MM。BR
- 1 名前:優気 投稿日:2004/08/15(日) 17:42
- 優気といいます。
少しずつ書いてきたモーニング娘。のBR小説です。
一応主人公は、自分が推してる紺野になってます。
もちろんBRなのでメンバー死んでいってしまいますので、
好きなメンバーが殺されちゃうのとかそういう系がダメな方はご遠慮下さい。
1年前から書き始めたので、
設定は2003年のままで、モーニング娘。のメンバーもまだ15人の設定です。
改訂したい部分も多々あるので、更新遅れたりもすると思いますが悪しからず。
初めて書き込みするので不慣れな部分もありますが、
どうぞよろしくおねがいします。
- 2 名前:第一部 試合開始 投稿日:2004/08/15(日) 17:55
-
- 3 名前:B1 投稿日:2004/08/15(日) 17:57
- いつもと同じ東京。
いつもと同じような人の声。
いつものように都会を行き交う人たち。
そして、いつもと同じように仕事場に向かうモーニング娘。。
その日15人は、意味不明の仕事をすることになっていた。
メンバーの誰もが意図がよくみえていかなった。
「また岡女なんじゃないの〜?」
移動の車内で、ぼやくのは矢口真里。岡女のハメの手には敏感なのだ。
「6期も入ったし、撮り直しってのもおかしくないと言えばおかしくないけど・・なんで今さら?」
と首を傾げたのは安倍なつみだ。
「・・絶対へんだよ。見え透きすぎでなんか不気味じゃない?」
と言うリーダー・飯田圭織に付け足すように、石川梨華も意見を述べた。
「そうですよ!岡女だったとして、何でこの衣装着るんですか!?」
今日の15人は、皆カーキ色のつなぎに、黒いブーツ・・・そう。
本日のお仕事は、ここにいるぜぇ!のPVの再収録らしい。真里は纏った衣装を見渡した。
「ドッキリにしては訳わかんないよね。嘘の演出も、この衣装も。」
「なんでまたここにいるぜぇ!の再撮影なんでしょう・・・。」
ちょっとカワイ子ぶった声で梨華が言った。が、誰もそこにはつっこまなかった。
「・・こりゃ岡女じゃないよね、絶対。」
圭織の一言に、三人はうなずいた。そう思う理由は他にもあった。
いつもなら、車二台でスタジオまで移動するものが、
今日は何故か一台の、しかも微妙に長距離バスで、15人がスッポリ収まっていた。
しかも、スタッフ・マネージャーが誰1人として乗っていない。
運転手と自分たち15人だけだ。
「何なんだろう・・・」
後部座席の大人組の会話は、沈黙となった。
- 4 名前:B1 投稿日:2004/08/15(日) 18:01
- 二人がけの席では、ヤングチームがいつもの様にワイワイ騒いでいた。
「あいぼ〜んそれちょうだ〜い!」
世間でも有名な辻希美・加護亜依コンビは、お菓子を食い荒らしていた。
その二人の後ろの席から身を乗り出すのは、吉澤ひとみ。
「今日プロモ撮り直すらしいよ?」
「は?なんでまた撮んの?」
ひとみはお菓子を鷲掴みして、口に放り込んだ。
「6期のパートできたんじゃないの?」
「ライブ用のレッスンしかしてないよ。」
ひとみの隣に座っている藤本美貴が割って入った。
「じゃあなんで・・・」
通路を挟んだ横の席では、6期の田中れいな、道重さゆみ、亀井絵里の三人が
見たことしか無かった衣装を今自分たちが着ていることに感嘆している様子だった。
衣装の各部を見回しては、笑みをこぼしている。
三人も美貴と同様、ライブ用のレッスンしか受けていなかった。
- 5 名前:B1 投稿日:2004/08/15(日) 18:02
-
「パート増えたんじゃん?サビのソロパート。」
「それあるの、二人だけだったもんね。」
5期の高橋愛・小川麻琴・新垣里沙も、やはり今日の仕事の話をしていた。
皆疑問に思っている、今日の仕事。
「でもなんで今更作り直すんだろうね?」
「だよね〜」
今までに来たこともないような建物が見えてきた。
あれがテレビ局なのだろうか・・どうやらそうらしい。
座席に膝をついて後ろを向いていた麻琴はブレーキの反動でよろけた。
その反動に揺らされながらも、紺野あさ美は車窓を見たままボーっとしていた。
見たことのない場所。一年前発売の曲のPV撮り直し?そんな見え透いた嘘が岡女のドッキリ作戦?
・・今までにない何か変な予感がしてならない。
「あさ美ちゃん。着いたよ。」
窓の外を向いたまま寝ているのかと思った麻琴は、あさ美に声をかけた。
「う、うん。」
我に戻ったように、あさ美は振り返った。
「あれ、起きてたんだ。どうかしたの?」
「何でもないよ。」
あさ美は足下に置いたカバンを持って、車を降りた。
バスの前で光る、緑色のデジタル時計―――――時は、2003年10月18日。15時02分。
- 6 名前:B1 投稿日:2004/08/15(日) 18:05
- 車を降りると、そこには1人のADが立っていた。
「荷物を持って、楽屋へ移動してください。」
周りには他にスタッフと思われる人は誰1人いない。
むしろその場にはモーニング娘。とそのADの16人しかいないようにもとれた。
「楽屋は通路を左にずっと行ったところにありますから。」
ADは手をいっぱいに広げて15人を誘導した。
「ねぇ、やっぱり岡女じゃない?」
「岡女ってみんな一斉に移動ってあったっけ?」
大所帯の先頭を歩く大人三人がそんな疑問をぶつけ合っていた。
「でも、この雰囲気・・・・」
なつみはドアを開けた――――
「ほら!やっぱりぃ〜」
真里は苦笑いしながら、ドアのサン部分にもたれかかった。
「え〜本当に岡女なの〜?」
三人に続いて、他のメンバーもぞろぞろと岡女の教室に入ってきた。
しかし、カメラはセットしてあるし、いつもと同じセット。
なんだ変わりはないのに、教卓に岡村先生、カメラマンやスタッフの姿はない。
それでも過去の流れ通り、一応皆自分の席に座った。
「荷物持って来ちゃったけど、いいのかな。」
あさ美は後ろの席の愛に話しかけた。
「荷物チェックとかしたりして。」
「まさか。」
「あっ!」
「どうしたの?」
「ケータイ忘れた・・・最悪。」
愛は苦笑いしながらカバンに顔をうずめた。
「先生遅くない??」
「眠たくなってきたんだけど。」
「え?寝てオッケー??」
「寝ちゃおっか!?」
亜依と希美は、机に伏せて睡眠体勢に入った。二人だけではない。周りの皆も眠そうにしている。
「あれ・・・・なんか頭痛くなってきたよ。」
眠そうな声で真里が言った。
時間は刻々と過ぎ、1人、また1人と深い深い眠りに落ちていった。
【残り15人。】
- 7 名前:意味不明 投稿日:2004/08/15(日) 22:15
- ・・・・・
- 8 名前:優気 投稿日:2004/08/16(月) 18:59
- >7さん
レスどうもありがとうございます。
どの辺りがわからなかったのか教えて頂けるとうれしいです。
しかし、感性にお合いしなかったのなら、読まないことをお勧めします。
好き嫌いが激しいジャンルかと思われるので。
判断はお任せしますが、よろしくおねがいします。
- 9 名前:B2 投稿日:2004/08/16(月) 19:39
- 紺野あさ美は目を覚ました。
顔をあげようとすると、激しい頭痛が襲った。
しばらくして目眩のようなものがおさまると、ゆっくりと頭を抱えて起きあがった。
(見たこともないような場所に着いたけど、
確かに岡女のスタジオに連れてこられたはず・・・。)
何があったのだろう・・・催眠ガスだったのか?・・・だったのだろう。
まだ周りのメンバーは寝ているようだ。
セットは何の変哲もなかった。
変わって・・いな・・・い?むかって左側を向いた瞬間、それは違うとわかった。
―――カメラが一台もない。
あるのは、冷たそうな白い壁と何か変な板で塞がれた窓だけだった。
スタジオではない。・・・じゃあここどこだ?
辺りを見回していると、黒板の上の時計が目に入った。
時間は・・・9時45分!?・・・夜か…それとももう朝?寝ていたせいで時間の感覚がない。
うつむいて寝ていたせいか、肩が少し重かった。
しかも、まだどこか息苦しい。首を回そうとすると、何かヒヤッとした物が食い込んだ。
この手触りは鉄だろう。一体何・・・?
- 10 名前:B2 投稿日:2004/08/16(月) 19:41
-
「こ・・紺野?」
キョロキョロと動くあさ美に気がついたようで、
斜め後ろの席にいた石川梨華が、無い元気を振り絞って声を出した。
「石川さん!」
少し安心したようにあさ美はほっと胸をなで下ろした。
「これ・・なんなの?」
「さぁ・・・・なんか、スタジオじゃないっぽいですよね。」
その一言に、梨華は辺りを見回した。
梨華もやはりあさ美と同様、壁と窓の存在を知ると、
ここは他の別の場所だと断定できた。
「なんで私たちこんな所いるの?」
あさ美は黙ったまま首を傾けた。
「ねぇ・・その首輪何?」
「え?」
さっきまで気にしていた首の得体の知れない物に、また手を伸ばしてみた。
自分では見えないが、どうやら首輪らしい。金属製の。
「石川さんも付いてますよ。」
梨華も首に恐る恐る手を伸ばした。やはり、ヒヤッとした。
二人は手を首にあてたまま、寝ている他のメンバーにも目をやった。
みんなの首に、銀色に光る物が巻き付いていた。
「これきつくて取れないんだけど。」
間に指を入れようと試みるも、梨華はあえなく断念した。
あさ美は後ろに身体を向けていたため、自分の後ろの席の愛が目に入った。
どこかわからない場所。
得体の知れない首輪。
・・すべてが不気味でしょうがない。
- 11 名前:B2 投稿日:2004/08/16(月) 19:43
-
「ねぇ愛ちゃん!起きて・・・!」
不安になったあさ美は、少しでも多くの人に起きていて欲しかった。
梨華も近くの席のメンバーを起こし始める。
「吉澤さん!起きてください!」
「起きろ〜!まめ起きろ〜!」
こんな行動が連鎖していって、しばらくするとメンバー全員が(半開きの人も居たが)目を覚ました。
繰り返される疑問は・・
「ここどこ?」
「(首を触りながら)これ何?」
・・そしてもう1つ。
前回の岡女の教室での撮影で最後尾の席に座っていた道重さゆみがふと気がつく。
「ねぇねぇれいな。」
「何?さゆ。」
「この机、誰の・・・?」
「あぁあっっ!!!」
14の視線が吉澤ひとみに注がれる。
「うちのカバン無いんだけど!!」
「あっ!あたしのもないっ!」
皆が足下や机の横を確認するが、荷物は何もない。
あるものといえば、みんな机の上にケータイは残ってるみたいだけど・・・・
「ここ圏外だよ!!」
その発言に、皆がケータイの表示を確認しだした。
電波の届かないところらしい・・・ここは山奥か?それとも思い切り沖合か?
とその時、前のドアがガラガラと開いた。
「つんくさん!?」
皆が一斉に黒板の方をみた。
・・・ありゃ、明らかにプロデューサーのつんくだ。
「ほら〜静かにせぇ〜!!」
教卓の先生気取りのプロデューサーは騒然としていたメンバーを注目させた。
「どうなってだこりゃ・・・」
なつみは小声でつぶやいた。
- 12 名前:B2 投稿日:2004/08/16(月) 19:45
-
「つんくさん!これどういうことですか?」
圭織が立ち上がった。
「何するんです?こんな窓の外も見えないようなところで。」
真里も机をバンと叩いた。
「ほらほら。静かにせぇ。落ち着け。」
ちょっと投げやりにつんくは座るように手で指示した。
「とりあえず、今回の仕事の説明をする前に。もう1人メンバーに加わって貰う。」
そう言うと、ドアを開けて廊下に手招きをした。
「ごっちん!!」
亜依が黄色い声をあげた。後藤真希が入ってきた。
真希は歌手活動を停止していた。
そして理由がわからないだけでなく、メールも電話も通じなく消息不明だった。
まぁ生きてることくらいはわかっていたが・・・
とにかくメンバーは皆真希を見るのは一年ぶりに近かった。
そして、これは確実に岡女の撮影ではないと誰もが悟った。
さゆみの後ろの席に静かに座る真希。
そう。さっきまで空いていた席は、真希の為のものだったのだ。
「ごっつぁんも呼ばれたの?」
「・・・ごっちん?」
何を聞かれても真希は答えない。
無表情で、何も考えていない・・考えられないような目をしていた。
「よ〜く聞けよ。」
15の視線はまた教卓に戻された。その奇妙に微笑混じりな言い方が不気味だった。
教室が嫌にしーんと静まりかえる。
「ここに集まってもらったのは他でもない。」
ズボンのポケットに手を突っ込んだプロデューサーは、窓の方までゆっくりと足を運んだ。
その行動を睨みつけるように真希は見ていた。
もちろん板で閉ざされていて外が見えるはずはないが、何か遠くの物を見るように目を細めた。
そして一息して明かした。
「おまえらには殺し合いをしてもらう。」
その場の空気が、一瞬にして重苦しい空気に変わった。
【残り15+1=16人。】
- 13 名前:優気 投稿日:2004/08/16(月) 19:46
- まとめて数話分更新したいと思います。
- 14 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:47
-
皆何が何なのか飲み込みがつかなかった。
昨日まで信頼できたプロデューサーがたった今悪魔と化した。
「なんや〜反応悪いなぁ。いつもなら『え〜』とかイヤそうに言うてるやん。」
あざ笑いながらつんくは教卓の前に戻ってきた。
「今日はえらい解釈早いな。」
「ふざけないでください!」
そう言ってまた机をバンと叩いた真里。力強い音がした。
「何なんですか?殺し合いって。解釈早いどころじゃないです。
みんな訳わかんないだけです!そんな事しませんよ!!」
口をとがらせ、ツンとした表情で真里は”悪魔”を睨みつけた。
「せぇへんなら・・無理矢理させる。」
さっきまでへらへらしていたその表情が一瞬にして鋭く、真里をにらみ返した。
あんなつんくの顔は見たことがない。真里はカタンと腰を下ろした。
震えたため息をゆっくりと吐いた。
「殺せばいいだけや。」
不気味な笑みを浮かべる。
ちょっと間をおいて、でも躊躇したわけではなく、説明は続いた。
- 15 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:49
-
「おまえらの誰か1人になるまで終わらないからな。
つまり、15人の息の音が止まったら優勝者はおうちに帰れるってことや。」
楽しそうな口調で話すつんくを見て、何人(ほぼ全員)が身震いをした。
あまりの怖さに小さなうなり声がしたと思うと、誰か(複数名)がグスンと鼻をすすった。
「こんなの変です!おかしいです!」
なつみは力強いがガタガタの声で言った。
たった一言だがかなりの勇気を要したことだろう・・と誰もが思った。
「それにどうしてこんな事しなきゃいけないんですか?
私たち、映画の主人公でも自衛隊員でもないんですよ!!」
プロデューサーはなつみの発言をかき消すように、右手の人差し指をつきだしてぶんぶんと振った。
「おまえらは、テレビ番組やらの企画で、学力テストやらスポーツテストやら大運動会・・・
いろいろ測定してきた。いいや、測定”されて”きた。
そのデータには順位まで打ち出されていた。
・・しかしそれは、その時だけで終わってしまった。
それこそ、何の役にも立たないただの娯楽的な物になってしまったんや。」
一息ついてから話を続けた。
「だから今回これを企画した。その測定されたデータが無駄にならないようなな。
学力、持久力、瞬発力、生き抜く方法・・・すべてを駆使する必要のあるこの企画を。
しかし今回は中学3年の男女ではなく・・・ランダムな年齢の女だけでだが。」
悪戯な口調でプロデューサーは説明しおえると、いつの間に教卓の脇にあったパイプ椅子に腰掛けた。
何を言っているのかさっぱりわからない。
15の表情はガチガチに強ばった。(1は例外、無表情だった。)
例えわかっても理解したくなかった。皆同じに違いない。
辻希美は、加護亜依の様子が気になり、ふと右隣に目をやった。
亜依は俯いていた。目の辺りから何か光る物が滴り落ちている。
そして、自分の頬にもその光る物の筋がうっすら伝っていることに気づく。
(あいぼん・・・・)
- 16 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:50
-
「ちょっと待ってください!」
圭織がリーダーらしく挙手した。
「なんや?」
椅子に座ったプロデューサーは腕を組んだ。
「私たちは、こんな殺し合いの為に今まで番組収録の仕事をしてきた訳ではありません。
生き残るしか勝つ方法がないっておかしいです。
もし為すすべがそれしかないのなら、私たちは16人で生き残ります。」
もっともな意見だ。そうその通り。自分たちに殺し合うなどできるはずがない。
今まで毎日のように顔を合わせ、共に過ごしたかけがえのない仲間なのだから。
つんくが今日見てきた中で一番悪い目つきで圭織を睨みつけた。
「黙れ。」
低い声でそう言った。その声は確実にリーダーの耳にも入ったはずだ。
しかしそれに怯むこともなく、圭織は主張を続けた。
「私たちは・・・・ずっと、一緒の仲間です。信頼だって並以上にあると信じています。
皆大切な仲間なんです!」
「黙れゆうてるやろ。」
圭織の表情は徐々に真剣になり物を訴えた。
教卓の陰から何かを手に取っていじるような音がした。
「殺し合いなんてできるはずがありません!!」
「黙れぇ!!!」
「私たちは、全員で――――――
一瞬その場の空気が完全に停止した。
- 17 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:55
- 突然の爆音に、皆身をすくめ耳を塞ぎ目を閉じていた。
ふと我に戻り辺りを見渡す。
つんくは椅子から立ち上がった姿勢で何かを構えていた・・・・銃だ。
・・・まさか・・・
「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
そこは、叫び声が木霊する地獄と化した。
教室の外に出ようとする者や、目を瞑ってその場にしゃがみ込む者もいた。
さっきまで座っていた机の脇に圭織が倒れていた。
心臓を一発・・・一瞬の出来事だった。
廊下側の一番前の席に座っていた圭織の隣のあさ美、斜め後ろの愛、真後ろの梨華は、
飛び散った血をもろに浴びていた。
カーキ色の衣装の軍服に赤い斑点が無数に描かれ、
咄嗟に腕でカバーしたり他の方向に背けたはずの顔にも、霧状の細かい斑点が付着した。
三人はあまりの恐怖に立ち上がって逃げるどころか、叫ぶことすらできないでいた。
「おら座れぇ!!!」
さらにバン!バン!と銃口を天井に向け引き金を引いた。
二回銃声がなり響くと、更に甲高い悲鳴が飛び交ったのが次第に沈黙となり、
恐怖に立ち上がって逃げ出そうとした一同も着席した。
「説明に戻る。一度しか言わない。ちゃんと聞け。」
荒々しくそう言い捨てた。
15人は何が起きているのか飲み込みも付かない不安定な状況で、
説明など聞いている場合ではなかった。
皆を引っ張ってきてくれたリーダーが・・圭織が・・・
早速犠牲になってしまった。
皆黙っていたが、悲しみは怒りへ転じていた。確実に。
- 18 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:56
-
「ちょい入ってきてぇ〜!!」
声のトーンを戻してドアの向こうに叫びかけると、見知らぬ男が二人入ってきた。
二人とも迷彩服を着ていて、とてもごつい体格をしていた。
両手には黒いカバンの様な物を沢山持っている。
「こん中には、何食か分の食糧とか、コンパスとか、地図とか入ってるからな。
武器も入ってる。武器だけはどれに何が入ってるからわからへん。適当なの持ってけ。」
メンバーの表情が更に強ばった。放心状態で無表情の者も居たが・・。
唾を詰まらせたような変な間があったが、説明は続いた。
「六時間に一回の割合で放送入る。1人一枚の地図はなくすなよ。
このデイパックの中に入ってるからな〜。」
そういって、ごつい男二人が持っている黒いカバンをあごで示した。
どうやらあの黒いカバンが”デイパック”らしい。
「適当に決めた立入禁止エリアを発表していく。
ちなみに、全員がこの校舎を出発してから一時間後にここの校舎のあるエリアも
禁止エリアになるからな。その島の地図にでも書き込んでおけよ〜。
ペンも入ってるからな、赤いやつが。」
『赤いやつが。』と付け加えるように言って、ニヤッと奇妙な笑みを見せた。
島?・・・どうやら私たちは海のど真ん中にいるらしい。
”校舎”・・?ということは、ここは本物の学校か?
学校があるということは、無人島ではないみたい。
- 19 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:58
- 「放送後、発表された時間までにその禁止エリアから立ち去らないと、
おまえらの首に付いてるそれ!・・吹っ飛ぶからな。
この首輪、誰がどこにいるかも把握できる優れ物や。」
その言葉で初めて首輪の存在に気がついた者も居た。
気になって、取ろうと引っ張ったり、手を入れようとする者もいた。
(もちろん取れるはずはなかったが。)
「あと!首輪取ろうとしてみぃ。それでも爆発するで。」
注目を仰ぐように声が上がると、首輪にふれていた手が一斉に膝の上に戻ってきた。
その光景を見つめる目は血飢えているようにも見えた。
「ねぇ。」
突然声がした。ひとみだ。
「そういやさぁ、どうしてゴッチンいんの?」
皆の視線がひとみの方を向いた。
「モーニングのメンバーだけだっていいじゃん。何か意味あんの?」
ひとみはこんな状況にも関わらず平然としたしゃべりだ。でも礼儀は知っている。
今までつんくにこんな口調で物を聞いたことはなかった。
こうなったら彼と対等に接するつもりなのだろうか?
