黒羽の天使

1 名前:凛一 投稿日:2004/07/28(水) 22:37
 某版で書かせてもらっています。
その内、作者の正体に気付く人が出てくるんじゃないか
と思いますが(文体とかで)優しく見守ってやってください(笑
 
HNを変えたのは気持ち的なものです(苦笑
この話は、多分もう1つより早く完結します。
田中・亀井・道重・後藤・石川が主な登場人物かな…と。
2 名前:〜プロローグ〜 投稿日:2004/07/28(水) 22:41
この島には、古くからの言い伝えがある。
『災いを呼ぶ黒羽』というもので、100年に一度
島に黒い羽を持った子供が産まれ、島中に災いを齎す不吉な者と
されていた。生まれた子供は早々に殺され、その一族は島から
追い出されたという。
今から16年前…丁度、前回の黒羽誕生から100年目に、再び
『黒羽』が誕生した。
代々「黒羽退治」をしていた一族である田中家は先祖達と
同じように、黒羽とその一族を退治しようとした。
けれど、黒派の両親は、自分たちの命を犠牲にしてまででも
黒羽を生き延びさせようとして、黒羽をどこかに隠した。
3 名前:〜プロローグ〜 投稿日:2004/07/28(水) 22:48
当時は大分騒がれたらしい。
島の大人たちを総動員させて山狩りまで行ったほどだ。
懸賞金までかけたと言うのだから、島の人々の黒羽に対する
恐怖心というのは計り知れないものがある。
しかし、16年後の今年まで、島に何の災いも起きない事から
あの時に黒羽は死んだとされていた。
 しかし、今から数ヶ月前の事…
島の学校の生徒たちの間で「黒羽を見た」という話が広まった。
最初は「まさか」と思って、耳を貸さずにいた大人たちの中にも
黒羽を見たと警備隊に連絡した者が数名出たので、再び
「黒羽退治隊」が結成されたのだった…
4 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/28(水) 22:50
<れいな視点>
「黒羽を見た?」
「そう、ホントに見たんだって!れいなの家って
 黒羽退治の専門でしょ?家族から何か聞いてないの?」
一体、同じ言葉を何人から聞いたんだろう。
少なくとも、ここ1ヶ月くらいで10人以上に聞かれた気がする。
それは友達だったり先生だったり。
時には近所のおばさんだったり…
目の前のこの友人は、丁度校門から出ようとしていた私を
わざわざ走って捕まえてまで聞いてきた。
今も私の返事を目をキラキラさせながら待っている。
5 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/28(水) 22:58
「聞いてないよ。ってか、別に私、黒羽何てどうでも良いし。」
この答えも何回目なのだろう。
それを聞いた人たちは、皆「なーんだ」という顔をする。
この友人も例外じゃなかった。
どこかつまらなそうに校舎へと戻って行く。
最近、人々の興味を引くような話題の少ないこの島で
『死んだと思われていた黒羽が生きていた』
という特ダネが、見捨てられるわけがない。
(にしても、皆、黒羽、黒羽って…
 黒羽がいたから何なんだろう。災いを呼ぶ?アホか…)
そう思いながら校門を出てすぐに右に曲がる。
私の家は本当は右に曲がる。
しかし、今日は行かなくてはいけない所があった。
6 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/28(水) 23:01
「やっほー。」
「…」
海沿いの崖にある小さな洞穴。
私はそこに入りながら彼女に声をかける。返事はない。
「ご飯、持って来たよ。」
「…」
返事がないのも気にせずに一方的に話しかける。
自分の声が洞穴に反響し、エコーがかかっているのが分かった。
やがて奥から出てきた少女に、私はにっこり笑いかけると
「絵里、こんにちは。」
「…」
絵里は、小さな声で俯き加減に
「こんにちは…」
そんな会話をしながら絵里の背中にある黒い羽根に
チラッと目をやる。パッと見は昨日と大して変わりないように
見えるけど、確実に黒くなっているはずだ。
7 名前:凛一 投稿日:2004/07/28(水) 23:13
今日はここまでにします。
苦情・感想お待ちしています。

(早速訂正)
そう思いながら校門を出てすぐに右に曲がる。
私の家は本当は右に曲がる。
   ↓
  そう思いながら校門を出てすぐに右に曲がる。
私の家は本当は左に曲がる。
               です。
     
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/29(木) 00:18
出だしから設定が面白そうで引き込まれました

期待して待ってます
9 名前:凛一 投稿日:2004/07/29(木) 07:51
「今日はねー、色々あるよ。」
「…」
カバンの中に隠していた袋を取り出し、あらかじめ給食の時間に
キープしておいたパンと、牛乳。そしてビニールに包んだ
デザートのゼリーを絵里の前に並べた。
ホント、欠席者がいてくれてよかったと思う。
「好きなやつ食べて良いよ。」
そう言ってから、私も残しておいた自分の分の牛乳の
ストローを銜えた。
絵里は、パンを手に取って、不思議そうに眺めている。
――パン持ってきたの初めてだったっけ…?

そう、絵里は今、島で話題になっている黒羽。
私が彼女と出会ったのは、丁度1週間くらい前――
10 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:01
『はぁ?黒羽退治?だって、黒羽って、まだ15だか16なんでしょ?
 私と殆ど変わんないじゃん。』
『でもな、早く退治しないと、島に災いが起こるんだよ。』
『だからって、殺さなくたって良いじゃん!
 ってか、もし生きてても、今まで何も起きてないんだから良いじゃんか。
 退治隊に入るなんて、私は嫌だよ。』
何で、何もしていない黒羽を殺す必要があるのか。
それも自分より一つ年上なだけの少女だ。
(そんな事したくない。)
そんな経緯で私は家を飛び出した。
(だいたい、何で私が退治隊に加わらないといけないの?
 お姉ちゃんに言えば良いじゃん。父さんたちも
 私が一族の中で、唯一、黒羽退治の能力持ってないの知ってるくせに…)
その事が原因で、母さんは親戚中から責められて島を出て行ったんだ…
(私のせいで…)
小さい頃からずっとそれがトラウマになっていた。
『一族の中で自分だけ異質』という思いが強かった。
(家なんか帰らない…)
11 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:04
気付くと海に来ていたようだ。
いつも友達と遊びに行く砂浜じゃなくて反対側の崖。
(そういえば、こっちに来るの始めてかも…)
「…?」
落ちたら危険だと、幼い頃から行くのを禁じられていた崖の下。
私はそこに小さな洞穴を見つけた。
「何だろ…。誰かいるのかな?」
私は、そこに引き寄せられるように下に降りて行った。
「うわっ…」
結構高い。落ちたら確実に大怪我だ。
ずるっ…
「げっ…」
危ないと考えている側から足を滑らせる。
「やば…」
足場にしていた大きな巌が崩れ、まさに宙ぶらりんの状態。
「くっ…」
汗で手が滑る。次の瞬間――
「…!?」
…正直、その直後の記憶はない。
12 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:05
「…っ…?」
頭にズキンと痛みが走り、うっすらと目を開けると
心配そうな顔をした少女が私を覗き込んでいた。
「…え…と…」
(誰だろう…学校の子じゃないな…。)
痛む頭を抑えながら起き上がって辺りを見回す。
(あれ、ここって…)
…洞穴の前?
「…大、丈…夫…?」
さっきの少女が聞こえるか聞こえないか位の声で尋ねてきた。
「うん…痛っ…」
うん、と返事をしたは良いけれど、大丈夫じゃないっぽい。
頭だけじゃなくて、どうやら足も怪我をしていたようだ。
捻挫をしたのか立つ事が出来ない。
「…あなたは…えっ…?」
何気なく少女に目を向けた私の視界に
少女の背中にある黒い羽が入った。
「黒羽…」
思わずそう呟くと、少女は、はっとした表情になって
「あなた…人間…私…殺しに…」
と言いながら、洞穴へ駆け戻ってしまった。
13 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:10
(今の…黒羽、だよね…。)
父さんやおじいちゃんたちが捜し求めていた黒羽。
それが、今、目の前にいた。
(何で…)
何でここに。と思いかけた私は、あっ、と呟いて洞穴を見た。
『16年前、黒羽は我々の手を掻い潜って、奴らの家族によって
 どこかに隠されたんだ…』
昔から、よくおじいちゃんに聞かされていた話が頭をよぎる。
洞穴からは何の物音もしない。
「…」
岸壁まで、何とか這って行き着いた私は
岩を支えにして「くっ」と立ち上がった。
けれど、頭と足がズキズキと痛みとてもじゃないが
歩ける状態じゃない。
「…っつ…」
それでも、何とかして洞穴まで辿り着こうとして
一歩踏み出した時だった。
「…そこに、いて…」
先ほどの少女…黒羽が
洞穴からじっと私を見つめているのに気が付いた。
「…大丈夫…。あなた、悪い人じゃない…」
黒羽は、自分に言い聞かすようにそう呟きながらゆっくりと
私に近づいてくる。
私はその場から動かずに、黒羽の言葉を待った。
14 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:13
「…」
やがて黒羽は、私のすぐ側まで来ると、足元にしゃがみ込み
足首に手を翳した。
「えっ…?」
すると、みるみる足の痛みが消えていくのを感じ
私は驚いて黒羽の顔を見た。
「私は、これくらいしか出来ないけど…」
「いや…あの…」
私が黒羽の肩に手を乗せると、黒羽はビクッとして目を瞑り
俯いてしまった。
それがなんだか怯えているように見えて、私はさっと手をどかし
黒羽の横にしゃがんだ。
「ありがとう。」
頭は、まだ結構痛かったけれど、なんだかその痛みにも
慣れてきてしまったみたいで、だんだん気にならなくなって
きている。黒羽は、俯いたまま首を横に振る。
どうやら「気にしなくて良い」という意味らしい。
「私、れいなっていうんだ。…あなたは?」
耳を澄ませていると、微かに「絵里」と言う声が聞こえた。
「絵里、か。よろしくね?絵里。」

―――これが、私と彼女の出会いだった…

15 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:22
<絵里視点>
 16年間、誰も来た事がなかったこの場所に今日、突然人が落ちてきた。
私より、少し小さい女の子。頭を打ったのか気を失っていて
私は彼女を家の前に寝かせるとそっと様子を見る事にした。
「…っ…」
しばらくして目を開けた彼女は、私の背中を見ると一言
「黒羽」と呟いた。
その時、ずっと、お母さんに言われていた言葉を思い出した。
『人間に近づいたらいけない。
 人間はあなたを殺そうとするのだから…』
(どうしよう…この子、人間だよ…。
 私、殺されちゃう…怖いよお母さん…助けて…)
お母さんなんてもういない。
分かっているはずなのに、どうしても助けを求めてしまう。
お母さんだけじゃない。
お父さんも、おばあちゃんもおじいちゃんもお姉ちゃんさえも…
皆、私を助けるために死んでしまった。私は1人なんだ――
16 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:25
気が付いたら逃げ込んでいた洞穴の中。
そっと外を覗くと、彼女は岩につかまりながら
今にも倒れそうな感じで必死に立っていた。
(あの子、他の人間とは違う…)
何でそんな事を思ったのかは分からない。
天性のカンと言うやつだったのかもしれないけれど
私の中で、彼女は悪い人ではなくなっていた。
「そこに、いて…」
私は彼女にそう言うと側に近寄り、そっと足に触れた。
見る見る癒えていく傷に、彼女は驚いたような顔をして私を見つめ
私の肩に触れた。
(…!)
17 名前:1.引き寄せられた2人 投稿日:2004/07/29(木) 08:29
突如湧き上がってきた『人間』に対する拒絶反応。
思わず体が震え、私はぎゅっと目を瞑った。
(怖い…怖いよ…)
しばらく体を強張らせていると、彼女はそれに気付いたのか
手をどかし、私の隣にしゃがんだ。
れいなと名乗ったその少女は
「あなたは?」
私はしばらくして絵里、と小さな声で返す。
少女はそれを聞くと、にっこりと笑って
「絵里、か。よろしくね?絵里。」

