天気とあたし

1 名前:ベイム 投稿日:2004/05/31(月) 16:26
初めて小説書きます。長い事ROMってましたがとうとうチャレンジ
しようかと………頑張ります。

主な出演は藤本さん、松浦さん、後藤さん、吉澤さんとなります。
では、目に止まったら見てみて下さい。
2 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 16:33
サァァァッ−−−−−……ゴロゴロゴロッ−−−−−−−−−

雨、雨、雨、雨。 ここん所、天気が悪くて困っている女の子が1人。

東京というど真ん中の都会で普通の暮らしをしている、高校2年青春真只中。

「傘持ってきてないって……さーいーあくーぅ…」

教室を掃除しながら亜弥は窓に額をくっつけて、不機嫌に言った。
そんな彼女を置いて、雨は先程よりも激しく音を立てて雷までも連れている。

「まっつー、さぼっちゃダメだってば、早く机運んで」
亜弥の肩を軽く叩いて注意したのは、後藤真希。亜弥の良き相談相手でもあり
ライバルでもある。
3 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 16:44
亜弥と真希はフットサル部に入っていて、2人は唯一のエース。
しかもスタイル、顔と共に完璧で、下駄箱は靴が入れられない程の人気者。
お互いがお互いの良さを知り、欠点を知っている、親友なのだ。

「ね、1週間ずっと雨降ってるんだから明日も雨って想像出来ないの?」

真希が小馬鹿にしたようにクスッと笑った。それに亜弥は御立腹の様子。

「うるさい……あたしはずっと信じてるんだよ!晴れになるって!」

亜弥がここまで晴れになる事を信じているのには、訳がある。
今週の土曜日に、大事な大事なフットサルの公式戦試合があるのだ。
絶対に負けられない強豪チームとあたり、去年の屈辱を返すために毎日練習
してきたフットサル部は燃えている。

「真希だって勝ちたいでしょ?土曜日に試合がなきゃ意味がないんだよ!!」
腰に両手をあてて、熱を込めて亜弥は大きい声で言った。
「そんなでっかい声出さなくても……分ってるよ」
真希は亜弥の熱血には慣れっこになっている。高1の時からの仲なので、
亜弥の考えている事はお見通し。
4 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 16:50
  「………それじゃあ明日も元気で登校するように」
亜弥には長く感じた学校の時間がやっと終りを迎えた。

帰りの学活中亜弥は、携帯にメールを打ち込みまくり、その長文をやっと
相手に送信した時、真希に後から声をかけられた。

「……今度、いつ会える?」

「うわわわっ!!ちょっと真希何勝手に見てんのさ!!」

真希は軽く溜め息をついて、ラブラブだねと携帯を覗いてコメントした。

「へっへ〜、いいでしょ。ホンットに!!会いたいなー……」
ディスプレイをジーッっと見つめる亜弥は、まさに恋する女の子。

5 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 16:58
真希はやってられないと言わんばかりの顔で亜弥を置いてさっさと帰ってしまった。

「あれ?真希?もしかして帰ったぁ!?もーっ、傘無いんだってば!!」
教室には亜弥以外誰もいない、ガランとした風景が広がる。職員室に行けば傘の貸し出し
があるが、亜弥にとってそれはとても面倒臭い事。ダッシュで帰る事にした。

「ふんふんふ〜ん♪日曜日、よっちゃんに会える!!ヒャッホ〜イ!」

恋する乙女は思考回路が読めない……よっちゃんとは、亜弥の恋人。
他校だが、フットサルの試合で知り合い、1ヶ月前から付き合い始めた。
超がつく程の美形で、スポーツと勉強はもちろん、性格も良い。
 下駄箱のフタをおそるおそる開けてみると、亜弥の思った通り、ラブレター
なるものが50通程押し込まれていた。

「あーあ……この枚数もって帰るのかぁ。雨もひどいし、本気で走ろっ!」
もともと中学の時は陸上部で足は早い方の亜弥。クラウチングスタートのポーズ
をとり、深呼吸をした。
6 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 17:07
「位置について……よーい、ドンッ!!」
ミニスカを履いている腰を上げ、自分でスタートを切った。

昇降口の向こうには雨の世界が広がった。激しく、そして冷たく雨は
亜弥を打つ。セーターはほんの少し走っただけで濡れ、靴は泥だらけになる。
カバンを頭の上にかぶせて、雨をほんの少しでも避けようとしたが、あまり意味
がない。全速力で、家まで走るだけ。
家まで後少し、川沿いを泥だらけのローファーで突っ走り、時折川を見る。

「うわー、溢れてる。危ないなぁ………」
川の水は、いつもの穏やかな流れと違い、激流に変わっていた。

「速い速い松浦選手!!水たまりを突破しましたーっぁあ?」

亜弥は地におおわれている水たまりをひょいっと飛び越えた……が。
7 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 17:14
亜弥の頭では、水たまりを飛び越えた事になっている。

飛び越えたと思っていた水たまりの上に着地……してしまっていた。

「うっぎゃーっ!!ヤバイーッ……制服ドロドロじゃん!!」
元から汚れていたローファーはさらに茶色を帯び、セーターは薄く汚れた程度。

「あーもう最悪!!!あたし運悪すぎ!!」
人一倍大きい声を持っている亜弥は、通常よりもさらにトーンを上げた。

すると、誰かの不機嫌な声が亜弥の横から聞こえた。
8 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 17:22
亜弥は大声を上げた後、自分の横に1人の男の子がいるのに気がついた。
自分と同じく、傘を持たず、ジーパンにTシャツで帽子を被っている。

「何……あんた、何様のつもり?人に泥水かけといて自分だけ最悪とか
叫んじゃってさ。馬鹿みたい」

男の割りに声が高い……無意識のうちに脳内でこんな事を考えた。

「ほら、早く謝れ。これ、どーしてくれるの?」
男は自分のジーパンの裾を指差した。茶色に染まって、ビショビショになってる。

「ごめん……なさいっ」
「謝りゃいいんだよ謝りゃ……」

泥をかけたのは悪いと思うが、そんな言い方はないだろうと亜弥は思った。
名も知らない奴に馬鹿と言われたのにはさすがに怒った。
9 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 17:29
「あの、何ですかその言い方」
「あ?何が?」

キッと亜弥は自分なりに強い目つきで相手を睨み付けた。

「知らない人に馬鹿なんて言われる筋合いありません。ジーパン汚して
すみませんでした。さよならっ」
睨みながら、再度走り出そうと足を出そうとした瞬間、相手に手を掴まれた。

「ごめん。馬鹿って言ったの撤回…します。それと、これっ」

さっきの態度とは打ってかわって、急にていねいになった。
相手はバックから、何かを取り出し、恥ずかしそうに帽子をとって
こう言った。

 「傘、おりたたみでよかったら、貸す。じゃ、さよなら」



    女……しかも、かわいい………
   傘を無理矢理渡されて、ぺコリを一礼された。
 あっというまの出来事だったが、亜弥の胸には何かが詰まったのだ。
10 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 17:32
「あのっ、名前教えてよ。傘、返したいし…」
フッと振り返ったその女の子は、少し、ほんの少しだけ微笑んで
こう言った。


「美貴………藤本美貴」
「み…き」

亜弥の頭には、美貴という名前が焼き付いた。ただ、すごく気になったから。
11 名前:ベイム 投稿日:2004/05/31(月) 17:33
ああ……一気に更新してみました。感想くれれば嬉しいです。
12 名前:あず 投稿日:2004/05/31(月) 20:27
自分的には続きがすんご〜〜くきになります。
次の更新楽しみに待ってます!!
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/31(月) 21:37
大好きな4人です。
続き楽しみにしてます♪
14 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 21:51
  川を後にして、亜弥は走った。美貴からかしてもらった傘を握りしめて……

鼓動は、高鳴る。

走ったからではない、違う心鳴り。

「何ッ……あたし気にしてないよねっ!?」

走っても走っても、家に着かない。ゴールがないみたいに、家からはとても長く感じた。
15 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 21:58
−−−−−−−−亜弥の部屋………

「おかーさんっ、制服どうしよぉっ」

家に着き、シャワーを浴びてから寝巻きに着替えた亜弥。
制服が汚れてしまったので、2階の自分の部屋から1階にいる母に叫んだ。

「今洗濯してるわよー、全く、傘持っていきなさいって朝言ったでしょ?」
1階から母の応答がきた。それを聞いて亜弥はうんざりした顔をする。

「だってー……いやだもん、絶対、土曜日は晴れるんだよ…」
窓をイヤイヤ見ながら、独り言を漏らした。
16 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/05/31(月) 22:06
   

     チャラリラリーン♪

「ん、メールだぁ。……よっちゃんだ!!」
亜弥の携帯に着信をしたのは、恋人である吉澤ひとみ。いつもは
簡潔メールばかりの吉澤も、今日は長文。

 『土曜日の試合、勝てるといいね。応援してっから!!!
   それから、月曜日。久しぶりに会える事、楽しみだよ。
  それじゃあ、バイバイ!』

「よっちゃぁん……会いたいよぉ…今すぐ会いたいっ!!」
吉澤の事を思い出して、月曜のデートを想像している。しかし、そこの
裏にはなぜか藤本がよぎる。

「だぁぁぁ!!なんなのあのヒトは!あたしにインネンつけてきて勝手に傘
貸しただけの……他人だよ………」

他人、赤の他人。絶対そうだと自分に言い聞かせようとする亜弥。


「今日は木曜日……どーか土曜日だけはっ!!晴れますように…」




 藤本と出会った最初の日、亜弥の変化はここからだった。
17 名前:ベイム 投稿日:2004/05/31(月) 22:11
>12、あず様=初レスありがとうございます。温かい目で見てやってください!!

>13、名無飼育様=この4人の関系はこれから明白になりますので、見てて下さい……!

次の更新日は明後日頃になるかと。
18 名前:ベイム 投稿日:2004/06/01(火) 11:02
>16の部分で『〜それから月曜日』ではなく『〜それから日曜日』
でした。スミマセン……
19 名前:ベイム 投稿日:2004/06/01(火) 11:03
ええと、明日更新するつもりでしたが時間が出来たので更新しようと思います。
不定期ですので、御見知りおきを。
20 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/01(火) 11:15
  ピピピピッ…ピピッ……時計は朝七時を指している。

 今日は金曜日、試合前日の爽やかな朝となる予定だったが………

「も〜ぉ……石原さんの嘘つきーっっっ!!雨じゃんか!!」

亜弥は窓ガラスを割るいきおいで拳を窓にぶつけた。
今週の週間予報では、曇りとなっていた筈だが天気は昨日に引き続き雨。
寝癖を軽く直し、昨日洗濯&乾かした制服を着て1階に降りた亜弥は、
どかっと乱暴にイスに座る。

「何苛ついてんの?」
母はそれほど気にする事もなく亜弥に朝食を出した。
「言わなきゃわかんない?」
明日は試合だと言う事は母も承知しているが、わざと聞いたのだ。
「しょうがないでしょ、天気は神様に逆らえないの!早く食べて学校
行く!!」
「は〜い……」
21 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/01(火) 11:20
家を出て、薄いブルーの傘をばっと拡げる。本当は傘などさして行きたくないのに……

「あ……傘、返さなきゃ……」

昨日美貴に貸してもらった、折り畳み傘の事をすっかり忘れていた亜弥は
急いで家に入り、自分の部屋から折り畳み傘をカバンにしまった。

「返すの……なんかヤだな」

美貴に会うのはなんとなく抵抗があった。再びあの顔を見るには勇気がいるから。
できるだけ美貴の事を忘れ、足早に学校へ向かった。
22 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:00
てるてる坊主、てる坊主。明日天気にしておくれ−−−−

知らん顔の真希に、ついに亜弥はキレた。

「真希、試合やりたくないの?」
唐突の質問に、真希は目を大きくさせる。
そしてしばし、頭をかいて答えた。


「したいん、じゃない?」
「何さ……真希本気でフットサルやってるんでしょ?」
「まあね」
「しかも中学から」
「まあね」
「だったらなんでそうやって投げやりでどうでもいいって顔するの…?」
真希はうんざりした顔になり、先輩面を見せた。
23 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:10


「焦っても、天気は、うちらには変えられない」


単純に考えて、そういう事。そういう事だけれど、願う事は止められない。

「まっつー、あたしも同んなじ。ボール外でけっ飛ばして、ゴールにブッ込ませたい」

亜弥と気持ちが繋がる時、真希は亜弥を優しく抱き締める。
教室には、何人かの女子がその光景を見てざわついている声が響く。

「真希……?」
「だから、待とう。雨降ったって、あたしらどうせ勝つんだよ」
いつもの余裕スマイルを亜弥に向ける。いつだって、格好がつく真希に亜弥は
憧れているのだ。
「うん………、あたしと真希で、今度こそ勝とうね?」
「当たり前ってば。あ、ごめん、なんか……成りゆきで」
自分の行為に気付いた真希は、とっさに亜弥から離れた。それから、一言。

「あんたの恋人以外、こういう事しちゃいけないね」
「馬鹿!からかうなってば!!」


  雨は、降る。
24 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:18
よくよく考えれば、真希だって亜弥と同じ気持ちになった事は数知れないであろう。
中学校の時にやり始めたフットサルへの想いは亜弥よりも強い。
天候が悪くて試合が中止になった事だって山程あるのに、真希は慣れる。

「ねぇまっつー、この傘どうした?」
放課後、しばらくの雨で部活練習が無いため、真希と2人で帰る事にした。
「うぇっ!?は……ハハ、ちょっと借物で」
「誰から?」
「あー…えと、知り合いから」
「ふーん」

無駄に心臓がバクバク高鳴ると、またもやアイツの顔が浮かぶ亜弥。
忘れても、また戻ってくるクールアンドプリティフェイスな女。
亜弥の好みの顔だったが、性格が良くない。第一印象が良くないと、亜弥には
合わないらしい。

25 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:24
「それじゃ、明日、雨だったら連絡網回るからね」
「……雨前提で言わないでよ真希」
「ハイハイ、晴れだったら……競技場に8時」
「了解!!あたし急ぐから、バイバイ!!」
「うん、バイバイ」

真希と亜弥は川の土手で別れた。そして、美貴に傘を返すため、美貴を探す。
「あの人普段どこにいんだか……探すの一苦労だよ」
それから早くも15分経った頃、美貴を見つけた。
この間会った時よりも、更に目つきが悪くなっていた気がした亜弥は
美貴の目の前に仁王立ち。

「あの、藤本さんですよね、あたし傘かしてもらった松浦です」

美貴はダルそうに亜弥を見上げ、一言こう放った。
26 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:38


「………誰?」


美貴の記憶の引き出しには、亜弥の顔は全くインプットされていなかったのだ。
傘の事も、ジーパンを汚された事も、全て覚えていない。

「あんた、誰……会った事あったっけ?」

ついについに、亜弥の拳に熱がこもる。
これまでのストレスと苛立ちを、全身全霊をこめて、拳に託した。


  バキィッ!


「いたい………いってーっ!!!!!」
「あんた、何なの!?ジーパン汚した程度で怒って勝手に傘あたしに押し付けて
名前だけ言って去って折角借りた傘返そうと思って返しにきてやったら
誰か覚えてないってどういうこと!??最低!!死ねっ!!」

美貴は、目をどこかに泳がせ、記憶を辿る。そして、『ああ』と思い出した。

「……ジーパン汚したあんたね。はいはい、思い出した」
美貴にとって傘を貸した事も、ジーパン汚された事も、3分で忘れてしまうのだ。
その時はものすごい形相で怒っていたが、今では格下がりの顔。

「もうどうでもいいけどさ、いきなり殴るってのは女としてどうかと思うけど」
「はぁっ!?あんたが覚えてないのが悪いんじゃん!」
「だからってさ……っかー、すっっっごい痛いんだけど」
「え、そんなに強く殴った…?」
「ええ、そりゃあもう。痛くて痛くて、口の端切っちゃった」
「うそぉっ!!どこ、見して!!」
今まで美貴の事を嫌煙していた亜弥だったが、血と聞いた途端に美貴の頬に手を当てる。
27 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:45

「……ウッソ−、騙されたね」

「何、本当にあんた何なの?」

「マジで心配した?今美貴の事」

ふふん、と勝ち誇ったような目で亜弥を見て、ほんのちょっとだけ美貴が笑った。

「誰があんたなんかっ!!」


亜弥はムキになり、美貴の帽子を奪い取って逃げた。

「何すんの!!返せ!」
「やだよ〜っ、こっちまでおいで!!軽ヤン!!」
「……本気で走るよ美貴。いいの?」
「どうぞどうぞ、元陸上部の足をなめないでよね」
「ほ〜、お手並み拝見しよっか。そらっ!!」

亜弥は、美貴の合図と共に、走り出す。
28 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 20:51


「ハッ……はぁ、はぁ…あーーっ!!くやしー!」


亜弥が帽子をとって、1分もたたないうちに美貴に奪い返された。

「あんた遅すぎ。見かけもドンくさそうだけどね」
「なんで元陸上部で県大会に出たこともあるあたしがあんたに負けるの!?」
亜弥はまだ呼吸が落ち着かないのに、美貴は平然とした顔で野原に寝る。

「傘返したんだから、帰ればあんた。今4時だけど」
「言われなくても帰りますーだ!」
「あ、待って帰んないで」

なんだこいつはという目で亜弥は美貴と見た。
29 名前:雨女と晴れ女 投稿日:2004/06/02(水) 22:18
「誰もいないとヒマだし」
「あたしはヒマ潰しの女じゃありません…」

なんて怒りながらも、美貴と同じように野原に寝そべる。

「ねぇ、あんた名前藤本美貴って言うんだね」
「だから何?」
「……あたしの名前聞かないわけ?」
「別に傘かしただけで名前聞く必要ないと思うけど?」
「……なんでそうやって逃げるかなぁ…」
うまが合わないが、なんとなく雰囲気が暖かい。亜弥は自然と感じていた。

「名前、なんてーの?」
「結局聞くんじゃん」
「質問に答えろ」
「…松浦亜弥」
「は〜ん、かわいいじゃん」
「あー、……え?」

可愛い。
30 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 22:24
「名前が、名前がかわいいねっつったの」
美貴はわざと名前の部分を強調して、亜弥の表情を面白そうに伺う。
「あんたってホントムカツク人……嫌いだよもう!」
「美貴はあんたの事嫌いじゃないよ」
「はぁっ?」

さっきのかわいいといい、行動が読めない人だ。と亜弥は思った。

「あんね、笑えるんだあんたといると。けどあんたが美貴の事嫌いなら
それでいいけどさ」

極めて冷静、冷たく、静か。だけどどこか優しい、しだいに亜弥は美貴に
敬語を使わなくなっていたのに気付いた。
31 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/02(水) 22:33
「ジョーダン」

「あ?」

「嫌いじゃないよ、好きでもないけど!」

「その言葉そのまんまあんたに返そう」

「……あー!!なんなのさ!!…お?」


 初めて、美貴が笑った。 微笑むのではない、本当に、素で笑っている。
亜弥を見つめ、綺麗な瞳で笑う。その姿に亜弥は魅せられた。

「笑うとカワイイんだから、笑えばいいじゃん」
「何にもないのに笑える?ただの変人じゃん」
「そりゃそうだけど……そうだ、あたしちゃんと名前あるんだから、
あんたって止めてよ」
「あっそう、分かった」



「亜弥。って呼ぶよ」


名前ではっきりと、呼ばれた事はない。親にしかないのだ。


「あー……イヤ?」

少し不安そうに亜弥の頭をぽんぽん撫でる美貴は申し訳なさそう。

「イヤなんだね、じゃ亜弥ちゃんで。こっちの方がかわいいか」

「かわ…いいって、どーせ名前でしょ」
「まだ何も言ってないじゃん。亜弥ちゃんがかわいいっての」

2回目の、かわいい。
32 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/03(木) 09:49
やっぱあやみきいいっす。
あやよし?なんてありえれいにゃです。
33 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 16:41
よく、かわいいねって言われる亜弥だが美貴に言われるとへんにもどかしい。

「あ、あたしもう帰る。明日のお祈りしなきゃだしー……」
「お祈り?何それ」
「あんたにカンケーございません!」
「当ててやろっか?」

望むところだ、と亜弥は豪語した。

「答えは簡単、明日雨が降らないように。じゃないの?」

時が止まったかのように、亜弥は呆然とする。なぜ、分かったのか。

「なんで分かったの!?何もの!?心理学者!?」
「普通に考えてそうじゃん。ここ最近ずっと雨降ってるし、晴れないと
いろんな行事が潰れる。それでキミはお祈りって言うから」
ほうほう、と頷いてあ亜弥は本題に入る。

34 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 16:46

「サッカーの試合ねぇ」
「サッカーじゃない、フットサル!女の子がやるサッカーだよ」

美貴は亜弥の言う事に静かに耳を傾け、遠くで遊んでいる子供に目をあてる。

「それで、晴れになるようにと」
「そうだよ。絶対、雨なんか降らせないよ!」
亜弥の自信ありげな言葉を聞いて美貴はためいきをついた。

「亜弥ちゃんは、雨きらい?」
「当たり前じゃん、だいっっきらい」
「……そっか」
「なんで残念がってるの?」
「美貴、雨大好きだから」
「雨がぁ?変わってるね……何もかもあたしと逆だ」
35 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 16:53
「晴れると、わけもないのに何で明るくなるんだろ。って思うんだよ。
むしろ、雨の方が好き。だから、雨の日しか外に出る事ない」
「はぁ……?おかしい人。だから傘ささないで歩いたりするんだ」
「そーそー、ありのままになるっていうの?」
「クサッ。台詞がクサすぎる……あんた、祈ってよ」

