Wild Child

1 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 01:39
こちらでたくさんの作品を読ませてもらっているうちに
自分でも書いてみたくなったので立てさせてもらいます。

ありがちな話だと思いますがおつきあいいただければうれしいです。
感想などのレスをいただけたらなお喜びます。
2 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 01:40
『ほんとにごめんね…』
「いいよ、気にしないで。」
『でも、前から約束してたのに…』
「だから気にしないでいいって。
 それよりさ、前から梨華ちゃんがやりたいって言ってた仕事なんだからがんばりなよ〜!」
『うん、ありがとう!がんばるね。』
「それで次のオフこそつきあってね〜。」
『うん!一緒にお買い物行こうね!』
「ん〜。」
『あっ、そろそろ行かなきゃ。それじゃまたね。』
「はいよ〜。」
3 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 01:42
ピッ。

ふ〜。どうしよ…ヒマになっちゃったな…。
せっかくのオフなのにこんなとこでボーっとしててもしょうがないし
とりあえず歩きながら考えようかな。

っていうかこないだ桜が散ったばっかりなのに
もう夏のようなみたいだよねぇ…。
今でこんなに暑かったら9月ってどうなっちゃうんだろ。

下手に日焼けなんかして社長に怒られるのもヤだから
かぶってた帽子をちょっと目深にして足を速めた。
4 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 01:42
やっぱりTシャツとかタンクトップ早めに買わなきゃ。
ま、別に一人で買い物してもいいんだけど…
次のオフもそんな遠くないし買い物は梨華ちゃんと一緒に来たときにしようっと。
それじゃ、今日はビデオでも借りて帰りますか。

ドンッ

「きゃっ」
「うわっ」

バキッ

いたたた…
5 名前:出逢い 投稿日:2004/05/02(日) 01:44
ぼーっと考え事をしながら歩いていたあたしは
前から走ってくる人にまったく気がつかなかくて
ぶつかって思いきりしりもちをついてこけてしまった。

「ごめん。大丈夫?」
「あ、はい…」

ぼーっとしてたのはこっちなのに謝られちゃった…。
見上げると申し訳なさそうに差し出してる手が見えたから
素直にその手をとって立ち上がった。

「ほんとごめん。ケガとかしてない?大丈夫?」
「あたしは大丈夫ですけど…」
「あ―――!」

あたしの視線の先に気づいて視線を落としたとたんその人はすごくびっくりしてる。
ついさっきまであたしの足があった場所に落ちているのはCDショップの袋。
確かにぶつかった後「バキッ」って音が聞こえたんだよね…
6 名前:出逢い 投稿日:2004/05/02(日) 01:45
案の定、CDショップの袋を開けるとケースに見事にひびが入ってた。
いやぁ、これは誰がどう見てもあたしが悪い…よねぇ?
なんかショックすぎたのか固まっちゃってるし。

「あのぉ、それ弁償しますよ。」
「あぁ…いや、ぶつかったこっちが悪いんだし、気にしないでよ。」

柔らかなアルトでニコッと笑った顔に一瞬見とれてしまった。
色白の肌に金髪なんだけど、全然嫌味がなくて爽やか。
黒いTシャツとリストバンドにジーンズってシンプルな服もかっこいいし
あたしより少しばかり高いところにある目からは優しさが伝わってくる。

「でも…」
「大丈夫!CDは割れてないからちゃんと聞けると思うしさ。ほんと気にしないで。
 こっちだったら大丈夫じゃなかったけどね。」

なんて笑いながら見た先は肩にかけた大きめの黒いケース。
7 名前:出逢い 投稿日:2004/05/02(日) 01:46
「ギター…ですか?」
「うん。商売道具みたいなもんだから、こっちだとやばかったけどね。」

そっか…バンドやってる人なんだ。
あ、でもなんかそういう感じするね、うん。

今日は予定もないし、そのまま分かれるのはもったいない気がして
どうしようかな…なんて考えてると、ぐるるるるという音が聞こえてきた。
びっくりして顔を上げると少し顔を赤くしてるのが目に入ってきて
あたしも今日はまだ何も食べてないから空腹なのを思い出した。
8 名前:出逢い 投稿日:2004/05/02(日) 01:48
「あの、ほんとにいいんですか? そのCD…」
「あ、いいよいいよ。気にしないでよ。」
「じゃあ、お詫びになにかご馳走しますよ。」
「へ? いいよ〜。ほんと気にしないで。」
「気持ちだけですから、遠慮しないでください。」
「いや、あの…」
「ちょうどあたしもお腹空いてたし、ね?」
「それじゃ、ご馳走してもらおうかな。」

社長がよく「あんたに上目遣いでお願い事されたら嫌やなんて言われへんわ」
って言ってるのを思い出して上目遣いで言ってみてよかったぁ〜。
ま、あたしが女の子に上目遣いしたからってどんだけ効果あるのかわかんないけどね。
サービスついでに満面の笑みで続けてこう言った。

「それじゃ行きましょうか。」

9 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 01:52
今日のところはこんな感じです。
3人称で書こうと思ってたんですけど難しくて
1人称になっちゃいました。
改めて書き手さんのすごさを感じます・・・。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/02(日) 03:46
まだ何もわかりませんが・・・
変わった書き方ですね、と
11 名前:メイ 投稿日:2004/05/02(日) 13:32
更新お疲れ様ですm(_ _)m
面白いです!すごく!
続きがすごく気になります!頑張ってくださいw
12 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 17:48

彼女が「オムライスが食べたい!」って言ったから
あたしがよく行くお店に行くことにして、
お店につくまでに軽く自己紹介。

彼女の名前は吉澤ひとみちゃん。
今は大学1年生であたしと同学年なんだけど誕生日が早いから19歳ってことと
友達とバンドをやっててこのあと練習があるってこと、
今日は好きなバンドのCDを買いにきてたってことを話してくれた。
13 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 17:49
「そっちは?」
「ん?」
「いやぁ、あたしばっかしゃべってて、まだ名前も聞いてないからさ。」
「あ…あたしは…後藤真希…です。」
「へ〜後藤真希ちゃんか…それじゃ真希ちゃんだね♪」
「ぅへ?」

思ってもなかった言葉にびっくりして変なこと叫んじゃった。
あたしの反応を見た吉澤さんは「気に入らなかったかな」なんて苦笑いしてるけど…
14 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 17:49
「真希ちゃんって呼んでくれていいんだけどさ…吉澤さん、あたしのこと知らないの?」
「ほえ? 今日あったばっかりじゃん。」
「あ、うん。そうだよね〜。」
「そうだよ〜。真希ちゃんって変わってんね。
 あ、あとその吉澤さんってのもやめよーよ。」
「じゃあ、よしこって呼んでいい?」
「よしこ?」
「イヤ?」
「あ、今までそう呼ぶ人がいなかったからちょっとびっくりしただけだよ。
 なんかいいね、よしこって響き。」

よっほど気に入ったのかその後も「よしこかぁ〜」って何度も言ってみてた。
なんかかわいいかも…。
15 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 17:49

   *****

話してみると思った以上に気があったあたしたちは
食べ終わるころにはすっかり仲良くなって
携帯番号やアドレスを交換していた。


「は〜おいしかった!ごちそうさまでした。」

お店を出たところでよしこがそう言いながらぺこっとおじぎをした。
ほんとにおいしいそうに食べてたからむしろあたしのほうが得した気分かも。
それに久しぶりに梨華ちゃん以外の同年代の子と話せたしね。

