DREAMER
- 1 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:07
- 空版と同時進行で書かせていただきたいと思います。
ミキティ主演の学園ものです。
CPはいろいろ書きたいと思っております。
それではよろしくです。
- 2 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:08
- ハイ、藤本美貴で〜す。
今日から朝比奈女子学園の三年生として転入します。
え、何で三年からだって?
まあそれは読めばそのうちわかるよ、うん。
作者的には、学園青春物にバトル(ケンカ?)と恋愛をやりたいみたいだけど、
この作者ってへたれだから、どうなることやら・・・。
美貴はロ〜マンティック♪な恋がしたい・・・美貴にやらせてくれないかな〜・・・。
意味わかんないけどとりあえず、本編スタート!
- 3 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:09
- 教室のある一室で、高橋愛はホームルームが始まるまでの間、
ずっと小説を読んでいた。
愛が小説を閉じると同時に、後ろから背中を軽く叩かれた。
愛はゆっくりと後ろを振り向く。
「ねえねえ、今日から新しい転入生が入ってくるんだよね!どんな子かな?」
話しかけてきたのは、中学からの友達の紺野あさ美だ。
「・・・別に興味ない。」
「それに二人もくるなんて楽しくなりそうだよね〜。愛、仲良くなれるといいね!」
全然人の話し聞いてない、そう思って愛は小さく溜息をついた。
あさ美は中学の時からそうだった。
誰ともまともに向き合わない愛に対して、いくらそっけなくしても話しかけてくる。
愛は自分と話してて何が楽しいのだろう、とたまにあさ美に対して疑問になる。
それでも話しをしようとしない愛からしたら、ただ一人友達と呼べる存在だった。
- 4 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:10
- とりあえず、あさ美との関係はまた今度にして、問題は
転入生についてだった。
愛の席は教室の左から二列目の、後ろから二番目だ。
あさ美の席は愛の後ろである。
そして、愛とあさ美の左の席は両方とも空席だった。
恐らく、いや確実にこの二つの空席に転入生がくるのだろう。
なぜ一気に二人も入ってくるかというと、このクラスは元から
一人少なかったのに、去年一人転校したために二人少なかった。
そのための人数合わせとして、二人の転入生がくることになった。
前の扉が開かれて、担任の中澤が入ってくる。
その後ろからは、一言で言えばかっこよさと可愛さを合わせ持つ
セミロングの少女がついてきている。
顔立ちは整っていて、身長は高くないがスタイルがとてもよく、
大人っぽい女性を思わせる容姿だった。
- 5 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:11
- 当然周りからは歓声が飛んだ。
「可愛い人だな〜!愛もそう思わない?」
愛はあさ美を無視して、ただ転入生の顔を見ている。
「ほら、静かにしいやっ!」
中澤から注意されて教室は一瞬で静まる。
「はい、そんじゃ自己紹介したってや。」
中澤の言葉で転入生は生徒達と向き合った。
「初めまして、今日からこのクラスに転入することになりました、
藤本美貴です。よろしく〜!」
またクラスメイト達から歓声が飛んでいく。
美貴は軽くお辞儀する。
「んっと、好きな食べ物は焼肉で、趣味は映画鑑賞。特技はスポーツで・・・。」
「藤本、そこまで誰も聞いてないから。」
美貴が話していると、中澤に止められた。
- 6 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:12
- 「え〜!だって先生は美貴のこと知りたくないんですか〜?」
「別に知らんでええわっ!いいから席つけ!藤本の席は高橋の隣や。
高橋、手ぇ上げ。」
愛はしぶしぶ手を上げる。
「そんなわけでよろしく〜!」
美貴は周りに手を振りながら、愛の隣の席まで歩いていく。
「藤本美貴です。よろしくね♪」
美貴は愛に笑顔で挨拶する。
「・・・よろしく。」
愛は美貴を一度見て、すぐに前に向き直る。
「ごめんなさいね。愛ったらこういう子なんですけど、本当はいい子なんですよ。」
美貴が斜め後ろを振り返ると、あさ美が手を合わせて謝ってきた。
- 7 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:13
- 「全然気にしてないよ。あなたは?」
「私は紺野あさ美と言います。よろしくです。」
「うん、よろしくね!」
美貴とあさ美は軽く握手を交わして笑い合った。
「あともう一人の転入生についてなんやけどな、どうやらご家族の
都合上で二週間ほど遅れてくるそうやから。それじゃホームルーム始めるで。
あ、そういや藤本は学校ん中どこら辺まで見たんや?」
中澤が美貴に尋ねてきた。
「いや〜、それが全然見てないからわかんないんすよ。
美貴が見たのって編入試験受けにきたときだけですから。」
「そっか、んじゃ高橋、あんた放課後にでも藤本のこと案内したりや。」
「私が・・・ですか?」
愛は困った顔をして聞き返した。
- 8 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:13
- 「何や、何か用事でもあるんか?」
「いえ・・・特にないですけど・・・。」
「別にいいですよ。一人でも回れますから。」
美貴は嫌そうにしている愛を見て、手を上げて中澤に答える。
「そっか。んじゃわかんなくなったら適当にそこらへんにいるやつ
誰か締め上げて、そんで聞いてくれや。」
「は〜い!」
「(締め上げていいのかよっ!?)」
誰もが思ったが誰も口には出さなかった。
「あの、明日でよければ私が案内しますよ?」
あさ美が後ろから美貴に申し出る。
「そっか、そんじゃ明日頼んでもいいかな?」
「はい!」
「えっと、今日のホームルームはな・・・。」
美貴は、中澤の話しも聞かないであさ美とずっと話していた。
- 9 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 02:15
- 今日はここまでです。
空版のやつと同時進行ですけど、
絶対に放棄はしないんでよろしくです。
- 10 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 13:38
- やば、間違えました!
もう一つは金版です!
ごめんなさい・・・。
- 11 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:48
- ホームルームと入学式、始業式が終わって、今日はすぐに帰りとなった。
愛は学校が終わると、すぐにかばんを持って教室から出て行った。
あさ美も部活があるとのことで早くに出て行ってしまった。
特にやることのない美貴は、クラスメイト達と適当に話しを
したあとにあさ美に案内してもらう前の下準備として、
学校を見て回ることにした。
だが、
「えっと〜、ここ、どこ?」
美貴は迷っていた。
朝比奈学園の敷地は普通の高校の数倍は広い。
そのために、何も知らないで入った人はまず迷ってしまうだろう。
美貴もその一人で自分がどこにいるかわからなくなってしまった。
- 12 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:49
- 「美貴の教室は一号棟で、ここが三号棟だから・・・。」
「どうかしたんですか?」
美貴が首を傾けて唸っていると、後ろから声をかけられた。
見るとそこには、二人組みの生徒が立っていた。
一人はほんわりした感じの子で、一人は目つきが鋭い。
リボンが青いのでどうやら一年のようだ。
ちなみに二年は緑で、美貴達三年は赤だ。
「んと、何か迷っちゃったみたいで・・・。」
美貴は恥ずかしそうに頭をかいた。
「一号棟ってどうやって行ったらいいかわかる?」
「一号棟はですね・・・。」
ほんわりした子がゆっくりと答えていく。
- 13 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:50
- 「なるほどね、ありがとう。」
一通り説明してもらって美貴は笑顔でお礼を言う。
「でもさ、今日入学したばっかなのによく知ってるね〜。」
「ここの学校には先輩がいますんで、よく話しを聞いてたんです。」
「そうなんだ〜。」
美貴は軽く相槌を打つ。
「なんであなたは知らんとですか?もう三年ですよね?」
もう一人の生徒が美貴を睨みつけるように聞いてくる。
その目に美貴は少し後ずさる。
「もう、何でそういうこと聞くのよ。」
「いいんだよ。美貴は今日からここに転入してきたんだ。だからあまり
ここの学校のことは知らなくてね、それで回ってたら迷っちゃったんだ。」
「そうだったとですか。」
目つきお鋭い子は頷くと携帯を見る。
- 14 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:51
- 「そろそろ行かんとやばいとよ?もう絵里達着いてるかもしれんよ。」
「え、もうそんな時間なの?やっば〜い。」
全然やばそうに見えないのは気のせいだろうか?
そんなことを考えるてると、二人は美貴を振り向いた。
「あの、私達急ぐので。」
「うん、忙しいのにごめんね。教えてくれてありがとう。」
美貴は手を振って二人を見送った。
- 15 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:51
- 美貴は一号棟まで戻ると、屋上に上っていった。
屋上には誰もいなかった。
美貴は屋上のフェンスまで歩いていく。
下を見てみるとグランドを走り回っている子が何人かと、
何やらサッカーをやっている生徒達がいた。
大きさからしてフットサルのようだ。
しかしあまり興味のない美貴は、ぼーっとその光景を見ていた。
今日は天気がよく、太陽が美貴を照らしている。
「う〜ん、気持ちいいな〜。」
美貴は伸びをして地面に寝っ転がった。
「ふぁ〜、眠い・・・。」
美貴はそのまま眠りについた。
- 16 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:52
- 美貴が次に目を覚ましたのは、すでに夕方と夜の境目といっていい時間であった。
「うそっ!?もうこんな時間なの?」
携帯の時間は六時を示してる。
「あっちゃ〜、まあいっか。」
美貴はかばんを持って歩き出そうとした。
その時、
「ん、あそこって確か・・・。」
美貴が見た方向のところはまだ光がついていた。
どうやら体育館のようだ。
美貴は興味を持ち出して体育館まで行ってみることにした。
さすがに学校が広いだけあって、体育館もまた広かった。
渡り廊下を歩いていって、中を覗きこんでみる。
そこには、バスケットゴールにシュートをしているアサミの姿があった。
- 17 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:53
- アサミがゴール下からシュートをする。
それがはずれてコートに落ちる。
それをすばやく取ってまたシュートをする。
それを何度も繰り返していた。
美貴は、あさ美が必死にシュート練習している姿に、少しの間見惚れていた。
「あっ・・・。」
少し強めにシュートしたためか、バックボードに当たって
跳ね返ったボールがあさ美の後ろへと落ちていく。
あさ美がボールを取りにいこうと思ったその時、視界に美貴の姿が写った。
「藤本さん!?何でこんな時間まで学校に・・・?」
あさ美はボールを取って美貴に近づいていく。
- 18 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:54
- 「ん〜、ちょっと寝ちゃってたみたいでね。紺ちゃんこそ
こんな時間まで練習してるの?」
「こ、紺ちゃん・・・?」
「そ、美貴が付けました。あなたは今日から紺ちゃんに決定〜!」
美貴のテンションについていけないのか、あさ美は首を傾けて戸惑っていた。
「ずっと練習してたの?他の部員さんは?」
「今日は昨日練習試合があったということで、軽く流して終わったんです。
その後の時間は誰も体育館を使わないとのことで、私が先生に頼んで
使わせてもらってたんです。私は他の人に比べて下手だから、
他の人よりも練習しなきゃ追いつけないんです。」
「は〜、すごいね・・・。」
あさ美の体は赤く火照っていて大量の汗を流していた。
部活に行くといって出て行ったのは昼過ぎで、今はもう六時過ぎである。
その間ずっと練習したということになる。
- 19 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:54
- 「ちょっと美貴もやらしてもらっていいかな?」
「もちろんいいですよ!」
あさ美は笑顔で傾いた。
美貴はボールが入っているかごから一つ取って、ゴール下からシュートした。
ボールはゴールの輪に跳ね返って落下していった。
「あれ、もう一回!」
しかし、何度打ってもゴールに入ることはなかった。
あさ美はおもしろそうに美貴を見ている。
何度目かのシュートの後、
「あ〜、いいかげんむかついてきた。」
美貴は跳ね返ってきたボールを手に持って、フリースローの位置まで下がっていく。
「これならどうだっ!」
美貴は叫ぶと同時に走り出して、高く飛び上がる。
「ハァッ」
ドガッ!
美貴はボールを直接ゴールに叩き込んだ。
あさ美はその光景を呆然と見ていた。
体育館には、ボールがバウンドする音だけが響いていた。
- 20 名前:konkon 投稿日:2004/07/24(土) 19:56
- 今日はここまでです。
改めて空版ではなく金版なのでごめんなさい・・・。
- 21 名前:ベイム 投稿日:2004/07/24(土) 22:30
- いいっすね。楽しいです!みきこん…?かな?
- 22 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:23
- 「よっし、満足満足♪」
美貴は着地して手をはたくと、落ちたボールをかごに戻して
あさ美の元へと歩いていった。
「すごい・・・藤本さん、何かスポーツとかやってたんですか!?」
「別に何もやってなかったよ。」
「ではバスケ部に入りませんか?」
あさ美が目を輝かせて聞いてくる。
「いや、美貴は球技は苦手だからさ。」
「そんなこと言ったら私だってそうですよ。」
「それにバイトもあるから入っても幽霊部員になっちゃうよ。」
「えっ、でもうちの学校はバイトは・・・。」
「うん、禁止なんだけどさ、美貴は一人暮らしだから
生活かかってるからね〜。」
あさ美はその言葉に俯いた。
- 23 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:24
- 「あ、このことは黙っててね。じゃなきゃ美貴生きていけないからさ。」
「あ〜、はい。もちろんですよ。」
「そういや紺ちゃん、まだここで練習してるの?」
すでに時刻は七時近くになっていた。
この学校の門限は七時半までなので、もう出る準備をしないとまずい。
「ん〜、そろそろ愛が迎えに来てくれるはずなんですけどね。」
「えっ、愛ちゃんもまだ学校にいるの!?」
美貴は驚いてあさ美に聞いた。
「はい、今日は図書室で勉強しているようですので、
一緒に帰ろうってことになってたんですけどね。」
「それじゃあさ、迎えに行ってあげようよ。紺ちゃんはシャワー
浴びて着替えてきなよ。美貴はここで待ってるからさ。」
「そうですね。それじゃ、着替えてきますね。」
あさ美は自分のかばんを持って、体育館の裏の方へと向かっていった。
美貴は暇つぶしに、ボールを持ってシュート練習をし始めた。
- 24 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:25
- 「お待たせしました。」
あさ美が制服に着替えて美貴の元へと歩いてくる。
美貴はボールをかごの中に入れて自分のかばんを拾う。
「そんじゃ帰ろうか?」
「はい!」
あさ美は美貴に並んで歩く。
あさ美の体から微かに石鹸の匂いがして、美貴は少しドキドキしていた。
渡り廊下を歩いている時、体育館裏から何か声が聞こえてきた。
「これは・・・愛ちゃんの声?」
「・・・行ってみましょう!」
二人は声がする方へと近づいていく。
物陰から覗いてみると、愛が四人の生徒達に囲まれていた。
- 25 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:26
- 「あっ、あの人達はっ!」
あさ美はすぐに後ろを向いて走り出そうとする。
「知ってるの?」
「あの人達は・・・メロンの人達なんです。」
「メロン?」
「はい、ここの学校で恐れられている人達で、よく暴力や恐喝などを
してるって聞いています。早く誰かを呼んでこなきゃ愛が大変です!」
「いいよ。呼ばなくて。」
「・・・藤本さん?」
震えているあさ美に美貴は優しく笑顔を向ける。
「美貴が行くよ。紺ちゃんは愛ちゃんがきたら一緒に逃げてあげて。」
「でも、・・・大丈夫なんですか?」
「心配いらないって。それじゃ、愛ちゃんきたら頼むね。」
美貴は憮然とした表情で愛の元へと向かっていった。
- 26 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:26
- 「なあ、あんた政治家の娘なんだってね?」
眼鏡をかけた生徒が愛に聞いた。
「・・・だから何?」
「何って決まってんじゃん。少〜しお金を恵んでほしいなってね。」
「めぐみなだけに、お金の恵みをってね。」
「瞳、つまらないから。」
めぐみと呼ばれた生徒が、瞳に突っ込んだ。
「どうしてもってんなら、少し顔に傷をつけちゃうことになるけどね〜。」
「もしそうなったらお父さんは何ていうかな〜?」
「でもさ、あゆみ。少し恥ずかしい思いしてもらうってのもいいんじゃない?
さっきから震えちゃって可愛いくない?」
「雅恵好みの顔だもんね〜。んじゃそっち側でいきますか。」
雅恵と呼ばれた生徒が、愛に近寄っていく。
- 27 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:27
- 愛は後ずさろうとするが、後ろには瞳がいるためそれ以上は下がれない。
愛はその場で胸を押さえつけて、震えを止めようとしているが止まりそうもない。
愛は唇を噛んで雅恵を睨みつける。
「いい表情してるね〜。フフフッ。」
雅恵はにやつきながら愛に手を伸ばしていく。
その時、
「そこまでにしときなよ。」
五人の視線が一斉に声の方へと振り向いた。
そこには腕を組んで立っている美貴の姿があった。
「何、何か用なの?」
あゆみが美貴を睨みつける。
「ねえ、金持ってる人間なら誰でもいいの?」
美貴はあゆみの問いに答えずに聞いた。
- 28 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:29
- 「当たり前だろ。だからお前には用はないんだよ。消え失せろ!」
瞳が低い声で言ってくる。
「一つだけいい事教えてあげるよ。」
「ああっ?」
「美貴の親父も政治家なんだよ。それもかなりの大物のね。」
美貴は淡々と話していく。
「だからさ、別に愛ちゃんじゃなくてもいいじゃん。」
「それはあんたにだったらたかってもいいってことだよね。」
めぐみの言葉に四人は今度は美貴を取り囲む。
「愛っ!」
「あさ美?」
四人が美貴に気を取られてる間に、あさ美は愛の腕を掴んで走り出す。
「あさ美・・・いいの?あの人を置いていって。」
「藤本さんにはきっと何か策があるんだよ。だからここは信じよう!」
愛とあさ美は体育館裏から抜け出した。
- 29 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:29
- 今日はここまでです。
- 30 名前:konkon 投稿日:2004/07/27(火) 22:31
- >ベイムさん
ありがとうございます。
CPは今後また発展すると思うので、
暖かく見守ってやってください。
- 31 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:09
- 美貴は二人が行ったことを確認してから、話し始める。
「別に美貴にたかってきてもいいよ。ただし、」
美貴は親指を立てて下に向ける。
「やれるもんならね。」
「なっ、調子にのってんじゃねぇっ!」
その美貴の言葉と挑発にキレたのか、四人は一斉に美貴に
殴りかかっていった。
四人がいくら殴ったり蹴ったりしても、美貴は反撃も防御も
避けようともせずに、何もせずにやられている。
「ハァッ、ハァッ、何だよこいつ・・・。」
「何、効いてないわけ?」
いったん殴るのをやめたあゆみと雅恵は、表情を変えずに
立っている美貴に恐怖を抱いた。
- 32 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:09
- 瞳とめぐみも美貴から離れる。
「一つ聞いていい?」
美貴が口から出た血を指で拭って、四人に振り返った。
「いつもこうやって力で人を押さえつけてきたわけ?」
「ハンッ、当たり前だろ。それ以外に何があるっていうんだよ。」
瞳がさも当然といった感じで答える。
「いいからそろそろ落ちろよ!」
雅恵が落ちていた石を拾って、美貴に殴りかかる。
その直後、
パンッ!
かわいた音と共に雅恵が吹き飛んで地面を転がっていく。
- 33 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:10
- 「な、こんな時にそんな冗談おもしろくないって。」
瞳は苦笑いしながら雅恵の顔を覗き込む。
そこで、瞳は雅恵の顔を見て驚いた。
雅恵の鼻は完全に潰れていて、血が止まらずに流れていた。
三人共美貴が何をしたかすらわかっていなかった。
「美貴、一番むかつくんだよね。そういうの。」
美貴が三人に向かっていく。
「力で押さえつけて言うことをきかせようっていうのがさ。」
美貴の目に見えないほどの蹴りが、めぐみの顔に直撃する。
めぐみは何回転もしながら地面を転がっていく。
「やられた人の気持ちとかわかんないんでしょ?」
美貴は素早く瞳の顔を片手で掴み上げる。
- 34 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:11
- 「うあっ、がっ・・・。」
美貴のあまりの力に、こめかみと頬に指が抉り込んでいく。
瞳は泡を吐いて気を失った。
「何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いなんだよ。」
「うっ、うわーっ!」
あゆみがポケットからナイフを取り出して美貴に向かっていく。
「いいかげんうざいな・・・。」
美貴はナイフを振り上げるより早く、あゆみの顔を殴っていた。
あゆみの顔は雅恵同様、鼻が潰れて血がだらだらと流れていた。
「まだ起きてんでしょ?」
かろうじて意識のあるあゆみに声をかける。
あゆみが力無く顔を上げると、美貴が落ちたナイフを拾って
あゆみに近づいていく。
- 35 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:11
- 「もし美貴が同じようなことしてるの見たら、今度はこんなもんじゃ
済まさないよ。わかった?」
「ひっ・・・。」
あゆみは涙を流しながら後ずさる。
「わかった!?」
美貴はナイフをあゆみの顔のわずか数ミリというところに投げつけた。
ナイフが地面に突き刺さり、あゆみの頬が少しだけ切れて血が流れる。
「ひゃっ、ひゃい・・・。」
あゆみはそれだけ言って失神した。
- 36 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:12
- 美貴があゆみから目を離して前の方を見ると、そこには愛とあさ美が立っていた。
「!?紺ちゃん、愛ちゃん、何でいるの・・・?」
「ご、ごめんなさい!どうしても気になってしまって・・・。」
あさ美は深く頭を下げて謝る。
愛は美貴の一歩手前まで歩いていく。
「・・・一つだけ聞いていい?」
愛が真剣な目で美貴を見上げる。
「何?」
「あなたのお父さんって政治家だって・・・本当なの?」
「・・・そうだよ。」
「それじゃ、藤本環境大臣って・・・。」
「そ、美貴の親父だよ。」
愛は拳を震わせて俯いてしまう。
「今日は・・・助けてくれてありがとう・・・でも私は・・・。」
愛はそれだけ言うと後ろを向いて走り出す。
- 37 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:12
- 「あっ、愛っ!?」
あさ美は愛を追いかけようとするが、寂しそうな目をしている
美貴を置いてはいけなかった。
「藤本さん・・・。」
「・・・紺ちゃん、帰ろっか!」
美貴の目は、先ほどまであさ美を見ていた優しい目に変わっている。
「藤本さん、強いんですね。」
「別に美貴だって強くなりたかったわけじゃないけどね。」
美貴は上を見上げて答える。
「どういう・・・意味ですか?」
「聞きたい?美貴が何で強くなったかさ。」
美貴はあさ美に視線を戻して聞いた。
「紺ちゃんさ、美貴の過去話を聞く勇気ある?」
あさ美は少しの間美貴を見つめた後、ゆっくりと頷いた。
- 38 名前:konkon 投稿日:2004/07/29(木) 22:13
- 今日の交信は以上です。
- 39 名前:みきっティー 投稿日:2004/07/30(金) 02:45
- おもしろいです。
藤本さんの過去・・・一体何があったのか?
次回も期待してます
- 40 名前:ベイム 投稿日:2004/07/31(土) 12:01
- 同じく気になります……konkonさんに大期待♪
- 41 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:06
- 「藤本、ちょっと職員室まできてくれるか?」
二日目の昼、この日も授業がなく午前中で学校は終わりだった。
美貴はあさ美に学校を案内してもらうということで、簡単な概要を聞いていた。
そこで担任の中澤から呼び出しを喰らったとこであった。
「は〜い。ちょっとだけ待っててもらえる?でなきゃ別の日に改めてって
感じでお願いできるかな?」
「いえ、私はここで勉強でもして待ってますよ。」
「そっか。ごめんね。」
美貴はあさ美に軽く頭を下げて、中澤のあとをついていった。
職員室に入って、中澤は自分の椅子に座って美貴を見上げる。
「話しって何ですか?」
美貴は首を傾げて中澤に聞いた。
「昨日、柴田達が病院に運び込まれたんや。うちの学校でけんかしたらしくてな。
そのけんかの相手があんただって聞いてな。」
その話しを聞いて、美貴は苦笑いをする。
- 42 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:07
- 「あんた達がけんかしてんのを見た生徒がいたんや。どうなんや?」
「あ〜、まぁ・・・。」
「柴田達は重症でまだ何も話しを聞けん状態や。だからあんたから
聞こうと思ってな。何かけんかせなあかん理由でもあったんか?」
美貴は頭をかいて、中澤から目を逸らす。
「何もないのにいきなりけんかふっかけたんなら、何かしらの
処罰が下されるやろ。まぁ、たぶん停学やろうな。」
「あっちゃ〜、入学二日目で停学は痛いな〜。」
美貴は難しい顔をして俯く。
「で、どうなんや?何でけんかしたんや?」
「・・・。」
中澤の問いに、美貴はなぜか口を閉ざしていた。
- 43 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:08
- 「大変だ・・・愛に知らせないと!」
あさ美は何か嫌な予感がしたために、二人が職員室に入ったあと、
廊下から話しを聞いていた。
そして、美貴が昨日のけんかの理由を答えないので愛を探しに向かうことにした。
「この時間だと・・・図書室かな。」
あさ美は全力疾走で図書室へと走っていった。
あさ美は息を切らしながら図書室の扉を開く。
図書室には、一人だけ椅子に座って勉強している生徒がいた。
あさ美の予想通り、椅子に座っていたのは愛だった。
あさ美は愛に駆け寄って愛の横に立つ。
- 44 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:09
- 「愛!大変なの!」
「・・・あさ美?どうしたの?」
「藤本さんが昨日のけんかを誰かに見られちゃって、停学に
なっちゃうかもしれないの!藤本さん、けんかの理由を話そうとしないんだよ。」
「・・・。」
愛は黙ってあさ美の顔を見上げている。
「私が行ったって仕方ないの。愛が行って先生を説得して!」
第三者が教師を説得しても、結局は愛がいなければ話しにならない。
そう見切ってあさ美は愛を探しにきたのだ。
「・・・何で私が?」
「何言ってんのよ!?愛、昨日助けてもらったでしょ!?」
「それは昨日お礼言ったよ。私があの人を助ける義理なんてない。
昨日だって偶然居合わせただけであって、ただ恩を着せようとでも思ってたんでしょ。
あんなお気楽な性格して、何にも苦労なんて知らない顔なんかして、
私とは違ってどうせぬくぬくと生きてきたんでしょ?
あんな人を助ける理由なんか・・・。」
- 45 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:11
- 「愛!」
パンッ
あさ美が平手で愛の頬を叩いた。
愛は叩かれた頬を手で押さえて動かない。
「ごめん・・・でも聞いてよ。藤本さんだって、愛の思うように
生きてきたわけじゃないよ・・・。」
「・・・。」
「藤本さん、虐待受けてたんだって・・・。」
「えっ・・・?」
その言葉に、愛が顔を上げてあさ美を見つめる。
- 46 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:13
- 「だいたい十年位前から、藤本さんのお父さんが名を上げ始めた
辺りから殴られるようになったんだって。成績が下がったり、
何か嫌なことがあったりするたびに殴られるようになったらしいの。
藤本さん、顔や体が痣だらけになったりしてね、あまり学校に
行けなかったらしいよ。藤本さんの痣に気付いた人も、お父さんの力を
恐れて誰も何も言えなかったみたい。」
「・・・。」
愛は黙って話しを聞いている。
「藤本さん、いつか殴り返してやろうって思ったらしくてね、
毎日のように隠れて鍛えてたんだって。だからあんなに強くなったんだよ。」
「何で・・・それなのに・・・あんなに笑ってられるのよ・・・?」
「・・・今まで笑うことができなかったからだと思うよ。
自分らしく生きたい、って言ってたしね。愛だってそう思うでしょ?」
- 47 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:14
- 「わ、私は・・・。」
「何で藤本さんがけんかの理由答えないかわかる?愛の名前を出せば
すぐに解決するのに、それでも言わない理由。」
「・・・?」
「愛の気持ちを誰よりも知ってるからだよ。愛がどれだけ苦しんでるのかを
知ってるからだよ。同じ境遇だった藤本さんだからこそ、愛の気持ちがわかるんだよ!」
あさ美は涙を流しながら話し続ける。
「愛が恨んでるのは政治家でしょ・・・?藤本美貴さんじゃないでしょ!?」
「私は・・・。」
愛はポケットから自分のハンカチ出してあさ美に渡した後、
図書室を飛び出していった。
- 48 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:15
- 「祐ちゃん、これは仕方ないわな。」
「そこをなんとか頼むで、貴っちゃん!」
中澤と美貴は、校長からの呼び出しで校長室で校長の稲葉貴子と話しをしていた。
稲葉は父が早くに亡くしてしまったために、若くして校長の座についた。
稲葉と中澤は年が近いため、お互いをあだ名で呼び合っていた。
中澤はさすがに転校二日目で停学は可愛そうだということで、
なんとか稲葉の説得をしていた。
しかし、当の本人の美貴は何度中澤からけんかの理由を聞かれても、
笑ってごまかしていた。
「理由もないのにけんかなんかしたんやったら、校則上停学や。
でないと他の生徒にも示しがつかんしな。」
「でもな・・・何で藤本も何も言わんのや?」
「さっきから言ってんじゃないですか。むかついたからやったって。」
「それじゃ理由にならんのやって。むかついた理由を聞いてんや。」
「むかついたものはむかついたんです。」
渋い顔をしている中澤に、美貴は笑顔で答える。
- 49 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:16
- 「じゃあ、今回は停学っちゅうことで・・・。」
コンコン
稲葉が美貴に停学を言い渡そうとしたときに、ドアのノックの音が聞こえてきた。
「はい、どうぞ〜。」
稲葉の声でドアが開かれる。
そこに立っていたのは、息を切らして立っている愛だった。
「高橋?」
「愛ちゃん・・・。」
愛はゆっくりと美貴達に近づいていく。
「あんな、今ちょっと話ししてるから後にしてもらえんか?」
愛は稲葉の声に耳を傾けずに近づいていく。
そして、美貴の目の前で止まる。
- 50 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:17
- 「何で・・・本当のことを言わないの?」
「嘘ついてるつもりはないけどね。」
「けど、原因は私にあるんでしょう?何でそのことを言わないの?」
「ん〜・・・。」
美貴は頭をかいて愛から目をはずす。
「どういうことや?」
中澤が美貴から愛に目を移す。
「昨日、私は柴田さん達にからまれてたんです。それでかつあげされて、
私に何かしようとした時に藤本さんが助けてくれたんです。藤本さんは悪くありません。」
「・・・そうなんか?藤本?」
「・・・。」
「藤本さんを停学にするようなことがあるんなら、柴田さん達が
話せるようになってからでもいいんじゃないですか?それに四人も
いたんだから正当防衛でしょう?」
愛は必死になって稲葉の説得をする。
- 51 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:18
- 「しかしな・・・。」
「もし、この意見が通らないようであるならば・・・親の力を
使ってでもこの学校を訴えます。」
「!?」
愛の言葉に、他の三人は目を見開いて驚いた。
「・・・わかった。」
稲葉がゆっくりと頷いた。
「高橋の言うことも一理ある。この話しは柴田達が目を
覚ましてからにするわ。」
「・・・ありがとうございます。」
愛は頭を下げて礼を言う。
「んじゃ、私は祐ちゃんと話しがあるから二人はもういいで。」
「わかりました。失礼します。」
「は〜い。」
美貴と愛は、校長室から出て行った。
- 52 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:18
- 徐々に交信します。
ちょっと金版の方が優先されるかもしれませんけど、
ご了承ください。
- 53 名前:konkon 投稿日:2004/08/02(月) 21:20
- >みきっティさん
ありがとうございます。
藤本の過去はちょっと悲しいことが多いんですけど、
応援してあげてください。
>ベイムさん
期待に答えられる自信は正直ありませんけど、
なるべくがんばりたいと思います。
- 54 名前:みきっティー 投稿日:2004/08/02(月) 21:37
- 更新おつかれです。
ガンバレ美貴ちゃん
ガンバレ愛ちゃん
ガンバレ作者さん
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/02(月) 23:17
- 自分は気にならないけど一応
中澤裕子なんで「裕ちゃん」でお願いします
更新、頑張ってください
- 56 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:27
- 「・・・。」
「・・・。」
先ほどから美貴と愛は、ずっと無言で歩いている。
愛は真っ直ぐな目で、一方の美貴は苦笑いでいる。
美貴は何度か話そうとしているのだが、どうも最初の一言が口に出せない。
美貴は決心して愛に話しかけることにした。
「あのぉ、愛ちゃん?」
「・・・何?」
美貴の呼びかけに愛は振り向く。
「・・・怒ってる?」
「何で?」
「いや、美貴、よけいなことしたかな〜って・・・。」
愛は少しの間美貴を見つめたあと、ゆっくりと口を開く。
- 57 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:27
- 「・・・全くだよ。もしこれで停学になってたらどうする気だったの?」
「ん〜、その時はその時かな。」
「あなたが私をかばってくれたのはうれしかった。けど、
逆に言えば私のせいで停学になるとこだったんだよ。
その時私はどうしたらいいの?」
「まぁ・・・。」
「でも・・・ありがとう。」
愛は笑って美貴にお礼を言った。
美貴はその時の愛の顔を見て固まっていた。
「どうしたの?」
「愛ちゃん・・・可愛い〜!!」
美貴はいきなり愛に抱きついた。
- 58 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:28
- 「な、な、な、ななっ!?」
「ん〜、すっごい可愛い!可愛すぎ!」
美貴は一度愛から離れる。
突然の美貴の行動に、愛は口と目を開けて驚いていた。
「いつもそうやって笑ってればいいのにさ、もったいないよ!」
「そそ、そんなことないで!っつうか突然抱きつくなんて何考えとんのや!?」
愛は顔を赤くして美貴を睨みつける。
「・・・ププッ、ハハハハハッ!何、愛ちゃんどこ出身なの?
めちゃくちゃなまってたよ!」
「あ・・・。」
「ねえ、どこの方言?マジサイコーなんだけどっ!キャハハハハッ!」
「ほ、方言なんてでてえんざ!っつか笑いすぎや!」
美貴は腹を押さえてその場にうずくまっている。
- 59 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:29
- 愛は美貴を一瞥して先に行こうとする。
「あ〜、お腹痛い!ちょっ、ちょっと待って・・・。」
美貴はお腹を押さえながら愛についていく。
「愛ちゃん、興奮するとそうなるんだね〜♪めちゃ
いいキャラじゃん!人気者になれるって!」
「別に・・・私は興味ないから。」
「政治家の娘っていうのもさ、いろいろ大変だよね〜。」
「藤本さん・・・。」
「今の愛ちゃんは昔の美貴と同じだね。誰にも心を開こうとしないでさ、
全部自分の中に押し込んじゃってる。それじゃ本当の自分を忘れちゃうよ。」
「・・・。」
「一度自分の殻をぶち破っちゃえば美貴みたいになれるよ♪やってみない?」
「・・・。」
愛はじっと美貴を見つめた後、再び歩き始める。
美貴はそんな愛についていく。
- 60 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:30
- 「・・・やめとくよ。」
「愛ちゃん・・・。」
「藤本さんみたいには・・・なりたくないかな〜。」
「うわっ!それひどくな〜い?」
「ふふっ。」
愛は目の前の階段で止まって美貴を振り向く。
「今日はありがとう。私、行くとこあるから。」
「そっか。んじゃまた明日ね〜。」
美貴は手を振って階段を上っていく愛を見送った。
「やばっ、紺ちゃん待たせっぱなしだった!急がなきゃ!」
美貴は走って教室へと戻っていった。
- 61 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:32
- 教室に入ると、あさ美は一人勉強しているようだった。
「紺ちゃん、遅れてごめん!」
その声に反応してあさ美は振り向いた。
それを確認して美貴は手を合わせて謝る。
「マジごめん!ちょっと中澤先生に野暮用頼まれそうになって断ってたんだ。」
「いえ、気にしてませんから。」
あさ美は笑顔で首を振る。
ふいに、あさ美の目が赤くなっていたことに気が付いた。
「紺ちゃん、目が赤いよ?もしかして・・・」
「えっ、いや、これは・・・。」
「寝ちゃってた?」
「はっ?」
「美貴もよくあるんだよね〜。一人で勉強してるとどうも眠くなっちゃうんだよね。」
「はぁ・・・。」
「寂しかった?ホントごめんね!」
「・・・いえいえ。それでは行きましょうか。」
「うんっ!」
あさ美は先ほどまで泣いていたことを黙っていることにして、
美貴と共に教室を出て行った。
- 62 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:32
- 「こちらが図書室になります。」
「・・・うん。」
美貴は頭の中になんとか教室の場所を叩き込んでいた。
以前にも説明したが、この学校はとにかく広い。
そのためにも覚えなければいけない教室が多すぎるのだ。
「そういえば、愛ちゃん昨日図書室で勉強してるとか言ってたね。」
美貴は昨日のことを思い出してあさ美に聞いてみた。
「はい、愛はよく図書室で勉強してるんですよ。学年で一位、二位を
争うほど頭がいいですからね。」
「へ〜、頭いいんだね。んで愛ちゃんと張り合ってるのって誰なの?」
「私です。」
あさ美は淡々と答えた。
- 63 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:33
- 「は〜、紺ちゃんも頭いいんだ・・・今度美貴に勉強教えてね♪」
「そんな、教えてもらうのは愛の方がいいですよ。愛は教え方も上手ですからね。」
「ん〜、わかった。」
「それでは次に行きましょうか。次はですね・・・。」
「ちょっと待った!」
美貴は手を前に出してあさ美を止める。
「そろそろいいや。美貴は必要最小限にしか覚えられません。」
「そうですか・・・では帰りましょうか?」
「うん。」
美貴とあさ美は方向転換して、昇降口へと向かっていく。
「そういやさ、紺ちゃん何で美貴に対して敬語なの?」
美貴は今まで疑問に思っていたことを聞いてみた。
- 64 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:35
- 「ん〜、失礼かもしれませんけど、藤本さんって何か同じ年って
感じがしないんですよね。」
「・・・ふ〜ん。」
「あの、気を悪くしてしまったらごめんなさい。」
あさ美は慌てて頭を下げる。
「いや、いいんだけどね。意外と鋭いんだな〜って。」
「ほえっ?」
あさ美は聞き取れなかったのか、声が裏返ってしまった。
「紺ちゃんってぼーっとしてる感じだから以外だなってね♪」
「あっ、それは言わないでくださいよ〜・・・。」
「冗談だって。けっこうな時間だし、帰ろうか?」
携帯の時計を見て美貴はあさ美に聞いた。
「そうですね、そろそろ帰りま・・・。」
「そういえば紺ちゃんの番号聞いてなかったな。後で教えてよ・・・ってどうしたの?」
携帯のディスプレイを見て固まっているあさ美を見て、美貴は首を傾げた。
- 65 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:36
- 「いっけない、今日あの日だった!早く行かないと!」
「あ〜、ごめん。美貴が遅れちゃったせいだね。」
「いえ、それでは私は帰ります!」
あさ美はかなり急いでいるのか、走って昇降口へと向かっていく。
が、途中で振り向いて戻ってくる。
「ん?忘れ物?」
「藤本さん、これから時間ありますか?」
「ん〜、今日はバイトもないから暇だね。」
「では、私と一緒にきませんか?面白いものが見れますよ。」
あさ美は目を輝かせて聞いてくる。
「面白いもの?」
「愛の本当の姿、見てみたいと思いませんか?」
「愛ちゃんの・・・本当の姿?」
美貴は一度首を傾げた後、あさ美についていくことにした。
あさ美が美貴に見せたいほどの、愛の本当の姿に興味があったから。
- 66 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:37
- >みきっティさん
ありがとうございます。
できれば紺ちゃんの応援もよろしくですw
>名無し読者さん
ごめんなさい。
何か違和感感じてたんですけど、
字を間違えていたとは・・・。
次からは気をつけます。
- 67 名前:konkon 投稿日:2004/08/05(木) 22:38
- 今日の交信は以上です。
- 68 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/08/05(木) 22:41
- 偶然のリアルタイム!楽しませていただきました。
高橋さん…何なんでしょう…
続き、楽しみにしています!
- 69 名前:MS 投稿日:2004/08/06(金) 23:21
- こちらの方も読まさせていただきました。
こっちはこっちでいいですねぇ。
こういうのも好きです。
愛ちゃんの本当の姿・・・きになります!
更新がんばって〜!
- 70 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:02
- 「こちらになります。」
「ここって・・・ライブハウス?」
あさ美につれられてきたとこは、どこにでもあるようなライブハウスだった。
「ここに愛ちゃんがいるの?」
「はい!では行きましょうか。」
あさ美は楽しそうに答えて中へと入っていく。
美貴もあさ美について入る。
奥へ進んでいくと、カウンターに一人の女性が立っていた。
「お久しぶりです。飯田さん。」
カウンターに立っていた女性に、あさ美は頭を下げてお辞儀する。
「久しぶりだね、紺野。そっちの彼女はお友達なの?」
飯田と呼ばれた女性は、美貴を振り向いて聞いた。
- 71 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:03
- 「初めまして、紺ちゃんの友達の藤本美貴で〜す。」
「フフッ、元気な子だね。私はここのライブハウス、タンポポのオーナーを
やっている飯田圭織よ。よろしくね。」
圭織は笑顔で美貴に自己紹介をした。
「紺野、早く行かないと始まっちゃうよ?」
「あっ、そうですね。それではまた後ほどです。藤本さん、行きましょう!」
「ああ、うん。」
あさ美は圭織にチケットを二枚渡すと、美貴の手を引いて奥にある
扉の中へと入っていった。
中ではたくさんの人達が盛り上がっていた。
今は全然知らないバンドが歌っている。
「紺ちゃん、チケット代っていくら?」
美貴はかばんから財布を取り出してあさ美に聞いた。
- 72 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:05
- 「ああ、いいですよ。本当は妹とこようと思ったんですけど、
何か用事ができたとかでこれなくなってしまったんですよ。
だからチケットが余ってたので気にしないでください。」
「そっか。そういや愛ちゃんはどこにいんだろ?」
美貴は周りを見渡して愛の姿を探す。
ライブを聞いてノリノリの愛の姿を思い浮かべる。
だが、全然イメージがつかめなくて美貴は苦笑いを浮かべる。
それが本当の姿だとしたら、それはそれで確かに見る価値がある。
美貴があさ美を見ると、愛を探しているわけでもなく、何やら携帯を
いじっているようだ。
「紺ちゃん、ライブ見にきたんじゃないの?それに愛ちゃんもいないし?」
「それはすぐにわかりますよ♪」
あさ美は携帯を閉まってステージを見上げる。
美貴もつられてステージを見る。
- 73 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:08
- どうやら演奏が終わったようで、今やっていたバンドが裏へと帰っていく。
少しすると、今度は女の子が何人か出てきて演奏の準備を始める。
次はこの子達が歌うのだろうか、それに美貴も興味を持ち出して
ステージを見つめる。
最後に一人の少女がマイクを持ってステージの真ん中に立つ。
その少女を見て、美貴は目を見開いて驚いた。
「愛ちゃんっ!?」
ステージでマイクを片手に観客に手を振っている少女、それは
先ほどまで話しをしていたクラスメイトの愛だった。
クラスにいる時とは全く別人で、とても楽しそうな顔をしている。
「みんな〜、よくきたで!次はうちらの歌を聴いてや〜!」
観客達の歓声が部屋全体に鳴り響く。
「そんじゃいくでっ!まずはvictory!」
愛が勢いよく歌いだす。
- 74 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:09
- その声はとても綺麗でかつパワーがあり、それでいて圧倒されると
いうよりもどこか引っ張られる感じだった。
愛は踊るように体でリズムをとりながら歌っていく。
愛だけではなく、二人のベースが鮮やかに音を協調させ、ドラムが
力強い音をたててリズムを作り出す。
そして、愛の引き付けられる歌声に美貴は完全に酔っていた。
ただ、一つだけ気になることがあった。
それはギターの音が、他の四人とは一致していないような感じがした。
二人のベーシストにドラマー、そして愛の声、この四人はどこにもないような独特の雰囲気を作り上げている。
しかし、このギタリストだけは何かがずれている。
いや、音がずれているわけでもなく、リズムがとれていないわけでもない。
それでも美貴には違和感があるように感じていた。
- 75 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:09
- 恐らくこの部屋にいるほとんどの人間が気付いていないだろう。
それをかき消すほどの力を、このバンドは持っているからだ。
愛の本当の姿、美貴は感動してステージに魅入っていた。
一曲目が終わる。
「まだまだいくで!みんなついてきてや〜!」
さらに観客達のボルテージは上がっていく。
「次の曲、soap bubble!」
愛は先ほどよりも激しく体を暴れさせながら歌っていく。
美貴は愛の歌っている姿に魅了されつつあった。
「藤本さん、どうですか?愛、かっこいいでしょう?」
あさ美が笑顔で美貴を振り向いた。
「すごい、すごすぎだよ!愛ちゃん、マジかっこいいよ!」
美貴は愛から視線をはずさずに答えた。
- 76 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:10
- 「それはよかったです。月に一度しかやりませんから、あまり
見ることができないんですよ。」
「それだけしかやらないんだ・・・。」
「何でも、愛のお父さんは厳しい人ですから、勉強させられてばかりで
なかなか時間が取れないとのことです。」
「そっか・・・愛ちゃんのお父さんも政治家だったね。政治家って
いうのはみんなそうなんかね〜?」
美貴はそれでも視線をはずさずに、ステージを見つめ続けている。
いつまでも聴いていたい、心から美貴はそう思っていた。
「最後に新曲いくわっ!しっかりと目と耳に焼き尽くしてや!」
観客達は腕を振り上げながら声援を送る。
- 77 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:11
- 「そんじゃ、聴いてくれや。MY DEAR BOY。」
かっこいいギターの音と共に、イントロが始まっていく。
次の瞬間、耳に響き渡るようなドラムの音と、
綺麗なベースの音がハモっていく。
さらに愛の力強い歌声に、美貴は武者震いをした。
そして、こうも考えるようになっていた。
「美貴もバンドやりたい・・・。」
美貴はステージを見ながら呟いた。
「え、何か言いましたか?」
あさ美は美貴の呟きを聞きとれなくて、振り向いて聞いた。
美貴はステージを見つめたまま、あさ美の問いに答えることはなかった。
- 78 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:11
- 今日の交信はここまでです。
- 79 名前:konkon 投稿日:2004/08/09(月) 01:13
- >名無し飼育さん
ありがとうございます。
ご期待に答えられるように
がんばりたいと思います。
>MSさん
こちらまで読んでいただけるとは嬉しい限りです。
どちらもがんばっていきたいと思います。
- 80 名前:MS 投稿日:2004/08/09(月) 21:30
- おお〜、バンドですか。
今後のミキティどうなっていくか
交信(更新)待ってます。
- 81 名前:みきっティー 投稿日:2004/08/10(火) 02:05
- 更新おつかれさまです。
すげぇー、まさかこんな展開でくるとは・・・
これからも3人の動きに目が離せません
- 82 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:46
- 「みんなありがとな〜!また見にきてくれやっ!」
愛は手を振りながら、他のメンバーと共に裏へと帰っていく。
愛の最後の言葉に、部屋中に歓声が鳴り響いている。
美貴は最後まで愛を見つめ続けていた。
「藤本さん、帰りましょう。」
あさ美は美貴を振り向いて言った。
愛達のバンドが最後だったらしく、他の客は
みんな部屋から出て行っている。
「藤本さん?」
美貴が全く反応しなかったので、あさ美は軽く美貴の肩を叩いた。
「ん、何?紺ちゃん?」
そこでようやく美貴はあさ美を振り向いた。
「あの、もう終わったので帰りませんか?」
周りにはすでに、ほとんど人がいなくなっていた。
- 83 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:47
- 「・・・うん。」
「さあ、行きましょう。」
出口に向かっていくあさ美に、美貴はステージを何度も
振り返りながらついていった。
「よっ、どうだった?今日のhigh bridgeは?」
カウンターを通り過ぎようとしていたとこを、圭織が話しかけてきた。
「やっぱり愛はかっこいいですね。友達として尊敬します!」
あさ美は笑顔で答える。
「high bridgeっていうんだ・・・。」
「藤本さんはどうだった?」
「呼び捨てでいいですよ。その方が楽なんで。それより
聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
美貴は真剣な目で圭織を見つめる。
- 84 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:49
- 「何?」
「今日やってたその、high bridgeですか?そこのギターの人って
愛ちゃんのバンドの人ですか?」
「・・・どうしてそう思うの?」
「何か、他のバンドの人達と何か違うっていうか、合ってなかったって
いう感じだったんすよね。」
圭織はその言葉に目を見開いて驚いた。
「えっ、あなた今日初めて聞いたのよね?どうしてわかったの?」
「ん〜、そういう感じがしたからですかね?」
圭織はじっと美貴を見つめてから、視線を上に向けて話し始める。
「そう、あの子達のバンドにはギタリストがいないの。あの四人特有の
雰囲気っていうのかな。それに合わせられる人がなかなか見つからないみたい。
だから今日弾いてたギタリストもさ、他のバンドからレンタルしてやったのよ。
音を合わせることはできたみたいだけど、やっぱりほんの少しだけ何か違和感は
したのよね。まさかそれに気付くなんてね・・・。」
圭織は呟くように話す。
- 85 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:49
- 「そこで相談なんですけどいいですか?」
「?」
「愛ちゃん達、まだ楽屋にいますよね?」
「そうだね、まだ出てきてないようだけど・・・。」
「美貴、high bridgeに入りたいです!」
「「えっ!?」」
それまで話しを聞いていたあさ美も圭織と一緒になって驚いた。
「藤本さん、ギター弾けるんですか?」
「一通りはできるよ。くそ親父に隠れてけっこう弾いてたからね♪」
「・・・本気で言ってるの?」
圭織は真剣な顔で美貴を見つめる。
- 86 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:50
- 「もちろんですよ!」
美貴もまた、圭織の目を見つめて答える。
「・・・いいわ、ついてらっしゃい。あくまであなたを採用するか
どうかを決めるのは、高橋達だけどね。」
圭織はそれだけ言って奥の方へと出ていった。
「藤本さん・・・。」
あさ美は心配そうな顔で美貴を見つめている。
「紺ちゃんも行こう!愛ちゃんもいるからさ。」
「えっ・・・はい。」
美貴はあさ美の手を引いて、圭織の後を追っていった。
- 87 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:52
- 「ここに高橋達はいるわ。」
圭織はある一つの部屋の前で立っていた。
「ここか・・・う〜、緊張してきた!」
「藤本さんでも緊張することあるんですね。」
「紺ちゃん、何気に毒舌だね・・・。」
コンコン
「入るよ。」
圭織はノックして部屋へと入っていく。
美貴とあさ美も圭織について入っていく。
部屋の中には、先ほどまでライブをやっていた四人の少女の
姿が目に入った。
- 88 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:53
- 一人はなぜか、普通の倍はあるだろう鏡を持ってじっと自分を
見つめているようだ。
一人は椅子に座って、MDウォークマンを聞きながら足で
リズムをとって鼻歌を歌っている。
一人は先ほどまでライブをやってて暑いはずなのに、湯気が出ている
湯のみを持ってぼーっとしている。
そして、愛は焦点の合わない目で上を見上げていた。
「ん〜、飯田さん、その人は誰ですか〜?」
湯のみを持った少女の声に、他の三人の視線が一斉に美貴にきた。
愛はかなり驚いているのか、目を見開いて美貴を見ている。
「あさ美、何でここに藤本さんがいるのよ?」
愛は睨みつけるようにあさ美を見て聞いた。
- 89 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:54
- 「ほんとは妹とこようと思ったんだけどね、用事ができたって
言ってたから藤本さんを誘ったんだよ。」
「何で藤本さんを連れてきたのよ?」
「だって、他の人を誘おうとしたら愛、やだって言ってたじゃない。
けど、藤本さんなら話しもしたし平気かなって思ってね。」
「・・・。」
愛はあさ美から視線をはずして俯いた。
「あれ、あなたは確かあの時の・・・。」
「ん、・・・あー!昨日の・・・。」
「ん、知り合いなの?」
圭織が美貴を振り向いて聞いた。
「ん〜っと、昨日美貴が学校で迷ってたら、あの子達が
助けてくれたんです。」
美貴は笑顔で二人に近づいていく。
- 90 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:55
- 「初めまして、藤本美貴です。昨日はありがとね。それと、今日の
ライブすっごいかっこよかったよ!」
「はい、ありがとうございます。道重さゆみっていいま〜す。」
鏡を見ていた子は元気に答える。
「・・・どうも。田中れいなです。」
ウォークマンを聞いていた子は、少し顔を赤らめて自己紹介をした。
「絵里、こっちおいで〜。」
さゆみは手招きして、湯のみを持っている少女を呼びかける。
絵里と呼ばれた少女はゆっくりとした動作で、美貴に向かって歩いてくる。
「愛ちゃんのクラスメイトの藤本美貴です。よろしくね。」
「藤本美貴さん・・・。」
絵里はそれだけ呟くと、上を向いて固まってしまった。
- 91 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:56
- 「あれ?美貴、何かおかしなこと言ったっけ・・・?」
「あ、気にしないでください。この子、たまにこうなっちゃうんです。
絵里〜、起きなさ〜い!」
さゆみは絵里の肩を叩いて呼びかける。
「あ、ごめんなさい。亀井絵里っていいます。こちらこそよろしくお願いしま〜す。」
「(大丈夫かな、この子・・・。)」
美貴の中での絵里の第一印象は、不安の一文字だけだった。
「それで、何しにきたの?」
愛は機嫌が直っていないのか、鋭い目つきで美貴に聞いた。
「藤本がさ、高橋達のバンドに入りたいんだって。」
美貴の代わりに答えた圭織の言葉に、四人は驚いた。
「えっ、うそ、そうなんですか〜!?」
「マジで言っとんのですか?」
「うちのバンドは厳しいですよ〜。」
愛を除く三人が美貴に集まって聞いていく。
- 92 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 21:57
- 「ほんとだよ。美貴、今日high bridgeのバンドに一目惚れしちゃったんだ。」
美貴は笑顔で答える。
「・・・ふざけないで。」
突然の愛の言葉に一斉に静まり返った。
「私達は本気で上を目指してがんばってんの。一目惚れしたから入りたい、
私達をなめてんの?そんな簡単になれるもんじゃないんだよ。わかってんの?」
「美貴だって本気だよ。」
美貴と愛は真剣な目で見つめ合う。
「はいはい、そこまで。」
それまで黙って見ていた圭織が、手を叩いて二人の間に入った。
「高橋、一度でいいから藤本の音楽を聴いてみればいいじゃん。
それから答えを出しても遅くはないでしょ?」
「そうですけど・・・。」
愛は納得しかない顔で圭織を見ている。
- 93 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 22:02
- 「藤本もさ、ちょっと軽率じゃないの?ここにいる人達は本気で
バンドをやりたいって思う人が集まるの。それを簡単にこのバンドに入る、
じゃ誰も認めるわけないでしょ?」
「飯田さん、美貴は本気です。」
美貴は一向に引き下がろうとしない。
その時、愛が奥にあるロッカーから何枚かの紙を取って美貴に差し出す。
どうやらギターのコードが書いてあるようだ。
曲名はsoap bubble、と書いてある。
「一週間後にテストします。その時に・・・。」
「この曲って今日やってたやつだよね?」
「そうだけど?」
愛は首を傾げて聞いた。
- 94 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 22:03
- 「だったら今からやろうよ?」
「ハァッ!?」
そこにいたあさ美以外の五人は声を揃えて驚いた。
今日始めて聴いた曲をすぐに弾こうというのだ。
そんなことを聞けば、誰もが驚くだろう。
「美貴、早くみんなと弾いてみたくて仕方ないんだよね!」
「・・・今から?」
「そうだよ。美貴の本気、見せてあげるよ。」
美貴は不敵な笑みを浮かべて愛を見つめていた。
- 95 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 22:03
- 交信しました♪
- 96 名前:konkon 投稿日:2004/08/12(木) 22:06
- >MSさん
金版、緑版、どちらも見ていただいて
ありがとうございます。
こちらではいろいろとやってみたいと思います。
>みきっティーさん
今のところは愛ちゃん、紺ちゃん、ミキティの三人がメインですかね。
ちょっと混乱ぎみで書いてます。
ご理解できないところは自分の力不足ということで
お詫び申し上げます・・・。
- 97 名前:MS 投稿日:2004/08/12(木) 23:24
- 金版、緑版、2つも書くのは大変だと思うけど
両方とも焦らず頑張ってください。
ミキティどうなるのかな?
次回の交信お待ちしております。
- 98 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:03
- 「分かった。」
美貴と愛が見つめ合っているところで、口を開いたのは圭織だった。
「でも飯田さん・・・。」
「いいんじゃない、やってみても。何で今日聴いたばっかりの藤本が、
ここまで自信あるのかはわからないけどさ、やりたいっていうんだから
やってあげなよ。それでわかることだしね。」
「・・・わかりました。絵里、れいな、さゆ、それでいい?」
愛は難しそうな顔をしながら三人を振り向いた。
「絵里はいいですよ〜。」
「さゆも〜。」
「れいなも平気です。」
三人は笑顔で首を頷ける。
- 99 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:04
- 「それじゃ、今からさっきのステージでやってみようか。」
「あ、ちょっといいですか?」
移動を始めようとしたところで美貴が手を上げる。
「美貴、今ギターないんで貸してもらってもいいですか?」
「いいわよ。それは後で持っていってあげるから、先に行ってなさい。」
「は〜い。」
美貴は元気に返事をして部屋を出ていった。
他のみんなも部屋からぞろぞろと出ていく。
その中で愛だけはその場に立ち尽くしていた。
「できるわけ・・・ないじゃん・・・。」
愛は仕方なく、重い足取りでステージへと向かっていった。
- 100 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:05
- 「はい。これでいい?」
「お〜、ありがとうございます!」
ステージで絵里達と話していた美貴に、圭織が裏から持ってきたギターを手渡した。
「ねえ、ちょっとだけ、ほんの五分くらいでいいから練習させてもらってもらうね!」
美貴は絵里達に手を合わせて謝りながら、ギターの感触を確かめる。
美貴がギターを弾き出した時、ステージにいた三人は感嘆していた。
「(藤本さん、うまいじゃん。)」
「(どっかでやってたのかな?)」
「(自信あるだけあるとね。)」
ステージにいた三人は、思わず美貴のギターに魅入っていた。
「すごいな〜、藤本さん・・・。」
「確かにうまいね。けっこうやってたんじゃないかな?」
あさ美と圭織は素直に意見を述べる。
「(けど・・・まだまだだね。)」
その中で、愛だけは現実を見ていた。
- 101 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:05
- 確かにうまいけど、それだけじゃこの世界ではやっていけない。
それ以前に、愛のいるhigh bridgeには入れられない。
それが愛の感想だった。
「ごめんね。もういいよ〜。」
美貴がギターを弾くのをやめて、ベースとドラムを構えている三人を振り向いた。
「それじゃ、いきますよ。」
絵里の合図でさゆみとれいなが曲を弾き始める。
それに美貴も続いて弾いていく。
しかし、
「・・・だめじゃん。」
「藤本さん・・・。」
圭織とあさ美は心配そうに美貴を見つめる。
美貴は全然音を合わせられていなかった。
三人が作るリズムに全く乗れず、なんとか弾いている感じであった。
「(はぁ、結局こんなもんか・・・。)」
愛は心の中で落胆していた。
だが、その気持ちが徐々に変わっていくことになる。
- 102 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:06
- そろそろサビに入ろうかというところで、それは起こった。
愛は思わず立ち上がった。
美貴がちゃんと三人に合わせて弾けてきたのだ。
微妙に音がはずしたりずれたりはしているのだが、それでもまるで、
何度もこの曲を弾いたことがあるように、違和感なく弾いていたのだ。
それだけではなかった。
今まで誰一人として出せなかった、high bridge特有の雰囲気を出してきているのだ。
どんなにうまいギターを弾ける人間がいたとしても、周りに合わせることが
できなければそれはバンドとして成り立たない。
美貴は完全にhigh bridgeと同化しきっていた。
「(すごか・・・。)」
「(私達に・・・。)」
「(合わせてるよ・・・。)」
演奏している三人も、手を止めずに美貴のギターに感心しながら聴いていた。
- 103 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:09
- 演奏している三人も、手を止めずに美貴のギターに感心しながら聴いていた。
「(私達だって負けてられない!)」
曲はさらに激しくなっていく。
「すごいよ!なんかすごくない?・・・愛?」
あさ美の呼びかけに答えずに、突然愛がステージに向かって歩き出した。
そして、ステージに上ると愛はマイクを持って歌い始めた。
「(愛ちゃん・・・。)」
美貴を入れたhigh bridgeがステージで演奏している。
その光景を見て、圭織とあさ美は嬉しそうに聴いていた。
「何か・・・楽しそうですね〜。」
「そうね。聴いてるこっちにも伝わるくらいにね。」
そうして歌が終わっていった。
- 104 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:09
- 「ふ〜・・・。気持ちよかった〜!」
美貴はギターを置いてその場に座り込んだ。
「藤本さんすごかったですよ!」
「私達と合ってましたよ〜。」
「どっかでバンドとか組んでたとですか?」
絵里とさゆみとれいなは、美貴のそばまで走って近づいてきた。
「ううん、人に合わせて弾いたのは今日が初めてだよ。」
「「「ええっ!?」」」
三人は声を上げて驚いた。
「美貴ね、誰かに聴かせたことは・・・まあ一人だけいるけど、
誰かと弾いたっていうのは初めてだったんだ。」
「それであんなにうまく・・・。」
「そうでもないよ。最初なんか合わせたことなかったから、
超戸惑っちゃって外しまくってたからね。」
美貴は笑いながら話す。
- 105 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:10
- 「でも、一回しか聴いたことなかったとですよね?何でもう弾けるとです?」
れいなが首を傾げて美貴に聞いた。
「ん〜とね、美貴って一度聴いた歌ってめったに忘れないんだよね。
それが印象に残った歌なんかは特にね。それと、絶対音感って知ってるかな?
