ETERNAL 〜Love Letter〜
- 1 名前:作者 投稿日:2004/08/04(水) 19:49
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後藤・安倍・矢口・吉澤…ってか笑わん姫中心半リアルです。
時期は昔になりますが、2003年9月くらいで。
下手ではありますがお付き合い下さると嬉しいです。
- 2 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/04(水) 19:50
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キミは私に似ていた。
私は、キミに似てなかった。
その欠片を探すのに必要なのがアイだって、
私はサイゴまで気付かなかったんだ。
- 3 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2004/08/04(水) 19:50
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「犬見せて、犬。」
玄関で靴を脱ぎながら、吉澤が急かすように後藤に言った。
「可愛いんだよ〜。やっと歩き始めるようになってさぁ。」
言いながら手に持ってきたのは、ようやく子犬のカタチになった犬。
近所の犬が子供を生んだのを一週間くらい前にもらってきたんだそうだ。
「わぁ〜、可愛い!!」
「よろよろだけど、必死で歩こうとするのがまた可愛いの。」
興奮する吉澤に後藤が「食べないでね。」と忠告するが、まるで聞いていない様子で、子犬の頭をつついている。
「ねぇ、名前はもう付けたの?」
「うん、なっちってつけた。」
あまりにもナチュラルにその名前が出て来たから、吉澤は驚いて顔を上げた。
言葉の出ない吉澤に気付いていないのか、後藤は愛おしそうに、なっちの名付けた子犬を撫でている。
「目が合った瞬間ね、他になんにも浮かばなかったんだよね。」
そういって、なっちを嬉しそうに吉澤の方に向けた。
「ほら、この目。似てない?」
「…うん、そうだね。」
吉澤は少し切なそうなそうに微笑んで、なっちの頭をそっと撫でた。
- 4 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/04(水) 19:52
-
片思いというのは、付き合ってるときよりも意志が固くてやっかいだ。
見ているだけ、どうせ諦めていると自分に言い聞かせながら、どっかでまだ希望を持っている。
不思議な物で、それはダメな相手だと分かっていると、ますます強くなる。
後藤もそうだけど、後藤が想っているみたいに、
彼女も同じように違う人間を、多分もう何年も見つめ続けている。
知っているのに惹かれてしまったんだから、後藤の場合、自業自得なのかもしれない。
「ごっちん。」
よっすぃーと話をしていたなっちが、ふいに後藤の方を見た。
振り向いた表情が可愛くて、その不意打ちに頬が緩む。
「ごっちんに言ったらダメですって!」
慌ててよっすぃーがなっちの腕を掴む。
「よっすぃーね、昨日ね…」
「ダメですって!」
だけどなっちは逆に面白がって、こっちに身を乗り出してくる。
後藤もそれにつられて、同じように身を乗り出した。
「なんだよ〜、後藤に隠し事する気ぃ?」
「だって、ごっちんに言ったら馬鹿にされるし。」
よっすぃーはこう見えてかなり恥ずかしがり屋。
結局話しちゃう所がよっすぃーらしい所なんだけど。
「なんだよぉ。固い友情を交わした後藤がそんなコトするはずないじゃん。」
「でも、よく吉澤で遊ぶくせに。」
「あ〜、確かに。」
なっちはくすくすと笑いながらよっすぃーに同意した。
口を揃えて言う事ないのに。
「2人とも、ひどい〜!」
- 5 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/04(水) 19:53
- ふいに、ドアの開く音がした。
真っ先に反応したのはなっち。
「あ、矢口っ!遅いべさ。どうしたの?」
あっという間に後藤の横を擦り抜けて、まだ眠そうなやぐっつあんに駆け寄る。
たいしたことじゃない。
何も特別な事じゃないのに、こういう些細な事が、ひとつひとつ痛む。
後藤は取りあえず、目の前にいるよっすぃーに気付かれないように、にこっと笑いかけた。
よっすぃーは思った通り気持ち悪そうな表情を返してくる。
「なに?」
「で、何の話?」
「しつこいよ〜。大したことじゃないって。」
「教えてよぉ。」
嫌がるよっすぃーの向こうに見えるなっちの笑顔は、特別だった。
やぐっつあんといるとホントに嬉しそうで、見ているこっちはかなり答える。
後藤が知っている中では、一番良い表情をする。
いちばん?自分は、なっちの事を実際どのくらい知っているんだろう。
もしかしたら、もっとあるかもしれない。
そう考えたら、なんだかじっとしてられなくて、
終わってから後藤は久しぶりになっちを御飯に誘った。
- 6 名前:( ´ Д `) 投稿日:( ´ Д `)
- ( ´ Д `)
- 7 名前:( ´ Д `) 投稿日:( ´ Д `)
- ( ´ Д `)
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 23:18
- このメンバー、好きです。
こらから、頑張って下さい。
- 9 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:14
-
2人でいる時のなっちは、普段よりも少し優しくて、
それがまた可愛くて、後藤の病気を悪化させる。
諦めるなんて口ばっかりで、自らハマる様なことばっかりして。
だからなっちにまつわる知識は増えた。
でも結局なっちの気持ちの仲間では、いつまで経っても見えてこない。
触れたい部分には、手が届かない。
やぐっつあんなら、届くのかな。
後藤は会話が途切れるのを見計らって、その名前を出してみた。
「ねぇ。」
「ん?」
「なっちさ、やぐっつあんと御飯食べに行ってる?」
「なんで?」
「や、なんとなく。」
「…最近はあんまりない、かな。」
「そっか。」
「…どうして?」
「ううん、聞いただけ。」
なっちは拍子抜けしたような顔をして、わざと突っかかるように返してくる。
「どうしたんだべさ。それで終わり?」
「もうちょっと引っ張る?」
「いいけど、別に。」
- 10 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:15
- それから少しの間、後藤たちは黙々と端を口に運んでいたら、
ふいになっちの手が止まって、後藤は顔を上げた。
なっちはどこを見るでもない遠い目で、呟いた。
「ごっちんはさ、好きな人の傍にいると嬉しい?」
一瞬ばれているのかと思ったけど、どうやら全然そんなことはないようで、逆にちょっと空しくなる。
しかし後藤ももう子供じゃないから、普通に笑顔で答える。
「そりゃ、嬉しいと思うよ。好きなんだから。」
「…そっか。」
「なっち、嬉しくないの?」
やぐっつあんといるとすごく嬉しそうに見えたけど。
「…どうやったら諦められるか、いっつも考えてるんだべさ。」
「どうして諦めるって決めてるの?」
「無理だから。絶対に無理だって分かってるんだべさ。」
「ちゃんと言ったの?」
なっちは急に大人しくなって、無言で首を振った。
「言わなきゃ、やぐっつあんだって分かんないよ。」
- 11 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:16
- あ…しまった。
そう思ったときというのは、もう手遅れと相場は決まっている。
「…ごっちん、知ってたの?」
「 知ってたっていうか、なんとなくそうかなぁって。」
「いいよ、別に。」
ふと、ここでどさくさに紛れて告白しちゃおうかななんて考えが過ぎって、
打ち切られそうになった話を繋ぐ。
「でもホントに、言わなくちゃ気付かないよ、やぐっつあん。」
「いいの、気付かなくて。」
「どうして?」
「避けられるの、恐いっしょ。」
その言葉で、後藤の告白は中止を決定した。
確かにそう。
フラれるのは大丈夫だとしても、避けられるのは辛い。
「そっか。」
「うん。」
後藤は次の言葉が出てこなくて、とりあえず口いっぱいに御飯を押し込んだ。
なっちはそんな後藤を見ながら、薄く微笑んだ。
- 12 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:20
-
翌日オフだった後藤は、朝から友達と遠出する計画を立てていた。
寝ぼけ眼の後藤は、そのままタクシーに乗り込む。
隣の空席を見ながら、またなっちの事を思い出していた。
食事が終わってなっちと家に帰る途中、
何も知らないなっちは、ずっと後藤を励ましてくれていた。
「ごっちんだったら大丈夫だよ。嫌いな人なんて、絶対にいないべさ。」
「なっちは?」
「なっち?もちろん大好きだよ。」
知らないとはいえ、そんな簡単に好きだなんて言われたら、逆に悲しくなる。
それが恋愛感情の上にない言葉だと分かっているから。
だけど、必死で褒めてくれるなっちが可愛くて、その可愛さに私はすっかりやられてしまった。
これで好きになるな、なんて方が無理な話。
と、携帯の音にハッと我に返る。
こんなぼんやりしてたら、また寝ちゃうかもしれない。
でもまずは電話に出て、と携帯を手にする。
- 13 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:21
- 「ごっちん?吉澤だけど。」
聞き慣れた声に気が抜ける。
どうしたんだろう、こんな朝から。
「どうしたの?朝から。」
眠気からとろとろしゃべる自分とは反対に、
よっすぃーは切羽詰まったような声で言った。
「急に安倍さんが倒れて、今病院にいるの。」
その先はほとんど聞いていなかった。
なっちが倒れた?
