東雲

1 名前:12 投稿日:2004/04/11(日) 23:05
長編を書きたいと思います。

週1回ペースで更新したいと思ってます。
とりあえずは、第一話を・・・
2 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/11(日) 23:21
それは突然の事だった。
亀井の腹部を鋭い痛みが襲い、その痛みを確認しようと頭を下げた瞬間
首の中を異物が通り、そのまま頭を通り過ぎた。
その様子を呆然と見つめていた道重の視線が急にぶれた。
そして、同じように亀井の様子を見ていた田中が、道重の方を振り返ると
道重の頭にも亀井と同じく、壁から飛び出した槍が突き刺さっていた。
「はぁ!?」
そう言い残すと、田中はあわてて、ソファを飛び越えると部屋の外に出た。
ドアの外には藤本の姿があった。
「あっ、ミキティ・・・」
助けを求めようとして・・・気付いた。
藤本の喉下から槍が飛び出て、それを血が纏っている。
がすっ!!
田中の頭を他の三人と同じく、槍が貫いた。
3 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/11(日) 23:30
「おらっ!!おらっ!!おらっ!!」
深夜の公園に加護の声が響いていた。
ブランコの間から見える綺麗な満月を見上げながら辻は加護に声をかけた。
「その位でいいんじゃないれすか?」
「まだまだや・・!おらっ!!」
加護の足元でうずくまっている男が「あぐっ!!」と声を上げた。
「お前ら、ヘラヘラしやがって・・」
加護はそう言うと男の腹部を蹴り上げた。
辻は軽くため息をつくと、加護の方へと近づいた。
近くに寄ってから気付いたが、加護の足元に転がっている男の顔が薄黒く膨らんでおり
裂けた傷口からはもう血も出ていなかった。
「やりすぎれすよ」
4 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/11(日) 23:38
「やりすぎな事あるかいな、そんなもん」
加護は再び、男の腹部をえぐるように蹴った。
辻も同じように再びため息をつくと、男の前でしゃがみこんだ。
「うっわ・・エグ・・・」
「あっ・・あっ・・・」
男は哀願するような声を上げて、辻の顔を見た。
辻はそれを見て、優しい声で訊いた。
すでに辻の頭の中ではそろばんではなく、ゆとり教育の影響なのか
電卓が高速で打たれて始めていた。
「おにいさん、月給いくらなんれすか?」
「ま〜た、始まった」
加護が呆れたような声を上げる。
「ね?月給いくら?今、財布持ってる?」
辻はにっこり微笑むと、男は呆然とその少女を見つめていた。
5 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/11(日) 23:53
『二頭龍』は新興団体である。

「最近のサラリーマンはお金持ってないんれすねぇ」
「当たり前や。不況、不況言うてるやつがもっとる訳ないわ」
辻と加護は男を公園に残したまま、駅前に来ていた。
辻の手には男の財布が握られている。

行動理念は『正義』。

「それにしても五千円て・・・」
「本当れすよ。これでナンパするなんて何する気だったんれすかね?」
千円札の束を抜き取ると、辻は路上に財布を投げ捨てた。
「あ〜あ、なんにしろ暇やな〜。また、適当に駅前でリーマン捕まえるかぁ?」
辻が八重歯を見せて笑った。
「あいぼんは、本当に暴力ふるうのが好きれすね」
「はぁ?暴力やない。制裁や」
そう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。

