市井先生の授業日記
- 1 名前:序章 投稿日:2004/06/05(土) 22:38
- 私、市井紗耶香は、大学生になって家庭教師という物をはじめた。
飲み屋のバイトとかだるいし、ビラ配りなんかかったるいし、ガキ相手に偉そうにしてれば
良くて、その上時給のいいカテキョなららくかなー、なんて気楽に始めたもんだ。
だけど、やってみたらこれがまた、大変のなんのって・・・。
悪ガキにババアに、いや、手のかかるお子様に、活発なお姉さまに、いろいろな生徒がいる。
言い方かえれば、面白い、とも言える。
今までもいろいろな生徒がいたし、これからも出合って行くだろう。
それで、私は、そんな生徒達について書き記すことにした。
- 2 名前:How much 投稿日:2004/06/05(土) 22:39
- 「市井先生、これ教えてやー。」
私の生徒、中澤裕子、29歳。
この年になって、再び大学受験を目指してる。
矢口の紹介だから教えてるけど、年上教えるのは大変だ。
はーあ、家庭教師なんてバイト、やるんじゃなかったかなあ?
でも、時給いいんだよな。
- 3 名前:How much 投稿日:2004/06/05(土) 22:39
- ある日のこと。
「市井先生、予備校のテスト返ってきたで」
「ん?どれどれ、今度はまともな点数になった?」
「今度は、って、いつもまともやないか。だけど、今回はすごいで」
まあ、100点満点の40点をまともというのなら、この63点はすごいのだろう。
大丈夫なのかな、こんなんで。
- 4 名前:How much 投稿日:2004/06/05(土) 22:39
- 「先生、なんかご褒美ちょうだいや」
「褒美? そんなえらそうなこと言える点数じゃないでしょ。また今度ね」
「えー、そんなこと言うなら、うち、勝手に褒美奪ったる!」
「えっ、ちょっと、や、なに、するの! ん、んぐ!!!」
襲われた。
キスされた。
わたしの、初めてを、こんなおばさんに・・・。
奪われた。
- 5 名前:How much 投稿日:2004/06/05(土) 22:40
- 「いやー、先生サービスええなあ。ん? どないしたん先生? そんな顔して、まさか、
初めてやないやろ?」
「そ、そ、そんなわけないでしょ」
「そっか、そやろなあ。ちょっと残念や」
そんなわけあったんだよーー!
初めてだったんだよー!!!
返せー!!
- 6 名前:How much 投稿日:2004/06/05(土) 22:40
- 「あっ、そうそう、渡すの忘れとった。これ、今月分の授業料です。どうぞ、お納め下さ
い。交通費合わせて25680円」
・・・・・・。
黙って封筒を受け取る。
25680円。
わたし、なぜか、とてもいけないことをしているような気がするんですけど。
「先生、来月もよろしく頼むで」
来月もっすか?
25680円で。
私の中で、25680円の値札のついたバーコードが自分の額についた絵が浮かんでいた。
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/08(火) 05:32
- 給料安っ!
- 8 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/08(火) 18:55
- お、なんか設定おもしろそうですね
これから色んなハロメンが出てくるのかな?
期待してます。でも確かに給料やすいな〜w
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/08(火) 21:07
- ツボにクリーンヒット!!
とても期待
- 10 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:26
- 「せんせい、これ分からないです。」
「ん? よっすぃー、いいよ、私が教えて上げる」
石川に吉澤。
二人も私のかわいい生徒だ。
高1の石川は、中3の吉澤にすぐ勉強を教えたがる。
- 11 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:27
- 「梨華ちゃん、この証明問題なんだけどさあ、三平方の定理と、相似のどっちで解いたらいいのかなあ」
「うーん、どっちでもいいよ。よっすぃーの好きな方でやってみたら」
おいおい、それは相似でしか解けないよ。
石川は、自分が分からないと、すぐ自分でやってみなとごまかす。
吉澤が私に教わるのが、取られるみたいで気にいらなくて、すぐこうやって口を挟むのだろう。
だったら、最後までしっかり面倒見ろっての。
- 12 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:27
- 「いちーちゃん。ごとーさあ、この3単現のsってのわかんないんだけど」
おーい、それ中1の英語だぞー。
それこそ石川、あんた教えてやれよ、とか思うけどすでに吉澤と二人の世界。
いーもんね、素直な後藤を教えるのは楽しい仕事だ。
家庭教師やって良かったと思う瞬間てかんじ。
- 13 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:27
- 「そっか、そういうときにsがつくんだ」
「そう、3人称、単数、現在。忘れんなよ」
「うん」
よし、いい子だ。
- 14 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:27
- うーん、3人も生徒がいると2時間という時間はとても早い。
あっという間に過ぎてしまう。
「よし、今日はこれで終わり。後藤と吉澤は期末テスト頑張れよ」
「ねえ、いちーちゃん、なんかさあ、期末テスト不安なんだよー。だから、ちょっと残ってごとーに教えてくれないかなー。ちゃんと1人分の正規料金払うからさー」
この3人、1人分の授業料節約のために、まとめて授業って形にして、一人あたりの金額は半分にしてる。
そして、今日は後藤の家での勉強会だったのだ。
後藤の親は、客商売で、夜も家を空けている。
- 15 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:27
- 「なに、不安なのってどれ?」
「あのね、じつは、やっぱり、全部だったりするんだけど、他のは、いっつもだめだから別に気にしないんだ。だけどね、保健体育がさあ、バスケなんかは得意なのに、テストが出来なくって、悔しいんだよね。だから、教えてよ。紙の上の知識ってやつ、そういうのにがてだからさあ、実際やってみれば分かるかなあって思うんだよね」
保健体育?
実技?
実際やってみればわかる?