優しい瞳をした少女。この子なら大丈夫…そう思った。
18 名前:凛一 投稿日:2004/07/29(木) 08:34
更新終了です。

名無飼育様 >>
ありがとうございます!
期待に沿えるかどうか分かりませんが(オイ
一生懸命頑張ります☆
         
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 22:30
個人的に後藤さんと石川さんが気になります(w


20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/31(土) 01:05
面白そうですね
21 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 07:26
私がれいなと出会って一週間くらい過ぎた。
れいなは殆ど毎日学校が終わった後、ここに来てくれる。
彼女曰く、この岸壁は島の大人たちですら、近寄らないような場所だから
あんまり見つかる心配はないらしい。
というより、場所によっては立ち入り禁止になっているそうだ。
「こんにちは、絵里。」
れいなはいつもそうやって話しかけてきてくれるけど、やっぱりまだ
人間に対する恐怖心が消えていない私は、彼女と目を合わす事が出来ずに
数テンポずれてから小さな声で
「こんにちは」
と返すのが精一杯だった。それでも彼女は笑ってくれる。
まるで「大丈夫だよ」とでもいうように、優しく微笑んでくれる。
今まで私を見た人間の中で、普通に接してくれるのはれいなだけだった。
22 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 07:48
「でね、その友達がさぁ…」
「ホントおもしろいんだよ〜」
れいなは時々こうやって、人間の世界の事を教えてくれる。
背中に付いた、この黒い羽さえなければ
私も住んでいたであろう人間の世界。
――世界っていうのは、たくさんのその種類が集まって
  出来ているんだよ。
随分昔にお母さんが教えてくれた話。
人がたくさんいるから『人間の世界』
草花がたくさんあるから『植物の世界』
動物がたくさんいるから『動物の世界』…
その時お母さんは
『この世の中の全てのものが
 どこかの世界に所属して生きている』
って言っていた。
23 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 07:50
…じゃあ、私はどこに存在しているの?
羽が生えているから鳥?
言葉が喋れるから人間?
動物?植物?魚?
どこの世界にも入れてもらえない、中途半端な存在。それが私。
自分がどこに生きているのか分からない。
別に好きで黒羽になったんじゃない。
生まれたときから既に黒羽と決められていたんだ…
「じゃあ、また来るからね。」
日が沈み、辺りが真っ暗になった頃、れいなは
いつもそう言って帰って行く。
24 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 08:56
『どうやって帰ろう…』
始めて会った日、彼女は高い岸壁を見上げ、そう呟いてた。
降りようとしたのはいいけど、登る事を考えていなかったらしく
かなり途方に暮れている様子だった。
『親とケンカして家飛び出して来ちゃったんだけど…。
 さすがにもう帰らないと島中の人間動員して探されちゃう
 からさ。それはかなり困るんだ…』
『…』
そう言うれいなを見つめながら、私はある選択を迫られていた。
私は1つだけ崖の上に上がる道を知っている。
自分が住んでいる洞穴をずっと奥に進むと
道が二つに分かれているのだが、そこを右に行くと
なだらかな坂道になっているらしく、崖の上に着く。
けど、そこは結構大きな家の裏手にある林の中に繋がっていて
誰かに見つかる可能性が高い。
しかもそこの家というのは16年前に私を追いかけて
家族を殺した人間たちの一族が住んでいた。
25 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 08:58
あの道をれいなに教え、万が一誰かに見られたら
私は殺されるだろう。確実に。
けど、困っているれいなを放っておくわけにはいかない。
『あの…』
『え…?』
何?というように私を見たれいなの手を掴んで
私は洞窟の方を指差した。
『ここ…進めば、行ける…から…でも…人間、いるから…』
そう言うと、れいなは
『まっすぐ進むの?』
『途中で、二つに分かれてるから…右に…』
『分かった。で、上は人がいるから見つからないように
 行けばいいんだね?』
こくっと首を縦に振ると、れいなは嬉しそうな顔になって
『良かった…これで、何回でも絵里の所来れる。』
『え…?』
『また、色々話しようよ。』
26 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 09:26
それ以来、れいなはあの道を通って来るようになったけど
一つ、不思議な事がある。私が教えたあの道は、れいなの言葉で言うと
ある家の所有地の中にあるらしい。所有地と言うのはその家の持ち物
の土地と言う事らしいけど、そこにれいなは勝手に入って良いのだろうか?
それを一回だけ聞いた事があるけど、れいなは
「あ…まぁ…」
という風に言葉を濁した。まぁ、何か理由があるんだろうと思って
それからその話題には触れないようにしている。
27 名前:2.優しいココロ 投稿日:2004/07/31(土) 10:08
「…寂しい、よ…」
れいながいなくなった後の洞窟でそっと呟く。
久々に感じた『人の温かさ』
もう忘れかけていたけれど、れいなに会って何かが変わった。
れいなと一緒にいると安心する。家族が死んだ後、ずっと1人で
ここに暮らしていたけど、あまり寂しいというのを感じた事は
なかった。どっちかといえば怖いという気持ちの方が強くて
遠くからでも、人間の声が聞こえるとかなりびくびくしていた。
けど、今は寂しいと言う気持ちの方が強い。
れいなが帰った後のしんとした洞窟は電気もないせいで暗く
海沿いな為に結構じめじめでひんやりとしていた。
それが寂しさを倍増させているようで、私は最近、夜になると
洞窟から出て、岸壁に寄りかかるようにして眠っていた。
そんな私の様子を、近くでじっと見つめている少女がいるなんて
全く気付かずに…
28 名前:凛一 投稿日:2004/07/31(土) 10:28
更新終了です♪

19:名無飼育様
 後藤さんと石川さんは後々ゆっくりと出てきます。
 まったりと待っていてください(笑

20 :名無飼育様
 ありがとうございます。
 これからも頑張るんで、どうぞお付き合いください!
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 02:23
面白いです。
続き、楽しみにしています。
30 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 16:47
新しい家、新しい学校。
ここは、お父さんたちが長年追っている『あれ』がいる島。
正直、どうでもいい。
何で私のご先祖が『あれ』の事を研究し始めたのかは分からない
けれど、お父さんたちは毎日毎日『あれ』の事を調べていた。
「さゆ、少しは手伝ってよ。」
「あ…うん」
「はい、これ。」
お姉ちゃんが渡してきたのは食器の入ったダンボール。
結構ずしっとしていて危なく落としそうになった。
「持てる?」
「ん…何とか…」
そう言いながらもフラフラと歩く私を見ていたお姉ちゃんは
「やっぱり何か危ない」と言いながら、反対側を持ってくれた。
31 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 16:51
「お母さん、これってどこ置けばいい?」
「あーそこ置いておいて。」
「よいしょっ…あれ、そう言えばお父さんは?」
お姉ちゃんが聞くと、お母さんはちょっと呆れたような顔をして
「この島で『あれ』を追いかけている退治隊の方のお宅に行く
って言って出て行ったわよ。多分、引越しの挨拶を兼ねて
『あれ』の事、聞きに行ったんでしょ。」
「あぁ…田中さん…だっけ。」
お姉ちゃんも呆れたように返事を返す。
――田中
この名前はお父さんからよく聞いていた。
お父さんたちが『あれ』を研究する立場なら
その田中さんというのは一家代々『あれ』を殺す、立場らしい。
『あれ』というのはこの島にしか生まれないもので
かなり恐れられている。だから、島では『あれ』が生まれたら
退治隊がすぐに殺すんだそうだ。
「あ…そうだ、さゆみ。」
お母さんとお姉ちゃんの会話をぼんやりと聞いていた私に
お母さんは何かを思い出したように話しかけてきた。
32 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 16:54
「…何…?」
「お父さんが、もしよかったらお前も来なさいって
 言ってたわよ。あと、梨華も。」
「何で?」
見事にお姉ちゃんとハモる。
別に私たちは退治隊の家に用事なんてないのに…
「何かね、田中さんのお宅に、あんたたちと同じ年くらいの
 お子さんがいるんだって。だからじゃないの?
 いい機会だし、行ってくれば?こっちは後でお父さんに
 やらせるから。自分の部屋は片付けたんでしょ?」
お母さんはそう言うと終わると、まぁ行くか行かないかは
あんたたちの自由だけどね、と付け加えた。
「どうする?」
どうせ、ここで嫌だと言ったところで
家に帰ってきた父さんに連れて行かれるに決まってるんだから
最初からお姉ちゃんと行った方がいいかもしれない。
「…行く…。」
よし決まりっとお姉ちゃんは私の手を取った。
(結局、お姉ちゃんは行きたかったんだね)
お姉ちゃんに引っ張られるように歩き始めると、後ろから
「田中さんの家はここの前の道、まっすく進んだ所にあるから。
かなり大きなお宅だからすぐ分かるわよ。」
というお母さんの声が聞こえた。
33 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 16:56
「…ねぇ、さゆみ?」
「…何。」
丁度玄関を出たところでお姉ちゃんは足を止めて私の方を見た。
「さゆはさ、田中さんって人の事どう思う?」
「…どう…って…」
「ほら、ウチと田中さんじゃ、同じ『あれ』繋がりでも
立場が違うでしょ?言ってしまえば、お父さんたちは
守る立場で田中さんたちは殺す立場。
その子供同士って上手く行くのかなぁって…」
(あぁ、そういう事。)
言われてみれば確かにその通りだと思う。
「…さぁ…」
「…」
私の答えに、納得いかないような顔をしているお姉ちゃん。
いや、納得いかないというよりは…
「さゆ、どうしたの?」
…心配している顔。
「…」
「さゆさ、この間から変だよ?」
「別に…」
34 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 16:59
――――
―――
――


「ごめんな、さゆみ。お父さん今日はあの島に行くんだ。」
――今日も、じゃん…
一体、何度こういう会話があっただろうか。
小さい頃からずっと家族に遊んでもらった記憶はない。
うちの家族というか一族の女たちは『あれ』について
どうでもいいみたいで、『あれ』を熱心に代々
研究しているのは専ら男。
生憎、一族の中でウチだけ男はお父さん1人だから
お父さんはおじいちゃんやおじさんたちと研究所に篭りっ放しで
滅多に家に帰ってこなかった。でも、男だけで研究所で暮らして
いたら、そこがどうなるかくらいはよく分かっている。
という事でお母さんが時々研究所へ食事を作りに行ったり
洗濯をしたりしていたようだった。
35 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 17:05
「さゆみ、家族みんなであの島に引っ越そう。」
そんな事を言われたのは一ヶ月くらい前だったか。
お母さんは前々から納得していたらしくて何も言わなかった。
お姉ちゃんも特に異論はないようだったけど
私1人だけが浮かない気分だった。
お父さんたちは休日になると、よく『あれ』がいるという島へ行って
『実地調査』というのをやっていた。
休みが続けば当然お父さんは帰って来ない。
今回、引っ越そうという話になったのは
『引っ越せば、家族が一緒にいる時間が長くなる』
という考えから来たらしい。
けど、私はそうは思わなかった。
だって、あの島に高校はない。
だから島の高校生はみんな、毎日隣の島の高校まで船で通っているんだ。
お姉ちゃんも高校生だからそうなる。
そうなると、朝は早いし、帰ってくるのは夜中だ。
お母さんだって、どっちにしろお父さんの新しい研究室に通うんだろう。
36 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 17:06
島なんかに行ったら、それこそお父さんは
研究に没頭して帰って来なくなる気がしたから…
今のままの方が、みんな一緒にいられる気がしたから…
だから嫌なんだ…。
怖いんだ。家族が本当にバラバラになっちゃいそうで…
37 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 17:27
「そうですか、道重さんのお子さんですか。」
その人は、田中家のおじいさんという人だった。
「はい。上の子は高校2年生で、下の子は中学2年生です。」
お父さんにほら、と促されて、私とお姉ちゃんは
「道重梨華です。」
「…道重さゆみ…です。」
おじいさんはにっこりと笑うと
「ウチの孫たちが高校1年生と中学3年生で……真希!!れいな!!」
しばらくして
「何?」
と言いながら部屋に入ってきたのは
長い茶髪のストレートが綺麗な整った顔の女の人。
「おや、真希、れいなは…?」
「さぁ?どっか行っちゃったよ。」
その言い方がどこか棘のあるような言い方で、私は少し変な感じがした。
38 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/02(月) 17:39
「まったく…」
おじいさんはしばらくぶつぶつ言っていたけれど
「まぁいい…真希、こちらは今日、ここに引っ越してきた
 道重さん。そして、そのお子さんたちだ。お前より1つ上の
 梨華さんと、れいなと同い年のさゆみさんだ。」
真希さんは、あまり興味なさそうに
「…どーもよろしく。」
ぺこりと頭を下げた。
「…梨華ちゃんって呼んでいいかなぁ?」
「えっ?あ、うん。いいよ!」
突然話しかけられてかなり驚いた様子のお姉ちゃん。
「じゃあ、梨華ちゃんとさゆみちゃん、ちょっと上行かない?」
私がお父さんの方を見ると言って来いというように頷いた。
「じゃあ…」
と言って立ち上がると、おじいさんは
「れいなが帰って来たら、そっちに行かすから。」
と真希さんに声をかけた。その時、真希さんが
「夜中まで帰って来ないよ。」
と冷たく言い放った――
39 名前:凛一 投稿日:2004/08/02(月) 19:30
短いですが、更新終了です。

29 :名無飼育さん>>
 ありがとうございます!
 これからもどんどん更新していきたいと思いますので
 待っていてください!!