行動理念は『正義』。
6 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/12(月) 00:10
と、加護が急に顔を強張らせた。
辻は加護の視線の先、自分の背後に気配を感じ、振り返った。
がつんっ!!
頭の中で鈍い音を感じた、次の瞬間に辻の視線は地面まで落ちていた。
「な・・・」
混乱している頭を整理しようとしていた辻の顔の前を黒いブーツが通り過ぎた。
「なんや!お前!」
そう叫ぶ加護の声が聞こえた。と、同時に頬を伝う生暖かい感触が辻を覚醒させた。
(出血!殴られた!誰に!?誰でもいい!敵だ!)
一気に頭の中を整理すると、辻は素早く立ち上がった。
それと入れ替わるように加護の体が崩れて、地面に伏せるのが見えた。
その加護の前に立っている黒いフードをかぶった女の姿。
それが敵だと、辻は瞬時に判断した。女はゆったりとした動きで辻の方を向いた。
「あんたが二頭龍の辻?どっちも似たような感じで分かんない」
頬を伝っていた血が顎から落ちたのとほぼ同時に辻は拳を突き出していた。
が、それをゆったりとかわして、女は辻の胸をつかんだ。
「な・・・」
「やっぱり、あんたが辻だ。胸ないもん」
女は辻をそのまま突き放した。
7 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/12(月) 00:22
尻餅をつくように倒れこんだ辻は再び素早く立ち上がった。
女は突っ込んでくることもせず、ただ立っていた。そして言った。
「まぁ、どっちがどっちでもいいんだけど」
辻は再び、右の拳を女の顔めがけて突き出した。
(と、見せかけて・・・フェイント!)
辻の拳は女の顔の真横を通り過ぎて、そのまま辻は身体を反転させ、
左手の肘を再び女の顔に向かって振り出した。
「きゃはは」
笑いながら、女はその肘鉄を一歩下がってかわした。
(けど・・・)
「これもフェイントでしょ?」
女はそう言うと、更に身を引く。辻の肘鉄から伸ばした裏拳は虚しく
空をきった。そして、体勢を一瞬崩した辻の身体を女は蹴り抜く。
めきっ!!!
アバラの骨の軋む音が辻の耳にまで届いた。

8 名前:第一話「東雲(しののめ)」 投稿日:2004/04/12(月) 00:34
「がっはっ・・・」
血を吐きながら辻は、その場に倒れこんだ。
「あら?もう終わり?おいらはまだまだやれるんだけどな」
女はそう言うと、辻の右腕をつかんで、無理やり立ち上がらせた。
「うっ・・・あっ・・・」
(喋れない・・・?)
辻はそう思った瞬間に、自分がおかしくなっている事に気がついた。
呼吸が出来ない。いや、それだけではない。身体が動かないのだ。
(感覚がない?)
いや、感覚がないわけではない。
(時間・・・)
そう、時間が止まっている。身体中の時間が止まっている。
9 名前:12 投稿日:2004/04/12(月) 00:37
とりあえず第一話終了です。

何か感想があれば、それこそ意味が分からない等の感想があれば
(まだ、第一話なので勘弁)
とりあえず書いといて下さい。
10 名前:第二話「音」 投稿日:2004/04/12(月) 09:15
女はゆっくりと辻に近づくと、しゃがみこんで辻に声をかけた。
「どう?身体中の時間が溜められる気分は・・・」
(時間を溜める?)
辻は頭の中で復唱して訊ねた。
それを知ってか知らずか、女は続けた。
「おいらの『病気』はね、触れた人の時間を溜めることが出来るの。
じゃあ、ここで問題」
女は立ち上がって、加護の方を見た。
加護は辻と同じように動けないながらも女を睨みつけていた。
女は更に続けた。
「溜まった時間は一体どうなるんでしょう?」
ふと、加護の身体が震え始めた。
加護の口元から涎が地面に飛び散っている。
「あっ、答えられないか・・・正解は・・・」
加護の震えが目に見えて激しくなっていった。
それは痙攣などというレベルではなく、陸に打ち上げられた魚のように
口をパクつかせながら全身が上下に大きく振れている。
そして・・・
「暴発」
ぶつんっ!!
加護の身体から何かが切れる音がした。それが、筋肉が切れた音だとは辻は
おろか、加護自身も気付いていなかった。
加護の腕が青黒く染まり、ものの二分で大きく膨れ上がった。
同じように顔、肩、足まで膨れ上がり、最後に大きく跳ね、
地面に伏すと加護はそのまま動かなくなった。
(あいぼん!)
11 名前:第二話「音」 投稿日:2004/04/12(月) 09:32
全身の筋肉が破壊され、動けなくなった加護を捕らえていた視界が
大きく揺れ始めた。
「あんたも、暴発が始まったね」
女は辻を見下ろしながら言った。
辻は目線だけを女に向けた。いや、向けようとしたが、すでに視線
は激しく揺れ動き、定めることが出来なくなっていた。
それまで押さえつけられていた全身が、今度は激しく動き出した。
「あっ、あっあ、あああ」
辻の口元から激しく泡が吹き出した。
筋肉が大きく伸びるのが感じられた。そして、そのまま肉離れが起きる。
その激痛が辻の全身を包む。
「あああああああああああああ」
叫び、悶え、苦しみ続けた末、辻は・・・
絶命した。