ある音の高さをね、他の音と比較せずに識別する能力らしいんだけど、
美貴はそれを持ってるらしいの。だからギターの音だけを正確に
聴きだすことができたんだ。」
「「「は〜・・・。」」」
絵里達は関心して聞いていた。
「愛ちゃん・・・美貴、どうだった?」
美貴は愛を振り向いて聞いてみた。
愛は先ほどからマイクを持ったまま俯いている。
「・・・全然だめだよ。」
少ししてから愛は上を向いて答えた。
- 106 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:11
- 「そっか・・・。」
美貴は少し寂しげな表情で下を向いた。
「・・・もっとうまくならなきゃ。でないと、来てくれるお客さんに
聴かせられない。 だから・・・これからがんばろう。私達と一緒にね。」
「えっ、ってことは・・・。」
「私は・・・すごくよかったと思う。加入を認めます。」
「・・・ほんと!?ほんとに!?」
「・・・うん。」
「よっしゃーっ!!」
美貴は立ち上がってガッツポーズを取った。
「ありがとう!愛ちゃん!」
美貴は走って愛に抱きつこうとした。
しかし、それより早く愛が振り向いて手で美貴を制する。
- 107 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:12
- 「ただし!」
「はいっ!?」
「足を引っ張るようなら脱退させるからね。」
「もちろん!美貴、がんばるよっ!」
「それでいい?」
愛は絵里達を振り向いて聞いた。
「いいと思いますよ〜。」
「おもしろそうだしね♪」
「れいな達は高橋さんの意見に賛成ですよ。」
三人は笑って答える。
「よかったじゃない。大変なのはこれからだけどね。」
圭織がステージの下まで歩いてくる。
「はいっ!もう絶対やってみせますよ!」
「何で高橋が途中から歌い始めたかわかる?」
「?」
美貴は首を傾けて圭織を見る。
- 108 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:13
- 「それはね、藤本が楽しそうに弾いてるからだよ。あんなに楽しそうに
弾いてる人なんて、そうはいないと思うんだ。音楽っていうのはね、
音を楽しむって書くでしょ?その点では、藤本はちゃんと音楽を
やってたと思うんだ。高橋はそこをよく熟知してる。だから、
そんな藤本に惹かれて歌いたくなったんだろうね。」
「・・・そうなの?」
美貴は愛を向いて聞いた。
愛はその質問に答えずに、絵里達の方を振り向いた。
「絵里、後で藤本さんに楽譜とMD渡しておいて。」
「は〜い。」
「そういうことだから・・・期待してるからね。」
愛は最後の方だけ小さく呟いて、ステージを降りていった。
「愛ちゃん・・・任せてよ!」
美貴はステージを降りていく愛の後ろ姿に、自分の胸を叩いてみせた。
- 109 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:14
- 「愛、よかったね!」
ステージを降りた愛にあさ美は近寄ってそう言った。
「何で藤本さんじゃなくて私に言うの?」
「だって愛、楽しそうなんだもん。」
あさ美は愛の顔を覗き込んでそう答える。
「別に。」
「またまた照れちゃって〜、愛だって本当は嬉しいんでしょ?」
「・・・さってね。」
愛はほんの少しだけ笑って楽屋へと戻っていった。
けれど、長年付き合っているあさ美は知っている。
あの表情は、愛が心の底から喜んでいる表情だということを。
「もしかしたら、藤本さんが愛を本当の愛に変えてくれるかも・・・。」
あさ美はその場でそう小さく呟いてから、美貴達のいる元へと向かっていった。
- 110 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:14
- 今日はここまでです
- 111 名前:konkon 投稿日:2004/08/19(木) 22:15
- >MSさん
ありがとうございます。
どちらもめげずにがんばっていきたいと思いますw
- 112 名前:MS 投稿日:2004/08/19(木) 23:45
- 愛ちゃん厳しいですね。
でも現実を見るって事はそういう事なんですね。
次の更新もお待ちしております。
- 113 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:02
- 「うん、いいと思うよ。」
圭織は満足そうに頷きながら、ステージに立っている愛達に近づいていった。
美貴が加入してから一週間後の今日、初めて美貴を含んだhigh bridgeが練習をしたのだ。
そして、一通りの練習が終わったあとに、圭織に聞いてもらっていた。
「藤本がいても、もう違和感ないよ。今まで誰かを代理で使うよりも全然いいと思うよ。」
「ホントですか!?」
美貴はギターを持ったまま圭織に駆け寄っていく。
「うん、藤本はこの一週間ですごくうまくなったよ。」
「あ〜、やっぱ美貴って天才だね♪」
「天才にしてはずいぶんと音をはずしてましたね〜。」
絵里はのんびりとした表情に似合わない毒を吐いた。
「うぐっ、亀ちゃん痛いな〜・・・。」
美貴は座り込んでいじけ始める。
- 114 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:04
- 「(ある意味天才だよね。)」
「(うん、努力の天才とね。)」
さゆみとれいなは、少し離れたとこで話していた。
美貴がhigh bridgeに加入してからの一週間、美貴はギターを触らない日はなかった。
バイトが終わったあとに近くの公園で弾いていたり、先生にも内緒で
屋上で弾いていた時もあった。
コードなどが読めなかったりわからなかったりした時には、愛だけではなく
二年の絵里や一年のさゆみ、れいなの教室まで駆け込んで教えてもらったりしていた。
そのため、美貴は高校で有名人と化していた。
それを本人が知るよしはなかったが。
「もっとうまくなって、近いうちに亀ちゃんを追い抜いてやるからね!」
「はいは〜い♪期待して待ってますよ。」
絵里と美貴は少しの間見つめあったあと、笑い合った。
そこにさゆみとれいなも話しに加わっていく。
- 115 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:05
- 「藤本が入ってさ、よかったと思わない?」
圭織はただ上を見つめている愛に声をかけた。
「・・・まだわかりませんよ。入ったばっかりだし、今の段階では、
まだバンドとして成り立ってません。」
「本当にそう思う?」
「?」
その言葉に愛は圭織を振り向いた。
「気付いてないかもしれないけどさ、藤本が入った後の高橋ってすごい
楽しそうに歌うようになったんだよ。それは他の三人も同じことが言える。
何かから解放されたように楽しんでるんだよ。あの子には、きっとそういう力があるんだよ。」
「・・・。」
「たぶん、そのうちわかるよ。あの子がいることでhigh bridgeが
どう変わっていくのか、圭織はすごい楽しみだよ。」
「・・・そうは言ってもまだまだですよ。」
愛は軽く笑ってそう答える。
- 116 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:05
- 「それに、高橋も変わってきてるしね。」
「はい?何か言いましたか?」
圭織の呟きに愛は首を傾げて聞いた。
「ううん、何でもないよ。時間も遅いし、そろそろ終わりにした方がいいよ。」
「そうですね。」
時刻は八時を指していた。
美貴達は一通り片付けを終わらしてから、外へと出て行った。
「「「お疲れ様でした〜!」」」
「お疲れ。」
「また明日ね〜!」
帰り道が違う絵里達は、三人並んで帰っていった。
- 117 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:07
- そこで美貴はあることに気付いた。
「ねえ愛ちゃん、何か亀ちゃんって他の二人よりも一歩離れてる
感じがするのって、美貴の気のせいかな?」
「・・・さゆとれいなは付き合ってるんだよ。」
愛は前を向いたまま答える。
「へっ、そうなんだ〜。」
美貴は一瞬だけ驚いて、首を頷かせた。
「絵里は優しいから、二人を気遣って少し下がったとこから見守ってるんだよ。
あの三人はね・・・。」
「愛ちゃんさ、この後時間あいてる?」
美貴の突然の質問に愛は美貴を振り向いた。
「もしよかったらさ、一緒に晩御飯でも食べに行かない?美貴ね、
いいとこ知ってるんだよ〜!」
愛はしばらくの間、口を開かずに美貴を見つめ続けていた。
- 118 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:09
- 「ここだよ♪」
「ここ・・・?」
美貴が愛を連れてきたとこは、どこにでもあるような定食屋だった。
美貴に晩御飯を誘われた時、愛は断ろうとしていた。
しかし、なぜか無意識のうちに頷いていた。
心のどこかで、美貴と話しをしたいと思っていたのかもしれない。
「さっ、入ろうよ!」
「あっ・・・。」
美貴は愛の手を引いて中へと入って行った。
「店長、久ぶりだぜっ!」
「いらっしゃっ・・・何だよ〜、若い子が入ってきたと思ったら美貴ちゃんか〜。」
景気よく声を上げた男は、わざとらしく首を竦めた。
- 119 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:09
- 「何、文句があるなら帰るけど?」
「冗談だよ。そんなに怒るなよ〜。」
「全く、せっかく美少女が二人もきてあげたっていうのにさ〜。」
「おっ、確かにそっちの子は可愛いね〜。美貴ちゃんの友達かい?」
「美貴も可愛いんです〜!そ、美貴の学校の友達の愛ちゃん♪」
「・・・どうも。」
愛は緊張しているのか、先ほどから周りを見渡している。
「こんな店だけどさ、味は美貴が保障するよ。」
「こんな店はねえだろよ〜。うまいのは確かだけどな!」
「自分で言うなっての。あ、あそこ座ろう。」
美貴は空いていた席に座り込む。
愛は美貴と向かい合うように座った。
- 120 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:10
- 「・・・さっきの人と知り合いなの?」
愛は呟くように美貴に聞いた。
「うん、美貴が一人暮らし始めて最初の頃はさ、あまり自炊は
しなかったんだよね〜。それで適当にいろんなとこで食べてたんだけどね、
ここの料理はかなりおいしかったんだよ!店長も気さくな人でさ、美貴は
一人だったからけっこう救われたんだ。」
「そうだったんだ・・・。」
「さってメニューは何にしますか?」
先ほどの店長が笑顔で注文をとりにきた。
「美貴はいつも通り、焼肉定食の大盛りで!」
「ハイよっ!そっちのお嬢ちゃんは何にする?」
「えっと、メニューは・・・。」
愛は落ち着かない素振りで店長に聞いた。
- 121 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:11
- 「あ〜、ここはメニューがないの。こう見えてこの人いろんなもの
作れるから、適当に注文すれば作ってくれるよ。」
「そういうことよっ!」
店長はガッツポーズを愛に見せる。
「じゃあ・・・ソースカツ丼を・・・。」
「ソースカツ丼か・・・よっし作ってみっか!」
「美貴のお客様なんだからね〜、失敗したらタダだからね。」
「おう、任せろい!」
店長が厨房に戻っていくと、美貴は大声を上げて笑い出した。
「愛ちゃんがソースカツ丼・・・キャハハハッ!」
「・・・何?」
愛が睨みつけるように美貴を見た。
- 122 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:12
- 「だって・・・ククッ、愛ちゃん見たまんまお嬢様育ちって感じだからさ〜。
絶対そういうの頼まないと思って・・・。」
美貴の笑いは止まらない。
周りの客は美貴のことを知っているのか、見向きもせずに料理を食べている。
「ねえ、何でソースカツ丼なの?」
ようやく笑いが止まった美貴が、愛を振り向いて聞いた。
「昔、福井のお婆ちゃんの家で作ってもらったんだ。その時の味が
忘れられなくてね。もう何年も昔だけどね・・・。もう行くことも
できないだろうし。」
「そっか・・・愛ちゃんは今までどうだった?美貴、愛ちゃんのこと知りたいな。」
「私は・・・。」
愛はしみじみと話しだした。
- 123 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:13
- 「確かあなたのお父さんが、大臣に当選した辺りからだった。私のお父さんも
有力候補だった。いや、当選確実って言われていた。けど、大臣になったのは
藤本さんのお父さんだった。そこから父は変わった。私のことを縛り付けるように
なった。家にいても常に勉強させられて、父に代わって大臣になれとでも言わんばかりに、
ずっと政治がどうのって話しばかりさせられて、私が私じゃなくなっていくようだった。」
「そっか・・・。」
「そこからは自分の殻に閉じこもるようになった。テレビも見れないから周りの話しにも
ついていけないし、何より自由が無かった。だから遊びに行くこともできずに、友達は
みんな離れていった。それからは一人になることが当たり前になった・・・。」
「けどさ、紺ちゃんがいるじゃん!美貴だっているしね♪」
美貴は笑顔で愛の頭を軽く撫でた。
- 124 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:15
- 「今はバンドをやって、それをお父さんに認めてもらうために
がんばってる。これが認められれば、私は本当の自由になれるって
信じてるから。」
愛の目は真っ直ぐだった。
それを美貴は惹かれるように見つめていた。
「藤本さんは・・・どうだったの?」
「美貴?美貴の過去も暗いよ〜。それでも聞く?」
美貴は笑顔で言うと、愛は軽く首を頷けた。
「美貴も同じ時くらいからね、くそ親父からの虐待が始まったんだ。
家にいる時にはいつも殴られてたってくらいやられてたんだ。
お母さんはそれより前に離婚しちゃっててね。お姉ちゃんもいたんだけど、
お母さんと一緒にどっか行っちゃったんだ。」
- 125 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:16
- 「お姉ちゃんがいたんだ・・・。」
「うん、今はどこにいるかわからないけどね。そこからは殴られてばかりの
生活の日々だったよ。顔に痣ができて学校に行けない日とかもあったり、
悲惨な時には骨が折られた時もあったよ。それでいて勉強しろだの学校から
帰った直後に部屋の中に閉じ込められて、何人もの家庭教師に押さえつけられて
勉強の毎日だった。先生も友達も何もしてくれなかったよ。くそ親父に何も
されたくなかったんだろうね。当時でもけっこうな権力持ってたから、怖かったんだと思う。
美貴は特に何も言えなかったけどね。だから本当の自分を隠して生きていた。」
「・・・。」
「今さ、意外だなって思ったでしょ?」
「えっ、いやそんなことは・・・。」
「想像つかないでしょ?美貴が根暗だったとこって。」
「うん。」
愛はすぐに二回首を頷けた。
- 126 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:17
- 「即答かい!まあいいや。根暗ってわけじゃなかったんだけどさ、
いつも空回りしてた。本当の自分を隠して、誰とでもただ話してれば
いいって感じだった。けど、中3の時だったかな。自分を変えてくれた、本
当の友達に会えることができたんだ。」
「本当の・・・友達?」
「うん!何でも言い合える、心の底から信頼できる友達だよ。」
美貴はそこで話しをくぎる。
「その人は、今どうしてるの・・・?」
「知らないんだな〜、これが。その子転勤族だったからさ、三ヶ月くらいしか一緒に
いられなかかったんだ。でも、その分いろいろと話しをしたし、分かり合えたと思う。
美貴が勝手にそう思ってるだけかもしれないけどさ、美貴にとってすごく大切な友達だよ。」
「そうだったんだ・・・。」
「その子に会えたから、美貴はもう何にも負けないって決めたんだ。いつかその子に胸を張って
そう言えるように、くそ親父を殴り返せるくらい強くなって、いつか本当の自由を手にするためにね。」
美貴は一息ついて愛の顔を覗き込んだ。
- 127 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:18
- 「愛ちゃんにも絶対できるよ。そういう自分にとって大切な人達がね。」
「私にも・・・?」
「ちょっと違うな。愛ちゃんには愛ちゃんを思ってくれる人達が
たくさんいるじゃん。田中ちゃんや重さん、亀ちゃんや飯田さんだっている。
何よりも紺ちゃんがいるしね。それに・・・美貴も愛ちゃんにとって大切な人に
なりたい。」
「藤本さん・・・。」
「あとは愛ちゃん次第だよ。夢の翼を広げて自分をぶち破れ!それができれば
あとは完璧〜♪今は苦しいかもしれないけどさ、がんばろう!美貴もついてるからさ!」
「・・・それが不安なんだよね。」
「うわっ、出た!愛ちゃんの毒舌・・・。」
「フフッ、藤本さん特有だよ。」
「・・・それは喜んでいいのかな?」
美貴は首を傾げて唸る。
それを見て、愛は軽く笑った。
- 128 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:19
- 「さあ、できたぞ〜!」
厨房から店長がお盆に料理を乗せて出てきた。
美貴の前に焼肉定食、愛の前にソースカツ丼が置かれた。
「滅多に作らないけど、うまくできてると思うよ。」
「だから自分で言うなっての。愛ちゃん、食べてみてよ。」
美貴は軽く店長に突っ込んで愛を見つめる。
愛は少し恥ずかしそうに一口食べてみる。
「あ、おいしい・・・。」
「よかったじゃん、タダじゃなくなってさ。」
「だから言ったろ、うまくできたって。ところで何の話しをしてたんだい?」
「あ〜、もう、乙女の会話に口を挟むもんじゃないよ。料理運んだら行った行った〜!」
「ちぇっ、つれないな〜、美貴ちゃんは。」
店長は軽口を叩くと、厨房へと戻っていった。
- 129 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:19
- 「ね、うまいでしょ?」
美貴は焼肉を口に頬張って愛に聞いた。
「うん。すごくおいしいよ・・・。」
「そか、よかった〜♪」
愛がおいしそうに食べているのを見て、美貴は嬉しそうに焼肉を口に入れていく。
「そういやさ、愛ちゃんは亀ちゃん達とどうやって組むことになったの?」
美貴は口を動かしながら気になってたことを聞いてみた。
「・・・あれは高二の最初の頃だったかな。私はただぼうっと屋上で外を見てたの。
その時に高校見学にきてたさゆみとれいなを、絵里が屋上を案内したんだって。
そこで私達は出会ったの。」
「ほうほう、それでどうなったの?」
「昔から歌うのは好きで、私は無意識のうちに屋上で歌ってたみたい。そこで
いきなり三人に、一緒にバンドやらないかって誘いがきたんだ。私の歌に
惹かれちゃったとか言われてね、本当にびっくりしたよ。」
- 130 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:20
- 「うんうん、わかるね〜。美貴にもその気持ちはよくわかるよ。」
「何か・・・やってみたくなったんだ。この子達とならできるかもって思ってね。
本当の自分を出したいって思ったんだ。歌っている時だけは自分らしくなれてると思うから。」
「そうだったんだ〜。」
美貴は初めてhigh bridgeのライブを見た時のことを思い出していた。
愛の言っていることは本当だろう。
歌っているときは素の自分を出せていると、美貴は確信していた。
「美貴、絶対うまくなるよ。それでさ、いつか親父達が手も出せないようなとこまで、
有名になっちゃおうよっ!」
「・・・そうだね。」
「美貴、愛ちゃんの支えになれるようがんばるからさ。応援よろしく!」
美貴は愛に手を差し出した。
「うん。がんばってね。」
愛は軽く手を握った。
そして、二人はその場で笑い合った。
- 131 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:21
- 「おはよー。」
「おはよ〜。」
翌日の朝、あさ美は声をかけてくれた友達に挨拶をしながら
教室に入って行った。
そこで、あさ美は口を開いて驚いた。
愛が美貴と話しをしていたのだ。
自分とですら滅多に目を合わせて話しをしないのに、今の愛は
美貴と向かい合って話している。
驚いていたのはあさ美だけではなく、他のクラスメイトにいたっても同様だった。
どこか奇妙な光景を見ている、そんな感じだった。
「(愛・・・。)」
それでもあさ美は嬉しくなって、二人に駆け寄っていった。
「藤本さん、愛、おはようございます!」
「おっはよ〜♪」
「おはよう。」
美貴は元気に、愛は素っ気無く挨拶を返す。
「(私も愛と普通に話せるように、がんばろうっと!)」
あさ美はそう心に決めて、二人の会話に混ざっていった。
- 132 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:21
- 交信しました〜。
- 133 名前:konkon 投稿日:2004/08/24(火) 23:22
- >MSさん
ありがとうございます。
愛ちゃんはいろいろとありまして・・・
交信がんばります!
- 134 名前:MS 投稿日:2004/08/25(水) 12:11
- 交信お疲れです。
愛ちゃんと美貴の過去には
そんな過去があったんですか。
いつか親父親父さん達を見返す事の出来る
有名なバンドになれればいいですね。
次の交信お待ちしております。
- 135 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:41
- 美貴が転入してきて二週間が経ったある日の朝、あさ美はいつも通りに
バスケの朝練を終わらしてから、教室の中へと入っていった。
「おはよー!」
自分の席についてから、前の席の愛と美貴に声をかける。
これがあさ美の習慣となっていた。
最近では、美貴が話しをして愛が話しを聞いていることが増えていった。
それがあさ美は嬉しくて、いつもならそこで話しに加わるのだが今日は
いつもと違うようだった。
愛は自分の席で小説を読んでいて、美貴は頭を左手で押えながら下を向いていた。
「おはよ。」
少しテンポが遅れて愛から返事が帰ってきた。
- 136 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:42
- 「愛、藤本さんどうしたの?」
「アホなんだよ。放っておきなよ。」
愛は一度だけあさ美に視線を向けてから、再び小説に目を向けた。
「藤本さん、おはようございます。」
「紺ちゃんか・・・おはよ〜・・・。」
美貴は少し顔を上げてあさ美を見上げる。
「どうしたんですか?頭痛ですか?」
「ん〜、二日酔い・・・。」
「二日酔い!?お酒を飲んだんですか!?」
あさ美は声を上げて美貴に聞いた。
「あ〜、紺ちゃんあまり大声出さないで・・・頭に響くし、
先生達に聞かれたら困るからさ・・・。」
「あ、ごめんなさい。」
あさ美は一度周りを見渡してから、美貴に視線を戻した。
- 137 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:43
- 「でも、どうしてお酒なんか飲んだんですか?」
「ん・・・美貴のバイト先の先輩達が飲みに行こうって誘われてさ、
でも焼肉屋で飲むって上に奢りだって言われたらさ、これは何が何でも
行かなきゃって思うじゃん?んで一晩中飲んでて、っつ〜・・・。」
美貴は頭を押えながら上を見上げた。
「だから言ったでしょ、アホなんだから放っておきなって。」
横から視線を小説からはずさずに愛が言った。
「愛ちゃん・・・冷たい言葉にも優しさが含まれてるなんて、
そんなに愛ちゃんに愛されてたんだね・・・」
「はぁっ?」
「頭が痛くて苦しんでるから、一人にしておいてくれるってことでしょ?」
「・・・アホに何言っても無駄やったわ。」
愛は一つ大きな溜息をついた。
- 138 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:44
- 「愛ちゃん痛いって・・ってかほんとに痛い〜・・・。」
「まあ、自業自得ですね。」
「紺ちゃんまで・・・。」
あさ美が冗談ですって言おうとしたところで、前の扉が開かれて中澤が入ってきた。
後ろには知らない一人の少女がついてきていた。
恐らくは転入生の子だろう。
その容姿は美貴に勝るにも劣らないほどの可愛さと、とてもスタイルが
よくて大人っぽいセミロングの少女だった。
前回同様、教室中に歓声が響いた。
「は〜、綺麗な人だな〜。ねえ?」
あさ美は口を開けて転入生を見ている。
- 139 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:45
- 「うん、綺麗な人だね。」
「(何っ!?愛ちゃんまで綺麗って・・・どんな子なのよ?)」
美貴はなんとか転入生を見ようとするが、二日酔いのための頭痛と
寝不足で目を開けてもどこかぼんやりとしていて、転入生の顔を
見ることができなかった。
「ほら、静かしい!」
中澤の一喝で、教室は一瞬で静まり返った。
「この間言ってた、二週間遅れで入ってくる転入生や。
それじゃ、自己紹介したってや。」
「はい、今日からこのクラスに転入することになりました後藤真希です。
よろしくお願いします。」
真希は軽くお辞儀をした。
その直後に歓声と拍手が沸き起こった。
- 140 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:46
- 「はいはい、静かに!後藤の席は一番奥の窓際の席や。そのうち
席替えでもするからそれまではあそこで我慢してくれ。」
「わかりました。」
真希は周りにお辞儀をしながら席へと歩いていく。
「ここの席にくるんだ〜、どうしよ〜!」
あさ美はなぜか胸を押えながら悩んでいた。
美貴の時よりも明らかに嬉しそうだ、そう思った美貴は少し悲しくなった。
それよりも後藤真希と言う名前、美貴はどこかで聞いた記憶があった。
それも自分にとってかなり大切な存在であったはずである。
それが二日酔いのせいにより、頭が痛くてなかなか思い出せない。
真希は美貴のすぐ目の前まで近づいてきていた。
美貴は自分の指で、目を開ききって真希の顔を見た。
- 141 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:46
- その瞬間、
ガタッ!
椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がった。
真希を含めた全員の視線が美貴にいった。
「ごっ、ごっちん!?」
「・・・ミキ・・・ティ?」
美貴は、目を見開いて真希のことを見ていた。
一方の真希も、どこか信じられないといった感じで美貴を見ている。
「なっ、何でごっちんがここにいるのよ!?」
「そういうミキティこそ・・・?」
二人はそのまま黙り込む。
- 142 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:47
- 「ごっちん・・・久しぶりじゃ〜ん!会いたかったよっ!」
「おわっ!」
美貴は突然笑顔になって、真希に抱きついた。
「何、ごっちん髪切ったの〜?身長も伸びてるしさ、前は大して
変わらなかったのにね。なんかすごく大人っぽくなってるしさ〜!」
「ミキティも・・・変わったね。ずいぶんと可愛くなってるじゃん。」
「そんな〜、美貴は元から可愛かったよ!」
美貴は嬉しそうに真希とじゃれあっている。
愛は、それをほんの少しだけ寂しそうに見ていた。
「何や、藤本と後藤は知り合いやったんか?」
中澤は首を傾げて二人に聞いた。
- 143 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:48
- 「親友です!」
美貴は真希と肩を組んで親指を立てる。
「そうやったんか。とりあえず、積もる話しもあるやろうけど休み時間にしてくれや。
あまり授業を遅らせるわけにもいかんからな。それじゃ授業を始めるで。」
その言葉に、美貴と真希もいったん席についた。
「後藤真希です。よろしくね。」
真希は笑顔で隣に座っているあさ美に言った。
「はっ、はい!紺野あさ美です!え、ええと、よ、よろしくです!」
あさ美は慌ててお辞儀をした。
「ふふ、おもしろい子だね。クラスで人気あるでしょ?」
「そっ、そんなことないですよ!」
あさ美は首を大きく振って否定する。
- 144 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:49
- 「あ、一つ気になったんだけどさ、中澤先生って・・・。」
「今日はこの問題からいってみるで。これは難しいぞ〜。」
中澤はカリカリっと音を立てて、黒板に問題を書いていく。
その問題とは、
nが3以上の自然数である時、
Xn+Yn=Zn
を満たす、自然数X、Y、Zを求めよ。(nは指数)
と、書いてある。
「たぶん解けへんやろうからな、今日のところは相談してもええわ。
この問題の趣旨は考えることやからな。」
その言葉にクラスメイト達は、周りと相談したりしながら問題を解こうとしている。
愛もノートにいろいろと書き込みながら考えているようだ。
だが、数分経った中でも誰一人答えることができていないようだった。
- 145 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:50
- 「藤本さん、ちゃんと考えてる?」
「愛ちゃんが解けない問題を、美貴が解けるはずありませ〜ん・・・。」
美貴は問題のことなんか気にできないほど、頭を押えながら眠気と必死に戦っていた。
ただ、寝てしまって中澤に叩き起こされるのだけはごめんであった。
みんなが話し合っている中で、突然問題発言が飛び出した。
「へ〜、中澤先生ってもう三十超えてるんだ〜。」
ブチッ!
クラス中に血管が切れる音が響いた。
クラスメイト達は一斉に静まり返る。
「ご、後藤さん・・・。」
あさ美は美貴のように頭を抱え込んでしまった。
- 146 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:51
- 「後藤〜、人の年齢気にするほど余裕あるようやな〜。なんなら
この問題も余裕で解いてみてくれや。」
中澤は鬼の形相をしながら真希に言った。
今まで誰も解けなかった問題を解けというのだ。
それも、解けなければ鬼の制裁が待っているだろう。
後藤がこれから先、学校へこなくならないように、とだけクラスメイト達は願っていた。
真希は、ほんの少しだけ問題を見つめてから口を開いた。
「・・・この問題に答えはありません。」
「何やと?」
中澤は目を細めて真希に聞いた。
真希の答えにクラスメイト達は首を傾げていた。
- 147 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:53
- 「フェルマーの最終定理ですね。n=2の場合、32+42=52となり、
(X=3,Y=4,Z=5)は1つの解となることから、有名なピュタゴラスの
定理となりますけど、3以上の場合は答えがないんです。それは
1995年にアンドリュー・ワイルズが証明しました。」
真希の答えに、中澤までもが黙ってしまった。
「・・・正解や。」
おおーっ、という尊敬に近い歓声がそこら中から飛び交っていく。
真希は表情を変えずに席についた。
「後藤さん、すごいですね・・・。」
「そう?ねえ、紺野さんってさ・・・。」
真希はふにゃっと笑ってあさ美と話し始めた。
「相変わらずの天才っぷりだね〜。」
美貴はそう小さく呟いて軽く笑っていた。
- 148 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:54
- 「後藤さん、起きてくださいよ。後藤さん!」
あさ美は寝ている真希を起こそうと肩を揺らす。
しかし、一向に真希は起きようとしない。
「後藤さ〜ん、もう帰りの時間ですよ〜。」
そう、真希は一日中寝ていたのだ。
正確には、昼休み以外の時間だ。
真希は数学の授業が終わったと同時に寝てしまった。
休み時間に話そうと思っていたクラスメイト達は、かなり残念そうな
顔をしていたが、真希の天使の寝顔を見た瞬間に、またキャーキャーッと
騒ぎ始めていた。
その後の授業中も真希は寝ていた。
もちろん教師に指名されたりしたのだが、その時はあっさりと答えを
答えてまたすぐに寝る。
その繰り返しで今に至る。
- 149 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:55
- 昼休みではほとんど美貴と真希の昔話を二人でしていたために、
他のクラスメイト達は全然話せなかったようだった。
そして、帰りの時間になっても真希は全然起きようとしない。
「紺ちゃん、そんなんじゃこの子は起きないって。」
「藤本さん?」
「こうやるんだよ。」
ゴンッ!
美貴の鉄拳が真希の頭にクリーンヒットした。
「ふっ、藤本さん!藤本さんが殴ったら後藤さん死んじゃいますよ!」
「え〜、美貴が化け物みたいな言い方しないでよ〜。」
「ん・・・。」
真希はゆっくりと顔を上げる。
- 150 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:56
- 「あれ、もう学校終わったの?」
「とっくに終わったよ。ねぇ、今日暇だったらこれからごっちんの
家に遊びに行っていい?」
「あ〜、まだ片付け終わってないから無理だね。昨日も一日中家の中の
整理してたから、眠くて仕方なかったんだよね。」
「だからといって、一日中寝てられるのなんてごっちんくらいなもんだよ。」
「んあ〜、そうかな?ま、今日のところは勘弁ってことにしてよ。」
真希はかばんを持って立ち上がる。
「ミキティと紺野さんはこれからどうするの?帰る?」
「美貴はちょっと用事があるから、まだ帰らないよ。」
「私は・・・その、部活がありまして・・・。」
「そっか、それじゃね。」
真希は軽く手を振ってから、教室を出て行った。
- 151 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:57
- 「さって、美貴もそろそろ行かなきゃ愛ちゃんにしかられちゃうかな?」
「あ、あの、藤本さん。」
「ん、何?」
美貴は、下を向いてもじもじしているあさ美を振り向いた。
「後藤さんって、どういう人なんですか?」
「ごっちんはね、めちゃくちゃ強いよ♪」
「つ、強いんですか?」
「そ、なんせ美貴と互角だったくらいだからね。」
「ふっ、藤本さんとですか!?」
「明日の昼休みにでもさ、美貴がごっちんについて知ってること教えてあげるよ。
マジでもう行かなきゃほんとに愛ちゃんに殺されちゃうからさ。」
「はい、わかりました。」
「じゃあね〜。」
美貴はあさ美に手を振りながら教室を出ていった。
「後藤・・・真希さんか〜。」
あさ美は真希のことを思い出しながら、部活へと向かっていった。
- 152 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:57
- 交信しました。
- 153 名前:konkon 投稿日:2004/08/31(火) 23:59
- >MSさん
辛い過去を持つ二人だからこそ分かり合えるのではと
勝手な解釈を作ってしまいました(汗)
二人ならがんばれるでしょう!
- 154 名前:MS 投稿日:2004/09/01(水) 02:26
- 交信お疲れ様です。
ごっちんきましたね〜!
なんかめっちゃ頭良いですね。
それに美貴と互角って・・・。
ごっちんの過去も知りたいですね。
次の交信お待ちしております。
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 09:25
- おーっと紺野さん。もしかして・・・・・
がんばってーーーー
- 156 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 09:26
- おもしろいですけどフェルマーはやりすぎじゃw
- 157 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 10:19
- 初レスです。
いよいよ、真打ち登場と言ったところでしょうか?
愛ちゃんとのバンドも気になりますがごっちんとの関係も気になります。
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/02(木) 07:48
- 初レスです。ところで処分はどうなったのかな?
私の予想では何か1騒動ありそうな気がするのですが・・・。
それも藤本・高橋ではない方で
- 159 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:19
- 「ん・・・。」
真希は目をこすって、ベッドから起きる。
大きく伸びをしてから、部屋の壁にかかっている時計を見た。
今の時刻は6時20分、学校が始まるのが8時半で真希の家から
学校は5分ほどで着くから、家を出るまでにまだ二時間はある。
「目が覚めちゃったな・・・寝すぎたからかな?」
それもそのはずである。
真希は、家に帰ってからは荷物の整理をしていた。
整理が終わったのは9時頃で、思った以上に早く終わってしまった。
まだ姉も帰ってこなくて暇になった真希は、二人分の夕食を適当に作って
自分の分を食べたあとに、風呂に入ってからすぐ寝てしまった。
昨日学校であれだけ寝た上に早くに寝れば、朝早く起きてしまうであろう。
- 160 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:20
- 「まあ、早起きは三文の得っていうしね。たまにはいいかな。」
真希はパジャマ姿のままベランダに出る。
手摺りに寄りかかってぼーっとしてたところ、一人の少女がジャージで
荷物をしょって走っている姿が見えた。
そのジャージは、真希が通う朝比奈学園指定のジャージだった。
「あの子は確か・・・。」
その少女は真っ直ぐに学校へと向かっていく。
真希はじっとその少女を見つめ続けていた。
ちなみに真希の家はあるマンションの三階で、学校までの距離は一直線である。
真希はその少女が学校に入っていくのを見届けてから、ベランダから家の中へと入っていった。
「確か部活やてるって言ってたっけ?見に行ってみよっかな。」
姉はまだ寝ているようだ。
真希は素早く制服に着替えてから、二人分の朝食を作って自分の分を食べる。
姉の分の朝食をラップしてから、真希は荷物を持って家から出ていった。
- 161 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:21
- 真希は学校に辿りつくと、周りを見渡して先ほど通った少女を探した。
試しにグランドへ向かっていくが、そこには誰もいなかった。
その代わり、奥にある体育館から何か物音が聞こえてくる。
真希が体育館を覗くと、そこには朝走っていた少女、紺野あさ美が
バスケの練習をしていた。
ドリブルや壁を使ったパス、フリースロー等の練習をしていく。
「(・・・けっこううまいね。)」
それが真希の率直な感想だった。
真希はあさ美に声をかけずに、体育館の入り口からあさ美の練習姿を見ていた。
今度はボールが入っているかごを3Pラインまで持っていって、3Pシュートの練習を始めた。
何度もシュートをしていくのだが、なかなかボールはゴールの中に入らない。
かごの中のボールは徐々に減っていく。
- 162 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:22
- シュートを打ったうちの一本が、バックボードに当たってあさ美の
元へと跳ね返っていく。
あさ美はそれを気にせずに、新しいボールを取り出してシュートを放つ。
跳ね返ったボールはあさ美の後ろへと転がっていった。
「ハァッ、ハァッ、何で入らないんだろう・・・?」
あさ美は息を整えてから、再びシュート体制に入る。
その時、あさ美の上空を一つのボールが美しい放物線を描いてゴールへと向かっていく。
ボールは綺麗にゴールの中へと入っていった。
あさ美が振り向くと、シュートを放った後の体制をしていた真希が立っていた。
「ごっ、後藤さん!?何でここに・・・?」
「ん〜、うちの前を走ってる可愛い子が目に入ったものでね。」
真希は笑顔であさ美に近寄っていく。
- 163 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:23
- 「一人で練習してるの?他の部員さんは?」
「えっとですね、うちの部活は朝練は本当はないんですよ。ですけど、
私は他の人よりも下手なので、たくさん練習しなきゃ追いつけないんです・・・。」
「ふ〜ん。」
真希はじっとあさ美のことを見つめる。
「(紺野さん、なかなか筋はよかったよな〜。ここの部活には、
この子よりもうまい子がいるってことなのかな?)」
「あ、あの・・・。」
「ん、何?」
「すごいですね!こんなに離れたところからシュートを決めるなんて。」
「そうかな?」
真希がシュートを打った位置は、あさ美が打っていたライン際よりも
1メートルは離れていた。
1メートルも距離を置くことがどれだけ難しいか、それは誰よりも
練習しているあさ美が、誰よりも熟知していた。
- 164 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:24
- 「それに比べて私は全然ですよ。3Pは昔からどうも苦手で・・・。」
「そうかな?」
真希は落ちていたボールを一つ手に取る。
「紺野さんはセンスあると思うよ。それが今練習してるとこ見てた後藤の感想ね。」
手で軽くボールをバウンドさせていく。
「いい、腕の力加減やジャンプする足の力も必要だけどね、要はバランスなんだ。
そのために必要なのは膝の柔らかさなの。ここら辺ね。」
そう言って真希は自分の膝を指す。
「(後藤さん・・・綺麗な足だな〜・・・。)」
あさ美は真希が指した膝というよりも、足全体に目がいってしまっていた。
「ここによって体全体に力が伝わっていくんだよ。そして、流れに逆らわずに
力を加減して、そのままシュートしていく。」
真希はその場からシュートを放つ。
ボールはすっぽりとゴールに入る。
- 165 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:25
- 「は〜・・・。」
「紺野さんの場合はね、力が入りすぎなんだ。もっとリラックスして
打った方がいいと思うよ。」
「は、はい。」
「ん〜っと、そうだ。」
真希は手を伸ばしてあさ美に向ける。
「紺野さん、後藤の手に向かって思いっきり殴ってみて。」
「えっ!?」
「大丈夫だって。ミキティから聞いてるでしょ?後藤はそんな
やわじゃないってことをさ。」
「はい・・・。」
「そんな不安そうな顔しないでよ。後藤がちょっと試してみてほしいだけなんだからさ。」
真希は笑顔で優しく言った。
- 166 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:28
- あさ美は少しの間下を向いて考えると、決心して真希を見上げる。
「わかりました。やってみます。」
「うん、本気でやってね。」
「・・・いきます!」
あさ美は渾身の一撃を、真希の手に向けて突いた。
パンッ!
乾いた音が体育館の中に響く。
しかし、真希の手が少しでも動くことはなかった。
「なるほどね・・・やっぱり思った以上に力があるな・・・。」
真希は何か考え込むように、顎に手をやって呟いていた。
- 167 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:28
- 「何かバスケの他にやってたりしたの?」
「は、はい、中2の頃まで空手をやってまして・・・。」
「そっか。紺野さんさ、片手打ちに変えてみない?」
そう、真希は片手打ちでシュートを打っていたのだ。
女子の中では両手打ちが基本だった。
そのため、あさ美は両手打ちで今までシュートを打っていた。
「片手で・・・ですか?」
「うん、紺野さんはその方がいいと思う。ちょっとやってみよっか。」
真希は落ちていたボールをあさ美に手渡す。
「ちょっと今までのシュート体制とってみて。」
「はい。」
あさ美はその場でシュート体制を取る。
- 168 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:30
- 「えっとね、最初は慣れないかもしれないけどね・・・。」
真希はあさ美の後ろから手を伸ばして、片手打ちのシュート体制を作らせる。
今は真希が、しっかりと後ろからあさ美の両手を掴んで教えている。
「(ご、後藤さん・・・胸が背中に当たってます・・・。)」
「ん〜、もうちょっと力抜いてくれないかな?そうでないとシュート打てないよ。」
「(無理です・・・。)」
あさ美は顔を真っ赤にしながら、それでもなんとか真希を
困らせないようにとしているのだが、ただでさえ一目見た時から
気になっていた人に、後ろから胸を当てつけられてリラックスしろなんて
ことは、あさ美でなくても無理な話しだろう。
- 169 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:30
- 「それ!」
「ヒャッ!?」
真希はあさ美がシュート体制をとっているのをいいことに、あさ美の
脇腹を軽く突っついたのだ。
あさ美はその場で力が抜けて後ろに倒れそうになる。
しかし、それより早く後ろから真希があさ美を片手で支えていた。
「ごめんね、大丈夫?」
真希は少し困った顔をしてあさ美を覗き込んだ。
ドキッ
一瞬、胸が異様な高鳴りを覚えた。
- 170 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:31
- 「ご、後藤さん・・・。」
「もっと軽くいこうよ。緊張するなとは言わないけどね、緊張しすぎても
うまくいかないんだよ。だからさ、楽にいこうよ。ね?」
「はい・・・。」
真希の満面の笑みを見て、あさ美は軽く頷いた。
「(どうしよ〜!私、やっぱり後藤さんのこと・・・。)」
あさ美は自分の胸を押さえながら、なんとか立ち上がった。
「よし、んじゃ今のやつ忘れないでね。紺野さんならできるからさ。」
「・・・はい!」
あさ美は元気に返事をして、真希に教わったシュート体制をとった。
そして、二人は授業が始まるまで練習を続けていた。
- 171 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:31
- 今日はここまでです。
- 172 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:35
- >MS様
ん〜、ごっちんの過去については
もう少しお待ちを・・・(汗)
>155:名無し飼育さん様
紺ちゃんは・・・
もしかするかもしれませんね〜
っつかしますねw
>156:名無し飼育さん様
フェルマーの最終定理はですね・・・
なんとなく使いたかったんです(笑)
- 173 名前:konkon 投稿日:2004/09/06(月) 00:38
- >157:名無し飼育さん様
そうですね。
ごっちんもこの物語の鍵を握る一人に
なると思いますよ。
>158:名無し飼育さん様
申し訳ありません!
自分もそこの章で入れようと思ってたんですけど、
入れ忘れてしまいました・・・(泣)
1騒動とはいわずに何度も騒動を起こすと思いますよw
- 174 名前:闇への光 投稿日:2004/09/06(月) 22:03
- すみません。158は私です。
名前を入れ忘れまして申し訳ありません。
物語の方は段々と2つの核が見えてきましたねえ。
次回更新を楽しみにまたさせていただきます。
- 175 名前:MS 投稿日:2004/09/06(月) 23:58
- 更新お疲れ様です。
真希って、バスケの才能もあったんですね。
それともただ、運動神経がいいだけなのか・・・。
どっちにしろ、凄い事には変わりないですけどね。
紺野さんとも絡んできて今度どうなるのかな?
次の更新お待ちしております。
- 176 名前:konkon 投稿日:2004/09/07(火) 19:48
- CMです(笑)
よかったら見てください♪
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/gold/1086365495/
- 177 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:46
- あさ美と真希が教室に入ると、真希に何人ものクラスメイト達が寄ってきた。
昨日全く話せなかったからか、クラスメイト達は四方八方から真希に
質問攻めをしていった。
それを真希は、まるで聖徳太子のように全ての質問にあっさりと
答えているのだからさすがである。
居場所を無くしたあさ美は、少し寂しそうに自分の席に座った。
「藤本さん、愛、おはよーございます。」
あさ美はいつも通りに、前の席にいる二人に挨拶をした。
「こうした方がいいと思うけど・・・。」
「ん〜、でも美貴はこうしてみたいんだよね・・・。」
しかし、二人からの返事はない。
二人は向き合って、真剣な表情で話し合っているようだ。
- 178 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:47
- 「おはよ〜ございま〜す。」
あさ美は二人に近づいて、もう一度挨拶をした。
「ん、あ〜、紺ちゃんおはよー。」
「おはよう。」
「何してるんですか?」
あさ美は気になって二人に聞いてみた。
「紺ちゃん、これ見てみてよ!」
美貴が一枚の紙をあさ美に渡した。
紙には、詩のようなものが書かれてある。
「・・・これは?」
あさ美は一通り目を通した後に、美貴に聞いた。
- 179 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:48
- 「それね、美貴が作ったんだ!それで愛ちゃんに感想聞いてたんだ。
曲もできてるんだよ!」
「曲の方はけっこうよかったけど、歌詞があまり合ってないよ。」
「そうかな〜?」
美貴が唸っているところで、クラスメイト達から逃れた真希が自分の席についた。
「およっ、遅刻常連のごっちんが普通に学校にきてる・・・。
これは今日は雨かな?」
美貴は立ち上がって窓の外を見上げた。
「それは昔の話しでしょ。今は違うよ。」
「そういやさ、今回はいつまでここにいられるの?」
「えっ・・・?」
美貴の言葉に反応したのはあさ美だった。
- 180 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:49
- 「どういう・・・意味ですか?」
「ごっちんは転勤族だからさ、いつまで一緒にいられるかな〜って、
紺ちゃん泣いてるの!?」
あさ美の目から一粒の涙が零れていた。
「えっと、そんな泣かれるほどのことでもないと思うけど・・・。」
真希は優しくあさ美の頭を撫でる。
「お姉ちゃん、今年から就職でこっちに住むんだ。それでね、
転勤ばっかりしてるから最後の一年くらいは同じ学校に
いなさいって叔父さんに言われてね、今はお姉ちゃんの
ところに住んでるんだ。だから、今年一年はここにいられるよ。」
「よかった〜・・・。」
あさ美の目から涙が溢れていく。
真希はハンカチで、あさ美の涙を拭ってやる。
- 181 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:49
- 「大丈夫?」
「はい、完璧です!」
あさ美は笑顔で真希に答える。
「そっか。それじゃ、今回はけっこう一緒にいられるんだね♪」
「そういうこと。まあ、昔ほどはばかやるつもりはないけどね。」
「あの時は美貴達も若かったね〜。」
「本当だよね〜。二回目の中3の時は若かった!」
真希と美貴は、目を合わせて笑い合った。
「あの〜・・・二回目ってどういう意味ですか?」
あさ美は恐る恐る口を挟んだ。
「後藤達、中学の時に一回留年してたんだよ。」
「「・・・えっ?」」
あさ美と愛は同時に聞き返した。
- 182 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:50
- 「あれ、ミキティ言ってなかったの?」
真希は美貴に視線を移して聞いた。
「ん〜、なかなか言う機会がなかったんだよね。」
「ふ〜ん。まあいっか。」
「えっと・・・どういうことなんですか?」
あさ美はまだ納得できてないようで、困った顔をしながら聞いた。
「美貴達はね、中3の時にある理由で休学してたんだ。だから、
美貴達は一個年上なんだ。」
「・・・そうだったんだ。」
愛は素直に頷いた。
「ごめんね。騙すつもりはなかったんだけどさ、年上って言うと
みんな遠慮しちゃうかなって思ってたんだ。」
美貴は少し寂しげに言った。
- 183 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:50
- 「そんなことないですよ!」
「じゃあ、紺ちゃん敬語やめない?」
「それは・・・難しいです。」
四人はその場で大笑いをした。
「あ、愛聞いて!後藤さん、すごいバスケット上手なんだよ!」
あさ美は愛を自分の方に振り向かせて、真希の自慢話を始める。
「ごっちん、朝っぱらからバスケやってたの?」
「ん、まあね。朝早く起きたらさ、偶然にもうちの前を紺野さんが
通ったんでね。一緒に練習してたよ。」
「そうなんだ。ごっちん、バスケすごいうまかったもんね。ここでもバスケやるの?」
「そのつもりだよ。おもしろい子にも出会えたしね。」
そう言って、真希は視線をあさ美に向ける。
- 184 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:53
- 「紺ちゃんのこと?どうだったの?」
「あの子はうまくなるよ。いや、うまいんだけど自分でそれを
認めてないからなおさらだね。何よりも集中力がすごいもん。
さっきさ、五分だけ1 ON 1で勝負してみたんだ。」
「うん。」
「結果は7対2で勝ったんだけどさ、どうだったと思う?」
「えっ、嘘!?手加減でもしてたの?」
美貴は驚いて聞き返した。
「いいや、全力でやったよ。あの子はね、一度見せた技をやろうとする時、
ボールを取りにくるんじゃなくてどうやったら抜かれないかを考える子なんだ。
だから、すごくやりづらい相手なの。それがまたおもしろいんだ。後藤からしたら、
どうやって抜いてやろうかなって考えることになるしね♪」
「へ〜・・・それで嬉しそうにしてるんだ。」
美貴は珍しそうなものを見るように、真希を見つめていた。
- 185 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:53
- 「それでも、ごっちんをそこまで抑えるなんてすごくない?うちらがいた
中学のバスケ部も強かったけどさ、ごっちんにそこまで言わせる人なんて
いなかったでしょ?」
「そうだね。だから楽しみなんだ。あの子とバスケができると思うとね。」
そう言った真希の顔は、とても嬉しそうだった。
「そういうミキティはどうなのさ?音楽やるとか言ってなかったっけ?」
「もちろん!美貴も自分の道を見つけたよ。」
美貴は真希に向けて親指を向ける。
「そこにいる愛ちゃんのバンドに入れてもらったんだ。もうね、愛ちゃん
すごい歌うまいんだよ!美貴、一発KO喰らっちゃってさ、速攻で
バンドに入れるようがんばったんだ。それでね・・・。」
そこからは、美貴による愛の自慢話が続いた。
- 186 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:55
- 「そっか。安心したよ。」
一通り話しを聞いて、真希は安堵の溜息をついた。
「ミキティも、やりたいことをやってたんだね。」
「まあね。今までつまらない鎖に繋がられてたからね・・・。」
美貴は軽く一息ついた。
「またさ、昔みたいに暴れてやろうよ!今度はそれぞれの夢に向かってさ!」
「それもおもしろそうだよね。いっちょ派手にやってやりますか!」
美貴と真希は手を叩き合わせた。
それと同時に中澤が教室に入ってきて、その日の授業が始まっていった。
- 187 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 00:58
- 今日はここまでです。
- 188 名前:konkon 投稿日:2004/09/10(金) 01:01
- >闇への光さん
そうですね。
物語は二つの構成でもあり、また一つに繋がるって感じですかね。
真希と美貴の二人が主役と思ってくれたほうがいいかもしれません。
けど、いちおう主役は美貴ちゃんですw
>MSさん
ごっちんはすごいんですw
まあそれは今後の物語で分かってくると思いますので
もう少しお待ちください(^^;)
- 189 名前:MS 投稿日:2004/09/10(金) 23:23
- 更新お疲れ様です。
そっか、だからごっちんバスケ凄かったんですね。
紺野さん、もしかしてごっちんの事を・・・。
次の更新お待ちしております。
- 190 名前:マチル 投稿日:2004/09/13(月) 12:41
- 更新お疲れ様です。
始めまして、マチルです。
一気に読ましていただきました。
ごっちんの過去が気になります。
更新待ってます。
- 191 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:02
- 昼休み、
「紺ちゃん、ごっちんについてなんだけどさ・・・。」
美貴は後ろを振り向いてあさ美を見た。
真希は当たり前のように寝ている。
「あの、その件なんですけどね・・・ごめんなさい、やっぱりいいです。」
あさ美は美貴に頭を下げる。
「えっ?」
「やっぱり、人に聞くのってよくないと思うんです。自分で直接後藤さんに
聞いてみたいと思います。」
「えっ、ああ、うん。それがいいと思うよ・・・。」
「それではちょっと行くとこがあるので、失礼します。」
あさ美は昼食も取らずに、教室を出て行った。
「美貴が先にそうやって言おうと思ってたんだけどな〜。」
「えっ!?」
美貴は驚いて愛を振り向いた。
- 192 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:03
- 「そう思ってたんでしょ?」
「なっ、何でわかったの!?もしかして・・・愛ちゃんってエスパー?」
「・・・藤本さんの顔を見れば、誰でもわかるよ。」
美貴は口をだらしなく開けて、ポカーンとしていた。
「愛ちゃん、やっと美貴の愛を受け止めてくれる気になって・・・。」
「後藤さん起こしたら?私も今日は委員会があるから。」
愛は美貴の話しを遮って、弁当を持って教室を出て行った。
「愛ちゃん、つれないね〜。ほらっ、ごっちん起きろ〜!」
ゴンッ!
「っつ〜、もうちょいマシな起こし方ってないわけ?」
「フフッ、起きない方が悪いんだよ。」
「何にやけてんの?気持ち悪いな〜。」
「いいから弁当食べよ♪」
愛につれなくされたのは少しだけ寂しかったが、自分のことを
わかってきてくれたことが美貴は嬉しかった。
その数分後、あさ美が少し暗い顔をしながら教室に戻ってきた。
- 193 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:04
- 昼休みになって、あさ美は教室を抜けると一つ離れた二号棟に足を向けた。
階段を上ってある教室の前で止まる。
「あの、小川さんを呼んでもらえないかな?」
あさ美は教室から出てきた生徒を呼び止めて、そう頼んだ。
少ししてから、一人の少女が出てきた。
「マコっちゃん。」
「何?」
マコっちゃんと呼ばれた少女、小川麻琴は怪訝そうな目であさ美を睨みつける。
「あのさ、昨日うちのクラスに転入してきた人がいてね、その人がバスケ部に
入りたいんだって。その人すごいバスケがうまいんだよ!」
あさ美は嬉しそうに話しをする。
- 194 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:05
- 「ふ〜ん。あさ美ちゃんからしたら誰でもうまいんじゃないの?」
「それは・・・そうかもしれないけど。」
「かもじゃないよ。それで?そんなこと、いちいち私に報告してくる必要あるわけ?」
「いや・・・でも・・・。」
「麻琴〜、何してんの?」
教室の中から、誰かが麻琴を呼ぶ声が聞こえた。
「何でもないよ。すぐ行く〜。」
麻琴はクラスメイトに、明らかにあさ美に対する態度と違う明るい返事をした。
「じゃあね。私はあさ美ちゃんと違って忙しいから。」
麻琴はさっさと教室の中へと入っていってしまった。
「あっ・・・。」
あさ美は寂しそうに、教室の中で楽しそうにクラスメイトと
話している麻琴を見つめた。
「(マコっちゃん、変わっちゃったな・・・昔はいつも仲良かったのに・・・。)」
あさ美は小さい溜息をついて、自分の教室へと戻っていった。
- 195 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:07
- あさ美が教室に戻ると、美貴と真希が向き合って弁当を食べていた。
真希は手作り弁当、美貴はコンビニ弁当のようだ。
「紺ちゃん、どこ行ってたの〜?一緒に食べよ!」
美貴があさ美に気付いて手招きする。
「はい・・・。」
「元気ないね。どうかした?」
真希はあさ美の暗い表情が気になって声をかけた。
「い、いえ何でもないです。それより後藤さん、先ほどマコっちゃん、
バスケ部のキャプテンに後藤さんのこと伝えておきましたよ。」
「それでいなかったんだ。ありがと〜。」
「いえいえ・・・。」
笑顔でお礼を言った真希を見て、あさ美は顔を赤くして下を向いた。
- 196 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:09
- 「(ふ〜ん、なるほどね。)」
「どうかしたの、ミキティ?さっきからさ、気持ち悪くくらい
にやつきまくってるけど。」
「ん〜、今日はそんな気分なんだよ。」
「藤本さん、今日は様子がおかしいですね?」
「いや、ミキティはいつもこんな感じだよ。」
「こら、ごっちん!」
美貴は笑いながら真希を軽く叩いた。
「それにしても、早くバスケがやりたいな〜。」
「すぐにできるでしょ。放課後まで我慢しなよ。」
それから三人は、くだらない話しをしながら昼休みを終えた。
- 197 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:11
- 「後藤さん、部活に行きましょう!」
放課後、あさ美は嬉しそうに真希に呼びかけた。
「ごめん、そういえば昼休みに紺野さんがいない間にさ、中澤先生に放課後に
職員室に寄るように言われてたんだ。だから、後藤は後から行くよ。」
「そうですか・・・では、待ってますね!」
あさ美は一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、すぐに笑って教室を出ていった。
「いいね〜、紺ちゃんって健気で可愛くて優しくってさ。」
「・・・誰と比べて言ってんの?」
愛は席から立ち上がって、美貴を睨みつける。
「だ、誰とも比べてなんかないって!愛ちゃんもすごく可愛くていい子だよ!」
美貴は上ずった声で答えた。
「本当にそう思ってる?」
「(美貴にだけ冷たいとこ抜かせばね。)」
「今何考えた?」
「いえいえいえいえいえいえいえ!何でもありません!」
美貴は首を何回も振って否定した。
- 198 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:12
- 「(やっぱエスパーじゃ・・・。)」
「まぁいいや。絵里達はもう着いたらしいから、早く行くよ。」
「OK!」
愛がかばんを持って歩き始める。
「ん、どこに行くの?」
愛についていこうとした美貴は、真希に聞かれて振り向いた。
「図書室だよ。これからバンドの練習するんだけど、その前のちょっとした
ミーティングがあるんだ。」
「そうなんだ〜。がんばってね。」
「おう!ごっちんもね。」
美貴は手を振りながら、愛を追いかけていった。
「さって、それじゃ後藤も行きますか〜。」
真希は大きく伸びをしてから、職員室へと向かっていった。
- 199 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:13
- 「・・・ということや。まあ、こんくらいかな。」
中澤の呼び出しというのは、学校の概要についての話しだった。
真希は編入試験の時にしか学校にきていなかったので、それらの説明をしていたのだ。
「わかりました。それでは。」
真希は立ち上がって職員室を出ていこうとする。
「あ〜、ちょい待ちや。」
真希がドアの取っ手に手をかけたとこで、中澤に呼び止められる。
「矢口〜、ちょっとこっちきてくれるか?」
中澤は、奥の方で書類の整理をしていた一人の教師に声をかけた。
「な〜に〜、裕ちゃん?」
矢口と呼ばれた教師は、トコトコと中澤に近寄っていく。
その教師は見るからに小さい教師だった。
- 200 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:15
- 「後藤は確かバスケ部に入るんやったな?」
「はい。これから行くところだったんです。」
「えっ!?バスケ部に入るの!?」
「ならちょどええわ。これがバスケ部顧問の矢口や。」
「これ扱いすんなよ!よろしく〜!矢口真里です!」
真里は笑顔で真希を見上げた。
「(へ〜、こんな小さい教師も世の中にはいるんだな〜。)」
「あ、今小さいって思ったろ?」
「はい。」
「いいよ、嘘つかなくても・・・って肯定かよっ!少しは
否定したっていいじゃん!」
「後藤は嘘つくの苦手なんですよ。」
真希は淡々と答える。
「ふ〜ん、いい度胸してんじゃん。それじゃ、おいらも仕事に
一段落ついたし、一緒に体育館に行くか。」
「がんばれや〜。」
「はい。それでは失礼します。」
真希は真里と共に、職員室を出て行った。
- 201 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:15
- 今日はここまでっす!
- 202 名前:konkon 投稿日:2004/09/13(月) 23:17
- >MSさん
ごっちんのバスケの腕はここからですよ。
紺野さんはどうなるんでしょうかね〜♪
>マチルさん
ありがとうございます。
ごっちんの過去話しはもう少しお待ちを・・・(汗)
- 203 名前:MS 投稿日:2004/09/13(月) 23:51
- 更新お疲れ様です。
ごっちんと真里の会話がちょっと面白かったです。
美貴と愛ちゃんの関係もよくなってきて・・・。
この2人の関係もこの先どうなっていくのでしょう?
次の更新お待ちしております。
- 204 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:55
- 「矢口先生って、確か昨日うちのクラスで英語の授業やってたらしいですね?」
「お、寝てたのによく知ってるな。」
真里は頭で腕を組んで、真希を振り向く。
「起こされませんでしたよね?何で寝てたのに怒らないんです?」
「この手のタイプはどうせ起こしても起きないか、起きたとしても
さっさと答えて、また寝ちまうんだろうなって思ったから。」
「(思ったよりやるな。この先生・・・。)」
真希は少しだけ真里を感心していた。
「それにさ、寝顔がすっげぇ可愛かったから許しちゃう♪もうやばかったね〜、
矢口自分を抑えるので精一杯だったんだぜ!」
真里は笑顔で答えた。
- 205 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:56
- 「(・・・次からは起きてよっと。)」
「それよりもさ、後藤はバスケ経験とかあるのか?」
「ん〜、まあぼちぼちですかね。」
真希は少し考えてから答えた。
「だったらちょっと厳しいかな〜。うちのバスケ部はさ、去年は県で
ベスト8までいったんだよね。だからけっこううまいやつが多いんだよ。
特にキャプテンの小川は、県で作られる最強チームの代表枠に入れたって
いうくらいうまいんだよ!」
「それは楽しみですね。」
「それにな、新垣っていって二年なんだけど、強豪中学からきたやつもいるんだ!
今年はいくぜ〜!インターハイまでさ!」
「そういえば、紺野さんはどうなんですか?」
真希は気になってたことを聞いてみた。
- 206 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:57
- 「ん、何で紺野のこと知ってるんだ?」
「クラスメイトです。彼女からバスケ部のことを聞いたんで。」
「あ〜、そうだったな。紺野は本当に練習を一生懸命にやる子だよ。
けど、な〜んか他のやつらとうまくいってないみたいなんだよな〜。
おいらは顧問だけど経験者じゃないし、勉強した程度しか知らないから
口を挟めないしさ。」
「そうだったんですか。」
話しているうちに、体育館前の通路まできていた。
二人で歩き出そうとしていたその時、
「あ、いた!矢口先生、お聞きしたいことがあるんですけど、
今平気ですか?」
二人の生徒が真里に駆け寄ってきた。
- 207 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:57
- 「ん、道重と田中じゃないか。お前ら本当仲良しだよな。勉強についてか?」
「はい。」
「そっか。ん〜、でも今は・・・。」
「いいですよ。先に行ってますから。」
真希は二人の生徒を見つめてそう言った。
「(わ〜、綺麗な人・・・。)」
「れいな、見過ぎ。」
「いたっ!ちょっと見ただけばい・・・。」
れいなは殴られた頭を押えながら、真里に救いの手を求めている。
「・・・悪いな。んじゃ、後で行くから、わかんないことがあったら
紺野にでも聞いてくれ。」
「わかりました。」
真希は軽く頭を下げてから、体育館への通路を歩き出した。
- 208 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:59
- 体育館は、どうやらバスケ部しか使っていないようだった。
真希はバスケ部をじっと見つめる。
今は5対5のミニゲームをやっているようだ。
その中には、真希が探していたあさ美の姿もあった。
コートの外では、他のバスケ部らしき生徒達が座りながら話している。
あさ美にボールが渡る。
あさ美は数回ボールをバウンドさせてから、前に鋭いパスを出す。
ボールは、二人のディフェンスの隙間を縫うように飛んでいく。
しかし、そこには味方は誰もいなかった。
一人の生徒が、怖い形相をしてあさ美に寄っていく。
- 209 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 21:59
- 「ちょっと、紺野先輩!またですか?こっちフリーだったじゃないですか!
何でこっちに出さないですか?」
「え・・・でも・・・。」
「本当にバスケの才能ないですね。もっとちゃんと見て出してくださいよ。
それくらいはやってくださいよ。全くもう。」
「・・・ごめん、里沙ちゃん。」
そう文句を言った少女、新垣里沙はまるで見下ろすようにあさ美を睨んだ。
「ディフェンスくらいはちゃんとやってくださいよ。ほら、走って!」
「は、はい。」
あさ美は走ってディフェンスに入る。
敵のチームにいる麻琴には、二人のディフェンスがついている。
- 210 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:00
- 「ね、ねえ、マコっちゃんに二人も行かないで!り、里沙ちゃんも
戻ってよ。右が空いちゃって・・・。」
あさ美がそう言った時には、すでに麻琴が右にボールを出していた。
ボールを取った生徒は、あさ美がディフェンスするよりも早く、シュートを
打ってゴールを決めていた。
「紺野先輩!小川先輩を一人で止めれるわけないでしょ!」
「で、でも里沙ちゃんも戻れば・・・。」
「私はオフェンスなんです。戻ってどうするんですか!勉強じゃなくって
こういうところでも頭を使ってくださいよ。」
「うん・・・。」
あさ美は何かに耐えるように、体を震わせていた。
- 211 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:01
- そして、同じようなことが何度か続いたその時、
「あさ美ちゃん、他の人と交代して。練習にならない。」
麻琴はきつい一瞥をあさ美に向ける。
「・・・わかった。」
あさ美はとぼとぼとコートから出て、他の生徒と交代した。
その後は他の生徒が話しをしている時でも、少しでも人の技を盗めるように
あさ美はじっとコートの中の、練習風景を目に焼き付けていた。
里沙が敵のボールをはじいて、コートの外にボールを出した。
そのボールは、話しをしている生徒達の頭を超えて、後ろへと転がっていった。
「紺野先輩、暇ならボール取ってきてもらえませんか?」
「・・・。」
後輩の里沙に言われても、あさ美は何も文句を言わずにボールを拾いに歩き出す。
あさ美がボールを拾おうとしたその時、あさ美より早く誰かの手によってボールが拾われる。
- 212 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:02
- 「先輩に対する言葉遣いがなってないね。」
「後藤さん・・・。」
ボールを拾ったのは、それまで体育館の壁に寄りかかって練習を見ていた真希だった。
真希はボールを片手に、コートに歩み寄っていく。
「小川先輩、あの人誰ですか?」
里沙は真希に向けて不信な目をしながら、麻琴に聞いた。
「・・・さあ?見たことないけど。」
「取ってあげるよ。ほらっ!」
真希は、里沙に向けてボールを投げつけた。
そのボールはあまりに速すぎて、里沙は全く反応できなかった。
ボールは里沙の横を通り過ぎて、コートの横に置いてあった椅子を吹き飛ばした。
- 213 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:03
- 「ご、後藤さん、そんな思いっきり投げちゃ・・・。」
あさ美は、そこで真希の顔を見て言葉を失った。
真希の目は今までとは全然違い、恐ろしいほどに怖くなっていた。
真希は一度溜息をついてから目を瞑った。
「十分手加減したよ。」
次に目を開いた真希の目は、今までどおりの元の目に戻っていた。
「何よ、あんたは?」
麻琴がコートから出てきて、真希を睨みつける。
「マコっちゃん、この人がさっき話した・・・。」
「昨日転入してきた後藤真希だよ。よろしくね。」
真希は笑ってそう答えた。
しかし、全く目は笑っていない。
- 214 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:04
- 「それで、何の用なの?」
「後藤、今日からバスケ部に入ったから。バスケしにここにきたんだよ。」
「へ〜。」
真希の答えに、麻琴は軽く頷いた。
「・・・別にいいけど。後藤さんだっけ?バスケはできないと思うよ。」
「何で?」
「私達はインターハイ狙ってやってるの。あさ美ちゃんの話しではうまいらしいけど、
あさ美ちゃんレベルに認められてもレギュラーにはなれないから。」
「ふ〜ん。」
真希は軽く相槌を打った。
「小川さんっていったよね。キャプテンってことはさ、
一番この中でうまいってことだよね?」
「そうなるね。」
「それじゃさ、後藤と勝負しない?」
「はぁっ!?」
真希の言葉に、麻琴は声を上げた。
- 215 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:04
- 「で、どうするの?別に自分の名誉のためにも、受けないでいた方が
マシだっていうんなら特に何も言わないけどね。」
「誰も受けないとは言ってないでしょっ!いいわよ、受けてやるよ。」
麻琴はあっさりと真希の挑発に乗った。
「それで?どんな勝負するのよ?その勝負に何か意味あるわけ?」
「勝負方法は、オールコートの1 ON 1だよ。三本先取した方の勝ち。」
「何でオールコートなの?ハーフコートでいいじゃない。」
「オールコートの方が、実力が出しやすいんだよ。ハーフの方がいいっていうんなら、
それでもいいけどね。」
「別にどっちでもいいよ。」
麻琴は鋭く真希を睨みつける。
- 216 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:05
- 「後藤がもし負けたら、パシリでも雑用でも何でも好きに使っていいよ。
その代わり、もし後藤が勝ったら後藤の言うことを一つ聞く。
それでどうかな?」
「後で後悔しないでよね。さっさとどっかで着替えてきなよ。」
麻琴はそれだけ言い残して、コートの中に入っていく。
「・・・大丈夫なんですか?あんなこと言っちゃって・・・。」
あさ美は心配そうに真希の顔を見上げる。
「紺野さん、バスケ部の部室ってどこにあるの?」
「あ、はい。案内します・・・。」
あさ美は心配そうな顔をしながら、真希を部室まで連れて行った。
- 217 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:05
- 今日はここまでです。
- 218 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:06
- 川VvV从<美貴の出番がな〜い!
