チーズ・ロワイアルU
- 1 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/10(木) 13:08
- 前スレ『チーズ・ロワイアル』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1071250715/
・黒い服をお召しの方。
・『ちーしーなーしーあーしーだろうが!』という方。
・職業が“死ぬよりつらい苦しみ”への水先案内人な方。
・とても素直で騙されやすい方。
・(○`ー´)<………。
以上の方は、お読みにならないことが得策だと思われます。
- 2 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:13
-
「Life's but a walking shadow, a poor player」
いつの間にか受けて、いつの間にか受かっていた高校での英語の授業中。
腐れ縁は続いたようで、またしても同じクラスになった私くし――新垣里沙と
藤本絵里は、仲良く机を並べて教師の流れるような発音に耳を傾けていた。
ツンツン。
しかし流れすぎていて上手く聞き取れず、今どこを読んでいるのかも見失い、
みなが退屈を感じ始めていた頃、左肘をつつかれて振り向くと
藤本ちゃんがシャーペンを口元にあてて微笑んでいる。
「新垣さんってバリ島に行ったことあるよね?」
「うん。小3の夏に行ったニィ」
そのまま小声で話しかけてきた彼女は、私の答えを聞くとパァッと目を輝かせ、
嬉しそうに1人で顔を綻ばせた。
「バリ島行くニィ?」
「ううん。あのね、バリ島で水筒買った?」
「水筒? 買ってないニィ」
水筒は荷物として持っていってたから買う必要もなかったし。
それよりなぜ突然そんなことを訊くのか。
バリ島の水筒なんて………なにか価値のあるものだったっけ?
- 3 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:14
-
「れいなが…ね、欲しいみたいなの」
考え込んだせいで訝しげにひん曲がった私のマユゲを見たのか、
藤本ちゃんは恥ずかしそうに頬を染めてモジモジしながら呟く。
ハハーン、それでプレゼントしようと思ってるニィね?
でも待てよ。そんな話初耳だし、どうして田中ちゃんはそんなも…じゃなかった
バリ島の水筒なんぞが欲しいのか。
「それはぁ、わかんないけど、でもこないだ言ってたから。
『バリの水筒が欲しい』って」
「……ふぅーん……」
それならそうと、ニィに言えばいいのに。
我が新垣家から遣バリ使を派遣すれば、すぐに手にすることができるニィ。
遠慮したのか、あるいはいつか自分でバリ島に言って買おうと思っているのか。
どっちにしても水臭いったらありゃしないニィ。
「けど、日本じゃどこで売ってるかわかんないし、
現地に行くにもお金がないから
新垣さん持ってないかなぁと思って」
「持ってないけど、保田さんにでも頼んで買ってきてもらえるニィよ。
ニィと藤本ちゃんの仲だし、お金も気にしなくていいニィ」
「…ほんと?」
「うん。田中ちゃんは新垣塾の塾生だからね、
喜ぶ顔が見たいのはニィも一緒だニィ」
「ありがとぉっ!」
「ニ、ニィィッ…ちょっ、わかった、わかったから」
- 4 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:14
- 授業中だから!
ニィの手持ってブンブン振り回しながらはしゃいじゃダメニィ!
先生に怒られちゃうニィよ!
「ん? そこ、なにを騒いでるの? 授業中よ」
「あ、すいませぇん」
「ごめんなさいニィ」
ほーら見ろニィ。
慌てて謝ったけど、先生は明らかに怒ってて
逆三角の黒ブチ眼鏡をクイッとあげると、物凄い早さで黒板に
白いチョークを走らせた。
「あなたたち…藤本さんと新垣さんね?
この黒板の、モン吉はエミリー、ニイガキュンは
クミのセリフを訳しなさい」
「「っ…」」
先生センスないニィ!!
ニイガキュンって、ニイガキンとかニイガンとかニイキン(ニイ菌じゃないニィ)
に比べたらマシ…ってこともないニィよ! どれもこれも微妙ニィ!
おそらく藤本→フジモン→モン吉という経緯で名付けられた藤本ちゃんも
激しいショックを受けたらしく
信じられないといった顔で先生を凝視していた。
- 5 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:14
- 「どうしたのモン吉、わからないの?」
わからないのはあなたの神経だ。
再びモン吉と呼ばれた藤本ちゃんは、頭をクラッとさせつつも
気丈に立ち上がり、青い顔で懸命に英文を訳す。
それにならってニィも同じように立ち上がった。
「え、えっと…
『クミ、私にはケンドーコバヤシが柔道家に見えます』」
「ニ、ニィッと…
『エミリー、そういえば彼、靴のサイズが29センチもあるのよ』」
「…よろしい。2人とも、今後は気をつけるように」
ホッ、よかった。
てゆーか先生、さっきまでシェイクスピア読んでたのに
なんでいきなりこんな文……クミとエミリーにケンコバって、
マクベスとマクダフはどこ行ったニィ?!
しかし、疑問を抱えながらも先生が表情を柔らかくしたことに安心して
席につこうとした瞬間、隣の体がクネリと動いたと思うと―――
ガターン!
- 6 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:16
- 「ニアァ!? 先生! 藤本ちゃんが倒れましたぁ!」
「モッ、モン吉?! どうしたの?! 貧血っ?!」
『貧血は貧血だろうが、原因はあんたの“モン吉発言”だニィ!!』
などと私くし、優等生・新垣里沙が口にできるハズもなく、
血の気を失った顔で教室の固い床に倒れこんだ藤本ちゃん(モン吉)の
肩を抱き上げる先生のうなじに、先日あさ美ちゃんにもらった
“塗った6時間後にすね毛の成長速度が5倍になる薬(無臭)”をさりげなく塗る。
「新垣仮面、いつでもどこでも弱い者の味方です」
「ん? なんかうなじに触れたような」
「気のせいニィよ先生。
藤本ちゃんはニィの力で回復させますからご安心を」
「力で? よくわかんないけどお願い」
「マユゲホスピタール!!」
「ひゃあ!? ニイガキュンのマユゲが七色に…っ!」
マユゲから放たれた金・銀・銅・山吹・群青・肌・肉色の七つの光が
藤本ちゃんの身体を柔らかく包み込む。
するときっかり10秒後、『初めてぇーのぉちゅう〜♪』というヤケに楽しそうな
歌声と共に光の中から、満面の笑みの藤本ちゃんが現れた。
- 7 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:17
-
「コロ助ナリよ〜」
「……ニテネ」
無事に血の気は戻ったようだが、どうやら後遺症が残ってしまったらしい。
似てないのに、藤本ちゃんはニコニコしながら私を「キテレツ」に見立てて
コロ助になりきっている。
「キテレツぅ、なんか新しいマユゲないナリかぁ?」
「…な、ないニィよ」
まぁ日々新しく生え変わってると言えば生え変わってるけど。
「まぁ、モン吉ったら物真似上手ねぇ」
「え?」
先生耳おかしいニィ。
「む。モン吉じゃないナリ、我輩はコロ助ナリ」
いやいや、あんたはコロ助でもなく藤本絵里だから。
と、突っ込もうとするものの、どこから出したのか変なチョンマゲのヅラまで
つけた藤本ちゃんは、褒めてくれた先生に飛びついて肩を組み、
コソッと耳打ちして一緒に歌い出した。
- 8 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:17
- 「「いざすすめやキッチン〜、目指すはジャガイモ〜♪」」
はじめてのチュウの次はお料理行進曲か、ニィも当然この歌で
コロッケとナポリタンスパゲッティの作り方覚えたんですよ。
…とか懐かしがってる場合じゃなくて!
先生、今は英語の授業中だし、あんたさっきニィたちが騒いだら
怒ったクセに自分が騒いでどーするニィ!!
「「小麦粉、卵にパン粉をまぶして、
あげればコロッケだよ、キャベツはどうした〜♪」」
まいっか。2人とも楽しそうだし。
周りのクラスメイトの、ちょっと引いてたり
「藤本さんって…こんな子だったの?」的な視線を感じるけど、
その通りこんな子だから問題はないだろう。
「「「まだまだあるメニュー、鍋の熱いプール
スパゲッティ泳がせたら ザルにあげてOK〜♪」」」
2番にさしかかる頃にはニィも一緒になって2人と肩を組み、
視界の端に映ったクラスメイトも、何人かは小声で一緒に口ずさんでいた。
ニィニィ、まだまだ出来たばかりの新しいクラスが今1つになろうと
してるニィ。これぞ青春、かけめぐる青しゅ―――
「やい、そこのビューティペアを
ビューティベアだと勘違いしていた豆」
- 9 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:18
- 「…ん? ニァァア!? あ、あさ美ちゃん!
なにしてっ…今は授業中ニィよ! 勝手に入ってきちゃだめニィ!!」
その前にニィはペアをベアと勘違いなんかしてません!
「大丈夫、ポドリアルスペースにしてあるから」
ハイ?……っんなあ!?
ホントだニィ!! みんな逆さまになっちゃってるニィ!
「って夢あおいかあんたは!!」
「キャラ的には美紅ちゃんなんだけどね」
「いや、違うから!
キャラもなにも程遠いから!」
「その口、2度と開けなくしてやる」
「ぎゃあ!? ごめんなさいっ!」
フゥーッ、フゥーッ、びびびびっくりしたぁ。
背後から声がしたと思ったらいきなりあさ美ちゃんはいるは
世界は引っくり返ってるわ………てか仮面ライダーも知らないニィが
ウィングマン知ってていいの? ま、いいか。
「で。わざわざポドリアルスペースまで作って
一体なんの用ニィ? 今日はまこっちゃん一緒じゃないニィ?」
「用件はさておき、まことは苗字が小川でしょ?
美紅ちゃんと被るからおいてきた」
- 10 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:19
- ……そこまでして自分を美紅ちゃんポジションにおきたいのか。
心配しなくても、小川なだけでまこっちゃんはあさ美ちゃん以上に
美紅ちゃんとはかけ離れてるよ。
「って用件さておかないでよ!
用もなくこんなことしてまで会いにこないでしょ」
「お豆に会いたい、それだけじゃだめ…?」
「 ダ メ 」
そんな媚びるような目で言ってもだめ。
ちょっとカワイイけど、それに油断したらどうなるかは
よくわかってるニィよ。さっさと話せ、そして世界を元通りにしてくれぃ。
「チェイング!! コィングマン!」
「アホなぁ!?
あんた美紅ちゃんポジションがええんとちゃうんかい!!」
セリフだけで変身できてないし!
遊んでないで早く話せというのに!
「はぁ〜あ、ノッてくれてもいいのに……じゃあ話すか。
あのね、さっきの水筒のことなんだけど」
「あ? あぁ、田中ちゃんが欲しがってる?」
- 11 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:20
- なんだ、そのことか。
でもなんであさ美ちゃんが知って……と、疑問をよぎらせた私をよそに
あさ美ちゃんの笑顔は不気味なほど絶え間ない。
「うん、バリ島の。
私、昔海外の料理を漁ってた頃に輸入関係の仕事してる人と
知り合いになって、バリ島の水筒をいただいたことがあるの。
複数いただいたから、田中ちゃんが欲しいなら1つあげようと思って」
そう言って、あさ美ちゃんは制服の懐から銀色に光る物体を取り出した。
ニェ? これがバリの水筒?
どう見ても普通の魔法瓶に見えるんだけど…これじゃ日本のと
全然変わんないニィ。
「ちゃんとバリ製だって書いてあるでしょ?
正真正銘モノホンだから、田中ちゃんにあげてね」
言われて見ると、たしかに水筒にペタッと張られたシールには
英語でバリ製だと書かれている。
『でもねあさ美ちゃん、モノホンは死語だよ』そんな言葉は飲み込んで
ニィは素直に感謝した。
- 12 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:20
- 「ありがとニィ、おかげで今日の放課後には
渡せるニィよ。田中ちゃんも藤本ちゃんも喜ぶニィ」
「ふふふっ。
いいことすると気持ちがいいなぁ。
じゃあ私教室に戻るね。お豆、アディオス」
「アディオスニィ〜」
ニィニィ、あさ美ちゃんったら、やっぱり根は優しい人ニィ。
大事ないただき物を分けてくれるなんて、女神のようニィね。
「「食べればペロリヤーナ、赤いナポリタン〜♪」」
お? ポドリアルスペースも解除されたようだニィ。
「藤本ちゃん、藤本ちゃん、バリの水…」
「ん〜? 新垣さんも一緒に踊ろっ」
「え? あ、ハイハイ」
しょうがないなぁ、ニィの踊りは高いよぉ。
水筒を渡すのは休み時間でいっかと判断した私は、差し伸べられた
手を取った。その瞬間、よりいっそう顔をクシャクシャにして笑った
彼女がドキッとするほど綺麗だったけれど、なんとなく悔しいので
そう思ったことは内緒にしておく。
- 13 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:20
-
―――このとき、私は1つ、重大なヒントを見落としていた。
先日キツネが届けた手紙に込められた、縦書きの『こんのアヒャ美』に
気づかなかったように、またしても―――
「あれ? あさ美ちゃぁん、机にシールくっついてるよ。
なにこれ? ゾウジルシ?」
「キリンさんが好きです。でも、ゾウさんはもぉっと好きです」
「んぇ? なに言ってんのあさ美ちゃぁん」
―――そして知らなかった、こんな会話が、なされていたなんて―――
- 14 名前:かけめぐる青春。 投稿日:2004/06/10(木) 13:21
-
- 15 名前:つみ 投稿日:2004/06/10(木) 17:13
- 新スレおめでとうございます。
ばりってのはもしかして・・・
主人公の二人は・・・・
次回までのお楽しみですか・・待ってます!
- 16 名前:shou 投稿日:2004/06/10(木) 19:07
- 新スレおめでとうございます。
それと、更新お疲れ様です。
いままであまりなかった視点をふくめ
これからも楽しく読ませていただきます。
- 17 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/10(木) 19:27
- 新スレおめ&更新お疲れ様です。
あぁ、くそ。。。
なんか作者サマと紙一重に世代がズれてるぅ・・・。
聞いた事のある漫画なんですが、、、
歌も2番は普通に知らなんだ。
まぁ十分楽しめますけどw
次も楽しみにしてます。
- 18 名前:我道 投稿日:2004/06/10(木) 19:54
- 新スレおめでとうございます。
に、二番・・・あったのか_| ̄|○
しらなんだ・・・あぁ、しらなんだ・・・。
相変わらず、楽しませてくれますね(w
次回からも萌死、笑死覚悟で読ませていただきます。
頑張ってください。
- 19 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/11(金) 01:08
- 初レスです&新スレおめでとうございます。
なんとなく作者様と世代的に一緒な気がします。
ディ○ンショ○パワーを使えるコンコン・・・スゴイですね(w
しかも、バッチいらず(w
次も楽しみにしてます。
頑張って下さい。
- 20 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:57
-
『ただい…ひゃっ!? たん?』
『おかえり。どこ行ってたの?』
『ふぇ? え、えーっと…と……図書館!
あそこだといつもの倍勉強に集中できるから』
『へぇ…』
最近、亜弥ちゃんの様子がおかしい。
帰り遅いし、なんか疲れてるし。
電話しても出なかったり、メールの返事も遅い。
日曜のことがあって、たしかにちょっと気まずくなりかけたけど
美貴は怒ってないし。
むしろあの場に亜弥ちゃんがいてくれて、お母さんのことを知ってくれて
気が楽になったった。
亜弥ちゃんは『だめだって思ったけど…、でもたん、
なんとなくお母さんのこと恨んでるみたいだったから…』って
家に着いてから何度も謝ってくれたし
心配させちゃったのは美貴なんだから、亜弥ちゃんは悪くない。
…強いて言うなら、『もう全然平気だよ』って言ったのに
バス停で思いっきり咳こんでたことだけは怒ってるけど。
『あれは、たんがいきなり見たからびっくりしてムセたのぉ』
ってムセたにしてはひどい咳だったし、嘘ついて無理するなんて
見破れなかった自分自身にも腹が立つ。
- 21 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:57
- お仕置き執行を止めてくれたことについてはマジで怒ってないよ。
逆に感謝してるぐらいだから。
美貴完全にキレてたし、亜弥ちゃんが止めてくんなかったら
1発どころかボコボコのズタズタのギッタギッタにしてたかもしんない。
ファミレスでそんなことして警察呼ばれたら大変だったし、
美貴がお仕置きしなくても他の誰かが代わりにやってくれたみたいだから。
………テロだって聞いたけどレイナンじゃないよな。
『藤本ぉぉお!! ミツコさんがっ!ミツコさんがぁぁあ!!』
誰がやったか知んないけど、夜に学長から電話かかってきたときは驚いた。
『生きてんですか? よかったですね』って切ったら
『この薄情者ぉぉお!』ってもう1回かかってきたけど。
『ごめんな美貴ぃ、遊びに来いって言うたのに
店なくなってもうてん。でも爆撃って……ロックやん?』
次の日の朝のニュースで『被害に遭ったプールバーの経営者:寺田光男さん』
なんちゅうテロップと一緒に出てきたときは味噌汁吹いた。
公共の電波でなにぬかしやがるんだあのバカ。
なち姉たちは知らないから、不思議そうな顔してる前で
同じように吹き出した亜弥ちゃんの口押さえなきゃなんなくて。
…うん、やっぱね、なち姉とごっちんはいいかもしんないけど
絵里が知ったら色々…ねぇ、ショック受けそうだし。
- 22 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:58
- あ…、やっぱ亜弥ちゃんもショックだったかなぁ。
口には出さないけど、やっぱ母親がアレだっていうのは
引いちゃったかなぁ。
それで美貴のこと避けてる?
ううん、でもお風呂も寝るのも一緒だし。
毎日毎日ホントに疲れてるみたいで湯船でトロンとしちゃって
ベッドに入ってキスのあと抱きついたと思ったらすぐ寝ちゃうけど、
避けてるとか、そういうのじゃない。
美貴の目、ちゃんと見てくれるし、無防備に笑ってくれる。
だから疑いたくない。
美貴じゃないやつと………なんて、考えたくない。
でもそうじゃないならなに?
明らかに嘘ついてたから図書館じゃない。
あんなに疲れるってことは、もっと体動かすことだ。
バイトはたしか親に反対されてるって言ってたし。
友達とボーリング? なら嘘つく必要ないじゃん。
あーわかんない。なにしてんだろ。
もっかい聞く? 今度は嘘つかないでくれるかな?
うーん………うーん………………うーん………………………
- 23 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:58
-
―――
「お、ふ、藤本おはよ。いっぱい食べて元気出せよな」
「ハ?」
「お母さんのこと心配なんだろ?
テロかなんだか知んないけど、ひでぇことするよなぁ」
「…あぁ、その話か。
あの人ゴキブリ並にしぶといから
大丈夫じゃないですか」
「おいおい、お母さんをゴキちゃん扱いすんなよぉ」
「褒めてるんですよ」
「………」
今日は海外に住んでる友達が遊びに来るとかでまいちゃんが
いなくて、1人で学食のA定食をつついてると
矢口さんが遠慮がちに話しかけて来た。
亜弥ちゃんのことで考え込んでたら
お母さんのことで凹んでるって勘違いされたみたいだけど
残念ながらそれはない。
店は吹っ飛んだけど、誰も怪我してないし。
店の隣にある家は無事だったから寝るとこを失ったワケじゃない。
あそこで働いてる斉藤さんたちは可哀想だけど
美貴がなんとかできる問題でもないし。
- 24 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:59
- 「いや、そりゃお前に店建て直せとは言わないけどさ。
でもフルーツの詰め合わせぐらい届けてやってんだろ?」
「だから誰も怪我してないし、
入院もしてないのになんでそんなの届けるんですか」
届けるくらいなら美貴が食べるし。
呆れた声で答えると、矢口さんが目をひん剥いた。
「んなっ!? ああいうことがあったらまずフルーツの盛り合わせ
届けんのが常識のツネシキの真賀田四季だろーがっ!
なに暢気にコロッケ食ってんだよ!」
「ハァ? なに食べたっていいじゃん。
コロッケ好きなんだよ!すべてをFにしてられるかっ!」
大体誰が決めた常識だよ、初めて聞いたし!
「あんだとぉ!!
そんなにコロッケが好きならあややとイチャついてないで
新妻の五月みどりのコロッケ毎日食ってろバカ!」
「バカはそっちだ!
五月みどりのどこが新妻だよ!!」
新妻どころか菊○桃子の姑でしょ!
矢口さんボケたんですか?
心配になっておでこに手をあてようとすると物凄い勢いで振り払われる。
「てめぇ物知らずにもほどがあんぞグルァ!!
今日もコロッケ、明日もコロッケ〜♪って知らねぇーのかっ!!」
「知るかっ!!」
「っ……………ジェネレーション_| ̄|○」
フン、勝った。
- 25 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 18:59
- 「ち、ちくしょぉ…じゃあ詰め合わせじゃなくていいから
メロンやパイナップルの1つや2つ…」
「矢口さんが持ってけばいいじゃないですか」
知らない仲じゃないんだし。
「おいらより藤本が持ってったほうが喜ぶだろぉ…」
「喜ばれたくないんで」
「お前、それでも人の子かよ!」
冷たく言い返した美貴を、矢口さんちょっと泣きそうな目で睨む。
そんな…、泣かないでよ困るなぁ。
「お母さん、テレビで真っ先に藤本の名前呼んでたじゃんか。
会いたいんだよ、心細いんだよ、フルーツはいいから会ってやれよぉ」
「……見たんですか…」
見たんならわかってよ、美貴の心情。
アイツのせいで2杯の味噌汁が犠牲になったの。
「たしかに面白かったよなー。裕子なんて録画してたもん。
あとで色んな局で流れたのまとめて記念のビデオ作るから
藤本にも1本プレゼントするって言ってたぞ」
「心の底からいりません」
余計なことすんな!と今すぐ学長室に殴りこみたい気持ちを抑えて
爽やかな笑顔で即答する。
- 26 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:00
- けど、せっかく人が笑ってんのになぜか矢口さんはヒッと怯えた声を出した。
失礼なやつだ。
「そ、そっか……裕子には
おいらから言っとくからよ。じゃあな」
そしてそのまま後ずさるようにして去っていく。
ったく、結局なにしに来たんだあの人。
考えごとしてたのに邪魔しやがって……えーと、えーと、そうそう、亜弥ちゃん。
学校が終わってから夜遅くに帰ってくるまで
亜弥ちゃんがどこでなにしてるかって考えてたんだ。
今日も遅いのかな?
夜道は危ないから心配なんだよなぁ。
あー…気になる、気になる、気になる…………
『おい、ウジウジガール』
『あ? 誰だよそれ』
『お前だよ。そんなに気になるなら見にいけばいいじゃん』
『あとつけろってこと…?』
『そう、尾行な尾行。お前の弱い鼻腔じゃなくて』
『…うっさい』
『プクク、拗ねんなよぉー』
『でも尾行なんて…』
『亜弥ちゃんだってこないだ美貴のこと尾行したじゃん。
尾行返しだよ、あ、尾行って言い方が嫌なら
“キュルルンあややの背中観察”みたいな感じでどぉよ?
バレないようにやりゃあいいって』
『うーん…』
- 27 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:00
-
背中観察……かぁ。
バレないように……かぁ。
ちょっと、後ろめたいけど……やっちゃっていいのかな?
気になって、講義にも集中できないし。
また聞いて嘘つかれたらキツイし。
美貴が勝手に考えたって答え出ないし。
バレなきゃいいんだ、バレなきゃ。
背中観察だ、背中観察。
先にやったのは、亜弥ちゃんなんだし。
良心の呵責があるけど……ごめん、亜弥ちゃん。
美貴ははやく本当のことが知りたい。
午後の講義サボることになるけど、行こう。
決めたあとの美貴は素早かった。
急いでコロッケとご飯を味噌汁で胃に流し込むと
早足で大学を出て、途中にあるその昔ごっちんとセーラー服を
買った店でパン工場のネズミ色の作業着を買い、
手早く着替えて脱いだ服をコインロッカーに預け
帽子を深く被って高校の校門がよく見えるところに張り込んだ。
出口はここだけだから、ヨソ見をしなければ
見逃すことはない。
- 28 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:01
- 念のため早退してないかどうか確かめるために
『まだ講義あんのに眠いよー』というメールを送ると、
数秒後に『たんも? 今現国なんだけどもー限界ぃ』とのお返事。
よし、授業受けてる。
返事も早いから本当だ。
安心して携帯をしまおうとすると再び携帯が振動して
『たーん、寝ちゃわないように相手して?』なんてせがまれる。
授業聞きなって返したけど亜弥ちゃんは諦めてくれなくて
放課後になって『今日も図書館行くね』っていう一言がくるまで
ずっとチャットみたいなメールのやりとりをしてた。
◇◇◇
―――
「れーなー、じゅくちょー遅いねー」
「高校生やけんね…」
放課後の新垣塾本部でれいなとさゆはマンガを読んだり鏡を
見たり(これはさゆだけやけん)しながら、塾長が来てくださるのを待っとぉ。
- 29 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:01
- そう、塾長は高校生になって、絵里を…
絵里を連れて隣の女子高に行ってしまったと…ぐすっ。
くぅっ……なんで?
なんでこの世には年の差なんてもんがあるんね?
その見えない壁は、教室は違えど1つ屋根の下にいた絵里をれいなから
引き離し、お隣さんっちゅうご近所でいうところの
『平家さーん、回覧板ですぅー』みたいな距離に突き放してしまったとよ!
ひどかぁ…まったくもってひどか話ばい…っ。
なんかあったとき、絵里がすぐにれいなのとこに助け求めに来れんやん。
「じゅくちょーがいるから大丈夫ー」
「……そりゃそーやけど…」
助けたいやん、この手で。
れいなだって塾長の熱いご指導の元、あらゆるピンチから
絵里を守れる力を身に付けるための特訓受けとるんやけん。
「ほぇ? そーだったんだー」
「…さゆ、知らんかったん?」
「んー、だってさゆ別に絵里を守りたくないよー?」
「さゆは自分守りなよ。カワイイんやから」
「キャ、れーなの正直者ー」
- 30 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:02
- いや、さゆのが果てしなく正直やし。
「やっぱりねー、今日はマツゲがオススメなの」って
また鏡に向かってクルクル回る姿は真似できん。
てか回るとブレて自慢のマツゲがよう見えんのやけど…。
「カワイイからみんなにも見せてくるー」
「え? 回ったまま?」
「クルクルー」
危ないよって止めようとしたれいなの声を無視して、
さゆは回りながら軽快に本部を出て行った。
ちょっと、1人にせんでよ。暇やん。
……さゆのアホ、転んで怪我しても知らんけん。
「あー! れーなー、箱が置いてあるよー」
「んぇ?」
べ、別に寂しいワケやなかってまたマンガを読もうと思ったら
外からさゆの大声がした。
立ち上がって見に行くと、そこにはすでにさゆの姿はなく、
ポツーンと1つ、体育座りしてるときの飯田さんぐらいの大きさの箱が
置かれとる。
「な、なん? これ…」
塾長への贈り物やろか?とれいなが箱のフタに手を
かけたとき、ガタッと音がしてそのフタが開い――――
- 31 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:02
-
_____
/:\.____\
|: ̄\∩*^ー^) タナカサンニオトドケモノデース
|: |: ̄ ̄U ̄.:|
「――んなぁ!? えええ絵里ぃぃいい?!」
「れぇーなっ」
「う、わぁっ!」
なにが起こったんか、一瞬どころかたっぷり30秒ぐらいわからんかった。
気づいたられいなは箱から飛び出してきた絵里に抱きつかれて
本部の床に倒れこんどって、首には絵里の腕が巻きついとって……ぇぇえ!?
「…え、え、え、絵里? なにやっとぉ?」
「れいながぁ、今1番欲しいもの、なぁ〜んだ?」
「ハ?」
れいなが今1番欲しいもの?
そ………そんなん、絵里に決まって………
「れいなが1番欲しいもの、プレゼントしに来たの」
「え…」
マジで?! こ、こんなところでくれると?!
嬉しいけどっ……そんなはやまっちゃいけん気が…っ。
- 32 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:03
- 「ほ、ほんとに…くれると?」
「うん。そのために来たんだってば」
れいなにクネついとる絵里をそのままに、腹筋に力を入れて起き上がる。
信じられんくって顔を覗くと絵里の様子はいたって普通で…、
これが年上の貫禄ってやつですか?
ばってん、もらえるのは嬉しいけど、
正直なにをどうやったらいいかとかよくわからんし…
塾長とかさゆがいつ戻ってくるかわからんし…
ど、どうすればよかとねっ?!?!
『落ち着けレイナン。1度深呼吸して、美貴の言う通りにやってみな』
『お、お姉さん! 助けに来てくれたと?!』
『あぁ、美貴に任せなって。
まずは絵里の頭を撫でて、こめかみにかかる髪を耳に
かけたらそこに優しくキス。ハイ、ワンツー』
ワンツーって、…これほんとにお姉さん?
なんかおかしい。あんなに絵里に触るの許してくれんかったのに。
こないだの看病返しのときだって
目隠しで絵里を着替えさせんの大変やったのに………ハッ!
- 33 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:03
- 『ま、まさか、あんた、本能?!』
『チッ、バレたか。
あんたアタキがナニ言ってもじぇんじぇん聞いてくんなかから
わざわざ美貴姉の真似してやったのに』
『ミ、ミキネェって…』
危ない危ない。
本能の巧妙な罠に引っ掛かるとこやった。
れいなの本能は頭脳派やね。
『でんばってん、据え膳はおっただかなかと失礼なんやなかとです?
絵里はくれるって言ってるんやし』
『ま、そりゃ、そうやけど…』
『場所も場所やけんって遠慮する気持ちはわかるけど、Aくらいなら問題なかでしょ』
『う、う〜ん…』
Aってまた古い言いかたを…。
でもそやね、本能の言う通り、わざわざ来てくれたのに
なんもせんで帰すのは失礼な気がしてきた。
「絵里」
「れいなぁ?」
初めてやけん、こんな、縺れた体勢ではしたくない。
絵里の手をとり、ちゃんと立って向き合う。
そうすると絵里のが背が高いから、れいなが見上げる形になるけど
この位置から見える、れいなを見下ろすときの
絵里のちょっとお姉さんぶった表情も、れいなは結構好きなんや。
- 34 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:04
-
「じゃ、じゃあ、もらうけん」
「うん」
自分を奮い立たせるためにもそう宣言して
唇をニマニマさせてる絵里を引き寄せる。
絵里、ずっと夢見とった。
ほら、はやく目閉じぃよ、いつまで笑っとぉ?
まあキスするときでも笑っとるほうが、絵里らしくていいか。
「ハイ、水筒っ」
「ブチュゥッ…んぁぃ?」
・・・・・・え?
「バリ島の水筒、れいな欲しいって言ってたでしょ?」
「………バ…?」
唇に冷たくて硬い衝撃。目の前には銀色の物体。
な、なんねこれ? バリ?……島の、水筒ぉ…?
い、いや、これどう見ても普通のゾウジルシかなんかの水筒やん。
「見てここ。メイドインバ………ふぇ!?」
「あ? どしたん?」
「MADEが……MEDOになってる……」
「へ? あ、ホントや。
英語のつづり間違っとぉね」
「…だ、騙された……新垣さんに……してヤラれた…っ!」
- 35 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:05
- はぃ? なん? どゆこと?
そげん悔しそうに下唇噛まれてもサッパリわからんのやけど。
「おかしいと思ったの!
『ポドリムス経由で早急に手に入ったニィ』とか
ワケわかんないこと言ってたから! もぉ!新垣さんのバカぁ!!」
「だあっ、ちょ、絵里落ち着きぃ。
その前にれいな、バリの水筒が欲しいなんて一言も言ってないけん。
そんな話誰に聞いたと?」
騙されたとしたらそこからや。
まったく…、絵里は割った覚えのないガラスでも「割ったでしょ?」って
言われたら「割ったかも…」って悩むくらい騙されやすいんやから
下手な嘘ついちゃいけんっちゅーのに……。
「え…? れいなだよ?」
「あーれいなか、アイツいっぺん絞めたらな…ってれいなぁあ?!?」
そんなぁ!? アリエレーイナ!
「言ってたじゃん、こないだ。
だから絵里、新垣さんに頼んで買ってきてもらって…偽物だったけど…」
「こないだっていつ?」
「れいなが…倒れちゃったとき。
一緒にクローゼット入ったでしょ? 覚えてる?」
「もちろん。でも、そんなこと言ってないよ」
あんな貴重な体験忘れられるか。
- 36 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:05
- 「あのとき、れいなずーっとうわ言みたいに
『バリの水筒が欲しい』って言ってたもん、だから…」
だんだん絵里の声から、力がなくなってく。
れいなの顔を見て、自分が聞き間違えたってことに気づいたみたいや。
小さく青褪めてれいなの腕をくっと引っぱる。
「ち、違ったの? でも、『絵里、欲しい、バリ、水筒』としか
言ってなかったんだよ?」
「え、えーっと…」
そう言われても…言ってないし思ってな…ん?
絵里、欲しい、バリ、水筒。
絵里、欲しい、バリ、すいとう。
絵里、欲しい、ばり、好いとう…………………
『絵里が欲しい。ばり好いとぉ』
ぬがぁああ!?
なっ、れっ、れいなったら無意識になんつーこと口走ってくれるとね!?!
たしかに欲しいけどっ…ぎゃあああ!!
- 37 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:06
- 「あ、あのっ、あれはあのっ」
「違ったんだぁ……ごめんねれいな…
こんなの、いらないよね……ごめん、帰る…」
「え、ま、待って! 違ったけど! でも欲しいばい!」
違ったけど、でも絵里がこうやって渡しに来てくれたことは
すっごい嬉しい。その気持ちが、すごく。
出て行こうとする肩を掴んで引きとめると、絵里は泣きそうな顔で
水筒を後ろ手に隠す。いや、もうバッチリ見たし…。
「欲しいなんて……無理しなくていいよ」
「してないけん、ちょうだい?」
「………」
できるだけ優しく言うと、俯いてれいなを見ないまま
おずおずと水筒を差し出してくれた。
受け取った手に、ポタッと透明の雫が落ちる。
「泣かんでよ。水筒は1番やなかったけど
でも絵里はちゃんと、れいなが1番欲しいもの持ってきてくれたけん」
「……絵里、他になにも持ってないもん…」
「持っとぉ」
持っとぉっていうか、絵里そのものやけん。
少し顔を上げて恨めしそうに見つめてくる絵里の背中をぽんぽん叩いて
ぎゅうっと強く抱きしめる。
この目、この声、このぬくもり。これが、れいなの1番欲しいもの。
- 38 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:07
-
「絵里、1回しか言わんよ。
れいなは、絵里のことがむちゃくちゃ大好きばい」
「っ…え?」
絵里が理解する前に、下から噛みつくみたいに勢いをつけて口づける。
初めて触れ合ったそれは、夢見た以上に甘い、甘くて、気持ちいい。
突然のことに硬直してる体を抱く腕に、もっと力が入った。
「…ぇな…」
何度か角度をかえたあとで、ようやく現れた戸惑いに顔を離す。
見開いてる目をまっすぐ受けとめるのは照れ臭いけど
ここで逃げちゃだめな気がする。
ぐっと顎を引いて、絵里を見つめた。
「…い、今…」
「プレゼント、もらったけん」
「好きって……」
「くれるんやろ? いまさら返品とか許さんよ」
「もっかい…」
「だから、1回しか言わんって」
「れいなぁ…」
「う………す、好き…やけん…」
「もっかい」
「言ったやん……」
「もっかい」
「も、もー言わん!」
「むぅ」
- 39 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:07
- むぅやなか、2回も言わせよって…最高に恥ずかしいたい。
ほっぺたが風邪ひいたときよりも熱くなっとる気がする。
心臓がありえんぐらい痛い。
好きな人に好きだって伝えるのは、こんなに緊張するんや。
「れいな」
「は、はい?」
「絵里で…いいの?」
「…っ絵里がいいの!」
もう恥ずかしいから言わせんで欲しい。
あ、でも、これだけは聞いとかな………
「絵里こそ、れいながもらって…いいの?」
「うん。びっくりしたけど」
「あ、ごめん…」
「いいよぉ。絵里も、れいな大好きだから」
「あ? あ、ありがと…」
人がすごく大変な思いをして言った言葉を、
絵里はアッサリニッコリ言ってのける。
なんとなく悔しくて目を逸らしたら、唇を尖らせて反論された。
「絵里だってドキドキしてるよぉ? ほら」
「おわっ……あ…」
- 40 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:07
-
だからなんで絵里はこういうことを
サラッとするんかね?!少しはこっちの気持ちも考え―――ドリーム。
身長差のおかげで簡単に抱え込まれて耳を胸の真ん中に
押しつけられたれいなの視界いっぱいに広がる、一面ピンクのお花畑。
鼻先に見える丘では、舞い踊る妖精が
こっちにおいでとれいなに手招きしてる。
なんねこれ……幻想?……イリュージョン……?
吸い込まれる、突然瞼が重くなる。
素直に目を閉じて耳を澄ますと響く、トクトクトクっていう絵里の音。
なんて、なんて心地いい。
後頭部を撫でられながら、頭のてっぺんにキスされて、
ときおり耳にかかる吐息が少しくすぐったいけど。
もしも願いが叶うなら、このまま何時間も何日間も何週間も何年間も
ずっとずっと、こうしてたい。
- 41 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:08
-
「れいな…」
「絵里…もぉ、離さんよ?」
「うん…離さないで…」
背中にまわった絵里の手にも力が入る。
このまま、このまま、いつまでも―――――
ガタッ
「ただいまー、あのねー、色んな人からいっぱいお菓子もらったー」
「のわあ!? ぬぉぉぉささささゆっ、お帰り!
うわーこれうまい棒の納豆味やん!
また復活したんやねー」
「……」
「れーな顔真っ赤だよー? あー絵里ー!
見て見てー、今日もさゆカワイイのー」
「……のがカワイイ」
「えー?」
- 42 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:09
-
lヽ
l 」
‖ ノノハヽ
⊂ノノ*^ー^) エリノホウガカワイイ
ヽ と)
(⌒) |
⌒J
§ノヽ§
从*・ 。.・;从⊃ ヒャー
(つ /
| (⌒)
し⌒
「きゃぁぁあああああー」
「なだああ!?やめんしゃい絵里ぃいい!!」
「さゆのバカ! れいなの嘘つき!」
「うぉ!? れいなも標的なん?!」
願いなんて、そうそう叶うもんやない。
抱き合ったまま寝ちゃいそうな甘い雰囲気をブチ壊したさゆと
さっさと離れてしまったれいなは、
このあと小1時間ほど絵里に追い掛け回された。
- 43 名前:プレゼント フォー ユー。 投稿日:2004/06/14(月) 19:09
-
- 44 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/14(月) 19:10
-
レス、ありがとうございます。
>>15つみ様
有難うございます。
ばりはそのままだったんで一気に更新したかったんですけどねw
あの2人は次回、必ず、たぶん。
>>16shou様
有難うございます。
へぃ、こんなんでよかったら
どうぞよろしくお願いします。
- 45 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/14(月) 19:11
- >>17名も無き読者様
有難うございます。
メル欄>( ・e・)問題ないニィ。
そんな悔しがらんでも(w
2番、意外とマイナーだったようでびっくりしました。
>>18我道様
有難うございます。
お料理行進曲で凹まんでも…w
覚悟していただけるほどのモノが書けるか
わかりませんが、頑張ります。
>>19ピクシー様
有難うございます。
近いかもしれませんねぇ。
おいらは直接ではなくて、3つ上の人の持ってるのを読んでたんで。
コンコンは無限の可能性を秘めてますから(w
川o・∀・)<完璧です!
- 46 名前:つみ 投稿日:2004/06/14(月) 19:30
- ああついに・・・
ついにって感じですね!
少し涙ありの笑いありーので楽しかったです!
箱が欲しい・・・w
- 47 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/14(月) 23:58
- 更新お疲れ様です。
オイラも、兄が集めていたので・・・近いですね。
コンコンだけでなく、ニィニィもまたとんでもない可能性を・・・(w
オイラも箱が欲すぃ・・・(w
- 48 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/15(火) 03:55
- 更新お疲れサマです。
いや、やはりせっかくのネタが分からないのは
エライ損をした気分になるもので・・・。
それにしても彼(彼女?)の生命力は流石ですw
そしてついに。。。ww
次も楽しみにしてます。
- 49 名前:shou 投稿日:2004/06/15(火) 19:19
- 更新お疲れ様です。
田中と亀井やっとこさですか・・・よかった
顔がほころばずにいられませんでした。
藤本さんがブチ切れそうですけどね・・・
おもしろかったです。次回も期待してます。
- 50 名前:みきあや信奉者 投稿日:2004/06/17(木) 22:12
- /ヽア━━;´Д`━━ン!!
い、イリュージョン発現でつか…
は、箱…狭いの好きなのね
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/18(金) 12:33
- やっと来たれなえりハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
このことを知った藤本さんのリアクションが楽しみですw
さて、さゆみんは後で学習ルームに来なさい
次回も楽しみにしています。
- 52 名前:ごめんねみっちゃん。 投稿日:2004/06/25(金) 01:29
-
「さーて藤本ちゃんは無事にプレゼントできたか…ニィィ!?」
「あ、じゅくちょー」
「みみみ道重ちゃん! これはどういうことニィ?!」
その日、私が時間を見計らって本部に向かうと
そこはまるで何者かの襲撃にあった挙句テポドンを打ち込まれたような
悲壮な有様になっていた。
「えっとぉ、絵里が珍しく怒っちょってぇー、追いかけっこしたんですねー。
でぇー、絵里が刃物みたいなの持ってたんでぇー、
私もれーなも必死で逃げてたんですけどー、よく見たらカマボコでぇー、
カマボコって言っても機動隊のことじゃなくてー、
白身魚のすり身を蒸して冷やしたやつだったんでぇー、
3人で分け分けして美味しく食べましたぁー」
「……あぁ、あれね」
刃物みたいなカマボコとは、先日私が『カマボコの板まで切る包丁が
あるのなら、包丁みたいなカマボコがあってもいいんじゃないか』という
とっても純粋で里沙らしい考えを元に開発した新しいタイプのカマボコである。
ちなみに同時開発で『面倒臭がり屋の人にさかずに食べられたとき
消化されるまでお腹の中から文句を言い続けるカニカマボコ』というものも
制作したのだが、今は関係ないのでその話はまた後日。
- 53 名前:ごめんねみっちゃん。 投稿日:2004/06/25(金) 01:30
- ってそんなことより、まだまだ無邪気でカワイイ中学生のハズの
道重ちゃんがカマボコで機動隊を連想しちゃだめニィ。
『芸能人は歯が命』でお馴染みの東幹久をトウ・カンキュウって
読んでいまだに中国人だと思い込んでるニィのおじいちゃんかチミは。
「えへっ、博学なさゆもカワイイ♪」
「…ニハハ…」
チミの場合なにも知らないほうがかわいい気がするけど……まぁいいか。
「で、あとの2人はどこ行ったニィ?
藤本ちゃんが怒ってたって言ってたけど…」
「んーとぉ、なんか走り回ったらどうでもよくなったみたいでぇー
『もう邪魔しないでね!』ってれーなの腕引っぱって
どっか行っちゃいましたー」
「へぇ…」
怒ってた→邪魔→2人でドロン☆
ってことは………まさかあの2人、とうとうくっついたニィ?!
「じゅくちょー、今日はマユゲチョコ持ってないんですかぁー?」
「あるニィ、ほれお食べ」
「わーい」
そっかそっか、あの2人、長いことモジモジクネクネしてたけど
やっとそうなったかぁ…いやぁ、感慨深いねぇ。
自分のことのように嬉しいねぇ。
- 54 名前:ごめんねみっちゃん。 投稿日:2004/06/25(金) 01:31
- こうなりゃ今日は祝杯だニィ、道重ちゃん、付き合ってもらうニィよ。
「あれー、このマユゲバタークッキーボロボロ壊れますー」
「あ、それ石川さんが作ったから…」
いけないいけない、危険食品ってラベル貼るの忘れてたニィ。
「でも美味しいで……ぐふっ!」
「っニァ!? 道重ちゃん! 道重ちゃんしっかりぃぃ!!!」
ボロボロのクッキーのカスをつまんで食べた道重ちゃんは
胸を抑えてその場に倒れた。
急いで肩を支えると、目を見開いてピクピク唇を痙攣させている。
かなり危険な状態だ。
「道重ちゃん!大丈夫ニィ?!」
「じゅ…じゅくちょ……」
「ここにいるニィ! しっかりするニィ!!」
「き……聞いて欲しいことが……あるんです……」
「そ、そんな最後みたいなこと言っちゃだめニィよ!」
- 55 名前:ごめんねみっちゃん。 投稿日:2004/06/25(金) 01:32
-
そんな今際のきわに『ずっとアナタが好きだった』なんて
言わなくたってわかってるから!!
「ちがっ………あの…平家さんって……じゅくちょーと絵里の
小学校の…ときの……担任の先生だったハズなのに…」
「そ、それ以上は言っちゃだめ」
「うっ………zzz」
おっとっと、いきなりなにを言い出すのかしらこの子は。
ニィが迅速に懐に忍ばせていた匂い袋を嗅がせると
道重ちゃんは安らかな顔を寝息を立て始めた。
細かいことは気にしちゃだめ。
適当に生きなさい。
私から言えることはそれだけだ。
おやすみ、さゆみ―――――。
- 56 名前:ごめんねみっちゃん。 投稿日:2004/06/25(金) 01:33
-
―――
ガタンゴトン ガタンゴトン
「………」
待ちに待った放課後。
校門の前で張ってた美貴は、チャイムが鳴るとすぐに出てきた
亜弥ちゃんを尾行して電車に乗ってる。
そーいや亜弥ちゃんの前に物凄い勢いで走ってきて
隣の中学に乗り込んでった箱がいたけど、なんだったんだろ?
なんとなく箱の下から生えてた足に見覚えがあったから、亜弥ちゃんかと
思ってビビッたけど、亜弥ちゃんにしては少し黒かったんだよねぇ。
美貴と同じぐらいっていうか、亜弥ちゃんはもっとマッシロケだし。
ま、そのあと正真正銘の亜弥ちゃんが普通に出てきたから
いいんだけど。
てか、かわいいなぁ………――
同じ車両の、離れたところから亜弥ちゃんを見て
改めて思う。
- 57 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:34
- 最近は蒸し暑くなってきて、他の乗客たちには
だるそうに口開けてるオジサンがいたり、周りの迷惑も考えずに
シャツの裾から手ぇ突っ込んでBanしてる子がいたり、堂々とコンビニの
冷やし中華食べてるヤツがいるけど、亜弥ちゃんは
姿勢よく背中をピンと伸ばして茶色い瞳を外の景色に向けて立ってる。
後姿だけど、すごくかわいくて、かっこよくて
思わず見惚れてたら、美貴の近くにいた男子高校生たちから
当たり前みたいに声が上がった。
「なぁ、あの子今日もいるな」
「お前声かけてこいよ」
「早くしないと、あの子次の駅で降りるぞ」
次の駅? てことは1駅しか移動しないのか。
つーかこいつら、なに亜弥ちゃんが降りる駅チェックしてんだよ。
ニヤニヤしながら亜弥ちゃんのほうを見てる子たちに
ムカついた美貴は、パン工場の帽子で顔を隠して
亜弥ちゃんからは見えない死角に移動し、身の程知らずの
ハイスクールボーイに穏やかに話しかけた。
「おい、あの子に手を出すな」
「あ? なんだよパン屋……って、…そ、その目は…っ!!」
「あぁあ!? ほほほ本物?!」
「ま、まさかオレたちにお仕置きを!?」
- 58 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:34
- ん? なんだこいつら、美貴のこと知ってんの?
美貴のほうはサッパリ知らないんだけど、
振り返った男の子が美貴の顔を見て驚愕の表情で固まったと思ったら、
一緒にいた子たちが次々と騒ぎ出した。
ちょ、ちょっと大きい声出さないでよ!
美貴今尾行中なんだから!
「あの、み、美貴様ですよね…?」
「ハ? あぁ、そうだけど、なんで知ってんの?」
しかもその呼び方……激しく嫌な予感が…。
「オ、オレ、まめおなんです! 会えて光栄です!」
「オレも! どれだけ美貴様に蔑まれたいと思ってきたことか!」
「オレなんてヒールで踏まれたいと思ってました!」
「んなっ!? 誰が踏むか!
てか大きい声で名前呼ばないで!」
なにがまめおだっ! 亜弥ちゃんにバレるっつーの!
慌てて男の子たちの口にそれぞれが持ってた鞄を突っ込んで塞ぐ。
すると苦しいハズなのに、なぜかみんな嬉しそうに微笑んで美貴を見てきた。
キモッ、てか怖っ。
- 59 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:35
- 内心どころかあからさまに引き攣りつつ、そぉっと亜弥ちゃんを見ると
ラッキーなことにウォークマンを聞き出したみたいで
こっちの騒ぎには全然気づいてない。
ほぉっと胸を撫で下ろすと、まめおの1人が
目を輝かせて尋ねてくる。
「あ、もしかして美貴様、尾行プレイ中なんですか?」
「へ?」
「で、あの子が美貴様のお相手なんですね。
うわあ、さすがだなぁ、ますます惚れます」
「やめて。てかプレイとかじゃないし」
どういう勘違いだ。貴様、築地で解体するぞ。
やだなぁ、美貴がM男養成スクールでバイトしてたって、
ウチの高校だけの噂じゃなかったんだ…他校の男子、しかも年下にまで
浸透してるなんて……ぐすっ。
「美貴様には感謝してるんです。
オレたち、美貴様に出会うまで自分がそういう人間だって
わかってなくて…どっちかっていうと逆だと思ってたんです。
でも美貴様の話聞いて、写真でお姿を拝見して、内なる本当の自分に
気づいて…美貴様がいなかったら、ずっと気づかないままでした」
「………」
気づくなそんなもの。
- 60 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:35
- 「オレたち、美貴様だけなんですよ。
美しくって気高くって足が長い美貴様だからこそ
踏まれたいっていうか、オレたちの女王様は、美貴様だけなんです!」
「………」
へぇ、全然嬉しくない。
そんな熱い眼差しでオンリーワンだって言われても、
亜弥ちゃんのなんでもない言葉のほうが100万倍嬉しい。
…ん? でも待った。
この子たち、美貴のまめおなら、どうして亜弥ちゃんに
声かけようとしやがったワケ?
「え…あ、だって美貴様は高嶺の花で……
電車通学じゃないからあまり見かけないし…」
「お前らには亜弥ちゃんこそ高嶺の花だっつーの!!ふざけんなクルァ!!!」
「ブホォッ!?」
「グヘェッ!?」
「ヴドゥッ!?」
キレた。美貴の大事な亜弥ちゃんを安く見積もりやがって。
さっと床に手をついて逆立ちした美貴は、長く広げた足を
回転させてまめおたちの顔面を蹴り倒してやった。
- 61 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:35
-
一仕事終えて顔を上げると周りの乗客から「ヒィィッ!?」とか
「いよっ、かっこいいぞねーちゃん!」って声が聞こえたけど
チラッと見た亜弥ちゃんは変わらず外の景色を眺めてる。よし。
やがて電車が駅に到着し、亜弥ちゃんが降りたのを確認してから
まだ倒れてるまめおたちに
「今度見かけたら道頓堀の水飲ますから!!」
しかも一気で!と言い捨てて電車を降りた。そのとき、小さく
「「「……し、幸せ……」」」っていう呟きが聞こえたような気がするけど、
たぶん空耳、絶対空耳、空耳アワー。
タモさん、美貴、Tシャツより手ぬぐいが欲しいんだけど。
「今日はいっぱい汗かきそうだなぁ…」
ってなわあ!? あ、危なっ!
心のタモさんに語りかけてたら亜弥ちゃんが目の前にっ!
てか汗って……声色はちょっと嫌そうなのに、表情が生き生きしてるのはなんで?
なんで汗かくの? 走るの?!
思いっきり動揺して挙動不審になる美貴の前で、眩しそうに空を仰いだあと
亜弥ちゃんは軽い足取りで駅前のコンビニに入っていく。
遠くから覗いてると、亜弥ちゃんはペットの1番大きいお茶とポカリを買って
出てきた。………あれは、1人で飲む量じゃない。
- 62 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:36
- 待ってよ、待ってよ待ってよ!
誰と一緒に汗かいて誰と一緒にそれ飲むのさ?!
さらに動揺した美貴の頭から一足早く汗が噴き出す。
帽子の中がじんわりムレるのがわかった。
げぇぇ、野球選手みたいに帽子のせいで禿げたらどうしてくれんだよ。
亜弥ちゃん、はやく相手のとこに連れてって! 帽子を脱がせて!
「こんにちはー」
むっ、あいつか?!
「お、いらっしゃい、今日はなんにするんだい?」
「えーっとぉ、オススメありますかぁ?」
ガクッ、また買い物するみたい。
続いて八百屋に入っていった亜弥ちゃんは、どうやら店のご主人と
顔見知りらしく、親しげにパイナップルなんぞを薦められてる。
「この大きさなら安くて美味いよ。
2人で食べるならこれで充分さ。今日もいつもの時間に
取りにこれるかい?」
「ハイ、いつもすいません」
ふっ、2人!?
今2人って言ったよねあの親父!
亜弥ちゃんと2人でパイナップルアイランドなんて、美貴ですら逝ったことないのにっ。
- 63 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:36
- でもいつもの時間って…まだ商品は受け取らないみたいで
お金だけ先に支払った亜弥ちゃんは、八百屋の主人に手を振ってまた
駅に向かって歩き出す。
「ふふっ、今日も頑張ろーっと」
なにを?! だからなにを?!
美貴が隠れてる電柱の前を、楽しそうに通り過ぎる亜弥ちゃんを見てたら
ちょっと泣けてきた。
怖い、怖いよぉ、事実を受けとめたくないぃ。
基本的には“人生、楽しむ”がモットーの美貴なのに
なんで泣きながら亜弥ちゃん尾行してんのさぁ。
逃げたい、もう、なにも見ないまま。
こんなことなら疑わずに、なにも知らなければよかった。ぐすん。
「こんにちはー!」
「あ、亜弥ちゃん、こんにちはぴょん」
…ぴょん?
美貴の心の中の悲鳴にも気づかず、亜弥ちゃんはどうやら目的地に
着いてしまったようで、祭りでもないのに駅前広場に出てる屋台の
『準備中』って札に凭れてるピンク色のウサギの着ぐるみに走り寄っていった。
- 64 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:37
- 「今日も手伝ってくれるぴょん?」
「ハイ!…あれ? あゆぴょんさんお1人ですかぁ?
マサウルフさんたちはどうしたんですかぁ?」
あゆぴょんって呼ばれた人は、体はスッポリ(腕以外)着ぐるみに
覆われてるけど、頭にはウサギの耳をつけてるだけだから顔はバッチリ見える。
目がでかくてパッチリしてて、すごいキレイ。
…キレイはいいけど、亜弥ちゃんとどういう関係だ?
手伝いって、この屋台の? カキ氷って書いてあるけど……早くない?
季節を先取りしすぎなカキ氷屋の隣にはもう1つ屋台があって、
それは鯛焼き屋って書いてあるし……。
なんだこのアンバランスな並びの屋台は。
「マサウルフはシロップ買いに行ったぴょん。
ひとぴょんたちは……まーたサボッてるのかも…」
「え…あ、じゃあ私急いで着替えてきますね」
「ありがとぴょん」
無人の鯛焼き屋を一瞥して溜息をついたあゆぴょんさんに
そう告げると、亜弥ちゃんはサッと屋台の後ろにある
小さな試着室みたいなモノに入っていった。
着替えるって…亜弥ちゃんもあの、アニマルなコスプレすんの?
- 65 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:37
- それは物凄く見てみたいような楽しみなような…っじゃなくて!
ウサギ! 亜弥ちゃんを麗しのコスプレ世界に引きずり込むなんて!
なに勝手に素敵なことしてくれちゃってんの!!
「シロップ買ってきたがぅ」
「ご苦労様ぴょん。亜弥ちゃん来てくれたぴょんから
ちょっと任せていいぴょん?
ひとぴょんたちがいないから探してくるぴょん」
「がぅ。大丈夫がぅ」
かめはめ波を打つ感じで、ウサギの“呪”の気を放っていてると
次に現れたのはグレーな着ぐるみのオオカミ。
マサウルフって人はどっちかっていうと顔の造りは細くて鋭いのに
声がポワーンとしてるせいか、のほほんとした印象を受ける。
てか『がぅ』……いや、いいよ、いいんだけど。
あゆぴょんさんが去ったあと、「いらっしゃいがぅー」っていう気の抜ける
ような掛け声で開店した屋台に、速攻で何人か客が来て
店はなかなか流行ってるみたいだった。
10分ぐらい経って、マサウルフさん1人…いや、1匹か?でサバくのも難しく
なってきた頃、試着室のカーテンが開いて客たちからワッと歓声が上がった。
- 66 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:38
-
⊂⊃
/⌒ヽノノノノハヽ
/ソソソソ 从*‘ 。‘) イラッシャイマセー
(/(/(/(/ (つと)
(_)_)
んぐはあぁああっ!?!?!?
あああ亜弥ちゃん?! ちょっとそれ反則だし反則だし反則だし!!
てっきりアニマルなコスプレで来ると思ってたのに、
亜弥ちゃんは真っ白いワンピ?(これがなんつーか胸がすごい強調されて
ボーンって感じで、でも腰はキュッ!みたいな)に
頭の上にはワッカが浮いてて、背中にはこれまた真っ白い羽、With Love、コスプレバンザイ。
「アヤジェルハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!」とかいう
野太い男の声やら「アヤヤー」なんつう女の人の黄色い声まで
広場中の人たちの注目を浴びながらマサウルフさんの横に移動して接客を始める
亜弥ちゃんに、客の群がること群がること。
美貴だって群がりた…じゃなかった、今すぐ駆け寄って他のヤツらから
引き離して誰にも見られないところに連れ去りたい!!攫いたい!
- 67 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:38
-
ひどいよ亜弥ちゃん!
そんなラブリーエンジェルな姿を不特定多数の人間に見せつけるなんてっ…!
ちくしょぉ誰だ!!
亜弥ちゃんにこんな格好させやがったのはぁ!!
あゆぴょんかっ?! マサウルフかぁあああ?!!!
「ったく! 2人ともサボッちゃだめぴょん!」
「ち、違うのヨ、私はただセクシー年金についてお年寄りと議論を…」
「むぁ、葱次郎さんのネギパフェ美味しかったむぁ」
「コ、コラ! めぐう〜るシャラァップ!!」
あぁん? 今度はなんだ?!
…ってお? あのあゆぴょんに引きずられてるウサギと羊…まさか…っ
けど信じられないぐらい見覚えが………っ
「ぴょっ…ネギパフェ?! どこが年金ぴょん!
まぁた葱次郎さんとこでサボッてたぴょん?!
しかもまた名前だけで最高に不味そうなもん食べて!
2人とも店長に頼んで今日の分のお給料差っぴいてもらうからね!」
「エェェー!?
待ってヨ! 1日でも差っぴかれたら生きてけないワヨォォォ!!」
「むぁ、生活苦しいむぁ」
「ならサボらないの!
ただでさえお店吹っ飛んじゃって店長だって大変なときなのぴょんよ!
こんなときぐらい必死で働きなさいだぴょん!!」
「「…ご、ごめんなさい」むぁ」
- 68 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:38
-
えーっと、美貴、大体わかっちゃったんだけど。
あの見覚えのありまくるξξノ" З.")な顔のウサギと( ‐ Δ‐)な顔の羊は
斉藤さんと村田さんだよね?
『ウチで働いてる子や』って写真見せられたことある。
直接会ったことはないけど、斉藤さんとは何度か電話で話したことあるし。
あとの2人は見たことなかったけど、店長って言ってんだから同じだよね。
で、なにやってるワケ?
店が吹っ飛んだから、今度は屋台?
なんで亜弥ちゃんがそれ手伝ってんの?
亜弥ちゃんがさっき買ってた2人分のパイナップル、あとで取りに行く
ってことは、この4人のうちの誰かと食べるんじゃないよね?
誰と食べんの?
\ | /
― (m) ─ ピコーン!
目
〃ノノハヾヽ
(VvVlll从
「あ、あの野朗ぉぉぉぉぉ!!!!」
落ち着いて考えたら、1駅しか移動してないってことは
ここ、アイツの住んでる町だし。美貴とお母さんのことあんなに心配してた
亜弥ちゃんが、店を失ったアイツを美貴みたいにほっとくワケがなかった。
- 69 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:39
- またロクでもないこと閃きやがって!!
あのコスプレも『ぴょん』だの『がぅ』だのも全部ヤツの提案かっ!
シメる! 荒縄でシメる!!
「亜弥ちゃん!!!」
「っ!? た、たんぅ?!」
あぁたんさ、えぇたんだとも、文句あるかドゥルァ。
「え、えへ…バレちゃった……たんもお母さんに会いにきたのぉ?」
「…なワケないじゃん」
「え…?」
「そんなワケないじゃん!!
亜弥ちゃんが毎日毎日帰り遅いから気になって着いてきたの!!
そしたらなんだよっ! なにやってんのこんなとこで!!
その格好っ……なにがアヤジェルだよっ!!!」
「っ…」
「そんなにコスプレしたいならっ…美貴に言ってくれればよかったのに…っ!」
「ふぇ?」
くぅっ! そうです、それが本音です、ごめんなさい。
「え、そこのパン工場の人亜弥ちゃんの知り合いぴょん?
なんで泣いてるぴょん?」
「とりあえずこれで涙をお拭きだがぅ」
「ありがとござ…ってこれ布巾だしイチゴのシロップついてるしっ!」
- 70 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:40
- うげっ、顔中が甘酸っぱくなっちゃったじゃん!
裏切られた感じがするから美貴イチゴ嫌いなのに!
「ん? あれ、あの子…みみみ美貴ちゃんっ?!
アナタ美貴ちゃん?! 美貴ちゃんが店長に会いにっ?!」
「む、むぁ! 急いで店長に電話むぁ!!」
「だあ!? 違うし! 余計なことしなくていいです!」
あぁもぉ! ここじゃギャラリーが多すぎる!
「ちょっと移動するよ! 静かなとこに!」
「え? でもっ、まっ…待ってぇ!」
大丈夫。コスプレのままで、全然美貴は構わないし。
脱いだやつは斉藤さんたちがなんとかしといてくれるでしょ。
「でっ、でもっ、パイナップルっ…」
「何時に取りにいくの?」
「6時…7時くらい…」
「んじゃ3時間で終わらせるから!
でも今日はアイツのとこには行かせないよ!
パイナップルアイランドには美貴と逝くんだかんね!!」
「…パ? ど、どこそれぇ?」
無限の宇宙のどっかにあんだよ!
いいからちょっと黙ってて! 亜弥ちゃん担いで走るのって
美貴にとっちゃ結構な重労働なんだから!
- 71 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:40
-
「ハァッ、ハァッ、く、苦しっ…お?」
おぉ! ちょうどいいとこに!
息が上がって限界が近づいてきたとき、目の前に
古びて客が少なそうな『ドレミでドン!』っていう建物を見つけた。
カラオケか。静かな場所って言ったけど、誰にも見られずに
2人になれるならなんでもいいや!
迷うことなく中に入ると、中は薄暗くてどんよりしてて
カウンターにいるモヤシみたいな女の人にも生気がない。大丈夫かここ。
「えっと、3時間で」
「はい、ではご休憩ですね」
「へ? はぁ、そうです」
「こちらが鍵です。どうぞごゆっくり」
ん? 鍵?
あれ? カラオケで鍵ってもらうっけ?
「た、たん、逃げないから降ろしてぇ」
「あ? あぁ、ごめんね」
頭を傾げつつ、亜弥ちゃんを肩から降ろして
鍵の部屋番号を確かめながらオバケが出そうな廊下を歩く。
- 72 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:40
- 「625…625…あった、ここ……え?」
見つけた部屋に入ると、視界いっぱいに信じられない光景が。
なにこのベッド?
さすがさびれた店なだけあって、そのベッドもわりと小さいし、
壁紙もちょっと薄汚れてるし、カラオケなんてどこにもないけど。
えーっとここって思いっきり………ホテル?
だってだって、そういやあのモヤシ『ご休憩』って言ってたし、
置いてあるものが…さびれてるクセにやたら変なオモチャが
あんだけどっ…こんなん使わないよ美貴は!!
てか普通『ドレミでドン!』つったらカラオケだと思うよ誰でも!
なんだよ! シーツがさりげなく鍵盤柄だからなんだってんだ!
『ドレミの上でドン!』ってことか! こりゃあ1本取られっ…るワケないじゃんバカッ!
「たん? 座んないの?」
「え? あ、いや、出よ?
ごめんね、美貴そういうつもりじゃなくて…」
「なに言ってるの? ここ静かだよ?
静かなとこ行こうって言ったのたんでしょぉ?」
たんだよぉ。
でもね、ここの静けさはちょっと違うっていうか。
もしかしたらそのうち他の部屋が騒がしくなるかもしんないし。
- 73 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:41
- 「たん、ここ座って?」
「で、でも…」
亜弥ちゃん、自分の格好わかってる?
エンジェルなんだよ? 頭にワッカつけたままドレミの上に
座ってんだよ? 美貴にドン!と来いって言うワケ?
「いいから座るの!」
「わ、あ」
美貴が獣になっちゃう前にここを出たほうがいいと思って
心のバックギアにシフトしかけたのに、亜弥ちゃんはアッサリその手を
掴んで、あろうことか胸元に頭を引き寄せた。
もうさ、絶対ワザとだよね。
「あの…ね、黙って勝手なことしたのは謝る。
でもね、ちゃんと話すつもりだったの。
お手伝いだけど、お仕事するの初めてだったから
疲れちゃって、なかなか話す機会がなかったんだけど…」
「…ぃぇ、ぁの、そんなことより…」
あの、すいません、離してくれませんか。
亜弥ちゃんの気持ちは充分わかるし、さっきは怒鳴っちゃったけど
もういいから、もうヤバイから……おわわ、ダブルクラッチしても
バックギアに入んない。だめだ、手遅れだ。
- 74 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:41
- 「ミキたんのママ、無理してたんだよ?
ホントはね、お店が吹っ飛んじゃったショックで
あれからずっと寝込んでるのに……あのニュースのときは
たんに心配かけまいとして、明るく振舞ってたの…」
「えっ…」
あ、あの人が?
思わず顔を上げた美貴に、亜弥ちゃんは寂しそうな目で頷く。
「食欲も落ちててね、でもフルーツなら食べてくれるし、
携帯で撮ったミキたん見せてあげるとすっごい喜ぶんだよ?
