突然のミライ

1 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/28(水) 21:41
 アタシは確かに楽屋にいた。

何人かと楽しくおしゃべりして
    
   バカなお話で笑って
     
               でも、突然真っ暗になって

    目が覚めた時には
     
        独りぼっちで

  ここは・・・どこ?
   
2 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/28(水) 21:48
人混みの中、私服、スッピンのままで私は立ちつくしていた。

普段ならすぐに化粧室に駆け込み、焦って化粧をしていただろうが、今はそれどころじゃない。

確かに楽屋にいたはずなのに、気が付けば街のど真ん中。しかし、ただの街ならば良かったのだが。

「ここ、どこ・・・?ねぇ、かおりん、紺野、高橋、あいぼん・・・皆どこ行ったんだよぉ!?」

化粧室で叫んでしまい、先客が不審な物を見るような目で立ち去る。しかし、叫んだ所でどうにもならないのはわかっている。

「とにかく、ここがどこだか調べなきゃ」

化粧を終え、そこから外へ歩き出す。相変わらず活気があり、人が左へ右へ過ぎ去っていく。

街並みは東京っぽいのだが、知らない建物がたくさんあり、また人のファッションなども全然知っていた物と違うのだ。

「これじゃまるで・・・」

自分一人が違う世界から来たみたい、と思った。しかしありえないか・・と呟いて舌をペロっと出し、再び歩き始めた。

3 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/28(水) 21:56
まずは自分のいた、元の場所に戻ってみようと歩く。しかし、街並みが知っているのとは違うため、迷ってしまった。

「ここ、どこだよぉ」

小さく呟きながらも必死に歩く。

と、フと顔を上げると大きな駅が見つかった。ここならば、何かわかるかもしれない、と走って近寄ってみるが、その駅名は

「新第三東京駅・・・?」

聞いたことのない駅名である。少なくとも、自分の記憶にはない。

どんどん混乱して、頭をかかえる。しかし、進まなければ何も出来ないのだ。

女は歩き始めた・・・と思ったが、何故か手が引っ張られる。考え込んでるうちに、男達に囲まれていたのだ。

うかつだった・・・油断していた、と後悔しても後の祭りである。

「随分変なファッションだけど、なかなか可愛いじゃん。どう?遊ばない?」

下心丸見えのいやらしい笑みを浮かべる男達。街並みは変わっても、男は変わっていないな、と内心思うが、そんなこと考えている場合ではない。

(逃げなきゃ・・・・!)

しかし既に囲まれている上に、誰かが助けてくれそうな気配もない。何とかしようと考えているうちに街の外れに引っ張り込まれた。

4 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/29(木) 20:14
後ろには壁、前には獣たち。完全に逃げ場を失った。

「何する気なんだよぉ!」

精一杯の声を上げるが、それも効果はない。男達は薄ら笑いを浮かべ、徐々に手を伸ばしてくる。

「いいことにきまがっ・・・!」

何かを言おうとした瞬間、一人の男は突然頭を押さえて蹲った。そしてパンパンパンと手が叩く音が路地裏に響く。

「はーいはいはいはい!女性に対しては紳士的に!」

ワケのわからないことを言ってさらに持っていた「何か」を男達に投げ込む。命中率は良く、次々と男達の頭、顔などに命中させていく。

「これでわかったら・・・さっさと帰れ」

呆然・・・としている場合ではない。チャンスとばかりに追い込まれた状況から逃げようと走った。

「こっち!」

男が突然手を掴み、連れて行かれる。普通ならば抵抗して逃げていただろうが、このときばかりは何故か素直に引っ張られるがままついていった。

その理由は妙な「安心感」である。手に触れただけだが、何か暖かい、それでいて信用できるような感じがしたのだ。

そして引っ張られて連れて行かれた先は一つのマンションである。エレベーターに駆け込み、すぐに男は8階へとボタンを押す。

「間一髪セーフかな」

男は軽く苦笑いを浮かべつつ、手を離す。自分も慌てて手を離し、サっと離れる(と言ってもエレベーターだから狭い空間だが)。

「まあまあ、警戒しなくても・・・つってもあんなことがあった後だしな。ま、信用してもらうために、俺の名前を教えておこう」

少々警戒はしたが、一応名前には耳を傾けた。知って置いて損はない。何かあったら、その名前を警察に言えば良い、と浅はかな考えを持っていたからだ。

「沖田春樹(オキタハルキ)と言う。・・・さ、次はそっちの番」

ニっと笑みを浮かべ、名前は?と続ける。普通なら怪しいから答えない。しかし、何故かクチが動いてしまった。

「真里・・・矢口真理」



5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/29(木) 23:16
理→里だよ
6 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/30(金) 19:23
名前を聞くと沖田さんはうんうんと笑顔で頷き、デスクの椅子にかける。