〜訂正〜
「はい。上の子は高校2年生で、下の子は中学2年生です。」
           ↓
「はい。上の子は高校2年生で、下の子は中学3年生です。」
2年と3年の違いですが…
40 名前:_ 投稿日:2004/08/02(月) 20:58
面白いですw
これからどうやって絡んでいくか、楽しみでしかたがない。
マッタリと待ってるんで、頑張って下さい!
41 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:30
「まぁ、そこら辺に適当に座ってよ。」
真希さんに促されて、お姉ちゃんと2人、床に正座。
「あはっ、別に、正座じゃなくていいのに。まぁいいか…」
そう言いながらも、私たちが正座だからか、真希さんも正座をしていた。
「えっと、改めまして…真希です。
 で、本当はれいなっていうのがいるんだけど…今、ちょっと事情があって
 いないんだよね…」
真希さんは、ちょっと困ったような顔をして私とお姉ちゃんを見た。
「あのさ…初対面でこんな事聞くのあれかもしれないけど…
 2人のさ、お父さんって黒羽の研究者でしょ?」
「え…なんでその事…」
お姉ちゃんがちょっと驚いたように聞くと、逆に真希さんは
「あれ…まさか、お父さんからウチの家系の事、聞かされてない?
 2人のお父さん、よくウチに来てたよ。私は初対面だったけど…
 ってより、ウチの親父たちがそっちの研究室に通って立って感じかな。」
と、意外そうな顔をした。
42 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:33
「田中さんっていう名前は聞いていたけど…会ってるなんて知らなかった…」
「へぇ…まぁ、そんな事はどうでもいいんだけどね。
2人とも、お父さんの事どう思ってる?」
「どうって…別に、何とも思ってないかな。
小さい頃からあんなだし、もう慣れちゃった。」
お姉ちゃんは本当にそう思っているんだろう。
真希さんは今度は私の方を向いて
「…さゆみちゃんは?」
「…分からない…です。」
――本心だった。確かに黒羽の事はどうでもいい。
でも、それを研究しているお父さんたちの事はどうかと言えば
よく分からない。迷惑かけられてばっかりだけど
それでも嫌いではない。でも好きでもない。
「そっか。…あのさ、道重家って、一族全員が研究に携わっているって
ワケじゃないんでしょ?」
お姉ちゃんがこくっと首を振る。
「ウチの家系はさ、一族全員、生まれたその瞬間から退治隊なんだ。
何かね、よく分かんないんだけど、ウチの一族だけが持ってる
黒羽退治の能力みたいのがあるんだって。
だから、この島は黒羽退治がウチらしかいないんだけどね。」
私とお姉ちゃんは黙って真希さんの話を聞いている。
話の先が全く予想できなかった。
真希さんが話を続ける。
43 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:35
「でね、ウチの一族は、この島の人間以外と結婚しちゃいけないって
決まりがあるんだ。黒羽の事を知らない島以外の人間と結婚したら
能力を持たない子供が生まれるって言われていたから…。
でも、ウチの親父はそれを破った。
ウチの母親は島以外の人間だったけど、何故か黒羽の事を知っていたし
生まれた子供…私もきちんと能力持っていたから
全然問題ないってされてたんだけど…」
真希さんはそこで一旦言葉を切ってちょっと溜息をついた後
「妹…れいなが、能力持ってないんだよね…」
その時の真希さんは寂しそうな、悲しそうな、そんな瞳をしていた。
お姉ちゃんは俯いている。
多分、お姉ちゃんには話の続きが予想できていたんだろう。
「当然、母親は親戚中から責められた。
何で親父が責められないんだろうって思ったけどまぁ、大人の事情って
いうのもあったんだろうね。ウチの親父、一人っ子だし。
そんなわけで、母親は家を…この島を出て行った。
私が小学生になった年だったんだ。だかられいなは5歳だったんだけど
その頃から完全に自分の事、責めちゃってね。
昔から、母親が周りからなんか言われるたびに
『私が悪いんだから。お母さんは悪くない』
って言ってたけど…。それが、すごく可哀想で…しかも、れいなの事は
島の人間達には秘密になってるんだ。」
「何で…?」
44 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:36
お姉ちゃんが恐る恐るといった感じで尋ねると
「だって、島で唯一の退治隊の家系の本家でだよ?
 能力のない子供が生まれたなんて言ったらどうなるか…。
 だから、母親の事も、島の人たちは『諸事情で離婚』としか
 知らない。」
「…そう…なんだ…」
私は、なんて言えばいいのか分からなかった。
同じ『あれ』に関係していても、ウチと田中さんの家では
状況が全然違う。お姉ちゃんも黙ったままだ。
「…さゆみちゃん?」
「へっ?」
突然、話しかけられて、思わず変な声を出してしまった。
真希さんはくすっと笑ってから
「…この島の中学って、1学年1学級制だから、さゆみちゃんは
 れいなとは絶対に同じクラスになるんだ。
 でね、あの子と…仲良くしてやってくれないかな…?」
「え…あ、はい。もちろん…」
(突然、何でそんな事を言い出すんだろう。)
45 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:40
そう不思議に思っていると、真希さんは
「さっきも言ったけど、島の人にはれいなの事は内緒なの。
 だから、あの子の友だち、退治隊の事とか色々聞いている
 みたいなのね。でもあの子自身、黒羽に対する思いっていうか
 そういうの複雑だと思うからさ。
 ちょっとフォローしてあげてくれないかなって。
 れいなって、見た目はしっかりして見えるんだ。
 でも、ホントは全然そんな事なくて、すっごく弱んだよね。
 あぁ、もちろん精神的にね?ケンカは…多分、それなりに
 強いと思う…けど…。」
真希さんって、本気でれいなちゃんの事、心配してるんだ。
お姉ちゃんて、みんなこうなのかな。
ウチのお姉ちゃんも、すごく優しくて、私の事を結構気に
かけてくれている。
知ってるんだよ?お姉ちゃんが、引越しする何日か前から
私の事でお母さんに色々話していた事。
お姉ちゃん、自分の新しい高校の事とかも不安なはずなのに、
私の事を一番に気にしてくれている。
れいなちゃんの事を話す真希さんを見ていたら
ウチのお姉ちゃんと同じなんだって感じがした。
46 名前:3.捕獲と保護 投稿日:2004/08/03(火) 14:43
「…大丈夫ですよ。」
何となく飛び出した言葉に、真希さんは一瞬
「えっ?」と言ってから、すごく優しい顔になって
「ありがとう」
と言った。お姉ちゃんも、ちょっと驚いた顔をしてから
ホッとしたような表情になった。

「あの…」
しばらくして、お姉ちゃんが、窓の外を見ながら
「もう外真っ暗だけど…れいなちゃん、まだ帰って来ないの?」
真希さんも、そういえばという顔をして
「…いつもより…遅いかも…。
 …今日のはいつもより凄かったからな…」
真希さんは呟くように言ったけど、私にはしっかりと
聞こえてしまった。
「…何が凄かったんですか…?」
真希さんはちらっと私の方を見て
「…ん?あぁ…あのね…」
47 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 14:49
「だからだな、れいな。お前も退治隊に入ってだな…」
「嫌だっていってんじゃん!」
(もう、何度目なんだろう。この言い争い。)
いい加減、うんざりして来た。
目の前に座っているのは父さんとおじいちゃん。
黒羽の目撃情報がますます増えてきて、本格的に退治隊が
立ち上がる事が決まったんだ。
だから、田中家全員が退治隊としての任務を負った。
つまり、私も退治隊の1人だって事。
でも、私なんかがいたら足手纏いになるのは目に見えている。
それでも、無理矢理私を退治隊に加えようとしているのは
単なる自分たちの名誉の為。
一族の中で1人だけ、しかも末っ子が隊に入らなかったなんて
言ったら、恥さらしもいいところだ。
というより、私の事が島の人にバレてしまう。
(…お母、さん…)
悲しい事があるとココロの中で呼んでしまう大切な人。
もういないって分かってるのに…
「お前に能力がないのは一族みんな分かっている。だから…」
「もういい加減にしてよ!!みんな…黒羽、黒羽って…
 あの子が何か悪い事したの?あの子だって、生まれたくて
 羽持って生まれて来たんじゃないっ!
 私も…好きでこんな家系に生まれて来たんじゃないし
 お母さんだって、こんな能力のない子供を産もうと思って
 産んだんじゃないっ!」
48 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 14:53
私に最後の言葉も言わずに家を出て行ったお母さん。
私はすごく恨んだ。お母さんをじゃない。
能力を持たずに生まれてきた自分を、だ。
こんなにお母さんに迷惑をかけて、ここでのうのうと
暮らしている自分がすごく嫌いだった。
お母さんが、私に何も言わずに出て行ったのも、お母さんが
私の事を恨んでるからだ。ってそう思ってた。
「ま…待て、れいな。今、『あの子』と言ったな…!
 黒羽の事を知っているのか?!」
「…っ!」
(何でそこまであの子にこだわるの?!もうこんな家…っ!!)
「れいなっ!!」
後ろから2人分の声が追いかけてきたけど、私は走り続けた。

