笑っていれば
- 1 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:27
- 初めまして。駄文ですがよろしくお願いします。
短編、中編となります。
勝手ながらあやみき絡みが多いと思いますので……
では自分なりの甘いものを書こうと思います。
短編、中編で進行します!
- 2 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:35
-
「ごめんってば、おーい、亜弥ちゃん」
さっきから美貴はある人に謝罪をしている。
なぜなら、それは些細な理由で。
「だからぁ、あの時はさぁ……ボーッとしてて気付かなかったんだよ」
それは、TV番組の収録中に起こった事。
収録中に目が合ったのに、美貴がシカトをしたという原因から喧嘩は始まった。
「ずーーーっと辻ちゃんと話してたよねみきたん」
「いやぁ、だってつまんなかったからさぁ」
適当な理由をくっつけて、美貴の恋人、亜弥ちゃんに必死で謝る。
- 3 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:41
- ここは亜弥ちゃんの部屋。綺麗に片付いていて、整理整頓されてある。
折角スケジュールが合ったから、珍しく美貴から誘ったのに。
休日が喧嘩で過ぎてしまうなんて……
しっかり正座をさせられた美貴の目の前には、胡座をかいてふてくされている
亜弥ちゃんがいる。
「じゃー、何したら許してくれんのさ」
「何開き直ってんのみきたん……」
「や……ごめん。で、どうしたらいい?」
えーっとえーっとえーっと……亜弥ちゃんの怒りを抑えるには…
- 4 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:47
- おばかな美貴の頭が必死で考えだした案。
「キスしたげるよ」
「はぁっ!??」
こうでもしないと機嫌は直らない。美貴はそう思った。
「前は機嫌悪い時キスしたらすぐ機嫌直ったし……直る?」
「……みきたんあたしの機嫌直すためにだけするの?」
まあそれはそうでもあるけど……したい時ってあるじゃん?
「キスってそういうもんじゃないよ……って、みきたんが言ったんだよ?」
「え、そうだっけ」
「そぉだよ。昔あたしがふざけてしようとしたらすっごい拒絶されてさ」
またしても亜弥ちゃんは御機嫌ななめになってしまった。
- 5 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:50
- 「違うよ、今したい気分なの!」
「ほんとぉ?」
本当……そうだ本当だよ。亜弥ちゃんにキスしたいんだよ。
あーっ、照れるなぁもう。
そんな上目遣いで見られたらしたくなるってのが恋人ココロでしょ!
「じゃ、遠慮なく」
「ちょ、やっ、みきたん!?」
美貴は我を忘れたかのように亜弥ちゃんをベッドに押し倒していた。
どうも上目遣いで美貴の理性はふっとんだらしい。
- 6 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:54
- 「キスって言った」
「だから、してあげるよ?」
嫌がる素振りは見せるものの、あまり抵抗はしていない亜弥ちゃん。
そういう事なら、最後まで行くっきゃないでしょう……。
「ちょっみきたん!どこ触ってんの!」
「もー無理ですっ」
なんて、最初は笑ってた亜弥ちゃんも最後になったらすっごいセクシーな
顔しちゃって。最初はキスだけのつもりだったけど、段々気分がね……
- 7 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:59
-
「あははっ、亜弥ちゃんかわいー」
亜弥ちゃんは終った直後すぐ眠っちゃって。
スースー寝息をたてる寝顔は美貴しか見れない、特別なもの。
「……たぁん」
「お、何だ……?」
寝言……美貴の名前呼んでる。よっぽど好きなんだ、美貴の事。
「んーっ……好き…」
好きだって、普段あんまり言わないくせに寝言となると言うんだ。
「……知ってるよ」
そして軽くついばむようなキス。それは短かったけど、すごく大切な
物を感じるようなキスだった。
FIN
- 8 名前:証千 投稿日:2004/06/09(水) 20:59
- 今日の更新終ります。
- 9 名前:never foget day 投稿日:2004/06/10(木) 21:37
- 6月のじめったい季節、あたしはこんな日が大嫌い。
しかも最近、冷たくされているような気がしてならない人がいる。
その人は、すっごく優しいけど、すっごく馬鹿なんだ。
ただ一言が言えなくて、いつもあたしを焦らすその人はまるで犬みたい。
- 10 名前:never forget day 投稿日:2004/06/10(木) 21:45
-
「明日……何の日だか知ってる?」
TVを見ながらただ呆然と黙っているだけのみきたんは、いつも通り。
あたしの言う事全然聞いてなくて、ただ相づちを打つだけ。
「明日ぁ……えーっと…」
思い出せ、にぶちん。只でさえ忘れん坊なんだから。
「ー……あ、亜弥ちゃんの誕生日だねぇ」
「忘れてたんだ」
「いやいや、忘れてない忘れてない。ちゃんとプレゼントあるから!」
軽く柔軟をして、すっと立ち上がったみきたんは、あたしが座っているせいか
背が高く見えた。
- 11 名前:never forget day 投稿日:2004/06/10(木) 21:52
-
「プレゼントって、何?」
「なんでそうそっけないのかな…美貴がやりにくいじゃん」
そっけなくなんか、してない。そっちが悪いんだ……
いつもあたしの事興味無さげで、ちゃんと見てくれてない。
デートする時も、手を繋ぐというかただ触れているだけの関係。
「プレゼントは、2つあるよっ。偉いっしょ?」
わざと明るく言ってるのかな?……いつもよりニコニコしてる。
- 12 名前:証千 投稿日:2004/06/10(木) 21:55
- 短くてごめんなさい。御感想、松浦さんと藤本さんに誰かが
絡んでるリクでしたら受け付けますので、なんなりと。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/10(木) 21:58
- 更新お疲れ様です!
作者さんのあやみきを読んでハマってしまいました!
リクいいですか?
あの・・・最近気に入ってるごまみき・あやごまあたりお願いしていいですか?
これからも期待してます!!
- 14 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:12
- 「ねーってば、亜弥ちゃん。聞いてる?」
悔しいよ。ずるいよ。みきたんが笑うと、もっと好きになるじゃんか。
好きにさせといて、あたしに冷たくするんだもん。
「あ……亜弥ちゃん?どぉしたのっ!??何で泣いてんの!?」
「みきたんがぁっ……うぇっ…みきたんが悪いんだよっ!!」
泣くつもりなんて、なかった。だけどどうしても目がいう事を聞いて
くれなかった。
見られたくない。こんな弱い自分をみきたんに見せたくなかった。
- 15 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:19
- 「美貴……のせい?美貴知らない間に何かした…?」
「したよぉっ……みきたんのバカぁっ……だいっきらい!」
次から次へと出てきた意地っぱりは、泣いているあたしは気付かなかった。
床で正座を崩して泣いているあたしを、みきたんは呆然とそれを見ている。
「ダメだよっ……亜弥ちゃんは美貴の事好きだもん」
「ふぇ…?」
それまでそういう事言わなかったみきたんが、初めて口にした。
好きとか、言われた事なんて告白された時ぐらいだから。
- 16 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:27
-
「だから……美貴の事きらいになっちゃだめなんだよ。
こういうの慣れてないからっ……上手く言えないけど……」
上手く言えなくてもいい、ずっと言って欲しかった。
「美貴は、亜弥ちゃんの事好き。だから…きらいにならないで?
わがままだけど……亜弥ちゃんにはずっと美貴の事好きでいて欲しいんだ」
みきたんはそう言ってあたしの事をだきしめた。顔はもちろん真っ赤で
あたしとは目を合わせないように頑張ってた顔が、すっごくかわいくて。
「たんのばかっ、あたしの事絶対悲しませないって言ったくせに」
「あ………ごめん、で、何で泣いてたの…?」
やっぱり最後のラストまで鈍感なみきたんは、あたしの涙の訳を知らなかった
わけで。
- 17 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:33
- 「ふっ……アハハっ!!わかんない」
「えぇ?わかんないの?」
みきたんに好きって言われた時、もう悲しみはどっか行った。
あたしは、みきたんの事が好き。みきたんも、あたしの事好きって
言ってくれた。それだけでもういいや……
「ねぇみきたん、首くるしーよ」
「や、もうちょっとだけ……ね?」
後ろから首に巻き付くように抱かれてしまったあたしは急に甘え出した
みきたんに放すようにいった。
「プレゼントって何だったの?」
「そらー……明日のお楽しみじゃん」
「えーっ、せめて1個だけでも教えてよ!!」
みきたんはしばらく考えて、照れくさそうにニコッと笑った。
- 18 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:40
-
「もーちょっとロマンティックな所が良かったんだけどっ…」
「え……?」
後ろ向きの状態で、首に巻き付いてるみきたんを見上げた瞬間
キスをされた。
「……だから別の場所が良かったのに……」
「みきたんっ……!?何でいきなりっ……」
みきたんからのキスは毎回ほっぺ。だから余計驚いちゃって。
- 19 名前:never forget day 投稿日:2004/06/11(金) 19:45
-
「はいっ、約束終了!」
「は?約束……?」
「さっきのキス……もう2度と亜弥ちゃん泣かせないって証拠だから」
「え、そうだったの!?」
おそらくみきたんはキスするのがものすごく照れたらしく、しばらく
ぽわ〜っとしてた。その顔もまたかわいかったんだよね。
「明日は一緒に過ごせる?」
「んー…仕事終ったらすぐ行くよ。12時に間に合うようにする!」
「ほんとぉ?」
「………多分」
ちょっと頼りないあたしの恋人は、あたしにとって大事な人。
いくら鈍感でも、ちゃんと好きって分るよ?
だからずっと笑ってるよ。
ずっと傍にいて、笑っているからね。
FIN
- 20 名前:証千 投稿日:2004/06/11(金) 19:47
- >名無飼育さん、レスありがとうございます。あやごま、みきごま
ですね。早速書こうと思います。
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/11(金) 19:49
- リアルタイムでドキドキしながら読んでますよ。
甘〜いあやみき、ごちそうさまでした!!
証千さんのあやみき大好き!もっと書いてくださいね。
これからも頑張ってください。
- 22 名前:証千 投稿日:2004/06/11(金) 21:39
- >名無し読者さん、甘かったですか!どうもです。
次はあやごま書くのでどうぞよろしくお願い
します!
- 23 名前:let's love game 投稿日:2004/06/11(金) 21:47
- 恋なんて、ごとーには縁のない話。
よくTVドラマで見るシーンなんか運命的だなぁって
思うけど、あそこまで本当に上手く行くわけないじゃん。
なんて現実的だけど、そんなごとーにも春がやってきた。
真面目に恋しちゃったんだよ、ごとー。
誰よりもあの子が素敵に見えて、輝いて見えてしまう。
目がハートマーク?みたいな。
両思いになるまでどのぐらいかかったか分る?
なんと1年半だよ1年半。長かった…………
その彼女とどこまで行ったかって………?
苦労の連続、繰り返してきたんだ。
- 24 名前:let's love game 投稿日:2004/06/11(金) 21:58
- ある夜中、どうも寝つけなかったごとーはコンビニに行ったんだ。
丁度ティッシュ切らしてたから近場のコンビニへと向かった。
ごとーが夜中眠れないっていうのはすごく珍しい。
朝昼晩、休むことなくいつだって寝ているごとーなのにその時は全然
眠る気が起きなかった。
「あーあー、ティッシュはっと………あった」
けだるく箱ティッシュを片手にぶら下げてレジに行くと、店員が誰も
いないのに気がついた。
「すみませーん、会計したいんですけどー……?」
店の奥から出てきたのは、最近来たばかりのアルバイト店員だった。
けど、普通の店員じゃなかった。
すごく、綺麗な目。すごく、カワイイ顔。彼女の全てがごとーには美しく
見えたんだ。
- 25 名前:let's love game 投稿日:2004/06/11(金) 22:07
-
「すいません!お待たせしました!」
「……かわいー…」
「はい?」
声までもがなめらかで、美しい。めっちゃごとーのタイプだった。
その店員さんはごとーの反応に困ったようで、顔を伺ってた。
「どうかしましたか?」
「あ……いえ、お願いします」
「そうですか、良かったです!」
あっ、今笑った。心の中で密かに思って、ごとーも笑いそうになった。
これが、まっつーとの出会い。
ずっとコンビニに通い続けて半年目でやっと携帯番号を教えてもらった。
ガードが堅いのか、容姿のわりにしっかりしてる高校3年生。
ごとーより1歳下とは思えないくらい大人っぽい一面もあって、それでいて
子供っぽい所もある彼女に夢中になった。
- 26 名前:証千 投稿日:2004/06/11(金) 22:08
- 今日の更新終ります。
明日は更新できるかどうか……?
けど日曜は少なくとも更新しますのであしからず。
- 27 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 17:41
-
「……でさぁふざけんなだしあの上司!!こっちが黙ってりゃいい気
になりやがって!!」
自分の仕事が忙しくってコンビニに行けない日は、ものすごく寂しかった。
これまで1人暮ししてたのが嘘みたいにまっつーに会えないと死にそうになる日々。
ヒマを見つけてはコンビニに出向いていた。
「ごっちん、お客さんレジ来るからもう帰りなさい!」
「え〜……じゃあ今度また来る!」
「ハイハイ、またね」
やっぱりごとーの想いは届かなくて、会う事は限られていた。
あっちの『好き』は友達、ごとーの『好き』は……ねぇ…。
それでも、確実に成果は上がっていたようだった。
合う度にスキンシップも増えてたし、バイバイの時には手を振って
くれるようにもなった。そんな日は家に帰ってガッツポーズを1人で
しているわけで……
- 28 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 17:47
- 仕事の愚痴は黙って聞いてくれる、良い奥さんになりそうな彼女は
たまにこんな事を聞いてくる事があったんだ。
「ごっちんはさぁ、結婚するなら恋愛結婚がいい?」
痛い所を突かれた。なんとなく咳払いをして大人っぽくごとーはこう言った。
「恋愛結婚でしょ、御見合いなんて相性あわなけりゃドボンだもん」
「そっかー、現実派だなぁごっちん。そだ、好きな人いる?」
心臓が爆発しそうだった。普段はごとーにそっけないまっつーがその日
に限って恋バナをするなんて意外だったから。
「……いないって言ったら嘘になるけど…」
「ふーんそっかいるんだ」
またしても意外な反応が返ってきた。簡潔にサラッと言ってのける
まっつーの行動は、ますますごとーの気持ちをくすぐった。
- 29 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 17:54
- 「……あたしの知らない人?」
何故、わざわざここまで聞いてくるのだろう。
ごとーはしだいにモヤモヤしてきた。
だって目の前にるのに、伝えられないからむいた。
お客さんが入っていない時、まっつーの態度が少し変わったのにすぐ
ごとーは分かった。
「知ってる……ね」
「……そっか…」
何?その反応は……。不安だらけだったごとーの気持ちに、小さい穴
が空いたみたいで、なんとなくだけど、恋に期待した。
花が、咲きますようにと密かに思ったんだ。
- 30 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 17:58
-
「か、可愛い子?」
明らかにどもっている口調。先走りに期待しても仕様がなかったけど
気持ちが溢れてしょうがなかった。
しばらくの沈黙が流れたその時、誰かに背中を押されたんだ。
- 31 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 18:06
-
「むっちゃくちゃ可愛い子でね、ごとーにちょっと冷たい人。
それでその子、ここでバイトしてる松浦亜弥っていうんだ」
好きって言葉にはしなかった。せめて自分の気持ちだけ伝えたかった
から。
まっつーはただ驚いた感じでごとーを見ていた。
「付き合ってくれるかなって、告白したんだけど……どうよ?」
「好きだよ…」
「やっぱりダメだよね……」
「好きだってば!!何回も言わせないでよ!」
告白は、あっけらかんと成功を迎えた。
「あたしの事ちゃんと想ってんなら、付き合ってあげてもいいよっ」
そう言ってかわいく笑った姿は、付き合っている今でも2度と見えない
笑顔だった。
- 32 名前:証千 投稿日:2004/06/12(土) 18:07
- やったぁぁ!!更新出来ました。
ペースが速いですが頑張ります。
- 33 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 21:38
-
「あたしの事ちゃんと想ってんなら、付き合ってあげてもいいよっ」
だってずっと見てきた。大好きで大好きで、たまらなかった。
成功して次のステップを考えていたごとーには、でかい波が待っていた。
それは、まっつーのガードが堅すぎる事。
まっつーとごとーの休みが重なった時はうちで遊んだりもする。
けど、ぜっっったいにキスをさせてくれないんだ……
雑誌をパラパラめくっているまっつーの横顔はこの世の物とは思えない
くらいめっちゃカワイくって、そんでもってセクシーさがあって……
ボーッと見ているとまっつーにいつもこう言われる。
「……見過ぎだよごっちん。また何か変な事しようと思ったでしょ?」
雑誌を横に置いてごとーにぐっと近付いてくる。
ヘタクソだけどキスさせてなんて言えないし。
「変な事って……別に可愛いなぁって!」
「どうも……ねぇあたしのどこ見て可愛いって言ってる?」
「全部!!」
「なんか答えになってないなぁ……じゃあどこが好きだったの?」
一目惚れって言ったら……呆られるかな。
- 34 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 21:46
- 「どーせ顔でしょ、分ってるよ」
当然、というようにまっつーはごとーから離れた。
初めは顔だけで好きになってたけど、今は違う。
優しくて思いやりがあって、ちょっと天然で、そんな所に惹かれた。
「初めは……ね。けど、まっつーの全部が好きだよ。
答えになってないかもだけど……本当だから」
自分なりの表現でいい。彼女を安心させたいから。
やっとまっつーの口元が緩んだ。やっぱりいつものスマイルで。
「いつもそうだった。あたしの顔目当てでコンビニ来る人少なくない
んだよ?だからごっちんの事結構警戒してたんだあたし」
……軽い奴に見られたごとーの存在って一体。
「そんなぁー、ごとーマジだったんだからさ。だからそんなガード堅く
しないでよ」
- 35 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 21:54
- 素早くまっつーの肩を抱き寄せて、耳もとで囁いた。
けどまっつーからの反応は無かった。
黙ったままでずっとごとーの瞳を見つめている。
見つめられたらオッケーって事だよね?
「そういう目で見ないでね、止まらなくなっちゃうから」
「……いいよ、止まらなくなって」
「え?」
まっつーがごとーの首に手を回して目を閉じた。
先の先まで行きましょう!!!
「んっ……はっ…ぁん…」
まっつーとのキスはやっぱり気持ちよかった。
2人同士でのファーストキスにしてはちょっと激しかったかな…?
時折色っぽい声を出すまっつーに、ごとーは気持ちを抑えられない。
- 36 名前:let's love game 投稿日:2004/06/12(土) 22:05
- フロアの床じゃさすがにこの先辛いと思って、ベッドに行こうとした。
「ベッド……行こっか?」
「んっ……やっ…」
ノースリーブでさらに色っぽい姿を見てヤらないわけがない。
いくらまっつーが抵抗しても、ごとーの力には勝てないさ!
「いや?もっと気持ち良くなりたくない?」
まっつーは諦めたかのように小さく頷いた。その時の顔はほのかに
ピンク色で。
ベッドについた所で、まっつーの服を一気にとっぱらった。
「ちょっ…待ってごっちん!」
「や、もう待てないよ?キスがオッケーって事はこの先まで行くからね♪」
「えっ!?やっ…んっぁ……」
豊満な胸に口付けをすると、感じて思わず声を出すまっつー。
舌でしばらく弄び、少し刺激を与えると更に声を高める。
「んあっ…んぁんっっ……」
「気持ちいいっしょ?じゃ、下脱ごっか」
もうごとーの暴走は止まりそうにありません………!!
- 37 名前:証千 投稿日:2004/06/12(土) 22:06
- 更新終わりにします。エロ入ってきちゃいました。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/12(土) 22:10
- ドキドキしすぎて、や、やばい。えと、今日もまたリアルタイムです(汗
あやみき大好きですけど、あやごまにはまっちゃいそうで…(ぇ
このごっちん、なんかかわいいらしい。
更新頑張ってください。
- 39 名前:名無しA 投稿日:2004/06/13(日) 10:37
- リクエストも受け付けているということなので。
みきこんかあやこん
つまりは紺野さんからみでお願いします。
これからもがんばってください。
- 40 名前:証千 投稿日:2004/06/13(日) 21:19
- 今日の更新であやみき終ると思います。
>名無しAさん、それではみきこんを書こうと思います。
あやこんは難しそうです………
期待に添えられるかどうか恐縮です。
- 41 名前:let's love game 投稿日:2004/06/13(日) 21:26
- 下まで到達したごとーはなぜかしら緊張した。
こんなにも通じ合えるえっちはした事がなかったし
ましてまっつーとなんて。
まっつーの過敏な反応はごとーも見てて驚いた。
だってあんな素が見られるなんて思ってもいなかったから……
「やっ……ごっちんダメっ!」
「だから無理だって、ごとー我慢したんだもん」
下に到達した途端に、少しづつ抵抗を始めたまっつー。
拒否られても、ごとーの頭脳はイカレちゃってますから無駄無駄♪
なんて甘く考えてた。
「よし、いくよまっつー」
「ダメぇっ!無理!」
「そろそろ観念しなよ〜?」
とことん追い詰めた。けどその直後、とんでもない反逆を喰らったごとー。
- 42 名前:let's love game 投稿日:2004/06/13(日) 21:30
-
がいんっ!!
前頭部に、にぶい音が響いた。
何が起きたのかその時は分らなくて目眩がしてたまらなかった。
素っ裸の状態のまっつーは必死に何かごとーに言っている。
ダメ……聞こえなくなってきた
このまま最後まで行くと思ったえっちは、中断してしまった。
キス以上まで行ったものの、やっぱり壁はでっかい。
- 43 名前:let's love game 投稿日:2004/06/13(日) 21:37
- 『……っちん』
何か聞こえる。甘くて、優しい誰かの声。
『ごっちん!大丈夫!?』
「まっつぅー……?」
さっきの裸姿は消えて、まっつーは服に着替えていた。
当の倒れたらしいごとーはベッドに横になり、15分ぐらい失神して
いたらしい。
「……ごとーなんで倒れたんだっけ?」
ふと首を横に向けるとまっつーが心配そうにごとーの前頭部を撫でていた。
「……あたしが……ごっちんのおでこ、膝で蹴っちゃって…」
さっきの行為の途中を脳内再生してみる。
えーっと下まで行ったごとーは無理矢理っぽくヤろうとしちゃって
……蹴られたんだ。
「ごめん!痛かった…よね?」
もう一度額に手を添えられて、まっつーは半涙目で謝った。
こんな顔見た事なくって、許せないわけがない。
- 44 名前:let's love game 投稿日:2004/06/13(日) 21:45
- 「ぜんっぜん平気!!……大体ごとーが無理矢理……ね?」
こくんと小さく頷いて、恥ずかしそうに笑ったまっつー。
いてて、と言いながらぶつかった部分を鏡で見てみた。
アザにはなっていなかったけど、ずいぶん赤く腫れていた。
「あらら、いっつ……あー、散々だなぁー」
力尽きたみたいにベッドに横たわった。けど、視線はまっつーに向けていた。
「ごめん……ごとーまっつーの気持ち考えてなくて…」
「……うん、ちょっと怖かっただけっ。忘れていいから…」
「……キスできてよかったけどね、ごとー的には」
「ばっ……だってごっちんがイキナリするから!!」
あわてふためいてまっつーは説明しようにもごとーの耳には聞こえなかった。
- 45 名前:let's love game 投稿日:2004/06/13(日) 21:56
-
「今度は、ちゃんとまっつーの気持ち聞いてからするよ」
まっつーの手を握って、甲にキスをした。
「じゃあ、今してよ……キス」
「ぇ?……ここに?」
彼女なりに精一杯頑張って言ったんだと思う。
かわいくって仕方ない、そっと抱き寄せた。
唇にひとさし指を当てて、キスの確認。
ちょっと無理矢理だった事も最後には万事OKになった。
段々でいいから、距離を縮めたい。遅くてもきっと大丈夫だよ。
きっと、ね?まっつー。
FIN
- 46 名前:証千 投稿日:2004/06/14(月) 21:56
- >名無読者さん、すみませんレスの返しを忘れてました。
後藤さんかわいかったですか?
ありがとうございます!
- 47 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:05
-
白いセーターベストにチェックのスカートを身にまとった天使を見た。
もう2度と会えないと思われる程、目に残る美しさだった。
蝉が鳴き渡る校門前、夏の暑さもふっとぶような爽やかな人。
あの夏の日、忘れない。
- 48 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:13
- ごとーは東京の大学で、教師の資格を取得するため猛勉強している
普通の大学生。
体して成績が良いわけでもなく、高校の時の成績はどちらかというと
悪い方だった。
そんなごとーが教師になったのは、ほんのちょっとしたキッカケ。
字幕映画を見た時、心を奪われた。映画の世界でうまく英語が翻訳され
てこんなにも人に感動を与えられるんだ、と感動したというわけ。
その後死ぬ気で苦手だった英語を勉強して、英語教員になろうと志している。
そして今度、教育実習生として学校に向かう事となった。
普通は出身校を選択するけど、ごとーはあえて近場の高校を選んだ。
……ミーンミンミン
「うるさっ……けどっ、諦めるもんか……」
絶対に諦めない。あの子のハートを射止めるまでは……
『近場の高校』は『恋』の発展を喚んでいた。
- 49 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:19
- 6月の後半、その季節は恋にピッタリという訳じゃなかった。
じめったくて明るい気分にはなれそうもない。
雨が降りそうなある夕方、ごとーの携帯が鳴った。
「はぁい……?…っあいぼん?」
『ごめん!雨降ってきたから傘高校まで持ってきて!!」
「えぇ?…本当だ雨降ってら…分かった、じゃ今行く」
妹のあいぼんはごとーが今度から実習として行く高校の生徒で
今は1年生。生意気だけどちゃんとごとーの気持ちを分ってる妹思いの
良い子。
もし、この時傘を持っていかなかったら運命の出会いは果たせなかった
んだろう。
- 50 名前:証千 投稿日:2004/06/14(月) 22:21
- >49、「〜妹思い」じゃなくて「〜姉思い」でした……
ごめんなさい。
- 51 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:30
-
「……も〜、どこにいるのさあいぼん!」
慣れない高校の昇降口前をうろうろ、あいぼんを探していた。
1年の下駄箱を見ると、あいぼんの上履きがあった。
と言う事は外に出ている筈、そう思って門を出て待っていた。
そろそろ来るだろう、と思った頃、ごとーと同じように誰かを
探している女の子がいた。
傘が邪魔してよく顔が見えなかったけど、時々独り言を漏らしながら
誰かを探している、それだけが分かった。
人を見てる場合じゃあない、あいぼんを探そうとその女の子から目線を
外した。
「……あの、すいませんけど……後藤亜依って子知ってますか?」
急にさっきの女の子から振り向きざまに声を掛けられた。
後藤亜依と言えば、ごとーも探しているあいぼん。
「あぁ……あいぼん、ごとーの妹だけ……ど…?」
ろれつが回らなくなった。目に映ったのは、傘をのけて微笑んでいる
女の子。いや、ただの女の子じゃなかった。
すごく素敵だった。
- 52 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:38
-
「あ、あいぼんです。どこにいるか分りますか?」
質問をちょっと無視して彼女の名札を見る……と
『藤本美貴』。
「……美貴ちゃんって言うんだ……」
「え…?あ、ああはい。で、どこにいるか分ります?」
ちょっといらつかれたのか、目つきが怖かった。
「ごとーもさっきから探してる……あ!いた!!」
「……あ、あいぼーん!こっち!」
あいぼんが来たせいで会話が途切れてしまった。
なんか残念だった。
「もーあいぼん!美貴と帰るって言うから待ってたのに!」
「ごめんごめん、あ、真希ちゃん何でいるの?」
何でいるの、ってあいぼんが呼んだのに。
「そっちが携帯で呼び出したんじゃん!傘持ってこいって!」
「……ああそういえば!ごめん真希ちゃん…!」
酷いもんだ。姉が折角貴重な夕方の時間を過ごそうとしたのに。
なんて、でも、会えた。素敵な人に、会えたから。
歩き出すまで、ごとーはずっと美貴ちゃんの事を見つめてた。
顔ちっちゃくて顔だちがしっかりしてて、全体的にかわいい。
見愡れていると、横からあいぼんがニヤニヤしながらこっちを見てきた。
- 53 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/14(月) 22:48
- 「何、真希ちゃんやらしー!美貴ちゃんの事見過ぎだよ〜!」
痛い所を急に突かれてすかさず美貴ちゃんから目を外した。
アスファルトを見てブツブツ言うしかなかった。
すると美貴ちゃんはごとーの方を見て、笑った。
ちょっと照れて『あいぼんバカ!』なんて……増々かわいい。
「じゃ、あいぼん、3人でかえろ?」
「ダメだよー、真希ちゃん美貴ちゃんに変な事する!」
「あいぼん!!うるさい!何もしない!」
余計な事を次から次へと喋りまくるあいぼんとごとーを見ながら
やっぱり照れ笑いをしている美貴ちゃん。
その時、惚れちゃったんだ。多分ね……
「じゃ、またねあいぼん!」
「ばいばい美貴ちゃん!ほらっ、真希ちゃんも手ふりな!」
「……うっさいよあいぼん!」
ちゃんと手を振ってバイバイしたかった。けどあいぼんに話をふられた
から手が動かない。
「さよならっ、後藤さんっ!」
「……さよ、ならっ……さよならっ!!」
「しつこいって真希ちゃん…」
満面の笑顔が見れた、最初の日。さよならって一言だけど、すごく
嬉しかった。
- 54 名前:証千 投稿日:2004/06/14(月) 22:49
- 今日の更新終ります。ごまみき結構長引くかもしれません…
- 55 名前:waiting for you 投稿日:2004/06/17(木) 22:28
- 「ねーあいぼん………美貴ちゃんって恋人いるのかな…」
家に帰ってすぐに気がついた事、それは恋をしたという事。
きっかけなんて単純だけど、ごとーの愛はもっと深いから。
お風呂から上がったあいぼんとごとーは2人っきりでリビング内の
TVを見ながらさり気なく聞いた。
と言ってもごとーはTVなんかより大事な事があったから見向きもしなかったけど。
アイスを冷凍庫から出し、ぺろぺろなめながらあいぼんは振り向いた。
「そーだねぇ、恋人はいないと思うけど…」
「いないんだ!……けど何?」
「ものっすごくモテるよ、性格良いし可愛いしねぇ」
そりゃ、可愛い。ごとーが好きになった程だもん。
「……本気?本気で真希ちゃん…LOVEで……?」
あいぼんはなめかけのアイスを落とすぐらい神妙だった。
「……あいぼんだから話すよ、マジ。惚れちゃったんだよ!!」
『ぼとっ』と鈍いアイスが床に落ちる音がした。
本当に落とすとは思わなかったけど。
- 56 名前:証千 投稿日:2004/06/26(土) 12:13
- ごまみき、ここでちょっとひと休みさせて頂きます。
リクエストを下さった名無飼育さん、本当に申し訳ないです。
息詰まってしまいまして…でも完結はさせますので!
- 57 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:15
-
あやみきです。
- 58 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:26
-
『亜弥ちゃんは、美貴の事どうでもいいんだ』
−−またそうやって拗ねる。子供じゃないんだから。
『だって美貴に冷たい』
−−冷たくなんてしてないよ。冷たいのはそっちじゃん。
『………分かった。もう、離れよ。疲れる、亜弥ちゃんといると』
−−こっちだって同じだよ。下らない事でいちいちつっかかって。
元々、遊びだったんだから。
- 59 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:29
-
また、やっちゃった。 あんな事言うつもりじゃなかったのに。
素直にならないとああなるんだって、分かってたつもりだけど。
追いかけなかった。 追いかけてもどうせ届かないだろうけど。
- 60 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:35
- 休日の午後、ベランダから遠くのビルを見ていた。
この都会の中、自分は今生きてるんだなーなんて変な事考えて。
生きる上で大切な物、何だろう?
水、食料、etc… 2、3年前のあたしはそう答えてた筈。
でも、違った。生きる上で大切な物。
ちょっと気になってただけなのに、気付いたら本気になってた自分がいて。
少しでも目が合うとその日一日ハッピーで、話し掛けられた日には
もう浮かれまくってた。
愛する人がいる事。生きる上で一番大事なものだって分かった。
- 61 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:39
- ぼんやりした視界がどこまでも続く。
泣いてなんかない。 でも、何処かであたし泣いてんだ。
だって付き合う前に決めたんだもん。
どんなに辛くなっても泣かないって、決めたんだもん。
涼しい初夏の風が頬を撫でる。風鈴もそれに伴って鳴る。
1人でいる事があたしにとって、どんなに辛い事か分かった。
愛してる。愛してた。どっちか迷ってる。
- 62 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:45
- 昨日の夜、ベッドに放り投げられた携帯は今どうしてるだろう。
気になって気になってしょうがない。
みきたんからの連絡はあるはずない、分かっているのに。
きっと彼女は今TVで多くの人に笑顔を振りまいている。
あたしが今、すっごく求めている笑顔を視聴者にあげているんだ。
突然、マイナーな着信音が部屋中に鳴り響いた。
マネージャーさんからの電話だった。
多分、明日の仕事内容の変更か何かだろう。
- 63 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 12:54
-
「もしもし…?」
『おお、明日の事なんだけどな……』
聞き慣れているマネージャーの声が、今は聞きたくなかった。
もっと違うなめらかな声が聞きたい。
『って事になったからな。…あ、そうだ』
「何ですか?」
『藤本が今日、スタジオの機材で怪我したらしい…知ってるか?』
「……怪我?」
『ああ、割れたガラスにうっかり手を付けてしまったらしくてなぁ。
台に置いてあった破片の上に手を着いて、掌が傷ついた程度だから体した事
ないらしい。あれ、松浦知らなかったのか?5時間位前だけど……』
言葉が出なかった。怪我と聞いた途端、もう仕事が出来ない程の大怪我を
負ったのかと思った。
普段はそういう事に敏感な彼女が、そんな事をするなんて。
- 64 名前:証千 投稿日:2004/06/26(土) 12:54
- 夜また更新します。
- 65 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 19:55
- マネージャーからの電話を切ってから、あたしはみきたんの電話番号を
見つめた。
何度も何度も、繰り返しリピートした番号。
「もう……いらないかなぁ…?」
手元の消去ボタンを押そうとする自分がいた。
いっぱいいっぱい、好きを送ったメールも出来ない。
昨日に戻って、やり直したい。
もうみきたんはあたしの番号を消したのかな……消してるよねきっと。
あたしは自分勝手すぎた。分ってる、ワガママでいつもみきたんを
振り回してきたんだ。
- 66 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 20:09
- 1ヶ月前ぐらいかな、みきたんとデートする時間がなくなってた。
お互いが毎日忙しかったからしょうがないって思ってた。
でも、夜になると必ずみきたんは電話を1本入れてくれる。
どんなに眠くても、時々欠伸をしながらあたしの相手をして、そして
最後にあたしがいつも言ってた言葉。
『みきたん、大好き!!』 「あはっ、そりゃどうも…」
みきたんはすっごい照れて、言い返してはくれなかったけど。
でもあたしはものすごく嬉しかった。
だから夜になるとワクワクして、みきたんに会いたくてしょうがなかった。
でも、段々そういうやりとりも消えた。
あたしが深夜のお仕事も出来るようになってから、連絡もしなくなったし
みきたんから連絡が来る事も少なくなった。
- 67 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 20:17
-
気持ちがいつのまにか擦れ違ってたんだね、みきたん。
「いつもだったら……後ろからギュッてしてくれるよね…」
やっぱり消去できない。まだみきたんの事、忘れたくない。
もう終りなのかな?
ずっと傍にいたのに、もう遠くへ行っちゃったんだ。
楽しくて楽しくて、好きすぎて好きすぎて。
みきたんの優しかったキス、笑った顔、全部体が覚えちゃってる。
会いたいよ、みきたん。
- 68 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 20:21
-
ガチャッ
ベッドの上で蹲ってると、玄関の方から音がした。
鍵が開けっ放しだったらしい。
驚いて立ち上がると、玄関で俯いてる人がいた。
あたしと同じ背丈、あの人しかいない。
- 69 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 20:28
-
運命の赤糸で、結ばれたんだ、きっとね。
「亜弥……ちゃん…」
「みきたん……っ!?」
左手に包帯を巻いている。切り傷と知ってても、心配だった。
とっさに玄関に走って行って、みきたんの左手を握った。
「大丈夫……大した事、無いからさ」
「アホォ!」
「は……亜弥ちゃ……」
もう、わかんない。涙出てきちゃって、どうしようもなく安心した。
目の前に、想ってた人が急に来るなんて。
わんわん泣いてるあたしを困ったようにみきたんは見てる。
面倒くさいのもしょうがないね、みきたんがあたしをフッたのも分る。
- 70 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:02
-
「ご、ごめん……美貴どうかしててっ…」
「ずっとっ…きのうっからっ……不安でっぇっ…」
あたしが嗚咽を漏らすと、みきたんは優しく抱きしめた。
もう何日も抱き合ったりしなかったから、懐かしくかんじた。
「亜弥ちゃん突き飛ばすような事言って…バカだよね美貴本当に」
「あたしがっ…ワガママすぎたのっ…?」
「そうじゃないよ、違くてっ」
とっさにあたしを抱いてた手を離して、みきたんは言った。
- 71 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:09
-
「亜弥ちゃんと一緒にいて疲れるなんて思ってないしっ……
なんていうかぁ……」
不器用だって、知ってる。 言葉が見つからないんだね。
「だからっ……亜弥ちゃんと気持ちが離れてく気がして…他の誰かに
亜弥ちゃん取られたら美貴生きていけなくなるしっ……」
「たん……?」
「もう、離さないからっ。亜弥ちゃんの事しっかり愛すからっ!!」
やっと言ってくれたね、たん。
- 72 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:14
-
「もう、離さないから」
「うん」
「絶対、毎日電話するしメールもするから」
「うん」
「絶対絶対、亜弥ちゃんの好きな美貴でいるよう努力するから」
「うんっ!」
強く強く抱き締めた、みきたんの全部が大好き。
どこが好きかって?
数えたら切りがないから自分でもよくわかんない。
- 73 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:24
- −−−数日後。
「亜弥ちゃぁ〜ん、お風呂長いよぉ。美貴ヒマだよぉ」
そんなこんなで、結局仲直りしたあたしとみきたんは、同棲する事になった。
一緒にいられる時間が長くなるから2人で考えた事。
そしたらみきたんがビックリするぐらい甘えん坊になっちゃって大変!
あたしがお風呂に入っている間、扉の向こうで子犬みたいに鳴いてるのは
殆ど毎日。
『ちょっと待ってて!TVでも見てなさい!』
「うー……亜弥ちゃん見てた方がいいもん」
ガチャッと音がしたかと思うと、みきたんが脱衣所の扉を開いたのだった。
- 74 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:31
-
『何開けてんのバカー−ーッッ!!!』
幸いあたしはバスタオルに身を包んでいたため、マッパではなかった。
恋人同士とはいえ、みきたんに見られるのは恥ずかしい事で……
「なんだ、裸じゃないじゃん……アダッ!!」
『何期待してたの!?リビング戻れっ、ばかたん!!』
オヤジ化したみきたんの腕を思いっきり殴って、リビングへ追い返した。
『……ばぁか、たんのエロオヤジっ……』
さっさとパジャマに着替えて、脱衣所で髪を乾かしてからリビングへ戻った。
- 75 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:42
-
リビングに行くと、みきたんはぶーたれながらDVDをみていた。
叩いた(殴った)腕が痛かったらしく手で摩っていた。
TVからあたしに目を移すなり、恨めしそうな目で睨んだ。
睨んだってもう慣れっこだもん、可愛いもんだよ。
「何、その目は」
「だってぇ……亜弥ちゃんが美貴に冷たいんだもん…」
「冷たいって……あんな事したらあたしだって怒りますぅー」
「ははっ、恥ずかしかったんだ?」
「……当たり前じゃん。むっちゃ恥ずかしいよ」
まあ座ってとか言いながら、みきたんの横に座った。
「違うよ亜弥ちゃん、ここにいて」
「へ?……うわぁっ!!」
みきたんの言ってる意味が分った。横に座れじゃなくて、みきたんの
胡座の上に座れって事。
あたしの体をヒョイと持ち上げて、ぽすんとみきたんの上にのせられた。
- 76 名前:cool or sweet 投稿日:2004/06/26(土) 22:51
- 「どーゆー筋力してるわけ……?」
「まっ、そんな事どうでもいいさ」
きゅんきゅん鳴くその子犬はあたしの首筋に鼻をこすりつけて甘える。
なぜ彼女があたしに甘えまくるのか原因がよくわからない。
「くぅーっ……亜弥ちゃん可愛すぎ。襲いたくなるね」
「は…?みきたんそれシャレにならないよ」
「だって本当だもん♪」
くいっと顎を唇に導いて、キスをしようとするみきたん。
こういうシチュエーション、前は苦手だったよねぇ……?
「ふふん、美貴も成長したでしょ。全然照れてないでしょ?」
「成長っていうか単に飽きてたりして」
「なんて事言うの!!美貴言ったでしょ、亜弥ちゃんの事愛すって!」
「わーかってる。からかっただけだよ。愛されてるよアタシはぁ〜」
甘えっこのみきたんと正常派なあたしは、前まで真逆だったのにね。
- 77 名前:証千 投稿日:2004/06/26(土) 22:59
- すみません、ここで切ります。
明日にはあやみき終らせます。
あやみき終了したら、リク頂きましたごまみきを書くので!
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/29(火) 16:30
- 現実の二人も実はこんなんなのかなぁ・・・と妄想してみたり(*´Д`)ポワワ
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/10(土) 17:16
- 続き待ってます。あやみきって甘いなあ…
- 80 名前:cool or sweet 投稿日:2004/07/11(日) 21:32
-
ほのぼの考えている間に、みきたんがまたあたしにイタズラをしかけた。
みきたんの膝の上から、床に押し倒された。
「たん!じょ、ジョーダンやめてよぉ!」
「冗談でこんな事しないよ、今日、シたいんだ」
「シたいって……!ふぁ…んっ…やぁ…」
「もう、何にも言えないようにしてあげるからさっ…」
立場逆転、俗に言う玄関プレイに近かったのかもしれない……
「んっ…んんっ……ぁん」
「亜弥ちゃんのココかわいい…」
「いやぁだぁっ…たんっ…!」
当のみきたんはあたしの胸から離れなくて、次々にあたしを虐める言葉を
言う。
ぱっぱと進んでしまった時、みきたんの手があたしの所に触れた。
「ゃんっ……」
「腰、もうちょい上げて?」
もうそのときのあたしは言われるがまま。
みきたんはあたしのパジャマをとっぱらうと、そっとアソコに口付けた。
「くぁ……んっ…あっあっあっ…ぁ……」
「もっと声出して」
何回も何回も口付けながら、舌をうまく使ってあたしを気持ち良くさせようと
してる。
- 81 名前:cool or sweet 投稿日:2004/07/11(日) 21:35
-
「大丈夫……指使わないから、さ」
そう言ったみきたんは、どんどんペースを速める。
時々吸ったり、わざと音たてたり………とにかくいじわるだった。
「くぁんっ!!みきたん…も…無理っ…ぁぁあああっ!」
「いいよ、イって…」
もー、意識がなかったのかな?
「ふぁぁぁん!みきたんっ…あっあっあっぁ…」
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/12(月) 02:26
- 今回の更新はここまでなのかな?獣ミキティ(・∀・)イイ!!
- 83 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/17(土) 06:34
- 純愛から一転してエロエロへ…
幸せでし。
ピロートーク期待しとります!
- 84 名前:cool or sweet 投稿日:2004/07/31(土) 23:49
-
目覚ましのアラーム音で、あたしは目を覚ました。
横に目をやると、やっぱり愛しい人が。
「たぁん……朝だよぉ?」
「んぐぅっ、痛いよぉ………」
へらっと笑って、ぶつくさ言いながらも起きてくれた。
昨日の今日…だけど、さっぱりして良い気分。
なんてゆうか、ああいう事した人の初めてがみきたんで良かったって思う。
何でもない事で笑顔になれるのも、みきたんがいるおかげ。
「……ねぇ、亜弥ちゃん今日どっかいこうか?」
「連れてってくれるの!?」
「うん。しばらく一緒に行けなかったしね」
一言だけ、『ごめんね』。そう言ってくれたけど、謝らなくていいのに。
むしろみきたんの優しさに甘えてたの、あたしのほうだったから。
- 85 名前:cool or sweet 投稿日:2004/07/31(土) 23:55
-
喧嘩だって、これからいっぱいすると思う。
それでもあたしがみきたんに想う『好き』は限り無いから。
ブラウン管の向こうで笑うみきたんと、今を比べちゃうのも楽しい。
大好きだよ。ずっとずっと、アイシテルから。
- 86 名前:証千 投稿日:2004/07/31(土) 23:59
- 読者の皆様、誠に申し訳ございませんでした。
色々と私情がありまして、更新が2ヶ月近く疎かになり、皆様の御期待を
裏切った事でしょう。
以後気をつけます。
>82様、長らく留守にしていて申し訳ないです……。それでもお待ちしていたのですね…ありがとうございました。
>83様、エロが入ってしまいました(笑更新はこまめにするつもりですので、2ヶ月近く留守と言う事は今後ないように致します。
読者の皆様、深くお詫び申し上げます。
- 87 名前:kiss kiss kiss 投稿日:2004/08/01(日) 00:07
-
ピンポーン。
「ハーイッ」
美貴が玄関のドアを開けるより早く、扉は開いた。
誰? そんな事も考えるヒマもなくて、予想は当たった。
「……亜弥、ちゃん?」
「たん、ちょっと…ごめん…」
「わっ」
ギュ−ッと両腕ごと、抱きしめられた。
彼女がこんなに静かに、強く抱き締める事はあまりない。
泣いてない。でも、何かを伝えたいんだ。
コイビト。だから。美貴は亜弥ちゃんを守るべき人間だ。
- 88 名前:kiss kiss kiss 投稿日:2004/08/01(日) 00:13
-
「……何か、あったんだね?」
「ん……」
「そっか。じゃ、こっち、おいで」
「…アリガト…」
差し伸べた右手を、アツク、強く握った。亜弥ちゃんの手は、美貴よりも冷たかった気がする。
こんなにも、弱くて小さかったかな、亜弥ちゃんって。
リビングに上げて、ホットココアを出す。
それでも冷えて赤くなった頬を、亜弥ちゃんは摩るわけでもなく、只ジッと他でもないどこかを見つめて居た。
「……何か、ワケありでしょ?」
「ん…」
「美貴に、何が出来るかな?」
「…あのね…」
「ん?」
ギュッ
亜弥ちゃんが欲したのは、美貴からの抱擁だった。
彼女なりの、精一杯の掴まり方。強がりのカタチだったのかもしれない。
- 89 名前:kiss kiss kiss 投稿日:2004/08/01(日) 00:21
-
誰よりも優しくて、思いやりがあって、負けん気が強い。
そんな美貴よりも年下の先輩が、こうやってちっちゃくなってる。
「今日っ…仕事でさ…ミスっちゃってさ…何か…今まで何してきたんだろって思えてきて…」
「うん」
「これまで…歌う事大好きで…ファンの皆に応援されて、自分がいるって思ってた…でもっ…」
「うん」
「自分…何目指して芸能界入ったんだろって…目標失っちゃって…」
「うん…」
「…みきたん…あたしって迷惑かなぁ…?」
「そんな事、これっぽっちも思ってないよ」
「弱くて、みきたんに面倒かけて…」
耐えてたんだね。ぽつり、ぽつりと亜弥ちゃんの目蓋からこぼれ落ちる、涙。
普段は当たり前に笑って、冗談かましたりして。
そんな事が、亜弥ちゃんにとってどんなに辛い事だったんだろう。
笑いたくもない時に、笑顔ふりまいて。
それでも、みんなに心配かけたくなかったから、ずっと元気で。
美貴はずっと知ってた。誰よりも、分ってた。
- 90 名前:証千 投稿日:2004/08/01(日) 00:23
- 今日はこれで更新終了致します。では後々に。
- 91 名前:kiss kiss kiss 投稿日:2004/08/01(日) 23:04
-
「……目標なんつーのはさぁ…見かけ倒しだよ」
「ぇ…?」
本当は、こんなクセ−事言う勇気なんて少しも持ってない美貴は、力を振り絞った。
先輩である、松浦亜弥に図々しくも、年上として、人生の巧みを教え込もうと頑張る。
「…どんなに頑張って、ふんばっても、上手く行かない時ってたくさんある」
「うん…」
「でもさ、そういう人ってカッコわるいかな?」
「……」
「美貴は、すっげーカッコいいと思うんだ。大好きな事、ひたむきに続けて、プラスにつなげる。
もしマイナスになったとしても、それが成長する応援の印になるんだよ」
…クサイ…な。出しゃばってるように聞こえるけど…どんどん口にしちゃった。
「応援の…印…?」
「そう。亜弥ちゃんを応援してる人、いーっぱいいるよ?」
「ん…」
「ファンの人、亜弥ちゃんのママ、パパ、妹ちゃん。数えらんないくらい、ね」
「うん…」
おいおい、反応しろって。…何か、一番大事な人、忘れてる?
「亜弥ちゃんには、美貴がいる。美貴が亜弥ちゃんを、いっちばん応援してる」
甘えん坊で、ワガママで、うるさい。
それでも人の心が判る、優しい子。
美貴が好きになった、亜弥ちゃんだから、応援したい。
- 92 名前:kiss kiss kiss 投稿日:2004/08/01(日) 23:13
-
「元気、でたかにゃ?」
「みきたん…ヘンッ!!」
「…亜弥ちゃんの真似っこだよぉ」
単純っつうか、根っから明るいというか。
やっと元気を取り戻して、いつものアタックが始まった。
ドサッと覆いかぶさって、苦しいくらいに美貴を抱き締める。
「……ありがとね、聞いてくれて…」
「いいえ、どう致しまして」
「弱音、吐けるのみきたんだけだからっ」
「知ってる。だからコイビトじゃん?」
「うん!!」
どちらから求めるわけでもない、唇へのキス。
それは、何かを紡ぐように、繋げるようにあったかいキス。
「ね、もっかい…」
「ハイハイ」
笑った顔もまた、美貴が知り尽くしている柔らかさ。
可愛過ぎる、美貴のヒト。
- 93 名前:証千 投稿日:2004/08/01(日) 23:13
- 復活祝いとしてあやみきを。
リクを頂きましたごまみきについては…後々。
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/02(月) 08:55
- 作者様の文体に癒されるなあ〜。
おいしく頂きました。
- 95 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 11:45
-
一時的な迷い。絶対そうなんだ。
そう自分に言い聞かせて、もう3年近く経ってる。
この感情が、恋なんかじゃないって事。
- 96 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 11:52
-
もどかしい気持ちに気がついたのは、いつだったかな。
『松浦亜弥』っていう、美貴と同じ女の子にそれとなく気を染めていた。
「お〜い!藤本のみきたん!!」
「へ?亜弥…ちゃん?」
なんちゅうネーミング。迷惑だなんて思わなかったけど、呼ばれる度に胸が張り裂けそう。
何も知らずに陽気に駆けてくる亜弥ちゃんは、美貴の頬にキスをしようと背伸びする。
ホラ、こんな事するからまた溢れてくる。
未だに尽きない、変なキモチ。
「…だ、ダメ。いつかね…」
「いつかって、いつ!」
「亜弥ちゃんが正気になるまで…」
「え?意味わかんない!!」
苦しい。もどかしい。
どうすればいいのか、『親友』である亜弥ちゃんにも言えない深い悩み。
決して、言えない悩み。
- 97 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 12:12
- 独りで抱え込んでいると、いつも傍にいて愚痴を聞いてくれた親友で
さえ、口を開く事もできない。
…情けない。
「たんたーん♪」
「た、たんたんって…」
「ちょっとお話聞いて」
「う、うん」
ある日、家に亜弥ちゃんが押し掛けてきた。
参ったな。よりによって本人がきちゃあ物思いにふけってもられない。
「で、何?」
「…最近、たんが暗いから…心配してた」
「…そっか…」
悔しい。美貴が暗いのは、他の誰でもない亜弥ちゃんのせい。
伝えられなくて、こもりっきり。
そんな美貴を、心配してくれてたんだ。
上目遣いで、美貴の髪を手ぐしでとかす。
- 98 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 12:16
-
いっそ、言ってしまえば楽になるかな。
「…なんでも、ないよ」
口から出たのは、紛れもない嘘。
本当は亜弥ちゃんの事だけがうごめいてる。
言えなかった。もう、亜弥ちゃんを好きっていう感情を判っているのに。
「…なんでもなくないよ。たん、あたしにチュ−させてくれないし」
「そ、そんなの何でもない…」
「違うでしょ?…あたしの事嫌いになったなら言ってよ」
「そんなんじゃないってば!!美貴は…美貴はただ…」
頬がアツイ。真っ赤に染まって、熱を帯びているに違いない。
こんな状態で、亜弥ちゃんに言えっていうのか、美貴の本能は。
- 99 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 12:21
-
「……ね、本当の事…言って?」
ぐぅっ、と喉が鳴った。
亜弥ちゃんが美貴の喉を右手で優しく撫でたからだ。
「亜弥ちゃんの事が……気になるんだ」
抑えてた筈の、感情がみるみる溶けてゆく。
「気になって気になって…ちゃんと…話も出来なくて…そっけなくしたりして…」
「みきた…」
「ごめんね…勘違いさせて。美貴のせいで…嫌な思いしたよね…」
「してない!みきたんがそう思ってくれてるなんて知らなくて…」
「キモチ悪い…よね。親友がさ…急に違う風に見えるんだもん…」
玉砕。
親友っていうモノも、全て無くなる。
- 100 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 12:24
-
「……あたし、鈍感だったから…みきたんのコト気付いてなくてっ…」
「…」
「でもっ…好き…だよ、みきたん」
「亜弥ちゃんの思ってる好きと、美貴の思ってる好きは違う!」
「そうじゃなくて!!…みきたんのコト……」
同情かけてるつもりかな。いっそ断ってくれれば気持ちがいい。
「あたし……みきたんを…愛してる…からっ…」
「きちんと言えなかったあたしも悪い。でも…っ怖かったからっ…」
- 101 名前:いろんな愛 投稿日:2004/08/02(月) 18:01
-
怖かった……?
「嘘なんかじゃないよ?ホントだからっ…」
「亜弥ちゃんっ…」
思わず、泣きそうな亜弥ちゃんを抱きすくめてしまう。
美貴のせいで、亜弥ちゃんも苦しんでたかもしれない。
そう考えたら、実に自分が間抜けだったのかハッキリ自覚ができた。
「…みきたんはっ、あたしの初恋のヒトだから」
「え!?」
「にゃはは、ほんとだよ。大事にしてよね」
「ってコトは…ええ!??」
「うん。みきたんと、おつき合いさせてもらいます!」
「いいの…?美貴なんかでいいの…?」
「ううん、みきたんがいいの」
これが、美貴の願いだったんだ。
亜弥ちゃんと、両想いになる事。
本当の恋愛は、こんな簡単に行くもんじゃない。だから亜弥ちゃんを支えなきゃいけない。
「それじゃぁ、誓いのキスでもしますか」
「え!?ま、また今度ね…」
「ぶぅー、今しなきゃダメ」
「えぇ…そ、それじゃ…」
この後の展開は、美貴に聞かないでね。
どうなったかは読んでるあなた次第。
愛のカタチは、それぞれなんです。
- 102 名前:証千 投稿日:2004/08/02(月) 18:05
-
>78様、レス返しを遅れてしまいすみません。妄想してしまいますよね、あやみきだと…
>79様、お待たせして本当に申し訳ないです。これから更新は速めに致します。
>94様、いえいえとんでもないです。文才のない自分にそんなお言葉は…
- 103 名前:欲しいもの 投稿日:2004/08/04(水) 23:35
-
「んぐっ…あ、亜弥ひゃん…ろいて…」
「ダメ、ちゃんと塗らなきゃ」
「いいってらぁー…うぅー」
美貴は今、亜弥ちゃんの楽屋にいる。
同じ番組で共演できる事になったから、娘。の楽屋からちょいと抜けて
恋人である亜弥ちゃんの楽屋に遊びにきたわけさ。
で、美貴は亜弥ちゃんに肩をがっしり掴まれて、リップを塗られている。
「んー…きもちわりぃよぉ」
「ダメだってばぁ、みきたんもアイドルなんだから。ハイ、終りっ」
「ぐぅぅ、ティッシュぅー」
「ティッシュで拭いたら塗った意味が無くなっちゃうじゃん!!」
何で亜弥ちゃんがしつこく美貴にリップを塗りたがるかというと、キスするとき
美貴の唇がカサカサだと嫌なんだとか。
そんなぁ。言われた時はプチショックだった。
「最近塗ってるから乾燥しないでしょぉ?」
「んー…まあね」
「常に持ってないとダメって言ってるでしょ、みきたん鏡もカバンの中入れてないんだから」
「そんなもんいらないもぉーん」
「ひゃっ!!」
- 104 名前:欲しいもの 投稿日:2004/08/04(水) 23:45
-
こういう世話やき女房もいいかなぁ。なんて、亜弥ちゃんを後ろから抱き締める。
亜弥ちゃんもリップを塗ってる途中だったから、妙に色っぽかったんだよ。
「たん、離して」
「やーだね。最近会えてないのに離せるもんか」
「あたしが会いたいって電話したら眠いって切ったのはどこの誰でしたっけぇ?」
「美貴でーす」
「バーカ。離しなさい」
離せって言うわりに、力いれてないじゃん。
なんだかんだ言って美貴の事好きなんだから。
「じゃあ何したら離してくれるのぉ?」
「キスしてよ」
「今リップ塗ったばっか。後でね」
「キスがダメなら押し倒すのみ」
「え?…みきたん!???」
だってだって、キスだめなんだったらアレしかないでしょ。
もー口尖らせたって可愛いだけなんだよーだ。
「…あーゆーおーけー?」
「バッ…いいわけない!みきたん離してっ…」
「やーだよってば。誘ったのはそっちだよん♪」
「ちがっ…ぁっ…やだって…ばぁっ…」
甘い声出されたらもう止まるものもないね。
このままゴーしちゃいましょー。
- 105 名前:欲しいもの 投稿日:2004/08/04(水) 23:52
-
「人っ…来ちゃうよぉっ…」
「んー、亜弥ちゃん色っぽいよ」
「なっ!??関係ないっ…んっ…」
何だか美貴エロビデオ監修の人みたいになってきた。
やだなーそういうアイドル。
決してそういうわけじゃないからね。
でも
余裕ぶっこいてた美貴と、色っぽい声を出す亜弥ちゃん。
2人の世界に、邪魔が入った。
こんこん
『松浦さん、そろそろスタンバイお願いします』
「あ、はいっ!!」
「あー…」
危なかった。スタッフさんにヤッてる現場を見られたら芸能界に
いられなかった。
スタッフさんが楽屋に入って来る直前、異変に気付いた亜弥ちゃんが美貴を
はね除けてバッと起き上がったからギリセーフ。
ぱたん
「……たんっ」
「は…ハイッッ」
ギロッと亜弥ちゃんに睨まれて、とっさに床に目をやる。
- 106 名前:欲しいもの 投稿日:2004/08/05(木) 12:10
-
「…だから言ったでしょ」
「あ…うん…いだっ!?」
額に、亜弥ちゃんが投げたリップがあたった。
相当機嫌を損ねたっぽい。
そのくせ顔は赤い。
「いたいよぉー、亜弥ちゃん」
「知らないっ。今日は一緒に寝ない!!」
「えぇっ!??」
トホホ……夜のぶんをとっておこうと思ったのに…。
当分、おあずけなようです。
FIN
- 107 名前:証千 投稿日:2004/08/05(木) 13:29
- なんだか、甘いのが書けなくて困っている作者です。
次の更新には甘いのを書こうとかと。
- 108 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 00:38
-
「たん、聞いて」
「うん?」
「明日、何の日か分る?」
「…何の日?」
「……ハァ、あっそ、もういいよ…」
「え?何が?」
みきたんが鈍感って事は知ってた。
でも、ここまでにぶちんだとは知らなかったよあたし。
ふにゃっと笑って何も知らずにあたしの頬にキスをする。
みきたん女の子でしょ?2月14日の意味ぐらい…分っててよ!!