「なんかさぁ、真希ちゃんとは今日初めてあったような気がしないんだよね。」
「あ、あたしも!」
「お〜真希ちゃんもかぁ!うれしいなぁ〜。」
16 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 17:50
今日は会ってすぐにご飯に誘っちゃったんだけど、
ずっといろいろ話してるけど普段はほんとにすごいひとみしりなんだよね。
緊張とか顔に出ないみたいで初対面だと愛想が悪いとか
上から見てるんじゃないかって言われがちなんだけどさ。
ほんとに、よしことはずっと前から友達だったみたいに
すごく自然に話せてるから自分でもびっくりしちゃった。

「おっと、そろそろ練習行かなきゃ…」
「あ…うん。がんばってね。」
「おう。帰ったらメールするよ。」
「うん。」

じゃあねって笑顔で手を振ると走って行っちゃった。
ビデオは借りれなかったけど、よしこと友達になれたし、いい日だったな〜。
17 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/02(日) 18:23
短いですが、今日の更新はここまでで。
一応、登場人物の名前は出てきましたが
ぜんぜん話が進んでません(^^;

レスのお礼です。
>名無し飼育さん
まだなにもわからないようなのにレスありがとうございます。
変わった書き方とは私の名前のことでしょうか?
そ、それとも全体の・・・?(汗)

>メイさん
ありがとうございます!
途中で投げ出さないようにがんばりたいと思います。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/02(日) 21:51
このCP好きですよ〜。
頑張ってください。
19 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:05

偶然の出逢いから2週間。
1日に何度かメールをやりとりしたりときどき電話で話したりして
よしことはずっと昔からの友達みたいに仲良くなった。

好きな音楽や映画の話だったり
よしこの学校のことやバンドのことだったり
バイトであったことだったり話してくれた。

あたしは学校に行かないで働いてるってことと
ちょっと時間と休みが不定期な仕事をしてるって話はしたけど
やっぱりなんの仕事をしてるかまでは話せないままだった。
え?あたしの仕事ってなにかって?

「はい、10分休憩入りま〜す!」

スタッフさんの声でその場の空気がふっと緩む。
今日のお仕事はスタジオでファッション雑誌の取材と撮影。
機材の都合かなんかでちょっとした休憩時間ができちゃった。
20 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:07
そう、実はあたし芸能界でお仕事をさせてもらってて。
今日はたまたま雑誌のお仕事だけど、あたしの本業は歌手なんだよね。
まぁ、ドラマとか映画とかも出させてもらってるけど歌ってるのが一番好きだし。
しかも、13歳からこのお仕事をさせてもらってたりするんだよ。

「ごっち〜ん、休憩だって〜。」
「あ、梨華ちゃん。楽屋戻ってよっか。」
「そうだね。」

落ち着いてて大人っぽい、クールなイメージを持たれがちなあたしだけど、
ほんとは結構緊張しいだったり子供っぽかったりでヒトミシリも激しいんだけど
今日みたいに梨華ちゃんとか仲がいい子がいるとちょっと気が楽なんだよね。
21 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:09

「ごっちん、最近なんかいいことあった?」

楽屋に入るなり携帯をチェックしてたあたしに
いつもよりも3割り増しくらいの笑顔で梨華ちゃんが話しかけてきた。

「んあ? なんで?」
「だってさぁ、なんかいつにもまして楽しそうなんだもん。
 特に携帯見てるときとかすごい笑顔になってるよ〜。
 あ、もしかして恋人でもできたぁ〜?」
「違うよ〜。友達だよ、友達。」
「え〜。あやしいなぁ〜。友達からのメールであんなニヤニヤするかなぁ?」
「あやしくない、あやしくない。ニヤニヤもしてないし!」
「ふ〜ん。」

ジャジャジャジャジャージャージャージャジャーン♪

そんなやりとりをしてたらちょうどよしこからメールが届いたみたい。
22 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:12

「あっ、ごっちん着信もその人用に変えてある!」
「そっ、そのほうがわかりやすいからだよ。梨華ちゃんのだって変えてあるし。」

まったく、何を言い出すんだか。
梨華ちゃんってこういう話になるとテンションあがっちゃうんだよねぇ。

「なになに? 金曜の夜あいてたらご飯食べに行かない?だってー。」
「ちょっ、なんで勝手にメール読んでんの?!」
「いいじゃん、減るものでもないんだし〜♪」 
「減らなくてもダメだから。」

まだ携帯をのぞきこんでくる梨華ちゃんをよけながらメールを返す。
金曜はダンスレッスンだけだから夜はあいてるから
もちろんオッケーって返事。

「いいなぁ〜。デートのお誘いかぁ〜。」
「いやいや、よしこは女の子だから。」
「ごっちん、見た目でそうやって決めつけちゃダメだよ!
 男とか女とかいう前に、恋愛は人間同士でするんだから!
 愛に性別なんて関係ないの!!!」
23 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:14

・・・しくった。すっかりしくった。
梨華ちゃんの最愛の人は女の人だったんだよねぇ。
しかも、梨華ちゃんのマネージャー。
あたしが見た感じ、相手にされてるのかイマイチわかんないんだけどね。

「後藤さん、石川さん、そろそろお願いします。」
「はぁ〜い!」

休憩時間が終わるのを知らせに来てくれたスタッフさんに返事をして
まだまだ一人で愛について語り続けてる
・・・っていうか惚気を話し続ける梨華ちゃんをつれてスタジオへ移動した。
24 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/08(土) 20:23
今日はここまでです。
先週からワームにやられてしまっててやっと復活です。
全然話が進まない・・・というか
書きたい場面までうまくつながらなくて悩んでしまってます。
最後までかけるようにがんばります。

>18 名無し飼育さん
レスありがとうございます。
最近、このCPを見る機会がなかなかないので妄想で補給です(笑)
長い目でお付き合いいただければうれしいです。
25 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 00:31

「おっす!」

待ち合わせの場所に着くと、よしこが待ってくれてた。
男の子みたいに片手を挙げてあいさつするのも自然なかんじ。

スニーカーにちょっと色あせたジーンズ、白Tシャツと黒のジャージで
黒いキャップをななめにかぶってギターを肩にかついでる。

改めてよしこを見るとあたしより背が高いのに頭がちっちゃくて
手足も長いからすっごいスタイルがいいんだよね。
そのうえ顔もすごいかわいいんだけどかっこいい。

それから、手!手がすごいきれいなの!
大きいんだけど細くてスッとしてて、爪も長くいけどきれいに整えられてて。
ギターを弾くから伸ばせないんだよって言ってたけど
よしこの手、大好きなんだよね。
26 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 00:31

「おっすぅ〜!」

よしこと同じように右手を上げて返事をする。

「待った?」
「ん〜ん。今来たとこだよ。」

あはっ。なんか恋人同士の会話みたい。
そんなやりとりがうれしくて自然にテンションがあがっちゃう。

「ね、今日はなに食べに行くの?」
「今日はね、あたしのおすすめのお店を紹介しようかなと思ってます。」
「おすすめのお店?」
「うん。雰囲気がすごくおちつくいてて、料理もすごいおいしいんだよね。」
「そりゃあ楽しみだねぇ。」 
「すぐ近くだから。じゃ行きますか!」
27 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 00:31


28 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 00:32

よしこが連れてきてくれたお店は路地に入ったところにあって
知る人だけが知ってるるお店って感じだった。
木でできた建物はぬくもりにあふれてて
店内は座席数もそんなに多くなくてアットホームな雰囲気。
「ふるさと」って名前通りの懐かしい感じがする。