『二頭龍』は振興団体である。
行動理念は『正義』。
たった二人のこの団体はその二人が絶命。
そしてこの日、『二頭龍』は、壊滅した。

12 名前:12 投稿日:2004/04/12(月) 09:38
第二話終了です。

えーと・・・一応、方向性は決めてあるんですが、
なにぶん、久々に書くんで
勘弁です。

一応、続きます^^;


13 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 04:30
ぼんやりと意識下にかかった霞が消え始めた。
身体がまだ動かないが、頭の中では単語の羅列を整理し始めていた。
天井の電灯を確認した頃には身体中を動かせるようになっていた。
「ここ・・・は?どこ?」
辻はゆったりと身を起こすと辺りを見回した。
真っ白い部屋に真っ白なドアがある。
そして同じく真っ白なベットの上に辻は乗っていた。
なんて無機質な部屋だ。部屋に対しての第一印象はこれだった。
こんっ、こんっ・・
二回のノックの後、辻が返事する前にドアが開いた。
14 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 04:39
「やっとお目覚め?」
ドアが開いてすぐに懐かしい顔が辻の目に飛び込んできた。
「矢口さん!」
矢口と呼ばれた女性は少し微笑むと、ベットの横に腰掛けた。
「さっきはごめんねぇ」
「はい?」
さっき?といった顔を辻がすると、矢口は少し苦笑した。
「やっぱり気づいてなかった?」
「なんれすか?え?」
「さっきの。ほら、駅前で」
「へぇ?」
間抜けな辻の返事を聞いて、また矢口は苦笑した。
そして、すぐさま真面目な顔をして言った。
「もしかして、覚えてない?」
辻は何の事だかわからないという顔で返事をした。
「というより、矢口さんは何でここにいるんれすか?
・・・そういえばここは何処なんれすか?」
「舌足らずの喋り方も変わってないね」
矢口は質問には答えず、そう言って笑った。
なんだか分からなかったが、とりあえず辻も笑った。
15 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 04:49
矢口は一頻り笑った後、「待ってて」と言い部屋を出て行った。
そしてしばらくして、加護が部屋に入ってきた。
「あいぼん」
「ああ」
気のない返事をした後、加護は辻の隣に座った。
辻は先程、矢口にはぐらかされた質問を加護にした。
「あいぼん、なんでここに辻達はいるんれすか?」
「それがな、ワイにもわからん」
加護の返答は期待していたものではなかったが、とりあえず
加護が一緒にいるので安心だと辻は思った。
だが、辻とは逆に加護は心配そうにつぶやいた。
「記憶がないんや・・」
「え?」
「ここに来た記憶も公園を出てからの記憶も」
しばらく辻も同じように思い出してみたが、やはりここにきた記憶も
公園を出てからの記憶もまるで思い出せなかった。
それでも辻の、加護がいるから大丈夫だという確信は揺らがなかったが。
16 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 05:01
それから数分たって、矢口が現れた。
辻と加護は同時にここが何処なのか訪ねたが、矢口は答えず、ベットに腰掛けた。
そして急に話を始めた。
「あんたたち、今、『二頭龍』ってチーム組んでるんだってね」
加護は一瞬質問に答えない矢口に不満そうな顔をしたが、答えた。
「はい」
