よしかご小説
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2004/08/28(土) 19:19
- 吉澤&加護中心の小説をなんでもいいんで
誰か書いて下さい!!!
お願いします!!(_ _)
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/28(土) 20:17
- ochi
- 3 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:31
- せっかくなので、書かせていただこうと思います。
吉澤さん。加護さん中心の物語です。甘い感じにはならないと思うので、期待している方はごめんなさい。
タイトルは「〜二人で見た日々〜」です
- 4 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:32
-
〜二人で見た日々〜
〜プロローグ〜
- 5 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:32
- ━━━奈良県某所━━━
どこにでもある閑静な住宅街。今日は四月の半ばにしては空気がひんやりと冷たく、
休日の昼前だというのに人影はまばらで、野良猫が二、三匹日なたを求めて歩いてくのが見られるぐらいだった。
その住宅街に佇む、これもまたどこにでもある、ごく普通の一軒家。表札には「加護」という文字。
恐らくこの家の誰かが掃除でもしているのだろうか
グイーングイーンという機会音が静かな住宅街に必要以上の雑音を響かせていた。
- 6 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:33
- 「ふう。」
この家の主婦であろう一人の女性が、どうやら掃除の一区切りがついたらしく
掃除機をコンセントから引き抜き、掃除をしていた二階のある部屋からぼんやりと外を眺めていた。
「ちょっと寒いけどええ天気やな。よかったわ。」
主婦はそう呟くと学習机の椅子によいしょと腰をかけた。
「あの子がおらんだけでこんなにも家が広く感じるなんてなぁ‥‥」
その時突然風がピュ−っと吹き、外から来た埃とともに机の上に置いてあったプリントが床に散らばった。
- 7 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:33
- 「あー!あー!あー!。」
主婦は慌ててプリントがどこかに飛ばされないよう、素早くかき集め、トントンとそろえなおし、
素早く窓を閉め、元あった場所に戻そうとしていた。
そのとき、ピタ!と主婦の手が止まった。
そして、微かに震えた声で、
「これは‥間違いない―――亜依の字‥」
主婦の手を止まらせたのはプリントが全て飛び散って、その下に置いてあった一冊のノート。
そのノートの表紙には、「日記」と下のほうに「2003/05〜」と書かれているだけのものだった。
主婦が釘付けになっているのは日付の方らしい。躊躇いもせずにノートを次々とめくると、
あっというまに両膝をつき、前掛けのエプロンに顔をうずめ、声を殺して泣いている。
「あ、あの娘入院中こんなものを‥‥入院してからほとんど毎日やないの‥。」
2003/05/27 ‥‥ 2003/05/28 ‥‥ 2003/05/29
主婦の言う通り、まるで小学生の夏休みの日記のように、その日の天気から、今日楽しかった事、
悲しかった事、嬉しかった事などが毎日のように事細かく書かれていた。
唯一つ違うことは、夏休み末に宿題に追われる小学生が記憶だけを頼りに、何日分もいっぺんに書こうとして、
結局、新学期に担任の先生にお叱りをうけるようなものではなく、
今日の終わりに、「今日も一日キチンと過ごせました」と聞こえてくるような内容の日記だった。
- 8 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:34
- 主婦‥いや加護亜依の母親は幾分落ち着きを取り戻し、日記の内容を誰に聞かせるわけもなく、
ひとつひとつ思い出していくように、声に出して読んでゆく。
「ご‥五月二十七日 晴れ。今日から日記をつけるでぇ!!!‥‥って最初はこれだけ?亜依らしいわぁ。フフ‥」
「六月一日 晴れ 今日はお母さんにタコ焼きを買ってきてもらった。一人で全部食えるなんてウチは幸せやぁ‥だって!」
一枚一枚日記のページをめくっていく母親の顔は涙で眼を潤ませながらも菩薩のように微笑んでいた。
そうしていくうちに‥‥
「やっぱり、ひとみちゃんの事ばかりねぇ‥」
母親は日記に書かれてある名前をいろいろ指差しながらそう呟いた。
吉澤さん。 よっすぃ〜。 ひとみちゃん。 よっちゃん。
一見全て違う人物に感じるのだがそうではないらしい。
「ひとみちゃんがおらんかったら、亜依は‥ううん!亜依だけじゃなく、うちら一家ももうだめだったかもしれんな。ホンマ‥感謝してる。」
- 9 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:34
- ―――――― 亜依ちゃん!私と遊ばない?フットサルやろうよ ――――――
―――――― パパぁ?せめてママに‥‥ ――――――
―――――― ほら!こうして一緒に寝れば夢の中でうなされても助けてやれるよ? ――――――
―――――― カッケー父ちゃんにまかせとけ!!必ず勝つよ。 ――――――
- 10 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:35
- ピンポーン
「は、はーい。」
玄関のブザーに我に返った母親は、日記を大事に机に置き、玄関へ階段を小走りで駆け下りていった。
すると、窓は閉じられ風は入ってくるはずはないのに、日記はゆっくりページがめくられていく。
止まったページには
「よっちゃん!大好きや!」
そう書かれていた。
- 11 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 00:35
- プロローグは以上です。もし、数日中にレスが頂けたら、続けてみたいと思います。
こんな駄文でよければ、読んでやってください。よろしくお願いします。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/29(日) 01:59
- 作者さんキターー!!!