「安倍さん、こんばんは〜。」
「お〜、よっちゃん。いらっしゃい。」
「あ、今日は吉澤が一番のりですか?」
「そうだよ〜。」

カウンターの中にいる人によしこが声をかけると
人懐っこい笑顔を浮かべてとてとてと近づいてくる。

「あら、よっちゃんの友達?」
「あ、はい。こんばんは。」
「いらっしゃい。ゆっくりしてってね。」

安倍さんはそう言って首を傾けると太陽みたいに笑った。
29 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 00:41

カウンターに座って注文を終えるとよしこがぐっと身を乗り出した。

「あ、安倍さん、今度ライブまたやるんで、打ち上げに使わせてください。」
「いいよ〜。いつものメンバーだよね?」
「はい。あ、もしかしたら増えるかもしれないんですけど。」
「オッケー。何人増えるかわかったら教えて。」
「よろしくお願いします。」

よしこと話しながらも安倍さんは手際よく料理をしていく。
あっという間にあたしたちの前にはおいしそうな湯気をあげている料理が並べられた。

「さぁ、召し上がれ〜♪」
「いただきます!」

ぱくっと一口食べると料理と一緒に幸せが口いっぱいに広がる。

「おいし〜!!!」

足をばたばたさせてそういうとよしこが満足そうに微笑んだ。

「でしょ? 真希ちゃんならここの味、気に入ると思ったんだ〜。」

自分がほめられたみたいにうれしそうにしながら
よしこも口いっぱいにほおばっておいしそうに食べ始めた。
30 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:05

頼んだ料理もほとんど食べ終わった頃に安倍さんが話しかけてきた。

「いやぁ〜だけど、よっちゃんが友達を連れてくるとはねぇ〜。」
「そんなに珍しいんですか?」
「珍しいっていうか・・・よっちゃんって、こう、自分の時間を大事にするからさ、
 あんまり自分のことを話したがらなかったり
 家とか行きつけの場所とかはあんまり人を入れたがらなかったりするんだよね。
 だから、なっちのとこにバンドの子たち以外ときたのははじめてだよ。」
「そうなの?」

その話に少しびっくりしてよしこの方を見た。
31 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:07

その話に少しびっくりしてよしこの方を見た。

「ん・・・こういう落ちつけて、ご飯もおいしいところって
 人に教えるのってなんかもったいないじゃないですか。
 でも、真希ちゃんはすごい気があうし、
 この前連れて行ってくれたお店の味が好きなら
 きっとここも好きだろうなって思ったから
 紹介しようと思って連れてきただけですよ。」
「へぇ〜。それはなっちをほめてんのかい?」
「ほめてるじゃないですか!」

なんだか安倍さんはニヤニヤしながらよしこを見てる。
そのよしこはどうしてか少し顔を赤くしながら
「まったくもう・・・」なんてお皿をつついてる。

「まぁ、真希ちゃんよかったらまた来てね。」
「はい。」
「よっちゃん以外の人と一緒でもいいからさ。」
「安倍さん、なんですかそれー!」
「あははは。」
「真希ちゃんも笑うなよー!」

よしこと安倍さんのやりとりがおもしろくて思わず笑い声がこぼれた。
料理もすごくおいしかったし安倍さんもいい人だったから
また食べに来たいなって思った。
32 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:24



食べ終わって少しの間は安倍さんと3人で話してたんだけど
時間が遅くなるにつれてだんだんお客さんが増えてきて
お店の中も忙しそうになったから出ることにした。

「ねぇ、ほんとにいいの?」
「よしこは学生なんだから気を使わなくていいの!
 あたしはこれでも働いてるんだからね。」
「でも、前もご馳走してもらったし・・・」
「前はあたしがCDを踏んじゃったからでしょ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。ごちそうさまでした。」
「あたしこそ、こんな素敵なお店教えてくれてありがとう。」
 ご飯もおいしかったし安倍さんもおもしろかったしまた来たいな。」
「真希ちゃんが気に入ってくれてうれしいよ。」

そういって微笑むよしこの笑顔になぜだかドキドキして視線を横へ動かした。
視線の先にはギターがあって気になったことを聞いてみた。
33 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:26
「そう言えば、よしこっていつもギター持ち歩いてるの?」
「今日は練習があったから持ってるけど・・・まぁだいたい持って歩いてるかな。」
「へぇ〜。じゃあさ、なんか弾いてみてくれない?」

話には聞くけどまだ一度もギターを弾いてるのを見たことなかったし
歌も聴いたことがなかったから思いきって言ってみた。

「あ〜、今日持ってるのさ、エレキなんだよね。アンプも持ってないし・・・
 アコギなら適当に弾けるんだけど。ごめんね。」
「そっかそっか〜。いいよ、気にしないで。」

ちょっと考えたあと、ひらめいたという風に目を輝かせた。

「そうだ。2回もご馳走してもらったし、
 今はギター弾けないかわりにさ、これもらってよ。」
34 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:32

よしこが差し出したのは2枚のチケット。
そこには「Wild Child」って書いてあった。

「今度ライブやるって言ったでしょ。それのチケット。
 友達とでも一緒に見に来てよ。
 まぁ、都合がよければなんだけど…。」
「ありがとう。絶対行くね〜!」

チケットを見ると、ちょうど次のオフで場所もこの近く。
よし、買い物したあとに梨華ちゃんと一緒に行こう〜っと。
ニコニコしながらチケットをしまってると
よしこがコンビニを見つけて言った。

「ちょっとジュース買ってきていい?」
「うん。いいよ。」
「真希ちゃんもなんか飲む?」
「ん〜、じゃあミルクティーがいいな。」
「OK牧場。ちょっと待ってて。」
35 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:37

OK牧場って・・・よしこってたまにおもしろいよね・・・
なんて思いながら端っこによってよしこが出てくるのを待ってると声をかけられた。

「おねえちゃん、ひとり〜?」

突然だったから驚いて顔をあげてしまったら
思ったよりも近くにいてお酒臭かった。

「お、おねえちゃんかわいい〜ね。」

あたしの前に立ってるのは真っ赤な顔をしてちょっと足元がふらついてる酔っ払い。
こういう人にばれちゃうと大変だから下を向いて聞こえないふり。
それでも一緒に飲まない?とか言いながら離れてくれない。

「なー、聞こえてんだろー? 無視すんなよー。」

それでも無視してるといきなり腕をつかまれた。

「ちょっ・・・」

どうしよう。よしこ助けて!
36 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:41

「おい、おっさん。誰の連れに声かけてんの?」

少し低めだけど聞き覚えのある声と同時に肩をぐっと抱き寄せられた。
安心してそれまで入っていたからだの力が抜ける。

「な、なんだよ。連れがいるなら早く言えよな・・・」

おじさんはぶつぶつ言いながら離れていった。

「大丈夫?」
「うん。」

ほっとしてよしこの顔を見上げると優しい顔で笑ってた。
その笑顔が思ったよりも近くにあるのにまたドキドキしちゃって
ありがとっていいながらうつむいてしまった。

「よし、行こっか。」

肩に回されていた手がスッとおろされる。
ぬくもりが離れるのがなんだか寂しいなって思ってたら
よしこの左手はあたしの右手に繋がれた。
びっくりしてまたよしこの顔を見上げた。
37 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:44

