メテオストライク
- 1 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:15
- 元ネタありです。
付き合ってくださる方、いましたらどうぞ。
- 2 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:16
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「ねえ、亜弥ちゃん」
西日が差し込んで、窓ガラスは四方に光をまき散らす。
ベッドの上に乱雑におかれた服をふまないように、美貴は横になった。
「ねえってばあ。なんだっていいよ、服なんて」
「よくない。せっかくのみきたんとのお出かけなんだから」
「お出かけって。ただご飯食べにいくだけじゃん」
彼女のそんな言葉はお構いなしに、亜弥は服選びを続ける。
美貴は、鏡から反射してくるオレンジ色がうざったくて、体を反対側に向けた。
- 3 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:17
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「それにさ、焼肉だよ。焼肉。匂いついちゃうじゃん」
「匂いなんてすぐ消えるよ。みきたんと思い出だっていつかは消えちゃうんだよ。
だから今を大切にしようって思えるんだよ」
「はいはい。今度はなに読んで影響受けたか知んないけどさ。それと服とは関係ないじゃん」
それに対する返答はなかった。
美貴もそれ以上何も言おうとしないから、宙ぶらりんな沈黙が流れる。
結局彼女が「よし、完璧」と鏡の前で一回転する頃には、陽はとっくに沈んでいた。
- 4 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:17
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「じゃあ、しゅっぱーつ」
亜弥が威勢よく玄関から飛び出す。
「え?ちょっと、服片付けないの?ねえ、亜弥ちゃん?」
またも返答はない。
部屋には美貴のため息だけがとり残された。
- 5 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:18
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「あー、おいしかった」
店から出ると、美貴はさっきとはうって変わって軽い足取りになっていた。
「すごいね、みきたん」
こちらはというと、逆にどこかテンションが低い。
「え?なにが?あたしそんなに量、食べたっけ?」
「いや、量とかじゃなくて。勢いというかなんというか。ちょっと怖かった」
「なんじゃそりゃ」
「みきたんの『たん』は、タン塩の『たん』だね」
「んな」
亜弥は言いたいことだけ言うと、店の前から続く小さな路地を歩き出した。
納得のいかない美貴も、しかたなく後に続く。
- 6 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:18
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「亜弥ちゃん」
美貴が話しかけようとすると、亜弥はいきなり足を止めた。別にそこに何があるわけでもない。
そして、なんの脈略もなく空を仰いだ。
彼女を見ていた美貴も特に何も考えず、つられて夜空を見上げる。
やけに星の多い夜だ。
満天の星空は、これでもかというくらい輝きを放っていた。
「すごいね、星」
「うん。なんか落ちてきそう」
その表現は、幼稚なんだけど的を獲ていて、美貴はクスリと笑った。
それを知ってか知らずか、亜弥は少しだけ居心地が悪くなったように視線を元に戻した。
- 7 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:19
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「どっか寄ってこうか」
なおも星を見上げながら、何気なく美貴が切り出す。
「うん」
「よーし、じゃあ、お店が閉まっちゃうまで買い物ツアーしちゃうか」
「うーん」
二人の空気が一気に上昇する。
と、その時だった。
一瞬何かが光った。
その光は瞬く間に目の前を覆った。
美貴は何が起こったのかわからなかった。
世界が真っ白になる。
次の瞬間、目に飛び込んできたのは、自分に倒れこんでくる亜弥だった。
「もう、亜弥ちゃん?」
雷かなんかだろうと思った。そして亜弥はこわくなって抱きついてきたんだろうと。
そんな亜弥を起こそうとすると、頭から赤い液が噴き出した。
それはピューッという形容詞がぴったりなくらいに飛び出した。
それが血だとわかるまでには数秒かかった。
「え、えー!?」
- 8 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:20
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白い天井。
シーツも壁もカーテンも花瓶まで白い。
そしてその花瓶には小さな花達が、いかにもお大事にという感じで飾られている。
すぐに病院だとわかった。
けれど、どうして病院にいるのかがわかるまでには多少の時間を要した。
- 9 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:20
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亜弥がとりあえずベッドから出ようと起き上がろうとしていると、部屋のドアが勢いよく開いた。
「お、目覚めてる」
扉の先に立っていたのは美貴で、さほど驚いた様子もなく亜弥に話しかける。
亜弥のほうは、花が挿されている花瓶があまりに美貴に似合っていなくてふき出しそうになる。
この時、亜弥は自分の身に起こった衝撃の事実を知る由もなかった。
- 10 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:21
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「亜弥ちゃん、驚かないで聞いてね」
「うん」
「亜弥ちゃんの頭にね、隕石が刺さっちゃったの」
「はぁ?」
「・・・・・・・」