かっこいい吉澤さんが、いつみなく頼もしく見える。
「それについてだが・・・」
つんくは不意に真希に目配りした。真希は冷たく睨みつけていた。
「後藤がしばらく(といっても1年間)休養を取っていたのは皆知ってると思うが、
こいつは、前回の殺し合いの優勝者だ。」
真希を見つめる15の表情が、一瞬にして硬くなり青ざめた。
「去年、学校の同じクラスメイト40人近くと殺し合いをした後藤は、
そのショックで口が聞けなくなった。
だから仕事も当然できへんかったんや。今回は、特別ゲストとして参加して貰った。」
教卓に手をかけ、辛そうに(でも演技混じりに)語った。
- 20 名前:B3 投稿日:2004/08/16(月) 19:59
-
「そんな辛い思いをしたゴッチンをまた参加させるんですか?」
怒りでドギマギした口調で、なつみが質問した。
「あぁ・・・・」
答えはもう悪魔の頭の中にはあったらしい。即答だった。
平然と回答するつんくに、なつみは驚き、失望した。
「ひどすぎますよ・・・」
「15人だと少ないやん?それに、1人くらい経験者がいないと、つまらんやろ。」
でかい声をあげて、気が狂ったように笑い出した。
「ふざけないでください!!」
「こらこら・・」
今度はごつい男の1人の腰に装備されていたマシンガンが、ガシャガシャと音を立てた。
「おまえも反論するなら、こいつと同じにするで。
まぁこれ以上人数が減っちゃ困るがな・・・・」
プロデューサーはニヤッと笑みを浮かべ、
長い銃の先であさ美の隣の通路を指した。
そこにはやはり赤い血だまりがあった。
さっきなつみが目をやった時よりも広がっていた。
(圭織・・・)
なつみは心の中でそう叫んだ。見ているのも辛い。
血の鉄臭い匂いが一層増したような気がしてならなかった。
なつみは着席した。
その目は真っ直ぐにプロデューサーを睨み、圭織を哀れみ、一筋涙を流した。
【残り15人。】
- 21 名前:B4 投稿日:2004/08/16(月) 20:38
- 「ささ。そろそろ出発してもらう。
この校舎を出たらそこはもう戦場や。大いに闘ってこい。」
つんくは弾んだ元気な声で叫ぶと、また人差し指をブンブンと振った。
「1人出発したら、三分の間をおいてまた1人出発・・それの繰り返しや。
順番は不公平にならないようにこのクジで決める。」
つんくは紙袋の口の部分を握ったまま持ち上げた。
その袋を振った。袋の中で何かがガサガサと揺れ動く音がした。
きっと紙切れが入っているのだろう。
「こん中の紙には、おまえら16人の名前が書いてある。
それを俺が引く。
名前を呼ばれた者から順にデイパックを持って外へ出ろ。」
よくよく紙袋の中身を振って混ぜ、しばらくして手が止まった。
「じゃあ、一人目引くぞ〜」
ワクワクした面もちでつんくは袋に手をつっこみ、折り畳まれた紙切れを一枚取り出した。
メンバーに緊張が走る。
「最初は・・・・石川梨華!」
梨華の心臓は張り裂けそうに高鳴った。
ゆっくりと立ち上がり、俯いた顔を徐々に上げる。
「よし。こっちこい。」
つんくは紙切れを教卓に置き、手招きした。
「好きなの取ってけ。さっきも言ったが武器は何入ってるかお楽しみの福袋やで。」
立って腕を組んだまま、つんくは楽しそうに笑った。
そんな言葉など耳にも入らず、梨華は適当にデイパックを1つ手にしてた。
その真正面に座っていたあさ美は、
隣から飛んできた赤い液体と、狂っておかしくなったプロデューサーとで尚恐怖がこみ上がった。
(あぁこれが最後の石川さんの姿になるかもしれないんだ・・・)
そう思うと胸が締め付けられる思いだった。
そしてそんなこと考えちゃいけないと自分を叱った。
- 22 名前:B4 投稿日:2004/08/16(月) 20:39
- 教室の15人と前の三人が梨華の背を見送った。
しばらくすると、廊下に走る足音が響いて聞こえた。
プロデューサーは、自分側に立っていたごつい男の服を引っ張り寄せて耳打ちした。
嫌に長い耳打ちだ。
男はうんうんとうなずき、最後に「はい。」と小さく言った。
腕を放されるとその男は窓際に移動し、ベルトに装備されたレシーバーを手にした。
そしてそれを手で覆い隠し、本当に小声で話を始める。
教室内はその小さく響く声だけとなり、待機メンバーには緊張とイライラが走った。
つんくは時計を見た。それにつられて、あさ美も黒板の上の時計を見た。―――10時18分。
(多分夜だ。だってドアの向こうの廊下は自然に真っ暗だったもん。)
そして袋に手を突っ込んで一枚引いた。
少し躊躇したように、開かれた紙切れの文字を見つめていた・・。
「次・・・・後藤。」
ニッと笑って真希に悪戯な視線を送った。
真希は軍服のポケットに両手を突っ込んで、通路をゆっくりと歩いてドアの前まで来た。
「おまえが2番目なんて・・・世の中不平等だよな、まったく。」
嫌みったらしく笑うプロデューサーをギロッと睨んだ。
一度外に出たならもうこの校舎にも戻って来れないのだ。
デイパックを肩に担ぎ、
最後に最も研ぎ澄まされた刃物のような視線を送りつけて、真希は教室を出た。
その後ろ姿を見送るとつんくは教卓の前に戻ってきた。
- 23 名前:B4 投稿日:2004/08/16(月) 20:43
- (真希を除く)最後列・真ん中の席の田中れいなは、左右の同期に目を配っていた。
左隣のさゆみは案の定泣いている。
気が弱いというか、こういう状況を苦手とするのは何となくわかっていた。
(こんな状況を苦手としない奴の方がおかしいが。)
「大丈夫だよ。」
口をそう動かして、でも声には出さず息をもらして。
しかし確実にさゆみにそう言った。
その時だけさゆみは泣くのを辞めて、れいなの顔を見つめた。
右隣の亀井絵里にも目をやった。
強ばった表情で深く俯いていたが、れいなの視線に気がついたようで首がこちらを向いた。
絵里の魂の抜けたような目がれいなを見つめた。
その目は、不安と恐怖に駆られ今にも泣き出しそうだった。
れいなはまた「大丈夫だから。」そう口をパクパク動かして見せた。
しっかりと伝わったのか、絵里は朧気に小さくうなずいた。
- 24 名前:B4 投稿日:2004/08/16(月) 20:43
-
「そこ。なにやってんのや。」
絵里とれいなはビクッと肩をすくめた。
嬉しそう(誰かを撃ちたいよう)に、銃を構えるそぶりをしてみせて、
また自分の手首の腕時計に視線を落とした。
紙袋に手を突っ込んだ。どうやら真希が教室を出てからもう3分経ったらしい。
あっという間だった。(恐怖に一時間くらい待っていたような気分の者も居たが。)
残る13人の表情をマジマジと見つめながら、つんくは次のくじを引いた。
「次!おぉ・・・田中じゃないか。」
くじを引き取って折れた紙を開くと不思議なくらいすぐに指名した。
れいなは威勢良く立ち上がったが、自分の意志に反して足はとても重かった。
「れいな・・・」
霧の彼方から聞こえるようなか細いその声がした。・・さゆみだった。
すかさずさゆみの顔をもう一度見て、絵里の顔も窺った。
二人も視線が上にあるれいなの顔を見つめた。
れいなはどうも進まない足を無理矢理前に突き出し、数分前に真希が通った通路を歩いた。
できることなら、二人の手をひいて一緒に教室を出たかった。
憎きプロデューサーがあんな銃など握りしめていなければそうしていただろう。
適当にデイパックをとり、肩に掛けた。
「せいぜい頑張るんだな。」
れいなの背に手をふるような動作をしてみせた。
それを横目で見ていたのか、れいなも振り返って手をふりかえした。
逆向きにもう一度振り返り教室を見渡して廊下へと出ていった。
「新メンバーの輩にしては大したもんじゃないか・・・」
つんくは、ニッと微笑んだ。
【残り15人。】
- 25 名前:B5 投稿日:2004/08/16(月) 20:47
- 三番目にくじを引かれた田中れいなは、
梨華のように猛スピードで廊下を走ったりはしなかったが、早歩きだった。
銃を構えた迷彩服の男たちが数メートル間隔で廊下に並んで立っているのだ。(それは特別校舎も同じようだった。)
無表情の男達の顔が自分を見ているような気がしてならない。
プロデューサーのように、銃口を向けてくるのだろうか・・・。
さっきあんな事がなければどこか別の教室に隠れることができただろうに。
そんな錯覚に襲われた以上、この校舎に身を潜めるのは難しかった。
(さゆと絵里、待っていたいのに・・・)
自分がさっきまで居た教室が何階なのかもわからないまま、れいなは階段を駆け下りた。
一階にもやはり廊下には男たちが居た。
すくむ足を必死に動かし、昇降口(下駄箱があったのでわかった)を出た。
夜の闇に包まれて薄暗くライトアップされた校庭には誰もいないようだ。
外の方が危険ながらも、校舎にいるよりも安全なような気がした。
- 26 名前:B5 投稿日:2004/08/16(月) 20:50
- どこか二人を待っていられそうな物陰はないだろうか・・・。
校庭一面を見渡すと、校門から向かって左手に大きな立方体を発見した。
それは白くて、青い屋根で、ガレージのような四角い口・・・倉庫だ。
倉庫の大きな口はガッチリとしまっていた。
学校の敷地の角にあり、その周囲は高めのブロック塀になっていたため、
誰かに見つかるようなことはなかった。
れいなは倉庫と塀の狭い間でさゆみと絵里を待つことにした。
この校舎のあるエリアもそのうち禁止エリアになってしまうが、
それはメンバーが皆出発した1時間後。二人の同期を待つのに問題はなかった。
冷たい土の上に腰を下ろした。
あまり動いたわけでもないのに、嫌に息切れしている。
受けとったばかりのデイパックとやら言う黒いカバンを手に取った。
何が入っているのだろう・・・恐る恐るジッパーの口を開けた。
プロデューサーが言っていた、食糧と水、地図、赤いペン、コンパス、懐中電灯、ばんそうこうなども入っていた。
そして武器・・・・ランダムに入ってると”あいつ”は言っていた。
ということは、当たりはずれもあるのだろうか。
デイパックの黒い底の方まで覗きこんだ。
プラスチックのケースに、ドライバーの様な枝の赤いものが入っている・・アイスピックだ。
ケースの蓋を開けて赤い枝を握った。
(使い方にもよるけど・・・まぁまぁかな。)
ケースの中には付属でプラスチックのキャップのようなものが付いていたから、
それをアイスピックの細く鋭い先につけた。
強い風が、れいなの頬を撫でた。
すると、アイスピックを握っていた手がブルっと震えた。
風にあおられて嗅ぎ慣れない匂いが鼻を突いた。
でもさっき教室に漂っていた・・生臭く鉄っぽい・・・・血の匂いだ。
そのことを理解するのにしばらくかかったのがわかった。
れいなは恐る恐る倉庫の陰から校門を見た。
自分の居る位置の延長線上にレンガ造りのそれは見えた。
誰の姿もない。
ケータイの時計表示を見た。―――10月18日。午後10時33分。
(教室の時計と見比べても間に狂いはなかったから、正確な時刻のはずだ。)
- 27 名前:B5 投稿日:2004/08/16(月) 20:53
- 教室を出て、10分近く経っている。
れいなの後に3・4人はこのフィールドに繰り出された計算だ。
誰がいるかわからない。
誰が死んでいるかわからない。誰が裏切るかわからない。
立ち上がってデイパックの紐を肩にかけた。
さっき見つけたアイスピックのキャップをはずすと、その手に一層力が入るのがわかった。
赤い枝をしっかりと握りしめてコンクリートの冷たい壁に背中をべったりくっつけると、
それを伝うようなカニ歩きで校門の近くまで移動した。
ちょうどその時、
校門の脇のフェンス越しに1人の人影が学校の敷地と平行に続くコンクリートの道を駆けていくのを見た。
誰かはわからない。
だがその右肩には、デイパックよりやや大きい黒い物を担いでいた。
間一髪。あと少し早く陰から出ていたら、襲われていたかもしれない。
心の奥底からヒヤリと血の気が引いていくのを感じた。
(今のはあまり深く考えないようにしよう。)
自分にそう言い聞かせた。
- 28 名前:B5 投稿日:2004/08/16(月) 20:54
-
レンガ造りの校門からひょこっと顔をのぞかせた。
誰もいない。
アイスピックを握っている手にすさまじい汗をかいていることに気づく。
それを握り直して、ふぅ〜・・と呼吸を整えた。
真っ暗な空を見上げる。
れいなは、外へ踏み出した。校門の外へ・・・・
「・・・・きゃあっ!!!」
数歩外に出たところで、
れいなはすぐに立ち止まり、口を手で必死に押さえた。
声を押し殺して叫んだ。
校門の真ん前で1人仰向けのまま倒れている。
(さっきは遠くしか気にして見ていなかったから、気づかなかったようだ。)
頭の下には血だまりが広がっている。
しゃがまなくても輪郭からして誰だかわかった・・・・梨華だ。石川梨華だ。
カーキ色の軍服には血が・・・違う。
これはさっき、飯田さんの血が飛び散ったのが着いただけで・・・・
彼女のこめかみに赤い穴がポッカリ空いていた。
銃声は聞こえなかったのに・・血の動きは鈍くゆっくりになっていたが、確かにまだ流れ出していた。
吐き気がしてきた。
おそらく、出発したメンバーの中に本気になっているヤツがいるのだろう。
・・もしや、さっき見た黒い物を手にした人が石川さんを・・?
全身にブルブルと身震いが走り、胸が苦しくなった。
・・ちくしょう・・私たち仲間なんじゃないの?・・・
ようやく事態を飲み込んだれいなは身をすくめた。
足下が一瞬にしてグラッと揺らいだ。
どこか・・どこか逃げられそうな・・隠れられそうな場所は・・・と、
道の脇にあった林が目に飛び込んできた。
林の奥へ。もっと奥へ。あと10m、あと1m、あと1cm奥へ。
ガサガサと草の上を走る音と共に、れいなの姿は森の闇の中へ消えた。
そして、学校の前の林にれいなが駆けていったちょうどその時、
7番目に昇降口から出てきたのは、他の誰でもない、亀井絵里だった。
【残り14人。】
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 22:03
- お初です。
えーと・・・、BRものって、形を変えていろんな人が書いているんですよね。
だから、評価的には結構厳しくなるかも。
配役も現時点では大体想像出来るし。
でも、作品としては今のところは良く出来ていると思うんで。
批判的になってすみません。
- 30 名前:優気 投稿日:2004/08/19(木) 21:08
- >29さん
批判だなんてとんでもないです。
貴重なご意見どうもありがとうございます。
おっしゃるとおり、娘。一人一人のキャラや性格的に、配役は大体決まってきてしまうんですよね。
けど、そのいろんな人のようにというか、負けずにというか…。
自分のBRが書きたい!って気持ちがあるので、書き進めていこうと思います。
どうぞよろしくおねがいいたします。
- 31 名前:習志野権兵(29です) 投稿日:2004/08/19(木) 21:33
- 気を悪くすると思ったので、名無しで書き込ませて貰いました。すみません。
そして、レス有難うございます。
とにかく書き続けることが大切だと思うんで、完結に向けて頑張ってください。
書き続ける限りは、応援させて貰います。
- 32 名前:優気 投稿日:2004/08/19(木) 22:02
- それでは、更新します。
- 33 名前:B6 投稿日:2004/08/19(木) 22:03
- 絵里が出発してもうすぐ3分が経つ。
教室では一定の間隔で(当たり前だが)1人また1人と人数が減っていく。
そして折り返しとなる8番目には、高橋愛のくじが引かれた。
遂に呼ばれた同期の名前・・・。あさ美はブルルと身震いした。
「行かないで!」後ろを向いてそう言いたかった。
同期の里沙も麻琴も寂しそうな目で愛の背中を見ていた。
一歳違いの亜依と希美も同期ではないが、複雑だった。
(今回もまだ、自分じゃないから良かった・・・けど・・・でも・・・・)
AngelHeartsでは一緒に頑張ったし、
年齢と加入した年が近いからか何かといえば
この二人と5期四人の六人はまとまって活動することが多かった。
「ほら高橋。こっち来い。」
つんくがまたさっきと同じ事を言った。当然だがこれで8度目だ。
愛は青ざめた手でデイパックを取った。
そのまま視線をあさ美に向けた。
出発するまであと3分(正確にはあと2分弱だったけど)ある。
しばらく見つめ合っていた。あさ美は精一杯の視線を送った。
愛はそれに応えるようにうんと頷いた。
「3分経ったぞ〜行ってこ〜い!」
発言の勢いでドアを指さした。
愛はドアに目をやり、それをそのまま足下に横たわる変わり果てたリーダーに・・・。
しばらく追悼かのするように目を強く瞑っていた。
開いた愛の目はさっきまでとは違っておどおどしていなかった。
そのまま力強い歩で教室を出ていった。
(愛ちゃん・・・・)
泣き出しそうなのを必死に堪える。
無事で居て。元気で会おうね。絶対だよ…
- 34 名前:B6 投稿日:2004/08/19(木) 22:03
- 教卓では、そんな思いを知る由もないつんくがまたくじを引いていた。
次々に仲間が戦場に旅立たされる。
「あ・・・飯田引いちゃった。」
嫌らしくくじの紙きれをわざとヒラヒラさせみせた。
「飯田はもうとっくに逝ってます!ってか。ゴメンゴメン。引き直します。引き直すぞ〜」
その笑いこけた狂顔を、全員が睨みつけた。
「はいはい。9番目は・・・・辻希美!!」
名前を言う前に、希美は指をさされていた。
亜依は反射的にその表情を窺った。
涙は乾き切っていて・・・・険しい顔だ。
希美はポケットにケータイを入れるふりをして、見えないように手の中に納めた。
通路に立つと、ヨロついたように亜依の机に寄った。
カタンと小さく亜依の机が揺れた。
「おら。」
低い声を発したプロデューサーにいつもの悪戯な笑みを見せると、
頭をかきながら希美は前の教卓まで足を運んだ。
亜依はボーっとデイパックを受けとる希美を見つめていたが、
不意に膝の上に落とされた希美のケータイ・・・。
(・・・あ!)
ボーっとしていてすぐにわからなかったけど…。
もちろん声には出さなかったが心の中でそう言った。表情もは!っと変化した。
けど今開くと「カチッ」と音がなってしまう。
だから今は・・・メッセージが見れない・・・。
視線を膝の上からドアの当たりにもっていった。
希美は自分をずっと見ていたようですぐに目が合う。
お互いに軽くうなずいた。
今までに見たことのない顔色が、少し気にかかったけど・・・。
- 35 名前:B6 投稿日:2004/08/19(木) 22:04
- 希美はドアの奥の闇に姿を消した。つんくは闇に向かってふっと鼻で笑った。
どこかイライラしたようなトーンの声で、つんくは10回目のくじを引いた。
「次は・・・新垣やな。」
ビクッとその身体と2つ結びが揺れた。いつも元気な里沙の顔は真っ青だった。
その顔を皆が心配そうに見つめた。
「つんくさん。」
手を挙げて真里は言った。
「新垣、すごく顔色悪いんですけど、誰か付き添って行ったらダメなんですか?
保健室かどこか・・・・ここ学校なんですよね?」
どこか反抗的な言い回しにも聞こえたが、
里沙の様子を理由に誰かと一緒に出発させようとしたのだった。が。
「それはできん。ルールやからな。無理や。」
何となく目に見えていた答えだった気もした。
真里はガタンと椅子に座ってチッと舌打ちした。そこでまたつんくと互いににらみ合った。
里沙は廊下側の壁と机の間にできた通路を通って前まで来た。
(まめ・・・・)
それでも立ち上がった里沙を、真里は応援するようなまなざしで見ている事しかできなかった。
ぶらんと垂れ下がった腕がゆっくり重そうに持ち上がり、
黒のデイパックを受けとるとドアの前で立ち止まってしまった。
・・・涙を抑えているのだろうか。
息づかいが荒く、肩が小刻みに震えているのがわかる。
恐る恐るつんくの表情を窺ったごつい男(廊下側にいた方)がドアを片手で静かに開けた。
重い足を無理矢理廊下の闇へ運んぶ。
そしてまたごつい男がドアを(ピシャッと)閉めた。
しばらくするとドタンドタンと走る足音が響いて聞こえた。
- 36 名前:B6 投稿日:2004/08/19(木) 22:05
- これで11度目。袋に手を突っ込んだ・・。
「はいはーい!」
ひとみは元気に返事するとスッと立ちあがった。
「勘が鋭いようだなぁ・・・11番目はおまえだ。」
引いた紙をすぐにクシャっと丸めて、苦笑いをみせた。
(だってあんた今こっちチラっと見たじゃん。わかるって、普通。)
「やる気か・・・?」
何かを見込んだようにプロデューサーは尋ねた。
ひとみは言い返しはしなかったが、ふっと笑った。
振り返ると圭織を見下ろしてそのまましゃがみこんだ。
「こりゃひどいや・・・・」
圭織の心臓部にひとつ穴がポッカリ空いている。
その上半身を両手で持ち上げると、袖になま暖かい何か(無論血だが)が染みた。
「変な行動はよせよ。わかってるよな?」
そう言われるのを待っていました!と言った具合に、ひとみは速攻で返事を返した。
「待ってください。まだ時間1分くらいはあるでしょ?
それにちょっとくらい拝ませてよ。リーダーですよ?」
・・・やっぱり吉澤さんだ。
あさ美は何故かホッとした。
「そうだな・・・あと1分半だ。」
プロデューサーは腕時計を見てそう告げた。
ひとみは圭織の顔にひっついた髪を耳にかけ、その魂の抜けた顔を見つめた。
しばらくそのままで、時間が無いと我に返ったのかゾッとしたのか、
静かに、でも少し早いような動きで持ち上げていた身体を床に置いた。
左右にぶらっとしていた両手を身体の前で組んでやった。
「もういいだろ。そろそろ時間だ。」
まだプロデューサーは時計を見ていた。
うんと小さく頷いて立ち上がった。足下のリーダーを見つめながら。
「じゃ。」
手で軽く挨拶してみせると、がらがらと大きな音をたててドアを開けて出ていった。
カツカツとブーツがゆっくりと音を立てていた。
- 37 名前:B6 投稿日:2004/08/19(木) 22:06
- どこまで冷静でいられるというのだ、この状況で・・・。
誰が何処で自分を狙っているのかもわからないというのに。
あさ美は里沙が気がかりでならなかった。
いつもは笑顔満点の里沙だ。あんなに血の気が引いちゃって・・。
六期が加入して先輩になったとはいえ、まだ中学三年生だ。
世間から見ればまだまだ子供だ。恐いのも無理ない。
というより、この状況なら誰も皆怖がっていてもおかしくない。
むしろ怖がっていない方がおかしい…。
「――――あさ美!紺野あさ美!!」
自分の名前が呼ばれていた。ボーっと考え込んでいたようで気づかなかった。
何を考えていたのかも一瞬で忘れた。
あぁ・・・次か。12番目は私か。
そう事態を理解するとあさ美は咄嗟に腰を上げた。
「早くデイパックを持ってけ。」
怖さで動かなかったはずの足が、いとも簡単にあさ美をごつい男達の前まで自分を運んでいった。
(確か武器はランダムに入っているって・・・言ってたっけ。)
一瞬どれを取ろうか迷ったが、何の武器が入っているのかもわからなかったし、
最終的には適当に受けとった。
ドアを開けるとそこはどこまで続いているのか見えない真っ暗な廊下だった。
それがわかった次には、廊下の冷たい空気が頬に触った。
足を一歩踏み出した。一歩出ちゃえばあとはもう恐くない。
一歩、また一歩―――――P10:51、紺野あさ美の戦闘は始まった。
【残り14人。】
- 38 名前:優気 投稿日:2004/08/19(木) 22:11
- 更新途中ですがレス返し。
>31 習志野権兵様
ありがとうございます。すごく嬉しいです^^
脳内にはとりあえずエンディングまでの展開は浮かんでいるので、
まだまだ先長いですが、頑張って書き続けていきたいと思います。
応援よろしくおねがいします。
それでは更新もう1話続きます。
- 39 名前:B7 投稿日:2004/08/19(木) 22:14
- もしあの時席が前後だったら、
隣だったら・・絶対にケータイか何かでメッセージを渡していた。
席が遠すぎたのは不運だった。
学校から北に見える林に入ったあさ美は、里沙を捜している。
(10分くらいしか出発時間がずれてないから、まだこの変にいるはず・・方角が同じだったら。)
校門で倒れる石川さんも拝んできた。死後硬直も始まって硬くなっていた。
―――もちろん哀しみと恐怖があった。
1期前の先輩だ。タンポポでも娘。でもお世話になったお姉さん。
何かと悩みを聞いてもらったり、二人でラジオを仕切ったことも多かった。
そんな明るい(”きしょい”なんて思い起こすべき感情ではない)先輩が、無惨な姿であさ美の前で冷たくなっていたのだから。
しかし―――彼女の死には謎が多かった。
こめかみの傷の周りには、なんか火傷みたいな跡もあった。
いつだか推理物のマンガ(大体見当はつくと思うが)で読んだが、銃傷の周りにやけどがあるのは近くから撃った時。
何故遠くからではなくあえてこんな近くから撃ったのだろう。
石川さんも武器を持っていたかもしれないのに、近づいて危険ではなかったのだろうか。
(彼女の武器は毒薬だったが、デイパックの奥底にあって取り出した形跡はなかった。)
それに、銃で撃たれたならなぜ銃声は全く聞こえなかったのだろう。
普通の銃で石川さんのこめかみに押し付けて引き金を引いたとしても、少しくらいは音を立てるはずだ。
教室に居て聞こえなかっただけなのか。
- 40 名前:B7 投稿日:2004/08/19(木) 22:15
- 林の中で里沙を捜しながらそんなことを推理をしていると、どこからともなくブツッと雑音がした。
ビクッと身震いしたが、それは島内放送だとすぐにわかった。
「は〜い。午後11時きっかり、15人全員が学校を出ました。
殺し合いは完全にスタートしたわけだ!」
11時・・・もうそんな時間か。
10分間”迷走”ならぬ”迷歩”していたのか。
「じゃ、地図を出せ〜。デイパックのポケットに入ってるはずだ。」
あさ美はデイパックを肩にかけていることを思い出す。
ジッパーを勢いよく開け、手探りで地図を引っ張り出した。
地図のすぐ近くにはペンも転がっていた。おそらく赤だ。暗くて見えないけど。
「日付変わった19日の午前0時には・・・あと1時間後だな。
学校のマークがあるやろ。3−Eのエリアが1時間後に立入禁止になる。
12時を過ぎてそのエリアにまだいたなら・・・・わかってるよな?さっき言うたもん。」
最後の一言は、独り言のように聞こえた。
「次の放送は朝の6時や。それ以降はさっき言ったように六時間おきに放送が入る。
そん時に、それまでに死んだ人の名前と、禁止エリアとその時間を発表していくからな。
健闘を祈るで!」
最後に心ない一言を付け加え、またブツッという雑音がして放送は終わった。
もしウトウトしていて八方を禁止エリアに囲まれたら、自分は死を待つのみだ。
・・なんてそんな考えが頭を過ぎった―――まだ大丈夫だ。うん。
- 41 名前:B7 投稿日:2004/08/19(木) 22:15
- ふぅと一息吐いて、黒いデイパックに目をやった。
(そういえば中には何が入ってるんだ?)また手をつっこんで探り始める。
これはペットボトルのデコボコか。じゃあこのビニールは・・・。
この太い棒状のこれは・・・・手にしてみた。何か小さな出っ張りがあった。
それを動かすとピカッと光を放った――懐中電灯だ。
目がくらんで、咄嗟に手でかばった。
スイッチはオンのまま、懐中電灯をカバンの中に押し込んだ。
カバンの中が明るくなって何が入っているのか一目瞭然だった。
ペットボトルが二本。さっきのビニールはパンだ。3つくらい。あとリンゴが1個。
他にも、コンパスとか包帯とかばんそうこうとか。(れいなのと同じような物。当然。)
・・・ん?ペットボトルの向こう側に黒い何かがゆがんで見えた。
ボトルを退かした。もちろん明るかったのでそれが何かすぐにわかった。
手に取り、懐中電灯の逆光に暗く見えるそれを目を凝らして見た。
銃。紛れもない銃だ。
ボーっと眺めていたが、
――銃だよ!これ銃じゃん!――驚いて少し顔から離した。
恐怖がコンコンとこみ上げてきた。なんでこんなの持ってるんだ私!