ほんとありがとうございマス。
吉加護の甘めな感じも期待してましたけど・・・イイ!!(・∀・)/
続きが楽しみです。よろしくお願いします!!!!
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 10:53
- 駄文じゃないですよ。
是非、続けてください。
- 14 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 16:13
- >> 12 名無し読者 様
>> 13 名無飼育 様
早々の暖かいレス有難うございます。
駄文ではございますが、続けてみたいと思います。
よろしくお願いします。
- 15 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 16:14
-
〜二人で見た日々〜
第一話 奈良のおだんごあたま
- 16 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:15
- 2002年7月。 奈良県にある、とある公立の中学校の校門の前から出てきた少女の顔は
これでもか!というぐらい暗い雲をしょっていた。
「アカン‥ウチは‥ウチはもうだめやぁ〜。今日が命日やぁ〜!」
「ちょ、ちょっとあいぼん?いくらなんでもそれは‥。」
「なっちゃんはウチのオカンの恐ろしさを知らんねや!!成績が合計10段階も落ちたって知ったら、
ヘッドロックかけられて、ブレーンバスターくらってそれから‥‥」
どうやら、一学期の成績がすこぶる悪かったらしい。
「加護亜依」と書かれた通知表をひろげ、家で待っているであろう母親への言い訳を考えながら、
頭に乗っている二つのかわいいおだんごと共に、ガクガクブルブルと震えている。
- 17 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:15
- 「ほ、ほら通信欄をみなよ、あいぼん!「クラスメートの信頼も厚く、加護さんの明るい性格のおかげでいじめもなく、
担任の私も、自慢のクラスになっています。」だって、すごいじゃん。」
友達の「なっちゃん」は、なんとか亜依の元気を取り戻そうとしてるのだが、亜依は、
「嬉しいけど成績はあがらへんしなぁ‥。」
いまいち反応が薄いらしい。
「そんなことないって。あいぼんの良さは通知表だけじゃわかんないよ。
少なくとも、私はいっぱいあいぼんのいい所知ってるよ。」
「ハハ‥ありがとなぁ。」
亜依はそう言ってくれた友達の真剣な顔に妙な気恥ずかしさを感じ、頬をほんのり赤く染め上げながら、
さっきより軽くなった足取りで、家路へと進んでいった。
- 18 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:16
- 「た、ただいまぁ〜」
「おかえり、亜依。通知表は?」
「い、いきなりかい!!普通「今日も暑かったわね。」とか、「もうお昼ご飯食べる?」とか、ジャブからはいるもんやろ!!」
なんとか当たり障りのない会話で少しでも母親の機嫌をとっておこうと目論んでいた亜依の作戦は、
熟練された母親の右ストレートによって、脆くも崩れ去ったのだった。合掌。
「関西人はそんなまどろっこしいことせえへん!ほら!はよ出しぃ。」
「わ、わかったわ。(グス‥短い人生やった。)」
亜依は観念したように、おずおずと通知表を閻魔様(今の亜依にはそう見える。)に差し出す。
- 19 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:16
- 「―――――――――――― ふーん‥‥」
「あ、あの‥お母様。お肩でも‥‥」
「―― 亜依?」
「はいっ!!!」
パブロフの犬よろしく 亜依に対して、妙にニコニコした笑顔を見せる母親は娘の頬を軽くつまみながら、
「亜依は来年受験やねぇ?」
「はいっ!」
「こんな成績じゃあかんよねぇ。」
「はひっ!」
ここで頬を摘む力が二段階ほどが強くなる。しかし顔はあくまで笑顔。
- 20 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:17
- (普通に怒られるより、めっちゃ怖いわぁ!!!)
