世界破滅寸前

1 名前:瑛美 投稿日:2004/06/10(木) 05:59
瑛美(えいみ)です。
初です。
どっかの小説のリクエストで世界の破滅寸前のを書いてくださいっていう
リクエストがあったのを思い出して書くことにしました。
カップリングはあのメジャーなお二人です。
自分のお気に入りです。
がんばるのでどうぞよろしくお願いします。
2 名前:プロローグ 投稿日:2004/06/10(木) 06:00
ねぇ どうしてまた振り返ってる足辿って
ねぇ あれからもう夏は何度も巡っているのに
何もかも覚えているよ
名前呼ぶ声も何気ない癖も
忘れたいのに忘れたくない

涙がこぼれ落ちないように
滲んだ空を見上げているよ
人はどうして思いのままに生きられないの
願いをかける流れる星を探してみるけど
夜明けがもう早すぎて見つけられずにいるよ
君の事思い出す日なんてないのは
君の事忘れた時がないから

浜崎あゆみ HANABI・HANABI episodeUより
3 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 06:01
今年は、例年よりも少しばかり蒸し暑い。
道路からも公園の地面からも湯気が立っているように見える。
誰も彼も、何もかもがうだるようにして動いている。

空は真っ青な深い空色で、まるでぎしぎしと音がしそうな綿みたいな入道雲が大きく浮かんでいる。
太陽の光は容赦なく自分を照らし続け、どこまでもついてくる。
あちらこちらからセミの声がする。

「・・・・あっちぃぃぃ〜・・・・」

どこかの家の屋根の下に下がっている風鈴の音がする。
アイスキャンディーのおじさんの自転車の音がする。

ひとみは歩く。

通りを車が走る音がする。
さわさわと涼しい風が横を通り過ぎる音がする。

「・・・あ・・・・気持ちぃぃ・・・・」

茶色のさらさらの髪がよく映える、白い軽いノースリーブのトップに水色の短パン。
それに黒いサンダルをつっかけて、黄土色のカバンを手に持ちながら
タオルで汗を拭きながら目的地を目指す。

真夏の原宿はこの陽気だというのにそれでも人で溢れかえっている。
長いまっすぐな道の両側に次々とぎっしり並ぶ沢山の店と
中心を常に走っている沢山の車と
止まることを知らない歩く人混み。

どの人たちも思い思いに涼しそうな格好をしている。
4 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 06:02
「うぁ゙〜・・・暑いぃぃぃ〜・・・」

早く目的地に着きたい。
きっと中ではクーラーが効いていて涼しいんだろうな。
待ち合わせの時間まであと5分。
相手は彼女のことだから、きっともう中で席にすわって冷たいミルクティーでも飲んでるか、
外でおそいよぉとか来ないかと思ったぁとかいいながら待っててくてれるんだろうな。

そんなことを考えながら歩いていたら目的の場所が見えた。

新しくできた喫茶店。
既に雑誌とかテレビにも載っていて、かなり人気のあるところらしい。

そして相手は・・・
つまんなそうな不安そうな顔をして長い茶色の髪をなびかせながら
喫茶店のガラス張りの壁に寄りかかりつつ、地面にしゃがみこんでいた。

「あ、梨華ちゃん!ごめん遅くなっちゃって!!」
「・・・あぁ〜ひとみちゃん!もぉ〜遅いからもう来ないかと思ったよぉ〜。
 心配したんだからねー?もう」
「遅いって梨華ちゃんが早すぎるんだよいつも。今だってホラ、
まだ待ち合わせた時間よりも5分も前だよ?一体いつきたのさ」
ひとみがしゃがみこんで、腕につけている黒いG-shockのデジタル時計を梨華に見せながら言うと
梨華はなんとなく恥ずかしそうに言う。
「20分ぐらい前・・・」
「へ?!・・・早すぎるってばちょっと・・・梨華ちゃんはイロイロ心配しすぎなの!
 もうちょっとゆっくり行こうよ」
「・・・いいのお〜もぉ〜」