無意識に安堵していた自分が恥ずかしかった。
(こんなの、使ってたまるか・・)
しかしこのもしかしたら四面楚歌な状況下、そうも言っていられない。
気分が進まないままあさ美はその銃をポケットに忍ばせた。
カバンに入れておいた自前の腕時計を腕に巻いた後、それを見た。11時10分だ。
そして、地面に広げて置いた地図に目を落とした。
学校の位置は3−E。
自分は恐らく、ギリギリその隣のエリア(4−E)にいると思われる。
あと約1時間後にはあの場所も禁止エリアになる。一刻も早く遠のいておきたかった。
それに、里沙はきっとこの近くにいるだろう。
(あの顔色では遠くまで走っていく元気はなさそうだったから。)
手早く荷物をまとめた。
懐中電灯の明かりを切ると、あたりが漆黒の闇に戻った。
ほぉと吐いたため息が白く消えていった。
あさ美は東へ歩き出した。
【残り14人。】
- 42 名前:紺W夢中 投稿日:2004/08/20(金) 10:07
- おもしろいです。更新速度も速いし。
BR物は幾つもあるけど、
それぞれ違った面白さがあるので期待しております
- 43 名前:優気 投稿日:2004/08/20(金) 21:52
- >42 紺W夢中様
ありがとうございます。
次のあたりから、1年前に書いたのを改訂する部分になってしまうので、
改訂含め少しずつ速度がスローになってきてしまうかと自分でも焦っているのですが、
ご期待に添えるよう、少しでも早く更新できるよう努力します。
どうぞよろしくおねがいいたします。
- 44 名前:B8 投稿日:2004/08/20(金) 22:28
-
学校の裏口から出たのは、
15人(正式には16人)の中で8番目に出発した高橋愛ただ一人だった。
無論、正門を出なかったわけだから、梨華の死体(こんな言い方したくないが)も見ていない。
だから当然、死んだのは飯田さん1人だと思いこんでいた。
愛はそのまま裏口を出て、南へ下った茂みの中に身を潜めていた。
まだあまり離れた様子はない。隣のエリアくらいだろう。
デイパックから探しだした武器・・ともいえないが、それを手にしながら今いる茂みまで歩いてきた。
今はそれを眺めていた。
その黒いスクリーンには白っぽいラインが様々な形を描いている。
この大きい四角形は学校を表しているのだとわかった。
そして、学校をクネクネと南下して今はピタリと止まっているこの青い点は自分。
青い点はきっとまだ生きているメンバーなのだろう。
(地図と見比べると、同じような配置であることに気がついたから。)
愛のデイパックに入っていた武器とは言い難い武器とは――探索機だ。
学校を表すその四角い光の線の中には赤い点が光っている。
おそらくこの赤い点(=退場したメンバー)は飯田さんだ。
しかしその赤い点はもう一つあった。
自分がたどった道とは反対側。つまり正門側だ。
そこで誰かが死んでいる・・誰かが・・。
校門を通るべきだったのか通らぬべきだったのか、今更どうしようもないことに迷っていた。
- 45 名前:B8 投稿日:2004/08/20(金) 22:31
- 愛の気持ちをモヤモヤさせているものはもう一つあった。
ケータイを忘れたことだ。
放送は聞いていたが、(『午後11時きっかり、15人全員が学校を出ました。』)ケータイを頼りにしていたから腕時計はあいにく持ち合わせていなかった。
今の時間がわからない。
次の放送は朝の6時・・そう言っていたな、あの狂ったプロデューサーは。
最初の放送からあまり時間は経っていなかったが、今何時なのか無性に知りたかった。
とその時、探索機が自分の居るエリアに動く青い光を写しだした。
その光は愛が隠れている茂みの前の道を歩いてくる。
どんどん近づいてくる。
愛は荷物をたぐり寄せて身をかがめた。
心臓の音が大きく耳元で鳴っているような感覚だ。
腹這いになって茂みの陰から道を覗いた。
――誰かいる!(探索機で見たのだからわかっていたことだが、)
更に心臓の音が大きく速くのがわかった。
そして自分の潜む茂みのほうを向いていることと、その人影が何かを両手で持っていることがわかった。
「誰?動かないで。」
その人影は言った。
カチャッとその手に持っていた物(おそらく武器)が音をたてた。
愛は震える喉から必死に声を絞った。
「私・・私だよ・・・おねがい撃たないで・・。」
腹這いになっていた愛は少し苦しそうにそう言った。
荷物がズリズリガサガサと地面と草をかする音をたてながら、
―――それが誰であろうと、仲間を殺せるような仲間はいないと信じていたから―――
愛は道に立った。
- 46 名前:B8 投稿日:2004/08/20(金) 22:33
-
「まこっちゃん・・・」
安堵感からか、相手がまだ武器を構えているにも関わらずほぉとため息が出た。
その口調で(ちょっと訛っていたのもあるかもしれないが)小川麻琴も、
目の前の人影が愛だとわかったらしい。
麻琴は咄嗟に手に持っていた武器を降ろした。
「愛ちゃん・・」
愛の前には、武器を・・・矢がセットされたボウガンを降ろした右手に持った麻琴が立っていた。
「ごっ・・ごめん。」
愛は何も言わずに首をふった。
二人は道の脇の地面に腰を下ろした。
(整備された道と森の境目、ちょうど少し段になっていた。)
「どうして茂みに誰かいるってわかったの?こんな真っ暗だったのに。」
「だって・・。」
そう言って愛がまだ手にしていた探索機を指さした。
―――これか。探索機の弱い光が見えたんだ。
もしまこっちゃんじゃなかったら、撃たれてたのかもね・・。―――愛は俯いた。
麻琴は視線を自分の横に置いたボウガンに向いた。
「いつも一緒にいるメンバーにも警戒しちゃうんだね。なんか情けないな。」
頭をかきながら苦笑いした。
さっきのことをまだ気にしているらしく、ちょっと元気のない声だった。
「しょうがないよ。私は気にしないから。」
「ありがと。」
その通り。こんな状況下仕方のないこと。
何処で誰が本気になって武器を構えているかわからないのだから。
- 47 名前:B8 投稿日:2004/08/20(金) 22:34
-
少し沈黙になって、愛がまた口を開いた。
「ねぇ」
ふと、さっき探索機が写しだした赤い点を想い出した。
「校門の前で、誰か・・誰か・・死んでた?」
最後の方は殆ど言葉として発音されていなかったが、麻琴には何が聞きたいのかわかった。
「前、通らなかったの?」
コクリと頷いた。
まだ何も知らない愛に、校門の前で犠牲になっているメンバーの姿を見た麻琴。
麻琴は重たい口を開いた。
「石川さんが・・・倒れてた。銃で頭を撃たれたみたい。」
愛は息を詰まらせた。
「嘘・・石川さんが・・・?」
麻琴は口を閉じたまま”うん”と喉の奥で発音した。
もうあのエリアには戻れない。
石川さん・・・最後に一目だけでも・・・。
また心の中でどうしようもない後悔に迷っていた。
「誰が裏切ったんだろう・・」
また沈黙になった。嫌な沈黙だ。
二人とも俯いたまま同じ事を考えていた。
―――仲間を殺せるはずがない・・・・なんて考えは間違えみたいだ。―――
- 48 名前:B8 投稿日:2004/08/20(金) 22:36
- 石川さんの死を引きずったままだと、自分たちもその二の舞になっちゃう。
落ちた気持ちを無理矢理切り替える。
次に進まなきゃいけない、次に・・・・・。
「とりあえず…。」
しばらくして麻琴はオンにした懐中電灯を左手に持って、広げた地図を照らした。
愛もそちらにゆっくりと目をやる。
「学校のあるエリアからもっと離れておこう。禁止エリアになる前に余裕をもって。」
麻琴は声のトーンを変えて言った。(すごく無理矢理な切り替えなのは愛にもわかっていた。)
学校のある3−Eのエリアを指す指が地図を辿っていく。
「それにこの南に民家の集落があるから、何か使えそうな物を取りに行こう。」
ライトの光に映し出された麻琴の顔がこちらを見ている。
地図に落としていた視線は、しばらくしてから麻琴の視線とぶつかり、
「うん。」
大きく頷いた。
そう計画を話す1つ下で同期の麻琴が、自分より大人に頼もしく見えた。
手に持っていた探索機をデイパックのポケットにしまう。
「大丈夫?今から動ける?」
「うん。」
先に立ち上がっている麻琴に手をかり、愛もゆっくりと立ち上がった。
二人は荷物を肩にかけ、麻琴は再びボウガンを手にして歩き出した。
・・と、愛はふとして立ち止まった。そういえば・・
「まこっちゃん。」
「何?」
「今何時?」
麻琴はボウガンに添えていた左手を離して、
デジタルの蛍光色の緑色をピカッと光らせたその手首に視線を降ろした。
「午後11時21分・・だよ。」
「ありがと。」
【残り14人。】
- 49 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/21(土) 07:12
- 更新、お疲れ様です。
自分の都合とかもありますし、更新のぺ―スについては特に気にする事は無いとおもいます。
焦らずに自分のぺ―スで書いてください。
- 50 名前:優気 投稿日:2004/08/21(土) 21:25
- >49 習志野権兵様
レスどうもです。
曜日とかを決めて更新していくのも有りですし、ちょっと考えてみようと思います。
お言葉ありがとうございました。
- 51 名前:B9 投稿日:2004/08/21(土) 21:28
- 先ほどれいなが見た走り去っていく人影の正体は、
6番目に校舎を出た安倍なつみだった。
”右手の黒い物”をなつみは確かに手にしている。それというのはマシンガンだ。
肩からストラップをかけられた黒いマシンガン。
なつみももちろん放送を聞いていた。
全員出たということは、真里ももうこの島のどこかの道を歩いているのだ。
なつみは教室を出る前に伝言を打ったケータイを、後ろの希美を経由し、そのまた後ろの席の真里までまわしてもらった。
希美が確かに真里に渡したなら、確実に真里はその伝言に目を通してはずだ。
そして最北端のここ、展望台のある高台に来てくれるはず。
とにかく今は真里と二人で話し合いたい。
残された真里となつみの二人で、なんとかこの事態を切り抜ける方法を考えたかった。
大人チームが混乱しているメンバーを切り盛りしなきゃ…。
(圭織(と梨華)も大人チームだったが、席が離れていて伝言がまわせなかったし、それにもう話し合いができるはずもない。)
なつみが学校を出たのは午後10時33分。
そして今は11時まわって24分だが、約40分でこの最北端の高台にある展望台に到着したのだ。
遅くても12時には真里もここに到着するだろうと予測できた。
展望台の前にある木製のベンチに腰掛けていたなつみは、夜空を見上げた。
星がきれいだった。東京で見る星よりもそれははっきりと瞬いている。
(いつ誰が狙っているのだろうと警戒はしていたが、)気持を落ち着かせるために詩を考えていた。
絶好の作詩日和な満天の星空だ。
どんな状況でも自然を愛せる気持ちがまだあったことに、なつみは少しホッとした。
♪東京で見る星も ふるさとでの星も同じだと教えてくれた♪
・・・圭ちゃんの歌った「NeverForget」の歌詞が頭を過ぎる。
(戦場で見る星もってか・・何考えてんだ。)
こんな状況じゃなければもっともっとその夜空を堪能できるのに。
なつみは無意識のうちにと唇をかみしめていた。
- 52 名前:B9 投稿日:2004/08/21(土) 21:31
- こちらは希美が渡した伝言を正確に受け取った亜依。
学校を出た亜依は、希美のケータイを握りしめながら学校の周りを一周した。
皆もう学校から遠のいていったのか、デイパックに入っていたナイフを手にして警戒していたが誰にも出くわさなかった。
そして小さい声で亜依を呼ぶ希美との合流に見事成功した。
今回、途中で合流して行動を共にしたのはこの二人が二組目だった。
感嘆している暇もなく、二人はその3−E南東の角から更に南東へ足を進めた。
あくまで学校のエリアでは合流しただけ。
こんな所にいたんじゃ禁止エリアになった瞬間にドカンだ。
しばらく早歩きすると、先導していた希美が足を止めた。
闇を見渡したが(もちろんよく見えないけど)黒い陰はなかった。
風で木の葉がこすれてワサワサと音を立てた。
希美はゆっくりと茂みに腰をおろして、自分の荷物をドサッと置いた。
その光景を見下ろすように亜依は俯いていた。
「よかった・・・ののの事、信じられて・・・」
泣いているようだった。小刻みに震えている。
希美は頭を上げて亜依のその俯いた顔を見つめた。
- 53 名前:B9 投稿日:2004/08/21(土) 21:33
- 「だってさ・・・敵かと思ったんだもん・・・みんな・・・仲間なのに、敵と思っちゃった・・・
一人で行動することになったらどうしようって・・・恐かった・・・」
泣きじゃくりながらも亜依はその気持を素直に吐いた。
「そしたら校門で・・・梨華ちゃんが・・・あんなことするなんて仲間じゃないよ・・・」
希美は立ち上がって亜依の肩をポンと叩いた。
「あいぼん・・・・」
梨華が逝ってしまった悲しみに泣きじゃくる亜依。
そして、それをただ、無言で見つめる希美。
「あのさ、あいぼん・・・・・」
亜依は涙に濡れた目を、希美の肩に押しつけた。
こんな時に、希美の「胸の内」を亜依に告げられるはずはなかった…。
少し困ったように頭をかいて、亜依の肩に手をおき、ゆっくりと座ることを促す。
ヘナヘナと木の横の地面に腰を下ろした亜依。
「疲れたね。寝ようか。」
ノリの悪い低い声でそう言った希美は、木の幹に背を預ける。
亜依は希美の肩にもたれかかって目を閉じた。
冷たい夜風で木々がザワザワと立てる音だけが聞こえる。
その目を開きさえしなければ、「ここは戦場だ」なんて思い出すこともないだろう。
いつもみたいにグッスリ眠っているあいぼん。
その寝顔を眺めながら思う。
こんな平凡な夜も、今日で最後だよ…。
【残り14人。】
- 54 名前:優気 投稿日:2004/08/21(土) 21:38
- なんだか駄文になってきちゃってすみません。
しばらく辻褄合わせや見返しで、次の更新が延びてしまうとおもいます。
よろしくお願いしますm__m
- 55 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/23(月) 02:10
- >54
そうですね。ちょくちょく見直しとかはやった方が良いですね。
後、全然、駄文では無いのでご安心を。
次の更新を楽しみに待ってます。
頑張ってください。
- 56 名前:優気 投稿日:2004/08/23(月) 16:31
- >55 習志野権兵様。
自分、語彙にはかなり疎いので、これから先訳のわからない文章が出てくるかもしれませんが、
その時はどうか頭をフルにお使いください〔笑〕
絶対に失敗したくないし後悔もしたくないので、何度も見直したりしてると時間がかかってしまいます…。
いつも丁寧なレスをありがとうございます。
- 57 名前:優気 投稿日:2004/08/23(月) 16:31
- 実は、
第一部があと一話で終わることに気が付いたので、B10だけ更新しちゃいたいと思います。
第二部から先、B11からはもう暫しお待ちを。
- 58 名前:B10 投稿日:2004/08/23(月) 16:33
- なつみのまわした伝言を、確かに真里は受け取って読んでいた。
ケータイ画面には、
「真北で待ってる。ここが島ならあるはずだから」
…と文字が並べられていた。
真里は学校を出ると、速攻でデイパックから地図を取り出して最北端を確認した。
偶然にもそこは高台の上で、合流地点にはわかりやすい場所だった。
その通りに、最北端・高台の上の展望台を目指して歩を進めていた。
真里が学校を出たのは午後11時きっかり、つまり一番最後だった。
今は歩を進めて一時間近く経っていたが、
ようやく斜面に生える木々の向こうに光を放つ何かが見えてきた。
あれが展望台らしい。
てっぺんは丸く、デッキのような出っ張りがあった。
なっちはあの下で待っているんだ。
真里は小走りになった。
- 59 名前:B10 投稿日:2004/08/23(月) 16:35
- その時、茂みのカサッという音がした。
今のは自分の足音ではないし、風だって吹いていなかった。
真里はビクッと身震いし、すかさずナイフをそちらに向ける。
月明かりに銀色がギラッと反射した。
(落ち着け。落ち着いて・・・)
ふぅと一息吐いて、自分に暗示をかけた。
もうすぐおいらはなっちと合流するんだ、話し合うんだ。…よし。
展望台は近い。走って向かおうか。・・とその時だった。
バンバンと大きな音がたった。―――銃声らしい。
それも自分のすぐそばで…。
- 60 名前:B10 投稿日:2004/08/23(月) 16:36
- 身体が急に熱くなった。
何かが・・何かが自分の体内に食い込むのを感じた。
(まさか・・・・そんなの・・)
そう感じた部分に手をあててみた。
掌が赤く、でも闇にのまれて真っ黒に染まっている。
そしてもう一カ所。左足も熱く痛みが跳ねていた。
興奮と恐怖に息が荒くなってきた。
「誰・・・・・?」
震える声を真里は茂みの向こうに飛ばした。
もちろん返事はない。
立っているのがつらくなったのか、意志に反して砂利道に跪いた。
四つん這いに折れた身体から、ボタボタと血が流れ落ちている。
――――――死ぬのか?おいら死ぬのか?――――――
ボヤッと霞む目をグイッと上にあげた。
夜空の無数の星が瞬き、その中に目指す展望台が見える。大きくはっきりと。
自分に鞭を打った。
そこだ。すぐそこにナッチがいる・・・・
おぼつかない足つきで、
真里は目前まで迫っている展望台へ向かっていった。
- 61 名前:B10 投稿日:2004/08/23(月) 16:39
- その銃声の主は、茂みの陰でガタガタと手を震わせていた。
銃を握りしめたままのその手は強ばって動かすことができない。
(わたし今何した?…矢口さんのこと…撃ったよね?)