「なんで不機嫌かにゃ?」
「そんな事ないよ。…ここでいいから」
「ん?あっそぉ、それじゃおやすみ〜」
「…おやすみ」
せっかくマンションの前まで送ってくれたのは嬉しかった。
でもそれより、あたしの愛が届いてるかどうか不安。
好きとか、愛っていう言葉を口にしない彼女はあたしの心を知らない。
些細な事でも、気にかけて欲しいんだよ。
ばーか。
- 109 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 00:46
-
『亜ー弥ちゃ〜ん!美貴の恋人になって!!つか、なりなさい!』
照れてるのバレバレで告白をされた、出会ってから3ヶ月目。
もうこの人以外、あたしの心は奪えないんだって思った。
あたしだけの、藤本美貴でいてくれるんだって、すごく幸せだった。
『…寂しい時、傍にいてくれる?』
『当たり前ジャン。だから告白したもん』
『あたし束縛とかしちゃうよ?』
『え?そんなもん美貴だってするよぉ』
『でもっ…』
『いいからさ…』
自然に目蓋をとじると、初めてのキスをした。
『美貴のものに、なっちゃいなって』
うん。あたしは、みきたんだけのものになるよ。
そう決めてから、さらにかわいくなろうって頑張った。
スカートいっぱい履いたり、髪型変えたり。
それでもみきたんはいつだって鈍感。
明日のバレンタインだって、何の日か覚えてないんだもん。
- 110 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 00:56
-
「…ギャッハッハッッハ!!よ、よっちゃんそれはヤバい!!」
「んだよ笑いすぎ!」
「だ、だって…ギャ−ッハッハッハッハ!!!」
あたしといても、あんなに笑う事ないよ。
やっぱり嫉妬しちゃう。やっぱり悔しい。
当日になっても、みきたんは気付いてない。
あたしの所に駆け寄ってくる事もない。
「よっすぃ、チョコあげるよ」
「お!!そっか、バレンタインだもんな今日。サンキュ梨華ちゃん」
「…あ!!そうだ!!」
……ふぇ…?みきたん、こっちに向かって走って来る。
まさか、思い出した、とか…?
「亜弥ちゃん捕獲ぅ!!」
「た…たん!!」
「ねーねーチョコ頂戴」
「ふぇ…?」
「だからさ、美貴のチョコあるんでしょ?ちょーだい」
「覚えて…たの?」
「アハハァ、昨日亜弥ちゃんに言われた事家に帰って気付いたんだ。
カレンダー見たら、ひらめいた!」
もっとはやく、気付けよ。あたしの気持ち、分っててよ。
- 111 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 01:09
-
「ん?何で頬赤くなるかにゃ?」
「そっ…そんな事ない!!」
「いーから早くぅ、頂戴!!」
「…あげない」
「は?!!」
「みきたんなんかに、あげるつもりないもん」
ちょっといじわるしたら、みきたんどうするかな?
あたしの中に埋まってた事をほんのちょっと出してみた。
どうするんだろう、みきたん。
「何で何で何で何で何で!!!美貴に作ってくれてないの!???」
「ちょっ…たん待って!!」
「もしかして嫌いになったとか…美貴のどこがいや!??目!?肉食べる所!?
あ…あとは…馬鹿な所!?う…デートにおくれるから?!男っぽいから!??
な、何とか言ってよ…亜弥ちゃんが美貴の事嫌いになるなんて…そっか…嫌いなんだ…」
思わず吹き出しそうになるくらい、みきたんは必死だった。
おかしくておかしくて、かわいくてかわいくて。
あたしの肩をがくがく揺らして、青い顔をしてる。
かわいそうだから、もうやめとこ。
「半目で寝るの怖いから!??あとは…」
「みきたん、聞いて」
「そっかそれが嫌なんだ…」
「聞いて!!」
「はっ…」
みきたんに抱きついて、落ち着かせる。
こんなに慌てたみきたんは初めて見たかもしれない。
「ウソだよ。チョコならちゃんとある」
「う…そ?」
「当たり前じゃん。あたしはたんの事大好き。嫌いな所なんていっこもない」
「ほん…とに?」
「半開きでも、目が怖くても、肉が大好きでも、デートに遅刻しても、
男っぽくても…そこが大好き。ほら、チョコ」
「う…うぇっ…うぇっぇ……」
「何で泣くのぉ?そんなにビックリした?」
「だって…亜弥ちゃんに嫌われたら美貴…どうしていいのかわかんなくってぇっ…」
わーわー泣き出したみきたんの背中を撫でて、首筋にキスをした。
単純なんだから。
- 112 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 01:19
-
「うっ…ぐすっ…カッコわりぃ…」
「そんな事ない。かわいーもん」
「ぐっ…うぇっ…」
「1つだけ、チョコあげた代わりにお願いがあるんだけど、いい?」
「…何っ…?」
鼻水出す直前のみきたんに、思いを伝える。
「…一回でいいの。一回でいいから、好きって言って?」
呆然とする、たん。みるみるうちにほっぺが赤くなって、鼻水をすすってる。
「…ね?いい…かな?」
「好きだよ」
「ふぇ…?」
「マジ、愛してる。好き。大好き。めちゃくちゃ愛してる」
「たん…?」
みきたんは泣き止んで、立続けに言ったあたしへの言葉。
大好き。あたしとおんなじだよ?
「…不安だったよね。ごめん。中々言えなくて…」
「ううん、もういいの」
「毎日想ってる。歌うたう時も、何してても、想ってる」
「…何かはずかしいよぉ…」
「大好きだよ。亜弥ちゃんの事愛してる」
「……もぉ分ったから!!!!!」
何回も言われるとさすがに照れる。
みきたんに抱きしめられながら、赤くなった頬が見えないように胸にうめる。
- 113 名前:keep your … 投稿日:2004/08/08(日) 13:20
-
絶対、忘れたらダメだかんね?
「ハイッ、あ〜ん」
「チョコより亜弥ちゃんがいい!」
「ダメ−ッ、おうち帰ってから!!」
「えぇー、今がいい〜」
「ダメッ!!」
急に甘えっこになったみきたんは、しばらくあたしから離れなかった。
まだ鼻が赤いよ?
FIN
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/10(火) 00:00
- (;゚∀゚)=3ムハー
- 115 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 21:32
-
むちゃくちゃ大好き。
ミキティが好きって言ってた漫画…
「…泣きそうなんだけど…」
「えー、漫画で泣くガラなんだぁ」
「だってさぁー…もうやめとこ。後で泣く」
「なんで?」
「…だってごっちんに泣く所見られたくない」
「えぇ、見たい見たい」
「ムリムリ、恥ずかしいジャン」
普段の行動から似合わない言葉が出た。
かわいい事言うんだよねミキティ。
「でもさ、いい話だよこれ」
「へー、そうなんだ」
「こんな恋愛したいよね」
「え、今してるじゃん」
「……よく恥ずかしくないよねごっちん」
「だって好きだから」
「…わざわざ言わなくていいって、分ってるから」
「アハハ、大好きミキティ〜」
「…いいっつのに」
照れくさそうに、不器用に。
ごとーに抱きついて、肩に顔をうめた。
- 116 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 21:41
-
笑うとまっつーにそっくりだよね、ミキティって。
たまにテレビで見るとあれ?って思う。
彼女の顔もわからないようじゃまだまだかな。
「ごっちぃん」
「んー」
「美貴の誕生日にさぁ、コタツ買って」
「こ、コタツ?」
「うん。亜弥ちゃんちにあるんだけど、くれないんだよー」
「2月にコタツ買うの?」
「まぁいいじゃん、美貴真夏にストーブだすんだから」
「あ、そっか。じゃー買ってあげるよ」
「やた!約束ね!」
「ハイハイ…」
かーわいいなぁ。笑顔がすっごいかわいい。
髪にそっとキスをすると、驚いたのかごとーの肩に噛み付いた。
「いってっ…」
「あぁっ、ごめん!」
「や、いーよ。ミキティのだったら痛くないから」
「いやいや、痛いって言ったじゃん」
「いーの。ほら、本当にちゅーしちゃうよ?」
「やぁだよぉ」
「なんでそう露骨に嫌がるかなぁ」
「嫌とかじゃなくてさぁ、なんか…こう…」
恥ずかしいんだ。
困ったように笑うさまですぐに分る。
決して自分からキスをせがむ事はないし、する事もない。
別にいいんだけどね。そこが好きだから。
- 117 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 21:48
-
「んぅー、美貴もう寝ようかなぁ」
「早いねぇ、ずいぶんと」
「あ゛ー寒。ごっちんも寝ようよ」
「ごとーまだ眠くないや、先寝てていいよ」
「……えー」
抱きついてたミキティはごとーから離れて、ベッドに腰掛けた。
先に寝てていいよと言ったんだけど、不服そうな目でごとーを睨む。
なんだなんだ?
「ごっちんも寝ようよぉ…」
「だから、眠くないんだって」
「寝ようよぉ!」
「だーかーらぁ……」
一緒に寝たい…んだ。
恥ずかしくて、その一言が言えないんだ。
「……わーかったよ。寝るよ」
「やったぁー」
「でもミキティが寝たらごとーはテレビ見るからね」
「なんで!ダメ!!」
「はぁ?意味わかんない……」
「だからっ…だからぁ」
まくらを持ってもじもじするミキティ。
かわいー。
要するに。だっこされて眠りにつきたいのね。
- 118 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 21:58
-
「分った。ちゃんと寝るよ」
「やぁったぁ!」
さっきから『やったー』って連発するね。
そんなに嬉しいのかな。
よくよく考えたら、今冬なんだよ。
冷え性のミキティは体温の高いごとーを湯たんぽにしたいんだな。
「湯たんぽかよ…」
「だって温かいじゃーん」
「ほれ、布団かけて」
「んぅー……」
目蓋を閉じて、横になったごとーを引き寄せた。
ごとーより背ちっさいのに力だけはあるんだ。
そんで…かわいさもあるわけで。
すーすーと、規則正しい寝息。
潤んだ唇。
「んっ…ぅー…寒い…」
「寒い?」
ぎゅっとミキティを抱き締める。
さっきまでは軽く背中を摩るぐらいだった。
……ブラしてないんだ、ミキティ。
まぁ寝る時はそうだよ。ごとーだってそうだし。
半目で寝る癖は、ごとーと寝るようになって治ったんだって。
この間言ってた。
嬉しい…のかな。嬉しく思っていいのかな。
「かわいーよなぁ…マジ…」
「…くー…」
「キス、しちゃっていいかな」
少し強めに、唇を塞いだ。
「んっ…んぅ…」
「げ、起きる……?」
とっさに唇を離して、様子を伺う。
- 119 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 22:08
-
良かった、寝てる。
さっきリップ塗ってたから、ミントの味がした。
「舐めてやろ」
ちょっとした悪戯心。
どんな反応するかなー、なんて考え付いた。
元々舌使いに弱いミキティだから、起き上がるかなー。
ぺろぺろ。舌先で下唇をなぞった。
起きない。
ぺろぺろぺろ。
「…んぅ…んんっ…ごっちん…!??」
「あ、起きたぁ」
「なっ…ちょ…何やっ…」
「唇舐めてる」
「やめっ…うぁぁっ…」
攻め続けながら、舌を段々と口に忍び込ませる。
「やだってば…はんっ…」
「…ヤバい、かわいすぎミキティ」
「ぁんっ…」
色っぽい……鼻にかかった声が大好き。
無理矢理するのは可哀想だし、そろそろいじわるはやめておこう。
- 120 名前:かわいい彼女 投稿日:2004/08/13(金) 22:14
-
「ふぅ、お疲れー」
「…寝てる間に何すんのぉ!!!」
「だってかわいかったんだよー」
「かわいくなんかな…」
「いーや、かわいかった」
ミキティの濡れた唇を親指で拭いて、もう一度抱き締める。
「今度したら…怒るよ」
「あ、怒ってないの?」
「今の所…でも寝てる間にすんのはヤ」
「じゃー起きてる今しちゃう?」
「はっ?…ふっ……やめっ…」
「ペロペロ…冗談だよー」
「馬鹿。もういい、1人で寝るっ」
布団をすっぽり被っちゃって、御立腹。
かわいいのが罪なんだよーだ。
いじっぱり。負けず嫌い。男前だけど、女の子の面もある。
そんな素敵な、ごとーの彼女。
FIN
- 121 名前:証千 投稿日:2004/08/13(金) 22:17
-
ごまみき。書いてみました。
>114様 ムハ−…しちゃいましたか。ありがとうございますw
- 122 名前:みきっティー 投稿日:2004/08/14(土) 00:32
- かわいいー・・・
とってもとーってもイイです。
これからも期待しています
- 123 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/14(土) 05:14
- みきてぃかわいすぎる
ごまの視線がやさしい
この2人イイ〜!!(萌
- 124 名前:お楽しみ 投稿日:2004/08/14(土) 10:50
-
「おかえり」
「たーだいまっ」
「うわぁっ」
帰りがてらに、彼女を抱き締めるのがマイブーム。
反応がこれまたかわいい。
照れながらでもちゃんと抱き返してくれる。
藤本美貴ってやつは、ごとーのハニー。
「美貴お風呂入ってくる」
バスタオルを一枚ケースから取り出すと風呂場へ向かおうとする。
このチャンスを逃すものか。
「一緒に、入ろ?」
キョトンとした顔で、ごとーの顔を見る。
あ、脈アリかな?
「…バーカ。入る訳ないでしょが!」
「あだっ…タオルで殴るなよぉ」
「大人しくテレビでも見てなさい」
「えぇー。チッ…」
頬を赤くして、バスタオルでごとーの腹をぶった。
冗談なのに。
- 125 名前:お楽しみ 投稿日:2004/08/14(土) 10:55
-
ザァァァーーーーッ……キュッ
そろそろ、上がる頃だろうな。
「ごーっちん、美貴のジャージ取って!」
「んぁ、ジャージィ?」
「べ、ベッドの上に置いてあるやつぅ!」
「…あ、これか」
どもってるな。ごとーがミキティの着替える所を覗かれると
恥ずかしいから照れてやがる。
下着は…持っていったのか。
え?残念なんて思ってないよ…
「ミキティ、開けるよー」
「だっ…だめ!!」
「何で…」
「う、後ろ向いて!!」
「えー。…はい、早く取ってぇ」
あーあ、何だよ。わざわざ後ろ向きでジャージ渡さなきゃいけないんだ。
…まぁ、後のお楽しみって事で。
ほんのりと、せっけんの匂い。
- 126 名前:お楽しみ 投稿日:2004/08/14(土) 11:03
-
「ふぅ、気持ちいかったぁー」
「おやじぃな…乾かすから、こっちおいで」
「さんきゅー」
胡座かいた上に、ミキティをのせる。
軽いな、相変わらず。
細いし。
濡れた髪って…色っぽいよね。
「んぅー、イイ感じ」
「何が?」
「ごっちんってあったかいから、湯冷めしないじゃーん」
「…どーも」
「いい匂いするしぃ」
「……どんな匂いさ」
「へへっ、わかんない。でも美貴が好きな匂いだよ」
ころん、と横になってごとーの首筋に顔をうめる。
くすぐったい上に、襲っちゃいそうでヤバい。
「ふふっ」
「な、何で急に笑うの」
「何かね、美貴って愛されてるよなぁって」
「え?」
「ごっちん、何で美貴の事すきになったの?」
「…ごまっとうで一緒になってから、かわいいなぁって」
「亜弥ちゃんだってかわいいのに、何で美貴?」
「そりゃー違いはあるでしょ。まっつーもかわいいと思うけど、
ごとーが思うかわいいはミキティだったから」
「…なぁんかヤだなぁー」
「え?」
「……ハズい。やめときゃよかった」
「自分から言ったのにぃー、もーかわいすぎ」
そのままぎゅっと抱き締める。
もう、こうしていられるだけで理性がとびそう。
ヤバいよヤバいよ。
- 127 名前:お楽しみ 投稿日:2004/08/14(土) 11:17
-
「ねぇ、ミキティ」
「んぅ?」
「いつになったら、ごとーは満足できんのかな」
「へ?」
「だから、カラダ。まだ、ヤ?」
「……ん…」
ミキティが、えっちをさせてくれないのは、やっぱりまだ怖いってのがある。
大丈夫だよっていつも言うんだけど、恥ずかしさもあるらしい。
いつも切り出すと、複雑そうに、申し訳無さそうに抱きついてくる。
「…ごめん」
「いいよ、無理矢理とか、しないから。絶対」
「やっぱ…まだ…何か…」
「分ってる、大丈夫だから」
「…待っててくれるの?」
「当たり前。ミキティの初めてはごとーがもらう事になってるから」
「……ありがと」
「いーえ」
かぁいいなぁ。
ずっと待ってるから、安心しててよ。
「…ス…ならいいよ…」
「ん?」
「キス…までならいい…」
「……ほんと?」
OKをもらうまえに、ミキティの唇に口付けた。
可愛さ余って憎さ百倍…だっけ?
そんな感じ?
「んっ…ふぅ…」
「……かーわいいっ」
チュッと音をたてて、ついばむキス。
「…かわいすぎてどうかしちゃいそうだ」
「どうかしちゃいそうって…」
「好きすぎて、壊れそう」
「…ハズいって。やぁめてよ…」
「そんな事言ってたら、いつまでごとーはお預けくらうんだ」
「…決心つかせてよ」
「あいよ」
あと、何ヶ月。あと、何日?
どんどん距離が縮まって、1つになれるその日まで。
ごとーは、お楽しみを取っておきます。
FIN
- 128 名前:証千 投稿日:2004/08/14(土) 11:20
- >122様 ありがとうございます。ごまみきは最近ブームでw
>123様 ごまの感じ、自分も書いてて好きですね、ありがとうございます。
- 129 名前:証千 投稿日:2004/08/14(土) 13:56
- あやごま。あとで書きます。
- 130 名前:みきっティー 投稿日:2004/08/14(土) 16:00
- 早くこないかな?
1つになれる日が・・・
待ちどおしいよーーー!!!
- 131 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 00:27
-
それは、ごまっとうが結成されてまもないころの楽屋。
この世で一番嬉しかった。あの人からの、告白。
- 132 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 00:35
-
「……んぁぁー…おはよ…」
「おはよう。ってゆうか寝すぎだよごっちん」
「ミキティだっていつも欠伸して…おはよまっつん」
「ぇ?あ、おは、おはよぉ」
「何で亜弥ちゃんどもってんの?」
「ど、どもってなんかな…」
「変なまっつぅーだぁ」
へらへらっと笑って、くしゃくしゃあたしの頭を撫でた。
…大好き。
「ん?亜弥ちゃん顔赤い」
「あ、ほんと。熱でもあんのかいまっつー」
「…ひゃっ?!」
ごっちんの長い手が、あたしのおでこに伸びてきた。
心臓がばくばく鳴って、聞こえてしまわないように押さえる。
熱い。熱なんかじゃない。
「…熱はないねぇ。変なの」
「おかしいね、いつもおかしいけど」
「みきたん」
「ハイハイ、すみませんでしたぁー」
「んははぁ」
あたしとみきたんのやりとりを見て可笑しそうに笑う。
かっこいい。かわいい。
優しい。そんなトコに、一目惚れしちゃった。
- 133 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 00:44
-
いつもなら、普通なら、上目遣いでアタックできる所なんだけど。
無理。
ごっちんにそういう事ができなくなってる。
何でだか、わかんない。
「やっぱ亜弥ちゃん変…マネージャーさん呼んで来る」
「んあ、よろしく」
「へっ…?いいよぉみきたん!いいって…」
「いいから、じっとしてて」
「わっぁ…」
イスに座ったあたしを、背後から覆いかぶさる、ごっちん。
当然平常ではいられないあたし。
「あははぁ〜、これで動けないぃ」
「ごっちん…?」
「たまにはリラックスリラックス。肩もんだげるよ」
無邪気に肩をぽんぽん叩く。
その行動の1つ1つが、あたしを期待に追い込ませる。
ずるいよ。
- 134 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 00:53
-
「どーよ、きもちい?」
「…う、ん」
「そっか、そりゃよかった。…ね、まっつー」
「な、何?」
「最近、疲れてるんじゃない?ボーッとして、顔真っ赤だし」
「そんな事…ないんだけど…」
誰のせいだと思ってんの。
他の誰でもなくて、ごっちん自身があたしを痛くさせてる。
やだ。優しくされたら、期待しちゃう。
好きって言えば、OKしてくれるのかなって、馬鹿みたい。
「……なん、でもない…」
「…そ。じゃあ、一個、言うよ」
「え…」
何か、言ってくれるの。嬉しいけど、寂しい。
「ごとーは、まっつーの事好き。だから心配」
友達。友達だって分ってる。
止めて。
「ちがっ…うよ…そういうのがヤなのっ…」
「え?」
「もうっ…傍にいないでいいよぉっ…」
「な!??泣いてるのまっつー?!ごとー何か悪い事…」
無神経、だ。
あたしがどんなにごっちんを愛してても、伝わってない。
挙げ句の果てに、オロオロしてまた頭を撫でてくる。
嬉しい。紛れもなく、愛してるって分った。
- 135 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 01:00
-
「っ…ヤだ…よっ…」
「ごとーが、嫌?」
「違うのぉっ!!優しいのがヤなのぉ!!!」
「…や、優しい?」
こうなったら、とことん嫌われろ。
どうなったっていいもん。
勝手に片思いしてれば、ごっちんは困らなくて済む。
「…っ…いつも…好きとか言うからっ…期待…しちゃって…」
「な、何でさ?」
「だから…何でそう鈍感なのぉ!」
「だ、だって、期待してくれてた方が…」
「…ぇぇ?」
あったかいものが、触れた。
何でこんな事するの。
「……これが、ごとーの気持ち、だから。好きのカタチ、これ」
「好きっつうのは…その…さ、キスしたいっていう気持ち」
「まっつーが。松浦亜弥が、好きだ。愛して…るんだよ」
期待。した、結果がこれなの?
「……まっつーさ、ごとーの事どう思ってる?」
「好き…」
「好きか…ってえぇ!?あ、愛してるって事?!」
「う…ん」
まさか、逆告白されるなんて思ってもなかったし。
愛してるなんて、言われるとも感じてなかった。
のに。
- 136 名前:LOVE AND LOVE 投稿日:2004/08/15(日) 01:05
-
「…優しいとこが、一番スキだから…余計…」
「あー…ごめん。無神経すぎた?」
「すっごく…」
「…ごめんなさい」
「んーん。いい。そこが、好き」
「それじゃ…していい?」
「何…を?」
唇を指でなぞられて、やっと意味が分った。
「んっ…ぅ」
ダイスキ。
「…いつから、想っててくれてたの?」
「デビューして、すぐ。ごっちんは?」
「……同じ」
思いが、伝わってるって信じていいんだ。
好き。だよ。
FIN
- 137 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 04:36
- ごまみき、あやごま
( ´Д `)がツボすぎます!作者様乙です!
- 138 名前:証千 投稿日:2004/08/15(日) 14:13
-
>130様 1つになれる日はいつやら…いつか書きたいと想います(笑
>137様 ごっちんツボにハマっちゃいましたか、それは書きがいがありました!
- 139 名前:さよならの始まり 投稿日:2004/08/15(日) 14:21
-
『ずっと、4人で頑張ろう』
『『『オーッ!!!』』』
ドキマギして、ろくに仕事も出来なかったあの時。
4人だったから、今があるのに。
何でだよ。ざけんじゃねぇよ。
◇◇
「…よっすぃ?」
嫌だ。泣くもんか。
ぜってーに、泣かない。
「ごめん、ね…あたしっ…」
「……んでだよ」
「ほんとは…」
「触んなよ!!!…もう…いいから…」
彼女の手を、振払ったあたしの痛みは誰にも分るわけない。
バラバラかよ。どこ、行くんだよ。
- 140 名前:さよならの始まり 投稿日:2004/08/15(日) 14:27
-
逃げてるんだってわかってるんだ。
こんな事、理解してる。
いつかはみんなバラバラになって、しまうから。
「な…んで…卒業…かよ……」
梨華ちゃんが、卒業。
モーニング娘から、彼女はいなくなる。
あいぼんとののだって、もうあたしの近くにはいない。
誰1人、いなくなるっていうんだ。
『泣くな、よっすぃ!』
『…ないてなんかねぇよ』
『ちゃんとサブリーダーをまっとうするのれす!!』
8月1日。4期は2人になった。
梨華ちゃんは、特別なんだ。
いつでも傍にいて欲しかったんだ。
不貞腐れて、投げやりになって、どうにでもよくなった。
彼女がいないのなら、モーニングにいる意味はない。
- 141 名前:さよならの始まり 投稿日:2004/08/15(日) 14:36
-
「……?おぉー、よしこじゃーん」
懐かしい、ごっちんの声。
あたしが一度、愛した人。
彼女もまた、あたしから遠ざかってしまった。
「んぅ?泣いてんの?」
「…泣いてない。あっちいけよぅ…」
「メソメソしてるねぇ。いい加減大人になりなさいっ」
「……ごっちんと殆ど変わらないだろ」
大好きだったのに。憧れてたごっちんは、笑顔で卒業していった。
あたしの一方的な、片思いで終ったんだけど。
「梨華ちゃんは、よっすぃが大好きなんだよ」
「……わーってるよ…」
「だから、大事に想ってるんだよよっすぃを」
「………っ」
いつだって支えてくれたのが、梨華ちゃん。
すべった時は、転ばないように受け止めてくれた。
尚更、想いが募るんだ。
「ごとー、卒業して良かったなぁって思う」
「…は?」
良いわけないだろ。みんなが、悲しむんだ。
「……今まで出来無かった事がさ、面白いくらいに成長すんの。
踊りだって、歌だって、何もかも独りでやるんだけど、不思議とそれが好きなんだ」
「でも、独りだから、今のごとーがある」
「え…」
「大好きな仲間がさ、後ろから押してくれるから、何だって成功できちゃう」
「梨華ちゃんも、そうなって欲しいんだ。ごとーは」
- 142 名前:さよならの始まり 投稿日:2004/08/17(火) 12:31
-
「ごっちん、もういいよ」
床にぺたんと座りこんだあたしを、梨華ちゃんは哀しそうな目で見る。
息を切らして、あたしを探していたらしい。
そこまでして好きになんなよ。
「…よしこ、ごとー行くわ」
電気が消されたみたいに、あたしのなかは黒いものでいっぱいだった。
どうしろっていうんだ。
彼女を引き止めてはいけないと、知っているのに。
「あたしね、よっすぃが一番大切。卒業なんて、したくなかった」
「…じゃ…何で…」
「あたし自身が、変わらなくちゃ。よっすぃも変われない」
「なんで変わらなきゃっ…」
泣かないって決めた。なのに、溢れる。
「いっぱい勉強すること、残ってるもん」
梨華ちゃんの放った笑顔は、あたしを負かした。
ごっちんも、そうだったんだ。
そして梨華ちゃんも、未来へと進む。
止めたら、いけないって。
- 143 名前:さよならの始まり 投稿日:2004/08/17(火) 12:34
-
「……ずっと、見てるよ」
うん。分ったよ。
梨華ちゃんは、モーニング娘。を卒業した。
その後のあたしは後悔などしなかった。
次へのステップへ進む彼女を止められるものなどいない。
そう悟った。
今、さよならの瞬間。
あたしが言ってあげられた言葉は、何だったのかな。
FIN
- 144 名前:証千 投稿日:2004/08/17(火) 12:36
- 息ぬきにいしよし。
単純ですみませんでした。駄文失礼。
何か書こうか迷ってます。
- 145 名前:証千 投稿日:2004/08/17(火) 12:38
-
ごまみき。またかよっ。
- 146 名前:彼女 投稿日:2004/08/17(火) 17:22
-
「昨日、何で電話しなかった?」
「…だから、亜弥ちゃんに会ってて…」
「それは分ってる。だったら遅くなるって電話一本欲しかった」
「……そんな暇なくてっ…」
「…あっそ」
こんなに怒りが込み上げてきたのは、何年ぶりだろう。
その怒りは、紛れもないミキティ自身に向けられているわけで。
本当に、怒っているのに。
分ってんのか?
「…まっつーと遊んだ事に怒ってるんじゃない。分ってるでしょ?」
「分ってるよっ…」
「ごとーの気持ちとか…考えて…」
駄目なんだって。怒り任せに、大声出しちゃ。
でも、本気で心配だった。
昨日、ごとーの家に来るっていうから、待っていたのに。
ミキティはまっつーに連れられて、一緒に遊んでいたという。
そんな事どうでもいいから、すごく心配だった。
何の連絡もなしに、まっつーと遊んでいた事に怒っているんだ。
本当に、心配で。
- 147 名前:彼女 投稿日:2004/08/17(火) 17:27
-
強がって、涙をこらえている。
泣かせるつもりなんてこれっぽっちもないのに。
不器用過ぎる、不安定なごとー。
「…今度は、やめてよ。マジでさ…」
「……だから、わかってるっ…」
「分ってない!!」
「分ってるってば!!!もういいでしょ?!」
「何でそうなるんだよ、ごとーは……」
誰よりも、ミキティの事が大事だから。
だから、こうやって怒ってんだ。
「…ごっちんは、勝手すぎる……」
勝手なのは、そっちだろう。
泣きながらこぼした一言は、確実にごとーを打ち抜いた。
「……何がだよ…」
「全部だよ!!っ…もいやだっ……」
「だからっ…」
怒鳴っちゃいけないってば。必死に唱える、自身への言葉。
- 148 名前:彼女 投稿日:2004/08/17(火) 17:35
-
「……ごっちんはっ…美貴の事…何で心配するのっ…」
「好きだからに決まってんだろ!!それ以外に…」
ミキティを、愛してるから。大好きだから心配だった。
彼女自身も分っていると思ってた。
「……早く言えよぉっ……だから美貴っ…それがイヤでっ…!」
「何で…」
「ごっちんは…いつも美貴にそゆこと言わないから…っ…」
『ミキティ、愛してる』
この言葉を放ったのは、何ヶ月か前。ミキティに告白した時だけ。
ごとーが、理由だったの?
心配、させたかったの…か。
「馬鹿っ、そんな事でっ……」
「だってごっちん…っ」
「……好きじゃなかったら優しくしないし、心配しないよ」
ミキティ以外の他の誰かを、好きになれない。
病気になるほど、愛してる。
泣き止みそうなミキティを、立ち上がらせようとして抱きすくめる。
ミキティの匂いが、ごとーの怒りごと静めた。
- 149 名前:彼女 投稿日:2004/08/17(火) 17:40
-
「……好きだから、…もうお願いだから…」
「……う…ん…」
「心配かけさせないで、傍にいてよ」
全てが、愛しい。
何もかもが可愛くて、好きすぎて、悔しいくらい。
恥ずかしくて言葉には出来なかった事で、彼女を苦しませて。
「……ミキティは、ごとーのモノだから」
誰にも渡さない。たった1人の、ごとーの彼女。
FIN
- 150 名前:rina 投稿日:2004/08/17(火) 19:19
- 更新お疲れ様ですっ。
ごまみき、あやごまいいですねぇ〜!!
大好物ですっ。(w
内容がまた・・・引き込まれます。
最高ですっ。
- 151 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 01:42
- 不器用で真っ直ぐなごっちんの言葉にキュンとしちまったー!作者様のごまみきやっぱイイ!!
- 152 名前:愛のチカラ 投稿日:2004/08/19(木) 00:46
-
絶対に、全力を尽くして彼女を守る。
外出禁止令を出すと、彼女は顔の色を変えた。
「ちょっと!!冗談じゃないよぉ!!」
「冗談じゃないもん」
「だ、だって美貴…ラジオの生あるし……」
「その声で生やって、ファンのみんなに笑われたいの?」
「っぐ…」
何言ってもきかないみきたんを力ずくでベッドに沈めた。
このコ、あたし以上に我がままだ。
声はガラガラ、熱は平熱よりやや上、鼻声がいつにもましてひどい。
なのにみきたんは仕事へ行くってきかない。
「あぁーあ。ラジオやりたかったのに…」
「もうマネに連絡しちゃったもん」
「……亜弥ちゃん帰ってイイよ」
「何でよ」
「仕事、早いんじゃないの明日っ」
「なんでむくれるのぉ…」
布団を頭まですっぽり被って、防御体制。
アナタ、あたしより年上の19歳でしょ?
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 02:11
- 作者さんのあやごま好きです♪ぁゃみき狂なんですけどぁゃごまにもハマりそぅ…これからも応援してます!!
- 154 名前:愛のチカラ 投稿日:2004/08/19(木) 10:26
-
「あーあぁ…亜弥ちゃんのバーカァッ!」
「こっちのセリフですぅ」
「じゃあ一緒に寝よ」
「ハ?アンタ何言って…」
自分勝手な人だ。
さっきまで怒ってると思ったら、急に態度変えちゃって。
甘えモードに入ったみきたんは、あたしをベッドの中へ引きずり込んだ。
「ヒャァッ!」
「へっへっへ、冷たい攻撃!」
「足冷たすぎ!!!」
「体質だもん、しょ〜がないー」
「ッヒィ!!離せぇーっ!」
「イ・ヤ。亜弥ちゃんあったかいもん」
膝のあたりに、みきたんの両足が絡み付いて来る。
どういうつもりかあたしをからかうのが好きなみきたん。
そりゃー…イヤじゃないけどさ。
だって、そういう所が好きだもん。
- 155 名前:愛のチカラ 投稿日:2004/08/19(木) 10:32
-
やっと冷たい攻撃をやめたたんは、しっかりをあたしを抱きしめて
緩やかに呼吸をし始めた。
「…好きだよ」
幻聴かと思ったくらい、か細い声で呟いたみきたん。
風邪をひいた時ぐらいしか言えないのか。
「何よ、急に」
「いや…何か」
「変なみきたん…」
「…もう変になりそうだよ」
にへらっと笑って、あたしの額にキスをかまされた。
「風邪ひくとさ、亜弥ちゃん世話してくれるから」
「毎回そうはいかないよーだ」
「そんな事ないね。亜弥ちゃんは美貴の事好きだから」
「…ナルシ入ってる?」
「アハハ、まぁね」
お見通し。そうだよ、あたしはみきたんが好き。
放っておけないから、甘くしちゃう。
- 156 名前:愛のチカラ 投稿日:2004/08/19(木) 10:39
-
「美貴、亜弥ちゃんに捨てられたら死ぬよ」
「どうぞご勝手に」
「えぇ!?そんな…」
「冗談に決まってんでしょ、真にうけるなバカちん」
「冗談に聞こえなかった…」
そんなわけ、ないでしょ。
あたしだってみきたんに捨てられたら、あたしだって死ぬよ。
でも、捨てられるとか考えられないな。
だって。
「…みきたん、好き」
「へい?何か言った?」
「……なぁんでもないよ」
「えーっ気になるんだけど」
「もう言いません!」
「言えー、言わないとキスするぞ」
いいよ。
返事をすると、瞬時に奪われた、唇。
あたしって、本当に甘い。
風邪をひいてるみきたんにキスをされたら、絶対にうつるのに。
- 157 名前:愛のチカラ 投稿日:2004/08/19(木) 10:44
-
「はい、終り」
「えー、あと一回」
「ダメェ−ッ」
一度唇を離した隙に、押し倒された体を起こしてみきたんに抱きつく。
止まらなくなったら困るからね。
「治ったら、もう一回…」
「何か言った?」
「べ、別に」
照れくさい事をぼそぼそ言ってるらしいみきたん。
普段言ってくれないけど。
繋がってるもん。絶対に、斬れない糸で。
「亜弥ちゃーん」
「何?」
「大好き」
「…あたしも」
これが、風邪にも感染しない。
愛のチカラ。
FIN
- 158 名前:証千 投稿日:2004/08/19(木) 10:49
-
>150様 ありがとうございます。自分、rinaさんの作品を拝見させて頂いている身です(笑
あなた様の作品が最高ですんで、滅相もないです。
>151様 キュンと時めくごっちんの言葉…愛読ありがとうございます。
>153様 みきごま、あやごまは最近ブームなものでww
あやみき以外に書きたいのがこれぐらいしかないんです。ごめんなさいです(笑
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 17:50
- あま〜い。甘すぎです。
もっともっと甘いのをお願いします。
- 160 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 19:52
-
あたしの恋人は、他の人とは違う。
なんてゆうか特別。
ある意味、あたしのペット。
みきたんは、あたしのワンコちゃん。
- 161 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 19:55
-
ゴミ箱に捨てられていた彼女は、あたしに恋をした。
うるうるの瞳で、『助けて』って。
もとい、あたしもヒトメボレしたから境目なんてのはない。
人間とワンコの恋って、意外とあり得るものだ。
- 162 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 19:58
-
今日も、あたしを困らせる一匹の犬。
「これさぁ、肉少なくない?」
「だったら食べなくてよろしい」
「くぅーん…食べるよ…」
性格=ワガママ
特徴=ピンと立った耳。
ワンコのくせに、飼い主のいう事を聞かない。
でも、もとはといえば彼女は人間だった。
- 163 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:04
-
『ヒトの意志は勝手。それが嫌で、美貴は犬になる運命だったと思う』
濡れた鼻を前足で拭って、みきたんはこう言った。
何故彼女が犬になってしまったのかはあたしも知らないし
みきたん自身にも分らない。
『捨て犬でさ、血統書も無いけど、飼ってくれるかな?』
ずっと飼ってあげる。 あたしは雨で濡れた毛をタオルで拭いた。
- 164 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:10
-
居候人、いや、居候犬?
「…首輪キツイッ」
「外しちゃダーメ、散歩する時困るでしょ?」
「美貴人間だよ」
「今はワンコちゃんでしょ」
「ウーッ……」
皿に盛ったウェットタイプのフードを半分以上残し、毛づくろい。
今ではドッグフードの方が美味しいらしい。
あたしが調べた所、犬種は豆柴。
ちっさくてコロコロしてて、超かわいい。
「…かーわいいよぉ」
「キャンッ!!痛いよ亜弥ちゃんっ」
「もー好き好き!!」
「ウグッゥ…ありがと…」
モッコモコの毛を見るとついつい抱きしめたくなる。
寝る時はいつも一緒。冬なんか暖房いらず。
- 165 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:22
-
「…みきたんの人間姿ってどんな感じだったの?」
「別に…どんなって、普通だよ」
「そっかぁ…」
過去の事を聞くと、いつもみきたんは黙ってあたしの腕から逃げる。
何か重いものを背負ってるみたいに、溜め息をついて伏せて。
もし今も人間だったら、もっと恋はうまくいくのかな。
思っちゃいけないような事、時々馳せる。
「…たん、お風呂入ろっ?」
小さなみきたんを抱き上げて、お風呂場に連れてゆく。
「…え、亜弥ちゃんも入るんじゃないの?」
「ハ?」
「やっ…な、何でもないや」
「何よぅ、あたしのハダカ見たかったわけぇ?」
「ちがっ…うよぉ…」
「ワンコのくせにエロいんだぁ、みきたん」
「…あ、亜弥ちゃんだって時々キスしてくるじゃんかぁ…」
「キスだけでしょぉ?エロワンコ!」
「そ、そんな事ないっ」
からかいながら、首輪を外してやる。
ホント、ワンコのくせにえっちぃみきたん。
- 166 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:29
-
「ブハァッ、冷たいぃっ」
「ブルブルするなみきたん!こっちにかかるよぉっ!」
ぶるぶるっと身を震わせて、水を弾く。
その水滴があたしにかかって声をあげると、みきたんは面白そうに
その行為を続ける。
「ほら捕まえたぁ」
「ウギャ−ァ、シャンプーが目に入るよぉ」
「いちいちうっさい!洗ってあげてんの誰よ!」
「亜弥ちゃん」
「よろしい。ホラ、大人しくしてなさい」
「ハーイ」
ワシャワシャ洗ってあげると、くすぐったいのかジタバタ暴れるみきたん。
泡を流してやると、またぶるぶるっと弾いた。
- 167 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:37
-
ぶおーーーーーーーっっ
「熱いっ、毛が焦げちゃうよぉ」
「大丈夫だよ、静かにしなさい」
「…ドライヤーってだから嫌だよ」
「つべこべ吠えないの。はい、終ったよ」
「…ふーっ、開放された」
ごろごろフローリングに転がって、部屋の中を3週ぐらい駆け回る。
本当に人間だったのかな。
「サッパリした?」
「うん。気持ちかったよぉ、ありがとぉー」
ふわふわもこもこ。抱きつくみきたんを抱えて、眠る事にした。
ペロッ
「ふふっ、何よぉ」
「ほっぺ柔らかいなぁって」
「みきたんの肉球もやぁらかいよ」
ほっぺを舐められた仕返しに、肉球をフニフニした。
くすぐったそうにして前足をあたしの頬に押し付けられる。
- 168 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:45
-
「…こういう時だけさ、美貴も人間に戻れたらって思う」
「え?」
「亜弥ちゃんと色んな事したいし…人間だったらもっと楽しいかなって」
「いろんな事って…?」
「…だからさ…その…えっちとか…」
「……やっぱエロワンコだ」
「違うよぉ!…デートとか…」
「お散歩してるじゃん」
「でも…遊園地とか……」
「お家で遊んでた方が楽しいよ」
「でもでもっ…映画とか…」
「みきたん」
「…?」
気にしてるんだ。あたしの事、想ってくれてるから。
別に不満足はしてないし、ワンコのみきたんが好きだから。
そんな事気にしなくていいのに。
「あたしは、今のままでいいの」
「でも…」
「ワンコでも、ヒトでも、関係ないもん」
「……」
「そのままの、みきたんが好きだよ」
「…耳立ってるよ?」
「カワイイよ」
「いいの…?」
「もちろん。あったりまえだよ」
みきたんには、人生楽しんで欲しい。
例え犬であっても、人間であっても。
みきたん自身は、変わらないんだから。
- 169 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:52
-
「餌代、人間に戻ったら返すから」
「そんな事気にしてたんだ?」
「まーね…一応…」
「それまでずっと傍にいてよね」
「いていいの?居候でも?」
「いて欲しいよ。みきたんには」
「じゃあ…ずっといる」
「そうしてて」
リアルな事考えてるみきたんに、内心ちょっと可笑しかった。
「…また…ヒトってもんに憧れもっちゃったなぁ」
「……そっか」
「でもどっちだっていい。亜弥ちゃんがそうしてって言うなら」
「え?」
「大好きだよ、亜弥ちゃん」
「な、何か話が…」
「犬でも愛してくれるんでしょ?」
「う…ん」
犬の心は、分りません。
人間に戻ったら、このモコモコはなくなるって考えると寂しい。
「やっぱ、ペットだね」
「美貴が?」
「恋人でもあって、ペットでもあるよ」
「…嬉しく思って良いのかな」
「思っててよ」
たとえどんなあなたでも、『愛してる』の対象に変わりない。
- 170 名前:君はペット 投稿日:2004/08/20(金) 20:54
-
「亜弥ちゃんっお腹減ったぁー、早く御飯っ」
「ちょっと待って!今お掃除してるの!」
「やだったらヤだ!!早く!」
ほら、また。
飼い主を呼ぶ一匹のワンコ。
やっぱり、君はペットなんだね。
FIN
- 171 名前:証千 投稿日:2004/08/20(金) 20:56
-
>159様 甘いのを研究中です。今回はペットな感じで。
痛めは書けないので(笑
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/20(金) 22:20
- 豆柴美貴ちゃん可愛い〜!
ある日突然人間に戻る話も見たいです。
- 173 名前:名無し娘。 投稿日:2004/08/20(金) 23:04
- >>172
同じく私も・・・
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/21(土) 12:16
- 見てみたいですね…ワンコミキティかわゆい!!
- 175 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/21(土) 12:17
- すみません…ageてしまいました…
- 176 名前:証千 投稿日:2004/08/21(土) 16:26
- いやはや、読者の皆様レスをありがとうございます。
『君はペット』の続きを書きたいなぁなんて恐縮ですが思っていた
所です。
長くなるかもしれませんが…
- 177 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 16:33
-
ドタバタしている、いつもの昼下がり。
1人と1匹の、猛烈な戦い。
「…嫌だっ」
「ダメ」
「嫌だ」
「ダメ」
「いーやーだ!」
「ダメ!!」
「…嫌だよこんな服ぅ」
「なんで、カワイイよ」
「邪魔くさいよ」
「飼い主はあたしなんだけど」
「…またそうやって弱味を握る」
あたしがしようとしていた事は、ワンコみきたんにお洋服を着させる事。
知り合いがそういうショップに働いていて、特別に作ってもらったブルーの
かっちょいいトレーナー。
ちっちゃいみきたんの丈に合わせたのに、みきたんは着たくないってわめいてる。
「はずかしいよぉ…こんなおこちゃまなの…」
「カワイイってばぁ」
「…みんなに笑われる…」
「大丈夫だよ、カワイイから」
無理矢理頭にトレーナーを通して着させてやる。
わおわお文句を言いながらも、きちんと着てくれた。
- 178 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 16:36
-
「…やぁっばい、カワイイィ……」
「ぐえっ」
「もーカワイイカワイイかーわーいーいー!!」
着させてみると、めちゃんこカワイイ。
ちっちゃい体にピッタシ合ってて、振り向きざまの形がめちゃカワイイ。
写真取ろうかな。
「いいからさぁ、散歩は?」
「あ、そっか」
豪を煮やしたみきたんは、ポラロイドのシャッターを押したあたしを
ぎろっと睨んだ。
- 179 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 16:39
-
いつもの公園に到着。
「…はずかしいな」
「いいから、早く行ってきなよ」
「ちぇっ…」
いつも通っている公園では、リードは付けずにみきたんを遊ばせる。
お友達のワンコもいっぱいいて居心地がよさそう。
トレーナーを見てもじもじするみきたんの頭を撫でてあげると、
渋々という顔で駆けていった。
- 180 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 16:51
-
「…お、美貴じゃん」
みきたんの後から、お友達のワンコ。
「よっ、相棒」
「…ゲッ…よっちゃ…」
「何だよ、かわいらしいの着ちゃってー」
「わ、悪いかよ…」
「オレっちも作ってもらうかなー、梨華ちゃんにかわいいの」
「…もーほっといてよ」
「カワイーじゃん。ヒューヒューッ」
「このっ…いい加減にしろよっ!」
…おそらくこんな会話してるんだろうな。
あたしはみきたんの言葉しか理解できないから。
「微笑ましいね、あの2匹」
「うん、そーだね…って梨華さん」
「こんにちわ、亜弥ちゃん」
「いつもみきたんがお世話になってます」
「いーえぇ、こっちこそよっちゃん楽しそうだし」
梨華さんは、みきたんのお友達ワンコ『よっちゃん』の飼い主さん。
よっちゃんはみきたんの何倍もあるおっきなダルメシアン。
足が長くてキリッとしてる、名前に合わない格好良いワンコちゃん。
「ゼェッ…ゼェッ…ま、待てよっちゃんっ…」
「ここまでおいで〜だ。大型犬に刃向かうからだー」
「むっかつくな…」
2匹は仲良く追いかけっこしてる。
と、その中にまたワンコが。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/21(土) 17:47
- 続編めちゃ楽しみです。
タイトルからしてかなり期待!
それにしても恥ずかしがる美貴ワンコ可愛すぎです〜
- 182 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 21:29
-
「んぁおーん」
「あ?このふにゃけた鳴き方は…」
「ごっちん!!」
そうそう、このワンコも何か変。
『んぁおーん』とかおかしな鳴き方する。
名前は、ごっちん。種類はダックスのマーブル。
また欠伸してる…かわいいなぁ、ごっちんも。
いや、みきたんの方がかわいいな。
「ごっちん最近ここ来なかったから心配してたぞぉ」
「んあ、りょこーっつうものをしてきたぁ」
「旅行?どこに?」
「んぇーっと…でっかい水溜まりで色が真っ青な…」
「海かぁ、いいなぁ。オレっちも梨華ちゃんと行きてぇー。美貴は行った事あるか?」
「…うん、昔ね」
ありゃ?なんか…みきたんのテンションがまた落ちてる。
…何か他のワンコちゃんに聞かれたのかな。
言葉わかんないから悔しい所。
「あ、そうそう。その海ってのがしょっぱくてぇー」
「そりゃそうだろ、塩入ってんだ」
「んあ、どんくらい?」
「どの位ってそりゃぁ…その…まー…一杯入ってんだよ。なぁ美貴?」
「……へ?」
「何だよ、聞いてなかったのか」
「…ご、ごめん」
明らかにみきたんの瞳は、何かを言っていた。
ごっちんやよっちゃんの元を離れ、あたしの所にチョコマカ駆け寄ってくる。
- 183 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 21:35
-
「んぅ?どしたみきたん?」
「…だっこ」
「え?」
「……だっこ、して…」
カワイイ。 破壊的に可愛過ぎる。
ちっちゃな声で『だっこ』だって…
「どぉしたのよみきたん。よいしょっ」
「くぅん」
「おーよしよし、かわいーねお前はぁもう!!」
何だかんだ言って、結局は寂しがりやのみきたん。
だっこをせがむ事なんて殆ど無いからね、照れくさいんだ。
「もう、帰る?」
「…うん」
「そっか、じゃあよっちゃん達にバイバイしなさい」
あたしがしゃがんで、よっちゃんにみきたんを覗かせる。
- 184 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 21:42
-
「じゃあまた今度なっ」
「…うん」
「んぁー、またねぇ」
「…うん」
やっぱりまだ瞳は寂しそうに潤んでる。
不謹慎にもかわいいとか思っちゃうし。
梨華さんと、ごっちんの飼い主である紺ちゃんにあたしもバイバイして
「そろそろ、歩く?」
「…いやだ。だっこ…」
「あ…そう…」
地にみきたんを降ろそうとすると、ジタバタ暴れだした。
甘えん坊になったみきたんをこのまま受け止めるしかないのかな。
「…どしたの?何かあったの?」
「……今は…だっこしてて…」
「そっか…後で、ちゃんと聞かせてね?」
「…うん」
きっとみきたんなりの思いがある。
よっちゃんがふった、『海』の一言。
みきたんをこんなにさせる、何かがきっとある。
- 185 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 21:47
-
マンションに帰って来た途端、みきたんはヒョイとあたしの腕
から飛び下りた。
ゲンキンなコ。
「こぉら、お手手拭きなさい!」
「やーだよー、汚れてないもーん」
「またそんな事言うとっ…こうしてやる!」
「うわぁぁぁっ、ちょっと!!くすぐった…」
「ほれほれほれほれぇ〜」
「ぐぁっ!くすぐったいぃ!」
キャッキャと無邪気に寝そべるみきたんは、何か思い出したように
また暗くなった。
しゅんとして、あたしの膝に乗る。
「…さっき、よっちゃん達と何かあったんでしょ?」
「…よっちゃん達は悪くない…美貴が勝手に…」
「だから、どうしたのっ?」
泣きそうなくらい、瞳には涙を溜めているのがわかる。
我慢しているのが、わかる。
- 186 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 21:54
-
「……海…の話になって…」
「海?」
「うん…海。…何か1人で色んな事考えちゃって…」
「…何か、ヤな事あったの?」
「う…ん」
そういえば、紺ちゃんちが海に行ったって。
ごっちんが話したんだ。
「……美貴、元々母子家庭…って話したよね…?」
それは最初の頃に聞いた。
お父さんはみきたんが産まれるまえに蒸発していなくなったって。
あたしは、みきたんの事をそれしか分ってない。
「……お母さんとさ…、最後に出かけたのが…海だったんだ…」
「え…?だって…今お母さんどうしてるの……?」
下を向いて、ひくひくとヒゲが動く。
- 187 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:02
-
「お母さんさ、それから狂っちゃったんだ」
淡々と、涙を止めて話し始めた。
あたしはただみきたんを見つめて、聞く事しか出来ない。
「優しくて、明るくて、本当に大好きだった」
「でも、おかしくなっちゃった」
「お婆ちゃんと…お父さんの事でもめて、毎日イライラしてた」
「それから、もう美貴はお母さんなんかの子供じゃないって、決めたんだ」
みきたんの言っている事が、すぐに理解できなかった。
どうしていいのかわからないあたしに、みきたんは自分の首を
あたしの右手にあてがった。
「…ココんとこ…真直ぐ線はいってる…」
「切られたんだ」
「………え?」
首筋にそって、4cmぐらいの真直ぐの傷。
生まれつきの痕かなんかと思ってて、聞かなかった。
違ったんだ。それは、痛みの痕だったんだ。
- 188 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:11
-
「お母さんに殺されかけた、痕だよ」
お母さんは、台所から果物ナイフを出した。
震えた手で酷く、目を血走らせて。
気付いた時には首を掴まれてた。
何がなんだかわからなかったけど、直感的に1つだけ分った。
殺されるんだって。
無我夢中でフローリングを蹴った。
それでもお母さんは本気でチカラを込めてナイフを握ってる。
美貴、お母さんに殺されるんだ。
「…手が滑ったのか知らないけど、ココカスった」
「な…んで…」
「血が出た事にビックリしたみたいで、もう…それっきり」
それっきり、お母さんはみきたんの目の前に現れなかった。
「…お願いだから、泣かないで…?」
「なっ…んで…たんが…」
「いいから…泣かないでよ。だから今まで黙ってて…」
濡れた頬を、みきたんがぺろぺろ舐めた。
さっきまでの涙目は消えて、笑っているように見えた。
- 189 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:17
-
「…それからさ、亜弥ちゃんに出会ったんだよ」
ぺろぺろ舐める事を止めて、スッと後を向いたみきたん。
「足フラッフラで、お腹空いてて。そのまま家飛び出してきたから」
「ん……」
「どうせ人間なんてやってても面白くないって、絶望的」
「え……?」
「そんな時に、意識なくなったと思ったら犬になってたってわけ」
雨が降ってて、ゴミ箱の傍らでぐったりしていた。
あの豆柴に、そんな憶い事があった。
「これ運命だって思ってさ、亜弥ちゃんを」
「えっ…」
「すっごい…綺麗だったから…」
傘をさして、スーパーの袋をひっさげて。
『…ワンコちゃーん、こんな所で何してんの?』
ニコッと笑って、手を差し伸べてくれた。
久しぶりに見た、誰かの笑顔。
めっちゃくちゃ素敵だった。
- 190 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:21
-
「惚れちゃった、亜弥ちゃんに」
「…ばか」
笑顔をくれたのは、みきたんでもある。
ママとパパ事故死して、あたしはずっと1人だった。
一人暮らしを始めたある日に、みきたんと出会ったから。
「……亜弥ちゃんの事、お母さんって思った事もある」
「……ん」
「優しくてあったかくていい匂いで…」
「…そっか…」
あたしに何が出来るかって、1つしかない。
みきたんにしてあげられることは、小さい事だけど、とっても大きな事。
1つだけ。
- 191 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:24
-
「あたしが、みきたんのママになるよ」
「えっ……?」
包んであげるよ。ずっと、飽きるまで傍にいるから。
いさせてほしい、アナタの傍に。
「みきたんのママは…あたしが成ってあげるよ……」
そっと、ふわりと抱き上げる。
微かに震えている体を、そっと。
熱いモノが込み上げて、溢れでそうな位。
- 192 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:28
-
目をとじて、心音を聞く。
トクトク…トクトク…規則正しいみきたんの音が、なる。
突然、周りが光った。
信じられないような光をあたしは見た。
それは、みきたんから。
ちいさなワンコから、なびくようにキレイな光りが。
抱きしめていた腕を離して、光りの美しさに見とれる。
「みきっ…たん?」
その時、微かに聞こえたオト。
声。
『今、会いに行くよ』
あったかい、心地よい、美しいその声。
- 193 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:33
-
目が痛くなって、ギュッと目蓋をとじてしまった。
「…亜…弥……」
みきたんの、優しい声。
とじていた瞳をゆっくり開ける。
じんわりと、笑ったその笑顔。
「初めまして。藤本美貴です」
やっと出会えた、あたしが大好きなワンコ。
「みき…たん…なの…?」
「そうだよ。…あはは、イメージ崩れた?」
「っ…くぅっ…ふぇっ…」
「え!??あぁぁぁっごめん!…泣かないでよぉ…」
笑顔が、何よりも眩しかった。
みきたんは、人間というヒトに戻った。
- 194 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:39
-
「ほんとに…っ…人間に戻ったのっ……?」
「らしいね…」
「…みきたんっ…カッコイイっ…」
「ぇ?」
「でも…ふわふわじゃない…」
「んぇぇ、カンベンしてよぉ」
キリッとした瞳。細くてしなやかな手足。
茶色の髪。
何もかもが、愛しく思えた。
「ねぇ…お母さんはいらないよ」
「えっ?」
「亜弥ちゃんは、美貴の何?」
「な、何って…」
愛しいっておもう事は、それこそが。
「美貴は、亜弥ちゃんの恋人だよ。お母さんはいらない」
ああ、そうだった。
あたしが必要としているのはただ1人で、みきたんだけ。
それこそが愛。
「今度はさ…美貴がする番だよ」
「えっ?」
「だから…ギュッて」
ワンコみたいに、肉球ないけど。
ワンコみたいに、毛はふわふわじゃないけど。
抱きしめたみきたんの匂いは、ワンコの時のままだった。
- 195 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:46
-
いつもの公園。
「ごっちぃん、美貴のやつどこいっちまったんだよ」
「んぁー…知り合いのお家に貰われて行ったんだって…」
「そーかー…アイツ…今どうしてんだろ…」
「…幸せだといいねぇ」
悪いな、ごっちんとよっちゃん。
美貴は今、人間に戻ったんだ。
「あら、亜弥ちゃんこんにちわ。…あら?そちらの方は?」
「あ…どうも久しぶ…」
「みきたんっ?!」
「あ…そか…あ、初めまして」
「…どこかで見たような…亜弥ちゃんのお友達?」
「えっ…ああ…まぁ…」
危ない。余計な口滑らせたら危ないよね……
ワンコが人間に戻ったのが知られたらめんどいじゃん。
「友達の藤本…」
「恋人の藤本美貴です」
堂々と言えばいいのに、亜弥ちゃんったら。
豪語した後、亜弥ちゃんは顔を真っ赤にして足を蹴られた。
「あらぁ、偶然ねぇ。亜弥ちゃんの飼ってた子も同じ名前…」
「ぐぐぐ偶然ですよぉーねぇ亜弥ちゃん?」
「そっそうですよ!やだ〜梨華さんってば!!」
ふぅ。揃って溜め息をついた。
- 196 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:50
-
「……ん?アイツ…美貴に似てね?」
「んわぁ、似てる…」
「まさかなぁ」
「まさかねぇ」
「「まさか…なぁ…」」
青いトレーナーを、よっちゃん達が覚えていませんように。
じろじろと視線を浴びせられる美貴は、来ていた青いトレーナーをかいた。
「そろそろ。帰ろっか?」
「うん、帰ろう」
「あっれ〜?みきたん、だっこはもういいのぉ?」
「っ!い、言わないよそんな事!!!」
「お風呂も体洗ってあげるよぉ〜?」
「う、うるさい!!」
今思えばすっごいはずかしい事してた。
お風呂一緒に入ったり、だっこしてもらったり。
- 197 名前:君は恋人 投稿日:2004/08/21(土) 22:57
- 後日談。
「亜弥ちゃんこれ肉すくないよぉ」
「野菜いためなんだから当たり前でしょ?」
「肉……」
「野菜も食べるのぉっ。ほら、あーん」
「ふん、いらないやい」
「こら!お口開けなさいっ!!」
「やーだよ」
ワガママワンコ、いや、ワガママ人間健在。
相変わらずのワガママにあたしは言葉もない。
「ねーっ、これ捨てなよっ」
「だ、ダメ!」
「なんでよ。首輪なんていらないよ」
「ダメ。これ…宝物だから」
「は?」
「ワンコみきたんの、思いでがいっぱいあるからっ」
「いーじゃん、今から作れば」
「え…」
「映画行けるし、遊園地行けるし、何でもできるよ」
「でも、ヤ」
「…えっちもできるし…」
「ハ?今何ていった?!!」
「何でもないよ…」
「なんていった?!!!!」
「え、えっちしたいなんて言ってない!!」
「……人間のくせにっ…エロワンコだ!!」
まだ残っていたのがえっちさだった。
呆れちゃうよ。
ペットであり、もとい恋人でもある。
ちゃんと愛して愛されて、毎日とっても楽しいです。
やっぱり愛しい君は、ペットかな?
