ののたん聖誕祭

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/07(月) 01:29
さて、来週はモーニングの奇跡、辻希美さんの誕生日です、イェイ!
ってなかんじで生誕スレです。
ロリキャラのののたんから、大人な希美さんまで、いろいろ書いちゃってください。
サイズ、期限共に無し、書きたいモノをどうぞお願いします。

( ´D`)ノ<がんばるのれす!
2 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:22

 のんさん

3 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:23

れいなちゃんが不注意で弁当を床に落としてしまいました。
それはそれは美しいまでに見事な反転です。

あまりに隙のない悲劇にれいなちゃんは泣き出したしまったという。

そんな時にのんさん。

「れいな、泣くんじゃない!のんの一個あげるから!!」

お弁当を三つ重ねたのんさんは、その一つを田中に差し出しました。
涙ぐみつつも、それを受け取るれいなちゃん。

その影で、強制ダイエット中のあいぼんと麻琴は泣いていたそうな。

4 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:23

何がなんだかわからないけれど、素のアイドルを目指す里沙ちゃん。
素というより、野放しなメンバーが多い中、何故か素の姿が目立ってしまう里沙ちゃん。
今日も素全開です。

ありとあらゆる穴が開き、何やら出てしまっています。
これも立派なキャラ作り、修行の一環なのです。
ですが、女の子としてあるまじき姿だと、梨華ちゃんが注意します。
「ちょっとガキさん、はしたないわよ」
「たいがいにしろよ、石川」
あらら……里沙ちゃん、ついに時代を呼び起こすのですね?

そういうのは微妙に慣れた感じの梨華ちゃんですが、それでもやっぱり傷ついてしまいます。

そんな時にのんさん。

「えーっと、なんだっけ……」

まごついてしまいました。

「慣れっこよ、私、こんな……」
梨華ちゃんはそう強がるものの、やっぱり辛かったんだとさ。

5 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:23

「あらら、困ったわ。私の友達がいないわ」
圭織ちゃんの大親友、クマちゃんのパンツがないみたい。

なんで履いているはずのパンツ君が行方不明かって?
そんなの知らないよ。

慌てふためいた圭織ちゃんは、絵里ちゃんに八つ当たり。
「あんたの靴下がそそのかしたのよ!!」
最近はちゃんと靴下にも気を使っている絵里ちゃんは泣き出してしまいました。

そんな時にのんさん。

「カオリン!クマちゃんは森の方がお似合いよ、旅立ったのよ!!
今日は私のクマちゃんで我慢なさい!!!」

鞄からお気に入りのシルベニアファミリーを取り出したのんさん。
困ったように受け取る圭織ちゃん。

挟めば下着代わりになるかもしれないけれど、食い込むし、刺激たっぷり。
ホタテに次ぐセクシー下着だね!

絵里ちゃんはその後、愛ちゃんに慰められたのが傷になったそうな。

6 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:24

「わたし、もうかわいいキャラにちかれたんです!!」
さゆみちゃんは、突如そう叫びます。
実際かわいいとは思うけど、なんて加入当初はなかった恥じらいがちに言います。
ほっぺをぽっと赤らめて。

ぽわ〜んとしてしまった男スタッフをはじめ、圭織ちゃんや美貴ちゃん。
いつの間にか過ぎ去ってしまった思春期を思い起こし、なんだかモジモジと照れてしまいました。

「ええい。こうなったら、かわいいおかおにカッターをつきさしてやるー!かわいくなくなってやるぅ!!」
さゆみちゃんの金切り声に、圭織ちゃんをはじめ、大人は大慌て。

あれれ?でもなんかおかしいよ。
さゆちゃんの声、トーンが一つ高くて甘い感じだったし、芝居じみてたよ?
それにほら、後ろの絵里ちゃんだってほくそえんでる。
いつかの仕返しかな?

そんな時にはのんさん。

「かわいいだけのキャラが嫌なら……バカになればいいんだよ。もしくは太る」

のんさんの言葉には説得力があり、重く響きます。
さゆみちゃんは溢れる涙を隠せずにいます。

よくわからないけど、それで解決らしいです。
絵里ちゃんは手を叩いて大はしゃぎ。
それを見たさゆみちゃんも嬉しそう。

そんな話です。

7 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:25

「私、太ってないもん、ぽっちゃりしてるだけだもん!」
特にきっかけもないのですが、麻琴ちゃんが叫びます。

あー、そうですか。
麻琴ちゃんの言うことには、メンバーみんな無関心。
ケメ子の「おえぇ」くらいのお約束。
でも、麻琴ちゃんは悲しそうに大きな体を縮めて蹲ってしまいます。

そんな時にのんさん。

「のんが太ってた時、踊れないくらいに体が重かったよ」

「ごめんなさい」
麻琴ちゃんは土下座で謝ります。

太ってるのに、ミュージカルで太り役を演じきったマコっちゃんに幸あれ。
麻琴ちゃん、背中や足の指の間や膝の裏に肉がついてても可愛いよ!!

8 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:25

「ホントは『ぶりんこ』がよかった……」
亜依ちゃんの表情が翳ります。
いや、これは影なんてものじゃない、闇そのものだ!!

そんな時にはのんさん。

「あいぼん、一緒に頑張ろっ!のんはいつでも一緒だよ!!」

亜依ちゃんはたちまち元気になりましたとさ。


9 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:25

「21なのにおばさんかよ、裕子かよ……」
真里ちゃんの表情が翳ります。
いや、これは影なんてものじゃない、闇そのものだ!!
でもウソくさい。

真里ちゃんは亜依ちゃん大好き。
マネしたくなっちゃうのです。

暗くはならないけれど、深刻でもないけれど、真里ちゃんは次期リーダー。
ちっちゃいのに、空気読めるのに知らん顔で前に出るのが好きなのに、次期リーダー。
しかも、あいぼんのその後に。
無邪気なおばかさんは、自分を見てほしいがためになんだってやってしまうのです。

ある意味、一番嫌な種類の空気が流れてしまいます。

もう頼れるのはこの人しかいない!
のんさん!!

「でも、やぐちさんはいいほうだよ……」
のんさんは俯いたまま、誰とも視線を合わさずに指差します。
その人差し指は力なく垂れ、のんさんの腕はふるふる震えています。
10 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:26
え?誰を指差したの?
心当たりのある何人かはドキッとした顔をします。

「え〜、わたしぃ?吉澤さんじゃないのぉ?」
「ばっか、マコトおめー。二ヶ月くらい前まで高校生だっつーの!飯田さんかお前だよ」
「えぇ!?圭織?私、確かにちょっと老けてるかもしれないけど、年相応だよ。役柄とか、何にしても年相応よ。ぷぅ〜。それよりも石川よ」
「なんで?私、かわいいじゃない?それに、まだまだ現役よ?あ、美貴ちゃんじゃないの?」
「はぁっ?美貴?美貴は六期だもん。それより矢口さんなんてネタにもならな……」

うっわ〜、泥沼。
何のことかよくわからないけれど、娘。の半分くらいは無理してる、ということですね。
みんな何も言わないけれど、それぞれに何か胸の奥に秘めている部分があるのですね。

ちなみに真里ちゃん、やっと話を振られて満足したようでした。

11 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:26

「私のおいも……」
悲しそうに楽屋の隅でうずくまるあさ美ちゃん。
大事に取ってあったおいもがなくなってしまったようです。

「また買えばいいじゃない」
矢口さんが励ましますが、そういう問題ではありません。
そのタイミング、その時間に食べられないことが悲しいのです。

そんな時にのんさん。

「あ、ごめん。のん、あれ食べちゃった」

……そうですか。

12 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:26

「パンチラ嫌なの!客席の視線が嫌なの!!エコも嫌なの!!!」
ミュージカル開演直前、愛ちゃんが塞ぎこんでしまいました。

最初に崩れたのは高橋か……
その場にいたメンバーは、皆一様に暗い顔です。
愛ちゃんを責めようがありません。
だって、だって……

そんな時にのんさん。

「のんなんてさー、自分でチラりまくってんのに笑われるんだからさー」

そうなんだけどね、でも、何となくわかるでしょ?
のんさんと愛ちゃんのパンチラの違い。
けど、のんさんはわかりません。

だからなに?
いいじゃないのさ。

哀さんになってしまった愛ちゃんは、大人に説得されてミュージカルに出ましたとさ。

13 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:27

梨華ちゃんはいつものように舌打ちします。
最初は笑い混じりの和やかなものだったのですが、最近は本気で苛立っているようです。
「ちっ、大の大人が揃いも揃ってよぉ!」