ただひたすら――
絵里の事を守りたくて…
49 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 14:54
「…何してるの?」
何時間くらい経ったんだろう。
家を飛び出した時には青かったはずの空には無数の星が煌き
辺りには明かり1つなくなっていた。
「…絵里…?」
いつの間にか洞穴の前に来ていたらしい。
優しく微笑む絵里を見たら、急に涙が溢れて来た。
「絵里…私…」
「ん…?」
何で、こんな優しい子を殺さなくちゃいけないんだろう…。
この子は何もしていない。悪い子じゃないのに…何で…。
堪え切れなくて、わぁぁぁっっと泣き出してしまった私を
絵里はそっと抱きしめてくれた。
(暖かい…)
「…よくね、お母さんがこうやってくれたんだ。」
(絵里の…お母さん…)
「…ずっと忘れかけてたんだけどね。人の温かさっていうの…」
(でも、そのお母さんを殺したのはウチの…)
「絵里…ごめん。ごめんね…」
「…何でれいなが謝るの?
 れいなは何にも悪い事してないじゃない。」
絵里は本当に何も気付いていないのだろうか。
私の家系の事も、何も…
50 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 14:57
「…?」
ふと、絵里の腕の力が強くなった気がした。
顔を上げてみると、絵里はじっと一点を凝視している。
「絵里?」
「…あ…何でもない…」
そう答える絵里の顔は蒼く、声も微かに震えている。
「何でもなくないっしょ?どうしたの?」
「…………人が…」
絵里の言葉にハッとして辺りを見回す。
けれど周りには誰もいなくて、絵里は不安そうな顔で私を見た。
「…どんな子だった?」
「…よく、分かんない…でも…女の子…」
見られた…?
私は、かなり動揺した様子の絵里をギュッと抱きしめて
「…絵里、洞穴の他に、上に行く道ってない…?」
「・・・・・・・・分かんない…あそこしか、通った事…ない…」
「探してくる。」
51 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 14:59
えっ?と私の顔を不安そうに見つめる絵里に私はもう一度
「見てくるから。絵里は洞穴の中にいて。いい?」
それでもなお、私の服の裾を掴んでいる絵里。
(さっきと逆だね)
そんな事を思いながら私は
「絵里?これ、すごく大切な事なんだよ?
 もし、本当に誰かが見てたなら口止めしないといけないし
 絵里の命に関わる事なんだよ?」
と少し強い口調でそう言った。
「・・・・・・う、ん・・・・・・」
「私は絵里の事守りたいんだよ…」
でも、絵里は離そうとしてくれない。
「ウチの家系は、絵里の事殺そうとしている退治隊なのっ!
 でも私には…絵里の事は殺せない…もし、絵里が見たのが
 ウチの親戚とかだったら大変な事になるの!!
 お願いだから分かって!」
52 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 15:21
言ってしまってから、はっとして絵里を見た。
絵里は、俯いて顔を上げようとしない。
ただ、掴んでいた手を離して、ぎゅっと拳を握っている。
「あ…その…」
慌てて何かを言おうとしても、頭が真っ白で言葉が出てこない。
「…いいよ。」
か細く、今にも消え入りそうな絵里の声。
「………」
「…知ってた…から…」
(…………知ってた?)
「…れいなの家族が…私の事、追いかけてるの…知ってた…。」
「……いつから…」
(いつから気付いてたの…?)
53 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:08
(絵里視点)
「……本当は、初めて会った時に知ってた……。」
れいなに出会うずっと前、私は何回か、あの道を通って
上に行った事がある。その時に、れいなを見たんだ。
れいなはお姉ちゃんらしき人と一緒に買い物袋を持って
あの家に入って行った。
だから、初めてれいながここに来た時には分かってたんだ。
でも、何故かれいなは大丈夫だって思った。
だから黙ってた。
れいなが、何も言わずにここに来るのは
何か理由があると思ってたし、いつか、絶対にれいなの方から
話してくれるって信じてたから…
「…ははは…」
顔を上げると、れいなは泣いていた。
笑いながら泣いていた。
「れいな…?」
「……よかっ…た。」
そう呟いて、れいなは私の肩に顔を埋める。
54 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:10
「…さっき、勢いで言っちゃってから…後悔した…
 絵里が、私の事拒否…するんじゃないかって……
 不安だったんだ……でも、よかった……」
(そんな事、しないよ。)
私は、震えるれいなの肩をぎゅっと抱きしめた。
その時、さっき見た女の子がすぐ近くに立っているのに
気が付いたけど、その子は、私とれいなを交互に見てから
そっと微笑んで、声を出さずにこう言ったんだ。
『良かったね』
多分、さっきまでの会話を、どこかで聞いていたんだろう。
私が頷くと、その子は人差し指を口に当てて頷き返してくれた。
不思議な子だけど、れいなと同じで安心できる笑顔。
不思議と、逃げようとか、その子に何か聞こうという気には
ならない。その子は、もう一度微笑むと
どこかへ走って行ってしまった。
「…」
何だったんだろう。私の事を見ても、全く驚かなかった。
むしろ、全ての事情を知っているような感じがした。
55 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:12
(今の事、れいなには黙っておこう。)
私はそっと、れいなの頭を撫でる。
いつの間にかれいなは泣き止んでいて
スースーと気持ちよさそうに眠っていた。
(どうしよう…)
別に私はこのままでも構わなかったけど
れいなの家族が心配しないかな?
でも、さすがに送って行こうっていう勇気はない。
(起こしたほうがいいかな…)
でも、さっきのれいなの表情が頭を過ぎって
その動作を踏みとどまらせている。
さっきというのは、私がれいなを見つけた時。

「あ、れい…」
声をかけようとしたんだけど、その時のれいなが今まで
見せた事のないような顔をしていて…
私はれいなの笑っているところしか殆ど見た事なかったから
あんな悲しそうな顔のれいなにどう話しかけていいのか
分からなくて、しばらくそのまま見守る事にした。
56 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:15
でも、日が沈んで、周りがだんだん暗くなって来ても
れいなは立ち上がろうとしなかった。
というより、日が沈んできている事に気が付いていない感じがした。
そろそろ話しかけた方がいい気がして
「…何してるの?」
さすがに、れいなが泣き出した時はびっくりしたけど
また、あの日みたいに家で何かあったのかな…?
57 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:22
「ねぇ…」
そんな事をぼんやり考えていたから、誰かが近づいてきた事に
全然気が付かなかった。
「えっ?」
顔を上げると、さっきの女の子と、あと2人の女の人が
立っていた。女の人のうちの片方は、見たことがある。
「それ…うちの妹なんだ。」
その人は、ちょっと戸惑ったような感じで話しかけて来る。
私は、正直どうしていいのか分からなくて、ただその人たちを
見つめるしかなかった。
「…名前は?」
「…絵里…」
今にでも逃げ出したい気分だった。
でも、どう考えたってそれは無理。
だから私は、その人たちの質問に素直に答えるしかなかった。
58 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:25
「絵里ちゃん、黒羽…だよね?」
――…はい。
「家族は?」
――いません…。
「れいなとは仲良いの?」
――…はい…。
「1人でここに?」
――…はい…。
59 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:40
正直、どこまで本当の事を言っていいのか分からなかった。
仮にも相手はれいなのお姉ちゃんと、全く知らない人。
その人は、私にいくつか質問した後、れいなの方を見た。
「れいな、いつもここに来てたのかな…」
誰に言うともなく、ポツリと呟く。
「真希さん、どうするんですか?」
さっきの不思議な少女が、不安げにその人を見て尋ねた。
真希、と呼ばれた人は
「…大丈夫。黙ってるよ。れいなの友達みたいだし。
 それに、れいな、この子の事すっごく大事にしてる
 みたいだからね。」
それを聞いたあとの2人は嬉しそうな顔になって頷いている。
とりあえず殺される事だけは免れたようだ。
「仲良くしてあげてね?」
その人…真希さんは、私の頭を撫でながらそう言うと
れいなの事を抱え上げた。
「全く、コイツもよく寝るな…」
相変わらず眠っているれいな。確かに、この話声の中で
こんな体勢で眠っていられるのは、結構凄いかもしれない。
60 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/03(火) 17:47
「じゃあ、またね。」
そう言って帰って行く3人の背中を見送りながら
私はあることに気が付いた。
初めてれいなを見た時にもチラッと見えていたものが
あの3人にもある。
私があの3人をあまり怖がらなかった理由はそれ。
あれがある人間は、私を見ても驚かないし、優しい。
ただ、あれが何なのかはよく分からない。
お母さんの話にも出てきた事がないものだ。
私と正反対の色をしたあれはとても綺麗で、喩えて言うなら
それを持っている人間は天使に見える。
いや、本当に天使なのかもしれない。
ふと頭に浮かんだフレーズを呟く。

「天使に出会った悪魔、か…」
61 名前:凛一 投稿日:2004/08/03(火) 17:51
更新終了です☆

>>40 :_ 様
ありがとうございます!
話の構造は、大体できているんで、できたら夏休み中に完結…
…できるように頑張ります!!
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 23:42
うわぁ、この先がどうなるかすげぇ楽しみ。
63 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/05(木) 21:25
<れいな視点>
 目が覚めると、そこは見慣れた自分の部屋。
(あれ…)
私は昨日、絵里の腕の中で眠ってしまった。そこまでは覚えている。
じゃあ、ここに連れてきたのは…誰?
「おはよー。お寝坊さん。」
ガチャっとドアが開いて入ってきたのはお姉ちゃん。
「全く…ホント、私以上によく寝るよね。感心しちゃったよ。」
…まさか、お姉ちゃんがここに…?
「昨日もさ、全然起きないんだもん。」
「…絵里に会ったんだ…」
自分でも、語気が強くなっているのが分かる。
お姉ちゃんは絵里に会ったんだ。
それで私をここに運んで来た。
「……。」
黙ったまま私の方を見ているお姉ちゃん。
「…絵里に何かしてたら許さない……」
それでも何も言わないお姉ちゃんに、だんだんイライラしてきて
飛び掛ろうかと思った時だった。
「…れいな、あの子の事、ホントに大切なんだね。」
「…え?」
「…仲良くしなよ?」
そう言うとお姉ちゃんは、ご飯できてるから。
と言い残して部屋を出て行った。
64 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/05(木) 21:28
――えっと…
話の状況がよく掴めない。
お姉ちゃんと絵里は昨日会った。これは間違いない。
そして、何を話したのかは知らないけど
私が絵里と仲が良いのを知っている。
…それで、黙っててくれるの?
何故だろう。
そもそも、お姉ちゃんには、きちんと退治隊の能力がある。
絵里を見た時、何も感じなかったんだろうか?
そんな事を考えていると、お姉ちゃんの
「れいな!早くしないとパン冷めちゃうよ?」
という声が聞こえてきて
私は大急ぎで、昨日のままだった服を新しい服に着替えてから
「今行くよ!!」
と部屋を出た。
…何を話したのかは、絵里に聞いてみよう。
そう思いながら…
65 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/05(木) 21:32
<梨華視点>
 今朝から妹の様子がおかしい。
いや、引っ越してくる前からおかしかったけど
それとはまた違うおかしさ。
そわそわしちゃって、何か言いたそうな表情で私を見てくる。
まぁ、言いたいことは何となく分かるんだけど…
「行ってくれば?」
朝食を食べた後、歯磨きをしていた妹に声をかける。
「え?」
「絵里ちゃんの事、気になってるんでしょ?行ってくれば?」
きょとんとした妹の顔。
明らかに、『何で分かるの?』という顔だ。
「…お姉ちゃんも行かない?」
1人で行くのは心細いのか、上目遣いで尋ねてくる。
「んー…ごめんね。私、真希ちゃんと会う約束してるんだ。」
昨日の帰り際に真希ちゃんが
『明日、高校の子たちに会いに行かない?』
と誘ってくれた。と言っても、ほんの2・3人らしい。
本当は、後輩とか、知り合いはたくさんいるらしいんだけど
とりあえず同い年とって事で2・3人。
高校は1学年2学級だから、真希ちゃんか、これから会う
子たちのどっちかとは同じクラスになるみたいだ。
66 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/05(木) 21:34
「そうなんだ…」
「でもさ、もしかしたら、れいなちゃんが
 来るかもしれないじゃない?」
「…うん」
「あ、じゃあ、真希ちゃんに電話してみる?
 それで、れいなちゃんと会う約束すれば?」
この提案には妹も乗ったようで、まだ早いかなと思いながらも
私は受話器を取った。
『…はい、田中です。』
『あ、道重ですけど…真希ちゃん?』
『うん。どうしたの?』
『あのね…』
妹がれいなちゃんに会いたいという旨を伝える。
ホントはちょっと違うんだけど妹が、1人で絵里ちゃんに
会いに行くのが心細いから、れいなちゃんを誘った
と言うのは、何となく言い辛かったのだ。
『うん、うん、分かった。
 じゃあ、そっち連れて行くね。ごめんね朝早くに…』
『いやいや、全然気にしなくていいよ〜
 朝早くだろうが夜遅くだろうが自分の部屋の電話だから
 問題ないし。じゃあ、そういう事で、9時にね。』
67 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/05(木) 21:36
がしゃっと電話を置くと、さゆが「何て?」と聞いてきた。
「うん、9時に真希ちゃんの家で待ち合わせ。
 だから、早く支度しちゃいな?」
「は〜い」
嬉しそうに自分の部屋へ入って行こうとしたさゆは
ふと足を止めて振り返り
「ねぇ、お姉ちゃん?」
「ん?」
「…あの子の事…黙っててくれる?」
もちろん、と頷くと、さゆはにっこりと笑って
「良かった〜」
私としては、お父さんに言うつもりは全くなかった。
それは昨日の真希ちゃんと同じ気持ちだったんだと思う。
「いい友達になれるといいね。」
その言葉はさゆには聞き取れなかったようで
「何か言った〜?」
「ううん。何でもない。」
――ホント、あの3人には、いい友情関係を作って欲しい。
そう思った。
68 名前:凛一 投稿日:2004/08/05(木) 22:25
少量ですが、更新終了です。