FIN
- 198 名前:証千 投稿日:2004/08/21(土) 22:58
- 一日で終えました…大変です。
『君はペット』と『君は恋人』完結しました。
まぁ後日の話もまた番外編として書きたいかなーと。
レス返しはまた次の更新の際に…
あー…眠いでござんす。
- 199 名前:七氏 投稿日:2004/08/21(土) 23:10
- リアルタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━イム!!!!
なんだかんだでエロい藤本さんが(・∀・)イイ!!!
個人的に、松浦さんに甘える藤本さんっていうのがツボでした。
これからも楽しみに待ってます
- 200 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/21(土) 23:17
- 良かったぁ…。
素敵な話をありがとうございました。
後日談も楽しみに待ってます。
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/22(日) 04:20
- 美貴たん…めちゃ可愛い♪
从‘ 。‘从ぁたしのが可愛いでしょ?
从 v 从亜弥ちゃん可愛いょ…
プチぇ(ryなトコゎ残ってたんだね(笑)作者さん!これからも素敵なぉ話期待してます♪頑張っちゃってくださいね☆
- 202 名前:ななしさくしゃ。 投稿日:2004/08/22(日) 14:46
- エロワンコみきたんが可愛かったです。
番外編も楽しみにしてます!
- 203 名前:証千 投稿日:2004/08/22(日) 17:06
- 一晩経った間にいっぱいレスが……
ありがとうございます。
>199様 いやいや、書いててもはずかしかったですね(笑
エロティ復活…キテますね。
>200様 人間に戻ったみきたんは幸せですよ、きっとww
付き合って頂きありがとうございました。
>201様 素敵なお話は一生書けませんから(笑
でもそう言ってもらえて嬉しい限りです。
>202様 エロさが増さないように調教しておきますよ(笑
番外編、お楽しみクダサイ。
- 204 名前:証千 投稿日:2004/08/22(日) 17:07
-
更新早いような気がする。
- 205 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:13
-
「ちょっと亜弥ちゃん、このカード捨ててよ」
「えー、今度なんかあったら困るしぃ」
「困るもなにも、美貴はもう人間に戻ったんだから…」
「また犬に戻ったらどうするぅ?」
「有り得ないって。犬はもういいのっ」
名残惜しく、ペットショップの会員カードをまだ保存しているあたし。
偶然にもそれを発見したみきたんは不服そうにこちらを見た。
「ワンコの感触、懐かしいなぁー」
「そう?」
「もこもこしててさぁ、もう一回触りたいなー」
「んな事言ったって…違う犬でも飼えば?」
ふてくされたようにソファに寝転がってしまう。
嫉妬してんのね。
- 206 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:18
-
「ダメだよ、みきたんじゃないと」
ゴロンと横になったみきたんに、後ろから抱きつく。
匂いと性格だけは、犬の時と変わらない。
「自由に変化できたらいいのにね」
「そんな夢みたいなこと…」
「だって犬になれたんだから、有り得なくはないでしょ?」
「有り得ないの。美貴は人間のままでいいよ」
「なんでぇ?」
「えっちできないじゃん」
「……サイテ−」
「ギャッ」
寝っころがるみきたんの背中を、思いっきりぶったたいた。
これだから人間のみきたんは嫌だ。
エロいんだもん。前からだけど。
「いたいなぁー…」
「いいから離れなさいよぉ」
「無理」
叩いた背中を摩って、あたしを抱き締める。
- 207 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:21
-
ちょうど、目の前にみきたんの首がある状態。
やっぱり首筋に沿った傷は近くで見ると目立ってて痛々しい。
その線にそって、キスをする。
「へへっ、くすぐった…い?!!」
「ひゃっ…みきたん!??」
どこかで見た、光り。
キレイな青白い光が、みきたんを包んだ。
あの時と、同じ。
- 208 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:26
-
もくもくと、光りが消えてゆく。
って事は………?
「あ…れ…?なんで…肉球…肉球ぅ!???」
「わ、ワンコになってる!!???」
「ななななな何で戻ってんのさ!??どういう事!??」
「わかんな…」
また、もこもこワンコになってるみきたん。
ワケがわからなくて、周りに落ちている服を見渡す。
「……キスしたから…だ…」
「へっ?」
「あたしが…首んとこに…キスしたから…?」
「んなわけない……かな…」
また、もこもこのワンコみきたんを抱えて、首筋を見る。
やっぱり傷はある。
- 209 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:29
-
首筋の傷に、また唇を当てた。
シャァァッ
一瞬、あたりが明るくなる。
「あ…れ?また…人間になってる…」
肉球、もこもこが消えて、また人間になってるみきたん。
やっぱりそうなんだ。キス…したから…
「…どーゆーこっちゃ…」
「あたしがキスすれば、変化出来るって事…だよね…?」
「……えーっ?!!!!」
また、不思議なお話が始まりそうです。
- 210 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:34
-
「なんつー…無理矢理な…」
「ねぇねぇ、もっかいワンコになってよぉ」
「や、ヤだよ!ちょっ…亜弥ちゃん?!!」
だって、もこもこワンコ久しぶりなんだもん。
再度みきたんの首にキスをした。
シャァァッ
「わ…もこもこみきたんだぁ!!!」
「ウワンッ!?」
「肉球〜♪」
「フニフニするなぁっ…」
あたしが望んでいた通りの事が起きちゃいました。
自由に人間とワンコが入れ替れるなんて、素敵すぎる。
「ねぇ…亜弥ちゃんがキスしないと美貴はずっと…」
「うん♪ワンコのまま!」
「でぇぇっ!?」
当分は、えっち中止かな?
- 211 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:39
-
「首輪捨てないでおいてよかった〜」
「ぐっ…邪魔だよっ…」
「飼い主はあたし」
「……またそういう事……」
久しぶりのワンコに、感動。
つい最近までつけていた首輪をつけて、公園にくり出す事にした。
「こーんにちわぁ!」
「亜弥ちゃん、お久しぶり…あら?この子…」
「そうなんですよ!またこっちで暮らす事になりましてぇ。ね?みきたん」
「…へっ」
ふっと鼻で笑ったな。
「……ん?あれ、美貴?」
「んぁ…?美貴だよねぇ」
「アイツ…帰ってきたのかぁ!!!」
「んわぁ!!」
ダダダ−ッと疾走してくるみきたんのお友達、よっちゃんとごっちん。
駆けてくる二匹の姿を見て、みきたんはふぅと溜め息をつく。
- 212 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 17:47
-
「お前っ…またこっちで暮らすのかっ!??」
「ま、まぁ…」
「んぁ、良かった良かった」
「アハハ…良かったんだよね、きっとね…」
「元気ないな、まぁ久しぶりに再会したんだから遊ぼうぜっ」
「んぁおーん」
良かった、元気に3匹で遊んでる。
それにしても、何で急に入れ代わり自由になったんだか。
まぁそこらへんは置いておこう。
「んぁー、そろそろ帰るよぉ」
「ん?もう帰るのかごっちん」
「紺野と一緒にスーパーとやらに行かなきゃぁ」
「そーか、じゃあな」
「んぁ、また明日〜」
「え!??美貴明日も犬……?」
「は?何言ってんだよ美貴」
「いや…あははは…」
しばらくもこもこみきたんと暮らそうかな。
なんていじわるな事考えてみたり。
- 213 名前:証千 投稿日:2004/08/22(日) 17:47
-
ファンタジーだなぁ。
夜また更新します。そん時には完結かな。
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/22(日) 17:50
- 完結か・・・
どういう感じになるのか
楽しみにしてますよー
- 215 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/22(日) 18:17
- 当分えっちおあずけのワンコ美貴さんに同情しますw
亜弥ちゃんは肉球フニフニできて嬉しそうですが。
にしてもおもしろいな〜。
作者さんの更新スピードに乾杯!
- 216 名前:ななしさくしゃ。 投稿日:2004/08/22(日) 20:01
- 更新されてる!!
もう完結ですかぁ。残念。美貴犬が可愛すぎです。
- 217 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 20:34
-
「お願いだから…戻してぇ…」
「えー…」
「夜だけでもいいから!!」
「えっちしたいだけでしょ」
「ぐっ…ち、違うよぉ」
両脇を抱えてみきたんを持ち上げながら観察。
かわいい…
えっち目的で人間に戻りたいみきたんなんか知らないっ。
「…そっちがそういう気なら…」
「何よ?」
ふわんっ
シャァァッ
「み、みきたん?!」
「やったー、成功!!」
やられた。首の傷を、唇に押し付けられて人間に戻ったみきたん。
油断してたあたしって、ワンコよりバカ?
- 218 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 20:37
-
「やったね、美貴の勝ちぃ〜」
「…何か腹たつ…」
「さぁさ、寝よ寝よ」
「ちょっ…ヤだたん!どこ触って…」
「ムカついたからお仕置きだよ〜」
「ひゃっ…んっ…」
あたしはみきたんをナメていた。
ちょっとやそっとじゃあたしに伏せるみきたんではない。
結局、こてんぱんに仕返しされた、あたし。
- 219 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 20:45
-
「…ん…ぁー…おはよ、亜弥ちゃ……ん!????」
もっこもこみきたん、登場。
眠ってる間に、キスしちゃった。
「……またかよっ…」
「ふふっ、かぁいい♪お散歩行く?」
「………」
その後、ほっぺを甘噛みされました。
「あーあ…朝から憂鬱」
「いーじゃぁん、だっこしてあげよっか?」
「…結構です。歩くもん」
フンと鼻を鳴らして、撫でてあげた手を振り払われた。
素直じゃないんだから。
「おはよー梨華さん!」
「亜弥ちゃん!あの噂知ってる?!」
「…あの、噂?」
「それがね…」
最近、この公園の周りで犬盗難事件が多発している。
今週で2件目の被害件数……か。
- 220 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 20:51
-
「で、犯人が凄いのよ」
「え?」
「女の人なんですって!!知能犯らしくて、警察もお手上げって…」
「へぇー…女の人ぉ…」
楽しくよっちゃんとごっちんと戯れるみきたんを眺める。
ま、誘拐なんて縁のない話かな。
一応人間だし、頭はそこそこだから。
「よっちゃん何かまさに危ないわよねぇ…かわいいしぃ…」
「そ、そうですか…。うちは心配ないですね、丈夫だし」
「でも世の中何があるか分らないわよ、お互い気を付けましょうね」
みきたん、かわいいから危ないかなぁ。
ふわふわもこもこ、誰が見たって惚れちゃうよね。
「へっくしゅんっ」
「ん?どした?」
「いや…寒気がした」
「んぁ、ごとーもヤな予感がする…」
「何言ってんだよ二匹とも」
胸騒ぎがしたのは、気のせいだ。
- 221 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 20:57
-
キキーーーーッ
「…おい、高橋っ」
「なんでやしょ、親分」
「……今回のターゲットは、あいつだ」
「あいや、それまた何で?」
「…神のお告げだ。交信の結果が出た」
「それは確かやね、承知やよ」
あの黒リムジン、さっきからこっち見てる。
…気のせいだよね。違うよね。
「ほうかむりは無用だ。お前、犬に好かれるタイプか?」
「あいやー、比較的には」
「では、行ってこい!」
「あいや!!」
「なぁごっちん、何かいい匂いしない?」
「んわぁー…肉の匂い…」
「こんな所で肉の匂いなんて…違うだろ。なぁ美貴…ってお前!!」
すったかすったか走っているみきたん。
あたしの心配は、的中した。
- 222 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:03
-
「肉っ!肉っ!どこだ肉!!」
「おい、美貴待てよ!!」
「ダメ!みきたんこっち!!」
「肉があるんだってば、亜弥ちゃんにもあげるから待っててぇ」
「そういう事じゃないの!!早く止めて…」
あの胸騒ぎは、嘘じゃなかった。
「そこの犬っころ!!捕獲するやよっ!!」
「肉っ…うわぁぁっっ!!」
「みきたん!!!!!」
「暴れてもムダやよー」
「ハナセッっ…ワンワンワンッ」
「いたたたっ、噛んだら痛いやよ!!」
黒づくめの、帽子を被った女の人。
牛肉のロースを持って、みきたんを抱きかかえる。
「みきたん!みきたん!!!!」
「亜弥ちゃ…助けっ…て!!」
「ワンワンうるさいやよ、手荒なマネはしたくないんやて」
何やってんだろう、あたし。
みきたんをワンコにしていなければ、こんな事になってない。
- 223 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:05
-
「みきたん!!みきたん!!!」
「亜弥ちゃん…っ!!亜弥ちゃん!!!!」
黒いリムジンは、みきたんを乗せて走って行った。
追いかけて追いかけて、最後までみきたんを追った。
でも。
「みきたんっ…みきたん!!どこ…行くのっ!??」
瞳に写るリムジンが、涙で霞んだ。
- 224 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:08
-
ここは、何処?
美貴、どうしたんだっけ。
公園で、肉持ったやつに撫でられて。
調子のってたら、掴まって。
亜弥ちゃんが…いない…
「あ、亜弥ちゃん!!どこ!!」
気絶していたのか、美貴は知らない間に知らない場所にいた。
真っピンクの部屋。
おもちゃが一杯置いてある、赤ちゃんの部屋。
美貴は、ベビーベッドで寝ていた。
- 225 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:12
-
「どこだよっ…亜弥ちゃん!!亜弥ちゃん!!」
ワンワン鳴いても、亜弥ちゃんはいない。
どこにいるの。
どこで泣いてるの。
ガチャリ
「…起きたかな……?」
鍵が開く音がした。
その声は、さっき聞いた声。
「お前っ…どういうつもりだ!!!」
「ギャンギャンうるさいやよぉ、心配せんでもええ」
「ここ何処だよ!美貴は亜弥ちゃんちに帰るんだ!!!」
「それは無理やよ」
「なっ…」
「君には、ここの愛くるしいペットになってもらうんやよ」
福井弁なまりの、サル顔。
何だよコイツ。何気なく亜弥ちゃんと雰囲気が似てる。
- 226 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:17
-
「愛くるしい…ここのペットぉ?」
「そうやよ。贅沢できるし、何でもやり放題」
「でもなんでっ…」
ガチャリ
「それは、君に選ばれし何かがあったから」
「親分…」
「おやぶん?」
長い髪をかきあげて、大きい瞳で美貴をまじまじと見つめる。
どうやらこいつが親玉らしい。
「愛くるしい瞳…子犬のような表情…完璧だ」
「は!?」
「君にはまず、こちらに案内しよう」
「こちらって…オイコラだっこすんじゃねぇよ!!」
「ハハハかわいいなぁお前は」
「ハハハじゃねぇよ離せ!!亜弥ちゃんちに返せよ!!」
「だからそれは無理なんやよ」
「ふざけんなぁ!!亜弥ちゃん!!亜弥ー!!」
美貴をだっこしていいのは亜弥ちゃんだけなんだよ。
気安く触れるんじゃない。
美貴は赤ちゃんルームから出て、背の高い女と福井弁訛りの女に
連れて行かれた。
- 227 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:24
-
「高橋、この子に何か与えてやってくれ」
「へい」
背の高い女は、飯田というらしい。
よくみりゃキレイだけど、何考えてるのかさっぱりわからない。
「…何か食べたいもの、あるんか?」
「…何もいらねーよっ」
「そーかー、それじゃあーしは焼肉でも…」
「や、焼肉?」
「そうやよ」
「た、食べる」
「ええよー、こっちにおいでな」
思わず焼肉と聞いて腹の虫が騒いだ。
違う、美貴は焼肉食べに誘拐されたんじゃない。
でも……
「うまい!!何だよコレ!!」
「そうやよー、十勝牛やし。ここで生活すれば何もかも上手くいくやよ」
「……」
ゲンキンな自分に気がついて、口を止めた。(箸は持ってないからね)
「…やっぱり、家が恋しいんか?」
「……」
「あーしも最初はそうやった。でも、幸せやよ」
「…へ?」
「あーし、飯田さんに救われたんやよ」
救われた?
- 228 名前:君はペット 投稿日:2004/08/22(日) 21:30
-
シャァァッ
「あーし、こういう姿なんやよ」
開いた口が塞がらない。
目の前に、レッド色の小さな犬。
「あああああああアンタ…いいい犬……?」
「そうやよ。元は人間やけど、ある日急にプードルになってしもて」
「えええええ!???」
「…飯田さんは、そうなってしまったあーしを助けてくれたんやよ」
「へ、へー…」
「だから、あんたもあーしみたいになれるやよ」
「………」
「あと、もう一匹いるやよ。あっちの部屋に」
「え…?」
「あーしみたいな、人がもう1人いるんやよ」
全然意味がわからない。
美貴みたいな人が、2人もいたなんて。
- 229 名前:証千 投稿日:2004/08/22(日) 21:31
-
完結は無理でした。
結構長くなりそうです(笑
すみませんがレス返しは次回の更新に…see you next time。
- 230 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/22(日) 22:52
- 「美貴を抱っこしていいのは亜弥ちゃんだけなんだよ!」って台詞にジーンときました。
にしても美貴様アホ過ぎです・・・
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/22(日) 22:54
- やべ、ネタばらしごめんなさい。
- 232 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/23(月) 01:06
- ほほほ!
おもしろいがな!
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/23(月) 04:39
- 作者様、素敵すぎですw
- 234 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 12:29
-
あの部屋に、いるの?
ガチャ
「……あのぅ…」
「!?」
開けた部屋の片隅には、小さく丸まっている…一匹の犬。
寝ている所を起こしてしまったのか、美貴を見て驚いてる。
「あの…美貴…」
「あなたっ…誰?」
「あ…藤本。藤本美貴…」
「ふ、藤本?」
「う、うん。美貴…一応にんげ……」
「人間?あたしと…同じなの?」
「あ、らしいね…」
何か、かわらしい子。
犬なんだけど、人間の雰囲気がある。
種類は多分パピヨン。
とてとてと美貴の方に歩みより、匂いを嗅がれる。
「……あなたもここに連れてこられたの?」
「あ、うん」
「そう…家に帰りたい?」
「そ、そりゃあこんな所にはいたくないよ」
美貴がそう言うと、溜め息をつくその子。
- 235 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 12:39
-
「あたしはさゆみ。ずっと前からここに住んでるの」
その子は道重さゆみというらしい。
元々は中学校に通う女の子で、山口県に住んでいた。
やっぱり、福井訛りのやつと同じいきさつでここに住んでいる…か。
「ふーん…道重ちゃんは…」
「さゆって呼んで」
「あ…さ、さゆね。さゆは…いつからここに?」
「5ヶ月ぐらい…前かな。飯田さんに連れてこられて」
「ここから出たくないの?」
「…出来る事なら出たい。でもそんな事できないよ」
ここは東京の外れにある一等地。
めちゃめちゃでかいお城で、誰1人訪問者を許さない大豪邸。
さゆはここから脱出する事を諦めていた。
「美貴ちゃんは、帰りたいの?」
「うん…待ってる人、いるから…」
「…あたしにはいないよ、そういう人」
「え?」
「家族はバラバラで、ずっと1人きりだもん」
「……そんな…」
「もういいの。ここで一生暮らす事になるよ」
大好きだったお姉ちゃんは、事故で亡くなった。
両親も共に事故死、残されたさゆは養護施設に引きとられた。
「お願い…美貴ちゃん」
「えっ…?」
「あたしと一緒に、ここで暮らそうよ」
「そ、そんな…」
1人ぼっちの、彼女。
昔の美貴と、何もかもが一緒に写った。
- 236 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 16:39
-
「だけどっ…美貴は…」
「お願い、1人になるのはもう嫌なの!!」
「…でも…」
待ってる人がいる。
大切な人が、美貴を待ってる。
ガチャリ
「そこの二匹、こちらへおいで」
現れたのは飯田だった。
びっちりタキシードを着て、手招きをしている。
「な、なんだよっ」
「これからパーティーがある」
「ハ?」
「月に一度の感謝祭があるの」
「…なんだよそれ」
「君たちがいれば楽しくなることだろう、こっちにおいで」
「おいでって…ぐわっ」
「きゃっ」
美貴が口を挟む前に抱きかかえられ、部屋を出た。
パーティ…?
- 237 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 16:44
-
すごい。
「なんだこのシャンデリアとか…」
「ははは、体した事はない」
「高そうなものばっかじゃん…」
パーティー会場はとても華やかで豪華だった。
この隙にどこかの扉を開けて逃げるという手もある。
「…さゆ、行こう」
「えっ…」
「ここから逃げるんだ」
「だって…無理だよそんな事!!」
「無理じゃない。やってみなきゃわかんない!!」
こんなパーティなんかしてる場合じゃない。
今すぐ亜弥ちゃんにあって、抱きしめたい。
「こっちおいでっ」
「…う、うん」
テーブルの下にそっと隠れ、タイミングを計る。
飯田と高橋を目前にして、足を前にだす。
「行くぞ!」
「うん!」
- 238 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 16:50
-
「あっ、逃げるやよっ!!」
「何ぃっ!!」
「さゆっ、走れっ!!」
「う、うん!!」
玄関のフロアをくぐりぬけ、飯田達が追って来た。
ここまで来て捕まるわけにはいかない。
「ッ…きゃっ!!」
「さ、さゆ!!」
大理石の隙間に足をつっかえてしまった。
やばい、追って来る。
「ワンワンワン!!来るな!!」
「ふん、ちっとも怖くないやよ!」
「やめないか高橋。おびえさせるのはよそう」
「だって…そもそもさゆみ、なんでさゆまで…」
「あ、あたしは…」
さゆは、外の世界が嫌なんだ。
怖くて、恐ろしくて、この城にいる方が幸せだと思ってる。
- 239 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 16:58
-
「お前らっ…美貴達を捕まえて何をする気なんだよ!!」
何の為に、美貴を亜弥ちゃんから引き離したのか。
大切な人の涙を見るのが一番嫌なんだ。
「…君たちは一般人に飼われる存在ではないんだ」
「なんで…」
「何でも自由に、束縛される事のない世界。それがこの城だ」
「そんな自由、いらない!」
「さゆみを見てみろ。彼女には肉親もいやしない。1人にさせておけるか」
「だからって城に閉じ込めるかよ!!」
「それが彼女の為だ!」
間違ってる。こいつらのいってる事は、間違ってる。
「大切な人と一緒にいられるのが…美貴にとっての幸せなんだよ!!」
「何だとっ…」
いつまでも、一緒に。
愛する人がいるから毎日が楽しいんだ。
「さゆっ、乗って!
「えっ…でもっ…」
「いいから背中に乗って!!」
この子の幸せは、こんな所にあるはずない。
もっと楽しんで、もっと色んな事知って、本当に幸せになって欲しい。
「飯田さん!追いかけなくていいんやろか!??」
「…そうだったのか…」
「飯田さん?」
「本当の幸福は…ここにはないのか…?」
待っててよ、亜弥ちゃん。
- 240 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:02
-
「ハァッ…ハァッ……」
「美貴ちゃん…もういいよっ!!」
「ダ、ダメだよっ…さゆ…足怪我してるっ…」
さすがに辛い。
さゆを背中におぶってる分には問題ない。
でも山道はキツイ。
「…亜弥ちゃんが…いるから……」
「亜弥ちゃんって…誰?」
「美貴の…大事な…人…さゆにも…いるでしょ?」
「え…」
「そういう人…いないはず…ないよっ…」
誰も1人じゃない。
大切な人が、さゆにもいるはずだよ。
「……れいなっ…」
「そ、そっか…いるじゃん、ちゃんと…っ」
「…優しくて…強いからっ…」
「ぜ、絶対…さゆの事…待ってるよ?」
「……そうかなっ…」
「当たり前だよっ…亜弥ちゃんだって…待ってるから…」
会いたいよ。
亜弥ちゃんに、会いたい。
- 241 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:07
-
「全体が黒くてっ…首筋に4cmぐらいの傷がある豆柴なんです!!」
「そうですか…首輪はしていますか?」
「はいっ」
「…分りました、情報が入り次第連絡を致しますので…」
「…お願い…しますっ…」
みきたんがいなくなって、8時間が経った。
警察の人が周辺を捜索して、指名手配犯の似顔絵を書いてる。
「お願いだからっ…帰ってきてよぅ……っ…」
会いたいよ。
みきたん。
- 242 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:12
-
タッタッタッタッ……………
山道が終って、道路に出る。
肉球がすり切れて血が滲み出て来る。
「れいなって子…っ、どこにいるの…?」
「…今…東京に出て来てると思う…」
「そっか…会えるとっ…いいね…」
さゆも同じ、大切な人がいるんだから。
美貴も頑張る。亜弥ちゃんにいっぱい頭撫でてもらう。
- 243 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:14
-
「…ごっちん、美貴…どこに連れてかれたんだろう…」
「んぁお…寂しい…」
「帰ってくるかな…?」
「帰って来るよ、きっと…」
「「はぁっ…」」
ごっちんとよっちゃんもみきたんを心配してる。
人間に戻れないみきたんは今どうしてるんだろう。
帰って来てよ。
「…ハァッ…もう…すぐっ……」
「あの…公園?」
「…うん!!」
- 244 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:16
-
もう日が落ちて真っ暗になる。
あと50m、あと20m。
亜弥ちゃんがそこにいるはず。
「……弥…」
声が掠れても、血が出ても、走った。
- 245 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 17:21
-
「みきたぁっ…ん…」
泣いてる。泣かせたのは、美貴。
「亜弥ちゃん!!!」
「…たん…?」
さゆをベンチに降ろして、駆ける。
「亜弥ちゃん!!」
「みきた…馬鹿!…どこ…行ってんのぉっ!!!」
「ごめ…く、苦しいっ…」
「心配っ…したぁっ…」
「ごめん、変な奴に捕まって」
「…馬鹿…馬鹿っ!!」
「……馬鹿でーす」
泣きじゃくる亜弥ちゃんに抱きしめられてちょっと苦しかった。
すごく懐かしい感じがした、亜弥ちゃんの匂い。
「…元に、戻してよ?」
「う…んっ!」
首に、亜弥ちゃんの唇が。
心地よい感触だった。
- 246 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 21:40
-
シャァァッ
「…やっぱ、人間が一番だな」
「みきたぁん!!」
「うがが、苦しいっ」
人間が一番。今回の事件で尚更思った。
一度亜弥ちゃんをひっぺがして、ベンチに座るさゆに話し掛ける。
「…これが、美貴の姿」
「…うん。じゃあ、あたしも」
「あ、そっか…」
亜弥ちゃんは顔にハテナを浮かべてこちらを見ている。
その様子を見て、さゆは遠慮がちに立ち上がった。
シャァァッ
「……どう、かな?」
「わー…かわいい。想像通り」
「ほ、ホント?」
「うん。普通の中学生だよ」
「えへへ、ありがと」
女の子らしい顔立ち、まさにさゆみって感じだった。
- 247 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 21:47
-
「みきたん、その子誰?」
美貴の右手をギュッと握って、顔を覗き込まれる。
なんだ、やきもちやいてる。
「美貴ちゃんに、助けられたただの友達です。ね?」
「そうだよ。城で知り合った、友達」
「……ほんと?」
「疑うの?」
「…ううん!」
全く。かわいいことするんだから。
「…あたし、れいなに会ってみます」
「……そっか、自身持ちなよ」
「え?」
「れいなって子、さゆの事大事に思ってる筈だよ」
「なっ…何で?」
「…ふふっ、さゆが大事に思ってるなら、同じだよ」
上手くいくといいんだけど、れいなって子と。
美貴はさゆと出会ってなかったら、きっと諦めていた。
亜弥ちゃんに会う事を、諦めてた。
「…あ、みきたんヤバい」
「何が?」
「……周り、見てごらん」
「え?……あ!!!」
美貴と亜弥ちゃんとさゆの周りには、梨華さん、よっちゃん、ごっちん
紺ちゃん、…その他警察。
変化を見られてしまった。
- 248 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 21:50
-
「…非常にヤバいね」
「うん…」
「あ…もしかして美貴ちゃん、変化の事…」
「そう、亜弥ちゃんと美貴以外知らないんだよね」
ポカーンと口をあけて、視線を浴びせられる。
「…お前…美貴なのか?」
「よ、よっちゃん…」
「んわぁ…人間だったのかぁー…」
「ごっちん……」
しゃがんでよっちゃんとごっちんの頭を撫でる。
よっちゃんは心底ビックリしたらしく、放心状態。
アハハ、迷惑かけて、みんなごめんなさい。
- 249 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 21:56
-
それから警察の人に美貴が誘拐された経緯を説明した。
山奥の城の事、飯田と高橋の事。
でも、美貴には飯田達が犬を誘拐した目的が分らないまま。
「…ただの犬好きってだけじゃないよな」
「…そうだね、きっと何かあるんだよね」
「でも、犬に対する気持ちはすごく強い人なんだよ」
「うん、それは暮らしててあたしも分った」
これから飯田達は逮捕されるんだろう。
そう思うと、少しでも一緒にいた時間が勿体無い気がした。
「じゃーね、さゆ」
「うん、今までありがとう美貴ちゃん」
「バイバイ、さゆみちゃん」
「ありがとうございます、松浦さんも」
公園から出て、さゆを見送る。
- 250 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 21:59
-
「さゆーーーっっ!!!!」
「?」
さゆには、今の美貴みたいになってほしいから。
遠ざかるさゆに手を振った。
「絶対、幸せになってよーーーー!!!!!」
新しい幸せがいっぱいある。
いっぱい楽しい事見つかるはずだよ、さゆ。
「…行っちゃったね、さゆみちゃん」
「……うん」
「名残惜しいの?」
「…いーや、妹みたいで楽しかったよ」
「その城で何があったのさ…」
「な、何もないよさゆとは」
『疑わないでよ』って言ったら、また首にキスされそうになった。
- 251 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 22:04
-
「みきたん、もう公園行かないの?」
「だって正体バレたのにもう会わせる顔ないでしょ…」
「そんなぁ。よっちゃん達待ってるよ?」
「……分ったよ、行くよ」
「それじゃー変化!」
みんなに正体がばれちゃって後日、みきたんは異常に犬になる事を拒む。
いづらいの分るけど、遊び相手がいなくなっちゃあよっちゃん達は可哀想。
シャァァッ
「あーあ…見るに絶えないよこの体」
「かぁいい♪」
みきたんが誘拐されて、すごくみきたんの存在が分った。
傍にいなきゃあたしはダメになるって。
「こら!!みきたんそっちは行っちゃダメ!!」
「大丈夫だって…もう誘拐犯いないから」
「ダメ!!あたしの目に届く所で遊んでなさい!」
「…チェ」
心配で心配で。いつみきたんがいなくなると思ったらヒヤヒヤする。
- 252 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 22:11
-
「…ワンコみきたんー、帰るよぉ!!」
「おい、ワンコ人間。飼い主呼んでるぞ〜」
「…うるへーよっちゃん…」
よっちゃんの尻尾に噛み付いて、みきたんはあたしにだっこされる。
「へん、お前は飼い主に飼われすぎなんだよ!」
「なんだとぉ!!」
「……?みきたん、よっちゃんと何喋ってるの?」
「ある意味マザコンってか?」
「お前噛み殺す!!亜弥ちゃんはお母さんじゃない!!」
「こぉら、もう帰るよ?」
もー、何話してんだかわかりゃしない。
気になって聞いてみたけど、恥ずかしがって教えてくれなかった。
「…亜弥ちゃんは美貴の何なのさ」
「え?恋人でしょ?」
「……そっか」
「何よ、変なみきたん」
あたしの肩までよじ登って、唇に首をぶつけられた。
シャァァッ
- 253 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 22:16
-
「…これで美貴が優位体制」
「……飼い主はあたし」
「亜弥ちゃんの恋人は美貴」
「えぇ?意味わかんない」
「美貴の方が亜弥ちゃんより偉いって事」
「…キスする?」
「言われなくてもするつもり」
会話する前から、人間に戻ったみきたんは必要異常に顔を近付ける。
これがキスの合図だからね。
「…人間の方がいいよ、やっぱり」
「えっち出来るからでしょー?」
「……。亜弥ちゃんとちゃんとキスできるから」
「へー」
「何で流すのさ」
「嘘だよー。あたしもおんなじだから」
みきたんの手の温もりとか、感触とか。
すっごい『好き』が伝わる。
- 254 名前:君はペット 投稿日:2004/08/23(月) 22:19
-
「ねぇー、ワンコのままでお風呂入る?」
「…入らないよっ」
ペットと恋人どっちがいい?って聞いたら、『どっちも』だって。
欲張りな答えでも、あたしもそう思った。
いつまでもいつまでも。
あたしの大事な、ワンコちゃん。
FIN
- 255 名前:証千 投稿日:2004/08/23(月) 22:25
-
>216様 美貴犬は最後まで美貴犬として残り続けます……(クサ
完結、とうとうしてしまいました。おつき合いありがとうございました
>230様 だっこしていいのは松浦さんだけです、絶対に(笑
許しませんねwネタばれは別に気にしませんので、大丈夫ですよ〜
>232様 ほほほ!笑いが止まりませんね、駄文に(笑
読んで下さりありがとうございました
>233様 素敵なのはワンコと亜弥ちゃんです(笑
駄文でしたが最後までおつき合い頂きありがとうございました。
- 256 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/24(火) 01:18
- あははは!
めっさおもしろい!
(・∀・)イイ!
これの続きがあれば是非!
- 257 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/24(火) 18:13
- 最高です!
完結なされたばかりで心苦しいのですが、もう少しこの二人のお話を見たいです!
例えばささいな事から二人がケンカしてワンコ美貴が家出する。
亜弥ちゃんも勝手にしろ!どこにでもいっちゃえ!みたいな感じ。
でもしばらくして雨が降ってくる。みきたん大丈夫かな?濡れてないかな?
なんて感じでワンコ美貴を探しに行く。
こんなんだめですか?
- 258 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/24(火) 18:19
- ごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・。
- 259 名前:証千 投稿日:2004/08/24(火) 19:41
-
イヤハヤ、ありがたいお言葉をもらいました。
あの素晴らしいワンコをもう一度というアンコールを
頂き光栄です。
257様、是非設定を利用させて頂きます。
- 260 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 19:50
-
ワンコちゃんと人間が入れ代わる機能って、便利です。
「亜弥ちゃん…暑い…」
「夏に毛皮は暑いかぁー、それじゃ戻ろっか」
真夏に毛皮を被ったワンコみきたんは、茹だるような暑さにヘバってしまった。
クーラーがある涼しい部屋とはいえ、ちょこちょこ動き回るもんだから舌を出して倒れる。
誘拐されてから一段落、あたしは改めてワンコが大好きになりました。
「いい加減…キスで変化ってヤだよ」
「なぁんでぇー」
「めんどくさいもん」
まー…確かに首にキスしないと変化できないってのはめんどいけどさ。
いいじゃん。愛の再確認って事で。
そう言ったらみきたんは溜め息をつきやがった。
- 261 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 19:58
-
シャァァッ
「あー涼しいぃ〜、快適快適♪」
「汗ふかないと風邪引くよー」
「汗かかせたのは何処の誰だっつの…」
「なぁによ、またゴミ箱送りにされたいの?」
「なんでそうなるんだよ」
「ワンコじゃなかったらあたし、みきたんの事助けなかったし」
この頃ワンコになる事を拒むみきたんはいらついてる。
あたしがしつこいのかな?って思った事もあるけど、お願いは聞いてくれる。
ぶつくさうるさいから、あたしも何かと怒鳴る事が多くなった。
「…別に美貴だって、御飯くれる所だったら亜弥ちゃんじゃなくたっていいもん」
「あっそう。それじゃ出て行きなさい」
「…そーかよ、言われなくても出ていくよ!!」
「勝手にすれば?どうせまたお腹空いたって甘えても知らないんだから」
「……っ…馬鹿にすんな!!」
ほんっと、ウルサイ。
最近は口答えばっかりするし、わがままは酷いし。
どうせ口だけなんだから、放っておいたら帰って来るに決まってる。
- 262 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 20:05
-
「亜弥ちゃんなんかっ…きらいだ…」
「偶然、あたしもおんなじです」
みきたんなんか、知らない。
1人でイライラして、あたしにぶつける。
ダッと立ち上がって、玄関に向かうみきたん。
あたしはそれを追いかけて、肩をひっつかんだ。
「…っなんだよ!」
「……ホントみきたんムカツク」
本当に家から出て行くなら、こらしめるのがいい。
シャァァッ
「な…っ何すんだよ!!早く戻して…」
「い・や。言う事聞かないんだったら一生ワンコのままでいなさい」
「……ぐっ…」
いい機会だよ。
わざとみきたんをワンコにしたあたしは、涙ぐむワンコみきたんを
くっと睨んだ。
「もうっ…知るかぁ!!」
最後にワン!と一声吠えて、みきたんは出て行ってしまった。
決して、あたしは止めようとも思わず、ソファに座り直した。
- 263 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 20:09
-
どうせまた帰って来るんだ。
そう自分に言い聞かせて、みきたんに冷たくした事を反省する事もやめた。
「あ…洗濯物……」
雨が降りそうな曇り空に気がついて、ベランダに出た。
「…みきたん、帰ってくるよね…」
とっさに、みきたんの事を思い浮かべる。
さっき喧嘩して出ていったばかりなのに、なんで。
- 264 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 20:14
-
タッタッタッタッタッタッタ
「…二度と帰るもんか」
亜弥ちゃんと、喧嘩をした。
あんなに派手に怒ったのは久しぶり。
でも止めておけばよかったとは思ってない。
美貴が悪いんじゃない。
亜弥ちゃんがいちいちうるさいのがいけないんだ。
事あるごとに、あれはダメ、これはダメ。
御飯は野菜ばっかりだし、美貴の事全然わかってない。
このまま何処かへ行って、ペットショップにでも売られようか。
恐ろしい事を考えてしまった。
そんな事するわけない。人間が人間に媚をうるなんてゴメンだ。
「……よっちゃんの家でも行くか」
もうすぐ雨が降りそうだ。
- 265 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 20:19
-
よっちゃんちはとんでもない金持ちだし、自由に出入りできる
犬専用の小扉が裏庭に付けられてあるから梨華さんにバレて亜弥ちゃんちに
連絡されることもない。
亜弥ちゃんに知られたらきっと、『人様に迷惑かけちゃダメ』とか
うるさいんだ。
よっちゃんちに着いて、小扉から中を覗く。
小扉から中は、よっちゃん専用部屋に繋がっているから。
「よっちゃーん、いる?」
よっちゃん専用部屋には、ベッドにサッカーボール、備え付けのTVとか
とにかくゴージャス。
傍にあった雑巾で、土で汚れた足をふきふき。
亜弥ちゃんはいつも人の家に上がる時はこうしろってうるさかったから。
…美貴、何で亜弥ちゃんの事ばっか考えてんだ。
- 266 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 20:26
-
「…お?美貴?」
「あ、ごめん、勝手に上がって」
「いや、構わねーけどよ。…どした?」
「あ、いや…遊ぼうかなぁと思って…」
「?…変なやつだな、急に。ま、でも今ごっちんが来てるから、一緒に遊ぼうぜ」
奥の方から、自慢のぶち柄を目立たせてよっちゃんは現れた。
ちょうどごっちんも遊びに来ていたらしい。
今となってはよっちゃん達にも美貴が人間だとバレてしまったけど
仲の良さは変わらない。
「んぁー、美貴だ」
「や、ごっちん」
「オイ、飼い主さんはいいのか?」
「……え」
「だから、亜弥ちゃん。ちゃんと断って来てんのか?」
うん。言ってきた。
よっちゃんとごっちんに、嘘をついた。
本当は喧嘩して飛び出してきたなんて、言える訳無い。
「そーか、ならいいんだけど」
「ご、ごっちんは紺ちゃん来てるの?」
「んあ、一緒に来たぁ」
「そっか…」
「何で美貴、飼い主と一緒に来なかったんだよ?」
「べ、別に」
「…変なやつ」
今頃、せいせいした顔でTVでも見てるんだ。
美貴がいると亜弥ちゃんはイライラしてばっかりでうるさい。
美貴がいないほうが、亜弥ちゃんは落ち着けるんだ。
- 267 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/24(火) 20:49
- ケンカしててもお互いの事が気になってしまう二人ハァ━━━━ *´Д`* ━━━━ン!!!!!!
最高です。さすがです。涙ぐむワンコキャワです。
このケンカをきっかけにさらに二人の絆が深まることを期待します!
自分のような者のリクに応えて頂いてありがとうございます!
- 268 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:20
-
ポツ…ポツ……ザァァァァァ
「あ…降ってきてる…」
TVで誤魔化していた感情は雨によって打ち消された。
みきたん、今どこで何してんだろう。
まだ肉球の傷、治ってないのに。
もしかしたらよっちゃんちかごっちんの家にお邪魔してるのかもしれない。
電話したほうがいいのかな。
ダメ。そんな事したらまたつけあがるもん、みきたん。
「……でも、電話ぐらい…」
あたしは押しながされ、自然と梨華さんちの番号をプッシュしていた。
- 269 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:26
-
プルルルル…プルルルル…………
よっちゃんちの電話が鳴った途端、嫌な予感がした。
もしかして、もしかするかもしれない。
「…もしもし石川です。…亜弥ちゃん?」
『こ、こんにちわ。あの…うちのみきたんそちらにお邪魔してないですか?』
「家に?見てないけど…ちょっとまっててね」
……嫌な予感は当たるもんだ。
「よっちゃーん、ちょっとー」
「ん?梨華ちゃんが呼んでる」
「……っ…」
よっちゃんの部屋の扉が開いた。
「あ、やっぱ美貴ちゃん来てたんだ。いつの間に来たの?」
「あぅ…あぅ…」
「コラァ!梨華ちゃんにだっこされてんじゃねえよ!!降りろ!」
梨華さんは美貴を抱き上げて、再び電話を取った。
このままだと家に引き戻されてしまう。
絶対イヤだ。
美貴は亜弥ちゃんの家に帰るつもりなんてないんだ。
- 270 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:34
-
「もしもし?美貴ちゃん、よっちゃんの部屋で遊んでたわ」
『本当ですか?すいません、迷惑かけて…』
「いいのよぉ、出入り自由だし気にしないで」
『でも…本当にすみません』
電話ごしに、亜弥ちゃんの声が聞こえた。
何で遊びに来ただけで『迷惑かけた』とか言うんだよ。
美貴、何にも迷惑かけてない。
お節介すんなよ。
『今から迎えに行くんで、みきたんそちらで待たせてもらってていいですか?』
「全然構わないけど…うちで遊ばせておいてもいいわよ?」
『いえ、迎えにいきます…ありがとうございました』
「そう?じゃあ待ってるわね」
どうせ怒られるんだ。
『何で勝手な事するの』『人に迷惑かけちゃいけないの』。
うんざりだよ。
「…美貴?お、おい、どこいくんだよ…」
「ごめん、帰る」
「だ、だって飼い主迎えにくるんだろ?待ってろって…」
「いい。1人で帰れる」
「知らないって…おい!!美貴!」
「んあっ、美貴っ」
小扉を出て、雨が降りしきる住宅街を突き抜けた。
亜弥ちゃんの元へ帰るつもりはない。
亜弥ちゃんをうんと心配させて、うんと悲しませるんだ。
- 271 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:40
-
ピンポーン
みきたんの馬鹿。結局あたしが頭を下げる事になるんだから。
よっちゃんの家に行くぐらいなら、家出なんかしなきゃいいのに。
梨華さんにまで迷惑をかけて本当に何してんのあのワンコは。
「亜弥ちゃん、いらっしゃい」
「あ、すみませんでした…みきたんが…」
「いいのよ、よっちゃんも遊んでもらってるし」
「ありがとうございます…」
「ちょっと待っててね…美貴ちゃーん、美貴ちゃーん」
家に帰ったらお説教。
やる事は決まっていた。
もう人間の姿に戻してあげないんだから。
「梨、梨華ちゃん!!!」
梨華さんちの廊下から、よっちゃんが猛スピードで走って来る。
それを察した梨華さんは慌てて家の奥に走ってゆく。
…何があったの?
- 272 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:46
-
「あ、亜弥ちゃん!!」
「え?」
しばらくすると、梨華さんは大慌てで奥から出てきた。
何が起こったのかさっぱりだったあたしの肩をガクガクゆする。
「み、美貴ちゃんが……」
「え?みきたんが、どうかした……」
「いないの!!さっきまで遊んでると思ってたら…」
みきたんが、いなくなった。
「……みきたん…どこにいったんですか!?」
「分らないわ…亜弥ちゃんからの電話を切ってから様子が変で…」
「様子が…変?」
「ええ…しょんぼりして尻尾丸めて…」
あたしのせいなの?
あたしが突き放したから?
- 273 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/24(火) 21:51
-
ザァァァァァァァァァァ
「……ホント、何処行こう…」
行くアテもないのによっちゃんちを飛び出した美貴。
大人しく亜弥ちゃんの迎えを待っていればよかったのかもしれない。
でもそんな事したら負けを認める事になる。
台風並の豪雨が、ワンコの美貴を襲う。
「あ…あそこ…」
ちょうど雨宿りになりそうな民家の屋根があった。
住宅街とは離れた人気の少ない町には幾つかの民家が連なっている。
「ぷへっ…あーあ、毛がびっしょびしょ」
ふと、亜弥ちゃんとのお風呂を思い出す。
美貴がぶるぶる身を震わすと、亜弥ちゃんは笑いながら泡を流してくれた。
この雨が、シャワーになってるのかな。
- 274 名前:証千 投稿日:2004/08/24(火) 22:34
-
>267様 いえいえ、リクエストを頂くとは夢にも思ってなかったので
嬉しかったです。喧嘩の行方は……後日更新でなんとかなりますよ(笑
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/24(火) 22:38
- 美貴様ワンコシリーズ(!?)ちゃいこーです!
もう、二人とも本当にかわいい!!
続き待ってます。頑張ってくださいね!
- 276 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 00:20
- ファンタジーラブ。設定がたまんないなぁ。意地っ張りな気高い美貴様に一万枚の松坂牛を。亜弥ちゃんには…タンをw
- 277 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 11:46
-
「やよー」
幻聴かな、雨宿りしてる民家の中から聞き覚えのある声が聞こえた。
雨で頭がいかれたのかな美貴。
ガララ
「…やよ?なんやこの犬っころは…」
「た…高橋?」
引き戸から覗いたのは、飯田の子分、高橋愛だった。
とっくに逮捕されているはず…じゃなくて何でここにいるの。
「…ん?君は…焼肉大好き美貴ちゃんかい?」
「あ、うん。久しぶり」
「こんな所じゃぬれるがし、中に入るやよ」
どうせ再会するなら人間の姿がよかったな。
美貴は言われるがままに古めかしい家屋に招かれた。
- 278 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 11:54
-
「…で、何で逮捕されてないの?」
「いきなりやね…」
「だ、だって飯田は逮捕されたんだろ?」
「……あーしだけ逃げてきたんやよ」
「飯田を…置いてか?」
高橋はお茶を啜りながらこくりと頷いた。
飯田を信頼してたんじゃなかったのか、コイツ。
「…もうあの城は廃虚やし、飯田さんが逃げろって」
「あいつが高橋だけ逃がしたっていうの?」
「……そういう事になるがし」
それでいいのか犯罪者。
でも美貴には高橋がそういう風に見れなかった。
自分とおなじ境遇だから。
- 279 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 12:03
-
それから高橋には、亜弥ちゃんと喧嘩をして飛び出してきたこと。
そして、さゆがどうなったかということ。
「……そうか…、飼い主に愛想つかれたっちゅう…」
「あ、愛想なんかつかれてない!」
「じゃあ何で飼い主は出て行くのを止めなかったんや」
「…そ、それは…」
「問題は美貴ちゃんにもあるんやないの?」
美貴が悪いっていうのか。
わがままばっか言うから、亜弥ちゃんは美貴が嫌いになった?
ううん、そんな事…ないはずだ。
「…とにかく、これからどうするんや」
「家には帰らない…」
「どうするかは美貴ちゃん自身やけど…」
「…やけど、何?」
「たいせつなもの、忘れとったらいかんやよ」
「たいせつな…もの?」
高橋はにんまりと笑って、一杯の茶漬けをおわんに盛ってくれた。
お腹が空いていたころだったからすぐにたいらげてしまった。
- 280 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 18:38
-
「…聞こう聞こう思っとったんやけど、何で人間に戻らん?」
「…戻りたくとも戻れないんだよ」
「何で?」
「ワケは聞かないで」
亜弥ちゃんのキスがないと美貴は一生このままだ。
それもいや。
かといって亜弥ちゃんの元へは………
「…もういいや、ありがとう。美貴は行くよ」
「まだ雨止んどらんよ?」
「いいよ。雨宿りさせてくれてどうも」
「あっ…ちょっと!」
ありがとう、高橋。
それだけを残して美貴は雨が降りしきる外へ飛び出した。
- 281 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 18:42
-
「………あ、ここ……」
美貴が辿り着いたのは、何の変哲もないゴミ置き場。
それでも、記憶に残ってる場所だった。
「……亜弥ちゃんが美貴を助けてくれた場所…か…」
3つのゴミ箱によりそって、美貴は気を失ったように眠っていた。
誰も救ってくれない。
死ねばいっそ楽になるだろう。そう思ってた時だった。
『にゃははぁ、かわいーね、君』
顎を撫でて、持っていたおにぎりをくれた。
人の優しさに、久しぶりに触れた気がした。
- 282 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 18:47
-
「…あのおにぎり、具が入ってなかったな」
何の味もしないただのおにぎりだった。
でもすごく、おいしかった。
また食べたいな。
『うちに来るかぁ?』
帰りたいよ。まただっこしてよ。
亜弥ちゃん。ごめん。
- 283 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:26
-
フッ
「…たん?」
ベッドの上でうずくまってただ1つの事を考えていた。
みきたんの事。
フローリングの上で爪が鳴る音。
おねだりする時に鼻をくぅと鳴らす音。
どれも全部、あたしが好きな音。
だけどその音は聞こえてこない。
もう、聞けないのかな。
「…やだよぉ…みきたんっ…」
ごめん。
あたしが悪かった。
- 284 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:30
-
『亜弥ちゃん』
「……あそこに…いるのかな…」
きっとあそこにいる。
- 285 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:35
-
「もー…気が遠くなる……」
ぽちゃん、とこぼれる雨の水滴が鼻先におちる。
ただ苦しくて、歩く事もできない。
何で?お腹も空いてないのに、力が出ない。
さっき御飯食べたばっかりなのに欲しいものがある。
亜弥ちゃん。亜弥ちゃん。
「…たん」
綿飴かな。甘い匂いがどこから香ってくる。
それに甘い声もする。
- 286 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:40
-
体に水滴がかからなくなった。
まるで傘が美貴を覆ってるみたいに。
「…みきたん、大丈夫…?」
美貴の事を『みきたん』って呼んでいいのは亜弥ちゃんだけだ。
誰?誰が頭撫でてんの?
目をあけると、二つ結びの柔らかい笑顔。
見覚えあるよ。
「……弥…」
「もう喋んないで?お家帰ろ?」
「…う…ん」
たったひとつだけ見えた温もり。
ストーブなんかよりあったかい、亜弥ちゃんの素肌に触れた。
- 287 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:48
-
「……んぅ…?」
目が覚めると、そこは亜弥ちゃんの家だった。
あの笑顔は亜弥ちゃんだったんだ、と今さらながら思う。
「…あれ、戻ってる…」
肉球が消えていて、美貴の掌は傷だらけになっていた。
完治してないのに走りまくったのがいけなかったんだ。
ズキズキ痛む手のひらを誤魔化して、亜弥ちゃんを探す。
「…どこ…亜弥ちゃん…どこぉ…」
くらくらする頭を抑えて、ベッドから出た。
ザァーと聞こえてくるシャワーの音が微かに痛く感じた。
ガチャ
「…みきたん?」
ひょこっと現れたのは、バスタオルを巻いた亜弥ちゃん。
もう失明していいぐらい、愛おしい姿だった。
- 288 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 19:54
-
「……手、包帯巻かなきゃ」
「いいよ、ほっとけば治るから…」
「ダメだってば」
「いいって…」
「ダメなの!!!」
突然大声を出した亜弥ちゃんにフラフラだった美貴は頭を覚醒された。
驚いて亜弥ちゃんの頬を手で撫でたら、冷たい水がつたって落ちた。
「……もうっ…言う事聞いてよぉ……」
本気で怒ってる。
亜弥ちゃんは美貴のために泣いて、怒ってる。
- 289 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:02
-
「…っ…みきたんがいなくなるのっ…もうヤなのぉっ…」
「……ごめん」
「…言う事聞いてよぉっ」
「……ごめん」
今なら両手を伸ばして、彼女を抱き締める事は容易い。
なのに肝心の心は届けない。
「…美貴が悪かった。亜弥ちゃんが美貴の事想ってくれてるから…注意とかしてくれるのに…」
「……」
「美貴、馬鹿だからすぐカッとなって亜弥ちゃん困らせてたよね?」
「…ん…」
美貴がいなくなったら悲しいから。
ちゃんと傍にいて欲しいから。
亜弥ちゃんはいつも美貴に怒ってくれてた。
「ちゃんと素直になるから。亜弥ちゃんを困らせたりしないから…」
つっけんどんだったのは美貴の方。
もう意地っぱりは止めるよ。
- 290 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:06
-
「……もうっ…ばかワンコぉ……」
キスしたい。
「ふっ…んっ……」
亜弥ちゃんとのキスは、甘くて、優しくて。
初めてキスした時のように、その後は気まずかった。
- 291 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:17
-
あの大馬鹿ワンコは、あの日の約束をまんまと破ってくれました。
「注射は死んでもだやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「待ちなさい!!」
「嫌だぁぁぁ!!家に帰るんだぁぁ!!!!!!!」
動物病院で獣医さんに笑われながら、予防注射の日にちを延期させてもらった。
人生で一番、恥ずかしかった経験。
「あ〜良かった♪注射しないで済んだ〜♪」
「………」
「あ、亜弥ちゃん怒ってる?」
「………」
本当にゴミ箱に捨ててやろうかと思った。
あたしが恥ずかしい思いしてるのにこの馬鹿ワンコはうきうきしてココアを飲んでる。
「ねーねーそんな事よかさー、早く人間に戻してよ」
「…一生そのままでいなさい」
「まーたそんなホラこいちゃって〜、早くー」
「もーっ…ほんとに知らない!!!」
布団にくるまって、みきたんの声をシャットアウト。
- 292 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:23
-
「んもぉ、怒んないでよぉ」
「バーカ」
「…そんなに馬鹿?」
「馬鹿。大馬鹿ワンコ。バーカバーカ」
「うぅ…」
チャリンと首輪に下げた鑑札を鳴らして、布団にもぞもぞと忍び込んでくる。
「やっほー」
「何よ」
「美貴を馬鹿にさせたのは亜弥ちゃんだよ?」
「……は?」
「亜弥ちゃんの事、大好きすぎて馬鹿になっちゃったんだもん」
「な、何言って…」
「元々頭良かったのにさー、亜弥ちゃんのせいだ」
「……」
「でももう手後れだし」
「…え?」
あたしの頬に肉球をあてて、嬉しそうに舌を出すみきたん。
憎らしいんだけど、拒否できない。
- 293 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:34
-
「亜弥ちゃん以外の人、好きになれない」
シャァァッ
「はっ…反則!!」
「何でぇ?首が唇にあたっちゃっただけだよー」
「ウソォ!!」
「もうしゃべんないでよ。二人っきりがいい」
「ふ、二人だけじゃん…」
布団の中で、みきたんが人間に戻ってしまった。
首をわざとあたしの唇に押し付けて。
「亜弥ちゃんも美貴以外の人、好きになれないよ」
「…何でわかるの?」
「自信あるよ、美貴に魅力いっぱいあるから」
「……ナルシワンコだぁ」
みきたんに抱きしめられて、自然と笑顔になる。
悔しいけど、むっちゃ大好きなんだ。
「キス、していい?」
「やだ」
「まだ怒ってんの?」
「べっつに」
「見え見えだよ」
あたしの髪にキスを落して、みきたんの唇がそっと頬に触れる。
「どさくさに紛れて何すんのよ」
「したくなかった?」
「……ううん」
「それじゃ、もっかいする」
「んっ…ふぅ…んぅ…」
一度許すとしつこい。
甘く見るとすぐかかってくるから。
- 294 名前:たいせつなもの 投稿日:2004/08/25(水) 20:41
-
「んっ…しつこい!!」
「いてっ」
一度はなされたと思った唇は、胸元へと降りてきた。
あまりにしつこいので頭をぺちっと叩く。
「ちょーし乗んな」
「へへ、ごめん」
「…もう、どっか行かないよね?」
「え?何、突然…」
「あたしもうるさくしないようにするし…だから…」
「行かないよ。亜弥ちゃんの匂いから離れたくない」
あたしの首に顔を埋めて、耳元で囁いた。
ずっと言えなくて、涙が出そうになる。
「…マジで、大好き」
「……うん」
「亜弥ちゃんも言ってよ」
言えないよ。急に恥ずかしくなる。
もう、ヤバいくらい好きなんだけど。
「大好き、だよ」
たいせつなもの。
ワンコと人間が繋がる、たった一本の糸。
FIN
- 295 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 20:42
-
おわったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ついに、ついに、ついに完結しました。
栄養ドリンクが欲しいです。
- 296 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 20:43
-
かくし
- 297 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 20:43
-
そいやっ
- 298 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/25(水) 20:51
- 完結乙です!
川VvV)つ■<栄養ドリンク、どうぞ!
美貴様ワンコシリーズ、本当にイイ!!!萌えすぎてやばかったですw。
ありがとうございます。これからも頑張ってください。
- 299 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/25(水) 21:11
- 完結お疲れ様です!