そのお礼にってたんの小さいときのアルバム見せてくれて、
幼稚園のときのフリフリ着てるたんもバッチリ見たよ」
「そ…そうなんだ…」
美貴の知らないところで親と恋人が仲いいのって
なんかやっていうか、照れ臭い。
それに、美貴の頬をそっと撫でる亜弥ちゃんが
特殊な親子関係のギクシャクを一生懸命ほぐそうとしてくれてんのが
有難いけど恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
「たん、一目でいいの」
「………」
「ほんの一瞬でもね、たんの顔見たら
お母さん元気になると思うんだ。
誰かがいると恥ずかしいなら、今日は私、帰るから。
あのパイナップル、たんが持ってったげてくれないかなぁ?」
「………」
- 75 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:42
-
亜弥ちゃんって、どうしてこんなに上手いんだろう。
美貴の扱いかた、よくわかってるよね。
そんな風に優しく触れられて甘い声で頼まれたら
美貴が断れるワケないって、わかっちゃってるんだもんね。
てかさ、美貴だって鬼じゃないんだから、そんな話聞いたら
会いに行こうって思うよ。
心配しないで、そんな顔しないで。
亜弥ちゃんの瞳の中で、美貴が揺れてる。
「行くよ」
「……ホントぉ?」
「うん」
諦めたような顔になってたかもしんないけど、小さく笑った美貴に
亜弥ちゃんはホッとしたみたい。
頬にかかった熱い吐息が、心臓にじわっとしみて
美貴は亜弥ちゃんの背中から天使の羽を取り外すと、背中を
抱いてベッドに沈ませた。
すると、キョトンって目をまぁるくして瞬きしまくる翼の取れたアヤジェール♪
「…ふぇ? たん?」
「ん?」
「…い、行くんでしょ?」
「行くよ」
「じゃ、じゃあ…」
「行くけど、3時間って言っちゃったし。
八百屋だっていつもの時間に来いって言ってたじゃん」
「え、で、でも…っ」
「腕の中にこんなかわいい天使がいるのに、手放せないよ」
「…え、あっ…」
- 76 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:42
-
だからバックギアとかどっか逝ったから。
ワッカはつけたままでいいよね。
素材はなんなのかわかんないけど、フワッとしてて
すごい触り心地のいい衣装は脱がせるのが勿体ない。
ま、その中の亜弥ちゃんのほうが、ずっとずっと触り心地いいんだけど。
舌を入れる前に目を開けると、亜弥ちゃんの耳は真っ赤になってて。
かわいくて、耳たぶを撫でてあげたら、遠慮がちに開いた口から
舌が出てきて美貴の上唇を控えめにたたいた。
重ねるたびに、どんどん大胆になる亜弥ちゃんだけど、
まだ自分からは入ってこれなくて、ちゃんとしたのが欲しくなると
こうやって美貴に伝えてくれる。
いつからかそれは2人の決まりになって、
美貴もその合図があるまでは強引に入ったりしない。
合図を受けて、ゆっくり絡めとると、亜弥ちゃんは途端に色っぽく乱れて
美貴のなにもかもを掻きまわしてくんだ。
こうなると、亜弥ちゃん以外なにも美貴に入ってこれない。
亜弥ちゃんだけが美貴の中にいて。
亜弥ちゃんだけが美貴に浸透して。
亜弥ちゃんだけが美貴を染めていく。
- 77 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:43
-
「…たっ、たんっ…?」
亜弥ちゃんも同じになろうよ。
美貴だけを感じて、美貴だけに染まって。
気持ちは溢れて、理性の堤防を簡単に決壊して全身に流れ込んだ。
今まで、あまり触れてないところにも美貴を触れさせたくて
戸惑ってる身体をひっくり返す。
「ひっ、ひあっ」
まだ赤い耳に噛みつきながら背中をジッパーをおろし
現れた淡いピンクのブラのホックを外すと漏れる、小さな悲鳴。
ずるいってわかってるけど、「嫌?」って囁いたら
やっぱり亜弥ちゃんは慌てて首を横に振ってくれた。
ジッパーを腰のあたりまでおろして広げると
剥き出しになった背中に喉が鳴る。
ゆっくり眺める間もなく吸い込まれた美貴は
ミルクを舐める猫みたいに、音を鳴らしながら
亜弥ちゃんの背中を骨に沿って舐めた。
背中の骨って、17本ぐらいだっけ?
数えてないけど、ときどき噛みつきながら
全部舐め終わって、亜弥ちゃんの荒くなった呼吸が耳に入るまで
美貴はただただ夢中になって求めた。
- 78 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:44
-
「はっ…はぁっ…」
刻まれた歯形と、唾液で濡れた背中に、血が燃える。
亜弥ちゃんを仰向けに戻してまたキスすると、
びっくりするぐらい熱くなった彼女は、求めてくる激しさも
今までのとじゃ比べものにならない。
またそんな目で見て。
美貴を呼んで。
どうなっても知らないから。
好きだよ。
向けられる視線に、ぶつけられる想いに、吸いこんでく肌に囚われて。
もう止まれない。
そう思った。
- 79 名前:ドレミの上で。 投稿日:2004/06/25(金) 01:44
-
- 80 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/25(金) 01:48
-
松浦さんおたおめ。
そんなときにこんなんでごめんなさい(恥
逝ってきます。
レスありがとうございます。
>>46つみ様
ついに・・・なのにあんなオチでごめんなさい。
罪悪感でいっぱいだったのですが、楽しいとのお言葉に
助けられました。
ノノ*^ー^)<お気に入りなんであげませんけどぉ、体験版なら1回千円でいいですぅ。
(;・e・)<高っ。
>>47ピクシー様
なんてったって塾長ですからね、彼女はw
ノノ*^ー^)<千円ですぅ。
从;`,_っ´)<だから高いって…。
ノノ*^ー^)<れいなはタダだよ?
从*`,_っ´)<そ、そう…。
>>48名も無き読者様
では古き良き書物に是非目を通してみてください。
彼は彼でいいですよ(w
でも一応元乙女なので、弱いとこもあったみたいです。
- 81 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/25(金) 01:49
- >>49shou様
へぃ、やっとこさですw
藤本さん、ブチ切れる前に自分の行動を
振り返れるといいんですけどね。
>>50みきあや信奉者様
ノノ*^ー^)<好きですぅ。
从 `,_っ´)<・・・。
ノノ*^ー^)<でもれいなのほうが好きですぅ。
从*`,_っ´)<・・・。
イリュージョンは、みんなの胸にあるのです。
>>51名無飼育さん(様)
お待たせ致しましたハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
レイナンには長生きして欲しいものですw
从*・ 。.・从<キャ、このご時世にそんな物騒なこと言っちゃだめなの。
川o・-・)<あとでまめおハウスに来なさい。
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/25(金) 16:48
- おもしろいですw
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/25(金) 22:39
- ヒィィ!
なんですかこの寸止めは!興奮しっぱなしですよ!w
愛のあるエロが大好きです。作者様のエロが大好きです。
これからもエロいままでいてください。
- 84 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/26(土) 00:51
- 更新お疲れ様です。
うぅ・・・夏目漱石に手が伸びる・・・(w
どこに金を払えば?(w
次回も楽しみに待ってます。
- 85 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/26(土) 15:43
- 更新乙彼サマです。
とりあえずハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
流石、もうとにかく流石です。
ていうかごめんねみっちゃん、気付かなかった。。。
野朗の意外な一面に驚きつつ次回も楽しみにしてます。
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 09:09
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
寸止めですか、お仕置きですか?
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/28(月) 02:29
- 作者様、これは、新しいイジメですか?笑
- 88 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:47
-
「ふっ、はっ、んっ」
顔に触れ合うお互いの吐息。
深く深く入りこんで容赦しない美貴に、激しかった亜弥ちゃんもどんどん
追い詰められて苦しそうに眉を寄せる。
亜弥ちゃん、だめだって、それがそそるんだって。
やばい、美貴かなりやばい。
このままじゃ亜弥ちゃん窒息させちゃうよ、ねぇ。
薄暗い『ドレミでドン!』の一室は、クーラーが効いてるのか
蒸し暑い外に比べてひどくヒンヤリしてるんだけど。
ベッドの上の温度は確実に上昇してて、パン工場の作業着を着てる美貴は
頭から背中から、ドクドクと汗が吹き出すのを感じてた。
前はいつも、亜弥ちゃんとこういうコトになるときって、もっと焦ったり変な唄が
聞こえてきたりしたけど、今日は妙に順調で。
時計をチラッと見ると、部屋に来てから40分も経ってて
けど充分時間があるから、きっと、最後までする。しなきゃ、止まれない。
- 89 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:48
- 「んぅっ…」
弱弱しく首に絡みついた手に、遠慮がちに髪の毛を引っぱられてようやく離れる。
その弾みでおでこを流れて目に入った汗に顔をしかめると
激しく胸を上下させて呼吸を乱しながら、今にも零れそうなぐらい目を潤ませた
亜弥ちゃんが、優しい手つきで瞼を撫でてくれた。
お礼に張りついた前髪をはらってワッカがくっついてるバンド越しにおでこの汗を
舐めたら、慌てた手にグイグイ腕を引っ張られる。イテテテテ、なに、なに?
「きっ、たないよっ」
「美貴?」
「ちがぅっ、さっきも……背中…っ、今日いっぱい汗かいたのに…」
「キレイだったよ。美貴が舐めたせいで汚れちゃったけど」
「だからちがって、ミキたんがな……からとかじゃなくて、汗の匂いとか…」
「亜弥ちゃんの匂い、好きだよ」
「っ…私だって…たんの匂い…好きだけ、どぉ…」
ぐぅっと喉を鳴らして、悔しそうに黙る亜弥ちゃん。
知ってるよ。前公園で思いっきりうなじの匂い嗅がれたし。
美貴にだって嗅がしてよって、拗ねてそっぽ向いちゃった横顔つついて
「仕方ないなぁ」っていつもみたいに許してくれるのを待ってると
その横顔にさっき背中に触れたときに見た、枕に半分顔を埋めて真っ赤な顔で
熱い息を吐いてた姿がダブッて待ってられなくなる。誘われる。
- 90 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:48
-
突き動かされる。
こめかみあたりに、シビれるような電流が走って
気づいたら耳に細い悲鳴が聞こえる中、ぐったりした体から
白い布を剥ぎとってた。
でも、全部じゃない。上だけ。
いつかの朝みたいに、身体に力の入らない亜弥ちゃんは
腰を浮かせることができなくて、美貴も、ぶっちゃけ今知ったけど
脱がせるのは上からちょっとずつみたいな、徐々派らしくて。
それに一気に引っぺがしたら『せっかくのコスプレがぁああ!』って本能から
抗議が殺到するに違いないし。いや、ワッカはついてるからコスプレはコスプレなんだけど。
「そんな見ちゃだめぇ…」
なにをいまさら。
いつも一緒にお風呂入ってるじゃん。
なんの抵抗もなく美貴に裸見せてんじゃん。
とか意地悪く恥ずかしそうに胸を隠す亜弥ちゃんに言ってみせるけど、
心の中じゃ『カワイイカワイイ最高カワイイ!!!』って狂喜乱舞してる美貴。
とられた自分の羽の横で、上半身裸でワッカつけた天使なんて
そうそう見れるもんじゃ……じゃなくて、そんなコスプレ云々差っ引いても
亜弥ちゃんってばすごいかわいい、マジで、世界一。
- 91 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:49
- 「亜弥ちゃん愛してるぅー」
「あっ、た…っ!」
アハッてだらしなく頬を緩めながら、手をどけて触れる。
指先に力をこめて、変わっていく形を甘い感動に包まれながら見守る。
ビクッと震えて動かなくなった亜弥ちゃんが慣れるまで
柔らかいところをゆっくりゆっくり揉んで、緊張を解きほぐしてあげる。
あれ? でもなんか…これってなんか………なんだ…?
「たんのエッチ!」
「わ、ちょ、見えないよ!」
ポッと浮き出た違和感は、するっと伸びてきた亜弥ちゃんの手に遮られた。
緊張がほぐれてきた彼女は、ギュッと閉じてた目を開けて
美貴の目を両手で塞いできたんだ。汗ばんだ手がかわいい。
「亜弥ちゃーん」
「…たん、エッチな目、だったぁ」
エロ目か、エロ目ですか、なち姉や梨華ちゃんじゃあるまいに。
別にいいじゃん、美貴のエロ目見れるの亜弥ちゃんだけだよ?
これって結構特別なことだったりするんだけど、隠しちゃう亜弥ちゃんにはお仕置きだ。
見えなくたって触ってんだから。
亜弥ちゃんの手が目にある限り、美貴の手を止められないんだから。
- 92 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:49
-
「ひゃあ…っ!」
親指の腹、人差し指と中指、くねる小指で固くなってるとこに刺激を与えると
途端に甲高い声を上げて跳ねる身体。
目の前の手が揺れて、汗で滑る指の隙間から、また目をギュッと閉じて
口を薄く開けてる亜弥ちゃんが見える。
こ、これ……なんか完全に見えてるよりやばい…。
やがて亜弥ちゃんの手がポトッとベッドに落ちたとき、零れる涙を舌ですくって
美貴はそのまま首、鎖骨をなぞり、頂をくわえた。
「ふぅーっ…んっ、んーっ…んんんっ」
細かい震えが暴れる舌に伝わってくる。かわいい、たまんない。
左手を口にあて、ときどきもっとってねだるように背中を逸らせて胸を突き出して。
浮いた隙に手を潜りこませて背中を抱くと、美貴のせいでベタついたそこは
タコの吸盤みたいに美貴に吸いついてきて。さすが両A面、縛ってるようで、縛られる。
何度も思うけど、もう離せない。 何度も想うよ、大好き。
「たっ、たんっ、…ずっ…るぃ…」
シーツを掴んでた右手が作業着の襟を引っぱる。
たしかにずるいね、それに熱いし。
美貴は素早く亜弥ちゃんと同じように上だけ脱いだ。
- 93 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:50
- 「んぅ、っ、っ…っ」
そろそろ舌がシビれて痛くなってきたとき、亜弥ちゃんが控えめに
足を動かしてるのが見えて、美貴は太ももに手を伸ばした。
「ま、待って!」
撫でると切羽詰まった声で掴まれて、ハッとなって顔を上げる。
「やだ?」
「…ん、ううん、ちょっとでいいから……ギュッてして?」
「え? あ、ハイハイハイハイ」
ぎゅうね、ぎゅうでいいのね。よかった、ありがと。
たぶんすごく情けない顔した美貴に届いたのは、申し訳なさそうな亜弥ちゃんの
かわいいお願いで、安堵した勢いでブンブン頷いて抱きしめたら
腕の中の亜弥ちゃんが吹き出した。
「ちょっと、なんで笑うの」
「だってたんかわいいんだもん、クフフッ」
「………」
褒め言葉だけど、今の亜弥ちゃんには言われたくないっていうか
あんたこそ心臓鷲掴みにされるぐらい、脳味噌溶けちゃうぐらいかわいいってば。
ちょっと不貞腐れて、けど、いつもみたいに屈託なく笑う亜弥ちゃんに
心が穏やかになって、美貴は亜弥ちゃんを抱いたままコロンと横に転がる。
- 94 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:51
- ほどよく汗ばんだ身体はピッタリくっついて、髪を撫でると
安心したみたいに目を閉じて、でも手の平に伝わる鼓動は
あの日、キスして泣かせちゃった日以上の速さを持ってる。
「…心臓痛かった?」
「……破れて口から飛び出すかと思った…」
「うわ、それは見たくない」
「むぅ、なんだとぉー」
かわいいお願いの理由がバレた恥ずかしさを、拗ねた声で誤魔化して
でも赤い顔で証明しながら目を閉じる亜弥ちゃん。
好きだなぁ……ん? あれ? まただ、またきたぞ。
遮られた違和感が蘇る。
亜弥ちゃんまるで……でも、だって、けどそうなら、そうなら………
「……亜弥ちゃん」
「…なぁに?」
「今日、ここまでにしとく?」
「ふぇ? で、でもっ」
「無理しなくていいよ? ホントに心臓、破れたら大変だし。
美貴なら大丈夫だから」
「でもたん、ずっと『止まれない止まれない』って言ってたじゃん」
コラ美貴、声に出してたんかい。
- 95 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:51
- 「他にもぉ、『かわいい』とかぁ…」
「わわわうんうん! 言った言った言いましたけどっ!」
亜弥ちゃん抱きしめたらなんか落ち着いてきたし!
そりゃしたいけど、ここまででも充分したし、時計見りゃ
いつの間にか2時間経ってるし!
「あと1時間だしさ。
いっぱい舐めちゃったから気持ち悪いでしょ? シャワー浴びよ?」
「気持ち悪くないよぉ」
「そ? でもベトベトじゃん? 汗もかいたし。
美貴も入るから、一緒に入ろ?」
「…いいの?」
「いいって」
そーんなごめんって顔しなくていいよ。
怖いんでしょ? だって、ここまでって言ったときちょっと
ホッとしたの見えたもん。
「あ、でもその前に」
「ん?」
「……………トイレ、行ってきていい?」
「っ…ぅ、うん」
そうだよね、そりゃそうです、ぶっちゃけ美貴も、次行きます。
「お、起こしてくれる?」
「うん」
- 96 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:52
- 腕にはなんとか力が入るみたいだけど、全体的にぐたぁって
なってる亜弥ちゃんは、美貴にしがみついて起き上がり
なんとかベッドを降りたんだけど、フラフラしてて頼りない。
「つかまって」
「ごめぇん」
「なに謝ってんの」
まぁ、美貴も亜弥ちゃんの色気で頭がボケッとしてフラフラなんだけど
ちゃんと歩けるから。
ラブホのくせに、どっかのビジネスホテルみたいな
ただポンとあるだけのトイレまで亜弥ちゃんを運んで座らせ
まさか見てるワケにも…ってかそういう趣味はないから!って誰に言ってんだ美貴はぁ!
「たん?」
「あ、じゃあ、終わったら呼んで?」
「待って」
「ん?」
ないないないない!覗きはナシ!っと足早に立ち去ろうとすると
亜弥ちゃんが足を掴んだ。
え、だめだよ、そういうのはもっとこう…
いやだから趣味じゃないから一生しないし! 亜弥ちゃんとは健全健康をモットーに――
「……私だけ、だよね?」
「お付き合いを…ってんぇ? え? あ? う、うん」
「…たん、どもりすぎ」
- 97 名前:Sweet Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:52
- いや、今のはタイミングが! いきなり聞くから!
そんな見損なった感じの目で見ないで! 誤解だってば!
「てか、当たり前じゃん。
亜弥ちゃん以外に誰がいんのさ、美貴が教えてほしいよ」
「…いない?」
「いるワケない。ありえない」
「………ん、わかった」
だって美貴に寄ってくんのまめおだよ?
亜弥ちゃんがまめおに負けるワケないじゃん。
なぁんでそんな心配するかな?
「もしかして、前に浮気とかされたこととか…あるの?」
「え? ないよ。付き合ったことないもん」
「っ…あ、そ、そうなんだ…」
「そうだよ、ミキたんが初めて」
「あ、ありがと」
お礼言うのは、変かもだけど。
そっか、美貴が初めてか、嬉しいな、すごい嬉しい。
亜弥ちゃんの前に膝まづいて見つめ合う。
えへへって笑い合って、好きって囁き合って、キスをした。
でもここトイレなワケで、便座の上なんて
素晴らしくムードのない空間だったけど、それでも亜弥ちゃんは
とろけちゃうくらい甘かった。
- 98 名前: 投稿日:2004/06/29(火) 17:53
-
- 99 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:54
-
―――
「なに? あの人だかり」
シャワーでサッパリしたあと、『ドレミでドン!』を
こっそり脱出し、八百屋でパイナップルを受け取った美貴たちは
亜弥ちゃんの荷物を取りに駅前広場に向かった。
するとそこにはなにやら黒山の人だかりが……。
亜弥ちゃん待ちかと思ったけど、そうでもないらしい。
目立つ格好で美貴の横に立ってる亜弥ちゃんに誰も気づかないし。
不思議に思ってみんなの見てる前方に目を凝らすと、カキ氷屋と鯛焼き屋の
あの4匹がバカでかい看板を持ってなんか叫んでる。
「あ、たんだぁ」
「なんじゃあるぁあああああ!??!!!」
その看板に、美貴は果てしない殺意を覚えた。
『この子、捜しています。
__
/ __ヽ
lし'ソノノハl>
l、 リVvVリ
ト、つとノ
/ __|;;;|_\
 ̄(_,イ_|  ̄ みきちゃん 19歳 』
- 100 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:54
- うぎゃあ!? ちょっとちょっと何年前の写真だよ!!
19歳って激しく説得力ないじゃんか!!!
そこの4匹ぃ!
いますぐその恥ずかしすぎる看板を下ろせ!!!!!
「全員皮剥いで焼いてやる!」
「たんっ、焼いちゃだめぇ!」
じゃあなに?! 煮ればいいの? 刺身?刺身?
ワサビつけまくってやる!! 止めないで亜弥ちゃん!!!
動物たちに襲いかかるべく拳を振り上げて人だかりに突撃しようとする
美貴の前に立ち塞がる亜弥ちゃん。それをかわそうと―――
―――したとき、耳慣れた2つの声が美貴を凍りつかせた。
「ふぅ、よかった、なんとか駅に着いたばい」
「ウフフッ、迷子になるかと思ったねぇ」
「思ったねぇやなか! 無理矢理ラムネに乗せよって…
誰かに見られたらってヒヤヒヤしたとよ」
「だから帰りは乗らないじゃん」
「そういう問題やなくて…」
んなぁああ!?
そこを歩くは大事そうにクマを抱いてる絵里と田中ちゃん!!
なんでよりよってこんなときにっ…てかまたクマ乗ったんかい!
- 101 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:54
- 「たん、あれ絵里ちゃ――」
「シィィ!」
わかってる! でもまだ2人は美貴たちに気づいてないから
急いで亜弥ちゃんを抱えて近くの木に隠れた。
お願い、お願いだから通りすぎて、そのまま、さっさと電車乗って帰りなさい。
しかしそんな切望も虚しく、2人は見てしまった。
「なんやろ? 騒がしかね。
あ、あのみきちゃんて子、お姉さんにそっくりやん」
「え? ホントだぁ。名前も一緒だし」
「ん?19歳? お姉さんっていくつ?」
「19だけど………美貴さん?」
ぐすっ、絵里、美貴の年ちゃんと覚えててくれてありがとう。
でも今だけは…忘れててほしかった…っ。
「なんでお姉さん捜してるんやろ? あの動物さんたち」
「あーっ! あゆぴょんにマサウルフにひとぴょんにめぐう〜る先生!!」
「…ハ? なん?
絵里、あの人たちのこと知っとーと?」
「人じゃないもん!
むぁた診療所のナースのひとぴょんとめぐう〜る先生は
えりにゃんの飼い主なの!! あゆぴょんとマサウルフはそのお友達で…」
「……あぁ、あの小猫の人形劇の」
「そうだよ! れいにゃんだってお世話になってるんだから! 行こ!」
「え? どこに?」
- 102 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:55
- だあ!? コラ絵里!
田中ちゃんの腕グイグイ引いて人だかりに入るな!
駅に、駅に行って! 改札通って! 電車乗れ!
「亜弥ちゃん! ここに隠れてて!
絶対出てきちゃだめだからね!」
「ちょっ、たん! 待って!」
「絵里止めるだけだから!」
絵里があの4匹と会話したら全部バレちゃう!
ミツオの存在が明るみになる!
それだけはっ…それだけは避けなくてはっ!!
木の陰から飛び出した美貴は「どけっ!」と人だかりを掻き分けて
絵里たちを追いかけた。
だけどなんせ人が多い…っ、なにこの町、人口多すぎだよ!
「あのー、マサウルフさーん」
「が? なにがぅ?」
「私、美貴さんの妹ですぅ」
「んがっ!? ママママジがぅぅぅ?!」
だああ!? 美貴がまだ半分も進めてないのに
クネクネ器用に人の合間を縫ってた絵里たちがオオカミの元にっ!
しかも話を聞きつけて斉藤さんたちまでもが絵里の傍に集まったきた。
- 103 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:55
- 「妹サンっ? てことは店長のあとに再婚した人の娘サンネっ!
あぁ、複雑だワ……ちょっぴり切ないっ…セクシーに切ないっ」
「むぁ、かわいい子むぁ」
「隣の子はお友達ぴょん?」
「は、はい…」
田中ちゃんが今『なんやろ、こん人たちの喋りかた』って思ったに3億ミキティ。
さらに斉藤さんのセクシーっぷりにひいたに10億ミキティ。
って賭けてる場合じゃなくて!
田中ぁ! そんな訝しげな目を動物たちに向ける暇があったら
絵里をそいつらから引き剥がせっ!
「どうして美貴さんを捜してるんですか?」
「あぁ、えっと…」
「絵里です、こっちはれいな」
「絵里ちゃんにれいなちゃんネ。
2人は知らないカモだけど、ワタシたち、美貴ちゃんのお母さん、
ホントのお母さんのお店で働いてたの。
けどお店が不慮の事故で吹き飛んで……今は細々と屋台で頑張ってるんだけど
今日ここに美貴ちゃんがお母さんを心配して来てくれたのヨ」
違う。
亜弥ちゃんの話聞いたから今は少し、生まれたばっかのカンガルーくらい
は心配してるけど。
- 104 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:56
-
「美貴さんのお母さん…」
「この町に住んでるんですか? へぇ、絵里知ってたん?」
「ううん。
月に1回くらい会ってるみたいだけど
美貴さんもお父さんも、あんまり話したがらないから」
話せるか! 色々問題がある上にお母さん(絵里たちの)に失礼だし!
「そうなの…、でも、決して親子の心が離れてるとか、
そういうことじゃないの。だから今日も来てくれたんだろうに…
突然竜巻に攫われていなくなっちゃって…」
「…竜巻ってそんなん見えましぇんでしたけど…」
「そうなんですかぁ!? 美貴さん大丈夫かなぁ?」
よくもまあそんな嘘八百をっ…って2人とも信じるなよ!!
田中! あんたは信じちゃだめでしょーがっ!
「まさかワタシたちがついていながら取り逃がし…じゃなくて攫われたなんて
店長に知れたら大変だシ。
じゃあ最初から来なかったことにしようかと思ったら
見かけた瞬間めぐう〜るが店長に『美貴ちゃん来たむぁ』ってメール打っちゃって……
だからこうして必死にみんなに呼びかけて捜してるの」
村田さんっ…いらないことしやがって!
てか斉藤さん『取り逃がす』って言った? 言ったよね?!
美貴は獲物かっ!!!
- 105 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:56
- 「そのお母さんは今なにしとーと?」
「たぶんオシャレネ、美貴ちゃんに会うときはすごく張り切るカラ。
寝込んでたのも忘れて着替えてるワきっと。
屋台閉めたあと連れてくって言ったけど
もう3時間は経ったし、待ちきれなくなって来ちゃうカモ…」
げぇぇ!それ早く言え!
斉藤さんの言葉に、美貴の体の奥深くに眠っていたエンペラーパワーが目覚めた。
「ひれ伏せ! 下僕ども!!」
背が低いせいで埋もれかけてた美貴は、目の前にいた背の高いおっさんの
肩の上に立って怒号を発する。
途端にまわりにいた人たちが一斉に美貴から離れて
この目を見るや地面に膝をつき、両手を上げて「ははー、美貴様ー」と
頭を下げだした。おぉ、ちょっと快感。
よし! これでやっと絵里の元にっ…
「ヘイ!メロン記念日!
愛しのマイスウィート美貴はどこや!」
「ヤバッ! 来ちゃったワ!」
「「……え…?」」
んぎゃあ!? やっと障害物を乗り越えたと思ったら
このクソ暑いのに白いスーツに白いネクタイ、白いマフラー、ブルーのグラサン。
極めつけに真っ赤なバラの花束を持ったアイツが現れやがった!!
- 106 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:57
- 「え?…美貴さんの…お母さん…?」
「お、おっしゃんやけん……どう見ても…」
くぅっ…! 絵里と田中ちゃんの目が点になってる…っ。
つーかアイツ! 寝込んでたわりには元気そうじゃん!
安心したよ! 安心してブッ飛ばせるよ!!
「ん? なんやあそこ変な宗教か?…って美貴ぃ!!!
真ん中で崇め尊ばれとんのは美貴やないかぁああ!そんなとこでなにし…っ」
\ | /
― (m) ─ ピコーン!
目
/:::::::::::::::::::::::::::ミゞ
/:::: 丿::::::ノ::::::::丿::ヾ
|:::::::::::/::丿:ノノ::ノ::ノ
丿ノ:::::::丿. へノノ ソ
丿l^ 、 ノ丿 (・) (・)
ノ(ヽV ( ,ゝ )
ソ::. / _ ll _〉
丿 ヽ:: ‘ー''/
│ ヽ──│
「征服やな! いよいよ女帝となって世界征服に乗り出したんやな!
さすがマイスウィート! エリザベス以上にロックやん!!」
「誰が女帝だ!!!
2度とひらめけない体にしてやる!!ウルァッ!!!」
「ルズボォゥッ!?」
- 107 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:58
-
「キャア!? み、美貴ちゃんっ?!」
「…むぁ、いい蹴りむぁ」
「め、めぐう〜る感心してる場合じゃないわヨぉ!
一撃で店長の純白のスーツがただのボロ切れに…っ!」
「…似てない親子だぴょん…」
「がぅ、2人一緒にいるとこ見ても信じられないがぅ…」
「たんっ! 暴力はだめだってばぁ!」
「ガルッ! 亜弥ちゃんこそ出てきちゃだめじゃん!!」
「アヤヤー、心配無用やで。
子供はいつか親を越えるもんやねん。 愛 の 拳 で 」
「なにが愛だ! ソルァ!」
「ピギャホォッ!?」
「ひゃっ?! たんやめてぇ!」
「み、…美貴さんの、お母さん……おと…おと……」
「男がお母しゃん…? え、そんなん、どげんしたらできると…?」
- 108 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:58
-
千切れたバラが空に舞う。
気のすむまで暴れながら、気づいてる。
お母さんが間一髪で急所を避けて、ダメージをあまり受けてないこと。
絶対、やり返してこないこと。
「1人でパイナップルアイランド逝ってこい!!!」
それが余計にムカついて、
亜弥ちゃんの持ってるパイナップルをお母さんの口に突っこんだ。
- 109 名前:Bitter Time 投稿日:2004/06/29(火) 17:58
-
- 110 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/29(火) 17:59
- 前半、苦手な方ごめんなさい。
いまさらですけど、よい子は読んではいけません。
レスありがとうございます。
>>82名無飼育さん様
ありがとうありがとうありがとうございます!
>>83名無飼育さん様
寸止めていたことに更新したあとで気づきましたw
エロ書くの苦手なんですけどねぇ…ってなんで私がエロいって
知ってるんですかぁああ!?(爆死
>>84ピクシー様
ノノ*^ー^)<もちろんわた…
(●´ー`)<保護者代理であるなっちがもらうべ。
>>85名も無き読者様
( `◇´)<………。
いい子なのにね・゜・(ノД`)・゜・
野朗、意外と娘思いです。
>>86名無飼育さん様
ハァ━━━━━━*VvV━━━━━━ン!!!!
お仕置きてw えぇ、お仕置きですww
>>87名無し読者様
いいえ、新しいプレイです(w
- 111 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/29(火) 18:04
- ∧ ∧
ノノハヽ
ノノ*^ー^) 流します♪
彡 γ⌒つつ
(__ノノ ●
- 112 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/06/29(火) 18:05
- _| ̄|○
- 113 名前:shou 投稿日:2004/06/29(火) 18:33
- 更新お疲れ様です。
リアルタイムで読ませていただきました。
亜弥ちゃんの可愛さよりも藤本さんの女帝っぷりに
惹かれてしまいました(死刑?
それと、バトルシーン?面白かったです。
次回も楽しみにしてます。
- 114 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/30(水) 03:41
- 更新お疲れ様です。
じゃ、なっちに夏目漱石を・・・本当は本人に直に・・・(w
美貴帝も相変わらず大変ですねぇ。
次回も楽しみにお待ちしております。
- 115 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/30(水) 09:08
- 更新お疲れサマです。
野朗、やりますねw
あややも最高なんですが女帝のインパクトが・・・。
ていうか野朗の愉快な仲間たちにそんな設定があったとは。。。
続きも楽しみにしてます。
- 116 名前:つみ 投稿日:2004/07/02(金) 15:33
- 更新お疲れ様です!
ミキ帝・・・
どれだけ笑わせてくれば気が済むんですか・・・
ホントにひれ伏しました・・・
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 21:24
- 更新乙です。初めて読みました。
本編だけでなく111-112でも爆笑させてもらいましたw
- 118 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:47
-
なんなんだろう。
「絵里ちゃんはれいにゃんが1番好きなんか?」
「はぁい。
意地悪そうに見えてすっごく優しいし、一途で熱いとこがあるじゃないですかぁ。
でも、年下のくせにいっつもえりにゃんのこと子ども扱いするは許せないですけど…」
「まーあれは一種の優しさなんやけど
えりにゃん拗ねるもんなぁ」
「絵里も、れいなが子ども扱いしてくるんで気持ちわかるんです。
絵里のがお姉さんだし、しっかりしてるのにーって」
「……ドコガ…」
「む? れいな、なんか言った?」
「ベツニ…」
なんなんだろう、この光景は。
「ナハハ、絵里ちゃんとれいなちゃんは仲ええんや……ん?
絵里ちゃん! よく見たらえりにゃんにソックリやん!
れいなちゃんはれいにゃんソックリやし!
これは神が与えたもうた奇跡! どや? 2人ともウチで働かんか?!」
「えー、えりにゃんになれるんですかぁー?」
「待てやコルァ!
絵里を魅惑のコスプレ界に引きずりこむなバカ!」
「ザビピュゥッ!?」
「「「「「キャー店長ぉー」」」」」
「み、美貴さんだめですぅ!」
- 119 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:48
-
草が焦げ、土が黒ずんだプールバー跡地に隣接している1軒の日本家屋。
カラカラと情緒溢れる音をたてて開く玄関の戸は
訪れた者に望郷の念を与え、母の作った味噌汁の味を懐かしく思い出させる。
10畳ほどだろうか、この家で1番広いその部屋に一歩足を踏み入れると
井草の香りが深く鼻に染み入り、虎と龍の象られた欄間に目を奪われた。
―――って、本来ならそんな感じの家なんだけど。
中央にある乱れた布団とか、それから発せられる匂いとか
よっぽど悩んだんだなって思わせるたくさんの散らばった服とか。
そういうミツオの痕跡がさぁ、全ての情景を吹き飛ばしてくれちゃって。
入った途端げぇぇって顔をしかめたのは美貴だけじゃないハズ。
田中ちゃんもさりげなく「おぇっぷ」って言ったでしょ?
聞こえてんだよ、いいよ、怒ってんじゃない。褒めてんの。
いまにも倒れそうなくらい青い顔で
それでもここまでついてきて、絵里だって似たような顔してたのにさ。
パイナップルの代わりになるモノ買いに亜弥ちゃんが
出てったあと、一同に気まずい空気が流れたのにさ、のにのにさ。
ところがどっこい、ところがどっこーい!!!
- 120 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:48
-
なんなんだ、なんなんだよ!
絵里! さっきミツオ見て愕然としてた絵里はどこ逝ったんだ!
立ち直り早すぎだよ!田中ちゃんはまだショック状態から抜け出してないのに!!
「…お姉しゃん…スイマセン、こげんの、差別みたいなこつ
思っちゃいけんってわかってるんですけど…どうしても…信じられんくて…」
「気にしなくていいよ、それが正しい反応だから。
男になったってだけならともかく、あのキャラじゃしょうがない」
美貴だって、ミツオに初めて会ったとき
絶対別人だと思おうとしたもん。
お母さんじゃないただの陽気なオッサンが、お母さんだったフリして
美貴の前にいるだけだって、そう思おうとしたことがある。
そう言って肩をポンと叩いたんだけど、親しげにミツオと笑顔で会話を
弾ませる絵里を部屋の隅で体育座りしながら眺めてた田中ちゃんは、青白い顔で
申し訳なさそうにうな垂れちゃって、なんか見てて痛々しい。
小学生で家を出て、1人で生活してる田中ちゃんだけど
まだ世の中のアレコレに対する免疫はできてないんだよね。
田中ちゃんは悪くないよ。おかしくないよ。おかしいのは絵里だよ。
絵里、人見知りしなよ。なんでそんな早く打ち解けてんの?
なに楽しそうに喋っちゃってるワケ?
- 121 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:48
-
「でもびっくりですー。
美貴さんのお母さんがれいにゃんたちの産みの親のつんく♂さんだったなんて。
絵里ホントに大好きでー、幼稚園のときから毎日欠かさず見てるんですよー」
「嬉しいなぁ! そんな絵里ちゃんには
番組特製えりにゃん&れいにゃんストラップをプレゼント☆」
「わああ! ありがとうございまぁす!
これ応募したけど当たらなかったんですよぉ!」
・・・・・絵里、帰っておいで。
そんな嬉しそうにミツオからモノ貰っちゃだめだめ。
お返し要求されたらどーすんの。
「絵里って、小猫が絡むと人見知りせんとです」
「へ?」
「前話したでしょ?
れいなと初めて会ったときだって人見知りせんかったやないですか。
それって、れいながれいにゃんに似とったからで…」
「………」
そーいや、さっき斉藤さんたちにも臆することなく話しかけてたね。
察するにお母さんが自分で書いた小猫の話に出てくるキャラに似てるって理由で
雇ってる斉藤さんたち4人は、絵里にとってはピョンとかウルフとかいう
キャラクタそのもので、小さい頃からずっと見てた大好きな動物たちそのものだから
会えた喜びで人見知りするのなんか忘れちゃうってことらしい。
- 122 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:49
- で、お母さんはそんな大好きなキャラクタの産みの親だから
当然キャッキャと懐いちゃうワケだ。…だ。………だああああぁ。
つーか美貴も知らなかったんだけど、お母さんがそんな話書いてたなんて…。
思わず「ぅぅぅ」と小さい唸り声が喉から漏れた。
そんな美貴を同情的な目で見て、さらに田中ちゃんは話を続ける。
「塾長も、そうなんです」
「ぅぅ…う?」
「えりにゃんとれいにゃんは、世界を救うために“魁!新垣塾”に通っとって。
やけん、初めて塾長のこつ塾長って呼んだんは、絵里なんです」
「え? で、でも、絵里は塾生じゃないって言ったじゃん」
今だって、絵里は塾長のこと苗字で呼んでるし。
「ハイ、違うし、絵里がそう呼んだんも1回きりやったんですけど…
『あれは小学校の入学式だったニィ。
緊張の面持ちで親の手を離れて、ピカピカの小学1年生として
友達100人できるかな♪なんて口ずさみながらマユゲを整えてパイプイスに
腰掛けたとき、後ろの席から「あー! 新垣塾長だあー!」なんつう声とともに
1人の幸の薄い少女が飛びかかってきたんだニィ』
ってことがあって、それをキッカケに2人は仲良くなったらしいんです」
「…へぇ」
幸薄いって…たしかにそうだけど……。
- 123 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:50
- 「やけん、のちに塾長が塾長になったんも、
そんとき絵里に呼ばれて感じた一種のエクスタシーというか
感動が忘れられんかったからやって言ってました」
「エ、エクスタシー…」
「あのあと何回頼んでも、なんでかもう絵里は呼んでくれんくて、
こうなったら塾長になってやるしかないって」
“しかない”ってことはないような気がするけど…
「絵里は塾長に“塾長になる!”っていう夢を与えたとよ。
さっきれいなにもくれましたけど……ドリーム…」
例えば自分のあだ名を『塾長』にしてみんなに無理矢理呼ばせるとか――ん?
他の方法を模索して頭を捻ると、いきなり田中ちゃんの顔が真っ赤になった。
え? どうしたの?
さっきもらったって…なにさ? れいなはなにになるつもり?
「あ、いや、れいながもらったんはそういう夢やなくて…その…」
そういう夢じゃないって、他にどんなゆ―――
「絵里の持ってる夢をもらったっていうか…絵里をもらったっていうか…」
「なにぃいいい?!!?!」
「ハッ! し、しまっ…!」
- 124 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:50
- なにがしまっただ!!聞き捨てならぬぞレイナン!
絵里をもらったたぁどういうことだコノヤロウ!!!!
怒りのボルテージがググーンと上がって、レイナンの胸倉を掴んで立ち上がると
宙に足を浮かせたレイナンは慌てて弁解を始めた。
「んみゃあ!? お姉しゃん誤解です!
そげん意味やなくて精神的な意味やけん!!」
「せ、精神的ぃぃ?!」
えーっと…『精神的=非・肉体的』。
ホッ!よかった!絵里の赤いフリージアは守られてるよなち姉!
「ってレイナン、まだ告ってなかったの?!」
「…はぐぅ…で、でも今日ちゃんと言いましたっ、
あの、大事にしますけん、もうちょっとそぐぅ…」
「もうちょっとなんだよ」
「ミキたん! なにやってんの!!」
「美貴さん! れいなを離してください!!」
「うがあ!?」
まさかもうちょっと触らせろとかじゃねーだろぉな?!と
レイナンをひっ捕えてた美貴は、右から左から柔らかい衝撃を喰らって
畳の上に倒された。イテテテテテ…ついでに重…い。
起き上がろうとしたら桃の香りが全身を押さえつけてて、目を凝らすと
いつの間に帰ってきたのか桃のいっぱい入った袋を持った亜弥ちゃんが
美貴の上に乗っかってて、少し離れたとこに咳き込むレイナンを
抱きしめてる絵里が見えた。腹立ちを認識する前に眉間がググッとなる。
- 125 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:51
-
「もぉ! たんったらほっとくとすぐこれなんだから!
田中ちゃんイジメちゃだめでしょぉ!」
「ちがっ! 今のは…」
「四の五の言わないでちゃんと謝りなさい!」
「えぇ!?…ご、ごめん、レイナン…チッ」
「舌打ちしないの!」
「ぐ…」
「あ、べ、別に…れいなは大丈夫やけん…」
「ほんと? れいな大丈夫? 苦しくない?」
「うん」
ムカッ! こらレイナン!絵里から離れなさい!
って言いたいけど言えないこの状況。完全に美貴悪者じゃん。
そりゃさ、精神的にだって聞いた時点で地に足つけたげるべきだったけどさ
ビビッたんだもん。いきなり絵里をもらったとか言いやがるから!
「悪い子のたんは桃むくの手伝いなさい。
お母さん、台所借りますね」
「おぉ……アヤヤはたくましいんやなぁ……」
ムカムカ。イタズラが見つかって怒られてる子供みたいに
亜弥ちゃんに首根っこ掴まれてる美貴を、お母さんはやったら楽しそうな顔で見やがる。
「バーカ…」
バツが悪くて、お母さんの目に懐かしさが滲んでるのがわかって
思わず呟いたら、こっちを見た亜弥ちゃんがすごい優しい顔で微笑んでた。
なんなんだよぉ、ったく。
- 126 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:51
-
―――
「れいなぁ、気分どう?」
「ん、ほんとに大丈夫やけん」
「でも顔色悪いよ?」
「それはえーと…」
お姉さんのせいやなくて、文化の違いに衝撃を受けたせいっちゅーか…。
顔色ならお姉さんに吊るし上げられる前から悪かったとよ。
なーんて、お姉さんのお母さんが限りなくお父さんっちゅう
特殊な生態を既にバッチリ受け入れとる(というか、どうでもよくなっとる)絵里に
言ったら、ますます心配されそうやけん、れいなは
続きを誤魔化すために黙って目を閉じた。
「眠いの?」
「…ううん」
お姉さんたちが台所に消えたあと、青い顔のれいなをお母さ…ミツオさんの
『キレイな空気吸わせたったほうがええな』という言葉を受けて
緑茶と煎餅が似合いそうな縁側に運んでくれた絵里は
お姉さん座りして、並んで座ったれいなの頭をエイッと膝に乗せてくれた。
おぉ!? どっから出したんね?!
似合うとか思っとったらいつの間にか絵里の手に湯呑みと煎餅がっ!
……ま、まぁそのへんは置いといて。
促されるまま寝転んでみたものの、こげなどう見ても膝枕されとるとこ
お姉さんに見られたら半殺しばい。
- 127 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:52
-
「れーなぁ」
「なん?」
「……プレゼントしたくなっちゃった」
「はぇぇ!?」
な、ななななにを急にっ!?
こん子はっ、こん子はこっちの気苦労も知らんと
なんでそげなこつペロッと言いよるんね?!………あ、知らんからか。
「…ここじゃ、いけん」
「2人っきりだよ? みんなのいる部屋からは、ここ見えないし」
「い、いつ誰が来るかわからんやん」
「んー、誰も来ないよぉ」
そんな簡単に言うな! もしもお姉さんが来たら大変やけん!
さっきは慌てて咄嗟に精神的とか言ったけど
その、く、口と口を…ぬぁはっ!…くくくくっつけたなんて知られたら
れいなはギッタンギッタンのズッタンズッタンにされると!!
今のこの体勢だってれいなは命懸けなんやから
そのへんもう少し慮ってくれてもよかやん!
「いいもん、れいながだめって言ってもするもん」
「えぇえ!? や、やめときぃって!」
嫌がるれいなに無理矢理絵里からなんて!
嬉しいようなオイシイような…ってちがぁう!とか考えとる
間に上からどんどん絵里の顔が迫ってく…わあああ!?
- 128 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:52
-
ガラッ
「絵里ちゃーん、田中ちゃーん、桃むけ…っ」
「「!?」」
「…ご、ごめん!」
パターン!
「「…………」」
ブ、ブハァッ! し、死ぬかと思った…。
あと2センチィィィ!!っちゅうとこで襖を開けて現れたんは松浦さんで
とりあえずお姉さんやなくて安心したけど、
自分からしようとしたくせに、絵里が真っ赤になって俯くから
見られた恥ずかしさも倍増して気まずくなる。
「……だ、だから言ったやん、誰が来るかわからんって」
「…む…」
いや、イジケられると、余計空気が甘酸っぱさを増すんやけど…。
ジワジワと、耳まで赤くなってく絵里を見とったら
こっちは全身に火がついたみたいに熱くなって
声も震えてちゃんと出てくれんかった。
ドキドキ、ズキズキ、ドキズキ、ズキドキ。
くすぐったいような、掻きむしりたくなるようなこの感じ。
これが、これが恋する乙女の胸の疼きなんやね!
- 129 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:53
- れいなが制服の胸元をキュッとの掴んだんと、絵里が
まったく同じことをしたんは、ほとんど同時やった。
うわあ…一緒やね、れいなたち。
同じ時間に、同じ場所で、同じ疼きに身悶えて。
フッと目が合うと、ますます胸は疼いて
無言で見つめ合ったまま、なにも言えんけど。
絵里はまだ、れいなの頭に手を添えたまま
れいなはまだ、絵里の膝枕に頭を乗せたまま
もう、ここがどこだろうとどうでもいいけん。
今度こそ、今度こそ絶対、離さんよ、絵―――
『あれ? 絵里たちに持ってったんじゃないの?』
『ふぇ!? あ、そのぉ、フォーク忘れててっ』
『へ? なぁーに言ってんの、ちゃんとあるじゃん』
『…あ、ほ、ほんとだぁ…あはは…』
『変な亜弥ちゃん。いいよ、美貴が持ってくから』
『ふぇえぇ!? いいいいいよぉ! 私が持ってくからぁ!』
『いいっていいって、先戻って食べてな』
- 130 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:53
- ―――里…ってぎゃああ!
襖の向こうから女帝の打ち鳴らす地響きが! お仕置きされるぅ!!
『たん! 待っ…』
ガラッ
「おーい桃むいたよー」
「い、いただきまぁす!」
間一髪セェェーフ!!
伊賀忍者なみの俊敏さで絵里から飛び離れたれいなは
ササッと女帝によって開かれた襖の前へ移動し
桃の乗ったお皿を受け取るべく片膝をついて手を伸ばした。
「プッ、なにやってんのレイナン。もう気分いいの?
パンツ見えてんだけど」
「ぬぇえ!? おっとっとっと!」
「なっ! 美貴さん! れいなのパンツ見ないでください!!」
「えー、だって見たっていうか見えたし。
派手におっぴろげるレイナンが悪いよー」
「す、すいましぇん…」
「アハハッ、オレンジとは色も派手だねー」
「ぐっ…」
「れいな、派手なのが好きなの? 派手なのがいい?」
「へ?」
- 131 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:54
-
ちょちょちょちょ絵里! 今いい具合に美貴さんの意識が
パンツに逝ったおかげで縁側に漂ってた甘酸っぱい空気を悟られやんで
済んだっちゅーのに、いきなりなにを聞きやがるん?!
「ねぇ、派手なのが好きなのぉ?
絵里も派手なの穿いたほうがいい?」
「な、なに言っとるんね!!
そんなんは絵里の好きにしんしゃい!」
「……レイナン」
ぎくぅっ!
戦慄が走る。鋭い視線は、まるで炎の矢。
左腕にプラプラくっついとる絵里はれいなを見てるけん
気づいてないと思うけど……おたくのお姉さんスゴイ顔になっとーよ。
『絵里に派手なパンツ穿かせてどうする気じゃゴルァ』って今にも
叫びだしそうに唇は震えとるし、目の奥では地獄の火炎が激しく燃え盛っとるし。
骨になるまで焼かれるかもしれん………。
火葬たい、仮装やなくて火葬。生きながらにして火葬パーティーたい…。
「…イリュ、イリュ、ウジョ」
「ほぇ?」
と、ある程度の恐怖を想定して怒号が放たれるのを待っとったけど
やっとこさ口を開いたお姉さんはモゴモゴと意味不明な言葉を発して
怒りの上にニマッとか、ニタァとか、突然不気味な笑いを浮かべ始めた。
- 132 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:54
-
こ、壊れたと?
怒りがMAXを飛び越えて、イカレてしまったと?
ばってん、そんとき気づいた。お姉さんの腰のあたりに白い腕が巻きついとる。
どうやらお姉さんの背中には松浦さんが張りついとって
怒りを静めてくれとるらしい。
ありがたや。アヤヤ様ありがたや。
「れいな、れーなってば」
「…ほ? ほぃ?」
「むー…」
やべ、お姉さんに気ぃとられてスッカリ絵里の存在忘れとったばい。
てか「だからパンツゥー」って頼むけんその話はあとにして!
またお姉さんがプルプルしだしとるやん!!
「え、絵里、桃食べるけん、あっちの部屋戻ろ?」
「えー、せっかく美貴さんが持ってきてくれたのにー?」
そ、それはそうやけど、これ以上ここで
2人でおるのは危険やけんね。
「絵里、まだミツオさんと話したいことあるやろ?」
「んーん、また今度でいい。…れいなといたい…」
- 133 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:56
-
バキューン。
ぐはぁっ、打ち抜かれたけんね、心臓打ち抜かれたけん。
むちゃくちゃ嬉しいんやけど、ばってんお姉さんの視線がばり怖いんやけど。
恐る恐るお姉さんを見ると、地獄の火炎に続きまして
今度は凍てつく氷の刃がキラキラ輝いとる瞳とご対面。
火葬つぎは凍葬? そんなん聞いたことないっちゃ。
クネクネ クネクネ
ん? なんね?! 絵里のおるほうから不穏な動きを察知したばい!
こ、今度はなに言い出す気や!
あんたにはあのダイアモンドダストが見えんのかね!!?
「美貴さん、もうちょっとれいなと2人っきりでいいですかぁ?」
見えんのか……从ヽ´,_っ`)
なにか言おうとしとるけど、怒りを抑えるのに精一杯で喋れんお姉さんに
追い討ちをかけるようにれいなの肩にコトンと顎を乗っけてクネクネ照れ臭そうに
揺れる絵里には、ダイアモンドダストもハウスダストも見えんらしい。
いっぺん黄色のファブリーズで除菌したろか。
- 134 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:57
-
もういくら松浦さんでも止められんかも。
でも、絶対殺られる…というれいなの予想に反し、怒号を放たないままの
お姉さんの表情は心をそのまま表すかの如く変化していった。
まずちょっと驚いたみたいに目を大きく開けて、
つぎに物凄い目でれいなをギロロロッと睨んだあとクネついとる腕を確認して
ワザビがツーンときたときみたいな涙目になり、
最後に全体を見て思いっきり口をへの字に。
こ、これは……助かったんやろか……?
てかお姉さん……言っちゃなんやけどかわいかね。
まるで、大事にしてたモノをお母さんに勝手に捨てられて
新しく同じモノを買ってあげるって言われても許せんっちゅーか、
けど、時間が経ってやっと「もういい」ってまだ拗ねてんだけど
無理して諦めた子供みたいで、無償に頭を撫でてあげたくなる。
そんなお姉さんの様子に、1人不思議顔の絵里。
「美貴さん? どうかしました?」
「……ぅぅ…」
どうかしまくりやけん。
絵里、もうちょっと姉心ってやつをわかってあげんしゃいよ。
今お姉さんは絵里のために妹離れしようとしてくれとるんやけん。
「…ぅぐ…」
「たん、がんばって」
「ぅぐぐ…」
- 135 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:58
- 肩の上にぴょこっと顔を出した松浦さんに励まされて
お姉さんはへの字の口を懸命にこじ開けた。
「……な…なかよ……よく、ね…」
やっと開いた唇の隙間から短い言葉を搾り出して
もう限界だといった風にクルンと向けられた背中が尖っとる。
お姉さんを正面に迎えた松浦さんは
「よくできました」って、優しく頭を撫でてあげて
れいなたちがいるにも関わらず「ご褒美だよん」て言って
お姉さんのオデコにブチュッとした。すると、尖りが少しだけ緩む。
おぉ…松浦さん大人って感じたい……お姉しゃん羨ましかぁ…。
「じゃあ、ごゆっくりね〜」
「は、はい」
襖が閉じられたあとも、甘えるように首に擦り寄ったお姉さんを
ヨイショと抱えた松浦さんの微笑が目に焼きついとって
思わずポーッと放心してしまう。
「んぅ、絵里もー」
「ひゃ?…んにゃ!?」
たんに絵里も羨ましかったんやと思うけど、
れいなも絵里にあんな風にしてもらいたいばい…なんて思っとったら
その言葉が聞こえたかのように絵里が首にクネついて願いを叶えてくれた。
- 136 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:58
- 「れいなも、れいなもー」
「…かがんで、届かん」
「れいな小っちゃいもんね」
んなっ! やかましか! 中1で見事に成長がストップしたれいなを置いて
絵里もさゆもここぞとばかりにでかくなりよって!
ばってん小さかなら小さかなりの特典っちゅうもんがあるんったい!
オーバーオール着ればほぼ確実に子供料金で電車に乗れるんやけんね!
…ってそれ軽い犯罪やーん…_| ̄|○
ぐすん、いいもんどうせチビッコだもん。
開き直って絵里を見上げると…わあっ、やけんその見下ろしとるくせに上目遣いなんは反そ…
「小っちゃいれーな好き」
「く…ぁ、あぅ?」
「小っちゃいくせに生意気で、頼りになって
絵里の手引っぱってくれるれいな、好き」
「…絵里…」
白い歯見せて恥ずかしそうにしながら、それでも素直な絵里が眩しい。
(素直すぎるのもどうかと思うけど)
プレゼント…欲しいたい……おでこにはもらったけど
さっきもうちょっとってとこで邪魔されたけん、続きぃーとかないんかなー?
- 137 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 15:59
-
「欲しい?」
「うん!」
絵里と違って素直に言えんけん、さりげなーく物欲しげな視線を送っとったら
読み取ってくれた絵里がニコニコしながら聞いてくれた。
もちろん! 当たり前やん! ようわかったね!
ちびっと感動して思わずメチャクチャ喜びに満ちた声で返事してしまったとよ。
いやー絵里ーすごかねー、れいなたちってば以心伝心やねー…
「ハイ、あーん」
「あー…あぁあ!?」
って桃かい!……………くぅっ、泣いちゃいけん、強くなれいな。
「フフフフフッ、ウフフフフッ」
「…あ? なに笑っとぉ?」
涙を堪えて桃を憎憎しげに噛み砕いとると、
いきなり耐えられんって感じで絵里が笑いだした。
まさか…まさか………。
「か、からかったと?」
「アハハハハハッ、ごめんね? わかってたんだけど、れいなかわいかったからつい」
- 138 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 16:00
- 「んなっ!?なにがついや! こんバカ絵里!」
「ンフフフフフー、だぁってぇー」
「だってやなか! わかっとーなら早くプレゼントしんしゃい!!」
っておおっと! 勢いに任せて口走ってしもーたばい!
慌てて口を抑えるも、それは絵里の手にどかされて………………
「………」
「れーな真っ赤ー」
「…やかまし」
「桃の味したよ」
「そ、そりゃ食べたばっかやけん…」
「今度はー、梅干しの味とかがいいなぁー」
「うぇぇ? や、やめときぃ」
いくら絵里が好きやからって、食べるのれいななんやんね?
そんなもん、れいな越しに味わわんでも普通に食べたらよかやん。
「あ、納豆とかだと糸ひいたりするのかなー?」
「…っ知るか! 変なこつ考えとらんと絵里も桃食べんしゃい!」
一瞬想像してもーたやん!
れいなにまで変な妄想抱かせるんやなか!!
- 139 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 16:01
-
「あ、豆のまんまとひきわりどっちがいい?」
「ど、どっちでもよか!」
っちゅーかプレゼントの前はどっちも嫌に決まっとぉ!
「選んでよー、たったの二択だよ?」
「そういう問題や……じゃ、じゃあひきわりで」
「わかったー。納豆はひきわりでパンツは派手なの…っと」
「だああ!? やけんパンツは好きにしぃって!
てかメモるな! 大体そんメモ張とペンどこから出しよったと?!」
「このポケットー」
「んぇ?…なぁああ!?それはマユゲンポケットぉぉ?!」
ヒラッヒラッと絵里が見せたのは、見覚えのある塾長のマユゲンポケット。
(見た目は限りなく未来の世界のネコ型ロボットが所持しとる●次元ポケットに酷似)
あ…も、もしかしてさっきの湯呑みと煎餅ここから出したんか…。
「な、なんで絵里が持っとぉ?」
「さっき本部で拾った」
パクッたんかい。
まー案外たいしたモンも入っとらんし、絵里なら塾長も怒らんやろ。
なんだかんだ言ってあの人も絵里には甘いけん。
- 140 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 16:02
-
「派手なパンツ入ってないかなー?」
「入ってるワケなか! つーか探すな!!」
絵里やったら地味でも暗くても濁った沼の水色でもなんでもいいけん!
派手とか色がどうこうより、れいなとしては靴下みたいに破れてないかどうかが気になるたい!
こん子の性格やと穴の開いたパンツ平気で穿いとっても不思議やないし!
ついでに上下の色がバラバラでも全然お構いなしっぽいし!
ってだあああー!!!
だめ! だめっちゃれいな!
そげん考えば頭に巡らしたらめくるめく危険な想像図が脳裏に浮かぶやないの!
めくるめくっちゃいけん!!
「ないなぁ。そだ、今度一緒に買いに行こっか?」
「逝けるかぁああ!!!」
叫んだ瞬間、頭の中でプツッていう音がした。
「なんで? れいな新しいのいらない?」
「………モウゲンカイヤケン」
「れ、れいな? 寝るの? わわわっ」
ふらぁっと絵里の腕に倒れこんだれいなは、15分くらいですぐに目が覚めたけど。
その短い睡眠時間の間に、絵里が穴の開いたパンツを持って
れいなのクラスに半泣きで助けを求めてくる夢を見た。…………悪夢や。
- 141 名前:妹離れは難しい。 投稿日:2004/07/14(水) 16:02
-
- 142 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/07/14(水) 16:03
-
シゲさん、遅れたけどおたおめシゲさん。
暑いよシゲさん(何
レス、ありがとうございます。
>>113shou様
女帝のほうが書いてて楽しかったりするので
私こそ死刑です(爆
>>114ピクシー様
(●´ー`)<さ、この金でごっちんと美味しいもん食べるべ(ニヤリ
川;VvV)<美貴は平穏な暮らしがしたいのに…。
>>115名も無き読者様
女帝人気あるなぁ。
ここの読者様はみなさんまめおなんですね。
>>116つみ様
お、またまめおが(w
川VvV从<苦しゅうない、顔を上げぃ。
>>117名無飼育さん様
どうも初めまして。ズレると泣けます(悲
笑っていただけて救われました。アリガトウ。
- 143 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/14(水) 17:35
- 更新乙彼サマです。
あぁ、、、彼女同様妄想が「奇跡の香りダンス」のサビ。。。
>ここの読者様はみなさんまめおなんですね。
ここのおかげで気付いてしまった気がします。
これからもバンバン気付かせてくださいなw(ヤメレ
次回も楽しみにしてます。
- 144 名前:つみ 投稿日:2004/07/15(木) 00:52
- 更新お疲れ様でした!
帝・・・
がんばった・・・今回はなかなか感動させていただきました。
ミツオさんもつながりましたか・・・
次回も楽しみにしてます!
- 145 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/15(木) 02:33
- 更新お疲れ様です。
あぁ!なっち・・・どう使おうと自由だけど、しっかり箱を・・・(w
今回も良いテンポ(?)の会話が楽しかったです。
次回も楽しみにまってます。
- 146 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/16(金) 22:52
- たのしぃー……!!ふじもんがあややに良いこ良いこされてるのは
実際にありそう…。
- 147 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:07
-
「偉い、偉いで美貴ぃっ!
よう頑張った!
世界一の妹想いや! 立派なお姉ちゃんや!」
「ですよねぇ。
たんってホント妹ちゃん想いで…たまに暴走しちゃうのがキズですけど、
最後はちゃーんと絵里ちゃんの笑顔のために頑張るとこが立派ですよねぇ」
「……グスン」
「おーおー、大っきいおめめから涙ポタポタリンやん。
そうやってボロボロ泣きながらも我慢しようとして口がへの字になるとこは
変わってへんなぁ。よちよちよっ…にぐぁ!?」
「こりゃ! 噛んじゃめっ!」
「…ぅー」
ほぉー。眼光だけで星1つくらい簡単に消せそうやなって思ってたけどもぉ、
意外とかわいらしいんやの、店長の娘さん。
亜弥ちゃんの腕の中で体育座りして泣いてもてぇ、そりゃ店長もよちよちって言いながら
頭のひとつも撫でたくなるやよ。
…んだども痛そうやわぁ、噛まれた右手の甲にハッキリクッキリ歯型ついとるがし。
「フッ、刻んでくれたんやな。
美貴の歯の成長っぷりをオレの手に!
パクッとガブッと刻み込んでくれたんやなマイスウィート!」
「グス…っんなワケあるかアホっ!!」
「ゲフゥッ!?」
「きゃ! こりゃたん! 鳩尾にエルボしちゃめっ!」
- 148 名前:ゴキゲンメンバーは出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:08
-
なにがあったか知らんけど、気分が悪なった田中ちゃんって子と、
絵里ちゃんって子のとこに桃を届けに行った亜弥ちゃんがなかなか戻って
こんもんで、娘さんが様子を見に行って2人で戻ってきたと思ったら
亜弥ちゃんに抱えられて娘さん泣いとるし。
それ見て店長はアタフタしながらも必死に慰めとって。なのに噛まれて喜んで。
おまけに亜弥ちゃんの制服の襟元をきゅっと掴んで
まるでお母さんに抱っこされとる幼稚園児状態な娘さんに
渾身のエルボ喰らわせられて昏倒した店長は、見たこともないくらいニコニコしとって…
弱冠、気持ちが悪い。
「大丈夫ですか?」
「おう! 美貴の愛のエルボやからな!
この鍛えぬいた腹筋で衝撃もバッチリ吸収したでぇ!
泣いとるけどこんだけのパワーがあれば大丈夫やな。よかったよかった」
「っ…触るな!」
「イテテ! つねるのは勘弁してやぁ!」
…あいやぁ! 前言撤回するやよ!
いまのは泣いとる娘さんを元気づけようとワザと挑発したんや!
それが上手いこといったんが嬉しくてニコニコしてたんやの。店長、お見事やよー。
その思惑に娘さんも気づいとるんかなぁ? 悔しそうにしとるけど
店長のおかげで涙は止まったみたいや、めでたしめでたしやぁ。
- 149 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:08
-
ズズッ プハァ
目の前で続けられる微笑ましい光景に目を細めながら番茶をすする。
日に日に弱って立ち上がることもままならんかったのに、娘さんが会いに来たって
村田さんからの連絡聞いただけで布団から飛び起きたときはびっくりしたけども、
こうやって娘さんを前に舞い上がっとるとこを見ると
店長の子を想う親心っちゅうもんが伝わってくるわぁ。
でも残念なことに………
「たん! つねっちゃめっ!」
「うぅー!ガルゥー!」
「吠えないの!」
「ガルッ……クゥーン…」
………いまの状況やと誰が親なんかようわからんけどの。
そんなあーしの疑問に露とも気づかん亜弥ちゃんは、唇を尖らせて
サルやのにアヒルみたいな顔しながら娘さんのおでこをペチッと叩く。
叩かれた娘さんは、眉尻と目尻を思いっきり垂れ下げて
飼い主のご機嫌をとる仔犬みたいに鳴きながら亜弥ちゃんの首に擦り寄ってった。
たしかあーしらより2つも上やって聞いたけど
顔かわいいし甘えんぼさんやし、あんましそうは見えんのー。
あの頭、あーしもドサクサに紛れて撫でてみてええかの?
- 150 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:09
-
ソローリ、ソローリ。
読んどった本を置いて、忍び足で亜弥ちゃんの背中に近づく。
近くで見ると、濡れたマツゲをキラキラさせて赤くなった鼻を
亜弥ちゃんの白い首に擦りつけとる顔は…ひゃあ!べっぴんさんやよー!!
「反省してる?」
「……うん、ごめんなさい」
「それは私にじゃなくて、お母さんに言わなきゃ」
「オカーサンゴメンナサイ」
「声が小さいよぉ、棒読みだし」
「ナハハッ、ええねんええねん。美貴が来てくれただけでも嬉しいのに
こんなかわいいとこまで見れて、お母さんは幸せやで」
そぉ〜っと、サラサラの茶色い髪に手を伸ばす。
でも、あともうちょっと、もうちょい…ってとこで、亜弥ちゃんの首にくっついてた
額が剥がれて、腫れぼったい目が思いっきりあーしを見た。
「っぎゃあああ!? ああああんた誰?!」
「ひょぉ!? ああああーしは高橋愛やよー!」
「た、高橋哀ぃぃぃ?!」
ハッ! そういえば店長が出てって留守番しとる間もみんなが帰ってきたときも
本読んどったで自己紹介するん忘れとったがし!
娘さんとは初対面やのに! ここは気を取り直して挨拶せな!