「駅まで繋いでていいかな?
 ほら、真希ちゃんかわいいからまた声かけられちゃうといけないし。」

ちょっと照れくさそうに笑うよしこの言葉が一瞬理解できなくて
あたしはなんともまぬけな声を出してしまった。

「ほえ?」
「ほら、こうして手を繋いでたらカップルに見えるでしょ。」

よしこが指した先のショーウィンドウに映るあたしたちの姿は
ちょうど恋人同士が手を繋いでるみたいでまたドキドキしてしまった。
38 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 01:46
今日の更新は以上です。
今回の吉澤さんの服は今週のハロモニ。なイメージで。

やっと書きたい場面までいけたので一安心ですが
突然の思いつきで全然予定してなかった人が登場しました。
これからどういう風に絡んでくるんでしょうか・・・。
39 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:55

よしこのことは大切な友達だって思ってるのに
メールや電話が来るとすごくうれしくて
あれからよしこのことを考えるとドキドキしてしまう。
そんな自分の気持ちにうまく折り合いがつかないままライブの日がやってきた。

今日は1日オフだったから梨華ちゃんと一緒に買い物をした後、
いったんうちに荷物を置いてからライブハウスにきた。
あたしも梨華ちゃんもライブハウスでライブを見るのは初めて。
もしバレちゃうといけないから開演時間ぎりぎりに入って
そのまま一番後ろの壁際に立って見ることにした。

「ごっちんの知り合いの人、すごい人気なんだね〜。」
「そうだね…。」

そのライブハウスは客席の奥行きが広くて軽く300人は入りそうなんだけど、
一番後ろでもそんなに余裕があるわけじゃないくらいたくさんの人でうまっていた。

よしこが「結構人気あるんだよ」なんて言ってたけど、
まさかこんなに人気があるなんて思ってもなかったからびっくりした。

それにしても、女の子が多い気がする。
40 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:55

「わたし、ライブハウスでライブを見るのって初めてなんだぁ〜!」

なんて目を輝かせてステージをみてるんだけど…
梨華ちゃんってロックのライブがどんなのかわかってるのかな?
結構激しいノリだって言ってたんだけどねぇ。大丈夫かなぁ。
ケガすると危ないから、あんまり前のほうには来ないほうがいいよとも言ってたし。

「梨華ちゃん、もし危なくなったら外出ようね。」
「ふえ?」

それを伝えたところでちょうど客席の電気が消えた。
お客さんはすでにヒートアップして口々にメンバーの名前を叫んでる。
と、ステージに薄暗い照明がつき、メンバーが出てくる。
それぞれ楽器を持って、いつでも演奏を始められる体勢になった。
海の底にいるみたいな青い照明じゃあたしたちからは誰の顔も見えない。
41 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:57

ジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッ

ギターの音が響く。

ドンッドンッドンッタカタタタッ

ドラムとベースが加わったところでヴォーカルが登場した。

「It's too late to turn back
 When the green lights flash
 Too late to turn around
 When the love goes down

 Your fire my fate
 This woman won't wait
 So love beam your laser light
 Get ready gonna take this flight

 You're so wild
 (you're wild and willing)
 So wild (your spirit's free)
 You're such a wild wild child
 Oh baby go wild with me
 ・・・・・・」
42 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:58

「すごい・・・」

思わず息を呑む。
ハスキーな低音の歌いだしでよしこの歌声だって一瞬わかんなかった。
最初はすごくセクシーなのにサビになると情熱的な高音になる。
鳥肌が立ってた。

でも、うまいのはよしこだけじゃなくって、
アレンジがシンプルな曲をここまできかせられるってことは
ほかのメンバーもかなりうまいってことだよね。
43 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:59

   *****

大盛り上がりのうちにライブは終わり。
あたしの予想に反して梨華ちゃんは今日のライブがかなり気に入ったみたい。
途中、あたしよりも盛り上がってたもんね。
騒ぎすぎてばれやしないかとひやひやしたよ。

あたしは今、梨華ちゃんと一緒に楽屋の前に来てる。
よしこに楽屋に遊びに来てねって言われてるから挨拶くらいはして帰ろうと思って。
ノックしようかと思ったそのとき

「どちら様ですかぁ?」

突然後ろから聞こえてきた声に驚いて振り返ると、
肩までの髪を落ちついた茶色に染めた小柄ですごくかわいらしい女の子が
缶ジュースを何本か腕に抱えてたっていた。
目には警戒の色を浮かべてあたしたちを見ている。
って、二人そろって帽子を目深にかぶってりゃ怪しいよね。
44 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 14:59

「あの、あたし吉澤さんの友達で…」
「よっすぃ〜の? ちょっと待ってくださいね。」

まだ警戒の色を弱めないまま楽屋のドアを開けると
「よっすぃ〜!友達だって言う人がきてるよ」と声をかけてる。
「よっすぃ〜」って呼ばれてるんだ、なんて思ってると
首にタオルをかけたよしこが出てきた。

「お〜!真希ちゃん待ってたよ!今日は来てくれてありがとう!」

あたしに気づくとうれしそうに微笑んで駆け寄ってくる。

「あ、松浦、いつもありがとな〜!」
「ほんとにお友達だったんですね。すみませんでした。」

松浦さんはぺこと頭を下げるとよっすぃ〜にジュースを一本渡して中へ入っていった。
45 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:00

よしこに聞くと、たまにファンが楽屋までおしかけてくるから
松浦がとりつぎ役をしてくれてるんだよって教えてくれた。

「こちら、あたしの友達の梨華ちゃん。」
「あ、吉澤です、よろしく。」
「ライブどうだった?」
「かっこよかった!」
「でしょでしょ♪まぁ、立ち話もなんだから入ってよ。」

楽屋に入るとよしこがバンドのメンバーを紹介してくれた。
ギターの藤本美貴ちゃんにベースの辻希美ちゃん、ドラムの小川麻琴ちゃん。
メンバーを紹介されるなり梨華ちゃんはギターを弾いてた子に話しかけてる。

「美貴ちゃんってわたしと同い年なんだ〜!すごいギターうまくてびっくりしましたぁ!」

ハイテンションではしゃぐ梨華ちゃんをちょっと離れたところから
冷めた目で見ているのは・・・松浦さん。
ごめんね、梨華ちゃん悪い子じゃないんだけど…。
46 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:00

ライブの感想とか始めてライブハウスに来たことを話してると
美貴ちゃんが梨華ちゃんに質問しているのが聞こえた。

「梨華ちゃんってさ、なんでそんな深く帽子かぶってんの?」

その後すぐ、梨華ちゃんが答える前に松浦さんがあたしたちのほうへ近づいてきた。

「あのぉ、ちょっとお聞きしてもいいですかぁ?」

あたしと梨華ちゃんを交互に見てる。

「お二人とも誰か芸能人に似てるとか言われたことありません?」
「えっ・・・」
「入ってきてからずっと帽子かぶったままなのが気になるしぃ、
 それになんか、梨華さんの声聞いたことあるような気がするんですよねぇ…」

やばいよ。ばれてるっぽいじゃん。
あ〜梨華ちゃんの声って特徴ありすぎるからなぁ…
って気づくと松浦さんが梨華ちゃんの顔をのぞきこんでるし!
47 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:00

「やっぱり!石川梨華さんですよねぇ?」

梨華ちゃんってば、のぞきこまれたことににびっくりして固まっちゃって
その間に松浦さんに帽子とられちゃってるし。
さすがにあの顔にあの声で違いますなんて言っても説得力ないよね。

「じゃあ、よっすぃ〜が『真希ちゃん』って呼んでる人は後藤真希ちゃん?
 あ、せいか〜い♪」

あたしは観念して自分から帽子を脱いだ。
松浦さんはやっぱりねって表情をしてあたしたちを見てる。

「あれ? なんで松浦は真希ちゃんの名前知ってんの?」

よっすぃ〜が不思議そうな顔で松浦さんに質問してる。
美貴ちゃんも頭に「?」マークが浮かんでそうな表情だし。
48 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:01