作者<・・・もう少しお待ちを(汗)
- 219 名前:konkon 投稿日:2004/09/16(木) 22:08
- >MSさん
そうですね〜。
美貴が主人公なのになぜかごっちんへ・・・
美貴&愛はまたすぐに登場させますよ(汗)
- 220 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/16(木) 22:19
- がんばってごとーさん。
応援してるぞっ!!
- 221 名前:MS 投稿日:2004/09/16(木) 22:31
- 更新お疲れ様です。
ごっちんVS麻琴も気になります。
ごっちんもいいけど、
美貴&愛ちゃんも気になりますね。
218>川VvV从<美貴の出番がな〜い!
次は出してもらえるといいですね。
次の更新お待ちしております。
- 222 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:43
- ジャージに着替えた真希とあさ美は、麻琴の待つ体育館の中へと入っていった。
麻琴はすでにコートの中で立っている。
部員達は、コートの周りで座って見ているようだ。
「待たせてごめんね。」
「別に。」
麻琴は真希を睨みつけながら、コートの中央に歩いていく。
「さっさと始めるよ。里沙ちゃん、審判やって。」
「は、はい!」
里沙は慌ててボールを持って、麻琴に向かって走っていく。
あさ美とは全然違う態度だ。
真希はその光景を少しつまらなそうに見つめながら、麻琴に歩み寄っていく。
「それでは、いきますよ。」
真希と麻琴は、向かい合って睨み合う。
- 223 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:44
- 「始め!」
里沙が真上にボールを投げた。
真希と麻琴は、同時に高く飛んでボールに手を伸ばす。
先に触ったのは麻琴だった。
麻琴はボールを前の方にはじいて、着地と同時に走り出す。
真希はすぐに振り返って、麻琴を追いかけていく。
麻琴がボールを手にしたと同時に、真希はディフェンスについた。
麻琴がボールを拾ったのは、3Pラインより少し中だった。
「(ふむ、瞬発力はなかなかありっと。さて、こっからどう出るのかな?)」
真希はにやにやしながら、麻琴の動きを見つめていた。
麻琴はその場からシュートを打った。
真希はそれに合わせて、ボール目掛けて飛んだ。
だが、ほんのわずかに届かずボールはゴールの中へと入っていった。
- 224 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:44
- 「(へ〜、ここでシュートを打つんだ〜。けど、打つんだったら
もっと早く打たなきゃだめだね。)」
真希は麻琴のことを一度見てから、ボールを拾いに、向かう。
「さってと、次は私の攻撃だね。」
真希は麻琴の言葉を気にせずに、ボールを持ってドリブルを始める。
麻琴は少しづつ下がりながらだが、徐々に真希との距離をつめてディフェンスをしている。
「(ディフェンス面ではどうかね?)」
真希は両手でボールを交互に揺さぶりながら、一気に右に走っていく。
それを麻琴を読んでいたようで、真希から一発でボールを奪った。
「(ふ〜ん。ディフェンスもまあまあだね。あとはオフェンスかな。)」
真希はじっと麻琴を見つめる。
- 225 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:45
- 麻琴が右に動く。
それにつられて真希も右に動いた。
次の瞬間、麻琴は俊敏な動きで左に走り抜けていった。
「(なるほどね、クロスオーバーか。けど、こんなもんか。)」
麻琴はそのままレイアップシュートでゴールを決める。
「さっきの約束、忘れてないよね?」
「もちろん。あんたもちゃんと守りなよ。」
麻琴は真希の質問に答えずに、ディフェンスに入る。
「紺野先輩、何であの人あんな約束したんでしょうね〜?」
里沙は、真希をばかにするようにあさ美に聞いた。
「・・・後藤さんは勝つよ。」
あさ美の答えに、里沙はいぶかしげな表情をする。
- 226 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:46
- 「はぁっ?誰がどう見たって小川さんの勝ちじゃないですか〜。
何言ってるんです?もしかして頭までいかれちゃって・・・。」
「見てれば分かるよ。」
いつもとは違う、どこか怖い雰囲気を出しているあさ美に、里沙は
それ以上何も言えなかった。
真希がゆっくりと攻めていく。
麻琴は必要以上には近寄らずに、先ほどのように少しづつ距離をつめている。
真希がハーフラインを超えた辺りで、麻琴は3Pラインにいる。
距離は3メートルほどだ。
「教科書通りだね。」
突然の真希の言葉に、麻琴は顔を曇らせる。
- 227 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:47
- 「何言ってるの?文句でもあるわけ?」
「いいや、逆にほめてんだよ。まるでお手本のような動きだから、
後藤にはまずできないな〜ってね。」
後藤は淡々と話していく。
「けどね、常識的に実力を高めたって限界は知れてるんだよ。
教科書には載ってないことまではやらないからね。」
「何が言いたいわけ?」
麻琴は真希を鋭い眼光で睨みつける。
「あんたは後藤には勝てない。」
真希はそう言い放ったと同時に、シュートを打った。
- 228 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:47
- 「!?」
麻琴は驚愕の表情を浮かべて、ボールの行方を追った。
ボールは綺麗にゴールの輪の中を通過していった。
これには麻琴だけでなく、見ていた部員全員が目を丸くして驚いていた。
「ハ、ハーフラインから・・・。」
「後藤があんたのまねできない理由、後藤は非常識だからね。」
真希はクスっと笑ってディフェンスに入る。
「・・・この〜!」
麻琴はドリブルしながら、真希に勢いよく向かっていく。
真希は抜かれるまでぼーっと立っていた。
真希は、抜かれた瞬間麻琴を追いかけていく。
- 229 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:48
- 「これで終わりだよ!」
麻琴がシュート体制に入る。
「遅いんだよ!」
真希は麻琴がシュートするよりも早く、横からボールをはじいた。
「ほらほら、さっさとディフェンスにつきなよ。」
真希はハーフライン際ではじいたボールを手にして、シュート体制に入る。
「くっ!」
麻琴は必死になってジャンプして、シュートされるのを防ぐ。
「残念でした♪」
真希はシュートせずに、そのままドリブルしてゴールに向かう。
麻琴は着地したと同時に、ダッシュで真希を追いかけた。
真希が左手でレイアップシュートの体制に入る。
それに合わせて麻琴は飛んだ。
- 230 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:49
- 「(取れる!)」
麻琴のタイミングは完璧で、そのままシュートしてればまず取れただろう。
あくまで真希が、そのままシュートしてればの話しであった。
真希は麻琴の手が視界に入った瞬間、ボールを左手から右手に持ち変えた。
そして、着地するより早く右手でボールを放り投げる。
ボールは、ゴールの中へと吸い寄せられるように入っていった。
「ダブル・クラッチ・・・。」
あさ美は思わず呟いた。
「すごいね、後藤さんって・・・。」
「かっこいい・・・。」
部員達は、すでに麻琴ではなく真希のプレイに魅入っていた。
- 231 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:51
- 「くそっ!」
麻琴はなんとか真希を抜こうとフェイントをかける。
しかし、真希は全く引っかからずに麻琴をその場で止めている。
「ほらほらっ、普通の試合だと8秒過ぎちゃったらオーバータイムだよ?」
「くっ、なめないでよ!」
麻琴は強引にも真希の左を掻い潜ろうとする。
「無理だっての。」
真希はあっさりと麻琴からボールを奪う。
麻琴はボールを取られたと同時に、真希の目の前まで走ってディフェンスに入る。
真希は麻琴がディフェンスに入るまで、その場から動かなかった。
「いい、本当のフェイントっていうのはこうするんだよ。」
真希は、初速からトップスピードで麻琴に向かっていく。
- 232 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:52
- 「(左だ!)」
麻琴の予想通り、真希は左に向かってきた。
だが、次の瞬間、
「!?」
麻琴の視界から真希が消えた。
いや、消えたように見えた。
真希は左に向かった瞬間、一瞬で向きを変えて右に向かっていったのだ。
あまりの速さに、麻琴は全く反応できなかった。
麻琴が抜かれたことを認識して振り返ると、真希はすでに
ハーフラインを超えていた。
そのスピードは、麻琴が普通に走るよりも断然速かった。
「(最初の2点は・・・手加減してたっていうの・・・。)」
麻琴は呆然と真希の後姿を見ていた。
- 233 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:52
- 真希は3Pラインについたと同時に、ボールを両手で抱える。
そこからなんと、真希は3Pラインからゴールに向かって飛んだのだ。
その姿は美しく、そして高く、まるで羽が生えているように翔んでいたように見えた。
「・・・思い出した。」
あさ美は翔んでいる真希を見て、昔に見たことのある一人の少女と結びついた。
「ハッ!」
真希は力強くゴールにボールを叩きつけた。
その光景に、誰もが呆然としていた。
その直後に、
「・・・かっこいい!」
「すごい、すごいよ!」
「小川さんに勝っちゃったよ!」
部員達から一斉に歓声が上がっていった。
「・・・金髪の妖精。」
あさ美が呟いた声が、誰かに聞かれることはなかった。
- 234 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:52
- 交信しました〜。
- 235 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 14:54
- >220:名無し飼育さん
ごっちんはがんばります!
いえ、がんばり続けますw
>MSさん
美貴&愛はまだまだですね〜・・・
ごっちん編が終わってからですね。
- 236 名前:MS 投稿日:2004/09/20(月) 23:56
- 更新お疲れ様です。
ごっちん強すぎです。
紺野の最後の言葉が少し気になりました。
次の更新お待ちしております。
- 237 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:52
- 「ふう、私の勝ちだね。」
真希は麻琴に歩み寄っていく。
麻琴は悔しそうな目で、真希を見つめている。
「あんたもけっこううまかったよ。けど、まだまだだね。県の代表枠に
入れたくらいで浮かれてたら、インターハイで優勝なんてできないよ。」
「・・・あんた、何者なの?」
麻琴は体を震わせながら真希に聞いた。
「何であんたみたいなすごい人がいるのに、一度も見たことも
聞いたこともないなんて、そんなこと・・・。」
「あるはずだよ。」
麻琴の問いに答えたのは、コートの外から近寄ってきたあさ美だった。
- 238 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:54
- 「四年前の中学の全国大会で、準決勝まで大活躍だったあの幻の
金髪の妖精、後藤さんのことですよね?」
「!?」
あさ美のその言葉に、麻琴や里沙、部員達は驚いた。
「金髪の妖精って・・・誰もが天才だと認めていたあの・・・。」
「先ほどのダンクシュートを見て確信しました。あのダンクシュートは、
確か全国大会でもやってましたよね?」
「金髪の妖精か・・・そうやって呼ばれてた時もあったね。」
真希は軽く笑って答える。
「で、でも、金髪の妖精って確か私達より一つ上じゃ・・・。」
「そうだよ。後藤は一年くらい休学してたからね。」
「じゃあ、決勝戦から突然姿を消したのは・・・?」
「・・・後藤にもいろいろあったんだよ。」
真希は少し寂しげな目をして遠くを見つめる。
- 239 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:54
- 「まぁ、勝負は後藤の勝ちだからね。一つ言うことを聞いてもらうよ。」
「・・・何?」
「紺野さんをキャプテンにしてほしいんだ。」
「ハァッ!?」
その言葉に、麻琴を含めた部員全員が驚いていた。
もちろんあさ美も、口をポカーンと開けて驚いていた。
「ん、後藤何か間違ったこと言った?」
「なっ、何であなたじゃなくてあさ美ちゃんなの!?」
「紺野さんがキャプテンがいいと思ったから。」
麻琴の荒い言い方も気にせずに、真希はあっさりと答える。
「だっ、だってあさ美ちゃんは・・・。」
「下手だから。って言いたいの?」
真希の問いに、麻琴はしぶしぶ首を頷ける。
- 240 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:56
- 「だったらやってみなよ。後藤とやったように1 ON 1でね。
今回は10分マッチね。もしあんたが勝ったら、さっきのは
無しにしたげるよ。けど、勝てなかったらちゃんと言うこと
聞いてもらうからね。」
「・・・。」
麻琴は、あさ美と戦うことに自分のプライドが許さないのか、
全く首を頷けようとしない。
「おもしろそうじゃん。小川、やってみろよ。」
横から声を投げかけたのは、顧問の真里だった。
「矢口先生・・・。」
「やってみなきゃわかんねぇだろ?紺野だって毎日一生懸命練習してたんだ。
それがどんだけ辛いか、未経験者の矢口にだってわかるぜ。」
真里はあさ美と麻琴を交互に見つめる。
- 241 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:57
- 「でも・・・。」
「ここで逃げるっていうんなら、お前は紺野に勝つ自信がないってことになるぞ?
それでもいいのか?」
「・・・わかりました。」
麻琴は話しが終わると、一度コートの外に出て水分補給をし始めた。
「矢口先生、いつから見てたんです?」
真希は、真里の存在に気付いていなかったので聞いてみた。
「んっと、後藤と小川が勝負するってとこからかな。」
「それってほとんど初めからじゃないですか。」
「後藤、すっげぇうまかったんだな!矢口感動したよ。マジかっこよかったぜ!」
真里は目を輝かせて、真希を見上げる。
- 242 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:58
- 「それはどうも。さっきの生徒達はどうしたんです?」
「なんかさっきの田中ってやつがな、後藤に見惚れてたことに道重が
キレちまってな、田中のことぶん殴ってどっか走ってっちまったんだ。
それで、田中もそれ追いかけて行っちまったから、放っておいて
こっちにきたんだ。」
「放っておいてよかったんですか?」
「いいんだよ。どうせいつものことだから、一時間もすりゃまたすぐに
イチャつき始めてるって!おいらだって、恋人とイチャついたりしたいのに・・・
おいらも恋人欲しいぞぉ!」
「・・・矢口先生ならすぐにできますよ。」
「本当か!?後藤、お前っていいやつだな〜!」
「(単純・・・。)」
真里は真希の肩を何度か叩いたあと、コートの外に出ていった。
- 243 名前:konkon 投稿日:2004/09/24(金) 00:00
- 真里との話しが終わると、今度はあさ美が真希に近寄ってきた。
「後藤さん・・・絶対勝てませんよ。私、前にマコっちゃんと
やった時も全然相手にならなかったし・・・。」
「いいから。やってみなよ。」
「でも・・・。」
「紺野!」
真希に強く言われ、あさ美は一瞬体を震わせる。
「紺野、あんたはうまいと思うよ。後藤はそう思ってる。どう、
それでも後藤を信じる気になれない?」
「・・・。」
「だいたいさ、小川とやったのはいつの話しなわけ?」
「た、確か二年位前だったと・・・。」
あさ美は少し考えてから答える。
- 244 名前:konkon 投稿日:2004/09/24(金) 00:00
- 「今と昔は全然違うんだよ。だから、後藤がもう金髪の妖精って
呼ばれることもないんだ。後藤は朝に一回だけ紺野と練習しただけだけどさ、
後藤は紺野とバスケをやってみたいって思ったよ。紺野はどう?」
「・・・私も、後藤さんとバスケットがしたいです。」
「ならさ、自分を信じてやってみてよ。あんたは誰よりも練習してたんでしょ?
結果がどうだったなんて、あとで誰にも文句とか言わせないからさ。」
「・・・自分を信じることは、まだできないかもしれません。」
「紺野・・・。」
「でも、後藤さんを信じます。私、やってみます!」
あさ美は真剣な目で真希を見上げる。
「OK、んじゃいってきなよ。本気でやるんだよ。」
「はい!」
少しだけあさ美の顔を見つめたあと、真希はコートから出ていった。
- 245 名前:konkon 投稿日:2004/09/24(金) 00:01
- 交信しました♪
- 246 名前:konkon 投稿日:2004/09/24(金) 00:02
- >MSさん
ごっちんは最強ですw
あさ美の残した言葉には
こういう意味が隠されてたんです。
まぁ、回想シーンがもしあった時には
そこでよろしくです。
- 247 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 21:36
- 紺野さんガンバ!!金髪の妖精のお墨付きだぜ♪
- 248 名前:MS 投稿日:2004/09/26(日) 10:38
- 更新お疲れ様です。
ほうほう、そういう意味があったんですか。
やっぱりすごいですね、ごっちんは。
紺野さんも頑張って欲しいです。
次の更新お待ちしております。
- 249 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:49
- 「いい、本気でいくからね。」
「・・・うん。」
麻琴の休憩が終わったあと、あさ美と麻琴はコート中央で睨み合っていた。
麻琴に睨みつけられても、あさ美は引かずに睨み返していた。
「始め!」
先ほどと同じように、里沙がボールを真上に放り投げる。
二人は同時にジャンプして、ほぼ同時にボールに触った。
はじかれたボールを先に触ったのは麻琴だった。
すぐにあさ美が麻琴の前に迫る。
「このっ!」
麻琴が強引にも右から抜こうとする。
あさ美はそれをすぐに察して、右に寄って抜かれるのを阻む。
- 250 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:49
- 「(くっ、抜けない・・・あさ美ちゃんってこんなに
ディフェンスうまかったっけ?)」
「(さすがはマコっちゃんだ・・・抑えるのでやっとだ・・・。)」
二人は硬直状態のまま、その場から動けない。
麻琴が一瞬の隙をついて、あさ美の右へ避ける。
それに気付いて、あさ美が手を伸ばす。
次の瞬間、麻琴は左へと動いた。
そこまであさ美は反応できずに、麻琴はあさ美の横を抜けていってシュートを決める。
「は〜、あれがマコっちゃんの伝家の宝刀、クロスオーバーか〜。
やっぱマコっちゃんはうまいな〜。」
あさ美は、敵である麻琴に感心しきっていた。
- 251 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:50
- 「次はあさ美ちゃんだよ。早くしなよ。」
「あ、ごめん。」
あさ美はすぐにボールを拾ってドリブルを始める。
麻琴はじりじりとあさ美に迫っていく。
麻琴が手を伸ばそうとした時、あさ美は右に動く。
麻琴は横からボールを取ろうとする。
「(やっぱおかしいよ。私があさ美ちゃんに負けるなんてありえない!
さっさと終わらして・・・。)」
次の瞬間、あさ美が麻琴の前から姿を消した。
いや、麻琴の左を抜いていったのだ。
「(うそ・・・私のクロスオーバーを・・・。)」
そう、あさ美は麻琴と全く同じ技をかけたのだ。
- 252 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:51
- 麻琴があさ美に自分の技を使われて、気力を失い欠けていた。
その時、
「小川!勝負の途中だろ!あきらめるな!」
声を出したのは、麻琴にあさ美をぶつけてきた真希だった。
「紺野のことを甘くみてると、後悔するよ。」
真希のその言葉に、麻琴はダッシュであさ美を追いかけた。
麻琴が追いついてディフェンスについた頃には、あさ美はすでに3Pライン上だった。
「(あさ美ちゃんは3Pを打てなかった。だとすると内側にくるはず・・・。)」
麻琴があさ美の動きを読んでる間に、あさ美はシュート体制に入る。
そして、そのままシュートを打った。
そのフォームは、真希に教わった片手打ちだった。
「嘘・・・。」
ボールは微妙に輪にぶつかりながらも、なんとかゴールの中を通り抜けた。
麻琴はボールがゴールを通り抜けるのを、呆然と見ていた。
「だから甘くみるなって言ったのに。」
真希は誰にも聞こえないように、嬉しそうに小さく呟いた。
- 253 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:51
- 「そこまでです!」
里沙の声が体育館中に響いた。
その言葉と同時に、あさ美と麻琴は動きを止めた。
結果は7対7の同点で終わった。
「ふう、終わっちゃったか。」
「ハァッ、ハァッ、何で・・・私があさ美ちゃんと引き分けなの・・・。」
麻琴は息を切らしながら、あさ美のことを睨みつける。
一方のあさ美は、大して疲れた様子も見せずにぼーっとどこか遠くを見ている感じだった。
「これでわかったでしょ?」
麻琴に近づいてきた真希が口を開いた。
- 254 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:52
- 「何で・・・あさ美ちゃんがあんなにうまく・・・。」
「答えは簡単、誰よりも練習してるからだよ。」
「え・・・?」
「紺野はね、朝二時間も早く学校にきて練習してるんだよ。それにこれは
友達から聞いたんだけど、部活が休みの日や部活の終わった後、休日なんかも
練習してるんだってさ。」
もちろん友達とは美貴のことである。
「誰よりも練習した分、誰よりもうまくなれる。これは小学生でも知ってることだよ。
それに、あの子は効率よく計算して練習してる上に、うまい人の技術を盗もうとする
集中力が半端なくすごい。ただ、だらだら練習してたってうまくなりっこないんだよ。」
「・・・そうだったんだ。」
「でも、だったら何で紺野先輩はあんなに意味わかんないパス出したり、
ディフェンスに指示したりするんですか?」
横から里沙が口を挟んだ。
- 255 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:53
- 「それはあんたらの実力不足だよ。さっきのミニゲーム見てたけど、
何で紺野のボールを取れないのか、後藤は不思議で仕方なかったよ。
紺野のパスは、確実にいいとこへ投げてたよ。後藤だったらナイスパスって
言いたいとこだね。それに、ディフェンスに指示してたのも的確で効率よかった。
ただ、声が小さい上に指示出すのが遅いのが問題だったけどね。」
真希の話しを、部員達は黙って聞いている。
「新垣って言ったね。特にあんたはいばりすぎだよ。実力世界では年なんか
関係ないとか思ってるんだろうけど、あんたの場合はただのいじめだ。
紺野の人の良さをうまいこと使ってたみたいだけど、もし今度後藤が
同じとこ見たら、本気で許さないからね。」
「は、はい・・・。」
その言葉に、里沙は顔を下げる。
- 256 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:54
- 「フォワードだから、ディフェンスだから、そんなのバスケには関係ないんだよ。
バスケはサッカーとかとは違って、五人しかいないんだ。全員で守って全員で攻める
それが基本だよ。だから、最もハードで体力の必要なスポーツだって言われてるんだよ。
そして、チームワークの大切さもね。」
真希はそこで一息つく。
「紺野が下手だって決めつけて、全く相手にしない他の部員達も問題あるんだよ。
中学が強豪だった、強いチームの枠に入れた、だから何だっていうんだよ。
上には上がいるんだ。もちろん、後藤以上にうまい人だってたくさんいる。
だからこそ、紺野みたいに必死になって練習するんだよ。誰よりもうまくなりたければね。」
そこまで真希が言い終わったあと、それまで下を向いていた麻琴が顔を上げた。
「・・・後藤さん。」
「何?」
「私を弟子にしてください!お願いします!」
麻琴が突然頭を下げた。
- 257 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:54
- 「ほえっ?」
「私ももっとうまくなりたいんです!次はあさ美ちゃんに勝てるくらいに、
強くなりたいんです!」
「私もお願いします!」
今度は里沙まで頭を下げた。
「後藤さん、お願いします!」
さらに部員達全員が頭を下げ始めた。
真希はその光景を、苦笑いしながら見ている。
真希は一息ついてから、部員達を見渡していく。
「後藤じゃないでしょ。キャプテンは今度から紺野なんだからさ。」
「・・・私がやるんですか?」
あさ美は不安そうに真希の顔を見上げる。
- 258 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:55
- 「同点だったんだから、小川に負けてないでしょ?」
「いえ、確かにそうなんですけど・・・なぜ、後藤さんがやらないんですか?」
「一番うまいやつがキャプテンをやるんじゃないんだよ。的確に指示を出せて、
チームの中心的存在になれる人がやるべきなんだよ。その点では、後藤は
点取り屋だから無理があるんだよね〜。それに自分勝手だしね♪」
「でも、私なんかがそんな大事なことを・・・。」
「紺野、何回同じこと言わせるの?」
真希はあさ美の肩に手を置いて、あさ美をじっと見つめる。
「あんたは誰よりも練習して、そこまで実力を身に付けたんでしょ。
昔は小川の全く相手にならなかったのに、今ではどう?本気の小川と
対等に戦えたでしょ。自信持っていいんだよ。」
「そうだよ、あさ美ちゃん。」
横から麻琴が話しに入ってきた。
- 259 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:56
- 「私もあさ美ちゃんに負けないくらい練習して、もっと強くなるよ。
今度は負けないからね!」
「マコっちゃん・・・。」
「みんなで強くなろうね!」
「おーー!!」
部員達も腕を上げてやる気を見せる。
「言い忘れてた、紺野はPG(ポイントガード)になったほうがいいよ。」
「PGですか?」
「うん、あれだけ正確で素早いパスを出せる人は滅多にいない。それに、
ディフェンス面でもあんたは的確な指示が出せるし、3Pも・・・まあ、
これは練習すればもっとうまくなれるでしょ。どう、やってみない?」
あさ美は下を向いて考える。
- 260 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:56
- 「・・・やってみます!」
少ししてから、あさ美は元気に返事をした。
「そっか、これからもよろしくね。紺野キャプテン♪」
「キャプテンはやめてくださいよ〜。」
真希とあさ美は笑いながら、部員達の元へと歩いていった。
そして、紺野がキャプテンとして初めての練習が始まった。
- 261 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:57
- 今日はここまでです
- 262 名前:konkon 投稿日:2004/09/26(日) 15:59
- >名無し飼育さん
紺ちゃんはごっちんに認められてます♪
これからもがんばってほしいですね!
>MSさん
金髪の妖精は、まぁデビュー当時の
ごっちんってことでお願いしますw
ここからが二人の新しい生活の始まりです☆
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/28(火) 10:48
- 紺ちゃんこれからもがんばれ!
- 264 名前:MS 投稿日:2004/09/29(水) 00:09
- 更新お疲れ様です。
紺野は努力家ですなぁ。
練習の成果が出てよかったですね。
次の更新お待ちしております。
- 265 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:51
- 「もう動けない・・・。」
「早く帰ろ・・・。」
部活が終わり、バスケ部員達は帰るために部室へと戻ってきた。
普段ならしゃべりながら着替えたりしているのだが、今日に至っては部室は
とても静かだった。
あさ美をキャプテンに迎えて初めての練習では、ずっと基礎の練習をしていた。
とにかくひたすら練習のみで、本格的なフォーメーションやミニゲームは一切やらなかった。
その練習に対して不満を述べようとした者もいたが、真希に同意されては
口答えのしようがなかった。
「ミニゲームで実践するよりも、まずは基礎を固めることが大事だと思います。」
「基礎ができてなきゃ、試合なんかできるわけない。」
それが二人の言い分だった。
そのため、何キロ走ったかわからないほどひたすら走りまくっていた部員達は、
話す気力も失っていた。
- 266 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:51
- 麻琴も里沙も、完全に疲れきった顔をしながら着替えている。
ただ、真希とあさ美だけは違っていた。
「紺野はさ、もっと早く声を出せるようにしなきゃね。」
「後藤さんはボールへの当たりが激しいですからね、もう少し
抑えたほうがいいですよ。」
二人は特に疲れを表情に出さずに、二人で練習の反省会をしていた。
「お先に失礼します。」
「お疲れ様でした〜。」
部員が次々と帰っていく。
「先に帰るね。」
「お疲れ様です。」
麻琴と里沙も部室から出ていって、最後に真希とあさ美だけが残っていた。
「そろそろ時間ですね。」
「そうだね。後藤達も帰ろうか。」
二人は素早く着替えて、部室を出ていった。
- 267 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:52
- 「そういえばさ、紺野はどうしてバスケを始めたの?」
並んで歩いている途中に、真希があさ美を振り向いて聞いた。
「どういう意味ですか?」
「だってさ、途中まで空手やってたんでしょ?何でいきなりバスケを
やり始めたのかなってね。」
「ああ、そういうことですか。」
あさ美は軽く笑って真希を見上げた。
「金髪の妖精になりたかったからですよ。」
「後藤に?」
真希は目を細めてあさ美を見つめる。
- 268 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:53
- 「四年前の全国大会では、準々決勝からテレビ放映されてたんです。」
「あ〜、だったかな。」
「そこで偶然テレビを見ていたら、金髪の妖精が華麗にゴールを決めていたんです。
そこで私もこうなりたいなって思って・・・一目惚れみたいなものですかね。」
あさ美は恥ずかしそうに顔を赤くする。
「私は、少しでも後藤さんに近づけたんでしょうか?」
あさ美は少し不安そうな顔で真希を見つめる。
「紺野は金髪の妖精になれないよ。」
「・・・そうですか。」
真希の言葉に、あさ美は悲しげに下を向いた。
- 269 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:53
- 「そういう意味じゃないよ。紺野は金髪の妖精になる必要なんかないんだ。」
「・・・?」
「金髪の妖精になれるやつなんて、後藤を含めて誰にもなることは
できないんだよ。昔の後藤は金髪の妖精って呼ばれてたけど、
今の後藤は今の後藤だし、紺野には紺野の自分にしかない武器を
持ってる。金髪の妖精になる必要なんてないんだよ。」
「私だけの・・・武器?」
「そう、後藤にしか持ってない武器もたくさんあるかもしれないけどさ、
紺野には紺野の、後藤が持ってないいいところをたくさん持ってるんだ。
誰かのようになりたいなんて思うことないよ。紺野は紺野なんだから。ね?」
真希は笑ってあさ美を覗き見た。
- 270 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:54
- 「後藤の力を持つ人が二人いたって、二倍にしかならないんだよ。けど、
後藤と紺野の力が合わさったら、何倍にも、何十倍にも膨れ上がると思う。
そう思わない?」
「そう・・・なんですかね〜?」
「きっとそうだよ。だからがんばろう。二人で最強コンビって言われるくらいにさ!」
「最強コンビ・・・。」
「あ、最強コンビの方が金髪の妖精よりもかっこいいかも!
よし、それで決まりだね!後藤と紺野は最強コンビ♪」
「後藤さん・・・。」
「何?」
「あまり・・・センスないですね。」
「んあ〜、そっかな?けっこういいと思ったんだけどな〜。」
真希は首を傾げて唸り始める。
- 271 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:54
- それをあさ美は、笑いながら後藤の顔を見つめていた。
「あの、私からも聞いてもいいですか?」
「ん、何でも聞いていいよ。」
「後藤さんと藤本さんは、どのような出会いをしたんでしょうか?」
「あ〜、その話しか。話すと長いんだよね〜。」
真希は少し考えたあと、手をポンッと叩いた。
「紺野さ、今から時間ある?」
「今から・・・ですか?」
「後藤の家にこない?そこならゆっくり話せるしね♪」
あさ美は目を見開いて止まってしまった。
- 272 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:55
- 「ん〜、やっぱりこの時間だと無理があ・・・。」
「い、行きます!」
あさ美は大声で真希に言った。
「そ、そっか。んじゃ行こうか。」
「はい!」
真希は不思議そうに、あさ美は嬉しそうに真希の後をついていった。
- 273 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:55
- 今日はここまでです。
- 274 名前:konkon 投稿日:2004/09/29(水) 23:57
- >名無し読者さん
応援、ありがとうございます。
これからも紺ちゃんはがんばり続けます!
>MSさん
紺ちゃんはいつでもどこでも一生懸命!
こんないい子はそうはいませんよ〜w
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/01(金) 10:38
- どんな出会いなのかな
- 276 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:00
- 「遠慮なく入ってよ。」
「お、おじゃまします・・・。」
あさ美は緊張しながら真希の家に入っていく。
家の中は綺麗に片付いていて、二人で住むには十分な広さがあった。
「そこら辺座ってくつろいでてよ。今晩御飯作るからさ。」
真希はかばんを放り投げて、冷蔵庫の中をあさっていく。
「えっ、そんな、悪いですよ〜。」
「何、後藤が作るご飯は食べたくないってこと?」
「そ、そういう意味ではなくて・・・。」
「んじゃ決まり!今日は何にしようかな〜♪」
真希は鼻歌を歌いながら、夕食の準備を始める。
あさ美はリビングにあるソファに座って、キョロキョロと周りを見渡している。
- 277 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:01
- 「暇だったらテレビでも見てていいよ。」
「は、はい・・・。」
あさ美はゆっくりと立ち上がって、テーブルの上にあるテレビの
リモコンに手を伸ばした。
時刻は8時頃、この時間は特に見たい番組はない。
それでも何もしないで待ってる方が落ち着かないので、とりあえず
今やっているドラマを見ることにした。
しばらくは何でもないように見ていたが、途中であさ美は口を開けて固まってしまった。
それはどんなドラマでもありがちな、恋人同士のキスシーンだった。
「お待たせ〜!できたよ。」
真希はお盆に二つの皿を乗せて、リビングへと近づいてきた。
真希がくるより早く、あさ美は慌ててテレビを消した。
- 278 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:01
- 「どうしたの?」
「な、何でもないです・・・。」
あさ美は顔を赤くして答える。
真希は首を傾けながら、テーブルの上にお盆を置いた。
「わ〜、おいしそう・・・。」
「後藤特製オムライス!どうぞ召し上がれ〜。」
「では・・・いただきます。」
あさ美は少し躊躇しながらも、スプーンを取ってオムライスを一口口に含んだ。
「どう、お味のほうは?」
「・・・おいしい!」
「そっか。よかった。」
あさ美の嬉しそうな顔を見て、真希は安心して自分の分に手をつける。
- 279 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:02
- 「けっこうやるもんでしょ?」
「はい!すごいおいしいです!」
あさ美は手を止めずにオムライスを食べている。
「後藤さん、料理人でもいけるんじゃないですか?」
「それは後藤にバスケをやめろってことかな?」
「ち、違いますよ!私は、その・・・。」
「フフッ、冗談だよ。」
真希は笑いながらオムライスを口に入れる。
「さって、後藤とミキティの話しだったよね。」
「・・・は、はい。」
あさ美はオムライスに食べるのに夢中で、少しだけ思い出すのに時間がかかった。
「そうだな〜、何から話そうかな・・・。」
真希はいろいろなことを思い出しながら、少しづつ話し始めた。
- 280 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:03
- 「うん、なかなかよかったと思う。」
愛は首を頷けて、後ろで弾いていた四人を振り向いた。
「この曲、絵里は好きですね〜。」
「うん、さゆもいいと思う。」
「やってみると、けっこう面白い曲っちゃね。」
三人は愛に近づいていって、それぞれ感想を述べた。
美貴が作った歌は、曲はそのままで歌詞をメンバー全員で考えて書き換えることにした。
そして練習の最後に、一度だけ全員で弾いてみたのだった。
「藤本さんの曲はかっこいいですね。」
「歌詞は微妙だったけど、作曲は向いてるんじゃないですか〜?」
四人で話しをしているところに、美貴が腕を振り上げて近づいていった。
- 281 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:04
- 「よっしゃ〜!やっと美貴の出番がきた〜!」
「「「「ハァッ!?」」」」
「だってさ、主役なのに五話も美貴の出番なかったんだよ!
読者のみんな、美貴のこと覚えてるか〜い!?」
「・・・そんなことしてると、後藤さんに主役取られるよ?」
愛は大きな溜息をついて、美貴を遠い目で見つめた。
「うぐっ・・・それは困る。でもさ、そしたら愛ちゃんもヒロインじゃ
なくなっちゃうんだよ?それでもいいの?」
「別に。」
愛はあっさりと答える。
- 282 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:06
- 「何もそんなあっさりと答えなくたって・・・。」
「藤本さんと後藤さんって、こんなに違うのにどうして仲がいいんだろ?」
「ん、知りたい?美貴達のこと?」
愛は少しの間、美貴のことを見つめて考える。
美貴は愛のことを見つめて、首を頷けるのを待っている。
しかし、
「「「藤本さん!!!」」」
絵里、さゆみ、れいなの三人が怖い形相をして、美貴の前まで近寄っていく。
「はい・・・何でしょうか・・・?」
美貴はその顔を見て、怯えながら後ずさっていく。
- 283 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:07
- 「藤本さん、もっとしっかりしてください!」
「藤本さんが主役じゃなくなっちゃったら、さゆ達の出番が
減っちゃうんですよ!」
「ただでさえ後藤さん人気は高いんですからね!れいな達の
ことも考えてくださいよ!」
「・・・すいませんでした。」
美貴は大きく頭を下げた。
「ねえ、そろそろ本題に入りたいんだけど・・・。」
愛は、また大きな溜息をついてから時計を見た。
時計の針は8時を指していた。
「(もう時間か。そろそろ帰らなきゃ・・・。)」
愛がそう思っていたその時、
- 284 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:08
- 「高橋、ちょっといいかな?」
扉から圭織が顔を出して、愛を呼んだ。
「何ですか?」
「少し、話しがあるんだけどいいかな?」
「はい、わかりました。」
愛はすぐに頷いて、美貴達を振り向いた。
「飯田さんと話ししてくるから、片付けして少しだけ待ってて。」
愛の言葉に、美貴達は素早く帰る準備を始める。
愛はそれを見てから、圭織のいる部屋へと向かっていった。
- 285 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:09
- 「「「お疲れ様でした〜!」」」
「お疲れ様。」
「お疲れで〜す!」
愛が戻ってきてから、絵里達と別れて美貴と愛は並んで歩き始める。
「愛ちゃん、今日はどうする?いつものとこに行く?」
「ん・・・行くよ。私も聞きたいことがあるしね。」
「聞きたいことって、さっき言ってたごっちんと美貴の関係についてだよね?」
「・・・うん。」
愛は少し時間をおいてから、首を縦に頷かせた。
「いいよ♪そうだね〜、ごっちんと初めて会ったのはさ、
二回目の中三の初めだったんだ。」
- 286 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:10
- 三年前、
「今度の転入生ってどんな子かな?」
「あ、きたみたいだよ。」
当時中学三年生だった美貴のクラスに、HRの時間になって担任が
教室の中に入ってきた。
担任の後ろからは、一人の少女がついてきていた。
顔はとても端整で、中学生とは思えないほど大人っぽい。
しかし、全くの無表情でまるで生きている感じがしない。
「それじゃ、自己紹介してくれるかな?」
担任に促されて、転入生は何も言わずに頷いた。
- 287 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:11
- 「初めまして、後藤真希です。」
「・・・それだけでいいの?」
担任の問いに、真希は軽く頷いただけだった。
「えっと、席はあの空いてる席についてもらえるかな?」
真希は空いてる席を一瞥して、無表情のまま席についた。
真希の雰囲気は、どこか近寄りがたいオーラを出していて誰も話しかけようとしない。
「何か暗い子が入ってきちゃったね。」
「そうみたいだね。」
そんな話し声が、美貴の耳にどこからか聞こえてきた。
その日、真希が誰かと話すことはなかった。
- 288 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:11
- 「ねえ、後藤さんはどこからきたの?」
真希が転入して三日後の昼休み、美貴が真希の前の席に座って話しかけた。
この三日間、真希は授業で教師に指名されるとき以外は口を開くことがなかった。
クラスメイトが話しかけても、見向きもせずに本を読んでいたり
どこか遠くを眺めたりしていた。
それは美貴も例外ではなかった。
「それじゃあさ、趣味とかって何?好きな食べ物とかは?」
「・・・。」
真希は、美貴のことを気にせずに小説を読んでいる。
「ねえ、その本おもしろいの?何て小説?」
「・・・。」
やはり真希からの反応はない。
- 289 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:12
- 「(ん〜、何だったら聞いてくれるのかな?)」
美貴は真希のことをじっと見つめる。
「後藤さんってさ、髪綺麗だよね。」
美貴は立ち上がって、当時長かった真希の髪に触れようと手を伸ばす。
その時、
バシッ!
「いたっ!」
真希が美貴の手をはじいたのだ。
- 290 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:13
- 「あ〜、うざったいな!あんた何で何も言わないのよ!?」
美貴は真希の顔を覗き込みながら怒鳴る。
「・・・。」
それでも真希は何も言おうとしない。
「やだね〜、こんだけ暗いんじゃ、やっぱ家族もネクラの集まりなんだろうね〜。」
美貴は真希を見下ろすようにそう言った。
その時、
ガタッ
椅子が倒れるくらいの勢いで、真希が立ち上がったのだ。
- 291 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:13
- 「今・・・何て言ったの?」
「あれ、ちゃんと聞こえるんだ。それじゃもう一回言ってあげるよ。
ネクラ家族なんてやだね〜って言ったんだ・・・。」
ドガッ!
美貴が言い終わるより先に、真希が美貴の顔を殴り飛ばした。
美貴は、机や椅子を吹き飛ばしながら派手に転がっていく。
「キャーッ!」
その光景を見ていたクラスメイト達は、叫びながら二人から離れていく。
「あんたに何がわかんだよ・・・私の家族のことをばかにするな。」
真希はそれだけ言って、かばんを持って帰る準備をする。
- 292 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:14
- 「あんたのお父さん、政治家なんだってね。お父さんに泣きついて、
何でもやってもらってるあんたなんかと一緒にしないでよ。
後藤はあんたみたいに、親に甘えて生きてるんじゃないんだ。」
真希はそれだけ言い残して教室から出ていこうとした。
しかし、真希が教室を出る直前で、
「ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!」
バキッ!
美貴が飛び蹴りで真希の顔を蹴り飛ばした。
「ぐっ・・・。」
真希は強く壁に叩きつけられて、その反動で倒れそうになる。
さらに真希が倒れるよりも早く、美貴は真希の顔を掴んで壁に押し付けた。
- 293 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:15
- 「もう一回言ってみなよ。誰が誰に泣きつくって?」
美貴は恐ろしい形相をして、鋭い目つきで真希を睨みつける。
「い・・・ったいなっ!」
真希の中段蹴りが美貴の腹にめり込んで、その衝撃で美貴は後ろに数歩よろめく。
「このネクラ女、調子に乗ってんじゃねぇよ!」
美貴は口元に付いた血を腕の裾で拭って、真希のことを睨みつける。
「世間知らずの政治家のお嬢様、後藤を怒らせたこと後悔させてあげるよ。」
真希は長い髪を一度振り払ってから、美貴のことを睨みつけた。
- 294 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:15
- 今日はここまでです。
- 295 名前:konkon 投稿日:2004/10/03(日) 11:16
- >名無し読者さん
こんな出会いになりましたw
内容は次回までお待ちを・・・
- 296 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/04(月) 10:53
- なんかすごそう…
- 297 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:03
- 「うらっ!」
美貴の拳が、まともに真希の顔を殴りつける。
「ぐっ、このっ!」
真希の回し蹴りが美貴の側頭部を捉える。
二人は血だらけになりながらも、殴り合いを続けていた。
教室はすでに廃墟と化している。
机や椅子は飛び散っていて、壁にはいくつものひびが入っている。
窓ガラスは何枚も割られていて、生徒のかばんや教科書などは
そこら辺に散らばっている。
見ている生徒も教師も、二人のけんかをただ呆然と見ていることしかできなかった。
それほどまでに、二人のけんかは激しかった。
- 298 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:03
- 「ガハッ、うぉぉっ!」
真希はなんとか美貴の腹を殴りつける。
美貴が一瞬だけひるんだスキに、真希は美貴を投げ飛ばした。
美貴は、机や椅子の残骸の中に背中から落ちていった。
「いっつ・・・。」
「これで終わりだっ!」
よろけながら立ち上がった美貴に、真希の膝蹴りがまともに腹に入る。
「ごふっ、このっ、なめてんじゃねぇ!」
美貴は落ちていた椅子の足を持って、真希の頭を殴りつけた。
「くっ・・・。」
真希の頭から血が流れていく。
- 299 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:04
- 「もらった!」
そんなことも気にせずに、美貴はさらに椅子を振りかぶる。
「うっ、ぉぉぉっ!」
真希の鋭いハイキックが椅子を粉々にし、その勢いを止めずに美貴の顔を蹴りつける。
「ゴフッ・・・。」
美貴は何メートルも転がっていくが、すぐに立ち上がって真希を睨みつける。
「ハァッ、ハァッ・・・。」
「くっ・・・。」
二人は少しの間睨み合ったあと、同時に走り出した。
「うぉぉぉぉっ!!」
「うあぁぁぁっ!!」
美貴と真希の右ストレートが、同時にお互いの顔を殴りつけた。
「ぐっ・・・。」
「ぅあ・・・。」
そして、二人はその場にくずれ落ちていった。
- 300 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:05
- 「・・・ん。」
美貴はゆっくりと目を開けて起き上がった。
周りを見渡すと、どうやら病院の一室のようだった。
時計の短針は5時を指している。
「って〜、けっこう寝ちゃってたんだ・・・。」
美貴は腫れた顔をさすりながら、上を見上げていた。
美貴の顔には、いくつもの絆創膏が貼られているようだ。
「全く、こんなに殴りやがって・・・後藤さん、強かったな〜。」
「まぁね。」
「!?」
声がした方を振り向くと、隣のベッドで横になっている真希の姿があった。
真希の顔にも、包帯や絆創膏などが貼られていた。
- 301 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:05
- 「おはよ〜。いや、もう夕方だからこんばんわかな?」
「・・・。」
美貴の気持ちは複雑だった。
先ほどまで殴り合いをしていた相手に、何て返事を返せばいいかわからなかった。
しかし、真希は微妙に笑っているようだった。
その表情を見た美貴は、少しの間真希の顔に見惚れていた。
「ん、何?」
「いや、後藤さんの笑った顔、初めて見たな〜ってね。」
「・・・何かね、藤本さんと殴り合ってすっきりしたんだよね。」
真希は笑いながらそう答える。
「後藤さんは、何でそんなに強いの?」
美貴は下を向いて真希に聞いた。
- 302 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:08
- 「ん〜、後藤はずっと鍛えてたから。お父さんを倒すためにね。」
「・・・お父さんに?」
その言葉に、美貴は真希に視線を向ける。
「後藤さ、自慢になっちゃうけど生まれた時から天才なんだってさ。
一度見たり聞いたりしたものは絶対に忘れないし、どんな難しい問題でも
余裕で答えられるんだ。そんなわけで、勉強は少しやれば満点が取れた。
後藤はそれがつまらなかった。」
「ふ〜ん、自慢してんの?」
美貴は、少しつまらなそうにしながら真希を睨みつける。
- 303 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:09
- 「まあ、話しは最後まで聞いてよ。そんな時に、お父さんにバスケを教えてもらったんだ。
バスケはさ、答えが一つじゃないから絶対っていう答えは出てこない。後藤も人の考えや
動きを全て読むことはできない、それだからとても楽しいんだ。後藤のお父さんは
すごいバスケうまくてね、どんなに練習しても勝てなかったんだ。何がいけないのか、
そこで後藤は考えた。まだ小さい時だったから、身体能力に問題があるってことに気付いた。
だからね、後藤は毎日体を鍛えてたんだ。お父さんよりも強くなれば、どんなに小さくても
勝てると思ってた。バスケの大会で優勝したら、お父さんに勝負してもらうつもりだった。まぁ、
それはもう叶わぬ夢になっちゃったけどね。」
そこで真希は、寂しそうに遠くを見つめる。
「どういう意味なの?」
「・・・後藤の家族はさ、いなくなっちゃったんだ。」
「えっ・・・?」
その言葉に、美貴は表情を曇らせる。
- 304 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:10
- 「死んじゃった。後藤は一人っ子だったんだけどね、去年の夏、
家族で外食しに行った帰りに交通事故にあったんだ。お父さんも
お母さんも死んじゃったんだけど、後藤だけは奇跡的に生き延びたんだ。
今は親戚の家にお世話になってるの。」
「・・・そうだったんだ。本当にごめん・・・。」
美貴は真希に向けて頭を下げる。
「いいよ。むきになった後藤も悪いしね。」
真希は笑ってそう答える。
「藤本さんこそ、どうしてそんなに強いのさ?」
「美貴も・・・くそ親父に勝つために鍛えたんだよ。」
「藤本さんも?」
「・・・美貴、くそ親父から虐待受けてるんだ。」
美貴は呟くように話し始める。
- 305 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:12
- 「お母さんは離婚しちゃって、お姉ちゃんはお母さんについていった。
頼みの綱のくそ親父は、何かあるたびに美貴のことを殴ってきた。
だから美貴は、誰も頼れる人がいなかった。親父の力を恐れて、
親戚も先生も友達さえも、ただ美貴に深入りしようとしない
外見だけの関係だった。本当に信じられる人がいなかった・・・。」
美貴の目から一粒の涙が零れる。
「それであんなに怒ってたんだ・・・。」
「いつかはくそ親父に勝って、自由になりたかった。だから、
くそ親父に頼ってるって言われて、美貴もむきになっちゃってさ・・・
フフッ、ごめんね。こんなくだらない話ししちゃって。」
美貴は軽く笑って真希を振り向いた。
その時、真希は立ち上がって美貴のベッドに座り込んだ。
そして、美貴の頭をそっと撫でていく。
- 306 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:14
- 「後藤・・・さん・・・?」
「ん・・・もう何も言わなくていいよ。今は後藤が傍にいるからさ。」
二人はしばらくの間見つめ合う。
「・・・不思議だな。誰にもこんなこと言ったことないのに。」
「それは後藤も同じだよ。」
「美貴達さ、本当の友達になれるかな?」
「・・・なれると思うよ。」
真希は顔を上げて、少し考えてから答えた。
「後藤さんのこと、信じてみてもいいかな?」
「呼び捨てでいいよ。その方が落ち着くしね。」
「じゃあ・・・ごっちんで決定!」
少し唸ったあと、美貴は嬉しそうに真希を振り向いた。
- 307 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:14
- 「ん〜、藤本さんは・・・ミキティかな?」
「ごっちん、あまりセンスないね。」
「そういうミキティもどうかと思うけど?」
「フフッ、ハハハハハッ!」
「アハッ♪」
美貴の中で、何かがはじけとんだ。
それは真希にとってもそうだった。
二人はその日の晩、いろいろなことをずっと話し続けていた。
- 308 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:14
- 交信しちゃいました〜♪
- 309 名前:konkon 投稿日:2004/10/13(水) 23:16
- >名無し読者さん
すごくしちゃいましたw
もう少しマシなストーリーを
思いつかないのかって感じですね(汗)
- 310 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:00
- 「ってなことがあったんだ〜。」
「そんなことがあったんですか・・・。」
真希は終始笑顔で、あさ美に話していた。
「その事故があったのが決勝戦前日だったんだ。笑っちゃうよね、
お父さんに優勝の前祝いで外食に連れて行ってもらった帰りに、
あんな事故にあっちゃうんだから。」
「・・・。」
「そこから後藤は、一年くらい家に閉じこもってたんだ。やっぱり、
その時はショックでね。それで休学ってことになって、もう一年
やり直すことになったの。」
「後藤さん・・・。」
「そんな悲しそうな顔しないの。後藤はそれでも神様に感謝してるんだ。
ミキティに出会えたからね。もちろん、紺野に出会えたこともね。」
「えっ、えっと・・・。」
あさ美は顔を赤くして下を向いてしまった。
- 311 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:01
- 「あの時ごっちんに出会わなかったら、美貴はずっと人のことを
信じられなかったかもしれない。」
美貴と愛は、以前美貴が連れてきた定食屋で夕食をとりながら話していた。
「いきなり殴り合ったなんて、ばかみたいって思うでしょ?」
愛は少し考えてから、首を頷けた。
「相変わらず素直だね〜。でもね、殴り合ったからこそ美貴達は
仲良くなれたんだと思う。二人ともそれまでにいろんなことで
溜まってたんだと思うんだ。それを一気に発散させたから、
話したいことを話せたんだと思うの。」
「藤本さんは、どうして休学したの?」
「ん〜とね、美貴の中三の時がくそ親父の虐待がピークだったんだ。
その時はひどかったよ。何回半殺しにされて病院に担ぎ込まれたかわかんないもん。
んで、結局入院の連続で留年決定!笑っちゃうでしょ?」
「・・・笑えると思う?」
「愛ちゃんは笑った方が可愛いよ♪けどさ、ばかみたいな考えだけど、
くそ親父にはその点だけは感謝してるんだ。ごっちんっていう、
親友と巡り合えたからね。」
美貴はフッと笑って遠くを見つめた。
- 312 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:02
- 「そのあとに転校するって聞いた時は、ほんとにショックだったよ。
ミキティとずっと一緒にいたかった。離れたくなかったよ。」
「けど、いいですね。そこまでお互いに信頼していたなんて、
本当に羨ましいですよ・・・。」
あさ美は呟くように言った。
「紺野は違うの?」
「えっ?」
「中学の時から、ずっと高橋と一緒にいたんでしょ?ミキティから聞いたよ。」
「それは・・・私が好きで彼女の傍にいるだけです。何か放っておけなくて・・・
それに、表には出さないけどあの子は優しい子なんです。愛が私をどう思っているかは、
私にはわかりませんよ。邪魔だと思われてるかもしれないし・・・。」
「そんなことないと思うよ。だってあの子、紺野と話してる時が一番楽しそうだもん。」
真希は柔らかい笑みで、あさ美を慰めた。
- 313 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:02
- 「親友・・・か。」
「愛ちゃんもそうでしょ?紺ちゃんと仲いいじゃん。」
そう言われて、愛は少し難しい顔をする。
「確かに今までは、あの子といる時が一番落ち着けたよ。けど、
私は不器用だからどうしても冷たい態度を取っちゃうんだ・・・
それをあさ美がどう受け取っているのか、私にはわからない。
いつかは私といることに疲れてしまって、私のことなんて
忘れちゃうんじゃないかって、そう思う時があるの。
それだけは怖いね・・・。」
「でもさ、愛ちゃんは紺ちゃんといることを望んでるんでしょ?
そこら辺は、ちゃんと伝えなきゃだめだよ。」
「私は・・・。」
「できないで終わらせたら、本当に何もできないよ。やるだけやってみて、
それでもできなかったら美貴に任せなさい!それでOK?」
「・・・そうだね。藤本さんに任せるのは怖いからね。」
「うぐ・・・まぁ、それだけ毒舌吐けるなら平気だね。」
美貴は苦笑いをしながら、愛の顔を見つめていた。
- 314 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:03
- 「考えてみたら、本当にずっとミキティと一緒にいたな〜。心から
信じられる友達ができたのって、後藤もミキティが初めてだもん。
話したいことが話せて、誰よりも信じることができた。不思議だよね。」
「後藤さんは・・・藤本さんのこと好きだったんですか?」
あさ美は恐る恐る聞いてみた。
「好きだったよ。今もミキティのこと大好きだよ。けど、恋愛感情ではないと思う。
ずっと一緒にいたいとは思ってたけどね、親友って言葉が一番正しいね。
紺野もそうでしょ?高橋の存在はさ。」
「・・・はい。」
「恋愛以上に大切なことってあると思うんだ。かと言って、恋愛を
否定しているわけじゃないけどね。お、もうこんな時間か。
紺野、時間平気なの?」
「あ・・・そうですね。」
あさ美は少し寂しそうに時計を見上げた。
- 315 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:04
- 「あの時はさ、親父に殴られたりもしてたけど、本当に幸せだったよ。
ごっちんと原チャリとかでいろんなとこ周って、いろんなことやって遊んで、
いろんなやつらとけんかしたりしてね。」
「・・・けんか?」
「ほらっ、美貴達可愛いからさ、しょっちゅうばかな男達から声かけられたりしてたんだよね。
んで、強引なやつとかは力で引っ張っていこうとするからさ、そういうやつらはお仕置きして
やったりしてたんだよ♪」
「確かに後藤さんは可愛いからね。」
「美貴だって可愛いかったもん!」
「可愛かった?今は?」
「もちろん綺麗!」
「ふ〜ん。」
「愛ちゃん突っ込んでよ〜。」
「疲れた。」
「ひどいよ〜。」
美貴はわざとらしく泣きまねをする。
- 316 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:04
- 「悪かったね、こんな時間まで付き合わせてさ。」
「そ、そんなことないですよ!また・・・後藤さんのお話しが聞きたいです。」
「そっか、ありがとう。送っていくよ。」
「いえ、大丈夫ですよ。慣れてますから。今日はご馳走様でした。」
「フフッ、あんなのでよかったらいつでも作ってあげるよ。
じゃあ、気をつけて帰ってね。また部活でね。」
「はい、お邪魔しました。」
真希は玄関から手を振って、あさ美を見送った。
「ふわ〜、さって久々に運動して疲れたし、後藤もさっさと寝るかな。」
真希は大きな欠伸をして、玄関のドアを閉めた。
- 317 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:05
- 「またさ、美貴達は暴れてやるんだ。今度はそれぞれの夢に向かってね。」
「夢?」
「ごっちんは世界一のバスケット選手、美貴は愛ちゃんと一緒に
世界一のバンドを目指す。それをごっちんと誓ったんだ。」
「・・・そうなんだ。」
「美貴は絶対ギターうまくなるよ。もっともっとうまくなって、
本当に愛ちゃんを支えられるようになること。それがまず第一歩かな。」
愛は黙って美貴の顔を見つめる。
「支えてくれるって言ったよね?」
「うん!」
「私達は止まらないよ。絶対に追いついてね。一緒にバンドやるんだから・・・。」
「・・・もちろん!」
美貴は大きく腕を振り上げる。
それを見て、愛は嬉しそうに笑っていた。
- 318 名前:konkon 投稿日:2004/10/16(土) 23:05
- 交信しました。
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 20:29
- ほほぉ〜、次回に期待です
- 320 名前:よしよし 投稿日:2004/10/18(月) 22:02
- 同じく緑板で学園物を書いているものです。
いつも白版・緑版両方を楽しく読まさせて頂き勉強させてもらっています。
これからも頑張ってください。
- 321 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:06
- 「うぉぉぉっ!すっげぇ緊張してきた〜!」
放課後、美貴が自分の机をバシバシと叩きながら、悶えながら叫んでいる。
「ふ、藤本さん、落ち着いてくださいよ〜。」
「だって、だってさ〜・・・やばいんだもん!」
あさ美が美貴を止めようとするが、美貴は全く止まろうとしない。
「藤本さん。」
「ミキティ。」
「「うるさい!」」
「二人してハモんなくたって・・・。」
愛と真希に睨まれて、美貴はすぐに縮こもる。
- 322 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:06
- 「う〜、余計に緊張するようなこと言わないでよ〜!」
「ミキティでも、緊張って言葉知ってるんだね。」
「・・・美貴ってどう見られてんの?確か、前に紺ちゃんにも
同じこと言われたよ。」
あさ美は少し恥ずかしそうに、顔を赤くする。
「まぁ、やるだけやってやるさ!美貴のかっこいいところ見せてあげるからね!」
「期待してるよ。それじゃ、また後でね〜。」
「がんばってくださいね!」
真希とあさ美はかばんを持って、教室から出ていった。
「愛ちゃん、美貴達もそろそろ行かない?」
美貴が振り向くと、愛は普段とは違う、どこか悩んでるような顔をしていた。
- 323 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:07
- 「愛ちゃん?」
美貴が愛の顔を覗き込む。
「あ・・・ごめん。何?」
「いや、そろそろミーティングの時間だからさ、そろそろ行かないかなってね。」
「・・・そうだね。行こうか。」
愛はゆっくりと腰を上げて、帰る準備をした。
「(・・・らしくないな。どうしたのかな?)」
美貴は思ったことを口に出さずに、準備が終わった愛と共に教室を出ていった。
- 324 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:08
- 二週間前、
「あの、話しとは何ですか?」
「まぁ、とりあえず座ってよ。」
ライブの練習の後、圭織が椅子に座ってから自分の向いにある
椅子に愛を促した。
愛は圭織を見据えながら椅子に座る。
「ゼティマって知ってるわよね?」
「はい、あの大きいレコード会社ですよね。」
「うん。でね、そこのプロデューサーの人がさ、二週間後に
high bredgeのライブを見に来るんだ。」
「えっ!?」
愛は目を見開いて驚いた。
- 325 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:09
- 「その人とちょっとした知り合いなの。それでね、高橋達の話しをしたら
興味を持ってくれてね、一度聞いてみたいんだってさ!」
「私達の歌を・・・。」
「本気でプロを目指してるんでしょ?これはとても大きなチャンスだよ。
その人に気に入ってもらえれば、あなた達もデビューできるかもしれない。」
愛は口を開けたまま、返事すらできないでいる。
「正直なところ、今までは聞かせることができなかったんだ。high bredgeには
ギタリストがいなかったからね。仮に別の助っ人を頼んだとしても、その人は
あなた達の雰囲気を合わせられないだろうし、これから先も助っ人に頼んで
歌うわけにもいかないからね。」
圭織の言葉に、愛は軽く頷く。
- 326 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:10
- 「でも・・・今は違うってことですね。」
「うん、藤本がいる。藤本が入って間もないけど、あの子なら
やってくれると思うの。それに、あの人も忙しい人だから
滅多にこれないしね。次はいつあなた達の歌を聞かせることが
できるのか、わからないんだ。でも、あなた達ならできるって
信じてるから。」
「・・・わかりました。ありがとうございます。」
愛は圭織に大きくお辞儀をして、部屋を出ていった。
- 327 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:11
- 「・・・っていうことがあったの。」
high bredgeの面々は、図書室でライブについての話し合いをしていた。
そこで、愛は二週間前に圭織と話したことを美貴達に話していた。
「「「「・・・えーっ!!!!」」」」
一瞬の沈黙の後、美貴達は大声で叫んだ。
「ここ図書室なんだから、静かに・・・。」
「デ、デ、デ、デビューというとやと!」
「絵里達・・・デビューできるんだ・・・。」
「やっとさゆの可愛さを認めてもらえたってことね♪」
愛の言葉も聞かずに、絵里達三人は浮かれきっていたところ、美貴だけは
口を開けて固まっていた。
「ちょっ、ちょっと待って!」
美貴の声に、絵里達はその場で止まる。
- 328 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:12
- 「愛ちゃん、美貴入ったばっかなんだよ!美貴がなんかがやったら、
絶対認めてもらえないって!誰か別の人に代わってもらうか、
もっとうまくなってから聞いてもらうとか・・・。」
「無理だよ。」
愛はあっさりと答えて、美貴を見つめる。
「そのプロデューサーの人は忙しいらしいからね。月に一度しか
ライブをやらない私達の都合に、合わせることなんてできないみたい。
それに、私達の雰囲気に合わせられるのは藤本さんしかいないの。」
「でも・・・。」
「確かに、たったの一月しかたってないけど、藤本さんはすごく
うまくなってるよ。自分を信じてもいいと思う。」
「・・・。」
美貴は下を向いて俯く。
- 329 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:13
- 「大丈夫ですって〜。絵里達がついてますから。」
「それともさゆ達では頼りないですか?」
「そ、そんなことないよ!」
美貴は慌てて首を振る。
「今は藤本さんあってのhigh bredgeとよ。大丈夫ですって!」
「亀ちゃん・・・重さん・・・田中ちゃん・・・ありがとう。
そうだよね!やるだけやってやろうね!」
美貴は笑顔で三人を見渡した。
「これは他の三人にも言えることだけど、失敗を恐れなくてもいいんだよ。
今まで通り、練習通りに楽しく、一生懸命にやればいいんだからね。
デビューできるっていうのは嬉しいけど、それ以上に私達は歌が好きで
やってるんだから。」
愛は軽く笑ってそう言った。
- 330 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:14
- 「愛ちゃん・・・。」
「藤本さんがいなかったら、私達にそういうチャンスがくることなんて
なかったんだから、やりたいようにやっていいよ。」
「・・・愛ちゃん、ありがとう。」
「それじゃ、今日の話しは終わり。また後でね。」
愛はかばんを持って、さっさと図書室を出ていった。
「美貴達も行こうか・・・ん?」
美貴がかばんを持とうとした時に、軽く肩を叩かれた。
振り返ると、そこには笑顔の絵里が立っていた。
「愛ちゃん、藤本さんがきてから変わりましたよ〜。」
「そうなの?」
「そうですとよ。前はあんなに笑わなかったんばい。」
「最近、さゆ達と話してても笑うようになってきたしね♪」
さゆみとれいなも嬉しそうに話す。
- 331 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:18
- 「藤本さんのよくわかんない力のおかげだと思いますよ〜。」
「よくわかんない力って亀ちゃん、それ褒めてんの?」
「ん〜、どうでしょうね〜。」
「おいおい・・・。」
絵里の曖昧な答えに、美貴は苦笑いを浮かべる。
「でも、笑ってくれたほうがいいですよね?」
「もちろん!愛ちゃんの笑った顔、めちゃくちゃ可愛いもん♪」
「・・・まぁ、今日はがんばりましょうね。」
「うん。それじゃ、美貴の初陣だ!大暴れしてやるぜ!」
「「「お〜!!!」」」
美貴達は元気に図書室を出ていった。
- 332 名前:konkon 投稿日:2004/10/20(水) 22:21
- >名無し飼育さん
期待どうりにがんばれたでしょうか・・・?