「……明日晴れろって?」
「そう」
「やだね。晴れ嫌いって言ったばっかり」
「ダメ、あんたなら、晴れにできる」
「何の根拠があって………」
「あたし、そんな感じするもん」
「………考えとこうかな」
「ほんとっ?」
「さあね、その時の美貴の気分次第だけど」
36 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 16:59
あくまでも、亜弥にはそっけない。

「さ、帰るかな。じゃあサイナラ」

大欠伸をして美貴は勝手に川を後にしようとする。

「もーっ、あんた何であたしに冷たいのっ!?」
イライラした様子で美貴は大股で亜弥に近付く。
「あ・ん・た。やめろって言ったの亜弥ちゃんじゃないの?」
「う……じゃあなんて呼ぶの?」
「どうぞご勝手に」
「美貴………美貴だから……好きな食べ物なに?」
美貴は少し考えた後、即答した。

「牛タン、かな」
「牛タン……たん。みきたんは?」
「却下です」
「せっかく人がかわいい名前つけてあげようかと思ったのに!」
「呼び捨てでもいいから、それだけはカンベン」
「わがまま……あたしの事は亜弥ちゃんって呼んだくせに!!
   もー、2度と会ってやるもんか!!」
37 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 17:04
あかんベ−をして亜弥は捨てゼリフを吐いた。

「こっちから願い下げですよ……じゃ、バイバイ」

美貴はからかい、亜弥に近付く。そして………



「なぁにんすんの!!??やっぱあんた最低!!」
亜弥は思いっきり力の限り美貴を突き飛ばした。
「サイテ−だよどうせ、もう会いたくないならいいんじゃないキスぐらい」

冷たく冷ややかに笑い、美貴は川沿いから見えなくなる程早く走っていった。

「キスぐらいって……なんだよーーっ!!なんであたしがあいつにキスされなきゃ
いけないの!?あーっ、もう!最低ナンパ馬鹿女タラシ野郎!!」

明日の試合、勝てるのか……?
38 名前:ベイム 投稿日:2004/06/03(木) 17:55
>32、名無し読者様=よしあやはこれからどうなるのか、見ていて下さい♪
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/03(木) 21:15
あやみきいいですね。
あと、よしごまにならないかな?
40 名前:ベイム 投稿日:2004/06/03(木) 21:35
↑ふっふっふ……どうでしょう(笑
これから見て下されば分ります(鬼
41 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 21:41
明朝6時、亜弥は早くもベッドから跳ね上がった。
眠れない、眠れるわけがない。昨日、美貴とのやりとりがなかった
ら、きっと亜弥は安眠していたに違いないだろう。
「もう、起きよう……」
亜弥には1つ心残りがあった。それは、吉澤の事。
たいして関係のないやつに、いきなりキスをされたのだから、彼氏である
吉澤に申し訳ない気持ちでいっぱいの亜弥は吉澤にあわす顔がない。

「あっ!そうだ雨っ……」
急いで窓にかけより、カーテンをシャァッと勢いよく開けるとそこには

「う……そ…は、晴れてる……」
外は、まっさらの青色が空に浮かぶ快晴。亜弥が夢にまで見た天気だ。

「いやったぁ〜!!は・れ・た!は・れ・た!」
42 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 21:47
そして、競技場に至る。

「良かった、グラウンドぐしゃぐしゃじゃなくて…」
「そだね、良かったじゃんまっつー。願いが叶って」
「もう!ひと事だなぁ真希は……うし、勝つぞぉっ!!」

2人のスーパーコンビは誰にも追いつけない。無敵のタッグなのだ。

  ピーッ!!
対戦校は余裕の表情とまではいかないよう。ニヤリと亜弥と真希はアイコンタクトをとる。

「……真希バック回って!」 「はいよっ」
軽やかにボールを蹴り、みごと真希にナイスパス。

「んー、角度厳しいかな…」 「前から来るよ!早く!」

真希はゴールと距離を計る……一時のミスは失点に繋がってしまう。
43 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 21:52
 「いけーっ!真希!」 「ここだ!!」

左キックがボールをみごと飛ばす。きれいな曲線を描き、ゴールギリギリに
入った。

「う……そだ、バナナシュート?」
相手校はあっけにとられ、ゴールキーパーは立ち尽くしている。

「もうちょっとまん中狙えばよかったかな」
「余裕じゃん真希、とりあえず、ナイス♪」
「どぉも」

次々に得点をきめる真希と亜弥は、とても輝いている。
ようやく後半戦も終了し、ホイッスルが鳴った。
44 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 22:00

「なーんだ、余裕だったね!!久しぶりに蹴ったから楽しかった!ね、真希?」
「そうだねぇ、あたしも楽しかったかな。……ん?」
「どした真希?」
「あそこ、あそこに立ってる人、亜弥の方見てない?」
「へ、どこどこ……?あーっ!!よ、よっすぃー!!」
競技場の外で、吉澤はずっと亜弥の事を待っていたのだ。そのボーイッシュな
フェイスに、すれ違う女の子達は吉澤を見る。

「や、近く通ったから、待ってた。どうだった?試合」
思いもかけない吉澤の登場に亜弥は目を丸くして、美貴との事を思い出す。
「あああ、勝ったよ……圧勝みたいな!!わざわざアリガト!!」
その横で、真希は亜弥の顔色がおかしい事に気付いていた。

「それじゃ、もう遊ぶ時間もないね、家まで送るよ」
「や、いやいや大丈夫!帰れるから!!」
「それじゃあたしが来た意味がないんだけどな」
「うー………じゃ、お願いします」
今は吉澤と一緒に帰る気分ではなかった亜弥は、吉澤に手を握られるだけで
へんに意識する。
45 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 22:07
手を握り、足を踏み出そうとした瞬間、亜弥の目に信じられないものが飛び込んだ。
ちょうど今亜弥と吉澤を横切った、ある人物。いつもの帽子を深く被り、早足で
どこかに行こうとする、ある人物。

「ちょ………ごめんよっすぃー!!」
「は?え、おい!!」
吉澤の手をふりほどき、足早に行ってしまう誰かを追いかけた。
まだ、誰か分らないのに、確信したわけじゃないのに、無性に追いかけた。

「おい!………みきたん!」
美貴。美貴だった。急いでいた足を止め、ギロっと亜弥を睨む。
「それ、呼ぶなって言った」
ポケットに手を突っ込み、態度悪そうに発する言葉はやはり冷たい。

「………ちょっと来て!!」
「え?」
ズルズルと亜弥は美貴を引きずり、競技場の裏へ移動した。

「あんたっ、どういうつもりなの?ちゃんと答えないとあたしあんたの事
殺しかねないけど」
「美貴はいつだって真面目人間です」
「嘘」
「………何苛立ってんの?美貴ちゃんと晴れにしてあげた」
晴れにしてあげた……美貴は空に願いをかけたという事か。
46 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 22:11
「それはいいの。で、あたしに何か謝る事あるんじゃない?」
「さあ、あったっけ」
「とぼけんのもいい加減にしなよ、なんで…帰り際にあんな事っ!」
「キスの事言ってんの?」
平然と言う美貴はバカバカしそうに亜弥を見つめる。
「……そーだよ!!あたしにはちゃんとした恋人いるのにっ……」

「ふーん、あいつ?あそこでつったってる人か」
「そういう言い方やめてよ。ちゃんと、わけ話して」
「……外国じゃキスは挨拶代わりだけど」
「ここは日本」
「うるさいなぁ、いいじゃんキスぐらいでギャアギャア騒がなくたって」

キスぐらい。亜弥はにどめの鉄拳を美貴にくらわす一歩手前。

47 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/03(木) 22:42
「おっと、殴らないでね。知ってる?殴られた人より殴った人の方が痛いんだよ」
得意げに、亜弥の拳を美貴の両手で包む。
「さわんないで」
「はいはい。でさ、亜弥ちゃんはあのつったってる人の事愛してる?」
「は…?話そらさないでよ」
「いや、そってるつもりだけど……」
「……好きだよ、なのにあんたがキスしてきたから喋りづらいじゃんか」
「じゃ、別れちゃえ」

「別れる……だぁ?」

「そう、別れちゃえば?率直に言うと、亜弥ちゃんがあの人の所有物ってのが
美貴は気にくわないわけさ」

「なんでそういう事しか言えないの……?よっすぃーの事悪く言わないでって言った」

「別に、その人じゃなくても美貴は亜弥ちゃんが誰かの物になってるってのが
憎らしいだけだよ」

「………さっきから何が言いたいの?ちゃんと言わないと……」


「鈍い。馬鹿の上に鈍い。………美貴は亜弥ちゃんが好きなだけ。
そんだけ。別に亜弥ちゃんが美貴の事何にも思ってなくてもいい。
けど、誰かの所有物ってのが気に入らない」

「は……、好きって何言って……」
「だーから、愛してるってば」

ぶっきらぼうにスッパリと言った、愛の言葉は、亜弥にとって痛かった。
48 名前:ベイム 投稿日:2004/06/03(木) 22:42
今日は一気にドヴァ−と更新しました。
御感想くれると嬉しいです。
49 名前:ベイム 投稿日:2004/06/05(土) 14:46
ここでちょっと一息入れたいので、短編書こうと思います。
CPはみきごまで。
50 名前:短編を。 投稿日:2004/06/05(土) 14:51
好きだって、言葉にしないと分らないかな?

けど言葉にしたら、きっと恥ずかしがるんだよね。

気付かないうちに怒らせた時もあたしはずっと待ってたんだ。

絶対、キミは観念して、またキスをする。だから、待ってる。


今度ばかりは……ダメかな? 本気でマジに怒らせちゃった。
51 名前:短編を。 投稿日:2004/06/05(土) 14:55
そのケンカは、ミキティにとって重大な事だったらしいんだけど…
にぶちんなあたしはそれに気付かずに、背いて歩いた。
ケンカの理由ってのが……昨日の電話の事。

『ミキティ、今日電話するからね』

そうあたしは仕事が終った後ミキティに言ったらしい。
すっかりその事を忘れていたあたしと、電話をずっと待っていたミキティ。
あまりに疲れてあたしは、電話の事などすっかり頭から消えていたから大変。
こっちからメールを送っても、シカト。電話をすれば、着信拒否。
52 名前:短編を。 投稿日:2004/06/05(土) 20:25
いかに怒っているのか、その時あたしは想像が出来なかった。

「あちゃ〜、どうしよ。ま、どうにかなるよ」
あきらめて携帯を放り出し、深々と眠りに落ちたんだ。


それが、アダになったなんて………
53 名前:短編を。 投稿日:2004/06/05(土) 20:39
朝起きようとも、やっぱりミキティの事が気になった。
一応恋人だし、仲が悪くなるとモヤモヤが残って気分が悪い。
『一応』というか……なんだろう。

「んー……ちゃんと会って話すかな」

身支度を整えて、携帯を見る。ミキティから連絡は………
「あるはずないね……」
そう思いながらも、すかさず携帯チェックをしてしまうのは性なのか。

「今日オフって言ってたから……家にいるはずか、けどいきなり来たら
怒るかなぁ………」

人からよく優柔不断って言われるあたしは、迷いに迷った。
54 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 08:52
「よし、行って謝ろう」

やっとの事で決心したけど、内心ドキドキしている。
玄関を出て鍵をかける。服装はいつも通り、ラフにいればいいんだよね……?
この前撮影でスカート履いてたらミキティが似合わないって言ったから
私服ではずっとジーパンやパンツを履いているんだ。
電車の乗り継ぎでは頭がボーッとして何も考えられなかった……

55 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 08:55
ついに、ミキティの家へ来た。

ドアの前で何度も、謝りの言葉を探したけど、分らない。

ちゃんとしたケンカはした事がないから……

「いざ、参るっ!」

インターフォンを押すと、エコーがかかる。
あたしの足は微かに震え始めてきた。
56 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 08:59
『…はい?どちらさまですか?』

押してまもなく、あの人の声が聞こえた。

「……あたし……だけど」
精一杯だした声はか細くて、ミキティに聞こえたかどうか……

『ごっちん?』
すごいびっくりしたような声で、あたしの名前を呼んだ。
「あ…うん、ちょっと……話したいんだ」
怒っていなさそうなので、中に入れてくれるよう頼んだ。
57 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:04
『……ちょっと待って』

少ししてから、声のトーンが下がった。もしかして、入れるか迷ってる?
受話器を置いて、2分後。ガチャッと扉が開いた。


「やぁ〜……ミキティ…」
「何?」

まだ、怒ってる。普段から怒ってるような目だけど、あたしには分る。
ふくれっつらで、ツッコミはいつもより厳しい。黒のジャージを着た様は
ヤンキーのようだった。
「……ごめんなさい。電話、待っててくれたんでしょ?」
小さく頭を下げて、素直に謝った。けどミキティは黙って腕を組んでいる。
58 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:07
「待ってなんかないよ」

いつもの、意地っぱり。素直じゃないんだから…

「嘘だよ、待っててくれたんだよねミキティ。なのに……」
「べつにっ……どうでもいいよもう…」
さっきから目を合わせてくれない。ずっと笑わない。

「どうでもいいなら、何で怒ってるの……?」

今すぐ、抱きしめたい。けど、抱きしめても許してはくれない。
59 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:11
「どうでもいいなら、なんでメール返してくれなかったの?」

恐る恐る、訪ねてみた。するとミキティは顔を赤くしていた。
好きって言ったら照れるし、言わなかったら怒る。
それみたいに、顔を赤くする。

「送り返したくなかったから、悪い?」
「いや…悪いっていうか」

引き下がってしまう。怒らせたあたしが言える分際ではないし……
60 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:15
「……なんで言い返さないのさ」
「だって、そんな偉くないしあたし…」
「けど、美貴の彼氏でしょ」
「そーだけど……」

あたしの煮え切らない態度にいらついたのか、ミキティから切り出した。

「美貴の事、大事にするって言った」
「へ……?」
「絶対嫌な気持ちにさせないって言った」
「あ、あの……」

「一番に美貴の事考えてるって、言った」

思い返せば、記憶が蘇る。 あたしがミキティに、アタックしまくってた時の事。
61 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:19
何回も何回も、あきらめなかった。好きって気持ち、たくさん伝えたあの頃。
けどミキティの答えはいつも同じだったんだよね。

『美貴、亜弥ちゃんだけなんだ』


まっつーに、完敗してた毎日。チャレンジはいつしか、成功に変えた日は
ものすごく嬉しかったのに。

「それ…覚えてたのミキティ?」
「そうだよ……ごっちんがしつこいから覚えちゃったんだよっ」
まだ照れくさそうにミキティはわざと乱暴に言う。
それでもあたしにとって、大事なんだよね。
62 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 09:24

「ごめん……あたし忘れてた。ずっとミキティの事ばっか考えてるのに
たまに投げやりになっちゃって……こんなに好きなのに」

やっとの事で、胸の鎖が外れた。 ミキティの手を引っ張り、抱き締める。

「怒らせても、どうにかなるって思ってたんだ?」
「……はい」
「どうでもよかったわけ?散々コクっておいてさ」
「や、そういうわけじゃないんだけどっ……」
言葉が見つからなかった。なんて伝えればいいのか。

63 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/06(日) 10:55
あやみき大好き!
しかもごまみきもあるなんて!!
更新頑張ってください。待ってます。
64 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 13:18
あれが、あったんだ。 逃げ道じゃない、本当の言葉があった。

「あの、ちょっと聞いてミキティ」
「はい?」

ふかーく深呼吸をして、切り出す。



「愛してます、藤本美貴の事。大好きですっっっ!!」

にっこり笑って、ミキティのほっぺに軽いキス。
65 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 13:25

「これ覚えておいてねミキティ、絶対あたしもこれだけは覚えてるから」

いくら忘れんぼのあたしだって、ちゃんと分る絆。
お互いが好きでいる事があたしらにとって第一なんだから。
なんて思っていると、ミキティはものすごく照れた様子。

「忘れんなよっ、その言葉!美貴も覚えておくからっ!!」
びっ、とあたしの事を指差して照れくさそうに笑ったミキティ。

「やっぱり笑ってるミキティが一番好きだよ、愛してますよ〜♪」
「うるさい!!もう言わなくていいんだよ!!」
「え〜、なんでよ」
「しつこいっっ!」
66 名前:短編を。 投稿日:2004/06/06(日) 13:29

「しつこくても、言うよ。嘘じゃないからねー」
「わーかったからっ……んっ……」

家に入ろうとする手前、ミキティが振り返った瞬間にキス。
あとでまた照れてぎゃあぎゃあ騒がれるんだけどね。

「さあさ、家入れて?」
「ばか、まだ許してないんだよーだ!」
「そんなぁっ!」


いつまで続くか、この愛は……?

FIN
67 名前:ベイム 投稿日:2004/06/06(日) 13:33
ふぁ〜、短編終了しました。ベタやな〜っ!!

>63、名無読者さん=ごまみきは雰囲気がムズイです……
     読んで頂き嬉しい限りです!


ちなみに、かける時に書くタイプなので更新は遅くなったり早くなったりです。
68 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 13:42


「まっつー、あっちで吉澤って人待ってるよ」

美貴と亜弥の沈黙を破ったのは真希だった。
2人の様子を察したのか、交互に2人の顔を見る。

「それと……あなたは?」

亜弥はふと美貴の目を見た。何も動じる事なく、いつもの冷たい目。

「藤本美貴ですけど、あなたは?」
亜弥の時とは打って代わって、敬語を使い礼儀正しくなっている。
「まっつーの親友で、後藤真希。…言っちゃ悪いけど、この子彼氏
恋人いるんで。ほら、まっつー帰るよ」

「ちょっ……真希っ……」

真希に腕をつかまれて、吉澤の所に戻る。
美貴は只いつもの様にボケッとして亜弥を見てるだけ。

「ごめんっ、真希待って!」
「え?」
69 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 13:49
駆け出した亜弥の目には、美貴が映っている。

「ごめん、あんたの事好きになれない……」
「知ってるよ、どうぞ彼氏とお帰り下さいませ」
美貴は顎で吉澤を指す。

「でも川には行くから!雨になったらあんたの所行くから!」
「来なくていい。っていうか、来ない方がいいんじゃないの?」
「……ねぇなんでそんな事言うの?あたしそんな事言ってないよ?」

涙が自然と出てくる、刹那。 

70 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 13:54

「言わなくても分るんだよ、亜弥ちゃんの言いたい事」
「じゃあなんて言ったと思う……?」



「あたしは、あんたの事なんかどうでもいい。好きになるなんてゴメンだ」

走馬灯のように駆け巡った、雨の出来事。あれは、真実ではない……?