「そんなばかなー。なーにいってんの」
「・・・・・・・」
「もう。みきたんたら…」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「えー!!」
衝撃の事実は10分もしないうちに語られた。
そして品川庄司もびっくりのノリツッコミによって理解されたのであった。
- 11 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:21
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隕石と呼ばれた石は、確かに亜弥の頭に刺さっている。
それも半分くらいが見える状況で残っている。
まるで角が生えたように、奇妙な物体がそこにはあった。
「死んじゃうの?」
パニックがひと段落して、少し冷静になった亜弥は問いかけた。
「命に別状はないって。それどころか奇跡的にうまい具合で刺さってて、体になんの異常もみられないんだって」
さらに美貴は続ける。
「しかもあまりにうまい具合に刺さってるから、手術で隕石を取るのは不可能なんだって」
- 12 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:22
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美貴の説明から少しの間があって、亜弥は体を彼女のほうに向けた。
「みきたん、なんか楽しそう」
「え?」
「なんかねぇ、おもしろがってる」
「そんなことないよー」
「嘘だね。これ見て『節分のときは鬼の役で決定だね』とか思ってんでしょー」
「いや、そこまでは」
「ほら、少しは思ってたんじゃん。ひどいよー。こっちはどうやって隠そうか必死で考えてんのに」
「わかった、わかったから。その隕石を隠せる帽子買ってきたげるから。ね?」
「かわいいやつ」
「え?」
「この石隠せるだけじゃなくて、かわいさもちゃんと考えたやつ」
「もちろん、もちろんじゃん」
「絶対だよ」
隕石の研究者たちで騒然となっていた。隕石が頭に当たった少女について。
医学界ではさらに騒然となっていた。隕石が頭に刺さったままなんともない少女について。
当の本人たちが帽子選びに没頭しているとも知らずに。
- 13 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:22
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水たまりを避けようと、小さくジャンプしながら歩く。
それが不規則なリズムのステップみたいで、美貴は少し楽しくなった。
そんな彼女とは対照的に、亜弥は帽子を深く被って水たまりのない道路の端を歩いていた。
帽子の影となって窺い知ることはできないが、その目は美貴を睨んでいるように思えた。
- 14 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:22
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美貴が少しだけ頬をゆるませて、亜弥のほうを向く。
すると、今度は明らかに彼女は美貴を睨んでいた。
「しょうがないよ、亜弥ちゃん」
いくら帽子で隠したところで、亜弥はただの生徒。
教師たちは、授業が始まれば帽子を脱げと言うに決まっている。
「だって。そうじゃないもん」
しかも亜弥が学校に行く前から、すでに噂は広がっていて、みんな隕石のことを知っていた。
もちろん当たっただけではなくて、刺さったままだということも。
- 15 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:23
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「もういいかげん機嫌直してさ。ね?」
「初めから怒ってなんかいません」
こんな時が一番怒っているのだということを彼女は充分理解している。
「ねえ、ってば。亜弥ちゃん」
不幸とは続くものだ。
会話に夢中になっている美貴。
特に彼女は、亜弥の機嫌を直そうとしていて、不用意に交差点に出てしまった。
「あぶない」
亜弥の声は、トラックのけたたましいブレーキ音でかき消される。
- 16 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:23
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それは考えたことではなかった。
咄嗟に体が反応した。
亜弥は美貴を守ろうと飛び出した。
両手を体の前に翳した。
トラックが亜弥に当たろうという瞬間、その手が光った。
そして手に触れた瞬間、トラックは止まった。
重力や力や慣性の法則なんかを飛び越えて、トラックは止まった。
ポカーン。あまりに幼稚だが、そんな表現がしっくりくる現在の状況。
ただただ亜弥の頭の隕石だけがと光っていた。
- 17 名前:流氷 投稿日:2004/08/15(日) 02:25
- こんな感じです。
なんでもいいので書き込んでもらえると嬉しいです。
では、また。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 05:48
- 元ネタはモロにアレですね。どう引き伸ばすのか・・
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/15(日) 14:33
- これの元ネタってるろうに剣〇書いてた人の読み切りですよね? 違ってたらごめんなさい。更新楽しみにしています…。
- 20 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/16(月) 09:15
- 作者さん、始めまして。結構、キツイ所にチャレンジしますね〜。
期待してますんで、頑張ってください。
>19
当たっているから、大丈夫ですよ。
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/17(火) 21:31
- 元ネタとはだいぶ雰囲気がちがうみたいですね。
文章きれいだし、会話がナチュラルでいいです。続きを楽しみにしています。
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