>>62 名無飼育様
ありがとうございます!
これからも頑張ります☆
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/14(土) 00:06
6期の話が大好きなんで両方読ませていただいてます。とってもおもしろいです!がんばって更新してください。
70 名前:_ 投稿日:2004/08/14(土) 15:21
続き大期待です。
もう1つのお話の方、教えて頂けませんでしょうか?
71 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:32
<れいな視点>
 パンを齧っていたら急に電話がかかってきた。
と言っても、居間の電話じゃなくて
お姉ちゃんの部屋の電話だったし、特に気にしなかった。
どうせ、吉澤さんや藤本さんからの電話だと思ったから。
「れいな、今日、道重さんたちと会う約束したから。」
だから、戻ってきたお姉ちゃんのこの発言を聞いた時はびっくりした。
「道重さんって誰?」
「あ…れいな、いなかったから知らないんだっけ。
 新しく引っ越してきた子たちなんだけど、れいなと同い年の子と
 私と同い年の子が、家に来たの。お父さんは黒羽の研究者なんだって。
 昨日、一緒にあんたの事探してくれたの。」
ふーん…って、えっ?
「じゃあ、その人たちも絵里に会ったの?!」
「うん。でも、悪い子たちじゃないよ。
 黒羽とかあんまり興味ないみたいだったし。」
「……でも…」
でも、万が一って言う事もあるじゃないか…
72 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:34
「まぁ、会ってごらんよ。」
お姉ちゃんはそう言った後、「あ、そうだ」と
何かを思い出したように呟いて
「妹の方、学校、れいなと同じクラスになるんだから
 色々教えてあげなよ?」
…そっか、転校生になるんだ。
随分半端な時期だと思う。
その道重さんという家が、黒羽の事を研究している関係で
引っ越してきたなんて知らなければ、何かワケありの家族として
島中の噂の種になるんだ。
「れいなとさゆちゃんと絵里ちゃん、仲良くなれると思うよ?」
「何で分かんのさ。」
「何でだろ。カン…かな?」
お姉ちゃんはそう呟きながら、食べかけだったパンを齧る。
私は、とにかくその子に会って、それから対応を決めようと思い
それ以上、引っ越してきた子の事を話題にする事はしなかった。
73 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:37
9時ちょっと過ぎに、例の人たちはやって来た。
お姉ちゃんは明るく
「おはよー、梨華ちゃん、さゆちゃん。」
と言うと、私の頭に片手を乗せてぼそっと
『自己紹介しな』と呟いた。
「始めまして、田中れいなです。」
軽く頭を下げると、お姉さんらしき人がにこっと笑って
「初めましてれいなちゃん。道重梨華です。で、こっちが…」
「道重さゆみです。」
さゆみという子の方は緊張しているのか顔を真っ赤にしている。
こういう子はこっちからリードしないと、絶対喋らないタイプ。
「あー…さゆ?うちの事はれいなで良いから。」
「え…?」
「いや、だから…ウチら同い年でしょ?
 だから、呼び捨てで良いよって…」
そう言うと、さゆは嬉しそうに笑って
「うん、よろしくね。れいな。」
お姉ちゃんと梨華さんが、私たちのやり取りを見て笑っている。
74 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:39
「…じゃあ、そういう事で。行こっ、梨華ちゃん。」
「うん。」
「ちょ…待ってよお姉ちゃん!」
梨華さんと並んで歩き始めるお姉ちゃんの背中に声をかける。
「行くって、2人でどこへ?」
「あれ、言わなかったっけ?
 今日、美貴とよっすぃ〜の所に行こうかなって話してて…
 れいなはさゆちゃんと仲良くね?」
「…うん。分かった。」
お姉ちゃんたちがいなくなった後
目の行き場に困っているようなさゆに声をかける。
「えー…っと、さゆはさ、絵里に会ったんだよね?」
「うん。」
はっとしたように私の方を向いて頷くさゆ。
75 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:40
「びっくりした?」
「んー…少し。」
徐々に、さゆが絵里の事をどう思っているかを聞きだしていく。
これはある意味、テストだ。
「お父さん、黒羽の研究してるんだって?」
「うん、まぁ…」
なんだかハッキリしないさゆの答え。
相手が退治隊の家系だから、多少引いてるのかな?
「さゆは、一緒に黒羽の研究したりしないの?」
「…私、あんまり興味ないんだよね。
 だから、黒羽の事も殆ど知らないし…」
お姉ちゃんが言っていた通りだ。
「じゃあさ、黒羽の事見た時、どう思った?」
これが一番の重要関門。
さゆは、少し困ったように私を見て
「…黒羽の事は何も思わなかった。ただ…」
「ただ…?」
76 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 17:43
私はそう繰り返してさゆを見た。
さゆは、また恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「…れいなと絵里ちゃんと…友達になりたいって思った…」
合格、と心の中で呟く。
私は、不安そうに私の顔を見ているさゆに手を差し出しながら
「行こっ、絵里の所。」
さゆは一瞬きょとんとした後
「うんっ」
と嬉しそうに頷いて、私の手を取った。
私はその手をぎゅっと握り返す。
さゆの手は…絵里のとはまた違う温かさがあった―――
77 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 18:11
<絵里視点>
  私は、一睡もできずに朝を迎えた。
昨日の、れいなのお姉さんと他の2人
そしてれいなの背中の「アレ」が凄く気になって寝られなかったのだ。
「何だろう、あれ…」
その昔、私のお父さんやお母さんを殺した人たちの背中には見られなかった
白く、透き通っている羽…
――ズキッ…
「っ…」
咄嗟にこめかみを押さえる。
「…」
数日前から、時々こめかみに、ほんの一瞬だけ
突き刺すような痛みが走る時がある。
78 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 18:12
あまり気にしないようにしているけど
チラッとお母さんが言っていた言葉を思い出す。
黒羽になった時から背負っている運命。
最近、特にそれを意識するようになってきた。
「タイムリミット…もうすぐなのかな…」
自分で呟いた言葉に
タイムリミットについて意外と恐れを抱いていない事に驚いた。
ふと、れいなの事が頭に浮かぶ。
最初に出会った時の驚いた顔。
上の世界の事を色々教えてくれた時の笑顔。
家族の事を話していた時の涙。
私の腕の中での寝顔。
れいなに会えて良かった、と思う。
恐らくタイムリミットは冬。私の誕生日。
私は、それまでにれいなとは、いくつ思い出を作れるかな
と他人事のような事を考えていた。
79 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 18:13
「絵里〜!!」
背後から聞こえたれいなの声に振り向いた私は
れいなの隣にいた人物に、思わず目を細めた。
「おはよ。」
「おはよう。…昨日いた子だよね?」
れいなの隣にいる子は、覚えててくれたんだ
と嬉しそうに笑って
「初めまして…でもないけど…道重さゆみです。」
れいなが後を受けて
「絵里、さゆって呼んであげてよ。
 この島に引っ越してきたばっかりの、新しい友達。」
「よろしく、さゆ。私の事は絵里でいいよ。」
「うん、よろしくね。絵里。」
80 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 18:22
一通りの自己紹介を終えた後、私たちは岩に腰掛けて
色々な話をした。
れいなの学校の事や、さゆが前まで住んでいた島の事。
そして、私の事などなど。
けど、私はその中でタイムリミットの話をすることはなかった。
できれば、タイムリミットまで黙っていたかった。
いずれは分かってしまうと思うけど、今はあんまり知られたく
なかったから。
「じゃあ、昨日さゆと一緒にいたのって、やっぱり、さゆの
 お姉さんだったんだ。れいなのお姉さんはすぐ分かった…」
「え?何で?」
「何か、お姉さんって感じしたもん。ねー、さゆ?」
「うん、真希さんって、れいなの事大切にしてるって
 感じ伝わってくるし。」
「何それー?」
81 名前:4.出会い 投稿日:2004/08/14(土) 18:30
さゆと顔を見合わせてハハハと笑う。
「何だよー!」
れいなも満更でもなさそうに、そして少し照れたように笑った。

もし、神様がいるならば
今すぐ時間を止めて欲しい。
運命が変えようのないものなのは分かっているけど
それでも
もっと一緒に…
ずっと一緒に…
この3人で過ごしたい。
私は、笑う2人を眺めながら、初めて少しだけ…
ほんの少しだけ、タイムリミットへの恐怖を感じた―――
82 名前:凛一 投稿日:2004/08/14(土) 18:38
更新終了です!

>>69 名無飼育様
 ありがとうございます!
大量に残っている夏休みの宿題を早急に片付けつつ
頑張りたいと思います!

>>70 _様
 ありがとうございます!
もう1つの小説は…海版にあります
『輪廻転生』というものです。
良かったら読んでやってください(笑
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/16(月) 03:50
更新お疲れさまです。タイムリミットに恐怖を感じれるようになった絵里。なんか今が幸せって感じれるようになれて、よかったような気がしますけど、複雑ですね・・・
84 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 16:16
「梨華ちゃん、あの子たちどう思う?」
同じ島から同じ高校に通っているという2人に挨拶をした帰り道。
ぶらぶらと道を歩いていると、真希ちゃんが呟くように言った。
「あの子たちって、ひとみちゃんと美貴ちゃん?2人ともおもしろい
 子だなって思ったよ。一緒にいて楽しそう…」
そーじゃなくて、と真希ちゃんは苦笑いして
「絵里ちゃんとさゆちゃんとれいな。」
「あぁ…」
そういえば、あの3人、今何やってるんだろう。仲良くしてると良いけど…
「あの子…絵里ちゃんさ、黒羽じゃん?私は絵里ちゃんの事を誰かに
 話すつもりは全くないんだけど…でも…私が言わなくても、いつか
 必ず島の人にバレる日が来ると思うんだ。そうなった時に、きっと
 れいなの事もバレちゃう。そうなった時、れいながどう思うかなって…
 絵里ちゃんは確実に捕まっちゃうだろうし…それも、今は仲良くやってる
 けど、梨華ちゃんの所とウチとで、絵里ちゃんの事、取り合う気がして…」
85 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 16:28
「…」
真希ちゃんって、ホントにれいなちゃん想いなんだな。
そう思うと同時に、私の中にはさゆみの事が浮かんだ。
本当に真希ちゃんの言うような事になったら、さゆみとれいな
ちゃんは気まずくなってしまうだろう。いくら大人たちの問題
だからと言っても、関係ないという顔はできないはずだ。
「私、あの子たちにはずっと今の関係を保ってもらいたいんだ。
 れいなは友達って言っても表面的な付き合いばっかみたいだし
 …さゆちゃんと絵里ちゃんにとって、自分以外の2人は
 島で初めてできた友達じゃん?だから…」
「うん…そうだね。」
真希ちゃんの言いたい事はよく分かる。けど私たちには、3人を
見守ってあげる事しかできない。
86 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 16:38
「姉って立場も複雑だよね。」
私がそう言うと、真希ちゃんは「そうだね」と頷いてから
「今度さ、梨華ちゃん家行ってもいい?黒羽の研究者の家って
 見てみたい…」
「良いよ。でも、ウチにあるのは黒羽についてのレポートだけ。
 あと、本が大量に…しかも両親家にいないけど…」
「…そのレポートや本って、部外者が読んでも平気なのかな?」
その点は全然問題ない。むしろ、田中家の娘さんが興味を持って
くれたなんて知ったら大喜びしそうな気がする。なんせ、いくら
自分の娘達に勧めたところで、誰も真剣に読んでくれないから。
私は呼んだフリくらいはするけど、さゆみは完全にスルー。
「…でもさ、レポートなんてどうするの?」
「んー…黒羽の事、ちょっと調べておこうかなって。あ、調べる
 ってよりは知っておこうかなって言った方が良いかな。」
87 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 16:50
万が一の事があったとき、れいなとさゆちゃんにアドバイス
してあげられるでしょ、と付け加えた真希ちゃん。
「万が一…って?」
すると、真希ちゃんはハッとしたような顔をして
「あ…いや、まぁ色々だよ。」
「…」
彼女は、一体何を隠しているんだろう。絶対に黒羽の事で何か
重大な事を知っている気がする。
しかし、真希ちゃんは口を割ろうとする様子はない。
ただじっと黙っているだけだ。
「真希ちゃん…」
「…」
帰ろうか、と言って先に歩き始めた真希ちゃんは、しばらく
進んだ後、ふと足を止め
「…梨華ちゃん、実はさ…」
88 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 17:05
<さゆみ視点>
「…大丈夫?」
心配そうに絵里の顔を覗き込むれいな。
「うん…ごめん。大丈夫だから…」
申し訳なさそうに言う絵里の顔色は青白く、とてもじゃないが『大丈夫』
という感じじゃない。
「熱とかは…ないよね。」
私は絵里の額に触れていた右手を外しながら、そういえば黒羽って病気とか
するんだろうか、と、くだらない事を思った。