「当たりでしょ?美貴の事、忘れていいよ」

最低野郎が、いつもの倍ぐらいに最低に思えた亜弥の目には涙がある。




「そーだよ、大当たりだよっ……あんたなんかどうでもいいんだよ」
71 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 15:23
うらはらに、言葉は吼える。



「邪魔、早くどっかいけ、アホ野郎……」

「やっと言ったね」


今までで一番最低なやつと、やっとおさらばできる。
だけど、震えが止まらない。なぜか涙が溢れてくる。

「阿呆……か、覚えておくよ」

そう言って、美貴は消えた。 亜弥の目には、それが見えない。



72 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 15:27
「まっつー、帰ろう。ぐずってないでさ」
「ぐずってなんかないよ……」

吉澤は、遠くから走り去る美貴を見ていた。嫌煙した目で、今にも
殴りかかろうとする形相だった。

「大丈夫…?家まで送るから……もう大丈夫だよ」
「よっすぃっ……」

亜弥は、吉澤の胸に身を委ねた。心の支えが欲しかった。
只、それだけ。


「藤本……美貴か。やっぱりな……」


吉澤は、小さく亜弥に聞こえない様、そっと呟いた。
73 名前:ベイム 投稿日:2004/06/06(日) 15:28
あーあーあーあー、どうなるのやら。
自分でさえも分りません………
一応ageときます。
74 名前:ベイム 投稿日:2004/06/06(日) 15:31
大切にしてくれなきゃ HONEY HONEY BAD EMOTION♪

優しさがちょっとだけありゃ HONEY HOENY FAIN EMOTION♪

特に意味はなし。
75 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 19:13
話の設定が好きです。
面白いので続き期待してます!
76 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 19:24
翌日、吉澤に家まで送ってもらった亜弥はまだ目が腫れていた。
忘れようと思っていても、嘘は油性よりも濃いマジックで書かれているのだ。

「デートする気分じゃないよ……」

ベッドから起き上がったものの、足下がおぼつかない。
身支度をしても気が入らず、歯磨きの途中でボーッとしてしまう。

「亜弥ーっ、電話!」
洗面所から母がひょっこりと顔を出し、受話器を洗面台の横に置いた。
「誰……?」
「真希ちゃん」

真希から電話をもらう事はめったにない。何故か、それは無頓着だから。
77 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 19:27
「もしもし……」
『まっつー、あんた大丈夫?』
「何がぁ…?」
『ちょっと、親友がせっかく心配して電話してやってるっつのに』
「あー……もう昨日の事はなんでもないんだってばぁ…」

また思い出してしまう。楽しい事を考えて必死に忘れようとするにも
次から次へ波が亜弥に押し寄せる。

『何でもないって雰囲気じゃなかったけど。それと……忠告しとく』
「もぉ、何……?」
78 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 19:33
真希は一息置いてから、簡潔に言った。


『吉澤って人、気をつけた方がいい』

「は…?真希何言って……」

『あたしの知り合い、吉澤さんのグループにボコされたらしいんだ』

「ちょっと待ってよ……それ何?」

『あたしもよく分んないんだ……』

真希は曖昧に説明するも、亜弥には信じられない。
何を信じて、何を信じるべきではないのか。
79 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/06(日) 19:40

『ただ明確になってるのが……』


その先は、聞きたくなかった。 耳を塞いで、どこかに行きたかった。



『………警察で世話になった事何回かあって…前科があるんだ』




「やめてぇぇぇぇっっ!!!!」


−−−−−−−−ピッ……ツーツーツーツー

電話は、床に転がり、亜弥はその場でしゃがみ、泣いた…………
80 名前:ベイム 投稿日:2004/06/06(日) 19:43
よしざーさんと藤本さんの役柄が難しいです……
今日の更新終了します。

>75、名無し飼育さん=設定考えるの苦労しました…… 
    ありがとうございます。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 19:57
黒吉なんでしょうか?
あややが悲しむ姿は見たくないですよぉ。・゜・(ノД`)・゜・。
82 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/07(月) 21:52
ぬかるんで、歩けない。


どうやって進めばいいのか、教えてくれない。


「まっつぅー……切れちゃった…」
真希は亜弥の事を第一に考えていつも行動を共にしている。
当然吉澤の事を話にしても、真希は悔しかったのだろう。
子機をベッドに投げ捨て、真希は大急ぎで亜弥の家に向かった。

83 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/07(月) 21:55

「あら、真希ちゃん!久しぶりねぇ〜」

家に向かうと、すぐに亜弥の母が出迎えてくれた。

「お久しぶりです…あの、亜弥ちゃんは…」
「亜弥ね……私もよく分らないんだけど…とりあえず部屋にいるわ。
どうぞ2階へ上がって」
「ありがとうございます……」

トントントン……階段を上がるにも足が重い。辛い。

84 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/07(月) 22:06

「まっつー、真希だけど……開けるよ?」

返事は、返ってこない。ただ、雨が降っているだけ。
数回ノックをした後、ドアノブに手をかけ開けた。

「真希……?」
「大丈夫、かなって。やっぱ……言わなきゃよかったかな…」
亜弥はベッドにうつ伏せて、声を殺して泣いていた。
真希の態度はいつもより温かく、優しかった。

「………みきたん?」
「え?」

影が、ほんのり微かに見えた。迫りくる面影が、亜弥を刺し続けている。

「違うっ……違うのに…」
「まっつー……忘れなよ、あの人の事は」
「分ってる……そんなの分かってるよっ…」
85 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/07(月) 22:11
頭が痛い、ギンギンする。

これまでにないくらいの痛みが襲ってきた。

「吉澤さん……に、会う?」
真希の言葉は詰まっていた。
亜弥は首を横にふる。
「会えない……ていうか会いたくないか…」

ずっと、亜弥にだけ優しかった吉澤。 誰よりも愛してくれていた筈と思っていた。

86 名前:ベイム 投稿日:2004/06/07(月) 22:14
>81、名無飼育さん=よしざーさんの事はこれからどうなるのやら……
           お楽しみ下さい♪
87 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/09(水) 17:01
ポツ……ポツ……ポツッ−−−

「雨……さっきまで晴れてたのに?」
突然の雨は、とても激しく、冷たかった。

こんな日に出会った2人は、今では彼方。

「真希、もう帰ったら?」
「まっつーが平気になったら帰るけど」
亜弥の事がよほど心配なのか、真希はやっぱり優しい。

「いー……いーんだ。後でどうにかするよ、真希は心配しないで?」

重なってできたいくつかの空欄。いつかは埋めなければ穴は広がる。
88 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/09(水) 17:08
「まっつーがそうしろって言うなら、帰る。でも、辛くなったらいつでも
頼っていいんだからさ、我慢しないでよね」

「さすが親友じゃん……ありがと…」

真希は亜弥から傘をかりて、家を後にしたのだった。

「やばっ……」
忘れていた事があった。すかさず携帯を開く亜弥。



『あたしだけど、どうしたの?時間合ってるよね?』

吉澤との、約束。前々から、楽しみにしていた筈なのに。
真希からの電話に出なかったら、事実か嘘を受け止めないで済んだ筈なのに。
89 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/09(水) 17:14
送られてきたメールは、無意識のうちに消去してしまった。
指先が震えて、ディスプレイが歪んで見える。
「何でっ……わかんないよぉっ……」

利用されているのではないか、亜弥はどこかで察した。
信じて信じあって、そして恋人となった。
手を繋いで遊びに行って、笑ってふざけ合って。
ただ、ごく普通のカップルだった。

「好きなのに、分んないって……何でだろ…?」

90 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/09(水) 17:25
ポツッ……ポツッ……ポツッ−−−

「……雨じゃん」

川沿いをランニングしながら、フードをとったやつがいた。
とても冷たくて、雨に負けないぐらい寂しい人がいた。

「結構激しいな……」

やがて土は泥に変わり、雲の動きは早くなった。
あちこちに水たまりが出来はじめる。
ふと目に止まった水たまりに、片足を乗せてあいつは思った。

ジーパンを汚された。
誰に?
−−誰だっけ……?
そう、彼女はもう来ないんだ。
−−そっか、会えないんだ。
会いたいんでしょ?
−−……分らない。けど、元気かなぁ?
それは僕にも分らないよ。
−−会っちゃいけない。彼女には大事な人が待ってるから。
91 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/09(水) 17:33
それは君の意志で決めるんじゃないかな?
−−美貴の?
そうだよ、会いたいなら、追いかけよう。
−−追いかけたら、また失っちゃうよ。
そんな事、分らない。全ては君にあるんだから。


我に返った美貴は辺りを見渡す。
美貴以外の誰もいなかったが、確かに声は聞こえた。

「美貴誰と喋ってたんだろ……」
足下を見下ろすと、水たまりの上に重ねた自分の片足に気がついた。
「水………たまり?」

今まで会話していた相手は、水たまりだったのだろうか。
「好き、なんて言わなきゃよかった」

拒絶。嫌い。大嫌い。

92 名前:ベイム 投稿日:2004/06/09(水) 17:36
遂に90突破しました。どうでもいいのですが。
進展が早いよっ!って思う方がおおいと思いますがご了承ください…
93 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/15(火) 20:06
ふと空を見上げると、極黒い雲が輪を描いている。
美貴の心を映しているかのように、暗く非常に憎たらしい雲。

「じゃあ、会うしかないな」

バシャンッと水たまりをはね除けてやみくもに走った。
せめて一目だけでも、彼女の顔が見たい。
もう一度だけ会って、言いたい事が美貴にはあった。
強がった自分を責める事だけやめて、進むしか道はなかった。



やがて、太陽はあらわれるのか。
94 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/15(火) 20:22
−−−逃げ込む道はただ1つ、お前も道連れだ。


暗く閉ざされた瞳を開くと、とうに終電の駅に到着していた。
ここまでどうやって辿りついたのか、思い出せないでいる。
重い足をやっと動かし、駅から出た。

「……っくそ、雨かよ……」


ボーイッシュな声とキャップ帽から覗く色白の肌。
吉澤ひとみ。
彼女もまた荷物を抱えて彷徨っている1人だ。
「何で急にすっぽかされるかなぁ……いらつく…っ」
近くにあったゴミ箱を軽く蹴飛ばし、その残骸を見た。

「あたしもこうなるのかな……ゴミみたいに……さ」

嫌悪され、やがて捨てられる廃棄物のように。
95 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/15(火) 20:30
浮ついた理性、ぶちぶちと切れる頭の糸が、ピンと張るのを
吉澤はひたすらまっていた。

『稼ぐ……?』
「そうだ、努力なんかしない。絶対あたしらだけのルーツ」
『でもっ……そんな事したらみんないなくなっちゃうよ!?』
「静かにしな、入るだろ?楽できるんだから……」

耳の鼓膜が破れそうな程、何度も再生される髑会話。
どこかでかけ違えてきた番号は、いつしかひっきりなしに繋がる。
入れてもらえる傘なんてどこにも無い。探す力なんてない。

96 名前:ベイム 投稿日:2004/06/15(火) 20:32
久しぶりの更新です、しかも少なくてごめんなさい…
97 名前:ななーし 投稿日:2004/06/19(土) 21:06
黒よし・・・?ごっちんとの関係はあるんですかね?
いつも見てましたななーしです。
あやみきがラブラブになる事を願っていますのでっ。
98 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/20(日) 20:48
必死だった。
何もかもめちゃくちゃでしがみつきたかっただけ。
考えるヒマなんかなかった。
良心は消えてどこかへ行ったんだ。

「やめろよっ……もうっ…死にたい…」


死ねば今より幸福が待ってるかな?
幾度となく死に対する思いが高まり、気は絶頂に達する。

廃棄物と化す前に、やらなければならない事があるだろう?


誰かがこだまする、胸の中。

アイシテル……それだけなんだって。
99 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/20(日) 20:52

4人は、違う道を彷徨ってるのではない。


1つの道を進むのだ。


ただ、障害が重いだけ。


情熱は熱い、しかし希望はうすっぺらく変化し始めた。


雨だけが知っている秘密、それが知りたくて走り出す美貴は


愚かなのであろうか?
100 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/20(日) 21:06

覚醒−−−−………


吉澤の背後には傘をさした警官2人がいた。
何をしているわけでもなく、ただパトロールをしてる様だ。
しかし、吉澤の足は勝手に動く。
自然と、警官がそばを通るだけでもどこかへ逃げるように歩き出して
しまう。
吉澤の不審に歩く姿を警官は不思議そうに見つめ、声をかけた。

「ちょっと、何してるんだね?」

軽く肩を触られたその時、雨が降りしきる歩道を吉澤は無我夢中で
走った。

「あっコラ!!待ちなさい!!」


哀れだ、自分でそう思わざるを得なかったのだ。
警察に掴まってしまう。
何もしていなくても予感する自分が哀れで仕方が無い。

吉澤の支えは亜弥だけ−……違うのか。
101 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/20(日) 21:21

フワッと柔らかい感触が、亜弥の鼓動を小突いた。
誰かを信じる訳でもないが、突然寂しさを感じたのだ。

雨、雨、雨、雨。フットサルの試合を目前にしていたあの日。
傘がなかったあの日、川沿いを駆け抜けた。
今日もまた、同じ雨が降っている。

間に合え、間に合えと願う。気持ちが変わってしまう前に。
冷たくて冷たくてそっけない、だけどあったかい。
探してももういないのかな?思い出しては涙する。

「好きじゃないんだってばっ……あんなヤツっ…」


『亜弥ちゃんがかわいいっつったの』

『だーから、愛してるってば』

あの人に言われたから嬉しかった。


「あのっ……最低野郎ーーーーーっ!!好きだよあたしもっー!!」


言わなくちゃいけない事がある。
美貴になんて事を言ってしまったのだろう、後悔が遅かった。
102 名前:雨女と晴女 投稿日:2004/06/20(日) 21:30
好き。

やっと確信できる、美貴の事を恋の対象として見てしまった。

腫れた目をごしごし擦り、急いで着替えた。


「早く行かなきゃっ……雨の日にいるって言ったもんっ!」

好きな人の為にオシャレするってのが女のコだよ。
いつか、吉澤と交際を始めた時に友人から言われた一言。
けれど、吉澤の為ではない。吉澤とは違う、亜弥を引き付ける
力が美貴はあったのだ。
大急ぎで階段を駆け降り、玄関でスニ−カーを履いた。

「亜弥?どこいくの!?」
出かけようとする亜弥を見て母は驚いた。

「っ……行かなきゃいけない所!!」


正直に言おうと誓った。
103 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/22(火) 19:15
「亜弥!雨降ってるんだから傘!!」
「ささない事にしたの!!」

母の玄関からの呼び掛けにも応じなかった亜弥。
ザァザァと途切れず聞こえている雨音に負ける事なくぐんぐん
加速する足は軽やか。
Tシャツがすぐにビショビショになるも気に止めないその強さは
どこから出てくるのか亜弥自身も分らなかっただろう。

104 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/22(火) 19:19

神様、勇気をあたしにちょうだい。


亜弥が刹に願った、たった1行の願い。

叶えと願う程美貴に対する『好き』が増えてゆく。
105 名前:ぶんぶん 投稿日:2004/06/22(火) 21:55
更新楽しみにしてましたぶんぶんです。
藤本さんと松浦さんが幸せになる事を祈ってるので!
106 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/23(水) 22:22
バシャバシャと水しぶきを跳ねる音が聞こえる。
川についた頃は夕方となっていた。
あの日のように美貴を探す亜弥の瞳には雨の風景が広がるだけ。

「どこにいんの……みきたぁーーん!!」

美貴が嫌う、亜弥が勝手につけたアダ名を思いっきり叫んだ。

107 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/23(水) 22:32
何度も何度も叫んだ、美貴の名。

「みきたん………みきたぁん…!」

最後に叫んだとびきり大きく、想いを乗せた。


「ねぇ、うっさいんだけど。それで呼ぶなって言ったでしょ」

後から傘をさした、誰かの声がした。
亜弥の耳には懐かしく、美貴には慣れたその声。
ずっと会いたかった人だった。

「みきた…」
「言うならまだしも叫ぶなんてさぁ、ふざけんなっつの」
「なんで……いるのっぉ……?」
「なんでってさぁー」

「亜弥ちゃん、来るかなーって思ってずっと待ってたんだ」

ジャージの上をさっさと脱ぐと、それを亜弥に渡した。
『待ってた』と美貴が口にする前から亜弥はまた泣き出す。
108 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 17:06
すると美貴はギョッとした感じで亜弥を見た。

「もぉ……美貴なんかした?泣く人見るの弱いんだからさ」
「したよっいっぱい……いっぱいしたよっ……」

渡したジャージを着ようとしない亜弥に半キレぎみにジャージを着させた。
そして、亜弥の頬につたう涙を美貴は手で拭った。

「寒いでしょ、美貴でも寒いくらいなんだから」
「寒くないっ…よぉ…」
「反発しない。美貴が怒りたいくらいだよ」
「ふぇ…?」

「……アナタにフラれてから、寝てないんだよ美貴」

ふと亜弥は美貴の目尻を見ると、確かにクマができて目はほんのり
赤くなっている。どうやら本当に寝不足のようだ。
109 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 17:19

「未練タラタラだけどね、好きなんだ、その人の事」


「一回フラレちゃったっていうか美貴が突き放したってのもあるかもね」


「しばらく会わなくなったら、ものすっごく好きが増してね」

亜弥はぼんやりした目の前に美貴がいる事さえ曖昧だった。
美貴の一言一言が夢を見ているのではないか、そう思った程だった。

「っていうか、何か言ってよ。美貴ばっか喋ってたらバカみたいじゃん」
「バカァ……なんっ…で…しつこいぃっ…」
「しつこいねぇ、美貴は。けど諦めたくないから」

深く深呼吸をした美貴は、亜弥に迫った。

「もう一回言うよ。亜弥ちゃんの事好き。世界一大好き」

クマができた目は、必死で亜弥に伝えようとしている。
110 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 17:26

『好き』と『好き』の違い、亜弥は迷わなかった。

「好きっ…だよ……」

「お友達として?」

「違う…」
「そいじゃ何で?」

美貴は待ち焦がれていたかのように亜弥を見る。

「……言わなくても分かってるでしょ!!バカ!」
「へへへぇ、泣き止んだ」

いつのまにか目にたまっていた涙は美貴の言葉で洗い流されていった。
目にある事がまだ理解しがたかったのだ。
111 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 17:42

「ねぇ、ごめん……本当はあんな事思ってないよ?
あんたがあたしの事突き放すような言い方するから……なんか…」

歩道橋の下、泣き止んだ亜弥は美貴にうったえかける。
フットサルの競技場で起こった事を美貴が気にしているのではないかと
亜弥は思った。

「あー……なんか美貴がさぐり入れたら亜弥ちゃん本気で返してくるから」
つっけんどんな返事を返す美貴に、亜弥はムッとした。

「だってさ、亜弥ちゃん吉澤って人妙にかばうからむかついた」
「は…?」
「嫉妬だよ嫉妬。ごめんねガキだから美貴」
首にかけていたタオルで、亜弥の髪の毛を優しくふいた。
怒っているような顔の裏には照れ隠しの動作が混ざっていたのだ。

「よっすぃーは……さ…」
「?」

「もう、あたしの事必要としてないなぁって思ったから。
ずっとよっすぃーと一緒にいても、付き合ってる間……好きでいられる
自信、ないから……さ」

亜弥の髪からタオルを離し、美貴は頭を撫でた。
112 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 17:51

「何か、あった?あの人と」

「……ん、いろいろあるの。でももう大丈夫だから、ね?」

石段に座った亜弥と、立っている美貴との角度から亜弥が美貴を見ると
上目遣いに見えてしまう。

「ふーん……もう、その人の事いいの?」
「何変な事いってんの?いいんだよ……今は好きな人いるから」
「っ!??」
驚きをかくしきれないように美貴は亜弥から目をそらした。

「キョドりすぎだからー、これでも正直に言ったつもりだよ?」
「……どぉも、やっと告白してOKもらったような気がするけど」
「あーっ、またそうやってふてくされる…あ、そうだ」
「何?」

ぐわんっと思いっきり美貴の手首を引っ張り、美貴を視点を合わせた。
113 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 18:02

「いった、何急に?」

「信じてないでしょ?好きって言ったのに」

「そんな事……」

「それじゃ、証拠見せるよ……?」
「は……」

シャーーーーー……………………………

雨の音が一瞬にして引いた。その模様は、2人には全く気付かなかった。

「あの時と、違うキスだもん」
「……何が違うの?」
「だからぁ……想いが一緒になったキスでしょ?」
「ああ、そっか……あん時と違う…か」
「もう一回、する?」
「……今度は美貴からでいいね、その気にさせた亜弥ちゃんが悪いよ」
「なにが……んっ…」

片思いと両思い、どっちが充実した恋愛になるか。
亜弥の答えはたった今分かった。
114 名前:虹を結んで 投稿日:2004/06/24(木) 18:10

「晴れちゃったね、つまんないの」
「あれ、亜弥ちゃん雨嫌いじゃなかった?」

歩道橋の下から一歩出ると、外は快晴になっていた。
先程の豪雨はなんだったのか、というような晴れだった。

「んーん、好きになった」
「何でさ?」
「……みきたんの事好きになったから、かな?」
「意味わかんないや」
「鈍感だなぁ……」
「いいからさ、ほら」

亜弥をおいてさっさと前に進む美貴は、亜弥の手を強く握った。
そして亜弥も、強く握り返した。

「あ、虹だ」
「ホントだ!!スゴー!」

キラキラ輝く虹色の7本の線が、いつもと違う風に2人には見えた。
強く手を握り、愛し合える存在。お互いの気持ちが通じ合った気持ちの良い
夕方となった。
115 名前:ベイム 投稿日:2004/06/24(木) 18:12
遂にあやみき接近となりました。
あやみき……あやみき……あやみき……ズボーッという展開
もあり得なくもない?
116 名前:ベイム 投稿日:2004/06/25(金) 19:05
すいません、レス返しが遅れてしまいました。
105、ぶんぶんさん=レス遅れて申し訳ないです。あやみきはどうなるのか
自分でも不思議です……
117 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/25(金) 19:12

あいつ、何なんだよあの眼。

すげえ人を見下したような、濃い眼をしてあたしを見た。

ふざけんなよ、ふざけんなよ。

会った事ある。どこかで一度会った事が。

……違う。いや、違うのか?…あいつだ。

アタシを陥れた、アイツの眼。今、たった今思い出した。
118 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/25(金) 19:16
あいつは覚えちゃいないだろう。
あの時、あいつが余計な事をしなければあたしはこんな事にならなかったのに。

信じるものも、掴むものも、全部無くなった。


名前も知らない、あの目つき。


あたしを焼きつくした。あいつの全てで全部あたしは消えた。
119 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/25(金) 21:10

ズブ濡れで吉澤は家の近くまで帰ると、門前に誰かがいた。
薄暗くて、遠くからはよく見えないが会った事のある顔だった。

「…吉澤さん、だよね。覚えてるかな?」

チラリと薄いブルーの傘をさしたその人は、真希だった。

なぜ真希が自分の家を知っているのか、吉澤はいぶかしげに真希を見る。

「後藤、さん?何であたしの家知ってる……」
「勝手に来て迷惑だった?まっつーに色々聞いてさ。ごめん」

肩からサラリと真希の長めの髪が流れるのを、吉澤は何故か見のがさなかった。
ただ、髪を触るしぐさがどうしてか可憐に見えた。

「いいよ。で、あたしに何か用?」
特に用がなさそうに見えた真希にありきたりな言葉をかける。
それに真希は軽く息をつき、こう言った。
120 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/25(金) 21:25

「……高橋愛、知ってるよね?」


パァァァンンンッッッッ−−−−−−−

道路の端から、高いクラクションが鳴った。


「ねぇ、答えてよ……」

吉澤の心に、あの声がこだまする。

『逃げ込む道はただ1つ、お前も道連れだ』


「違うんだっ……あれはあたしがやったんじゃないっ……」
「あの子どうなったか分る……?あなたに裏切られた後っ…」

聞きたくない。耳を塞ごうとも、けたたましく声は響く。
それと同じように、雨は激しかった。

「……高橋は…もう還ってこない…あんたのせいで…どれだけの人が
苦しんでるか分る!??……お願いだから誰にも関わらないで!!
まっつーも同じ目にあわせるなんて許さないから!!!」

普段はクール、亜弥以外に素を見せる事はなかった真希。

亜弥の親友として、吉澤を許せなくなった自分がいたのだ。
121 名前:ベイム 投稿日:2004/06/25(金) 21:27
よしごま、なりつつあります。
まだまだストーリー展開が遅くて話が見えないですね……
見づらくありますが読んで頂ければ幸いです。
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/26(土) 15:01
おもんない
123 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/26(土) 16:46
二人にどんな過去があるんだ・・・?
よしごま気になります。
124 名前:ベイム 投稿日:2004/06/27(日) 19:50
>122、名無飼育さん=おもんない…おもろないという事ですよね?
            駄文すぎですね、ごめんなさい(汗

>123、名無飼育さん=2人の過去はこれから御覧下さい。
            どんどん気になっちゃって下さいっー
125 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/27(日) 20:00

「違うんだっぁ……愛をっ…愛をやったのはあたしだけじゃない!!
元々あんな事するつもりじゃなかったんだ!!只あいつらに……」

「今さら何言い訳するつもり……?あなたのやった事は犯罪なんだよ!??」

−−犯罪。 分っている。 償わなければならないのは分っている。
      
「……警察には言わない。でも、これだけは止めて」

真希の瞳にはうっすらと涙があった。
取り乱したせいだろう、呼吸も荒かった。



126 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/27(日) 20:10

「っ……まっつーと、2度と会わないで」

吉澤は歯を強く食いしばった。自分で自分の舌を噛まないように。

「まっつーは、全部あんたのしたこと知ってる」

「知ってる……?何でっ……何で亜弥ちゃんが知って…!?」
「あたしが教えた」

今日の約束場所に亜弥が来なかった事。
メールや電話が1本もなかった事。

「まっつーに触れないで。あの子にあなたは必要ない」



127 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/27(日) 20:22

−−−神様、あたしは死ぬべきですか?