- 151 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:09
- 「初めまして、アルバイトの高橋愛です。
趣味は読書と標準語のリスニングです」
あかんあかん。初対面で挨拶もナシに頭撫でるなんて
最近やっと有り難味がわかってきたけど、前は好きでもなく
むしろ嫌いで尊敬もしとらんかったお母さんに怒られるとこやったやよ。
ごめんの、娘さん。
「た、高橋哀だかウエオだか知んないけどあんた何者?!
なんでいきなし現れて美貴の眼前で目ぇ見開いてるワケ?!」
「ふぇ? ちがうよミキたん。
愛ちゃんは元々びっくりしたような顔なんだよぉ。
それにいきなりじゃなくて、さっきからずーっといたでしょ?」
「ハ…?」
ちょっとちょっと亜弥ちゃぁん、哀とウエオはキレイにスルーってどういうこ…
ってんなぁ!?!
まさか娘さん!その顔はあーしの存在自体にすら気づいてなかったんか?!
「い、いたっけ…? さっきからって、絵里たちのとこから戻ってきてから?」
「………ヨ」
「ちがうよ、もっと前。
愛ちゃんはお母さんの看病係り兼留守番係りだから最初っからいたよぉ?
私たちが入ってきたときも、部屋のすみっこで本読んでたでしょぉ?」
「え…嘘ぉ。見てないし、見てないし美貴」
「………ヤヨ」
- 152 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:10
-
ヒドイヤヨ……ひどいやよ……酷いやよぉぉおお!!!
「娘さぁん! たしかに挨拶もせんと虐待の本読み耽っとったんは
あーしが悪かったけど!! こんなんで嘘ついてどうするん?!
それに『見てないし』ってどういうことやぁああ!!」
「えぇ!?
だってさー、斉藤さんたちも触れなかったじゃん。
誰か『哀ちゃんただいま』とか言ったっけ?」
だから哀じゃないがし! 愛やよ愛! LOVEやよLOVE!
「あのね、たん。
愛ちゃんが本読んでるときは邪魔しちゃ悪いからみんな声かけないんだよ」
「いやいや、いくらそうでもただいまぐらい言おうよ。
そっちだっておかえりとか、なんか喋って存在アピールしてくんなきゃわかんないって」
「喋ったやよ!>>118をよく見てみるがし!
『キャー店長ぉー』ってとこカギカッコ5つついとるやろ!!」
これは決して間違いとかじゃなくって
あーしがおったから5つになったんやよ!!
「…あ、ホントだ。
で、でもさぁ! 単体では喋ってないじゃん!
ただでさえ4人もいる中に紛れられたらわかんないってば!」
「…ぐすっ、ほーか、ほーか、そんなにあーしの声には個性がないんか…」
- 153 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:10
- ばあば。あなたが手塩にかけて育ててくれた愛はいま、悲しみという名の大海に
すべてを飲みこまれようとしています。
「え? いや、そんなこと言ってないけど…」
「いいんやよ、もういいんやよ。
どうせあーしは嘘つきの無口の読書好きやよ…」
いいんや、こういう扱いは慣れとる。
だからそんな顔せんで。
あーしなんかを傷つけたぐらいで、申し訳なさそうな顔することないやよ。
「や、あの、ごめんね?
美貴のほうも、あんま余裕なくてさ、だから気づかなくて…。
全然、哀ちゃんは悪くないよ?」
「そうだよ愛ちゃん。そんな自虐的にならないで。
たしかに無口で読書好きだけど、愛ちゃんは嘘つきなんかじゃないから」
「フッ…」
そんなん、知らんから言えるんや。
あーしの前の名前を、昔のあーしを知らんから。
必死に謝ってくる気持ちが眩しくて、あーしは2人から目を逸らす。
脳を駆け抜けた記憶に、自嘲で唇が歪むのがわかった。
- 154 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:10
-
「あーしの親は、あーしが小学生のときに大ゲンカして1回離婚して
高校に上がる前にまた再婚したんや。
2人が別れてる間、あーしはお母さんに引き取られて、お母さんの苗字を
名乗っとった。………それが、すべての始まりやった………」
聞いてくれるかの?と、逸らした目を戻すと、娘さんと亜弥ちゃんは
正座してあーしを見とって、コックリ頷いてくれた。
その後ろでは同じく正座した店長と動物さんたちが桃をつつきながら
聞き耳をたててくれとる。
あーしの話を真剣に聞いてくれるなんて…。
熱くなる目頭を抑えて、あーしは静かに口を開いた。
「なんでそう読むんかっていう、変わった苗字ってあるやろ?
空に鷹がおらんと小鳥が安心して遊べるから小鳥遊でタカナシさんとか
山がなくて月が見えるから月見里でヤマナシさんとか
いろはの“い”でカナガシラさんとか、春夏秋冬でヒトトセさんとか。
あーしの友達には、お母さんの旧姓が一口でイモアライって子がおって
『くそぉ、お父さんが婿養子に入ればよかったのに…っ。
いまからでもそうさせてやろかな、アヒャ!』
なんて企んどった子もおった。あーしとまことが説得して
最終的には里沙ちゃんの『でもそれだとコンコンじゃなくなるニィ!』
っていう言葉で踏みとどまってくれたんやけど…」
「…アヒャ? まこと? ニィ?………まさか」
「ん? どうかしたかの?」
「べ、別に、……マサカ、マサカネ……アハハ」
- 155 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:11
- どうしたんやろ? 娘さん、一気に顔青くしてもて。
あーしの話のせいやろか? やめたほうがええんやろか?
「大丈夫かの?」
「たん、アブラ汗かいてるよぉ?」
「なんでもないなんでもない。ごめん中断させちゃって。続けて?」
「………つらくなったら言うての。
あーしのお母さんも、旧姓はそういう苗字やった。
四月一日って書いてワタヌキって読むんや。
………でも、あーしのクラスメイトは誰も、そうとは呼んでくれんかった。
『嘘つき、嘘つき』みんながあーしを指差してそう呼んだ」
目を閉じれば蘇る、無邪気で残酷な子供たちの声。
「いまの時代、四月一日に綿入れの着物を脱ぐ子なんかおらんし、
四月一日って言えばエイプリルフールっていう認識しか持ってないのは
当たり前のことやけどっ……仕方ないことなんかもしれんけどっ……!
でもっ! あーしは嘘なんかついたことなかったやよ!!
なのにあーしの言っとることがホントやってわかってても、『嘘みたいに言った』とか
ワケわからんこと言ってあの子らは結局あーしを嘘つき呼ばわりして!!!」
ぐずっ、ううぅっ…生まれて初めて味わった屈辱を思い出して
涙と鼻水がどんどん出てくる。
ティッシュが近くになかったから、手で乱暴に拭った。
「せめて、せめて八月一日でホズミさんやったら、どんなによかったやろ?
苗字が嘘ついてもええ日やっただけで
ちゃんと話も聞いてもらえんなんて!! 世界にたった1人にされたみたいで
寂しくて寂しくて、死んでまおうと思ったことも……あった」
- 156 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:11
- そう言うと、真っすぐにあーしを見とった亜弥ちゃんの肩が大きく揺れた。
「やだぁ! やだよ愛ちゃん!
私は聞くもん! 愛ちゃんの話聞いてるもん!」
「…ん、ありがと。
あのときもな…亜弥ちゃんみたいに、そう言ってくれた子がおって
あーしはこうして生きてるんやよ。
年下の、いっつも口開けてボーッとしとる子と、常になんか食べとる子と
マユゲから熱光線を出せる子のおかげで、あーしは救われたんや」
まことは、偶然通りかかった学校の裏で
泣いとったあーしを見つけて
真剣に話聞いてくれて、泣きながら抱きしめてくれた。
まことの泣き声を聞きつけて飛んできたあさ美ちゃんと里沙ちゃんは
『そいつら、一生本当のことが言えない体にしてやりましょう』
『手伝うニィ!』
と言ってあーしの教室に乗り込んでいってくれた。
けど、そしたらみんなが嘘しか言えんくなったもんで、2週間後に
『では逆に一生嘘のつけない体にしてやりますね』
『手伝うニィ!』
ってことになって、あーしのクラスは正直者しかおらんようになった。
- 157 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:11
-
「よかったっ…よかったねぇ愛ちゃん!」
「……マユゲ…」
「やけどの。あーしは不安なんや。
何年も、毎日のように嘘つきって言われ続けて、『四月一日愛=嘘つき』は
あーしの中でも完成された方程式やった。
自分で自分を、疑い始めとった。
そんな中で、みんなは一生嘘のつけない体にされて
みんなが正直者になったあのクラスで、あーしは唯一嘘のつける人間になってもた」
『べっつにさぁ、嘘ぐらいついてもいいよぉ。
お父さんが言ってたけど、生きてく上では必要な嘘もあるんだって。
ほら、お医者さんが患者さんに本当の病名言わなかったりするじゃん。
それにあさ美ちゃんとガキさんなんてヤルコトナスコト嘘っぽいしさー』
『ピーマコ…』
『まこっちゃん…』
『へ?っなぐあっ!?』
『ひょ!? まことぉ!!』
『あはははは、今日のピーマコはよく飛びますね。
心配せずとも愛ちゃんは嘘のつける性格ではありませんから、ご安心なさい』
『ニィニィ、顔に出るニィ』
3人がそう言ってくれて、なんとか今日までやってこれた。
でも、嘘という言葉に対するトラウマは、根太くあーしの心にうわっとる。
「……そう、だったんだ。
愛ちゃん、つらかったね。だから、無口なんだね」
「…ごめんね。知らなかったとはいえ、嘘なんて言っちゃって…。
美貴、軽率だった。ホントにごめん」
- 158 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:12
-
目を潤ませた亜弥ちゃんは、あの日のまことみたいに
あーしをぎゅってしてくれた。
娘さんもそ〜っと手を伸ばして、あーしの頭を撫でてくれる。
優しくされたら、余計涙が止まらんがし。
「そんなことがあったんか…ぇっく、高橋、よう耐えたなぁ…ひっく」
「て、店長まで泣かないでだぴょん」
「もらい泣きしちゃうがぅ」
「桃がしょっぱくなるむぁ」
「ホントね…ってコラめぐう〜る!
しんみりするときぐらい桃食べるのヤメなさいヨ!」
「だって美味しいむぁ」
店長たちも、あーしなんかのために泣いてくれて…。
あったかい。ここはなんてあったかい家なんや。
「ありがと、ホントにホントにありがと」
ばあば。あなたが手塩にかけて育ててくれた愛はいま、優しい人たちの
ぬくもりに包まれています。
「…あれ? そういや哀ちゃんその制服…」
亜弥ちゃんがあーしから離れたとき、娘さんがクルッと目を丸くした。
- 159 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:12
- 「そだよ、愛ちゃんも同じ、クラスもね。
だからいつもここには一緒に来てたんだけど、今日は
たまたま愛ちゃんが職員室に呼ばれてたから私1人だったの」
「あ、そうなんだ」
「テロがあるまで知らなかったんだけど、あの日愛ちゃんがやつれてたから
どうしたの?って聞いたらここでバイトしてるってわかって…。
それで連れてってって頼んだんだ」
そうそう、亜弥ちゃんから話聞いたときはびっくりしたがし。
ついでに見せてもらったプリクラで娘さんの顔見てもっとびっくりして。
だって全然似てないやよ。
店長の娘さんやったらもっとジャガイモみたいな顔しとってもおかしないのに。
「そっかぁ、そだよね。
亜弥ちゃん1人じゃここ来れないよね。
道ゴチャゴチャしてるし。
哀ちゃん、亜弥ちゃんがお世話になったね、ありがと」
「…だから、いまさらやけど哀やなくて愛やよ」
灰原さんやないんやから…。
「ふぇ? あ、そなの? ごめん、美貴勘違いしちゃって」
「いいやよ。どうせあーしにはそっちのほうが似合っとる…」
それぐらいわかっとる、気にせんといて。
- 160 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:13
- 「えぇえ!? そんなことないって!
愛だよ愛! 高橋ときたら愛しかない! 愛情イッポン!」
「チオビタドリ…ってそんなの飲んだことないやよ!
幼稚園のとき大人に混じって参加したチオビタドリンク一気飲み大会で
新記録出して優勝したことなんてないやよぉおお!」
「ゆ、優勝?! すごいじゃん! 何秒だったの?!」
「ツーエイト」
「ハ?」
「…2,8秒ってことじゃない?」
「すっ、すごいじゃん! それ大人でも勝てないよ絶対!!」
「でっへへ、照れるがし」
自分でも信じられんかったけど
ツーエイトのリズムで飲んだらツーエイトで飲めたんやよ。
でもあまりにも早すぎて、ズルしたんやないかって
あーしに負けて悔しそうな大人の人たちにずいぶん疑われた。
………あれまぁ。
いま気づいたけど、ズルしてないのに疑われたり、嘘つき呼ばわりされたり
あーしって昔から踏んだり蹴ったりやの。
そりゃ背中に哀しみが張り付いて、哀やって勘違いされるハズやわ。
「や、あ、だからごめんって…」
「ニシシ、そや、頭撫でてもええかの?
そしたら忘れてあげるで」
「へ? どーぞどーぞ! 好きに撫でて! さっさと忘れて!」
「んじゃ遠慮なく」
「だめぇ!!」
- 161 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:13
- んぇ? なんでよ亜弥ちゃぁん。
娘さんが快く頭差し出してくれたのに…。
「あ、愛ちゃんいま目がたんのこと狙ってた」
「ひょぉ!? 狙ってへんがぁ」
「狙ってたもん! 私のたんに手ぇ出そうなんていい度胸じゃないの!」
「せやから狙ってへんって言っとるがぁ!」
てか亜弥ちゃんのかもしれんけど頭撫でるくらいええやんケチぃ!
「ちょっと、亜弥ちゃんも愛ちゃんもケンカはやめなって…」
「ナハハ、美貴はモテモテやな!」
「美人さんぴょんからね」
「がぅがぅ、美人がぅ」
「…ぴょんより?」
「んがっ…いいいいや! がぅにとってはあゆぴょんのほうが!」
「むぁぁ、桃の汁がほっぺに飛んだむぁ、痒いむぁ」
「アラアラ、顔洗ってきたラ?」
「サル!」
「オラウータン!」
「だーから2人ともやめ…」
「美貴さぁん」
「おぉ絵里っ……と、レイナン…」
「お、お姉さん、ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」
「…どっちが? 桃が? 絵里が?」
「……りょ、両方」
「チッ」
- 162 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:14
-
「美貴、ファイトや! 頑張れぇ!」
「うっさいな……てかレイナン、顔色さっきよりひどくなってない?」
「アハハ…ちょっと、その、ありまして…」
「んんー? 2人でなんの話してるんですかぁー?」
「っ!?」
「な、なんでもないけん! 顔くっつけんでよ!!」
「れいなのケチー」
「…ぅぅぅ…」
「……す、すいましぇん……って、あれ?
あの松浦さんと言い合っとるん誰ですか?」
「レイナン、お前もか」
「あーっ!! アイアイ先生だぁ!!!」
「「ハ?」」
「アイアイ先生ぇー!」
「サル!」
「オラ!」
「せーんせーぇ!」
「ん?」
あんたはたしか…娘さんの妹の絵里ちゃん。
先生ってあーしのこと? 失礼な! あーしはまだピチピチの女子高生やよ!
あんたより先に生まれはしたけど先生なんて呼ばれる筋合いはないがし!!
「ちょ、ちょっと絵里。なんなん? アイアイ先生って」
「なんなんじゃないよ。
アイアイ先生は新垣塾でえりにゃんたちに人生について教えてくれてる先生でしょ!
そうですよね、つんく♂さん!」
「そぉそぉ、滅多に出てこんのによう覚えとったな絵里ちゃん」
「えへへ」
- 163 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:14
- あぁ、あーしが似とるキャラクタのことか。
正直1回も見たことないで知らんのやけど、滅多に出てこんのや、ふぅーん。
「先生ぇ、私先生の『人生とは、若狭湾なんやの』って
言葉、すっごく心に響きました」
「…若狭湾? あんた、若狭湾を知っとるん!?」
「ハイ、でも最初は知らなくて
先生が言ってたの聞いて、図書館で調べたんです」
「ええ子や! 絵里ちゃんはええ子やよー!」
「ウフフ、恐縮ですぅ」
それに比べて…
「お姉さん、ワカサワンってなんですか?」
「さぁ?」
「そこの2人…若狭湾知らんの?
絶好の漁場として豊富な海の幸を食卓に届け続けとるあの若狭湾を知らんの?
若狭フグとか、有名やろ?」
「「………」」
田中って子はともかく、娘さん、大学生のあんたまで知らんとはどういうことやの。
「…ほな福井のなんやったら知っとるん?
まさか、なんも知らんなんてことないやろね?」
「福井?……福井っつったら原発じゃない?
前にもんじゃのCループ系の温度計が折れてナトリウムが大量に
格納容器内に漏れたせいで原子炉が自動停止して大事故になったとこだよね?」
「おぉ、お姉さんさすがです」
「へへっ」
- 164 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:15
-
どこが……どこがさすがやぁあああ!!!!!
「娘さん!! それは『もんじゃ』やなくて『もんじゅ』やよ!!
ってかなんで原発知っとって若狭フグ知らんの!?
福井をバカにしとるん?!それとも平成10年9月に
『若狭小浜とらふぐ王国』宣言した小浜市をバカにしとるん?!
どっちにしろ福井の敵イコール私の敵であることに違いはないがし!」
「「えぇえ!?」」
「ウキキキキッ、怒ったやよー!!」
「「ぎゃああああー!!」」
くらえ! 必殺ソースカツクラッシャー!!!
これを喰らったら2度と卵のほうのカツ丼は食べられんくなるんやあ!
「なっ、愛ちゃん!
愛ちゃんの相手は私でしょ!!
てゆーかウキキッて、サルはそっちじゃん!!!」
「やかましいわあ!!!」
「キャー!?」
フン! こうなったら全員まとめて福井送りにしてやるがし!!
「ぐはぁっ!? オ、オレたちにまでソースカツクラッシャーがぁああ」
「ぴょぴょっ!? 体がうすっぺらくなってくぴょぉぉん!」
「がぅ!? ソースが降ってくるがぅー!」
「むぁ、いい匂いむぁ」
「ちょっとめぐう〜る! なに朗らかに匂い嗅いでんのよ!
うすっぺらくなったらワタシのセクシーはどうなるの!!」
- 165 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:15
-
「ウフフフフッ、クフフフフフッ。
生でソースカツクラッシャーを体験できるなんて夢みたい。
楽しいねぇ、れいなぁ」
「どこが!!
暢気に笑っとらんで逃げるとよ!」
「えぇーやだぁー」
「カツ丼が食べれんくなってもよかと?!
れいなは嫌ばい! まだ食い足りん!」
「むー…」
「ウキキウキキウキキーッ!」
「…はぁ、紺ちゃんの友達ってこんなんばっかり…」
「たん! 私たちも逃げよ! ソースカツになっちゃうよぉ!」
「…コンチャンノバカ、コンチャンノバカ…」
「たん! 逃げようってばぁ!」
訛りがとれてしまおうと、田舎臭さが消えてようと
決して忘れぬ、ふるさとの町。
福井をバカにするやつは、何人たりとも許さんで。
ふるさと大好き、福井大好き。
我、高橋愛、ここにあり。
- 166 名前:ゴキゲンメンバーは、出揃った。 投稿日:2004/07/21(水) 21:15
-
- 167 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/07/21(水) 21:16
-
細かいことは気にしないでね(爆
暑さのせいでおかしいんです。いや、元々か_| ̄|○
レス、ありがとうございます。
>>143名も無き読者様
ここのせいで気づかれてしまったとは…っ・゜・(ノД`)・゜・
ごめんなさい、私がまめおなばっかりに(悲
>>144つみ様
無理矢理繋げた感アリアリですけど(w
帝、褒めてくれてるよ帝。
从从*V)<ありがと…。
>>145ピクシー様
(?)ってなんですか、(?)って(w
テンポってちょっと気にしてたりするので
嬉しいです。ありがとうです。
>>146名無飼育さん様
ありそうというか絶対に し て い ま す (爆
お米と研いだとき、スボンがちゃんとたためたとき
たんはあややに良いこ良いこされてるハズです(w
- 168 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/22(木) 00:35
- 更新お疲れ様です。
(?)って、「テンポ」という言葉で表して正しいのかな?という意味の(?)です。
哀もとい愛ちゃん登場ですか・・・
昨年旅行で福井行って、かの有名な「ヨーロッパ軒」のソースカツ丼を食べた事がありますが・・・
あれは「卵とじ」が普通の人間にとっては、カルチャーショック受けた感じになりました(w
次回も楽しみに待ってます。
- 169 名前:つみ 投稿日:2004/07/22(木) 01:23
- 更新お疲れ様でした!
ついにあの方も出てきましたね!
期待していたキャラどおりでした。
メンバーはそろいましたね・・・でもやはり今回のことで最強なのはえりりん??
と思ってしまいました。
次回も待ってます!
- 170 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/22(木) 10:18
- 更新乙彼サマでございます。
チラチラ話題に上るあの方々は何者なんでせうか・・・?
というか皆さん特殊能力保持してらっしゃるようで。。。
帝、、、詳しいね帝・・・。w
自分はCループ系がわかりません。(ググレ
でわ次回も楽しみにしてます。
- 171 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/24(土) 19:58
- 良い感じです作者様w
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/28(水) 01:39
- 更新お疲れ様です。
ミキティーに「福井の敵とか意味わかんないから。なんで人vs県?」というツッコミをして欲しい今日この頃。
高橋さんでてきましたね。何気に泣ける過去が笑えました(おいっ!)
次回も楽しみにしてるのでお願いします。
- 173 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:37
-
「うわあ、そりゃ大変だったねぇ。
カツ丼食べれなくなるなん…って待った!!ヤッてないぃい?!」
「……っぽい」
「コラァ! うるせぇぞ里田ぁ!!
いま大事な話してるっつーのにデカイ声出すなよ!」
今日も今日とて意味なんか全くならないであろう矢口さんの講義中、
美貴は昨日の一連の出来事と、亜弥ちゃんを抱きしめたときに感じた
違和感を、消しゴムのカスを練ってるまいちゃんに打ち明けた。
すると、案の定驚いたまいちゃんは教室中に響き渡る声で『ヤッてない』とか
言ってくれちゃって、みんなの視線を浴びるとともに、
ブチ切れた矢口さんから怒声が飛んできた。
「大事な話って、どうせ『なぜ村○春樹を読むとお腹が減るのか』とかでしょー」
「そうそう、矢口は特にサンドウィッチが食べたくな…ってちげーよ!!
今度の試験の話してんだろーが!!!」
「ゲッ、それほんとに大事じゃないですかー」
「だから大事だっつってんだろ!!」
・・・・・うわ。
試験ってもうすぐだったっけ。
すっかり忘れてた。
やだなぁ、矢口さんの試験って最高に面倒なんだよ。
こないだなんて大学ノートの裏表紙にさなえちゃん書かされて、1日中かかって一生懸命
鉛筆で書いたのに『なんだよコレ!さなえちゃんバカにしてんのか!落第!』とか
ワケわかんないこと言われて。
- 174 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:38
-
矢口さんの一声で落第なんて冗談じゃないから、なんとか考え直してもらおうと
3日完徹でよしこちゃん書いたら
『出来はともかく、その心意気は昭和だな。ブリキ大王動かせるぞ』
『無理です。あれって念動力で動かすんでしょ。
そんな力ないし』
『バカ、諦めんな。無理を通せよ、マタンゴ食えよ』
『美貴に死ねって言うんですか』
『バ…、バカ言っちゃいけねぇ。無法松は死なねぇんだよ…。
ブリキ大王ある限り、男 無法松、死んだりしねえ!!』
『いやいや、美貴は男じゃないし無法松じゃないし!』
『うおおおおおお!ド根性ぉおお!!』
って原付で駅前の広場まで連れてかれて……
『今は、昔の、バビロニア〜♪』って“GO!GO!ブリキ大王!!”を
1番から3番までフルコーラスで歌わされた。
あんなの2度と嫌。ありえない勢いで嫌。
偶然なち姉や絵里が通りかかって見られたらどうしようって、歌ってる最中は
そればっか考えて気が気じゃなかったし。2人には見られなかったけど
バイトに行く途中の梨華ちゃんに思いっきり見られたし……。
『ミキティ!すっごく素敵だったよぉ!』
『………(泣きたい)』
褒められて、あれほど嬉しくなかったことはない。
- 175 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:39
-
「いいかー、今回は平塚でハズレ車券拾いすっから。
拾った枚数で上位10位以内に入れなかったヤツには単位やんないぞー」
「ハァアア!?
10位以内って!ほとんどだめじゃないですか!!」
「そうだよ。
でもこないだの藤本みたいに、矢口の心を打つような
心意気を見せてくれたヤツは大目に見てやる」
「…んなアホなぁ…っ」
サドだ。正真正銘のサドがここにいる。
矢口さんは試験がどうこうってより、単位のために
美貴たちが必死こくとこ見たいだけなんだ。
氷片手にそれを眺めてせせら笑いたいだけなんだ。このチビサドめが。
「まーでもさー、たしかに10位以内ってのは
さすがに厳しいって矢口も思ったんでぇー、最初から人数を
減らすことにしましたー! ハイ、拍手ぅー」
「え?」
「え、じゃねーよ! 拍手しろよお前ら!
ノリが悪いと拗ねちゃうぞ! 人数減らさねーぞ!」
あぁん? 子供かあんたは!
- 176 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:39
- と、頭の中でほのかにキレつつ、小さい体を最大限にいからせてプンスカ怒る
矢口さんに慌ててパチパチと拍手を送る。
人数減らすってワケわかんないんだけど、少しでも10位以内に入れる可能性が
増えるなら理不尽な拍手でも打っとくに越したことはない。
「で、どういうことなんですか?」
「だからー、試験の前に一発勝負してだな、
それに勝ったヤツは試験免除。試験当日も大学に来なくてヨシ」
「…勝負ってなんですか?」
「餅を食べれたら勝ち」
「……ハ? そんだけ?」
「おう」
「……ウソォ」
「キャー!矢口さん最高ぉー!!」
ヤッター ワーイ
餅を食べるだけで試験免除なんつー信じられない話に、真っ先に
まいちゃんが飛び上がり、次の瞬間教室中が黄色い歓声で
いっぱいになる。
みんな、ちょっと待ってみんな。餅ってただの餅じゃないハズ。
どのぐらい食べるかも聞いてないし、味もわかんないのに
そんなさっさと喜ぶとあとで泣くハメになるよ。
- 177 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:40
-
「ミッキー!やったねぇ!」
「や、だから、落ち着きなって。
相手はあの矢口さんだよ? 絶対なんか企んでるって」
「んだと藤本ぉ! 元はといやぁこの特別処置はお前のためなんだぞ!!」
「へ? なんでですか?」
美貴のため?
そ、そりゃ美貴みたいにお嬢様育ちの世間知らずが
平塚でハズレ車券拾いなんてみんなより不利なのは明らかだけど…。
「いや、お前がお嬢様育ちってのはありえないけど」
「あぁ?」
「っ…に、睨むなよ! ほんとのことだろ!
てか藤本のためってゆーのは!
試験の日は付属の高校、ちょうど創立記念日で休みじゃんか!
お前、昨日元気なかったしさ、あややとデートでもして
元気になってもらおーって矢口なりに一生懸命考えたんだよ!」
「や、矢口さん…」
だったら試験そのものを無くして欲しいもんだけど…。
矢口さんの温かい心遣いに、目頭が熱くなる。
そういやこないだデートしようとして面談でだめになったし。
はやく亜弥ちゃんとまともなデートってしたいって思ってたんだ。
ありがとう矢口さん、睨んでごめん矢口さん。
美貴食べるよ。
矢口さんのキモチとオモチ、よく味わって食べるよ!!
- 178 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:40
-
「ハーイ、じゃあ1人1個ずつ取って後ろに回してー」
「わー信玄餅だぁー」
わお、まともな餅が出てくるなんてっ、矢口さんやるぅ。
みんなの手元には、小さい容器がビニール袋に包まれててなんとも
言えないかわいらしさを醸し出してる信玄餅が配られた。
ビニールをほどいて、つまようじと黒蜜をどかすと
容器のフタには溢れんばかりのきな粉がひっついてて
入ってるハズの3切れの餅は全然見えない。
あー美味しそー。美貴、アンコはダメだけどきな粉なら食べれる♪
「昨日山梨の友達が送ってきてくれてさー。
けど量間違えたらしくて嫌がらせかと思うぐらい届いたから
みんな、遠慮なく食べていいぞー」
「わーい、いただきま…」
「 た だ し 」
「ん?」
いざフタを開けようとしたとき、矢口さんの声が急に低くなった。
……なんだ……この嫌な気配は……。
- 179 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:41
-
「その容器の中のきな粉を
1粒たりともこぼさずに食え」
「えぇええ!?
そんなの絶対無理に決まってんじゃん!!!」
くそぉっ! やっぱり矢口さんだ!
普通に食べさせてくれるワケがなかった…っ!
だって! だってだよ! こんな容器いっぱい入ってるきな粉をどうやって
こぼさずに中の餅食えって言うワケ!? 食べたことある人ならわかるでしょ?!
絶対無理! だからわざわざビニールの袋だってついてんでしょーが!
「こぼしたヤツは平塚行きだかんなー。
しかも電車賃は各自で負担してくださーい」
「んなぁ!? 自腹ですかぁ?!
冗談じゃないよ!
学生さんはお金がないんだよ!」
「えぇー? ミッキーはなんだかんだカテキョで結構稼いでんじゃん」
「そんなの矢口さんの月給に比べたら微々たるもんだよ!
ってかまいちゃんどっちの味方だよ!! 平塚行きたいの?!」
「んー、遠足代わりにいいかなーって」
「いいワケあるかバカッ!」
どこの誰が遠足先でハズレ車券拾うんだっ!
よくもそんな暢気な顔してられ……ハッ! まさか!
こいつ!もし単位もらえなくてもおじいちゃんの力でなんとかしようとか…っ。
- 180 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:41
-
「ポンピーン♪」
「なにがポンピンだグルァ!!
そんなズルしたら唇に邪悪な色のマニキュア塗ってやるから!」
「ひゃー、怖ーい。
邪悪ってだけで具体的に何色なのかわかんないとこが更に怖いー」
「だあ!そこ!うるさいっての!
ゴチャゴチャ言ってねーでさっさと食え!」
「うっ…どうやって食べろっていうのさ…」
とりあえずそ〜っとそ〜っとフタを開けて、つまようじで
上のほうのきな粉をこぼさないようにほじくる。
慎重な作業を続け、ようやく餅が見えたこ……うわあっ!?
あ、危ない! セーッフ!
無理無理。なにがなんでも無理。
一歩力の加減間違えたら確実にこぼれる。
まだ餅見えただけで触れてもいないのに。
……みんなどうやってんのかなぁ?とコッソリまわりを窺うと、
はやくも餅の取り出しに着手してた子たちが次々にきな粉を舞い散らせて
脱落してってた。
隣を見ると、まいちゃんは地道に少しずつきな粉をすくって
舐めてて、やっぱ、時間かかるけどそれしかないかな、方法は。
- 181 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:42
-
「あ、言い忘れたけど制限時間3分ね。
ちなみにいま残り1分ー」
「ハァ!? 言い忘れるなバカッ!!」
「っ…怒鳴るなよ! 傷つくだろ! 残り30秒にしちゃうぞ!」
なにが『しちゃうぞ』だ!
語尾をかわいらしくしときゃとりあえず萌えると思ったら大間違いだ!
『逮捕しちゃうぞ』とか本当にされたらシャレになんないじゃん!
「うわー、間に合わないやー。
ミッキーどうする?」
「うーん…時間もないし……なんかいい方法……」
さっきはあんなにかわいかったのに、いまやその外見には憎しみすら覚える
信玄餅を前に美貴は頭を抱える。どうすればっ…どうすれば…っ
と、そのとき、脳内にチャララララ〜ンというメロディが―――
ひとくちで It's All Right♪
つっこみゃ きな粉は こぼれないさ♪ Hey!
―――そうか!!
容器ごと口の中につっこんで上手いこと美貴自慢の長い舌に中身をひっくり返せ
たらあとは噛むだけだ! きな粉も外にこぼれない!!
そうとは決まればツッコミキティ! 逝っきまーすっ!!!
- 182 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:42
-
「ふごっ…んがっ…」
「なっ!? ミミミミッキー?! なにしてんのぉ?!」
「さすが藤本! 勝負に出たな!」
小さい容器、だけど口の中に入れるとなると
けして小さくはない容器を、乙女の恥じらいを捨てて思いっきり開けた
口の中へつっこませる。
左のほっぺに舌を寄せて、そこに餅ときな粉を放り込んだ。
うぐぁ、ほっぺがリスみたいにパンパンになる…っ。
慎重に慎重に、唇の隙間からきな粉がこぼれように息を止めて、空になった容器を
持った指を口の中から出すと、ストップウォッチを持った矢口さんが
やたら楽しそうに近づいてきた。
な、なにする気だろ。
つっこんだはいいものの、量が多すぎて上手く噛めなくて苦戦してるとこに…
「藤本見てぇー、いないいないー…ばぁー!
いないいないー…ばぁあー!!」
んぐっ…てめぇコノヤロウ! 変顔で笑わせてきな粉を
吹き出させようとしてやがるな!
てかさっき美貴のためとか言ったクセになんで邪魔すんだよ!!
- 183 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:43
-
「チィ、変顔じゃだめか。
ならこないだカオリに聞かされたホットなダジャレ聞かせてやる!
五月みどりの、シャツ黄緑。
エーゲ海にいる、ええ外科医。
ソナタを弾いているのはそなたか?
キリマンジャロを頼んだのはキミなんじゃろ?」
「ぅっ!…んぐぐ…」
「ガハハッ! くだらなさすぎて笑えるー!!」
んぐぅ! 全然ホットじゃないのに!
寒すぎるダジャレなのに連続で言われるとキツい!
でも堪えたぞ。矢口さんが次の手考えてる間にはやく飲み込まなきゃ。モグモグ…
「んじゃ次は歌いまーすっ!
私は揺れたことがない〜♪ パットがないと胸じゃない〜♪
ほくろじゃないのよ乳首は、ハッハー♪
背中の肉も寄せ集め、ホッホー♪」
「ムゴッ…グフゥッ…」
「捜し物は何ですか〜♪ 見つけにくい胸ですか〜♪」
「モグッ……んぐぐぉ(吊るすぞ)…」
矢口ぃ、これ飲み込んだら覚えとけよ。
そりゃ美貴は亜弥ちゃんほどでかくはないけど揺れたことぐらいある!
パットなんかなくたって胸は胸だ! 背中に集めるほどの肉なんかついてないし!
捜さなくても見つかるに決まってんじゃんかっ!
「ガハハ! 矢口さぁん、それ自分のことですかぁ〜」
「なっ…里田ぁ!もういっぺん言ってみやがれ!」
「えぇー、だっていまの自虐ソングでしょ?」
「ちげーよっ!」
- 184 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:43
-
ちがわねーよっ!
自分だって人のこと言えないクセに!
けどいまチャンスだ。まいちゃんが矢口さんを引きつけて
くれてる間に飲み込んじゃおう。
矢口さんのストッピウォッチを覗くと、残り15秒。ギリギリだ。
『ミキたん』
…亜弥ちゃん。
美貴、頑張るからね。
絶対絶対、今度こそデートするんだ。
どこ行こっか? 遊園地がいいかな。
『にゃはは、たんかわいいなぁ。ちゅーするか?』
うん。する。したい。
もし遊園地に行くなら、観覧車のてっぺんでキスしよう。
天国に近い場所で、神さまが嫉妬するくらいのキスしよう。
- 185 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:44
-
「モグモグ…ゴックン!
よっしゃ食べたぁ!!」
「へ?…うっわマジかよ! マジで食いやがったコイツ!
たかがデートのためにここまで出来るなんてっ…あ! さてはお前!
デートのついでに恋の解体新書・ターヘルアナトミア改め
ターヘルアヤトミアであややの心も体も解剖する気だなコノヤロウ!!」
ハァン?! なんだよターヘルアヤトミアって!
まーいいさまーいいさ。好きなだけ吠えたまえよ。美貴は勝ったんだ。ヘヘン。
誇らしげに笑ってみせると、矢口さんはストップウォッチを見てから
本当にこぼしてないか美貴のまわりの確認を始めた。
けどもちろん机にも床にも美貴の服にも1粒もきな粉はこぼれてなくて
悔しそうに顔を上げて、ボソッと「合格」と呟く。
「ミッキーすごーい!!
よかったねぇ、亜弥ちゃん喜ぶよぉー」
「へへっ、だといいけど。はやくデートの約束したいなぁ」
「メールすれば?」
「んー、会って直接言いたいし」
「ギャハハッ、ミッキー女の子だねぇ」
あーっ、まだ午後の授業あるなぁ。
でもそれサボッても亜弥ちゃんが学校終わってないし。
- 186 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:44
-
「あ、でミキティ、ヤッてないってどういうこと」
「そういうこと」
「へぇー…っておーい、わかんないぞーい」
なんか背中でまいちゃんが言ってるけど、浮かれきった美貴には届かない。
はーやく放課後になんないかなぁー。
会いたいなぁー、亜弥ちゃぁーん。
◇◇◇
「ねぇ愛ちゃん、ソーツカツが美味しいのはわかったけど
こっちじゃ売ってないんだよぉ?」
「フン、卵が乗っかってんのなんてカツ丼じゃないわぁ」
「カツ丼なの! しかも卵のほうが一般的で…」
「イッパンとかコッペパンとかいう問題じゃないがし!
亜弥ちゃんもソースカツ丼食べれば卵とじが許せんくなるやよ!」
「………………ヤヨ? 亜弥ちゃん?」
「松浦さんなら今物凄い勢いで帰ってったよ?」
「ひょぇ!? い、いつの間に…」
◇◇◇
- 187 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:44
-
―――
「たぁん!!」
「っわあ!? 見えちゃう!」
待ちきれなくて、美貴は午後の講義が終わると同時に
亜弥ちゃんの高校まで全力疾走でやって来た。
着いてから5秒も経ってないとき、膝に手をついて荒い息を整えてると
亜弥ちゃんがマッハの勢いで走ってく……るのはいいんだけど、
あまりにも速いもんだからスカートが
はためいてひらついて危ないったらありゃしない。
だああ! ひらつきの中のトキメキは美貴以外閲覧禁止だってのに!
「亜弥ちゃんストップ!」
「ミキたぁん!」
「わああっ」
慌ててスカートを抑えようと走り寄ったら、美貴の広げた腕を見て
勘違いしたらしい亜弥ちゃんがフニャフニャの笑顔で抱きついてきた。
「たん! 迎えに来てくれたのぉ?」
「え…、あ、うん…」
そのまま首にゴロゴロと甘えられて、すんごいくすぐったい。
顔の肉が緩々になって、引っぱったらビローンって伸びそう。
- 188 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:45
-
「ありがとぉ。
いまね、あそこの窓からね、たんの姿が見えてね、すっごい嬉しかったんだぁ」
「へ!? 見えてから来たの?!
あの窓の教室から?!」
「うんっ」
すっ、すごっ…、今でさえ美貴がここに着いてから30秒も経ってないのに…。
「だって、たんだもん。
すぐ見つけたし、私のことも見つけてほしくて…」
「……そっか。ありがと、見つけさせてくれて」
「えへへぇ、でもぉ、次はちゃーんと自分で見つけてね?」
「…い、今のは息がしんどくて下向いてたから遅れただけだし。
次は…、うん、大丈夫」
たぶん。でも亜弥ちゃん早すぎだから、勝つのは難しそうだなぁ。
「ぜぇぇーったいだよ? 約束」
「ん、約束」
「約束のちゅー」
「…したいけど、ここ学校のまん前だから。
は、はやく家帰ろ?」
「むぅ…ちょっとくらいいいじゃん。たんのケチ、照れ屋、テレタン」
「ぐっ、か、帰ろうってば!」
- 189 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:45
- 我慢すんのも大変なんだから! 見えてんでしょ!
さっき亜弥ちゃんが言った窓からこっち見てる高橋ちゃんとその他
クラスメイトのみなさんの姿っ!
卒業生としてはみだりに学校の風紀を乱しちゃいけないとか
色々思うことがあんの!
「ふーん、じゃあ家帰るまで我慢してあげる」
「家っていうか部屋まで我慢してね、絵里が帰ってるかもしんないから」
「見られても大丈夫だと思うけどなー」
「だめ!」
そ、そりゃ絵里も…っレイナンと…モゴモゴなのはわかってるけど!
わかってるけどだめなんだい!っと亜弥ちゃんが怖がらない程度に
眉間に皺を寄せると、ふいに後ろからパッパカとかゴロゴロっていう
音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「ほぇ? なんだろうねぇ?」
振り返っても、美貴たちの後ろにはなにもない。
けど音はどんどんこっちに近づいてきて。なに?なんなの?って
サッパリわからず固まってると……見えた。
「あっ、美貴さんと松浦さんだぁ」
「ウマ――♪」
なんじゃありゃぁぁああああ!?!
- 190 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:47
-
ゴロゴロゴロゴロ パッパカパッパカ
£
/⌒/⌒/⌒ヽ⌒丶
│;;;┌────┐:: | ∧彡
│;;;│☆ノハヽ ,| :: | 彡 ・\ ウマ――♪
│;;;│ノノ*^ー^) | :: | 彡 人ヽ)
│;;;└─○○─┘ ::|ニコ彡彡 ̄ ̄ ̄ /
:、,,,ゝ ヾ __;;;;ノ;;;;ノ// ヾ _ /
◎◎ ◎◎ //〉〉 ̄//〉〉
''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''
「きゃああ!? たん! お馬さんだよぉ!!」
「うっ!?ううう馬ぁあってゆーか馬車ぁあああ!??!」
しかも乗ってたのって………
「えええ絵里ぃぃ!!
待ちんしゃい絵里ぃぃぃ!!!」
「田中ちゃん!!なんで藤本ちゃんがニィのマユゲンポケット持ってるニィ!!」
「あ、その、昨日持ち出しちゃったらしくてっ、
今日返すハズやったんですけど…」
「こんな明るい時間にあんな目立つもんに乗って帰っちゃって!
こうなったらあさ美ちゃんに頼んでポドリアルスペースをっ…」
「 塾 長 」
「ん…? んなぁっ!? モッさん!
おたくの妹さんが大変ニィ!!!!」
- 191 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:48
-
………やっぱり絵里なのね。
クマの次は馬車か。………………なんとかならんか、あの子。
あれじゃあ人目は避けられないよね。
黒髪の控えめな笑顔がかわいい女の子(あら、よく見たらあの子藤本さん家の
絵里ちゃんじゃない)が、白馬のひく馬車に乗ってたって
ご近所で評判になっちゃうね。
「もしもし! あさ美ちゃん!?
至急力を借りたいんだニィっ…実は馬車が……え?
いま詰まったシュレッターを直してて手が離せない?
ちょっ、待って! なんなのその普通すぎる理由はっ!
シュレッターよりも藤本ちゃんがっ…!」
「塾長ぉ! れいなは絵里のこと追いかけるけん!」
………もう、美貴、知らない。
「たん! 私たちも追いかけなくていいのぉ?!」
「いいのいいの、アハハ…」
「な、なに笑ってるのぉ?
お馬さんに攫われた絵里ちゃんなんとかしないとっ…」
アハハハ、アハハハハ。
違うって亜弥ちゃん。
絵里は自分から乗ったんだよ、自分から。あのファンシーでパンプキンな馬車に。
- 192 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:49
-
「いい天気だなぁ…」
「たん! 空見てる場合じゃないよぉ!」
見上げた空は、雲ひとつない快晴。
降り注ぐ太陽の光は、お父さんが吸ってたタバコの煙以上に
ひどくひどく目に染みた。
「あさ美ちゃん! お願いだから助けてってば!
またおばあちゃん家行ったときスパム買ってきてあげるから!
………ニィ? なさばな? なんの話ニィ?
ちょっと! あさ美ちゃーん? おおーいあさ美ちゃーん」
あ、そうだ。これ言うために会いにきたのに忘れてた。
「亜弥ちゃん、今度の創立記念日のことなんだけど」
「絵里ちゃーん! あぁ! もうあんなに遠くまで行っちゃったよぉ!」
「デートしよ」
「田中ちゃん追いつけるかなぁ…ってふぇ? たん、いまなんて?」
「だから、デートしよ。
美貴もその日、大学休みだからさ」
「ほんと!? 嬉しい! たん大好き!!」
「あさ美ちゃーん、おーい」
- 193 名前:デートをしよう、今度こそ。 投稿日:2004/08/06(金) 02:49
-
- 194 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/08/06(金) 02:50
-
その昔、諸事情であの食べ方を実践したら
気管に粉、喉に餅という事態に陥り、死にかけました(・∀・)
大変危険ですので絶対に真似しないでください。
川VvV从<誰も真似しようなんて思わないよ。
レス、ありがとうございます。
>>168ピクシー様
川*’ー’)<あーしのがショックやったやよ!
羨ましいですねぇ。私はどっかの弁当屋の適当なソーツカツ丼しか
食べたことがありません・゜・(ノД`)・゜・
>>169つみ様
川*’ー’)<待っとってくれたん? 嬉しいやよー。
亀ちゃんは最強というかなんというか
田中さんは苦労しそうです(w
>>170名も無き読者様
え? ただのかわいい女学生ですが?(爆
川o・-・)<完璧です。
書いといて私もサッパリわかってませんので
適当に読み流してください。
>>171名無飼育さん様
川*’ー’)<ウキキッ、ありがとうやよーw
>>172名無飼育さん様
川*’ー’)<笑ったんか、ソーツカツクラッシャー喰らわせてやるがし。
女の子は地理弱いですから(w
私なんて福井がどこにあるかもわかりません(ホホホ
- 195 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/06(金) 03:30
- 地元の銘菓がこんなところに・・・
ミキティーは鼻息できな粉が飛び散るあのお菓子をよくこぼさずに食べましたねw
あれは食べ方にコツがいるんですよ
- 196 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/06(金) 12:06
- 更新乙彼サマです。
自分は子供の頃にあんな感じのモノを喰って詰まって死に掛け、
それ以来トラウマになりました。。。
にしてもただの・・・?(汗
あ、いや、完璧にそうですよね、うん。
続きも楽しみにしてます。
- 197 名前:つみ 投稿日:2004/08/06(金) 18:58
- 更新乙彼さまです。
今回も笑わさせていただきました。
わたくしは昔焼き鳥の最後に残っていたところを食べようと
串をそのままのどにつっこんでしまった経験からそれ以来あまり串ものは食べていません・・・・
次回も楽しみにしております。
- 198 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/06(金) 20:59
- きな粉と来たか矢口さんw
よくも残さずたべられたもんですね美貴ティも。
- 199 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/07(土) 10:37
- デート楽しみ〜。
邪魔者が入らない事を願います。
- 200 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/09(月) 03:23
- 更新お疲れ様です。
自分も好物ですよ、餅。
さすがに、そんなに一生懸命食べた事はないですが(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/09(月) 22:05
- ライブ・ア・ライブ............素敵です。
- 202 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/09(月) 22:15
- 落とします。
- 203 名前:我道 投稿日:2004/08/22(日) 19:40
- 遅刻ですが、更新お疲れ様です。
ミキティ…漢(おとこ)ですなぁ…さすが帝です。
あの喰い方の真似はさすがに出来ません。
亀井さんのハジケぶりにも微かに期待しつつ、次回の更新も待ってます。
頑張ってください。
- 204 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:57
-
「やばっ」
ふいに手にした休日、亜弥ちゃんとのデート。
初恋中の中学生じゃあるまいに、昨夜なかなか寝つけなかった
美貴が時間ギリギリに目を覚ますと、すでに仕事に行ってるハズのなち姉が
疲れきった表情でリビングのソファに沈んでた。
「仕事休んだの?」
「……うん」
声をかけると、だるそうにキョロッと美貴を見た目には
いつもの輝きがない。
ニコニコが基本形なこの人のこんな顔見るのは
絵里が目を覚ましたあの日の朝以来だ。
ごっちん、キツかっただろうな、なち姉おいてくの。
働かなくていいから店に連れてって
自分の傍においときたいって思っただろうに。
だって美貴ですら、急いで支度することも忘れて
津波みたいに押し寄せてくるほっとけないって気持ちに襲われてんだから。
- 205 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:57
-
「なっち、カボチャが嫌いになりそうだべ」
思わず近づいて頭を撫でると、苦々しげな声が聞こえた。
すっぴんでいつも以上に幼さの残る目に、うっすら涙が浮かんでる。
「カボチャは悪くないよ」
「わかってるべさ! わかってるけども!」
ぽたっと、声を張った勢いで涙が零れ落ちる。
それを乱暴に手で拭う仕草が見てらんなくて、思わず肩を抱く。
「もう……帰ってこないつもりなのかも…っ…」
「気が済んだら帰ってくるよ。
塾長が面倒見てくれてるから大丈夫だって」
「グスッ…でも!でもあのカボチャはそのジョクチュウちゃんのもんっしょ?!
亀ちゃんを変な世界に引っ張り込んだ子っしょ?!」
「いや塾長だし。
てか無理に引っ張り込んだワケじゃないよ。
むしろ絵里が進んで入ってっちゃったワケで」
「ふぇぇん…美貴のバカぁ」
「へ? 美貴?」
おいおい美貴かい。苦笑いすると美貴をグーでポカポカしながら
腕の中の23歳は本格的に子供泣きしちゃって。
この人ホントに23? 信じらんないよね。前に誰かが言ってたけど、まさにこの世の奇跡っていうか
やっぱりこの世の奇跡っていうか、なっち、ミラクルをありがとうなっち、みたいな。
- 206 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:58
-
ことの始まりはあの日。
美貴が信玄餅を見事に平らげて亜弥ちゃんとのデートを手にしたあの日。
馬車で駆け抜けて行った絵里を見なかったことにした美貴だけど
あのあと田中ちゃんから『捕まえました!ばってん…っ引きづられてるとよ!』って
悲鳴みたいな声で電話がかかってきて、
おいおいレイナン、それ捕まえたって言わないじゃん。
捕まえたっていうより走ってる馬車になんとかしがみついただけじゃん。
『絵里ぃ!止めっ…絵里ぃ!!』
『ガタゴトガタゴト』
『んー楽しいっ、…あれ?いまのれいなの声?』
『絵里!靴の底がなくなるぅぅぅ!!』
それでもなんとか、厚ゾコでもなんでもない普通のスニーカーを履いてたレイナンの
奮闘で無事に馬車は止まったようで。
場所聞いて美貴たちが急いで駆けつけると、馬車の小窓から顔を出して楽しそうに
笑ってる絵里と、それを目立たないように木陰に隠して人目に触れないようにしてるレイナンがいた。
『藤本ちゃん!ニィのマユゲンポケット返すニィ!』
『ハイ』
『お、意外と素直に…ってその馬車も返すニィよ!!』
『えぇー、まだ乗るぅー』
『ダァメ!』
- 207 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:59
- 素直なんてとんでもない。塾長がマユゲンポケットとやらに馬車をしまおうとしたら
絵里は頬を盛大に膨らませた。
やだやだぁって馬車の中に引っ込んじゃって呼びかけても返事もしない。
『仕方ない、馬だけでも先にしまうニィ』
『ま、待って!リンちゃん!!』
『ヒヒーン!』
リ……リン…?
クマのラムネの次は馬のリンか。
馬だったらトウカイエリリンとかカメコテイオーでよさそーなのに……。
『私だったらマツウララかなぁ? 勝てなさそうだけど』
そだね、ハ●ウララみたいだもんね。
美貴だったらやっぱミキティは外せないんだけどもういるしなぁー…
『ってそんな「私が馬主になったら」っていうもしも論争してる場合じゃなくて!
絵里っ!今度どっかの牧場連れてってあげるから!
いまは降りといで!』
『むぅー』
牧場行ったら色んな動物がいるよ!ポニーとかにも乗れるよ!
ポニーだよポニー!トニー谷じゃないんだよ!
アベック歌合戦出なくていいから!「あなたのお名前なんてぇの?」とか聞かないから!!
- 208 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:59
- 必死で叫んでも、よっぽど気に入ったらしい絵里は唸るだけで
馬を取り外されてただの箱と化してるパンプキンの中から出てくる気配すら見せなかった。
『仕方ない。こんなファンシーなもん出しっぱじゃ目立ってしょうがないよ。
とりあえず家に持って帰ろ。美貴が馬代わりになるからさ』
『れ、れいなも手伝います!』
このへんは思い出したくない。
ガタゴトと、美貴とレイナンでパンプキンを引いたんだけど
馬がなくても目立つもんは目立つし、夕飯の買い物に行く主婦のおばちゃんたちや
遊んでる小学生からの視線が痛いし、絵里は『リンちゃん…クスン』って泣き出すし。
藤本家についたらついたで、大きいから玄関に入んないし。
庭じゃ近所から丸見えだし、ブルーシート被せたら中の絵里が喜んじゃって
ますます出てこないし。
(美貴は理解しかねるんだけど、隙間とか狭いとこ好きだから、シートで覆われて
視界に圧迫感があったのが気持ちよかったらしい)
まーこうなったら待つしかないってことで
美貴たちはリビングに行って塾長にお茶出したりして、
絵里のことは頑なに傍を離れようとしなかったレイナンに任せた。
あれは…時間が経つのも気づかないくらい美貴と亜弥ちゃんが夢中で
塾長の『マユゲビーム〜熱光線から始まったその歴史・第三章〜』に聴きいってたとき
庭からつんざくような叫び声がして、ハッとあたりを見ると
外がいきなり暗くなってた。時計を見ると、もう7時過ぎ。
いまの声……、なち姉が帰ってきたんだ!
- 209 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 05:59
-
『な、なんだべ! このファンシーでパンプキンなシロモノはぁああ!?』
『んあ、絵里ちゃん買ったの?』
『ううん、新垣さんのポケットから出てきたの』
『ポッ…ポポポポケットからこんなビッグビッガービッゲストなモンが
出てくるワケねぇっしょ!!
買ったんでないならどこで拾ってきたんだい!
いますぐ元の場所に返してくるべさっ!』
あわわわなち姉落ち着いて!
急いで庭に飛んでくと、絵里のライダーっぷりや事情を知らない
なち姉は真っ青になって隣でボケッとしてるごっちんにしがみついてた。
『なち姉っ!あの、これは』
『美貴は黙ってて! 亀ちゃん! まずは降りてきなさい!』
『……やだぁ』
『なっちの言うことが聞けねぇべかっ!』
『なつみお姉さん落ち着いてつかぁさい!
これはその…れいなが絵里にプレゼントしたもんやけんっ』
『なっ!?メンタイコちゃん!
こんなデカイもんプレゼントしちゃ困るべ!』
『…め、明太子って…』
こないだは普通に呼んでたのに、咄嗟に嘘をついて絵里を庇ったレイナンを
なち姉はキッと一睨み。
明太子ちゃんって、なんでもキャラにするアンパンマンでもいたかどーか…
つーか鉄火のマキちゃんってアリなの? 頭に鉄火巻生えてんだけど、しかも2本。
いやそれ以上にタオルちゃんってありえないよね。
名前になんのヒネリもないし、森の中をタオル使ってターザンみたいに移動すんだよ、すごくない?
- 210 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:00
-
『お姉ちゃんひどい!!
れいなはれいなだもん!明太子だってそこまで好きじゃないんだもん!』
『んあ、そーなの?』
『あ、ハイ』
『そんなことはどーでもいいべ!そんなデカイのお庭においたら洗濯物干せないっしょ!
お家の中にだって入らないし!メンタイコちゃんに返しなさい!』
『やぁだあああー!』
でも1回アーアアーってやってみたいかも…ってハッ!脱線してるし!
美貴がターザンへの憧れに思いを馳せてる間に、なち姉は嫌がる絵里を
無理矢理引っ張り出そうとしてた。
『ちょっ、なち姉! 心配しなくてももうすぐ返すからっ…』
『任せるニィ』
塾長! なんて頼れる背中っ!
黙っててって言われたけどもう無理!と思って駆け出そうとすると
塾長が白い歯を見せて美貴を制し、喚くなちえりに歩み寄っていった。
『返すべ!!』
『やあだ!』
『天使なほうのお姉さん、聞くより見てだニィ。
マユゲビーム零式・メモリー青春の光!!!!』
ピカァーッ
- 211 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:01
-
『ひゃあああ!?』
『んあぁっ!? なっち!!』
だああ!? ままま眩し…っくない!
塾長が右手の人差し指を額にあてて叫ぶと、夜の闇の中に深緑色の光が発せられ、
なち姉と、なち姉を怪しげな光から守ろうとしたごっちんをモワ〜ンと包んだ。
青春の光が深緑って……。塾長、なにがあったんですか?
『きゃっ、新垣さん!お姉ちゃんになにしたの?!』
『口で言っても聞いてくれなさそうだから
藤本ちゃんがこうなった経緯を見てもらってるだけニィ』
経緯ってどっから?
あのポケットから馬車を取り出すとこから?
でもそれだとイマイチ伝わらない気が………
『たん、なつみさんたち大丈夫かな?』
『た、たぶん…』
うん、それも心配だ。
なんてったって美貴は1度マユゲビームの失敗であんな目に遭ったし。
けどいまは塾長を信じるしかない。
あ、でも! なんか深緑の中にうっすら見える2人の顔がどんどん歪んでくんだけど…っ!
- 212 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:01
-
光が2人を包んだまま静かに時が過ぎて。
いつの間にか絵里はパンプキンを降り、レイナンに寄り添って
光を見つめてた。美貴も亜弥ちゃんと手を繋いでじっとしていた。
『そろそろ終わるニィ』
塾長の声がしてまもなく深緑は闇に溶け、夢の中にいるような
顔してたなち姉とごっちんが、ハッと目を見開いたのが見えた。
『…………いまのは、ほんとのことかい?』
ふいに聞こえた、唸るような低い声に、心臓が揺らいだのは美貴だけじゃない。
問いかけられた塾長も、普段のなち姉の柔らかい声をよく知るごっちんも
絵里もレイナンも亜弥ちゃんも、みんな一斉になち姉を見て足をすくませた。
この人、なち姉じゃない。
血の気を失った白い顔にも、思いっきり座ってる目にも温度がない。
誰これ、なち姉じゃないってば。
『美貴、美貴は知ってたの?』
『っ…』
いきなり振り向かれて、視線に体が硬直した。
塾長、またなんか間違えたの? なち姉になにしたの?
なに見せたらこうなるの?
- 213 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:02
- 疑問がそのまま顔に出てたのか、塾長をチラッと見ると
手をブンブン振ってて…
『間違えてないニィ! ちゃんと藤本ちゃんが初めてクマに
乗った日から今日までをダイジェスト盤でお送りしたニィ!』
ゲッ。塾長、そんなとこから見せたの?!
たしかにそっからじゃないと理解はしずらいけど。
てことはなち姉も絵里が暴走族を蹴散らしたこととか―――
『ほんとなんだね。………亀ちゃん』
パァン!
『『『『『……え?』』』』』
なち姉と絵里以外の全員の声がハモった。
みんな驚きに固まって、叩いた手を振り下ろしたまま絵里を睨むなち姉と
叩かれた頬を抑えて呆然としてる絵里を見てた。
『お、お、おね、えちゃ……』
『……もしものことがあったら、どうする気だったべか…。
なっちは亀ちゃんが大事なんだよ? すっごくすっごく大事なんだよ?
なのに、なんで亀ちゃんは自分を大事にしないんだいっ!!』
流れる涙を気にもとめずに絵里を責める目は
いままでのどんなときのなち姉よりも怒ってて、美貴が初めて無断で
朝帰りした日のなち姉なんか比べものにもならなくて。
- 214 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:02
-
この激しい怒りは、裏返せば激しい愛情で。
そうだよ。誰よりも絵里を想ってるなち姉が平気なハズないんだ。
シートベルトもついてないのに、あんな速く走るクマに
絵里が乗ってるとこ見せられて。
自分が美貴を止めてた間に、美貴の代わりに戦った絵里を見せられて。
危ないのはわかってるけど、絵里が好きなら、乗りたいならって
許しちゃった美貴とは違う。
親代わりっていう責任を背負ってるなち姉は、許すワケないんだ。
『お姉ちゃんがぶったぁあああ!!!』
『えっ、絵里! どこ行くんね絵里ぃい!!!』
そんな気持ちを、絵里はわかんなかったのか、
わかってても叩かれたショックが大きすぎたのか、
悲痛な叫びを残して庭を飛び出していった。
残された美貴は動くこともできなくて。
亜弥ちゃんの手を握ったまま、ただ突っ立ってて。
2人の手のひらが汗で湿ってくのを感じながら、ごっちんの胸で
泣き崩れるなち姉を見てた。
- 215 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:03
-
レイナンが、足の速い絵里を見失いそうになりながら追いかけて
5キロも離れた河川敷で捕まえてくれたけど。
絵里は家には絶対に帰らないって言い張って、なち姉もなち姉で好きにしろなんて
言うもんだから、その日から1度も家に帰ってきてない。
レイナンからの報告で、塾長の家にお世話になってて
元気だとは聞いてる。何度か迎えに行ったけど会ってもらえなかった。
梨華ちゃんからメールで色々聞いてるから
まあ大丈夫かって美貴は安心してるけど。
でも、絵里が生まれてから、入院してたとき以外こんな離れて暮らしたことなんて
なかったなち姉は、毎朝絵里の部屋の前を通っては溜息をついて
絵里のお茶碗にご飯をよそいそうになっては俯いて
庭のカボチャを眺めては右手を閉じて唇を噛む日が続いてるんだ。
絵里が乗ったものの中では、馬車が1番安全だったけど
目に入れば絵里を叩いた手の痛みが蘇るんだろう。
人を叩くのって、大事な人ほど叩いたほうが痛かったりするから。
美貴だってミツオを殴るとちょっと痛いし。あくまでちょっと。ナノ単位で。
「亀ちゃん、ご飯ちゃんと食べてるかなぁ?」
「昨日しゃぶしゃぶだったって」
「しゃぶしゃぶ…」
塾長ん家金持ちだから、きっといい肉だったんだろうな。
ちょっと羨ましくてヨダレが出る。
- 216 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:03
-
「亀ちゃん、自分でシャブシャブしたことないのに…」
「え?」
「火傷すると危ないから、しゃぶしゃぶのときは
いっつもなっちがシャブシャブしてあげてたっしょ。
前にしたとき、見てなかったのかい?」
「あー…自分の肉に夢中で……」
藤本家では滅多に出てこないメニューだし、美貴肉命だし。
それにもう絵里も高校生なんだし、てっきり自分でシャブシャブしてると思うじゃん。
美貴も昔はお母さ…ミツオがね、ミツコだった頃はやってくれたけど。
「…ん? そういえば美貴、今日まっつーちゃんと
どっか行くんでないのかい?
まっつーちゃんえらい早起きしてオシャレして
『ミキたんとデートなんですぅ』って1時間も前に出かけてったよ?」
「ああああーっ!!!
そうじゃん!!急がなきゃ!」
なち姉の打ちひしがれた姿にすっかり忘れちゃってた!
約束までにあと20分しかない!
つーか1時間前って亜弥ちゃんなんのために?!
「同じ家出て同じ場所に行くなら一緒に出かけりゃいいのに」
「しょーがないじゃん!
亜弥ちゃんが『デートはやっぱり待ち合わせしないと』って言うんだもん!」
「若いねぇ…」
- 217 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:04
- なち姉だって若いでしょーが!
見た目も中身も実年齢以上にっ!!!
ダダダッと忙しく家中を駆け回って歯磨きを特に入念にしてから
1番気に入ってるジーパンとジャケットを身にまとい、直す時間がなかった
寝癖に帽子を被せる。それをニヤニヤしながら見てるなち姉は、やっぱ顔色が悪い。
「1人で大丈夫?」
「なーに言ってんだい。
ちょっと疲れが溜まっただけなんだから心配いらねぇっしょ」
「…そう。じゃ行ってくる」
「健全なデートすんだよ〜」
「っ、うっさいな! 健全じゃないデートするワケないじゃん!!」
「イヒッ」
ったく、なにがイヒだ! 旭化成かあんたは!
あのCMちょっとウザイんだよ!1回見たら飽きんだよ!
ってわあ!? 時間やばっ!
亜弥ちゃんごめん!たぶん…っいや5分は確実に遅れる!だあああ!!!
- 218 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:04
-
―――
「ふぅ。デートの日ぐらい早く起きればいいのに。
まっつーちゃんは大変だねぇ」
ソファに沈み込んだまま、なっちしかいないガランとした家で
ポソッと呟いてみる。
独り言だし、当たり前のように返事はなくて、ちょっと寂しい。
独り言といえば、亀ちゃんは昔からよく独り言を言う子だったべ。
なっちといても、たまに壁に向かって喋ったりして。
最初ちょっと怖かったべさ。なんか見えてるのかと思ったから。
『みえるって…オバケ? やだよぉ、怖いもん。ぐすっ』
おまけにすぐ泣く子で、泣いたら泣いたで泣くのが好きなのかって
いうぐらい泣きっぱなしで。
幼稚園に入ったばっかのときは毎日真っ赤な目で帰ってきて、
お父さんが呆れてたっけ。
毎晩絵本読んであげるのはなっちの役目で、シンデレラ読んだげたあとに
『明日は泣かない。もう泣かない。ね?』って言うと
そのときは頷くんだけど、やっぱり次の日も目は赤くて。
なっちが遠足で、いつもより早起きした日だったかな?
物音で起きちゃった亀ちゃんがテレビつけたら、仔猫の人形劇やってたのは。
- 219 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:04
- 出てくる動物たちに、たちまち夢中になった亀ちゃんは
毎日早起きしてその番組を観るようになって。
そのうち、絵本を読む代わりに、寝る前はなっちに
仔猫ごっこをせがむようになって
いつの間にか、真っ赤な目をしてることもなくなった。
亀ちゃんが、少しずつ、少しずつ、けど確実に強くなっていく姿を
頼られなくなる寂しさも感じながら
それでも嬉しく見つめつづけてきたけど。
まさかあんな強さを身に付けちまうなんて………。
いや、強さというか、無鉄砲さというか。
なっちの気持ちも知らないで、亀ちゃんのアホ。
亀ちゃんなんか、亀ちゃんなんか、……………大好きっしょ。
あーあ、上手くシャブシャブできたのかなぁ?
亀ちゃんが初めてシャブシャブするとこ、見たかったなぁ。
でもこれからは、もっともっと色んなことに
なっちの見てないところでチャレンジしてくんだよね。
お姉ちゃんって、寂しいべさ。
......................................
...........................
...................
