娘。的昔話

1 名前:紫苑 投稿日:2004/03/31(水) 10:13
タイトルのように娘。的な昔話です。
2 名前:紫苑 投稿日:2004/03/31(水) 11:18
娘。的昔話
   雪女
むかーし、むかーし、新潟あたりに「ひとみ」っつー
兄貴と、「まこと」っつー弟がいてようだ。
ひとみはイケメンで、村の若い娘からの貢ぎ物で不自由なく
暮らしていたと。
したっけいきなりひとみが
「山にいくかぁ」て言うもんだからまことはおどろいて
「兄貴、ついにアルツハイマーになったかぁ!」
つったら思いっきりグーでなぐられたと。

まあいろいろあったけど山にいったそうだ。
したら山は吹雪だった。
別の日にいきゃあよかったのに、ひとみは意地はって
「今日行くんだ!」つってきかねがった。
したっけ案の定、道にまよった。
「兄貴ぃ〜、ここ圏外だぁ〜、ケータイ
  つながんないよぉ〜」
「ばか!時代設定無視すんな!!」
「だってぇ〜、台詞わすれたんだもん」
「まあ、いいやあそこの小屋にとまろう」
3 名前:紫苑 投稿日:2004/03/31(水) 12:07
二人が小屋に入って4時間、二人は寝ていた。
ように見えるが、まことは、寒さで寝れなかった。
「さみ〜よ〜って戸あいてんじゃん」
ギィーギィー
そこに白い着物・・・ミニスカートをはいたきれいな娘がいた。
娘が小屋に入ろうとするとバーンという大きな音がした。
風で戸が閉まって娘の顔面を直撃したのだ。
娘は何事もなかったように(いたがってたが)入ってきた。
そして、ひとみに息をかけて凍らせた。
そして、まことの方をむいて
「あんさわけぇがぁいがすわ、
  けどだっかさしゃべったらころすど」
といって、ひとみをかついで出て行った。
まことは、なにを言われたか分らず呆然としていた。
まことは何事もなかったかのように町に帰った。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 12:39
続き期待してます
5 名前:紫苑 投稿日:2004/04/15(木) 16:59
誠に勝手ながら学校がはじまったのでご自由にお書き下さい。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:13
こんこんと降りしきる雪の日には、山の麓の町は温泉街という本来の魅力を,、存分に発揮するかのような賑やかさだった。
「よ!お兄ちゃん、顔まっ青にしてどないしたん?うちで暖まっていかん?」
いかにも老舗という佇まいをもつ旅館の前では、その雰囲気に似つかわしくない呼び込みのお姉さんから声をかけられた。
綺麗な笑顔に、年の頃は20代半ばだろうか
まるで優しさに誘われる様に、まことは手を引かれて温泉旅館に入っていった。

意識がはっきりとしてきたのは、露天風呂で乳白色の湯に浸かりしばらく経ってからだった。

吹雪き。
山小屋。
白い息で、瞬く間に兄を凍りの彫像に変えた少女(少し間抜け)。
寒さで消えかけていた体温が戻ると共に、込み上がってくる恐怖と悲しみ、喪失感。
自分は何故、兄を見捨ててしまったんだろう。
まるで遠い昔のような、村の楽しい日々。

頭を抱えていたまことが、不意に立ち上がる。
「ぅん、取り返そう!」
手際良く体を洗い、冷水を浴びる。
扇風機がそよ風を送る脱衣所で、用意された小奇麗な浴衣に身を包みロビーへ向かった。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:17
「おや、まるで別人やなぁ、男前やん!」
およそ客に対する態度ではないが、まことの年齢的なものに配慮した所為でもあるのだろう。
軽い口調で接するこのお姉さんは、みちよと名乗った。
「さっきはホントありがとぅございますぅ」
まことは一応、命を助けられた御礼をしてから本題に入った。
「ちょっと聞きたいことがあるんですけど…」
「ん?」
「『あんさわけぇがぁいがすわ、けどだっかさしゃべったらころすど』
こんな感じの事をある人に言われたんですけど、意味わかります?」
少し唖然としながらも、みちよは言葉を選びながら丁寧に答えた。
「標準語に直すと
『あなたは若いから生かすわ、でも誰かに喋ったら殺すよ』
じゃないかな…わたしもここの出身じゃないから、確実とは言えんけどね」
「ぁあ、なるほど!それなら意味が通じます」
「あんた、変な事に巻き込まれてんなら警察行きよ?」
まことは気付かされた。
「あ!…みちよさん、ありがとう!交番どこですか?」
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:18
確かにこれは、殺人事件または誘拐事件であり、一般人にとって警察は頼れるパートナーである。
意気揚揚と交番へ行き、意気消沈で宿に戻った事は、いうまでもない。