「あ、適当にどうぞ」

スっとソファに座り、少々かしこまってしまう。助けてもらったようだし、何せ他人・・しかも男の部屋であるのだから。

その態度を察してか、沖田さんはゆっくり立ち上がる。そして近くにある小さめの冷蔵庫を開け、ジュースをポイっと投げ渡してくる。

「中学生ならジュースだよね?」

優しさにホロリと涙が出そうになったが、その一言で目の中に戻ってしまった。邪気のない笑みで中学生と言われると、正直凹む。

「だ、誰が中学生だよっ!アタシはこれでも成人したよっ!」

ムキになって答える程嘘くさく聞こえたのか、笑顔で「ハイハイ」と受け流されてしまう。

「ま、それはそれとして、だ。君、何で・・・」

その先の言葉は容易に想像出来た。何故私もあんな所で突っ立っていたのかわからない。むしろこっちが聞きたい、と口を開こうとした。

「そんな妙な格好してんの?見たことないファッションだよねー」

再びコケそうになった。この人、天然なんだろうか・・・。

7 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/30(金) 19:24
>名無し飼育さん
>>理→里だよ

変換ミスしてしまいました。ご指摘どうもです。
8 名前:時の旅人 投稿日:2004/07/31(土) 21:27
とりあえず、わかることだけを説明してみた。自分は成人であること、アイドルグループの一員であること、仲間と居たが、気がつけば街の中にいたこと、そして何か手がかりを探そうとしたら絡まれたこと。

「へぇぇ・・・夢遊病?」

次の瞬間、持っていたジュースの缶が沖田さんの額にヒットしていた。

「じょ、冗談だ。しかし・・うーん」

顎に手を当てて考え込む。と、椅子をクルリと開店させてパソコンの電源を入れる。

「なかなか興味深いね。調べてみましょう。そのアイドルグループってのをね」

私も沖田さんも黙々として、カタカタとキーボードの音だけがこだまする。

何でもいい。手がかりが欲しい。そして早く帰って港また楽しく喋りたい・・・というか、一体ここはどこなんだろうか、と頭の中に考えがグルグル回る。

と、沖田さんが椅子を回転させてこちらを向いた。その表情は重く、険しい。

「確かモーニング娘。つったよね?」

私はコクンと頷く。そう、あの賑やかなグループの一員だ。が、次の瞬間、信じられない言葉を耳にすることになった。

「それ、20年も前に解散してるよ」

9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 03:34
更新が待ち遠しいです
10 名前:名無鈴 投稿日:2004/08/01(日) 09:59
今後の展開がどうなるか楽しみです。

以外な娘。がヒロインですね。
11 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/02(月) 09:41
20年前。

その言葉に私は言葉を失った。そんなはずない。だってほんの一時間前まで楽しくメンバーと居たんだから。

「疑ってるようですけど、これは紛れもない事実。どういうことなんでしょうね?」

さすがに沖田さんも困惑しているようだ。そんなこと言われても私にもわかんない。

「え、と。今ちなみに西暦何年?」

やっと口から出てきた言葉。そして、沖田さんは「確か・・」と唸って口を開く。

「2025年です」

そして再び固まってしまう。2025年。私は20年もタイムスリップしちゃったの?

