが
多くなりやすい、ということ。初めてのときは共作で最初の部分をつけて
貰ったから気にならなかった。でも今回でもう3曲目、いい加減にその事に
気がついてしまった。一般的な曲はAメロ、Bメロ、サビだけの曲が大半なのに、
あたしは更に数が多い。まずイントロで声出したりして。
でもつんくさんはこう言う。
「ええねん、『恋レボ』も多かったし、耳に残れば勝ちやねん。」
耳に残れば勝ち。その通りだと思った。いくらメロが多くても、全部残って
しまえばこっちのもんなのだから。今回は冒頭に強めのメロをぶつけたあと、
段々作っていった。いつも通りサビっぽいのを作る前にどんどんメロが
“ノリ”で増えてゆく。
「お前相湧き水みたいに出てくるなぁ。」
つんくさんは感心しているのか呆れているのか。
つんくさんはほぼ手直しだけの状態となっていた。順調に作曲は進み、
さて、あとはサビ。でもこの日はそこで足踏みをしてしまった。
「今日はここら辺でやめとくか。明日お前早いやろ?」
「そう、ですね。」
あたしは言われるが否やすぐに荷物をまとめて、それがつんくさん
ちょっと気に入らなかったのか不満げな顔。帰れって言うたのは
あんたやろ?と言いたくもなったがそのまま帰った。
次の日は朝から収録でかなりタイトなスケジュール。こりゃまた
夜遅くに30過ぎの金髪親父と二人悲しく曲作りですか、
なんて少し切なくなったり。
最近梨華ちゃんとも一緒に帰ったりしてないかもなぁ、
それもあの30過ぎの(略)
- 33 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:14
- 収録の合間に、矢口さんが話しかけてきた。普通の雑談だったらここに
書くことはなかったと思う。でも、矢口さんはとんでもない事を、よりに
よってあたしに言って来たんだ。
「よっすぃ〜さ、最近つんくさんの曲、なんか違うと思わない?」
あいぼん第二弾?!なんか皆違和感感じてるなぁ、あたしゴースト失格かも?
「そうですかね?」
驚きはしたものの、流石に言われるのが二回目とあって、あたしは
落ち着いて演技。でも矢口さんにその上を行かれた。
「思うんだけどさ、誰か他の人が作ってると思わない?」
「え゛っ?!?!」
目を新メンの高橋並に見開き、でっかい声を出してしまう。この尋常
じゃない驚き方に矢口さんもびっくりした顔をした。慌ててあたしは
次の言葉を探すも、いい言葉が出てこない。
「そ、それはないんじゃないですか?あははははははは・・・・。」
あ、やばい噛んだ。
「え〜絶対そうだよ〜。だかさね、決めたんだ。今日スタジオ横に
張り込もうって!」
「え゛え゛っ?!!!」
さっきよりも大声を出しちゃったから流石にスタッフの視線がこっちに
集中してきた。
「あ、あははははは・・・あははははは・・・。」
精いっぱい作り笑顔してごまかす。
「さっきからよっすぃ〜おかしいよ。あ、もしかして。」
やばい?!あたしは頭の中で胸の前を十字に切った。
「この前の曲センターだったから信じたくないんだぁ?」
・・・よかった、こんな人で。あたしは安堵しまくった表情を
していたけど、矢口さんはゲラゲラ笑って気がついていなかった。
- 34 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:15
- あたしはなんとか矢口さんを切り抜けた事に安心しきっていたら、
ある事に気がついた。
矢口さんが張り込んでいたら、スタジオ入れないじゃん・・・。
あたしはすぐにつんくさんに電話をかけた。電話で事の詳細を述べると、
つんくさんはマジで焦りまくった。なんか噛みまくるわ奇声発するわで
大変。落ち着いたところであたしは崖から突き落とすような一言を。
「仕方ないんでサビ、お願いします。」
「え?!」
え?!ってあんたねぇ・・・。
プロデューサーでしょ?
作曲者でしょ?!
そのくらい根性で行けよ!!
口にはしなかったけど頭では不満爆発。でもだからと言ってこれを
丁寧に言うのはあたしの脳では出来ない芸当だったので、
「努力します。」
とだけ言って電話を切った。電話を切ると、あたしは大きく溜息をついた。
携帯の会社が同じなら携帯で作って送れたんだけどなぁ〜・・・。
なんであう(au)やねん!!
いい加減にせいや!!
中澤さんっぽくキレてみたけどなんかむなしい。
パソコンからCDに落として手渡しも考えたけど、
もし本当に矢口さんが仕事終わりずっと張ってるなら当分渡せそうにない。
でもリリース日はもう予定の中にきっちり組み込まれていて、
つんくさんのように、たくさん曲をさばいて行かなければいけない人に、
遅れはタブーだった。
- 35 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:17
- 仕事が終わった後、矢口さんは本当にスタジオの一室、つんくさんの
作曲場の横で張っていた。何故かあたしも一緒に張っていた。
「やっぱよっすぃ〜も気になってんじゃん。」
半ば強制に色々言いまくった挙句引っ張ってきたのはどこの
どなたでしょうか?え?人違い?ああそうですか・・・。
もうやけだった。
「何やってるんですか?」
5期メンの4人が、揃ってあたし達を不審な目で見ている。そりゃ
仕方ないよな・・・。怪しい者ではありません、なんて言えないもん、今。
「張り込み。ゴーストライターの。」
矢口さんはあっさりと答えた。
「あの噂のですか?」
「噂になってんの?!」
あたしは真琴の方を思い切り見てしまった。
「え・・・矢口さんが専らの噂だって。」
少し困った様子で真琴は答えた。この話、噂にまでなってんだ。
てか矢口さんでしょ?噂にしたの。
5期を吸収。張り込み隊合計6人。
増えちゃったよ・・・。頭を抱えていると、今度はあたし以外の
4期メン+ごっちんが通りかかった。
「皆集まって楽しそうやな。」
「入れてほしいのれす。」
「かくれんぼですか?」
「梨華ちゃん、それ、寒い。」
なんかそんな風に話しながらいつの間にか矢口さんが説明を始める。
すると5期とほぼ同じ反応。・・・・ぉぃぉぃ。
4期+後藤加入。張り込み隊合計10人。
- 36 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:19
- あ〜あ、二桁行っちゃったよ・・・。これ潜り抜けたら神だよ神。
ジェームズボンドだよ。めちゃめちゃテンション下がってると救いの手が。
「こんなに張ったらバレませんか?」
お、ナイスだ梨華ちゃん!流石!!
その調子で5期をまず帰らせてしまおう!
であたしも帰るふりして他の策を・・・。
「じゃあ二手に分かれようか。」
そりゃないっすよ矢口さん!!
警備の目が余計に厳しくなった事にあたしは落ち込んだ。
もうこれは不可能ですね、三億円事件の犯人捕まえるぐらいに。
つんくさん頑張って〜。そんな風に物思いに耽っているといつの間にか
5:5に上手く分けられていた。
・ 5期+矢口
・ 4期+後藤
あたしは二手に分かれる直前に、苦し紛れに一言、吐いた。
「も、もう時間遅いし、4人は帰ったほうがいいんじゃない?」
「そうですね。」
こんこんナイス同意!ささ!帰った帰った!!元々半ば強制
(先輩という名の権力)でその場にいた5期メンは、あたしの
言葉であっさりと帰ることになった。
「あたしも帰る、眠い。」
ごっちんも誰かが帰るのを待っていたみたいで、芋づる式で帰っていった。
5期+後藤脱退。張り込み隊計5人。
- 37 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:21
- 5人にまで減った・・・。あたしはとりあえずこのまま減り続けるのを
待とう、んで矢口さん一人なら、いざとなったら・・・・。
なんだか良からぬ事を考えると、バチって当たるんですね、すぐに
天罰が下りました。
「なにゃ、何しとんの?楽しそうなやなぁ。うちとみっちゃんも入れてや。」
「あー!なっち達のけ者べか?なっち達も入れるべさー!」
「松浦も入れてください!」
何ですか?この野次馬根性。ていうかなんで今日に限ってスケジュール
被ってるんだよ!!!
中澤+平家+安倍+飯田+保田+松浦加入。張り込み隊計11人。
あの・・・何故減った分すぐ補強を・・・。しかもさっきより
増えてるし・・・。どっかの野球チームじゃないんだから・・・。
あたしは慌ててトイレと言う事で一旦その場を抜け出した。
廊下の見えないところまで行くと、階段に腰掛け、再び電話をした。
「無理です。」
あたしのその一言につんくさんは泣きそうになりながら説得してきた。
情けない・・・これがスーパープロデューサーの成れの果て・・・。
「あたしだって行きたいのは山々なんですよ。でも10人の目を
掻い潜って部屋に入るなんて無理っす。」
あたしはジェームズボンドじゃない。スパイキッズでもない。
無理なもんは無理なんだ〜!!
って思い切り言ってやりたかったけど思ってもないことも口走る。
「そこをなんとか・・・。お前だけが頼りやねん。」
消えてしまいそうな声のつんくさんは、なんだか泣けた。
でも頼まれたからと言って出来るもんじゃない。
・・・ん?あ、こう言えばいいのか。
あたしは思ったことをそのまま口に出した。
- 38 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:23
-
「じゃあ方法考えてください。」
「・・・分かった。」
分かったって言ったって事は、どうにかするって事だよね?
本当に出来るの?
作曲場のドアを、両側5人、6人で囲って監視中。あたしが
向こうに歩み寄るのは不可能と見ていいと思う。
諦めて作ってもらうのが一番いいんだけど・・・。
あの人作る気ゼロっぽいんだよなぁ。とりあえず眠いから、
なんでもいいから早くして〜。自分のほうも曲作る気ゼロモードに
突入していた頃、背後から声が聞こえた。
「あんた達何やってんの?」
振り返ると、そこにいたのはマネージャーさんだった。
まだいたの?その姿を見て、矢口さん一人、あからさまに焦りだした。
「明日早いから直ぐ帰れってあんなに言ったわよね矢口!!」
「はい!!!」
矢口さんは名指しされてビビったのか、勢いよく返事をした。
でも声は震えちゃってる。なんであたしが、って顔しているのが、
悪いけどちょっとだけ笑えた。
「分かったら、全員さっさと帰る!!」
・・・あれ?あたしも帰らされてるじゃん!!全員速やかにタクシーへと
詰め込まれてゆく。だめじゃん!!
バタン!!
ブーン・・・・。
作戦失敗。
- 39 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:24
- タクシーの中、すぐにあたしは苦情の電話をした。
「つんくさん?!あたしまで帰らされたんすけど!!」
あたしはこの時ばかりはボロクソ言ってやろうと、
勢いよくまくし立てた。でもつんくさんの声はめちゃめちゃ冷静だった。
「今からUターン戻って来い。」
なるほど!!目から鱗が落ちますぅ!!いきなり態度変わりまくりな
あたし。話しながら頭をペコペコと下げ、運ちゃんに頼むと、
すぐに作曲場の方へと逆戻りした。すぐに電話してよかった。
あたしは大した時間を要することなく戻る事が出来た。
あたしは駆け足で作曲場へと向かった。眠いし、時間が惜しかったから
さっさと作るなり諦めるなり決めたかったのだ。階段を駆け上ると、
そこはすぐに作曲場の横・・・。
「諦めてたまるか〜!!!」
なんだか雄たけびを上げているちっさい人一名。
・・・矢口さん・・・。
なんであなたはこう、・・・あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
あたしは発狂しそうになるのを必死にこらえ、階段の途中まで降りると
再びつんくさんに電話をした。
「矢口さんがいます!」
つんくさんは一瞬驚くと、諦めたような声で、言った。
「もうしゃーないな。」
「え?」
- 40 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:26
-
「今回の新曲のセンターは、矢口、お前や。」
「本当ですか?!」
この二言で、「もうしゃーないな。」の意味を理解して頂けたんじゃ
ないでしょうか?こう言っちゃ矢口さんに失礼だけど、
かなり苦肉の策です、はい。
〜一旦回想〜
あたしはつんくさんに言われた通り、矢口さんに話しかけた。
「矢口さん。」
矢口さんは少しびっくりしたのか、小さな体を一瞬ビクッと震わせて
可愛かった。矢口さんは振り向いてあたしの顔を見ると、笑顔を覗かせた。
「よっすぃ〜も戻ってきたんだぁ。やっぱあれくらいで負けちゃダメだよね!」
あたしはとりあえず受け答えをした。すると、
ガチャッ。
「二人とも、入れや。」
つんくさんが中から現れた。これには矢口さんはめちゃめちゃ驚き、
あたしの方を見て、更にびっくりして、とうとうを声を出してしまう。
「なななななんで?!よっすぃ〜もなんで?!」
全く動じないあたしが、更に矢口さんを混乱させたみたいだった。
あたしは矢口さんを作曲場へと引きずりこむように引っ張った。
あんまり騒がれると困る。3人で中に入ると、つんくさんは急いで
戸を閉めた。
- 41 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:27
- 矢口さんはあたし達の告白に、ただただ呆然とした顔で聞いていた。
ゴーストライターがいるのは間違いないと思っていたけど、まさか
メンバー内、しかもよりによってこいつかい!みたいな感じだろう。
あたしも矢口さんだったら、なんでよっすぃ〜なんだよ!!
って絶対思うし。
「それで、この事は、秘密にしてほしいねん。」
机の向かい側に座る矢口さんに、両手を机に乗せ、頭を下げるつんくさん。
安い土下座だなぁ、あたしはそんな事を思いながらつんくさんの横で
座っていた。一応当事者(?)なのでつんくさんの横に座り、矢口さん
一人が向かい側。
「頭を上げてください。」
つんくさんは頭を上げない。
「頭を上げてください。」
2度目で静かに頭を上げる。ああなんだっけ、ラーメンマンだっけ?
・・・・あ、そうそれ、ラーメンズ。
のネタで土下座のマナーなんてあったけど、頭を上げてくださいって
言われてすぐ上げると、安い土下座だと思われるからすぐ上げちゃいけない、
とか言ってたなぁ。実行してやがる・・・。
- 42 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:29
- 「この事について、誰にも言いません。」
あたしとつんくさんはほっと胸を撫で下ろした。
「言っても信じてもらえないと思うし。」
ザクッ。
まあ否定出来ないけどさぁ、なんか悲しい。やっぱメンバーの誰かが
実は曲作ってるなんて、例えファンサイトの掲示板にひたすら書き込み
まくっても相手にされないんだろうな。やってみようかな・・・。
【発覚】なんてつけちゃってさ。あーでももういいのか。
いいから今これ書いてるんだっけ。
矢口さんも言わないって言ったし、このまま終われば良かったんだけど、
つんくさんが「保険」をかけるべく、口を開いた。
「ありがとな。で、お礼といっちゃアレかもしれへんけど、今回、
センターでどや?」
『え?』
あたしと矢口さんは同時に声を上げた。矢口さんはもう大人な態度で
言わないって言ったのに、何でそんな事を。もしこれで味を占められたら
逆に脅されかれないってのに。まあつんくさんなりの感謝の気持ちと、
メンバーへの気持ちの信頼の表れなのかもしれない。
「ただ、そのあとは、この事は忘れてくれ。」
- 43 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:30
- 矢口さんが去った後、あたしはさっそく聞いた。
「作りました?サビ。」
つんくさんは渋い表情で答えた。
「出来た事には出来たけど・・・・。聞いてみい。」
お、出来たんだ!少し嬉しくなってさっそくヘッドフォンを身につける。
つんくさんが全然皮肉に対して表情を変えないのは、もう絶対的な
上下関係が確立しているからだろう。もうつんくさんは、
あたしがいないと今の自分を保つ事が出来ない。
「・・・・・微妙、と言わざるをえませんね。」
あたしは素直な気持ちを伝えた。なんというか、ぱっとしない。
全盛期の曲たちの比べると、見劣りならぬ聴き劣りを感じる。
「ただ、やっぱ一度聴いちゃうと展開上他のメロ思いつかないんで、
これで行きましょうか。」
あたしは流れで1回聴かされた上でそれを頭の中から消去し、
新しく、より良いサビを作れほど頭も良くないし、天才でもない。
「え?ええんか?」
いや、それはあんたが聞くことじゃないでしょ、作曲者は一応
あなたですから。あたしは心配そうな表情のつんくさんを流すと、
「だから、最初のメロを多めにぶつけましょう。これ(サビ)の前に
挟んで、曲の終わりもこれにしましょう。」
数打ちゃ当たる、いや当てる。つんくさんはあたしの力説に納得、
とりあえず話がまとまった。そしてあとは詞を残すのみとなったんだけど、
「詞は、お願いします!弾けちゃってくださいよ!あたしは眠いんで、
帰ります!じゃ!」
「え?おい!待・・」
あまりに眠かったのであたしは有無言わせず家へと帰った。
- 44 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:33
- どうでもいいけど矢口さんの演技、めっちゃ白々しく見えるんですけど、
事実を知っているせいかな?そういえばこれ書いてて気がついたが、
ここ最近センターをうまい事回してるよね。
梨華ちゃん、あたし、矢口さん。
売り上げが減ってるって事は、世間的に、
梨華ちゃん>あたし?矢口さん
なのか〜。よし、あたしと矢口さんどっちが上か、勝負だ!
そんな事を意味も無く考えていたら、どうやら今回のセンターは
たいしたセンターじゃない事が発覚した。あたしや梨華ちゃんは、
台詞まであって、本当にメインだったけど、今回の曲は結構全員
目立つって言うか、ニュースで矢口さんがセンターって流れなかったら、
ファンでもない、普通の人から見たら、
「ただ真ん中に立ってるだけ」
じゃん。矢口さんご愁傷様です。あたしはつんくさんの愛情って
そんなもんなのね、なんて思ったりしてしまった。
- 45 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:34
- 毎回緊張のオリコン。もう3回目のせいか、誰もあたしが緊張しながら
ランキングのページを開いている所を気にしない。
「・・・・・・・・・・。」
ちょっとだけ、いやな気分になった。1位なのは、当然だからいい。
問題は内容だった。27万2950枚。30万枚を切ってしまった。
見た瞬間一瞬わが目を疑った。え?どういうこと?
31万0810枚→30万8940
と来ていたから30万は普通に取れるもんだと勝手に勘違い
していたのかもしれない。よく考えたら恋レボは50万越え
してたんだもんなぁ。
「よっすぃ〜どうしたの?次よっすぃ〜だよ?」
矢口さんに言われてはっとする。そういえば今、アルバムの最後の
曲歌入れ中だっけ。にしてもこんなギリギリに入れることないのに。
・・・ん?あ、そうか、これアルバム先行扱いだからか!
あたしは気を取り直してレコーディングに向かった。なんと1発OK。
つんくさんは目を丸くしていた。あたしは上機嫌のままブースを出ようと
すると、ふと気がつく。アルバム先行って、あたし達のようなアイドルの
場合当てはまるのかな?
途端にテンションが落ちまくる。分かりやすい、っていうかガキだな、
あたし。ブースの出口でしばし放心状態になると、
「吉澤、調子いいみたいやから言うけど。」
つんくさんがいきなり言った。
「ストックが尽きた。」
- 46 名前:おって 投稿日:2004/04/08(木) 22:37
- 今日はここまで。
>>27 レスありがとうございます。
「結構」を「かなり」に変えられるようなものが出来ればいいなと思います。
>>28 レスありがとうございます。
どうもです、といっても1週間経った上また更新してしまいましたがw
この話で、楽しんでいただければ幸いです。
- 47 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/08(木) 23:47
- このままどこまで行くのでしょうか?
まさか...
- 48 名前:9 投稿日:2004/04/09(金) 01:01
- 更新乙です。
おもしろいです。
- 49 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:20
- 3.「手を握ってめっちゃギュッとデインジャー!」
「ストックが尽きた。」
・・・・・・え?それって・・・・・。あたしが何も言えないでいると、
つんくさんは更にこう付け加えた。
「EEJUMPをもって打ち切り、ソウルドアウトや。」
あ、ライオン先生の主題歌歌ってた・・・ってそうじゃなくて。
しかもこの頃まだいないし。あたしは血の気が引いた気がした。
確かにいつかは来ると思っていたが、まさかこんなにも早く尽きてしまうなんて・・・。
まあ自分たちはあたしが自給自足で何とかするとしても・・・。
「でも締め切りもうすぐのがたくさんあんねん・・・。」
つんくさんは吐き捨てるように呟いた。今、こんな時に言われても、困る。
あたしはとりあえず逃げようとと、
「・・・・とりあえず、後で話しましょう。押してますし。」
とだけ言うとつんくさんに何か言う暇も与えずにブースから出た。
「え?!早いよ!!!」
あたしが出てくると、ののが何故か焦っている。机の上に前のめり気味に
構えて。何か隠しているようだ。
「何隠してるの?」
満面の笑みで近づいてみた。
「えっと、いや、あ、えっとあと5分!5分待って!!そしたら行くって
つんくさんに言っておいて!!」
よく見てみるとののの時計はストップウォッチに切り替わり、2分半まで
時間が刻まれていた。
「のの3分経ったよ。」
「え?」
ののはバッと起き上がった。想像通りのブツが机には置かれていた。
「つんくさ〜ん。」
「あ〜ちょっと待って待って待って待って!!!」
あたし達が追いかけっこしている間も、ラーメンは伸びてゆくよ?
- 50 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:22
- その日の仕事終わり、あたしはスタジオに呼び出された。また泣きつかれる
のだろうか。オッサンの泣く姿ほど醜いほどはないと思うのに、それに何度も
付き合わなきゃいけないなんて、嗚呼、可哀想なひとみ。なんてくだらないことを
考えながらスタジオに入ると、つんくさんはちょっと硬い表情をしてこっちを
見ている。
あ、なんか空気がいやだ。
「ストックが尽きた。」
またそっからかい!・・・目がマジだな・・・。
「それって、あたしがどうにかしろってことですか?」
あ〜またやっちゃった、立場逆転現象。
今書いてるとそう思うけど、この当時あたしは全然そんな事考えなかった。
人間ってちょっとした事で変わっちゃうから怖い。でもつんくさんはそんな事
気にする余裕すらなかった。両掌をバシンと合わせると、拝み倒してきた。
「頼む!この通りや!カップリング、アルバムは全部責任持って作る!
パクリ全開フルスロットルや!!」
いやそれいいのかよ!!
てかそれでシングルも行けや!!
言いたい気持ちをグッと堪える。流石それを言うまでの人格崩壊はしていなかったらしい。
客観的に見ても嫌な奴だな〜、当時のつんくさんの前での『吉澤ひとみ』。
「で、まず何を作ればいいんですか?」
あたしがそう言うとつんくさんの表情はぱっと輝いた。何もかも希望に満ち溢れたような、
そんな感じ。そんなに期待されてもめちゃめちゃ迷惑なんですけど。
たかが3曲作っただけなのに・・・。
- 51 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:23
-
「えっと手始めは・・・。」
つんくさんは手元の資料をめくり始めた。おそらく簡単なリリース予定表
みたいなものなのだろう。ちょっと覗き込めば今すぐにでも見れたが、
怖かったので見るのはやめた。
「カントリー」
「いいじゃないですか稼ぎよくないから“根性”で。」
部屋内沈黙。
なんか物凄い呪文間違って唱えた魔法使いみたいな気分。別に間違ってないけどね。
ごめん梨華ちゃん、
あたしあの雰囲気好きになれない。
「吉澤お前・・・仕事選ぶ気か?」
「いけませんか?」
本当、思い出す度に思う。
あたし調子こきすぎ。
つんくさんが強く出れないのと、曲を作れなくなっているのを分かった上で
これだもんね。鬼だよ鬼。
つんくさんは渋々次の曲を指でなぞる。
「じゃあバカ殿様とミニモニ姫。の『アイーン!ダンスの唄』みたいなものをな?」
「そんなに構想できてるんですから作れますよ。」
超造り笑顔で言うああたしに対して、超仏頂面のつんくさん。あまりにも
その表情が、例えるならば放送できないぐらいひどい顔だったから、
あたしは仕方なく、
「・・・分かりました。じゃあ・・・。」
ちょっとした間の後、あたしは歌った。
「アイーン!アイーン!アイーン!アイーン!アイーン!♪これサビで。」
構想2秒。
つんくさんは唖然とした顔で、でも納得した顔。
「でもそれええなぁ。」
決定。
- 52 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:26
- 残りの仕事は真面目に受けた。ごっちん、あやや、ミキティ、メロンと
2週おきくらいに続くのでそんなに余裕がない。でもだからと言って構想が
浮かんでいるわけでもない。引き受けたことを毎回のように後悔する。
楽屋の暇な時間も暇じゃなくなってしまった。曲のことばかり考えておしゃべりも
上の空。遂には交信扱いされかける始末。
だって4曲も出来ないって!!
あんなおじさんが作る男を悦ばすための曲なんて!
・・・っと失礼。
心を落ち着けるためにぼっーとした時間を少し、過ごしていると、ごっちんが
不意に視線に入った。
よし、ここはいっそ・・・。
「ごっちん。」
「何?」
「次ソロで出す時、どんな曲がいいと思う?」
「んあ?う〜ん、なんだろう・・・。」
ごっちんはすごく驚いた顔をしたけど、答えてくれた。
「なんかこの前友達に言われたんだけど、ファンじゃない人にはあたし、
きついイメージがあったりもするらしくて。それを覆せるような、
なんていうかな、よく分からないけどそんな曲がいいや。」
笑顔を見せるごっちん。この笑顔を見たら、誰もそんなイメージ持たないと
思うんだけどなぁ、なんて考えていると、
「でもなんでいきなり?」
うっ、痛い所を・・・。
なんて言おうか。あたしはちょっと悩んだけど、よく考えてみるとあんまり
悩んだら余計に不自然だ。早く答えなきゃ。
「近々曲渡されるらしいよ?」
アレ?
コンナ事言ッテイイノカ?
「え、ほんと?」
「うん。希望通りならいいね。」
「そうだね。でもどうだろ〜?」
ごっちんは楽屋の上の方に目をやる。遠い目。とりあえず、
なんとかごまかせた?
- 53 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:27
- えっと、ごっちんの希望はきついイメージを一掃するような曲、か。
う〜ん、じゃあどうしよう。
あたしは家に帰るとベッドの上に転がりながら、考えていた。きつくないんだから、
優しい?ていうかアイドルなんだからきついとまずいよね・・・。
よっし!決めた!子供だ!!子供と戯れるんだ!手握っちゃったりしてさ!
なんか知らないうちにあたしは曲より先にプロモのイメージが先行してしまった。
そこからそれっぽい曲を思い浮かべてゆく。
なんかさわやかで、子供と一緒に歌えるようなメロディー、服なんかピンクで、
子供と一緒にいい笑顔いっぱい見せちゃってさ・・・・
って、だから曲先に考えないと。
メロディーはそれっぽく仕上がったけど、歌詞はいかに・・・。
これまで歌詞に関しては大部分つんくさんに頼ってきた。でも今つんくさんに
会いに行ったら仕事増やされそうだし、正直会いたくない。自力でやろう。
これだけ構想できてるんだから出来るはず。あたしは気合を入れて、辞書片手に
ルーズリーフと格闘した。
- 54 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:29
-
「あ〜、吉澤さ〜ん!!!」
うっ、この声は・・・。
あたしは振り向くと、そこにはやはり、あややの姿が。
「ど、どうも・・・。」
今結構噂になっているあややの年齢詐称。あたしたちの間ではこの頃一番
流行って(?)いたから、あたしは思わず敬語で話してしまった。
そんなあたしを見て、あややは表情を一遍も曇らせることなく応対してくる。
「やだ〜吉澤さんなんで敬語使うんですかぁ?それじゃまるでこっちが
年上みたいじゃないですか!」
あの〜、その笑顔、裏があるようにしか見えません!!
でもだからと言って本人にその真意を聞くのは・・・。
(実は未だに聞けてなかったりする)
とりあえずあたしはこの会話の中ですぐに、ごまかすような曲を!と勝手に
妄想し出していた。ごまかすためにはとりあえず桃色の〜♪のごとき。
とにかくブリブリのアイドル路線で、ノリノリで、イェーイ!みたいな曲(どんなだ)
にしなきゃ!
と謎の使命感に駆られたあたしは、初めて曲よりも詞に時間をかけた。
歌詞書いてるとき、なんか耳が熱くなったのは気のせいじゃないと思う。
てか今これ書いてて耳が熱い・・・。首裏とか・・・。
- 55 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:30
- 続いて会いに行ったのはミキティ。この頃そこまで馴染みが深かったわけ
ではなかったけど、話しかけると笑顔を見せてくれた。
でも流石に次の曲どんなのがいい?なんて聞かれても困るかな?、って思ったけれど、
ミキティは強い目で答えた。
「今は皆に追いつけるように必死だから、いい曲ならなんでもいいよ。」
ミキティ、燃えてます。
熱いです。
気持ちガンガン伝わってきたんですけど、それ、一番困るんですよねぇ・・・。
漠然としてる上に、物凄いプレッシャーが・・・。
もちろんミキティはそんな事お構いなしで(あたしが作ってることなんて知らないわけだし)
笑ってる。
「そうだね・・・。頑張れよ!!」
あたしは精一杯の激励をして、方向転換。
その瞬間、表情から力が抜けた時、たまたま通りかかった高橋と目が合った。
高橋はあたしの顔を見ると目を大きく見開いて驚く。
・・・・そんなにひどい顔してた?
今日は家に帰るまで大分撮影がかかりそうだった。だから夜ご飯を食べつつ構想を練る。
なんていうか、作曲家っぽいなぁ。かっけー!
ミキティの言葉通り、売れる曲を作るのが望ましいようだったから、男の子を
喜ばせるような曲を必死に妄想した。そこであたしが当時書いたメモが手元にあったから、
箇条書きだけどそのまま載せます。
- 56 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:31
- ・ サビ裏声
・ 歌詞に「口付けて」「抱きしめて」・・・
・ 振り→揺れ
・ いっそ大胆に
あと他にもなんか色々書いてあったけど、くしゃくしゃに丸めてあったのと、
食べながら書いたのがあって自分でも読めないや。
でもよくこっから持っていったなぁ、なんて自画自賛してみたり。
すみません、調子乗りました。
最後はメロンの4方。工程を書いてもいいんだけど・・・、全員希望は
トップ10入り、と息が合いまくりで、希望に添えられなかったのが
あたし的に痛いから略で。(メロンファンの人ごめんなさい)
- 57 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:33
- なんだか、時を重ねるごとにオリコンを買うペースが上がっているような・・・。
あたしは緊張した顔でランキングの1ページ前で手を止めていた。なんだかんだ言って
アイーンも心配だったから、計5冊もこのクール?だけで購入。
あたしの部屋のスペースは、ここらへんから少しずつ減り始めていた。ケチだから、
捨てられネーゼなんです、はい。
アイーン9万越えはホッとした。2秒で9万枚売ったようなもんだから、
丸儲けだ。でもごっちんがそれに2万も負けたのがびっくりした。
え?なんで?作ったのにかけた時間、単位も桁も違うのに。ごっちんに
こっち路線は合わなかったのだろうか。前作の初動分からないからなんとも言えないけど。
あややあんなに恥ずかしい思いをして作ったのに、またも2位。
2位族ですよ、はい。桃色には勝てなかったか〜、
つんくさん、やっぱあんた偉大な変態だよ。マジで。
どうでもいいけどオリコンだけでこんな金使うなんて勿体無い・・・。
でも順位変動と総売り上げみたいからしょうがなかった。
今回一番成功だったのはやっぱミキティじゃないでしょうか。
週が良かったおかげか、見事トップ5入り(4位)前回とほぼ同じ初動らしいから、
低下しているほかと比べて明らかに成功したといえる。
でもメロンが14位だったんだよな〜・・・。
- 58 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:35
- これだけ低下しても、つんくさんは曲自体が作れない状態だったから
あたしが作るしかない。あたしだってもうかなり苦しいし、ストックすら
最初からないのに、なんだよ!!
でもあたしが作らないとハロプロ自体がストップしてしまう。なんてひどいんだ。
そんな中、スタジオに次の予定を聞きに行くと、着くが否やつんくさんに頭を下げられた。
「すまん!!」
何がなんだかよく分からないが、とりあえず嫌な予感。
「なんですか急に。」
つんくさんは頭を上げることなく、ずっと礼をしている。
「申し訳!」
「パクリですよ。」
すぐにツッコミを入れるとつんくさんは少しだけ笑った。
さすが常習犯。
「断れんかった。」
つんくさんは罰の悪い顔で笑うと、手と手を合わせて一言。
「カムサハムニダー。」
あ、悪寒・・・。
後は皆さんのご想像通り。とりあえず次回に持ち越させていただきます。
- 59 名前:3. 投稿日:2004/04/14(水) 23:38
- ちょっと短めですがここまで。
>>47 レスありがとうございます。
とりあえず、行けるトコまで行かせていただきますw
話が単調にならないように出来ればいいですね。
>>48 レスありがとうございます。
おもしろいですと言っていただける喜びのために書いていると言っても
言い過ぎではない位に自分の原動力となっています。
更なる飛躍を目指しますので、よろしくお願いします。
- 60 名前:おって 投稿日:2004/04/14(水) 23:38
- 名前戻してないしsage入れ忘れた・・・。sageます。
- 61 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/15(木) 19:09
- 最後のカタカナがわからなかったです _| ̄|○
- 62 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:01
- 4.「チョンマル サランヘヨ」
「あの、すみません、意味がよく分からないんですけど。」
今ならピンと来る人もいると思うけど、当時のあたしからしたら、なんだか
よく分からないカタカナ語を片言の日本語で連呼されているようにしか
聞こえなかった。つんくさんはそんなあたしに、言った。
「チョナン・カンって、知っとるか?」
「町内会?」
「無理やりやん!ちゃうちゃう。チョナン・カン!まあ知らんなら説明するとな、
草g剛が韓国でそう言う名前で仕事してんねん。」
へぇ。
このときもうトリビアがあったら、ボタンを押していたと思う。
もう、10へぇくらい。
それ程初耳だった。でも、
「それと「申し訳!」、どこら辺繋がってるんですか?」
悪いけどはっきり言って、草gさんがチョナン・カンって名前で韓国で活動
していたなんてあたしにとっては完全にトリビアで、それが謝られる理由に
なるなんて全然訳が分からなかった。
「ん〜、あ〜・・・・・。曲。」
「え?」
ま、まさか・・・・・・・。
物凄い悪寒があたしの全身を襲う。
「作ってくれって・・・。」
その声を聞いた途端、あたしの中で何かが弾けた。
- 63 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:02
-
「仕事増やすなー!!!!」
大声で叫んですぐに手で口を隠して、ついでに顔もそらす。
やば。
本音が思い切り出ちゃった。そ〜っとつんくさんの方を振り向くと、
つんくさんは深々と頭を下げている。
・・・・え?マジすか?
「ホンマにすまん・・・・。」
あの〜、本当にプライドのカケラもないんですか?あなた。
頭を上げてください、って言ってもどうせ1回目は聞かないだろうから、
あたしは無理やり頭を起こした。
「分かりました、作りますから。」
その一声をやはり待っていたつんくさん。
安堵した表情でフーッと息を吐きながら目を閉じ、両膝を地面についてしまった。
そのまま両手も地面に付ける。
「大丈夫ですか?!」
いきなりだったからあたしは驚いて、一応聞いた。するとつんくさんは、
「歌詞、韓国語やから。曲出来たらすぐくれや。草gさんに訳してもらわなあかん。」
言い方にプチン。今度はあたしの中で何かが切れた。
- 64 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:03
-
祭りの後の静けさとはこの事か。
- 65 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:04
- あたしもとうとうアジアデビュー、なんてバカな事を考えながら、曲の
構想を練り始める。
でもどうしよう。全然漠然としてて何も思いつかないぞ。
というかチョナンカン自体見たことないんだから仕方がない。というわけで、
あたしは実際に夜中やっているという番組を見ることにした。
放送日、金曜日の仕事帰り、12時を回っていたけど放送まではあと1時間以上
あった。どうしよう、今のうちにつんくさんの言う「ストック」でも考えてみるか?
色々考えているうちに、あたしは曲を作り始めてから今までの事を記す日記を
作ろう、と思い当たった。それが今書いているこれの「元」となっているわけだけれども、
書き始めた当初はこんな使い方するなんて夢にも思わなかった。
大体あたしの性格上3日坊主が関の山、と思っていたから、ほんの軽い気持ちで。
一気に書くのには苦戦したけど、なんとか書き終えた。
ふーっ、一息つく。ジュースを一杯口にして、時計にふと目をやると・・・・。
2:22
あ、佐々木・・・じゃなくて。
番組終わってんじゃん!!!!しかも明日入り早いの忘れてた!!
寝なきゃだめじゃん!!!
あたしはすぐに電気を消すと、ベッドに潜り込んだ。
- 66 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:05
-
時はそんなに待ってはくれない。
曲の締め切りというものがちゃんとある。特に今回はつんくさんと草gさんの
韓国語歌詞打ち合わせ日が決まっていたから、かなり切羽詰っていた。
でも番組見てから作りたいし・・・。
困ったあたしはフジテレビまで、プライベートの時に行った。
「すみません、借りまーす。」
テレビ局にはそれぞれ、莫大な量のビデオテープを保管している、
図書館ならぬビデオ館のような物が存在する。
なんかちゃんとした名前あったけど忘れました。
そこであたしは『チョナン・カン』のビデオを借りる事にしたのだ。
でも借りる時、変な目でちょっと見られた気がするけどスルー。
「どれどれ・・・・。」
家に帰ってあたしはさっそくビデオを見ることにした。時間はない。
テープを入れ、再生っと。
ピンポーン。
ん?
まさに再生ボタンを押す直前に、家のチャイムが鳴った。今家にいるのは
あたし一人。母親は弟を荷物持ちにスーパーへ。仕方なくあたしは、
とりあえずはんこを持ってドアを開けた。
ガチャッ。
- 67 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:07
-
「はい。・・・って梨華ちゃんじゃん。どうしたの?」
突然の訪問に、あたしは驚いた。いつもなら嬉しいんだけど、今日は
ちょっと・・・。しかも急に来られたから、どう出迎えればいいか
分からなくてテンパった。
「遊びに来ちゃった。迷惑だったかな?」
「ううん、全然そんな事ないよ!上がって。」
嗚呼、今日は徹夜でしょうか?
ひーちゃんが〜夜鍋〜をして〜1曲作ってくれたぁ〜♪
はぁ・・・・。
しばらくお喋りしたり、弟の部屋からゲームを拝借して遊んだりしたあと、
梨華ちゃんは急に改まった表情で、
「よっすぃ〜最近ちょっと変。」
と一言。
え?
とあたしが聞き返すと、
「何か悩みでもあるの?あたしでよかったら、いつでも聞くよ。」
思い切り目と目が合う。
どうしよう、あたしは一瞬、本気で言ってしまおうかどうしようか悩んだ。
これだけ信頼出来る親友に、隠し事なんて・・・。
でも・・・・。でも、信じてくれないだろうな。
「うん、ありがとう。でも別に何もおかしくないから。」
妙にごまかしてるっぽい言い方になっちゃった事を、言ってからちょっと
後悔した。
- 68 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:09
-
ゴーストライター【ghost writer】
ある人名義の原稿や著作をその人に代わって執筆する影の筆者。(広辞苑より)
「悩み、かぁ〜・・・・。」
買ったはいいけど埃がたまってしまっていた電子辞書を持ったまま、あたしは
ベッド上を転がった。
影の筆者、という響きは確かにかっけーけど、同時に思うことが一つ。
あたしは何をやっているんだろう。
それを一度思ってしまうと作曲意欲が完全に薄れる。
なんのため?
誰のため?
あたしのため?
いや、違う。じゃあ・・・。
頭の悪いあたしには、これ以上いい答えを望むのは難しいだろう。
考えれば考えるほど、電気コードが複雑に絡んで取れなくなるように、
ぐちゃぐちゃになってしまう。だから、今はただ、曲を作り続けるしかない。
そんな気がした。
- 69 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:12
-
とりあえず借りてきた『チョナンカン』を見てみる。
・・・・・いやこれ、まんま草gさんですよね?韓国語話すだけで。
あ、でもほっぺ赤い。
とりあえず結論。なんも浮かびやしませんでした。字幕出るのも
いいんだけど、これ見てるだけで曲作れたら苦労しません。(何を今更と自分にツッコミ)
ど、どないしょう・・・・。眠いし、もういいかな〜?ベッドの上で、
うとうとして羊が何匹も何匹もぐるぐる頭の中を駆け回ってきた。
まずい、寝てしまう・・・。締め切り的にそろそろ作り始めないと間に合わない・・・。
ここであたしに魔が差した。
「・・・よし。」
瞬間的にAメロの概要が決定。ようはつんくさんの真似をしただけだけど。
「やったぜ彼女が笑〜ったbaby!♪てか〜。」
数年前、TOKIOさんからリリースされたつんくさん作詞作曲の
『みんなでワーッハッハ!』の一部を、頂戴させていただきました、
この場を借りてつんくさんには深く謝罪を致します。
どうせ見てないだろうけど(見てたら困ります。)
- 70 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:14
- この時期はまだあたし達は人気のピークから落ち始めの所で、仕事の量は
最盛期と同じく殺人的なスケジュール。本当に死ぬんじゃないかと思ったこと
さえある忙しさで、それなのに寝る間を惜しんで曲を作っていたあたしは、
疲労が皆よりも蓄積されてゆく。
楽屋のちょっとした休みで、あたしはいつしかみんなと喋ったりせずに眠る
ようになっていた。
これは最近矢口さんに聞いた、当時のあたしが寝ていた時の会話。
「最近よっすぃ〜おかしいよね。」
カオリの一言から、会話は始まったらしい。寝ているあたしを見て何気なく
言った一言だったらしいんだけど、皆うんうんと同意して、そこから会話が
盛り上がったとか。
「男じゃん?」
ごっちんが平気でそんな事を言うもんだから梨華ちゃんが半端なく焦った。
「そ、そ、それはないよ!!」
何故かテンパッてる梨華ちゃんはあっさり流され、男説一気にヒートアップ。
「でもこんなに疲れてるんだから、プライベート割いてまで体力使ってるって
事なんじゃないですかね?」
早口で高橋が男説を押す。事情を知っちゃってる矢口さんは、梨華ちゃんと
一緒にその説を覆そうと必死にかばってくれたらしい。
「こんなに男っ気溢れてるのにそう簡単に見つからないって!」
悪かったですね、矢口さん。
話してくれた時慌てて口を塞いだあの動き、可愛くて今でも忘れません。
「で〜もよっすぃ〜だってやるときゃやるっしょ〜。これは絶対男だべ!」
安倍さんはどうやら満面の笑みで押していたのは、
ようやくプレス(以下略)
結局この後も会話が盛り上がった末、男説がしばらく主流となったらしいです。
皆さん、勝手に想像しないで下さい・・・。
- 71 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:15
- チョナンカンの『愛の唄〜チョンマル サランヘヨ〜』は、あたし的には
つんくさんのゴーストに徹した1曲だったと思う。
Aメロをつんくさんに似せたことで、つんくさんが作ったように聞かせる事が
出来た。結果オーライって言ってしまえばそれまでだけど、あたしの中では
そう言う意味では確かな手ごたえが残る1曲だ。
なんとか締め切り日に作曲室のドアを開く事が出来たあたしは、そのまま
作曲室でしばらく休憩した。連日の疲労から、うとうとし始めた頃、草gさんが
作曲室に訪れた。
あたしはちょうど二人の死角にいたから、草gさんはあたしの存在には気づかない。
つんくさんも忘れていたのか、それとも寝ているから大丈夫だと思ったのか、
熱く曲について語りだした。
「この曲は名前の通り、ラブソングや。サビなんか愛してるしか言わへんし。
せやけど単純な中でも何かを感じ取って歌って欲しいねん。」
草gさんは真面目な表情で相槌を打つ。そしてつんくさんは決め台詞のように言った。
「二人でエエもん作ろうや。」
一瞬、本気で飛び出そうか迷った。
なんやねんあのオヤジ!まるで自分で作ったかのように!!