とりあえず、これからもかんばります(汗)
>よしよしさん
ありがとうございます。
自分もまだまだ実力不足なので
もっと勉強させていただきます!
ほっほ〜う、同じ緑版ですね。
時間があれば今度読ませていただきたいと
思いますのでよろしくです♪
- 333 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 18:49
- 愛ちゃん達いよいよデビューですか?
でもまだまだ波乱がありそうな予感
- 334 名前:konkon 投稿日:2004/10/22(金) 00:47
- 訂正です!
321の最後にこの一文を入れてください。
どうもすいません・・・
「二人してハモんなくたって・・・。」
「今日がミキティの初ライブっていうのはわかったからさ、
少しは落ち着きなって。」
「そうですよ!私達も応援にいきますから!」
今日はhigh bredgeがライブをやる日で、今日から美貴が正式参加するのである。
そして、美貴は激しく緊張しているようで、朝からずっとこのような状態であった。
- 335 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:42
- 「う〜、あんなこと言ったけど、やっぱり緊張してくるな〜。」
美貴は震える肩を抑えながら、ライブハウスの裏門へと向かっていた。
裏門へ入るには、大通りから離れた裏道を通ることになる。
ここは大通りとは違って、用がある者以外はあまり通ることはない。
美貴が裏道に差し掛かったところ、前の方で五人の男達に絡まれてる二人の少女が目に入った。
後ろ姿でもわかる。
その少女達は愛と絵里だった。
周りに人影はなく、誰にも助けを呼べない状況だったようだ。
「ねえ、俺らと遊びに行かない?」
「あ、あの〜、絵里達用がありますから・・・。」
絵里は弱弱しく断った。
- 336 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:42
- 「いいじゃんよ、どっか行こうぜ!」
「・・・行きません。」
「君達みたいな可愛い子、俺すごく好みなんだ!だめかな?」
愛の言葉も無視して、男達はしつこく二人に迫る。
美貴は一つ溜息をついて、二人のそばまで歩み寄る。
「何してんの?」
男達は一斉に美貴に視線が向いた。
「あれ〜、もう一人可愛い子がいるじゃん。君も一緒に行こうよ!」
「愛ちゃん、亀ちゃん、ちょっと下がってな。」
美貴の言葉に、愛と絵里は美貴の後ろまで下がる。
男達は今度は美貴に近づいていく。
- 337 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:44
- 「今の美貴に触ると怪我するよ。何せ興奮しすぎてやばいからね。
さっさとどいてくれない?」
「ヒャハハッ!興奮しすぎって何?何がそんなにやばいのかな〜?」
「だったら俺らが抜いてやるって!」
男達は下品な笑い方をしながら美貴の傍まで歩み寄る。
「もう一度だけ言うよ。そこをどいて。」
「怪我するよってさ。何、触ったらどうなるのかな〜。」
男の一人が、美貴の右肩を掴んだ。
次の瞬間、
ガッ!
美貴が、右肘で男の顔を突き飛ばした。
男は鼻から血を出しながら、派手に転がっていく。
- 338 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:45
- 「なっ!?」
男達が驚く間もなく、美貴は左にいた男の顔に左手の裏拳で殴り飛ばす。
美貴はそれでも止まらずに、前にいた男の顎を右足で蹴り上げる。
さらに、右足を下ろした反動を利用して左足の後ろ回し蹴りを、
もう一人の男の側頭部に打ち込んだ。
まさに電光石火の速さだった。
四人の男達は、一瞬にして倒れこんでいった。
「て、てめぇっ!」
残った一人の男が、右腕を美貴に向けて振り上げる。
美貴はそれを軽くはじくと、男の首を右腕だけで掴んで持ち上げる。
- 339 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:46
- 「あがっ・・・あ・・・。」
「二度と美貴達に近寄るな。次に見かけた時には容赦しないからね。」
そう言って、美貴は男を地面に叩きつけた。
男は顔面から地面にぶつかって、鼻血を出しながら蹲っている。
「ふ〜、少しはすっきりしたかな。愛ちゃん、亀ちゃん、行くよ。」
後ろにいた愛と絵里を振り向いて、美貴は笑顔で呼びかけた。
「あの、ありがとう。」
愛は美貴の隣に並んでお礼を言った。
「気にしなくていいよ。二人とも可愛いからね〜。亀ちゃん、行くよ?」
呆然としている絵里に、美貴はもう一度呼びかける。
その声に反応して、絵里は慌てて美貴のそばまで走っていった。
- 340 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:46
- 「藤本さん、すごいんですね〜!絵里、久しぶりに見直しましたよ♪」
「亀ちゃん、微妙にひどいから。っていうか美貴達のバンド七時半からでしょ?
あと一時間しかないじゃん!早く入って練習しよう!」
美貴は愛と絵里の手を引いて、ライブハウスへと入っていった。
「ぐっ・・・あの女、絶対許さねぇ・・・。」
今まで蹲っていた男が、鼻血を出しながらゆっくりと立ち上がった。
「七時半からか・・・くくくっ、思いっきり楽しいライブにしてやるよ。」
その男はふらふらとしながら、倒れた男達を起こし始めた。
- 341 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:47
- 「お久しぶりですね、つんくさん。どうぞこちらへ。」
「お〜、久しぶりやな。飯田。」
つんくと呼ばれた男は、圭織に促されて部屋へと入っていく。
つんくが椅子に座ったのを確認してから、圭織は向かい合って椅子に座る。
「どんな感じなんや?お前のお勧めのhigh bredgeとやらは?」
つんくは煙草を吸い始めてから圭織に聞いた。
「そうですね〜、一言で言えば吸い寄せられますよ。聞いててとても気持ちのいいバンドです。」
「ほ〜う、滅多に人を褒めないお前が言うんなら、よほどのもんなんやろな。けど、
一人は入ったばっかなんやろ。大丈夫なんか?」
その言葉に、圭織は苦笑いを浮かべる。
- 342 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:48
- 「ええ、まぁ、でもその子も他のメンバーに追いつこうと、必死になって
練習しています。すぐに一人前になりますよ。」
「努力してるからって誰もが認めるわけじゃないのは、お前が一番知っとるやろ。
実力がものを言う世界なんやで。プロの世界っていうのは。」
「ええ、わかってます。だからこそあの子が必要なんです。あの子には、プロの世界でも
数少ない人にしか持っていないものを持っているんです。それを私は見てみたいんです。
今後のhigh bredgeがどうなっていくのかを。そして、世界中にhigh bredgeの歌を
聞かせたいんです。」
つんくは圭織の話しを黙って聞いている。
「言ったやろ。認めるかどうかを決めるのは俺や。百聞は一見にあらず、だからこそ
ここまで聞きにきたんや。違うか?」
「・・・そうでした。今日は楽しんでいってくださいね。」
「おう、期待しとるで。」
つんくは煙草の火を消して、部屋から出ていった。
- 343 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:49
- 今日はここまでです。
- 344 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:50
- 正直なところ、仕事の都合上
次の更新がいつになるかわかりません。
次の休みに交信したいと思いますので
ご了承ください。
- 345 名前:konkon 投稿日:2004/10/24(日) 09:51
- >名無飼育さん
どうでしょうね〜。
デビューできるのかどうか、
まだこれから考えていきたいと思います(汗)
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/25(月) 11:36
- マターリ待ってますよ
- 347 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:38
- 美貴は足を震えさせながら、指を組んで椅子に座っていた。
周りでは絵里、れいな、さゆみの三人は、椅子に座って笑いながら話しをしている。
「(だめだな〜、美貴ってこんな本番に弱かったっけ・・・。)」
ギターを持って弾いてみても、指が震えてうまく弾けなかった。
メンバーに特に何か言われたわけでもなかったが、美貴はひどく落ち込んでしまっていた。
「(今日のライブによっては、high bredgeがデビューできるかどうか決まるんだよね・・・
美貴、絶対足引っ張っちゃうじゃん。どうしよ〜・・・。)」
美貴が目を閉じて心を落ち着かせようとしたその時、誰かの手が自分の手を包んだ。
目を開けると、愛が美貴の手を包み込んでいた。
- 348 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:39
- 「らしくないよ。」
「愛ちゃん・・・。」
愛はじっと美貴の目を見つめる。
「言ったよね?失敗を恐れるなって。今まで通りにやればいいんだって。」
「で、でもさ、これでhigh bredgeの運命が決まっちゃうんだよ・・・。」
「それを藤本さんが背負う必要はないよ。それに、運命なんて簡単には決まらないよ。
私達がもしここで認めてもらえなかったとしても、私達は歌うのをやめない。
一回の失敗くらいであきらめられるほど、小さい夢じゃないんだから。違う?」
美貴は静かに首を振った。
「もっと気楽にいこうよ。チャンスなんて、自分を信じてればいくらでも掴めるよ。
失敗したらその時はその時、それも大きな力になるはずだよ。がんばろうよ。」
「・・・愛ちゃんは強いね。」
いつの間にか震えは止まっていた。
- 349 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:39
- 美貴は立ち上がって、愛の手を逆に包み込んだ。
「美貴、がんばるよ。足引っ張っちゃうかもしれないけど、
とにかく最後までがんばるから!」
「うん、その意気だよ。私達だって最初は怖かったよ。でも、そこから
経験して、成長して、いろいろと積み上げていくんだよ。ライブは
きっと、藤本さんも楽しめると思うよ。」
「うんっ!ありがとう、愛ちゃん。」
美貴の返事と同時に、部屋の扉が開いて圭織が入ってきた。
「みんな、そろそろ始まるから準備して。」
「「「「は〜い!」」」」
愛以外の四人は、立ち上がって準備を始める。
- 350 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:40
- 「いよいよだね。がんばってね!」
「はい。でも、いつも通りですよ。楽しみながら歌うのがうちのバンドですから。」
愛は軽く頷いてからそう答えた。
「そうだったね。」
圭織は優しく笑って、部屋を出ていった。
「それじゃ、いくよ。」
「「「「お〜!!!!」」」」
愛の声に、美貴達は腕を振り上げながら部屋を出ていった。
時刻は七時二十五分、まもなく美貴の初めてのライブが始まろうとしていた。
- 351 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:41
- 「ふわ〜ぁ、眠い・・・。」
真希は大きな欠伸をして、あさ美を振り向いた。
「ねぇ、ミキティ達っていつ出てくるの?」
「そうですね〜、この次だと思いますよ。」
真希とあさ美は、美貴達のライブを見ようとライブハウスにきていた。
今は他のバンドがライブをやっている。
周りからは、歓声や熱狂が伝わってくる。
しかし、美貴のバンドにしか興味のない真希は、眠たそうに目を擦っていた。
「ちょっと外の空気吸ってくるね。」
「すぐに始まるかもしれませんから、早めに戻ってきてくださいね。」
「ふぁ〜い。」
真希はもう一度大きな欠伸をして、扉を開けて会場から出ていった。
- 352 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:42
- 「ん?」
真希が会場を出たとこで、受付で何人かの男達と一人の女性が
もめているのが目に入った。
その女性とは、受付にいた圭織だった。
男達はバットや木刀など、何やら物騒な物を持っている。
その男達は、顔に絆創膏などが貼られていた。
そう、この男達は先ほど美貴にやられた男達だった。
「だから、そんな危ない物持ち込んで入らないでください!」
「うるせえな。いい加減引っ込んでろよ!」
パンッ!
「いたっ・・・。」
圭織が一人の男に叩かれて倒れこんだ。
- 353 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:42
- 男達は圭織に気にせずに、会場の中へと入ろうとする。
それを見ていた真希は、会場の扉に寄っ掛かって入れさせないにする。
「よぉ、そこの姉ちゃん。ちょっとどいてくれないか?」
「そんな危ない道具持ってきて、何するつもりなの?」
真希は男達から視線を外さずに聞いた。
「ライブをめちゃくちゃにしてやるんだよ。あの女、俺達をなめやがって!」
真希は男達の傷のある顔を見て、すぐにその女の正体が美貴だと理解した。
「どうせあんた達が何かやったんでしょ?ミキティは曲がったことをする子じゃないんでね。」
「ああ!?いいからさっさとどけよ!」
「どかせてみなよ。後藤の親友の邪魔はさせないよ。かかってきな、
人の邪魔することしかできない弱虫ちゃん達。」
真希のその言葉にキレて、男達は一斉に真希に向かっていった。
- 354 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:43
- 愛達の前のバンドが、演奏を終えてステージを去っていく。
「大丈夫?」
何度も深呼吸している美貴に、愛は少し心配そうに声をかける。
「大丈夫だよ。行こう!」
美貴はギターを手にして、愛達と共にステージに向かう。
観客達は、見たことのない美貴を見てひそひそと話し始める。
「みんな〜、久しぶりやね!まだまだいける〜!?」
愛の声に、観客は一斉に腕を上げて歓声を送る。
「みんなに紹介するで!うちのバンドの新しい仲間、藤本美貴!」
愛が美貴に手を向けた。
- 355 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:44
- 美貴は小さくお辞儀をする。
次の瞬間、観客から壮大な拍手が送られてきた。
「それじゃ、五人になって初めてのライブ始めるで!まずはUnexpected Gourd Island!」
絵里とさゆみが、目を合わせて音を作り出す。
そこに美貴とれいなが入っていくのだが、出だしから美貴のリズムがずれてしまった。
「(や、やばっ!)」
「(落ち着いて。)」
愛が目で美貴に伝える。
美貴は首を頷けて、なんとか音を合わせていく。
「(がんばって。藤本さん・・・。)」
愛はそう思いながら、観客に視線を向けて歌い始めた。
- 356 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:45
- 交信しました〜。
- 357 名前:konkon 投稿日:2004/10/29(金) 22:46
- >名無し読者さん
すいません、この連休にがんばりたいと思います。
マターリとしていてくださいw
- 358 名前:よしよし 投稿日:2004/10/30(土) 07:01
- がんばれミキティ!がんばれごっちん!!
がんばれ作者さん!!!
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 13:05
- 更新お疲れ様です
ライブも気になるがごっちんも気になる
- 360 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 12:05
- 一気に読みました!おもろい!
藤本のキャラがとても光ってますね!愛美貴がとてもよいです
次回期待して待ってます。お気に入り追加!!!!
- 361 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/03(水) 12:18
- 乙です!
愛美貴のからみがもっちょとほしいかなってわがまま言ってみたり・・・
- 362 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:30
- 「ん、始まっちゃったか。」
真希は、愛の歌声を聞いて会場を振り返った。
真希の前には、五人の男達が血を出して倒れている。
真希には掠り傷一つついていなかった。
「ありがとう。助かったよ。」
圭織が叩かれた顔を押さえながら、真希にお礼を言った。
「別にいいよ。後藤がミキティの邪魔されたらやだなって思ってやったまでだしね。
それより大丈夫なの?」
「このくらいなんてことないよ。」
圭織は笑って答える。
「そう。んじゃ後藤はミキティ達のライブ見てくるよ。」
「うん。本当にありがとね。」
真希は軽く頷いて、会場の中へと入っていった。
- 363 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:31
- 「(それにしても、下手くそやな。あのギタリスト。)」
つんくはあまりおもしろくなさそうに、ステージを見ている。
「(確かにドラマーとベーシストは、そこそこの力を持っている。それに、
ボーカルはかなりのうまさがあるわ。あれは成長したらおもしろくなるかもな。
独特の雰囲気っていうのも頷けるわ。こいつらにしか出せん、柔らかくも
力強い、自分らを包み込むような優しさがあるみたいや。やっぱり問題は
ギタリストやな・・・。)」
つんくは煙草が吸いたくなって、外に出ようか迷っていた。
そこで、
『あの子達は、ライブ中にも成長していくんです。つんくさんも気に入りますよ。きっと。』
前に圭織から聞いたことを思い出す。
「そこまで言うなら、見せてもらおうやないけ。」
つんくはじっくりとステージを見ながら呟いた。
そこでちょうど、一曲目が終わるとこだった。
- 364 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:31
- 「(なんだろ・・・この感じ・・・。)」
美貴は一曲目が終わってから、自分の手を見つめ続けていた。
「藤本さん、大丈夫ですか?」
絵里が近くまで寄ってきて、小さい声で聞いた。
「うん、大丈夫だよ。」
美貴は笑顔で絵里に答えた。
「次の曲いくでっ!Love revolution!」
再び絵里とさゆみのベースの音から始まる。
今度は、美貴は綺麗に音を合わせることができた。
「(いけるね。)」
愛は軽く笑って美貴を振り向いた。
美貴は愛に気付かずに、観客に笑顔を振りまきながら弾いていた。
- 365 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:32
- 「(もっといける・・・まだまだいけるよ・・・。)」
美貴の中では、テンションがすでに絶頂を迎えていた。
さらに美貴の中にいるもう一人の美貴が、もっと激しくいけ、もっと暴れてやれ、と
心の中から叫びこんでいる。
「(すごい・・・。)」
愛は歌いながら、歌が徐々に激しくなってきていることに気付く。
その音源を辿ると、絵里でもさゆみでもれいなでもなく、美貴が作り出していた。
「(ほえ〜・・・。)」
「(何か藤本さんに・・・。)」
「(引っ張られてる感じ・・・。)」
絵里、さゆみ、れいなの三人も、同じ気持ちだった。
愛は今までに感じたことのない気持ちよさに、背中に寒気を感じるほどの興奮を覚える。
そして、観客に負けないほどの声量で歌い始める。
- 366 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:33
- 「(ちゃいこ〜!)」
絵里は少し前に出て、ベースの音量を上げながら弾いていく。
「(絵里、フライング!)」
「(れいなだって負けんとよ!)」
さゆみ、れいなも激しく音を震わせる。
もちろん、観客もヒートアップしていた。
そこで、そろそろ二曲目が終わろうとしていた。
「止まらないで続けていくよーっ!MY DEAR BOY!」
一度音を区切った直後に、美貴のギターがすぐに入る。
愛達四人は、美貴に引っ張られているといっていいほどに、美貴の音に調和させていた。
「(気持ちいいな〜。ライブって最高だね!)」
美貴達の頭には、すでにデビューできるかどうかという想いは、存在していなかった。
ただ、今やっている音楽がすごく楽しい。
その気持ちだけがライブハウス全体を支配していた。
- 367 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:34
- high bredgeの歌が、ゆっくりと音を下げながら終わっていく。
観客は、これまでにないくらい盛り上がっていた。
普段はライブが終わったら、観客達は簡単に声援を送ってからすぐに帰ってしまうのだが、
今日に限ってはずっと大きな拍手と声援を送り続けていた。
「かっこよかったよ〜!」
「痺れちゃったわ!」
美貴に向かって何人もの観客達が、手を振ったり声をかけたりしている。
「ほらっ、返してあげなよ。」
それまでぼーっとしていた美貴の肩を、愛が軽く叩いてそう言った。
その後ろでは、絵里達が笑顔で観客達に手を振っている。
「ああ、うん・・・。」
美貴は笑いながら手を振り返して、愛達と共にステージ裏へと戻っていった。
- 368 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:35
- 「愛達のライブ、すごかったですね!」
「そうだね!ミキティ達かっこよかったね〜。」
真希とあさ美は興奮しながら、ライブの感想を話していた。
普段は見ているだけのあさ美も、ゆっくり聞いていようと思った真希も、
いつの間にか歓声を送ったり腕を振ったりしていたために、汗でびしょ濡れだった。
「いつもこんなにハードなわけ?」
「いえ、私もこんなにすごいライブは初めてですよ。すごく楽しかったです。
きっと藤本さんが入ったおかげでしょうね。」
「うん、後藤もすごく楽しかったよ。ミキティ達、がんばってたな〜。」
これは後藤も負けてられないね。」
「どういう意味ですか?」
「そのまんまだよ。ミキティに負けてちゃ後藤の名が廃るからね♪」
真希とあさ美は、ライブが終わってもまだ盛り上がっている観客達を残して、会場から出ていった。
- 369 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:36
- ライブが終わったあと、つんくはすぐに会場から出て圭織のいる受付に向かった。
「あ、つんくさん。」
受付の前にいた圭織が、つんくに気付いて声をかける。
「どないしたんや、その顔は?」
つんくは、赤く腫れている圭織の顔に気付いて目を細める。
「いえ、何でもないですよ。それよりどうでしたか?」
圭織は真剣な目でつんくを見据える。
「腕はまだまだやな。今のままじゃプロにはなれんわ。」
「そうですか・・・。」
「でも、おもしろいバンドやったわ。あのギタリスト、最初足引っ張っとったくせに、
途中からメンバーを、いやあの会場にいた全員を"快楽の絶頂"に引き上げよった。」
つんくは面白そうに話す。
- 370 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:37
- 「藤本が?」
「ああ。あれを自在に引き出せるようにできれば、あいつは世界中の
どこに行っても通用することができるやろうな。とりあえず、選考には
入れといたるわ。これでデビューできるかどうかは、それはあいつらの
成長次第やけどな。」
「あ、ありがおうございます!」
圭織は深々と頭を下げた。
「これ、あいつらに渡しといてや。じゃあな。」
つんくは名刺を一枚圭織に渡して、ライブハウスを出ていった。
「フフッ、つんくさんにあそこまで言わせるなんて、よっぽど
すごかったんだろうね。お疲れ様。」
圭織は誰に言うわけでもなく、その場で嬉しそうに呟いた。
- 371 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:38
- 「何か今日のライブすごかったとね!」
「うんうん、いつもよりも楽しかったもん。」
「最高のライブだったね〜。」
楽屋で絵里、さゆみ、れいなの三人は、ライブの話しで盛り上がってた。
愛はいつも通り、上を見つめながらライブの光景を思い出していた。
「藤本さんもすごかったと・・・ひっ!」
「どうしたの?れいな?」
「あれ・・・あれ・・・。」
れいなは震えながら指を指した。
れいなが指した方を絵里とさゆみが向くと、そこにはものすごく怖い顔をした美貴が、
椅子にもたれかかって座っていた。
絵里とさゆみは、美貴の顔を見た瞬間に視線をはずした。
- 372 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:40
- 「藤本さん・・・キレとるっちゃ・・・。」
「な、何で機嫌悪いのかな・・・?」
「わかんない・・・でも怖いよ〜。」
三人は、先ほどよりも音量を下げて震えながら話す。
それに気付いた愛が、ゆっくりと美貴に近づいていく。
「・・・藤本さん?」
愛の声に反応して、美貴はすぐに姿勢を正す。
「何、愛ちゃん?」
「いや、すごく怖い顔してたからどうしたのかなって。」
「ん、別にそんな顔してたつもりはないけどな〜。ただ気が抜けちゃってただけだよ。」
美貴は首を傾けて答える。
「「「「(気を抜いた顔が、あんなに怖いのか・・・。)」」」」
四人は同時にそう思ったが、とりあえずそれを聞いて、絵里達はようやく落ち着くことができた。
- 373 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:41
- 「どうだった?初ライブの感想は?」
愛は美貴の目を見つめて聞いた。
「何かね、終わるのがすごく早かった気がするよ。だから正直なとこね、
あまり覚えてないんだ。でも・・・。」
「でも?」
「すごく楽しかった。それだけは実感できたよ。」
美貴は満面の笑みで答えた。
「ずっと弾いていたい、ずっとはじけていたい、そう思ってた。
美貴、もっとがんばるよ。いつかはでかいとこで、思いっきり
弾いていられるとこでライブをやりたい。」
「・・・そうだね。」
愛は軽く頷いた。
- 374 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:41
-
コンコンッ
「入るよ。」
楽屋に入ってきたのは圭織だった。
「今日はお疲れ様。さて、突然ですけど結果発表です。」
美貴達は黙って圭織の次の言葉を待つ。
「つんくさん、どうやら気に入ってくれたみたいだよ。high bredgeのことをね。」
「本当ですか!?」
それを聞いて、絵里達は手を叩き合わせる。
「じゃあ、さゆ達デビューできるんですか?」
「慌てないでよ。今説明するからさ。」
圭織に言われて、また楽屋の中は沈まり返る。
- 375 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:42
- 「つんくさん一人に認められても、まだデビューできるわけじゃないんだ。
半年後にオーディションがあるの。今回はその選考に選ばれるかの審査だったの。
それに選ばれなきゃデビューはできないわ。」
圭織の言葉に、絵里達は悲しげな表情になる。
「・・・その方がいいですよ。」
「藤本?」
「美貴は全然下手だから、もっともっと練習する必要があります。それに、
それに、どうせだったらめちゃくちゃ感動させるくらいの歌を
聞かせたい。」
「同感ですね。」
美貴の話しの後に、愛が口を開く。
- 376 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:43
- 「私達の歌のレベルを上げないと、デビューできたとしてもたかがしれてます。
根強い力を持つバンドに、私達はならなければいけないんです。今回のことで、
改めて高い目標が持てましたよ。」
二人の力強い目の輝きに、圭織は嬉しそうに笑う。
「・・・そうですよね。」
「今のさゆ達では、まだ届かない夢ですね。」
「でも、決して届かない夢じゃなかとね。やってやるっちゃ!」
絵里、さゆみ、れいなの三人は、再び手を叩き合わせた。
「愛ちゃん。」
「ん?」
「そんなわけで、これからもよろしくね♪」
美貴が愛に向けて手を上げた。
「もっとうまくなってよね。上にいくには、藤本さんの力が必要なんだからさ。」
愛は軽く笑って、美貴の手を軽く叩き合わせた。
high bredgeに大きな目標ができたことにより、美貴達は改めてうまくなる気持ちを強めた。
- 377 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:44
- 今日はここまでです。
- 378 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:46
- >よしよしさん
ごっちんもミキティもこれからも
がんばっていきますよ〜!
あまけで自分もがんばらせていただきます・・・(汗)
>359名無し飼育さん
ん〜、ごっちんの出番は次回ということで(マテ)
ごっちんはごっちんでいろいろとやっていきたいと
思ってます。
- 379 名前:konkon 投稿日:2004/11/04(木) 23:49
- >360名無し飼育さん
ありがとうございます。
そう言っていただけるととても嬉しいです。
まだ序章ら辺なのでこれからいろいろと
起こっていくと思いますのでこれからも
楽しみにしていてください。
>361名無し飼育さん
そうですね〜。
自分の中では少しづつ愛が心を開いていくという
展開にしたいのでゆっくりといきたいと思ってます。
ですが、まだまだ始まったばかりですので、これから先も
愛美貴の絡みはいくらでもあります♪
それまではご了承ください。
- 380 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 02:55
- 更新お疲れ様です!
今回も楽しく読ませてもらいました。
気を抜いた顔・・・・思わずわらってしましました。
こういうスパイスの利かせ方がとてもうまいですね。
とにかく愛美貴といい物語といい最高です。
顔がにやけてしまって・・・軸になってる藤本のキャラに奥行きが
出てきてる感じで、藤本のキャラとしての成長が話に深み?を与えて
くれてるのかも・・・って勝手な感想ですが、次回も楽しみにしてます!
- 381 名前:よしよし 投稿日:2004/11/06(土) 00:34
- 交信おつかれです。
みきてぃの人を引きつけるパワー!
ちゃいこーです♪
オマケに後藤さんのパワーもちゃいこーです♪
当然作者さんは大ちゃいこー♪
次回も期待しとりますよー!
- 382 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:03
- GWが明けてからの次の土曜日、
「・・・の五人がスタメンだ。いいか〜、今日の対戦相手は、片方は正直なところ
それほど強くはない。もう片方は、去年ベスト8までいったらしい。けど、
うちのチームなら絶対勝てる!自分を信じて、がんばれよっ!」
「はいっ!!!」
この日は朝比奈高校の体育館で、バスケの試合が行われる。
真希達バスケ部は、控え室で準備をしながら真里から激励をもらったところだった。
「紺野、大丈夫?緊張してない?」
真希は、控え室の隅で体を震わせているあさ美に声をかけた。
「は、はい!完璧です!」
「んじゃ完璧な紺野あさ美さん、期待してるからね♪」
「え、えと、すいません、完璧じゃないです。期待しないでください・・・。」
あさ美は慌てて手を振った。
- 383 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:04
- 「フフッ、冗談だよ。けどね、後藤達ならきっと勝てるよ。自信を持って。」
「はぁ・・・。」
「みんなもそうだからね。」
真希は今度は全員に聞こえるように言った。
「後藤達はGWの間、倒れるくらいにずっと厳しい練習をしてきた。
成せば成る、これは後藤の信条だけどね、やってやろうと思えば
やれるはずなんだよ。気合入れていくよ!」
「おー!!!」
真希の声に、部員達は元気に返事をした。
「そんなわけで、紺野キャプテンからも一言お願いします。」
真希は笑ってあさ美に振った。
- 384 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:04
- 「わ、私ですか・・・。」
「そうだよ。一言でいいからさ。」
「えっと、では・・・。」
あさ美は少し考えてから、部員達を見渡していく。
「こんな私ですけど、皆さんついてきてくださいね!そして、
勝てるかどうかは置いておくとして、最後まであきらめないで
がんばりましょう!」
「おーっ!!!」
真希達は元気に控え室を出ていった。
- 385 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:05
- 「早く始まらないかな〜♪」
美貴は上機嫌で、椅子に座って鼻歌を歌っていた。
美貴達はバスケ部の試合を見にきていた。
前回のライブ終了後、土曜はバイトまで時間が空いてて暇だった美貴は、
どうせなら真希達の試合を見に行かないかと愛を誘ったのだ。
愛は、土曜は普段なら家庭教師と勉強しているところだったが、
その家庭教師が風邪で寝込んでいることから、たまにはいいかと
思って美貴の誘いに乗ったのだ。
その話しをしている時に、絵里、さゆみ、れいなも話しに入ってきて、
一緒に見にいくことになった。
今日は授業があるわけではないので、美貴達は私服できていた。
朝比奈学園の体育館はとても広く、二階には座れる席がいくつもあった。
- 386 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:06
- 美貴達は絵里、愛、美貴、さゆみ、れいなの順で、最前列に座っている。
美貴達の他にも、けっこうたくさんの人がバスケを見にきていた。
「お、ごっちん達出てきたよ!」
「そうみたいだね。」
隣に座っていた愛は、じっと真希達を見ている。
「ごっちん?誰のことですか?」
美貴の隣に座っているさゆみが聞いた。
「美貴の親友だよ♪本名は後藤真希。あの子だよ。」
美貴は椅子に座りながら、控え室から出てきた真希を指差した。
「あれ、紺野さんってバスケ部だったんですか〜?」
今度は、愛の隣に座っている絵里が聞いてきた。
あさ美はよく愛と一緒にいるので、絵里達も顔見知りであった。
- 387 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:07
- 「そうだよ。最近キャプテンになったらしいよ。」
「ほぇ〜、キャプテンですか〜。」
「すごかね、紺ちゃん。」
その言葉に、さゆみとれいなも感心していた。
「後藤さんって、どれくらいバスケット上手なの?」
「めちゃくちゃうまいよ。言葉で説明できないくらいにね。
絶対に見にきてよかったって思うよ。」
愛に聞かれた質問に、美貴は笑って答える。
「久しぶりに、ごっちんのバスケを楽しませてもらいますか!」
美貴は嬉しそうに、真希達のことを見つめていた。
- 388 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:07
- ウォーミングアップが終わって、真希達は一度真里のいるベンチへと戻っていく。
「準備はいいな?」
「はい!!!」
部員達は、元気に真里に返事をする。
「よっし、それじゃ勝ってこいよ!」
真里の言葉で、スタメンの真希達はコートの中へと入っていった。
相手チームは、すでにコートの中で待っているようだ。
「新垣。」
「はい?」
真希は小さな声で里沙を呼んだ。
- 389 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:08
- 「最初の得点っていうのは、試合の流れを生む一番大事なとこなんだ。
だから、まずはうちが先に点を取りたい。」
「はい。」
「後藤がジャンプボールを絶対に取るから、そのこぼれ球を拾ってほしい。
たぶん、一瞬の飛び出しだったら、後藤を抜かせばこの中では一番あんたが
速い。頼んだよ。」
「・・・はい!」
相手チームと礼をして、試合が始まった。
真希はコートの中央で軽く屈伸をする。
ジャンプボールの相手は、真希よりも10cm以上身長が高い。
それでも真希は、不敵な笑みを浮かべてジャンプボールを待つ。
- 390 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:08
-
ピーッ!
審判がボールを真上に上げる。
真希と相手がボールに向かって飛び上がる。
真希は驚異的なジャンプ力を見せて、相手より先にボールを触って後ろに出した。
そのボールに飛びついたのは里沙だった。
「小川先輩!」
「OK!」
里沙はボールを拾うと、すぐに前にいた麻琴にパスを出す。
麻琴は綺麗に一人抜いて、ハーフラインを超えていく。
そこで二人のディフェンスに阻まれる。
- 391 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:09
- 「あさ美ちゃん!」
「はい!」
麻琴はすぐに抜くのが厳しいと判断して、横にいたあさ美にパスを出す。
「後藤さん!」
あさ美はボールを受け取ると、ディフェンスが近づくより先に
3Pラインからシュートを打った。
そのシュートは、ゴールではなくゴール手前に向かって落ちていく。
相手ディフェンスは、素早くボールの落下地点に入る。
だが、
「ハァッ!」
ガゴッ!
真希が高く飛び上がって、あさ美のシュートしたボールを空中で受け取って、
直接ゴールに叩きつけた。
- 392 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:09
- あさ美が打ったのはシュートではなく、真希に対するパスだったのだ。
「紺野、ナイスパスだよ。」
真希はゴールから手を放して飛び降りると、あさ美に手を向けた。
「はい!」
あさ美は嬉しそうに、真希の手を軽く叩き合わせた。
「アリ・ウープ・・・。」
相手チームの選手は、真希のダンクシュートを見て呆然としていた。
試合開始後、わずか10秒の出来事だった。
- 393 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:10
- 今日はここまでです
- 394 名前:konkon 投稿日:2004/11/09(火) 23:14
- >名無し飼育さん
ありがとうございます〜。
まだまだ発展途上CPなので盛り上がるのは
これからですw
美貴の成長が周りの人にどう影響していくのか、
とりあえずがんばります!
>よしよしさん
ミキティの人を引きつける力っていいですよね〜♪
ごっちんは大丈夫ですよ〜。
なぜなら強いですからw
とりあえずお言葉に甘えて作者も
がんばらせていただきますm(_ _)m
- 395 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/10(水) 13:04
- 更新乙です!
藤本が垣間見せた運動神経は今後は発揮されるんでしょうかね?
今回とは関係ないですが少し気になっちゃって。
次回も待ってます
- 396 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/10(水) 18:13
- みんな身長どれぐらいあるの?
- 397 名前:よしよし 投稿日:2004/11/11(木) 22:09
- 更新オツカレです。紺&後コンビのアリウープ!!
先制パンチ大成功ですね。今後の試合展開も期待してまーす。
- 398 名前:konkon 投稿日:2004/11/15(月) 23:59
- 「ヒュ〜!やっぱごっちんうまいね〜♪」
美貴は口笛を吹いて、感嘆の声を上げた。
あさ美のパスをもらって、真希がシュートを決めたところだった。
最初のシュート以降、試合はほぼ一方的な試合となっていた。
とにかく朝比奈学園がひたすら押している。
特に、あさ美から真希に対するパスがすごかった。
あさ美の鋭いパスたった一本で、真希はそこから余裕でシュートを決める。
二人は最強コンビと言っても過言ではなかった。
美貴は楽しそうに試合を見ている。
逆に、愛達は真希達、特に真希のうまさに口を開けて、唖然として試合を見ていた。
- 399 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:00
- 「どう、愛ちゃん。楽しいでしょ?」
「うん・・・それもあるけど・・・。」
愛は試合を見ながら、ゆっくりと話す。
「あさ美があんなに楽しそうにしてる姿、初めて見た・・・。」
愛は、試合の内容よりもあさ美のことが気になっていた。
「今までも、バスケをしているとこを何度か見たことあるけど、
あそこまで楽しそうにはやってなかった。」
「ごっちんといるからだと思うよ。紺ちゃんもうまいからね。本当にうまい人と
組んでるから、紺ちゃんも本気でやれるんだろうね。」
美貴が言っていることは正しかった。
今まであさ美が本気でやっても、誰も相手にしなかった。
それが真希が現れたことにより、全力でパスを出せるようになった。
それがあさ美は嬉しかったし、楽しかった。
試合は結局128対54という、朝比奈学園の圧勝で終わった。
- 400 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:01
- 「よくやった!次もこの調子でがんばれよ!」
真里は温かく真希達を迎える。
「もちろん。次も勝ちますよ。」
真希は椅子に座ってから、自信たっぷりといった感じでそう答えた。
「ほ〜、言うねえ!次の試合は一時間後だ。30分以内に昼飯食って、
後の30分で体動かせるようにしとけよ。」
「はい!!!」
部員達が返事をすると、真里は大きく頷いて体育館を出ていった。
「後藤さん・・・。」
振り返ると、あさ美が不安そうな顔で真希の顔を覗き込んだ。
- 401 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:02
- 「どうしたの?」
「あの・・・どうだったでしょうか?」
「何が?」
「私が試合に出て・・・よかったんでしょうか?」
真希はあさ美の顔を見つめた後、にっこりと笑った。
「後藤はさ、自慢になっちゃうかもしれないけどね、中学の時ってバスケの
強豪学校にいたんだ。それで、うまい人達と組んだりしてたこともあったんだ。」
「はあ・・・。」
あさ美は難しい顔をしているが、真希はそのまま話し続ける。
- 402 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:03
- 「紺野はね、そのうまい人達のどの型にも当てはまらないの。
今まで後藤が欲しいと思ったときに、ボールを出せる人は
いなかった。けどね、紺野はそれを当たり前のように出してくれる。
紺野とは目と目が合うだけで、意思が疎通してると後藤は思うんだ。
これほどすごいことはないよ。後藤は紺野と組めて、心から
よかったと思ってるよ。」
「後藤さん・・・。」
「これからもよろしくね。頼りにしてるからさ。」
真希は立ち上がって、あさ美の頭を優しく撫でる。
あさ美は顔を赤くして、真希を見つめていた。
- 403 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:04
- 「すごいやん、バスケ部。」
「当然だろ!」
体育館の入り口で見てた裕子に、真里はガッツポーズを見せる。
「それにしても、本当にすごいわな。後藤はもうプロでもいけるんやないか?」
「そうだね。紺野もいいパス出すし、本当に今年はインターハイに行くぜ!」
「あの、すいません。ちょっといいですか?」
裕子と真里が話しながら渡り廊下を歩いていると、前から一人の少女が声をかけてきた。
「矢口、聞いてあげなや。」
「・・・。」
「矢口?」
真里はその少女を見て、口を開けて固まってしまっていた。
- 404 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:05
- 「え、え〜っと・・・。」
「どうかしましたか?」
真里が固まってしまったために、代わりに裕子が聞くことにした。
「今日、バスケ部の練習試合が朝比奈学園でやっているそうなんですけど、
こちらの方で合ってるんでしょうか?」
「ええ、この先の体育館でやってますよ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
少女はお辞儀をして、体育館へと向かっていった。
「おい、いつまで固まっとんのや?」
裕子は真里の頭を軽く叩いた。
- 405 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:05
- 「いたっ!あっ、さっきの子は!?」
「もうとっくに行ってもうたで。」
裕子が後ろに視線をやると、真里は慌てて後ろを振り向いた。
だが、先ほどの少女はもう見当たらなかった。
「うそっ!?さっきの子ってうちの学校の生徒じゃないよね?」
「そうやな。うちの生徒じゃないわ。」
「やばいくらい可愛くなかった?矢口マジ惚れちゃったんだけど〜。
じゃあ、次の学校の生徒だったのかな〜?あ〜、おいらも
その学校行きてぇな〜。」
「さっきの子はな、後藤の・・・ってちょっち待ちや。」
真里は裕子の話しも聞かずに、独り言を言いながらどこかへ歩いていく。
「(・・・重症やな。)」
裕子は真里を放って、昼食を食べるために購買へと向かっていった。
- 406 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:06
- 「さってと、昼食か〜。」
「後藤さんは、お昼はどうするんですか?」
真希とあさ美は、控え室に戻る準備をしながら話している。
「ん〜、購買で適当に買ってこようかなってね。今日さ、寝坊しちゃって
弁当作れなかったんだよね。」
「あ、では私も一緒に・・・。」
「真希。」
あさ美の話しの途中で、二人は声がした方を同時に振り向いた。
「ヤッホ〜♪」
「なっち!応援にきてくれたの?」
「そうだよ〜。」
先ほど真里達がすれ違った少女、安倍なつみに真希は駆け寄って
嬉しそうに話し始める。
あさ美はそれを、寂しそうな表情で見つめている。
- 407 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:07
- 「そうだ!真希、今日お弁当持ってる?」
「それがさ〜、寝坊しちゃって作れなかったんだ。だから購買で済ませるよ。」
「そこでね、ジャーン!」
なつみは持っているかばんの中から、ナフキンに包まれている一つの弁当を取り出した。
「ハイ、真希のために作った特製弁当だよ!」
なつみは、弁当を真希の手に持たせる。
ズキン
「へっ、なっちが作ってくれたの?」
真希は驚いた表情でなつみを見つめる。
- 408 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:07
- 「そんな意外そうな顔しなくたっていいべさ〜。真希ほど上手じゃないけど、
なっちだってお弁当くらい作れるよ。このなっち特製弁当を食べて、
次の試合もがんばりなさい!」
「うわ〜、なっちありがと〜!」
真希は勢いよくなつみに抱きついた。
「ちょっと、危ないべさ!」
「だからなっち大好き!」
真希は嬉しそうな顔をしながら、なつみから離れようとしない。
ズキン
「(胸が・・・苦しいよ・・・。)」
あさ美は見てるのが辛くなって、胸を押えながら顔を俯かせる。
- 409 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:08
- 「(痛くてたまらない・・・後藤さん・・・。)」
「あさ美ちゃん、どうしたの?」
辛そうな表情をしているあさ美に、麻琴は心配そうに声をかけた。
「何か顔色悪いよ。大丈夫?」
「あ、うん。ちょっと疲れて気持ち悪くなっただけだよ・・・
外の空気でも吸ってくるね。」
あさ美は走って外へと出ていった。
あさ美が通った後には、いくつもの涙が零れていた。
- 410 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:11
- >395 名無し飼育さん
ん〜、そのうちあるかもしれませんね。
まぁ、自己紹介でスポーツが得意と言ってしまったので
機会があれば書かせていただきたいと思います。
>396 名無し飼育さん
モーニング娘の平均身長は155くらいでした。
だから、そのくらいの設定にしておいてください。
バスケは身長じゃありませんよ♪
- 411 名前:konkon 投稿日:2004/11/16(火) 00:12
- >よしよしさん
やっぱ時代はこんごまです(マテ)
愛美貴書こうにもやはりそちらへと
自分はいってしまいます・・・。
試合は・・・どうなるんでしょうねw
- 412 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/11/18(木) 22:27
- 初めまして名無しの荒らしです。
H.Nこんなのですが荒らしに来たわけではありません。
一気に読みました、いや〜愛美貴最高です!
こんごまも出てきてもう言うことなしです。
これはもうお気に入りの一つです!!頑張って!!!!
- 413 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/11/18(木) 23:04
- 乙ですよ!
予想してなかった人の登場で俄然盛り上がってまいりましたね。
あの方と藤本の絡みも実は期待なんですが・・・
- 414 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:44
- 「愛ちゃん、食べませんか〜?」
絵里はお菓子を食べながら、隣に座っている愛にお菓子の袋を向けた。
「絵里、ここは飲食禁止だよ。」
「でも、ほら。」
絵里が愛の隣を指を指した。
愛がそちらを振り向くと、
「これ、おいしいね。」
「そうでしょ〜♪このお菓子、あんまり売ってるとこないんですよ。」
「あ、さゆ。これあげるかられいなにもちょうだい。」
美貴、さゆみ、れいなの三人が、何やらお菓子を分け合って食べているようだった。
- 415 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:44
- 「ご飯食べに行く時間はないし、購買のパンもあきちゃいましたからね。
軽〜い腹ごしらえってやつですよ。どうぞ♪」
絵里は笑って、再び愛にお菓子の袋を向けた。
愛は軽く溜息をついてから、袋から一つお菓子を取って口に入れた。
「あれ、紺ちゃんどこに行くとよ?」
れいなは、体育館を走って出ていこうとしているあさ美に気付いた。
美貴もあさ美に目を向ける。
あさ美は腕で目を押さえていて、泣いているようだった。
美貴は、今度は真希のいる方に視線を移す。
真希はなつみとじゃれ合いながら、楽しそうに話していた。
「(・・・なるほどね。)」
美貴は一人頷いて、椅子から立ち上がった。
- 416 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:45
- 「どこに行くの?」
立ち上がった美貴に気付いて、愛が顔を上げて聞いた。
「ちょっとね、飲み物でも買ってくるよ。」
美貴は軽く笑って歩き始める。
「ウーロン茶よろしくね。」
愛は淡々とした口調で美貴に頼んだ。
「あ、絵里はオレンジジュースでお願いします。」
「さゆはカルピス!」
「れいなはコーラがよかです。」
三人は笑顔で美貴に頼む。
「・・・普通、先輩をパシリに使うか〜?」
美貴は苦笑いしながら、二階席の扉を開けて階段を降りていった。
- 417 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:46
- あさ美は、体育館から少し離れた中庭にあるベンチに、座って俯いていた。
「(悔しがること・・・ないじゃない・・・。)」
あさ美はそう自分に言い聞かせる。
「(後藤さんほどの人なら、あれだけ可愛い彼女がいたって・・・
別に不思議じゃないよ・・・。)」
あさ美はまた一つ涙を零した。
「(でも・・・でも・・・私は後藤さんのことが・・・。)」
「こんなとこにいたの?」
あさ美はその声を聞いて、一瞬体を震わせる。
声をかけてきたのは真希だった。
- 418 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:47
- 「小川に聞いたよ。気持ち悪くなったから外に出たって聞いて探してたんだ。
動きすぎちゃった?それとも、後藤が無理させすぎた?」
あさ美は俯いたまま、小さく首を横に振った。
「聞きたいことが、あるんですけど・・・いいですか?」
あさ美は真希に視線を向けるため、少しだけ顔を上げる。
「ん、いいよ。」
「後藤さんにとって・・・さっき話してた人は・・・大事な人ですか?」
「さっき話してた・・・なっちのことかな?」
あさ美は首を小さく頷かせる。
「そうだね〜、すっごい大事な人だよ。後藤のことを可愛がってくれるし、
とっても優しいし、誰よりも分かってくれる。本当に大切な人だよ。」
「好き・・・なんですか?」
「うん、大好きだよ。」
真希は笑って答える。
- 419 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:48
- あさ美は真希の笑顔に耐え切れずに、また俯いてしまう。
「紺野、大丈夫?」
真希は、あさ美の頭に手を伸ばして撫でようとした。
その時、
パシッ
「紺・・・野・・・?」
「あ・・・。」
あさ美が真希の手をはじいたのだ。
真希は何も言えずに、その場で固まっていた。
「あの・・・本当に大丈夫ですから。」
「・・・そっか。なら、戻ろうよ。」
真希はなんとか笑顔を作って、そう口に出した。
「・・・はい。」
真希が歩き出してから、あさ美は真希の横に並ばずに後ろをついて、
体育館に向けて歩き出した。
- 420 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:49
- 交信したっちゃ〜♪
- 421 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 13:52
- >名無しの荒らしさん
ありがとうございます〜♪
まだまだ未熟者ですが、愛美貴、こんごま共に
どんどんと発展させたいと思いますので
どうぞよろしくです!
>名無し募集中さん。。。
予想してなかった人というのはあの方のことでしょうか・・・?
あの方とミキティの絡みはどうかわかりませんけど
真希とは関係あるんでしょうね〜(謎)
自分でもちょっち困り気味です(汗)
- 422 名前:konkon 投稿日:2004/11/27(土) 23:56
- 「お二人さん、お疲れ様〜♪」
真希とあさ美が歩いていたところを、体育館の入り口で待っていた
美貴が声をかけた。
「すごかったじゃん!やっぱごっちんってうまいよね〜。」
「・・・まぁね。」
真希はあさ美のことが気になって、あまり元気がなかった。
それを美貴は気にせずに、真希と先ほどの試合について話し合っていた。
あさ美は下を向いたまま、二人の話しに加わろうとしない。
「ミキティ、後藤達あと一試合あるから、もう行くね。」
「そか。あ、ちょっと紺ちゃんに話しあるからさ、ごっちんは
先に行っててくれない?」
「・・・わかった。」
真希は美貴とあさ美の話しが気になったが、今は自分がそこにいても
意味がないと悟って、先に控え室へと戻っていった。
- 423 名前:konkon 投稿日:2004/11/27(土) 23:56
- 「あの・・・話しって何ですか?」
あさ美は悲しそうな表情をして、美貴に顔を向ける。
「安倍さんってさ〜、すっごい可愛いよね〜。」
「・・・安倍さん?」
「そう、安倍なつみさん。通称、いや自称なっちかな。さっきごっちんと
話してた人だよ。」
美貴は笑顔で話していく。
「はぁ・・・。」
「安倍さんってね、ちょっと抜けてるとことかあるんだけどさ、
人のことを自分のこと以上に気遣うことができる、すごい
優しい人なんだよね〜。ごっちん、羨ましいよな〜。」
「あの、私も試合がありますから・・・。」
あさ美はそれ以上聞いているのが辛くなって、美貴に背を向けて歩き出した。
- 424 名前:konkon 投稿日:2004/11/27(土) 23:57
- 「あれでごっちんの"お姉ちゃん"じゃなかったらな〜。」
ピタッ
美貴は、少し離れたとこまで歩いたあさ美にまで聞こえるように、
その言葉だけは大きめな声で言った。
それが聞こえたあさ美は、その場で立ち止まって美貴を振り向いた。
「あの・・・藤本さん。」
「美貴が付き合ってたかもしれないのにな〜って、どうしたの?」
美貴は近づいてきたあさ美に、笑顔を向けて聞いた。
- 425 名前:konkon 投稿日:2004/11/27(土) 23:58
- 「あの・・・今、"お姉ちゃん"って・・・。」
「そうだよ。安倍さんはごっちんのお姉ちゃんです。前にさ、ごっちんは
親戚のお姉ちゃんの家に住んでるって言ってたじゃん。そのお姉ちゃんが
安倍さんなんだよ。親戚だから苗字が違うってだけ。ごっちんがあだ名で
呼んでるのは、昔っから仲良かったからだってさ。というか、安倍さんが
自分でなっちって呼んでって言ったらしいよ。おもしろい人でしょ?」
美貴の問いに、あさ美は口を開けたまま何も言えなかった。
「紺ちゃんさ、安倍さんに嫉妬してたでしょ?」
美貴は優しく笑って聞いた。
- 426 名前:konkon 投稿日:2004/11/27(土) 23:58
- 「えっと、わ、私は、その・・・。」
「ごっちんのことが好きなんだよね?」
「そ、そんな、私なんかが後藤さんのことを・・・。」
あさ美は慌てて手を何度も振った。
「一ついいこと教えてあげる、ごっちんには彼女はいないよ。」
「えっ?」
「好きな子とか、気になった子ができたらお互いに報告する、それが
美貴とごっちんの暗黙の了解だからね♪」
「そうだったんですか・・・。」
「ごっちんが好きな子のタイプはね、一生懸命にがんばってる優しい子だよ。
これって紺ちゃんに当てはまると思わない?」
「あの、その・・・。」
あさ美は顔を赤くして下を向く。
- 427 名前:konkon 投稿日:2004/11/28(日) 00:00
- 「紺ちゃんさ、自信持っていいと思うよ。これは美貴が口を出すような
ことじゃないから余計なことまで言うつもりはないけれど、ごっちんは
絶対紺ちゃんのこと気にいってるよ。でなきゃあんなにかまうようなことも
しないし、さっきなんかすっごい落ち込んでる顔してたもん。紺ちゃんなら
いけると思う。それが美貴の感想です。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
「んじゃ、がんばってね〜。」
「・・・ハイ!」
美貴が後ろを振り向いて歩き出す。
が、すぐに振り返ってあさ美に近づいていった。
- 428 名前:konkon 投稿日:2004/11/28(日) 00:01
- 「どうしました?」
「ちょっとした言い訳かな。紺ちゃんを美貴が取ったなんて、
ごっちんに思われたくないからね。」
「えと、そんなことは・・・。」
「まぁ、とりあえず・・・ってな感じで言っておいてよ。」
「それでいいんでしょうか・・・わかりました。」
「それじゃね〜。」
美貴は手を振って、体育館から出ていった。
「藤本さん、本当にありがとうです・・・。」
あさ美は美貴の背に、軽くお辞儀をしてから控え室へと向かっていった。
- 429 名前:konkon 投稿日:2004/11/28(日) 00:01
- 交信しました〜。
- 430 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/28(日) 12:50
- 紺ちゃんあきらめるなー。
きっと大丈夫だよ。
- 431 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/11/28(日) 15:43
- お疲れ様〜
こんごま更に期待大ですよ。
ファイトです
- 432 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/28(日) 15:52
- ミキティーやさしいですね〜
自分もこんこんを応援してます!
- 433 名前:konkon 投稿日:2004/12/03(金) 23:59
- 「お待たせ〜。」
ジュースを抱えた美貴が、愛達のいる席まで戻ってきた。
「お〜!」
「藤本さん、ありがとうございます!」
絵里達は、嬉しそうに美貴からジュースを取っていく。
「ほい、愛ちゃんの分。」
「ありがと。」
愛は少しだけ笑って、美貴からジュースを受け取った。
「ねえ、あさ美と何話してたの?」
「ん〜っと、美貴達が応援してるからがんばれって、激励の言葉を送っただけだよ。」
美貴は軽く伸びをしながら答える。
- 434 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:00
- 「別に藤本さんの激励がなくても勝つと思うけどね。」
「・・・またそういうこと言いますか。」
「違うか、激励がないほうががんばれるんじゃない?」
「・・・。」
さすがの美貴も、愛にここまで言われると落ち込んで下を向いてしまった。
「フフッ、冗談だよ。あさ美、喜んでたでしょ?」
愛は軽く笑って、下を向いて落ち込んでいる美貴の頭を軽く撫でた。
「(紺ちゃんよりも、美貴の方ががんばらなきゃいけないのかも・・・。)」
美貴は、心の中で大きな溜息をついていた。
- 435 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:00
- 「あ、あさ美ちゃん。大丈夫なの?」
「次の試合いけそう?」
控え室に入ったと同時に、麻琴から聞いたのか、心配そうな顔で部員達が集まってきた。
「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
あさ美は笑って部員達を見渡した。
その顔を見て安心した部員達は、次の試合の準備を始める。
あさ美は、控え室の奥の方で暗い顔をして座っている真希に気付いて、ゆっくりと近づいていく。
「後藤さん。」
あさ美に呼ばれて、真希は力なく顔を上げる。
「あのですね、その・・・。」
「紺野・・・後藤、何か悪いことでもしたかな?」
真希は泣きそうな顔であさ美のことを見つめる。
- 436 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:01
- 「もし悪いことしたのならさ、後藤がやったことを言ってほしい。
もう絶対にそんなことしないから、紺野を嫌な気持ちにさせたくないから!」
「い、いえ、そんな、後藤さんは何もしてませんよ!」
あさ美は大きく首を振って否定した。
「あの、情けない話しなんですけど、久しぶりの試合でありまして、
試合内容を思い出したら何かミスばかりあったような気がしたんですよ。
それでですね、考え込んでたらちょっとネガティブになってきてしまいまして、
機嫌が悪くなっちゃったんです・・・あの、先ほどは本当にすいませんでした!」
あさ美は真希に向けて、大きく頭を下げた。
- 437 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:02
- 「・・・後藤、紺野に嫌われてないの?」
「も、もちろんですよ!嫌うはずないじゃないですか!」
「そっか・・・よかった〜。」
真希は安心しきった表情で上を見上げた。
「本当によかったよ〜。」
「あの、後藤さん。私、がんばりますから!絶対に後藤さんに
認めてもらえるようにがんばります!」
「・・・ありがとう、紺野。後藤もがんばる。それでさ、
二人で最強コンビを目指そうね!」
「はい!」
あさ美は真希のことを見つめながら、大きな返事をした。
- 438 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:02
- 「そういえばさ、ミキティと何話してたの?」
「えっとですね、私ならやれるから緊張しないでがんばれ、と
そう言ってもらいました・・・。」
「そうなんだ。何で後藤には言ってくれなかったのかね〜?」
「あの、後藤さんの場合は・・・緊張することなんてありえないから、
激励なんて必要ないとか・・・。」
「うわ〜、ミキティむかつく〜。後藤だって緊張することあるもん!」
「そうですね・・・。」
バンッ!
あさ美が真希に同意したと同時に、控え室の扉が壁に当たるほど勢いよく開いて、
怖い形相をした真里が入ってきた。
- 439 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:03
- 「おい、てめーらさっき以上に気合入れてけよ!万が一にでも負けたら、
地獄の特訓始めっからな!覚えとけよ!」
真里は耳を塞ぎたくなるほどの大声で、部員達にそう叫んだ。
その直後に、真里は控え室から出ていって乱暴に扉を閉めた。
部員達は、呆然としたまましばらく固まってしまっていた。
「後藤さん・・・。」
「何?」
「矢口先生、何をあんなに怒ってるんでしょうか?」
「さぁね・・・。」
真希とあさ美は、呟くように話した。
- 440 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:03
- 「まぁ、次の試合もがんばろうね!」
「はい!」
あさ美は笑顔で真希の顔を見上げて返事をした。
「あんな可愛い子がいる学校なんて、絶対許せねぇ・・・。顧問として
かっこいいとこ見せて、絶対に矢口に惚れさせてやる・・・。」
真里の頭には、先ほどすれ違ったなつみのことしか頭になかった。
なつみが真希の姉ということを、まだこの時点では真里は知らなかった。
- 441 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:05
- 交信しました〜。
- 442 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 00:08
- >名無し読者さん
あきらめないですよ〜!
あきらめたくなるときもあるかも
しれないけどコンコンはがんばります!
>名無しの荒らしさん
もちろん、こんごまはここからです!
まだまだ先は長いので大丈夫ですw
>名無飼育さん
ミキティ、自分で書いておきながら
めちゃに優しすぎ・・・(汗)
でもこの小説ではかっこいい主人公に
したいと思います♪
- 443 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/05(日) 19:45
- お疲れ様で〜す。
紺ちゃん頑張ってますね、次はミキティかな〜?
- 444 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:43
- 後半戦、残り時間五秒、
「後藤さん、決めてください!」
あさ美が前に鋭いパスを出す。
・・・4・・・3・・・
相手のディフェンスは、そのボールに誰も反応できない。
・・・2・・・1・・・
「任せて!」
真希はゴール下でパスを受け取ると、高く飛び上がる。
・・・0
「ハァッ!」
ガゴッ!
ピーッ!
審判の笛よりごくわずか先に、真希のシュートが決まった。
- 445 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:44
- 「やったーっ!」
朝比奈学園の部員達が、歓喜に包まれる。
真希達朝比奈学園は、相手が去年のベスト8にも関わらずにゲームを支配して、
圧倒的な強さで勝利を手にした。
「やっぱうまいね〜!ごっちんも紺ちゃんもすごいや!」
美貴は椅子から立ち上がって、手摺りから身を乗り出した。
ちょうど、試合が終わって控え室へ戻ろうとしている真希達が向かってくる。
「ごっち〜ん!」
美貴の声に真希は顔を上げて、美貴の方へと近づいていく。
「勝ったね!」
美貴は、笑顔で真希の方に拳を突き出した。
- 446 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:45
- 「おう!」
真希も笑って、二階にいる美貴に拳を上げて返す。
「後藤さん・・・あ、藤本さん。」
真希が美貴の所にいっていることに気付いたあさ美は、真希の元へと寄っていく。
そこで愛は立ち上がって、美貴の隣にきて手摺りから顔を出した。
「あさ美、やったね。」
愛はほんの少しだが、嬉しそうにしてあさ美に向けて親指を立てる。
「愛・・・うん!」
あさ美は嬉しそうに、愛に親指を立てて返した。
「そうだ、紺野昼ご飯食べてないでしょ?一緒に食べない?」
真希は美貴から視線を外して、あさ美を振り向いた。
- 447 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:46
- 「えっ、後藤さん、お姉さんからお弁当もらったんじゃ・・・。」
「ん〜、なっちには悪いんだけど、後藤は紺野と食べたかったからさ。
だからまだ、食べてないんだ。どうかな?」
「え、えっと・・・。」
あさ美は先ほど真希の手を振り払ったのを思い出して、そして真希に
誘われたことによる嬉しさで、どう答えたらいいか迷っていた。
「だめ・・・だよね。試合ではうまくいってたけど、後藤、
紺野に嫌われちゃったっぽいしね。」
真希は寂しそうに呟いた。
「そ、そんなことないですよ!」
「・・・本当?」
「本当です!だ、だって私、後藤さんのこと好きですから・・・。」
あさ美は顔を赤くしながらも、真希のことを見つめてそう言った。
- 448 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:47
- 「(よっしゃ〜!紺ちゃんとうとう言ったんだ!ごっちん、ちゃんと答えてやれよ!)」
美貴は興味津々といった感じで、二人のことを交互に見ている。
隣にいた愛は、そんな美貴のことを訝しげに見ていた。
「・・・ありがとう。紺野みたいな最高の"友達"が持てて、
後藤はすごい幸せ者だね。」
ガンッ!
美貴は手摺りに思い切り頭をぶつけ、頭を押さえてしゃがみ込んだ。
「(あの超鈍感・・・気付けよ・・・。)」
「「?」」
真希とあさ美はその音に反応して上を見上げたが、美貴はすでにしゃがみ込んでいて、
そこには愛しか立っていなかった。
愛は難しい顔をしながら、落ち込んで座り込んでいる美貴を見下ろしていた。
- 449 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:48
- 真希とあさ美は、一度顔を見合わせて軽く笑い合った。
「今日はこれで終わりだし、後藤の家で何か作ってあげようか?」
「いいんですか?」
「もちろん!紺野がそれでいいっていうならね。」
「それでは、喜んでお邪魔させていただきます!」
真希とあさ美は楽しそうに話しながら、控え室へと戻っていった。
「・・・どうしたの?」
「いや・・・愛ちゃんは今の会話聞いてて、何も思わなかったの?」
美貴はゆっくりと立ち上がって、愛に聞いた。
「あさ美、よかったよ。後藤さんみたいないい人が"友達"になってくれて。」
「(ここにも鈍感が一人・・・。)」
美貴はまた心の中で溜息をついた。
- 450 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:49
- 「さってと、この際だからご飯食べたあと、どっか遊びにいこうか?」
「「「さんせ〜い!!!」」」
気を持ち直した美貴の意見に、絵里、さゆみ、れいなは元気に手を上げた。
「もちろん、愛ちゃんも行くんだよ♪」
美貴は笑顔で愛の顔を覗き込む。
「いいよ。藤本さんはバイトがあるんだし、あまり時間もないから急がなきゃね。」
愛は何気に楽しそうな表情をしていた。
「んじゃhigh bredge、いっくよ〜!」
美貴を先頭に五人は歩き始める。
その時、美貴の視線の先に一人の見知った女性が座っていたのが見えた。
美貴は笑ってその女性の元へと歩き出す。
- 451 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:50
- 「こんにちわ。安倍さん。」
美貴の声に、なつみは目の前にいる美貴を見上げた。
「お〜、美貴つぁんじゃないかい!久しぶりだね〜!」
なつみは立ち上がって美貴の顔を見つめる。
「真希から聞いていたけど、ずいぶんと可愛くなってるじゃん!身長もあの頃は
なっちよか小さかったのに、美貴つぁんも成長したんだね〜。」
「・・・いい加減、その呼び方やめませんか?それに、美貴が
中3だった時点で安倍さんよりも身長高かったですよ。」
「そういう細かいことは気にしないもんだべ!」
なつみは嬉しそうに、美貴の肩をバシバシと叩く。
- 452 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:50
- 「ちょっ、痛いですって!安倍さんも変わってませんね。」
「何を〜、それはなっちが成長してないって言いたいんかい!?