呼吸もままならない状態だと聞いて、後藤は友達に詳しい説明も出来ずに、
とにかく行けなくなったことだけを電話で伝え、病院に向かった。
家からそう遠くないはずなのに、遠い道のり。
卒業が決まって、ソロの仕事も増えたから、疲労が溜まったのかもしれない。
もしかしたら、疲労だけじゃなくて悪い病気になっちゃったのかな。
そう考え出すと悪い方に行ってしまう。
後藤はそんな考えを振り切りたくて、携帯を強く握りしめることしかできなかった。
- 14 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2004/08/07(土) 01:21
- ようやく病院に着いたときには、もう様態は安定してきたらしく、
待合室にいたスタッフも、そんなに緊迫した空気ではなかった。
連絡をくれたよっすぃーは他のメンバーと収録を続けているらしく、そこに姿はなかった。
取りあえず状況を聞いたものの、
本人を確認しないことには落ち着かなくて、とにかくなっちのもとへ向かう。
病室に行くと、酸素マスクはしているけど、スヤスヤと眠っているなっちの姿を見ることが出来た。
ようやく胸を撫で下ろした後藤は、ベッドの横に椅子を見付けて、腰を下ろした。
気持ち良さそうな寝顔を見ていると、さっきまで焦っていた自分が可笑しくなる。
吉澤も、なんで真っ先に私に電話をくれたんだろう。
後藤も後藤で、別に生死に関わることでもないのに、血相変えてやって来て、何やってるんだろ。
でも仕方がない。
自分の中での最優先事項は、なっちなんだから。
だからやっぱり伝えよう。
目を覚ましたら、いつものように笑ってくれたら、今度こそちゃんと。
例え報われなくても、なっちの事をこんなに好きな人間もいるんだって、
それだけでも知っていて欲しい。
後藤はシーツに手を伸ばし、そっとなっちの手を握った。
最近、またちょっと細くなった気がする。
細い腕を見付けていたら妙に切なくなって、思わずぎゅっと力を込めた。
慌てて緩めたけど、どうやら起こしてしまったらしく、寝惚けたような声が耳に入った。
- 15 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:22
- 「…なんでごっちんがいるの?」
なっちは子供みたいに目を擦りながら、ゆっくりと後藤の方に首を傾ける。
たったそれだけのことが、どうしようもなく愛しい。
「心配して飛んで来ちゃったの。」
ペロッと舌を出してみる。
あぁ、本当に大した事なくて良かった。
「仕事は?」
「今日はね、オフなの。」
「そっか。ごめんね。せっかくの休みなのに。」
「大丈夫。後藤、なっちより大事なものなんて、今思い付かないから。」
「なぁに、それ?」
なっちが眉間にシワを寄せるのを見て、なんだか切り口が唐突すぎたと反省する。
ちょっと失敗したなと思いつつ、脳みそをフルに活躍させて、無理矢理話を繋げた。
「なっち昨日さ、避けられるの恐いって言ったよね。」
「…うん。」
「最初ね、後藤もその通りだなって思った。」
今だってそう思ってはいるけど。
「でもね、なっちが倒れたって聞いて、言わなくて後悔する方がイヤだって思ったの。」
「後悔?」
「うん。後藤ね、すっごい好きなんだ、なっちのこと。」
- 16 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/07(土) 01:23
- なっちはあからさまに驚いた顔をして、そのまま固まってしまった。
本来なら、なっちのリアクションを待ってから話を進めるべきなんだろうけれど、
後藤は沈黙が長引くのが恐くて、なっちが何も言わないうちに、もう次の言葉を発していた。
「ホントにさ、やぐっつあんのこと、諦めようと思ってるんなら、後藤のことちょっとは考えておいて。」
「ごっちん…。」
じーっと見付けられて、心臓が不規則な爆音を刻み始める。
その目で見られるとどうにも弱い。
その上、手を握りっぱなしにしていたことに気付き、慌てて手を放した。
「ごめん。」
「ううん。」
「…昨日後藤のこと励ましたの、失敗したって思ったでしょ。」
ごっちんのことを嫌いな人なんていないとか、後藤を喜ばせるような事言ってたからね。
だけどなっちは半身を起こしてまで、ムキになって否定した。
「そんなことないべさっ!」
どうしてこう、優しいんだろう、なっちは。
「じゃあ、ちょっとは考えてくれる?」
そして後藤はどうしてこう、ズルイんだろうか。
けれどそんなずるい後藤の言うことに、優しいなっちは黙ってコクンと頷いてくれた。
- 17 名前:作者 投稿日:2004/08/07(土) 01:25
-
少量ですが、更新致しました。
>>8
レスありがとうございます!
ゆるゆるの更新になるとは思いますが、よろしくお願い致しますm(__)m
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/11(水) 23:40
- 設定から引き込まれました。
面白い。更新を楽しみにしてます。
- 19 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:10
-
「ごっちんてさぁ、なっちのこと好きなの?」
お世辞にもおいしいとは言えないロケ弁を頬張っていると、やぐっつあんが突然そんなことを言い出した。
「なんで?」
いくらロケバスの中で誰もいないからって、そんなことここで言わないでよ。
「さっきからさ、なっちのことばっかり聞いてるじゃん。」
そうだったかなぁ?