体が動き出そうとした時、目の前に天使と悪魔が現れた。
- 72 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:16
-
悪魔:突っ込めー!つんくなんかぶっ飛ばしちまえって!行っちゃえ行っちゃえ!
天使:だめよひとみ!そんな事したら!今まで隠してきた苦労が水の泡よ!!
悪魔:いいからいいから、つんくだって文句言えないって。
天使:だめだめ!そ、そうよひとみ!こんな時は人って3回書いて飲み込むのよ!!
なんか、悪魔が矢口さんに妙に似てて、天使がやけに梨華ちゃんっぽいんですけど?
そんな二人のやり取りを見ていたら、なんだかほのぼのした気分になって踏みとどまった。
「あ、眠い・・・。」
あたしは一仕事終えた疲れを癒すため、改めて目を瞑る。だんだん意識が
薄れていって、
体が軽くなってきて・・・。
「いい曲ですね。」
「せやろせやろ!俺も頑張ったでー!」
目の前にまた矢口さんと梨華ちゃんが見えた気がした。
- 73 名前:4. 投稿日:2004/04/22(木) 22:18
- 突然話飛ぶけど、あたしは誰の歌になるかも分からない、ストック曲を
作るようになっていた。アルバムかもしれないし、誰かがシングルで歌うかもしれない。
備えあれば憂いなし。
作れるときに作っておけ精神であたしは作った。それに伴ってつんくさんは
あたしに定期持込時間を決めてきた。この時間帯に持ってきて欲しい、
という範囲の設定。確かにいつ誰が作曲室に来るか分からないし、つんくさんも
24時間作曲室にいるわけにはいかないから、時間を決めて置けば便利。
でもある日、あたしは仕事の時間の都合上、1時間だけ早く、作曲室に
足を踏み入れた。
「すみません、あの時間(収録と)被ってるんで今渡します。」
ドアを開けると、つんくさんは少し驚いた顔をした。そりゃそうか。
「え?・・お、おお。はよ貸してみ。」
何だよその言い方・・・。
なんて思いながらも無言でMDを手渡す。つんくさんはすぐに聴き始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
音楽を聴いているときのつんくさんの顔は流石に音楽家。一応らしい表情で
曲を聴いている。聴き終わると、なんだかいつもより早口で、
「ええな。今日はこれだけやな?」
「はい。」
「ありがとな。でも次から」
ガチャッ。
「?!」
ドアノブが回る音がする。
・・・・・・やばい?
こんな所で次回へ移させていただきます
- 74 名前:おって 投稿日:2004/04/22(木) 22:21
- >>61 レスありがとうございます。
アニョハセヨーにした方が分かりやすかったですかね?
って自分からネタバレっぽいこと言っちゃってる〜(汗)
失礼しました。
- 75 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:11
- 5.「幸せ?」
ガチャッ。
- 76 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:11
-
ジャジャンジャンジャジャン♪
寂しい夜は〜ごめんだ〜♪寂しい夜は〜つまんない♪
そんな曲が聞こえてきそうな、そんな状況。
- 77 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:13
- ドアが開いた。
誰?ていうかまずい?
今回あたしは譜面まで持ってきて、手に持っていたから慌てて背中で隠す。
「失礼しま・・・・・?」
そこにいたのはこんこん。
なんで?ていうか、なんか、譜面めっちゃ見てますよね?
「まさか・・・・・・。」
察しのいいこんこんは、すぐに気づいてしまう。あたしは慌てて言葉を
探していた時、つんくさんが動いた。
「吉澤、ちょっと出てくれへんか?」
「はい?」
「(ここは任せとけ。矢口と同じ要領でイチコロや。)」
「は、はぁ・・・。」
あたしはとりあえずそのまま作曲室を出た。
大丈夫?こんこん、それで落ちてくれるのかね?
あたしはただ、部屋の外で待つしかなかった。
- 78 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:15
- しばらくすると、こんこんが部屋から出てきた。
「入っていいですよ。大丈夫です、誰にも言いません。」
こんこんは笑顔で控室の方へと歩き出す。あたしは胸をそっと撫で下ろすと、
足早に作曲室の中へとは入った。いつ誰に見られるか分からないし。
「どう説得しました?」
「さっき言うたとおり、矢口と同じや。次の曲、後藤の横に並べたる、
言うたらすぐにOK出たで。」
目線を合わせることなく淡々と喋るつんくさん。立ち上がると、その曲を
流してくれた。
「・・・・・・・・・・・。」
聴いている間はいつも無言。こんな時だけプロらしいつんくさんには、
プロでもなんでもないけどあたしもプロらしく。
で、聞いてみて思ったのが・・・・。
「えっと・・・・あなたはアジアのパーピヨン♪でしたっけ?」
「言うな。」
即答・・・。
なんだ、自覚してるじゃん。まああたしだって前科持ちだし、強くは
言えないけどさ。でもつんくさんの復活とも言える一作。
一応コメントをしなくてはならないとでしゃばったあたしは、ちょっと批評を
混ぜた。
- 79 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:17
-
「曲自体はいいと思います。でも。」
「でも?」
「こういう路線が受けなかったから、LOVEマシーン路線に行ったんじゃ
なかったでしたっけ?大丈夫ですかね?」
「・・・・・・・。」
つんくさんは渋い表情をしたまま、少し黙り込んでしまった。でもちゃんと
言っておかないと、あたし達の死活問題でもあるのだから。
「せやな、でもな吉澤?これは一種の賭けやねん。正念場や。モーニングが
第一線で張れるかどうかの。」
「正念場・・・。」
「今右肩下がりやろ?ここで初動がこれ以上下がったりしたら、正直もう
手の打ち様があらへん。もしそうなったら・・・。」
つんくさんは表情を更にゆがめ、かなりためた。でも、
「いや、これは今言うことやあらへんな。今は頑張るだけや。」
おい!!あたしにも言えないっていうの?!
ってあれ、何この彼氏に不満を述べる彼女みたいなキレ方。
しかもつんくさんはドンドン話を進めた。
そしてあたしは聞くことになる、年に一度のイベント、今現在のあたしの
状況的には、最も聞きたくない言葉。
- 80 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:18
-
「シャッフルの曲をな?」
あ゛〜聞いちゃったよ〜、
心の中で落ち込むと、つんくさんに届くはずも、あたしがサトラレなはずも
なく、会話はそのまま進んでゆく。
「コンセプトは決めたんや、今年は『幸せ』。で、曲作ったろ!って
気合入れたんやけど・・・・・。」
もういい、その先言わないでいいです。
「分かりました・・・・。ただ余りグループは手を抜かないとばれるんで
抜かせていただきます。」
ちょっと嫌〜な皮肉を混ぜて、あたしは答えた。
「おお、ちょうど恐竜の博物館かなんかのタイアップきとるから、
それ頼むわ。メンバー分けは、こんな感じや。」
え、タイアップ来てる奴に手を抜いてよろしいんですか?票を渡されると、
あたしはすぐに自分の位置を確認した。
・・・ほっ。あたしはとりあえず前回のような事がないことを確認すると、
今度は各メンバーがどのような傾向をもって集められているのか、見てみた。
- 81 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:19
- 一組目はなんていうか、主に可愛い路線?平均年齢が低い感じ(一部除く)
あいぼん、高橋、麻琴、ガキさん、ミカちゃん、あさみさん、斉藤さん
というメンバー。
さ、斉藤さん・・・・。
二組目はあたしのいるグループ。一組目より大人っぽい感じかな?
あたしの他に矢口さん、ごっちん、梨華ちゃん、アヤカさん、平家さん、
大谷さん、里田さんというメンバー。
最後は・・・・残った方々(ひど!)
この話は当時のあたしの日記から文に起こしているからあたしには過去の
あたしは止められません。
カオリ、圭ちゃん、安倍さん、のの、こんこん、りんねさん、柴っちゃん、
村田さん、ミキティ、石井さん、あやや。
どう見ても残り全員詰め込んだ感じじゃないですか、でも駒は全然揃ってますね。
問題はどこを恐竜に当てるかだった。第一恐竜、手を抜いていいんですか?
という疑問もある。タイアップがついてるから丁度いいってことは・・・。
あたしが考えていると、つんくさんは言った。
「恐竜の奴は、『幸せきょうりゅう音頭』みたいな奴でええと思うよ。」
ええんかい!!
あかんがな!!
しかもなんでひらがなやねん!!
あ!
「時間ないんで、もう行きます。」
あたしは若干訛った事を気にしつつ、慌てて部屋を出て行った。
- 82 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:20
- 仕事が終わり、家へと帰ると、さっそく悩んだ。どっちを恐竜に当てるか?
いや、もう普通に一番人数多いところでいいんだけどさ、駒が一組目よりも
充実してるだけに勿体無い。それに完全なゴーストに徹するより、少しぐらい
違いを見せておきたいというあたしの個人的な希望があった。
大体恐竜もちゃんと作ればいいんじゃないの?
あ、気がつかれました?
はい、鼻っからあたしの所は恐竜の候補にすら入っておりません。
全力を尽くさせていただきます。
今まで一番少数の組が毎回売り上げトップを記録しているだけに、法則を
打ち破ってやりたいと思います。大体娘。メンバーのこの厚み。
ここ3曲のセンターに、エースがいるんですよ?
あ、すみません、何自分ヨイショしてんだろ。
とにかく、色っぽいスローテンポの曲をセクシーに歌い上げる姿を妄想しつつ、
あたしは曲を作り始めた。そこで順調に作り上げる中、ふと考えた。
「ラップ、どうしよ。」
バラードにラップは間違いなく不要だったが、歌が下手なのをミキサーさんだけで
ごまかすのも大変。でもラップって、つんくさん韻踏めてない事がほとんどだよな〜。
- 83 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:22
-
結局入れてしまった。歌詞は・・・つんくさんに任せよ。あたしも韻踏める自信ないし。
しかし曲を作り終えたことで、先回しにしていた悩みが再びぶり返す。
恐竜・・・。
こんなに悩んでたから、恐竜に襲われる夢を見てしまった。
ああもう、早く決めなきゃ。そんな風に悩んでいると、きっかけはフジテレビ。
フジテレビでの仕事の時、それはあっという間に解決した。
あたしは控室に急ぎ足で戻っていた。ベーグルを単独で置きっぱなしに
していたからだ。ゆで卵をセットで置かないとあたしのだと分からず、
勝手に摘む人が大勢いる。しかも今日のベーグルは普通のベーグルとは
訳が違う。値段から味まで、何もかも違う。けちなあたしは悩んだ末、
財布を開けた。そこまでの道のりは長かった。
えっと・・・10日くらい悩んだ。でも、あたしがドアを思い切り開けると、
ベーグルは既に・・・。
「ほひしぃ(おいしい)。」
ベーグル、逝去。
死因:食われる。
犯人:安倍なつみ。
∴3組目、とびっきり手抜きのきょうりゅう音頭に決定。
安倍さん、怨むなら己の食欲を怨んでください。
- 84 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:23
- きょうりゅう音頭はさくっと作り、残った組の曲構想を練る。とりあえず
あたし達がセクシー路線だから・・・プリティー路線で。そういう歌詞は
あたし書けないからつんくさんに任せようかな、と思いつつ曲を作る。
そしてあたしたちの曲ときょうりゅう音頭と一緒に3曲まとめてつんくさんに
たたきつける。
「これの歌詞、お願いします。」
しかしつんくさんは疲れた顔で、
「すまん、今モーニングの新曲の方で手一杯や。あれいじったり歌詞付けたりで
寝れへんのや。吉澤、思い切り弾けたれ!」
あたしはちょっとだけ気がついた。
この人、疲れたふりをしている・・・。
大体あたしが聞いた時点で大体完成していたのに、睡眠を削られるほど
いじったりしてるはずがない。ていうか睡眠削られてるのはあたしだ!!!
でもあたしは弾けた。
弾けて弾けて弾けまくった。
そして書き終わった歌詞を見て赤面した。
は、はず・・・・・。
あたしだったらこんなん歌えへんわ、あれ?つんくさんと最近よくしゃべる
せいで、ちょっとうつった?いやだな・・・
頭狂った歌詞も書けるようになってるし・・・。
こんなん渡されて「歌詞の意味を理解して歌え」って言われても・・・。
キモいです、正直。
30過ぎのオッサンがそう言う曲作っていたかと思うと。
そしてそう言うのを書けてしまっている当時のあたしもキモいです、
勘弁してください。
- 85 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:24
- 曲を聴いた時の十人十色のリアクション、確信犯だけど笑えないあたしは
必死に耐えた。やばい・・・安倍さんの表情が・・・。
ベーグル食べたからですよ、安倍さん。あれいくらしたか分かってるんですか?
あたしはセクシー7(つんくさん命名。自分の曲を作ったときのイメージから
そのままだったから、イメージどおり曲を作れていることにホッとした)の
ごっちん、梨華ちゃん、矢口さんと、
「この曲でよかったね〜。」
なんて話していた。なんか矢口さんから強烈な視線を感じたけど、
置いておいて。
話し終わった後、あたしが一人で歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
「?」
振り返ると、そこには半笑いのこんこんが立っていた。
「あ!キッスキッスキッス♪あ!ドドンガドン♪失礼しま〜す。」
こんこんは笑顔のまますぐに立ち去った。
・・・・・。
こんこん恐・・・・・。
もしかしてあたし、まずい人敵に回しちゃった?
- 86 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:25
- さっきの矢口さんの視線がやっぱり気になったあたしは、二人きりの時、
矢口さんに相談することにした。
「たまに、なんであたしこんな事やっているんだろう、って思っちゃったり
して・・・。」
あたしは正直に今の気持ちを話した。時々襲われる、虚無感。こんなことして
何になるんだろう、いつまで経っても根本的な解決にはならないし、売り上げも
落としてるし・・・。
あたしはあたしなりに色々悩んでいたが、話せる相手がいなくて、一人で
溜め込んでいた。それがストレスとなり、太り始めて・・・
ってそれはどうでもいいんだけど。
もう一つ大きなストレスとなっていたのは、いつか曲が尽きてしまって、
つんくさんみたいに何もでなくなってしまうんじゃないだろう、という恐怖感。
そうしたら自分達はいったいどうなってしまうのか、考えるだけで体はもう
疲労のピークに達していた。
「でもやめることは出来ないし・・・。」
やめたらすなわち、それはあたしたちの終わりを意味する。恐ろしくて
辞められない。やらなければならないという気持ちが、以前の楽しかった気持ちを
完全に忘れさせていた。
- 87 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:26
-
「う〜ん・・・。」
矢口さんは軽くうなった後、重い口を開いた。
「よっすぃ〜は、そんなことじゃだめだよ。」
「え?」
よく意味が分からず、あたしは聞き返してしまった。矢口さんは続ける。
「いつものよっすぃ〜なら、
『あたしゴーストライターなんすよ!かっけーっしょ!』
ぐらいの勢いがある。最初はあったのかもしれないけど。」
うっ、鋭い。見事でございます。
「その気持ちのまま、行けばいいと思うよ。やっぱよっすぃ〜は
『あたしはつんくさんを救うヒーローだ!』
ぐらいの意気で行かないと。」
あたしはなんだか、頭を何かで思い切り叩かれたような、衝撃を感じた。
そしてはっとする。そうだよ、あたしは・・HIRO、
じゃなくてHEROだ!
「ありがとうございます!あたし、やります!」
「頼むよ!娘。の命運はあんたが握ってるんだから!」
「あ、でも新曲作曲者つんくさんだ。」
あたしがそう言うと矢口さんはその場で思い切りこけた。
- 88 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:28
- 作曲室内は気持ち悪いくらいに静まり返っていた。シャッフルは仕方がない
にしても、『Do it now』の初動はかなりいただけなかった。
またも降下してしまうとは。
18万枚という数字が、現実としてあたしたちに重くのしかかる。
どうしようもないのか?矢口さんのおかげで気合が入ったばかりなのに、
いきなりテンションが下がってしまった。
「吉澤、この間の事覚えとるか?」
この間の事、と言われても全く見当がつかない。
「・・・どれですか?」
「もしこの曲がこけたら・・・・で俺止めたやろ。」
「ああ。あれですか。」
あたしはあまり興味のなさそうな返事を返してしまった。なんか肩の力が
抜けてしまったような、そんな感覚。
「そんなテンション下がっててどないすんねん!
これからリリース速度上がるんやで!!」
「は?!なんでですか?!!」
いきなり言われたもんだからあたしは飛び跳ねるように驚いた。
「いいか?例えば今回の18万やてな?印税だけで1800万やで?会社いくら
入るか分かるか?それこそ億単位のレベルや。せやから多少売り上げが
減っても、リリース速度を上げれば儲けは変わらへんのや。」
一瞬納得したけど、あたしはすぐに言い返した。
「今この状況でリリース速度上げられない事は、つんくさんが一番分かってるはずです!!
無理です!!」
「手抜ける所抜いてまえ!上からの命令や!!!」
- 89 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:30
- その言葉で、室内は再び沈黙に包まれた。・・・ウエカラノメイレイ。
「いいか、好き勝手やってるように見えてもな、そう言うわけちゃうねん!
所詮プロデューサーなんて表向きだけ、実際はただのマリオネットや。」
つんくさんは吐き捨てるように言うと、更に衝撃の告白を続けた。
「上の決めた予定に従って曲を作る。それだけや、自由なんてあらへん。
お前やって、俺が選んだ訳ちゃうねんぞ。」
・・・え、どういうこと・・・?
あたしは全身をストレスが襲った。
一瞬にして体力的にも精神的にも疲れがどっと来る。
「言えるのは『この子ええんちゃいます?』程度や。最終面接やて、
最初から結果は決まっとる、出来レースや。」
あたしが何も言えない中、どんどん新しい事実が明らかになってゆく。
「そんでな、5期なんかは金を積まれたから入れろ、言われて入れた奴が
一人おるんやで。まあ名前は言わんけど、賄賂や。
俺はそれに反対する力すら、ないねん・・・。」
つんくさんはそこまで言い終えると机を叩き、頭を抱えてうずくまって
しまった。あたしも同じ体勢になりそうなくらいに全身にストレスを感じたけど、
矢口さんの言葉を思い出し、乗り切った。
- 90 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:31
-
「やっぱよっすぃ〜は
『あたしはつんくさんを救うヒーローだ!』ぐらいの意気で行かないと。」
- 91 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:31
-
「・・・・なら。」
あたしは座っていた椅子を跳ね飛ばすように立ち上がる。つんくさんは
びっくりして顔を上げた。
「なら、思惑通りに作ってやろうじゃないですか。
吐けるだけ吐いて、出せないくらいに出しまくってやりましょうよ!!!」
あたしは声を思い切り張り上げた。つんくさんはそんなあたしを見て、
沈みきった表情に、少しだけ光が差し込んだように、
「その意気や!!!」
復活。
しかし、
「ほな、5曲頼むわ!!」
多!!!!
軽くはめられた気分になった所で続きはまた次回
- 92 名前:5. 投稿日:2004/04/29(木) 21:32
- 更新終了です。
- 93 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/29(木) 22:08
- それでも、今から見ればこの頃ってまだ売れていたんですよね _| ̄|○
恐竜おんどにそんな秘密が...
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 09:58
- 恐竜音頭・・・あなおそろしや
- 95 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 21:53
- 6.「やる気!カレー東京ロマンティック美学(なんのこっちゃ)」
つんくさんはめちゃくちゃなことを言ったもんだ。3週間後が発売日なんて、
普通ならもうテレビ収録真っ最中か、終わってるくらいで、
当然CDは完成してますよ?
「いやこれは延期でしょ。」
「いやいやそれはあかん。」
それはあかんって・・・・お前のせいやろ!!!
「ほな、この間作ったストック、行くか。」
「あ。」
あたしは胸をそっと撫で下ろした。忘れていた、そういえば作ったんだっけ、
ストック。もう日程的に、今日にでもレコーディングを始めないといけない
状態なだけに、曲のクオリティとか贅沢な事は言っていられない。
あたしたちはすぐに曲の選考に入った。
「3週間後に出るのは誰ですか?」
「後藤とソニン。」
2人?!
「ストック2つも使っちゃうのか〜。」
ちょっと惜しい気もしたが、
「後藤の方はもう今日の16時からレコーディングやから。」
「はっ?!」
なんでももうストック曲のアレンジは全て終了、あとはどれを歌入れだけ
だからどれを選んでも問題はないようで。
てか無茶苦茶だなぁ、いや、あたしが作っている時点で何もかも間違ってるけど。
- 96 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 21:55
-
結局これで選出されたのが
「やる気!IT’S EASY」と「カレーライスの女」だった。
詞は・・・誰が書いたかは伏せときます(その時点で自白してるようなもんか)
とにかく当時の作詞を見ていると頭が痛くなる。耳まで赤くなっているのが
自分でもよく分かります。今書けって言われても絶対に書けないと思う。
書く気も全くないけど。
13時になるとごっちんが現れた。この日、モーニング全体としてはオフ。
ていうか基本日曜日が一番忙しい。水曜日とかは穴日で一番休みのある確率が
高かった(と言ってもごく稀だけど)
あたしはここにいると妙に思われかねないので慌てて隠れた。
歌詞を見ているごっちんの顔を見てたら、顔が赤くなってきてる自分に
気がつく。嗚呼、恥ずかしい・・・。
つんくさんは恥ずかしくないのかな?いい年こいて今時いないだろ、
っていうような純な女の子の詞を書いて。
まあアイドルの詞なんてそんなもんじゃなきゃファンが喜ばないし、
仕方がないんだけど。正直3人祭のときは本気で全員ひいた記憶がある。
全員で流石になしだろ、キモい、とか言いまくって。
そんな中アレを平気で梨華ちゃん、あいぼん、あややは、かなりプロ精神を
感じた。
あたしが母親だったら、泣いてるもん。
- 97 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 21:56
-
ごっちんはレコーディングをそつなくこなした。眠いからなのか、集中
しているからなのかどうかは知らないけど、あたしがたまに誤って立てた
音にも全く反応せず、あたしが後ろをそっと通過した時も特に気づく様子も
なかった。
あたしは自分の作った曲が歌となってゆく瞬間をこの目ではっきりと見て、
自分が歌う時とは違う、一種の感動を覚えていた。
よしっ。
感動したあたしにはちょっとした暴走壁があるのかもしれない。
「おぉ〜よっすぃ〜、どうしたの〜?」
ふにゃふにゃで全く力の入っていなくて、レコーディング中とは全く様子の
違うごっちん。レコーディングが終わって、自販機にジュースを飲みにきた所で
あたしは声をかけたのだ。
「お疲れ様。ちょっと忘れ物しちゃって。奢るよ。」
あたしは自分の感動のお礼を何とかごっちんにしてあげたいと思い、
安いけれどジュースを奢る事でその感情を満たす事にした。
「いいの?じゃあ奢ってもらっちゃうおうかな。」
ふにゃ、っと笑うとごっちんは自販機の前に立って、飲みたいジュースを
指差した。
ゴトンッ。
あたしの小銭がジュースに変わると、ごっちんはすぐに一気飲み。
「――っかー!!」
「ごっちんオッサンみたい。」
あたしが言うとごっちんはまた笑った。
- 98 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 21:57
-
「もうすぐあたしも卒業かー、寂しいねぇ。」
ごっちんは変にちびまる子ちゃんみたいな言い方をするもんだから、
あたしは噴出してしまった。
「誰も泣かないと寂しいから、よっすぃ〜ライブで泣いてよ。」
「え〜やだよ〜。」
あたしが言うと、ごっちんの表情がいきなり曇る。
「そうだよね、あたしなんかのために涙流すなんて、あたしなんかのために
出来ないよね・・・。」
「え・・・・?」
あたしがあたふた慌てていると、
「って梨華ちゃんなら落ち込むよね。」
「・・・・・プッ。」
『アハハハハハ!』
二人とも壊れた笑い袋みたいに笑う。あまりの豹変振りがおかしくて
笑わずにいられなかった。
「湿っぽいのはごめんだから、笑っててね。」
ごっちんは笑顔でそう言ったけど、その顔はどこか寂しげに写った。でも
ごっちんと話していた瞬間、あたしはその一瞬だけ、普通の、ただの
一メンバーに戻れた気がした。
でも今は違う、ゴーストとして、曲を書き続けなければならないんだ。
- 99 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 21:59
-
「カレーライスの女」も無事にレコーディングが終了したところで、残り
3曲。つんくさんは今回は逃げるようになんか色々論じだして、頭の悪い
あたしは上手くかわされ、結局全部引き受けることとなってしまった。
しかも中澤さんの曲は二人の次の週発売との事。無茶を言ったもんだ、大体
中澤さんの曲はタイプが他と違うから、あたしはめちゃめちゃ頭を抱えた。
どういう曲を作っていいものか全く分からない。
(ていうかもうあたしあの曲のメロディー掘り起こせません)
苦し紛れに作った1曲だったが、つんくさんは苦し紛れにすら曲を作れない
状態が未だ続き、しゃーないな、と受け取った。
いいのか?そんなんで。
しかし中澤さんの曲は売り上げこそ落ちたものの、前曲と変わらぬ初動
順位を記録。ファンは曲なんて聴かないのだろうか?あたしはちょっと
考えさせられた。
ようは「LOVEマシーン」の時は、ファン以外の人もノリでかなり買ったのだ。
そのノリで買った人の大部分が「恋のダンスサイト」にも乗っただけの話。
おそらくその当時は曲も耳に残ったから買ってくれたのだろうけど・・・。
「I Wish」の失敗でも分かるようにノリノリな曲でないと買ってはくれない。
「聴かせる」曲ではなく「見せる」曲でなければ、あたしたちは売れないのだ。
その失敗を「Do it now!」でも繰り返す形となったということ。
なんだか話が上手くまとめられないけど、曲が悪いと固定ファンしか
買わない、しかも固定ファンは少しずつではあるが確実に去ってゆく。
その上でごっちんが抜ける次のシングル、どう対処するのか、
課題となりそうだ。
- 100 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:00
- さて、真面目に色々語っちゃいましたが、続いて作ることになったのが
ミキティの曲。
え?
作詞ですか?
・・・・・・・・・・・・・まあまあそれは置いておいて。
いやぁ、参ったんですよ、
地元の友達が自分の恋愛話を自慢のように話してきて。
忙しすぎる自分にはそんな暇もあまりないのにこのキャラでしょ?
なかなか一度別れると縁がないんですよ。
で、その友達の話なんですけど、最近気になる人がいるんですって。
よく友達とはしゃいでるのを毎日見かけてて、向こうも気づいてたのか、
自転車置き場でメモを渡してくれて、家に帰ってから見てみたら、
「夜9時になったら電話が欲しい」
って、なんてうらめし・・・基、羨ましい話なんでしょうか。気になる
ドラマも放っておいて、部屋に鍵までかけて、時計と9時まで睨めっこ。
9時になった瞬間電話、もう、部屋の景色が変わって見える感覚って
言うんですか?
もうあたし史上最大の恋が始まりそう〜なんて言うんですよ、
ははは・・・・・・。
すみません、行けるところまで粘ろうと思って、結局最後まで粘ってみましたが、
もう無理です、嘘です、ごめんなさい。
もうなんていうか、妄想に次ぐ妄想で行ける所まで“逝った”みたいな感じです。
- 101 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:02
-
曲を貰った瞬間のミキティの顔は、今でも忘れられない。あのクールな
彼女には、ああいう曲は・・・。
嫌悪感を明らかに剥き出しながらも、必死に抑えようとしている、複雑な
表情をしていたのを、またも隠れながらびびっていた記憶がある。
まあでもアイドルはそう言う曲を歌わんと売れん、というような事をつんくさんが
熱弁しているときは、真剣な表情で耳を傾けていたから、ちゃんとプロ意識も
あることでしょう、多分。
それに自己最高の売り上げを何気更新してるからいいでしょ。
こんな風に書いているから、まるであたしは作曲者に専念しているように
見えるけど、皆さん知っての通り、そんな事は全くなく、仕事は相変わらず
忙しいまま続いてゆく。あたしはモーニング娘。としての仕事と、作曲者
としての仕事は完全に切り、そのときはそのときに全力を注ごうと努力していた。
仕事中、ふとメロディーが浮かんでしまうとその誓いはすぐに破れ、
メロディーを繋ぎ止めるのにいっぱいいっぱいになってトークなんて
出来なくなっちゃうけれど、それでも出来る限り努力した。
周りでは相変わらず「男疑惑」が主流で、ちょっと気になる発言をする娘も
いたけど、それもさらっと流す。
・・・あれ?今考えてみると、いじってきたのって・・・。
折角なのでダイジェストで、どうぞ。
- 102 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:03
-
「はぁ〜。」
あたしが楽屋で溜息をつくと、それを聞いていた梨華ちゃんが心配そうに
こっちを見ている。
「よっすぃ〜、石川が心配してるぞ〜。たまには石川“も”かまってやれよ〜。」
矢口さん、“も”を強調しないで・・・。
「そうですよ、自分の事ばっかりで石川さんが可愛そうです。」
こんこん参上。
2人とも含みのある言い方をするから、梨華ちゃんの顔はますます不安げに
なってしまった。そして周りにも人が段々増えてきて・・・。
「どうなの?よっすぃ〜、はっきりしなさい。」
保田さん、怖い!怖いから、そんなガン見しないで!!
「はっきりするも何も、何もないですって!!!」
「私見ました、この間、スタジオの近くを歩いていたら・・・・
いや、これ以上は私の口からは言えません。」
こんこんがまたも意味深な言い方、ちょっと、勘弁して!
「ええ?!ちょっとあさ美ちゃんそこで止めるのは反則やよ!!」
「こんちゃんその先言ったらこのケーキあげるから!!」
ののに釣られかけるこんこん、一瞬迷ったが、
「やっぱり私の口からは・・・。」
ますますヒートアップする楽屋。誰か止めて・・・。
ガチャッ!!
「あんた達!!あゆから苦情が来てるわよ!!」
あゆー?!
とにかく、とりあえず騒ぎは納まり、今度はあたしの周りでひそひそ話が
始まっていた。
- 103 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:05
-
まあ、ご覧になって分かる様に、意味深な発言を言ってネタを振って騒ぎを
立てているのは、事実を知っている2人だけ。
2人とも分かった上であたしをからかっている・・・。
矢口さんはまだ分かるけど、こんこん・・・。きょうりゅう音頭の事は謝るから、
許して・・・。
騒ぎが収まった頃、今度は別の話題で盛り上がる。それがあたし達の常。
今度は一体どう転がったかは全く覚えてないけど、
「目標」を一人一人言っていくことになってしまった。
さて、どうしようか・・・。
皆あたしの回答に注目している。
まずい・・・さっきの延長であたしは明らかに浮いていた。
無難な回答を探したあたしは、とりあえず答えた。
「え〜っと、痩せる、かな?」
すぐにののにどつかれる。当時ののは相当太っていたから、仕方がないが、
とりあえずそれで受けが取れた上、うまい事かわすことに成功。そんな中、
こんこんから珍回答が飛び出した。
「目標は・・・・ないですね。」
『え?』
全員聞き返す。
いや、そんな答えアリ?
あたし含め、何人も無理やりに答えを作っていただけに、納得のいかない
表情のメンバーもちらほら。
「野望はありますけど。」
『野望?』
全員ハモり、思わずその場で笑った。いつもなら仕事中でも『せーの』が
必要なのに、何でこんな所でハモっちゃうのだろう。
結局この場はこの流れに乗り、野望について語ってもらえる前に終わってしまった。
でも、野望って・・・。
- 104 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:07
- このクール(とつんくさんは呼んでいる。ハロプロは一定の期間に連続的に
リリースをした後、少し間を置いてまたそれを繰り返す。それゆえにドラマの
クールから引っ張ってきたこの単語を使用している)最後の1曲は、あやや。
とりあえず、モーニングの次の稼ぎだから気合を入れろ、そうつんくさんに
言われ、あたし自身もそれを充分理解していたので「YEAH!めっちゃホリデー」
を超えられるように頑張った。曲の出来も良好。初動も変わらず。
とりあえずあややの売り上げは死守
(と言ってもモーニングの初動にすら及ばないんだけど)成功。
かくしてこのクールは無事に終わりを告げた・・・。
が。
「次のクールは、1ヵ月後やから、今から作らんと、間に合わんぞ。」
はぅ。
「で、曲数は・・・?」
つんくさんは苦い表情を浮かべ、少しだけ黙ると、
「・・・・聞きたいか?」
それだけ、呟く。
「聞かないと作りようがないです。」
「ま、まあ、カバーでな、お前らは聖歌隊だけ、やればええ曲が1曲。
美空ひばりの詞に音を付けるのが1曲。メロン1曲、モーニング1曲、
藤本1曲、カントリー1曲、新ユニット1曲、」
「新ユニット?」
つんくさんはまた少し溜める。そしてとうとう口を開く。
- 105 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:09
-
「賭けに出るんや。後藤と松浦と藤本を組ます。」
「え?!」
初めて知らされたあたしは驚かないはずがない。
なんだそれ、賭けは賭けだけど、しくじったら世間に、
「ああ、つんくも終わりだな。」って思われるようなものだ。
でも単純に、初動だけで足し算するとして、3人の前回の曲の初動合計が
・・・174,280枚。
ん?この数字、何かに似ている・・・。
あたしは携帯の電卓を叩いて気づく。
「『Do it now』の初動、弱ってとこですねぇ。あと今気づいたんですけど。」
あたしは言ってはいけないことと分かりながら、口に出してしまった。
「3人のCDを買ってる人って、大部分かなり被りますよね、多分。
ならいっそあややかミキティをモーニング入れちゃった方が簡単だしいいんじゃ?」
つんくさんは物凄い渋い顔。たばこを吸う人だったら、間違いなく間を取りに
たばこを吸うだろう。
「それええかもな・・・・。」
「え?」
あたしは聞き間違いかも知れないと思い、聞き返した。
「いや、なんでもない。」
つんくさんはそれだけ言うと、またクールの曲を、表を見て読み上げた。
「“ごまっとう”と同じ週にソニン1曲。」
「ゴマ納豆?」
「ごまっとう。3人のユニット名や。」
うわぁ〜安直・・・。3人どう思うんだろう。
「ミニモニに高橋にKIDS4人入れたの1曲。」
え?まだあるの?そろそろ終わりだと思ってたあたしは少し焦った。
「ミニハムず1曲、後藤1曲。終わり。」
- 106 名前:5. 投稿日:2004/05/06(木) 22:10
-
「合計?」
「11・・・。」
11・・・。
「申し訳!」
「いや、流行ってませんしもうそろそろ古いです。」
「まあ、聖歌隊抜けば10曲、美空さんの詞は半分出来てるんやから9.5曲やん♪」
や、やん♪って・・・・。
本気で殺意が芽生えかけるも、落ち着ける。プロデューサーじゃなかったら
潰しているのに・・・。
「ほな、よろしく頼むわ。全部。」
「な!!!全部はないです!!!」
「せやな、じゃあ3曲はがんばったるから、あとよろしくな。」
プロデューサーじゃなかったら沈めているのに・・・。
あたしはなんとか少しでも楽になろうと、提案をした。
「じゃ、じゃあ誰かカバーで!!カバー!!あ!ごっちん行こうごっちん!
サントワマミー!!
サントワマミー♪夢のような〜♪あの頃を〜♪
ミュージカルの主題歌シングルにしちゃえ決定決定!!」
このときのその場しのぎの判断が、ごっちんのCD売り上げ落下に拍車を
かける結果になるなんて・・・この当時のあたしは考えもしなかった。
続きはまた次回。
- 107 名前:おって 投稿日:2004/05/06(木) 22:17
- 祝100突破!
>>93 今の時代、CD自体も売れませんからねぇ。
(アイドルだから人気が保てているなら売り上げは変わらない気もしますが)
>>94 きょうりゅう音頭の裏にベーグル有w
でもあの差はどうなんだろうと当時思った記憶がありますね。
- 108 名前:9 投稿日:2004/05/06(木) 22:26
- 最後笑いました。
視点がおもしろいです。
- 109 名前:9 投稿日:2004/05/06(木) 22:27
- すいません。sage忘れてました。
- 110 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/05/07(金) 01:05
- なるほど、だからサントワマミーなのか
という事はあれも...
- 111 名前:名無しさん@超真矢 投稿日:2004/05/07(金) 10:53
- 言ってはいけないことは口に出さないほうがよかったね・・・
- 112 名前:おって 投稿日:2004/05/13(木) 21:19
- 今頃気づいたんですが、前回6なのに名前欄5って・・・・。
更新します。
- 113 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:20
- 7.「年末ラッシュ」
さて、残り8.5曲。これをどうあたしとつんくさんで振り分けるのか。
あたしはつんくさんと真剣な眼で見つめあい、下の部分が折り曲がった紙に
シャープペンを走らせてゆく。慎重に、かつ大胆に、線を引く。
9本の直線を繋ぐ、たくさんの線を、二人で築いた。
「よし・・・・。」
あたしが言うと、つんくさんは直線の一番腕に鉛筆を止めた。
「行くで。」
静かに鉛筆を走らせる。下へ、時に左、右、道なりに降りてゆく鉛筆は、
やがて一つのゴールを迎える。
「まずここな。」
一番下に○を付ける。そして再び直線を選び、2回、同じことを繰り返した。
あたしはひやひやしながらそれを見る。○が3つ、付けられた所で、
つんくさんはふうっ、と一息。そしてやがて、
「行くで。」
折れ曲がった部分を一気に開いた。
- 114 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:21
-
「・・・・・・・・。」
「ほな、そう言うことみたいやから、お互い、がんばろな。」
つんくさんはそう言うと、もう一枚紙を持ってきてメモを取った。
「これでモーニング死んだらつんくさんのせいですよ?」
ビクッ!
つんくさんの体が確かに震えたけど、今回は切り返してくる。
「ごまっとう売れへんかったらお前のせいやぞ?」
ビクッ!
あたしも同じ様に体を震わせた。お互い、痛いのを引いてしまったもんだ。
でもさぁ、あみだくじで作る曲決めなくてもいいのに・・・。
あたしは頭を抱えた。受け持った人はそれぞれこんな感じ。
あたし:メロン、ミキティ、カントリー、ごまっとう、ミニハムず、あやや
つんくさん:モーニング、ソニンさん、ミニモニに高橋
お互い絶対にミスれない爆弾を抱えながら、年末へと向かう事になったようです。
- 115 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:22
-
わたくし、モーニング、いや、ハロープロジェクト中最も働いて稼いで
いると自負しております。確かに作るのは辛いし、過労になりそうだけど、
働いている分だけの見返りはお金で跳ね返ってくる。
作詞もするようになったから、4%の印税があたしのものになる。
だからあたしは長者番付には現れない形で、ハロプロ中トップの稼ぎなのだ。
裏1位とでも言いましょうか。汚い話だけど、やっぱ商売ですから。
そこら辺きっちりしとかないと。
締め切りの関係でまず作ることになったのはメロン。
あたしにはない大人な感じを出したいな、と思ったのが曲の土台だった。
でもそれでいてつんくさんが書きそうな詞を書かなければならない。
あたしは悩んだ。
そんな時に、楽屋で安倍さんとカオリの会話が、あたしの耳に飛び込む。
- 116 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:24
-
「これどう?いい匂いするよぉ〜。」
「あ。いいいい。なっちこれどこで買ったの?」
二人が盛り上がっているのが聞こえて、あたしは視線をそっちに移した。
二人の手には香水。
香水・・・。
銀座のホステス・・・。
「あなた、なんの匂い?これ。」
「違うんだよ、付き合いで仕方なく・・・。」
ってそうじゃなくて。
んな詞書きたかない。
もっとなんてーか、同じような感じでもっといい感じに出来ないかな・・・。
ん〜・・・・・・・・・。
あなたの車、香水の香りがする。あたしの知らない匂い。
いい匂いだけど、嫌い。
・・・・ぉおおお!!
なんかよく分からないけどこの感じいい!
決定!
- 117 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:24
-
そんなこんなで香水の歌詞の構想を練る。片想いの方が浮気より綺麗に
映るし、ファンへのウケが絶対いい。
振られるのが怖い・・・みたいになんか弱気な感じを見せて柴っちゃん達に
グッと殿方を引き寄せてもらって。
作曲を済ました後、いよいよしっかりとした形に移る。そんなとき、
ふと思った。
「ラップ・・・・・。」
どうしよう、やっぱり韻は“踏まない”方がいいんだろうか。
いや、流石に1回くらい踏まないとあたしの気がすまない・・・。
でもあんまり踏むと次つんくさんが作ったとき「あれ?」ってなるし・・・。
結局“女”と“on&”というなんともまあ微妙な踏み具合となった。
- 118 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:26
-
曲を作り終えてつんくさんに渡すと満足げな表情。
「で、そっちは出来ましたか?モーニング。」
発売日が近い順にどんどん来る締め切り。メロンがトップバッターで、
その次はモーニングだった。
「まあ待てや。俺やて頑張ってるんやで?お前のペースはおかしい。」
いや、一番良い時あんた良い曲をおかしいペースで仕上げてなかった?
そんな事言ってもつんくさんを悩ませるだけだから言わなかったけど。
堕ちたもんだ・・・。
でもそんな風に思っていると、つんくさんは機械をいじくって曲を再生した。
お?!出来たの?!
あたしは静かに聞く事にした。
「・・・・・・・・・。」
いつものように何も言わずに二人で聞く。
でも、これは・・・。
「『Do it now!』よりはファンウケいい、「かも」しれません。
でも、・・・ぶっちゃけていいすか?」
「・・・・・言え。」
つんくさんの眼を見て、はっきりと・・・・。あたしは迷った。
いいのか?
いかんのか?
・・・・・・・
「行ってまえ〜!!」
野球を見に行ったとき阪神を応援してハイテンションになってた梨華ちゃんが
頭をよぎる。
よっしゃ!!
行ってまえ!!
「つまんないです。」
- 119 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:28
-
「つまんないです。」
もう1回言ってみる。
つんくさんの表情はこれはもうすごい物で、見せれるなら見せたい、
いや、やっぱ見ない方がいいかもでも見せたい・・・とそんな顔をしていた。
「そうか・・・・。」
つんくさんは激しくローテンション。そりゃそうだけど、ここらへんシビアに
やっておかないとダメでしょ。死活問題だし。
「じゃあこれは、ストック行き・・・と。」
マスターテープを“ストック箱”にぶち込む。つんくさんはそれを入れると、
はぁっ、と溜息をついた。
いやあれストックってことはいつか使うんかい・・・・。
ちょっとビビってしまう。
ガチャッ!
「うわ!!」
あまりに唐突に開いたドア。あたしは座っていた椅子から転げ落ち、
そのまま机の影に隠れた。
「やってますね〜。」
こんこん?!