ぷぅっと頬を膨らませる梨華を少しかわいいとか思いながら、手を伸ばして立ち上がるのを手伝う。
そして二人は道の人混みを残して喫茶店の中に入っていった。
5 名前:瑛美 投稿日:2004/06/10(木) 06:04
こんな感じで始めてみましたがどうでしょう?
透明感が出したかったんですけどなんか
説明が多くなっちゃったような気がして・・・
自演っぽいのはしょうがないんで言わないでくださいね。(ーー;)
6 名前:瑛美 投稿日:2004/06/10(木) 06:40
すいませんもっつ続き書こうと思ったんですけど
PCがイカレてできなくなっちゃいました。ToT
なので一旦切ります。
7 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 21:05
喫茶店の中はもう既に人が沢山いた。
何かの洋楽が心地よく響くなか話し声ががやがやいっているのとか
食器がかちゃかちゃ音を立てていて、それもまたまるでBGMのように聞こえて心地が良かった。

「ん〜・・・席あるかなぁ〜・・・」
不安そうにつぶやく梨華。
せっかくここまできたのに席がなかったらどれぐらい待つことになるのだろう?
ひとみもどことなく残念な気持ちだった。

しかしそこに店員が来て、よかったですね、これでもう席が全部埋まってしまいましたよ、と笑みと共に言われ、
やったぁ!とか心の中でガッツをしながら自然と唇の形が笑みになる。

「よかったね、ぎりぎりで」
「ん、ラッキー♪」

喫茶店の中はさすが噂になるだけあって、とてもキレイだった。
真っ白な壁に描かれた青い模様
真っ白なフローリングの床
硝子のテーブルに銀色のメタル椅子
表通りに面している壁は下が海のような青い色で上は透明になっていくグラデーションの硝子になっていた。
インテリアも凝っていて、なんだ思わずキレイとか涼しいとかうわぁとか言っちゃいそうな素敵な喫茶店だった。

店員に案内されながら、梨華はお店の中をきょろきょろしながらもうはしゃいでいる。
8 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 21:06
「ひとみちゃん!ここすごいきれいだねぇ〜w」
「うん・・・すっげぇキレイ・・・」

周りをさぁっと見渡したながらつぶやくひとみ。
その口が少し開いたままだ。
そして彼女が見つめる先は梨華。
なんか今日の梨華の服装がとても店にマッチしていてキレイだとか思う。

今日彼女が着ているのはいつものピンクだらけの洋服じゃない。
まるで店にあわせてきたような、真っ青なノースリーブのさらっとしたワンピースに
同じような真っ青なミュール。
アクセサリーが青と緑と金色のベネチアン硝子のものでとてもキレイだった。

それに対してひとみは白いノースリーブの肩がざっくり切れているフード付のシャツに
水色の短パンに黒いサンダル。

梨華ちゃんって時々垢抜けたみたいになるんだよね。
女の自分も一発で惚れちゃいそうな感じ。男だったらもっとやばいかも。
今だって店の中のお客がちろちろ梨華のことを見ている。

うぅ〜・・・なんかむかつく・・・そんなに見るなよ・・・

そう思った自分に苦笑しながらも席につく。
席は硝子の壁に面している、外から1番見える席だった。
9 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 21:08
実際梨華は、昔からものすごくモテるのだ。

小学校の頃から男子にすごく人気があって、かといって人当たりもいい梨華は
女子から恨まれたり嫉妬されたりすることもなく誰からも人気のある子だった。
それが中学に入ると爆発的になり、他校からもわざわざ来るやつらがいたほどだ。

しかし彼女は一度も誰とも付き合った経験がない。

告白してくる人間が女であろうと男であろうと必ず丁寧にお断りをする。
それからすぐにひとみのところにきて後悔の念と共に懺悔をしにくるのだ。
彼女曰く告白の場合断ってもすぐに気の毒になってしまうらしい。

それももう慣れたけどね。

きっと待ち合わせで自分が来る前に来てた彼女は、何人かの男にナンパされていたに違いない。
後で聞いてみようっと♪

そんなことを考えるひとみだってものすごくモテたりする人間だ。

すらっと伸びた身長にスッと細いからだと手足と、白い肌。
そして祖母がイタリア人だからだろう、日本人にしては妙に彫りが深い
アクなく整った端麗な顔に、キレイなさらさらの茶色の髪。
ノリがいい性格とスポーツとかそつなくこなせたりすることで
誰も彼もが彼女の恋人を夢見る。

手紙の数も告白の数も毎年貰うチョコレートの数もよってくる人の数もものすごい量だ。

彼女が気がつかないだけだろうが梨華だって・・・

もぉ〜・・・みんなそんなにひとみちゃんのこと見ないでよぉ・・・ひとみちゃんだって気がついてよね!