裕ちゃんの悪夢が。
いや、後藤なら、悪夢じゃないぞって、なに考えてるんだ、と自分に突っ込みを入れる。
おーい、しっかりしろー。
- 16 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:28
- 「よ、よしざわも、テ、テストだろ。だ、だ、だいじょうぶか?」
「あっ、よっすぃーには私が手取り足取り教えて上げる。ねっ、よっすぃー。」
「う、うん。」
ま、まじっすか?
4人で?
市井紗耶香、貞操のチャンス! じゃなかった、危機、危機です。
- 17 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:28
- 「よっすぃー、そうと決まったら、早くかえって、うちいこ。市井先生達の邪魔しちゃいけないし。」
「えっ、これから、梨華ちゃんち行くの?」
「うん。うちね、今日、みんな旅行に行っちゃって誰もいないんだ。だから泊まってってよ、ねっ、よっすぃー。一晩かけて、たーっぷりお勉強しよ。」
石川と吉澤は帰っていった。
後藤と、ついに、ついにふたりっきりだ。
- 18 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:28
- 「いちーちゃん。よっすぃーたち帰ったから、ごとーの部屋いこ。」
後藤の部屋でふたりっきり。
どうするんだ、市井。
初めてだぞ。
相手にまかせるか?
いや、市井のが年上だ。
じゃ、上か?
でも、後藤のが体力ありそうだぞ。
どうする?
- 19 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:28
- 「いちーちゃん、ちょっと待ってて。ごとー、着替えるね。」
着替え?
コスプレっすか?
最近の中学生は進んでるなあ。
コスプレってことは、やっぱ、市井がぬがさなきゃいけないんだろうなあ。
ということは、上か。
- 20 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:28
- 「ごめん、待った?」
んあ、じゃーじ?
市井はおやじじゃないから、そういうのはなあ。
どっちかっていうと、制服の後藤の方がお気に入りなんだが。
- 21 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:29
- 「あのさあ、ストレッチのしかたってのがテスト範囲にあるんだけど、なんか紙にかいてるの見るだけじゃわかんないだ。だから、ごとーが実際やってみるからさあ、いちーちゃん、それ見て、あってるかどうかチェックしてよ。」
あ、ストレッチ。
ストレッチね。
あ、そうですか。
なんだ、ストレッチか。
ストレッチね。
はははー。
- 22 名前:実技 投稿日:2004/06/13(日) 00:29
- 「あれ、いちーちゃん、かおあかいよ。どうしたの?」
「へ、いや、べ、べつに、何でもないぞ。ははは。」
「笑ってごまかしてる。なんか、違うこと想像してたでしょ。」
「そ、そんなことないぞ。ほら、早くやれ。やってみろ。」
「あー、あせってるー。図星なんだー!」
「う、うるさい!」
まあ、図星なんだけどさあ。
でも、絶対私だけじゃないって、勘違いしたの。
吉澤の貞操は守られただろうか・・・・・。
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 12:22
- おもしろい。
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 20:23
- うん。23と同じ意見。
後藤さんとの絡みもっと見たいです
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/14(月) 17:39
- おぉ、裕ちゃんにはあんなにも拒絶だったのに
ごっちんには積極的ですね(脳内ですがw)
素直なごっちんきゃわいいです!!
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/19(土) 01:08
- もっとщ(゚Д゚щ)カモーンナッ
- 27 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:09
- なんか面倒な生徒が多いんだよねって仕事仲間の圭織にうち明けたら、素直ないい子いるよ、数学の担当探してるんだけどやってみない? って誘われた。
それで行ってみると、これだよ。
まあ、素直なのは確かかもしれないけど、十分大変じゃんか。
- 28 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:09
- 「かけ算九九は、先月おぼえました。」
「えーと、小学生じゃないよね。中1、だよね。」
「はい。そうです。辻希美12歳です。」
おーい、かけ算九九覚え立ての12歳に、どう数学教えろってんだよー!
見た目から中1と小1聞き間違えたのかと思ったぞ。
圭織、だましたな。
- 29 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:11
- 「辻さんの目標は何?」
「のの、ってよんでください。」
「じゃあね、ののちゃんの、目標はなにかな?」
なんとなく、保母さん口調になるよ。
「つじの目標は、あいぼんとおなじクラスになることです。」
「あいぼん?」
「友達の加護亜依ちゃんです。学校では同じクラスなんですけど、塾だと違うクラスなんです。」
ああ、あの子か。
実は、その加護さんも私は教えている。
なかなかできる生徒で、確か塾では上から二番目のクラスなはずだ。
- 30 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:12
- 「すごく高い目標だねえ。」
「そうなんですか? 辻は、あいぼんと、いつもいっしょにいたいのです。学校ではいつもいっしょなんです。だから、塾でもいっしょにいたいんです。でも、辻は、さいきん塾に入ったから、違うクラスなんです。テストでいい点取らないとあいぼんのクラスにいけないんです。」
なるほど。
上のクラス、じゃなくて、あいぼんのクラスってのがポイントなわけか。
「がんばるんでよろしくおねがいします。」
まあ、どう考えても、かけ算九九覚え立てが一番上のクラスってのは無理があるんだけど、この笑顔で“頑張ります”なんて言われた日には、無理だよ、なんて言えなくなっちゃうんだよな。
- 31 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:12
- 「とりあえず、じゃあ、1年生の最初から復習してみよう。」
「はい。わかりました!」
返事は、すごくいいんだけどなあ。
授業やってみたら、大変さは想像を超えている。
「数字ってすごいですね。0よりちいさな数があるなんて、つじ、はじめて知りました。」
初めてねえ。
中学の最初の部分を、こんな冬になって、初めてって言われちゃ辛いわ。
- 32 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
- 「じゃあ、これが宿題ね。来週までにやっておくんですよ。いいですか?」
「はい。わかりました。」
結局、最後まで保母さん口調がなおらずだ。
はは、この宿題、ちょっと多めに出したから、半分もやってれば上出来かな。
- 33 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
- 一週間後、宿題のことはあまり気にせずにののちゃんの家に行くと、驚くことに宿題はきれいに片づいていた。
しかも、採点してみると満点。
「ののちゃん。すごいじゃん。」
「はい、がんばりました。」
すごく誇らしげな笑顔。
こっちも嬉しくなってくるよ。
- 34 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
- 「それで、せんせい、これ教えてほしいのです。」
ののちゃんが見せてきたのは国語のプリント。
「何? 学校の宿題か何か?」
「はい。今週中にやらなきゃいけないんです。飯田先生が来てからじゃ遅いんです。だから、市井先生教えて下さい。」
簡単な古典だから、市井にも分かるけど、数学の時間が削られるのは痛いなあ。
とはいえ、生徒に頼られて。出来ませんなどと言えるわけもなく1時間かけてそのプリントを教えて上げた。
- 35 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:14
- 「ありがとうございます。すごくたすかりました。」
またしても満面の笑顔。
いいねえ。
かおり、いい子紹介してくれたよ。
それからも、私の出す宿題はきちんとこなしてくれる彼女だった。
そして、何故か毎回国語も教えている私。
国語の先生だけ、やたら宿題出したがりなんだろうか?