てか、その手に持っているロープは?あ、嫌な予感・・・。
こんこんはすぐにあたしを見つけると、テレビでも見せないくらいの笑顔で、
「まさかとは思いますけど次は・・・・・ね?」
「は・・・・はい。で、でも」
Do it now!でチャラにならないの?と言おうとしたら、
「アレとコレとは別ですよ♪」
流石こんこん、あたしの考えなんかお見通し。
しかもなんか嬉しそうに言うのは・・・・嗚呼恐ろしい後輩。
- 120 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:30
-
立ち去ったこんこんを見て、あたしはつんくさんに言う。
「あれ、どうしましょう。」
つんくさんはまた悩ましげな表情。
少し黙った後、いつかやったように頭をめちゃめちゃに掻き毟りだした。
やばっ。
あたしは慌ててつんくさんの背後に回り、両腕を掴むと後ろに回し
(肩が!肩が!とか叫んでるけど気にしない)、
こんこんが何故か落としていったロープで手を縛り付ける。
「発狂しないで下さい。人が来て困るのはつんくさんですよ?」
つんくさんは少しだけ動くと、肩辺りからポキッ、と明らかに嫌な音がした。
「・・・・・ユニット、考えておく。そうやな・・・石川の後釜にでもするか。」
え?梨華ちゃん?あたしは少し考えると、
「あ、なるほど。」
手をぽんと叩く古いリアクションをしてしまった。
ふと時計に目をやると・・・。
「!!時間だ!!失礼します!!」
あたしは急いで部屋を飛び出した。
- 121 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:31
-
「(あ。)」
あたしは本番中、自分の犯したとんでもないミスに気がつく。
やば・・・。
「(あたしはSM嬢じゃねぇってんだ。)」
これじゃ完全な放置プレーじゃないか、つんくさん喜んでたらキモいな〜って、
何考えてるんだあたし。
でもとりあえず本番中だから、抜け出せない。今日の収録は・・・・
あと2時間?
大丈夫か。
あたしはつんくさんがプロデューサーだという意識を完全に失っていたから、
全然平気な顔して撮影を続ける。
だって選んでもらった恩義も、持つ必要がないって分かったし。
もはやあたしの方が力あるし。これが当時のあたしの考え。
人間権力を持つと人が変わってしまう、身をもって体験できていい勉強になった、
といえばそれまでだけど、正直つんくさんには悪かったと思う。
色々・・・。
*****
撮影が漸く終わると、あたしはダッシュで作曲室へ・・・行かなかった。
なんか頭からその事が完全に飛んじゃってて、矢口さんとクリスマスについて
熱く語っていた。
「クリスマスぐらい休みくれっての!つんく畜生〜!!」
「あ!!!」
その一言で完全にあたしは目覚めた。
「すみません!用事忘れてました!!!」
あたしはフットサルでボールを追いかけている時のように思い切り走る。
タクシーに乗り込み、出来るだけ急いだ。
- 122 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:33
-
ガチャッ。
「すみません、忘れ物したんですけど時間なかったんで仕事終わったあとに
来ちゃいました!!・・・あれ?」
つんくさんが全然普通に譜面に書き込んでいたから驚いた。
「なんでロープ。」
「確信犯かい!!」
つんくさん若干キレ気味。
どうやらつんくさんはもう出来てる曲の手直しをしている様子。
「どんな曲ですか?」
あたしが聞くと、つんくさんは鼻歌で曲を歌う。
「・・・・・合格で。」
とりあえず、と思ったけどそれは口に出さずに。つんくさんはそれを聞くと、
特に喜ぶ事無く“アレンジ行き”の箱に譜面を突っ込んだ。
「あと2曲か・・・。」
ん?あたしはそこで引っかかった。
「あたしと同じペースで曲出来たんだから、もっと作ってくださいよ。」
「・・・・あ?」
つんくさんはガラの悪い声で聞き返す。あたしは目をそらさずにじっと
つんくさんを見た。しばらく二人とも何も言わずに、にらみ合いが続き、
そして、
「あ痛痛痛痛痛痛!!!!」
つんくさんはいきなり右足を抑えて叫びだした。
「またメチャイケすか。大概にしてください。」
黙るつんくさん。あたしをちょっと見ると、
「あ痛痛痛痛痛痛痛!!!!」
今度は左足を抑えて更に大声。
「・・・もういいです。」
いい歳こいたオッサンのだたこねに、あたしは付き合うことにした。
この当時はまさかヨモギタと会う事になるとは思わなかったな〜。
- 123 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:34
-
仕事は相変わらず忙しいけど締め切りも定期的にやってくる。あたしは
苦しんでいた。出ない・・・。
便秘なんかより全然苦しい。(あ、表現が汚い?まあこんなキャラなんで)
とにかく、5曲(4.5曲)仕上げなければならないのに、全然ネタが出ない。
逆立ちして出ないかな?なんてバカな事考えて逆立ちして頭打って笑われたり、
つんくさんみたいに掻き毟ってヘアメイクさんに苦労かけたり、ますます
あたしの周りでは噂がエスカレートしていた。
「きっと上手く行ってないんだよね。」
なんて声がたまに聞こえたりして。
ええそうですよ、上手く行ってませんよ。
男は関係ないけど。男・・・・・。
ここであたしの中でふと何かが宿ったような感覚を覚えた。
ボーイフレンド・・・・。
よしっ、ミキティは香水をもっと清潔に、彼の彼女を排除して、
恋人になれないの?
いや、なれませんか?的な感じでヲタの心理を揺さぶれ!
あ、ヲタとか言ってすみません!誰に謝ってるんだあたしは!あたしの脳内は
興奮と混乱の連鎖でパンクしそうになった。
とりあえず、早く、早く作らないと。
あたしは立ち上がると、ドアへと歩き出す。もう今日は仕事がない。
楽屋でなんとなくだべってただけだから、長居は無用。
「お疲れ様でした。」
なんだか物凄い視線を感じた気がしたけど、あたしは気にせずドアを閉める。
そしてさっきよりも速いスピードで走り出した。
- 124 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:35
-
「っしゃーーー!!!久々に来たー!!」
心の中で絶叫。出来た事で超ハイテンションになってしまったあたしは、
ベッドの上で暴れまわり、とうとうキレた弟がいきなり部屋に入って来て叱られた。
「ったく、ジャニーズとかと付き合ってちょっとは女らしくならねぇかな・・・。」
弟が愚痴りながら去る。
なんだとー?!オトコマエに向かって女らしくしろとはなんだ!!
ってあたしは自分で何をほざいているんだろう・・・。
精神が不安定だ・・・。でも詞を書く上で、やっぱり恋をしていると違う、
もっとリアルな詞が書けるのかな、なんてたまに思ったりもする。
どこかで誰かが言っていた。
恋をしていない歌手なんて音楽家としてダメだ。
尤もだと思うし、それはメンバーを見ていてそう思うことがある。
恋をしていると、同じ歌声でもちょっとした所での伝わり方が変わってくる。
でも溺れるとファンをないがしろにして陰口の量が増えるんだよな〜。
梨華ちゃんとかかなり多いし。
え?あたし?
・・・・・まあまあまあ。
- 125 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:37
-
そんなこんなで色々妄想。なんか気づくと恋してぇ〜、って妄想が始まって、
気づくと別れていた。
なんでやねん?!
自分でツッコミを入れたくなるほど短い恋物語、時間にして僅か12分。
早!
きっと1分で1ヶ月くらい進んでたんだろうな〜、はえ〜・・・。なんか自分で
始めた妄想なのに悲しい。気づくと街で見かけたりする風景が脳内を駆け巡る。
ダメだ、止まらない。あたしは妄想に身を任せて、流れる所まで流れることにした。
彼(誰かよく分からないけどオトコマエ。イケメンというよりオトコマエ)を
見かけると数分前(数ヶ月前?)の風景をフラッシュバック。
こりゃ重傷だわ。それでもあたしの妄想は続く。オトコマエな彼は、映画を
真似てあたしに永遠を誓う。恥ずかしい〜。それにときめいている自分というより
こんな事を数分前に妄想していた自分が恥ずかしい〜。
ここであたしは現実に戻る。そこはやっぱりベッドの上で、女っ気の
あまりにも少ない部屋。
はぁ・・・・。なんか軽い失恋をした感覚なあたしは、バカだよな〜・・・。
でもあたしはこのバカな感じに便乗してしまうことにした。
これを曲にしよう。かなりバカみたいな発想だけど、せっかくネタが
出来たんだから使わないわけにはいかない。ちょうどカントリーの締め切りも
近かったから、あたしはこれをカントリーの曲に使う事にした。
別れってのが、つんくさんの話からどうやらこれで最後っぽい梨華ちゃんに
ちょうどいいし。
いつかもし、あたしが作っていることがばれて、梨華ちゃんに曲の由来を
聞かれたとしても・・・これだけは言えません。
- 126 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:39
-
さて、締め切りは最大の山を迎える。
ごまっとう。
モーニングの新曲も正直微妙だし、ここいら一発当ててごまっとうを
しばらく引っ張らなきゃ。でも曲が出来ない!!あたしの葛藤は続く。
いい曲を作らないといけないと思えば思うほど、曲なんて出てきやしない。
勢いで2曲出来たものの、果たしてこのユニットの曲を勢いで作っていいのかどうか。
あたしたちの命運の乗せての発売な訳だから、こける事は許されない。
今までで最大のプレッシャーがあたしに圧し掛かった。重圧を力に変えなければ・・・。
そんなこんなで出来た『SHALL WE LOVE?』、皆さんの耳にはどう残りましたか?
評価は売り上げでのみ現れるもんだと思っているあたしは、かなりショックを
受けました。
自信がちょっとあっただけに。
でもこの自信が崩された事で、あたしはいい勉強をしたと思う。
あたしのような音楽的にずぶの素人が曲を作る場合、携帯のメロディ作成で
作ったり、パソコンのソフトを使ったりで、何度か繰り返し聴いて確かめながら
でないと、自分の中から浮かび上がってきたメロを再現出来ない。
その時何度も何度も聴く訳だけど、その回数が多ければ多いほど、必然的に
自分の耳に残り、
「あ、これいい曲なんじゃね?」
と”勘違い”してしまう。
でもぶっちゃけ『ここにいるぜぇ!』よりは全然耳に残ると思うんだけどなぁ(まだ言ってる)
- 127 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:40
-
ごまっとうの曲を仕上げた当初は、一山越えた安心感と、どこから出てきて
いるのかまるで分からない勘違いな自信で、いい気分になっていた。
あんな惨劇になるなんて、知る由もないから、その勢いそのまま、あたしは
ミニハムずの曲作りに取り掛かった。
でも正直、ミニハムず系の曲(子供狙いの曲)は作るのが初めてだから、
めっちゃ困った。でも愛の唄は超えたいよな〜とか、慢心から来る自信で
曲を作ってゆく。そんなんでいいのが出来るはずがなかったのか、それとも
宣伝状況が悪いのか、曲はこけ、初登場順位もひどいもの。しかもそのまま
上がることなく堕ちてゆくのは、泣けた。
ていうか本当に泣いたような記憶も・・・。
曲を作った直後の不安という名の感情は、そのまま『草原の人』に乗り移った。
美空さんの詞だし、こりゃいっちょ同じ週でぶつかるミスチルさんの連続1位記録
止めちまおうかな、なんて『SHALL WE LOVE?』完成時期は思っていた。
でも『ミニハムずの結婚ソング』が出来た頃にはテンションが下がる下がる。
やっぱり曲出来ねぇ・・・。
美空さんには悪いけど、詞から曲なんて出来ません。正直適当に口ずさんで
作りました。そしたらglobeの『can’t stop fallin’ love』Aメロと
似てしまって慌てて修正して。
ちなみにここで一つカミングアウト。
カメラさんに頼んで、CDTVのあややの歌録りの画、鼻の穴が見えやすく
可愛くなく映すようにしたの、あたしです。
正直腹いせです、
こんな曲売れなくていいよ、って感じで。
嗚呼自分で言うのもなんだけど、やっぱ女の子は怖い・・・。女子高と
同じだけ、あたし達にも大分裏がある・・・
(ここで語るべき事ではないのでこれ以上はノーコメントで。)
- 128 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:41
-
「終わったぁ〜・・・。」
全曲アレンジ終了。今年の作曲業は以上。あたしは達成感に浸り、
ふう〜っと一息ついていると、
「吉澤、本業の方は紅白までぎっしりやぞ?」
はぅ。
「最近仕事熱入ってないって聞いたぞ?」
ぐはっ。
「最近調子乗ってるんちゃうか?」
げほっ!
痛いことを言われまくり、あたしはその場でひれ伏した。
全て、あなた様のおっしゃる通りでございます。ええ。
「ちゃんとやれや?」
「はい!!」
返事だけはしっかり、これ芸能人の基本です。
- 129 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:42
-
一気に話は飛んで、紅白終了後。
あたし達は家に帰れるはずもなく、ホテルで新年を迎えるという、なんとも
寒い状況だった。毎年だから慣れているけど。あたしは去年のように、
同期メンとごっちんで年明けを待つ。
ごっちんは本当は全然違う所に泊まってたんだけど、一人で寝れないって
言って遊びに来てた。
ホテルの同じ部屋でボーっとしながら、あたしは色々考えていた。
初めは友達に音楽編集ソフトを貰って、遊びでやってたんだよな〜。
いつの間にやらこれだもん、訳分かりません正直。でも今、あたしは誰の
ために作っているのだろう。自分のためではない気がする。
じゃあ誰だ?
つんくさん?
会社?
・・・・・なんか気分悪くなってきた。
「大丈夫?顔色悪いよ?」
そんなあたしに梨華ちゃんは心配そうな顔で話しかけてくれた。
「大丈夫。」
あたしは笑顔を見せると、梨華ちゃんも笑顔を見せる。あたしはホッとすると
梨華ちゃんの横に座った。ベッドがボスンっと揺れた振動で梨華ちゃんが
軽く揺れる。
- 130 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:44
-
「カウントダウン始まるよ〜!」
ののに言われてあたしは時計を見上げた。もうそんな時間か。ののは
去年のようにフジテレビのジャニーズのカウントダウン番組を見ながら、
あいぼんと二人、ハイテンション。そういえば去年はこのあと・・・。
「数えよ〜!!!」
そうだ、数えたんだっけ。もうかなりノリで。梨華ちゃんは妹をあやす
みたいにはいはい、って感じで微笑みながら、ごっちんはかなり眠そうに
しながら、っていうかもう半分寝てる。
「59,58,57。」
カウントダウンが始まった。なんか皆楽しそうな顔をしていて、あたしも
自然で笑顔になっていた。そんなとき、あたしはなんとなくではあるけど、
自分が誰のため曲を作っているのか、なんとなく分かった。
ああ、そういうことか・・・。曲作りはつんくさんのためでも、
会社のためなんかでもない。
「42,41,40。」
答えはすごく近くにあって、しかもすごい簡単だったんだ。
胸の痞えが取れた気がして、すっきりする。
「よっすぃ〜も数えて!」
あいぼんに言われてはっとした。そういえば数えるの忘れてたわ。
あたしはテレビに映る数字を見ると、数え出した。
- 131 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:45
-
「15,14,13,12,11。」
5人顔を見合わせ、一瞬笑顔になると、皆の気持ちは更に盛り上がってくる。
ごっちんも目を覚ましたみたい。
「6,5,4!」
あたしが曲を作っているのは、届ける為だ。
「3!2!1!」
この笑顔達を、日本中に。
「ハッピーニューイヤー!!!」
なんて色々考えるのは、あたしらしくないのかな。
今年は、・・・じゃなかった去年は色々考えすぎた気がする。
今は、5人で共有しているこの時間を、大切に過ごそう!
「初詣行くぞ〜!!」
あたしが叫ぶと、4人は不意打ちをくらったような顔で、
『ええ?!!』
凄い驚いたけど、凄く笑っていた。
終わりっぽい雰囲気だけどまだまだ続きます、続きはまた次回。
- 132 名前:7. 投稿日:2004/05/13(木) 21:50
- >>108-109(9) レスありがとうございます。
笑っていただけると、作者冥利に尽きます。これからもどんどん
笑っていただけたら幸いです。
>>110 レスありがとうございます。
今から思えばなんであそこで楽する方を選んでしまったのだろう、
って思ってみたり。(あそこから売り上げ激減ですし)
>>111 レスありがとうございます。
確かに・・・。人それぞれとはいえ、あんまり効果なかったし、
ソロの分の稼ぎ減ったから失敗なような・・・。
- 133 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/05/14(金) 21:56
- 確かにこの時期痛いのが続きましたよね
でもDo it nowは名曲だと思います
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/15(土) 02:37
- Shall We Loveは難しいよ
特に最初の寸劇が・・・
- 135 名前:おって 投稿日:2004/05/17(月) 23:04
- >>133 レスありがとうございます。
でもDo it nowってやっぱりパピヨンに似て(ry
まあ名曲ですが、”聴かせる”より"見せる"の人達ですからね、
あの人達は。でも正直あんなに下がるとは予想外でしたが。
>>134 レスありがとうございます。
寸劇・・・・分からねぇ _| ̄|○
牛丼屋かなんかで流れたのを聴いた事はあったような・・・。
ぶっちゃけてしまうとハロプロへの出費0なので。
(小説のみのファンなんです。すてっぷさんの作品に感銘を受けまして)
だからCDTVのページで発売曲を毎回調べて・・・。
今週テストですので更新が遅れると思われます。もしかしたら来週に
なってしまうかも分かりませんが、長い目でお待ちください。
(出費0の所とかで皆さんが退いてしまったら・・・ _| ̄|○)
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/28(金) 13:58
- >>135
長い目で待ってる次第。楽しく読まさせていただいております。
出費ゼロ?良いではないか。
自分も基本的にハロモニ。と歌番組オンリーで楽しんでるヲタでござい。
- 137 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:50
-
8.「ノンストップ?」
新年いきなりの生放送を終え、ホッとしたのも束の間。あたしはすぐに
作曲室へと飛び込み、リリース予定を聞く事にした。
「今回はどんな感じでしょうか。」
あたしは年末にした誓いを胸に、結構いい感じのモチベーションで来ていた。
10曲くらい、どんと来い!って感じ。
「結構休みあるぞ。でもそっから・・・きついで?今回休み大きくとらん
代わりちょくちょく間置くんや。数売って儲けるって寸法やな。」
「どんと来い!!」
トリックじゃないけど、妙にやる気が出ていたあたし。
でもレコード会社の求めるものは、あたしの想像をはるかに超えていた。
「一気に言うで。」
「はい。」
つんくさんは一息、深呼吸をすると、
「メロン、藤本、1週間置いてひょっこりひょうたん島のカバー、2週置いて
松浦、後藤、2週置いてミニモニのカバー、ソニン、モーニング、
桜庭裕一郎と安倍デュエット曲が同じ週、メロン、ミニモニ、2週置いて
松浦、1周置いて後藤、2週置いてシャッフル。
これで1週か2週置いて次のクールに入るで。」
- 138 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:51
-
途中で数を数える事をやめた。
「えっと、何曲でしょうか?」
つんくさんはリストを見ながら1個1個数え、
「17。まあカバー差っ引いて15やな。」
平然とした表情で言うつんくさん。
でもすぐにあたしの顔を見て、びびり出した。
「よ、吉澤・・・。まあ落ち着けや・・・。しゃーないねん。」
なんだか年末に感じたあの気持ち、全部吹き飛ばされた気がする。
そして決意はすぐに怒りへと変貌を遂げる。
何故か、それはあたしにも分からない。でもとにかく、ムカつく。
大体クール間が1,2週って、所々1,2週空いているから休みって
言わねぇだろ!!!
「・・・・みたい。」
あたしはかなり小声ではあったが、汚い言葉を吐き捨てた。
「え?」
つんくさんが聞きかえす。ここで何故か、あたしの理性は遂に全て吹っ飛ぶ。
「馬鹿みたい!!!!もう我慢出来ない!!!何が15曲だ!!!
てめぇで作れや!!!!」
あたしはそのまま作曲室を飛び出した。
- 139 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:52
-
あたしの表情があまりにも怖かったせいか、すれ違う人すれ違う人みんな、
あたしを避けるように道を開けてゆく。この世界あいさつが基本だろうが!!!
スタッフさん無視すんなゴラァ!!
あたしの怒りは全然納まらず、歩けば歩くほどイライラしてきた。
そんな時、
「おい吉澤!!すまんかった!!」
つんくさんが後ろから駆けて来る。
ブチッ
てめぇ、どの面下げて・・・。
あたしの体を支配する怒りと言う名の感情は、更に高まってゆく。
くるっと振り向くと、
「いい年こいて何がチュッ!だぁぁ!!!!!」
バギッ!!!
遂に、遂に手を上げてしまった。
でもあたしはそんなもんじゃ納まらない。ほぼ無抵抗のつんくさんに更にもう一撃。
ガン!!!!
つんくさんはあたしにいくら殴られ、蹴られても、すまん、とだけ言って
決してやり返したり権力をちらつかせたりはしなかった。
それほどまでに曲作りに関してナーバスだったのかもしれない。
それなのに、この時のあたしは・・・・。
「うらぁぁっ!!!!」
ガン!!!
もらったベーグルの個数分殴ると、
あたしはそのまま走ってスタジオを後にした。
- 140 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:53
-
「はぁっ・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・。」
落ち着いて辺りを見回す。どうやらあたしは公園にいるらしい。というのも、
つんくさんへの3発目辺りから記憶が曖昧で、自分がどうやってここに来たのか
すら分からないからだ。こういうのをキレたっていうんだろうか。
「はぁっ・・・・。」
今度は溜息をつく。冷静に考えてみれば、あたしは一体何をやっていたんだ。
ヘタレだとしても、仮にもプロデューサーをリンチにした。しかも徹底的に。
幸いあの場には誰もいなかったから問題なかったが、どこかから情報が漏れたら
それこそ週刊誌の格好のネタとなる。
でもだからと言って曲を作るつもりはなかった。15曲も付き合ってはいられない。
いくら作曲の理由を見つけたとはいえ、よく考えたらモーニング以外は
関係ないし。でもつんくさん一人で大丈夫かな・・・。
って何心配してんだあたし。
こんな感じであたしはかなり精神が不安定で、錯乱状態に近かった。
でもとりあえずは、普通のメンバーとして、普通に仕事をする常態に戻そう。
いいきっかけになるだろうし。あたしはそう思っていた。
- 141 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:54
-
「あ〜・・・・。」
ブランコに揺られながら、不満が頭中を充満する。
煙が出ているんじゃないだろうかってくらい頭が暑くなってきた。
大体今までもらえる分の印税より少ない額で甘んじてやってたら
付け上がりやがって・・・。
大体最初はかなり騙されてたじゃないか。
金そのものを貰うようになってから儲けは増えても売り上げは落ちてるっちゅうねん!
今更ながらピースの印税払えー!!!
もうなんだか訳が分からないくらいに、自己中で理不尽な不満ばかりが駆け巡った。
「・・・・うわ!!!」
気づくとブランコは地面とほとんど平行くらいの所まで上がっていた。
慌てて足でブレーキをかける。そして、
「・・・・はぁっ。」
もう一度溜息を着くと、あたしは少しだけ気分が落ち着いた。
- 142 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:55
-
次の日あたしはテレ東のビルに入る直前、いきなり呼び止められた。
「吉澤!すまんかった!この通りや!!せやから!せやからやめるなんて
言わんといてくれ!!!」
あたしは完全にシカトして入社しようとした。
でもつんくさんはあたしの目の前までダッシュで回りこむと、
「この通りや!!」
出た!
お得意の土下座!
いつもならあたしが「頭を上げてください」って2回言って上げるけど、
この日のあたしは判断が違った。
「・・・・・・・・・。」
無言のまま、足音も立てずに通過。ガードマンさんの横を通った後、
ふと外に眼をやると、まだ土下座していた。ちょっとだけ泣きたくなった。
しばらく見ていると、やがてつんくさんは立ち上がり、とぼとぼと車へと
乗り込む。その背中はいつもより小さく、切ない。
あたしはなんか罪悪感に一瞬だけ駆られたけど、気にせずに足を進めた。
- 143 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:56
-
「あ、よっすぃ〜。」
「お、ミキティじゃん。」
呼び止められてあたしは振り向く。あたしの何気なく言った一言で加入が
決定、加入したらソロどうなっちゃうんでしょうこの人。
これもあたしの責任だよな・・・。
「もうちょっとしたら仕事一緒だよね。」
あたしは本人の気持ちを探り入れようと言ってみた。
あたしだったら絶対そんなよく思っていないと思うけど。
「そうだね〜。まあこれをバネにがんばろうかな、なんて。」
あ、今の一言どうとっていいか全然わかんない。
もっとはっきり言ってくれ〜。
あたしはなるべく表情を出さないようにミキティの話を聞く。
「元々モーニングに入りたくてオーディション応募したんだしね。」
その言葉を聞いてはっとする。
そういやそうだっけ。あたしと同じ時、4期オーディション落選者だったね。
ああ、あの時は天才的美少女なんて言われてたっけ・・・。
今は見る影もないな・・・って失礼な!
ってあたし誰にツッコミ入れてんの!?
とりあえず精神的に未だ全く安定が見られないから、壊れる前にあたしは楽屋へと向かう。
- 144 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:57
-
「おはようございまーす!」
楽屋に入ると、みんなの視線が明らかにおかしい。
って最近ずっとそうだったけどさ。まだ男だかなんだか言ってるんかな、
アホらし。
なんて思いながら平然といつも通りの位置に腰を下ろす。
ここで周りを見渡すと、みんな一気に目を逸らす。そして小声で色々と話していた。
その視線がいつもよりもひどくて、あたしは黙る事をやめる事にする。
立ち上がると、全員の視線が一気にあたしへと集中。あたしが口を開こうとすると、
その前に梨華ちゃんが抱きついてきた。
「よっすぃ〜やめないでっ!!!」
「・・・・・・・・・・・はい?」
あたしの知らない間に、世の中はグルグルと回っているらしい。
今までの噂は確か、男関連でそんな話全く出てこなかったよね?
何?
やめるって?
卒業?
クビ?
え、つんくさんキレちゃいました?
こりゃ参った。
あは、あはははは。
混乱するあたしの弱弱しい脳みそに、真琴からクリティカルヒットが飛び出す。
「いいじゃないですか浮気くらい!!別につんくさんと別れるからって娘。
やめる理由なんてどこにもないですよ!!」
「はぁっ??!!」
- 145 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:58
-
- 146 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:59
-
話を少しだけ巻き戻してみよう。
あたしが入社する時、つんくさんが土下座して謝ったのはさっき読んでくれた
通りだけど、その時にあたし達の会話を見ている娘がいた。
高橋愛。
「吉澤!すまんかった!この通りや!!せやから!せやからやめるなんて
言わんといてくれ!!!」
つんくさんはこう言った。 これを、こんこんや矢口さん以外の、
何も事情を知らない娘が見たらどう思うか。答えは一つ。
- 147 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 00:59
-
「吉澤さんがやめる?!」
高橋はすぐに楽屋で真琴に話したらしい。
真琴は驚いて大声を上げ、楽屋中を響き渡る。
- 148 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:00
-
『ええええええ!!!!???』
それを聞いた全員物凄い声を上げる。
「男と何かあったの?」
カオリがそう言うと、梨華ちゃんはめちゃめちゃ焦ったらしい。
「そ、そんなはずは!!大体よっすぃーがやめるわけないじゃないですかっ!!」
「とりあえず説明して。」
圭ちゃんの凄い剣幕に高橋は泣きそうになりながら語ったという。
つんくさんがあたしに土下座して謝っていた事。
あたしがそれをシカトして通過して言った事。
確かに何も知らなければ、つんくさんとあたしが付き合っていて、
つんくさんが浮気か何かして、それにキレたあたしがやめると言い出した、
と言う構図は、かなりきついがそれ以外判断のしようがない。
「・・・・遂にですか・・・。」
こんこんがそう呟くと、楽屋のテンションは更にヒートアップしてゆく。
「どういうことべさ!?知ってたんだべか?!」
矢口さんはそこで必死にフォロー。
安倍さんをなんとか止めた所で、あたし入室。
そのため異常なまでの視線を感じたんだろう。
さて・・・・・どう言えばみんなを言いくるめられるかな?
- 149 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:00
-
- 150 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:01
-
結局“やめる”っていうのはつんくさんの勘違い、喧嘩の理由はベーグルって
感じで無理やり話をまとめ、あたしは何とか全員丸め込んだ。
でも話が一段落した後、梨華ちゃんが近づいてきて、
「本当だよね?」
と不安そうな顔でこっちを見てきたのはもう!たまりません。
軽く撫でてあげると笑ってくれたし。
とりあえずは解決したように見えるけど、実は全然解決していない。
まだ問題がある。それは謝って来るつんくさん。これを見られて下手に
変なこと言われると苦しい。嘘に嘘を重ねていくのはキリが無いし、
仕方がない・・・。
あたしは悩んだ末仕方がなく、
ガチャッ
「失礼します。」
「・・・吉澤。」
つんくさんはあたしを見るが否やすぐに椅子から転げ落ち、
即土下座の体勢に入っていた。
僅か2秒の早業。
逆に退きますよ、それ。
「謝らないで下さい。」
相変わらず模範的な土下座をしているつんくさんに、あたしは言った。
「作りますから。もう謝らないで下さい。」
- 151 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:02
-
言ってから後悔してももう遅い。顔をあげた時のつんくさんの表情ったら・・・。
そこであたしは思いだしてしまった。そういえば15曲とかいう破格の数字でしたね。
さて、駄々こねている間に時間を浪費したぞ、どうしようってんだ。
でも次の瞬間、あたしは今年初めて、つんくさんをちょっとだけ見直す。
つんくさんは何束か譜面を取り出すと、
「一応、作ったで、5曲。」
そのとき持って来たのは
『AS FOR ONE DAY』
『チャンス of LOVE』
『ミニモニ数え歌』の2つともと、
『母と娘のデュエットソング』だった。
ほとんど後回しになったからあたしは泣きそうになった。
当初は『チャンス of LOVE』を『赤いフリージア』の所に持って行く予定
だったけど、ここまでいい流れで来ていた分、強い曲を持ってこなければ!
という判断から後回し。
急遽曲を仕上げる破目になり、あたしはいきなり徹夜に襲われる。
そんな時、あたしは弟のゲームに救われた。
いいサビが浮かばないまま夜中、ふらふらと冷蔵庫を漁った帰り、弟の部屋が
明るかったから覗いてみた。
今考えるとかなりまずいことしたよな・・・。
もしものことがあったら危ないし。
- 152 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:03
-
「何やってんの?」
「ビーマニ。」
弟は特に驚く様子も無い。熱中してるせいかな?
あたしはボーっとそれを眺めていた。徹夜で疲れていたし、いい休憩だな、
なんて思っていると・・・。
「・・・・・・・。」
曲は『20,NOVEMBER』。
そのイントロの部分が妙に引っかかる。そしてそれと同時に、
「♪♪」
鼻歌を歌う。曲が終わった瞬間弟は、
「それ、似てるけど、何て曲?」
「そのうち分かるよ。」
あたしは笑った。
使用決定。
悩んだ時間、0。
- 153 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:05
-
次の日、つんくさんに曲を渡すと、実はミキティのソロ実質ラスト曲は
次の週発売、つまり締め切りギリギリだと発覚。
「え?今夜も徹夜させる気ですか?」
つんくさんはあたしの一言にめちゃめちゃびびって一歩退く。
「やだなぁ、睨んでるわけじゃないですよ、眠いだけです。」
笑いながら言ってやると、いつの間にかつんくさんは譜面を漁り始めていた。
でもだからと言ってホッとしてはいられない。
どうにかして曲をさばかなければならない。
つんくさんが頭を抱えながら譜面をいじくっている間にも、あたしは横で
携帯を使って曲を考える。曲はあやや。ぶりぶりで行かないと売れない、
『草原の人』でそれが分かったんだから、しないわけにはいかないでしょう。
今回は意外とすんなり出てきた。サビを仕上げ、つんくさんの耳元に流すと、
つんくさんの筆の動きはにぶり、頭を掻き毟る手が速まる。
面白いのでサビ以外置いておいてごっちんの曲へと移行。
そんなこんなでサビだけはこの2時間くらいで4曲出来てしまった。
メロン+つんくさんの作った4(ミニモニは両A面になったし)+4
(『ね〜え?』『うわさのSEXY GUY』『東京ミッドナイトロンリネス』『GOOD BYE 夏男』)
+ミキティ=10。
サビだけとはいえあと5曲にまで縮む。
つんくさんには悪いけどやっぱ曲は楽しく作らないと、と実感した。
- 154 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:06
-
何故かいきなり曲作りに余裕が出来る。でもちょうどじっくり作りたい曲が
残っていたから、あたしは時間をかけて作ることにした。
桜庭裕一郎の新曲を。
今回はTOKIOさんとの両A面じゃなく1本と言う事で、あたしは気合を
入れて書こうとした。ただドラマの脚本との兼ね合いがあって、ある程度
最初から制限が付いていた。タイトルは『お前やないとあかんねん』で、
歌詞は全編通して関西弁。普段聞いてはいるけど実際はパチモノ関西弁しか
使えないあたしにとって、これは難題。
でも今つんくさんに歌詞任せたら曲作りのストレスで果てそうだったから、
あたしは協力者を探すことにした。
「なんでやねん!!」
「ちゃうちゃう、なん“で”やねん!!!」
あの〜、なんか違いません?
歌だから、言葉だけ覚えればいいんで、イントネーションは・・・。
そんな事言えずに、あたしはあいぼんと中澤さんに関西弁を叩き込まれてゆく。
よく考えたら大体構想だけ考えてつんくさんに変換してもらえば済む話だったような?
でもバカなあたしはこの当時そんな事思いつかず、余計な言葉ばっかり
覚えていく。
「ちょっこす。」
「ちゃう!それは島根や!」
- 155 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:07
-
1週間くらい経って、『お前やないとあかんねん』を作り終えて曲を渡すと、
つんくさんはなんと頑張ってあたしの作ったサビにメロをつけていた。
曲は『うわさのSEXY GUY』と『東京ミッドナイトロンリネス』の2曲。
・・・・・ん?
「なんであややの曲やってくれないんですか!!
あれが一番締め切り近いのに!!!ていうか明日か!!
やばいやばいやっヴぁ〜!!」
テンパったあたしは暴走気味に曲を作り出す。
1週間もかけて作ったあの余裕が、嘘みたいに。
つんくさんはそんなあたしを横目に、次の日あたしが『ね〜え?』を
完成させて持って来ると、ちゃっかり夏男も完成させてくれた。
流石にそれには驚き、あたしは思わず本音を口にする。
「よく作れる所まで持ち直しましたね。」
素で感心しましたよ。そんな意味を込めてあたしは言った。
つんくさんは特に返事をする様子もなく、黙々と譜面を眺めている。
なんかムカついたから、あたしは冗談半分で、
「本当に自分で作ってます?」
ブッ。
つんくさんは思い切り噴出すと、
「つ、作っとるに決まっとるやないか!!」
さすがにキレましたね。
- 156 名前:8. 投稿日:2004/05/29(土) 01:09
-
時と曲完成を重ねるごとに、あのイベントが近づいてくる。
そう、シャッフル。
これ程あたしの頭を悩ませる行事は無い。
一度に3曲も作らなければならないのはきつい。特に焦ったのはつんくさんが
韻も踏めないくせにラップ方面で1曲欲しいと言ったとき。
いやそれはあかんて!
って矢部さんばりのツッコミを叩き込みそうになりました。
でもつんくさんの目はマジ・・・。そこではあたしは試しにとんでもない提案をする。
「じゃあ、こんなのどうでしょう。
今年は3曲トリプルA面、1枚のCDにしてしまう。」
1枚だけ、2枚だけ、という人があまり考えられない状況の今のハロプロからしたら、
みすみす売り上げを3分の一に減少させるだけだけど、それほどラップは
止めて欲しかった。
「いや、それやと儲からん。」
つんくさんもやっぱり同じことを考えていた。
でもあたしは切り札を持っている。
「出せば、現状で固定ファンがどんだけいるか分かりますよ。」
その一言で決定だった。
つまり去年のシャッフルの目的は、調査以外の何物でもなかった、ということ。
でもそれは、逆にあたし達を焦らせる形となってしまった。
11万3994枚。
なんて寂しい数字だろう。『AS FOR ONE DAY』よりも少ない結果に、あたし達は
呆然としていた。
続きはまた次回。
- 157 名前:おって 投稿日:2004/05/29(土) 01:12
- おかげさまでテストも無事終了、なかなか良い結果でした。
今後は部活との両立が課題となってきますが、これからもよろしくお願いします。
(運動部なのでいつ寝て更新忘れるかは分かりません←無責任)
>136 レスありがとうございます。
俺は更にハロモニすらみていない、歌番組(元々ほとんど見てる)オンリーという・・・。
ようは小説に関してはいろんな人のファンですが実際は別に・・っていう感じです(ぶっちゃけすぎ)
こんな私めですがどうぞ最後までお付き合いの程を。
- 158 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/05/29(土) 04:09
- おおー、もうここまで来てしまいましたね
時間の流れはあっという間ですね(現実の娘たちも)
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/30(日) 18:59
- ラップよりR&Bのほうが駄目なんじゃないのかな・・・と思う昨今
- 160 名前:おって 投稿日:2004/05/30(日) 20:52
- すみません、156に訂正を!
なんて寂しい数字だろう。『AS FOR ONE DAY』よりは多いものの、あまりに少ない結果に、
あたし達は呆然としていた。
調べたら『AS FOR ONE DAY』は8万4251でした。m(_ _)m
- 161 名前:おって 投稿日:2004/05/31(月) 00:00
- !!更に訂正です!!
文章はあのまま、シャッフルの初動、調べたはずなのに(いいわけは良い)
7万0201枚でした。
それにしてもあの11万って何の数字だ?(独り言)
分かり次第また書き込みます。度々すみませんm(T▽T)m
- 162 名前:おって 投稿日:2004/05/31(月) 00:06
- 分かりました、総売上です。
11万ってのはシャッフルの総売上でした。
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/31(月) 16:10
- >>162
売上の話も良いけど、小川「麻」琴・・・
いや、誰もツッコまないからさ(いいわけは良い)
あ、毎回楽しく読んでます。
- 164 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:04
-
9.「リミット」
『Do it!now』大ごけ時以来のこの重圧。懐かしいなんて言ってる場合じゃないけど、
久々だぁ〜。もう二度と味わうもんかって思っていたのに・・・。
『AS FOR ONE DAY』はまあ仕方がないと思っていた。
出来の問題、ウケないローテンポしか作れなかったつんくさんの失敗だったと思ってた。
ただシャッフルは、3枚全部詰め込み、ラップはまずいと言う事で
R&B調、アップテンポ3種類で1枚で3度美味しい!なんて自画自賛していただけに
かなりヘコむ。やばいくらいに。
でも今になって、冷静に考えて見れば、あれは売れなかったのはしょうがないのかもしれない。
『壊れない愛がほしいの』は、結構自信作だったけど、あれで売り上げを記録したければ、
歌詞を自分流に書いて、“歌手”に歌わせるべきだった。そんな事出来る立場じゃないけど。
少なくとも、ああいうそんなテンポ速くない曲は、歌の下手さが露骨に出る危険性がある。
というか出ました。
『GET UP!ラッパー』は・・・・あたしが詞を書けばよかったと本気で悲しい。
詳しくは↓の回想をどうぞ・・・。
- 165 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:05
-
あたしは必死に曲作りに追われていた。別に作っているのはシャッフルの
3曲だけではない。次クールはすぐそこまで来ている。
大至急、こんこんの暴走ストップ要因ユニット
(カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)ミキティよりこんこんの名前を前にした理由も・・・お分かりですね?)
の新曲、モーニングの曲は仕上げておきたかった。
つまり5曲も今すぐ作らなければならない曲がある、ということ。
あたしのストレスも最高潮、遂に夏が来ても痩せなくなって来て、もう最悪
・・・・ってあたしの話しはどうでもいい。
そんな時、手の開いてるつんくさんが目に入り、頼んだ。
「お願いします!!!」
もう限界だった。大体出来た曲含め、モーニング新曲以外そのまま渡してしまった。
出来た曲はそのままでよかったのに、無駄にラップではない“早口”加えやがって!!
なんてキレて見ても、後の祭り。
- 166 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:06
-
「なんじゃこりゃ〜!!!!」
今なら、草gさんばり、とでも言おうか、そのくらい叫びそうになった。
完成品を見て。
「こんなんいらないですよ!!」
韻踏まないラップなんてただの早口、しかも遅ければもう・・・・何?!
「もうアレンジまで終わってもうたから今更言われても遅いわ!!!」
なんか逆ギレするつんくさん。しばらく口げんかが続く。
そんな中あたしは密かに、良かった、『シャボン玉』は渡さなくて。
とホッとしていたりする。正直結構手ごたえ感じてたし、練りに練って構想を
考えていたから、つんくさんによってそれが犯されてしまうのが嫌だった。
でも大丈夫、もう好きなように作ってやる。あたしは燃えていた。
久々に気合が入る。そういえば、新メンの実質デビュー曲だし。
いい曲作ってやらなきゃ可哀想だし、入った途端に駄目になったとか言われて、
高橋を哀ちゃんにしてしまったような事だけにはしたくない。
- 167 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:07
-
とりあえずショック受けるのはここら辺で終わりにして、ポジティブポジティブ!
なんて梨華ちゃんばりの変貌でとりあえず頑張りましょうと言う方向になり、
発売日の近い『シャボン玉』のプロモーションをあたしは必死に頑張り、
つんくさんはあたしの作った曲達に詞をつけたりアレンジしたり。
この時やってもらっていたのは確か
『22歳の私』
『SEXY NIGHT〜忘れられない彼〜』
『抱いてよ!PLEASE GO ON』
の3曲。にしても、自分でもないのに22歳の私とか、今更感すごいあるけど
女視点がキモい。いや、安倍さんのはいいんですけど、
『街で会っても知らぬフリをしていいでしょう? 話しかけられても自然に笑えない・・・』とか、
30過ぎのオサーンのくせに、『青春なんて誰にも止めたり出来ないわ』とか・・・。
「ぶっちゃけていいですか?」
「なんや?」
詞の進みだけは早いつんくさん。
カリカリと今も目の前で書き進めております。
- 168 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:08
-
「キモいです。」
ブッ!!!
つんくさんはいきなりの暴言に思い切り噴出した。
「な、ナ、名、那、なんやねん!!!」
「詞が。」
ブッ!!!