- 220 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:05
-
「…なっち? 寝てるの?」
「べさ…?ひゃあっ!?」
「んあぁっ」
うとうとしかけたとこに、思いがけなく近くで声が聞こえて目を開けると
至近距離にごっちんのドアップ。
びっくりよりなんでって気持ちが大きくて口をパクパクしてると
ごっちんは右手に持っていた袋を差し出した。
「梨。お母さんがなっちにって」
「あ…ありがと…。仕事は?」
「今日のごとーはお店にいても使えないって。
だから、これがごとーの仕事」
そう言うやいなや、ごっちんはソファに腰掛けてなっちを抱き起こし
ぎゅうっと優しく包んでくれた。
ごっ、ごっちん…嬉しいけど…2人も休んで迷惑かけちゃダメっしょ!
「いいの。今日は上のお姉ちゃんも手伝うんだって。
それにさ、なっちに元気出してもらわないと
ウチの店にあるなっち特製メニュー出せないじゃん、人気なのに」
「…ん、そだったね」
「なっちがそんなんだと、絵里ちゃんが帰ってきたときびっくりしちゃうよ」
「………うん」
- 221 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:07
-
ごっちんの優しい声が気持ちよくて。
特有の香りにアロマオイルも敵わないほどの安らぎを与えられて
ただでさえうとうとしてた意識が深くもぐりこんでく。
このまま、ごっちんの胸で
何十時間もぶっ続けで寝ちゃいたい。
それで、起きたとき亀ちゃんが帰ってきてたら、
そしたらきっと、なっちの目真っ赤になるけど
ウサギさんみたいになってもいいから、亀ちゃんに会いたいな。
「なっち、おやすみ」
「…おやすみ…」
謝りたい。
会って謝りたいよ。
亀ちゃん、ごめんね。
叩いちゃって、ごめんね。
痛かった、よね。
やがて訪れた眠りの中に出てきてくれた亀ちゃんは、あの頃の、真っ赤な目で
なっちのあとをテケテケ追っかけてきた亀ちゃんで。
夢だってわかってたけど、なっちは涙を止めることができなかった。
- 222 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:07
-
- 223 名前:ファンシーパンプキン騒動。 投稿日:2004/09/12(日) 06:08
-
建て直しに思ったより時間がかかってしまいまして
1ヶ月以上空いてしまって申し訳ありません。
カオリン、なっち、おたおめ(激遅
美貴様・゜・(ノД`)・゜・
ご回復を心よりお祈りいたしております。
レス、ありがとうございます。
>>195名無飼育さん様
おぉ、地元の方。コツあるんですか?さすがですね(w
ミキティが食べるシーンは実際に食べながら書いたのですが
机が砂漠みたいになりました(悲
>>196名も無き読者様
ト、トラウマ…お互い命があってよかったですねw
いまさらですが、女学生という言葉は古臭かったと反省しております(爆
>>197つみ様
串は痛そうですねぇ。
想像しただけで怖いです。ご無事でなにより。
川o・-・)<でも串ものは美味しいものばかりです。完璧です。
>>198名無飼育さん様
(〜^◇^)<きな粉は体にいいんだぞ!
(VvV从<愛のためだかんね。
2人とも、特殊なアホですw
- 224 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/09/12(日) 06:08
-
>>199名無し読者様
デート、もうちっとお待ちください。
邪魔者は……たぶん入りませんのでw
>>200ピクシー様
あんまり変に食べると危ないですからねw
これからもマターリ食べてください。
>>201名無飼育さん様
中世編の衝撃は忘れられません。
レスはsageでお願いします。
>>202名無飼育さん様
ありがとうございました。
>>203我道様
川;VvV)<メスだよ!
从*‘ 。‘)<わかってるよぉ。
亀井さんハジケすぎて飛んでってしまいました。
- 225 名前:名も無き読者 投稿日:2004/09/12(日) 12:51
- 更新お疲れサマです。
うぅ、なんか久々にせつねぇべさ。。。
でもミキティ、ナノなのね・・・。
ていうか相変わらず随所に散りばめられた小ネタが面白過ぎますw
次回も楽しみに待ってます。
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/12(日) 13:04
- 机がきな粉だらけになった大惨事…さぞ
お片付けが大変だったでしょうね作者様w
デート楽しみに待ってます。
- 227 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/12(日) 21:11
- デート楽しみに待ってます!
- 228 名前:ピクシー 投稿日:2004/09/16(木) 09:10
- 更新お疲れ様です。
姉妹愛ですねぇ・・・
今後に注目。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/18(土) 15:35
- マツウララがツボにはいった。ハライテェー
- 230 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/18(土) 22:55
- 更新お疲れ様です。
ずっとROMしてたんですが、耐え切れずw
久々なちごま!過去作品からの読者としてはめちゃめちゃ
嬉しいっすね〜。
頑張ってください。次回楽しみに待ってます。
- 231 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:17
-
「………はやくっ」
長い、長い、長過ぎる。
起き抜けで力の入んない体にムチ打って、猛ダッシュで駆け抜けてきたというのに
大通りに出たとこで捕まった信号機はなかなか青に変わらない。
携帯を見ると、待ち合わせの時間までもうあと2分しかなくて、
いますぐ信号が変わってもここからじゃどんなに走っても10分はかかる。到底間に合わない。
電話しとこ。ピッピッ。トゥルルルル。ガチャ。
『はい、松浦です』
「あ、亜弥ちゃん? あのね、美貴」
『今日は、たんとデートなので電話に出ることができません。
ご用の方はメッセージを残すなりメールを打つなりしてください。
私とたんのデートを邪魔する人は、何人たりとも許さないんだからっ! ピーッ』
「………」
どうしよう。
聞かなかったことにしようかな、いまの。
てか亜弥ちゃん、美貴とのデートほんとに楽しみにしてくれてるんだ。
なのに遅刻って……怒るかなぁ、怒るよねぇ、どうしようどうしよう。
- 232 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:17
- アセアセ、イライラ。
もう1分以上赤なんだけど! はやく変わってよ!
レッドはリーダーの色だけどいまの美貴に必要なのはブルーなんだよ!
目の前をビュンビュン走ってく車を恨みがましく見つめながら
地団駄を踏む。美貴も車ならなぁ、免許持ってないけど。
こないだ矢口さんが歌ってた生きてる車がほんとに存在してくれればいいのに。
『ぼくはブンブー、ヘーイヘイ♪』
『………』
『お前らの耳はロバの耳かゴルァ!
ヘーイヘイつったらヘーイヘイって合いの手入れろよ!!』
『……へ、ヘーイヘイ』
『まんまるタイヤが〜、ぼくの足ぃ〜、デコボコ〜…ってボケッとすんな!
手拍子ぐらいしろって!!』
『…いや、なんですかブンブーって』
『んなっ!? ブンブーはブンブーだろ!
走って泳いで空飛んで、ぼくって生きてる車さ〜♪だよ!!』
『知りません。
てか泳いで空まで飛ぶんですか? 車のくせに』
『藤本テメェ!!
お前なんか愛よファラウェイだチクショウ!!
ほんとのキスをお返しにくれてやる!メモリー・オブ・ラァーブッ!!!』
『ゲ。いりません』
亜弥ちゃんでもないのに美貴の唇に触れようとしないで。
大体なんのお返しだ、なんの。ラブとかキショい。
- 233 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:18
- 『あ、藤●理恵ですかー? ダンクーガ懐かしー』
『里田ぁ! 矢口の味方はお前だけだよぉ!』
『…誰それなにそれ』
『藤本ソルァ!COOL & CLASSYでC.C.ガールズだこのスットコドッコイ!
お前みたいな果てしないミディアムレアは焼いてやる!こっちこい!!』
『まーまー矢口さん落ち着いて。
ミッキーダンクーガ知らないのー? 見かけによらずネンネちゃんだねぇ』
『………』
そういう問題? 美貴と1こしか違わないのに知ってるまいちゃんが
初老なんじゃないの? って矢口さん!!キャンプファイアー組み立てんなっ!
本気で焼こうとしてきたチビはムカついたけど、2人は燃え盛る炎の前で
『やってやるぜ!』とか言ってえらい盛り上がってて楽しそうだった。
てか教室でしていいの?……………いっか。
そーいや、今日みんなは平塚に行ってんだよね。
いまごろ競輪場で額に汗してハズレ車券拾ってるなんて………
美貴、回避できてほんとによかっ…
ペーペーポーペーペペポー♪
「ん?…あ!青になってる!!」
こーこはどーこの細道じゃー…って危ない危ない。美貴がファラウェイしちゃってた。
時間…もう過ぎてるし! 急げ!急げミキティ!略してイソティ!
- 234 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:18
-
「ハァッ、ハァッ、あ、亜弥ちゃん!」
いた! 約束の時間に10分遅れで着くと、この町のシンボル・ペンギンの
ペン公の前で鏡片手に前髪をイジってる亜弥ちゃん発見。
美貴の声にバッと勢いよく顔を上げてキラリと光った歯に、ちょっと眩暈が…。
「ミキたん!!」
「ご、ごめんね、遅れちゃって。待ったでしょ」
「ううん。待ってないよ。私もいま来たとこ」
「え? あ、そーなの?」
「うん」
そっか、よかったぁ。
亜弥ちゃんも遅刻かぁ、美貴よりはやく家出たのにねぇ。
と、亜弥ちゃんの笑顔に安心してホッとしたら、左斜め後ろのほうから
ヒソヒソ声が聞こえてきた。
『藤本先生ったら究極のニブチン。完璧です』
『えぇー?なんでぇー?』
『わからんのかまこと。亜弥ちゃんはの、
デートのお決まりのセリフが言ってみたかっただけやがし』
『あーなるほど。
そういや30分は待ってたもんねぇ。いま来たってのは嘘だよねぇ』
『あ、2人とも、そろそろ行かないと始まるよ、宝塚』
『『はぁーい』』
- 235 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:19
-
「「・・・・・」」
ちょっと待てそこの3人。いまのマジ?
30分って、亜弥ちゃん約束の20分も前から待ってたの?
「……愛ちゃんのバカ」
略して愛バカ( ´ Д `)…じゃなくて!
「そんなに待ってたの? ごめん、ほんと」
「ち、ちがうの。待ってたっていうか、待ってたかったの。
たんがね、私のこと見つけて『ごめん、待った?』って言いながら
白いシャツをなびかせて駆け寄ってくるとこ見たかったから」
「…でも…」
シャツは白いけど、黒のジャケットはおってるからなびかなかったよ?
「い、いいの、そのへんは。なつみさん心配だったんでしょ?
ミキたん優しいからもっと遅れてくるかなぁって思ってたもん。
だから気にしないの」
「…亜弥ちゃんのが優しいよ」
「んふふ、たんにだけね。今日デートだし、特別!」
「わあ!?」
フニャッと笑った亜弥ちゃんは、突然ペン公の影に美貴を押しやると
素早く唇を舌でつっついた。
- 236 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:19
- ちょっと誰かに見られたら…っ!
こんなとこで、しかも舌でくるなんて思ってもなかった美貴は開いた口が塞がらない。
でもどんどん朱に染まってく頬を見て、亜弥ちゃんはすごい満足気。…く、悔しい。
「さてと、たん、朝ご飯食べてないでしょ?」
「…うん、けどいらないよ」
「ダメ! デートの朝はしっかり食べなきゃ!
あっちにある紅茶の美味しい喫茶店行こ!!」
「んぇ、美貴紅茶よりココアがいいなぁ」
「ならこっち!」
「わああ」
な、なんか亜弥ちゃん、朝からすごい元気じゃない?
美貴をぐいぐい引っぱってく背中がたくましいんだけど。
つーか美貴が生まれた町なのに、なんで亜弥ちゃんのが詳しいの?
「えへん、今度デートするって言ったらクラスの子が教えてくれたの!
愛ちゃん以外の子だから大丈夫だよ!」
へぇー、そうなんだ。ってそれ愛ちゃん可哀想じゃない?
「いいの!
だって愛ちゃん、『変な緑の汁出す店あるやよー』とか言ってくるんだよぉ?
緑の汁ってなに?って聞いたら『それは誰も知らん。妖怪人間の出生みたいなもんや』って言うし」
「…あの子、それ飲んだのかな…」
まあ、細かいことは気にしないでおくか。
- 237 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:19
-
―――
「ん、おいしい」
「ほんと? よかったぁ」
喫茶店で運ばれてきたココアを一口飲むと、それまで脳内を占領してた
怪しげな鍋からおたまで掬い取った変汁を飲んでる愛ちゃんの姿が一瞬で消えた。
小さな窓からわずかな光が入ってくる店内はほどよく混んでて
静かじゃないけど、全然うるさくない。
それもそのハズ、なぜかここはカウンターは普通なんだけど
テーブル席は1つ1つに囲いがあって、周りから見えないようになってる。
だから声もなに話してるかわかんないし、椅子も向かい合うんじゃなくて
2人掛けソファにくっついて座れて、まさにデートにはぴったりのお店。
「たん、あーん」
「あーん」
「アイーン」
「あいー…ってちがうし!」
「にゃはは」
こ、こんなバカなこととか、普通の喫茶店じゃできないし。
…と、そんなことを考えて、気づいた。
今日の亜弥ちゃん……………キレイじゃん。
ふっと近くに映った目元がキラキラしてる。
オレンジジュースをストローでチューチュー吸ってる唇は
潤いたっぷりでプルップルだし。フワッと耳の後ろから甘い香水の香りもして
いつもの、あんまり化粧っけのない亜弥ちゃんもいいけど
今日はほんと、愛と美の女神アプロディテも真っ青なぐらい綺麗で困っちゃう。
- 238 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:20
- ど、ドドドドレミファじゃなくてどうしよう。
意識しちゃったら、なんか緊張してきた。
亜弥ちゃんがこっち見てないときはいいんだけど、見られると見れないよぉ。
「…たん?」
「ひゃふぁいっ?」
「どーしたの? 震えてるよ?」
ひょえぃ!? だだだだめよ! それは逆効果だよ!
カップがカタカタ言っちゃってるのを見て、亜弥ちゃんはそっと包んでくれたんだけど
それにビクッと反応しちゃった美貴は、ソーサーの上にカップをカシャンと落っことした。
幸い零れなかったけど、亜弥ちゃんはびっくりしたみたいで…
「…やだった?……触ったの…」
「ちがうちがう!全然!なんて言ったらいいか…えっと、キスしよキス!」
「ふぇ?…んんっ!?」
やなワケないじゃん! むしろウェルカムだっての!
変に言い訳するよりさっさとこの緊張を解こう。
毒をもって毒を制すみたいに亜弥ちゃんのキスで亜弥ちゃんを制すって寸法だよ!
美貴ってば頭いい!!
「…はっ…ん……」
ってやば。ここってばキスにはもってこいってゆーか
囲われてるし、注文も全部運ばれてきたから店の人も来ないし
誰にも邪魔されないから、亜弥ちゃんに合図をもらって深くなったキスが止まってくれないよぉ。
いや、美貴が止めろよってことなのはわかってんだけど。心とは別物の体が大暴走なワケ。
- 239 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:20
-
「ちょっ…たん…まって!」
「もうちょっと…」
「んんぅっ…」
手がするすると亜弥ちゃんの膝丈のスカートの中へ入ってく。
こらこら待ちなさいって美貴も思ってんだけど
突入部隊は退却の意志を見せず、かと言って突入しすぎるワケでもなく
亜弥ちゃんの太ももトラップに引っかかっちゃって動けません。
太ももにへばりついて、たまに揉んだりする手に
戸惑っていた腕が美貴の肩にまわった。
するっと髪の毛に潜りこんだ指が、丁寧に美貴を撫でていく。
途端、キスは勢いを失って、和やかな優しいものに変わっていった。
ひとつひとつ、たしかめるような動きに背骨がピリピリする。
亜弥ちゃんの指に合わせてゆっくりゆっくり、やがて静かに離れたあとは
2人とも骨盤から上がタコみたいにグニャグニャになって
肩を合わせて背もたれに倒れこんだ。
「…まだ朝だよぉ?」
「…ん…」
「動けないよぉ…」
「……うん」
自分から突入しといて悪いけど、美貴も返り討ちにあっちゃって。
矢口さんに言われて否定したのに朝っぱらからターヘルアヤトミアで
ハートの解剖始めちゃってごめんなさい。
- 240 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:20
- 「もっとかわいい声で謝って」
「あやちゃん、ごめんなさい」
「うふふ、かわいい♥ もっともっと」
「ごめんなちゃい。ゆるちてあやちゃん」
「にゃひゃひゃひゃ、たんの幼な声はたまらんなぁ。
いい子いい子、うまく言えまちたねぇ」
たまらんなぁって…、そりゃーお姉さん肌の亜弥ちゃんの前じゃ
美貴もただの甘えん坊で、幼な声まで加わった日にゃ
そのかわいさたるや人類史上稀に見る感じだろうけど。…いいじゃんたまには自分で言ったって。
「はい、クロワッサンは自分で食べようね。左でとって右でちぎるんだよ?」
「あーい。
左でとってぇ、右でちぎる。左でとっ…ぁ」
「ありゃ、なに間違えたの?」
「…右でとっちゃったのぉ…」
「ダ〜メでしょ、お椀持つほうでとるの。はいもっかい」
あぁ、なんかこれって、傍から見たら物凄くキショいんだろうけど
やってる本人は楽しいなぁ。
ちぎったパンに亜弥ちゃんがジャムをつけてくれて
ほおばった美貴の口の端からはみ出たのを、指で拭ってくれて、もうデレデレ。
だって仕方ないじゃん。ここにロマンがあるんだから。キャモン。
- 241 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:21
-
「ぷはぁー、ごちそうさまぁ」
「サラダも全部食べたね、えらいえらい」
ヨロヨロとようやく動けるようになって再開したころには
飲みかけのココアはすっかり冷めてたけど、ロマンでママンな亜弥ちゃんの
マハリクマハリタでさっきの100倍は美味しく感じた食事を終えて
次はいよいよ優艶…じゃなくて遊園地!!
電車で3つ駅を移動して、このへんじゃ1番でかいハロモニランドへ。
ここはお父さんが再婚前に絵里を連れてったとこでもあって、美貴も
昔はよく来てた。ここ数年は全然だけど、あんま変わってないなぁ。
「ミキたんあれ見てぇ!乗りたい乗りたい!」
「うん。乗ろ、全部乗ろ」
最初に亜弥ちゃんが指差したのは軽めのジェットコースター。
ここにはもう1個最近できたすごいのがあるから
肩鳴らしにはちょうどい……
「きゃあああー!!!」
「ヌハー」
……いい感じです。いい感じのフィット感。
結構古いから、コースがギシギシいって思ったより全然軽くない勢いで
差し迫ってくる恐怖。亜弥ちゃんはキャーキャー叫んで
腕にひっついてきて、訪れた柔らかな春にあぁロマンよもう一度キャモン。
- 242 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:21
-
「すごっ、アハハハハ!
なんでミキたんこんな幸せそうなのぉ?
お姉さーん、これ1枚くださーい!」
お蔭様でなんて普通に言えないけど、降りたあと売ってた写真の美貴は
デコも幸せも丸出しで至福の微笑みを浮かべてて亜弥ちゃんは爆笑。
お部屋に飾ろーとか言い出して、正直それはやめてね。
「たんたん!次あれ!」
「ぷはぁっ、びしょ濡れだぁ!」
ハイな亜弥ちゃんにつられて、美貴も思いっきりはしゃぐ。
次に入った水のアトラクションで濡れた体を拭きがてらポップコーン食べて
休む間もなくまた次へ。
『ハーイみなさんこんにちは!
さあメイド服に着替えてマシンガンを持って
意地悪お局サブリーダーと戦いながらメイドの休憩室を目指し!
ケーキの盗み食いをしたお局リーダーを倒すんだ!
成功すれば旦那様からご褒美がもらえるぞ!!』
「出たな!意地悪お局サブリージャ…うじゃあ!長いんだよ名前がウルァ!!!」
「わあー、たん上手ぁーい」
えへへっ、昔っからこれは得意で、なにを隠そう未だ破られていない
ここの最高得点を叩き出したのは小5の美貴だから!
今日はその記録を破ってやる!!ウラウラウラウラァ!!
- 243 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:21
- 『おぉー!素晴らしい!最高得点です!
8年間破られなかった記録が更新されました!
しかもキミは…あのときの!!!』
おぉ、おじさん覚えててくれたんだ。
『相変わらずスナイパーの目をして…』って涙ぐまれちゃった。
ご褒美のチョコケーキもおいひぃ〜、今度は美貴が亜弥ちゃんにあーん。
......................
................
..........
「あ〜、体がまだまわってる」
「足がプラプラだから吹っ飛んじゃうかと思ったねぇ」
日が暮れかけ風も涼しくなって、この年で乗るのは案外恥ずかしい
メリーゴーランドや空中ブランコ、最新のジェットコースターと
全部乗ったころにはさすがにちょっと立ちくらみが。
てかアレ足がプラプラどころか思う存分グルングルンしやがって、
脳味噌がシェイクになってそうだよ。
「はい、コーラ」
「ありがと」
- 244 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:22
- 2歳という年の差を顕著に表してピンピンしてる亜弥ちゃんから
コーラを受け取ると、おでこにヒンヤリしたものが触れる。
亜弥ちゃんが濡らしたハンカチをあててくれてて気持ちいい。
こういうとこ、好き。
「久しぶりに遊んだぁって感じ」
「私も。すーっごく楽しかった」
いい匂いのする肩にコテンと凭れる。なんかすっごい、幸せがいっぱい。
ドタバタ続きで荒んでた体が癒される。
やっぱ美貴にはアロマよりアヤヤテラピーが1番。
「んーっ、じゃあそろそろ帰…あぁ!!観覧車忘れてた!!」
「ふぇ? あーっ!」
デートがもし遊園地なら観覧車でウフフって考えてたのに
こんなベンチですっかりエンディングトークに突入しちゃってたよ!
しまったぁ、やっちまったぁ…って気分は亜弥ちゃんも同じだったらしく
2人そろってベンチでガックシ_| ̄|○。
「って凹んでる場合じゃないよミキたん!
はやく観覧車乗りに行こ!!」
「うん!」
- 245 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:22
-
―――
「ふぃー、やっと乗れたよ」
「外真っ暗だねぇ」
夕暮れどきに並んだのに、人がいっぱいいて順番がきたころには
亜弥ちゃんの言う通り外は真っ暗。
でもおかげで窓の外にはライトアップされた建物や
輝きだした空が広がっててとってもキレイ。
「ねぇたん、そっち行ってもいい?」
「ん? いいよ」
景色に見惚れてると、向かい合って座ってた
亜弥ちゃんが隣にきた。
腕をクルンと巻き取られて、すごい近くで目が合う。
じぃっと見られたのが妙に照れ臭くて、咄嗟に笑って視線を景色に戻した。
こ、これは………いいムードってやつ……かも。
キスしたほうがいいのかな? でも、どうせならてっぺんでしたいじゃん。
それに朝の暴走の件があるから変に始まっちゃっても困るし…。
- 246 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:23
-
「たん」
「…な、なに? 外、キレイだねぇ」
「こっち見て」
「え、えぇ? 亜弥ちゃんも見なよ外。
ほら、あの屋上に立ってるおじさんハゲて…」
「たんが見たいの」
「っ…」
耳に息がかかるほど近くで聞こえた声のあと、突然シャッと音がして
窓にカーテンがかかった。
えぇえ!?なんじゃこりゃあ?!カーテンなんて昔はなかったのに!
てかこんなの閉めたらまわりから『お。あいつら中でヤラシイことしてるぜ』って
バレバレじゃん!…いや、まだしてないけど!
「たんが外ばっか見るからでしょ!
外よりたんなの!たんがキレイなの!
ついでに私もキレイだから、たんは私を見てなさい!
ハゲ親父なんかどうでもいいからっっっ!」
「っ…あっ、ハイ、すいません」
お、怒られちった…。でもカーテンは開けといていい?
美貴、こういう空間は苦手だよ、絵里は好きそうだけど。
「むぅ!いま絵里ちゃんのこと考えたな!
私のこと考えなさい!!」
「どぇええ!? なんでわかったのぉ?!」
「勘!」
怖っ。
- 247 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:23
-
「好き、ミキたん」
「ぁ…ぅ…」
もう美貴、この子には勝てない。
近すぎる瞳に燃やされた頬が痒くて、隠したいけど無理だろうな。捕えられた手は動かない。
カーテンの閉められた狭い箱の中、こんな風に見つめあって
先に堕ちるのは絶対に美貴。
ねぇ、底無しの沼に堕ちて、必死にもがいて手を伸ばしたら
亜弥ちゃんはその手をとってくれるの? 美貴をひとりにしない?
「しないよ。堕ちるなら一緒に堕ちるもん。
でもね、私はきっと飛べると思うんだ。
ミキたんを抱っこして、どこまでもどこまでも、飛んでいられる。2人なら」
自信たっぷりの唇が、美貴の手の平に触れる。
歌うように、誓うように、刻むように口づけられる。
「松浦亜弥にまかせなさい」
「……うん」
頭抱えられて、熱い溜息が出る。
もうまかせてるんだよ? 知らなかったの?
亜弥ちゃんに会ったときからきっと。………記憶ないけどきっと。
美貴は亜弥ちゃんにまかせっぱなしな気がする。
- 248 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:23
-
「あ、そろそろてっぺんかな?」
背中にあった手が離れて、視界にまたキラキラした夜景が広がった。
なんかもうキスとかどうでもよくなっちゃったけど
イベントは大事にしないとね。ここに来た思い出も残るし。
では、失礼して…
「だめ」
「へっ?」
な、なんで?
さっきカーテン閉めて迫ったのどこの誰よ?
「せ、迫ってないよ!
こっち見てって言っただけでしょ!!」
「いや、それはそうだけどさー」
「よくわかんないけど恥ずかしくなってきちゃったの! だからだめ!」
えぇぇぇーなにそれなにそれ!ここに来てそれはありえない!
「なにをいまさら…誰も見てないし、深いのじゃないよ?
朝のことは反省してるから、ほんと一瞬、くっついたらすぐ終わり、ね?」
「で、でもぉ…星が見てるよ…」
手でキツネを作ってジェスチャーしながら説得するも、亜弥ちゃんは
顔をポッポさせてモジモジ。
- 249 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:24
- ポッポあやや&モジモジあややキャワワ…じゃなくて!
3時はとっくに過ぎてんだよ!
それに星には目ん玉ないと思うんだけど!
あったとしてもこの距離じゃ裸族でも見えないし!
ってだあああ!?てっぺんも過ぎちゃう!はやく観念して亜弥ちゃん!
「亜ー弥ちゃん」
「ううーっ…」
「亜弥ちゃんやい」
「うぅ…」
「もうするから、待てないから」
「ぅっ……っ…」
「ハイ、おしまい」
あまりにもユデダコだからいつでもやめられるように
どこも抑えず顔だけで近づいてすっと奪った。
逃げなかったけど、ほんの一瞬のキスに亜弥ちゃんは膝を抱えて額を埋めちゃって。
なんとなく声をかけるのも野暮な気がして
白い手をとって指を絡める。握り返してくる力の強さが好き。
繋がったまま、てっぺんを過ぎたゴンドラが下に着くまでずっと。
茶色い髪を見ながら、景色を無視して、ずっと。
- 250 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:24
-
―――
「もう7時だね。夜も食べて帰ろ」
「うん。ミキたんの奢りね」
「へっ? いいけど。なんでいきなり?」
繋いだ手を揺らして歩く出口までの道。
いつもはことお金のことになると遠慮する亜弥ちゃんから珍しい発言が。
美貴はバイトしてるし、今日は多めに持ってきたから全然オッケーだけど。
「お月さんだって見てたのに…」
「あぁ、だから見えてないって」
亜弥ちゃんがワザとらしく拗ねた素振りをするのが
照れ隠しだってわかるから、美貴は呆れた声を出してるクセにすごい笑顔になる。
たぶんいま、目には見えない恋の花が2人のまわりに咲き乱れてるんだろうなぁっ……て、
その様子を頭に浮かべたら鼻がムズムズしてクシャミが3回も出て
亜弥ちゃんに笑われた。グズッ。
- 251 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:24
-
てくてくのんびり駅に向かいながらなち姉にメールして
途中にある洋食屋で夕食を済ませる。
この店は美貴が昔遊園地に行った帰りに必ず寄ってたとこで
入った途端カウンターの奥のマスターに
『ややっ、アンタはたしかわずか9歳でどすこいステーキを完食したお嬢ちゃん!
久しぶりじゃないか!すっかり娘っ子になって!
アンタの出した最年少記録はまだ破られてないよ!』
って店中に響く大声で言われた。
ちょっと待って、どすこいステーキ? 9歳?
身に覚えがないんだけど。美貴ここではいつもエビフライ食べてたんだけど。
『それはなぁ、最後は白目むいて肉かじってたから、もう2度とこの子には
食べさせないでってお母さんに頼まれて。けど完食した証拠はあるよ。
この写真見てみな』
『キャー!たんかわいい!』
必死に記憶を探る美貴にマスターが差し出した写真を見ると
自分の顔の5倍はある空の白い皿を前に、ポッコリしたお腹に手をあてて
苦しげに笑ってる9歳の美貴の姿が…。
その後ろではハンカチ片手に泣いてるミツコだった頃のミツオまで写ってて
なんか…ヤな写真……。
- 252 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:25
-
『マスターさん、この写真もらえます?』
『ごめんね、これは証拠品だから…あ、でもネガがあるから
焼き増ししてあげようか?』
『ハイ!お願いします!』
『しなくていいっ!! 亜弥ちゃん、そんな変な写真もらってどーすんの!』
『変じゃないよぉ、輝かしいミキたんの成長の1枚でしょぉ』
『どこが輝かしーのどこが!』
そりゃー肉好きとして記録自体は輝かしいと思うけど!
その写真は全然ダメ!てか10年前のネガなんか捨てろよマスター!
『すべてが! それにこれ…絵里ちゃんに見せたらきっと帰ってくるよ!』
『んなワケあるかぁ! むしろ2度と帰ってこないよ!
そこまで言うなら焼き増してもらってもいいけど誰にも見せないでよね!』
『わかった。
じゃあマスター、焼き増しできたら電話ください』
『いやいいよ。郵送するから住所教えとくれ』
ぐっ…人の気も知らないで…っ。
ミツコだった頃を見て複雑な思いを抱かないほど、まだ時間は経ってないのに。
そんなワケで、今度は美貴が拗ねる番。
まあ亜弥ちゃんしか見ないならいいんだけど。いいけど、
お願いだからできるだけ机の中に封印しといてね。お願いだか―――
- 253 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:25
-
「っ…!」
「――んわわっ!?……ふぅ」
間一髪セーフ。手繋いでるのに亜弥ちゃんが急に止まるから
危うく転ぶとこだった。
「ちょっと亜弥ちゃ―――えっ?」
美貴が拗ねてるからワザとしたのかと思って、なにすんだよぉって小突こうとしたら
亜弥ちゃんは驚くほど蒼白な顔で唇を震わせてる。
「亜弥ちゃん? っどーしたの?!」
「…………つ…ぉ………」
「え?」
覗き込んでも美貴を映さない瞳はなにかに怯えてて
視線の先を辿ろうとすると、なにも捉えないうちに
首に腕がまわって抱きつかれた。それはそれは、切ないほど強い力で。
苦しさを感じると共に、頬にポタッと水滴が落ちてくる。―――雨だ。
「たん! こっち来て!」
「わっ、待って、駅は逆…」
「黙って! 喋っちゃだめ!」
へ? ワケわかんない。亜弥ちゃんどうしちゃったの?
自分は大きな声を出してるのに、美貴に黙ってて?
- 254 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:25
-
雨が降ってきたのに駅とは逆の方向に走り出して、引っぱられた美貴は
なにがなんだかサッパリわからない。
どこに行くの?
ていうか、ただ闇雲に走ってるだけな気がするんだけど。
「亜弥ちゃん待ってよ!」
「…っ、ごめんっ、もうちょっとこっち!」
ぐるぐる走りまわって、最後にひっぱりこまれたのは
ビルの間にひっそりあった駐車場の隅。
雨は本格的に降り始めて髪が顔に貼りつく。空が光った。
「……どうしたのさ?」
普通なら怒るとこだけど、普通じゃない亜弥ちゃんの怯えかたに
震えるのを堪えて搾り出した声は不安に濡れていた。
「わ…たし、ミキたんに……謝らなきゃいけないことが………」
「あやまる?」
なにを? そこまで怯えながら謝ってもらうようなことはないと思うけど…。
「でも、でも待って。
謝るから、ちゃんと謝るからその前に――――」
- 255 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:26
-
耳がおかしくなったんだと思った。
まさか、そんなハズないって。
「ホテルに連れてって。抱いて」
美貴の頭に、雷が落ちた。
- 256 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:26
-
- 257 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:26
-
◇◇◇
亜弥ちゃんがなにに怯えてたのか。
どうしていきなり抱いてなんて言ったのか。
真意が掴めない美貴は断ろうと思ったんだけど。
ザーザー振りの雨のおかげで、これじゃ電車に乗るのはキツイし
タクシーは拒否られるだろうし。
そしてなにより、ホテルに連れていくことさえ断ったら
亜弥ちゃんが壊れちゃいそうな気がして
抱くって話はとりあえず置いといて
コンビニでタオルと下着と傘を買ってホテルを探した。
けど見当たらなくて、駅のほうに行くのは
亜弥ちゃんが嫌がったから、反対の道に入ったら
幸か不幸かそこはホテルがズラッと並んでる通りで。
「ここでいい?」
「……うん」
- 258 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:27
-
派手な装飾のホテル。
ロクに見もせずに選んだ部屋に入り、飛び込んできた
冷たい体を抱きしめてキスをした。
「風邪ひくから」
先に入ってって譲り合いになって、結局2人で入ったけど
いつもみたいにはしゃいだり、じゃれてこないのは
疲れてるからとかじゃなくて……………本気なんだ。
美貴は、どうしたらいいんだろう。
謝らなきゃいけないことがなんなのか知りたいけど、
その前にって言われたんだ。いまは聞いちゃいけない。
それにこれは亜弥ちゃんのお願いで、それなら叶えたいって思う。
けど、けど……。
先にお風呂を出た美貴は、ベッドの上で正座して頭を抱えた。
腹を括ったほうがいいのかな。
抱くなら、今日はこないだみたいに途中でやめることはできないし。
最後までしなきゃ亜弥ちゃんを傷つけると思う。
- 259 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:27
-
「…お待たせ」
うあぁあって出かけてた唸り声をひっこめて顔を上げる。
お揃いのバスローブを着た亜弥ちゃんが歩いてきて
美貴の真似してベッドに正座する。
…こ、これは、三つ指たててよろしくお願いしますの構図だ。
もう始まってるんだ。亜弥ちゃんは、もう始めてる。
なにかが外れる音がして、右手が動いた。
- 260 名前:デート日和ってことでいいじゃん。 投稿日:2004/09/26(日) 07:27
-
バスローブを脱がせるとゴチャゴチャになってた頭の中が
真っ白になって、もうなにも考えられなかった。
明かりをしぼった室内で、ただ愛してるってことだけが
ハッキリこの目に見えていた。
甘い声に昂ぶって、あつく溶けたところをあわせて揺れると
爪をたてられた背中の痛みさえ快感にかわって
先に達した亜弥ちゃんの上に倒れこむ。
全身がしびれてドロドロになって。
離れないまま亜弥ちゃんの中に流れ込んで、目を閉じて眠った。
- 261 名前: 投稿日:2004/09/26(日) 07:28
-
- 262 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/09/26(日) 07:28
-
間に合わなさすぎですが、後藤さん、お誕生日おめでとうございます。
レス、ありがとうございます。
>>225名も無き読者様
塾長は今まさにああいう色の青春を送ってるんです(w
切ないのは気のせいですから。
>>226名無飼育さん様
えぇ、ハタキではたいたら飛ぶし、スーパーハボキ(古)が
あればどんなによかったか…っ・゜・(ノД`)・゜・
デート、お待たせしました。
>>227名無飼育さん様
お待たせしました。楽しみにしちゃイヤンイヤンハワイヤン(爆
- 263 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/09/26(日) 07:29
- >>228ピクシー様
姉妹というか母娘みたいですけどね(w
今後…やっぱり田中さんが苦労しそうです。
>>229名無飼育さん様
おぉ(w あなたはいい人です(何
>>230名無飼育さん様
どうもどうも、長いことお付き合いいただいて。
久々のなちごますっごい短かかったんですが
喜んでいただけてなによりですw
では久しぶりになちごまどぅ!
- 264 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/26(日) 08:47
- 突然の亜弥ちゃんの行動にビックリの読者です。
デート最高!!!!
- 265 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/26(日) 10:39
- もんのすごく甘い!!
更新大感謝です!!!
- 266 名前:ピクシー 投稿日:2004/09/27(月) 02:35
- 更新お疲れ様です。
甘〜・・・甘いよ〜・・・
「愛よファラウェイ」、何故かTV版だと2番からだったなぁ・・・
個人的には矢口のキャラ好きです。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/27(月) 19:31
- 確かにものすっごい甘い…けれど。
松浦さんの真意がわからないですね。
次回更新に期待大です。
- 268 名前:名も無き読者 投稿日:2004/09/30(木) 17:27
- 更新お疲れサマです。
にゃはは、とっても甘くて素敵デスなw
しかもミキティ、やっぱり只者じゃなかったわけですな。
しかしラストのアレは一体・・・?
ワクドキしながら次回も楽しみにしてます。
- 269 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/10/10(日) 07:44
- さて…今は5時間目くらいですか?遅刻もイイトコなレス(´Д`;
携帯から一気読みしました。途中で4回電池が切れました。ミラコー。
>>89->>97、>>240で萌え死に、>>106でも氏にかけました。
最 高 で す 。
- 270 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:43
-
ファサ ファササ
髪をなぞる細い指。つまんでくるくる巻かれたり、息を吹きかけられたり。
亜弥ちゃんの上に乗っかったまま目を閉じてる美貴だけど
いい加減くすぐったくて寝てるフリもしんどくなってきた。
「やっぱ好き、ミキたん好き」
だけど、歌うように囁く声が聞こえて顔を上げようにも上げられない。
だってここで目が合ったらお互いすっごい恥ずかしいじゃん。
こ、こんなことしちゃったあとだけど、いやあとだから余計っていうか、
背中のどうやっても手が届かないとこがムズムズして心拍数が上がっちゃう。
「……たん、…起きてるの?」
「へぇええぇ!?」
ななななんで?! なんでバレた!?
必死にじっとしてたのに!!
思わずガバァッと亜弥ちゃんを見る。
するとやっぱりその顔は赤く染まってて、恨めしげに細められた目に睨まれる。
頭にあった手が降りてきて耳を引っぱられた。イタタタ…
- 271 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:43
- 「耳、赤くなってる」
「っ……」
なっ、部屋暗いのに…って美貴にも亜弥ちゃんの赤さが見えてんだから
そっちだってわかるのは当然か。
でも、でもさぁ、赤くなったのは亜弥ちゃんのせいだよぉ。
美貴悪くないよぉ。
「だ、だって言いたくなったんだもん」
あらら、拗ねちゃった?
唇を尖らせた亜弥ちゃんは、「たん、重い」って失礼なことを言って
くれちゃいながら身を捩って乗っかってた美貴をコロンとベッドに下ろした。
ずーっとくっついてたから、突然できた隙間が妙に冷えててクシャミが出る。
「うっ…寒い」
「もぉ、おいで」
そしたら、呆れてるような、笑うのを堪えてるような顔で
亜弥ちゃんはすぐに手を伸ばしてくれた。あったかいめぇ。
- 272 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:44
-
正直言って、ちゃんとイケるなんて思ってなかった。
いままで胸なら触ったことあったけど、あんなとこ触るの初めてだったし。
亜弥ちゃんもなんだかんだ言って震えっぱなしで
足を割ろうとしたら泣きそうになってたし。
そうなんだろうとは思ってたけど、やっぱり初めてなんだってわかって
記憶のない行為は無かったってわかって嬉しかった。すっごく。ありえないぐらい。
じゃあなんであのとき2人、素っ裸でラブホのベッドにいたのかは
思い出せないし疑問だけど。しかも2度も。
割った先は、びっくりするくらい濡れてて
それに自分が感じてるのもわかった。
最初から痛い思いをさせるのもヤだし、それは、できればもっと普通の場所で
したかったからくっつけてみたけど、まさかあんなに気持ちいいなんて。
気持ちの昂ぶりが、身体の昂ぶりに直結したんだろうね。
亜弥ちゃんも、きっと同じだった。
何度も何度も名前を呼ぶから、『もっと言って、好き』って
言った瞬間背中を反らせて痙攣した姿は、深くこの目に焼きついてる。
- 273 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:44
-
折り重なったあとも、乱れた呼吸を整えようともせずに
『ミキたん、ミキたん』って呼んでくれて。
それが子守唄になったのか、無事に終わった安堵感で美貴は
もはや定番となったイリュージョンに顔を埋めて
ぐーすか寝ちゃったけど、亜弥ちゃんは…ずっと起きてたの?
「んーん、寝たよ。ちょっとだけ」
ミキたんが重くてすぐ起きちゃったけどね、なんて。
時計を見るとまだ真夜中。美貴もあんまり寝てないみたい。
けどもうあんまり眠くないなぁ。
頬や鼻にあたる亜弥ちゃんの胸が気持ちくて、ずっとフニフニしてたい。
やめらんない。ええやめられませんとも。やめられるワケないじゃん。
「やあー、もうくすぐったいのぉ」
あちゃちゃ、やりすぎた。
フニャフニャ笑いながらシーツの中に逃げられちゃった。
追いかけて捕まえたら、頭に浮かぶ前に言葉が口から出た。
「もっかいしていい?」
「……好き」
- 274 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:45
- うわ、もしかけて狙ってた?
首に巻きつかれてこんなに深く激しくさぐられて。
美貴、またおかしくなっちゃいそうだよ。
ううん、絶えずおかしいんだ。
この瞳に合ってから、この匂いを知ってから、おかしいままだよ。
「…あっあっ……やあっ、はぁっ…き…たない、よぉっ…」
今度は舌で、丹念に愛する。
熱気のこもるシーツの中、いやらしい音に掻き立てられて
自分の鼻にも届く自慢の長い舌で熱いところを縦横無尽、恋愛戦隊ナメルンジャー。
「さっきのっ…んっ…そのま、ま…ぁっ…なのにっ…んんん」
だから余計に、亜弥ちゃんが濃くていい。
もっともっといっぱい出して、全部見せて。
笑う顔も拗ねる顔も優しいときも怒ってるときも
感じてるときさえ、美貴のもの。
美貴だけの、亜弥ちゃん。
「ふあ!…あっ!あっ…あああっ…もっ、もうっ、ふっ…はあああああっ!!」
- 275 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:45
-
◇◇◇
- 276 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:45
-
―――
「…たんのえっち」
「えへへ」
「えへへじゃないのぉ」
えへへへへへ、でへへへへへ、どうしよう、美貴キショい。
わかってんだけど、充分承知してんだけど
止まんない、止まらずキショい。ノンストップKishoi。
疲れただろうから寝ていいよって言ったんだけど
『ミキたん眠くないんでしょ』ってずっと一緒に起きててくれた
亜弥ちゃんはさすがに眠そう。美貴によりかかってウトウトしてる。
始発電車は人が少なくて、みんなほとんど寝ちゃってるけど
亜弥ちゃんの寝顔を他の人に見られたくないから
美貴は被ってた帽子を脱いで亜弥ちゃんを隠した。
「だめ……たん…寝癖…ムニャ」
「誰も見てないから」
すご、半分寝てんのに寝癖の心配してくれるの?
もーかわいいなぁ、かわいすぎるなぁ、美貴すっごい好き、この子。
- 277 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:46
-
―――あっ、やばっ。
込み上げるものが抑えられずにキショさ全開でニヤニヤしてたら
大変なことに気づいた。なち姉に連絡してない。
夕食いらないって電話はしたけど、泊まることは言ってなかった。
どうしよう、最近は絵里のこともあったし、心配してたら―――
かと言って電車の中だからかけられないけど、とりあえず携帯を
取り出して見る。
するとそこには着信5件、留守電も入ってるしメールも…っなち姉ごめん!
「アレ?」
恐る恐る履歴を見てポカン。
5件の着信は全部まいちゃんだった。時間はちょうど美貴たちがホテルに
入ったぐらい。
変だな、まいちゃんはデートのこと知ってるから連絡してこないハズなのに。
なんかあったとか? でなきゃ5回もかけないよね?
ジャケットで携帯を隠しながらメールを見ると…
『ホテルかい?ホテルなのかい?ミキスケベースケベー(・∀・)
なっちアーンド日テ…じゃなくてごっちん♪』
うるさいバカップル!!!…バレてるし_| ̄|○
- 278 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:47
- だああまいちゃんになにかあったかもしんないのに!
焦りながら留守番センターに接続する。入ってた1件のメッセージは
まいちゃんで………
『ミッキー!明日大学こキャアアアア!!!!』
ま、まいちゃん!!!
なに?!どうーしたの?!なにがキャーなの?!
なんかヒソヒソ声で喋ってたっぽいけど、今日大学でなんかあったっけ?
特別なものはなんもないハズだけど。
「…ん、たん? どーしたの?」
「ふぇっ、あ、なんか、変な留守電入ってて…」
「変? イタズラさん?」
「ん、あー…そっか、イタズラかなぁ…」
うーん、ああ見えて気は遣ってくれるからその線は薄いけど。
っていつの間にか考え込んじゃってたらしい美貴が我に返ると
さっきのトロンとした目はどこへやら、パチクリ開いた真剣な目が
不安そうにこっちを見てた。
「あ、そんな心配しなくてもまいちゃんだし。
大学のことで用があったみたいだから行けばわかるよ」
「…里田さん、だよね?
どんな人だっけ?」
- 279 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:49
- どんなって、えーと…
「背が高くて、足速くて力も強くて天然で喋るとちょっとオッサンな感じかなぁ」
「ふうん。日焼けとか…してるの?」
「日焼け? まあ白か黒かでいうと黒だねぇ」
「アゴ……しゃくれてる?」
「しゃくれてないよ、黒くてしゃくれてんのは梨華ちゃん…って
なんでそんなこと聞くの?」
どんな人って聞くのはわかるけど、シャクレって……
「え、あ、なんとなく、梨華ちゃんって人は
石川さんだよね? 前に話してくれた絵里ちゃんのお友達の家で
働いてる人だよね? その人がしゃくれてるの?」
「なに亜弥ちゃん、シャクレ好きなの?」
「ふぃ? ち、ちがうよぉ」
怪しいな、にゃははーなんて笑ってるけど乾いてるし。
シャクレ好きなんだ、たぶんすっごい好きなんだ。
どうしよう美貴しゃくれてないよ、かと言ってしゃくれたくない。梨華ちゃんごめん。
「あの、たん? ほんとにちがうから。
たんのアゴ好きだよ」
「じゃあなんで聞いたんだよぉ」
「だからぁ、なんとなくなの、ね?」
「…ふぅーん……っっ!?」
- 280 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:49
- なんとなくなんかで納得できなくてイジケると、亜弥ちゃんがそっと
帽子で隠して美貴の耳をかじった。
不意の攻撃に思わず声が出そうになるのは慌てて抑えたものの
目ん玉は素直に飛び出しそうになったのを見て
亜弥ちゃんはヒアッヒアと引き笑い。
「ぐ……亜弥ちゃんだってえっちじゃん」
「たんに言われたくなーい」
「あんなに乱れといて…」
「こーらあ!」
アハハ、赤くなっちゃってかわいい。
ってこっちが言ったくせに美貴も思い出しちゃって顔が熱ぅー。
パタパタパタパタ2人並んで顔を仰いで。
なんかいいね、こういうの。
初々しくない? 美貴と亜弥ちゃん。
意味もなく吹き出したりなんかしちゃって、目を合わせて笑って。
少しむこうの席で寝てる人たちを起こさないように
密やかに密やかに、朝の幸せを噛みしめて。
- 281 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:49
-
―――
「ひゃああああ!!!?」
玄関を開けた途端なち姉の悲鳴が聞こえて、亜弥ちゃんと顔を見合わせる。
まさか強盗…っとか思って靴も脱がずに家に上がると
パジャマの乱れたなち姉とムスッとしたごっちんがリビングから出てきた。
「あー、あはは、お帰りー!」
「んあ……なんで帰ってくんのさ」
ヤ ッ て た な 。
「び、びっくりしたっしょやー、てっきりそのまま
学校行くかと思ってー」
「荷物ないし、亜弥ちゃん制服ないし」
「あ、そうだったねぇ、あははは。朝ご飯食べるっしょ?
さあごっちん準備準備ー!」
「んあ…」
ごめんごっちん、ごめんってばごっちん。
そんな睨まないでよ、しょうがないじゃん。
「朝ごはんぐらい食べてくりゃいーのに」
ボソッと呟いて、ごっちんは去っていく。
その背中に、“無念”の二文字が見えた。
「んあ、ミキティの顔には“感無量”って書いてあるよ」
そんな言葉が聞こえたような、聞こえなかったような。
- 282 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:50
-
―――
夜通し体力を使ったおかげで、美貴も亜弥ちゃんも
普段の倍は朝食を食べてポンと膨れたお腹を抱えて歩く。
美貴はもうちょっと遅くてもいいけど
できるだけ長く手を繋いでたくて、一緒に家を出た。
今朝は天気もよくて、なんか祝福されてるみたいで気持ちいい。
「ミキたん、放課後大学まで行っていい?
一緒に帰れる?」
「今日は美貴のが早いよ。美貴が亜弥ちゃんとこ行く」
バス停に着いちゃって別れ際、寂しそうな声にもうデレデレ。
大学終わったら速攻ですっ飛んでくから!
「ミキたんが?…じゃあ、えっと、まっすぐ来てね?
帽子、ちゃんと被るんだよ?」
「そのころには寝癖なおってるよぉ」
「なおっててもいいから、被ってこなかったらもうキスしない」
うぇえええ!?なんでさ?!
被るよ被る!帽子のひとつやふたつ喜んで被るからそれだけは勘弁して!!
「えへへ、よぉーし……じゃあ、そろそろ行くね」
「あ、待って」
- 283 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:50
- おっといけない。通りの端にバスが見えて、立ち去ろうとする亜弥ちゃんに
言っとかなきゃいけないことがあった。
「美貴、待つからね」
「…え?」
「ぶっちゃけさ、心あたりないから
なんなのかすっごい気になるし、早く聞きたい気持ちもあるけど
でも、どんだけでも、ちゃんと待つから。焦んなくて、いいから」
「ミキたん…」
だからいつか、謝りたいときに謝って。
謝らなくていっかって思ったり、謝りたくなくなったりしたら
謝らなくてもいいし。
「車に気をつけてね、いってらっしゃい」
「…行ってきます。ミキたんも、行ってらっしゃい」
「うん、行ってくる」
乗り込む前にそっと前髪を撫でて、1番後ろの席の窓から
ブンブン手を振ってくれる亜弥ちゃんに大きく手を振り返す。
バスが発車して、どれだけ遠くに小さく見えても輝いてた。
ダイヤが何カラットあっても絶対に敵わない。
亜弥ちゃんには、敵わない。
- 284 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:51
-
―――
そういうことか。
「ヘイ、マリマリマリー、相変わらず体はミニマムだけど
可愛さはマキシマムだねベイベー」
「イヤン、そんなこと言われるの真里恥ずかしい」
「・・・・・」
普段ならまだ誰もいないような時間。
教室に入った瞬間、目の前で繰り広げられていた光景に美貴は言葉を失った。
「あ、ミッキー…。
昨日何度も電話しちゃってごめんねぇ。
なんか今回はミッキーに用があって帰ってきたらしいよ」
「美貴に用?
てかまいちゃん顔色悪いけど…」
「ハハハ…昨夜ね、いきなり窓から入ってきてね…
てっきり私に会いに来てくれたんだと思ったらいまから
ミッキーん家行くけど住所忘れたから連れてけって聞かなくてさぁ
必死に引き止めてたんだよ」
「……あ、ありがと」
窓から?まいちゃん家ってたしか高級な感じのマンションの18階だったような…。
- 285 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:51
- 「しかも格好が思いっきりとび職で頭にタオルまいてたから
一瞬誰だかわかんなくて超怖かったぁ。
まあ、そんなとこ好きなんだけど」
「………」
「ああああーーー!!!ミキティ!!!!」
美貴に用があった割には美貴の存在にようやく気づいたらしい
よっちゃんさん――こと吉澤ひとみは、抱いていた矢口さんを
優しく離してから美貴にむかって突進してきた。いや、これはもはや突撃か。
「ぐふっ、よっちゃんさん苦しいよー」
「ミキティ!会いたかった!」
声を上げる間もないほどの速さで背の高いよっちゃんさんに
抱きしめられて、小さい美貴はすっぽり捕まっちゃう。
うん、懐かしい、よっちゃんさんだ。
「1年振りくらい? どこ行ってたの?」
「マイホームタウンを巡ろう企画でね、埼玉・ぶらり1人旅を敢行して
きたのだよ。これお土産のゼリーフライ、食べる?」
「あーっ、食べたいけどいまお腹いっぱい」
「あれ? ミキティって朝飯食べないんじゃなかった?
珍しいね。じゃあ包んであげよう」
「2個ちょーだい」
「おーおー食いしん坊だねぇ」
いや、亜弥ちゃんの分なんだけど、まいっか。
- 286 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:51
-
「あ、で、美貴に用って?」
「ん? あーっ! そうそう!!
旅先でミキティの話聞いてさー!オレもう超慌てて帰ってきたワケ!」
美貴の話?……ハッ、もしかして梨華ちゃんから亜弥ちゃんのこと聞いたとか?
いや!その前に美貴って記憶はないけど梨華ちゃんにトンデモナイコトしたんだっけ?
チクッた? 梨華ちゃんチクッた?
背中に冷や汗が流れる。
このよっちゃんさんという人は美貴たちの中学の後輩で梨華ちゃんの幼馴染み。
中学卒業と同時に実は繊細でもろい心を鍛えるための旅(本人談)
に出ながら、なぜか普通に高校を卒業したツワモノだ。
そんなよっちゃんさんを生粋の姉心で梨華ちゃんはいっつも心配してて
よっちゃんさんも旅が終わるまでは絶対に美貴たちの前には
現れないのに、梨華ちゃんにはときどき電話して安心させてるらしい。
けど、なんでか旅から帰ってくるとまいちゃんとかとばっかつるんで
梨華ちゃんに会いに行かなかったりして、2人は、なんていうか不思議な関係。
でも、梨華ちゃんがモテて因縁つけられたときは
よっちゃんさんが1番キレてたし、変な男がラブレター持ってきたときは
ママチャリで轢いてたし、なんだかんだ言って仲良いんだ。
- 287 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:52
- そんな梨華ちゃんを…っ、美貴がその…ねぇ、…したってバレたら
なにされるやら。
考えると全身に鳥肌が。
シメられるの?シメられちゃうの?美貴川つvT从グスン。
ドン!
ひっ…、一瞬よっちゃんさんが机を殴ったのかと思って
喉の奥から悲鳴が漏れる。
けどよく見ると、それは机の上にやたらでかい風呂敷包みを乗せた音だった。
「な、なにこれ…?」
「なにってお茶だよお茶。お〜いお茶。
ミキティが急性伊トウ園で倒れたって聞いたからさー
慌ててコンビニ走って買い占めてきた。全部1006本あるよ」
「せ…せん…?」
500_gボトルとはいえ、1006本ってどんだけ重いの?
てか急性伊トウ園ってなに? 聞いたことないんだけど。
「あーよしこ、それって伊トウ園じゃなくて咽喉炎じゃない?
しかもそれで倒れたのミッキーじゃなくて、ミシシッピーって
愛称で有名なアイドルの藤本美示だよ」
- 288 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:54
- どっからツッコメばいいのか戸惑ってると、背中からまいちゃんの声が。
って伊トウと咽喉って全然違うじゃん!!
でもって藤本ミシシッピー? 誰それ? 川?
「ほら、アリャリャって愛称で同じくアイドルの松浦亜里ゃと仲良い子。
食っべったっいー 高い高い特選牛ぅ〜♪
チラシをずっと眺めるだけ〜♪
好きよ 好きよ 大好きよぉ♪
だけーど 買えーない 特選牛ぅ〜♪って歌知らない?」
なにその歌、全然知らない。
歌詞はものすごく共感できるしいい曲だけどアイドルが歌ってんの?それ。
で、なんでまいちゃんズッタカターって振り付けまで完璧なの?
「あー、あの子か。
なーんだ、ミキティと一字違いだからすっかり騙された。こりゃ参った」
…………よくわかんないけど、騙されたっていうか
どう考えたら急性伊トウ園なんてものがこの世に存在すると思うワケ?
しかもこんなにお茶買ってきて…お茶飲めば治るの?…へぇ。
- 289 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:56
- 「間違いかー、でもせっかく買ってきたからミキティにあげるよ」
「え…いらな…」
「いいからいいから、ついでに小耳に挟んだんだけど
石川のこと押し倒してバイト先クビにしたんだって?
それについてじっくりお話しよーじゃないの、お茶でも飲みながら」
ギクッ! や、やっぱりコイツ!
「や、でも美貴、いまから講義が…」
「大丈夫。マリマリマリーに許可はもらってある。
それにお茶なら1006本もあるんだ、遠慮するなよ」
グワシッと肩を抱かれて、片手でひょいっと風呂敷包みを担ぐよっちゃんさんに
空き教室へと連行される。助けてぇ。
その後ろでまいちゃんが、だからミッキー、大学こないほうがいいよって
留守電入れたのに…って呟いたのが聞こえて…
いいやアンタ途中で悲鳴に変わってたし!
知ってたんならよっちゃんさんが美貴に気づく前に帰れって言ってよ!!!
- 290 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:57
-
「さあ、まずは1本目、開けちゃおうか」
キラリと光るよっちゃんさんの目。
こ、これは…よっちゃんさんに変なことされる前にお茶を飲みきるしか
助かる方法はない…ないよね?…ないよ川つvT从。
亜弥ちゃんとの甘い朝で、心を満たされたこの日。
美貴は“お茶地獄”という言葉に出会い、胃袋を緑茶で満たされた。
チャポンチャポン。
- 291 名前:幸せはやっぱり不幸と共に。 投稿日:2004/10/13(水) 17:57
-
- 292 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/10/13(水) 18:24
-
すっかり更新が遅れモードで申し訳。
レス、ありがとうございます。感謝感謝。
>>264名無飼育さん様
ちゃんとしたデートってそういえば初めて書いたので
不安だったんですが、ありがとうございますw
読者様最高!!!!
>>265名無読者様
前半はあやみきゴトを信じていたころに書いて
後半は泣きながら書いたのでちゃんと甘くなってるか
不安だったんですが、こちらこそ大感謝ですw
>>266ピクシー様
ぶっちゃけ、私は「ほんとのキス〜」しか聞いたことが
なかったりします(爆
この話でやっとまともに矢口さんを書けたので
そう言っていただけると嬉しいです。
- 293 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/10/13(水) 18:25
- >>267名無飼育さん様
ですねぇ、真意が明らかになるのはもうちょっと先に
なりそうですがお付き合いよろしくですw
でもほんと甘く書けててよかったー(ホッ
>>268名も無き読者様
私もついていけないさw
ミキティは掘り出せば様々な伝説があるようです。
まあ、自慢になるものは少ないんですけど…w
>>269◆ZpT8ZEbM様
いえいえ、私も遅刻しまくりですからw
年内には終わる予定が、間に合うか微妙です。
てか4回も電池切れしながらとは、お疲れさまでした。
何度も萌え死んでいただいて、貴方様こそ 最 高 で す 。
- 294 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/13(水) 22:00
- お待ちしていました…もう死ぬ程の甘さ×無限です。
- 295 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/10/13(水) 23:24
- 二番乗りー?ねぇにばんのり?更新キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
うわぁい待ってました!!もぅ二人がかわいくてしょうがないです。。。作者さん…
ポ(w
よっちゃんさんにママチャリでひかれt(ry
- 296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/14(木) 03:17
- 甘いのに、甘甘なのに・・・
読後お腹痛いのは何ででしょう・・・
笑いすぎて苦しいです。タスケテー
今はミシシッピーに猛烈に会いたい自分がいますw
- 297 名前:ピクシー 投稿日:2004/10/14(木) 06:41
- 更新お疲れ様です。
ミシシッピーにアリャリャ・・・(w
よっちゃんさんも登場ですか・・・
こうなってくると、残りの4期2人は出てくるのでしょうか?
緑茶飲みすぎ(水分一気に取りすぎ)で、お腹を下さないように注意を(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 298 名前:名も無き読者 投稿日:2004/10/17(日) 01:22
- 更新お疲れサマです。
アリャミシ小説が読みたくなる今日この頃。。。w
また新たな新人類が登場してる感じがしますねぇ、、、
心もお腹も満たされた(?)ミキティにこの先ナニが待つんでしょう?
続きも楽しみにしてます。
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 01:47
- 今回も楽しく見させていただきました。
作者さんの話は小ネタ満載なので本当油断ができませんw
因みにずっとずっと告白したかったのですが、
作者さんの好き(だと思われる)CPが全て漏れなく
私一押しCPばかりなので軽く運命を感じています。勝手に。
これからも更新頑張ってください。私事ばかりですいませんでした。
- 300 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 01:10
- ここのアヤミキは大好きです!
マジ二人とも可愛いっすね〜♪
そして面白いw
続き楽しみしてます。
- 301 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 01:33
- おち
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 20:08
- チャポン2
続き待ってます。
- 303 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:36
-
「………はあ」
まただ。また聞こえる。
ここのところ、彼女の口から発せられる音の97%がこれだ。
「新垣さん、新垣さん」と、見た目より幼い声で呼ばれることに
なんの感慨も抱いたことなどなかったが、目の前にいないワケでもなく
ましてや少し前のように眠り続けているワケでもないのに
憂いに満ちた息を吐き出す音ばかり聞かされていると、長ったるい午前の
授業のあとの、待ちにまったランチタイムさえ重苦しいものに感じてしまう。
「ねぇねぇ」
「んニ?」
「藤本さんどうしたの? 最近ますます幸薄いけど」
箸を持つ手はクネクネ動いているが、口に運んではいない様子を見かねて
こうなったら“マユゲビーム・パンダの給食はパ〜ンだ”で腸が捻転するほど
笑わせてやろうとオデコに手をかざすと、後ろの席の井戸ちゃん――井戸端バタバ子が
興味本位ではなく本気で心配そうに訊ねてきた。
- 304 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:36
- 「年下のあの子とケンカとか? でも今朝も一緒に歩いてたよね?」
「ん〜…そっちじゃなくて、ちょっとした反抗期ニィ」
「そうなんだ。私も最近お姉ちゃんが口うるさくてさー、
お母さんは相変わらずなに喋ってるかわかんないし」
その反抗に不本意ながら加担してしまった私の曇ったマユゲを見て
井戸ちゃんはやれやれと大きく体を伸ばしながら愚痴る。
あー、たしか井戸ちゃんには離れて暮らしてる噂好きのお姉さんと
得体の知れない言語を話すお母さんがいるんだっけ。
(ちなみに井戸ちゃんのお父さんの名前は井戸端足、お母さんはステファニーという)
私も1度お母さんたち見たことあるが、φだかファイだか
聞いてるこっちがWhy?なお母さんの言葉をお姉さんが
通訳して妹に伝えている姿は、一種異様な雰囲気を醸し出していた。
井戸ちゃんが家を出たのは高校入学と同時だから、それまで
お姉さんと彼女の間に育ってきた環境の違いなんてほとんどなかっただろうに、
なぜ一方はあの言葉を理解してもう一方は理解できないのか、
何度か医者に診てもらったらしいが、原因は未だ謎…ってこんな話はどうでもいいか。
- 305 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:36
- 「お母さんのワケわかんない言葉とお姉ちゃんの詮索が嫌で
叔父さんの家に転がり込んだのに、毎日電話してきて
今日はなに食べた?だの、男は狼だのしゃぼん玉だの、
お母さんに頼まれてんだろーけどいい加減ウザいんだよねー」
「心配してくれてるニィよ」
「わかってるけど毎日はヤダ!」
そりゃそうよね。でも、ニィにも豆子(妹・家出中)がいるから…。
井戸さんのお姉さんの気持ち、そこはかとなくわかるニィ。
「そっか、豆子ちゃん…まだ帰ってこないんだ…」
「ニィ……困った子だ―――ん?」
“………じゅ………ちょ…………す…け……………”
「ムムッ?」
「え? どうしたの?」
豆子、お姉ちゃんは豆子に会いたいです。なーんて脳裏に浮び上がる豆子の
笑顔に手を振っていたら、突然マユゲイヤーに苦しげな声が届いた。
- 306 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:37
-
ニィン? この声どっかで聞いたよーな…………モッさん?
“…………くちょ……けて…………く…ぅ………”
モッさんだニィ! 間違いなくモッさんの声ニィ!!
そしてこれは……ジュチョスケ……クチョケテ……『塾長助けて』!!!
「モモモモッさん!!なにがあったニィ?!」
「ひゃっ?…に、新垣さん? どうしたの?」
“…コ…ア…………ぱり……り…が…”
「ココアはやっぱりモリナガ?」
「ちょっと、おーい、誰と喋ってんの?」
モッさん…、甘いものが飲みたい症候群にかかってしまったニィ?
“間違えた………もう…お茶………無理……ゲップ”
「モモモモッさん!しっかり!!
どこニィ?! いまどこにいるニィ!!」
「モッさんって誰よー?」
“しろ……い……世界……………わあ、骨付きカルビだぁ…”
- 307 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:37
- んなぁあああ!? ああもう井戸ちゃん黙ってて!
なにがあったか知らないけどモッさんがあっちの世界にっ!!!
「藤本ちゃん! 大変ニィ!
おたくのお姉さんが白い世界にっ」
「っ……お姉ちゃん…」
「だあああ! そっちじゃなくてモッさんだってば!」
しまった、いまのこの子に『お姉さん』というキーワードは禁物だった。
まだクネクネとプスプス箸で卵焼きをつついていた藤本ちゃんは
ニィのNGワードに泣きそうな顔で俯いてしまった。
ええい仕方ない、ニィだけでなんとかするか。
「お食事中におじゃマ〜ルシェ〜、紺野でぇーす」
「ピーピーピーピー、ピーマコ小川です」
と、気合を入れて立ち上がった瞬間、教室の前のドアが開いて
あさ美ちゃんとまこっちゃんが入ってきた。
「あ! そこの金魚お姉さんとトンマ人形の2人!