もう何と言ったら良いか…萌えと感動で胸がいっぱいって感じです!
素敵なお話ありがとうございました!やっぱあやみきはええなぁ。
川VoV)<飲んどけ!
つ日
- 300 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 23:00
-
ドヒャ−。完結後にレスが…(爆
良かったね亜弥ちゃん!!
川v)<みきたん大好き!!
カンケーないね。ごめんなさい。
>298様 ワンコシリーズ好評だったようで心から嬉しく思います。
最後の最後までおつき合いありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします。
>299様 栄養ドリンク、心してイッキしたいと思います(笑
みなさまのレスが栄養となりますのでよろしくです。
あやみきマンセーです。
- 301 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 23:01
-
何ゲ上の亜弥ちゃんが怖かったりします。
気にしない気にしない。
- 302 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:06
-
あなたに出会って毎日がとてもたのしい。
今日もあの道を二人で歩きたい
色んな人に言われるの
最近変わったねって。
ねぇ、貴女はどう思う?
綺麗になったかな?
- 303 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:10
-
貴女に出会うまで、意地っ張りだった私。
たった一瞬の出会いで、私は変わった。
わかってんでしょ?
「好き?」
「うん」
「だから、違うの」
「うん?」
バーカ。鈍すぎるでしょ、どう考えても。
あたしが欲しいのは、言葉なの。
- 304 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:12
-
「なぁに?美貴わかんねーやぁ」
へらへら笑ってTVのチャンネルを変えるみきたん。
気取ってなくて、キザじゃない所が好きなんだけど。
あまりにも鈍感すぎる。
顔を近付けて、キスしようとしても軽くあしらってしまう。
それがカタチだって分ってても優しい貴女が好きだけど。
- 305 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:16
-
あたしが欲しいのは、『好き』っていう言葉。
なのにみきたんは気付かなくて。
『うん』とか『ああ』っていう返事だけじゃヤなのに。
「…みきたんから口説いたんでしょ?」
「んぇ?何が?」
「……明日学校ないから、デートしようって」
「あはは」
金曜日の夜、みきたんがあたしの家に押し掛けて。
『貴女が好きだ』って。
初対面の人に、言われちゃったんだよ。
- 306 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:20
-
この人、誰?って思ったよ。
だって顔も見た事無い人に告られたんだよ。
『明日学校休みだから、デートしよう』って唐突に。
不覚にもあたしは初対面見ず知らずの人に好意を抱いちゃったけどさ。
「デート終って、あたしがOKしたんだよぉ」
「うん、そうだねぇ」
「可笑しい話だよ、1日でみきたんに惹かれちゃったんだもん」
「そんだけ美貴ってカッケかったんだぁ、うれしーなぁ」
そうだよ。めっちゃめちゃカッコよかった。
何でもリードしてくれて、しぐさとかかわいくて。
何より、笑った顔が好き。
- 307 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:27
-
「それで、あたしのファーストキス奪って」
「うん」
「生まれて始めてだよぉ?ビックリしたよ」
「だってしたかったんだもん」
「…誰でもよかったとか?」
「んなワケあるかいぃ」
すっとあたしの髪に指を通して、彼女特有の笑顔を見せた。
もう、これでノックアウトされたんだよあたしは。
「…まだ覚えてる?」
「へ?」
「キスした後、みきたんが言った言葉」
「え、えーっと」
今でも鮮明に覚えてる。ホッと頬が熱くなって、完全に惚れた証拠だった。
みきたんは覚えてるかな?
「えーっと…あぁ!」
- 308 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:34
-
『ずっと、愛してるから』
「うわぁー、恥ずかしい事言ったなぁ」
「にゃははぁ、あたしもすっごいハズかった」
「…さすがにもう言えないもん」
「え、言ってくれないの?」
「言いたい時が来たら…また言ってあげるよ」
「何よそれぇ」
子供らしく照れてはにかむみきたんにぎゅっと抱きしめられて
あたしまで恥ずかしくなる。
「……あの時の事、今も実行してる?」
「いぇっさー」
「じゃ、言ってみてよ」
「無理っ」
「なぁんで?」
魔法の言葉は、一回きりみたい。
もう期限切れなんだって。みきたん曰く。
- 309 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:39
-
「じゃあソレじゃなくていいよ?」
「じゃなくてって、何するの?」
「みきたんからあんまりしてくれないこと」
「えーっと…御飯奢り?」
「馬鹿」
わざとじゃないでしょうね、何てわざとなわけないか。
天然なんだからしょうがない。
唇に人指し指をあてて、馬鹿なみきたんでも分るようにした。
「キス?」
「わかってんじゃん」
あたしの首に手を絡んで、そっと唇が触れた。
- 310 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:44
-
「ふざけてないで最初っからすればいいのに」
「えー、だって亜弥ちゃんからいつもするから」
「…そういうのが女を不安にさせるんですぅ」
「いいじゃんいいじゃん、もう寝よ」
鼻をつままれてニカッと笑われちゃぁ、言う事聞くしかないでしょ。
「亜弥ちゃんもっとこっち寄って」
「なんで?」
「キスするから」
何を言い出すのかと思ったら。
そんな事考えてる間に、さっきより強く唇を塞がれた。
甘んじてたあたしが悪いのか。
「…かわいー」
「あたし?」
「他の誰いんの」
「可愛いは飽きた」
「ハ?」
「…もっとさ、違う角度で言ってよ」
「違う…角度?」
- 311 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:49
-
色んな人に言われてるんだけど、気付けバカやろー。
「…かわいー」
「だから違う」
「…キャワいい」
「アンタ本当の馬鹿でしょ」
「…えー…美人」
「…近いけど」
あともう少し。あたしを変えたのはあんたなんだけど。
「……き、綺麗?」
「…ふふっ、分ってんじゃん」
正解したから何か頂戴。だって。
モノホンの馬鹿だねこりゃ。
ロマンチックのかけらもないみきたんの言い種だったけど、すごく嬉しい。
「…でもさ、それ古いよね」
「何で?」
ベッドからむくっと起き上がると、仰向けのあたしに覆い被さる。
- 312 名前:your love 投稿日:2004/08/25(水) 23:53
-
「な、何っ?」
「亜弥ちゃんへの愛を甘くみないで欲しいね」
「えっ?」
ぱっぱっぱっとテンポよくあたしの服を脱がせていく。
手慣れたもんだよね。
ワケがわかんないあたしに次々キスを落とし、こう言った。
「亜弥ちゃんが綺麗だっつーのは、とっくの昔から知ってらい」
そっか、そうだよね。
なんてえっちの途中で考えたあたしはみきたんより馬鹿かな。
甘い声で鳴きかけると、みきたんはまた唇を塞ぐ。
鈍感の癖に、あたしの愛には敏感だ。
FIN
- 313 名前:証千 投稿日:2004/08/25(水) 23:54
-
ワンコが終りましたがまだワンコの雰囲気が取り切れてない
です。
まあドンマイって事です。
- 314 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/26(木) 01:29
- 更新キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
チェックしてよかったれす・・・(*´Д`*)
- 315 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 16:59
-
キーンコーンカーンコーン
「次宿題忘れたやつ罰金なー」
「せんせぇー罰金はダメでしょぉ、犯罪ですよ」
「ハハハッ、冗談だよ」
ヤッバイ。かっこよすぎ。
「……ん?松浦?どうかした?」
ぼけっとしてたあたしに、先生の美顔が迫ってくる。
初めてこんな至近距離で会話したかも。
「…妄想も程程にしろよぉ?」
「なっ…そんなんじゃないです!!」
そんなんじゃないけど。
でも、先生の事だけ考えてた。
- 316 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 17:05
-
あたしが先生に恋をしたのは、つい最近の事。
『今日からこのクラスを担当する、藤本美貴です。よろしくお願いします』
もう、ノックアウト。
笑顔にやられたって感じ。
1ヶ月前に新任としてやってきた先生は、あたしのクラスの担任。
優しくて、頭良くて(先生だからだけど)、何でもできて、頼りになる。
めっちゃくちゃ魅力的。
「…あーあ、つまんない」
「何がつまんない」
「だってぇ、勉強ばっかなんだもん」
「しょうがないでしょ、受験だし」
「…ちぇっ」
恋のシーズンでもある秋。だけれど受験のシーズン。
中々勉強に行き詰まるあたしに、先生はこう言ってくれた。
『わかんない所あるんだったら、図書館行こっか?』
即返事をして、おしゃれして。
なのに、先生は。
- 317 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 17:10
-
カリカリ…カリカリ……
「…せんせー何してんの?」
「勉強」
「先生でも勉強ってするの?」
「まあね、まだ勉強不足だし…」
ひたすら真面目な先生は、会話を持続させてくれない。
もう、シャーペン持ってノートとにらめっこばっか。
「…せんせ、ここわかんないぃ…」
「え?…ここはこの公式使って、ここにかければいいんだよ」
「あ、そっか…」
どんなに単純な問題でも、先生は一緒になって解いてくれる。
馬鹿なあたしに解りやすく、ていねいに。
「…ふーっ、ちょっと休もうか?」
「う、うん!!」
おしゃべりタイム。大丈夫、議題は考えてきたから。
何よりあたしは先生に恋人がいるかどうかもんのすごく気になる所。
- 318 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 17:14
-
「でもさぁ、受験って一生に一度か二度はやらなきゃいけないからさー…」
「…そうですね」
「美貴何か合計したら3回もだよ」
「…そうなんですかぁ」
「松浦は何処の高校がいいんだっけ?」
折角お喋りタイムになったというのに、先生は受験の話しばっか。
勉強が友達とか前に言ってた事は本当なのかな。
なんか…つまんない。
「…せんせ、恋人とかいるの?」
「んぇ?何、突然?」
「だ、だって、態々休日にあたしなんかと…」
「いないいない。作る気もないし、まだいらないかな」
「…いらない…んだ…」
話を変えた途端、先生は顔を真っ赤にしてまたシャーペンに。
…恋人…いらないんだ。
何か悔しいじゃん。
- 319 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 17:20
-
「松浦は、いるんじゃないの?」
「えっ?あ、あたしですか?」
「うん。だって可愛いし、性格いいからさ」
「い、一般的にですか…?」
「や、そういう事じゃなくてさ、美貴から見て、すごく良いコだなって…」
何人かに可愛いとか言われた事はある。
でも先生に言われると、無性に嬉しい。
「名前も、可愛いよね。『亜弥』って」
「じゃあそう呼んでくれますか?」
「えっ!?美貴が?」
「……ヤですか?」
「いやいやいやいやいやそんな事ないよ」
必死に手をバタバタふって否定する先生。
そういう仕種がかわいくて堪らない。
思いきった事言ってみたけど、結構脈アリ?
「…美貴なんかが呼んでいいの?」
「先生がいいんです」
「あ、ありがとぉ。じゃ、亜弥ちゃんでいい?」
「ハイ!」
「随分、嬉しそうだなぁ…」
ふさっと、先生のキレイな手があたしの髪を撫でた。
その手の裏には先生が照れている事が隠されてて、何ともいえない
嬉しさが込み上げてくる。
- 320 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:03
-
それから先生は学校の中でも『亜弥ちゃん』って呼んでくれる。
嬉しすぎて、楽しすぎて、毎日学校に行くのが待ち遠しい。
「オハヨ、亜弥ちゃん」
「おっ…はようございます!」
「せんせぇ〜、あたしに挨拶ないんですかぁ?」
「ごめんごめん、みんなオハヨ」
やっぱり先生はクラスみんなのアイドルであって。
あたし専属ってワケにはいかない。
なんせ女子高だから目当ての人が多い。
「…せんせ、モテるよね」
「へ?そんな事ないよ」
「ううん、かっこいいってみんな言ってるもん」
「んなこたないよ」
そんな事あるから言ってるのに。
他のみんながプリントに目を通している間、あたしは先生と話してる。
何でもないことでも、『先生』って呼べばすぐに来てくれる。
そりゃ、生徒と教師だからだけどさ。
「何か質問ある人、手を挙げて」
「ハイハイハーイ!!」
「おー、元気だね。じゃああいぼん」
「先生って恋人いるんですかー?!」
「うん良い質問だね…って関係ないでしょ!」
教室がどっと笑いにつつまれる。
でもあたしはそんな事どうでもよかった。
今、あいぼんの事、『あいぼん』って呼んだ。
いや、あいぼんはあいぼんだけど、いつもは名字で呼ぶのに。
- 321 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:09
-
「質問に答えて下さい!!」
「それは秘密。知りたかったらこの問題を解け!」
「えぇーっ、酷い先生!!」
「へっへっへ〜」
黒板の前であいぼんは困惑してチョークを握りしめてる。
でもあたしはそこを見てるんじゃない。
へらへら笑ってる、先生を見てる。
何でよ。何で他のコ、名前でよぶの?
「バッカらしいったら…お、亜弥ちゃん正解」
「……」
ノートに黒板の問題を解いたあたしに気付き、先生はサッと赤ペン
で丸をつけてくれた。
教室のいちばん端にいたのに、態々あたしの所まで来てくれた先生。
気付いてんの?あたしの気持ちわかっててそういう事するの?
「亜弥ちゃん数学得意になったねぇ、偉い偉い!」
「う…わ…」
先生はあたしの頬を撫でて、いつものフェイスでニッコリ笑う。
ほんと、憎めない。
- 322 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:14
-
好きすぎる。あたしは先生の事、好きすぎておかしくなる。
だからあいぼんにだって嫉妬した。
片思いのくせに図々しいってわかってても、悔しいもん。
せんせぇ取られるって思ったら、いてもたってもいられない。
「亜弥ちゃん、今日居残りね」
「えっ!?何で!」
「…フフッ、お説教。かな?」
「えーっ!!あたし何かしました…」
「ジョーダン。ちょっとね」
「は、ハイ…」
説教。と言われてあたしは硬直した。
でもそんな事はウソで、すぐに笑ってくれた先生。
…放課後って事は、二人っきりだよね?
- 323 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:20
-
「ごめん、お待たせ」
ピシャッと教室のドアを閉めた途端、心臓が跳ね上がった。
会議で少し時間に遅れた先生は謝りながら適当に生徒のイスに座った。
「ほら、亜弥ちゃんも」
「あ、ハイ」
促されてあたしも先生の隣に座る。
イスを引いてあたしが座りやすいようにしてくれたりとか、とにかく優しい。
「で、本題なんだけどぉ」
「…ハイ?」
「言って困るようだったら、先に謝っとくよ」
「…え?」
「その…すごく迷惑だと思うんだけど」
先生と一緒にいられるなら迷惑なんか感じない。
むしろあたしが迷惑かけてるかもしれないし。
頬を赤くしてもごもごする先生。
何が様子が変。
「美貴、好きな人、いるんだ」
頭の上に、岩が落ちてきた気分。
1、2秒経ってから事が理解できて、もうどうしようもなかった。
- 324 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:24
-
「…その…さ、何でこんな事言われなきゃいけないのって思ってるかもだけど…」
「…いえ…」
「回りくどいの嫌かもしれないけどっ…あの…亜弥ちゃんにも…いるかなと…」
「…あたし?」
ホント。何でこんな事言われなきゃいけないの。
あたしは、死ぬ程先生が好きなのに。
先生に好きな人がいるって知っただけで絶望的なのに。
「……亜弥ちゃん…にも…いる?」
「……います…」
「えぇぇ!??い、いる…の?」
「…はい」
「そ、そーか…そうなんだ…」
「……何で、そんな事あたしに聞くんですか…」
「え…」
「何で…あたしがこんな事先生に言わなきゃいけないんですか?」
「その…それは…」
溜めてたものが、一気に溢れ出す。
黙ってたって、後悔するだけだよね。
- 325 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:30
-
「何でっ…あたしにそういう事言うんですか!!!」
「ご、ごめ…」
「先生みたいに頭良くて…かっこよくて…」
「……う…」
「……います…好きな人ぐらいっ…」
先生を困らせた。
冗談じゃないよね、あたし。
先生はなんも悪くない。
ただあたしが勝手に言い散らかしただけなのに。
「……負けちゃったか……」
「……え?」
「…その、亜弥ちゃんが好きな人…かっこいいんだ…」
「……」
「美貴じゃ…ダメだよね」
「っ…え?」
ガタッとイスから立ち上がった先生の瞳には、涙があった。
何で泣くのか、何で先生がそんな事を言うのかわかんない。
「…美貴の好きな人…今目の前にいるんだよね…」
「っ…せんせ?」
「…もうさ、可愛くて…すっごい良いコで…思っちゃいけないのに…さ…」
「…め、目の前って…」
今、先生の目の前にいるのは、あたし。だよね?
どういう事。
- 326 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:36
-
「…亜弥ちゃんが、好き」
何言ってんの、先生。
ふざけてるのかと思ったけど、目を見たらマジ。
信じられない。
「…生徒に…手出したら…ヤバいよね…」
「そんな事ないっ…」
「ダメ…かな…亜弥ちゃんの好きな人に…勝てないかな…」
「違う!先生違うのっ…」
とっさに溢れる先生の涙を見て、あたしは先生を抱きしめていた。
違うのに。
先生が好きなんだよ。
「…あたしが…好きなのはっ…せんせぇだよっ…」
「…ぐすっ…へ?」
「かっこよくて頭良くて優しいのが…せんせぇだもん」
「な、何で…」
「ずっとずっと前からっ…好きだもん」
先生の好きな人ってのは、あたしで。
あたしの好きな人ってのも、先生で。
ちょっと遅かった、相思相愛だった。
- 327 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 18:39
-
「はい、質問ある人ー」
「ハイハイハイ!!」
「またあいぼん?じゃ、どうぞ」
「先生って恋人いるんですかー!?」
「…またその質問?」
「だって答えてくれなかったじゃないですか!!」
「えーっとねぇ…」
今日も数学の授業は楽しく受けてるあたし。
困った顔をして先生は、あたしの方をちらっと見て笑った。
ふふっ、言ってくれるのかな。
「…いるよ。恋人」
「えーっ!??いるのぉ!?」
「もちろん。めっちゃ可愛いよ」
「!!!」
唐突にあたしの方を見て、カーッと顔が熱くなった。
もちろんみんなは『エーッ』とか『ウソ!』とか絶叫してる。
まさかあたしが先生の恋人とは、知らないよね。
- 328 名前:誰よりも、君が 投稿日:2004/08/26(木) 21:39
-
「その人とはどこまでいったんですかー!?」
「ノーコメント。じゃあ次の問題ー」
…そりゃあ、キスもしてないもん。
まだ付き合って2日しか経ってないし。
「せんせぇ」
「ん、何?」
「…あれって、あたしの事…だよね?」
「当たり前じゃん。他に誰がいるの?」
くすっと笑って、あたしのノートを覗き込む先生。
…やっぱかっこいい。
「亜弥ちゃん」
「ハイ?」
ちゅっ
「なっ…な…」
「あ、嫌だった?」
「い、や…じゃないですけどぉっ…」
「授業中にキスするのもなんだけどさ」
あたしのファーストキスは、みごと先生に奪われた。
しかも、授業中。
誰も見ていなかった事を願い、そそくさと先生は黒板に向かう。
「こ、こここの…も、問題解る…ひと…」
カッコつけて、動揺してるの隠してる先生。
自然とあたしは顔が綻んで、浮かれ気分になってしまう。
誰よりも、君が好き。
FIN
- 329 名前:証千 投稿日:2004/08/26(木) 21:42
-
>チェックしてもらえて嬉しい限りです。
どうも最近あやみき不足だったのですが、ドキみきを聞いて
復活した証千です。
今後ともよろしくお願いしします。
- 330 名前:314 投稿日:2004/08/27(金) 10:05
- 再びチェックしてよかったれす・・・(*´Д`*)
はぁ〜。幸せ。
作者様、ありがとう。。。
- 331 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/27(金) 11:37
- 早い更新、ツボなシチュエーション、そして何よりこの甘さ…
何をとってもサイコーです。
あぁ…ほんとに、ほんとにありがとう…。
- 332 名前:証千 投稿日:2004/08/27(金) 12:32
-
>330様 度々訪問嬉しい限りです。ありがとうございます。
幸せを私にも…(笑
>331様 甘過ぎるんだよ。と友人にいわれましたがシカトしています(笑
こっちがありがとうです。ありがとうございます。
…次はちょっと悲しいです。
- 333 名前:蒼い涙色 投稿日:2004/08/27(金) 12:34
-
こんな終りが来るなんて知らなかった。
どうしても、さよならと言いたくなくて。
『ごめん。他に好きな人ができた』
納得できるわけないじゃん。
携帯のディスプレイにそう写った文を、頭でリピートしてしまう。
- 334 名前:蒼い涙色 投稿日:2004/08/27(金) 12:36
-
やっぱ、続かなかった恋。
飽きっぽい貴女の性格。
意地っ張り、あたしの性格。
釣り合ってたらすごく、楽しかったんだろう。
忘れようとしてんのに。
好きすぎて好きすぎて、番号なんか覚えちゃったんだよ。
今どんな仕事してるのかな。
どうでもよくなる貴女の存在は、あたしにないから。
- 335 名前:蒼い涙 投稿日:2004/08/27(金) 12:39
-
『亜弥ちゃん』
『…何?』
『好きだよ』
『……うん』
ベッドの中、静かに額にキスを落とした貴女が零した一言。
なんで裏切ったりするの。
聞きたくないのに。会いたくないのに。
そんなの嘘。貴女が忘れても、あたしは忘れる事なんかできやしない。
前なら素直に言えるのに。
このメールが届かなければ、素直に貴女に甘えてる。
泣いたって届かない。
泣いたって貴女があたしに振り返る事はない。
知ってる。
- 336 名前:蒼い涙色 投稿日:2004/08/27(金) 12:42
-
今また涙が止まらない。
返してよ。あたしの分だけ、貴女の思い出を返して欲しい。
いつまでも仕舞っておけば、貴女の存在は消える事ないんだから。
メールは返さない。
だから、ね?
好きなのに。
貴女は今、何してるのかな、みきたん。
FIN
- 337 名前:証千 投稿日:2004/08/27(金) 12:44
-
つい私の大好きなナンバーを歌にしてしまいました。
あーあ、悲しいね。
ついでに駄文だね。
しかも途中でタイトル間違えました。『蒼い涙色』です。
ダメです。甘いのを書かなきゃダメなんです。
ごめんなさい。
- 338 名前:残した跡 投稿日:2004/08/27(金) 12:50
-
「ダメ、後ろ、向いちゃ駄目!!」
「…亜弥ちゃ…」
「……ダメ、だもん…」
ダメだってば。後向いたら、あたしは泣くから。
そしたらみきたんを困らせる。
今度会う時まで、あたしは泣かないから。
「……ずっと、好きだから」
「…嘘…じゃないよね?」
「嘘なんかつかない。本当だよ」
「…浮気、しない?」
「するわけない。亜弥ちゃんだけだよ」
「…他の女の子にデレデレしない?」
「亜弥ちゃん以外に興味ない」
向いちゃダメって言ったのに。
聞かないみきたんはあたしを抱きしめた。
「…早く、行くのっ」
「……もうちょっと…」
「ダメ…。そうしないとあたし、忘れられなくなるから」
「……分った」
- 339 名前:残した跡 投稿日:2004/08/27(金) 12:54
-
そしてみきたんは、いなくなった。
酷く悲しみにくれて、帰ってくるのをひたすら待つ。
たった数日なんだけど。
◇ ◇ ◇
「亜弥ちゃ〜ん!!!」
「みきたんっ?」
「帰ってきたよぉー!!」
みきたんはどこから帰ってきたかって?
「お土産はぁ?」
「…ハワイのお土産っつったら、美貴しかないじゃん」
「えっ?」
「…美貴がお土産だよ」
なんちゅうキザな事するの。
そう思いながらも、ベッドに押し倒された。
- 340 名前:残した跡 投稿日:2004/08/27(金) 12:57
-
「…で、本当のお土産はぁ?」
「へへへっ、これ」
「……わぁ、かわいいっ…」
ハワイのファンクラブツアーから帰ってきたみきたんは
あたしにお土産をくれた。
1つはみきたん、2つ目はかわいいピアス。
「…でも、あたしは1つめの方がいい」
「……そっか」
「みきたんがいい」
「そっか…じゃあ、もっかいする?」
「…うん」
最高のお土産は、恋人からの愛。
そうだよね?
FIN
- 341 名前:証千 投稿日:2004/08/27(金) 12:58
-
久しぶりの短編という短編を書いたきがしました。
やはりあやみきは素晴らしいですね。
- 342 名前:更新が早いのは暇だから 投稿日:2004/08/27(金) 12:58
-
かくし
- 343 名前:する事がないんです 投稿日:2004/08/27(金) 12:59
- それっ
- 344 名前:330 投稿日:2004/08/27(金) 15:49
- な、なんと!!また更新されてる━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
作者様の仕事の早さにビックリです。
一日に2回もチェックしてしまう程はまっている自分にもびっくりです(笑)
わたくしもぜひ作者様に幸せをあげたいのですが、なにぶん力不足で…。
作者様の甘甘なあやみき、楽しみにしてます!!さいこーです。
・・・さて、また読み返そ。
- 345 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/27(金) 18:14
- ほんの数日でも二人には永遠に感じてしまう。
嗚呼、あやみきって美しい。
- 346 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:09
-
それは貴女がくれた音。
何よりもなめらかで、純なモノ。
「…っ…亜弥ちゃん!危ないってば!」
「…たん?」
防波堤の上をとことこ歩くあたしを見つけて、駆け寄ってくる貴女。
心配してくれてんだ。
「ほ、ほらっ、降りといで!!」
「だいじょーぶだよ、みきたんも…」
「ダメ!!早く降りるの!!」
血相を変えて、あたしに怒鳴る。
ちょっと口うるさくて、頑固なあたしの人。
- 347 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:14
-
「むぅー…」
「いいから、おいで」
心配性のみきたんは大きく手を広げて、降りてこいと言う。
ここは素直に聞くしかないみたい。
ふわっ
「っ…とぉ」
「にゃはは、捕まえた」
「…捕まえられた…の?」
ホラ、こんなにも優しい笑顔を見せてくれる。
怒ったって怖くないもん。
ほんとーは、優しくて、頼りになって、大人っぽい。
「ねぇ、砂浜行こうよ」
「え?あ、いいよ」
海の鳴りをもっと近くで聞きたかったあたしは、みきたんの
手を握って砂浜へ向かう。
- 348 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:20
-
ぐっぐっぐっぐっぐ……
砂を踏む音が、2人分聞こえる。
「…あ、亜弥ちゃん、パンツ見えるよぉ?」
「……見たのぉ?」
「み、見てないけどっ…」
「みきたんのえっちぃ」
「み、見てないってばぁ!!」
バカたん。とあたしが投げかけると、顔を赤くして繋いでいた手を解くみきたん。
冗談なのに本気で受け止めるから困っちゃうよ。
「…ンー、きもちいねぇ」
「まーね」
「みきたん、この砂浜で初めてあたしにさ…」
「わわわ、言わないでよ…」
そう、ここであたしとみきたんは結ばれた。
『亜弥ちゃんが好き』って、内気なみきたんが見事ズバッと言ってくれた。
その拍子に……
「キスされちゃったしぃ」
「…もう終った事でしょ…」
「嬉しかったぞぉ?」
「……どーも…」
みきたんが流木の上に座り、あたしもその隣に座る。
照れるたんの腕にくっついて、ほっぺをつんつん。
- 349 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:27
-
「…ね、あの時緊張した?」
「したさ、そりゃ」
「いつからあたしの事、好きだったの?」
「…兵庫に引っ越してきた頃から」
「ってことは…一目惚れかぁ?」
「そっ…そうだよ、悪いかよ…」
そっか、一目惚れされちゃったんだ、あたし。
って事は、あたしが中学3年で、みきたんが高2の時か。
「…あの時みたいに、キスしてよ」
「へっ?」
「キス」
「あ…ああハイ…」
半ば命令口調になったあたしに、優しくキスをする。
させてる感じはするんだけど、みきたん曰くそんな事ないって。
「…泳ぐ?」
「やだ、寒い」
「寒いって、今8月だよ」
「さーむーいーの」
「…むぅ」
「……分ったよ、足だけね」
「やった!」
渋々の顔でジーパンの丈を捲るみきたん。
それでも必ずあたしのお願いは聞いてくれる。
- 350 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:32
-
ザザァ−ーーン
「…ふはっ、冷たい」
「そお?」
ぶるっと身を震わせたみきたんは、寒さをやわらげるんだか知らないけど
あたしを後から抱き締める。
そんな事したら歩きにく……
「きゃっ…」
「亜弥ちゃん!」
ドパァァァン
浅いからよかったものの。
波打ち際で倒れたのは、あたし。
…ではなく。
「ぶはっぁ…しょっぱいっ…」
「みきたん!!」
転びかけたあたしをとっさに引き寄せたみきたんは、反動で自分が倒れる羽目に。
- 351 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:40
-
当然、服はビショビショ。
「あ゛ー…濡れちゃったね」
「ごめっ…」
「いいのいいの、美貴が勝手にコケただけだから」
「旅館、戻ろっか…」
「そだね」
二人っきりの旅行に来ていた為、宿泊している旅館に帰る事にした。
2年前に来た海の思い出とは、かけはなれてしまった。
「…あははっ、2年前はロマンチックだったのにね」
「あれでうちの家族がいなければよかったのに…」
「全然、めっちゃ楽しかった」
「そっか」
「…今年は、二人っきりだし…」
みきたんから恋を打ち明けられたロマンチックな満月の夜。
でも今日の夜は満月じゃない。
ちょっと不満。
「あー、疲れちった…寝よ」
「え?もう寝るの?」
「もうクッタクタ。海で転ぶわ何だかで疲れたよ」
旅館に帰ると、敷かれていたのは1枚の布団だけ。
っつうことは、1枚で寝ろと。
- 352 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:46
-
「おいでよ、亜弥ちゃん…」
「ひゃっ…」
ニコニコしながらあたしの手を引っ張るみきたん。
下心見え見えなんだけどなぁ。
「……キス、以上の事していい?」
「バカ」
「だ、ダメですか…」
「いいよ」
「え?」
「いいよ…しても」
初夜はみきたんにあげてもいいかな。
カウントに入るんだかわかんないけど。
「亜弥ちゃん…」
「んぅっ…ふっ…」
夜が明けるまで、こうしていよう。
ずっと二人きり、心地よくまどろんでいようよ。
- 353 名前:風の詩 投稿日:2004/08/27(金) 20:48
-
あなたがくれた、風の詩。
もっともっと、してあげられる事がある。
そう、あたしは感じているから。
リアルな恋愛じゃなくていいから。
只貴女は優しい人でいて。
海の鳴りだけが、包んでくれる、セレナーデ。
FIN
- 354 名前:証千 投稿日:2004/08/27(金) 20:50
-
>344様 更新が早いのは暇人だからです(豪語
いや〜、書きたいネタがありすぎるんですよ。
萌え萌えでしたか、ありがとうございます。
>345様 嗚呼、レスって素晴らしい。
いや〜、私にとってレスをいただける事が何よりです。
ありがとうございます。
- 355 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/27(金) 22:15
- おぉ!たくさん更新されてビックリしました。
甘くて萌え萌え〜です。特に藤本センセイ…きゃわいい!
やっぱり作者さんのあやみきはイイ!ですねv
頑張ってください。
- 356 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/28(土) 01:45
- とろけそうな位甘いですね〜。
作者さんのあやみきを読むと1日の疲れも癒されます。
えっちで優しい藤本さん最高!!
- 357 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/28(土) 14:04
- 今日初めて拝見させて頂きました。
…甘いです。甘いの大好きなんで頑張って下さい。
あと、松浦さんと藤本さんの別れ話…『蒼い涙色』を見て感動でつ。
これからも応援しています。
- 358 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 14:15
-
「ね、ねぇみきたん…」
「何」
「夜、何か食べたいもの…ある?」
「別に。何でもいいよ」
「あ…そっか」
今日もまた同じ返事。
そんなの毎日の事だけど、何か言ってくれないと不安だよ。
二人暮らしを始めてから、もう2ヶ月が経つ。
ぺラリと雑誌を捲り、あたしの事には見向きもしない。
今日もまた、同じ事。
みきたんはそういう人。いつでも冷たくて、視線を合わそうとしない。
「お風呂、涌いてるよ」
「うん」
片言の言葉を残し、雑誌を片付けてお風呂場へ向かうみきたん。
あたしはその背中を見るのが大好きで。
どんなに冷たくたって、彼女が好き。
- 359 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 14:18
-
「…湯、熱かった」
「ご、ごめん…」
タワイもない事。そう思っててもみきたんの怒りを買うポイントになる。
だからあたしはできるだけ、気を遣う。
友達にみきたんの事を話すと、必ず、絶対言われるのがこの一言。
『そんなやつの、何処がいいの?』
あたしは正直にこう答える。
「そういう所が、好きなんだもん…」
本当は優しくて一途だって、あたしだけが知ってる。
「何か言った?」
「…んーん、何でもない」
ふいと振り向いて、台所に目をやるみきたん。
とっさに隠したせいか、ふぅと溜め息をつかれてしまった。
- 360 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 14:22
-
「…おいしかった?」
「普通」
「……そっか」
静かに箸を置いて、みきたんは完食した皿を台所に持って行く。
…おいしいとは言ってくれない。いつもの事。
「…どれが一番おいしかった?」
「だから普通」
「………」
- 361 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 17:03
-
せっかく頑張って作っても、おいしいの一言が無いんだもん。
悔しいような、悲しいような。
「…分ったよ。えぇと…茶わん蒸し…」
「ホント…?」
「本当じゃなかったら何」
「……えへへっ」
あ、笑った。
今日はじめての、みきたんの笑顔。
でも、満面の笑みじゃない。
「お風呂、入ってくるねっ」
「…あっそ」
たった一言の投げやりな言葉だったけど、すごく嬉しい。
…何だかんだで、やっぱり優しいみきたん。
- 362 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 17:35
-
「…みき、たん?」
「Zz…Zz…」
お風呂から上がって、パジャマのボタンをとめながらリビングに
つくと、みきたんがソファに身を投げ出して寝息を立てる音。
- 363 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 19:58
-
このままじゃカゼひいちゃう。
そう思って、ほっぺを突いて起こそうとした。
お、怒られませんように…
「…みきたん、ここで寝ちゃダメ…」
「んぅっ…うる…っさいよ…」
「…ごめんね…」
「…別に謝らなくてもいい…もう、ベッド行くから…」
案の定、みきたんの寝起きは悪く、目つきもいつも異常に怖い。
フラフラしながらベッドに向かい、ぼんっと倒れた。
「あっ…お布団…」
「いいっ、暑い」
「で、でもこの前みたいにお腹痛くしたら…」
「うっさいなぁ…もう眠いんだよ!」
ふいに、みきたんが怒鳴った。
いつもの事。なんだけど、いつまでも慣れないあたしはビクッと肩を震わせてしまう。
- 364 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 20:03
-
「あ……」
止めてよ。みきたん。
そんな哀しそうな目、止めて。
みきたんが悪いんじゃないから。
慌てて震えた肩を誤魔化すように、ぺたっと床に座り込んだ。
そのあたしを、みきたんは優しく、抱きとめてくれる。
「…ごめ、ん」
「大丈夫だからっ…早く…寝ていいよ?」
「……今は…亜弥ちゃんの事だけ考えたい」
尽きるようにみきたんが投げかけた言葉は、あたしの唇へと伝う。
少し、みきたんが零したしょっぱい味がした。
- 365 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 20:07
-
みきたんとあたしが付き合うようになったのは、2ヶ月前。
それは一緒に暮らすようになったと同時。
殆ど、あたしの押し掛けでもあった。
- 366 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 20:14
-
『…何、してんの?』
『……あたしっ…』
『亜弥ちゃん、だっけ』
面倒臭そうに髪の毛を掻いて、ふぅと溜め息をつかれた。
しつこいあたしの行動に飽き飽きしたからだと思う。
『…あんた、美貴の事好きなんだね』
『……はい』
『それじゃ、いいよ』
『…え?』
思い掛けないみきたんの態度に、あたしは少し期待した。
『……別にいいよ。傍にいても』
『…?』
『あんたなら、好きになれそうだよ』
あたしの手をそっと引き寄せて、みきたんの胸に導かれた。
あの時、みきたんがあたしの事を想っていたとは思えない。
実際、今もだけど。
- 367 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 20:22
-
「……みきたん?」
「…何」
「…今、幸せ?」
「何でそんな事聞くの」
「……みきたん、いつも怖いから…」
こういう事を聞くのも精一杯なのに、答えを出されるのはもっと辛い。
幸せかどうかは、みきたん自身に聞かなきゃわかんないから。
「知らない」
「…っ…」
「でも、楽しい」
「…え」
「毎日、楽しいから、そうなんじゃないの」
くるりとあたしの方に直り、こめかみにキスをされた。
終った後は、必ずキスをしてくれる。
「…あたし、いても邪魔じゃない…?」
「…別に」
「いつまで、いていい…?」
「……美貴が、亜弥ちゃんを嫌いになるまで」
「…」
曖昧なみきたんの言葉に、あたしはどう返事をしていいのか分らなかった。
それでも、ここにいていいというのなら。
「みきたん…」
「何…」
「好き、だよ」
「…何千回も聞いたよ」
「ごめん…」
- 368 名前:フキゲン 投稿日:2004/08/28(土) 20:25
-
「美貴は、亜弥ちゃんを嫌いにはなれない」
「…え」
「ずっと、いて欲しい」
「みきた…」
「どこにも行かないで、ずっと美貴だけ見ててほしい」
声が詰まって、言葉が出ない。
それは哀しみの感情じゃない涙。
流せば流す程、あたしはみきたんを愛しいと思う。
FIN
- 369 名前:証千 投稿日:2004/08/28(土) 20:31
-
>355様 萌えて頂き光栄です。藤本せんせーは実際頭良いんでしょうかね。
まあ人間に不可能はないと言いますから(笑
>356様 結局は甘いんです。甘いのがあやみきなんです。
そして藤本さんも亜弥ちゃんには甘いんです。
>357様 蒼い涙色は正直書くのが辛かったんです。
亜弥ちゃんと藤本さんが別れてしまうのは…ギャ−ッ!!
- 370 名前:愛心 投稿日:2004/08/29(日) 19:18
-
幸せを望めば、何でも手に入ると思っていた。
必ず自分に言い聞かせ、戸惑う事を拒んだ。
「あたし、別れて正解だったかも」
「…何で?」
「ホントに幸せじゃなかったと思うんだ、みきたん」
彼女はそう呟いた。
冷たく囁けばミキティの苦になるであろうから。
親友 → 恋人 その続きは
「結局さぁ、破局だもん」
まっつーは、それでいいの?
そう訪ねると彼女は静かに頷いた。
それ以上は絶えられなかったんだと思うけど、傷口に染みた。
- 371 名前:愛心 投稿日:2004/08/29(日) 19:38
-
「…だから、想って欲しいの、あたしのコト」
そういうわけで。まっつーは、ごとーを愛してくれて。
告白のシチュエーションは楽屋、決してロマンチックじゃない。
それでも彼女は関係無しに、ミキティではないごとーを選んだ。
「…最初から分ってたと思う。あたしホントはみきたんのコト好きじゃ無いんじゃないかって」
「隠してて、言えなかった…の?」
「そう、かな」
「でも、みきたんと親友じゃなくなるのが怖かったから」
「うん、分る」
「中途半端な気持ちで、みきたんのコト振り回してたのはあたしの方」
「…うん」
そしてまっつーは、気持ちを打ち明けてくれた。
すっごく驚いたし、なによりミキティのコトが。
- 372 名前:愛心 投稿日:2004/08/29(日) 19:43
-
すごく、好きだよ。
自分を誤魔化してまで、ごとーを愛してくれて。
気付いてあげればよかったと、遅くも気付いてしまう。
「…ふっきれるからとかじゃないの、ずっと…好…」
「んじゃ、一緒になろ」
「…ごっちん?」
「ミキティにさ、恨まれるかもだけど」
この子は強い。
誰よりも輝いて、誰にも追いつけない存在だと感じた。
先輩なんだけどさ、ごとーの方が。
でも恋愛はちんぷんかんぷんなごとーだから、ある意味尊敬できる。
傍にいれば、彼女の見えない角を丸くできる。
「ごとーでよければ、ヨロシク」
泣いてしまわないように。
ミキティに、羨まれるよな恋をしよう。
君と僕で、繋ぎたい。
- 373 名前:愛心 投稿日:2004/08/29(日) 19:49
-
「…アタシ、ごっちんに移りかえたとか…そんなんじゃないからね?…」
「知ってるよぅ、一番ごとーが知ってる」
「ずっと…ずっと好…」
「もぉ分ったってば。ほら、早く仕事」
せかせか言い続けるまっつーの動揺は、とても可愛くて。
目指せキス。
なんつって。
「……ミキティに、よーく説明しておくこと」
「ん…」
「…ね?そうしないと、まっつーがヤな思いするし、ミキティもそうなっちゃうよ?」
「……うん」
「大丈夫だから。ごとーがいるから」
嬉しいような、複雑。
アリガト、ミキティ。
- 374 名前:愛心 投稿日:2004/08/29(日) 19:53
-
「…それじゃ、バイバイ」
楽屋の外までまっつーを見送る。
ほのかに頬が染まって、戸惑ってるのが分った。
…好きなんだよなぁ、こういうシチュエーション。
それもこれも、ミキティのおかげでもあった。
「ごっちん…?」
「ん?」
「あり、がとう」
「へ?な、何で…」
「ごっちんが、初恋の人で良かった」
「…え?」
「みきたんより、上手に恋愛できそうだから」
最後にまっつーがミキティに残した言葉は。
『好きでいてくれて、ありがとう』
言い残したたった一言は、ごとーに責任がある。
何よりもかけがえのない、幸せをプレゼントしたい。
何よりも愛する、君の為に。
FIN
- 375 名前:証千 投稿日:2004/08/29(日) 19:55
-
なぁんか破局モノをまた書いてしまったような…。
切ないなと思いながらも手が勝手に。
最終的にはあやごま。しかし微妙にあやみき。
…あー、悲しいです。
今度はあやごま、ちゃんと書きます。
- 376 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 20:09
- 作者さんアリガトーーーーーー
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 00:28
- いいですよ、うん。
なんか好きだなぁ。
- 378 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:20
-
「…まっつー、俯いてどした?」
「…ごっちん?」
ヘイ×3の収録で、たまたま一緒になった日。
その日は娘。の子も一杯いて、久しぶりにごとーは現場を楽しんでいた。
でも、何か物足りない。
それはまっつーが元気ないから。
イスに座って、時々溜め息つきながらいつもの笑顔がない。
「…何でも、ない」
「何でも無いような顔、してないよ?」
「……ヘーキ、だよ」
ごとーは気がついた。
思えば、彼女は今日一度も笑顔を見せて無い。
- 379 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:24
-
まっつーの視線の先は、ミキティだった。
よっすぃと軽くじゃれあうミキティを、寂し気に見つめてる。
ほ〜、またあの二人、喧嘩したのか。
「…行ってきなよ、ごっちん」
「え?」
「みきたんの所、行けば?」
「何で?今うちはまっつーと喋って…」
「……いいんだって、気にしなくて」
何かこのコ、変。
妙に反発的で、でも寂しそうにごとーを促す。
もちろん何で彼女がそんなコトを言うのかすら分らないごとー。
「…そんな、ごとーはミキティの肩を持つような事しないよ」
喧嘩してるから、ごとーにそんなコト言うんだろう。
そう思って、まっつーを安心させようと柔らかに言った。
- 380 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:28
-
「…違うの」
「え?」
「……ごっちんは、みきたんのコト、好きなんでしょ?」
うん。そりゃ好きだよ。
決して嫌いなんかじゃない、友達として大事だよ。
何かまっつー、勘違いしてない?
「や、好きは好きだけど…」
「じゃ、じゃあみきたんに…」
「やだなまっつー、何言っちゃってんの」
「…だって…」
変なコト言うと思ったら、ヤな想像してくれるなぁ。
どうやらこのコ、ごとーとミキティを勘違いしている。
「ミキティは、友達。友達だから好きなんだよ?」
「…うそ…」
「こんな事に嘘ついてどうするのさ、本当だって」
「…だって、この前みきたんが…」
ミキティが?何か言ってた…?
- 381 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:33
-
「ミキティが、何か言ったの?」
「……あのね…」
この前、みきたんと焼肉食べにいったの。
−うん。
…そしたらね、みきたんがあたしに恋人いる?って聞いてきて…
−うん。
みきたんに言ったら気まずくなるかなぁと思って…ごっちんの事…
−ああ、言わなかったんだ。いいよ、別に。
うん…そんで、みきたんにもいる?って聞いたら……
−うん?
好きな人…はいるって…。
−ああ、うん。
それが…ね…
『美貴、ごっちんの事好きなんだ』
−…そう、ミキティが言ったの?
うん…。それであたし、何も言えなくて…
ミキティが、ごとーの事好きだって?
「…でもさ、何でごとーが…」
「だってだって、ごっちんみきたんと仲良いし…」
「そりゃそうだけど」
「何か…ごっちん…意識してるんじゃないかって…」
- 382 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:39
-
ホントこのコ、可愛い事する。
「…ごとー、まっつーと仲良いじゃん」
「…ぇ?」
「だからさ、ミキティとも仲良いけど、それ以上仲良いのはまっつーと」
「……」
「…嫉妬してくれて、ありがと」
もう、可愛い。
ごとーがまっつー以外好きになるわけないじゃん。
「…こういうの、重い…よね?」
「いーや。むしろ大歓迎」
「…ほんと?」
「ホントホント。ごとーもするしさ、そんくらい」
「……えへへぇ」
「あっは♪」
まっつーの頬を撫でて、キスをする。
『ここじゃダメだよぉっ』って慌ててたけど。
それにしてもさ…。
ミキティの事、どうしよ。
- 383 名前:your smile 投稿日:2004/08/30(月) 12:43
-
「…やっぱ、無理か」
「お?どうしたミキティ」
「ごっちんを落とせるのは…亜弥ちゃんしかいないっつうことね…」
「へ?おいら意味わかんねー…」
「いいですから。早く楽屋戻りましょう」
やぐっつぁんとコソコソはなしてるミキティ。
ごめんね。
やっぱごとーには、まっつーだけなんだ。
「にゃははぁ」
「あ、笑った」
「え?」
「だってまっつー、ずっと笑わないから」
「そっか…ごめんね、心配させて」
「いーや」
そっと笑顔まで包み込んで、まっつーを抱き締める。
やっとこで笑ったまっつーと、そのまま楽屋へ戻った。
大事な笑顔は、ごとーのもん。
FIN
- 384 名前:証千 投稿日:2004/08/30(月) 12:45
-
>376様 どういたしまして(笑
>377様 そう思って頂きよかったとです。
あやみきマンセーです。
- 385 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 13:18
- あやごまもいいけど、作者さんの書く甘甘なあやみきが読みたいな〜なんて…。
- 386 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:33
-
最近、笑顔が冴えない。
そんな事を、愛する人に言われた。
どうしたらいいっていうのよ。
あなたは何を求めてるの?
あたしを好きだと言ったのは知ってる。
それでも心は覗けない。
シャッターを押した、貴女は何を思うの。
- 387 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:38
-
あたしの家で二人っきり、貴女はお菓子を食べるかTVを見てるか。
別に不満があるわけでもない。
「亜弥ちゃん、写真取ってあげるよ」
うん。
只ありがとうとだけ言って、笑顔は見せなかった。
少しでも気が緩むと貴女を許してしまいそう。
「ケータイのカメラだと画像汚いからさ、デジカメね」
月に一度の、二人の恒例行事。
お互いの写真を撮り合って、貴女は必ず何か言葉をくれるよね。
その度に落ち込んだり、舞い上がったり、切なくなったり。
- 388 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:41
-
「あちゃ、残り2枚しかないやぁ」
そう言うと、こんな事まで言ってくれた。
「美貴は撮らなくていいから、亜弥ちゃんだけ撮るね」
いつもみたいに、優しくしてくれる。
自分より、あたしを優先して。
へへっと笑って、ピントをあわせる貴女。
「じゃ、そこ座ってね」
後ろに下がったり、前に来たり。
『う〜ん』とか言って、配置が決まらないみたい。
いつもそうだから。
あたしを撮ってくれる時は、いつもそうしてくれる。
- 389 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:46
-
「おし。亜弥ちゃん、撮るよー」
こんな時、どういう表情すればいいんだろう。
毎日のように仕事で写真は撮られてるのに、貴女をいると頑に分らなくなる。
「なぁんだよぉ、笑って笑ってぇ」
カメラさんがかけてくれる言葉はあまり励ましになってない。
貴女の柔らかい言葉は、あたしを強くする。
子供のように無邪気に、貴女は笑ってあたしを促す。
…ピピッ
「おー、撮れた撮れた」
ドキドキ。
今日は、どんな言葉をくれるんだろう。
必要以上のあたしの緊張に気付かない貴女は撮った現像をまじまじと見つめる。
「…なぁんか、ヘンだな」
ぽつり、と頬をかきながら首をかしげている。
今月は、バツだったみたい。
- 390 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:50
-
「ヘンっつうかさ…可愛いんだけどさ…」
ふぅと困ったように息をつく。
少し表情を変えたあたしに気付き、貴女は慌ててあたしの髪を撫でた。
「違うんだよ?かわいいんだよ?あのね…なんか…」
涙は出ない。
悲しいとかじゃないし、別に。
「何か…笑ってるけど…笑ってない…感じ…」
ふいに突かれた、あたしの心臓。
同じ事、言われちゃった。
その言葉を、仕事中に言われた。
- 391 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:53
-
すごくショック。っていう感情じゃなかった。
笑顔振りまいてても、笑いたくない時だってある。
でも、それが仕事なんだから。
みんなに凄いねって言ってもらえるように、頑張ってる。
自然に笑えなくなってきて落ち込んだ時もあるけど。
今、まさにその状態だから。
「……疲れてる、の?」
そんな事ないよ。
そんな事あるよ。
微笑んで貴女を安心させたいのに。
うまく作れない。
- 392 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 16:56
-
「…ね、美貴の前だけでいいんだ」
途切れ途切れの言葉遣いで、粘るように悟る。
「ちょっとでいいから、笑ってくれないかなぁ…」
思えば、あたしは最近自然に笑えてない。
何でだろう。あたし自身だって何度も思ってた。
でもその答えは、今目の前にある。
貴女に会えなかった、から。
「美貴、亜弥ちゃんの笑った顔、大好きだから…さ」
知ってるんだよ。
知ってる。
でも、肝心の貴女に会った途端、どうしていいのか分らなかった。
- 393 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 17:00
-
聞きなれた、貴女の声。
耳元で呟くように、愛しく感じて仕方がない。
「……へへへっ…」
貴女の笑顔は、止めどなくあたしを癒す。
辛い時も、哀しい時も、いつだって。
自然に惹かれて、愛する事ができている。
「おぉ、笑った笑ったぁ」
あたしが微笑むと、貴女はもっと笑顔になる。
嬉しいよ。
「さ、もう一枚、余ってるから」
そっとあたしの肩を撫でるように剥がし、デジカメに目をやった。
そっか、まだ残ってる。
- 394 名前:レンズの向こう側 投稿日:2004/08/30(月) 17:02
-
今度は笑って、貴女に見せたい。
最後の一枚、あなたが大好きな、あたしの笑顔で。
「いくよ」
……ピピッ
「……これが、美貴の大好きな亜弥ちゃんだよ」
現像を見て、ゆっくり微笑んだ貴女。
貴女の笑顔は、あたしの笑顔。
FIN
- 395 名前:証千 投稿日:2004/08/30(月) 17:03
-
甘いんだか切ないんだかサッパリです。
>385様 私もあやごまよりやはり、あ や み き ですね。
甘いんだかよくわかりませんが、新しく作ったんでどうぞ。
- 396 名前:かくし 投稿日:2004/08/30(月) 17:04
-
美貴ママは密かに松浦さんを狙ってますね。
ドキみきナイス。
- 397 名前:かくし 投稿日:2004/08/30(月) 17:05
-
やはり一心同体。
- 398 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:18
-
「浮気、したでしょ」
「してないよ」
「嘘。した」
「してない」
「嘘」
「してない」
「う…」
「しつこいなぁ、してないってば」
ぽいっと彼女に枕を投げ、否定した。
だけども信用してないようす。
「そんじゃ、アレなに」
「…梨華ちゃんが寝ぼけてつけたんだよ」
シャツについてしまった、友人のキスマーク。
寝起きの梨華ちゃんに声をかけようと近寄った途端、バタリと
倒れてきたからふいに付いてしまったものなんだけど。
- 399 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:23
-
「…むぅ……」
「ヘンな事言い出さないでよ、元からヘンなんだから」
「むぅ!」
「ウソウソ。いいからソレ洗濯しておいてよ」
うだうだ喧しい恋人を放っておき、口紅がついたシャツを洗濯機
に放り込んだ。
疑り深いのは彼女の癖でもあり、性でもある。
「……ねぇ、何でその人、寝起きだったの?」
「だから、バイト先の控え室で寝てたの。夜勤だったから」
「……むぅ」
「あのねぇ…美貴は梨華ちゃんが風邪ひくといけないから起こしたんだよ。
下心だとかヘンな事しようとか、有り得ないの。オーケー?」
「…わかった」
「それでよし」
全く。聞き分けのないコイビトを持つと大変だ。
それでも好きになっちゃったんだから、しょうがないんだけど。
「ったく、冗談じゃないよあんなキショキャラと」
「…みきたん、あたしにもキショいって言う」
「だって寝言でずっと美貴の名前連呼するんだもん」
「だって好きだもん」
「知ってるもん」
「むぅ…」
軽く彼女にデコピンをかまし、得意げに笑ってみせた。
ホラ、つられて笑うんだから。
- 400 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:29
-
「…あ、ティッシュないじゃん。亜弥ちゃんのせいだー」
「何であたし…」
「昨日ワーワー泣いて全部ティッシュ使ったのは何方でしたっけ?」
「…だってみきたんのせいだ」
「亜弥ちゃんがホラー見るって言ったんじゃん。シラネー」
いつもそうだよ。
怖がりのくせに、ホラー見たがるんだ。
終わりには泣いちゃって、美貴が亜弥ちゃんを抱きしめて促すしかないんだから。
「…雨降ってるじゃーん」
「それじゃ美貴が行く」
「いいよ別に、あたしが行く…」
「アンタ病み上がりなんだから部屋でじっとしててよ」
「…風邪引いたの、先週の事なんですけどぉ」
「またぶりかえしたら大変でしょ。美貴が行くから」
「いい」
「ダメ」
「いいってば」
「ダメだってば」
お互い頑固。
決着つくまでずーっと延長戦がつづくのがオチだ。
- 401 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:33
-
「…もういい。一緒に行こ」
「えーっ」
「何でよぅ」
「だって亜弥ちゃんひっついてくるんだもん」
「それはアンタでしょう!?」
「そりゃ寒いから。亜弥ちゃんはラブラブしたいだけでしょ」
「いーじゃん、付き合ってんだもん」
「だってさ、女の子同士でイチャつきまくってたらヘンな目で見られるじゃん」
「そいじゃ帽子被ってよ。帽子被ったら完全オトコだもんみきたん」
ふさっ。
帽子を瞬時に被せられ、頬にチュッとやられた。
意味ワカンネー、こいつ。
「あ、コラ」
「何?」
「コート着ないと、亜弥ちゃんは」
「いい。いらないよ」
「風邪ひくからだめ」
「いい!」
「着るの!」
「いいってば…ンゥッ!?」
言う事聞かないやつには、甘いお仕置きだ。
うるさい亜弥ちゃんの唇を、キツク塞ぐ。
- 402 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:38
-
「んっ…ふぅっ…」
「……っ…ホラ、着るの」
「…バーカ。わかったよーだ」
名残惜しくも唇を離れ、コートを羽織わせた。
エレベーターを降り、相合い傘でスーパーへ。
「…ひゃっ」
「おーあったけー」
「冷たいんだけど」
「あったかいんだけど」
「…むぅ…しょうがないな」
「へっへっへ〜」
亜弥ちゃんの手に指を絡ませ、恋人繋ぎ。
その手はあったかくて、柔らかくて、大好きなモノトップ3に入る。
「…信号待ちが一番辛い」
「何で?」
「足が寒い」
ガチガチに固まってしまいそうな両足を足踏んで、信号待ち。
もうちょっとで青。
になるはずなんだけど、ここの信号は遅い。
- 403 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:43
-
「アタシ、信号待つの好きだよ」
「へ?」
「だってぇ、この間みきたんとお喋りできる」
「いつもしてんじゃん」
「ちっがうの。止まってる間にしゃべれる事とかあるでしょ?」
「えー、ナイよ」
「あ・る・の!」
何だか亜弥ちゃんの言ってる事がわかんない。
時々、いや、いつも言うけどさ。
「寒い…」
「冷たいってば」
「両手にホッカイロ持ってるみたいだ」
「あたしの手はホッカイロじゃないもん」
「亜弥ちゃんの愛がホッカイロ?」
「なぁにソレ…クサいよたん」
信号待ちの間、亜弥ちゃんの両手を握りしめた。
大袈裟に反応するから面白くて何度も。
「ね、キスしよ」
「…人いるじゃんか」
「いーじゃん、1秒以内ですれば」
「分ったよ」
そうキリ出したのは亜弥ちゃんのほうで。
さっさと目をとじてしまうもんだから、素早くチュッとかましてやった。
- 404 名前:恋愛信号 投稿日:2004/08/30(月) 22:48
-
「ふへっ、冷たかったぁ」
「あはは、あったかかったよ美貴は」
唇を離した後、にこっと笑って亜弥ちゃんは唇をなぞった。
「あ、信号青だよ」
「渡ろう」
もうすこしだけ、こうしていたかったかもね。
青に変わる前に、もっとすればよかった。
「信号の青ってさ、緑だよね」
「いや、青でしょ」
「違うもん、緑だよ」
「いーや、青」
なんて、下らない事言い合うのも、いいんじゃないかな。
「じゃ緑にしとけ」
「うん、それでいっか」
「くっだらないなぁ」
最後に二人で笑いあって、横断歩道を渡り切った。
今度渡る時は、もっとキスをしとこう。
FIN
- 405 名前:名無し。 投稿日:2004/08/31(火) 00:37
- ぬぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
痒い痒い痒い!