- 36 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:14
- そんな疑問もあったが、とりあえず、能力的には大変だけど、それでも素直な、セクハラもしないいい子を紹介してくれた圭織にお礼をかねて食事をごちそうした。
「いやあ、紗耶香のおかげだよきっと。なんかさあ、辻、今までになくやる気に満ちてるんだよね」
「そうなんだ。でも、私のおかげとかって訳じゃないでしょ。塾に入ってあいぼんって子と違うクラスになったのが、悔しかったんじゃない?」
「うーん、そうなのかなあ?でもさあ、かおり一人で教えてたころは、辻の方から質問してくるなんてなかったもん。それも、数学ばっかり聞いて来るんだよ。絶対、紗耶香の影響だって」
「えー、私の方は国語ばっかりだよ、聞いてくるの。私の授業時間、いつの間にか半分くらい国語になってるもん」
- 37 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:15
- 「紗耶香、もしかしてさあ、紗耶香の教えてる国語って、古典のプリント?」
「え?うん。そうだけど」
「そうか、なるほど。なんか、辻のやってることが分かってきた」
「え?なに、分かってきたって?」
「まあ、いいから。今度、紗耶香が辻の家に行くときに、私も一緒に行くよ。そのときに話す」
「うん。分かった」
いつも突飛なことを言い出す圭織だから、あまり気にはしないでおこう。
そう思い、次の授業の際に、圭織を辻の家へつれていった。
- 38 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:15
- 「いやー、辻。かおりも一緒に来ちゃったよ。市井先生が、辻がいつも国語を熱心に勉強してるって言うからさあ、週1回じゃ足りないかなあって思って。やる気出してえらいねえ。今日は、かおりも無料で手伝って上げるよ。」
何故か、辻ちゃんはぎょっとした顔をしていた。
いきなりだからびっくりしたのかな。
- 39 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:15
- 「じゃあ、ののちゃん。今日も、学校の古典の宿題あるの?」
「い、いや、今日は、ないです」
「そっか、無いんだ。テストが近いから、絶対あると思ったのに無いんだ。かおり残念だなあ。まあ、いいや、かおりも市井先生の授業見てるよ。とりあえず、宿題の答え合わせでしょ」
「うん。じゃあ、宿題の答え合わせしようか。ののちゃんノート見せて」
「あ、いや、いいだ先生、かえらないんですか?」
「ん?帰らないよ。せっかく来たし」
「じゃ、じゃあ、れいぞうこにあるケーキたべてきていいですよ」
「いらないよ、辻じゃないんだから。それより、早く宿題を見せなさい!」
- 40 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:15
- なんで圭織怖い顔してるんだろ。
ののちゃん、おびえてるじゃないか。
ののちゃんがおそるおそる出したノートをかおりがひったくる。
「ちょっと、かお、じゃなくて飯田先生、なにするんですか!」
「市井先生。その答えは辻がよーく分かってるみたいだけど」
「ごめんなさい。もうしません。ゆるしてください」
なに? なにごと? なんで、ノートひったくられて謝ってるの?
- 41 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:16
- 「辻。これって、かおりがこの前来たときに教えた問題だよね」
「えー、なにそれ、どういうこと?」
「ごめんなさい。もうしません」
「辻はね、紗耶香の出した宿題を、私に解かせてたの。そして、紗耶香がいつも教えていたって言う古典のプリントは、私が出した宿題。ねー、辻。自分の力でやりなさい。出来なかったら来週ちゃんと教えるから、自分の力で解きなさいって言ったよね、私。忘れたとは言わせないよ」
「ごめんなさい。ゆるしてください」
- 42 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:16
- なるほど。ようやく全部つながった。
それで、全然勉強できないはずのののちゃんが、私の宿題で満点だったわけか。
でも、まあ、私としては、宿題をやろうとした姿勢は評価して上げたいけどなあ。
自分の力でやれ、といっていた圭織にすれば、確かに腹立たしいことなのだろう。
- 43 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:16
- 「辻!」
「は、はい」
「今日は、お説教だからね」
「ごめんなさい」
「いい、辻。ステレオっていうのはね、右のスピーカーと左のスピーカーから・・・・」
かおりの十八番。意味不明な長説教。
ステレオと、宿題他の人にやらせたのがどうやってつながるんだよ・・・。
- 44 名前:賢い学習法 投稿日:2004/06/27(日) 22:16
- 今日は私の授業なんだけど。
なんか、私の罰ゲームのような気がしてきた・・・。
よく考えると、こんなわけわかんないこという圭織が国語の先生ってのは、いいのか?