「あのねぇ、後藤真希っていったら日本のトップアイドルだよ!
 今よっすぃ〜が飲んでるジュースのCMにも、
 そのまこっちゃんが使ってるデオドラントスプレーのCMにも出てるし、
 ドラマに出て主題歌歌ったりもしてるし、ファッション雑誌の表紙にもなってるし。
 とにかく、日本では知らない人はいないってくらい有名なんだから!」
「のん知ってるよ。テレビでよく見るじゃん。」
「あたしも知ってます!後藤さんのCD持ってますもん!」
「あ〜、まこちゃんの部屋にポスター貼ってあったよね。」
「うあぁ〜!のんつぁんそんなことバラさないでいいから!」

松浦さんは美貴ちゃんの腕に手を回しままの梨華ちゃんに目線を移動して
「ちなみに、そちらの石川梨華ちゃんは男子学生に大人気のグラビアアイドルね。」
って紹介してくれたんだけど、その視線の意味には気づかないみたい…。

「そうなんだ〜。知らなかった・・・」
「美貴も知らな〜い。」

よしこも美貴ちゃんもまだ驚いたままであたしたちを見てる。
そんな二人を見て松浦さんはため息混じりに言った。

「はいはい。家に帰ってもCD聞いてるかギター弾いてるかの
 洋楽バカで音楽バカだもんね、二人とも。」
49 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:01


あ〜あ、よしこにばれちゃったな。
あ、でもあたしたちの仕事を聞いても態度が変わらなかったのはうれしかった。

よしこは「真希ちゃんは真希ちゃんじゃん」って言ってくれたし
美貴ちゃんは「またライブに遊びに来てよ」って言ってくれたし
辻ちゃんはすでに打ち上げのことで頭がいっぱいみたいだったし
小川さんは握手すると赤べこみたいに首を動かしながら
「がんばってくださいねぇ〜」って言ってくれた。


そのあと、「ふるさと」での打ち上げに一緒に参加することになって
着替え終わったメンバーと一緒に外へ出ると
女の子が何人か待っていてよしこや美貴ちゃん、メンバーに手紙やプレゼントを渡してる。
松浦さんは慣れた様子で人をかき分けると車に乗り込ませていった。

あぁ、あたしたちはこの子達と同じだと思われてたわけね。
50 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/10(月) 15:03
本日の更新終了です。
最初の目標だった50レスにいけてちょっとほっとしてます。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 18:39
更新お疲れ様です
最近よしごまが少ないので期待しております☆
頑張ってください★
52 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 00:51

一番後ろによしことあたしが座って
真ん中に小川さんと辻ちゃんに挟まれて梨華ちゃんが座ると
最後に運転席に美貴ちゃん、助手席には松浦さんが座った。

「それじゃぁなちみのとこまで美貴ちゃんよろしく〜ぅ! あぁーおなかすいたー!!!」

辻ちゃんは後ろから運転席をゆすりながらほえてた。
車が動き出すと一気に車内が騒がしくなる。

「はいはい。急いで安全運転で行きますよ。」
「松浦ぁ、安倍さんとこに今から行くって連絡いれてもらえるかな?
 人数のことはもう言ってあるから。」
「わかりました。」
「なちみ、今日はなに作ってるかな?」
「こないだぁ、カボチャを使った料理を作ってくれるって言ってました。」
「マコっちゃんカボチャ好きだもんね〜。梨華ちゃんは好きな食べものなに?」
「わたしはぁ・・・」

辻ちゃんと小川さんの高校生コンビに質問攻めにされながらも
梨華ちゃんはうれしそうに答えてる。
もともと面倒見がいいからなつかれてうれしそう。
53 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 00:52

「美貴ちゃんって運転できるんだね。びっくりしたよ。」
「いつもあたしとミキティが交代で運転してるんだ。」
「よしこも運転できるの?」
「まぁね。っていうか、一応これあたしの車だし。」
「え?! これよしこの車なの?」
「そうだよ。機材とか楽器運ぶの大変だからさ、バンドのために買ったんだ。」

そう言いながら自分のギターをあげて見せてくれる。
そういえばよしこだけじゃなくて、辻ちゃんもベースを抱えてるし
小川さんはスティックケースを、松浦さんは美貴ちゃんのギターを抱えてる。

「ごめんね。あたしたちが乗ったから狭くなっちゃったよね。」
「そんなことないよ。これ7人乗りだし。」
「でも、ギター抱えてるの大変じゃない?」
「ああ、いつもこうだからさ。」
「そうなの?」
「そ。倒れちゃうといけないから持ってないとね。
 ハードケースにすりゃーいいんだけどさ、なんかめんどくさくて。」
54 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 00:56

安倍さんのお店に向かう間、よしこがいろいろと話してくれた。
今日の1曲目は久しぶりのカバーの曲をやったこと
その曲はHEARTの「WILD CHILD」って曲でバンド名の由来の曲だってこと
それ以外の曲はオリジナルで詞はよしこが、曲は美貴ちゃんが作ってるってこと。
あたしが気に入った曲はよしこが詞だけじゃなくて曲も作った曲で
一番好きだし感動したって言ったらすごくうれしそうに微笑んでくれた。

「あたしも作詞とか作曲とかやってみたいなーって思うんだけど
 どうやればいいか全然わかんないから眺めてるだけなんだよね。」
「ん〜、あたしは別に曲作るときに楽譜書いたりしないなぁ。
 っていうか、楽譜なんて読めないし。
 作曲するときはギターを適当に弾きながら作っていくからさ。」
「マジで?!」
「マジマジ。真希ちゃん、楽器は?」
「ん〜、ピアノくらいかな。」
「真希ちゃん、ピアノ弾けるの?」
「弾けるって言ってもちょっとだけだよ。別に習ってたわけじゃないし。」
「じゃあさ、この曲って弾けるかな?」
55 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 01:05

そう言ってよしこがかばんからとりだした楽譜を見てあたしは一瞬固まってしまった。
目線を手元にやったまま固まってしまったあたしを見てあわててよしこが口を開く。

「あ、無理にとはいわないけど。
 もし弾けたらちょっと頼みたいことがあっただけで・・・」
「ううん、大丈夫。弾けるよ。
 数少ないレパートリーのひとつなんだけどさ、
 まさかこの曲がでてくるなんてびっくりしたんだぁ。」
「そっかー。じゃあさ、今度一緒にこの曲やってくれないかな?」
「一緒に?」
「まぁ、お遊びってことで!
 なんていうの? ・・・そう、コラボレーション!」

人差し指をピンと立てて、瞳を輝かせてそう話すよしこがかわいっくって
自然とほほが緩んでくるのが自分でもわかる。

「ふふふ。いいよー。」
「よっしゃー!」

今度はガッツポーズをして車内の注目を集めたよしこは
ニカッと笑って両手でピースサインをしながら立ち上がって

「イテッ!」

見事頭を車の天井にぶつけた。
56 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 01:06
今回の更新は以上です。
57 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 01:08
>51 名無飼育さん
レスありがとうございます。
最近少ないですけど、爽やかな感じが好きなので
がんばって書いていきたいと思います。
58 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/30(日) 01:10
更新ペースがあがるどころが落ちてて申し訳ないです。
書いてるうちに考えてなかったところが出てきたり
考えてなかった人が登場したりで書き直し書き直しなんです(^^;
まったりお待ちいただければ幸いです。
59 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/30(日) 14:00
よしごまのコラボ楽しみです。
60 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 16:58