全部、無くなったよ。  手に入ったのは、金だけだった。

友達も、愛した人も、何もかも。 消えてしまったんだ。


    『そいういう卑怯な事、やめた方がいいんだよ』

−−−うるさいっ!!お前に何が分るんだ……

    『……あんたの勝手だけどさ、いつか全部消えるよ』

−−−何がだよ!?

   
    『ぜ、ん、ぶ。全部、あんたの前からいなくなるから』


そうだったんだ、結局。 藤本美貴、あいつが言った。
128 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/27(日) 20:44


「先輩!!吉澤先輩!!」

学校の廊下で、女の子が吉澤の事を呼んでいる。
彼女の名は、高橋愛。

「お、愛じゃん。どーした?」
「ごめんなさい、試験近いんで今日部活出られそうになくて……」
「ああ、分ったよ。あたしも勉強しなきゃいけないんだけどねぇ〜」
「先輩すっごい頭いいんですよね?うらやましいですよぉ!!」

人懐っこい性格で、誰とでも仲良くなれる吉澤の可愛い後輩だった。
中学の時、フットサルの試合を見て以来夢中になったのだ。
廊下で会えばしっかりと挨拶をし、とっつきにくいタイプとは決して言えない。

「先輩、ちょっといいですか?」
「ん?何?」
「ここの公式がわかんないんですけど……」

愛の勉強を教える事も何度かあった。
その事について吉澤は迷惑と感じる事もなく、試験前には熱心に勉強を
教えていた。
愛の人懐っこさゆえ、度々他の先輩から嫌味を言われる事も少なくなかった。


129 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/27(日) 20:55

愛が気にしないよう、極力吉澤は気を遣っていた。
しかし愛は陰口にも屈する事なく絶えず笑顔だった。
その様子に吉澤も安心して、先輩と後輩の関係を築いていたのだった。

ある日、吉澤は同じクラスの女子3人と放課後残って雑談をしていた途中、
愛の話になった。

『あの子態度でかくない?ウザいんだけど』
『だよねー、あたしもそう思った!!』
「そ、そーかな……」
『いっぺんシめてやろっか?そうすれば先輩の怖さっての分るでしょ』
『あ、それいい!』
「別にあの子じゃなくても他の子いるじゃん!!やめようよ!!』
『何でよ、そんな気にする事ないじゃん。ひとみおかしいよ?』
「おかしくなんか……」

『大丈夫だって、1人が先公に見つかってもあたしらが助けるから』


なんて事したんだろう。
130 名前:ベイム 投稿日:2004/06/27(日) 20:55
ふぅ……高橋さんがめちゃめちゃです。
更新終ります。
131 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 22:26
自分だけの疎外感を味わいたくはない。
吉澤はそう思っていた。
『仲間』という輪を失えば、きっと自らが壊れると感じていたのだ。

『それじゃ、ひとみがあの子呼んできてよ』
「な、なんであたしが……」
『よく喋ってるじゃん。やってくれるよね?』

ググッと、吉澤の肩に友人の手が食い込む。


「わ、分った……放課後、体育館裏に呼べばいいんだね……?」

『そっ、ついでに金でも巻き上げちゃう?』
『ハハハッ、それいい!!』

じくじくと、心が傷んだ。
また同じ事をして、また同じ痛みを味わうのに。

132 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 22:33

「せんぱぁい、用って何ですか?」

「あ……ちょっと、来てくれるかな……」

無垢な瞳で吉澤をいつもの笑顔で伺う。
純粋すぎる眼を今から穢してしまって良い訳ないと吉澤は十分に分っている。
けど、1人になりたくなかった。
逆らえば1人になる。重圧に負けてしまっている。
素直に吉澤にちょこちょことついてくる高橋は知るよしもない。

「ちょ、ちょっと待ってて…」
「はい!」
裏庭まで来た吉澤は、木陰に隠れていた女子を呼ぼうと高橋を待たせた。

あと何分だろうか、その瞳が消えるのは。
133 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 22:41

「…………先輩?どうしたんで……キャァッ!!!」
『あー、うざってぇ。何純情ぶっちゃってるわけ?』
『見てるとむっかつくんだよ、消えて?」


     愛、ごめん。 愛の知ってるあたしは、違うんだ。

  1人じゃ何もできなくて、下等な人間なんだ。
      

「せっ……ん……何でぇっ……こんな…」

 やめて。 もう、言葉にしないで。 



  
134 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 22:51
その時だった。

体育館裏に近い道路に続く道から、偶然その現場を目撃したある人がいた。

泣き崩れて誰かが座り込むその回りを、4人の女子が囲んでいる。

「………何やってんだ?」

きょろきょろと辺りを見渡し誰もいない事を確認すると一気にフェンスを
乗り越えた。

「…イジメってやつかい…美貴関わりたくないなぁ……」

木の葉がゆらいだ。
135 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 23:01
着地した時に地面の葉を踏んでしまったらしく、ガサッと大きめの
音がしてしまった。

『誰だっ!?』

「美貴だ」

美貴は軽く手をはらうと、だるそうに4人に近寄る。

『何だあんた!!ここの関係者じゃ……』
「一応卒業生なんだけど」
『どうでもいいよ、ここから消えてくんない?』

吉澤は美貴と他の女子のやりとりをただ呆然と見ていた。
見つめていたその先には、あの目つき。

鋭い美貴の目に、ある意味釘付けになっていた。

凍ったように冷たく、怒りとは違う恐れを感じさせる眼。

「……女が女泣かすってタチ悪いよね、怖っ。ってか、そこのあんた
も何か喋るとかないの?ずっと黙ってるけど」

淡々と喋り続ける美貴の目を見るあまり、吉澤は我を忘れていた。
136 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 23:18

「いい?君ら美貴の言う事聞いた方がためになるかもよ?」
『はぁ?何偉そうに……』

「そういう卑怯な事、やめたほうがいいんだよ」

「うるさい!!お前に何が分るんだ……」

怒りが込み上げて、徒然なるままに言葉を発した吉澤。
こころが見すかされている。そう感じたから。

「……あんたの勝手だけどさ、いつか全部消えるよ」

「何がだよ!?」



「ぜ、ん、ぶ。全部、あんたの前からいなくなるから」

137 名前:雲に紛れた愛 投稿日:2004/06/28(月) 23:23

それからは、全く覚えてない。

愛が、どうなったのか。 あたし自信がなくなったのだけは分ったけど。


1つだけ大事な人をなくした、悲しさが残ったんだ。


でもまた見つけた。もう、あんな過ちは起こさない、起こせない。

本気で、愛してた。今でも愛してる。


だから、取られたくない。  あいつだけには。
138 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/28(月) 23:33

「真希ぃ〜、調理実習一緒の班だぁ!!」

亜弥と真希の通う高校では、1ヶ月に一度家庭科授業の一貫として
調理実習がある。
今月の課題は、家庭料理である。
もっぱら家で料理をする事などない亜弥にとってこの時間はとても
苦痛だ。
一方、1人暮らしをしている真希はとても料理が上手い。
この差は月とスッポンという所か。

「ゲ、まっつーと同じじゃん。作れんの?」
「作れないから困ってるんじゃん……」

2人が話している間に、家庭科の先生がこの授業の目的を長々を話している。


『料理という物は、大切な人に食べてもらえばこそ嬉しいのです。
一生懸命、愛情をこめてみなさんそれぞれ調理を開始して下さい』

「大切な人ねぇ………作ったら誰にあげるよまっつー?」
「ん?へへへ〜、内緒!」

ニコニコする亜弥に、真希は怪し気な視線を送った。
139 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/28(月) 23:39

「あーもう!!何で上手く巻けないの!??」

「ア−ぶきっちょだなまっつー、どれ、貸して」

「ダメ!あたしがやらなきゃ意味ないんだもん!!」

卵焼きが上手く巻けずに苦戦している途中、真希がすかさず言葉を
入れた。
「あ、そうそう、そうやって……うまいじゃん」
「できたぁ!!味見する?」
「結構です。上手くできても味はどうかと思うけど……」
「そんな事ないもん!みきたんならおいしいって言ってくれるもん!!」
「みきた………ん?」

思わず呼び慣れている名を使ってしまった。
真希は首をかしげてよくわからないような顔をしている。

「な、なんでもない!さ、次おにぎりだよ!!」
「あー、そだね」

亜弥が美貴のために作っているとは、亜弥以外知らないのだった。
140 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/28(月) 23:43

キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカンコーン……

「やったぁ!!できたぁ!!」
「なんとか終った……で、あたしこれどうしよっかな。あげる人
特にいないし」
「え、ママとパパにあげないの?」
「実家まで持ってくのめんどい。適当な人………」

真希の頭には、何故か吉澤が浮かんだ。
適当な人。=吉澤。

「……あの人、嫌いだけど……」
「何ブツブツ言ってんの真希?」
「や、なんでもない。早く教室もどろっか」

足早に調理室を後にした。
141 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/28(月) 23:48

「真希バイバイ!!あたし今日部活出れないっていうか出ないから!!」
「は?……あ、もう行っちゃったか。張り切ってるなぁー…」

ホームルームが終るやいなや、教室を猛スピードで出た亜弥。
どこに向かうかというと、場所はただ1つ。

「はぁっ……はあっ……どこにいんのっ…?」

いつも美貴が座っている河原の草原には誰もいない。

「スゥ……みーきたぁーーっ…んぐっ!!」
「いー加減にしてね亜弥ちゃん」

背後から口を押さえられた亜弥。口を抑えているのはもちろん美貴。
よほどみきたんと言われるのが嫌らしい。
142 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/28(月) 23:56
美貴を見つけた亜弥は、おもわず顔が綻んだ。
それに美貴は動じる事もなく、指定席となった河原に座った。

「で、何か用?」
「あのねっ、あのねっ、今日学校である物作ったんだ!!」
「へぇ、そうなんだ」

眠い目を擦りながら、美貴は興味なさげに答えた。

「またそうやって冷たくする!」
「あーハイハイ、何したの?」

ニコニコしながら亜弥はカバンから弁当箱を取り出した。
中には、今日つくったおにぎりと卵焼き。

「ジャーン!!何だと思う?」
「何ぃ…って、弁当箱でも作ったの?」
「ちっがうよ!!おにぎりと卵焼き作ったの!!」
「へぇ、そうなんだ」
「………」

この前はすごく優しかった美貴が、ずいぶんと自分に対する態度が
変わったような気がする。亜弥は思った。
143 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 00:04

「んー……お腹空いたなぁ、それちょうだい」
「え?ちょ……あ!!ばか!!」

腹が空いたと唐突に美貴は亜弥の持っていた弁当箱からおにぎりを1つ
取り、ぱくっと一口食べた。
こんな筈では。心底悔しかった亜弥は美貴の食べる姿をじっと見た。

「おいし……?」

「んー、普通。おいしいつうかなんつうか……わかんない」

一筋縄ではいかない様だ。感じるままに、本能のままに動く美貴の脳裏を
亜弥はまだ分らなかった。
『おいしい』と言われたくて頑張ったかいがなくなったような気がしたのだ。

「何でそんなテンション下がるの」
「だって……みきたん不味いって……」
「不味いなんて言ってないじゃん。普通って言ったのに」
「おいしいって言ってくれると思ったのに…」
「あーもう、じゃあこっち食べるよ」

おにぎりを持っていない片方の手で、ひょいっと卵焼きを口のなかに
放り込んだ美貴。
亜弥はふてくされた様に美貴の動く口を見た。
144 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 00:14

「……まあまあじゃないの……」
「へ?」

今日初めて美貴が亜弥の目を見た。笑いはしなかったが。

「おいしーんじゃない?うん、おいしい」
「ほんと……?ホント!?おいし!?やったぁ!!」

亜弥の嬉しそうな笑顔を見て、美貴も不思議そうに笑った。

「これ、美貴の為に作ってくれたんでしょ?頑張ったねぇ」
「そぉだよ、作ってあげたんだよ!」
「ははっ、じゃあ毎日作ってよ」
「ふぇ…?」

亜弥を横からぎゅっと抱きしめた。
思いもかけない美貴の行動に亜弥は耳が熱くなる。

145 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 00:21

「まあまあの味だったから、また作ってね。いつでもいいから」
「ふぇっ?でも毎日って………」
「今考えたら亜弥ちゃんレパートリー少なそうだからさぁ」
「酷いみきたん!!」

ぽすぽすと亜弥の頭を撫でると、そっと頬に唇を寄せた。

「こっちの方がおいしいか、亜弥ちゃんの料理より」
「は………何さいきなり……」
「キス、ごちそうさまでしたっ」
「何がっ!!ちょ、ちょっと待ってよみきたん!先行かないでよ!」
「さーお腹一杯になったし帰ろう」

勝手気侭な美貴にふりまわされる亜弥は、真っ赤な顔で美貴の後を
追った。
146 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/29(火) 13:16
すっごく面白いです。がんばってください
更新お疲れさまでした。
147 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 21:18

「あふぁ……眠……」

すたすたと亜弥の前を歩く美貴は、亜弥のペースに合わせるなどおかまい
なし。欠伸をしながら会話もなく、手も繋ぐ事もない。
元々美貴がそっけないのは知っているが、恋人となった今でも冷たくされるのは
亜弥には厳しいものだった。

「美貴さぁ、亜弥ちゃんの事マジで好きだよ」
「うん……ふぇ!?」

踵を返し、美貴は亜弥の方を向いて後ろ向きに歩き出した。
唐突な質問を亜弥に投げかけると、意地悪そうに美貴は笑った。

「ななな何急に!??」
「いや別に、言いたくなっただけ」
「だからって何で今……」
「あ、言わなくてよかった?だったら訂正するけど」
「いい!!訂正なんてしないで!!」

やや大きめの声で言ってしまった。美貴も亜弥の行動に驚き、足を止めた。
148 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 21:29


「……みきたんおかしいよ……」
「え?面白いって?」

「違う!!あたしに冷たくしたり、そうやってあったかくしたり……
あたし意味わかんないもん……」


まるで、天気のようにコロコロと変わる。

昨日好きだった事が、今日は嫌いになる。

いつか美貴もそうなるのではないかと亜弥は不安でたまらなかった。

 
149 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/06/29(火) 21:40

「あーもうめんどっちいなぁ。泣かないでよぉ………」

「だってぇ……」

美貴はトレーナーの裾でごしごしと亜弥の涙を拭き取った。
人の涙を見るのがめっぽう弱い美貴は亜弥の反応にただ戸惑うばかりだった。

「美貴自己中だからさぁ……何、その…タイミングとか知らないんだ」
「………」
「本能のままに動きたいのさ美貴は、分る?」
「……っ…わかん……ないっ…」

ポリポリと美貴は頬をかく。泣き止まない亜弥をどうすれば良いのか
迷っているのだ。

「……よし、決めた。亜弥ちゃんおいで」
「ふぇっ…?」
「おーいで、ギュッてしてあげるんだってば」

手招きをして、美貴はおいでと亜弥を促す。
150 名前:ベイム 投稿日:2004/06/29(火) 21:42
>146、名無飼育さん=おもしろいですか?ありがとうございます!
            その言葉が励みになります!!
 

151 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 09:51
あやみきいい最高です!けどよっすぃーにも幸せになって欲しい…
ますます目が離せないですね。本当に面白いです!!
更新お疲れさまでした。
152 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/07/01(木) 20:51
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら亜弥は美貴の胸に納まった。
やれやれと言った感じで美貴はそれを受け止める。

「うわぁっん……」
「ふー、泣き止んでよ……」

子供のように美貴の肩に顔を埋めて亜弥は泣きじゃくった。
無神経な美貴としては、亜弥を泣き止ませる方法が抱き締める他無かった。

「亜弥ちゃんといると楽しいから。ぜんっぜん飽きるとか無いから」
「ほ……んと?」
「A型は嘘つかないよ」

くしゃっと亜弥の前髪をかきあげ、額にそっとキスをした。
亜弥は美貴の意外な行動に驚き、ビクッと肩が揺れた。

153 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/07/01(木) 21:21

「別に……亜弥ちゃんが嫌いだからつっけんどんしてる訳じゃなくて。
単に気分が乗らない時があるだけなんだよ。そ−ゆー時、そっとしておいて
欲しいわけよ美貴」

「う……ん…」

「むー……まだ泣くかい…。家まで送るから、手つなご」

「うあぁ!」

ぶっきらぼうに亜弥の手を引いた美貴。
乱暴な美貴の態度に少し戸惑った亜弥だが、もう美貴のなすがまま。
154 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/07/01(木) 21:40

「いーよぉ!自分で帰れるよぉ……」
「あーうるさいうるさい。言う事聞きなさい」

亜弥は自分の手がじんわりと汗ばんできたのを感じ、美貴から手を
ふりはらおうとしたが美貴の力の方が強かった。

「ここか。じゃ、さいなら」

亜弥を家の門前まで送ると、さっさと後を向き帰ろうとする。
その背中を亜弥は、見送る事が出来なかった。

「たんっ……待って!!」

思わず声に出してしまった。出さずにいられなかったのだ。


155 名前:手作りの愛情 投稿日:2004/07/02(金) 18:52

「はぁ、何?」

めんどくさそうな様子で美貴は雑に振り返った。
亜弥は通学カバンから一枚の紙を取り出し、美貴の胸に押し付ける。

「……何さこれ」
「学園祭……明後日の土曜日やるの」
「うん、で、何?」
「だから!みきたんこれに来てくれるかなぁって……」

『んー』と美貴は唸り、こう言った。


「暇だったら、行くよ」


丁寧に紙をたたみ、ポケットに突っ込んだ。
そしてまた歩き出す美貴は携帯を取り出しメールか何かをしながら
家に帰るのだった。


「暇だったら……あたしの事愛してんなら暇じゃなくてもこい!!ばかぁ!」


波乱万丈である。
156 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 19:38

「おはよ、真希………」

ボスンと机にカバンを置いた亜弥は、真希に抱きついた。
朝の読書中に後から首を絞められちゃたまらない。

「おはよ。てか離れて」
「うぅ……」
「珍しくテンション低いんだね。あ、そうだ、弁当どうなった?」
「うっ!」

美貴に手作り弁当を渡した昨日を亜弥は思い出してしまった。
料理を褒められたまでは良いが、学園祭に誘った事で亜弥はまたテンション
が落ちている。

「……まあそれはいいの。真希結局誰にあげたの?」
「あー…吉澤さん」
「へ〜よっすぃー……え!?」
亜弥は手元にあった教科書何冊かをドサドサッと床に散らばした。
不意に吉澤の話をふられ、挙動不審となる。
157 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 19:42

「ななななな何で!?どうして!?どうやって!?」
「……別に、何か可哀想だよなぁって思ったから」
「か……可哀想?」

「うん。実はさ…あたし言っちゃったんだ。直接」
「何…を…?」

吉澤の警察沙汰。亜弥が愛していた、吉澤の事は忘れられない。

「まっつーと、金輪際付き合わないでって」
「……真希…」
「嫌なんだよ。まっつー巻き込みたくない」

読み途中だった本を枝折もせずに真希はパタンと閉じた。
158 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 19:45

「あの人…確かに最低だよ。でも、それ以上に可哀想な人」
「……うん…」
「自分を許せてないから、また同じ事繰り返しちゃうんだ」

「だから、あたし放っておけなかったんじゃないかな……」
「お弁当渡した事…?」
「うん。帰りに偶然会って。あげる気はあんま無かったんだけどね」
「真希は…優しいね」
「は?」

教科書を拾い、亜弥はぽつりと言った。
159 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 19:50
「あたしが真希だったら、絶対そういう事出来ないもん」
「そんな事…」

「ううん、あたしは…よっすぃーの事、多分愛してなかったよ。
今、考えてみたらそうかもしんないって思う。
警察の事聞いた途端……さ、何か…パッてこれまでの関係捨てたくなった」

「もう……いいんだ?」

「うん。愛せる自信ないからっ…。アハハ、あたし…結構最低な事言ったよね…」

「……そーか…じゃ、今の恋、がんばんな」

「うん!…?」

薄々感付いていたのかもしれない。亜弥と美貴の関係を。
160 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:04

「亜弥ー、こっち持って!」
「分った!今行く!」

亜弥の学校は女子高で、まあまあの成績を残している優秀校である。
サッカーやフットサルなど球技の名門を売りにして毎年多くの女子が入学
する。
当然学園祭は女子だけでやるが、出し物は各部で出す事になっている。
今年のフットサル部では、有料のPK戦を行う事になった。
めちゃめちゃ強いフットサル部にPKで勝つと豪華商品がもらえるというなんとも
高校生がやるものではないが。