具体的に指摘され、今度は体ごと後方へと吹き飛ぶ。
ここら辺は流石関西人。違うねぇ。
「しゃーないやろ!!」
頭を抑えながら言われても・・・。
「しょうがないですよ。
つんくさんの詞で出てくる女は、今時女性進出社会におけるウーマンパワーを
完全に否定した、今時珍しい男尊女卑の香りが香ばしい詞ですから。」
いきなり登場はこんこん。これにまたつんくさんが吹き飛ぶ。
「な、なんでおんねん!」
いや、テンパリ過ぎだって・・・。
「あたしが呼んだんですよ、和解記念。」
こんこんとハイタッチする。どうやらこんこんはカントリーで許してくれたらしく、
「いや、曲は駄目ですよ、使ってもらったから許すんです。」
なんかめちゃめちゃ心を読まれてあたしはびびった。
やっぱこんこん恐るべし。
- 169 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:10
-
「で、なんでこいつを呼んだんや?和解記念だけなら他でやればええやん。」
なんか挙動不審なつんくさん。前縛られる間接的な要因を作ったのもこんこんだし、
まあ無理も無いんだけど・・・。
「こんこん、頭いいからなんかいい意見出してくれないかなーって。
矢口さんでも良かったんですけど、こんこんの方が頭良い気がするし。」
こんこんは笑顔でつんくさんを見る。つんくさんは目をあわせようとしない。
こんこんは意地悪く更に近づいてゆくと、つんくさんは観念したように顔を
こっちに向けた。目が合った瞬間、
「つまんない曲ばかり書いてるから落ちぶれるんです。」
またまた後方へと吹き飛ぶつんくさん。
流石毒舌!こんこんの快心の一撃に、つんくさんはふらふら。
言い返す力も根拠も無く、つんくさんは悲しそうな顔をしながら起き上がった。
「これしか書けへんのやからしょうがないやん・・・。」
あれ?
30のオサーンマジ泣きとかないよね?
ねぇ?ねぇ?ね〜え?
迷うな♪セックシーなの〜キュートなの〜どっちが好きなの〜♪
「じゃなくて!!!!」
「どうしたんですか吉澤さんいきなり発狂して。」
「あ、ごめん。」
精神安定剤打とうかな・・・なんてこの当時本気でちょっと考えたりもしてました、いやマジで。
- 170 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:11
-
そんなこんこんも『シャボン玉』の出来にはとりあえず納得してくれた。
そういえば、と感想を求めると、
「吉澤さん、あなたには負けましたよ・・・。」
とやはりアニメオタク?の噂に信憑性をと与えさせるような台詞調のコメント。
とりあえず曲を認めてもらったあたしはガッツポーズ、ハイタッチとお祭り騒ぎだったけど、
つんくさんはまだ死んでた。
「しゃーないやん・・・。」
まだ言ってるし。しょうがないので軽く蹴りを入れる。
「うっ!!!」
意外と深くにヒットし、うごめくつんくさん。
こんこんがそれを見て嬉しそうに蹴り出す。
「うっ!!!げほっ!!」
「こんこんストップ!!!それはまずいって!!」
何とか取り押さえ、こんこんの暴走を止めた。
- 171 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:12
-
別に『シャボン玉』が出来たからと言って、あたしは休めるわけではない。
今度もまたあたし達の曲、しかも今回はちょっとしたイベントの、さくらおとめ分割。
個人的に勝手に楽しみにしていた所もあるが、なんであたしがさくらなのよ、
って思ったりもした。つんくさんに聞いた所によると、
「本当は吉澤と石川が逆の方がええんやけど・・・。」
“ど”を異常なまでに強調して、つんくさんは言った。
「ピンクの衣装を石川が着てもファンはとっくに飽きとるし、何より本人が
趣味の悪さに気づいてない。ここで外す事で少しでも気づいてもらえへんかな〜という狙いもある。」
でも梨華ちゃんはそれくらいでへこたれる様な子ではありません。
一度へこみ、次にポジティブポジティブで復活。どこまでも暴走して行くから
恐ろしいのです。そしてつんくさんの読みを更に上回る大事件、
2004年の流行色が『ピンク』に決定。
このときは関係ないけど、聞いたときのつんくさんのやってしまった顔が
凄く面白かったです。
- 172 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:13
-
『シャボン玉』はとりあえず前回越えを果たし、ほっと一息をつくものの、
なんだか虚しい。この数年で、売り上げの枚数が本当に落ちたよなぁ。
これは業界全体的な不景気だけでは説明出来ないくらいひどくて、
ピース以降出す曲出す曲毎回累計が10万くらい減っていった事から
「つまんねぇんだよ!」とか「飽きた」って言われてるみたいで悲しい。
曲を作れなくなっている自覚は確かにある。どんどんつまらなくなっているのも分かる。
でも、作る曲数は増えていくばかり。売り上げは減る一方。
この苦しい反比例は、あたしの体に深刻なストレスを与えてゆく。
精神的にただでさえきついのに、作る曲数の増加で睡眠時間が低下、
心身ともに限界で、満身創痍(だっけ?)だった。
「よっすぃ〜大丈夫?」
梨華ちゃんがあたしの事を心配そうに見る。
楽屋で気を抜いてたら、物凄い疲れた顔を見せてしまったのかもしれない。
矢口さんなんか同情?と取れる表情でこっちを見ている。
「マッサージでもしましょっか?」
麻琴がひょっと首を出す。あたしは思わず笑うと、
「なんで笑うんすか〜。ほら、寝た寝た。」
「なんか最近みんな疲れてるからね〜。」
矢口さんがうわ言のように呟き、一人の娘に指を指した。
- 173 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:14
-
「あ、本当だべ。」
安倍さんがまるでお母さんのように微笑む。
うぅ、眩しいっす。いなくなると思うとホント、悲しい・・・。
でも、これからもっと減るんだろうな・・・。なんだか哀愁に浸りながら、
麻琴のマッサージを受ける。なんでかよく分からないけど妙に手付きがよくて、
凄く気持ちがいい。
「あ〜、気持ちいい〜。」
オッサン臭い声を出すと、周りのみんな笑った。
「よっちゃんさんオッサン〜。」
みきちゃんさん(いつしか呼び方が変わったっけ)はあたしを見てかなり笑っている。
そりゃもう、矢口さんくらい。
そんなに笑う事無いだろ!って思っても気持ちよくてダラシの無いオッサンに
すぐなってしまう自分が泣ける。まあいいや、いい機会だし、休ませて貰おう。
「なんか体育会系の縦社会っぽ〜い。」
そんな風にふざけたりしていると、いつしかあたしは夢の中へと・・・。
- 174 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:15
-
夢の中で、あたしは道の無い道を歩いていた。
後ろを振り返ってみても何もない。前を見ても何も無い。
あるのはただ同じ景色が、少しずつ荒んでいっている。
いくら歩いてみても何もない。道は開けなかった。あたしは漸く理解する。
これが今のあたし。
あたしの状況だ。このまま進んでいって見える景色に、輝きはない。
「う・・・・うぅっ・・・・。」
あたしは夢の中で絶望した。
このまま進んでいけば、あたし達に未来は無いと言うのだろうか。
どうすればいいの?
どうすれば道は開けるの?
「大丈夫ですか?うなされてましたよ。相当疲れてるんじゃ?」
起きてすぐ麻琴に言われた。
「いや、大丈夫、余裕余裕!」
無理して元気に見せて、とりあえず安心させる。
でもあたしの中では、一つの決意が芽生え始めていた。
- 175 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:17
-
あたしが作曲室でその決意を語ると、つんくさんは驚き、
「ホンマか?!」
ものすごく焦った。まあ無理もない。でももう決めた事だから、考えを改める気はない。
「はい、決算と一緒に、ゴーストとしての身を退きます。」
具体的な日にちももう決めた。まあなんていうか、高校卒業と同時に作曲家も卒業、
って感じでしょうか。軽いノリに見えるかもしれないけど、
あたしだって一応かなり悩んでこの結論に達したんだ。
あたしの心の中の苦しみなんて、きっと誰にも一生分からないんだろうけど。
予想外だったのは、つんくさんが意外とそこまで焦らなかった事だ。
最近曲を何とか作れるようになってきたからなのか、それとも・・・。
嫌だよな、あたしはゴーストになってから、卒業の話は全部構想の段階で
全部教えられている。だからこの時点で、
あいぼんとののも、梨華ちゃんとカオリも全部知っていた。
4期で残されるのは、あたし一人になってしまうということはかなりショック
だったけど、今はあまり深く考えないようにしている。
まだ先だし、今からあーだこーだ言ってもしょうがない。
人数が減るのなら出番が増えるチャンスあり!
なのだろうか・・・。
- 176 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:18
-
話反れましたね。とりあえずつんくさんにそれを話すと、安倍さんの
ラストシングルをモーニングの書き下ろし曲ラストということになり、
一応こっそりと軽い卒業式をやってくれるとも。
そんでもって最大のプレゼントとなったのが、
「お前が曲を作っていた形を残すために、2枚目のベスト出すで。」
あたしが初めて作った曲『ザ☆ピース』から、その最後のシングルまでの間の
シングルを集め、ベストにしてくれるというのだ。
これはちょっと嬉しかった。いくつかはあたしの曲ではないものの、
ある意味あたしのために作ったベスト。
決算対策ではなく、あたしのために・・・。
時期が時期だけに決算対策っぽくなったけど、あたしは嬉しくてすぐに残りの曲作りを続けた。
- 177 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:19
-
2枚同時リリースなんて、GLAYかよ!って感じで別に見るのはいいんだけれど
作るのは大変。それでもベストの話でモチベーションだけは無駄に上がっていたから、
あたしは頑張って曲政策へ。でもああいうのって、最盛期にやるもんだよな・・・。
落ち目で落ち目で落ち目な今することじゃないよ・・・。
ってシャッフル毎回成功してんだかしてないんだか微妙だし。
とりあえず分割でファンが半分に割られてはかなり困る。売り上げが半分だと
分割した意味が全くないし。
ようは2枚とも買わせて、合計してモーニングの倍弱売れればいい、というのが
事務所側の考えらしく・・・。あたしにもプレッシャーは多少かかっていた。
それと一つ制約もある。さくらは落ち着いた、女の子らしい恋の歌を、
おとめはロックに。さくらはローテンポ気味に、というのも付け加えられていて、
ようは売れたいのに危険な賭けに出るという矛盾。
あたし達ぶっちゃけ歌、ねぇ・・・・。
それでローテンポとかロックとか歌っちゃうと・・・。
まあいいや、あたししーらないっと。
- 178 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:20
-
とりあえずロックって言われてもそれっぽいのを作った経験はない。
まあとりあえずアレンジャーさんがそれらしくしてくるだろうという
勝手な考えの元、曲を制作してゆく。で、最初に思ったのが何故か英語の歌詞。
ロックだし、英語だろ!
と訳分からない考えがあたしの頭をよぎり、それっぽいメロディーを考えよう、
としているうちになんかどこかで聞いたことあるようなないようなメロディーが・・・。
まあ気にしないでっと(つんくさんと違って無意識だから無実だと勝手に思い込んでいました)
作ったあと、辞書を片手に英語歌詞を書くも、途中で挫折。
バリエーションがなくて、みんな同じ・・・。ちゃんと勉強してりゃ良かったと、
今更後悔してしまいます。しかも今も、辞書使わずに訳せるか、自信ないです・・・。
あんなに短いのに・・・。
鬱になる前に話を区切って、さくら組の方行きましょうか。
こっちはローテンポという事で、一瞬葛藤に襲われた。あんまり難解な歌にすると、
とてもじゃないけど歌番組で聞けたもんじゃなくなる可能性高し。
でも恋の歌でノリノリにしすぎるともう出来てるおとめと被る。
仕方ない・・・ローテンポに決定。もう安倍さんの力に頼ります。
- 179 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:21
-
「・・・・・・・・・。」
「よっすぃ〜、大丈夫?」
矢口さんがあたしを心配そうな表情で見てくる。
無理もない、あたしの楽屋での当時の疲れようって言ったらなかった。
本当、死人みたいな感じ。
さくらおとめの曲を作ったあともクールは終わらない。
あたしは必死こいてソニンさん、ミニモニ、あぁ!(つんくさんの思いつきユニット)
を仕上げ、目下モーニングの曲作成中。
なんであたし達の曲のペースが上がってるんだよ?!
とつんくさんに問い詰めた所、一番儲かるから、という簡単な答えが・・・。
あたしはこんだけ作って、たった一曲の福山さんの売り上げに遠く及ばない
なんて思うと泣けてくる。それが余計に疲労を誘った。
「明らかに死にそうな顔してるよ、一番忙しかった時の辻加護以上に。」
そう言われても仕方がない。
なんせ人の倍働いている身。元々かなり忙しい仕事なのに、曲を作って睡眠時間
抉っていたら誰でもこうなります。
「まあ3月末までの辛抱です・・・。」
矢口さんはそれを聞くと少し残念そうな顔をして、
「正直つんくさんの曲よりよっすぃ〜の曲の方が好きなんだよなぁ。」
とボソッと呟いた。その瞬間、
「吉澤復活!!」
あたしは立ち上がると、すぐに力尽きて倒れた。
- 180 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:22
-
え、はいそうですね。
『Go girl 〜恋のヴィクトリー〜』は完全にダメダメですね。
作りながら思いましたもん、これはあたしの作ったシングル史上1位確実の
駄作だ、と。それでもボツにしなかったのは、もう体力的に限界だったから。
正直もう、ボツとかなんだか言ってる余裕なんてなかった。つんくさんも
それを分かってくれたらしく、作戦を変更。
「年末の歌番組はこれ歌いまくるぞ。」
ようはなんとか耳に刷り込ませよう、という作戦なんだかそうでないかめっちゃ微妙な作戦。
年末の作戦が決まると同時に、それまでにリリース予定の曲を誰が作るか打ち合わせ。
その結果あたしは、メロンとごっちん。つんくさんはミニハムずとカントリーという形で
話がまとまった。
「あ、同じ曲数。」
あたしが言うと、つんくさんはとくに何も反応を見せなかった。
つまんないなぁ。
- 181 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:24
-
えー、上の文、訂正します。
『原色GAL派手に行くべ』の方が駄作でした!すみません!!申し訳ない!!(誰)
とにかく鬱になりかかって、いい曲なんか出来なくて、
・・・・なんていいわけだよね、あ〜あ〜♪
「ダダンダンダダン♪ロンリー誰も〜孤独なのかい?♪」
「過去の栄光にしがみ付かないで下さい。」
歌うつんくさんに辛口コメントを述べてみる。
ザクッと胸に響いたのか、つんくさんはかなり寂しそうな表情。
すんません。
お互い出来た曲を聴かせ合い、溜息をつきながら今年の会議はこれにて終了。
次のクールは来年1月下旬。そんなに休んではまずいはずだけど、12月入るまでは
休みをもらえた。このときのオフはとにかくひたすら眠っていた気がする。
起きても、ふと浮かんだメロディーを携帯でメモる程度で、特に何もしないで体力回復。
そうでもしないとやってられないくらい、体が蝕まれていた。
そんな時に見たオリコンの結果は衝撃的だった。
4位。
ひょっこりを除けば4位なんて順位とったの、ラブマ以前ですよ?
どうするのよ?辞めにくいし!!なんて色々な想いが頭を交錯する中、
あたしは割り切ることにした。
「あたしの尽き果てそうな湧き水、全部搾り出してやる。」
とりあえず、気合を入れなおすいいきっかけにはなったと思う。
次はいよいよラスト。
- 182 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:24
- ・・・・え?こんなに早く終わるなら短編用で書けって?
ごめんなさいm(__)m
続く。
- 183 名前:9. 投稿日:2004/06/04(金) 01:29
- >>158 レスありがとうございます。
そうですね、早く進めすぎた感はあまりますが、こういう話は
単調になってしまうのでスピーディーでないと持たなくて・・・。
>>159 レスありがとうございます。
その意見、そのまま取り入れさせていただきました。
僕もかなり納得です。歌番組で見て、「うわ・・・・」っていつも
思ってましたから。
>>163 レスありがとうございます。
間違いの指摘、ありがとうございました!
それによって今回出番がないはずだった小川に出番が回りましたw
- 184 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/06/04(金) 12:26
- コンコンがおもしろすぎでした
自分的にはハニーパイ好きですけど。
それに晴れ雨なんて名曲じゃないですか
恋VICは萌え燃えだし
それでは次回も期待してます
- 185 名前:おって 投稿日:2004/06/06(日) 15:46
- >>184 レスありがとうございます。
基本的に曲が言いか悪いかはテレビで見ていて何回目に耳に残ったか
で決めているもので。
書くために必要な情報の質問なのですが
ベスト2の最後の曲って初収録ですか?それともアルバム曲なのか、
c/wなのか、はたまたライブでは歌っていたのか・・・。
- 186 名前:おって 投稿日:2004/06/06(日) 15:47
- 上げないと気づかれないかもしれないので一旦age
- 187 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/06/06(日) 17:41
- 吉紺の辛口具合ワラタです
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/07(月) 04:12
- >>185
CDには初収録ですね。ライブは知りません
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/07(月) 10:49
- 娘。安倍、後藤、保田で歌ってるのでライブで披露するのも難しいです
もしかしたら今度のハロプロコン辺りで歌うかもしれませんが
今のところは披露されていません
- 190 名前:おって 投稿日:2004/06/07(月) 19:10
- >>187 ちょっと毒舌過ぎるかもしれませんが・・・w
>>188-189 情報提供感謝です。話しに組み込ませさせて頂きます。
- 191 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:25
-
10.「My graduation」
あ、タイトルは気にしないで。
決してSPEEDではなくてSPEEDではなくてSPEEDではなくて。
『Go girl』がこけたことで(結局年末ラッシュ作戦が成功して累計は悪くなかったけど)
あたしは12月まであった休みを返上して、11月下旬には曲を作り始めていた。
締め切り表を貰い、数えると・・・・。
「少なくないですか?」
あたしは拍子抜けしてしまった。
あたしがゴーストライターを卒業する、決算までにリリース予定があったのは、
モーニング、あやや、カオリ、中澤さん、1週置いてさくおと、Berryz、
あやや(だけど谷村さんが作るとか)、ごっちんで終了。
たった6曲。
しかもカオリの曲はつんくさんが作るらしい。
「これが少ないといえるお前が羨ましいわ。」
つんくさんは不貞腐れながら言う。
「作れるようになってるじゃないですか。」
「ん、ま、まあ、せやけど・・・。」
まだきつい、ってか。あたしいなくなった後大丈夫かね?
- 192 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:26
-
とりあえずあたしは曲を作り始める。
締め切りの事情で安倍さんの卒業シングルをいきなり作らなくてはいけないようで、
なんだか一歩先に軽く悲しくなる。でも安倍さんのラストの曲なのだから、
前向きな曲にしたいな、とあたしは思い、詞を書いてゆく。
ちょうど詞を書いているとき、どうでもいい事だけれど、何故か知らなかった事を
初めて知った。
「オーライオーライ!!」
公園で少年達が野球をしている。・・・一瞬混じりたくなった。
それに気づいたのか、横を歩いていた矢口さんが言った。
「よっすぃ〜、知ってた?」
「何をですか?」
「オーライ、ってit’s all rightのオーライなんだよ。」
・・・・すみません、一瞬何がなんだかよく分かりませんでした。
英語弱いな〜、社会はもっと弱いけど。黙っているあたしを、
「どしたの?」
矢口さんはもっと訳の分からない、と言った顔をして覗き込んできた。
「あ、いや、なんでもないです。でも知ってましたよ!それくらい!」
なんか馬鹿にされてるような気が何故かして、あたしは思い切り強がった。
「本当かよ〜。」
矢口さんは全く信じてない。
- 193 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:27
-
そう、こんな理由で、
「あたしは分かってるんだよ!」
という強がりからit’s all rightを歌詞に入れることにした。
どこに入れるか考えていると、サビの部分がしっくり来ると思い入れると、
そのままタイトルにまで出世。ちょうど前向きな歌詞を書こうと思っていたのもあって、
ちょうどよかった。
でも、これのせいで矢口さんにいじられまくったのは言うまでもない。
「無理し過ぎ。」
笑いながら肩をバシバシと叩かれまくる。
あたしも安倍さんのラストシングルにまでしてしまったのだから、
退くに退けない。
「そんな事ないです!完璧です!」
こんこんの台詞を引用。隅っこで話していたのにピクッと反対側のこんこんが
僅かに揺れる。矢口さんはまたも笑うと、
「代わりに作ってるんだから、ある程度無理するのもしょうがないけどさ。
あんまり背伸びするなよ?」
とだけ言ってその場から立ち去った。背伸び、か。
あたしはそんなにバカ・・・・だよな。
辞書引かないとit’s all rightも分からない大バカだよな。
- 194 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:28
-
「はぁ・・・・・。」
思わず溜息をついた時、なんだか視線と気配を同時に感じた。
横を振り向く。その気配は、ロッカーと壁との僅かな隙間から放たれていた。
恐る恐る視線を移すと・・・・・。
「亀井・・・・。」
もしかして・・・・。あたしの嫌〜な予感は、見事的中した。
亀井はモソモソと隙間から身体を出すと、笑顔で言った。
「さっきの話、詳しく聞かせて下さい!」
あ〜あ、やっちゃった。なんで今更・・・。
あと4ヶ月で終わるのに、最後の最後でまた一人バレるとは・・・。
どうしよ、ごまかせないものか・・・。
でもあたしの頭にごまかす技術なんてない。
あたしは亀井の手を握ると引っ張り、
「ちょっと外出よっか。」
- 195 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:29
-
この間一人でキレまくった公園で、あたしは亀井に全部話した。
全部、丸ごと。最初から今まで。公園について、ブランコに揺られながら、
あたしは一瞬躊躇した。さて、どうしたものかと。
でもあたしの背中を押す声が、どこかから聞こえた。
『さあ打ち明ける瞬間』
誰だか分からないけど、なんだか凄い楽になった気がして、
その勢いで一気に話してしまった。自分でもびっくりするくらい、すんなりと。
話し終わったらあたしはまた軽く溜息をついた。
亀井はなんだか信じられないみたいで(そりゃそうか)、
シゲさんみたいにボーっとしている。
「信じるも信じないも、亀井の自由だよ。」
最後にあたしが付け加えると、亀井は漸く口を開く。
「矢口さんも紺野さんも、本当に信じてるんですか?」
やっぱり信じないだろうな。無理も無い。あたしだったら絶対信じない。
え、あんなアホな先輩が?って感じ。
- 196 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:30
-
「うん。」
あたしは普通に答えた。
矢口さんはつんくさんから直接告白されちゃっている。こんこんに至っては、
作曲室で相談している決定的瞬間を目撃しているし、その後も作曲室で大暴れ。
信じているのだろう。亀井はそれを聞くと、
「じゃあ信じます。」
笑顔で答えた。え?どんなノリ?
でもとりあえず信じたという事は、今度は口止めしないといけない。
「この事はくれぐれもみんなには内緒で。」
あんな歌詞書いてるなんてこれ以上知られたら、あたしは恥ずかしくて生きていけない。
「はい!」
亀井は笑顔で返事。
よっしゃ。
「でも。」
うわ来たよ条件つき〜。
いきなりテンションが下がった。亀井ははっきりとは言わずに、敢えてなのか、
まわりくどく、
「今月絵里の誕生日なのは、知ってますよね?」
え〜っと、確か・・・
「天皇誕生日。」
「分かってるじゃないですかぁ〜、お願いしますね?」
嫌だとは言えないのに、お願いしますねって・・・・。
最近の子は怖いわ〜。
「了解。」
「やったぁ〜!!」
- 197 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:31
-
さて、亀井の誕生日プレゼントを(しぶしぶ)考えつつ、今度はあややの曲を
書き上げてゆく。とりあえず『THE LAST NIGHT』で確認できるのは、あややは
バラードやノリの良くない曲を作ったらそれはあややではなく、決して評価されない、ということ。
売り上げでこれ程までに差が出るということは、1アイドルとしての評価よりも
楽曲ごとで評価されているということ。
唯一の例外の『LOVE涙色』は、単純に曲が良かったとしかいいようがない。
(てかつんくさん、涙色のBをちょっといじっただけじゃないですか、
『AS FOR ONE DAY』のサビ)
普通のバラードを作るくらいなら、へちょいアップテンポの方が絶対に売れる。
またも『ね〜え?』と同じタイアップがつくこともあって、あたしはアップテンポ!
というのを意識して曲を思い浮かべようと努めた。
「止まらない〜♪」
なんとな〜く、呟いた言葉。
ふと浮かんだフレーズを、ぱっと浮かんだメロディーに乗せてゆく。
う〜ん、なんか勢いでララバイって使っちゃったけど、なんて意味だっけ?
- 198 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:32
-
年末までに絶対に上げなければならないのは、中澤さんまで。
つまりこの年の最後の1曲は中澤さんの曲で締め・・・・、
「あ、ええで。出来てしもうたから。」
「え。」
かなり不意打ち。
あたしの表情を見たつんくさんはすぐに土下座直前の体勢へ。
それにしても安い土下座やのう。でも、
「って俺なんで謝っとんのやろ。」
つんくさんはすぐに気がついて頭を上げた。
確かに。
いつもはむしろ曲多くてキレてたのに、少ないって言われて謝るのは筋違い。
あたしもそれくらいは気づいた。でも、
「最後なのに曲少ないと味気ないです。」
その言葉を聞いた途端、つんくさんは再び地面に腰を下ろした。
- 199 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:33
-
別にあたしは中澤さんの曲は力入れてないから(ひどい?)、
両A面にされても逆に困ったけどとりあえず作り、今年はこれにて営業終了。
亀井へのプレゼントを考えなきゃ。
みんなあげるものよりもいい物あげなきゃいけないってことだろうから・・・。
中に入る小さめなロッカーとか?
あ〜どうしよ〜・・・。しかもクリスマスのプレゼント交換会も何にするか
考えなきゃいけないしさ〜。
あたしは仕事が終わって今度は別の事に大分悩まされた。
でもだからと言って、これは人に相談する程の事じゃ・・・。
「どうしたらいいかな?」
って結局相談してるあたし。
てか特に交換会何にしたらいいかなんて聞いたら交換会のスリルが全く無いじゃないか。
なんか色々考えながら、ジュースを飲みながら梨華ちゃんの返答を待っていると、
なんだか梨華ちゃんの様子がおかしくなってきた。
- 200 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:34
-
「よっすぃ〜、亀井ちゃんが好きなの?」
ブッ!!!
思わず飲んでいたジュースを噴出す。
何を言ってらっしゃるんですか梨華姫。
いしよし小説読みすぎですよ、
そんなのにはまったらロクな事が(あたしに)ないですよ!!
ってあたしここに書いてるのか、あはは(笑えない)
「ネット小説もほどほどに・・・。」
こりゃ相談にならない、あたしがジュースを飲みなおすと、
梨華ちゃんは目を潤ませる。
え?
あたしはマジで焦って、
「大丈夫!?」
ハンカチを取り出し、梨華ちゃんに渡した。
梨華ちゃんはそれで涙を拭きながら、
「ごめん・・・。ごめんね・・・。あたし、だめだよね・・・。
あんなのに影響されちゃって、あたしもよっすぃ〜も女の子なのに・・・。」
俯いたまま、少し小さな声で少しずつ言う梨華ちゃん。
え・・・もしかしてマジ?
「でもね。」
いきなりあたしの目を見る。やばい、男だったらもう絶対落ちてるよ。
なんだかよく分からないけど、凄くドキドキする・・・。
- 201 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:35
-
「あたしのこの気持ちはホンモノ。」
梨華ちゃんはいきなりあたしの手を握った。
その眼はあたしの眼を、少しも逸らさずに見つめている。
少しずつ近づいてくる梨華ちゃんの身体。
あたしはとうとう、梨華ちゃんの身体を優しく抱きしめた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
しばらくそのままでいると、梨華ちゃんは顔を起こし、
二人の顔の距離は5センチくらいに。暫くその状態でいると、
梨華ちゃんは少しずつ、顔を近づけてきた。
唇と唇が、まさに眼と鼻の先まで来た所で、梨華ちゃんはいきなり一気に後退した。
「?」
あたしはびっくりして目を丸くすると、梨華ちゃんは悪戯に笑った。
「顔、赤いよ?」
「!!」
あたしは思わず自分の頬を触れると、凄く熱くなっているのが分かった。
梨華ちゃんはそんなあたしを見てまた笑うと、言った。
「あたしも少しは演技巧くなったでしょ〜♪」
・・・・・悔しい。めっちゃ悔しい。あたしは苦し紛れに一言、吐いた。
「寒い。」
○吉澤ひとみ―石川梨華● TKO
決まり手:「寒い。」
- 202 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:36
-
プレゼントをなんとか決め、あたしは23日、亀井にそれを渡した。
「絵里楽しみだな〜、吉澤さんのプレゼント。」
やばい、やっぱり期待している。まずいなぁ〜・・・。
何も言わずに亀井に箱を渡す。
「さてさて中身はなんでしょ〜?」
亀井は楽しそうに箱を開けると、そこには・・・。
「・・・・・・鍵?」
亀井が不思議そうな顔をしていたので、あたしは言った。
「テレ東の、人が入れそうなくらいのロッカーの鍵。貰ってきた。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
亀井は何にも言わずに、鍵をじーーーーっと眺めていた。
・・・・やばい、すべった・・・。
あたしは泣きそうになった。
だって狭い所好きじゃん!!って理不尽にキレていると、
「楽しみにしてたのにな〜・・・。あ〜、さゆとれいなと藤本さんに電話しなきゃ。」
脅されてる!!
すべった上に脅されてる!!
「・・・・・ほら。」
あたしは“ホンモノ”のプレゼントを、亀井に手渡した。
「・・・・・・?」
渡したのはパールのネックレス。
「高かったんだぞ〜。」
まあ稼ぎまくってるからいいんだけど。亀井はそれを貰うと笑顔で、
「吉澤さん、ちゃいこ〜です☆」
- 203 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:37
-
ホッとしたのも束の間、次の日はもうプレゼント交換会。
こっちは無難にもうちょっとまともに。貰った人のリアクションも上々で、
胸を撫で下ろし、自分が貰ったものを確認すると・・・・・。
「なんじゃこりゃ。」
なんだか妙に薄っぺらくて、紙?・・・・・。
「!!!」
思わず声を出しそうになる。でもなるべく平常心を装って、もう一度、
「なんじゃこりゃ。」
よし合格。
あまりにリアクションとると変に思われるけど、無表情でいるにはあまりに辛い。
「なんですかそれ。譜面ですか?」
麻琴が不思議そうに譜面を眺める。
その瞬間、あたしは素早く辺りを見回し、犯人発見。
分かった瞬間怒る気も失せた・・・。
あたしはその場ではアイドルスマイル(作り笑顔)で切り抜け、
あとでつんくさんにあげた。
- 204 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:39
-
年明けて、あややの大脱出にはめられ涙を流しつつも、あたしは生放送中ずっと、
曲の構想を練り続けていた。
さくらおとめ。
2曲同時リリースなのだから、労力は2倍。
当たり前だけど、これがまたきつい。
しかもおそらく合計で『愛あらばIt’s all right』を超えなければ
会社は満足してくれない。
そんでもって相変わらず曲はローテンポ、ロックテイストに限定。
はっきりとってあたしにとって、さくらおとめは嫌なことこの上なかった。
正直一番やりにくい仕事だった。
でもさくら組はなんだか知らないけど楽にサビが作れた。
それはあたしの記憶の片隅に残っていた、年末に聞こえた誰かの声。
『さあ打ち明ける瞬間』
亀井に話すか否か、迷っていた時に聞こえた声。
しかもこれが歌だったものだから、これをベースにあっという間にサビが出来てしまった。
そして曲を作るうちに曲名を決める。
さくら組ともじったのもあるし、今年はさくらが早いだろうと勝手に予想してたのもある。
とにかくそんなこんなで『さくら満開』という題に決定、歌詞もしっかりこんこんの言う、
『今時女性進出社会におけるウーマンパワーを完全に否定した、
今時珍しい男尊女卑の香りが香ばしい』詞をしっかり書かせてもらいました。
なんか書いててちょっとムカつくけどね。
- 205 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:40
-
その反動がおとめに表れてしまうのは、当然なのかもしれない。
元々ロックな曲を求められているから、ちょうどいい。
あたしはノリで曲を作っていった。正直oioiが耳に残ればいいだろう、って
感じで作ったところがあるから、サビがめちゃめちゃ多い曲になったと思う。
でもタイトルが決まらなくてつんくさんに相談したら、『友情』って単語を使うから驚いた。
結局曲中2回しか「仲間」って単語が出てきてない上に、「友情」なんて言葉、
出てきましたっけ?
まあ確かに辛い時は田舎にでも戻って、なんて『ふるさと』みたいな事書いたけど・・・。
大体サブタイトル・・・。歌詞で書いたけどさ、なんかめちゃめちゃダサいロックみたいに
なっちった。
今更ながら、『友情』って題にするなら『U CAN DO』を『WE CAN DO』にした方が
よかったんじゃないかな、と思うけど後の祭りですね。
曲の内容とかどうとかよりも、またも1,2位を決めれなかった事、
おとめがさくらと大分離れた位置でフィニッシュした事が問題だ。
合計で『愛あらばIt’s all right』を超えられなかったということはつまり、
安倍さんが抜けたことでそれだけの打撃をモロに食らっていることの表れ。
ますます辞めにくくなってるよ・・・。
- 206 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:41
-
あっと2曲、あっと2曲・・・・。
悲しい、悲しすぎる。梨華ちゃんくらい悲しいよ。
何がって?だってあと2曲しか作れないんですよ?
確かに今まで色々ありました。こんなにたくさん作れるかー!!
ってキレたり、つんくさんリンチしたり、パクってみたり。
でもですよ、最後ってなんでも名残惜しいじゃないですか。
嗚呼もう終わっちゃうんだなと思うと。元々最初は好きで始めていただけに。
しかもごっちんはいいんだけどさ、もう片方は・・・。
初めから売り上げなんて期待出来ないし、群衆から冷ややかな眼で見られる
だけですよありゃ。ミニモニの時代悩んでた矢口さん並に悩んじゃいます。
あたしは別に小学生の曲を作るためにゴーストやってるわけじゃないっての!
みたいな。
でも残り2曲だからそういうのを一切無視して普通に曲を作成。
その結果、小学生に「あなたなしでは生きていけない」なんて歌わせる始末。
ちょっとやりすぎた感も凄いあるけど、まあ気にしない気にしない。
- 207 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:42
-
ごっちんが最後か・・・。あたしは感慨に耽りながら、曲の構想を部屋で
練っていた。最後だし、何気なくあたしが作る最後だということをアピールしようかな、
サヨナラとか入れて。
あとバラード気味の方がいいや、あとで聴きながら一人で泣かせてください。
というわけでラスト1曲のコンセプトは、
『時が経って聴いて思わず(自分が)泣いてしまう曲』に決定。
曲を作り、詞を作り、ふと気づく。詞がこれだと、まずい・・・・。
なんだかあたしと一部(矢口さん、こんこん、亀井、寺田)以外、解読不能。
他の解釈すら出来ない。
ボツ。
あっさりと切り捨て、
「っと待てよ。」
あたしはこっそり、それだけとっておく事にした。
あとで聴く時、この歌詞を見ようかな、なんて思いながら。
切り替えて『サヨナラのLOVE SONG』の作詞開始。
まだ好きなのに別れる、もう一度逢いたい・・・みたいな詞を書こうとして、
あたしはあれこれ考えた。
まあ結局ボツになった奴もまだ作りたいのにやめる、もう1曲作りたい・・・
的な曲なんですが。
- 208 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:43
-
ドン!!!
あたしは最後の2曲をつんくさんにまとめて渡すと、つんくさんは少しだけ、
名残惜しそうな顔をしながらそれを受け取った。
「・・・・吉澤。」
譜面をまとめながら、つんくさんは言った。
「ベストに新曲1曲入れる気、あるか?」
「あります!」
「早!!」
あまりの即答ぶりに、つんくさんはめちゃめちゃ驚いていた。
いやだって、最後はやっぱりモーニングで終わりたいですよ、
始まりも終わりもモーニング。やっぱこうでなくちゃ、ね?
「じゃあ頑張ります!!」
あたしは急いでその場から立ち去り、移動しながらもずっと曲を作っていた。
- 209 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:44
-
ドン!!
ドン!!
「あれ?なんで2曲やねん。」
つんくさんは渡された譜面を見て不思議そうに呟く。
あたしは胸を張って言った。
「心配なんで、ストックも1曲。」
実はただ単に作りたかったから勢いで作っただけだった。
つんくさんは譜面をじーっと眺めた後、
「ありがとな。」
と本当に心を込めた礼をしてくれた。
あたしはそれを見て、思わず頬を少し緩める。
「もうここに来るメンバー、いなくなっちゃいますね。」
あたしがいなかったらたまに遊びに来てた矢口さんとかも来る意味無いだろうし。
ていうかむしろあたしがまだゴーストじゃなかった時は立ち入り禁止じゃなかったっけ?
「・・・・。」
つんくさんは何も言わずに、ただただ譜面を眺めていた。
- 210 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:45
-
こんなに緊張してオリコンを買うのもこれが最後になるのかな。
あたしはそんな事を思いながら、ベスト発売週のオリコンを購入、
何も言わずに見た。
「・・・・・・・・。」
まあ、しょうがないよね。
これからあたし達がどんなに落ちて行くか分からない。
落ちて行くきっかけを作ったのはあたしなのか、はたまたつんくさんなのか、
不景気なのか。
それは頭の悪いあたしには全然分からないけど、とにかく言える事がある。
作っている時あたしは、凄く楽しかった。
忙しくて死にそうになったりもしたけれど、凄く充実していて、なんかいいなぁ〜って。
でももう終わったんだ。そう思うと目頭が少し熱くなる。
「・・・・・・・・・・ごめんなさい。」
何故かあたしの口からそんな言葉が。
自分が作り出してから落ち出したような気がしてきて、終わる事への悲しみと、
罪悪感が同時にあたしを襲ってきたのだ。
過ぎたことは変えられない。人間に過去を完全にかき消す術なんて、
存在し得ない。
だからあたしは、自分のやったことに胸を張りたいと思う。
あたしは一時代を築いたモーニング娘。の、ゴーストしていたんだ!と。
いやいや、胸張っちゃまずいって。
- 211 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:45
-
後日、あたしはスタジオ付近をふらふらとうろついていた。
ジュースを買うついでに、作曲室の前を通りかかる。懐かしいな〜。
しみじみと感じながら、何気なくあたしはドアを開けてみた。
ガチャッ。
「おはようございま〜す、調子どうですか?って・・・・え?」
- 212 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:46
-
中の風景を見た瞬間、様々な情景、言動、行動があたしの脳内でフラッシュバックした。
- 213 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:46
-
「すまん、これからこの時間にしか曲持って来ないで欲しいんやけど。
誰が来るかもわからんしな。」
- 214 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:46
-
「すみません、あの時間(収録と)被ってるんで今渡します。」
「え?・・お、おお。はよ貸してみ。」
- 215 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:47
-
「失礼しま・・・・・?まさか・・・・・・。」
「吉澤、ちょっと出てくれへんか?」
- 216 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:47
-
「すまん、今モーニングの新曲の方で手一杯や。
あれいじったり歌詞付けたりで寝れへんのや。吉澤、思い切り弾けたれ!」
- 217 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:48
-
「なんでロープ。」
「確信犯かい!!」
何故かほどけていたロープ。
- 218 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:48
-
「一応、作ったで、5曲。」
いきなり作れるようになったつんくさん。
- 219 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:49
-
「本当に自分で作ってます?」
ブッ。
「つ、作っとるに決まっとるやないか!!」噴
出して、焦りまくったつんくさん。
- 220 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:49
-
「な、なんでおんねん!」
- 221 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:49
-
「吉澤さん、あなたには負けましたよ・・・。」
- 222 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:50
-
「はい、決算と一緒に、ゴーストとしての身を退きます。」
この時も、意外と焦らなかった。
- 223 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:50
-
「ん、ま、まあ、せやけど・・・。」
あたしに曲作れるようになったじゃないですかと言われてこの詰まり方。
- 224 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:50
-
「あ、ええで。出来てしもうたから。」
出来て“しまった”?
- 225 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:51
-
「なんですかそれ。譜面ですか?」
- 226 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:51
-
「もうここに来るメンバー、いなくなっちゃいますね。」
「・・・・。」
- 227 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:51
-
「目標は・・・・ないですね。」
「野望はありますけど。」
- 228 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:52
-
こんこんの野望、着々進行中?
- 229 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:52
-
お
- 230 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:52
-
わ
- 231 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:53
-
り
- 232 名前:10. 投稿日:2004/06/11(金) 00:53
-
。
- 233 名前:おって 投稿日:2004/06/11(金) 00:55
- ゴーストライター、これにて終了です。
それにしても、本当にあっという間に終わってしまいました。
しかも今のバイト数を見ると明らかに短編用で書くべきだった・・。
というわけで、ここは暫く不定期に短編を載せたりして、次の小説を
ネタが見つかるまでその形態をとりたいと思います。
本当に読んでくださった方、ありがとうございました。
レス、じゃんじゃん書いちゃってください。待ってます。
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/11(金) 04:42
- あ゛〜終わっちゃった終わっちゃった!
文章とかは別にして(失礼)面白かったです。笑かしてもらいました。
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/11(金) 17:15
- 面白かったです!
ただ一応>>205
78,142 [04.01.21] 娘 愛あらば I'TS ALLRIGHT
42,897 [04.02.25] さくら組 さくら満開
40,183 [04.02.25] おとめ組 友情〜心のブスにはならねぇ!〜
ぎりぎり超えてます
- 236 名前:おって 投稿日:2004/06/12(土) 14:20
- >>234 レスありがとうございます。
そうですね、ひどい文章ですw
とにかく笑かしたい、と思って勢いで書いてたらこうなりました。
まあ地の文もたいしたレベル差ないと思いますが。
>>235 レスありがとうございます。
自分は一応累計のつもりで書いたのですが、累計もギリギリ
超えていましたね。すみませんでした。
(新曲は明らかに下回ってるなぁ〜)
- 237 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:10
- ちょっと短編を一作。
短編コンペに出す候補だったのですが、色々あってやめにしました。
理由は貼り終わった後にでも・・・。
ではどうぞ。支離滅裂な話ですが。
- 238 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:11
-
(昔々或る所に、いえ全然昔ではありませんが、
高橋愛ちゃんという女の子が福井で生まれました。
彼女はすくすくと育ってゆき、やがてモーニング娘。という
アイドルグループのオーディションに合格、晴れてその一員となりました。
しかし、彼女は楽屋で浮いた存在でした。いつも一人で本を読んでいて、
メンバーのみんなから一歩退いている少女です。まるで人と仲良くなる術を
知らないかのように・・・。
この物語はそんな愛ちゃんが、同期の小川さんにメル友を紹介してもらう
所から始まります・・・。 )
- 239 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:12
-
『シンデレラ・シンドローム』
- 240 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:12
-
「どうしたの?機嫌良さそうだけど。」
「うん、今度会う約束したんだ!」
「良かったじゃん。」
「ありがとうね〜。」
麻琴に紹介してもらった彼は、写真は見たことあるけどまだ名前も知らない。
ただしイニシャルは教えてくれた。HY。
なんだかインディーズバンドを思い出す。本人も意識してか、
『だからお願い僕の側に来てくれないか。』
なんて言ってあたしを誘った。
ということは、あたしの事を・・・。
「・・・・鼻血。」
- 241 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:13
-
気を取り直していきまっしょい。
HY君はなんだか爽やかだけど、ちょっぴりオバカな一面を見せる時があって、
すごくかわいい。年は1個上だけどそれを感じさせないあどけなさがある。
なんでもフットサルでキャプテンをしているらしくて、応援しに行きたいって
言ったけれど、「恥ずかしいからやめて」って断られてしまった。
そんな所もかわいい。
宝ジェンヌの夢破れて以来、あたしはこのグループに入ってから一つ、目標を
切り替えた。王子様を探す。王子様なんて言い方、今時の女子高生が言うはずもないし、
言ったらむしろみんなひくだろうけど。無駄にシンデレラに憧れてしまっているのだ。
別にいじめられているわけではない。確かに一人でいる時間も多いけど・・・。
12時になっても解ける呪文はない。硝子の靴もない。でも、王子様はもう明日、
目の前に・・・。
「・・・鼻血。」
- 242 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:13
-
◇
- 243 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:14
-
あたしは待ち合わせ場所でドキドキしながら待っていた。
AM11:00。
やっぱりちょっとだけ意識した待ち合わせ時間に、あたしは思わずニヒヒと笑った。
AM10:40
「愛ちゃ〜ん。」
呼ばれてあたしは思いきり振り返った。でもそこにいたのはHY君ではなく、
「どないしたん?」
「きっと噂のHYなのれす。」
のんつぁんとかーちゃんだった。あたしはHYの2文字だけで頬を緩ませてしまい、
「うん。」
としか言えなかった。なんとか頬を引き締め、
「二人はどうしたの?」
「遊びに来たのれす。」
「二人で?」
『うん』
「へー、寂しいね。女二人。」
露骨に嫌な表情を二人はしていたけど、あたしがそれに気づくのはもう少し後のこと。
- 244 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:15
-
AM10:55
「愛ちゃんも待ち合わせ?」
「はい・・・。お二人もですか?」
今度は藤本さんと石川さんが登場。
まあこの犬公はよく待ち合わせに使うベタな場所だから、しょうがないか。
「うん、にしても5分前精神で来なきゃダメだよね〜。」
「遅刻はしないよきっと。」
石川さんはニコニコと笑いながらなだめる。
ということは・・・吉澤さんか。
AM11:00
吉澤さんが二人と合流。携帯をいじりながらちょっと軽くだべっている。
その横で、あたしはそろそろそわそわし始めていた。
おかしい。何で来ないの?