そんな時、のんさんは決まって言います。
たしなめるようにでもありますが、愛ある説教です。厳しいです。

「ファンの人、みんな一生懸命応援してくれるんだから、そんなこと言っちゃダメだよ!」

そして、蹴りをひとつ梨華ちゃんにお見舞い。
「ちょっと、のの、いったぁ〜い!!」
「ののの心の痛みに比べれば、そんなもの痛みではない!」

「ちょっと辻ちゃん!ファンの人がどうのって、まんま美貴のパクリじゃん!!」
美貴ちゃんのつっこみもお約束。

でも、リスペクトあるパクリはHello!内では認められているのです。
だって、ぷろりゅーさーさんがそうなんだから。

「えへへ」
いっけね、のんさんは頭をかきます。

今日ものんさんは元気。

14 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:29

今日はミュージカルの千秋楽。

いつでものんさんはフルスロットル。
ステージ中を所狭しと元気に笑顔ではしゃぎまくります。
思い残し?
あるよ、あるけど……
のんさんは今を懸命に楽しむのです。

この前はアドリブの長セリフで大笑いしましたし、スカート捲りあげてあはんうふん。
その次の日は恥じらう美貴ちゃんを抱き留めましたし、スカート捲りあげてあはんうふん。
今日もテンションMAX、アドリブだってちゃんと言えたし、たくさん笑いを取りました。
そして、やっぱりスカート捲りあげてあはんうふん。

娘。に入って、毎日がとっても楽しい。
のんさんは、いっつも笑顔を絶やしません。

そして舞台終わり、ぺたんとステージに座り、幕が降りるまで客席に手を振りつづけます。
幕が降りました。

再び幕が開き、最後の挨拶を終え、のんさんは舞台裏にはけます。
本当にミュージカルはおしまいです。

 ふぅ〜

大きく息を吐いたのんさん。
充実感の端にある何かに想いを馳せてしまったのでしょうか。
下を向くと、不意に涙が零れ落ちてしまいそうになります。


「のんつぁん、行こ?」
前を歩いていた紺ちゃんが振り返り、のんさんに声を掛けます。

のんさんはぐっと息を飲み込み、涙をしまいます。
今はまだ、13人の仲間といるのですから。


15 名前:のんさん 投稿日:2004/06/13(日) 22:29
おわり
16 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:50




「ある日のシダ研」
17 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:52




ここは某中野サンプラザの楽屋。ドアには「シダ研究部・部室」と汚い字で書かれた張り紙がしてある。
「て言うかさあ、シダ研究部ってハァ? って感じだよね。シダなんか研究して何でエコロジーに繋がるか意味がわかんないよね、マジで」
鼻をちーん、ちーんとかみながら不平を述べる藤本。顔はもちろん「素」である。
「まあねー。つんくは劇の中で何だかんだ理由つけてたけど、のん全然わかんなかったもん」
スナック菓子をぼりぼり頬張りつつ、辻が答える。
「まあつんくのアイディアも年々枯れてってるしね」
「しょうがないって。だってつんくだもん」
自らのプロデューサーを呼び捨てにした挙げ句、大口を開けて笑う二人。
「それよりさあ」
スナックパウダーでべたべたになった手を楽屋の床になすりつけながら、問う辻。
「何?」
「シダってさ、何」
暫し楽屋の時間が止まる。
18 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:54

「辻ちゃんさ、あんたシダ研でありながらシダが何かもわからなかったわけ? マジで? 信じらんない」
飯田に説教されている時のような顔をしながら、辻を問いつめる藤本。
「まあのんは女優だからね」
「女優だったらシダが何かくらい調べておきなさいよ、まったく。これでもうすぐ17って言うんだから末恐ろしいわ。美貴が17の頃は(ry 」
聞いてもいないのに、某写真誌に載っていた記事そのままのことを語り出す藤本。お塩平八郎の乱なんて目じゃないよ、と感心する辻だったがあくまでも質問の手は緩めない。
「だからだよ。のんが17歳の誕生日を迎える前に、シダが何であるかってのを知りたいんだよ」
「え、そ、そうなの?」
急にそれまでの美貴帝ぶりから、しおらしい態度になる藤本。
「まさか、ミキティは知らないはずないよね? だってもう大人だもんね。17の頃には(ry なことしてたミキティだもんね?」
「いやそれはその…」
普段子供も震える素の顔を持つ程の攻撃派藤本だったが、守りに転じると意外なまでの脆さを見せるのだった。
「えーっ、知らないの!? そりゃあソロも首になるわなー」
この野郎…
藤本は思わずオラオラ(高橋ではない)をかましそうになったが、一応アイドルなので我慢した。その代わり、力ではなく知恵で辻をボッコボコの、ギッタンギッタン(by 剛田たけし)にしてやろうと思うのだった。
19 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:55

が、実は藤本もシダが何であるか、よくわかっていなかった。世界地図の読み方も分からないような女に、知を求めるのがそもそもの間違いだった。まったくモーニング娘。は阿呆の集団だ。
しかし不幸中の幸いなのは、相手もまた筋金入りのバカ女王だということだ。何か適当なこと言ってごまかしてやろう、と企む藤本であったが。
「シダはさあ、あれだよ、課長だよ」
「それは取締役・島耕作」
「じゃあツッパることが男の」
「それは嶋大輔」
「伏せていたまえ」
「天空の城ラピュタかよ! 古いよミキティ!」
次々に嘘を論破される藤本。
て言うか何で取締役? その上マニアック過ぎるよ辻ちゃん、と心の中で突っ込んだり泣きを入れたりする藤本だが、諦めてはいなかった。
20 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:57

「シダってのはさ、あれあれ。緑っぽいやつ」
決まった! 逢えない長い日曜日のサビの裏声がすっと出た時くらい決まった! 
熱っちい地球を冷ますんだ、というからには地球に優しい存在に違いない。地球に優しいものと言えば緑、これが定説だ。現に、ガチャピンだって緑のおばさんだって五月みどりだってあんなに地球に優しいじゃないか。
「うーん、なるほど」
勝った! 勝ったぞこんちくしょう!!
目の前の納得している八重歯ちびを目の当たりにし、藤本は歓喜のむせび泣きをしそうになった。この百戦錬磨、酒もタバコもイッツオールライトの美貴様に知力で逆らうなんざ10年はえーんだ! と、この世の幸せを噛み締める。しかし、辻のコンパクト脳は新たな疑問を生み出していた。
「じゃあさ。どうしてのんとミキティーはその緑っぽいやつの研究会役になったわけ?」
21 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 02:59

な、なあんでそんなこと聞くんですかー!?
藤本は余りの衝撃でかずの子になってしまった。
せっかく人がない乳、いやない知恵絞って適当な答え出したって言うのに、何でその努力を無にするような発言すっかなあ。大人の事情なんだよ、大人の事情、と身も蓋もない解答をしようとも思ったが、従うとは負けることと尾崎豊が言ってたことを思い出し、踏ん張った。
「うーん、わかんねー」
そう、最初からそう言うべきだったのだ。人間素直が一番ですね。
「そっか、美貴たんでもわかんないんだね」
「まあね、って美貴たん言うな」
辻が松浦の真似をして、たん、たんと連呼する。
「…でもさ、何で二人がシダ研に選ばれたんだろうね」
「選ばれた、ってのは違うんじゃない? 当てがわれたって言うか、適当に放り込まれたって言うか」
選ばれたってのは、梨華ちゃんと重さんのエコモニ。みたいなのを言うんであって。まああれも微妙か。藤本は心の中でそんな不謹慎なことを考えていた。
22 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 03:01

「物事には、必ず何らかの理由があるはずだよ」
辻は普段は見せない真面目腐った顔で、そう言った。
藤本は頭をハンマーで思いきり殴られたような衝撃を受ける。
何この子? 何げに凄いこと言ってるんじゃないの? そっか、そうなんだ。物事には何らかの理由があるんだ。美貴が北海道の真ん中らへんに生まれたのも、ハロプロに入ったのも、矢口さんの顔が急に変わったのもよっちゃんさんが加入当初の面影もないのも加護ちゃんの髪の毛が薄いのもみんな理由があるんだ!
「よしわかった、じゃあシダ研に入った理由を二人で考えよう」
「うん」
取りあえず話は前に進んだものの、娘。の中でも知的にも乳的にも貧民街に住まう二人であるからして、まったくと言っていいほど結論らしきものは出なかった。
23 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 03:03