「噂は聞いてるよ。行動理念は正義。正義に反するやつ等を片っ端から
叩いてるって」
「そうです」
加護は事務的に答えた。その態度はおそらく矢口の最近の噂から来ている
のであろう。
「ふ〜ん」
矢口はまるで興味がないかのように答えた。
加護は少し苛立ったように続けた。
「最近の矢口さんの話も聞いてますよ?」
あっ、標準語。辻は一瞬、考えたが黙っていることにした。
矢口が訊いた。
「どんな?」
「クスリに手を出したって。最近じゃ、それに染まってて、集団感染
の病気を貰った」
加護は矢口を威嚇するように見つめた。
そして、なおも標準語で続けた。
「後輩として情けないです」
17 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 05:10
部屋中に重苦しい空気が流れた。
「信じてるんだ」
矢口は加護の態度に応じるでもなく訊いた。
加護は答えずに、続けた。
「今、それを知らないチームはいません。有名です」
「そうなんだ?案外、おいらも有名だったんだね」
「ふざけないで下さい」
「まぁ、噂は噂だし、ほっといたら消えるでしょ」
そういうと矢口は立ち上がり、加護の前に立った。
「・・・なんですか?」
「胸・・・また大きくなった?」
「・・矢口さん、馬鹿にしてんすか?」
「や、いたって真面目」
先程からの部屋中に重苦しい空気に加護の殺気が混じり始めた。
辻はただ黙って見ている事にしていたのだが、もし、加護が動けば
何時でも動ける体勢にゆっくりと構えた。
が、
「きゃはははは」
という矢口の笑い声で部屋の空気が一気に弛緩した。
18 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 05:15
と、次の瞬間に、矢口は加護の腕を掴んでベットの上に投げつけていた。
辻があわてて気持ちを切り替えようとした時には頭を掴まれ、加護と同じく
ベットの上に投げられていた。
加護の上に載った形になった辻は乗り切れず、ベットの下に落ちた。
「あ・・・・」
ベットの上で寝転びながら呆然と矢口を見ている加護に矢口は
「あんた、前と変わってないね。そんなんじゃ、いつかやられちゃうよ」
そう言ってまたきゃはは・・と笑った。
19 名前:第三話「現金と思想」 投稿日:2004/04/14(水) 05:28
「かなわなんわ・・矢口さんには」
ベットからようやく起き上がった加護はそうぼやいた。
「当ったり前でしょ?」
矢口はそういうと、にっと笑った。
ベットの下でまだ呆然としている辻を起こすと、矢口はお遊びは
これくらいにして・・・という前置きをして言った。
「あんたたち、今の時代、正義ってなんだと思う?」
「?」
急な質問に加護と辻は呆気にとられていると、それを察して矢口
は少し笑いながら続けた。
「行動理念は正義でしょ?」
加護が答えた。
「そうやけど、具体的に聞かれると・・なぁ?」
「うん」
辻もよくわからないという顔をした。
「おいおい、大丈夫かぁ?『二頭龍』」
矢口にそう言われた二人は困った顔を見合わせた。
矢口はそれを見て、また笑うと続けた。
「正義っていうのは時代時代で変わるの。
今の時代、正義っていうのはね・・・」
矢口は二人に話しながら思い出していた。
二人を説得するために渡されたマニュアルを。
矢口がそのマニュアルの中で気に入った文がある。

加護は『正義』という『思想』で釣る。
辻は『富』という『現金』で釣る。
20 名前:12 投稿日:2004/04/14(水) 05:29
今週、来週分のラスト更新です。