ふるさとに着くと安倍さんが太陽を思わせるような笑顔で迎えてくれた。
お店の中にはすでに料理が並んでいたけど、前によしこと来たときには目にしなかった
オムライスやスパゲティー、ハンバーグとともにもずく酢や唐揚げなどが並んでた。
なんでも前者は高校生コンビ、後者はお酒の肴系が好きな美貴ちゃんのリクエストらしい。

「さ、座りましょうか。」

みんなを促すと、松浦さんは美貴ちゃんの腕をつかんで
美貴ちゃんを端の席に座らせて自分もその隣に座った。

「梨華ちゃん、早く早く!」

梨華ちゃんは松浦さんの行動にこめられた意味には気づかないまま
辻ちゃんと小川さんにはさまれて席に着く。
61 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 17:08

「真希ちゃんも座ろ?」

うながされるまま、あたしはよしこの隣に座ったけど
よしこはグラスを持ってたったままで話し始める。

「じゃあ、みんなグラスを持って!
 ・・・コホン。えー、今日もライブお疲れ様でした!
 まぁ、反省すべきところもありますが、今日のところは・・・」
「カンパーイ!」

長くなりそうな話を美貴ちゃんが途中でさえぎって音頭をとると
みんな思い思いにグラスをぶつけ、料理に手をのばす。

「んーおいしい!」
「安倍さん最高です!」
「そうかい? まこと、ありがとねー。」
「なちみ大好き〜。」
「ののもまこともおいしそうに食べてくれるからなっちはうれしいよー。」

安倍さんは目を細めると辻ちゃんと小川さんの頭をガシガシとなでた。
このお店に来ると幸せな気持ちになれるのは料理のおいしさと
安倍さんのあったかさのせいなんだろうな。
62 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 18:46

   *****

打ち上げはけっこう時間も経って、いい盛り上がり。
みんな未成年だからお酒は飲んでなくてジュースだけなのにテンションが高いんだよね。
テーブルの上のお皿もほとんどが空に近づいてきてる。

よしこはふと思い出したように席を立つと安倍さんに近づき、耳打ちをしてる。

「安倍さん、ちょっと奥借りていいですか? あの・・・」

安倍さんはうなずいたあと、ニコニコしながら奥へと消えた。
それを見届けたよしこはこちらへ歩いてくる。

「真希ちゃん、ちょっと来て」

返事をする間もなく立ち上がらせられるとあたしも奥へ連れて行かれた。
従業員の休憩室みたいなところで、机といすがいくつか置いてあった。

「これでいいかい?」

ちょうど安倍さんがキーボードを持ってきて机の上にセットしてくれた。
63 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 19:00

「ね、ちょっと弾いてみて。」
「なんの曲やるの?」
「そっか、まだ言ってなかったっけ・・・えっと、これなんだけど。」
「あ・・・」

よしこが出したのは「なごり雪」と書かれた楽譜。
思いもよらない曲にあたしは固まってしまってた。
そんなあたしを見て、よしこが心配そうにのぞきこんでくる。

「あ、無理にとは言わないから・・・」
「ん、大丈夫。この曲は弾けるんだ。」

笑顔で言ったつもりなんだけど、今はうまく笑えてるかあんまり自信がないな。
この曲――なごり雪はいろんなことを思い出させるから。
64 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 19:05

いったん瞳をとじて細く息を吐く。

「んじゃ弾いてみるね。
 久しぶりだからうまく弾けなくても笑わないでよー!」

今度は自分でもうまく笑えてるってわかった。
65 名前:オレンヂ 投稿日:2004/06/17(木) 19:45



ところどころつっかえたりしたものの、思ったよりもちゃんと弾けた。
頭よりも体が覚えてるっていうのかな。

「おー!真希ちゃんいいねー! ね、もっかい弾いてみて?」

よしこの言葉にもう一度弾き始めるとよしこの歌声が聞こえてきた。

うん、やっぱよしこっていい声してるよね。
最初はよしこの歌声に聞き入ってたんだけど、
よしこが歌いながら笑いかけてくれるのがすごくうれしくて
とっても楽しくって、気づくとハモってた。

「おー、完璧じゃん! かっけー!」

よしこの笑顔につられてあたしも笑顔になってくる。
全然弾いても歌ってもいなかったのに覚えてるなんて・・・ね。

「よし、じゃあ早速むこうで披露しちゃおうか!」
「んあ?」
「いい出来だしさ〜。さ、いくよ!」

そう言ってキーボードを担ぐとよしこはすぐにお店の中へ戻ってしまった。
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/18(金) 21:36
お披露目ですか?
楽しみ
67 名前:Mirai 投稿日:2004/06/29(火) 22:30
よしごま小説発見!!
初めて読ませていただきました。
ごっちんとよしこのなごり雪聴いてみたいなぁ・・・(笑)
続き楽しみにしてます!
68 名前:オレンヂ 投稿日:2004/07/31(土) 17:14
レスありがとうございます。
話がすすまないまま1ヶ月以上が経ってしまって申し訳ないです。
書いてはいるんですけど言葉がうまくでてこなくて自分の才能のなさに
( ´D`)<凹む〜

気分転換に短編をあげたいと思います。
69 名前:HONEY COMING 投稿日:2004/07/31(土) 17:15

「いいなぁ・・・」

ベッドに寝転んでカオリンに借りた小説を読んでいると
ベットにもたれて床に座っているごっちんがテレビを見てぽつりと言った。

「なにが?」

その言葉につられて画面に目をむけてみたら
初めて会った芸能人同士がデートをするという番組をやっていた。

「こういうのしたいなぁ〜」

あたしからはテレビを見たままのごっちんの後頭部しか見えないから
どういう表情をして言ってるのかわかんないけど
その番組に出て、知らない男とデートしてるごっちんを想像すると
ちょっとムカッとすると同時に胸が痛くなった。
そのまま答えないでいると、今度は振り返って「いいと思わない?」と聞いてきた。

「・・・この番組に出たいの?」

振り返った表情を見ても別にからかうつもりとかもないみたいだし
どういうつもりなのかわからなくて聞いてみた。

「ん?」

あたしの言葉に驚いたのか首を少し傾けてる。
あ、くるくるとした目とか首のかしげ具合とかやっぱりかわいい。
70 名前:HONEY COMING 投稿日:2004/07/31(土) 17:16

「いま、ああいうのしたいって言ったじゃん」

なんとなく見つめられてテレちゃったのもあって
テレビをあごでさしてそう言うと再び小説に目を落とした。

「もしかしてよしこ、すねてる?」

ちょっと高くなった声でうれしそうにそういってくるごっちんに
小説を読みながら「別に」と答えたらごっちんはクスクス笑いながら背中に飛び乗ってきた。
衝撃に一瞬言葉を失っていると、後ろから抱き付いて耳元で話しかけてくる。

「うそだー。すねてる」
「すねてなんかないって」
「すねてるじゃん」
「すねてませ〜ん」

考えてることを見透かされてるみたいでなんとなくおもしろくないし
胸にずっとくすぶってる小さな不安を知られたくなくて本から目を上げられないでいた。

あたしたちはやっぱり女同士だから結婚もできなければ子供もできない。
だからいつの日かごっちんがそれを望むならば解放してあげなきゃって思いと
それでもごっちんを絶対に話したくないって思いがいつもせめぎあってる。
71 名前:HONEY COMING 投稿日:2004/07/31(土) 17:16

