百花繚乱
- 1 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/08(火) 14:34
- 初めまして。なつまり。と言います。
主役は、なちまりです。感想、ご指摘どんどん書いて下さい。
勉強になりますので。それでは宜しくお願いします。
- 2 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 14:43
- 暗い・・。
寒い・・。
痛い・・。
恐い・・。
ここはどこ?
私は・・・誰?
深夜。ボロボロのベッドで寝ていた彼女、
安倍なつみは大量の汗を掻きながら目が覚めた。
- 3 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 15:17
- 「はぁ、はぁ、またあの夢・・・。・・・どうしよう眠れないよ」
なつみは枕元にある、古びたデジタル時計を手に取り時間を確認する。
- 4 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 15:33
- 「2時かぁ。矢口さん、起きてるかな。・・・いやきっと寝てるよね。う〜ん、どうしようかな」
なつみはブツブツと独り言を言っていると5分が経ち、そしてようやく結論を出した。
「よし!決めた!矢口さんには悪いけど一緒に寝てもらおう!よし決定!」
なつみはベッドから起き上がり、枕と毛布を持って部屋を出ようとスライドドアを開けようとするが、
両手一杯に持っている枕と毛布のせいで手が使えないことに気付いたなつみは右足で開けようとするが僅かに届かなかった。
「と、届かないぃ〜・・。きゃん!」
派手な音を起てて木造の床に仰向けに倒れこんだなつみは頭を擦りながら起き上がると再度挑戦する。
- 5 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:14
- ・・・そんななつみはドアと格闘すること5分後、一つのことに気付いた。
(ん?・・なっちの右手空いてるじゃん)
枕と毛布をいつの間にか左手と体で抱え込んでいたなつみは難なくドアを開ける。
- 6 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:19
- 「開いた開いた。さっ、行こうっと」
なつみは笑顔で言うとそのまま矢口の居る1階のリビングだったへと歩いて行く。
「矢口さぁ〜ん、起きてますかぁ〜?」
1階に辿り着いたなつみは矢口の自室である部屋のドアを開けて
声を掛けるが返事は無い。
- 7 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:23
- 「あっれ〜?変だなぁ、どこ行ったんだろ」
部屋をキョロキョロと見回すが誰も居ない。
するとその時、スッと何かがなつみを後ろから抱き締めて、
「・・起きてますよぉ・・」と耳元で囁く。
- 8 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:29
- 「き、きゃああ〜〜〜〜!!!!変態変態変態!!!
きゃあ〜!!お化け恐いお化け恐いぃ!!近寄らないで!変態お化け〜〜!!」
恐くなったなつみはその手を振り解き、目を瞑りながらその何者かに毛布を掛けて
叫びながら枕で何回も殴打する。
- 9 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:33
- 「うわっ!って痛い痛い痛い!痛いって!
っつうかおいら変態でもお化けでもないんだけど!やめてくれ〜なっち!ほんと痛いって!」
毛布を掛けられた何者かの声を聞いた時、なつみは手を止めて恐る恐る毛布を取る。
- 10 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:38
- 「あっ、・・矢口さん」
その正体はなつみが探していた矢口真里だった。
「もぉ〜、ひどいよなっち。おいらがちょっとからかっただけで
いきなりボコるんだもん、しかも本気で・・」
「ご、ごめんなさい・・。恐くてつい・・」
なつみは、しゅんとして俯きながら真里に謝った。
- 11 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:43
- 真里は笑顔で「いいっていいって。おいらもなっちと同じことしてると思うし。
だけどどうしたの?こんな夜中に。・・・あぁ、そういうことぉ」
真里は床に落ちている毛布となつみの持っている枕を見てすぐにわかった。
「一緒に寝よっか。って言ってもさっきので目冴えちゃったでしょ?」
コクンと頷くなつみ。
- 12 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/08(火) 16:46
- 「おいらも目冴えちゃったし、前ので・・」
「?」
首を傾げているなつみに
「君のせいだよ、君の!2階でドッタンバッタンって物凄い音が何回もしたんだけど何してたの?」
- 13 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/08(火) 16:48
- 今日はここまでです。
- 14 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/06/08(火) 17:04
- なちまり、激しく期待しております。
作者さん、がんばってね。
- 15 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/08(火) 18:20
- >14さん
ありがとうございます。
ご期待に添えられるようにがんばりたいと思います。
だけど書いてもらうのがこんなに嬉しいものだとは思いませんでした。
毎日更新出来る様、頑張ります。
- 16 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/09(水) 11:47
- 真里の問いになつみは首を傾げたままだったが、
やがてハッとした顔で真里を見る。
「ご、ごめんなさい!実は・・・」
なつみは真里に頭を下げてからさっきの出来事を話した。
数分後・・・。
真里はお腹を抱えて笑い転げていた。
- 17 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/09(水) 11:51
- 「きゃははははは。おもしろすぎ!きゃはは、あ〜お腹痛い苦しいぃ。ごほごほ」
「そんなに笑わなくたっていいじゃないですか。ひどいですよ、矢口さん」
咳き込む真里に口を尖らせて拗ねながら文句を言うなつみ。
- 18 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/09(水) 11:57
- 「いや〜ごめんごめん。あまりにも面白かったからさ。
・・・・だけどさ、なっち。おいら達友達でしょ?いくら助けてもらったからって、
さん付けと敬語はやめてよ。そういう風に言われるとムズムズするんだよね、なんか。
だからさっ!さん付けと敬語は無しだからね!もし使ったらご飯抜きだよ!わかった?」
笑顔で言う真里になつみも自然と笑顔で「うん!」と答えれた。
- 19 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/09(水) 12:04
- 「よ〜し、良い娘だ!・・・ふぁ〜あ、なんかおいら笑ったら眠くなっちゃった。
なっちはどうする?眠れる?」
「うん、大丈夫。なんか安心しちゃった。その・・矢口の・・笑い声聞いたら・・」
照れて言うなつみに真里はなつみの腕を突付きながらからかう。
「な〜に照れてるんだよぉ。あっ、もしかしておいらのこと好きだとかぁ?」
「・・・な、何言ってんのさ!そんなんじゃないって・・・」
「冗談だよ!さっ、寝よっか」
- 20 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/09(水) 12:13
- 真里は先程まで寝ていたソファの背もたれを倒して、手招きする。
なつみは枕を抱えたまま毛布を拾ってから、
真里と向かい合うようにソファの上で横になり毛布を二人に掛けて笑顔で真里を見る。
真里も笑顔で応えてから仰向けになって、染みだらけの天井を見詰めながら話しを始める。
- 21 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/09(水) 12:23
- 「早いもんだよね。なっちとおいらが会ってもう3ヶ月だもんね。
・・・おいらさ、毎日が楽しいんだ。
この家はぼろいし、せまいけどなっちが来てから、そんなの全然関係なくなったんだ。
むしろありがたいなって思えるんだ・・。・・・・ねぇ、なっち聞いてる?」
返事も無いなつみに対して痺れを切らした真里はチラッとなつみを見ると溜息をついた。
- 22 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/09(水) 12:30
- ・・・なつみはスゥスゥと規則的な寝息を起て、かわいい寝顔で既に眠っていた。
「はぁ〜、いくらなんでも早いよ、なっち・・。
せめておいらの話しを聞いてくれても・・。
・・・かわいい寝顔しちゃって。そこは変わってないよね・・」
真里はなつみの寝顔を見ながら、髪をゆっくり撫でていると昔のことを思い出してしまい、
目頭が熱くなり自然に涙が頬を伝った。
- 23 名前:第一輪 loss memory 投稿日:2004/06/09(水) 12:37
- 「グスッ、・・・なっち、おいらが・・おいらが必ず
・・・なっちの・・記憶を・・・取り戻させて・・あげるからね・・。
約束だよ・・・なっちぃ・・」
そう言うと真里は、ぎゅうと力強くなつみを抱き締めた。
「・・・・」
なつみは気付かれないようにスッと目を開け、真里のすすり泣く声を真里が眠るまで聞いていた・・・。
- 24 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/09(水) 12:40
- 一応、今日の分は終了です。
そして一話目も終了です。短いですが。
- 25 名前:LOVE 投稿日:2004/06/12(土) 00:27
- 続きが気になるところで・・・
なちまりに激しく期待しております。
っていうか、いきなり切ない・・・どーなるの、この2人・・・
- 26 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/12(土) 22:14
- なつみや真里が住んでいる此処、東京は3年程前に歴史上最大の大地震により都市全体が脆くも崩れ去った。
ビルや住宅街の倒壊によって多くの死傷者を出して今や東京の人口は約10万人にまで減り、東京は日本の主要都市ではなくなった。
そしてこの地震の被害は東京だけではなく、日本中に多大な被害を与えた。
だが、一つの都道府県だけが全く被害を受けなかった。それは北海道である。
北海道は10年程前にロシアにその全土を取られてしまい、道民は強制的に追い出されてしまった。
- 27 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/12(土) 22:31
- その後ロシアはアメリカ、ドイツと協力して3年の月日をかけ、北海道を軍事要塞にしてしまった。
その軍事要塞にロシア、アメリカ、ドイツはこう名付けた。
・・・〈Zetima〉と。
軍事要塞Zetimaの開発により、日本政府はロシアは日本を侵略するつもりだと読んだが、その読みは外れた。
- 28 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/12(土) 22:43
- ロシアは、『日本を侵略するつもりはない。北海道だけあれば充分だが、我々はその気になればいつでも侵略出来る。
これがどういう意味かわかるかね?まぁ、日本のトップに君臨する人々だ、最後まで言わなくてもわかるだろう。
そうされてほしくなければ今後、日本は我々ロシアに資金援助などの全面協力をすること。
勿論断れないのはわかっている筈だ。もし断れば、我々は今すぐにでも日本人をこの地球から滅ぼす。
・・・あの兵器で・・・』
- 29 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/12(土) 22:53
- と脅迫され政府は黙って従うしかなかった。
このことを国民に伝えるとすぐにデモが起き、
5万人という多くの人々が北海道の上陸を試みたが
帰って来たのは無傷の20人の少女と女性だけで他の人達は全員殺されてしまった。
その20人の中に当時15歳と14歳のなつみと真里が入っていた。
- 30 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/12(土) 23:05
- 短いですが今日は終わりです。
>25 LOVEさん。
レスありがとうございます。
一応シリアスの長編を書いていきたいと思っています。
あの、LOVEさんに質問なんですが間違っていたらごめんなさい。
もしかしてSweet Loverを書いている方ですか?