「雪女なんて相手にされるハズないか…」
あてがわれた部屋から静かに積もる雪を眺め、暖かいお茶で気持ちを落ち着かせる。
時間は夜9時を回った程だったが、小さい町とはいえ歓楽街だ。
浴衣を着た明らかな旅行者でなければ補導されてもおかしくない上に、
気のふれたような事を口走っていたにも関わらず、軽い説教で済んだのは幸運といえた。
「こんな時、頼りになりそうなのゎ〜」
携帯の電話帳をスクロールさせて目に留まったのは
紺ちゃん
「…あ、もしもし?」
「おー、どーしたの?」
「あのさ〜…」
紺野あさ美は、モテモテの兄ひとみを抜きにして、まことと付き合ってくれる数少ない友人であった。
加えて彼女は、コンピューターを使える頭の良い子だ。
まことは、交番の経験を踏まえて『雪女』に対する情報に絞って聞くことにした。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:20
「紺ちゃん、雪女って知ってるよね」
「雪女…息で、何でも凍らせちゃうってゆー」
「そーそー、倒す方法とか知らない?」
「倒すってwそーだなぁ…夏に寝込みを襲うとか?」
「夏…」
「ほらぁ、熊って冬眠するでしょ?きっと雪女は夏眠するから」
「うん、とりあえず夏まで待てない、即効性のあるやつでお願い」
「お願いって、ぇ〜…火炎放射器とか?」
「どこに売ってるか知ってる?」
「ガスバーナーならデパートにあると思うけど…」
「さっすが紺ちゃん!ありがと!」
「う、うん…え?」
「ホントにありがとう」
電話を切ってから改めて、有能な友人に感謝をしてまことは眠りについた。

「明日、朝一で火炎放射器を買って、リベンジマッチ…zzz」
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:27
朝、目が醒めると紺野から一通のメールが入っていた。
『大丈夫?』
真意を汲んでなお励ましてくれる友人に感謝のメールを送り、まことは温泉旅館を後にした。

昨日の吹雪きが嘘のような快晴のもと、雪景色の山を少年が一人登って行く。
腰に下げた900ミリリットルのポカリスエットと、片手にガスバーナー(9800円)。
およそ自殺志願者のように軽装だが、
「ちょっと山小屋まで」
この一言で誰に怪しまれる事も無く、もう一時間が過ぎていた。
「きっとガキの使いぐらいに思われてんだろうなぁ」
本来、人の命を脅かす雪女退治という英雄的行為だが、
事は成されて初めて認められるのだろうと、まことは理解していた。
孤高の英雄は、ただひたすら歩を進める。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:29
山の中腹にさしかかった所で、小休止をとろうとまことは大木の幹に腰を下ろした。
スポーツ飲料が体を潤してゆく。
白銀の世界の美しさに、小さな溜息が漏れる。
「いいね〜」
兄が言いそうな台詞だと、まことは笑った。
本当は二人で、この景色を見るはずだったのだ。
視線を落とし、もう一度溜息をつき立ち上がろうとしたその時、
手に持っていたペットボトルが何物かに引っ張られた。
「ぅわっ!なにっなにぃ!?」
「よこせ!」(訛)
まことも、そう言われて引き下がる程のお人よしではない。
ペットボトルの引っ張り合いをしながら組んづ解れつ、まことが馬乗りになった所で勝負は着いた。
「いきなり何ぉ…」
言いかけて、まことは奇妙な光景を目の当たりにする。
まことが抑えつけている少女とおぼしき相手は、口を窄めてフーフーと息を吹きかけていた。
「…ちょっと冷たい」
「う、うっさいな!ペットボトルよこせよ!」(訛)
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:31
威勢の良い少女に少年時代の自分を重ね、少なからず好感を抱いたのか
まことは、逃げられない様に相手の足に腰を移動させて、飲み物を与えることにした。
「ぷはー!うまっ!涌き水でお腹壊して以来なんだよー、助かったぁ〜!」(訛)
「君おうちは?」
「前は福岡居たけど、今はもっと奥の洞窟」(訛)
「洞窟…」
「よし、助けてもらったお礼に助けてやろう、なんか困ってるか?」(訛)
唐突なその提案に、少しの間を置いてまことは答えた。
「洞窟に連れてって」
「ん?」
少女の目が、鋭くなった。
「べ別に変な理由じゃないよ」
努めて平静に振舞うまこと。
「どもってるって。『スノーイング娘。(略して雪娘。)』入りねらっとるん?」
「いえ、意味が解りません」
「じゃあ何で?」
「ぇと、一目会いたいなぁって…」
「ああ、ファン?遠くから見るだけならいいよ?」
「十分です、ハイ」
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:33
山道をそれて獣道の行軍は大変なものだったが、れいなと名乗った少女のおかげで楽しい道のりだった。
山小屋をベースに適当に探して歩こうという計画も不要になり、最短ルートの大収穫である。