2人もモッさんのSOS受け取ったニィ?!」
「……ムスッ」
- 308 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:38
-
| | | __ノ ヽ__ ヽ
| | | ● ● | むすすっ
.ノ | ○  ̄ ̄ ノ
キャー イヤァー シニタクナァーイ
さっすが我が幼馴染み!!…ってあれ? なにその拗ねた顔は…
おまけになぜか私と藤本ちゃん以外のクラスメイトたちが
悲鳴を上げ、ある者は教室から逃げ出し、またある者は
腰を抜かせて机の下に身を隠す。
ちょっとちょっと、みんなどうしちゃったニィ。
「金魚じゃないもん、美人だもん」
「トンマって言わないでよぉ」
「新垣さん、はやく謝って! 怒ってる! 先輩怒ってるから!」
「ニィ? ああ、サーブを心配してるニィね」
あれはまだ私たちがチュウな学生のときだったが、
戦争の起こらないハズの国で空から戦闘機に狙撃されたことは
額の(o・-・)が消えた今も、多くの乙女の心に深い傷を残しているようだ。
- 309 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:38
-
でも今日は大丈夫ニィよ。ここ教室だし、それに…
「おや…あなた、藤本先生の妹さんですね。
挨拶が遅れて申し訳ございません、私くし藤本先生に魂のご指導を
ご鞭撻いただいております、紺野あさ美と申します」
「…え? あ、こんにちは」
「あーほんとだぁー、藤本先生のオデコでしか見たことなかったけど
実物もかわいいねぇ! 私、小川麻琴でーす」
「……おでこ? は、初めまして」
藤本絵里がいるからね…ってまこっちゃんそれも禁句!
せっかく記憶失ってるんだから!
てか初対面だったっけ?
あ、そっか、こないだポドリアルスペースで来たときは
藤本ちゃんも逆さまになってたニィね。
「ね、ねぇ新垣さん、なんで紺野先輩が
藤本さんに敬語使ってんの? 藤本さんってもしかして大物?」
「…細かいことは気にしないで。
それよりあさ美ちゃんたち、なにしに来たニィ?」
「ん?…あ、藤本先生を助けるお豆を止めに」
「ハッ!」
- 310 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:39
- おっとっと、そうだ!
一瞬忘れてたけど早くモッさんを助けに行かなきゃだニィ!!
「…って待った、止める?
なに言ってんのあさ美ちゃん、あんたモッさんの味方じゃないニィ?」
「味方だよ。
だからこそ止めるの。
お豆が行くより松浦さんが行ったほうがいいでしょ」
「…へ? 松浦さんが?」
「そう。さっき愛ちゃんに『ミキキトク スグカエレ』って
松浦さんに伝えてってメールしたから
お豆が行ったら野暮ってものよ。
ほら、あそこを走り抜けてくの松浦さんでしょ」
「ニ? おお! ほんとだニィ!」
あさ美ちゃんに言われて窓の外に目をやると、校庭に砂嵐を巻き起こしながら
走り抜けていく松浦さんの姿が。
マユゲアイで捉えたその表情は、心配と不安が色濃く表れている。
- 311 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:39
-
「あ、あの…危篤って、美貴さんになにかあったんですか?」
「だーかーら! 白い世界に逝ったってさっき言ったニ…ぐぇ!?」
「すいません、お豆が無礼な態度を。
藤本先生は大丈夫ですから、心配しないでくださいね」
「は、はい…」
「ぐっ…ぇっ…苦し…」
「うぇえー、あさ美ちゃん離したげてよー、ガキさん首んとこ鬱血してるよー」
ちょっとまこっちゃん、そう言ってくれるのは嬉しいけど
声に緊迫感がなさすぎだニィ! もっと必死に言って!
あ、あさ美ちゃんも…茶帯の実力こんなとこで発揮しないで…
私も……私も白い世界に………ランナウェイ…………………
2秒後、私の意識は白い綿毛の中へ消えていった。
- 312 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:39
-
- 313 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:40
-
―――
チャポン チャポン ピン チャポーン
もうだめ。もう絶対無理。1006本には全然遠いけど
せめて3桁までいったってことぐらいは評価して欲しい。
「きも…ちわる……」
「ギブ?」
心の中で助けて助けてって叫びながら102本目のボトルを空にしたところで
机の上に倒れこんだ美貴に、冷たいよっちゃんさんが届く。
ギブ…したいけど…ギブしたらよっちゃんさんになにされるやら。
でももう飲めないし、お腹痛いし、限界だし。
さっきこっそり梨華ちゃんにメールしようとしたのがバレて
携帯取り上げられちゃったから、もう誰にも連絡できないし。
「ギブならギブって言っちゃいな。
痛くしないからさぁ」
ひぇぇ。痛いってどういうこと? その微笑はなに?
美貴どうなっちゃうの? 亜弥ちゃん助けてぇ!!
『たぁーん、たぁーん、ミキたぁ〜ん』
- 314 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:40
- と、目をギュッと閉じて心の中で強く叫んだとき、亜弥ちゃんの
声が空き教室に響いた。
「お? なんだいまのキショイ声」
「キショくない! 携帯返して!」
キショいのはオメーの石川だよ!…って叫んだら込み上げるモノが…おぇっぷ。
てか電話だから返して!
『ミーキたん、ミキたんたん♪』
「…あや?
オレの知らない子じゃん、ミキティ、これ誰だよ」
「よっちゃんさんには関係ないでしょ!」
「へぇ、そんなこと言うなら…」
ぎゃああー!?! やめて!出ないで!
ごめん、ムカついてたからつい生意気なこと…っ。
「もしもし? お前、ミキティとどういう関係?」
「だああーっ!? 変なこと言うな!…っもがっ…」
『っ…っ、……っ…』
美貴の口を塞いでないほうの手の携帯から漏れてくる
亜弥ちゃんの戸惑い。
よっちゃんさんめ、わざと低い声で脅すような声出して
体がタポンタポンじゃなかったら市中引き回しの上首吊り獄門にしてやるのに…っ!
- 315 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:41
- 「あ? オレ?
オレはいいんだよ、オメーのこと聞いてんだよ」
『………っ!』
「恋人ぉ? ほんとかなぁ? ミキティもそう思ってんのぉ?」
「おぐぉぐぅぁぁ!ぅがぁ!」
「ふぅん、でもいまミキティはオレの腕の中にいるから。
かーわいい顔しちゃって、ウルウルな目でオレのこと見つめてっから」
「んぐぅー!んぐぅー!」
ピッ。
ちょちょちょっとよっちゃんさん!!!
なんてこと言い放って携帯切りやがるの!!
たしかにウルウルな目だけど見つめてんじゃなくて睨んでんだよ思いっきり!!
「さーて、こんなもんでいいかな。
ミキティ102本もよく飲んだね。
はい薬。これに懲りたらもう石川に変なことすんなよ」
「ハ? ちょっ…待ってよ! よっちゃんさっ…うっ、おぇっ」
懲りるもなにも!あれは不可抗力だ!…と、思いたい。
いや、マユゲ抗力か。
気持ち悪さで蹲る美貴の頭をサラリと撫でて
よっちゃんさんは教室を出て行った。残りのお茶を引っさげて。
- 316 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:41
-
なんだアレ…美貴にくれるって言ってたのに…いや、すこぶるいらないけど。
それより亜弥ちゃん!
絶対変な誤解させちゃってるハズ。
電話しなきゃ電話…ってなんで出ないの?!5限目始まっちゃった?
いや、お…怒っちゃったのかな…そら怒るよな…美貴だったらブチ切れる。
はやく謝らなきゃ…ぅぅぅ。
少し動いただけでも体中の穴からお茶が噴き出してきそうな
衝動を抑えつつ、四つん這いで這って教室を出る。
途中にあったトイレを見たら、それが合図になったのか
お茶が喉をせり上がってきて、慌てて立って中に駆け込んで目一杯吐いた。あー死にそう。
てか実際鏡に映った顔死んでるし。むくんでるし。
力の入んない手でもらった薬出して、水なしで飲む。
すぐに効くわけないけど、待ってる時間はない。
掃除道具入れにあったモップを1本拝借して、それを
杖代わりにし歩くことにした。
朦朧とする意識を引きずりながらヨロヨロ歩く。
目つきとかすごいことになってるな、たぶん。
「お母さぁん、あのモップのお姉ちゃ…」
「シッ! 見ちゃいけません!」
- 317 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:42
- う、うるさいな、すれ違う人なんかどうでもいいもん。
…それより…ちょっと…体力の限界が…昨日ちゃんと寝てないし…
目がかすんでよく見えない。やばい、倒れそう―――
「ミキたん!!!」
「……ぁ…あやちゃ…」
「ミキたん! どうしたの?! ひどい顔色…ったん?」
「ふぇっ…亜弥ちゃぁああああん」
よかった、亜弥ちゃん怒ってなかった。それどころか
美貴のこと心配してくれて。安心したらぶわっと涙が出てくる。
それでなくてもモップで周囲の視線を買いまくってたのに
ワンワン泣き出しちゃった美貴を、亜弥ちゃんはそっと抱き寄せて
床屋の角にぽつんとある公衆電話の影に隠してくれた。
「亜弥ちゃ…っ、ちがうんだよ…、さっきのは…友達がイタズラでっ…」
「うん、うん、あとで聞くから、ね?」
「くすん…」
「あ、でもいっこだけ」
「…なに?」
「お友達って……さっきの、…男の人?」
「ううん、よっちゃんさんは女の子だよ」
中身は野朗だけど。でも意外と女だってまいちゃんが言ってたか。
- 318 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:42
-
「そう…よっちゃんさん……ん、わかった」
公衆電話の陰で亜弥ちゃんがくれたキス。
吐いたばっかだから汚いよって言おうとして小さく逃げた頬を
捕まえられて、強めに押し当てられた。
やっぱり怒ってるのかも。
おどおどと目を開けると、亜弥ちゃんも目を開けて
美貴をじっと見てた。しかし―――
「み…み、どり…」
「へ?」
―――瞬きを忘れたまま離れたところで、亜弥ちゃんの目が
落っことしそうなぐらい開いた。
「たん、涙が……緑なんだけど…」
「気にしないで」
お茶だから。
「で、でも…どっか内臓悪いんじゃ…」
「健康、いたって健康、美貴元気。家帰ろう」
よっちゃんさんの薬が効いてきたのか、吐き気はおさまってきた。
まだフラフラするけど、亜弥ちゃんが隣にいれば
気力で家まで歩ける……ハズ。てか、歩いてみせる。
- 319 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:43
-
―――
「ん…」
「たん? 起きた?」
「美貴ぃぃぃ!!! 大丈夫かぁああ?!?」
「ひっ…」
あのあと亜弥ちゃんの腕を借りてなんとか家まで辿り着いたのは
憶えてる。けど靴脱いだ記憶はなくて、それでも部屋のベッドに寝てるから
亜弥ちゃんが運んでくれたんだろう。
それはいい。
そこまではいい。
けどなんで? なんでこの家に、いま美貴の目の前に…
「ミツオがいんのさ! 帰れ!!」
「ミーキーたん、そんな口の利き方ないでしょぉ。
心配して来てくれたんだよ」
「呼んだの? 亜弥ちゃんが呼んだの?! なんてことを…っ」
なんて恐ろしいことを…っ、やっぱ亜弥ちゃん怒ってる?
とにかくさっさと帰らせて!なち姉とごっちんが帰ってくる前に!
- 320 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:43
-
「んあ、お茶入りましたよー」
「いやああああ!?!?!」
ごごごごっちん! なんで家に?! 今日も休んだの?!
「んあー、ミキティ起きたの? 大丈夫?
まだ顔色悪いねぇ」
「あ…あ…あ…」
「んあ?」
「美貴を見ないでぇ!!!」
ていうか美貴とミツオを並べて見ないでぇ!!
「たっ、たん! どこ行くの?!」
どこでもいいじゃないですか。
1人になりたいんす。ここにいるの、つらいんす。
無我夢中でベッドを飛び降りた美貴は、一直線にある場所を目指した。
いまなら、あのときの絵里の気持ちがよくわかる。
どう、いま美貴はものすごく、ものすごく、挟まりたい。
挟まりた――――
- 321 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:43
-
_____ _____
____/|::::::::/____/|::::
|| ||::::::| || | |::::
|| ||::::::| || | |::::
[||] ノハヽ| [||] | |::::
|| (●´ー| || | |:::: センキャクダベ
|| |( つ| || | |:::
[||] | ∪" | [||] | |:::
_||__,,|/ :::::::|__||__,,|/:::::
「嫌ぁぁああああ――――――――――!!!!!」
- 322 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:44
-
ねぇ絵里、挟まりたいのに挟まれないとき、人はどうしたらいいんだろう。
美貴は、どうしたらいいんだろう。
「べさ、こうしてるとなんとなく亀ちゃんの気持ちがわかってくるべさ」
「んあ、姉妹だねぇ」
「へぇ、この家では隙間ブームなんか、ロックやん」
「たん? たん? ありゃ、寝ちゃった。
ごっちん、ミキたんベッド戻すの手伝ってぇ」
「んあー」
どうしたらいいかわからない美貴は、現実から逃れるべく目を閉じた。
これが、夢だったらいいのに。
起きたらミツオがいなかったらいいのに。そう思いながら。
「美貴はまた寝たんか。
ほな子守唄歌ったるわ、いい夢をーごらんなさい、すーべーてーをー忘れー♪」
・・・・忘れたいから歌うなバカ!!!
- 323 名前:求めるときに、隙間なし。 投稿日:2004/10/26(火) 20:45
-
- 324 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/10/26(火) 21:12
-
落ちが微妙でギョメンナサイ。
レスありがとうございます。
>>294名無飼育さん様
ありがたいお言葉に敬礼っ ノVvV从
こちらこそ読者様のレスに死ぬ程の感謝×無限です。
>>295◆ZpT8ZEbM様
へい、二番乗りですよw 川*VvV)カワイイッテ(‘ 。‘*从 エヘヘ
(0^〜^0)<轢いてやるYO!そこに寝ろYO!
逃げてください。
>>296名無飼育さん様
川o・∀・)<私が助けましょう、脱いでください(フフ
ミシシッピーはミシティとかミシピィとか地味に悩みました。
顔はこんな感じです→(VvV●从 姉妹ではありません。
>>297ピクシー様
アリャリャも亜茶でアチャチャと悩みました。
残りの四期……あの子たちもまともに書けた試しが(ry
下る前に上がってしまったようです・゜・(ノД`)・゜・
- 325 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/10/26(火) 21:13
- >>298名も無き読者様
川●VvV)人(‘ 。‘●从 アリャミシ
新人類だなんて、豪華な言葉使っちゃダメですよ(w
もうそろそろ終わりますんで
ミキティには心休まる日々が待ってるんじゃないでしょうか。
>>299名無飼育さん様
おぉ、推しが一緒なのですか、しかも漏れなくw
私も運命を感じますw ビビビッ。
では読者様との愛を胸に(違)これからも
頑張らせていただきます。ありがとうございます。
>>300konkon様
ありがとうございます。
2人、約1名可哀想だったりしますがw
お手数ですがレスはsageでお願いいたします。
>>301名無飼育さん様
ありがとうございました。多謝。
>>302名無飼育さん様
( ・e・)<お待たせニィ!
- 326 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/10/26(火) 21:14
-
念のため。
____ ________ ________
|書き込む| 名前:| | E-mail(省略可): |sage |
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
☆ノハヽ__ / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノノ*^ー^)つ/\< ここに「sage」(半角)と
/| ̄∪ ̄ ̄|.\/ .| 入れるとスレがあがらないの。
|____|/ | そうするとちょっと押されるくらいの
,,,,∪∪,,, ,, \狭い所でマターリできるの。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 21:22
- さすがの帝もお茶は無理でしたなw
亜弥ちゃん可愛いです。
- 328 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/10/26(火) 21:47
- またにばんのりです。
更新キタ━━━(゚∀゚)━━━!!オイラは一時間で2リットル(水)が
限 界
でした。すげぇな、帝。てかもぅ藤本さんが可愛かったらダイスケ的にもウォルウォケェ(・∀・)です。
- 329 名前:ピクシー 投稿日:2004/10/26(火) 23:28
- 更新お疲れ様です。
下す前に上がってきちゃいましたね(笑)
102本・・・51リットルですか・・・人間一気に水分を取りすぎると、「死」もあるらしいですよ?
帝の生命力恐るべし・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 330 名前:名も無き読者 投稿日:2004/10/28(木) 22:33
- 更新お疲れサマです。
高1の新入生歓迎会でやらされた「色々混ぜて得体が知れなくなった水」
早飲み競争の時のチャポン腹を思い出しました。。。
背後のラグビー部の皆様が脅すんです・・・。(涙
てか素敵オリキャラが、しかも前作のアレが召喚されるとはw
何気に好きだったので舞い上がってます。
そろそろ終わるというのは寂しいですが、続きも楽しみにしてます。
- 331 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:40
-
「クルクルー」
「ちょっとさゆ、掃除の邪魔たい」
「掃除なんかやめてれいなも回ればいいと思うの」
「…いいワケなか」
まったく、さゆは自由過ぎるけん。
回るならせめて終わるまで待ってくれんかね?
箒かける前にクルクルしたらホコリ舞うやん。
「ホコリと一緒に舞うさゆもかわいい」
「…あっそ」
「れーな」
「あ?」
ぬぉ?! ビックリした。
あっそなんてそっけなく言い返したんが気に入らんかったんか
振り向くと無の表情を貼り付けたさゆの顔が目の前に…っ。
「な、なん?」
「今夜は眠れないね。頑張って」
「はぁ?」
- 332 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:40
- いきなりなんね?
最近れいなは絵里に付き合って塾長の家でお世話になっとるけん、
自分のアパートのうっすい布団より100倍寝心地のいい
フカフカのベッドで気持ち良く眠れとぉのに。
ハッ、もしや……絵里が帰るってことやろか。
絵里が帰れば、れいなも自分のアパートに戻ることになって
またうっすい布団で寝ることになる。
久しぶりの薄布団は、フカフカで寝慣れた身体には固すぎて
よう寝れんってことをさゆは言いたいんやなかろうか?
そ、それはちびっと残念やけど、でも、でもよかったばい。
絵里が、お姉さんと仲直りできるなら、れいなはうっすい布団だろうが
地べただろうが氷の上だろうが喜んで寝るけん!
「ん〜、仲直りはまだ先かもなの」
「え?なんで?絵里は帰るんやろ?」
「ん〜」
いや、唸っとらんで、どういうことなん?
仲直りせんのに、絵里は塾長の家を出て行くんかね?
ならどこ行くと? まさか誘拐…っ
「れいなファイットー」
「えぇ!? ちょっ待てさゆ! 待ちんしゃい!」
「クルクルー」
- 333 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:41
-
―――
「さーて藤本ちゃん、帰ろうか」
今日も爽やかに訪れた放課後。
座りっぱなしでやや軋む体を伸ばしながら、私くし――小豆の貴公子こと
新垣里沙は隣の席の藤本絵里に甘く蕩けるおしるこのような笑顔を向ける。
「…ううん、もういいの」
「へっ?」
しかし、向けた先の彼女は小さな微笑をたたえた顔を横に振り
続けて柔らかく頭を下げる。
「新垣さん、いままでありがとう」
「…ニィ、帰る決心ついたニィか。よかったニィ。
お姉さんにちゃんと謝れるニィ? ついて行こうか?」
「家には帰らない」
「ニェ…?」
え? 帰らない?…ちょっとちょっと!
いきなりなに言い出すのこの子は!
「そんなのダメニィ!それならニィの家を出て行かせるワケには
いかないニィよ!」
「フフッ、ほんと、新垣さんっていい人だよね。案外」
- 334 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:41
- 当然だニィ。なんせニィの体の98%は優しさででき…って案外は余計ニィよ!!
「有難いけど、でも、これ以上新垣さんのお家に迷惑かけられないもん」
「別にウチは迷惑じゃないニィよ。
いま両親とも海外出張中だし、妹は家出中だし。
部屋は充分余ってんだから遠慮することないニィ」
それに藤本ちゃんが迷惑なんだったら道重ちゃんなんか
ほぼ毎日予告もなく『おいしいチョコくださぁい』ってニィの部屋の窓から
入ってくるニィよ?
(けど前に一度窓の鍵が閉まってて入ってこれなくて
ベランダで『チョコ…』ってうわ言いながら凍死しかけるって事件があったから
窓の一部を改造してネコ用のドアみたいに道重ちゃん専用の小窓が造られた)
あの子に比べたら藤本ちゃんは行儀よく玄関から入ってくるし
お風呂使ったあとケの一本も残さないし
トイレットペーパー三角に折るし。
チョコやらお菓子やらあるだけ食い散らかす道重ちゃんと違って
藤本ちゃんは一日いくつって決めて毎日ちょっとずつ食べるでしょ。
そのせいでとっといた分道重ちゃんに食べられちゃったりするでしょ。
そういうとこが幸薄いでしょ…って話が逸れたニィ。
- 335 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:42
-
「でもでも、今日お父さん帰ってくるって
石川さんが言ってたよ」
「え? あ、そーなの? 知らなかったニィ」
お父さん帰ってくるニィか。また土産は豆大福かな。
つーかわざわざ海外に出張に行ってるのにいっつも土産が和菓子ってどうなの?
「…知らなかったの?
ダメだよ、久しぶりに会えるんだから」
「いや、聞いてなかったし。
お父さん帰ってきたって豆大福くれるだけで話もしないから
藤本ちゃんたちいても大丈夫ニィよ」
あ、でも豆子がいないからちょっと問いつめられるかも…。
究極の大豆を求めて旅立ったとでも言っとけばいいかな。
「ダメだよ! お父さんに会えるときはちゃんと話さなきゃ!
いついなくなっちゃうかわかんないんだよ!」
「っ……藤本ちゃん…」
そういえば………藤本ちゃんの今のお父さんとお母さんは海外に住んでて
前のホントのお父さんもマグロ漁船に乗ったきりでずーっと会ってないんだっけ。
会いたくても会えない藤本ちゃんの前で
ニィったら無神経なこと言っちゃったニィ。
- 336 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:42
- 「藤本ちゃん、ごめんニィ。
でも行くとこが決まってないんなら、やっぱり放っておけないニィよ。
田中ちゃんだって心配し………あ、田中ちゃんの家行くニィ?
なぁーんだぁ、それならオッケーニィよ〜」
「ふぇっ?」
「んェ? ちがうニィ?」
ポロリと言ってみたんだけど、そんな考えは全然なかったのか
藤本ちゃんは目を見開いてポカンとしている。
いやだって、藤本ちゃんが出てけば絶対田中ちゃんは追いかけるし。
行くアテがないなら、『れいなの家来んしゃい』ってなるでしょ。
「れーなの……お家……」
おや、ニィはひょっとして、余計なことを言ってしまったのかしら。
田中ちゃんの家に行くということは、思いっきり2人っきりで
邪魔するものなんてなにもなくて、お付き合いをしてるワケだから
夜はもちろん釣りバカ日誌でいうところの合体………きゃあああああ!?!
「そっかぁ! 新垣さんアリガト!
絵里、れいなの家に行く!!」
「っ…うひょお!」
アワワワワワ!変な声出たニィ!
待って藤本ちゃん!田中ちゃんの家でめでたく…モニャモニャなことになって
あとで田中ちゃん家に行くことをそそのかしたのがニィだとか、モニャモニャしたって
バレたらモッさん怒るんじゃない?怒るよね?大激怒ニィ。
- 337 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:42
-
「じゃあ絵里帰るね。
これ、少ないけどお世話になったお礼」
「いいいいらないニィよ!! ウチは金なら足りすぎてるから!
だからやっぱり出てくのやめにしない?
いきなり行ったら田中ちゃん部屋掃除してないかもしれないし」
「絵里が掃除するから。
ほんとにほんとにありがとう。
また明日ね、バイバーイ」
「っ…バイバイニィ」
モッさん、すまぬ。
おたくの妹さんが大人になる日が来てしまったようだニィ。
田中ちゃん………、頑張るニィよ……。
◇ ◇ ◇
- 338 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:43
-
「なぁ絵里、やっぱり…」
「れいな、卵とってー」
「あ、ハイハイ」
卵か。すでにカゴの中には鶏肉とマッシュルームとタマネギが
入っとるけん、これはオムライスを作ってくれるつもりなんかなぁ。
「れいなの家ケチャップある?」
「うん」
決まりじゃね。…絵里のオムライスかぁ…作れるんかなぁ…。
お姉ちゃんの料理で一番好きって言ってたんは聞いたこつあるっちゃけど
絵里が作ったって話は聞いたこつなかよ。大丈夫やろか。
「むー、れいな失礼なこと考えてるー」
「っか、考えてないけん! 楽しみやなーって思っとったと!」
「ほんと? んふふ、楽しみにしててねー。
あ、チーズも買うー」
ふぅーっ、焦ったばい。てか腕離して欲しいんやけど。
さっきからひっつかれとるけん柔らかいもんが当たっとぉ…。
- 339 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:44
-
絵里の料理もさることながら、いま一番心配なんはれいなの理性たい…。
さゆが言っとった頑張れっちゅうんはこういうことやったとね。
掃除終わって学校出た途端、門のとこで待っとった絵里に
クネつかれて気づいたっちゃけど、そげんの頑張るとか頑張らんの問題やなかやん。
絵里は塾長とお父さんの時間を大切にして欲しくて
気ぃ利かせただけなんやから、決してれいなと…ンニャアなことしたいワケやないけん。
変なこととか、考えたらいけん。
「ねーねー」
「ん?」
「新婚さんみたいだねぇー」
「ブハッ!?ゲホゲホゲホゲホッ!!」
「きゃっ! 大丈夫?」
イタタタタタっ、コーラ変なとこ入った!めちゃくちゃ痛いばい!
買い物を終えたアパートまでの道、コーラの缶をチューチュー飲んどった
れいなは思いっきり吹き出した。
絵里がシシシ新婚とか言いよるからっ…。
- 340 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:44
-
―――
「…れいな、怒ってる?」
「え?」
れいなの住んどる狭いアパートに着くと、ひとしきり部屋を見渡したあと
炊飯器をセットした絵里がモジモジしながら聞いてきた。
べ、別に怒ってなんか…
「目、怖くなってる」
「ぐ…元々こういう目たい」
「えー? そんなことないよねぇ、キティちゃん」
「…高校生にもなってヌイグルミに話しかけんのやめ」
「だっていっぱいいるんだもん。
そんなに好きなの?」
「違う。いまはむしろ嫌っとう」
おとーしゃんが毎週送ってくる嫌がらせに近い電報はまだ続いとって、
いくつか友だちにあげたり近所の幼稚園に寄贈したりしたんやけど
それでも処理しきれんほど大量のキティたちがれいなの部屋を埋め尽くしとるけん、
一見れいなが集めとるように見えるかもしれんけど。
もう何年もこの顔に四方八方から見つめられ続けられたら
さすがに嫌気がさすばい。
ひきっぱなしの布団の上も、机の上もテレビの上も流しの上も
この部屋はもはやれいなの部屋ではなく、こいつら占領されたと言っても
過言やなか。
- 341 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:45
- できればいますぐにでも燃やすか捨てるかしたいんやけど
相手はヌイグルミやし…なんか可哀想で…
「絵里もいっこもらう」
「ん、好きなだけあげると」
「なんで友だちにあげたとき絵里にくれなかったの?」
「…絵里にはラムネがおったけん、いらんかと思って」
「ふーん」
あ、あれ? 絵里怒っとる?
れいなの布団の上にちょこんと座って転がっとるキティを抱き上げた絵里は
つまらなさそうに口を尖らせた。
「え、絵里?
ごめん、絵里にもあげるべきやった、ほんとごめ――」
「バカ」
「うぐっ」
そ、そりゃバカやけどそげん怒らんでも……ん?
「絵里? 熱あるん?」
顔を半分キティに隠しとる絵里のほっぺが赤くなっとう。
さっきまであんな元気やったのに…
- 342 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:45
-
「ちがう。ちがうもん、れいなのバカ」
「ぐわ」
おでこに手を伸ばそうとしたら、突然キティに頭突きされた。
な、なんするとぉってキティをグイグイ押し付けてくる絵里の腕を
掴むと意外にあっさりキティはどいてくれて、
でも次はキッと釣り上がった目に睨まれる。
「初めてだもん。れいなの家、絵里だけで来るの初めてだもん。
さゆと一緒に来たのだってずーっと前だし
こんなにキティちゃんいなかったもん」
「あ、そ、そうやったね…」
そういえば。絵里とさゆが来たんは、まだキティが押入れだけで
なんとかなっとったときやけん、随分前の話で。
『れーなの部屋は狭いし寒いしお菓子がないの』ってさゆが言って
塾長の家でばっか会っとったし、こないだまでは
れいなが絵里の家にお世話になっとったけん、この部屋で絵里と
2人っきりになるんは、今日が初めてや。
やけん、なにが起こるかわからん。
気持ちは伝え合ったんやし、軽くならくっついたし。
2人の関係を一歩でも二歩でも進められるワケで
今夜は夏の夜じゃないのにすこぶるデインジャーたい。
- 343 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:45
-
「緊張してるのに…、れいな怖いし、そっけないし、絵里のこと子供扱いするし」
「……しとらんよ」
「したもん」
しとらんよ。でなきゃ、なんでれいなの心臓こげんバクバク言っとるん?
れいなの胸にぶつかってきた絵里の頭を抱える。
髪に鼻を突っこんで吸い込むと、絵里の匂いがいっぱいして
自分でも驚くぐらい熱い溜息が出た途端、腕を引っぱられて、
気がついたら布団の上で、絵里の上に乗っかっとった。
「…え、絵里?」
「子供扱いしないで」
こ、この格好は危険すぎる、はやくもデインジャーな体勢を
慌てて解除しようとするのに、絵里は真っ赤な顔で、
いまにも泣き出しそうな目で睨んでくる。
卑怯や、そんな顔。
腕を掴んでた手がするするとれいなのほっぺたまで登ってきた。
誘われるままキスすると、絵里がペロッと舌を出した。
「待っ! 絵里、そんなんどこで…っ」
「…子供じゃないもん! これぐらい知ってる」
「っ………」
- 344 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:46
-
声も出んかった。
夢中で、夢中で、離れてもすぐじれったくなってキスして
舌なんかどうやって絡めるのが正しいとかわからんけん
正しいキスなんかできんけど。
ただ動くままに、こうしたいと思うがままに。
それが、れいなと絵里のキスなんやから。
時おり漏れる、少し苦しそうな絵里とれいなの声、息遣い。
それはストッパーになるどころか、むしろ潤滑油みたいに
なめらかに2人を動かして―――
______________________________________________________________
______________________________________________________________
/ /! ,イ | l|l |l l
.| | / | ━┳━ ━┳━ ! ||l |l | レイナン、あんたヤる気?
| | l | ! ||li |l |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 345 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:46
-
ぎゃあっ!?
って、お姉さんのそんな声が聞こえてくるような気がするけど
全然止まれなか。
まだ夕方で外も明るいのに、オムライスだって食べてないのに
絵里の手が、れいなのネクタイにかかって
れいなの手が、絵里のリボンにかかって
まるで初めてじゃないみたいに潤滑に、お互いのブラウスのボタンを外してく。
上から2つ目を外すとき、絵里がキスの中で小さい悲鳴を上げても
手は止まらなかった。
「絵里、起きて」
「…ん」
途中でブレザーにひっかかって、脱がせてなかったことに気づく。
目が合わせられんくて逸らすとカーテンも閉めてなかった。
自分のを脱ぎながら立って薄緑のカーテンを閉め、振り返ると絵里も
脱いだブレザーをたたんどって、その背中にたまらず抱きすがった。
- 346 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:47
-
「れいなは…」
「…なん?」
「れいなは、まだ子供?」
「大人やないけど……でも、子供でもなか」
だって、子供はこんなことせんやろ?
からかうような声で囁きながらまたキスして、今度はどんどん唇が下がってく。
鎖骨を吸うと耳かじられて、ブルッと身震いした拍子に
絵里を布団に押しつけた。
「ごめん、布団薄いっちゃろ?」
「れいなのだもんね」
「なっ…」
どういう意味と?!れいなはボーボーた…ゴホゴホ、なに言わすんね。
人がせっかく背中痛くないか気遣ったのに…
「れーなぁ」
「あ?」
「もぉ、怒んないでよ。つづきぃー」
「ぇ? あ、うん…」
つ、続きね。てゆーか、れいなたちブレザーしか脱いでないやん。
ブラウスとスカートも脱いどけばよかった。
はあ、なんか難しい…。
初めてなんやから仕方ないか。少しずつ慣れてくんやろう。
- 347 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:48
-
もうすでに疲れてきた体にそう言い聞かせて
残りのブラウスのボタンを外しながら、再び絵里の身体に唇を近づける。
胸って…もう触ってもええんかな?
その前に下着脱がせんと……
と、ごちゃごちゃ考えながら鎖骨から下に唇を滑らせたときやった。
「ひゃうっ!? れ、なだめぇ!!」
「ふぉ?! 絵里? どうしっ…エビィィィイイイ?!?!」
ビチビチビチッ ビチチッ
◇◇◇
「絵ー里」
「…グスン」
「泣くことなかやん。れいな気にしとらんけん」
- 348 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:48
-
れいなが胸骨に触ったせいでエビになった絵里は、無事人間に戻ると
無表情で起き上がり、話かけても返事をせずに服の乱れを整えて
れいなの顔も見ようとしないまま流しの前に立ち
黙々とオムライスを作り始めた。
出来上がったオムライスは、ホクホクのチキンライスに
チーズ入りのぐちゃぐちゃ卵っぽいオムレツが乗っとって、
見た目はアレやったけど味は普通に美味しい。
やけん素直に「おいしか」って言ったんやけど
そしたら絵里は泣きだして。
必死に頭を撫で続けたら、やっと口きいてくれた。
「えっ…絵里の…胸骨触っちゃいけないって…ゥック…家訓にもなってるのに…
れいなに黙ってて……ヒック、ずっと黙ってて…だってお母さん、
絵里のせいでエビ食べれなくなって…ふぇぇぇ」
か、家訓になっとるん?……やったらお姉さんも教えてくれりゃいいのに。
「ごめんなさい、れいなごめんなさい」
「絵ー里、気にしてないってば。
謝ったほうが怒ると。
はやく泣き止んで絵里もオムライス食べよ?
ばりおいしいけん」
「ぅっ…っく、うん…」
- 349 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:49
-
絵里はどっちかって言うと、エビになるの黙ってたことより
中断しちゃったことを悪いと思ってるみたい。
たしかに残念やったけど、れいなはちょっとホッとしてたりもすると。
あのまま勢いでしてもよかったんやろうけど
それやと後でなんも憶えてないような気がするけん。
無表情でビチビチ動く絵里にはビックリしたけど
あんなん見たくらいじゃへこたれんばい。
絵里がエビでもクマでも猛獣使いでも
れいなの気持ちは変わらんけんね。
「絵里ー」
「…なぁに?」
「愛しとーよー」
「っ…バカぁ」
「イヒヒ」
- 350 名前:子供じゃないふたり。 投稿日:2004/11/18(木) 19:49
-
- 351 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/11/18(木) 19:50
-
モッさん、すまぬ(爆
すっかり遅れましたが、誕生日ということで
おめでとうレイナン。
∫
ノハヽo∈∫
从 `,_っ´) ズズズ たしか去年も遅れたっちゃ
(つ=||||____
('⌒)\_/
ごめんよレイナン_| ̄|○
レス、ありがとうございます。
>>327名無飼育さん様
(VvVlll从<美貴も人の子だからね。あー気持ちわる。
从*‘ 。‘)<えへ、ありがとぉ。あなたもキャワイイです、たぶん。
>>328◆ZpT8ZEbM様
1時間で2g、なかなかツワモノとお見受けしました(w
ちなみに私はそんな限界にチャレンジしたことありませんが(爆
(VvVlll从<鬼だよね、この作者。
>>329ピクシー様
「死」っ!?ひぇええ。
そうとは知らずごめんよ美貴様、でも私鬼だから(爆
美貴様が丈夫な子で本当によかったですね(他人事のように
>>330名も無き読者様
「色々混ぜて得体が知れなくなった水」は私も高校時代にファミレスで
よく作り、スジャータと名付けて後輩に飲ませました。
やっぱり鬼ですかね(w
- 352 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 22:23
- ほぉー…なかなか成長してますねこの二人もw
ラブラブっぷりが久々に伺えて良かったです。
次回更新期待してます。
- 353 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/11/18(木) 22:46
- …なんか今回メインの二人よりしげさんのキャラがすきでたまりません。
すいません。すいません。
姉さん事件ですい(ry
余談ですがうちの部長(50代つるっぱげ)の通称もモッさんでガキさんが呼ぶ度、彼の姿が紺会場のドリーム集団のように目の前に迫ってきました。
更新乙でした。
とりあえずモッさんを遠めに見つつ待ってます。
- 354 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 23:44
- ハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!
徐々にステップアップしていく二人萌え。
しかしその姿を見てもその愛が変わらないれいな凄いw
- 355 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 23:57
- れなえり(;´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
- 356 名前:ピクシー 投稿日:2004/11/19(金) 01:14
- 更新お疲れ様です。
胸骨に触ってはいけない・・・たしかにそんな家訓がありましたね(w
エビになってしまいましたか(w
現実の実物も見てみたいですね。
メンバーの誰か、ハロモニとかでさりげなくやってくれないものか。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 357 名前:名も無き読者 投稿日:2004/11/20(土) 22:16
- 更新お疲れサマです。
とりあえずレイナンの心に巣くうお姉さんにビビりました。
んでおとーしゃんの甲斐性に脱帽し。
とどめとばかり久々出て来た例の家訓・・・作者サマの寸止めのタイミングはえぇ、鬼ですねw
それでわ続きも楽しみにしておりまする。
- 358 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:25
-
―――
『Hey!ラジオの前のリスナーのみんなお待たせしました!
今日のゲストは、ハロープロテインの松浦亜里ゃちゃんと藤本美示ちゃんでーす!』
『こんにちはぁ。
マツウラァ、アリャでぇぇーす』
『ちーす、藤本美示でーす』
電気もつけてない自分の部屋で、ベッドにもぐりこんだときに手が
リモコンにあたったらしく、ラジオからDJとアイドルの軽快な声が聞こえてくる。
『ミシたん、もうちょっとかわいく挨拶できないのぉ?
ちーすじゃチンピラみたいだよぉ』
『えー、美示ゴボウじゃないよー』
『それは キ ン ピ ラ でしょ! 私が言ってるのはチンピラ!』
『あーあー、ウサギなのに尻尾がネコみたいなヤツ?』
『それは チ ン チ ラ !』
『わお、亜里ゃちゃん水玉だぁー』
『それはパンチラ…ってきゃああ!!? なにすんのよミシたんっ!』
ん? この子たち、さっきまいちゃんが言ってた子かな。
たしかアリャリャとミシシッピーとかいう…
- 359 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:25
-
『二人は相変わらず仲がいいのねぇ。
最近もお泊り会とかしてるの?』
『もちろんです! 昨日も私がミシたん家行ってぇー』
『なんの連絡もなしにいたよね』
『あらー、まるで恋人同士じゃないのぉ。もう同棲しちゃえばぁ』
『にゃはははは。
どうするミシたん?』
『引っ越すってこと? うぇ、荷造りめんどい』
『私が行くからミシたんは荷造りしなくていいよぉ』
『じゃあおいで』
『キャー、決まりね! ところでそんなラブラブな二人なんだけど
ソロ活動してる亜里ゃちゃんと、ソロからパーキング娘。に加入した美示ちゃんが
どうして一緒にこの番組に来てくれたかっていうと…』
あ、パーキングなんちゃらなら美貴も知ってる。
たしか100円パーキングみたいに誰でも気軽に駐車できるような
ってコンセプトで名付けられたアイドルグループだよね。
でもさ、駐車するってことは免許持ってなきゃダメじゃん。
アイドルなのに対象年齢18歳以上限定かよ。
- 360 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:26
-
『そうなんですぅー。私とミシたん、晴れて二人っきりのユニットを組むことになりましてぇ』
『亜里ゃちゃんがぬんく♂さん脅したんだよね』
『え? そうなの?』
『ちょっ、ちょっとミシたん!
脅したのはアンタでしょ!「ぬんく♂、いい加減目ぇ覚ませよ」って!』
『えぇー、アレはぬんくさんが居眠りしてたから
起こしただけじゃん。
美示、亜里ゃちゃんみたいに関西弁で「ぬんく♂はん、そろそろええのんとちゃいますか?
いつまで神風待っとんねや?」って詰め寄ってないよぉー』
『そんなこと言ってないぃぃ!!』
『…まぁまぁ、二人のユニット結成にはそんな秘話があったのねぇ』
秘話? 秘話ってゆーかアイドルの裏の顔じゃん。
『だから脅してなんかないですよぉ!
いつもみたいにぬんく♂さんがパキーン!てなってぇ、
仕事終わりに事務所に呼ばれてイェーイだったんですぅ!』
『アハハ、そうそう、冗談ですよ』
冗談に聞こえないよ。てかぬんく♂って…ヤな名前…。
- 361 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:26
-
『なんだ冗談なの、よかったわぁ。
それで、気になる二人のユニット名は?』
『『・・・・・』』
『ん? 二人ともどうしたの?』
『いや、えーと…なんていうか……』
『そのへんは、来るべき日までとっておきたいんで
まだ言えないんですぅ』
『来るべき日っていうと、ユニットのデビュー日ってことかしら?』
『ハイ、ファーストシングルの発売日ですね』
『ははぁ、なるほどぉ。じゃあシングルのタイトルとかもまだ秘密?』
『いえ、それは今日かけてもらうつもりなんでぇ。
タイトルはそのときに』
『ひっぱるようなネタでもないけど』
『ミ、ミシたん! ネタじゃないでしょ!
私たちの記念すべきファーストシングルなんだよ?! 二人の愛の結晶でしょ!』
『あー、そだね』
『フフフ、二人見てると楽しいわねぇ。
それじゃあタイトルは置いといて、どんな曲なの?』
『えっとぉ、歌詞がちょっと切なくって泣ける曲なんですよ。
私が歌ってミシたんがラップでツッコんでるんですけどぉ』
『サビはハモッてますよ』
『ラップでツッコミ…?』
- 362 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:27
-
どんな歌だよ。
てかミシシッピーのほうがツッコむの?
さっきから聞いてると、美貴と一字違いのクセにミシシッピーは
ボケまくりでアリャリャがツッコんでばっかなんだけど。
『なんていうかぁ、言葉で言い表すのは難しい曲なんです。
ミシたんのツッコむ声が最高に良くってぇ』
『亜里ゃちゃんの歌声も素敵だよ』
『やだぁ…たんったら、いつもはそんなこと言ってくれないくせにぃ』
『えへへ、ラジオだしね。特別特別』
『まあまあお熱いこと。じゃあそろそろリスナーも
ジレジレしてる頃だから、曲聴いてもらおうか?
初めての共同作業・曲紹介お願いしまーす』
『はぁーい。
それでは聴いてください。アリャリャとミシシッピーが
歌ってます。ミシたん、せーのっ」
『『「メリーさんのマトン」』』
- 363 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:27
-
……………マトン?
あぁ、そういやミシシッピーって子はデビュー曲で特選牛がどうのって
歌ってたんだっけ。肉専門なんだ。へぇ、美貴ファンになりそう。
アリャリャのほうは、そういや『桃缶肩重い』とかいう
『桃缶を担いだら〜肩重い〜♪』みたいな感じの曲歌ってたよね。
コンコン。
「ミキたん」
あと『ムッカムカ・イタメール』とか『100回目のミス〜社長、減給だけはご勘弁〜』とか…って
何年か前に聞いたことがある曲を思い出してたら
ドアが控えめにノックされて、返事する前にそっと開いたドアから
亜弥ちゃんが顔を出した。
布団から手だけ出してリモコンを探し、『メリーさんのマトン〜♪(食用かよ!)』
ってアリャリャの歌とミシシッピーのツッコミが流れてくるラジオを切る。
- 364 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:28
-
「気分どう?」
「よくわかんない」
家でも少し戻して、たぶん胃の中はスッカラカンな美貴。
けどなにも食べる気にならないし、起きるのも面倒だったし、
理由はそれだけじゃないけど、夕飯は辞退してベッドに転がってる。
「下、盛り上がってるよ」
「………へぇ」
そう、ミツオが、ミツオがまだいるの。この家に。
美貴が意識取り戻したの見て、『ほな帰るわぁ』って言ったクセに
ちゃっかり夕飯にお呼ばれしやがって。
まあ、気を遣ってくれたのか、なち姉たちには自分のことを
美貴の母親ではなく母親の兄――伯父だって名乗ってくれたらしく。
それはそれでなんか……美貴が悪いみたいで……あぁもう、早く帰ってくれないかな。
「あのね、湯豆腐作ったんだけど食べる?
おかゆのほうがよかったかな?」
「食欲ない。汁物見たくない」
てゆーかあらゆる水分に拒絶反応。
頭ん中でクツクツいってる鍋を想像しただけでキモイ。
おかゆも豆腐も白いハズなのに、なぜかグリーンなシロモノしか
想像できなくて余計キモイ。ぐわああ、緑茶の残像がぁ。
- 365 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:28
- 「…そっか」
「あ…」
やば、緑な脳内に苛立って思いっきり不機嫌な声出ちゃった。
せっかく作ってくれた湯豆腐なのに
そっけなく「いらない」なんて言っちゃったもんだから
亜弥ちゃんは小さく傷ついた顔になってる。
「あの、ごめ……へ?」
咄嗟に謝ろうと慌てて上半身を起こそうとすると、俯いたまま静かに
近づいてくる亜弥ちゃん。
ベットに腰掛けるとおもむろに布団をどけて、美貴の着てるシャツをペロンと
めくってお腹に手を…ってくくくくすぐったい!なにすんの亜弥ちゃん!
「もうペッタンコになってるのに…ほんとにお腹空かないの?」
「ひゃひゃひゃ!あひゃひゃ!あひ!ひぃ!」
「む? たん、なに言ってるかわかんないよぉ」
「ひゃひゅひょほぇ!」
あんたがさすってんのがくすぐったくて喋れるかぁ!
「さっきはポコンって出ててかわいかったよねぇ」なんて
今は亡きポコティを偲ぶのはもうやめてぇ!
- 366 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:28
- 「ねぇ、じゃあなにも食べなくていいから下行こう?
気持ち悪いのは治まったんでしょ?」
「絶対ヤダ」
「むぅ。お母さんがいなかったら、たん倒れたままだったかもしれないんだよぉ?」
「ぐ…」
やっぱりそうですか。
ほんとは食事なんかどうでもよくて、ミツオのとこに美貴を
連れてきたいだけですか。そうですか。
そうそう、美貴さぁ、意識が朦朧としてたから
亜弥ちゃんに抱えられて歩いてる記憶しかなかったんだけど、
気力だけでなんとか歩いてた美貴は途中で体が動かなくなっちゃって
途中から亜弥ちゃんにおんぶされてたらしいのね。
でも、意外とたくましい亜弥ちゃんといえど普通に背の小さい女の子なワケで。
美貴だって小さくてスタイルよくて細めで小顔な女の子なワケだけど
お茶地獄のせいで体重がいつもの3割増だったっぽいし
鞄だって持ってたし。
そんな4割増な美貴をおんぶして家まで歩くなんて
亜弥ちゃんには到底無理で、おんぶはできたけど歩けなくて
困ってたとき、目の前に真っ赤なスポーツカーが停まったそうな。
- 367 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:29
-
『よぅ!そこのオンブロックなお嬢ちゃ…っなぁあああ!?
おんぶされとんのはマイスウィート美貴やないかっ!!
どないしてん?! 美貴の身になにがあったんやぁああ!!』
ピコー(ry
『わかった! 誘拐やな!!
ということはおんぶしとるお前は今話題のかわいい子しか
誘拐せーへんっちゅー怪盗・面食いマンやろ!!』
『ふぇ? あ、お母さ…』
『んんぅ? その顔は美貴のハニーのアヤヤやないかぁ!
その変装で美貴を油断させて眠らせたんやな!
つーかどこ触っとんねんゴルァ!!』
『いや、あの…』
『たしかに美貴はかわええ、最高や。なんせオレが腹を痛めた子やからな。
誘拐したなる気持ちもわかる。
しかし、しかしや! そんなことするくらいやったら
真っ向から告白してハートを奪えばええやろ! 怪盗やったらルパン見習わんかい!』
『あの、だから…』
ゲ、恥ずかしい。
きっと道行く人々に白い目で見られていただろうこのやりとりは、
ムックリ顔を上げた美貴が(なぜか本人は全く覚えがないんだけど)
ミツオに強烈な右フックをかまし、『美貴が亜弥ちゃんの偽物に騙されるワケねーだろ!』
と怒鳴ったことで終わったらしい。
- 368 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:29
- そして怒鳴ったあと、またバタンQシャ乱Qな美貴は
ミツオの車に乗せられて家まで帰ってきたんだそうだ。
で、車を降りるときもミツオに触られるのは強く拒否したそうで
(これも覚えてないけど正しい判断だった)
ずーっと亜弥ちゃんに抱えられてたから、てっきり亜弥ちゃんが
美貴を運んでくれたんだと思ったと。
そんなこんなで、ミツオには感謝しなきゃいけないんだけど
美貴はまだ「ありがとう」が言えてなくて。
それを気にしつつも、なち姉たちのいる前でミツオと並ぶのも
嫌だから、1人で部屋に閉じこもってて。
そんな美貴を気にして、亜弥ちゃんは湯豆腐っていう口実を
作って呼びに来てくれたっぽくて。
あーあ。その優しさ、無下にできるワケないじゃん。
ベッドを出た美貴は、お腹をくすぐられたお返しに
亜弥ちゃんのお尻を一撫でしてから部屋を出た。
「こ、こらあ!」
「んへへ」
- 369 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:30
-
―――
下に降りると、途端に明くなった視界にまだグリーンが少し残ってた。
瞼を擦りながら賑やかなダイニングに足を踏み入れ―――
「お、美貴大丈夫かぁ?
なつみちゃんの料理おいしいでぇ!
美貴は毎日こんなええもん食べとるんやなぁ」
グリングリン、美貴の席にはララ、ミツオが座り〜♪
「ふざけんなタワケぇ!」
「ポフデェ!?」
ある日パパと二人で語り合ったさ!お前のことを!!
『ほんっと、笑かしてくれるよなぁ』
『怒ってないの?』
『怒る理由がねぇよ』
『……ふーん』
『美貴。オレ、アイツと結婚したこと後悔してねーぞ』
『悔やんでもしょーがないよね、事実だから』
『オレ、美貴が産まれたときスッゲェ嬉しかった。だから、そんだけでいいんだ』
『…オヤジ』
『ん? 抱きつきたかったら遠慮すんなよ』
『してないし』
『あんだよー、これから2人っきりなんだから仲良くしよーぜー』
『ウザイ。美貴に構ってる暇あったらさっさと新しい人探してこい!』
- 370 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:30
-
「イタタタタ、すまんすまん、ここ美貴の席やったんか」
「んあぁ、伯父さん大丈夫ですかぁ?」
―――ハッ! しまった、つい。
蹴った拍子に回想シーンにまで突入しちゃったよ。
「ミキたん! ついで脳天蹴り飛ばしちゃダメでしょ!」
「ワ、ワザとじゃないよぉ、足が勝手に」
「もぉ、たんの足は悪い子ちゃんなんだから」
ペシッと亜弥ちゃんが美貴の右足をはたく。
その様子を、ミツオが嬉しそうに眺めていた。
「なに見てんだよ」
「たん、もっとカワイイ声で」
「………な、なに見てるんでちゅか」
「ブッ! ミキティなにそれ!
カワイイ声って言ってるだけなのになんで赤ちゃん言葉なの?!」
「そのナチュラルプリティっぷり。
さすがお父さんの子供やな」
だああ!!うっさいよみんなして!……ってアレ?なち姉は?
「んあ、間違えてごとーの焼酎飲んじゃって」
「うわ、真っ赤」
ごっちんに膝枕ですぅすぅ寝ちゃって。
つーかごっちん、あんたまだ未成年でしょーが。
- 371 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:30
-
「美貴も飲まへん?。
膝枕ってどー考えても太もも枕な点に注目しながら」
「ミツオ、まさかごっちんの太ももに萌えてんじゃないでしょうね?」
「ギクッ」
「 殺 ! 」
てめぇ、それでも元女か!
ごっちん「イヤァン」て恥ずかしがってんじゃんか!
後藤さん家からお預かりしてる真希ちゃんを変な目で見るんじゃない!
「ミキたんストーップ!」
「ぬわっ、止めないで亜弥ちゃぁん!」
「いいから座って! もぉ、元気じゃんミキたん」
え? あ、そういえば。
いつの間にやら視界もグリーンが消えて普通だし。
お腹も空いてきた。
「じゃあ湯豆腐食べる?
待ってね、今用意するね」
「うん。……ん?」
あれ? 不本意ながらもミツオの向かいの席に座らされた美貴の
目に、おかしな映像が入り込んでくる。
「ああーっ!!ゼリーフライ!
なんでミツオが食べてんだよぉ!!!」
「へ? え、あかんかった?」
- 372 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:31
- あかんに決まってんだろおかん!!
亜弥ちゃんにあげようと思ってたのに!
「え? 私に?」
「あ、まだ1個しか食べてへんけど。
ごめんな、勝手に食べてもて」
「…べ、別に、亜弥ちゃんの分あるならいいよ。
きょ、今日、助けてもらったし、……お、お礼にあげる」
「え、ええの? ありがとう。
嬉しいわ、美味しいわ、ちょっとごめん、お母さん顔洗ってくる」
お礼って言っても、それ貰いもんだし。
そんな泣かなくても…。
「んあ? ゼリーフライ?
もしかしてよっすぃにもらったの〜?」
「あ、うん。昨日旅から帰ってきたみたいで今日大学に来てたんだ」
「ほんと? 会いたいな〜」
よっちゃんさんは旅の資金を集めるために、美貴の紹介で
ごっちんとこのお店でバイトしてたこともあるし
2人は同い年だから仲がいい。
よっちゃんさんのことを話すごっちんはすごく嬉しそう。
「…よっちゃんさんって、さっきの電話の人だよね?」
「あ…うん、ほんとごめんね。
よっちゃんさんも悪気ないんだよ?」
「んあ、よっすぃにまっつーになんか言ったの?
まーなんとなくわかるけど、すぐタラシぶるからなぁ」
- 373 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:31
- さすがごっちん、よくわかってるね。
でも、でもね、よっちゃんさんが美貴に緑茶地獄を喰らわせたなんて
ことまではわかんないよね。
「タラシ? そういうキャラの人なの?」
「うん。別に不真面目なワケじゃないよ。
結構真面目だし、さっきはちょっと
タイミングが悪かっただけだからさ」
よっちゃんさんが魔人化してるときだったからね。
「んあ、まっつーも会ってみればわかるよ。
そだ、ごとーも久しぶりに会いたいし、ミキティ家連れてきてよ」
「え、いいけど…」
あの子、埼玉育ちのクセに『育ちもコーヒーもアメリカンだから』とか
言ってスキンシップしまくりだったりするからな。
美貴もそのノリ嫌いじゃないから、『よっちゃんさーん』なんて
ひっついたりしてるけど。
亜弥ちゃんのことはあんまり……触られても困るっていうか…
「んあ、ミキティが守ってあげれば大丈夫だって」
声には出してないのに、眉間にシワティだったのを見て
ごっちんは悟ってくれたみたい。
けど逆に、守るって言葉を聞いて亜弥ちゃんは不安になったようで
「乱暴さんなの?」と言って、美貴の手をキュッと掴んだ。
そんなことないよって頬を撫でると、くすぐったそうに微笑む。
- 374 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:32
-
「いざとなったら梨華ちゃん呼べばいいし。
んあ、ごとー、そろそろ足痺れてきたから
なっちベッドに運んでくんね」
ヨイショと席を立ったごっちんは、抱きあげても全然起きない
なち姉を抱えて出て行った。
気ぃ遣ってくれたのかな?
ミツオもまだ戻ってきてないし、2人っきりになったところで
亜弥ちゃんによそってもらった湯豆腐をフゥフゥして食べる。
ん〜、おいし……………ん?
「亜弥ちゃん」
「なぁに?」
まさか、いや、ありえるかも。
「ダシとった?」
「え?…あ」
从;‘ 。‘) (VoV从
「わ、忘れてた…ご、ごめん!すぐ作り直すから!」
「ん、いいよいいよ。
これがほんとの“湯豆腐”じゃん? あったかい冷奴だと思えば気になんないし」
「で、でもぉ!」
「亜弥ちゃんも食べなよ、あったかヤッコ。美味しいよ」
「たん…」
- 375 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:32
-
漢字で書くと温奴かな。
美貴冷え性だから、人間でも冷たい奴より
亜弥ちゃんみたいに温かい奴のほうが好きだな。
あったまるもんね。
「ほら、あーん」
「…あったまるからだけ?」
「なワケないじゃん。亜弥ちゃんなら冷たくてもいいよ」
わかってるクセに。
恥ずかしいこと言わせるなよぉ。
ぽんぽんって撫でると、小さい頭が肩に乗っかった。
そのとき感じた体温は、やっぱりすごくあったかくて、
美貴はお箸を持ってないほうの手で、思いっきり抱きしめた。
「ミーキたん」
「亜ー弥ちゃん」
後で聞いたんだけど、いい雰囲気な美貴たちを邪魔してはいけないと
部屋に入ってこれなかったミツオは、なち姉を寝かせて戻ってきた
ごっちんに『美貴をよろしゅうに』と頭を下げて帰っていき、
そしてまたごっちんも、しばらく美貴たちを覗いたあと
なち姉の眠るベッドに入っていったらしい。
てゆーか、覗くなよごっちん。
- 376 名前:温かい人。 投稿日:2004/12/08(水) 19:33
-
- 377 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/12/08(水) 19:34
-
書いてしまった…(蹴
更新遅れてますのに話が進んでなくてすみません。
あと2、3回だと思われます。目指せ年内!
レス、ありがとうございます。
>>352名無飼育さん様
从 `,_っ´)<心の成長期やけん。
ノノ*^ー^)<れーなの体は止まっちゃったけどね。
ペシペシ
止まったんやなか!休憩しとるだけたい>从*` ヮ´)ノシ(^ー^;从
>>353◆ZpT8ZEbM様
从*・ 。.・从<それは当然のことだから謝らなくていいの。
遠くから見るより至近距離で見つめて
ロマンスが生まれたほうが素敵だと思うの。
川+VvV)<てか禿げ…?
( ;・e・)<モッさんのことじゃな…くもないこともないニィ。
- 378 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/12/08(水) 19:35
- >>354名無飼育さん様
从*´ ヮ`)ノノ*^ー^)<大人の階段のーぼるー♪
れいなさんの九州女児の心意気が
エビに勝ったようです。
从*` ヮ´)<あれぐらいで変わるようじゃ愛とは言えんったい!
>>355名無飼育さん様
/ \ ア / \ アしてくれてありがとう(w
>>356ピクシー様
書いた本人も忘れていた家訓ですが(w
現物は私も見たいような気がしますが
前に圭ちゃんが鎖骨に触っただけでも目がすごいことになっていたので
やっぱり見たくないかもしれません。
>>357名も無き読者様
从从 V)<神出鬼没とは美貴のことなのだ。
そして作者は鬼出神没です(何
おとーしゃんのアレは甲斐性なのか(w
父親じゃなかったら間違いなくストーryですけども。
- 379 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/12/09(木) 22:57
- 更新キテター!!
食用かよ!!
…隣の部屋にまで笑い声が聞こえてそうです。
ハズカシィ(キャ)。
みきたんもミシタンも大好きです。
- 380 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/10(金) 04:13
- 更新お疲れ様です。
色々笑わせてもらいました。
ツボに、はまりまくりです。
膝枕は太もも枕・・・言われてみて、納得してしまいました。
温奴・・・今の季節にはそれでもいいかも。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 19:58
- なんだかあま〜い空気かもしだしすぎですw
なっちとイケない事してたごっちんは助言ナイス
- 382 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 20:14
- 上げちゃったらさげましょー。
- 383 名前:名も無き読者 投稿日:2004/12/14(火) 01:29
- 更新お疲れサマです。(亀
アリャミシのコンビとDJさんの仕事っぷりに感動です。
てゆーかよくあの会話について行けるな・・・。
我が家の湯豆腐も基本的に温奴ですが何か?w
てかお父さんの懐の広さは見事なモノですな、、、流石ミキパパ
ミキママも流石っちゃ流石ですが♪
では続きも楽しみにしてます。
- 384 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:07
-
―――
「いいかー、雪の上を歩くときは板をハの字にすんだぞー」
「えーっ?
2本しかないのにどうやって“はの字”にするんですかぁ?
適当に間違ったこと教えないでくださいよー」
「いやいやまいちゃん、ハだからハ。
平仮名じゃなくてカタカナ」
「へ?…あぁ、そっち?
ったく、矢口さんの説明っていつも一言足りないんだよねぇ」
ここは大学の裏にある小さめの山。
いつだったか、我が校の学長である中ざわわ裕子(从 #~∀~从<わが1個余計やで!)が
『しょっぼい山やな〜、鳥取のダイセンの何分の1やねん』と
ビール片手に矢口さんにぼやいたことがあったそうで、それ以来この山は
小山と書いて『しょうせん』と呼ばれている。
若いころは京都や大阪あたりでブイブイヒイヒイ言わせてたんだか言わされてたんだかな学長の
口からなんで鳥取の明峰・大山の名前が飛び出したのやら。
てゆーか美貴の数百倍元ヤンっぽい学長の一声で地図まで書き直されたってゆーのが
いまだに信じらんない。
- 385 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:08
- アビボだよアビボ。なんてアンビリーバボーを略してみたりなんかしてると
美貴の頬にびゅんと鋭い風が走った。
慌てて隣を見ると、「身長なんか足りなさ杉だしさー」ってでかい声で喋ってた
まいちゃんが恐怖に顔を歪めながらマトリックスな体勢で放たれた矢のようなものを
避けてる。
「ぎゃあっ! はぁっ、焦ったぁ…っなーにすんですか矢口さん!」
「オマエはおぼっちゃまくんかバカ!
平仮名がいいなら1人でヒラガナッてろ!
つーかおいらのストック返せよ!」
「返せもなにもそっちが投げたんでしょー! こんなもの、エイッ!」
「わあっバカバカッ!」
バカはどっちなんだか。
レベルの低い争いに溜息が出る。他のみんなは楽しそうだし、美貴も
いつもなら笑えんだけど、ここ、寒いんだよね。
外だし、今年は暖冬らしーけど家があったかいからさ、
誰かさんのおかげでぬくぬくだからさ、外の寒さが例年より骨身に染みるんだよ。
てか寒いなら寒いで、目の前に広がる世界が真っ白なら
嬉しかったり諦めもついたりするんだけど。
- 386 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:08
- 「…矢口さん」
「てめぇ首に歯型つけてやんぞ里田ぁ!」
「届くんならどーぞー」
「噛む! マジで噛む! ちょっと屈めやゴルァ!」
「ギャハハ、背伸びしても届きませんねー」
「 お い 矢 口 」
「くそぉ! 誰か脚立持ってきて…ってお? な、なんだよ藤本ぉ」
別に一生言い合っててくれてもいいんだけど
またこれで矢口さんが泣いたりして罪を擦り付けられたらたまったもんじゃない
美貴は、口を開けてピョンピョン跳ねてる矢口さんの両脇を捕まえた。
すると地に足が着かない状態で物凄く顔も近い状況になにを勘違いしたのか
矢口さんはほんのり顔を赤くして照れくさそうにしてる。
「キショ。モジモジしないでください」
「う、うっさいうっさい! ジッと見んなよ!」
「見てませんよ。矢口さんこそ乙女の瞳向けないでください」
「む…むけてないよぉ…」
あらあら俯いちゃって、学食のおじさんが『矢口は慣れちゃってダメだな』って
言ってたけどまだまだ純じゃん。かわいいねぇ。
って違う違う、変な意味じゃなくて。小動物を愛でる心が芽生えただけ。
動物愛護だよ愛護。ああもうややこしいから話戻すよ。
- 387 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:08
-
「なんで雪のない山でスキー研修なんですか」
そうそう、風ばっかピューピュー吹いてる山の上は確かに寒いけど
せっかくみんなスキーウェア着てんのに肝心の雪がない。どこにも。
まあこのへん自体滅多に雪降らないけどさ。スキーしに来たんでしょ?
「暖冬なんだからしょうがないだろ。
スキー場だって困ってんだぞ」
「だったらスキー研修やめればいいじゃないですか。
中高生じゃあるまいし、雪のない山なんかで滑りたくないんですけど」
「なっ!? 冬にスキー研修しないでどーすんだよ!
オマエらは中高生で滑ったかもしんないけど、矢口の学校は
中学も高校もなかったんだよ! 隣の地区のヤツらは行ったってのによぉ!」
いや、そんなこと言われても…。
「矢口が…矢口が教授になったとき
一番やりたかったことがなにかわかるか?
スキーだよ、スキー研修だよ!
掴み損ねた青春を取り戻すことこそが矢口の夢だったんだ!」
「そんな個人的な夢に生徒巻き込まないでください」
「冷たっ!
雪より冷たい美貴とかってマジ最悪」
はぁ、ユキとミキで語呂がい…いワケあるかぁっ!!
- 388 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:09
- 「最悪はどっちだ!! 大体なんだよこの大量のオレンジは!
雪の代わりにピンポン玉ってどっかのテレビでやってた雪崩の実験じゃないんだよ!
こんなモンの上滑れるかぁ!!」
「なんだと藤本ぉ!
昨日この近辺のスポーツショップ全部回って必死で集めたんだぞ!
山全部に敷き詰めんのに朝までかかったんだぞ!」
「へぇ、頑張ったね」
褒めたよ、表情の消えた顔で懸命に褒めたよ変な頑張りを。
だからいいでしょ、滑らないから、絶対美貴滑んないから。
「……ぐすん」
「ゲ」
「ぐすっ…ひっく…ふぇ……ふぇっ…」
やば…これは擦り付けられた罪じゃない。犯人思いっきり美貴?
「あーあミッキー泣かしちゃって。
言ーってやろ、言ってやろ、がーくちょうに言ってやろ♪」
ときどき思う。この人って友達なんだろうか。
- 389 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:09
-
「藤本さん」
「へ?」
とそのとき、普段はあんまり話さない子に肩を突かれた。
クールな感じで、確か福田さんだったと思うけど…。
「藤本さんって研究所生まれ?」
「ハ…?」
なに言ってんの? 研究?
いえいえ美貴は普通に産婦人科でオギャアと生まれたハズだけど。
出産に立ち会った親父が『お前は取り上げられた瞬間から近づく大人を睨んでたぜ』
って目を細めながら言ってたし。
「そっか…そう聞かされてるんだ。
ごめん、変なこと聞いて」
「え、ちょっと待ってよ。質問の根拠は?