そんなつもりはなかったけど、やぐっちゃんがそう言うんだから、よほど聞いていたんだろう。
けれども、ここで肯定するわけにもいかない。
「そんなことないよ。」
「ふ〜ん、別に良いけど。」
「なに〜?その顔ぉ。誰もそんなこと言ってないでしょ〜!」
「はいはい。止めないよ?今、付き合ってる人いないし。」
ホントにやぐっつあんはなっちの気持ちに気付いていないんだと、改めて確信する。
- 20 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:11
- 後藤なんかよりもなっちの方が、ずっと可哀想かもしれない。
なっちはがぐっつあんが好きなんだよ。
後藤の口からは言えないけど。
「何見てんの?」
「拗ねないで〜、やぐっつあんも好きだからさぁ。」
言いながら、嫌がらせのようにやぐっつあんの体をペタペタ触る。
もちろん、箸を持ったままで。
「バカ!触んないでよ〜。ご飯食べなさいっっっ!」
やぐっつあんを好きになる気持ちは、なんとなく分かる。
それはきっと後藤だけじゃなくて、やぐっつあんの事を分かってる人間なら、
みんなが持っている感情じゃないかな。
ただなっちは、その度合いが強くなり過ぎてしまった。それだけの事で。
そして、たったそれだけの違いが、何年もの間なっちを苦しめている。
そう考えると、後藤はふざけながらなっちの分まで切なくなった。
- 21 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:14
-
入院は1日だけだったものの、家で寝ているというなっちが気になって、後藤は翌日も電話を掛けた。
電話に出たなっちはどこか元気がなくて、余計心配になる。
「まだ調子良くない?」
「ううん、もう元気。」
「にしては無口だと思うんだけど。」
と、思いもよらないところで沈黙が走った。
今、マズイ事でも言ったかな?
電話の沈黙は、表情が分からないから本当に焦る。
次の話題を考えているうちに、珍しくなっちの方から口を開いた。
「ごっちんがあんな事言うからだべ。」
あぁ…そっか。
「明日会ったらどんな顔しようか、いっぱい考えてたのにさ、普通に電話なんかしてくるから分からなくなる。」
悩んでいるなっちには申し訳ないけれど、真面目に考えてくれてるんだと思うと、頬が緩んでしまう。
顔が見えなくて良かった。
「そんなに気にすることないよ。」
「無理言わないでよぉ。気になるに決まってるじゃない。」
「じゃあやぐっつあんの事忘れて、後藤のこと好きになってよ。」
冗談のつもりだったんだけど、どうやら笑えないみたいで、さっきより想い沈黙が流れてしまった。
「ごめん、ウソウソ。冗談だって!」
- 22 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:15
- その時、空耳かと思うくらい小さな声で、なっちは「出来るかな」と言った。
その声があまりにも儚げで、後藤はまた余計な事を聞いてしまった。
「なっちはさ、辛くないの?」
「何が?」
「好きだって言えないのが。」
少し間があってから、なっちは後藤の質問に答えずに、逆に聞き返してきた。
「ごっちんはなんで優しくできるの?」
「別に優しくないじゃん。」
「だってなっちに今、すぅっごい気を使ってるでしょ。」
余計な事も色々言っちゃってるけど。
「なっちだって色々気ぃ使ってるでしょ?」
「なっちは。矢口にそんな事…多分出来てない。」
「そうかなぁ。」
「時々ね、すっごい傷付けたくなるの。『なんで分かんないんだべさ!』って。」
それは後藤だって同じ。
現にこんな話をなっちに振ってる時点で、すでに傷付けてるかもしれない。
「ホントはもう、諦めてるんだけどね。」
わざと明るい口調で返すなっちを抱き締めてあげたかった、今すぐ。
でも伸ばした手は電話の向こうには届かなくて、もどかしさだけを小さく握りしめる。
- 23 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:16
- 「後藤も優しくなんてないよ。なっちの事慰めながら、やぐっつあんも上手くいかないように祈ってるし。」
「うん…。」
「でもね、それも含めてなっちが好きなんだ。」
だからきっと、やぐっつあんの事が好きでも嫌いでも、後藤の気持ちは揺るがない。
「もし、やぐっつあんが好きななっち事受け止められたら、後藤と付き合ってくれる?」
「何言ってるの?そんなのダメだべさ。なんでごっちんがそこまでしなくちゃならないの?」
「そんなん、なっちが好きだからに決まってるじゃん。」
3度目の沈黙。
やっちゃった。言い過ぎた?
引いちゃったかな?
後藤は慌てて沈黙を埋めようと、茶化すように言った。
「知らないの?後藤、結構努力家なんだから。」
そこで初めて、なっちが笑ってくれた。
「え〜、そうだっけ?」
「そうだってばぁ。後藤の陰の努力は有名だよ?」
「それ、陰じゃないじゃん。」
ようやくいつもの口調に戻ったなっちと、それから夜中まで話したけれど、
結局返事らしき言葉を聞く事は出来なかった。
- 24 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:17
-
久しぶりに家に遊びに来たよっすぃーに、前から聞こうと思っていた事があった。
「なっちが倒れた時さ、なんで真っ先に後藤に電話したの?」
よっすぃーはまるで悪い事でもしたみたいに俯いて、それから独り言のように呟いた。
「…なんでだろうね。」
そして、意外な言葉が後ろに続いた。
「まだ好きなの?」
普段はこーゆー所に突っ込んでこないのに、珍しい。
あまり娘。と一緒に仕事をしていないから、若干の不安が過ぎる。
「なんかあったの?」
まさか、なっちとやぐっつあんがどうにかなったとか。
「いや、なんにもないけど。…ただごっちんが卒業してて良かったかなぁって、最近よく思う。」
「…そうかもね。」
さくら組でツアーをやっている事も相まって、なっちとやぐっつあんが一緒にいる機会がものすごく多い。
もしよっすぃーの立場だったら嫉妬でおかしくなってるかもしれない。
嫉妬?そんな言葉、後藤には似合わないよな。
そこで終わりかと思ったら、よっすぃーがまた独り言のように呟いた。
「ねぇ。」
「ん?」
- 25 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/08/16(月) 19:18
- 「なんで安倍さんなの?」
本当に今日のよっすぃーはおかしい。
今度はよっすぃーに何かあったんじゃないかという心配が生まれてくる。
「安倍さんには矢口さんがいるんだよ?」
そう、そんな事は分かっている。
でもやぐっつあんが気付かない限り、何も起きない事も分かっている。
「けど、言っちゃったんだよね。」
「言った?安倍さんに?」
それは告白したときのなっちと同じくらい驚いた顔をして、よっすぃーはようやく俯いていた頭を上げた。
「まぁ、気持ちだけは、と思って。」
後藤が続けると、どうにもバツの悪そうな顔をして、でもようやくいつものよっすぃーらしいトーンで言ってきた。
「ごめん。吉澤さっきから変な事ばっかり聞いてるね。」
「ホントだよ〜。後藤、ちょっと落ち込んじゃったもん。」
「ごめん、ごめんね。」
その話はそこで終わったけれど、時々会話が途切れると、
よっすぃーはまた何か考えてるらしく、どこか違うところを見ていた。
- 26 名前:作者 投稿日:2004/08/16(月) 19:22
-
更新致しました。
笑わん姫4人中心のはずが、後藤・安倍中心になる予感…
>>18
レス有り難うございます。
面白いと言って頂けると嬉しいです。
やる気が出てくるんで!!