亜依。心の本音である。
「それとも、もう働くんか?中卒じゃ世間は冷たいでぇ?」
「だ、大丈夫やて、ウチより順位が下の奴もいっぱいおったし‥‥」
「じゃあ上の人数は?」
「も、もっとおったかな‥‥」
また頬を摘む力が強くなる。亜衣の頬がみるみる赤くなっていく。
「これから夏休みは毎日三時間以上勉強!もちろん宿題の時間は別!!ええね!!!」
「ひょ、ひょんな‥うひかへとろありと‥‥ふぁふぁ」
訳(そ、そんな‥うちかて、友達との交流を深めたり、ひと夏の恋を探したりいろいろと‥。)
「それとも家庭教師をつけてビシビシしごいてもらう?」
そこでようやく亜依の頬は開放され、頬をさすりながら、涙目の亜依は、
「いいえ、前者の方でお願いします‥」
まあそれぐらい仕方ないかと観念した亜依は素直に聞き入れた。
- 21 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:17
- 「じゃあ、お昼食べたら、今日の勉強しっかりやるのよ。」
母はことも何気にそう言い放つ。
「えええええ!!!!!今日からなん?今日はこれからなっちゃんとプールに‥‥」
「なん?」
母がひと睨みすると、
「うう‥なんでもありませぇん。」
ガックリ肩を落とす。
「楽しみにしとったのに‥‥ボソッ‥鬼ババ‥」
「誰が鬼ババだってぇーー!!!」
「(なんで、聞こえるねん。)いいいいいいやめっそうもない。」
そういって、しゅんと落ち込んだまま部屋に入ろうとする亜依を見て、さすがにかわいそうと思ったのか
ふうっと一息ついて、
- 22 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:17
- 「ほな今日は特別や。明日からがんばるんやで。」
「ほ、ほんまか?やっぱ、オカンは日本一や!愛してるでぇ。」
さっきまでの暗い顔はどこへやら、満面の笑みで部屋に入りかけてた体をこっちにむけて、
投げキッスを送ってくる。
「約束を破るような子にはなるなって、オトンもようゆうてたもんなぁ。さすがオトンや。ウチを見守ってくれてる。」
「死んだみたいにゆうなや、まだピンピンしとるやろ」
「はあー。ほんまよかったわぁこれで明日からの地獄に向けて、命の洗濯ができるわぁ。」
亜依はまるで地獄の底で掴んだ一本の蜘蛛の糸をたどって、地上に出た亡者のように、
久しぶりに一筋の光を見たような気分になった。 しかし‥
「そんかわり、今日の分は、明日きっちりやるんやでぇ。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
やっぱオカンは鬼ババやぁーーーーーーーーーーーー」
そういって、階段下にいた、母親に、フライングクロスチョップをぶちかまし、
ダダダ‥と逃げ去っていった。
- 23 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:18
- 「ゲホゲホ‥ゴルァーーーー亜依!!なにさらすんじゃーー」
「うっさい鬼ババーーー」
「待てこの馬鹿娘ーーーそれでも女の子かぁ!!ーーー」
「だれが待つかい、ウチの座右の銘は「わんぱくでもいい。たくましく育つ」やぁーー!!」
「そんな古いネタ誰もわかるかぁー!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 24 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:18
- ところかわって玄関前。
一組の親子が「引越し蕎麦」と書かれた包みを持って立っていた。
母親の後ろに立っていた小さな娘は少し不安な顔をしながら、母の行動を待っていた。
「ここね。」
ピンポーン
「‥‥‥‥‥‥‥‥あら?」
もういちど ピンポーン
「‥‥‥留守‥じゃないわよねぇ‥」
それもそのはず、向かいの家から、こっちの家に向かうときから、家の中より
「鬼ババー」と「馬鹿娘ー」という単語がものすごい音量で飛び交っており、
いたるところから、バタバタと走り回っている音が聞こえるのだから。
「そういえば‥向かいの奥様が「加護さんのお宅は一度運動会が始まると、閉会式まで一時間はかかるわよ」
っていってたわね。しょうがない‥希美!出直しましょう。」
「うん。」
亜依とよく似た少女はそう言うと、来た道を母親と共に帰っていった。
- 25 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:19
-
「いい加減にしなさい馬鹿娘ーーー!!!。」
「うっさい鬼ババーー!!」
- 26 名前:第一話 奈良のおだんごあたま 投稿日:2004/08/29(日) 16:19
-
――加護家のごく普通の一日。いつも通りの一日。当たり前にすごした一日。
――笑った。泣いた。怒った。
――それでよかった。幸せだった。
――あの日がくるまでは‥‥‥
- 27 名前:作者 投稿日:2004/08/29(日) 16:20
- 第一話 奈良のおだんごあたま 終了です。
次回は第二話に入りたいと思います。
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/29(日) 23:58
- 更新お疲れ様です!!!