お母さんに言いつけちゃうぞ?」
「(あんた今何歳だよ・・・ったく、本当に変わってないや・・・。)」
美貴は心の中で突っ込みを入れてから、軽く笑って3年前のことを思い出しかけていた。
「藤本さん?」
後ろから愛に呼びかけられて、美貴はすぐに現実に戻る。
「あ、紹介してなかったね。こちらはごっちんのお姉ちゃんの安倍なつみさん。」
「初めまして、安倍なつみです。なっちって呼んでね。」
なつみはまるで、太陽のような笑顔で愛達に笑いかけた。
- 453 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:51
- 「可愛い人だね。」
「(お〜、まるで天使のような人だ・・・。)」
「れいな、何を思った?」
「いえ、何も思っとらんです!」
れいなは、さゆみに何度も大きく首を振って否定する。
絵里はその光景を笑って見ていた。
「初めまして、後藤さんのクラスメイトの高橋愛っていいます。」
愛は深くお辞儀をする。
「お、真希と同じクラスなんだべか。仲良くしてやってね。あの子、
本当は寂しがり屋なのに不器用だからさ、よく一人になっちゃうことが
あるんだよね・・・。」
「・・・いえ、それはもうないと思いますから大丈夫ですよ。」
愛は力強くそう言い切った。
- 454 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:52
- きっと、愛はあさ美のことを思ってそう言ったのだろう。
美貴も隣で大きく頷いた。
「そうだ、これから美貴達昼ごはん食べに行くんですけど、
よかったら一緒にどうですか?」
「あ〜、嬉しいんだけど、なっちはこれから担任の先生とお話しが
あるから、また今度ね。」
「そうですか。それじゃ、今度遊びに行きますんで。」
「うん、なっちがいる時ならいつでもきていいからね〜。」
美貴達は、手を振ってなつみと別れた。
「安倍さんとも仲良かったの?」
「そうだね、ごっちんとたくさん遊びに行ったりしたけれど、
安倍さんにもよくお世話になったよ。安倍さんの笑顔を
見てるとさ、いやなことがあったりしてもけっこう癒されたもんだよ。」
愛の問いに、美貴は少し寂しそうに答える。
「亀ちゃん達も先に行っちゃったようだし、美貴達も急ごうか。」
「そうだね。」
美貴は愛と共に、絵里達を追って体育館を出ていった。
- 455 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:52
- 今日はここまでです。
- 456 名前:konkon 投稿日:2004/12/12(日) 04:56
- >名無しの荒らしさん
紺ちゃん、勢いよく言っちゃいましたw
次回からはあいみき編にいきたいと思います。
- 457 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 11:33
- 乙です!
こんなときだからこそ、なっちの出番は癒されますね。
次回も楽しみに待ってます!
- 458 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/16(木) 21:47
- お疲れ様
いよいよあいみきですか〜。
たのしみにしてま〜す
- 459 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:29
- 六月も中旬に入ろうとした、ある金曜日の夜のことだった。
「恋をして〜仕事して〜歴史刻んだ地球〜♪」
台風による大雨の中、美貴は鼻歌を歌いながら傘を差して、商店街を歩いていた。
手には、スーパーの買い物袋を二つ持っている。
「いや〜、大雨のせいでスーパーに客があまりいなかったから、安売りの肉が
たくさん買えたぜぃ!台風様様って感じだね♪」
美貴は雨の中でも気にせずに、気分よく家に向かっていた。
商店街を抜けると、美貴の住むマンションの隣にある公園が見えてきた。
美貴が家に帰るには、この公園を回らなければならない。
それが面倒になった美貴は、公園を突っ切っていくことにした。
- 460 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:30
- 美貴が歩いていると大雨の中にも関わらず、傘も差さずに
ベンチに座っている少女が目に入った。
その少女は制服姿で、美貴と同じ朝比奈学園の制服だった。
少女の隣には、けっこうな大きさのかばんが置いてある。
俯いているために、髪が邪魔で顔はよく見えない。
「(放っておくわけにはいかないよね・・・。)」
美貴はその少女が気になって、少女の傍まで歩み寄る。
「ねえ、どうかしたの?」
美貴は優しく声をかけた。
- 461 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:31
- その声に反応して、少女は顔を上げる。
その瞬間、美貴は目を見開いて驚いた。
「あっ、愛ちゃん!?こんなとこで何してんのよ!?」
「・・・藤本さん?」
大雨の中、ずぶ濡れになってベンチに座っていたのは、なんと愛だった。
愛は明らかにも泣きそうな顔で、美貴を見上げていた。
「と、とにかく、風邪ひいちゃうから美貴の家に行くよ!」
美貴は持っていた傘を愛に渡して、愛のかばんを持って歩き始める。
「・・・藤本さんが濡れちゃうよ。」
「美貴の家はすぐ近くだからいいの。ほらっ、行くよ。」
美貴は器用にも買い物袋とかばんを片手で持って、もう片方の手で愛の手を引っ張って歩き始めた。
- 462 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:32
- 美貴は、あるマンションの二階に住んでいる。
美貴は家に着くと、鍵を差し込んでドアを開ける。
「ただいま〜。」
「ニャ〜。」
美貴が玄関に入ってきたと同時に、一匹の黒猫が奥から歩いてきた。
「ただいま、トレイン。お客さんがきてるから、ちょっとだけご飯は待っててね。」
美貴はトレインと呼ぶ猫の頭を軽く撫でてから、荷物を置いて
急いで浴室の方へと向かっていく。
そして、すぐに玄関で待っている愛のところまで戻ってきた。
手には二つタオルを持っている。
- 463 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:32
- 「ほい、ちゃんと体拭きなよ。」
「あ、ありがとう・・・。」
愛は渡されたタオルで体を拭き始める。
それを確認した美貴は、もう一つのタオルで自分の体を拭き始める。
「今お風呂沸かしたから、あと十分もすればできるよ。その間に
風邪ひいちゃったら意味ないからさ、シャワーでも浴びててよ。」
「でも・・・。」
「いいから入る!」
美貴はまだ濡れている愛を強引にも引っ張って、脱衣所の方へと連れていく。
- 464 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:33
- 「脱いだ服は適当に置いといてよ。たぶん、愛ちゃんのかばんの中に
入ってる服も濡れちゃってると思うから、あとで美貴の服でも
用意しておくからね。ちゃんと暖まるんだよ。いいね?」
「う、うん・・・。」
「(美貴と愛ちゃんって、そんなに体型とか身長って変わらないよね。
問題があるとしたら、やっぱり胸か・・・そんなに変わらないと
思うけど、愛ちゃんにサイズ小さいって言われたら美貴泣きそうだし、
Tシャツにトレーナーでいいかな。)」
美貴はそんなことを考えながら、脱衣所から出ていった。
「・・・。」
愛は何も言わずに、服を脱いで浴室へと入っていった。
- 465 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:34
- 三十分程経った後、愛は美貴の服をきて脱衣所から出てきた。
キッチンの方からは、何やらいい匂いがしてくる。
リビングでは、美貴がソファに寝っ転がりながらトレインとじゃれて遊んでいた。
「お、愛ちゃん出てきたね。髪おろした愛ちゃんも可愛い〜♪
美貴の服きつくない?」
「うん・・・ありがとう。」
「そろそろ晩御飯できると思うからさ、テレビでも見て待っててよ。」
美貴は愛をソファに座らせてから、キッチンの方へと向かっていった。
愛は、美貴の家を見渡していく。
リビングにはテレビ、MDラジカセ、二人用のソファが二つ
テーブルを挟んで向き合って置かれている。
テーブルの上には、何冊かの漫画や雑誌、部屋の隅にはギターが
一本立て掛けられていた。
- 466 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:35
- 一通り見渡した愛は、見たい番組もなかったのでテレビは付けずに、
下を向いて俯いていた。
すると、愛の視界までトレインが歩いてきて、愛のことをじっと見上げる。
「トレイン・・・ちゃん・・・。」
愛が手を差し出すと、トレインは反抗せずに撫でられる。
「へ〜、愛ちゃんすごいじゃん。トレインって人見知りするのに、
もう懐いちゃったんだ〜。」
キッチンから、美貴が皿を二つ持ってリビングに入ってきた。
「はい、美貴特製ビーフカレーだよん。」
そう言って、美貴は愛の前に皿を置いた。
「晩御飯食べてないでしょ?一緒に食べよ。」
美貴は自分の分の皿を愛の向かい側に置くと、またキッチンの方へと戻っていった。
今度は手に缶詰を持って、リビングへと入ってきた。
- 467 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:36
- 「ほら、トレインおいで。晩御飯だよ。」
美貴はテーブルの横に置いてあるえさ入れに、缶詰の中身を入れていく。
トレインはえさに気付いて、愛から離れてえさを食べ始める。
「さ、美貴達も食べようよ。どうぞ〜♪」
美貴は愛のことを見つめて、愛が食べるのを待っている。
「・・・いただきます。」
自分が食べなければ美貴も食べない、そう悟った愛は、スプーンを
手に取って一口食べる。
「どう?おいしい?」
「・・・うん。」
「そっか。よかった〜。」
美貴は嬉しそうに自分の分を食べ始める。
- 468 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:37
- 「やっぱさ、動物も人の優しさとかってわかるんだろうね〜。
トレインのやつ、愛ちゃんが優しいこと知って甘えやがってさ〜。」
美貴は食べながら話し始める。
「藤本さん、猫飼ってたんだね。」
「飼ってたっていうか、拾ったんだよね。空腹で倒れてるところを見つけてね、
管理人さんにも頼んで一緒に住んでもいいってことになったんだ。この子もさ、
美貴と同じだったと思うんだ。」
「・・・同じ?」
愛は不思議そうな顔で美貴を見つめる。
- 469 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:37
- 「うん。たぶん、人間にひどい扱い受けてたんだと思う。最初拾った時はさ、
全然なついてくれなかったんだ。空腹のくせにご飯を食べようとしなかったし、
美貴が手を出せば毎回のようにひっかいてきた。管理人さんまでひっかいて、
けっこう苦労したよ。まぁ、それでも放っておけなかったんだよね。一人でいる
寂しさを、美貴も知ってるからさ。」
「・・・。」
「な〜んて暗い話しはやめにして、さっさとご飯食べちゃお。
冷めないうちにね。あ、おかわりあるけど食べる?」
愛は、少し考えてから首を横に振った。
「んじゃ美貴もダイエットするつもりで、ここら辺でやめとこっかな。」
美貴は食べ終わると、まだ食べているトレインの頭を撫で始めた。
- 470 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:38
- 美貴は愛が食べ終わったのを確認してから、皿をお盆に乗せて
キッチンへと持っていく。
愛は、美貴が台所の水を流し始めたのに気付いて立ち上がる。
「わ、私が洗うよ。」
「いいの。愛ちゃんは美貴のお客様なんだからさ♪」
美貴は鼻歌を歌いながら茶碗洗いを始める。
愛は座り直すと、今度はトレインが愛の膝の上に乗ってきた。
愛は優しくトレインの背中を撫でてやる。
しばらくしてから、美貴がキッチンから戻ってきた。
「お、いいな〜。トレインってば愛ちゃんの膝の上で寝ちゃって、
羨ましいね〜。美貴と代わってくれないかな〜、なんてね。」
美貴は笑いながら、愛に向かい合ってソファに座る。
- 471 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:40
- 「どうして・・・何も聞かないの?」
「ん?何のこと?」
「私が・・・一人で公園にいた理由。」
愛が呟くように美貴に聞いた。
本当はわかってた。
それが美貴の優しさなんだということを。
それでも愛は聞かずにはいられなかった。
「美貴が強引に聞いたところで、それは美貴のためにしかならないよ。
愛ちゃんは話したいって時に、美貴に話してくれればいいと思う。
それまで美貴は待ってるからさ。」
予想通りの言葉に、愛はまた下を向いた。
- 472 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:41
- 「・・・聞いてもらっても・・・いいかな?」
「うん。」
「私、お父さんとけんかしたんだ・・・。」
愛は震える声で話し始める。
「歌が好きだから・・・high bredgeで歌っていきたいから
・・・それを話したら、お父さんが怒って反対して・・・
私が口答えしたら、お父さんに叩かれて、勘当されちゃって
・・・家を出てきたんだ・・・。」
「そっか・・・。」
美貴は優しい目で愛を見つめている。
- 473 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:42
- 「私はどうしたらいいの・・・どの道を選ぶのが一番正しいの・・・
教えてよ・・・藤本さん・・・。」
愛は、泣きそうな顔で美貴の顔を見つめる。
「それは・・・美貴が答えることはできない。」
美貴は少し考えてから口を開いた。
「自分の道は自分が決めなきゃいけない。正しい道って言われても、
美貴にはそんなのわかんないよ。それは愛ちゃんがどう判断するかの
問題だし、美貴が口出しすることはできない。」
「そう・・・だよね。私の話しなんか、ただの迷惑だよね・・・。」
「それは違うよ。」
美貴は一息ついてから立ち上がって、愛の隣に座る。
- 474 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:42
- 「愛ちゃんがどんな道を進もうと、美貴は何も変わらないよ。
愛ちゃんに何かあったら美貴が絶対守るし、愛ちゃんが
困ってる時は美貴が絶対に助けてあげる。道で止まっちゃった時は、
美貴が後ろから押してあげる。それじゃだめかな?」
「藤本・・・さん・・・。」
「何があっても、美貴は愛ちゃんの味方だよ。」
美貴は優しく愛の体を抱しめる。
「ふぐっ・・・ふぅぅ・・・。」
「美貴がそばにいるからさ。今は安心して休みなよ。」
愛が泣き終わるまで、美貴はずっと愛の体を抱き続けていた。
- 475 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:43
- 更新しました〜。
- 476 名前:konkon 投稿日:2004/12/17(金) 23:46
- >名無し飼育さん
そうですね〜。
どんな時でもなっちの笑顔で癒される人って
けっこうたくさんいると思います。
なっちの出番もまたあるでしょう。
>名無しの荒らしさん
あいみきの方向へと引っ張りたいのですが、
甘々になることはなさそうです・・・(汗)
でも美貴との関係はこれをきっかけに
もっと深まると思われます。
- 477 名前:名無し飼育 投稿日:2004/12/18(土) 00:19
- キタキタキタ!!
あいみき編待ってました。
これをきっかけに二人がどんどん親しくなって欲しい。
そして愛ちゃん頑張れ!
- 478 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 00:24
- 更新お疲れ様です。
美貴が飼っているトレインは、某漫画の主人公の名前ですよね?
自分も、あの漫画好きなんですよね〜
またの更新待ってます。
- 479 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 04:18
- いいんじゃなぁーい
とってもいい!
藤本と高橋の絡みはいいですね
次回も心待ちにしてますよ!
- 480 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/19(日) 16:59
- お疲れ様〜!
いいですよ〜!!!あいみき、サイコーですぜ
美貴のやさしさ伝わってきます。
猫のトレインはなぜトレイン?なのでしょう
- 481 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:01
- 「藤本さん・・・起きてる?」
「ん〜、どうしたの?」
夜中、目が冴えて寝れない愛が、隣で寝ている美貴に話しかけた。
美貴と愛は、二つの布団をくっ付けて寝ている。
「藤本さんは、どうやってお父さんから離れたの?」
「美貴?美貴の場合は愛ちゃんよりも簡単だったよ。」
美貴は愛を振り向いて顔を合わせる。
うっすらとだが、顔の表情は見える。
- 482 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:02
- 「くそ親父と殴り合った。それだけ。」
「殴り・・・合ったの?」
「うん。去年の年末あたりに、いつも通りくそ親父に殴られた。
さすがの美貴もそろそろ限界でね、普段ならそのまま殴られてたんだけど、
その日に限っては殴り返したんだ。そこからは本当に殴り合いだよ。
家中で暴れまわって、泥棒が入ったんじゃないかってくらいに家が
荒れちゃって、親父の秘書も何人も巻き添えくわせて殴っちゃったっけな。
もう本当に悲惨な状態だったね。」
美貴は思い出し笑いをしながら話していく。
- 483 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:03
- 「それで、あとちょっとで勝てるって思ったんだけど、結局は
負けちゃったんだ。でもすっきりした。今まで溜まってた分を、
ほんの少しだけど返せたと思うからさ。その次の日に親父から
呼び出し喰らった時には、また殴られるかなって正直なとこ
ビクビクしながら親父と顔を合わせたんだ。そしたらね、
こうやって言われたの。あと三年、それ以内に自分の道が
決まっていなければ、私のあとを継いでもらう。後は勝手にしろ、
だが私はお前に手を貸す気はない。自分一人の力で生き抜いてみせろ。
そうやって言われたんだ。」
「すごいね・・・。」
愛は口を開けたまま感心していた。
- 484 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:07
- 「そしたらあのくそ親父、本当に何もしないから今の学校に入るのに
苦労したよ・・・。貯金はけっこう貯まってたんだけど、やっぱ
減るばっかじゃやばいからバイトしなきゃいけないし、学費も
払いたくなかったから特待生になるために勉強しまくったし、いや〜、
美貴って本当に頑張り屋さんだね♪」
「普通、自分で言う?」
「だって、本当のことだもん♪」
美貴は笑って答える。
「親父の言うことも、全てが全て間違ってるわけじゃないんだよね。」
美貴は、今度は呟くように話し始めた。
- 485 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:08
- 「美貴は親父に殴られてばかりだったけど、今地球がどれだけ
危ないかってことも知ってる。地球温暖化が進んでいて、
どれだけの生物が死んでいるか、これから先温暖化が続いたら、
人間も地球に住めなくなる。そのためにがんばってるのはわかってる。
だから、最低限の努力はするつもり。でも、美貴はバンドをやりたい。
愛ちゃん達と一緒に、音楽をやりたいんだ。それに・・・美貴が
いなくなれば、親父も"あの子"に継がせるしかなくなるだろうしね。」
「"あの子?"」
「ああ、何でもないよ。こっちの話しです。」
美貴は手を振って誤魔化す。
- 486 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:08
- 「もし、愛ちゃん達と出会うことはなかったとしても、美貴は自分で音楽の道を
進んでいたと思う。美貴、歌手にもなりたかったんだよね〜。」
「・・・歌ってるの聞いたことないけど。」
愛は不思議そうに美貴を見つめる。
「そうだね。カラオケだって、ごっちんと一回しか行ったことないもん。」
「だめじゃん・・・。」
「そんなことないよ〜。美貴、ごっちんにすごい褒められたもん!
そうそう、ごっちんも歌めちゃくちゃうまいんだよ〜!愛ちゃんもさ、
今度一緒に行こうよ。みんなでさ!」
「そうだね。」
「でもね、歌手は一つの候補に入ってたってだけだよ。今は、
愛ちゃんの歌に合わせてギターを弾く、それが一番の生きがいだよ。」
「・・・ありがと。」
愛は恥ずかしそうに、美貴から視線を外して上を見上げる。
- 487 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:09
- 愛に合わせて美貴も上を向いた。
「明日さ、もし晴れたら遊園地に行かない?」
「遊園地?」
「うん、前に管理人さんがね、新聞とったらチケット二枚もらったんだって。
それでさ、もしよかったら遊びに行ってきたらってことでもらったんだ。
どうかな?」
「・・・私でいいの?」
「当たり前じゃん!美貴は愛ちゃんと行きたいんだよ。」
「・・・うん、ありがとう。」
愛は少し恥ずかしそうに、呟いた。
- 488 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:10
- 「私も、藤本さんと・・・。」
「美貴。」
愛の言葉を遮って、美貴は自分の名を呼んだ。
「えっ?」
「藤本さんってやめない?美貴でいいよ。」
「じゃあ・・・美貴ちゃんと行きたい。」
「それじゃ決まりだね!明日が楽しみだな〜♪それじゃ、明日は
早いから今日はもう寝よう!おやすみ〜。」
その言葉から三秒後には、美貴は完全に爆睡していた。
「(早・・・。)」
愛はあきれて何も言えなかった。
- 489 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:10
- 「・・・。」
愛は少し起き上がって、美貴の寝顔を覗き見る。
愛は、自分の顔をゆっくりと美貴の顔に近づけていく。
そこで、
「(わ、私、今何しようとしてたんやろ・・・?)」
その直前で自分がやろうとした行動に気付き、恥ずかしくなって
頭から布団に潜り込んだ。
「今日は本当にありがとう・・・おやすみなさい。」
愛はそう小さく呟いて、ゆっくりと目を閉じた。
- 490 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:11
- 交信しました〜!
- 491 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:14
- >477:名無し飼育さん
あいみき編、いっきま〜すw
愛ちゃんが素直に美貴に心を開けるかどうかが
今回のポイントですね〜。
さてさてどうしたものやら、続きを待っててくださ〜い(汗)
>488:名無し飼育さん
よく気付きましたね〜!
黒猫=某漫画の主人公ってイメージって
やっぱありますよね♪
なんとなく猫がいいと思ったらこうなってましたw
- 492 名前:konkon 投稿日:2004/12/21(火) 17:17
- >479:名無し飼育さん
そうですね。
あいみき、こんごまは自分の中での
大ブームとなっております♪
これからが勝負時ですね。
>名無しの荒らしさん
ミキティがめちゃくちゃ優しいです!
何かある意味姉妹みたいにも見えるから
なんとも・・・。
トレインという名の理由は491で言いましたのと
ミキティの某シングルからとってきました〜!
- 493 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/21(火) 21:14
- お疲れ様〜
あぁ!あの某マンガとミキティのあの曲とダブルで掛けてたんですかぁ
シングルは何となく分かったんですけどね・・・。
いや〜愛ちゃんと急接近ですね。
これからどんどん近づいていってほしいです
- 494 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:11
- 「ん〜、いい天気。」
朝、起き上がった美貴はベランダに出て大きな伸びをした。
台風は北上したらしく、天気は快晴となった。
「おはよう。」
目を覚ました愛が、ベランダに出て美貴の隣まできた。
「おはよ♪それじゃ、美貴は朝ごはん作るから、愛ちゃんは適当に
美貴の服に着替えちゃってよ。まだ愛ちゃんの服は濡れてる
みたいだからさ。美貴の服はタンスの中に入ってるから。大したものは
持ってないけどね。」
「うん・・・ありがとう。」
愛が軽く頷いたのを確認して、美貴はキッチンへと入っていった。
- 495 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:12
- 「朝だし、軽めでいいかな。」
美貴は昨日の残ったカレーを温め始める。
同時に、冷蔵庫から野菜を取り出して、簡単に皿に盛り付けをして
サラダを作り始めた。
十分ほどしてから、美貴はお盆にサラダとカレーを乗せてリビングに入っていく。
「愛ちゃん、お待た・・・。」
美貴は愛を見た瞬間、お盆を持ったまま固まってしまった。
普段の愛の私服では、美貴が着ているような男物や、どちらかというと
地味な服装が多かった。
しかし、今日に至ってはまるで別人のような格好をしていた。
愛が着ていた服は、ピンクのキャミソールに白のブラウス、
下はチェックのミニスカートにルーズソックスという、いかにも
女の子らしい服装であった。
耳にはライブ用とは違う、可愛いピアスをしている。
髪は結ばずに下ろしていた。
- 496 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:13
- 「美貴ちゃんも、こういう服着るんだね。」
「(愛ちゃん、可愛い・・・。)」
美貴は口まで開いて、愛を見つめ続けていた。
「どうしたの?」
美貴が立ち止まっているのに気付いて、愛が近寄っていく。
「美貴ちゃん?」
愛が覗き込むように、美貴の顔を見る。
「あ、愛ちゃん!これ、テーブルの上に置いといて!
先に食べててもいいから!」
美貴は愛にお盆を渡すと、急いでベランダまで出ていった。
「(愛ちゃん可愛すぎ!本当に美貴やばいって!)」
- 497 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:13
-
ガンッ!
美貴は、自分から思い切り手摺りに頭をぶつけた。
「(美貴、落ち着け!落ち着くんだ・・・こりゃやばいな。
理性保たないと、絶対愛ちゃんのこと襲っちゃうよ・・・。)」
美貴は何度も深呼吸したあとに、部屋の中へと入っていった。
部屋の中では、愛がソファに座って美貴を待っていた。
まだ朝食には手がつけられていなかった。
「愛ちゃん、先に食べてていいって言ったのに。」
「・・・美貴ちゃんと食べたかったんだよ。」
愛は軽く笑ってそう答える。
- 498 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:14
- 「(愛ちゃん、その笑顔反則だよ・・・。)」
ゴンッ!
今度は、美貴は自分の頭を自分で殴りつけた。
「ど、どうかしたの?」
「何でもないよ・・・早く食べよ。」
美貴は自分の頭を何度も振ってから、ソファに座って愛と一緒に
朝食を食べ始めた。
- 499 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:15
- 近くの駅から電車に乗って三十分、美貴達は遊園地に到着した。
朝早くからきたためか、遊園地の中はそれほど人がいたわけではなかった。
「愛ちゃん、何乗りたい?」
「ん〜・・・美貴ちゃんから決めてよ。」
「それじゃ・・・やっぱジェットコースターに乗ろうよ!」
「え・・・怖そうじゃない?」
「何言ってんの?ジェットコースターは遊園地の定番だよ。
まずはこれからでしょ!」
そう言って、美貴は愛の手を引いてジェットコースターへと向かった。
十分ほど並んだあと、いよいよ美貴達の番まで回ってきた。
前の客達が降りて、美貴達がジェットコースターに座る。
「やだ・・・怖いよ・・・。」
愛は体を震わせる。
- 500 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:15
- 「大丈夫だよ。美貴がついてるじゃん!」
美貴は愛の手の上に、自分の手をのせる。
「怖くなったら抱きついてきてもいいよ♪」
「それは・・・遠慮しておく。」
「ちぇっ、残念。」
ジェットコースターが徐々に頂上まで上っていく。
次の瞬間、
「キャーッ!」
「ヒョ〜!」
ジェットコースターが一気に落下していった。
「キャーッ!!」
先ほどから愛の悲鳴が鳴り止まない。
「(ははっ、これくらいで悲鳴上げるなんて、愛ちゃん可愛い〜・・・。)」
美貴は、愛の悲鳴を聞きながらそんなことを思っていた。
- 501 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:16
- 短いながらに交信です・・・。
- 502 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:17
- 亀ちゃん、誕生日おめでと〜!
ノノ*^ー^)<写真集も発売で〜す♪
- 503 名前:konkon 投稿日:2004/12/23(木) 20:18
- >名無しの荒らしさん
徐々にですけど接近中です♪
近いうちには二人もくっつくと思われますが
それがいつになるやら・・・(汗)
- 504 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/12/24(金) 04:14
- おお!いいなぁ
- 505 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/24(金) 23:53
- 更新乙でぇす!
くっつきますよね〜。でもマイペースでがんばってくださいね
- 506 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:05
- 「美貴ちゃん、次はね・・・。」
愛が美貴の手を引いて、先へ進んでいこうとする。
「ま、待って・・・ちょっと休憩しよう。」
美貴は近くにあったベンチに座り込んだ。
「何、もう終わり?」
「だから・・・休憩だって・・・。」
美貴の顔は青冷めていて、かなりの汗を流していた。
美貴達はジェットコースターに乗ったあと、次々と絶叫マシーンに乗っていった。
それらは全て、愛の希望であった。
何個もの絶叫マシーンに乗ったせいで、美貴はすでに限界に達していた。
- 507 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:06
- 「(何で愛ちゃんはそんなに元気なの・・・?)」
美貴は疲れきった表情で、愛の顔を見上げた。
しかし、そこに愛の姿はなかった。
「あれ、愛ちゃん・・・?」
美貴はゆっくりと周りを見渡していく。
その時、頬に何か冷たい物が当たった。
「はい。大丈夫?」
美貴の頬には、愛が買ってきた缶ジュースが当てられていた。
「ありがとう・・・。」
美貴は愛からジュースを取ると、また下を向いてうな垂れた。
どうやらジュースを飲む気力もないらしい。
- 508 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:06
- 「・・・ほら。」
「?」
愛は美貴の隣に座ると、美貴の頭を自分の膝の上に乗せた。
「あ、愛ちゃん!?」
「いいから。じっとしてて。」
美貴は寝たまま、愛の顔をぼんやりと見上げていた。
愛はジュースを飲みながら、周りの風景を見渡している。
「・・・愛ちゃん、ありがとね。すごい落ち着いたよ。」
美貴はゆっくりと体を起こす。
本当はずっとそうしていたかったのだが、さすがにそれは悪いし
愛と一緒に遊園地を楽しみたかった。
- 509 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:09
- 「そう、今度は落ち着いたとこに行こうか。」
「落ち着いたとこ?」
「あそこに行かない?」
愛が指したところは、『鏡のラビリンス』と看板が立っている建物があった。
「へ〜、おもしろそうじゃん。行ってみようか。」
美貴はジュースを一気飲みしてから、首を回しながら立ち上がって、
愛と一緒にその建物の中に入っていった。
「うわ〜・・・。」
「すごいね、こりゃ・・・。」
美貴と愛は、鏡の世界に感動しながら歩いていた。
どこを見ても、とにかく一面鏡だらけだった。
「本当に鏡だけの世界だね。」
愛の言葉に、美貴は頷きながら歩いている。
- 510 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:09
- 「どこを見ても美貴と愛ちゃんが見えるなんて、まるでこの世界には
二人しかいないようだね・・・ってあれ?」
いつの間にか、隣で歩いていた愛がいなくなっていた。
どこを見ても、鏡には美貴しか写っていない。
「あれ、愛ちゃん?先行っちゃったのかな?今美貴かっこいいこと
言ったんだけどな〜・・・。」
美貴が首を傾げたその時、
フーッ
「ヒャァッ!」
美貴は普段よりも何オクタ−ブも高い悲鳴を上げた。
首の後ろに、生暖かい息がかかったのだ。
- 511 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:10
- 「キャハハハッ!」
後ろを振り向くと、大笑いしている愛の姿があった。
「こっちだよ〜。」
愛は子供のように走って奥の方へと進んでいく。
「愛ちゃん、あんな風に笑うんだな〜。」
美貴は愛の笑顔を見れて嬉しくなり、走って愛を追いかける。
「こらっ、待て!」
美貴は走って奥の方へと向かっていくが、途中の曲がり角でまた愛が消えた。
「あっれ〜?」
ツン
「どわっ!?」
今度は脇腹を突かれたようだ。
少し後ろには、腹を抱えて笑っている愛がいた。
- 512 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:11
- 「フフフッ、どうかした?」
愛はまた奥の方へと進んでいく。
「愛ちゃんのあの笑顔を見れたのは嬉しいけど、何か悔しい・・・。」
そこで、美貴の心に火がついた。
「よ〜し、次は絶対捕まえてやる!」
美貴は十分に警戒しながら、ゆっくりと先に進んでいく。
「(こういうとこで、さっきはやられたんだよね・・・。)」
美貴は周りを見定めながら、忍び足で曲がり角を歩いていく。
その時、
ポンッ
美貴の肩に手が乗っかけてきた。
- 513 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:12
- 「(今だっ!)」
美貴は素早く後ろを振り向いて、肩に乗っていた手を掴んだ。
「愛ちゃん、捕まえ・・・ってあれ?」
美貴はその手を掴んだまま振り向いた。
しかし、その手の人物は美貴の予想した愛とは別の人物だった。
「藤本さん・・・あの、気持ちは嬉しいんですけど、れいなには
さゆがいるんで・・・」
「た、田中ちゃん!?」
美貴が手を掴んだのは、愛ではなくれいなの手であった。
「あの、藤本さん?」
美貴はそこでようやく手を握っていることに気付いて、れいなの手を放した。
- 514 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:13
- 「な、何で田中ちゃんがここにいるの?」
「いや、れいなのお母さんが新聞とったら、遊園地のチケットを
二枚もらったらしくて、それでさゆと一緒にきたんです。」
「あれ、亀ちゃんは一緒じゃないの?」
いつも三人一緒なので、美貴は気になって聞いた。
「絵里は、わざとバイトを理由にして断ったんです。」
「わざと?」
「絵里は、昔から大人ぶってるけど子供で、でも一番れいな達のことを
思ってくれるんです。れいな達は幼馴染だったとですけど、れいなとさゆが
付き合うようになってから、いつもれいな達のことを気遣うようになったとです。
れいな達がけんかしたらその仲裁役になったり、悩み事があると話しを
聞いてくれたり、いつも自分のこと後回しにするようなやつなんです。
ばかなんですよ。本当にばかと言っていいほど優しいやつだっちゃ・・・。」
「わ、わかったから泣かないでよ。美貴が泣かしたみたいじゃん。」
美貴はハンカチを取り出して、泣き始めたれいなの涙を拭った。
- 515 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:14
- 「大丈夫だって!亀ちゃんにも、そのうちいい子が現れるからさ。
その時はさ、田中ちゃんや重さんが話しを聞いてあげなよ。」
「・・・はい。」
「そういえば重さんは?一緒じゃないの?」
「あ!さゆとはぐれちゃったとですって!さゆのこと見てませんか?」
「いや、美貴も見てないよ。美貴も愛ちゃんとはぐれちゃったんだ。
たぶん、もう外に出ちゃってるんじゃないかな?」
「そうですか。じゃあ、出口を探しましょう!」
「うん。」
美貴はれいなに並んで歩き始めた。
- 516 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:15
- しばらく歩くと、ようやく外に出てこれた。
が、愛とさゆみの姿は見当たらない。
「あれ、どこ行っちゃったんだろ?まだ中にいるのかな?」
「ん・・・あ、藤本さんあそこ!」
れいなが声を上げて指を指した。
「お、いたの?」
美貴はれいなが指した方に視線を向ける。
そこには、ベンチに座って俯いている少女が見えた。
その少女が顔を上げて、美貴達の方を振り向いた。
「あの子!めちゃ可愛くなかとですか?」
れいなは嬉しそうに少女を見つめている。
一方の美貴は、目を見開いて驚いているようだった。
- 517 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:16
- 「なんで・・・なんであの子がここにいるの・・・?」
美貴はれいなに聞こえない程の小さい声で呟いた。
「あ〜、あんな子もよかとな〜!藤本さんもそう思い・・・。」
「へ〜、れいなの好きなタイプはあんな感じなんだね。」
その声を聞いた瞬間、れいなの体の機能が全て停止した。
そして、体を小刻みに震わせながら、ゆっくりと後ろを向いた。
そこには笑っているさゆみと、苦笑いしている愛が立っていた。
さゆみの顔は笑ってはいるが、目は全く笑っていなかった。
「さ、さゆ・・・これは、その・・・そう、ただ藤本さんとの話題作りのために・・・。」
ガッ!
れいなが言い終わるより先に、さゆみが自分のかばんでれいなの顔を殴りつけていた。
- 518 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:17
- 「れいなのばかっ!」
さゆみはかばんを乱暴に持ち直した後、出口の方へと走っていった。
「いって〜・・・。」
「れいな、早く追いなよ。」
「は、はい!さゆ、待つばい!」
愛に言われて、れいなは慌ててさゆみを追いかけていった。
美貴は、れいな達のことも気にせずに少女をじっと見つめている。
「可愛い子だね。美貴ちゃんの好みもあんな感じなのかな?」
愛は隣から美貴を軽く睨みつけた。
だが、美貴は全く反応しない。
美貴の顔は、乗り物に乗ったわけでもないのになぜか青冷めていた。
体は微妙に震えている。
「・・・美貴ちゃん?」
愛は前に回って、心配そうに顔を覗かせた。
その少女は美貴達を見て微笑んだ後に、人ごみの中へと消えていった。
- 519 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:18
- 『何でパパを裏切ったのよ!?』
「ち、違うんだ!だって美貴は・・・」
『パパにあれだけ愛されているのに・・・私と違っていつも一緒にいられるのに!』
「お願いだよ!美貴の話しを聞いてって・・・。」
『約束したよね?一緒にパパの跡継ぎになろうって・・・。』
「それは・・・。」
『許さないんだから!私は絶対に許さない!』
「ねえ、待ってよ!美貴は・・・美貴は・・・。」
- 520 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:18
- 「美貴ちゃん!」
そこで美貴は顔を上げる。
「ハァッ、ハァッ、愛・・・ちゃん・・・。」
美貴の視界に、泣きそうになっている愛の顔が入ってきた。
美貴はもう一度だけ、少女がいたベンチに目を向ける。
「どうか・・・したの?」
「・・・ううん、何でもないよ。」
美貴は深呼吸しながら首を振った。
「さっきの子・・・知ってるの?」
「・・・遠い親戚ってとこかな。」
美貴はどこか悲しい目をして遠くを見ていた。
愛はそれ以上何も聞かずに、美貴の顔を見つめていた。
- 521 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:19
- 「お腹すいたね。何かご飯食べにいこうか。」
美貴は軽く笑って愛に向き直った。
「・・・うん。」
「美貴、肉が食べたい。ハンバーガーがいいな!」
「そんな物ばかり食べてると、栄養のバランスが悪いよ。」
愛はできるだけ笑顔で答えた。
少しでも美貴が落ち着くように。
二人は、適当に昼食をとってから遊園地を回っていった。
その後は美貴が体調を崩すことはなく、二人は十分に楽しむことができた。
ただ、美貴の中で一つの決意が芽生えたことを、愛は知らなかった。
- 522 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:19
- 更新しました〜。
- 523 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:22
- >名無し募集中。。。さん
もっとよくしたいですけど、今はこれが限界です(汗)
もう少し先までいけば・・・なんとかなりますw
>名無しの荒らしさん
くっつきましたね〜。
まだベタベタじゃないですけど愛の心を
開かせられるのも時間の問題ですね、きっと。
とりあえずマイペースにいかせていただきます!
- 524 名前:konkon 投稿日:2004/12/29(水) 22:23
- 今年最後の更新でした。
まだまだ未熟者ですけど、読んでくれた方々には
とても感謝しています。
物語のほうはまだまだ中盤、これからもよろしくです!
- 525 名前:名無しの荒らし 投稿日:2004/12/30(木) 18:23
- 今年最後の更新ご苦労様でしたぁ!
来年も楽しみにしてますんで頑張ってください
- 526 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/12/30(木) 22:29
- あのー、レスはsageでお願いできませんか?
- 527 名前:桜娘 投稿日:2005/01/02(日) 19:48
-
更新おつかれです。
いったい誰が現れたのか続きが楽しみです。
それはさておき、今年もよろしくおねがいします。
- 528 名前:よしよし 投稿日:2005/01/02(日) 20:32
-
更新お疲れさまです。
美貴ちゃん愛ちゃんとってもいい感じですね。
これから2人がどうなっていくのかとても気になります。
遠い親戚の娘も気になってます。
今年も頑張ってください。続き楽しみにしてまーす。
- 529 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:26
- 愛が家出をした後の次の月曜日、職員室で裕子はある考え事をしていた。
「矢口〜、ちょっときてくれんか?」
昼休み、裕子は自分の机で次の授業の整理をしている真里を呼んだ。
「な〜に〜、裕ちゃん?」
「今日から家庭訪問があるのは知ってるわな?」
「うん。」
「そこでな、矢口にも家庭訪問をやってもらいたいと思っとる。」
「ハァッ!?おいらが!?」
真里は声を上げて驚いた。
「ちょっと高橋に問題があったようでな、高橋ともう一人の家に土曜日に
行くつもりやったんやけど、高橋がどうも家出したらしくてな、そのため
親御さんと話しが混むかもしれんのや。」
裕子は小さな溜息をついた。
- 530 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:29
- 「家出!?んじゃ、高橋は今どうしてんのさ?」
「高橋の話しでは、今は藤本の家に世話になっとるようや。」
「へ〜、そうなんだ・・・何かあったのかな?」
「それはわからん。本人は自分の夢のためってだけで、
他には何も言わないんや。今年で矢口も二年目や。
一回くらいやってみてもいいと思うんやけど。」
「ん〜、でも裕ちゃんが担任でしょ。おいらは副担だし、
あまり面識がないおいらが行っても、家の人達や生徒は
困るんじゃないの?」
「そこら辺は大丈夫や。矢口もよく知っとるやつやからな。」
裕子は笑って答える。
「ふ〜ん。で、誰なの?」
「後藤や。バスケ部でもよく話したりしとるから大丈夫やろ?」
「後藤か〜。ならなんとかなるかな。」
「それに、矢口もきっと喜ぶと思うで。」
「?」
にやけている裕子の顔を見て、真里は首を傾げていた。
- 531 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:29
- 「新垣、もっとよく見てパス回して!」
「はい!」
「小川!ボールを持ってからじゃなくて、持ってないうちに
周りを把握しておくんだよ。常に先を読んで行動して!」
「はい!」
真里が体育館に入ると、バスケ部はミニゲームをやっているようだった。
そこでは真希が、コートの外からいろいろと指示を出していた。
「お〜い、後藤!」
真里は、真希に声をかけて近寄っていく。
「お、やぐっつぁん。今日は早いね〜。」
「ってちょっと待て!何だ、そのやぐっつぁんってのは!?」
真里は真希の手前まで近寄ったと同時に、声を荒げて聞いた。
- 532 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:31
- 「何って、矢口先生だからやぐっつぁんってことだけど。」
「だからそこが問題なんだよ!先生に向かって何であだ名なんだ!?
しかもタメ口かよ!」
「だって、やぐっつぁんも中澤先生のことあだ名で呼んでるでしょ?」
「おいらと裕ちゃんは親戚同士だからいいんだよ!後藤は違うだろ!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ。」
真希はのんびりと真里を宥める。
「いい、教師ってうのは、生徒と同じ立場で見ていかなければいけないの。
それにやぐっつぁんは後藤達の顧問でしょ。だったらなおさら自分の視線を
低くして、生徒とよく分かち合う必要があるの。」
「お、おう・・・。」
真希の話しを、真里は戸惑いながらも首を頷けて聞いている。
- 533 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:32
- 「そんなわけで、後藤はやぐっつぁんと友達同士みたいな感じで、
一緒に仲良くやっていきたいって思ったの。だめかな?」
「まぁ・・・そうしたいってんなら、別にそれでもいいけどな。」
真里は少し考えてから頷いた。
「ただ、やぐっつぁんが小さくて高校生にすら見えないからって、
ばかにしてるわけじゃないよ。」
「小さい言うな!お前は一言多いんだよ!」
「ところでさ、どうかしたの?」
真希は、真里の怒った口調も気にせずに笑顔で聞いた。
- 534 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:33
- 「ああ、そうだった。今度の土曜に家庭訪問があるだろ。それについてなんだけど、
裕ちゃんの方でちょっとした問題があるようだから、おいらが行くことになった。
そんなわけでよろしくな。」
「ん、わかったよ。なっちにもそう言っとくよ。」
「なっち?」
真里はその言葉に首を傾げる。
「ああ、後藤のお姉ちゃんだよ。後藤さ、両親いないから親戚の
お姉ちゃんが保護者代わりなんだ。」
「・・・そうだったんだ。ごめん。」
「気にしないでよ。正直なところ、なっちもやぐっつぁんの方が
年が近くて喜ぶだろうしね。」
「そっか。そういうことだから、よろしく頼むな。」
「OK〜。んじゃ練習に入りますか!全員集合!」
真里との話しが終わると、真希は部員を集めて今日の練習内容を話し始めた。
- 535 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:33
- 土曜日、
「うわ〜、何か緊張してきた!」
真里は、真希の住んでいるマンションの階段を上っていた。
服装は何でもいいと言っていたが、真里はスーツ姿だった。
「ここか・・・。」
真里は何度も表札を確認してから、大きく深呼吸をする。
「よしっ!」
ピンポーン
「は〜い。」
ブザーが鳴って、中から返事が聞こえてきた。
真里の前の扉が開かれて、なつみが顔を出した。
- 536 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:34
- 「あっ!」
真里はなつみの顔を見て、一瞬固まってしまった。
「?」
「い、いえ、何でもないです。すいません・・・。」
真里は顔を赤くしながら、なつみに謝った。
「えっと、矢口先生でよろしいですか?」
「は、はい!」
「では、どうぞ中へお入りください。」
なつみは、笑顔で真里を家の中に招き入れる。
「し、失礼します。」
真里は緊張しながら家の中へと入っていく。
- 537 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:35
- 「そちらに座ってお待ちください。すぐに行きますので。」
そう言って、なつみはキッチンの方へと入っていった。
真里は落ち着かない感じで、リビングのソファに座る。
『うちの生徒じゃないわ。』
『矢口もきっと喜ぶと思うで。』
「(裕子のやつ、知ってやがったな・・・。後でいじめてやる!)」
真里は、以前に裕子と話していたことを思い出していた。
裕子の話しを真里が聞かなかったことは、この時点では真里は知らなかった。
- 538 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:35
- いや、覚えていなかったのだった。
すでに、頭の中はなつみのことで頭が一杯だったから。
そこへ、なつみがコーヒーとお茶菓子を持ってリビングに入ってきた。
「お待たせしました。」
なつみは小さくお辞儀をして、真里の正面に座る。
「改めまして、真希の姉の安倍なつみです。」
なつみは軽くお辞儀をする。
「は、はい!後藤真希さんのクラスの副担任をやらせてもらってます、
矢口真里と申します!」
真里は大きく頭を下げる。
「フフッ、そんなに気を使うことないですよ。」
真里の行動に、なつみは軽く微笑む。
- 539 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:36
- 「(あ〜、やっぱ可愛い・・・。)」
真里は、なつみの笑顔に顔が緩む。
「(ち、違う違う!今日は後藤の副担任としてここにきてるんだ!
こんなことじゃいかんぞ・・・。)」
「あの、真希はどうなんでしょうか?前の学校では、けっこう浮いた状態に
なってしまったようでして・・・。」
なつみは心配そうな顔で真里に聞いた。
「そ、そんなことないですよ!後藤さんは、すごくいい子ですよ。
頭もいいし、バスケ部では先導して部員達を率いて、一生懸命にバスケに
取り組んでます。たくさんの仲間達に信頼されてますよ。」
「そうでしたか〜。よかった〜・・・。」
「大丈夫ですよ。後藤さんはですね・・・。」
真里はなつみを安心させるように、ゆっくりと真希の日頃の状況を説明し始めた。
- 540 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:36
- 更新しました〜♪
- 541 名前:konkon 投稿日:2005/01/03(月) 23:40
- >名無しの荒らしさん
あけおめです!ことよろです!
今年もよろしくお願いします♪
まだまだ話しは進みますのでなんとかがんばります(汗)
>桜娘さん
誰が出てきたんでしょうかね〜(笑)
それはそのうちわかると思いますよ♪
今年もがんばりましょう!
>よしよしさん
今後もこの二人の関係はよくなると
思われます(謎)
どうなるかは神のみぞ知るってとこですか・・・。
- 542 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/01/04(火) 21:27
- 更新お疲れ様〜そしてあけおめです!
遠い親戚の子&なちまり。
もう目が離せない展開になってきましてね〜
最後に今年もよろしくお願いします
- 543 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:41
- 「・・・っていうわけなのよ。笑っちゃうでしょ?」
「は〜、藤本さんってそういうときもあったんですか〜。」
夜七時過ぎ、バスケの練習が終わった真希とあさ美は、楽しそうに話しながら
真希の家へと向かっていた。
次の日は午後から練習ということで、あさ美は真希に誘われて真希の家に泊まることにした。
あさ美は今までにないほど緊張しながら、真希の家に向かっている。
「あの、私なんかが本当に・・・その、泊まってもよろしいんでしょうか・・・?」
家の前で、あさ美は不安そうに真希に聞いた。
「紺野、そういうのは無しだっていったでしょ。後藤は紺野と一緒に
いたいから誘ったんだよ。」
「は、はあ・・・。」
告白であるわけではないが、あさ美は顔を真っ赤に紅潮させる。
- 544 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:41
- 「ただいま〜。」
真希は元気にドアを開ける。
しかし、なつみからの返事はない。
「お邪魔します・・・。」
あさ美は緊張しながら真希の後ろをついていく。
それでもやはり、返事は返ってこなかった。
電気はついているし、家のドアは開いていたから家にはいるだろう。
ここからでは見えないが、奥の方から話し声が聞こえてくる。
「紺野、入っていいよ。」
「は、はい。」
あさ美を家に上げると、真希はリビングのドアを開ける。
- 545 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:43
- 「ただいま〜ってあれ?」
「あ、おかえり〜。」
「おう、お邪魔してるぜ!」
リビングには、お菓子を食べながら笑っているなつみと、
ソファで寛いでいる真里がいた。
「何でやぐっつぁんがここにいるの?今日の家庭訪問って、
昼からじゃなかったっけ?」
「ああ、おいらもすぐに帰るつもりだったんだけどさ、なっちと
意気投合しちゃってずっと話してたんだ。」
真里は笑って答える。
「ごめん。まだご飯作ってないや。これから作るからちょっと
待っててね。矢口も食べてってよ。」
「え、いいの?」
「もちろん!それじゃちょっと待っててって・・・ん?」
そこでなつみは、ようやく真希の後ろに隠れているあさ美の存在に気付いた。
- 546 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:43
- 「えっと〜、真希の友達かい?」
「は、はい!」
「初めまして、真希の姉の安倍なつみといいます。」
「なっち〜、初めましてじゃないから。それに、昨日言ったじゃん。
今日友達泊めるよってさ。」
「は、初めまして!紺野あさ美と申します!」
「いや、だから初めましてじゃないって・・・。」
真希は、あきれた顔でなつみとあさ美を交互に見ている。
「ごめんごめん。なっちさ、家庭訪問のことで頭がいっぱいでさ、
聞いてなかったかもしんないや。」
なつみは手を合わせて謝る。
- 547 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:44
- 「真希の友達か・・・それじゃ、ゆっくりしてってね。」
「はい!」
なつみは嬉しそうに、キッチンの方へと向かっていった。
「ちょうどいいや。後藤、少し話しをしないか?」
「うん・・・後藤もやぐっつぁんと話したいことがあるんだ。」
真希は真里の向かい側に座る。
「あの、では、私は安倍さんのお手伝いにいってきます。」
真剣な表情になっている真希を見て、あさ美はリビングのドアを
開けて出ていこうとする。
「そんなことする必要ないよ。紺野はお客様なんだからさ。」
「いえ、いつもお世話になってますから、今日くらいは手伝わせてもらいますよ。」
あさ美は真里に軽くお辞儀をして、リビングから出ていった。
- 548 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:44
- 「紺野も変わったよな〜。」
「そうなの?」
「ああ。後藤がうちの学校にくる前はさ、いつも消極的で言われたことしか
やらなかったし、自分の意見を全く言おうとしなかったんだよ。」
「へ〜・・・。」
真希はあさ美が出ていったドアを見つめる。
「やぐっつぁん、お願いがあるんだ・・・。」
真希は振り向いて、真っ直ぐに真里を見る。
「何だ?」
「これからも、なっちと仲良くしてあげてくれないかな?」
「・・・どういう意味だよ?」
真里は真希の目をしっかりと見て聞いた。
- 549 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:45
- 「なっちってさ、人のこと気遣いすぎるんだ。優しすぎるんだよ。
だから、それが逆にいい子ぶってるとか、うざいとかって
言われたことがあるみたいでね、すごい落ち込んでた時があるの。
前の学校では、けっこう友達とかと仲良くやれてたみたいなんだけどさ、
今の職場ってなかなか馴染めてないみたいなんだ。」
「そうなんだ・・・。」
「だから、やぐっつぁんと友達になってほしいんだ。なっちが後藤と
いる時意外に、あんなに楽しそうにしてる顔、久しぶりに見た気が
するんだ・・・。」
真希はそこまで言い切って俯いた。
- 550 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:46
- 「そんなこと言われるまでもねぇよ。むしろ逆だな。おいらも
なっちと一緒にいたい。むしろそれ以上の関係に・・・。」
「それ以上?」
「い、いや何でもない!とりあえず心配だけはするな!」
真里は慌てて首を振った。
「そっか・・・ありがと。」
「後藤、おいらも話しがあるんだ。」
真里は真剣な表情に切り替える。
「なっちからいろいろ聞いたよ。後藤のこれまでのことをね。
前の学校とかでは、いろいろと問題があったんだって?何か
けっこう浮いた存在だったらしいな。」
「・・・。」
真希は黙って真里の話しを聞いている。
- 551 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:47
- 「教師と言い合いをして負かせたり、友達とけんかしてもあっさりと
勝っちまったりして、人との付き合いがあまりなかったらしいね?」
「・・・やぐっつぁんには関係ないよ。」
真希はつまらなそうに答える。
「関係なくもねえだろよ。確かに後藤は頭がいい。それに、運動能力は抜群だし、
何をやらせても器用にできてしまう。だから、全く人に頼ろうとしない。
正直おいらはそれが、たまにつまらなく感じる。」
「・・・何が言いたいの?」
「お前は何でも一人でできるよ。でもさ、もっとおいら達を信頼しろよ。人は
一人で生きてるんじゃないんだ。教師とかってのは関係なしに、おいらは
後藤と一人の仲間として、仲良くやっていきたいんだよ。」
「やぐっつぁん・・・。」
「今の生活は楽しいか?」
真希は無言で首を頷ける。
- 552 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:48
- 「だったら、その方が楽しくなるぜ〜!もっと素直になれよ。おいら達が
できることは、そうはないかもしれない。でも、できることならやってやろうと
思う。いや、できそうにないことでもやってみせたいと思う。おいらはいつでも、
後藤の味方だからさ・・・って泣くことないだろよ!」
「えっ・・・?」
真希は真里に言われて、初めて自分が泣いていることに気が付いた。
真希の目からは、いくつもの涙が零れていた。
普段から友達や教師は、何でもできる真希に対する嫉妬心が強かった。
そのために、いつも上辺だけの付き合いとなっていた。
真希が困っていても誰も助ける必要はない、自分で何でもできる、
そう思われていた。
- 553 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:49
- 真希は真希で、自分の心の弱さを見せないように、全て自分でやり遂げていた。
でも、今日初めて人に信頼してほしいと言われた。
それが真希は、とても嬉しかったのだ。
「うん・・・ありがとう・・・。」
「おいらから言いたいのはそれだけだ。そんなにいい事言ったか?」
「いや・・・やぐっつぁんの熱弁してる姿が面白くて・・・。」
真希は必死に涙の言い訳を探した。
「そんなわけで、これからもよろしくな!」
真里はニッと笑う。
「・・・うん!」
真希も笑顔で真里に返した。
- 554 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:50
- 「ご飯できたよ〜!」
ドアが開いて、お盆を持っているなつみと、鍋を持っているあさ美が
リビングに入ってきた。
「今日はね〜、この間真希に教えてもらったビーフシチューとね・・・。」
「安倍さん、早く!これ熱いです・・・。」
「あっと、そうだったね!真希、紺ちゃんのお鍋置くから新聞紙敷いて!」
「紺ちゃん・・・わかった。」
どうやら真里と話しているうちに、あさ美となつみも打ち解けたようだ。
「お、うまそうじゃん!」
「当たり前じゃん!なっち達の愛情込めた手料理なんだからね♪」
なつみは嬉しそうに真里に言った。
- 555 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:52
- 「後藤さん、どうかしました?」
下を向いている真希に、あさ美は心配そうに聞いた。
「・・・何でもないよ。お腹がすいて力が出ないだけ。」
「後藤らしいな。」
「やぐっつぁん、それってどういう意味?」
真希は少し怒った風に声を出した。
その会話を聞いていたなつみとあさ美は笑っている。
「(そうだよね・・・後藤は一人じゃないもんね!)」
初めて信頼してほしいと言われた言葉、その日は真希にとって、
とても大切な日となった。
- 556 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:52
- 今日はここまでです〜。
- 557 名前:konkon 投稿日:2005/01/07(金) 23:53
- >名無しの荒らしさん
なかなか先に進めなくてすいません(汗)
徐々にですけどいろいろと交わっていくと
想いますので、これからもよろしくです!
- 558 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/08(土) 08:21
- 他人のスレまで乗り込んで必死に宣伝してる割にレスつかないのな
- 559 名前:名無し 投稿日:2005/01/08(土) 17:11
- 作者さん!すっごいおもしろいです!
- 560 名前:よしよし 投稿日:2005/01/08(土) 18:58
-
更新おつかれさまです。
う〜ん、なかなかいい感じになってきましたね。
これからの更新も期待してます。
がんばってくださーい。
- 561 名前:真由 投稿日:2005/01/08(土) 23:47
- 初めましてヽ(≧∀≦)風板の真由です。
ずっと読んでますよー。こないだはレスありがとうございました。
私こんごま大好きなのでw期待してます。
頑張って下さいね〜ヾ(^^*
- 562 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/01/09(日) 19:41
- お疲れ様です
こんごまでてきましたね
このCPも結構好きなんでがんばってください
- 563 名前:みっくす 投稿日:2005/01/12(水) 06:35
- おつかれさまです。
楽しく読ませてもらってます。
がんばってくださいね。
後、他の板でレスするときは、
できればsageでお願いしますね。
- 564 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 22:55
- 他人の作品に自作を宣伝するためにageレスする迷惑作者ハケーン
- 565 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:07
- 「ただいま〜。」
夜の11時過ぎ、バイトが終わった美貴が家に帰ってきた。
「お疲れ様。」
美貴が家に入ると、玄関まで愛が出迎えた。
愛は、親に勘当されたその日から、美貴の家に居候している。
愛は一度は断ったのだが、美貴が一緒に住もうと言ったことで、愛はしぶしぶ承諾した。
愛が断った理由は、美貴と住むことに問題があるわけではなく、ただで住むことでは
迷惑だと思ったからだった。
そこは、美貴が出世払いでいいということで、一応は納得した。
一応というのは、愛が自分の居場所を見つけるまでとのことだ。
自分の住む家を見つけることができるまで、その時までは美貴の家に住ませてもらうことにした。
- 566 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:08
- 「ご飯温めとくから、先にお風呂に入っちゃいなよ。」
「うん。よろしく〜。」
美貴は軽く頷いてから、浴室へと入っていった。
十数分後、美貴はバスタオルで頭を拭きながらリビングへと入っていった。
リビングでは愛が勉強をしていた。
「出てきたんだ。ちょっと待ってて、ご飯持ってくるから。」
愛が立ち上がって、キッチンへと入っていく。
「ありがと〜。」
そう言いながら、美貴はさっきまで愛が勉強していた教科書を、
手に取って読み始める。
「偉いね〜。こんな時間まで勉強してるんだ〜。」
美貴は感心しながらソファに座る。
「何言ってんの?来週から試験だよ。」
「そうだったっけ?」
美貴は、愛が持ってきた夕食を食べながら答える。
- 567 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:09
- 「美貴ちゃん、勉強しないの?」
「した方がいいのかな?」
「当たり前でしょ。」
美貴の言葉に、愛は軽く溜息をついた。
「んじゃさ、一つ賭けてみない?」
美貴は楽しそうに愛に聞いた。
「賭け?」
「そう、負けた方が勝った方の、何か一つ言うことを聞く。どう?」
「別にいいよ。ハンデはあげないよ?」
愛は自信満々といった感じで答える。
「もちろん!それじゃ、今日から美貴達はライバルってことでよろしく〜♪
それじゃ、おやすみ!」
夕食を食べ終えた美貴は、ソファの上で寝てしまった。
「ライバル宣言しといて、何で寝ちゃうのよ・・・。」
愛はまた一つ溜息をついて、近くにあった毛布を美貴にかける。
それからしばらくの間、愛はずっと勉強をしていた。
- 568 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:10
- それから10日後、
「今日が発表の日だよね?愛ちゃんに勝ってるかな〜?」
「(何でそんなに自信があるのよ・・・。)」
美貴と愛は学校に向けて歩いていた。
愛は難しい顔をして美貴を見ている。
今日は試験が終わって、テスト用紙が返される日であった。
あれからテストまでの間、美貴が変わったところは、愛の目からは全く見られなかった。
バイトがない日は夜遅くまでどこかに行って、帰ってきたらすぐに寝る、それだけだった。
休みの日に何してたと聞いた時には、町の探検巡りと答えていた。
唯一変わったとこといえば、美貴はテスト期間までの間、
朝に愛よりも先に起きていることが多かったことくらいだ。
そんな美貴が、テストの点に自信があるのが愛は不思議で仕方なかった。
しばらく歩いていると、前の方に見知った二人を見つけた。
- 569 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:11
- 「あ、ごっち〜ん!」
二人の前の方を歩いていたのは、真希とあさ美だった。
美貴は走って真希達の方へと向かっていく。
「お、ミキティじゃん。朝から元気だね〜。」
「おはようございます。」
二人は笑って美貴を迎え入れる。
「おはよう。」
少し遅れて、愛も三人の輪へと入っていく。
四人が話しながら歩いていると、昇降口の入り口が人集りになっているのが見えてきた。
「あれ?何かあるのかな?」
「あ、藤本さん達は知らないんですよね。うちの学校では、学年ごとに成績の
上位三十名までが、掲示板に貼り出されるんですよ。」
「そうなんだ。んじゃ、ちょうどいいや。見ていこうっと!」
それを聞いた美貴は、小走りに掲示板に寄っていく。
- 570 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:13
- 真希達は、そんな美貴を見てゆっくりと掲示板に向かっていった。
その成績の順位を見たとき、愛は目を見開いて驚いた。
「うそ・・・。」
美貴達三年の成績順は、前回と大きく入れ替わっていた。
一位は真希で、点数はほぼ満点であった。
それに続いて、二位にあさ美、そして、ほぼ僅差で三位についたのは美貴であった。
その次に、これも僅差で愛が四位となっていた。
「高橋、どうかしたの?」
「後藤さん・・・。」
固まっている愛を見て、真希が声をかけた。
- 571 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:14
- 「美貴ちゃんって、頭よかったんだね。」
「そう?ミキティは物覚えとかいい方でもないよ。」
「でも、全然勉強してる姿とか見てないし・・・。」
「だろうね。ミキティ、高橋には勉強してるとこ見せてないからね。」
真希の言葉に、愛は顔を顰める。
「どういう意味?」
「ミキティってさ、すごい努力家なんだよ。けどね、高橋に努力してる姿を
見せたくなかったんだってさ。よくわかんないとこで格好つけるくせして、
毎日相手にされてた後藤の身にもなってみろっての。」
真希は軽く溜息をついてそう答える。
- 572 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:14
- 「えっ、じゃあ、毎日どこか行ってたのって・・・。」
「ミキティ、後藤のとこにきてたんだよ。夜遅くまで勉強教えてくれって、
ほんと大変だったよ〜。んで家に帰ったらすぐに寝るくせに、朝早くから
また勉強教えてって電話してきてさ、低血圧の後藤には耐えられなかったね。
休みの日にまで家に押しかけてきて、後藤の休日返せって感じだよ。」
「そうだったんだ・・・。」
美貴がなぜ朝早くから起きていたことのか、ようやく納得がいった。
美貴は愛が見ていないとこで、ずっと勉強をしていたのだった。
「でも、何でわざわざ私の見てないとこで勉強を・・・。」
「さっき言ったでしょ。格好つけたがりなんだよ。」
真希はあっさりと答えて、あさ美と一緒に教室へと向かっていった。
愛はしばらくの間、掲示板を見ている美貴を見つめていた。
- 573 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:16
- その日の晩、バイトが終わった美貴が家に帰ってきた。
「ただいま〜!」
「ニャ〜。」
今日は愛からの出迎えではなく、トレインが出てきただけだった。
「ただいま、トレイン。」
トレインを抱き上げた美貴は、ゆっくりと家の中へと入っていく。
愛は、ソファに座って遠くを見つめているようだ。
「愛ちゃん、ただいま。」
美貴の声で、愛は顔を上げる。
「あ、ごめん。気付かなかったよ。今晩御飯の用意するから。」
愛は無表情のまま、キッチンの方へと入っていく。
- 574 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:16
- 美貴は一度首を傾けてから、トレインを下ろして浴室へと入っていった。
美貴が風呂から上がった頃には、すでにテーブルの上に美貴の分の
夕食が置かれていた。
「お〜、今日は生姜焼きですか!」
美貴は嬉しそうにソファに座る。
「それじゃ、いただきま〜す!」
美貴は一枚肉を頬張って食べる。
「ん〜、おいしい!愛ちゃんって料理のセンスあるよね〜。」
「・・・。」
しかし、愛からの返事はない。
美貴が顔を上げると、愛は黙って美貴のことをじっと見つめているようだった。
- 575 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:17
- 「えっと、どうかしたの?」
「・・・ずるいよ。」
「へっ?何のこと?」
「私に隠れて勉強してたこと。」
「あ〜、ごっちんから聞いちゃったか。」
その言葉に、美貴は苦笑いを浮かべる。
「休みの日も、後藤さんの家で勉強してたんでしょ?」
「え〜っと、ほらっ、美貴って負けず嫌いだからさ、やっぱ勝負事って
やるからには勝たないと意味ないじゃん。だからさ・・・。」
「そんなに私に勝ちたかったの?」
「まぁ、それが一番大きかったかな。」
美貴は、少し考えてからそう答える。
- 576 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:18
- 「・・・私に何してほしいの?」
愛は呟くように聞いた。
「・・・これはさ、命令っていうよりもお願いっていうか、
頼みたいことっていうか、むしろ提案に入るのかな?」
「・・・何?」
「愛ちゃんさ、これからもここに住まない?」
「えっ!?」
愛は目を見開いて驚いている。
「ここだったらさ、学校から近いし、そんなに家賃も高くないし、
それが二人なら半分で済むしね♪寝坊もしなくてすむし、新曲が
できたらすぐに愛ちゃんに聞かせられる。これほどいいことばっかって
こともそうないよ!」
「ふ〜ん・・・。」
愛は納得できないといった顔で、美貴を見ている。
そんな愛を見て、美貴は一息ついてから遠くを見つめる。
- 577 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:19
- 「・・・じゃあ、本音を話すよ。美貴が帰ってきたときにさ、愛ちゃんが
家にいてくれたのって、すごく嬉しかったんだ。寂しさを感じさせない
温かさをもらえたっていうか、すごく落ち着いた。愛ちゃんがいてくれたから、
美貴はいつも安心して家に帰ってこれた。そんなこと、今までなかったんだ。」
「・・・。」
愛は黙って話しを聞いている。
「いつも不安だった。心細かった。家に帰りたくなかったよ。でもね、
愛ちゃんがきてくれて、美貴は寂しくなくなった。それどころか、
早く帰りたいって思うようになったよ。愛ちゃんのおかげでね♪」
「そうなんだ・・・。」
「あくまで提案だからさ、それを決めるのは愛ちゃんだからね。美貴は
強制する気はないよ。愛ちゃんが一人でどこかに住むっていうのなら、
美貴は止める気は無いし、もし美貴が・・・。」
「ねぇ、明日って学校は午前中で終わりだよね?」
美貴の言葉を遮って、愛が口を開いた。
- 578 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:19
- 「えっと、そうだったと思うけど・・・。」
「放課後、買い物に付き合ってくれない?」
「へっ?」
「二人で生活するとしたら、けっこう足りない物が多いからね。
いろいろと準備しなきゃいけない物があるでしょう?」
「じゃあ・・・。」
「・・・これからもよろしくお願いします。」
愛は恥ずかしそうに頭を下げる。
「こっ、こちらこそよろしくね♪」
美貴もまた、嬉しそうに頭を下げた。
顔を上げた二人は、目を見合わせて軽く笑い合った。
こうして、美貴と愛の二人暮らしが始まった。
- 579 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:22
- >名無しさん
ありがとうございます!