- 31 名前:LOVE 投稿日:2004/06/14(月) 17:58
- 更新お疲れ様です。
シリアスですねぇ。今後の展開がとてつもなく楽しみです。
>>もしかしてSweet Loverを書いている方ですか?
あっ、はぃ。更新遅い上にネタも古いアレを書いているLOVEです。
板同じなので、なちまり同士頑張りましょうね☆
- 32 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/14(月) 22:33
- LOVEさん、お返事ありがとうございます。
楽しみと言われると嬉しいですね、やっぱり。
これからどんどん書いていきますので、読んでくれたら幸いです。
Sweet Lover読ませていただきました。
私はああいう話し大好きです!最初から一気に読みました。
ですが、更新遅い上、ネタも古いということを気にしないでください。
続きは気になりますが、更新するということはLOVEさん自身が決めることですから、
あせらずより良い話を書き続けてください。
私は何年経っても完結するまで読み続けます。
それに昔の娘。の話を書くこともLOVEさんの味(?)だと私は思っています。
話が長くなってすいません。更新は後程ということでもう少し待っててください。
なちまり同士頑張っていきましょう!
- 33 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/17(木) 14:35
- 20人は発見された当時意識が無く、かなり衰弱して命の危険がある為、すぐに大きな病院に入院したが
彼女達の回復力は異常だった。早い者は半日で遅い者でも一日で回復した。
それから彼女達は意識を取り戻し、一週間飲まず食わずで病院生活を送っていた。
そんなある日、一人の看護士が夜の見回りをしていると部屋から「・・・ウーーー・・・」という呻き声が聞こえ、
気になった看護士はそっと部屋を覗いてみると言葉を失った。
20人の内の10歳にも満たない8人の年少組が部屋の隅で頭を抱え込み、
しゃがみ込んだまま血に飢えたような眼で看護士を睨んでいた。
看護士はその異様な眼差しにその場で気絶してしまい、ショックで二度と正常な状態には戻れなかった。
その翌日、気味悪がった担当医達は一言吐き捨てて彼女達を病院から追い出した。
「もはや人ではない、化け物だ!」と。
- 34 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/17(木) 14:41
- 短めの更新ですが。
今日は辻ちゃんの誕生日ですね。おめでとう。
次回の更新は19日にします。
予定では多く書こうと思っています。
- 35 名前:名無し読者。。。 投稿日:2004/06/17(木) 22:50
- 面白そうですね。なちまり推しなので期待しています
- 36 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/19(土) 19:49
- 追い出された彼女達は家へと帰ったがどうやって広まったのか、
周りの人達からも化け物呼ばわりされ、強制的に家さえも追い出されてしまった。そして彼女達は黙ったまま自然と集まり暫く呆然としていた。
・・・デモでロシアに訴えたが返り討ちに遭い、全員両親を殺されてしまい、そして何故か自分達が無傷で助かってしまった。
助かったは良いが病院の人間、周りの人間から化け物と呼ばれ、帰る場所、家族、知り合い、友達を失えば普通の人は精神が崩壊するかもしれない。
だが彼女達はそんなことなど気にしていなかった。ただただ天を仰いでいた。無表情で。
涙を流すものは一人も居なかった。そんな不気味とも思える彼女達に一人の男が話し掛けてきた。
- 37 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/19(土) 20:21
- 彼女達はスッとその男を見る。これで殆どの人が逃げるのだが男は逃げなかった。
逆に笑いながら関西弁で話す。「おいおい、何やねん。一斉にこっち見て、恐いやんか。
見るならそんな恐い顔やなくて笑顔の方がええって。みんなかわいい顔しとるのに台無しやで?」
彼女達は男の言葉に耳を貸さず、再び天を仰ぐ。男は暫くそれを黙って見てから口を開いた。
「・・・君ら。化け物呼ばわりされたんやろ?噂になっとるで」
彼女達は男を鋭く睨み、そのまま男の言葉を待つように見据える。男はその反応を見て含み笑いをすると、話を続ける。
「そう身構えんでもええやんか。俺は君達を批判するつもりは無い。むしろ・・・なんや恥ずかしいなぁ」
照れ笑いをした後、真剣な顔付きになり「俺と一緒に来ぃへんか?べ、別にいやらしい意味やないで!君達が良ければやけどな。どや?」
その後表情を崩し、笑顔で聞く。彼女達は暫く黙っていたが、その中での年長者が男と同じく関西弁で聞き返す。
- 38 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/19(土) 20:39
- 「・・・おっさん。なんでウチらを誘うんや?嫌われてるウチらを・・」
「アホォ!おっさんちゃうで!・・・それに俺は嫌ってへん、それでええやんか」右手で突っ込んでから彼女達を見詰める。
年長者の女性はキョトンとした顔から俯いて鼻で笑うと顔を上げ、男の目を見て「・・ウチはついてくで。行く場所ないしな、みんなはどないする?」
と答えると19人の少女達を見て質問する。
少女達はお互い見合わせて、確認し合うと年長者に向かって微笑みながら頷いた。
だが二人の少女はどこか腑に落ちないようで頷かず、真剣な顔で男を見据えていたが男は二人の視線に気付かない振りをして、俯きニヤリと笑った。
こうして男と彼女達20人の生活が始まったのだが、この男には秘密があった。
- 39 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/19(土) 20:54
- 過去の話は終わりです。中途半端ですが。
男はもう少し出てきます。誰だかわかると思いますが・・・。
>35 名無し読者。。。さん。
ありがとうございます。
期待していただけると嬉しいです。
なっちと矢口さんは私の一番好きな人達なので、
多く出したいですが少しだけ待ってて下さい。
- 40 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/26(土) 23:08
- 大地震により跡形も無くなった此処、国会議事堂だった場所に一つの会社が建っていた。
会社の名はZetimaCompany。
関係者からはZ・Cと呼ばれている。
Z・Cは3年前の大地震から約3ヵ月後に軍事要塞Zetimaが自己負担で建てた会社である。
勿論、地震の後になどを建てても何のメリットも無いのだが会社は会社でもそれは表向きの話だ。
裏では様々な人体実験や研究をしている。
その研究費用等も全てZetimaが払っている。
- 41 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/26(土) 23:21
- 此処の社長兼所長である男、つんくは社長室の安楽椅子に身を沈め、
デスクに両足を乗せて組みながら自分の唯一の武器であるベレッタM92FSを拭きながら、昔の思い出し笑いしていた。
「ククッ、あん時はおもろかったなぁ。簡単に騙されて。あん時のあいつらの顔ったらなかったで。しかも今もな・・」
天井を見上げながら独り言を言っているその時、つんくの正面にある扉からノックが聞こえた。
つんくはスッと笑みを消し、入れと銃に視線を落とし言い放つと扉が開く。
3人の女性が失礼しますと言って入ってきた。
女性の名前はそれぞれ中澤裕子、飯田圭織、保田圭という。
つんくから見て裕子を真ん中に、圭織が右に圭が左に位置し、そのままつんくに向かって歩いてくる。
- 42 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/26(土) 23:32
- 彼女達がデスクの前で足を止めると、拭いていた銃をデスクの端に置き、前のめりになり手を組んでからその上に顎を乗せて、
「よぉ来てくれたわ。忙しかったやろ?すまんなぁ」と心にも無いことを笑顔で3人に言った。
3人は特に表情も変えずに「いえ、別に・・」と声を合わせて答えた。
つんくはその態度に笑顔を崩さず心の中で舌打ちをした。
「で、話しってなんですか?」と圭織が突然聞いてきた。
突然のことに多少驚いたが、自分から話しがあると呼び出したのでそのまま、「あぁ、そういえばそやったなぁ」と軽く流してから話し始めた。
「話しっていうのは、お前ら3人に消して貰いたい奴らがいるんや」と言ってから2枚の写真をデスクの引き出しから出し、デスクの上を滑らせながら3人に差し出した。
- 43 名前:第弐輪 Z・C 投稿日:2004/06/26(土) 23:50
- 裕子は写真を拾い上げ、交互に見比べる。圭織と圭はそれを覗き込むように見る。
「右のが安倍なつみ。左のが矢口真里や。その二人はここの大事な情報を勝手に持ち出した悪い奴らや。飯田。こういう奴等は放っておいたらどうなると思う?」
「つんくさんとあたし達の邪魔になります」