聞かされてるとか勝手な解釈されても困るんだけど」
しかも目がなんか哀れんでるし。
なんなのほんと。
- 390 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:10
- 「知らないならそのほうが…」
「よくない。このままだと気持ち悪すぎ」
「なら言うけど、聞いて後悔しないでよ?
親が言ってたんだけど、昨日派手な車に乗った男の人が
藤本さんはオレがお腹を痛めた子だって叫んでたって…」
「 あ の 野 郎 」
決めた、いま決めた、ううん前からきっと決まってた。
ミツオを抹殺しよう。
「福田さーん、それ誤解だよ。ねぇミッキー」
「え? あ、うん。
あれは母方の伯父さんなの、伯父さん」
煮えくり返る思いでゴウゴウと目に炎を宿らせていた美貴に
まいちゃんの助け舟が。
ごめん、さっきの訂正する。あんたフレンドだよ。
「たぶん『美貴はオレの妹が腹を痛めた』の“妹”が聞こえなかったんじゃない?
伯父さんは興奮すると滑舌悪くなるって言ってたよね」
「うん、そうそう」
「ふぅ…ん」
なんか、あんま納得してくれてないっぽいけど。
まさか『ああ見えてあのオッサン、昔は女だったんだぁ』なんて
ぶっちゃけられるワケないし。
- 391 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:10
- 「マジで誤解だから。家の人にもちゃんと言っといてね」
「そ…だよね。
映画じゃあるまいし、現代でジュニアみたいなことあるワケないか」
そうそう、いつかは実現しちゃうかもしんないけど
まだ今はシュワちゃんだって知事にはなれても妊婦もとい妊夫にはなれないから。
あはは、ごめんねほんと。なんて涼しげな顔を綻ばせて
福田さんは誰もいない木のほうへ歩いていった。
学食でもよく1人で食べてる姿を見かけるし、1人が好きなのかな。
「てかミッキー、矢口さん子供泣きに突入したけど」
「うあ、忘れてた」
さっきからびええだのうええだのうるさいと思ったら…泣きすぎだよ小さい大人。
「どーすんの? このままだとマジ退学だよ」
「えぇえ、助けてよまいちゃぁん、おじいさんになんとか言ってよ」
「それはミッキーの財布の頑張り次第で検討するけど
まずは泣き止ませなきゃ。体の割に声でかいから耳痛いよー」
再度訂正。フレンドじゃない、こいつ鬼。
- 392 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:10
- 「矢口さーん、氷舐めますかー?」
「びええ!うええ!」
「ミッキーだって本気で言ったんじゃないですよぉ。
ほんとは矢口さんのこと偉いと思ってるけど、恥ずかしいから
ワザと悪態ついたんじゃないですかー」
「うわーんあんあんあんあー!」
ワザとどころか思いっきり本心だったのはバレバレなのか、
駄々っ子みたいに泣きじゃくる矢口さんに泣き止む気配は全くない。
「だめだわ、もっとインパクトのあることしないと…」
「インパクトねぇ…」
そう言われても、ここには敷き詰められたピンポン玉と
スキー用具一式しかないし…
と、悩んでると、突然地面が浮いた。
「な、なに?! わあ!?」
「うお!? ミッキーの立ってるとこだけ地面が盛り上がってる!」
ななななに突然?! 一向に泣き声が止まらない湿った空気を払拭するには
( ` Д ´)<盛り上がるしかないでしょー!ってんなワケないし!
こりゃ確かにインパクトあるけど肝心の矢口さんは手で顔覆ってて見とらんがな!!
- 393 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:11
-
ガポガポガポッ
「いやああ!? 地面から変な音がぁ!!」
「ミッキーこっち!」
怖くて足がすくんじゃった美貴はまいちゃんに引っ張られて
やっとこさ盛り上がる地面から離れる。けどまいちゃんも怖いのは一緒で
遠くに避難することもできずお互いにしがみついたまま
震えてると、ブチブチッとなにかが切れる音がして土の塊が中を飛ん―――
スパーン
_.-~~/
/ / ミ
/ /
/ /
//.. ∩ <呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンだYO!
|(0^〜^)_
/| ヽ/
" ̄ ̄ ̄"∪
- 394 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:11
-
・・・・・誰に呼ばれたの?
ツッコミキティ精神で浮かんだツッコミも驚きすぎて声にはならず。
ワナワナ震えるオーディエンスもなんのその、地中から這い出て
パーカーについた泥を払いながら、よっちゃんさんは暢気にカラッと笑う。
「いやーまいったまいった。
なかなか外に出れないと思ったら山だったか、マウンテンカッケー」
「よよよよしこ…」
「おーまいまい、雪もねーのにスキーしてんの?」
「よよよしこはななにを?」
年の功か先に声の出たまいちゃんがみんなの気持ちを代弁してくれた。
よっちゃんさん、あんた、なんで地中にいたのさ?
「あ? あー、ひーちゃんさー、昨日モグラのビデオ見ちゃってー。
モグラってカッケーのね、どこがってのはわかんないけどカッケくて。
この感動を伝えたくて叫んだらお母さんにうるさいって言われて
でも叫びてーし、そーだ地面の下ならうるさくねーかなと思って
モグラリスペクトも兼ねて掘り進んだらどんどん入り込んじゃって、
やべぇ、出れねぇかもって超焦った。あー空気うめー」
- 395 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:12
-
空気うめぇっていうか小さい山とはいえ山は山なのに
てっぺんに来る途中でよく酸欠になんなかったね。
つーかわざわざ地面掘らなくても部屋で音楽かけながら
布団被って枕に顔突っ込んで叫べばよくなくなくなくない?
「待ってよミキティ。
ひーちゃん頭よくないから、そんなになくなくなくなく言われたら
ないのかあんのかわかんねーよー」
「……わかんなくていいけどさ、あんた人知超え過ぎだよ」
こういう娘だから、20歳になるまで車の免許取るの親に止められてるって
前聞いたけど………よっちゃんさんのお父さんとお母さん、
どうかもう一度よく熟考して年齢を繰り上げてください。
「えーっとなくなくなくなくないだから、ないのがないのがないのでな…あああ!
わかんねー!…ん? そーいやなくと言や、
なんでマリマリマリー泣いてんの?」
へ? あ! また忘れてた!
子供泣き続行中の矢口さん放置しっぱなしだったよ!
- 396 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:12
- 「やー、ミッキーがねー」
「えぇえ!? ちょっとまいちゃん!」
あんた今の今まで震えてたのに、いつの間に立ち直ってんの?!
てかよっちゃんさんに話したら今度は何地獄でお仕置きされるやら…。
相手が梨華ちゃんじゃない分、軽めかもしんないけどヤなもんはヤだよ!
「ふむ。インパクトねぇ」
って焦ってたら、どうやらよっちゃんさんは美貴をどうこうするより
矢口さんを泣き止ませる方法を考えることに興味を持ったようで…助かった。
真剣な顔になって腕を組んでるよっちゃんさんは
やっぱ黙ってるとかっこよくて
まさか数分前まで地中にいたとは思えないほどキレイな顔してる。
「ミキティ」
「はい?」
普通に美人だなーとか思ってた顔が美貴に向く。
内心ドキッとなんかしてない。髪についてた泥が額に垂れてるし。
- 397 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:13
- 「泣くの反対は、なんだと思う?」
「え……笑う、じゃない?」
「その通り。じゃあ、人を笑わせるにはどうしたらいい?」
「面白いこと言ったり…くすぐったり…」
いまの矢口さんはくすぐったら余計泣きそーだけど。
「面白いことって具体的に?」
「ぐたいてき……ダジャレとか? 漫才のビデオ見せるとか…」
「残念ながらここにはビデオがない。
ということはマリマリマリーを笑わせるにはダジャレしかないワケだね」
「へ? あ、そだね」
「そして、笑わせるのはもちろん、泣かせたミキティの役目だね」
「ハ?」
ヒフヘホ? なに、美貴にダジャレ言えって?
「いや、とりあえず頭にこれつけて」
「うわわ、なに?」
_______
|スキーが好きーや|
 ̄ ̄][ ̄ ̄ ̄ ̄
ノノノハヽ
从VvV从<?
- 398 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:13
-
なんか、見る間もなくカチューシャっぽいものを頭につけられた。
ちょっと重いような気がしたのと同時に
一瞬周りの空気が微妙に凍った気がしたけど、よっちゃんさんが
「似合うよ、最高」って言ってくれたから、きっとかわいいんだろう。
「ハイ、じゃあそのまま滑って」
「え、滑んの?」
「うん。さ、マリマリマリー、ミキティが滑るよ。
先生である君はちゃんと見届けなくちゃ」
「ぐすっ、ぐすんっ」
「ほんじゃ藤本、行っきまぁーす」
よっちゃんさんのダンディな説得に矢口さんが応じたのを確認して
美貴はオレンジな雪もどきの上を滑っていく。
「だああああー!? 無駄に怖いーっ!!!」
ツルツルしてるからか思ったよりスピードが出るぅぅぅ!!
だあっわあっぎゃあって感じで、転ぶかフェンスに突っ込むかと思ったけど
天性の運動神経でなんとか無事に止まれた…ホッ。
下に着くと、間もなく物凄い形相で滑り降りてくるよっちゃんさんにオンブされて
降りてきた矢口さんにキュウッと抱きつかれた。これは仕方ないよね亜弥ちゃん。
- 399 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:14
-
「藤本のアホ、寒いんだよバカ」
「ハ? 寒い」
「ナッハッハミキティ、気持ちは通じたってことさ!」
気持ちは通じたっていうか、美貴特に謝ってもないけど許してもらえたの?
泣き止んだみたいだからいいのかな。
「てか、みんなは?」
「ん? あー…しばらく上にいんじゃない。
まいまいとか20分は動けなさそうだし」
「動けない?」
「や、ツボ押されたみたいで痙攣してるだけだから大丈夫。
あーっ! 今日はいい天気だー!」
「えー、でも寒いよー」
矢口さんを真ん中に3人でくっついてたら
次々にみんなが悲鳴を上げて降りてきたけど、その中にまいちゃんはいない。
まだ痙攣してんのかな。ほんとに大丈夫なの?
心なしか福田さんに客が1人(しかも身内)しかいない舞台で漫才してる
お笑い芸人を見るような目で見られた気がしたけど、どうかしたのかな?
そーいやお笑いといえばダジャレはどこいったんだろ?
よくわかんないけどまあいいか。
- 400 名前:ピンポンスキーヤー 投稿日:2004/12/24(金) 07:14
-
- 401 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/12/24(金) 07:59
- おめでとうございます。
ノノ*^ー^)<去年も遅刻したよね。
・゜・(ノД`)・゜・というか、気づけば1年経ってました。
読んでくださってる方、どうもありがとうございます。
年末らしく冷えこんできましたので、風邪にお気をつけください。
レス、ありがとうございます。
>>379◆ZpT8ZEbM様
隣の部屋で聞きたかった。
ミシタンもですかw
ちょっと野生的すぎますけどいい子です(何
>>380ピクシー様
湯豆腐のダシを取り忘れたというのは
彼女が実際にやっちまったことだったりします。
私は从‘ 。‘从さんの温奴なら、一年中でも構いません(トウフ苦手ダケド
>>381名無飼育さん様
テーマが「ほのぼのラブラブいちゃこらさっさ」なものでw
(*´ Д `)<んあー。てかミキティが邪魔しなきゃさぁ…(以下省略
>>382名無飼育さん様
どうもありがとうございます。
>>383名も無き読者様
DJさんはアリャミシヲタですから。
料理はそれぞれの家庭の味でいいと思います。
川;V-V)<親父はともかくミツオは褒めると調子に乗るから…。
- 402 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/25(土) 01:25
- 更新お疲れ様です。
ピンポン球でスキーとは・・・しかも敢えてホワイトではなく、オレンジですか(w
よっちゃんさんのハチャメチャっぷりといい・・・今回も色々のたうちまわらせてもらいました。
自分は「豆腐(冷奴でも)にはポン酢」派(別に何もなくても可)なので、温奴でも普通に美味しく食べてそう・・・
豆腐は好物の部類ですし・・・(でも豆乳はあまり好きじゃない)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 403 名前:konkon 投稿日:2004/12/25(土) 01:44
- いや〜、毎回笑わせてもらってます!
よっすぃすげぇ・・・
やぐっつぁんは本当に泣きそうw
次回更新待ってま〜す♪
- 404 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/12/25(土) 03:56
- 彼氏とカラオケに二人きり。
歌う彼氏。
小説読んでる自分。
…最 高 ですから。
クリスマスおめでとうございます。
- 405 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:40
-
「吉澤ぁああ!!逃げんなゴルァ!!!!」
「アッハッハッハッハ、鬼さんこちら、手の鳴るほうへ♪」
パンパン…ってだからそちらに向かってんのにアンタが逃げてるから
追いつかんのでしょーが!!
なんで、ヤケにすれ違う人々から寒々しい視線を送られるのか、
やっとのことで降りてきたまいちゃんが涙ながらに
美貴の肩を慰めるように撫でたのか。
小山から教室に戻ってきたところで髪を梳かそうとカチューシャを
取り外した美貴は、ようやくその理由に気づいた。
よりによってスキーが好きーって…箸が転がっただけで笑う年頃の女の子でも笑わないよ。こんなもん。
センスのカケラもないじゃんか。
「でもマリマリマリーは泣き止んだろう?
文字には不思議な力があるんだよミキティ」
「なにが文字だ!
トリックの野際○子みたいなこと言ってもこんなのただのダジャレだよ!
しかも末恐ろしく寒い!」
- 406 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:41
-
よっちゃんさんの言う通り矢口さんは泣き止んで
今は泣き疲れたのかまいちゃんの腕の中で瞼冷しながら寝ちゃってるけどさ!
……どうかさっさと瞼の腫れがひいて、学長に小山での出来事がバレませんように。
「なにぃ! 末恐ろしく寒いだとぉおお!!」
「ひゃっ!?」
「ひゃ」の次に美貴の口から出た言葉を正確に書き表したら「うおぎゃ」だったと思う。
突然走るのをやめたよっちゃんさんの背中に、ハヤブサのデコティ時代を彷彿とさせる
俊足で突っ走ってた美貴は顔面を思いっきりぶつけた。
「いたたたたた、いきなり止まんないでよもおっ!」
「寒いだと?」
「え? あぁ、寒いよ! 極寒だよ!」
こりゃあ鼻血が出ちゃうんじゃないかって勢いで痛むを鼻っ柱を
抑えつつ顔を上げると、こっちを振り返ったよっちゃんさんが
美貴のほっぺたをグワッと両手で挟みこんで
悪質な金融業者の借金取りみたいな声で低く脅してきやがる。
- 407 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:41
- 別に、そんなんされても美貴は全然怖くないけど。
それより鼻血が出るかもだからティッシュ欲しいんだけど。
「…はあ。ミキティ、君は笑いをわかってないね」
「あぁ!? よっちゃんさんよりゃわかってるよ!
美貴の頭見たみんなの反応も微妙だったじゃんか!」
「そりゃ面白すぎて声が出なかったからだよ。
真の笑いってもんは心の中だけにとっておくもんだ」
「んなワケあるかぁっ!!」
初恋の思い出じゃあるまいに! とっといてどーなるもんでもないでしょ!
「あれは、カレーライスとライスカレーの違いを研究する旅での出来事だった…」
「ハ?……あぁ、高1の夏休みの時の?」
なんで急にそんな話?
「静岡に着くと、石川がいた。
あいつ、新幹線で追いかけてきやがってさ。
人が5日間かけて歩いた道のりを、1時間もかからずに新幹線で…」
「ああ、そんなこともあったね」
- 408 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:41
-
『美貴ちゃん、私ね、勉強にもバイトにも疲れちゃって…
気分転換に旅行しようと思うんだ。
貯めてたからお金あるし。』
『へぇ。一人で?』
『んー、美貴ちゃんについてきて欲しいけどバイトあるでしょ?
よっすぃ捕まえてみる。
一昨日電話あって、箱根にいるって言ってたから』
『ふーん』
箱根にいると聞いてたものの、よっちゃんさんが長い間ひとつの場所に
留まることはないと考えた梨華ちゃんは静岡まで行き
駅の立ち食いそば屋で、運よくざるそばを食べてるよっちゃんさんを見つけた。
@@@
@@@@
@ ^▽^)<よっすぃ! 煤i^〜^0;)<うぉ!?
なにを気合入れたんだか、カールしたクルクルの髪に
避暑地にテニスしに行くお嬢様みたいなピンクのワンピ、走ったら転んじゃいそうな
細いミュール。それを履いてる梨華ちゃんの同じく細い体はやたらと大きな荷物に
いまにも折れそうになってて、小さなリュックしょってるだけの
よっちゃんさんに思いっきり呆れられたらしい。
- 409 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:42
- 『でもねでもね、私の顔見たとき、
びっくりした後のよっすぃ、ちょっと嬉しそうだったんだよ?
口ではバカとかついてくんなとか言ってたけど』
それは梨華ちゃんの勘違いじゃなくて、本当によっちゃんさんは
嬉しかったみたい。
『私の荷物持ってくれて、いっつも野宿してるって
言ってたのに、一緒に民宿に泊まってくれたの。
それになんとお金も出してくれたんだよ!』
梨華ちゃんもお金あったから断ろうとしたけど
『箱根で稼いだ』って一体何して稼いだんだか、分厚い茶封筒を
見せられて黙ったらしい。ホントに何してたんだよアンタ。
『あの夜のひーちゃん、優しかったぁ…。
久しぶりに下の名前いっぱい呼んでくれたし』
これ、聞いたときはふーんって聞き流してたけど、今思うとヤッてたんだ。
ひーちゃんって呼び方変わってるし。
- 410 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:42
-
「あのクルクルパー、こっちは遊びで旅してんじゃないのに
いきなりついてきて迷惑だったけど、仕方ないから一緒にいてやったのよ。
カレーの研究を手伝うことを条件に」
やっぱこの2人、そういう関係なんだねーって美貴はわかってるのに
よっちゃんさんは素直じゃないなぁ。フフフ。
「でもさー、あんなブリブリの格好のヤツが一緒だと
野宿できないし、せっかく貯めた金どんどん減ってくし、
民宿で隣の部屋に泊まってた双子じゃないのに双子みたいな赤の他人の
中学生2人組みと仲良くなったから
遊んでばっかで研究どころじゃなくて、いまだにライスカレーと
カレーライスの違いがわかんないんだよなぁ」
なーんかご飯とルーが別々になってんのがカレーライスで
一緒のがライスカレーだって聞いたことあるような気がするけど。
将来カレー屋とかキレンジャーになるつもりがないんだったら
わかんなくていいんじゃない?
………てか、なんの話しててこんな話になったんだっけ?
「え? あ、だからカレーはどうでもよくて石川がさー」
- 411 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:42
- どうでもいいのかよ!
アンタそれでもカレーの研究にひと夏捧げた人間かっ!
いや、別にいいんだけど。研究結果出てないし。
たかがカレーのために美貴がムキになることもないしね。
あ、待って、たかがって言ったのは勢いで、決してカレーをバカにしてるんじゃないから。
思い起こせば真の笑いがどうのって話してたのに
カレーより梨華ちゃんが関わってくるってのが意外すぎてつい。
「中学生の…あいぼんとののっていうんだけど、
あいつら、梨華ちゃんの話聞いても全然笑わないのね。
ヨシザワの話では笑うんだけど」
そりゃそうでしょ。梨華ちゃんのブリザードトークじゃね。ひゅうぅ。
「だから梨華ちゃんが『面白くない?』って聞いてさー、
そしたらあいぼんが言ったんだよ。
『梨華ちゃんの話は面白すぎて笑えへん』って」
「え…?」
あいぼんって子、頭大丈夫?
- 412 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:43
- 「なるほどって思ったよー。さすが関西の子は違うっていうか。
じゃあオレのトークはダメなワケ?ってショックだったけど
『そんなことあらへん。よっちゃんは上の上やで。
でも梨華ちゃんは上を突き抜けた特上やから』って言うから仕方ないかーって」
「へぇ…」
まあ、ある意味突き抜けてるよね、ある意味。
けど待った。突き抜けてるのは認めるとして、
さっきからひとつ腑に落ちないことがある。
「よっちゃんさんさぁ……梨華ちゃんの話、面白いの?」
「へ?」
まさかとは思うけど、そぉっと尋ねた美貴を
よっちゃんさんはキョトンとした顔で見返す。
なに言ってんの今更って感じに。
「当ったり前じゃん!!
梨華ちゃんは世界一おもろいよ!
そりゃ毎日聞いてると飽きるけどさ、旅に出て
しばらく聞かないと無償に聞きたくなんだよね。
だからヨシザワも結局最後はこの町に帰ってくる、みたいな」
- 413 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:43
-
…………………マジで?
ちょっと、その発言、美貴には衝撃的すぎて眩暈が…。
そーいや昔から、梨華ちゃんがなんか言うと
みんなが呆れたり美貴が突っ込んだりしてる隣で、よっちゃんさんは
妙にニヤニヤしてたっけ。あれは面白かったからだったんだ…。
「あいぼんに褒められたから梨華ちゃんも大喜びで
民宿にいたときはいつも以上にハジケてたなぁ。もう梨華ちゃんの独壇場って感じ?
ののが苦しそうに『もういいのれす。限界れす。よっちゃんの話が聞きたいのれす』って
気ぃ遣って言ってくれたから、ヨシザワも頑張っちゃったけど
やっぱヨシザワの話のときは2人ともゲラゲラ笑ってたから、まだまだ特上には
程遠いってことだよね」
よっちゃんさん、それって…。
美貴、なんかわかった気がする。あいぼんって子の本当の気持ち。
ののちゃんも、2人とも真夏に凍死しなくてよかったね。
- 414 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:44
-
◇◇◇
ちょっと遠い町の片隅で。
あの頃より少し大きくなった2つの影が並んで歩いている。
「ふぇっくし!」
「あいぼん、風邪?」
「ちゃうと思う。誰かが噂してんねんな。このカワイイあいぼん様のことを」
「そっかぁ……えっくし!」
「お。ののも噂されとんのちゃうん?」
「たぶん違う。なんか今寒気した」
「なんやて? そっちこそ風邪やん。はよ家帰らんと」
「うーん…でもこの寒さは…梨華ちゃんぽい…」
「うわっ、その名前聞いただけで寒いわ!
あのクーラーいらずの環境にええお姉ちゃん、元気にしとるかなぁ?」
「ののはよっちゃんに会いたーい」
「うちもー」
◇◇◇
- 415 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:44
-
―――
「いやあ、外の風は気持ちいいね」
「寒い」
「相変わらず冷え性なのかベイベー、僕が夢の翼で暖めてあげるよ、イエスワンダラン」
「いらんわ!」
翼ってコートのポケットに手ぇ突っ込んで広げただけじゃん!
ったくまだ美貴は怒ってんだからね!
「なんだよなんだよー、頑固一家のほのぼのストーリーで
ミキティの荒んだ心はすっかり和んだんじゃなかったのー?」
「和むか!」
美貴の心は元々マッサラで荒んでないし!
なにがほのぼのだよ! てか頑固一家ってなに?!
「ミキちゃん、ヨシザワとのトーク5文字以内の吐き捨てで済ましちゃイヤン」
「キショいから、てか重いから乗っかんないで」
「えー、ヨシコ痩せたのよぉ?」
「それでも美貴より重い」
- 416 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:45
-
つーかもうすぐ家だから離れて欲しいんだよね。
まだ昼過ぎだから亜弥ちゃんに見られる心配はないけど、
よっちゃんさん、さっきまで地中にいたからジャージ泥だらけだし
わざとなのかガニ股だし頭は泥のついたオールバックでガラ悪いんだよ。
そんな人に肩組まれて歩いてるなんて、近所で変な噂されたら
どーしてくれんの。
「あんだよー、ミキティが誘ったくせに。
『よっちゃんさん…今夜美貴のおウチに来て?』っておねだりの眼差しで」
「誰がおねだりだ!!
てか美貴はごっちんに頼まれたの!」
「おー、真希ちゃんね」
「呼んだ?」
ンア
(0^〜^)´ Д `(VvV从
「「んぎゃあ!? ごごごごっちん!!
なんでいきなりいんの?!」
「んあ、散歩」
- 417 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:45
- び、びっくりした、いきなし美貴とよっちゃんさんの間から
にゅって顔出さないでよ!
「さ、散歩って、仕事は?」
「お母さんが腰痛めて温泉行くっつーから休みになったの。
んあ、よしこ久しぶりー、なんかヒョシュッてなったねー」
「ハーイ♪
真希ちゃんこそピスキンッて感じじゃん。会いたかったよ」
「あはっ、ごとーもー」
ヒョシュとかピスキンとか、懐かしいな、この2人のワケわかんない繋がり。
手を取り合ってスキップしながら再の喜びに浸る姿に
ちょっと心がほんわかする。
「ごっちん、なち姉は一緒じゃないの?」
「んあ…いつまでも迷惑かけらんないから、今日新垣さん家に絵里ちゃん
迎えに行くことになって。お詫びとお礼の品買いにデパート行ってる」
「1人で?
散歩するくらいごっちん暇なのに?」
いつも必要以上に一緒にいんのに、なになに、ケンカでもしたの?
- 418 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:45
- 「ちがうよぉ。なんか、なっちが絵里ちゃんが戻ってくるまで
叩いちゃったこと反省するために
ごとーといるの自粛するとか言い出して………くすん」
それは可哀想に。
でも今日絵里が帰ってくればいいんだから泣くなよごっちん。
「おぉう、よくわかんないけどこんなとこで泣くなYO。
狭いけど家に入って粗茶でも飲もうぜ」
「そうそう、粗末なお茶って書いて粗茶でも…ってクルァ!!
ここ美貴ん家だよ!親父が給料安いなりに頑張って建てた家狭いとか言うな!」
「じょ、冗談だYO、ごめんYOぉ」
まったく失礼してくれるよこの人は。
ごっちんを慰めつつ、よっちゃんの脇腹をグリグリしながら
美貴たちは家に入った。
「んあ、粗茶どころか今お茶っ葉きれてる。
ジュースならあるけど」
リビングに入るなり、ごっちん言葉を聞いてまたしても「ミキティの家っていうか
ごっちんの家みたいだYO」と小さく呟いたよっちゃんさんをいつか養老の滝に
突き落としてやる!なーんて企みつつ、
冷蔵庫からオレンジジュースを出して美貴とごっちんのグラスに注ぎ
よっちゃんさんには水道水を入れてやる。ひどくないひどくない。
- 419 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:46
-
ジュース飲んだら、「泣いたら眠くなった」ってごっちんが寝ちゃって。
こういうときはすぐ起きるから、その間によっちゃんさんには
お風呂に入ってもらうことにした。ソファに泥ついちゃってるし。
「服も洗ったげるから脱いで」
「あ、うん」
「って待て待て! ここで脱ぐな!」
無駄にセクシーに脱ぎだすよっちゃんさんを脱衣所に案内すると
「たまには背中流してくれないか、美貴」って言うから即座に拳で断った。
着替えはジャージでいいよね、美貴の中学のときのじゃ小さいだろうけど
ごっちんのを勝手に持ってくるワケにもいかないし。
案の定ピチピチのあずき色のジャージに頭に、タオルを巻いた
よっちゃんさんが出てくるとごっちんもんあぁと目覚めて
しばらく3人で積もる話をした。
するとあっという間に時間は経って、そろそろ亜弥ちゃんが帰ってくる時間。
「んあ、今日はよしこいるから鍋」と、ごっちんが冷蔵庫の中身を
チェックし始めた。足りないものを書き出してるメモを見ると
美貴の好きなキムチ鍋らしい。でもごっちん、肉3`じゃ足りないよ。5にして5。
- 420 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:46
- いやいや、美貴は肉しか食べないもんって言ってるんじゃなくて。
さっきなち姉から、デパートからそのまま塾長の家に行くって電話あったからさ。
絵里が帰ってきたら田中ちゃんも来るかもしれないし、あの子も肉好きだし。
説得は通じて、肉は晴れて5`になり
美貴とよっちゃんさんで買出しに行くことになった。
「んあ、余計なもの買わないように」
「「はーい」」
そうだ、亜弥ちゃんにメール打っとこう。
おかえりって言えないけど、今夜は鍋だからねって…
「さあ!行くぜミキティ!」
「だあ!? ちょっと待ってまだメール…っ」
「おいおいメールなんかよりフミをしたためろよ!ジャポネーゼなら筆を取れ!」
「うっさい! 何時代だアンタは!」
ぎゃあ! 携帯かーえーせーぇ!
「つーかよっちゃんさん、上になんか着なくていいの?!」
美貴のジャージ(中学時代・そしてピチピチ)のまま外出る気かい!
- 421 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:47
- 「ん? そーいや寒いな、この長いマフラーかりるか。
ついでに帽子もイタダキ」
いやいや、寒いならジャンバーとかかすけど?
玄関でごっちんのマフラーと美貴の帽子をタオルの上から被ったよっちゃんさんは
なんとも微妙な格好のまま外に出た。
「ごっちん起きたんだから、ジャージかえればよかったのに」
「んん〜? これでいいんだよ。むしろこれがいいのさ」
「ハ? どこがいいの?」
「なんせこれは、思春期のころのまだ未熟なミキティの身体を包み込んでいたジャージだからね。
それだけでグッドアイテム!」
「脱げ、いますぐ脱げ」
なにがグッドアイテムだ。
手のひらを太陽に向けて未熟な身体とか言うな!!その手の血潮止めてやるぞ!
「やん、ミキティのエッチ」
「なっ!?どこが! よっちゃんさんのオヤジ!」
「お父さーん、ミキティが呼んでるー」
「だああー!!!呼んでないから吉澤家に電話すんなゴルァ!!」
そりゃよっちゃんさんのオヤジって言ったけどそういう意味じゃなくて
アンタがオヤジだってことだよ! てか説明しなくてもわかるだろ普通!!
- 422 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:47
-
―――
「ハァッ、ハァッ、ハアッ………も、疲れた」
「このぐらいでヘコタレティだなんてヤワいぞミキティ♪」
「うっさい…誰のせいだと…」
「ミキティが鬼ごっこ始めたんだろー」
アンタが美貴を鬼にしたんだよ!!
よっちゃんさんを叩きのめそうと蹴りとか波動拳とか、スーパーの中でも
バトりながらの買い物を済ませ、5`の肉を大切に胸に抱えて
家にたどり着いた美貴の体力はすでに限界にきていた。早く肉食べないと倒れそう。
「ただいまー!」
「ただいま…」
けどちょっと、これ以上持ってんのキツくて
玄関に座り込むとよっちゃんさんが肉の入った袋を持ってくれた。
「先行ってるから、休んでからおいで」
「あ、ありがと…」
得意の男前スマイルで美貴の頭撫でて去っていく。
こういうとこが憎めないんだよね。
- 423 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:47
-
「あっは! その格好で行ったのぉ?」
「おう、カッケーっしょ? マフラーかりたぜごっちん」
「んあ、カッケーカッケー」
リビングのほうからごっちんの声。
…あれ? 亜弥ちゃんまだ帰ってないのかな?
声しないし、上から降りてくる気配もないし。
携帯……はさっきとられ…っあ、返してくれたんだ。
座り込んでる美貴の隣にポツンと置いてあった。
まだ学校かな? 友達と遊んでるとか?
亜弥ちゃんの携帯にコールするけど電源が切られてるか圏外で
繋がらない。―――どうして?
寄り道してるのかな? でもそれなら連絡してくれても……まさか
またミツオに会いに行ってたり?
昨日、なにも言わずに帰っちゃったから?
それならと、こないだ教えてもらった哀じゃなくて愛ちゃんの携帯にコール。
…なかなか出ない。ジレジレしてると9回目のプルルルでやっと出た。
- 424 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:48
- 『…もしもし』
「あ、愛ちゃん? 美貴だけど。
いま亜弥ちゃん一緒じゃない?」
『え、えっと………一緒やけど、ど、いま亜弥ちゃんトイレ行ってるがし』
「トイレ? ね、どこにいんの?
亜弥ちゃんの携帯繋がんないんだけど」
『ほぇ?…ほ、ほほぉそれはぁ……あ、で、電池切れたんよ、うんうん。
ここはー………あーしの家やよ。今日急に宿題出てもてぇ
ふたりでやったほう、がいいねってはなしになったの。
みきた…やなくて美貴ちゃんに…でんわ、あいちゃんのけいたいからし、ようと
おもってたとこだったんだよ』
「……愛ちゃん?」
む? なんか、愛ちゃんの様子変じゃない?
後半訛ってなかったっていうか、自分のこと愛ちゃんって言ったよね?
『んなっ! あーしやってプリティキュートな福井っ子なんやから
自分のこと名前で呼びたくなる日だってあるやよ!
その前にあーしの訛りはとれてもたんやぁ!』
「とれてないよ」
『ム! あーしが嘘ついとるって言うんか!
心の古傷を承知で抉るなんて極悪非道やよ!
そんな子には亜弥ちゃんの声聞かしたらんでの!!』
「えぇえ!? ごめん、とれてるから!」
- 425 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:48
- 百歩、いや一億歩譲ってとれてるから!!
『もう遅いがし! 亜弥ちゃん今日はウチに泊めるでの!
美貴ちゃんは1人でネンネするがよろし!』
「え? 泊まるの?」
『宿題が莫大な量なんやよ! 一晩で終わるかどうかも微妙や!
電話してる時間ももったいないわ、切るで』
「へ、ちょっと待っ…」
ツーツーツー。
切られた。_| ̄|○
正直者だったばかりに亜弥ちゃんの声が聞けないなんて…。
愛ちゃんのバカ、略して(ry
あーあ亜弥ちゃん帰ってこないのかー。
せっかくよっちゃんさん来てるのに、絵里も帰ってくるのになぁ。
残念だめぇ…って凹んでるとメールが……愛ちゃん?
『ミキたんへ。
今日は帰れなくてほんとにごめんなさい。
あったかくして寝てね。 亜弥。』
亜弥ちゃん…(VvV*从
うん、美貴あったかくして寝る。亜弥ちゃんも頑張ってね。
- 426 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:48
- 愛ちゃんが怒って使わせなかったのかもしれないけど、
電話じゃなくてメールってことは、ほんとに宿題の量が
深刻そうなので短いメールに愛を込めて返信した。
ぬくもりなんて、伝わらないハズの機械でも
亜弥ちゃんからの言葉は不思議。
あったかくて、元気をくれて。
ほどなく体力が回復した美貴はやっと靴を脱いで手を洗い
よっちゃんさんが薪を割るかの如く肉をブッタ切ってるキッチンへ。
普段は枝豆茹でるくらいしかやんない美貴もお手伝い。
ごっちんの指示に従って、白菜切ったつもりがよっちゃんさんの髪
切っちゃったり。(髪だけだから。流血騒ぎにはなってないよ)
亜弥ちゃん、今日も美貴はいい子です。
◇ ◇ ◇
鍋の準備も整って、3人のお腹の虫がグーグー鳴りだしたとき
ごっちんの見えないシッポがピンとたった。
「んあ! 帰ってきた!」
- 427 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:49
- 叫んだ瞬間、犬のように走り出したごっちんに美貴たちも続く。
なち姉あーんど絵里おかえりー!!!!ってドアをズバーンと開けると…
「ふむ。いい匂いだニィ」
「チョコの匂いじゃないですねぇ、なに作ってるんですかぁ?」
( ・e・)从*・ 。.・从
「…うぇ? 塾長と……さゆみちゃん?」
なぜ、なんで2人がここに? なち姉と絵里は?
「あ、モッさんヒサブリだニィ。
いやーお礼とかは全然気にしなくてオッケーマイソウルなのに
あんな立派なお煎餅いただいちゃってそれだけで恐縮だったニィけど
お姉さんに是非と誘っていただいたので、今日はご馳走になるニィ」
「あー、藤本さんだぁ。
さゆみちゃんだなんてぇ、こないだみたいにさゆみんって呼んでくださいよぉ」
「……………」
こないだって……あの夜のことかいさゆみん。覚えてないよマイソウル。
「んあ、さゆみんちゃんは初めましてだねぇ。
てかなっちと絵里ちゃんどーしたの?」
そうそれそれ、気を取り直してそれがわかんないよねマイソウル。
- 428 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:49
- 2人が誘われて鍋をつつきにきたのなら、その誘った人は?
美貴とごっちんの頭からハテナが飛び交う中、塾長の話によると
なんと絵里は数日前から塾長の家を出て、今は……レ、レイナンの家に?
待ってください。レイナンは熊を捕まえるために単身で上京してきたワケで
ボロい安アパートに1人暮らしなワケで………
「塾長ぉおおお!!!なんでそんなことさせたのさあああ!!!!?!」
「ぬおぉ、モッさん落ち着くニィ!
ちゃーんと道重ちゃん送り込んだりして
夜は朝までガードだから大丈夫ニィよ、ね、道重ちゃん」
「はい。でも初日は行きませんでしたよぉ?」
「 ん だ と ぉ 」
よりによって初日にエロテロリストを野放しにするなんてフォルァ!
初日が初夜になってたらどーしてくれんのよユアソウル!!
美鬼神現る。ゴゴゴ…と美貴の肩から角が生え、手の爪が一気に40センチに。
「レイナン、成敗してくれるわあ!!!」
「ミキティカッケー」
「ニォ!? モッさん落ち着いて!」
「その羽根、黒じゃなくてピンクにしたほうがかわいいと思うの」
「んあぁ! 待ってミキティ!」
「ぐぇ」
- 429 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:50
- 最後に背中から羽根が生え、成敗飛行へインザスカイな美貴の横っ腹に
ごっちんがタックルをかました。
涙目で振り返ると、目の前に白い封筒が。
「なっちに、なんかあったらミキティに渡してって頼まれてたの。
たぶん今だと思うから読んであげてくれない?」
「手紙…?」
しかもなんかあったときに読む手紙って「これを美貴が読んでるってことは
もう私はこの世に…」みたいな内容じゃないよね、まさかね。
少々の不安を抱えながら封を切る。
『美貴へ。
お願いです。なっちにやらせてください。
美貴の大切な妹、絶対連れて帰ります。 なつみ』
……なち姉。
だべもべさも無い文面から、よっぽど真剣なんだってわかる。
けど下に小さく『ところでなっちの牛乳プリン食べたっしょ?』なんて
わざわざここに書くなよ!
せっかく胸打たれてたのに…ええ、食べましたとも。
- 430 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:50
-
だって食べたかったんだからしょーがないじゃん!と逆ギレしながらも
こんな手紙もらったら、なち姉を信じて待つしかないワケで。
なち姉がいなくて寂しそうなごっちんと
ワケわかってないよっちゃんさんと、申し訳なさそうにしてる塾長と―――あれ?
「みなさーん、はやく食べましょー」
すでに玄関から姿を消して食卓の椅子に腰掛けてたさゆと
鍋でもつついて待つしかないじゃん。肉うまい。
明日は休みじゃないから、鍋を食べ終えると塾長とさゆみんは
帰っていって。今日は姉妹だけのがいいだろうって、気を遣ってごっちんと
よっちゃんさんも9時頃にごっちんの家に帰ってった。
けど、待てど待てどなち姉たちは帰ってこず。
話できてんのかな?
なんだかんだずっと会ってないから、仲直り難航してんのかも。
あーレイナン家に飛んできたい。
せめて電話したい。
でも我慢。なち姉を信じなきゃ。
- 431 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:50
- 言い聞かせるけど気になるし、なら寝ちゃえと思っても眠くなくて。
仕方なくキッチンにあった焼酎をウーロン茶で割って飲む。
5杯目でいい具合に眠気がきて、広く感じるベッドで
猫みたいに丸まって目を閉じて。
布団、冷たいな。
亜弥ちゃんがいないとこんなに冷たいんだ。
そんなことを考えながらウトウトしてると、いつの間にか寝ちゃってたらしい。
やけにリアルな夢を見た。
「…たん」
胸の上に亜弥ちゃんが乗っかってる。
ハッキリとはわからないけど、泣き腫らした顔で、美貴の輪郭を撫でてる。
形を覚えようとしてるみたいに。何度も。
「ミキたん」
こたえようとしたけど声が出てくれなかったから
唇をなぞった指を舐めてみる。うん、しょっぱい。
- 432 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:51
-
逃げようとした中指を音をたてて吸うと、唇が降ってきた。
顔のいたるところに。
忍びこんできた舌は、荒々しく絡みついてきて
戸惑った美貴は夢から醒めそうになるのを必死で抑える。
たった一晩会えないだけでこんな夢見るなんて
恥ずかしいけど、だけど夢でも、亜弥ちゃんを離したくないから。
なのに舌を解放されて、名残惜しさに唸ると今度は首に喉に熱が走って
リアルな香りが一層強くなる。
されるがまま感じてると、ゆっくりパジャマのボタンを外された。
これって美貴の願望なの?
肩に鎖骨に胸にお腹に、そんなにキスされたら声出ちゃうよ。
小さな痛みを伴うほど強く吸われて熱い溜息が零れる。
亜弥ちゃん、亜弥ちゃん、亜弥ちゃ――――
気持ちよさに溺れていくと同時に意識が混濁してく。
やだ、だめ、夢が終わっちゃう。待って、待って、待って………………
- 433 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:51
-
夢の終わりに、伸ばした手を
布団の中に戻してくれたのは亜弥ちゃんだった。
とうとう真っ黒の世界に溶けてった美貴に
寂しそうな残像だけを残して。
亜弥ちゃんはいなくなった。
- 434 名前:そして美貴だけになった。 投稿日:2004/12/29(水) 05:52
-
- 435 名前:名無しのЛ 投稿日:2004/12/29(水) 05:52
-
今年最後の更新です。
年内完結の夢が・゜・(ノД`)・゜・
読者様、よいお年を。
レスありがとうございます。
>>402ピクシー様
(〜^◇^)<オレンジのほうが燃えるだろ!
(0^〜^)<ハチャメチャ?いたって普通だYO!
(;^▽^)<自覚がないのよね…。
>>403konkon様
(0^〜^)<ありがとYO!
( *^◇^)<だって藤本がイジメるんだもん…。
いや、実際はもっと強い子だと思いますけども(w
>>404◆ZpT8ZEbM
(0^〜^)<歌聴いてやれYO!
別の日に更新すればよかったですね。
彼氏さんごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・
- 436 名前:名も無き読者 投稿日:2004/12/29(水) 12:06
- 更新お疲れ様です。
・・・前回更新に間に合わなかった。。。orz
前回はヤグチさんが素敵にカワユく犯罪的でした。
んでよっちゃんさんは慢性的に上の上な笑いを運んでくれるわけですが。
が、最後に何か、、、
不安ですが続きも楽しみにしてます。
- 437 名前:konkon 投稿日:2004/12/30(木) 00:37
- よっすぃの面白さには目を張りますね!
なっち、亀ちゃんとの姉妹愛にはプリンが
出てくるまで感動いたしましたw
あややはどうしたんでしょうか?
これからも笑わせていただきます♪
- 438 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/30(木) 03:44
- 更新お疲れ様です。
実家帰省の前に読めた♪
あいぼん&ののも登場してきましたね。
なんか、キャラがたくさん出たので、いつも以上におもしろかったです。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 439 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2004/12/30(木) 08:21
- 続ききになりまス…
えろてっく ですね…
余談ですがこの前亀仙流の方々をたくさんみました。
その人たちと共に亀井さん藤本さんを応援します。
更新乙でした
- 440 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:24
-
「ぅぁ…寒い…」
のそっと布団から出た鼻につんとした空気が刺さる。
あれ? エアコンのタイマーかけたのに。音速の動きで腕を布団から
シュッと出してリモコンを取ると、タイマーはキチンと朝の6時にセットされてる。
……てことはまだ6時前?
うわ、美貴ったら年寄りでもまこっちゃんでもないのに早起きしすぎだよ。
時計見たら4時55分。ヘロン…じゃなかったヘレンさん(5時起き)より早いってどうよ?
外まだ暗いし寒いし、こんなときは2度寝にかぎ……………しまった、全然眠くない。
あー美貴って変に寝起きいいからなー。
でも寒いから出たくないしなー…。
とりあえずエアコンが効き始めるまで、布団の中を転がることにした。
ゴロゴロ、ゴロゴロニャ………ん?
- 441 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:25
- んんん?
なんかおかしくない? 下になんか……余韻ってゆーか……あ!
鎮火してはいるんだけど、なんとなく燻り続けてる火の中に
ぼんやりと昨日の夢が映し出される。
亜弥ちゃんが…なんていうか、美貴を襲ったってゆーか……その………。
は、恥ずかしい。
1人になって寂しかったからか知んないけど、あんな夢見るなんて乙女失格!
思い出すと顔から火が。誰にも見られてないしバレてないけど
恥ずかしすぎてジタバタしちゃう。あーっうーっ!
仕方ない。もう起きちゃおう。
だってジッとしてると思い出しちゃうし。
ここは顔でも洗って気を紛らわしたほうがいい。
そうと決まればさっそく行動。
意を決して暖かくなり始めた布団の外に飛び出して靴下を履き
転がってるトレーナーを被ってしんしんと冷える廊下…寒ぅううう!!
- 442 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:25
- こんなとき亜弥ちゃんがいてくれたら
無邪気に抱きついてくれたりしてあったかいのに。
そう、亜弥ちゃん、亜弥ちゃ―――ってだあ! 今は亜弥ちゃん思い出しちゃだめ!
愛しのマイハニーだけど今は胸が疼くから!
それにぶっちゃけチガウトコロも疼くから…ポッ。
なーんてなに言ってんだ美貴はあ!
洗面所の鏡に映った顔、思いっきり1人百面相してるし。
キモ過ぎるって―――んんんんん?
なにこれ? 虫さされ?
こんな寒い時期に……ってこれちょっと多すぎない?
歯ブラシをくわえて眠そうな顔の下。首に、いくつもの―――
え、なんで、こんな、そんな―――
ハッとしてトレーナーをパジャマごと脱ぎ捨てる。
すると、相変わらず綺麗な肩に、小振り…なっ、誰が小振りだ!
ってそんなことはどーでもよくて! なにはともあれ形はいい胸にお腹に
へ、へその下あたりにまで…っ、数え切れないほどの赤い痕がある。
- 443 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:25
-
これはどういう……まさかあれ……昨日の………夢……………じゃない?
思った途端、パジャマ着るのも忘れて上半身裸のまま階段を駆け上がる。
美貴の部屋―――違う、さっきいなかったじゃん。
亜弥ちゃんの部屋―――いない。
絵里の部屋、なち姉の部屋、ごっちんの部屋―――いるワケないし。
朝になったけど、なち姉と絵里は仲直りできたかな。
下に降りてリビング―――ここにもいない。
トイレにもお風呂場にも、どこにも亜弥ちゃんはいない。
美貴が立ち止まると物音ひとつしないし。どういうこと?
剥きだしの上半身が寒さを感じなくなるほど探し回って
荒い息を吐く美貴の耳に声が、鼻に香りが、あの夢にしてはリアルすぎた
亜弥ちゃんが鮮明に甦る。
あれは、亜弥ちゃんだった。
別の、家に侵入してきた不審者を間違えたとかじゃない。
家の戸も窓も、全部ちゃんと鍵かかってるし。
- 444 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:26
- 合図がなかったけど、あのキスは、絶対に亜弥ちゃんだった。
てことは、あの泣き腫らした顔も……
宿題が終わって帰ってきたなら今ここにいるハズ。
途中で抜け出してきて、また愛ちゃんの家に行ったのかって考えたけど
あの泣き顔は…? 愛ちゃんとケンカしたとか?
だからそれならここにいるハズだってば。
てか亜弥ちゃん怖がりだし、夜中に1人で出歩くなんて…あああわかんない!
美貴が考えたってしょーがない、とりあえず愛ちゃんに電話…
『たぁーん、たぁーん、ミキたぁ〜ん』
と思って部屋に戻ったら携帯が鳴ってて、慌てて出る。
「もしもし!?」
『美貴ちゃぁあああああん!!!亜弥ちゃんがぁあああ!!!』
「あ、愛ちゃん? 亜弥ちゃんがどーしたの?!」
涙が混じってるような愛ちゃんの大音量の悲鳴に耳をつんずかれて
一瞬携帯を離す。亜弥ちゃんが? 亜弥ちゃんがなに?!
- 445 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:26
-
『美貴ちゃん最低やよ!
亜弥ちゃんがおるのに昔の男だか女だか家に連れ込んでぇ!
知らんと思ったら大間違いやあ! アルバム見たんやからの!!』
「ハ?」
『ショックやったけども、んだども亜弥ちゃんは「会う前だもん。
しょーがないよね」って笑っとったがし!
写真破いちゃったこともちゃんと謝ろうとしてたんやよ!』
「へ? 写真?」
写真破った? アルバム見た? 愛ちゃんなに言ってんの?
てか昔の男だか女ってどっちだよ。
その前にどっちもなにも連れ込んでないし。
『ほやけど昨日…「人って最終的には自分の親みたいな人と
ゴールインするって言うよね」って…
そりゃあの人は店長と同じかもしれんけど! てゆーか逆やけど!
あんなに美貴ちゃんのこと想っとる亜弥ちゃん泣かすなんて美貴ちゃんは最低じゃああ!!!』
「ハァ?」
ちょっとタンマ。親みたいな人って誰よ?
ミツオと同じようで逆な人? ワケわかんないし、いても絶対勘弁なんだけど。
- 446 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:27
- 「ねえ、話見えないんだけど。
亜弥ちゃんそこにいないの?」
『だーからおらんから美貴ちゃんに電話してるがし!
起きたら布団空になっとるし、「帰るね」って
書置きあったけどナツオだかカツオだか波平だかと仲良くしとる
美貴ちゃんのとこに帰ったとも思えんし!』
愛ちゃんのとこにもいない? なら亜弥ちゃんどこに………てか待った。
愛ちゃん今サラリと変なこと言ったよね?
「なんで知ってんの?」
『あ〜亜弥ちゃんどこ行ってもおたんやろ。
こうなるんやったら昨日の時点で美貴ちゃん家に殴りこみに行けばよかったやよ』
「話聞いてよ!
なんで愛ちゃんが夏男のこと知ってんの?!」
『うがあ!! 美貴ちゃんが言ったんやろ!
亜弥ちゃんと初めて会ったときに!!!』
「…え?」
言ってないよ!…と思うよ?
記憶、ないけど、ないけどだって、言うワケないじゃん。
- 447 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:27
- 『亜弥ちゃん…ずっと…気にせんようしとったけど
間違えられたってことは似とるんやろなって、美貴ちゃんのこと好きになればなるほど
気になって。こっそりアルバム見たらそれっぽい人がおって、
亜弥ちゃんには全然似とらんかったらしーけど、キレイな顔でにこやかに美貴ちゃんの肩
抱いとって…それだけならまだしも他の人まで…ほやから頭にきてついって…』
間違えた? 美貴が亜弥ちゃんと夏男を?
そーいやまいちゃんに亜弥ちゃんのプリクラ見せたとき
似てるって言われたけど、美貴は似てるなんて全然思ったことないのに。
や、でもそれは、亜弥ちゃんの中身を知ったあとだったからなのかも。
パッと見顔だけなら似てるかもしれないけど
かわいくて柔らかくて、とびっきり甘い亜弥ちゃんを知った美貴には
そう思えなかっただけで。
けど変だな。写真なんてないハズなのに。
たしかに本棚には高校のときのアルバムがある。
(赤ん坊のときから中学までのミツコ時代のお母さんが載ってるやつは
クローゼットの奥に封印した)
だけどそこには、1枚も夏男の写った写真なんてないハズ。
ましてや肩を、美貴や他の子の肩を抱いてるのなんて。
- 448 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:28
-
だって、肩なんか抱かれたことなかったし。
急にいなくなられて、ショックより頭にきて、もらった貝殻とか全部海に投げたし。
写真なんかあったら即効で捨てたと思う。
いや、そもそも撮った覚えすらない。
キャンキャン愛ちゃんが言ってるけど、聞き流してアルバムを開く。
1枚1枚素早くチェックするけど、やっぱりない。
学校で撮ったのはもちろん、海で撮った写真にも
大抵いるのは梨華ちゃんと――そっか、だから亜弥ちゃん、シャクレが
どうこうって――学校での写真には滅多にいないけど、海では
大活躍だったよっちゃんさ――ああああっ!? そーだ! このとき
梨華ちゃんがやたらエロいビキニ着てて! ナンパ男がワラワラ寄ってきたから
よっちゃんさんがハンズで買ったヒゲ(税込み・504円)つけて甚平着て
竹刀振り回して追っ払ったんだった!!
で、それがスゴイかっこよかったから
美貴も梨華ちゃんも面白がっていっぱい写真撮って。
たしかに1枚、肩抱かれてメロメロな顔で撮った記憶もある。
- 449 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:29
-
そうたしかこのページに……なくなってる。
1枚だけ、写真が抜き取られてる。
その下の梨華ちゃんが肩抱かれてるやつはあるのに。
髪は金髪のオールバックで、サラシも巻いてたのか角度の問題か
胸の膨らみもわかんないよっちゃんさんは思いっきりキレイな顔の男?
…うーん、美貴には頑張っても男装の麗人って感じにしか見えないけどなぁ。
でも、亜弥ちゃんには見えちゃったんだ。
男の人に。それもかなりチャラチャラした男に。
そりゃ、破る…かな。
美貴だったらたぶんビリビリに切り裂いて燃やすと思う。
絶対そうする。
ねえ亜弥ちゃん、破っちゃったのは、美貴のこと好きだからでしょ?
気分のいいことではないけど、怒ったりなんかしないよ。
亜弥ちゃんが謝る必要なんかないよ、ないんだよ。
謝らなきゃいけないのはむしろ美貴。
だってずっと苦しめてた。
そういえば、あのとき、あのとき―――って、亜弥ちゃんの
言動に隠れてた不安が見えてくる。
- 450 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:29
-
遊園地に行った日も。
あの日に、よっちゃんさんは帰ってきた。
美貴は気づかなかったけど、亜弥ちゃんの視線の先にいたんだ。
なんであんなとこにいたかわかんないけど。
アルバムの中の、学校で撮ったよっちゃんさんは、どれも黒か茶髪で
前髪下ろしてほにゃんって笑ってるかわいいのや変顔ばっかだから
同じ人間には見えなかったかもだけど、帰ってきたときのよっちゃんさんは
頭にタオル巻いてとび職な格好だったらしいし。
昨日は、家に帰るときは泥のついたオールバックで
買出しに行ったときは帽子被ってた。
ヒゲはなかったけど、男前な顔で美貴のことからかってるとこ見てたんだね?
ミツオと逆って…ジャージがピチピチだったから
身体の線で女だってわかったのか。
でもそれなら普通写真も女だったって思わない?
あの海で男だったのが女になって美貴の元に帰ってきたなんて思わなくない?
『美貴ちゃん! 美ー貴ーちゃん!
聞いとるんか人の話! あーしは亜弥ちゃん捜しに行くでの!
マスオだかワカメがええならもう2度と亜弥ちゃんに顔見せんといて!!』
- 451 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:30
- そう喚かれて電話は切れた。
マスオ? ワカメ? そんなのサザエにくれてやる。
もう2度と見つめ合えないなんて、そんなの、美貴ヤダ。
亜弥ちゃんがどう思おうと残ってるワケないのに。
美貴の中は亜弥ちゃんでいっぱいなのに。
片思いもできなくて、恋の有給休暇とってた美貴を、夢中にさせてくれたのは亜弥ちゃんなのに。
それに約束したよ、美貴。
見つけるって約束したよ。
『だって、たんだもん。
すぐ見つけたし、私のことも見つけてほしくて…』
『……そっか。ありがと、見つけさせてくれて』
『えへへぇ、でもぉ、次はちゃーんと自分で見つけてね?』
美貴の亜弥ちゃんを、亜弥ちゃんの美貴以外が見つけちゃだめなんだよ。
- 452 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:31
-
ダッと駆け出しかけて、裸だった上半身に急いで服を。
転がるように階段降りて玄関を飛び出す。
さっさと自転車買っとけばよかった。
ちょうどバス停を通ったときバスが来たけど、乗ってて見つけたらすぐ降りれないし
走って亜弥ちゃんを捜す。
あ、てか今日、普通に平日だから学校あるじゃん。
でも待てよ、それなら愛ちゃんの家に戻るか。
念のため高校に行ってみたけどまだ5時半だから門も閉まってる。
飛び越えて中に入ってる可能性もあるけど……違う、考えるな、感じろ。
ここに亜弥ちゃんは…………いない。本能でわかる。
『たまには役立つだろ?』
『ごくたまに、ごくごくたまに、ごくごくごくたまに』
『キィィィ! 失礼な美貴め!』
ああうるさいな。無視してダッシュ。
なんとなく駅のほうに行かなきゃいけない気がする。
亜弥ちゃん…電車乗っちゃったりとか、「帰ります」って前住んでたとこに
帰ったりしないよね? 家族は海外だし。この町にいるよね? いてね、お願いだから―――
- 453 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:32
-
「朝早くからご苦労さまでぇっす♪
朝ごはんは召し上がられましたかぁ?
まだなら是非、歩きながらでもペロッといただける
ひとみ特製のチーズ・ロワイアルはいかがですかぁ?」
@@@
@@@@
@0^〜^)ノ○ ヒトツ200エンデース
「なぁああ!? よよよよっちゃんさんぅ?!」
なにその頭?!しかも珍しくピンクのフリフリワンピなんか着ちゃって寒そう。
てゆーか女だ。この人女だ。間違いなく女だよ亜弥ちゃん、今も昔も。
「あ? あれ、ミキティ。えらい早いね。
どう? おひとついかが?」
「…いらないけど。なにそれ? チーズバーガーじゃん」
「そりゃそーよ。ほら、ジョン・トラブルタが言ってたっしょ?
イギリスではチーズ・バーガーのことこう言うって」
「トラブルタ?」
ボルタなら知ってるけどブルタは知らないな。
- 454 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:33
- 「なんていうかさぁ、チーズ・ロワイアルなのに1回出たっきりじゃいかんと
ヨシザワは思いましてねぇ、次の旅の資金作りも兼ねて
こうして商売してるワケよ」
「その格好で?」
「これだと売れるんだわ、ほらひーちゃん天才的だから」
「…………」
まあそりゃ、かわいいけどさ、美貴相手に素丸出しで喋ってたら
客来ないんじゃないの?
しかもここ、キッチンズバーガーの目の前なんだけど。
「まー、今人少ないし。
さっき買ってくれた女子高生が通ってからミキティ以外誰も通りゃしないし。
嫌がらせも兼ねてるからここでいいのいいの」
ああ、梨華ちゃんクビにしたからね…ってちょっと待った!
「女子高生が通ったの?!」
「お? うん、なんか痛々しい子がね。
目も鼻も真っ赤で一晩中泣いてましたって感じでさー。
やっと人来たと思ったらそんなだし、けどヤケにじーっと見てくるから
声かけたら1個買ってくれて。近くで見ると結構かわいかったなー」
- 455 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:34
-
そ、それ…それ亜弥ちゃんだ!!
絶対亜弥ちゃん!
「ねえ! その子が来たのどんくらい前?!
どっちに行ったの?!」
「え? 5分か10分くらい前にえーと、どっちかなー?
あっちの、ビルとかあるほうに行ったと思うけど」
ビル? 駅から離れたってこと?
よっちゃんさんが自信なさげに指差すほうに聳え立つビルたちを
見上げるとその中に…ホテル! 美貴と亜弥ちゃんが泊まったホテル!!
「つーかさー、こんな朝早くから1人でって
マジ寒いわ寂しいわだから石川に頼んだのね、手伝ってって。ごっちんは店あるし。
そしたらアイツなんて言ったと思う? 『ごめん、美勇伝の集まりがあるの』って
あんだよ早朝ランニングかよーとか思ったらオールナイトでボーリングするっつーのよ。
いくら美勇伝の勇は水原勇気の勇だからってドリームボールの特訓と
ひーちゃんどっちが大事?って話でさぁ。
あ、美勇伝ってのは石川の大学のサークルかなんからしーんだけど……ってあれ? ミキティ?」
- 456 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:35
-
ごめんよっちゃんさん。
話の途中なのはわかってたけど、美貴は行かなきゃならないんです。
ツッコミたいけど堪える美貴の気持ちをわかってね。
「んだよ、また1人かよ」って拗ねる声を背中に受けつつ
無駄に豪華な外観のホテルを見上げながら走る。
亜弥ちゃん、亜弥ちゃん、亜弥ちゃん!
逃げないで。いなくならないで。美貴を1人にしないって言ったじゃん!
美貴だって見つけるって約束守るから、亜弥ちゃんだって守ってよ!!
- 457 名前:ホントのカノジョ。 投稿日:2005/01/21(金) 20:35
-
- 458 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/01/21(金) 20:36
- 思いっきり途中できって申し訳。
( ^▽^)サンにも(〜^◇^)サンにも間に合わず_| ̄|○
そして今更ながら明けましておめでとうございます(爆遅
レス、ありがとうございます。
>>436名も無き読者様
( *^◇^)<キャハッ!照れるじゃーん!
(0^〜^)<え?アタシ?梨華ちゃんじゃなくて?
慢性的って肩こりみたいですね(w お体に悪くないといいんですが。
>>437konkon様
(0^〜^)<えへ、ありがとYO!
プリンを人に盗られたとき、その人の本性がわかるって誰かが言ってた。
今回少々アホなのかダークなのか微妙で申し訳。
>>438ピクシー様
( ‘д‘)<やっと主役の登場やで。
( ´D`)<あいぼん、のんたち思いっきり脇だよ。
うっさい、言ってみただけや>(TдT*)(´D`;)<ご、ごめん。
・゜・(ノД`)・゜・
>>439◆ZpT8ZEbM様
え、えろてっくですか(w
サラーリと書いたつもりが…。
川*VvV)ノノ*^ー^)<応援ありがとうございまーす。
- 459 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 00:06
- 更新お疲れ様です。が、しかし…
こんないいところで…オーノー…_| ̄|○
ミキティの自分ツッコミが最高ですw
あぁ続きが気になる…楽しみに待っております。
- 460 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2005/01/22(土) 07:42
-
│
│∀・)…キタ…
│
更新乙です。
こんかいもどうなるかコナン並に胸がトキドキです。
いろいろ書きたいのですがまぁ抑えておきます…
余談2ですが太鼓の達人(タタコン付き)を買いました。
うるさくて寮で使えません。
ミスムンをうたうおねーさんがたに『イヤおまえら誰だよ』と片手で突っ込みつつお待ちしています。
- 461 名前:ピクシー 投稿日:2005/01/22(土) 10:19
- 更新お疲れ様です。
よっちゃんさん・・・何やってんですか(w
とりあえず・・・続きを期待してます。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 462 名前:名も無き読者 投稿日:2005/01/26(水) 22:58
- 更新お疲れ様です。
ソコに来ますかw
やっぱりよっちゃんさんの行動には涙止まらないわ。
あの時のアレはそーだったのか。。。
大人しく美貴様の活躍を待つとします。
- 463 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:26
-
「あ、亜弥ちゃーん…」
ごちゃごちゃ建ってるビルの端っこに、ででんと聳え建つド派手なお城―
―じゃなくてラブホの前までやって来た美貴は、この近くに
いるであろう亜弥ちゃんの名前を呼んでみる。小声で。
「カオリは思うの。聞こえないって」
だってだって恥ずかしいじゃん!
人いないけどさぁ! 響くしデカイ声なんか出せるワケ―――
「ってアナタ誰ですかぁああ?!」
「オーレィ! 私は通りすがりの踊れる占い師、アターレ飯田」
「いやいや踊ってないし占ってないし!
鍛えてんじゃん!!」
- 464 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:27
-
ノノノハヽ
川‘〜‘)|| ニノウデニキクゥー
(( ━─OO─━ ))
∪∪ プルプルッ
「いやー、若い子に負けてらんないからねー」
「…若い子って……飯田さんも若いじゃないですか」
び、びっくりした。いきなり降ってきた声に振り向いたら
えらく情熱的な服を着た背の高い女の人が、長い髪を揺らしてテレビで
見たことあるボディなんちゃらをプルプルしながらやたら迫力のある
大きな目で美貴を見下ろしていた。
顔や雰囲気が、明らかに美貴より年上っぽいから敬語使ったけど
キレイなお姉さんって感じで全然オバサンぽくないから気にしなくても……ん?
てか待って、アターレ飯田?
どっかで聞いたような……聞き流したような……あ!
- 465 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:27
- 「ほんと? カオ若い?
わあ、ありがとうなっちの妹not亀。いい子だねなっちの妹not亀」
この人……レイナンの上京話に出てきた飯田さん?
塾長にクマをプレゼントした人? つまり巨悪の権化?
なっちって、そーいやあんときもなち姉の知り合いっぽかったんだっけ。
「てかnot亀って…」
「えー、だって2人いるから分けないとダメでしょ?
同じ肩書きとはいえ、まったく同じ呼び方じゃあ絵里ちゃんに失礼だし」
「だからってnot亀じゃ余計失礼ですよ」
なんなのこの人?
つーかこんな近距離でプルプルしないでください、あたりますから痛いですから
…って遊んでる場合じゃない! 亜弥ちゃん!
「スイマセン、急いでるんで失礼します!」
「そっか、あやや捜してるんだっけ」
「えぇええ!? なんで知ってるんですか?!」
「だってカオ、占い師だもん」
- 466 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:28
- 占い師だからって普通わかるの?
いや、この飯田さんって人からはどっか不思議なオーラを感じる。
なんたってクマの持ち主だし、物凄い人なのかも…。
「なら、亜弥ちゃんが今どこにいるか占ってくれません?」
「うん、いいよ」
この近くにいるハズだけど、あたりを見渡せど姿はないし
もうどっか他のとこ行っちゃったかもしれない。
「では、まずお支払いのほうですが、人捜しは1回2000円のところ
今回は初回特別サービスということで、奇跡の圭織タンス1棹をお付けして
10万円になります」
「どこがサービスだよ!! 高くなってんじゃんか!」
しかも98000円アップって!
無駄に変なタンスお付けするな!! いらんわ!!!
いきなりシビアな話始めたと思ったら…悪徳の香りプンプンなんだけど!
- 467 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:28
- 「ははあ、香りとカオリをかけたんだ?
うまいね、さすがなっちの妹not…」
「だから余計失礼だっつってんだろ!!
別に美貴は上手いこと言ったつもりないし! 2000円払うからさっさと占えよ!!」
もう年上に対する敬意もヘッタクレもあったもんじゃない。
最近のモノなのに、なぜか懐かしい2000円札をアターレの腹立たしいほど
エロい唇に押し付けてやる。
「もごっ…ふごっ、わかった、わかったから…」
「あ、モッさーん、グッモーニン」
「へ? 塾長!」
おらおらわかったなら早く占えやあ!と、狂犬化してると
暗いビルとビルの隙間から、青いバケツと釣竿を持った塾長が出てきた。
この時間にその格好は……釣りの帰り?
