東京下町銭湯物語2

1 名前:江戸屋敷 投稿日:2004/08/24(火) 02:07

色々と悩んだ末、立てる事にしました。
ここの板の、フリー短編スレで『東京下町銭湯物語』を
書きましたが、その続きを是非書きたいと思いまして
筆を取った次第です。
2 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/24(火) 02:12


古くから歴史名高い、『下町銭湯』は創業300年。


お客は途絶える事もなく、商売は大体繁盛だ。



その歴史名高い銭湯を切り盛りしているのが、この輩。




「梨華ねぇー!!!タイルをピンク色に塗るなぁ!!!」




男子浴場でデッキブラシを片手に絶叫する番頭。

吉澤ひとみである。



「何ようるさいなぁー」
「ふざけるなよ…江戸の風呂にピンクって…」
「かわいいよぉ」
「…ったくもぉ!!落すのはあたしなんだから!!」



姉が風呂場のタイルをピンク色に塗ってしまったらしい。
激怒した番頭だったが、姉に逆らう事は出来ない性だ。


3 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/24(火) 02:18


ガララ……



「オッスゥ!」
「なっ…美貴?」



元気良くズボンの裾をまくしあげ、デッキブラシを片手に風呂場に
入ったこの女。

番頭、吉澤ひとみの恋人である、藤本美貴。


この2人の関係は…この話の第一談を見ればわかるであろう。



「手伝ってあげよっか?」
「いーよ、別にっ」
「何でよ、折角彼女が助けてあげようと…」
「か、彼女とか声に出さなくていいよっ」
「だーってそうじゃないの?」
「……わかったよ、じゃあそっちやって」
「はいよ」



ひとみに似て美貴は男勝り。
顔、スタイル良し。性格…はいいのだろうか。
強がりで頑固、負けず嫌い。

こんな所が、ひとみを引き付けたのだ。



4 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/24(火) 02:25


ガシガシ…ガシガシ…




「あー…落ちた落ちた。しっかし梨華ちゃんもよくやるよねぇ」
「ホントだよ。仕事はあたしにまかせっきりだし…」
「偉いねぇ、ひとみ入れて従業員さんたったの3人だし」
「……まー、じぃちゃんの遺言だからな」
「…そっか」



番頭には、父親がいない。
梨華が生まれる前にビルの上から身を投げ亡くなった。
下町銭湯では番頭を任される位にはなっていたが、それを祖父が
許さなかったのだ。



「…じぃちゃん、もう67歳だったしな」
「そうだね。でも元気だったよ」
「……お風呂大好きだったもんね、おじーちゃん」
「……じぃちゃんの分も、あたしがやんなきゃ。だろ?」
「…頑張れ、ばんとーさん!」
「サンキュ」



美貴が番頭の頭に巻いてあるバンダナを巻き直す。
細やかなしぐさにときめいてしまう番頭であった。


5 名前:江戸屋敷 投稿日:2004/08/24(火) 02:29


夕方の五時半、下町銭湯は開く。




今日はこのへんで。

まだ内容が分りづらいと思いますので、次で明白にしたいと思います。
6 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/24(火) 14:49