私が、ののちゃんに数学の授業を開始したのは、やっぱりいつもどおり家について1時間後のことだった。
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/28(月) 21:11
- 何気に優しい市井先生ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/02(金) 01:19
- 市井先生苦労が絶えないねっ
そんな先生が大好きですw
- 47 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:13
- 私にとって、いま一番いい生徒、それは圭ちゃんのことだろう。
彼女は、私より年上だけど、裕ちゃんのようにセクハラもしないし、かといって気を使って
しまうこともなくかなりやりやすい。
それに、なんと言っても成績優秀なのだ。
私がちょっと説明すれば、あとは勝手に理解してくれる。
もしかしたら私よりも全然勉強できるんじゃないか、と思うこともあるくらいだ。
だけど、彼女はいまだに大学に進むことが出来ない。
今年で4年目の3浪生だ。
- 48 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:13
- 「ねえ、圭ちゃん。今年こそ絶対受かろうね。自信ある?」
「自信は毎年あるんだけどね」
「なんで、本命だけ落ちちゃうんだろうね。本番に弱いタイプ?」
「そうでもないつもりなんだけど」
彼女は、成績優秀なだけあって、これまでも数多くの大学合格している。
しかし、毎年本命の大学だけ落ちるのだ。
早稲田大学理工学部建築学科。
まあ、確かに難しいよ。
他の滑り止めのところと比べてはるかに難しいのは確か。
だけど、圭ちゃんの実力からすれば3回受けて全部落ちるなんて考えられないんだよね。
模擬テストでもいつもA判定だし。
- 49 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:15
- 「じゃあ、今日は過去問をやろう。科目は数学ね。問題を解いていく過程も見てるから」
「はい、分かりました」
圭ちゃんは、こういうときには私に対して敬語を使う。
年齢に関係なく、先生と生徒だからとけじめをつけたいのだそうだ。
裕ちゃんとは全然違うね。
- 50 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:15
- 「それじゃ、はじめ」
実は、家庭教師にとって、生徒に過去問をやらせるくらい楽な授業はない。
一応、この問題で手こずってるな、とかそういうチェックはするけど、基本的にそのテス
ト時間中は質問されることもないし、逆に手持ちぶさたで困ることになる。
仕方ないので、圭ちゃんに渡したプリントの元になっている過去問の問題集を眺めつつ、
紅茶なんかを飲んでいた。
合格体験記とかが載ってて、暇つぶしにはちょうどいい。
それに、建築学科だけ、ちょっと合格の基準が違うことが分かった。
まあ、これは私の担当とは関係ないし、いいんだけどね。
- 51 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:18
- 「はい、おわり」
圭ちゃんが残念そうに答案を私に渡す。
「どうだった、感想は?」
「うーん、最後1問ちょっと残っちゃった。出来ると思ったんだけどなあ」
「あ、ホントだ。でも、これ難しいよ。三次元空間の中での動点の速度式が微分系で表さ
れて、しかもその後、極限出さなきゃいけないんだもん。この問題を最後に残したこと自体
が正解だよ」
「そうなんですか?」
「うん。それに、もう一つの難しい数列の方。f(x)=x2―a=0の解に近づく数列xn(a)を求
める方が出来てるからさあ、かなりいいよこれ。合格点には間違いなく達してる」
「ほんと?ほんとに?」
「うん。この手の筆記テストは採点者によって点が変わってくるけど、私の基準だと、60点
中41点かな。完全に合格圏内だよ」
「41点か。数学あんまり得意じゃないんだけど、それくらい取れれば大丈夫ですよね」
- 52 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:19
- 大丈夫どころじゃない。
得意だって、これだけ出来る人はそう多くない。
どう考えたって落ちるわけない点数だ。
「先週の、英語と理科を合わせると、かなりいい点数なんだよね。それで、気になったん
だけど、建築ってさあ、デッサンの実技試験あるんだって?」
「うん、筆記試験の次の日に、建築志望の人だけ集められて、デッサンのテストするんだ」
「デッサン見せてよ」
「恥ずかしいですよ」
「先生に見せなさい。模擬テストの一環です。なにかあるでしょ」
- 53 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:20
- いやがる圭ちゃんに先生風を吹かして無理矢理迫ると、渋々といった感じでスケッチブッ
クを持ってきてくれた。
まあ、趣味で撮ってるという写真なら見たことあるけど、あれだけのセンスがあればきっ
とデッサンだってそこそこの物があるだろう。
「どうですか?先生。別に個展を開こうとか、そんなつもりないし、さすがにそのレベル
じゃないですけど、そこそこいけてると思いません?」
見せるの渋ってたくせにやけに自信満々。
どんだけうまいんだ、と期待しつつスケッチブックを開く。
- 54 名前:模擬テスト 投稿日:2004/07/11(日) 22:21
- ・・・・・
なんて言ったらいいんだろう。
私は、感想をいわなくてはいけないのだろうか。
採点しなくちゃいけないの?
「こっ、これは、た、たぬきなのかな?」
「ちがいますよ、ひどいなあ。犬に決まってるじゃないですか。ダックスフンド」
圭ちゃんだけはいい生徒だと思ってたのに。
あなたとは、もうお別れ。
あなたに必要なのは私じゃなくて圭織。
引きこもりの子に絵を教えることもあるちょっと特殊な家庭教師の圭織を、あなたに薦めます。
これからは勉強はいいから、圭織と頑張って。
さよなら、圭ちゃん。
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/12(月) 19:13
- 毎日チェックしてますよ( ‘ д‘)
ケメちゃんウケル!