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/23(月) 21:15
- 後藤安倍中心大歓迎。
続き期待してまってます。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 17:22
- 更新お疲れさまです。
よっすぃーが誰を好きなのかが気になるところです。
みんなが自分の気持ちをどうしていくのかも興味があります。
これからも、頑張って下さい。
- 29 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:46
-
それからも、これといって後藤となっちの関係が変わる事はなかった。
避けられるよりはマシかもしれないけど、なんだかもどかしい。
同性に告白するなんて大勝負に出たのに、この平和な空気はなんだっていうの!
もっと一波瀾あるでしょ、普通。
などと1人イラついている後藤の目に、ますます気分を凹ませる風景が映った。
さっきまで離れて座っていたはずのやぐっつあんの横に、いつの間にかなっちがくっついて座っている。
そんなにくっつかなくても声は聞こえるだろうに。
何やらごにょごにょしている会話に、自分でも最低だなぁと思いながら、めいいっぱい聞き耳を立てた。
どうやらやぐっつあんがキレかかっているらしい。
「別に怒らなくてもいいでしょ。あの人だって悪気はないんだろうし…。」
「あるって、絶対!」
「なんで。また何か言われたの?」
「あの人、真顔で『なっちと矢口が出来てるんでしょ?』とか言ってくるんだよ!」
なっちが言葉を失っているのが分かる。
見ているこっちが苦しいくらい。
「ばっかじゃないの。ホント最低。」
けれどなっちはいつもと違い、その話にさらに突っ込んだ。
「…もしさ、本当になっちが矢口の事好きだって言ったらどうする?」
「やめてよ恐いって。そんなの気持ち悪いし。」
「そ、そうだよね〜、気持ち悪いに決まってるべさ。」
いつもだったら、そんな事くらいで動揺を見せないなっちが、この時は何故か黙って部屋を出て行った。
- 30 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:47
- 後藤は気になって後を追った。
廊下に出たけれど、そこにはもう姿はなくて、きょろきょろと辺りを見回した。
と、ずっと先の方に妙に速い足取りで進む背中がある。
やっぱり様子がおかしい。
小走りで追いかけると、足音に気付いたのかなっちが振り返った。
声を掛けようとしたけれども、後藤を見た瞬間、逃げるように足を速めた。
慌てて駆け寄って、逃げる肩を掴んだ。
「なっち。」
「放っておいて!なんでついて来るの。」
「だって、心配だから。」
肩の手を払おうとするなっちに逆らって、後藤は掴んだ手に力を入れた。
「どうしたの。やぐっつあんのあれって、いつもの事じゃん。」
強がる瞳には何かが溢れ始めていて、手を放す事なんて出来なかった。
「うるさいよっ…」
そう言いながら、なっちはついに泣き出した。
「ごっちんの所為なんだから…」
「どうして?」
「ごっちんが甘やかすから、なっちすっごい弱くなっちゃった。」
「なにそれ〜。変なところで人の所為にするんだからぁ。」
せめてもの強がりなんだろうと思うと、なっちがとても可愛いらしく思える。
後藤はなっちの腕を引き寄せて、胸に抱き締めた。
「泣きたいだけ泣いて良いよ。後藤、見てないし。」
抵抗する代わりに憎まれ口でも叩こうとしたのか、なっちはなにか言いかけたけれど、
それも含めて涙になって流れてしまったみたいだった。
- 31 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:49
- やぐっつあんを憎いとは思わない。
ただ羨ましいと思う。
こんなになっちを振り回す事が出来るのは、きっとやぐっつあんだけだから。
そして後藤はそんななっちを抱き締める事くらいしか出来ない。
と言ってもなっちがそれを望んでいる訳じゃなくて、こんな方法くらいしか、知らないから。
しばらくして落ち着いたのか、なっちがゆっくりと腕を解いて、後藤を見上げた。
真っ赤な目が、とても哀しそうに瞬きをする。
その空気が揺れている瞬間を綺麗だと思うのは、不謹慎だろうか?
「もう、いいの?」
そんな聞き方あるわけ?と自分でも突っ込みそうだった。
こういうときにどうして気の利いた言葉が出てこないんだろう。
でもなっちはそのままの表情で頷いて、聞き逃しそうなくらい小さな声で「ごめん」と言った。
胸で泣いたから「ごめん」なのか、後藤の想いに対しての「ごめん」なのか、
それを聞き返す勇気が後藤にはなかった。
顔を洗うと言って歩いて行く、小さな背中をぼんやりと見送るだけ。
後藤たちの出口はどこにあるんだろう。
探し続けて、もう随分と季節が流れた。
それは後藤もなっちも同じで、このままじゃただ季節を見送るだけだって事も分かっていた。
分かっているのにどうしようもない事が、この世には多すぎて、
その度に自分の不甲斐なさに気付き、途方に暮れる。
やぐっつあんの気持ちが動かないとしたら、なっちはこれからもずっと苦しんでいくのかな。
そして後藤も…。
- 32 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:50
- そう思ったらたまらなくなって、気付くと後藤はなっちを呼び止めていた。
「なっち!」
振り向くのを待ちきれず、後藤はまた駆け寄っていった。
なっちは立ち止まり、まだ赤い目できょとんとしている。
「後藤、自分で思ってるよりも気が短いみたいでさ。」
赤く目を腫らしたなっちにこんな事を言うのは、間違っているかもしれない。
でもやっぱり答えが欲しい。
わがままだけど、気持ちが知りたい。
なっちの口から、言ってもらいたい。
「気持ち全部じゃなくて良いから、半分でも後藤のこと思ってくれるんならそれでいいから。
あとは後藤が頑張るからさ。」
「頑張るって…。」
「なっちがやぐっつあんのことで悩んじゃわないくらい、一緒にいるから。」
人が真面目に口説いているのに、なっちは小さく吹き出した。
ここ、笑うところ?
「それ、ウザイっていうんだべ。」
「なぁに、ウザイって!」
なんと言われても、その笑顔が純粋に嬉しくて、つられて頬が緩んでしまう。
だけど笑って誤魔化される程、後藤は間抜けでもない。
- 33 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:51
- 再びなっちを抱き締める。
こうすると大人しくなるって、分かったから。
それからゆっくりと問い掛ける。
「これもウザイ?」
大人しいのは良いけど、答えてくれないのは困る。
後藤はもう一度、言い直した。
「ここがなっちの居場所になるようにね、後藤頑張るから。」
胸に顔を埋めたまま、なっちは小さな声で呟いた。
「…ずっと考えてたの、そのこと。」
「え?」
「ごっちんは、ずっとなっちのこと好きでいてくれる?」
「もちろん。」
「なっちがごっちんのこと好きになるまで、待っててくれる?」
期待以上の言葉が飛び込んできた後藤の脳は、小さなパニックを起こした。
「そ、そんなこと言っちゃって良いの?」
後で取り消しなんて言われたら凹んじゃうよ。
「だって、気付くと大切なとき、いつもごっちんがいる。」
「それはさぁ、後藤がイイヒトだからね!」
調子良く返したつもりだったのに、なっちは後藤の話なんて聞いてないみたいに、ため息を吐いた。
「浮かれやすいのがたまにキズだけど。」
せっかく上機嫌だったのに、本人に腰を折られてしまった。
- 34 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:51
- もちろん、後藤も反撃を忘れない。
「なっちは一言多いのがたまにキズ。」
「嫌い?」
…どうやらなっちの方が上手みたい。
好きだと知っていてそういうことを言う、確信犯。
「なんかズルイ、なっち。」
だから仕返しになっちの弱点をつく。
優しく抱き寄せて、少しばかりくさい台詞でも呟く。
「好きだよ、そういうところも全部含めて。」
腕の中で俯くから顔は見えないけれど、微かにのぞいている耳は真っ赤になっていた。
確信犯は…後藤もか。
「か、顔洗ってくる!撮影までにメイクが間に合わなくなっちゃうよ。」
顔を伏せたまま、逃げるように小走りで走り去っていく背中。
後藤はなっちの役に立ってる?
