生意気な精神安定剤

1 名前:右京 投稿日:2004/03/27(土) 16:13
新参者ですが短編集を書かせていただきます。
トバ好きさんと自分好きさんの短編を載せていこうと思います。
右も左もわかりませんので、常識外れなこともするかもしれません。
その際は、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。
2 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:14
眠れない夜はつまらないテレビを垂れ流してベッドの上で体育座り。
別に何が見たいんじゃなくて、
テレビから漏れる光でこの部屋を照らしていたいから。
スタンドの明かりとか部屋の明かりだと強すぎて・・・
見せたくない自分も照らされそうで―――怖い。
そんな夜に部屋に鳴り響くケータイの着信音、
私はクッションに顔を埋めてそれを無視した。
こんな時間に電話をしてくる相手なんて大体予想がつく。
私の気持ちをこんなにさせたヤツからの電話だろう―――――出てやるもんか。
この着信が終わったら電源を切っておかなくちゃと思いながら長い着信を耐えて待つ。
少し前ならこの音を聞く度に期待に心を躍らせてた。
でも今は・・・・・ケータイを壊してしまいたいぐらい憎たらしく聞こえる。
3 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:14




「――――絶対許してやるもんか」




◇◇◇
4 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:14



好きだからって何でも許せるような広い心は持ち合わせていない。
好きだから許せない事はいっぱいあるし、守って欲しいことだってある。
私がただ単にワガママなだけかもしれないけど、
それを承知で付き合い始めたのはアナタでしょ??
私、付き合う前に言ったよね?
ワガママだし束縛とかしちゃうよ?・・・それでも平気??って。
そしたら、亜弥ちゃんのワガママなら聞いてあげるし、
束縛だって苦痛じゃないって笑顔で言った。
しらばっくれたって無駄だからね、ちゃんと私が覚えてるんだから。
なのに今のアナタは何??
電話口だと恋人の声もすぐにわからないし、メールも未だに私からの一方通行。
そしたら怒るのは当然でしょ??なんでわからないのって怒るのは当然じゃん。
――――そりゃさぁ、側にいるときは最大限に優しくしてくれるし
抱きしめて欲しいときに何も言わずに抱きしめてくれることは嬉しいよ。
5 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:15
けどアフターケアも大事にして欲しいんだよ、私は。
逢えない時にこそ優しくして欲しい、側にいてくれる以上に優しい言葉をかけてほしい。
声を聞いたって、メールをしたって補えないモノが自分の中で溢れてきちゃうのに、
それさえしてもらえなかったら私・・・・死んじゃうよ?
アナタが側にいないとダメになっちゃう体になってるんだもん。
気づいてないかもしないけど私、アナタの思ってる以上にアナタのことが大好きなんだよ??
たぶん、アナタよりも全然好きな気持ちの大きさは勝ってると思う。
アナタから寄り添ってくれた恋は今では私一人のものなの??
――――――そんな事思ってしまうほど私の気持ちはボロボロで、淋しくて
・・・側にいて欲しいよ、ホントは。




◇◇◇
6 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:15




―――――また鳴り響く着信音。
今度という今度は許してあげない、絶対許してやるもんか。
ごめんっていうコトバだって何度も言っちゃえば重みがなくなって安くなる。
それをわかるまでは絶対に電話になんて出てやらない
・・・・私も辛いけど、決めたんだもん。
顔を埋めていたクッションをケータイの上に乗っけて音を遮断する。
もしケータイが喋れるとしたら、苦しいよぅ・・・って言ってるかもしれない。
ごめんね私のケータイ、ちょっとだけ我慢してて。
しばらくすると着信音は途絶えて、テレビから漏れる音だけが部屋に響く。
7 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:16
・・・そういえば、明日は用事があるって言ってたっけ
こんな時間まで起きてても大丈夫なのかなぁ??
気にせず寝ちゃうのも腹立つけど、
私のせいで体調を崩しちゃうのはイヤだし元気なままでいて欲しい。
アナタの事を心配する気持ちはこんな時でも変われないのはちょっと悔しい。
でも、自分が苦しいより相手が苦しい方が今の私にとっては苦痛だから。
ベッドとクッションに挟まれたケータイを手に取り、
ボタンを押そうとすると再びケータイが鳴った――――今度はメールの着信音。
誰からだろうと思ってすぐにチェックしてみると―――――
8 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:16


『【件名】Re>
 【内容】そろそろ開けてくれるとウレシーんだけどな。
     美貴もそろそろ限界だったり?       』

9 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:17
何??開けてくれる??・・・・もしかして
私は勢いよくベッドから飛び出すと、そのまま玄関へと急いだ。
ドアのチェーンを外して鍵を開け、裸足のまま外へ飛び出す。

「おぉー・・・やっと開いた。遅いよ、亜弥ちゃん」
「遅いって・・・何も言ってないじゃん」
「雰囲気で気づくのが恋人だろぉ〜?
 亜弥ちゃんが前に言ったじゃんかぁ・・・クシュンッ」
「とりあえず中に入って。そんな薄着じゃ風邪引いちゃう。」
「・・・それじゃ、お言葉に甘えて」

普段から見たことのある部屋着を身にまとっていたミキたんを部屋に入れると
手を引いてリビングまで連れて行き、ベッドの毛布を渡した。

「えぇー・・・亜弥ちゃんの肌で温めてくれないのぉ〜」
「ばか!!お茶入れてあげるからそこでジッとしてなさいっ」
「・・・はぁーい」
10 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:17

たんは観念するかのように肩をすくめ毛布を体に巻きつけると
体育座りでつけてあったテレビを見だす。
それを横目で確認しながら私は台所に向かい、ヤカンに水を注いで火にかけた。




・・・・しばらくしてヤカンが口から湯気を吹いて沸騰を知らせると、
ガスコンロからヤカンを外してティーバックを入れていたマグカップにお湯を注いだ。
二つのマグカップの片方をたんに渡すと、私は離れた場所に腰を下ろした。

「・・・・許したわけじゃないからね」
「わかってるって。ありがと、亜弥ちゃん」

たんは、熱々のマグカップを両手で握ってさっそくソレに口付けた。
11 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:17
「ほぉー生き返るぅ〜♪・・・都内で凍死なんてシャレにならないもんね、よかったよかった」
「よかったじゃないよ、まったく。他人ン家の前で死なれちゃこっちもいい気分しないっつーの」
「えぇー!!そーゆう心配なのぉ??
 ・・・もっとさぁ、ミキたんが死んじゃうなんてヤダよぅ〜って
 泣き崩れるところじゃない?この場面って」
「・・・勝手に言ってろ」
「おぉー怖い怖い。」

首をすくめて再びコップを口に持っていく。
それにしても何でなにも言わずにドアの前なんかにいたんだろう。
逢いたいならメールすればよかったのに――――まぁ、逢いに行くかはわからないけど。
12 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:18

「―――今、なんで美貴がこんなところにいるんだろうって思ったべ?」
「思ってないよ、そんなこと」
「顔に書いてありますけどぉ〜」

にやぁ〜っと口元を吊り上げて私の顔を覗き込む。
人の気持ちを全部見透かしているようなこの表情が嫌い
・・・それも全部当たってるところが尚更キライ。
顔を背けてマグカップに口付けてソレを流し込む。
暖かいのと甘い匂いが気持ちをゆったりと落ち着かせ、喉とココロを共に潤す。
13 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:18

「電話やらメールやらで気持ちを伝えたってダメだと思ったんだわ。
 さすがに美貴だって、申し訳ないと思ってるしね・・・
 今までの事と今回のデートをすっぽかしたコト。」
「・・・」
「だからさぁ、亜弥ちゃんには黙って部屋の前で待とうかなって思ったの。
 直接会ってなんてもらえないと思ったけど、
 ずーっと待ってれば亜弥ちゃんだって外出ぐらいするでしょ?
 その時に謝ろうと思って。・・・でも、あまりにも薄着で出てきちゃったからさ、寒くて寒くて。
 我慢してやろうとは思ったんだよ?これでも我慢強い方だし。
 だけどさ、あ・・・死ぬかもって頭の中に過ってさ、情けなかったけどメールしてしまいました。」
「・・・それって情けないって言う問題じゃないと思うんだけど
 ――――軽いストーカーじゃん、その行動って」
「あぁー・・・ストーカーかぁ・・・亜弥ちゃんにメールしなかったら
 凍死、もしくは警察にいたかもしれないね・・・アハハッ♪」
「アハハじゃないよ、ホントにもぅ!!」
「ごっめんごめん」
14 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:19

頭をガシガシ掻いて豪快に笑ってる。
もぅ・・・何を考えてるかサッパリわかんない。
――――申し訳ないと思ってるならやらないでよ。
怒っているよりも、呆れた気持ちの方が大きくなっていた私を
急にマジメな顔してジィーッとたんは、見つめていた。

「言い訳なんてするつもりない、美貴が全部悪いって美貴自身がわかってるから」
「――――開き直り?」
「違うよ、そんなんじゃなくって本当に申し訳ないと思ってるの。
 亜弥ちゃんからのメールや電話ならそっちが暇な時間ってことでしょ?
 だから思う存分出来るんだけど・・・そうじゃない時はさ、
 なんか・・・忙しいかなって思ってメールも電話もしにくくてさ。」
「――――それ言い訳だよ」
「いやっ・・・そのっ・・・あのっ・・・ごめん」

別に許してあげてもよかった・・・普段なら既に許しちゃうと思う。
けど今日は違った。困った顔が見たかったのかな??自分でもわかんないけど。
ミキたんはさっきよりも体を小さくして俯いていた。
15 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:19

「・・・しょーがないか、自分でも最低の事しちゃったって思うし。
 もっと大事にしなくちゃいけない存在なのに乱暴に扱ってたのが悪いんだもんね。
 ・・・・亜弥ちゃんは何をしても、ずっと好きでいてくれるって思っちゃってて
 でも、そんなのは美貴の勝手な思い上がりだった、これも言い訳・・・・か」
「・・・ミキたん」
「お茶ありがと。―――――それじゃ美貴、そろそろ行くね。」

たんは巻きつけていた毛布をベッドに置くとスッと立ち上がった。
そしてその足で一歩一歩玄関へと向かっていく。
なんでこんなに思いつめちゃったんだろう・・・私の言葉、そんなに傷つけたのかな??
―――――違うよね、その前から電話にも出ないでメールも返さないで
不安になってた心に私が最後の一刺しをしてしまったんだ。
自分がされて不安になったことを相手にもしちゃってる・・・・
されたくなかったことをしちゃってる・・・・
私は・・・・私は・・・
たんの姿が視野からなくなるギリギリのところで私も立ち上がって
たんを後ろから抱きしめた。
16 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:20

「亜弥ちゃん??」
「まだこんなに冷たいじゃん。ダメだよ、温まらないと」
「だってこれ以上迷惑かけたくないし。」

振り払おうともがくミキたんを更に強い力で入れて抱きとめると、
少しずつ抵抗していた力を抑えていった。

「・・・私ね、すっごい淋しかったんだ。
 ミキたんはもう私の事キライになったから優しくしてくれないのかなって」
「そんなことないっ!!美貴は今でも亜弥ちゃんを―――」
「うん、わかってる。たんも私が電話もメールもしなかったら悲しかったんでしょ?」
「――――うん」
「私はミキたんが感じた何十倍も辛かったんだからねっ!!
 たんにずぅーっとずぅーっとイジメられてたんだから」
「そんな美貴は―――」
「まだ言い訳する気?」
「・・・スミマセン」
「ホントにすまないって思ってる?」
「もちろんだって!!今後は日々是精進する次第でございまする」
「じゃあねぇ、一つだけ約束守ってくれたら許してあげる。」
17 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:20
「何??何でも守るよ、亜弥ちゃんとの約束ならっ!!」
「今まで散々破ったクセに?」
「うぅ・・・」
「来月の最初の休みの日にデートして。じゃなかったらもう私達は・・・」
「わ、わ、わかった!絶対する約束するっ!!
 亜弥ちゃんとのデートならたとえ火の中水の中井戸の中・・・」
「そんなところに私行かないし」
「じょ、じょ、冗談だって!!いや、冗談はその例えであって・・・
 その・・だから・・・美貴の気持ちは」
「あはっ♪わかってるわかってるってば。可愛いね、ミキたんは」
「なっ―――」

真っ赤になった耳にフゥーっと息を吹きかけて石になってもらってから
たんの上着の袖を引っ張ってベッドに誘導する。
正気に戻ったミキたんは一瞬、戸惑いはしたけれど状況を把握してギューッと抱きしめてくれた。
18 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:21

「ねぇねぇ」
「なぁーによ?」
「アンタ、明日用事があるんじゃなかったの??・・・もう明日になっちゃうよ??」
「あぁ、大丈夫ダイジョーブ。もう半分用事済ましてるから」
「ほぇ??」
「亜弥ちゃん家に突如乗り込んでやろうと思ってただけだから。もぅ半分は用事済んでるでしょ」
「ぬわぁにぃ〜!!!他人ン家に勝手にお邪魔しようと思ってたの??」
「へ?ココは亜弥ちゃんと美貴の家だからねぇ♪ってデレデレな顔で言ってたじゃん」
「はぁ!?アンタがいっつもデレデレな顔じゃんかよぉー」
「うわぁー怖い怖い。責任転嫁しちゃうなんて」
「このぉー!!バカたんっ!!」
「アホ亜弥っ!!」
「「むぅー!!」」
19 名前:カモミール 投稿日:2004/03/27(土) 16:21





こーやってじゃれ合ってる時が一番楽しい。
やっぱりたんとはずぅーっと一緒にいたいし、仲良くラブラブでいたい。
今度約束破ったり、私を放っておいたら・・・・ただじゃおかないからねっ!!バカたんっ。

おわり。
20 名前:右京 投稿日:2004/03/27(土) 16:28
更新終了。
あやみきに見えないものを書いていくと思いますが
温かく見守っていただけると幸いです。
21 名前:名無しapple 投稿日:2004/03/27(土) 16:42
かわいいあやみきに癒されました(*´∇`)
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 02:02
十分すぎるほどのあやみきを堪能させてもらいました。
まさに精神安定剤ですね。これからも頑張って下さい。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 02:24
おお!いいもの発見!!
即ブクマクさせていただきました。
これからにも期待してます。
24 名前:名無し飼育 投稿日:2004/03/28(日) 04:53
また飼育に来る楽しみが一つ増えました。
次のあやみきが楽しみです。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 16:42
あやみきぃ〜〜!大好きです。
ごちそうさまです。ありがとうございます。
次、楽しみしてます。
26 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/30(火) 03:13
発見!・・・スレタイがまず面白いっす。
最近益々綺麗になってきた二人に、可愛いストーリーを
提供してあげて下さい。応援してます。
27 名前:読者 投稿日:2004/03/30(火) 21:49
うう〜あやみきめっっちゃ良いです。
これからもROMらさせて頂きます。
28 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:31
あのねぇ松浦さん。
この世の中、そう簡単に法律って変わらないんだよ?知ってますか??
日本国ではね、オトコとオンナの結婚は認められてるけどオンナ同士の結婚ってムリなんです。
だからって美貴は日本を離れる気はございません。
・・・そんな目ぇウルウルさせて上目遣いで見られたって無理なモノは無理なんです。
亜弥ちゃんだってもう高3になるんでしょ?それぐらいわかるじゃない。




◇◇◇
29 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:31




ベッドの上に二人向かい合って胡坐をかいて座ってる。
美貴はジャージだからいいんだけどさ、亜弥ちゃんはスカート丈32センチのミニスカート。
なんか亜弥ちゃんが言うには
これがベスト、可愛くみえるしパンツも見えないっ♪・・・らしいです。
こんな説明どーでもよくて美貴が何をいいたいのかっていうと、
その亜弥ちゃんも胡坐かいてるワケですよ。
ってことはパンツ丸見えなワケじゃないですか、
ミキたんに見せるのは問題ないからっ♪なんて思ってるらしいですけど
やっぱり見せるべきではないと思うワケです。
・・・・今流行の古き良き時代のオンナになって欲しいんですよ、亜弥ちゃんにも。
まぁこれはもう何度も言ってきたし、ことごとくシカトされたから半分諦めてるんだけど。
で、そんな亜弥ちゃんが今日もワケわからないことを言って美貴を困らせてるんです。
誰か代わってよ、こんな事言われたって美貴が説明するのメンドイじゃん。
――――あっ!やっぱいいわ、亜弥ちゃんのパンツ見せたくないもん他の人に。
30 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:32


「でもぉ〜たんだって今よりも幸せになるよ絶対。
 ボクと結婚したら一生幸せにしちゃうぜ、べいべ〜♪」
「似合わなスギ。そーゆうのはオトコマエな人が言ったら似合うの。
 亜弥ちゃんが言ったって何もグッとこないから」
「ひっどぉーいっ。アタシがたんを幸せに出来ないってゆーの??
 あのねぇアタシ以外の人にたんの顔をこんなに緩みっぱなしにさせることなんて出来ないよ?」
「・・・それ、自信持って言うような台詞じゃないから。
 ってゆーか、そーゆうことを言ってるんじゃなくて、結婚ってゆうのがさぁ――――」
「大丈夫だよたん。愛に不可能という文字はないんだからっ!」
「おぉーい、人の話聞いてくださーい。松浦さーん、藤本のミキスケはここにいますよぉ〜」
31 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:32

目の中に炎を燃やしてこっちの話なんてカケラも聞いてない。
普段美貴がガァーって一方的に喋ってるからそれの仕返し??
・・・確かに亜弥ちゃんと一緒にいると軟体動物みたいに骨がなくなって
ヘロヘロになるぐらい亜弥ちゃんの事を大好きな美貴だけど、
さすがに亜弥ちゃんと結婚は出来ないよ。
この国の決まり云々よりも美貴は亜弥ちゃんに普通の幸せを送ってもらいたいから。
きっとね、これから何年も経てば亜弥ちゃんにだって好きな男の子の一人や二人できる。
そしたら、美貴は潔く亜弥ちゃんから身を引いて
親友として一番の大親友としてその恋を応援するつもり。
だから美貴はそれまでの繋ぎに使ってもらえれば構わない。
亜弥ちゃんの幸せが美貴の幸せだし、亜弥ちゃんの笑顔が見られるなら他に何もいらないもん。
――――――――たとえ亜弥ちゃんの側にいられなくなっても遠くで見守れるならばイイかな。
・・・正直、ちょっと辛いけど。
美貴の気持ちはいつまでも亜弥ちゃんに向いてるから・・・ヤジルシは亜弥ちゃん向きだから。
・・・ってこんなマジメに考えることでもないね。法律がダメって言ってる事はダメ。




◇◇◇
32 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:32




「―――おぉーい、ミキたんやー帰ってこぉーい。」
「ん?!」

自分の世界から帰ってくると、すっかり亜弥ちゃんの目は普通の色素の薄い茶色に戻ってて
しかもその目が超近くにあるんだよねぇ・・・亜弥ちゃん、またオデコくっつけてるんだね。
もぉーなんか面倒くさいから何も言わないけどさ、今度は美貴のいうこと聞いてくれる??