緊張して出て来れないのかな?
- 245 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:15
-
ブーン
メールが来た!
あたしは0.2秒で携帯を開く。人間の反応速度の限界を超えた。
H.Y君からだ!
『ごめん、もう来てるんだけど緊張しちゃって。まだ話しかけられないけど、待ってね?』
かわいい!
あたしはニヤニヤしながらメールを打ち返す。
『自分の好きなタイミングでいいですよ☆』
とりあえず打ち終わり一息つくと、携帯を握る手が自然と熱くなってくる。
ふと横を見ると、
「あれ、なんでまだいるんですか?」
「だべってるだけ。」
藤本さんが答えた。まぁどうでもいいや。
送信♪
- 246 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:16
-
チャン♪チャン♪チャララララーララ♪(ガラスの十代/光GENJI)
- 247 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:16
-
BL@CK MAIL(昔)の着メロがいきなり聞こえた。
誰だ?そんな今更な着メロを使っているのは・・・・吉澤さんか。
吉澤さんは2人にメールの内容を何故か見せると、3人で笑い出した。
「ねぇ。よっちゃんさんこれなんて打つの?」
「もうちょっと焦らしたら?」
「もう行っちゃおうよ。じゃあ・・・『今から行くよ。』で。」
『男前〜。』
「送信っと。」
- 248 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:16
-
ブーン
- 249 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:17
-
「・・・・・・・。」
あたしは目を信じられないくらいに大きく開けたらしく、
3人はあたしの顔を見て爆笑していた。なんか一気にぞろぞろとメンバーが
出てくる。麻琴なんかカメラ持ってるし。あたしはキレそうになる自分を抑え、
とりあえず言った。
「ひどいじゃないですか皆して嘘ついて。あたしに何の恨みがあるって言うんですか!」
「高橋、あたしは嘘ついてないよ?」
「・・・・え?」
- 250 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:17
-
HY君の再確認。
まず麻琴の最初の一言は、『メル友を紹介してあげるよ。』ついさっきのんつぁんが言っていたのは、『うわさのHYなのれす。』男だなんて誰も一言も・・・。
HY。Hitomi Yoshizawa。フットサルキャプテン。年、一つ上。
そういえば写真だって本人だって言って見せてくれたわけじゃない。
あたしが見せて、って言って何も言わずに麻琴がみせてくれただけ。
誰もそれが彼だなんて言ってない。
そう、みんな確かに一度も嘘をついていない。さっきだってもう来てるって
メールでヒントまでご丁寧にくれている。
なんだか、バカはあたしみたいだ。なにやってんだろう・・・。
あたしはこの場にいられなくなり、走り出した。
「高橋!」
「あ!」
靴が脱げるも、あたしはそのまま、出来る限り遠くへと逃げるように駆けてゆく。
- 251 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:18
-
嗚呼なんてあたしはバカなんだろう。自分で自分が嫌になる。
二言くらいいつも多いし、あたしやっぱり好かれていないのかな?
なんだかすごく胸が痛い。あたしはその場に立ち止まり、道路の端に座り込んだ。
・・・・・?何これ・・・。
「高橋!」
吉澤さんが走ってくる。でもなぜか歪んでよく見えない。
「ごめん!だから・・・泣かないで。」
「・・・え?」
あたし、泣いているの?人差し指で軽く瞼を擦ると、水滴が指につく。
「ち、違います!泣いてません!雨です!あたしの前にだけ雨が降ってるんです!」
- 252 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:18
-
それを聞くと吉澤さんはさっき以上に爆笑してもせた。
「わ、笑わないで下さい!」
吉澤さんは好きなだけ笑うと、真剣な表情に切り替える。
「高橋ってさ、いつも一人でいること多いじゃん?みんなで考えたんだ。
もーっと仲良くなれないかな?って。もうちょっと打ち解けてくれないかって。
そこでこうやってドッキリを組んで、笑って終われればって思ったんだけど・・・。
考えが甘すぎたのかもね。」
- 253 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:19
-
・・・・・。
あたしは吉澤さんの話を聞いているうちに、段々と胸の痛みが熱さへと変わっていった。
「え?!だ、大丈夫?」
吉澤さんは慌ててハンカチをあたしに差し出す。
「だって、あたし・・・・一言多いし・・・・、いつも、みんなが、
嫌だなと思うこと言って、・・・傷つけて・・・嫌われて・・・・
懲らしめてやろうって思ったんじゃないんですか?」
吉澤さんは少しだけ黙るとまた、
「あはは。」
笑い出した。
- 254 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:19
-
「だって仲間じゃん。一緒に何年も仕事してる。
それにさ、高橋がちゃんと自分がそう言うこと言っているっていう
自覚があるなら、絶対変われるから。・・・ってもう泣かないで!」
- 255 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:19
-
「すみません・・・なんだか嬉しくて・・・。」
あたしが涙を拭き終えると、吉澤さんはさっき脱げた、あたしの靴を差し出してくれた。
「どうぞ、シンデレラ。そろそろみんなの元へと戻りましょう。」
- 256 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:20
-
(そう、愛ちゃんは別に嫌われてなんかいなかったのです。
爽やかな笑顔を送る先輩を見ていると、愛ちゃんは思わずこう思ったのでした。)
王子様・・・見つけた。
「はい。」
あたしは差し出された手を握り、ゆっくりと硝子の靴を足にはめた。
- 257 名前:おって 投稿日:2004/06/17(木) 00:23
- まあ読んでいただければ病めた理由もなんとなく分かっていただけると思いますが・・・。
@高橋のキャラセッティング(ここの小説やら辞典やらの情報をエスカレートさせてしまいました)
Aいい話へと繋げられなかった(そんな文章力ないです)
B色々無理があった(これ言っちゃキリないですけどね)
Cもっと短く簡潔に面白いのが出来てしまった
Cはあくまで僕の主観ですが、これが一番の理由だったりw
なんてーか、シュールなのを書きました。
短編コンペ参加しますので、僕のがどれだか頭の片隅で予想
してもらえたらなと思います。
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/18(金) 03:53
- Cが一番気になるw
期待してます
- 259 名前:おって 投稿日:2004/06/19(土) 02:20
- >>258 前回0票が17作もあって現在まだびびって出せてませんw
絶対出しますけど。期待に応えられればいいですね。
楽しみにしていてください(って出してもどれだか分かりませんか)
- 260 名前:おって 投稿日:2004/06/24(木) 23:19
- 久々に一作。中編くらいになると思います。
ただし試験が近いという理由で更新は結構後になりますが。
- 261 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:20
-
ナックルボールとさゆの空
- 262 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:20
-
さゆは気まぐれだ。
気が変わりやすくて、まるでナックルボールみたいにいつ何を言うか
全然予想が出来ない。しかも次の日には逆の事を言ったりもする。
「女心と秋の空」とは、まさにさゆのための言葉じゃないだろうか。
たまに、そんな事を思う。
- 263 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:21
-
ダンスレッスン。
さゆはいつものように上手く踊れなかったけど、一点だけいつもと明らかに
違っていた。何故か悩ましげな表情を浮かべている。あたしはよく分からず
ダンスレッスン中さゆの動きを目で追っていたけど、とうとう何故かは分からなかった。
初めてちゃんと踊れない自分に嫌悪感を抱いたとするなら、大きな前進。
それはもう、ルイス・アームストロング?の月面で歩いた一歩くらい。
でもさゆの悩みはどうやら全然違う方向へと進んでいるようだった。
自販機の横であたしはさゆに話しかける。
- 264 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:21
-
「どうしたのさゆ、悩んだりして。」
「れいな。聞いてくれる?ちょっと悩みがあるんだ。」
さゆはいつものように鏡で自分の顔を見ながら言った。
あたしはダンスがダメで・・・・なんていう答えを期待して待った。
でも、そんな簡単にさゆが変わってくれるはずはない。
さゆは物凄い事を言ってみせた。
「さゆ、後藤さんが好きかもしれない。」
「(ピクッ。)」
後藤さん、と言う言葉にあたしは少しだけ反応してしまう。
「良いことだよ!後藤さんは立派な先輩だし、参考にしないと。」
「違うの。」
「え?」
何が違うの?
あたしはさゆが言っている意味とは大分取り違えていたみたいだけど、
これ以外に意味は思いつかない。
- 265 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:22
-
「キスしたいくらい、好きなの。」
一瞬あたしの脳は電波が複雑に交差し、ショートしかけた。
そして一瞬たった後、
「はぁ?!!!」
思い切りよく叫ぶ。ちょっと遅れてやまびこのように、
「本当にー?!」
自販機と壁の隙間から声が聞こえてきたから、あたしは自販機を思いきり
壁側へと蹴り飛ばした。妙な声が聞こえたけど気にしない。
とりあえず意識と記憶が軽く飛んでもらってれば良し。
「さゆにそんな趣味があったなんて・・・。」
あたしが眉をしかめたのを見て、さゆは言った。
「だって後藤さん、さゆほどじゃないけど可愛いんだもん。」
一瞬キレかけたけどあたしは持ち直す。落ち着けれいな・・・大人になれ。
大人にならないとこいつには着いていけないぞ・・・。
- 266 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:23
-
「でね、れいな電話番号聞いて来てくれない?」
「え?」
そんな展開おかしい、絶対。
メアドとか知ってて話した結果ではなくて好きになったの?
あたしは頭を混乱させた。
「知らないのに好きなの?」
「うん。今日好きになったの。」
「今日?!」
「嘘〜?!」
さっきよりかなり虫の息ながら自販機と壁の隙間から声。
あたしは思いきり自販機を蹴り飛ばした。
グチャッって音がしたけど気にしない。きっと奴にとっては快感快感。
エクスタシーへようこそ。
- 267 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:23
-
「場所変えよう?二人きりで話したほうがいい。」
あたしの提案で、二人で人気のない部屋まで移動した。
流石にカメラ倉庫には人がいない。落ち着いて話す事が出来た。
さゆは真剣な顔つきで、いかに後藤さんの事が好きか語る。
「一見クールなのに、話してみるとふにゃってしててかわいいの。」
ああそうですか・・。
あたしはどうしていいのか分からずに、とりあえず話を聞き続けていた。
全部聞き終わった後(って言ってもたいしたことは言ってないし、
あんまし覚えてないけど)
「メアド聞いたら?」
この直後、あたしはこれが失言だったと後悔する事になる。
さゆは真顔で、
「れいな聞いて。」
- 268 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:24
-
「は?」
「だってれいなも後藤さん目標なんでしょ?」
関係ねー。
「そういうのはさゆが自分でやらなきゃ。」
当たり前の事をあたしは言った。
そりゃ、好きなのはさゆなんだから、あたしが介入する問題じゃないはず。
「だって、後藤さんだよ?緊張するじゃない。」
さっきみたいに大きな間が二人を包み込む。
正論のような、そうでないような・・・。
「れいなだって後藤さんのメアド欲しいでしょ?」
さゆは畳み掛ける様に顔を近づける。その目は強くあたしの目を見ていた。
「・・・・・・・・分かった。」
あたしは断りきれずにそう言うと、さゆは満面の笑みで喜んだ。
- 269 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:25
-
とは言ったものの、どうしましょう。あたしはかなり悩んでいた。
後藤さんはデビュー前から目標で、今もずっと目指している存在。
仲良くなりたいといえばなりたいけど、あたしの中で描いている
後藤さん像を壊しかねないし、話すだけでも結構緊張するのにメアドなんて
とてもじゃないけど・・・。
でもさゆに押されて断れなかったのだからやるしかない。
と思った瞬間、あたしの脳内で名案が浮かぶ。
「忘れた」「ごめん」の連呼で引き伸ばしまくってさゆの気持ちが
変わるのを待った方が無難なんじゃないのか?
「それ採用。」
誰がいるわけでもないけど、あたしは自分の部屋の中で一人、呟いた。
- 270 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:26
-
今回のさゆは本気らしい。あたしの作戦はあっさりと失敗に終らされた。
「まだー?」
「約束したじゃん。」
毎日言われまくってはさすがにしょうがない。
「分かった、今日行くから!」
今日はハロモニの収録。
つまり後藤さんと共演出来る日だ。
あたしは覚悟を決め、後藤さんに・・・。
「・・・・・。」
「どうしたのさゆ。」
後藤さんに・・・。
「・・・・・。」
後藤さんに・・・。
「緊張してきたとよ〜!!!」
あ、訛った。
- 271 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:26
-
収録中、あたしはずーっと後藤さんを見ていた。
後藤さんが喋るたびに反応し、後藤さんが動きたびに反応し。
まるでストーカーみたいに熱視線を送るあたし。
その熱い視線に気づいたのか、後藤さんはこっちを向いた。
「!!」
目が合う。
あたしが困って曖昧な笑みを見せると、後藤さんもふにゃっとした笑いを
返してくれる。ちょっとだけドキッとしてしまった。
撮り終わると後藤さんはあたしに近づいてきた。やばいっ、来る・・・。
少しずつ、少しずつ、・・・・。
「(やばい、もう来る!)」
覚悟を決めろ、れいな。グッと拳を握り締めると、
- 272 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:27
-
スルッ
「(・・・・・あれ?)」
「よしこ〜会いたかったぞぉ〜。」
クルッ
素早く後ろを振り向くと、そこに立っていたのは吉澤さん。
その脂肪と一緒に消え(ry
「あ、そうだ。」
後藤さんは突然こっちを向いた。
「田中ちゃんなんか用?」
吉澤さんもこっちを見る。
あたしは改めて覚悟を決めた。
- 273 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:27
-
「(き、緊張した〜・・・。)」
あたしはフラフラとさゆへと近づいていった。
なんでメアド聞くのにこんなに緊張しなければならないのだろう。
でもとりあえず約束は果たした。
あとはさゆ次第。
「さゆ。」
「何?」
「後藤さんのメアド聞いたよ。」
「あ、もういいや。」
「はっ?」
携帯を取り出しかけていたあたしに告げられた、訳の分からない一言。
どういうこと?
「さゆ、藤本さんが好き。」
- 274 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:28
-
◇
実況:ナックル!田中空振り三振!!
中畑:空回りしてますね。
◇
- 275 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/06/24(木) 23:28
-
「な・・・何故。」
番号どうしよう。
いっそあたしが・・・いやいやいや。
- 276 名前:おって 投稿日:2004/06/24(木) 23:30
- 今日はここまで。続きます、多分w
一応れなさゆ?で黒れな入ってます。というかこういう書き方をすると
どうしても黒くなってしまう・・・。訛りはたま〜に出します。
- 277 名前:shou 投稿日:2004/06/28(月) 16:05
- はじめまして、更新お疲れ様です。
一気に読ませていただきました。
かなりツボにはいる作品が多く嬉しかったです。
これからもよろしければ読ませていただきます。
- 278 名前:おって 投稿日:2004/06/28(月) 23:52
- >>277 shou様
レスありがとうございます。
試験前にもかかわらず見に来てしまいましたw
でも来た甲斐がありました、レスがあって。
ツボに入っていますか、それは良かったです。
これからもよろしくお願いします。
短編コンペいよいよ投票開始しましたね。自分の作品はどうなる事やら(汗)
試験前なのに集中出来ない・・・。皆さん、投票は積極的にw
- 279 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 02:05
- 乙女心をナックルボールにするとはw
隙間女は無事ですか?w
コンペの方は全部読むのめんどいので晒して(ry
- 280 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 09:59
- >>279 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
えっと・・・無事なはずですw
(短編コンペの隙間女は無事じゃないけどw
なんか分かりにくく書きすぎたみたいで_| ̄|○
試験初日なんで、そろそろ更新するッぽいです。
- 281 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:11
-
藤本さんは同期という間柄だから取り入るのは簡単のはず。
あたしはそう楽観視していたけど、さゆは何故か話しかけることを
渋っていた。
「どうしたのさゆ。ただ藤本さん誘ってどっか行くだけだよ。」
「緊張する。」
お前いつからそんなキャラになったんだよ!
この間自分から誘って藤本さんと二人で美味い物巡りしてたのは
どこのどなたですか?
あたしは沸き起こってくる怒りを抑えて、コーヒーを飲んで落ち着くと
言った。
「どうして欲しいの?」
「そうだよ、どうしてほし」
グシャッ。
「あ」
グロテスクな音とともに快感を感じるよがり声。
やっぱうちの同期は皆どっかおかしいや。
- 282 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:12
-
さゆ的には、普通に呼び出せばいいのだと。
それこそ自分でやれよって話なんですけど。
でも何故か藤本さんが来るのを待って楽屋にいるあたしがいる。
なんでだろ。
「よろしくね。」
さゆのこの顔を見てしまったからかもしれない。
こんな顔で必死にお願いされたら断れない。
しょうがない、あたしが一肌脱ぎますか。
「えりもやる〜!」
ロッカーから中から声が聞こえた。
あたしは何も言わずにロッカーに近づくと、180度回転させて開け口と壁を
接触させる。少ししてドンドン!!と叩く音が聞こえてきたけどすぐに止んだ。
「じゃあ藤本さん呼ぶから、あとは自分でやってね。」
「う、うん!」
あれ、この子本気とよ。
- 283 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:13
-
藤本さんは遊びに来た松浦さんと一緒に話していた。
なんでまあ、こういうときに限っていつも誰かといるのでしょうか。
あたしは藤本さんがひとりになるのをじっと待った。
「た〜ん♪」
じっと待った。
「だから引っ付かないの〜。」
じっと待った。
「でね、でね!」
じっと待った。
「へぇ〜。じゃあ今度一緒に行こっか。」
じっと待った。
「やったぁ〜!」
・・・・・・。
「いつにしよっか。」
・・・・・・。
- 284 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:13
-
「どないしたらそんな待てるというかー!!!」
『?!!』
突然の絶叫に、二人はかなり驚いた表情でこっちを見る。
あたしが頭掻き毟ってるもんだから、びっくりした二人は、
『何かあったの?』
ハモッってるし・・・。
「あ、藤本さんにちょっと用が・・・。」
あたしはアイドルの得意技、営業スマイルに切り替えて二人に応対。
ところが、
「れいな!」
突然さゆに呼ばれ、あたしはやむなく戻ることにした。
さゆはあたしが来ると、
「やっぱ無理。」
と顔を抑えた。
何いっちょ前に乙女やってんだよ!!
そんなキャラなのか?
そんなキャラなのか?
- 285 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:14
-
「じゃあなんでもなくなりましたって言ってくる。」
あたしが一歩目を踏み出したところで、
「やっぱ言って!」
思わずずっこけそうになり、横の机で自分を支えた。
あたしが近づくと二人は再びこっちへと視線を向ける。
「で、何?」
藤本さんと松浦さんのこの仲の良さを見てもひるまないさゆに乾杯、
いや完敗かも。あたしはゆっくりと口を開いた。
「れいな!!」
またかよ!!
- 286 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:15
-
あたしが戻ると、藤本さんは「大変だね」みたいな顔であたしを見ていた。
なんなんだよ、って思われなくてホッとしながら、さゆの側へ。
「やっぱいいや。」
凄い不安そうな顔で言うさゆ。一体どこが不安なんでしょうかね?
「なんで?」
今度は理由を聞いてみる。
さゆは顔を赤らめながら、不安そうな表情で答えた。
「断られないかな?」
なんでだよー!!!この間美味い物巡り(ry
「大丈夫だよきっと。」
「あ〜・・・でもいいや。」
- 287 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:15
-
「じゃあ断ってくる。」
今度は二歩目で言われた。
「やっぱ言って!」
もうなんだか混乱してきた。
あたしが藤本さんの前に行くと、今度こそ言えよ、みたいな顔をしている。
「なんでもさ」
「れいな!」
『なんなんだよ!!』
松浦さんも一緒にユニゾン。3人の絶叫にびびるロッカー。
思い切り揺れて、転倒した。それにびっくりする藤本さんと松浦さん。
目を丸くしている。ロッカーは器用にも捻りながら倒れ、開け口は地面と接触。
状況は何も変わらず。
あたしはそのロッカーを軽く蹴飛ばして通過、さゆの元へと向かった。
- 288 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:16
-
「やっぱやめるの?」
あたしの言い方が悪かったのか、さゆは不機嫌そう。なんか怒り気味に、
ガチャッ
とその前に吉澤さんの入室に阻まれる。
吉澤さんは入るが否やさゆに近づき、
「落ちてたぞ〜。」
と手帳をさゆに差し出す。一方藤本さんは早くしろよ的な顔に変わってきてる。
吉澤さんは笑顔をみせると、そのままフラフラと楽屋の奥へ。
「で、どうすんの?」
あたしが改めて聞くと、さゆは言った。
「さゆ、吉澤さんが好き。」
- 289 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:16
- ◇
実況:ナックル!!!田中二打席連続三振です。
江川:完全にしてやられましたね。直球変化球を交互に使い分けて
最後の最後にナックル。これはちょっと打ちようがありませんね。
◇
- 290 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:17
- スタスタスタスタ。
「で、何?」
藤本さんはいい加減にしろみたいな顔。
ここでなんでもないですなんて言ったら・・・。
恐ろしくて想像できなかったあたしは、
「こ、このあと御飯一緒にどうですか?」
誰か、さゆの“残飯処理”変わってくれ・・・。
- 291 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:17
- 隠す事あんまないけどスレ隠し
- 292 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:17
- 隠し
- 293 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:19
- というわけで更新終了です。試験中なのにw
どうも隙間女はやられ役になってしまいます、この話ではもう
この形で固定。他の話はこんな風にはならない・・・はずw
- 294 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 21:36
- おもしれー
- 295 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/02(金) 14:10
- いやほんと笑える
- 296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/04(日) 00:03
- 短篇コンペ>あーあれね、あっちかと思ったけどこっちね。
ところで作者さんはどこかで書かれてた方ですか?
- 297 名前:shou 投稿日:2004/07/05(月) 19:01
- マジおもれーっす(笑)これからも読みます。
- 298 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:12
-
後藤さんから藤本さんはまだ分かるんだけどさ、なんでいきなりここで
吉澤さんが来ちゃうかな?あたし的に太っている人は(ry
「吉澤さんって、ジャンル変わりすぎじゃない?」
ジャンルって、用途合ってんだか間違ってんだか分からないけどとりあえず
これ以外に言葉が思いつかなかった。それに対してさゆは、
「人は自分と違うものを持っている人に惹かれるって言うでしょ?
だから相性もばっちりだと思うの。」
あ、そうですか・・・・・。
なんか意味深だなおい。
- 299 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:13
-
吉澤さんをデートに誘うとしたら、何がいいのだろう。
二人で考えていると、
「サッカー!なんてどう〜?」
ん?
今日は何処だ?!
あたしはキョロキョロと楽屋中を見渡した。
・・・・・。
「そこだ!!!」
あたしはロッカーに向けて落ちていたボストンバックを思い切り、
「って重っ!!!!」
よく見ると微妙にジッパーが開いていて、
「よぉ。」
ジーーーーーーッ。
「あ!!やだ!閉めないで!!」
え?
悲鳴?
空耳ですよ、空耳。
- 300 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:13
-
とりあえず死者に祈りを捧げつつもサッカーの方向で確定。
「でもさゆサッカールール分かる?」
「全然。」
「だよね〜。」
却下か。せっかく意見合ったのにもったいないな〜、なんて思っていると、
「教えて。」
「え゛?」
あ、すみません、ドスが利きました。
「ルール。」
なんだかまた苦労しまくりそうな気がしてならないんですけど。
- 301 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:14
-
「はい、まずサッカーってのは、何人でやるかは分かりますよね?」
「れいなバカにしてるでしょぉ〜。5人。」
ドン!!!
「・・・・・・。」
吹き飛んだボストンバックを目の当たりにしてさゆは黙り込んだ。
「それはフットサルたい・・・。11人。11対11。」
「は、はい・・・。」
珍しく大人しいさゆ、どうしたんだろ。
- 302 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:15
-
「オフサイド分かる?」
「何それ。」
ドン!!!
「フォワードのほかの二つは?」
「センターとシューティングガードとぉ。」
ドン!!!
さゆがルールを理解した頃にはバックはぴくぴくと震えていた。
ごめん、我を忘れて蹴りすぎた。
あたしは罪滅ぼしに、自販機と壁の間に挟んでおいた。
- 303 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:15
-
吉澤さんは小川さんとじゃれあっていた。
その姿はさながらプロレ(ry
「ほら、さゆ。」
背中をぽんと押すと、
「れいなお願い。」
なんかいつものパターンにはまりそうなんですけど・・・。
「自分で行け!」
今回は勢いよく二人の前に突き飛ばしてみた。こうすれば退けないでしょ。
あたしいい奴。
「あの・・・今度いっしょにサッカー見に行きませんか?」
吉澤さんは一瞬ポカンとしたけど、
「おう、行く行く!!」
そう言って今度はサッカー談義に。
ただここでまずいことにあたしは気づいた。ルールは教えたけど・・・・。
「何戦?」
「マリノスとサンフレッチェ広島です。」
- 304 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:16
-
「おお森崎兄弟!」
「え?」
「坂田使えないよな〜。」
「あ、そうですね。」
でもなんか珍しいもん見れたな、人に話合わせるさゆなんて、
ガチャピンVSヒャックマン(知ってる人いるのか?)くらいレアい。
「マリノスで誰が好き?」
「え?え〜っと・・・・。」
こいつは、まずい。あたしは吉澤さんの死角に周り、口を動かした。
「(くぼ)」
「うほっ?」
ゴリラかい!!
ただ吉澤さんはなんかそれを聞いて爆笑してるから、
まあどうにかなったんでしょうか。
- 305 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:17
-
『楽しみ〜。』
『マリノス勝つかな〜?』
『いよいよ明日だよ〜。』
毎日のように来るメールを眺めながら、
あたしはホッと胸を撫で下ろしていた。良かった良かった。
あの子めっちゃ楽しみにしてるっちゃ。友だちとして成功を祈っとるたい。
そしていよいよ緊張の当日。さゆからいつものようにメールが来る。
またノロケっぽいメールかな、なんて笑いながら見ると、
『他に好きな人出来ちゃった。』
- 306 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:17
-
◇
実況:空振り三振!!これで田中三打席連続三振です。
掛布:完全にタイミング狂わされましたね。
◇
- 307 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/07(水) 22:17
-
数時間後・・・。
『アンジョンファーン!!!』
たくさんのサポーターと喜びを分かち合ってる吉澤さんとあたしがいた。
- 308 名前:おって 投稿日:2004/07/07(水) 22:22
- 更新終了でございます。
>>294 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
最高の誉め言葉、ありがとうございます。
>>295 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
ほんと笑えるだなんて言われて思わず自分で読み返しましたw
>>296 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
羊で別の名前で小説を書いてます。あと狩狩でもネタをまた別の名前で。
>>297 shou様
レスありがとうございます。
これからも読んでいただけますか!ありがとうございます。
- 309 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:11
-
「で、今度は誰が好きになったの?」
あたしはペンをくるくる回しながら、さゆと特に目を合わせる事無く呟く。
なんだかいい加減だるくなってきました。
「中澤さん。」
「え?!」
面倒臭い気持ちが一気に吹き飛ぶ。
「キラーパスだ・・・。ジャンル違うとかそういうレベルじゃないし。
J−2とユーロ2004くらい違うんだけど。」
さゆはそう言われると不満そうに、
「えー言ったよ。自分と違うものを」
「違いすぎる!!坂田と久保くらい違うぞ!」
「・・・・それくらいでちょうどいいと思う。」
・・・・いいのか?
「ところでれいなさぁ。」
「何?」
「なんでアンジョンファンのユニフォーム着てるの?」
- 310 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:11
-
あたしの服装とかペンとか例えとかは置いておいて、とりあえず中澤さんに
好かれるための作戦会議をいつものように始めた。
(残念な事に)今日はえりがいないので、ストレスが溜まりそうです・・・。
「とりあえず番組で一緒にやってるから接触チャンスは多いでしょ。」
「うん。」
さゆは嬉しそうにニコニコしている。
・・・・今は本当に好きなんだよなぁ、恋心って恐ろしい。
さゆはう〜ん、って口を膨らませて少し悩んだ後、手を叩いた。
「お酒なんかどう?」
どう?って、それはあなたが決める事ですよ。
とりあえずそんな事は言わずに相槌を打つ。
「いいんじゃない?でも逆に食われるかも。」
あたしが笑うと、さゆは別に嫌そうな顔をしない。
・・・・いやしろよ。
- 311 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:12
-
未成年だし、仕事がらそんな表だってお酒を買えない。
というわけで成人した人で、お酒に詳しそうな人を探す事に。
「ん〜、保田さん?」
そのまま保田さんに頼む事になり、さゆが携帯を開く。
あたしは冗談っぽく言った。
「電話の後に保田さん好きになったとか言わないでよ。」
「大丈夫、もうなったことあるから。」
・・・・・・出島?
平然と保田さんの番号を探すさゆが、なんだか怖く見えてきました。
- 312 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:13
-
ガチャッ。
「持って来たわよ〜。『八海山』!」
ご大層な名前の酒をひき連れて、保田さん登場。
相変わらずギロギロした目でちょっとあたしはびびった。
てっきりワインかなんか持ってきてくれると思ってたのに、渋いですね。
「田中!日本酒だからってなめちゃダメよ!」
心読めるのかよ!!
あたしはびっくりして高橋さんくらい目を見開いてしまった。
保田さんは厄介・・・じゃなくて八海山について熱く語り出した。
新潟のお酒だとか、そんな事はどうでもいいんだけれど保田さんは一通り
八海山について語った後、
「大事に飲みなさいよ。」
って言って立ち去った。
はーい・・・・・・
っておいおい。
- 313 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:13
-
「じゃあ頑張って来いよ。」
「れいな。」
「分かった、分かったから。」
その言葉を聞くとどうもいつも悪い方向に転がる気がしたあたしは
さゆの口を塞いだ。さゆはニコニコしながら携帯を渡してくる。
「・・・・・え?」
「お願い。」
やられた・・・。
あたしは渋々電話をかけ、中澤さんの家に遊びに行く約束を取り付けた。
・・・・あたしはさゆのなんなのさ。
- 314 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:14
-
「おお、一緒に飲むか!」
総長、あなたがそんなんだからあたし達は落ち(ry
中澤さんはコップを2つ、ジョッキを1つ机の上に置くと、一気に注ぐ。
・・・・なんか色々間違ってませんか?
『乾杯〜!』
なんだかノリノリなあたし達。さゆには一応作戦を軽く立てておいた。
簡単な事。酔った所で食うか食われるか。あ、すみません、言葉汚いですね。
ちょっとアイドルだってこと忘れてました。総長見てると忘れちゃうんですよ。
ていうか忘れたくなるんですよ。
「苦〜い。」
さゆが表情を歪ませると、中澤さんは豪快に笑った。
「まあまだシゲさんには早いなぁ!」
- 315 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:14
-
- 316 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:15
-
あの・・・・・これってピンチですよね?
さゆ?
さゆ?
おーい。
「zzzzzzzzz。」
「田中ちゃん可愛いのう・・・。うち燃えてきたわ・・・。」
え、うそ!
目据わってるたい!!
え、なんで這うようにゆっくり来るっちゃ?!
え?!
マジで?!
ちょっと!!!
ひっ!
- 317 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:15
-
◇
実況:あーっとデッドボールだ!これはわざとじゃないですかね?
川籐:そんなん避けれん方が悪いんですわ!
張本大沢:喝っ!
福本:俺が現役の時は・・・。
実況:・・・・ドリームタッグでお送りしております。
◇
- 318 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:17
-
砕けたビン。
その横で脳天を砕かれた三十路。
その横ですやすやと眠る人形姫。
その横で息を切らしながら、手を真っ赤に染めている少女。
- 319 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/08(木) 23:17
-
「タバスコはまずかったかな・・・・。」
- 320 名前:おって 投稿日:2004/07/08(木) 23:18
- 更新終了です。
前回のが微妙に納得いかなかったのですぐにこの回をうpしました。
- 321 名前:おって 投稿日:2004/07/08(木) 23:18
- 隠し
- 322 名前:おって 投稿日:2004/07/08(木) 23:18
- 隠し
- 323 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 23:26
- どんどん笑度が上がってるw
>>308 じゃ羊でいちばん笑える小説と狩狩でいちばん笑えるネタスレをさがします
- 324 名前:おって 投稿日:2004/07/09(金) 00:14
- >>323 名無飼育さん様
即レス感謝です。
残念な事に羊と狩狩で名前を変えている理由はその名前ごとに性格を
出すためなので羊は今比較的真面目なのを書いています。
ただそのスレの前スレは羊で初めて書いた作品が残っているはずです。
それは男×娘。ですがギャグ路線ですのでよかったらそれをどうぞ。
処女作なので大分読みずらいところもあるかと思いますが・・・。長々と失礼しました。
- 325 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/12(月) 13:03
- 見つからない、というかわからないので諦めますorz
いいです。この話の続きさえ読めればいいもん
- 326 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:43
-
えー、現在中澤さんの家から朝帰り中。
これでれいなもいっちょ前の大人・・・え?違う?
横を歩くさゆは少しボーっとした顔で、酔いが冷め切っていないらしい。
時々頭を抱えてた。
「やっぱり中澤さんもなんか違う。」
やっぱりって・・・確信犯ですか?
もうそろそろいい加減にして欲しいんですけどマジで。
最近プライベートもほとんどさゆに振り回されて終わりだし。
願わくば、あと2週間くらいはさゆに好きな人が出来ませんように・・・。
ん?微妙に日本語おかしいかも?あたしも酔ってるわ。
このあと仕事なのに。あ〜れいなったら悪い子。
・・・・やっぱ酔ってるっぽい・・・。
- 327 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:44
-
二人して昨日と同じ服のまま楽屋入り。あっちの気のある先輩がいたら
間違いなく変な目で見られるだろうな〜。
でも残念ながらそんな変な子はさゆしかいませんから!ええ!
・・・・あー頭痛い。
『おはようございます!』
楽屋に入ると、まだ紺野さんしか来ていなかった。
やっぱり朝帰りのせいか来るのが早過ぎたらしい。
紺野さんは朝っぱらからバリバリお菓子食べてて、とても見習いたくな
・・・真似できません。
「食べる?」
袋をあたし達に差し出す紺野さん。
・・・・口の周りバーベキューの粉たっぷりです。
「あたしはいいです。」
「シゲさんは?」
「いただきます。」
即答かい。
- 328 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:46
-
パリパリと無神経に食べまくるさゆ。
コンビに寄ったのに何も買わなかったからねこの子。
でもトップアイドルが朝ごはん「スコーンバーベキュー味 20%増量」で
いいのだろうか・・・。
さゆは食べ終わると、なんだかポーッとした顔になっちゃって、
まだ酔ってるのが分かりやすい表情。飯田さんにバレたらまずいぞ〜。
「さゆ、お手洗い行こう。」
顔洗った方がいいし。
あたしはさゆの手をひいてトイレへと向かった。
- 329 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:46
-
「さゆ。」
「何?」
「酔ってるでしょ。」
「うん。」
「酒飲んだの飯田さんにバレたらまずいし顔洗ってすっきりしちゃいな。」
「え?お酒はもうひいたよ。」
「え?じゃあ何に酔ってるの?」
「恋。」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
- 330 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:47
-
まるで辻さんだよ、お菓子貰っただけで好きになるなんて。
動物の餌付けじゃないですか。猫だって餌もらったら逃げますよ?
猫以下?ニャ〜ン。
・・・・すみませんでした。
「自分の持ってないもの(お菓子)を持っている人に」
「もうええ!・・・・・で今回は何する?」
結局あたしはさゆが一人で暴走しちゃうのが心配なわけで。
さゆが突っ走ったら何するか分からないし。
「はいはーい!お菓子作ってプレゼントォ!」
今日は何処にいる?!トイレで個室は全開だぞ!!
あたしは標的を探すハンターのようにトイレ中を見回した。
隙間・・・隙間・・・。
- 331 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:48
-
「どこたい?!」
「ここ。」
「そこかぁ!!!」
声が聞こえた後ろ側へと鋭い蹴りを放つ。
ドン!!
「?・・・・。」
よく見てみるとドアを盾にして立っているえり。
「そんな何度も引っかからないよぉ〜だ。」
それを聞いた瞬間あたしの中で何かが弾ける。
ぐいっ。
「うぅ!!それはちょっと・・・ひどすぎるよ・・・。な・・・んで・・・。」
バタッ。
ドアに顔を強く挟まれたえり、撃沈。
なんかサスペンスドラマみたいで後味滅茶苦茶悪いけど、
ここでのえりの役回りだからめげるなえり。
- 332 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:49
-
というわけで結局えり案を採用、お菓子の材料を買いにあたし達は
スーパーへと出かけた。
さゆはどんどん材料を選んでゆく。
「薄力粉〜。」「ほい。」
「いちご〜。」「ほい。」
「生クリーム〜。」「ほい。」
「バニラエッセンス〜。」「ほい。」
「卵〜。」「ほい。」
「芋〜。」「?!ほい。」
「ベーグル〜。」「?!ほい。」
売ってんのか?普通に。
「ナタデココ〜。」「??!ほい。」
「肉〜。」「!!!」
- 333 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:50
-
「ちょっと待てー!!!」
「え、大丈夫だよれいなの好きなお肉ちゃんと選んだから。」
「ホームパーティーでも開くっちゃか?!いらないとよ!紺野さんの分だけで!」
はぁっ・・・はぁっ・・・。
なんで買い物だけでこんなに疲れなきゃいけないんだ・・・。
てかよくこんだけ騒いで気づかれないな。
・・・・あ。
「あれ、松浦さん?」
「ホントだぁ〜。」
松浦さんはあたし達と比べて随分重装備で買い物をしていた。
サングラス、帽子、こんなに暑いのにコート。
高級マダム御用達のこの店の中ではかなりダサい。
てか目茶目茶嫌な予感するんですけど。
「さゆ、頼むから好きにならないで。」
「え〜・・・・分かった。」
え〜・・・って何?
買い物に手間取りすぎたおかげでケーキを作るのは次の日に持ち越し。
あたしは材料を両手に抱えて家路を進む。
・・・頼むから今回で終ってくれ。
- 334 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:50
-
次の日。
♪
メールが来た。
さゆからだ。なんだろう、遅刻のメールかな。
別に今日は一日あるからいいけど。あたしはさゆからのメールを開いた。
「・・・・・・・。」
- 335 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:51
-
◇
実況:三球勝負!三振!!
星野仙:予想外でしたね。こればっかりはしょうがないねぇ。
◇
- 336 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/12(月) 18:52
-
パクッ。
「うん、なかなか行けるっちゃ。」
一人悲しく、残飯処理。
- 337 名前:おって 投稿日:2004/07/12(月) 18:54
- 田中、亀井、イ`w
>>325 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
これは嬉しい一言ですね、こんな話に価値を見出していただけるとはw
- 338 名前:おって 投稿日:2004/07/12(月) 21:09
- 隠し忘れ
- 339 名前:おって 投稿日:2004/07/12(月) 21:09
- 隠し
- 340 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/13(火) 04:24
- なにげに紺ちゃん出番もセリフも少なっw
>>337もうこっちに全力を注いでくれと思うくらい好きですが何か?
- 341 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:18
-
遠征中のホテル、あたし達6期は3人で同じ部屋にとりあえずいた。
あたしは内心いつさゆが誰を好きになるかとびくびくしていた。
もういい加減勘弁シテクダサイ。ていうか身を固めるならそれはそれでいいから。
「ねぇ。」
えりがいる事を分かった上で、さゆは呟いた。
『何?』
二人で同時に答える。この表情はまたいつもの禁断症状ですね。
「石川さんが好きになっちゃった。」
『何?!』
あたしは後方に飛んでベッドの上を跳ね、奥の地面へと落ちた。
一方えりは驚いたあまり壁に頭を強打。
って、ベッドと壁の間にいたんだけどね。
- 342 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:19
-
石川さんだけは来ないだろうと思っていただけに、あたしはなんだかよく
分からないけど慌てた。
「どこがいいの?」
あたしが聞くと、えりが畳み掛けだす。
「そうだよ。身も心も黒いし〜、寒いし〜、実家貧乏だし〜、
空読めないし〜、歌下手だし〜。」
・・・最後の二つはさゆも一緒たい。
「ピンクばっか着てるし〜、何より顎がしゃくれてるし〜」
ガチャッ。
「亀井さんごめんなさい・・・。」
『石川さん?!』
石川さんはドアの横から泣き顔を覗かせると、逃げるようにドアを速攻
閉めた。でもゴンッて音がして一瞬ひるんだらしく、少ししてから走る音が
した。
・・・顎が当たったな・・・。
- 343 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:20
-
あたしはベッドを突き飛ばして戦犯を久々に理由つきで押しつぶすと、
「さゆ、これはチャンスたい!ここで励ませば一気にポイントが」
「今ので冷めた〜。」
- 344 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:20
-
◇
実況:空振り三振!!