「ぜっんぜん答えでないねー」
「辻ちゃんさ、さっきからお菓子食べてばっかで何にも提案してないじゃん」
「ちっ、ばれたか」
「ばれたか、じゃねーよ。もともとは辻ちゃんが持ち込んだ議題でしょ」
藤本の言うことは至極正論なのだが、辻の中ではそれはそれでええやん、みたいな空気が流れはじめていた。要するに、飽きたのだ。
それを獣のような勘で察知した藤本。激しく辻を睨み付けた。
この野郎、17歳に相応しく背中に十七歳の地図でもナイフで彫ってやろうか? それとも憂鬱の鬱の字がいい? ああん?
と目で訴えると、辻は「らってじまんするんらもん!」と泣き叫ぶ直前に安倍に「後で食べようねー」と強がってみせた時のような表情になった。
「おっ、泣くか、泣きやがるか! 泣いて済むなら泣きやがれ!」
「あ…うっ、うっ」
「泣くんだ。ハンバーグしかわかんなかったのにぃ、って目と唇腫らして泣いた誰かさんみたいに泣いちゃうんだ。へえー。ふうーん。もうすぐ17歳になるのに辻ちゃん泣いちゃうんだ」
そう藤本が楽しげに煽っていた時のことだ。
シダ研究部の部室、ではなく楽屋のドアが開け放たれた。
24 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 03:05

「あれは涙じゃありません! ハンバーグをのんちゃんに奪われた悔しさと、安倍さんのあまりに理不尽な発言に対する抗議を体を使って表現したまでです!」
鼻息荒く登場したのは、紺野。
「要するに泣いたんじゃん」
藤本の冷静な突っ込みにしばし顔を赤らめる紺野だが、せき払いを一つすると、改めて二人に向き直った。
「何やら楽しそうに議論しているみたいですが、何故このディベート部所属の紺野あさ美を呼ばないのか、理解に苦しみます」
「あれ、あさ美ちゃん確かフットサル部じゃ…」
辻がそう言いかけるのを、紺野はふぐ面をして否定する。
「何がフットサルですか! どうせ無能未納不能プロデューサーが『ハロプロの暇そうな連中集めてフットサルやらしたらおもろいやん、おめでとう、イェイ!』とか適当に決めた作業に何故この私が参加しなければならないんですか! もうね、そんなんやらされるくらいならここでウ○コするぞ俺は!」
何故カンニングのネタ? と思いつつも紺野の主張に圧倒される二人。
「ところで、何故お二人がシダ研究部という劇中ではどうでもいい…ゲフンゲフン…いや縁の下の力持ち的存在の役柄になっているか、という議題ですよね?」
こいつ盗み聞きしてやがった…
人畜無害そうな顔をしてやることがえげつないな。藤本と辻は共通の認識を持った。
25 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 03:08

「実はですね。その理由はシダ、を漢字で書くと一目瞭然なんですよ」
「はぁ? 何それ」
まるでヤクザが因縁をつける時のような顔で凄む藤本。
「いいから、とにかく書いてみて下さい」
そう言いつつ、紺野はどこから持ってきたのか、二組のペンとメモ帳を取り出した。
言われるままに、メモ帳に文字を書いてゆく二人。しかし、紺野の表情は冴えない。
「あの、藤本さん。『死蛇』って何ですか。まさかシダを漢字で書いたつもりじゃないですよね。あと、隣に『夜露死苦』とかいう意味不明の四字熟語が書いてあるんですけど」
恐る恐る指摘する紺野に、藤本は不満そうな顔をする。
「それとのんちゃん、何この記号は。漢字ですらないじゃない。まったくアホかとバカかと。もういいです。お二人に期待した私が馬鹿でした」
紺野は大きくため息をつき、それから自分で漢字を書きはじめた。
「何これ…羊歯?」
「そうです。羊の歯と書いて、シダって読むんです。あとは御自分たちで考えて下さい」
ふらふらとよろつきながら、楽屋を後にする紺野。二人の予想以上のバカ女っぷりに、かなりのダメージを負ったようだった。
26 名前:「ある日のシダ研」 投稿日:2004/06/18(金) 03:13




「羊の歯とうちらの何が関係してるのかな?」
「さあ、羊の歯みたいに逞しく生きろってことじゃない?」
「そういうことか」
「そういうこと」

                          おわり
27 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:26
やがて融けゆくもの
28 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:27




「ああ、W(ダブルユー)ですか? あれはちょっと思い出したくない過去ですね。
恥ずかしいって言うか、ああいうユニットを組んでたって知られたくないって言う
か。ええ。はい。あの…あゆさん、いるじゃないですか。そう、浜崎あゆみさん。
あの人、昔子役だったんですよね。それから女優の中谷美紀さんも二人組のアイド
ルユニットでデビューしたっていう話で。そうですね、似てますね。でも加護は、
元Wの加護亜依でなくて、加護亜依って昔Wってユニットを組んでたんだってね、
って…」


29 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:28


手元のリモートコントローラーの照準を、静かに合わせる。
テレビはぱちっと小さな音を立てて、それから沈黙した。

加護亜依。
今や国民的人気を獲得したと言っても構わないくらいの勢いを持っている、
アイドルアーティスト。
彼女のブレイクは「第二のラブマシーン」と呼ばれ、ジリ貧だった事務所
は彼女のおかげで再び活力を取り戻した。事務所の中でもどうやら加護亜
依さまさまらしく、事務所も強気に彼女と娘。の元メンバーなんかを抱き
合わせブッキングしているという。
まあ、強制的に事務所を追い出されたあたしには、まったく縁の無い話だ
けれど。
30 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:30

一方、あたしはと言うと。
Wの結成から一年後。突然事務所に呼び出されたかと思えば、普段は
縁のない重役室に通された。
そこには事務所の会長をはじめ、お偉いさんたちが勢揃いしていて。
その隅の方で、プロデューサーのつんくさんが居心地悪そうに座って
いた。
「辻あんなあ・・・」
「寺田君は何も言わなくていいんだよ。これは私たち、いや事務所全
体の意向だからね」
つんくさんが喋ろうとするのを、隣のスーツを着たおじさんが遮った。
何となく、暗い雲が心の中を覆い始めていた。
「単刀直入に言わせてもらうよ。辻君、君には芸能界を引退してもらう」
とは言え、この言葉は俄かには信じがたかった。泣いたり、怒ったり、
理由を聞くこともできず、ただ何故の嵐が脳内を拭き抜けていた。
今思えばあの時の出来事が原因だったのだろうけど、当時はそんなことを
考える余裕などないに等しかった。
31 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:32

「Wが不振なのは一重に君の力不足だとは思わないか」
「このままでは君の親友の加護君の経歴にも泥を塗ることになる」
「加護亜依のソロデビュー、という話が出ているんだ」
「しかし君がいてはそれすらままならない。世間は君たちを二人で一人
だと見ているからね」
「そこで君には学業専念のため、という理由でこの世界から身を引いて
もらいたい」
「言っちゃ悪いがどうせもともと加護君のおまけ的存在だったんだ。18
にもなれば引き際くらいわかるだろう」
今にして思えば、事務所の都合で適当に取って付けたような理由ばかり。
でも、当時のあたしはただ黙って下を向いているしかなかった。
「まあ、そういうことだ。ご両親には既に話は通してあるから契約云々
のことは心配しなくていい。用件は以上だから、もう下がってもいいぞ」
最後に、テーブルの真ん中に座っていた人が、何の感情もない言葉でそ
う言った。
崖の縁に立つあたしを突き飛ばそうとする、黒い手。思わず、見知った
顔に救いを求めるように顔を向けた。
「…済まんなあ」
だけど目に映ったのは、情けなくへらへらと笑う、金髪のくたびれた中
年だった。

あたしは成す術もなく、落ちていった。
32 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:33


幸か不幸か、その後しばらくして小さな事務所に拾われた。
12でデビューしたころからあたしを買ってくれていた、ある番組
プロデューサー。
彼の下で働いていた人が、事務所の社長をしていた。
決して満足な芸能活動はできなかったけれど、芸能界から完全に消
え去ることだけは免れた。
既に高校を卒業していたためか、昔の事務所から妨害を受けるよう
なことはなかった。
おかげで、地方局ながらも週一でラジオのパーソナリティの仕事を
任されている。
それでも。ブラウン管の中で活躍する彼女を見て、思う。