「まさか、未来へ来たとでもいうのですか?まさか、ね。まだ完全にタイムマシーンだって確立されていないと言うのに」

私だって信じられない。何がどうなってこの時代に来ちゃったかなんて。

が、しかし。悩んでいたも仕方ないので前向きに原因を考えてみることに。

「ねぇ・・・どうしてだと思う?」

沖田さんは腕組みし俯く。時折うなり声を上げながら。私も必死に考えた。

「時空の歪みが原因というのは間違いないんでしょうが・・・それが突然、しかも普通の部屋で起こるというのは考えにくい、とすれば・・・答えは一つです」

人差し指をピっと上げて答える沖田sなん。私は「何?」と顔をよせて聞いてみる。

「誰かがあなた、もしくはあなた達をその時代から消そうとしています」



12 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/02(月) 09:43
>名無し飼育さん
とりあえず定期的に更新はするつもりなので、長い目で見てやってください。

>名無し鈴さん

なんとなく、一番適しているであろうと思ったヒロインにしました。

あと沖田sなん→沖田さん ですね
13 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/04(水) 20:03
「な・・・!」

私を懸想としている。つまり、現代(と言ったらおかしいかもしれないけど)では私が邪魔だと思ってる人がいる。それだけで凄いショックだった。

「・・・落ち込んでいる暇はありません。そういうことだとすれば、何とか戻る方法を見つけないと」

厳しい表情で声をかけられるが、私はどうもやりきれない思いでいっぱいだ。

「もーいいよ。どうせ私が邪魔だってんなら、帰らないでも・・・」

そう言った瞬間、沖田さんが立ち上がり、近づいてきた。顔を上げた瞬間、乾いた音と頬に痛みが走っていた。

「いい加減にしてください。全てがあなたを邪魔だと思ってるわけないでしょう!仲間がいたんでしょう!?」

そうだ。私には娘。のメンバーがいた。皆がそんなことするはず・・・あるか。

でも・・・。

「ん、わかった。でも、ビンタすることないんじゃないのぉ?」

むぅっと膨れっ面で沖田さんを睨むと、苦笑いを浮かべて「ごめん」と一応謝罪をしてくれる。

例え、私を消そうとした人がメンバーだとしても、胸ぐら掴んで理由を問いたださなきゃ!
14 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/07(土) 20:17
「元気出たようですね」

ニコっと微笑む沖田さん。んー、癒される笑顔だ。性格は天然だけどね。

「とにかく、手がかり探さないと・・・」

なんとしても戻りたい私は早速調べようと提案。が、しかし・・・

「まーまー!とりあえずお腹減ってるでしょ?何か作りますよ」

苦笑いを浮かべ、キッチンへ。何かうまくはぐらかされた気がするけど、ま・・いっか。



しばらくして、キッチンから出てきた沖田さん。手にはスプーンとオムライス・・しかもケチャップはハート形。

「お待たせ。さ、どうぞ」

ハートに苦笑しながらも、「いただきます」と言って口に運んでみる。

「あ・・・おいっしー!え?何これー?」

口に含んだ瞬間、卵がふわ〜っとして、ご飯とケチャップ、さらに具もいい具合にマッチして・・・。

「ふふ、得意なんですよ、料理。一人暮らしが長いもんで・・・」

そう言ってまたキッチンへ引っ込む。うーん、会って間もないけど・・・以外な才能。

そして全て平らげ、はー!っと大きくため息をつく。

「お粗末様です」

そう言ってサラやスプーンを持って引っ込んでいく。沖田さん、何か腰が低いっちゅーか、優しすぎるっちゅーか。

「ねー!それはいいんだけどさー!」

あやうく本題を忘れそうになって、少し大きめの声をかける。すると奥から出てきて、微笑む。

「デザー・・・」

「ボケはいい!」

沖田さんは苦笑いを浮かべ、椅子に座る。そしてこほhん、と一息ついて口を開いた。

「とりあえず帰る方法は一つです。簡単な方法ですが、時間はかかる・・・といった具合ですか」

15 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/11(水) 20:41
簡単なのに時間がかかる、という言葉に少し首を捻ってしまう。

「簡単ならすぐに出来るんじゃないの?」

しかしその言葉に困った表情の沖田さん。一体何故?