「しっかし面倒臭い事になって……これであたしらが負けたらメンツ丸つぶれ
だっつの」
「まあまあお金もうかったら顧問だって奢るって言ってたし」
「中澤先生が!?あのケチな!?どうせファミレスか何かでしょ…」
亜弥がベニヤ板に釘を打ちながらぶつくさと言ったその時。

「誰がケチやて?松浦」

ゴゴゴゴ……と亜弥の背後から炎が燃え上がる。
161 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:10

「おぉう、お局顧問の登場じゃん」
「31歳の誕生日お祝いできなくてごめんねー」
「うるさいねん!そこに触れるな!」

「まあそんな事はどうでもええ。……松浦、お前この中澤大先生を
けなした罪は重いで……覚悟しいや」
「そんなぁ……許してせんせぇ?」
「かわいこぶっても通用せえへん。こっちきいや」
「ひどいティーチャー!いやぁだぁ!!」

部室のドアがバタリとしまった。

「あーあ、亜弥連行されちゃった。どうせ学園祭の準備亜弥にだけ
負担かけたんだろうね」

フットサル部の仲間がへらへら笑いながら亜弥と中澤を見送った。
162 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:19

「また職員室送りですか……飽きましたよせんせぇ…」
「飽きる飽きないの問題やないやろが!」
「もぉあたし早く部室戻って準備したいんですけど…」
「その準備以外にする事があるんや。それをお前に命じる」
「何ですか?」
「いやぁ大した事あらへん。宣伝総合部長になってもらうだけや」
「あーなんだそんな事…ってはぁ!??」

職員室中の先生が一気に亜弥に視線を向けた。コピー機の音が丁度
鳴り終った後の事だった。

宣伝総合部長とは、全ての部活動の出し物の管理責任をする重大な役目である。
学園祭を明日に控えていると言うのにまだ決定されていなかったと亜弥は
後々中澤に言われたそうな。
163 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:23

「うるっさいなぁ……せやから、忙しなるよ。飯食うてる暇も友達と
遊ぶ時間もあんまないで」
「だったら大した事あるじゃないですか!!冗談じゃないです!」
「これまでのツケが回ってきたんや。礼ぐらい言いや」
「ツケって…授業中に5回居眠りしただけでしょ!?」

「とぉにかく!!!顧問の命令は絶対!明日の朝一番早くきぃや!」

「そぉんなー!!」

164 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:32

「もぉ……あの三十路過ぎのおばさん!!みきたんと過ごす時間が
ぜんっっぜん無くなっちゃったじゃんか!!!」

「まっつー静かに。ここ図書室」
「はいぃ……だってだってだってぇ……」
「ねぇ、みきたんて誰?」
「えっ!ああ!藤本美貴って子!知ってるでしょ?」

またも本と宿題の課題を片手にペンを動かしている真希の顔を
覗き込んだ。

「……あ、あの目つき悪い人。前にまっつーといざこざしてた…」
「それは…まあ前の話しで」
「……付き合っちゃってるの?」
「うん!まあねぇ〜♪」
「前まですっごい嫌いみたいだったのに?」
「最初はさ…むかついたよ、そりゃあんな自己中だもん。
けどみきたんと喧嘩してしばらく会わなくなったら……すごいすごい
寂しくて。気付いたら好きになってたのさ!」

照れくさそうに亜弥は話した。
165 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:43

「良かったじゃん、ちゃんと好きな人が出来たなら」
「うんっ!」
「見た感じ性格がよさそうには見えないけど……?」
「まぁー……心開かないもん。気分屋だし。でもでもっ、すっごい
優しいの!!優しいけど…そういう事してくれるのごくタマになんだけどね……」
「あははっ、超クールなんだ」
「そうそう!でさでさぁこの間映画行こうかって誘われて!!
であたしすごい喜んでたのに、前夜になってドタキャンだよ!?
その理由ってのが『面倒くさくなった』だよ!?信じられる?
で、まだあるんだよ!みきたんったらさぁ……」

「ふははっ!!」

亜弥と美貴の話を聞いていた真希は、シャーペンを放って笑い出した。
166 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 20:56
「な、何真希……秀才の頭とうとう壊れちゃった!?」

「だってさぁ、まっつー。すっごい楽しそうなんだよ」
「ふぇ?」

「そのみきたんの話してる時まっつー、笑顔だもん」
「そ…そう…かな?」


「大好き、なんだね。みきたんって人の事」


亜弥は笑顔で首を縦にふり、真希に寄り掛かった。

「ありがと。ふっきれたのも、真希がいたからだよ」
「そらー…どういたしまして」
「でさ、まだ話残ってるから話すね。その後ね……」
「ハイハイ、聞きますよ」

真希は静かに亜弥の話しを聞いた。

当然、彼女の気持ちが落ち着くまで、ずっと。
167 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 21:06

「電話もまだこない…メールもまだこない……」

中澤とのいざこざ、真希との雑談を終え家路についた亜弥。
シャワーを浴びた後に携帯の着信を見た。

「ほったらかしだよ……また泣くぞぉ……?」

学園祭に誘った亜弥に美貴はこう言った。

『暇だったら、行くよ』

メールも電話もないと言う事は行かないという事なのであろうか。

「来てくれても……会えるかわかんないけどさ……」

亜弥が美貴に送ろうとしていたメールの文を一気に消去した。
内容は……

『明日、絶対来てね』

溜め息ばかりが亜弥を責める。
168 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 22:40

ヴヴヴヴッ−−

「何っ!?電話!?」

着信は、美貴だった。大急ぎで受話器ボタンを押す手がほんの少し震えた。

「もしもしっ!たん!?」
『うん。明日、学園祭だっけ?』
「そう!覚えてた!?」
『かろうじて。仕事ないから気が向いたら行く』
「気が向いたらって…来てよぉ……」
『あー泣くな泣くな。多分行くから。じゃね』

どうやら美貴には亜弥の寂しそうな声が効くらしい。
携帯から聞こえる声は明らかに寝起きだ。
言いたい事だけ言い終えると美貴は電話を切ろうとする。
169 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 22:58

「待って!切らないで!」
『何で……美貴眠い…」
「眠くてもダメ!もし切ったら…泣くもん!」

『…わかった。あと10分だけだよ…あーネム……』
「うん!」

それから10分、20分、1時間。美貴はおそらく眠い目を必死でこすり
ながら亜弥の話に付き合っていたのだろう。

『……へぇ、そう。ねぇぇ美貴もう寝ないと死ぬ……』
「あたしはみきたんの声聞いてるから眠くないもん!」
『んな……むちゃくちゃな。じゃーどうしたら寝てくれるの…』

亜弥は冗談、というか思い付きでふざけて言った。
170 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/02(金) 23:01

「みきたんが一緒にいてくれたら寝るよ」

今にも寝てしまいそうな美貴に、そっと携帯から言った。


『……プッ……ツーツーツー…」

「き……った…?みきたん?もしもし?切ったなぁ!!」

とうとう眠りについてしまったのだろうか。
171 名前:ベイム 投稿日:2004/07/02(金) 23:05
>151、名無飼育さん=レス返し遅れて申し訳ないです。
            よっすぃーは幸せになるのでしょうか……
            果たして!!?
172 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/03(土) 01:53
嗚呼、あやみき最高。
更新待ってます。
173 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 02:19
おもしろい裏には隠された過去が・・・
続き楽しみです。
174 名前:ベイム 投稿日:2004/07/03(土) 17:29
>172、名無読者さん=最高でしたか。それは良かったです!
            
>173、名無飼育さん=楽しみと言って頂き嬉しいです。
            頑張ります。
175 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 19:47


「明日……会えるかわかんないって言うのに!ばか!」

美貴に電話を一方的に切られた亜弥は怒りながらもベッドに潜り込み
眠った。
176 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 19:55

「松浦さんっ、バスケ部の塗装終ったからチェックして!」
「わかりましたぁっ!!」
「バレー部の出し物で変更あるから目通しておいて!!」
「はいっ!!!」

朝6時起きで学校に向かった亜弥は、学園祭当日の朝準備で大忙しだった。
各部の出し物の最終確認、パンフレット配布準備などなど宣伝総合部長はやる事が
山積みなのでイスに座る事さえままならない。
しかし、頭の中にはただ1つの事だけだった。

「みきたん……来るかな…」

自己中マイペース人間藤本美貴の事が気掛かりでしょうがない。
177 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 20:02

「松浦さんっ、自分の出し物チェック行ってらっしゃい!」
「あ、ハイ!」

他の最終準備を終えた亜弥は、フットサル部の部室へ走った。

「真希!ボール数足りてる!?」
「ん、オッケー。ラインも引いたし。てゆうかまっつー早く着替えなきゃ」
「あ!ユニフォームに着替えなきゃいけないんだっけ!?」
「そうだよ。各部のユニフォームでやらなきゃいけないんだよ」
「あーもう!トイレで着替えてくる!」
「行ってらっしゃーい」

陽気に亜弥に手をふった真希は欠伸をしてのろのろと教室に向かった。
178 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 20:08

教室にあるカバンからユニフォームを取り出し、廊下を突っ切って
トイレに駆け込んだ。
寝起きの時とは大違いの早さで制服を脱ぎ、雑に畳んだ。

「あと……一時間で始まる……!」

チャイムが学校中に響いた。
179 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 20:25

「フットサル部のPKで買ったら豪華商品プレゼント!」
「一回200円だよー!楽しいよー!!」

ガヤガヤとにぎわい始めた学園祭では各部の部長がボードを首に
かけて宣伝をしている。
その頃亜弥はバレー部、ソフトボール部、新体操部をハシゴし終えた所に
やっと自分の部活動宣伝に戻る所だった。

「亜弥と真希はここ座ってニコニコしてて!!」
「あんたら美形がここ座ってりゃ客がわんさか来るってもんよ!」

2つのパイプイスにどかんと座らされ、亜弥と真希は驚きながら顔を見合わせた。
180 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 20:34
「髪の毛結んでかわいく!」
「笑顔で!」
「通りすがった人にウインク!」

「「「いいね!??」」」

  「は…はぁ」 「逃げよっと」


効果は抜群だった。フットサル部のコーナーを通る人々はあちこちで
亜弥を見て奇声を上げている。
苦笑いで手をふる亜弥は、バスケ部のコーナーの片隅で立ちながら寝ている
誰かを見つけた。
181 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 20:38

「み……きたん…?みきたん!?」

レトロなジーパン、黒のトレーナーでB系の目つきが悪い奴といえば。
美貴しかいない。
携帯をいじくりながら欠伸をしてきょろきょろと亜弥を探しているようだ。

「すいませんちょっと抜けます!!」
「あっコラ!待てぇ金の成る木!!」
「中澤せんせーその言い方……」

心配していた事がすっきり晴れた亜弥だった。
182 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 21:07

「……ったん!」

「亜弥、ちゃん」

美貴の背中を拳でトンと突いた。美貴は思いもよらぬ亜弥の登場に
驚いたらしい。

「来てくれたんだ…偉い偉い!」
「だって来いって言ったのそっち。…やめろぉ!」
「うへへぇ…」
美貴の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でた亜弥は思わず笑顔が溢れる。
その光景を真希は唖然とした顔で見ていた。
183 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/03(土) 21:20

「今日さ…あたし御飯食べる時間ないぐらい忙しいらしくて…」
「ほぉー、学園祭って大掛かりだねずいぶんと」
「うん……けど…待っててくれる?」

ズバーンと、とどめの上目遣い。亜弥は日頃練習しているだけある。

「……そこで座って待ってるから、行っといで」
「待っててくれるの!?」
「でも遅かったら帰る。只でさえ眠いんだから」
「帰んないでよ!一緒に帰ろうってみきたんが言ってたんじゃん!」
「だってさぁ」

「亜弥ちゃんいないと、美貴つまんないもん」


184 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/04(日) 13:54

「つまんない……の?」
「うん。多分いないとつまんないと思う」
「みきたん…」
「亜弥ちゃん……」

2人がお互いを見つめあい、影が重なるまで後一歩の所……

「松浦さん!大至急パンフレット印刷して頂戴!」
「油売ってないで早く職員室行って!」
「えええ!??ちょちょ待って下さいぃ!」
「いいから早く!忙しくなってきたわよ!!」

美貴とのラブラブモード突入間近、学園祭担当教師に掴まってしまった。

「みきたぁぁん!待っててねぇぇ!!」
「あー……」

先生2人に担がれる亜弥を美貴は呆然と見送った。
185 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/04(日) 13:58

「あー、まっつー運ばれちゃったか」

眠そうに屈伸をして美貴に声をかけたのは真希。

「……誰だっけ?」
「後藤真希。まっつーの友達。ってゆーか会った事あるよね」
「あ、ごめん。ぜんっぜん覚えてなかった」
「アハハ、聞いた通りのマイペース人間だね。ここ、座りなよ」

真希は美貴フットサル部のテントに招き、イスに座るように促した。
そして真希もその隣に座り、こう切り出した。
186 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/04(日) 14:15

「……えっとさ、まっつーの新恋人さんだよね」
「あー、まあ。」
「じゃあ…吉澤ひとみって……知ってるよね…?」
「……亜弥ちゃんの…」
「そう。まっつーの元恋人。でも…正式に別れたわけじゃ…ないんだよね」
「…やっぱそうだったんだ」

美貴は真希にもらった缶ジュースのタブを手で弄んでいる。

「…言ってなかった?まっつー…」

美貴は黙ってコクリと頷いた。


「まっつー、いつもあなたの事話してる」
「へー」
「大好きなんだって、聞いてて分るよ」
「……」

「大事にしてよ。あなたが本気なら……ね?」

187 名前:ベイム 投稿日:2004/07/04(日) 14:16
長々とひっぱってごめんなさい。
タイトル焦ってしまいました…………。
まあドンマイと言う事でこのままにしておきます。
188 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/04(日) 18:27
>>184
最高っす。もう少しだったのに…
189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/04(日) 19:29
ごっちんいい奴だ…
そして作者さんの書くあやみきは最高ですね!
もちろん作者さんのペースでがんばってくださいね。
更新お疲れさまでした。
190 名前:ベイム 投稿日:2004/07/04(日) 20:12


風板の方にもスレ立てました。気が向いたら見てやってくださいまし。
191 名前:ベイム 投稿日:2004/07/05(月) 22:30
>188、名無し読者さん=もう少しだったのに!書いてて自分も
             思いました……!

>189、名無飼育さん=最高だなんて…私に使う言葉じゃないんで。
            更新ペース早いので、見て頂いて嬉しいです。
192 名前:好きだよ 投稿日:2004/07/07(水) 18:59

「分ってる、よ」

「そんなら、いいよ」

たわいもない会話だったが美貴と亜弥の誓いになった。
真希は照れくさそうに誤魔化している美貴を見て微笑む。

「ライバル多いよ」
「うん」
「そのうち浮気するかも」
「うん」
「それでも、あなたは抱きしめられる?」

美貴は真希の瞳を優しく見つめ、こう言った。


「余裕。亜弥ちゃんは、美貴のだから」

193 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 19:12

汗をかいた缶ジュースが、手のひらを冷やす。

握りしめる力は焦りと憎しみから込み上げてくる。

  

『まっつーに触れないで。あの子にあなたは必要ない』


必要とされていない。なんて、もう痛いくらい知ってるから。

それでもまだ、愛しく想えてしまう。必要なんだ、彼女が。

「……っ…ざけんな…」


藤本美貴。 やめろ。  あの子はあいつの物なのか。
194 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 19:22

「美貴でいいよ」
「は?」
「いや、あなたとかよそよそしいの苦手だからさ」
「あ、そう。じゃああたしは真希で」
「ん」
「……吉澤…さん…?」
「へ?」
「ごめん、ちょっと待ってて」

テントから駆け出した真希は、校舎側へ向かった。
美貴はそれ程気にする事もなく、バレー部の出し物をまじまじと見つめる
のだった。

「吉澤さん?」

水道の蛇口を軽く捻ったその人は、吉澤だった。
ギンとした目で真希を見ると、濡れた口をジャージの袖で拭った。

「…どうしたの…?」

「……べつに…」
「まだ諦めてないんだ」
「違う!」
「違くない。さわんないでって言ったでしょ」

弁当をあげた事、ほんのすこし吉澤が気になった真希も亜弥の事になると
我を忘れたかのように目が鋭くなる。
195 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 19:31

「あの子は、もう振り向かないよ」
「知ってるっ……」
「一生あなたの名を呼ぶ事もない」

美貴が微かに真希と吉澤のやりとりを伺った。
怪訝な目つきでじっと見ている。
もちろん遠くからなのでやりとりは聞こえていない筈だ。


「知ってるから……知ってるから…諦められないんだ…。
あいつにっ…あいつにだけは渡したくないから!!」

『あなたが好きです』

初めてだったから。
196 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 20:43

『あの、付き合ってください』
『ハ…?』

亜弥が更衣室でシューズを脱いでいる所、突然の告白だった。
試合終了後の更衣室の中には亜弥と吉澤の2人きり。

『付き合ってって……アタシ?』
『うん、そう。なんか、好きになっちゃった』
『あ…そーですか……』

『そういう事で、付き合おう』

亜弥は断れなかった。これといった理由は無かったが、吉澤は本気という
事だけは分った。

大好きなんだ。伝えなきゃいけないから、諦めない。絶対に。
197 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 20:51

「ねぇ…聞いてるの?」
「っ…」

我にかえった。あの更衣室での出来事を濃く想い出していたのだ。


「一度、一度でいい。亜弥ちゃんに会わせてくれないか」
「何言って……」
「本気だよ。会いたいんだ、彼女に…」
「あなたとまっつーが会っても何も変わらない」

変わらないんだ。でも、変えたいんだ。好きなんだ。

「愛ちゃんにした事、彼女にもする気?」

痛い。

「……そんなに…まだ好きなの…?」

静かに首を縦にふった。

198 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 20:58

「っ…あの子以外…好きになれないから…」

尽きるように言い放った吉澤に、真希は鼻をすすった。


−−−−ッカン

「お、ナイッシュ−」

おそらく飲み終えた缶ジュ−スをゴミ箱に投げ入れた。
その音に反応した吉澤と真希は声の主を探す。


「吉澤さん、だっけ。亜弥ちゃんの……」
「呼ぶな!!」

突然大声を上げた吉澤に美貴は至って動じず、校舎の窓を見上げた。
199 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/07(水) 21:06

窓からひょこっと顔を出した、誰かが。

美貴に笑って手を振っている、誰かが。

愛しい、誰かが。

「みきたん、そこに誰かいるのぉ?」

亜弥の角度からでは、吉澤は見えなかった。
懐かしいその声に、耳が和らいだ。
美貴は少しだけ吉澤を見るとすぐ視点を亜弥に戻した。

「早く下降りてきな」
「あと10枚印刷しなきゃいけないの!!」
「駄目。早く来い」
「何で……?」
「いいから。大事な話あるらしい」
「……わかった。すぐいく!」

いつも以上にぶっきらぼうな美貴に亜弥は戸惑いながらも窓から
姿を消した。
200 名前:ベイム 投稿日:2004/07/07(水) 21:13
更新終ります。
ずいぶんと美貴が他人事なのですが気にせずに。
201 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/09(金) 00:50
修羅場ですね!ドキドキ…
202 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/09(金) 13:59
ですね…ドキドキ あぁゴメンなさい!!よっすぃーがんばれ!
203 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/10(土) 20:33

「……あんた…美貴の事すっげー嫌いでしょ」

亜弥が来るまでの間、俯き加減の吉澤ににじり寄り美貴は聞いた。
美貴よりも背が高い吉澤をに怯む事もなく眼光をきかせる。

「ああ、嫌いだね。ダイッキライだよ」

霞むように声を喉から出した吉澤の拳は震えている。

『嫌い』よりも『憎しみ』よりも、『悔しさ』が強い事を己も分っている。


その時、昇降口に3人は目を向けると、何かを見て立ちすくむ亜弥がいた。

呼吸をしているのかさえ、分らない。静かに視線を向けて俯き、唇を噛み締めている。


『好き』だった人。 『好き』な人。
204 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/10(土) 20:47

「亜弥ちゃ……」
「亜弥、こっち、おいで」

吉澤は亜弥の名を呼んだか呼んでいないかの間、美貴は吉澤を睨みつつ
『亜弥』と呼んだ。
美貴は走って亜弥の元に駆け寄り、三つ編みの亜弥の頭を撫でた。

「……こっち、おいで。色々、話す事あるから…」
「ん…ごめ…ん…みきたん…っ…」
「謝んな。だからおいで」

嫌だ。触るな。吉澤はその光景を見て唇を噛み締めた。

「……なんだ…よ……」

「よっすぃ……っ…あたし……あたしじゃダメだよぉっ……」
「何で……?あたしは亜弥ちゃんが良いんだよ!?」
「違う…の…最低だよっ…あたし……」
「なん…で?なんで…?」

言いたくない。悲しませるから、そして自分も悲しむから。

それでも言わなければ。お互いの幸せは、無い。

205 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/11(日) 17:42

美貴と真希は、その様子を言葉を入れる事なく見ていた。


「あたしっ……よっすぃの事っ…好きになれないよぉ……」


もう、彼女は行ってしまった。

遠い所へ、届かない。  


「……藤本、が…いるから…?」
「……っ」

「あいつと、あたし…何が違うってんだよ……」


206 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/11(日) 17:54

  「何も違くない。同じ、同じだよ。でも、まっつーは……」


「美貴がいいんだって。まっつーには、美貴しかないんだよ」


吉澤の言葉に真希が強く言った。

亜弥は後を振り返り、真希と美貴を潤む瞳で見る。


「そんなに……あいつがいいの?」
「…っ…うん…」
「そんなに良いヤツ…なの?」
「…うんっ…」

吉澤はぱたんと地面に落ちた。そして、ふんぎりがついた。


「………今まで、ありがとう。それと、……ごめんなさい」


深く、深く深呼吸。立ち上がり、吉澤は最後に美貴にこう言った。
207 名前:まだアイシテル 投稿日:2004/07/11(日) 18:01


「亜弥ちゃん悲しませたら……っぜってーあんたを殺すからな」


振り返らない。もういいから、次を行く。



「……フン、殺されてたまるかってーの」


美貴は吉澤の右肩を、軽く拳で殴った。
208 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 18:12