「亜弥ちゃんあのね、美貴と亜弥ちゃんは女同士だから―――――」
「ウソだよミキたん。」
「はぁ??」
「今日何日か知ってる??4月1日、エイプリルフールだよ。
 結婚してなんてウソに決まってるじゃ〜ん。
 さすがにバカなアタシでも簡単な法律ぐらい知ってるよぉ〜。
 何?もしかしてホンキだと思った??
 さっすが、アタシに惚れてるたんだけあるねっ!!エライッ」

・・・・なーんだ、ウソか。
そーいや今日はエイプリルフールだったんだね、すっかり忘れてた。
ホンキで呆れたし、ホンキで焦っちゃったじゃんかよぉ〜・・・ふぅ、安心した。
――――――でもなんでかなぁ・・・ちょっとだけ、ちょっとだけだけど
淋しい気持ちがあるんだよね美貴の胸の中に。
33 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:33
でもそんな事は表に見せないようにして、ハハッ・・・騙されちゃったなぁ〜って軽く微笑むと
亜弥ちゃんの表情が急に曇りだして、顔を離し目を細めて美貴を睨んだ。
―――まさかと思うけど、感づいてないよね??美貴のこの気持ちに。

「なんか隠してるでしょ、ミキたん」
「へ??別に隠してないよ何も」
「いーや、なんか隠してる。
 胸の奥に閉じ込めてないでハッキリ言いなさい、包み隠さず話すのがアタシ達のルールじゃん」
「そんなたいしたことじゃないって」
「――――いいから、話して」

亜弥ちゃんって何でこんなに鋭いのかな?
美貴がちょっとでも気になったことがあったらまるでお姉さんにでもなったかのように
普段より声のトーンを落として、『話して』って言うよね??
亜弥ちゃんよりは顔に出ない方だと思うんだけどなぁ・・・・
まぁ、気づかれたからには隠すことなんて出来ないな、亜弥ちゃんの前じゃ。
だからと言って、こんな顔を合わせて話すのも恥ずかしいから
美貴は亜弥ちゃんの首に腕を回して抱き寄せる。
そして、亜弥ちゃんの耳元でゆっくりと少しボリュームの下げた声で話し始めた。
34 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:33

「なーんかさ、ちょっと淋しくなっちゃったんだよね、
 亜弥ちゃんが側からフッと消えた感じがしたのよ」
「なんで?アタシはここにいるじゃん」
「うん、いるのにね。理由はわからないけど
 亜弥ちゃんの気持ちが遠くに行っちゃった気がしたの。
 ウソだってわかってるのに・・・・なんでかなぁ〜」
「・・・ねぇミキたん、結婚ってゆーのはさすがにウソだけどアタシはたんの事大好きだよ?
 たぶん世界で一番好きって思ってるし、言える自信もある。それに・・・」
「それに??」
「たんの幸せを一番願ってるのもアタシだと思う」
「ほぇ??」

予想していなかったコトバに声がひっくり返ってしまった。
な、な、なにを言ってるの?亜弥ちゃん。
抱きしめたまま目をパチクリさせると背中に回されていた腕が、より美貴の体をキツく抱きしめる。
35 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:34

「コレ、言わないでおこうと思ったんだけど・・・
 ほら、あまりにも重たいオンナになりたくなかったから。
 けどイイキッカケだと思って言っておくね。」
「――うん」
「アタシね、たんの事ホント好きなんだ・・・
 最初逢った時はまさかこの人を好きなるなんて思わなかったけどね。
 どんどん好きな気持ちが大きくなって、好きっていう感情で見てるんだなって思ったときに
 どんな偏った愛だとわかっててもミキたんの事が好きな事は辞められないし止められないってわかったんだ。
 でも、少しでも負担がかかっている事に私自身が気づいたら笑顔でバイバイするつもり。
 きっと涙でボロボロになると思うけど、ミキたんといる時には精一杯の笑顔で別れるつもり。
 こんな事言ったら重たい事考えすぎ、もっと気楽な関係がいーんだけどって思われるのはわかるけど・・・
 なんだろう・・・今知って欲しい、今伝えなきゃいけないなって思ったから。
 良くも悪くも松浦亜弥にとって藤本美貴はホンキで愛してる人だから隠し事はしたくない・・・そう思った」
36 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:34

耳元で話されるから、一言一言が脳へ直接語りかけてくるような気がして
重みのあるコトバのパンチが美貴の脳を揺らす。
まさか亜弥ちゃんも美貴と似たような事を思ってるなんて知らなかった。
一言一言が真剣で、ホンキで美貴を好きでいてくれるから
・・・ホンキで考えてくれてるから言ってくれたんだよねぇ。
ありがとう亜弥ちゃん、包み隠さず自分の気持ちを打ち明けてくれて。
・・・そしたら美貴も隠さないで亜弥ちゃんに今の気持ちを伝えないといけないよなぁ。
けどさっき地味にダマされてるしぃ、普通の言い方でっていうのはねぇ・・・・。
そうだ、今日はエイプリルフールなんだもんね、ウソついても怒られないんだよね?
―――――アハッ♪いいこと思いついちゃったっ。
37 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:35

「・・・亜弥ちゃんってさ、可愛いけどワガママで余計な事まで首をつっこむ世話好きで
 どーしようもない自分好きじゃん??だからさぁ、あんましついていけないんだよ美貴。
 だからさぁ、わかるでしょ??――――――付き合うのは重たいよね」
「そっか。そうなんだ・・・ミキたん・・・そっか・・・」

震えた小さな声で返事をした亜弥ちゃんの体が強張っていくのがわかる。
やばっ!!・・・もしかして言いすぎた??
・・・で、でもさぁ、自分からエイプリルフールの話を振ってきたんだから大丈夫だよね?
落ち着け美貴、落ち着け美貴、平常心・・・平常心。
目を潤ませた亜弥ちゃんの体を一度離してから微笑みを一つ見せる。
そして、ばぁーかと言ってオデコを指でピンッと弾く。

「まぁ、言ってる事はほとんどあってるんだけど一つだけウソついちゃったよ、亜弥ちゃんわかる??
 ほらエイプリルフールだからお返しに・・アハハッ♪
「・・・わからないウソなんかつくなよ・・・・バカたん」
「うっわぁ〜、それって愛情足りないんじゃないの??
 あーわかった、大好きっていう台詞もウソだったんだ?」
「違うよっ!!ミキたんの事大好きだもん。」
「だったら当ててみ?どこがウソだったか」
38 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:35

涙を溜めたまま空を仰いでんーっと唸りながら亜弥ちゃんは考え始める。
しばらく唸った亜弥ちゃんの視線がやっと美貴の下へ降りてきた。
あのさ、普通に見てくれる??こんな時にまで上目遣いかい?アンタは。

「・・・・あんましついていけないってトコロ??
 ほらアタシ、色んなコトに首突っ込んじゃうし」
「違いまぁーす。やっぱり愛が足りないなぁ〜亜弥ちゃんは。
 ・・・付き合うのは重たいってトコロに決まってんじゃんか。」
「だってそれがたんの気持ちなんでしょ?だからアタシとたんは――――」
「これからもずぅーっと一緒にいるんでしょーが、バカ」

亜弥ちゃんの下瞼が重さに耐えられなくなって零れ落ちた涙に口付けて一つ一つ吸い上げる。
美貴が目尻に口付けた時、亜弥ちゃんの口から小さな音が零れ落ちた。
39 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:36

「ミキたんのどれがウソだかわからないよ。
 エイプリルフールでも・・・ついていいウソと悪いウソがあるよ・・・」
「あ、あのさ・・・言ったことはウソだからねウソ。
 でも、これからはホントのこと言うからちゃんと聞いててね。
 ・・・美貴も亜弥ちゃんのコトが大好きで、もう亜弥ちゃんを離さないって決めたの。
 それで素直に好きだって言おうと思ったんだけど
 さっきウソつかれたからお返しにウソついて、
 その後にズバッと気持ちを伝えたら面白いかなぁ〜なんて思って・・・」
「―――――バカ、ウソつくタイミング・・・・悪すぎるよ」
「ごめん、亜弥ちゃんがそんなに退くなんて思わなかったんだよぉ。
 言ってから気づいたんだもん、あっ!コレヤバかったなってさぁ〜。。。
 でもねでもね、亜弥ちゃんを離したくないってのはホントだよ?
 大袈裟だけど死ぬまで一緒にいたいなぁ・・・って、コレこそ重過ぎるよねぇアハハ・・・」

タイミング悪すぎ・・・おっしゃる通りです、美貴もそう思いますから。
最初はすっごいイイ演出だと思ったんだけどね――――見事に失敗しちゃった。
亜弥ちゃんを泣かせるつもりは全然なくて・・・ってゆーか泣かせるなんて最低だと思うし。
美貴が悪い、美貴が悪者、美貴が黒い、クロティって呼んでいいよ。
クロティがイヤならクロたんでもいいから――――ホント、ごめんなさい。
自分がクロティだとつくづく感じながら頭を下げてしばらくすると、
頭をポンポンと叩かれてたので恐る恐る美貴は顔を上げた。
すると美貴の目の前にはウサギのように目を赤くして不貞腐れた表情の中に
笑顔をチラつかせる亜弥ちゃんがいた・・・。
40 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:37

「しょーがないなぁ・・・つかまってあげるか。タイミングの悪すぎるミキたんに」
「――――へ?」
「だからぁ、イヤイヤですけどぉ〜側にいてあげます。そーしないとミキたんが泣いちゃうもんね。」
「泣いてるのって亜弥ちゃんじゃないの?」
「――――なんか言ったか、藤本のミキスケェ」
「い、いや・・・別に。
 ちなみに聞きたいんだけど、側にいてくれるって・・・ホントなの??」
「―――――ホントに決まってるじゃん、ばかぁ」
41 名前:ウソはつけない。 投稿日:2004/04/01(木) 11:37




側にいたいから側にいる、好きだから好きでいる。
自分を曲げるなんてよくないコト。
どんな目で見られたって、美貴は亜弥ちゃんが好きだし、
亜弥ちゃんは美貴のコト好きでいてくれるし。
それだけわかれば十分なんだよね、今更だけどやっとわかった。
今度は笑顔にさせるからさ、同じ言葉で――――――
亜弥ちゃんのコト大好きだから、ずっと一緒に・・・いよ?




おわり。
42 名前:右京 投稿日:2004/04/01(木) 11:59
更新終了。
またしょーもないグダグダしたものですが、
軽く目を通していただけると幸いです。
前回は多くのレスありがとうございました。
いきなりの大量レスにビビッてしまいました(照

>>21名無しapple様
あやみきに見えないあやみきですが
適度に癒しを与えられるように頑張ります(笑

>>22名無し飼育さん
お褒めのお言葉ありがとうございます。
ストックの減らない精神安定剤
・・・自分も欲しいなぁ〜なんて思ったりしてます(笑

>>23名無し飼育さん
あわわ・・・ブックマークに
入れてもらえるようなモノは書けそうにないのですが
楽しんで書いていきたいと思いますのでよろしくです。
43 名前:右京 投稿日:2004/04/01(木) 12:01
レス返しの続きです。
読んでいただけて、反応をもらえる嬉しさは
自分のモチベーションを大幅に増大させてもらえます。
ホント、感謝です。ありがとうございました。

>>24名無し飼育様
期待に副えるモノを書ける自信はないのですが
楽しんで書きますのでよろしくお願いします。

>>25名無し飼育さん
あやみきっぽさが見えるようにこれからも精進して行きますので
見守っていただけると幸いです。

>>26ROM読者様
スレタイはお友達の言葉をお借りしたもので
自分もアクセントがあっていいなぁと思っております(照
イイストーリーを提供できるよう努力していきます。

>>27読者様
ありがとうございます。
あやみきの空気が少しでも感じていただけるように
頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
44 名前:名無しapple 投稿日:2004/04/01(木) 12:46
みきてぃかわいいなぁw
まつーらさん愛されてるなぁ。
45 名前:ROM読者 投稿日:2004/04/01(木) 16:18
更新乙です。
雰囲気が良いですね。ホントにそれっぽい。
こんな感じ大好きです。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/04(日) 23:20
リアルな感じがすごくいいです!
らぶらぶあやみき萌え〜(*´Д`)ハァハァ
47 名前:アタシとミキスケ 投稿日:2004/04/18(日) 17:56
ここに真っ黒い毛に目つきの悪い鋭い目、
首元に黄色の鈴と赤いスカーフを巻いたネコがいる。
アタシはこのネコにミキスケという名前をつけた。
ミキスケは明らかに飼い主がいるハズだが
必ずアタシの家の庭にやってきては、縁側で日向ぼっこばかりしている。
いきなり家に来て、我が物顔で縁側を占領しているそのネコに対して
正直、最初は追っ払おうかと思った。
土足侵入して縁側で寝るって何事かと思うじゃんか。
たとえネコであろうとも容赦しないっ!!って。
・・・けど、やっぱりその愛くるしい容姿(遠目から)を見てると
にゃ〜♪って甘えてきたら、しょーがないオマエの休憩所にしてやるって思ってさ
『ネコちゃぁ〜ん♪』って言いながら手を差し伸べたわけよ、そしたら
ミキスケは初対面のアタシに向かって、その黄色い目で睨みつけ
その後すぐにプイッと顔を背けどっかに行ってしまった。
その時、アタシは思った――――――誰かに似てるなって。
ネコのクセに生意気で、愛想ゼロで、おまけにアタシをシカトするヤツなんて・・・
だからこの名前。
48 名前:アタシとミキスケ 投稿日:2004/04/18(日) 17:56

「ミキスケ、オマエご主人様誰なのさ。いっつも家に来てるけど」
『・・・』
「オマエ、たまには牛乳あげてるアタシに感謝しようと思わないの?
 にゃー♪って可愛らしく鳴いてみたりしてさ。」
『・・・』
「・・・」
『・・・』
「・・・やっぱりオマエ、アタシの大親友に似てるよ。ミキスケ」
『・・・ニ゛ャー』
「・・・しゃがれてるのかよ」

そのハスキーボイスまで似てるとは思わなかったよ。
忙しくて逢えないから淋しい気持ちでいっぱいだったけど
オマエがいると淋しさがちょっとだけ薄くなった気がする。
オマエ、もしかして・・・たんなんじゃないの??
そんなコトバが出そうになったけど、口には出さないで頭を撫でてやった。


――――そしたらやっぱり睨まれた。

おわり。
49 名前:右京 投稿日:2004/04/18(日) 18:03
コレだ!と思う短編が中々かけないので
とりあえず小話を書いてみました。
適当に更新するなっ!と思われるかもしれませんが
ご了承ください。

>>44名無しapple様
ヘタレすぎる美貴さんしか書けませんが
こんな美貴さんも好きになっていただけると嬉しいですw

>>45ROM読者様
微妙なモノですが、喜んでいただけて嬉しいです。
まっつー&美貴さんの雰囲気、ウマく書けるよう努力します。

>>46名無し飼育さん
萌えていただけて嬉しいですww
しばらく小ネタしか載せられない可能性大ですが
見守っていただけると幸いです。
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/19(月) 21:15
高級肉を置いておいたらこんなネコ来ますかねぇ・・・飼いたい(*´∇`)
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/21(水) 21:07
すっごくおもろいです、猫ミキリアルですな!!
更新がんがってください!
52 名前:ROM読者 投稿日:2004/04/23(金) 02:13
更新お疲れ様です。
本当は大好きなのに、素直になれない・・・
と、勝手に妄想してます。すみません・・・
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 03:09
この作品大好きです。
作者さん更新がんばってください!
54 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:00

例えるなら生意気な野良猫。
こっちが下手に出ていれば、プイッと顔を逸らして他の事を興味を示す。
逆に関心のないそぶりをしていれば
にゃーって甘えた声を出しながら頬を摺り寄せてくる。
よーするに、自分勝手自由気まま、ごーいんぐまいうぇいなヤツだって事。
だからこそ目を逸らせないというか、いつまでも側に置いておきたい感じ。
藤本美貴はそーゆう野良猫。
飼い主なんていらねーよってツンとした態度を取ってるやせ我慢が得意な野良猫。
55 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:00



夜遅くにアタシの家にやって来た野良猫は開口一番
亜弥ちゃん、今日泊まらせて!!って怒鳴り気味に言って
靴を適当に放り投げてベッドへ直行した。
言っておくけどミキたんさぁ、ココさアタシん家。
アタシがイイとかイヤって答える前に家にあがるってどーゆうこと??
ミキたんの持ってきたドラムバッグはボフンという音を立てながら床に落ちる。
そして同じボフンという音を立てながらミキたんはベッドに体を沈めた。

「あー!!ムカツク。美貴は悪くないっての!!!!」

大きな枕に顔を埋めてそう叫んだらしい。
防音されたミキたんの声はしっかりとは聞こえなかったんだけど
・・・ご機嫌ナナメらしい事はわかった。
56 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:01
だいたいアタシの家に来るときは、めちゃめちゃテンションが高いか低いかのどっちか。
テンションの高いとき―――機嫌のイイ時は鼻にかかった声で亜弥ちゃ〜ん遊ぼうよぅ
ってアタシが忙しい忙しくないのを考えもせずにベターっとアタシにまとわりついて離れない。
昔さぁスライムって流行ったでしょ?理科の実験とかで作ったりするドロドロベタベタヒンヤリ無機物。
アレが体につくみたいにくっついて離れないの。
スライムと違う事といえば、イイ匂いがするのとアタシもドロドロになっちゃうトコロ。
逆にテンションの低いとき――ご機嫌ナナメの時は、一切くっついたりしてこない。
勝手に家にあがりこんだと思えばベッドにある枕かソファにあるクッションを持ち出して
ぐぉーうぉーブツブツって叫びまくる。
アタシの存在なんて全然関係なくて、ストレスをぶちまければそれで満足らしい。
それだけならまだ許せるんだけど、その日の夜は寝相の悪いたんの抱き枕にされる。
この時のアタシの苦労と言ったら言葉には言い表せない程のモノ。
―――――――ホント、野良猫みたいに自分勝手でしょ?
57 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:01

「そのドラムバッグ明らかに何日も泊まるつもりなんじゃん。
 アタシだってそんなにヒマじゃないんだけど??・・・って聞いてんのかヒトの話」
「だからぁ!美貴はヤル気がなかったわけじゃないっつーの、
 アンタのやってることフツーに見てただけだっての」

・・・あぁ、まったく聞いてないな。
かみ合わない会話をするつもりもないので、
さっきまでしていたお風呂の掃除をしようとその場を去ろうとしたその時――――

「・・・ちょっと待って」

顔だけ振り返ってベッドの方を見ると
ムクッと上半身を持ち上げた野良猫が枕をギュッと胸元で抱えたまま
アタシのことをじぃーっと上目遣いで見つめた。
58 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:01

「いんや、待てない。アタシはこれから誰かさんのせいでやむ終えず中断したお風呂の掃除。
 たんは適当に叫んでりゃいいじゃん」
「いや、そーするのもイイと思うんだけど・・・今日はそれだけじゃなんかムリ」
「はぁ〜・・・意味わかんないから。ムリだろうがなんだろうがアタシは今忙しいの。
 勝手に家にあがったのに命令される筋合いはございま―――――」

言い終わる前にアタシの体はベッドの上のコイツに引っ張られて、抵抗する間もなくギュッと抱きつかれた。

「ちょ、ちょっとぉ!!たんヤメてってば」
「ヤだ」
「ヤだじゃなくて、離せぇ!アタシはまだやることいっぱいあるんだからぁ!!」

体を捻ってもコイツのばか力からは全然逃れられなくて、
観念したアタシはとりあえずフゥ〜っとため息一つこぼして、離しなさいと低い声で諭した。
59 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:02

「なんで離さなきゃいけないのさ」
「やることあるって言ったでしょーが」
「そんなん明日の朝やればいいじゃん」
「今やりたいの、アタシは今やりたいんです」
「んーじゃあムリだね、美貴だって亜弥ちゃん離せらんないもん」

ベッドに二人向かい合って座ってる。
胡坐をかいてるから二人ともパンツなんて丸見え・・・まぁ気にしてないけど。
ってゆーかさぁ、このワガママっぷりは何??
やりたいことあるっつーのに離さないってゆーし・・・。
普段なら唸ってるだけで終わるじゃん、なのに今日はアタシの邪魔するんですか??