もう彼女は、あたしの手の届かない世界の住人なんだ…
彼女の活躍を耳にし、目にするたびに遠い気持ちにさせられる。
その度に耳を塞ぎ、目を覆おうとしたけれど、この業界にいる限り
は情報の流入を抑止することは不可能に近い芸当だった。
33 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:34

そのうちあたしは、自ら進んで彼女の情報を欲するようになっていった。
ついさっきも、長寿番組であるトークショーに彼女が出演するという話
を聞き、控え室のテレビをつけたところだったのだ。
自虐的行為と言われてしまえば、否定のできない話ではある。
何のために、と聞かれてもきっと答えることなんてできないだろう。
けれど最後はどうしようもない嫌悪感に襲われ、目を背けてしまうのだ
った。
いつもながらに、自分が情けなくなる。

あたしはあたしの道を選び、
彼女は彼女の道を選び取った。

それでいいじゃないか。
結果的に彼女は成功し、あたしはこんな業界の隅で生きざるを得ない。
でも、自分の選択は間違いなかった。
胸を張ってそう言えた。

なら、どうして心に広がった砂漠はいつまで経っても消えてくれない
のだろう。
34 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:35

「希美さーん、本番10分前です」
「わかった」

部屋の外から聞こえてくるスタッフの声にそう返事すると、あたしは
糸引く闇のような思考をやめて、控え室のドアに手をかけた。
35 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:36


ローカル放送局のくせに、スタジオへと続く廊下はやたらと長い。
ここを通るたびに感じる、底知れない不安と嫌悪感。
一見理不尽にも思えるこの感情の出所は、きっとあの時の出来事だろう。
そう言えばあの場所も、ここくらいに長い廊下で照明もまた薄暗かった。
ふわりふわりと浮かぶ記憶の断片を避けるように、廊下を突き進む。
大丈夫。いつも通ってる道じゃないか。
そう言い聞かせるように、ヒールの音を高く鳴らす。
けれど、そういう時に限って運命は、残酷だ。
何の前触れもなく、次々に落ちてゆく廊下の照明。

記憶の扉が、開かれる。
36 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:37


あたしたちWの、最初で最後のソロコンサート。
あたしとあいぼんは、自分たちの泊まるホテルとは別のホテルの廊下に
立っていた。
照明が薄暗く落とされている中、あいぼんの青白い顔だけがやけに目に
染みた。
「なあのの、ホンマに気持ち、変わらへんのか?」
あいぼんが、困ったような表情でそう言った。それはあたしが我侭を言
う時に良く見た、お馴染みの表情のはずだった。
その表情が冴えなかったのは、連日のコンサートの疲れだけではなかっ
たはずだ。
「うん。のんは…行かない」
一言だけ、はっきりと言った。自分なりに考え抜いた結論だった。
「のんは嫌だよ。そんなことするくらいなら、死んだほうがマシ。あい
ぼんは、そんなことまでして売り出して欲しいの? そんなことするた
めに、娘。のオーディション受けたの?」
37 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:38
「ちゃうわ!!」
あいぼんの声が、長い廊下に響き渡る。
「うちかて、こんなんしとうない。せやけど、断ったらWはしまいや!
今までうちらがしゃかりきでやってきたことが、みんななかったことに
なるんやで!」
彼女の力強い言葉に、何度励まされたことだろう。彼女のまっすぐな眼
差しに、何度自分を見失わずにいれたことだろう。
けれども、今の彼女の言葉だけはどうしても受け入れるわけにはいかな
かった。
「じゃあお終いでいい」
「のの!!」
不意に腕を掴まれたその瞬間。
あたしの何かが、壊れてしまったのかもしれない。
小さな手を振り解いた後に口走った言葉は、驚くほど冷めていた。

「そんなに売って欲しいんだっら、あいぼん一人でやんなよ」
38 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:39


かつてあたしたちは、お互いを自らの半身に喩えた。
でもそれは結局は、世間知らずの子供の幻想だったのかもしれない。
所詮あたしはあたしで、あいぼんはあいぼんでしかなかったのだ。
そのことが証明されたに過ぎない。
今思うと、そういうことなのだろう。

39 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:40


廊下の照明は、すぐに再点灯された。
あたしの魂も再び現実へと、還ってゆく。
思い出したくない、そして忘れることのできない記憶。
けれど二度とは戻ることのできない、時間。
あたしは、間違ったことをしたわけじゃない。
自らの意志を確認するように、スタジオの扉を開ける。
「のっぞみちゃーん、元気ぃ?」
あたしの姿を認めるや否や、番組のディレクターが軽薄な挨拶をしてきた。
「おはようございます」
「今日も爽やかな番組進行頼むよう。のぞみちゃんの曜日、評判いいからさあ」
適当に相槌を打ち、さっさとブースに入る。
あたしはただ、与えられた仕事をきっちりとやり遂げるだけ。大きな成果はな
くても、確実に地位は守られる。あの事務所にいた時には、考えもしないこと
だったけれど。
40 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:41
ブース内の照明が眩しい。
さっきの停電のせいで暗闇に目が慣れてしまったせいだろうか。
マイクをONにしてそのことを照明担当に伝えると、首を傾げながらも了承
してくれた。どういうわけか調整したと思しき後もその眩しさは変わらなか
ったけれど、もう一度言うのは億劫だったので何も言わなかった。

「のぞみちゃーん、本番十秒前」
「5秒前」
「3」
「2」
「…」
41 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
川o・-・)
42 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:46


いつもと同じ、少し早めのこんばんは。『トワイライトステーション』
木曜パーソナリティ、辻希美です。 それでは、早速お葉書いきたいと
思います。東京都杉並区のペンネームE&Mさんからのお葉書。

希美さん、いつもオンエア楽しみにしています。わたしは高校一年生の
女の子です。実は希美さんに聞い てほしいことがあるんです。この前友
達と、先生たちが出払った後の職員室でふざけてたら、誤って机の上の
コーヒーカップを倒しちゃったんです。当然のことながら机の上はコー
ヒーまみれ、しかもその机は 気に入らないことがあるとすぐに手の出る、
こわーい先生の机。すぐに先生に謝ろうと思って友達にそう言ったんで
すが友達に止められてしまいました。その時友達がわたしの腕を掴んで
きたんですけど、その子の手が凄く震えてたんです。思わず、その子の
手を取って一緒に逃げちゃいました。希美さん、これっ てやっぱり悪い
ことですか?」
43 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:47


「……」
「……」
「のぞみちゃんどうしたの! 早く喋って!!」
ディレクターの焦った声で、我に帰る。そうか。そういうことだったんだ。
あたしは目の付け根を軽く指で揉みほぐし、それから言葉を口にした。

「そうですねえ。E&Mさんは確かにいけないことをしてしまったんだと
思います。だけどあたしにはきっと友達を思うあまりだったんだ、そんな
気がしてなりません。確かに悪いことは悪い、先生に本当のことを話さな
くちゃいけない。それでも、あなたが友達を思いやったその気持ちだけは、
忘れて欲しくないですね」
44 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:48

どうしてあたしは、あの震える小さな手を無理にでも引っ張ることが
できなかったんだろう。
自分の選んだ道が正しいと思うのなら、何故彼女と一緒にその道を歩
もうとは思わなかったんだろう。

お互いの半身であることをやめたのは、のんのほうだったんだね。

合間の時間にかける曲の紹介をしながら、照明のほうに顔を向ける。
少しオレンジがかった照明が滲んで、まるで夕陽が融けてるみたいに
見えた。

もう、眩しくはなかった。
45 名前:やがて融けゆくもの 投稿日:2004/07/08(木) 01:48

やがて融けゆくもの  おわり
46 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:31
あいぼん家を出る
47 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:32
希美は、亜依の実家を訪れていた。
ちゃぶ台を挟んで向き合っている。

「いいかげん、機嫌を直して帰って来てくらさい」
「いや」
「あいぼんがいないと、のんは、のんは……」

ぼろぼろと涙がこぼれる。

「御飯が食べられません」
「うちよりも飯の方が大切なんかい!」

亜依は、ちゃぶ台の端を持つと、片膝を上げて勢い良くひっくり返した。
ちゃぶ台は1回転すると綺麗にもとの位置に納まる。
ちゃぶ台の上に乗っていたお茶も遠心力により1滴も零れていなかった。
秘技、ちゃぶ台回し、長年の修行のすえ会得した高等技術である。