そんなことを思っていたりする。
10 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 21:10

「梨華ちゃんどうしたの?うちなんか悪いことした?」

目の前でまたぷぅっと頬を少し膨らませながら店員から貰ったメニューを見る梨華を見て
ひとみは聞く。

「・・・なんでもないよ・・・それよりひとみちゃんどれにするか決めた?」
「ん〜・・・なんか全部おいしそうで困っちゃうんだよね〜♪ 飲み物はアイスミルクティーって決めたんだけどね」
「ひとみちゃんってばいっつも食べ物のことばっかり!太るよ〜?」

笑いながらそういう梨華にひとみは少しばかり反発してみる。

「そんなことばいってば!いいの〜。だって人間食べないと生きてけないじゃん。
 腹が減っては戦はできぬって言うっしょ?・・・決めた!!これにする」

そういってメニューの写真を指差し名が梨華に見せるひとみ。
その指が指しているのはクレープの上にアイスクリームとフルーツがのっているものだった。
まぁたそんな太りそうなものを・・・
そんなことを考えながら梨華は店員を呼ぶ。

「アイスミルクティー二つと・・・このクレープと・・・このケーキください」
「はい、かしこまりました。お飲み物は先にお持ちいたしますか?」
「どうする?ひとみちゃん」
「喉渇いてるから先がいい・・・」
「・・・じゃーさきでお願いします。」
「はい、かしこまりました」

にこやかな笑顔を浮かべながらメニューと一緒に去っていく店員。
それを見送ると共にひとみは梨華に聞いてみる。
11 名前:1.世界 投稿日:2004/06/10(木) 21:11
「ねぇ梨華ちゃん?」
「なぁに?」

外を見ていた梨華がひとみに顔を向ける。

「あのさ〜・・・梨華ちゃんうちが来る前そこの壁のトコにしゃがんでたでしょ?」
「うん?」
「ソコのトコでナンパとかされた?」
「はぁっ・・・・?!」

目を丸くしながら顔をしかめる梨華。
それに対してひとみは楽しそうないたずらっぽい笑みを浮かべて続ける。

「だぁってさぁ〜梨華ちゃんってどっかでかけると必ず誰かにナンパされんじゃん」
「えぇぇぇぇぇええええそんなことないよぉ〜」

顔を赤くしながら言う梨華。

「そんなことあるね〜。梨華ちゃんモテモテじゃんwwで?今日どうだったの?」
「なによぉ。ひとみちゃんだって出かけるといっつも声かけられたり声かけたりしちゃうじゃない」
「いいんだよそれは〜楽しいからwで?今日は?」
「んもう・・・。ひとみちゃんが来るちょっと前に3人ぐらいにお茶に誘われちゃったけど・・・」
「おぉ〜wwで?で?」
「ちょっとそんなに勢い乗らないでよ・・・それで・・・お友達と待ち合わせててこれからその子と
 遊ぶからっていって・・・断った」
「梨華ちゃんってさ、絶対受けないよね、そういうの。全部断るでしょ」
「・・・ん・・・ん〜そうかも・・・ね。」
「なんで?」

少し考えてから梨華が言う。

「ん〜・・・だって恋愛感情ないんだもの。好きだって思えないんだもの。楽しいって思えないんだもの。
 それって相手に失礼だと思わない?」
「・・・」

さすが梨華ちゃん・・・。
ひとみは返す言葉がなくなった。
12 名前:瑛美 投稿日:2004/06/10(木) 21:13
今日の更新はここまでにします。短くてすみませんToT
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/10(木) 22:00