・・・あぁわかったわかりましたよ、アタシがここにいればいいんでしょ??
だからさそんな目で見ないでよ、近距離で上目遣いされるのは弱いんだって。
胸の中でため息一つ零して、アタシはコイツの頭をゆっくりと撫で始める。
60 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:02

「美貴ちゃぁ〜ん、何がしたいんでちゅかぁ〜??」
「亜弥ちゃんキショイ」
「・・・う、うっさいなぁ。アンタが離さないからこーゆうことになってるんでしょうが」
「頼んでないじゃん」
「・・・」
「・・・」
「ココ、誰の家?」
「亜弥ちゃん家」
「じゃあわかってるよね?どっちが強いかって。」
「――まぁ・・とりあえず」
「わかってるなら、出てく??」
「ヤだ」
「ヤならさっさと何したいのか言えー!!!!!」

頬を紅潮させて、普段ミキたんのするように睨みをきかす。
アタシの睨みに怖気づいたのか、たんは視線を逸らしたまま手をギュッと握り締めた。
61 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:02

「側にいて欲しいんだ、ちょっとだけでいいから」

消え入りそうな声。
なんだか弱々しく体を小さくしてアタシの手を握り締めてる。
・・・こーゆうのがたんのイヤなトコロ。
クッとアタシの心を鷲掴みして離そうとしない。
おかげで顔が真っ赤になっちゃってるじゃん、アタシ。
見なくたってわかるよ、熱いもん顔が。

――もうしょうがないなぁ・・・。

ふぅーと息を吐いてから、しゅんとうな垂れたミキたんの頭を
アタシの胸に埋めさせてその頭をゆっくりと撫でた。

「何があったか知らないけど・・・特別だからね」
「―――ありがと」
62 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:03

篭った声で言われた感謝の言葉。
フッと笑ったコイツの顔を見るとどうも鼓動が早くなる。
アタシの弱点を全部わかってるからかもしれないけど、不意打ちなのがヒキョウだよ。
ヒキョウすぎてムカつく―――けど全然イヤじゃなくて、むしろ落ち着く。
ナンダカンダ言って、アタシだってミキたんがこーやって甘えてくるのが好きなんだ。
だけど恥ずかしいから言い訳をつけてから相手をする。
―――――素直じゃないのはアタシかもしれないね。
でもこんな事言ったら図に乗るから絶対に言わないけれど。
63 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:03


生意気だと感じるのは自分の感情に素直に生きてる証拠。
どこかしらで抑えている感情をいつもたんは惜しげもなく出している。
・・・いんや違うな、アタシの前だから出してくれてる。
別に自信過剰なわけじゃなくて、そうだって事は見ててわかるの。
その剥き出しの感情に負けて結局相手してさ、アタシもたんも満足するんだよね。
アタシの心にズカズカ入ってくるのはミキたんだけ。
土足厳禁なココロに不法侵入するアンタはやっぱり野良猫。
でもねぇ、ちょっと他の野良猫とは違うことがあるんだ、このミキスケには。
たぶんたんもわかってないと思うけど首輪みたいなモノをつけてるの、野良猫のクセに。
首輪つけてるなら鈴がチリンと鳴るはずなんだけど、鳴らなくて。
その代わりにつけてるモノがちっちゃなカプセル。
アタシの精神安定剤――――アタシの大事なモノ。
だからミキたんは、生意気な精神安定剤ってワケ、おわかり?
64 名前:生意気な精神安定剤 投稿日:2004/05/05(水) 15:03

心の中で胸に顔を埋めてるミキたんに問いかけるけど答えなんてもちろん返ってこない。
――けどその代わりなんだろうか、何かを感じ取ったたんがムクッと顔をあげて
アタシの顔をジィーっと見つめ、ニヤッと口角を吊り上げた。


「やっぱり亜弥ちゃんっておっきいよねぇ・・・ちょっと苦しいもん」
「ば、ばかっ!じゃあ離れればいいじゃん」
「うんにゃ、もーちょっとこのクッションに埋もれてるよ。気持ちイイし♪」
「胸をクッション扱いするなぁ!!」
「アハハッ♪」




しばらくの間、たんがワザと頭をグリグリ押し付けていたのは言うまでもないよね。

おわり。
65 名前:右京 投稿日:2004/05/05(水) 15:16
長い間更新していなくて申し訳ございません。
他に書いてるモノを書いていたら短編を書けず(汗
ってなわけで、前回のネコ話に多少リンクしたモノを。
短いし、終わり方微妙だし・・・
とダメダメなんですけども更新しました。

では、遅くなりましたがレス返し。

>>50 名無し飼育さん
高級じゃなくても肉なら絶対食いついてくると思いますww
出来れば内臓系を(ry

>>51 名無し飼育さん
応援ありがとうございます。
美貴さんってネコっぽいなぁと思っただけの書き殴りですww

>>52 ROM読者様
その妄想スバラシイかと(笑
あの短い文章で何かを感じていただけただけで嬉しいです。

>>53 名無し飼育さん
ありがとうございます。
これからも見守っていただけると嬉しいです。
66 名前:ROM読者 投稿日:2004/05/05(水) 22:58
更新お疲れ様です。
ROMの心も鷲掴み。作者様の作品を読んで、
心休まるこのひとときがROMの精神安定剤。
67 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:31
ホントに仲がいいの?と周りによく言われる。
美貴はもちろん即答であったりまえじゃんっ!なんて答えてるけど、実際はどうなんだろう??
・・・たぶん、きっと・・・いや・・・絶対仲いいからっ。
だってラブラブだよねぇ〜ってあっちも言ってるわけだからね。
・・・え?さっきから誰のこと言ってるのって??
それはもちろん、あの子しかいないでしょう・・・自分がだぁ〜い好きな女の子。
68 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:31


久しぶりに早い時間に終わった仕事。
楽屋でメンバーは帰りの支度をしてる真っ最中。
慌ててバッグにモノを詰めてる人もいれば、のほほ〜んとお茶を飲んでる人もいる。
当の美貴はメールのやり取りをついさっきから。
もちろん相手は・・・。

『みきたんお仕事お疲れ様。それじゃー、ウチに来て来て(はぁと
 今日はキムチ鍋パーティだから材料の買出しよろしくぅ〜♪』

・・・キムチ鍋パーティだからってなに?!
全然聞いてないっつーの。ってゆーか買出しはまた美貴担当??
・・・まったく亜弥ちゃん、行動パターンが一定だし自己中すぎっ。
美貴の仕事が早く終わる→亜弥ちゃんチに行く→○○パーティ(基本的に買出し担当は美貴)→お風呂→一緒にオヤスミ。
別にイヤなわけじゃないけど、普通おかしいと思うでしょ??
ヒトサマの家に住居人じゃない人が先に入って帰りを待つなんてさ。
美貴たんのお部屋だと思っていいからね、だって私と美貴たんの愛のお部屋だもん・・・って。
なんでそんなセリフを恥かしげもなく言えるんですか??
合鍵までもらっちゃってるんだけど。。。いいのか、コレ。
大親友ですけど、ここまで優遇されるのはラブラブのせいだから??
・・・こんな事をメールで言えるはずもなく(ってゆーか、言ってもムダなのがわかってる)
わかった、それじゃ買出ししてから向かうね。と短く返事を打って送信。
ケータイをパチンと閉じてフゥ〜っと天井に向かって息を吐いた。
69 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:32

「愛しのアヤヤとメールですか?ふっじもっとさぁ〜ん。」

ニヤついた顔でゆっくりと美貴の隣に来たのはよっちゃん。
よっちゃんを見る時は必ずニヤけてんだよね・・・マジメな顔ってないの?と真剣に質問したくなる。
まっ、そんな事は美貴にはどーでもいいんですけど。・・・どーせよっちゃんには女房役がいるわけだし。

「そーだよ。亜弥ちゃんからのメール。」
「まったく羨ましいねぇ〜、いつもいつもお熱いメールができるなんてさぁ〜・・・私もしたくなっちゃうよ」
「・・・・よっちゃん、めちゃめちゃオッサンだよ今。」
「いいんだよ〜。羨ましいのは変わりないんだから。私もそんなメールできる人が欲しいよ、うん。」

胸の前で手を組んで、上を見上げてキラキラ目線。
亜弥ちゃんがやったらカワイイだろうなぁ・・・ってこれまたどーでもいいね、こんなこと。
美貴はバッグのヒモを肩にかけて席を立った。

「梨華ちゃんとかまこっちゃんとかいるじゃん、よっちゃんには。
 メンバー以外なら、アヤカちゃんとかまいちゃんとかさ。」
「チッチッチッ・・・藤本。そのメンバーとはアンタ達みたいにあっつーいメールはしてないのっ。」
「・・・メール見た事あんのかよ」
「内容なんて容易く想像できるっつーの。
 どうせみきたぁ〜ん、亜弥ちゃ〜んっておのろけ文を両方とも連発してるんだろ??」
70 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:32

ギクッ・・・。
まさにそのとーり。
そんなにバレバレなのか、美貴達のメールって。
動揺して脈を早く打つ心臓と同じぐらい早くブルブルっと首を振って違うよと言い返した。

「全然違うから。美貴達そんな惚気てないし。
 み、美貴急ぐからもう行くわ。お疲れ様でしたー!!!」

皆のお疲れさま〜の声を背に受けながら楽屋を後にした美貴は、亜弥ちゃんチに向かった。
・・・よっちゃんがこっちが恥かしくなるわってボソッと呟いていたなんて知らずに。


***
71 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:33

「ただいまぁ〜ってゆーか、お邪魔しまぁ〜す!!・・・・って誰もいないか。」

シーンとした部屋に響く美貴の声。
亜弥ちゃんチに到着した美貴の両手は見事にスーパーの袋で塞がっていた。
とりあえずたくさん食べるはずだろうと思って買ってきた野菜とお肉とキムチの素。
もちろん野菜少なめ、お肉多めなのはトーゼンなワケで。
使い慣れた台所まで移動して、買ってきた材料をとりあえず冷蔵庫にしまう。
お鍋の時は亜弥ちゃんも手伝ってくれる。
・・・って言っても美貴が切った野菜をお皿に並べるだけなんだけど。
まぁ、普段はジィーっとソファに座って自分の出てるテレビを見てるか、
美貴の背中から顔出して美貴たんウマイねぇ〜、コレおいしそうだねぇ〜って意味不明におだててるわけだから
ありがたいって言えばありがたいんだけど。

「あっちゃぁ〜、冷蔵庫の中なんもないなぁ〜。多めに買ってきて正解だったかも。
 余っても残り物で何品か作れるし。」

ホントに冷蔵庫の中はスッカラカン。
飲み物とチョコレートがあるぐらい、後は見事になにもない。
72 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:33

「久々に来たらこれだもんなぁ〜。亜弥ちゃんってどーやって生活してるんだろ??
 もしかして美貴以外にも誰か連れ込んで、作ってぇ〜♪ってお願いしてんのかな??
 ・・・まぁ大体の人は喜んで作っちゃうんだろうけど・・・自分をカワイく見せる天才だから亜弥ちゃんって。」

なーんて大きい声の独り言を言ってたら・・・

―――ピンポーン―――

あっ、誰か来た・・・。
袋に残っていた残りの野菜を適当に冷蔵庫に詰め込んでインターフォンまで走った。
ガチャッと音を立てながら耳に近づける。

「はい、松浦ですけど。」
「こちらも松浦ですけど。」
「はぁ?・・・亜弥ちゃんもう帰って来たの??」
「はぁ?はないでしょー!!美貴たんが呼んでるんだもん。急いで帰って来ちゃったよ」
「いや、呼んでないから。・・・ってゆーか早く部屋に入りなって。自分んチでしょーが。」
「はぁ〜いっ♪」
73 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:33

インターフォンを置いたと同時にドダドタドタッと廊下を走る音、そして・・・

「たっだいまぁ〜美貴たんっ♪」
「おかえり亜弥ちゃん。」

ニッコニコして美貴の顔をジィーっと見つめてる。
ちょっと息を切らしてるところに、ホントに急いできたんだ可愛らしいなぁ〜なんて思っちゃってる自分が怖い。

「それにしても早くない??美貴もついさっき来たばかりなのに。」
「思ったよりも早く仕事が終ったの。美貴たんが部屋で待ってるって思ったらソワソワしちゃってて、
 そしたらマネージャーさんが早く帰ってやれって。・・・美貴たんとのラブラブな生活に協力してくれるんだからステキだよねぇ〜♪」
「・・・亜弥ちゃん。もしかして・・・美貴が待ってるんですよとか仕事してる時に言ったりした??」
「もっちろん言ったよ。美貴たんと久々に会えるんですっ!って。」
「・・・おぃおぃ」
「ん??私なんか悪いこと言った??言ってないよね??言ってるハズないよね。」
「・・・言ってないです」
「でしょ〜♪」
74 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:34

やっぱり亜弥ちゃん節はどこに言ってもフル稼働してるんだね・・・。
まぁ〜慣れてるんですけど、いつまで経っても目の前で言われると力が抜けちゃうわ・・・脱力感ってヤツ。
ちょっとグッタリきた体をそのままソファに落とした。
久々の脱力感は、立っている事も許してはくれないらしい。

「はぁ〜、久々だよ亜弥ちゃんのこの感じ」
「・・・美貴たん??」
「疲れるっていうんじゃなくて、イイ意味で脱力感が襲ってくるの。
 松浦亜弥っていう強い風がやってきたっ!って感じ。」
「ぷっあははは。美貴たん全然例えがうまくな〜い。わかんないよー!!」
「わかんなくてもいーの、美貴がわかればそれで十分。」
「もぅー!!せっかく帰って来たのに、いきなりソファに倒れこむなんてダメだよぅ。
 ・・・そんな美貴たんには・・・こうだっ!!」

ソファーに倒れている美貴に向かって、亜弥ちゃんがダーイブッ!!!
反射的にといいますか、ガシッと亜弥ちゃんの体を抱きしめてしまった。

「・・・あっぶないなぁー!人が寝てる場所に飛び込んでくる人がどこにいるんだよっ。」
「・・・ここにいまーすっ♪」
「そーゆうじゃなくてさぁ〜・・・もぅ、亜弥ちゃんはいっつもこうなんだから。」
「えへへ♪」
「えへへ♪じゃないよ、まったく。」
75 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:34

油断もスキもあったもんじゃない。
今は仰向けになれたからよかったけれど、うつぶせだったらどうするつもりなの?!
美貴の呼吸器官が絶対壊れるよ?・・・マジで。
危なかったという気持ちを込めながら、フゥ〜っと息を吐くと亜弥ちゃんがギュゥ〜と強く抱きついた。

「・・・ねぇ美貴たん??」
「どーしたの??亜弥ちゃん」
「こーやって、ギュってしてくれるの久しぶりだね。前に一緒に寝た時が最後だったから。」
「そーいえばそーだね。結構久々かぁ〜亜弥ちゃん抱き枕は。」
「・・・うん」

お泊りするときは必ず一緒のベッドで抱き合って寝るのが決まり。
抱き合うというよりかは、美貴が亜弥ちゃんを抱き枕みたいに一方的に抱きしめると言った方が正解かもしれない。
なーんか落ち着くんだよね、亜弥ちゃんを抱き枕にして寝ると。
リラックスできるんだよ、なんてゆーか亜弥ちゃんの体温と肌の柔らかさが心地イイの。
それと、抱きしめると急に亜弥ちゃんっておとなしくなるのも落ち着く理由かもしれない。
昔、亜弥ちゃんは美貴たんの心臓の音を聞いてるのって言ってたけど・・・ホントなのかな??
抱きしめると途端に静かになって自分からはあまり話しを切り出さない。
いつも押し押しの亜弥ちゃんが急にシュンとしちゃうんだよねぇ〜不思議な事に。
フツーの女の子といいますか、乙女ちっくな女の子になるんですよ。
ほら、今もこーやって・・・。
76 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:34

「・・・やっぱりおとなしくなるんだね、亜弥ちゃん。」
「・・・美貴たんにこーされると落ち着くの。
 ギューって力いれてもらうと、ほわわわ〜んって頭の中がボゥーっとしちゃっていい気持ちになるんだぁ〜・・・」
「美貴も同じかな。抱きしめてると落ち着く。それも久々だと余計に。」
「・・・だね」

フタリで無音の空間を楽しんでいる。
フタリでゆったりとした気持ちでお互いを感じてる。
こーゆう時、亜弥ちゃんはいっつも顔を真っ赤にさせて美貴の胸に顔をうずくませるんだっけ。
それでちょっと時間が経った後に亜弥ちゃん、顔を赤くしたまま上目遣いで言うんだよね、

「美貴たんがいるから・・・頑張れる」

昔からこのセリフが不思議で仕方なかった。
亜弥ちゃんならちょっと自惚れ入っちゃうけど、美貴たんだぁ〜いすきっ♪とか言うのかと思うんだけど・・・。
もしかしたら、ミンナの松浦亜弥から一人の松浦亜弥になってる時なのかもしれない。
表には決して出さないけど、この言葉で溜まっているウヤムヤを外に出してるのかも。
だから美貴もこう答えてる、美貴の素直な気持ちを言葉に表してる。
77 名前:あいにーどゆー 投稿日:2004/05/11(火) 18:35

「亜弥ちゃんがいるから・・・美貴は美貴でいられる」

お互いに頑張れるのは信頼できる相手がいるから。
美貴には亜弥ちゃんが、亜弥ちゃんには美貴が。
やっぱり自惚れかもしれないけど、必要としてるしされてる関係だから
こうやって、ちょっとした時間をフタリでゆったりと共有したいのかも。

「亜弥ちゃん、もうちょっとこうしててもいい??お鍋はちょっと遅くなるかもしれないけど。」
「・・・うん。私ももうちょっとこうしてたい・・・」
「じゃあ、もう少しだけ・・・」




しばらくして、亜弥ちゃんのお腹の虫がなったところでお昼寝タイムは終了。
気を取り直して、お鍋の準備に取り掛かり、フタリでヒーヒー言いながらお鍋をした。
辛いモノが苦手なのにキムチ鍋が食べれるようになったのは美貴といるからだよね、やっぱ。
亜弥ちゃん的に言えば、愛のパワーってやつかな。
・・・うっわー、自分で言うとやっぱり恥かしいわ、亜弥ちゃんにしかいえないよマジメな顔じゃ。
まっ、こーして亜弥ちゃんと美貴はやっぱりラブラブだなぁと再確認することができましたっ♪
亜弥ちゃんは美貴にとって、いなくなっては困る人。絶対側にいて欲しい人なんですっ。

おわり。
78 名前:右京 投稿日:2004/05/11(火) 18:39
以前書いたモノを載せてみました。
俗にいう、『場つなぎ』ということで。
相変わらずのつたない文章ですが(汗

>>66 ROM読者様
ウマイッ!(笑
そういっていただけるとは、作者冥利に尽きます。
更新は不定期ですが毎回見ていただいて感謝感謝で・・・。
これからもよろしくお願いします。
79 名前:ROM読者 投稿日:2004/05/11(火) 21:32
更新お疲れ様です。
>>78・・・ ものすごい場つなぎですね。
お陰でROMはまた発作が起きました。
えっと、萌えろ!マナー部のDVDは・・・(え?
80 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/09(水) 20:11
はぁ〜、なんかじんわり来ます。
何ともいえない甘〜い空気が漂ってきました。
きっと松浦さんは藤本さんの心臓の音を聞きながら彼女の匂いも堪能してるんでしょうねw
次回更新期待してます。
81 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:05
今日だけは好きなんて言葉はいらない。
それよりも言ってほしい言葉があるから。
今日だけ使える、今日だけ有効な呪文。

大好きなミキたんに言って欲しいのに・・・忘れてるの??
アタシの気持ちなんて全然気づかないで、今も誰かとはしゃいでる。
早く言いに来てよ、今日だけしか効き目のない呪文をアタシに使ってよ。




82 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:05
「メール見てないのかなぁ・・・」

殺風景な部屋に置かれた大きめのベッドにゴロンと寝転がって
ケータイのディスプレイ覗いて、ボタンをピコピコ。
センターに問い合わせても、メールは来ていませんとのこと。
ポトンと可愛らしい音を立ててクッションに寝転んだのはケータイ。
入れ替わりに起き上がらせたカラダを開けっ放しの窓の淵に移動させる。
落ちてきたオレンジ色の光を背中に浴びて、部屋の中に長ーい影をご招待。
本当はアイツを入れたかったんだけど・・・どーしたものか、音信不通。

「アタシの事避けてんの?・・・んなわけないか、アタシがいないとダメな子だもん」

絶対的な自信とは裏腹に、ため息一つ零して自分の影をジッと見つめた。





◇4時間前◇
83 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:06
「待った、よっちゃんさんは美貴に何をしてもらいたいわけ?」
「・・・カオリのところに一緒に来てよ、お願いだから」
「はぁ?勝手に行けばいいじゃん」
「だからさぁ、一人じゃ心細くって・・・ブツブツ」
「・・・心細い?」
「・・・うん」