そうやって言っていただけるのがとても嬉しいです。
これからもどうぞよろしくです♪
>よしよしさん
少しづつよくなってます(謎)
ゆっくりまったりが好きなんで、急には発展しないと
思いますが、よくよくは・・・(笑)
- 580 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:24
- >真由さん
ありがとうございます。
自分も真由さんのこんごまを楽しく
読ませてもらってます。
時代はこんごまですよねw
この小説ではメインは一応あいみきですけど
こんごまもがんばりたいと思います。
>みっくすさん
了解しました(汗)
自分勝手で申し訳ないです・・・
これからは気をつけていきたいと思います。
小説のほうもがんばりたいと思います。
- 581 名前:konkon 投稿日:2005/01/15(土) 03:27
- >558・564名無し飼育さん
自分的には自己紹介のつもりで書いていたのですが、
それが迷惑でしたら今後は気をつけたいと思います。
もしよければ、今後も何かありましたら教えてください。
恐縮でした〜。
- 582 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/01/15(土) 10:15
- 更新おつかれさまです。
あいみきの同棲生活楽しみです
良い感じになってきたのでがんばって!!
- 583 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:25
- バスケットボール県大会決勝リーグ戦、この日、県でたった二高だけ選ばれる
インターハイ出場校が決まろうとしていた。
朝比奈高校は、ここまで順調にトーナメント戦を勝ち進み、そして決勝リーグまで辿りついた。
決勝リーグでは、勝ち残った四校によって行われ、その上位2チームが
インターハイへと進むことができる。
朝比奈学園はここまで2勝0敗と好調で、インターハイ出場はほぼ確定している。
だが、この日の対戦相手はインターハイ出場常連校であり、もし負けると
得失点差によってリーグ戦敗退もありえるのだった。
そして、運命を決める第三戦が始まっていた。
- 584 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:27
- 「マコっちゃん、6番にマークついて!」
「わかった!」
「まいちゃん、ゴール下をお願い!」
「任せて!」
あさ美は的確にチームメイトに指示を出していく。
しかし、相手は素早いパス回しにより、真希達を翻弄していく。
「このっ!」
真希がボールを取った8番に飛び込んだ。
それより先に、8番は後ろにいた6番にパスを出し、同時に真希の
壁となって邪魔をする。
「里沙ちゃん、後藤さんのフォローに回って!」
「は、はい!」
里沙は慌てて6番に向かう。
だが、里沙の懸命なフォローも実らずに、6番は綺麗にゴールを決めた。
- 585 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:28
-
ビーッ!
ここで前半が終了した。
現在の点数は58対40と、朝比奈学園が大幅に押されている。
かなり研究してきたのだろう、相手チームは真希達のことを完全に抑えていた。
特に真希、あさ美に対するマークは厳しく、二人の連携が全く出せずにいた。
朝比奈学園の控え室には、感じたことのないほどの重圧が圧し掛かっていた。
「ま、まだ前半だぜ!ここから攻めればいいじゃないかよ、そんな落ち込むなって!」
黙り込む部員達に、真里が明るく声を出した。
だが、部員達の表情は暗い。
「くそっ!どうしたらいいんだよ・・・。」
麻琴が壁に手を当てて、そう呟いた。
- 586 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:28
- 「・・・仕方ないよ。相手はインターハイの常連高なんだからさ。」
ゴール下を守っていた里田まいは、汗を拭きながら淡々と麻琴を宥めた。
「仕方ないですむわけないでしょ!?ここで負けたらインターハイに
いけないかもしれないんだよ!」
まいの言葉に、麻琴が突っかかる。
「だいたいね、まいちゃんのさっきまでのディフェンスはなんなの?
全然止められてなかったじゃない!」
「そ、そんなことはわかってるわよ!でも、相手が強すぎるんだからそんな簡単に
止められるわけないでしょ!そういうあんたはどうなのよ?さっきから突っ込んでは
止められての繰り返しじゃない。」
「何よっ!」
「も〜、二人とも少しは落ち着いてくださいよ。」
二人が睨み合う中で、里沙が間に入って二人を離した。
- 587 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:30
- 「今ここでぐちぐちと言ったって仕方ないじゃないですか〜。」
「そうだよ。なんとか打開策を立てて、ここから挽回しよう。」
あさ美は軽く麻琴の肩を叩いて、そう口に出した。
「じゃあ・・・どうしろっていうの?あさ美ちゃんならどうするの?」
「それは・・・。」
麻琴の質問に、あさ美は下を向いてしまう。
「・・・ねえ、やぐっつぁん。」
「ん?」
それまで椅子に座って黙り込んでいた真希が、横にいる真里の顔を見上げた。
「後藤達はどうすれば勝てると思う?」
「えっ、でも、おいらに聞いたって・・・。」
「後藤はやぐっつぁんの意見を聞いてるんだよ。」
真希は真剣な目で真里を見つめている。
他の部員達は、黙って二人の話しを聞いている。
- 588 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:30
- 「やぐっつぁんさ、バスケをやったことないからって意見言わないだけでしょ?
なっちから色々聞いたよ。やぐっつぁんの家には、バスケの本とかビデオが
たくさんあるんだって。毎日仕事が終わって疲れてるにも関わらずに、それらを
見て、いろいろ研究してるんだってことをね。」
「・・・。」
「最近買ったビデオカメラだってさ、毎日後藤達の練習姿を映してるのも、
卒業アルバム用とかじゃなくて、家で見て研究してくれてるんでしょ?」
下を向いて何も言わない真里を気にせずに、真希は続けて話し続ける。
「後藤達にはやぐっつぁんの力が必要なんだよ。それで負けたって、
後藤は文句を言わないよ。やぐっつぁんに、一人の仲間だって
言ってもらえて、後藤はすごく嬉しかったよ。だから、後藤は
やぐっつぁんのことを信じる。」
「・・・ありがとな、後藤。」
真里はゆっくりと顔を上げて、部員達を見渡していく。
- 589 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:31
- 「紺野、お前はどう思う?おいらの言うことを聞いてくれるか?」
「もちろんですよ。私も矢口先生のことを信頼してますから。」
「そっか・・・。」
「それに、名前ばかりの顧問っていうのもどうかと思いますしね。」
「・・・お前、ほんとに変わったな。」
あさ美の言葉に、真里は苦笑いを浮かべる。
「それじゃ、もう時間もないから簡単に言うぞ。よく聞いておけよ。」
部員達は黙って首を頷ける。
「とりあえずはメンバー交代からだ。里田と斉藤、紺野と木村は交代だ。」
「えっ!?」
部員達は声を上げて驚いた。
- 590 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:32
- 「やぐっつぁん、紺野を外すの?」
「ああ、紺野はもう外せないメンバーなのは、いくらおいらでもわかるよ。
でも、今回に至っては少し状況が違うから、様子見ってことで一度ベンチに
控えてもらう。紺野、それでいいな?」
「はい!」
あさ美は元気に返事をした。
「それで小川、お前は紺野のポジションにつけ。」
「私が・・・ですか?」
麻琴は首を傾けて真里に聞いた。
「ああ、後藤がくるまではお前がゲームの流れを作ってただろう。今回は
紺野じゃなくてお前がやるんだ。でも、だからといって紺野みたいに
やる必要はない。お前らしくやればいい。わかったな?」
「は、はい!」
- 591 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:33
- 「新垣、お前はできるだけスティールを狙っていけ。それと、
自分が一度守りについた相手は、絶対に目を離すなよ。」
「はい!」
「斉藤はリバウンドを外さないようにな。一本のリバウンドが試合の
流れを変えるんだ。ここだけはしっかりと頼む。」
「はい!」
「木村はパスをもらったら積極的にシュートにいけ。別に外したって
構わない。その代わり、無闇にパスを回そうとするな。」
「はい!」
「そして、後藤。お前は周りのフォローに回れ。」
「フォローに?」
「そう、お前からもパスを出すんだ。相手は絶対にお前がシュートするもんだと
思ってるから、ゴール付近では積極的にお前にディフェンスについていた。
その時が狙い目だ。小川や新垣が何度かフリーになったときがあった。
ゴールだけじゃなくて、周りにも目を配らせるんだ。」
「なるほどね・・・。」
- 592 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:34
- 「絶対に後藤がフリーになる時がくる。その時までは、お前が敵を引きつけるんだ。
そして、お前がチャンスを作り出すんだ。わかったな?」
「了解です!」
真希は笑って、わざとらしく敬礼をする。
「それじゃ、時間だ。がんばってこいよ!」
「はい!」
部員達は元気に返事をして控え室から出ていった。
「紺野。」
「はい?」
真里は、最後に出て行こうとしたあさ美に声をかける。
「必ずお前が必要となる時間がくるはずだ。その時までは、
目を凝らさずに試合をよく見ておくんだ。」
「はい!」
「よっし、この試合に勝って、絶対インターハイにいくぜ!」
あさ美の背中を軽く叩いて、真里は控え室を出ていった。
- 593 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:34
- 更新しました〜。
- 594 名前:konkon 投稿日:2005/01/22(土) 15:36
- >名無しの荒らしさん
あいみきも萌える方向へと向かっていますw
これからが美貴の勝負どころですね♪
- 595 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/01/26(水) 23:05
- お疲れ様〜
あいみき確かに萌えの方向へと進んでいますね。
それに加えごまこんになちまりまで進行中とは、
すごいです。
かなり応援してますよ〜
- 596 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:32
-
ピーッ!
後半の始まりの合図と共に、審判が高くボールを上げる。
真希は相手よりも高く飛び上がり、後ろにいた麻琴にボールをはじいて渡す。
麻琴はボールを拾うと、ゆっくりとドリブルをして上がっていく。
真希には二人のディフェンスがついていて、パスを出せそうにもない。
麻琴は周りに目を配らせていく。
「(なるほどね、後藤さんに二人、美海ちゃんにも一人ついてるか。
理沙ちゃんは後ろ、だったら・・・。)」
麻琴は相手の7番が自分についたと同時に、後ろにいた里沙にパスを出す。
そして、7番の横を駆け抜けていく。
- 597 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:32
- 「里沙ちゃん、リターン!」
「はい!」
里沙は素早く麻琴にパスを出す。
美海をマークしていた8番が、麻琴を止めようと前に出る。
「美海ちゃん、ローポスト!」
麻琴は8番が自分に向かってきたのを確認すると、フリーになった美海に高いパスを出した。
美海はボールを飛んで受け取ると、そのままシュートをした。
ボールは綺麗にゴールに入った。
「ナイッシュー、美海ちゃん!」
「ナイスパス!小川さん!」
麻琴と美海は、軽く手を叩き合わせる。
「(へ〜、小川もやるもんだね〜。)」
真希は、ディフェンスに戻りながら首を頷けていた。
- 598 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:34
- 「ふむ、小川も状況をよく理解しているようだな。」
「は〜、やっぱりすごいですね。マコっちゃん・・・。」
あさ美は麻琴のプレイを見て、口を開けて感心していた。
「さて、問題はディフェンスだ。紺野、ここまででゲームメイクしているのは
何番だと思う?」
「ん〜、6番ですかね?毎回6番からのパスから始まってましたし・・・。」
相手の攻撃は、いつも6番のパスから始まっていた。
それを思い出して、あさ美はそう答えた。
「それが違うんだな〜。」
「えっ?」
「よく見ててみろよ。」
6番がドリブルをして攻めていく。
そこに、真希が早いチェックで前に出る。
6番はすかさずサイドにいた7番にパスを出した。
- 599 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:35
- 「ちっ!」
真希は今度は急いで7番に向かっていく。
それより早く、7番は中に走りこんでいた6番に高いパスを出した。
マッチアップについていたのは里沙だ。
しかし、里沙の身長では手が届かずに、長身の6番がパスをもらってシュートをした。
ボールはゴールの輪をくぐり抜けていった。
「どうだ、わかったか?」
「なんとなくは・・・。」
真里の質問に、あさ美は曖昧に答える。
「ゲームを作っているのは、7番だったんですね?」
あさ美は真里を振り向いて聞いた。
- 600 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:36
- 「惜しいな。ゲームを作っているのは4番と7番だ。6番が最初に
パスを出すのは、必ずあの二人のうちのどちらかだ。そして、
そこから6番は長身を生かしたシュートを狙ってくる。5番と8番は、
その間に他のディフェンスを抑えている。身長差を利用されたら、
さすがの新垣も取れないからな。それが負けている原因だ。」
「では、美海ちゃんが6番にマッチアップするんですね?」
「いや、それよりも先に流れを止める。」
真里は不敵な笑みを浮かべて、試合に視線を移す。
あさ美と話していた間にも、試合は進んでいく。
麻琴がボールを持って攻めていく。
そこに、今度はパスを出させないようにと厳しいチェックに入る。
- 601 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:36
- 「里沙ちゃん、ゴールの右に狙って!」
麻琴はボールを体の後ろに回して、横に走りこんできた里沙にパスを出す。
「(ゴールの右・・・わかった!)」
里沙は、ボールをもらうとすぐにシュートを放った。
ボールは、ゴールの右に向かって落ちていく。
「後藤さん!」
「・・・そういうことか!」
麻琴の声で、真希はゴール下に走り出した。
真希についていたディフェンスは、里沙のシュートに目がいっていて、
真希のことに気付いていない。
真希は里沙のシュートがバックボードに当たるより先に、
ボールを受け取ってゴールに叩き付けた。
- 602 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:36
-
ガゴッ!
会場中に激しい音が響いた。
真希はゴールから手を放すと、麻琴に近寄っていく。
「いい判断だったね。」
「いえいえ・・・。」
真希に頭を撫でられて、麻琴は嬉しそうにする。
「・・・そんな怖い顔するなよ。すぐに出してやるから。」
「別に怒ってませんよ。」
真希が自分以外の誰かの頭を撫でたことが、少し気にいらなかったあさ美は、
自分でも気付かないうちにふてぐされたような表情をしていた。
- 603 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:37
- 「紺野、お前は確かに正確で鋭いパスを出せる。それも、相手の
手が届かないスペースを見極めて出せるから、仲間は安心して
パスを受け取ることができる。でもな、スペースを見つける
だけじゃなくて、自分からスペースを作り出すことも必要なんだ。
上を目指すならね。」
「はぁ・・・。」
「小川の場合、自分や味方を使って自分からスペースを作り出している。
それに、変則的なパスを出すことで、相手の混乱も誘っている。」
真里の言葉を、あさ美は黙って頷いて聞いている。
「紺野には紺野にしか持ってない、すごいセンスがあると思う。
でもな、そればっかりに頼っているようではだめだ。確かに、
自分の長所を伸ばすことも大事だと思う。けど、これだけ
すごい仲間達がいるんだ。いいところを盗んでいけ。」
- 604 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:38
- 「盗むんですか・・・?」
「そう、お前は物覚えがいいし、身に付けるまでの努力を怠らない。
誰のようになれとは言わない。ただ、人のいいところを自分自身の
力にしてしまえば、お前は本当にいいプレイヤーになれる。おいらは
そう信じてる。」
「・・・はい。」
まだ、完全に納得できたわけではない。
しかし、真里を信じてる。
あさ美はそれ以上何も聞かずに、試合に集中することにした。
真希が6番のディフェンスに入る。
- 605 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:39
- 6番は、長身を生かして高いパスを4番に渡した。
4番は中に鋭く切り込んでいく。
麻琴がマークについたところで、4番はフリーになった5番にパスを出す。
5番は軽々とシュートを決めた。
「ディフェンスはどうしたらいいでしょうか?」
「後藤の短所ってどこだか知ってるか?」
あさ美の問いに答えずに、真里はそう聞き返した。
「・・・いえ。」
「後藤はじっくりとディフェンスするのが苦手なんだよ。だから、
相手がきたらすぐに飛び出してしまう。そこが問題だ。後藤は
一対一だったら大抵は勝てるだろう。でも、6番は長身の上に、
両サイドにパスをもらえる4番と7番がいる。さすがの後藤も、
三人を相手にはできない。」
- 606 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:40
- 「そうだったんですか・・・。」
「だから紺野、お前があいつに手を貸してやれ。」
「えっ?」
「そろそろ小川のパスも読まれてくるだろうからな。木村と交代だ。」
真里は、あさ美にこれからの動きを簡単に説明すると、審判に交代を告げた。
真希が麻琴のパスをもらってゴールを決めたところで、交代したあさ美は真里からの説明を
話すために、試合に出ている仲間を呼び出した。
「時間ないから簡単に説明するね。マコっちゃんは、6番のディフェンスについて。
中に入ってきたら、今度は美海ちゃんがゴール下で6番のマッチアップ。
里沙ちゃんは今まで通り、スティールを狙っていって。」
「「「はい!!!」」」
三人は大きな声で返事をした。
- 607 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:40
- 「後藤さんは7番にマッチアップしてください。」
「7番・・・?」
「はい、絶対に離れないようにお願いします。7番には3Pもありますので、
シュートにも気をつけてください。私は4番につきます。」
「それがやぐっつぁんの指示なんだね?」
「はい。」
「そっか、わかったよ。」
真希は軽く頷いて、相手のことを見渡していく。
そして、ボールを持っている6番ではなく、7番に張り付くように
ディフェンスについた。
あさ美は4番のマッチアップにつく。
麻琴、里沙、美海もそれぞれの位置についた。
- 608 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:41
- 6番は、4番と7番にパスが出せずに、その場で困惑して止まっている。
4番、7番もパスをもらおうと、必死に真希、あさ美を振り切ろうとするが、
この二人を一対一で振り切ることは至難の業であり、なかなか振り切れずにいた。
「もらった!」
麻琴が6番からパスを奪う。
相手は素早くディフェンスに入る。
麻琴は一度上がるのをやめて、隣にいた真希にパスを出す。
その時、
「後藤!」
真里がベンチから声を出し、それに反応した真希が顔を真里に向けた。
真里は腕を上げて、人差し指を立てた。
「(封印を解くってことだね。)」
真希は真里に軽く笑いかけると、その場でドリブルの手を止めた。
- 609 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:41
- 今日はここまでです。
- 610 名前:konkon 投稿日:2005/01/27(木) 23:42
- >名無しの荒らしさん
そうですね〜。
できるだけみんなそれぞれのシーンを作りあげたいと
思っています。
もうちょいしたら、ラブラブなカップルができるとは
思いますけどね〜w
- 611 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/01/28(金) 17:38
- お疲れ様です
紺ちゃん達試合がんばってますね
だんだんキャプテンらしくもなってきましたし。
封印を解くってなんなんでしょう?気になります
- 612 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/01/28(金) 19:37
- おお!
矢口がいい感じ!こういう役回りもはまってる感じでいいですね
- 613 名前:よしよし 投稿日:2005/01/31(月) 00:10
- 更新おつかれっす。
矢口監督いいですね♪
試合の続きもラブラブカップルも
めちゃめちゃ期待してま〜す。
- 614 名前:マカロニ 投稿日:2005/02/01(火) 14:21
- 初めまして(^O^)
いつも読んでました!あいみき少ないのでここは大好きです!
他にもキャラがいいしバスケの試合もなんかリアルでいろいろ楽しめるんでまた来ます♪
- 615 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 22:57
- 「(いくよっ!)」
真希が立っているところはハーフラインだ。
真希はシュート体制に入り、ボールをゴールに向けて放つ。
朝比奈学園バスケ部以外の、会場にいた全員が驚愕の表情でボールの行方を追った。
ボールは吸い込まれるようにゴールに入った。
「後藤さん、ナイッシューです!」
「さすがですね!」
周りの声に真希は笑って頷いた。
真里は、真希のハーフラインからの超ロングシュートを封印させていた。
もし万が一の時までの、切り札としていたのだ。
- 616 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 22:58
- だが、
「(もう出し惜しみできる状況じゃない。これで後藤に対するマークが
厳しくなるだろう。そこを利用して、紺野と小川が攻められれば・・・。)」
そう判断した真里は、深く腰を下ろして試合の流れを見ていた。
「(あとは、みんなを信じるだけだ。)」
「さぁ、まだまだいくよ!」
あさ美の声で、またメンバーは顔を引き締めてディフェンスに入る。
先ほどと同じように、4番、7番は全く動けずにいる。
6番が中に入ろうとするが、それをさせないように麻琴が厳しいディフェンスに入る。
6番は強引にもシュートを打つが、それはゴールの輪に当たって、
リバウンドをした美海がボールを取り押さえた。
- 617 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 22:58
- 「紺野さん!」
美海のパスをあさ美は受け取ると、ゆっくりと相手陣地に上がっていく。
その間に、じっくりと相手の動きをよく見て、次にどう攻めたらいいか、
次々とあさ美の頭で計算がされていく。
相手の動きを見切り、最善の展開を作り上げていく、それが紺野あさ美というプレイヤーなのだ。
「(私には、後藤さんのようにセンスがあるわけではないし、強くもない。
でも、私は後藤さんと一緒にプレイしたい・・・最強コンビになりたい・・・。)」
「・・・あさ美ちゃん?」
「マコっちゃん、いくよ。」
「うん!」
7番が近づいてくると、あさ美は麻琴にパスを出す。
麻琴は素早くあさ美にリターンパスを送る。
- 618 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 22:59
- 「(私はもっとうまくなりたい・・・後藤さんとコンビを組んでもおかしくないって
思われるくらいまでうまくなりたい。後藤さんと一緒にいたい! )」
あさ美の針の糸を通すような鋭いパスが、真希に送られる。
「(紺野、どんどんうまくなってるよ・・・。)」
真希はボールを持って、ゴールに向かって飛び込んだ。
しかし、真希を二人のディフェンスが拒む。
このままぶつかれば、確実に真希のファールとなるだろう。
「(でもね、紺野。後藤だって負けないよ。紺野のパスを生かせるように、
後藤だってもっとうまくなってやるんだから!)」
真希はそのままシュートをせずに、手首を返して後ろにパスを出した。
- 619 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 22:59
- 「(試合に勝つには、何も後藤が決める必要はない・・・。
後藤は一人じゃないんだから。後藤には最高の相棒がいる。
紺野、君ならここに走りこんできてるはずだよね。)」
真希はあさ美の姿を見ていたわけではないのに、そう確信していた。
そこには真希の予想通り、いつの間にか走りこんでいたあさ美がボールを受け取った。
「紺野!いけっ!」
「はい!」
あさ美は3Pラインからシュートを放つ。
ボールは綺麗な放物線を描き、見事にゴールの輪を潜り抜けた。
「やったね!紺野!」
真希は、嬉しそうにあさ美の頭をガシガシと撫で付ける。
「はい・・・。」
あさ美は恥ずかしそうに、顔を赤くして返事をした。
- 620 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:00
- 「さって、こっから一気に追いつくよ。」
「はい!」
二人はまたそれぞれのポジションについていく。
「(やるな〜、紺野のやつ本当にすごくなるぞ。)」
真里は誰にいうでもなく、心の中で感心していた。
「(あれは小川からのリターンパスを受け取ったことから、相手ディフェンスは
紺野に引き付けられて、後藤に対するマークが一瞬甘くなった。紺野は
そこを見逃さなかった。さっきおいらが言ったことをすぐに実践しやがった。
後藤は後藤で、相手を限界まで引き付けて、紺野が動いているのを予測して、
いや、たぶん確信してたんだろうな・・・。紺野なら、絶対に後藤のパスを
もらえるとこに走りこむっていうことを。あいつら、本当にすげぇやっ!)」
試合の方はというと、朝比奈学園が驚異的な追い上げを見せて、そして追いつき、追い越した。
- 621 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:00
- 試合はそのまま流れていき、
ビーッ!
試合終了のブザーが鳴った。
結果の方は、98対90と朝比奈学園の逆転勝利で終わった。
麻琴や里沙、美海は抱きついて喜んでいる。
「やりましたね、後藤さ・・・。」
「紺野ーっ!」
真希は思い切りあさ美に抱きついた。
「ごっ、後藤さん・・・。」
あさ美は耳まで顔を赤くして、真希の顔を見上げる。
- 622 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:01
- 「後藤達、勝ったんだよ〜。やったね!」
真希はすごく嬉しそうに笑っている。
真希は、ゆっくりとあさ美を放してベンチへと戻っていく。
「でも、今日のMVPはやぐっつぁんかな。」
「そうですね。」
ベンチでは歓喜の声が飛び交っている。
「よくやったな。」
真里は、戻ってきた真希達に嬉しそうに声をかける。
「後藤達が勝てたのは、やぐっつぁんのおかげだよ。」
「そうですよ。矢口先生がいてくれたから、私達は勝てたんです。」
真希とあさ美の言葉に、他の部員達も頷いている。
「・・・そっか。おいらも少しは役に立てたか〜。」
そう言った真里の目から、一粒の涙が出てきた。
- 623 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:02
- 「あれ〜、矢口先生泣いてるんですか〜?」
「ばっ、別に泣いてるわけなんかじゃ・・・。」
「鬼の目にも涙ですね。」
「てめ、紺野!次の試合出さねえぞ!?」
「冗談ですよ♪」
真里が声を荒げるも、よほど嬉しいのだろう、あさ美は臆せずに笑って答えた。
「やぐっつぁん、泣くのはまだ早いよ。」
「・・・後藤?」
「泣いてもいいのは、インターハイで優勝してからだよ。」
「・・・へっ、言うじゃねえかよ。」
真里は軽く笑って真希を見上げた。
「だからさ、これからも頼むね。後藤達はやぐっつぁんのこと、
信じてるから。やぐっつぁんについていくから。」
「そうだな。おいらもみんなのこと信じてるよ。やってやろうぜ!
インターハイ、絶対優勝するぜ〜!」
「おーっ!」
真希達は元気に腕を振り上げた。
今年の夏、真希達の最初で最後のインターハイが始まろうとしていた。
- 624 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:02
- 交信しました〜。
- 625 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:05
- >名無しの荒らしさん
封印とはこのようになっておりましたw
紺ちゃんもがんばってますよ〜。
ごっちん共々もう少しバスケの話しは続きます♪
>名無し飼育さん
リーダーらしい矢口さんを書いてみました!
かなり男っぽいとこがみそですw
- 626 名前:konkon 投稿日:2005/02/01(火) 23:09
- >よしよしさん
試合はまぁ、もう少しあると思いますが、
ラブラブ・・・う〜ん、いつになるやら(汗)
それらしく書けるようにがんばります。
>マカロニさん
初めまして〜です。
ありがとうございます!
あいみき、こんごま、その他(マテ、いろいろと
やらせていただきます。
またきてくださいね〜♪
- 627 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/02(水) 14:34
- ごっちんの封印って白板の小説のパクリかよ
- 628 名前:闇への光 投稿日:2005/02/02(水) 16:25
- >627
確か封印についてはレス228(2004/09/20(月) 14:47)に出ていますよ。
あなたが言っている(と思われる)白板の小説は書き始めが12月だから、
konkonさんがパクリでは無いと思うのですが・・・
konkonさん、続き、楽しみに待っています。
ただ、気になるの点が一つ・・・。
何らかの伏線があるな・・・。
- 629 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/02/02(水) 17:22
- お疲れ様
ハーフラインから・・・
やっぱりごっちんはうまいですねぇ
紺ちゃんも試合の中で成長してうまくなっていってますねぇ。
627さんが言っている白板の小説にも負けないようにがんばって
- 630 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:26
- 「バスケ部がインターハイにいくんだってさ!」
「マジで!?それってすごくない!?」
期末テストも終わり、終業式間際の朝比奈学園では前日の真希達の
試合によって、インターハイにいけるということで、バスケ部の話しで
盛り上がっていた。
なんといっても、朝比奈学園で初めての全国大会である。
その日の放課後、あさ美の周りにはたくさんのクラスメイト達が集まっていた。
「紺野さん、がんばってね!」
「応援してるからね!」
「う、うん。ありがとう・・・。」
勉強はできるが、愛ほどではないにしろ、おとなしめのあさ美は
クラスメイト達とそれほど親しい関係ではなかった。
あさ美は曖昧に返事を返しながら、クラスメイトの話しに頷いている。
- 631 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:27
- 一頻りクラスメイトが離れていったあと、あさ美は前の席で
小説を読んでいた愛の肩を軽く叩いた。
それに気付いた愛は、振り向いて笑みを向ける。
「あさ美も人気者になったもんだね。」
「そ、そんなことないよ〜。長引いちゃってごめんね。そろそろ行こうか?」
「うん。」
期末テストが終わったために、午前中で授業が終わりなのでたまには二人で
買い物に行こうと約束をしていたのだ。
バスケ部の練習は、試合の次の日ということで休みであった。
あさ美は練習を希望したのだが、休むことも必要だと真里に言われたので
しぶしぶ承諾した。
- 632 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:28
- 「ところで、後藤さんと藤本さんはどこに行ったの?」
あさ美がクラスメイトに捕まっているときには、真希の姿はどこにもなかった。
鞄は置いてあるようなので、まだ帰ってはいないのは確かだ。
「後藤さんは、あんたみたいに捕まらないように、どこかに逃げたんじゃない?」
「クスッ、後藤さんらしいな〜。」
「美貴ちゃんは、後藤さんを探しに行ったみたい。場所知ってるのって聞いたら、
ごっちんのことなら何でも知ってるって、それだけ言って行っちゃったよ。」
「ふ〜ん、愛もそうやって藤本さんに言われてみたい?」
「ばっ、何言うとんやざ!?」
愛は顔を赤くして声を荒げた。
「フフフッ、冗談だよ。」
「・・・ったく。」
あさ美が帰る準備を始めたのを見て、愛は一息ついて立ち上がった。
- 633 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:29
- 「ん〜、やっぱここが一番落ち着くな〜。」
真希は体育館の壁に寄りかかって座り込んだ。
大きく伸びをして、転入してからのバスケ生活を振り返ってみる。
それを思い出し、真希は一人で笑っていた。
「な〜にを一人で笑ってんのさ?気持ち悪いな〜。」
そんな声が体育館の入り口から聞こえてきた。
振り返ってみると、そこにはあきれたような顔をしている美貴が立っていた。
「ごっちんがおかしいのは前から知ってたけど、そこまで重症だったとは
思わなかったな〜。病院に連れていったほうがいいかな?」
「ミキティにそんなこと言われるとは、後藤も落ちたもんだね〜。」
美貴が真希の前に座り込むと、二人は顔を見合わせて笑い合った。
- 634 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:30
- 「ところで、どうかしたの?」
「ん、ちょっとね・・・。」
真希は美貴から視線を外し、上を見上げる。
「後藤、この学校にきてよかったよ。」
「いきなりどうしたの?」
「今まで、後藤はたくさんの学校に転入してきたんだ。それはミキティも
知ってると思うけど、人の輪にうまく溶け込むことができなかったんだ。
ミキティと出会って、後藤はすごく変わったと思う。でも、それでも
後藤は、どこかで一人で生きてるって思うことがあったんだ。」
真希の話しを、美貴は黙って聞いている。
- 635 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:31
- 「けどね、ここはとっても居心地がいいんだ。みんなが後藤に
優しくしてくれる、わかってくれる、仲間だって認めてくれてるんだ。
だから、後藤はがんばるよ。インターハイで勝ち進んで、
後藤がいたからよかったんだって、みんなにそう思って
もらえるようになりたい。」
「そっか・・・。」
美貴は軽く頷いて立ち上がる。
「でもさ、ごっちんがそこまで抱え込むことないよ。」
「ん、どういう意味?」
真希はゆっくりと美貴を見上げる。
- 636 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:32
- 「ごっちんがインターハイで結果が出せなかったとしても、ごっちんは
ごっちんだよ。例え周囲の目が変わったとしても、美貴達の関係は何も
変わらないよ。美貴は後藤真希の親友、それは何が起ころうとこの先
ずっと変わることなんてあり得ないんだ。」
「ミキティ・・・。」
「深く考え込みすぎだって。みんなわかってくれてるよ。ごっちんのことをね。」
「・・・いいよな〜、ミキティは。何も考えてなさそうでさ。」
「何言ってんの?美貴ほど悩んでる乙女はいないよ!」
「ハハハッ。ありがとう、ミキティ。」
真希は笑って立ち上がる。
「ミキティ、ちょっと付き合ってくれないかな?」
「いいよ。紺ちゃんに嫌われない程度にね♪」
美貴は笑顔で答えると、真希に並んで歩き出した。
- 637 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:33
- 「ねえ、体育館でバスケ部が練習してるみたいだよ!」
「ほんとに?どんな練習してるんだろ?見にいってみようよ!」
愛とあさ美が昇降口に向かっている途中で、数人の生徒のグループから
そんな話しが聞こえてきた。
「あさ美、今日って休みじゃなかったの?」
「うん、そのはずなんだけど・・・。」
あさ美は首を傾げて、体育館の方に向かっていく生徒達を見ていた。
「ごめん、ちょっとだけ様子を見にいってもいいかな?」
「別にいいよ。」
二人は向きを変えて、体育館の方に歩き始める。
渡り廊下につくまでにも、どこで情報を聞きつけたのか、何人もの生徒が
体育館に向かっていた。
- 638 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:35
- 「誰が練習してるんだろ?矢口先生に怒られ・・・。」
あさ美が体育館の扉に手をかけた瞬間、
ガゴッ!
体育館中に、大きな衝撃音が走った。
あさ美は慌てて扉を開けて、中を覗く。
そこには、悔しそうな顔をして頭を掻いている真希と、ゴールの輪に
ぶら下がっている美貴の姿があった。
どうやら、二人で1 ON 1をやっていたようだ。
真希はユニフォーム姿で、美貴はジャージを着ている。
- 639 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:35
- コートの周りや二階席には、けっこうな数の生徒達が美貴達の試合を見ていた。
あとから覗き込んだ愛も、呆然として二人の姿を見ていた。
「フフン♪これで5対3、あと2点だね!」
美貴はゴールの輪を放して、地面に降り立つ。
「くっそ〜、また突き放してやる!」
真希にしては珍しく、口元に笑みを浮かべてドリブルを始める。
あさ美が知っている限りでは、バスケに関して真希が嬉しそうな表情をするときは、
よほどの実力者と対立するときのみである。
それだけ、真希は美貴の実力を認めているのだろう。
真希はゆっくりとドリブルをして、美貴に近づいていく。
- 640 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:37
- 対する美貴は、普通の人よりも下がり気味でディフェンスをしている。
距離がある分だけ抜かれにくいというのもあるが、美貴にとってのベストの
距離はこのくらいなのである。
美貴には、真希やあさ美のようなうまさは持ち合わせていない。
それ以前に、バスケの知識すら持っていないため、ディフェンスの構えも適当だ。
しかし、人並みはずれた運動能力や反射神経、動体視力や瞬発力を存分に
発揮させるには、この距離が妥当であったのだ。
美貴の身体能力であれば、真希との距離を一瞬でゼロに縮め、
ボールを奪うことも可能なのである。
「ミキティ、いくよっ!」
「望むところだよっ、ごっちん!」
真希は一気にスピードを上げて、美貴に向かっていった。
- 641 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:37
- 交信しました。
- 642 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:40
- >名無し飼育さん
白版の小説は自分も読ませてもらってますけど、
決してパクリではありません。
それだけは信じてください。
>闇への光さん
ありがとうございます。
そこまでわかっていただいて光栄であります!
気がかりな点ですか・・・?
伏線は日常茶飯事であります(笑)
- 643 名前:konkon 投稿日:2005/02/08(火) 01:42
- >名無しの荒らしさん
ごっちんはうまいですよ〜♪
そして、ごっちんと共にうまくなろうする
努力家の紺ちゃん・・・自分は大好きです(爆)
できるだけがんばります!
- 644 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/02/08(火) 22:09
- 乙ですよ!
気になるところで終わらせてくれましたね!!!
気になって仕方ないじゃないですか!
藤本のすごいのが見れるのかな?次回も期待して待ってます
- 645 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/02/09(水) 18:27
- お疲れサマ〜
ミキティ、バスケも中々やりますね、
あのごっちんが2点差なんて。
しかも次はインターハイですかぁ。
いやぁ、格好いいですねみんな。
次回も期待してます。
- 646 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 18:50
- 〉〉名無しの荒らし さん
レスはsageが基本ですよ。
- 647 名前:真由 投稿日:2005/02/10(木) 16:30
- 更新お疲れさまで〜す。
後藤さん、楽しそうなのが目に浮かぶ…w
藤本さんすごい運動神経。いいですねぇ。
続きに期待。。待ってま〜す♪
- 648 名前:清 投稿日:2005/02/11(金) 18:13
- 今日一気に読ませていただきました。
感想…
物凄く楽しいです!!
藤本×高橋は好きなんですがあまりここでは見かけないのでとてつもなく嬉しかったです。
ただ、自分はバスケ部だったんで多少あれ?と思うことはあったんですが、それは物語が楽しいのでそっちのけという事で…。
これからものんびりマイペースに頑張ってください。
陰ながら応援させていただきます。
- 649 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:40
- 「このっ!」
「抜かせないよっ!」
どれだけ続いていたかは、あさ美もよく覚えていない。
でも、それだけの間、真希が美貴のことを抜けずにいたのも確かであった。
あの金髪の妖精とまで呼ばれていたほどの真希が、素人の美貴を抜けなかった。
「くそっ、ミキティしつこい!」
「ごっちんには言われたくないよ!」
真希が抜こうとも、美貴が素早く手を出して止めている。
それでも、真希は嬉しそうな表情で美貴を見ている。
美貴は美貴で、口元に笑みを浮かべている。
- 650 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:41
- 「あの人・・・誰なの?」
「後藤さんを止めているなんて・・・。」
バスケ部員の麻琴と理沙、この二人もあさ美と同様に、バスケ部の練習を
聞きつけて止めにきたのだが、二人のプレイに魅了されて結局ずっと二階席で、
1 ON 1を見ていた。
「それっ!」
美貴が一瞬で真希との間を詰めて、ボールを横に弾いた。
「どわっ!危ないな〜・・・。」
真希は慌ててボールに手を伸ばし、ボールを受け止める。
「ちっ、惜しい。」
「ったく、油断も隙もありはしないんだから。」
真希は一息ついて、美貴を見据える。
「(すごい・・・すごいよ、ミキティ・・・。)」
口には出さずとも、真希は美貴のことを感心していた。
- 651 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:42
- 真希の中では、すでに余裕というものが存在していなかった。
とにかく、美貴の動きはすごかった。
美貴はバスケらしいバスケをしない。
いや、バスケを知らないからこそ、できる動きなのだろう。
ディフェンスの仕方も、ドリブルもめちゃくちゃだ。
それでも、真希を徐々に追い詰めていく。
ほんの一瞬でも気を抜いたら、すぐにでも捉えられそうになる圧迫感。
それから逃れようとする緊張感。
込み上げてくる焦燥感。
少しづつ高まっていく集中力。
そして、胸に高鳴りを覚える高揚感。
それらが、真希に絶頂を与えていた。
真希の今の気持ちを表すならば、一言で言うなら楽しい。
久しぶりに、バスケの楽しさを教えられたのだ。
- 652 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:42
- 「ならば、これで・・・。」
ほんの一瞬だけ、真希の視界にゴールが入る。
ボールの動きが、ほんの少しだけ遅くなる。
その誰も気付くことができない僅かな変化を、美貴は見逃さなかった。
「(ここだ!)」
「(くる!)」
真希が大きく一歩後ろに下がり、シュートを打った。
その打った位置は、封印しているはずのハーフラインからのシュートだった。
これには、見ていた全員が驚愕の表情に染めた。
そして、さらに驚くべき行動を目にする。
「させない!」
普通なら手が届くはずのない距離からのシュート、それを美貴は驚異的な
ジャンプ力を魅せ、ボールを受け止めたのだ。
- 653 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:43
- 「すごいよ・・・まさか、あれを止められるなんてね。」
口ではそう言ったものの、真希は満面の笑みを浮かべている。
「後藤さんが、1 ON 1であれを打つなんて・・・。」
二人のプレイを見ていたあさ美は、小さくそう呟いた。
真希は、普通の試合でも今のシュートを簡単には打とうとしない。
それを放つことをさせた、美貴のことを強者だと認めているからなのだろう。
「今度は美貴の番だよ!」
美貴がスピードを上げてドリブルしていく。
真希は美貴のことをじっくりと見据え、少しづつ距離を縮めていく。
真希がタイミングを読んで、ボールに手を伸ばした。
その瞬間に、美貴の足が急ブレーキをかけて、真希との距離をおいた。
そのため、真希の手は空を切って終わってしまう。
その直後に、美貴は真希の右から抜いていく。
- 654 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:44
- 「甘いよ、ごっちん!」
「このっ!」
先ほどから、真希が抜かれている技の一つがこれだった。
美貴の武器は、なんといってもこの脚力にある。
もの凄いスピードを出せるも、一瞬でそれをゼロにすることが
できるだけの脚を持っていた。
そして、そこから再びトップスピードまであげることができる。
それには、真希もなかなかついていくことができないでいた。
バスケの知識を持たない美貴。
だが、美貴の人並みはずれた身体能力は、バスケの技術すらも凌駕していた。
「くそっ!」
真希は猛スピードで美貴を追いかけ、すぐにディフェンスに入る。
- 655 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:44
- 「ちぇっ、ごっちんこそしつこいじゃん。」
「フフン、バスケ部の後藤が負けるわけにはいかないでしょ。」
「じゃあ、それを覆したら面白いよね。やってやるよ!」
これが冗談に聞こえないから、怖いものである。
美貴ならやってのけてしまう、そう思わせることができる力を持っていた。
美貴の視線が、チラチラとゴールに視線を向けている。
シュートではなく、何かしでかしてくると真希は思っていた。
真希は認知している。
美貴のシュートは入らない、ということを。
美貴がゴールを決めることができるのは、レイアップシュートと
直接決めるダンクシュートのみである。
- 656 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:45
- 真希が5点決めたのは当然だとして、美貴が3点も決めることができたのは、
最初の1点は真希はお遊び気分でやっていたので、美貴に何度もシュートを
させてあげて決めさせてあげた。
それ以降は入れさせないつもりだったのだが、2点目はファールすれすれの
力で押し切られて、レイアップシュートを決められた。
ファールを理由にしてノーカウントにするのは、バスケ部としては少しださい。
そう思った真希は、あえてファールを取らなかった。
だが、そのプレイが真希に火をつけたのだ。
そこからは、真希も力を出して次々と点を決めていく。
それでも、途中からはなかなか思うように事が運ばなくなる。
美貴が真希のシュートを何度も止めていたのだ。
頭よりも先に、体が動いているのかもしれない。
なんであろうと、真希を抑えているのも事実だった。
- 657 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:46
- そして、美貴の3点目は、真希以上の常識を覆す行動に出たのだった。
ゴール前で、真希は美貴のボールを取ろうと手を伸ばした。
次の瞬間、美貴はボールを強く叩きつけ、大きくバウンドさせたのだ。
ボールが真希の上空を舞っていく。
そこへ美貴が真希の横を駆け抜けて、ボールを空中で掴んでダンクシュートを決めたのだった。
そこからは、愛達が見ての通りである。
真希の予想とははずれ、美貴が3Pラインからシュートを打った。
美貴のシュートはゴールには向かっているが、真希は入らないと確信して、
ボールの落下地点を精密に計算し、そこへ向かう。
だが、ここでも美貴は常識を覆した。
ボールがゴールに当たって跳ね返る。
- 658 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:46
- そこに、
「うりゃっ!」
ガゴッ!
本日二本目の強烈な音が、体育館に響いたのだ。
美貴は、跳ね返ったボールを直接ゴールに叩きつけたのだ。
これには、さすがの真希も反応できなかった。
「これで4点目!あと1点で同点だよ♪」
美貴は嬉しそうな表情で真希と向き合う。
一方の真希は、口を開けて呆然としていた。
それも束の間、真希はすぐに笑顔を取り戻す。
- 659 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:47
- 「フフフッ、ハハハハハッ!」
「・・・ごっちん?」
突然笑い出した真希を、美貴は首を傾げて見ている。
「ミキティ、本当にすごいよ。皮肉でもなんでもなく、素直に感心するよ。
こんな気分になったのは久しぶりだよ。これで、後藤も本気を出せる。」
「何、じゃあ、今までは本気じゃなかったってこと?」
「いいや、本気の本気、100%だったよ。でもね、これからの後藤は120%、
後藤が最高潮の時にのみ出せる力なんだよ。紺野にしか見せたことがない、
後藤の"三種の神器"、それを今から見せてあげる。」
真希は楽しそうにそう答えると、ゆっくりとドリブルを始めた。
- 660 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:47
- 交信しました〜。
- 661 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:51
- >名無し飼育さん
すいません、ミキティのすごいことを考えてたら、
切るしかなかったんですよね〜(汗)
まぁ、ミキティはすごいということでw
>名無しの荒らしさん
バスケもすごいみたいですね〜。
ここまできたら、バンドはやめてバスケに移行しようかと(爆)
次はインターハイ、その前にたぶんあいみき編を入れたいと
思いますので、あとちょい先になりますね。
ご了承ください。
- 662 名前:konkon 投稿日:2005/02/13(日) 19:55
- >真由さん
ごっちんの笑顔ほどたまったもんではありませんよ〜(爆)
バスケを楽しくやってるごっちんはかっこよくもあり、
可愛くもあり・・・後には紺ちゃんとも絡めます♪
>清さん
ありがとうございます。
何せバスケ経験が大してないものでありまして・・・
何かあったらご指導のほうよろしくです(汗)
小説のほうはともかく、あいみきはまったりと
やらせていただきたいと思います。
- 663 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/02/13(日) 21:09
- お疲れ様〜
次は三種の神器ですってぇ!?
いったいごっちんの限界はどこにあるんでしょう?
あいみきもあるみたいなんで楽しみにしてます
- 664 名前:清 投稿日:2005/02/14(月) 12:00
- 次は三種の神器!?
3つも何があるのかとてつもなく気になりますね…。
バスケのシーンはオイラがとやかく言うと雰囲気をぶち壊しそうなのでそのままでOKですよ。
がしがし頑張ってください。
にしても、バスケ初心者の美貴さんやりますな…
ごっちん負けるな!!
- 665 名前:真由 投稿日:2005/02/14(月) 19:43
- もー後藤さん可愛すぎ!それから藤本さんすごい。
ダンクに近い?ような超人のようなシュート、やってみたいっすw
三種の神器楽しみに待ってますっ。
- 666 名前:桜娘 投稿日:2005/02/16(水) 11:12
- 更新おつかれです。
後藤さんと張り合えるとはサスガ藤本さんです。
後藤さんの三種の神器どんなんかなぁ〜。
藤本さん簡単にやられないようにがんばれー。
作者さんもがんばれー!!
- 667 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:28
- 真希がドリブルをして、徐々に美貴に近づいていく。
それに合わせて、美貴がディフェンスに入る。
「ねぇ、ごっちん。三種の神器って何?」
決してボールから目を離さずに、美貴が聞いた。
「ミキティでも止めることができない、インターハイ用に後藤が
編み出した必殺シュートだよ。本当は出すつもりはなかったんだけど、
ミキティは普通じゃないからね。見せてあげるよ。」
「普通じゃないって、褒めてるの?」
「もちろん。それも最大級にね。これを出せるのは、紺野と
やったとき以来だから、ミキティは二人目だよ。それは
後藤が認めたってことだよ。ミキティの実力をね。」
「クスッ、それはどうも。それにしても、ごっちん、
紺ちゃんのこと好きだね〜。」
「・・・まぁね。」
真希は軽く笑って美貴の顔を見据える。
- 668 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:29
- 「よかったね、あさ美。」
愛は、隣で見ているあさ美に言った。
「うん・・・。」
あさ美は少し顔を赤くして、嬉しそうに頷いた。
あさ美が人一倍努力をしていたこと、それを誰よりもよく知っているのは、
一番場長く一緒にいた愛だった。
それが、一時期はバスケ史上最強とまで言われた真希に認められたこと。
あさ美が喜んでいるのを見て、愛の顔にも笑みが浮かんでいた。
体育館の中では、真希のドリブルする音だけが響いている。
それだけ二人の試合に誰もが熱中していた。
真希が突然猛スピードで走り出す。
- 669 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:29
- 「(速い!)」
今まで動き回っていたとは思えないほど、真希のスピードは
全く落ちていない。
むしろ、さらにスピードが速くなっているようにも感じる。
真希が素早い切り替えしを魅せ、美貴の右を抜いていく。
「くそっ!」
美貴もまた、疲れを見せない走りで真希の前に立ち塞がる。
だが、真希のスピードは衰えることなく、美貴が追いついたのはゴール前だった。
「いくよっ!」
真希がボールを右手に持って、高く飛び上がる。
「やらせない!」
美貴も真希に合わせて、ボールに目掛けて高く飛び上がった。
- 670 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:30
- 美貴のジャンプ力は、真希と同等といっていいほどまでに高い。
そのために、真希の空中での動きまでも止めてしまうために、
フェイントはおろか、ダブル・クラッチまでも防いでしまう。
美貴に常識は通用しない、真希はここまでの美貴の動きを見てそう思っていた。
美貴が手れを伸ばしたのを見て、真希がボールを持つ右手を下げる。
「(ダブル・クラッチか!?)」
美貴は、すぐに左手に視線を向ける。
「甘いよ、ミキティ。」
真希は、なんと空中で反転をして、ゴールに背中を向ける。
「(うそ・・・?)」
真希の体が邪魔しているために、ボールの位置が美貴には見えていない。
ゴール直前で、真希は反転しているうちに左手にボールを持ち替えて、
腕を高く振り上げる。
- 671 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:31
- 「ほっ!」
ガゴッ!
真希の左腕でのダンクシュートの音が、体育館中に響いた。
「何よそれ〜!」
着地した美貴が、真希に向かって文句を言った。
「三種の神器の一つ、クロス・ダンク。空中でいる間に身を反転させて、
相手にボールを見せないようにしてたんだよ。最後までシュート体制に
入らないから、ミキティでも止めることはできないよ。」
「う〜、そんなの反則!」
「体に触れてないもん。反則じゃないよ。」
真希は笑って答えると、ボールを美貴に渡してディフェンスについた。
- 672 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:32
- 美貴は一度大きく息を吐き出すと、真希に猛スピードで向かっていく。
「甘いよ!」
美貴のボールを、真希が横から簡単に奪った。
真希の動きが冴え渡っている。
美貴との試合のおかげで、真希の体中のアドレナリンが激しく暴れ周り、
真希は全盛期にも劣らない、いや、その時以上の動きを見せている。
「少しは他のフェイント使ったら?」
「そんなの知らないよ!美貴はバスケ部じゃないもん!っていうか、
ごっちんは少しは手加減しろっての!」
「手加減してほしいの?」
「絶対にいや!」
「ミキティ、矛盾してるよ。」
「美貴は負けたくないの!」
そう言って、美貴はすぐにディフェンスに入る。
- 673 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:33
- 「相変わらずだね〜。でも、後藤には勝てないよ。」
真希のいる位置は3Pライン、真希の動きがほんの僅かだけ鈍る。
シュートを打ってくる、そう思った美貴は、真希に向けて飛び出した。
美貴の予想通り、真希は3Pラインから飛び上がり、シュートを打った。
先ほどとタイミングはほぼ同じだった。
しかし、美貴の手はボールに届かなかった。
その理由は、真希が打ったシュートはフェイダウエイ、つまりは後ろに下がって、
相手の手の届かない位置からシュートを打ったのである。
しかも、真希は常人よりもはるかに高く、大きく後ろに下がった上に、
シュートの高さが並外れて高かった。
それは、二階席で見ている生徒までが見上げるほどに、高い放物線を描いている。
- 674 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:35
- 高く飛び上がる瞬発力、シュート体制を乱さないボディバランス、
そして、高く打ち上げる腕力、シュートの精密さ、それらを持ち合わせる、
まさに真希にしかできないシュートだった。
空中にいる長い滞在時間を得たボールは、数秒後にゴールの中に吸い込まれていった。
「三種の神器の一つ、オーバー・フェイダウエイ。ディフェンスがまず届かない
位置からのシュートだから、絶対防御不可能なのだ〜!」
呆然としている美貴に、真希は嬉しそうに親指を立てる。
「うっわ、むかつく〜。」
美貴は、真希を一睨みしてからドリブルを始める。
「ミキティ、その顔怖いからやめた方がいいよ〜。」
真希の言葉が聞こえていないのか、美貴はただ真希の顔だけを見ている。
美貴が完全に集中しているのがわかる。
それを察した真希も、口を閉ざして美貴の動きを見つめていた。
- 675 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:36
- 「(絶対抜いてやる!)」
「(くるっ!)」
美貴が突進するように走り出す。
真希は狙いを定めて、ボールに手を伸ばした。
決して、体の動きが流されない程度に。
美貴が急ブレーキをかけてくるだろうからだ。
美貴の動きがピタリと止まる。
ここまでは、真希の予測の範囲のうちだった。
あとは右か左か、もしくは上か、真希の反射神経ならば止められる。
そう思っていた。
「(ここだっ!)」
猛スピードで左に飛び込んだ美貴に向けて、真希は手を伸ばす。
ここで美貴は、真希でも予測できなかった行動に出たのだった。
- 676 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:36
- 真希が手を出した瞬間、美貴はさらにブレーキを踏んだのだ。
トップスピードから一瞬で静止状態に戻す、これだけでも
常識レベルを超えているのに、それを連続で使ったのだ。
美貴の鍛え上げられた強靭な脚の筋肉、それがなければ絶対不可能だろう。
真希の体は、完全に左に流れてしまっている。
美貴は一踏みで真希の右を抜いていく。
真希を抜いた美貴は、ゴールに向かって飛び込み、ボールを叩きつけようと
ゴールに腕を伸ばした。
バンッ!
バックボードに強烈な衝撃が走った。
- 677 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:37
- 美貴に抜かれた真希は、一瞬で体を持ち直し、美貴を追い抜くような勢いで
走り出して、横から美貴のボールを叩き付けたのだ。
ボールは転々としてコートを跳ねている。
「うぉぉぉっ!」
「うぁぁぁっ!」
着地した二人は、もの凄い速さでボールに飛び出した。
すでに遊び気分とはいえず、二人の顔は真剣そのものだった。
先にボールを取ったのは真希で、その勢いのままフリースローラインから飛び上がった。
常識はずれの超ジャンプダンクシュート、普通なら誰も止められるはずがなかった。
ただ、それはもう一人の常識はずれを除けばの話しだが。
「負けるか!」
真希が飛び上がった瞬間、同時に美貴も真希に並んで飛んだのだ。
- 678 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:38
- 美貴が真希の持っているボールに向けて、左手を伸ばす。
そうはさせじと真希はボールを一度左手に預ける。
それに気付いた美貴は、今度は右手をボールに手を伸ばす。
しかし、真希はさらにボールを右手に返したのだ。
そして、ボ−ルを軽く放り投げてシュートをしたのだ。
「あっ!」
二人が着地した辺りで、ボールがゴールの輪を潜り抜けていった。
「あ〜、あとちょっとだったのにな〜・・・。」
「最後の三種の神器、トリプル・クラッチ。でも今のは危なかったよ。
さすがはミキティだね♪」
美貴が落ち込んでいるのを見て、真希は笑って美貴を褒めた。
- 679 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:39
- 「美貴ちゃんって、バスケうまかったんだね。」
「うまいなんてレベルじゃないよ。すごすぎだよ・・・。」
愛の言葉に対して、あさ美は口を開けて二人のプレイを見ていた。
確かに、あれだけ一対一で真希を止められる選手など、そう多くはいないだろう。
「あの人って、バスケ部の後藤さんでしょ?やっぱうまいね!」
「相手の人は誰だろ?すごいかっこよくない!?」
「後藤さん、がんばってください!」
「相手の人も、応援してますよ〜!」
二人が一度止まったのを見て、緊張から抜け出した生徒達は
二人に向けて、いくつもの黄色い歓声を上げていた。
今更になってギャラリーに気付いた美貴と真希は、首を傾げながら
周りに軽く手を振り返した。
すると、さらに歓声が悲鳴のように体育館に鳴り響いていく。
- 680 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:39
- 「「・・・。」」
愛とあさ美からしたら、もちろんそれが面白く感じるはずがない。
「後藤さん。」
「美貴ちゃん。」
二人の声を聞いて、美貴と真希は体育館の入り口に視線を移す。
「あれ、紺野だ。いつの間にきてたんだろ?」
「愛ちゃんまで・・・。」
美貴と真希は、走って二人の元に寄っていく。
「後藤さん、今日は練習が休みということはお忘れですか?」
「えっと、知ってるけど・・・。」
「美貴ちゃん、買い物に行くから付き合って。」
「うん、別にいいけど・・・。」
「「なら、すぐに着替えてくる!!」」
「「は、はい!!」」
怖い形相をした愛とあさ美に言われて、美貴と真希は慌てて体育館を飛び出していった。
- 681 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:43
- 「やれやれ、まさか愛ちゃんがあそこにいたとはね〜。」
「紺野、なんであんなに怒ってたんだろ?」
「(何で気付かないのかな、こいつは・・・。)」
美貴はあきれた表情で真希の顔を見つめる。
「それにしてもさ、ミキティもバスケ部に入ったらよかったのに。
後藤をあそこまで抑えることができる人なんて、そうはいないよ。
何度も後藤をフェイント使って抜いてたしね。」
「フェイント?美貴、一度も使ってないけど?」
「・・・わからないで使ってるから、それもまた脅威だね。」
美貴の恐るべし脚力、それはプロでもそう簡単には成し得ることができない、
まさに脅威と言っていいほどの、切り替えしを使えることである。
瞬発力、反射神経、どれもバスケにおいて必要な、それも並外れた能力を、
美貴は持ち合わせている。
これだけの力があれば、美貴もバスケのプロになることが夢ではないだろう。
- 682 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:44
- しかし、真希はあえてそのことを伝えなかった。
藤本美貴という親友を、よく知っているから。
「まぁ、美貴って天才だからね♪でも、ごっちんにはごっちんの
道があるように、美貴には美貴の道がある。悪いんだけど、
美貴は音楽の道を進みたいんだよ。」
思ったとおりの言葉を聞いて、真希は笑みを浮かべる。
「・・・そうだったね。後藤は負けないよ!」
「もちろん、美貴だってやってやるよ!絶対夢を叶えようね!」
「うん!」
二人は立ち止まって、お互いの顔を向き合う。
パンッ!
美貴と真希は、大きく手を叩き合わせた。
そして、再び笑い合って歩き始めた。
- 683 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:44
- 更新しました。
- 684 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:47
- >名無しの荒らしさん
ごっちんには限界はありませんよ〜♪
あいみきというかなんというか、あいみきになるのかな・・・?
まぁ、あいみきですw
>清さん
三種の神器、出しました〜!
めちゃくちゃなので文句があるようでしたら
流しちゃってください。
ミキティもよくがんばりました・・・。
- 685 名前:konkon 投稿日:2005/02/19(土) 18:52
- >真由さん
バスケしているごっちんも可愛いですかw
自分もそう思います(爆)
っつか何しても可愛い!
すいません、こんな調子でやらせていただきます(汗)
>桜娘さん
ごっちんと張り合えるのは現実では紺ちゃん、
非現実ではミキティのみです(謎)
とりあえず、ネタが尽きないようにがんばらせていただきます・・・
桜娘さんのサッカー小説も続き待ってます!
- 686 名前:真由 投稿日:2005/02/20(日) 18:44
- さすが後藤さん!!ですねぇ。もうメロメロですw
ここまでハマってしまった責任とってくださいよ〜(笑
藤本さんと後藤さんのコンビがすごく好きです
更新待ってます♪
- 687 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/02/20(日) 23:55
- 更新お疲れ〜です!
ごっちん&ミキティは恐ろしいですね
さらに焼きもちを妬く愛紺の二人もすごく
イイですよ〜!!!!
次回も頑張ってくらさい
- 688 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/25(金) 13:57
- すんげ〜!二人ともかっけぇ〜!!
恋のほうも進展待ってまぁす☆
- 689 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:42
- 7月下旬、朝比奈学園は夏休みに入っていた。
そんな誰もが楽しむ休みの中、high bredgeのメンバーはというと、
「れいな〜、チョコパフェ一つ追加ね。」
「わかったっちゃ!さゆ、これできたから持ってって!」
「は〜い。」
厨房にいるれいなから差し出されたハンバーグセットを、
さゆみは盆に乗せて持っていく。
「れいな、ミートスパゲッティと、サラダの盛り合わせと、
あとは・・・。」
「レシートを見ればわかるけん、そこ置いといて!あ、絵里!