お疲れした!!
21 名前:uranai師 投稿日:2004/04/14(水) 07:53
こういう話好きです。期待してますので頑張ってください。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/24(土) 11:42
面白そう
頑張ってくださいー
23 名前:第四話「病気」 投稿日:2004/04/27(火) 12:19
辻と加護は二頭龍として活動する以前、矢口の属している『東雲』
の特攻部隊『神風』として活動していた。
『東雲』は総人数、約800人。
行動理念を『個々の正義』とする団体で当時、関東エリアのあらゆる
チームを抑え、トップとして君臨していた。
それが二年前。
24 名前:第四話「病気」 投稿日:2004/04/27(火) 12:37
加護と辻が脱退して一年後、つまりは『二頭龍』設立一年前。
矢口の元に四人の新兵が現れた。
それは特攻部隊の幹部が二人、辻と加護が抜けた代わりとして新たに
迎え入れられた新兵だった。
「失礼します」
ノックの音と共にそんな声がした。
「ああ、どうぞ」
矢口の気のない返事の後に部屋のドアが開いた。
「はじめまして。今回、幹部候補として来ました高橋愛です」
「同じく、新垣です」
「同じく、小川です」
「・・・・」
入ってきた四人は自己紹介をしたが、最後に入ってきたややおっとり
とした感じの娘は自己紹介をしなかった。
「えっと、その子は?」
「紺野です」
高橋が代弁して紹介し、紺野と紹介された娘は一言も喋らず、ただ黙って
いる。
「また、一癖ありそうな・・・」
矢口は苦笑したが、高橋は眉ひとつ動かさずに
「紺野は寡黙なものですから」
と、真面目に答えた。

25 名前:第四話「病気」 投稿日:2004/04/27(火) 12:58
「おいらの事は知ってるよね」
「はい、矢口幹部の御噂は耳にしております」
「御噂って・・」
矢口はまた苦笑したが、相変わらず高橋達は無表情なままだ。
(やりづらいな・・)
矢口はそう思ったが、とりあえず話を始めた。
「ここに来てもらった理由はわかるよね?」
「大体の見当はついています」
「じゃあ、改めて説明する必要はないか」
そういうと、矢口は腰掛けていたソファーから腰を上げ、
ドアの前に整列している四人の前に立った。
「最近、ある新興団体がうちらのエリアで暴れてるらしくてさあ、
それでその団体が名前も素性もわからないんだよ。まあ、時間が
経てば消えるだろうって軽く考えてたら下っ端の族とかが次々に
消されてんのね」
「その団体を調べて潰すんですね?」
新垣が矢口に続けて訊いた。
矢口は少し笑うとそう、と答えた。
「期限は二週間。うちのチームの第四層までなら使っていいから」
『東雲』は大きく五層に分かれている。
まず、第一層が矢口と他三名の幹部長クラス。チーム内では絶対的
権限を持っているこの層が以下の層をそれぞれ束ねている。
そして第二層。これは辻と加護が元、属していた層で主に特攻、支配
という役割が与えられ、それぞれエリアを任されている。
続いて第三層から下は暴走族、ギャングの集まりで、主に戦闘の場合
狩り出されるのはこの層の人間達である。
26 名前:第四話「病気」 投稿日:2004/04/27(火) 13:07
「それは使用しても、しなくてもいいという事ですか?」
高橋の質問に矢口は不思議そうに尋ねた。
「え?うん」
「私達だけでもいいという事ですよね?」
矢口はその質問を受けて笑いながら答えた。
「まぁ、そこら辺のことは任せるけど、あんまり余裕ぶってると
足元すくわれるから、用心のためにも二、三のチームは動かした
方がいいと思うよ」
「わかりました」
高橋はそう応えたが、実際は動かす気はないだろうと矢口は思った。
「とりあえず、そういうことだから」
「はい。失礼しました」
四人は深くお辞儀をすると、部屋をあとにした。
矢口はそんな四人を見ながら、妙な違和感を感じていた。
27 名前:第四話「病気」 投稿日:2004/04/27(火) 13:30
矢口のいた部屋をあとにした四人はすぐさま活動を開始した。
四人は、つい数日前に襲われた族の集会場に来ていた。
「やり口から言って、探してる団体の仕業だと思うんだけどさ」
高橋はそういうと、地面に飛び散っているガラスの破片を拾った。
辺りには、バイクの残骸や、歪んだ車のボンネットが落ちていた。
「どう?紺野?」
高橋が尋ねると、紺野は目を瞑り、意識を集中し始めた。
紺野の頭の中を幾つもの事象が飛びかい、交わる。
紺野はそれを一つ一つ纏めていく。
(集会、強襲、流血、残骸・・・)
紺野が頭の中で事象を纏めているのを見て、高橋がつぶやいた。
「紺野の『病気』ってさあ、すごくない?」
バイクのハンドルの残骸を持ってはしゃいでいた新垣と小川が
振り向いて応えた。
「頭の中でどんな事でも推理しちゃうんでしょ?」
新垣がそう言うと小川が続けた。
「金田一の孫もびっくりの洞察力だよね」
「だってさ、どんな些細なヒントでもいいんでしょ?」
「高橋もそんな『病気』が良かったなぁ」
「無理無理、紺野、頭いいもん。頭良くないと使えないよ」
「じゃあ、小川は無理だね」
「なんでよ」
そうこう三人が談笑している間に紺野は分析を終えていた。
「終わったよ、みんな」
紺野がそう言うと、高橋が指を鳴らして立ち上がった。
「んじゃ、潰しときますか」
四人はそのまま、紺野の言う場所へと向かった。
28 名前:12 投稿日:2004/04/27(火) 13:38
更新終了です。
>21
 レスどうもありがとうございます。こういう話というか、いまいち分かりにくい
 部分があると思いますが、伝わっているのならそれはそれで有難いです。感謝
>22
 ありがとうございます。頑張ります。面白そうだと思っていただけるならば
 これ幸いなのですが、途中で「あれ?そんなに・・・」と思った場合は見限って
 下さい。見限られないように努力はするので^^;