絵里がこめかみを抑えて蹲ったのはつい数分前の事。
何の前触れもなく真っ青な顔になった絵里にはびっくりした。
とりあえず、パッと見の症状が貧血に似てたからという事で、れいなと
2人で絵里を寝かせておいた。
89 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 17:30
「大丈夫だよ…2人ともゴメン……っつー…」
起き上がろうと頭を上げた絵里は、まだ頭痛が続いているのか
再びこめかみを押さえて横になってしまった。
「絵里ってカゼとかひいた事ある?」
れいなが尋ねると、絵里は「ない」という風に首を振った。
「じゃあ、どうしたんだろう…」
「んーー…」
れいなと2人で顔を見合わせる。
いつの間にか空はオレンジ色に染まっていて
一部はもう夜の空になっていた。
ふと、朝から3人でずっと一緒にいた事に気が付く。
絵里は、まだ具合が悪そうにしているしこのまま1人にするわけ
にはいかないだろう。
でも、そろそろ帰らないと、家族に心配をかけてしまう。
90 名前:5.想い 投稿日:2004/09/13(月) 17:49
「じゃあさ、今日はウチら、ここ泊まろうよ。私、お姉ちゃん
 たちに言ってくるからさ。その方が安心じゃん?」
れいなの提案に、絵里はかなり驚いたようだったけど、私は
それで大賛成だった。
「じゃあ、行ってくる。」
れいなの走り去る後ろ姿を見送った後、私は絵里の方を見た。
「何か…ホント…ごめん…」
「良いって!初めてきちんと話した日にお泊り会って、何となく
 おもしろくない?絵里1人じゃ心配だし…。だから、今日は
 しっかり寝て、明日は元気になるんだよ?」
「…ありがと。」
しばらくして戻ってきたれいなの後ろには
「あれ…?」
「お姉さんたち…」
真希さんとお姉ちゃんが、スーパーの袋を持って手を振っていた…
91 名前:凛一 投稿日:2004/09/13(月) 18:04
一ヶ月ぶりに更新しました〜

>>名無飼育さん様
 きっとこれからどんどん複雑になっていくでしょうw
 
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/15(水) 23:05
更新お疲れさまっした!ごっちんが知ってる秘密って…期待してまってます。
93 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:11
ザザ―ン ザザーン
寄せては返す波。
私はそれをぼーっと見つめながら、ある事を考えていた。
話すべきか黙っておくべきか。
簡単に言えばそういうことなのだが、これはとても重要な意味を持つ。
話さないということは、れいなやさゆちゃんをとてつもなく傷つける事に
なる。しかし、話してしまった事により絵里ちゃんに気まずい思いをさせて
しまうかもしれない。どっちにしろ誰かを傷つけてしまうこの難題に
私はふーっと静かに溜息をついた。
94 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:14
「真希ちゃん。」
その時、背後から聞こえた優しい声。
振り返ると、そこには優しく微笑む梨華ちゃんが立っていた。
「…3人とも、寝たの?」
「うん。何か、学校の先生の気持ちが分かった気がする。」
何の事かと思って聞いてみると、最初はれいなとさゆちゃんが
2人で、寝ている絵里ちゃんを起こさないように、こそこそと話
をしていたらしいけど、いつの間にか、元気になって起きてきた
絵里ちゃんも交え、3人でかなり賑やかに騒いでいたらしい。
95 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:16
「明日起きれなくなるから、いい加減寝なさいって言ったら
意外と素直に寝ちゃったの。」
「ごくろうさま。…座ったら?」
うん、と言って私の隣に腰掛けた梨華ちゃんは
「綺麗だねー…」
と、空を見上げながら言った。私もつられて空を見る。
「…」
しばらく2人とも無言で空を見上げていた。
「ねー真希ちゃん?」
ふと、梨華ちゃんが言った。
梨華ちゃんの方を見ると、梨華ちゃんは空を見上げたまま
「絵里ちゃんの事、何隠してるの?」
「あ…」
私が言葉に詰まっていると、梨華ちゃんはにこっと笑って
私の方に視線を向けて
「話してよ。」
「…」
この時、梨華ちゃんにも一緒に考えてもらえたらって思った。
私ひとりじゃ結論なんて出せないから、梨華ちゃんの意見も
聞きたいって思った。
「…実は…」
96 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:19
今から半年くらい前の事だ。
ある日、梨華ちゃんたちのお父さんとウチの親父が黒羽…
絵里ちゃんについて話していたのをたまたま聞いてしまった。
その話というのは――
「黒羽は16歳で死ぬ。」
「え…?」
梨華ちゃんが驚いたように私を見る。
やっぱり初耳だったみたいだ。
「まぁ…、この話してたの道重さんなんだけどさ。」
「…」
「早い話が、絵里ちゃんの命は今年限りって事。」
「じゃあ、この間、ウチのレポート読みたがってた理由って…」
「助ける方法、探したかったんだ。」
そう言うと、梨華ちゃんは私から視線を外してそれを洞窟の方へ
向けた。ここからは何も見えないけど、きっとそこにいるのは
仲良く川の字になって眠っている3人。
97 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:21
「絵里ちゃんが具合悪くなったって聞いた時、どきっとした。
もう始まってるかもしれないんだ。死へのカウントダウン…。」
「絵里ちゃんはその事…」
「…知ってると思うよ。」
梨華ちゃんが再び視線を私へ戻す。
「知ってるから、きっと何も言わないんだよ。」
沈黙。
ただ、波の音だけが続いている。
「さゆとれいなちゃんには話すの?」
梨華ちゃんがポツリと言った。まさに私が悩んでいた事。
「分かんない…梨華ちゃんはどうするべきだと思う?」
「私は…話した方がいいと思うよ。
もしかしたら、絵里ちゃんの事助ける方法があるかもしれない
じゃない?だから、皆でそれを探そうよ。」
98 名前:5.想い 投稿日:2004/10/03(日) 22:22
「でも…絵里ちゃんが隠してるんだよ?
ここでウチらが勝手に話ちゃって良いのかな?」
「でも、いつかは2人にもバレちゃうでしょ?だったら…」
お互いがお互いの意見に「でも…」で返す。
きっと、この問題に答えはない。
どっちが正しいとも間違ってるともいえない。
すべては自分たちの選択にかかっている。
「…残酷だよ。神様って…」
ふと、梨華ちゃんが言った。
私はそれに答えずにさっきと同じように空を見上げる。
「…」
どうしたらいい?どうしたら誰の事も傷つけなくて済む?
それとも、一人の犠牲も出さずに、誰も傷つけずに
事を終わらそう何て考えは甘いのかな。
私は、梨華ちゃんのさっきの問いに答えるようにそっと呟いた。
「…残酷だね。神様って…」
99 名前:凛一 投稿日:2004/10/03(日) 22:26
文化祭に体育祭に部活の大会に期末テストに全国模試…
いやぁ、秋は大忙しです。
そんなこんなで一ヶ月ぶりの更新でした。
もうちょっと早くできないかな…。精進します。

>>名無飼育さん様
ありがとうございます!
後藤さんは、こういう事でした☆
これからきっと謎は深まって…行くのだろうか?(笑
100 名前:凛一 投稿日:2004/10/03(日) 22:27
あ、100いった〜w
101 名前:名無飼育 投稿日:2004/10/04(月) 23:47
更新お疲れ様です。
ちょうど胸がキュンとなるような季節になってきたのもあって、
心地よい切なさを感じております。
102 名前:みちる 投稿日:2004/11/05(金) 15:22
作者さん、はじめまして。
一気に読みました!
とてもおもしろくて、続きが楽しみです!
切ないですね…思わず涙が出ました。>_<
私は6期のファンなので、6期の話はとても好きです!
これからもがんばってください。
103 名前:5.想い 投稿日:2004/11/05(金) 22:55
スースー
右隣のれいなの寝息。
クークー
左隣のサユの寝息。
私はぐっすり眠る二人の寝顔を交互に見ながら二人に会って何か
自分も変わったなぁ…と考えていた。
数ヶ月前まではこんな事は考えられなかった。まさか私に、普通の友達が
できるなんて…ホント、夢のまた夢の話だった。
それにしても、れいなともさゆとも何だか変わった出会い方をした。
れいなは上から落ちてくるし、さゆはどこから来たのか知らないけど
いつのまにか側にいたし…
104 名前:5.想い 投稿日:2004/11/05(金) 23:01
そこまで考えて、私の頭に1つの疑問が湧き上がって来た。
…さゆって、どこから来たの…?
いや、別にどこから越して来たとかそういう意味じゃない。
あの日、さゆは一体どこからこの場所に降りてきたのだろう。
今まで気が付かなかったけど、皆、帰りはどこから帰ってた?
洞窟からじゃない。海岸沿いにまっすぐ歩いて行った。
…どこから?
そう考えたら、急に不安になってきた。れいなの家の裏以外にも
道があるというのだろうか?
「…」
私にとっては重要な意味を持つ、ここと上を結ぶ道の存在。
105 名前:5.想い 投稿日:2004/11/05(金) 23:08
考えてみれば、れいなが何も言ってこないという事は、その道が
かなり安全な場所にあるという事だって十分ありえる。それでも
やっぱり、怖かった。れいなやさゆのいなくなった後、一人で
時間が過ぎるのをじっと待っている時に誰かに見られたら…
「れいな…。さゆ…。」
そう呟いても返事はない。
聞こえてくるのは二人の寝息と波の音だけ。
そっと体を起こしてみると、少し離れたところで真希さんと
梨華さんが並んで座り、何かを話しているのであろう後ろ姿が
見えた。会話の内容は全く聞こえない。
106 名前:5.想い 投稿日:2004/11/05(金) 23:21
あの二人は知っているのだろうか。
私は今年で死ぬ。もっと言えば今年の誕生日の日に、だ。
私より大分大人びて見える、二つの背中。
何も知らないように見えて実は全部分かっていて。
それでいて私たちの事を見守っていてくれているような感覚。
れいなとさゆが、少し羨ましかった。
二人にそれを言うと、必ず「あんなお姉ちゃん、いらないよ」と
言うのだけれど、私からしたられいなと真希さん。そしてさゆ
と梨華さんの関係は少なからず、憧れの対象となっていた。
――れいなもさゆも、私には手に入らないものを持っている。
――なんで私だけが黒羽なんかに…
そんな事を思いながら、私は再び横になり、目を閉じた…
107 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/14(日) 02:42
悲しい定めを持って生まれた子供…。
すごい悲しい話ですね。しかも誕生日って…
救ってほしいです。
更新待ってます。
108 名前:ホットポーひとみ 投稿日:2004/11/15(月) 06:25
最初から読んでます。
悲しいお話ですね
更新待ってます。
109 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 21:57
<れいな視点>
絵里が、泣いている。
真っ暗なこの空間に、絵里の羽は同化し、溶け込んでいて見えない。
どうしたの?と動く私の口は声を発す事ができず、もう一度試すも同じ。
急に不安になった私は、絵里の方へ手を伸ばす。
けれど、触れようとする度に、絵里は遠くなって行く。
『絵里!!』
思わず上げた叫び声も、空気が少し漏れただけ。
『絵里!』
れいな…
私の名前を呼ぶ人がいる。
110 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 21:58
『絵里!!』
れいな!
でも、絵里の声じゃない。
『絵里!!!』
れいなっ!!
………………さゆ?