あまりにもの甘さに痒くなってしまいましたw
信号待ちのキスねぇ〜いいねぇ〜w
- 406 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 12:53
-
このままずっと、永遠に。
手を繋いでいたかった。
手が汗ばんだって、堅く繋いだ心と心。
絶対、忘れないよ。
- 407 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 12:56
-
「ね、みきたん」
「何?」
肩にそっと寄り添い、甘い声を出す亜弥ちゃん。
それは茹だるように暑い、去年の8月31日の出来事だった。
彼女の夏が、終った日。
「…あたし、来年は海に行きたい」
「うん、絶対一緒に行こうよ」
「行ける…かな?」
「当たり前だよ、美貴が保証する」
蝉が優々と木にとまり、煩く鳴き続ける病室の外に顔を向けた。
もう、明日で9月だというのに。
まだ、やり残した事があるというのに。
- 408 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:00
-
保証なんか、美貴に出来る訳無い。
神様の手下にでもなった気分か、悪魔の最高官か。
夏が終ると同時に、命の灯火までが夏風になじんでしまう。
美貴はそう悟った。
「…宿題、結局出来なかったね…」
「…そだね」
病気のせいで殆ど学校に通えず、夏休みの課題を終える事が出来なかった彼女。
ここまで彼女を苦しめる病を、美貴は憎んだ。
肩を抱き寄せると、痛みが伝わってくる。
「みき、たん…?」
「…ん…」
「何で、泣くの……?」
もっと一緒にいたいんだ。
だけどそれは、叶わないから。
- 409 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:06
-
泣きたくなんかない。彼女を痛ませるだけだ。
「やめ…てよ…。みきたんっ…」
「亜…弥ちゃん…っ…」
彼女の胸に身を委ね、美貴は泣き崩れた。
本当は亜弥ちゃんが泣きたいのに。
美貴はなんて弱い奴だったんだ。
神様あと少し、1分でもいいから。
彼女に生きる時間を、下さい。
- 410 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:10
-
目をとじたら、君はいなくなる気がして。
夜も眠れなくて。
もっと彼女にしてあげられる事があった。
最後に彼女が残した言葉は、聞き取れない程微か。
病室の布団に涙がこぼれ落ち、彼女は消えてしまった。
- 411 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:14
-
「…美貴ちゃん…?」
亜弥ちゃんが眠りに着いた病室の外では、たった2人が残された。
「……お見舞い、もっと早く行けばよかった…っ…」
梨華ちゃんはロングソファに倒れるように腰掛けた。
彼女の眠りを妨げるような声を上げ、泣き続けて。
- 412 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:21
-
畳みの上で正座をして、瞳は頑に写真に向けられる。
いつもなら1分だって出来ない正座。
時間など忘れるくらい、愛おしさが溢れてくる。
「こんな顔で、笑ってたんだっけ、亜弥ちゃん…」
そっと写真に触れ、妙に落ち着く自分がいた。
心は叫んでるっていうのに。
「美貴ちゃん、亜弥の事、見てあげてくれる?」
振り向くと、亜弥ちゃんのお母さんがいた。
美貴なんかよりずっと、ずっと亜弥ちゃんを見てた唯一の人。
- 413 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:25
-
なんでこんなにも、リアルな現実があるんだ。
離れた心に傷をつけ、また癒そうとしたいのか。
「……いい寝顔してるでしょ?」
「…そう、ですね」
「…もっとワガママ聞いてあげてれば、よかったのかなぁ…」
涙を浮かべて、少し笑った亜弥ちゃんのお母さんは、眠っている亜弥ちゃんから
目を背けた。
でも美貴は、首を動かす事ができない。
何故こんなにも綺麗で、安らかに眠っているんだろう。
キリッとした眉、ふんわりした唇、なにもかも美貴が知り尽くしてる。
残酷という、眠りだった。
- 414 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:30
-
「……ね、亜弥ちゃん」
呼びかけたって、前のように笑顔を見せてはくれない。
ただ目を閉じて、眠ってる。
まだ温もりが残っていそうなサラサラの髪を指ですく。
「美貴は、これから受験だなぁ」
「就職しなきゃいけないし、結婚もしなきゃな…」
「その時はさ、もうネギとかあんこ、苦手じゃないかもね」
そっと微笑んで、次々と話し掛けた。
そんなの無駄。
わかってんだよ、そんな事。
- 415 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:39
-
「……っ…一緒に…生きたかったのに…さぁっ…」
声を上げて泣く事は出来なかった。
息を殺して、誰もいない和室で。
「……好き…だよ……」
美貴が残したかった、一言。
こんな風になるまえに、言っておけばよかったと。
- 416 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:44
-
あれから、一年が経った。
美貴は晴れて大学生になり、音楽サークルに所属している。
もちろん出会いは…ないんだけど。
定期入れに入っている、彼女の写真を見つめる。
講議中だろうがテスト中だろうが、ホッとできる唯一の彼女。
美貴の頬にキスして、はにかんでいる。
「…ま〜た見てるね、ミッキー」
「……うわぁ!ま、まいちゃ…」
「それにしてもさ、可愛いよね〜この子」
「まーね…」
パッと手に持っていた定期入れを、サークルの友達である里田まいに
奪われた。
まいちゃんは、亜弥ちゃんが亡くなった事を知らない。
「…ね、今度紹介してよ」
「え」
「可愛いじゃん、友達になりたい」
「……無理だよ」
「何で?」
1年経った今でも、忘れられないんだ。
- 417 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:47
-
「亜弥ちゃんさ、もういないんだよね」
「…え?」
「だから、いないの。オーケー?」
つん、とまいちゃんの頬を突いたけど、結構ダメージが大きかったみたい。
いけない事を聞いてしまったから、気にしてるんだ。
「ご、めん…」
「いいって、ヘーキ」
平気、って言ったけど、全然平気じゃない。
今すぐにでも思い出して泣きたい気分。
お墓参りには何度も行ってる。
そんなに遠くはないから、忙しくない日には必ず。
その時には、亜弥ちゃんが好きで、美貴が嫌いなあんこ。
ごめんね亜弥ちゃん。美貴、まだあんことネギは食べられてないや。
- 418 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:51
-
「…ミッキーさ、それで…医学部に…?」
「あー、まあね」
「そっかぁ…」
「無力だったし、あの時。何にも出来やしなかったから」
一緒にいてあげる事しか、出来なかったから。
もうこれ以上、誰かを悲しませたくなかった。
「今、生きてる事がどんなに幸せなんだろうって思うから」
「…うん」
「亜弥ちゃんの為にも、精一杯生きて、幸せになろうと思うんだ」
どこかで見てて欲しい。
頑張って、君の分まで生きてみせる。
- 419 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 13:59
-
実家に帰ると、お母さんとお父さんが迎えてくれた。
もちろん、ワンコのアンも。
「おかーさん、亜弥ちゃんち行ってくる」
「…え?」
「へへっ、行ってくるよ」
亜弥ちゃんが亡くなってから、一度も家に行ってない。
カラダが拒否してたから。
お母さんは驚いた顔をして、見送ってくれた。
「…んーっ…亜弥ちゃんちだなぁ……」
おばさんに言って、部屋に入れてもらった。
昔のまんま、可愛らしい部屋だった。
窓を開けて、風の香りをかぐ。
病室で流れていた、夏の匂い。
- 420 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 14:03
-
「…歌っちゃおうかな…」
音楽サークルでもらった歌を無性に歌いたくなった。
夏のせいだ、と意味不明にこぎつけて。
白く 流れる雲に叫ぼう
青春のこの胸を
初恋の 初恋の思い出よ
小指を 硬く 結んだ 君なのに
「この風と一緒に…消えてっちゃった……か…」
最後のフレーズをとめて、言葉にしてみる。
なんて当てはまってるんだろう。
- 421 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 14:08
-
赤く萌えてる 僕の心に
いつまでもこの花を
初恋の 初恋の思い出よ
黒髪ゆれて 笑った君なのに
あの夢と かなしく消えてっちゃった
「大人になるんだ、もう泣かないさ…」
グスッと鼻をすすり、溜めた涙を誤魔化した。
「忘れはしない いとしい君だけは…」
あの空のどこかで、美貴を見てるんだろう。
夏雲が忙しく流れて行った。
- 422 名前:last summer 投稿日:2004/08/31(火) 14:11
-
愛する君のために、うたった言葉。
きっと見ててくれてるよね。
こんなにも美貴は強くなれたんだ。
それは貴女のおかげだから。
今、君はどうしてる?
きっと、今でも愛してるよね?
FIN
- 423 名前:証千 投稿日:2004/08/31(火) 14:12
-
なんか松浦さんに酷い事をした気分です。
書かなきゃよかった……
駄文ですし。
>405様 痒い痒い…同感でございます。
正直書いてて恥ずかしいったらありゃしないんです。
- 424 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/31(火) 14:32
- 作者さん、、、寂しい、泣けます。。。うぅ・・・。
でも好きな文章です。
でもでも、やっぱり幸せな二人もお願いします。。。(鬼)
- 425 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/31(火) 16:42
- 泣きました。
- 426 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/31(火) 19:02
- マジ泣きしてしまいました…マジで!!
カッコいいっすみきたん!!
そして亜弥ちゃん安らかに……
作者様乙です。
- 427 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/31(火) 19:13
- …思いっきり泣きました。
作者さんの文章、大好きですよw。
- 428 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/08/31(火) 20:15
-
あの人は、あたしを寂しくさせるのが得意らしい。
どんなに想ってても、伝わってないんだもん。
「…っ…くそぉ…!」
「ほれほれ、こっちだよん」
ユニフォーム姿が眩しくて、いつもグラウンドを見つめてる。
笑った顔がすごく可愛くて、優しくて、数えられないくらい好きな所いっぱいある。
授業なんかそっちのけで、愛しいあの人を観察。
「ほれほれ、ミキティこっちだよ…ってオイ!!」
「…っ…うわぁっ!?」
でも、ドジがタマに傷なんです。
フットサルの試合中、ボールを奪おうとした彼女はコケてしまった。
「ちょっと!美貴ちゃん大丈夫!?」
「バッカじゃねえのお前…」
派手にコケた彼女を呆れた様子で見学してたみんなが溜め息をつく。
あたしから見たら、すっごい可愛いんだけどな。
- 429 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/08/31(火) 20:22
-
「みきたんっ、大丈夫?」
「あ、亜弥ちゃん…へ、ヘーキ…」
「あっちで休憩しよう?足痛いでしょ?」
「いーよ、チャンスなんだもん」
ニッと笑って、血がまじった膝を手で拭う。
強がってるのかわかんないけど、やっぱりカッコいい。
「おらぁっ!」
「わっ、何だお前!!」
2組の吉澤さんからボールを見事奪ったみきたんは、小さくガッツポーズをする。
ヤバい、可愛過ぎる。
勝手に惚れてしまったあたしは、あんまり話し掛けられる事もできず。
只、アダナで呼び合う事は日常になった。
- 430 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/08/31(火) 20:29
-
「ちょっと亜弥!美貴さん点決めたよ!!」
「ふぇ…」
友人に声をかけられ、みきたんのほうへ向いた。
ゴールを決めたらしい。
これでうちのクラスは3ー2で勝利を収めた。
「…ひゃーっ、ツカレタァ…。亜弥ちゃん、そこのタオル取って?」
「あ、うん!」
息を切らせながら、みきたんはベンチへ戻ってきた。
頭から水を被ったのか、頭はびっしょびしょ。
濡れた髪が妙に色っぽく見える…なんて考えてしまう。
「あははっ…美貴、ドジだよねぇー…」
「そ、そんな事…」
「あるよぉ。隣のクラスにドジティって言われるしさー」
「でも、可愛いよ…」
「ん?」
「…なんでも、ない…」
がしがしと頭をふくみきたんをみて、鼓動が弾む。
- 431 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:27
-
「ほな、明日も元気で登校するように!」
下校時の学活が終り、あたしはみきたんの席に目をやった。
小さく欠伸をして、涙を浮かべている。
自然とその風景を見るのが、あたしのなかで習慣となって。
「ミッキー、一緒に帰ろ!」
「あ、ゴメン。先帰っていーよ」
「何か用事あんの?」
「ちょっとね、亜弥ちゃんに用事」
「ふぇ…あたし?」
欠伸をやめて、みきたんはあたしの方に指を指した。
その時、微かに里田さんがあたしを睨んだのが確認できた。
あたしは、知ってるのに。
里田さんは、みきたんの事が好きなんだ。
「あ…そ、じゃあたし帰るわ」
「うん。じゃ〜に〜」
にこにこ笑うみきたんと対象に、里田さんはとても寂しそうだった。
あたしのせい?
自己嫌悪に陥る直前、みきたんは二人っきりになった教室を見渡す。
あたしに用事って…何?
- 432 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:33
-
「あの…みきたん?」
「うん?」
「…知ってるんでしょ?」
「何を?」
「だから…里田さんが、みきたんの事…」
「あーハイハイ、とっくのとうに」
じゃあなんで、あのまま片思いさせてるんだろう。
行動が読めないみきたんの事は、惚れてるあたしでさえわかんない。
「なんつーか…まいちゃんはまいちゃんなわけだよ」
「え?」
「まいちゃんはまいちゃん。…要するに、恋人になっちゃタブーな人ってこと」
「…なんで?」
「…何でだろうね。美貴、他に好きな人いるわけでもないし…ヘンだなぁ」
ホント、みきたんって変わってる。
あたしから見たら、里田さんは完璧な人。
綺麗で頭良くて、みきたんとなら釣り合うのに。
それでもみきたんは、恋人として見る気はないの?
「…亜弥ちゃんが恋人だったらいいのになぁー」
「えぇ!?」
「んへへ、何か尽くしてくれそうぉだから」
照れてるのバレバレでとんでもない事を言い出す。
あたしの気持ち知らないから言えるんだろうけど。
冗談で言われたとしても、どうしようもなく嬉し過ぎる。
- 433 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:37
-
「でもさ」
「…?」
ギッと音を立てて、机の上にのっかる。
「亜弥ちゃんモテるでしょ?可愛いもん」
「そ…んな事ないけど…」
「いやいや、だって美貴が男だったら目付けてる所だよ」
「え!?」
「あはは、ウソウソ。でも、こんなに可愛かったらほっとけないかもね」
つん、と額を人指し指で突かれた。
途端に顔が赤くなるのを感じて、そっぽを向いてしまう。
「ふははっ、マジかわいー亜弥ちゃん」
「い、いいよもう…」
嬉しい。
嬉しいんだけど、期待しちゃだめだよ。
みきたんは、あたしの事何とも思ってない。
只の、『可愛い同級生』にしか。
- 434 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:42
-
「みきたん…?」
「何だいぃ?」
言ってしまおう。
まだ、キッカケならこれからいっぱいあるかもしれないんだから。
『好き』と伝えて、彼女の気持ちが知りたい。
「……みきたん、あたし…」
「んー?」
「…好き、なの。みきたんが…」
か細い告白は、きちんと伝わった。
ダメかもしんない。キョトンとして、全然分ってないよ。
「……あのー、それ、美貴の事かい?」
「…ん」
「どぇ!?み、美貴!?」
「……?」
「や、あの…あの…えと…えーっと…あの…」
カーッと血が昇ったかのように、みきたんは顔を赤らんでいる。
迷惑。だったかな。
- 435 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:47
-
「……好き、かわかんないんだけどさ…」
「…え?」
「美貴、恋愛とか正直苦手なんだぁ」
「……ん」
「だから…彼女とか…持つの下手だし…」
答えは、とても寂しいものだった。
みきたんはやっぱり、あたしを友達範囲しか見てない。
「…でも…すっごく、気にしたいよ」
「…え…?」
「亜弥ちゃんの事、四六時中気にしてたい…んだ」
「…それって…どういう意味?」
「あのー…ね…」
「……美貴は、亜弥ちゃんの事、気になる…から」
ぶあっと何かが被さったような、暖かさ。
それはみきたんのカラダが、あたしと1つになったからだった。
- 436 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:53
-
「…みきたんっ?!」
「ごめん、やっぱ可愛いから…」
「……」
「…あっ、違う違う。亜弥ちゃんに言う可愛いは違うから…」
半泣きべそだったあたしを、見てくれた。
「…用事って…何だったの…?」
「や…それとなく、美貴も同じ系の事を言おうと…したんだけどさ…。
亜弥ちゃんがまいちゃんの事切り出すからいいづらくなって…そしたら亜弥ちゃん
から告られるんだもん」
「つまりだよ。美貴はけっこー前から気にしてたんだよ、亜弥ちゃんを」
みきたんを想う気持ちは、最初から繋がってたらしい。
なんて偶然、必然な気持ちなんだろう。
- 437 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 12:57
-
夕暮れ時になった学校のグラウンドを、みきたんの胸のなかから覗いた。
山に紅が広がって、信じられないくらい綺麗。
「あの…じゃ、美貴帰るわ…」
「え…」
チュッ
「嫌だったら…ごめん!!!」
「みっ…みきたん!!」
不意に、キスをされるなんて。
こそくな真似をされたあたしは、悔しいやら嬉しいやら。
いや、当然嬉しいんだ。
「あっ…危ないよぉ!!」
「へ…うぎゃぁ!」
ツルッ ズデンッ ドテッ
「いってて…あ…」
「…みきた…ん…」
走り去っていったみきたんは、廊下の何もない所でスベッてまたもや
派手にコケてしまった。
コケて起き上がったみきたんは、追いかけたあたしとばっちし目が合う。
- 438 名前:愛しき貴方 投稿日:2004/09/01(水) 13:01
-
「ぅーっ…カッコ悪いっ…!!」
「あっ…待ってよみきたん!!」
顔を更に赤くして、また走り去って行くみきたん。
その顔が、とびきり可愛くて。
「…大好き…」
愛しき貴方。
FIN
- 439 名前:証千 投稿日:2004/09/01(水) 13:05
- 何かもうグッダグダです。
最悪です。
甘くねぇじゃん、全然。
>424様 甘い二人のほうが幸せですよね(笑
やはりそうでございます。
>425様 泣いてしまうような二人…結構酷な事書いてしまいました。
>426様 亜弥ちゃんが…なんだか後悔と嬉しさがある微妙な面持ちです。
>427様 私の駄文にそんな滅相もない…でもありがとうございます。
- 440 名前:証千 投稿日:2004/09/01(水) 13:05
- ネタ不足です。
誰か私に手を差し伸べて…という事で。
ネタ提供、よろしかったらお願いします。
甘いのやら、痛いのやら、めっちゃくちゃ甘いのやら。
- 441 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 16:14
- もう全開であっま甘などいかがですか?
- 442 名前:証千 投稿日:2004/09/01(水) 18:32
- やはりあやみきといえば甘いの王道ですねw
甘いのしか能がない私なんで、ありがとうございます。
でわ、何時間か後にあやみき書こうと思います。
- 443 名前:あい・らぶ・ハニィ 投稿日:2004/09/01(水) 19:21
-
「たんたんた〜ん♪」
「はいはいは〜い…」
彼女のリズムに合わせ、適当に返事をしてみた。
何か用があるわけでもないのに美貴の名を連呼する亜弥ちゃん。
ベッドの上に体育座りして手招きしてる。
ここで拒んだら後がうっさい。
ひょい、と横に座ってやる。
「ニャハハァ」
「何さぁ」
「みきたん、いー匂いする♪」
「あーそう」
「あたしは、どんな匂いする?」
「え?」
亜弥ちゃんの…匂い?
んな事言われてもなぁ、何度も体に触れてるけどそんな事考えた事もない。
「…くんくん」
彼女の肩に鼻をくっつけ、匂いをかいでみた。
「…わかんない。洗剤の匂いしかしない」
「そんな事ないもんっ」
「えー。じゃあ美貴はどんな匂いさ?」
「みきたんの匂い♪」
「……そっちだっていい加減じゃん」
あんまりにも可愛い顔をしてはにかむもんだから、美貴も答えるしかないな。
- 444 名前:あい・らぶ・ハニィ 投稿日:2004/09/01(水) 19:27
-
「くんくん…」
「ニャハハ、くすぐったいぃ」
えー…どんな、どんな匂い…。
洗剤の匂いしかしないよぅ。
「…んとー……」
「んと?」
「美貴が好きな匂い」
「むぅ…。ま、いっか」
なんだかよく分らないけど、彼女の気になる点は丸まったよう。
よかったよかった。
「でも、ちゃんと答えてないからー…」
「え…何かすんの?」
「うん。してして」
「何すんの?」
どうせまた我侭全開のお願いをするのだろう。
甘く見ていた美貴は、ベッドに押し倒されていた。
「何さ」
「チュ−して」
「は?」
「チュ−。キスだよぅ」
- 445 名前:あい・らぶ・ハニィ 投稿日:2004/09/01(水) 19:34
-
チュッ
唇をついばむように頂き、頭をボスンと枕に戻す。
亜弥ちゃんが美貴の上に乗っかってるから結構キツかったりすんだよ。
どいてくれないかなぁ。
「どいてどいて、キスしたよ」
「…やだ」
「んぇ?」
「もっとしてくんなきゃ、イヤ」
何を言いますか、このお嬢さんは。
別にしたくないわけじゃないけどさ。
「…パンツ見えるよ」
「バッ…!!」
「知らないよ。っつうか亜弥ちゃん美貴の上に乗ってるんだから
美貴がパンツ見えるわけないでしょ」
「…むぅ!!たんのエロ!」
「今日は白か…」
「違っ…ピンクだもん!!」
「へ?」
「あ…」
バカなのはそっちでしょ。
軽くあしらってみると、亜弥ちゃんは顔を真っ赤にしてプイと
そっぽを向いてしまった。
もう、可愛いんだから。
- 446 名前:あい・らぶ・ハニィ 投稿日:2004/09/01(水) 19:40
-
「たんの…えっち…」
だってミニスカはいてるのが悪いんだい。
言いたかったけどそんな事言ったらもっとむくれるからな。
つか、さっきまでチューチュー言ってたあのコはどこへいったの。
なんなら、こっちからしちゃいますか。
「亜弥ちゃん、こっち向け」
「ヤ」
「あややー」
「…」
「まややーたややー」
「……」
ちっ。軽く心の中で舌打ちして、最後の手段。
「亜弥、こっち向いてよ」
「……ん…」
ころん、と美貴の胸に飛んできた。
ゲンキンなコだよ相変わらず。
彼女を振り向かせるには、名前を呼べばいいと美貴は学習した。
何か、愛を感じるんだって。
まー呼び捨てなんてえっちの時か、美貴が甘える時ぐらいだけどさ。
- 447 名前:あい・らぶ・ハニィ 投稿日:2004/09/01(水) 19:44
-
「亜弥ちゃんって、美貴の事大好きなんだね」
「…そーだよ、悪いかよぅ…」
「いんや、安心する」
「…ホント?」
コクリと頷き、彼女の髪を撫でる。
サラサラで、つっかえのない綺麗な茶髪。
「……何度でもしてよ」
「え?」
「キス…」
何度でもするさ、亜弥ちゃんになら。
「目、閉じて」
「…ん…」
これから長い夜が始まりそうです。
何だかんだ言ったって、美貴も亜弥ちゃんに夢中。
マイ・ハニィだから。
FIN
- 448 名前:証千 投稿日:2004/09/01(水) 19:45
- 甘いのがかけた…のかな?
微妙すね。
- 449 名前:your eyes 投稿日:2004/09/01(水) 20:53
-
「ミキティ」
「何?」
「キスしていい?」
「ヤだ」
「何で」
「昨日したじゃん」
「今日してないじゃん」
突き出した唇を、つんと指で跳ね返された。
プチショックごとー。
「ガード堅いっすね」
「どういたしまして」
「こんにゃろ、こうしてやるっ」
「キャァァッ!?」
ミキティに襲い掛かる、猛獣と化したごとー。
そんな世界破滅的な可愛さを見せつけられたら止められないでしょ。
- 450 名前:your eyes 投稿日:2004/09/01(水) 20:58
-
「離し…っ…ンゥっ!!」
言葉を途切らさせ、唇を塞ぐ。
「ふっ…ンゥ…」
「色っぽいよぉー」
「うるさっ…あっ…んっ…」
何かを言われる前に、ごとーはさっさとミキティの服を脱がせた。
ああだこうだうるさくなるのはこれからだからね。
「やっ…やめてごっちん!」
「無理だね」
「やっ…なの!!本当にヤだ!!」
「…あ?」
彼女の頬に伝ったのは、涙だった。
あわわわ、泣かすつもりなんてなかったんだけど。
「ご、ごめ…」
「…っ…」
「あの…可愛くてつい…」
「もう…ヤだごっちんっ…」
これじゃ強姦じゃん。
泣いてしまったミキティを、そっと包むように抱きしめた。
- 451 名前:your eyes 投稿日:2004/09/01(水) 21:00
-
「…もう、しません」
「……」
「襲ったり無理矢理キスしたりしません…」
「…ほん、と?」
「うん。だから、許して?」
最後にはにっこり笑って、『許してやる』と頭をガシガシ撫でられた。
ホラ、その瞳。
ミキティの瞳は、ごとーを狂わせる魔性の瞳。
FIN
- 452 名前:証千 投稿日:2004/09/01(水) 21:01
- ごまみき。
無性に書きたかったんです。
- 453 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/02(木) 23:22
- あい・らぶ・ハニィ 超萌えました!
やっぱこんなん好きです。
- 454 名前:rina 投稿日:2004/09/03(金) 09:31
- 更新お疲れ様です。
ミキティに優しい(甘い?)ごっちん最高ですっ。
- 455 名前::名無し読者 投稿日:2004/09/03(金) 16:02
- ごまみき好きかも・・・。
- 456 名前::名無し読者 投稿日:2004/09/03(金) 16:03
- ageちゃいました・・・。
スミマセン!!
- 457 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 20:44
-
ひゅうっ
「ぐっ…さ、寒いっ……」
冬真只中、学校へ通う為自転車を必死こいて坂を登っている、普通の女子高生。
あたしこと、松浦亜弥です。
今日は偶然、いや毎日なんだけど…遅刻をしてしまいましてですね。
「あー…もう8時半じゃん」
またアイツの顔を見なければいけない。
憎らしい、あたしが唯一邪魔な存在として見ている奴が待っている。
- 458 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 20:50
-
「毎朝連続遅刻率100%の松浦さん、おはよう」
ムカツク。にっこり笑って遅刻済みサインをあたしに突き付けた。
「それにしても遅過ぎるんじゃない亜弥ちゃん」
「勝手に名前で呼ばないで」
「あーコワイ。そろそろ先生から呼び出しもらうと思うよ」
「うるさいなぁ、あんたに関係ないでしょ?」
「だって美貴、生活委員だし」
ホンット腹たつ。
こいつ、生活委員長の藤本美貴。
あたしと同じ同学年であり、違うクラス。
いつも憎らしい事ばかり言うからあたしは嫌ってる。
「あんたも早く校舎はいらないとダメなんじゃ…」
「そーだね、亜弥ちゃんが一番最後だったし。一番最後」
「…ウザッ」
その笑顔がムカツクんだっつの。
顔がめっちゃ綺麗なくせに、態度があたしにだけ裏腹。
- 459 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 20:55
-
「あ、ちょい待て」
「何っ」
ぐい、と腕を引っ張られたかと思うと、またニコリと笑う。
「三つ編み、ほどけてる」
「あ…別にいい…」
「ダメダメ、亜弥ちゃん顔は可愛いんだから」
「…どういう意味」
「そーゆー意味♪じっとしてて」
「あ…ちょっと…」
『顔』をわざわざ強調して言う所が更に腹たつ。
ふい、と委員長の顔を見上げると、またにっこり笑った。
…何気に髪結ぶの上手じゃん。
「ほい、これで元通り」
「あ…りがとう」
「ついでに性格も可愛くしておいてよね」
「ハッ?!」
「んじゃあ美貴は行くね」
「ちょっと待て!!委員長!!!」
ひらひらと手を振り、いつものスマイル。
分ってんだぞ、営業スマイルだって事ぐらい。
- 460 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 20:58
-
「…であるからして……」
理科の授業はつまらなさすぎる。
特に科学。あたしのツボからは遠過ぎる科目。
余りにも退屈で、窓から向こう側の教室を覗いてみた。
「…ゲ、なんで委員長が…」
向こう側の教室には、委員長のクラスが授業を受けていた。
移動教室で総合らしい。
…ヤなもの見ちゃったよ。
「…わ…」
目が合ってしまった。
途端に委員長は意地悪な笑みを浮かべ、手を振られた。
- 461 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:03
-
委員長は少しだけ窓を開けて、何かゴソゴソやってる。
何するつもりだよ。
「…な、何やってんのよ!」
「今そっちに投げるから、バレないようにね」
「え…うわっ」
その笑みを保ちながら、委員長は3m離れた教室から何かをあたしに投げた。
「…飴…?」
あたしに投げられた物は、委員長がくれた飴玉だった。
それに添えられた、1枚の紙切れ。
ヘンに思って委員長のほうを見てみると、また同じ笑み。
『 これ食べて目覚ませ、寝坊魔。
BY 生活委員長 藤本美貴 』
何でそうあたしの怒りを買うかなぁ。
ニヤリと笑った委員長は、急いで窓を閉めていた。
- 462 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:08
-
「ああーっ…もう!!!」
グシャグシャに丸めた手紙を、ゴミ箱に投げ捨てた。
ふざけるな。
あの意地悪な瞳と笑顔、あたしは絶対に許せない。
「何やってんの亜弥…あ、飴じゃん。頂戴」
「フンッ、あげるよこんなもん」
ちょっと優しい所あるじゃん。
なんて一瞬でも思ってしまったあたしのバカ。
食べたくもない飴玉をクラスメイトの高橋愛にあげてしまった。
「さっきさー、亜弥の委員長こっち見てたよねー」
「うん…って何さ亜弥の委員長って」
「だって亜弥、委員長のお気に入りじゃん」
「ハ…?冗談よしてよ、寒気がする」
「何でよ、結構いいヒトって評判だよぉ」
死んでもイヤだ。
あんな根性悪とあたしが何故噂になってるの。
大体あの位のビューティーフェイスがあるなら恋人ぐらいいるでしょうに。
- 463 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:12
-
あたしが…委員長のお気に入りねぇ。
トボトボ屋上を通り、音楽室へと足を運んだ。
音楽係であるあたしは毎日こんな寒い屋上を通らなければならない。
うわ。ヤな所見ちゃったし。
あたしが偶然屋上で目にした光景は、2人の生徒が煙草吸ってる現場。
別にどうってことはないけどさ、この学校なら当たり前だし。
でも女子高だからそういうインネンつけられやすいっていう……
「…おい、何見てんの?」
ギクッ。
別に凝視してたわけじゃないんだけど。
あたしは彼女達のいけない所に触れてしまったらしく、見事に恐ろしい形相で
睨まれた。
どうしよ。平常に見えるかもしれないけど結構怖かったりするんだよ。
- 464 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:17
-
「煙草吸ってんのがウザいって?」
「や、別にそんなんじゃ…」
「じゃあ何で見てんだよ」
「偶然じゃないですかね…」
「んだと…?」
変質者に痴漢された時より怖いかもしれない。
ヤバいよ、スッゲ−怖い。
「アウト♪セーフ♪ヨヨイの…あれ、亜弥ちゃん」
すっごい怖い。偶然にもアイツが現れた。
しかも変な歌を口ずさみながら。
「偶然だねー。そーそー、さっきの飴食べた?まこっちゃんにもらったんだけどさー…」
「おいあんた…」
「一緒にあった手紙読んだよね?感想聞かせて欲しいんだけどなー」
「おいってば…」
「つーかその大荷物は何?あ、そっか音楽係か…」
「おい!シカトすんじゃねぇよ!!」
「あい?」
アホ。
全く持って事態を理解しておらず、あたしの周りの状態は目に入ってない。
どこまでおちゃらけたやつなんだよ。
泣きそうなんだけど。
- 465 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:22
-
「なんすか?」
あたしと煙草を吸っていた先輩を見比べて、やっと理解できたらしい。
キッと目つきを変えて、すっげー態度。
何、あたしの事マジで助けてくれるわけ?
「随分な態度じゃん?」
「そーすか?先輩にはいつもこうっすけど」
「キャハハッ、冗談キツんじゃないの?」
「いや、あんたらにつく冗談ありませんし」
ちょっと、言い過ぎだよ。
逆に怒りをかわれたら、ヒョロいアンタじゃ勝ち目ないよ。
あたし、委員長と二人でボコされるしかないの!?
「ふざけんな?」
「…うわっ」
ぐい、と胸ぐらを掴まれた委員長。
これはもうダメだ。
諦めかけたその時。
- 466 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:25
-
「何か言う事ないわけ?アタシらに」
ああ、何か泣けてくる。
嫌いな委員長でも、あたしのせいでボコボコにされたら。
ごめん、委員長。
「…せよ…」
「あ?」
「離せっつってんだよ、テメェ」
あたしの耳に届いたのは、委員長のハスキーな低音ボイスだった。
目を覗くと、いつもの笑顔じゃない。
生活委員長、藤本美貴の顔じゃなかった。
- 467 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:29
-
「アァ!?ざけんなよっ…」
「おっと、暴力止めましょうよ」
「んだと…」
先輩が打った右手を、委員長は左手で避けた。
いつもの委員長じゃない、裏委員長が。
「先輩方、美貴とやってもどうせ勝てませんよ」
「…チョーシこきやがって、テメ−こいつと知り合いか?!」
「は、ハイィッ!?」
先輩が指差した先は、あたし。
委員長は驚いた顔であたしを見つめ、呆然とする。
ボーッとしてないで助けてよ
そう思うかさきに、先輩に手首を強く掴まれた。
「いった…っ…!!」
ドスッ ドォンッ
- 468 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:34
-
痛さに目をつぶった瞬間、何かが起きた。
反動で転んだあたしは目を開くと、とんでもない事が起きてた。
「亜弥ちゃんに触んじゃねぇよ、ボケ」
ハスキーボイスが、倒れている先輩二人に向けた一言。
裏委員長の実態、あたしは見た気がする。
「…ちょ…委員長…」
「保健室、行こう」
「え?」
「ケガしてる。早く」
「あ…ありがと…」
違う。
委員長じゃない、この人。
あたしさえも見た事がない、冷めた顔。
いつもの意地悪な笑みはなくて、ただ無の状態で赤く腫れたあたしの
手を摩って。
- 469 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:39
-
「…他に痛い所、無い?」
「あ、大丈…」
「……良かった」
保健室には先生がいなくて、包帯巻くのも委員長がやってくれた。
正直、委員長があんな人だと思わなかった。
だって暴力ふるえるような人間じゃないし、喧嘩とか嫌いだと思ってたから。
第一、何であたしなんか助けたのかわかんない。
「…委員長?」
「何?」
「…あん時のいいんちょー、怖かった」
「……そぉ?」
「何か…目とかキツくて、へらへらしてなくて…」
あたしの知らない委員長が、あんなに怖かったなんて。
何でこんなに委員長委員長って言ってるんだろう、あたし。
でも凄く気になってしまう。
強くて、怖かったけど格好良かった委員長。
「…ありがと、いいんちょーいなかったらあたし危なかったし…」
「いーよ、美貴が勝手にした事だから」
そう言って、委員長はいつもの意地悪の笑顔を見せた。
『亜弥ちゃんに触んじゃねぇよ、ボケ』
何でエコーかけてんだよ、自分。
別に気にしてないもん。関係ないもん。
- 470 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:45
-
「またあの先輩達何か言ってきたら、美貴にいいなよ」
「あ…でも…」
「亜弥ちゃんに何かあったら、生活委員長の名が廃るからね♪」
「な…んでよ!」
「だって遅刻魔がいなくなったら、美貴寂しいしー」
「え…?」
「毎日美貴だけ見られるじゃん、亜弥ちゃんの朝イチ」
どういう意味?
そう尋ねたかった。でも、悔しさと恥ずかしさが込み上げる。
何でよ。何でいじわる委員長にこんな事思ってんの?
「亜弥ちゃんいなくなったらさぁ、美貴生活委員降りるから」
「へ…?」
「亜弥ちゃんがいるから委員長までやってるんでしょが。にっぶいな」
「何で……?」
「何でって、答えは1つ」
意味わかんない、委員長。
「亜弥ちゃんは、美貴のお気に入りだから」
包帯を巻いた手首をそっと包まれ、ニコリと笑みを浮かべる。
- 471 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:49
-
「お、お気に入りって…」
「だから、愛の告白なんですケド今の」
「こっ、告白!??」
委員長が、あたしの事好きだって。
空白の、委員長のイタズラがあたしを思い出させる。
毎朝笑顔で、あたしに話し掛けてくれた。
それでもいじわるばっか言ってくる。
廊下で会えばまた笑って、手を振ってくれた。
それでもあたしはシカトしてた。
そんな委員長、あたしはいつの間にかいつも頭に入るようになってた?
「…じゃ、じゃあ何であたしにヤな事ばっか…」
「面白いんだもん、からかい甲斐がある」
「…っ…でもっ…」
「好きなコには意地悪したくなるんだよーだ」
んべっ、と舌を出して笑ってみせた委員長。
あぁ、もうダメじゃんあたし。
- 472 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 21:55
-
「…付き合ってあげても、イイよ」
「ハイ?」
委員長の事、好きだよ。
ストレートで真直ぐしてる委員長が、好き。
「あたしだけ、だよね…?」
あたしだけ、守ってくれる委員長。
あたしだけ、意地悪する委員長。
あたしだけ、見てくれる委員長。
あたしだけ、毎朝遅刻チェックしてくれる委員長。
「…誓うよ、委員長の名に誓って」
意地悪な委員長の笑顔は、優しい笑顔へと変わっていた。
保健室のベッドのうえで、静かに唇が重なった。
- 473 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 22:04
-
それからそれから、委員長とあたしは交際を始める事となった。
「3・2・1……タイムア−ップ」
「…ウッソォー…」
いつものように、委員長から遅刻済みチェックを受ける。
あーあ、今日で100回目じゃん。
「随分ポイント給ったね亜弥ちゃん」
「べっつに嬉しくないし…」
「委員長の特権で減らしてあげてもいいんだけど?」
「マジで!?委員長ってそんな事できんの!??」
「ウッソ−。できる訳ないじゃん、バーカ」
相変わらずの、意地悪委員長。
軽く頬をぺちっとやられ、キスをされた。
「ちょっ…委員長!?」
「ほっぺ、冷たいね」
「い…」
「美貴があっためてやろう」
「へ…?ってうわぁっ!!」
ニコニコ笑いながら、あたしは委員長の胸に納められた。
着ていたコートをあたしに着せて、頬をそっと撫でられる。
「…いいんちょー、校舎はいらなくていいの?」
「その前に、いっぱいキスしてから…ね?」
「……ばぁか」
今年何度目かの、雪が降る。
あたしと委員長を覆うように、冷たい雪が降り続ける。
- 474 名前:ゼロ=ラブ 投稿日:2004/09/03(金) 22:08
-
校舎に入るまで、あたしと委員長は何度も唇を重ねた。
あともう少し、あとちょっと。
委員長がそう言って聞かず、結局二人して先生に怒られる羽目に。
「ー…いいんちょーがしつこいから」
「だって学校の中じゃ出来ないし」
「じゃああたしの家来る?」
「何、誘い受けしたいの?」
「バッ…死ね!!」
「うわ、酷」
えっちぃ委員長は放っておいて、脇腹をパンチして廊下を駆け抜けた。
いつからなんだろう、ゼロの気持ちから愛に変わったのは。
FIN
- 475 名前:証千 投稿日:2004/09/03(金) 22:11
-
あやみき。甘いんだかわかんねーっす。
>453様 わがままな亜弥ちゃんはみきたんにしか宥められません笑
ありがとうございます
>454様 エロは苦手なんです。優しいごまは自分もすきでございます。
rina様の作品も自分は楽しみにしています!!
>455様 ageは気にしてないので全然平気ですよ。
ごまみきは読むと癖になりますので、お勧めです。
少なくとも私の駄文以外です。以外。
- 476 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/03(金) 23:58
- カァ〜ッ!ペッ!カァ〜ッ!ペッ!
甘ぁ〜い!甘すぎます!
綿菓子もビックリなぐらいの甘さだよ!w
でもなんかいいなぁ〜ほのぼのしてて。
- 477 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/04(土) 02:06
- 委員長かっこいいっす!!
続きが呼んでみたいな〜ってw
- 478 名前:証千 投稿日:2004/09/04(土) 10:07
- 委員長のおよびを頂くとは…
お呼びでないと思っていた私、光栄です。
>476様 お菓子にも勝る甘さ。それはあやみきなんですねw
ありがとうございます!
>477様 続きをちまっと書いてみようと思います。
続編希望、大変光栄です。
- 479 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 10:14
-
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「委員長ぉーー!!!」
「…ん?亜弥ちゃん」
やっと来たか。
という感じであたしは学校の門に立っている委員長に駆け寄った。
「ハイ、今日も遅刻ね」
「…分り切ったように…」
「だってそうじゃん。早く校舎はいろ」
「うん!」
委員長とはいつも、一緒に校舎に入っている。
あたしが遅刻するからできる事なんだけど。
冷たく冷えたあたしの手を、委員長があっためてくれる。
「んじゃ、バイバイ」
「うん、ばいばーい」
委員長とは、クラスが違う。
今になってから一緒のクラスがよかったかなぁなんて思える。
アハハ、付き合う前はダイッキライだったからね。
「愛、おはよう」
「おーはよう」
「…あれ?今日、まこっちゃんは…」
「もういいのソレは。言わないで」
「…何で?」
「……別れてやる、あいつとなんか」
「っは!?何で!」
「……浮気すんだもん」
あたしの友達高橋愛の恋人、小川麻琴ことまこっちゃん。
そのまこっちゃんと愛が、喧嘩をしたらしい。
といっても、愛の一方的な思い込みのせいで。
- 480 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 10:19
-
「う、浮気?」
「…だってあさ美ちゃんとくっつきすぎなんだよ」
「そりゃ…同じクラスだし」
「昨日なんか一緒に帰ろうって言ったらさ、あさ美ちゃんと
約束しちゃったから、ごめん。だって!!!」
「それは先約があさ美ちゃんであったから…」
「それでも浮気は浮気なの!!」
ずいぶんと御立腹な愛。
まこっちゃんが浮気するような根性があると思えない。
確か委員長と同じクラスだったような。
…ちょっと聞いてみよう。
「ミッキティー、亜弥ちゃんが呼んでる」
「ほぇ?」
アホ面でポッキーか何か食べながら、いつものスマイルをひっさげて
あたしの元へやってきた。
「どーしたよ、珍しい」
「…あのさ、まこっちゃんの事、聞きたいんだけど」
「何故に?」
「……あさ美ちゃんとまこっちゃんがね…」
「ふんふん」
静かに、周りに聞こえないように委員長の耳元で説明。
- 481 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 10:25
-
「まこっちゃんが浮気してるってぇ!????」
「バカッ声が大きい!!!!」
委員長のバカ。クラス全員の人に聞こえるような大声で喋りやがった。
わざわざ耳元で喋った意味ないじゃん!!
「ふ、藤本さん……?」
「おいおいまこっちゃん、浮気はダメだよ浮気は」
「わ、私浮気なんてしてな…」
「ウソを言いなさるな、愛ちゃんが可哀想だよ」
「いや、だから…」
「ちょっと委員長黙ってよ!!」
「ウグッ」
べらべらと喋り捲る委員長の腹を殴り、まこっちゃんをなだめる。
まこっちゃんは恥ずかしさと情緒不安定さでおどおどしていた。
「あのねまこっちゃん、あさ美ちゃんとの関係なんだけど…」
「浮気とかそんなんじゃないのに…愛ちゃんが勝手に勘違いしてるんだよぉ…」
「でも一緒に帰ったって…」
「それはあさ美ちゃんが具合悪くて、私保健委員だったから連れて帰った
だけだよぉ」
「…ああ、そういう事」
意外に下らない理由だったのね。
そっと肩を撫で下ろした瞬間、あたしの背中に張り付いた人物。
- 482 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 10:31
-
「いってーじゃんかーぁ…」
「…委員長…邪魔」
「いい匂いすんね、亜弥ちゃん」
「エロいんだよバーカ。じゃあね」
「いやいやちょっと待ってよ、お話しようよ」
ああ恥ずかしい。
委員長のクラスの人にヒューヒュー言われてああ恥ずかしい。
そういうの全然気にしない委員長だから、困る。
- 483 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 13:20
-
「亜弥ちゃーん、一緒に帰ろー」
「あ、ちょっと待ってて」
やっとこで授業が終り、委員長が迎えに来た。
まだポッキー食べてる。
大体生活委員ならそんなもん学校に持ってくるなよ。
今日日直だったあたしは、日誌を書き残していた。
「アレだったら、先帰っていいよ?」
「いや、亜弥ちゃんと帰りたいからいーよ」
「…そ…」
あたしの後から覆い被さるように日誌を覗き込む委員長。
こんな時はいつも優しく、あたしを待っててくれる。
「…委員長ってさ、ちゃんと名前あるんだよね」
「え?そりゃあそうだよ」
「何か…委員長って定着しちゃってるし」
「アハハ、そう言えばそうだね。美貴もそっちのほうがいい」
「そう?」
「うん。生活委員、好きだからね」
あたしは、委員長の事を出来れば名前で呼んであげたい。
そう言った事もあったけど、委員長は委員長なんだから。
ってよくわからない返答をされた。
- 484 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 13:25
-
「じゃ、帰ろうか」
「うん」
日誌を書き終え、先生に提出して下駄箱へと急いだ。
朝も一緒、帰りも委員長と一緒。
なんか最近は、これが日常になっちゃってる。
「……ん、何コレ」
下駄箱の扉を開くと、一枚の手紙。
首をかしげていると、後から委員長の声。
「何、これ」
「わかんな…あ、ちょっと!!」
「…ふーん、ラブレターねぇ」
「ふぇ!??」
ラブレタ−。
それは愛の告白を意味する手紙。
ソレがあたしの下駄箱に入っていたという事は。
委員長はあたしからラブレターを奪い取り、まじまじと見つめてる。
- 485 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 13:30
-
「亜弥ちゃん、人気者だねー」
「べ、別に…」
「で、どうすんのこれ」
「え…」
「美貴が何か言う事じゃないし、どうすんの?」
もしかして。委員長、拗ねてる?
ムッとした表情で、ローファーを履いてる。
もしかしてもしかしたりするの?
「…どうするのかは、亜弥ちゃんが決める事だし…」
そんなの、もう答えは決まってるのに。
「…ぶぁーか。受け取らないよ、ラブレターなんて」
どんっ、と委員長を後から抱きしめた
- 486 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 15:12
-
「いいんちょー、拗ねてるでしょ?」
「や…そんなんじゃないけど…」
「ふふっ、心配してんでしょぉ?」
「…だって取られたらヤだし」
「へ?」
「亜弥ちゃん可愛いから、他の奴に取られそうなんだもん」
ちょっぴりムッとした顔で、ほっぺが赤くなってる委員長。
こんな悔しそうな表情、初めてみたかも。
なんか、あたしの特別っぽいじゃん。
「取られたら、取りかえすけどさ」
「アハハッ、いいんちょー怖っ」
これでこそ、あたしの委員長。
ちょっと意地悪だけど、すんごく優しい委員長。
- 487 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 15:18
-
「ねー、委員長」
「ん?」
少し立ち止まって、委員長のブレザーの裾を掴んだ。
あたしがこんな事したら、どういう反応するかな。と思って。
何にも言わないで、上目遣い。
「…んな事されたら、襲っちゃうよ?」
「死ね」
「うーわ、性悪だ」
「もうっ…いいんちょーのえっち!!」
「ふははっ、すいませんでしたー」
やっぱり、いつもの委員長。
あたしが何を言いたいのか分ってるくせに、わざと。
ホントはさ、キスしてって言いたかった。
「亜弥ちゃん」
「何っ」
委員長の綺麗な顔が、すぐ近くにあった。
意地悪な委員長は、不意をついてあたしの唇を奪った。
- 488 名前:委員長の使命 投稿日:2004/09/04(土) 15:25
-
「ふふっ、大成功♪」
「…むかつくなぁ」
「そんな事言って、抱きしめられてるくせに」
そうだよね、とことん憎めない委員長。
何されたってあたしは結局、受け止めてるんだから。
「いいんちょー」
「何?」
「もっかい、して?」
「…了解」
委員長のキスで、あたしはどうにかなっちゃいそう。
いつの間にか好きになってて、夢中になってる。
これからも、ずっと。
FIN
- 489 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/04(土) 17:03
- なぁ〜っ!!!!甘い甘い!甘納豆!!
もう痒くってボリボリかいちゃいましたよ!w
悶え苦しみながらポワンポワンポワンと酔ってしまいましたw
どんどん次から次へと欲しくなる・・・あやみきって癖になりますねw
- 490 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:02
-
恋という名の花が枯れた夜、何かが起きた。
「えぇっと、今夜からお世話になります」
ペコリと一礼して、ニコリと笑った天使。
何だかコイツと、うまくやっていけそうな気がした。
- 491 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:06
-
ジリリリリリリリリリリリ
「あの、松浦さん」
「…んー…」
「朝なんですけども」
「……」
率直に言えば、役立たず。
その役立たずが、あたしの元へやってきたのはつい最近だ。
「んっ…あぁっ…」
「おはようございます」
「…おはよ」
自称天使見習い、美貴。
名字などなく、只の美貴だそうだ。
- 492 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:09
-
「朝食、出来てますんで。ゆっくり入浴へどうぞ」
「うん、ありがとう」
パシリみたいだって?
まあそうなんだけど。
これがあたしの日常。
つい3ヶ月ぐらい前からの、普通の日常。
この天使との出会いは、かなり運命的なものだった。
- 493 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:13
-
失恋という、屈辱。
最初で最後の恋は、錯覚だった。
あっけなく別れてしまった最後に唇を噛み締め、独りクリスマスを充実。
できているわけがなかった。
クリスマスツリーを憎らしく見つめ、外の雪を眺めて。
しゃんしゃんしゃんしゃん
『…何、この音…』
幻聴。そう言い聞かせて、鈴がどこかで鳴る音を誤魔化す。
でもその音は何度も続いて、イライラが募っていた。
パリーンッ
『キャァッ!!!』
『いっつぅ…っ…』
ベランダから、窓が割れる強烈な音。
青白い光が放たれた先には、真っ白のスーツを纏った人らしき物体。
- 494 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:18
-
頭を摩って、えへへと笑っている人らしき物体。
何何だよ、人の家で。
意外にも冷静だった自分に驚きながらも、人らしき物体を凝視していた。
『…あ、すいません。窓割っちゃいまして』
『あ、アンタ…誰っ?』
『えーと、天界から来た使いの者です』
『て、天界……?』
こいつ、人間じゃない。
正座して頭をかき、へらへら笑ってる。
だいたい高層マンションからどうやって来たんだ。
『あのですね、美貴は松浦さんを助けに来たんです』
『…ハ?』
『松浦さんの、恋を実らせるのが美貴の使命で…』
『ハ?』
『いやだから美貴、天使の研修に来たんですよ』
天使なんて空想上のお話。
でもそれは実際の出来事だった。
- 495 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:24
-
『お役にたてるように、頑張ります♪』
『あ…そう…』
気が着けば、長い月日が経っていた。
五ヶ月という期間付きで、あたしの恋を実らせる為にやってきたんだという。
今月で3ヶ月目だというのに、全く恋の予感はない。
「…すいません、全然ピンと来ないんですよ」
「言い訳だよね、それって」
「ごめんなさい」
…そんな顔されちゃ、憎めないってもんよ。
別にこいつが嫌いなわけじゃない。
意外と頭の回転早くて、気が利くいい奴。
なんだけどさ…。
「…アンタさぁ、ニセモノじゃないでしょうね」
「え?」
「だから、アンタ本当に天使?」
「天使っていうか、天使みなら…」
「ハァ…だったらさっさと恋人探してよ」
「あ…すいません」
馬鹿・アホ・ドジ・間抜け・役立たず。
一緒に暮らしてて5拍子そろうこいつの性格が判断できた。
- 496 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:30
-
「美貴、3回も天使試験落ちてるんですよ」
「うん」
「だから松浦さんの恋を実らせないと、美貴に明日はないっていう…」
「うん」
「できるだけ頑張るんで、よろしくお願いします♪」
「……ハァ」
溜め息ばかりがあたしを責める。
所詮、こいつに罪はないんだよね。
「あたし、今日買い物行くけど…アンタも行く?」
「はい!行かせて頂きます!」
あたしと行動するのが余程嬉しいんだか知らないけど。
まあ、荷物持ってくれるしいいか。
「わぁ、素敵です松浦さん」
「…そーかな」
「可愛いです!」
なんか、恥ずかしいんだけど。
この間買ったスカートを履いて出かけようとしたら、こいつが
いちいち感想をつけてくる。
いつもそうだ。『似合う』やら『素敵』やら。
- 497 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:35
-
「…あんた、普通にしてればモテるのにね」
「え?」
「スタイル良いし、顔はまあまあだし。人間に生まれてれば
幸せだったと思うよ」
「今でも松浦さんに仕えて幸せですよ?」
「あ、そう」
いくら天使だといえ、他の一般人には姿が見えてしまうわけで。
色々と服を買って、似合うやつをいつも着させる。
勿体ないしね、こんなにカッコイイ外見だもん。
ジーンズに黒のトレーナー。
似合い過ぎるんだけど、人間じゃないからなぁ。
「…天使ー、あたしのネックレス探して」
「はいはーい」
こんな時、この天使は役に立つ。
静かに目を閉じて、手を翳す。
- 498 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:41
-
「……えーっと、洗面台の2番目の棚の奥です」
「そ、ありがと」
「いえいえ」
コイツには、無くした物がどこにあるのか分る能力がある。
他にもちょっとした魔法っぽいのとか、物を空中浮遊させるとか。
「あ、美貴がつけたげます」
「うん」
鏡を見て、天使はネックレスを付けてくれる。
何から何まで、お節介なくらい。
「あははぁ」
「な、何ですか?」
「だって、鏡に写らないんだもんね、アンタ」
「あ…そういえば」
天使は鏡に写らない。
人間の瞳にしか、見据えられないものなんだって。
- 499 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:48
-
「あちゃ、雨降ってきちゃった」
「あー…どうします?」
「ううん、行く。アンタは家で待ってる?」
「いえ、松浦さんにお仕えします」
『お仕え』ねぇ。一緒に行きたいんだか、一緒に行かなきゃ
いけないんだか、たまにいらつく時がある。
水色の傘を広げ、雨の町を歩き出す。
「あ、美貴が持ちます」
「いいよ、別に」
「ダメです。もっとこっちに寄らないと濡れますし…」
「あ…うん」
なんか、恋人同士みたい。
何でもエスコートしてくれて、馬鹿だけどそれなりに優しい。
あたしの肩を抱いて、傘を持ってくれた。
…相合い傘じゃん。
「…アンタ…ここどうしたの?」
「あー、包丁で切ってしまいまして」
「消毒、した?」
「いえ」
「馬鹿…痛くない?」
「いえ、平気です」
とっさに赤い傷を見つけたあたしは、何気なく手をとってしまった。
- 500 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/04(土) 19:51
-
「あったかいです、松浦さんの手」
「…そう、かな」
「美貴が冷たいんですよね、あははっ」
ぽぅっと頬が赤くなるのを感じた。
くっと手に冷たいこいつの手が伝わる。
「手、離してよ」
「えー、寒いんでこのままでいいじゃないですか」
「…ま、いっか」
「やったぁ」
無邪気っていう言葉はこいつにお似合いかもしれない。
純粋すぎるから、詐欺にでもあったら大変なやつだ。
- 501 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/04(土) 23:30
- 天使見習いの人が可愛らしすぎます。
- 502 名前:477 投稿日:2004/09/05(日) 00:48
- 続編ありがとうございます。
見習いさんがかわいいですね。
試験に受かるといいですね。
- 503 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 10:20
-
「よ、おねーさん」
「…?」
来た。町を歩いていると、必ずと言っていい程男に声をかけられる。
何故なのか…理由は知ってるんだけどさ。
まぁ、あたし結構可愛い方なんだよ。
「…何か用ですか?」
「あ?アンタ彼氏?」
「…いえ、違います」
「じゃ黙っててくれる?」
「松浦さん行きましょう」
「…あ…」
やっぱり。この天使、男に見間違えられてる。
ナンパ男を避けるには、この天使を連れて行くのが一番。
キッと相手を睨み、あたしの手を引いた。
「人間界は面倒臭いですね…全く」
「そう、かな?」
「松浦さん、可愛いから危ないんです」
「…もしあたしがあの人に連れていかれてたら、どうする?」
「もちろん、助けます」
「……何でよ?」
「お仕えして…」
「あっそう」
あくまでも、仕事としてあたしを守ってるだけ。
新しい恋人を見つけて、実らせるのが天使の仕事。
なんでだろ、わかんないけどムカツク。
- 504 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:09
-
「……美味しいですか?」
「うん、美味しい!」
「あは、それは良かったです」
買い物で疲れた胃を、天使が作った晩御飯で癒してくれる。
どこで料理習ったんだか知らないけど。
お袋の味みたいな、懐かしい料理を毎日作ってくれる天使。
あたしが美味しいと言うと、すごく嬉しそうな顔をする。
「…これ、食べられるのもあと2ヶ月なんだね」
「そういえば、そうですね」
「料理しか取り柄ないしね、アンタ」
「アハハッ」
役立たずなんだけど、必要かも。
2ヶ月の間、恋人が見つかるといいんだけど。
- 505 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:21
-
天使研修に来て、3ヶ月が経った。
3回も試験に落ち、落ちる所まで落ちた美貴。
今度こそ。と思い立ってやってきたのが、松浦亜弥さんのお家。
可哀想な事に、松浦さんはクリスマス当日に恋人と破局してしまいまして。
こんな素敵な方なのに、恋は枯れてしまったんです。
美貴は自ら松浦さんを選び、天界からやってきました。
そう、NEXT LOVEを探し出す為に。
美貴は松浦さん曰く、美貴は役立たずで鈍感。
得意なのは料理だけだと言う。
ああ、早く一人前になりたい。
- 506 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:26
-
初めて松浦さんを見た印象は、とても素敵な人。
とっても可愛いんです。
でも、ちょっと冷たいクールな人。
それでも本当は優しくて、あったかい人だということが分りました。
美貴が人間だったら、松浦さんを選んでいるのですが…
いやいや、そんな事考えてはいけないのです。
いくら素敵でも、美貴は恋を実らせるためにやってきたのだから。
その…変な気持ちを持ってはいけないわけなんです。
- 507 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:31
-
「…早く恋人さん、見つけなきゃなぁー…」
松浦さんの寝顔を拝見して、独り言を呟く。
とても幸せそうで、かわいらしい寝顔。
松浦さんの恋人は、どんな人になるんだろう。
本来ならそういう事を考えてさっさと適材適所の方を探さなきゃいけない。
でも、美貴はそれができずにいる。
いけない感情を、持ってる。
サラリと滑らかな髪を撫で、静かに笑みがこぼれる。
起こさないように、そっと。
その横に寝そべって、目を閉じた。
早く、朝が来ますようにと。
- 508 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:37
-
「…ふぅ」
「どうしたの、溜め息なんかついて」
「…いえ、何でも」
やはり、ダメです。
昨夜の物思いがまだ残って、マトモに松浦さんを見られません。
朝食を食べる手も遅いです。
「……美貴、一度天界に戻ります」
「え?」
「戻ると言っても、すぐ帰ってきますんで」
「…何で、帰るの?」
「あー…うー…試験の書類手続きをしなきゃいけないので」
「ああ、そう」
ふぅ。
なんとも変なウソをついてしまいました。
今この現状で、美貴は松浦さんを援護する事は無理。
一度頭を冷やし、松浦さんへの想いを打ち消さないといけないのです。
- 509 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 14:40
-
「…では、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい。いつ戻るの?」
「えぇー…あー…松浦さんが呼べば戻ります」
「フフッ、へんなの」
「あは…あははは…」
ベランダから天に飛び立ち、松浦さんに振り返った。
手をふって、笑っている。
素敵すぎる笑顔で。
ああ、ドキドキしてしまいます。
- 510 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:37
-
ああ、肩が重いです。
「…あ、美貴ちゃん!!」
「……梨華ちゃん?」
天界に戻った美貴を一番に見つけたのは、同じ研修生の梨華ちゃん。
彼女は頭良くて、天使試験を初めて受ける美貴の後輩。
「急に戻ってきて、どうしたの?」
「え、あー…暇潰しに…」
「え?松浦亜弥って子はもう…」
「あああああああれはまだ……」
当然、優秀な成績の梨華ちゃんはキューピッドを勤め終えた。
美貴は3ヶ月かかっても松浦さんに恋の気配さえあげられてない。
…情けないなぁ、美貴って。
後輩に追いぬかされるわ、役立たずだわ。
「天使試験、受かるといいね…」
「え?だって美貴ちゃんも受けるんじゃ…」
「…どうせ落ちるよ美貴なんて」
「そんな事ないよぉ」
「…何で?」
「え…そ、それは…」
言葉につまる梨華ちゃんは困惑する。
ほらね、美貴の天界での得意な科目なんかありゃしない。
「と、とりあえず…せっかく帰って来たんだし、遊びに行きましょうよ」
「…そうだね…」
「ほらっ、ポジティブポジティブ!!」
「…アハハ」
梨華ちゃん、失礼だけどキショイ。
ああ松浦さん。美貴はどうすればいいのでしょう。
- 511 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:40
-
「…あーあ、行っちゃった」
ガラでもなく、急に寂しさを感じた。
別に、あいつがいなくなったからではない。
むしろ嬉しく思っていいはずなのに。
天界に書類手続きねぇ…また試験に落ちたら元も子もないじゃん。
シーンとした部屋。
こんな空気、あの天使が来る前からなのに。
アイツがいないだけで、何かつまんない。
邪魔だなぁって思った事あるけど、やっぱ面白くない。
…何でだろう。気になってしょうがない。
「……友達誘ってどっか行こうかなぁ」
携帯を片手に、友達2〜3人にメールを打った。
- 512 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:42
-
友達は快く承諾してくれて、後2人男友達を連れてくるらしい。
久しぶりにゆっくりできる一時を楽しもうと心踊らせる。
カラオケで何歌おうか、とか考えて。
- 513 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:45
-
「…………」
カラオケでリストページを適当に捲り、何かを考えていた。
ぼうっとして何も頭に入らなくて、只アイツの事が過る。
今頃天界で何してんだろう。
たった3ヶ月いただけなのに、それ以上の存在が通過する。
「…亜弥?どうしたの?」
「…へっ?」
「何か、顔赤いよ…?」
「そっ…んな事ないよ。さ、歌お歌お!!」
不覚。だなぁ。
何でアイツの事で照れなきゃいけないのよ。
勝手にそんな事思ながら、マイクを手にした。
- 514 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:50
-
「…な、あの子なんて言うの?」
「え?亜弥だけど…」
「ちょっとオレに貸してくれない?」
「や…でも…」
「いーよ、オレが行ってくるから」
友達の連れの1人が、あたしの横に座った。
「ね、この後暇?」
「え…あたし?」
「うん」
「そうだけど…」
「んじゃさ、ちょっと付き合わない?」
「え…」
「さ、行こっか」
言われるがままに、あたしは何も考えずに男に手を引かれた。
頭ではイヤだと分っていても、体が拒否できない。
何で?