今日は大事な日なのに、この男前に捕まってはや1時間。
普段ならパパッと決めるのに、こう肝心な事になると
優柔不断になるというのは、女の子らしいなと褒めるべきなのか。
それともこんな大事なときに邪魔しやがって!と文句を言うべきか。
美貴には何も出来ないことを言われてもこっちが困る。
気づかれないようにため息をついて、テーブルに置いてある汗のかいたコップに手を伸ばす。
中に入った麦茶で喉を潤すと、もう一度よっちゃんさんを見つめなおした。

「皆認めてんじゃん、二人のアツアツっぷりはさ。
 なのにどーして心細くなったりするんだっつーの。」

右手の人差し指でよっちゃんさんのおでこを押すと
「うぅ・・・」と可愛らしい女の子の声をあげた。

―――――相当に重病だな、コレは。

「カオリの怒ったときってどーなるか知ってる?」

ぼそっと呟かれた言葉は、美貴には答えになっていないように思えた。
いきなりの事だったので、ただ首を横に振って否定の意を表す。
すると、怯えた大きな瞳は天井へ向けられ両手で肩を抱いた。
84 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:07
「何も喋らなくなるの。
 ジッと見つめるだけで、何も喋らない。
 それってどんなに怖いことか・・・わかる?」
「・・・う、うん。なんとなくだけどわかる。
 美貴も亜弥ちゃんが黙って見つめられたら怖いもん、確実に」
「それの10倍、いや・・・100倍ぐらいだと思ってくれればいいや」
「・・・地獄だね」
「・・・そう、地獄」

二人でゆっくりと息を飲んだ。
ピリッとした空気が部屋中を巡っているのを肌で感じ取れる。

「もしかしてよっちゃんさん・・・飯田さんを怒らせたワケ?」
「あ、アタシは何も悪いことしてないんだよ?」
「原因はどーであれ、怒らせたんでしょ?」
「・・・うん」

ここまで男前を弱々しくさせた理由は、飯田さんのご立腹のせいだった。
きっと、十分すぎるほどよっちゃんさんが悪いと思うんだけど
ここで友達を見捨てちゃったら、美貴がカッコ悪い。
というよりも、今よっちゃんさんの頭をパクッと食べたって
面白いリアクションもらえそうにないし。
仕方がないか、たまには助けてあげるよ―――タダじゃないけどね♪
俯いたよっちゃんさんの肩にポンと手を乗せて
コクッと頷いて見せてやると、見る見るうちに表情が煌いた。
85 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:07
「・・行ってくれるの?」
「ただ、こっちにもキャンセルできない大事な用事があるんだから
 途中までついていくだけだからね?」
「ミキティ・・・。
 アンタやっぱし、イイヤツだよなぁ〜!!!」
「うぎゃっ!!!」

美貴よりちょっとだけ勝ってる(しょうがないから認めてる)胸の膨らみを目の前に
露わにすると思いっきり強く抱きしめられた。

――今、美貴は亜弥ちゃんとはまた違う感覚に襲われている。
窒息する恐怖と首の骨が折られちゃうんじゃないかと思うほどの
怪獣圧力に苦しめられてる・・・至福を感じない抱擁。

「離せ!離せってぇ!!!」
「いやぁ〜、こんなにミキティが可愛いヤツとは思わなかったね。
 あややが一途に好き好きビーム出すのもわかるかもなぁ〜」
「そ、そーゆうのが飯田さんを怒らす原因なんだろぉ!!」
「だからぁ!アタシは悪くないっての!!」
「うわぁぁ・・・」

余計に力強く抱きしめられ、しばらく美貴は気を失った。
―――――その数分後、藤本美貴は松浦亜弥と連絡を取れなくなるだった。





86 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:08
昨日はちゃんとメール出来たし、ちょっとだけだったけど電話もした。
「明日はドーンと騒いじゃおうね、お祭りみたいにっ♪」なんて、いつもよりテンション高めで言ってくれた。
なのになんで連絡一本よこさないの??
口には出してないけど、ものすごく嬉しかったんだぞ。
ミキたんと記念日に一緒にいれるんだぁ!って、ガッツポーズまでしちゃったんだぞ。
なのに、なのに・・・あのバカたんはぁぁ・・・
プルプルと握り締めた拳が震える。
ひょっこりウチに来たら、松浦家代々伝わる秘拳でやっつけてやるんだから。
こんな日に持っていたくもない感情を表情と態度に現す。
けれど、同時にソレとは対極の存在の感情もあった。

『もしかして・・・誕生日覚えてないの?
 そんなワケない、あれでもアイツは結構記憶力はある方だし。
 じゃあ何か大事件に巻き込まれたとか?
 何かと巻き込まれるタイプだから・・・・否定しきれない』

寝転がっていたケータイのディスプレイと遠目から覗くけど着信の気配なし。
反対にある机の上に目をやれば、開きっぱなしの手帳にはニヒヒ♪と悪戯っぽく笑うたん。
87 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:08
「やっぱり、あややパンチくらわせてやるしかないな」


プリクラの中でじゃれている自分達を見て、決心がついたその時だった。



―――ピンポーン。




「・・・ナビが壊れた王子様のご登場」




88 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:08
吉澤ひとみと飯田圭織の魔の手から何とか逃げ延びて到着した目的地。
ものすごく遅れたからかな・・・
それとも新着メール10件全部が亜弥ちゃんで返信一切セズだったからかな・・・
でも、これはしょうがないんだってば。
よっちゃんさんと一緒に飯田さんの住んでるマンションの近くまでいったら
イキナリ圏外になって、うっわなんだコレ!?って思ったら
目の前に死神―――ゴホン、飯田さんが立ってて、
逃げようかと思ったんだけど体が金縛りにあったように動かなくて。
・・・もうこれ以上言えない、言ったらまた出てきそうだし。
とりあえず、よっちゃんさんをエサにして美貴はなんとか逃げ延びたワケで。
だから全然、美貴は悪くないし善意がかえって殺意・・・ゴホン、悪意を呼んだってだけで。
ほら、亜弥ちゃん。そんな膨れっ面しないでよぉ、笑顔が可愛いって自分で言ってたじゃん。
スマイルスマイル!!ファーストフードのお店でスマイルくださいって言っても
亜弥ちゃんだったら1000円ぐらい取りそうな、太陽のように輝いた笑顔になってってばぁ!!

「もっとマシな言い訳とか出来ないわけ?」
「言い訳って・・・全部ホントだって言ってるじゃん」

終始膨れっ面の家の主人の顔をしたからグィッと覗き込む。
けれど、弾かれるようにすぐにそっぽを向いてしまう。
美貴的に非常にヤバイ状況を打破すべく、ポンと手を叩いて
ポシェットに入れていた小さい包みを取り出した。
89 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:09
「そ、そうだ!!コレあげる」
「・・・」

無言だったけど、コッチを見てくれた。
これは一気に畳み込むべし。
包みからシルバーのイルカが星に乗っているピアスを取り出して掌に乗せた。

「昔からピアス集めるの趣味だったでしょ?
 ほら、コレも亜弥ちゃんコレクションに入れてくれるといいなぁ〜と思って買ってきたんだけど」

じぃーっとピアスを見つめて後に今度は美貴の目を見つめる。
それを交互に何度か繰り返して、やっと小さな手が包みに伸びた。

「お誕生日おめでとう」
「・・・ありがと」

まだ表情は強張ってるままだし、俯きながら頬膨らませ加減100%だけど
恥ずかしいから美貴のコトを見てないんだって勝手に解釈しちゃいます。

「・・・ねぇ、ミキたん」
「うん?」

アタシは首をかしげて聞き返す。
渡したピアスを手の中に包んで、亜弥ちゃんの大きな瞳はアタシを見つめてる。
90 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:09
どうやら怒りのボルテージは静まったらしい・・・まったくゲンキンな子だなぁ。
ま、いっか。それだけ喜んでくれてるってことだし。
そんな事を心の中でブツブツと喋っていると、亜弥ちゃんの唇が動き出した。

「アタシね、今日はもっとスゴイ事になると思ってたんだ」
「スゴイ事?」
「うん、朝からミキたんが遊びに来てさ。
 二人でずぅーっとベタベタイチャイチャするんだよなぁ〜って。」
「あぅ・・・美貴もそのつもりだったんだけど、ごめんね」
「ううん、いいの。
 ナンダカンダでちゃんと来てくれたし、一番聞きたかった言葉言ってくれたし。
 お休みの金曜日はいつにも増して平凡だったなぁ〜って思えばいいもん。」
「―――明らかにイヤミじゃん」
「そりゃ、たんが全部悪いもんっ。年に1度しかない日をこんな風にさぁ〜」
「だ、だからごめんってば。
 その代わりにこの後は何でもしちゃうから許してよぉ」
「・・・ホントに何でもする?」
「うん。でも、じゃあ死んで!とか辞めてね。
 まだ美貴には限りない可能性を持つ未来が待ってるんだから」
「そんなたんじゃあるまいし言わないってば。
 それじゃあ〜ねぇ、パーティする為に買出しに行こう買出しっ」
「ほぇ?今から」
「うん、今からっ♪」
91 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:10
コクコクと首を縦に振って、にゃははと可愛らしく笑みを浮かべると思うと
握っていたピアスを机に置いて、奥にあった消毒液で適当にピアスを消毒。
今までつけていた、たしかお気にのピアスを外して新しいピアスを両耳に。
つけ終わると、人差し指で弾いてイルカを泳がせる。

「どう?似合ってる??」
「うん、バッチリ。」
「やっぱりぃ〜♪ アタシなんでも似合っちゃうからなぁ〜」
「自分で言うか、自分で!」
「・・・にゃはは♪」

後頭部をガシガシと掻いて照れ笑いを浮かべる亜弥ちゃんはアタシの大好きなまっつーの亜弥ちゃん。
やっぱり笑ってる顔が一番好きなんだなぁ〜って再認識している最中に
既に腕はガッチリ組まれてグィグィと引っ張られてる。

「ほら、行くよミキたんっ!!」
「わわわ、待ってよ。もう少しゆっくりして―――」
「アンタのせいで時間ないのっ。召使いはご主人サマの言う事に絶対服従っ!!」
「だ、誰が召使いだっ!!!」
「うん?――――何でも言う事聞くんじゃなかったの?」
「うぅ・・・」

再び笑みを浮かべた亜弥ちゃんに引きずられて、部屋を出ようとしたその時――――悪夢は再びやってくる。
92 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:10



―――ピンポーン。



「・・・こんな時間に誰だろ?宅急便かなぁ。」
「うぎゃっ!」

引きずられていた力の元が急にいなくなってインターフォンへと足早に駆けていく。
そのおかげで美貴はフローリングの床と情熱的なキス。
気が利かない床だから顔を傾けてくれなくて――――って、誰も床とキスなんてしたくないっ!!
赤くなってヒリヒリしている鼻の頭を押さえながら亜弥ちゃんの元へトボトボと帰ると
そこにはちょっぴり青ざめた気がする亜弥ちゃんの姿。

「・・・お出かけ中止かもしれないよ、ミキたん」
「ふぇ?」




93 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:11


「じゃじゃーんっ!!吉澤ひとみと飯田圭織、只今到着いたしましたぁ〜♪」

両手に大きな買い物袋をぶら下げてブイサインしているよっちゃんさんと
ここがあややの家なんだねぇ〜、なんてぼぉーっと眺めてる飯田さんが美貴達の目の前にいる気がします。
ついに幻覚まで見えるようになった自分に嫌気が差した。
隣で引きつった笑顔を見せてる亜弥ちゃんを見たら、なんとなく現実っぽく思える自分が尚更イヤ。

「あのぉ〜・・・今日はどんな御用で?
 訪問販売と新聞の勧誘はお断りしてるんですけど・・・」
「えぇー、お客さん可愛いからサービスしちゃうのにぃ〜。
 夏こそお鍋セット!に圭織の特製野菜炒めもつけちゃうっ!!」
「えぇーそんなにぃ?!ビックリビックリッ♪」

ノリノリで親指をグィッと立てて営業用スマイル全開なよっちゃんさんに
ベタベタなリアクションの亜弥ちゃん。
アンタ達・・・何しに来たんだ。
っつーか、亜弥ちゃん。今の状況を楽しむなっ!!
口には出さない激しいツッコミに気づいたのか気づかないのか、
ハイテンションなやり取りの隣でひっそり微笑む飯田さんが美貴をジッと見ている。
94 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:11
「・・・なんでしょう?」
「ウフフ。
 今日、あややの誕生日だって聞いたからさ、突撃パーティ!しちゃおうと思って来ちゃった♪」
「来ちゃった♪じゃないですよ、何を考えてるんですか。
 ってゆーか、さっきまでよっちゃんさんとケンカしてたんじゃなかったんですか?」
「あぁ・・・アレはもういいの。愛の力の方が強かったから。
 ね、ダーリンッ♪」

よっちゃんさんの肩に頭をポンと置いた飯田さんを
目に星をたっぷり入れて覗くバカな男前。

「もちろんだよ、ハニー。ボク達の愛はアンコウが棲む深海より深いんだ」
「うんっ♪」

・・・勝手に自分の世界に陶酔してしまった二人。
呆れてモノを言えないとはまさにこんな事なんだろうなって思う。
勝手に亜弥ちゃんの家に入り込んだと思えば、今度はおバカなロミオとジュリエット。
そもそも、亜弥ちゃん家を何で知ってるのかと問い詰めたくなるけど・・・これは言わないでおこう。
しばらくして現世に戻った男前はコホンとワザとらしく咳払い。
95 名前:平凡じゃない誕生日 投稿日:2004/06/29(火) 20:11
「ご存知のとおり、これからあややの誕生日パーティをやるから
 どんどん準備しちゃおう、時間ないしねっ!!」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った!!
 何で勝手に話を進めようとするの?ありえないじゃん、その考え方ありえないじゃん。」
「ばっかだなぁミキティ、話を盛り上げるにはキャラクターは多いほうがいいんだってば。」
「はぁ??話ってなんの事?もぅワケわかんない」
「美貴。世の中、流れに身を任せるのも必要なんだよ」
「そんなん説明になってないよ飯田さんっ!!」
「ミキたん、いいんじゃない?いっぱいで騒ぐのも面白そうだし」
「亜弥ちゃんまで納得しちゃうのかよっ!!」




美貴の力いっぱいのツッコミも虚しく空を切って、誕生日パーティを準備せざるを得なくなってしまった。
たった一人の常識人がちょっとお馬鹿の3人に勝てるワケもなく、美貴は流れに身を任せる事に。
・・・まぁ、亜弥ちゃんが喜ぶならそれはそれでいいような気がするけど・・・なんかなぁ。




その後、見事に大盛り上がりをしたのは言うまでもない―――と思う。
96 名前:右京 投稿日:2004/06/29(火) 20:17
久々の更新でございました。
違うものを書いていまして、
短編を書けなかったと言い訳させてください(汗
あまり更新も出来ないんで、今後は月の底辺にくっつきます。

>>79 ROM読者様

萌えマナ懐かしいですね。
その単語を聞くとまた見ようかなって思っちゃいます(笑

>>80 名無し読者様

実際の二人も甘い生活して欲しいなぁという欲求がでまくりで
みっともない短編でしたが、喜んでいただけて嬉しく思います。
97 名前:ななっすぃ 投稿日:2004/07/02(金) 03:05
待っとりました〜♪
98 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:46
今年の暑い夏もそろそろ荷物をまとめ
過ごしやすい秋にバトンタッチをする時期。
風もだんだんと冷たくなり、木々も赤いドレスを着る為に準備をし始める頃。
そんな季節のせいか、みんな少しずつだけど変化を見せている中、
相変わらず何も変化のないヒトもなかにはいるわけで・・・。


99 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:47
冬の制服に身を包み、短い髪なりに2つにしばってみる。
スカートは何回も巻いて短め、鞄はボロボロだけど色んな落書きが残ってるオリジナル。
自分で言うのもなんだけど、皆が羨む程の可愛さだったりするんだなぁ〜これが。

そんな格好で学校に続く街路樹が並んだ道を駆けてゆく。
・・・って表現するほどキレイな事じゃなくて、遅刻しそうだから猛ダッシュ。
この時間帯になると急に人の数は減って、
歩いている学生は大抵、近場にあるもう一つの学校の制服ばかり。

「だぁ!!!もぅ遅刻しちゃうじゃん」

違う学校の学生を一人抜かして、グンとスピードアップしようと思った矢先――――


―――ズテーンッ!
100 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:47
・・・思いっきり派手に転倒。
鞄の中身を見事にブチまけて、おまけに膝をちょっとスリむく。
あぁーもぅ!最悪っ!!
慌てて鞄の中身を拾って、膝の汚れと少しめくれたスカートを直して
その動作の一環として腕時計に視線を落とす。

「・・・間に合わないジャン」

ガクッとうな垂れつつ、ハァ〜っと大きくため息をついて空を見上げる。
そーいえば、今日は朝からついてない―――
寝坊はするわ、髪は乱れちゃうわ、朝ごはんは牛乳一本だけだわ、挙句の果てには遅刻決定。
ついてないというか、哀れに感じちゃう。
なんだか今日はまだまだついてない気が・・・なんて思えば―――

「今日はピンクかぁ〜。勝負してんねぇ〜♪」

言葉の方向へ振り返ると、そこには同じ制服のミディアムレイヤーの茶髪が
こっちを猫目のように細めてイヤらしく笑っていた。
アタシがこの世で一番苦手な相手であり、最もキライな相手である。
101 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:48
「人のパンツを勝手に見るな、変態っ!」
「なぁーに言ってんの、そっちが勝手に見せてきたんじゃんか。
 見せられるほうの気持ちも考えてよ」
「・・・じゃあ何で鼻の下を伸ばしてるのよ」
「いやそれは・・・朝からいいもん見せてもらったからさぁ〜」
「このド変態っ!!!」

前を向きなおしてアイツを無視して歩き始める。
あぁームカツク。
なんで朝からこんなヤツに逢わなきゃなんないんだろう。
アタシが寝坊して遅刻確定の時間帯にココを歩いているのが悪いの?
違う、アイツがサボリ癖を直せばイイだけの話。
ってゆーかさぁ・・・そんな事より。

「・・・なんでついてくるワケ?」
「同じ学校じゃん、当たり前なコト言わないでよ」
「だっていつも屋上で寝てるだけなクセに」
「おっ、意外とミキのコト観察してるんだぁ〜・・・ふぅ〜ん」
「な、なんでアタシがアンタの事観察しなきゃいけないのよ。
 バッカじゃないのまったく!!」
「ひゅ〜、ムキになるのがますます怪しいねぇ〜♪
 ・・・ってゆーか、亜弥ちゃんは敬語って知らないの?
 ミキの方がさ、一応先輩なんだけど」
「変態に使う敬語なんて ご ざ い ま せ ん」
「・・あー、そうでございますか。」
102 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:48
再び無視して歩みを進める。
向こうも気にしていないようで、話はすっかり別の話題へ転換していった。
さすがに完全無視はアタシの良心が許すことなく、適当に返事はしていた。
アイツもその程度で十分だったらしく、他の人の前ではムスっとしているのにペラペラと喋り続けた。

アイツは決してアタシには近づかず、一定の距離を保って後ろから声を飛ばす。
チラッと後ろを振り返ると、必殺の営業用スマイルを浮かべてひらひらと手を振ってくるヤツ。
学校の中で『カッコよくてクール』と評判で、女の子までも虜にしてしまっている。
何がいいのかアタシにはサッパリわからないけれど、友達が言うには
口数も少ないトコロがクールらしく、人を蔑ましたような視線は色気のある流し目・・・らしい。
アタシが思うには、何を考えてるかわからなくて、いつもお昼に屋上にあがれば
奥のベンチで寝ているただのサボリ人間なだけだ。
103 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:49
「亜弥ちゃんがこんな時間に歩いてるとは思わなかったなぁ〜。
 これはやっぱり、ミキと亜弥ちゃんが結ばれる運命にあるんじゃない?」
「ない!絶対ありえないっ!!」
「そんな強く否定しなくたっていいのに。
 これでも学校だとそれなりに人気あるんだけどなぁ〜。」
「そっちが興味持ってようと、アタシはアンタに興味はないの。
 もう話かけないでよ、こっちは急いでるんだから!!」
「・・・もう遅刻確定なのに?」
「アンタみたいに毎日毎日サボってるようなヒトじゃないんです!!」
「そりゃご苦労なこった♪」