最後の一文もなんかツボ…(笑)
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/14(水) 14:08
- 圭織と圭ちゃんがギャーギャー言い合う授業もおもしろそうですねw
市井先生ガンバ♪
- 57 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:37
- 私もいろんな生徒を抱えて大変なのよ。
この子もそう。
大変な部類に入る。
成績はいいんだけどね。
授業態度がっていうか、性格がっていうか、いろいろ、とにかく大変なのよ。
ののちゃんのクラスメイトの加護亜依さん。
だけど、そんな彼女でも落ち込んでる姿を見せられれば、先生としてはほうっとくわけにはいきません。
- 58 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:37
- 「67点か。まあ、たまにはこんなこともあるよ。次頑張ろう」
「はい」
成績がそれなりにいい彼女にしては珍しい点数。
まあ、この同じテストをののちゃんは27点だったわけだけど・・。
- 59 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:38
- 「たまには、出来の悪いこともあるからさ、あまり気にしないで」
「テストが悪いのは、そんなに、気にしてるわけじゃないです」
そんなに気にしてないと言う彼女だけど、表情はショックを隠しきれないという感じ。
強がってるのが手に取るように伝わってくる。
元気づけてあげなきゃね、先生としては。
- 60 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:38
- 「先生。なにか、物まねして下さい」
「物まね?」
物まねっすか?
自分でも、元気ださなきゃって思ってて、言ってるのかな?
うーん、こう言いうのは、私の性格ではあまりやらないのですが、かわいい生徒のために頑張ってみますか。
「おら、しんのすけ。みればー」
得意のクレヨン新ちゃんのものまね。
これで絶対、亜依ちゃんも元気出してくれるはずだ。
- 61 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:38
- 「にてへん」
うっ。
しらー、とした目でこっちを見てそう一言だけ言いやがった。
誰のために、こんな恥ずかしい思いしてものまねなんかしたと思ってんだ、このガキ。
「そうやなあ、普通そんなもんやろなあ。なんか、自信持てたは」
「なんだよ、なんなんだよ!」
「今日学校でな、ガクトのものまねしたんよ。そしたら、似てない言われてな、うち、才能ないんかなあ思ってな」
「なに、テスト悪くて落ち込んでたんじゃないの?」
「ああ、あれ? あれ、ののがいっしょに受けよう言うから、しゃーないから受けただけやしなあ。全然やる気もなかったし、まあ、もうちょっと取れてもよかった思うけど、あんなもんやろ」
- 62 名前:ショック 投稿日:2004/07/27(火) 22:39
- このガキ!
人が、本気で心配したと言うのに・・・。
この後帰ってから、私がクレヨンしんちゃんのものまねの練習を積んだのは言うまでもない。
- 63 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:26
- はぁ・・・。
答案を見せられてため息をついてしまう。
英語53点 数学51点 国語57点 物理54点 世界史52点
このあまりに普通な点数達。
全部誤差の範囲に並べられた点数達。
文句の一つも言いたくなる。
- 64 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:27
- 「やぐち。まじめにやろうよ」
「そんな、いーじゃん固いこと言わなくたって」
固いことも言うから家庭教師なんだっつーの。
なんてことを言ったら、この145cmの生意気なちびは「だから紗耶香は男に縁が(ry 」とか、ため口で言い出すのが目に見えている。
- 65 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:27
- 「一応さあ、中間テストなわけでしょこれ。小テストとかじゃなくて。受験生なんだから、ちゃんとやろ。ね」
「大学受験に内申点は関係無いって教えてくれたの紗耶香じゃーん」
「そうだけどさー」
「まあ、細かいこと気にしなさんなって。やればこれくらいのは大体出来るんだから」
そう、矢口真里、高校三年生は、やれば出来るのだ。
予備校系の模擬テストだといい点を取ってくる。
なのに、学校だと絶対にこういう点数で返ってくるんだ。
- 66 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:28
- 「で、先生、今日は何するの?」
私がちょっと怖い顔を見せると、矢口はこうやって呼び方を先生に変えて覗き込むようにして来る。
この小動物のような抜け目のなさ、もとい、かわいさがあるからどうしてもにくめないのだ。
「ごまかすんじゃないの。私が怒られるんだからねえお母さんに。真里はどうして学校のテストになるとダメなんでしょう? とか言われるこっちの立場も考えてよ」
「しょうがないじゃん。テストの点より大事なものがあるんだよ。それは紗耶香だって分かるでしょ」
字面どおり取れば、矢口の言っていることは間違ってないとは思う。
大学生の私に、高三の分際でため口を聞くことを差し引けば、矢口の言葉におかしなことはない。
だけど・・・。
- 67 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:28
- 「学校のテストでいい点なんかとってさあ、目立っちゃった日には、あの女、勉強出来るらしい、なんてなって可愛げないじゃん。そんなに勉強は出来ない子でいて上げないと、男が引いちゃうからさあ。いやあ、つらいねえ」
はぁ・・・。
矢口の、“テストの点より大切なもの”なんて、こんなもんなのだ。
「それで、ね、教えて? なんてやっとけば、大抵の男なんか思い通りに動くんだから。それと比べればテストの点なんか、悪すぎない程度に調整しとけばいいじゃん」
「はいはい」
軽く聞き流す。
矢口の相手をいちいちしていたら身が持たない。
- 68 名前:大切なもの 投稿日:2004/08/09(月) 23:29
- 「ね、先生。先生の授業はちゃんと頑張るからさ、大学もちゃんと受かるから、今度ケーキおごってよ」
「あー、もう。しょうがないなあ。ちゃんとやるんだぞ」
「はーい」
私に対してリスのような顔で、下から覗きこんでそう言う矢口には、結局かなわない。
私の授業から一番矢口が身につけたものは、テストの点よりも大事なものを手に入れる技なのかもしれなかった・・・。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 07:23
- ある意味、矢口が一番賢いのかもしれない…。
更新お疲れ様です。
- 70 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:27
-
「先生、なっちに英語は向いてないっしょ」
- 71 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:27
- なんでこう私の生徒はみんな手がかかるのだろう。
安倍なつみ、北海道出身の二浪生。
自称得意科目国語。
国語の指す国が日本全体かどうかは不明だが。
それはともかく、27点の英語の答案とともに差し出された彼女の進路希望票には、とんでもないことが書かれていた。
- 72 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:28
- 「やっぱ、なっちみたいな知性豊かな女性は、それなりの文化の中で学ばないとだめっしょ」
私は黙ってその希望票で彼女の頭をはたいた。
ヒマラヤ山脈が日本で一番高い山、とか言う教養人がいてたまるかっての。
「夢ばっか見てないでさあ、現実を見ようよ現実」
「夢を見るのは大事だべ」
さすが矢口の親友。
いいこと言う!