14 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/06/11(金) 08:58
こっそり応援してます
15 名前:1.世界 投稿日:2004/06/13(日) 22:38
「ん、ん〜・・・まぁ・・・そうだけど、さぁ〜」
「だってもしも付き合ってる人が自分を愛してくれていないってわかったら傷つくのわかってるんだもの。」
「何?梨華ちゃん経験あんの?」
「え、えぇ?・・・そんな・・・ないよぉ〜も、もうやだなぁ!ひとみちゃんってば」

ひとみの何気ない質問に突然キョどり始める梨華。
梨華の心臓は突然凄まじい勢いで鼓動を打つ。
それとともに顔も徐々に赤く染まっていく。
何かを隠すように必死でひとみの言うことを否定する。

しかしそれに全く気がつかないひとみ。
顔をきょとんとさせながら、梨華の答えを真に受けて話を続ける。

「そうなの?ふぅ〜ん・・・それよりさ、昨日ごっちんがメールしてきてねぇ〜・・・・・・・・―――――」

・・・はぁ〜・・・・話が流れた・・・よかった・・・・

深いため息をつきながら梨華は心の底から安心する。

全くひとみちゃんって鈍いのに変なところで鈍いのと鋭いのが混じるからイヤなのよね。
だからたまにあぁやって痛いトコ聞かれると焦っちゃうじゃないの、もう。
はぁ・・・・

また、ため息が出る。
なんだって自分の目の前でべらべら何かを楽しそうに、面白そうに笑いながら話す彼女は
ここまで鈍く、ここまで鋭いんだろうか。

彼女の茶色のさらさらな髪は、整った美しい顔をふわふわくすぐっている。
16 名前:1.世界 投稿日:2004/06/13(日) 22:39

「それでねそれでね、ごっちんてばまぁた市井さんに言えなかったんだって!!
 もうこれで10回目だよ〜?!もういい加減勇気出して言えって言ってるのにさぁ〜
 『本人の前に行くと緊張しちゃっていっつも話が違う方向にどんどんそれちゃうんだよ〜』だって!
 あははは!!まったくごっちんてば普段は『クールだよねーww』とか言われてるくせに
 ホントは根性なしで甘えんぼでふにゃふにゃなんだから」

一体何がおかしいのか。
人が告白しようと頑張っている姿を根性なしとかふにゃふにゃとか言うなんていい度胸をしているもいいところだ。

ちなみにごっちんこと後藤真希はひとみと梨華の幼馴染であり親友である。
3人は物心ついた時から一緒に過ごしている。
生活の全てにおいて、この3人は一緒に過ごしてきた。
俗に言う『お互いが隣にいるのが当たり前の存在』である。

そしてつい最近・・・といっても去年の今頃発覚した事実。
真希に好きな人ができたのだ。
相手の名前は市井紗耶香。真希と同じ高校に通う1年上の先輩である。
普段は梨華やひとみと同じようにモテる真希も、なかなか好きな人には弱いようで。
出会ってからすぐに仲良くなりお互いの家を行ったりきたりするようにはなれたもののいざ告白をするとなると緊張のあまり自分から話を逸らしてしまい、その自己嫌悪からひとみや梨華にたびたび愚痴のメールをいれてくるのだ。
そして、どうやら今日も失敗したらしい。

まったく本人の気も知らないで・・・

梨華またふっと軽くため息をつくと、困ったような優しい笑顔を向けてひとみの話に耳を傾け始めた。

青と透明のグラデーションの硝子の向こうをふっと見た時に視界の隅に入った人が、市井さんに似ていた。
17 名前:1.世界 投稿日:2004/06/13(日) 22:40





その約1時間ほど前に、約3万5000kmで動いている小惑星が確認された。




18 名前:瑛美 投稿日:2004/06/13(日) 22:46
更新です。
本当にめちゃめちゃ短くてすみませんTOT
ストックの半分が消えちゃって・・・だから今一生懸命書き途中なんです。
それと両方やっているので少しずつしか更新できないのですが許してくださいTOT