「もういい、帰れ!!」

亜依は玄関の方向を勢い良く指差した。

「あいぼん……」

希美は立ち上がると、とぼとぼ玄関へ向けて歩き出す。
玄関を出る時に最後の望みを託して1度振り返るが、亜依は怖い顔で立っている。
希美は希望を打ち砕かれ項垂れた。

「あいぼん、愛してます」

そう言い残し、亜依の実家を後にした。
48 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:33
空が真っ赤になった夕暮れ時、なつみは大きなワゴン台を引きながら公園の前を歩いていた。
宣伝を兼ねたパンの屋外販売の帰りである。
ワゴン台の中には売れ残りのパンが幾つか残っていた。
ふと、なつみの耳にブランコの軋む音が聞こえ、視線を向けると辻の後姿が見えた。
希美は公園のブランコに腰を下ろし夕日を見ていた。
なつみは、こっそり背後に近づくと、そっと目隠しをした。

「だーれだ」

希美は誰だか分かったが答えなかった。
なつみは指先に触れる暖かい感触を不思議に思い手を離した。
指先が濡れていた。

「のんちゃん、泣いてるの?」

なつみに振り向いた希美の瞳は涙でうるうるしていた。

「のんは、のんは捨てられたのれす」

希美は今にも泣きだしそうな、切ない声で言った。
なつみは、ワゴン台からパンを一つ取ると、希美に渡した。
希美は御礼を言って受け取ると、嬉しそうにパンを齧った。
その様子に、なつみは優しい笑みを浮かべた。

「良かったら、なっちに話してくれないかな?」

希美は頷くと、ぽつりぽつりと語りだした。

「実は……」

49 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:34
希美の話は、亜依に圭織との浮気がばれて実家に帰った話しに始まり、
実家まで謝りに行ったが冷たくあしらわれた話に及んだ。
話を聞いて、なつみは納得したようにうなずいた。

「そうだったんだ……そうだ!なっちが御飯作ってあげる」
「ほんとれすか!?」
「うん、ほんとだよ」

こうして、二人は手を繋いで仲良く辻家へと向かった。
やがて、アーチ型の屋根をした二階建ての可愛い感じの家にたどり着く。

「ここがのんの家です。どうぞ上がってくらさい」

そう言って玄関を開けた。
すると、家の廊下をパタパタと歩く足音が聞こえた。

「あなたぁ、おかえりなさぁい。うちなぁ、やっぱり考えなおしてん」

玄関の戸口まで歩いてきたのはエプロン姿の亜依であった。

「あいぼん……帰って来てくれたんれすね」

希美はうるうると瞳を潤ませる。
50 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:35
その時、希美の横を通りぬけて、なつみは玄関に上がった。

「おじゃましまーす……あっ」

玄関で亜依と鉢合わせとなり、気まずそうに声をあげる。

「あー、なっちお邪魔みたいだから帰るね。ばいばいのんちゃん、御飯はまた今度作ってあげるね」

なつみは、呆然とする希美と亜依を残し、手を振って去っていった。
亜依の表情がとたんに冷たくなる。

「あ、あの、これは違うんれす」
「うちがいない間にまた別の女連れ込んで……信じたうちがバカやった」
「あぁ、まってくらさい! これには訳が!」
「うっさいボケ! 離婚や! りこんーっ!」
「まって、どこ行くんれすか! あいるびーばーっく!」
「カムバックやボケ! 実家に帰るんや! はなせ、はなせーっ!」

こうして亜依は辻家を出ていった。
二人の別居生活は、まだまだ続きそうである。
51 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:36



あいぼん家を出る  おわり
52 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:38
( ´D`)vv(‘д‘ )だぶるゆー
53 名前:あいぼん家を出る 投稿日:2004/07/08(木) 03:43
(●´ー`)なっちはパン屋さんだよ
54 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:00


「警部補・辻畑のん三郎」

55 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:01




殺人現場に転がる、三十路の死体。
現場に駆けつけたのは、数々の難事件を解決した警部補・辻畑のん三郎と部下の豆泉里沙太郎。
「美貴はやってないです」
声高に訴えるのは、三十路こと中澤裕子の死体の第一発見者・藤本美貴。
「お前がやったのは間違いないんだ! 中澤が豊胸手術を受けると聞いて裏切られたと思って殺したんだろう!」
詰め寄る豆泉。しかし藤本も一歩も引かない。
「て言うか美貴、隠れ巨乳だし。中澤さんが豊胸手術受けるのを最初に勧めたのは美貴だから」
己の洗濯板のどこが隠れ巨乳じゃ、と思いつつも反論できない豆泉。
「ミキティ、あなたは昨日の夜はどちらへ?」
「昨日の夜は、中澤さんの家に寄って、すぐ帰りました…」
藤本の答えを聞き、頷く辻畑。
「やっぱりお前が犯人だ!」
「シメるぞこのコネガキ!!」
56 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:02


辺りの照明が落とされ、辻畑にだけスポットライトが当たる。

「えー。中澤を殺したのはミキティで間違いないのれす。貧乳が貧乳を殺すはずはないんれす。それは貧微無仲間ののんが…ゲフンゲフン。ただ、のんはミキティが中澤を殺した決定的証拠を見つけてしまったのれす。ヒントは、扇風機。辻畑のん三郎れした」
57 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:02


「とにかく美貴はやってないから!」
そう言って部屋を出て行こうとする美貴を、呼び止める辻畑。
「まあまあ。ここは親睦を図る為にみんなでロマンチック浮かれモードでも踊るのれす」
「はぁ? 何で美貴が踊らなきゃ…」
数分後。
「はぁはぁ…ソロが恋しくてつい踊っちゃったじゃない。もういいでしょ、美貴帰る…」
「まあまあ、そんなことを言わずに今度はブギートレイン03でも踊るのれす」
「ちょ、ちょっと待ってよ…」
数分後。
「ひ、久しぶりに踊ったから汗が…」
徐にソファーに腰掛ける藤本。
「暑いれしょう。扇風機のスイッチをつけてあげるのれす」
「うん、気が利くじゃない」
天井に取り付けられた扇風機が、勢い良く回り始める。徐々に乾いてゆく、美貴の体。そして、変化が起こった。
58 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:03

「…すっかり汗も引いてきたし、今度こそ美貴帰るから…」
顔色を変えてその場を立ち去ろうとする藤本だが、辻畑の馬鹿力で両肩を抑えつけられる。
「遠慮なさらずに。さあ、もっと涼むのれす」
「いや、本当にいいから! ちょっと離しなさいよ! あっ、ああっ!」
ここぞとばかりに強風に切り替える辻畑。すっかり乾いてしまった藤本の前髪がぺろーんとめくり上がり、広大なデコが晒された。
「昨日の晩は熱帯夜だったのれす。恐らく中澤とミキティはソファーに並んで酒でも飲んでいたんれしょう。扇風機をつけるのは至極当然の行為なのれす」
がっくりと項垂れる藤本。
「中澤さんに、『何やそのデコは! 今すぐ昴歌えや! 太陽拳使うてや! わいが大阪府知事横山ノックですたいって言うてみ! 』って笑われたんです。だからつい…」
涙ぐむ藤本に、辻畑は微笑んで言った。
「ミキティ、今度親友のあいぼんを紹介してあげるのれす」
「辻畑さん…」
藤本を促す辻畑。ゆっくりと歩き、部屋を去る二人。
59 名前:警部補・辻畑のん三郎 投稿日:2004/07/15(木) 17:03


一人取り残された、豆泉。
「あたし全然活躍してないんですけど」

                            おわり。
60 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:05
この物語はフィクションであり、
辻畑のん三郎は架空の人物です。

ついでに全然推理ものじゃないです。
61 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:17
「娘。小説贋作劇場」
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:17
「のんキョ」
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:17


「今日からのんがコンコンの家庭教師をするのれす」
「謹んでお断りします」

                    END
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:18
「辻希美2011」
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:18


「のんちゃん、エーリアンが襲ってくるよ!!」
「えーり餡? うまいんれすかそれは」

                    END
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:18
「百のん夜行」
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:19


「私の名前は、マグラ・グリフォス」
「ああ、野菜すてぃっくの人れすね」
「誰が名倉じゃ!」

                    END
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:19
「さよならののイスト」
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:20


「わあ、あいぼん! のんの体が浮いてきたよ!」
「うちは浮かばへんわ! うちだけパンパンですからっ!」

                    END
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:20
「Pink nonosonor」
71 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:20


「あれ、あいぼんの鏡に貼ってるプリクラ、ジャニ(銃声 
 
                    END
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:21
「ビッグノノンチ」
73 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:21