圭織は気をつけの姿勢になり、真っ直ぐ前を見ながら答えた。
「せやろぉ。中澤、保田。こういう邪魔な奴等はどうするんや?」
「・・・処刑です」裕子と圭も圭織と同じように答えた。
「あぁ!そうや!3人ともちゃんとわかってるなぁ!流石やで!」
つんくはその答えに満足したようにうんうんと頷いてから、椅子の背もたれに寄り掛かり、
「目的はターゲットの完全抹殺や。もし武器が足りへんかったら地下に仰山あるで。何使うても構わへんからな。それじゃあ早速行ってくれ」
「・・・はい」3人は返事をしてから一礼して社長室を出て行った。
3人が出て行った後つんくは椅子に寄り掛かったまま、一つ溜息をしてから先程の自分の行動を思い出し、一人高笑いした。
- 44 名前:なつまり。 投稿日:2004/06/26(土) 23:53
- 更新終了です。
今回なちまりは出ませんでしたが、次の話は出ますので。
- 45 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/06/30(水) 17:45
- 朝。真里は仄かに苦味のある香りで目が覚めた。
「んー?なっちぃ?」
目を擦りながらソファから体を起こし、隣で寝ている筈のなつみの毛布をポンポンと叩くが手応えが無かった。
「おはよう、矢口」
コーヒーを煎れながら見ていたなつみはそれが謎な行動に見えて、笑いながら真里に挨拶した。
「ん?あぁ、おはようなっち」
「今、コーヒー煎れてるから。モーニングコーヒーってやつ?待っててね今、パンと一緒に持っていくから。飲もうよ、二人で」
「うん、ありがとなっち」
- 46 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/15(木) 23:31
- 真里は礼を言ってから、なつみを見詰めると雰囲気が変わったように思えた。
昨日までの超天然から一変して、どこか大人っぽくなり、しっかりしたお姉さんに見えた。
一人っ子だった真里は姉妹ってこんな感じなんだろうな、と遠い目をしながら考えていると一際派手な音が聞こえた。
「あ〜!またやっちゃったぁ〜!」と頭を抱えて叫んでいるなつみに真里は・・・。
深い溜息を一つして、前言撤回、やっぱりなっちはなっちだ、と一人納得した。
- 47 名前:なつまり。 投稿日:2004/07/15(木) 23:36
- 最近、この百花繚乱以外の小説をワードに書いているのですが、近い内にどこかの板で書きたいなと思っています。
男と娘。で、学園モノです。
- 48 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/17(土) 21:31
- それから10分後。
ようやく派手な音が収まり、ソファから起きてTシャツと下着姿だった真里は普段着に着替え、2ヶ月くらい前に近くの公園付近で拾ってきたベンチに腰掛けた。
そして少しふらふらしながらなつみが二人分のトーストとコーヒーを歪んでいるトレイに乗せて持ってきた。
「お、お待たせ、矢口・・」
そう言ってなつみは震える手でテーブルの上に置いた。
「ハハ、朝からなっちも大変・・だねぇ・・」
苦笑いをしながらなつみに話し掛ける真里だったが、当のなつみは精も根も尽き果てたようないわゆる、どこかでは見せられない顔になっていた。
「ねっ、食べようよ。折角作ってくれたのに冷めちゃうよ」
真里は多少なつみに気を遣いながら話すとなつみは、姿勢を正し、数秒俯くと笑顔で、
「そうだね、食べよっか」と答えた。
- 49 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/17(土) 21:50
- その行動に真里は改めて、いや、初めてなつみの行動がわからなくなり、背筋がぞっとした。
切り替えが速いというか、前のことは切り捨てていって新たな人格が生まれる、そう、まるで生まれ変わっているように感じた。
もしかしたら3ヶ月前に逢う前の記憶は完全に無くなってしまったのではないのかとさえも思えた。
それほど、今のなつみの切り替えは小さいことではあるが、真里にとっては恐ろしく感じた。
「お〜い、矢口〜大丈夫ですか〜?」
なつみは前のめりになり、右手で意識を確認するように真里の目の前で手を振る。
それに気付いた真里はハッとして、笑顔で答える。
「ハハ、ちょっと考え事。ごめんね、心配かけちゃって。食べよっか、いただきまーす」
そして誤魔化すように早口で捲くし立ててから、トーストに被り付いた。
なつみは疑問に思ったが空腹には勝てず、コーヒーを一口啜ってから、トーストを食べ始めた。
そしていつしか疑問は消えていったが食後、それは突然起きた・・。
- 50 名前:なつまり。 投稿日:2004/07/17(土) 22:07
- 更新終了です。
下書きを書いてすぐに書いたので、誤字脱字があるかもしれません。
ご了承ください。
学園モノですが、明日この花板で書きます。タイトルが花関係なので。
タイトルは『恋の花が満開』です。
主役は男と87年組っていうんですかね、それと矢口さんですね。
全員出す予定ですが、この方達です。
興味があったら読んでみてください。それでは。
- 51 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:02
- なつみが突然倒れたのだ。
「なっち!」
真里は慌ててなつみに駆け寄り、すぐになつみの体を調べた。
「・・・」
「・・や、やぐち・・」
なつみは震えながら真里の顔に右手を伸ばそうとしていた。
それをぎゅっと両手で包む真里。
「大丈夫だよ、なっち。恐がらないで、オイラが側に居るから」
「うん・・」
なつみは笑顔で返事をすると気絶した。
真里はスッと手を放すとなつみを軽々持ち上げた。
(まずはなっちの治療。それからきつ〜いお灸を饐えてあげるよ)
真里はリビングのドアを蹴破るとなるべく揺らさないように地下へ走り出した。
ここの地下は真里がなつみと逢う約半年前に独自で創り上げたシェルターである。
そこには真里となつみしか入れないようにセキュリティがあるのだが、実際は真里が創り終わった後1泊しただけで真里は9ヶ月ぶりに入る場所である。
なつみはこの家に地下があることさえ知らないでいる。
- 52 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:16
- 地下に辿り着いた真里は声紋チェックを抜け、中に入る。
そこはドーム状の部屋で部屋全体を照らす照明と、様々な機関銃などが所狭しと並んでいる。
後は部屋の中央に長いソファが置いてあるだけである。
真里はソファを軽く蹴ると、ソファは凄まじいスピードで診療台へと変わった。
そこになつみをそっと置いて「後は頼むよ」と一言。
すると部屋中に「はい、わかりました」と女性の声が響いた。
真里はその返事を特に聞く訳でもなく、つかつかと一つの箱に向かって歩き出した。
そして箱の中身、白銀のワルサーP38を取り出した。
「こいつだけあれば充分だな。待っててね、なっち。撃った奴を殺ってくるから・・」
そう言い残し、真里はリビングへ向かった。
- 53 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:32
- 「裕ちゃん。二人共逃がしちゃったけどいいの?」
崩れ掛けているビルの屋上で身を低くしている圭織は、双眼鏡を覗き込みながら隣りの裕子に尋ねた。
「大丈夫やろ。圭ちゃんの狙撃は完璧やからな。今頃、あのちっさいガキは友達の死体見ながら泣いてるやろ。で、何らかの形でまたあの部屋に戻ってくる。そこでドーンと一発お見舞いして終わりや。どや、ええ考えやろ」
同じく双眼鏡を覗き込みながら話す裕子に、隣りでスナイパーライフルを構えている圭が突っ込む。
「全然だね。何らかの形っていつ戻ってくるかわからないじゃん。これ構えてると結構疲れんだよね」
文句を言う圭に裕子は拳を握り締め、なんやねん!毎回毎回、文句ばっかり言いおって。あんたなんか撃つだけやないか。と、愚痴を本人には言わず、心の中で言っていた。
「あ、来たよ」と圭織が言うと圭は銃口を真里に向けた。
- 54 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:35
- 「さてどこかな。オイラを怒らせたバカな奴は」
真里は独り言を言いながら、倒壊している街が一望出来る一面ガラスへ歩き始めた。
- 55 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:37
- 「今や圭ちゃん!」
「OK。わかってるよ」
圭は返事をしながら引き金を引いた。
弾は音も無く発射された・・。
- 56 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:40
- 「ふ〜ん。あれかぁ」
真里は一つの崩れ掛けているビルを発見した。
そしてガラスを全部割り終えると「ざっと300mくらいか。余裕だな。・・・甘いよ・・・」
向かってきた弾丸を無駄な動き一つ無く避けた。
- 57 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:42
- 「な!なんやねん!あいつ弾が見えとるんか!