ふにゃっと表情を崩したんだろう。
アイツを見ているわけじゃないけど、こんな明るい声を出したから。
何故か最近はアイツの行動がわかってきたような気がする。
とっても腹が立っているハズなんだけど、完全に嫌になりきれていない自分がアイツを観察してる。
・・・べ、べ、別に好きってワケじゃない。
いつまでも付きまとうストーカー的なアイツを好きになるワケがない!!
104 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:50
自分の中でアイツに対する口論をしているとフッと後ろの気配が止まった気がした。
気になったわけではないけど一応振り向いてみる。
すると、何かを考え付いてニヤッとまたもイヤらしい笑みを浮かべるアイツがいた。

「亜弥ちゃんさぁ、学校サボってミキと一日デートしない?」
「はぁ?!何言ってんの??」
「どーせ今から学校行ったって遅刻を怒られるだけなんだよ?
 優等生の亜弥ちゃんならもちろん文句なんて言われないし、
 ミキの場合はもう諦められてるからね、関係ないし。」
「な、なんでアンタとデートしなきゃいけないのよっ!」
「だってミキ、まだ答え聞いてないもん。
 フラレてるワケじゃないんだからデートぐらい出来んじゃん」
「だから、あの時はアンタが勝手に帰っちゃったから―――」
「それも作戦の一つというものです。
 ・・・ってゆーかさぁ、ただ単にサボるのが怖いんじゃない?
 ほらぁ〜、松浦さんはぁ〜、優等生ですからぁ〜」
「何よ、学校サボるぐらいどーってことない!!」
「よし、じゃあ決まりだっ!!」
105 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:50
しまった!!と思ったときはもう既に遅かった。
反射的に口から出てしまった言葉と同時にアイツは
アタシに駆け寄って、右手をスッと持つとそのまま方向を変えて駅へと駆け出した。

「どこいこっか、動物園?遊園地?・・・それともホテル?」
「学生服着てそんなトコロ行けるかぁぁぁぁ!!!!!」





これからもアタシは藤本美貴から逃げることは出来ないんだろうか・・・。


おわり。
106 名前:ア・イ・ツ 投稿日:2004/09/01(水) 10:52
大変長らくお待たせしました。
・・・と言っても待ってくださってる方がいたかどうかですが
短編をなかなか書けずに2ヶ月、3ヶ月・・・
これからもまったりになるかと思いますが、ヒッソリやろうと思います。

>>97 ななっすぃさん

お待たせしました(笑
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 18:36
おおー、引っ張られる亜弥ちゃんキャワです!!
108 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 21:54
美貴さま。あなたからは誰も逃げれません・・・
109 名前:大塚 投稿日:2004/09/03(金) 00:58
待ってましたよー。そして待った甲斐がありました!
意地っ張り(と勝手に解釈しますが)な松浦さんが可愛いです。
これからもマターリとがんばりましょう…お互いに。
110 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:07
雨の日は別にキライじゃない・・・むしろ大スキ。
そりゃ、前髪が言うこと聞いてくれないし
気分的にジメっとするかもしれないけど・・・それでもスキ。

だって雨の日は堂々と甘えられるから。
偶然を装ってるのはバレバレだと思うけど
帰り道の短い時間だけど、側でミキたんの横顔を見られるからスキ。



独り占め出来るって時間がスキなのかもしれないなぁ・・・にゃははっ♪



111 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:08
「今日はムリ、絶対ムリ。ミキは一人で帰る」
「えぇー!!何でだよぉ。傘忘れちゃったんだから送ってってよ。
 隣の家までなんてちょっと数歩長くなるだけじゃん」
「ダメダメダーメ。悪いけど他あたってよ」
「だってぇ、他の子だとすっごい迷惑かかるじゃん。アタシの家まで送ってもらうなんてぇ」
「じゃあミキにだって迷惑かかるでしょ?」
「ぶぅー!!だっていつもはミキたん送ってってくれるじゃん」

今、藤本美貴の教室で激しくバトル中。
雨の日は何故か傘を忘れてしまうアタシ。
だからって言うのもなんだけど、幼馴染の藤本美貴にいつも相合傘で送ってもらってます。
だけど、今日はなんだか様子がおかしい。
いつもならちょっとイヤそうな顔をするけど二つ返事でOKなのに・・・。

「あのさぁ〜、ぜぇーったい確信犯じゃん、亜弥ちゃん」
「へぇ〜??何のことぉ〜??」

甘ったるい口調でミキたんの台詞をサラッとかわす。
怒ってるというか、呆れた顔に近い表情でアタシの事をジィーっと見つめてくるミキたん。
その視線が痛いから、ちょっと天井なんか見上げてみたりすると
ハァ〜と大きなため息が目の前から聞こえた。
112 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:09
「ミキはヒャッキンのビニール傘しか持ってないの知ってるでしょ?」
「うん、知ってるよ。」
「コレ小さいの、すっごい小さいの。わかる?一人用なの」
「うん、それも知ってる」
「じゃあ何で『雨カクジツ!』って時には
 必ず傘忘れてきて、幼馴染と一緒に帰ろうとするワケ?」
「だって、家が隣だから最後まで濡れる事ないじゃん。
 もしさ、アタシがズブ濡れで一人で帰ったらミキたん心配するでしょ?
 制服って濡れたら結構スケちゃうんだよ?
 イヤライ人に襲われたらちゃんと助けてくれるの?ねぇ、ねぇ!!」

言葉の勢いに任せてググッとミキたんとの距離を詰める。
顔と顔の距離わずか約5センチ、我ながら見事な距離感。
もうチューしちゃおうかと思ったけど、すかさず手の平で押し返されてた。

「・・・わかったよ、もぅ。
 送っていけばいいんでしょ、送っていけば。」

もうダメ降参、と言わんばかりに再び大きなため息をついて帰りの準備を始める。
いつの間にか周りを囲っていた先輩達がクククと笑いを堪えながら
よくやった松浦!とか、やっぱりミキが勝てるワケないんだよねぇ、
とかよくわからない言葉をかけられて、不思議だったけどとりあえず笑顔で
ありがとうございますぅ!って返してみる。
するとガサガサっと適当に鞄の中にモノを詰めこみながらミキたんが
返事しなくていいんだよ、亜弥ちゃん。とため息混じりの声で答えると
笑いを堪えていた先輩達が一斉に笑い出して、教室が黄色い声に包まれた。
113 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:09
「だぁーもぅ!ウッサイんだよ。 ほら、亜弥ちゃん帰るよっ」
「ほぇ?!・・・うわっ」

髪をガシガシと雑にかいた後、そのままグッと腕を引っ張られて教室を後にする。
さっきまで散々イヤだと言ってた割にはゴーインだなぁ。
さっさと歩かれて玄関についた頃には
雨の降りは増していて、この中一人で帰ってたら絶対風邪ひいてたなって思う。

「ほら、亜弥ちゃん鞄かして。」

ザーザーと音を立てながら落ちる雨に夢中になっていたら
いつの間にか隣のミキたんはちっちゃい透明傘を広げて準備万端の模様。
素直に鞄を渡すと右手に2つ抱えて左手に傘を持った。

「こーやっても肩とか濡れちゃうよ、大丈夫??」
「うん、へーきっ♪」

空けてくれていた脇にスッと自分の腕を通して組み合う。
ミキたんのぬくもりを感じるこの瞬間からアタシの幸せの時間はやってくるのだ。

「じゃ、いこっか」
「うんっ♪」



雨の中、私達は歩き出した。




114 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:10



あの角を曲がれば人通りが一気に少なくなって、カンペキな二人だけの時間が流れ始める。
いつもならルンルン気分だけど・・・ちょっと気になることがあった。
雨が振る日は必ずミキたんと帰ってる。
コイツだってちゃんと知ってるし、何も言わなくても送ってくれていた。
けど、今回はあんなに拒否ってみたりするなんて。。。なんかあったのかな?
幼馴染の面倒を見るのがヤになった?・・・だったら、もっとわかりやすく拒否するハズだし。
自分の中で考えてるのもおかしいので、ギュッと組む腕に力を込めた。

「うん?どーしたの」
「なんで今日は帰りたくなかったの? そんなにイヤだった?相合傘」
「いや、そーゆうわけじゃなかったんだけど・・・ちょっと今回はワケありでさ」
「ワケあり?」
「・・・うん。」

視線を泳がせながらの返事。
アタシには言いたくないって素振りだねぇ・・・ミキたん。
でもね、聞かないでおいてあげるよ、なんて言える程大人じゃないんだよねぇアタシ。
未だに空を見ているお隣さんの顔を必殺のウルウル瞳の上目遣いでジィーッと見つめる。
・・・と、こーゆう場合。
アタシの視線があまりにも熱すぎて視線を逸らしているのが耐え切れなくなった藤本美貴は
恐る恐るだけどアタシの目を見てくる・・・その確立100パーセントッ!!
――――ほらね、言ったとおりじゃん。
115 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:11
「・・・言わないとダメ、だよね?」
「言えないようなコトしたの?サイテー」
「ち、違う違うっ!!」

豪快に首をフルフルと横に振る。
その慌て方が怪しいって思わせる行動だってコト・・・わからないのかなぁ。
それにしても、ミキたんイジリって楽しい。
小さな子とお話してるみたいな気分になっちゃうんだよねぇ・・・にゃはっ。
アタシがこんなどーでもイイ事を考えていたなんて知ってか知らずか
怯えた犬のように軽く首をかしげた。

「・・・怒らない?」
「怒るようなことしたの?」
「・・・あぅ」

変な言葉を発して、シュンとうな垂れてしまった愛犬ミッキー。
なんか行動の一つ一つが可愛らしくて、笑っちゃいそう。
しっかりアタシの事は傘の中に入れているのに、傘の中での主導権を握ってるのはアタシ。
さっきまでの事がウソだったように・・・ギャップのありすぎるミキたんは可愛かった。
・・・でも、もうそろそろお話聞いてあげないと可哀想だよね?
あんまりイジメちゃうとホントに怒った時コワイし。
116 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:11
「怒らないからさ、ほら教えて。ね?」
「・・・うん、、、あのね。
 今日が曇りのち雨って天気予報だったじゃん?
 それでこーゆう日は亜弥ちゃんがミキの教室来るの皆知ってるからさ
 友達の一人がからかう感じに
 『ミキの方が亜弥ちゃんと帰るのが楽しみなんじゃないの?』って言ってきてさ。
 そーいわれると・・・反論したくなるじゃん?
 そんな事ないよ、じゃあ今日は帰らないっ!って勢いで言っちゃったワケよ。
 そしたら、じゃあ賭けてみる?みたいな事になっちゃって。
 勝負師のミキとしては絶対に後には退けない状況で・・・」
「アタシを使って賭け事したの?」
「一週間分のお昼賭けて・・・ごめんなさい。」

・・・怒るっていうか、なんだか呆れた。
そんな小学生の言い合いじゃあるまいし、何やってんだかって感じ。
ドーリで最初から勢いよく相合傘を否定してくるはずだ。
いやはや、ミキたんらしいというか、なんというか。。。
117 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:13
「はァ、そんな事で勝負しないでよ。
 負け戦だってわかりきってるじゃん」
「何でさ、もう少しミキの気持ちがガッシリしてれば勝てたべ」
「絶対ムリ、確実にムリ、100%ムリッ!!」

ズバッと言い切って、眉間にシワを寄せながらキッと睨みつける。
凄みなんてミキたんに比べればアリンコみたいなもんだけど、勢いってものが大事よ、大事。

「なんでそんな言い切れるのさ?」
「バカねぇ、ミキたん。
 ミキたんにアタシを捨てられるワケがないじゃないっ!!」
「・・・」

人差し指をピンと伸ばしてお隣さんの鼻の頭にビシッとつける。
決まった・・・確実に決まった。
コレは絶対、藤本のミキたんは松浦の亜弥ちゃんにホレ直しちゃったね。

「・・・はァ」
「何でため息なんてつくのよぉ!」
「だって・・・ミキもバカだけど、亜弥ちゃんも相当バカなんだもん」
「バカって言うなよ、バカって。」
「ばかばかばぁーか!」
「もぉ!!ミキたんっ!!!!」
「あわわっ、ちょっと狭いんだから押さないでよ」
「キャッ!肘でドコ押してんのよ変態っ!!」
「亜弥ちゃんがムダに発育してんのが悪いんでしょーが」
「なにをぉ!!」
118 名前:相合傘 投稿日:2004/09/08(水) 16:13
話は思わぬ方向へ言っちゃったけど・・・まぁ、いっか。
ミキたんとこーやってバカ騒ぎできるのが好きなわけだし。
やっぱり独り占めできるこの空間―――大スキだなぁ。



「・・・そーいえば、ミキたん賭け事に負けたから
 アタシのお昼も奢ってね」
「はぁ!?何言ってんの。アレはアタシと友達との問題で―――」
「だぁれぇぐぁアタシを使って賭け事したのかなぁ〜?」
「・・・しゅみましぇん」





今日も傘の中は大騒ぎ。
119 名前:右京 投稿日:2004/09/08(水) 16:17
勢いだけです、すみません。

>>107 振り回されるまっつーを書きたいだけに書きました(笑
>>108 その通りです、彼女は一度狙った獲物は逃がしません。
>>109 お疲れ様です。これからもお互い刺激しあえればイイですねw
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/08(水) 17:18
…双方かわいすぎます!!
121 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/09(木) 09:19
はげどおです!
122 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:22
急性咽頭炎――――
主に風邪症候群から来る『のど風邪』。
副鼻腔炎などやアレルギー性疾患の一症状、
あるいは鼻後漏と関係することも言われている。

滲出性中耳炎――――
鼓膜の向こうの中耳の中に浸出液がたまって、
耳が聞こえにくくなっている。
あるいは音を伝える鼓膜の動きが悪い状態。


・・・まぁ、こんな状態になっちゃったワケで
自宅で安静にしてなさいとのご命令。
両方の症状ともミキの鼻炎がらみだから、
いつ発症してもおかしくなかったんだと思う。
それで現在の症状は、喉が痛くて声が出づらいのと熱と頭痛かな。

123 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:23
「でさぁ・・・なんで来たの?」
「来たの?じゃないよ、まったくぅ。
 ミキたんが【体調崩しちゃった】ってメールしてきたから、
 慌てて仕事終わらせてこっちに来たって言うのにぃ!」
「だって、ホントに来るとは思わなかったんだもん」
「もぅ、恋人が倒れた時には参上するのが彼女の役目でしょ?」
「・・・ミキが彼氏って言いたいの?」
「アタシ程のお姫様なんていないと思うけど?」
「ふんっ、言ってろ」

掛け布団をバサッとかぶって部屋の明かりを遮る。
正義の味方なんだか救世主なんだか恋人の務めなんだか知らないけど
亜弥ちゃんが来てくれたおかげでご飯抜きの危機は回避されて
今、一生懸命ご飯を作ってくれてる。

喉が痛いと言っても、さすがにご飯は食べないと栄養つけれない。
かと言って、肉を食べようとすれば、たぶん喉にものすんごいダメージがくる。
松坂牛のステーキが置いてあるのに、待て!って言われてる犬みたいだね。
今のミキの姿を例えるとするならば。
まぁ、犬がステーキを食べるかなんてわからないし、美貴が犬か?と言われたら
思いっきり首を横に振って否定してやるけど。
124 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:23
口はウマくまわったけれど、思考力がどうも落ちてる。
風邪特有の気だるさに加え、声量も少なければ、音も聞こえづらい。
あぁー・・・なんか亜弥ちゃんと話してたら疲れちゃったのかなぁ・・・眠くなってきた。
このまま寝ちゃったら・・・亜弥ちゃん、忙しいだろうから帰っちゃうだろうなぁ・・・。
ありがとってお礼も言ってないのに・・・悪いことしちゃうなぁ・・・

・・・


・・・


125 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:24
あれからどれぐらい経ったんだか、見当もつかない。
被っていた布団をのけて、天井を見上げる。
ぼんやりとした視界には、光量が抑えられた明かり。
聞こえづらい耳には、ガサガサと聞こえてくる――紙をめくる音かな?
ってゆーか、なんか人の気配が感じる・・・もしかして、お母さん?

首をゆっくりと回して横を向いてみると
そこにはソファに胡坐をかいて座って雑誌をペラペラとめくる亜弥ちゃん。
まだミキの視線には気がついてないらしく、
興味なさそうに視線を落としているだけだった。

まだ帰ってなかったんだと思う反面、
まだいてくれてたんだと安堵感が胸の中に押し寄せてくる。
容姿もイイし、友達想いだし、世の中の男の子が夢中になっちゃうのもわかるよ、うん。
もしミキが男で、亜弥ちゃんみたいな彼女がいたら自慢しちゃうもんね、絶対。
見てて飽きない子って、そう簡単には見つからないよ。
よっちゃんさんの事も彼女にしてみたいとは思うけど、
対称的な場所にいる存在だから、亜弥ちゃんもミキにとっては彼女にしてみたい子。

―――って、思考能力なんて全然ないのに、こんな事は考えちゃうんだ。
我ながら亜弥ちゃん好きなんだなぁ〜・・・あはは。
126 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:24
「・・・あれ?たん起きてたの?」
「えっ・・あ、うん」
「なぁーに動揺してんの」

ミキの視線に気づいた亜弥ちゃんは、呆れたような表情を浮かべると
雑誌をパタッと閉じてスリスリと地面を這うようにベッドに近づく。
そして、自然な動作で自分の前髪を手の平であげてミキのオデコに当てた。

「んー・・・熱はまだ下がってないね。」
「うん、ボォーっとするから」
「おかゆ作ったんだけど、ミキたん食べる?」
「うん、食べる」
「・・・そっか、それじゃちょっと待ってて」

淡々としたやり取りで台所へ向かい、
用意していたものを持ってこちらに戻ってくる。
すべての立ち振る舞いが自然で、まるでミキが思っている事がわかっているよう。
問いかけてくるのはあくまでも形だけの行いであって、答えは既に知っているみたいだった。
127 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:24
「おかゆ熱いからフーフーしてあげよっか?」
「残念だけど、一人で食べれます」
「もぉー、恥ずかしがり屋なんだからぁ〜」

亜弥ちゃんオリジナルのにゃはは笑いを披露されてから、
ミキの足がある辺りにちょこんと腰を下ろす。
ソファとベッドの距離はそう遠くないのに座ったのはその位置。

「どう?おいしい?」
「・・うん。おいしいよ」
「むぅ・・」

首をかしげて上目遣いで問われたと思ったら、ご機嫌斜めでプクッと頬を膨らます。
なんでそんな顔するのさ、ミキは美味しいって言ってるのに。

「何怒ってんのさ、美味しいよ?」
「そんな鼻声な人が味覚なんてあるハズないじゃん」
「うっ・・・」
「ウソつかれたって嬉しくありませんよぅーだ」
128 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:25
プイっとそっぽを向かれてしまった。
普段ならそんな事日常の極一部分なのに、今日はなんだか寂しかった。
病気になると心まで弱くなっちゃうのかな・・・病は気からって言うし。
そう思うと心細い気持ちが大きな波のように攻め立ててきて、意思とは無関係に口が開いてしまった。

「ねぇ、亜弥ちゃん」
「うん?どーしたの?」
「なんでいてくれたの?明日早いんじゃないの?」
「んー、早いけど・・・一人にしておけないじゃん。」

それってミキが病気だから?それとも・・・ミキが寂しい気持ちになってるのを気づいてくれているから?
でもそれは、口には決して出さない。亜弥ちゃんの気持ちがミキに向いているかどうか知りたいから。
そんな意思は伝わってないんだろう、両手をベッドについて空を見上げた亜弥ちゃんはこっちを向かずに天井に呟いた。