「時間を飛び越えちゃった、ということですから・・・まず」

簡単な図式を紙に書き始め、テーブルにポンと置いて説明を始めた。

「あなたの居た時間がここ・・・で、今の年代がここです・つまり、その時の越えるトンネルみたいな物がそう簡単に見つからないということですね」

あっ、と声に出し、私は凍りつく。確かにタイムマシーンなんかウチらの時代にはなかったはず。

「しかし、そうなればあなたの時代にいる、矢口さんを飛ばした人は、何かのきっかけでそのトンネルを扱うことが出来たことになる」

沖田さんは真剣な表情で答え、言い終えた後に深いため息をつく。

「まったく、やっかいですね。飛ばされた云々もそうですが、ヘタすれば次元の裂け目が出来かねないというのに」

また知らない言葉、と指摘すると再び真剣な表情で話し始める。

「次元の裂け目・・つまり、時間を飛んだり戻ったりしすぎると時間の空間がねじ曲がり、空間が避ける。ヘタすれば、意識しなくても飛ばされることだってある」

「なっ・・!それってマズイんじゃないの!?」

沖田さんは深く頷き、私は愕然とした。部屋には昼の3時を知らせる時計の音だけが響き渡った。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/17(火) 15:40
良い。

更新待って待つ
17 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/19(木) 02:21
「マズイなんてもんじゃない。下手をすれば・・・」

そこで口をつぐんでしまう。「何?」と問いかけても首を横に振り、答えない。

「推測に過ぎないので、何とも言えません」

そう言って扉の方向へ足を進めていく。

「何、どうし・・・」

「シッ!」

突然言葉を制す沖田さん。そして扉を素早く開き、サっと後ろに下がる。

「っ!」

そこに立っていた女性は驚き、怯えた様子でこちらを見ている。

待て。

何か見覚えが・・・・。

「あなたは誰・・・」

「高橋じゃないか!」

沖田さんの言葉より早く私の声。立っていたのは、紛れもなく高橋愛だった。

「や、矢口さぁぁん!」

涙をポロポロこぼしながら抱きついてきた高橋。不安と安心が一緒になって感情が溢れだしたのだろう。

「よしよし・・・怪我はないね?」

高橋はうん、うんと頷きながら声を上げて泣いた。沖田さんは背を向け、それを見ないようにしていた。
18 名前:時の旅人 投稿日:2004/08/26(木) 22:02
しばらくして、ようやく高橋が落ち着いて、ようやく会話が再開。

「ふむ、これはまた凄いことになってしまった」

へ?と首を2人で傾げると、沖田さんはため息をついた。

「鈍い2人ですね。一人飛ばされたのではないということが今わかりました。ということは、他にも誰か飛ばされた可能性が、ってことです」

「あっ!」

思わず声を上げてしまった。あの時、確かに何人かと喋っていた。高橋も含まれていた。

「じゃ、じゃあ・・・まさか!」

高橋はまだわからない様子で、私のことを見てオロオロしている。

「あのとき一緒にいたのは、私に高橋、藤本に紺野!」

必死に記憶を引っ張り出して名前を上げた。

「そんなにいるのですか?参りましたね・・・」

椅子に座り、頭を抱える沖田さん。と、その時パソコンから音が。

「ん、メールですか」

キーボードの音が部屋に響き渡る。背を向けて、話題が転換した!と思った私は

「ちょっと!まだ話は終わってないって・・・」

「いえ、これは・・・随分な情報ですよ」

19 名前:名無し 投稿日:2004/08/30(月) 23:32
age
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/31(火) 19:51
何故に上げる。
迷惑だぞ。
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/31(火) 19:51
忘れてた。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 11:23
>>20-21
和んじゃったよ。おい。
23 名前:時の旅人 投稿日:2004/09/06(月) 22:30
随分な情報という言葉でピタっと体が固まってしまった。

もしかしたら他のメンバーと会えるのか。

もしかしたら一気に帰れたりしちゃうんだろうか、と胸を躍らせる。

「次元の裂け目の反応がいくつかの場所で出たみたいです。ただ、すぐに閉じてしまったようですが」

キーボードの音が響き渡る。私たちは戻れないのか、とため息をつく。

「何故ため息なんです?反応があったということは、メンバーがそこにいたということ。まあ、じっとはしていないでしょうがね」

「あっ!」

そうだ。何人か飛ばされてきたわけだから、そういう反応が出てもおかしくないわけだ。

「でも、離れちゃったらわかんないですよ?これだけこの街広いんですし」

その言葉に、沖田さんはフフッと笑みを浮かべる。

「大丈夫。そのことに関しては、ある人を呼んであります」

その時、呼び鈴が部屋に鳴り響き、扉が開く。現れたのは、女性にしては背が高い、スラっとしたモデル体型の女性。

「お久しぶり、沖田君」

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