待ってました!!!w
よっすぃーはまだ出てきてないみたいですね。
あいぼん親子の対話がおもしろい!(・∀・)
続き頑張ってください!
- 29 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:24
- <<28
名無し読者 様
すいません。これじゃ主役は母親ですよね(苦笑)
もう一人の主役の吉澤さんは第四話から登場予定です。
まだ物語は序章ということでご勘弁を‥
今回の更新です。
- 30 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:25
- 〜二人で見た日々〜
第二話 隣の客はよく柿食う客だ!
- 31 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:25
- 夏休みも三日目。亜依は母親との約束通り学習机に向かい「必ず出る!!英語文法200問!!」と
かれこれ朝から三時間近く格闘していた。
「くそーーっ!!こんだけ苦労して覚えた文法。試験に出えへんかったらこの○文社訴えたるからな!!」
もちろん参考書は何も答えないし、むしろそんなこと言われても迷惑な話である。
亜依は突出して苦手な教科はないが、どうもこの英語の文法の組み立てが苦手だった。
「ぽっしびる?そんなビル知るかい! そんなんいらん‥‥と‥‥よしできた!よっしゃーー!
今日のノルマおーわりっと。」
- 32 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:25
- 亜依は母親との約束をまもりつつ、中学生最後の夏休みを少しでも満喫するため、
三時間の受験勉強は午前のうちに済ませ、
夏休みの宿題は夜に。
そして、あいた午後を自由に使うという40日もつのだろうか?とつっこまれるような無謀な作戦を
昨日、涼しい図書館の中で考え付いたのだ。
「昨日は図書館で勉強したゆーんがまったく信用されてへんかったからなぁ。
まぁ実際なんもせえへんかったけど‥‥」
母親の目は節穴ではない。娘がおとなしく図書館などで勉強しているか、していないかなど、
あっというまに見抜いてしまう。
「今日は家でやったから大丈夫やろ!さて、午後なにすんかなぁー。今日は一人やし‥‥」
- 33 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:26
- さすがに亜依とて同じ受験生の同級生をしょっちゅう遊びに誘うことはしない。
なっちゃんとも夏休み初日にプールに行き、昨日図書館にも付き合ってもらったので、
今日は誘えない。
「しゃあない。きょうはおとなしく、家でゲームでもしとるか。」
予定がないのなら、受験生なんだから勉強せい!とつっこみたくなるのだが、
どうやらまだ亜依にはまだ受験の緊張感はもてないらしい。
ガチャ!
「亜依。勉強終わった?」
「な、なんやオカン!びっくりした!今日は‥いやいや今日もちゃんとやってるで!」
「なーにビクビクしてるんよ。言うの忘れてたけど今日お隣さんとお昼。うちで
ご一緒するからね。もうそろそろいらっしゃるころだと思うけど。」
「ふーん‥そうなん?まぁ別にええけど‥‥」
- 34 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:26
- お隣さんとは数日前東京からこの地に越してきた「辻家」のことである。
昨日亜依が図書館に行っているときに引越しの挨拶に来たらしい。
「ゆうべオカンいっとったけど、お隣さんの娘。ウチに似とるんやって?」
「そーなんよぉ。「希美ちゃん」っていうんだけど髪型も背丈もそっくり!