「チョコレートのでっかいオブジェが降ってきたのれす! いっただっきまーす!」
「痛、イタタタタ! あたしチョコレートじゃないから!」

                    END
74 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:21
「黒いのん陽」
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:22


「薬で記憶を奪われたのれす…そこにいるプレステの得意な室蘭の偶蹄目の名前も忘れてしまったのれす」
「記憶どころか命を奪ってもいいんだべよ?」

                    END
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:22
「桜」
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:22


「あーし、よしざーさんのこと…つるつるいっぱい愛してるやざ」
「れいなはボーボーたい!」

                    END
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 17:24
元ネタの作者さんたち非常にごめんなさい・・・
79 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:17

「生理もきてないガキどもがよーっ!」

80 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:17

「Berryz工房さん、おねがいしま〜す」
スタッフが呼びに来て、リハ待ちをしていた少女達が一斉に立ち上がる。
ぞろぞろとステージに向かうその中に、辻希美。

「つじねーちゃん、Berryz工房じゃないでしょ?」
希美の隣にいた梨沙子がしなだれかかるように笑い、言う。
「あれ? そうだっけ?」
「うん、そうだよ」
「マジ!?」
「まじ」
「のん、Berryz工房じゃなかったの?」
「ちがうよ、ダブルユーだよ」
希美がわざとらしく、おっかしいなぁ、と首を傾げ、梨沙子はそれを見て大笑いする。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:17
「ほら、つじねーはまだリハじゃないから」
梨沙子が希美の背中を押し、楽屋に戻そうとする。
「のん、Berryz工房の振りとか完璧にできるけど、ダメなの?」
「だめっ」
「えぇ〜? のんのファイティングポーズ、勇ましくない?」
「うさましいけど、だめ」
「いや、のんはさ、パンチラもOKだからファイティングポーズ……」
「パンチラじゃないもん、スパッツだもん、それにちがうもん!」
「何が違うんだよ」
「ぜんぜんちがうもん」
「あ、リハ行かなきゃ。雅ちゃんが呼んでる」
「つじねーを呼んだんじゃないよ」
「違うって、今、絶対りしゃこじゃなくて、のんを呼んでた」
「もうっ、とにかくだめぇ!!」
梨沙子は食い下がる希美の背中をぴょんぴょん飛びながら押し、
「リハ行くんだから、邪魔しないでよ」
と言うと、ステージに駆けていく。

「いっつも一緒だから、のんもBerryz工房じゃないかと思っちゃうよ」
梨沙子の背中を見送りながら、希美が一人ごちる。
亜依の待つ楽屋に戻ろうとしたとき、梨沙子が振り返って大きく手を振った。
希美は笑顔で返し、梨沙子がステージに消えてから、弱く息を吐いた。

82 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:18

希美と梨沙子、本物のバカとアホ、ものすごく気が合うらしい。
だが、周りにいる大人たちは、気が気じゃない。

漢字の読めない梨沙子に、漢字を読もうとしない希美。
程度としては、こんな具合に二人は解釈されていた。

希美の教育は失敗してしまった。
それが運良く今でも希美のチャームポイントになっている。
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:18
梨沙子でも果たしてそう上手くいくのだろうか。
上手くいく、いかない、ではなく、しっかりと教育しなければならない。
奇跡はそう簡単に二度も三度も起こるものではない。
会議で、希美での失敗を梨沙子に生かそうと決めてすぐだった。

大人たちは青ざめた。
希美と梨沙子が仲良くなってしまったのだ。
WとBerryz工房をセットにした時点で危惧されていたことだったが、事態は予想を遥かに超えていた。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:19
梨沙子が漢字を読もうとしなくなってしまったのだ。
台本がひらがなだけじゃないと、打ちひしがれたようにさめざめと泣くようになった。
携帯させていた国語と漢和の電子辞典は叩き壊されてしまった。
ひらがなは江戸時代中期の華々しい女性文化の抽象なのだと、誤った知識をひけらかすようになった。
カタカナすら認めなくなった。
希美の影響だ。

大人たちの不安をよそに、希美と梨沙子は仲がいい。
一人の社会に生きる人間ではなく、アイドルとして考えるのなら、いい影響ばかりだ。
しかし、梨沙子が普通に社会生活を営めるように教育しなければならない。
親御さんから大事なお子様を預かっている側として、当然のことだ。
だが、これは仕事をさせる上では相反する問題であり、良心が必要で、超えたことのない壁である。
梨沙子を含む、個性の強いHelloのメンバーを教育することは、頭の悪い犬の躾よりも難しい。

85 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:19

希美が楽屋に戻ると、亜依はイヤホンをしてハングル語の勉強に集中していた。
時折、もごもごと拙い口調でニダと繰り返す。
小学生とはしゃぐのは辛くなってきたらしい。
こうやって一人の世界に浸ることが多くなってきた。

できるけど、やらない。
その程度になってしまったのだ、亜依にとっての大はしゃぎとは。
それでも、気分や体調のいい日は、一緒にはしゃいだりもする。
希美はそっちの亜依の方が好きだ。

「あ゙〜」
声を出し、椅子をひきずって音を出し、希美は化粧台の前に座った。
亜依が希美に気付き、イヤホンを外した。
そして希美の隣に移動し、本を開いた。

希美は何を話しかけるでもなく、鏡越しに亜依を見ている。
普通に見ていると、亜依は照れてくすぐったそうにするからだ。

86 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:19



会場のざわめきがステージにこもり、舞台袖の廊下から漏れてステージ裏にこだまする。
リハを終えた梨沙子は、恐竜のお腹の中にいるみたいだ、と思った。

開演までの短い食事の時間。
梨沙子は何も手をつけず、水ばかり飲んでいる。
空腹を感じはするものの、胃が食べ物を受け付けようとしないのだ。
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:19
茉麻がそんな梨沙子に気付き、声をかけた。
「ちゃんと食べないと、大きくなれないよ?」
「もう、じゅうぶん大きいからいいもん」
梨沙子は拗ねたように茉麻を見つめたまま、ゆっくりと水を口に含んだ。
「そっか、じゃあ、お腹すいて動けなくなるよ」
「うごくもん」

仕方ないな、といった風に茉麻は肩を竦める。
梨沙子の隣にいた桃子は口いっぱいに弁当を頬張ったまま、
テーブルの中央に盛られた梨をつまんだ。
「はい」
梨沙子の前にさしだされた白い梨。
ざらざらした表面が瑞々しく蛍光灯の光を吸い込んでいる。
「これ一個だけでも食べよ? ね?」
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:20
桃子の優しい声と茉麻の心配そうな視線に促され、梨沙子は目を閉じて梨を齧った。
しゃりっと小気味いい音がして、口の中が果汁で溢れる。
噛むのもそこそこに飲み下すと、まだ目の前にあるもう半分も食べた。
梨沙子は喉に込みあげる吐き気を水で押し戻そうとする。
だが、胃は梨を拒絶し、ひくひく痙攣した。

「ちょっとトイレに行ってくる」
そう口にして、梨沙子は戸惑った。
自分の声が、絶望的に余裕なく響いたからだ。
「うんこしてくるから」
誰に向けるでもなくおどけると、ゆっくりとした動作で楽屋を出た。
そして、体が完全に廊下に出て楽屋から見えなくなった瞬間、駆け出した。
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:20

トイレに駆けこむと便器に顔をつっこみ、食べたばかりの梨をそのまま戻す。
胃の収縮がそれだけではおさまらず、梨沙子が少しずつ飲んでいた水も全て逆流させてしまった。
梨沙子は喉と舌を焼く胃液に涙を滲ませながら、ようやく個室のドアを閉めた。

ペーパーで口を拭い、口腔に残った異物を吐き出す。
梨の欠片がピチャっと音をたてて、便器に張られた水を叩く。
唾液でぬるりと濡れ、白く泡立っている。
薄く波紋を作りながら、ゆっくりと便器内で揺れ動く。
梨沙子は手探りでレバーを探し、水を流した。
涙で歪んだ視界で渦が巻く。
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:20

梨沙子にとって、ライブは恐怖そのものだ。
元々、大きな音が得意ではない。
大音は無遠慮に脳内に響き渡り、思考が鈍くなってしまうからだ。

ある日、ステージから客席を見ることができるようになった。
そして、愕然とした。

発光するステージから見えた客席は陰惨な風景そのものだった。
笑顔でいる客は誰もなく、皆一様に必死な顔で汗を撒き散らせて叫んでいる。
じめじめした唸りのような咆哮が、重くステージを震わせていた。
ただ立ち尽くしている客の視線は、ぬるりと梨沙子の背筋をざらりと舐めた。