それとも困らせてるのかな?
聞けないけれど、少なくとも後藤の腕はなっちにとって居心地が良いみたいだから、
今はそれでひとまず満足することにする。
そうしていられるなら、なっちの気持ちを待ってるのも、悪くない気がするから。
- 35 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2004/09/01(水) 18:53
-
あれから何週間が過ぎた。
あれはOKの返事だと思っていたけれど、違ったわけ?
ただの気まぐれだったのかな。
それともやっぱりやぐっつあんのことを諦めるなんて、できそうもないのか。
「…その可能性は高いよなぁ。」
後藤だって諦めようと何度も思って、でも顔を見る度に挫折して、
その繰り返しでここまで粘ってしまった。
「だけど、粘り勝ちってのもあるからね。」
口にするだけで嬉しくなる。
が、嬉しくなっているのは自分だけってオチだったらどうしようかと、ここ数日そんなことの繰り返し。
待ち時間の長い後藤は、娘。の撮影を眺めながら、ぼんやりと物思いにふけっていた。
告白してから地道に努力するなんて、こんなのは初めてだ。
大抵、頑張って頑張って「よしっ!」って思ってから告白してた気がする。
や、あんまり自分から言った事ってなかったような気がする。
どうだったっけ?最近なっちの事ばっかり考えてるから、ボケが始まったのかもしれない。
そんな後藤の気持ちを分かっているのかいないのか、
目の前ではやぐっつあんに抱きつくなっちの姿が見える。
「仕事だよ、仕事。」
呟いてみたけれど、楽屋でも見たことあるんだよなぁ、ああいう光景。
少し視線をずらすと、2人のそばで適当に笑っているよっすぃーがいた。
よっすぃーはどう思ってるんだろう。
2人のことも、それを見てる後藤のことも。
- 36 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:54
-
「別に。」
よっすぃーは買ってきたケーキをつつきながら、さらっと流した。
「別にって…もっと何かないわけ?」
最近見つけたというおいしいケーキをぱくつきながら、人の分のケーキまで狙っている。
「そういうややこしいことに、吉澤のこと巻き込まないでよ。」
「冷たいなぁ、よっすぃー。後藤も一応気にして言ってるんだからさ、もっと何かないの?」
と、急によっすぃーの手が止まった。
そのスキに後藤は自分の分のケーキを確保した。
よっすぃーは真面目な顔をして、後藤の方に向き直った。
「じゃあ言うよ。」
「うん。」
「矢口さんと同じくらい鈍感だよね。」
後藤はよく分からなくて、首をかしげてしまった。
やぐっつあんと同じで『鈍感』ってことは、とりあえずバカにされてるんだよね?
「ど〜ゆ〜意味、それ?」
「そういう意味。」
全然分からない。
ってことはバカなのか、やっぱり。
「分かるように言ってよ。」
「分からなくて良いの。」
- 37 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2004/09/01(水) 18:55
-
よっすぃーは訳の分からないことを言ってるし、なんだか夜もよく眠れなくて、
翌日後藤はイライラしたまま楽屋を訪ねてしまった。
入るなり目に付いたのが、必要以上に…と後藤は思うんだけれど、
やぐっつあんにくっついてソファに腰掛けているなっちの姿だった。
しかも横を向いて座っている矢口の背中に、べったり頭を凭れている。
眠いのか目を閉じていてなっちの表情は分からないし、
やぐっつあんはまるで気にも止めてない様子で、
加護となにやら楽しそうに話をしている。
後藤は軽くみんなに挨拶をしながら、少し離れた椅子に腰を下ろした。
なっちもそのままの姿勢で「おはよう。」と言った。
ちゃんとこっち向いてよ、とまたイライラが募る。
全体重掛けている訳じゃなさそうだから重くはないんだろうけど、
やぐっつあんも少しは反応しなよ。
うらやましいじゃん。いや、そうじゃなくて。
なっちは構って欲しくてそうしているのか、
触れていたいだけなのか、いっこうに動く気配はない。
やぐっつあんだって無視しているのか、当たり前だと思っているのか無反応。
- 38 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:56
- でもすれ違っているような雰囲気はない。
きっと2人だけが持っている、2人だけの空気なんだろう。
自分はあんな空気の中にいたことがないから、妬んでいるのかもしれない。
友達がいっぱいいても、あんなふうにいられる相手を持つことはなかった。
そのことを話すとなっちは「それはなっちが友情じゃなくて片思いだからだよ。」と、寂しそうに笑うけど。
誰かを思う力だけが持っている優しい空気。
だとしたら、きっとやぐっつあんもなっちを思っている。
それがどんなカタチにしても。
後藤は必死で放つ「愛してる」なんて言葉じゃ、全然太刀打ち出来ない。
そうだよ、勝てるわけないよね。
気が付くと後藤のイライラは、どんよりとした自信喪失に変わっていた。
- 39 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:57
-
例によって色々考えていたら、またしてもいてもたってもいられなくなって、
後藤は唐突になっちの部屋を訪れた。
なっちも分かっているのか、何も聞かずに部屋に通してくれる。
けれど、それが逆に話のきっかけを作りづらくしてしまった。
どうにも本題を切り出せなくて、くだらない話ばかり弾んで、ただ時間が過ぎていく。
時計を見ると、もういい加減帰らないとマズイ時間になっていた。
このまま泊めてなんて言ったら、いかにもそういうつもりで来たと思われそうだから、
今日はもう諦めて帰ろうと、後藤は重い腰を上げた。
「じゃ、メールでもするね。」なんて言って、
玄関に向かおうと背を向けた後藤を、なっちの方から呼び止めた。
「帰っちゃうの?」
その言葉はあまりにも予想外だったから、振り返った後藤の顔はそうとう間が抜けていたと思われる。
だいたい、そんな寂しそうな顔見ちゃったら帰れないじゃん。
「なぁに〜、そんな切ない顔しちゃって。」
茶化してみても、反応はない。
「どうしたの?なんかあったの?」
なっちは部屋から動かないから、後藤が戻って横に座る。
「なんもないけど…。」
そういって俯いたきり、しばらく黙っていたが、ふいにボソッと呟いた。
- 40 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:58
- 「なっち、すごいズルイよね。」
言いながら後藤のシャツの裾を掴む。
「そんな事ないって。」
そうだとしたら、ズルイのは裾を掴むこの手だろう。
こんな事をされて愛しいと思うなって方が無理。
自覚しているのか無意識か分からないけれど、
なっちは掴んだ裾を引っ張って、潤んだ目で後藤を見上げた。
「あるよっ!今なっち勝手なこと言って、ごっちんを利用しようとしてる。」
「いいよ…それでも。」
確かにズルイかもしれない。
だって後藤はもう、なっちが何を言っても受け入れる気持ちになっている。
「使えるもんは、なんでも使いなよ。」
と、なっちの顔が険しくなって、急に瞬きの回数が増える。
つまり泣きそうなのを堪えている。
「あ〜、また泣いちゃう…。」
「まだ泣いてないべさ!」
「『まだ』?」
そう返すと、なっちはふくれて黙ってしまった。
そんなところも可愛くて、ほころぶ頬の筋肉を必死で抑え、まともな事を言う。
「泣いても良いんじゃない?いつも強がってるんだから。」
「またそうやって甘やかす…。」
「甘やかしてるのかなぁ?」
「うん、ものすっごく。」