>>>14名無し飼育さん・・・・・・ありがとうございます!!初レスです!!!
                  がんばります!!!!
19 名前:JUNIOR 投稿日:2004/06/13(日) 23:45
更新お疲れ様です。
そして初めましてです。
この作品は面白くなりそうなので期待してます。
がんばって下さい。
20 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 07:27
・・・いよいよ?
21 名前:瑛美 投稿日:2004/06/16(水) 20:45
遅くなって大変すみませんでした。

>>>19JUNIOR様・・・・・・・ありがとうございます!期待にこたえられるように頑張ります!
>>>20名無し飼育さん様・・・・・はい、いよいよです!遅くなってごめんなさいTOT

今回も少し短めですが更新します。
22 名前:1.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:46

2004年夏。


暑くて暑くてしょうがない。


スカッと晴れた吸い込まれそうな青い空に、遠くに浮かぶもくもくとした入道雲。
それを見ているだけでも蒸し暑いのに、ケヤキ並木のケヤキの木に沢山止まっているセミの鳴き声が、
余計に夏を感じさせる。

イロイロな店先にぶら下がっている風鈴と、時々あたる店から流れ出るクーラーの冷たい空気だけが唯一の救いだ。

この暑いというのにこの人混み。よくこんな日に外を暑く気になれるなぁと少し感心する。
全員が全員夏を満喫するかのように、弾けるかのように派手な格好をしている。


どこかわくわくした雰囲気と蒸し暑い空気の漂う原宿に、私はちょっとうんざりし始めていた。
23 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:47
「いちーちゃん」

ふっと頭に蘇るあの声と響き。

「いちーちゃん」

甘い甘い声。滑らかな声。空気の混じらない声。

「いちーちゃん」

私の大好きな声。後藤の声。

風鈴の音みたいに、余韻が頭に響く。
24 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:48





出会ったのは1年前。今日みたいな暑い夏の日だった。



25 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:49
高校に入ってからやりだした水泳はどうやら才能があったらしくて。
部活に入ってしばらくすると、1年生の中で一人だけ、大会に出れるようになっていた。
大会でも2,3回目の大会からは上位3位に毎回入るまでにめきめき上達していった。

結構自分にあってたのかな。

そう思うと結構嬉しくて、何か目標にできるものを見つけた気がして素直に喜べた。
そして去年の夏も大会に出る予定だった私は、学校の屋外プールで一人残って練習をしていたんだ。
どうやら運動部の部活は涼しい午前中にということだったらしく、
私が残って練習を使用としていた午後は、学校はとても静かで、
時々さわさわと若草色の木を揺らす風と鳴き止まないセミの声だけが響いていた。

ゆったりと時間が流れる中で、私はなぜかすごく得をした気分になった。

太陽の光が反射する水面はキラキラ光っていて波打っていてキレイだった。

プールの底の色と同じ水色の水。
ふちに当たってたっぷんたっぷんいう水。
透明な水。
ずごく柔らかい、溶けかけのゼリーみたいな水。

触ると自分まで透き通った気持ちになれる。

買ったばかりの黒に蛍光色の黄色と青の線が入っている水着と銀色の水泳帽は、
まだピチピチしていてちょっと着慣れなかった。
26 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:50
ぎらぎら照りつける太陽と、すっと吹く風と、少し汗ばんだ体。
真っ白なプールサイドに腰掛けて、日焼けして茶色くなった足だけをそっと水の中に入れる。

「・・・っ・・・わぁ・・・冷たい・・・」

スペアミントと、プールの独特のあの匂いがした。

しばらくしてから全身を震わせ水の中に入っていく。
最初は悲鳴をあげそうなほど冷たい水も、しばらくすると慣れてきて。
5分後には体慣れのためにクロールを泳ぎ始めた。

ゆっくり、ゆっくり丁寧に水を掻き分ける。
足も1秒に1回程度の速さでばたつかせる。

水の中は、自分の足がばちゃばちゃいう音以外は一切何も聞こえない。
太陽の光がプールの底でそっとゆらめくだけの静かな世界だ。

私が腕で水を掻き分けるスピードで私の体も前に進んでいく。

ゆっくり、ゆっくり。
すっと。
流れるようにして水が私の体を撫でる。
27 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:50