じゃなくて、意味が深いんだよこれが・・・。
- 73 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:28
- 「で、その夢の実現のために、なっちはどういう努力をしてるのかな?」
なんでこう、私の生徒達は現実を見ないのだろうか。
私のように、現実を直視して、常に冷静に成功への道を歩くものはいないのか?
ぶっちゃっけ、金払ってくれればいい、っていう立場ではあるけどさあ。
- 74 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:28
- 「えー、ダンスでしょー、歌でしょー」
「時代間違ってるんじゃないの?」
「なっちは先生と違って上流階級なんだから、それくらいのたしなみが必要なのくらいわかってくれないと困るっしょ」
もう、好きにしてくれ。
- 75 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:28
- 「それで、志望校は?」
「えー、そこに書いたっしょ」
「志望校は?」
「だから書いたって」
「志望校“おふらんす”って、どこが志望校なんだよ!」
「えー、だって、なっちみたいなハイソサエティな人間は、やっぱ“おふらんす”でしょ」
いい加減にしてくれ。
私は、もう一度無言でなっちの頭を進路希望票ではたいた。
- 76 名前:進路指導 投稿日:2004/09/12(日) 21:28
- 「先生、フランス語教えてよー。あー、先生フランス語出来無いからそんなこと言ってるんでしょー」
そりゃ出来ないけど、そういう問題じゃないだろ。
この後、フランス行きを、フランス文学志望に変えさせるまでに二週間の時間がかかった。
- 77 名前:ミッチー 投稿日:2004/10/04(月) 18:51
- 初めまして!
面白いっすねぇ〜☆
市井先生頑張れ!!
- 78 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:36
- 「ねえ、裕ちゃんなんでわざわざ大学受験しようなんて思ったの?」
中澤裕子30歳。
ついに三十路に達した彼女は、一念発起して大学受験を目指す、だそうだ。
その理想は良いんだけど、力が伴ってないんだよね。
私と彼女の間に置かれた成績表。
とほほな数字が並んでる。
- 79 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:36
- 「そんなん、女子大生やったら合コンしまくりやし、いい男が寄ってくるし、遊び放題やからにきまっとるやないか」
本気なの? って聞こうと思ったけどやめた。
裕ちゃんの場合、多分本気だから。
「で、この志望大学は本気なわけ?」
こっちは、聞いておこう。
夢を見るにもほどがある。
- 80 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:37
- 「ああ、本気や」
「あのさあ、成績表見てから言おうね。っていうか、それ以前に、鏡も見てから」
「失礼な! 成績はともかく、鏡は余計や」
いや、成績はともかくって、それじゃダメでしょ。
- 81 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:37
- 「でもさあ、純情可憐女子大学て、裕ちゃんが行くようなとこじゃないと思うよ。お嬢様学校だよ。分かる? なんで、あんなとこ行きたいの? 成績も伴ってないしさあ」
「そんなん、決まってるやん。となりに、美男三高大学があるからや」
美男三高大学・・・。
まあ、昔は人気だったらしいけど、いまは他にもいろいろあるのにねえ。
やっぱ裕ちゃんは、一昔前の人なんだなあ。
- 82 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:37
- 「で、現実的に、第二希望は?」
わざと冷たい声にして言って見た。
ちょっとは、現実を見てもらわないと困る。
「えー、だめー?」
「だめ! 第二希望は?」
「じゃあなあ、玉輿捜索大学」
ああ、あのぎらぎらした感じでなんか、女から見ると引いちゃう感じがするけど、男の前ではお嬢様って奴が多いとこね。
- 83 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:37
- 「まあ、似合ってるかもね。でも、これも力が伴ってない」
「そんなあ。先生、なんとかしてーな」
「なんとかは、自分でしなさい」
「えー、先生、助けてよー。うちの一生がかかってるんやから。なんてたって、金溢贅大学との合コン回数ナンバーワンなんだから」
頭痛くなって来た。
大学行くより、結婚相談所行ったほうがいいんじゃないのか?
- 84 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:38
- 「じゃあ、第三希望は?」
「先生、冷たいやん」
「だ・い・さ・ん・希望は???」
有無を言わさぬ強い口調で私は言った。
「標準女子大学」
ぼそっと裕ちゃんが言う。
普通じゃん、とちょっと安心した。
- 85 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:38
- 「それそれ。そういうの待ってたの。力的にも後一歩で届きそうなところだもんね。で、志望理由は?」
ま、普通の学校だね。
可もなく不可もなく。
そんな中からでも女子大を選び出すあたりが裕ちゃんらしいけど。
- 86 名前:進路指導2 投稿日:2004/10/24(日) 19:39
- 「ああ、隣がすけこまし技術大学やから」
「・・・」
もう、好きにしろ。
そんな感じだった・・・。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 20:12
- 待ってました!!!
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 18:36
- あはははは!
面白い!
大学の名前も志望理由もさ・い・こ・う!w
- 89 名前:ミッチー 投稿日:2004/11/10(水) 17:32
- やっぱおもしろいネ!
本当にそんな名前の大学があったら面白いな(笑
- 90 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:31
- 「だって、梨華ちゃんが・・・」
吉澤は、すぐにこれを理由にいいわけをする。
一つ年上の石川に、いつまでたっても支配されてる吉澤。
そんな吉澤が持って来た進路希望票は、一目見ると石川の意のままだったけれど、透かして見ると吉澤の心の叫びが現れていた。
- 91 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:31
- 「第一希望は、可愛可憐学院で本当にいいんだな?」
うつむいたまま答えない。
私はため息をついて扉の方を見てしまう。
扉の向こうでは石川と後藤が二人で自習しているはずだ。
スポイルされちゃってるよなー吉澤。
ちょっと荒療治が必要かなー、なんて思うけど、どうしたらいいだろう?