思わず笑いそうになったわぁ。」
「なんで笑うねん!ウチに似とるなら、可愛い娘やろうなぁ‥。」
「でも似てるのは外見だけやね。中身は全然違うかったわ。おとなしい娘でねぇ‥
どっかの騒がしい怪獣とは大違いだったわ!」
「オカンに言われとぉないわ!!こんな清楚で可憐な美少女つかまえて!」
「どこがやねん!!‥そういえば辻さんに「加護さんはいつも親子仲良さそうで羨ましいです」って
いわれたけど‥‥なんでやろ?」
「しらん!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 35 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:27
- それから十五分程して、辻さん親子はやってきた。
「どうも!おじゃまします。ほら、希美!」
「お、おじゃまします。」
「そんな畏まらなくて結構ですよぉ!これから永い付き合いになるんですから!楽にいきましょ?」
(そんなん関西人のノリをまともにぶつけたら相手はひくで!)
亜依はそんな事を思いながらも「希美ちゃん」が気になるようで、料理が置いてあるキッチンテーブルの
椅子に座りながら、母親の影に隠れて見えない「希美ちゃん」を見ようと、身をよじらせていた。
「亜依!いらしたわよ」
最初に亜依の母親。次に希美の母親。そして最後に希美がダイニングに入ってきた。
- 36 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:27
- そこで初めて「希美ちゃん」をまじまじとみつめた亜依は軽く苦笑いをして、
(た、確かに似とるかもしらん。背丈もおんなじ位やし、おだんごも一緒や。)
心の中でそう呟く。
「あなたが亜依ちゃん?まあっ!本当にうちの希美にそっくりね!ほら、希美!」
希美の母はそう言って、少し後ろにいた希美を亜依の前に連れて行き、挨拶を促す。
希美は軽く頭を下げ、
「は、はじめまして亜依さん!辻希美です。」
「は、はじめ‥」
「まあーーーっ!!!いいのよ!「さん」なんてっ!!希美ちゃんたらぁ!!」
亜依の挨拶を思い切りさえぎり、まさしく関西人のノリを大爆発させた亜依の母親は豪快に笑いまくった。
「こ、この馬鹿親‥‥」
亜依は完全に挨拶のタイミングをはずし、ただ豪快に笑っている母親を顔を赤くさせながら睨み続けるしかできなかった‥。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 37 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:28
- 「さあどんどん食べてちょうだい。希美ちゃん!」
「は、はい。いただきます。」
(なんで挨拶でこんな疲れんねん!)
あの後なんとか挨拶を無難に済ませ、やっと昼食にありつけそうな亜依はやっと一息ついた。
テーブルの上には大和鶏や大和ネギを使った料理や、柿の葉寿司など、奈良を強調したい気持ちが
充満した昼食が並んでいる。
「はあ‥オカンもベタベタやなぁ‥まあ鹿センベイがないだけましか‥はよ食べよ。」
亜依はさっそく大好物の柿の葉寿司に手を伸ばす。
(これ、平○の柿の葉寿司やん!オカンめ!見栄はりよって!)