牛島:ボール球自分から振りに行きましたね。
◇
- 345 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:20
-
「とりあえず行ってこい!」
「はーい。」
さゆは言われるがままに部屋を出てゆく。
励ましていくうちにぶり返せば理想。当分は振り回されずにすむ。
・・・・やっぱり不安なあたしはとりあえずさゆの後をついていった。
- 346 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:22
-
「嗚呼私なんかブツブツブツブツ・・・・。」
「石川さん。」
「・・・シゲさん。田中ちゃん。」
あたし達二人を見た石川さんの顔は、マジで涙に濡れていた。
そりゃ後輩に陰口をあんだけ好き放題叩かれてるところにちょうど
出くわしたら凹むかな。
特に石川さんみたいに常に天秤が揺れちゃってる人は特に。
誰かー、精神安定剤を彼女に。
「元気出してください。石川さんにだっていい所たくさんあるじゃないですか。」
“にだって”の部分がめちゃめちゃ引っかかったけど石川さんはそうでも
無いらしい。というかそれ以前に、
「ないよぉ〜。」
全否定。完っ全にネガティブモード。凄い手のかかる先輩だな。
ここでコテコテに来るならさゆが思いつかないんだよな。
「・・・・・(れいな、石川さんのいい所ってどこ?)」
コテコテに来たー!!!タチ悪いなさゆ。
あたしはとりあえず耳打ちしまくった。
- 347 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:23
-
「今日のそのピンクのワンピースだって可愛いですよ。
(さゆには負けるけど)」
ん?
なんかコイツ今呟いてなかったか?
「そう・・・?」
「はい。黒いのだって健康的な証拠じゃないですか。吉澤さんみたいに
白いとむしろ不健康です。」
つい先日まで好きだった先輩に何たる言い草だ。さゆって恐ろしい。
あたしが言った事に必ず一言(余計なものを)つけてくる。
流石将来の女優候補。
「ありがとう・・・。元気出たよ。」
「あの、石川さん。」
「何?」
「石川さんのこと好きです。」
ぶり返したんかい!!
まあOKだね、これで最終回だ、バンザーイ、バンザー
「ってれいなが言ってました。」
- 348 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:24
-
◇
実況:牽制球!!ジャッジは・・・アウトです!!
大野:完璧な牽制でしたね。田中も全く予想できなかったんじゃないですかね?
◇
- 349 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:24
-
「ちょ、ちょ、さゆ、何言ってるかぁ!!」
あたしが焦って顔が赤くなったのが妙に石川さんにはリアルに映ったらしい。
「・・・田中ちゃんホントなの?」
「え、えーっとごめんなさいごめんなさいごめんなさいすみませんすみません
黒っ!!
あ、ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!」
あたしの謝り倒しは10分間続いた。
- 350 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:25
-
- 351 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:25
-
実況:打った〜!!金本逆転ツーランホームラン!!
『金本〜!!!』
あれ?
ここはどこ?
あたしは誰?
- 352 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/15(木) 00:26
-
そんでもって、
横にいる黒い人は誰?
- 353 名前:おって 投稿日:2004/07/15(木) 00:26
- 隠し
- 354 名前:おって 投稿日:2004/07/15(木) 00:26
- 隠し
- 355 名前:おって 投稿日:2004/07/15(木) 00:28
- 更新終了です。
>>340 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
そんなに嬉しいコメントを書かれたら更新予定を早めるしか
無いではありませんか!w
でも中編って最初言っちゃったからもうそんなに回はありませんが・・・。
- 356 名前:ゴーストライター おまけ? 投稿日:2004/07/15(木) 19:05
-
あ゛〜つんくさん最近血迷ってるなぁ。
こんこん曲ちゃんと作ってないんじゃないの?
カバーが妙に増えた気がするし。しかもごっちんの曲はたけさん?!
ってか「あんた才能無いんじゃない」って目茶目茶胸に突き刺さったんですけど・・・・。
作ったのほとんどあたしだもんな・・・。後藤さんごめんなさい・・・。
だから何度言ったら分かるんですか!
あややはアップテンポノリノリブリブリアイドル曲しかウケません!!
そう言う路線じゃないの連発して、どういうつもりですか!!
稼ぎ頭また一つ潰れたらどうするんですか?!
あ、でもCMだけ無駄に多いような・・・。
やっぱあたしが作らないと、駄目だな〜・・・・。
すみません調子に乗りすぎました。
- 357 名前:ゴーストライター おまけ? 投稿日:2004/07/15(木) 19:06
-
ていうかまずはこんこんだこんこん。今日楽屋着いたら話聞いてみよう。
あたしはそんな風に自宅で決め、電車に乗っていた。
電車の中、ボーっとしているとふと耳に入ってきたのは中学生くらいの
男の子達の会話。
「なあモー娘。の新曲聴いた?」
「ああ、CDTVの新曲エクスプレスで。でも全く残ってねぇや。」
自分で作ったわけじゃないけどはぅ!!
「もう終わりだよなマジ。なんだよあのタイトル。かしまし娘って昔の
お笑いトリオだろ?」
「いやそれすら知らないから。」
爆笑する二人に対して、こみ上げて来る怒り。
「でも解散しないんだよな〜。」
「今のうちにやめるが華ってもんだろ。」
「いやもう遅い。」
- 358 名前:ゴーストライター おまけ? 投稿日:2004/07/15(木) 19:07
-
――プツン。
ってやばいって。
中学生相手にいきなりキレたらそれこそ中吊り広告にでっかく
取り上げられちゃうから。
危ない危ない。
え、落ち目だからでっかく取り上げられないって?そりゃないよおっちゃん。
- 359 名前:ゴーストライター おまけ? 投稿日:2004/07/15(木) 19:07
-
楽屋に入るとこんこんは朝っぱらから口にスナック菓子をつけててなんか
可愛い。でもこんこんしかいなかった。これは都合がいい。
あたしは話しかけようとしたら、
ガチャッ。
「・・・亀井どうしたの?」
現れたのはほんのり顔が赤いシゲさん、田中ちゃんと、
田中ちゃんに背負われた亀井。
亀井は顔をほんのりどころか真っ赤にしてのびてらっしゃいます。
「いや、これは・・・不可抗力です!」
必死そうな田中ちゃんに、納得してあげる事にした。
でもこれで話すチャンス逃したな、どうしよう。
- 360 名前:ゴーストライター おまけ? 投稿日:2004/07/15(木) 19:08
-
3人は部屋の隅へと移動した。田中ちゃんは気絶中の亀井をロッカーと
ロッカーの間に挟むと、さっきまで苦しそうな顔をしていた亀井は見る見る
悦った表情に。
やっぱ苦労すると同期の扱いって上手くなるよね。
反対側だから大丈夫だろうと思い、あたしはこんこんに話しかけようと
したら、
――――――――!
なんだ?!
この強烈な・・・殺気?
あたしは野性的本能でそれを察知し、放たれている方向を見た。
・・・・シゲさんか田中ちゃん。 ・・・・シゲさんだな。
なんだかよく分からないけど命の危険を感じたからあたしは話しかける事を
やめた。なんかこう、殺されかねない雰囲気だったし。また今度でいいや。
おわり
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 22:51
- おぉ、ただたんに作者さんの愚痴かと思ったらリンクしてるのか?とりあえず石川編もワロタ
- 362 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/07/20(火) 11:42
- おって さま
「ゴーストライター」の保存作業、終了しました。
引き続き「ナックルボールとさゆの空」「ゴーストライター おまけ?」の保存作業に移ります。
では。続きを期待して待ってます!!
- 363 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:12
-
「反対。」
あたしのあまりに早い反応にさゆは目を丸くした。でもあたしは退けない。
あまりに予想外の先輩の名前がまたしても飛び出したのだから。
あの先輩はまずい。
「辻さんはやめとけ。1リーグ制反対。」
「なんで?」
「オールスターなくなっちゃうし、日本シリーズだって」
「そっちじゃなくて。」
「・・・あんなえさ与えたら着いてくる様な先輩まずいって。
近鉄オリックス合併くらいまずい。」
「・・・・れいな、今度は野球にはまったの?」
「なんで?」
「・・・・なんで江夏のハッピ着てるの?」
- 364 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:13
-
江夏のハッピをどうやって手に入れたかって?
いやこれは決して球場にいたガキから奪い取ったものではありませんよ?
断じてそんな事は無いです。え?じゃあそのメガホンはって?
ちゃんと買いましたよ。
間違いなく横のじじいが興奮している間にこっそり取ってなんかいませんから。
「じゃあえりに相談する。」
「え゛。」
それはまずい。それを言われたらあたしは相談に乗るしかないじゃないか。
なんだかよく分からないけどそんな気がして、あたしはさゆを止めた。
「分かった、話を聞く。なんで好きになったの?」
「スコーン チーズ味くれたの。」
今度はチーズ?!バリエーション豊富だね!!
あたしは頭を抱えながら、考えた。
このノリでいくと間違いなくこの間の材料で・・・
「だからこの間の材料でケーキ作ろう?」
- 365 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:14
-
「いや、それはやめといた方がいいよ。」
「なんで?」
「えりはおとなしくしてるっちゃ!!!」
ガン!!!
『あ。』
遂に・・・・遂にやってしまったさー(沖縄?)
- 366 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:14
-
「ごめんなさいごめんなさい。」
「ったく、二度とこういうことはないようにね!」
マネージャーさんにたっぷり怒られ、あたしはローテンションで帰ってくると、
さゆの頭の中ではもうケーキを作る事で決定していたみたいだ。
「この間の材料処分に困ってたでしょ?ちょうどいいと思うの。」
いや、だからねさゆみさん?この間の奴、全部一人で・・・・。
「だから古いからやめといた方がいいって!」
「嫌。さゆケーキ作りたい。」
- 367 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:15
-
◇
実況:直球ズバッと決まりました三振!!
池山:道重が直球勝負は珍しいですね。
◇
- 368 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:15
-
あたしはなんで一人、マダム御用達スーパーで買い物を・・・。
また松浦さんいるし。ある意味さゆがいなくてよかったかもしれない。
今度こそ作る事になり、日取りも決め、
「よしあたしが作り方教えるっちゃ!」
「え〜、れいなよりいい先生いるの。」
「え?」
- 369 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:16
-
◇
ウグイス嬢:バッターは、田中に代わりまして、後藤。バッターは、後藤。
◇
- 370 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:16
-
「じゃあいっちょ作りましょーか!」
こうして何故かノリノリの後藤さんの下、あたし達のケーキ作りは始まった。
あたしは一回一人で残飯処理のため作ったから、後藤さんの指示にもなんとか
着いていけた。でもさゆは・・・。
「シゲさん手慣れてるねぇ。でもそれ塩だよ。」
「あれ?」
「それ小麦粉。」
「あれ?」
同じものをかき混ぜているのに、何故かさゆのだけ色が微妙に違うし。
あわわ・・・。
- 371 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:17
-
完成?品試食。
「あ、後藤さんの美味しいです!」
あたしが絶賛すると、後藤さんは満足そうに笑った。
「ありがと。田中ちゃんのも美味しいよ。」
誉めてもらったあたしは物凄く嬉しくて飛び跳ねそうになる。
後藤さんに誉められたとよ!
さゆ?・・・さゆ?
「さゆのも食べて。」
いや・・・・その・・・・なんていうか・・・・緑?
・・・・芸術は何とかだ、とはよく言ったもので・・・・。
「さゆ。よく聞いて。」
あたしはさゆの目を真っ直ぐ見て言った。
「何?」
「悪いこと言わないから辻さんにあげるの諦めて。」
- 372 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:17
-
◇
実況:田中ここは敬遠でしょうか。
池山:無理も無いですね。
◇
- 373 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:18
-
「やだ。」
- 374 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:18
-
◇
実況:道重強引に打ちにいった〜!!大きい!!大きいぞ!!
◇
- 375 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:19
-
「シゲさん本当にお願い!これののにあげてののに何かあったら大変だよ!
ののもうすぐ卒業で大事な時期だし、こんなときに食中毒なんかになったら
大変だよ!!0−157とか怖いじゃん?」
後藤さん、色々ものすごくひどい言い草混じってません?
「・・・・分かりました。」
- 376 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/21(水) 00:19
-
◇
実況:後藤、ファインプレー!!
池山:見事なダイビングキャッチでしたね。あれはそう出来るもんじゃないですよ。
◇
- 377 名前:おって 投稿日:2004/07/21(水) 00:24
- 更新終了です。
え?いや、別にネタがなかったわけでは断じて無いですよ?
いや、無理やり組み込んだのは確かですけど、別に次のネタもネタだけはうわなにするやめ(ry
>>361 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
面白半分でリンクさせてみました。こんな世界があってもいいかなと(よくない)
>>362 ななしのよっすぃ〜様
レスありがとうございます。
保存作業、お疲れ様です。ですが「ゴーストライターおまけ?」に
関しましては保存の扱いに困るでしょうし、無理に保存しなくてもいいですよ。
更新が遅くなった言い訳を一つ。
空版にて陸上物のお話を始めました。主役は吉澤、大体の人出ます。
RUN WILD
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sky/1089213000/l50
ヒマでしたら読んでみてください。
- 378 名前:おって 投稿日:2004/07/21(水) 00:24
- 隠す事無いけど隠し
- 379 名前:おって 投稿日:2004/07/21(水) 00:25
- 隠し
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/21(水) 03:16
- 今回のは実況のアナウンサー頑張ったなぁ・・・と。いや、一番頑張ったのは作者さん(泣
ええ空のも読んでます。もちろん読んでますともさ。
- 381 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:24
-
先日あたしの手によって見事に破壊されたロッカーが、楽屋の隅に悲しそうに
横になっていた。なんでもこの後業者の人が回収しに来るらしい。
楽屋にいるのは何故かあたしとさゆだけで、またも嫌な匂いがぷんぷん
におってきていた。
基本的にさゆの危険信号は、さゆの顔を見ることで察知できる。
なんだか少し火照った感じで、ポーッと夢見る少女みたいな表情。
そうそう、まさに今この表情・・・・・・・ってえ゛え゛?!
あ゛!!
近づいてくる!!
え、やだ!!
来るんじゃなか!!
あかんあかん!!
- 382 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:25
-
「ねぇれいな。」
がっしりと腕をつかまれて、小さいあたしにこの巨人はどうする事も出来ません。
なすすべなく話を聞く事に。
でもあたし自身やる気0。
「何?また誰か好きになった?えりかつんくさん以外なら応援してやるぞ。」
「・・・・なんで分かったの?」
- 383 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:25
-
◇
実況:おっと初球ナックルストライク〜!ナイスボールですね。
某解説者:そうですね。
◇
- 384 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:25
-
「どっち?!」
あたしが大慌てしているのも気にせずに、さゆはマイペース。
「れいな・・・エスパー?」
- 385 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:26
-
◇
実況:田中自分から振りに行って空振り!ストライクツー!上手く交わされましたね?
某肥満解説者:そうですね。
◇
- 386 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:26
-
「つんくさん?えり?」
「・・・・っ」
「っ?!?!」
マジで?!!!
「くしゅん!!」
- 387 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:27
-
◇
実況:落としてきた空振り三振!
某肥満巨人贔屓解説者:そうですね、ところで巨人は(ry
実況:・・・・・・・・・・。
◇
- 388 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:27
-
「やめとけ。」
とりあえずえりだったからよかったけど・・・いやよくない。
「なんで?」
「隙間女と付き合ったらさゆまでおかしくなっちゃう!」
ってもうおかしいか。
「駄目って言われれば言われるほどロミオとジュリエットみたいに燃えるの。」
「でもきっとえりのことだからこの部屋のどこかにいるよ。」
あたしはそう言って部屋を冷静に見回した。
- 389 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:28
-
Aロッカー
Bボストンバック
C畳の下
D衣装タンス
{ライフライン使う〜?}
出たな妖怪隙間エクスタシー。
「50:50!」
だめっちゃさゆ!!乗ったら負けとよ!!!
「ン〜・・・・・ジャジャンッ!お〜っとBとDが消えましたぁ。」
なにそれみのもんたのつもりかよ、似てないっちゅうねん!!
・・・・・・・・・・・取り乱しました。
あたしはボストンバックを思い切り蹴り飛ばした。
- 390 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:28
-
{ぶぅ〜、はずれってキャァ!!!}
ガン!!!
倒れたロッカー直撃。
「ワンパターンなやつっちゃ・・・。」
ガチャッ。
「これですか?壊れたロッカーは。」
「はいそうです。」
{え?あれ?ちょっとぉ!!!}
「じゃあ来週新しいのが届きますんで。」
「お疲れ様です。」
{え?嘘!!いやー!!}
- 391 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:29
-
◇
実況:打った〜!!!!亀井にはめっぽう強い田中・・・。入りましたホームラン!
小早川:道重が相手のときとは別人みたいなバッティングをしますね。
◇
- 392 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/07/27(火) 18:29
-
いいの?あれ
一週間後くらいに新しいの来ると思うから
いや、ロッカーじゃなくて
さゆ、今更常識人に路線変更しても無駄たい
- 393 名前:おって 投稿日:2004/07/27(火) 18:31
- 何故亀井をこんな可愛そうな役回りにしてしまったのだろうと思いつつも
こんな話を書いてしまいましたw
>>380 名無し飼育様
レスありがとうございます。
今回も実況の方が目茶目茶頑張りました(汗)
因みに前回はロッカーのための伏線以外の何物でも無いです。
次回、感動の(?)最終回。
- 394 名前:おって 投稿日:2004/07/27(火) 18:43
- 隠し
- 395 名前:おって 投稿日:2004/07/27(火) 18:43
- 隠し
- 396 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 19:26
- あっちが更新されてたのですぐに飛んできますた。今回なかなかいいですねー。最終回めちゃめちゃ期待して待ってます(プレッシャー
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/28(水) 02:03
- 更新お疲れ様です。
この話マジで面白くて大好きです。
今回はわりと楽に片付いてよかったですね田中さんw
次回も楽しみにしてます。
- 398 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/08/01(日) 14:05
- この話もいいですね
最後はどうなるんだろう?
- 399 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:17
-
今日こそ最終回になりますように、とわけの分からない祈りをするように
なってから早一ヶ月。毎回毎回祈りだけが空回りしているけど、そろそろ
さゆも決めてくれないかな。
誰も好きにならないならそれが一番いいんだけれど。
えりが(残念ながら)クール宅急便で返却されてきてから、さゆの暴走は
全く持って納まらない。あの後すぐにすれ違い様に大谷さんに惚れて
とうとう娘。の枠から飛び出したさゆ。
その後も色んな方向に伸びて、危うくタ○リさんを好きになりかけ慌てて
止めた。
あたしは今もいつさゆが誰かを好きになる事を恐れている。
こんな特殊な意味でこの感覚を味わった事ある人は世界でもあたし以外に
いないんじゃないだろうか。
あれ、でもなんでさゆは毎回毎回あたしに相談してくれるんだろう。
- 400 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:19
-
「れいな。」
「はいっ!!!」
「ジュース買いに行こ。」
「え、あ、うん。」
最近いつもこう。
名前を呼ばれるだけで妙な反応してしまう自分がいる。なんだか倦怠期の
カップルみたいにギクシャクしていて気持ちが悪い。
「あ・・・10円足りない。」
さゆが財布を覗き見ながら困った表情をして、お札を取り出そうとすると、
チャリーンチャリーンチャリーン、ビー、ゴトン
「はい。たまには先輩らしい事をしないとね。」
たまたま通りかかった矢口さんがジュースを奢ってくれた。
矢口さんはあたしにも小銭を渡すと、
「つりはいらねぇよ。」
とだけ言い残して去った。
本人は決まった・・・なんて思ってるんだろうけど矢口さん。
あなたはなんて事をしてしまったんですか!!
さゆの方を見てみると案の定・・・・・・ぁっ。
てか100円で何買えというんですか・・・。
- 401 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:19
-
「食い物だけば好きになると、お前は動物っちゃか?!なにとよその単純さは!!!」
口が避けてもそんな事言えません。心の中で絶叫。
どうせこの程度の口撃効かないんだろうけど。
さゆはやっぱり夢見る少女みたいな顔になってた。
夢見る少女じゃいられない〜♪
・・・ごめんなさい。最近あたしも暴走壁がちょっと出てきました。
「れいな。」
速攻で逃げようとするもあっさり捕獲される。
先生〜、このおっきい姉ちゃんが虐めるよ〜。
「分かったから、言わなくていい。」
あたしの諦めたような表情にさゆは満足そうに笑った。
- 402 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:20
-
「ラジオで投稿でもしてみたら?」
はなっからやる気のない発言を言ってみる。
「だめ、だって面白いの思いつかないもん。」
え、ハガキ職人にでもなるつもりか?!
てか面白いの書いてどうするんだよ!何気なく気持ちを伝えるんだよ!
などの言葉を限りなくソフトに伝えた。
「え〜、そんな回りくどい事したくない。ていうかめんどい。」
ここはもういつも通り神(えり)光臨待ち。
なんだかんだいっていつもえり案採用だし。叩いてストレスも解消(ry
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「なんで出てこんとぉー!!!!」
「だって叩かれるじゃん。」
- 403 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:20
-
ボンッ!!!
つ、ついに007レベルに突入・・・。えりは天上の通気口から降りると、
全身に埃がかかってくしゃみ連発した。
「れいながえりに何もしないなら案出してあげる。」
「エリザベス様エリザベス様どうかここは一つご意見をお願い致します。」・・・・な、何故ここに来て立場が逆転してるんだ・・・。
えりの案は矢口さんに横浜を案内してもらってご飯を一緒に食べるというもの。
そのときに横浜を褒めちぎるらしい。流石一人年上。私ども中学生の貧困な
発想では遠く及びません・・・・我慢我慢。
- 404 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:21
-
「れいなも来てよ。」
またもさゆから恐怖の一言。なんでこうも毎回の王道を進みたいんですか?
「あたし行って毎回飽きてるじゃん。だから今回はさゆ一人で行っておいで。
直前キャンセル出来ないようにもう今日この後って矢口さんにアポ取ったから。」
先手必勝。
今回こそ決めたいから頑張らせていただきました。
これでさゆも逃げられまい。
「・・・・・でも、アポ取ったのはれいなだよね?」
「・・・・・・・・あ。」
- 405 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:21
-
「田中ちゃんも来たんだ。」
「はい。」
なるべく笑顔、なるべく笑顔。あ、限界・・・。
あたしはさゆと矢口さんが楽しくおしゃべりしている間に顔を逸らして
素の表情をさらけ出した。ちょうどショウウィンドウに顔が反射する。
・・・・ひでぇ顔だ。
矢口さん行きつけの中華屋さんへ。
店に入った時点でふと過去の出来事が頭をよぎる。
「・・・・・・・・・。」
「どうしたのれいな。」
「え、別に。」
流石に矢口さんは・・・・・・・中澤さんみたいなことはないよな。
- 406 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:22
-
- 407 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:22
-
「だからさ〜、あたしも色々大変らわけよ?」
あった。
思いっきりあった。流石やぐちゅー。
腕を肩に回され、酒臭い息を思い切り顔にかけられる。・・・・飲ませろ(違
サブミッションを軽くかけて腕を捻り、とりあえず矢口さんの絡みから
抜け出る。矢口さんが肩を抑えて暴れている間に、あたしはさゆに囁いた。
「さゆ、逃げない?」
「・・・・そうしよっか。」
- 408 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:23
-
◇
実況:おーっとここはバッテリー、敬遠のようです。
原:完全に勝負を避けましたね。
◇
- 409 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:24
-
店を駆け出し、繁華街でちょこちょこバレてストリートファイトを繰り広げ
“殺戒”気分を味わいながら一気に街を抜ける。
サインが欲しかったらプライベート以外で話しかけてください、ライブの
直後とか。
気づくとまさに横浜、ベイエリアってやつだろうか、人気のない海辺に
辿り着いた。とりあえず疲れたから二人で腰を下ろし、夜空の星を見上げた。
夜空の星の全てがさゆの犠牲者に見えてきてドッと疲れがこみあげる。
「矢口さんはもういいや。」
やっぱり飽きた・・・。さて、次は誰が犠牲者かな〜。
矢口さん、って来たから次は飯田さんかな?おっきいし。
さゆはあたしの方を見ると、
「れいな。」
「何?」
「好き。」
- 410 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:24
-
◇
実況:ナックル!!空振り三振。あ〜っと振り逃げだぁ〜!!!
◇
- 411 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:25
-
なんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねん
なんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねん
なんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねんなんでやねん
「れいな、待って〜!!」
とりあえず逃げとけ。
あたしは気持ち人類を超えるスピードでひたすら逃げた。
フォームもへったくれもあったもんじゃない。
逃げないと食われる!
しかし近頃でかくなり続けるさゆから逃げられるはずもなく、
- 412 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:25
-
◇
実況:アウト〜。
◇
- 413 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:26
-
「なんで逃げるの。」
「だ、だって・・・。」
なんで、と申されましても。
今までひたすら相談相手で散々振り回してきて、その行く末がこんなだなんて。
いきなり言われても困る。
もう頭の中は壊れてしまいそうなくらいに混乱していた。
逃げ出したのは、どうすればいいのか分からなくなったあたしの答え。
今はとにかく、時間が欲しい気分だった。
それでもさゆはそんな事許してはくれなくて、
「さゆじゃ、だめ?」
その瞳はあたしの事を真っ直ぐ見つめていた。
何処までも果てしなく続く地平線みたいに、真っ直ぐ。
もしくは前田幸長のナックルボールみたいに揺れる。
- 414 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:27
-
さゆは気まぐれだ。
気が変わりやすくて、まるでナックルボールみたいにいつ何を言うか
全然予想が出来ない。しかも次の日には逆の事を言ったりもする。
「女心と秋の空」とは、まさにさゆのための言葉じゃないだろうか。
たまに、そんな事を思う。
でも・・・・。
あたしは今日もさゆも信じて、振り回されてゆく。
- 415 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:27
-
「いいよ。」
- 416 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:28
-
今日は信じていいかも、といつものように思いながら。
「あ、やっぱりさゆ」
「早!」
- 417 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:28
- おわり
- 418 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:28
- 隠し
- 419 名前:ナックルボールとさゆの空 投稿日:2004/08/01(日) 18:32
- 終わってしまいました。
>>396 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
期待に答える事は出来たでしょうか?もしくはプレッシャーに押し負け(ry
今回頑張って多めに行ってみました、最終回拡大版みたいな。
>>397 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
田中さん前回楽し過ぎましたのでこんな感じにw
大好きなんて言葉、誉めすぎですよ(照
>>398 飛べない鳥 様
レスありがとうございます。
最後はこんな形になってしまいました(汗)
というか自分の貧困な発想ではこれが限界でして・・・。
久々のレスありがとうございます。
- 420 名前:おって 投稿日:2004/08/01(日) 18:37
- 今後もここは短中編を中心に乗せる形になります。
空版メインに進めていく事になってしまいますが、
実は水面下に1作、ストックをためています。ストックが半分くらい溜まったら
どこかの板で連載をしたいと思っています。ただ文体が違うので名前も
「おって」ではなくて別の何かにします。
でもいつ始めるにせよ、必ず金曜日に開始します。
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 23:27
- 楽しい作品ありがとうございました。今後もこのスレチェックし続けます
新作、飼育内ならさがしだしてみせる
- 422 名前:おって 投稿日:2004/08/02(月) 15:04
- INDEX
って各話の名前なんてありませんでしたけど(爆
1.後藤編 >>261-275
2.藤本編 >>281-290
3.吉澤編 >>298-307
4.中澤編 >>309-319
5.紺野編 >>326-336
6.石川編 >>341-352
7. 辻編 >>363-376
8.亀井編 >>381-392
9.矢口編 >>399-417
ゴーストライターおまけ >>356-360
- 423 名前:おって 投稿日:2004/08/02(月) 15:10
- ってあげちゃった_| ̄|○
>>421 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
とりあえずいつの金曜か分かりませんが必ず金曜に更新します。
もし気づいたらメル欄にでも「421です」って入れてみてください、
当たったら反応するはずですw
- 424 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 21:58
- おつかれさんでした
できればその後のさゆれなを一回でも読んでみたいです
- 425 名前:おって 投稿日:2004/08/05(木) 18:43
- >>424 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
それ自分も読みたいですw
でもここで切った方が色々想像が膨らむし、いいかな〜っと。
・・・すみません、面白く書く自身がないだけです_| ̄|○
現在例の新作ストック書き溜め中。タイトルにインパクトを感じる
可能性アリ。でもネタが分からない人は少しだけきついかも。
何板がいいかな・・・。
っていうかRUN WILDもかかないとだめですね(汗)
あっちは超長くなるっぽいです、もしかしたら来年の今頃も
終わってないかもしれない。
以上、レス返しと近況報告させていただきました。
因みにこのスレは時間のあるときに軽く短編を載せたりして使いたいと思います。
- 426 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/06(金) 12:14
- めっけw
とりあえずこちらを見に来ました。
特に黒めな田中しゃんが素敵です。
空板の方もそのうち見に行きたいと思います。
短編、楽しみにしてます。
- 427 名前:おって 投稿日:2004/08/06(金) 15:40
- >>426 名もなき読者 様
レスありがとうございます。
来て頂けましたか、ありがとうございます。
いつも希望峰楽しく読ませてもらってます、そちらの田中さんも素敵ですよw
自分は緊迫感を出すのが苦手なので勉強になります。空板もレースで
もっと何かこう胸を熱くする文を書ければいいのですが。
お互い頑張りましょう。
- 428 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:26
-
「わ゛ーーーーーーーーー!!!!ちょっと梨華ちゃん!!」
「・・・・・・・・。」
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛のびてる〜?!!!!」
『暴走への誘惑 渋滞にて最悪 抑えてる状態 自由への招待♪』
カーラジオから流れる、シャレにならない曲。
既に渋滞にて、抑えきれずに暴走中。
死という自由に今すぐ招待されてしまいそうな状況。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
とりあえず現在、大ピンチです。
- 429 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:27
-
HEAVEN‘S DRIVE
- 430 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:27
-
「梨華ちゃんが免許取ったぁ?!」
大体ここから胡散臭かったんだ。
どうやって梨華ちゃんに免許を与える教習所があると言うのだろう。
危険すぎて誰も乗らないだろうな・・。
「だからさ美貴ちゃん。今度ドライブしよっ。」
キショッ。
そう一蹴してしまっても構わなかった。でもその前に
「ドライブ適当にしてー、焼肉食べてー。」
「いく!!!」
今から思えばバカか、美貴は。
今から思えばここでもし断っていればこんな事態にはならずに済んだはず。
誰か道連れにしてもよかったかも、悪運強そうな娘。
- 431 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:28
-
美貴の家の前に車が止まった時、車は既に即カー○ンミニクラブに連れて
行って神田うのに見てもらわなければいけないような状態だった。
ていうかサイドミラー片方もげてぶら下がってるし。
顔も一気に青ざめるような感覚を覚える。
「大丈夫・・・・・じゃな」
「大丈夫大丈夫!!隕石が降って来て当たっただけだから!」
めちゃくちゃないいわけしますねこの子。
てか隕石なら隕石でそれも危ないから。
なんだか物凄い生命の危機を感じてるんですけど、乗る前から。
「ほらっ、早く〜。」
半ば強引に車に詰め込まれ、美貴は拉致された瞬間のような絶望的な気分に陥った。
・・・・って、拉致なんかされた事ないけど。
- 432 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:29
-
「でもさ。」
気になっていた疑問を梨華ちゃんにぶつける。
「なんでよっちゃんさんじゃなくて美貴なの?」
間。
「ねぇ。」
「・・・・・・・・・。」
梨華ちゃんはしまった顔をしてエンジンを慌ててかける。
その表情はやっぱりキショい。
「ちょっとー。」
ギュルルルルルッ!!!!
「うわ!!!!」
急発進。
と同時に一瞬ウィリー。
ありえないって。ありえないから。
ドンッ!!!
真っ直ぐ進めない車は早速電柱にぶつかって慌てて進路変更。
その後もジグザグに壁と格闘しながら進む。
ああ、あれだ。
ミニ四駆のサンダードリフト走法。実現可能なんだあれ。
- 433 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:30
-
『モー娘。藤本・石川事故死』
なんてシャレにならないけどすぐにでも現実になりそうな状態。
今そんな事あったら本格的に娘。壊れますよ?
なんて人の心配をしている場合じゃない、とりあえず今は自分の命を守る方法を考えなきゃ。
えーっと、うーんと、降りろ!!
「降ろせぇぇぇ!!!」
「大丈夫大丈夫。」
「どこがだぁぁぁ痛!!!!」
いきなり吹き飛んだ衝撃に耐え切れずにぴょんと飛び上がった美貴の頭が
天上に直撃。
・・・シートベルトつけなきゃ死ぬわこれ。
でもなんだろうこの感じ、何かに似ているような・・・・。あ。
「インディージョーンズライド!!!」
東京ディズニーシーの目玉。
あの暴れ車と感覚がピッタリ・・・・ってそれだめじゃん!
全然だめじゃん!!
「梨華ちゃん降ろしてぇぇぇぇぇ!!!」
「止まらなーい!!」
嘘つけ!顔完全に( ^▽^)になってんじゃねぇか!!
- 434 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:31
-
車は遂に大通りへと出てしまった。
警察に見つかったら即捕まっちゃうような速度で驀進中。
最初はまだ良かったんだけど前方に車が見え始めてから大変。
さっきのサンダードリフト走法をまた繰り返しそうになりながらもなんとか
ぶつからずにガンガン行く。
「もうやだーーー!!!(胸の)成長が止まる前に死にたくなぁぁぁい!!!」
「もう止まってるよ美貴ちゃんは。」
「うるせぇぇぇぇまだまだこれからじゃぁぁぁ!!!」
言葉も荒くなる。
辻ちゃんと田中ちゃんとwow wow wow 貧乳♪なんて替え歌歌ってる場合じゃない。
とりあえず生きて還らせて・・・。
ガンッ!!
ウィーン
ゴゴゴゴゴゴゴ
「え?!」
どこかにぶつかった弾みでミラーがおかしくなった。窓全快。
風がどんどん中に入ってくる。
「でもなんで美貴なの〜!!!」
左右に振られながら叫ぶ。
「だってぇ、よっすぃ〜に怪我させたら大変だも〜ん。」
「・・・・美貴は練習台かぁーーーー!!!」
え?泣いてるって?・・・窓からゴミが入ってきたんだよ!!
- 435 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:32
-
人間ってのは生命の危機に瀕すると人が変わるらしい。美貴がその例。
自分でも分かってるけど叫ぶしかない。
「助けてーーーーー!!!!」
窓の外へと助けを求める。でも外のリアクションは、
あれ藤本美貴?うそ、マジで?
でいつも終了。猛スピード過ぎて誰もついていけないみたい。
嗚呼神様、いるのならどうか助けてください。
駄目ならこの運転席の女を抹殺して・・・・あれ?
「梨華ちゃん?」
梨華ちゃんはハンドルを握ったまま、口をボーっと開けて視線はどこかを
向いていた。
ガタンッ!!!!
横の車と接触して右に振られる。
「わ゛ーーーーーーーーー!!!!ちょっと梨華ちゃん!!」
「・・・・・・・・。」
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛のびてる〜?!!!!」
『暴走への誘惑 渋滞にて最悪 抑えてる状態 自由への招待♪』
ってな感じで今に至る。って解説してる場合じゃなさ過ぎるわけで。
- 436 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:33
-
「あ゛〜もう!!!」
美貴は助手席から身を乗り出してハンドルを強引に掴んで、とりあえず小道に。
ギュルルルルルルルルッ
ウィリーって出来るんだ、一般乗用車で。
もういっそこのままひっくり返れば車止まるし楽になれるんじゃないかと
思いつつも、まだ死にたくない。
ソロコンサートをするまでは藤本美貴、死ねません。
どうにか小道に入ったものの、アクセルを梨華ちゃんが踏みっぱなしだから
止まりようがない。ここで美貴に与えられた選択肢は、
@梨華ちゃんの足を切断してアクセルを外す
A梨華ちゃんの家に激突して無理やり止める。
Aは無理だな、マンションの40階とかだから。じゃあ@だ・・・
ってちょっと待て美貴!
もはや正気じゃないのか美貴!
B梨華ちゃんをどかして止める
だな、これで決定。
「よいしょっ。」
美貴はシートベルトを外して移動した。
太もも辺りを掴んで上に持ち上げるっと。
- 437 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:34
-
その時、足を外せば徐々にスピードが落ちて止まったんだろう。
でも何の間違いか、美貴の手が汗ばんでいて滑って梨華ちゃんの足は・・・・
ブレーキをモロに踏んだ。
キュルルルルルッ
シートベルトを外していた美貴は当然、吹き飛ぶ。
「゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛゛!!!」
声にならない叫び声をあげて、フロントガラスに思い切りたたきつけられる美貴。
ジ・エンド・・・・。
梨華チャン、絶対呪ウ、呪ッテヤル・・・・。
と思いきや、クッションがその前に飛び出し、間一髪、梨華ちゃんを呪わずに済んだ。
いや、やっぱ呪う。
「スヤスヤスヤ・・・・。」
この幸せそうな寝顔を見てそう思った。
- 438 名前:HEAVEN'S DRIVE 投稿日:2004/08/10(火) 00:34
-
強制終了(汗)
- 439 名前:おって 投稿日:2004/08/10(火) 00:37
- 書く前と書いたあとでここまで内容が変わるとは・・・。
別にストレス溜まっているわけではないんですけどね(汗)
でもこっそり書こうと思ってた新作、更新2回目行く前に見つけられるとは
思ってもみませんでした。ochiだしそう簡単には・・・と思っていたら即ハケーン
されてるしw 421さん、読んでいただきありがとうございます。
今度はもうちょっと考えて書きます(汗)
多分執筆時間20分くらいなんで。たまにはシリアスも書きたいし・・・。
- 440 名前:421 投稿日:2004/08/10(火) 01:45
- カッコイイタイトルだなと思ったらコメデイだったwそしてものすごい勢いで強制終了、やられたorz
あっちは絶対最初の金曜に来ると思ってましたw頑張って下さい。これにてコテは終了
- 441 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/10(火) 16:45
- 更新お疲れ様です。
しっかりBGMにあの曲かけておきましたw
暑さで参ってる時はこうゆうお話が一番読み易いかも。
ありがとうございます。
- 442 名前:おって 投稿日:2004/08/13(金) 16:03
- 今更ながら返レスを
>>440 421様
レスありがとうございます。
やられましたか、それはよかったw
タイトルはラルクの曲です、別に深い意味はありませんが。
風の方が力入って空の更新を渋って情けないばかりです(汗)
>>441 名も無き読者様
レスありがとうございます。
暑い時はどうもストレスのはけ口みたいな暴走文になってしまって・・・
確かにシリアスな話だったら最後まで読むのが大変そうだ・・・。
お礼を言われると照れますw
「暑さで参ってる時はこういう話が読み易い」の言葉を受けて
全然コメディじゃない短編ここにうpするのやめてしまうチキンですw
森板の「金魚すくい」、よかったらどうぞ。
自分で書いてて頭こんがらがって、やっぱこういうの向いてないと
痛感せざるをえないお話です_| ̄|○
あ、感想のときあげちゃって構いません、その森の奴。
- 443 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/08/26(木) 00:26
-
波乗りマリー
- 444 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/08/26(木) 00:27
-
“そいつ”は突然矢口の体を襲った。
本当にいきなり、なんの前触れも・・・いや前触れならあった。
しかし矢口自身はそれを全く自覚していなかった。
その自覚の無さがこの事態を招いてしまったと言っても過言ではないだろう。
“そいつ”が矢口の体に降り注いだのは電車の中、
矢口がメールを読んでいたときのこと。
- 445 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/08/26(木) 00:27
-
「っ。」
あと少しで声が出そうになり、口を抑える。まずい。
「・・・・・・・・・。」
おなかが、痛い。
- 446 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/08/26(木) 00:28
-
矢口は下腹部を少し撫でると、すぐに昨日の事を思い出していた。
夕食後、風呂上り。
暑いという理由でアイスを3つほど平らげた矢口は酒を飲むと、
そろそろ食べないとまずいと思っていたケーキを平らげるという離れ業を
やってのけていた。
しかしそれが見事にたたり、腹を痛めた。
今日はテレビ局前に止まっているロケバスに集合し、そのまま乗り込む。
時間的に余裕はあまりないから、駅を降りたらすぐにトイレに行こう。
矢口の視線は完全に電車内のヴィジョンの釘付けとなっていた。
あと3分・・・。いつまで経ってもあと3分・・・。
いくら待っても、一向に付く気配がない。
矢口自身としてはもう既に1時間くらい待った感覚。
こんなにトイレに行きたいのはラジオの時以来だ。
イライラが募る。
一体いつになったら駅に着くんだ!!!
自分の感覚が狂っているだけなのに、矢口は理不尽にキレかかる。
- 447 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/08/26(木) 00:29
-
電車を飛び出て数歩で、矢口は歩を緩めた。
スピードの出しすぎは命とり。危険すぎる。
しかし速度を落としたところで気がつく。間に合わない。
どうすればいいんだ!
矢口は迷って立ち止まった。
「(って。立ち止まる暇あったら走れー!!)」
脳が信号を送る。
矢口は駆け足で2歩走るとすぐに苦痛に表情をゆがめて歩を緩めた。
「(あ、危なかった・・・。)」
- 448 名前:おって 投稿日:2004/08/26(木) 00:31
- 最初に諸注意。かなりくだらない話です。
あと森は思いのほか好評だったので短編集という形をとってやってみることにしました。
1つの季節に2作品。夏のもう一作は投稿したので秋になったら
また2作上げる形で、春までに計8作書き上げる予定です。
- 449 名前:◆rVzCHAMY 投稿日:2004/08/26(木) 12:35
- いやいや、楽しみにしていますぞ。
- 450 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 21:58
- くだらない話なのか
てっきり、くだる話かと思ったよ
- 451 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 22:13
- 下らない話をクソマジメにやるのは大好きです
森のはホントに評判がいいようで。おってさんのは全部楽しみにしてます
- 452 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:39
-
スピードを上げては苦痛に顔をゆがめ、スピードを落としては間に合わないと加速。
その繰り返しで少しずつトイレへと近づいていた。
既にライブ並の発汗量。
矢口はロケのために持って来たタオルすら取り出す余裕もなく、
ただその視線は一点、スカートをはいた棒人間の絵を見つめていた。
- 453 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:39
-
やっと、やっと苦しみから解放される・・・。
矢口、突撃。
しかし寸前で立ち止まる。
「な・・・・・・・・。」
なんなんだ、この行列は。
- 454 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:40
-
時間帯はもろ通勤ラッシュ。
故にそれだけ人の数も半端じゃなく多い。
でも会社でしろよ!!畜生!!
矢口は腹を抑えながら最後尾についた。
ふと時計に目をやると、とんでもない事に気がつく。
集合時間は9:00
現在時刻は8:50
あと10分で用を済まし、駅を出てテレビ局までたどり着くのは・・・
不可能。
矢口は予定を変更、一刻も早くテレビ局についてトイレを借り、
バスに乗る事にした。
- 455 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:41
-
しかし現在の下半身事情から矢口は走ることが出来ない。
苦痛に表情を歪め、臀部を意識しながらの走行が続く。
しかし続いて矢口を待ち受けていたのは信号という名の進行妨害機だった。
立ち止まり、必死に耐えながら時を待つ。
「・・・・・・・。」
長い、長すぎる。
こういうときほど長く感じるのは分かっているが、それにしても長い。
なんだか汗ばんできた。
冷や汗も垂れる。
しかしそれを拭く為鞄からハンカチを出すことさえ相変わらず
ままならなかった矢口は震えながらそれを放置した。
- 456 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:41
-
やっと青く変わったランプを視界にとらえると、矢口はダッシュで
横断歩道を渡ろうとして、3歩で歩を緩めた。
「・・・・・・・。」
学習能力がない、なさ過ぎる。
早く走ればアウト、遅く歩いてもアウト。
中途半端なスピードで精一杯力の限り進む。
そしてようやくテレビ局が見えたとき、バスの中から飯田がひょこっと
顔を覗かせていた。
- 457 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:42
-
どうしてこういうときに限って、悪い伏線が張られているのだろう。
矢口は昨日、遅刻した田中を思いきり注意したばかりだったのだ。
矢口は携帯の時計に目をやった。
8:58。
矢口はバスの前までたどり着くと、
マネージャーにトイレへ行く許可をもらおうと探した。
しかしそこで田中に、
「矢口さん、5分前精神ですよ5分前精神。」
カチンときた矢口はバスの中へと直行。
- 458 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/03(金) 23:42
-
「じゃあ出してください。」
マネージャーの声がしてから矢口ははっとした。
- 459 名前:おって 投稿日:2004/09/03(金) 23:46
- 矢口さんは必死です。
>>449 ◆rVzCHAMY様
レスありがとうございます。
楽しみにしていただいて幸いです、期待を裏切ってしまいそうですがw
>>450 名無飼育様
レスありがとうございます。
!!ヤラレタ_| ̄|○
>>451 名無飼育様
レスありがとうございます。
全部楽しみだなんて言われると感涙してしまいます。
これからもよろしくお願いします。
- 460 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/04(土) 00:21
- 面白い!!