- 92 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:32
- 「吉澤。この紙をこうやって透かしてみるとなんか見えるんだけどこれは何かなー?」
「な、なんでもないです」
「じゃあ、可愛可憐学院を第一志望にした理由は?」
また吉澤はうつむく。
チラッとドアの方を見てから言った。
- 93 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:32
- 「そんなの、先生分かってるんじゃないですか?」
「いーや、わかんないね。吉澤の口から言ってもらわなきゃわかんないね」
「梨華ちゃんが、梨華ちゃんが来いって・・・」
まあ、分かってて聞いたんだけど。
こいつ、このまま石川と同じ学校に入れたら一生尻に引かれるな。
別に将来のことまで面倒見る義務はないけど、吉澤は石川のいないところでのびのびしている時はすごく魅力的な子だから、ちょっと改造してみることにした。
- 94 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:32
- 「はっきり言おう。無理だ、お前の成績じゃ」
石川でぎりぎりだったところに、吉澤の成績じゃ無理だ。
「それは、わかってます」
まだうつむいている。
あー、くらい!
なんでこんなに暗いんだこいつは。
- 95 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:33
- 「お前の本音を言ってみろ本音を」
進路希望票を吉澤の前に突きつける。
いやー、カッコイイなあ私。
金八先生も真っ青な熱血先生っぷり。
「お前の本音は私には見える。お前は池面鍛錬高等学院が本当の第一希望なはずだ!」
う〜ん、決まった。
第一希望の欄に、シャープペンで何度も書いては消し書いては消しして明らかに痕が見えるようになっていた。
ボールペンで書かれた見せ掛けの第一志望の下にある吉澤の本音。
あまり聞き慣れない学校ではあるが。
それを、私が見つけ出してあげたのだ。
- 96 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:33
- 進路希望票を机におくと、そのむこうには呆然とした吉澤の顔がのぞいた。
「先生って面白いんですね」
がくっ。
な、なんだそのリアクションは。
感動に胸を熱くしろよ。
「お前ここまで言われて何も感じないのか?」
「でもー」
「でも、なんだ? 吉澤は市井より石川のが怖いのか?」
「はい。梨華ちゃんのが,怖いです」
即答かよ!
まあ、いい。
- 97 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:34
- 「それでどうするんだ? 石川が怖い怖い言っても、進路は自分で決めろよ。手助けなら市井がしてやるから」
「一度、梨華ちゃんと対決しなきゃいけないかなあ、とは思ってるんですけどねえ」
吉澤が明るさを取り戻している。
いいぞ。
もう一押し。
「吉澤、今から隣の部屋行くぞ。それで石川に宣言するんだ」
「でも、それは・・・」
「いいから。市井がついてるから。私に続いて同じこと言えば大丈夫だからな」
でも、とか、やっぱり、とか言っている吉澤の頭をはたいて立ち上がらせる。
そして、私達は、石川と後藤が自習している部屋へと向かった。
- 98 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:34
- 「石川!」
「石川!」
腰に左手を当て右手で石川を指差すと、吉澤もまったく同じ格好をした。
いや、そこまで真似しなくてもいいんだけど。
石川と後藤は、ぽかんと口を開けて私と吉澤をそれぞれ見ている。
「石川! 吉澤はなあ、お前の言うなりになんかならないぞ!」
「石川! 吉澤はなあ、お前の言うなりになんかならないぞ!」
「よ、よっすぃー、突然、なに言い出すの?」
「あ、あの」
「吉澤、いいから」
吉澤を目で殺す。
それから続けた。
- 99 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:35
- 「吉澤はなあ、池面鍛錬高等学院にいくんだよ! 可愛可憐学園なんか行ってたまるかってんだ!」
「吉澤はなあ、池面鍛錬高等学院にいくんだよ! 可愛可憐学園なんか行ってたまるかってんだ!」
ぽわわーんとした目で石川は吉澤のことを見つめた。
「よっすぃー、よっすぃー。やっと私の気持ちに気づいてくれたのね。私ね、よっすぃーには、とてもかっこよくて強い子になってほしかったの。だから、私、うれしい。よっすぃーのこと、応援する!」
な、なんだ?
あっさりオッケー?