このカレー、もうすぐできるから持ってって!」
「あ、ちょっと待って。お客さんきたからレジに行くね〜。」
絵里はそれだけ言って、レジの方へとパタパタと走っていく。
- 690 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:43
- 「あ〜、何でこんなに忙しいっちゃっ!」
れいなは厨房で大声を上げた。
絵里、さゆみ、れいなの三人は、同じレストランでバイトをしている。
絵里とさゆみはウェイトレス、れいなは厨房で料理を作っていた。
本当なら、厨房にはれいなともう一人、今日はバイトのリーダーが料理を
作っているはずなのだが、そのリーダーは運悪く客のクレームの対応を
しているために、今はれいなが一人で料理を作っている。
今の時刻は六時過ぎ、夕食時ということもあって客は少しづつ増え始めている。
そんな中、れいなは慌しく厨房の中を駆け回っていた。
「あ、鍋が噴出しそうっちゃ・・・肉が焼きすぎちゃう〜・・・。」
鍋の火を消し、肉をオーブンから取り出して一息ついたれいなは、
ふと店の中を見渡した。
さゆみは、空いたテーブルの上を綺麗に片付けている。
絵里は、笑顔で客の接待をしている。
それでも、二人はゆったりとしたペースで仕事をしていた。
- 691 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:44
- 「何でバイトって資本主義じゃないっちゃ・・・。」
れいなは愚痴を言いながら、再び作業に取り掛かる。
その時、
「「お早うございます。」」
扉から引継ぎのバイト達が入ってきた。
それを見たれいなは、嬉しそうに入ってきたバイトに飛びついた。
「えっと、今はビーフシチューを煮てたとこです!あと、ステーキが焼けたとこなので
セットで出しておいてください!それではあとは任せます!お疲れ様でしたーっ!」
れいなは風のように走り去っていった。
バイト達は、口を開けてれいなが出て行った扉を見ていた。
「絵里、引継ぎの人達がきたみたいだよ〜。」
入ってきたバイトに気付いたさゆみは、レジで立っていた絵里の肩を叩いてそう言った。
「本当?今日はあの日だから急がなきゃね。」
「あ、もうこんな時間じゃん。お疲れ様でした〜。」
「お疲れ様で〜す。」
絵里とさゆみはバイト達に軽く頭を下げて、更衣室へと向かっていった。
- 692 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:45
- 「ありがとうございました。」
コンビニから出ていった客に、愛は頭を下げて見送った。
愛は、ライブハウスからそう遠くないコンビニでバイトをしていた。
ここからならば、バイトのあとでもすぐにライブに出れる、そう考えて決めたのだ。
愛は金を持っていないわけではない。
いや、普通の高校生よりもはるかに多く持っている方であろう。
そのため、美貴の家に住む生活費にも問題はなかった。
だが、何もしないで美貴の家に住むということ、親からもらった金で生きていくこと、
それは愛のプライドが許さなかった。
自分の力で生きていく、そう決めた愛は、自分で働いて生活費を
稼ぐことに専念していた。
「いらっしゃいませ。」
レジに置かれた商品を、愛は次々とバーコードを読み取っていく。
- 693 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:46
- 「ねえ、もしかしてhigh bredgeの高橋愛ちゃんじゃない?」
「あ・・・本当だ!ここでバイトしてるんだ〜。」
愛に声をかけてきたのは、一組のカップルだった。
「俺達high bredgeの大ファンなんだ!握手してくれない?」
「あ、私もお願い!」
「あ・・・はい。」
愛は差し出された手を、順に軽く握り返す。
「次のライブっていつやるの?」
「次は・・・今日、これからあるけど。」
「「えっ!?」」
愛の言葉に、二人は声を揃えて驚いた。
「嘘でしょ?だっていつもとやる時期が違くない?」
「今は夏休みだから、週に一度はやろうと思ってるんだ。」
「そうなんだ・・・失敗したな〜。」
二人は、本当に残念そうに顔を俯かせた。
- 694 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:46
- 「じゃあ、今回はあきらめるしかないか。」
「そうだね。次のライブは絶対行くからね!来週もあるんでしょ?」
「うん、その予定だけど・・・。」
「俺達さ、いつもhigh bredgeの歌に励まされてるんだ!」
「うんうん、愛ちゃんの歌って最高だもん!じゃあ、また来週ね!」
「うん、ありがとう。」
勘定を済ませたカップルは、愛に手を振って店を出て行った。
「でも・・・今の私は・・・。」
愛は二人を見送ると、悲しそうな表情でそう呟いた。
そこで、愛は壁に掛けてある時計の時間を確認する。
「(今日こそはできなきゃ・・・私はhigh bredge失格だね。)」
そう心に決めつけ、愛は更衣室へと向かっていった。
- 695 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:47
- 「えっと〜、呼び出し音は二十番だったっけな。」
美貴は、学校から少し離れたパチンコ店でバイトをしていた。
パチンコ店なら、まず普通の女子高生がくることがないために、
バイトがばれることもない。
それに加えて、時給も他のバイトに比べてけっこう高めである。
そこらを考慮しつつ、美貴はこのバイトを選んだのだった。
「お、今日は美貴ちゃんか〜。ついてるな、これ頼むよ。」
「はいは〜い。お、今日はけっこう儲かったんじゃないですか〜?」
「まぁね。これも美貴ちゃんがいてくれたおかげだよ。」
「フフン、じゃあ、美貴は勝利の女神ってとこですかね♪」
美貴は軽く客との会話を交わして、パチンコ玉の入った箱を積み重ねていく。
「よっと!」
美貴は、普通なら台車に乗せて運ぶところを、一気に五箱もの箱を
積み重ねて軽々と持ち上げる。
- 696 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:48
- 「相変わらずすごいね〜、美貴ちゃんの力は。」
「まぁ、美貴の取り柄の一つだからね。」
客と笑顔で会話しつつ、美貴はパチンコ玉の清算を始める。
「はい、ありがとうございました〜。帰りに襲われないように、
気をつけて帰ってくださいね〜。」
「怖いこというなよ〜。」
美貴はレシートを渡して、客を笑顔で見送った。
「さってと、そろそろ時間かな・・・ん?」
美貴が歩いていると、一人の見知った人物が近づいてきていた。
その人物も、美貴に気付いて足を止める。
「ん・・・お前、藤本じゃねぇか!」
「矢口先生・・・。」
真里は大声を上げ、美貴は苦笑いを浮かべる。
- 697 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:48
- 「や、矢口先生、こんなところで何してるんですか?」
「何って、パチンコに決まってるだろ。明後日からインターハイで
ここを離れるから、今日のうちに軽く打っておこうと思ってな。」
「そっか、ごっちん達、明後日からなんだ・・・。」
「あとで電話でもしてやれよ。っつうか、お前の方が何してんだよ?」
美貴の服装を見て、真里は怪訝そうな表情を浮かべる。
「お前わかってんだろ?うちの学校ではバイトは・・・モガッ!?」
「えっ、何、気分悪いですって?じゃあ、一旦外に出ましょうか!」
美貴は真里の口を素早く押さえ、真里を片手で抱えて走り出す。
「フグッ、ムググ・・・。」
真里は暴れて美貴の腕から逃れようとするが、もちろん美貴の力に敵うわけもなく、
簡単に外に連れ出された。
- 698 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:49
- 美貴はバイトに入る際に、履歴書に嘘を書いていたのだ。
留年したことを理由に、すでに高校を卒業をしてフリーターということになっている。
それならば、10時以降も働けるしパチンコ店でのバイトも何の問題はない。
だが、ここで真里に学校の話しをされて誰かに聞かれると、クビになってしまう。
そうなったら生活費が稼げなくなる、そこまで考えた美貴は真里を説得するために、
強引にも外に連れ出したのだった。
「プハーッ!何しやがんだよ!」
「まぁまぁ、夏休みに入って久しぶりに会えたんだし、少しは
ゆっくりとお話ししましょうよ。」
声を荒げる真里を宥めながら、美貴はどうやってこの場を逃げ切ろうかと考えていた。
- 699 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:50
- 「それにしても、よく店の中に入れましたね。」
「あ〜、別に煙草の匂いはだめなわけじゃないし、よくゲーセンとかにも
行くから、うるさい音とかにも慣れてるんだよ。」
「いや、小学生扱いされて追い出されなかったことが、美貴には不思議で・・・。」
「うるせーっ!大きなお世話だよっ!それよりもお前の方だろ、問題は!」
「(ちっ、誤魔化せなかったか・・・。)」
真里に話しを戻されて、美貴は心の中で舌打ちをした。
「うちの学校では、バイトは禁止なんだよ。それがいかなる理由でも、だ。」
「いや〜、見逃してくださいよ。美貴、バイトしないとお金なくて
生きていけないんですから・・・。」
「だめなもんはだめだ。」
真里は首を縦に振ろうとしない。
そんな真里を見て、美貴は財布から一枚の写真を取り出した。
- 700 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:51
- 「じゃあ、これでどうです?」
「何の写真だ?」
「三年前の美貴の写真で〜す!この写真を焼き増ししてあげますから。」
「買収する気かよ!っつうかそんなのいるか!」
「ひどい・・・ごっちんもいますよ?」
「ふ〜ん、どれ、見せてみろよ。」
真里は、あまり関心なさそうに美貴から写真を受け取った。
美貴から受け取った写真には、三人の少女が楽しそうに笑っている。
真里はじっと写真を見つめたまま動かない。
「だめ、ですかね?」
「いや・・・この写真焼き増ししてくれるなら、考えてみてもいいかな。」
真里は目を泳がしながら、美貴にそう言った。
- 701 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:52
- 「(さっきの矢口先生の表情から推測すると、美貴とごっちんには
あまり興味がない。ということは・・・。)」
「まぁ、藤本もがんばってることだし、ここは大目に見てやっても・・・。」
「目的は安倍さん、ですか?」
美貴の渡した写真には、今より少し幼い頃の美貴と真希、それになつみが写っていた。
美貴の言葉に、真里は慌てて首を横に振った。
「だっ、誰もなっちがいいなんて言ってないだろ!?」
「何で安倍さんのあだ名を知ってるんです?」
「え〜っと・・・。」
真里は頭をかいて、何も言えずにいる。
「(よしっ、もう一押しだな。)」
悩んでいる真里の顔を見て、美貴は口元をにやつかせる。
- 702 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:53
- 「美貴、安倍さんの写真もたくさん持ってますよ。ごっちんと
どっかに遊びに行く時、安倍さんが一緒にいたのもけっこう
多かったし、それに・・・。」
「藤本!」
美貴の話しの途中で、真里は美貴の肩を強く掴んだ。
「バイトがんばれよ!」
「はい!」
「写真よろしくな〜♪」
真里は顔をにやつかせながら、美貴に手を振って帰っていった。
「ふぅ、矢口先生もけっこう単純だね。・・・あっ!もうこんな時間じゃん!
愛ちゃん達に怒られる!急がないと・・・。」
携帯で時間を確認した美貴は、帰る準備をするために走って店の中へと戻っていった。
- 703 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:53
- 更新です〜。
- 704 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 11:58
- >真由さん
絶対無理です。
ごっちんの可愛さからは誰も目を背けることはできませんよw
自分もミキティ&ごっちんのコンビ、
なんかすごい好きなんですよね〜。
>名無しの荒らしさん
一応メインとなるこの四人、めちゃくちゃ好きです!
絶対にこの四人で何かをさせたい、そう思っている
今日この頃ですw
とりあえず、いずれは萌えの方向へ・・・(爆)
>名無し飼育さん
かっこかわいい二人です♪
恋・・・どちらもできれば早めに実現させたいと思ってます。
というわけで、今後もまたよろしくです!
- 705 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 12:08
- ミキティ、誕生日おめです!
とうとう20になりましたね。
これで煙草を吸わせても違和感がないかも・・・w
- 706 名前:秋嵐 投稿日:2005/02/26(土) 16:27
- はじめまして
なっちに弱いやぐっちゃんかわいいですww
私も3人が移った写真
焼き増ししてほしいです(笑)
白版の方もがんばってください。
- 707 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/02/27(日) 01:33
- お疲れ様
high bredgeのみんな夏休みにバイトを・・・
あれっ!?バイト大丈夫なんですか?
れいなは料理できたんですねぇ、思いがけない感じです
それにしても、なっちの名前を聞いた瞬間人が変わりましたな矢口先生。
なっちパワー素晴しいですね。
- 708 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:32
-
バタンッ!
楽屋の扉が勢いよく開かれた。
ライブの準備をしていた絵里、さゆみ、れいなの三人は、そちらに視線を向ける。
「ハァッ、ハァッ、ぎりぎり・・・かな?」
そこには、汗をかいて息を切らしている美貴が立っていた。
「遅かったですね〜。」
「さゆ達は、もう準備できてますよ。」
「早くせんと、始まっちゃうっちゃ。」
少し怒った口調で、絵里達は美貴に次々と言葉を発した。
「ごめんごめん、すぐに準備をするよ。」
そう言って、美貴はライブ用の衣装に着替え始める。
- 709 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:33
- 「あの、藤本さん。ちょっといいですか?」
着替え終わった美貴の傍まで、絵里が近づいてそう聞いた。
「愛ちゃんのことなんですけど・・・。」
「愛ちゃん?」
二人は同時に愛に視線を向ける。
愛は、いつも通り椅子に座って目を瞑り、集中力を高めていた。
「何か、最近変わったとことかありませんでした?」
「変わったとこね〜・・・。」
美貴は腕を組んで考え込む。
「絵里が思うにはですね・・・。」
「絵里、美貴ねえ、時間ばい。」
絵里の話しの途中で、れいなが二人を呼んだ。
- 710 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:34
- 「っつうか田中ちゃん、何で美貴ねえって呼ぶの?」
「ん〜、呼びたいから。それじゃ理由にならんとね?」
「いや、別にいいけどさ・・・。」
遊園地に行った辺りから、れいなは美貴のことを"美貴ねえ"と呼ぶようになっていた。
美貴は、自分が無茶ばかりしているからだと思っているが、れいなからしたら
姉のように慕いたいと思っているからだ。
愛とは違う、どこか人を引き付ける力を持つ美貴に、れいなは憧れを持ち始めていたのだ。
もちろん、れいながそのようなことを美貴に伝えるはずもなかった。
「れいなのこともれいなでよか。その方が落ち着くばい。」
「わかったよ、れいな。ところで、飯田さんは?」
普段なら時間には圭織が呼びにくるのだが、今日はきていない。
それが気になった美貴は、れいなに聞いた。
- 711 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:34
- 「飯田さんは、何か他のバンドと話しがあるから、時間になったら
自分達で勝手に行ってくれって、ここにきた時にそう言われたんです。」
れいなより先に、隣にいたさゆみが答えた。
「ん、わかった。愛ちゃん、行こう。」
美貴は愛に近づいて呼びかけた。
しかし、愛は全く反応しない。
「愛ちゃん?」
「・・・何?」
二度目の呼びかけで、愛はようやく顔を上げた。
「時間だってさ。今日も暴れてやろうぜ!」
「・・・うん。行こうか。」
愛の口調や表情、雰囲気などはあまり普段と変わりはない。
だが、よく一緒に行動している美貴には、愛のごく僅かな表情の変化も
見逃すことはなくなっていた。
愛の目は、やる気には満ちていたがどこか寂しげで、悲しい目をしていた。
「(・・・そんな顔しないでよ。美貴が悲しくなっちゃうじゃん。)」
美貴はそう思ったが、口には出さずに愛達と共に楽屋を出て行った。
- 712 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:35
- 「みんな〜!次の曲にいくでーっ!THE PEACE!」
愛の掛け声と共に、観客が大きな歓声を上げる。
愛は曲に乗りながら、笑顔を振りまいて歌っていく。
時々腕で振り付けなどもして、本当に楽しそうに歌っている。
「(高橋さん、元気なかったけど・・・。)」
「(この調子なら平気そうっちゃね。)」
さゆみとれいなは、それぞれの楽器を弾きながらそう思った。
「(この歌は平気みたいだね〜。っとなると・・・。)」
絵里だけは、楽しそうにベースを弾いているのだが、冷静に何か考え事をしていた。
「(やっぱ、ライブって最高だね!)」
美貴はというと、ギターの合間を縫って愛の振り付けを真似て踊っていた。
そして、ゆっくりと曲が終わっていく。
- 713 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:36
- 「次の曲はけっこう悲しい歌やけぇ、みんなは泣かないで聞いてね!」
愛の言葉で、美貴達や観客は笑い始める。
「いやいや、本当やから。では心を込めて歌います。AS FOR ONE DAY。」
ゆったりとしたメロディから始まるこの歌、会場の雰囲気も先ほどよりも静かになっている。
観客達は、愛の歌を真剣に聞いている。
しかし、その当人の心境はかなり複雑だった。
「(何でなの・・・?)」
誰が見ても、愛には何も変わったところは見られない。
恐らくは、いや確実に観客達は気付いていないだろう。
だが、high bredgeのメンバーだけは愛のごく僅かな変化に気付いていた。
high bredge特有の雰囲気、それが愛だけが微妙にずれていたのだ。
- 714 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:36
- 愛は、歌いながらなんとか合わせようとする。
それでも、愛の雰囲気が他のメンバーと交わることはなかった。
「(高橋さん・・・。)」
「(どうしたんだろ・・・?)」
「(愛ちゃん、がんばって!)」
絵里、さゆみ、れいなの三人は、それぞれの想いを込めて愛に合わせようとする。
それでも、なかなか雰囲気がかみ合わせることができない。
徐々に音が下がり、歌が終わっていく。
雰囲気のずれに気付かない観客達は、声援と拍手を愛に送っている。
愛は一度頭の中を振り切って、観客達に笑顔を向ける。
「ありがと〜。それじゃ、最後の曲にいくよ!この曲は・・・。」
「美貴が作ったんだよーっ!」
横から走ってきた美貴が、愛が持っているスタンドマイクを奪ってそう叫んだ。
- 715 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:39
- 「えっとですね〜、次に歌う新曲はなんと美貴が作りましたーっ!
まだまだ作詞作曲、共に未熟者だけど、心を込めて歌詞を作り上げ、
曲はほんわりとした感じの・・・。」
「邪魔。」
少し怒ったような表情で、愛が美貴の頭を押してマイクから離させた。
「美貴ちゃんはギターを弾いてればいいの。ほらっ、戻って戻って。」
「愛ちゃん、ひどい・・・。」
美貴が泣き真似をしながら、自分の位置に下がっていく。
それを見て、観客達は大笑いをしていた。
周りでは、絵里達も声を出して笑っていた。
- 716 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:40
- 「(さって、これで少しは愛ちゃんが元気になってくれればいいけど・・・。)」
「お恥ずかしいところをお見せしました。それじゃ、聞いてください。
とりあえずはあれが作った新曲です。Don't stop tears。」
「(あれ扱いかよ!)」
美貴は心の中で突っ込みを入れてから、ギターで音を作り出す。
愛が歌い始めてからも、やはり五人の空気が交わらない。
「(何で・・・何で私だけ合わせることができないの?私は・・・
私には、歌しかないのに・・・。)」
愛は、周りの観客には笑顔を振りまいてはいるが、心の中ではほとんど泣き顔に近かった。
絵里達は、愛に合わせようと音を調節していく。
そんな中で、美貴は愛の歌声にたまに軽く首を頷かせていた。
- 717 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:41
- 「(なるほどね〜。美貴が作った歌だから、愛ちゃんがどうして美貴達に
合わせられないのか、よくわかったよ。そういうことだったんだね・・・。)」
美息は軽く笑って、自分自身が作り出す雰囲気を変え始める。
「「「「(!?)」」」」
ほんの一瞬だけ、愛達四人は美貴に視線を向けた。
そして、すぐに観客に視線を戻す。
美貴だけが、愛と全く同じとはいえないが、ほとんど似た雰囲気を出し始めていたのだ。
「(何で、美貴ちゃんが私に合わせられるの・・・?)」
「(頭いいのも悪くないけど、愛ちゃんは考えすぎだよ。)」
愛はもう一度だけ、小さく美貴を振り向いた。
そのときに、美貴は愛に優しい笑みを向ける。
それを愛がどう受け取ったのかはわからない。
結局ライブ自体は成功だが、五人全員が雰囲気を合わせられることなく
ライブが終わっていった。
- 718 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:43
- 「ん〜、ライブのあとってすごい爽快感があるよね〜。」
美貴は着替えながら、言葉通り爽やかな笑みで愛達に言った。
だが、ライブの光景を思い出している愛も、普段なら話しをしている
絵里、さゆみ、れいなの三人も、美貴のことを訝しげな目で見ていた。
「美貴ちゃん・・・どういうことなの?」
愛は、消えそうな声で美貴に聞いた。
「どうして、私だけがずれてるの?何で私に合わせることができたの?」
「ん〜、知りたい?」
「うん・・・そうでなきゃ、私が、私のせいで、high bredgeを壊しちゃうよ・・・。」
愛はすでに泣きそうな顔をしている。
「・・・本当にそうかな?」
美貴は軽く愛の頭を撫でて、そう言った。
「美貴は今のhigh bredgeを壊すのも、そう悪くないと思う。もちろん、
いい意味でだよ。むしろ、愛ちゃんが壊してもいいと思うんだ。」
愛は無言で美貴の顔を見つめている。
- 719 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:44
- 「あの〜、藤本さん。何か知ってるんです・・・。」
「亀ちゃん達さ、明日は何か用事ある?」
絵里の言葉を遮って、美貴は絵里達を振り向いた。
「絵里は、夕方からちょっと用事が・・・。」
「れいなとさゆは、特にないばい。」
「それじゃあさ、美貴の家で打ち上げやらない?」
「「「「打ち上げ?」」」」
美貴の言葉に、愛達は首を傾げる。
「そ、たまにはいいんじゃないかな〜ってね。もう夏休みに入ってるんだしさ、
ミーティングも最近やってないから、たまには本音で語り合っちゃったりとかね。
あ〜、何か楽しそ〜!そうと決まれば買出し行ってこなきゃ!愛ちゃん、みんなを
家に連れてってあげてね。美貴はスーパー寄って帰るから。またあとでね〜!」
それだけ言って、美貴は楽屋から出て行った。
愛達は、美貴の行動についていけずに、少しの間その場で固まっていた。
- 720 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:44
- 更新しました。
- 721 名前:konkon 投稿日:2005/03/05(土) 13:49
- >秋嵐さん
初めまして〜よろしくです!
完全に弱点と化してますねw
三人揃って安藤美貴、な〜んて(爆)
週1で更新したいと想ってますのでまたよければ
見てやってください♪
>名無しの荒らしさん
もちろん、バイトは隠れてやっていますよ。
自分もそうでしたw
れいなってウエイトレスはちょっと似合、わな、いか、な・・・
って感じだったので、なんとなくカッコイイ方にしてみました。
- 722 名前:秋嵐 投稿日:2005/03/05(土) 15:05
- 更新お疲れ様です。
さすがミキティー愛ちゃんに関しては
24時間レーダーが反応してます(笑)
後紺&愛美貴のこれからが楽しみです。
- 723 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/03/06(日) 15:23
- お疲れ様
どうしたんでしょう愛ちゃん?
自分の歌が歌えないことに悩んでますね。
ミキティはそのワケがわかってるみたいですが・・・
- 724 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:45
- 「あーっ!美貴ねえ、それ、れいなが焼いてた肉だっちゃ!」
「フフン、早いもの勝ちだよ♪」
美貴が食べた肉を見て、れいなはひどく落胆した。
「れいなの肉が・・・。」
「・・・また焼けばいいじゃない。」
落ち込んでいるれいなに、愛が突っ込みを入れる。
「もう絶対渡さんとね!っつうか・・・。」
「にゃ〜!」
突然、トレインがれいなに向かって大声で鳴いた。
「何でトレインは、れいなにばっか突っかかってくるっちゃ!
ペットは飼い主に似るっていうのは本当っちゃね・・・。」
「れいな、それはどういう意味かな〜?」
「い、いえ、深い意味はなかですと・・・。」
れいなは、どこか怖い笑みをしている美貴に、首を何度も横に振った。
- 725 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:45
- 「れいなも同類に見られたんじゃないの?」
「トレイン、おいで〜。」
絵里が手招きすると、トレインは絵里の膝の上で丸くなる。
「ほら、可愛い〜♪」
「何か不公平ばい・・・。」
絵里がトレインの背中を撫でているのを見て、れいなは深いため息をついた。
「それにしても、藤本さんってけっこういいとこに住んでるんですね〜。」
「家賃とかって高いんじゃないんですか?」
「そうでもないよ。ここの管理人さんって美貴の親戚の人だから、
家賃は半額くらいで済んでるんだよ♪」
絵里とさゆみの問いに、美貴は笑顔でそう答えた。
- 726 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:46
- high bredgeのメンバーは、美貴の家で焼肉を食べていた。
周りには、何本かのビールやチューハイ、ジュース等が置かれている。
夏休みだから、という理由で美貴が買ってきたものだ。
ミキ以外の四人は初めて酒を飲むようで、戸惑いながらも少しづつ口に運んでいる。
久しぶりのメンバー全員での食事、美貴達はテーブルを囲んで、いろいろと
話しながら盛り上がっていた。
愛もそのうちの一人だ。
だが、心はここにあらずといったところか、愛は時々遠くを見つめてぼーっとしていた。
「愛ちゃん、どうしたの?もう酔っちゃった?」
愛の隣に、美貴が座り込んだ。
美貴に肉を取られたれいなは、二度と取られまいと必死に焼いている肉を守っている。
絵里とさゆみは、缶ジュース片手に笑いながら話している。
- 727 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:46
- 「美貴ちゃん・・・さっきのことなんだけど・・・。」
「いや〜、愛ちゃんも美貴の気持ちをわかってくれてたなんてね〜。」
「同じ?」
美貴の言葉に、愛は軽く首を傾げる。
「藤本さん、何を知ってるんですか〜?」
愛との話しの途中で、絵里が口を挟んだ。
さゆみとれいなも、黙って美貴に視線を向けている。
「じゃあ、みんなに質問するよ。確かさ、初めて美貴が作った歌を、
曲に合わないってみんなで詩を変更したよね。それって何でかな?」
「それは・・・曲調と詩が合わないからで・・・。」
美貴の問いに、さゆみが恐る恐る答える。
- 728 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:47
- 「重さん、何で合わないと思ったの?」
「悲しい詩だったけん、曲が激しすぎるとよ。」
さゆみより先に、れいなが口を開いた。
「それってさ、何を意味するのかな?」
「何って・・・あっ!」
それまで黙って聞いていた絵里が、声を上げた。
「そういうことだったんですか〜・・・。」
「おっ、亀ちゃんは気付いたみたいだね。見た目とは裏腹に、
けっこう鋭いんだね。」
「藤本さんには言われたくないですよ〜。」
「絵里、何がわかったん?」
美貴と絵里の話しに、さゆみとれいなは困惑していた。
- 729 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:48
- 「愛ちゃんの歌に対する感情が、強くなってきたってことですね?」
そこで、絵里は愛に視線を向ける。
愛は、どこか難しい顔をして話しを聞いている。
「今までの愛ちゃんは、とにかく歌をうまく歌おうって気持ちが
強かったんだと思う。でも、今は歌自体の感情も伝えようとしている。
それが、美貴達が合わせられなかった最大の理由だと思うんだ。」
そう言って、美貴はビールに口をつけた。
「愛ちゃんの歌で絵里達がずれた歌は、主にAS FOR ONE DAYや、
Don't stop terasのような恋する気持ちを伝えるって歌が
多かったですね。他の曲でも、もちろん恋愛に関する歌は
あるけど、それは勢いに身を任せるっていう気持ちのほうが強かった。」
「歌詞を理解して、その想いを相手に伝える歌い方を覚えた・・・。」
「美貴ねえが言ってたhigh bredgeを壊すって、さらに進化するって
ことだっちゃね・・・。」
絵里に続いて、さゆみとれいなも同調した。
- 730 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:49
- 「ってことは、つまり・・・。」
れいなが少し戸惑った感じで、絵里を振り向いた。
「そう、絵里達も進化しないといけないってことだよ。もっとうまくなって、
愛ちゃんに追いつかないといけないんだよ。」
「うわ〜、さゆ達もっとがんばらないとね!」
「そんなこともないと思うよ〜。藤本さんでもできたくらいだもん。
絵里達だったらすぐにできちゃうよ。」
「亀ちゃん・・・美貴、かなり傷ついてるんですけど・・・。」
絵里の何気ない言葉に、美貴は苦笑いを浮かべる。
そんな美貴も知らずに、絵里達三人はやる気を露にして盛り上がっていた。
「まあ、そんなわけだから、愛ちゃんが気にすることは全然ないんだよ。」
美貴は愛の頭を優しく撫でる。
- 731 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:50
- 「でも・・・。」
「愛ちゃんがうまくなっているのに対して、美貴達はまだ追いつけてない。
でも、一緒に上を目指すんでしょ?だから、美貴達はもっとうまくなるよ。
愛ちゃんを支えられるように、美貴は誰よりも強くなる。約束するよ。」
「そう・・・ありがとう。」
美貴の話しを、愛は軽く笑って頷いた。
「けどね、私だって止まらないよ。一番上を目指してるんだからね。」
愛は不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「もちろんだよ!high bredgeの名を世界中に轟かせてやろうね!」
「うん。」
美貴と愛はそこまで話すと、目を合わせて笑い合った。
- 732 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:50
- 「そういえば、愛ちゃんは誰を好きになったんですか〜?」
突然の絵里の言葉に、愛の体が固まった。
「そうだよね〜。高橋さんは好きな人ができたから、恋愛の歌に
感情を乗せて歌えるようになったってことですよね〜。」
「もしかして、美貴ねえのことですか?」
「だ、誰がこんなの好きになるんやけ!?」
愛は勢いよく立ち上がって、首を大きく振って否定した。
「愛ちゃん、こんなのってひどすぎない・・・?」
「やったら、もっと男らしくなるんやざ!」
「いや、美貴は女だから・・・。」
絵里達は、美貴と愛のやりとりを笑って見ている。
- 733 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:51
- 「愛ちゃん、顔赤いですよ〜。」
「高橋さん、可愛い〜♪さゆには負けるけどね。」
「そんな照れんでもよかね。」
「て、照れてなんかないわ!お酒に酔っただけやよ!」
「愛ちゃん、方言丸出しだよ。興奮しすぎだから。」
「う、うるさいわ!大体美貴ちゃんが原因でこうなっとるんやけぇ・・・。」
愛は渋い顔をして座り直す。
愛がいじけ始めたのを見て、絵里達は笑いながら宥めている。
そこで、美貴は一息ついて上を見上げた。
「(楽しいな。美貴、high bredgeに入れて本当によかったよ・・・。)」
美貴は天井を見つめて、一つの想いを胸に抱いた。
絶対にhigh bredgeを守る、そう心に決めつけた。
「藤本さ〜ん。助けてくださ〜い。」
横からそんな情けない声が聞こえてきた。
そこを振り向くと、なぜか部屋の隅の方で、愛が絵里達に正座をさせて説教をしている。
美貴は軽く笑みを浮かべて、愛達のもとへと寄っていった。
- 734 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:52
- 更新しました。
- 735 名前:konkon 投稿日:2005/03/12(土) 10:56
- >秋嵐さん
ミキティレーダーは最強ですからw
愛のことをそれだけよく見てるってことですね〜♪
次からはまたこんごま編に行きたいと思います。
>名無しの荒らしさん
一時期の愛ちゃんを書いてみました〜。
いつだったかは忘れたけど(汗)
愛と同棲?しているミキティにしかわからない
ことでしょうね〜。
- 736 名前:秋嵐 投稿日:2005/03/12(土) 13:26
- 更新お疲れ様です。
おぉ!次からはこんごまも登場ですか!
密かに私はこんごまの方が好きなので(ォィ
楽しみに待っています。
- 737 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/03/12(土) 14:51
- お疲れ様です
なるほど!
愛ちゃんの歌に対する感情が強くなったんですかぁ
それに気付いて変わっていこうとするミキティも
格好いいですね。
世界中を轟かせる、でっかい目標ですね。
- 738 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 06:21
- ageレス&ネタばれレスは勘弁願いたい。
- 739 名前:秋嵐 投稿日:2005/03/14(月) 18:27
- >738さん
ご指摘ありがとうございます。
Konkon様にもご迷惑をかけてすいませんでした。
以後気おつけます。
sage
- 740 名前:秋嵐 投稿日:2005/03/14(月) 18:28
- すいません。上げてしまいました。
重ね重ねご迷惑をかけてすいません。
- 741 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/14(月) 21:15
- sageはメールに入れるんですよ。
作者さん一応落としておきますね
- 742 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:31
- 「ただいまより、全国高等学校総合体育大会、バスケットボール選手権大会を、
開催することをここに宣言いたします!」
試合会場となる体育館で、インターハイの開会式が行われていた。
ここには今、真希達を含む全国の猛者、全60チームが勢揃いしている。
真希達はこのあと、トーナメント順によってすぐに試合が行われる予定になっている。
「紺野、いよいよだね。」
「は、はい!」
控え室で準備をしているあさ美に、真希は優しく声をかける。
「そんなに緊張することないって。いつも通りに一生懸命にやればいいんだからさ。」
「は、はい・・・。」
真希の声を聞いても、あさ美の体の震えは止まらない。
それは、ここにいる部員全員が同じような状態だった。
顧問である真里も、緊張のしすぎからか何やらぶつぶつと独り言を言っている。
- 743 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:32
- なんといっても、朝比奈学園初のインターハイ出場である。
そのプレッシャーと、会場に募っている独特の雰囲気に飲まれては、
緊張しない方がおかしいのかもしれない。
しかし、真希だけは普段と大して変わった様子は見られなかった。
そこで、真里は真希の口元が動いていることに気付いた。
「・・・後藤、何食べてるんだ?」
「んあ、ガムだよ。やぐっつぁんも食べる?」
真希は一度ガムを風船状にして膨らますと、ポケットから数枚のガムを取り出した。
「余裕だな〜。おいらなんて、緊張して手が震えてんのに・・・。」
「違うよ。その逆、緊張してるから食べてるんだよ。」
「・・・?」
真希の言葉に、真里は首を傾けて難しい顔をしている。
- 744 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:33
- 「平均脈拍数130、この状態が人は一番力を発揮できるんだよ。
そのためにも、ガムを噛んで気持ちを落ち着かせてるってわけ。
野球選手がよく噛んでるのを目にしないかな?あれだって、
カッコイイからとか、好き好んで食べてるわけないでしょ?
緊張を解すために噛んでるんだってさ。さすがに試合中までは
食べれないけど、今のうちに落ち着いておかないと、後で試合に
ならないかもしれないからね。」
「・・・すごいな。よくそんなこと調べたな。」
「バスケでうまくなれるんだったら、後藤はどんなことでもするよ。
誰にも負けたくないからね。ってなわけで、やぐっつぁんも食べない?
なんならみんなにも分けてあげてよ。」
そう言って、真希は何枚ものガムを真里に渡す。
- 745 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:35
- 「いいのかよ?お前の分が無くなるぞ?」
「まだまだたくさんあるからいいの。紺野も食べる?」
「いえ、私はいいです・・・あの、トイレに行ってきます。」
「あ、後藤もついてく。」
あさ美について真希も控え室から出ようとする。
「もう少ししたら作戦会議始めるから、さっさと帰ってこいよ。」
「は〜い。」
真里にそう言われて、真希は軽く手を振って控え室を出て行った。
真希達が歩いていると、前から他校の数人のグループが歩いてきた。
それを見たあさ美は、思わず足を止めてしまう。
「美勇伝高校・・・。」
あさ美は、小さい声でそう呟いた。
- 746 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:36
- 「紺野、知ってるの?」
「も、もちろんですよ!バスケをやっていて、知らない人は
いるはずありませんよ・・・。」
前から歩いてきた生徒達は、毎年インターハイで優勝している王者、
美勇伝高校の生徒だった。
それも、今年の美勇伝は過去最強とまで言われている。
春の大会では、周りを寄せ付けない圧倒的強さで優勝している。
インターハイに出る学校は、何よりも先にチェックしなければ
ならない高校だろう。
「ってことはさ、あの二人のことも知ってる?」
そう言って、真希はグループの先頭を歩いている二人に視線を向ける。
- 747 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:37
- 「はい。毎試合30点以上も点を決めるという、攻撃の要である、
スモールフォワード(SF)の三好絵梨香。それに、まだ二年で
ありながら高校NO.1PGとまで言われていて、さらには
鉄壁の守りを誇る、岡田唯。すごい有名な人達ですよね・・・。」
真希達の前で、美勇伝高校の生徒は足を止める。
そして、前にいた二人がさらに一歩前に出てきた。
「久しぶりね。後藤さん。」
片方の生徒、三好絵梨香が真希の名を呼んだ。
「えっ?」
絵梨香の言葉に反応したのはあさ美だった。
あさ美は、口を開けて真希と絵梨香を交互に見ている。
「久しぶりだね。絵梨香に唯・・・。」
真希はフッと笑って返事をした。
- 748 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:38
- 「こうやって向き合ってる姿なんて、夢にも思いませんでしたよ。
まさか、後藤さんと戦うことになるかもしれないなんてね。」
今度は、隣にいた唯が口に出した。
「後藤もだよ。でもさ、後藤は二人と戦いたくて、体がうずうずして仕方ないよ。」
「後藤さん、何であなたはあの時、美勇伝中学から転校なさったのですか?」
唯の言葉に、真希は顔を顰める。
「・・・いろいろとあったんだよ。」
「美勇伝中学にいれば、あなたは今頃世界で戦えていたのかも
しれない。そうでなくても、たくさんの技術を学んで、もっと
うまくなっていたのかもしれない。それを私は見たかった。
それが、今は名も知らない高校でバスケをしていたなんて、
私は非常に残念です。」
唯は、一気にそこまで捲くし立てる。
あさ美は黙ったまま話しを聞いている。
- 749 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:38
- 「・・・そうかもしれないね。でもね、いろいろあったっていうのも
あるけど、あそこはバスケに縛られすぎているから、後藤には
元から合わなかったんだよ。あそこでは自分が成り上がろうと、
他者を突き落としてでもっていう感情が強すぎて、自分のことしか
考えていられなかった。そんなの後藤はいやなんだよ。楽しくやれれば
それでよかったんだ。それにね・・・。」
そこまで話すと、真希はあさ美の肩を抱き寄せる。
「わっ・・・。」
「最高のパートナーにも巡り合えた。後藤はこの学校に入ったことを、
全く後悔してないよ。」
「・・・そう、あなたの言いたいことはわかった。」
それまで黙っていた絵梨香が口を開く。
- 750 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:39
- 「けど、あなたがいなくなって、あなたと同じポジションだった私は、
いつも比較の対象にされていた。後藤の方がよかった、仕方なく
三好を使う、いつもそんなことばかり言われていた。だから、
私はバスケットの本場、アメリカに一年留学して、技術を
磨いてきた。二度と後藤真希の名に消されないようにね。」
「・・・。」
「朝比奈学園という、初めて聞いた高校の選手名を調べていたら、
あなたの名前があって驚いたよ。それと同時に、武者震いをした。
あなたと戦いたいと思った。だから、絶対に決勝戦まで
勝ち上がりなさい。あなたの高校と戦うには、美勇伝は
反対グループ、ゆえに決勝戦しかないのだから。」
「・・・わかった。」
真希と絵梨香が睨み合う。
- 751 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:40
- 「・・・It is never defeated at you this time. We and,
it is Biyuuden to win the championship. 」
突然絵里香が真希に言ったのは、英語だった。
アメリカにいただけあって、なかなかうまい発音だと真希は冷静にそう思っていた。
先に目を放したのは絵梨香で、軽くあさ美を一瞥して先へと進んでいく。
「It is a serif by Goto. Goto cannot be never defeated at anyone.
We it is in Asahina educational institutions that win.」
真希は、絵里香を振り向きもせずにそう言った。
次に真希が発した言葉もまた英語だった。
絵里香に劣らない、綺麗でスピーディな発音だった。
それを聞いて、絵里香は振り返らずに立ち止まる。
- 752 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:40
- 「・・・looking forward.」
「Let's meet in the final.」
そこまで話すと、絵里香が先へと進んでいく。
「よくわかんないけど、決勝でお会いしましょう!」
唯は真希に軽くお辞儀をして、絵梨香のあとをついていった。
他の生徒も、二人について歩いていく。
そこで真希は、自分のことをじっと見ているあさ美に気付いた。
「後藤さん、あの人達と、知り合い・・・ですか?」
「うん、中学の時の仲間だよ。後藤、一時期は美勇伝中学にいたんだ。」
「・・・ご両親のことは、話してないのですか?」
「まぁ、ね。それを理由に逃げるのもいやだし、あの学校でバスケを
することが苦になったのも、本当のことだから。」
真希は軽く笑って歩き始める。
- 753 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:41
- 「でも、負けられない理由がまた一つ増えたよ・・・。」
真希の言葉で、あさ美は一つの決心をして顔を上げる。
「後藤さん、私達もがんばりますから、絶対に決勝まで勝ち進んで、
美勇伝に勝ちましょう。」
「紺野・・・。」
「それが、一番正しい答えだと思います。」
「・・・ありがとう。」
真希は優しい笑みであさ美の頭を撫でる。
「ところで、三好さんと何を話してたんですか?」
「・・・そういえば、紺野って英語が苦手だったんだよね。」
あさ美は英語が苦手だということを思い出し、真希は苦笑いを浮かべる。
- 754 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:42
- 期末テストにしても、英語以外の教科はほぼ満点に近かったのに
対して、英語だけは半分ほどしかとれていなかった。
あさ美は、二人の会話が英語になったと同時に、真希と絵里香の
話しを全く理解できずにいた。
「絵里香はね、"今度こそは私が勝つ。そして、美勇伝が優勝する"って
言ってたんだよ。それに対して後藤はね、"それは後藤のセリフだよ。
後藤は誰にも負けられないんだ。勝つのは私達朝比奈学園だよ"って言ったんだ。」
「ほうほう・・・。」
「"楽しみにしてる"ってさ。だから、"決勝で会おうね"って言ったんだよ。」
あさ美は何度も首を頷けて、真希の和訳を聞いていた。
自分で言ったことを思い出し、真希は真剣な表情で上を見上げる。
真希が出した答え、それが正しいことを証明するには、真希が美勇伝と試合をして
結果を出すことしか、残されていなかった。
- 755 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:42
- 今日はここまでです。
- 756 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:47
- >秋嵐さん
こんごま(バスケ)編に突入です♪
気にしないでください。
自分も最初はわかってませんでしたから(汗)
>名無しの荒らしさん
なんたって、ミキティは愛ちゃんの・・・(謎)
愛ちゃんもミキティも応援したいですw
ミキティがどこまでやれるか、楽しみにしていてください♪
- 757 名前:konkon 投稿日:2005/03/15(火) 21:49
- ちょっち遅れてミキティ、デビューから
3周年おめ〜!
- 758 名前:清 投稿日:2005/03/15(火) 23:18
- どうも、お久し振りです!
全国で一番強いのは美勇伝っすか…
三好さんと岡田さんのプレーが気になりますな…
って決勝で会おうって事は反対のブロック通しなんですね。
あ、あとちょっと疑問に思ったんですが、参考にしている漫画とかありますか?
微妙にセリフで似たものがあったので…
それと、美勇伝高校は春の大会で優勝と言ってましたが、春の大会となると総合体育大会になりますよ…
あ〜なんか細かい話になりますが、厳密に言うと5月に高校総合体育大会(総体)の地区予選があり、6月頃に県総体、7月か8月に全国大会(インハイ)ってな風になるんですよ…。
それで夏にまた違う大会の予選があって、それに勝ち進むとウィンターカップになったような…
あれ?でも違うかもしれません…
バスケ部だったけどそんなに勝ち進んだ事ないんで上の方の試合には疎いんで…
もしかしたら間違えているかもしれません。
でしゃばりすぎた話ですいませんm(_ _)m
でも内容はめっちゃ楽しいんで、オイラのコメントはシカトの方向で頑張って下さい!
感想は山程あるんですが、時間がなくてなかなかレス出来ないんですが応援してまっす。
- 759 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/03/15(火) 23:49
- >738さん
ご指摘どうも、でも正直ageなどの意味が分かりません。
あと、作者のkonkonさんご迷惑おかけしました。
そして更新お疲れ様です。
ここで美勇伝が出てきましたね、
しかも全国一ですよ。
インターハイ楽しみです
- 760 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/16(水) 00:31
- >759
mail欄にsageと半角で入れると、スレッドが上に行かず、
今あるいちのまま。
mail欄にage、何も書かない等、sageといれないと、スレッドが一番上にあがります。
下がっているスレッドにageレスすると更新と間違うので、あまり好ましくない。
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/16(水) 00:56
- >>名無しの荒らしさん
738さんではないですが…
レスする前に、FAQや小説板自治スレをお読みになったほうがいいと思います。
ずっとageレスをされているようなので。
作者さんスレ汚し失礼致しました。
- 762 名前:秋嵐 投稿日:2005/03/16(水) 18:13
- 更新お疲れ様です。
いろいろご迷惑を掛けてすいませんでした。
応援しているのでこれからもがんばってください。
- 763 名前:真由 投稿日:2005/03/18(金) 13:24
- 朝比奈学園、、美勇伝に負けないで〜!!
なんて思っちゃったりw
紺野さんと後藤さんのィィプレーを見せつけてあげたいっすね。
更新待ってます。
- 764 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 11:38
- 研究内容ならまだしも台詞まで…
- 765 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:27
- 「はい、全員集合!」
試合前の練習が終わり、部員達は真里の元へと戻っていく。
あと数分で真希達の初戦が始まる。
「いいか、相手は優勝候補とまで言われている強い高校だ。
どいつもこいつも、みんなうまいらしい。でも、うちの
メンバーならば勝てるとおいらは確信している。」
真里は笑みを浮かべて真希達を見据える。
「ただ一つ問題なのが、身長が180を超えているセンターの5番だ。
今大会で、NO1センターとまで言われているほど、ゴール下では
強いらしい。なんといっても、こいつがディフェンスについたときには、
ゴール率が20%以下、つまりは相手のシュートを五本中四本は、
止めているってことだ。だから、こいつをゴール下まで入れさせないこと、
それが目標だな。相手に仕事をさせるなよ。ぶっ潰せ!」
真里は腕を組んで、真希に視線を向ける。
- 766 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:28
- 「こいつには、ディフェンス時には後藤についてもらう。
後藤のジャンプ力なら相手に引けを取らないし、力負けも
しないだろうから・・・って、後藤、大丈夫か?」
そこで真里は、真希の体が震えていることに気付いた。
「おいおい、どうしたよ?今更怖くて震えてんのか?」
「まさか、武者震いってやつだよ。気にしないで。」
真希は笑って真里を見据える。
「(むしろ逆だね。嬉しいんだよ、それだけ強い相手と戦えることがね。)」
「相変わらず面白いやつだな・・・それじゃ、あとは作戦通りにいくぞ。
朝比奈学園の力を見せてやれ!」
「はい!」
「よっしゃ、いつものやついくぜ!」
真里が手を前に出すと、次々と部員の手が乗せられていく。
- 767 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:29
- 「朝比奈学園、優勝するぞっ!がんばっていきまっ。」
「「「「しょーい!!!!」」」」
試合に出る真希達は、軽く手を叩き合わせてそれぞれのポジションについていった。
ジャンプボールをするのは真希だ。
その前に立ちはだかったのは、真希よりも20cm以上も高い5番だった。
「(なるほどね、これは骨が折れそうだわ・・・。)」
真希は軽く笑って屈伸を始める。
審判がボールを持って、二人の元に向かってくる。
「(まぁ、後藤達は負けないけどね。)」
真希は目線より高い位置を見上げて、5番を睨みつける。
それに気付いた5番は、負けじと真希を見下ろすように見ていた。
- 768 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:29
-
ビーッ
審判が高くボールを放り投げる。
それに飛びつく真希と5番。
二人の指先に、同時にボールが触れた。
「(うそっ!?)」
5番は驚愕の表情で真希を見ている。
それも当然であろう、20cm以上もの身長差があるにも関わらず、
真希は驚異的なジャンプ力を魅せ、ボールに触ったのだ。
「(ちぇっ、少しタイミングが遅かったかな?)」
逆に、真希の表情には軽い笑みが見える。
ボールを拾ったのは、真希の努力もむなしく相手の7番だった。
- 769 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:30
- 「ディ、ディフェンス!」
あさ美の声で、真希達は素早くディフェンスにつく。
しかし、麻琴と里沙が相手に振り切られてしまう。
振り切った4番に、7番がパスを出す。
「紺野!フォローに回って!」
「は、はい!」
真希に言われて、あさ美が4番にディフェンスにつく。
だが、いつものあさ美らしかぬあまり形のいいとは言えない
ディフェンスだったために、簡単に4番に抜かれてしまう。
4番がゴール下に高いパスを放り投げる。
そこに飛び上がってボールを拾ったのは5番だった。
マークしていたはずのまいは、全く反応できていなかった。
- 770 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:31
- 「(紺野まで・・・まぁ、無理もないか。)」
緊張しすぎて仲間の動きが普段よりもにぶい、そう思った真希は
仲間のフォローをするために、すぐにゴール下まで戻っていく。
5番がシュート体制に入る。
「やらせない!」
ゴールから離れたとこにいた真希は、猛スピードで5番のシュートを
防ごうと飛び上がる。
あまりにスピードを出して飛んでしまったためか、真希はバランスを
崩してブロックする形になる。
そこで、
ドンッ!
「うわっ!」
勢い余った真希が5番と接触した。
- 771 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:32
- 20cm以上の身長差がある上にパワーがある5番、さらには真希の体制も
乱れていたために、真希はコートの外に倒れ込んだ。
5番のシュートは、ゴールの中へと入っていった。
「後藤さん!」
あさ美達は、慌てて真希の元へと駆け寄っていく。
「・・・大丈夫ですか?」
あさ美は心配そうな表情をして、真希の顔を覗き込む。
「みんなさ、固くなりすぎだよ。」
真希は、倒れたまま周りにいるメンバーに笑顔を向けた。
「小川、後藤の勝負を受けたときの自信はもうないの?」
「そんなことは・・・。」
「新垣、あんたの素早い飛び出しっていうのは、後藤の勘違いかな?」
「い、いえ・・・。」
「まいちゃん、いつものカッコイイジャンプはどうしたの?」
「えっと・・・。」
真希の質問に、三人は俯いてしまう。
- 772 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:33
- そして、真希はあさ美をじっと見つめる。
「紺野、後藤達は何だっけ?」
「私達は・・・最強、コンビです・・・。」
それを聞いて、真希は笑顔で頷いた。
「ここにきて、後藤は初めて人を信じてプレイすることを覚えた。
後藤はみんなを信じるよ。後藤は一人じゃ勝てない。でもね、
ここにいるみんなでなら絶対に勝てると思う。がんばろうよ!」
「後藤さん・・・。」
「いこう!後藤達の力を見せてやるんだ!」
真希は立ち上がって、審判にボールをもらいにいく。
「大丈夫かね?」
「はい。全然平気ですよ。」
真希は笑顔で頷いて、ボールを受け取った。
- 773 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:34
- 「後藤さんの気持ち、無駄にできないね・・・。」
「後藤さんに信じてもらえてるんだから、やってやろうよ!」
「よし、みんないくよ!」
「おーっ!」
あさ美の掛け声で、あさ美達は声を上げてコートに入っていった。
あさ美達の目は、先ほどまでとは違って自信で満ち溢れていた。
「紺野!」
あさ美は真希からボールを受け取ると、ゆっくりとドリブルを始める。
その間に、他のメンバーは相手陣地へと走りこんでいく。
「(やらせないよ!)」
相手の四番が、あさ美のマークにつくために近づいていく。
- 774 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:35
- その時、
ヒュッ!
「えっ?」
四番が気付いたときには遅かった。
あさ美の突然の高速パス、ドリブルからパスまでの動作があまりにも速すぎたために、
四番は全く反応できずにいた。
ボールはさらに二人のディフェンスの横を通り抜け、ゴール右下へと向かっていく。
「ナイスパス、紺野!」
そのボールを受け取ったのは、猛スピードで走り込んだ真希だった。
- 775 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:35
- 真希はボールを持って、高く飛び上がる。
「打たせるか!」
5番がシュートをさせまいと、真希の前に飛び塞がった。
そこで、真希は空中で反転をして、ボールを5番の死角に持っていく。
「えっ!?」
真希の三種の神器の一つ、クロス・ダンクだ。
飛び上がったはいいものの、5番は真希に手を出せない。
今までどんなシュートをも防ぎ込み、真希よりもはるかに身長の高い、
今大会NO1センターとまで言われている5番がである。
勢い余った5番の手が、真希の顔に当たる。
- 776 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:36
- それでも真希は止まらずに、
「ハッ!」
ガゴッ!
真希はゴール直前で前を向き、ボールをゴールに叩きつけた。
「バスケットカウント、ワンスロー!」
審判の声が鳴り響いた。
5番がファールを取られたのだ。
その直後に、周りからすごい歓声が飛び交っていく。
「やりましたね、後藤さん!」
「おう!」
真希は、笑顔で寄ってきたあさ美とハイタッチを交わす。
「(誰がこようと、後藤は絶対に負けない!)」
真希は強くそう思い、フリースローの位置に向かっていった。
- 777 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:36
- 更新しました〜。
- 778 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:41
- >清さん
自分の学校も速い段階で負けてしまったので
上の方の大会はよくわかりません(汗)
ただこんな大会があったな〜って感じで書かせてもらってます。
ちなみに自分はいろんな影響を受けやすいんで
某漫画は参考にしていると思います。
>名無しの荒らしさん
美勇伝が全国一位、たぶんこの二人が目立つ小説って
あまりないと思うのでたまにはこういうのもいいかな〜って
思われますw
自分が言うのも何ですけど、できればE-mail欄に半角で
sageと書いてレスを頂けるとありがたいです。
申し訳ないんですけど、できればそれでお願いします。
- 779 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 12:45
- >秋嵐さん
いつも応援ありがとうございます!
これから気をつけて頂ければ何も問題ないですよ♪
同じように、E-mail欄に半角でsageと書いてレスを頂けるとありがたいです。
申し訳ないんですけど、できればそれでお願いします。
>真由さん
ん〜、ごっちん達は美勇伝に勝つことができるんでしょうか?
ごっちん&紺ちゃんの活躍を期待してください♪
創造するたびに思うことが一つ、やっぱりこの二人はちゃいこーです(爆)
- 780 名前:konkon 投稿日:2005/03/21(月) 13:57
- >名無し飼育さん
FAQ読みました。
これからは気をつけたいと思います・・・m(_ _)m
- 781 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/03/22(火) 08:45
- 更新お疲れ様。
は〜い、今度からちゃんとsageるようにやっていきます。
すいませんでした。m(_ _)m
感想いきます
ごっちんの一言でみんなの肩の力が抜けましたね。
もう朝比奈でのごっちんの存在は大きくなってますね。
初戦から三種の神器の一つも出してもう波乱って感じですね?
sagaってましたよね?
- 782 名前:真由 投稿日:2005/03/22(火) 09:22
- くっそー5番め痛いじゃないか!とか思っちゃったりw
フリースロー頑張って(^^)最強コンビも頑張れ(*><*)
- 783 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:42
- 「おわ〜、後藤さんすごいですね〜。」
「昔よりも、確実に強くなってるわね。安心したよ。」
絵梨香達美勇伝高校の生徒達は、会場の席で真希達の試合を見ていた。
「唯、あんたなら後藤さんのこと止められる?」
「さぁ、どうでしょうね〜?後藤さんを一人で止めることは、
さすがの私でもけっこう難しいですよ〜。」
唯は、まったりとした口調で答える。
「後藤さんを飛ばせたら、誰も止めることはできない。あの人を
止めるのだとしたら、私でなければですけど、最低でも二人は
必要ですからね〜。だから、後藤さんにパスを回させないこと、
それが重要ですね。」
唯の言葉に、絵里香は首を頷ける。
- 784 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:44
- 「確かにね。それにしてもあの4番、すごいパスを出すわね。」
「はい。後藤さんを止めるには、4番を警戒する必要もあるようですね。
あの後藤さんが、最高のパートナーというだけありますね・・・。」
絵里香と唯は見抜いていた。
点が決まるまでの一連の流れを、誰が生み出しているのかということを。
それは点を決めている真希ではなく、あさ美がゲームメイクしていることを。
ピーッ!
真希が体で5番を押さえ込み、そこから抜け出そうとした5番が
真希を手で倒したために、ファールを取られたのだ。
開始からたったの5分で、5番は2つもファールをしたのだ。
もう簡単には手を出すこともできないだろう。
- 785 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:46
- 「何か嬉しそうですね〜。」
口元を緩めている絵里香を見て、唯はそう口に出した。
「フフッ、当たり前じゃない。この調子なら、絶対に後藤真希は
勝ち上がってくるわ。でも、そういうあなたも楽しそうね?」
「はい♪強い人と戦えることが、何よりも楽しみですから。」
この二人も真希と同様に、強者と戦えることを望んでいた。
ガゴッ!
本日二本目の真希のダンクシュートが決まった。
これも、あさ美のアシストによるものであった。
そして、再び観客からの歓声が会場全体に響き渡っていった。
- 786 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:47
-
♪〜
その日の晩、夕食を食べ終わった愛がテーブルの上を拭いていると、
ソファに放り出されている美貴の携帯が鳴り始めた。
「美貴ちゃん、携帯鳴ってるよ。」
「は〜い!今行きます!」
台所で茶碗洗いをしていた美貴は、慌ててリビングへと駆け込んでいった。
愛から携帯を受け取って、ディスプレイに映っている番号を見る。
知らない番号に少し不安を抱きながらも、美貴は通話ボタンを押す。
「はい。」
『ヤッホーッ!ミキティ、元気〜?』
「その声はごっちんか。元気だよ!」
相手が真希だと気付き、美貴の顔の表情が緩む。
- 787 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:49
- 「インターハイ、今日からだよね?どうだったの?勝った?」
『フフン、愚問だね。もちろん、後藤達は勝ちました〜!』
「お〜、すごいじゃん!やったね!」
『まだまだだよ。後藤達の目標は、優勝だからね。』
そう言った真希の言葉には、自信に満ち溢れている感じがした。
「そっか〜、あと何回勝てば優勝なの?」
『あと五回だね。優勝トロフィー持って帰るから、期待して待っててね。』
「そっか。美貴、一度でいいからトロフィーって持ってみたかったんだよね♪」
『ミキティには危なっかしいから持たせられないな〜。』
「ひど〜い!何よそれ〜。」
『ハハハッ。』
「それでさ・・・うん、でね・・・。」
- 788 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:50
-
ガチャッ
「後藤さん、ジュース買ってきました〜。」
しばらく真希と話していると、美貴の耳にドアの開く音と同時に、
そんな声が聞こえてきた。
誰の声かはすぐにわかった。
「ごっちん、紺ちゃんのことパシリに使ってるのかよ〜?」
『違うよ!じゃんけんで後藤が勝ったんだよ。後藤が紺野に
そんなひどいことさせるわけないじゃん!』
「あっ、ねえ、紺ちゃんとも話しさせてよ?」
『え〜、ミキティが紺野と話したら、紺野の耳が汚れちゃうじゃん。』
「何だそりゃっ!?いいから代われっての!」
『はいはい。』
電話の向こう側から、真希の愚痴が聞こえてくる。
- 789 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:52
- 『こんばんわ〜。』
少しして、あさ美の声が受話器から聞こえてきた。
「お疲れ様。それと、初戦突破おめでと〜!」
『あ、ありがとうございます!』
「その点で話したい人がいるみたいだから、ちょっと待っててね。」
そう言って、ソファに座っている愛に携帯を渡す。
「話したい人って、私のこと?」
「だって、そんな目で見られてたらね〜。」
愛は、美貴が話している間ずっと美貴のことを見つめていた。
別に美貴が気になっていたわけではなく、それは自分も話しがしたいと
目で訴えていたように、美貴は感じ取っていた。
愛は携帯に耳をつける。
- 790 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:54
- 「もしもし。」
『あ、愛!私達勝ったよ〜!』
「そう、おめでとう。どうだったの?」
『え〜、ではですね、ここから先はこのおじゃマ〜ルシェ、紺野が
解説したいと思います。高橋さん、準備はいいですか〜?』
「(おじゃマル・・・?というか、解説っていっても、
もうとっくに試合は終わってるんじゃ・・・。)」
『もしも〜し、愛、聞いてるの?』
「聞いてるよ。でも、こんな時間まで電話してて平気なの?」
「全然気にしなくていいよ〜。この電話はホテルの電話だから、
通話料とかもただだからね♪心配いらないよ。」
「いや、んでなくて・・・。」
- 791 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:56
- 愛は、あさ美達は試合で疲れているだろうから、早く寝なくても
平気かどうかという意味で、そう聞いたのだ。
だが、それが全く通じていないあさ美は、楽しそうに試合内容を話している。
『あのね、相手の5番が大きい上にすごい強かったんだ〜。でもね、
後藤さんがもっとすごくてね・・・。』
「うん・・・うん・・・。そうなんだ。」
あさ美の元気そうな声を聞いて安心した愛は、顔に笑みを浮かべて話しを聞いている。
あさ美と話している時のみ、愛はどこか優しい笑みをしているように感じる。
その光景を見て、美貴はソファに寝っ転がって天井を見つめる。
「(ごっちん、紺ちゃん、美貴達も応援してるからがんばれよ!)」
美貴はフッと笑い、今は遠くでがんばっている親友のことを想っていた。
- 792 名前:konkon 投稿日:2005/03/26(土) 13:59
- >名無しの荒らしさん
ありがとうございます。
全然平気ですよ〜。
ごっちんの存在は大きいですね〜。
力だけでなく、また別の強さを手に入れたって感じですね♪
>真由さん
抵抗して殴り返したら面白かったかもw
な〜んてごっちんは強いから平気ですよ〜。
ここからが最強コンビの見せ場ですね!
- 793 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/03/27(日) 10:47
- お疲れ様〜
美勇伝も認めた?ごっちんたちの最強コンビ
本当に強いですね。
それにしても、相手の5番は何をしてるんだ!?