経験者ならこの苦痛わかりますね
- 461 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/04(土) 04:10
- 何だかよくわからない汗
思考回路はショート寸前
たまに見える希望
深い絶望
あんなスリルは人生に必要無いorz
- 462 名前:名も無き読者 投稿日:2004/09/04(土) 16:09
- 更新乙です。
押し寄せる高波、それを壁際でうずくまってやり過ごし、すり足で高速移動。
そしてまた押し寄せ(ry
周期的にだんだんと間隔を狭めながら迫る、冷静な判断力を失わせるほどの恐怖。
いや、流石ですw
- 463 名前:◆rVzCHAMY 投稿日:2004/09/06(月) 13:40
- 更新お疲れ様です。
- 464 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:06
-
「ちょっとま」
矢口はそこまで言うと止まった。
出発したバスの振動が、腹へと予想外のダメージを与えたのだ。
苦痛に顔をしかめると、矢口はそろりそろりと椅子に座った。
着地も慎重に行わなければならない。
勢いよくドンと座った日には衝撃で一気に首を絞める結果になりうる。
そーっと、そ−っと、
ぐぃっ
「うっ!!」
「矢口さん早く座ってくださいよぉ。」
押し込まれるように椅子に座らされる。
柔らかいビニールでさえ、今の矢口には充分すぎるほどのダメージを与えた。
- 465 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:07
-
犯人は横に座る石川だった。
事情を全く知らない人間は、時に窮地に立った人間を簡単に崖へと突き落とす。
矢口は今まさにギリギリの状態。
一歩でも踏み外せば奈落の底。
一気に自由落下。
「・・・大丈夫ですか?」
矢口の顔色の悪さと汗に気がついたのか、石川は矢口の顔を覗き込んだ。
「だい・・大丈夫だよっ。」
次期リーダーとして、先輩として。
矢口は耐えた。
- 466 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:07
-
親ライオンは子ライオンを崖へと落し、這い登ってきた子だけを育てるという。
そうだ、これは試練。試練なんだ。
きっとそうに違いない。そう思わないとやってられない。
バスの運転手が、新人だなんて。
激しい揺れ。
振動に苦しみながら、ギューッと前の席の背もたれの上の部分を掴む。
腕で支えて振動を防ごうと試みているのだ。
しかしそんな努力もむなしく、急ブレーキ急カーブなどで矢口はジャブを
食らい続けていた。
これはきっと落ち目になったせいだ。
そうに違いない。でもそう思いたくない・・・。
- 467 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:08
-
予定によるとロケ地である公園には40分で到着する。
果てしなく長い40分が始まろうとしていた。
矢口は苦痛に顔をゆがめていると、ある瞬間から突然、
ちょっとだけ苦しみがひいた。
「(あれ、ちょっと楽になったぞ・・・)」
矢口の表情にようやく落ち着きが戻る。
矢口は鞄からイヤフォンを引っ張り出すと音楽を聴き出した。
なんとか凌げそうだ。
- 468 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:08
-
カップラーメンが出来るほどの時間と少しが経過した時、
矢口のMDでは『波乗りジョニー』のイントロのピアノが流れた。
その時、
「!!」
・・・・キタ。
キタ・・・・。
ビッグウェーブが来た!!
突然の乱調。
荒れ狂う海の中波に乗っている自分の姿が頭の中を浮かび上がる。
振り落とされた時、それは下る時だ!
- 469 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/10(金) 00:09
-
全身に震えが起こる。
まずい。
洒落にならないくらいまずい。
さっきまでも苦しかったが、
1回のピアノを経て来た突然のフォルテによって、かつてないほどの苦しみを
矢口は味わっていた。
死ぬより苦しいという言葉の意味を、今はっきりと悟る。
- 470 名前:おって 投稿日:2004/09/10(金) 00:15
- 誰でも一度は通る道なのかもしれません。
>>460 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
面白い!!と言い切って頂けて本望です。
予想外に被害者の声が聞こえて驚きました。
>>461 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
なんだか軽い詞を見ているようでした。
確かにこんなスリル人生には要らないorz
>>462 名も無き読者様
レスありがとうございます。
流石と言われると照れますw
そういえば自分もすり足だったような・・・。
>>463 ◆rVzCHAMY様
レスありがとうございます。
こんなお話にもお疲れ様と言って頂けると矢口さんも救われます。
これからもよろしくお願いします。
黒板で前羊で書いたものを上げましたので、よかったらどうぞ。
- 471 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/10(金) 00:59
- 一気に全部読ませてもらいました。
今回の矢口の気持ちがすごくわかります。
私はバスの中二時間くらい耐えたことがあります。
あの時はかなりやばかったです(笑)
- 472 名前:名も無き読者 投稿日:2004/09/10(金) 22:53
- 更新乙です。
あぁ、やぐっさん。。。
クレッシェンドでないことを祈るばかりです・・・。
5つは大変でしょうが、続きも楽しみに待ってますw
- 473 名前:◆rVzCHAMY 投稿日:2004/09/13(月) 13:08
- 更新お疲れ様です。
今回のお話は非常に身につまされるものがあるので、
ワクワクドキドキしながら読ませて頂いております。
後、黒板の方も読みました。あのお話だったのですね。
五つもの板を回るのは大変でしょうが、頑張ってください。
- 474 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:05
-
汗が止まらない。目からも涙が出てきそうだ。
矢口は尚も脳内でサーフィンを続けていた。
と言っても、もうほとんど振り落とされそうな状態だ。
「あ、あと、何分くらいかなっ?」
声が裏返る。
いつもキショイキショイと言っていた石川の声に少し似ていて、
自分で嫌気が差した。
「あと、15分くらい?」
「そう、ありがと・・・。」
矢口はMDを聴く事に全神経を注ぐ事にした。
聴いていれば、3曲か4曲でつく。矢口は目を瞑った。
- 475 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:06
-
暗闇の中、ひとひとと殺人鬼が迫ってくるような錯覚を覚える。
逃げたいけれど、苦しい下半身が全く役に立たない。
ここに来て朝電車の中で飲んだ紅茶が効いて来ている。
「こんな状態で寝れるかー!!!」
思い切り叫ぶ。
騒音の関係で周りには聞こえなかったが、
横にいる石川にはしっかりと聞かれた。
「?? どうしたん・・・・です・・・か?」
「いや、なんでもないよ、キャハハハ・・・。」
笑顔も引き攣っていた。
- 476 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:06
-
もうぐしょぐしょのハンカチで汗を拭っていると、
前の席のマネージャーが立ち上がった。
矢口はそんなものに気がつく余裕すらなかったが、その声を聞くと
表情が一変した。
「渋滞だから30分遅れるぞ。」
「!!」
今、この状況で最もきつい一言。
格ゲーで瀕死状態にゲージ全部使う超必殺技を使われたような気分。
汗を拭いた場所からは、もう汗が吹き出ていた。
- 477 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:07
-
それから30分後、バスはロケ地である公園に到着した。
バスを降りる3分前、下半身の苦痛は和らいだため、余裕のある表情
(ただし汗だく)でバスを降りた。
ぴょんっ、とバスから飛び降りる。
しかしこのノリで取った浅はかな行動が、思わぬダメージを与えた。
- 478 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:07
-
「ぐっ!!」
ショートアッパーを食らって苦痛を声に出すボクサーのような、ごつい声。
それほどのダメージを矢口の腹部には与えた。
「(今日一番のビックウェーブ!!!!)」
思わず蹲る。
汗が止まらない。
なんていうか、
ア リ エ ナ イ
- 479 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:08
-
流石に公園だからトイレくらいはあるだろう。
公衆トイレがどこにあるのかをキョロキョロと見回す。
一時的に視力がオスマンサンコンを超えた矢口は瞬時にそれを
発見してみせた。
走れない。でも歩きではきつい。
中途半端な速度で進みながら、衝撃をなるべく受けないように行く。
そしてついに、目の前に到達した。
中に入ると、あまりに汚さに吐き気がする。
しょうがない、障害者用を使おう。
矢口はドアに手をかけ、一気に横にスライドさせようとした。
- 480 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:08
-
ガッ
「ぐぅっ」
鍵がかかっている。誰か入っている様だ。
そして今ドアの跳ね返りの振動が伝達し、矢口は崩れ落ちそうになった。
「誰ぇ〜?」
聞こえてきたのはかん高い、今の状況で最も怒りを誘う、アニメ声。
「早くして〜!」
「待ってくださいよ〜。」
こっちには待てない事情があるんだよ!!
叫ぶと響きそうなので言うのをやめた。
- 481 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/09/18(土) 22:09
-
ゆっくりとトイレを出てきた石川。やっと、やっとついた。
もうこの苦しみとはおさらばだ。目の前が花園に見える。
ドアの先には、美しい楽園が―――。
「矢口、あとにしろ!渋滞で押してるんだから!!」
「えぇ?!」
マネージャーに引っ張られながら、矢口は思った。
お母さん、おいら今度初めて人を殺めてしまうかもしれません。。。
- 482 名前:おって 投稿日:2004/09/18(土) 22:18
- 更新までの間に何回かあの苦しみを味わいました_| ̄|○
>>471 名無し読者 様
レスありがとうございます。
一気に読んでいただけましたか、ありがとうございます。
自分も車内で2,3時間耐えた事があります、死ぬかと思いました。
>>472 名も無き読者 様
レスありがとうございます。
5つ、頑張るしかないです。無計画にスレ立てたから責任を取らないと。
あと企画、頑張りましょうw
>>473 ◆rVzCHAMY 様
レスありがとうございます。
ここはトイレ我慢経験者の集会場ですか?w
黒板知っていらっしゃいましたか。
内容を大きくは動かせないと思いますが、羊で読んだ人でも楽しめるよう
いじりたいですね。
- 483 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 02:43
- 今何してるんでしょうね
サンコン
- 484 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 14:25
- >>483
ttp://www.yomiuri.co.jp/hochi/geinou/jul/o20040722_100.htm
ttp://www.geocities.jp/tormsk/index.htm
- 485 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:01
-
プルプルと全身が小刻みに震える。
今すぐその場で失禁してしまえばどんなに楽か、なんて考えてはいけない事を
矢口は考えていた。
でもそんなこと、少なくとも、いや少なくなくともカメラの前では
避けなければいけない。
次期リーダーとして、というよりホモサピエンスとして。
- 486 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:02
-
もはや理性が飛びかねない状況の中、矢口はフレームの中ではあくまで
アイドルとして振舞った。
それはこの仕事をやっている以上当然のことで、
いくら苦しくたって悲しくたってコートの中では平気なのである。
勿論、全くもって平気ではないのだが。
そして今日、よりによって今矢口が最もしたくないであろう仕事が
待ち構えていた。
- 487 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:03
-
「まあやるか分からないから、軽い練習な感じで行きます。」
『はーい』
新春かくし芸大会の大縄跳び。
今現在矢口の肉体で最大の敵は、振動。
又の名を揺れ。
もしくはバイブレーション。
実際番組に出るかすら分からないのに練習するなんて間違っている。
しかもどうせ出来ないじゃないか。
矢口はそう叫んでトイレに駆け込みたい気持ちを必死に抑え、
全員の真ん中に立つ。
- 488 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:03
-
なんでカメラが回るのだろう。
そう思っているとディレクターが説明をした。
「出演する場合はこれを最初のVで流すかもしれないんで、
とりあえず30飛んだら終わります。」
『はい』
口は勝手に動く。
しかしそんな調子で体を動かせば、矢口の体はすぐに大変な事態に直面するだろう。
死より辛い苦しみが、今まさにそこに迫っている。
- 489 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:04
-
「いきまーす。」
矢口は思った。ようは飛べばいいんだ。
30回飛べばトイレに入れる。
冷静な見解だが矢口に時間はそんなに残されていなかった。
1回のミスが命取り。
例えば自ら縄を引っ掛けてしまえばそれだけでも振動が伝導し、
括約筋を刺激する。
女性の括約筋は男性と比べ弱いためそれだけ耐えるのが苦しいのだ。
「せーの。」
矢口の戦いが始まる。
- 490 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:04
- ・・・・・・・・・・・・・
- 491 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:04
-
「21,22、あ!」
「(今引っ掛け奴どこのどいつだーー!!!)」
カメラが回っているためそんなに怒れない。
しかし矢口の脳内ではミスをした人物とその回数は全て刻み込まれていた。
最多エラー賞の飯には下剤を入れてやる、なんて計画をしながら。
- 492 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:04
-
何回飛んでも埒が明かない。
少しずつ前進してはいるものの、少しずつでは今の矢口には遅かった。
他のメンバーと比べ、尋常ではない汗のかき様。
しかし全員が全員自分に必死で誰一人として矢口の異変には気がつかなかった。
「(誰か一人くらい心配してくれてもいいじゃねぇかよ・・・。)」
飛ぶその度に毎回振動を受け、いまや全身にそれが響くようになっていた。
もう穴という穴全てから何かが出てきそうな感覚。そんな時、漸く。
- 493 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:05
-
「30!!」
「終わった〜!!!」
「はいOKでーす。」
その声を待ち続けて早2時間。
もう何もかも限界の矢口は出せる限りのスピードでトイレへと突っ走った。
しかしそのスピードは歩く歩道ほどのもの。
それが現在の矢口の下半身事情からして精一杯だった。
そしてその矢口の体の左右を、風が吹き抜けていく。
- 494 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:05
-
「えりが先!」
「れいなが先と!!」
皆行きたかったのかよ!!!
一人、運動後の爽快感を感じているアニメ声を除き、全員がトイレへと
一目散に走っていた。
お母さん、メンバー全員斬り捨てたいんですけど、どうしたらいいでしょう?
- 495 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:06
- 母「水に流せ」
- 496 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:06
- おわり
- 497 名前:波乗りマリー 投稿日:2004/10/04(月) 00:09
- 久々の更新。待たせてすみませんでした。しかもこんな終わりって(汗)
>>483 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
自分はCMで見たくらいですかね、ニコンサンコンジュウニコンだか
なんだかやっていたような。
>>484 名無飼育さん 様
サンコン情報ありがとうございます。
そんな年いってたんですか、しかも大使館って。
全く知りませんでした。
- 498 名前:おって 投稿日:2004/10/04(月) 00:09
- って名前波乗りマリーのままになってる!
- 499 名前:名も無き読者 投稿日:2004/10/04(月) 23:23
- お母さんにうちわを一枚。(謎
更新お疲れサマです。
いやなんか、妙にリアルで面白かったですw
持ちスレの枚数を考えても、これ程のモノを書き続けられるというのに脱帽ですわ。
これからも引き続き頑張って下さい。(平伏
- 500 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 23:51
- 最後まで笑いました。
お母さんには思わず、「上手い!」とうなりましたw
- 501 名前:(●´ー`) 投稿日:(●´ー`)
- (●´ー`)
- 502 名前:おって 投稿日:2004/10/11(月) 18:55
- お母さんのウケがいいw
>>499 名も無き読者 様
レスありがとうございます。
持ちスレは・・自分がバカなだけですのでw
>>500 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
笑っていただけて幸いです、痛々しい実体験込みですから(縄跳びはしてませんが
お母さんは完全なその場の思い付きですw
>>501 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
たまたま完結した所でこのレスだったので一瞬普通のレスと勘違いしましたw
コピペお疲れです。
企画に現抜かして全然書けてなくて申し訳ないです。
次から不定期に短編コンペのテーマに沿って短編を一作ずつ上げてみようかなと思ってます。
自分の初参加の硝子以前、斜陽までを。
そのうち、忘れられた頃に上げます。
- 503 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:04
- とうめいにんげん
- 504 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:04
-
「完璧です!遂にできました!」
ある日の放課後、いつものように化学実験室から聞こえてくる叫び声。
それがあさ美ちゃんだということは、見なくてもすぐに分かる。
私は呼ばれる前に自分から出向く事にした。
どうせいつも教室から引っ張り出されて付き合わされるのは目に見えているし。
教室を出ると、ちょうどあさ美ちゃんが教室まで走ってくるところだった。
「真琴!ちょうどよかった!きてきて!」
いつものように手を引かれると、私は化学室へと足を踏み入れた。
- 505 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:05
-
「透明人間?」
「もっと驚いてよ!」
私の薄いリアクションにあさ美ちゃんはかなり不満げ。無理もない。
むちゃくちゃな事を色々言って、結局いつも爆発したりして火傷しそうになっているのは私だ。
あさ美ちゃんはいつもタイミング良く盾とか取り出して防いでるし・・・。
「すごいんだよ!完璧です!」
「完璧なのは分かったから。」
「も〜う!論より証拠、飲んで!」
今日はクスリか・・・。怪しいビンには恐怖心を覚えずにいられなかった。
頭の中にはエジソンが子供の頃友達に自作のクスリを無理矢理飲ませ下痢を
させたなんていうエピソードが流れ・・・・。
「えいっ」
考えている間に私の開いている口にはクスリが注ぎ込まれた。
「うっ!」
反射的に中身を半分も飲んでしまった。
- 506 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:06
-
「やったー!」
「何すんの!」
「だって真琴口半開きだったよ?」
「う。」
痛いところをつかれた。何か反論しようと頭の中で考えをめぐらせる。
でもその間に、
「あ・・・頭痛くなってきた・・・。」
「え?そんなはずないんだけどな〜・・・。」
罪の意識のカケラもないあさ美ちゃんはボーっとした顔で色々と考えている。
どこか遠くを見るような顔をしながら机に乱雑に詰まれた紙を探し出して私には
理解出来ない計算式を書き込んでいる。
どうでもいいけど助けて、なんかすごい白くなってきちゃってるよ、体。
本当にまずいクスリなんじゃないの?ああ、もう見えな・・・・見えない?
- 507 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:06
-
『ああ!!』
気づくと私の腕は姿を消し、なくなってしまった。
私の腕があるはずの空間を見てみても、地面が見えるだけ。
あさ美ちゃんを見ると満足そうな顔をして笑っていた。
「完璧です!」
- 508 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:07
-
- 509 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:08
-
せっかくだから好き放題遊んできてくれと言われて私は適当に校舎をぶらついていた。
ただその時、あさ美ちゃんに言われて服を脱いだ。
「いくら体が透明になっても服は消えないから。それと2時間でクスリ切れるから
それまでに戻ってきてね。」
というわけで今結構肌寒い。全裸だから仕方ないけど。
3年生の教室を覗き込んでみると、石川さんと藤本さんが二人で色々話していた。
どうやら相当話す事に夢中みたいで、扉を開けたのになんのリアクションも示してくれなかった。
悔しかった私は机の上に座ってくっちゃべっている二人の横を通過すると、悪戯をした。
- 510 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:08
-
「でさー。・・・あれ?何あの文字。」
「え?」
梨華ちゃんは音痴
「美貴ちゃんひどいよ!!気にしてるの知ってるでしょ?!」
「ちょっ、ミキじゃないって!いっしょに話してたじゃん!ん?」
美貴ちゃんは貧乳
「梨華ちゃん・・・いい度胸してんじゃん・・・。」
「違うよ!!私そんな事しないよ!」
「問答無用!!」
私は必死に笑うのをこらえると、もう一言黒板に書き加えて教室をあとにした。
吉澤さんの取り合いはほどほどに
- 511 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:09
-
階段を駆け下りる。
ここで人とぶつかっても向こうはなんのことだかよく分からないんだろうな、
と思ったら前方から中等部の女の子が階段から登ってきた。ぶつかってやろう、
少し小走りで肩と肩をぶつける。
ドンッ!!
「?」
バタンッ!!ガン!ゴン!!ガンガン!!
女の子は不思議そうな顔をしながら階段を上っていった。
階段から転がり落ちる私になんて気づかずに。
なんてビッグな後輩だ・・・。一体身長何センチあるんだ・・・。
- 512 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:10
-
のんつぁんとかーちゃんがパンを取り合って争いをしていた。
2つパンがあるけど、二人とも意中のパンが被ってしまったようだ。
「のんが先に食べようとしたの!!」
「あいぼんのほうが先だった!!」
しょうがないなぁ、争いの元は私が食べてあげよう♪
二人が争っている間にひょいっとパンを持ち上げて一口でぱくり。
二人は全く気がつかないからもう1つの、こちらは少し緑?のパンもぱくり。
・・・・・ん?
「賞味期限切れたのなんて食べれないもん!」
「こっちだって!」
ぐぁぁぁ!!!これカビかぁ!!
- 513 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:10
-
- 514 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:11
-
体育館の人気のないトイレでさっき食べたものをなんとか吐き出した頃、学校でチャイムが鳴った。
もう1時間も経ったのか。一旦戻ろうかな、体も冷えたし。
フラフラとトイレの外に出る。校舎とは別の建物だかから中庭を通る。
校舎の入り口には寺田好調の変な銅像が建っていてうざかったから落書きしておいた。
「うぅ〜、寒ぅ〜・・・。」
肩を抱きながら歩く。早く戻って服着て、クスリが切れるのを待たないと風邪引くよ・・・。
トイレを出ると下校途中の先輩。後ろ姿でもはっきりと分かる。吉澤さんだ!
よ〜し、いっちょおどかしてやろう!私は吉澤さんの後ろに忍び寄ると、
吉澤さんがだるそうに持ち歩いている制定バックをひょいっと持ち上げた。
「・・・・ん?」
少しして気づいた吉澤さんは、後ろを振り向いた。私と目が合う。
勿論向こうは気づいていないけど。
「・・・・・ええぇ?!!」
吉澤さんは大慌てで走り出してしまった。バックから手を離して。
意外とヘタレなんだ、あの人。
- 515 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:12
-
校舎の方へと戻っていくと前方にはさっき私のせいで喧嘩になった石川さんと藤本さん。
姿は見えないけどごめんなさいくらい言おうかな、と思って私は二人に近づいた。
二人は仲直りしたみたいで話に夢中。
「ごめんなさい!」
突然の声に、二人は同じ方向を見た。また目が合う。
向こうは気づいていないけど。
「・・・・・・・・。」
二人は視線を逸らすと、私を避けるように早歩きでその場を去った。
え?どういうこと?
ん?
校舎の入り口からあさ美ちゃんが大慌てで駆け出してきた。
「ごめん真琴!半分しか飲んでなかったから時間も・・・・!!」
あさ美ちゃんは途中まで叫んで突然止まると、手で顔を覆った。
「どうしたのあさ美ちゃん。」
あさ美ちゃんはフグのようにパクパクと口を動かすと、あるものを指差した。
私はそれへと視線を移すと、絶句した。
- 516 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:12
-
顔面を無残に寺田校長の銅像に映るは、全裸の少女。つまりわた(以下略)
- 517 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:13
- 透明人間♪
- 518 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:13
- 現る現る♪
- 519 名前:とうめいにんげん 投稿日:2004/10/25(月) 23:13
- (字余り)
- 520 名前:おって 投稿日:2004/10/25(月) 23:14
- というわけで一発は「使用上の注意」
思いついたのからどんどん書いてみようと思っていますが、浅はかな話ですみませんw
- 521 名前:◆ka.Rfv1U 投稿日:2004/10/25(月) 23:20
- そんなことないですよ、面白かったですよ。
発想がすごいですよね。小川麻琴ですけどね。
- 522 名前:◆RIKa1gTQ 投稿日:2004/10/25(月) 23:24
- これからも頑張ってくださいね。
>>521も私です。8桁トリップだということをすっかり忘れていました。スレ汚し失礼。
- 523 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:37
- 犯人
- 524 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:38
-
古い話を、一つ。
- 525 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:38
-
その日の楽屋はいつもに増して騒がしかった。目の上のたんこぶがいない、
と言えばそれまでだが、メンバーは好き勝手喋り散している。
そんな中、一人寝ている吉澤だけがその空間において異質な存在だった。
横では亀井と道重が前日の収録の話で大騒ぎし、田中が携帯ゲームで一喜一憂。
紺野と小川がスナック菓子を大きな咀嚼音を立てながら食べている。
静かなのは高橋くらいなもので、静かに本を読んでいた。
その場所で寝ることなんて不可能とも思えるほどの熟睡。
しかしその熟睡がその後くだらない事件を生むことになるとは・・・誰が想像しただろう。
- 526 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:39
-
収録までかなり時間があったこともあり10人はかなりリラックスした状態だった。
スナックの袋も次々に開けられ撒き散らされていく。
楽屋の床には細かいカスやくずが所々散らばっているが、それを気にする人間は誰もいなかった。
「矢口さん大丈夫かな〜?」
パリパリと鳴る音が本当に心配しているのかどうか疑問を持たせる。
亀井は二筒目のプリングルスを開けると、道重に差し出した。
道重は無言のまま筒から1枚取り出すと、パクッと一口でそれを平らげた。
「急性腸炎ってやっぱり痛いのかな?」
「入院してるくらいだからかなり大変だと思うの。」
「二人とも説得力がないと。あ、絵里ちょうだい。」
「はい。」
3人とも口と手の動きに説得力が全くない。
本心を話しているのは誰もいないのではないのかと疑ってしまう。
- 527 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:40
-
ページをめくりながら真剣な顔つきで本を読んでいた高橋の手があるとき突然、止まった。
本の後ろからしおりを取り出すとページの間に入れ、音を立てて本を閉じる。
机の上に本を静かに置くとバックの中から携帯を取り出し、弄くりだした。
すごいスピードで弾くようにボタンを押していく。
そしてある時手を止めると、携帯をバックに閉まった。
紺野が携帯を開いたのはその後すぐの事。
するとそれまで小川とあんなに楽しそうに話していたのに、声のトーンが一気に下がった。
紺野の明らかな変化に気がついた小川はすぐに聞いた。
「どうしたの?」
紺野は無言のまま気まずい顔をして携帯のディスプレイを小川に向けた。
小川はすぐに開きっぱなしだった口を抑えると、静かな口調で話を再開した。
- 528 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:40
-
部屋の反対側では石川と藤本が畳の上でストレッチをしながら色々話していた。
ダンスレッスンの後ストレッチをしっかりする事で筋肉を解して次の日に備える。
こういう地味な作業は意外と大事で、筋肉痛を防ぐのにも体のキレを保つためにも
必要不可欠といえる。
「寒〜い。」
「ちょ、ミキティひど〜い!」
冷ややかな目をした藤本に対して必死に縋りつく石川。
いつもの楽屋となんら変わりのない光景。普段吉澤は里田のいる楽屋に遊びに行っていたためか、
藤本も石川も楽屋でまで吉澤を追いかけるような事はしなかった。
そのためいつの間にかこのコンビはよく見られるようになった。
「もう極寒だね、滝川くらい寒い。」
「そんなことないよ〜!」
- 529 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:41
-
扉が開く音がして全員の視線がドアへと一瞬だけ集中する。入ってきたのは新垣だった。
罰の悪そうな顔をして眉毛をハの字に曲げ、床に落ちているお菓子の食べかすを避けながら
進んで高橋の横に座った。少しだけ白の残った壁にもたれかかると、一息つく。
高橋は一瞬だけ新垣の方に目をやったが、すぐに読書に戻った。
「愛ちゃん。」
「・・・なにかの?」
「何読んでんの?」
「・・・『電車男』」
「何それ。」
「まんまやがの。」
「そう。」
『・・・・・・。』
ざわざわと声が止まない中で、その会話は異世界の空気を放っていた。
- 530 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:42
-
ある時突然、吉澤が目覚めた。
まだ思い瞼をそっとこすると左手で欠伸する口を抑えながら右手を大きく上に伸ばした。
そして机の上に置いてあった鞄へと視線を落すと、眠そうに細めていた目が一気に開いた。
「ない!!」
突然の大声に楽屋中が静まり返る。
音のない空間で吉澤は何も気にすることなく次の発言のため口を大きく開いた。
「スコーン(バーベキュー味)がない!!」
拍子抜けした。その場にいた全員がそんな表情をした。
目が充血していて少し怖い吉澤に対して、最初に発言したのは小川だった。
「自分で食べたんじゃないですかー?」
「いや麻琴じゃないから。」
「とりあえず食べたのはこの10人の中の誰かですかね。」
冷静な顔をした紺野の言葉に吉澤の目は再び大きく開いた。
- 531 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:42
-
「麻琴か?!」
「私じゃないですよ!あさ美ちゃんとずっと話してましたもん!ね?」
「はい。」
吉澤はとりあえず二人から目をそらすと、にらむような目をして楽屋中を見渡した。
そして6期の3人の前でその視点が定まる。
「お前ら3人の足元。」
吉澤が指差したのはスナック菓子の残骸だった。
3人はすぐに吉澤が言いたい事が分かり大慌てで弁解を始めた。
「これ絵里たちが買ったもんですよ!」
「れいなはずっとゲームしてたっちゃ!」
「さゆも絵里と話しながらこれ食べてたの!」
空になったプリングルズが転がっている。吉澤はそれを見ると溜息を着いた。
- 532 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:43
-
「高橋。」
「・・・・・・・・・。」
高橋は吉澤が沸騰していることなんかお構いなしに本を読み続けていた。
吉澤はその様子を見てまた目線を変える。
「ガキさん。」
「あたしさっきここに帰って来たばっかりですもん!!」
「でもガキさんさっきやっちゃったみたいな顔しとったよ?」
本を読みながら何気なく高橋が発言する。その言葉が吉澤の耳に伝わった頃、
新垣の顔色が一気に悪くなった。
「ガキさん!!」
「違いますよ!!それはちょっとプライベートな事情が諸々に絡んでいてですね?!」
新垣の弁解はこの後5分に渡り続き、結局吉澤が折れた。
- 533 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:43
-
吉澤はゆっくりと楽屋を歩くと相変わらずストレッチ中の石川と藤本の前で止まった。
二人は表情一つ変えずに吉澤を見上げた。
『食べてないよ。』
3人の視線が交錯する。吉澤は考え込んだ後、うんうんと頷いた。
「そうだね。」
吉澤はゆっくりと二人の横を通り抜けると、私の前に止まり、唇を指で軽くこすった。
そしてその指を咥えると、吉澤は怖いくらいの笑顔で言った。
「カオリ、バーベキューの味がする。」
- 534 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:43
- e
- 535 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:43
- n
- 536 名前:犯人 投稿日:2004/10/29(金) 22:44
- d
- 537 名前:おって 投稿日:2004/10/29(金) 22:47
- というわけで今度は「嘘」を書いてみました。
実際このテーマが扱われた時期に6期はいませんが・・・テーマだけ借りているということで。
>>521-522 ◆RIKa1gTQ様
レスありがとうございます。
ホントだ!またやっちまったー!orz ゴメンナサイゴメンナサイ
今回は気をつけたはずです・・・(間違いあったら指摘どんどんよろしくお願いします)
あとこの話の意味がよー分からん、などの苦情はどんどん受け付けます。
上手く書けた自信がないので(汗
- 538 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 03:28
- クックックッ(^m^ )おもしろい!
それにしても愛ちゃんのメールは何じゃったんかのぉ〜
それがちいと気になりよるわw
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 14:43
- 同じく気になっています…
ううん意味シン
- 540 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:33
- カウントダウン
- 541 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:33
-
「いや・・・。」
「3・・・・。」
人生所詮そぎゃんもんなんばい。
常に嫌なことと隣り合わせに人は生きていく。
よか事と悪い事は人生じぇんぶで見ると半々に分かれてるなんてゆうけど、
そぎゃん事は決してなくて。
悪い事の方が圧倒的に多い。
やけんちょこっとしたよか事に幸せば感じて生きていく。
でも今日でそんバランスも終わり。
- 542 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:34
-
「2・・・・。」
人間の一生なんて所詮地球に今まで刻まれてきた歴史と比べたら
花火のように一瞬なの。
でもその一瞬に喜び、悲しみ、怒り、憂い、恨み、希望、絶望、
いろんなものが凝縮されているの。
でもそれって辛すぎると思うの。
だから、ごめんね。
- 543 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:34
-
「だめ・・・。」
「1・・・・。」
骨は拾ってあげるっちゃ。
もう行くの。
- 544 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:34
-
「哀さんへの愛のメール、送信〜♪」
「いやーーー!!!」
亀井の携帯の送信メールを道重は今一度開く。
『あの、今度宝塚に連れていってもらいませんかぁ?☆』
道重はそれを見ると満足そうに微笑んだ。
- 545 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:35
- ご
- 546 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:35
- め
- 547 名前:カウントダウン 投稿日:2004/11/10(水) 23:35
- ん
- 548 名前:おって 投稿日:2004/11/10(水) 23:38
- テーマ無理矢理すぎますorz
>>538 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
笑って頂けてなによりです。ちょくちょく入れた小ネタに笑って
頂いているのだとしたらなおさら。
>>539 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。
えっと、高橋さんは・・・・知らない方が幸せな事があるということでw
- 549 名前:おって 投稿日:2004/11/10(水) 23:41
- 実は先日黄板に立ちました田中生誕祭に「雨」の話と「秘密」の話を投稿しました。
というわけでリンクを。
テーマ:秘密
『かみさまとれいにゃ』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/yellow/1099237060/41-51
テーマ:雨
『天気職人』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/yellow/1099237060/107-125
秘密の方はテーマに沿っているか微妙ですが・・・。
特に『天気職人』は珍しくCPを書いてみたので感想を頂けると今後の参考になると共に
作者が非常に喜びます。
- 550 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:04
- ささやかな夢
- 551 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:06
-
+ + +
雑誌の編集記者の仕事をしている私は、先日絶好の夕陽スポットという記事を書いた。
適当な山の頂上からマニアックな所は高層ビルの屋上まで、色々な所を回って
カメラマンに写真を撮ってもらい、形にした。
努力の甲斐あってか、雑誌の売り上げも好調。友達からの評判も良くて少しだけ鼻高々だった。
夕陽は見る場所によってまるで姿を変える。
山の頂上から見れば向かい側の山へと姿を段々と消してゆく姿は美しい。
オレンジ色の光が降り注ぐように輝く様は、この世の何にも変えられない
何かがあるように思えた。
- 552 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:07
-
コンビニを立ち寄った時、私は雑誌のコーナーに自分の書いてある雑誌があるか見に行った。
「お、あった。」
思わず笑みがこぼれる。
メジャーな雑誌だしあって当然、でも何故だか少し安心した。
そして嬉しいのはもう残り1冊まで売れていることだ。
私は上機嫌でぺッドボトルを物色すると、お昼ご飯のお弁当を選びに歩き出した。
財布の中身と相談してお弁当を抱えるとレジに向かう。
会計を終えて店を出ようとすると、最後の1冊を手に取った女の人が目に入って、私は足を止めた。
買うかな?
その女の人は肌がすごく白く、ホクロが多かった。
背は高く、金髪に染めた髪が帽子から流れ落ちるように出ていた。
ペラペラとページをめくると、ちょうど私の担当のページで手を止め、食い入るように眺め始めた。
なんだか照れくさい。
私は必死に緩む唇を抑えようとしたけど我慢できずににやけてしまった。
誰にも見られないように顔を隠す。
なんとか頬の緩みを抑え込んで顔を上げると、女の人はまだそのページをじーっと見ていた。
ここまで来るとなんだか恥ずかしい。
首の裏が熱くなってきたところで、急に首筋に冷たいものを感じた。
- 553 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:07
-
「!!」
「キャハハハ。」
間もなくして笑い声。犯人は仕事場で同僚の矢口だった。
どうやら彼女もお昼ご飯を買いに来たらしい。
すでに買い物を終えたらしく、弁当の入った袋を前後にゆらゆらと揺らしていた。
「どうしたの?顔赤くしちゃって。」
私は無言で指を指すと、矢口はすぐに大きく分かりやすいリアクションを取った。
「お〜なっちも出世したなぁ!記事見てもらっちゃってさ、次は夜空か?」
「も〜う。からかわないでよ。」
二人で軽く笑う。他のお客さんの視線をいくつか感じたところで私達は目を合わせると、
ゆっくり店を出た。
歩きながらふと、思いついたように矢口は言った。
「なっちさ、あの特集って本当に全部取り上げた?」
「え、え?どういう意味?」
「穴場とかないの?」
「ないよ、ないべさ。全〜部ちゃんと取り上げたべ。」
「ふーん。」
矢口はそれ以降は特にそのことについて話題にすることなく、どうでもいい話をしながら二人で会社まで戻った。
- 554 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:08
-
+ + +
電車の揺れは心地よい眠りを誘って、気がつくといつの間にか降りるべき
駅に到着していた。私は慌てて飛びおきると間一髪電車を降りることができた。
電車で寝違えたりするかどうか、分からないけど首筋が痛い。
最近働きっぱなしだったからな〜。多分疲れているんだろう。
重い足取りで改札を出る。アルコールは一滴も入ってないけどなんだか
二日酔いのようなだるさを感じた。なんだか貧血に近いような、そんな感覚。
夜道をゆっくりと歩き、外灯の僅かな灯りを頼りに私は家路へとたどり着いた。
鍵を開けて家の中に入ると、すぐに玄関に座り込んでしまった。
「なんだろ・・・この感じ・・・。」
とてつもなくだるい。このまま今すぐにでも眠りに落ちてしまいそうな感覚。
でもそうはさせてくれなかった。
ピンポーン♪
静かに、チャイムの音が部屋中に鳴り渡る。
私はなんとか立ち上がると、ドアを開けた。
- 555 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:09
-
「なんでしょう?新聞なら・・・あれ?」
背が高く、大きな瞳と白い肌、ホクロの特徴的な女性。
どこかで見たような気がしたけど、私はすぐに思い出せなかった。
「あの・・・お願いがあるんです。」
風が吹いて髪が靡く。そのとき私は漸くそれが誰だか思いだした。
「あ。さっきコンビニで私の記事を」
「はい。あの・・・夕陽の穴場を教えてください!」
「え!?」
自己紹介もなしにいきなり頼みごと。しかもその場で土下座。
私の寝ぼけた思考回路ではこの状況は処理しきれない。
でもとりあえず、引き取ってもらいたかった私は話した。
「穴場なんかないべ。」
「嘘です。」
「!」
- 556 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:10
-
なんで分かったんだろう、この人。
女の人は頭を上げると立ち上がり、私に一歩歩み寄った。
思わず後ろに下がりたい衝動に駆られるも、身体の動きが鈍い。
彼女はすぐに口を開いた。
「もし頼みを聞いてもらえなかったら」
「聞いて、もらえなかったら?」
「また、噛みますよ?」
「・・・・?」
「私、吸血鬼なんで。」
「・・・・・・・・。」
こういう人なら追い出しても大丈夫だろう。そんでもって警察を呼ぼう。
私はドアを開けるとすぐに追い出そうとした。でも、
「首筋、痛みません?」
そう言われた瞬間、ゾッとした。もし仮に、彼女が本当に吸血鬼なら・・・?
私は靴を脱ぐ事も忘れてお風呂場の鏡まで走った。
「あ・・・・。」
そこに映る私の首には、2つの赤い穴がしっかりと刻まれていた。
- 557 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:11
-
+ + +
どうやら彼女は本当に吸血鬼らしい。
更に加えて自分のお願いを聞かなかったらもっと血を吸う、と言われて私は
渋々彼女を部屋へと招き入れた。
「ども、あたし、吉澤ひとみって言います。よっすぃってみんなに言われてるんでそう呼んでください。」
「普通の名前なんだね。」
「一応人間と共存してますからね。」
洒落で出したトマトジュースをよっすぃは美味しそうに飲み干す。
口に赤いものをつけたままに彼女は話を続ける。
「吸血鬼って言うと太陽の光を浴びると溶けちゃうイメージがありますけど、
今はもう薬が開発されていて外に出てもほとんど影響ないんです。
副作用であたしみたいにホクロだらけになる人いるし、たまに飲み忘れて
外に出て死んじゃう人もいますけど。」
なんでもない顔でそんな事を言うと、よっすぃは残ったジュースを全て飲み干した。
コップを置くと私は紙パックを手に取ったけどお構いなく、って言われたから
そのまま机に置いた。
- 558 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:11
-
「で、よっすぃはなんで夕陽が見たいのかな?」
私は極めて軽い口調で言った。よっすぃも同じように、軽いノリで答える。
「あたし寿命が近いんです。」
「へぇ。・・・え?」
その軽さのあまり、私は一瞬聞き流してしまった。
「今何歳?」
「こう見えても287歳っす!」
何も言えなかった。
そこまで来ると毎年年を数える事さえも面倒臭くならないだろうか。
でもここまで長生きすると死に対する恐怖も薄れてしまうものなのかな。
絶対に知る事のできない感覚だけど、そんな事を考える。
「で、夕陽を全身に浴びて死にたいなって思って。どうせなら美しく死にたいし。
そしたらあの雑誌があって。」
「・・・・分かった。とっておきの場所に連れてってあげるべ。」
- 559 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:12
-
+ + +
雑誌にさえ乗せなかった穴場がある。私の大好きな夕陽スポット。
スポットと言っても、断崖絶壁の崖なんだけど、海へと沈んでゆくその姿、
空と海をオレンジ色に染め、やがて暗くしてしまうその風景は涙さえ誘うものだった。
でも吸血鬼とはいえ、人の死に場所を自分が選ぶとは思いもしなかった。
――どうせなら美しく死にたいし。
そんな言葉をなんとも思わずに言ってしまうよっすぃは、もう生きることに疲れたのかな?