「じぃちゃんと父さんの分まで、頑張るかっ」



たった3人で切り盛りしている銭湯を潰すわけにはいかない。
次女であるひとみは根気良くデッキブラシを持つ手に熱が入った。


「ねーひとみ」
「何だよ」
「どっか連れてってよ」
「は?何、突然…」
「彼女ほったらかして仕事ばっか」
「あ…ご、ごめん」



幼馴染みから恋人へと変化した美貴と番頭の関係は曖昧だ。
銭湯の仕事が忙しく、番頭は美貴とデートをしたことがない。
その事に美貴は不満を抱いていた。


「…えーっと…町内会議が明日あるし…その次には協会の…」
「忙しいの?」
「……暇が出来たら…連れてってやるよ」
「暇っていつさ」
「…いつか」



ごめんな、美貴。



忙しいとはいえ美貴にはすまないと思っている番頭は頭が上がらない。
溜め息をついて浴場を後にし、帰り際にひとみに笑顔で手を振った美貴であった。

7 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/24(火) 14:52


「吉澤さんも苦労してますね」
「…まーな…」
「最初はそうですよ」
「そーか…って麻琴」
「デートぐらいしなきゃですよ」
「そ、そーかな」
「美貴さん可哀想…」



うるせーやい。
小川の余計な一言に拳を入れた番頭。


8 名前:よしよし 投稿日:2004/08/24(火) 16:07
いいっすねー。
設定もおもしろくてOKです。
次回も期待してます。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 20:25
短編も読みました。
大好きなCPです。
幼馴染サイコー♪
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/27(金) 08:39
銭湯行きたくなりました。
頑張ってください。
11 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:30

やっぱり、美貴も女の子だよな。ふつーの。


番頭は数m先で姉と話している美貴をみつめ、茶漬けをすする。
彼女にしたからには尽くしてあげねば。


「ったってよ、何処連れてけばいいんだろ」


それもそうである。
彼女の好物である焼肉に連れて行く事は容易い事ではない。

食いっぷりが尋常ではないからだ。


「財布すっからかんだよな・・あーコワ」


ぶるぶると震え、また新たな考えを生み出そうとする。
足りない脳は久しぶりに活動しているのだった。


12 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:36


「……先輩?」
「ハァ…」
「先輩!」
「…うっせぇな、黙ってろ…よ…?」


箸を乱暴に置き、話し掛けてくる相手に振り返り威嚇した。
しかし、その相手とは。



「…松浦…?」
「はぁい、お久しぶりです!」



ハキハキと元気良く返事をしたのは、吉澤の高校時代の後輩、松浦亜弥。



「何やってんの、ここで」
「やですねぇ。普通にお風呂入りにきたんですよぉ」
「あ、そうなの。それじゃさっさと行け」
「相変わらず冷たいですねぇ、一緒に入ります?」
「いいから。早く行けよ」
「はぁ〜い」


松浦は高校時代からの番頭の追っかけだったのだ。
あまりのしつこさに番頭は相手にしていなかったが、松浦のアピールは
ウザいほど凄い。


13 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:39


「……誰、あの子」
「ん?高校ん時の後輩」
「…ふーん」
「ってぇ!!何すんだよ急にっ…」
「…デレデレしちゃって」
「はぁ?なんでっ…いってえな!!」


美貴にスネを思いっきり蹴られ、かかしの様に跳ぶ番頭。
あたしが何したっていうんだ。
番頭なりの言い分はあったのだが。


「…バカ、乙女心が分らないやつね」
「り、梨華ねぇ…」


蹴られたスネを摩り、番頭は美貴の後を追う。

もちろんケンケンで。

14 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:45

ダンダンダンダン……


トントントントン……



乱暴に階段を駆け上がる美貴の足音と、控えめな番頭の足音。


「ったく、何であたしの部屋に行くかなぁ」


すっかり番頭の部屋は美貴の部屋と化している。
半同棲なのであろうか。



コンコンコン



って、あたし自分の部屋じゃんココ。



「…何」
「何って、そっちが何だよ」
「鈍感」
「あ?」
「アンタ実は男なんじゃないの?」
「お、女だよ」
「…じゃー美貴の言いたい事分るはず」
「……」


この女王様の機嫌を直すには、至難の技が用いられる。



15 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:49


ベッドの上で足を抱え込み座る美貴の前に立ち、番頭は腕を組む。
対処するには何らかの方法がいるんだ。


「あー…何、松浦の事?」
「………」
「当たりか。くっだらねー」
「…何さ下らないって」
「へ、変な事考えてんじゃねーよ…」
「……」
「美貴以外なんかに…興味ないっつぅの」
「……え?」
「だっ、だから…美貴以外に興味ないし…」