この瞬間が私のお気に入りだった。

自分がその水の中に完璧に溶け込んだ瞬間。

世界から見えないところにいる自分。

私は水と一体化している。

幸せの瞬間だった。
28 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:51
そうやってクロールを200mぐらい泳いでから、少し休むためにプールサイドに上がる。
帽子とゴーグルを取ると、ショートカットの黒い濡れた髪にあたる風が
少し冷たく感じられて気持ちが良かった。


「泳ぐの、上手ですね」


不意に掛けられた言葉にすごく驚いてぎょっとする私。
もう体育館にも更衣室にもプールにも、誰も残っていなかったはずだ。
文化部は今日部活ないはずだし。
一体誰が声をかけてきたのか?
あたりをきょろきょろを見回す私に対し、声をかけた張本人は、にっこり笑って見せた。
29 名前:2.歓迎している 投稿日:2004/06/16(水) 20:52




白いキャミソールみたいなふんわりとしたワンピースが、印象的だった。



30 名前:瑛美 投稿日:2004/06/16(水) 20:53
しくじった!!!!!

「2、歓迎している」ってなる予定だったのに1番最初だけ「1、歓迎している」になっちまった!!!

しょっぱなからすみませんでした。
31 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/06/20(日) 08:30
気にしないでガンバって!
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/10(水) 15:53
続きが気になるー
33 名前:瑛美 投稿日:2004/11/11(木) 03:47
しばらく手がつけられませんでした。
放置状態のままにしてしまって本当にすみません。
明日からまた再開します。
待たせてしまった方々、本当におまたせしてしまってごめんなさい。
34 名前:手櫛で髪を梳きながら 投稿日:2004/11/11(木) 05:40




地毛だと思っていたあの髪の色は、実は染めたものだったらしいこと昨日になって知った。
少しも黒い部分なんか見せないから、出会ってからずっとキレイな髪だと思っていたのに。

まっすぐなサラサラの髪。
ふんわり匂う髪。
後藤の髪。

プールの塩素のおかげでパサついた私の髪とは大違いだ。


『あはっ ごとーはねーこんな髪だいっきらいだよ』
『なんで?』
『いちーちゃんの髪の方が好き』
『パサパサじゃん』
『ん いいの。いちーちゃんの髪が好きなの』
35 名前:3.手櫛で髪を梳きながら 投稿日:2004/11/11(木) 05:41

出会ってから1年。
夏休みのプールサイドで会った白いワンピースの彼女は、
私の家に遊びに来て、隣で私の髪を手で梳き流しながらそう言った。

そして今も、原宿の蒸し暑い熱気とさんさんと降り注ぐ直射日光の真下で、
自分の手で自分の透けるような茶色の髪を手櫛で梳きながら頬を膨らませている。


「・・・・・・・・おっそいよ・・・・・・」


恐ろしく不機嫌な声。
思わず両手をパチンと合わせて頭を下げる。

「っ・・・・ごめん!」
「・・・・この暑い中ずっと待ってたのにさ・・・」
「ごめんごめんごめん〜」
「・・・・・・・・・20分も遅刻するなんて・・・・・」


時計のセットを間違えたなんて口が裂けても言えない。


「っ・・・だからっ・・・・」
「・・・・・・・だから?」
「・・・・・・・・ほんっとにごめん!代わりにさ、ホラ 後藤の好きなもん買ってやるし
後藤の好きなとこ行ってやるし・・・・今日一日後藤の言うこと聞くからさぁ〜・・・・
機嫌直してくれよ〜・・・・・なぁ〜?・・・・」


いつの間にか必死になっていたことになんか気がつく余裕もなく、
一向に機嫌の直りそうにない後藤に頭を深く下げて謝り込む。

「「・・・・」」

しばらくの沈黙があって、どうしたかな、と私がチラっと後藤の顔を覗き見ると、
唇が半分にやけたようなそれを抑えているような、困ったような笑みを浮かべた後藤の顔が見えた。