「くっ!このぉ!」
圭はもう一回引き金を引いた。
- 58 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 14:48
- 「わからない奴だなぁ。少し痛い目に遭わせてやるか」
真里は両手でワルサーを構え、すぐに引き金を引いた。
弾は勢い良く発射され、真っ直ぐ圭の撃った弾へ向かって行く。
そして真正面で空中衝突して圭の弾は破裂したが、真里の弾はそのまま勢いが衰えるどころか、スピードを増し、回転数を上げながら圭の頬をかすめた。
- 59 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 15:07
- 頬からは血が滴り落ちていく。
それを圭は無表情で手に取り、見詰める。
「・・・裕ちゃん、圭織。手伝って。心臓一発で終わらせようと思ったけど、あいつは蜂の巣にしてやる!」
鬼の形相になった圭は後ろにある黒いアタッシュケースを開け、3つの銃を取り出した。
裕子にワルサーP38を、圭織にデザートイーグル50AEを渡し、そして自分のコルトパイソンを持ち、再び真里に銃口を向けた。
「今度はそうは行かないよ!準備は良い!?二人共」
「うん、いいよ」
「あぁ、ええけど・・」
(なんか引っ掛かるやけどなぁ。あの矢口って奴、どっかで逢った気がするんやけど気のせいか?それにあの銀のワルサーと加速した弾・・。あぁ〜!気持ち悪いなぁ、こういうのって)
「裕ちゃん?どうしたの、ぼーっとしちゃって。珍しいね」
圭織が構えながら話し掛けた。
「ん、あぁ。ちょっと考え事してただけや。気にせんといて」
「そっか。ならいいんだけど」
独特の笑みを浮かべて返事をした圭織は、既に立ち上がって撃っている圭と同じように立ち上がって撃ち始めた。
(気になるけど、今は任務の遂行や。後で怒られるのウチやし。忘れとこ)
「よっしゃ!」
裕子は気合いを入れると立ち上がり、撃ち始めた。
- 60 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 15:14
- 既に弾丸の嵐に遭っている真里は軽やかなステップでかわしていく。
「おっと。しかし良い腕してるねぇ、あの3人・・。かわすのが一苦労だよ。だけど隙があるな、そこに気付けばオイラもやられてたかもしれないけど。・・終わりだな・・」
真里は緩んだ表情を引き締め、隙を狙って3連続撃ちをした。
- 61 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 15:27
- 「くっ、打ち返してきよった。避け切れん!」
裕子は心臓に向かって来る弾を咄嗟にずらして、右の胸に当たった。
そして態勢を崩し片膝をついた。
圭織も何とか心臓を免れたが、圭は頭に血が上っており、弾が来たことすらわからず即死した。
「くそ!圭ちゃんがやられた。圭織撤退や」
苦しそうな表情で頷く圭織。
今まで一緒にやってきた仲間やからな、せめてウチらの近くで眠らせてあげようや。
裕子は圭織にそう言って二人でゆっくりと確実に圭を担いで行った。
・・途中、圭織が力尽き、裕子は二人を運んでいくが体の限界がきたみたいだ。
「く・・そ、・・ここ、・・まで・・・か・・・」
(覚・・・え・・と・・・れよ・・・・や・・・ぐ・・ち・・・)
二人を抱えたまま、裕子は永遠の眠りに就いた・・。
だが、その裕子達に二人の人影が近付き「・・みつけた・・」と一言呟いた・・。
- 62 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 15:32
- 「さて、なっちの治療も済んだかな。まぁ、アヤならとっくに終わってると思うけど」
アヤというのは先程地下で返事をした女性だ。
しかし正体はそこのセキュリティやシステムを管理するコンピューターである。
真里は銃を仕舞い込み、リビングを出ると真っ先に地下へ向かった。
- 63 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 15:56
- 「ねぇアヤ。なっちはどう?」
「安静にしています。心配はいりません」
「そっか。ま、そんなに心配はしてなかったんだけどね。アヤに任せてあるからさ」
笑顔で言う真里。
「それはお世辞ですか?私に言っても何も出ませんけど」
「な〜に言ってんの、お世辞なんかじゃないって。本心だよ。もしお世辞だとしてもアヤからは何も出ないことはわかってるからさ」
「・・矢口さん。それはいじわる、では?」
「や〜だ、アヤ。矢口でいいって前に言わなかったっけ?だいぶ前だけどさ。なっちも言ってくれるようになったんだからさ、アヤも遠慮しないでさ。ねっ?」
「答えになっていないのですが・・」
「答え?あぁ。そっ、いぢわる♪アヤみたいなタイプっていぢめたくなるんだよねぇ、おいら」
「断っておきますが私はそういう趣味はありませんよ」
「キャハハ、冗談だよ。ほんとアヤっておもしろいね。なっちと同じで一日中話してても全然飽きないよ、やっぱり。だけど天然さではなっちだけどね」
「ん?それは私も天然ってことですか?」
「え?今頃気付いた?そりゃあそうだよねぇ、1年近くも埃被ってたからなぁ。気付くのも遅くなるよねぇ。それに元々だし」
「埃など被っていません!だけど矢口さんだって似たような所に住んでいるじゃないですか。それに安倍さんとも・・」
「え?!なっ!ちょっ、ちょっとぉ!アヤもしかして見てたの?それって覗きだよ?!」
「どうやら図星のようですね。大丈夫ですよ、見てませんから。そこまで回路は繋がってませんからね」
「なんだよぉ。驚かさないでよね、あ〜ビックリしたぁ」
- 64 名前:第参輪 Contact and attack 投稿日:2004/07/27(火) 16:09
- 「・・・矢口さん」
アヤは真里の様子を見ながら静かに名に呼んだ。
「ん?何?」
いつもの様子で答える真里。
「・・市井という人の元に行くんですよね」
「・・・うん。そこに行く」
なんでわかったのとは聞かず答える真里。
アヤに嘘を言っても仕方ないからだ。
「だけどアヤのことが嫌いになったわけじゃないよ!なっちとアヤの安全の為だよ。ほんとはアヤもおいらが守ってあげたいけど一人で何でも出来ちゃうもんね、アヤは・・・」
俯いてアヤに見せないように涙する真里。
「・・・そんな事無いです。・・・だけどこういうとき思うんです」
「?」
涙を拭きながら顔を上げる真里。
「体があったら抱き締めてあげたい。もし私にも泣くことが出来たらって。今思ったことですけど」
「フフ、帰ってきたら造って上げるよ。それまで待っててね・・」
「ええ、楽しみにしています。・・それではいってらっしゃい」
「うん、いってきます」
- 65 名前:なつまり。 投稿日:2004/07/27(火) 16:14
- 3話終了です。
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 14:08
- test
- 67 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/08/05(木) 17:17
- 「何ぃ!中澤達がやられたやと!で、回収はしたんか。・・・あ?何処にも死体がないやと!アホ!見つかるまで捜し続けろや!