両手を腰につき、首だけ窓へ向けて照れ隠しをする。
隠せていないのが美貴には分っていて、くすっと笑われた。


「ひ、人が一生懸命…」
「ありがと。分ったよ」
「…あっそ」
「ひとみ」
「…エ?」
「ん」



両手を広げて、番頭を見つめる美貴。
彼女曰く、『抱きしめて起き上がらせろ』という意味らしいのだ。


16 名前:銭湯の利点 投稿日:2004/08/28(土) 01:53


5秒程固まった番頭はやっと意味が理解できた。
恥ずかしながらも応答する。


「ほ、ほら…」
「えっへっへ、サンキュー」
「も、もう立てんだろっ…離れても…」
「キスしてくれたら離れるよ」
「ハッ?」
「してよ、ひとみから」


もちろん、したくないわけではないのだ。
だが勇気がいる。

その勇気を振り絞り、かたくなに番頭は頑張る。


ほんの少し、1秒も経たないうちに唇から離れた。



「ハイ…終ったよ」
「何今の、キスじゃないよ」
「し、しただろ」
「してない!最低でも5秒はするの!」



無理弄される番頭は、この後女王の言いなりになってしまいましたとさ。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/28(土) 06:51
美貴さま強し。
ヘタレ具合も好きです。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/31(火) 02:22
更新乙です。すっげーいい話なんだけど一つ質問。
>4の所に若干の矛盾があるんですけど。番頭さんはどうやって生まれたん?
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/02(木) 12:47
初々しい二人が微笑ましいです。
>18
作者さんがきっとうまく説明してくれるハズw
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/19(日) 22:01
嫉妬する美貴様かわいいーなー
期待してますので頑張ってください
21 名前:江戸屋敷 投稿日:2004/09/27(月) 21:44
だいぶ、いやかなり更新が遅れて申し訳ないです。

それと>18様、説明不足でありました。
番頭さんと銭湯の関係はこれから明白にしようかと考えていた所なのですが
私の駄文により不適切な物になってしまいまして…
番頭さんの家庭事情はまだ長くなりそうです。
すんません…

22 名前:江戸屋敷 投稿日:2004/09/27(月) 21:52

>8様 すみません、レス返しをすっかり忘れていたもので…
設定はただの思い付きですので(笑

>9様 短編まで見て頂き光栄です。
更新は遅いですが温かい目で見守っていて欲しいです…

>10様 最近は銭湯が減ってきているので寂しい限りです。
風呂に入った気持ちで御覧になってくれれば嬉しいので。

>17様 自分の中ではヘタレ吉。
強きな美貴サマが大好きなのでw

>18様 お誉めの言葉をしかと受け止めさせて頂きます。
自分の説明不足により矛盾点のように表現されてしまいました…
これからは気をつけますので、これからもよろしくお願いします。

>19様 幼馴染みからの発展が早すぎたような…そんな気がするのは
きっと私だけではないのでしょうがw
番頭さんとその他出演者の関係は結構不可解なものが多いので…それでも
御覧になってくださり光栄です。

>20様 嫉妬美貴様は現実にもきっと…w
いたらいいのですが。



すみませんが明日中には更新をしたいと思います。
迷惑をかけた上に読者の皆様に不可解な思いをさせた事を深くお詫びします。



23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/28(火) 20:40
がんばってください。いつまでも待ってますよ
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/29(水) 17:57
期待してます
マターリ頑張ってください
25 名前:熱風呂 投稿日:2004/09/29(水) 21:13


「…いち、に…さん…よ…」
「お金数えて何してんのよ?」
「ふぎゃっ!?り、梨華ねぇ!」


慌てて財布をポケットに隠す。
万札を数え数え不安げな瞳を金に投げかける番頭。


「ははーん、何か欲しいものでもあるの?」
「そうじゃないけど…美貴が、さ」
「美貴ちゃん?貢ぐ気?」
「違うよ。アイツ…どこにも連れてってやってないし。たまにはどっかデートっつうのを…」
「ひとみにしてはいいこと考えるんだぁー…ふふっ、まあガンバッテね♪」


