エクジスタンシャリスム

1 名前: 投稿日:2004/08/09(月) 18:22
どうも。
書きたくて仕方がなかった学園モノを書かせていただきます。
やっぱり6期中心です。
ダメ出し・感想、大歓迎です。
それではどうぞ。
2 名前:エクジスタンシャリスム 投稿日:2004/08/09(月) 18:24

先が見えない事実より、
彼女たちと過ごす日々の方が大切だった。
3 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:25

晴れ渡った真っ青な空は、どこまで続いているのだろうか。
その空の果てまで行けば、何があるのだろう。


数学の授業は、いつも一番退屈な授業だった。
将来役に立つかどうかもわからない知識を頭に叩き込んで、何になるんだろう。
ノートを取ることもせず、亀井絵里はお得意のペン回しを始めた。
授業中、集中力が切れたりやる気がなくなったりしたら、いつもこうやって
一時間――正確には50分――を何とかやり過ごしていた。

数学の教師は、分厚い眼鏡をかけていて、いかにも理数系です、といったような
顔つきの中年男性だ。
この教師、成績のいい生徒には愛想よく接するくせに、あまり成績のよくない生徒には
意地の悪い接し方をする。
絵里はそれが大嫌いで、中3になるまではそこまで嫌いではなかった数学も、この教師が
担当になってからというもの、大嫌いになった。

因数分解、平方根、二次関数―――
そんなもの必死に勉強して、一体何の役に立つのか。
その理由を50字以内で簡潔に述べよ、という問題をこの教師に出せば、返ってくる
答えは容易に想像がつく。
4 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:25
高校受験の際に役立つのはもちろん、将来大学受験をする時、就職する時にとても
役立つ、他の科目もそうだ。

ほら、句読点もいれてぴったり50字。実際に聞いたわけじゃないけれど。
結局、こういう人間は枠にとらわれた言い方しか出来ないってこと。

「…亀井、まだノートが真っ白だが」

数学教師は絵里のノートを覗き込むと、持っていた教科書で彼女の頭をぺしっと
叩いた。そんなに痛くはなかったが、恨みたっぷりの視線で睨みつけてやる。

「だって、わかんないんですもん」
「説明をちゃんと聞かないからわからないんだ」
「聞いてもわかんないんです」

はあ、と相手がため息をついたのがわかる。
そして彼は何も言わず、次の生徒のところへ回っていった。
絵里も安堵のため息をつく。
もしここで難しい問題をあてられたりしたら、それこそ恥だ。
因数分解すら満足に解けない、なんて言えるはずがない。
5 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:26
「よかったね。あてられなくて」
「うん。どきどきした」
「言ってくれれば、数学教えるのに」

前の席に座っている道重さゆみが、後ろを振り返って話す。
彼女は恵まれた容姿で男子達の高嶺の花、先祖代々有名な医者だという家柄にも
恵まれており、おまけに頭がいいときたもんだ。
2年のとき初めて同じクラスになって、人間というものは生まれながらに不平等な
生き物なんだということを思い知らされた。
さゆみを見ていると心の底からそう思う。が、別に妬んだりはしない。
――他の女子はどうかは知らないが。
6 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:26

「田中、お前は本当に寝てばっかりだな。少しは真面目に授業を受けろ」

少し離れた席の方で教師の叱咤する声が聞こえる。
田中れいなは悪いと思っているのかいないのか、どこか腑に落ちない表情で机の上に
筆箱と教科書、ノートを出した。

「いつもそう素直だと、いいんだけどな」

満足そうに鼻を鳴らし移動する教師を尻目に、れいなはまた机に突っ伏す。
あの教科書とノートはカモフラージュですか。
絵里は半ば感心したような、呆れたような表情でれいなから視線をはがす。
7 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:27
「ねえ、今日も私、可愛い?」
「はいはい…可愛い可愛い」
「こらぁ道重、前向けー」

教師は絵里やれいなに接するときとは違う、愛想のいい笑顔を浮かべながら
軽い口調で注意する。
さゆみもさゆみで愛想笑いを浮かべ、「すいません」と一言。
「道重は素直だなぁ」とか何とか言いながら黒板に問題の解説を書き始める教師を
見て、絵里はやっぱり世の中って不公平だ、と思った。
そしてさゆみのその愛想笑いを見て、可愛いだのなんだの言う男子達を一瞥する。

やっぱり世の中、不公平なことだらけだ。
8 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:27
――***

「うちの学校も給食にすりゃいいのに、変なとこだけ私立中学の真似なんかして」

むすっとした表情でれいなはお弁当のおかずを口に放り込む。
確かに、普通の公立中学なら昼食は給食だろう。
しかし絵里は給食よりはお弁当の方が好きだった。
小学校の頃の給食なんて、全然おいしいと思ったことがなかったからだ。

「うちなんて、みんな忙しいから毎朝自分でお弁当作ってるの」
「さゆ、早起きなんて出来るんだ」
「うぅん……6時30分に起きて、それからお弁当作るの」
「遅いね、それって」