こんな時なら、いつもアイツがいたのに。
- 515 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:53
-
「……む?」
「どうしたの美貴ちゃん?」
誰かが、何か言ってる。
梨華ちゃんと二人だけで七並べをしている途中、不可解などよめきが起こった。
何だろう、この気持ち悪い感覚。
「…気のせいかな…」
「なにか聞こえたの?」
「うん、女の子の…」
……松浦さん?
んなわけないか。
今頃、役立たずの美貴がいないから清々して休日を楽しんでるに
違いない。
空耳だよ。空耳。
- 516 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 16:58
-
「…ねぇ何処行くの?」
「いいからいいから」
「……やっぱあたし戻…」
公園のベンチに、押し倒された。
人気のない静かな公園。
男はあたしの手をしっかり掴んでいて離さない。
何で……?
怖い。怖いよ。
怖いのに声が出なくて、どうする事も出来ない。
「…なっ…」
「黙れよ、そのつもりでついて来たんだろ?」
「ちがっ…」
「ヤる以外に何するっていうんだよ」
やっとの事で出した声は、声にもならないか細いものだった。
途端に涙が溢れて来て、何も抵抗できない。
「っ…美貴!!助けてぇっ!!」
- 517 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:00
-
「………誰?」
怖いよ。って、誰かが言ってる。
美貴が知っているような、あの声。
「……松浦…さん?」
助けて。
「っ…美貴ちゃん!?もう帰るの!??」
「松浦さんが呼んでるんだ!!」
「えぇっ!?」
「助けてって…怖いって言ってるんだ!!」
何があったの。
松浦さん。松浦さん。
何か起こったんだ、松浦さんに。
こんな事なら天界に行くなんて言わなければよかった。
- 518 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:04
-
「いっ…やぁっ!!!」
「静かにしろよ!!」
「美…貴っ…助けてよよぉっ!!」
涙で視界が掠れてゆく。
もう、このまま強姦されるしかないのかな。
「……っ…ま…さ…ん!!!!」
空の上から、声がする。
鼻にかかった声で、優しく語る声。
「おいっ、どけっ!!!」
「なんだお前っ…グァッ!!!」
美貴。
息を切らして、あたしに馬乗りになっている男を蹴りあげた。
- 519 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:11
-
「美…貴!!!」
「松浦さん!」
男が倒れた後、天使はあたしに駆け寄り抱きしめた。
溜まりに溜まった涙を、天使の胸に零した。
「…すいませんでしたっ…目を離したばっかりに…」
「怖っ…かったぁっ……」
「…もう、大丈夫です。美貴がいますから」
ぱっと胸から離されて、にっこりと笑った天使。
その笑顔を見た瞬間、また涙が出てくる。
「…っ…てぇっ…んだよてめぇ!!」
「松浦さん、逃げますよ!!」
とっさに天使はあたしを抱きかかえ、宙に舞った。
いわゆる、お姫さまだっこ。
「…ちょっ…」
「落ちないように掴まってて下さいね」
空の上から見下ろした夜の町は、とても綺麗だった。
空を飛ぶ鳥の気分が分ったような気がする。
- 520 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:17
-
マンションのベランダに降り、同時にあたしも地に降ろされた。
「ごめ…んなさい」
「え?」
「…心配、かけたよね?」
「だからって謝らないで下さい。美貴が目を離してたのが悪いんです」
「…わ…」
手を引かれ、天使の胸に引き寄せられた。
2度目の、抱擁。
「…松浦さん、聞いて下さい」
「……何?」
「……美貴、2度と人間界にはいられません」
「な、何で?」
「…先程、あの男に飛ぶ姿を見られてしまいました」
「…それが、いけない事なの?」
「はい。特定以外の人間に浮遊する姿を見られてしまいましたので
掟により美貴は…人間界から追放されます」
「でもそれはあたしを助けようとして…」
「美貴が誰よりも尊敬している神が定めた掟です。
破るわけにはいかないのです」
あたしのせいで、美貴はいなくなってしまう。
あたしが美貴を困らせるような事をしたから。
- 521 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:23
-
「やだっ…やだよ!!」
「松浦さ…」
「だってまだあたしの恋実らせてないじゃない!!」
「………」
「まだっ…使命果たしてない!!!」
「…すみません」
「……あやまんなくていいよっ…」
何でこんなにも悔しいの?
美貴がいなくなれば、あたしは生きてる意味なんてない。
そう考え出したのはつい最近の事じゃないから。
あたしは、この天使が好きなんだ。
「…っ…美貴だって、松浦さんと一緒にいたいです」
「……え?」
「怒られてばっかだけど、本当はすごく優しい松浦さんと
ずっと一緒にいたいです。
5ヶ月なんかじゃなくて、ずっといたいんです」
「…美…」
「松浦さんの事、愛してるんです」
「美貴…」
「だから…ずっといたいんです、一緒に」
いようよ、一緒に。
そう口にすると、天使は再度あたしを抱きしめた。
これが永遠のサヨナラだと、気付かせるように
- 522 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:36
-
目を開けば、すぐそこに。
貴女の幸せがまっている筈だよ。
「朝、ですよ」
赤く腫れた瞳を開けると、そこにはあいつがいた。
何で、いるの。
「なっ…アンタ…ッ…何やってんの!???」
「や、御飯作ったので…」
「だって…アンタ天界に帰ったんじゃ…」
「アハハ、それがー……」
天界に帰った美貴は、神に指令を受けた。
『まだあの少女は幸せにはなっていない。
たとえお前が天使でなくとも、使命を与えられたのはお前だ、
彼女を幸せにするまで天界には戻って来てはならぬ』
「というわけで…美貴、天使じゃなくなったんです」
「…って事は……」
「あー、人間にされちゃいました。罰として」
あの時の、あたしの涙はなんだったの。
永遠の別れだと思い込んでいたあたしの立場は何。
- 523 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:41
-
「いやぁ、天使職は失ったんですけど人間界で人生やり直せって…
神は本当に良い方です」
「……っの馬鹿!!!」
「え?」
「あたしがどれ程悲しんだかわかる!??」
「あ…えーと…」
こんなに愛してるんだ。
「…あわわ、泣かないで下さい松浦さぁん…」
「っ…うぇぇっ…」
「美貴が悪かったです。勝手にあんな事言って…」
「…もうっ、どっか行ったりしないでよ…」
「はい」
「あたしをっ…1人にさせないでよぉっ…」
「ハイ」
「美貴は、一生松浦さんの傍にいますから」
「…お仕えするんじゃないの?」
「いえ、天使じゃないので」
「…じゃあ…」
「愛してるって事です♪」
あたしの恋は、天使によって実りました。
変な話、元天使か。
- 524 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:44
-
「えぇと…んーと…」
「…?」
「あの、失礼します」
そっと腰を抱きとめて、唇に触れた温かいもの。
恋が愛に変わった、印。
「…ごめんなさい、松浦さんが余りにも可愛かったもので…」
「……敬語、やめて…」
「え?」
「名前で呼んでよ、亜弥って」
「え!???」
「…だって、もう天使じゃないんでしょ?」
「あ…う…」
キスはできるくせに、名前で呼ことが出来ないなんて情けない。
- 525 名前:天使のみつけかた 投稿日:2004/09/05(日) 17:50
-
「あ…あ…や……」
「聞こえないんだけど」
「…亜……弥…ちゃん」
なーんか、情けないなぁ。
「…にゃはは。まぁ、いっか」
「…うわぁっ…」
首筋にそっとキスをしたら、美貴は顔を赤くして肩を跳ねた。
「ご、御飯…作ったんで食べましょう」
「だから敬語…ま、いっか…」
あなたの隣にも、天使はいるはず。
優しい天使、意地悪な天使、怒りっぽい天使。
どれもみんな、私達人間に幸せを齎す天使。
ほら、そこにも。
FIN
- 526 名前:証千 投稿日:2004/09/05(日) 17:52
-
ふひぃー。最後だけ微甘。
>501様 結局天使は…結末だけ甘いっていう(笑
>502様 藤本さんは亜弥ちゃんだけの天使です。
ああ恥ずかしいww
- 527 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/05(日) 20:43
-
「…可愛いなぁ」
「え?」
「松浦、亜弥。チョ−可愛い」
「ああ、もう目付けたの?」
「いぇす。目ざといっしょ?」
「…あはは」
目指すは恋人。
絶対、彼女のハートをゲットしてみせます。
春が奏でる、愛の予感。
- 528 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/05(日) 20:48
-
「もう、ヤッベ−」
「は?」
「可愛すぎんの、あの子」
「友達までかこつけたの?」
「いや、会話した事ない」
「え」
「大丈夫、自信大アリだから」
親友のごっちんに豪語してしまったし、引き下がるわけにはいかない。
あの可愛い瞳を、美貴色に染めてやる。
スタスタを可愛い彼女に近付き、目の前に立ちはだかる。
「付き合ってクダサイ」
「…え?」
「3年4組、藤本美貴。君の事、好きなんです」
ドキドキ。ドキドキ。
「ハイ、あたしでよければ」
「……マジで?」
「デジマ」
「マジデジマ…って。アハハッ」
「ニャハハァ」
意外にも、彼女は簡単に告白をオーケーしてくれた。
- 529 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/05(日) 20:55
-
「みきたん、ウソ付かないで答えてね」
「は、ハイ」
「昨日の夜、何処で誰と何してたのかなぁ?」
「えと、えと…えっと…」
「み き た ん」
「ごめんなさいカラオケで友達とオールしてました」
しっかりと両手を握られて、上目遣い。
上目遣いだけど、怖い。
亜弥ちゃんとの約束を、破ってしまった美貴。
「友達って、だぁれ?」
「んと…えと…よっちゃんとぉ…ごっちんと…んと…」
「誰と!?」
「り、梨華ちゃん梨華ちゃん!!思い出したぁ……」
「本当に?」
「ほ、ほんとぉー…」
アヒルみたいに唇を突き出して、美貴を問いつめる。
うう…怖いよぉ。
- 530 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/05(日) 21:02
-
「ごめんね、今度からそんな事もうしないから」
「約束…する?」
「する。今度こそ破らない」
「じゃ…チュ−して」
チュ−しましょうとも。
屋上の片隅で痴話ゲンカを止め、そっと口付けをした。
それは段々と深い物に変わり、30秒程続いた所で唇を離された。
「えへへっ、授業始まるから…ばいばいっ」
「うん、ばいばい!!」
美貴は亜弥ちゃんにメロメロなわけよ。
可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて…長くなりそうだから省略ね。
この世にコレ程の美があっていいのかっていうぐらい可愛いんだよ。
それが美貴の彼女だよ、彼女。
デレっとした顔を、横からごっちんに摘まれた。
「いでいでっ、何すんのっ」
「嘘付きやがったな、美貴め」
「え…」
「梨華ちゃんに倒れこんで、膝枕してもらったくせに」
「あ、あれは酔った勢いっていう…」
「酔った勢いにしては激しく意識がハッキリしてたよ」
「う、うるさいっ」
摘まれた頬をこすり、教室に戻った。
全く、その事が亜弥ちゃんにバレたらお叱りを受けちゃうじゃないか。
- 531 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/05(日) 21:08
-
「っつうかさ、まっつーって単純だよね」
「えー?」
「美貴の突然の告白に、ビビッと来ちゃうんだもん」
「そりゃー美貴の魅力に惹かれたんだよ〜」
亜弥ちゃん曰く、『みきたんに運命を感じた』んだって。
それは美貴もおんなじなんだけど〜♪
「あの可愛さは国宝並だよね、まっつー」
「だしょだしょ、美貴が一番乗りみたいな」
「あ、初恋なの?」
「うん。亜弥ちゃんの初恋は美貴なんだってさ」
「へー、可哀想」
「んだよソレ」
もう、言葉では表現出来ないくらいの殺人的な色気っていうの?
イヤらしい色気じゃなくて、ピュアな色気。
上目遣いでお願いされたら美貴は犯罪でも犯すね。
「可愛過ぎるっていうのも難易度高いけど…あ、鐘鳴った」
「じゃーね美貴は亜弥ちゃんと帰るから」
「あ…」
バビュンと自慢の足で走り出し、下駄箱へ向かった。
ごっちんが何か言いかけてたけどそれは聞こえなかったって事で。
- 532 名前:从‘ 。‘从从 v 从 投稿日:2004/09/05(日) 23:03
- 天使最高♪
作者さんの更新が生きがぃです…m(__)m新作ゃばぃ♪更新頑張ってくださぃっ。あやごまも好きです…けどあやみき最高!!あやみき最強!!
- 533 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/06(月) 21:53
-
「亜弥ちゃーん……ん!??」
超高速で階段をかけ降りると、そこには信じ難い光景が。
誰かが亜弥ちゃんの肩を抱いて、優しく微笑んでいる。
「くぉらぁぁぁ!!何すんじゃぁ!!」
「み、みきたんっ?」
亜弥ちゃんの肩を抱いて微笑んでいいやつは美貴だけ。
許さん。
全速力で亜弥ちゃんを奪い取り、胸に収めた。
「美貴の物に何すんだよ!!!」
「…何って、転びそうになってたから助けただけ…」
「そうだよみきたん、変な事言わないで…」
「じゃあ何で亜弥ちゃんが微笑んでるんだよ!!」
いけすかない奴に亜弥ちゃんの肩を抱かすわけない。
ニコリと笑って、また亜弥ちゃんに視線を落とした。
「じゃ、またね」
「あ、ハイ」
「あぁ!!?」
- 534 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/06(月) 21:58
-
「どういう関係?!」
「違うよぉ、あたしがズッこけそうになってたから肩抱いてくれた
だけで…」
「抱いただけ!?本当に抱いただけ!?」
「嘘じゃないもん…」
「あ、疑ってるわけじゃ…で、アイツ誰!??」
ぷぅっと頬を膨らまして拗ねてしまった亜弥ちゃん。
だって、腹たつでしょ普通。
「んと、1つ先輩の吉澤さん。かっくいーっしょ?」
「よ、吉澤…か、かっこいい…」
確かにパッと見かっこいい。
でも一番かっこいいのは美貴なんだよ。
もしや亜弥ちゃん。
心変わりを………
ばしんっ
「……いったぁ…」
「おバカ。みきたん以外にカッコイイ人いないもん」
「あ、亜弥ちゃん」
「変な事言ってないで、帰ろ?」
- 535 名前:唄え少年よ 投稿日:2004/09/06(月) 22:01
-
頭を思いっきりぶったたかれ、ペロッと舌を出した亜弥ちゃん。
最高に可愛いんですけど。
「……なんか恥ずかしい事言ったかな、アタシ」
「十分ね…」
「みきたん、ほっぺ真っ赤だよ」
「あ、亜弥ちゃんこそ」
ぺしっと指で頬を弾かれ、そこにキスをされた。
「ほっぺじゃヤなんだけど」
「おー、言うねみきたん」
「続きは…校門出たら、ね?」
そっと亜弥ちゃんを引き寄せ、耳元で囁いた。
- 536 名前:証千 投稿日:2004/09/06(月) 22:03
-
あああああ…見切り発車で作ったんで続きが最悪です。
これで終りと思ってください。
ネタが無かったんです…。
甘いのを書きたいが故、このような終りかたになってしまいすいません。
ネタ不足中。
誰か提供よろしくです。
- 537 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:16
-
「…あーダル…」
「美貴、最近ソレばっか」
「だってする事ないし」
「あの、コイビトさんは?」
「あ?」
「だから、んと…あ…あ…」
「亜弥ちゃん?」
「そう、亜弥ちゃん」
多分、今は体育の時間でバレーボールをやっているだろう。
彼女とは学年が違う、後輩。
その時間美貴は、授業をサボって誰もいない教室で、まいちゃんと雑談をしていた。
「会いたい、とか無いの?」
「別に無いね」
「んじゃー…キスしたいとか」
「あっちがしたいなら、するけど」
「…率直に聞くけど、愛してんの?」
「普通に愛してる」
「……なんだか可哀想だね、亜弥ちゃん」
そう、なんだろう。
美貴なんかと付き合って、亜弥ちゃんは何が楽しいのか分らない。
只、『みきたん』と呼んで甘えてくる彼女をいつしか恋人にしていた。
一方通行になってるのは、とっくに分ってるんだけどさ。
「冷たいんじゃない?」
「そうかな」
「一緒に帰ったりしてあげなよ、あたしじゃなくて」
「だって亜弥ちゃんがいいって言うんだもん」
「カーッ…だからアンタはダメなんだよ」
頭を抱えて首を振ったまいちゃんは項垂れた。
親友の事にそこまで付き合ってくれるとはいい友達を持ったものだ。
- 538 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:20
-
「ねぇ、聞いてんの?」
「聞いてると言ったら嘘になるかな」
「馬鹿…。ガム噛んでないでさっさと行きなよ」
「何処へ」
「亜弥ちゃんの所だよ、馬鹿」
「何で昼休みに…」
「いいから、行け」
命令系かよ。
1人ツッコミを入れ、カラ教室を出た。
窓からはまいちゃんがガッツポーツを作り不敵な笑みを浮かんでる。
……しょーがない、行くか。
- 539 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:24
-
それにしても、美貴は目立ち過ぎる。
後輩の階をうろつくだけで、服装の違いが大きく出ている。
ワイシャツおっぴろげて、スカートめちゃめちゃミニにして。
ガム噛んで。
歩きかたヤンキーっぽくて。
「…亜弥ちゃんて何組だっけ」
それさえ知らないんだっけ、美貴。
もうどうしようもなく無知で本当に馬鹿なんじゃないか、自分。
「…ちょっと君」
「は、ハイィッッ!??」
「松浦亜弥って子、何組?」
「ま、松浦…は…3組です!!」
「あっそ。ありがとう」
「い、いえっ!!」
妙にテンパッて冷や汗かいてる男子。
眼力に引いたらしい。
自分では普通にしてるだけなんだけどなぁ、どうも怖く見えるんだ。
- 540 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:31
-
チラリと教室を覗いてみる。
あ、体育が終わったんだっけ。
「…あ、いた」
体操着とジャージを畳んで鞄に入れている姿を見つけた。
周りの女子とおしゃべりしながら無邪気に笑ってる。
やっぱ、可愛いんだよな。
好きなのかどうかさえ分らないのに、彼女が可愛いという固定観念は捨てられないでいる。
ガラッ
シーン
あーあ、やっちゃった。
ドアを引いて、教室に一歩入るなり教室全体が静まりかえった。
別にジャックしにきたわけじゃないよ。
「……みき、たん……?」
「ああ、いたいた亜弥ちゃん」
「ど、どうしたの急に…」
「その前に、みんなの誤解を解いてくれると美貴は嬉しい」
「あ……」
静まりかえった教室を再度見渡し、亜弥ちゃんは呆然としている。
ね、状況分ったでしょ。
- 541 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:38
-
「…ま、いっか。じゃ、場所変えよ」
「ふぇ…あ…」
今さら誤解を解くのも面倒なので、亜弥ちゃんの手を引いて教室
を出た。
こんな事は慣れっこ。
屋上へ向かう途中、何気無しに亜弥ちゃんの顔を覗き込んだら
ビックリしたように肩を跳ねた。
カツアゲするわけじゃないんだけど。
「……ガッコ−、楽しい?」
「え…あ…うん」
「美貴はつまんねー。する事ないし」
「…そっか」
まいちゃんに勢いで押されたものの、会話が続かない。
別に議題は無いし、只単に呼びつけた感じじゃん。
屋上のベンチに亜弥ちゃんは離れて座り、ずっと俯いている。
何でそんなにビビるんだろう。
いつもそうだけどさぁ。
「…みきたん?」
「あ?」
「何で…急に来たりしたの…?」
「あー…何となく」
そう口にした瞬間、亜弥ちゃんはほんの少しだけ微笑んだ。
そんなに嬉しいのかな、美貴が来ただけで。
なんか、照れるじゃん。
- 542 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:42
-
「…オイ、あれ松浦と眼光先輩じゃね?」
「アハハッ、そうっぽいな」
「藤本…だっけ?チョ−こえぇよな」
丸聞こえなんだけど。そこの男子3人。
『眼光』って。美貴は人間以下の扱いかよ。
慣れっこなんだよ。こういうのは。
それでも亜弥ちゃんといる時に限ってそういう事言うなよっつの。
ビクビクして怖がっちゃうじゃん。
「…気にしなくていい…よ?みきたんは…」
「わーってるよ、慣れてるから」
どうしようもなくイラついて、心配してる亜弥ちゃんにあたってしまう。
こんな事する為に二人でいるわけじゃないのに。
不器用だな、美貴って。
ガハハと笑い続ける後輩男子3人は尚も何かを言い続けている。
そろそろ限界かもな。
- 543 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:46
-
「キョーカツ、だったりしてな」
「あり得る!」
「ヘーキで付いてくる奴も危なかったり…」
「「「アハハハハハ」」」
プッチーン。
「今、なんつった」
ガシーンッと近くにあったバケツを蹴りあげ、男子3人を睨み付けた。
堪忍袋の緒が切れて、状況なんて考えて無かった。
美貴の事はどうでもいい。
亜弥ちゃんの事を悪く言うなら、美貴は誰であろうと許さない。
- 544 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:52
-
「…今、なんつったか聞いてんだよ」
「みきた…」
亜弥ちゃんの泣きそうな声を遮り、スタスタと近付く。
1人は引いて逃げ出そうとしている。
でも後の2人は、美貴をブチ負かす気満々らしい。
ほぉー、面白いじゃん。
「…聞こえませんでした?そりゃあすんません」
「あぁ?」
「先輩っつっても、女っしょ。手加減し…」
いって。
拳の裏で相手の顎を殴った。
裏拳を使うとやはり予想通り、数倍に痛かった。
「…もう殴るのヤだから、そこの2人消えなよ」
「ヒッ…」
片手でシッシッとやり、殴った拳をさする。
さすがに痛い。
相手の歯が掠って少し血が出ていた。
- 545 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/06(月) 22:57
-
「たんっ!!」
「あー、平気平…亜弥ちゃん?」
そう言い終わる直前、亜弥ちゃんは美貴の名を呼んで抱きついて来た。
わけが分らなくて、痛い拳をさする。
「ごめん…ね?あたしのせいでっ…」
「何で亜弥ちゃんのせいなの」
「だってみきたんケガッ…しかも人殴っちゃって…」
「んなのどうだっていい」
「なんで…」
やっと、分った気がしたから。
好きだから。
亜弥ちゃんが好きだから、人なんか殴ったりした。
どうしようもなくムキになって、腹が立って。
「美貴は、亜弥ちゃんの事を悪く言われるのが嫌なんだ」
「…でもっ…」
「好きな人貶されたらボコしたくもなるよ」
「…好…」
「うん。亜弥ちゃんが好きだよ」
そっと涙を拭き取り、柔らかい髪ごと抱き締める。
- 546 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/06(月) 23:26
- 美貴様、かっけー!
- 547 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/07(火) 19:51
-
何故、彼女が美貴に惹かれるんだろう。
告白をしてきたのは亜弥ちゃんのほうからだった。
たった一言、『好きです』と口にして。
ろくに断る理由もなかった。
『いいよ、別に』
この美貴の一言で、交際が始まった。
乗り気ではなかったし、もちろん亜弥ちゃんとは初対面だった。
断る理由もないからいいかな程度の乗り。
愛なんて感情を持ち合わせていたわけでもなかった。
でも、今はどうなんだ。
彼女を、愛している?
- 548 名前:ING恋愛形 投稿日:2004/09/07(火) 19:58
-
「…初めて、言ってくれたね…」
「え?」
「好きって」
「……遅かった、かな」
「ううん、嬉しい」
初めての好き。
初めての、亜弥ちゃんの笑顔。
何もかもが愛しいと、感じる。
「送るよ、教室まで」
殴った為、ギリギリ痛む手を亜弥ちゃんの指に絡ませた。
カァ−ッと頬が染まって行くのが分る程、亜弥ちゃんははにかんでいた。
愛ってものが、分った気がする。
FIN
- 549 名前:証千 投稿日:2004/09/07(火) 19:59
-
>546様 カッケ−!…ありがとうございます。
最近の美貴様は可愛いですが(笑
- 550 名前:夏休み 投稿日:2004/09/08(水) 16:04
-
「ねえ、髪結ってよ」
「いいよ」
彼女の細い指が、美貴の髪を通る。
目を閉じて感触に馴染んでいると、彼女はそっと微笑んだ。
夏の、暑い夕方の時。
「みきたん、髪伸びたね」
「そう、かな」
「そうかなって、伸びたから結ぶんでしょぉ?」
「あ、そっか」
矛盾した事を言っている自分に失笑し、彼女は立てひざを
ついて髪を結っていく。
「亜弥ちゃんは髪、結ばないの?」
「う〜ん…仕事でやってもらうぐらいかな」
「結べばいいじゃん」
「ううん、ストレートのほうがラクだよ。何で?」
「や…別に」
結んだ方が、可愛いよ。
なんて事言えるかい。
誤魔化した美貴を、悪戯な瞳で覗き込んでくる亜弥ちゃん。
- 551 名前:夏休み 投稿日:2004/09/08(水) 16:11
-
「たん、何で自分で結ばないの?」
「下手だもん美貴」
「ライブの時、他にあいぼんとか器用な子いるのに態々あたし
の所寄ってくるからぁ、みきたんってば」
「亜弥ちゃんとしては、そっちのが嬉しいかなぁって」
「…にゃはは、嬉しいぞぉ?」
「なら、いいじゃん」
ペシンと後頭部を殴られ、彼女特有の笑い声を上げた。
「…妹ちゃんがさ、夏休み終るってのに宿題終って無いーって騒いでた」
「アハハ、そっかぁ。中学生は大変だよね」
「あたしらにはカンケーないからね」
「でもさ、夏休みに終らせなきゃいけない事って宿題に限らないじゃん?」
「え?」
「うちらは、ダンスレッスンだってあるし」
「あー、そっか」
与えられた課題をこなすのも、中学生とか関係ないんだなぁ。
芸能界に入って学んだ事の1つだった。
この世界に入ったから、出会えた人もいる。
「…まー、ダンスレッスンも楽しいしね」
「そだね」
「芸能界ってもっと、お堅いもんだと思ってたけどさ」
「うん」
「楽しい事一杯あるし、色んな人にも会えたし。例えばぁー…」
「例えば?」
焦らすように、亜弥ちゃんはゴムで三つ編みを完成させてこう言った。
- 552 名前:夏休み 投稿日:2004/09/08(水) 16:20
-
「…つんくさんとか、ね」
「って…オイ!!」
「えへへぇ」
そこは、美貴が入るんじゃないのかよ!
思わず亜弥ちゃんにツッコミを入れてしまった。
そりゃあ…美貴も亜弥ちゃんに会えたし?
「嘘だよ。たんに決まってんじゃーん!」
「ふーん、あっそ」
「ヤダ、みきたん拗ねてんの?うりうり〜」
拗ねたくもなるよ。
つんくさんのポジションはどうなるんだって話だけど。
わざとらしくそっぽを向くと、亜弥ちゃんは後から抱きついて
首を絞められた。
「どーだっ、参ったかぁ?」
「…何かおかしくない?」
「まあまあ忘れてよ。あたしはみきたんに会えたのが、一番嬉しかった
事だから」
「ソレ、本当?」
「うん。年上なのにちょっとおバカで、天然で、甘えん坊なみきたんに
会えたのが嬉しいよ」
そっと亜弥ちゃんの胸に引き寄せられた。
なすがままになってしまった美貴は、ドギマギしながらじっとしてる。
甘えん坊……だっけ、美貴って。
- 553 名前:夏休み 投稿日:2004/09/08(水) 16:31
-
「…夏休み、どこも連れてけなくてごめん」
「何、突然?」
「だって、お互い仕事ばっかりだったからどこもデートしてない」
「それはしょうがないでしょ。分ってるよ」
「…気にしてるかなって」
「ちょーっと、みきたん」
少し大人ぶった声で、亜弥ちゃんは美貴を胸から剥がした。
「一応、芸能界の先輩なんだけど。アタシ」
「そうだね」
「…そんくらい、分ってるよ。メールや電話で大丈夫だから」
「でも、亜弥ちゃん時々会いたいって…」
「そりゃあそうだけど…。でも、こうやって会ってるし」
鼻頭にチュッとかまされたキス。
寂しさを誤魔化しているんじゃないかと心配なくらい、亜弥ちゃんは明るい。
「…なんで鼻?」
「口はみきたんからするもんでしょ?」
「あ…そう」
もうすぐ、夏が終る。
亜弥ちゃんとのキスは、後何回交わせるのだろう。
美貴達アイドルには夏休みがない分、楽しい思いで作ろうって、話してた。
でもね。
美貴は亜弥ちゃんといられる事が一番の思いでになるんだ。
FIN
- 554 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/08(水) 17:38
- はあああ
- 555 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 20:55
-
もし、もしもの話。
ミキと亜弥ちゃんが、生まれ変わってまた再会したら。
付き合ったりしてるかな。
そんな話題を、満天に輝く星に投げかけた。
哀しい、独り言。
叶わぬ夢を持ち、1人亜弥ちゃんに酔いしれた。
- 556 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 20:59
-
1人よがりの片思い。
ただ彼女に惚れてしまい、打ち明けられないこの思い。
何て勇気のないやつだと心を打ち、何度も告白しようと試みた。
でもダメだった。
無邪気に笑顔でキスされて、どうやって反応しろっていうんだよ。
「うーっ…寒い」
真夏とはいえ、夜は冷える。
ハッとベッドに目をやると、亜弥ちゃんが心地よさそうに寝息を
たてて眠っている。
二人一緒に寝られる訳もなく、ミキは真夜中まで起きていた。
明日は仕事で朝早いのにもかかわらず。
- 557 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 21:03
-
この寝顔を、一人占めできたら。
溜め息をつき、部屋に戻ろうと踵をかえした。
ゴーンッ
「いったぁぁ!!!」
物干竿に、おでこがクリーンヒットした。
畜生。降ろして壁にかけておけばよかったのに。
「あ…ヤバッ…」
おでこをさすり、あわててベッドに目をやった。
- 558 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 21:09
-
「…んぅっ……たん…みきたん?」
案の定、美貴が大声を上げたせいで亜弥ちゃんは起きてしまった。
ネムそうな目をこすり、上半身を起こした。
「そこで…何やってんの…?」
「あ、あの…その…何でも、ない」
「ふぇ…?えへへぇ、あたしもそっち行くぅ」
「あ…」
寝起きが悪い亜弥ちゃんのわりに、ベッドから飛び退いてタタタと
こっちに駆け寄って来た。
ああ…面倒臭い事しちゃったなぁ。
「こんな時間にベランダで何やってたの?」
「や…星を。ね」
「あー!凄い凄い!!星がすごい!」
何とも小学生的な反応で、手すりに乗り上げる。
こういうかわいらしさが美貴を敏感にドキッとさせるんだ。
- 559 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 23:39
-
「明日にはさ、この星なくなっちゃうんだなぁー」
「え?」
「朝になったら、星はいなくなっちゃうでしょ?」
「ま、まあね」
「寂しいよねぇ。こんなに綺麗なのに…」
確かにそうかもしれない。
でも暗い中で光るから綺麗なんだよね、星って。
「真夜中だけ見られる特別な命」
「ハ?」
「ふふっ、パパの言葉なんだ」
「…へーぇ」
「人は死んだら、星になるって。
一番輝く星は、精一杯生きていた人の証なんだってさ」
…あの星も、誰かが生きていた証拠って事か。
珍しく亜弥ちゃんは凄い事を言うもんだ。
星から目を離して亜弥ちゃんは美貴にニコリと笑いかけた。
「あたしも、悔いのない生き方したいなぁ」
「今してるじゃん、好きな事やらせてもらってるし」
「あー、そっか。でも、ソレ以上に熱中出来るものあるよ」
「え?」
ドキリ。
亜弥ちゃんは急に真面目な表情で美貴の肩に顔を埋めた。
- 560 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 23:43
-
「あたしの中は、歌とみきたんの事しかないから」
瞳を閉じて、ゆっくりした口調の彼女。
「邪魔だと思わないで、聞いてくれる?」
「う、うん」
もしかして。
ぐっと唾を飲み込んだ。
「あたしは、みきたんが好き。分る?」
「…ん」
「でも…さ、みきたんが思ってる好きとは違う。それも分る?」
美貴の思い過ごし?
亜弥ちゃんが美貴の事を、ラブの意味で好き?
- 561 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 23:46
-
「あ、あのさ…それってどういう…」
「……あのね…」
いつもの、甘ったるい彼女の声。
大好きなはずなんだけど、今は痛みにしか聞こえない。
「愛……してる…の」
服の裾をギュッと握られ、美貴は呆然とした。
亜弥ちゃんの肩を抱く事さえも忘れて。
「…何で…亜弥ちゃんは期待を裏切らないんだろーね…」
「…え…?」
涙が出そうなくらい、嬉しいよ。
カッコつかないから泣かない。絶対に。
誰よりも愛している、君だから。
- 562 名前:夜空の彼方 投稿日:2004/09/08(水) 23:49
-
「…亜弥ちゃんとおんなじ、好きを美貴も持ってる」
もう一度、聞かせてよ。
何度も何度も、愛の言葉を。
「ホン…トに?」
「嘘は言わない。二人のルールじゃなかったっけ?」
最後の涙を堪え、飲んだ。
月明かりと星が輝くもとで二人きり。
唇を交わした。
- 563 名前:証千 投稿日:2004/09/08(水) 23:51
-
あ、上のは完結しました。
すいません、終りと入力するのを忘れていまして。
>554様 はあああ…感想を頂いたこっちもはあああです(笑
ありがとうございます。
- 564 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 00:22
- うっわぁ〜〜〜〜
- 565 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/09(木) 17:08
- 藤本さん風邪で寝込む。亜弥ちゃんはツアー中。
娘。メンからメールで藤本さんが風邪でダウンしてることを知らされる。
コンサ終了後急いで都内へ戻り藤本さん宅へ。
こんな感じでお願いできませんでしょうか?
- 566 名前:_ 投稿日:2004/09/09(木) 19:53
-
「ゼェッ…ハァ…ゴホッゴホッ!!」
ヤバい。咳が止まらなくて、頭がくらくらする。
今日は歌収録があるから休めばみんなとスタッフさんに迷惑がかかってしまう。
責任は重い。
誰かに介抱してもらうか。
そんな甘い考えは捨てて、ヒエピタをデコにはっつけた。
いつもの鼻にかかった美貴の声がいつも以上に酷い。
風邪という病気を甘く考えていた。
- 567 名前:_ 投稿日:2004/09/09(木) 19:58
-
ピロリン ピロリン
「…わ、いいらさんからだ」
テレフォンゴール♪ なんてかっとばしている余裕はなくて。
鼻声を抑えつつ、飯田さんからのメールを受信。
もう収録には手後れだったので電話をしておいた所、態々メールまで
くれるとは。
『 風邪だって?無理しないでゆっくりしてなよ カオリ 』
さすが先輩。
しみじみと愛に浸りながら、鼻をブ−ッとかんだ。
他にもよっちゃん、梨華ちゃん、紺ちゃん、愛ちゃんからもメールが
届いていた為、返信をした。
「……っ…やっぱ止めとこう」
でも。ただ1人だけ、メールの返信をしなかった。
黙ってたら絶対に怒られるんだろうな。
ベッドの中、携帯とにらめっこして考える。
- 568 名前:_ 投稿日:2004/09/09(木) 20:02
-
『 今日、地元でライブやるんだ♪頑張るかんね!! 亜弥 』
亜弥ちゃん。
美貴が風邪を引いてるって知ったら、亜弥ちゃんはいてもたってもいられないはず。
ライブ中にそんな心配をかけたら迷惑をかけるだろう。
本当は早く会って抱きしめられたい。とか思ってる。
亜弥ちゃんと美貴にとって、最高のライブを作るのがお仕事でもあるから。
余計な心配をかけたくはなかった。
「…ふっ…ゲホッゲホッ!」
なっさけねぇ。
辛い時、いつも亜弥ちゃんに頼ってた自分は何だったんだろう。
- 569 名前:_ 投稿日:2004/09/09(木) 20:05
-
「…送信っと」
みきたん、あたし頑張るかんね。
メールを素早く打ちつつ、鏡を見てチェック。
よーし、今日も可愛い。
地元のライブが一番好きだもん、いつも以上に気合いが入る。
みきたんもきっと応援してくれる。
みんなに期待される、ライブにしなきゃいけない。
ピロリン ピロリン
テレフォンゴール!!かっとばす安倍さんのフレーズで覚醒された。
急いで携帯を開き、期待を膨らませた。
みきたんからかなぁ。
- 570 名前:_ 投稿日:2004/09/09(木) 20:13
-
「………え……」
携帯をゆっくりとテーブルに置いて、溜め息をついた。
さっきまでのテンションが、ぐっと下がるかのように脱力。
『 みきち→がカゼでダウンなんてよぉ。ー…あやや知ってんだよね? 吉澤 』
ついさっきまで、吉澤さんと軽いメールをしていた。
一度吉澤さんから途切れたので、何かあったのかと思ったら。
みきたんが、カゼで収録をお休みした。
急いで指を動かし、吉澤さんに返信をした。
『 知らないです!!! 』
『 マジィ?でも娘。のメンバー全員知ってるぜ? 』
1分も経たないうちに、吉澤さんからのメールは届いた。
どういう、事?
みきたんがあたしに、何で隠す理由があるの?
- 571 名前:証千 投稿日:2004/09/09(木) 20:16
-
ネタ、つかわさせていただきます!!
ありがとうございますー、ネタが不足していたもので!
- 572 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/09(木) 21:11
- わ〜い、ネタ採用ありがとうございます!
甘々期待してます。
- 573 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/09(木) 21:25
- お!面白そうですw
見事に二人ともあの歌を思い出しちゃってうけました(笑)
このネタ、かなりツボなんで甘〜いあやみき期待してます。
- 574 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:22
-
「あっくしょい!!!」
誰かに噂されたたりして。
はだけた布団をかけ直して、鼻をすすった。
…亜弥ちゃん、かな。
ダメダメ。
これじゃあ美貴が亜弥ちゃんを束縛してるみたいじゃん。
亜弥ちゃんだって仕事だから。
会いたいとか言えないから。
そう考えていても、彼女の笑った顔が浮かんでしまう。
「…あ゛ー。止めよ止めよ」
大丈夫。
- 575 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:28
-
どうしよう。
みきたんが、みきたんが。
オロオロしてみきたんに電話orメールをする事も忘れて。
ただ吉澤さんからのメールを呆然を見つめる事しかできなかったあたし。
ガチャ
「松浦さん、そろそろ裏入ってもらっていいですか?」
「ハッ…ハイッ!!」
「じゃあスタンバイお願いします」
ヤバい、本番まで後10分しかない。
携帯は控に置いておくしかないし、何より時間がない。
みきたん。みきたん。みきたん。
- 576 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:31
-
「たっだいまー!!!!」
「「「「おかえりー!!!!!」」」
違う。
あたしはサイボーグなんかじゃない。
今は唄わなきゃいけない。
ごめん。みきたん。
ファンの人たちが、声援を送ってくれる。
期待に答えるのが、あたしのお仕事。
そうだよね。みきたん。
- 577 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:34
-
ドキラブのイントロが流れはじめる。
あたしの第一歩、成長の印になっているスタートラインだった。
精一杯なりきる。
あたしである、松浦亜弥に。
- 578 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:38
-
「Gパン履〜くのにな〜れーたっと………」
バカみたいだよね、ハタから見たら。
普段あんまり聞かない亜弥ちゃんにもらったファーストアルバムを
聞いて歌っていた。
1人ベッドの中で、鼻声を混ぜつつ。
半無理矢理に渡されたアルバムだけど、結構良い曲ばかり。
「もうドキラブ歌い終ったかな、亜弥ちゃん」
ハハハ、元気にヘソ出しで踊りまくってんだろうな。
今美貴がヘソ出しして踊ってたら確実に死んでるね。
ああなんだ、美貴元気じゃん。
亜弥ちゃんの事思い出すだけで、すごく元気になれるのは気のせいかな。
- 579 名前:_ 投稿日:2004/09/10(金) 22:42
-
「……Zz………」
夢心地。
熱のせいでぽぅっとしているからかもしれないけど、フワフワする。
『みーきたんっ』
おぉー…亜弥ちゃんだ。
『にゃはぁ、お熱出ちゃったかにゃ?』
熱、出ちゃったんだよ。治してよ。
『……んじゃ、ずっといてあげる』
本当に?
『みきたんが楽になるまで、手、握ってるから』
ありがとう、亜弥ちゃん。
たった一瞬の夢物語。
静かに目を閉じて、夢に浸った。
- 580 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/11(土) 02:50
- せめて夢の中で。
美貴様…。・゚・(ノД`)・゚・。
- 581 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 08:47
-
アンコールが終る。
汗ダラダラでみんなに笑顔送って、裏にはけた。
「…やぁばい、チョ−楽しかった」
「お疲れ、松浦」
「あ…稲葉さん、お疲れ様です」
「そだ。控え室でケータイ鳴っとったよ」
「あたしのですか?!」
みきたん?
不安が過って、衣装のまんま携帯を確認した。
『 コンサート終ったかい?早く愛しのアイツを介抱してやれよん♪ 』
吉澤さん。
そうだよ、早く行かなきゃ。
みきたんが苦しんでるかもしれない。
体の調子が酷くなったら大変だ。
みきたんにもらったケータイストラップを握りしめて、みきたんの
傍にいてあげられない自分に喪失感でいっぱいだった。
- 582 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 08:53
-
あったかい、甘い声。
風邪薬みたいに苦くない、甘い甘いキス。
早くしたいなぁ。なんてぼやける回路で想像している。
思えば今日、一度も亜弥ちゃんの声を聞いていない。
メールもしてない。返事をかえせなかったから。
…亜弥ちゃん、怒るかなぁ。
なんとなく口角が緩んで、へらっと笑えてくる。
風邪ってこんな症状出るっけ。
「……たん……」
牛タン、食べにいきたいなぁ。
「ミキ、たん」
ありゃ、何か幻聴が聞こえて来た。
でも確かに理解できたのは、美貴が大好きな人の声だって事。
でも、目が言う事をきかなくて開かない。
- 583 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/11(土) 08:59
- 更新乙です。
こっちの美貴様もリアルの美貴様も心配です…・゚・(ノД`)・゚・。
- 584 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 09:04
-
「亜弥……」
『ちゃん』の部分が出なかった。
喉までやられてきたらしい。
間違いない、亜弥ちゃんの温もりだ。
手探りで亜弥ちゃんの手を握った。
夢で見たホンモノの、亜弥ちゃん。
「っ…くぅ…バカッ…ぁ…」
「弥…ちゃん?」
何故か美貴の手を握りかえしてくれる事はなくて。
代わりに、冷たい雫が美貴の手を滑り落ちた。
- 585 名前:証千 投稿日:2004/09/11(土) 11:17
-
微妙な所できってしまいすいません。
夜また更新しますので。
…ミキティ大丈夫かなぁ、15日のハロモニ収録で復帰らしいので
元気でかえってくる事を祈っています。
いちいちすいません、独り言のようにw
- 586 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 18:09
-
カチャリ
みきたんの家の鍵をゆっくり回して、玄関に入る。
待ち構えていたのは、みきたんちの匂い。
腹が立つような、落ち着けるようなみきたんの寝顔。
冷えピタがはがれて、顔がピンク色に染まってる。
もう何がなんだかわかんなくて、あたしは力が抜けたように床に崩れた。
「たん…」
「ぅー…ぅぁ…」
「ミキ、たん…」
「ぅぁぅっ…う…?」
目は開いてないけど、嬉しそうに笑ってるみきたん。
その笑顔で、あたしは一気に給りに給った思いをぶちまけてしまった。
キュッとあたしの手を握る。
そのみきたんの手に、あたしの涙がこぼれた。
- 587 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 18:14
-
「亜弥……」
消えそうな声で、あたしの名を呼んだ。
とめどなく涙が出て肩が跳ねる。
「っ…くぅ…バカッ…ぁ…」
「亜弥…ちゃん?」
何でこんなに心配かけるの。
なんでも割り切って話して欲しいと、付き合う前に約束したよね。
「ごめ…」
「何で電話一本してくれないの!?」
「あ゛…」
「具合悪いなら言ってくれれば…」
「だ、だってツアー中だし迷惑かけたくなくて…」
「ソレがバカだって言ってんの!!!」
ホントにバカ。
最後に怒鳴るような声をあげると、みきたんは呆然として目をどこかに泳がせる。
- 588 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 18:18
-
「……ごめんなさい、もうしない」
ベッドから身を出して、みきたんはあたしを後から抱きしめた。
みきたんの『もうしない』は何十回聞いたかわからない。
それでもあたしはこいつを嫌いになれないから。
何度も愛しいと思ってしまう。
「…っ…もうしないって、何を?」
「何かあったら亜弥ちゃんにすぐ言うし、隠し事もしない…」
「嘘」
「う、嘘じゃない」
「ホントに、ホントのホントにしない?」
「ホントのホントにしません」
信じてないけどね。
だって、みきたんのしょんぼりした顔、見てられなかったんだもん。
- 589 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 18:24
-
「…分ったから、早くベッドに戻って?」
「もう平気だよ、亜弥ちゃんがいる」
「ダメ、みきたん体熱いよ」
後に向き直って、みきたんに抱きつく。
そこから伝わる温度は、あたしと比べ物にならないくらい熱かった。
「…じゃ、傍にいて」
「…え?」
「美貴が目さめるまで、ずっと手繋いでて」
「……うん」
照れ屋な彼女がこんなお願いをするのは初めてかもしれない。
風邪の症状とは違う、顔を赤くしている。
そんな顔されたら、したくなっちゃうじゃん。
「みきたん」
「へ?」
触れた唇は、熱くなっていて乾燥していた。
それを潤わせるようにあたしの唇で湿らせる。
- 590 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 18:28
-
「わっ、ダメ!」
「え?」
「…か、風邪…うつる」
「平気だよ、キスぐらいで」
「と、とにかく…もう…寝ます」
「にゃはは、そうして下さい」
そっぽ向いて照れ隠し。
可愛くて可愛くて、またほっぺにチュ−をかました。
「だぁから…ぅぁ…」
「ほっぺなら、うつらないよ?」
みきたんを仰向けにさせて、その上に被さるようにのっかる。
照れまくってテンパルみきたんが可愛過ぎるから。
- 591 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/11(土) 18:48
- 藤本さんにとって亜弥ちゃんのキスは一番の薬ですよね。
二人の愛で風邪なんか吹き飛ばしてまえ〜!
続きまってます!
- 592 名前:_ 投稿日:2004/09/11(土) 20:31
-
あれは予知夢だったのかな。
亜弥ちゃんにお腹のあたりをポンポンされて子守唄っぽいものを聞かされながらふと思った。
ぼやけた視界の中に、確かに亜弥ちゃんはいた。
そして、本当に傍にいてくれている。
「薬、飲んだ?」
「ううん」
「なんでよ、じゃあ買ってく…」
「違う…そうじゃなくて」
精一杯のワガママ、聞いてくれるかな。
「キスしてくれたら、治るから………」
一番の病魔は、恋の病かもしれない。
FIN
- 593 名前:証千 投稿日:2004/09/11(土) 20:36
-
>572様 いえいえ、こちらこそ提供ありがとうございました。
また何かあったらこの駄文作者にお願いします。
>573様 残念ながらなっちの出番は無しという結果でしたが(笑
最後は甘くシメましたので。結果オーライです。
>580様 夢心地は現実でもそうだとよいのですがw
>583様 そうです…心配ですね。喉に来る風邪といった症状と
なんとか中耳炎?だそうで。
あぁ…復帰が待ち遠しいですね。
- 594 名前:証千 投稿日:2004/09/11(土) 20:38
-
レス返しが遅れてスミマセンでした。
尚もネタ提供を募集したいと思いますので。
ごまみき、あやごま、あやみき…。
つまりはごまっとう絡みでお願いします。
- 595 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:29
-
2月14日。
「今日こそやるゾー!!!!」
「誤解されるような事大声で叫ばないでよ、恥ずかしいなぁ」
ここまでの試練を実らせる日がようやくやってきた。
愛しのあの人に、愛を告白してやる。
- 596 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:34
-
「ウキウキだなぁ」
「だってみきたんがチョコ作ってって言ったんだよ!?」
「興味本位でしょ、悪魔でも」
「興味本位であたしにそんな事言うのかなぁ」
「あの先輩ならあり得るよ」
屋上のベンチでアンパン食べながらへらへら笑ってる。
いつも通りのマイペース人間。
でもそこがあたしのツボだったわけで、一目惚れ。
「愛は誰かにあげないの?」
「や、あげない。あげないしいらない」
「あたしが作ってあげようかぁ?」
「結構です。アンタはさっさと先輩にソレ渡してきなよ」
「りょ〜うかい♪」
一生懸命頑張ってつくったチョコレート。
みきたんに食べてもらいたくて。
ちゃんとあたしを見て欲しくて。
心踊らせながら、アンパンを食べ終ったみきたんの横に駆け寄った。
- 597 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:40
-
「たん♪」
「お、亜弥ちゃんだぁ」
「今日は何の日でしょう!!」
「えーっと…校長先生の誕生日」
「ちっがう!!ていうかソレ知ってるの凄くない?」
「学校のうんちくなら任せろ」
得意げに腕を組んで、トレーナーのフードを被ったみきたん。
高校とはいえ私服登校もアリだから。
みきたんはスカートなんか履く事はなくて、いつもジャージにトレーナー。
そこがまたあたしの心をくすぐった。
「今日はバレンタインじゃないっすか!!」
「あぁ、ヴァレンタインね」
「そう!セイント・ヴァレンタインデー!!」
わざと強調しておもしろ可笑しくする。
後輩・先輩の関係はそこにはなくて。
みきたん曰く、後輩以上親友未満なんだって。
「ほいでね、みきたんチョコ作ってって言ったじゃない」
「ああうん」
「…作ってきちゃったんだよ」
「おー、作られちゃったか」
小さい箱に入ったチョコを、みきたんは不思議そうに見つめる。
- 598 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:46
-
「どうせならカカオから作ってくれりゃ良かったのになぁ」
「ちょっと無理言わないでよみきたん」
「いーよいーよ、カカオは高いからね」
「…? 意味わかんないや」
相変わらずマイペースな所が可愛い。
この先輩、かなりの鈍感でもある。
あたしが何度も告白した結果、返ってくる結果はいつも。
『美貴はみんなを愛してるから、亜弥ちゃんだけ愛するのは無理』
へへっと笑って、こう誤魔化される。
納得いかなくて確かめたいんだけど、絶対に本性を見せない。
「…美味し?」
「あー、甘い甘い」
「答えになってないよぅ」
「美貴としてはもうちょっと苦い方がよかったかなぁ」
「……美味しくないの?」
「普通、かにゃ?」
ズガーン。
笑顔で毒舌なもんだから、傷つく事もある。
鈍感な上、正直ものだからしょうがない。
「…ま、いいや。でね、お話聞いて?」
「ああ、聞くよ」
まだチョコをもぐもぐしながら、首だけをこっちに向ける。
- 599 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:53
-
「あたしね、本気でみきたんの事好…」
「うわっ、さっきのアンコにアリが群がってる!!」
「入学した時からずっと…」
「あーあーあ、アンコ無しアンパン買えばよかったなぁ。
あ、それじゃアンパンじゃないか。アハハァ」
「……みきたん…」
それじゃあ何でアンパンを買ったの。
思わずそう突っ込みを入れそうになり、再度みきたんの顔を見る。
何の疑いもない、純粋な瞳。
受け狙いでやってるわけでもない天然さがあたしは好きだ。
でも、この人は人の話を聞かなさすぎる。
よりによって、告白の瞬間にアンコにアリが群がるだとか言わないで欲しかった。
「後で捨てなきゃな…あ、それで話って?」
「……もぉいい」
「え、気になるな」
「あたしよりアンコが大事なみきたんなんてもう知らない!!」
「どっちかというと亜弥ちゃんのほうが好きなんだけど…」
アンコと比べられてもちっとも嬉しくない。
みきたんはどこかから牛乳を取り出し、グビグビを飲み始めた。
- 600 名前:桃色天気 投稿日:2004/09/11(土) 21:56
-
「プハァ−ッ。ジャージー牛はいいねぇ、滝川の味だ。
もう一本あるから、亜弥ちゃんも飲む?」
「…いらない」
「あ、そう?」
もしかして、この人に惚れたのは間違いだったのかもしれない。
入学当初にみきたんを見て一目惚れしたあたしはバカだったのだろうか。
牛乳ニ本目をイッキのみし終えたみきたんは、牛乳瓶を購買所へ戻しに
屋上から去って行った。
「…っていうか、告白はどうなったの!???」
まだまだ後輩・先輩の関係は破れそうにないです。
FIN
- 601 名前:証千 投稿日:2004/09/11(土) 22:05
- 月板の方に新スレたてましたので。
このスレは多分使わないと思います。
あちらでもあやみきは書き続けますので、ご了承下さい。
- 602 名前:証千 投稿日:2004/10/20(水) 18:54
- また利用しようかと。
月のほうでは中編を書いているので、こちらでは
別のものを。
お暇な時にでも。
- 603 名前:曇のち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 18:59
-
「美貴、補習どうする?」
「サボる。当たり前じゃん」
「んな…やっぱごとーもやめよっかなー」
「やめとけやめとけ、一緒にサボろー」
勉強って、この世に必要あるんだろうか。
アタシはいらないと思う。
だっていくら数学ができたって、体して自分の人生に活用できるとは思わない。
数字だったら、消費税の計算ぐらいにしか、必要はないと思うし。
だったら社会科とか、むしろそっちのほうがいらないだろう。
ああ、なんて不憫な高校生活。
「部活も引退時期だし、そろそろおべんきょした方がいいよねぇ」
「もーいーよ、プ−太郎になってやる」
「うわぁ、言っちゃった」
また赤点。
テスト用紙を見た瞬間、もう笑うしかなかった。
テストの点数なんていつも平均点以下だし、赤点ばっか。
受験なのにこんな事でいいのか。
もちろん不安だってないわけじゃない。
でも、今は残りのスクールライフを満喫したい。
- 604 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 19:04
-
「あ、本鈴鳴っちゃった」
「ごとーは行くよ、やっぱ。このままバカで終らしたくないし」
「えぇー」
「美貴も行こうよ」
「…さっきと言ってる事うやむやじゃん」
「ま、真面目だし?あ、ごとーは環境委員の打ち合わせあるんで、遅れて行きま〜す」
「げぇっ、ずっるいの」
通学カバンを振り上げて、不敵に笑うごっちん。
しょうがないごっちんが行くなら、美貴も行こう。
でもごっちんは遅れて行くんだから、美貴一人じゃん。
図書室に先生と二人っきりでいるわけ?
冗談じゃないよ
「んじゃ、よろ〜」
「ちょ、待ってよ!」
スカートの中が見えてしまいそうな程に疾走していった。
普段はあんな運動しないくせに。
第一環境委員の打ち合わせなんて大した事しねーだろって……
「へりくつかよ。くそっ」
近くにあったゴミ箱を蹴り上げたら、小指に激痛が走る。
トホホ。
- 605 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 19:15
-
「……しつれーします」
たくさんの本のインクの匂いが充満する図書室。
漫画なんか一冊もないからだいっきらいだ。
「…遅刻だぞ、藤本」
「ああ、すんません…」
「ったく…。君は吉澤の隣に座れ」
「…はーい」
口うるさい数学教師に睨まれ、余計な事に服装の注意までされた。
今胸元見やがったな。
軽くガンつけた後、すでに来ていた生徒の隣に座った。
おお、真面目だなぁ。
「…この過程により公式は成り立つ…。藤本、問4の問題を解け」
「へっ?」
ぼぅっとノートに悪戯書きの途中、不意に指されてしまった。
しかも全然わかんない。
隣の子は平然と教科書を見つめチラリと美貴の方を見た。
「…どうした藤本、答えなさい」
「え、えと…」
こんなの知るかぁぁ!!