ひらひらと手を振りどこかへ去る楽天的な姉。
ただでさえやりくりに苦悩する日々にもかかわらず、コツコツと溜めた
へそくりを大事に使わねば。
番頭は恥ずかしながらもそう考えているのだ。


「よ、四万ありゃ足りるよな…」


そろばんを弾きつつ、玄関の外で可愛げに笑う恋人をちらりと覗く。
満足にデートも出来ず美貴には不憫な思いをさせているのは番頭も承知だ。
なおさら心が痛む財布の中身であった。
26 名前:熱風呂 投稿日:2004/09/29(水) 21:21


「マコトー。ちょっと来て」
「何でしょう吉澤さん」
「…あのよー、焼肉って四万で足りるかな」
「焼肉?安い所ならそれで十分じゃないんですか?」
「……あれと比較して考えてみろ」


くいっと小川の首を美貴の方に向け、軽くためいきをつく。

「…美貴さんですか。ギリで足りるラインですかね」
「だしょ?やっぱキビシーよな…」
「でも…美貴さんは…」
「ん?」
「…やっぱいいっす。じゃあ私はこれで」
「おぅ。お疲れー」


小川のやつ、何を言いかけたんだろう。

少し心に引っ掛かりながらも、仕事が終り疲れた様子の小川に手を振る。
この日はあまり客が多くない事もあり、いつもより早く店じまいをした。
いつもの営業時間は午後9時までなのだが、8時に早めたのだ。

27 名前:熱風呂 投稿日:2004/09/29(水) 21:31


「あ゛ー疲れたぁー…」
「今日もありがとう。お疲れさま」


銭湯のすぐ横にある美貴の家だけあり、毎日仕事を手伝ってくれているのだ。
朝早くにもかかわらず湯湧かしからなにまで最近は手伝うようになっている。
人手不足の銭湯にはとても良く働くので番頭もありがたく思っているのだ。


「…あのさ、美貴」
「んー?」
「い、今から…時間、ある?」
「今ぁ?別に暇だけど?」
「……焼肉、連れてってやろうか…?」
「…え……?」
「だから、焼きに…」
「行く行く行く行く!!!連れってくれるの!??」


弾丸のごとく、美貴は番頭に迫り寄る。
必死の思いで誘った番頭だったが、こんなにも嬉しそうにはしゃぐ
美貴を見て心が和らぐのだった。

「うん、お金ならあるし…たまには、さ」
「ホント!?やったぁぁ!!!」
「じゃ、ちょっとまってて」


うきうき気分の美貴を見るのは、仕事後の番頭にとって良い栄養剤だった。
こんなにも喜んでくれるとは思ってもいなかったので余計だ。
休憩間に置いておいた財布を取りに小走りする番頭。
ソファでうきうきしながら番頭の背中を見送る美貴。



この後、番頭は明いた口が塞がらなかった。
28 名前:江戸屋敷 投稿日:2004/09/29(水) 21:33

>23様 お待ち頂き嬉しい限りです…更新が遅い上にむこう量も少ない
ですが、お待ち頂いていると分れば俄然やる気が出ます。

>24様 次回更新はまた遅れ気味ですが頑張ります。
励みになりますので、待っていて下されば良いと思っています。

29 名前:24 投稿日:2004/10/01(金) 18:18
○万で足りないかもしれないとは…さすが美貴様ナイスです。
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 17:10
おっ!みきよしハケーン
銭湯とは珍しい設定ですね。
期待してます。頑張って下さい。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/04(木) 15:24
待ってます
32 名前:名無し 投稿日:2005/02/01(火) 21:18
マターリ待ってます

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