震えを止めようとすればするほど、ガタガタと大きく揺らぐ。
恐怖心に駆られて半ば狂いだしそうだ。
「いやぁ〜〜〜〜!!!」
小さく高く細い叫び声を上げてしまった。
…上げずには、いられない。
そのまま走り出した。こんな所いたくない。
逃げても祓いきれない事実だったが、とにかくどこか遠くこの血の匂いがしない所まで・・・。
足場の悪い茂みの中で、グラッと自分の身体が傾いた。
右足に凄まじい痛みが走る。
(もう、ダメだ・・・)
足を踏み外し、そのまま高台の斜面を転げ落ちていった。
- 62 名前:B10 投稿日:2004/08/23(月) 16:41
- 銃声・悲鳴・ガサガサとたつ大きな音を立て続けに聞いたなつみは、後ろを振り向いた。
誰の姿もない。
でもこの近くに、この高台付近に誰かいるのは確かだ。
血の気が引いてなつみはまた向き直った。
敵の姿もなければ、真里の姿も見えない。刻々と時間は過ぎた。
12時はとっくにまわっている。もうすぐ12時30分になる・・
・・・もしかして・・・いや、そんなことはない・・・。
夜空を見上げて深呼吸した。
しかしその予感は的中してしまう。
砂利がこすれる音が数回して止まった。
「なっ・・ち・・・・・」
なつみがまた振り返ると・・・・真里が立っていた。
腹の辺りと左足から流血しているらしく、カーキ色の軍服がどす黒い赤に染まっている。
「矢口・・・!?」
なつみは駆け寄る。
跪く真里を咄嗟に支えて自分も膝立ちになった。
真里はそのままなつみの肩に顔をうずめてもたれかかった。
「誰?・・誰にやられたの?」
真里は首を横に振って何も言わなかった。
手に握られていたナイフが石畳の地面にカランと音をたてて抜け落ちた。
ほぉと長いため息を吐いた、それが最後。
今自分の眼前で起きている事態が何なのか・・・何が起きているのか・・・。
「・・やぐち?・・ねえ・・・返事してよ・・・矢口・・」
泣き出しそうな声で、なつみは真里の背中をトントンと叩いた。
反応がない。
そんな・・・そんなことって・・・・心の底から哀しみが押し寄せた。
「矢口ぃぃい〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
哀しみは涙腺を伝わって目から溢れ出た。
真里の身体は、完全になつみの力だけで支えられていた。
どんどん冷たくなっていく。
もうピクリとも動かない。
真っ赤に染められた小さな真里を、なつみはずっと抱きしめていた。
【残り13人。】
- 63 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/26(木) 05:31
- 更新、お疲れ様です。
そしてこちらこそ、いつもレスを有難うございます。
今更ながら、紺W夢中さんの言った通りかも知れない。そう思わされた今回の展開でした。
そっか、こう来るとは思わなかった・・・。
- 64 名前:優気 投稿日:2004/08/29(日) 21:12
- 63 >習志野権兵様
この娘。小説界にBR物が結構あるのは知っていたのですが、
実は、どれもチラッとしか読んだことがないんです。
だからかなり自分の感性だけで書き進めています。
自分のこうしたいって思うままに書いてしまうので、
メンバーの性格とかから現実的に考えると「ん?」って矛盾な部分も出てくるかもしれないです^^;
- 65 名前:第二部 始動 投稿日:2004/08/29(日) 21:14
-
- 66 名前:B11 投稿日:2004/08/29(日) 21:16
-
11番目に学校を出発した吉澤ひとみは、もうすでに集落の民家に身を隠していた。
自分の引き当てた武器からして、銃でも構えた人に遭遇したら速攻御陀仏だ。
こんなんじゃ誰に出くわしても何も抵抗できないじゃないか。
(どのタイミングで使えんのよこれ・・・。)
ひとみが見事に引き当てた武器とはダーツセットだった。しかも的まで付いている。
相手を負傷させられる程度なら。
メンバーの命は極力奪いたくない。
ひとみは乗り気なんかではなかったから、これくらいの物で十分だ。
でも、誰がやる気なのかわからない・・皆そこが恐くて牙を剥くのだ。
とにかく何か自分を守れそうな武器を手に入れるか、
武器を持っている仲間と行動を共にする必要があった。
それに、ごっちんとも話がしたい。(向こうは話せないらしいが・・。)
一年休んでたと思ったら久々に会うのがこんな所。
スタート前から気になっていた。
行動を共にすることが出きれば、無防備なひとみには強い仲間だとも考えた。
こんな言い方よくないが、彼女は殺し合いの経験者だ。何らかの知識はあるに違いない。
ごっちんを捜しに出発したいが、ダーツセットなんてあまりにも無防備すぎる。
それに今は真夜中。真っ暗な所をむやみに動いても危険だ。
(ケータイの表示は午前1時18分を示している。)
そんな訳で、ひとみは侵入した家から出られずにいた。
- 67 名前:B11 投稿日:2004/08/29(日) 21:19
- とりあえず、何か為になりそうな物を物色していた。
とかく食い物が必要だと考えた。が、そんな考えは甘かった。
(ちくしょ・・・冷蔵庫ん中全部腐ってやがる・・・)
さっき流し台の下から見つけた缶詰は、缶切りがなくあけられない。
水道からは一滴の水も出ない。
してやられたって感じだ。
唯一見つけたのは、戸棚の奥の茶筒の隣に置いてあった
(幸いにも)未開封のゴマ煎餅くらいだった。
それを腹の足しにしながら棚という棚を物色しては、(もう食べ物への期待も徐々に失せていたが)使えそうな物をカバンに詰めていた。
しかしそれも荷を重くするから厳選した物だけだったが。
ひとみはさっき割って入ってきた窓の外を見た。
真っ暗でよくわからないが確かに二人いる。
1人は武器のような何かを構えていた。
まさかそこに居るとは思っていなかっただけに、心臓の高鳴りがひどい。
台所の床に伏せて息を殺した。
窓の向こうもシーンと静まり、荒野での早撃ちの決闘みたいな張りつめた空気が漂った。
この条件じゃ出ていくだけ不利になる。
やられるのは目に見えている。
じっとしていた方が良い…。
ふぅと深呼吸して鼓動を整えた瞬間、
シュッと空気を裂く音が立ち、消えた。
はっとして窓の外に目を移そうと小さく背伸びすると、
「うわっ!」
自分が手にしているのよりはるかに大きい矢が、床に刺さった。
頭にヒヤッと嫌な感覚を覚える。
血の気がサッと引く感覚だ。
それを振り払うように頭をぶんぶんと振り、立ち上がって、調理台の上にガタンと飛び乗った。
「誰だ!!」
割った窓からするりと身を出し、柔らかい地面に降りる。
考え直してみれば、かなり危ないことをしたんだなぁとヒヤヒヤするけど。
- 68 名前:B11 投稿日:2004/08/29(日) 21:20
-
「吉澤さんっ!…」
月明かりの下に、二人の人の輪郭が見えた。
十月の気候に、肩が上下するたび白い息が空気中に漂う。
「小川、高橋・・・。」
目の前には、立ちすくんでいる愛と麻琴。
その二人をただ茫然と目に写しているひとみ。
だけど・・・・・何て言葉をかけたらいいんだろ。
なんて思ってると。
「ごめんなさいっ・・・・」
泣き出してしまった二人。
麻琴は手から力が抜けていくように、ボウガンを地面に落とした。
両手で顔を覆い隠して声を押し殺して泣いている愛。
ひとみは何も迷うことはなく、ゆっくりと歩み寄る。
かわいい後輩達。
そんな腹黒い柄じゃない。ひとみは疑心を持つようなことはなかった。
「気にすんな。」
自分も武器を持っていないことを証明するように、両手を顔の横まで上げて一歩一歩近づく。
顔を上げた麻琴。泣きじゃくってる愛。
ほら。いつもの二人だ。
「・・ひくっ・・・ごめん・・なさい・・・」
「いいから。」
ずっと外を放浪していたようで、そっと握った手はすっかり冷え切っていた。
「中、入ろうよ。」
さっきまで自分が身を潜めていた民家に指を指す。
でもガチガチに竦んでいて、二人とも一歩も動こうとしない。
「…うちのこと疑ってる?」
試すように聞いてみると、同時に首を横に大きく振った。
泣く声が一層大きくなった気がする。
「だったらおいで。今日はもう休もう。」
ヨロヨロと私の後についてくる二人。
身体だけでも休ませておかないと、気持ちも絶対持たない。
自分ができることはちゃんとしてあげたいから。
自分がしっかりしなきゃ…。
【残り13人。】
- 69 名前:B12 投稿日:2004/08/31(火) 20:32
-
「・・あいぼん、起きてる?」
そんな希美の声がした。
二人は昨日身を潜めた茂みで、夜を明かした。
”夜を明かした”といってもまだ午前4時半をまわったくらいの時間。
ずっと夢の中にいたいのに、いつもよりはるかに早く起きてしまう。
しかも今は10月だから、あたりはまだ真っ暗だ。
むしろ、月も太陽も出ていないこのくらいの時間帯の方が、夜中より暗いように思える。
今の自分の状況を思い出して、頭痛がしてきた亜依。
不思議にも眠くなんかこれっぽっちもない。
緊張感からか少し疲れているような感じはしたけど。
- 70 名前:B12 投稿日:2004/08/31(火) 20:34
-
「みんな、どんどん減っていってるのかな…」
「うん・・・」
元気なく頷いて亜依が返事をして、沈黙になった。
まずい支給のパンを手に握っていたが、空腹でも食べ物が喉を通らない。
風が二人の頬をなでた。
今日はまだ、昨日に比べれば少し暖かいような気がする。
「次はあたし達かもしれないよね。」
「・・・・。」
「あたし死にたくない。・・あいぼんだってそうでしょ?」
「う、うん・・」
返す言葉が見つからない亜依。
なんでのの、いつもと同じトーンで普通に話せるんだろう…。
お互い、ボーっと全然違う方向を向いたまま。
どんな表情かわからないけど、希美のどこか落ち着かない雰囲気だけは感じられた。
何かを言い出そうとしている、そんな雰囲気…。
「じゃあ…。」
案の定、しばらく少し考えていたようで、決心したように希美が話し出す。
そのただならぬ雰囲気を感じ、亜依は咄嗟に希美のほうに目をやった。
昨日教室を出ていく直前に視線を合わせた時と、同じ目で亜依を見つめている。
「じゃあさ、今約束しよう。」
また少し間をおいて言った。
「私たち、殺し合いをしよう。」
- 71 名前:B12 投稿日:2004/08/31(火) 20:35
- 亜依は目を丸くした。
「・・は?」
何言ってんの?
「えっ・・でもそれって・・」
「知ってるだけで、もう2人も死んじゃったんだよ?誰かがもうマジになってる。確かじゃん。」
「だっ…だけど・・」
いつものののじゃない。
昨日からそうだった。
目の色が…全然違う。光がない。
「とにかく、こうなったらやるしかないよ。」
「・・・うん・・・・。」
亜依の頭の中でいろんな感情が交差する。
ののが言っていることは正しいのかもしれない。
梨華ちゃんは・・矢口さんは・・誰かに殺されたんだ。
あの銃声は本物だった。きっとあの音がしたとき、誰かが死んだんだ。
矢口さんでないのなら、誰かがまだ生きているけど血を流しているのかもしれない。
それが誰だかはわからない。
・・・安部さんかもしれないし、よっすぃ〜かもしれない。
あさ美ちゃんかも・・まこっちゃんかも・・里沙ちゃん・・・ミキティ・・
れいなちゃん、絵里ちゃん、さゆみちゃん・・・・ゴッチン?・・・・
「あいぼん?」
どうしよう。ののがあたしのこと、待ってる…。
けど…。
- 72 名前:B12 投稿日:2004/08/31(火) 20:35
- 自分は残りたい。でも殺したくない。
信じたい。でも誰も信じられない。
あたしの隣にいるのは、唯一絶対信頼できる希美、ただ一人だけ。
さぁ。どうする?どうする、加護亜依…?
「のの・・・」
そして希美の目を見てうんとはきり頷いた。希美も頷き返した。
希美は立ち上がる前に、うぅ〜んと甘ったるい声を上げて伸びをする。
亜依は希美よりも先に立ち上がり、そんな希美の姿をボーっと見下ろしていた。
「ふぅ・・・」
二人はデイパックをかついで、その場に向かい合って立った。
希美はまだ暗い空を見上げて、白い息を吐いて深呼吸した。
顔を元の位置に戻して「よし」と小さく呟いて、ハキハキとした声で切り出す。
「辻希美と、」
「…加護亜依は、」
最後の一言は二人声を揃えて言った。
”以心伝心”とはこんな具合なのだろうか。何の打ち合わせもない宣誓のセリフが見事にハモった。
「「殺し合いをします!」」
二人は互いの両手を繋ぎあい、俯いて目を閉じた。
鳥の鳴き声、カサカサと音を奏でる草木、風が運ぶ緑の匂い・・それだけが二人の五感を刺激した。
―――アタシタチハ殺シアイヲ・・・・スル!―――
その開かれた目を合わせた。
希美の瞳の中に、亜依の瞳の中に、何をみたのだろうか。
でも明らかにさっきまでとは違った目になっている。
何も言葉を交わさないまま、二人は走り出した。
互いに禁断の衝動に駆られながら・・・。
【残り13人。】
- 73 名前:習志野権兵 投稿日:2004/08/31(火) 20:45
- 更新、お疲れ様です。
>64
それで良いと思いますよ。
他のBRものの、全てが良いかって言うとそう言う訳でもないし。
取り合えず訳もなく、押尾学とか乱入させなければ問題ないですよ(笑)
今、良い感じで進んでいるので、自分を信じて頑張ってください。
- 74 名前:習志野権兵 投稿日:2004/09/03(金) 05:52
- 更新、お疲れ様です。
>65〜72
これって、もしかして、元ネタはカップルのあのシーン?
何れにしろ、こう持って来るとは・・・。
参りました! (お見事!)
- 75 名前:優気 投稿日:2004/09/03(金) 22:02
- >73・74 習志野権兵様
元ネタみたいなのはないです^^書くときに特に何かを意識はしませんでしたよ。
どうもありがとうございます。
なんだか自信ついてきました。とても嬉しいです。
自分には加護推しの娘。仲間が居て、
その子の発案がきっかけで、自分娘。のBRを書き始めたのですが、
その時その子に「辻加護はこういうキャラに…」とリクエストがあったので、こうなりました。
主人公は紺野ですが、準主人公は?となると、加護かもしれません。
このコンビは結構鍵になってくる(?)人物だと思います。
- 76 名前:B13 投稿日:2004/09/03(金) 22:05
- 4番目に出発した藤本美貴は、
さゆみ同様どうしようという計画もなく学校の南東をウロウロしていた。
支給の金属バットを片手に。
恐怖に食事も喉を通らなければ、落ち着いて寝れもしない。
だからずっとうろついていた。
そしてそのうち、美貴のすべてが狂いだした。
「へへっ・・・・」
ずっと彷徨いっぱなし。殆ど腰を下ろして休んでいないのに、
全く疲れがない。
しかも怯えているはずなのに、顔が勝手ににやけている。
美貴は何がしたいの?
人を殺したいの? …違うよね?
じゃあ何でだろう。
なんでこうも体の底からウズウズするの?
誰にも止められないくらい、暴れ狂いたい…。
(人が見あたらないからか)八つ当たりするように木々を滅多打ちにしていたせいで、
誰にも攻撃していないのに早くもバットはボコボコになっている。
それをカラカラと音を立てて引きずりながら、歩いていた。
そしてその歩は、ちょうどあの”ふたり”が身を潜めている茂みに近づいていた。
もちろん、美貴は気づかない。
- 77 名前:B13 投稿日:2004/09/03(金) 22:08
- ”ふたり”は互いの顔を見合わせる。
徐々に辺りがはっきりと見えるようになり、
さっきよりも鮮明に互いの表情を窺うことができた。
「・・いってみる?」
「うん…。」
茂みを転々と移動しながら、希美と亜依はようやく最初の獲物を見つけた。
希美が楽しそうに繰り出す質問に、亜依は無意識に返事をする。
そして次気がついたときには、もう銃口は美貴に向けられていた。
”人を殺してみる”ための実験台として・・・・。
美貴は気づいているのか気づいていないのかわからないが、
二人の隠れている茂みに近づいていることは確かだった。
その手には金属のバットが握られていて、地面をカラカラと引きずっていた。
やはり良心はいるの?希美の心の中で何かが騒いだ。
・・撃っちゃダメ!
―――うるさい。ここで殺さなかったら、いつか自分も殺されるんだ・・・!!!―――
そっちの意志の方が強かった。
さっき誓ったんだ。あいぼんと。信頼できるあいぼんと・・・。
希美はゆっくりと歩いてくる美貴に向かって引き金を引いた。
バンバンと凄まじい音が鳴り響いて、その振動は希美の手を伝わった。
銃弾は美貴の左肩に的中した。
見る見る赤く染まっていく。
かすめただけの頬にも血がパッと舞って細い傷になった。
美貴はバットを地面に落とすと、右手で肩をかばって蹲った。
はぁはぁと深くゆっくり息をしている。
「1人目〜♪」
希美がガッツポーズして見せた。
そんなことには目も向けず、亜依は茫然と赤に染めあげられた美貴をみていた。
- 78 名前:B13 投稿日:2004/09/03(金) 22:09
-
・・そんなに痛いの?銃って。
でももし今ののが撃ってなかったら、あのバットで殴られてたのかな。
銃とかってよくドラマにでてくるよね。・・あれは服の下に血のりの入ったベスト着てるんでしょ?
これは・・?ベスト着てんの?・・・違う。なんか鉄臭いもん。
血吹き出てるし・・・ミキティから・・ミキティから血でてるよ!
バットと銃どっちが痛いんだろう。
…別に大したことないんじゃないの?
ののにできちゃうんだもんね。結構簡単なんだ。
―――――あたしにだって、いけるいける!!
- 79 名前:B13 投稿日:2004/09/03(金) 22:11
-
「ねぇ、あたしも行ってきていい?」
そう言う亜依は、何を見つめているのかわからない目をしていた。
「もちろん!行ってきなよ。」
希美はニッコリとそう返した。
しかし亜依が一歩踏み出したその時、バットがからんと音を立てた。
バットを握りしめた美貴が立ち上がったのだ。
「逃げよっ!!」
咄嗟に亜依の腕を掴んで、希美は走り出した。
ナイフを構えていた亜依はしばらく美貴の方を見やってから、
走ることに集中した。
その二人の姿を見送った美貴は、その場に倒れ込んだ。
肩をぶち抜かれたくらい・・大したことない。
まだいける。出血が止まれば。
でもこの痛みは・・・耐えられない。
目の前に広がる夜空を仰ぐなり、美貴はまたニッと笑った。
左肩には走る振動で強度の痛みが跳ねて二人を追うことができなかった。
【残り13人。】
- 80 名前:習志野権兵 投稿日:2004/09/04(土) 06:27
- 更新、お疲れ様です。
>75
あ、そうなんだ。
てっきり、カップルの自殺したシーンを変えたと思った。
今のところ、かなりオリジナリティがあって、良い感じです。
- 81 名前:優気 投稿日:2004/09/12(日) 21:19
- >80 習志野権兵様
カップルの自殺シーンは、この後少ししてから似たような場面が出てきます。
まぁ、そのシーンがその後に繋がっていくわけです…。
更新詰まって申し訳ないですm__;m
1話更新させて頂きます。
特に進展はないですが、「説明」的な内容なのですが、
語彙に疎いせいで意味不明になってしまったので、どうか頭を使って駄文を解読してくださいw苦ワラ
- 82 名前:B14 投稿日:2004/09/12(日) 21:22
- 午前6時。島中にプロデューサーの声が響く。
二回目の放送だ。
「はい、みんな聞いとるか〜?放送やで!
禁止エリアは、午前7時・5−E、午前9時・2−F、午前11時に1−Eや。」
詰まるように少し沈黙を挟んだ。
「午前6時までに死んだんは・・・飯田圭織を抜くと、
石川梨華と矢口真里・・・たった二人や!
どういうことや。まだ13人おるんやで!
何ボケボケしとる!!殺し合え言うたはずや!!殺せぇえ!!!!!」
プロデューサーの割れた怒声で、甲高いノイズが響く。
先ほどの放送終了時よりも大きなブツッという音がして、放送は終わった。
- 83 名前:B14 投稿日:2004/09/12(日) 21:24
-
「もぉ〜!やる気だしぃや!…ったく。」
ぐしゃぐしゃの髪をかき回しながら、つんくは愚痴った。
だって、本当にメンバー達の間で殺し合いが起きて死んだのは、
矢口真里。一人だけだから…。
「あそこまで仕組んだのにな〜。まだ火が付いてへん感じや。」
「また何か指令をお出しになりますか?」
低い声で軍服の男(教室で皆にデイパックを渡してたうちの一人)が言った。
「いや・・ええわ。もうズルは沢山してもうた。
後藤を2番目に出発させたし、石川も撃ったしな。」
この計画のもっとも重要な部分。
後藤真希を2番目に出発させることだったのだが、
実際の所、二番目にプロデューサーは”田中”の紙を引き当ててしまった。
しかしこれでは、後藤真希の濡れ衣作戦はおじゃん。
だから紙に反して、2番目に”後藤”を指名したのだ。
くじで「後藤」と書かれた紙を引き当てるまで、一つ前に引き当てたメンバーを出発させていたのだ。
(”田中”が引かれた時は「後藤」出発、”藤本”が引かれた時「田中」が出発。
”道重”が引かれた時「藤本」が出発・・・・と、これがひとみが指名される時まで循環した。)
だかられいなを指名するのも妙に早かったし、
ひとみもそれをプロデューサーの視線で感じ取ることができたのだ。
- 84 名前:B14 投稿日:2004/09/12(日) 21:25
- そこまでして真希を2番目に出発させたのには、きちんと理由がある。
石川梨華をスタート直後に殺したのは、この殺し合いのスタッフ戦闘員。
「最初に出発したメンバーを殺せ」と連絡がわたったのだ。
つんくプロデューサーが教室でデイパックを持たされたごつい男に耳打ちしたのはこの件だ。
他の教室で待機していた戦闘員の一人が任務を任され、
昇降口で最初に出発した石川梨華を待ち伏せしていた。
校門から出てきた梨華の背後に忍び寄り、怯えて冷えきった身体をがっしり掴んだ。
叫び声をあげないようにごつい手で梨華の口を押さえたのち、
無声銃の銃口をこめかみに押しあて、その引き金を引いたのだ…。
このときにこめかみに火傷の跡ができた。
太い腕を振りほどこうと抵抗していた梨華の身体から力が抜け、一瞬にして止まった。
一番にくじを引かれた者は、誰でもこの悲惨な運命にあった。
最初に出発することになった石川梨華は人生最悪の不幸に見回れてしまったのだ。
梨華を殺した目的。
それは、後藤真希が本気だという「嘘」を知らしめる為。
- 85 名前:B14 投稿日:2004/09/12(日) 21:31
- 1番目に石川、2番目後藤が出発したのだから、梨華を殺す時間があるのは真希だけになる。
つまり、真希が梨華を殺したように見せかける為だ。
そうすれば3番目に出発した人間に「後藤真希はやる気だ」と、
それ以降に出発した人間には、真希でなくとも「メンバーの誰かはやる気だ」と思いこませることができる。
誰かが真希と落ち合ったとしてもヤツは話せない。
事実を語れない。
長く付き添っていた仲間だって、1年間の真希の消息は昨晩まで知らなかった。
そのうえ去年あった殺し合い特別企画の詳細は誰一人聞いていない。
見つけた瞬間に殺しにかかるか、速攻逃げるか。
真希の濡れ衣は着せられたままになるわけだ。
ヤツは精神不安定。この戦場に戻され、気が弱っているはずだ。
本当はやる気はない。
でもメンバーには、やる気のように見える。
そこから誤差が生まれ、殺し合いの引き金になる。
今回真希を参加させた理由もここにある。
島の北側のエリアを封鎖させたのも意図的にやったこと。
他のメンバーは南下して島の中心まで移動していった。
夜が明ける前まで、灯台ブロックのなつみと真里が残っていたが、
禁止エリアに囲まれた北エリアに取り残されるほど馬鹿ではない。
島の南に進み、南下していったメンバーに遭遇するに違いない。
移動できるブロックを狭め、皆を寄せ集め、
不安定な信頼状態のまま無理矢理殺し合わせる。
こうでもしないとこの厚い信頼に成り立っている此奴等のこと、殺し合いなんてやるはずがない。
「残りのメンバーに任せよう。あと13人。
誰かが必ず後藤を殺しにかかる。」
ペロッと乾いた唇をなめ、つんくはニヤッとほほえんだ。
「楽しみや・・・。」
その表情がコンピューター画面の黒い光に不気味に照らされた。
画面には、島全体の図と3個の赤い点、13個の青い点が映し出されている。
【残り13人。】
- 86 名前:習志野権兵 投稿日:2004/09/12(日) 22:25
- 更新、お疲れ様です。
なるほどね・・・。
奴がやったのか・・・。
小説でも現実でも本当、色々とやってくれるよ(笑)。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/12(日) 22:25
- ずっとロムってたのですが初レスさせていただきます。
毎回ドキドキして読んでいます。
説明文はわかりやすくて押しつけがましくもなかったので
読みやすかったと思います。
マターリ頑張ってください。
- 88 名前:優気 投稿日:2004/09/23(木) 20:53
- 86 >習志野権兵様。
毎回レスをありがとうございます。
本当、彼はいろいろやってくれますよね^^;
流石に実際、BRにまでは手を付けてほしくはないです〔笑/当たり前ですがw〕
87 >名無飼育さん様
レスどうもありがとうございます。
わかりやすかったなら、幸いです。
一読者様の感想が聞けて、参考になったのと同時に、とても嬉しいです^^
これからもどうか見守ってやってください。
よろしくおねがいします。
更新延びちゃってすみません。
それでは、B15を更新します。
今回は少々長めです。
- 89 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 20:55
- もうすぐ朝の7時になろうというところだ。
島内放送のぎりぎり前までと、放送が終わってからの約1時間、ひとみはすっかり眠っていたらしい。
寝ている間もずっと握りしめたままにしていた地図を広げる。
地図のすみに放送されたことをメモしたのだ。
その内容をもう一度読み直す。
日常でいうなら、朝起きて、その日一日のスケジュールを確認するみたいに。
(飯田さん、梨華ちゃん、矢口さん・・・。
禁止エリアは、午前7時から二時間おきに5−E、2−F、1−E・・。)
―――ここは戦場だから?―――
あっさりと仲間の死を受け止めることのできた自分が怖くなった。
でも頭では理解できても、心はワンテンポ遅れているらしく茫然としている。
こんな事実逃れて夢でもみていたい。そんな気持ちになったのだろう。
辛さが睡魔になり、無防備にも二度寝してしまった。
しかしその間誰かに襲われるようなことがなくてよかった。
万が一のことを考えて、デイパックやらの荷物は肩にかけたままにしていたけど…。
- 90 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 20:56
-
「もう起きちゃったの?」
夜中に合流した麻琴は、床に寝そべったまま、ぼんやりと目を開いていた。
「はい。おはようございます。」
小さく低い声で、麻琴は返答した。
その傍らで寝ていた愛のことを考慮して小さくしたのではなく、
どんなに明るく振る舞おうとしても、これくらいが精一杯なのである。
「よく寝れた?」
「はぁ…。ビミョーですね。」
少し苦笑した。
ディパックから取り出した、ちょっと早い朝食も喉を通ってくれない。
仕方なく貴重な水を流し込む。
「まだ寝てればいいのに。寝てた方が楽じゃない?」
「そうですね…。」
自分だって、麻琴だって、まだ眠ってる愛だって、わかってる。
現実を見てるよりは、夢見て眠っている方が気持ちがどんなに楽か…。
夢が冷めて、現実を押しつけられた瞬間、どんなに胸が潰れそうになるくらい苦しいものなのか。
- 91 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 20:57
- 二人は同時に、麻琴の横で眠っている愛に視線を下ろした。
気持ちよさそうに眠っている。
「今のうちにちゃんと食べておきなよ?いつ出発することになるか、わからないから。」
「はっ、はい。」
そう言って、お互いに手にしたままの支給のパンを口に運んだ。
これを食べておかないと身体が保たなくなっちゃう。
無理矢理口に詰め込むと、吐き気がするくらいだけど…。
「あの…」
「何?」
「ここを出たら、…どうするんですか?」
「う〜ん…。」
床に広げたままになっている地図に目を落とす。
端には禁止エリアと時間が書き込んである。
「わかんねぇ。」
「…え?」
「本当のとこ、ごっちんに会いたいし、みんなとも話したいけど、どこいるかわかんないし。
それに…」
少し迷いながらも、はっきりと自分の想いを話した。
「その前に、誰かに殺されるかもしんないしね。」
- 92 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 20:58
- さらっと言ってしまった自分が、恐く思えた。
麻琴も、まさかそんなこと言うとはって感じの表情でひとみを見つめる。
「…ごめん、ヘンなこと言って。」
「いえ…。」
「そんな事んならないようにさ、3人で頑張ろうよ。」
麻琴がまた愛のほうに目をやると、「うーん」と気持ちよさそうに伸びをした。
もうすぐ起きるのかな?