「れいなきっと、この雪娘。オーディションに合格出来たら変われると思etc」
少女の話を要約すると、雪女に憧れてこの山に来て、現在修行中との事である。
まことには異次元の話にしか思えなかったが、適当に相槌をうって聞き流す優しさはあった。
二人は良好な関係のまま、棲家である洞窟まで辿りついた。

しばらく茂みに身を潜めて様子を覗っていると、中から綺麗な娘が出てきた。
「うーん…今日は天気悪いなぁ、お日様出てると力出ないしぃ〜」
昨日の雪女のようだが、恐ろしさが無いのは天気のせいであると推察される。
「おい!おーい!人の話し聞けよおまえっ!」
洞窟の奥から響いた懐かしさすら覚えるその声を、まことは聞き間違いようがない。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:34
「はぁ〜、顔は綺麗なんだけど性格がなぁ…」
うんざり、とでも言いたげに娘が呟く。
「それ自分に言ってんだろ?つーか動けるよーにしろよ!このキショピンク女!」
「キショくないから!これは可愛いのっ!」
しかしなんだろう…この雰囲気…
「だいたいミニ浴衣って歳じゃねー…」
雪女が一息を洞窟に送り込むと、辺りは再び静寂に戻った。

「さすが石川さん、華麗の一言に尽きるたい」
雪女を羨望の眼差しで見つめる少女は放っておいて、まことは戦闘態勢に入った。
「雪女!覚悟しろ!」
虚を突かれたれいなには止める間もなく、一気に雪女(石川)の前に踊り出たまことが素早くガスバーナーに火を点す。
「おまえは昨日の…」
「雪女の弱点は熱!おまえに勝ち目はなーい!!」
不適に笑いながらまことは最大火力を放出させた。
「うわー」
雪女(石川)が声をあげる。まことは勝利を確信していた。だがしかし
「なんてゆーと思った?」
放たれた炎は、雪女(石川)の浴衣にさえ何の影響も与えていなかった。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:35
「人口の炎なんて、私達には効かないのよっ!ふん」

万事休す!

そこへ、れいなが割って入った。
「すいません石川さん!見るだけだって注意したんですけど…すぐ帰らせます!」
れいなは状況を把握出来ていなかった。
そんなれいなの襟首を掴んで、まことは起死回生を計る。
「人質だ!兄貴と交換しろ!」
ちろちろと、次の燃焼まで待機するガスバーナーをれいなに向けて叫んでいた。
極限状態に置かれたまことの選択肢は他になかったが、自分の行為に手が震えていた。
「雪女には効かないってさっき…」
微妙に話は聞いていたらしいれいなの呟きに、一瞬まことの思考は止まった。
自分の愚かさを呪わずにはいられない。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:36
「くっ!卑怯者め」
雪女(石川)の言葉に、まことは耳を疑った。
「耐性の弱い未熟なれいなを盾にするなんて!」
続けられた雪女(石川)の解説は、形勢を逆転するものだった。
「「そーなのか」」
気持ちとは不思議なもので、弱いと言われるとれいなもなんだか熱いような気になってきた。
「あ、兄貴を解放しろ!」
「い、石川さん…」
「う…、待ってなさいよ…ったく」


永遠の一秒とは、このような感動の場面を表すのだと、まことは実感した。
大股で洞窟を出てきた兄の姿を、生涯忘れることはないだろう。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:38
兄弟は人質の少女を手放すと、一目散に山を駆け下りていった。
雪女は後を追わず、熱で弱った少女を抱き止める。

「れいな大丈夫だった?」
「石川さん、ごめんなさい…」
雪女は優しく微笑むと、少女の唇に唇を重ねた。
注ぎ込まれる冷たい息が、少女の火照った体を癒してゆく。
「無事で良かったよ」
責める言葉の一つも無く、その身を案じる雪女の胸に少女は顔を埋めた。
絶対零度の温もりを少しでも零すまいとするように、強く強く抱きしめる。
肌から伝わる柔らかな冷気が少女の全身を覆う頃には、空は灰色に変わっていた。
「…石川さん」
「オーディションって言ったって、一人しか居ないんだから、何かあったら…ほら、えーっと、ほら!私がかおりんに怒られるでしょ」
少女の潤んだ瞳に見上げられて、頭を撫でながら言葉を繕う雪女の棲む山は
今日も一層、降り積もる。


18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 21:39
新潟あたりの昔話は、これでおしまいじゃよ
ふぉっふぉっふぉ



以上、好きにやらせて頂きました

現在 森は46スレありますが、このスレはもちろん
圧縮対象で構わないんだと個人的には思います

最後に、未熟者ではありますが、もし誰かに楽しんで頂けたのなら
嬉しいなぁ(←パクry
19 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/17(土) 00:03
面白かったです
違う人が続き書いたの?
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/17(土) 02:00
>>19
ありがとうございます
>>6-18書きました
駄目だししてもらえると勉強になります
自分としては、主役が変わってしまった印象が馬鹿丸出しですが
他にもあったら是非

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