みたいな感じですよ。
まぁそれでも初戦勝ったんでよかったですよ。
あと5回勝ってほしいですね。
- 794 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:43
- 大会二日目、真希達の会場とは別の、もう一つの会場で第二回戦が
行われようとしていた。
真希達は、自分達の試合までにはまだ時間があるということで、
この試合を見にきていた。
その試合とは、常勝、美勇伝高校の試合である。
美勇伝高校は、シードだったためにこれが初戦となる。
真希達は客席のフェンスから、じっと美勇伝の選手達を見つめている。
本当は客席に座れればよかったのだが、真希達が着いた頃には
すでに満員で、座ることができなかった。
それだけで、美勇伝の人気と実力がどれだけ高いかがわかる。
試合前に、美勇伝の相手チームの監督が、美勇伝の監督に近づいていく。
- 795 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:44
- 「フフッ、すごい自信ですね。」
手を握り返したのは、まだどう見ても二十代前半の女性だった。
その女性こそが、美勇伝の監督、木村アヤカだ。
アヤカは、十代でアメリカでプロデビューを果たし、去年まではプロとして
試合をしていたのだが、試合中に大きな怪我を負ってしまい、二度と選手として
試合ができる体ではなくなってしまった。
選手の道を絶たれたアヤカ、そこで声をかけたのが、美勇伝の理事長だった。
美勇伝の監督となって、さらなる実力を見出してほしいとのことだ。
そしてアヤカは今、選手ではなく美勇伝の監督として、ここに立っていた。
「うちは前に戦ったときから、さらに磨きをかけて強くなりましたよ。
ここで美勇伝には消えてもらいます。」
「望むところですよ。でも、試合はフェアでお願いしますね。」
男は顔をにやつかせたまま、自陣のベンチへと戻っていく。
- 796 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:48
- アヤカもまた、笑顔で男を見送った。
そんなアヤカを、一人の生徒がじっと見ていた。
「アヤカさん、よくもあんなこと言わせていられますね〜。」
屈伸をしていた絵里香が、少し怒った口調でアヤカに言った。
「いいのよ、絵里香。それは試合になればわかることだしね。
それに、今回はあなた達がいる。確実に負けはないわ。」
「まぁ、それはそうですけどね。」
前回のインターハイの準決勝、その対戦高が今回の初戦の相手だった。
過去にただ一度だけ、美勇伝が追い詰められたことがある。
それがその時の準決勝で、90対87と辛勝だった。
「前の"三年"達は、全然使えませんでしたからね〜。」
絵里香は、軽くため息をついて呟いた。
- 797 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:49
- 「監督も監督でどうしようもなかったし、今年からでもアヤカさんに
変わってくれてよかったですよ。これで、私も本気でやれる。」
「わかってるじゃない。なら、この試合で教えてあげなさい。
美勇伝の、あなた達の本当の実力というものをね。」
「はい。」
絵里香は軽く頷いて、周りの美勇伝の選手を見渡していく。
「唯、準備はいい?」
「は〜い。」
唯は、やる気があるようなないような、まったりとした口調で答える。
「よし、みんな、いくよ!」
「はい!」
絵里香は、メンバーを率いてコートへと入っていった。
- 798 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:51
- 「あの美勇伝を追い詰めた高校か・・・これはどうなるかわかんないな。」
誰に言うわけでもなく、真里はぶつぶつと呟いていた。
結果だけでしかないが、前回のインターハイのデータを真里は知っている。
真里は真剣な表情をして、両校の一人一人の選手を見ている。
「紺野、どっちが勝つと思う?」
隣で見ていたあさ美に、真里は振り向かずに聞いた。
「どうでしょうね〜。両方とも強そうですから・・・。」
あさ美は、少し難しい顔をしてそう答えた。
「そうだろうな〜。後藤はどう見るよ?」
今度は、あさ美の隣で見ている真希に聞いた。
「んあ、美勇伝の圧勝。」
「圧勝?だって、相手チームは去年、美勇伝を追い詰めたんだぜ?」
真里は訝しげな表情をして、真希を振り向いた。
- 799 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:52
- 「やぐっつぁん、美勇伝のバスケ部にはね、くだらない一つの
決まり事があるんだよ。いや、あったんだ。」
「決まり事?」
「美勇伝ってさ、一年前と同じ選手が活躍しているって話し、
一度でも聞いたことがあった?」
真希は、にこやかな笑みで真里に聞き返した。
「そういえば、聞いたことないな・・・。」
「美勇伝はね、三年生しか選手として出ることができなかったんだよ。
幅広い選手層だっていうことを、周りにアピールするために一年ごとに
選手を総入れ替えしているんだ。だからこそ、そのたった一年のために、
試合に出れるためにみんな強くなろうとするんだ。」
真希は淡々と話していく。
真里やあさ美達は、黙って真希の話しを聞いている。
- 800 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:53
- 「けど、今年の冬からあの監督に代わって、その制度がなくなった。
そうしたら、唯達二年や一年にもチャンスが芽生えてきた。
そのため、三年生は三年になったら出れるかもっていう意識が
消えて、本当の強さを持たなければ試合に出れることはない、
そういう自覚を持ち始めたんだよ。」
「そうだったんだ・・・。」
「それだけじゃなく、絵里香と唯が組むような、様々な組み合わせを
行えるようにもなった。そして、プロの選手として戦ってきた
木村アヤカ監督、後藤も認める絵里香と唯の実力、今年の美勇伝の
試合結果は、別に見なくてもわかるよ。決勝を除いてね。」
真希は一息ついて、コートに視線を向ける。
「(後藤が知りたいのは、あの二人がどこまで強くなったのか、
後藤をどこまで楽しませてくれるのか、それだけだよ。)」
- 801 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:54
- いよいよ試合が始まる。
センターサークルには、両チームの選手がジャンプボールを待っている。
そこで唯は、絵里香が会場のある一点だけを凝視しているのに気付いた。
「絵里香先輩、どうしました〜?」
絵里香からの反応はない。
絵里香の視線の先を辿ると、先日話しをしていた真希の姿が目に映った。
「(ずいぶんとお互いに気になっているようですね〜。)」
試合が始まれば平気だと思い、唯は構え直す。
「唯。」
少しして、絵里香は唯を呼んだ。
「はい?」
「前半で勝負を決めるよ。」
「前半?そんなに必要ですか〜?」
唯は、穏やかな笑みで絵里香に聞いた。
- 802 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:55
- 「・・・ごめん、訂正するわ。1クォーター(1Q)でケリをつける。」
「は〜い。」
ビーッ!
試合が始まり、二人の選手が同時に跳んだ。
先に触ったのは美勇伝の選手で、弾いて唯の手元にボールを落とす。
「せ〜んぱい。」
唯は、絵里香にボールを放り渡す。
「私の本気、見せてあげるよ。後藤真希・・・。」
- 803 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:56
- 1Q残り三十秒、
「・・・圧倒的だな。後藤の言った通りだ・・・。」
試合を見て、真里はそう呟いた。
1Qが終わるというところでありながら、点数は36対10と美勇伝が圧倒的な力で、
敵チームを押さえつけていた。
一言で言うならば、強すぎる。
去年互角だったのがまるで嘘のように、敵の動きを完全に封じ込み、
面白いように点を決めていく。
「あの6番、ゴール下が強いね・・・。」
「8番もすごいですよ。マークした相手に、シュートを全然入れさせてません。」
「5番のレベルも高いよ・・・ドリブルもパスもうますぎる。」
まい、里沙、麻琴は美勇伝の選手の技術に、感心しながら話している。
他の部員達も、口を開けて試合に見入っていた。
- 804 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:57
- そして、絵里香、唯の実力は確実にプロのレベルに達している。
唯にボールが渡り、そこに5番と6番の二人がディフェンスにつく。
「フフ、二人掛かりですか〜。まぁ、それでも私は止められませんよ。」
唯の視線が二人を同時に捉える。
直後に、
シュッ!
「「えっ?」」
唯の持つボールが消えた。
そう見えたのだ。
- 805 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:58
- ボールに視線を向けていたにも関わらず、唯の動きについていけずに、
気付いたらいつの間にかボールを離していた。
どんなところからでも、一瞬の隙をついて確実なパスを出す、
それがNO1PGと呼ばれている岡田唯だ。
「ナイスパス、唯。」
ボールは、5番の後ろにいたはずの絵里香の手にあった。
もちろん、絵里香にも二人のマークがついている。
「(邪魔だよ。)」
絵里香は猛スピードで飛び出して、勢いよく顔をゴールに向ける。
それにつられて、マークした7番は跳び上がる。
だが、絵里香はシュートを打たずに飛び上がった7番の横を抜けていき、
8番を素早く体を左右に振って惑わせ、隙を見せた途端に抜いていく。
絵里香がゴールに向けて跳び上がる。
シュートを防ごうと、4番が絵里香の持つボールに手を伸ばす。
- 806 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 22:59
- 「甘いよ。」
「なっ・・・。」
絵里香はボールを止められる瞬間、右手から左手にボールを渡して軽く放り投げる。
ボールはゴールの輪を潜り抜ける。
ビーッ!
そこで、1Q終了のブザーが鳴った。
「ダブル・クラッチ・・・。」
4番は、呆然としてベンチに下がっていく絵里香を見ていた。
38対10、絵里香達が言ったように、たったの1Qで試合は
もう決まってしまっていた。
観客席からは、ハイレベルの技術を魅せる美勇伝に、壮大な歓声を送っている。
「お疲れ様。随分と差がついたんだし、前半はもう休む?」
「いえ・・・今日は最後までやります。」
アヤカの問いに、絵里香はある一点から目を離さずにそう答えた。
絵里香の視線の先、そこには、先ほど目に入った真希の姿があった。
- 807 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:01
-
ビーッ!
試合終了のブザーが鳴った。
結局、試合結果は134対46という圧倒的強さで、美勇伝の勝利だった。
美勇伝は、どれだけ差を広げようと全く手を抜かずに、最後まで
点を決め続けていた。
「やぐっつぁん、先に行ってるよ。」
試合が終わったと同時に、真希はポケットに手を入れて歩き始める。
「もういいのか?まだ時間あるから、もう一試合くらいなら見れるぞ?」
「後藤はいいや。どうせこっちから出てくるのは、美勇伝だけだしね。」
真希は笑って答えると、真里に背を向けて歩き出した。
- 808 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:02
- 「あの・・・後藤さん。」
しばらく歩いていると、後ろから声をかけられた。
真希が振り返ると、走ってきたせいか、軽く息を切らしているあさ美の姿があった。
「紺野、どうしたの?」
「えっと、私も先に行ってようと思いまして・・・。」
「そっか、んじゃ一緒に行こう。」
「は、はい!」
周りからは、先ほどの美勇伝の試合の話しが、至るところで飛び交っている。
それは、当然真希やあさ美の耳にも入ってくる。
「美勇伝・・・強かったですね。」
「そうだね。」
「後藤さん、あの、不謹慎なことかもしれませんけど、一つだけ
聞いてもらってもいいでしょうか?」
あさ美が立ち止まったので、真希も足を止めてあさ美を振り返る。
- 809 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:03
- 「別にいいよ。」
「美勇伝の試合を見て、すごく強いなって思いました。私達は勝てるかなって、
もちろん勝つつもりではいたんですけど・・・別に自信がないとかではなくて、
その、なんと言いましょうか・・・。」
はっきりとしないあさ美の話しを、真希は黙って聞いている。
「私、試合を見て、体がゾクゾクしたんです。この人達と戦いたいって、
思わずそう思ってしまったんです。何か、嬉しくなったんです。こんなに
すごい人達と戦えるかもしれないなんて、幸せだなって・・・えっと、
おかしいですよね、私って・・・。」
「・・・。」
「あの、後藤さん・・・?」
「・・・紺野、可愛い〜!」
それまで黙っていた真希は、突然笑顔になってあさ美に抱きついた。
- 810 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:04
- 「ごっ、ごごごご、後藤さん・・・!?」
あさ美は、顔を真っ赤に染めて真希を見上げる。
胸が痛いほどまでに、心臓が激しく暴れている。
「やっぱり紺野は、最高のパートナーだよ。」
真希はあさ美から離れて、嬉しそうに笑う。
「後藤もそう思ってたよ。誰よりもうまくなりたければ、自分と同等、
もしくはそれ以上の人と敵対する。その人以上にうまくなってやるって、
そんな強い気持ちがあるってことだよ。紺野は全然おかしくないよ。
後藤が言うのもなんだけど、それだけ紺野も成長したってことなんだよ。」
「そう・・・なんですか?」
「きっとそうだよ♪」
真希は優しくあさ美の頭を撫でる。
「後藤達で、絶対に美勇伝に勝とうね。」
「はい!」
真希達は顔を見合わせて笑ったあと、会場から出て行った。
- 811 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:04
- 更新です。
- 812 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:06
- >名無しの荒らしさん
5番は何してるんでしょうね〜。
まぁ、真希が強かったということですかね♪
あと五回戦、どう、しよう、かな・・・(汗)
今回は美勇伝とこんごまにしてみましたw
- 813 名前:konkon 投稿日:2005/04/01(金) 23:09
- すいません、ミスが発覚しました(超汗)
795の頭にこの文を入れてください・・・(泣)
「よろしくお願いします。今日は勝たせてもらいますよ。」
髭を生やした四十は超えているであろう男性は、にやついた顔をして手を差し出した。
- 814 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/04/02(土) 12:20
- こんこんにもごっちんのような気持ちが芽生えてきましたね。
美勇伝強すぎますよぅ。これじゃ5回勝のは・・・?
- 815 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 14:56
- 真希達朝比奈学園は、二回戦、三回戦、四回戦と順々に勝ち進んでいく。
そして、今は五回戦、準決勝戦の試合が行われている。
残り時間はあと五分、今はあさ美がボールをキープしている。
バスケ記者の平家みちよは、記者専用の特別席で紙にボールペンを走らせながら、
真希達の試合を真剣に見ていた。
1チームごとに一人の記者が配布されており、みちよは朝比奈学園の担当となっていた。
一回戦からここまでの試合を見て、みちよは記事に書き出していた。
「平家先輩。」
みちよが振り向くと、一人の女性が近づいてきていた。
「りんねやないか。そっちはもう終わったん?」
「はい。こちらはまだ試合中なんですね〜。」
りんねと呼ばれた女性、戸田りんねは笑顔でみちよの隣まで歩み寄る。
りんねは、今まで別会場で試合を行っていた美勇伝高校の担当だ。
- 816 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:00
- 「ああ、さっきちょっとしたファールトラブルがあったんや。まあ、
怪我人はいなかったんやけど、試合が遅れとるんや。」
先ほど、真希と相手選手がぶつかるというトラブルがあった。
お互いに大した怪我はなかったのだが、それによって試合が少し延びていた。
「それにしても、どうしてこんなに早く終わったんや?こっちの
時間が延びているとはいえ、早過ぎやないか?」
「決まってるじゃないですか・・・美勇伝が強すぎるからですよ。」
りんねは、軽く笑みを浮かべてみちよに答える。
「一度しかタイムアウトを使わなかった上に、ファールを取ることは
あっても、取られることはない。早く終わるに決まってますよ。」
「なるほどな・・・試合結果は?」
みちよは、試合から視線を外さずにりんねに聞いた。
- 817 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:00
- 「五回戦でありながら、110対68の100点オーバーの圧勝でした。
この試合だけでなく、全ての試合が100点オーバーです。二回戦に
至っては、トリプルスコアになりそうなくらいまで圧勝でしたよ。
まさに、過去最強と呼ばれるだけある強さでしたね・・・。」
りんねの言葉に、みちよは苦笑いを浮かべる。
「さすがなや・・・。」
「特筆すべきは、やはり三好、岡田のコンビです。とにかくうまいんです。
岡田の鉄壁のディフェンスから始まって、そこからどんな状況であろうと
三好に繋げるという絶妙なパス、そして、誰も止めることができない
三好の華麗なドリブル、シュート、今回も美勇伝の優勝は揺ぎ無いですね。」
「そうでもないかもしれんよ。」
そう言われたりんねは、不思議そうな表情でみちよを見つめる。
- 818 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:02
- 「どういう意味です?そういえば、美勇伝の対戦相手が決まる、
こちらの試合は・・・えっ!?」
りんねは、スコアボードに映っている高校名と得点を見て、目を見開いて驚いた。
80対58と、朝比奈学園が大量にリードしていたからだ。
「嘘・・・朝比奈学園の対戦相手、去年の準優勝高じゃないですか。
そんなに強いんですか?朝比奈学園って・・・。」
「朝比奈学園にも、秀でた才能を持つ子達がいるってことや。」
みちよは、試合から視線をずらさずに答える。
「一回戦では、優勝候補と言われていた高校を倒してるんや。」
「は〜、すごいんですね。朝比奈学園には、どういう子がいるんです?」
「そうやな、そんじゃ、一人一人教えてやるわ。」
ガッ!
相手のシュートがゴールの輪にぶつかって、ボールが宙に浮かび上がる。
- 819 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:02
- 「まいちゃん!」
「任せて!」
まいが敵ディフェンスを体で押し切り、高く飛び上がってボールをキャッチする。
「まず、今ボールを取ったのが5番のセンター、里田まい。今ので
この試合、15本ものリバウンドを取っとるわ。」
「15本・・・。」
「身長はそれほど高いわけやないんやけど、ポジション取りがうまいんや。
シュートの軌道を見極め、予めボールの落ちてくる位置に先に動いとる。
やから、落下時には飛び上がってボールを取ることができるんや。」
あさ美のパスから真琴がシュートを決めて、さらに朝比奈学園が突き放す。
相手高校は、パスを回しながら朝比奈学園を攻めていく。
「(今だ!)」
突然、里沙が素早い飛び出しを魅せて、相手のパスを奪い取った。
- 820 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:03
- 「小川先輩!」
「ナイスだよ!里沙ちゃん!」
真琴は、嬉しそうに里沙からのパスを受け取る。
「スティールしたんは、8番の新垣理沙。ボールに対する貪欲さ、
嗅覚が飛び抜けてすごいわ。」
「あの8番って、身長が150くらいしかないんですね・・・。」
「その分、ディフェンスに徹底している。それだけやなくて、一瞬の飛び出しが
素早くて、パスを防ぐのがうまいんや。相手のマークをした上で、パスのコースを
読んで、スティールする。やられた相手は、けっこう切り崩されるもんやで。」
試合の方では、真琴がドリブルをしながら敵陣地へと上がっていく。
真琴に相手の8番が近づいていく。
「あさ美ちゃん!」
「はい!」
真琴は、横にいたあさ美にパスを出したと同時に、前に走り出す。
- 821 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:05
- あさ美からのリターンを受け取ると、真琴は得意のクロス・オーバーで一人抜いて、
ゴール下へと切り込んでいく。
レイアップシュートをしようと、真琴はボールを持って飛び上がる。
そこに、センターの5番が真琴のボールに手を伸ばしてくる。
このままでは止められる、そう思った真琴は、シュートをせずにボールを下げて、
ゴール下にいたまいにパスを出した。
まいはボールをもらうと、飛び上がってシュートを決める。
「いい判断だったよ。マコっちゃん。」
まいにそう言われて、真琴は笑顔で親指を立てた。
「6番の小川真琴、この子にはポジションらしいポジションはないようや。
ドリブル、パス、シュート、特に穴のないオールラウンダーで、どこでも
卒なくこなすんや。」
「へ〜、オールラウンダーですか・・・。」
- 822 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:06
- 「去年の県大会でも、かなり目立ってたらしいんや。ただ、トーナメントで
負けたみたいやから、あまり名前は聞かんかったけどな。」
そこでみちよは、ボールを持った朝比奈学園の7番に目を向けた。
「そして、なんといってもあの7番、後藤真希がすごいんよ・・・。」
真希が敵陣地に入った瞬間、猛スピードでドリブルしていく。
持ち前のスピードで一人を抜くと、右腕を高く振り上げてゴールに向かって飛び込んだ。
「やらせない!」
真希のボールを止めようと、6番がボールに手を伸ばして飛び上がる。
真希は冷静にボールを左手に渡して、6番の手から逃れる。
「このっ!」
さらに、今度は5番がボールを持つ左手に手を伸ばしてきた。
そこで真希は、もう一度左手から右手にボールを受け渡す。
そして、ボールを軽く放り投げる。
- 823 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:07
- 「「なっ・・・。」」
真希の三種の神器の一つ、トリプル・クラッチ。
ディフェンスについた5番と6番は、呆然としてボールの行方を追っていた。
パサッ
ボールがゴールの中を通過していった。
「今、空中で、二回ボールを離しましたよね・・・?」
「あれが四年前に金髪の妖精と呼ばれとった、天才・後藤真希や・・・。
あのボールキープ力、ボディバランス、シュートの精密さ、どれももう、
プロ級としかいいようないわ。高校生の域をはるかに超えている。」
みちよは、口元をにやつかせて話している。
- 824 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:09
- 「金髪の妖精・・・戻ってきたんですね、全国大会に・・・。」
「実力はあの頃よりもはるかに上や。今まで試合には出てこなかったとはいえ、
ずっと鍛錬を怠らなかった証拠や。あの後藤真希率いる朝比奈学園と常勝美勇伝、
面白くなりそうやと思わんか?」
「けど、いくらあの後藤真希でも、三好、岡田の二人には勝てないと
思いますよ。あの二人のコンビには、誰も手が出せないかと・・・。」
「もし、その後藤真希とコンビが組める子がいたとしたらどうや?」
「えっ・・・?」
みちよの思いも寄らない言葉に、りんねはみちよに視線を移す。
そんなりんねを、みちよは軽く笑って見上げる。
「美勇伝との試合で鍵となるのは、たぶん、4番のPG、紺野あさ美や。」
あさ美がボールを持って、相手陣地へと攻め上がっていく。
あさ美に4番のディフェンスがつく。
- 825 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:11
- 「里沙ちゃん!」
あさ美は後ろにいた里沙にパスを出し、4番の横を抜いていく。
里沙からのパスを返されたあさ美は、一瞬だけ周りを視界に入れて、
すぐに3Pラインからシュート体制に入る。
「くそっ!」
素早く戻った4番が、あさ美のシュートコースを跳んで塞ぐ。
そこで、あさ美はシュートをせずに、ドリブルで中へと切り込んでいく。
ゴール下には、まいと真希がいる。
だが、まいにはディフェンスが一人、真希にはディフェンスが二人もついている。
右の方からは、一人のディフェンスがあさ美に近づいてきている。
その少し先に、真琴の姿が見えた。
あさ美はゴールと真琴を、交互に視界に入れた。
右からきていた8番が、真琴に気付いてパスコースを防ぐ。
そして、真希をマークしていたうちの一人が、あさ美のシュートを
防ごうと飛び出した。
- 826 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:13
- 直後に、
シュッ!
あさ美が体を半回転させて、遠心力を利用して右手で左にボールを投げたのだ。
誰もが予測できなかった動きなために、ディフェンスは誰も動けていない。
ボールは、ものすごい勢いで左サイドに向かっていく。
そこには、ディフェンスを振り切った真希が、3Pラインで待ち構えていた。
真希にとってディフェンスが一人ならば、抜いてくださいといっているようなものだ。
真希は一度フェイクを入れてディフェンスから逃れると、軽々と3Pシュートを放った。
ボールは綺麗にゴールの中へと入っていった。
「何・・・あの子、今どこ見てパス出したの・・・?」
りんねは、目を丸くして驚いている。
あさ美の視界に、一度も真希を入れていなかったはずだからだ。
- 827 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:14
- 「これがすごいんや・・・一瞬の隙を見せると空いたスペースに、
いや、自ら動くことでスペースを作り出してパスを出す。それも、
まるで心を通わせているように、正確に後藤真希にパスを送っとる。
ほんの一瞬で状況を把握して、一番効率のいい攻め方を築き上げる。
それが4番のPG、紺野あさ美や。あの二人は、三好、岡田に劣らない、
最高のコンビなんや。」
あさ美は、嬉しそうに真希と手を叩き合わせる。
試合は止まらずに過ぎていき、
ビーッ!
試合終了のブザーが鳴った。
結果は、95対66と朝比奈学園の勝利で終わった。
- 828 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:18
- 「明日の試合、楽しみやな。」
みちよは、書類をまとめて鞄にしまう。
「そうですね。では、失礼します。」
りんねはみちよに頭を下げて、会場から出て行った。
「(常勝、美勇伝と朝比奈学園、完全実力主義の美勇伝には、
まさに強い者しか選手に選ばれとらん。さらには、プロから
技術を叩き込まれた、華麗なるSF、三好絵里香に、一年の
頃からレギュラーを勝ち取っとる、完全無欠のPG、岡田唯。
対するは、全くの無名高、朝比奈学園か・・・。金髪の妖精と
呼ばれた後藤真希とコンビを組むんは、この大会まで名前の
知られていなかった、PGの紺野あさ美・・・。これでもし、
朝比奈学園が美勇伝に勝つようなことがあったら・・・本当に
面白くなるわな。明日が楽しみや。)」
みちよは、自分の想いに口元を緩ませて、席から立ち上がった。
- 829 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:18
- 更新しました。
- 830 名前:konkon 投稿日:2005/04/09(土) 15:21
- >名無しの荒らしさん
紺ちゃんとごっちん、心が通うっていいですよね♪
いよいよ最強美勇伝との対決です。
結果はどうなるのか・・・面白い結末にしたいと思います。
- 831 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/04/15(金) 18:51
- お疲れ様です
ついにきましたか!美勇伝との対決
おもしろい結末待ってます
- 832 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:50
- その日の夜、
「・・・っていうことだ。それからだな・・・。」
真希達の泊まっているホテルのある大部屋に、真希達バスケ部員は集まっていた。
この部屋は、真里が特別にホテルから借りたものだ。
そこで、ビデオを見ながら美勇伝に対する作戦を立てていた。
誰もが真里の話しを真剣に聞いて、ビデオに見入っていた。
ただ一人を除いては。
「そんなところだ。誰か質問のあるやつ・・・って、おい、後藤。」
「・・・んあ?」
真里の話しを聞いてはいるのだが、真希の意識はどこか別の場所にあったように感じる。
それが気になった真里は、真希に声をかけた。
「お前、ちゃんとおいらの話しを聞いてたのか?」
「うん、聞いてたよ。なんなら一から全部説明しようか?」
「・・・嫌味かよ。聞いてたんなら別にいいけどよ。」
真里は小さくため息をついて、部員からの質問を受ける。
- 833 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:50
- 「・・・以上だ。疲れを残さないように、さっさと寝ろよ。
話しは終わりだ。解散。」
真里の話しが終わって、部員達は話しをしながら部屋を出て行く。
「あさ美ちゃん、明日のことで少し話したいんだけど、いいかな?」
「いいよ。私も気になるところがあるし、後藤さんはどうですか?」
麻琴に返事をしたあと、あさ美は真希を振り返って聞いた。
「あ〜、悪いんだけど、何か眠いから先に寝てるよ。」
「そうですか・・・。」
「ごめんね。みんな、明日の試合、絶対に勝とうね。」
真希は残っている仲間達に笑顔を振り撒いて、部屋を出て行こうとする。
「後藤・・・平気か?」
「ん、別に何ともないよ。ちょっと疲れただけだよ。やぐっつぁんも
早く寝ないと、それ以上身長伸びないよ?」
「大きなお世話だ。もうあきらめたよ。」
普段と変わらない口調だけど、どこか真希の様子がおかしい、そう思った真里は、
真希の出て行った扉をしばらくの間見つめていた。
- 834 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:51
-
「ハァッ!」
ガゴッ!
ホテルからそう遠くない公園に、豪快な音が響き渡る。
公園に置いてあるバスケットゴールに、真希が持参のボールを叩きつけたのだ。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
もう何本シュートをしたかわからない。
真希は何かから振り切るように、闇雲に、それでも正確に
シュートを打っていた。
ボールがゴールの輪に当たって、宙に浮かぶ。
- 835 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:52
- ボールがゴールの輪に当たって、宙に浮かぶ。
ガゴッ!
美貴がやったように、真希は空中でボールを受け取って、直接ゴールに叩き付けた。
ボールがバウンドする音が、公園に鳴り響いている。
真希はゴールから手を離して、地面に降り立つ。
「ハァッ、ハァッ・・・。」
真希は膝に手をついて、何度も荒い息を吐き出している。
その時、
パサッ
「・・・?」
真希の頭に、何かが覆い被さった。
- 836 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:53
- 「汗拭かないと、風邪引くぞ。」
真希が振り向くと、軽い笑みを浮かべた真里が立っていた。
頭にはタオルがかけられたようだ。
「やぐっつぁん・・・。」
「オーバーワ−クで明日試合に出れないなんてこと、絶対に
おいらが許さねぇからな。その辺にしとけよ。」
そう言って、真里はバウンドが止まったボールを拾い上げる。
「・・・ありがとう。」
「それにしても、よくこんな重いボールを持って、あんなに高く
跳べるもんだよな。本当にお前ってすげぇやつだな。」
「そんなこと、ないよ・・・。」
「あ、見てろよ!えっと、これくらいかな・・・。」
真里はゴールから少しだけ離れると、ボールを両手で持って構える。
真里の立っている位置は、フリースローライン辺りだ。
- 837 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:54
- 「それっ!」
綺麗なフォームとは言えないが、真里はゴールに向けてシュートした。
ガガガッ、パサッ
ゴールの輪に何度かぶつかったが、なんとかボールはゴールの中に入った。
「見たか見たか!?おいらのシュートが入ったんだぜ!いや〜、
何度も部員達の目を盗んで、シュート練習した甲斐があったよ。」
真里は満足そうに、何度も首を頷けている。
真里が何を言いたいのか理解できずに、真希は難しい顔をしている。
「ただの才能だけで上に上がっていくやつ、そんなやつも世の中には
たくさんいるかもしれない。でも、おいらは認めたくない。本当の
実力ってやつは、何度も何度も厳しい練習を繰り返して、それで
身に付けていくもんだと思う。」
真里は真剣な表情をして、真希の目を見て話していく。
- 838 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:55
- 「その点では、後藤はずっと厳しい練習を続けてきた。誰よりも多く、
自分に厳しく、決して甘やかさずに、ずっとずっとがんばってきた。
だから、おいらは後藤の実力を認めるよ。自信を持てよ。」
「やぐっつぁん・・・。」
「美勇伝が、怖いか?」
その言葉で、真希は真里から視線を逸らす。
「不安なんだろ?明日の試合がさ。」
「そんなこと、ない・・・。」
「・・・はぁ、お前となっちって、本当に正反対だよな。」
真里は、ため息をついて苦笑いを浮かべる。
「どういう意味?」
「なっちってさ、自分のことを包み隠さずに話すじゃん。自分の
いいところ、悪いところ、何でも話してくれる。」
「・・・?」
なんでここでなつみの話しが出てくるのか、真希は不思議そうな顔をして
真里の顔を見つめる。
- 839 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:56
- 「全部自分で受け持つことだけが、強さじゃないんだよ。本当の自分の
気持ちを人に伝えられること、自分の弱いところを人に見せられること、
それもまた一つの強さなんだ。同時に、それだけ伝えた相手を信じているって
ことにもなる。おいらじゃ、今の後藤の気持ちを聞くことはできないか?」
真希は俯いたまま、何も話そうとしない。
「人に話すことで、不安が解消されるってこともあるよ。どうだ、
騙されたと思って、おいらに話してみないか?」
真里は、ニッと笑って聞いた。
「・・・フフッ、やぐっつぁんには敵わないや。」
真希は、小さく笑って視線をゴールに向ける。
「そうだね・・・不安、なんだと思う・・・。」
真希はゆっくりと話し始める。
- 840 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:57
- 今の自分の力が、絵里香に勝っているかどうかということ。
自分の力が通用しなかったら、自分はどうなってしまうんだということ。
強敵と戦うことは嬉しいけれど、その反面、勝てないかもしれないという
不安を感じること。
色々なことを考えて悩んだ結果、明日のためにも少しでも体を動かして、
十分に体を疲れさせてぐっすりと寝よう、そう思っていたようだ。
「後藤、お前は別に疲れてなくても寝てるだろ?」
「・・・後藤は寝るのが好きなの!」
真里の言葉に、真希は軽く頬を膨らませる。
「それにしても、後藤もけっこう考えてたんだな〜。」
「まあね。でも・・・少しはすっきりしたよ。ありがとう。」
真希は笑って真里にお礼を言った。
- 841 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 21:58
- 「やっと笑ったな。お前は笑ってた方が可愛いよ。」
「何、それって口説いてんの?残念だけど、後藤にはもう
好きな子がいるから、やぐっつぁんとは付き合えないよ。」
「ばっ、誰が口説いてんだよ!?おいらだって好きな子がいるよ!」
「アハッ、それって誰なの?後藤も知ってる人?」
「それは・・・って、別にそんなことどうだっていいだろ!
それより、明日のことでお前の話しが聞きたい。」
さすがになつみのことが好きとは言えず、真里は強引にも話しを戻した。
「実際のところ、お前の見立てではどうなんだ?勝てそうか?」
「そうだな〜・・・総合では、やっぱり向こうの方が上かな。」
「おいらの作戦も含めても、まだ無理なのか?」
「ん〜、作戦通りに動けて、ようやく五分五分ってとこだね。」
「ふ〜ん。」
真里は以外にも素っ気無く頷いた。
- 842 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:01
- 「んじゃ、棄権すっか?」
「へっ?」
「だってさ〜、それじゃあ勝率薄いだろ?だったらさっさとあきらめて、
このまま棄権した方が面白そうじゃんか?」
「ハハッ、決勝で棄権ね〜。それは確かに面白いかもね。」
真里の思いがけない言葉に、真希は腹を抱えて笑い出す。
「でも、後藤は最後まで試合をあきらめないよ。今の話しだって、
後藤は一度でも考えてプレイをしたことない。どれだけ相手が
強くても、勝つんだって気持ちだけは捨てたことはないよ。
明日の試合だって、後藤は負けるつもりで試合に臨んだりしない。」
真希は真里の顔をじっと見つめる。
- 843 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:02
- 「やぐっつぁん、棄権するってもちろん冗談でしょ?」
「当たり前だろ。どんだけ無様に負けようが、おいらが周りに
何も言わせない。最後まであきらめないでやってやる!って
気持ちがあれば、必ず成功するよ。おいらはそう信じてる。
後藤達のこと、おいらは最後まで信じるよ。」
「やぐっつぁん・・・ありがとう。」
「・・・お礼が言いたいのはこっちだよ。」
真里は軽く笑って夜空を見上げる。
「後藤がきてくれなきゃ、おいらはここに立っていなかったかもしれない。
大体は小川が仕切ってたし、おいらは名前だけの顧問ってだけだったよ。
お前がおいらを必要としてくれなければ、おいらは何も始められなかった。
フォーメーション組んだり、作戦を立てたりって、色々と難しいことを
考えることもたくさんあるけど、すごい充実してるって思えるんだ。
本当にありがとな。」
「お礼を言うことないよ。やぐっつぁんは、最高の監督だよ。」
真希は小さく首を横に振って、笑顔でそう言った。
- 844 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:03
- 「まぁ、奇跡が起きれば勝てると思うけどね。」
「それは違うな。」
「えっ?」
「奇跡は起きるのを待ってるもんじゃない。人の強い想いが起こす
ものなんだ。だから、後藤達ならきっと起こせるはずだよ。例え、
あの最強の美勇伝が相手でもね。」
「・・・そうだね。」
「おいらだって、最後まであきらめないでがんばるよ。
お前の友達にも頼まれてるしね。」
「友達?」
真里は首を頷ける。
- 845 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:04
- 「藤本ってさ、パチンコ店でバイトしてるんだな。」
「あっ、えっと、それは、ミキティは・・・。」
「そんな慌てることねぇよ。学校に言うつもりはないからさ。」
「・・・ありがとう。」
「その時にさ、藤本にこう言われたんだ。」
『ごっちん達のこと、支えてあげてくださいね。ごっちん達、
きっと矢口先生のことを頼りにしてますから。』
「ミキティ・・・。」
「藤本に言われたからってわけじゃないけれど、おいらは今、
自分ができるだけのことをして、お前達を勝たせてやりたい。」
真里は、真希に拳を向ける。
- 846 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:05
- 「明日の試合、勝とうな。」
「・・・うん!」
真希は、軽く真里の拳に自分の拳を重ね合わせた。
「さってと、おいらは明日に備えてもう寝るよ。早く寝ないと、
身長伸びないからな。」
「もうあきらめたんじゃなかったの?」
「うるさい!とにかく、お前も早く帰って寝ろよ。でないと、
明日起きれねぇぞ。お前達もだぞ!」
真里は、なぜか周りの茂みに向かってそう叫んだ。
「お前"達"?」
「後藤、おいら達は一人じゃないんだ。最高の仲間達が
いるんだってこと、それだけは忘れるなよ。」
真希の肩を軽く叩いて、真里は公園を出て行った。
- 847 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:06
- 真希がしばらく呆けていると、茂みの中から何人もの人が出てきた。
それは、あさ美を含むバスケ部の仲間達だった。
「紺野、みんな・・・何してんの?」
「えっとですね、矢口先生についてきたのはいいんですけど、
ちょっと出て行きにくい雰囲気だったもので・・・。」
代表して、あさ美が小さい声で答える。
「何で?」
「「「「(やっぱりわかってないのか・・・。)」」」」
あさ美達は、同時にそう思った。
たったの四ヶ月間しか一緒にいなかったが、真希の性格は大体は把握できていた。
人のことには敏感だが、自分のことにはかなり疎い、それが後藤真希なのだ。
- 848 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:06
- 「後藤さん、どこかに出かけるなら、ちゃんとあさ美ちゃんに
伝えてからにしてくださいよ〜。」
「そうですよ。紺野先輩、泣きそうな顔で"後藤さんがいない!"って、
私達の部屋に飛び込んできたんですから。」
「そ、それを言わないでよ〜・・・。」
麻琴と里沙に言われて、あさ美は顔を赤くした。
「そっか・・・ごめんね、みんな。ありがとう、紺野。」
「はい・・・。」
「・・・みんなにさ、どうしても伝えたいことがあるんだ。」
真希は真剣な表情に切り替えて、部員達を見渡していく。
- 849 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:08
- 「後藤は誰にも負けない。でも、後藤一人じゃ美勇伝には勝てない。
みんなの力が必要なんだ。後藤はみんなのことを信じてる。絶対に
勝てるって信じてる。明日、美勇伝を倒して優勝しよう。」
「「「「はい!!!!」」」」
「朝比奈学園、優勝するぞーっ!」
「「「「おーっ!!!!」」」」
「さって、それじゃ帰ろうか。」
真希達は笑って公園をあとにした。
それぞれの想いを胸に、それでも、ただ一つだけの目標を目指して。
優勝を目指して。
そして、運命の決勝の時が訪れる。
- 850 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:09
- 更新しました。
やぐ・・・(号泣)
何があっても、おいらはずっと応援してます!
がんばって!
- 851 名前:konkon 投稿日:2005/04/15(金) 22:11
- >名無しの荒らしさん
今回は、ちょっとしたいい話しで終わりましたw
次回、いよいよ決勝です。
どのようにしようかと思考中です(汗)
- 852 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:03
- 小鳥の囀りで、愛は目を覚まして体を起こす。
夏休みの間であっても規則正しい生活をしている愛は、最低でも
朝と呼ばれる時間には起きていた。
愛は目を擦って、壁に掛かっている時計に視線を移す。
「10時か、少し寝すぎたかな・・・ん?」
隣の布団に、美貴の姿がなかった。
部屋の方に目をやると、美貴は片膝を抱えてソファに座っていた。
雑誌を読んだりテレビを見ているわけでもなく、何かを考えているようだった。
「美貴ちゃん、お早う。」
愛の声で、美貴は顔を上げる。
「ああ、愛ちゃん、お早う。」
「珍しいね。こんなに早く起きてるなんてさ。バイトが無い日は、
普段なら昼まで寝てるのに。どうかしたの?」
「まぁ、ちょっとね・・・。」
美貴は返事を返すと、また下を向いてしまう。
愛は美貴の前のソファに座って、美貴をじっと見つめる。
- 853 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:04
- 「ねぇ、本当にどうしたの?具合でも悪いの?」
「そんなんじゃないよ。ただ、ごっちん達、試合
がんばってるのかな〜ってね。」
美貴はフッと笑って、愛を向いた。
「・・・そういえば、今日が決勝だよね。あさ美達、
まだ勝ち残ってるのかな?」
最初の試合の日以来、美貴達は真希達と連絡をとっていない。
試合の結果は気になるけど、真希達の邪魔をしたくはなかったからだ。
「インターハイの決勝戦でごっちん達が当たるのってさ、毎年優勝している
すごい強い学校なんだってさ。しかも、今年は今までで一番強いらしいよ。」
「そうなんだ・・・。」
「だからテレビでやってないかな〜って思って、さっき雑誌で調べたんだけど、
デジタル放送でしかやってないみたい。だったらせめて、ごっちん達が
勝てるように祈ってたんだ。」
「・・・勝てるよね。みんな、すごく練習してたんだから。」
「ごっちんは誰にも負けないよ。美貴にそう言ったんだもん。
絶対に優勝して戻ってくるよ。絶対に・・・。」
- 854 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:05
- バスケットボール選手権大会、決勝戦、
「紺野、ゾーンを組み直せ!ディフェンスから流れを引き寄せろ!」
「はい!」
「唯、半端なスピードだとボールを取られるよ!もっと素早く
パスを回して!絶対に止まらないで!」
「はい!」
コートの外から、真里とアヤカの声がずっと飛び交っている。
インターハイ最後の試合、決勝戦が行われていた。
後半残り時間3分、すでに朝比奈学園はタイムアウトを使い切ってしまい、
70対75というスコアで真希達が押されている。
いや、十分過ぎるほど抵抗していたといえるだろう。
優勝常連、しかも過去最強とまで言われている美勇伝高校に、
真希達は必死に喰らいついていたのだ。
- 855 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:07
- 特にあさ美から真希へのラインが、ここまで繋げたといっても過言ではなかった。
そして、麻琴、里沙、まいも実力以上の動きを見せて、点に結び付けていた。
今大会、この決勝までに、美勇伝高校とここまで張り合えた高校は、
今だかつて存在していない。
それが今、常勝美勇伝という神話を、今まで全くの無名高だった朝比奈学園が
打ち砕こうとしていた。
周りでは、溢れるくらいの観客達と、この試合を後のために見ておきたいと
いうたくさんのバスケットプレイヤー達、さらには、大勢のバスケ雑誌などの
記者陣が見ていた。
四年前に存在していた金髪の妖精を、そして、今の後藤真希を見にきているのだ。
真希の実力は、日本中に知られ渡るほどにまで有名になっていた。
試合のほうでは、唯にボールが渡ったところで、麻琴が素早くマークにつく。
- 856 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:07
- 「ふぅ、随分としつこいんですね・・・。」
「後藤さんやあさ美ちゃんと、ずっと練習してきたんだ!
これくらい、なんともないよ。まだまだいける!」
「でも、私達は止められませんよ。」
唯が持つボールがいきなり消える。
「くそっ!」
唯の魔術とも言えるパスに、麻琴は反応できなかった。
その時、
「里沙ちゃん、右!」
「はい!」
あさ美の声で、理沙が右に飛び出してボールをスティールした。
「ちっ・・・。」
里沙にボールを止められて、絵里香は小さく舌打ちをした。
唯の芸術的なパス、絵里香の動き、それをあさ美は見極めつつあった。
- 857 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:09
- 「(あの4番・・・すごいです。)」
「紺野先輩!」
里沙は、すぐに後ろにいたあさ美にパスを出す。
「(3Pを打てるかな?・・・いや、だめだ。構えてる間に5番に
ディフェンスされる・・・。里沙ちゃんに返しても、そこで
止まってしまう。マコっちゃんは遠くて出せない。後藤さんには
ディフェンスが二人もついてるし、ならここは・・・。)」
パスを受けるまでの一瞬、そのほんの僅かな間に、あさ美は
そこまで現状を把握していた。
あさ美はパスを受け取ると、すぐゴール下に高いパスを出した。
そこで、まいと絵里香がボールを取ろうと高く飛び上がる。
高さだけなら、絵里香よりもまいのほうが分があると、あさ美は
今までのプレイで認識していた。
- 858 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:10
- 「まいちゃん、右サイドにチップアウト!」
「(右サイド・・・そっか!)」
まいは絵里香より先にボールに手を伸ばすと、右サイドにボールをはじいた。
「まいちゃん、ナイスだよ!」
まいがボールを弾いたところに、ディフェンスを振り切った真希が、
猛スピードで走り込んでいた。
真希についていたディフェンスは、あさ美のパスからの一連の流れに、
目がいってしまっていた。
そして、当然ながらボールを持ったまいにディフェンスに向かう。
その瞬間を、真希は見逃さなかった。
真希はパスを受け取ると、すぐにシュートを打った。
真希が打った位置は3Pラインよりも外、ボールは見事にゴールを潜り抜けた。
- 859 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:12
- 「やりましたね!後藤さん・・・。」
「次、ディフェンスだよ!ここで止めて、逆転するよ!」
真希に駆け寄ろうとした麻琴達は、あさ美の言葉ですぐにディフェンスに戻る。
誰よりも先に、真希に駆け寄って褒めたかったのはあさ美自身だろう。
だが、あさ美はまず第一に試合に勝つことを優先させた。
今自分がしなければいけないこと、真希にとって、もちろん自分に
とって大切なこと、それはこの試合に勝つことだ。
真希はあさ美に軽く笑いかけると、所定の位置についた。
「ごめん、絵里香・・・ハァッ、ハァッ、4番があそこで他の人に
パスを回すなんて、思ってなかったから・・・。」
「ハァッ、ハァッ、過ぎたことは、仕方ないよ。でも、私達は絶対に
負けられないんだ。美勇伝高校バスケ部を名乗っているからにはね!」
「そうですよ・・・ふぅ、ここを乗り切って勝ちましょうよ。」
唯の言葉に、絵里香や他のメンバーも首を頷けた。
- 860 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:13
- 残り二分弱、
「ハァッ!」
「くっ・・・。」
絵里香が一瞬の隙をついて、真希、麻琴と素早く抜き去り
レイアップシュートを決める。
「負けませんよ。」
「私達だって!」
あさ美が唯のディフェンスをを掻い潜って、3Pシュートを放つ。
コートの中では、誰もが荒い息を吐き出して、それでも走って
ボールを奪い合い、ゴールを狙ってシュートを打っていく。
その光景を見て、真里は目を潤めていた。
「(本当にすげぇよ・・・ここまであの美勇伝と戦えるなんてさ・・・。
お前ら、本当に最高だよ・・・。)」
真里の目から涙が零れ落ちていく。
それは他の部員達や、試合を見ている観客達も同じだった。
- 861 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:13
- 時間は変わらないスピードで過ぎていき、残り時間15秒まで迫っていた。
点数は81対83、朝比奈学園はあと2Pで同点、3Pで逆転と
いうところまできていた。
今ボールを持っているのは絵里香で、そこに麻琴とあさ美が二人掛かりで
なんとか押さえている。
「絶対にここは・・・。」
「抜かせない!」
「私達だって、負けられないのよ!」
絵里香が強引に抜き去ろうとする。
そこを、麻琴とあさ美が庇い合いながら守っていた。
「いい加減に・・・。」
「(今だ!)」
ほんの一瞬の隙をついて、あさ美が絵里香のボールをはじいた。
- 862 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:15
- 「ご、後藤さん!」
あさ美がボールに飛びつき、真希の元へとはじき飛ばした。
勢い余って、あさ美は激しくコートの中を転がっていく。
「紺野、やっぱあんたは最高だよ!」
真希はボールを手に取ると、素早い切り替えしで二人のディフェンスを抜き去った。
しかし、すぐ目の前には相手の6番と、鉄壁を誇る唯が待ち構えていた。
「ここは通しません!」
「後藤達は、勝つんだーっ!」
残り時間3秒、場所はハーフライン、真希はディフェンスに塞がれるより先に、
後ろに高く飛び上がり、シュートを放った。
真希のオーバー・フェイダウエイ、飛び込んだ唯の手も届かない。
観客達の歓声が、まるで嘘のように沈黙になった。
絵里香も唯も、あさ美も麻琴も里沙もまいも、会場にいた全員が
ボールの行方を追っていた。
- 863 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:18
- 3・・・2・・・1・・・
ビーッ!
パサッ
「あっ・・・。」
一秒にも満たない時間、ボールがゴールに入るよりも先に、無情にも
試合の終了を告げるブザーの音が、会場中に響き渡った。
「負け・・・たの?」
真希のシュートは、惜しくもノーカウントに終わってしまったために、
81対83で美勇伝高校の優勝となった。
- 864 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:18
- 「ふぐっ、くっ・・・。」
「うぅっ・・・。」
試合が終わった直後に、麻琴と里沙は泣き崩れた。
まいも目に涙を溜めて、手で顔を押さえている。
「み、みんな・・・戻ろう・・・。」
あさ美はぼろぼろと涙を零し、仲間を集めようとする。
あさ美の声が聞こえてはいたが、真希だけは泣くこともなく、
ただ呆然としてその場に立ち尽くしていた。
少し離れたところからは、美勇伝高校の歓喜の声が聞こえてくる。
「後藤さん・・・。」
近寄ってきた絵里香の声で、真希はそちらのほうを振り向いた。
「後藤達の・・・負けだよ。」
真希は、聞こえないほど小さな声で呟いた。
- 865 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:19
- 「まだ、私は勝った気になれない・・・あなたを超えたとは
思ってない。だから・・・また試合しましょう。」
「絵里香・・・。」
「昔、あなたにどのような事情があったかはわからない。でも、
再びバスケットを始めたあなたと、こうして戦うことができた。
だから・・・また、ね。」
「うん・・・次こそは、絶対に負けないからね。」
絵里香は優しく微笑むと、自陣のベンチへと戻っていった。
「すごかったですね。」
「えっ・・・?」
一方、あさ美の所には唯が笑顔で近づいていた。
- 866 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:21
- 「まさかここまで止められるとは、思ってもなかったです。そして、
あの正確で素早いパス、周りを見極める広い視野、同じPGとして、
心から尊敬しますよ。」
「そ、そんなことないよ・・・。」
「楽しかったですよ。またやりましょうね。」
終始笑顔で、唯はあさ美から離れていった。
あさ美は呆然として、その場に立ち尽くしていた。
まさか、今大会NO1PGの唯に褒められるとは、思ってもなかったからだ。
それでも、今は負けて悔しいという気持ちの方が強くて、
素直に喜ぶことができなかった。
「朝比奈学園、すごかったよーっ!」
「来年もまた応援するぞっ!」
真希達の耳に、観客から壮大な声援と拍手が送られる。
真希達はそれを聞きながら、ゆっくりと自分のベンチへと戻っていく。
- 867 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:21
- 「よくやった・・・本当に、最高の試合だったぞ・・・。」
ベンチに座っていた真里が立ち上がって、泣きながら真希達にそう言った。
「後藤達・・・負けちゃった・・・。」
真希は寂しそうに呟く。
「ご、後藤さん・・・ごめんなさい・・・。」
麻琴が真希の前に立って、頭を下げる。
「・・・小川、何で私に謝るの?」
「わ、私が、後藤さんの足を引っ張ったから・・・後藤さんの力に、
全然なれてなくて、それで・・・。」
「違う!昨日、あれだけでかいこと言ったのに、おいらは何もできなかった・・・。
お前達は悪くない!おいらが、もっと、いい指示を出せてれば・・・。」
真里の言葉の途中で、真希は麻琴と真里を抱き寄せた。
- 868 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:22
- 「そんなことないよ。ここにいるみんながいてくれたから、後藤は
ここまでがんばることができたんだ。そんなこと、全然思ってない。
小川ややぐっつぁん、みんながいてくれたから、後藤達はここまで
勝ち上がってこれたんだ。みんなには、すっごく感謝してるよ。」
「後藤・・・。」
「ありがとね。朝比奈学園にきて、バスケをやってて本当によかったよ。
後藤にも、これだけたくさんの大切な仲間ができたんだからさ。」
泣いている部員達に、真希は微笑みかける。
「・・・よし、じゃあ、とりあえず帰るぞ!今夜は飲むぞーっ!」
「おーっ!」
部員達は、泣きながらも真里の声に答えて控え室に歩き始める。
そこで真希は、あさ美だけがその場で立ち止まっていることに気付く。
「紺野・・・行こう。」
「・・・そうですね。行きましょうか。」
あさ美は涙を拭って、真希に笑って返事をした。
真希はあさ美の肩を抱き寄せて、控え室へと戻っていった。
- 869 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:23
- 更新しました。
次回でインターハイ編は終了となります。
そして、次章に進みたいと思います。
- 870 名前:konkon 投稿日:2005/04/22(金) 23:25
- ちょっちある理由で次の更新まで少し間が空きます。
精神状態に微妙に異常がきたしてます・・・。
たぶんGW頃には復活できると思います。
- 871 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 02:09
- 更新乙です。次の対決が楽しみです。
バスケットのルールでは結末のようになるんでしたっけ?
そこだけ少し気になったもので。
- 872 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/04/24(日) 10:12
- お疲れ様です
負けてしまいましたか・・・。
でも良い試合でしたね。
優勝は出来なかったけどおもしろかったです
- 873 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 10:35
- >>872
ネタバレレスは絶対にやめよう!
更新された分の感想を書くのに、物語の重要なところをバラしてしまうのは厳禁。
あとから読む人にとっては、楽しみを奪われて大迷惑です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうしても書きたければ、可能な限り遠まわしに・ぼかして書こう。
なにが「重要なところ」か、どうすれば「遠まわし」になるか、それは自分の頭で考えてください。
ネタバレ感想が書きたければ、ネタバレ可の感想スレッドで。
以上、自治FAQからのコピペ
- 874 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 21:59
- >>872
ネタバレかよ・・・最悪だ・・・
konkonさん、いつも読ませてもらってます
面白い作品+早い更新、一読者として、正直嬉しいですけど、あまり無理しないで下さいね
- 875 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/25(月) 15:43
- >>872
ネタバレのため流し
- 876 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/04/26(火) 22:09
- はいはい
すみませんでしたぁ
- 877 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/27(水) 10:57
- あれ?自分もバスケやってましたけど>>871さんと同じく
バスケのルールでは結末のようにはならないんじゃ…?
同じく気になったもので。
汚スレ、スマソ。
- 878 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:17
- >872・876 名無しの荒らしさん
えっと、これから気をつければ大丈夫です!
まだまだ続きますのでまた見てやってください。
>873・874・875 名無し飼育さん
ありがとうございます。
自分も今後も気をつけていきたいと思います。
>871・877 名無し飼育さん
申し訳ありませんm(_ _)m
バスケのル−ルを誤って覚えてました(汗)
そんなわけで、レス862、863を以下のように変更しましたので、
またよろしくです。
- 879 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:18
- 「ご、後藤さん!」
あさ美がボールに飛びつき、真希の元へとはじき飛ばした。
勢い余って、あさ美は激しくコートの中を転がっていく。
「紺野、やっぱあんたは最高だよ!」
真希はボールを手に取ると、素早い切り替えしで二人のディフェンスを抜き去った。
しかし、すぐ目の前には相手の6番と、鉄壁を誇る唯が待ち構えていた。
「ここは通しません!」
「後藤達は、勝つんだーっ!」
残り時間3秒、場所はハーフライン、真希はディフェンスに塞がれるより先に、
後ろに高く飛び上がり、シュートを放った。
真希のオーバー・フェイダウエイ、飛び込んだ唯の手も届かない。
「(決めるっ!)」
真希の視線には、ゴールしか見えていなかった。
そのために、横から飛び込んできた影に気付かなかった。
- 880 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:19
- 「やらせないっ!」
「!?」
真希のシュートコースに、絵里香の手が伸び出てきた。
真希の手から、ボールが離れる。
チッ
真希の耳に、何かが擦るような音が聞こえた。
絵里香の指がボールに触れたようだ。
ボールは一直線にゴールに向かっていく。
観客達の歓声が、まるで嘘のように沈黙になった。
絵里香も唯も、あさ美も麻琴も里沙もまいも、会場にいた全員が
ボールの行方を追っていた。
- 881 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:20
- 3・・・2・・・1・・・
ガッ!
「あっ・・・。」
ボールがゴールの輪に当たって、宙に高く舞っていく。
そして、
ダンッ!
ボールがコートに落ちた。
その直後に、試合の終了を告げるブザーの音が、会場中に響き渡った。
真希のシュートは惜しくも外れてしまったために、81対83で
美勇伝高校の優勝となった。
- 882 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:23
- 以上が変更後です。
今後はもう少し勉強しながら書かせていただこうと
思います。
大変ご迷惑おかけしました。
それでは、続きを更新します。
- 883 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:24
- 「おい、お前ら食ってるかーっ!」
「おーっ!」
朝比奈学園バスケ部は、真希達が泊まっているホテルの近くの焼肉屋にきていた。
ここまでこれて嬉しいとしか言いようがない真里は、勝っても負けても
食べにいこうということで、予め人数分の予約をしていたのだ。
もちろん、真里の奢りである。
真里はずいぶんと酒を飲んだのか、顔を真っ赤にしている。
部員達は、わいわいと騒ぎながら焼肉を頬張っている。
「小川〜、ちゃんと食ってるのか〜?」
「もう、食べまくってますよ〜!それよりも矢口先生の方が
大変じゃないですか〜?そんな顔赤くして平気ですか?」
「当ったり前だろ!おいらがそう簡単に酔っ払うかってんだ!」
真里は、麻琴の隣まで歩み寄って肩に手を回す。
- 884 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:25
- 「もう十分酔ってますよ。」
麻琴は笑いながら真里に突っ込んだ。
麻琴は、真里と一緒にふざけながら部員達を笑わせていた。
立ち直りが早いところは、麻琴の最大の長所といえるだろう。
「ん、そういえば後藤はどうした?」
「あれ、最初の方はいたんですけどね〜。あれ、あさ美ちゃんも
いなくなってる・・・。」
「どうしたんだろ?呼んでみましょうか?」
里沙が携帯を探ろうと、かばんに手を入れる。
「いや・・・放っておいてやろうぜ。本当に一番悔しかったのは、
たぶん、あいつらだろうからな・・・。」
真里はそう呟くと、窓の方を向いて夜空を見つめていた。
- 885 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:28
- 夏の夜風に吹かれて、真希はホテルの屋上のフェンスに寄りかかって、
星を見上げていた。
どのくらいそうしていたかはわからない、けど、今は何も考えたくなかった。
自分の中で、何をどうしたらいいのかはっきりしていなかった。
ただ、試合に負けたという事実だけが、真希の心にポッカリと穴を開けていた。
しばらくして、屋上の扉が開かれる音がした。
真希はゆっくりと顔を扉に向ける。
「こんなところにいたんですか。」
真希が視線を向けた先には、笑顔のあさ美が立っていた。
「紺野・・・。」
「もういいんですか?みんなはまだ食べてますよ。」
あさ美は笑顔を崩さずに、ゆっくりと真希に近づいていく。
- 886 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:29
- 「そういう紺野こそ、全然食べ足りてないんじゃないの?普段なら、
おかわりして、何杯も食べてる頃でしょ?」
「あ、後藤さん、ひどいですよ〜。」
わざとらしく怒っているあさ美を見て、真希はフッと笑う。
隣まで歩いてきたあさ美から目を反らし、真希はまた空を見上げる。
「星、綺麗ですね〜。」
万点の星空を見て、あさ美は嬉しそうにそう言った。
「星を見てると、気が和らぐというか、落ち着きますよね。」
「紺野って、意外とロマンチストなとこがあるんだ。」
「以外というのは余計ですよ。」
真希の言葉に、あさ美は少しだけ拗ねた顔をする。
それから少しの間、二人の間に沈黙の時が降りる。
- 887 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:30
- 「・・・負けちゃったね。」
「・・・そうですね。」
真希の呟きに、あさ美は軽く頷いた。
「後藤が、後藤があと一歩早く踏み込んでれば、あと少しでも早く
シュートしていれば、後藤達は勝てたんだ・・・。」
「後藤さん・・・。」
「なのに、後藤は・・・後藤のせいで、負けたんだよ・・・。」
真希は下を向いて、震える声でそう口に出した。
「・・・そうですか。」
「えっ・・・?」
自分勝手な考えだが、真希はあさ美が自分のことを慰めてもらえるかと思っていた。
だが、真希の予想とは違ってあさ美はただ同意しただけであった。
- 888 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:34
- 「やっと私の方を見てくれましたね。」
「・・・紺野?」
「後藤さん、後藤さんが一人で抱え込むことなんかないですよ。」
『ごっちんがそこまで抱え込むことないよ。』
以前、体育館で美貴に同じようなことを言われたのを思い出し、
真希は目を丸くして驚いた。
「みんなわかってますよ。後藤さんのことを、大切な仲間だって
思っています。誰も後藤さんのせいだなんて思っていません。
深く考え込むことないですよ。後藤さんは、一人ではないんですから。」
『深く考え込みすぎだって。みんなわかってくれてるよ。ごっちんのことをね。』
「(紺野・・・ミキティと同じことを・・・。)」
あさ美の言葉に、真希は思わず涙が出そうになった。
- 889 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:38
- 「後藤さん、言ってくれたじゃないですか。私達は大切な仲間だって。
後藤さん一人で、敗北の原因を抱える必要なんてないんです。
そんなこと言ったら、私なんかどれだけ後藤さんの足を引っ張ったか、
わからないですよ。」
「そ、そんなことない!紺野はすごく後藤の力になってくれた!
紺野がいてくれたから後藤は・・・。」
真希の言葉の途中で、あさ美は人差し指を立てて真希に向ける。
「ほらっ、後藤さんも私と同じことを言ってくれるじゃないですか。
同じことです。だから、後藤さんも一人で我慢しないでください。」
「紺野・・・。」
「今の私達のチームで、今日と同じ美勇伝のメンバーと戦うことは、
もうないでしょう。でも、バスケを続けてればまた、別のチームだけど、
いつかは三好さん達と試合をすることもあるはずです。その時こそ、
絶対に勝ちましょう!私達、最強コンビで。」
あさ美は力強く、それでいて優しく真希にそう言った。
- 890 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:39
- 「・・・。」
「後藤さんのことを支えられるように、私ももっと強くなりますから。
私はずっと後藤さんの傍にいますから。」
そこまで言い切ったあさ美に、真希は抱きついた。
「後藤さん・・・。」
「・・・ごめん、今だけ、こうさせて・・・。」
真希の体が震えている。
もしかしたら、声を押し殺して泣いているのかもしれない。
あさ美は、真希の顔を見上げずに優しく抱きしめる。
恐らく、例え心を許しているあさ美であっても、泣いている顔を
見られたくないだろうから。
「次こそは、勝つから・・・絶対に勝つから・・・。」
真希は小さく呟いた。
- 891 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:40
- 「紺、野・・・後藤は、もっと、もっと強くなるから・・・。」
「はい・・・。」
あさ美は優しく真希の背中を撫でる。
「(後藤さん、泣き止んだらまた、あの素敵な笑顔を見せてくださいね。)」
いつからだろう、ここまで人を想えるようになったのは。
いつからだろう、ここまで自分が強くなれたのは。
そう思ったあさ美は、軽く笑みを浮かべる。
「(きっと、愛や後藤さん、それに、藤本さんに出会えたからかな。)」
それからしばらくの間、あさ美は真希の体を優しく抱きしめていた。
「もう、大丈夫だよ・・・ありがとう。」
真希はそう言って、あさ美の体から顔を上げる。
「そうですか・・・。」
あさ美はゆっくりと真希から手を離す。
- 892 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:41
- そこで、
「ごっ、ごごご、後藤さん!?どっ、どうかしましたか・・・?」
あさ美は顔を上げたと同時に、大声を上げて驚いた。
離れたと思っていた真希の顔が、あさ美のすぐ目の前にあったからだ。
「フフ、紺野の顔をよく見たいなって思ってね♪」
慌てているあさ美に、真希は楽しげに答える。
「紺野、大好きだよ。」
「・・・えっ?」
「ずっと伝えたかった。けど、バスケに支障が出たり、他のみんなに
迷惑かけたくなかったから、心の中にしまい込んでた。でも、大会も
終わったんだし、もういいよね。後藤は、紺野のことが好きだよ。」
真希は、今度は真剣な表情であさ美の目を見つめる。
- 893 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:42
- 「紺野には、たくさん助けられたよ。紺野がいてくれたから、今の
後藤がここにいる。これからもずっと、紺野と一緒にいたいんだ・・・。」
「後藤さん・・・。」
真希は少しだけ離れて、あさ美に向き直る。
「後藤と・・・付き合って、ください。」
「・・・。」
あさ美は真っ赤に染めて、口を開けて驚いていた。
「紺野はどう、かな?」
あさ美は一度息を飲み込んで、一呼吸ついてから真希を見据える。
「・・・さっき、言いましたよね。私は、後藤さんの傍にいたいです。
わ、私も後藤さんのことが好きです。ずっと好きでした・・・。」
「紺野・・・。」
「わ、私なんかで、よ、よろしければ、お願いします!」
あさ美は大きく頭を下げる。
- 894 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:43
- 真希の反応がない。
少しして、
「・・・ぶはーっ!すっごい緊張した〜。」
真希の突然の言葉に、あさ美は顔を上げる。
「美勇伝と試合するときよりも緊張したよ。まだ心臓がバクバクいってるし、
こんなに緊張したの初めてだよ。」
「そ、そうなんですか・・・。」
「ありがとう、紺野。これからもよろしくね。」
「は、はい!」
真希はゆっくりとあさ美に近づいて、手を差し出した。
「戻ろうか・・・みんなのとこに。」
「はい・・・。」
あさ美は、恥ずかしそうに真希の手を握り返す。
真希は嬉しそうに、あさ美の手を握って屋上をあとにした。
誰もいなくなった屋上、そこには、ただ二人の強い想いが染み付いていた。
- 895 名前:konkon 投稿日:2005/04/29(金) 17:43
- 今日の更新はここまでです。
- 896 名前:名無し飼育さん。 投稿日:2005/04/30(土) 18:08
- ごっちん、こんこん!おめでとうー!!
- 897 名前:名無し飼育さん。 投稿日:2005/04/30(土) 22:30
- なんか読んでて幸せな気分になっちゃいました
次章も楽しみにしております
- 898 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/05/03(火) 11:34
- お疲れ様
まじっすか〜?
ごっちんとこんこん!急展開ですね
- 899 名前:konkon 投稿日:2005/05/04(水) 03:33
- >896・名無し飼育さん
本当におめでとうって感じですね♪
ここからの二人に期待ですw
>897・名無し飼育さん
ありがとうございます。
そう言っていただけるとありがたいです。
次章でのこの二人にもご期待ください。
>名無しの荒らしさん
マジですよ♪
ごっちん&コンコン、どのようになるんでしょうかね〜。
次の展開は・・・まぁ、お楽しみということでw
- 900 名前:konkon 投稿日:2005/05/04(水) 03:35
- きりがいいので、次スレッドに移ります。
新スレはこちらになります。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1115143977/
それでは、これからもよろしくです。
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