分かりにくい部分等、ご指摘があれば言ってやってください。
努力はしますので
29 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 02:07
矢口から『浪軍討伐命令』が出されてわずか二日後・・・。
『浪軍』の中心である藤本、亀井、田中、道重の四人が殺害されるという
事件が起こる。
「・・・・」
矢口は新聞の小さな欄を見ながら、ため息をついた。
(紺野の調査報告後、わずか一日・・?)
(でもまさか・・・高橋達が・・・?)
(凶器は槍のような棒状のもの・・)
『東雲』第三本部内幹部応接室。
矢口は新聞を投げ捨てると、身の数倍はあるソファーにもたれかかった。
(あの四人・・)
(な〜んか、やばいねぇ・・・)
30 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 02:24
すでに矢口がソファーで考え込んでいる間に高橋達は動き出していた。
矢口のいる応接室の窓から見える廃墟の前に高橋と小川は来ていた。
見た目はただの潰れたカフェなのだが、そこは『東雲』第二本部になっている。
入り口にいたギャング風の男が高橋に挨拶した。
「お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ。誰?」
「自分は橋本といいます」
高橋は橋本と名乗った男をジロジロと眺めた。
「な・・なんですか?」
眺められるのが不快なのか、橋本はたまらないように訊いた。
「いや・・橋本君はさぁ、握力とかってどれくらいあるの?」
高橋の質問に一瞬、不思議そうな顔をしたが橋本は
「五十はありますけど、よく覚えてません。中学校から測ってないので」
「あっ?そうなんだ」
「はい」
「じゃあ、この人でいいんじゃない?小川?」
31 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 02:32
橋本がきょとんとした顔をしていると、小川が橋本の前に立った。
と、同時に橋本の視界が大きくぶれ始めた。
ドクンッ!!ドクン!!
心臓が破裂しそうな位、跳ねている。
「あっ・・・あっ・・・」
橋本は声にならない声を上げると、地面に塞ぎ込んだ。
(な・・・んだ??)
(こ・・・れ・・)
ドクンドクン!!
二回、大きく心臓が跳ねた。
小川が橋本の頭の上に手をあてた。
何か呟いているのが聞こえる。
「・・・・せ」
(は??何・・・言って・・・)
「・・・をこ・・せ」
(こせ?)
「中澤を殺せ」
(中澤を??殺せ??)
32 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 02:47
一方その頃、第三本部では矢口の目の前に紺野と新垣が踏み込んできていた。
「やっぱりね。あんたたち、信用できないな〜って思ってたんだ」
「勘がいいですね。矢口さん」
そう言った紺野の両手には入り口に立たせていた見張りの二人の頭があった。
「ということは、やっぱり『浪軍』をやったのはあんたたち?」
「そうです」
「この間に比べてよく喋るじゃん、紺野。どうやったの?」
「簡単ですよ」
今度は新垣が前に出てきた。
「こうやって・・・」
新垣が地面に手を置くと、手の周り一メートル程の地面が歪み始めた。
と、それを見ていた矢口の右耳のあたりを風が通り過ぎた。
あわてて矢口が左に飛ぶと、風が通り過ぎたところに槍が立っていた。
「!?」
「殺したんです」
「・・・・手品?」
何も無かったところに槍が現れた。いや、現れたというより生えた。
槍の根元の地面が盛り上がっている。
突き刺さっているようには見えない。
「手品じゃないですよ」
新垣が楽しそうに答えた。
「『病気』です」
「病気??」
矢口が怪訝な顔で応えると、新垣は
「まぁ、説明はめんどいので」
と勝手に話をやめた。
33 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 02:55
と、同時に矢口の足元が一瞬揺れた。
「!!」
すぐさま、矢口は後ろに身を引いた。
矢口のいた場所に槍が三本生えた。
「本当に勘がいいですねぇ」
感心したように紺野が呟く。
「あんたたち、一応訊くけど・・・」
(オイラを殺す気??)
言葉の続きを待っていた新垣達に向かって矢口は飛びかかった。
それを受け、あわてたように新垣は自分の前に槍を生やす。
矢口がその槍に向かって蹴りを放つと、意外にも簡単に槍は砕けた。
矢口の蹴りは槍越しに新垣の体を吹き飛ばした。
「うっ!!」