肩透かしを食って、こぶしのふりおろし先に困っていると、隣で後藤が私のシャツのすそを引っ張った。
- 100 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:35
- 「いちーちゃん、いちーちゃん」
「な、なんだよ。後藤も進路指導するか?」
後藤の進路、市井の妹、って、そうじゃなくてだ。
後藤にもちゃんと指導してやらないとなあ。
「いちーちゃん」
「だからなんだよ」
「池面鍛錬高等学院って、男子校」
・・・・・・。
一瞬、その場は氷ついた。
- 101 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:35
- 「あほ」
静まり返った部屋に、私のつぶやく声が響く。
そんな空気を、石川がぶち破った。
「よっすぃー。あきらめることないからね。自分に自信を持って。そうすれば不可能なことなんて無いから」
「そ、そうかなー?」
・・・・・・。
吉澤の奴、頭に右手を当ててへらへら笑ってやがる。
- 102 名前:進路指導3 投稿日:2004/12/12(日) 18:35
- 「先生、先生がついてるから大丈夫って言いましたよね。なんとかしてくださーい。そういう病院紹介してくださーい」
私は、思いっきり吉澤の頭をはたいてやった。
わかったよ。
違う病院紹介してやる。
そして、一生出てくるな。
- 103 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 18:57
- ナイス
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 19:05
- ワロタw
- 105 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 22:12
- クククッ
- 106 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:57
- 四月になった。
手のかかる子も、手のかからない子も一つ学年が上がる。
受験生組は、それぞれに第一希望とはいかなかった子もいたけどまあなんとか進学先にありつけたようだ。
今、私の目の前には何人かの子供達が座っている。
新学期になって新しく入ってきた生徒達だ。
- 107 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:57
- 私と圭織は貯めていたお金を使って塾を作った。
小さな小さな個別指導塾。
生徒は、それぞれのこれまで教えていた生徒プラス募集をかけてそれなりの人数集めている。
生徒が増えたからバイトも雇おうか、ということを考えていたら、無事大学生になった矢口と圭ちゃんが手伝ってくれるというので格安のバイト代で雇うことにした。
裕ちゃんとなっちもバイトさせてと言ってきたが御丁重にお断り申し上げた。
私達にも生活がかかっているのだから当然だ。
- 108 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:57
- 矢口は良く働いてくれている。
合コンに行くのにお金がいる、と言っていたので、ちゃんと自分でお金出してるんだー、と褒めたら、あたり前のように、「飲み代は男持ち」という返事が返ってきた。
お金は化粧品に消えているそうだ。
まあ、どんな化粧をしようと、仕事をちゃんとやってくれれば文句は言わない。
加護や辻相手に文字通り同じ目線に立ってわいわいやりながら教えている姿はなかなかに微笑ましい。
- 109 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:57
- そんな矢口と同じ大学で地方言語研究科に通っているなっちは、矢口曰く「ほとんど学校で見かけない」そうだ。
気になってもうすこし話を聞いてみると、中古のゲームショップでバイトしていると言う。
知り合い割引で安くゲームを手に入れようというゲーマーな私の下心が動いたから、わざわざ行ってみた。
話を聞くと、夕方からのバイトで、夜中に帰ってそれから朝までプレステして寝て起きてバイト、という暮らしらしい。
彼氏とか大学はいって出来ないのかー? と聞いたら、朝までゲームする友達ならいるけど彼氏はいないとのことだ。
まあ、なっちなら地方言語学に関しては勉強する必要もないだろうから大丈夫だろう。
- 110 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:58
- 圭ちゃんは結局早稲田には入れなかったけど、その他のすごそうなところ総なめにしていった。
だけど、デッサンの力なしで建築ってやっていけるんだろうか?
まあ、そこまでは私の仕事じゃないから知ったことじゃないか。
圭織が、美術の授業してあげようか? と圭ちゃんに何度も言ってるけどどうなることだろう?
まあ、圭ちゃんもバイトの先生としてはかなり役にたつ。
石川、吉澤、後藤といった生意気ばかりの子達に睨みを聞かせてくれるので本当にたのもしい。
- 111 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:58
- 裕ちゃんは、結局上位志望は全部落ちて、滑り止めに受けた顔塗工科大学に受かってそこへ行った。
三十で大学生活大丈夫か? と思ってたけど、リーダーシップを取ってくれる元気なおばちゃんとして人気なようだ。
ただ、合コンなんかには呼ばれても、単なる盛り上げ役でお持ち帰りはしてもらえていないらしい。
そのせいか、最近は女の子に手を出すようになってきて怖い、と矢口がこぼしていた。
生徒達にまた可愛い子が入ってきた今、ホント裕ちゃんを雇わなくてよかったと思ってる。
- 112 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:59
- 高校生クラスでは、相変わらず石川と吉澤後藤の三人が仲良くやっている。
変ったことと言えば、吉澤が年上の石川に対して冷たい態度が取れるようになったことだろう。
それに従って石川がどんどん変な奴になっていっているが、気にしないでおく。
そんななかでも後藤のかわいらしさは変らない。
気持ち的にはただでも教えたいところだ。
そのうち特別に保健体育の実習をしてやろうかと思う。
- 113 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:59
- 中学生組では、加護と辻が友達をたくさん紹介してくれた。
あいつらのキャラだから人気はあるとは思っていたけど、塾に生徒を紹介できるほど人徳があるのは意外だった。
連れてきた生徒達は、まあそれぞれ個性が合って面白い。
一人年上の高橋は、私にタキシード着ろだ、袴着てみてくれだの、自分を抱えて持ち上げろだのうるさい。
私のことを宝塚か何かと勘違いしてるんじゃなかろうか。
加護が連れてきた紺野は、加護よりもさらに成績が良かった。
今度のテストで一科目でも百点を取ったら、なっちの店で一本好きなゲームを買ってやる約束だ。
紺野のことだ、マニアックな一本を選んでくれるだろう。
小川は成績は平凡で、しゃべることも平凡で、その普通なところがかわいらしい。
ただ、授業料を取るのが申し訳なくなるくらいつつましく倹約してるところを見ると、寂しい気持ちになって来る。
辻が連れてきた新垣は、・・・・・・ 頭をかかえるくらい成績が悪かった。
社会の小テストの答えは、コント以外の何物でもない・・・。
- 114 名前:エンディング 投稿日:2004/12/31(金) 23:59
- とりあえず、これだけの数の生徒がいれば、まあなんとか塾としてやっていけるでしょう。
どいつもこいつも手がかかって仕方ないけど、それも楽しさのうち。
なんだかんだで、なついてくれる子供達がいることが楽しい。
「せんせい。わかんない」
「よし、どこだ?」
苦労は絶えないけど、可愛い子達に勉強を教えるのは楽しい。
この子達も、きっとどんどん成長して行くんだろうなあ。
「先生、ジュマペールってどこの国の首都ですか?」
辻の指差す先で、新垣が笑っていた。
・・・・・・。
- 115 名前:市井先生の授業日記 投稿日:2004/12/31(金) 23:59
-
市井先生の授業日記 おしまい
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/01(土) 02:16
- おもしろかった
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 21:59
- ぐっじょぶ
- 118 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/04(火) 17:44
- 面白かったっす。どこかで続き期待。
- 119 名前:ミッチー 投稿日:2005/01/10(月) 14:55
- おもしろかったです。
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