…あ、あっち側向いちゃった。
「吉澤さん。」
「ん?」
「・・・・殺しませんよね?」
「は?」
「メンバーのこと、殺しませんよね?」
語尾が震えていた。
その瞳からは、不安の表情が見られた。
「わたし、昨日愛ちゃんのこと撃ちそうになったんです。
その後二人で歩いてここに来たときだって、吉澤さんのことを…。
真っ暗で誰かわからなくて。でも、メンバーだってことは確かなのに…。」
自分を責め立てるような激しい口調で話す麻琴。
「あんま気にすんな。しょうがない…みんな同じだよ。」
「…。」
「とにかく今は、誰かが死ぬとか、誰かを殺すとかの前に、自分が生きること。…ね?」
元気のない後輩は唇をギュッと噛んで泣くのを堪えているようだ。
下向き加減の麻琴の頭に、ポンと掌を乗せて撫でた。
- 93 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 20:59
- …と。
「・・・んん〜っ・・・ふぁああ〜・・・・・」
横になっていた身体が、背伸びをした。
どうやら目が覚めたらしい。
「あっ。愛ちゃん、おはよう。」
「高橋おはよっ。」
こちらにゴロンと寝返りをうつ愛。
まだ眠たそうに目をこすりながら、ひとみと麻琴を見上げる。
すると、ハッとしたようで飛び起きた。
「あっ…ごっごめんなさい。すっかり寝込んじゃって…。」
くしゃくしゃになった髪を撫でつけながら、愛は言った。
ごめんね。せっかくこの「現実」を、眠って忘れていたのに…。
「気にしなくていいよ。うちらもまだいいよねって言ってたところだし。」
そうだと言う代わりに、麻琴はこくりと頷いてみせた。
「じゃあ…揃ったところで、どう動くか、計画を立てますか。」
ひとみは床に広げていた地図を、二人の見やすいように方向を変える。
地図を覗き込むように身を乗り出した愛に、麻琴は自分のパンを半分渡した。
愛はニコッと麻琴に視線を送ってからパンを囓った。
「どうしようか・・・。」
いざ話し合い…といっても、どうしたらいいのかわからない。
どう動くかといっても、誰かに会うために動くのか、とにかく自分が生き延びる為に動くのか。
それとも・・・・
「ひとまず、この集落は出よう。この辺にはみんな居ないみたいだから。」
「えっ…どうするんですか?」
麻琴の不安そうな顔が、ひとみを見つめた。
「誰かを捜そ。力を合わせたら、抜け出せるかもしれないじゃん?」
そうは言う物の、自分自身あまり自信は持てていない。
ただ二人を勇気付けて、少しでも気力を持ってほしかったから。
ここにずっと居たって、何も変わらないから。
「それじゃあ、・・・・・・」
――――――――――――ん?
- 94 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:00
- 何か、音がする。
見える範囲を見渡した。
自分たちが進入してきた窓、今いる台所、隣の和室。
・・・違う。玄関に通じてる、廊下。
――――――――――――マジで?
二人の後輩に目をやる。
愛は麻琴の手をしっかりと握りしめ、目を瞑っている。
麻琴も強張った表情。
「音」は明らかに近づいてきている。
ひとみは苦笑いの表情を浮かべた。
――まさか・・・ハハ・・まさかね・・・――
――誰かがいる。この家の中に。
- 95 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:01
- そう認識してしまえば、その音は確かにフローリングを引きずるカラカラという音だった。
ドアの向こうの廊下から、誰かが一歩、また一歩、こちらに近づいてきている。
全身が強張る。
麻琴と愛なんて尚更、顔が青ざめている。
うちが二人を守らなきゃ…。
「隠れろ!」
ひとみは台所から続く隣の和室に、二人を追いやる。
二人は荷物を抱えて、畳の上に身を寄せた。
「吉澤さん・・!?」
台所に戻ろうとすると、愛がひとみの服を掴んだ。
麻琴と愛の凍り付いた視線がひとみを見上げる。
「大丈夫。」
「大丈夫って・・・!」
「すぐ戻ってくるから。それまでじっとしてろ!」
自分が囮になれば・・・二人は助かるかもしれない。
「いい?絶対に動くな?!」
念を押しながら、二人を落ち着かせて、
ピシャリと襖を閉めた。
襖に背を向けたまま、ふぅと深呼吸した。
ちょうどその時、廊下に通じる方のドアが開いた。
―――――――藤本美貴が立っていた。
- 96 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:02
- 左肩は真っ赤に染まっている。
”カラカラ”という音の正体は金属バットだったらしく、右手でしっかり掴んでいた。
美貴の頬には銃弾を掠めたような傷があった。
「ミキティ・・・」
美貴の顔がニヤッと笑いかけた。
ひとみの背筋が凍り付いた。
・・え?何?どうしたの?
「落ち着いてよ。うちだよ?わかるでしょ?」
美貴の右手がピクッと動いた。
またニヤッと今度は鼻で「ふっ」と言って笑った。
いつものミキティの表情じゃない。
冷静を失った・・狂人の表情に近い。
・・まずい!やられる!
台所のの下の棚に背中を押しつけ、目を見たままゆっくりと立ち上がった。
美貴の右腕があがった。その拳の先にはボコボコにへこんだ金属バット。
心の中でカウントをとった。
・・・・3・・・2・・・1・・・よしっ!
ひとみは右手を流し台にかけ、調理台の上に軽快に身を乗せた。
間一髪!!振りかざされたバットが銀の流し台に食い込んだ。
「っとぉ!」
割れた窓を開けて、外へ走った。
美貴も窓から外の地に降り立った。
これで、麻琴と愛に危害が及ぶことはない。・・・・うちが、死にさえしなければ確実にね。
- 97 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:03
- 向かいにある家の外壁まで退いた。美貴が一歩一歩近づいてくる。
カラカラと金属バットが奏でる音に、身体が強ばるのを感じた。
ひとみはダーツの矢を投げてみようと思い立った。
万が一の時の為に、ポケットに2本ほど入れておいたのだ。
いつだかフレンドパークの最後のダーツで投げたよなぁ、それ以来だ。
(ルーレットのどこにささったかなんてそんなの想い出している場合ではない。)
「やっべぇ・・・」
矢は曲線をえがいて数メートル先に落ちてしまった。
やばいなんて言ってる場合じゃない。
一か八かでもう一本放とうと、
ポケットから取り出して置いておいた矢に手を伸ばした瞬間・・・
「・・・・うぁ・・!!!!」
地面についていた右手の甲に、バッドの先が振り下ろされた。
何度も何度も振り下ろされるバッド。
アニメにするなら、”バキバキ”と効果音をつけたくなるような光景。
「うう・・・・っく・・・・」
美貴の靴が、ひとみの手の甲から退くと、
それは赤く腫れていたり、真っ青に内出血したりしている。
力を入れようとしても、なかなか動こうとしない。
自ら目を向けるのも痛々しい。
ひとみの掌から落ちたその矢に向いていた美貴の視線が、
ギロッとひとみの目を見下ろした。
声には出さずに「ばいばい」と口を動かすと、バットを高く振りかざした。
恐怖にすくんで動けないことがやっとわかり、
強気でいたひとみも今にも泣き出しそうになっていた。
――もうお終いだ・・。――――
- 98 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:04
-
――――――――――パララララララ
でかい音が連続した。銃声らしい。
と同時に目の前では美貴が踊っていた。
血の霧がひとみの顔に降りかかってベトベトした。
銃声が止んだ。
美貴はまたもやひとみの方を見てニヤッと笑ってから、ゴボッと血を吹き出すとそのまま地面に倒れた。
その悔しそうな笑顔はひとみの脳裏に濃く焼き付けられた。
銃撃を受けた左半身は血みどろに潰れている。
- 99 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:05
-
「えっ・・・・」
襖の隙間からひとみの戦闘光景を見守っていた二人は、
もう狂った美貴がこちらに戻ってくる気配がないことを確認した上で、
台所の窓から、ひとみを見守り続けていた。
しかしその行動が、二人に最悪な「絵」を目の当たりにさせてしまった。
怯えて茫然としているひとみ。
血みどろになって散った美貴。
そして・・・・・
民家の窓から、ひっそりと外を見ていた愛と麻琴は息を呑んだ。
悲鳴が出ない。
ここで出してはまずいが、とにかく、声が出ない。
二人の脳裏にこの赤い光景が焼き付いた。
「ど・・・して・・・・」
口に手を押し当てて、ボロボロと大粒の涙を流す愛。
見たくもない光景から、目を離すこともできないくらいの緊張。
「なんで・・・・こっ・・・殺せるの・・?」
怖くてずっと繋いでいた手。
無意識のうちに、その拳に力が入った。
が、不意に愛が、それを振り切って離した。
「愛ちゃん!?」
今ひとみが居る道とは反対側に面した玄関から、愛は駆け出して行ってしまった。
目の前の吉澤さんを助けたい。
だけど、怯えきって泣いてしまっている愛ちゃんも放っておけるわけがない。
「えっ・・えっ・・・・・ちょっ待って!」
独りになることへの拒否と、愛ちゃんを独りにしてはいけないという責任。
それが麻琴に、愛を追わせた。
――――――――――
――――――
―――
- 100 名前:B15 投稿日:2004/09/23(木) 21:06
-
その真っ赤な身体に釘付けになっていた。
美貴に殺されそうになったけど、今こうして見てしまうと可哀想だ・・なんて。
ブーツがカツカツと音を立てて、コンクリートで整備された道を歩いてきた。
咄嗟にそちらに視線を向けた。
黒い武器 ―銃― は降ろしているようだった。
朝靄の中から、一人の人影がはっきりと目の前に現れた。
「ごっちん・・・!」
ひとみは唖然とするほかなかった。
(後藤真希が藤本美貴を殺した・・・!どうして・・・・!?)
状況が飲み込めないまま、しばらく真希の顔を見やっていた。
しかし、逃げようなどとは考えつかなかった。
なぜなら・・・。
血みどろになった美貴を、真希の悲しそうな目が見つめていたから。
【残り12人。】
- 101 名前:87 投稿日:2004/09/24(金) 00:21
- いやぁハラハラドキドキたまりません。
吉澤さんの後輩を思いやる気持ちがよかったです。
いよいよあの人が来ましたね〜。
この対峙してる二人がどうするのかものすごく気になります。
次も頑張ってください!
- 102 名前:優気 投稿日:2004/09/24(金) 20:14
- 今日はレスだけw
>101 87番様
レスありがとうございます。
とりあえずこの二人の話は今の所ここでお終いで、しばらく出てきませんw
…が、この二人は今後一緒に行動することになります。
どうぞ応援よろしくお願いします。m__m
- 103 名前:習志野権兵 投稿日:2004/09/24(金) 22:11
- 更新、お疲れ様です。
こちらこそ、いつもレスをありがとうございます。
話は戻りまして、始め偉そうなことを書いておきながら
ことごとく予想を外しまくってます(orz) 。
でも、お陰で益々楽しみになってきました。
次回も楽しみに待ってますので頑張ってください!
- 104 名前:優気 投稿日:2004/09/28(火) 21:33
- >103 習志野権兵様
レスありがとうございます。
そう言って頂けると、非常に嬉しいです。
書く甲斐があります^^
これからも予想をたてつつ、応援よろしくおねがいしますm__m
- 105 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:35
-
風でガサガサ茂みが音を立てては、ナイフを構えて辺りを見回す。
そんな動作の繰り返しでここまで進んできた。
(コンパスってこんなにも使えるものなんだ・・。)
道重さゆみは島の沿岸沿いをひたすら歩いてきた。
学校を出た時に行き着いた沿岸沿いの整備された道を、時計回るに歩き続けた。
しかしさゆみは、今まで誰にも遭わなかった。
裏切り者にも、信頼できる仲間にも。
それは運が悪かったわけではなく、だからといって良かったわけでもない。
誰かに会いたい。
会って一緒に行動したい。
その気持ちが、さゆみの身体を動かしていた。
そして今、
最東端の岩場で休んでいた自分は、4−Hの北西部・家々の立ち並ぶ集落の南端に居る。
- 106 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:38
-
さゆみはケータイの表示で時間を確認することを思いつかないほど必死になっていた。
降り注ぐ朝の日差しの中を、さゆみはどこまでも立ち並ぶ家々の真ん中の大道を歩いている。
警戒心からか、全ての家の窓から誰もいないのに人気を感じた。
左右の家屋をチェックしていると、風が頬をかすめた。
こんな戦場にも風はあるのか。自然はいつもとわからないんだ・・。
風が吹くなんて日常茶飯事なことだが、何故かこの場だといつも以上に風が恋しい。
が、その風が運んできたのは、いつもの緑の匂いではなかった。
嗅ぎ慣れない匂いだが、どこかで嗅いだ嫌な匂い。
・・・まさか・・・そんなはずないよね・・・。
さゆみは家々を見渡していたその視線を、恐る恐る道の向こうに向けた。
物は見えている。
風はあの匂いを運んできたんだ。
しかし訳がわからなくなった。息が詰まり、全身が凍り付いた。
さっきから嗅いでいたのは血の匂い。
わかってるはずだった。血がこの近くにあることは・・。
でもあまりの量。地面一帯が真っ赤に染まっているのだ。
その血の具合から、まだ死んでそんなに時間が経っていないことが窺えた。
視線が釘付けになったまま、さゆみは無意識に近づいていた足を止めた。
次にわかったのはぼやけて見えた人の輪郭。
「きゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
- 107 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:39
-
その声に揺られた様に木々がざわめいた。
横向きに倒れている身体の下側になっている左半身は、血みどろで何がどうなっているのかわからない。
だがその赤の中に丸い痕が多数見えた。
それにこれだけの出血だ。被弾に間違えはない。銃で殺されたんだ。
赤く染め上げられた頬。・・・・美貴。藤本美貴だ。
あまりの被弾に顔が歪んでしまっている。
モーニング娘。としてのスタートは同時だが、歌手としては先輩だ。
同期として入ったけど、倍大きく見えたし、大人だった。
私よりも年上の藤本さんが・・私よりも強いと思ってた藤本さんが・・・。
さゆみはうめき声もあがらないくらい。恐怖心に押し殺されそうだ。
「・・・あ・・・・あぁ・・・・・・」
そのまま立ち上がって走り出そうとしたが、足がすくんで腕にも力が入らない。
後ろを振り向くのも怖かった。・・誰か居たりして・・。
そこには誰もいなかった。美貴とさゆみの二人だけだ。
さゆみはまた美貴の潰れた身体に目を向けた。
「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
ようやく喉の奥から絞り出てきた声は、島全土に聞こえてもおかしくないくらいに轟いた。
叫び声の反動で勢いよく立ち上がると、ダッシュで集落の細道を抜けた。
方向なんてどうでもいい。誰の目にもつかない場所へ・・。
ひぃひぃ唸りながらさゆみは走っていった。
・・怖い・・怖いよ・・・助けて・・!!――――
- 108 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:42
- 一方、夜明けとともに動き始めた安倍なつみは、
夜を過ごした高台をゆっくりと降り、学校のある3−Eの東隣のエリアにさしかかっていた。
もう朝の7時を過ぎて徐々に明るくなってきていて、足下もしっかり見えている。
ずっと身を潜めていた高台・灯台のあるのはエリア3ーBだが、1−Eが午前11時に禁止エリアになる。
高台への上り坂が始まる地点、そこが1−Eなのだ。
そこが塞がれたら高台の下に降りれなくなってしまう。
高台の斜面はあまりにも急すぎて、ここから下へ降りていこうにも一度足を滑らせたら助かりそうにない。
禁止エリアに入らないように地図とコンパスを凝視しながら、なつみはそのまま歩を南に進めていた。
今は4−Eを抜け、4−Fの北部を南下している。
この辺りは禁止エリアに囲まれているし、
(まだ発表されてはいないが)この4−Fを封鎖されてしまえば、
もう島の北端は禁止エリアに包囲されて立ち入れなくなってしまう。
おそらくこの高台周辺にはもう誰も居ないだろう。
居るのはこの戦場を去った真里。ただ1人だ。
一夜を灯台で過ごした。冷え切った真里の傍らで・・。
- 109 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:42
-
閉まっていた灯台のドアをマシンガンでぶち破り、真里を抱きかかえて中へ入った。
中はなま暖かくて気味が悪い。
なつみは真里を座らせて灯台の曲線を描いた壁に寄っ掛からせた。
ボーっとしているだけだったが、長いようで短かった。
その小さな身体は、みるみる硬く冷たくなっていった。
気が付けば放送が入り、気がつけば禁止エリアと退場メンバーをメモし、気がつけば日が昇ってきた。
教室で見た圭織、校門前に見かけた梨華、そして今自分の目の前に横たわる真里。
この3人が第二回の放送で呼ばれた。
かけがえのない仲間。
あの時の出会いが偶然なら、この別れも偶然なの?
でもこんな別れって・・ありえないよね。
変わり果てた真里の姿を見ていると、悲しみも怒りに転換した。
―――・・なんでこんなことができるの?・・・―――
硬直した手をこじ開け、メモを押し込めた。
地図の端っこをちぎり取ったへなちょこな形の紙切れ。
矢口に宛てた、最後の伝言。
冷たい壁にもたれかかっている真里に別れを告げた。
「バイバイ。矢口・・・」
二度と目を開けることのない真里は、穏やかに眠っているような表情だった。
その視線はドアを閉め終えるまで真里から離すことができない。
なつみは灯台の重いドアをゆっくりと開けて外に出た。
バタンと大きな音が響きドアが風の力で閉まると、なつみの視線は遮られた。
よし。行こう。
なつみの心は確かにそう言った。
でも身体が言うことを聞かず、足が先へ進まないのだ。
頬を熱く、でもどこか冷たいモノが流れる。
もうここには居れない。
行かなきゃ。
矢口の為にも・・さぁ。行こう。
- 110 名前:B16 投稿日:2004/09/28(火) 21:43
- すくんだ足を一歩一歩踏みしめながら、元きた道を歩きだした。
赤い斑点が道の向こうまで点々と連ねている。
そしてその点は、坂の途中のどす黒い血だまりまで続いていた。
あの小さな限界の身体はこんなに歩いて灯台まで来たんだ。
この辺でウロウロ待ってたら助けられたのかな。
・・ちくしょう・・。
昇ってきた太陽がなつみを、なつみの涙を照らしていた。
―――私は許さない。
大事な仲間を殺せるココロがわからない。
優しくなんてできない。
だから、行って来ます。―――やぐち、大好きだよ――――――
私は、死ぬわけにはいかない・・・
逆襲のはじまり、はじまり。
【残り12人。】
- 111 名前:習志野権兵 投稿日:2004/09/29(水) 06:58
- 更新、お疲れ様です。
中々、終わらない悲劇。
そして奴の策略にはまり、また1人の娘が・・・。
最後はハッピーエンドで終わりますように
――と願い、俺は次回更新を待ちます。
- 112 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/09/30(木) 00:53
- おもしろいです!
あと、他のBR小説をあまり読んでないのもいい感じです。
やっぱり微妙に先入観がついてしまうから
- 113 名前:87 投稿日:2004/10/01(金) 18:23
- うわー。安倍さん…。つーかミキティ…。
なんていうかこういうお話だから仕方ないのですがやはり誰かが
死ぬってのは悲しいものですね。一体誰が生き残るのか、ラスト
はどうなるのか、ドキドキしながら待っております。
作者さん、頑張ってください。
- 114 名前:優気 投稿日:2004/10/03(日) 22:15
- >111 習志野権兵様
なんだか詩的なレスをありがとうございます。
エンドはまだまだ先ですが、どうぞよろしくおねがいします。
>112 名無し飼育さん様
レスどうもありがとうございます。
そう言って頂けると嬉しいです^^
他のBRは、原作以外読まなくて正解だったと自分自身思っています。
自分独自の世界を書き出すってなかなか難しいものですね。
>113 87様
レスありがとうございます。
書いてる自分でも、思わず胸が痛くなってきてしまいます。
やっぱり「命」って大切ですよね。
- 115 名前:第三部 親友 投稿日:2004/10/03(日) 22:16
-
- 116 名前:B17 投稿日:2004/10/03(日) 22:17
-
バトルロワイアルが開始して早八時間以上が経つ。
殺し合い2日目、午前7時半。
紺野あさ美は目を冷ました。
決して気持ち良いものではない。
10月の気候からなのか、ここが戦場だからなのか、ゾクゾクとした寒気で目覚めたのだから。
夢から冷めればそこは戦場。
いつどんな危険が身を襲ってもおかしくはない、孤独なところ。
不安になって辺りを見回す。
そこには何もなくて、ただ広い森が広がっているだけ。
風に葉がざわめく音と、薄雲から太陽が覗く空の色と、寄りかかった木の幹の冷たさと。
そして…
あさ美は自分の足下に視線を向けた。
乱れた2つ結びの頭が私の足にもたれかかったまま、グッスリと眠っている。
少し安心したらしくふぅと笑みがこぼれた。
――――――――
――――
――
- 117 名前:B17 投稿日:2004/10/03(日) 22:19
- 夜中あさ美は、北側の崖に沿って東に進み続けていた。
隠れられるような建物もなく自分1人だったから、どこかで夜を明かすのも危険だった。
崖沿いには木で出来た柵がどこまでも続いていたが、柵の前に誰かがしゃがみ込んでいるのが暗闇の中見えてきた。
2つ結びが肩に垂れている。
・・・新垣里沙だ。
そろっと歩み寄る。
砂利が音を立て、それに里沙の肩がビクッと揺れた。
「…ここで何してるの?危ないよ、こんな所に居ちゃ。
里沙ちゃん・・私だよ。わかる?」
里沙は顔を座った膝にうずめたままあげない。
高さを合わせようと、あさ美も里沙の隣にしゃがんた。
また何か声をかけようとすると、里沙が顔をうずめたまま小さい声で答えた。
「ここに居たら、誰かが殺してくれるのかなって…」
そう言って里沙は顔をあげてあさ美を見つめた。
泣き疲れと現実逃避に茫然としていた目だった。
「‥撃たないの?撃ってよ。」
あさ美は銃を(構えてはいなかったものの)握ったままだということに気がつき、咄嗟に背の後ろに隠した。
首を横に振った。
「撃てるはず・・・ないよ。一緒に行こう。」
里沙の手首をつかむとまたピクッと震えるのがわかった。
掴んだ手首を上に引っ張って立たせようとしたが、足がガタガタ震えてすぐによろけてあさ美の肩にもたれた。
「怖かった・・・」
里沙はあさ美の耳元で呟くとまた涙を流す。
身体の震えが止まらない里沙。
背に隠していた銃をポケットに突っ込んで、両手で里沙を宥めていた。
その後あさ美は里沙を負んぶして歩いた。
里沙はまだ泣いていたらしいが、しばらく経つと安心したのかあさ美の背の中で眠っていた。
ようやく安全そうな茂みを見つけるとその中へ踏み込んだ。
里沙をゆっくりと下ろし、木の幹に背をあずけた自分にもたれかけた。
木の葉の間から月明かりがうっすら二人を照らす。
腕の時計で時間を確かめると、あさ美も浅い睡眠についたのだった。
- 118 名前:B17 投稿日:2004/10/03(日) 22:21
- ――
――――
――――――――
どこから流れてきたのか、灰色の雲が空を泳ぎ始めた。
その合間から辛うじて覗く冬の眩しい朝日が、二人を照らす。
―――ここにいたら誰かが殺してくれるのかな―――
怯えた声が脳裏を幾度も過ぎる。
里沙もまた梨華の変わり果てた姿を目の当たりにしてしまったのだろう。
怯えて蹲ってしまう気持ちもわからないはずない。
―――ここにいたら誰かが・・・・―――
「大丈夫だよ。」
溢れそうな気持ちは口からポツリと呟かれた。
もし声にならなかったら、あさ美の中で不安が破裂しそうなくらい疼いていただろう。
此処でどうしたらいいのか。
どうしたら正しいのかなんて、きっとない。
他人を殺して生き残るのも寂しい。
だからといって自分が殺されるのも、すべてが終わってしまって怖い。
どうしろというのか…。
ただただ不安と絶望に押しつぶされそうになる。
今の瞬間を生きるのが精一杯の戦場の上で、
ただボーっと空を仰いでいるあさ美。
そこは、故郷でも、都会でも、此処でも同じで、見ていて落ち着くのだ。
年上の私が、里沙を引っ張っていってあげなきゃ。
そのまだ幼い寝顔を見ながら改めてそう思う。
だけどそれが、逆にプレッシャーみたいになってしまう。
―――これからどうしよう…―――
ほぉとため息を吐くと、それは白い息となって空気中を漂って消えた。
どれだけ考えても正しい「答え」は見つかりそうにない。
【残り12人。】
- 119 名前:習志野権兵 投稿日:2004/10/04(月) 02:08
- 更新、お疲れ様です。
このコンビか・・・。
何人、生き残るかは分からないが出来るだけ生き残って欲しい。
でも、基本的には1人しか生き残れないんだよなぁ・・・。
展開がまったく読めないっス。
- 120 名前:優気 投稿日:2004/10/20(水) 16:11
- >119 習志野権兵様
人数が少ないので、行動人数はピンかコンビだけですw
これでハロプロ全員とかの大人数だったら、
もっといろんな物語が書けて良いのかもしれないです。
けど、この脳みそではこれ以上複雑な物は書けないのが現状です(苦笑
2週間以上更新すっぽかして申し訳ないですm__;m
やっとテストが終わったので、豪速急で続き書きました(笑
- 121 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:12
- 昨夜7番目に出発した亀井絵里が目覚めると、夜はとっくに明けていた。
頭がボーっとして、身体が熱く重かった。
(なんで私生きてるんだ?)