34 名前:第五話「崩壊」 投稿日:2004/05/03(月) 03:09
新垣はそのまま、後ろの紺野にぶつかった。
新垣同様、油断していたためか、紺野はそのまま新垣と共に体勢を崩した。
「おりゃっ!!」
その隙に矢口は更に蹴りを放つ。
今度は新垣の顔面を捕らえ、新垣の鼻から血が噴出した。
(いける!!)
矢口はそう判断すると、新垣の胸倉を掴み、そのままドアに向かって投げた。
木製のドアは新垣がぶつかると、ばきばきと心地いい音を立てながら木目に沿って裂けた。
紺野は口を大きく開けたまま矢口を見上げていた。
「油断大敵。昔の人は上手い事言うね」
矢口はそう言うと紺野に向かって拳を振り下ろした。
ガスンッ!!!
矢口の拳に伝わってきたのは紺野を殴った感触ではなかった。
(槍!!)
そう気付いた時には、矢口の拳から出た血が槍を赤く染めていた。
人差し指と薬指の間を分かつように槍が深々と貫いている。
そして紺野の頬に血が滴り落ちている。
それまでぽかんと開いていた紺野の口が不敵な笑みを作った。
35 名前:七誌さんデス 投稿日:2004/09/12(日) 22:20
更新待ってます^-^;
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/25(土) 00:47
前回更新から7ヶ月経ってるんですけど・・・。
もうすぐ年越してしまいます。

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