「こないだお宅の妹さんにニィが作ったカマボコ食べられちゃって。
新しいのを作るべくアオメエソ釣りに行ってたニィ」
「あ、どうもウチの絵里がご馳走になりました」
「いえいえだニィ、ニィも昨日ご馳走になったニィから。
ところでモッさん、こんなとこでなにし……ぎゃあ!?
飯田さん?! ししししかもここはイカガワシイ建物の前ぇえええ!?」
- 468 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:28
- 美貴に向かって爽やかに微笑んでいた塾長が、口を2000円札で
封じ込められてる飯田さんと現在地に目を見開く。
誤解だよ塾長ぉ!!!
これは断じてそういうこっちゃなくて!
「わ、わかってるニィ、プライベートはプライベートだから」
「全然わかってないじゃん!
美貴はいま亜弥ちゃん捜してラブホで占いが10万はボッタクリなんだよ!」
「あ、ナルホド」
フーッ、フーッ、よかった、なんとか伝わったらしい。
荒くなった息を整えつつ、塾長のバケツの中が、釣りに行ってたのに
カラッポなことに気づく。釣れなかったのかな?
そうだよな、アオメエソってたしか九州とか四国とか、近くても三重で釣れる魚だもんね。
このへんじゃ―――
「ああああモッさん!!!」
「――んぃ?」
「ニイは昨夜モッさんの家をお邪魔した後、道重ちゃん誘ったら
断られたから独り寂しく羽田の最終で飛んだのに田中ちゃんに緊急で
呼び出されて戻ってきたニィよ!! まーたお宅の妹さんが挟まったニィ!」
「ええ!? またぁあ?!」
- 469 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:29
-
なにやってんのさなち姉!!
てかそれで塾長呼ぶなら美貴にも連絡してくれりゃいいのに!
あんな手紙書いた手前できなかったのかな?
「魚太郎さんの漁船に乗せていざ!ってとこで携帯が鳴って…
出たら田中ちゃん『絵里が絵里がぁ!』って泣いてるし
モッさんも連れてこうかって言ったら『お姉さんには絶対知らせちゃいけん』って…ハッ!
知らせてしまったニィイイ!?!?!」
「 塾 長 、 ど う い う こ と ? 」
イッケネ、里沙ったら口滑らせちゃった☆なんて舌出してないで
説明しろやゴルァ。噛ませるぞ、早くその舌しまわないと噛ませるぞ!
「ままま待つニィ! 落ち着くニィ!
ニィも詳しいことはわかんないニィ!
田中ちゃんにそう言われただけだから!」
「む…」
そりゃ、そうなのかもしんないけど! だったらなんで?!
まあ呼ばれてたとしても、美貴は亜弥ちゃんのことがあって
今はそれが1番の優先事項だから絵里のとこには行けないけどさっ!
- 470 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:29
- 田中ちゃんはこのこと知らないハズじゃん?
てことは美貴に絶対知らせちゃいけない理由ないじゃん!
大体絵里はなんでまた挟まったんだよ!
「それは…これから行かなきゃわかんないニィ。
モッさん、松浦さん捜してるニィ? だったらここは
ニィに任せるニィ。必ず、後でちゃんと連絡するから」
「うーっ……わかった、塾長、お願いします」
気になるけど、仕方ない。なち姉もいるし、絵里、大丈夫だよね。
「ニィニィ! ニィにお任せニィ!
…ところでそろそろ飯田さんの口を解放してあげないと逝ってしまうニィ」
「あっ、忘れてた…」
「プハァッ!! ひどい、ひどいよ美貴」
やっとnot亀やめたと思ったらイキナリ呼び捨てかい。
まあいいけど。
「それじゃニィは道重ちゃん釣って田中ちゃん家行くから。
飯田さん、こないだニィの家の庭にニンジン100本投げこんだの飯田さんでしょ?
最初は喜んだけど、あの日から毎日食卓にニンジンのグラッセが出てきて
嫌がらせだって気づいたニィ。それじゃ」
「ガキさんが悪いんだよ!
カオリのクマ人にあげたりするから!」
飯田さん……アンタ子供か…。
いや、微妙に金かかってるとこが大人だけど。
- 471 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:30
- 「じゃ、飯田さん、美貴も行きますね」
「待ちなよ、占ってあげるから」
「でも10万…」
「2000円もらったから、奇跡の圭織タンスはあげられないけど
占いだけならしてあげる。特別の特別、カモモ占いでよければ」
「カモモ…?」
「クマ―――ッ!!!」
「ぎゃあ!? ララララムネェエエエ!?」
不敵な笑みを浮かべた飯田さんが指をパチンと鳴らすと、この巨体が
どうやって隠れてたのか、飯田さんの背中からラムネが飛び出してきた。
「ちがうの。この子はラムネじゃなくて
ラムネの兄のカモモっていうの」
「オスなんですか……カモモなのに…」
どこの飼い主もネーミングが微妙だな。
まあこの際カモモでもキメメでもなんでもいい。早く占って。
「カモモ、あややはどこにいるか、よぉーっく考えて?」
「クマ―――…」
え? 考えるの? 占えってば。
- 472 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:30
-
∩___∩
| ノ\ ヽ 〔カンガエチュウ カンガエチュウ〕
/ ●゛ ● |
| ∪ ( _●_) ミ
彡、 |∪| | クマー…
/ ∩ノ ⊃ ヽ
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
「ヤ、ヤマ―――…?」
「山? カモモ、あややは山にいるの?」
「ク、クマァ…」
「美貴、山だって」
「そうですか。…って信じられるかあああっ!!!」
めちゃめちゃ自信なさげじゃんカモモ!!
てかクマーだからヤマーとしか言えなかっただけじゃないの?!
占いがどうとかじゃなく言葉のレパートリの問題だと思うんだけどっ!!
「そ、そんなことないよ。
カモモは頭のいい子だから」
「じゃあカモモ、ドライカレーとキーマカレーどっちが好き?」
「キ、キマ―――…?」
「ほら見ろ!!!」
「ちがうよ美貴、いまのは誘導尋問だよ」
「どこがっ!!!」
- 473 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:31
- ああもう時間の無駄だった!
美貴のバカッ! こんなことしてる間にも亜弥ちゃんはどんどん
離れてっちゃうんだぞ!!
「クワトロや、クワトロ・バジーナ」
「うへぇ、いきなりなにぃ?」
「クワトロ、鞄に入れておいたんだけどいなくなってて」
「いなくなっててって…フィギュアでしょ?
落としたんじゃないの?」
「失礼な! ヘビだよ! 新しいペットなの!」
「うぇえええー、ヘビィ?
んな恐ろしいモンよく飼うねー、てかなんでヘビにクワトロなんて…」
「シャーッ!」
「あ、クワトロ!」
「……ああ、それでシャアね、ハイハイ」
ん? 今度はなんだ? 駅のほうから仲良く歩いてくるのは………
「紺ちゃん! まこっちゃん!」
「あ、藤本先生…とお豆の師匠さん、おはようございます」
「おはよーございまーす」
「紺野と小川だっけ? おはよう」
「おはよ、なにやってんの?」
- 474 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:31
-
朝早いのに次から次へと…、美貴が普段遅すぎるだけ?
「高橋愛ちゃん、ご存知ですよね?
彼女から人捜しを手伝って欲しいと連絡がありまして」
「愛ちゃん家に行くとこなんですぅー」
「え? あぁ、そっか、友だちなんだよね…」
その昔、愛ちゃんが四月一日だった頃に知り合ったっていう……。
「あ、その捜してる人、亜弥ちゃんなんだ。
美貴も捜してて」
「だから山にいるよ、山に。早く行きなってば」
「うっさいな、飯田さんは黙っててくださいよ」
「…………」
ぐっ、な、なんだ。デカイだけに黙って見下ろされると威圧感が…っ。
儒教でお馴染みの孔子も身長が2メートルくらいあったらしいけど
そんなデカくてヒゲの長い爺さんに見下ろされながら『親を大事にしなさい』って
言われたら誰でも『ハイッ! 大事にします!』って言っちゃうと思う。
…み、美貴は言わないけどさっ。言う前に大事にして……いた過去もあった。
「せーんせぇ? 藤本せんせーい」
「…ッハ! なうわあ!?」
「アハハ、高い高ーい」
- 475 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:31
- いけない、思いっきり脱線してたよ。気づけばなぜか無言の飯田さんに
持ち上げられててまこっちゃんたちに笑われてるし。
てか飯田さん! 口が使えないからって手ぇ使うな!
「まいいや。で、なに?」
「あのー、えっとー、いま山って言いましたよねぇ?」
「うん、言ったけど…」
明らかに間違った情報だよ。
「いや、それがそうでもないっていうかー。
あそこのビル曲がったとこにバス停があるんですよー。
でぇ、そこから山行きと海行きのバスが出ててー」
「マジで?!」
てことは飯田さんの、もといカモモの占いを信じるなら
亜弥ちゃんはそのバスに乗って山へ芝刈りに?
「やー芝刈りはわかんないですけどー、可能性あると思いますよー?」
「飯田さんは適当なところもあると、お豆に聞いたことがありますが
占いを職業にしてるくらいですから、信じる価値はあります」
それは…そうだけど、美貴はカモモを信じていいものかって
思っちゃうワケで………って。
- 476 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:32
-
「海行きも出てるの?」
「はいー。夏休みに乗ったよね? あさ美ちゃん」
「うん」
海…。亜弥ちゃんが破った……海で撮った写真。
あの夏以来、1度も行ってない海。
亜弥ちゃんは…………でも美貴が亜弥ちゃんだったら、そんな海に行こうなんて思う?
けど山よりずっと、ずっと、亜弥ちゃんがいそうな気がする。
「藤本先生は、海だと思うんですか?」
「たぶん。絶対とは言えないけど…」
「……………」
『カオリが思うに絶対山だよ』という視線を頭に感じるけど。
美貴は、本能派の美貴は、海に、海に行きたい。
「では海に行ってください。
山には私たちが行きましょう。
飯田さんの占いを半分信じれば、松浦さんがあそこのバス停でバスに乗ったのは
間違いありませんから。残りの半分は自分を信じてください」
「そ…だね、ありがとう。
美貴、海に行く。もし山にいたらすぐに連絡して?」
「ええ、お気をつけて」
「行ってらっしゃーい」
「飯田さん、半分しか信じないけどありがとうございました」
「……………」
「……おろしてください、もう喋っていいですから」
「行っちゃヤダ」
「ハ?」
「美貴って抱き心地いいんだもん」
「知るかっ!! おーろーせぇ!!!!」
- 477 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:32
-
――――
あああいいい飯田さんめっ! 占い全部信じなかったからって
どすごい力でギュウギュウしやがって!!
苛立ちを足に込めて、愛ちゃんの家に行く紺ちゃんたちと別れ
先にバス停に向かった美貴は、ちょうどのタイミングで来たバスに
乗り込んで、1番前の席に座った。少しでも早く降りられる場所に。
平日だし朝早いし、サーファーさんは自転車や車を使うから
バスは空いてるけど、ちらほら途中で乗る人もいて
当たり前だけどノンストップで海まで行ってくれるワケじゃない。
イライラ、無理だと思うけどもっとスピード出してよ、ムカムカ。
飯田さんに時間取られたし、亜弥ちゃんはもう海に着いてるハズで
もし、着いた途端にやっぱ帰るとかなって駅に戻ってたりしたら
すれ違いになっちゃう。
だから美貴は窓にへばりついて反対車線に目をやった。
バスだけとは限らない。タクシーとか、まさかと思うけど
ヒッチハイクとかしてたらどの車に乗ってるかわかんないし!
- 478 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:34
-
って凝視しまくってると、すれ違う車の運転手に訝しげな視線を向けられたり
「あ!………ちがった」
似てる髪形の人にガッツいたら顔が許せないほど似てなかったり
. (⌒⌒⌒).).)
| ‘ 。‘ |:|:|
| :::|:|:|
 ̄ ̄ ̄ ̄
通りの向こうのパン屋の食パンが亜弥ちゃんに見えたり
./\__,ヘ,
| ノノハヾヽ__ ニャー
/从*‘ 。‘) /\
/| ̄∪ ̄∪ ̄|\/ /
| |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
捨て猫が亜弥ちゃんに見えたり(帰りに拾おう)
,へ-∞ヘ ,へ-∞ヘ ∧,,,∧
ミ*‘ 。‘ ミ ミ*´ Д `ミ ミVvV彡 ベービベービベビシャーウィニャー
c(,_uuノ c(,_uuノ ミ,,uu,@
にゃにゃっにょうだったり。
- 479 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:34
-
亜弥ちゃん、いない。
いたとしたら、絶対見過ごしてるハズない。
まだ海にいる。この海に。
終点でバスを降りた美貴は、車の来ない隙を狙って赤信号の
横断歩道を渡り、砂浜へと走る。
見つけなきゃ、美貴が見つけなきゃ。ここにいるんだから。
――――いた。
サーファーさんたちが波乗りしてるところから少し外れたところに
見慣れた1つの影があった。
寄せる波から逃げようともせずに
きっと、刺すように冷たい波に足を浸して、凛とした表情で
海を見つめてる。
気づかれないように背中に向かって、ゆっくり、ゆっくり近づいてく。
波音が消してくれるだろうけど、足音を忍ばせて
ちゃんと捕まえるまで逃げられないように、静かに手を伸ばして
もうちょっと――もうちょい――あと5メートル――…
- 480 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:35
-
「海のバカヤロ――――――ッ!!!!!!!!」
「っ…!」
ひゃあっ…と危ない。もう少しで声出すとこだった。
口を両手で押さえる美貴の5メートル前、飛びつけば確実に
捕まえられる距離にある背中が突然トゲトゲしく尖ったと思うと
普段の甘さはどこえやら、怒りに満ちまくった、でもやっぱりかわいい声が
海に響き渡った。
てか海のバカヤロウってアンタ…昔の青春ドラマじゃあるまいに。
「ミキたんのアホ――――――ッ!!!!!!!!!」
「………」
うん、アホだね。美貴、すっごいアホだね。
「なにがっ…なにがナツオだよ!! なにがヒトミだよ!! ナツコじゃねぇのかよ!!!
なにがチーズ・ロワイアルだっ!! あんなの噛み砕いて飲み込んでやったんだから!
他の子触った手でミキたんに触んなっ!!!!!
あたしのじゃない手でミキたんに触るなぁあああああ!!!!!!」
ナツコじゃない点に気づいたんなら、別人だっていう点に
気づきなよ。てか食べたんだね。
- 481 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:35
-
「たんの大バカッ!! フザケんなっ!!!
楽しそうに笑っちゃってんじゃねぇよ!!! なにトロケちゃってんだよ!!
好きだよ!! 好きだよ!!!! 好きだバカァアア!!!!!!」
知ってる。
「…見つけた」
「っ!」
引いていく波を追いかけるように近よって、トゲトゲの背中に抱きついた。
瞬間、ビクッと固まった彼女の棘が、お腹にまわした腕に
右肩に乗せた顎に、背中に張りついた胸に刺さって
痛くて痛くてしょうがないけど、離れるワケにはいかない。
もっともっと、もっと刺して。
美貴を磔にしてよ。
離れなくていいと思ってる。このままで、いいと思ってる。
「ねえ、目ぇ見てよ」
目を見てよ。
亜弥ちゃんのこと、好きだっていつも言ってる。
昨夜だって言ってた。
- 482 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:36
-
何も言ってくれないほっぺたに右手を伸ばすと
意外とすんなりこっちを向いてくれた。
いっぱい泣いたんだね……。
伏せられた瞼、鼻もえらいことになってる。
この体勢でするのはちょっと楽じゃないけど、必死に首を伸ばして
順々に口づけた。けど反応はない。
途中押し寄せた波が、信じられないほど冷たい。
「見てくれないなら、聞いてて。
亜弥ちゃんだけ、だよ。美貴がなに言ったか、亜弥ちゃんがなに聞いたか
知らないけど、ごめん、憶えてないけど、亜弥ちゃん以外いるワケない、ありえない。
前もそう言ったよね? 美貴、亜弥ちゃんへの気持ち、嘘ついたこと、ないよ」
…たぶん。いや、絶対!
憶えてないところが気になって弱気になりかける心を叱咤して
俯いてる顔を覗きこむ。
目を開けてくれたら、波じゃなく砂浜じゃなく、美貴が映るように。
「好き」
「っ…」
よかった、見てくれた。
これでも反応なかったらどうしよかと。
ほっとして笑っちゃったら、やっと現れた茶色い瞳から
ポタポタ涙が落ちる。
- 483 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:36
-
「なんで?…っなんでぇ? わかんないよ、ミキたんわかんないよ。
ここにいるの、おかしいよ。きのー…も、部屋入るの、怖かったんだよ?
ベッドにあの人…いたらどうしようって……そしたらミキたん、
1人でクークー寝てるし、安心したけど、でも、寝顔…手ぇ上げて笑ってて
そんなに楽しかった? あの人に学校ジャージ着せちゃってさぁ
私、着せてもらったことないよ、あのジャージ」
だってあれ…中学の指定ジャージでダサイし。
と、言いたくなるのを堪えつつ、流れる涙にキスしながら
かわいい嫉妬に耳を澄ませる。
「帽子だってなに被らせちゃってんの? ミキたんが被んなきゃ意味ないじゃん。
会ってほしくなかったのに……どっちよ? どっちが先に見つけたの?
女の人でよかったの? そっか、私も女だもんね、女なら誰でもいいんだ?
でも胸は大きくなきゃヤなんでしょ? あの人より私のほうが大きいよ。
ミキたんに会ってから、また大きくなったもん」
ん? ちょちょちょちょ、かわいいと思ってたら
後半おかしいんだけど。別に美貴は大きくなくてもいいし、
むしろそっちの人間ってゆーか味方ってゆーか、あれ、なんでだろ、涙が…
って泣いてる場合じゃなくて! また大きくなったの?
わあ、すごいねぇ…
って喜んでる場合でもなくて!!
- 484 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:36
-
「ねえ、たまんないんだけど」
「…なにが?」
「好きすぎる。亜弥ちゃんのこと」
「っ…な」
「だから、言い訳とか説明は後でいい?」
「え―――っ」
返事待てなかった、でも謝んない。
キスしたら、こっち向いてくれたから。
体まわして、美貴を抱きしめてくれたから。
少し大きめの波がやってきたとき、もう感覚がない足が
簡単に攫われて、2人して濡れた砂浜に倒れこんだ。
咄嗟に、美貴が下になって庇ったら、砂浜にガツンと頭をぶつけた。
柔らかいとこだからか、痛みはないけど衝撃はあって
頭がフワフワする………背中を波が滑ってく………
だけど不思議と、冷たくない。
美貴の上に乗っかって、大暴れしてる亜弥ちゃんのおかげかな。
なんて暢気なことを考えた瞬間、脳味噌がメリーゴーランドみたいに
廻ってるような感覚に襲われて……………………
- 485 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:37
-
―――――――――――
――――――
―――
気がつくと、美貴はぐるぐると巻く渦の中にいた。
目を開けても真っ暗で、体もフワフワって浮いてる感じ。
ここ、どこだろう?
『……た………ん……………』
亜弥ちゃん? 亜弥ちゃんの声がする。
やば、もしかして美貴、頭打って気ぃ失ったとか?
『……………キ……た………ミ…………ん………………』
あれ? なんかこれ、デジャヴっていうやつ?
『とうとう真実を伝えるときが、来てしまったべか』
ハァ? なち姉?
- 486 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:37
- ―――
――――――
―――――――――――
「痛い…」
「美貴さん!!」
「…うー…絵里?」
「あぁ!お姉さん!本当にすみませんでした!この通りやけん、許してください!!」
「…?…レイナン?」
「れいなです! 田中れいなと申します! 先程はとんだご無礼を…」
「ハ? あれ? 亜弥ちゃんは?
絵里とレイナン、なんでいんの?」
おっかしいな、海にいたハズなのにここ家だし。
しかも―――アレ? ここ亜弥ちゃんの部屋じゃん。
なのに家具がいっこもない。
「あや…? 美貴さん、頭大丈夫ですか?」
「へ? そんな美貴の頭がおかしくなったような言い方しないでよ」
「……あ、ごめんなさい…」
「いや、謝んなくていいけど…」
ってあれぇ? 絵里おかしくない?
てかこの会話って………
「あの、お姉さん。塾長は悪気があったワケやなくて…やる気はあったと思っとー……ばってん、
決してお姉さんを死に至らしめようとかそげなこつやなかんやけん、許しとっただけなかやろうか?」
「…………」
- 487 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:38
- レイナンもおかしい。なに言ってんの?
これって……あの日だよね? 美貴が亜弥ちゃんに初めて会った日でしょ?
で、でもそれなら、絵里は亜弥ちゃんの名前知ってるハズ。
朝食のときに聞いたんだし。ウラマツアヤだったけど。
「絵里、ここに住む亜弥ちゃんのことだけど…」
「え? ここに住むのは後藤さんですよ?」
「ん? ちがうちがう、ごっちんはあっちの部屋でしょ?
ここには亜弥ちゃんが…」
「後藤さんだけですよ? あや、なんて人は、知りません」
「ハァ!?」
知らない?! ごっちんだけぇ?!
「っ…ご、ごめんなさい。知らなくてごめんなさい」
「お、お姉さん、絵里を怖がらせちゃいけましぇんとよぉ」
「あ、ご、ごめん…」
ご、ごめんはいいけどなにそれ? どうなってんの?
亜弥ちゃんは?
「ただいまー」
「んあ、ただいまー」
- 488 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:38
-
「ななななち姉ぇええええ! ごっちぃぃん!!
明日からここに亜弥ちゃんも住むよね?!」
「べさ? なーに言ってるんだい。ごっちんだけっしょ」
「んあ? あやちゃんってだーれ?」
嘘……嘘……嘘だあ!
「む? 美貴、ほっぺに寝痕ついてるべ。
さては掃除サボッて居眠りしてたな」
「んあ、それで変な夢でも見たんじゃないのー?」
「ハァアア!? 夢ぇええ?!」
そんな、そんなワケ………ここまで来て………
「夢であやって子となにしてたんだい?
まさかヤラシイことしてたべか?」
「いやぁん、こんな昼間からー?」
夢オチ?
「あ、そーだ美貴、この際だから言っとくっしょ。
なっちと美貴は……亀ちゃんもだけども、実は生き別れた姉妹なんだべ」
「へ?」
「んあぁ!? なっち!
そんな大事なこと和室で高めのお茶も飲まずに離していいのぉ?!」
いやいやごっちん! 状況がどうという前に!
生き別れた姉妹ぃぃいいいいいい?! んなアホなぁ!!!
- 489 名前:ファインディング・アヤ 投稿日:2005/01/28(金) 21:39
-
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´ー`●\)< というお話だったんだべ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \^ー^) / 丿/
|_|_| ノノ_,ハ,_ヽ | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从VvV从 | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/
- 490 名前: 投稿日:2005/01/28(金) 21:39
-
- 491 名前: 投稿日:2005/01/28(金) 21:40
-
チーズ・ロワイアル―――完?
- 492 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/01/28(金) 21:41
-
卒業の前に書けてヨカタ。
飯田さん、25曲ありがとう。
そしてここまで読んでくださった方、ありがとうゴザベスノノ*^ー^)
レス、ありがとうございます。多謝。
>>459名無飼育さん様
切りどころがなかなか無くて…ほんと半端なとこで申し訳。
川VoV)<自分ツッコミができてこそ一人前なのだ。
続きを楽しみにしてくださったのに………ゴメン。
>>460◆ZpT8ZEbM様
ノノ*^ー^)<胸がトキドキ?
色々気を遣っていただいて、ありがとうございます。
>>461ピクシー様
(0^〜^)<稼いでんだYO!
美貴様が去ったあと、通勤途中のお父様方が
砂糖に群がるアリのように群がったとか群がらなかったとか。
期待とはなんて危険な………ゴメン。
>>462名も無き読者様
(0^〜^)ノ□<泣くなYO。
せっかく待っていただいたのに活躍がなかったヨカーソ。
………ゴメン。
- 493 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/01/29(土) 00:16
- ( ゚д゚)・・・
な、なんじゃこりゃあああああああftgyふじこlp;@:「
感動大作!!感動大作!!私もちつけ。
- 494 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/29(土) 02:01
- エエェェ(´д`)ェェエエ
だけどおもしろかったよ。
続編とか期待しちゃっても良いのかな(・∀・)
- 495 名前:ピクシー 投稿日:2005/01/29(土) 03:10
- 完結お疲れ様です・・・なのでしょうか?
とりあえず・・・今回もメチャメチャな展開に笑わせていただきました。
続編・・・あれば期待します。
なんか昔のジャンプの某漫画の終わり方と似てる(ニガワラ
- 496 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2005/01/29(土) 03:17
- 絶対続くと信じつつ眠りにつきます。。。
最後(?)にひとこと。
あややかわいー。
- 497 名前:名も無き読者 投稿日:2005/01/30(日) 21:30
- へぇ〜そういうお話だっ……えぇぇぇぇぇぇぇ!?
っとと、完結(?)お疲れ様です。
いつも通りにうひょひょひょ萌えーの胸キュンだったのです、が。
えぇもう既にココまでで名作なんですがこの先も欲しいと言ってみるテスト。
つーわけで続くと信じて待ってます。
- 498 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:49
-
―――完?
全部夢でした、ちゃんちゃん。
ちゃん?
- 499 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:49
-
,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
人./ノ_ら~ | ・・・ってこんなんで
从 iヽ_)// ∠ 終われるかああああ!!!!!!
.(:():)ノ::// \____
、_):::::://( (ひ
)::::/ハヽ てノし)' ,.-―-、 _
______人/ :VoV):: ( _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::( .n,.-っ⌒ ( ノl●´ー`).(^ー^)ソ|
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r' ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
||__| (::()ノ∴:・/|::| ./:/ /  ̄/__ヽ__/
|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/ ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/ .( ヽ ::|
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_ /⌒二L_ |
──────── ー' >ー--'
- 500 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:50
-
ぬわああエンドレスエンドレスエンドレス戻ってこーい!!!!!
危なっ! なち姉の戯言に大ダメージくらってたらエンドロール流れ出す
ふいんき(なぜかryじゃん!!
こんなラスト受け入れるワケないでしょこの美貴がっ!!
続編もなにも終わってないし終わらせないから!!!!
「なち姉! 変なこと言わないでよ!」
「む。変なことなんか言ってないべ。
なっちはただ真実をありのままに告げただけっしょ」
「なにが真実だよ! 生き別れなんて…!」
そりゃなち姉と顔は似てるけど、初対面の人に与える印象は真逆じゃん!
絵里とはどこも似てないし!
「信じたくない気持ちはわかるっしょ。
でもね、美貴は、生まれてすぐに引き取られていったんだべ。
今のお父さんと前の奥さんのとこに」
そんな…っ、美貴が親父とピコーンバカの子供じゃないなんて…っ。
お母さんの子供じゃないなんて…っ。
「嘘だ! 絶対嘘!
美貴のお母さんはミツオだもん!
今のお母さんも好きだけど…っでも美貴を生んでくれたのはミツオだもん!」
叫びながら思う。我ながら、なんてキショイ台詞なんだろう。
- 501 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:50
-
/:::::::::::::::::::::::::::ミゞ
/:::: 丿::::::ノ::::::::丿::ヾ
|:::::::::::/::丿:ノノ::ノ::ノ
丿ノ:::::::丿. へノノ ソ
丿l^ 、 ノ丿 (・) (・)
ノ(ヽV ( U ,ゝU)
ソ::. / _ ll _〉
丿 ヽ:: ‘ー''/ <うおおおおお美貴ぃぃいいいいい!!!!!
│ ヽ──│
「そうやで美貴ぃ! オレがお母さんやで!
さあ来い! 懐かしい母の胸でお眠り!!」
「ぎゃあっ!? どっから湧いてきやがったグルァ!」
「グフゥ!? 痛みさえ愛おしいマイスウィート…っ!」
なにが懐かしい母の胸だよ! あんたもう膨らみがないでしょーが!
そんな胸に抱かれた記憶は微塵もないっ!!
ってキャア!? さっきの台詞!
思わずなち姉たちの前でミツオがママンだってバラしちゃったよ!
- 502 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:51
-
………ってアレ?
真っ青になりつつ振り向いたら…なち姉もごっちんも、絵里もレイナンもいない。
おまけに……亜弥ちゃん(正しくはごっちん?)の部屋だったハズなのに
いつの間にか美貴は商店街の人混みの中にいた。
なんで? もうマジでわかんない。
「こっちや、こっち来ぃ」
「んぇ?」
キョロキョロしてたら、手招きしてるミツオを発見。
……お前はいるのか。
激しくその横顔にコークスクリューブローをお見舞いしたい衝動を
抑えつつ歩いていくと、そこはキッチンズ・バーガーの前だった。
「見ててみ」
「なにを……っあれ?」
肩を叩かれて、触んなハゲ!って拳を繰り出そうとしたら
隣にいたハズのミツオの姿はなくなってて…え? 消えた?
…おかしい、さっきからおかしすぎるぞ世の中が。
……ハッ! そっか! 夢はこっちだ! これ夢なんだ、そっかそっかアハハ。
- 503 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:51
- だよねーだよねー、亜弥ちゃん知らないとか生き別れとか
ありえないったらありえないもんねー、よかった…よかったよぉ…グスッ。
でも夢なら早く醒めてくんないかな。
亜弥ちゃんの真下でブッ倒れてんでしょ、美貴。
たぶん半目どころか白目むいてるし、キスの途中だし。
亜弥ちゃんビックリして泣いちゃってるかもしんない。
や、その前から泣いてたけどー…って、零れる雫を思い出して切なく締め付けられる
胸と、抱きしめた柔らかさを思い出してダラしなく口元が緩んだとき――
「いたーっ!!!
夏男ぉ! あんた今までどこほっつき歩いっ…」
「ふぇ?」
「ん…? ありゃ、違った。ごめん」
「いえ、別にいいで…」
ググググゥーッ。
「…………あ」
「……プッ…アハハハハハハハハ!ヤハハハハハハハ!」
「う…わ、笑わないでくださいよぉ」
「キャハハハハハハハハ!ごめっ…でも…っクハッ、すごい音…っヒャアッ」
- 504 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:52
- すぐ近くでバカデカイ声。
聞き覚えのありすぎるそれの発信源は、これまた見覚えのある…。
わかった。考えなくてもわかった。
というか、思い出した。
もう絶対に忘れない。
亜弥ちゃんと初めて会ったとき。
黄色くて丸い包み紙を見て妙にテンションの上がりまくった美貴は
梨華ちゃんにジャレついた後、ふと目に入った窓の外に
気持ちは終わってたけど中途半端な最後のせいで
消化しきれてなかった人を見つけて…
『血祭りにあげてやる!!!』
って物騒なこと思いながら店飛び出したんだった…。
いやだってさぁ、心を弄ばれたってゆーか、体はなーんもされなかったけど、
1回だけ手ぇ繋いだぐらいだったけど、
あのグッパイはかなりキツイ代物だったし。
あったかい家族と優しい友だちのおかげで立ち直るのは早かったけど
誰かを好きになんのは当分いいやとか、面倒だとか
そういうこと思うようになっちゃったし。
そんなグダグダしてる自分をなんとかするにはバキッと一撃必殺を……わ、わかってるよ。
女の子なんだし、いいじゃん結果的には殴らなかったんだから。
- 505 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:52
- 「クッ…プハハッ、ごめっ…アハハッ!」
「むぅ。笑わないでってばぁ」
「…ッハァハァ、ごめん…ハァ、お腹空いてるの?」
「……はい」
「そっか、名前は?」
「………亜弥です、松浦亜弥」
「んん? どっかで聞いたような名前だねぇ。
そっかぁ、亜弥ちゃんってゆーんだぁ、えへへ、かわいいねぇ」
「ほぇっ?」
そう、結果的には殴らずにナンパしたんだ。
女の子としては…まあ微妙だけど。
人として、社会的にはナンパのほうがマシだよね、きっと。
複雑な心境で見ている美貴の目の前で、あの日の美貴は嬉しそうに
戸惑ってる亜弥ちゃんの頭を「かわいい」を連発しながら撫でる。
「ねえ、お腹空いてるんならこれ食べる?
美貴と半分こしよ?」
「え…でも…」
「遠慮しないで、笑っちゃったお詫び。ね、行こ行こっ」
「あ、ちょっと…」
前に亜弥ちゃんから聞いた話とは少し違う気がするけど
目も声も甘え坊全開の美貴はおお!かわいい!って本人が感動するほど
可愛らしく、こりゃあこんなかわいい子に誘われたら
亜弥ちゃんもついてくよねって感じ。美貴ちゃんたらニクいねえ。
- 506 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:52
-
腰に手をまわして、亜弥ちゃんを守るようにして人混みを
歩いてく美貴の背中を見送ってると、景色が歪んで場所が変わった。
今度は公園。
ベンチに並んで座って、美貴ってば亜弥ちゃんに「食べさしてぇ〜」なんつって
甘えてる。子供かあんたは。
かと思うと、ポテトをかじる亜弥ちゃんを穏やかな目で見つめたりとか。
食べ終わったら、太ももにひっついて「あたーま撫ーでて?」ってどうしようあの子
驚異的にかわいくない? 美貴なんだけど、美貴が見ても美貴かわいいんだけど。
そんなキャワワな美貴は、亜弥ちゃんにとってもキャワワなようで。
2人は、ここで一気に仲良くなった。
初めは戸惑ってた亜弥ちゃんも、なにがそんなに楽しいのか
キャッキャ笑いながら美貴の要望に応えてて。
敬語やめて、呼び方も
「甘えん坊だからたんだ、たん。ミキたん」になって。
ひとしきりじゃれて、もう昔っからの友だちみたいになった2人は
商店街に戻ってお店を見たり、プリクラ撮ったり
くだらないことを言い合って笑い転げては顔をくっつけて歩いてく。
- 507 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:53
-
そんでもって問題の……。たしかに美貴は、1日早く来ちゃって
泊まる場所に困ってる亜弥ちゃんに『ずっと一緒にいよう』って言った。
でもなんで、あんなファンシーな外観のホテルに泊まることになったかって言うと…
「わーお城だぁー!
亜弥ちゃん! 美貴あそこ入りたい!!」
「ふぇ?…え、あそこは……あの…」
「はーいーりーたーいー!! 美貴ね、ちっちゃいときお姫様になりたかったんだぁ」
「ミキたんも? 私もなりたかったよぉ」
「んじゃお姫様になりに行こーよ!」
「…え、う、うん!」
┌────┐ / ̄\
│┌──┐│| |
│| ││ \_/
┌─┘│ ││
└──┘ └┘
ミキたん、そんなとこに入ってもお姫様にはなれないんだよ。
ってなんで言わないのさ亜弥ちゃぁああん!!!
無邪気な笑顔で誘う美貴も美貴だけど、そこはしっかり否定して拒否ってよ!
- 508 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:53
-
ルンルンで部屋に入った美貴はポポイと服を脱いで、赤い顔で興味深げに
視線を巡らせてる亜弥ちゃんを担いでを風呂場にむかった。
おいおい、姫になるって目的はどうしたんだ。
「ザブーン!」とか
「洗ってー!」とか
「…お? 亜弥ちゃんでかいねぇ、いいなぁ…あ、そだ!
胸で洗ってよ胸で!」とか…なにぬかしとんじゃスケベ!!
亜弥ちゃん恥ずかしそうなのに、美貴がかわいかったからか
腕のとこだけちょっと胸で洗ってくれたんだよね…アリガトウ。
どうして忘れやがったんだ美貴、こんな素敵な体験を。
あの朝2人とも裸だったのは、お風呂出て亜弥ちゃんに体拭いてもらってた
美貴が途中で鬼ごっこ始めちゃって。
着替え持ってなかったから裸のまんま、亜弥ちゃんは逃げる美貴に
バスローブを着せようと同じく裸で追っかけてたんだけど
ベッドで捕まえたときには疲れ果てて、そのまま寝ちゃってた。
ナニもせずに。キスさえせずに。
…てか、この美貴が翌朝素に戻ってたら…亜弥ちゃん相当驚いただろうなぁ。
- 509 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:54
-
「ミキたん」
その節は申し訳…って謝ってると、すでにスピョスピョ寝てる美貴の頭を
撫でながら亜弥ちゃんがとびきり甘い声を出した。
「どうしよう、好きになっちゃうよ?
これからも会ってくれる?
約束は、無理だよね……」
亜弥ちゃん…。
約束ってお風呂ですか、それなら無理どころか思いっきり入ってるし。
会うどころか毎日一緒だし。
好きになって、美貴のこと。どうしようなんて迷わないでよ。
美貴の寝顔を見つめる優しい顔に、好きって100回叫ぶ。
あの日の亜弥ちゃんには、美貴の声は届かないけど
言いたいんだ。早く言いたい、亜弥ちゃんに聞いて欲しい。
美貴の気持ち、美貴の、心からの――――…
.................................
.........................
.................
...........
「あーっイクぅッ…もうだめイッちゃうぅぅ!!待って!…いやあっ!!
まだだめぇ!…まっ、あっ…イクッ、イクッ、イッちゃうー!!!!!!!」
- 510 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:54
-
「いってもたの」
- 511 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:55
-
「…行ってもたのじゃないよぉ!!!
1 日 バ ス 1 本 なんだよ!? どーやって帰るのさここから!!」
「どうどう、ピーマコ落ち着いて」
「私は馬かっ! 大体さぁ! 向こうの山ならもっとバスあったのに
あさ美ちゃんが『あっちの山が匂う』って言うから来たんだよ?!」
フゥーッ、元合唱部のあーしに全力疾走は疲れるやよ。
麻琴はすごいわぁ。息乱れとるのに気にせんとポンポン喋っとる。
「まあまあ麻琴、バスがないなら
他の手段を考えればええでの」
「そうだよ、ピーマコは頭が固いんだから」
「あさ美ちゃんが柔らかすぎんだよ!」
ほやの、あさ美ちゃんは頭がええから。暖簾やって腕で押すし。
けど麻琴だって賢いんやよ? もっと自信もってええがぁ。
「うぇ? いや愛ちゃん、今はそういう話じゃなくて
他の手段ってどーすんのさ?」
「……どーするんやろ?」
「それを聞いてんのっ!!!」
- 512 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:55
- ひょおっ!?
怒られたやよ! 温厚でノホホンな麻琴に怒られたやよ!
でも泣いたらいかん!
だってだって、亜弥ちゃんを泣かせた美貴ちゃんの頼みで
山行きのバスに乗るのなんか嫌やってあーしは言ったがし!
でもアターレ飯田さんが占ったって言うから…んだども
バスが着いた山にも、隣の山にも、人気のない山奥まで行ったのに
亜弥ちゃんはおらんし、ぶっちゃけ道に迷った挙句
やーっと『どこかの駅行き』ってバス停見つければバスは行ってまうし、
時刻表見たら明日まで1本も来んし。
けどそれはあーしのせいやないっ!
誰のせいと言うなら、それは美貴ちゃんのせいやぁ!!
「えぇぇーそれは違うよ愛ちゃぁん」
「ちがわんわ!」
「川o・-。・)<違います」
「「ヒィッ!?」」
ひゃあっ!? ああああさ美ちゃん!
いきなり真顔で迫らんといてぇ! 謝るから!
あさ美ちゃんの尊敬する美貴ちゃんのせいにしたんは謝るからぁ!
- 513 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:55
-
「おぉう!? あさ美ちゃんなに食べたの?!」
「え…? ど、どうして私がついさっき2人の目を盗んでクッキーを食べたこと…」
「食べカスがついてる!!
つーかなんでコソコソ1人で食べるのさっ!
私と愛ちゃんだってお腹すいてんだから頂戴よ!!!」
あ、ほんとや、あさ美ちゃん口の端に食べカスがついとる。
「なに言っとるん麻琴ぉー。
あーしらにあげたくないからコソコソ食べたんやよー」
「ピンポン、さすが愛ちゃん」
「でっへへ、そんな褒めんといてぇ」
「喜んでる場合かっ!!!」
ひゃひゃあっ!? まーた麻琴に怒られたやよ!
カルシウムが足らんのや! 早く帰って牛乳飲ませんとっ!!
「あさ美ちゃん! 早くなんとかするやよ!」
「じゃあお豆に電話してヘリで迎えに来てもらおっか。
サーブはまだ使えないし」
ん? サーブってなんやろ? テーブルテニスでもしたかったんやろか?
- 514 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:56
- 「フフフ、今度愛ちゃんも乗せてあげるね。
ほとぼりが冷めたら…あれ?」
なんや乗り物か、てかほとぼりってなん…って、あさ美ちゃん?
どうしたん? 携帯を耳から離して歯ぁ食いしばっとる…。
「くそっ、ミノフスキー粒子か…っ」
「いやいやあさ美ちゃん、ただの圏外でしょ、圏外。ここ山奥だし」
「はかったな! シャア!」
「うえぇー、シャアはおたくのヘビでしょーが」
「坊やだからさ!」
「ハイハイ、もういいから」
みのもんた好き?…そうやったんや、あさ美ちゃん…ああいう油っこいのがタイプやったんか。
それなら尚更、お昼の番組までには…ってもうとっくに終わってるやよ!
「外も暗くなってきたし、どっか休める場所探そ。
連絡つかないけどここにいないってことは
松浦さん、海にいたんだろうし」
「やといいけど……美貴ちゃんが見つけるんは、ちょっと腹立つやよ」
「あーあ、勝手に学校休んじゃって、お母さん怒ってるかなぁ」
「立てよ国民!」
「ハイハイ、ギレン様、立ってるから。誰も座ってないから」
「軟弱者!」
「ハイハイごめん…って愛ちゃん!
なにアンタまでセイラさんになってんの!!」
「えへ」
- 515 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:56
-
◇ ◇ ◇
- 516 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:57
-
「お腹すいたー、学食行こー」
「うん」
亜弥ちゃんが美貴の元を去って、1週間が経った。
あの浜辺で夢から醒めると、なぜか時間は全然進んでなくて。
美貴が気を失ってたことも知らずに、冷たい波に悲鳴を上げるまでキスした後
近くのホテルで気持ちも言い訳も、忘れてたことも全部聞いてくれた亜弥ちゃんは
バカってたくさん言いながら、それでも許してくれた。
知ったら怒ると思ってたけど、初めて会った次の日、美貴が記憶をなくしてたことは
うすうす感づいていたらしい。
『理由はわかんなかったけどね…ちょっとひどいって思ったよ?』
けど、すでに亜弥ちゃんは美貴のことを好きになってたし
美貴が口走った『責任とる』って言葉もバッチリ聞こえてたから
既成事実を武器に猛アタックを開始したらしい。(武器にしてたんだ…)
くっつきまくって、美貴は逃げなかったから、上手くいってるって
思ってたけど、『責任』って言葉と間違えられた人の名前がずっと残ってて。
- 517 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:57
- それでも、ちょっとずつでいいから
自分を好きになってもらえれば……そう思ってたとき
美貴に初めてキスされて。
『嬉しかった、すっごく。でも一緒に、苦しかった』
わかんなかったんだもん、たんの気持ち。
私の胸が好きってことはよくわかってたけど。
あのね、言っとくけどね、亜弥ちゃんのだから好きなんであってね、
体が亜弥ちゃんでも顔がサザエさんじゃだめだし、中身がフネさんでもだめだし、
むしろ顔と体が峰不二子でも中身が亜弥ちゃんじゃなきゃ美貴は好きにならないよ。
『その例え…どれも体は胸大きい』
『ギクッ!? た、たまたまだよ、アハハハッ…ッ…ゴメンナサイ』
鋭いなぁ…ってそうじゃなくて!
呆れた目を向けないで!
『もういいよ。最初からさ、一緒にいすぎたね、私たち』
『…へ?』
- 518 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:58
-
ど、どういう意味?
不安を正直に映す美貴に、亜弥ちゃんは朗らかに笑いながら別れを告げた。
『私、パパたちのとこ行こうと思って。
明日から自由登校だし、パパにね、向こうの大学薦められてるの』
『え……美貴のとこに進学するんじゃないの?』
『一応そうなってるけど』
頭が真っ暗になった。よく真っ白って言うけど逆。全部真っ暗。
やだって声が出ないから、制服の裾を掴んで訴える。
こめかみを白い指が撫でた。
『電話が繋がらんって手紙が来てね。
一緒にパンフレットも入ってたんだ。
ミキたんいるからって、見向きもしてなかったんだけど』
やだ、やだ、絶対やだ!
そんな遠く…家族もいるし、1年や2年で帰ってくるって話じゃないでしょ?!
『泣かないで。まだわかんないよ?
けど、行くのは決めたから、明日発つね。
ミキたん、私のこと好きでしょ? 私も好き。心は繋がってるから』
そんな…っ心はなんて…寂しいよ、昨日だって寂しかった。
美貴だって好きだよ、好きだし、変わらないけど、寂しい。
- 519 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:58
-
『今日はいっぱい一緒にいるから。
明日、見送って?』
『ぅぅっ…』
そんな急に言われても、ミキたんが泣くと悲しいって言うなら
泣かせないでよ。
言葉通り、いっぱい一緒にいた亜弥ちゃんは、翌日涙の止まらない
美貴を数秒つよく抱きしめて行ってしまった。
亜弥ちゃんが搭乗ゲートに向かった後も、その場から離れられずに
泣いてた美貴は、色んな人にジロジロ見られたけど、そんなこともお構いなしに…
『たぁ〜ん、たぁ〜ん、ミキたぁ〜ん』
誰だよこんなときに!! 人が悲しみに打ちひしがれてるときに
亜弥ちゃんの着声聞かせやがって…っ『塾長』?
ああ! 絵里!
電話に出ると、すぐにレイナンの家に来いとのことで、
もうちょっと浸りたかったのに、涙を乱暴に拭って美貴は走り出した。
- 520 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:59
-
『あぁモッさん!』
『お姉さん! 絵里が大変ばい!』
『…………ベサ』
『ん? なち姉、なに隠れてんの?』
|_|
|自|
|粛|ー`●)
|中|⊂ )
| ̄|ノ`J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『もう出てもいいかい?』
『いいよ。なち姉のタイミングで出てきなよ、待ってるからさ』
『じゃあもうちょっと…』
『…やっぱ出てきて、なんで絵里がこうなってんのか簡潔に説明して』
美貴の目の前に広がる無数のキティちゃん。
押入れに詰まったその中に、小さく人間の目が覗いている。絵里だ。
しかも絵里、美貴の顔見てえらい動揺してんだけど。
『お姉さん、れいなが説明するとよ。
絵里は、意地はっとっただけやったけん、なつみお姉さんが
迎えに来てくれたんが嬉しくて、すぐに仲直りしたんです。
久しぶりになつみお姉さんのご飯食べて、一緒にお風呂も入っ…れいなは入ってましぇん!!』
あ、そう。ならいい。
- 521 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 20:59
- 『と、とにかく絵里は大喜びで、はしゃいどって…それがいかんかったと。
ピョンピョン跳ねとった絵里の腕が棚にあたって…その上に置いてあった
バリの水筒が絵里の頭に……』
直撃したの? 怪我は? バリのって…それゾウジルシじゃないの?
てかそれなら隙間に挟まってないで病院に…
『怪我はちっちゃいタンコブができただけやったんです。
でも……記憶が……巻き戻ったみたいで……』
ハ? どういうこと?
『お姉さんのおでこに、絵里と塾長の顔が刻まれたこつあったやないですか。
あのときに』
え……てことは…人格が妙に明るくなる前?
美貴のこと怖がってて、怯えてて、滅多に話しかけてこなかった頃の…
『そう、その頃ニィ。で、モッさんが藤本ちゃんに鉄槌をくらわせたいとか
ハイエナの檻に投げ込みたいと思ってるって思い込んじゃってるから
誤解を解いてやって欲しいニィ』
『絵里ぃぃいいい!!! 絵里にひどいことしようなんて思ってないよ!
ほら! おでこになんも刻まれてないし! 塾長とも仲良しなんだよ?!』
『っ…ユダンサセテ……シヌヨリツライクルシミ…』
『だああ! おびき出そうとしてんじゃないから!
生きる喜びをあげるから出ておいで!』
- 522 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:00
-
美貴の説得が始まって2時間が経っても、出てくる気配ナシ。
もうこうなったら無理矢理にでもキティちゃんの中に手を突っ込んで…
『待つニィ!』
『止めないで塾長!』
『そんなところに手を突っ込むなんて邪道も邪道。
あらゆる方向からブーイング殺到だニィ』
『ならそーすれば…っ』
『私に任せなさい!』
『ま、まさか塾長! あの技を?!
危険たい! こんな狭い部屋では危険すぎるたい!』
な、なにする気?! 危険って、絵里に怪我させるようなことだけは絶対に―――
『マユゲキャッチャー!!!』
__/ \__
/ \ ウ゛イイィーーン…
│ 〓〓〓〓〓〓〓 │
(( │ 〓〓〓〓〓〓〓 │))
\________/
// \\
││ ││
││_ _││
\┃\ / /
┃┃ ̄  ̄ ̄
┃┃
☆ノハヽ
ノノ*^ー^)
∪ ∪
∪∪ ))
- 523 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:00
-
―――こうして、無事に絵里は出てきたものの
キャッチャーのアームの部分っていうの? それが大きすぎたから
レイナンの部屋の壁にギギギっと傷がついたり、真っ黒い瞳は
腕を広げる美貴を避けてなち姉の背中に隠れたり。
一生懸命話しかけても『ゴメンナサイ』しか返ってこないし。
これが絵里じゃなかったら美貴はそろそろキレてるかもしれない。
そんなこんなでこの1週間、亜弥ちゃんはいないわ絵里には怯えられるわで散々な美貴。
おまけにずっと携帯の繋がらなかった紺ちゃんたちにやっと
報告できたと思ったら、紺ちゃんは連邦だのジオンだの騒いでるし
まこっちゃんは壊れてるし愛ちゃんは美貴にキレてるし。
飯田さんの占い…やっぱ山じゃなかったじゃん。
てかあの人、『踊れる占い師』って銘打っといて踊ってないし、2度と世話になるまい。
「ねーねーミッキー、今日なんにするー?」
「え? あー…A定かなぁ」
「エビフライか。んじゃBにしよっと。すいませーん」
「ハイハイ、イラッシャイマシタカモヨ」
「…ん?」
- 524 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:01
-
あれ、いつものおばちゃんじゃない…っていうか、この胡散臭い日本語…。
「亜弥ちゃん!!!」
「へ? ミッキーなに言ってんの? 寂しくて頭変になった?」
「っ…ソ、ソウデス。ナ、ナニヲ言イマスカ日本人。
ワタシハ通リスガリノ異邦人デショウ」
「2度も同じ手は通じないよ! なにしてんのさこんなとこで!
海外にいるハズでしょ?!」
「だから海外にいるんだからここにいるワケないじゃーん」
「ソウダトモ、オカシナ人ダケドネ」
その胡散臭いサングラスもスカーフも!
今回は色がグレーだけど思いっきり亜弥ちゃんだ!
隠したって隠せてない肌見ればわかる!!
グワッと身を乗り出してカウンター越しに亜弥ちゃんを捕まえて
変装を解く、するとやっぱり―――
⊂ヽ
ノノノハヽ
从;‘ 。‘从 バレテモター
/ つ |
「ほら亜弥ちゃん!!!」
「おぉー亜弥ちゃんだー」
- 525 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:01
-
「あ、あの…、えっと…」
「ここでなにしてるの? いつ帰ってきたの?」
「その…ここでね、バイトしてるの。今朝の便で帰ってきて…」
「バイトぉ?!」
「…うん、学校ないし、ちょっとでもたんの傍で蕎麦を打ちたくて…」
「亜弥ちゃん、うどんのが好きじゃん」
よくチュルチュルして…って話逸らさないでよ!!
「大学は?!」
「……あ、あれね、私、よく考えたら英語話せないし
和食好きだし………ミキたん大好きだし。
心がとか、格好いいこと言っちゃったけど、私だって寂しいもん!!
ミキたんがいなきゃいやなのぉお!!!!」
「……亜弥ちゃん…」
話せないって…それぐらい考える前に気づきなよ。
少し彼女のおマヌケに呆れるけど、それ以上に…安心して嬉しくって
カウンターを飛び越えてきた体を受けとめて、息苦しいくらいぎゅうぎゅうに抱きしめる。
「おかえりっ…おかえり亜弥ちゃん」
「ただいま……1人にしてごめんね?」
「いっぱい傍にいて、いっぱいキスしてくれたらいい」
「たん…」
- 526 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:02
-
「おーおーなんだよ、えらい騒ぎになってると思えば
ミキアヤがイチャついてんのかよー」
「矢口さん、妬かない妬かない。
見てくださいよ、ミッキーの幸せそうな顔、写真撮っとこー」
「お前、後で殺されるぞ」
ぐ…うるさいなぁ外野め。
美貴と亜弥ちゃんのラブラブ写真なら、むしろ撮って欲しいっての。
「ハーイ♪ マリマリマリー、元気かい?」
「まりっぺー!」
「あ、よっすぃー!……に、石川」
お、よっちゃんさん、今日は細身のジーパンで微妙に女の子っぽい服装。
その隣には今日もピンクと黒…いのは肌か、な梨華ちゃん。
梨華ちゃんは別の大学だけど、スーパーのタイムセールの特売品を矢口さんと
取り合ったことがあるとかで、仲の良し悪しはともかく知り合いらしい。
「吉澤さんと、石川さん」
確かめるように呟いた声にハッとすると、亜弥ちゃんは眉を八の字にしてて。
「吉澤さんに謝ったほうがいいかな?
失礼な勘違いしちゃったし」
「いいよ、知られてないから」
- 527 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:02
- でも悪いよぉ、って腕の中で申し訳なさそうな亜弥ちゃんのおでこに
鼻を寄せてくすぐる。笑った亜弥ちゃんが、そっと目を…
「なにが知られてないって?」
「「うひゃあっ!?」」
ぬおっ!? よっちゃんさんいきなり近い! ものごっつ近い!
「なに言ってんだよ、そっちのが近いじゃん、近すぎじゃん。
てかキスするとこだったろ? やらしーなぁこんな人前でー。
で、そのキュルルンな25歳は誰よ?」
「じゅっ、18です!!!
松浦亜弥! ミキたんの恋人です!!」
「えー? マジでじゅうはちぃー?」
「マジのマジの大マジで18に決まっとるやんけ!
どっから見てもピチピチの10代、酒も飲めへんっちゅーねん!」
ちょっ…亜弥ちゃん落ち着いて…てか関西弁?…初めて聞いた。
「んだよ、冗談にムキになるなんて怪しいヤツめ。
ミキティ、騙されてんじゃないの?」
「…騙されてもいいよ、亜弥ちゃんになら」
「ミキたん…」
「亜弥ちゃん…」
もうキミしか見えない。そう、ここは2人の世界。
- 528 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:03
-
「カーッ! やってらんねぇ!」
「うふっ、よっちゃん、私たちも負けてないわよぉ」
「……………」
「どーしてなにも言ってくれないのぉ!」
「キショッ、石川キショいよ」
「そういやよしこはともかく梨華ちゃんはなにしに来たの? 大学は?」
「え? あ、よっちゃんにね、新しいバーガー開発したから
食べに来いって言われて。講義あったけど、こないだ美勇伝の集まりで行けなかったし」
「ヘン、石川はひーちゃんより美勇伝が大事なんだろ」
「もぉ、拗ねないでってばぁ」
「石川の感想だけじゃ参考にならないからさぁ、
みんなにもヨッスィバーガー食べて欲しいんだよね。
ひーちゃん的にはそぉとぉイケてんだけど」
「マジで? ちょーだいちょーだい」
「そこのラブラブな2人も食べてみてよ、マジ上手いから」
ん? しょうがないなぁ。亜弥ちゃん、わけわけして食べようね。
「よっちゃんさん、これなに入ってんの?」
「えーっと、チーズとあんことシメサバ」
「グハァッ!?!?」
「キャー!? まりっぺ大丈夫ぅうう?!
死なないで!死なないでまりっぺぇえええ!!!」
「矢口さん! 矢口さんしっかり!!」
- 529 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:03
-
………よ、よかった、食べる前に聞いて。
チーズあんシメサババーガーってあの食べると幽体離脱しちゃうっていう
恐怖のバーガーじゃんかっ!! なにがヨッスィバーガーだよ!
「だって酢とかドコサヘキサエン酸は体にいいってテレビで言ってたから!」
「食べ合わせを考えんか! 食べ合わせを!!」
悲劇的な甘酸っぱさと魚くささが口内でとろけたせいで
矢口さん逝っちゃったじゃん!!
「ミッキー!矢口さんがぁ!!」
「矢口さぁん!はやく体に戻ってくださぁい!!」
「幽体離脱しちゃうなんて、どんな味なんだろ?」
「ぎゃあ!? 亜弥ちゃん食べちゃだめだよ!!!」
好奇心で死ぬ気かっ!!
「まりっぺっ…ぐすっ、こうなったら、石川のキスで目覚めさせてあげる!
よっちゃん、いい?」
「…い、石川…っ!………いいよ、矢口さんのためだ」
「待てやゴルァ!! 全然矢口のためじゃねーよ!!!!」
「ま、まりっぺ気がついたのね! よかった…っ!」
「おーマリマリマリー、無事でなによりだYO!」
体に戻ってきた矢口さんは、青い顔で「ほんとに無事か?無事なのか?」って
言いながら体をさすってる。と、口の中に味が残ってたのか、うげぇって言いながら
まいちゃんが持ってきてくれたお茶を飲む表情は、…マジきつそう。
絵里のマンボウプリンに匹敵するまずさなんだろうな。
- 530 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:04
-
「亜弥ちゃん、食べたらああなるんだよ、わかった?」
「…う、うん。怖いね」
「んあ? なにが怖いの?」
ンア
从*‘ 。)´ Д `(vV*从
「「ひゃあっ!? ごごごごっちん!」」
またしても突然にゅっと出てきて…って、なんでここに?
「だってだってー、ごとーだけ出番ないんだもん、無理矢理来たよ」
「…あ、そうなんだ。
でもなち姉と一緒じゃなくていいの?」
「なっち、休んだ分お仕事頑張んなきゃって張り切ってて
寂しかったけど1人で来たよ。てゆーかお腹すいたんだよねー。
なにこれ? ヨッスィバーガー? あっは、おいしそうだねぇーパクッ」
「「ギャアアアア!? 待ってごっち…っ!」」
「グフゥッ!?」
………み、美貴のせいじゃないよ?
- 531 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:04
-
おわっとけ。
- 532 名前:チーズ・ロワイアル 投稿日:2005/02/04(金) 21:06
-
- 533 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/02/04(金) 21:07
-
ごっちん、ごめん(爆
ここまでお付き合いくださった読者様、どうもありがとうございました。
これにて強制完結でございます。
とか言いつつまた番外編とか短編もどきの駄文を載せるやもしれません。
そのときは温かい目でどうぞよろしくお願いします。
レス、ありがとうございました。
>>493名無し飼育さん様
( ゚д゚)・・・キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
取り乱してくださるなんて嬉しいなぁ、感動です。
ありがとうございました。
アホ駄文、アホ駄文ですから、もちついて(w
>>494名無飼育さん様
エエェェ(´д`)ェェエエキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
おもしろかったなんて嬉しすぎる言葉をありがとうございます。
書いちゃっても良いのかな(・∀・)
>>495ピクシー様
へい、今度こそ完結しました。
いつも文章も話もメチャメチャで…笑ってくださってありがとうございます。
ま、まあよくある話のよくあるパターンですから(逃
>>496◆ZpT8ZEbM様
从*^ 。 ^从<ありがとうございまぁす。
川;V-V)<美貴は?ねぇ美貴は?(主役)
>>467名も無き読者様
(0^〜^)<男なら泣くなYO!
完結しました、ありがとうございました。
ひょひょひょ萌えーって若干キショいですね(爆
名作なんてとんでもない、駄作ですから、騙されてはいけません。
- 534 名前: 投稿日:2005/02/04(金) 21:08
-
, -―――-、
( ,、,、,、,、,、,、,、 ヽ
___ |, -、, - 、 | |
/ ___ ヽL ||・ |・ |- |_ |
|, -、, -、 .| | { `-c - ´ 6)
|| ・|・ | |_ | \ヽ 7 ノ_<
{ `-c - ´ 6) /  ̄ ̄ ̄ヽ
/⌒)=(c⌒ ~) ノ / / | _
/ ̄ / ~~ ヽ / / | | | |
\ |⊂⊃__| | | | __ ―――|) |
 ̄|| ミ_ |__ ノ \/ )ニ ―― | ̄| ̄ ̄|_|
`―´
「命知らずなの?」
「勇者なんだよ」
- 535 名前: 投稿日:2005/02/04(金) 21:09
-
:::::::::::::::::::::::::::::::: .;--;,
:::::::::::::::::::::: ____,;' ,;- i
:::::::::::::::::: ,;;'" i i ・i;
::::::::::::::: ,;'":;;,,,,,, ;!, `'''i;
::::::::::: ,/'" '''',,,,''''--i
::::::::: ;/ .,,,,,,,,,,,,,,,,, ;i'"`i; _______________
::::::: i;" ___,,,,,,, `i" E-mail(省略可): |( ・e・)<マユageビーム!!!!|
::::::: i; ,,;'""" `';,,, "`i  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
::::::: | ''''''i ,,,,,,,,,, `'--''''"
::::::: |. i'" ";|
::::::: |; `-、.,;''" |
:::::::: i; `'-----j
::::::::::: .i; ,;-'"
- 536 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 22:14
- あわわわ…
いやぁ参りましたw
ドラえもぉん〜のび太くぅ〜ん
短編楽しみにしちょります〜また帰ってきて下さいね〜
- 537 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 22:35
- やばい、また面白さが込み上げてきましたw
また短編などを書かれる時には金魚の糞になりひっついていきます。
- 538 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 22:39
- おとしまーす。
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 23:06
- あ、すみません、上げでよかったのですね。
すみません、面白かったです。
すみません、短編他楽しみにしてますm(_ _)m
- 540 名前:ピクシー 投稿日:2005/02/05(土) 01:29
- 改めて・・・完結お疲れ様です。
次回作も楽しみにしてます。
にしても・・・これまた、この作品らしい終わり方でした。
- 541 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/05(土) 01:33
- 貧ちゃーん
- 542 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/06(日) 01:17
- 522が可愛過ぎますからっ!笑
完結お疲れ様でした〜笑
- 543 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 04:01
- 完結お疲れ様でした
>>いいよ。なち姉のタイミングで出てきなよ、待ってるからさ
ここに作者さんの思いが込められてるのかな?とか思いました
関係ないけど髪の毛切ったえりりんもなっちに似てますね
本当に3姉m(ry
- 544 名前:名も無き作者 投稿日:2005/02/07(月) 23:11
- 続きやっぱりアッタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
ぐすん、まだ泣いちゃいなかったYO!
完結お疲れ様でした。
うひゃひゃとキモさ三割増しで拝読させていただきました。
毎度のことながら最高、そして素敵だな。
番外編、短編、変わらず楽しみにしてます。
てなわけでとりあえずお疲れさま、そして素敵な作品をありがとうございました。
- 545 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/02/10(木) 21:03
-
無理矢理終わった感満載の駄文に温かいレス、どうもありがとうございます。
あいぼんおめでとう。
>>536名無飼育さん様
川;VvV)<え、美貴を差し置いてドラちゃんとのび太なの?
正直この駄文で終わろうと思っていたのですが
もうちょっと晒していきたいと思います。
ありがとうございました。
>>537名無飼育さん様
たいしたものは書けない金魚に有難いお言葉・゜・(ノД`)・゜・
むしろ私がひっつきます(w
ありがとうございました。
>>539名無飼育さん様
いえいえずっと沈めていたのに( ・e・)が紛らわしいことをしましたので
どうかお気になさらず。こちらこそすみません。
ありがとうございました。
>>540ピクシー様
はい、今度こそ終わりました。
この作品らしかったですか?よかった(w
ありがとうございました。
- 546 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/02/10(木) 21:03
- >>541名無し読者様
かわいい貧ちゃんは好きですが、傍にいて欲しくありません。
ありがとうございました。
>>542名無飼育さん様
ノノ*^ー^)<いつもかわいいですよ?
あれは私も初めて見たとき悶えました。
ありがとうございました。
>>543名無飼育さん様
はい、思いっきり込めてしまいました。
もっと気の利いたこと言いたかったんですけども。
リd*^ー^)●´ー`)VvV)<3姉m(ryなのだ。
もう隠す必要はないじゃないか、と思います。
ありがとうございました。
>>544名も無き作者様
では全財産、私のものですね(・∀・)
す、すす素敵とか照れますw
あまり楽しみにせんでくださいね。
ありがとうございました。
- 547 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/02/10(木) 21:05
-
こちらも使わせていただきますが、懲りずに新しいスレを立てました。
いつもながら微妙な話ですので
しょうがねぇ読んでやるという方は、暖かい目でよろしくおねがいします。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/purple/1108034266/
- 548 名前: 投稿日:2005/02/14(月) 20:44
-
チーズ・ロワイアル番外編
ご褒美って素晴らしい。
- 549 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:45
-
「そういや何学部なの?」
亜弥ちゃんが学食でバイトを始めてしばらく経ったある日の夜。
一緒にお風呂に入った美貴たちは、これまた一緒にベッドに入る。
すると、くっついてきた亜弥ちゃんが、寂しそうに明日は大学の手続きがあるから
学校に行かなきゃいけないと言った。つまりバイトを休む。つまり美貴に会えない。
いやいや家で会ってるし、お昼に会えないだけじゃん。と言ってみたものの
白い割烹着に白い三角巾の亜弥ちゃんにご飯を渡してもらえないのは美貴だって寂しい。
「一応ね、知学部希望なんだけどぉ、どうかなぁ」
「ちがくぶ?」
「そ、たんと同じ」
「ハ? 美貴と?」
なに言ってんの? 知学部なんてちくわぶみたいな学部初めて聞いたし、
そんな学部あることすら知らないんだけど。そういや美貴って
進学するとき学部考えるの面倒で先生に適当に選んでもらったんだっけ。
- 550 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:45
- 「そうだよぉ、知学部、通称矢口学部。
1番人気だから難しいと思うけど、ミキたんの話聞いてると面白そうだし」
「やぐちがくぶぅ?!」
なんだそのフザけた学部はぁ!?
しかも1番人気? そんな怪しさ全開の学部がっ?!
「為になることを堅苦しくない雰囲気で教えてもらえるんでしょぉ?