大事な実験体なんやからな。見つかったら報告しろ、わかったな」
つんくは多少乱暴に電話を切るとムスッとした表情で腕を組み、考え事をし始めた。
(中澤達がやられたのは予想の範囲内やけど、こうも簡単にとはな・・。矢口達が強うなったのか、こちらが弱かったのか・・。
! まさか安倍が記憶を取り戻したんか。そうやったら急がなあかんわな。こっちがやられる前にやっとかんと。・・奴等を使うか・・)
- 68 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/04(土) 17:41
- 『今の場所がやばくなったらあたしの所に来なよ。事情だけは聞いてあげるからさ』
その言葉を聞いてから数年・・。
おいらは今・・・。
「紗耶香ぁ〜!どこだ〜!おいらはもう限界ですよ〜っだ!」
迷っている・・・。
真里は文句を言いつつもなつみを起こさないようにゆっくりと瓦礫の山に腰掛ける。
そして肩に掛けてある一見普通に見えるボストンバッグを乱暴に降ろした。
なつみを背負ったまま。
- 69 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/04(土) 17:49
- 「いやぁ、疲れたー」
「んぁ、やぐちぃ・・・えへへ・・・」
「やだねぇ、うちのお姫様は。どんな夢をみてんだか・・。よだれまで垂らしちゃって。いやらしいなぁ、まったく・・」
真里は照れながら右手の人差し指でなつみの眉間を突付いて持ち上げると、肩についているよだれを左手で拭いた。
そしてゆっくりと元に戻そうとなつみを見ると・・。
- 70 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/04(土) 17:59
- 「きゃははははは!なっちおもしろい!けどかわいいー!」
なつみは幸せそうな顔で笑っているのだが、真里に眉間を突付かれて眉毛が下がり気味になり、さらによだれの跡がついているというオマケつきだった。
「きゃははははは!だめ!笑い死にしちゃう!きゃはは、あー苦しいぃ!」
真里がお腹を抱えて笑っていると更に上の瓦礫の山から足音が聞こえた。
真里は気配に気付き、ピタッと止め、気配のある方に殺気を向ける。
「やだなぁ、矢口。そんなに殺気放ってちゃ他の奴らに気付かれちゃうよ?」
真里は聞き覚えのある声に驚いた。
- 71 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/21(火) 17:33
- 「紗耶香ぁ!」
「よっ!久しぶり。3年ぶりだっけ?」
そこには薄手のコートを着て、両手に黒いグローブと革靴を履いた市井紗耶香が立っていた。
「・・・そんなとこだね」
「あ、後ろにいるのなっち?寝てんの?」
「そっ、かわいいでしょ?」
「・・・。随分ベタ惚れだね、なんかあった?」
「まぁ色々とね」
「ふーん、そっか。まっ、うち来なよ。近くだから」
- 72 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/21(火) 17:35
- ・・・歩くこと数十メートル、瓦礫の山の中に一つ、ぽつんと薄汚れた白いテントがあった。
「あれが家?」真里がなつみを背負いながら聞く。
「そ。隠れ家ってとこだね。ま、入ってよ」
「うん、お邪魔しまーす」
中は見た目以上に広く、真里、なつみ、紗耶香が寝そべってもまだまだ余裕があるほどの広さだが、
それは一切物がないせいなのかもしれない・・。
- 73 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/21(火) 17:37
- 「食べ物とかないけどどうやって生活してんの?」
真里の疑問を待っていたかのように紗耶香はふっふっふと笑ってから答えた。
「食べ物とかはここにあんの」人差し指を下に向けた。
「ん?」真里は人差し指の方向、下を見た。
そこには少し大きめのマンホールがひとつあった。
「マンホール?・・・もしかして下で生活してんの?!」
「まあ、そんなとこ。実際は違うんだけど。ほら、行こ、こっちも色々話さなきゃならない事もあるし」
「う、うん。(なんか嫌な感じがするけど・・)」
- 74 名前:なつまり。 投稿日:2004/09/21(火) 17:39
- 「はい、じゃあその上に乗って」
「ほ?開けるんじゃないの?」
「いいから乗って乗って」真里は黙って上に乗る。
「よし、じゃあ行くよ。えい」
紗耶香が何かのスイッチを押した途端、マンホールはヴーンと音をたて、
数十センチ下に下がってからゆっくりと回転を始め、そのまま下がっていく。
「おいらダメかも。こういうの・・・」
- 75 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:19
- 「紗耶香ぁ。あれ、どうにかした方が良いよ・・・」
マンホールから降りた真里は膝に手をつきながら、忠告をした。
「あたしも思ったんだけどさ、部品が足りなかったんだよ。ま、いいじゃん。面白かったでしょ?」
「全・然!気分悪い」
悪びれた様子もない紗耶香に真里は膝に手をついたまま見上げて否定する。
「そっか、残念だね。矢口なら喜んでくれると思ったんだけど。ほら早く行こ」
ん?なにかがおかしい・・。矢口なら・・・。
まるでここに来ることがわかっていたような口ぶりだ。
それにさっきからなにかと急かしている。
なにを急いでいるんだろう、紗耶香ってそんなにせっかちだったっけ?
- 76 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:22
- あらゆる思案が頭の中で飛び交う中、響いた声が聞こえた。
「なにやってんの、矢口!おいてっちゃうぞ」
紗耶香の声だ。
「うん!今行く!」
返事をした後、真里は改めて周りを見渡した。
下水道だよね、普通の・・。こんなとこに住めんのかな。
やはりここは真里が予想した通り、普通の下水道だった。
だが、真里はあることに気付いた。
一つは水路に水が全く通っていないこと。
二つ目は上にある通風孔から生暖かい風が吹いているのだが、悪臭がしない。
いや、無臭と言った方が良いのかも知れない。
変だな、紗耶香がいじったのかな?
・・・・・いいか、別に。気にしてても仕方ない。
真里は自分にそう言い聞かせ、正面にいる筈の紗耶香を見た。
- 77 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:26
- だがその紗耶香は真里の視界には居なかった。
道は先に薄暗い直線と、右方向。
もし紗耶香が行ったのが直線ならば目を凝らして走っていけば追い付けると思うけど、
行ったのが右方向で、もしその先が複雑な道だとすれば・・・。
おいらに紗耶香を探すことは出来ない・・。
恐らく無理だろう、初めて来た場所なのだから・・。
初めて来た場所・・。
真里は頭の中でもう一度繰り返した。
そうだ、おいらはここに初めて来たんだ。
道を知っている筈が無い、そんな人間を置いて行くだろうか。
普通はそんなことしないはずだ、少なくともおいらは友達にそんなことは絶対にしない。
と、いうことは紗耶香がおいらのことを友達と思っていれば、どこかで待ってくれている筈だ。
- 78 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:28
- そうでなければ後ろの奴と挟み撃ちをするつもりでどこかに身を隠しているのだろうか・・・。
だがさっきから後ろに隠れている奴からは、気配は感じられるが、殺気は感じられない。
もし二人で討つ気なら隠れている奴から先に倒せるはずだ。
気配も消せない奴だ、倒すことなど赤ん坊の手を捻るほど容易いだろう。
いや、待てよ。
何故おいらは紗耶香が敵であることを前提で考えていたのだろう。
今まではそんなこと無かったのに・・・。
今まで?今までとはどのくらいのことを言っているのだろう。
・・・・なにかがおかしい・・。
- 79 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:30
- 色んな言葉が飛び交って頭の中が騒々しい・・。
だけど気持ちは落ち着いている・・・?