夜中に何があったか思い出せないけど、とにかくそれだけは不思議だ。
焦点が定まらず、天井を見る目が泳いだ。
(・・・ここ外じゃないの?・・・)
しかしそこは確かに屋内だった。
身体の感覚を尖らせると、どうやら寝かされているらしい。布団がかかっている。
耳にはシトシトと地面を雨が叩く音が届いた。
やっぱり私、生きてる…。
- 122 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:14
- そんなことをぼんやり考えていると誰かの顔がのぞき込んできた。
一瞬鼓動が高鳴り、そしてほぉと安堵した。
「絵里?」
その声は優しく絵里に呼びかけた。
(両者気づいてはいないが)昨晩学校の前で行き違いになってしまった、田中れいながそこにいる。
れいなは濡れた手で水をかけたタオルをギュッと絞った。
絞り出た水がポタポタと洗面器に落ちた。
「もう大丈夫だから。ね。」
昨日の夜、教室で口を動かして言ったのと同じ事を今は声に出して言った。
「・・・ここどこ?今何時?放送は?」
絵里は我に返ったように口早に尋ねた。
今までの意識が途切れてる間に何があったんだろう。
起きあがろうとすると、れいなが絵里の身体を支えた。
「無理しないで。熱あるから。」
そう言われて初めて額がヒヤッと冷たくなった。濡れたタオルを当てられたらしい。
「これ。飲んだ方がいいよ。」
れいなは封を切ったばかりの水を差しだした。
「・・ありがと。」
それを受け取ると絵里は一口二口コクッと飲んだ。
ペットボトルをれいなに渡すと、パタンと布団の中に潜った。
熱のせいでクラクラした。
「今は8時14分。ここは診療所だよ。放送は・・あった。2時間前にね。」
「だれ?・・・誰が・・・?」
縋るように絵里は聞いた。
”誰が”の続きは言われなくてもわかってる。
「飯田さん、石川さん、矢口さんに藤本さん。・・・・もう4人も。」
れいなは俯いて、座っている回転式の椅子を左右に揺らしていた。
―――やっぱり・・死んじゃったんだ・・・―――
深夜、矢口真里を撃ったのは絵里だったのだ。
- 123 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:15
- 罪悪感から鼓動が高鳴る。
なんて取り返しのつかないことをしちゃったんだろう…。
絵里は一瞬にして青ざめ、頭痛が増してクラクラした。
「あと、足首腫れてるみたいなんだけど・・・痛い?」
絵里は首だけ無理矢理起こして、自分の足の方へ視線を投げた。
右足の足首が、左足に比べてはるかに真っ赤に(一部青く)そしてパンパンに腫れている。
見た瞬間に痛みが走りだした。
幸いにも絵里のくるぶしは骨折には至っていなかった。
(そんなの専門知識もレントゲンもない二人にはわかるはずもなかったが。)
折れているのなら何倍もの痛みに口を聞く余裕なんてないはずだ。
絵里は無理矢理顔を笑わせて、首を横に振った。
でも痛くないと言うのは嘘。
ジリジリと痛みはあった。
「あんま痛くない。大丈夫だよこれくらい。」
「そう。」
窓の外をぼんやり眺める絵里。
その辛そうな横顔…。
絵里の「心」が表に出てる。
絶対何かある。
私が見つける前、夜中に何があったんだろう…。
れいなはゆっくりと口を開いた。
「・・・何があったの?絵里、高台の斜面で倒れてたんだよ。」
――――――――
――――
――
- 124 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:15
- れいなは日にちが変わってしばらくたった頃、学校の真北の森の中で銃声を聞いていた。
その直後、近くの斜面からガサガサと草木が揺れる音がした。
おそるおそる近寄ってみると・・・少し上の斜面に、動かない人影。
その垂れ下がる手には黒い物が握られていた。銃だ。
それが絵里だった。
絵里は一本の図太い切り株につっかえていた。
「絵里?・・絵里?」
小さな声で何度も声をかけたが、ぴくりとも動かない絵里。
れいなは泣き出しそうになったが、
何気なく手をかけた腕はまだトクトクと脈を拍っていた。
しかも妙に熱いその身体。額に手をあてると・・・・
(熱がある!!)
でも薬は持っていない。
このまま絵里が苦しむのを見ていることしかできないのか・・・。
ここに居てはダメだ。どこか屋内に移動してできる限りの処置をしないと。
地図を広げて集落を探した。
(ここにはもう誰かいるかもしれない。他にどこか・・)
集落の北東に見つけたのが太い十字のマーク、それがこの診療所らしかった。
デイパックを二人分自分の肩にかけて絵里の身体をゆっくりと起こして背におんぶすると、
れいなはその場を出発した。
迷子にならないようにコンパスを握りしめて沿岸の茂みの中をゆっくり南下していった。
その途中、絵里は魘されているようにこう言い続けたのだった。
今にも泣き出しそうな悲しそうな声で。
「・・ごめん・・・・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・」
――
――――
――――――――
- 125 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:17
-
武器の銃はれいなの座っている椅子の向こう側の診察台の上に置いてあった。
そうだ。私、あの銃で人を撃ってしまったんだ。
「わたし・・矢口さん、撃っちゃった。」
すべてを覚悟した口調で絵里は暴露した。
心の中のモヤモヤが晴れたかと思うと、大きな不安がふくらみあがった。
れいなはなんとなく感づいてはいた。
あの銃声の近さ、直後の茂みのガサガサいう音、そして絵里の手に握られた銃…。
でもれいなの目は丸くなった。
予想していたことでも信じられるわけがない。
「矢口さんの手の中で、銀色の何かが光ったんだ。多分ナイフとかだったんだと思う。
茂みで音たてちゃったもんだから、ビックリしてこっちにそれ向けられたの。
私、殺されるのかなって恐くなって・・。
月明かりでそれが矢口さんだってわかった時には、引き金ひいた後で・・・・」
れいなは黙ったまま聞いていた。
熱で苦しそうな絵里の声は、まだ話を続けた。
「引き金ひいたらもっと恐くなってきてたの。
小さい身体から、赤黒い血が沢山、沢山・・・私そこから逃げだそうとした。
隠れてた茂みは斜面にあったから、それで足を滑らせたんだと思う・・。」
話しても聞き手も、静かに俯いた。
「私、人殺しちゃったんだ。
もしかしたら、れいなのこともいつか・・・殺しちゃう・・・の・・かな・・・」
恐怖に震えた声で言い終えた。目から涙がこぼれている。
れいなは顔をしかめた。そして席を立った。
逆側のベッドまで足を運び、何かがカチャッと音を立てた。
それは絵里にかかる布団の上にドサッと放り投げられた。
- 126 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:19
-
「ほら。」
肩がビクッと身震いした。
絵里の膝の上には銃がのせられたのだ。
矢口さんを、大先輩を撃ち殺したその銃が・・・
「いやぁっ!!」
小さく悲鳴を上げて、絵里は両手で頭を抱えた。
れいなは自分のポケットからアイスピックを取り出すとキャップを抜いた。
ギラッと鋭利な刃先が光った。
絵里はそれを凍り付いた視線で見ていた。
鈍い銀色の光に胸が痛んだ。あの時の光と同じだ・・・。
しばらくその刃先をまじまじと見やってから、れいなは口を開けた。
「絵里にこれ・・向けられないよ。
絵里だけじゃない。さゆにだって、他の誰にだって・・。」
れいなはアイスピックにキャップをしてそっとポケットに戻すと、絵里を見た。
「殺すんなら、殺された方がまし。
もし私のこと信じられないなら、今のうちに撃っといて。」
最後の方は涙声に聞こえた。
今の絵里に一番堪えられないフレーズ。殺すんなら、殺された方が・・・
自分を犠牲にしての質問だった。
どうなっても悔いはない。れいなは絵里の本当の気持ちを験したのだ。
もし絵里が本当にやる気なら、ここで殺せと言っている私なんて優位に殺せるんだから・・・
- 127 名前:B18 投稿日:2004/10/20(水) 16:19
- 「そんなこと言わないで・・・」
両手で頭を抱えたまま、絵里はぶんぶんと首を横に振った。
「独りぼっちは怖いから、・・絶対・・殺さないから・・・・私のこと、信じて。」
縋るようにれいなの両腕を掴んでもたれる絵里。
布団が盛り上がり、乗っていた銃がカランと音を立てて床に落ちた。
それを歯を食いしばって見下ろした。
矢口さんと遭遇した時、絵里はやっぱり混乱してたんだ。
だから引き金引いちゃった・・。
殺す気なんてこれっぽっちもなかったに違いないのに、
”殺される”それだけが怖いんだ。信頼できる仲間にすら牙を剥いてしまうなんて。
あのクソプロデューサーが変な言い分吹き込むからだ。
仲間殺すなんて、つらすぎるよね―――
「ごめん。きつい言い方して。」
れいなが小さな声で呟くと、絵里は首をまた横に振った。
その身体からは徐々に力が抜けていくのが感じられる。
緊迫して凍り付いたような二人の瞳から、熱い涙が流れた。
【残り12人。】
- 128 名前:113 投稿日:2004/10/20(水) 17:01
- 更新&テスト乙です。
それぞれに皆さん大変だぁ…
じりじりとした緊張感がナイスです。
次回も頑張ってください。
- 129 名前:マシュー利樹(旧名:習志野権兵) 投稿日:2004/10/20(水) 23:33
- ・・・とある事情により、HNを変えました。
次回からこのHNでお願いします。
それはさておき、テスト、そして更新、お疲れ様です。
そうですか・・・、この人でしたか。
予想した人物の中にまったく入ってませんでした・・・orz。
BRものには娘。以外にも色々とあったんですが、あるスポーツのBRもので
大人数でやり過ぎた為、収拾がつかなくなり気づいたら終わっていたってことが
ありました。
あまり、大人数でやるのも後々が大変になるんで今の設定がベストだと思います。
次回、更新を楽しみに待っています。
- 130 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/29(金) 22:45
- このBRシリーズはよく読ましてもらったんですけど、ほんとに泣けます。
続き…待ってます。
- 131 名前:優気 投稿日:2004/11/01(月) 21:35
- 更新滞ってて申し訳ないですm__;m
レス返しです。
128 >113番様
レスありがとうございます。
緊迫感ちゃんと伝わってましたか?よかったw^^
文章での雰囲気作りってなかなか難しいです…。
129 >マシュー利樹様
毎度毎度レスありがとうございます。
やはり書いてみて、この人数がちょうどいいなと思い直しますね。
メンバー一人一人の個性みたいのも、この人数ならちゃんと出せそうな気がします。
あとは自分の文章力次第っす;
130 >通りすがりの者様
お褒めの言葉どうもありがとうございます。
そういう言葉がとても嬉しくて励みになります。
自分に鞭を打ちつつ、頑張って更新していきたいと思いますので、
どうぞよろしくおねがいしますm__m
- 132 名前:B19 投稿日:2004/11/01(月) 22:08
-
麻琴と愛は集落を南東に迷走した。
そしてたどり着いたのは、崖の上に広がる野原。海が一面見渡せるところだ。
崖という行き止まりに行き着いて、愛はようやくその足を止めた。
力が抜けたように野原に跪くと恐怖に泣き崩れた。
走り疲れた二人は、大きな樹の下にポツンと佇む岩に腰掛けている。
愛の涙は止まらない。
もう泣きやんだかと横をみると、その瞳からはまだ涙の筋が頬を濡らしていた。
そろそろ動き始めようと励ますように言って、とりあえず支給のパンを食べ始めたのだが、
二人に会話はなく沈黙が続くばかりだった。
重苦しい沈黙。
引き裂けないくらい厚い壁に覆われているような圧迫感。
それをかき消したのは枯れ果てた愛の声だった。
「まこっちゃん…」
「ん?」
ずっと俯いたままだった愛は水平線のあたりを仰いでいた。
麻琴は目をしっかりとその朝日を浴びた横顔に向けた。
「私たちさ、娘。に入れて、よかったんだよね…?」
「もちろんだよ。」
麻琴はうんと深く頷いた。
「憧れてた人たちにも会えた。
あさ美ちゃんにも会えたし、里沙ちゃんにも会えたし、まこっちゃんにも…」
「うん。」
愛はメンバー一人一人を思い出すように、名前を口にした。
麻琴もメンバーの名前が挙がる度、喉の奥でうんうんと低い返事をした。
脳裏に浮かぶメンバーの顔。
今頃みんなどうしているんだろう…
心の奥でそう呟くたび、皆と引き裂かれた戦場に居るんだと痛感する。
- 133 名前:B19 投稿日:2004/11/01(月) 22:09
- 昨日から殆ど何も食べていなかったのだが、愛は一口しかパンに手をつけていない。
愛はパンと持った手を膝の上に力無く下ろした。
「楽しかったよ。」
「・・・え?」
言葉に耳を疑った。
愛のただならぬ雰囲気を察して、もう一度彼女の横顔を見つめる。
黙ったまま愛は頷いた。麻琴は息をのんだ。
「ねぇそれって・・・」
「誰が味方で、誰が敵かなんてわからないじゃん。
私今はこうしてまこっちゃんといるけど、きっともう他の誰も信用できないと思うんだ。
・・・仲間なのにね。恐いよ。」
愛は自分の足下に視線を落とした。
「だけど…」
「後藤さん…変わっちゃったよね。」
返す言葉が見つからなくて、黙りこくった。
愛はどんどん胸の内を明かしていく。
「メンバーのそんな姿、見たくないもん。
誰かが苦しむ顔も、誰かが悲しむ顔も・・・・・」
ニッコリと笑って、水平線のもっと向こうを見るように顔を上げた。
愛の目から流れる涙がきらっと光った。
「…もう…見たくないよ…。」
語尾が震えた。
その気持ちは麻琴も同じ。
こんなところ居たくもないし、皆が悲痛に顔を歪めるのも見たくない。
弱り切っていた。
「こんな所…、いるだけで辛いから…。」
座っていた岩の足下に自分の荷物を置きっぱなしにしたまま、愛は立ち上がった。
- 134 名前:B19 投稿日:2004/11/01(月) 22:12
- 手にしていたパンはいつの間にか地面に落ちていた。
ずっと座っていたせいか足下はフラフラしている。
「愛ちゃん!!?」
麻琴もそれに続いて立ち上がった。
愛の細い腕を掴んで引き戻そうとする。
「何考えてんの!?みんなで逃げようよこんな所!!」
激しく首をふると、愛の目から涙が飛び散った。
ヒクヒクしている呼吸を懸命に整えてから、愛ははっきりと言った。
- 135 名前:B19 投稿日:2004/11/01(月) 22:12
- 「会えてよかった。大好きって。里沙ちゃんとあさ美ちゃんに会えたら、合流できたら伝えておいて。
そしたらまこっちゃんも二人と一緒に逃げてよ。東京に戻って・・ね?」
麻琴は頷かなかった。
強張った身体がガクッと膝を曲げ、ゴツゴツした岩肌に膝立ちになった。
愛の腰部にしがみついてなんとか引き留めようとする。
なかなか言葉が言葉にならなかった。
「勝手すぎるよ!・・・っ愛ちゃん!!」
必死に縋る麻琴の頭を、愛はそっと撫でた。
麻琴の肩がピクッとすくんだ。
「まこっちゃんは強い子だから、きっとみんなと会える。私弱くて・・・。ごめんね。」
麻琴はブンブンと首を横に振った。
優しい声。
もう二度と聞くことができなくなってしまうような、それくらい優しい声。
”悲劇のヒロイン”ってきっとこんな声をしていて、こんな表情を浮かべるんだろう。
「大好きだよ…。」
そう言うと、愛は振り返ってうっすらと微笑んだ。
疲れ切った笑顔‥。
「やめてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
麻琴は叫んだ。
次の瞬間見えたのは、特攻服を強い海風に靡かせて宙に浮かぶ愛の姿。
しばらくして、波の音とは不規則にしぶきをたてる音が、たしかに聞こえた。
もし私があの時、石川さんが死んでいたことを言わなければ…?
もし私があの時、仲間を殺す後藤さんを見つめる愛ちゃんの瞳を押さえて視界を閉ざしていれば…?
愛ちゃんを追いつめなかった?
脚が竦んで立ち上がれないまま、麻琴は崖の下を覗き込んだ。
波と岩しか見えない。
愛を飲み込んだあの波と愛を叩きのめしたあの岩しか…。
麻琴は泣きじゃくる以外、何もできなかった。
弱り切った愛は、最後の勇気を自分の死に使ってしまった。
【残り11人。】
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 23:44
- うわー。鳥肌立っちゃいましたよ。
高橋・゚・(ノД`)・゚・。 マコがんばれマコ
後藤さんと吉澤さんが気になります。
次回も頑張ってください。
- 137 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/11/02(火) 01:26
- 更新、お疲れ様です。
なるほど!
上手い!!――って感じっすね。
あの場面をこう使ったか――と。
でも、個人的には・・・orz。
- 138 名前:優気 投稿日:2004/11/21(日) 21:25
- 136 >名無し飼育さん様。
御感想ありがとうございます。
後藤さんと吉澤さんはあともうちょっとしたら出てきますよ(w
待っててくださいね^^
137 >マシュー利樹様。
実は自分も、書きながら凹んでました。
自分自身紺野推しであり5期推しであるし、ここで高橋を殺してしまっていいのかなと悩みました。
けど悩んだ結果こうしました。
変な言い回しになりますが、おそらくこれが最適なんじゃないかな…と。
この後も麻琴が頑張ってくれるはずです(ぇw
どうぞ見守ってくださいm__m
- 139 名前:B20 投稿日:2004/11/21(日) 21:27
-
「・・・嘘だ・・・」
あさ美は無意識のうちにそう洩らした。
昨晩教室で視線を交わしていた愛ちゃんが・・・・死んだ。
午後0時、三回目の島内放送があった。
(「6時から今までに死んだんは、藤本美貴と高橋愛。
順調やな〜嬉しいわぁ。この調子でどんどんぶちかましてや!」)
なんで?原因は?なぜ愛ちゃんが死ななければならないの?
私がメモでも渡して合流していれば死なずにすんだの?
愛ちゃんを殺したのは・・・誰?
荒いため息を吐いた。
今にも狂い出しそうな気持ちを必死に抑えた。
涙が勝手に流れ出るその瞳の奥には深い悲しみと怒り。
皆どうしちゃったんだ。
石川さんも矢口さんも藤本さんも・・・
誰にやられたの?・・・許せない。
昨晩7−Fに身を潜めた紺野あさ美・新垣里沙の二人は、そこからまだ動き出していない。
うっすらと明るくなり始め、眼中には島の北に広がる大海原が写った。
怯えきった里沙は深い眠りについていた。
大海に朝日が昇ってきても、起きる気配はまったく見せない。
一方のあさ美は恐くて目が冴えてしまい一向に眠れなかった。
もしかしたらうたた寝してたかもしれないけど、そんなのわからない。
今は里沙と一緒にいるけど、果たしてこれからどうなるんだろう。
また誰かに会えるのかな?