「わかったよ。もう・・・・頭上げてよぉ・・・周りの人がずっと見てて恥ずかしいぃぃ〜」
「じゃぁ許してくれる?」
「・・・ん・・・・許すよ。でも後藤の言うこと聞いてくれるんでしょ?」
「ん・・・まぁね。聞くよ」
「じゃぁさぁ、とりあえずどっか入らない?どっかの誰かさんのことずっと待ってたら喉渇いてきちゃったしさぁ」
「はっ・・・・はい・・・」
36 名前:3.手櫛で髪を梳きながら 投稿日:2004/11/11(木) 05:41
そういってへこへこ後藤のほうに近づいて、
するりと組まれた腕を引き寄せて歩き出す。

幸せ、なんだろうか。


「それではお姫様、どこへお連れいたしましょうか?」
「ん〜・・・・・そうだなぁ・・・・あ、そうだ!いちーちゃんこの間ごとーが持ってた雑誌覚えてる?」
「?・・・・あ・・・・あぁ・・・・あのファッション雑誌?」
「そうそう!それにねぇ〜今話題の喫茶店ってのが載ってて、それがすごいキレイだったんだよ〜!」
「そこ行きたいの?」
「うん!」
「かしこまりました」
37 名前:3.手櫛で髪を梳きながら 投稿日:2004/11/11(木) 05:41




あの日着ていた白いワンピースと白いミュール。
微かな風にはためいてふわりと翻る。

後藤が眩しく見えて、瞬きをした。



38 名前:3.手櫛で髪を梳きながら 投稿日:2004/11/11(木) 05:42





『た・・・・大変だぁっ!!!! 星がっ・・・・小惑星がっ・・・!!!』
『何だと?!』
『ものすごいスピードで・・・・こっち(地球)に!!!』




39 名前:瑛美 投稿日:2004/11/11(木) 05:44
すみません
とりあえずここまで。。。。超ミニマム更新です。。。
今このあと辻加護を出そうか出さないか迷っています。
どうしようかなぁ〜・・・
あんまりたくさん出すと手に負えなくなりそうなのでそのほかの人たちは出しません。
あくまでもいしよしで・・・w
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/11(木) 16:58
いいっすね〜。中、長編を期待してます!!
でもやっぱいしよしっすよねWW
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/04(土) 17:54
保全
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/16(木) 17:07
待ちますよ
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 13:22
come back!
44 名前:瑛美 投稿日:2005/01/01(土) 23:32
帰って来ました!!!
本当に半放置状態ですみませんでした。
もう試験試験試験だらけでまったく手つかずになってしまいました。

さて。更新は今週末にしたいと思います。
そこでそれまでに皆様にお聞きしたいのですが、
辻加護を出すか出さないか迷っています。

そこで投票。辻と加護を出すか出さないか。
それで次の更新までにストックを書きます。
皆様どうぞよろしく願いします。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 16:15
ぜひ出して欲しいっすね。
4期は最高ですもん
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/04(火) 05:07
ぜひ出してください
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/16(日) 14:13
ごまも出して欲しいなぁ
48 名前:nanasi 投稿日:2005/01/22(土) 02:57
>>>47 1ban saisyo ni detenjan tyanto yondekara resu siroyo.
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/08(火) 22:55
>47  そうそう 最初から読んだのかよ 作者さんにすげぇ失礼
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/09(月) 14:52
待ってますよぉ
51 名前:ははは 投稿日:2005/07/13(水) 17:19
゛れぜ
52 名前:名無しさん 投稿日:2005/07/13(水) 21:19
落とします。
53 名前:瑛美 投稿日:2005/08/24(水) 11:10
お久しぶりです。作者です。
戻ってきました。
1年間も放置状態となっていたことを大変申し訳なく思っています。
作者も1年歳をとって大学生になってしまいました。
そろそろ8月も終わりに近づき、夏が終わろうとしています。
もしもみなさんさえよろしければ、またこの話を再開させて頂こうかと思っています。
4期だけでなくできればいろいろな人を出して行きたいと思いますが、なんせ小説を書くのは初心者なもので・・・
なんだかよくわからないものになる可能性もないわけではありません。
もしも気になるところなどありましたら、フォローをどうかお願いいたします。
それでは、明日から『世界破滅寸前』更新再開です。
54 名前:瑛美 投稿日:2005/08/24(水) 11:11
更新再開なのでいちおうageってみようかと。
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:16
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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