・・・いや、違う!
意識が遠くなってきている、身体が重い・・。
『・・・ここは危険だ!』
頭はそう命令しているが、身体が言う事を聞かない。
なつみの様子をチラッと見ると相変わらず眠ったままだ。
- 80 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:32
- なっちを死なせたくない。
そんな真里の思いが僅かだが意識を保たせている。
前へ進まなきゃ・・・。
意識が朦朧としている中、ゆっくりだが確実に前へと足を進めている。
だが、この時地上に戻るという術があったにも関わらず、真里はそれをしなかった・・。
いや、考え付かなかった。
それほどまでに思考能力が低下していたとも考えられるが、
それ以上に真里のなつみに対する『救いたい』という気持ちが大きかったのだ。
- 81 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:33
- 真里が十歩目を歩き切ろうというとき、態勢を崩し、片膝をついてしまった。
な・・・なにやってんだよ、おいら・・・。
全然・・前に、進ん・・・でないのに・・・。
こんな、とこで・・・休んで、なんか・・・・いられない、の・・に・・・。
真里が倒れ込もうとした時、ひとりの人物が真里となつみを抱えた。
その人は顔と体全体を布で覆っていた。
「大丈夫。後はあたしに任せておやすみ、矢口・・・」
布のせいで少しくぐもった声だったがどこか安心できる声・・。
- 82 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:35
- おいらは一瞬、誰かのことを思い出した・・。
かなりうろ覚えだけど、小さい頃泣いていたおいらをよく慰めてくれた人・・。
小さい頃おいらとよく遊んでくれた人・・。
時にはおいらを怒ったり、時にはおいらとケンカしたり・・。
けど、最後には笑って許してくれた人・・。
長いようで短い時間を一緒に過ごした人・・。
だけどおいらはその人の名前を知らない・・。
- 83 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/04(月) 19:37
- そんな人のことを思い出した。
この人はその人に似ている・・。
安心できる声、おいらはそれだけを信じてこの人に身を任せよう。
たとえおいらがここで死んだとしても、この人がなっちを救ってくれる。
なっちの記憶を取り戻させてくれる・・。
ホントはおいらがやりたかったけど、どうやらムリみたいだから・・。
なっち。
おいらがいなくなっても安心して。
この人がなっちを絶対に救ってくれるから、ね?
なっち、またいつかどこかで逢おうね、絶対だよ?
・・・それじゃあおやすみ、なっち・・。
- 84 名前:なつまり。 投稿日:2004/10/04(月) 19:39
- 久々の更新終了です。
- 85 名前:なつまり。 投稿日:2004/10/04(月) 19:40
- 隠し・・。
- 86 名前:なつまり。 投稿日:2004/10/04(月) 19:41
- 隠します。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 08:53
- 矢口さん・・・
絶対また会えると信じたい
なちまり場面は癒されます。
- 88 名前:なつまり。 投稿日:2004/10/10(日) 13:45
- >>87 名無し飼育さん
それ程のものでもないのに隠してしまったことを後から後悔してしまったのですが、
読んで頂いて本当にありがとうございます。
- 89 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/27(水) 22:23
- ここはとある地下鉄。
朽ち果てているここは、地上へ上がる階段は瓦礫によって塞がれていて、他にはボロボロの電車が一両あるだけだった。
ホームには仰向けで倒れている真里とそれを見ている人が一人・・・。
「・・・・ぐち、おい、矢口。起きてよ。おかしいなぁ、そろそろ切れると思うんだけどなぁ」
しゃがみ込んで真里の様子を見ている人、下水道で真里となつみを助けた人なのだが、真里が起きずに困っていた。
- 90 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/27(水) 22:26
- 「あ、そうだ」
ひとりで呟くと、徐(おもむろ)に真里の鼻と口を塞いでしまった。
「ん?・・・・ん、んー。ん、んー!んんー!」
お、やっとか。
パッと両手を離した。
「ぷはぁ!誰だよ!寝てたのに!」
がばっと上半身だけを起こしてツッコむ。
「おっす」
「え?あれ、おいら生きてる・・・。なんで?」
「そりゃあそうだよ。毒ガスじゃないもん、あれ」
「あ、そうなんだ。って誰ですか?」
「ひどいなぁ、忘れた?」
その人は顔を覆っている布を取ろうと手をかけた瞬間。
- 91 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/10/27(水) 22:28
- 「矢口!そいつから離れて!」
「え?紗耶香?どうしたの、その傷」
左腕を押さえながら階段の近くの壁に凭れ掛かっている市井紗耶香がいた。
「いいから早く離れて!」
「え、う、うん、わかった・・」
真里が立ち上がってその人から離れようとした時、呼び止められた。
「矢口。離れるのもいいけど、そいつはっていうか、それは矢口となっちに何かしてくれた?」
「それ?」
「そうだよ。それはこそこそ隠れて矢口達の様子を窺って、挙句の果てにはあたしに成り済まして、
こんな安っぽい演技なんかしてるし。呆れるよ、全く」
「え?ウソ、もしかして・・」
「そ、久しぶりだね、矢口」
その人は布を取り、ニコッと真里に笑いかけた。
- 92 名前:匿名 投稿日:2004/11/02(火) 08:10
- 気になるところで切られていて……
次回を楽しみに待ってます。
- 93 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/11/13(土) 21:19
- 「紗耶香!なんで?なんで紗耶香が二人いるの?」
「後で説明するから。まずはあれを片付けよ」
「待ちなよ、いきなりあたしを偽者呼ばわり?」
ドンッ!
「・・・は?」
「うっせぇよ、お前しかいねえだろうが。・・・あんまりアタシを怒らせるなよ」
「あ?なにいきなりキレてんの?短気だね〜、随分。あんたの方が失敗作なんじゃないの?」
「・・・失敗作?なにそれ?」
真里がぽつんと呟いた言葉に布を取った紗耶香がニヤッと笑った。
「誰もそんなこと言ってないよぉ?失敗作の偽者さん?」
「チッ!」
正体がバレた紗耶香は二人に背を向けて逃げようとした。
「ふ〜ん、鬼ごっこ?随分子供だねぇ」
紗耶香が追いかけようと1歩踏み出した時、車両の方から声が聞こえた。
- 94 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/11/13(土) 21:21
- 「そんなことする必要ないよん」
ズドン!
1発の銃声が響いた時、逃げようとしていた偽者が力無く倒れた。
「へぇ〜良い銃だね、これ。あれだけの威力なのに無反動なんて。
電車の中に同じのいっぱいあったんだけど、2つぐらいもらっていい?」
「あ、あぁ、いいけど・・・」
紗耶香が間の抜けた返事をすると、撃った人物はクスクス笑いながら言った。
「どうしたの?そんなになっちが撃ったことに驚いたの?・・・意外だった?
なっちだって殺すときは殺すんだよ?だって殺らなきゃこっちが殺られるもん。・・・クスクス」
- 95 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/11/13(土) 21:23
- 「ホントに・・・・・なっちなの?」
なつみの口から出てきた言葉に驚きと動揺を隠せない真里。
「そうだよ?けどその前におはようじゃないの?マリちゃん。朝なんでしょ?」
((マリちゃん?))