「よっすぃ……待って!」
「…?」


「ずっと…ずっと友達で、いてくれるっ!?」


『恋人』から、『友達』へ戻りたい。


「っ…へ…当たり前…だよ」


好きだった、人。ガラスが割れて刺さるよりも痛い経験だった。

それでも、吉澤にとって亜弥は想い人として残るのだった。
209 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 18:21


「っ………こぉらー!!何やっとんねん後藤と松浦ぁ!」


吉澤が校門を出た後、背後から中澤が大坂弁をきかせやってきた。
何故か美貴は中澤を見た途端、顔が強張った。

「どこで何をしてると思ったら……あ?お前……お前はぁー!!」

美貴は亜弥の後に何気なく隠れたが、あっさりと見破られる。
亜弥と真希は不思議そうに美貴を見た。


「藤本やないか!!ひっさしぶりやな〜、元気しとったか?」
「……別に元気も何もないっすよ…」
「つれないな〜相変わらず。どや、フットサル部の見てってや」


亜弥はわけが判らないような顔で美貴に聞いた。

210 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 18:27

「中澤先生と、知り合いなのみきたん?」

亜弥の質問に美貴は青ざめた顔で答える気にもなれなかった。
そこにすかさず中澤が入る。

「知り合い所か……ふっかーい関係やんなぁ藤本?」
「だぁぁもう!黙ってて下さい!」
「ええやん実際そうなんやから」

バツの悪い顔で美貴は中澤に腕をとられた。
亜弥は少しムッとした顔で、中澤と美貴を睨むしかなかった。

211 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 19:50

「元教え子と教師ぃ?」


中澤がこの学校に来る前、美貴の通っていた高校の体育教師が中澤だった。
フットサル部のテント下で、中澤の隣に無理矢理座らされた美貴はふてくされて
そっぽを向いている。

「せや。コイツものすごいワルやったんやで、見かけからそやけどな」
「……」
「暴力事件は起こすわ学校サボるわでな、担任だったウチの身にもなれっちゅうの」
「……」
「へー、そうだったんですか」
「で、藤本、何しにきたん?」
「……亜弥ちゃんに来いって言われたから来たんです」

コート場で消されたラインを引き直している亜弥をちらっと見ると
溜め息をつく美貴。

「何、デキとんの2人は?」
「まーそんな所ですね」
「真希余計な事言うな」

うんざりした様子で美貴は欠伸を1つした。
212 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 19:53

「……みきたん先生と何話してるんだろ…」

亜弥はラインを雑にひきながら、テント下を睨んだ。
美貴と中澤が仲むつまじく話している途中、彼女である亜弥が何故
ライン引きなどしているのだろう。と、亜弥は思っていた。
宣伝もほぼ終り、予定よりも空き時間が出来たというのに美貴と近付けないのは
寂しい事だった。

「……ばかたん……!」

近くにあったボールを、思いっきりゴールに蹴った。
213 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 19:59

「ちょっとちょっと、あの超美形な人誰よ?」
「何で先生と仲よさそうにしてるわけ!?」

ライン引きの途中、背後からフットサル部の先輩が亜弥をひっつかまえた。

「あ……アタシの恋人です…」
「何!?あの人が!?……チョ−かっこいいじゃん」
「いや、カワイイんじゃない?」
「それはそうと、松浦その人の所行かなくていいの?」
「や…いいです」
「何でよ、折角仕事終って雑用しか残って無いんだから行けばいいのに」
「コレ終ったら、行きますから」

客も最初より減ってしまい、ボール磨きかライン引きしかする事がなくなって
しまった今、美貴と一緒にいられる時間は今しかない。
214 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:05

「藤本、……賭けせえへんか?」
「は?何です?」
「フットサル部ではPK戦やっとんねん、もちろんキーパー有りやけど
……アンタが入れられたらウチが何でもしたる。逆にアンタが外したらお前が
ウチに何かをする。やらへんか?」
「…めんどいんですけど」
「いいじゃん美貴、やれば?」
「せや!ほな、決まり!コート入れ!」
「無理矢理な……」

美貴は言われるがまま、渋々コートに入って行った。
その後ろ姿を見て中澤はニヤリと笑った。

「先生、何か企んでます?」
「フッフッフ……ちっとなぁ……」

真希は中澤の目がドルマークに変わったのを察した。
215 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:13

「亜弥ちゃーん、ボール貸して」
「ふぇ?」
「や、ボール。貸して」

コートに入った美貴は、ラインを引き終えたばかりの亜弥にボールを
頼んだ。

「何か分かんないけど、PKっていうのやれって言われた」
「みきたんが!?何で!?」
「さぁ……美貴サッカーも十分にやった事あんま無いけど。賭けだって」
「何を……?」
「さぁ」

トレーナーを脱いで、Tシャツになると美貴は首を軽く回した。

「これ持ってて」
「う…ん」

脱いだトレーナーを亜弥に押し付け、テント下の中澤を呼んだ。
216 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:17

「何すればいいんですかー」

「ウォーミングアップの時間やるからボールに慣れろやー。松浦
教えたりー」

中澤の言葉を聞くと、美貴はくるりと亜弥を見た。

「だって。どうすんの?」
「ふぇ!?あたしが!?…アップだったら…みきたん、取りあえず
あそこの壁にボール蹴ってみて?」

しばらくボールを見つめると、思い立ったようにボールを位置につけた。
217 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:23

「フッフッフ、あいつは満足にサッカーやった事もあらへん。
うちの名キーパーを打ち勝つ可能性は限り無くゼロやな…」
「せんせー独り言ですか?」
「…そして賭けにかったウチは温泉旅行に…」
「聞いてないや…まぁ確かに、ののに素人さんはキツいですかね」

「当たり前や……全国大会出場校名キーパーの名にかけて、きっちり
ガードせえよ。ええな?のの!!」

「はい!なのれす!」

名キーパーとは、亜弥と真希の後輩である辻希美である。
公式戦試合では欠かせない、フットサル部の陰のエースだ。

218 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:27

「…それじゃ、みきたん。蹴ってみて?」
「うん」

2、3歩下がって、ボールに神経を集中した。
狙うは赤く印が塗られているコンクリ壁。

「蹴るか」

−−−−−−−−−−

「ま、ウォーミングアップやるだけ無駄やったかな〜♪」
「そうれすね」
「……それは甘いよ先生」
「何でや後藤?」


「奇跡起こしちゃうかも……美貴ならね」

「何言うてん……はぁぁ!??何や……何やあれは!?」
「信じられないのれす……」

パイプイスがガタンと後に倒れたと同時に、亜弥は美貴を見て呆然とした。
219 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/11(日) 20:33

「く、…くっきり跡残したやと……!??」


美貴が蹴ったボールの行方は、ドンピシャで赤い印。
2メートル離れて初心者が見事中心に当てるなど滅多にない。

「ほ、本当に…ボール蹴った事ないのみきたん……?」
「あー、幼稚園で最後かな」

赤い印のコンクリには、ボールの跡が濃く残っていた。

−−−−−−−−−−

「あいつ……運動神経並やないな……」
「そうれすね……侮れないのれす…」
「先生担任だったんでしょ?」


「せやかて……50m走るのとは訳がちゃうやろ……」


また1つ、欠伸。
220 名前:ベイム 投稿日:2004/07/11(日) 20:37
結構更新量多かったですかね……w
サッカー物になってきました。路線ずれてますがまた元通りに
なると思うので。

>201さん=ドキドキな展開でした。結果は寂しいものですが。

>202さん=修羅場&修羅場で終りましたが…よっすぃかわいそうでした。
       まぁまだ続きがあるので乞う御期待下さい。
221 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 18:18

「すごい!!みきたんなら豪華商品ゲット出来る!」
「商品……?別にいらないや」
「せや!藤本に商品渡してたまるか!!」
「先生、テント下で大人しくしてて下さい」
「コラッ!離せや後藤!ぜったい、絶対やらんからな!!」

真希はズルズルと中澤を引きずり、亜弥にこっそり笑った。

「?真希…?」

−−−−−−−−−−

「PKチャンスはたったの1回!決められたら当分お菓子抜きの刑や!」
「そ……それは無理なのれす!絶対とめるのれす!」
「みきたん、頑張ってね!」
「適当に頑張る」

亜弥からボールを奪い、美貴はゴール前に置いた。
そして辻も手袋をはめはじめた。
222 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 18:26

「うちのエースキーパーや!!入るわけ…あらへん!!」

テント下の中澤が負けじと声を上げた。

その言葉に、美貴の負けず嫌いに火をつける。


「絶対、入れてやるよ、先生」


ニカッと美貴は中澤に笑いかけた。

「やっぱ……みきたんカッコイイよ…」

223 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 18:31

「来い!なのれす!!」

「行け!ののぉ!負けたら承知せえへん!」


殆ど初心者、というかド素人に値する美貴の身体能力は一体どうなって
いるのだろうか。



「蹴るか」


さっきの壁をイメージして、無意識にボールを蹴った。

フォームはめちゃくちゃ、歩合もまばら。


それでも奇跡は起きる。
224 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 18:37

「みきたん!!」


「止めろ!止めるんやのの!!」


いつの間にか、フットサル部のコーナーの回りには沢山の人だかりが
出来ていた。
もちろん注がれている視線は、美貴と辻。

−−−−−−−−

テンテンッ……と、ボールがネットにかかった。

辻の手袋を、大きく掠ってボールはゴールに入ったのだ。



「……入ったよ。先生」

肩をぐるぐる回して柔軟。そして中澤にまたしても不敵な笑みを向けた



225 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 18:45

歓声が、辺りから溢れた。
突然の拍手とコールに、美貴達は目を丸くした。

「せんせ?入れましたよ?賭けはどうなるんですかぁ?」
「うっ…く、くっそぉ!!」
「先生……ごめんなさいなのれす」
「いやいや、君は悪くないから。それで先生、どうする?」

ぐぐっと中澤に寄り、ふふんと得意げに中澤の肩を叩いた。


「っ……商品、やるわ!!もってけ泥棒っ!!」
「……商品て、中身何ですか」
「…お前には勿体無いハナシやけどな……」


「草津温泉の入浴剤詰め合わせセットれす!」

「せや、入浴剤詰め合わせ……ってはぁ!??」

中澤の記憶を巻き戻してみよう。

226 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 21:46

「な……せやかてウチは校長に……」

『温泉……セットを商品として…』


『温泉の入浴剤詰め合わせ』の部分が、中澤には聞こえていなかった。
舞い上がっていたのだろう、全く耳に入らなかったらしい。

「あれ?ののは先輩からそう聞きましたのれす」
「あ、あたしあたし。まっつーは知らなかった?」
「ううん、ぜんっぜん。先生…?大丈夫ですか…?」

もはや中澤は放心状態でパイプイスにもたれるしかなかった。


「ウチのっ……温泉旅行計画がぁぁっっ!!」


こうして美貴はPK戦に勝利し、草津温泉入浴剤詰め合わせセットを
手に入れる事ができた。
227 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 21:54

「良かったじゃん、美貴」
「……こんな重いもんいらない」

学園祭は順調に終了する事となった。
さて、宣伝委員長の亜弥はというと、各部の片づけに追われていた。
美貴の方を見ると、真希と楽しそうにじゃれている。
先程から美貴との会話があまりなかった事に少しだけ嫉妬感を抱いていたのだった。


「このっ……看板をあっちに置けば…っ終りっ…お、重い!!」

亜弥は最後の仕事として宣伝看板を倉庫に入れる作業を独りで行っていた。
いくら体力に自信がアリ、元陸上部だったとしても女性1人で重い看板を
担ぐのには相当の力がいる。

「………どんくさ…持つからいいよ」
「あ、ありがとうございま……す!?」

亜弥の手元に、手が重なった。
228 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 22:00

「みきたんっ…?」
「何。持ってあげるからどきな」
「いいよぉっ、できるからっ」

美貴は手に持っていた入浴剤セットを亜弥に押し付けた。


「疲れてんでしょ。やったげるから、どきな」
「あ…ありがと…」

やっぱり言葉は乱暴だった美貴だが、いとも簡単に看板を担いで
歩き出した。

「なんだ。軽っ。亜弥ちゃん力なさすぎ」
「うるさいぃ……それにあたし鈍くさくありません!!」
「うっそだ。美貴より足遅いくせに」
「………」

美貴は倉庫に看板を置くと、亜弥に持たせていた入浴剤セットを
持ち替えた。
229 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 22:07

「あ……」
「どしたの?」

美貴は一歩下がって、亜弥のつま先からてっぺんまでまじまじと見始めた。

「な…何かついてる?」
「や、今気がついた」

「ユニフォーム、かわいいじゃん」

亜弥の三つ編みをほどくと、そのゴムを手で遊ぶ。


「なっ……今気がついたの!?」
「うん。ぜんっぜん気付かなかった」
「鈍感なのそっちじゃん…」
「え?何か言った?それより早くかえろ。重いし」
「あっ!先行かないでってば!」

230 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 22:07

「あ……」
「どしたの?」

美貴は一歩下がって、亜弥のつま先からてっぺんまでまじまじと見始めた。

「な…何かついてる?」
「や、今気がついた」

「ユニフォーム、かわいいじゃん」

亜弥の三つ編みをほどくと、そのゴムを手で遊ぶ。


「なっ……今気がついたの!?」
「うん。ぜんっぜん気付かなかった」
「鈍感なのそっちじゃん…」
「え?何か言った?それより早くかえろ。重いし」
「あっ!先行かないでってば!」

231 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 22:13

「う…寒いぃ……手つなご」
「え?」

歩くペースが速い美貴は、後にいる亜弥の手をとった。
突然の事に亜弥はびくっと反応した。

「なんだよ亜弥ちゃん手冷たいじゃん」
「みきたんが勝手に…!!」
「ま、いいや。繋いでりゃあったかくなるか」

恋人繋ぎではなかったが、亜弥はそれでも嬉しかった。
不器用なのかこれが本能なのか、美貴の行動は読めない。
美貴にひっぱられながら、2人で校門を出た。
232 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/12(月) 22:21

−−−−ゴロゴロゴロッ……

「…やば、雨降るかなっ……」
「降ったっていいじゃん、そっちの方が嬉しい」
「みきたんはでしょ?あたしは嫌だもん」
「前雨好きになったって言ってたじゃん」
「それとこれとは……あっ、降ってきちゃったじゃん…」
「あーくそ、入浴剤邪魔」

亜弥の言う事に聞く耳をもたず、入浴剤セットを睨む美貴。
いつの間にか、本格的に雨が降り出した。

「しゃーない、走って亜弥ちゃんちまで行くよ」
「いいよぉ、みきたん濡れるし送ってもらわなくても……」
「……あ!!そうすりゃいいのか」
「え?」
「亜弥ちゃん明日学校休みでしょ」
「う…うん?」


「今日、美貴んち泊まる?」

「……へ?みきたんの…ウチ?」
「そう。こっから近いし、濡れるよりマシでしょ」
「やっ…でも」
「んなに照れなくても。何にもしねーよ」
「何かするつもりだったの!?」

「さー?いいから、早く」

言われるがままに、亜弥は美貴に手をとられるのだった。
233 名前:ベイム 投稿日:2004/07/12(月) 22:22
はぁ、ついに亜弥ちゃん美貴のおうちに泊まる事になっちゃいました。
はやっ。
234 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/13(火) 01:28
お泊りクル━从‘ 。‘从━从‘ 。)━川 ‘)━从从从━(V 从━(vV从━川VvV从━!!!
早く続き見て〜w
235 名前:ベイム 投稿日:2004/07/13(火) 18:19
>234さん=押し押しな藤本さんが自分でも書いてて不思議ですw
       お泊まりはどうなるんでしょ。
236 名前:落雷注意 投稿日:2004/07/13(火) 18:25

「んなぁ……トレーナー被ってな」
「うわっ」

美貴が亜弥の手をひっぱり、雨が激しくなってきたので美貴はトレーナーを
亜弥に被せた。少し大きかったトレーナーからは、美貴の匂いがした。
しかし、美貴はトレーナーの下にTシャツだったので冬の雨は厳しかった。

「みきたんっ…寒くないの?」
「寒いよ」
「そんじゃ悪いよっ、みきたんのだし…」
「いいから。亜弥ちゃんは美貴の言う事聞いてればいいの」
「う…ん」

237 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 18:35

「みきたんの家……本当に泊まっていいの?」
「亜弥ちゃんが嫌ならいいけど」
「やっ…嫌じゃないよ!」
「そんなら別に。このまま帰ったら絶対風邪ひくし亜弥ちゃん」
「……心配してんの?」
「まぁ、それなりに」
「んはっぁ、みきたんワケわかんない」
「ほら、着いた」

雨が降りしきる中、会話に夢中で気付かなかったが、美貴のアパートについた。

亜弥は次第に心臓の鳴りが早まるのを感じていた。

−−−−−−−−−

「ん…?鍵どこやったっけ…」

美貴はジーパンのポケットをひっくり返し、鍵を探したが中にあったのは
携帯と財布だけ。

「……ごめん、大家に鍵貸してもらってくる」
「無くしたの…?」
「多分」

亜弥は美貴の意外と子供っぽい一面にクスッと笑った。
普段は完璧なイメージの美貴が、小学生の様な事をするのを可愛く思ったのだ。
238 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 18:47
美貴がアパートの古びた階段を足早に降りるのを見届け、
亜弥は美貴の部屋の隣のドアに目を止めた。

「……安倍、なつみ…」

ヒビの入った表札を亜弥は読み上げた途端、ドアが勢い良く開いた。


「ふぁ〜……良く寝たべさ。まぁた美貴ちゃんに米もらわんと…?」


亜弥が見た美貴の部屋の隣人は、やたら訛りが入り、軽く寝癖がついた
女の人だった。
その『安倍』という人は亜弥と目が合うと、にへらっと笑いおじぎをした。

「おや?珍しいお客さんだべ、…美貴ちゃんの知り合いけ?」
「あっ…そうです。松浦亜弥っていいます」
「そぉか〜、カワイイ子だべさぁ!美貴ちゃんのコレ?」

安倍は笑いながら亜弥に小指を立ててからかっている。
それに亜弥は照れ笑いし、首を縦にふった。
239 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 18:53

「ほぉー、美貴ちゃんもやるわなぁ…あ、噂をすれば!!」

安倍が指差した先には、階段を上がってくる美貴。
美貴は安倍を見た瞬間、中澤と対面した時のようなギョッとした顔になった。

「安倍さん今度は何の用ですか…」
「そうやさ!度々申し訳ないべ、お米頂戴?」
「駄目です。美貴の分今日でなくなっちゃうんで」
「そ〜んなぁ!!普段お世話してる安倍さんになんて事を…」
「洗濯機たまに借りるだけです。それと亜弥ちゃんに話し掛けないで下さい」
「まっ!!嫉妬はだめさ」

ぷちん、と美貴の脳内縄が切れた。安倍に対する同情心も消え去ったようだ。


「亜弥ちゃん早くおいで」
「待って!美貴ちゃん今度こそぉっ……」
『バタン!!』

美貴は亜弥を連れて部屋の中へ入り、安倍を押しきり思いきりドアを
閉めて鍵をかけた。
240 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 19:00

「あークソ。しつこいなあの人」

美貴は靴を脱ぎ、そろえる事もなく部屋に入った。
そして手荷物だった入浴剤をソファに投げた。

「亜弥ちゃん入って」
「あ、うん」

美貴の部屋は、亜弥が想像していた通りものすごくシンプルだった。
テレビやソファ、ベッドはあったがその色がない事。
ほとんどの家具が無彩色で色合いがなかった。
亜弥は美貴に促されソファに座り、美貴のトレーナーを脱いだ。

「あーあー、髪の毛すごい。お風呂入ってきな」
「うぁ」

美貴はミニタオルを亜弥の頭に押し付け、髪の毛を手でほぐした。
241 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 19:09

「うん、じゃお風呂借りる。…みきたん?」
「何」
「あの…さ、離れないとぉ…あたし動けな…」
「ん」

美貴は顔を亜弥の首に押し付け、溜め息を1つこぼした。

そして、亜弥の首に唇が触れた。


「くすぐったいぃ!!何すんのさ!」
「何すんのって、いいじゃん別に。いいから行ってきなよ」
「……ばーか」
「亜弥ちゃんにだけは言われたくないな」
「っ!馬鹿!!」

美貴からバスタオルとミニタオルを奪い、バスルームのドアを乱暴に閉めた。


「……だって、かわいかったんだよ」


微かに笑うと、美貴はテレビのスイッチをつけた。
242 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/13(火) 20:41
(;゚∀゚)=3ムハー
243 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 22:06
亜弥はバスルームに入ると、首を手で摩った。
バスタオルを握りしめると、ますます恥ずかしさが増す。