到着したのは午後4時。
夕陽が見えるまで後1時間弱だろうか。
よっすぃは夕陽以外で溶けてしまわぬように、薬の量をしっかりと調整していた。
「殺風景だなぁ〜。」
ただの崖、と言ってしまえばそれまでのもの。
夕陽のないこの崖には、正直価値なんてなかった。
「まあ見てなさいって。最高の夕陽が見れるべ。」
時間は少しずつ、過ぎてゆく。
太陽が西へと傾くまでの僅かな時を、よっすぃは何を想うのだろう。
これから死ぬ事に対して、何を想うのだろう。
- 560 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:13
-
太陽が海へと姿を消そうとしていた。
少しずつ、少しずつ海の色を明るく染め上げていく。
空は早くもオレンジ色に写り、海からの反射で夕陽は普段普通の場所で見る
それの倍の輝きを放った。波に揺れるオレンジは、ただ空を見上げているだけでは
到底見ることの出来ない儚さがあった。
よっすぃは光を自ら包み込むように両手を広げる。
気持ち良さそうに光を浴びている。そしてあるとき時計に目をやると言った。
「そろそろかな・・・。」
段々と沈んでいく夕陽。
海に反射したそれと一緒に浮かび上がるように下から上へよっすぃを包み、
よっすぃもそれを全身で受け止める。すると段々とよっすぃの身体の色が薄くなってきた。
「よっすぃ!!」
まるで透明になるように、オレンジ色の光を浴びながら、段々と色を失っていく。
よっすぃは私の方を見ると、敬礼のポーズを決めた。
「安倍さん・・・・サンキュ。」
その言葉を最後に、一気に加速した光によっすぃは飲み込まれ、
完全に姿を消してしまった。
「・・・・・・・・・・。」
そしてその姿は、たまらなく美しかった。悔しいくらいに。
- 561 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:16
-
+ + +
次の日の夕方も、私はここに立っていた。断崖絶壁のギリギリに立ち、光を全身で受け止める。
それにしても、まさか吸血鬼の寿命がそんなに長いとは思わなかった。
両親共に早くから薬の飲み忘れで亡くなってしまったし、
自分達の家族以外に吸血鬼はいないと思っていたせいかもしれない。
「そろそろだな・・・。私はまだ23だけど。」
私はよっすぃが散る瞬間、魅せられてしまった。狂おしいほどに。
とても気持ち良さそうなその姿は、命を引き換えにしていいとさえ思えた。
私は昨日のよっすぃのように全身を広げると、段々と溶けていく身体を肌で感じた。
夕陽が、たまらなく熱かった。
- 562 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:16
-
- 563 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:17
-
- 564 名前:ささやかな夢 投稿日:2004/11/18(木) 02:17
-
- 565 名前:おって 投稿日:2004/11/18(木) 02:17
- 書き忘れましたがテーマは『斜陽』です。
- 566 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:14
- イン・ザ・ローソン
- 567 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:15
-
ある日私は決意した。
強盗しよう。
正直生活がギリギリ限界でいっぱいいっぱいだった。
お金がない。貧乏学生の私。
仕送りも留年報告を最後にストップ。
おじいちゃんに色々送ってもらったけど役に立ちそうなもんは一つもなかった。
バイトもクビになってから半年が過ぎた。
でも、銀行強盗はちょっとやる根性が無い。一人でやるならコンビニ強盗がいい所だろう。
深夜、人のいない時間帯に、か弱そうな女の子が働いてるコンビニを調べ上げた結果、
近所の青い看板のコンビニがちょうどそれに該当した。
- 568 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:16
-
ネームプレートには「石川」と書かれて茶色い髪の写真が横に貼られていた。
でも今は黒髪。肌は黒いけど、いかにも女の子、という印象の子。
きっと包丁の一つでも突き出せば簡単にお金を出してくれるに違いない。
私は危うく質に入れるところだった刃こぼれのある包丁を鞄に入れ、
家を出た。
やばい、緊張する。
曲がりなりにも法は犯さずにここまで来ていた私だが、
遂に手を汚す日が来たらしい。
- 569 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:16
-
AM1:00。
よくこんな時間に年頃の女の子を働かせるな、半ば呆れながら青色の看板をくぐる。
「いらっしゃいませー。」
女の子の声が聞こえた。やばい、緊張してきた。
落ち着かず全速力でここまで走ってきたから、動悸も激しい。
でも、やらなければならない。
やらないと、もう生活が成り立たない。・・・そうだ。
私は思いついてカップ麺のコーナーに足を運んだ。
お金と一緒にこれももらってしまおう。
何箱か拾い上げ、私はレジまでゆっくりと歩いた。
- 570 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:17
-
精神安定の時間稼ぎのつもりが全然そんな風には機能してくれなかった。
レジの前にカップ麺を置く。
「いらっしゃいませー。」
改めて女の子は愛想のいい笑顔で答えると、なんというか分からない機械を
バーコードと重ね合わせて値段を計った。
袋を取り出すと、中に入れてくれた。
・・・もう時間が来る。やばい、やばいぞ。
「315円になります。」
私は顔を上げられなかった。深く被った帽子を更に深く被る。
「お客様?」
おい聞いてるぞ?やばい。
顔を上げて顔を見た。・・・可愛い。
こんな子に刃物を突きつけていいのか?
「?」
嗚呼神様、私は愚かな罪人です。
私は覚悟を決めて、鞄に手を突っ込んで包丁を取り出した。
- 571 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:17
- 「金出しな!!」
- 572 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:18
-
「・・・・はい?」
「・・・・え?」
不思議そうな顔をした女の子。
どういうことだ?なんでこんなに落ち着いているんだ?
包丁じゃ迫力足りないかな?
でも振り回せばきっと。
「おら!!殺すぞ!」
「それじゃ人は殺せないかと・・・。」
なんて肝っ玉の据わった女の子なんだ。
それともこう見えて空手の使い手とか?
だからって刃物を目の前に平気なはずが無い。絶対おかしい。
そんなにこの包丁怖くないのか?
私は改めて包丁をまじまじと見つめてみた。
するといつの間にそうなったのだろう、私の手に握られていたのは、
- 573 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:18
-
孫の手だった。
- 574 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:18
- お
- 575 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:19
- じい
- 576 名前:イン・ザ・ローソン 投稿日:2004/11/24(水) 21:19
- おずぼーん
- 577 名前:おって 投稿日:2004/11/24(水) 21:20
-
というわけで短編今度はテーマ:青でお送りしました。
・・・くだらない話を書きたいお年頃だったんです。
- 578 名前:名も無き読者 投稿日:2004/12/08(水) 09:03
- 普通にワロタ。w
この場合の普通は誉め言葉ッスよ?
や、自分も若者なので。(謎
改めて更新お疲れ様です。
ってまだテーマ「青」しか読めてないんですが。
全部読んだらまたレスします。
というわけで少しは休んで下さいな。(爆
- 579 名前:Let’s 断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:26
- Let’s 断食
- 580 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:27
-
「まこっちゃん・・・」
「なに?」
「流石にまずいよ」
「だってこれが元気の源だしー」
「でもさ、あんまり丸くなっちゃうとぉ・・・」
「丸くって、あさ美ちゃんも最近ちょっとふっくらしてきたんじゃないの?」
「し、してないもん!!」
「してるしてるー」
「じゃあまこっちゃん、勝負だ!」
「え?」
「どっちが食べずに耐えられるか!」
- 581 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:28
-
そんなこんなの電話のやり取りで始まった断食対決。
スタートは次の日の朝から。
朝ごはん、それぞれ何も食べなかったのが顔を見れば一目で分かる。
小川は一食抜いただけでげっそりと頬がこけ・・・なんてことは間違いなくなく、
紺野はいつもよりもシャープな目つきに・・・・・なんてことも間違いなくなかったが、
とにかく緊張感を持った表情で構えていた。
二人のピリピリとした空気をいち早く感じ取った高橋は、
「どーしたん?二人ともピリピリして。」
どう空気を読み違えたのか、朝からカールをバリバリ食しながら話しかける。
そんな高橋を、二人は即睨みつける。
「うっ」
目で殺す。
まさしくそんな表現がしっくりと来る。
見事に瞬殺された高橋は新垣の元へと旅立って行くのだった。
- 582 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:29
-
こういう日に限って二人を誘惑するものが次々と目の前に現れるのは
最早世の中の原理であり定め、運命である。
早速朝っぱらから高橋という名の第一の刺客はあっさりと追い払われたが、
段々と時間が経過するに連れて二人の胃も食物を欲し始める。
しかしそこに救いの言葉が降りかかった。
「収録行くよー。」
リーダー飯田の声と共にぞろぞろと出て行くメンバー達。
しかし紺野と小川だけ微動だにしなかった。
他のメンバーが掃けると、早速二人はお互いをけん制し合った。
「まこっちゃん行かないの?」
「あさ美ちゃんこそ。」
「あたしはちょっと遅れて行くよ、だからまこっちゃん早く言った方がいいよ。」
「あさ美ちゃんあたしより先に撮るんじゃなかったっけ?」
ようは二人ともライバルがいない間に高橋が置いていったカールの残りを食べたいだけだった。
「なにやってんの二人とも。早く行くよ。」
『はーい』
しかし飯田の前ではいつもの仲良しだった。
- 583 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:30
-
こういう日に限って体力に物を言わせるような収録が待っているのは
最早世の中の原理であり(ry
しかしまだまだ余裕がある。
二人とも無計画にもフレームイン中は大暴れだった。
激しく動き回り、まるで自分からお腹がすくことを望んでいるかのように。
最初のうちは限度をわきまえたものだったが段々とお互い競い合うように激しさが増し、
遂に監督からやりすぎと注意が飛んだ。
二人ともその頃には息を切らしてはぁはぁと悶えながら視線を絡ませあっていた。
収録が終わるとお次はお待ちどう様お弁当タイム。
ロケ弁当が次々と配られていく中、二人は受け取って箸を割り、大きく口を開けて、
とそこで気づいた。
- 584 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:30
-
アイコンタクトで会話する。
どうする?
いいんじゃない?別に。
ノーカウント?
ノーカウント。
パクッ。
と意志の弱い二人ここで食べてしまったー!
断食にノーカウントなんてありえないはずなのに平然と弁当をかき込んでいく二人。
あっと言う間に平らげて最後に揃ってかぼちゃをパクリ。
終わってしまった至福の時に別れを告げると同時にシアワセそうな笑顔を見せた。
「じゃあここから再開ね。」
「そうだね。」
もう既に断食ではないことに、二人は全く気づいていない。
- 585 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:31
-
こういう日に限ってWが楽屋を訪れるのは最早(ry
当然お菓子を抱えて現れた二人は外見だけでなく内面もいい加減大人になって欲しいものだ、
と切実に感じる飯田は本当に彼女達を知らないだけなんでしょう。
彼女達はバリバリと好き放題スナック菓子を食べながら娘。の楽屋をうろつくと、
紺野と小川の横に座った。
「二人とも食べるでしょ?」
『要らない』
『えー?!』
これにはWも驚いてハモリで応戦。
いつもならちょうだい!と飛びついて半分近くを即消し去ってしまうコンビが
食べないなんて何かあったに違いない。
辻加護は二人の顔色をうかがった。
「熱でもあんの?」
『ない』
「お菓子は?」
『好き』
「食べる?」
『食べない』
おおー、と驚いたWはすぐに楽屋から退散した。
ここに来てやっと断食らしくなってきた。
- 586 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:33
-
3時のおやつの時間を過ぎても二人は何も食べなかった。
それを懸念して吉澤がお菓子を持って二人の前に登場した。
「どうした?元気ないけど。」
これには二人は驚いた。
珍しくお菓子をくれた事よりも楽屋にいる吉澤が物珍しかったのだ。
珍しく現れたら現れたでお菓子をくれるのだとしたらどんなに便利キャラだろう。
元からなついている小川はすぐ吉澤に身体を寄せた。
「こら、太い、太いから!」
「でへへへへー。」
「なに笑いだよ!ほら、食べるか?」
「結構です。」
「なんでいきなり冷めたキャラになるんだよ」
いきなり加入当初ばりにクールな表情を見せた小川に吉澤は衝撃を受けた。
その衝撃はまるで暴れん坊将軍の松平健しか見たことがなくてそれが大好きな人が
マツケンサンバを初めて見たときのようだった。・・・・たとえが分かりにくい。
とりあえず驚きのあまりそれ以上言葉が出てこない。
「紺野は?」
「要りません。」
こんなのこんこんじゃない!吉澤は泣きながら逃げ出した。
- 587 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:33
-
撮影も順調に進み、6時ごろこの日の収録全て終了。
そこで矢口が立ち上がった。
「このあと焼肉行く人ー!」
しかしそう言った直後、ものすごく冷たい視線を二つ、矢口は身体に感じた。
あまりの冷たさに身体の芯から冷え切る。
身体が小さいから全体に回るのも早いのだ。
「う・・・・じゃ、じゃあ石川、行こっか。」
「矢口さん大丈夫ですかー?」
因みに余談だが最初から寒い石川にはこの冷徹な視線は通じない。
「あーそうだ、まこっちゃんうち泊まりに来ない?」
「あーいいかもねー。あさ美ちゃんがご飯食べないの見張れるしー。」
「でしょー?」
この何か引っかかる二人の会話、二人から流れる冷や汗、
笑っているのに全く笑ってない目を見て、ただならぬ事態が二人を襲っていると、
楽屋のほとんどが感じた。
- 588 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:34
-
・・・・
- 589 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:35
-
断食、2日目。
結局夜は何も食べなかった。体力は早くも限界。
小川は無残にも痩せこけ・・・るとしたらダイエットしたい人は誰だって1日くらい絶食するだろう。
蓄えがあった分紺野より若干の余裕があるも、
夜見張って一睡もしなかったことにより激しい睡魔にも常時襲われるためどっちにしろピンチだった。
フラフラとする紺野。同じく今にも眠りに落ちてしまいそうな小川。
食べ物があったらすぐにでも食いつきたい状況だったが、
何故か負けたくないという気持ちが彼女達をそうさせなかった。
だが他のメンバーとしては気が気でない。
二人が生と死、現実世界と夢の間を彷徨っているのを見ていられなかった。
「紺野、なんか食え。小川、とりあえず寝ろ。」
紺野は口を開かないし、小川も目を閉じようとはしなかった。
よく分からないが二人がいかに必死で強情かだけはメンバーに伝わり、
相談の結果他のメンバーは二人の戦いに干渉しないことになった。
何の戦いをしているのかすら、他のメンバーには分からないのだが。
- 590 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:35
-
「まこっちゃん・・・・。」
「・・・・・・・ふぁい?」
「そろそろ寝たら?」
「・・・・・寝たらあさ美ちゃん・・・食べるでしょ・・・。」
「お腹は空かないの?」
「・・・・・空くけどまだまだいけるかな〜。」
「・・反応鈍いよ?」
「・・・・・・・気のせい気のせい。」
ここまで来ると自分がいかに耐え抜くよりもいかに相手を落すかの方が回り始める。
人間所詮卑怯な生き物だ。
しかし二人とも意地でも折れようとはしない。
ただ小川は体脂肪という名のアドバンテージに救われていたため若干優勢だ。
しかしそれでも眠ってしまえば紺野は迷わず食にありつくだろうからどっちが有利とも言えないが。
- 591 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:36
-
昼ご飯。ロケ弁当が今日も目の前に現れる。再びアイコンタクト。
ノーカン?
・・・・・。
まこっちゃん?
・・・・・。
寝てる!食べようっと♪
紺野は迷わず弁当に手を伸ばしたがその瞬間、
ニヤーッと笑う小川の顔がチラッと見え、すぐ手を止めた。
「まこっちゃん。あたしを騙すとはやるなぁ・・・。」
油断大敵。
口を開けて笑っていても、なかなか侮れない女だ・・・。
紺野は弁当を開けると、その開きっぱなしの口の中におかずを放り込もうとした。
ガシッ
数ヶ月ぶりにしっかりと閉じられた口に楽屋内の誰もが驚いたという。
- 592 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:37
-
2日目夜。
いい加減本当に限界が近づいている。
紺野は歩くのも辛そうな表情、そして小川は三半規管がいかれたかのように
足元がふらついて真っ直ぐ歩けない。
流石に小川もこの頃になると絶望的な空腹感に襲われ形勢逆転。
睡魔と食欲で逆にピンチに陥っていた。
「眠い・・・お腹すいた・・・眠い・・・お腹すいた・・・」
「寝ろ!食え!寝ろ!食え!!」
藤本はイライラの限界から小川がそう愚痴を漏らすたびにツッコミを入れる。
心の片隅で、「食ってない割に痩せないな〜」なんて思いながら。
「・・・・・・・。」
紺野は既に意識も朦朧としている状態。
口をパクパクとフグのように開けたり閉めたり。
今にもとげを出して襲ってくるのではないか、と警戒する各メンバー。
そんなとき、一人の救世主が降り立った。
「んあ〜、二人ともどーしたの?」
『・・・・・・・・・いえ』
もう紺野あさ美&小川麻琴を紅白で組んでもいいくらいのユニゾン具合。
後藤もそれでいいじゃん、二人で出るより、なんて思いつつも、
死にそうな顔をした二人の口の中に強引に餌を突っ込んだ。
『ふぐぅ!!』
口がパクパク&半開きだからすんなりと吸い込まれてゆく食物。
- 593 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:38
- 二人とも再度アイコンタクト。
いい?
イイヨイイヨ-
引き分け?
イイヨイイヨー
・・・ダメだまこっちゃん、意識ない。じゃあ、
いただきまーす!!
いただきまーす!!
- 594 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:38
-
・・・・。
- 595 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:38
-
「幸せだねー、まこっちゃん」
「ホントだよ〜。我慢した後のかぼちゃってこんなに美味しいと思わなかったよ。」
嬉しそうに微笑む二人に、後藤は残りのかぼちゃをジャグリング。
そんな後藤を見て、矢口が一言。
- 596 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:39
-
「ごっちんなんでそんなもん持ってんのさ?」
- 597 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:39
- か
- 598 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:39
- ぼ
- 599 名前:Let’s断食 投稿日:2004/12/09(木) 16:39
- ちゃ
- 600 名前:おって 投稿日:2004/12/09(木) 16:43
- 自分で600ゲット!ってなんか寒い・・・。
あー・・・オチてないorz
テーマ:食べ物でした。
>>578 名も無き作者様
レスありがとうございます。
休めと言われると書きたくなるもんです(爆
お誉めの言葉、ありがたく頂戴いたします。
- 601 名前:名も無き読者 投稿日:2004/12/13(月) 18:20
- 更新お疲れサマ・・・ってだから(ry
また所々吹き出しましたよw
そのギャグセンスを超えるなんて自分にはむ(殴/謎
次回も楽しみですがその前に以前の読まねば。orz
- 602 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:17
- Cat’s or dogs
- 603 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:18
-
「犬!」
「猫!」
「もういいよ!よっすぃ〜のバカ!」
梨華ちゃんはさとう玉緒のぷんぷん、
なんかとは比べ物にならない怒りようで部屋を飛び出していってしまった。
「・・・・・。」
あたしはポカンとする以外に選択肢がなかった。
それくらいしか自分のとるべき行動が思いつかなかった。
しばらくドアを眺め続けていたけど、それに飽きるととりあえず体勢を整えた。
「あんなに怒らなくてもいいのに。」
心の底から、素直に出てきた一言だった。
- 604 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:19
-
クリスマスイヴだというのにあたしの部屋は寂しかった。
飾られたちっちゃなツリーもコンセントに差さなきゃただの植木かぶれ。
詰まんない装飾品だ。
幸せって言葉を忘れてしまったみたいな感覚を覚える。
「さて、どうしよう。」
困った。
梨華ちゃんは機嫌を損ねたまま出ていってしまった。
このままだと拗ねて帰ってこないかもしれない。
「よいっしょっと。」
あたしは立ち上がると、財布と携帯、鍵をとって家をあとにした。
- 605 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:20
-
思えば二人で一緒に暮らし始めてから、なんだかんだかなり世話になってきたと思う。
料理がトイレの味がしたり、カーテンピンクに変えられたり、困るようなこともたくさんされた。
でも一緒にいることで楽しい時間を共有できたのは事実だ。
街はクリスマスということもあって幸せな空気が一杯に流れていた。
雪が降れば更に景色の写りも変わるんだろう。
ホワイトクリスマスなんて、日本にとっては夢か幻だ。
子どもがショウウィンドウの前で猫を指差しておねだりをしている。
お父さんとお母さんは「サンタさんがくれるかもね。」と優しく微笑んでいる。
小さい頃の記憶がふとフラッシュバックして、あたしの頬も緩んだ。
幸せそうな親子を横目に、あたしは店に足を踏み入れた。
- 606 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:21
-
店に入ると騒がしい鳴き声がたくさん耳に飛び込んできて、
同時にあの独特な香りが漂ってきた。
商品の彼彼女らも今日なら買ってもらえるんじゃないか、
と本能的に察知しているのかもしれない、
買って買ってと精一杯硝子にぶつかりながらアピールを続けていた。
「可愛いなぁ〜・・・。でも。」
クリスマスプレゼントにはリッチ過ぎるな、値札を見るたびにそう思った。
もう少しどうにかなんないもんだろうか。
たまたま通りかかった店員さんを捕まえて聞いた。
「幾らか負けてもらえませんか?」
「う〜ん・・・。」
あたしが誰だか気づいたのか、店員さんは困ったように笑顔を見せた。
いいじゃん別に、高額納税者がケチったって。
- 607 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:21
-
「じゃあ〜、ちょっと来てください。」
店員さんに連れられて店の奥へと行く。
たくさんのケージを通り過ぎる度に幾度と無く甘い誘惑に誘われたけど、
貼ってある紙がその度にあたしを現実に引き戻した。
無理無理、そんな予算ないから。
レジの後ろの壁際にたくさんの写真月の紙が張られている。
『子犬譲ります』そんなことが書かれている。
店員さんはいくつかピックアップすると、あたしに差し出してくれた。
「これなんてどうでしょうか?可愛いですよ。」
「う〜ん。これ今日もらますかね?」
「え゛?!」
流石に驚きを隠せないのか、
びっくりした顔をあたしにプレゼントしてくれた。
電話してみます、と言って店員さんはレジの奥へと入っていった。
- 608 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:22
-
- 609 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:23
-
「よしよしよし。なんて名前にしよっか〜?」
肩掛け鞄にすっぽりと納まった新しい家族は、ひょっこりと顔を覗かせた。
指を差し出すとクンクンと匂いをかがれてくすぐったかった。
梨華ちゃん、喜ぶかな?
鍵穴を差し込んでゆっくりと回す。
ガチャッ、という音に反応して、子犬が軽く吼えた。
「我が家だぞ〜。」
ドアを開けて、中に入る。
靴を脱いで靴入れを開けると、もう梨華ちゃんの靴が入っていた。
帰ってきたらしい。じゃあ早速驚かしちゃおうかな。
梨華は何故かすごく笑顔であたしのことを見た。
「さっきはごめんね。」
笑って許してもらおうってことだろうか。でも許しちゃう。
「うん、あたしもごめん。」
梨華ちゃんの傍による。
まだ吼えるなよ、まだ。
- 610 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:23
-
『あのさ。』
「よっすぃ〜先いいよ。」
「ううん梨」
キャンキャン!!
吼えやがった・・・。
「・・・よっすぃ〜?」
「・・・あはは。」
鞄から犬を持ち上げようと手を突っ込んだ。
にゃ〜。
「え?」
一瞬梨華がふざけて出した声かと思ったけど、どうやら違うみたいだった。
目が合う。梨華ちゃんはえへっ、とキショい笑いを浮かべていた。
「もしかして、梨華ちゃんも?」
梨華ちゃんは自分の後ろから子猫をさっと出してみせた。
- 611 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:24
-
「あらら・・・。」
お互いの意見を尊重しあう。
あたし達にとって今までそんなことがあっただろうか。
なんだか成長したような気がする。
「どうしよっか・・・。」
「・・・両方飼おう?」
「・・・そうだね。」
こういうのを幸せと呼んでもいいのかもしれない、ふとそんなことを思った。
- 612 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:24
- Merry Christmas
- 613 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:24
-
- 614 名前:Cat’s or dogs 投稿日:2004/12/31(金) 23:24
- 遅いけどorz
- 615 名前:おって 投稿日:2004/12/31(金) 23:27
- 今年最後の更新です(当たり前
>>601 名も無き読者様
レスありがとうございます。
噴出していただけましたか、それはよかったw
これからもどんどん笑っていただければ。今回はそう言う話じゃないですが。
本当はクリスマスに上げるつもりがこんなに遅くなってしまいましたorz
ではもうホント数十分ですが皆様良いお年を ノシ
- 616 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:06
- Glass of red tears
- 617 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:07
-
夜が怖かった。
どこまでも深い闇に飲み込まれ、
何もかも、自らの存在さえも見ることが出来なくなってしまうのに、
たまらない不快感を覚えた。そしてその夜を重ねる度に少しずつ衰えを感じる自らの体は、
もっと嫌だった。暗黒の世界の中、私は少しずつ、少しずつ、朽ちていく。
醜くなる自分に耐えられるほど、私は自分を愛していないわけではなかった。
出来うる限り、いやそれ以上の美しさが欲しかった。
目を閉じた世界と等しいそれは、しかしながら全く違う世界だった。
じわじわと確実に腐っていく肉体。
月の光を求めて彷徨っても、何も変わらなかった。
当てもなく歩き回って、また衰える私のカラダ。
でもそれでも、月の輝きは私を救ってくれる光だと、私は信じきってしまっていた。
悪循環は恐ろしいほどに絡まって。
私は夜の間から朝焼けが見えるまで、いつも、いつまでも徘徊を続けた。
- 618 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:08
-
歳を偽ることがこんなに苦痛となって私に降りかかるとは、夢にも思わなかった。
若い方が通るだろう、と年齢を5つもサバを読んだのがそもそもの間違いなのかもしれない。
歳月を重ねていくに連れ、無理は当然生じてくる。
老化は、仕事でのストレスを手伝って私の予想を遥かに超えるスピードで進んだ。
もうこれ以上、限界なのは充分承知しているつもりだ。
周りは心配そうな目で私を見つめ、揃って「疲れてるんじゃない?」と聞いてくる。
完全にばれるのも、もしかしたら時間の問題かもしれない。
それだけは避けなければならないが、私に術は無かった。
- 619 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:09
-
彼女に対して私は罪悪感と言う感情以外、何も持ち合わせていなかった。
会話の節々に、時折交わされる言霊は、私の胸を締め付けた。
「あたしの方が亜弥ちゃんよりちょっとだけ年上なんだからさ。
たまには甘えてもいいんだよ?」
「えー、じゃあ、たまには」
私が彼女の肩に寄りかかると、彼女は腕を回して私を包み込んだ。
「ほら、もっと。遠慮しないで」
彼女はその言葉が、どんなに私を苦しめているのかも知らない。
偽りの友情、偽りの親友。
信頼しきっていて何でも話せる仲、を親友と定義するのなら、
偽りなのは紛れもない事実だった。
私は彼女に本当のことを、何一つ話せていないのだから。
- 620 名前:Glass 投稿日:2005/01/15(土) 02:10
-
本当のことを言う勇気がない自分がもどかしかった。
それを明かしたことで、一体なんになるのか。
そして彼女はそれに対して、どんな反応を見せるのか。考えたくなかった。
出来ることなら今まで通りの関係をいつまでもずっと、そう願っていた。
でも彼女は、なんでもない顔で、冗談っぽく、私の願いを破壊した。
「亜弥ちゃんさー」
「なにー?」
彼女はあくまで笑顔で、私の口元を軽くなぞった。
「しわー。大丈夫?おばさんみたいだよ」
何気なく言ったに違いなかった、その言葉。
でもその瞬間から、私の中で彼女に対する感情の構造が根底から覆り、
全く新しいものへと変換された。
「美貴たんの意地悪」
「ごめんごめん」
罪悪感から、嫉妬へ。
- 621 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:10
-
彼女は私よりも若い。それだけで自分との差を感じずにはいられなかった。
私自身は自分のことが大好きで、臆面もなくそれを主張し続けてきたが、
そろそろ自分のことが嫌いになってしまいそうだ。
年老いて死するよりは、若く美しさがまだ残るうちに、命を絶ちたい。
既に美しさは満月の後の月のように、欠け始めていたが。
私の思考回路は配線が狂い、論理がおかしな方向へと流されたが、
不思議とそれをおかしいと感じることはなかった。
若さへの憧れ。
それはとても自然で、人類なら誰しも持つもののはずだから。
そんな私がある日古帯びた書物を見つけてしまったのは、運命だったのだろう。
- 622 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:11
-
祖父母の家の物置にずっと眠り続けていた、埃を被った胡散臭い本のようなもの。
ページをめくる度に埃が舞い、ページそのものが腐敗してしまう。
文字を読むことすらままならないものだった。
咳き込みながら、ページをゆっくりと慎重にめくる。
するとある一ページだけ、不思議と綺麗なまま保存されていた。
筆で書かれているけど、なかなかの達筆。そこには「永遠ノ若サヲ手ニスル方法」と書かれていた。
冷静な人ならありえない、の一言で片付けてしまうような、そんな文面に、私は惹かれてしまった。
今の私が一番欲しているもの。
何よりも変えがたい、他の何もよりも必要なもの。
何を犠牲にしてでも、私はそれを手に入れる。
私はなんとかそのページの解読に成功すると、すぐに材料を集めることにした。
- 623 名前:Glass 投稿日:2005/01/15(土) 02:12
-
ページ一杯に書き込まれた材料。
それは永遠の若さを得るための不思議な薬を作るために必要な、様々なもの。
私はびっしりと並べられた20以上の項目を一つずつ集めると、遂に残り一つまでたどり着いた。
「自分よりも若く美しい者の血」
言い聞かせるように、読み上げた。
私の頭の中に浮かび上がるのは、たった一人だけ。
彼女以外、思いつかなかった。
論理が破綻しているのは百も承知。
それでも私は、吸い込まれるように惹かれていた。もし本当ならば。
そう思うだけで私の体はどこまでも一人歩きを続けていくだろう。
永遠の若さを求めて、どこまでも。
- 624 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:13
-
彼女を呼び出すほど簡単なことなんてなかった。
今までのどんな材料を探し当てるよりも容易なことだった。
メール一本打つと、彼女は二つ返事で私の家へとやってきた。
何も知らずに。
「亜弥ちゃーん!」
彼女は無防備な笑顔を見せると、私に体を密着させた。
お互い腕を回して抱きしめあう。
「美貴たんご飯食べよっか」
「うん」
彼女を先に歩かせると、その背中の無防備さに、
思わず口元に三日月を作ってしまう。
私は玄関にあった空っぽの花瓶を拾い上げると、彼女の後頭部目掛けて思い切り振り切った。
- 625 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:13
-
「なん……で」
「なんでも」
あっけなかった。
力なく、重力に従って無抵抗にフローリングの上に堕ちる。
受身も取らずに倒れると、真っ赤な後頭部を惜しげもなく露にしてくれた。
彼女の頭から流れる紅い涙は、砕けた硝子に付着してそれを深紅に染めた。
コップを使って零れ涙を受け止める。
ある程度水面が上昇した所で、これまで集めてきた材料の中に流し込む。
滑らかにとはいかないが、少しずつそれを入れると、かき混ぜた。
これを飲めば、私は永遠の若さを手に入れることが出来る。
両手でコップを包み込み、私はゆっくりと口づけ、間もなく傾けた。
どろどろとしたものが少しずつ歯と舌に絡み合って、喉の奥へと浸食していく。
飲み込むたびに生臭い味がした。
- 626 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:14
-
突然、何かが割れる音がする。
そして間もなく、私は頭部から簾のように落ちてくる紅い何かに気づいたけど、
目の中に入って視界をふさがれた。
すぐに足元がふらつき、壁に寄りかかろうとする。
しかしそれを阻むかのように、私の足首の周りだけ急激に重力が増した。
なすすべなくその場に倒れる。
壁に立てかけられた硝子に私の顔が反射する。
私の目からは涙が零れ落ちていた。紅い、涙が。
でもすぐにその視界も霞み出した。見えない、美しくなったはずの、私の顔が。
なんとか抵抗しようとするも、体が動かない。
やがて私が大嫌いだった闇が私を支配すると、肩の辺りに少しばかしのぬくもりを感じた。
でもそれが彼女の腕なのかどうか、私に知る権利がない。
やがて思考が止まると、私達は赤黒く塗れたヌケガラと化した。
- 627 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:14
- そして
- 628 名前:Glass of red tears 投稿日:2005/01/15(土) 02:15
- 私達は
- 629 名前:Glass 投稿日:2005/01/15(土) 02:15
- 永遠に
- 630 名前:おって 投稿日:2005/01/15(土) 02:15
- 自分に怖い話を書くセンスがないと気づきましたorz
- 631 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:00
- Sunny day Sunday
- 632 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:00
- 39度のとろけそうな日、炎天下の夢Play ball! Play game!
- 633 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:01
-
◇set◇
ツアー中、たまたま大阪で一日空き日が出来た夏のある日曜日のこと。
石川さんはみんなの前で手を上げて言った。
「誰か私と甲子園見に行く人ー!」
当然のように全員チラ見の後すぐに目を逸らす。
あたしも例に漏れることなくそうするつもりだったけれど、石川さんの悲しそうな顔が目に焼きついて、
それが出来なかった。ずっと見続けていれば、当然見られている側はその視線に気づく。
石川さんはちょっぴり驚いた顔をしてあたしを見ると、見たこともないような笑顔で近寄ってきた。
「田中、一緒に行こ!」
周りの視線が痛くて、断れなかった。
- 634 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:01
-
貴重な夏目漱石一人と別れを告げると、あたしは石川さんの後ろをついて歩いた。
蝉の音が騒々しく耳に飛び込んできて、たまらなく暑い。
気づくと額から汗がこぼれていた。
汗を拭おうとハンカチを取り出して額に当てていると、振り返って石川さんと目が合う。
とても嬉しそうに、笑っていた。
「田中は甲子園来るのはじめて?」
「甲子園も何も野球見に来るの自体はじめてです。」
「私甲子園はじめてなんだー。」
聞けよ。
先輩相手にそんなことも言えずに黙った。
適当に空いている席に腰掛ける。
予めコンビニで買っておいた炭酸飲料を口に含むと、既に冷たくなくなっていて不快だった。
- 635 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:02
-
「なんでこっち側なんですか?」
「石川県の高校なのよ!」
地元じゃなくて名前かよ。
「へぇ〜・・・。強いんですか?」
「勿論、ダルビッシュなんか目じゃないわよ!」
気合は入っちょるなぁ。
夜までそのテンションが持ってくれればいいけど。
- 636 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:02
-
◇play ball◇
石川さんの笑顔は小麦色した球児みたいだった、試合開始までは。
石川県の高校のピッチャーが打ち込まれると石川さんは豪快な溜息を吐き出して、
険しい表情に一変した。
苛立つ汗を拭いながら、
石川さんは頑張れー、とこの場に不釣り合いとも言える高い声を張り上げている。
ここで喉をからしたらきっと怒られるんだろうな、あたしも一緒に。
最初のうちはそんなことばかり気になっていたけど、
段々と石川さんの表情を追うのが楽しくて、気にならなくなった。
芝生の上を転がるボール。
目で追うのも一瞬に、あたしは石川さんをずっと見ていた。
ゲームの行方よりずっと、石川さんが気になった。
なんでかはよく、分からないけれど。
- 637 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:03
-
「ああんもう〜!」
「打たれてますよ。」
「うるさい!田中も黙って応援して!」
高い声でヒステリックな悲鳴を上げる女の子。
その横で年下の女の子が冷ややかなツッコミをしてリアクションを楽しんでいる。
はたから見ればバカげた二人かもしれない。
でも、なんていうか、上手く言えないけど、あたしは今シアワセだ。
楽しくて仕方がない。いつも寒い寒いと笑っていた石川さんと話すことが。
日差しが強い。
暑さであたしの頭がどうかしてるのかもしれない。
- 638 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:03
-
◇game set◇
試合は結局石川県の高校の惨敗だった。
石川さんはしょぼんと落ち込んでいたけど、あたしはそんな石川さんをずっと慰めていた。
「落ち込まないで下さいよ、また一緒に見に来ましょう。」
その一言がまずかったのか、石川さんは目を輝かせてあたしの手を握る。
「本当?!」
「・・・たまになら。」
「毎回来ないと嫌ー!」
「吉澤さんと行ってください。」
「行ったことないしどうせ断れるー!」
そうなの?あたしは声には出さず、顔に出した。
それに気づいてか気づいていないのか、石川さんは、
「とにかく、今度は阪神を一緒に応援するよー!」
日差しが強い。
こんな約束をしてしまったのは、夏の太陽のせいにしておこう。
- 639 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:03
- わがままどうし いつまでも
- 640 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:04
- どこまでもいこう
- 641 名前:Sunny_day_Sunday 投稿日:2005/01/27(木) 01:04
- 日曜日♪
- 642 名前:おって 投稿日:2005/01/27(木) 01:04
- テーマ:夏 でした。
次に別れを書いたらそれをこのスレの最後の話としたいと思います。
- 643 名前:おって 投稿日:2005/01/27(木) 01:06
- 因みにほとんどの方がご存知かも分かりませんが
「木更津きゃっつあい。」
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wind/1091797241/
書いてました。
- 644 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/27(木) 20:06
- 石川さんらしさが出てて良かったです
- 645 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:20
- SNOW
- 646 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:20
-
****
燦々と降り積もってゆく雪は淡々と、私の心までも飲み込んでゆく。
身も心も全て冷え切ってしまった私は、力なくそこに項垂れることくらいしかできない。
なにも、なにもできない。
ただここで涙を流して途方に暮れるくらいしか、
そして、雪がやまないように願うことしか。
- 647 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:21
-
*******
打たれた頬は冬の風を浴びてひどく痛んだ。
でもはたかれた頬よりも、心の方がずっと痛かった。
彼女はその綺麗な瞳から涙を流して。
いつものような声で、いつもは言わないような言葉を口にした。
「さよなら。」
たった四文字で構成された、ただ単語。
でもその言葉に詰め込まれた彼女の感情全てが、
私の全身に襲いかかって爪を立てた。
あの夜とは全く違う、痛くて切ない傷跡が、
私を切り刻む。
- 648 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:22
-
切ない表情を浮かべて、目から流れる涙も隠すことなく、
彼女は部屋から出て行く。
強引に開けられたドアが悲鳴を上げる。
ばたんと閉じられたドアは、まるで私達の関係を遮断し、
永久に結び付けられないようにするために。
私を閉じ込めた。
私はゆっくりと机に向かうと、彼女への思いの丈を一枚の便箋へぶつけた。
いかに彼女のことを愛しているのか。
彼女の、愛する全てを。
ペンを持つ手が震えた。
囁くようにこぼした名前は、涙と一緒に便箋に溶けた。
「なっち・・・」
手の震えは肩まで伝わり、やがて私の全身を浸食した。
震えを止めたくて、机に思い切り両手を叩き付ける。
そんなことしても、無駄なのに。
そんなことしても、震えは止まらないのに。
そんなことしても、何も変わらないのに。
- 649 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:22
-
***
視界が白く染まってゆく。
このまま隅々まで、何もかも白くなってしまえばいいのに。
私の手に舞い降りては解けてゆく、儚い雪の影に虚しく笑う。
本当に、一人になってしまった。
今まで何度も出会いも別れも経験してきて、何度も孤独になった。
でも、それは嘘だったみたいだ。
今まで私は、本当に一人になった事はなかった。
だから、自分自身の強さも、弱さも、知らない。
何も。
吐く息は白く濁りを見せると、目の前からやがて消えた。
少しずつ薄れていくそれは、彼女を思い出させるには充分だ。
私は体を倒すと、雪に体を預けた。
- 650 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:23
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−−−寒い、暗い夜は嫌だ。
女々しい物思いに耽る。
机に置かれたままの手紙はついに届くことはないのだろう。
行動に出るだけの勇気を、私は持ち合わせていない。
ただただ何度も、何夜も、彼女を思い出しては眠れぬ夜を過ごす。
真っ暗な部屋の中の、唯一の灯りである煙草の灯は、
私の眠れない心を照らして。
眩しい光を浴びせて寝かせないように。
最後の煙が消えると、私は心の中で彼女の名前をまた、今度は叫んだ。
枯れ果ててしまうほど。
乾き枯れ果てた私の心を潤そうと流れた涙は、
心に水を注ぐ事はついになかった。
- 651 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:23
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あの時どうして、私は嘘をつかなかったのだろう。
いつものように笑って、いつものように接していれば。
そうすればなにもなかったはずなのに。
どうして。
偽りばかりで暮らしていたはずなのに。
壊してしまいたい。
なにもかも、自分自身さえも。
この世界を、私と彼女が、別々に存在するこの世界を。
手放した鳥は二度とは帰ってこない。
- 652 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:24
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*****
もう、この部屋をノックする人は誰もいない。
私の部屋だけが下界から切り離されているみたいに、
全ては息を潜める。
彼女がいなくなってから、どれだけの時が過ぎたのか。
壊された時計を目をやっても、
壊れた心を覗き込んでも、何も分からない。
ただ時折吹き込んでくる隙間風だけが部屋のBGMとなって、
私の体に冷たく響いた。
ふと窓の外を見る。
雪が降っていた。
私は気づくと厚着もせずに、
独りでに歩き出した体を止めることなく、外へ出ていた。
そのままゆっくりと白い絨毯の上を歩くと、
やがて腰を下ろした。
立ち上がる気も、帰る気もなかった。
- 653 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:24
-
*
雪よ踊れ。
今はまだ、やまないで。
私の溜息を優しく吸い込んで。
私の体を包み込んで。
冷たく、暖かく。優しく、強く。
つもれ。
この世の悲しみを全部。
私も、彼女も、なにもかも全て。
深く、深く、埋めてしまえ。
- 654 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:24
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――終曲。
- 655 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:25
- *
- 656 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:25
- *
- 657 名前:SNOW 投稿日:2005/01/31(月) 00:25
- *
- 658 名前:おって 投稿日:2005/01/31(月) 00:26
- テーマ:別れ。
「Sunny day sunday」もそうですが、それぞれ同名の曲をモチーフに作られています。
切なくかけていたかどうか、これが果たして最後に相応しいかどうか、
色々疑問ですが、これにてこのスレは終了とさせていただきます。
- 659 名前:おって 投稿日:2005/01/31(月) 00:35
- ◇目次◇
>>2-232 「ゴーストライター」
>>238-256「シンデレラ・シンドローム」
>>261-417「ナックルボールとさゆの空」
>>356-360「ゴーストライターおまけ?」
>>428-438「HEAVEN'S DRIVE」
>>443-496「波乗りマリー」
>>503-519「とうめいにんげん」
>>523-536「犯人」
>>540-547「カウントダウン」
>>550-564「ささやかな夢」
>>566-576「イン・ザ・ローソン」
>>579-599「Let's断食」
>>602-614「Cat’s or dogs」
>>616-629「Glass of red tear」
>>631-641「Sunny day Sunday」
>>645-657「SNOW」
- 660 名前:おって 投稿日:2005/01/31(月) 00:36
- >>644 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
この話のポイントはそっちよりもいしれならしいです。
でも人物でらしさを出すのが苦手なので勇気付けられました、ありがとうございます。
ってなわけでおしまいです。
- 661 名前:おって 投稿日:2005/02/02(水) 04:13
- 誰も読んでないのを寂しく確認した所で落します。
掲示板やってます、誰も見てない所に宣伝してどうするんだって話ですが
http://jbbs.livedoor.jp/music/11637/
- 662 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/03(木) 08:21
- 読んでるよ!波乗りマリー連載時にここを見つけてハマりました。
それからは毎日m-seek更新情報をチェックしつつシャイなので感想を書けなかったです。
空板のほうもがんばってください
- 663 名前:おって 投稿日:2005/02/05(土) 00:08
- 狽「たーー!
>>662 名無飼育さま
レスありがとうございます。
空板のほうは3月くらいより復活の予定です!
- 664 名前:おって 投稿日:2005/02/06(日) 18:42
- 忘れてた。
2月末の整理で整理してしまって結構です。管理人さんよろしくお願いします。
- 665 名前:◆RIKa1gTQ 投稿日:2005/02/08(火) 22:38
- 読んでるよー
たった今雪板から戻ってきたところだし
体調戻ったようで、よかったです。
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