「最近はいっつもすれ違いで、逢える時は仕事中のほんの数十分だけだったじゃん?
 昔はだいたい休みの日が重なったりしてたけど、今はそんな事滅多にないし。
 だからアタシがミキたんとの時間を作りたかったからかな。」
「ミキとの・・・時間?」
「うん。実はね、すっごい寂しかったんだ。
 メールだって電話だってしてるのに、ココロにぽっかり穴が開いたように思えちゃって。
 たんとの距離がどんどん広がって、大きな溝が出来てる気がしちゃってさ。
 そしたら、タイミングがいいんだか悪いんだか、たんが体調崩したってメールが来て。
 仕事なんて手につかなかったよ、ミキたんのせいで」
「えぇー、ミキが悪いの?」
「たんが悪いっ!全部ミキたんが悪いっ!!」
129 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:25
キッとミキの方を睨み付けてグググッと体を近づける。
そして両手で顔を捕まれてオデコとオデコがまた一つになった時、亜弥ちゃんの表情はグッと和らいだ。

「・・・心配させんな、バカミキィ」
「・・・ごめん」
「許してなんかやんないからね!
 すっごい心配したんだから。わかってる?ねぇ、わかってる?」
「わかってるよ・・・だから亜弥ちゃんずっといてくれたんでしょ」
「・・・ミキたんのバカ。バカばかばかぁ・・・」

強気な態度がどんどん弱々しくなっていく。
見つめる瞳には涙がジワっと溜まってきているようにも思えた。
と、思った途端ミキは持っていたスプーンとお茶碗をお盆に戻して
右手を亜弥ちゃんの後頭部へと持っていき優しく髪を撫で始める。
もし、ミキが同じ立場でいたらして欲しいことだったから。


――――なんかわかった気がする。
亜弥ちゃんはミキの気持ちがわかるんじゃないだね。
ミキも亜弥ちゃんの気持ちがわかるんじゃない。
亜弥ちゃんとミキが思ってることが一緒なんだ。
だからミキが寂しいと思った時、亜弥ちゃんも寂しくて。
ミキが苦しいときは、亜弥ちゃんがちゃんと側にいてくれる。
自分の気持ちを見てやれば、相手の気持ちが見えてくるんだってこと・・・やっと気づいた。
130 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:25


「ねぇ亜弥ちゃん、ミキが病気になったのって別に悪いことじゃないんだと思う」
「・・・どうして?」
「だって、一緒にいられる時間を神様が創ってくれたってことでしょ?
 そう思えば病気だって素敵なことだって思えない?少なくともミキはそう思う。」
「ミキたん・・・」
「ちょっとツライけど、それは亜弥ちゃんとゆっくり出来る時間の代償だと思えば苦じゃないよ。」


そう、これは代償。
思ったもの全てが貰える世の中なんて、平等でもなんでもない。
痛みを感じるからこそ、嬉しさも楽しさも2倍にも3倍にもなるんだよ。
今は、病気の痛みを感じて亜弥ちゃんの時間をもらってる。
亜弥ちゃんの言ってた溝を埋める時間を神様がくれたって、ミキは思うよ。
あいにく、病気な体だから何でもしてあげる!とは言えないけど
亜弥ちゃんとの時間を大事にするね。
ミキに出来る事なんてそれぐらいしかないからさ。
131 名前:病気の真相 投稿日:2004/09/20(月) 16:26
「カッコつけすぎだぞ・・・ミキスケ」
「あはは。ほら、一応カッコカワイイ人を目指してるから、ミキ。」
「もぅ・・・ちゅーするぞ?」
「あー、それはダメダメ」
「なんでだよぉ〜!恥ずかしがらないでミキたん、誰も見てないんだから」
「恥ずかしがるっていう問題じゃないってば」
「むぅー、イヤでもしちゃうもんねっ♪」
「病人は優しく扱えぇー」
「もんどーむよぉー!!」



これから数日後、無事に回復して仕事に戻ることが出来ました。
ただ、鎖骨のあたりに悪戯っぽくキスマークが残っているけど。



おわり。
132 名前:右京 投稿日:2004/09/20(月) 16:27
こんなだったらいいなという妄想文。

>>120 >>121
可愛く見えたようなので、大満足ですw
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 12:28
今回も可愛すぎですw
134 名前:右京 投稿日:2004/10/10(日) 11:14
先にレス返し。
>>133 気に入っていただけたようで(笑


ということで、二人ゴト妄想復刻版全3回をお送りします。
お暇な方はお付き合いくださいませ。
135 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:15
ミキにとって亜弥ちゃんとは。
んー、そーだなぁ・・・なんだろな。
気持ちを落ち着かせてくれるヌイグルミ・・・かな、なんか違う感じもするんだけど。
言葉に表せないんですよね、この関係。

亜弥ちゃんと仲良くなって、もう3年以上経ってるんですけど
なんだろ、こう仲良くなるなんて思わなかったんですよホント。
仕事では先輩だったけど年下の子なんで、付き合いづらいってゆーか、
何を話していいかもわからなかったんです。
ただえさえ年下の子と話すのは得意な方じゃないんで。
だから番号交換して、はいおしまい!みたいになるんだろうなって思いました。

でも、形だけの番号交換だと思ったら、ホントに電話してきて。
で、話の成り行き上、遊んじゃう?みたいなことになって。
それからですね、亜弥ちゃんと急に仲良くなったのは。

一緒に遊びにいったりもするし、お泊りしたりもするし、
お互いの家に行って、ただなんとなく過ごす時もあるんですよ。
側にいておしゃべりしてれば幸せ・・・ってゆーかただの出不精か、あははっ。
なんか変なフタリですよね?自分でもそー思います。
136 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:15


時にはマジな話もしちゃったりするんですよ。
ほら、昼間は楽しくワーワー話してるけど、
夜になると真剣な話が出来ちゃうじゃないですか。
んー、ゆっくりした時間が作れるからなんですかね?
暗いし、静かだしってのもあるかもしれないけど。

で、お互いの悩み事とか話したりするんですけど
適切なアドバイスをくれるってワケじゃないんです。
相手の話を全部聞いて、じゃあ頑張ろうねお互いに・・・みたいな感じ。
それがいいんだろうな。
なんかワケのわからないアドバイスをくれるよりも
全部聞いてあげるから答えは自分で見つけよーね、ってゆうのが。

やっぱり一人のヒトとヒトだから価値観も考え方も全然違うじゃないですか。
だからその悩みの答えでも、お互いの答えがあって
それを見つけたとしても強要しないから、こんな長く続いてるんだと思います。
137 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:16


亜弥ちゃんの尊敬するところ。
・・・これって絶対本人の前では言えないんですけど、
亜弥ちゃんってすっごい努力家で、ずぅーっと練習しちゃうんですよね。
昔、「ごまっとう」っていうユニットをしてた時なんですけど
3人が3人、ライバルみたいな意識があったんです。
絶対負けたくないな、っていう。
で、その時に亜弥ちゃんもミキも歌では絶対に負けないって自信はあったんですよ。
まだまだ至らない部分とかいっぱいあったけど、自分なりに努力して克服してきたモノがいっぱいあったから。
でも、ダンスだけは苦手だった、というよりも自信がなかった。

どーしても経験値の違いで、亜弥ちゃんとミキはごっちんに劣っちゃうんですよね。
元々、ごっちんはダンスも得意で卒なくこなしちゃう子だったんで
ダンスの差は開いていくばかりで、ミキも亜弥ちゃんも振り付けを覚えるので精一杯な状況になっちゃってて。
負けるもんかっ!ってキモチはあったんですけど、気持ちだけが空回りして結果にならなくて・・・。

正直、負けず嫌いなミキでもキビシイなって思っちゃった時があった。
悔しいけど、やっぱりこの差は抜けないのかなって弱気になっちゃって。
138 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:17

そんな時に亜弥ちゃんが練習してるトコロを見たんですよね。
わからない部分はどんどん聞いて、たくさん練習して成長しようとしてたんです。
それを見て、ミキも弱音なんか吐いてられない!って思って頑張りましたね。
そうやって出来たのが「ごまっとう」なんです。

・・・あれ以来かな?
弱い部分を見せたくないからって、一人ガムシャラにやるんじゃなくて
わからないところは素直に聞いて、それから自分が納得するまで練習するようになったのは。

だからって言うのもなんですけど
亜弥ちゃんは友達だけど尊敬できる子ですね、ハイ。
139 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:17

ミキから見る亜弥ちゃんは。
んー・・・これまた難しい・・・まぁ、なんだろな。
大体な部分は変わらないと思いますよ。
どこからどう見てもアイドル!って感じ―――それは否定しません。
何やってもカワイイし、そのおかげで周りからもチヤホヤされる―――それも否定しません。
でもアイドルだから裏表激しいんでしょ?―――これは否定します。

亜弥ちゃんってね、愛くるしいし、礼儀正しい子なんですよ。
別に亜弥ちゃんの宣伝してるわけじゃないんですけど、
なんだろな、こう・・・接し方がウマいんです。
素直な子だから周りもイイキモチにしてくれるんですよ、屈託のない笑顔とか気持ちのイイ返事とか。
意識してないところで純粋だから、そんなトコロが好きかもしれないですね。
・・・あははっ、今更だけどなんか恥ずかしいな。


亜弥ちゃんって年下で長女、ミキは年上で末っ子じゃないですか。
だからなのかは知らないですけど、亜弥ちゃんって甘え上手なんだけど、どこかお姉さんっぽく見せるんです。
甘えるところはスッゴイ甘えてくるんですよ?これでもかってぐらい近づいてくるし。
でも、なんか包容力があるってゆーか、しょうがないなぁ!とか言いながら色々してくれる。
140 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:17
ミキの場合はその逆。
お姉さんな風に見せてるんだけど、最終的には亜弥ちゃんに甘えてるかな。
それはベッタリしてるってワケじゃなくて、寂しくなった時に呼び出しちゃうのはミキの方って意味で。
この前もハワイに行く前の日に・・・。
モーニング娘。と行くハワイファンクラブツアーってゆーのがあって、それの前日です。

すっごい寂しくなっちゃったんですよね。
1週間近く行くんですけど、海外だからケータイも使えないじゃないですか。
で、1週間連絡取れないんだって思っちゃったら、あっ!これは亜弥ちゃんに逢っておかなきゃダメだ、みたいな。

結構ダメ元でメールしたんですよ、逢いたいんだけど・・・って。
そしたら、しょーがないなぁ!って返ってきて。
例のお姉さんっぷりを発揮したんですかね?
よくわからないですけど、とにかくすっごく嬉しくて夜中になってもずぅーっと話してました。
くだらない事をずぅーっと。もっと違う日に話せるだろ!みたいな事を永遠と。
寝させませんでしたね。
明日早いんだけどって言われたんですけど、「ミキに対する愛情ないの?」って言ったら
もぅ・・・って渋々付き合ってくれました。
141 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:18
いや、側にいてくれるだけでよかったんですよホントは。
でもね、側にいるのに喋らなかったらもったいないじゃん?みたいな・・・うん。
で、寝不足にさせちゃったのも悪いからと思って、朝、玄関まで見送ったんですけどね。
オマエ夫婦かよっ!って言われたけど、それもいーんじゃないかなぁって思った、あははっ。

ミキから見れば、亜弥ちゃんはすっごく優しい子です。
甘えさせてくれる存在っていうのかな。
う〜ん、よくわかんないけど・・・なんだろな。
今いなくなったら絶対に困る人、空気みたいに必要不可欠な人です。
・・・って、なんか質問の答えになってないような・・・まぁ、いっか!



最後に亜弥ちゃんに一言を、って言っても
うーん、いつも言いたいことは言いたいときに言ってるから、特にないんだけど・・・
えっと、なんだろ・・・
ミキはね、亜弥ちゃんといるだけでホッとしたり、元気が出てきたりするんで
これからも長くながぁーくラブラブしていようね。
目の前だと言えないから言っておきます、大好きです。
142 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/10(日) 11:18





松浦亜弥編につづく。
143 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/12(火) 16:28
いつのまにこんなものが。こういうのもイイですねぇ。
亜弥ちゃん編が待ち遠しいです!
144 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:41
更新前のレス返し。

>>143
あと2回ですがお付き合いくださいませ。
独白形式は初挑戦なので粗が目立ちまくりですが、ご了承を。
145 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:42
ワタシにとってミキたんとは。
うーん、なんだろうなぁ・・・大切な大切な恋人?かな。
べったり甘えたり、甘えられたり出来るのってミキたんだけなんですよ。
ココロを許せる大切な友達、親友って枠には収まりきらない大事な大事なヒト。
で、友達以上な関係を表せる言葉で表現したいから恋人。だから恋人ですっ。

でもまぁね、ミキたんの事を改めて考えてみると、
ミキたんと出会うのも神様が決めていた必然だったのかなって思うんです。
もし松田聖子さんのコンサートで隣の席に座っていなかったら、
もしワタシがデビューをしてなかったら、むしろオーディションを受けていなかったら
絶対ミキたんとは逢うことが出来ないじゃないですか、ミキたんも同じ事が言えるけど。
それってスゴイ確立の偶然だと思いません?

ワタシね、思うんですよ。
偶然ってゆうのは、本当に自分のわからないところで決まってしまうもので
必然ってゆうのは、その偶然が何個も何十個も重なり合ってるものだって。
だからミキたんとこうやって今でも一緒にいられるのは必然だって信じてるんです。
出会うべくして出会ったんだから、絶対この子は逃がしちゃダメだぞ!って言ってくれてる気がして。
だから絶対離したりしないし、離されないように一緒にいたいって思うんです。
146 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:42
んー、そうだな。
もしミキたんとの関係を何かモノ例えるとしたら・・・枕。そう、ピッタリな枕。
枕って硬すぎても柔らかすぎてもダメじゃないですか。
だから自分にピッタリなモノを探すのは難しいし、ピッタリな枕を作ろうとすると大変な労力が必要で。

ワタシとミキたんもそれと同じことかなって思います。
ここまで仲のいい友達ってなかなか作ることが出来ないし、むしろ作ろうと思っても作れないし。
それに自分から探そうって思って探せるようなモノじゃない。
それだけ大変なモノだから大事に、大切に、愛しく思う――失くしちゃいけないモノになるんですよね。

じゃあ、もっとミキたんを大切にしなきゃいけないのかも。
あっでも、たんはたんで全然イヤがってないと思うし・・・ってゆーか、イヤがるハズがないからいいや! にゃははっ。
147 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:43

ミキたんの尊敬するところ。
ヒトの気持ちを察してくれる優しさを持ってるところかな。
やっぱりこう、お仕事がいっぱいあると情緒不安定になっちゃうときもあるんですよね、正直言うと。
そういう時って、こう・・・妙に寂しくなったり不安になったりして。
弱い自分が前に出てきちゃうんです―――たまぁーになんですけど。
で、そんな時にミキたんに電話してみるんです。
ミキたんの声を聞いたら元気になれるかな?気分が変わるかなと思って。
でも、そーゆう事は言いませんよ?自分の心の中に留めておく事だから。

で、普段どおりの世間話をするんです。最近どーよ?的なことを。
けどね、声のトーンもいつも通りにだし話の内容も変わらないし、まして表情なんて見えてないのに
「亜弥ちゃんは亜弥ちゃんのペースでやればいいんだよ」って言ってくれるんです。
「へ?何言ってんの?」って返すと、「いや、なんか言いたくなった」って。

おめぇーは何でヒトの気持ちわかっちゃうんだよっ!って言ってやりたい。
言って欲しい言葉を言って欲しいタイミングでサラッと言っちゃうミキたんが憎い。
そのおかげで元気になっちゃったりするんですけど、なんか悔しくて。
・・・だって、ねぇ!
そんな事しちゃったら絶対ワタシはミキたんの側から離れない、離れちゃいけない、離れられなくなるじゃないですか。
藤本美貴依存症になってるのは全部ミキたんが、たんが悪いっ!!

・・・えっ?話逸れてる?
えっーと、そうそうそう。
まとめちゃうとヒトの気持ちを読んじゃうってゆーのがミキたんの魅力だと思うんで、そこが尊敬するトコですかね。
148 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:43

ワタシから見るミキたんは。
万年鼻声で、食事中に鼻かんで、かみすぎて鼻血だして、寝てるときは半目で、しかもバンザイで
口癖は「なんだろなぁ」で、一方的に話かけてくるからコッチはわけわかんなくて、
誕生日当日に「おめでとう」って言ってくれない人で、3ヶ月経ってやっと誕生日プレゼントくれる人で、
持ってるモノはワタシとオソロばっかで、寂しがりだけどおねーちゃんっぽくて、目力キツくて、負けず嫌いで、意地っ張りで
ヒトの気持ちを勝手に読み取って優しさをみせる反則ヤローで、めっちゃ憎たらしくて、けどめっちゃカッコ可愛くて・・・
・・・・・・・・・ってまぁ、そんな感じ? なははっ。

まぁ、そんなトコ全部ひっくるめてラブ、チョーらぶ。
好きすぎですねワタシ、ミキたんのコト。
・・・ん?聞いてないって? じゃあ、聞けぇ!!
と、そんな事は後でじっくり語るとして。
149 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:44
ミキたんってね、かなりサバサバした性格なんですよ。
ワタシもどちらかと言えば、サバサバした性格なんですけど、アイツは別格。
内に秘めてる感情をそのまんま表情に出すもんだから、いらぬ騒動を持ち込んできたりもするし。
「言いたいこと言い」な人間ってゆーのかな? 陰口は一切せずに正直に自分の気持ちを伝えるの。
もっとオブラートに包めば回避できる問題なのに、そんな事おかまいなしだからダァーっと。
まぁ、それがミキたんのいいところではあるんだけど、欠点でもあるかな。
エラそーなヒトには世渡り上手な部分も持ってるんだけど、基本的に付き合いベタ。
だからだと思うんだけど、ミキたんの周りってそーゆうサバサバした性格な子が多いと思う。ワタシを含めて。

あとは・・・そうそうそうそう。
この前、お仕事がずっと一緒で嬉しくて結構話してたんですよ、仕事の合間に。
そしたらミキたんが「亜弥ちゃんウチに泊まりにおいでよ」って言ってくれて。
「しょーがないなぁ〜」とか言いながら内心かなり嬉しくて、3,4日ぐらいミキたんチに泊まったんです。
その時はお母ちゃん――ミキたんのお母さんもミキたんチに来てて、ワタシを出迎えてくれたの。

でね?
手料理をご馳走になったり、一緒にお風呂入ったり、一緒に寝たりしたんですけど
一日中もう、優しくて優しくて。
アンタ、イイ旦那さんになるよって思うぐらい優しかったんですよ。
先に寝ちゃったから朝一緒の時間に起きてくれたりとか、
逆に夜更かしさせちゃったから一緒に起きてくれたりとか。
どっちも朝一緒に起きてくれたってだけなんですけど、ちょっと愛を感じません?
優しさというより、むしろ愛を。
150 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:44
で、その後も一緒に朝ごはん食べて、見送ってくれたの。
眠たげな鼻声で「いってらっしゃーい」って。
何度かそうやって見送ってくれたことあるんですけど、毎度毎度可愛くて。
ホント、もぅめっちゃ可愛くて。
絶対見たらニヤケちゃいますよ?・・・いや、絶対見させませんけどね。

それで結局何を言いたかったといいますと、優しいんです、あの子。
意識していないトコでの気遣いがドーンと胸を貫くって言うんですかね?
なんか、こう・・・ねぇ!
にゃははっ!なんかアタシの方が照れてきちゃったよ、もぅ!!