「………」
「何か、うなされてみたいだけど…大丈夫?」
目の前に、私の顔を心配そうに覗き込むさゆ。
上半身を起こして辺りを見渡すと、そこは洞窟の中で
少し離れた所で、お姉ちゃんたちが、肩を寄せ合うようにして
座っている。後ろからだと、起きているのか眠っているのかは
分からない。ぼんやりとした頭でさゆの方へ視線を戻すと
さゆはもう一度
「大丈夫?」
111 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:00
「…うん」
さゆはちらっと絵里の方を見ると、私の手を取って
「ちょっとお散歩しようよ」
少し、風が強い。打ち寄せる波が、規則正しいリズムを刻み
私とさゆはそれに合わせるように歩を進めた。
時計がないから正確な所は分からないけど、まだ頭上の星が
はっきりと見えているし、恐らく3時過ぎって所。
繋いだ右手が暖かい。
隣のさゆは時折綺麗な貝を見つけては嬉しそうに拾って見せて
くれる。振り返ると、遠くの方に小さく、洞窟を確認できた。
随分歩いたけど、その間にさゆは一度も、何があったのかを
聞いては来なかった。
112 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:02
「今日、学校だねぇ〜」
ふいにさゆが発した言葉。
「私、転校生なんだよねぇ」
そういえばそうだ。すっかり忘れていたけど。
「お姉ちゃんたち、もう学校行っちゃったかなぁ?」
「いや…まだのハズ…」
そこまで言った時、私のおなかが、ぐーっと鳴き声をあげた。
それに連鎖するように、さゆのおなかも鳴る。
どちらからともなく顔を見合わせて照れ笑い。
「帰ろっか」
「うん」
二人で、元来た道を歩く。さっきよりも少し早く。
「れいなぁ」
突然さゆが足を止め、私の手を離した。何?とさゆを見ると
砂浜にしゃがんで、何かを拾おうとしている。
113 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:03
「見て見て、これー!」
さゆが手にしていたのは、小さなビニール袋。
「さゆ、汚いから捨てな」
「何か入ってる。…小さいビン…みたいな奴…」
私はさゆの隣りまで戻り、さゆからビニール袋を受け取ると
ぐっと引っ張って破いてみた。カラン、と砂浜に転がる2つの
ガラスビン。
「わぁ…」
さゆがそれを拾い上げ、私に見せる。
小さなビンの片方には、見た事もない、キラキラと輝いた砂。
そしてもう片方には…
「これ、手紙?」
そう呟くと、さゆはぽんっとコルクを開けてビンを逆さにする。
私は、手のひらに落ちたそれをそっと開いた。
114 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:04
『連絡下さい』

たったそれだけのメモ。
何が言いたいのか、さっぱり分からない。
「…何コレ」
どうやらさゆも同じ気持ちだったようで、手紙と砂の入った
ビンを交互に見つめている。
「どうしよっか、コレ…」
何故だろう。何故か「捨てとけば」の一言が出て来ない。
さゆも、あまりこれを捨てる気はないようで…
私たちはお互いの顔を見ると、そっとビンを2つともポケットに
入れた。もちろん手紙も。
「帰ろ」
再び手を繋いで歩く。
しばらくして着いた洞窟では、既に絵里とお姉ちゃんたちが
起きていて、少し、不機嫌そうな顔で入口に立った私たちを
見ていた。
115 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:05
「どこ行ってたの」
寝起き、早朝、私たちの不在と3拍子が揃ったせいか
いつにも増して機嫌の悪いお姉ちゃん。
思わず肩を竦めるとさゆが私を庇うように
「ごめんなさい。私がれいなを連れ出したの……」
お姉ちゃんの隣りにいた梨華さんが、呆れたような
溜め息を漏らす。
「絵里ちゃん、すっごく心配してたんだからね」
見ると、今にも泣き出しそうな顔をした絵里。
私が、ごめん、と口を動かすと、それを見た絵里が
バカ…と呟いたのが聞こえた。
「バカって……」
「れいなっ、聞いてるの?」
お姉ちゃんの声。仁王立ちとも言えるお姉ちゃんの後ろで
絵里がクスクス笑っている。そして、私と目が合うと
『許す』
と小さく口が動いた。
116 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:49
それぞれ一通りお説教が終わった所で、お姉ちゃんは笑顔になり
絵里に向き直ると
「…もう、体調は大丈夫そうだね?」
一瞬、きょとんとした絵里は自分の頭痛の事を思い出したのか
「はい。迷惑かけて、すみませんでした」
と言って、お姉ちゃんたちに頭を下げた。
「ううん。また何かあったら呼んでね?」
梨華さんの言葉に、絵里は笑顔で頷く。
 また夕方に来るから、と絵里に伝え、私たちは一旦それぞれの家に
戻る事になった。ホントはもっと絵里といたかったのだけれど
さゆと梨華さんは今日から新しい学校に通うから、初日からサボる
わけにはいかない。それに私とお姉ちゃんは2人の事を色々面倒を見る
ように父さんから言われている。
117 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:50
「じゃあ梨華ちゃん。8時に桟橋でね」
「さゆは8時にウチでね」
さゆと梨華さんと別れ、私たちは家へ続く道路を歩く。
「ねー…れいな?」
「ん?」
お姉ちゃんの方を見ると、お姉ちゃんは何か聞きたそうな…
でも、聞くのを躊躇っている。そんな顔をしていた。
「どうしたの?」
「あー…いや…何でもないや」
何それーと言うと、お姉ちゃんはふっと笑って
「ほら、早く帰ろう。朝ごはん抜きで学校はキツイでしょ?」
と言って、突然走り出した。
118 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:52
「え?!ちょっと待ってよ!!」
そんなお姉ちゃんに違和感を覚えつつも、私は後を追いかける。
鬼ごっこ…というわけじゃないけれど、何となくそれは
昔よく遊んだ鬼ごっこを思い出した。
『あれは本当は、鬼が人を追いかけるんじゃなくて
人が鬼を追いかけるんだよ。』
そんな話を聞いたのはいつだろう。
あの話が本当かどうかは知らないけれど、その考え方はウチの
家系の事を言っているような気がしていて、私はどうもその説が
嫌いだった。
「つかまえたっ!」
家に入る寸前でお姉ちゃんに追い付き、私は勢いを付けたまま
お姉ちゃんの腰にしがみついた。お姉ちゃんはびっくりした
ような視線を向けた後にかっと笑って
「足、速くなったね」
「鬼ごっこ系と徒競走だけは絶対負けない自身あるから」
何それ、と呆れるお姉ちゃんの顔が何となくおかしくて
笑ってしまう。
119 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:53
2人でしばらくの間、意味もなく笑っていると
不意に後ろから声がした。
「遊びの鬼ごっこが得意なは役に立たない。
実践で上手くやって欲しいものだ」
振り返ると、そこにいたのは父さんとおじいちゃん。
「この家では、実践こそがものをいうのだからな」
またその話するつもり?と半分ケンカ腰に言おうと口を
開きかけたその時だった
「何回も言ってるけど、いい加減にしたら?」
お姉ちゃんが私より早く、2人を睨みつけながら言った。
「真希、お前には関係…」
「あるんだよ。」
120 名前:5.想い 投稿日:2004/12/20(月) 22:54
私は、びくっとしてお姉ちゃんの方を見た。
お姉ちゃんがこんな声を出す事なんて滅多にない。
それは、相当怒っているという事の表れでもあった。
「れいなが嫌だって言ってるんだから、無理矢理引っ張り込む
ようなマネするなよ。」
落ち着いた、それでも威圧するようなお姉ちゃんの声に
父さんたちは黙り込んだ。
そんな2人に満足したのか、お姉ちゃんはいつもの調子に戻って
「れいな、ご飯食べよ。マジで遅刻しちゃうよ」
と言うと、先に家に入って行った。
121 名前:凛一 投稿日:2004/12/20(月) 23:11
久しぶりに更新しました。

>>101 名無飼育様
ありがとうございます!
これから、またペースを上げていきたいと思います☆

>>102 みちる様
はじめまして!そして、ありがとうございます!
こんな駄作を面白いと言ってくれるなんて…
これからも頑張ります!

>>107 通りすがりの者様
ありがとうございます!
本当なら、亀井さんの誕生日に合わせて完結するつもりが…
精進しますw

>>108 ホットポーひとみ様
ありがとうございます!
最初から読んで下さっていたのですか?!
作者感激…
これからも、よろしくお願いします。

122 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 14:05
今日発見して一気に読みました!
すごく面白いので頑張ってください!
123 名前:5.想い 投稿日:2004/12/21(火) 21:30
れいな、とお姉ちゃんに続こうとした私の背中にかかる声。
「何…」
少しうつむき加減に、それでもハッキリした口調で尋ねると
父さんは私をじっと見つめ
「お前、父さんたちの事、うるさい奴らだとか思ってるだろ?
けどな、これはウチの家系に生まれた者の運命なんだ。
黒羽さえ捕まってしまえば、お前は二度とこんな事であれこれ言われなくて
済む。分かるだろ?黒羽がいなければいいんだよ。捕まえてしまえば…」
黒羽さえいなければ…?
私が黙ったままでいると、おじいちゃんが後を受けて
「黒羽さえいなければ…そうすればお前の母さんだって…」
黒羽さえいなければ…
124 名前:5.想い 投稿日:2004/12/21(火) 21:31
そうすればお母さんは今頃…
黒羽さえいなければ…
それはつまり…
……………絵里さえ、いなければ…
「いい加減にしてっ!!!」
お姉ちゃんの怒鳴り声。
私ははっと我に返り、お姉ちゃんを見た。
…私、今、何考えてた?
何だろう、胸の奥がむかむかする。
何かがつっかえているような、そんな感じ。
ぼーっとしていると、ぐいっと手首を捕まれ、私はそのまま
家の中に引きずり込まれた。
125 名前:5.想い 投稿日:2004/12/21(火) 21:49
「れいな、大丈夫?」
「え?あぁ…うん」
お姉ちゃんは何も言わずに私の頭をくしゃくしゃっと撫でて
それからまた、にかっと笑った。
お姉ちゃんの「にこっ」ではなく「にかっ」という笑い方は
不思議とすごく安心できる。『大丈夫だよ』って言ってくれているみたいで
嬉しかった。
「あぁあ…バカ親父たちのせいで…もう7時30過ぎたよ。
私、そろそろ行くからね。」
驚いて時計を見ると、既に7時30過ぎ…というよりもう45分に近く
私は大慌てで部屋へ戻り、制服に着替えた。
ブレザーのネクタイを締めながら居間へ行くと、お姉ちゃんが台所で
何かを作っている。
「何してんの?」
126 名前:5.想い 投稿日:2004/12/21(火) 21:50
「あんたの朝ごはん作ってるの。
まともに食べてる暇なんてないでしょ?」
そう言いながら差し出されたサンドイッチ。
私がそれを口に入れたのを見ると、お姉ちゃんは
「また放課後に行くから」と言って家を出て行った。
私は、冷蔵庫から適当に飲み物を取り出しコップに注ぐ。
そしてそれを一気に飲み干し、コップを流しに置くと
急いで洗面所へと向かった。
朝こんなに慌しかったのは初めてかもしれない、と考えながら
歯を磨き、顔を洗う。
もう一度部屋へ戻り、鞄の中身をチェックし玄関まで降りたのは
8時ジャスト。丁度さゆが来た時だった。
127 名前:凛一 投稿日:2004/12/21(火) 23:43
>>122 名無飼育さん様
ありがとうございます!
これからも頑張るんで、よろしくおねがいします!
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/01(土) 12:35
みんなさん、
新年、明けましておめでとうございます。
いい年になりますように。
作者さん:
かんばってください〜
更新待ってます^^
129 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:25
「おはよぉ」
どことなく眠そうなさゆ。まぁ、あれだけ早起きしたんだし
しょうがないかなと思いつつ、私はさゆの制服姿をまじまじと
見つめてしまった。
「さゆ、似合うねぇ…」
自然と漏れた言葉に、さゆは嬉しそうな顔をして
「ありがと。れいなも可愛いよ」
2人で並んで学校への道を歩く。時折出会うクラスメイトたちが
さゆの事を不思議そうに見ている。
改めて、さゆって転校生なんだよなぁ…と感じた。
さゆも同じ事を思ったようで
「何か変な感じ…」
130 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:33
「ん?」
「私さ、引っ越してきたばっかりでれいなと絵里と出会って
それで色々と話したりしてたじゃん?だから、ずっと前から
ここにいたような気分になるんだよね。」
「すぐ慣れるよ。」
そうだね、と言って笑うさゆ。私もつられて笑った。
「そう言えば、さゆ、お母さんは?」
「え?」
よく分からないけど、転校生って初日は親と登校するもの
じゃないの?すっかり忘れてたけど。
するとさゆは「あぁ…」と呟いてから少し俯き加減に
「お父さんの所」と小さな声で言った。
「お父さん、こっちに来てから殆ど家帰って来てないんだ。」
131 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:37
私は、これ以上この話を続けるのがなんだか可哀想になってきて
「そういえばさぁ」と強引に話題を打ち切った。
「絵里の事。学校では話題にしないようにしようね。」
「うん。大丈夫、分かってるよ。」
なら良かった。
それから私とさゆは無言で学校までの道を歩いて行った。
「じゃあ、さゆ。ここが職員室だから。」
「えぇ?れいな、一緒に来てくれるんじゃないの?」
「無茶言わないでよ。私、遅刻になっちゃうじゃん。」
そんなぁ…と呟くさゆの肩に手をかけて
「教室で待ってるよ」というと、さゆは
不安そうな目を向けながらも、こくっと頷いてくれた。