「ごっちんが出たいって言えば出させてくれるんじゃないの」
「ん〜どうだろうねぇ〜。でもあの番組に出ても意味ないんだよねぇ」
「意味ないって?」
「ああいうデートしたいなぁって思っただけだから」
「は?」
「手をつないでデートしたいなぁって思っただけだもん」

振り返ると、今度はごっちんが少し赤くなった顔を隠すように目をそらした。
抱きついた腕を放すとあたしの背中に背中をあわせてあおむけになる。

 帽子とかサングラスとかもしないでさ
 二人でずっと手をつないでデートするんだよ
 一緒に選んだ浴衣を着てお祭りに行ったり
 遊園地で遊んで作っていったお弁当を食べたり
 夜の浜辺で花火をしたり、その後ラブラブな時間をすごしたりしてさ
 そういう普通のデートをよしことしたいなぁって思って

「だから、よしことじゃないと意味ないもん。
 っていうか、だれだか知らない人と会っていきなりデートとかヤだし」
「すげぇかっけー人がきても?」
「よしこよりかっけー人なんていないし」
「ごっちんの理想そのままの人がでも?」
「よしこが理想の人だし」
「なっ・・・」
「よしこが嫌だって言ってもあたしはよしこのことずっと好きでいるから。
 だから、つまんないことなんか考えないでよ」

そう言うと同時にまた後ろからぎゅっと抱きしめられた。
う〜ん、あたしの思ってたことはしっかりわかっちゃってたらしい。
72 名前:HONEY COMING 投稿日:2004/07/31(土) 17:17

まだ見えない未来を思って不安を抱えてるなんてもったいないよね。
今の積み重ねがまだ知らない二人の未来につながっていくんだから、
君といる時間を大切にすごしていけば恐れることもないんじゃないかって思えるよ。

「じゃあさ、次のオフはどっかでかける?」
「ほんとっ?」
「バイクで海でも行きますか〜!」
「おー!」

次のオフだけじゃなくって、もっといっぱいデートしようね、ごっちん。


fin
73 名前:オレンヂ 投稿日:2004/07/31(土) 17:19
恋するハニカミという番組を見ていて思い浮かびました。
ハロプロのメンバーに出てほしいような、
でも見たくないような微妙な感じでw

WILD CHILDもがんばって書いてますのでのぞいてもらえればうれしいです。
74 名前:ロテ 投稿日:2004/08/14(土) 02:18
よしごまいいですね〜バンド仲間も面白いっす。
にしてもごっちん視点のよしこがやけにかっこよくてなによりですw
あの歌に反応したごっちんが気になります。
短編のすねるよしこ、かわいかったですw

あとオレンヂさんって紫板でレスくれた方と同一人物でしょうか?
間違ってたらごめんなさい。
これからも期待してますのでマターリ頑張ってください。
75 名前:WILD CHILD 投稿日:2004/08/14(土) 21:58

よしこの後に続いてお店の中に戻ると空いているテーブルに
キーボードが置かれていて、すでに準備は万端になっていた。
みんなは飲み物だけになったテーブルでそれぞれおしゃべりに夢中になってる。

「はいはい、いつものやりまっせー」
「おー」
「今日はなにー?」
「今日はなんと、吉澤と真希ちゃんのコラボレーションだぁ!」
「「「「「おぉー!」」」」」
「何の曲かは聞いてのお楽しみってことで!」

イスを回転させてしっかり見てくれてる。

「じゃ、やろっか」

やわらかく若いかけてくれたよしこにうなずきかえすと、
目を閉じてフッと短めに息を吐いてから弾きはじめた。

「汽車を待つ君の横で僕は
 時計を気にしてる
 季節はずれの雪が降ってる」

よしこがハスキーに、そして切なく歌いはじめる。
76 名前:WILD CHILD 投稿日:2004/08/14(土) 21:59

「東京で見る雪はこれが最後ねと
 さみしそうに君はつぶやく」

あたしも気づけば少しずつ口ずさんでた。

「なごり雪も降るときを知り
 ふざけすぎた季節のあとで」

Bメロからサビの終わりまでハモる。
そういえば、この曲は下のハモりしか教えてもらってないや。

「今春が来て君はきれいになった
 去年より ずっと きれいになった」

さっきよりももっと、よしことあたしの声がとけあって絡まって、
ひとつになってる感じがしてすごく気持ちよかった。

1番を歌い終わって、間奏で少し余裕が出来たから
みんなどんな顔をして聞いてるのかなって思って見てみると
目を閉じてたり体を少し揺らしたりして気持ちに聞いてくれてた。
ただ・・・美貴ちゃんだけは少し難しい表情をしてあたしたちを見つめてる。
その表情にこめられた意味がわからなくて気になったけど
2番に入る前によしこが視線を合わせてくれたのをきっかけに
またピアノを弾くのと歌うことに集中した。
77 名前:WILD CHILD 投稿日:2004/08/14(土) 22:00

歌ってるうちに、いつかの光景が目の前に広がる。

「君が去ったホームにのこり
 落ちてはとける雪を見ていた」


   いってくるよ
   やだよぉ〜・・・おいてかないで・・・
   泣くなよ・・・絶対帰ってくるからさ


「今春が来て君はきれいになった
 去年より ずっと きれいになった
 去年より ずっと きれいになった
 去年より ずっと きれいになった」


   真希・・・またな・・・


歌い終わると同時に拍手が聞こえた気がしたけど
あたしは突然蘇ってきた記憶に胸の痛みを覚えてちゃんと聞こえてなかった。
78 名前:WILD CHILD 投稿日:2004/08/14(土) 22:01

「やっぱうちら最高!」

みんなの反応に対してか嬉しさを隠さない表情で
振り向いたよしこが驚いたような表情に変わった。

「ちょ・・・真希ちゃんどした?」
「ん?」

なんでそんなにびっくりしてるんだろって首を傾けたら
ゆっくり近づいてきて、両手で頬を優しくはさまれた。

「なんで泣いてんの?」

よしこも少し悲しそうな表情で、親指で涙をぬぐってくれる。
あ、あたし泣いてたんだ・・・

「あれ? なんでだろ・・・ごめんね」

泣き笑いだろう表情でそう言うと、フッとぬくもりに包まれた。
う・・・わぁ・・・すっごいドキドキするんだけど。
でも、そんなことされると余計に涙が止まらなくなっちゃった。

結局、よしこはあたしが落ち着くまで抱きしめてくれてて。
泣き止んで席に戻ったら「よかったよー」って言ってくれたり、
美貴ちゃんには「よっちゃんったら女泣かせー」って冷やかされてたり。
あたしは泣いちゃった恥ずかしさであんまり顔をあげられなかった。

だから、松浦さんが複雑な表情を浮かべていることにも気づかなかったんだ。
79 名前:オレンヂ 投稿日:2004/08/14(土) 22:05
短いですが、更新です。

>ロテさん
うちのよしこをかっこいいといってもらえてうれしいです。
あの曲に反応した理由は・・・また後ほど。
短編の方は、照れたよっちゃんが好きっていう自分の趣味ですw

紫のレスの方は同じ名前の別の人だと思います。
同じ名前の人がいるんだ!ってびっくりしました。
ロテさんの作品を読ませていただきましたが、
テンポがよくておもしろかったのでこれからも読ませていただきます♪
80 名前:ロテ 投稿日:2004/08/15(日) 13:57
くぅ〜生で聴きてぇ!
後藤さんもそうですが美貴帝もなにかありそうですね〜。
これは本当に目が離せません!