・・・あの、もう一回言っていいですか? ラブ、ミキたんチョーらぶっ♪


ワタシにとってはミキたんは側にいなきゃ困る存在。
友達のような、恋人のような、姉妹のような・・・とっても曖昧だけど、曖昧なだけに特別な関係なんです。
今のワタシからミキたんを離そうとしても、絶対離せないと思う。
それだけ、ワタシの中にいるミキたんの存在って大きいから、とてもとても大きいですから。
・・・って、なんか告白してるみたいですよね? ふふっ、もぉーやぁだぁー!!
151 名前:二人ゴト 投稿日:2004/10/15(金) 14:45


最後にミキたんに一言。
色んな悩みをね、話し合ったりとか、頑張って!とかねミキたんに言うだけで
ワタシはとてもホッとしたり、楽しくお仕事出来たりしてるんで、これからも長くながぁーくよろしくねっ♪


アヤヤとミキティの二人ゴトに続く。
152 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/16(土) 02:01
す、すごい。。
どうしてこんなリアルなお話が書けるのでしょうか・・・。
続編、楽しみにしてます!
153 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/22(金) 00:13
二人ゴトに続くんですか!?すんごい楽しみです。
それにしてもすごい観察力と想像力w
154 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/27(土) 15:13
ず〜〜〜〜〜っと待っていますよ!!!
作者さん、頑張ってくらさいませ。
155 名前:右京 投稿日:2004/12/12(日) 14:01
色々と試してみましたが、ウマく二人ゴトを再現できなかったので
独白形式の2回で区切りたいと思います。
お待ちになってくださった方、申し訳ございません。


お詫びに、駄文ですが一つ載せます。
156 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:02
伝えたい言葉を考えてみる。 あなたの前だと素直になれる、と。
声にならない声で叫ぶ。 あなただから大好きだよ、と。

でもコレを伝えられる程、ワタシの心臓は強くない。
伝えたい言葉をすんなりと表現出来るなら、世の中全体はきっと幸せに包まれているハズだ。
何故言えないか。―――ぶっちゃけて言ってしまえば、恥ずかしいから。
相手の目の前で好きだの言ってしまう自分がとても気持ち悪い人間だと感じてしまうから。
それが何で彼女の前で起こるのかは、今でも不思議でたまらないけど。
このコトバを伝えられたら、ウマく空気を震わすことが出来たのなら
ワタシも彼女も、もっともっと幸せになれるとわかっているのに。。。
157 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:03
「ねぇ、亜弥ちゃん。」
「んー」

隣にいる彼女を見つめることなく声をかけると、肩にかかる重さ。
アゴをポテッと置かれて、「超」が付く程の近距離で見られてる証拠。
彼女の視線が横顔に痛いぐらいに注がれているのがわかる。

「ウチら、逢ってもう4年になるんだけど・・・覚えてた?」
「あったりまえじゃん。そんな大事な事忘れるわけないじゃん」
「そっか。で、ね」
「うん」
「あのね、そのー」
「うん、どうした?」

やはり、こーゆう場面になってみるとヒトの思考は停止するらしい。
想定はしていた事だけど、実際なってみると自分のテンパッている状況がバカらしく思える。
伝えたい事は頭の中にグルグルまわっているのに、空気を震わせる手段を忘れてしまって。
声にならない声を何度も何度も吐き出しては、変な息づかいとなって空気中に消えてしまう。
158 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:04
「・・・あぅー」
「あはは、何やってんの?ミキたん」

猫が猫じゃらしとジャれるように、頬をツンツンと突っつきながら笑みを浮かべる。
別にこんな事されるつもりで変な声を出したつもりではないけど、これはこれでいいかなぁと思ってみたり。
って、そんな事に浸ってる場合じゃない。

俯き加減になった視線を戻して、頭を少し横へ動かす。
すると現れるは、潤んだ瞳の松浦亜弥ちゃん。
ジッと見つめられるコト2秒。ドクンと大きく鼓動が聞こえた。

「ねぇ、亜弥ちゃんは楽しい? ミキと一緒にいて。」
「うん。たのしーよ?楽しいから隣にいるんだし、ね。」
「ありがと。ミキも楽しい、亜弥ちゃんが一緒にいてくれると」

このままこの気持ちが伝わってくれるなら、どんなに嬉しくて簡単なことなんだろう。
だけど、ヒトの気持ちはコトバで表さないと、空気を震わせて表現をしないと相手には伝わらない。
159 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:05
「・・・ミキはさー、亜弥ちゃんみたいに親しくなる子って今までいなかったの」
「ワタシもだよ。ミキたんが初めて。 ってか、ミキたん顔真っ赤だよ。大丈夫?」

大丈夫大丈夫、といいながら頬を冷えた手の平を当てて冷ます。
アンタのせいでなってるなんて言えるワケもなく。
アヒル口で心配そうに首をかしげている彼女との距離、もはやゼロ。

ドクン、と2度目の大きくなった鼓動は、ワタシ自身を急かしているようにさえ思えた。

「だからね、あのー、ミキが何を言いたいかって言いますと・・・」
「うんうん」
160 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:05
亜弥ちゃんといるとすっごい楽しくて、幸せで。
時にはケンカもするし、言い合いもする。
けど、寂しいときは一緒にいてくれたり、優しい言葉をかけてくれたりして。
亜弥ちゃんのコト見てるし、自分の事のように真剣に考えちゃうから、こんなコト出来るんだよね。
自分でもビックリしちゃう程、素直にストレートに気持ちを出せるんだ。亜弥ちゃんの前だと。
だから今日は言いたい、あなたの前でしっかりと言いたい。
この空気を震わせてアナタに伝えたいんだ、この気持ちを。亜弥ちゃんに対するミキの気持ちを。
ワタシの事を見ててくれる、思ってくれる亜弥ちゃんだから

161 名前:この気持ち、空気の振動に込めて。 投稿日:2004/12/12(日) 14:06
「大好きだよ。」
「・・・しってるよっ!!」
「うぎゃ!!」

覆いかぶさるように思いっきり強く抱きしめられて、
見つめられる表情は、にたぁ〜っと微笑んでいて頬の筋肉緩みまくり。

「うれしーんだけどさぁ、何故に今?」
「いや、別になんとなく」
「なんとなくだったら、これからもいっぱい好きって言ってよ」
「や、やだよ気持ち悪い」
「む・・・気持ち悪いってヒドイ」
「ミ、ミキが気持ち悪いってことだよ、亜弥ちゃんがどーとかじゃなく」
「気持ち悪くなんかないよ、ワタシいつも言ってるでしょ?」
「亜弥ちゃんとミキは違うじゃん、全然」
「ぬぁんだとぉぉぉ〜〜!!」


ずいぶん伝えたい事は短くなっちゃったけど、なんとなく伝わったならそれでよし。
でもいつか・・・全てが伝わればいいのにな。

おわり。
162 名前:右京 投稿日:2004/12/12(日) 14:07
>>152-154

散々待たせておきながら、
書けなかったアフォをお許しください ( ´д⊂ヽ
こんなんでお詫びになればいいのですが・・・。
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/14(火) 20:51
二人ゴト、残念ですが仕方ないです。。
その分短編楽しませていただきましたっ!
今後も作品を読ませてくださいね!
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 21:13
短編、良いですよw
甘いです。
…もしかして作者様、サイトをお持ちでらっしゃる?
勘違いだったらスルーで良いので
165 名前:寝顔にキスを、貴方に愛を。 投稿日:2004/12/23(木) 02:06
不確かなモノは、ワタシ達の関係。
確かなモノは、わたし達のキズナ。
真っ赤には染まりきれない、けど真っ白なほど純でもない。
ワタシ達は言わば、桃色ピンク色。純粋と情熱を併せ持った優しい色。
完全に染まりきらなくても、フタリがこの色を好きでい続ける限りわたし達の色は変わらない。
決してグレーじゃない。あくまでピンク。優しさで包み込む色。
166 名前:寝顔にキスを、貴方に愛を。 投稿日:2004/12/23(木) 02:07
スゥスゥと寝息を立てながら、隣で眠る大好きなミキたん。
目も半開きになるし鼻がつまってるから口で息しちゃってて、
あんまりカワイイ寝顔じゃないんだけど、愛くるしい大好きな顔。
夜中の一番起きちゃいけないような時間に勝手に目が覚めてしまって、もう10分ぐらいミキたんの寝顔を見つめてる。

「ミキたぁーん・・・大好きよ?」

軽くコクってみたりしたり。
いっつもワザとらしく何べんも言ってるから、この子にはそーゆうの効かないんだよね。もう。
その代わり、たまーに言われるミキたんの台詞に、ワタシの心臓が変な運動しだすのは秘密なんだけど。

今度はこっちを覗くような寝顔を鼻が触れ合うぐらいに近づいて見つめてみる。
魚眼レンズみたいで、表情なんてわかったもんじゃないけど。やっぱ好き。
好きなヒトの顔を見ても見飽きないのは、コイシテルヒトの特権。

更に、ちょっと離れてふぅ〜っと鼻に息かけてみたら、
唸りながら猫みたいにグーの手で鼻を擦ってムズムズと鼻と口の運動。
カワイイってゆーか、ホント小動物。
もう4年になるけど、そんなトコロはいつまで経っても変わらないよね。そんなトコロもやっぱ好き。
167 名前:寝顔にキスを、貴方に愛を。 投稿日:2004/12/23(木) 02:07
そーいや、もう4年なんだよね。
ミキたんと一緒に笑うことが出来るようになって、もうすぐ4年。

ミキたん、覚えてる? 初めて待ち合わせした場所。
ミキたん、覚えてる? 初めて撮ったプリクラ。
ミキたん、覚えてる? 初めて食べに行った焼肉屋さん。

どれも鮮明に覚えてるよ、ワタシ。
なんでだろうね、他の事はあっという間に過ぎ去って忘れちゃうのに
ミキたんとの思い出は、つい昨日の事だったように覚えてるの。

わたし達がいる場所は忙しく時が過ぎる場所。
季節なんて関係なく、毎日が年末みたいな忙しさで。
少しでも立ち止まってしまったら置いていかれてしまうような、そんな焦りがいつも付きまとってる。
そんな緊張と焦りの中にポツンとゆっくりとしたテンポで進む二人の時間があるから、いつまでも鮮明に残っているのかな?
それとも単純に、ミキたんの事が好きだから?・・・それは否定できないけどさ。
168 名前:寝顔にキスを、貴方に愛を。 投稿日:2004/12/23(木) 02:07

フタリで手を繋いで歩く時間がワタシにとって大切な時間。
3倍速で動く世の中から離れて、0.5倍速でゆっくりと進む二人の関係。
歩くテンポが早くなってしまっていたら、グッと袖を掴んでくれて歩調をゆったりと戻してくれる。
気持ちだけ先走って、自分が自分でいられなくなった時後ろからギュッと抱きしめてくれる。
松浦亜弥っていう名前だけが一人歩きしてる苦しさ、自分で自分を操作できない悔しさをちゃんとわかってくれる。
全てを優しく包んでくれるミキたんだから、忙しなく進む毎日に埋もれてしまいそうなワタシを助けてくれるミキたんだから・・・

「大好きなんだよ?」


ワタシは、寝顔にキスをした。


おわり。
169 名前:右京 投稿日:2004/12/23(木) 02:12
超短いですが、年内最後のモノとして。
マイペースに今後も書いていきたいものです、ハイ。

>>163
ホント、申し訳ないです。
なんか全然それっぽい雰囲気が出てこなかったんで
今までの空気を崩すのもアレかなと思いまして。
ホント、作者の勝手な判断なんですけども。

>>164
ひっそりとサイトの方をやらさせていただいてます。
こちらとサイトは一緒のもの載せてるから・・・お分かりになったのかな?
どちらもよろしくお願いします(笑
170 名前:164 投稿日:2004/12/25(土) 09:00
御丁寧に応答、ありがとうございました。
いや…右京さんの書くあやみきは甘い!
これからも頑張って下さい!
171 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/28(火) 01:08
いいですねぇ。
藤本さんへの気持ちがビシバシ伝わってきます。
来年も期待しています!
あやみきを愛する人全てに幸せを。
172 名前:右京 投稿日:2005/02/21(月) 22:26
明けすぎておめでとうございます。
松藤以外は書いておりましたが、久々の松藤の出来、微妙です。
ですが、誕生日にもあげられる気配がないのでこれで勘弁。

>>170
甘いしか取り得がないというか、全然ヒネったモノが書けませんが
今年もよろしくお願いします。

>>171
今回も面白みゼロでございますが、今年もあやみきでまい進あるのみ。
今年もよろしくお願いします。
173 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:26
別れたのは、ちょうど一年前―――彼女の誕生日。
些細なことでケンカして、それが原因で別れ話になって…。
その後、ワタシは散々泣いて全てを忘れた――忘れたつもりだった。
楽しいことも悲しいことも。怒ったことさえも忘れて、全部なかったことにした。
そのせいもあって、今日この日までそれなりに楽しく、面白く過ごしてきたのに。
――――今更電話なんてしてこないでよ。


174 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:27



2月26日24時10分。
ただの土曜日のはずだったのに、その電話は突如かかってきた。
番号は見知らぬもので、誰か間違えてかけてきたのかなと最初は思った。
それとも、ケータイ変えた時に登録し忘れた人か――そんなわけない、機種変だし。
徐に通話ボタンを押して、ケータイを耳へとあてた。

「もしもし」
「あのー、こちらは松浦亜弥さんのケータイでしょうか?」
「・・・はい、そうですけど」
「―――よかった、まだ番号変わってなかったんだね」

鼻にかかった低めの声。
その声の正体が誰なのかはすぐに推測が出来た。
一番声を聞いていた人で、一番好きだった人。
―――けど、それは昔の話。

「ミキたん?」
「うん――亜弥ちゃん、元気だった?」
「うん、元気だけど・・どうしたの?」
「あの、さ」

少し元気のない声だった。
何がそんなに悲しいのかと思ってしまうほどか細い声。
全て忘れてたつもりなのに、もう関係ない人なのに、心配してしまう――どうして?
175 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:27
「うん?」
「亜弥ちゃん、これから逢えないかな」
「・・・えっ、なんで?」
「大事な話があるから、どうしても今じゃないとダメだから」

突然のコトでなにがなんだかわからなかった。
何を言われるのかもわからないのに、頭の中に過ぎった答え。
とても怖かった、こんな事を想像してしまった自分がイヤだった。
だから咄嗟に口から出てしまったのは――嘘。

「――ごめん、今、彼が来てるから」
「・・亜弥ちゃん、彼氏いるんだ?」
「うん。ちょっと前から、ね」
「――そっか、ごめん。それじゃ」
「うん」

ゆっくりと耳からケータイを離し、閉じたケータイをテーブルの上に。
自分はバフンとベッドに倒れ込み、そこにあるモノに視線を向けた。

「お前はいつからワタシの彼氏になったんだ、うん?」


――――羊のぬいぐるみは何も答えず窓の外を見つめていた。
176 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:27




それから一週間。
ミキたんからの電話はかかってこなかった。
一体、なんの為に電話をかけてきたんだろう。
別れてから一年間、音沙汰もなく完全に忘れられたと思ったのに。
この一週間、ミキたんのことが気になって何をするにも中途半端な日々が続いた。
ワタシはそんなに器用な方じゃないから、イイ友達になんてなれないの。
恋人だった私達が向かう方向は友達じゃなくて、赤の他人しかないのに―――
なのに、あの時なんであんなことを思ったんだろう。
――――もう一度・・・なんて。



177 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:27




「もう別れよう、ミキといても亜弥ちゃんはつまらないんでしょ?」
「そうだね。ミキたんだってワタシなんかどうでもよかったんだもんね」
「・・・」
「早く出てってよ!!」
「―――じゃあね」

ほんの些細な事だった、ミキたんとワタシの気持ちのすれ違い。
好きって言っててもらえないと不安でしょうがなかったワタシを重たく感じたミキたんが別れ話を切りだした。
側にいることが好きって合図だったのに、それだけじゃわからなかったワタシ。
ワタシの好きの量とミキたんの好きの量は大して変わらないと思う。
―――けど、その表現の違いで私達の恋は簡単に終わりを迎えた。

好きだから側にいるだけでシアワセだと思ってた。
好きだから側にいるだけじゃ足りなくなるなんて思わなかった。

別れた後もミキたんの残り香は部屋中に満ちていて、部屋にあるもの全てが思い出に浸る原因になっていた。
だから模様替えをした、ミキたんが感じられなくなるまで何度も何度も。
なのにね、一つだけ捨てられなかったものがある。
それが羊のぬいぐるみ―――ミキたんが最初に買ってくれた私へのプレゼント。

なんで今更電話なんてかけてきたの?
せっかく忘れていたのに・・・せっかく新しい自分を探そうとしたのに。
なんで手を握るの? せっかく空いた右手を握ってくるの?
なんかもう、ヤだよ。
178 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:28




登録していないあの番号はいつの間にか着信履歴の一番下になっていた。
何度も見ては、発信ボタンを押そうとして。でも、そこまでは勇気がなくて。
またかかってくるだろう、もしかかってきたらその時は―――――
そう思っていたのに、一向にミキたんからは電話は来なかった。
一度ついてしまった嘘でこんなに後悔するなんて思わなかった。
またミキたんに逢いたい気持ちはどんどん大きくなっていて。


吹っ切れたはずの恋にここまで振り回されるなんて・・・思ってもみなかった。
――――ワタシ、どうしちゃったんだろ。


その時、マナーモードにしっぱなしのケータイがガタガタと音を立てて動き出し
ワタシはあわててケータイにかけよると、急いでソレを広げた。
すると、そこには登録のしてない電話番号。
不整脈を打つ胸の鼓動を抑えるかのようにギュッと胸に手をあててケータイを耳にあてた。

「もしもし」
「あの・・・ミキだけど」
「うん」
「やっぱりね、亜弥ちゃんには自分の気持ちを聞いて欲しくて。
 彼氏がいるのわかってるけど、一応聞いて欲しくて――――ごめんね」
「ううん」

相変わらずの弱々しい声のミキたんはホントに申し訳なさそうな口調で謝った。
ワタシがどんな気持ちなのかなんて想像もしていないんだろう。
179 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:28
「あのね亜弥ちゃん」
「―――ねぇ、ミキたん」

ミキたんの話を遮って、ミキたんの名前を呼ぶ。
自分の話を聞いてもらうためにアナタの名前を呼ぶのは一年ぶりなんだね。

「一緒に行った公園覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「そこで待ってるから」
「えっ――」
「ミキたんが来るまで待ってるから。私もね、話したいこと――あるから」

自分の気持ちがどうなのか確かめたいの。
この気持ちがホンモノなのかどうか実際にあってみて確かめたいの。
そうじゃなきゃ、ワタシはいつまで経ってもアナタを引きずることになる。
そんなのヤだもん、ハッキリさせたいから自分自身を。
だからね――――

「待ってる」

一言呟いて、相手の返事を聞かずに電話を切った。
180 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:28




ワタシが公園に来てから20分も経たずにミキたんはやってきた。
1年前と何も変わってないラフな格好。暗い色のコートにジーパン、スニーカー。
―――でも、ちょっと疲れてるのかな。そんな気がした。

「久しぶり」
「久しぶり―――待った?」
「ううん。大丈夫」

隣のブランコに腰を下ろして、ポケットに入れていた手を抜いて鎖を掴んだ。
ワタシも徐に後ろへ下がって地面から足を離した。
ギィーと音を立てながらブランコは加速する。

「亜弥ちゃん、話って?」
「うん、謝っとこうと思って」
「―――何を?」
「ワタシ、彼氏なんていないんだ。あれからずっと一人」
「えっ」

さすがに驚いたようでこちらを見つめる眼は若干大きく開いていた。
そんなミキたんを横目で確認しながらブランコは更に大きく揺れる。
181 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:28
「部屋をね、模様替えしたの。何度も何度も。
 なのに、誰かさんが置いていったぬいぐるみがいるせいで、ミキたんがずっと部屋の中にいるんだよ。
 失恋なんて吹っ切って、1年間楽しかったはずなのに。ミキたんはワタシの側にいやがったの」
「捨てればよかったのに」
「捨てようと思ったよ、何度も思った。だけどね、どうしても捨てられなかった。
 理由なんてよくわかんない、捨てようと思ったら勝手にカラダが固まっちゃうんだから」

愛着があったからっていう理由をワタシは勝手につけてミキたんに似た羊のぬいぐるみを捨てることは出来なかった。
―――――結局ミキたんを忘れることなんて出来なかった。

「ミキたんの話っていうのは、なんなの?」
「ミキ?ミキは・・・うん。ミキのワガママ聞いてもらおうかなって」
「ワガママ?」
「うん」

ミキたんも同じように後ろに下がって地面から足を離す。
足を折ったり伸ばしたりをして、その速度はどんどん上がっていった。

「逢いたいって思うときに逢えないのってすごい寂しいことなんだなって感じたんだ。
 ミキはさ、あんまりコトバで表現するのウマくないからさ、その、なんだろな、好きってコトバもあんまり使いたくなかったの。
 だってさ、そんな何度も使ったら、安っぽくなると思ってたから―――亜弥ちゃんを好きって気持ちが安っぽくなるのがイヤだった」
182 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:29
正面だけ見て、ミキたんは淡々と語る。
夜空に向かって語るその気持ちは本当にワタシの為に言ってるの?