132 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:51
休み時間。
さゆの机には人だかりができていた。
まぁ、無理もないだろう。出て行く人は大勢いても
入ってくる人なんて何年かに一回の割合でしかないんだから。
「ねぇねぇ、れいな。」
そんな喧騒には加わらず、自分の席で机に突っ伏していた私は
クラスメイトの声で顔を上げた。
「何?」
「れいなとあの子さ、知り合いなの?」
クラスメイトの視線の先にはさゆ。何で?と聞くとその子は
「朝、一緒に来てたからさ」
「親同士が、仲良かったから。」
「え、じゃあ…あの子の親も黒羽関係の仕事してるの?」
133 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:52
内心、しまった。と思う。さゆの家と私の家の事はあまり表に
出したくない。私は咄嗟に「違うよ」と言った。
「え、違うの?」
「昔、知り合ったらしい。黒羽の事は関係ないよ。」
その子はふーんと納得したのかしてないのか良く分からない
返事をして離れていった。
さゆの所でも、ちょうど同じ話題で盛り上がっていた。
やはり、今朝私とさゆが一緒に来ているのを目撃した子がさゆに
「道重さんとれいなって、仲いいの?」
「まぁ…親同士の仲が良くて…」
私と同じ返答。すると、それに対する質問も同じで
「じゃあさ、道重さんの家って、黒羽関係の仕事してるの?」
134 名前:5.想い 投稿日:2005/01/02(日) 15:56
「クロ…何、それ?」
さゆを囲んでいたクラスメイト達の間で、些か拍子抜けしたような
声が上がる。さゆは、興味津々なのを装って
「ねぇ、クロハって何?」
するとクラスメイト達は、あれこれと黒羽に関する情報をさゆに
教え始めた。さゆは、へぇ…と感心したように聞いている。
「役者だねぇ…」
誰も聞いていない呟き声を漏らす。
自然に頬が緩んできて、私はそれを誰にも見られないように
顔を窓の方へと向けた。
絵里、どうしてるかなぁ…

何となく、絵里に会いたくなった。
135 名前:凛一 投稿日:2005/01/02(日) 15:58
更新終了です

>>128 名無飼育さん様
ありがとうございます。
2005年初の更新でしたが、量が少なくてすみません…
136 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/16(日) 16:52
この先どうなるのか・・
あのビンの手紙は一体?
謎だらけですね、更新待ってます。
137 名前:みちる 投稿日:2005/01/16(日) 19:29
私も、絵里に会いたくなった(笑)
このさきどうなるかすごく気になります。
更新待ってます。
138 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/06(日) 02:02
ちょっとした事情で携帯からですが気にしないで下さい。更新待ってます。
139 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/15(火) 15:09
いつまでも待ってますよー。
140 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/24(木) 19:34
まだまだ待ってます。
141 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/06(日) 20:27
まだまだ待ってます。
142 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/18(金) 19:04
いくらでも待たせて頂きます。
143 名前:みちる 投稿日:2005/03/26(土) 10:01
作者さん、忙しいのかな?
早く続きを読みたいな〜
待ってます!がんばってください!
144 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/04/02(土) 23:40
>>138-142
あなたはいつでもどこでもそんなレスしてますよね。
作者様も暇ではないのですから、無駄なレスは控えましょうね。
145 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/03(日) 21:18
>144様  少し控えるようにはしております。 申し訳ありませんでした。
146 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:46
<絵里視点>

ザザーっと波が岩に当たって弾ける。
その音を聞きながら、私は砂浜に腰かけて考え事をしていた。
最近考える事なんて決まっているのだけれど。
太陽は大分傾き、そろそろ“学校”も終わる時間。
そう思っていたらやっぱり。
「絵里ぃ〜」
仲良く並んでやって来た、れいなとさゆ。
「やほー。元気だった?」
「朝まで一緒にいたじゃん。」
それもそうだ、と言って笑い合う二人。
私はつられて笑い……ある事に気付いた。
どうやら、さゆもそれに気づいたらしい。
笑うのを止め、訝しげな視線を私に向ける。
147 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:47
「どうしたの?さゆ」
さゆの様子を不審に思ったのか、れいなが尋ねる。
しかし、さゆはにこっと笑うと「何でもないよ」と言って
そっと私から視線を外した。
さゆの視線から解放された私は、自分でも大分驚いていた。
――私、今…
笑えてなかった、よね?
明らかに、口元が引きつっていた。
それは、自分でもはっきりと分かるくらい。
何故だろう。
いつもの普通のれいなとさゆのやり取り。
それだけなのに、何で……?
148 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:48
視界の端に、時折さゆの心配そうな視線を受けながら
私は話を変えようと、そうだ、と叫んで二人を見た。
「朝。二人ともどこ行ってたの?」
あぁ、とれいなが呟き
何かを思い出したようにポケットの中を探る。
「あれ、何でこんなの持ってるの?」
さゆの問いに、れいなは絵里に見せてあげようと思ったから
持って来たと言って、笑いながら私に何かを差し出した。
「何?」
それは、綺麗な砂が入った小瓶。
「朝、見つけた。ね、さゆ。」
「うん、手紙も一緒にあったんだけどね。
そっちは家に置いてきちゃった」
ふーんと言いながら胸の中にうずめく、よく分からない感情。
何なんだろう、この感じ…
「絵里?どうしたの?」
―――また、ぼーっとしてた…
149 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:49
さゆの方に視線を向け、私はさっきと同じように
笑顔で首を振る。けれど、さゆは納得いかなかったようで
「何でもなくないでしょ。さっきだって……」
「何でもないってば!」
自分でもどきっとするような大声。
さゆは、ごめん…と言って黙ってしまう。
れいなが気まずそうに私たちを交互に見ながら
「もう帰ろ。ねっ?じゃあ、絵里。また明日ね」
二人の姿が見えなくなると同時に襲ってくる、後悔と寂しさ。
何で、さゆにあんな八つ当たりみたいな事をしてしまった
のかはよく分からない。
150 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:50
並んで帰っていく二人の背中をぼんやり見つめて見送りながら
私はふぅっと溜息をついてその場に腰を下ろした。
れいなとさゆはいつも一緒。
ここに来るのも
学校に行くのも
そしてもちろん、帰るのも。
考えてみると…
あの二人は一日中一緒にいると言っても過言ではない。
「だから何って感じだよね……」
自分を納得させるように呟いてみる。
けれど、本当は分かってたんだ。
この気持ちがなんなのかって言う事くらい。
ただ、認めたくなかったんだと思う。
というよりも、それがどうしようもないのは知っていたから。
こんな事を考えてしまう自分が急に嫌になって
私は、自分の右手の甲を左手で摘みぎゅっと捻る。
151 名前:5.想い 投稿日:2005/04/03(日) 22:51
「―――…っつ…」
自分で自分に『お仕置き』
しばらくして手を離したそこは、赤というより紫に腫れ
指で押すとズキッという痛みが走った。
それを見つめ、私は何度か深呼吸を繰り返す。
………自分でも、どうしていいか分からなかったんだと思う。
こんな事でしか、自分の感情を抑えられない自分に
再び自己嫌悪を感じた。
初めて感じた思い。
それは次第にいらつきに変わり、八つ当たりへと進化する。
そう、さっきさゆにしてしまったように。
『嫉妬』と『眺望』そして『諦め』
この三つの思いが、その晩ずっと
私の中で交錯し続けた―――
152 名前:凛一 投稿日:2005/04/03(日) 22:55
皆さん、大変長らくお待たせいたしました。
え、待ってない?まぁまぁ……
どうも、お久しぶりの作者です。
留年危機を脱し、胸を張って新学期を迎えられると喜んでいる作者ですw
何だか、亀井さん悩んでます。
次回でちょっと事態はシリアスな展開へ……
なるかどうかは分かりませんが、今度はもっと早く更新しようと思います。
それではまた。
簡素な挨拶で申し訳ございませんでした↓↓
153 名前:みちる 投稿日:2005/04/07(木) 16:11
作者さん、更新お疲れ様です。
ん〜絵里の気持ち、わかります…
れいなは初めての友達ですしね…
次の更新待ってます!!
154 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/09(土) 00:41
作者様、お待ちしておりました! この度は荒い待ちレスをバラ散りばめてしまい、申し訳ありませんでした。 今後は密かに待たさせていただきます。
亀井さんは色んな事を知って遣り切れない状態ですね今後の行動が気になります。 次回更新待ってます。
155 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/18(木) 16:16
最終更新から4ヵ月が経ちました。 生存報告だけでもいいのでよろしくお願いします。
156 名前:作者 投稿日:2005/08/18(木) 19:58
自己保全とさせて頂きます。
再開まで、もうしばらくお待ちを………
157 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/19(金) 10:46
作者さま。
再開するまで、ずっと待っています。^O^)/
158 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/20(土) 23:46
157サン< 基本的にsageでお願いします。 メール欄にsageと記入してください。 作者様、自分も保全をさせていただきますが、帰って来てくれることを願っております。
159 名前:じゅん 投稿日:2005/08/28(日) 16:28
最初から読みました。色々お忙しいでしょうが更新お願いしますm(_ _)m
160 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/29(月) 14:06
セツナス
161 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/08(木) 00:48
マダカナー
162 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 14:42
作者サンズット更新待チツヅケテマス。(^_^)
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/06(木) 22:14
 
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/10(月) 19:39
作者さま。生存報告お願いできますか?
165 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/20(日) 18:51
最終更新および最終生存報告から7ヶ月と3ヶ月が経ちます。
生存報告だけでもいいので、よろしくお願いします。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:22
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/29(木) 05:24
作者さん……死んじゃったのかな?
168 名前:作者 投稿日:2005/12/29(木) 08:09
作者、生きてます。ここにいます。
ただ瀕死状態です。
正直煮詰まってます、話が進みません………;
年明けには何とか復活したいと思っていますが、すみません。
いつになるか分からないですが、更新は必ずします。
169 名前:みちる 投稿日:2005/12/29(木) 11:07
よかった〜!作者&小説が生きていて。
この話本当に好きですから、
なによりのクリスマスプレゼントです。(笑)
ありがとうございます。
楽しみにして待ってます。
作者さんがんばってください!
170 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/01(日) 03:39
はあ〜(*´Д`)=з
よかった生きてて…
本当に死んじゃったのかと思っちゃいました。 失礼しましたm(_ _)m

Converted by dat2html.pl v0.2