ってきれそうな位の心臓。
っつうか、あの教師の得意げな笑顔が気に入らないんだよ。
人を見下したような顔。
『こんなのもできないのか』って。
負けず嫌いの美貴としては、絶対に譲りたくないこの場。
…でもわかんないんだよぉ。
- 606 名前:曇のち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 19:27
-
トントン
汗をかく拳を握りしめ、立ち尽くすだけの美貴。
何か膝をつつかれるような感覚に覚め、視線を下に落とす。
「……χ=6、この式は成立すると言える」
「え…」
「いいから、早く答えなよ」
膝をつついたのは、隣の席の人。
不安げな美貴を見て呆れたのかわからないけど、答えをぼそりと教えてくれた。
ふいな接触に驚いたものの、ぱっと口を開く。
「え、えと…χ=6、この式は成立します…」
「…正解。次はもっと早く答えられるように」
ほっ、と胸を撫で下ろし、席につく。
隣の子の顔を伺い、とにかくお礼がしたかった。
「あ、ありがと」
「いーえ、どういたしまして」
「あの…2組の吉澤さん?」
「うん、吉澤ひとみ。君は1組の藤本美貴?」
「あ、うん」
「ははっ、よろしくね」
銀縁のメガネをかけたその子は、思ってたとおり秀才だった。
見た感じはカタいけど、話した感じによると結構優しい。
なんだ、よかった。
聞こえないようにぼそぼそと笑いあい、その度先生に睨まれる。
「…吉澤さんって、頭良いよね?何で補習来てるの?」
「や、復習したかったから。ってか、よしざーさんてやめよ」
「偉っ。…じゃー、よっちゃんさん」
「さん?何でさん?」
「なんか…雰囲気がそうだから」
「何だそりゃ。じゃあ…美貴ちゃんさんで、オッケー?」
「アハハッ、おっけー!」
「…静かにしろ!!」
チョークがニ本、額にとんできた。
- 607 名前:曇のち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 19:34
-
それから、美貴とよっちゃんさんは仲良くなった。
クラスが違うから話すのはあれが初めてだったけど、意外にも
明るくて優しい人だったのが分ったから、すんごくイメージが変わった。
美貴の思考の中では、メガネ=秀才だったから。
それでも、よっちゃんさんは学年トップの成績。
毎回聞くその名は学校中で有名だ。
「…よっちゃんさーん」
「なーに美貴ちゃんさーん」
「…案外かっこいーんだね、よっちゃんさんって」
「ハ?」
「いや、ただのガリ勉かと思ってたもん」
「うわ、ひでーな。ネクラとか思ってたろ?」
「あはは、うん。でもスポーツできるし、話してみれば楽しいし」
「そう?そりゃあ嬉しいなぁ」
よっちゃんさんは、毎日のように図書室で本を読みふけっている。
それを美貴は毎日観察しに来ている。
放課後二人っきりの図書室には、沈黙なんだけど。
でも、何だかよっちゃんさんといると落ち着ける。
何も考える事なく、ただ一緒にいるのが好きだった。
その頃は、ただの友達にしか思ってなかったから。
- 608 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 19:35
-
次第におかしい事に気付いた
あれ、何考えてるんだろう美貴。
そんな事、しょっちゅうで。
暇さえあればよっちゃんさんの事ばっか、考えてて。
思えばあれが、美貴の初めての経験だった。
- 609 名前:証千 投稿日:2004/10/20(水) 19:36
- まあ一応sage進行で行こうかと。
深い意味はないですが。
学園もののよしみきはもしは初めて?
見かけたら苦情なりなんなりどうぞ。
- 610 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:16
-
「ねぇ、美貴」
「んー?」
「アンタ、成績上がったよねぇ」
「ふっふ〜ん、まーね♪」
「どしたの急に。こないだより倍上がってるじゃん」
そう、美貴は変わった。
急に成績が上がり始めたんだ。
それは、よっちゃんさんのおかげ。
バカな美貴に、暇さえあれば、時間さえあれば勉強を教えてくれた。
分らない所があったら、いつでも言ってよ。って。
なんちゅうか、嬉しいと言うか複雑というか。
同学年の人から勉強教えてもらうのには、少し抵抗があった。
なんだか自分がバカにされてるんじゃないか。とか思ったりしてしまうから。
でも、よっちゃんさんはそんなんじゃなくて。
「ここはさっきの応用だよ。ここにかければ、答えが出る」
「…あ、ほんとだ」
「美貴ちゃんさんは問題をよく読まないからだよ。
頭では分ってるけど、注意力が足りないからね」
「うー…」
「あははっ、まあそこだけ気をつければ絶対大丈夫だよ。
美貴ちゃんさん、勉強すれば頭良いんだから」
「……お世辞?」
「んなわけないよ。冗談で、そういう事言いたくないし」
パタンと参考書を閉めてメガネを取ったよっちゃんさん。
ニコリと笑った顔が、美貴のどこかをきゅんとさせる。
頭イイだけじゃなくて、よっちゃんさんはすっごく優しいから。
先生に教えてもらうよりわかりやすくて、ていねいだし。
真剣な顔をするよっちゃんさんの横顔が、美貴は好きだった。
- 611 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:22
-
いつもの放課後、よっちゃんさんと図書室で待ち合わせをした。
放課後にならないと開かない図書室の前で、よっちゃんさんを待つ。
もう外は、冷たい風が吹く10月。
なんか、急に寂しくなったりして。
冷えた両手をこすりあわせ、よっちゃんさんの事を考える。
常日頃、最近の美貴は変だ。
思い出したくないわけじゃないんだよ。
でも、思い出すと、どこかしらがかゆくなる。
頬が熱くなって、心臓がじんじん痛む。
何かの病気じゃないかってくらい、重い。
「美貴ちゃんさん、待った?」
「ぁ…ああ、全然。入ろっか?」
「そだね。あーあ…英語の予習しないとなぁ」
「う、うん…」
ふぅ、と軽く溜め息をつくよっちゃんさんは、面倒臭そうにニコリと笑った。
その度、美貴の鼓動はビクッと波を打つ。
できるだけ顔を合わせないように顔を伏せても、自然と首が動いてよっちゃんさんの
表情を伺ってしまう。
何でこんな事、してるんだかわかんないよ。
- 612 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:28
-
「ね、ね、美貴っ」
タタタ、と教室に小走りで走ってきたごっちん。
急に美貴の肩を掴んで息をきらせる。
両手に積み重ねてあった資料本が倒れそうになって慌ててバランスを取り戻す。
「な、何っ?」
「美貴、吉澤さんと仲良いよね」
「うん、で、何?」
「じゃ…知ってる?」
「だから、何を?」
「あのね…」
両手にあった資料本をどけて、美貴の耳元でぼそぼそっと囁いた。
その時は聞き取れなかったフリをして、冷静を装ってたけど。
本当はどんな感情を見せればよかったのか、どんな感情を持てばよかったのか
わからなくて。
教室の窓から外を眺めて、ゴールにシュートを決めたよっちゃんさんを無意識に見つめるだけだった。
- 613 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:35
-
「やっほ、美貴ちゃんさん!」
「うゎっ!!」
「あ、ゴメンゴメン。やりすぎた」
最近ほぼ毎日訪れている図書室の隅で一人、何かを考えていた。
ただ呆然としていただけの時、耳元で聞き慣れた声が聞こえて心臓を打ち抜かれる。
やっぱり何も知らない顔で微笑むよっちゃんさんを見るのは、胸が痛い。
「今日、ちょっと用事あるから勉強できないんだ。ごめんねぇ」
「…ううん、いいよ、毎日やってるんだから」
「そう?明日はちゃんとおしえたげるからさ」
「…ありがと」
正直、それ会話に持ち出す事は難しくて。
ゴメン、と両手を合わせて軽く頭を下げるよっちゃんさんの顔を見て、美貴は愛想笑いをする。
本当はこんな事したくない。
いいよいいよって、言い返したかったんだけど。
「…よっちゃんさんってさ…付き合ってる人、いるんでしょ?」
とにかく、友情って言葉だけじゃ満足してなかったんだ、美貴。
いつの間にか気になってて、いつの間にか違う風に見ちゃってて。
よっちゃんさんの事が、好きだなんて。
- 614 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:41
-
「…美貴、ちゃんさん?」
「ごっちんから、聞いたよ。5組の、石川さんと…でしょ?」
「え…?それはちがっ…」
「先に言ってよぉ。石川さんと付き合ってるなんてさ、美貴知らなかったよ?」
「何言って…」
「おめでとっ。良かったね」
満面の笑顔で、何かを言いかけたよっちゃんさんを残して。
笑顔を振り払って、美貴は泣きながら図書室の角を曲がる。
あんな皮肉しか言えない自分が恥ずかしくて。
あんな事言って、美貴は一体何がしたかったんだろう。
もう友達に戻れない気がした。
美貴の勝手な言い分で、よっちゃんさんを傷つけた。
目尻が熱くなるのを堪えて、ぐっと握り拳をつくる。
きっと美貴は、世界で一番最低なやつだ。
- 615 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/20(水) 22:47
-
ピピピッ…ピピピッ…
「美貴!早く起きなさい!!」
「ん゛…今日休むっ…」
「バカも休み休み言いなさい。熱でもあるの?」
学校なんて行く意味がない。
泣き明かした後、心に穴がぽっかりあいてそんな事を思った。
もう、よっちゃんさんには会えない。
会わす顔なんて、なかった。
前みたいに、昨日みたいに笑いあう事はできないから。
前みたいに、面白い事して微笑んでくれるよっちゃんさんはいない。
だったらもう、学校行く意味なんてない。
「…頭痛い…」
「どれ。……あ、本当に熱あるじゃない」
「…マジィ…でぇ…?」
「昨日何かしたの?目真っ赤にして帰ってきたけど…」
「…何でもないよっ。ボールが当たっただけっ」
「だからって両目も赤くなるわけないでしょ」
「…うるさいよぉお母さん…」
ばさっと頭まですっぽり布団をかぶってシャットアウト。
まさか本当に熱が出る程、美貴は想ってたんだ。
自分自身でも気付かないくらい、夢中だったんだ。
なのに、自分から終らせちゃった。
ほんと、美貴って正直じゃなくて、意地っぱりだから。
- 616 名前:証千 投稿日:2004/10/20(水) 22:48
- あ゛…ageちゃった…
バカ作者です。
自分でsageとか言ってたのに…ああ…(w
時間があったので更新してみました。
- 617 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 22:49
- かくし
- 618 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 22:49
- もいっこ
- 619 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 08:54
- こっちのスレを再開させていたとは!
ムハーw意地っ張りミキティにムハーw
銀縁よっちゃんさんムハーw
- 620 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/21(木) 16:29
-
頭痛くて、ぼーっとする。
病は重病のようで、薬を飲むとさらに頭がガンガンする。
大人しく寝てなさいとお母さんに言われたものの、いつものように
安眠する事はできなかった。
もう8時半。学校の授業はとうに始まる頃。
いつもは仮病を使って学校を休みたがる美貴だけど、本当に風邪をひいてしまうなんて。
しかも、ワケありの。
昨日、泣いたのがいけなかったのかな、とか、考えたりもして。
でも一番の理由は、よっちゃんさんにある。
自業自得だって事は分ってても、どうしても諦められない自分がいるし。
ごっちんからあんな事を聞かなければ、美貴はいつもと同じようによっちゃんさんと
戯れていられたのかもしれない。
「…ん゛ー、頭痛い…」
視界がぼやけるのが分って、そのまま瞳を閉じた。
- 621 名前:曇のち 晴れ 投稿日:2004/10/21(木) 16:35
-
「…あの、後藤さん?」
昨日、美貴ちゃんさんの様子が変だった。
急に作り笑いなんかして、待ち合わせの図書室から出て行ってしまった。
きっと原因はなんらかの誤解なんだって分った。
だって、美貴ちゃんさんからあんな事を話すなんて思ってもなくて。
あの誤解をとけないまま、美貴ちゃんさんは学校に来ていない。
「ああ、吉澤さんだっけ?何?」
「あのさ、美貴。美貴ちゃんさんに、吹き込んだの…後藤さんだよね?」
「え?何が?」
「…えと、アタシと石川さんがどうとか、こうとか…」
美貴ちゃんさんは笑って、こう言った。
『おめでとっ。良かったね』って。
全然笑えてない笑顔が、バレバレだった。
何だかすごく寂しくなって、何も言い返す事もできなくて。
多分、美貴ちゃんさんは泣いていたんだ。
微かに鼻をすする音が聞こえて、瞳が潤んでいたから。
あたしは、知らないうちに、美貴ちゃんさんに何かをしていたんだ。
美貴ちゃんさんが、石川さんとアタシの事を誤解していた事。
それだけじゃない。
それだけで、あんな辛そうな笑顔は見せないよ。
- 622 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/21(木) 16:38
-
「え…?もしかして、違うの?」
「違うよ、全くの誤解」
「そーなんだ…ごめん、ただの噂だったなんて知らなくて…」
「いいよ、別に。でも、何でそんな噂が立ったんだろ…」
あ、あ。
もしかして、あの時だ。
- 623 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/21(木) 16:47
-
「…あたし、石川さんに演劇部の勧誘されてたんだ。
とりあえず仮入だけ済ましてた時…」
「時?」
「抱きつかれた…気がする…」
思い当たる理由なんて、それしかなかった。
その現場を誰かに見られて、それが広がったんだ。
「…なんだ、そんだけの事だったんだね」
「そうだよ、有り得ないから」
でも、でもなんで美貴ちゃんさんは?
それだけの疑問がひたすら浮かんでくる。
「そう言えばさ、美貴、風邪ひいてるらしいんだ」
「え…風邪?」
「そうそう、ごとーお見舞い行こうかなぁって思ってるんだけど…
一緒に行く?」
「……」
どうしても、美貴ちゃんさんが美貴ちゃんさんでなくなるような気がして。
何だろう、このわだかまり。
何だろう、この不快感。
どこかがズキズキして、もどかしい。
「…後藤さん、美貴ちゃんさんのお見舞い、あたし一人で行っていいかな?」
「え?ああ、吉澤さんがいいんだったら、任せるけど?」
「……ありがと」
こんなもやもや、嫌だ。
- 624 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/21(木) 23:03
-
きっと、夢の中でなら言えるんだろうな。
よっちゃんさんに、いつもみたいに笑いかけて。
『ごめん』
それだけじゃない。
ちゃんと、美貴の想いを伝えたい。
ボヤけていく視界、混乱する思考。
その中にうっすら、人陰が映る。
「…おはよ、美貴ちゃんさん」
「おは…よう…」
「うん、おはよう」
にっこり笑って手をひらひらさせたその人は、夢で見たあの人で。
昨日見た面影とか、全部忘れて、一年振りに再会したカンジ。
これって、正夢っていうの?
- 625 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 16:52
-
「布団、はねのけすぎだから」
「ああ…ありが…」
「つかね。勝手に喋りまくって勝手に帰らないでよ」
「……へ…?」
いつの間にかはね除けていた布団を美貴にかけて、キッと睨まれる。
それは紛れもなくよっちゃんさんの瞳。
今日はコンタクトだから、いつもの目とは違った。
ぼやけた視界でもはっきりと分った、よっちゃんさんの怖い瞳。
「…すっごく気にしてたんだ。美貴ちゃんさんが、昨日言ってた事」
「……え…」
「石川さんと、どうのこうのって」
いつもの、本を読んでいる時の顔。
真剣で真面目に字を追いかけて、静かに読書をする時の表情だった。
昨日、美貴がよっちゃんさんにした事。
よっちゃんさんは、とても気にしていてくれた。
- 626 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 16:57
-
「…今日、後藤さんに言っておいたんだ」
「……何、を…?」
「石川さんとアタシが、付き合ってるっていうのは嘘だって」
「…う、嘘?」
「そーだよ。ただの誤解」
あは、アハハハ。
なんて音がつくほど、心の中で自分に笑いかけた。
美貴は、勝手に思い込みをしていただけだった。
だって、石川さんって可愛いし頭もいいし、よっちゃんさんにぴったりだから
本当なのかと思って。
ちょっと黒いしブリッてるけど、釣り合ってるから。
諦めてた、のに。
「…ったく、変な誤解やめてよ。…美貴ちゃんさん泣くし」
「なっ…泣いてない!!別に悔しかったとかそんなんじゃ…」
「悔しかったの?」
「ちがっ…わ…」
こんな意地っぱりな自分がキライで。
さっさと言いたかった。
好きだよ、大好き。
そんな事を思って顔が赤くなる前に、よっちゃんさんは美貴を抱きすくめた。
隣にいて匂う、よっちゃんさんの匂いがすぐに分る程、強く。
- 627 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 17:04
-
「…よっちゃんさ…」
「ありがとう。それと、ごめんね」
「え…」
「…美貴ちゃんさん泣かせて、ごめん。それと、もいっこ」
「…アタシの事、好きでいてくれてありがとう」
自信満々に美貴の頬に、ちゅっと唇が触れた。
予想外すぎる、こんなの。
明らかに計算済みの行動だし、よっちゃんさんにしかできない。
ずるすぎる、こんな展開って。
「べつにっ…好きじゃないもんっ…」
「嘘だ、傍にいれば分るよそれ位。だから、ありがとうって」
「…っ…だって…よっちゃんさんは、美貴の事、そんな風に見てないでしょ?」
「バカ言えー。…こんな事こっぱずかしくて言えないけどさ」
ぐっと腰に回された手が熱を持って、伝えようとしている。
意地っぱりな美貴に、素直に伝えようと。
「大好きだから。アタシは、美貴ちゃんさんが大好きだよ」
- 628 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 17:10
-
「…恥ずかしいな、何か言ってよ」
「だ、だって今のっ…」
「勇気出して告白したのに…受け答え無し?」
「…知ってるんじゃ、ないの…?」
「知ってるけどさ。そりゃあ。でも言って欲しい」
美貴も、よっちゃんさんが大好き。
言いたいよ。ずっと我慢してたから。
でも恥ずかしい。
よっちゃんさんは美貴の頭をこづいて、もう一度ギュッと抱き締める。
抱きしめられる程、なんとなく切ない。
友達のまんまじゃ、変わらないから。
変わりたいから。
「…美貴も、よっちゃんさんが、大好き」
「…やった、両想い成功」
「ふあっ…」
しまった。
もっとかわいらしい声出せるのに、再び頬にキスをされて馬鹿な声をあげる。
ああ、女の子らしいってどういうもんよ。
背の高いよっちゃんさんの肩に顔を埋めて、ちらっと顔を覗き込む。
ゆっくりと微笑んで、やっぱり美貴の大好きな笑顔が見えた。
- 629 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 20:56
-
「…で、どうだったの、その後」
「え?」
「だから、ベッドでどうとか…」
「無いよそんなの。キスしただけで終り」
「えぇー、怪しい…」
「んな事するわけないでしょ告白の直後に!!」
次の日、学校で待ち構えていたのは奇妙な笑みを浮かべたごっちんだった。
たった一日で全快した美貴を心配する事もなくごっちんは立続けに質問を続ける。
一体どこで、よっちゃんさんと美貴の事を聞いたんだろう。
「ふぅ〜ん…美貴もオクテだからねぇ」
「…あのねぇ別に美貴とよっちゃんさんはそういう事するために…」
「分ってるってば。まあ、そんな事はもっとステップアップしてからだね」
「ああうっさいなぁっ」
しつこく聞き廻るごっちんを手で追い払う。
ここまで人の私情に首を突っ込んでくるごっちんは苦手だ。
大体よっちゃんさんに下心なんてなさそうだし。
なんてゆうか、純粋に美貴の事想ってくれてるみたいだし。
だから美貴も、そういうよっちゃんさんに惚れちゃったんだっけ。
「…おぉい、美貴ちゃんさーん」
「…ふ…へ?よっちゃんさん?」
「さっきから話し掛けてんのにー。シカト?」
「違う違う、ぼーっとしてただけ」
何か、通じ合っちゃってる。
なんて事に嬉しがって、不思議そうに首を傾けるよっちゃんさんを眺める。
- 630 名前:曇りのち 晴れ 投稿日:2004/10/22(金) 21:06
-
「ゴホッゴホンッ」
「あ、まだやっぱ治ってない。喉痛い?」
「あ…うん、でもヘーキ…」
やっぱぶりかえしちゃった。
鼻声なのはいつもだけど、咳が出ると辛い。
軽く喉を鳴らすと、よっちゃんさんは心配そうに背中をさすってから
ぐっと抱き寄せた。
「あんま、無理しないでね。送ってくよ」
「い、いいよ」
「だめ。つか、変質者にでもあったらどうすんの」
「何だその理屈ー。風邪の事じゃないのぉ?」
「とにかく何かあったらどうすんの。ほら、手」
「へ?」
「手!繋いで帰るっしょ?」
じれったそうに突き出した手を、美貴は微笑んで握り返す
その手はすごく暖かくて、冷えた美貴の手にはちょうどよかった
「ひっ、冷たい」
「冷え性なんだもーん」
「ま…いっか」
なんだかんだ言って、優しく笑って手に力を込めるよっちゃんさん。
「名前で、呼んでいい?美貴って」
「は…?美貴?」
「いやいや、だって美貴ちゃんさんって面倒じゃん。だったら、美貴でいいじゃん」
「や…いいよ今まで通りで!!」
「えぇ、折角可愛いのに」
「い、いいから!」
FIN
- 631 名前:証千 投稿日:2004/10/22(金) 21:07
-
>619様 ムハ−w ありがとうございます!
こちらは容量ギリまで使わせて頂こうと思い…
やはし勿体ないと。
リクもこちらで短編ならば受け付けていますので、気楽にどうぞ〜
- 632 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/23(土) 11:22
- おぉっ!こちらでも書かれていたのですね!
あのリクよろしいでしょうか?
ごまみきの甘々お願いします・・・・;;
- 633 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 12:55
- まだ寝ているならそっとしておこう。
そう思って彼女の背中をゆっくり撫でる。
忙しい日々の休日はこうやって過ごすのが二人にとってベスト。
だから何もせず、眠そうな瞳に微笑んであげよう。
きっと、いい夢が見られるから。
- 634 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 12:57
-
いつからか、好きの気持ちに気付く。
初恋は最初で最後の恋だと分ったのも、その瞬間だ。
磁石みたく引き寄せられて、いつの間にか瞳に捕われていた。
どこが好き?
よく他の人に聞かれる。でも、こう答えるよ。
全部が好き。どことかじゃなくて、あの子の全部が好き。
だって、答えられない。
理由なんか思い出せる程、頭良くないし。
だったらいっそ、愛し合えばいいと、そう思った。
- 635 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 13:01
-
あんまり甘えてくれないから、どうしていいのか解らない。
そう思う時も少なくないから。
何も言わずに黙って、キスをせがまれても、解らない。
最初は悔しかった。
好きなのに、わかってないから。
でも、不安な時は傍にいるよって。
そう言ってあげた。
そしたら綺麗に笑って、一番大好きな笑顔を見せてくれた。
時々無意識に見せる女の子っぽい所とかも、何か好き。
普段は男勝りだからかな、妙に色っぽいんだ。
もちろん指摘する事もなく、ただ見つめてるだけ。
だって言ったら怒るから。
そういう事、言わないで。って。
- 636 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 13:03
-
「…ごっちん…寒い」
「え?ああ、よいしょっ」
うっすら目を開けて、首に手を巻き付ける。
エアコンを入れてるわけでもないのに身体が冷えてしまったのか
抱きしめて温めてやる。
髪にキスを落とすと、おざなりにしようとする彼女の心が見える。
肩に顔を埋めているから、その時の表情は解らなかった。
きっと照れて、顔を赤くしていたに違いない。
- 637 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 13:07
-
ワガママも何も、聞いてあげたいから。
他の人以上に甘いんだな、これが。
時折ささいな我侭を言い出す彼女に、反論する気にはなれないし。
うん、分かったよ。って、頭を撫でてしまうんだ、つい。
ありがとう。って、笑う顔が好きなんだ。
誰よりも可愛くて、自分だけのものだって思うと、胸がどきどきする。
こういう満足感は他では得られないと、彼女に会って分かった。
「…ごっちん…」
「……ん?」
「…ん……やっぱ、いい」
「何、何さ?」
「い、いーや。何でも、ない」
焦るように誤魔化してそっぽを向いてしまう。
バレバレなんだけど、あえて何も言わずに流す。
きっと彼女はこう言いたいんだ。
- 638 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 13:10
-
「…キス、しよっか?」
こう、ね。
代わりに促してあげると、ぱっと驚いたように振り向く。
したいならしたいって言ってくれればいいんだけど。
そう簡単にはいかない彼女だから、代わりに言ってあげるんだ。
キスのサインはいつもそう。
頬のあたりを撫でてあげると、自然と目を閉じて。
そして唇を塞ぐ。
乾燥していそうな唇を潤すように、深く。
- 639 名前:いい夢を 投稿日:2004/10/24(日) 13:16
-
「…も…いいっ…」
「え…」
「…ごっちん、何かしようとするからっ…」
「……ちぇっ」
肩をぐっと抱いて床に押し倒そうとしたその時、微かに抵抗される。
あくまでそっとだけど、腕を押し返されて。
キスをするだけでトロンと、魔法にかかったように表情が変わる。
それが可愛くて、たちまち衝動に駆られる。
「…分かったよ。しない」
「寝てる間にしそうなんだけど…」
「しないってば。卑怯な事はしたくないの」
「…フーン」
「何その目ー。いいから、おやすみっ」
ちゅ、と短く唇を重ねた。
目を丸くさせて、『こういう事するから』と怒る。
なんて言いながら、しっかり胸の中に入って。
いつもの寝顔を眺めて、ただそれだけでいい。
いつか終わりが来ようとも、今があれば。
今の愛しさ、忘れない。
FIN
- 640 名前:証千 投稿日:2004/10/24(日) 13:18
- >632様 リクして頂いた甘いごまみき…甘かったのかどうか
分りませんが書いてみました。
- 641 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 17:06
- ごまみきをリクしたものです。
甘いですっ、物凄くっ。
やっぱり作者さんのごまみき大好きですw
ありがとうございました!
- 642 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 19:50
- 作者さんのごまみきいいですね〜
みきよしも好きなのでまた時間があるときに
甘いみきよしを書いてもらえたらうれしいです
- 643 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/25(月) 12:15
-
チュン…チュンチュン…
ピピピピッピピピピッ
「…うっせぇー……」
バキンッ
勢い余って起き上がった拍子に、目覚まし時計を落としてしまった。
うっすら目を開けると、もう朝が来ている事に気が付く。
寝返りを打って、隣の感触を確かめようと手を伸ばした。
スカ
あれ、いない。
- 644 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/25(月) 12:18
-
もう起きたのか。
というか、美貴も早く起きて会社に行かなきゃいけないんだよ。
ええと、今何時……
「…七時…四十五分……」
八時に家を出なきゃ、会社に間に合わない。
「…遅刻じゃんかぁぁぁぁ!!!!」
急いでスーツを着込み、適当に顔を洗い歯を磨く。
ノリでバリバリのワイシャツに苦しさを感じながらもネクタイを雑にまく。
やばいやばい、しかも会議だっていうのに。
遅刻したら大目玉だ。
- 645 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/25(月) 12:24
-
だんだんだん、と階段を降りてリビングに辿り着く。
朝はいつもこうだけど、今日は時間を読み間違えてしまった。
せっかく目覚まし時計をセットした意味がなくなった。
「あ、おはよぉみきたん♪」
「あ、うんおはよ亜弥ちゃん」
てきぱきと朝から家事をこなす、美貴のハニー。
エプロン姿にきゅんときてしまいながらも、コーヒーをすすり席につく。
「もぉー、昨日寝るの遅いからぁー」
「だって昨日の亜弥ちゃん可愛かったんだもん…」
「いつも可愛いですぅー」
「あはは、そっか」
ああ…昨夜の事を振り返ると、美貴も張り切り過ぎたなぁ。
余りにも亜弥ちゃんが可愛いもんだから頑張っちゃったよ。
って、そんな事言ってる場合じゃない。
- 646 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/25(月) 12:33
-
「…ってこんなゆっくりしてる場合じゃない!!行ってきます!」
「みきたんお弁当忘れてる!!」
「ああごめんごめん」
「ネクタイ曲がってるってば、ちょっとストォップ!」
「うぐっ」
玄関で首ねっこを掴まれ亜弥ちゃんにネクタイを直される。
なんだか新婚っていいよね、遅刻しそうな夫にいそいそとこういう事してくれるのって…
急がなきゃなんだけど、急がなきゃなんだけど…顔がニヤけてくる。
「…これでおっけい!」
「ありがと、行ってきます!!」
「みきたん忘れ物!!」
「え…他になんか忘れてること……」
あったじゃん。
新婚夫婦だからこそ出来るもんが、あったじゃん。
急いでてすーっかり忘れてたよ。
毎朝してる事なのに。
「…行ってきます」
ちゅっ
「ん、行ってらっしゃい」
「えへへ、じゃあね」
……幸せだぁ
- 647 名前:証千 投稿日:2004/10/25(月) 12:37
-
まあ、こんなカンジで。
甘いなぁー…久しぶりにこんなの書いた気がしますw
- 648 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 15:18
- 新婚さんの2人に頬がゆるみっぱなしです
もっと希望w
- 649 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 19:01
- 新婚…キテマースキテマース(笑)
ぁゃみき最高…vV
- 650 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 22:54
- いいねー。短編でこういう話書こうと思ってた矢先の事でした。
ここに気付いてよかった。
もっと希望2w
- 651 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 04:34
- 新婚…ありがちだからこそこんなに萌えてしまうのか(褒め言葉です
あ〜もう、どうしてくれるんですか作者さん?
ほっぺがずっと上にあがりっぱなしなんですよね(ニヤニヤ
- 652 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 06:55
- >>646の最後に、いつもみたいに「FIN」がないから、
まだ新婚シリーズは続くと信じてる。………信じたい
- 653 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 16:54
-
パンッ パンッ
「…ふぅ、洗濯物終了!」
表札は、藤本。
えへへっ、うふふっ。
あたし、藤本亜弥になったんだよね?
そう言い聞かせると、増々嬉しくなってくる。
洗濯物を干し終えてから主婦という実感に浸る。
「…えへへっ、次はお掃除だぁ」
みきたんと結婚してなかったら、あたしは一生恋愛とかしてなかったと思う。
だから、ずっとみきたん一直線。
結婚してまだ2ヶ月しか経ってないから、新婚甘々。
こんな幸せな生活を送る前は、色々と前途多難だったのが夢みたい。
- 654 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 16:58
-
ピーンポーン
「はぁい」
掃除機の音でかきけされそうなインターフォンに気付き、掃除機のスイッチを消す。
パタパタとリビングから玄関に駆けて、ガチャリとドアを開けた。
「…あ、吉澤さん?」
「おぅ奥さん。ちょっと、いい?」
「え、ああ、どうぞどうぞ」
「悪いね、突然」
来訪者は、お隣の旦那さんである吉澤さんだった。
何故こんな真っ昼間に我が家を訪れたか。ってゆうのは、後々。
少し不安げな瞳に気付いたあたしは、少し散らかり気味のリビングに
案内する。
- 655 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 17:07
-
「…で、お話って?」
ふぅ、と気力が抜けた様な吉澤さんにお茶を差し出す。
なんか、いつものたくましいカンジがない。
「…最近さ、梨華ちゃんの様子がヘンなんだ」
「梨華さん、ですか?」
「…梨華ちゃん、顔色わるくって、あんまり笑ってくれないんだ。
大丈夫?って聞いても頷くだけで、御飯作っても食べてくれなくて……」
「…そう、ですか……」
吉澤さんの奥さん、梨華さんはキャリアウーマン。
で、吉澤さんはアットホームダッド。
ようするに、主婦交代制の生活をしているお家。
どちらかというと家事が得意な吉澤さんが家の事をやって、仕事上手な
梨華さんは会社でバリバリ働いている。
いつでもラブラブな二人の様子に、途切れがかかっているという事。
「…仕事が、うまくいってないとか?」
「それはないんだ、今度の企画書が採用されたって喜んでたし…」
「……体調が悪いとしか考えられないですね、どちらにしても」
「そうでしょ?でもそう聞いてもそんな事ないって誤魔化されるんだ」
まあ、普段から健康体な梨華さんだけど。
あたしも思い当たる節は全く無く、何も協力出来そうになかった。
吉澤さんはありがとう、と言ってお茶を一滴も飲まずに帰って行った。
なんだかなぁ。みきたんは調子が悪くても焼肉焼肉騒いでるけど。
- 656 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:09
- 帰宅 8:30
「ただいまー」
はぁ、サラリーマンは疲れる。
同僚に押し付けられそうになった残業から逃れ逃れ、自分の仕事を
こなし家に帰れば愛しの亜弥ちゃんが待っている事を思えば楽なものだ。
ネクタイをゆるめて靴を適当に脱ぐ。
くんくん。
「…おぉ、いい匂い」
リビングをすり抜けて、キッチンからいい香り。
ああ、お嫁さんがいるってなんて素晴らしい。
- 657 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:11
-
「おかえりっ、みきたん」
「んぁーただいま…御飯何?」
「カレー。食べるでしょ?」
「うんうん、食べる」
嬉しそうにエプロンを解いた亜弥ちゃんの背中に抱きついて鍋を覗く。
亜弥ちゃんお手製のカレーが食事の時間をを今か今かと待っているようだった。
おかえりのちゅーをしてもらって、ルンルンで二階に駆け上がりベッドルーム
へ向かう。
- 658 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:18
-
「…ん?窓開いてる」
昼間に亜弥ちゃんが開けたんだろう。
そう思ってジャージに着替えた後窓を閉めようと鍵に手をかけた。
「…おいっ、おい藤本っ」
「……よっちゃん?」
お向かいの窓からひょこっと現れたのは、隣人の吉澤ことよっちゃん。
引っ越してきてすぐに仲良くなったためお隣さんとは境界線が薄い。
「何?」
「あ、あのさ、そっちに梨華ちゃん来てない?」
「ううん、来てないよ。まだ帰ってないの?」
「今日は早く帰ってくるって言ってたのに…心配だなぁ…」
「心配性だねぇ。そのうち戻ってくるでしょ。下で亜弥ちゃん待ってるから、じゃね」
「あっ、待て閉めるなぁっ」
ガチャリ
「……浮気でもしてたりして」
にひひ、と不安げなよっちゃんに笑いかけた。
ま、それはありえないかな。
亜弥ちゃんが作ったカレーの匂いが立ち篭めている頃だろうと思い
足早にリビングに戻る。
- 659 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:25
-
「……おいし?」
「うん、美味しいよ」
「そっかぁ、良かったぁ♪」
カレーも美味しいんだけど、早く亜弥ちゃんも食べたいんだよね。
そんな事言ったら照れて禁止令を出され兼ねないからあえて言わない。
つーかそれにしても最近カレーばっかな気がするな。
得意料理なのは知ってるけど、たまには他のものが食べたいな。
ってそんな事言ったら拗ねるからあえて言わない。
「あ、そうそう、隣んちの奥さん帰ってないんだって。亜弥ちゃん知らない?」
「えぇ?知らない…けど、旦那さんなら今日うちに来たよぉ」
「え?何で?」
「何か、梨華さんの事で色々あるんだって。様子がヘンだとか…」
「ふーん…。やっぱ浮気じゃ…」
「みきたんそういう事言わないの。失礼でしょ?」
「はいはいごめんなさいー」
ぺしりと頭をぶたれてそれ以上は言わない事にした。
- 660 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:28
-
「…んっ…ゴホッ…」
「亜弥ちゃん?」
ガチャン、と食器をテーブルに置く音が耳に響いた。
テレビに向けていた視線を戻すと、亜弥ちゃんが咳き込んで苦しそうにしてる。
どどど、どうしよう。
とりあえず、背中をさすってあげようと思い手を伸ばした瞬間、亜弥ちゃんは
立ち上がってキッチンに駆けて行った。
「だ、大丈夫亜弥ちゃん?」
「うっ…ん、何でもない」
「どしたの急に咳き込んだりし……」
これって。
これってさ、あの、俗に言う、アレじゃないの。
- 661 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:34
-
「あ、あ、あ、あ、赤…あかちゃ……」
咳き込んでキッチンに飛んで行くカット。
こんなのよくドラマで見る。
やっぱり、これってそうだよね。
「もしかして……赤ちゃん、できた……?」
いつの間にかテレビの音も聞こえなくなって、リビングに沈黙が流れる。
まさか、本当にこの時が来るなんて思ってもいなかった。
黙りこくって俯く亜弥ちゃんに問いかける。
そして、いつもの笑顔で、こう言った。
「…最近、ね…おかしいなって、思ってたんだけど…そーみたい」
「……やった…」
「え?」
「亜弥ちゃん、ママになるんだよ!?そんで、赤ちゃん産まれるんだよ!?やったぁぁ!!」
「みきたんっ?」
パパって呼ばれるんだ。初めて、パパって呼ばれるんだ。
- 662 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:40
-
思いっきり、亜弥ちゃんを抱き締める。
これまでにないくらい強く、優しく。
「び、病院、まだ行ってないよね?」
「うん。だってほんとにそうだと思わなくて…」
「明日、一緒に行こ。会社休んで、一緒に行く」
「い、いいよそこまで…」
「何言ってんの、美貴と亜弥ちゃんの子だよ?だったら初めから一緒にいたいよ」
「みきたん……」
そっと亜弥ちゃんのほっぺにキスをして、にこりと微笑みかける。
一緒にいよう。ずっと、赤ちゃんも一緒に。
結婚する前に誓った言葉が振り返る。
お義父さん、お義母さん、ごめんなさい。
亜弥ちゃんの次に大切なものが、生まれてきます。
- 663 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:44
-
バッターン
突然玄関の方から、とてつもない音が聞こえてきた。
「よ、よっちゃん?」
走ってきたわけでもないのに息を切らせて玄関の壁に寄り掛かるよっちゃんだった。
目をギラギラ光らせて、ニカッと気持ち悪い程に笑う。
こんなよっちゃん見た事ない。引き気味の亜弥ちゃんの手を握る。
「梨、梨、梨華ちゃ…に…」
「何?どしたの?」
「あ、あか…ちゃ………」
「は?何?」
ガシリと美貴の両肩をひっつかみ、ガクガクと揺さぶる。
まるでさっきの美貴みたいに言葉が途切れ途切れだ。
え、ちょっと待て。
まさか、んなわけないよね。
- 664 名前:ふぁみりぃ 投稿日:2004/10/26(火) 19:51
-
「赤ちゃんが、できた」
よっちゃんに?
「んなわけないだろ!!梨華ちゃんに、赤ちゃんができたんだよ!!!」
「…マジ?」
「嘘でこんな事言うか!さっき帰ってきたと思ったら、嬉し泣きしてそう言ったんだぞ!!」
「あの…うちの…亜弥ちゃんも…」
「へっ?」
なんたる偶然。いや、必然だったのかもしれない。
冷や汗だらだらのよっちゃんはあっけに取られた表情で照れくさそうに
笑った亜弥ちゃんを呆然と見果てている。
「実はさ、うちんとこも、できちゃったんだ」
亜弥ちゃんの肩を抱いて、よっちゃんさんに堂々と言ってやった。
まあ、産まれてくる子は亜弥ちゃんと美貴の子だし?
隣には負けないくらい、可愛い子供なんだろう。
「…ふ…ははは、じゃあ、予定日ほぼ同じかな…」
「だろう、ね。アハハッ、アハハハッ」
予定日も同じじゃ、多分病院も同じじゃないだろうね。
微かに不安を抱きながらも、嬉しそうに笑う亜弥ちゃんを見たら
何も言えなくなった。
新しい家族、新しい命。
亜弥ちゃんと、美貴の家族だね。
…つづく
- 665 名前:証千 投稿日:2004/10/26(火) 19:55
-
ついに書いちゃった家族シリーズ(笑
心配して下さった読者の皆様、御安心を。
続きはありますのであしからず……
>648様 ニヤけちゃうのは書いてる私もそう……w
ニヤけて下さい、どんどん。
>649様 キテます、作者共々。何かサ○エさんのようにならない
事を自分でも祈っていますw
>650様 ありがとうございます、まだ二人の愛は永久に……(笑
>651様 熟年夫婦のようにどろにまみれた空気感は出したくないのでw
いつまでも甘い感じを保ちたいです。
>652様 いえいえ、まだ終りではありませんよ〜。
期待して頂き光栄です。
- 666 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 20:06
- あはははは!
かなりウケル!!
- 667 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 21:28
- いいですね〜!ありそうでなかなか無かったこの設定
甘すぎてとろけてしまいそうです。w
若いって素晴らしいですね
- 668 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 21:56
- 続きキタキタキタキタ━━━━!!!!!!!!!!
なんだか結婚する前も大変だったようで、その辺のとこも気になったり…
- 669 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:25
-
「パパァ、パパァッ」
「…ふ…がぁっ!」
「あはっ。パパ、おっきしたぁ!」
「…絵里……こんにゃろ!」
「きゃははっ、きゃぁ」
幼児のくせに、残酷な事しようとするな。
寝ている美貴の鼻をつまみ呼吸を停止させられ、折角の日曜が台無しになってしまった。
仕返しに美貴の腹にのっかる絵里をくすぐる。
なんだよ、まだ6時半じゃないか。
「あれ?絵里、なんで幼稚園の体操着着てんの?」
「きょう、うんどうかいだもん!」
「え。えぇ?」
聞いてないな。
あ、そっか、そう言えば亜弥ちゃんから聞いたような気が。
- 670 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:30
-
亜弥ちゃんが絵里を産んで、もう4年の月日が経った。
病院に駆け付けた美貴はその場で大泣きして、産まれてきた赤ちゃんを
抱き上げ、絵里と名付けた。
我ながら、可愛い。
「もうっ、一昨日言っておいたでしょ?」
「だって一夜漬けで書類作ってて…忘れてたんだもん」
「罰として、場所取りしてくる事!」
「…場所、取り?」
「そう。場所取り」
今、朝の6時半だよ。
こんな時間から運動会の保護者席の取り合いしろって?
- 671 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:32
-
「当たり前でしょ?イイ席取っておいてね♪」
「…う…はい」
そう言ってお弁当を詰めはじめるマイハニー。
何か新婚当初より冷たくなったな亜弥ちゃん。
ぶつぶつ言いながらも、亜弥ちゃんの命令に従いさっさと家を出る。
でもこんな朝早くに席取りしてる家族なんてそうそういやしないだろう。
そう思ってた美貴は馬鹿だった。
- 672 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:35
-
「…なんじゃこの列………」
この人達、一体何時からここにいるんだろう。
そう思わさせるような行列だった。
もちろん全て、愛する娘息子の勇姿を撮影するために奥さんに送られた父親ばかり。
やる気まんまんが伺える。
「…ついていけないな…」
大人しく列の最後尾に並ぶ事にする。
保育園が開園する時刻は8時。おいおい、冗談じゃないよ。
- 673 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:39
-
「おーい、藤本」
「ん?ああ、よっちゃん」
同じく行列に参戦してきたのは隣人の吉澤ことよっちゃん。
やはり奥さんの命令だろう、眠そうに目をこすりながらビニールシートやら
イスやらを持ちうんざりした表情だ。
「朝早くからお疲れ。梨華ちゃん張り切っちゃってさぁ」
「同じく亜弥ちゃんも。絵里も体操着着込んで朝っぱらから大変だよ」
「れいなもだよ、梨華ちゃんより早く起きてやがんの」
お互い大変だね。
そう言い合いながら持ってきたイスに座り込む。
実はよっちゃんのとこも、うちの絵里と同学年。
泣き虫の絵里とは正反対の負けん気がつよい男の子だ。
- 674 名前:_ 投稿日:2004/10/27(水) 14:45
-
「…あ、矢口さん」
なんだ、矢口さんも来てた。
ちっこい背ながらも辺りを見回し列に並ぶ姿。
「おはよございます、矢口さん」
「おぉーう、お二人さん。席取りに行かされたのかい?」
「まあそんなとこです。開園まであと何時間だと思ってるですかね」
「そーだよなぁ、なっちも張り切って北海道弁が更に激しくて何喋って
んだかわかんなくて翻訳に苦労したぜ」
矢口さんの奥さんは美貴と同じ北海道出身。
矢口さんは子供よりも奥さんを溺愛してるので何を頼まれても断れないだとか。
- 675 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/27(水) 22:37
- わ〜い!続きキタ━━━━!!
家族シリーズにはまっちゃいましたよ。どうしよ、ニヤニヤ止まらない…
美貴パパ大変ですね。あと、子供たちにも期待してますw
- 676 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 17:45
-
「おい、おい藤本」
「…Zz……」
「起きろー。開園だぞー」
ふぇ…開園?
「やべ、イイ席取られちまう。先行くぞ!」
「狙うはブランコの前!」
え…今、何時?
寝ぼけ眼で携帯に目をやると、開園時間丁度。
- 677 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 17:48
-
ドダダダダダダダダダダダダダダダダ
「ちょ…いてっ、いててて!!!!」
「邪魔だどけぇ!」
「割り込みすんなよバカヤロー!!」
もはや並んだ意味などなし。
眠い目をこすり保育園の前にできていた行列は崩れ、順番など関係がなくなっていた。
急いで先に進もうとするものの、他のオヤジ達に阻まれなかなか進めないでいる。
やばい、ここで遅れをとれば端っこで絵里の活躍を眺めるしかなくなってしまう。
ここは裏技を使って。
「すいません、退いて下さい」
ギンッと回りのオヤジを睨む。
得意のガンつけでいそいそと後ずさってゆく。
ふふん、これで楽にすすめる。
- 678 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 17:55
-
ええと、どこにしようかな。
さっき矢口さんがブランコの前がどうのこうのって言ってたな。
「…げ、すでに人が…」
遅かった。
確かにブランコの前ならグラウンドが見渡せる。
でも時すでに遅く、すでに何人かがシートを広げてふんぞり返っている。
「…あ、ここでいいや」
こうなりゃ適当だ。
シーソーの横にある桜の木の下。
グラウンドからは少し離れてるけど、ここしかもう場所がない。
しょうがない、ここにしよう。
- 679 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 17:59
-
「おはよぉございまぁす!!」
「おはよう絵里ちゃん、今日は頑張ろうね?」
「うんっ!」
しばらくして門から元気よく登園してきた我が娘。
担任の先生に明るく挨拶をして、美貴に駆け寄ってくる。
ふふ、無邪気だなぁ。
「パパァ、だっこ!!」
「えぇ?しょうがないな」
こういう時に甘えたがるんだから。
何だかんだ言って娘には甘い美貴はひょいと絵里を抱き上げる。
って、亜弥ちゃんどこだよ。
「絵里、ママは?」
「あのね、あさ美ちゃんのパパとおはなししてる。あそこだよ」
「…え……」
- 680 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 18:02
-
何だ、何だあれは。
「あ…あれ…絵里……」
「あさ美ちゃんのパパ、かっこいいでしょぉ」
「パ、パパの方が…かっこいいよ」
「えぇーっ、パパださいもん」
ガーン。
娘にそんな事を言われて尚更あさ美ちゃんとやらの父親が憎い。
絵里が指差す先を見てみると、亜弥ちゃんとその父親が仲良さげに
話をしている。
妙に馴れ馴れしいんだよ。
- 681 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 18:04
-
「ママァ−、パパがよんでるよぉーっ!!」
「わっ、絵里!」
絵里が遠くにいる亜弥ちゃんに大声で余計な事を。
いや、別に余計じゃないんだけど。
でもタイミングってあるじゃん。なんか、嫉妬心で呼びつけたみたいに
とられたら嫌だし。
「…あ、すいません、夫が呼んでるみたいで…失礼します」
「うん、じゃあまた後でね」
何、何あの乙女の輝きは。
- 682 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 18:07
-
「…なぁに?どうしたのみきたん?」
「パパねぇ、あさ美ちゃんのパパのこと…」
「わ、わーわーわー!!!何でもない!!」
「えぇ?何よぉー」
ホントは何でもあるんだけど。
でも幼いと思われたくないから言わない。
「…あ、あの人…誰?」
「え?ああ、絵里のお友達のお父さんで、後藤さん」
「何で喋ってたの?」
「…ほぇ?何でそんな事聞くの?」
「べ、別に何でもな…」
「あーっ、わかったみきたん。やきもちぃ?」
そんなんじゃない。
今さら新婚でもないのにそんな事思うわけないじゃん。
- 683 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 18:10
-
「ち、違うよ」
「うーそ。悔しかったんでしょ?」
「…う……」
「んもぉ、可愛いんだからたんはぁ」
可愛いのはそっちだよ。
なんて新婚当初は毎日のように交わしていた言葉。
今じゃ恥ずかしくて言えやしないけどさ。
しかも絵里がいる目の前で頭ナデナデしないでよ!
恥ずかしいでしょ!
「あのね、保護者会の事話してただけ。分かった?」
「も、もう分かったよ。場所取りしておいたから、荷物置いてきなよ」
「んふふっ、はぁーい。絵里行こ?」
「うんっ」
…なんか、うまーくおちょくられた。
いつも亜弥ちゃんはそうなんだよね。
美貴の事見すかして、何でも知ってる。
言葉で伝えなくても、すぐに感付いてくれるから。
だから結婚したんだよなぁ、きっと。
- 684 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 18:16
-
パッパラパー パッパッパッパー
「えー…本日はお日柄もよく天候に恵まれて、去年とは違い絶好の運動会日和です…
保護者の方々、そして来賓の方々、記念すべき運動会に来て頂き………」
ああ眠い。
園長とか校長の話ってなんでこう長いんだろう。
開会式が始まり保護者席で取った桜の木の下で欠伸をすると、亜弥ちゃんに
頭をぺしっと叩かれる。
「みきたん、ちゃんとビデオカメラ持ってきた?」
「持ってきたよ。ちゃんと絵里の組になったら撮るから…寝かせて…」
「もぉーっ、しょうがないなぁ」
亜弥ちゃんはぷんすか怒りながらも美貴の髪を撫でて寝かし付けてくれる。
人前だから膝枕はしてくれなかったけど。
- 685 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:09
-
パン パンパーン
「みきたぁん!絵里の組始まっちゃうよ!」
「え…もう少し…」
「ダメ!ほら早くぅ!!」
あまり寝てない美貴を叩き起こし、亜弥ちゃんはやる気満々でグラウンドに駆け出してゆく。
夜はヤる気ないくせに。
おっと、話が逸れた。
「あ、パパァ!」
「おー、絵里は何番目に走るの?」
「えっとね、れいなといっしょにはしるから、よんばんめ!」
「そっかぁ、ばっちし撮ってあげるからね」
「うん!」
そっか、絵里はれいなくんと同じ組なんだったっけ。
絵里に腕を引っ張られてイヤイヤ運動靴の紐を結んでいる。
何かとやる気が感じられないけど、絵里がしつこいせいか
いつも一緒にいる。
なんだか悔しい…可愛い娘を持った故の事か。
- 686 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:15
-
「れいな、絶対一番だぞ!!」
「…なしておとうさんがはりきるん?」
「隣の藤本に負けてたまるか!死ぬ気で走れ!!」
んだとコノヤロー。
よっちゃんがれいなくんに喝をいれているのを美貴は聞き逃さなかった。
うちの絵里を甘く見るなよ。
「ほー、自信満々だねよっちゃん」
「ふん、うちのれいなが勝つに決まってるだろ」
「ま、勝たせてやってもいいけど。なー絵里?」
「何だとぉ!!」
親バカなのは分かってるよ。
だから余計に張り合っちゃうんだよ。
- 687 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:20
-
「れいなっ、いっしょにはしろうねっ」
「んな…しょうぶやけん、いっしょにはしるって…」
「いいの!れいなといっしょがいい!」
「…かってにせんか」
よっちゃんとの言い合いの最中、絵里はへんな事を言い出す始末。
一緒にゴールしたい気持ちは分るけど藤本家のプライドに賭けてそれはいけないよ。
そう言おうと思ったものの純粋な絵里に負けて大人しくグラウンド脇で
カメラをセットする。
「ところでこの種目って何?」
「50メートル走。絵里はれいなくんとあさ美ちゃんとさゆみちゃんと走るって」
「へぇー…あ、次だ」
亜弥ちゃんはパンフレットを見ながら背のびをする。
周りに人がいすぎて背の低い亜弥ちゃんは見えにくいのだ。
ま、美貴も大差ないんだけど。
- 688 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:23
-
「ぜったいいっしょにはしろうねっ?」
「…わーかってると。はやくならばんかい」
ウキウキ気分な様子の絵里と、恥ずかしそうにするれいなくん。
保育園児の分際でいちゃこきやがって。
カメラをのぞきながらふと思う。
「みきたん、ちゃんと撮ってよ?」
「うんうん撮るよ」
やや興奮状態の亜弥ちゃんの背中を撫でて促す。
- 689 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:25
-
「…位置について……」
園長の声に合わせて、カメラのスイッチを入れる。
「よーい…ドン!!」
パァンと音が鳴り響き、一斉にスタートする。
おお、絵里もなかなか速いじゃん。
「見て見てみきたん!絵里速い!」
「ああ、見てるよ見てるから落ち着いて亜弥ちゃん」
カメラで絵里の姿を追う。
奥に眠っていたビデオカメラがこんな時に役立つとは。
- 690 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:28
-
「…あっ、絵里!!」
一瞬追いかけていたカメラから、絵里が消える。
亜弥ちゃんの小さくあげた声に驚き、原画を見る。
視界から消えたと思った絵里は、20メートル近くの所で転んで泣いていた。
あちゃあ、泣き虫がでちゃったよ。
「みきたんどうしよう…絵里…」
「大丈夫。転んだぐらいで諦める子じゃないって」
それは美貴が一番知ってる。
美貴と亜弥ちゃんの子供だから。
立て。立って走れ、絵里。
- 691 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:32
-
「っ…絵里!?」
突然、転んだ絵里より先に走っていたれいなくんがピタリと足を止めた。
カメラで覗き、ズームにしてみる。
妙に焦った表情のれいなくんと、泣きじゃくる絵里。
「っ…ふぇっ…いたいよっ…ぅ…」
「絵里、だいじょうぶか?たてる?」
「うっ…いたいぃっ」
「れなといっしょにはしるって、いったばっかやろ。あきらめたら、ゆるさんっ」
砂で汚れた絵里の体育着をはらって、れいなくんが絵里の手を掴む。
やっぱり立派な男の子らしくて、よっちゃんにそっくりだった。
でも 悔しい。
- 692 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:35
-
「れいなくん…優しいね」
「…ん、そうだね」
「ふふっ、みきたん寂しいんでしょ?」
「べっ、別にそんなんじゃないよ」
「あたしは、れいなくんがお婿さんだったら文句ないけどなぁ」
お婿さん。
いやぁぁぁぁぁ!!!!!!