絵里がそう言うと、さゆみはきょとんとした表情を浮かべる。
それを見たれいなは、ハンバーグを口に放り込んだあと、

「さゆの世界はちょっとズレてるから」
「…そういうれいなは、いつも遅刻ぎりぎりのくせに」

頬を膨らませて言うさゆみに、対し、れいなはマイペースにお弁当をつまんでいる。
その光景を見て、絵里はくすくすと笑った。
9 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:28
屋上は3人以外は誰もおらず、ここは言うなれば3人だけの秘密の場所だった。
昼休みはいつもここで弁当を食べて、雑談を交わして、というのが日課だ。
見晴らしがよく、グラウンドはおろか、中庭や水飲み場など、すべて見える
ため、3人はよく愛の告白を覗いたりもしていた。

「そういやれいなさぁ、数学の時間、また寝てたよね」
「だって、あんなん受けてたって意味ないじゃん」
「絵里も人のこと言えないよね」
「さゆ、ひどーい」

軽くさゆみにつっこみを入れ、絵里は残りのお弁当を食べ始める。
早々と食べてしまったれいなは、眠そうに伸びをすると立ち上がって下の景色を
眺める。
伸びをしたれいなを見て、猫みたいだと絵里は思った。
気持ちはわからないでもない。
春らしいぽかぽかした気候のせいで、眠くなってしまうのは当たり前だ。
現にさゆみはお弁当を片付けながら欠伸をしている。

「お、やってるやってる。告白」
「誰ー?」
「んー…うちのクラスの奴だ」
「クラスの奴じゃわかんないよ」
「んな難しいこと言わないでよ。自分で見に来て」
10 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:29
口元を隠しながらまた小さく欠伸をするさゆみ。
絵里はようやっと食べ終わったお弁当を片付けながら、れいなの隣に急ぐ。
目を細めてその様子を見遣ると、クラスの誰か確認することが出来た。

「うちのクラスの山本さんだ」
「バレー部の?」
「うん」
「ふーん」

あまり話したことのなかった子だった為か、それきりさゆみは興味を失くしてしまった
ようだった。眠そうに寝転がったさゆみも、どこか猫みたいだった。
こうして見ると、普段は適当に「可愛い可愛い」と言ってやっているが、やっぱり
本当に可愛いんだなと思う。
ああ、やばい。こんなこと考えてたらまた劣等感に襲われる。
11 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:29
がちゃがちゃ、とドアノブを回す音がする。
「あれ、開いてんじゃーん」とか「誰かいんじゃない?」などという声が聞こえて、
慌ててさゆみは立ち上がった。

「おー。久しぶりの屋上ー」
「あんま変わってねーなぁ」

入ってきたのは、どうやら高校生らしい少女3人だった。
髪の長い、ちょっと魚っぽい人。
綺麗なんだけれど、どこか男っぽい人。
肩までの茶色い髪に、少し軽ヤンを思わせる――れいなも少し軽ヤンっぽい――人。
その3人組は絵里たちに気づいているのかいないのか、思い思いに変わっていない
屋上の感想を述べている。
意を決して3人に話しかけたのはれいなだった。

「あの――高校生なんですか?」

それを尋ねた直後、れいなはしまった、という表情を浮かべる。
そんなこと、聞かないでもわかる。3人は地元の高校の制服を着ているのだから。

「あー。うん、そう。うちら、高校2年生」

ボーイッシュな感じの人が愛想よく答える。
その様子を見て、れいなはもちろん、絵里とさゆみも安心した様子で笑った。
12 名前:屋上からの景色 投稿日:2004/08/09(月) 18:30
すると今度は、階段を上ってくる足音が聞こえる。
覚えがあるのか、その3人組は表情を変えた。

「やばいやばい!」
「また圭ちゃんかぁ?ったく、口うるさいのは治んないのな」
「よっすぃ、怒られるよ。先生、地獄耳だったじゃん」

軽ヤンっぽい人が嗜める。
その足音はどんどん近づいてきて、何故か絵里たちまで悪いことをしているような
気分になっていやだった。
そんな気持ちを知ってか知らずか、バン!という音がして、屋上のドアはいきおいよく
開いた。

「あんたたち、何やってんの!さっさと学校行きなさい!」

そこに立っている見慣れた姿に、絵里たち3人は安堵する。
その姿は、担任で国語担当の保田圭以外の何者でもなかった。
13 名前: 投稿日:2004/08/09(月) 18:32
更新終了です。
あっちのと同時進行ですんで、速やかな更新は無理かも。
マイペース更新ですが、よろしくお願いします。
14 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/09(月) 19:55
新スレおめ&乙デス。
こっちはだいぶ雰囲気違いますが
これからの展開が楽しみですw
両立は大変でしょうが頑張ってください。
15 名前:我道 投稿日:2004/08/11(水) 15:56
新スレおめでとうございます。そして、更新お疲れ様です。
此方の雰囲気もいいですねぇ。(w
なんとなく、ほんわかしてるって言うのでしょうか。
両立は大変だと思いますが、無理をせずに頑張ってください。
16 名前: 投稿日:2004/08/27(金) 21:19
更新ではないです…すいません…orz

えー…むこうのスレでも報告しましたが、一応ここでも。
諸事情(テスト)により、9月の中頃まで更新を控えさせていただきます。
このテストを逃すとちょっと危険なので。。。
テストが終わればひょっこりこっそり戻ってきます。
そのまま放置にはならないです。

それでは、次回は大量更新(?)とともにお会いしましょう。。。

Converted by dat2html.pl v0.2