私たち、どうなるんだろう。
こんなところもう逃げ出したいよ…。
そんなことをぼーっと考えて弱っているところに、死の放送が入ったのだ。
大事なメンバーが死んでしまうのは辛い。
けど、愛は一緒に苦楽を共にしてきた、もっと大切な仲間。
愛と麻琴と里沙と、あさ美。4人で頑張ってきた。
その同期の仲間が一人死んだ。
どうして私だけ生きてるんだろう。
変な罪悪感があさ美を襲った。
どうして愛ちゃんだけ死んで、私が生きているんだろう…。
- 140 名前:B20 投稿日:2004/11/21(日) 21:29
- 嫌みったらしくも地図の裏に16人の名簿が印刷されていた。
しかも行の最初、つまり名前の先頭には、チェックを入れるための四角まであった。
もう夜中のうちに亡くなってしまった3人にはチェックが入っている。
こんな惨いことをする自分自身が嫌だった。
そして今、藤本美貴、そして高橋愛にチェックを入れる時。
躊躇ったが…仕方がない。
把握しておかなければならないことだ。
赤いペンを握った拳がチェックを入れるのを拒むようにガタガタと震えた。
左手でペンを握った手を押さえつけ、ゆっくりと印をつけた。
頬の辺りが引き攣って自分がまたも泣きそうなことに気がついて、
必死に唇を噛みしめた。
隣からほぉと一呼吸吐くように空気が動く音がした。
また里沙の方に目を向ける。
こちらに背を向けて眠っている里沙が、また肩でほぉと深呼吸したのがわかった。
けどそれが、無意識的なものではないように見えなくて。
「・・・・里沙・・ちゃん?」
里沙は起きていた。
ゆっくりと腕をついて起きあがって、乱れた髪を整えた。
まっすぐ正面を向いて体操座りした時に見えた里沙の横顔が悲しげだった。
「もう・・・しょうがないよね・・・」
里沙の声はすっかり枯れていた。
その頬には筋の跡が残っている。
全然気づかなかったけど、放送を聞いてからずっと泣いていたのかな。
「・・・愛ちゃん・・・」
里沙は膝に瞳を押しつけるようにして俯いた。
誰かに見つからないように、声を押し殺して泣いている。
- 141 名前:B20 投稿日:2004/11/21(日) 21:30
-
しょうがなくなんてないよ…
あさ美の心がそう叫んだ。
瞳の奥が一気に熱くなり、涙が出てきた。
けど…
「みんなに、…会えるといいね。」
くよくよしてられない。
自分に鞭を打って、あさ美は笑顔を作った。
私が里沙を引っ張っていかないと。
私がくよくよしてたら、私も里沙もずっとくよくよしたままだ。
きっと大丈夫。
生きて帰れるはず。わかりあえるはずだよ。
だって仲間じゃん、私たち。
生きなきゃ、この状況で。
里沙の方を向いた。
その視線に気が付いたようで、里沙は伸ばした足に落としていた視線をあさ美の方に向けた。
不思議そうな顔をした。
里沙の目の前には、涙を流しながらも懸命に笑顔を見せているあさ美。
「きっと会えるよ。」
いつもは白い顔の肌も、泣いているせいで紅くなっている。
そんな笑顔の前ではなぜだか素直になれた里沙。
「・・まこっちゃん・・・・」
吐息するのと同時に麻琴の名前が出た。
泣いて乱れた呼吸を整えるように深呼吸してから、里沙は続けた。
「まこっちゃん、・・・安倍さんにも、・・・・みんなに、会いたいな・・・」
一生懸命に涙を拭きながら言った。
その横顔をじっとあさ美は見つめていた。
「会えるよ…ね?」
あさ美はコックリと深く頷いた。
少し照れくさそうに笑った。
里沙も笑った。
- 142 名前:B20 投稿日:2004/11/21(日) 21:31
- ―――――
―――
―
しばらく、気持ちを落ち着かせた。
その間に食事をとった。
泣いてすっきりしたせいか、落ち込んでいた心も少しは楽になった。
本当にほんの少しだけど。
あさ美は傍らに置いておいたデイパックを掴んだ。
里沙も、あさ美が次の行動に移ろうとしていることに感づいてデイパックを手に取った。
「じゃあ…」
あさ美は、ずっと座っていた木の根本から腰をあげた。
「そろそろ移動しようか。」
「うん。」
あさ美の手を借りて、里沙も立ち上がった。
広げた地図を二人で見下ろし、禁止エリアを考慮に入れた上で次の場所へ。
きっとみんなに会える。
それだけを信じて。
【残り11人。】
- 143 名前:優気 投稿日:2004/11/21(日) 21:45
- 以上B20を掲載させていただきました。
「今月まだ一話しか載せてねぇ…!」と急いで仕上げてしまったせいで、
こんな文です_┃ ̄┃○すみません。
次のB21は、特に激しく改訂する部分もなく、すぐに仕上げられましたので、
載せさせていただきたいと思います。
が、その前に、詫びるべきことが一点ありまして。
B15のレス100番で、
後藤真希の所有している武器について「黒い武器―銃―」という書き方をしましたが、
文章上の武器の性能からして、完全にマシンガンです(w
昔書いた物を改訂する上で、訂正するのを見落としてしまいました。
すみませんm__m深くお詫び申し上げます。
それでは、B21を続けて上げさせて頂きたいと思います。
- 144 名前:B21 投稿日:2004/11/21(日) 21:47
-
張りつめた雰囲気。
血に塗りつぶされた美貴を見下ろす真希。
そして、腰が抜けてなかなか立てないでいるひとみ。
真希の視線が美貴から離れるまで、結構な時間がかかったように思えた。
それくらいに空気が緊張していた。
「ん?」
眉間にしわを寄せて真希はじっとひとみを見やった。
…まずい。
ひとみは心の中で呟いた。
けど、逃げる気はまったくしない。
大好きなごっちんだから。大事な仲間だから。
だけど、実際問題・・・殺されてもおかしくない。
「ごっごっちん?」
そう念じて冷静を保って接そうとしても、声はおもいっきり震えてしまった。
額をゆっくりと汗が流れ落ちる。
息づかいも些か荒くなってきている。
近づいてきた真希は、ひとみの傍らにしゃがみこんだ。
息を呑むひとみ。
手に握られたマシンガンは・・・・静かに下ろされた。
塞がっていない左手で、力無く垂れ下がったひとみの手をそっと持ち上げた。
手の甲は真っ青に腫れてしまっていた。
それが、数時間前の話。
- 145 名前:B21 投稿日:2004/11/21(日) 21:50
- 応急処置が必要だと、真希はひとみを連れて農家の住宅棟に向かった。
真希にしてみれば「向かった」というより「戻った」と言った方が正しいみたい。
ひとみを案内するような、慣れた足取りだったからだ。
集落でひとみに会うまで彼女はそこで過ごしていたらしかった。
集落には美貴のようなメンバーが、他にも潜んでいるかもしれなかったし、
農家にも真希が居ない間に他の誰かが入っている可能性もあったのだが・・。
ひとみを一休みさせてあげたかったのだ。
とにかく、美貴の悲惨な姿を見てしまった以上(そうさせたのは何を隠そう自分なのだが)
ひとみをあの場に居させたくはなかった。
真希は集落まで使えそうな物を探しに行っていたのだ。
農家には・・物がなさすぎる。
本当に人が住んでいるのか。きっと老夫婦が営んでいるのだろう。(匂いがそんな感じ。)
必要最小限といったところか。
救急箱の中には、残り半分以下の消毒液やら温湿布が少しずつしか入っていなかった。
他の家屋になら何かしらあるかと、集落に出向いたのだ。
家々を荒らし回るといろいろ出てきた。
消毒液もほぼ一軒に一本は出てきたし、
湿布だって冷湿布だし、風邪薬や頭痛薬や鎮痛剤なんかも出てきた。
そしてその途中でひとみと美貴を見つけた。
美貴に殴り殺されそうになっていたひとみを救ったのはまったくの偶然だった。
ひとみは屋内へ入ると、
部屋の真ん中に置かれたソファーに腰を下ろし、足下にデイパックをドサッと置いた。
右手の痛みは増し、致命傷ではないもののその激痛に意識が朦朧としている。
真希は静かにドアを閉めてくると、ソファーの前のローテーブルにデイパックを置いた。
マシンガンは依然として持ったままだ。(替えの銃弾の箱はポケットに入っているようだった。)
ひとみの横に先ほど射止めた美貴から奪い取った金属バットを立てかけた。
何か遭った時、ダーツの矢などでは何も対抗できないからだ。
- 146 名前:B21 投稿日:2004/11/21(日) 21:52
- 真希はひとみの傍らにしゃがむと、だらんと力の抜けたひとみの右手をすくい上げた。
さっき見た時よりも更に手の甲が腫れてきている。
ひとみは脂汗をかいた苦しそうな顔つきだ。
真希はデイパックから取り出したペットボトルの封を切り、手の甲に水をかけた。
ヒヤッとしたかと思うと、ジンジンと疼く。
ひとみは歯を食いしばり耐えた。
ポケットからタオルを取り出して、しっかりとひとみの手の甲の水分をふき取る。
その上にそっと小さく切られた湿布を乗せた。
そしてそれを包むようにしてその上から更に包帯を巻いた。
真希の口が「よし。」と言うように動いた。
その光景を見てひとみは思い出した。
そうだ。ゴッチンしゃべれないんだ・・・。
真希はそのまま、自分のデイパックをあさり始めた。
「ねぇ。本当に話せないの?」
もちろんその返事は返ってこなかった。首くらい振ってくれたっていいじゃん。
今までの真希の表情とは確かに違っている。
笑顔が想像できないほど強ばり、瞳はどこか悲しげだ。
ひとみもゆっくりとソファーから立ち上がり、何かを捜し始める。
包帯で利き手が動かしにくかったがお構いなしだ。
棚で捜し物をしているひとみに真希が歩み寄ってきた。
真希は箱から銀色のシートを引き出し、カプセルを二つ押し出した。
そのカプセルの入っていた箱を見せた――鎮痛剤だ。
カプセルの粒をひとみが差し出した手のひらに乗せた。包帯の巻かれた不安定な右手だった。
「何かいって。手なら使えるでしょ?」
包帯の上でコロコロと転がる薬を落とさないように握りしめ、ゆっくりと右手を下ろすと、
続けてひとみが真希に差し出した左手には、開いたケータイが握られていた。
その画面は、メール新規作成画面。
一番上の[本文入力]の表示の左下、文章を打ち出す黒い四角がチカチカと点滅している。
- 147 名前:B21 投稿日:2004/11/21(日) 21:53
-
「ゴッチンと話がしたい。」
表情をまったく変えることもなく真希はそれを受け取った。
肩が下がり、ため息を吐いたのがわかった。
そのまま真希はソファーの端っこに座った。ひとみが荷物を置いたところとは反対側だ。
ひとみはデイパックから自分のペットボトルを出した。
見やると、離れて座っている真希はケータイに打ち込んでいるようだ。
ひとみはその光景を横目にカプセルを二粒飲んだ。
喉がゴクゴク鳴る音と、ケータイボタンのカチカチという音が静かな室内に響く。
ペットボトルのキャップを閉めようとしたちょうどその時、
ひとみの手元にケータイを握った真希の手が伸びた。
”何話したらいいかわかんない。”
ぷは〜と息を吐いたひとみに差し出された画面には一言そう打ち込まれていた。
自分と反対方向を向いている真希。
表情はわからない。
「じゃあ、うちが何か聞くから答えて。」
ひとみはソファーに左手をついて、真希の隣に詰めて座った。
「前も参加したってのは本当?」
入力することもなく、真希は頷いていた。
「優勝者・・ってことは、ゴッチンも殺したってこと・・?」
ひとみは躊躇いながらも至って単刀直入に尋ねた。
真希はまた頷いた。
「そっか・・・」
真希は歯を食いしばったまま更に深く俯いた。
こんな所で正気を失ってしまったなら自分は何をしでかすかわからない。
自らにそう暗示をかけながら真希はひとみの質問に答えた。
「一年間何してたの?」
”入院してた”
「怪我?」
”それもある。”
「じゃあなに?」
”覚えてない。気持ちが落ち着かなかったんだと思うけど”
「大丈夫なの?」
”今は。・・・でももしかしたらよっすぃーのこと殺しちゃうかもよ”
真希の脳裏によみがえるのは、今から一年前のこと。
そこには、今とまったく同じ状況の自分がいる。
――――――――
――――
――
【残り11人。】
- 148 名前:konkon 投稿日:2004/11/22(月) 03:33
- 真希の過去に何が・・・
交信期待してます!
- 149 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/11/23(火) 22:14
- 更新、お疲れ様です。
前の参加メンバーが気になる今日、この頃。
優勝候補の1人が脱落した事によって、益々、混迷が催してきましたね。
一体、誰が優勝するか(主役でさえ、分かんない)。
今から、取り合えず後藤の過去を予想しながら、次回更新を待ってます。
頑張って下さい。
- 150 名前:優気 投稿日:2004/12/10(金) 23:37
- 1ヶ月近く空けてしまいましたm__;m
テスト終了により復帰しましたので、また頑張らせていただきます。
148番 >konkon様
レスありがとうございます。
後藤さん結構な(?)過去を抱えてるんですよ。
彼女は重要な役所だと思いながら書いています。
149番 >マシュー利樹様。
前の参加メンバーは、それこそ本当に一般人(w
その中に一人後藤真希。といった感じの設定になってます。
- 151 名前:B22 投稿日:2004/12/10(金) 23:39
-
BRとは、
通常中学3年の(運悪く)選ばれた学級が行う実験のようなものだったが、
真希がいる某都内高校で特別企画として実行された。
もちろん後藤真希が居るクラスだということが理由で行われた訳で、
クラスの生徒は真希を憎悪し、
真希を消すことを目論んでいた。
しかし真希の味方をしてくれる女子生徒が1人だけいた。
その子はクラスではあまり目立たない方だったが、どちらかといえば仲はよかった。
”そんな”者同士。
2人はこの戦いの中生き残り脱出することを誓った。
その子は銃、真希はナイフが武器だった。
とにかく殺した。
真希を襲おうと現れる・あるいは潜んでいるクラスメイトを。憎悪したクラスの輩を。
恐い物はない。片っ端から殺していった。
生き残ることだけを考えていた。
どうにか方法を練ってこの地獄から二人揃って逃げ出すつもりだった。
そしたら東京に戻って―――――
しかしそれは叶わなかった。
裏切られた。
真希の味方をしてくれた女子生徒も敵だった。
生存者が遂に2人になると、真希に銃口を向けてニッと笑みを浮かべた。
真希は、殺したクラスメイトの手からもぎ取った銃を、
その子の胸に向けて引き金を引いた―――
―
―――
―――――
- 152 名前:B22 投稿日:2004/12/10(金) 23:41
- そして、これはひとみには伝えなかった事だが、
その後真希は自殺を図ろうとした。
しかしナイフは誰かを殺したときに刺さったまま、
今自分が手にしている拳銃にはもう弾は入っていない・・・・
――死ねない。
身を投げようと崖を目指して走っているところを、数名もの兵士に取り押さえられた。
死に損なった真希は愚かにもこの殺し合いの「優勝者」として東京に戻った。
そうして去年の秋から続いた入院生活。
気が付いた時にはもう「後藤真希歌手活動休止」という事実は知っていた。
現に今、自分が健康と言うにはほど遠い状態だった。
身体的にも良い状態ではなかったが、それ以上に精神的な面でも到底健康とは言えない。
窓の外をボーっと眺めながら無意識のうちにニヤッと笑っていたことだってあったし、
病室を抜けて、脱走して、暴れたまわっていたところを抑えられたことだってあった。
今だって完治したわけじゃないし、またそんな悪夢の状況に引き戻されたわけだ。
いつ狂いだしたっておかしくない。
もしよっすぃーが裏切ったら?
その時はまた、引き金を引くの…?
――――
―――――――
―――――――――――
- 153 名前:B22 投稿日:2004/12/10(金) 23:44
-
”わたしが狂ったらどうするの?”
真希は文の最後に、一行付け加えた。
冷静を装った。
けど、悲しい一言だった。
ケータイを渡した真希の奥には不安が浮かび上がっていた。
何をしだすかわからない。
罪もないヨッスィーを殺してしまうかもしれない。
自分で自分がわからない。自分が、恐い。
もしそうなるんならよっすぃーは自分と一緒にいないほうがいい。
もし私が怖いなら、逃げて…。
真希はただ目を瞑った。
一人一人がしっかりしなければならない状況で、今、自分を信じることすらできない。
そんな奴が他の仲間に信じてもらえるとでも思ってるのか…?
耐えない不安が真希の脳裏にあふれ出している。
その膝の上で強張っている拳を、ひとみの温かい手が握りしめた。
ひとみは首をゆっくりと横に振った。
「ミキティ撃った後すごく悲しそうだったよ。」
真希はひとみの方を向いた。
ひとみは手を握ったまま、正面を向いて言った。
- 154 名前:B22 投稿日:2004/12/10(金) 23:45
- 「信じられない」そんなキョトンとしたままの表情で、ひとみを見つめた。
「気づいてないっしょ?」
こっくりと頷いた。
案の定、気づいていなかった。
あの状況でそんな自分の気持ちになんて気づこうともしなかった。
それに撃ち殺したんだ。
またニヤッと笑みでも浮かべているかと思ってた・・。
「ミキティ見て悲しめるんだよ・・狂ってなんかない。
だから大丈夫。ゴッチンはうちのこと殺さないよ。」
泣いている子供を慰めるような口振りだった。
「長い仲じゃん。うちは裏切らないよ。絶対。」
横目で見たひとみはうっすらと笑みを浮かべている。
拳を包む込み掌にグッと力が入った。
「信じるよ。何があっても。」
ひとみはそう言うと照れくさそうに頭をかいている。
真希の肩からほぉと力が抜けていった。
ぶるぶると震えてきた唇をきゅっと噛みしめた。
その震えはすぐに止めることができた。なんで?涙が出そう・・。
すると自然にふっと息が洩れた。
「やっと笑った!」
ひとみは真希のこめかみを拳でどついた。
涙越しにぼやけてひとみが見えた。
「今度こそ帰ろう。一緒にさ。」
笑みを浮かべて真希は頷いた。
どんなときも変わらない仲間が居てくれたことに対する、安心。喜び。
一年前も、今も、辛いのは同じ。
他人を殺してしまった酷い罪悪感も同じ。
だけど、あの時死ななくてよかった。
仲間が居るってわかった。
生きててよかった。
【残り11人。】
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 01:28
- 一気に読ませて頂きました。
他のBRものも読んだことあるんですけど、後藤さんは、最初から狂人という設定が多い中、少し違った設定が新鮮ですね。
更新、頑張ってください。
- 156 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/12/11(土) 21:51
- 更新、お疲れ様です。
ふぅ・・・、取り合えず保田がいなくて良かったです。
確かに後藤が狂人って言う設定は多かった。
狂人はTプロデューサーだけで十分。
- 157 名前:優気 投稿日:2004/12/23(木) 20:38
- 亀井絵里さんお誕生日おめでとうござい!
優気です。
155 >名無し飼育さん様
レスありがとうございます。
新鮮だと言っていただけると嬉しいです。
1年前のことで狂いきって、鬱っぽくなってる後藤さんですね。
頑張らせていただきます^^
156 >マシュー利樹様
ありがとうございます。
圭ちゃんは小説で書いたことのないキャラクターなので、
おそらく彼女が居たら書けていなかったと想います。(w
- 158 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:39
-
愛が命を絶ってから数時間が過ぎていたが、
麻琴はしばらくその場所から動かずにボッーと仲間を吸い込んでいった海原を眺めていた。
取り残され、独りにされたけど、憎悪はなかった。
ただひたすら寂しい。
何もやる気が起こらない。ずっとここに居ようかとも考えた。
ここにいたって誰にも迷惑はかけない。
誰かが武器を向けてきたときには、こっちにだってボウガンがある。
変に森に入っていくより、ここにいたほうが安全なんじゃないか?
そう考えてしまうと、なかなかここから動き出せずにいた。
でも、それはいけない気がした。
ずっとここに居たいという自分の気持に反して、そう訴える自分もいる。
次に響く銃声が、あさ美の死を告げる物でも里沙の死を告げる物でも、おかしくない。
―――里沙ちゃんとあさ美ちゃんに・・・・・・・・・・・伝えておいて。―――
不意に愛の言葉が脳裏によみがえった。
耳元でささやいているかのようなそんな優しい声が。
―――私弱くて・・・。ごめんね―――
私が愛ちゃんを止められなかったこと、
私が愛ちゃんを守りきれなかったこと。二人に謝らないと。
愛ちゃんの気持。私の気持。
・・伝えなきゃ。二人に、会わないと・・・・!!
- 159 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:41
-
こうして、麻琴はようやく崖の岩から腰を上げたのだった。
どれくらい歩いただろうか。
でもかなりゆっくりのペースで歩いていた。
歩いているというより、ふらついているといった方がいいのかもしれない。
まださっきの衝撃が頭を離れていなかったから。
ショックから、脳まで血が通っていない様な感覚。なんだかひやっとする。
でも夢中に、必死になって、あさ美と里沙を探した。
愛の形見とも言える支給の探索機を片手に。
茫然と歩きっぱなしだった足を止めた。
ふとして、その黒い画面に目を落とした。・・青い点。それも二つ。
麻琴は辺りを見回した。
「あさ美ちゃん?まめ?・・・・誰なの?」
しかしその時、銃口が麻琴にピンポイントされていた。
茂みの中に、小さく聞こえた何かの武器をいじるような音。
麻琴は身をすくめたが、もう遅かった。
バキュンバキュンバキュン・・バキュン!――――
自分の後ろでその音を聞いた。
背中がカッと熱くなると、麻琴はそのまま砂ぼこりを立てて倒れた。
ボウガンを握った手からは力が一気に抜け、地面にたたきつけられた。
「命中♪」
満足げなその声が徐々に近づいてきた。
・・辻希美だ。銃口から上がり煙をフーッと吹き消した。
その後ろからは加護亜依。倒れた仲間を冷たい目で見つめていた。
麻琴の背に開いた三つの赤い穴を。
- 160 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:42
-
続いて、左腕にも銃弾が撃ち込まれたらしい。
倒れた衝撃で更に痛みが跳ねた。
隣に立ちすくむ亜依は、少し息があがっていることがわかった。
「ほら!あいぼんも!」
希美にポンと肩をたたかれると、麻琴の元に走り寄った。
・・・へへっ・・・
亜依は俯せに横たわる麻琴の上に乗っかり馬乗り状態になった。
そしてそのまま止めをさすように手にしていたナイフを振りかざす。
亜依を振り落とそうともがくも、
麻琴には自分の背中の上で何が起きているのかわからなかったが、
しばらくして今度は脇腹に激痛が走った。
ブシュッとリアルな音がして血が飛び散った。
脇腹が引き裂かれたのだ。
亜依は血の滴ったままのナイフを抜き、立ち上がった。
「くっ・・・・!!」
麻琴は歩く亜依の足にしがみついた。
すると亜依は、そのまとわりつく麻琴(ほぼ顔面)を蹴った。
その表情は・・・・もう・・・・正気ではない。
- 161 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:44
- 今度は足。左足。
そのナイフの冷たい激痛がギリギリと麻琴を苦しめた。
「ねぇ〜これ抜けないんだけど〜」
亜依がナイフの柄を引っ張る度、
麻琴の足はもう引きちぎれそうに(まぁそうだけど)ドクドクと痛みが響いた。
「・・・ぁぁああっ!!!!!!・・・・っっっぐぅぅ・・・・・」
「もういっか。このままで。」
「そのままの方が厳しいでしょ。麻琴にとっちゃぁ。」
飽きたおもちゃを放り出すかのように、亜依は希美の元に戻っていった。
「ふっふ・・・2人目〜♪」
返り血を存分に浴びた亜依は満足げな笑みを見せた。
「結構いけるね。」
「っしょ?」
二人はパチンと互いの手をあわせた。
亜依の左手には、麻琴のボウガンが握られていた。ちゃっかり持っていかれた。
・・まぁいいか。もう使わないよね・・
「でもどうしよう。あたしもう武器ボウガンしかないよ。」
「誰かからパクってけばいいじゃん。銃でもなんでも。」
痛みに耐えながら必死にこじ開けた麻琴の目には、森の奥に消えていく二人の後ろ姿が見えた。
銃声・悲鳴の木霊した6−Hエリアは、また静寂な茂みに戻った。
- 162 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:45
-
吐き気がするくらいの痛み。
横を向いて倒れたままの麻琴は、蹲ろうと足を丸めようとした。
しかし足が・・動かない。
そこで更に激痛が走った。
麻琴の足に刺されたナイフは、足を貫通し、地面にまで突き刺さっているのだ。
その足に目をやり確認したところで、もう絶望。
(ちきしょお・・・!)
もがいて顔を左右に動かすごとに砂利が音を立てた。汗で顔に砂がこびり付く。
意識がもうろうとして、視界がぼやけてきた。
腕の感覚、背中の感覚、足の感覚がまるで無い。自分じゃないみたいに。
それでも頭だけはちゃんと働いている。
―――里沙ちゃんとあさ美ちゃんに・・・―――
・・・・会いたい。会わなきゃ、どうしても。
- 163 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:45
- その二人がどこに居て何をしているのかわからない。
でも放送で名前はあげられていなかった。
12時から今までに死んでいなければこの島のどこかで生きているはず。
自分を襲ったした2人だってもうどっか遠くに行ったに違いない。
愛ちゃんからの伝言伝えなきゃ・・・
それに・・自分の最後の我が儘、きいてあげよう。
目の前には大空が広がっている。いつもと変わらない大空・・。
二人だってこの空の下で生きている。そう信じて。
「あさ美ちゃ〜ん!!里沙ちゃぁん!・・・・」
もう誰に見つかってもよかった。こんな悲痛もうすぐ終わるんだから・・。
引き裂かれた真っ赤の脇腹をかばいながら、麻琴は最後の力を振り絞ってそう叫んだ。
喉の奥から熱い何かがこみ上げてきた・・血だ。
どす黒い血が自分の口から噴水のように溢れ出て、それと同時に首を横に倒した。
自分でも驚いた。
感覚を無くしたはずの背中が、ギリギリと痛みを感じている。
薄れ行く意識の中に同期三人の笑顔が浮かんだ・・・・辛いのに顔が綻ぶのがわかった。
笑顔ってすごいな。こんなに苦しいのに笑ってるよ自分。
「・・・会い・・たい・・・」
- 164 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:47
-
あさ美は、ピクッと肩をすくめた。
「ねぇ・・今の聞こえた?」
「うん・・・名前呼ばれたよね?なんか聞き慣れた声。」
そう言った後で、その表現が不適切な言い回しだと里沙は思った。
聞き慣れた声・・・今の声以外だってそうなんだから。
でも、他のメンバーの誰よりももっともっと聞き慣れた親しい人の声だったような―――
「向こうのほうから聞こえた。」
顔を見合わせて、お互い頷いた。
あさ美は地図とコンパスを広げてた。
7−Fにいたあさ美達は、そこから東の海岸を目指していた。
その途中で聞こえた声。
おそらく南西の方から・・・距離は近い。
「誰だろう。私たち呼んだの。ねぇ。行こうよ。」
時計を見て、あさ美は首を振った。
「だめ。6−Hのあたりだよ。3時には禁止エリアになっちゃう。」
「今何時なの?」
「・・2時46分。」
「・・・。」
里沙は何も言い返せなくなった。
あと10分ちょっとしかない。そこに着く頃にはもうタイムリミットぎりぎりだ。
危険に飛び込むようなことだけはできなかった。それこそ自殺行為だ。
「あきらめよう。」
納得のいかない里沙の表情を窺って、あさ美がそう言い切った。
- 165 名前:B23 投稿日:2004/12/23(木) 20:47
- すると、少し考えてから里沙の口が開いた。
「今の・・・・まこっちゃんじゃない?」
あさ美はビクッとした。
「聴いたでしょ?」と里沙は続ける。
「いつも元気な、仲間がさ・・・・・呼んでるんだよ。
苦しそうな声で・・泣きそうに聞こえなかった?」
あさ美にだってわかっていた。あの声の主が麻琴だってことくらい。
その事実には目を瞑っていた。
こうなっては、自分の命を優先するしかない。
「愛ちゃんに・・・さよなら、言えなかったんだよ。
せめて・・・・せめてその人・・まこっちゃんにだけでも・・・さ・・。
もしそこで・・・時間がきても・・悔い・・ないよ。」
それで里沙の言葉は終わった。途切れ途切れででも最後まではっきりとした口調だった。
あさ美が見た里沙の目は、覚悟を決めて輝いていた。
里沙には仲間を思う心があった。例え危険を冒してでも。
自分と里沙のふたりだけのことしか頭になかったことが、恥ずかしく思えた。
「わかった。」
あさ美は周りのものをまとめ始め、里沙にもそれを促した。
そしてふたりは立ち上がった。
「その代わり約束して。」
向こうを向いていたあさ美が、勢いよく里沙に向き直った。
「まこっちゃんに、”さよなら”は言わないよ。」
里沙は大きく頷いた。
ふたりは手を繋ぎ、林の中を駆けていった。
――――午後2時49分。6−Hタイムリミットまで、あと11分。
【残り11人。】
- 166 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/24(金) 00:31
- うわぁー…
ネタバレになりそうなんでうわぁーとだけw
- 167 名前:優気 投稿日:2004/12/25(土) 14:52
- 166 >名無し飼育さん様
まさにうわぁーですねw
この辺りのシーンは念入りに何度も書き直しを加えましたが、書いてて自分も顔が歪む感じです。
このメンバーの中で一番”痛い”のは小川だと想います。
まこっちゃんファンの皆さますみませんm__;m
年末年始はしばらく更新が途絶えると想われるので、
今のうちに切りのいいところまで。…といってもあと1話だけですがw
- 168 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:11
-
放り出されたままの探索機が映し出しすのは、一つの動かなくなった青い点に、二つの青い点。
右往左往しながら、でも確実に近づいてきている、その二つの青い点。
探索機はさっきのアクシデントで少し遠くに飛んでしまい、
麻琴には手の届かない位置にあった。
もちろん確認することなどできない。
動けないのだから。
動こうとすれば、ナイフで釘打ち状態にされた足に激痛が伴ってしまう。
もう自分は誰に会うこともなく、死んでいくんだ。
この悲痛に耐えながら、ジワジワ死んでいくんだ。
この大苦痛は憎しみ。もう耐えられない。苦しすぎます・・。
良いのか悪いのか。でもどの道、私は・・・・byebye.