「なっちは自分に厳しくしようとしてるでしょ?じゃ、後藤が甘やかすくらいいいんじゃない?」
「そしたらなっち、そのまま甘えてダメになる気がする。」
「ならないって。なっても後藤がちゃんと引き取るもんね。」
もちろんならなくても引き取りたいんだけど。
- 41 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:59
- するとなっちは、哀しそうに薄く微笑んだ。
「バカだよね…ごっちん。」
「こういう後藤、嫌い?」
なっちは黙って首を振った。
同時に、裾を掴んでいた手が静かに離れようとしたから、後藤は応用に改めてその手を握った。
「今日、泊めて。なっちが寂しくなくなるまで、ずっとこうしてるからさ。」
なっちは答える代わりに、後藤の手の中で握られた手を裏返して、そっと握りかえしてきた。
その顔が、その手のひらが、たまらなく可愛くて、
後藤はもう片方の手で、なっちの頭をくしゃっと撫でた。
伝わってくる体温がとても素直な気持ちにしてくれる。
なっちはされるがままで後藤の方に凭れながら、ふいに呟いた。
「ごっちん、自分の居場所ってある?」
「居場所?」
「うん。いつでもなっちの分だけ空いてるの。それでいつ行ってもちゃんとあったかいの。」
言いたいことは分かるけど、どう答えたらいいのかが分からない。
「…難しいなぁ。そんなのあんまり考えたことないし。」
「そっか。」
こんな小さい頭で、なんでそんなに難しいことばかり考えるんだろう。
- 42 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/09/01(水) 18:59
- 「じゃあさ、なっちが後藤の居場所になってよ。」
「なっち?」
「後藤はなっちの居場所になるから。」
答えられない代わりに、なっちが手を伸ばしたらいつでもこうして繋いであげられる距離にいよう。
それを居場所と呼ぶのかは分からないけれど。
「そしたら絶対独りになったりしないでしょ?だから傍にいてよ。後藤すっごい大事にするよ?」
「…うん。」
「ホントに?意味分かってる?」
「バカにしないで、分かってるよ。矢口のことは忘れる。」
「なっち…」
自分で話を振ったくせに、それでけで頭が真っ白になってしまった。
そんな夢見心地の後藤をたたき壊すかのように、なっちはいつもの口調に戻って、可愛くないことを言う。
「その代わり、ちゃんと大事にしてよね!」
「なに、いきなり偉そうに。」
でも今度こそ本当に、はっきり返事をもらった。
なんか上手くいきすぎて、ウソみたいだけれど。
- 43 名前:作者 投稿日:2004/09/01(水) 19:09
-
更新しました。
なんか更新遅……。
>>27
レス有り難うございます。
後藤安倍中心OKですか…良かったです。
な割に今回はよっすぃーが出張ってますね…f(^_^;
>>28
レス有り難うございます。
よっすぃーの想い相手ですね…
そろそろ分かる感じになってくるかと思います。
他のみんなもこれから一波瀾…です、多分。
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/02(木) 22:19
- いいです。ものすごくいい・・・。
なちごまかわいい。
続きを一波瀾の言葉におびえながらw待ってます。
- 45 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/10/01(金) 19:20
-
結局後藤は横になっていたものの、時折不安そうに目を覚ますなっちの隣で、
あどけない寝顔に何度も手が伸びそうになりながら、一睡もせずに朝を迎えた。
自分は今、誰よりもなっちに必要とされている。
その喜びを噛みしめていたら、とても眠れなかった。
「ん〜…」
眠そうに目を擦るなっちに、静かに朝の挨拶をしてみる。
「おはよ。」
けれどなっちは眠そうな瞳のままで、後藤の顔をじーっと見ている。
「なぁに〜、なんもしてないよ。」
「そんなこと言ってないでしょ。」
「じゃ、なに?」
「なんでなんにもしないの?」
「え?」
言ってから恥ずかしくなったのか、なっちは口を噤んでしまった。
この朝のまったりした空気、見つめ合う時間、確実にそういう雰囲気が流れていた。
今にも押し倒そうかという気分に駆られたけれど、
後藤は押し倒す代わりになっちをめいいっぱいの愛でぎゅうっっと抱き締めた。
- 46 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/10/01(金) 19:21
- 「やっぱりやめた。」
「なんで?」
「もったいないからね。」
「なにそれ。」
「もう少し大事にとっとく。」
「へんなのぉ〜。」
へんかもしれない。
でもそれでもいい。
とても低い可能性に賭けて、待って待ってようやく手に入れた小さなぬくもり。
だかたもっと大切に、なっちが腕の中にいる喜びのひとつひとつが流れてしまわないように、
噛みしめて抱き締めていたいから、もう少し時間をかけよう。
そう、時間を…
「あっ、時間!」
後藤は慌てて時計を見た。
「あっ、全然時間ないよ!ごっちん、着替えどうする?」
「どうするって…取りに行く時間ないよ。」
どのみちエッチする時間なんてなかったじゃん、
と冷静に思っている自分がちょっと嫌な感じだけど、
『ちょっと小さいかも、だけど』と手渡されたなっちの衣服に着替えるのは、
なんだか結構嬉しかった。
- 47 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/10/01(金) 19:23
-
部屋を出ると、なっちは気まずいのか、黙って少し前を歩き出した。
「なっち。」
「なに?」
顔だけ振り向いてこっちを向く。
もういつ呼び止めても良いんだ。
いつでも、この顔を見ていられる。
「なっちのこと、すっごい好き。」
なっちは一瞬足を止めかけたけれど、あえて普通のペースで歩きながら、
困ったように、でも少し照れくそうに目を伏せる。
「…なんて答えたらいいの?」
「なんも答えなくて良いよ。」
「そんなの変じゃない?」
「じゃあ、『なっちも』って言って。」
「え…。」
またしても沈黙が続く。
後藤はなっちが答える前に慌てて付け足した。
「ウソだよ。」
そんな後藤に気を遣ってか、なっちが呟く。
- 48 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2004/10/01(金) 19:24
- 「好きだよ。」
「無理しないでってば。」
「無理じゃないよ。」
「ホントにそう思ったときに言って。でないと後藤、勘違いしやすいからさ。」
エレベーターホールの手前で、ふいになっちが立ち止まった。
後藤も隣で足を止める。
「ごっちん。」
「ん?」
なっちはまっすぐに後藤を見て
「ありがとう。」
と言うと、静かに微笑んだ。
照れているのか、それだけ言うと、こっちのリアクションも待たずに、さっさと歩き始めた。
ぼんやり背中を見ていると、気配がないことに気付いたのか、
なっちが振り返って早くと急かす。
だってさっきの好きって言葉よりも、なんだか胸に染みるんだもん。
『好きです』じゃなくて『ありがとう』から始まる恋があっても良いんじゃない。
後藤は小走りで追いつくと、なっちの腕を掴み、その細い手のひらを握った。
あとは後藤が頑張ればいい。
なっちの居場所になれるように。
- 49 名前:作者 投稿日:2004/10/01(金) 19:29
-
全然更新せず、申し訳なかったです。
それに、少量更新で…。
次は近いうちに更新したいと思います。
>>44
ありがとうございます!