オレンヂさん違いだったとは早トチって申し訳ないです。
しかもあんな駄文まで読んでいただけたとはw
これからもお互い頑張りませう。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 23:47
ほぜむ
82 名前:オレンヂ 投稿日:2004/10/22(金) 03:10
また長期間あいてすみません。
エピソードはいくつかできているのにそれをつなぐ部分ができず
長らく滞ってしまって申し訳ありません。

もう少し時間がかかりそうなのでまた短編をあげさせてもらいます。
リアルよしごま痛めで。元ネタはドリカムの同じタイトルの曲です。
83 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:12

「二人で出かけるなんて久しぶりだな〜。」

近頃全然声をかけてくれなくなったよしこに
久しぶりに誘われて買い物にでかけることになったんだ。

服を買って、お茶して、時間があったら映画でも見ちゃおうかな。

いつもは遅れてくるあたしだけど
今日はあまりにうれしくて早めに来ちゃった。
あたしがもう来てるのを見て驚くかな?
手を合わせて「ごめんごめん」って近づいてくる姿が目に浮かぶよ。
ふふっ。待たせるばっかりだったけど、待つのもいいもんだね。

ふと帽子を目深にかぶった人がこっちに歩いてくるのが視界に入る。

「よしこっ!」
84 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:13

ほんの少しの距離が我慢できなくてあたしから近づいてく。
こんな人ごみの中でもよしこならすぐに見つけられるんだよ。すごくない?

「真希ちゃん・・・」
「えへへへ・・・」

とりあえずよしこの腕に抱きついて微笑むと微笑み返してくれる。

「今日はどこから行く?」
「新しい服がほしいんだ〜」
「じゃ服から見に行きますか」
「うんっ」

85 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:13




86 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:13

「あー楽しかった!」
「そりゃーよかった」

結局、服を見に行っても気に入るのがなかったから
お茶をして最近話題の映画を見て帰ってきたんだけど
やっぱりよしこと二人でいると楽しくて時間があっという間に過ぎちゃう。

「ね、ちょっと寄り道していかない?」

二人で出かけるといつも必ずよしこは家まで送ってくれる。
駅から家までの間にある公園で時々おしゃべりすることもあったり。

「よーしこっ」

一緒にいれるのがうれしくて肩を抱いてあなたの胸に顔をうずめる。
でもよしこの両手はあたしの腰のあたりで緩やかに重なってるだけ。

「いつもみたいにギュってしてくれないの?」
「んー・・・ほら、ここじゃちょっと目立っちゃうからさ」
「むー」
「ははっ・・・むくれないの」
87 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:14

そりゃ、整備のせいで遊具もなくなって
台風のせいで木もまばらになっちゃってるうえに
大きな道路に面してるから人通りも結構あって
さっきから通り過ぎる人がチラチラ見てるけどさ。

抱きしめてくれないならあたしからくっつくからいいもん。
よしこの胸に顔をうずめてグリグリと頭を押しつけた。

「ちょっと真希ちゃん、くすぐったいよ」
「んじゃーもっとやる」
「あはは!やーやめてー!」
「覚悟しろー!」

一通り暴れたあと、ぎゅっと抱きしめられた。
と同時に、頭の上でふーっと短く息を吐く音が聞こえた。

「・・・よしこ?」

顔をあげようと思うのにグッと力を入れられる。
ちょっとやりすぎちゃったかな?
88 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:14

「あのさ・・・もう、こうして二人で会うの・・・やめよっか」
「え・・・?」
「わかれよ?」

今度は簡単に頭をあげることができたけど
それと同時に腰に回されていたよしこの腕はとかれてしまった。

突然のことに驚いて反応できないのに頭は妙に冷静で
今日は日が沈むのがいつもより早いなぁって思ったり
空から舞い散る雪は何年ぶりだっけ?なんて思ってる。

「・・・わかれよ?」

困ったような声なのに、こんなときも笑ってるんだね。
少し大きくなってきた雪が髪に落ちてとけた。
そのまままつげを濡らして地面に吸い込まれていった。
久しぶりに会ってはりきってた心も急速に冷やされてく。
89 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:15

「・・・あ、あたしのこと嫌いになったの?」
「そうじゃないよ!」
「じゃあなんで?!」

大声をあげたよしこにあわせてあたしも大声になる。

「・・・ごめん・・・・・・好きな子ができたんだ」
「うそ・・・」

涙は次々とあふれて地面に雪と一緒に吸い込まれていく。

「・・・うっ・・・えっ・・・・・・んっ・・・・・・」

泣いて泣いて泣いた。
90 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:16

「すっ・・・好きな子って・・・誰?」
「それは言えない」
「・・・なんでぇ?」
「ごめん」
「・・・ヤ・・・ダよ・・・よしこと・・・んっ・・・・・・わかれたくないよ・・・
 悪いとこがあったらなおすから!」

あーこんなあたしかっこわるいなって思ったけど
今、あなたを止められるならそんなことかまわない。

「真希ちゃんが悪いんじゃないよ・・・ごめん・・・ホントごめんね・・・」
「あやまらないで!」

そんな言葉は聞きたくなくて声を張り上げて叫んだ。
唇をかんで困った顔は気づかないふりをした。

さっきのあたしの通り過ぎる人が振り返っている。
もうバレようがそんなことはかまわなかった。

息が苦しいくらいに泣いて泣いて泣いた。
いつ以来だろうっていうくらいに声を荒げて泣いた。
こんなことであなたを止められるなら。
91 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:18

だんだん大きくなってきてる雪が髪に落ちてとけた。
そのまままつげを濡らして地面に吸い込まれていく。
地面は今落ちた水滴の色なんてつかないくらいに濡れていた。

どんなにかっこ悪くてもいいからよしことは別れたくない。
プライドなんて知らない。
今までよしこにも見せないようにしてた感情まで溢れてきて
泣いて泣いて泣いた。声を荒げて叫んだ。

「やだよぅ・・・よしこまで・・・あたしを一人にしないでよぅ!」

でも、何も・・・何にも変わらなかった。
よしこは「ごめんね」と言って背を向けて歩き出す。
92 名前:プライドなんて知らない 投稿日:2004/10/22(金) 03:19

「行かないで!」

通り過ぎてく人は振り返るのによしこだけは振り返らない。
去っていく背中を見送ることなんか出来なかった。

雪は大きさを増しながらどんどんと降り続けてる。
あなたのいた場所に残った靴の跡が目の前で消えていく・・・


93 名前:オレンヂ 投稿日:2004/10/22(金) 03:22
>ロテさん
レスありがとうございます。
ロテさんの更新の早さにすごいな〜と驚きながら読ませていただいてました。
ロテさんに見習って話を進めていきたいと思ってます。

それにしても同じ名前の人がいるとは思わなくて驚きました。
これならかぶらないだろうと思ってつけたんですが(^^;

>名無飼育さん
多謝です。
94 名前:オレンヂ 投稿日:2004/10/22(金) 03:26
あ、更新終了ですって書くの忘れてた(汗
> 92で更新終了です。
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/22(金) 19:49
この曲好きなんでぶっちゃけストーリーがわかっちゃったんですけど
うまくアレンジしてあってすごいなぁと思いました。
始めの明るいごっちんの描写が終わりを引き立たせてますね。
ちょっと読んでて辛かったけど(泣)
次回もマターリお待ちしております。
96 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/25(月) 02:14
やばい泣けてきた。
この後ごっちんがちゃんと家に帰れたか心配…

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