「あ……そだ、着替えどうしよっ…」

びしょぬれのユニフォームを脱ぐと、着替えの事に気がつく。
かろうじて下着は濡れていなかったものの、ユニフォーム上下が濡れて
着る服は美貴に借りるしかないのだ。

「み、みきたぁん?」
「……何」
「あのさっ、着替え…」
「あー、そっか。これでいいなら…」
「ダッ…今開けちゃ……!!」


−−−がちゃ


亜弥の上半身は、素っ裸。 

244 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 22:12

「ホラ、これでいいなら」

「……ふぇ?」


美貴は後ろ向きで、亜弥にTシャツとジャージのズボンを渡した。

「ん、早く取って。手疲れるから」
「あ…りがとっ…」
「入浴剤入れていいから」
「うん…」

美貴から着替えと入浴剤を受け取ると、ドアは乱暴に閉まった。


意外。だった。亜弥が想像するに、あの様な配慮をするとは思えなかったのだ。
美貴は亜弥の向こうで、どんな表情をしていたのだろう。
亜弥は湯舟に浸かりながら、ぶくぶくと泡をたてて考えた。
245 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 22:18

「みきたん…このお風呂帰ってすぐ湧かしてくれたんだよね……」


いつもはぶつくさ言いながら亜弥の事を大して気に掛けない美貴だが
その比はばらばらだ。
どんな態度でも、本当は優しい。段々と気付き始めていた。


「やばっ…寝そう……」


ザバァッと音をたてて湯舟から出た。
246 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 22:39

「ふぅ……ちょうどいいや」

美貴から貸してもらった着替えを着て、バスルームから出た。
熱のこもったバスルームとは違い、涼しく気持ちが良かった。
ソファにでも座っているだろうと思っていたが、美貴はソファにも
小さな台所にもいなかった。

「……すっげーぇ……」
「たん?」

美貴の声は、小さなベランダから聞こえた。
雨が止んだのか、美貴は空を見上げている。

「亜弥ちゃんもおいで、早く」
「な、何?」
「ほら、星……」
「……スッゴイ!!キレ−ッ!!」

亜弥がベランダの手すりに身を乗り出すと、美貴は亜弥の腰に手を
当てた。その行動に亜弥はあまり気付かず、夜空満天の星に夢中になった。
見渡す限り、星のじゅうたんだった。

小さい星が、強く光る物。 大きい星が連なり、輝く物。

様々な星に亜弥は魅せられていった。
247 名前:雨天冬景色 投稿日:2004/07/13(火) 22:47

「あんな雨の後、こんなに光る事ってないんだよ」
「そぉなんだ……すっごい…」
「都会だから空気汚いし、田舎じゃないと見られないから」

星を見ている時の、美貴の表情は、亜弥が初めてみた美貴だった。

あんなに活き活きとして星空を眺めていた小学生の様な笑顔に亜弥は
星よりも見ごたえがあった。


「そろそろ窓閉めるよ」
「やだ!あともうちょっとだけ!!」
「また今度見られるよ。美貴の家からだとね」
「本当?」
「いつでもおいで、星ぐらいタダなんだから、さ」
「うん!」


ベランダから見たあの星は、何かよりも強い、何かよりも大切な物だった。
248 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/15(木) 22:38
お互いが可愛くて仕方ない存在。
嗚呼、あやみきって素晴らしい。
249 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 21:42

「あっ、あたし学園祭の時職員室で結構食べちゃったから御飯いいよ」
「って言っても待たされてた美貴は食べてない」
「…ごめん」

むすっとベランダのドアを閉めて美貴は台所に向かった。
コンロに置いてある鍋を片手で開けると、中の物をじっと見ている。

「わっ、煮物だぁ!!みきたんが作ったの!?」
「や、まさか。お母さんだよ。こないだから来てて昨日帰った。
これあっためて食べるか…」

炊飯器に無洗米を入れると、スイッチを押した。
亜弥は美貴の家事をする姿をただ呆然を台所の隅で見つめる。
鍋を火にかけ、美貴は隅にいる亜弥に目もくれず欠伸をしてベッドに
携帯を取りにいった。

「ん……?…もしもし」 バイブで電話が来たらしい、美貴は携帯を耳に当てる。


『みっき〜?おあよぉ〜!!今ぁ酒屋で飲んでるんだけどぉ〜』


かなり大きい声が電話から漏れ、それは亜弥の耳にも入った。

「…まいちゃん?酔ってんの…?」
『ん〜?酔ってなんかないよぉ、飲んでるだけだよぉ』
「で、何?美貴忙しいから切る」
『ん!!ちょいまち!』

亜弥は電話で誰かと会話している美貴をどこか後ろめたく思った。
250 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 21:50

「亜弥ちゃん、煮物見てきて」
「あ…うん…」

美貴は電話を手で制し、亜弥を台所に行かせた。
人知れず亜弥は不満の様な気持ちが、美貴に対して膨らんだ。

『そいでねぇ、みっきー、明日シフト変わってくんなぃ?』
「ぜってーヤだ」
『お〜ね〜が〜いぃ!!5時間近くたちっぱは無理ぃ!』

しつこい美貴の友人をふりきりようにして、美貴は電話から耳を遠ざけた。


「うるさい!明日用事あんだよ!!酔っぱらって電話かけんな!!」


ブチッとボタンを押した美貴は咳払いをして、ごまかすように台所の亜弥を見た。


「……煮物、あったまった…」
「そ、ありがと」

ベッドから立ち上がり、どこか挙動不審に煮物の器と御飯茶碗を取り出した美貴。
亜弥の複雑な視線には十分気付いていたはずだが、誤魔化している。
251 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 21:58

「……さっきの人…誰?」
「んっ…ゴホッ!!ぁー…仕事の同僚」

口にしていた煮物をあうやく吐き出す所だった。
ちゃぶ台に向き合って座っている2人には、会話が先程から続かない。
ふくれっつらで亜弥はちゃぶ台に伏して、顔だけを上げて美貴を睨む。

「……なんでそんな目怖くしてんの」
「してない」
「煮物欲しいの?」
「いらないもん」

本当の気持ちを言わない亜弥を、美貴は分りきった様子で箸を置いた。


「まいちゃんてのは、友達。美貴、雑貨屋でバイトしてんの。
今のはまいちゃんが酔ってたからおかしい事言ってただけ。分った?」
「…べつにっ、気にしてなんかな…ぃ?」


素早く箸を取った美貴は、煮物の竹の子を亜弥の口に放り込んだ。
252 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 22:05


「……うまいだろ?」
「…おいしぃ……」

ニコッと笑った美貴は、テレビに顔を背けた。
口をもぐもぐしている亜弥は納得がいかない様でまだ美貴を睨む。


「変なやきもちなんか、妬かなくていいって」
「やっ…やきもちじゃない!!」
「嘘つけ。顔に書いてある。気に入らねーって顔してる」

再び煮物と白米に手をつけた美貴は黙々と食べ続ける。


「……その人…キレイ?」
「は?そらー美人だね。狙ってる人多いし」
「……」


口を開けたまま美貴は、しょんぼりとした亜弥に溜め息をつく。
253 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 22:11

「やきもち、やかれた方がこっちとしては嬉しいんだけど」
「…?」
「普段から知ってるけど、みきたん大好きってのがすげー出てれば
こっちだって安心する」

煮物のニンジンに箸を刺し、亜弥の口に持っていく。

「口開けろ」
「あー……」

言われるがままに亜弥はおいしい味を求めてしまう。


「……みきたんは、そういうのめんどくさいんじゃないの…?」
「うん、すっごいめんどくさい」
「だったら…」
「や、めんどくさいからいいんだよ」
「え…?」


「めんどくせーから、丁度いいんだよ」

254 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 22:17

「めんどくさいから、楽しいんだよ」


亜弥は、美貴の言う事があまり理解できなかった。
美貴が只亜弥に笑顔で接してくれるのが、それだけが嬉しかった。


「……アタシは…」
「あ?」

「あたしは……みきたんにとって、その人と違う風に見てる?」


テレビの音も、外の酔っぱらいサラリーマンの声も聞こえなかった。


「……亜弥ちゃんは、美貴の特別。知ってんだろ」

「分らせてくれないんだもん、みきたん…」


「なんだそれ。欲求不満?」

「ちっがう!!馬鹿!!……ばか!」


255 名前:綺麗に 投稿日:2004/07/16(金) 22:31

「…うそだっつの。おいで」


ぽんぽんと、美貴は胡座をかいた上を叩いた。
つまり上に乗れと言う事だ。


「……亜弥ちゃんは、まだまだだな」
「…何が」
「綺麗じゃなくて、カワイイから、まだまだ」
「…ごめんなさいねー御希望に添えられない彼女で」
「ふてくされんな。そういう事いってんじゃない」
「じゃーどういう事っ……んっ」


肩とお腹をぎゅっと抱きしめた美貴は、隙をついてキス。

とっさの美貴の行動に亜弥は、美貴の肩に顔を埋めた。


「これが、特別。亜弥ちゃんにしかしないから。分っとけ」
「わっ…」

胡座の姿勢を崩し、亜弥を床に降ろした。
空になった食器を台所に置くためだ。
256 名前:ベイム 投稿日:2004/07/17(土) 09:27
>248さん=素晴らしい…私も同感です。
       あやみき万歳です。
257 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/17(土) 13:43

「明日、みきたん用事あるの?」

テレビを見つつ、亜弥は食器を洗っている美貴に聞いた。


「何で?」
「だって電話で……」
「あんなの適当に言っただけだよ。別に何も予定ない」
「ふーん……」

食器を洗い終えた美貴は、体育座りをしている亜弥の隣に座る。


「暇だし、どっかいく?」
「ふぇ…?あたし…?」
「いやいや、あんたしかいないでしょ。どっか行く?」
「……っ行きたい!!映画見たい!」
「映画ね。わかった」

先日、美貴と映画を見に行く予定だったのだがドタキャンされたので
結局行けなかったのだ。


258 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/17(土) 13:50

「明日一回家帰んな、それから迎えにでも行くから」
「……うん!!」
「ぁー…眠い…風呂入ってくるから、眠くなったら寝てていいよ」

濡れたトレーナーとTシャツを畳み、洗濯機に放り込んだのを
確認した亜弥は、バスルームのドアが閉まるのを見届けると微笑んで
ガッツポーズをした。
これまで何度もお互い会いに行ったりはしたが、デートらしいデートは
した事がなかったのだ。

259 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/18(日) 09:28
ぶっきらぼうな言葉使いの中に亜弥ちゃんへの優しさをすごく感じます。
藤本さん、魅力的な人物ですね。大好きです。
亜弥ちゃん、初デート楽しんでね〜ノシ
260 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/18(日) 09:39
言葉遣いっすね。スレ汚しスマソ。恥ずい…
261 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:05

カードをひっくり返せば、そこには違うものがあると。


「また……ですか?」
「また、だよ」


何故彼女が、興味を持つのだろう。それは何かがあるのだから。
好奇心とは違った感情を持ち合わせてたのだ。


「好き、かもしれない。あんたの事が」
「軽いジョーク…?ごめん、笑えないからやめて」
「ふざけてこういう事言わないタチだよ」


「まっつーは、忘れたんでしょ?」
「……まぁな」
「だったら、あたしと、付き合ってみない?」


同情なんかいらない。そうは思った事は限り無い。


それでも気にしてしまう対象に値するのか?


傷つけないと、何度もくり返せるのか?

262 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:09


「弁当、うまかったし。キミを、好きになる価値はあるかもね」



亜弥を悲しませたバツなのかな?…それとも、こういう運命だったのかな。



だったら受け入れよう。  アイツよりも、超える幸せを掴むから。



「それじゃ、付き合う?あたしと」



「そうしようかな、愛せる…かもしれないし」



消えない過ちを、アナタに注ぐ。 大好きと言えるその日まで。



あの子にあげられなかった幸せを、キミにあげたい。
263 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:16


「「へっくしょん!!」」


シンクロした2人のくしゃみが、美貴の部屋に響いた。


「なんだよ気持ち悪い。いきなりくしゃみなんて……」
「あははっ、風邪ひいちゃったかな?」
「亜弥ちゃんはひかないだろ。馬鹿だから」
「!?……ばかばか言うなぁ、成績悪いけどさぁっ…」
「あー、いいから髪の毛乾かせ」

バスルームからドライヤーを持ってきた美貴は、そのドライヤーを
亜弥に投げ付けた。


「じ、自分でやればいいじゃん!」
「いいから、早くやれっつってんの」
「……あたしはみきたんの奥さんじゃないんですけどぉー」


ぶつくさと文句を言う物の、美貴の言いなりになってしまう。
コンセントに繋ぐと、温風が心地よく髪を解かす。

264 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:25

「んー…zz…んぁ……」
「うあ!?なっ…みきたん!?」

ドライヤーで美貴の髪を乾かしている途中、美貴が寝ぼけているのか
亜弥の肩に倒れてきた。
その勢いで亜弥は、手に持っていたドライヤーを床に落としてしまった。


「みきたんっ?ちょっ…この体制キツイっ……」


ドライヤーを放っておいたまま、亜弥は美貴を乗せたまま体制を整える。
本当に寝ているのだろうか。わざととは思えなかったものの、亜弥は怪し気に
美貴の寝顔を拝見。

「……かわいーっ!!初めて見ちゃったよ、たんの寝顔……」


何て無防備なやつ。このまま亜弥の胸で寝入る気らしい。


「……かっこいいんだけど、かわいんだね、たんはっ…」


遠くで鳴る音が、子守唄。 犬の遠ぼえが心地よかった夜。

結局その体制のまま、亜弥は美貴の頭を撫で、眠りに入ってしまった。
265 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:32

そして夜は明けた。あっというまの、束の間の夜。


「いっ……てぇっ……ケツがぁ……あ?」
「zz……zz…」


美貴が亜弥の胸から離れると、自分の尻を撫でて痛みを和らげようとした。


「寝てらぁ…なんでこんなとこで寝てたんだろ……?」
「zz……んぅ…」


そっと、美貴は亜弥の頬に触れた。

座って眠る亜弥の唇に、キスを落とす。


「そろそろ、起きろよ?」


唇から、亜弥の鼻に口付けた。



266 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/19(月) 16:40


  ドンドンドンドンドンンッッッッッ!!!



「あ!?」
「ふぁ……?」


朝の8時頃、玄関のドアだろうか、早くから強烈な叩音が聞こえた。
キスのせいか、その爆音のせいか、亜弥はぱっと目を覚ました。


「美貴つぅあん!?美貴つぁ〜ん!!」
「…安倍さん?」
「開けてけれ!!でないとなっちは殺され……ひぎゃぁ!!」
「安倍さん!?」


油断していた。美貴が扉を開けた後、遅くながら思ったのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−


「……芝居ってワケですか?」
「そ、そげに怒らなくてもぉ〜…」
「お米は無いと言ったはずですが」
「そうじゃないべ、野菜をかりようと……」
「同じじゃないですか!洗濯機はもう借りません!」
「なんだとぉ!じゃあ壊れても貸してあげんよ!」


ぎゃあぎゃあと安倍とのやりとりを繰り返す間、亜弥は眠そうな目を
擦りながら玄関までやってきた。
267 名前:konkon 投稿日:2004/07/21(水) 19:57
サイコーにおもしろいです!
とんとんと答えるミキタンかっけぇっす
268 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/21(水) 20:44

「……っとにかく…あー、亜弥ちゃん起きた」
「おっ、めんこい子と朝まで何やってたんだべ?」



ぷっちーん。昨日切れた筈の縄が、もう一本切れたようだ。



「北海道に帰って狐と戯れてこい!貧乏浪人生!!」



バァンとドアを閉めると、安倍はふぅと溜め息をついた。


「短気だべ、カルシウム足りんっしょ」


その安倍の言葉は、ドアの向こうの亜弥と美貴にばっちり聞こえて
いたのだった。
269 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/21(水) 20:58

「さっさと引っ越してくんないかな……そだ、何か食べる?」
「うぁ…うん」


美貴は冷蔵庫からヨーグルトを取り出すと、それを器に移しジャムを入れる。。
その中にレモン汁数滴、砂糖をひとつまみ加え、ちゃぶ台の上に置いた。

「ほら、こんなんしかないけど、食べな」
「なぁんか、みきたんこってるぅー…」

見栄えがよくないヨーグルトでさえ魅力的に見えてしまう。
ひとくち、スプーンですくって口に運んだ。

「……おいしぃ!」
「そ、よかった……」


亜弥が笑う度、美貴も笑顔になる。
安心したように、美貴は『ヨーグルトちょっと頂戴』と手を伸ばした。

270 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/21(水) 21:03

その後、10時頃になると亜弥を家に一旦帰らせ、美貴は携帯のディスプレイを見た。


「…メール…」

ピコッとボタンを押すと、そこには送り紛いな文章が。


『これから、アンタの所行くから!逃げたらネギとアンコ配達しに行くから!!

                 BY 昨日の電話、ごめんちょ!』



「ふざけんなっつの……」


美貴の親友であり、強敵でもある里田まい。

271 名前:ファーストデート 投稿日:2004/07/21(水) 21:11

その頃。家に帰った亜弥は………


「あーもう!何着て行けばいいんだよぉ……!!!」


ベッドに2、3着のスカートやパンツを並べ、デートに何を着ていくべきか
悩んでいる所だった。
まだ約束の時間には2時間もあるというのに、用意がいいものだ。


「よし!!これで決まり!!」


やっと決まったようだ。しかし、いくら亜弥が悩んでいたとしても
美貴にはその苦労はひとかけらも判らないだろう。
そんな事を分っていながらも、美貴の興味をひきたかった。


デート日和となるのだろうか。

272 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/21(水) 21:21

「ねぇ……まいちゃん……」
「ん?なぁにみっきー?」
「美貴…今日大事な用があるって言ったはずなんだけど…」
「ん?そーだっけ」
「しかもまいちゃん、仕事あるんじゃないの…?」
「あー、それは3時からだよぉ」


美貴の家には、すでに里田が訪問していた。
あのメールが送られてきたやいなや、すっとんできたらしい。

「いいぃじゃんー、みっきーとあたしの仲でしょ?」
「どういう仲だよ!っつかほっぺにキスすんな!!」
「二日酔いのあたしに優しくするっていうのはないの?」
「ない。あのさ、何しにきたの?」
「んー……一人暮らしは寂しいから、今日みっきーの家で遊ぼうと思って」
「や、意味がわかんない。1人で遊んでて」


悪魔のようにしつこい里田をふりはらい、亜弥の家に迎えに行く事を
思い出した。
273 名前:ベイム 投稿日:2004/07/21(水) 21:22
>267さん=ミキティのかっこよさに惚れる人が続出ですなw
       いやはや、光栄です。
274 名前:あやみき☆大好き 投稿日:2004/07/24(土) 03:42
この小説いいっ。美貴カッコイイ!!
275 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/25(日) 10:19

「やっば。まいちゃん、シャレにならない」
「んー?どうしたのぉ?」
「………っくそぉ!泣かせたらどうすんだよ!!まいちゃんのせいだぞ!」
「は?泣かせる?誰をさぁ?」

今だ、がっしりと美貴の腕を掴んで離さない里田に美貴は少しばかり
ドスを聞かせた声で訴えたが、効果はない。


「亜弥ちゃんが泣いたら、美貴が嫌われるんだよ!!」


少々乱暴ではあったが、手を振払い、時計を確認。

「亜弥ちゃん?何さ、恋人かい?」
「うっせぇ!後15分しかなくなっちゃったじゃん!」


亜弥の家まで、最低20分はかかる。4〜5分は遅れても仕様がない、と
美貴は考えたが、それは嫌な予感でもあった。

276 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/25(日) 10:25

「家にいるのはいいけど、絶対に携帯に電話かけんなよ!!いい?!」
「はいよ〜、行ってらっしゃぁい〜」


嫌な予感を抱きつつ、アパートを出た。
それにしても嫌な予感、というのは…当たるものである。


−−−−−−−−−−−−−

「……あれ藤本とちゃうか?」



予感、的中。

277 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/25(日) 10:38

美貴の背後に忍び寄る、ビール袋を手にした中澤。


「おい、藤本ー!」
「…?!な、中澤先生!?」


ジャージ姿で3、4本のビールを近くのスーパーで購入した様子だ。
美貴はそれを見るなり身を引き、早足でその場を去ろうとした。が、


「何で逃げ寄るねん、昨日会ったばっかりやないか!!」
「いえ、別に。美貴忙しいんでさようならっ」
「ちょちょちょ、待て。一緒にコレ、飲まへん?」
「何の義理があって先生と酒飲まなきゃいけないんですか、離して下さい」
「冷たいなぁ〜、世話してやった償いをせえっちゅうねん」
「んな昔の事っ……!?もう時間過ぎてる……?!」

携帯のディスプレイを見るなり、美貴は中澤を恨んだ。
約束の時間は1時半。しかし時刻は1時40分を回っている。


「美貴忙しいんですってば!さよならっ!」
「待て待てぇ、どこで誰と何をすんねや、答えてから離したる」
「んな無茶苦茶なぁ……用事ですよ!」
「だから、何しに行くねんな」


このやりとりは、10分程続いた。

278 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/25(日) 10:42

−−−−−−−−−−−−−

「みきたん…遅いなぁ……」


当に時間を過ぎている。しかし美貴は中澤の餌食になってしまい大幅に時間を
とられてどうしようもない。


「時間、間違えてんのかなぁ…」


−−−−−−−−−−−−


「もしや、松浦とでぇとかぁ?」
「……」
「そうなんやな!やりよるなぁお前〜」

こうなったら完全黙秘を続け、隙をついて逃げる。
美貴はこれしか方法がないと諦めていた。

279 名前:ベイム 投稿日:2004/07/25(日) 13:47

>274さん=風板の方、御観覧ありがとうございました。
       おもしろいと言ってもらえればそれだけで十分です。

280 名前:ベイム 投稿日:2004/07/25(日) 13:49
ちょっとした、コバナシを。
気に入らなかったらスルーして結構でございます。

『天気とあたし』番外編、それに伴って黒美貴っぽいのを書きたい!!
と無性に思ってしまった所で…ごめんなさい、途中で。

281 名前:天気とみきたん 投稿日:2004/07/25(日) 13:58

「ねぇ、キスしよっか?」


ふいにあたしの方を見て、みきたんは呟く。


「そういうのってさぁ、何にも言わないでするんじゃないのぉ?」
「聞いたら意味ないんだよ」
「えぇ?何でよぅ」

『何でも』って誤魔化す。ふふんと笑ったみきたんの笑顔は、あくまで
心は無表情。
川の水が流れる音が綺麗に聞こえるから、そんなのも気にならないけど。


「で、するの?しないの?」
「んぇ〜?そういうの聞かれたらどう返せば良いのかわかんないよ」
「じゃ、するよ」


くいっ、ってあたしの肩を引き寄せた。

なんだかな、こういうさり気ない事、あたしはすっごい嬉しい。


282 名前:天気とみきたん 投稿日:2004/07/25(日) 14:02

「……ね、亜弥ちゃん」
「なぁに?」

「美貴、いつまで亜弥ちゃんとこうしていい?」
「えぇ?」
「亜弥ちゃんが今の美貴と同い年になっても、高校卒業しても、美貴はこうしてていい?」


あたしの肩に、ぐっとみきたんの力が込められる。

何で、そんな事を聞くのかわかんなかった。 でも、それなりにみきたんは、想っててくれてた。


「…ずっと、だよ」
「……」


「ずぅーっと、みきたんは、あたしの傍にいて、こうやってキスしてくれる。
みきたんが、ずぅーっとずぅーっと、大好きだから」



みきたんへのスキは、無限大。 誰にも変わらないスキだもん。

283 名前:天気とみきたん 投稿日:2004/07/25(日) 14:08


「……美貴が、辛くなったら、こうしてていい…?」
「うん…」


こんなに、不安そうで寂しそうな、みきたんは見た事なかった。
子犬みたいにクンクン鳴いて、あたしの首に頬を擦り付ける。


いっつも強くて、かっこよくて、ひねくれてて、ちょっと意地悪。


でも、これは分るもん。



「亜弥ちゃん…」
「なぁーに?」



「愛してる」


「……知ってるよぉーだ…」



冷たくてもいいから。 『こころ』があったかいもん。


傍にいるから、みきたんも傍にいて?