なちごま可愛いですよね。
可愛く書きたいな、と思いつつ書いているので、
そう読んで頂けてありがたいです。
まだ一波瀾はしてないですがw…待っていて下さると嬉しいです。
- 50 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 21:43
- 少量でも更新してくださるだけで有り難いです。
次回更新、楽しみに待ってます。
- 51 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/22(金) 21:53
- なちごまいいですね。ちょっと切ない所もまたいいです。
更新待ってます。
- 52 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/10(水) 20:00
- 更新待ってます。
- 53 名前:なちのまご 投稿日:2005/01/04(火) 23:25
- ものすごく遅レスですが今日発見し
一気に読みました。4人をとりまく
空気感がとても気に入りました。
次回更新を期待しています。
- 54 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/12(土) 17:07
- いつまでも待ってますよ〜。
- 55 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2005/02/21(月) 18:32
-
「恋」の始まりは穏やかがいい。
刺激に頼ってしまわないように。
「愛」の色は薄い方がいい。
その向こうに貴方が見えるように。
「好き」の分量は同じがいい。
同じときに傍にいたいと思えるように。
- 56 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2005/02/21(月) 18:34
-
時々ふと思う。
なんでこんなことしてるんだろうって。
誰かに触れられると、その度にこの体は、もう自分のものじゃなくなる気がした。
その不確かな感覚に、いつも安堵感を確かめる自分がいる。
いつものぬくもり、いつもの匂い。
ごっちんの腕の中で朝を迎える。
もうこれが定番になりつつあった。
「ちょっと、まだするの?」
背中から抱き竦められて、慌てて腕を突っ張る。
「ダメ?」
「そんな情けない声で言わないでよ。」
ダメなんてなっちは一度も言った事ないのに。
「ホントごっちんって元気だよね。」
なっちが半ば呆れたように呟いているのに、
ごっちんはなっちを自分の方に向けさせると、それは嬉しそうに語り始める。
「そこが違うんだよ。」
「なに?」
「なっちといると元気になるの。」
「な〜んか、ありきたりなお世辞。」
冷静に突っ込んでるのに、全く意に介さない様子で、なっちをぎゅっと抱き締める。
- 57 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2005/02/21(月) 18:35
- 「後藤ね、会うたんびになっちのこと好きになってる気がする。」
言われてるなっちの方が、火を噴きそうだ。
「それって、最初はたいして好きじゃなかったって事だべさ。」
「違うの〜。すっごい好きだと思ってたのに、まだまだ上があって、
未だに上昇してて、そろそろ未知の世界って感じ?
こーゆーのを幸せすぎて怖いって言うんだろうな〜、きっと。」
そんなこと、よく面と向かって言えると思う。
まぁそれがごっちんの良いところでもあるんだけど。
なっちは照れ隠しの言葉すら浮かばなくて、大人しくごっちんの胸に顔を埋めた。
その途端、なっちを包むその腕にぎゅ〜っと力が入る。
「うわ〜、すっごい可愛い。」
これだけでこんなに喜ばれると、リアクションに困る。
なっちはせめてもの抵抗に、大きな声で言った。
「うるさいべっ!」
- 58 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2005/02/21(月) 18:36
-
ごっちんといると、寂しくなかった。
誰かに愛されるのは嬉しい。
なのに「好き」と言われると、途端に苦しくなる。
胸がきゅうんとなる。
それは、ごっちんの言う事に素直に「なっちもだよ」と言えないからなのか。
それとも矢口の事に区切りがつかないままで、ごっちんの腕に飛び込んでしまったから、
自分の中で上手く片付いていないだけなのか。
分からない。
それでも抱き締めてくれるごっちんに、幾度となく胸が締め付けられる。
「ごっちん。」
「ん?」
「ありがとう。」
もう口癖みたいになってる、感謝の気持ち。
ごっちんの「ごめん」とどっちが多いかってくらい、なっちは「ありがとう」を言ってる気がした。
でも一緒にいるのは、感謝の気持ちなんかじゃない。
多分この人を好きになれる気がする。
そう、思ったから。
矢口よりも好きになれる、気がしたから。
ずっと矢口が好きだった。
ずっとずっと。
いつか気持ちが届くんじゃないかって、微かな希望を持ちながら、いつもいちばん近くにいた。
この想いに気付いて欲しくて。
でも逆だった。
近付けば近付くほど、矢口が手に入らないんだって事を確信するばかりで、
気付いたら親友にも恋人にもなれない、それでいて息が詰まるくらいの信用を得てしまっていた。
そんな自分の、ダメなところも、矢口への想いも分かっていて、ごっちんは抱き締めてくれた。
なのに時々もう1人の自分が問いかける。
「ここがなっちの居場所でいいの?」と。
- 59 名前:作者 投稿日:2005/02/21(月) 18:44
-
長い間放置しててスミマセンでした。
また、少しずつはじめたいと思います。
レスありがとうございます
>>50
更新、遅くなってスミマセン。
楽しんで頂けると幸い。
>>51
なちごま、いいですよね〜。
また、個人的に切ないの至上主義なんです(笑)
>>52
今回からきちんと更新できる環境になってきましたので、
また、宜しくお願いしますね。
>>53
読んで頂いてありがとうございます。
今の感じで進むかどうかは…ですが、
4人を大切に書いていきたいですね。
>>54
ありがとうございます!
申し訳ないです!
少量更新ですが、これから少しずつでも更新していきたいと思いますので、
宜しくお願いします〜。
- 60 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/02/23(水) 01:54
- 更新されてるぅ泣
ありがとうございます
また読めてうれしいです
ごまがかわいいですねぇ
なっちはせつない…
作者さんペースで頑張ってください
- 61 名前:なちのまご 投稿日:2005/02/23(水) 22:07
- 更新ありがとうございました
これからの二人、それからそのまわりのメンバーが
どう関わってくるのか…
次回更新も楽しみに待ってます
- 62 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/27(日) 14:39
- 更新しましたね! 待ちわびてました!
なっち切なっ 涙 この二人はこのまま続いてくれるんでしょうか? 次回更新待ってます。
- 63 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/15(火) 16:49
- いつまでも待ってますよー。
- 64 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/13(金) 21:26
- 生存報告だけでもお願いしますm(__)m 保全します。
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 00:08
- まだ待ちますよ☆ところで矢口は誰が好きなんでしょうか・・・?
まさかよっすぃ〜!?よしやぐイイですね!!
- 66 名前:作者 投稿日:2005/08/25(木) 01:15
- 作者です。
全然更新してなくて、
生存報告もしてなくて
ご心配をお掛けしました。
スミマセン!