「だけどね、わかったんだ。
 何度も何度も好きって言っても安っぽくさせなきゃいいんだって。
 言えば言うほど気持ちが深く表現できる"好き"を言えばいいんだなって。
 その方法がどんなのかなんてわからないけど、亜弥ちゃんといたらそれが探せそうだと思ったの。
 そしたら、この気持ちをもう一度亜弥ちゃんに伝えなきゃなって思ったんだ」

ミキたんは鎖を持ったまま両手を前に出して、スピードに乗ったブランコにブレーキをかけてゆく。
そして、止まったと同時に動いているワタシに視線を向けた。

「もう一度付き合って欲しい。
 ―――亜弥ちゃんだからこんな気持ちになれるってわかったから」
「・・・」

ワタシも手を伸ばしてブランコにブレーキをかけ始める。
止まった後、ミキたんと目が合った。
183 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:29
「ワタシね、もう傷つきたくないの」
「うん」
「もう、好きな人に離れて欲しくないの」
「うん」
「ずっと側にいて、離れないで。ワタシのことだけずっと見てて。
 嫉妬だってするし、好きって言ってくれないと寂しくなるから絶えず言って欲しい。
 それが約束してくれるなら、付き合っても、いいよ」
「――――うん、約束する」
「ホント?」
「うん、ホントだよ」
「ホントにホント?」
「ホントにホントだってば」
「ホントにホントにホント?」
「そんなに疑うなら、ミキの首に紐つけてくれていい。
 亜弥ちゃんの側から離れないように」
「―――もぅ」


鎖から手を離してまっすぐにミキたんの元へ。
もう離さないで、ずっとワタシを見ていて。
もう泣きたくないから、寂しくて泣いたりなんてしたくないから。

ワタシは超能力者じゃないから、思ってるだけじゃ気持ちなんて読み取れない。
だからたくさん好きと言って。飽きさせてしまうぐらい好きって言い続けて。
ミキたんの好きならいつまでも聞いていたいから。


「ミキたん、大好きだよ」
「ミキも好き。亜弥ちゃんが大好き」
184 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:29
今日の夜空は晴れていて、星のカーテンはキラキラと夜空を飾っていて。
そんな中にいる私達は楽園に住まうアダムとイブのようでした。



おわり。
185 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:29

186 名前:飽きてしまう程、好きと言って。 投稿日:2005/02/21(月) 22:31

187 名前:ケロポン 投稿日:2005/02/22(火) 02:15
更新お疲れ様です。
久しぶりにグッときました。ちょっぴりシリアスな感じが引き込まれます。
これからも楽しみにしてます。
188 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/28(月) 23:11
いいです!
今年も作者さんについていきます。
189 名前:右京 投稿日:2005/02/28(月) 23:21
>>187
ありがとうございます。
程よい暇つぶしになったのであれば、嬉しく思います。

>>188
ありがとうございます(笑)
しっかりついてきてくださいねー!
・・・って、限りなくマイペースですけど。

では、更新します。
190 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:22
ねぇ、ミキたん。
誰にも望まれない愛だとしても、愛し合っていたいのなら
もうこの世界からいなくなろうよ、一緒に死ねばいい。
向こうの世界でシアワセになって暮らそう、ね?
男とか女とかそんな枷に縛られてミキたんを一緒にいられないなんてヤだよ。

今度生まれ変わったら、ワタシが男の子になっていいからさ。
二つ学年の上の先輩に恋をするの、男勝りなサバサバとした藤本美貴っていう女の子を愛したい。
そしたら、周りは何も言わないよね?
嫉妬しちゃって苦労を投げてくるかもしれないけど、ワタシ、めげないよ?
だってミキたんを愛してるもん。たんの事、大好きだもん。
だから、ね。
ずっと一緒にいよう、どこにいても生まれ変わってもしても。
ワタシの右手はたんがギュッと握ってて。
191 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:22




「なんでさぁー」
「うん?」
「ミキたんは、そんな――」

強いの?

「なによぉ〜」
「ううん、なんでもない」

ギュッて腕に抱きついて頭をミキたんの肩へ傾ける。
すると、空いた右手で頭をゆっくりと撫でてくれて。 ―――ちっちゃな手だけどおっきい手。
冷たいんだけど優しいあったかなワタシの大好きな手。
192 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:23
聞けるワケないじゃん。
ワタシがこんなに不安になってるのをミキたんに知られたくなんかない。
たんの前では笑っていようって決めたから。
どんなに不安でも寂しくても我慢しようって決めたから。
―――ううん、素直にならないんじゃないの。
なんてゆーのかな、これはワタシにとっての決意表明みたいなモンで。
偽った気持ちでも好きなことに変わりはないの。
むしろ、好きだから偽ろうって思ったの。
ワタシね、悔しいけどミキたんが大好きだから。アナタなしじゃ生きていけないってわかってる―――

「ねぇ、ミキたん」
「うん?」
「ウチらさ、男の子と女の子で出会ったとしてもこんなに仲良くなれたのかな?」
193 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:23
好きでいられるのなら、もっと自然な恋が出来るのなら違う出会いをしたかった。
今が満足できないワケじゃない、違う愛し方で悩むことがなくなるワケじゃないけど
―――今は辛過ぎる。
こんなに好きでこんなに愛してて。だから離れたくないって思うし、離れたいとも思う。
不安で不安でしょうがないのもミキたんを好きだからってコトもわかってる。
恋だけが全てじゃないって知ってるけど、この恋だから本気でいられるのも事実。

「親友ってこと?」
「うん、こーやって一番の親友でいられたかな?」
「どうだろうなぁ。
 ――たぶんね、ミキが男だったら、コクってたと思うな。"亜弥ちゃんが好きなんですー!"って」
「にゃはは、なぁーんか照れるじゃないの」
「だって、ミキは亜弥ちゃん大好きだもーん」
「ワタシも好きよ?」
「あはは、キモイねぇウチら」
「ホントだよー」
194 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:24
たぶん、お互いが気づいてるんだと思う。
――本気で好きで、本当に愛してるって。
でも、言い出せないで、こう、くっついてる。

好きに形なんていらないし、今のままでシアワセなのならそれでいい。
昔ならそう言えた、それでいいと思ってた。

だけど、好きになればなるほどそんなんじゃいられないって気づいた。
不安定だから形を求めたくなる。気持ちだって確かめたくなる。
たとえそれが偽りだとしてもその奥の物が知りたくなる、欲しくなる。
195 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:24
ミキたん。
ワタシ、ツライんだ。
だから一緒に死んじゃおう。
ワタシだけが死んじゃったらミキたんは悲しむから、一緒に新しい世界で幸せになろう。
お互いの関係を崩そうとしなくたって好きでいられるんだよ?
確かめて安心する事もできるし、気兼ねなく素直でいられる。

この世界が嫌いだなんて思ってないよ?
ただ、ウチらにとってはちょっと残酷すぎるよ。

ずっとずーっと好きな気持ち、変わらないから。
違う出会い方で好きになろう? シアワセになろう?
196 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:25
「―――ワタシ、引っ越そうと思うんだ」
「へ?何処に?」
「んふふ―――違う世界に」
「はぁ? 亜弥ちゃん、大丈夫?」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
「いや絶対壊れてる。アンタ、ネジ外れてるって」
「もぅ、だいじょーぶだってばぁ」

飯田さんの交信がこの世界から飛び立てるカギだったら
ワタシはすぐにでも飯田さんに交信の仕方を請うだろう。

未来の切符なんていらない。
この世界から飛び立てる力が欲しい。
枷を外すカギが欲しい。
197 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:25
「ねぇ、ミキたん―――」
「ん?」

一緒にこの世界からいなくなろう?

「――ううん、なんでもない」
「もぅ、さっきからおかしいよ亜弥ちゃん」
「にゃはははは」
198 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:25





なんて―――言える訳ないじゃん。


おわり。
199 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:26
 
200 名前:だから一緒に死んじゃおう 投稿日:2005/02/28(月) 23:26
 
201 名前:名無し読者 投稿日:2005/03/05(土) 04:12
作者様に失礼かもしれませんが
今の気分にぴったりの更新です…
202 名前:K坊 投稿日:2005/03/09(水) 23:12
おぉ!!
こんなところにあやみきが!!
狂気みちた亜弥さんがいいですね。
203 名前:ウンチ 投稿日:2005/03/10(木) 14:07
おぉ〜!あやみきだぁ〜☆
何かこれがみきちんが素顔かなと思ってしまう
俺でした☆★
204 名前:右京 投稿日:2005/03/18(金) 02:43
夜中に更新開始しまーす。・・・の前にちょっと一言。
あのですね、前回の重たいのは初ロマンス記事の前に
書いたんですけど、見事にかぶってしまい最悪な印象を
与えてしまったなぁとちょっと反省しておりました。

この間の悪さにビックリというか。なんというか。
今回のはそのネタの続きといいますか、同じようなネタです。
なので不快な気持ちを与えてしまうかもしれませんが
あえて今回もageていきますので、気分を悪くなさった場合
容赦なく底辺へ落として構わないのでよろしくお願いします。
205 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:44
ここ最近、スケジュールがキッチリ組まれていて余裕の出来ない日々が続き、
それに加えて、週刊誌のスキャンダル記事もあって精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいになっていた。
そんなある日、事務所の計らいと言うべきなのか午後から急にオフをもらうことになった。
だが私生活の行動には十分に注意しろとの厳しいお達しもあるせいで、下手に家から出ることも出来ず。
一体、何の為の休みなんだろうと疑問に思う。

――――羽を伸ばせという意味なのか、反省しろという意味なのか。

どうせなら、ぶっ倒れてしまうまで仕事をしたいと思ったのが本音。
仕事をしている時なら周りから縛られることもなく自分を見つめることが出来たから。
ただそれだけを見て走ることが出来たから。
・・・それに、過労で倒れたのなら少しは心配してくれる人だっているだろう。
今は周りが敵に見えてしょうがなかった。初めてのことだったし、あることないこと書かれるのは正直面白くない。

周りにあったわずかな自由でさえも奪われた気がして、
今の私は抜け殻のように部屋の大きさに似合わない大きなソファに寝っころがっていた。
206 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:44
何をやろうという気にもなれず、ぼーっとしながらテレビ観賞。
お腹がすいたら買いだめしていたカップラーメンを食べて、
喉が渇いたら2リットルのミネラルウォーターをコップに注がずに口飲み。

いきなり暇を与えられてもすることなんて何もない。
友達もこんな時間に暇な人は誰もいないだろう。メールや電話をかけるのも億劫でケータイの電源はすぐに落とした。
せっかくの休みなのに、こんなもったいない過ごし方ではどうかと思ってはいたが、何もすることがないのだ――しょうがない。

私はたいして見てもいなかったテレビを消してオーディオの電源を入れた。



207 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:45
―――CDが2週程した頃だったろうか、音楽以外の音が部屋の中に響く。チャイムの音。
ソファに胡坐をかいて雑誌を見ていた私は、スッと立ち上がりインターフォンへ。
そこに映ったのは、意外な人物だった。

「なんでいるの?」
「なんでって言わないでよー。仕事終わりに事務所に寄ってみたら亜弥ちゃんの事聞いてさ。
 わざわざ来てあげたのに。・・・ってゆーか、早く開けてよ。ほら、早くっ!」
「あ、うん」

エントランスの自動ドアを開けて、彼女を迎え入れる。
玄関まで来るまではそう時間はかからなかった。

「暗証番号知ってるんだから、勝手に来ちゃえばいいのに」
「そーゆうワケにもいかないでしょーが。何も言わずに来たんだから、一応承諾もらわないと」
「そっか。」
「もー、危ないんだから」

嘆息をつきながら彼女は靴を脱いで私よりも先に居間へと進んでいく。
208 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:46
交互にお互いの家を行き来しているので、どっちの家にも客人として歓迎する事はなかった。
自分の家が二つある感覚。まぁ、例えるとするならば近すぎる別荘と言ったところ。

「ねぇ、お茶でいいでしょ?」
「うん、ありがと」

彼女に続いて居間に入った私は冷蔵庫へと向かい、半分程残っていたお茶のペットボトルを取り出して2つのコップに注ぐ。

「あー、またカップラーメン食べてたの? 休みのときはいっつもこうなんだから、まったく」
「いいじゃん、メンドくさかったんだもん。」

コップを両手に持って彼女のもとへ。
ソファに座る彼女にコップを差し出すと"さんきゅ"と言いながらソレを受け取った。私も隣に腰を下ろす。

「で、どーしたの」
「どーしたのじゃないよ。亜弥ちゃんが寂しがってるかなぁと思って泊まりに来たの」
「明日も朝からリハあるんじゃないの?」
「まーあるけど、それは亜弥ちゃんも一緒でしょ」
「うん、まぁ」
「なら別にいいじゃん。いつもの事だよいつもの事」

あははと豪快に笑ってお茶をゴクリ。
なんか納得できる理由には程遠かったけど、断る理由もないので"そうだね"と頷き、お茶を口に含んだ。
209 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:46




その後、近況報告やら晩御飯やらお風呂やらを済ませ二人早々とベッドの中へ。
といってもすぐに寝るわけじゃなく、世間話の続き。
ポカポカになった体を冷ましたくないのがベッドへ向かった理由。

「まだ濡れてるじゃん。乾かさないと」
「あー、いいよいいよ。どーせ寝グセつくんだし」
「そーゆう問題じゃないってば。ほら、ちょっと起きてこっち。」

せっかく入ったベッドだったが、彼女のテキトーさには目を瞑れないので手を引いて化粧台の前へ。
置いてあるドライヤーをコンセントに挿して、ソレから吹く温風を頭に当てて乾かす。

「もう、ちゃんと乾かさないと臭くなっちゃうんだよ。せっかくシャンプーでイイ匂いなのに」

愚痴をこぼしながら、彼女の髪に手ぐしを入れる。
栗色の長くなった髪は温風と手ぐしによって、水分がとんでいきサラサラと踊りはじめた。
210 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:46
「ミキたんの髪ってキレイだよねぇ」
「そんなことないと思うけど・・・そうなのかな?」
「そうだよ。ミキたんの髪キレイ」

"ありがと"と照れながら鼻の頭をかく彼女。
だがすぐにその表情は消えて、鏡越しに表情は暗く沈んでいた。

「――――ねぇ、亜弥ちゃん」
「なぁに?」
「ホントはね、ミキが寂しかったの」
「え?」

不意に言われた一言に手を止めて首を捻る。

「ココんところ、全然逢ってなかったじゃん? 誕生日も逢えなかったし」
「うん。でもしょうがなかったじゃんソレは。お互い忙しかったし」
「――――そうやってウソつくんだ?」
「ウソ?」
「だって彼と会ってたんでしょ?見たよ、雑誌」
「あぁ、アレは―――」

偶然たまたま、あーいう状況が撮られてしまったワケで。
友達以上の感情なんて持ったことないのに、あることないこと書かれて困ってるのに。
・・・なんて言っても信じてはもらえそうにないけれど。
211 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:47
「ミキよりも彼の方が大事だよね、そりゃ。恋人と友達を比べるのがおかしいもんね」
「違うよミ―――――」

悲観的な発想をしている彼女を止めようと口を開いた瞬間、
鏡越しに映る彼女は目を真っ赤にして涙を流していた。

「わかってるよ、ミキより大事な人だってコト。だけどね、なんか悔しいの。悔しくて悔しくてたまらないの。
 理由なんてわからないよ。ただ亜弥ちゃんが取られちゃった気がして―――もうミキなんて必要ないんじゃないかって」
「そんなんじゃないってば」
「じゃあなんでミキには逢ってくれないのに彼とは逢ってるの?ミキって亜弥ちゃんにとってそんなに小さい存在?
 ミキだけなの?こんなに亜弥ちゃんが大好きなのって。ねぇ、なんかミキだけバカみたい」

違う、違うってば。

「ミキたんが小さい存在なわけないじゃん。どれだけ一緒にいると思ってるの?
 もう5年以上付き合ってるんだよ?小さいわけないじゃん!」

頭をたれる彼女に向かって言った言葉は届いたんだろうか。
彼女は鼻を何回もすすりながら、手の甲で涙を拭うと消え入りそうな小さな声で話し出した。
212 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:47
「・・・・・・前は彼氏出来たんだ、よかったねって言えた。亜弥ちゃんが幸せになるならミキも嬉しかった。
 でも、今はダメなんだもん。亜弥ちゃんの一番でいたい、亜弥ちゃんと一緒にいたいの」
「・・・」
「ミキ大好きなんだもん、亜弥ちゃんが。大好きで大好きで仕方ないんだもん」
「・・・ミキたん」

彼女は再び涙を流した。誰にも構うことなく大きくひき泣き状態で。
それがとても悲しくて。私自身が悲しくてドライヤーをテーブルに置くと後ろからギュッと抱きしめた。

「違うんだってば、彼は違うの。確かにあんなトコ見たら信じてくれないと思うけど・・・私、ミキたんの事大好きだよ?」
「・・・」
「世界で一番――ううん、宇宙で一番大好きだよ。
 だから、私の為に泣くのはやめて。ねぇ今日は私を励ましに来てくれたんでしょ?
 だったら笑って。ミキたんの笑顔大好きなんだから」

信じて欲しいなんて言えないけれど、色々な事情があってあの写真を撮らざるを得なかったの。
でもこれはミキたんにも言えなくて。ごめんね、ホントごめん。私がズルい事してるのは十分わかってるつもり。
213 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:47
「ねぇ、ミキたん。私、嬉しいよ。ミキたんがそんなに私の事を想ってくれてて。
 でも嬉しいけど、ミキたんには泣かれたくないよ。私のせいで涙なんて流してほしくない」
「――――ったら」
「うん?」
「…だったら、心配させないで。ミキを独りにしないでよ」
「うん。ごめんね」

謝るしか出来ない―――今の私にはこの一言しか言えない。
けど、やっぱりこれだけは信じて欲しいな。ミキたんが大好きなんだよ?

抱きしめる力を強めて"ごめん"とひたすら一つの言葉を繰り返す。
これぐらいしか出来ないから、今の私にはこれぐらいしか。

すると、まわしていた腕を彼女はギュッと掴み、抱きしめた。
214 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:48
「―――亜弥ちゃんはミキを一番にしてくれる?」
「・・・うん。ずっと一番だし、これからも一番だよ」
「約束だよ?」
「うん、約束」


周りがどんな状況でも私を想ってくれる人はいて、涙まで流してくれるヒトがいる。
寂しがりでヤキモチ妬きだけど――――― 一番近くで見てくれていて、信じていてくれる人。
本当の事、絶対言うから。時が着たら必ず言うから。だから―――もう少しだけ待っていて。



ミキたん、ごめんね。愛してる。



おわり。
215 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:48

216 名前:ごめんね、愛してる。 投稿日:2005/03/18(金) 02:48

217 名前:右京 投稿日:2005/03/18(金) 02:53
>>201
あわわ(汗)
不快な気分にさせてしまったようで申し訳ありません。
記事とは関係ない事に影響されていたものであんな風に。
失望なさらずに、また見ていただけると幸いです。

>>202
狂気ですね、まさに。
でも、それぐらい相手のことを好きになれたら素敵かなって
ちょっと希望的な事も入ってたりしてます(笑

>>203
ミキティは特に活躍していないんですが、
作者にもわからない何かを読み取ってもらったようで(笑
普通な感じです。ホント"素"みたいな。
218 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/16(土) 23:08
>ごめんね、愛してる。

あやみき信者としては、これこそが
リアルだと信じたいです。
でも亜弥ちゃんの言動考えると
そう簡単に男と付き合うとも思えないんですよねぇ・・・

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