疑問を持った紗耶香が真里に近寄って耳打ちした。
『矢口。マリちゃんなんて言われたことある?』
『ないよ。だって昨日やっと矢口って言ってくれたんだよ?』
「どーしたの?マリちゃん。おはようは?」
「え・・・」
『挨拶して。まずは様子を見なきゃ』
『わかった』
「お、おはよう、なっち」
今精一杯の作り笑いを浮かべて挨拶する真里。
「おはよう、マリちゃん」
対してなつみが満面の笑みを自然と浮かべて挨拶した後、しばらくの沈黙が続いた・・・。
- 96 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/11/13(土) 21:23
- ・・・・・・・・・・・・
- 97 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2004/11/13(土) 21:27
- しばしの沈黙の後、なつみが口を開いた・・。
「ねえ、何か話そうよ。なっち、つまんない」
先ほどの態度とは違い、口を尖らせて上目遣いで体を左右に揺らしながら言った。
それはまるで子供のように・・・。
『紗耶香ぁ、どうしよ』
『なに戸惑ってんのさ、ま、あたしに任せな』
「ごめんね、退屈にさせて。中でご飯でも食べながらお話しよ?」
紗耶香が中と言って指差したのは、1両の電車だった。
「やった〜、なっちお腹ペコペコだったんだ〜」
はしゃぎながら電車の中に入るなつみ。
その後を紗耶香が行こうとするのを真里が腕を掴んで引きとめた。
「待ってよ。・・・おいら恐いよ。あの娘、なっちじゃないような気がするんだもん。
・・・あんななっち見たことないよ、3ヶ月一緒に住んでたときも、あそこにいたときも・・・」
真里の掴む力が強くなる・・・。
紗耶香はその痛みを物ともせず、真里を宥(なだ)めた。
「・・・あたしは最近のなっちは知らないけど、確かにあんななっちは見たことない。
ころころ性格が変わって・・。まるで多重人格者だよ、あれじゃあ。・・・だけどさ、矢口。
こっちが動かなかったらなっちはあのままだよ?なっちを元に戻したいならこっちから動かなきゃ。
大丈夫だよ、あたしもいるんだから、ね?」
「ありがと、紗耶香・・・」
俯いて涙を静かに流す真里。
・・・おいら最近涙もろくなったなぁ・・・。
- 98 名前:なつまり。 投稿日:2004/11/13(土) 21:31
- 更新終了。
>>92 匿名さん
読んで頂きありがとうございます。
- 99 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/01(土) 00:27
- 「ふぅ、ごちそーさまぁ」
「うそぉ・・・」
「あはは・・・食べられちゃった・・・」
満足そうにお腹をさするなつみ。
そのなつみを見て呆然としている真里。
なつみに食糧を半分以上食べられて放心状態の紗耶香。
「ねえ、紗耶香さん?だっけ?お話ってなんですか?」
首を傾げながら紗耶香に尋ねるなつみ。
「ん?あぁ、話?もう少し待ってて。あの娘が帰って来てからするから」
「あの娘って、・・・ごっつぁん?」と真里。
「そ。真希についても話したいことあるし・・・」
「・・・。呼び方変えたんだね、あの頃と・・」
「まぁね・・・」
その時・・。
- 100 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/01(土) 00:28
- 「きゃあああ〜!!」
車両の外から叫び声が聞こえた。
「え、なになに?」
慌てる真里、なつみは急に真剣な顔付きになった。
「外からだ、真希!」
慌てている真里を置いて車両から出る紗耶香。
その後を黙ってついて行くなつみ。
「あ、待ってよ」と一言言ってから真里が続いた。
- 101 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/01(土) 00:30
- 車両の外に出た3人は崩れた階段付近でしゃがみ込んですすり泣いている一人の少女を見つけた。
(誰だろ、あの娘。・・だけどあの金髪って昔のごっちんみたい・・)
「真希、大丈夫?」
躊躇いも無くその娘に近づく紗耶香。
(え?真希って・・・)
「うん。大丈夫、いちーちゃん・・。っていちーちゃん!?あれ?じゃあこのいちーちゃんは?」
さきほどなつみに撃たれ、横たわっている偽者を指差す。
「よく見なよ、部品が出てるだろ?それでさ、これ調べたいから真希、中に運んどいてよ」
「えー、気味悪いよ」
「大丈夫。もう動かないから。で、3人は回収した?」
「あ、うん。あっちに置いてある。だけどあの3人ってよく出来てるよね、本人かと思っちゃった」
「よし、ご苦労。矢口!ちょっと手伝って。・・・なっちもいいかな?手伝ってもらって」
頷いてから静かに歩き出すなつみ。
対する真里はじーっと真希を見詰めている。
- 102 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/01(土) 00:31
- 「・・・ごっつぁんだよね?」
恐る恐る聞いてみた。
「そうだよ〜。久しぶりだねぇやぐっつぁん!」
笑顔で答えると走って真里に抱き付いた。
「ぐぇ!な、何か力強くなってない?見た目も幼く見えるし」
「ホントに幼いんだよ?13才くらいかなぁ」
「へぇ・・。もしかして紗耶香の話ってこのことかなぁ・・」
「え?話って?」
「ん・・ちょっとね・・」
「ほら!いつまで抱き合ってんの、そこの二人!さっさと運びなさい!」
地下鉄に響く紗耶香の声。
「は〜い」
間延びした返事をしながら離れる真希。
「おー、恐・・。嫉妬かねぇ・・」
ボソッと呟く真里。
「なんだって、矢口!」
「なんでもありませ〜ん」
そう言いながら真里はキョロキョロと辺りを見回し、頼まれたものを探す。
「え〜っと、運ぶものは、っと・・」
真里は左に目をやるとなつみが何かを背負い込みながら、電車の入り口に向かって歩いている。
あれは・・・。
- 103 名前:なつまり。 投稿日:2005/01/01(土) 00:38
- 少しですが年明け1発目の更新終了です。
今年も宜しく御願い致します。
- 104 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:01
- なつみの背負い込んでいるものを見てみると・・・人だ。
手足や髪が長く、綺麗だった・・。
だけどおいらの知ってる人はこっちが見惚れるほどの美しさだった。
あの人は似ているけど違う。何か人に造られた、って感じ。
あれ?また変な考えだ・・。
また頭がぼーっとしてきた・・。
「矢口、あたしに掴まってな」
あ、紗耶香だ・・・いつのまに来たんだろ・・・。
「真希、急いで2体を中へ。息をしちゃダメだよ」
真希は黙って頷いた後、近くに横たわっていた2体を両脇に抱えて電車へ走っていった。
この2体が紗耶香が真里に運ぶように言ったものである。
紗耶香も真希に指示したあと、真里を抱きかかえ、電車へ駆け込む。
- 105 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:03
- 電車の中に入ったことを確認した真希はドアの横にに付いているボタンを急いで押した。
するとドアはプシューと音をたてた後に閉まった。
「くっ、思ったより吸ったな。真希、1発殴ってくれ」
真里を座席に寝かせ、1,2歩歩いてドアにうな垂れるように寄り掛かる。
「わかった。ちょっと我慢してね、いくよ〜」
バキッ
「く〜〜、効いた〜。サンキュ。今度は矢口だな」
「やぐっつぁん、殴っちゃうの?」
「いや、あの薬を飲ませる」
紗耶香は真里の寝ている座席の隣の座席を開けた。
中には黄緑色の液体が入った小瓶が敷き詰めてあるように置いてあった。
- 106 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:04
- その中から小瓶を2本取り出し、1本は自分が持ち、もう1本を3m程離れているなつみに投げ渡した。
片手で受け取り、キョトンとしているなつみ。
「なっちも飲みな。色は悪いけど無味無臭だから。真希、なっちの傍にいてやって」
真希は返事をした後、ニッコリと笑いかけながらなつみに駆け寄った。
真希がなつみに話し掛けたのを確認してから小瓶のコルクの蓋を開けて、真里の口に流し込んだ。
数秒後、ゆっくりと目を開けた真里。
「ん・・・なんで・・・・おいら、寝てんの・・」
「またガスを吸ったんだよ。もう大丈夫だと思うけど、気分は?」
- 107 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:06
- 「ガス?・・・また、って・・・」
右手で頭に触れながら、体を起こし、軽く頭を左右に振った。
左を見ると僅かに霞んではいるが、目の前にしゃがみ込んでいる紗耶香が確認出来た。
「脳を一時的に混乱させるものだよ。効果は人それぞれだけど。まぁ、ワクチン飲ませたから、また吸っても軽いショックを与えれば平気だから。
ワクチンって言ってもあたしが作ったからね、ガスの効果を薄める程度なんだよ。専門的な人が作ればこの程度のは防げるはず。
けどあたしのでも7割くらいは抑えているから、矢口の場合は混乱してから気を失うみたいだけど、それも軽く混乱する程度に抑えられてるはずだよ」
(へぇ、紗耶香が薬を・・。機械専門なのにねぇ、また独学で身に付けたんだろうか)
回復した真里は紗耶香を見詰めながら、ふとそんなことを思った。
- 108 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:07
- 真里が言った通り紗耶香の専門は機械全般。
昔から興味があり、弄っているうちに知識や技術が身に付き、今では機械で知らない物は何も無い。
真里のワルサーP38を造ったり、アヤの設計図を描いたり、
なつみが『いっぱいあるからちょうだい』と言っていたM93Rオート9も造ったのは全部紗耶香である。
ちなみに大量に造った理由は、落ちていた雑誌で初めて目にした時に一目惚れしたから。
常に腰に4丁備えている。
- 109 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:09
- けど、紗耶香に似てる人のこと考えたのは混乱してたからなのかな。
「矢口、あたしを見詰めんのは後にして。どうやらお客さんが来たみたいだよ」
紗耶香に言われ、我に返った。
「お客さん・・・」
呟くと紗耶香があれだよと窓の外を指差した。
覗いてみると階段の瓦礫が崩され、そこからガスマスクを付け、全身真っ黒の防護服を身に纏い、ショットガンらしき銃を抱えた兵士が横3列に並びながらやって来た。
その列は向こう端の階段まで続いた。
数にしておよそ150。
1列で50か、と無意味なことを考えた。
そして最後に歩きながら降りてくるショットガン以外は同じ格好をしたおっさんが一人。
多分あれがこれのリーダー、それにしてもどこの軍隊だろう。
- 110 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:10
- おいらがそんなこと考えていると紗耶香は何かゴソゴソしていた。
そして突然何か投げつけられた。
ガスマスクが3つ。
「ちょっと話してくるよ。真希!マスク付けたらドア付近で待機!準備運動忘れんなよ!」
マスクを付けてからごっつぁんに指示して電車から降りた紗耶香。
どこの軍隊か聞こうと思ったのに。
けど準備運動ってことは・・・戦うの!?