アップしていませんが、少しばかり書き貯めましたので、
9月中旬、更新致します。
- 67 名前:作者 投稿日:2005/08/25(木) 01:16
- sage忘れ…。
- 68 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/08/26(金) 02:40
- はぁぁよかった!生存報告だけでも嬉しいっす
楽しみに待ってますんで、作者さんのペースで頑張ってくださいね
最終的にちゃんと終りさえすれば、いくらでも待ちますともさー♪
- 69 名前:名無し飼育 投稿日:2005/09/24(土) 23:17
- 待ってますね!
- 70 名前:作者 投稿日:2005/10/02(日) 22:27
- 9月を過ぎてしまいましたが、更新です。
- 71 名前:ETERNAL 〜Love Letter〜 投稿日:2005/10/02(日) 22:30
-
「ちょっとー、最後まで話聞いてよー。」
「だって、ごっちんの話、長いんだもん。」
リハーサルが延びて、退屈なメンバーたちは、楽屋でだらだらと過ごしていた。
なっちはあくびをしながら、見渡す。
吉澤は口を開けて爆睡に入っているから、ソファーは占領されていて座れないし、
加護と辻は5期メンとお菓子を前にキャアキャアと騒いでいる。
なっちはというと、さっきから矢口と梨華ちゃんと3人で、
ごっちんの話を聞いている…というか聞かされている。
どうやら最近はまっているマンガの話なんだけど…知らないからよく分からない。
けど、それにも飽きてしまって、ゆっくりと立ち上がるとくるっと向きを変えた。
「なっち、ちょっと気分転換にでもトイレ行ってくる。」
「ってなっち冷た〜い。」
ドアの方に歩いていくなっちの背中で、ごっちんは傍にいた梨華ちゃんに救いを求める。
「もう!どうなの、あれ〜!」
後藤のなんとも情けない顔に、梨華ちゃんは苦笑して小首を傾げるだけだったが、
となりに座っていた矢口はクックッと方を揺らして笑った。
「その通りなんじゃん?」
- 72 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2005/10/02(日) 22:30
- その声に、楽屋を出ようとノブに手を掛けていたなっちが立ち止まった。
ちらっと後藤の方を振り返ると、急に小走りで戻り、正面から勢いよく後藤に飛びついてきた。
後藤はその体重を慌てて受け止める。
「な、なんだっ!」
「冷たいっていうから、フォローしにきたの。」
「そういうのはフォローって言わないの。」
すかさず矢口が突っ込む。
「単にごっちんにベタベタしたいだけでしょー。」
咎めるでもなく、そう言うと矢口は傍にあった雑誌を手に取り、吉澤のいるソファーの横に移動した。
なっちは一瞬動きを止めたが、今度は当てつけのように、後藤の頭や体を触りだした。
「べたべたべた。」
「もー、冷たくないって分かったから!離れて〜。」
逃げるように顔を背けながら、後藤はなっちの腕を掴んだ。
なっちはくすくす笑いながら離れたかと思うと、パタパタと矢口の方へ逃げていった。
「なっちの行動って分かんない。」
梨華ちゃんに話しかけたつもりだったのに、横を見ると、梨華ちゃんは加護や辻と一緒にお菓子を食べていた。
ホント、みんな自分勝手なんだからと思いつつ、それに安心する。
- 73 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2005/10/02(日) 22:31
- 楽屋ではなっちと普通に接する、なんて意外に難しい。
やぐっつあんとも普通にしゃべるのは難しい。
でも、楽屋なんだもん。
なっちもそう思ってるのかどうなのか、やぐっつあんと後藤と3人でいても普通に接してくれる。
そういうところが大人なんだなぁって思うけど、
急にベタベタしたり、大人なんだか子供なんだかさっぱり不明。
でも、分からないから知りたい。
もっと距離を縮めたいと思う。
なっちの方を眺めると、矢口と2人で、眠っているよっすぃーにいたずらしようとしている。
こそこそ耳打ちをしながら、顔を見合わせて笑う2人。
そして中に入れば良いのに、なぜか傍観している後藤だった。
なっちのいちばん近くにいるのはやぐっつあんだ。
そのポジションは、きっと頑張ったからって変わるものじゃないって事が、
つきあい始めてますます思い知らされた。
なっちがただやぐっつあんの世話を焼きたがってるだけにも見えるけど、
やぐっつあんの中にもそれを受け止める何かがあって、それは第三者には見えない。
そして、後藤はどう転んでも第三者だった。
- 74 名前:ETERNAL 〜Love 投稿日:2005/10/02(日) 22:32
- 「ごっちん、なに黄昏れてるの?」
ぼんやりとそんな事を考えていたら、耳元で突然声がした。
うすく息が掛かって、どきんとする。
いつの間にかなっちが隣に戻ってきていた。
後藤は慌てて平静を装い、思考を切り替える。
「や、この後のソロの仕事を事をちょっとね。」
「そっかー。」
納得顔のなっちを、自分はどうしたらいいんだろう。
どんなに抱き締めても足りなくて、いくら言葉を並べても、どんどん溢れる気持ちに追いつかなくて、
無条件でなっちのすべてが、ただただ愛おしい。
なっちが自分を選んでくれた。
それはちゃんと現実で、信じられないくらいの幸せで。
なのに後藤は、未だに胸の奥にある不安を、拭い去ることが出来ないでいた。
やぐっつあんじゃなくて、ホントに良かったの?
後藤を選んだことを、後悔してない?
「なっち。」
一瞬でも手を放したら、何処かに行ってしまいそうな不安。
でも振り向くなっちを見たら、そんなことは言わなくても良いような気がした。
だから、とりあえずはどうでも良いことを聞いてみる。
「よっすぃー、まだ起きないの?」
なっちは一瞬考えたような顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻って言った。
「もう起きると思うよ。」
- 75 名前:作者 投稿日:2005/10/02(日) 22:47
- 久々です。
保全etcご迷惑をお掛けしました。
ありがとうございます。
>60
ごま可愛いですよね〜。
可愛いごま大スキですよ。
>61
その周りのメンバーというと、
主に矢口とよっすぃーですが…バッチリ関わっていきますよ。
あくまでもごっちん、なっちが主役で、矢口とよっすぃーは脇役ですが、
キチンと書きますのでよろしくお願いします。
>62
この2人がこのまま続いていくと良いと思いますが、
さてどうなるでしょう。
きっとなにか起こると思います…よ。
>63
いつまでも待たせてしまってスミマセン。
再開です。
>64
生存報告もほとんどせず、申し訳ないです。
ご迷惑お掛け致しました。
>65
よしやぐステキですね。
書いたことはないですが…どうなるでしょうか?
>68
スミマセン、スミマセン!
最終的にはキチンと終わらせるつもりですので、よろしくお願い致します。
>69
お待ち頂きましてありがとうございます!
突発次回予告:
「もしかして妬いてるの?」
「妬いてないってば!」
ごっちんは怒っていた顔をいつの間にか綻ばせていた。
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/04(火) 17:42
- 更新お疲れさまです。
待っていてよかったです。
ごまの気持ちが切なく思いました。
次回もお待ちしております。
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/12(水) 04:40
- 更新お疲れ様です。
まだまだ長く続きそうで嬉しいです。
今回はごっちん視点ですね、ケナゲで一途で泣けてきます。
両方の気持ちがわかる気がするので、切ないねぇ
なんとなくコレを読んだらDEFを応援する気になってきたw
- 78 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/11/13(日) 13:13
- 待ってますよ〜!
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/20(日) 03:58
- (●´ー`)( ´ Д `)
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:08
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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