嫌悪を感じた梨沙子は、動揺のあまり振りを間違えた、歌詞が飛んだ。
公演後の反省会で、そこをちくりと刺された。
自省していた梨沙子は、酷く傷ついた。
91 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:20
それ以来だ、ライブが恐怖の対象でしかなくなったのは。
前日から胸がじっとりと痛み、食欲もなくなる。
当日は全く食べられず、訳もわからずに眠くなる。
周りに心配かけさせたくない一心から、テンションを跳ね上げて必要以上にはしゃぐ。
開演前から体力を浪費し、ステージでは何も見えなくなるまで踊り狂う。

梨沙子はまだ十歳だ。
周囲を窺いながら生きていくしかできない。
逃げるということをまだ知らない。
そして不幸なことに、どこまでが許されるのか、
どうすれば周囲の人間が喜ぶのか、梨沙子は知っている。
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:21

梨沙子は便座に蓋をして、その上に座った。
背中を丸めて放心し、ふと思いついて自分の体にどれだけ余力が残っているか確認する。
腕を振り上げ、ぐっと足元に力をこめる。
思っていた以上に弱っていた。

もうすぐ始まるステージを思い、手で顔を覆う。
頭の中に無数の黒い糸が蠢き絡まりあっているような気がした。
涙は流せないと、息を止めて唾を飲み、上を向いた。
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:21

突然ドアが開き、希美が顔を出した。
「ドアの鍵くらい、掛けときなよ」
静かに希美が笑う。

梨沙子は突然の出来事に、呆然と希美を見上げるだけだ。

希美は梨沙子を持ち上げると、そこに座り、梨沙子を膝に乗せた。
そして、寂しそうに話しだす。
「ごめんね、りしゃ……」

「ホントさは、知ってたんだ、りしゃが参ってるの」

「でも、ちょっと大人ぶって、これはりしゃが解決しなきゃいけない問題だって、知らないフリしてた」

「りしゃ、まだちっちゃいんだもんね、一人じゃ頑張りきれないよね」

「ごめんね、そういうの、気付かなかった。……忘れてたよ」
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:22

梨沙子は言いようのない罪悪感に苛まれていた。
たった十年の人生では、それがどこから来るものなのか理解できない。
ただ身をかたくして、黙って時が過ぎるのを待つだけだ。

「泣いていいんだよ、こういうときは」
希美がそっと小さく囁き、梨沙子の心は壊れた。
必死に被っていた殻が剥がれた。
小さな小さな肩を震わせて、弱くしゃくりあげる。
やがてそれは熱を帯びて、大きな泣き声に変わっていった。

95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:23

希美は優しく梨沙子の髪を撫で、落ち着くのを待つ。

「桃ちゃんとまぁちゃん、死にそうな顔でのんとあいぼんの楽屋に来たんだよ、りしゃが大変なんです、って」
梨沙子が泣き濡れた顔で、希美を振り返る。
「今はさ、辛いかもしれないけど、仲間がいるってだけでよくない?」
希美はひそやかにそう笑って言い、のんはそう思う、と付け加えた。




96 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:23
おしまい
97 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 02:42

「ののたんが黒くなった理由」
98 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 02:44
あのね、のんが黒くなった理由教えてあげるね。

のんが、そうだなあ、ぷくぷくだった頃はこんなこげパンマンみたい
じゃなかったーって言う人、多いと思うんだけどね。

実は、それには秘密があったのです。
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 02:47
いもむしって、さなぎになる前はぷにぷにしてて丸っこいじゃん。
昔ののんが、そんな感じなのね。

で、いもむしってさなぎになる時は黒くなるでしょ?

だから、のんは今はさなぎなわけ。だから、もう少したったら脱皮して、
きれいなチョウになれるかもね。ふふ。
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 02:48




なるほどな。じゃあ、うちも今は幼虫っちゅうことか…
101 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 02:48

                        おしまい
102 名前:NT 投稿日:2005/01/06(木) 00:11
こんなとこにのんの名前のついたスレッドがあるのれす。
多分誰も使わねーだろーから、のんが活用してやるのれす。
103 名前:前口上という名の、 投稿日:2005/01/06(木) 00:25



あいぼんが最近、妙なことを口走ってるのれす。
「あいぼんさあ、作詞とかやってみちゃおうかなあ」
どうせ素敵だなの影響、とたかをくくってたのれす。
ところがどっこい、あのハゲは本気だったのれす。

ここに、あいぼんのかばんに入ってた手帳から引きちぎった紙の切れ端があるのれす。
手帳にはなまいきにも鍵なんてついてたんれすが、そこはのんの怪力でぶっ壊してや
ったんれす。
さて、あいぼんの作ったと思しき作詞の一節をここに記しておくのれす。

インチキつんくに負けへんで!(わぉ!:辻)
どうせあいつは張子の虎や(そりゃそうじゃ:辻) あいぼんさんがどついたる
奈良の生んだスーパースター(おーいぇー:辻) K・A・G・O あいぼん!!

これを見た瞬間、のんは震えが来たんれす。
まあ、のんのパートがオーキド博士だったりつんく風になっているのはさておき。
これは、ミリオンヒット間違いなしなのれす。
印税がっぽがっぽなのれす。
でも、このままだとまずいのれす。

いにしえの昔から、グループの作詞作曲を手がける人間は、グループ内で一番ギャ
ラが貰えているのれす。フミヤしかり、サザンの桑田しかり。逆に、その他の人間
は冷や飯を食らうことになるのれす。チェッカーズのヒゲや、サザンの毛ガニのよ
うに。

このままだと、のんはそっち側にいってしまうのれす。
104 名前:前口上という名の、 投稿日:2005/01/06(木) 00:34
そこでのんは考えたんれす。
小説を書いてやろうと。
最近では音楽活動をしていた人間が鼻くそほじりながら書いた小説が受けて、いつの
間にか大作家になってたりするのれす。
もしかしたら、のんも。
そう思ってこの話を書くことに決めたんれす。
これが世に出て、世間の注目を浴びたらちんけなアイドルユニットの作詞なんて目じ
ゃないくらい脚光を浴びるのれす。毎回だびんち(のんは読んだことないれすけど)
の表紙を飾ってやるのれす。天才美少女作家・辻希美の誕生れす。綿矢なんとかとか
金原なんとかとか相手にもならないのれす。
というわけで、今日から小説を書き始めるのれす。内容はのんが大活躍するファンタ
ジー物語なのれす。ハウルとかハリポタが流行ってるからやるなら今のうちなのれす。

え?
バカじょの分際で文章なんて書けるのかって?
おおつるぎたんの、一の舞二の舞三の舞、れすって?
失礼な、三の舞はあいぼんなのれす。
でもまあ、心配ご無用。
そこら辺でぷらぷらしてる暇そうなやつを捕まえてきて、のんのアイデアを伝えて
書かせるのれす。いわゆるゴーストライターというやつなのれす。
ほら、こっち来て挨拶するのれす。
105 名前:前口上という名の、 投稿日:2005/01/06(木) 00:42
どうもすいません、私、名前をうわ何を。うあwちゃ@pr
…辻さんが言うに、ゴーストの分際で名前を名乗るなんて45年早いらしいです。
ということで仕方がないので名無飼育さん(仮名)と名乗らせていただきます。以後お
見知り置きを。

さて、辻さんがさっきも言ってましたように、不肖私が彼女のアイデアを元に小説を書
かせていただきます。しかし何分本人が多忙ゆえ、周りの作者のみなさまと同じような
更新頻度はとても保てません。まあ私が自分で勝手に続きを書いてしまえば…

えー、今辻さんにきついお仕置きを受けてしまいました。そこら辺は臨機応変にやりた
いと思います。私も自給850円で辻さんに雇われている身なもので。
それでは、早速明日からでも連載を開始したいと思います。タイトルは…
106 名前:前口上という名の、 投稿日:2005/01/06(木) 00:47
タイトルなんてたかがゴーストに言わせるわけにはいかないのれす。
何てったって最初のタイトルを「はじめての・・・」と入れようとして間違えて、「あ
じめての・・・」と入れたばっかりに悲惨な末路を迎えた作者もいると風の噂で聞いた
のれす。

それではタイトルの発表、いくのれす。

「全ては希美のままに」よろしく!イェイ!