こんな状態で生きてることがすごいくらい。
その反面、まだ希望だって捨ててはいない。
加護さんと辻さん、私を完全に殺さなかった事に感謝。
来る保証の無い仲間だけど、とりあえず待つことができる。
あさ美ちゃんとまめ・・・・声届いたかな。
あとちょっとだから・・・来てほしいな・・・無理だろうけど。
モー娘。入れたし、よかったんじゃない?
モーニングに入れたから、貴重な体験とかも沢山できたし、本当に楽しかった。
モーニングに入っちゃったから、こんな終わり方・・・本当に悔しい。
でもいい事の方が多かったから、いいんだよね。よかったんだよね。
15年と11ヶ月。楽しかった。
・・・・。
こんなじゃ16歳にもなれないじゃん。
「はぁ・・・・・・・・・・・・・」
麻琴は長いため息を吐いた。
だんだんと身体の力が抜けていく。
風が頬をなで、鉄の生臭さが鼻を衝いた。
木々がざわめいた。
- 169 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:12
- すると、突然妙に周りが騒がしくなった。
風の音ではない。もう風は止んでいた。
大きな叫び声というか、何か・・。
叫び声というか、呼び声だ。誰かに呼ばれてる。
身体が揺さぶられている。
全身に痛みが走りピクッと震えた。
自分の目が閉じかかっている事に気がつき、夢中になって目を開けた。
「・・・っちゃん!・・・まこっちゃ・・・まこっちゃん!!!・・・」
少しずつ開いていく視界の向こうには、
左向きに横たわっている自分の目の前に、
あさ美と里沙が座り込んで、こちらを覗き込んでいる。
- 170 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:14
-
「まこっちゃんっ!!!!!」
「ねえ・・しっかりして!!」
麻琴を揺すっていたのはあさ美らしく、その掌はベットリと血にまみれていた。
麻琴は小さく頷くことしかできなかった。
それだけでも二人は満足そうに優しい眼差しを送った。
「ありがとう・・・・・来てくれて。」
里沙は力無いその手をすくい上げ、自分の顔の前で握りしめて涙を流した。
「どうしても、言いたいことが――」
「逃げようよ!」
「・・・え?」
麻琴の言葉を割って入ったあさ美。ため息を吐くように麻琴は聞き返した。
「だってこんなところに居たら・・・みんな爆死しちゃうじゃん!!」
自分が今いるのは、二人を呼んだ場所はあと数分で禁止エリアになるらしい。
麻琴の元気のない目が丸くなった。
なんてことをしたんだ私は。二人を巻き添えにしちゃいけない!
「じゃ・・・なんで・・来たりしたの?・・わかってて・・」
「会いたかったから・・・・」
あさ美が涙声をで言った。
里沙もそうだと同意して頷くと、咽びながら泣いた。
「バカだな・・」
麻琴は優しく笑った。
- 171 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:15
- 「逃げるっつったって無理だ。この足じゃ・・・動けないよ・・」
左足は真っ赤に染まっている。ナイフを中心として。
その痛々しい光景に、あさ美と里沙は顔をしかめるしかなかった。
麻琴本人には悟られないよう、顔を背けたまま。
「話・・・聞いてもらえれば・・・いいんだ。その為に・・・呼んだの。」
「でっ・・でも・・・」
「足のこれ、抜くの、怖いんだ・・・・今も、痛いのにさ・・・」
綻んだ麻琴を二人は涙でぼやけた視界越しに見つめた。
「お願い・・・ここで聞いて。」
自分の手を握っているあさ美の手を、麻琴はぎゅっと握り返した。
里沙はうんと頷いて俯いた。
「わかった。」
できるだけ笑顔で返事をしようとしたが、あさ美の声も涙で震えた。
「そんな・・・・泣かないでよ。」
その言葉に、更に涙が溢れてくる。泣いちゃいけないのに・・
- 172 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:16
- 深く呼吸してから、麻琴は話し始めた。
「・・・・・・愛ちゃん・・・・・」
二人の肩がピクッと震えた。
麻琴も話すのを少し拒んでいるようだった。
「・・・愛ちゃんとは、一緒に・・・いたんだけど・・」
大きくゆっくり息を吸った。
その時、初めて麻琴の声が震えた。
「今日・・崖から・・・飛び降りた・・・」
目を見開いた。
「みんなが苦しむの、見たく・・ないからって・・・・・・・止められなかった・・」
あさ美は麻琴の手をグッと握った。
「愛ちゃんの後、追えなかった」―――とは、言わないでおこうと麻琴は思った。
なぜだろう・・・言いたくなかった。
それでなくても涙してる雰囲気なのに、これ以上空気沈めちゃいけないよな・・。
なんだか息が持たなくなってきたぞ・・・
「伝えてって、頼まれたんだ・・・・愛ちゃんに・・・
”会えてよかった”・・・”大好き”って・・・」
相づちがうてなかった。それくらい泣いていた。
閉じた瞳の裏に浮かんだ、笑顔の愛ちゃん。
「それだけ。・・・・早く・・逃げて・・・」
ふたりは揃えて首を横にふった。
「何いってんの。」
「まこっちゃんおいて、逃げられないよ・・。」
麻琴は里沙の頬をそっと撫でた。
その冷え切った手を、里沙の暖かい手が握りしめた。
「お願い・・・わかって。」
あさ美も言葉が詰まって何も言えない。
まこっちゃんを助けたい。
三人で逃げたいのに・・・
足に釘打ちのナイフ、どうしようもできない。
どうしたらいいの?
・・・誰か教えてよ・・・
- 173 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:17
- 「そうだ。」
「・・・・ん?」
里沙は握っていた麻琴の手を顔から離し、麻琴の顔を見た。
その目は、真っ赤に腫れている。
「明日だよね?・・誕生日・・・・・」
え?と、里沙の口から息が洩れた。
忘れてた。
今日は10月19日。
もうすぐ里沙の誕生日だ。
覚えててくれたんだ、こんな時にも・・・・。
「まこっちゃん・・・」
「プレゼント・・・買ってある・・けど、家だから―――」
里沙は麻琴の身体にもたれかかり、顔をうずめて泣いた。
その頭を優しく撫でる麻琴。
「・・・・おめでとう・・・・私は、誕生日・・・・迎えられそうに・・・ないよ・・・・」
泥やら砂やら血で汚れた麻琴の頬を、一筋涙が伝った。
鼻をすするように鼻で呼吸し、あさ美の顔を見やった。
「まめには、誕生日・・・ちゃんと・・迎えてほしいから・・・」
あさ美は俯いていたが、その視線に気が付いて、少し顔を上げた。
「お願い。あさ美ちゃん・・・・」
そう言って乾ききった唇を噛みしめた。
まっすぐあさ美の目を見つめる麻琴。
段々麻琴の言葉が途切れ途切れの単語だけになっていった。
「・・・逃げて・・お願い・・時間・・・ないから・・。」
銃弾の撃ち込まれた左腕を地面から持ち上げて、手首の時計をふたりに向けた。
PM02:59;04―――――
- 174 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:17
- 「・・・わかった。」
「まこっちゃんには・・・・さよなら言わない約束だったのに・・・・」
里沙の手を握りしめたあさ美は、歯を食いしばった。
二人はその場を去っていく。
先導するあさ美も当然のごとく気が進むはずがない。
「ウジウジすんな・・・・・走って!!!」
そのボロボロの腹の底から出した大声は、森中に響き渡った。
大声を張り上げた反動から、麻琴の口はまたもどす黒い血を吐いた。
「やっぱりだめだ、わたし・・・」
「え?」
「まこっちゃん、おいてけない!」
あさ美は里沙の手をふりきり、麻琴の元に駆け寄った。
PM02:59;31―――――
麻琴は最後の最後の最後のそれこそ全ての力で、上半身を起こした。
地面に打ちつけられているナイフの抵抗を無視して無理矢理身体を動かしたので、
麻琴はその反動と足に走った激痛にうめき声を上げていた。
「まこっちゃん・・・・」
振り返って走りだそうとしたあさ美だったが、すぐに足が止まった。
左足はちぎれていると言っていい。血がドクドクと流れ出ている。
腕に力が入らず、麻琴はバタッと崩れるように地面に倒れた。
その姿が信じられなくて、茫然と痛々しい光景を見つめるしかできなかった。
「そんな・・・・死んじゃやだよ!!!!!!」
足はすくんでどうにも動かない。
こちらを向いたまま横たわっている麻琴が、ゆっくりと目を開けた。
その虚ろな瞳は真っ直ぐにあさ美を見つめた。
「二人には・・・・・生き残ってほしいから・・・うちらの・・・分まで。」
PM02:59;49―――――
- 175 名前:B24 投稿日:2004/12/25(土) 15:18
- 「・・・あさ美ちゃん!!!」
里沙は夢中で、あさ美の手を自分たちが逃げるべき方向へ引っぱった。
そのまま麻琴からどんどん遠ざけていった。
少し離れた茂みまで来たとき、あさ美が不意に立ち止まった。
その手を握って立ちすくんだまま麻琴を凝視した。
逃げることを促していた里沙も、一気に力が抜け、横たわる仲間を見つめた。
もっと離れなきゃ・・動かなきゃいけないのに、これ以上身体が動かなかった。
麻琴は寂しそうに笑っている。
―――ありがとう―――
PM02:59;59・・・03;00―――――
麻琴が目を静かに閉じた。
二人の頭の中には”麻琴”。それだけが渦巻いていた。
「まこっちゃ・・・・―――――
突然の爆風。
あさ美と里沙は数メートルばかり吹き飛ばされた。
里沙の声は爆音にかき消された。
隣のエリアには凄まじい灰色の煙と、砂埃が舞っていた。
血みどろの麻琴が吹っ飛んだ。砂埃に遮られてよくわからないが、
明らかにその向こうに赤が映えている。
「まこっちゃぁ〜〜〜〜ん!!!」
腰が抜けて動けなくなっていた里沙が突然立ち上がって、砂埃に遮られる方に向かった。
「ダメ!!」
あさ美はその里沙の腕をガッと強く引っ張った。
「ダメだよ!!」
「でも・・・でもぉ・・・・!」
里沙の腕から力が抜けていった。
「・・嫌だよ・・・・・・・・・まこっちゃん・・・・」
目前の禁止エリアから目線をそらして立ちすくむあさ美。
里沙はその場に座り込んだまま泣いていた。
この殺し合いという戦場では、何もかもすべてが無力なのだ。
探索機の黒いモニター画面は青い点を二つ・赤い点を一つ映し出していた。
【残り10人。】
- 176 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/12/27(月) 01:55
- ふう…
全ては寺田が悪い…
小説でも現実でも寺田が悪い
寺田が…
- 177 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/12/31(金) 13:27
- 今年一年、お疲れ様でした。
(上記のコメントを最後にしたくなかったので、少し書かせて頂きます)
今まで色々なBRがあったと思いますが、
この配役でのBRは始めてだったと思います。
(詳しくはネタバレに繋がりかねないのでコメントは控えさせていただきますが・・・)
この人は後半で死ぬだろうと思われていた人物が結構、早く死んでしまったり
逆に真っ先に死ぬだろうと予測した人物が未だに残っていたりと
読者(俺だけ?)の予測を裏切る展開を見せていたと思います。
来年以降も楽しみにしてますので頑張って下さい。
来年もよろしく!!
- 178 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/07(金) 16:49
- 少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
10人ですか・・・すごく悲しくて切ない{涙
かなり短い感想ですが、更新待ってます。
- 179 名前:優気 投稿日:2005/01/11(火) 21:37
- 遅くなりまして、あけましておめでとうございますm__m
只今B25執筆中なので、もうしばらくお待ちください;(本当すみませんw
今日はレス返しってことで。
176・7 >マシュー利樹様
いつもありがとうございます。
更新がのろのろして不定期なのに、毎回目を通してくださってレスまでして頂いて。
本当にありがたいです^^
いよいよ物語も折り返し地点に到達しまして(多分w
今まで書き貯めてきた分は全部更新したので、またどんどん書き貯めなければなりません。
やっぱり更新は不定期になると思うのですが、どうか見捨てないでくださいw
今年もがんばります。よろしくおねがいしますm__m
178 >通りすがりの者様
レスありがとうございます。短くてもご意見が聞けてとても有り難いです^^
書いてる側も「痛いなぁ‥」て切なくなってきますw
…が、ここまで書いたら書き終えなきゃ!
今年もどうぞよろしくおねがいしますm__m
- 180 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/29(土) 14:49
- 更新いつまでも待ってます。
- 181 名前:優気 投稿日:2005/02/06(日) 16:05
- 180 >通りすがりの者様
「待ってます」と言われると、書いてる側も安心できます^^
特に自分はノロノロ更新なので尚更有り難いものです。
月に1・2度更新できるかできないかといって状態で、
読んでくださってる方も「いつ更新だよ!」って感じだと思うので、
これからは原則的に、更新は日曜日にしたいと思います。(特例もありってことで。誰かメンバーの誕生日とかw)
よろしくおねがいしますm__m
- 182 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:09
- どこからか聞こえた爆音で田中れいなは目を覚ました。
慌てて窓の外に目をやると、森の木々の間から砂埃が見えた。
とにかく凄い砂埃で、木より高い位置まで砂が舞い上がっている。
何?爆弾?…あ。これ。
れいなは指先でおそるおそる冷たい首輪に触れた。
そう、きっとこれだ。
すぐに時計を確認した・・・・午後3時。
立入禁止になった・・眠る前にとった放送の書取と地図を見る。
午後3時封鎖エリア。
それは今れいなの目の前に広がっている、すぐお隣の6−Hだった。
背筋が凍り付いた。
誰かが、この首輪のせいで殺された。
さっき二人で泣いた後、絵里が疲れたようでさきに眠った。
れいなは起きてたけど、しばらく睡眠をとっていなかったのと泣いたのとで同じく疲れていたから、
正午の放送をメモにとってから眠りについたのだけど。
もしさっきの爆発がなかったら、疲れきった二人はずっと寝てたかもしれない。
今誰かが殺されたおかげで二人は生きてられたのかもしれない。
れいな達のいる6−Gは、正午の放送で午後5時に禁止エリアに入ると告げられていた。
「…。」
思わず息を呑んだ。
運命って複雑だ。誰かの不幸が誰かの命を助けるかもしれないんだから‥。
怖くなって、こちらに背を向けたままの絵里に目をやる。
まだ眠っているみたい。
れいなの焦った気持ちが少し修まったような気がした。
- 183 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:10
- 絵里の腫れた右足に乗せられていた濡れタオルを水につけて湿らせる。
まだ熱を持っていて腫れも増している。なんか青くなってるし。
見てるだけで痛そうなんだけど・・・。
これからどうしよう。
5時までだから、少なくともその一時間前くらいにはここを出ていたほうがいいとして。
絵里のこの脚で大丈夫かな。
「ねぇれいな?」
タオルを握ったれいな手がビクッと震えた。
向こうを向いている顔を上から覗き込む。
「おっ…起きてたんだ?」
絵里は返事をしなかったけど、確かに意識はあった。
「どう?楽になった感じ?」
絵里は喉の奥で小さく「うん」と言った。
足首にタオルを乗せるより先に、封をきったペットボトルを絵里に差し出した。
振り返って受け取るのかと思ったら、寝返りをうち天井を見上げて、絵里は呟いた。
「さゆ、大丈夫かな。」
あ。
「心配だな…。」
「そうだね。」
相づちを打ちながら濡らしたタオルをまた絵里の足の上に乗せた。
その返答を聴いた後に、絵里は一口水を喉に通した。
- 184 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:12
-
忘れてたわけじゃないけど、
絵里と会えて仲間ができただけで、気持ちが満足してたのかもしれない。
もし今さゆみが独りだったんなら絶対にこわくて心細いはず。
「誰かと一緒に居るかな。」
「うん。」
「怪我、してないといいな。」
「大丈夫だよ。」
ただ頷くしかできない。
昼の放送では名は挙がらなかった。
けど、今、たしかに生きている保証はない。
あ。まさか。
今さっきの爆発、さゆなんかじゃ…ないよね?
…バカ。何考えてるんだか自分。
「いつまでここに居られるの?」
自分の居るエリアだし、確認して知ってはいたけど、
一応地図をさっと見てから答えた。
「5時に立入禁止になる、けど。」
そう答えているそばで、絵里は掛け布団を払いのけ、
腕をついてゆっくりとベッドの上に起きあがった。
- 185 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:14
-
「さゆ、探しに行こ。」
真剣な眼。
勿論れいなだってさゆみが心配だ。
「うん」って喉の奥で発音しながらこくりと頷いた。
けど、絵里の体の心配も……と、思いだしたように返事の後に続けた。
「脚、大丈夫?」
「え?」
「まだすごい痛そうだけど…」
二人の目線が絵里の足元におりる。
まさか自分が怪我してること忘れてた?
それだけさゆを心配してるのか、ただのボケが発生しただけなのか…。
そんなのどうでもいっか。
忘れてたってことは、痛みが和らいだからってことで。
「もう平気だよ。」
ニッコリ笑った。
足首に乗っていたタオルを退けると、ベッドの側面に両脚を垂らした。
「立てる?」
絵里の肩に腕をまわして、支えるようにする。
ゆっくりと慎重に床に下ろされていく脚を見守りながら尋ねると。
「あっ…」
一瞬顔を歪めた絵里は俯いてしまった。
ピクッと震えた腫れてる脚が、また元の位置に戻ってきた。
「ごめん、無理だ…。」
やっぱ無理でしょ。ぱんぱんに腫れてちゃってるんだもん。
「いいよ。」
れいなは立ち上がり、置いてあった二人分のディパックを担ぎ直した。
- 186 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:16
- 二人の視線が絵里の右足に集まった。
「れながおんぶしてく。」
れいなは絵里の表情をうかがってから、床にしゃがんだ。
「いいよ。あとちょっとしたら痛くなくなるから!」
「大丈夫。別に重くないもん。」
「いいの!変なこと言ってごめんってばぁ…!」
そんなにおんぶされるの嫌?それともただの照れ隠しなのかな。
さゆを探しに行こうって状況の中で、こんな口喧嘩してる場合じゃない。
ちょっと間をあけて続けた。
「大丈夫やけん。」
少し呆れ口調、けど優しくれいなは説得するように一言口にした。
元々身体の小さいれいなに自分をおんぶさせることを、絵里は拒んだんだなって思って。
ずばりその心配を感づかれた絵里は顔をしかめた。
けど拒みきったところで、自分の脚だけで歩けるわけなさそうだし…
「‥待って。」
いろいろ考えていたらしく、少々間をおいてから絵里は口を開いた。
その場に立ち上がってベッドの方に振り向く。
「ん?なに?」
「じゃあそれ、絵里が持つよ。」
絵里はそう言って、れいなが肩にかけていた二つのデイパックを指さした。
「絵里が持ってれば、邪魔にならないでしょ?」
「ありがと。」
絵里は渡されたデイパックを二つたすきがけにした。
- 187 名前:B25 投稿日:2005/02/06(日) 16:17
- 絵里が照れくさそうに微笑した後、れいなの背中に温かい重みがかかった。
横目に渡した黒いデイパックがちらつく。
「重くない?」
「大丈夫大丈夫!」
どこぞのおばさんみたいに「よいしょ」とか言いながら、れいなは立ち上がった。
木造の診療所の短い廊下を進み、軋んだ音をたてながら古びたドアを開けた。
「ひー!寒いね。」
外は冷え込んでて二人の息が白くなる。
れいなは身震いをしながら、自分の背の怪我人を担ぎ直した。
「さゆを探しにいくぞー!」
と、拳あげた絵里が号令をかけた。
そんなに大きくない、けど小さくもないくらいの声で。
「「オー!!」」
こんな状況でこんな元気はないはず。
だけどだからって元気がないままだったら、進むはずの物も先に進めない。
さゆみと合流できた時に少しでもいつものような元気で安心させてあげたいから。
れいなと絵里は6−Gを東に、診療所横の開けた細い道を進んでいった。
10月となると日没も早い。あっという間に真っ暗になってしまう。
それに、こんな天気だから。
ついさっきまで晴れていた空は曇りだしていた。
【残り10人。】
- 188 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/02/06(日) 23:30
- 更新、お疲れ様です。
今年もよろしく。
今後、焦点になるのが、組み合わせ。
誰が誰とくっ付くのか。
こう言ったサバイバルにて、くっつく仲間によって、
自分の今後が決まってしまう。
う〜ん・・・想像できない・・・orz
- 189 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/12(土) 16:05
- 更新待ちわびていました。
自分よりも親愛なる友を・・泣ける話じゃないですか 涙
二人は生きて出会えるのでしょうか・・そうなってほしいという希望を胸に
秘めながら、更新待ってます。
- 190 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/24(木) 19:44
- いつまでも待ってますよー、日曜の更新楽しみにしてます。
- 191 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/16(水) 12:58
- まだまだ待ってます。
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/12(火) 08:52
- まだ・・・
- 193 名前:優気 投稿日:2005/04/23(土) 21:26
- 多分滅多に更新できないと想います。
書き進められたらじゃんじゃか書きたいのですが、忙しい時期に入ったもので…。
ギブアップとかじゃないんですがね…時間がないんです。
本当申し訳ないですm__;m
- 194 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/28(木) 06:27
- 生存報告ありがとうございます。 まったりと更新を楽しみにしております。 待ってます。
- 195 名前:みちる 投稿日:2005/04/28(木) 21:45
- 作者さま、
一気に最初から読ませていただきました。
本当におもしろくて、続きが気になります。
個人的にはごっちんが気になります。
あんな辛い過去を持って、これからどうなるか…
私日本人じゃないから、今日本語を一生懸命勉強してます。
それを読んで、本当に勉強になります。
ありがとうございます。
そして、更新を待っています。
がんばってください!
- 196 名前:みちる 投稿日:2005/04/28(木) 22:25
- それー>この小説。
間違いました。^^;
- 197 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/08/16(火) 23:56
- そろそろ、生存報告をしないと整理されちゃいますよ。
お忙しいとは思いますが、もし続けられるなら、レスを。
- 198 名前:優気 投稿日:2005/08/17(水) 19:58
- かなり久々にやってきましたw
はぁ…受験生に夏休みは本当にないです_| ̄|○
最近いろいろな文庫本を買って読むようになりました。
それに刺激されて、またBRの更新を進めたいと想っているのですが、なかなか書く時間がなく…;
いつもこの口実ばかりですね。本当申し訳ない。
けど読んでくださっている方のためにも、自分の達成感のためにも、
ちまちまながら頑張らせていただきますm__mお願いします。
- 199 名前:優気 投稿日:2005/08/17(水) 19:59
- 自分で上げてしまったw更新してないのに…申し訳ない_| ̄|○
- 200 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/18(木) 11:14
- いつまでも更新は待たさせてもらいますよ。 だからマッタリと更新をしてくだされば結構です。 またこちらに戻ってくるコトを願ってます。
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:53
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
Converted by dat2html.pl v0.2