最初から話す気ないじゃん・・。
ってことは持ってきたのを早速使うのか。
「やぐっつぁん、大丈夫?恐いの?」
いつの間にか隣にいたごっつぁんが話し掛けてきた。
その後ろにはなっちがいた。
「ううん、違うよ。どう戦おうかなって考えてたんだよ」
「あ、ごとーも同じ!久しぶりだからワクワクすんだよね〜、ま、少し少ないけど」
そう話してからごっつぁんは、あ、マスクもらうね、と無邪気に言いながらおいらの手から2つ取り、1つを後ろのなっちに渡した。
そういえばなっちは・・・。
- 111 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:11
- 渡されたマスクを付けようとしていたなっちに話し掛けてみた。
「なっち、大丈夫?」
「あ、矢口・・・なんか久しぶりだね。私、長く寝すぎてたみたいでごめんね」
はにかみながら話すなっち。
や、やった〜!!なっちが元に戻ってる〜!!
ガスのせいだったんだ、変な風になってたの。よかった〜。
「気にしないで。なっち・・・これから戦闘になるから出来るだけ身を低くしてね。それと窓から顔を出すのもダメだよ?」
最後はなつみを安心させるように笑顔で言ってみた真里。
なつみも笑顔で応えるがすぐに下を向いて、曇った表情になってしまった。
- 112 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/06(木) 00:13
- 「矢口も・・・戦うの?」
「うん。・・・・・心配してくれてるの?大丈夫だよ。パッと見、あのおっさんもあいつらも大したことなさそうだし、数だけだよ」
「ホントに?」
「ホント。おいらを信じて。それにおいらがなっちを守るから」
まっすぐ私を見て言ってくれた・・。
顔赤くしてすぐにそっぽ向いちゃったけど。
だけど少しでも私を見てくれたこと、私を想って言ってくれたことに素直に嬉しいと思えた・・・。
「ありがとう・・」
何も考えずに言えた一言。素直に言えた私の気持ち。
矢口と3ヶ月暮らして、初めて本当の私を出せた・・。
今まで話し掛けるのも答えるのもいちいち考えてた。
こうすれば矢口が喜ぶかな、こうすれば矢口に嫌われないかなって・・。
けど今は違った・・。初めて矢口に向き合えた気がした・・・。
そして成長したと感じられた私自身の気持ち・・・。
ありがとう、矢口・・。
- 113 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 13:54
- 「何か御用ですか?ここには何も無いですけど」
最高級の作り笑顔で出迎えるあたし。
「とぼけても無駄だよ。私達のことも知っているだろう?大人しくあの3人を返したまえ。そうしたら危害は加えないよ」
・・・あたしの笑顔を無視するとは良い度胸だね・・。
「信用出来ると思います?・・・・・まず無理でしょ。最初から喧嘩腰の奴を信用しろったって」
話してる内に段々と腹が立ってきた。
「ほぉ・・・。で、どこが喧嘩腰だと言うのだね?」
はぁ?ボケてんのか、このおっさん。
「だから!こんな・・・っ!」
- 114 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 13:55
- パン!
いきなり撃ってきやがって・・・。
後ろの電車の車体に付いた弾痕を冷やかな目で見ながら、1秒くらい気付くのが遅かったらやられてたな、と少し呑気なことも考えた。
余裕で避けたあたしはコートの両ポケットから黒い革のフィンガーグローブを一つずつ取り出し、嵌めた。
そしてコートを脱ぎ、投げ捨てる。
チラッとおっさんを見やると右手の拳銃からは煙が上がっている。
それをニヤニヤしながら吹き消すおっさんに本気で腹が立った。
ぶっ飛ばす・・・。
- 115 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 13:56
- 俯いて左の掌を右の拳で1回叩き、そしてゆっくりと戦闘態勢をとった。
「はぁぁぁぁぁああああ!!」
気合いを入れた。
別に無意味なことじゃないんだ、これ。
短時間で自分の“スイッチ”を入れるのにね。
で、スイッチは『切』から『入』になりました・・。
スイッチが入ったらどうなる?
多分、矢口ので知ったと思うよ。
アタシのとこに来たってことは1回くらいは戦闘があったはずだからさ。
・・・さて、やりますか。
すぐ終わるけどね・・。
- 116 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 13:58
- 「おらぁあああ!!」
一気に踏み込んでおっさんの顔に渾身の右ストレートを叩き込む。
「っ!!」
案の定おっさんは声にならない呻き声を上げて、後ろの奴らを巻き込んで吹っ飛んでいった。
ワイヤーアクションみたいに吹っ飛んだおっさんは向こう側の線路を通り越し、広告が張ってあった壁に物凄い音とともに減り込んだ。
はい、終わり。
たった1発の為に本気出したのは大人気無いと思うけど、そんぐらい腹が立ったんだよね。
あとは半分が逃げて半分が『会社の為に!』って言う奴らがいるんだよなぁ。そんな奴らは・・・。
「真希」
「は〜い」と、緊張感の欠片も無い彼女に任せることにしよう。
- 117 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 14:00
- 「うわぁ。いちーちゃん!ぜーいん、ゴトーが倒していいの?」
車内に戻ろうとした時、真希の言葉に驚いた。
全員?
慌てて振り返った。
どういうことだ、逃げる奴がなんでいないんだ。
普通、頭(隊長)がやられたらそれに怯えて逃げる筈なのに一人もいない。
何故だ?
・・・・・何か嫌な予感がする。
- 118 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 14:01
- 「矢口!」
そう思ったアタシは顔だけを電車に戻し、すぐに矢口を呼んだ。
「何?」
車窓からヒョコッと顔を出す矢口。
「なっちと・・・電車・・・・・任せたよ」
少しトーンを低くして言った。
「ズルッ、電車もかよ!」
コケた後、すぐに突っ込む。
「そ、電車も。大事なものがあるからね」
「・・・りょーかい」
どうやら通じたらしく返事をした後、すぐに引っ込んだ。
- 119 名前:第四輪 紗耶香とあの娘・・。 投稿日:2005/01/31(月) 14:02
- 「真希、“スイッチ”は入れなくていいの?」
顔を戻したアタシは奴らを見ながら真希に聞いてみた。
「だいじょーぶ。とっくに入ってるから!」
鼻を鳴らしながら答える真希。
どうやら興奮してるみたい・・。
「そうかい。じゃ、やりますか!」
「あいよ〜。って、いちーちゃんも?!」
驚いた顔をしている。
おもしろいな・・。
「あぁ、急に気が変わってね」
クスッと笑って真希を見る。
「そっか。じゃあ、半分コね」
真希が左手を顔の高さに差し出した。
「おっけー。半分コ」
アタシは右手でコツンと軽く拳を合わせた。
- 120 名前:なつまり。 投稿日:2005/04/05(火) 14:09
- 誠に勝手ながらこのスレは放置致します。
2つ共完結させると言っておきながら有言実行出来ず、申し訳ありません。
このスレに感想を書いて下さった方々、ありがとうございました。
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