FIN
284 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/25(日) 14:21

「ねぇ、たんってばぁっ……」
「……」
「たぁん!!一緒に帰ろうよぉっ」
「うるさい、触んな」


本当に、ほうっておいてくれないかな。すっげーしつこい。


「……幼稚園の時はさぁ、手繋いでくれたのにぃ…」
「昔は昔、今は今」
「じゃあじゃあっ、一緒に帰るぐらいいいじゃぁん!」
「1人で帰りたいから、邪魔」
「ぶぅ…」


幼稚園の時は、いいんだよ。あんな過去忘れたって。


「亜弥ちゃん彼氏ぐらい作れば?美貴追いかけてどうすんの」
「彼氏なんかいらないもぉん!みきたんが好きなのぉ!」
「そういう言葉重いんだよ。いらないってば」


欲しくないよ。 亜弥ちゃんには、きっと美貴よりも良い人がいる。


今だけを見てる亜弥ちゃんの言葉は、美貴には重過ぎる。
285 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/26(月) 21:56

−−−正直に、なったら?

嫌だ。そんな事、言えるもんか。


「たんは、あたしの事きらい?」
「……別に」
「別にじゃわかんない。どっちでもいいから、教えて?」
「…好きとかきらいとか…そういうんじゃない…」


トクベツな感情、持ってる。 自分だって気付いてるけど、言いたく無い。


「前はさ…、ぎゅってしてくれたり、笑ってくれたのに…。最近、みきたん
冷たいんだもんな…何か…すっごい、不安だもん…」



思わせぶりな事、言うな。

期待して、悲しんで、終り。そうなるんだ、美貴と亜弥ちゃんは。

286 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/26(月) 22:09

「あたしの事…親友って、思ってないよ…ね?」

「っ…」



いつから、美貴は変わった? 亜弥ちゃんと話すのさえ苦しくて。

いつの間にか、距離を置くようになった。


「あたしっ…たんの事、本当に大事だから…」
「分ってる!!」
「じゃあなんで避けるの?!」


避けられずにいられないよ。これ以上一緒に過ごしてたら、大好きになっちゃうって。


好きになっちゃったら、親友じゃなくなるって。

判ったから。
287 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/26(月) 22:15


「あたし……みきたんの事、大好きだしっ…愛してる」
「今だけだよそんなの!!」
「そんな事ない!」





「美貴だって…美貴だって愛してるよ…?それでも別れるのが怖い!!
亜弥ちゃんといつどうやって離れるのかわかんないし…」




傍にいてよ。 離れてしまったら、それだけで美貴はなくなるんだ。



288 名前:ベイム 投稿日:2004/07/26(月) 22:19
すみません、中途半端ですがここで一旦切ります。
次回更新に完結です。
289 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/30(金) 19:00


「やめて……あたしはそんな事しない……」
「だから失うのが怖いって言ってるでしょ…?亜弥ちゃんは他の人と…」



「そんなの…ヤだよ。あたしはずっと、小さい時からみきたんの事知ってる。
弱い所は、あたしが支えてあげたいの!!」



支えてもらう……?美貴が、亜弥ちゃんに守られる番が来たの?



いつでも、どんな時も、愛が感じられるの?

290 名前:追いかけた、キミ 投稿日:2004/07/30(金) 19:04

「……好きだもん、みきたんが、大好きだもんっ…」



泣きじゃくる亜弥ちゃんは、幼稚園の頃と全く変わってない。

泣き虫で、美貴がいなくなるとすぐ後を追い掛ける。



違う。 美貴が、追いかけなきゃいけなかった。




「亜弥ちゃん、傍にいて」

「美貴の、一番近くにいて、欲しい」





アリガトウ。   



291 名前:ベイム 投稿日:2004/07/30(金) 19:05
風板のほうにばかり向いてしまい、更新が遅れてすいませんでした。
短編はこれにて終了。
本編に戻らさせて頂きます。
292 名前:嵐の予感 投稿日:2004/07/30(金) 21:01

「お前、17の高校生捕まえて何するっちゅうねん」
「捕まえてって…人聞きの悪い」
「大体お前は昔から女をとっかえひっかえしすぎでなぁ……」
「……」


これはまずい。非常にまずい。時刻は2時丁度を回っている。
美貴は、中澤の左手に提げてあるビール袋に目をやった。

 
  ガシンッ



「あっ、コラ!何すんねんな!??」
「ビール代はいつか払うんで、さよならっ」


思いきり、蹴飛ばした。中のビールを地面にぶちまけ、無事に残っているビールは1つだけ。


「冗談じゃないっつの。早く行かないとっ……」



ビールが美貴のジーパンに少々かかったが、気にしている暇はなかった。
293 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/07/30(金) 21:11

−−−−−−−−−−−−−


「あ、来たっ」


亜弥が家の前の壁に寄り掛かり、不機嫌気味で美貴を待っていた。
メールも電話も入れない美貴に怒りを覚え、美貴が現れた途端駆け寄る。





「ごめん」
「ごめんじゃないよぉ!何分待たせてんだよ!!」
「だからごめんってば」
「…むぅ……」
「んだよ、あやまってんだろ」
「普通そこで開き直る?」
「…ごめん」



どうやら反省はしているのか。ペコリと頭を下げた。


294 名前:blue 投稿日:2004/07/31(土) 04:58
この小説を読んでおっぱいが好きになりました
これからも楽しみにしてます
295 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/08/02(月) 22:02

「いいよっ、許す!」


美貴の髪をグシャーと撫で上げ、もう一度優しく手でとかす。
首をかしげ、亜弥の頬を手で軽くつねった。


「時間もったいない、速く行こ」
「…もぉ、何なのさぁー」
「手」
「は?」
「手!繋ぐから出せっつってんだよ」


ぶっきらぼうに手を差し出す美貴は、亜弥を睨む。
その睨みに慣れてしまった亜弥は、その行動さえかわいく見えた。



−−−−−−−−−−−−



「んー……何見よっかなぁー……みきたんどれがいい?」
「美貴ホラーがいい」
「えぇぇー……」
「何、怖いのヤなの?」
「うん…」
「ガキっぽいなー…それじゃこっちでいいよ」
「また子供扱いする!!みきたんとそんなに変わらないじゃん」
「2つも違う。美貴仕事してるもん。社会人だし」
「……うるさいなぁ。もう、早く観よっ」


結局2人が観る事になった映画はラブストーリー。
特に観たい映画がなかったので、適当に決めてしまった。


296 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/08/03(火) 12:12

「……なんか…つまんないね」
「だから行ったじゃん。…出よっか」
「えぇ、もったいないよ」
「いいじゃん、美貴が払ってんだから。ほら行くよ」


半無理矢理だろうか、美貴は亜弥を連れて映画のワンシーンを
見送りながら場内を出た。


「お腹空いた…どっか食べに行くか」
「うん、そだね」
「亜弥ちゃん和食がいいんでしょ、美貴知ってるから、行こ」
「え?あ…うん」



出会った当初、美貴を交わした会話の1つに、食べ物の話があった。
その時、亜弥が話した事を美貴は覚えていたようだ。
滅多にその様な気づかいはない筈の美貴が…と、亜弥は嬉しく思った。


−−−−−−−−−−−−
和食屋にて。


「……おいしい!」
「そっか、良かった。そっちのちょっとちょうだい」
「あーん」
「あー」


久しぶりに甘い空気が流れたようだ。


297 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/08/03(火) 12:19

食事が終りそろそろ夕方になって来る頃、美貴は遠のく2つの影に
気がついた。



「……あれ、真希?」
「え?どれ?」
「あそこ、右側の歩道に…」



思いもよらぬ発見に亜弥はすぐさま真希の元へ、と走りだそうとする。
が、美貴は亜弥の腕を掴み静止させる。


「イタッ!…もぉ何!?」
「…そっとしとけ。早く帰ろ」
「えー何でよぉ!」
「何でも」




美貴は、はっきりと判った。


真希の横にいるもう1人の影が、吉澤だという事を。

298 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/08/03(火) 12:29

あの2人、どうなってんだろ。



今だにワケがわからずにいる亜弥を連れながら、家まで送る。
不服そうな表情を浮かべ、スタスタと先を歩いてしまう美貴のトレーナー
の裾を掴む。


「何」
「あたし見て、何とも思わないの?」
「ハ?」
「だからぁ、何か思う事ないの!?」


制服とは違う可愛らしいスカート、学園祭でした三つ編み。
鈍感な美貴は全く気付かなかった。


「……いつも通りじゃん」
「ハ!?たんの馬鹿!」
「美貴そんなに馬鹿じゃないって…」
「馬鹿馬鹿馬鹿!最低!」
「だーからさぁ」




「いつも通り、かわいいって言ってんじゃん」




299 名前:ベイム 投稿日:2004/08/03(火) 12:30
無事デートは終りを迎えました。
途切れ途切れですいません。
300 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/04(水) 19:49
280のレス読まないで番外編読んでしまい、まさか完結!?…orz
などと勘違いしてしまいました。
デート最高。
301 名前:本日は晴天なり 投稿日:2004/08/06(金) 18:00

「そっちがバーカ。言わないだけだよ」
「だ…言わないとわかんないじゃん!」
「いいから帰ろう。早く」
「わ…」


亜弥の頬を軽くつねり、そのまま先を歩く。
あっという間のデート時間は、痛い終わりとなってしまった。


「じゃーね」
「ちょっ…」
「何だよ」


ギロリと亜弥を睨むとキュッと抱きしめられる。
もちろん抱きしめているのは亜弥。


「…どしたの」
「何でもない…んっ」

噛み締めていた唇を、美貴にとかされる。
離れたくない。


「…ゲ、そろそろ帰らないと。まいちゃん残してきたんだった」
「ぇ?」
「それじゃあね」


ふっと亜弥から離れると、前を歩きながら亜弥に手をふった。



「……思わせぶりな事すんなよ、ばかっ」



寂しそうに呟いた亜弥の一言は、美貴にも聞こえていた。
302 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/06(金) 18:29

『高橋、福井の方に引っ越したんだって』
『…え?』
『……精神的にはまだ治ってないみたいだけど、心配ないって』
『……あたしっ…」
『いいよ。高橋だって、あなたの気持ちくらい分ってる筈だから』



また心にナイフが刺さる。
償っても償いきれないあたしの罪は、終る事がない。
愛にあわせる顔もなく、彷徨うだけだった。


それでも。真希の存在はあたしに何かを魅せてくれた。



新しい、光りをみせてくれた。




「…よっすぃ?」
「あ…うん…」



あたしは、後藤さんと付き合う事になった。



理由なんかわからない。ただ1つの感情が芽生えていた事に気がついた。



「…真希」
「うん」




「あたし、自首する」




愛してくれて、ありがとう。





「愛のためにあたしができる事、これしかないんだ」




たった1つでも、この償いはあたしにとってマイナスになる事はない。




ありがとう。
303 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/06(金) 18:33


「真希がいたから、決められた」
「うん」
「亜弥ちゃんの事だって、真希がいたから」
「うん」



「短かったけど、あたしは真希を愛してる」




サヨウナラ。




また、会えるかな。    また、会おう。



真希の唇に、唇を重ねた。




本当に、最初で最後のキスだった。




たった1人だけの、愛せた人。
304 名前:ベイム 投稿日:2004/08/06(金) 20:48
>300さん=鋭いですね読者様。完結はもうすぐだったりします(笑
       本編が終りましたら気ままに何か書くつもりなので。
       ごたごたの中つまらない物を読んで頂き光栄です。
305 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/09(月) 21:35

「…ただいま」
「zz…zz…zz…」



疲れ果てて家路についた頃、ベッドの上で幸せそうに眠る里田を睨む。

結局、バイトをさぼったらしい。



「…ふぁぁぁ…おぉ、みっきー!!」
「……爽やかな目覚めだね」
「まぁね。あーあ、もうこんな時間。さぼっちゃった〜」
「バーカ。店長に怒られるぞ」
「ドンマイドンマイ。さ、よく寝たしもう帰るわ。じゃーね」
「あっ…コラちょっと!!」


軽く寝癖を整えると、美貴に手をふり帰っていった。
一生こいつと友達をやっていくのは相当の体力が必要らしい。


「…もう寝るか」


亜弥からのメール返信は、明日にしておこう。



そう思いながら、風呂に入るのも忘れベッドに横たわった。
306 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/09(月) 21:43

−−−−−−−−−−−−−−−



「あ、いらっしゃいませー」



雑貨屋でバイトをしている美貴は、里田と同じ職場。
その雑貨屋は亜弥の学校からそう遠くはない。
それを察してか、妙に親友である里田に凝視されている。


「…仕事終ったら亜弥ちゃん迎えに行ってあげなよぉ?」
「なっ…なんでまいちゃんが知って…」
「ふふん、あたしは何でも知ってるさ。で、どうなの今の所」
「うっさい。ほらこれ持って」
「もぉーシャイなんだからぁ」


里田に頬を指でつつかれ、それを振払い店の奥に逃げ込んだ。
そろそろ学校が終る4時頃。
携帯を見て、それとなく亜弥に電話をかけようとする自分がいた。

「なーに、声聞きたくなっちゃったの?」
「…お前どっかいけ!!」
「イヤンッ、あー怖い!」


美貴はムキになって携帯をカバンになげこんだ。
里田を追いやるものの、一言にどうしようもなく動揺する。

307 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/09(月) 21:53

「んぅっ…眠いぃー…」
「まっつー、寝ないでよ」
「わ、分ってるよ」


教室を掃除する途中、真希の背中にもたれかかり目を擦る亜弥。
美貴に送ったメールの返事が返ってこない事に腹を立てよく眠れなかったらしい。


「…あ、そうだ。アンタ、昨日渋谷で何してたの?」
「は?」
「昨日、みきたんとデートしてる途中でね、見ちゃったんだぁ〜」
「……あぁ、ちょっとね」
「何よぉ!!横にいた人、誰!???」
「…言っても驚かないでよ」
「わーかってるよ」




「よっすぃ」
「なーんだよっすぃ……え?」
「だから、吉澤さん」
「よ、吉澤さんて…何で?!!何で真希とよっすぃが!!!?」
「…だから言いたくなかったんだけど」


「何で……」
「なんとなく、好きになったから」
「…」
「心配しなくていい。あの人、すごく変わったんだ」



目の奥から、ぐんと熱いものが込み上げる。


308 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/09(月) 21:58

「……大丈夫だよ。すごく、大切にしてもらってる」
「…そっか」
「美貴に負けないくらい、優しいから」
「うん…」



本当の人、見つけられたんだね。



「応援してよ。あんまり、時間ないからさ」
「ふぇ?今なんて言った?」
「いや、何でもない。ほら、掃除終ったから帰ろ」
「……うん!」




頑張って。あたしが愛してたよっすぃじゃない。


真希が愛してよ、よっすぃを。




あたしがしてあげられなかったコト。


いっぱい、あるんだからさ。
309 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/13(金) 13:05
この小説の中の二人がすっごい好きです。
完結悲しい…
310 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/18(水) 14:00

「…まっつー、携帯鳴ってるよ」
「ほぇ?」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「…やっぱ、電話すっか」



里田を追いやった後、やはり亜弥に電話をかけてしまう美貴。
何がって、声が聞きたかっただけ。


『……もしもし?』
「あ、美貴だけど。今何してんの?」
『えっ?今?学校の…そ、掃除…』
「それじゃ、後で行くわ」
『えっ!?な、何で突然っ…』
「……迷惑?」
『ううん!!来て来て!!』



かわいいこと、言いやがる。


電話を切ってから密かに思ってしまった。



「…みっきーったら、素直に会いたいって言えばいいのにぃ」
「うるさい。いい加減川に沈めるよ」
「いやーん」



空き時間になったら、学校まで迎えに行こう。
311 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/18(水) 14:04

「ちょっと真希!!みきたんが迎えに来るって!!!」
「そりゃ良かったね」
「何かさぁ…こういう事してくれるの初めてかもしんないんだけど…」
「…愛されてんじゃん?」



美貴なりの、愛の形なのだろうか。
そう考えつつ掃除をさっさと終えて、さっさと美貴に会う事に胸を
踊らせている亜弥。




−−−−−−−−−−−−−−−



「…まいちゃん、美貴行ってくるから」
「鞄は?」
「後で取りに行く」
「………もしかして仕事サボる気だね?」
「当たり。よろしく言っておいて」
「人に色々言っておきながら……」



ぶつくさと文句を言う里田を後目に美貴は学校へ足を運ぶ。


312 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/18(水) 14:11

「じゃあね真希!」
「あ…」


掃除を終えて亜弥は猛スピードで昇降口に向かった。
真希が声をかける頃にはもう姿はない。




「…お、いた」



つっかえながらローファーを履く亜弥を発見した美貴。
そんなに急がなくても、と苦笑。



「…おーい、こっち」
「……たぁん!!」



タタタ…と小走りで向かってくる。


いっそ抱きしめてやろうか。




「ぐぁっ」
「みきたんだぁ!!」



美貴が抱き締める前に、キツク抱きしめられる。
してやられた。


313 名前:空のいろ 投稿日:2004/08/18(水) 14:16

嬉しそうな笑顔。いつもの、美貴だけが見られる亜弥。


ようやく、愛おしく思えた気がした。




「……どしたの急に?」
「別に。会いたかったから」
「…嬉しいんだけど」
「そ、良かったね」



目を閉じて美貴の肩に頬を寄せる亜弥の頭を撫でる。
かわいくて仕方ない。




「…今日、お仕事は?」
「あるけど、サボる」
「だっ…ダメだよぉ!サボるって…」
「いいよ別に。半時間働いたし」
「…いいの?」
「美貴がいいって言ってんだから、いいの」



昨日会ったばかりなのに、ものすごく久しぶりに会った気がした。


仕事の事なんてどうでもよくなって、考えられるのは亜弥の事だけになっている。
314 名前:ベイム 投稿日:2004/08/18(水) 14:18

>309さん=完結と言ってもまだですけどね(笑
       でもありがとうございます。これからもどうぞよろしくです。
315 名前:blue 投稿日:2004/08/18(水) 14:22
この小説を読んでおっぱいが好きになりました。
これからも楽しみにしてますのでがんばってください。
316 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/19(木) 16:17
この二人にはやられっぱなしです。
更新読んだ後は小一時間骨抜きにw
317 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/09(木) 22:34
待ってます。
318 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/14(火) 20:36
ベイムさんカムバーック!
319 名前:Mirai 投稿日:2004/09/19(日) 15:37
待ってるよ。
あやみきもだけど、自分的によしごまが気になる・・・。
320 名前:りんね 投稿日:2004/09/22(水) 14:18
(⌒ ー ⌒)戻ってきてー
321 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/05(火) 22:27
お願いします。お願いしますから帰ってきて。
322 名前:ベイム 投稿日:2004/10/10(日) 19:32
すみません、作者です。
諸事情により今までずっとパソコンに触れていなかった物で更新がかなり遅くなってしまいまして…
決して放置はしませんので、もうしばらくお待ち下さると嬉しいです。
勝手で申し訳ないです。
323 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/11(月) 07:30
良かった…。
324 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/18(月) 12:15
作者さん、がんばってください
325 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 23:21
あげちゃダメよん。
326 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/03(水) 18:54
まだまだ
327 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/09(火) 07:01
こっから
328 名前:名無し 投稿日:2004/11/17(水) 20:07
まだ?もう何ヶ月だよ
みんな待ってるよ
329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/19(金) 00:37
まあまあ、餅つけ
330 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/27(土) 21:36
315がわけわからん事いうからだ
市んどけ315
331 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/07(金) 14:23
作者さんを信じてます

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