最後はだみ声の変なおっさん風になってしまったのれす。反省れすね。
それじゃ名無飼育さん(仮名)、のんが忙しい間もしっかりやるんれすよ。
107 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/01/07(金) 00:41



ここは剣と魔法が活躍世界。ありていに言えば、ドラクエみたいな(ry
世界の覇権を握るは、ここトゥンク帝国。
きまぐれでいい加減な皇帝が治める国、しかし彼の奇策はことごとく当たり、国は豊
かに栄えていった。隣国は概ね帝国の傘下に入り、今や帝国が世界の平和を保ってい
ると言っても過言ではなかった。

そんな帝国領のはずれ、ヨンキの町から物語は始まる。
遥か昔、帝国の前身であるシャランキュ共同体が広大な大陸を開拓していた時代。こ
こ一体は第四期開拓時代に開拓されたため、地方の中心部であるこの町はヨンキと名
づけられた。
帝国の位置する大陸の北部に位置するため、寒さが厳しく、町の食料を求めて飢えた
猛獣やら何やらが襲いかかる危険な土地。それゆえ、帝国の軍隊とは別に町では自警
団を設立する必要があった。

辻希美はヨンキ自警団の、一員であった。
108 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/01/07(金) 01:05


「せい!せりゃっ!」
団員たちの、激しい声が響く。
藁で作った人形相手に、実戦に備えた訓練が行われていた。
団員は老若男女問わず、様々な年代の人間が所属していた。その中でひときわ目立つ
のが、所狭しと動き回る、小さな少女。
「おりゃー!とりゃー!!せりゃー!!!」
掛け声だけは一人前だが、木刀を振るうその姿は木刀を振ると言うよりかは振り回さ
れていると言った感じに近い。しばらくじたばたと動き回っていたものの、当然スタ
ミナが切れてしまいその場にへたり込んでしまった。
「はぁ、はぁ…ぜえ…ぜえ…」
全身から湯気を出したまま、体育座りのまま動かない少女。この地方一体がひどく寒
いため、少しでも運動をすると見た目湯上り状態になってしまうのである。

そんな時だ。
少女が背にしている、藁の人形。
それが、一瞬のうちに派手に燃え上がった。
「なっなっ何!?」
先程までの疲労も何のその、再びばたばたとその場を走り回る少女。周りの団員たち
が咄嗟に訓練所の隅にあったバケツに入った水を藁にかけた。なぜか巻き添えになり
水をかぶる少女。
109 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/01/07(金) 01:17

「あんたたちさあ、いつまでそんなだっさい訓練やってるわけ?」

声のするほうを、団員全員が向く。
訓練所の窓の縁に座っているのは、少しふくよかな体とつぶらな黒目が特徴の少女だ
った。彼女が、藁に火を放ったのだ。いや、正確に言えば魔法を放ったと言うべきか。

少女のほうを見て、苦虫を噛み潰す団員たち。
それとはまったく対照的に、彼女を見て目を輝かせるのは、先程の水をかぶった少女
だ。
「あいぼん!!」
少女は一際大きな声で叫ぶと、駆け足で窓際に駆け寄った。
「ずっとのんの稽古みてたよ! 何だかただ暴れてるだけに見えたけどね」
「えへへ…」
「まあいっか。その辛気臭い稽古が終わったら、うちに来なよ」
あいぼんと呼ばれた少女はそう言うと、窓の縁から外に降りた。どすん、と音がした
のは内緒の話だ。
110 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/01/07(金) 01:18


              ※※※
111 名前:名無飼育さん(仮名) 投稿日:2005/01/07(金) 01:23




ふう、やっと最初の更新が終わった。
短いけど直書きだもんな。仕方ない、仕方ない。
それにしても最初って緊張するよなあ。でも無事に書き終えてよかった。
さて、これから風呂でも浴びて買ってきたえりりん写真集でも堪能するかな。
冷蔵庫のビールもキンキンに冷やしてあるし。

ん? 後ろに気配が…

ガスッ!!
112 名前:NT 投稿日:2005/01/07(金) 01:34
何れすかこれは!
のんがまるで落ちこぼれみたいな描写らないれすか!!
だぶるゆーの仕事が早めにはけたから、タクシー飛ばしてここまで来たのに!
この扱いはどっかで見たことあるのれす、これはなかよしの娘。物語でのんが一人だ
けユニットに入れないで道端のつぼみに愚痴をこぼすシーンにそっくりれす!
ムキー!のんは落ちこぼれじゃないのれす!のんは落ちこぼれじゃないのれす!

ハアハア、ついうっかりマウントポジションでたこ殴りにしてしまったのれす。
でものんを格好良く書かないおめーが悪いのれす。
大体あいぼんの登場シーンがめちゃめちゃ格好いいのはどういうわけれすか?
あいぼんなんてクソ女の上にずごっくだから、あんな感じじゃダメなんれす。
まあいいのれす。
次回はのんをもっと格好良く書くんれすよ?
そうそう、このラーメンマン写真集。のんの写真集と交換してやるのれす。
ワンタースワンとPSPを交換したくらい、ラッキーでよかったれすね。
それじゃ、のんは忙しいからもう帰るのれす。

113 名前:名無飼育さん(仮名) 投稿日:2005/01/07(金) 01:37


ひ、ひどい…
一瞬グレイシー一族かと思ったよ、辻さん。
いてて…前歯が一本、奥歯が一本。あれ、ちょっと鼻も曲がってるよ。とほほ。

て言うか俺のえりりん写真集、返してください…
本人が気づかないうちにあいぼん主役小説にしようと思ってたけど、仕方ないから名目上
は辻さん小説にするか…涙。
114 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/01/28(金) 00:56


「まったくよー。由緒ある魔導師の家系だか何だか知らないけどさ、むかつく
よなあ」
少女が立ち去ると同時に、それまで押し黙っていた自警団員の一人が悪態をつ
いた。続いて、
「そうだぜ。ちょっとくらい魔法が使えるからってでかい顔しやがって」
という言葉。こうなると彼らの口はもう止まらない。
「でかいのは顔じゃなくて腹だろ」
「そうそう、ふてぶてしいのは態度よりもぶよぶよの体だぜ」
「言えてる! あのチビデブが! 希美もよく友達でいられるよなあ」
希美と呼ばれた少女は、ただ俯くことしかできなかった。確かに友達を悪く言
われて腹が立たないわけがない。けれど、彼女はあくまでも自警団の一員であ
った。ここで彼女を庇おうものなら、以後団の中で冷ややかな視線で見られて
しまうのは間違いなかった。

115 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/02/21(月) 19:32
自警団の訓練が終わってすぐに、希美は駆け出して行った。
目指すは町一番の豪邸。
ヨンキ随一の実力者と噂される、加護家の邸宅だった。
加護家は古くから高名な魔導師を輩出している家系であり、そのルーツは
シャランキュ共同体の頃に遡るという。
そんな魔導師の家系の娘と一般市民の娘の希美が何故親しいのか。
それは折を見て話すこととしよう。

石畳の敷き詰められた坂道を駆け上がり、目指すは丘の上の大きな家。
ここヨンキの町は坂道の多い町であるが故に所々が険しい坂になっている。
上流階級の人間なら魔力で坂を行き来するケーブルカーを利用することが
できるが、一般の人間にはそうもいかない。
というわけで、希美はこの険しい大通りをひたすら駆け上っているので
あった。
116 名前:全ては希美のままに 投稿日:2005/02/21(月) 19:46
坂道が緩やかになりやがて完全に平坦な道に変わると、「あいぼん」の家
はもうすぐだ。希美は走る速度をさらに速めてゆく。しかし。

どんっ!

見えない壁に衝突し、希美は思い切り尻餅をついてしまう。
「痛った…何すんだよ!」
見えない壁だと思っていたのは、人だった。
「お前なあ、自分からぶつかっといてそれはないんじゃないか?」
「ううっ…って?」
希美は改めて自分がぶつかった人物を見てみる。
白銀の鎧に包まれた、精悍な剣士。白い肌と金色の髪が映えていて、その
人物の美しさをさらに引き立てていた。
「もしかしてよっすぃー? よっすぃーなの?」
「久しぶりだな、のの」
よっすぃーと呼ばれた、この美青年のように見える女性。
彼女は、希美の幼馴染・吉澤ひとみだった。
「うわあ、いつ帰って来たんだよお!」
希美は白銀の鎧に駆け寄り、がしっと抱きつく。
「いや、加護様と町長に『モーニング・スター』就任の挨拶に来ただけ
だからさ」
ひとみが希美の頭をがしがし撫でながらそう言う。
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/10(日) 16:55
おまいらきもい。

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