「冗談だよぉ、みきたんったら本気で受け止め過ぎ」
「だってそんな事言われたら…」
「ハイハイ。心配いらないよ。ほら、一緒にゴールしてる」
「え……」
- 693 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:38
-
さっきまで泣いていた絵里は、少しだけ笑ってれいなくんに抱きついてる。
ゴールテープを切った二人はビリだったけど、周りの先生達に凄く褒められている
ようだった。
「…後20年ぐらい経ったら、ウェディングドレス着るんだよ?」
「………」
「パパありがとう、って結婚式で言われちゃうんだよ?」
「……うん…」
「だからちゃんと、カメラ回しててね♪」
亜弥ちゃんはさっくりそう言うけど、きっと心では切ない気持ちで一杯なんだと思う。
それは美貴も同じ。
いつかはきっと、素敵な男の子と結婚しちゃうんだもんね。
- 694 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:41
-
「ぐすん…」
「泣かないのみきたん。まだ全然先の事だよ?」
「だって亜弥ちゃんが…」
「よしよし、ごめんねぇ」
亜弥ちゃんは美貴の頬にキスをして舌を出して謝った。
なんか寂しくなってきて泣いてしまった。
何だか本物の親バカになりそうだ。
『…えー、午後の部に移る前に昼食となります。園児のお迎えを保護者の方々
よろしくお願い致します……』
「え、もうお弁当?」
「うんっ。美味しいの作ってきたから一杯食べてね?」
「うん」
- 695 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:45
-
「パパァァ−!!」
「おぉっ、絵里!」
グラウンドから駆けてきた絵里を抱き上げてあげる。
精一杯頑張ったかけっこの事を誉めてほしいのか、もじもじしている。
「あのねっ、ころんだときにれいながいっしょにはしろうっていてくれたの!」
「…そっか、よかったね、最後まで走れて」
「うん!でね、れいなもいっしょにごはん食べていい?」
「え…う…」
「みきたん」
絵里をシートに座らせる美貴の後で、亜弥ちゃんが優しく言った。
そうだよ。何切なくなってんだよ美貴。
「そっかぁ、じゃあ吉澤さんと梨華さんも一緒?」
「うん!いいよねママァ?」
「いいに決まってるじゃーん!パパはちょっと拗ねてるけどねぇ〜」
「あ、亜弥ちゃん!」
ニヒヒ、と意地悪に笑う。
なんだかなぁ。
- 696 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:50
-
「れいなぁっ、こっちきてたべよぉ!」
「あ、うん」
「亜弥ちゃん、いいのかしらお邪魔しちゃって」
「いいえ、全然!吉澤さんもどうぞ」
「ああ、ありがとう」
総勢6人で昼御飯を食べる事になった。
運動会ってこんなふうにするんだっけ。
美貴は運動会、いっつもひとりぼっちだったからなぁ。
お父さんもお母さんも忙しくて、お昼には帰っちゃったから教室で
独りで食べていた記憶がある。
「それにしても、れいなもイキな事するなぁ」
「え…なにが?」
「絵里ちゃんと一緒にゴールしたでしょう?男らしかったわよ」
「べつに…絵里がどんくさかったやけん…」
「こーら、そんな事言わないの!」
「てっ」
いじらしそうにれいなくんは絵里の方を盗み見た。
こつん、と頭を叩くよっちゃんの奥さんはすみませんと謝る。
……こいつが未来の息子か……
「みきたん?頭どっか行ってたよ?」
「え?いや、別に」
パクパクと味も感じないままおにぎりやら卵焼きを胃に納めてゆく。
- 697 名前:_ 投稿日:2004/10/30(土) 19:52
-
「良かったねー、れいなくん頼りがいがあって」
「うん!絵里、れいなとけっこんするの!!」
「ばっ…す、するわけなか絵里なんかと!!」
「にゃはは、れいなくんかわいー」
ああ、失神しそう。
- 698 名前:証千 投稿日:2004/10/30(土) 19:54
- まあこんな感じで。
田中さんが博多弁なのは気にしないで下さいw
>675様 今回は子供達の活躍が多かったかと……
ありがとうございます、俄然やる気が出てきますよw
- 699 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 21:16
- もうだめだ。可愛すぎる。
- 700 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 21:43
- みんな可愛い。すべて可愛い。
でも亜弥ちゃん、夜もヤる気出してあげてw
- 701 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 23:40
- 素晴らし過ぎるな
こういうのを待ってた。ニヤけっぱなし
作者さんありがとう
- 702 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 02:46
- うわぁ何だこれ・・何ですかこの萌え作品は。
終始ニヤけっぱなしで自分がものすごくキショい。
突然超良作に出会ってしまいました。作者様愛してます。
- 703 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:21
-
「…ハァ、もういいやごちそうさま」
「え?もう食べないのみきたん?」
「うん、ごめんね…」
ごめんね、美味しくないわけじゃないから泣きそうな顔しないで。
今は腹の虫が鳴かないだけだから。
「そうだみきたん、保護者の競技出てもらうからね」
「…保護者の競技?そんなのあるの?」
「もっちろん。賞品もあるんだから、ガンバッテね♪」
へぇ、今どきの運動会って保護者競技まであるんだ。
亜弥ちゃんは何故か意味ありげな笑みを浮かべてパンフレットを差し出す。
- 704 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:25
-
「…何何、借り物競走……。よっちゃんも出るの?」
「あったりまえだい、れいなの無念をはらしてやる。覚悟しろ!」
「おとーさんはずかしいからやめんか!」
「パパがんばってねぇ!」
ほぉ〜…そういう事。
絵里の前で格好いい所を見せればパパの位もアップ確実。
前みたいにパパとお風呂はいりたくないとは言わせないぞ。
「よぉーし、パパ、絶対優勝するからね!」
「ほんとう?」
「本当だよ、よっちゃんには負けない!」
愛する娘のために、必死こいて久しぶりに運動しちゃいます。
- 705 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:29
-
赤のハチマキをキツク額に巻き、無邪気に笑う絵里に手を振る。
亜弥ちゃんも人前でみきたんと連呼して応援してくれてる。
さすがに恥ずかしいけど、可愛いから許す。
「れいなのパパもゆうしょうできるといいね!」
「はぁ?絵里、いうてることむちゃくちゃたい…」
「いいの!ほらっ、れいなもおうえんしよう!」
「…ついていけん…」
満面の笑顔でよっちゃんは周りの観客に投げキッスをする。
なんたって天才的にカッコいい美中年。
いや、中年ではないか。
「…位置について」
「…怖気尽くなよ藤本」
「そっちこそ、泣くなよ」
ああ、高校時代の血が騒ぐ。
- 706 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:32
-
パァン
よし、スタートは上々だ。
まず最初の障害物である跳び箱をクリア。
「…よっと」
なんなく成功。6段でさえ跳べなかったらどうしようと少し不安だった。
まだよっちゃんには抜かされず、俄然気合いが入るものの先頭を走る強敵が。
さっき亜弥ちゃんの言っていた、後藤サンだとかなんとかって人。
ロングの髪をゴムでまとめてしなやかに走る。
なんかムカツク。
周りのお母さん達はキャーキャー黄色い声を上げて耳障りだ。
- 707 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:36
-
ついに最後の障害物をクリアし、借り物地点へと急ぐ。
すぐ後ろに全力疾走を賭けているよっちゃんがぐんぐんと近付く。
こりゃやばい、さっさと紙を引かないと。
小さなボックスに入った紙を抜き取り、カサカサと広げる。
「…って…え゛ぇ!?」
『 きれいなもの 』
きれいなもの。
きれいなもの。
きれいな、もの。
- 708 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:39
-
「…パパ?」
きれいなものって、何だ。
たとえがあり過ぎて思い付かない。
すぐ隣にはよっちゃんが『とうめいなもの』を引いてすぐさま駆け出す姿。
なんだよ、きれいなものって。
「…どしたん、絵里のとうさん…」
「わかんない…パパ、こわいかおしてる。絵里をおこるときのかおしてる…」
「……みきたん?」
この世で一番、キレイなもの。
「あ、あったぁぁぁ!!!」
それって、一つしかないじゃん。
- 709 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:42
-
そうだ、アレだよ。
つか、アレしかないじゃん。
そんなに心配そうな顔しないでよ。
笑ってる顔が一番好きだよ。
だからずっと、傍にいて。
プロポーズは、こんな単純な言葉だった。
「み、みきたん?」
「亜弥ちゃん来て!」
あの時、あの時と同じ表情の亜弥ちゃんの手を引いて。
ゴールへと駆け出す美貴。
- 710 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:45
-
「っ…どしたの急に!」
「いいから、ゴールまで走るよ!!」
わけが分らないのも無理はない。
キョトンとした顔に美貴は綻んで、懸命に走る。
そして、ゴールテープを切った。
「…っ…はぁっ…はぁっ…く、るしっ…」
「大丈夫みきたん?息が…」
「ヘーキ。一番だよ、美貴達」
気がつくと、周りが大歓声に溢れているのに気付く。
- 711 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:47
-
驚く亜弥ちゃんの肩に抱きついて、呼吸を整える。
世界一素敵な、美貴のきれいなもの。
「…紙に、なんて書いてあったの…?」
「…へへっ、あのね…」
懐かしい、4年前の事。
まだ幼い恋愛しかしらなかったね、二人共。
目の前にある事だけに夢中になって、辛い思いもさせた。
だけど一生、一緒にいたかったんだよ。
- 712 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:51
-
「…み、みきたっ…な、なんで!?」
「照れないでよ。だって、亜弥ちゃんしか思い付かなかったんだよ」
「でっ…でも…」
「それとも、他にきれいなものが存在すると思ってる?」
クサイ。すんごくクサイセリフ。
真っ赤に染まる亜弥ちゃんの頬が可愛くて堪らない。
冷えた頬にちゅっとキスをして、硬直する亜弥ちゃんを抱きしめた。
もうどうとでもなれ。
園長に非難されようとも美貴は何も言わない。
「亜弥ちゃんはずっときれいだよ。美貴だけの、コワレモノだから」
言いたくても言えなかった。
- 713 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:54
-
可愛い、とは言えても、キレイだねなんて言えないでしょ。
「パパかっこよかったよぉ!」
「ふへへ、ありがと」
「…くっそ、負けた……」
「ふふん、ざまーみろよっちゃん」
息も絶え絶えのよっちゃんにニカッと笑いかけ、優勝賞品が手渡される。
「……なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!」
- 714 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 21:57
-
「…ったく、優勝賞品が紅白饅頭だなんて聞いてないよ」
園長から手渡された賞品は、とんでもなく美貴が嫌いなもの。
嫌がらせかと思う程気分が悪かった運動会だった。
隣のソファで絵里と亜弥ちゃんが美味しそうにそれを食している。
美貴の頑張りは結局、亜弥ちゃんとの愛を深めるだけのものだった。
「おいしいのに、パパなんでたべないの?」
「絵里、パパはアンコが嫌いなんだってぇ〜。変だよねぇ?」
「うん、パパ変!」
「……どーせパパは変ですよー…ふんっ」
挙げ句の果てに娘に変呼ばわり。
泣いてやる。と言ってもなぐさめにもならず。
- 715 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:00
-
「…ねぇみきたん?」
「……んー」
忙しかった運動会を終えて、疲れた体を癒す為早めに寝床につく。
ダブルベッドで寄り添うように亜弥ちゃんは美貴の肩に顔を埋めて甘えるように鳴く。
なんだか不思議な気持ち。
「そんなふてくされないでよぉー。みきたんカッコよかったよ?」
「…そーお?」
「うん。あたしのサイコーの旦那さんだもん」
なんでそういう事、可愛い顔で言っちゃうの。
キスしたい。
反射的に心が感じてる。
- 716 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:02
-
「…待って、たん」
「……んぇ?」
潤った唇を頂こうとしたその時。
亜弥ちゃんの手で肩をどかされた。
「…言って欲しいの、もっかい」
「……なにを?」
「だぁから、今日の…」
じれったくも亜弥ちゃんが言ってくれるまで待つ。
分かってるんだけど、ね。
- 717 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:06
-
「亜弥ちゃんは、ずっときれいだよ」
恋に落ちたその瞬間、美貴はもう亜弥ちゃん意外と恋愛できない。
そう思ったんだよ。
キスしたらもう死んでもいいってくらい、幸せだった。
そんな事を巡らせて、ゆっくりと甘いキスをする。
微かに鳴く、亜弥ちゃんの声。
乱れてゆくパジャマ。
- 718 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:08
-
「……っ…んぅっ」
「可愛い…」
「ふっ、あっ…」
亜弥ちゃんの声が響き始めた頃、柔らかい胸に手を止める。
幾度となく触れたその感触に感情が妙に高ぶってしまう。
少しづつ手に力を込めながら、亜弥ちゃんの耳に甘噛み。
ガチャッ
「「っ!?」」
- 719 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:12
- 突然、寝室のドアが開く音がする。
乱れた亜弥ちゃんのパジャマのボタンを、暗闇のベッドの中で
不器用に止め直す。
ビックリ仰天な美貴はおそるおそるベッドを捲った。
「…え、絵里ぃ?」
「ぇっ…ぇっ…ぁぁ…」
その正体は、泣きながらクマの縫いぐるみを抱く絵里だった。
何の事やら泣きじゃくる絵里をだっこしてベッドの横に座らせる。
それを察した亜弥ちゃんも美貴がズラしたパジャマのズボンを直して
絵里を抱きしめた。
「うぇっ…えっ…ママぁ…」
「どーしたの急に?ママに話して?」
さすが亜弥ちゃん、夜泣きの接し方は十分マスターしている。
- 720 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:15
-
「グスッ…あの…ね、れいながとおくにいっちゃうゆめ…みたの」
「えぇ?れいなくんが?」
あっけにとられる。
絵里は、れいなくんの事しか考えてないのか。
「と、取りあえずパパとママと一緒に寝よ?ね?」
「っ…うんっ…」
「……あは…あはは…あははは…」
「み、みきたんしっかりして!」
そっか、そうか。
絵里はもうれいなくんのものなのか。
美貴から離れてっちゃうのか。
- 721 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:19
-
「…みーきたん、拗ねないのぉ」
「…絵里が…れいなくんに…絵里…」
「ほら、絵里もう寝ちゃったよ?」
もうダメだ。
諦めようか。
いや、まだ将来の相手が絵里に決まったというわけじゃない。
気をしっかりもつんだ、美貴。
「…大丈夫だってば、まだ4歳だよ?」
「わ、分かってるんだけど…」
「結婚するまでまだ時間いっぱいあるってば」
「…だ、だって美貴達結婚したの19歳の時だよ?絵里だって…」
「ああもう、いいから!」
むぎゅっ、と後ろ向きで亜弥ちゃんに抱きつかれる。
そしてふと、我に返った。
- 722 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:22
-
「…絵里のことばっか気にしないの。大丈夫だから」
「で、でも…」
「みきたん、あたしの事は気にしないわけ?」
「え…?」
「あたしだって、そこらへんの人に取られちゃうかもよ?」
そんなの許さない。
もしそんな度胸のあるやつがいるなら美貴がブッ殺すよ。
「…渡さないって、誰にも。絶対」
「……えへへ、当たり前だよね?」
「うん。絶対、一生、誰にも、触らせないし渡さない」
- 723 名前:_ 投稿日:2004/10/31(日) 22:24
-
ちゅ、と額にキスを落として、眠気が来るのを待つ。
隣で幸せそうに眠る絵里の黒髪を撫でて、亜弥ちゃんを抱き締める。
これが家族っていうんだ。
朝がくるまで考えようかな。
これからのこと。…絵里とれいなくんの事でも。
……つづけ。
- 724 名前:証千 投稿日:2004/10/31(日) 22:25
-
ふひー。甘いのが出来上がりました。
番外編も考えてます、一応。
助言を読者の方に頂きましたので、亜弥ちゃんと美貴様の結婚秘話でもつづろうかと…
レスは明日にさせて頂きます。すんません。
- 725 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 22:28
- リアルタイムで拝見させていただきました。
最 高 で す
番外編の結婚秘話と、続きが楽しみで楽しみでなりません…
- 726 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/31(日) 22:45
- ……やっぱ萌えすぎて死にそうです(*´Д`)ハァ
家族シリーズ、前のワンコシリーズよりやばいかも…(ぇ
続きも結婚秘話もなんでもカモーナ!!です。頑張ってください。
- 727 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 23:24
- ハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!
家族シリーズやばいですね・・・甘い甘い。
結婚秘話も気になるし、れなえりの今後も気になる・・・。
次回更新楽しみにしています。作者様がんがってください。
- 728 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 23:44
- …こ、呼吸困難に陥りました…。
そして萌えすぎて頭がどうにかなりそうなんですけど。
さらに結婚秘話…萌え死んでしまう可能性は否定できません。
ものすっごい期待してます。頑張って下さい。
- 729 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 21:51
-
「…っ…ふぁっ…あっ」
「…気持ちいい亜弥ちゃん?」
「んっ…ぅぁんっ……き、もちいよっ…」
「ココ?」
「ぁ!ふぁっ…んんっ…やっ…」
ソファでぐったりとする亜弥ちゃんに、一層力が入る美貴。
指にぐっと力を入れてさらに刺激をする。
眉にシワを寄せて、亜弥ちゃんは堪えている。
- 730 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 21:54
-
ガチャッ
「ママァ−、きょうがっこうでねぇー…」
ソファがギリリと音を立てて揺れる頃、リビングのドアを控えめ
に開く音。
「…んっ…たん、もういいよぉ」
「ん、気持ち良かったでしょぉ?」
「うん、だいぶ体が楽になったかも。ありがと」
うーんと背伸びをして肩と腰の柔軟をする亜弥ちゃん。
あ、ちょっと読者の人誤解してたでしょ。
決してリビングであんな事やそんな事はしないわけで…
- 731 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 22:00
-
「どしたの絵里?」
「あのねぇ、きょうがっこうでれいながねー」
「…ぐ…」
晴れて愛娘の絵里も小学校に進学し、現在一年生。
毎日隣人の同い年、れいなくんと元気に登校している…
のはいいんだけど。
「れいなね、体育の50メートル走いちばんだったんだよぉ!」
「そうだったんだー、かっこよかった?」
「うん!いちばんかっこよかったのぉ!」
なんて、父親としては重大な問題にぶちあたっているわけで。
絵里はその…れいなくんにゾッコンらしく、将来結婚とかなんとか言ってて。
もちろん美貴はそんな事言語道断なんだよ。
- 732 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 22:04
-
「そっかぁ〜。宿題もうやった?」
「うん!」
「じゃもうおやすみっ、ママとベッドまで競走!」
「まけないもぉん!」
あー…なんか寂しいぁ……
れいなくんに奪られるっていうのが一番ショック。
確かにれいなくんは容姿端麗だし小一にしては男前な感じしてる。
だからって、だからって。
「…みきたん?」
「んぇ?ああごめんなさい」
「んふふっ、どしたの急に」
「や…別に」
絵里との競走を終えた亜弥ちゃんは怪訝な表情の美貴を覗き込む。
んな可愛い顔しないでよ。
ちゅーしたくなるじゃん。
「
- 733 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 22:08
-
「…みきたん、まーた絵里とれいなくんの事?」
「何で分かったの?」
「もー、何年一緒にいると思ってんのよ」
「……あはは、そっか」
亜弥ちゃんはつん、と美貴のほっぺを突いてにゃはっと笑う。
美貴はこの笑顔にやられちゃったんだよね。
一瞬でノックアウト。
「…今のみきたん、結婚式直前の時の顔だった」
「へ…」
「顔、硬直しっぱなしで、目見開いて、青ざめてたの」
「あ…そうだったっけ?」
結婚式か…
- 734 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 22:13
-
「…でも、タキシード着てたみきたん、すんごく素敵だった」
「え、そう?」
「うん。初めて見たんだもん、あんなキッチリした服着てるの」
確かに結婚式の時はギシギシの髪型に仕立ててタキシードを着てた。
あの時は不安で不安でしょうがなかった。
この先上手くやっていけるとか、将来の二人の事とか。
「亜弥ちゃんも、すっごくキレイでびっくりしたよ、美貴」
「えへへ、本当に?」
「うん。ウェディングドレスだったから…マジびびったよ。本当に」
目の前に白いドレスを纏った亜弥ちゃんがいて、美貴は何も言えなかった。
あいた口が塞がらなくて、ただただ美しい亜弥ちゃんに目を奪われてた。
- 735 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/01(月) 22:17
-
「そんでさぁ、式の途中にあたしのパパがみきたんに殴り掛かって」
「…それ、もう言わないで…」
「ナハハ、ごめんごめん。だってあの時のみきたん、ちょー情けなくてさぁ」
「……ぐ……」
もう思い出したく無い過去となってたのに。
そう、亜弥ちゃんのパパさんに美貴はぶんなぐられたのだ。
狂乱してておまけに酒を浴びていたパパさん。
思いきりグ−で殴られて、美貴は失神してしまった。
「ビックリしたもん。パパがお酒飲むと性格変わるって、言って無かったもんね」
「…美貴、結婚取り止めになるかと思ったんだよ」
「そんな事させないよぉ、そしたらあたしがパパ殴るもん」
「……」
笑顔でそんな事言わないで。
- 736 名前:証千 投稿日:2004/11/01(月) 22:22
- ま、こんな所で。
一体二人は幾つなんだ。と思われる方もいるかもなんですが
計算してみれば分りますw
まあ二人の若さは永遠に…というのがテーマなんであんま気になさらないようにお願いします。
>725様 最高と言って頂きありがたき幸せ…リアルタイムで御覧になられましたか?
それは嬉しい限りです。これからもどうぞよろしくです。
>726様 ワンコシリーズにも萌えて頂きましたようなのでこちらも満足です。
甘い二人の話は作者も大好物なので。
>727様 れなえりの進展はいかに…作者にも分りませんがw
その言葉を胸に頑張りたいと思います。
>728様 頭がどうかなってしまったようなので次回もお楽しみにどうぞ(笑
萌え死ぬ程喜んでいただければ作者も嬉しい限りです。
ありがとうございます。
誤字脱字などが多い駄文ですがこれからもどうぞよろしくお願いします。
ちなみに絵里ちゃんは保育園児でした。
途中で幼稚園児になっているのに気付き…すいません。
- 737 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 23:45
- 何年経っても奥様萌えーな旦那さん、ある意味すごいw
浮気とかしたら、奥様に殺されそうだからですかね?w
- 738 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/02(火) 00:53
- いきなり何やらかしてるのかと思えば…w
そして奥さんの尻に敷かれぎみなヘタレ旦那さん萌え。
- 739 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:16
-
美貴と亜弥ちゃんが出会ったのは、7年前。
当時お互いに若くハツラツと青春時代を過ごしていた。
美貴は大学を卒業してまもなく小企業に就職し、他愛もない一人暮らしを送っていた。
そしてなんと、亜弥ちゃんはその時高校生だった。
今考えたら結構いけない事をしていたのかもしれない。
そんな時、二人は終電電車の中で出会った。
- 740 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:19
-
未成年だというのに、上司に大量の酒を浴びせられた美貴は
フラフラ状態で駅に足を運びなんとか終電に間に合った。
あんなに飲んだのは生まれてはじめてだったかもしれない。
「…っ…ヒック…きもちわる…」
心地よい泥酔は通り越し、吐き気を催している。
トイレに行く暇もなく電車に乗り込むと、車内には全く人気が無い。
好都合だった。
誰もいないと安心し、美貴はやっとこで腰を下ろしてボスンと横になる。
朦朧とする意識と視界を閉ざし、目を閉じた時。
- 741 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:22
-
「…大丈夫、ですかぁ?」
なんだか甘ったるい声が耳に届いた。
ふいと首を横にすると、向かい側に誰かが座っている。
どうやら一人だけのようで、すぐに乗り込んできた様子だった。
短いスカートと声で女子高生だと分る。
「…ん…え、美貴?」
「そうです。相当酔ってるみたいなんで…」
「う…ちょっと気持ち悪いけど、平気…ありがとう」
「…そうですか、良かったです」
- 742 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:25
-
女子高生なのに、しっかりしてるなぁ。
なんて声をかけられた嬉しさで思ってしまった。
どこぞの酔っぱらいかも分らないのにほいほい声をかけて、危ないとも思えた。
安心したように笑ったその子は、寝転がる美貴の隣に何気なくやってくる。
「失礼ですけど、いくつですか?」
「…じゅう…く…」
「えぇ?未成年じゃないですか!」
「…上司に飲まされちゃって…うぇっ…」
やばい、出そう。
言い訳がましく並べ立てた上にもどす勢いだ。
とっさにその子は美貴の背中を撫でてしきりに声をかける。
- 743 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:29
-
「ん…ご、ごめん」
「いえ、いつもやってますから」
「え…?」
「うちのパパ、貴方みたいに酔っぱらって帰ってくるんです」
「あは…そっか」
パパ、か。
美貴はまだ程遠いや。
その時はそう思ってたものの意外と近かった。
「…きみ、いくつ?」
「あたしは18です。一個違いですね」
「女子高生か…でも何でこんな時間まで…」
「夜遊びですよ、ちょっとしたね」
ふと、美貴の背中を撫でる手が止まった。
きっとこんな夜遅くまで遊ぶのには、何かわけがあるのだろう。
その子の不安そうな顔ですぐに分かった。
- 744 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:31
-
「…ダメ、だよ?こんな時間まであるいてちゃ…」
「貴方に言われたくないんですけどぉ?」
「……ま、そうだけどさ…。名前は?」
「亜弥。松浦、亜弥です。貴方は?」
「美貴だよ。藤本美貴」
なんだかすぐに打ち解けて、その他に色んな事を話した。
この子、なんか楽しいなぁ。
自然と、殆ど同年代の友達のように会話をしていた。
- 745 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:35
-
「あたし、卒業したらどーしよっかなぁ…」
「まだ決めて無いの?」
「…あんまり…」
「そっかぁ。美貴みたいな平凡なやつにならないほうがいいね、亜弥ちゃん可愛いし」
「藤本さんは、サラリーマンですよね?」
「うん。結局大学出てもなーんも意味なかったしね」
人生は平凡だ。
普通の高校に進み、普通の大学に進み、普通の会社に就職。
はっきりいって充実はしていない。
美貴が可愛いと言うと、亜弥ちゃんはたちまち頬を赤らめた。
乗り気で言っただけなんだけど、美貴も後から恥ずかしくなってくる。
なんか、変なカンジがする。
- 746 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:38
-
揺れる終電電車は終点に辿り着き、美貴の酔いも覚め始めた時。
亜弥ちゃんが口を開いた。
「あの、よければ番号教えてもらっていいですか?」
「う、うん。構わないよ」
「たまに…電話とか、メールしていいですか?」
「え?や、別に、いいよ」
「…ありがとうございますっ、おやすみなさい!」
「……おや、すみ……」
嵐が過ぎ去ったような感覚。
ホンット、女子高生って楽しそう。
でもそれ以外に思う事もあった。
なぜか、番号を訪ねられた事が嬉しくて仕方なかった。
これが、亜弥ちゃんと美貴の初めての出会い。
- 747 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:41
-
それから何度か電話やメールを繰り返した後、もう一度会う事になった。
社会人と女子高生の友好関係は、意外にも深い。
電話とかメールだけで終るかなと思っていた所、亜弥ちゃんから誘いを受けたからだ。
「なんか、デートみたい」
「へ、へっ?」
お互いに時間があまりなかったので、亜弥ちゃんの学校の帰りに一緒するだけ。
それだけで何だか楽しかった時間。
亜弥ちゃんは唐突に美貴の腕にひっつき、嬉しそうに言葉を漏らす。
無論、美貴もそれは嬉しかった。
それはすでに、恋に変わっていたから。
- 748 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:46
-
「藤本さんは、彼女、いないんですか?」
「か、彼女?いないよそんなの」
「……じゃ、あたしがなっちゃおうかなぁ」
「はひぃ!??」
突然の告白。
何ヶ月か経った頃、亜弥ちゃんは恥ずかし気もなくボソリと呟いた。
「…あたし、好きですよ、藤本さんの事」
「え?え?あ、亜弥ちゃ…?」
「藤本さんは、あたしの事嫌いですか?」
嫌いとかそんなんじゃない。
ただ、いいのかなって思った。
高校生と、付き合ったりして。
- 749 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:51
-
「…き、嫌いじゃないよ?嫌いじゃないけど…あの…」
「……やっぱ、ダメですか?」
「ち、違う!好き!美貴も亜弥ちゃんが好き!」
パァン。と風船が割れるような音がココロの中で弾けた。
甘いような酸っぱいような恋。
「…本当、ですか…?」
「ほ、んとう…だよ。で、でもあんまり会える時間とか…ないよ?」
「ううん、いいんです。電話とか、メールできるし…」
「…美貴で、いいの?」
「……藤本さんがいいんです」
女子高生と社会人の恋愛はそうそう上手くゆくものじゃない。
友達にはなれても、恋人同士になると壊れてしまう。
美貴の友人がこんなケースだった。
でも、二人なら大丈夫。
亜弥ちゃんの頬にキスをした瞬間、決心した。
- 750 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:54
-
「…ごめん、残業なんだ、ホントごめん…」
『……ん、いーよ。仕事だもん』
「えっと…えと…ごめん…」
『いいってば。じゃ、頑張ってね?』
「…うん、じゃ、切るね」
ふぅ。
例えば、こんな事がある。
今夜のデートは残業により中止。
亜弥ちゃんの寂しそうな声を名残惜しく思いながらも、パソコンと戦う。
「…会いたいなぁ」
会いたい。
しきりにその思いが強くなってゆく。
しょうがない。そうは思っていても押えきれない。
頭を振り払い、夜遅くまで仕事と格闘する日々が続いた。
- 751 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 17:58
-
もう、我慢の限界だ。
「…っ…っつぁぁ…無理だよぉ……」
その夜、美貴は一大決心をした。
片手に花を、片手に指輪を。
そう、プロポーズをするのだ。
出会って一年足らずにもかかわらず、美貴は本気だった。
け、結婚に年月もなにも関係ない。
ただ、亜弥ちゃんの事が大好きなだけだった。
このままじゃ、どっちみち亜弥ちゃんと離れてしまうような気がして。
給料を叩いて指輪を購入したのだ。
駅前で地団駄を踏み、亜弥ちゃんを待つ。
ポケットに指輪を納め、グッと拳をつくり心臓を落ち着かせた。
- 752 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 18:02
-
「…ぅー…ぁー…ゃー…」
声にならない音を発し、寒さを感じながら待ち合わせ。
どんな言葉で伝えればいいのだろう。
それすら考える暇もなくプロポーズを決心した美貴。
まず最初に何を言えば……
「みーきたんっ!」
「っぁぁ!?」
がばっと背後から抱きついてきたのは張本人。
勢い余って美貴はとんでもない声を上げてしまった。
「ご、ごめ…そんなにびっくりすると思わなくて…」
「や、違うんだよ。色々…ね…」
「んぅ?変なみきたん」
こう、ハートを掴むような笑顔。
そんな顔するから、美貴はヘタレだのなんだのって言われるんだよっ。
- 753 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 18:08
-
「どうしたの?急用って、なぁに?」
「う…えーっと…ぇー…ょぅする…に…」
「…たん?」
ガヤガヤと電車から降りてくるたくさんの波が押し寄せる。
どもる美貴を不思議そうに見つめる亜弥ちゃんの手をとっさに
掴み、人込みを避けて既に閉店している店の前に連れてきた。
「っふぅー、すっごい人だったねぇー…」
「亜弥ちゃん」
「あ、さっきの事って何?」
「……美貴、本気なんだ」
さっきの波に揉まれながら、美貴は覚醒した。
今すぐに届けて、返事が欲しい。
- 754 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/03(水) 18:11
-
「…これ」
「わぁ、お花。どしたの、今日のみきたんへ…」
「真面目に聞いてて欲しいんだ」
小さいチンケな花束を受け取った亜弥ちゃんは不安そうに美貴を見上げた。
その肩ごと抱き寄せて、ポケットに入っている指輪を取り出した。
これで失敗したら、終ってしまうかもしれない。
そんな恐怖さえも忘れていた。
ただ、愛しさを届けたい。
「今すぐじゃなくてもいい、結婚しよう」
- 755 名前:証千 投稿日:2004/11/03(水) 18:16
-
今日はこんな所で。
最近は若年層の結婚率が高いらしいですね。
>737様 浮気などすれば奥さんが許しません。絶対にw
帝はヘタレなので浮気はしてしまうかもしれ…いえなんでもありません。
>738様 甘いのでね、帝は亜弥ちゃんに甘すぎです。
読んで頂き嬉しいです。
- 756 名前:証千 投稿日:2004/11/03(水) 18:16
- かくし
- 757 名前:証千 投稿日:2004/11/03(水) 18:16
- もうひとつ
- 758 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 18:27
- リアルタイムキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
こんなところで切るなんて・・・続きが気になって夜しか眠れない。
- 759 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 18:35
- ん?藤本さんは大学出たんですよね?
高校生の松浦さんと一歳違いじゃ計算合わなくないですか?
…話に水を差すようなこと言ってスイマセン。
そして空気読めなくてスイマセン。
ものすごい期待してますんでがんばって下さい。
- 760 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 19:33
- あややの夜遊びって夜遊びって…なんだかえっちぃことを想像してしまった自分は間違ってますか?
- 761 名前:証千 投稿日:2004/11/03(水) 19:45
-
果てしなく阿呆な作者からの言い訳です。
恐ろしい程の矛盾点がありすぎるのに読者様の御指摘により
発覚致しました。
すいません、適当と見なされてしまうかもしれませんが
変換よろしくお願いします。
ボツにしようと思っていた点を過って入れてしまうとは…
大学という点は脳内消去して下さって構わないので。
本当にごめんなさい。そして759様、適格な御指摘ありがたく思います。
ああ…逝ってきます
- 762 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 20:23
- 失敗は誰にでもあることなので気になさらず。
逝かないで読者を萌えさせてくださいお願いします…ハァハァ
気になる続き激しく希望です
- 763 名前:759 投稿日:2004/11/04(木) 00:14
- ああいやあのなんかすいませんすいません。
むしろ自分的に色々な妄想が繰り広げられたので問題ないです。
社会人が高校生に手出しちゃったとかドキドキワクワクムッハーな感じで最高ですよ!
あの、だから続きがんばってください。受け入れ態勢は常に万全ですw
- 764 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/04(木) 17:07
- 続き・・・続きが気になります・゚・(ノД`)・゚・
- 765 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/04(木) 17:57
- 今更ですが、みきごまの「waiting for you 」の
続きはないんですかね?
- 766 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/04(木) 20:28
- こんなとこで切らないで〜…
- 767 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 12:52
-
「いますぐじゃなくてもいい、結婚しよう」
ただ単に、ストレートな表現。
何も飾る事はできないけど、美貴にはこれが精一杯だった。
ぎゅっと目をつぶって、拳を握りしめる。
亜弥ちゃんがどんな表情をするのか、見たく無かったから。
遊び扱いかもしれない。
本気で言ってるなんて信じてもらえないかもしれない。
美貴の事、愛して無いかもしれない。
でも、答えが欲しかった。
- 768 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 12:54
-
「みきたん」
ふと、甘い声が亜弥ちゃんから漏れた。
いつものように、美貴を呼ぶその声。
甘ったるくて妙に癒されて。
この声を聞くのが、最後にならないように。
そう願いつつ、美貴は静かに目を開いた。
- 769 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 12:58
-
「好き、愛してる」
亜弥ちゃんは美貴の唇にキスをして、笑ってくれた。
その答えに気付いた美貴はとっさに亜弥ちゃんを抱きしめて、噛み締める。
これは夢じゃない。
「…みきたんと、結婚したい」
「……美貴も、ずっと一緒にいたい」
「しよっ、結婚」
「うん。うん!」
涙が出ないように、手の平の汗を拭うようにして目を隠した。
無邪気な彼女には、そんな美貴の行為には全く気付かずにいたけれど。
これが、幸せと言う事。
美貴は遅くもはっきりと気付いた。
- 770 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:01
-
「ばいばいっ」
「…うん、おやすみ」
亜弥ちゃんを自宅まで送りとどけ、別れのキス。
今まで何度も交わしたキスの中で、一番暖かいキスだった。
「…っしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
多くの人が振り返る。
そんな視線も気にせず、駅のホームで歓喜の声を上げた。
その時は嬉しくて嬉しくて、亜弥ちゃん以外の事も考えられなくて。
幸せだった。
その幸せから突き落とされるのには、時間はいらなかったけど。
- 771 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:04
-
勢い余ってプロポーズしたものの。
結婚についての事は美貴も良く知らない。
大体、亜弥ちゃんの両親に会った事もない。
なんだけど、今日この日。
ついに亜弥ちゃんの御両親と挨拶を交わす事に。
「…ぐ…や、やっぱ来週じゃダメ?」
「無理だよぅ、パパとママ待ってるし…」
「だ、だって美貴…」
「みきたん」
「は、はいっ?」
高校生と社会人の交際なんて認められるわけない。
本当はそう思ってても、亜弥ちゃんがどうしようもなく好きだから。
諦めたく無い。
亜弥ちゃんの家の前で突っ立っている美貴の背中を押され
ようやく目が覚めた。
- 772 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:06
-
「…大丈夫。パパは凄く恐いけど、ママは優しいから」
「へ?そ、そういう意味なの?」
「ううん、気にしない方がいいよ。きっと大丈夫だから、ね?」
あくまでも、きっと。
そう微笑んだ亜弥ちゃんが素晴らしく可愛くて美貴は何も言えずじまいになり。
松浦家の門を、堂々と踏んだ。
- 773 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:08
-
地獄よりも辛いこの空間。
「………」
「………」
長い沈黙が居間に続く。
学校の制服姿の亜弥ちゃんと、会社帰りの美貴のスーツ姿。
対照的だ。
そして亜弥ちゃんの御両親は二人共ソファに座りじっと美貴と
亜弥ちゃんを交互に見つめなおしている。
この二人の視線で溶かされそうな勢いだった。
- 774 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:13
-
「…美貴、君と言うたな」
「ハィ!?」
お父様、視線がものごっつ恐いです。
兵庫訛りのドギツイ声が美貴をビビらせた。
「いつから付き合うてん」
「え…と…一年…も、経ってません…」
「…ほうか。そいで、結婚か」
「……はい…」
やっぱ無理か。
自信を無くしかけた美貴に、亜弥ちゃんのパパさんは次々質問を投げかける。
- 775 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:17
-
「…亜弥、こんなひょろいやつの何処がええねん」
「なっ…何よその言い方!!」
「まあま、パパの言い過ぎやて。亜弥も落ち着いて」
…ひょ、ひょろい。
確かにひょろいよ美貴は。
亜弥ちゃんと体して身長変わらないし体力もあんまりないかもしれないけど。
亜弥ちゃんの前で言われちゃあパパさんの言葉だって傷ついた。
それを見た亜弥ちゃんのママさんは悔しそうにする亜弥ちゃんを宥め
美貴をじっと伺う。
「…それにしても、ええ目をしとるね美貴君」
「え…え?」
「カッコええわぁ、亜弥が惚れるのも無理ないやん。なあパパ?」
「…し、知るかっ」
……ママさん。
よく見るとママさんの雰囲気は、どことなく亜弥ちゃんに似ていた。
優しさで満ちていて、何だか被る。
ママさんの言葉に美貴の緊張も和らぎ、ぐっと力が入る。
- 776 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 13:21
-
「…亜弥は、ホンマに美貴君の事、好きなんやな?」
「あ、当たり前じゃん…」
「…ほうか…」
ママさんは亜弥ちゃんの手を取り、優しく語りかける。
やっぱり亜弥ちゃんとそっくりなんだな。
その光景を見て美貴は何となく納得してしまっていた。
いかんいかん。
「…せなら、ママは何も言わんよ。好きにしぃや」
「……ママ…?」
「パパはどうかわからんけど…どうや、パパは?」
「…っ…ぐ…し、知らん…」
パパさんは悔しそうに新聞を握りしめて、そっぽを向いてしまった。
そしてママさんは、美貴にこう言ってくれた。
「…不束な娘ですが、どうぞよろしくね。美貴君」
- 777 名前:証千 投稿日:2004/11/06(土) 13:23
- まだまだ続きそうです。
たくさんのレスありがとうございました。
バカで阿呆な作者についてきて下さるとは……
涙の嵐でございます。
本当にありがとうございました。
>765様 …すみませんがあれはボツにさせて頂きました。
殆どネタが尽きてしまいましたので…楽しみにして頂いていたなら
尚更深くお詫び致します。
- 778 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 15:10
- 765です。
あの話はボツになりましたか。
最近ごまみきにはまっていて、ちょっと言ってみただけなので
気にしないでください!!
証千さんが書くあやみき好きなんで、
これからもがんばってください。
- 779 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:19
-
宝物にしないといけないんだ。
亜弥ちゃんを、美貴の宝物に。
ソファから飛び下りた美貴は、フローリングの床に手と足をついた。
「ちょっ…みきたん!?」
「いいから、亜弥ちゃん」
堂々としていられない。
亜弥ちゃんを産んだ、この二人の御両親に
美貴の誠意を見せなきゃいけないんだ。
当時若造だった美貴の、精一杯の思いだった。
「…一生、大切にします…っ…」
固まるママさんとパパさんが美貴に声をかけるまで
美貴は頭を上げなかった。
「…っみきたん…」
「本当だから。泣かないでよ」
「ふふっ、若いねぇ十代って。なあパパ?」
「……勝手にしいや、もうパパは知らんっ」
「あら、拗ねてもうた」
そんなこんなで、ママさんとパパさんには認めてもらい。
すぐに結婚の準備に取りかかってくれた。
- 780 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:24
-
そして、松浦家との食事もするようになり。
ママさんも優しくしてくれて、結婚する上では何も問題はなかった。
「…ほうか、御両親が…」
「はい。あ、気にしなくていいですから」
「そう?でも、こんなにたくましいんなら心配あらへんねぇ」
「みきたん、もっと食べて?」
「あ、うん」
御飯をすすめる亜弥ちゃんに茶碗を預け、ふと昔の事を思い出す。
美貴は暖かい家庭という絶大なものを知らなかった。
小さい頃に施設に入れられてからずっと一人ぼっちで。
家族4人でテーブルを囲む事など一度も無かったからだ。
「結婚式には、親族の方来られへんの?」
「……呼びたく、ないんです」
「…ほうか」
- 781 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:27
-
幾つかの親戚はいる。
でも全て美貴との血縁関係はない。
親戚中をたらい回しにされるばかりだったので、美貴は自ら
施設に入る事を希望したのだ。
ママさんには理由を話さなくても分かってくれた。
何も言わずに承諾してくれるママさんに、涙腺が緩みそうになった。
「それじゃ、そのぶん良い結婚式になるとええね」
「ハイ。よろしくお願いします」
結婚式まで、あと1ヶ月。
- 782 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:33
-
「みーきたんっ!」
最近、課長が離婚をしたらしい。
そのニュースを知った途端、美貴は脱力した。
なんだか不安で堪らない。
もし美貴と亜弥ちゃんがそんな事になったら。
と考えずにいられなかったからだ。
「ちょっとたん!」
「へ…ああ、はいはい」
「じゃーん、卒業証書!!!」
「え…」
美貴のアパートに遊びに来る亜弥ちゃんのカバンから取り出された
のは、高校の卒業証書だった。
そっか、もう卒業だったんだ。
「どうだった、卒業式は?」
「うーん、あんまり」
「あんまりって?」
ふぅと息をついてから、美貴にギュッとしがみつく。
なんだよ、可愛いな。
- 783 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:36
-
「悲しいとか、嬉しいとかじゃなかった」
「え?」
「…友達にね、あたしとみきたんの事、話したの」
「…結婚する事?」
妙に寂しそうにする亜弥ちゃん。
いつもの笑顔が見られない事に、美貴は少しだけ不安を感じた。
「…結婚、まだ早いんじゃない?って」
「……友達に、言われたんだ?」
こくりと頷く亜弥ちゃんの髪を撫でてやる。
そうだよ。亜弥ちゃんだって、不安なんだよね。
- 784 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/06(土) 15:40
-
「…確かに早いかなぁって思うけど、後悔はしてないよ?
それだけはみきたんに分かってて欲しいの」
「うん」
「……みきたんはどう思ってる?あたしと、結婚する上で」
どう、思ってるか。
正直に言ったら、亜弥ちゃんを傷付けてしまう。
でも、正直に言わないと。
こんな嫌な気持ちで、亜弥ちゃんと結婚したくないよ。
「…確かに、美貴もそうは思う。今結婚したら、後後大変かもって。
でも、今結婚しなきゃ、ダメな気がするからさ」
「……なんで?」
「それはわかんない。亜弥ちゃんが好きだからかな?」
ずっと大好きって、言える勇気はない。
でも、そう想う勇気はある。
- 785 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/06(土) 21:20
- 感涙です…
- 786 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/08(月) 16:10
- あ〜なんか甘いな〜
続き楽しみにしてます
- 787 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:04
-
ずっと一緒がいいよ。
ね?と相づちを迫っても、その時亜弥ちゃんは何も言ってはくれなかった。
俯いて、恥ずかしがっているのがわかって美貴はただ亜弥ちゃんを抱き寄せる。
大丈夫だ、何も心配ない。
亜弥ちゃんを抱きとめたぶんだけ、美貴は安心できた気がしたから。
そして、木漏れ日が眩しい朗らかな日和。
朝起きると、太陽が眩しかった結婚式当日。
- 788 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:08
-
「…んぬ…」
「ミッキー顔こわーい」
「だ、だって」
「そんな事でどうする新郎!」
蝶ネクタイが苦しくて顔が歪む。
高校の時の友達まいちゃんが結婚式に来てくれた途端、青ざめる美貴の
頬を軽くひっぱたいて言った。
「…まさかミッキーが結婚とはねぇ」
「何言ってんの。まいちゃんだって一児の母でしょ」
「毎日幸せでーす♪」
「ウザ…」
結婚ってやっぱり幸せなものなんだ。
まいちゃんは美貴より若くして結婚している。
だから美貴よりも、辛さとかいっぱい、知ってるんだ。
- 789 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:11
-
口では色々と言い出す美貴だけど、正直人生の先輩はまいちゃんって事で。
背中を押されて踏み出せたのもこいつのおかげだったんだ。
「ほら、奥さんに誤解されちゃうんじゃないのぉ?」
「…っさいなぁ」
「行ってきなよ。もう、ドレスアップすんでる筈だよ」
「…う、ん」
「何もじもじしてんの性に合わないな。そらいけっ!」
「うわっ」
やば。心臓がはち切れそう。
そんな言い訳をするまえに、まいちゃんは美貴の肩をドンッと強く押した。
- 790 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:14
-
「どわっ!?」
勢いよくバーンと扉を開いた途端、前につんのめって大胆にずっこける。
あいてて、とひざ小僧をさする美貴の目の前に現れた光景に、目を擦り続けた。
足が震えて起てなくなる程、なんていうかキレイだった。
「…あ、やちゃん?」
うそ、じゃないんだ。
ここで泣く訳にはいかないんだよ。
溢れでそうな美貴の涙を拭って、亜弥ちゃんはとても可愛く笑ってくれた。
見た事ないぐらいの美しさに失神しそうだ。
綺麗に整えられたドレスは、何を着ても似合う亜弥ちゃんにとって
ベストだ。
- 791 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:18
-
「どう?なぁんかすっごく重いんだねドレスって」
「う…ん、すっごいキレイ…」
「本当?」
「……亜弥ちゃぁん…」
「ふぇ?みきたん?」
思いっきり甘えたい。
涙が出ないようにきゅっと亜弥ちゃんを捕まえて誰もいないメイク室で
抱き合った。
本当に、美貴だけの人になるんだ。
こんな幸せって他に無い。
あったとしても、美貴は絶対に信じない。
「にゃは、みきたんのあまえんぼ」
「ん…甘えたいんだよぅ」
これ以上ないくらいすき。
ポロリと落ちた涙を踏んで、無理矢理つくった笑顔でもう一度亜弥ちゃんを抱きしめた。
- 792 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:22
-
「…もうっ…知らん!」
「なんやパパ、今さら強がって」
「せやて亜弥が…」
「もう静かにせんと。ほら、来るで」
幸せにします。
御両親にそう誓った以上は、真っ当しなきゃいけない。
颯爽…とはいかなかったけど、くっと腕を差し出すと
亜弥ちゃんはくふっと笑う。
「…行こっか」
「うんっ」
ギィ、と扉が開き、赤いじゅうたんが続く。
- 793 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:25
-
ゆっくりゆっくりと足を踏出す。
それに伴い、肩がこるような幸せが近付いてくるのが分かった。
拍手が止み、どこからともなく神父さんが現れる。
なんか見た事あるような禿げ方に美貴と亜弥ちゃんは目を合わせて微笑んだ。
フランシスコ・マキエル。
やっぱりどこかで聞いた事があるような名前だった。
「エー、新郎新婦ともに、旅立つ二人の心には…」
ゆっくりと目を閉じて神父さんの言葉に耳を傾ける。
じょじょに誓いの時が、近付いて来る事を感じて。
- 794 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:29
-
「……誓いの、キスを……」
ありがとう。
亜弥ちゃんは美貴に、色んなものをプレゼントしてくれた。
もしかしたら、美貴はあげられたものの方が少なかったかもしれない。
でも、美貴の事を愛してると言ってくれた。
だから信じて、結婚しようって思ったんだよ。
「…松浦、亜弥さん」
「はい」
「美貴は、貴女の事を愛してます」
「はい」
少しだけ言葉に詰まった亜弥ちゃんを察して、ゆっくりと肩に手を伸ばした。
これが最後の言葉にならないようにと、願いながら。
「あたしも、みきたんの事を愛してます」
うん。
小さく頷いて、柔らかい唇に重ねた。
- 795 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:34
-
ま、そんな夢心地で神父さんの元から離れた瞬間に美貴は記憶を失ったね。
ヤケ酒とでもいうんだろう。
パパさんは酒を大量に浴びていて…まあ詳しい事は省略ね。
感動的な式にする筈が、痛い思いでとなってしまった。
「…まあ、今も幸せだしね」
「うん。絵里もいるし、ね」
いつのまにか美貴と亜弥ちゃんの寝室で眠っている絵里を挟んで
ゆっくりと語るように話す。
「たん、もっかいあの時みたいにキスしてよ」
「ぇ?や…そ、それは…」
「何でよぉー」
「は、恥ずかしいよ」
誤魔化すように毛布を被ってそっぽを向いた。
- 796 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:39
-
「新婚初夜はあんなにキスしてたくせに、最近してくれないよねぇ〜たん」
「…へ!?」
「あの時のみきたん可愛かったなぁー、目がギンギンで恐かったけど」
「だ、だって亜弥ちゃんが泣きそうになるから…」
「痛かったんだもん、急にするから」
「どうやってしていいのかわかんなかったんだよ!」
そりゃあ、新婚初夜は亜弥ちゃんの初めてだったし?
美貴は痛がる亜弥ちゃんに頑張ったんだよ。
でも最後は気持ちよかったって言ってくれてすごく安心したのを覚えている。
…なんて絵里がいるんだから大声すぎたか。
「…もうやめよ、絵里起きちゃう」
「そだね…じゃ、じゃあ…」
キスしよ。
自分から拒否ったくせに、やっぱりしたい。
矛盾は分かっていても、枕に顔を埋める前の亜弥ちゃんを引き寄せて唇に押し付けた。
- 797 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:43
-
「ん…ん!」
「いで、いだっ」
「ばかっ、絵里が起きるってば!」
「…ちぇ」
頭をパシンとひっぱたかれて、照れているのがバレバレだ。
自分から誘うくせに、そうやっていつも誤魔化す。
そこが好きなんだけど。
「…おやすみ、亜弥ちゃん」
「…ん…」
「もう寝てる」
くすっと笑って、少しよれた布団をかけなおしてあげる。
何度おやすみと言ったんだろう。
きっと結婚してから毎日、毎夜かけた言葉。
いつまで言えるんだろう。
そう思う事も恐くて考えたく無い。
そっと眠りについた美貴は、夢の中で打ち消した。
いつまでも、ずっと一緒にいられるなら。
それだけで美貴はきっと、人生最大の贅沢なんだろう。
FIN
- 798 名前:ママとパパの結婚事情 投稿日:2004/11/09(火) 19:46
- …はあ、長かった。
すいません、引っ張りすぎたかもしれないという点が…w
>785様 そんな言葉は作者をやるきにさせますのでw
毎度ありがとうございます。
>786様 微甘…ですがどうもですw
もっと向上していきたいので、どんどん感想お待ちしています。
家族シリーズはこれにて一段落。
また何か駄文でよければ書いてほしいな〜と奇妙な方がいらっしゃれば
お声を書いていただければ良いので。
- 799 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:03
-
あたしのペットは日々生意気。
尻尾を掴んでもひゅるりと逃げて消え去り。
そしてまたあたしの目の前で甘える仕種をしたり。
ある時は怒りに満ちて止められなくなったり。
そのある時っていうのが多過ぎるから、困る。
- 800 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:06
-
「ってぇな何すんだよ!!」
「何だよこいつっ…逃げろぉ!」
「一昨日来やがれこのバーカ!」
また今日も怪我を負って帰ってきた。
右手首に傷を隠すように巻かれた不器用な包帯。
右頬に張り付けられた絆創膏。
破れたシャツとすり切れたGパン。
どれをとっても、女の子とは思えないような格好だ。
今日は自分よりいくつか年上の男と取っ組み合いの喧嘩をしたらしい。
わざと誤魔化して包帯をさっと後ろに隠した仕種がバカ丸出し。
最終的にはいつも、彼女が勝つと決まっているのだけれど。
- 801 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:10
-
「何処でいつ誰とやったの」
「…それは…」
「言えないの?」
「ち、違うけど…」
おたおたして答える様子もない。
結局あたしには何も言えやしない、生意気な猫。
得意中の得意の睨み付けも、あたしには効かないと分かっているらしく。
ふにゃけた表情しか見せない。
「で、あっちも怪我させたの?」
「や…それはどうだろ…」
「正直に言いなさい」
「すいません歯を折る程殴りました」
「……あっそう」
正直に言ったからって許すわけじゃない。
別に、この猫が怪我するぶんにはあたししか心配しないからいい。
でもあっちに怪我をさせたらそれなりに猫に反省させなきゃいけないわけ。
あたしぎっと睨むと尻尾を隠して俯き加減。
いい加減に止めて欲しい、こういう事。
- 802 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:13
-
「…お風呂湧いてるから早く入りなさい」
「はーい」
頬や傷口に消毒をしてやり、乱暴にバスタオルを投げ付けた。
にもかかわらずこの猫はテレビに没頭しつつあたしの表情なんかに気付きはしない。
自由気ままな猫だから。
「ねえねえ一緒に入ろう?」
「喧嘩する子なんかと入りませんーだ」
「…けち」
小さく舌打ちをしてふんと鼻を鳴らす。
意地っぱりなんだよあたしは。
促すように言葉をかけると、にへっと笑ってバスルームに走ってゆく。
憎めない。やっぱりあたしは、あの猫が大好きなんだ。
- 803 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:16
-
『ねえ、何してんの?』
アイツがあたしに最初にかけた言葉。
夜の街でフラつくあたしを興味津々の眼差しで見つめてきた。
すぐにあたしは何かを感じ取る。
こいつはあたしなんかと違う、キレイな奴なんだ。
『こんな所にいたら、へんなやつに連れていかれちゃうよ?』
『いいよべつに』
『良く無いって。家どこ?送ってってあげる』
返事をする間もなく、アイツはあたしの手を引いて街を抜け出した。
どうせこいつも体目当てだろう。
最初から分りきっていたのに、あたしはぺらぺらと家までの道を喋りまくる。
無意識だった。
- 804 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:19
-
『それじゃ、おやすみ』
あっけにとられた。
あいつはあたしの手をそっと離し、マンションの前で立ち止まった。
へへっと笑って小さく手を振り、ばいばいと言った。
何故かあたしは、こいつを手放すのを嫌った。
何でだろう。わからない。
『アンタ、ヤらないの?』
『え?』
『あたしとヤりたいから来たんじゃ…』
『えぇ?んな事ないよ。心配だったから送っただけ。じゃあね』
そんな言葉、幾度となく聞いた。
なのにあたしは、すごく安心してしまっていて。
一瞬のうちに、あたしはアイツに惚れていた。
- 805 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:22
-
『アンタ、うちにいなよ』
『へ?』
『あんたもどうせ家ないんでしょ?』
『うん、フラフラしてる』
『じゃ、あたしのペットになってくれる?』
くい、ともう一度手を引いて。
必死だったわけじゃない。
ただアイツの傍にいたかった。優しさが欲しかっただけ。
卑怯っぽくも、アイツはまた笑って頷いた。
『いいよぉ。御飯食べさせてくれるんなら、ペットになる』
なんて無邪気に言うもんだから。
あたしは本気になって、アイツを好きになってしまった。
- 806 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:25
-
「亜弥ちゃぁん、水ちょうだーい」
髪が濡れっぱなしのままバスルームから出てきた。
そのままゴロンと横になり、あたしの膝に乗る。
まるであたしの気分は完全無視で甘えてくるもんだから、何も言う事ができない。
「自分でやりなさい」
「えー。しょうがないなぁ」
コロンと立ち上がって頭をぽりぽりとかく。
猫特有の仕種だ。
首筋や腕から覗く切り傷や赤い跡が妙に目立ち、あたし自身を傷付ける。
何でこんなになるまで喧嘩を続けるんだろう。
あたしには分らない。
「ふぅー、うまいっ」
コップを台所に置き、再び戻ってくる。
- 807 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:29
-
「ちょっと、あたしの服が濡れるって」
「乾かしてよぉ」
「…しょうがないな、じっとしててよ」
「はぁーい」
うきうきしながらテレビを見ている。
濡れたまんまの髪に指を通し、ドライヤーを当てた。
暖かい風が心地よいらしく、すぐに目を閉じて静かになった。
ドライヤーの時はいつも、こうやって大人しくしている。
「…アンタまた首のとこ…」
「な、なんでもないっ」
「見せなさい」
「や、やだ」
髪が乾く頃、ドライヤーのスイッチを止め髪を手ぐししていた時。
ふいと横を向いた瞬間、首筋に刃物がかすったような傷があった。
しかもまだ新しい。
ぐいっと肩を掴むと、猫は焦って身をよじる。
- 808 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:33
-
ぐいっと押し倒し、胸ぐらをつかんで傷をよく見る。
「…いつ作ったの」
「……おととい」
「誰にやられたの」
「…ヤクザ。大丈夫だって、サツに電話して捕まったから」
「下手したらアンタだって殺されてたか捕まってたかもしれないんでしょ?」
「そ…れは…」
「……もういい」
そういう所が嫌い。
何もかも不純利で、無垢な猫が大嫌い。
胸ぐらをはなして溜め息をつく。
すると猫は案の定不安そうな顔でとことこと近付いてきた。
- 809 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:36
-
「ご、ごめんね?痛くないし大丈夫だから…」
「いいって。いつもやってんでしょ?」
「……ごめん」
「謝るくらいなら最初から危ない事しないで」
「…ごめん」
ごめんしか言えない。
それがこいつの逃げ口。
きゅんと鳴いてピンと伸びた耳が垂れ、肩を落とす。
肩を落としたいのはこっちの方なのに、そんな事されたら何も言えないし。
「…ダイッキライ、あんたなんか」
「…………」
いっぱい傷付けば良い。
傷ついて、あたしのぶんまで痛くなればいい。
そう言った瞬間、猫の様子がおかしい。
唇を噛み締めて、ニャアと鳴くような目をしている。
結局あたしはこの猫に、してやられるんだ。
- 810 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:40
-
そっと手を伸ばして、頭を撫でる。
猫は驚いた様子で顔を上げ、にへっと笑った。
やっぱりこいつは単純な猫だ。
飼い主の一言で機嫌と変えて、へらへらと笑い出す。
「えへへぇ、だいすき」
「…うん」
「亜弥ちゃんは、美貴の事嫌い?」
「うん、大嫌い」
「………」
吹き出してしまいそうな程、おかしい。
この猫はアタシ無しでは生きて行けないらしい。
冗談も通じず、しょぼくれるんだから。
「嘘。好き、大好きだよ」
ぱぁっと笑ってくれるから。
あたしはこの猫が嫌いで、好きだ。
ひゅんひゅんと尻尾をふり、痛めた手首を絡ませてくる。
- 811 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:45
-
「亜弥ちゃーん」
「…なに?」
「ぎゅってしてぇ」
布団の中でもごもごする猫はあたしの手を素早く捕まえて。
大きく両手を開きにこにこしている。
つられて笑ったあたしの方が、もしかしたら猫より馬鹿なのかもしれない。
「にゃーぁ、いい匂い」
「…塗り薬くさいんだけど」
「んへへぇ」
体のそこらじゅうに塗った傷薬が匂う。
猫はへらっと笑ってみせてあたしの首にすり寄る。
本当にこいつは、甘え上手だ。
「明日は11時前に帰ってくる事。いい?」
「はぁーい」
「アンタいっつも口だけなんだから」
「そんな事ないよぉ、明日は早く帰るよ」
「喧嘩しないで帰ってくるんだよ?」
「はぁい」
なんて調子のいいことを言って。
約束を何度やぶられたかもわからないくらい、こいつは毎回どこかしらに
怪我を負って帰って来たりするから。
- 812 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:52
-
「亜弥ちゃんって、美貴に優しいからすき」
「…優しくなんかないよ」
「ううん、すっごく優しいよ。だからすき」
ものすごく嬉しそうな顔で言うもんだから。
あたしも嬉しかった。
小刻みに聞こえる猫の呼吸と合わせて、あたしの心臓も鳴る。
「亜弥ちゃんは、美貴のどこがすき?」
「……馬鹿なところ」
「そっかぁ、そうなんだぁ〜」
ホント馬鹿。
褒め言葉じゃないのに、馬鹿みたいに喜んで。
「…アンタの方が何倍も優しいよ」
「え?」
「あたしみたいな女に飼われる猫は、相当のお人好しだよ」
「…んぅ?よくわかんないよぉ」
わかんなくていいの。
そう言って猫の額にキスをすると、猫は嬉しそうにもっととせがんだ。
本物の馬鹿を扱うのは難しい。
軽くあしらいながらもう一度口付けると、安心したように目を閉じた。
- 813 名前:ガンつけ猫 投稿日:2004/11/09(火) 20:57
-
いつかこの猫が逃げてしまったら。
あたしは追うだろうか。
必死に探して、突き止めるだろうか。
答えは分らない。
あたしはこの猫じゃないと飼えないだとか、我侭は言えないから。
こいつがあたしの家に居候しているまで、ずっと好きでいよう。
今はそう思っている。
どこにでもほいほい煎ってしまうようなやつだけど、浮気というものをしたことがない。
何故ならば、あたしが大好きだからだという。
他の女に全く興味が無いらしく、欲する事もあたししかいない。
そう思えば、なんて贅沢なんだろう、あたしって。
静かにそっと微笑むと、猫は寝がえりを打ってうざい程にあたしを抱き締める。
仕方なくその腕に身を委ね眠る事にする。
この猫と共に、また朝を迎える。
FIN
- 814 名前:証千 投稿日:2004/11/09(火) 20:57
- 犬の次は猫……
- 815 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 21:21
- 家族シリーズ完結おめでとうございます!
甘々が終わってしまった・・・寂しいです。願わくば続編で田亀を・・・。
猫ハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!
飼い主とペットって設定イイ!
- 816 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 23:21
- 家族シリーズの新婚初夜あたりを書いてほしいです
甘〜いエロ含んでみたりとか…どうでしょう
- 817 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/10(水) 05:17
- 家族シリーズ思う存分楽しませて萌えさせていただきました!
自分も>>816さんのリク書いてほしいなぁ…とか思ったり
もうそろそろ470KBで、言ってる間に500KBいきそうですが、
引越し先にも金魚の糞のようについてきますんで、よろしくお願いします。w
- 818 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/11(木) 09:21
- 家族シリーズすごくよかったですw
続編希望です!皆様と同じく
新婚初夜のエピソード書いて欲しいです
エロありで。
- 819 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 15:32
- たくさんのありがたきレスに感動作者です。
一読者様の言う通り、そろそろ引っ越しの期にございます。
引っ越し後にも頂きましたリクをいくつか挙げてみたいと思います。
長い間ありがとうございました。
- 820 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 16:03
- 白板へ引っ越し決定。
Converted by dat2html.pl v0.2