それに矢口教授の話は聞くだけで元気になるって評判だよ」
「…………」
そら堅苦しかないけど為になんかならないよ永遠に。
って言いたいけど、亜弥ちゃんの目があまりにもキラキラしてるから黙っといた。
「頭大丈夫なのかな……美貴の後輩たちは………」
ただ、心配のあまり絶望的な声で呟いちゃったけど。
「ん? なんか言った?」
「い、いや、なんでもないよ。
明日帰り何時ぐらい?」
「え?……あ、えーっと……3時くらい、かな?」
- 551 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:46
- 咄嗟に話を変えた美貴に、亜弥ちゃんはうーんと唸りながら3本指を立てる。
「そんな遅いの?」
「え、あ、こないだ愛ちゃん家に忘れ物しちゃって。
それ取りに寄るから」
「…へぇ」
こないだっていうのはあの日のことかな。
そういえばあの日、海に行く途中のバスで見つけた捨て猫を
帰りに拾うの忘れてて、後日改めて拾いに行った。
近くで見れば亜弥ちゃんには全然似てない白い子猫は、絵里が『れいにゃん』って
名前つけてかわいがってくれてるんだけど…………ぐすっ、絵里ぃ。
絵里は頭を打って元に戻っちゃった後、レイナンやなち姉の話を聞いて
徐々に人格が変わってた頃のことを思い出したみたいなんだけど
美貴に臆せず話しかけてる自分が信じられないようで
未だ怯えた様子で接してくることに変わりはない。
絵里、お姉ちゃん、泣きたいんだけど。
「ミーキたん? おーい」
「…う? あ、もう寝る?」
「もう、まーた絵里ちゃんのこと考えてたでしょー」
- 552 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:46
- わあああここ家だよ、家だよ亜弥ちゃん!
その通り、お察しの通り絵里のこと考えまくりだった美貴に
亜弥ちゃんが圧し掛かってきた。パジャマ着てるけど、下着はつけてないから
感触がダイレクトでミキティ困っちゃう。
おまけに首に擦り寄られて…、くすぐったくて
大声で笑いそうになるのを我慢、我慢だ美貴!
萌えあがぁれー萌えあがぁれー萌えあがぁれーミキティ〜♪
亜弥をぉー襲えー♪
ってグハッ!? 久しぶりに変な歌が聞こえたと思ったら
勝手に美貴の体が亜弥ちゃんを抱えて反転して組み敷いてるしっ!
ダメ! この体勢は危険すぎる!
テ○ンス・リーに見られたら絶対『非常に危険です!』って言われる!!
「ミ、ミキたん? ちょっと待っ…」
「声出さないで」
「えっ…んぅ」
きゃああ!? 萌えないで萌えないで萌えないでミキティ!!!
- 553 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:46
-
..............................
........................
..................
...............
..........
- 554 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:47
-
翌朝、起きると亜弥ちゃんがいなかった。
起こしてくれなかったのは……怒ってるのかな?
学校あるのに何回もしちゃって。
声我慢してつらそうだったのに、萌えたせいで意地悪だったと思うし。
てゆーか、隣の部屋に絵里がいるから、美貴の部屋では
絶対ヤらないって決めてたのになぁ………。
朝からガックシ。凹みまくりで起き上がり
ノロノロと階段を下りる。リビングのドアを開けるのが怖い。
「あ…」
「あ? 絵里、おはよ」
「………おはようございます」
ドアノブに手を伸ばしたり引っ込めたりしてたら中からドアが開いて
絵里が出てきた。
出来るだけ優しく微笑んだんだけど、美貴を見るなり俯いた絵里の
声はアリンコ太郎並みに小さい。
「……か、顔洗ってきます」
「う、うん」
おまけに逃げるようにパタパタ走ってっちゃって…。
絵里、お姉ちゃん、泣くから。
- 555 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:47
-
「んあ、ミキティおはー」
「お? なんだい朝から暗い顔して」
くすんと1粒だけ涙を流してリビングに入ると、そこには仲良く
トーストにオリーブオイルつけて齧ってるごっちんとなち姉。
あれ? 亜弥ちゃんは………
「たん、おっはよ!」
「あ、お、おはよう」
元気な声に振り返ると、そこには眩しいほどの笑顔で台所から出てくる亜弥ちゃん。
よかった、怒ってなかった。
そうだよね、亜弥ちゃんだってなんだかんだ気持ちよさそうだったし。
「はいこれ、お弁当」
「え…?」
昨夜の情事に思いを馳せてたら、亜弥ちゃんが後ろ手に持ってたものを
美貴に差し出す。お弁当? ごまっとう…じゃなくてOBENTOU? 作ってくれたの?
「おにぎりとか、簡単なのだけど。
たん、いっつも学食だし、たまには」
「あ…あ…あ…っありがとう亜弥ちゃん!! 嬉しい!!」
- 556 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:48
-
ヤッタァー ワホーイ
「…ミキティ、子供みたい」
「そこがかわいいっしょ」
夜は大人だけどね。って心の中で呟きつつ
亜弥ちゃん手作りのお弁当を掲げ、喜びの舞を踊る美貴。
それを横目に亜弥ちゃんは鞄を持って「もう行くね」って…
「あれ? 亜弥ちゃんの分は?」
「たんの作ってたら忘れちゃって。大丈夫、購買でパン買うから」
「そうなんだ。てか早くない?」
「ゆっくり歩きたいの」
「…そ、そう。これありがとね、行ってらっしゃい」
「残しちゃだめだよ」
「はーい」
一緒に行きたいけど起きたばっかだから無理で、玄関まで見送る。
行ってきますのキスに顔を緩ませてリビングに戻ると
こちらも美貴がいない間にキスしてるなちごまが…って絵里が見たらどうすんのさ!
「あ、あは…」
「べ、べさ…そっ、そうだ美貴!
今日はチョコレートケーキ作るから、楽しみにしてるっしょ」
「え、ほんと? やったぁ」
- 557 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:48
- なち姉のチョコレートケーキ、美貴大好きなんだよねぇ。
甘さがちょうどよくって美味しーの。
「でも食べすぎちゃだめだべ。
まっつーちゃんの分食べれなくなっちゃうから」
「ハ…?」
亜弥ちゃんの分?
なに言ってんの、亜弥ちゃんの分は亜弥ちゃんが食べるでしょ。
美貴ジャイアンじゃないんだから。
「なーに言ってるべか。
今日はバレンタインっしょ。もらうんでないの?」
「ハッ! そうだった!!」
「んあ…忘れてたの?」
いやだって、最近カレンダー見てなかったからバレンもタインも
2月になってたことすら……
「ミキティ、意外と乙女ちゃんなのに忘れるなんて珍しいねぇ」
「ほんとだべ。相手がいないならともかく
まっつーちゃんいるのに」
- 558 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:49
- ほんと、2人の言う通りだよ、なんてっこったい。
恋する乙女・日本代表の美貴がバレンタインを…っ。
「てかさっきの様子だと亜弥ちゃんも忘れてない?」
「んあ、ぽいねぇ」
「べさ。あ、お弁当の中にこっそり入ってるんでない?」
え? ああ、そうかも。
亜弥ちゃんなら忘れないよね、しっかりしてるし。
ちょっと早いけど、見ちゃおうかな。
なち姉とごっちんにクルンと背を向けて、美貴は手早く袋から
お弁当箱を取り出して蓋を開け―――
プゥ〜ン
「グェッ!? ネネネネギくさっ!!」
「んあ? ネギ?」
「べさ? ほ、ほんとだべ、こっちまで匂ってくるっしょ」
―――た瞬間、かぐわしいネギの香りが、まるでなにかの毒ガスのように
漂い出てくる。亜弥ちゃん、やっぱ怒ってんじゃん!
- 559 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:49
- 美貴の大嫌いなネギ臭さに満ちた弁当の中身はおにぎりが2個と
刻んだネギ入り卵焼き、そして残りのスペースを埋め尽くすネギ、ネギ、ネギ……。
「ここまでするなんて…ミキティ、まっつーになにしたの?」
「……ぐすっ」
「どうせヤラシイことだべ」
「……返す言葉もございません」
なち姉の鋭い発言に、崩れ落ちる美貴。
バレンタインにチョコじゃなくネギをもらうなんて…
怖くて見れないけど、おにぎりの具もネギだったらどうしよう。
「げ、元気出しなよミキティ。
もらえないならあげればいいんだから!」
「そうだべ! 求めるより与える人間になりなさいだべ!」
そ、そうだよね。日頃、与えられてばっかだし
美貴も与えられる人にならなきゃ!!よーし大学の帰りに駅前で買ってこよう!
「ちょっとちょっとー、絵里ちゃん聞いたー?
ミキティったら売り物で済ますんだってー」
「普段料理しないからって、今朝わざわざ早起きして
お弁当作ってくれたまっつーちゃんに売り物渡すとはひどい話だべ。
亀ちゃんはこんな子になっちゃだめっしょ」
「…………」
「ぐっ…」
- 560 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:49
- いつの間に来てたのか、制服に着替えた絵里は
無言だけど明らかに『美貴さんひどいです』と目で言ってくる。
「わ、わかったよ! 作ればいいんでしょ作れば!」
「んあ、材料あるの使っていいよ」
「…ありがと」
「でも美貴、そろそろ行かないと大学遅刻するっしょ」
「サボる!!」
1番人気だろうがなんだろうが矢口さんの講義より亜弥ちゃんが大事でぃ!
「亀ちゃん、こんな大学生になっちゃだめだべ」
「…………学校、行ってくる」
「んあ、気をつけてね」
「絵里! 行ってらっしゃーい!!」
「っ……イッテキマス」
絵里も大事だからね。
そうだ、絵里の分も作ろう。猫の形にしてあげたら、きっと喜ぶ。
亜弥ちゃんのはぁ…やっぱハート?
それと、購買でパン買うって言ってたからお弁当も作って届けよう。
とっといてある制服着れば、潜り込んでも大丈夫でしょ。
そうと決まればファイトだ美貴! 燃えあがれミキティ!
- 561 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:50
-
◇ ◇ ◇
- 562 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:50
-
「はぁ…」
「どしたん? 知学部に決まったん嬉しないの?」
「ううん。そうじゃなくて。
ちょっとミキたんに意地悪し過ぎたかなって、自己嫌悪」
なんや、色ボケか。
知学部ヤホーイて喜んだと思ったら急に沈むから、どうしたんかと思えば。
結局そうやの。いっつも亜弥ちゃんは美貴ちゃんで一喜一憂してるがし。
「ん? 意地悪って?」
「……反省を促そうと思って毒々しいお弁当渡しちゃったの。
そろそろお昼だし、今ごろ蓋開けて絶叫してるんじゃないかな」
毒々しいって…毒入れたワケやないんやろ?
もし入れとっても美貴ちゃんなら気合で解毒するやよ。
「そんな、ミキたんを鍛え抜かれたアサシンみたいに」
「朝シャン?」
「 ア サ シ ン だよ!! 暗殺者のこと!」
「ひぇぇ!? 美貴ちゃん暗殺者やったんかぁ?!
どおりで鋭い眼差しっ」
「そんなワケないでしょ!!!」
ひょぉ!? 冗談やのに本気で怒らんでも!
- 563 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:50
- 「…ほ、ほやけどまあ、反省ってことは美貴ちゃんがまた悪さしたんやろ?
やったら亜弥ちゃんが自己嫌悪に陥ることなんかないやよ」
「………でも、お弁当渡したときのたん、
すっごい喜んで大ハシャギだったんだもん」
あー、なんとなくわかるような。
きっと素の顔からは想像もできんような顔で飛び上がっとったんやな。
「怒ってるかなぁ…」
「怒ってないよ」
「お、怒っとったとしても、チョコあげれば機嫌治るがし」
「そんな単純かなぁ…」
「亜弥ちゃんの前では単純かも」
そうそう、今日はこれからあーしの家で手作りチョコを作るんよね。
だから用が済んだのに、いつまでも学校におる場合やないんやよ。
凹んどらんで早くあーしの家行くやよ。
って。
「「ん?」」
「来ちゃった♪」
「「きゃああああああぁぁぁー!?!?!」」
- 564 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:50
-
んなななななな美貴ちゃんっ!!!なんでおるんっ?!
しかも制服っ……まだまだイケるやよ。ってそーじゃなくて!
挟んで喋っとった机の上にコロンと生首が転がっとると思ったら
それは美貴ちゃんで。
こうして見るとバレーボールの球みたいやよ、小さい顔やわ。
「ミっ…たっ、なんで?」
「亜弥ちゃんにお弁当作ってきた。…えへへ」
亜弥ちゃんも目玉が落っこちて目玉のオヤジになりそうなほど
瞼を開いて、信じられんって顔で美貴ちゃんを見とる。
えへへって、照れ笑いしながら美貴ちゃんが机の上に出したんは
なんと新聞紙で包まれた色気のないカタマリ。もとい弁当。
でもなんか、新聞紙の一部から竹串が2本突き出とるんやけど……。
もしかして、亜弥ちゃんの毒弁当の仕返しにきたんやろか。
「さ、食べて食べて」
「あ、うん…」
- 565 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:51
- だめやよ! 食べてはだめやよ!
でも丁寧に新聞紙を剥がしとる亜弥ちゃんを、美貴ちゃんは
机に両肘たてて監視しとるし……逃げれんのや、死んで詫びるしかないんや。
「わあっ」
ぐすっ、忘れんよ! 亜弥ちゃんのことは一生忘れんがし!
最後の一言が『わあっ』やったってこともっ…。
「えへっ、美貴頑張ったでしょ?」
「うん! すごい美味しそう!」
うん、すごい毒々そう!…ってあれ? 美味しそう?
なにかがおかしい、そう思ってお弁当の中を覗くと
白いご飯の上にのっけたつもりが蓋にくっついとる桃型の海苔、
卵焼…ちがったスクランブルエッグ、タコさんウィ…と思わせて足が7本の
不思議生命体ウィンナ、さっきのはこれか…串刺しのエビフライ、そして枝豆。
でもって野菜が足りんと思って最後に入れたんか
各地に散りばめられたミックスベジタブル。
たしかに1品1品は不味くなさそうやけど…全体像が微妙やわ。
あーしにはミックスベジタブルが触れてはいけない爆弾に見える。
- 566 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:51
-
「あのね、これね、美貴の気持ちを海苔でね」
「うんうん、元に戻せるかなぁ」
「卵ね、巻いてたら破れちゃったの」
「そっかぁ、味は美味しいよ」
「タコだったんだけど、焼いたら焦げたから切ったの」
「見た目にこだわったんだね、えらいなぁ」
「これね、自信作。ちゃんとまっすぐにしたんだよ」
「かっこいい、斬新だぁ」
「でもオススメはやっぱ枝豆、微妙な塩加減が難しいんだ」
「うん、丁度いい、さっすがミキたん」
「えへへへ」
おや、桃型やなくてハート型やったんか。
美貴ちゃんの説明を聞きながら、1つ1つ愛おしそうに口に運ぶ亜弥ちゃんは
とっても幸せそう。ちゃんと間にミックスベジタブルもつまんどる。
てか見とったらあーしもお腹減ってきたんやけど…。
「愛ちゃん」
「ひゃっ!? ああああさ美ちゃん!」
「シーッ、邪魔しちゃいけないよ。
中庭でお昼一緒に食べない? まこっちゃんたちもいるから」
「もう昼休みなん?…あ、あーし、亜弥ちゃんとチョコ…」
でもあの様子じゃ…。いっか、あーしは1人でも作れるやよ||'-' 川
- 567 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:51
-
「そんな悲しい顔しないで。チョコはお豆のお家でみんなで作ろう?」
「そうやの、そうするやよ」
どうせ麻琴たちにあげるの作る気やったし、ええか。
ほんなら亜弥ちゃん、お幸せに、無事にお腹壊さんことを祈ってるやよ。
「ねーね、美貴にも枝豆いっこちょーだい」
「うふふふ、ハイあーん」
「あーん」
やけどの、まだ残っとるクラスの子たちに
思いっきり見られとるで、ほどほどにするがし。
「にゃはは、ミキたんかわいい。おでこにご褒美のちゅうするべ」
「きゃーっ」
だからほどほどに…………お幸せに。
◇ ◇ ◇
- 568 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:52
-
「あのねぇ、亜弥ちゃん」
「なあに?」
「まだあるの」
「あ、デザート?」
お弁当を食べ終わって、ペットの緑茶を飲んでる亜弥ちゃん。
デザートなになに?って美貴の肩に頭を乗っけてくる。
「お弁当箱の下見て。美貴屋上行ってくる」
「ふぇ? なら私も…」
「亜弥ちゃんは見てから」
見ればわかるからって、立とうとする亜弥ちゃんを座らせて教室を出る。
なんていうか、普通の、いやちょっといびつな形のハート型の
チョコにしたんだけど、上にホワイトチョコでメッセージを書いたから
それを目の前で読まれるのは恥ずかしくって。
懐かしい階段を登って屋上に着くとそこには、何人か先客がいた…けど
ちょっと目を向けたら慌てて出てってくれた。
…わかってるから。怖くて逃げたことはわかってるから言わせるな。
- 569 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:52
-
「ミキたん!!!」
「お、早かったね」
手すりに凭れて間もなく、物凄い勢いで階段を駆け上がる音がした後
走って息は切れてるわ髪は乱れてるわな亜弥ちゃんが屋上に飛び込んできた。
その右手には、『みきはあやちゃんのことがだいすきだよ』って書いてあるチョコ。
ガバッと美貴に抱きつこうとして、けどその前に
チョコが割れないように箱にそっと戻してから抱きついてくる。
「私も、ミキたん大好き」
「…うん」
抱き返して、キスして。
亜弥ちゃんの腕が首にまわってどんどん深くなる。
―――と、息継ぎで唇が離れたとき。
「たんネギくさ……あ…」
あんたが言うか川;V-V)
亜弥ちゃんも言ってから気付いたのか、しまったって顔してる。
「食べたあと歯磨いたんだけど」
「………ごめんなさい」
「怒ってないってば。
てか美貴あれ全部食べたんだよ、すごくない?」
「全部…? ほんとに?!」
- 570 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:53
- そ、そんな驚かなくても。
亜弥ちゃんが作ってくれたんだから、草でも石でも食べるよそりゃ。
亜弥ちゃんだって美貴のお弁当全部食べてくれたじゃん。
「ほんと。ネギも、ネギ入り卵焼きも、カルビおにぎりネギ風味も
全部食べた。えらい?」
「う、うん…」
わざと無表情で言ったら、亜弥ちゃんは泣きそうになって。
ちょっと泣かせたいって思っちゃった。だめだめだめだめ。
健全第一、健全第一、縄で縛らない蝋燭垂らさない…って話逸れてる。
「えらいんならさ、褒めてほしいな」
「…えらい、ミキたん頑張ったね、すごい」
髪に指を通しながらおねだりしたら、少し安心してくれたみたい。
だけどね、ちがうんだよ亜弥ちゃん。
「そうじゃなくて。ご褒美のちゅう、いっぱいしてほしいべ?」
「っ…あ、そっかぁ」
なち姉じゃなくて亜弥ちゃんの真似して言ったら、ボッと顔を赤くして
照れくさそうにしたけど、すぐに首を引き寄せて甘いご褒美をくれた。
- 571 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:54
-
「もっと」
「ん」
「もっと、全然足りない」
「い、いっぱいしたよぉ?」
「もっといっぱいがいいの」
ていうか、いくつしても足りないの。
さりげなく抱き合ったまま、周りから見えない場所に移動する。
「わ、私、たんのチョコ食べたいんだけど」
「美貴は亜弥ちゃんが食べたいのだ」
「キャーッ」
え? ネギ弁当の理由?
忘れちゃった。
風がちょっと冷たいのが不満だけど、誰にも見られないなら
屋外もアリだよね。
萌えあがぁれー萌えあがぁれー萌えあがぁれーミキティ〜♪
この日、ネギ弁当を食べても反省しなかった美貴は
チョコのお返しに亜弥ちゃんを美味しく頂きましたとさ。
- 572 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:54
-
「って、お返しは普通ホワイトデイにするものでしょ!」
「え? ホワイトデイもしたいって?
でもその頃は亜弥ちゃん高校卒業してるから、大学の屋上だね」
「ち、ちがう!! たんのバカ!」
- 573 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:55
-
(VvV*从
- 574 名前:ご褒美って素晴らしい。 投稿日:2005/02/14(月) 20:55
-
おしまい。
- 575 名前:ピクシー 投稿日:2005/02/15(火) 00:54
- 更新お疲れ様です。
知学部・・・自分もそういう学部に行きたかったなぁ・・・
知さんの講義、面白そうだし・・・時折、課題がえげつないものもあるけど。
- 576 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/02/15(火) 01:12
- 番外編キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
しかもバレンタイ━ ;´Д` ━ン!!!!ということで萌え萌えでした。
このエロミキティめ。GJ。
ところで・・・個人的にれなえりのその後が気になるのですが続編は考えておられますか?
- 577 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2005/02/15(火) 14:03
- いまさらながらチーズロワイアル完結乙でした。ミキティかわいいよミキティw
ごっちんが激しく心配ですが彼女も魚る(ryなので大丈夫でしょう。
番外もエロティ全開っすねw
向こうも楽しみにしてます。
- 578 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:00
-
「したっけね、亀ちゃんも連れてったげて欲しいんだけど、どうだい?」
絵里が塾長のマユゲキャッチャーにキャッチされ、れいなの部屋が半壊してから
しばらく経った春休みのある日。
ガムテと画用紙で誤魔化し誤魔化し穴を塞いどった壁に限界が訪れ、
寝起きの平家さんと穴越しに目が合って絶叫されたせいで
大家さんに部屋の惨状がバレたれいなは、当然のようにアパートを追い出された。
とりあえず塾長の元に身を寄せて新しいアパートを探したけど
破壊者としてブラックリストに入れられてしまったらしく
なかなか見つからんくって困っとると、話を聞いたお姉さんが『水臭いな、おいで』と
れいなを藤本家の居候として優しく迎え入れてくれた。
- 579 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:01
-
余談やけど。
こん時れいなを連れて帰ってきたお姉さんを見て、絵里は嬉しそうな笑顔を
一瞬、本当に一瞬見せたけど、すぐに背中を向けてぴゅうと玄関を走り去った。
『言っとくけどレイナン…、ひとつ屋根の下だからって美貴もいること忘れんなよ……』
『ははははいっ! この命燃え尽きるまで絶対に忘れましぇん!!』
『お風呂でバッタリとか期待すんなよ? むしろ狙うなよ?』
『そそそそげなこつ期待も狙いもありえましぇん!!』
すぐ耳元で聞こえた地獄の底まで響き渡りそうな声に、れいなも逃げ去りたいと強く思ったんは言うまでもなか。
なのに。なのに。
同じ絵里の姉という立場でありながら、こん人はなんて恐ろしいことを言うんやろう。
れいなが地獄の底に突き落とされても構わんのやろか。
そう、そこのアナタ、絵里の大好きな、なつみお姉さん。
- 580 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:01
- 絵里がおつかいに出かけたと同時に、部屋にれいなを引きずりこんで。
ここに後藤さんが入ってきたら、確実にヤバめな光景が広がりそうなほど近く
顔を突き合せ、真剣な顔で何を言うかと思えば………
「あ、でも、家族と会うの久しぶりだもんね、水入らずがいいんなら
無理にとは言わないべさ。
もしよかったら、よかったらでいいんだ。
亀ちゃんを連れてくにしろ連れてかないにしろ、旅行券はあげるから」
そう言って、“天使特別賞”と書かれた白い封筒を差し出す。
商店街の福引で当たったというその中身は、福岡への旅行券やった。
最初、熊捕獲という志を胸に上京してきて以来1度も帰省していないことを
なつみお姉さんは知っとるから、『元気な顔見せてあげなきゃだめっしょ。ちょうど春休みだし』って
ことなんやと思って、そうやね、ずっと帰っとらんし、おかーしゃんのご飯食べたいし、
ムカつくけどおとーしゃんに会ってキティちゃんの電報送るんやめさせたいし…と、
ありがたく受け取ろうしたところに……………『亀ちゃんも』?
- 581 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:01
-
あれ? おかしかね、れいなの聞き間違いかね。
たしかに旅行券はペアやけど。ペアはペアであってパアでもピイでもプウでもないけど。
从*・ 。.・从<ポオ♪
いやいやさゆ、ポオでもなかよ。
…ってペアやからって絵里を連れていっていいワケなかとよ!!!
そげなこつばしよったら暗黒の世界に閉じ込められてもう2度と太陽の光ば見ることなく
朽ち果てていくことになるけんっ!!!!
天使にもらった天使特別賞でなんでそげな目に遭わないけんとぉおおお!!
「大丈夫。美貴にはなっちが上手く言っとくべ。
それにあの子、明日から大学のピクニック研修でしばらく帰ってこないし」
「え? ピクニックやのに泊まりなんですか?」
「大学生にもなるとね、たかがピクニック、されどピクニックなんだべ」
「はあ…」
「ピクニックとは、戦いなのさ。
きっと今年もボロボロになって帰ってくるっしょ」
「は、はあ…」
- 582 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:02
- ようわからんけど、大人になるとピクニックは命がけでせないけんくなるんか。
お姉さんがボロボロだなんて、よっぽど過酷なんやね。
恐るべし、大人ピクニック。
「美貴が家空けるから、その間にこっちでなんとかしようとも思ったんだけど。
お医者さんに環境を変えてゆっくりさせたほうが落ち着くだろうって言われて。
でもなっち、お仕事あるし、1日ならいいけど何日も休んだら
またごっちんに迷惑かけちゃうし…。
だから田中ちゃんさえよければって思って、無理ならほんと、いいんだけど、どうかな?」
「あ……」
そっか。色々あって以前にも増して人見知りが激しくなって
仲良くなりかけたお姉さんに怯え暮らしとる絵里。
ついでのようにれいなと付き合っとることも信じてくれんくて、
最近やっと真っ赤な顔で手を握ってくるようになった。
絵里も思い出しとるはずやけど、一線を越えかけたれいなとしては
ちょっと物足りんくて、つらかったりする。
ま、まあひとつ屋根の下やけん、越えられるワケないけど……ばってん、ばってんくさっ!!
越えかけてみたりとかしたいやん! そこに山があるんやけん!!
- 583 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:02
- 絵里が、少しでも明るさを取り戻すんやったら、も、もうちょっと積極的に
なってくれるんやったら………それなら………お姉さんもおらんことやし………
「あの、本当に大丈夫ですか? 絵里のためになるんなら
もちろん一緒に連れて行きますけど」
「ふぇ? いいのかい?」
「はい」
たとえこの身が朽ち果てようとも、絵里のためなら、よろこんでぇ从*´ ヮ`)ノ←レイナーゼ中山
「なら善は急げ!
さっさと荷造りするべさ、亀ちゃんももう帰ってくるだろうし」
「はーい、よろこんでぇ」
さっそくメイド服に着替えてレイナーゼ始動!
絵里ぃ! 楽しみにしとりんしゃい!!
心が解き放たれるくらい、爽やかで朗らかな南風(not 喫茶店)ば感じさせてやるけん!!
- 584 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:02
-
- 585 名前:旅行のススメ。 投稿日:2005/04/02(土) 05:03
-
短くて申し訳。
なんか嘘でも…と思ったら終わっとるがな||'-' 川
レスありがとうございます。
>>575ピクシー様
(〜^◇^)<おいらのとこは難関だぞぉ。
川;V-V)<面白くないから。全てがえげつないから。
知学部というか、ただの遊び部ですねぇ。
>>576名無し飼育さん様
从*VvV)<うへへ。
思いっきり、たぶん去年の夏頃から考えていました。
かと言ってあたたまってるワケでもなく、いつも通りたいした話では
ありませんが、楽しんで頂けたら幸いです。
>>577◆ZpT8ZEbM様
(l|l´ Д `)<んあ、えらい目に遭っ…ん?魚る?
どうも、拙い話にお付き合いくださってありがとうございました。
- 586 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/04/02(土) 15:47
- キタ ━━━━:・(´ヮ (○=(゚∀゚)=○)^ー^)・:━━━━ !!!!!(コラ
待ってました。それはもう毎日待ってました。
がんばれいな、山を越えろ!
次回更新もよろこんでぇ待ってます。
- 587 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/03(日) 14:15
- なんか更新されてたぁぁ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
れいにゃんの活躍に期待です。
- 588 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2005/04/16(土) 09:31
- キタワァ:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。
いいっすね続きがたのしみです(笑)
命がけか…
作者さんのかく美貴ねえさんが大好きです(笑)
- 589 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:32
-
―――
「れいな、大丈夫?」
「だだだ大丈夫たい、なんなに言っとう、余裕のよっちゃんやけけん」
「………」
噛んだ。
絵里が『飛行機久しぶりだぁー』って嬉しそうに笑ってたけん、まさか
初飛行機で緊張しまくっとぅなんて言えんかったれいなは、必死で弾む心臓を
悟られんように振舞ってたっちゃけど。
離陸する時に想像以上の怖さに目を開けてられんくなって、思いっきり
絵里の手を掴んでしまった。
やけん、すぐにれいなの様子に気付いた絵里は、サッと表情を変えて
シートベルトを外した後はれいなの頭を肩に乗せてくれとって…。
久しぶりの大接近たい从*´ ヮ`)
って喜んどる場合やなかっ! れいなったら
せっかくの2人っきりの旅行やっちゅーのにスタートから格好悪かばい!
- 590 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:32
-
「ヘイガールズ! 呼んだかYO!」
早く挽回せんと! 狙いでもなんでもなく初飛行機に震えて
絵里の母性本能くすぐったんは美味しい結果をもたらしたけど。
年下だろうが小さかろうが頼りになるねれいなちゃんなトコロば見せて
そのたくましい腕で絵里ば包んでやるんったい! クルリン!
「…って、誰ですかあんた」
「え? れいなの知り合いじゃないの?」
「ちがうと」
「オイオイ待てよガールズ、今呼んだだろ?
呼んどいてあんた誰は失礼千万歌えバンバンな話じゃないか」
「絵里、目ぇ合わせちゃいけんよ。
いつの時代もこういう人はいるもんやけん」
平和な日本と言えど、世の中には危険がいっぱいあるとよ。
こん人、見た目は確かに綺麗やけどね、一歩間違えたらオバサンパーマな
金髪の下の顔は美人さんなんやろうけどね、言動がおかしかよ、きっと頭がおかしかよ。
- 591 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:33
- 「あぁん!? 人と話す時は目ぇ見て喋れよガールズ!!
そっちの猫だかパンダだか知らねぇ小っこいのが
『よっちゃん』って呼んだから出てきたっつーんだYO!」
「よ、呼んでなかとよ。
あれは余裕のよっちゃんっていうひとつの言い回したい」
「なんだとぉ?! 紛らわしいんだよネコパンダ!」
「はあっ!? ケンカ売っとるんかこのクルパー美人っ!!」
「れ、れいな落ち着いてっ」
誰がネコパンダや!
そげん2つの動物を組み合わせたあだ名、曲がったキュウリみたいな事は
許せんブタゴリラみたいやなかかっ!
「…あいつさ、何気に可哀想だよな。
本名は薫ってそりゃあ可愛らしい名前なのに、ブタゴリラって」
ん? れいなの噛み付くような怒号に、クルパー美人は目を伏せて俯いた。
突然の変わりように、れいなの腰に巻きついとる絵里もポカンと固まっとぅ。
「ま、まあたしかに。マユゲはクルンと繋がっとぅけど、可愛い女の子に弱い、
ちょっとやんちゃな普通の男の子やのに、ブタゴリラはひどいっちゃね」
「マジひどいよ。
少し横暴なとこあるけど、あいつの言葉って1つ1つが胸打つじゃん?
香織ちゃんの手の冷たさを冷しトマトに例えたり、名誉毀損をメロン破損っつったり」
「れいなが1番グッときたんはモンタージュ写真をポタージュ写真たい」
「お前! わかってるじゃんかっ!!」
「へへっ」
- 592 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:33
- 「こんな世知辛い世の中で、しかも空の上で、違いのわかるイカしたガールに
会えるなんて、ひーちゃん感動したよ。
お礼にこれ、ビタミンCとエイコサペンタエン酸が豊富なヨッスィバーガー2。
美味しいから食べな」
「いいんですか? わあ、ありがとうございます。
ほら、絵里も」
「ありがとうございますぅ」
やったぁ、飛行機に乗る緊張で朝ご飯あんまり食べれんかったけん、お腹空いてたっちゃ。
さっきとは打って変わって、優しい笑顔で差し出された水色の包み紙の
バーガーをありがたく受け取る。その時、後ろの方の席から
『んがあっ!』って声がしたようなしなかったような。
誰かシートから滑り落ちたんやろか。
「しっかり食えよ! ブタゴリラ曰く、ビタミンCを嫌う奴は一生独身だ!」
「「はーい、いただきまー…」」
「んマまマまマ待ってみるモンヨっ!
そこのガールズさんタチはコノお弁当を食べるんデゴザロっ!」
「「「ふぇ?」」」
- 593 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:34
-
青い包みを捲って今まさにバーガーに噛み付こうをした時。
後ろからけたたましい日本語と共に、金のアフロ頭にサングラスに長いヒゲの
怪しげな外人サンが、美味しそうなサンドウィッチの入ったお弁当箱を持ってやって来た。
「な、なんだお前はYO!」
「ワタシのコト、アナタに話す意味ないデッシャロ。
コレ届けに来ただけダモンネ。
天使特別賞、旅行券とコノお弁当もセットなんダッタカモヤカラ。
渡スの忘れてたケドヨ、届ケに来たミタイヨ」
は?へ? この弁当も、福引の景品?
てゆーかこんな怪しげな外人、商店街におったっけ…?
「あ、じゃあ、両方いただきますとよ。
どっちも美味しそうやし」
「わあ、漬物とかお肉も入ってるよぉ」
「サンドウィッチに漬物かYO!
許されない組み合わせだ、そんな弁当はひーちゃんが処理してやる!」
「ダメダローガネ!
アナタはそのヨッスィバーガー処理してればヨイでゴザルバザールダネ!
ガールズさんタチ、そのヨッスィバーガーこそが許されナイデッシャレヨ!」
「ちげぇよ!!
ヨッスィバーガー“2”だよ間違えんな!!」
「あ、梨華ちゃん」
「え、どこ?」
- 594 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:34
- 他にも色んなフルーツとかおやつとか、絵里とれいなの好きなもん
ばっかり入ってる弁当を覗いて喜んどると、
窓の外を見て呟いた外人さんの、カタコトな雰囲気の消えた呟きに
よっちゃんやらひーちゃんやらさんが窓にへばり付いた。
その隙に、アフロな外人さんはサッとれいなたちの手からヨッスィバーガー2を
奪って姿を消す。
「なあどこだよ、梨華ちゃんいないじゃ…ってうおっ!?
どこ行ったアイツ!!
ヨッスィバーガー2は?! 捕られた?!
畜生奪い返してやるぅっ!!!!!」
それに気付いたよっちゃんやらさんも、いい加減他の乗客に迷惑過ぎる大声で
叫ぶと、外人さんを追って走り去っていく。
「……なんやったんやろ…」
「れいなあ、早く食べよ」
「あ、うん」
「ヨッスィバーガー2も食べてみたかったね」
「そやね」
あの外人さんも食べてみたかったんかな。
初めて名前聞いたけど、人気のある食べ物なんかもしれん。2やし。
お姉さんとなつみお姉さんに今度聞いてみよ。
- 595 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:34
-
◇ ◇ ◇
- 596 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:35
-
―――
【ハハキトク、スグカエレ】
「これ、キティちゃんの電報でお願いしときますばい」
「はい、かしこま…」
「おとーしゃん、いい加減にせんね」
「ぬ…?」
空港から実家に帰りがてら、福岡の町を絵里に見せようと思って歩いとったら
駅前の郵便局に入って行く懐かしい背中を見つけた。
わからず屋やけど、大好きやったその背中。
思わず熱くなる目頭を押さえて追っかけてきてみれば…
「れれれれいなっ!!!
れいなやなかとっ!!!!
本物かね?! 夢やなかとね?!
クマば捕まえて来いなんて、おとーしゃんが間違っとったばい!!!
会いたかったとれいなぁああああああああー!!!!!!!!!!」
「ぐぇぇっ」
- 597 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:35
- だあっ!?
やめんかおとーしゃん! 見られとぉよ!
郵便局中の人に見られとぉよ! 絵里だって驚いて…っ、
「よかったねぇれいなぁ、お父さんに会えて…グスッ」
「なに感動しとぅ!
苦しいぃっ…助けっ…」
「れいなあああー!!うぉおおおー!もぉ離さんけん愛しとぉよぐおおお!!」
「離せ! やないと死っ…ぅっ」
ガクッ。
「れいなぁ! そん可愛い顔ばもっと見せ…む?
ぬはあっ?! いつの間にこげん細っこく青白になりよったと?!
都会のせいかっ! やはり都会は恐ろしか場所やったか!!!」
クソ親父、お前のほうが、恐ろしか。(れいな、辞世の一句)
「あのぉ、お父さん初めましてぇ、亀井絵里です」
「ぬ? お嬢しゃんはれいなの友達と?
よく来たばい。すぐ近くに美味かとんこつラーメンの店ばあるけん、お昼にどうね?」
「わあ、食べたいです」
「奢っちゃるけん、ついて来んね」
「はぁい」
- 598 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:36
-
◇ ◇ ◇
「すごぉい、餃子小っちゃいですねぇ、れいなみたいで可愛いです」
「ぬはは、味もよかよ、遠慮せんと食べ」
「わ、このお醤油甘ぁーい」
「………」
なんやろ、これは一体。
れいなが昔家族でよく来たラーメン屋の硬い椅子の上で目を覚ますと
目の前に和気あいあいな絵里とおとーしゃんの姿が。
「ぬ? れいな起きたと?
お前の好きなとんこつばい。はよ食べんと伸びるとよ」
「餃子も美味しいよ、れいなぁ」
「……イタダキマス」
いつやったかお姉さんが、お父さんみたいお母さんと松浦さんが仲良いのって
なんか嫌って言っとった気持ちが、なんとなくわかった。
――と、その時、奥の隅のほうの席に、見覚えのあるアフロ頭が……2つ?
あれ、さっきの外人さん?…ともう1人、体が小さいアフロさん。
連れがおったんか。2人ともサングラスかけたままラーメン食べとって
怪しい人丸出しやけど、観光なんかな?
そうやんね、れいなたちにお弁当届ける為だけに飛行機に乗るワケなかやん。
てかよっちゃんやらさんはどうしたとやろ?
- 599 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:36
-
「ぬぉっ!? れいなは絵里ちゃんの家にお世話になってると?!
それはご迷惑をおかけしたばい。
れいな! どうしてこげん大事なこつばすぐ教えんかったんね?!」
「つ、つい最近の話やったから…」
「迷惑だなんて。
絵里が寂しいから来てって言ったんです」
おっとっと、れいなを置いてこの2人、どんどん話進めよって。
てゆーか絵里、れいなのおとーしゃんやからって
よく知らん男の人の誘いにほいほい乗ってラーメンすすっちゃいけんよ!!
「今度、お礼送るけん、絵里ちゃんは何が好きとね?」
「えぇっとぉ…あ、明太子お願いしていいですか?
友達が明太子スパゲッティ好きなんです」
「おお、自分より友達の好物ば先に考えるなんて、絵里ちゃんはよか子たい。
都会は恐ろしかとこやが、ばってん都会の子は天使やったと」
「え、絵里がですかぁ?
お姉ちゃんならともかく、絵里にそう言ってくれるのお父さんだけですぅ」
「ぬははは、絵里ちゃんは天使たい、れいなは電子並みにミクロたい」
「そこまで小さくなかっ!!」
おとーしゃんの肉眼っでハッキリ確認できるほど1,5メートルやアホッ!!
- 600 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:36
-
「それはそうと」
ちっ、軽く流しよった。
「おかーしゃんに連絡してあると? 絵里ちゃん、今日泊まってくやろ?」
「ちゃんと電話したばい」
「お世話になります」
「ぬっ、あいつ…昨日ヤケにニヤニヤしとーと思ったら
れいなが帰ってくるこつば内緒にしよって…」
ふん、おかーしゃんも教えたらうるさいと思って黙ってたんやろ。
正解たい。おとーしゃんのことや、知っとったら小さな祭りでも起こしかねん。
「さてと、すぐ家来ると?」
変わらず美味しかったラーメンを食べ終わると、嫌がらせに1人で2本飲んだオレンジジュースの分も
ニカッと笑って会計を済ませたおとーしゃんが尋ねた。
「このへん見てから帰る」
「れいな、お母さんにも早く顔見せてあげたほうがいいよ?」
「いやいや絵里ちゃん、おかーしゃんは今日3時までパートやけん、
夕方頃来たらよかよ。ワシゃあ先帰るけん」
- 601 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:37
- 「でも、なら一緒に」と言いかけた絵里に首を振り、れいなの頭を
ガシガシ撫でておとーしゃんは帰ってく。
その後ろ姿を、心なしかポーッとした顔で絵里が見送っとって。なんかムカつく。
「絵里、行こっ」
「え? あ、うん」
まだおとーしゃんの方を気にしとる絵里の手を引っ張って
れいなが昔よく言った雑貨屋とか、大きくなったら入ってみようと思っとった店に入る。
なんかテンション高くて、声が上ずったんが気になったんか、
ペットショップの前で絵里が立ち止まった。
「どうしたと?」
「……れいな、なんか怒ってる?」
「別に」
「…やっぱり怒ってる。絵里、なんかした?」
「やけん、怒ってなかって。絵里、なんもしとらんっちゃろ?」
「してないけど…したかもしれないし…。
やだよ…せっかくれいなの生まれたとこに一緒に来れたのに…グスッ、なんで怒ってるの…?」
- 602 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:37
-
え? 絵里?
そんな急に泣かんでよ、なんていうか、怒ってるっていうか、ただその…
「絵里が、おとーしゃん気にしとったけん、ムカついただけ」
「はぇ…?」
「だから! おとーしゃんの背中ジッと見てたんが気に入らんかったと!」
「…プッ…クフフフフフ…ウフフフフ…ウヘヘヘヘェ」
ぐっ、笑わんでよ! 恥ずかしいこと言ってもーた自覚が痛い程あるんやから!
「だって、れいなのお父さんだからだよ?
話してても、熱くて優しいし。
やっぱりれいなに似てて、格好よかったんだもん」
「んなっ…似てなかよ! れいなはあんなむさ苦しくないっちゃ!」
服に隠れて見えんかったっちゃけど、脱ぐと胸毛すごいんよあの人!!
ばってんどうしてれいなはトゥ(ry
「フフフフフ」
あーもおだーもお! 絵里がクネクネ揺れるごとに顔が熱い。
パタパタ手で仰いでると、ペットショップのガラスの向こうから
ジーッとこっちを見とる視線を感じた。
- 603 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:37
-
(\ 。
(\_ノ ⌒ヽ ゚。
) ´ Д `) ジーッ
(/(/⌒(/
「ぎゃあっ!?」
「ふぇ? れいな?」
ごごご後藤さんっ?!
いやいやいやいや! 今のどう見ても金魚! 金魚やったハズ!
ゴシゴシと目を擦って、もう1回見てみる。
するとそこには、やっぱりただの赤い金魚が泳いどった。
はぁぁっと、安堵の深い溜息が出る。
「目にゴミ入った?」
「う、ううん。目に映ってはならないモノが映っただけたい」
そう、決して映ってはならないモノが。((((((;´ ヮ`))))))ガクガクレニャブル
- 604 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:38
- 「れいな、どうしたの? 震えてるよ?」
「な、なんでもないけん、はよどっか行こ」
早く、1秒でも早く、ここではないどこかへゲラウェイ。
「わかった」
と、絵里は何を思ったんか、腕を掴んでれいなを支えながら
薄暗く人気の無いビルとビルの間に入り、通りから見えないように
積んであったダンボールの影に隠れると、レニャブルなれいなをそっと包みこんだ。
「え……絵里?…あの…」
「深呼吸して。れいな、喋っちゃだめ」
「は? あ、う?」
「シンコキュウしてってば」
してって言われても。こんな近くに絵里がおって
身体が全部、絵里ん中に閉じ込められとるとこで深呼吸なんか。
ちょっとでも息吸えば、一瞬にして絵里でいっぱいになるこんな世の中じゃ、ポイズン。
- 605 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:38
-
最近の絵里は恥ずかしがって、こんなんしてくるの、すっごい久しぶりで。
巻きつく腕も、背中を撫でてくれる腕も、懐かしくて。
懐かしく思うことが、少し悲しくて涙が出そうで。
震えとるれいなを心配しとぅだけで、
疚しい気持ちとか、全然ないんはわかってるっちゃけど。
〜ピンポンパンポン〜
どうやられいなに、疚しい気持ちが芽生えてしまったようです。
「絵里」
「だから喋っちゃ…っ」
どれぐらいぶり、やろ。
触れると、絵里は初めての時より身体を硬くして。
絵里は忘れてしまったことを、思い出しても、自分のことだって思えないことが
まだまだ多くて。れいなともキスも、そのひとつなんはわかっとぅ。
絵里、思い出して。
このキスを、思い出して欲しい。
まだ硬い絵里に深く入りながら、ゆっくり閉じていく瞼に、それだけを祈った。
- 606 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:39
-
「れいなスケベ」
「イヒヒ」
こんなやりとりを、来年も再来年も、ずっとできたらいい。
- 607 名前:懐かしのキミ。 投稿日:2005/04/18(月) 16:39
-
- 608 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/04/18(月) 16:43
-
終わるはずが終われずスマソ。
レスありがとうございます。
>>586名無し飼育さん様
从*` ヮ´)<なんで殴るとぉ!
マママ毎日待っていてくださったとは、なのにお待たせして申し訳。
頑張って山越え……ノノ*^ー^)ノ<よろこんでぇ。だったら
いいんですけどね(w
>>587名無飼育さん様
なんか更新しちゃった━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
川VoV)<何に期待だって?
从;´ ヮ`)<さあ?れいなには何のことやらサッパリ。
>>588◆ZpT8ZEbM様
書いたワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*☆
川;VvV)<美貴はヤなんだよ、たかが単位の為に命がけなんて。
大好きだなんて、嬉しいっす、ありがとうございます。
- 609 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/04/18(月) 16:48
-
ワン 〃ハヘヽヽ
〆人ヾヽ (´ Д ` ) んぁあ、オチ。
U*^ー^Jっと O )
"〜(っ∪ っ (__(_つ
- 610 名前:◆ZpT8ZEbM 投稿日:2005/04/18(月) 20:51
- 更新乙です!!今回もかなり笑わせて頂きました。てか2キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
2ってことはやっぱりやっぱりなんでしょうねw
中身を考えつつ待ちます。
- 611 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/04/19(火) 00:30
- ゴフッ・・・鼻血出すぎて口から溢れてきたばい。
もちろんあれからも毎日待っていたわけですが(*゚∀゚*)
よっちゃんがもう変人すぎてこの、ダビデパーマが!
そして次回更新も待ちマウス。
- 612 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 02:43
- 結局2人はどーなっちゃうんでしょうか・・・続きが気になりますw
更新待ってますー
- 613 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:28
-
―――
「絵里、入るけど?」
「ま、待って! キキキ緊張するよお!」
「………なんで」
さっきの名残でまだほんのり赤い顔のまま、なぜかいたく感動した様子で
ぽんと建つ一軒家と【田中】の表札を交互に見ている絵里の腕を引っ張ったら、
物凄い勢いでジタバタされた。
れいなが寝とる間にラーメン屋でおとーしゃんと意気投合してたんはどこの誰ね?
「だ、だって!
お父さんはのっけからテンションが高かったから勢いで絵里も乗っかれたっていうか、
お母さんと弟さんにちゃんと挨拶しなきゃとか色々考えてたらなんか気まずいんだもん!
入る前から気まずいんだもん!!」
「気まずいって……」
- 614 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:28
- 『( ・e・)<そういえばあの子、最近気まずいってよく言うよね』
放課後の新垣塾(高校の敷地に移動しました)で、サラダ煎餅をかじっていた塾長を思い出す。
ばってん絵里、れいなにしてみりゃさっきの…ホニャラランなホニャララが
絵里のくしゃみで中断して、
『………………』
『………………』
『………あ、あ、もうこんな時間やー。そ、そろそろれいなの家行っとく?』
『……あ、う、うんっ、行く!』
ってなった時とか、その後のここまでの道のりの方が断然気まずかったとよ。
「気まずさの種類が違うぅー」
「マンボッ!」
「「ぎゃあっ!?!」」
- 615 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:29
- 「れいなあ!!! あんたって子は何年も顔見せんとこん親不孝もんがぁああ!!
おかーしゃんがどれだけ心配した思っとーとね!!!
ちゃんとご飯食べとーと?! 風邪ひいてなかね?!」
「お、おかーしゃん!!」
絵里の弱弱しい「うぅー」に反応して元気よく現れたんはおかーしゃん!
泣いてるの、初めて見るっちゃけど、こん顔は間違いなくおかーしゃん!!!
「あ、あの、感動の再会のところ申し訳ございません。
私、藤本絵里と申しま…」
「ああ! あんたが絵里ちゃんね、おとーしゃんに聞いてると。よく来たったい」
「ふつつか者ですが、どうかよろし…」
「絵里、早まり過ぎばい」
しかもご丁寧に空中に三つ指立てて。
気まずい中でそんな古風な挨拶考えてたんか。
呆れて突っ込んだら、大真面目な顔してた絵里が途端にフニャけた。
ぐおあ……そ、そん顔はいけん、八重歯を見せつつ照れるなんてそげんレベルの高かこつ
されたられいなは、れいなはおかーしゃんの存在を忘れてしまうっ…!
- 616 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:29
-
『 お い 、 レ イ ナ ン 』(天からの声)
| | | ┰ ┰ | | そんな人目につくとこで暴走したらどうなると思ってんの?
| | | ノヽ.ノヽ ほら言ってごらん、
ノ | V ノ ノ .ヽ どうなる? どうなっちゃう? ミンチ?
うにゃあああ?!? お姉さん!!
ありがとうございます! れいなの理性の味方はお姉さんだけですばい!
ばってんちょっと……、怖すぎてチビりそうです……ミンチって…。
「从ヽ´,_っ`) 」
「れいな、急にさらにゲッソリしてどげんしたと? とにかく入りんしゃい。
今日はあんたの好きな焼肉に、立派なオジサンがあるけん、刺身と唐揚げにすると。
絵里ちゃん、好き嫌い大丈夫かね?」
「…お、おじさん………おじさんを……食べちゃうんですか…?」
「あら、食べた事なかと? 美味しいっちゃよ」
「そ、そうなんですか………おじさん…」
「ミンチはイヤ、ミンチだけはイヤ」
「む? れいな、何ブツブツ言っとう」
- 617 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:30
-
頭のてっぺんに、ズシズシと目には見えないお姉さんの気配を感じながら
絵里とおかーしゃんの肩を借りて、れいなは重い足取りで久しぶりの我が家に入った。
懐かしい。
玄関の匂い、下駄箱の上の家族写真、なにも変わってなか。
写真は、毎年新しいの撮って換えとったのに、れいなが家を出た年に撮った写真のまま。
れいなの映ってない、新しい写真に換えることなく、そのまま。
「当然たい。ウチは4人家族なんやけん」
「……うん」
ぼうっと立ち止まったれいなを、おかーしゃんが少しだけ抱きしめる。
絵里の前で、って思ったけど、嫌やなくて、動けんかった。
なんか、やっと家で、おかーしゃんの匂いで、やっと、実感できた。
……………帰ってきたっちゃねえ。
- 618 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:30
-
「お、れいな帰ったかあ!!
ささ、絵里ちゃんこん座布団に座りんしゃい!
レイマ(弟・仮名)! お前も絵里ちゃんに挨拶せんね!」
「こんにちはー。姉ちゃんお帰り」
「こ、こんにちはぁ」
人がせっかくジーンときとったのに、畳の居間に入ったら
おとーしゃんはすでにビールで顔を真っ赤にしとって
隣の弟は絵里を見てさりげなく驚いた後、目をキョロキョロさせた。
ま、まあ姉弟やけん、気持ちはわかるけど…………惚れんなよテメェ。
「夕飯まで時間あるけん、まずはお茶たい!
お、お湯沸いたな。レイマ(仮名)、ヤカン持ってきんしゃい」
「はーい」
弟はチラッと絵里を盗み見つつ、立ち上がって台所へ。
だから惚れんなよ。しばらく見ん間に少しは大きくなったけど
成長期前でれいなよりチビなお前になんか絶対絵里は渡さん!!!
- 619 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:31
- 熱い眼差しで弟の背中を睨んどると、ふいにれいなの服を絵里が掴んだ。
なん?って見ても絵里は俯いとる。
打ち解けたおとーしゃん相手やのに、気まずいんかな。
「おとーしゃん、はい」
絵里の様子に首を傾げとると、弟がヤカンを持って戻ってきた。
すると―――ん?
(⌒)
r=====ュ (_ __)) プシュー
{! l} |/
ヾ__o__〃 __
/~~~~~ヽ // アツイベ。
,'(●´ー`)/
{.:.:ひ.:.:.:U:ノ
ヽ、__ノ
「んなあっ!?」
「あ? なんね、急に大きか声出して」
だってだってそのヤッチやなくてヤカンっ!……あれ?
慌てて目をゴシゴシしてもう1度見ると、普通のヤカンや。
おかしいな、目の錯覚やったんかな…?
さっきの金魚といい、れいなの目はおかしくなったんやろか。
- 620 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:31
- 「………グスン、おじさん……」
「ん?」
こめかみを指で押して悩んどると、腕にこてっとあたる絵里の額。
おまけに声……泣いとう?
「絵里ちゃん!? どうしたと?!」
「お、おとーしゃん、なんかしたんやなかね?」
「グス、グスン」
「な、なんもしとらんとぉ!」
急須にお湯を入れとったおとーちゃんも、絵里の泣き声に気づいて困惑しとる。
弟もビックリして固まっとるし。
でもたしかにおとーしゃんはなんもしとらんはずっちゃけど。
…まさか、お茶の淹れ方がいけんかったと?
そやね、まずは急須にお湯入れる前に湯のみに入れて温めないけんよね。
ばってんそんくらいで絵里が泣くか?
「絵里ぃ、なん泣いとーと?」
「れいな…絵里、無理だよぉ……おばさんには悪いけど、絵里、おじさん
食べるなんて無理だよぉ…」
「「「ハ?」」」
- 621 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:31
- オジサンって、夕飯の?
「絵里、魚嫌いやったっけ?」
「ふぇ? なに言ってるのぉ、絵里はおじさんが無理だって…」
「絵里、オジサンは魚のことたい」
れいなのお父さんだもん、長生きして欲しいもん、としゃくり上げながら訴える
絵里の勘違いにやっと気づいた。
おとーしゃんと弟も、わかったみたいでほっと息を吐いとる。
ごめん絵里。
おかーしゃんが刺身と唐揚げにするって言ったとき、絵里が青くなっとったのに
れいなも天の声(VvV)に青くなってたけん、フォローするん忘れてたと。
「スズキ目スズキ亜目ヒメジ科ウミヒゴイ属、オジサン。
あごひげがオジサンっぽいけん、そういう名前なだけっちゃ。
こげんむさ苦しかおとーしゃん食べるなんてれいなも無理やけん」
「ふぇ…?」
「さりげなく何ひどいこつ言いよるんね、れいな。
おとーしゃんの肉はきっと松坂牛の千倍ジューシーかつ
イベリコ豚の一万倍トロケル舌触りたい」
「そこまでトロケたら逆に気持ち悪か」
なぜか自信ありげなおとーしゃんに冷たく返しながら、絵里の頭を撫でる。
よし、笑った。もう大丈夫やね。
- 622 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:32
- てかおとーしゃん、ビールばっか飲んどるけん松坂牛を出した気持ちはわかるっちゃけど
イベリコ豚を出すその根拠はなんね? ドングリなんて食べてなかやん。
「昔食べたことあったと。
ドングリはアク抜けば美味しいけん」
「そうなんですかぁ、絵里、食べたことないです」
「クッキーとか美味しかよ。今度作ってあげるけん、食べてみんしゃい」
「……おとーしゃんがクッキー焼くんか……」
「……ビジュアル的に物凄くやめてほしか……」
想像しただけで憂鬱になる姉弟を置いて、おとーしゃんは嬉しそうに
ドングリのアクの抜き方を絵里に熱く語りだした。
―――◇◇◇
「「「おかーしゃん、ごちそうさまー」」」
「ごちそうさまです」
「へいへい、よう食べたね。絵里ちゃん、オジサン口に合ったかね?」
「はい! すっごく美味しかったです!」
「じゃあまた、いつでも食べにきんしゃい」
「…はい、ありがとうございます」
- 623 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:32
-
「ふーっ、食った食ったー、絵里ちゃん、休憩したらお風呂入りんしゃい」
「え、いえ、最後で大丈夫です」
「遠慮せんでよかよか。そん次はれいな、おかーしゃんでオレ、レイマ(仮名)は最後な」
「おとーしゃん、レイマ(仮名)は遅くなったら可哀想やけん。
れいなの次でよかやん」
「よくなか。男は女の後に風呂入ったほうが長生きするけん。
3人のエキスをもらって、オレとレイマ(仮名)は120まで生きるったい」
「…………」
「…………」
「……僕、シャワーでいい」
「安心し、おかーしゃんが出る時お湯入れ替えるけん」
「おかーしゃん! オレとレイマ(仮名)に早死にせぇっちゅうんか!!」
「レイマ(仮名)はともかく、アンタみたいなアホは死んでも死なんわっ!」
「ぐはっ!?」
畳に寝っ転がって肩肘をつくおとーしゃんを思いっきり蹴り上げて
おかーしゃんはお風呂場へプンスカ歩いてった。
「くっ…アイツ、旦那を蹴るなんてどういう…」
「やかましいっ!」
「ぐぇっ!? れいなまで…っ…ガク」
まったく、絵里のエキスまで狙うとは何事や、こんエロジジイ。
おかーしゃんの蹴りだけでは許せんかったれいながトドメを刺すと、
おとーしゃんは空のビール瓶を枕にいびきをかき始めた。
- 624 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:33
- 「弟よ、アンタはこうなっちゃいけんよ」
「わかっとう」
遠い目で頷いて、弟はおとーしゃんの足を引っ張って廊下の奥にある
寝室へ連れてった。苦労しとるんかな、あん子も。
…そういや、れいなたちは今日、どこで寝るっちゃろ?
れいなの部屋は弟と2人部屋やったし、3人で寝るんはちょっと……。
「アンタの部屋やったら、2人で使ってた部屋の隣たい」
「え?」
お風呂を洗って戻ってきたおかーしゃんは
恐ろしくもれいなの心を読んだんか、突然そう言った。
「おとーしゃんな、アンタが出てってすぐに『帰ってこん』ってオロオロして、
3日経って『れいなに1人部屋をやる』って言い出しよったと。
たまに掃除もして、アンタの机でよう泣いとったばい」
「………」
「絵里ちゃん、さっきはエキスがどうこう気持ち悪いこと言って悪かったね。
でもあん人も、れいなが帰ってきたんが嬉しくて
飲み過ぎやったけん、許してやって欲しいと」
「い、いえ、絵里のエキスでいいならお好きに…」
「…絵里、待ちんしゃい。エキスは大事にしんしゃい」
- 625 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:33
- 間違っても軽々しく差し出しちゃいけん。………れいな以外には。
「れいな、なにイヤラしか顔しとう」
「し、しとらんっちゃ」
「……ふーん。30分したらお湯入れるけん、それまでれいなの部屋みたらどうね?」
「そ、そうするたい。絵里、行こ」
「うん。お部屋、よかったね」
おかーしゃんの疑わしげな視線を背に、階段を上がって
懐かしい部屋の前を通り過ぎる。隣の部屋のドアには、【れいなのへや】って
看板がついてて。そっとドアを開けると、あまり広くはない部屋に
れいなの机とベッドがあって……、ここは確かにれいなの部屋やった。
「…やったあ」
認めてもらえたんや、れいなは1人前なんや!
嬉しくってベッドにダイブしようと飛び上が―――ん? 布団の下になんか……
O000o
( ´ Д `) ンア、足ダポ。
) /
(_/
- 626 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:33
- 「ぎぃいやあああああ!?」
「れ、れいなどうしたの?!」
「ゴゴゴ後藤さんがっ、足が後藤さんでベッドにおるぅううっ!!!」
「え? なに言ってるの?」
後藤さんがっ!!そこの布団の端から後藤さんみたいな足がニョロッて出とったとぉ!!
「絵里、助けてぇ!」
「ほぇ…きゃっ」
ゴン。
「ん? あ、絵里ごめん、大丈夫?」
「…………」
「絵里? 絵里ぃ!」
うわっ、たたた大変やっ、驚きと恐怖で抱きついたれいなを支えきれずに
ベッドに倒れこんだ絵里の頭が、壁に鈍い音を立ててぶつかってしまった。
目は開いとーけど打ち所が悪かったんか、ピクリとも動かん。
…きゅっ、救急車! 病院に連れてかんと!!
- 627 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:34
-
「ウヘヘヘェ」
「え…?」
急いで携帯を掴むと、薄く開いた口から……ぶっちゃけ少し気味の悪い笑い声が。
「……絵里?」
「んんー? あー、れいなー」
「……れ、れいなっちゃけど」
「…あれ? 絵里、もしかしてれいなに迫られてる?」
「は?」
笑い声の後、絵里は自分とれいなの体勢を見て悪戯っぽく笑う。
てか頭…大丈夫と?
そおっと左手を打ったところに添えると、絵里は気持ちよさそうに目を細めて
れいなの背中に腕を回し、たと思ったら、布団をめくって中にれいなごと潜り込んだ。
「なっ…!? 絵里、ちょっと待って待って!」
「こないだの続きでしょ、いいよ」
ななな何を言っとるんねこの子は!? こないだの続き?!
続きもなにも、絵里はだって、さっきだって久しぶり………って、絵里、あんたまさか……
- 628 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:34
- 「ももも元に戻ったと?!?」
「んー? 戻る?」
いや、元々の絵里はついさっきまでの絵里やったんやから、戻ったって
言い方はおかしいんやけど、えっと、ようわからんっちゃけど、頭打って………
「絵里、これ見て」
「あーっ、美貴さんと松浦さん」
試しに携帯の画像を見せても、フニャフニャ笑ったままの絵里。
お姉さんを見ても、怖がったり、怯えたりしない絵里。
おお!! やりましたよお姉さん!!!!
小さくガッツポーズして絵里に抱きつく。
れいなはどんな絵里でも好きっちゃけど、やっぱ笑ってる絵里が嬉しくて
ぎゅうぎゅう腕に力をこめたら、絵里はすっと切なげに口をすぼめて目を閉じた。
………ハッ、そういえばさっき『いいよ』って………『 い い よ 』って。
ばってん待ちぃよ、ここで? れいなの1人部屋やけど隣は弟の部屋やし、
あと15分もしたらお風呂入らないかんし。
- 629 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:35
- それにそれに、こんベッド、後藤さんみたいな足が中に…っ。
思い出して、足を精一杯伸ばして探ってみる。
でも、なんもなくて。おかしいな、幻覚やったと?
てかなんで、なんでれいなは今日1日幻覚ばっか見るとね?
「もお、れいな」
「ひゃっ」
探っとった足が、絵里の足に挟まれた。
顔を上げると、拗ねた顔が見える。
やばい。 この体勢、この絡み、この距離にしてこの唇。 イタダキマス。
「んっ…れいな」
「絵里…」
「れいなー、お風呂用意できたとー」
おかーしゃんのアホぉっ!!!!!!!
- 630 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:35
- ―――
チャポーン。
「はあ…」
危なかったばい。
最近、控えめで恥ずかしがりな絵里に慣れとったけん、急に積極的になられると
流れに逆らえんというか、我慢しとった分みずから流れちゃうというか。
おかーしゃんは階段の下から声掛けてくれたけん、なんもバレんかったけど。
危なかったねぇ、なんて楽しそうな絵里は、れいなの耳にすっと近づいて
「お風呂先に入って」って、断る理由もないし、入らせてもらったんやけど。
なんとなく、脱衣所のほうに人の気配を感じるんは気のせいやろか。
ガラッ
「お待たせ〜」
「ぬおっ!?!?」
サッ
ノノノ从ヽ乙 ノハヽ☆
゚。从*` ヮ´;∩<絵里っ!? (^ー^*从
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /^と )
〜 ∪
- 631 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:36
- 「な、なんで入ってくるとぉ?!」
「えー? だってさゆと一緒に入るもん」
「れ、れいなはさゆやなかやん!!」
「むぅ。れいなのケチー」
って、おとと、隠す場所間違えたったい。
慌てて頭に乗っけたタオルを体(気持ち下の方)にあて、絵里に背中を向ける。
てか見えた……なんかチラッと見えたっ…。
「んー? なんでそっち向くの?」
「こ、こっち向きたい気分やけん」
絵里がおるけんとは言えず、ばってん出てってとも言えず…。
この微妙な心を理解してくれる人、おったられいなを助けてください!!
「ねー、背中洗って」
「ぬぐっ!? こ、子供やないんやから、じっ、自分で洗えるやろ!」
「むー、れいなのも洗ってあげるから」
「もう洗ったばい!」
「2回洗っちゃいけない理由なんてないじゃん」
そ、そらそうやけど!
だからって自ら理性を吹っ飛ばすようなことれいながするワケ―――
- 632 名前:ただいまとおかえり。 投稿日:2005/06/20(月) 18:38
-
「もっと強くしていいよ」
「……うん」
「後で頭もやってね」
「……うん」
「ありがと、じゃあこうたーい」
「わわわ、れいなはよかよぉ」
「だめ。れいなだけじゃズルイ」
「ズ、ズルイって……」
いきなり風呂に入ってくる絵里の方がダントツでズルイ気がするんはれいなだけ…?
「れいなの背中、白くて小っちゃいね」
「……そおかな」
「すぐ洗い終わっちゃう」
「お、終わったんなら…」
「つまんないから腕も洗ったげるー」
「うわあっ」
ちょっ、なんか背中にあたっとーよ! ド リ ー ム 。
ばってん、ドリームやけどっ! パラダイス風呂場っちゃけど!!
バレたら絶対に殺される!!!
ミンチでメンチでモンチッチに食べられてしまうんやあっ!!
- 633 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/21(火) 18:20
- 更新されてるーー!お疲れ様です。
めっちゃ嬉しいです!
よかったね二人ともw
でも幻覚…?気になります。
次回も楽しみに待ってますよ〜
- 634 名前:名無しのЛ 投稿日:2005/06/21(火) 20:19
-
面倒をかけまして申し訳ございませんが、
入りきらないようなので続きは紫板の方に貼らせていただきます。
『スニッフ』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/purple/1108034266/
Converted by dat2html.pl v0.2