普段は滅多に食べれないご馳走を逃すものかと亜依はいつもより食欲を増進させていく。
二個目‥三個目‥
その時ふと、希美がこちらを気にしているのを亜依は眼の端のほうで確認した。
「どうしたん?希美ちゃん。」
「う、ううんなんでもない。」
- 38 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:28
- そんなはずはないと亜依はいろいろ推理してみる。
「ああ、これか!」
柿の葉寿司を指差す
「柿の葉寿司ゆうてな。東京ではあまり見ぃへんやろうけどこっちではめっちゃ有名でうまいねん。
特に今日はオカンが見栄はって買うた高いモンやから、気に入ると思うわ。」
「余計なこと言わんでいいっちゅうねん。」
今度は母親が赤くなる。この親にしてこの子ありである。
「うん‥美味しそう。もらっていい?」
「もちろんや!」
希美は丁寧に柿の葉をとり、鯖が乗った押し寿司を口に運ぶ。
「どや?」
希美はほんのり笑みを浮かべ
「うわ‥凄く美味しい。」
「せやろ!どんどん食べてええで!(でもちょっとは残しといてな!)」
「うん。ありがとう亜依ちゃん!」
- 39 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:29
- 希美は相当柿の葉寿司が気に入ったらしく、次々と口に運んでいく。
亜依はちょっと苦笑い。
(ま、まあええか。お客さんやし)
それにさっきまで少々うつむきがちだった希美がいまは楽しそうに笑って、亜依とも打ち解けている。
(笑うと八重歯が可愛いやん!こりゃウチとええ勝負やな)
新たにできた友達の笑顔を見れて、そういう意味でも亜依は満足だった。
二人の母親は眼を細めながらその光景を見ている。
「心配いらないわね」と眼で語り合い、ほっとしたように同時に微笑んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 40 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:29
- 「じゃあいってくるでー。」
「行ってきます。」
「気をつけるのよ!」
「亜依ちゃん。希美をよろしくね。」
すっかり仲良くなった亜依と希美。亜依の提案で近所を案内することになったのだ。
「じゃあ商店街からいこか?」
「うん!‥でもごめんね!亜依ちゃんも受験で忙しいのに」
「かまへんて!余裕余裕!」
大嘘である。もしも希美がいなければ、間違いなく家でTVゲームをしていた事であろう。
- 41 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:29
- 「それより、なんでこんな時期に引っ越してきたん?希美ちゃんも来年受験やろ?」
亜依の言うとおり、受験を控えた子がいる家族がこの時期に引越しをするのは少々風変わりである。
普通は区切りのよい高校入学前や、そうじゃなくても三年生に上がる前とかであろう。
しかし、もはや一学期を終え、受験まであと半年のこの時期。
希美にとっては二学期から全く違う環境。しかも受験生にとって大事な夏休み中に引越しでバタバタするのは
精神衛生上良い事はないだろう。
「うん‥本当は私が卒業するまで向こうにいるつもりだったんだけど、お父さんの仕事の
都合が早まったのと、それと‥‥」
「それと?」
「ううん‥なんでもないよ亜依ちゃん。」
希美はそう言って笑ってみせる。
勘のいい亜依はなにかあるとは思ったが追求はしなかった。
(人間 喋りたくない事の一つや二つあって当然や)
亜依はもうこの話題を止めにしようと決めた。
- 42 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:30
- 「なあ希美ちゃん?」
「ん?」
「亜依ちゃんっていうのやめへん?うち「あいぼん」って呼ばれてんねん。そう呼んでくれへん?
ちょっと「亜依ちゃん」じゃ恥ずかしいわぁ。」
「うん!わかった。あいぼん!」
「希美ちゃんは東京じゃ何て呼ばれてたん?」
「あだ名は‥特に無かったかな‥」
少し希美に暗い影が舞い落ちるが亜依にはそんなものは通用しない。
「じゃあうちがつけたる!のぞみやからぁ‥‥‥のの!ののや!のので決まり。」
「‥のの?」
「そや!‥‥‥気に入らんか?」
「ううん!すっごい嬉しい!ありがとう。」
希美の顔には暗い影などもう何処かに消え去り、微塵も残っていなかった。
- 43 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:30
-
「じゃあいくでーののーーっ!!」
「うん!あいぼんーーっ!!」
- 44 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:31
-
――――― あいぼん‥‥あいぼんがつけてくれた「のの」ってあだ名。とっても嬉しかったよ。
あいぼんとの思い出。きっと‥‥きっと忘れないからね‥‥ ――――――――――
- 45 名前:作者 投稿日:2004/08/30(月) 04:32
- 第二話 隣の客はよく柿食う客だ! 終了です。
次回は第三話に入りたいと思います。
ようやく次回から物語の進展があると思われます。w
関西人の皆さん。少しおおげさな表現をしてしまいスイマセン。
次回もよろしくお願いします。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/30(月) 11:56
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
作者さん、更新お疲れ様でした!!
ののには何か裏がありそうですね〜
楽しみになってきました!!
次回に期待してます。
- 47 名前:名無し飼育 投稿日:2004/08/30(月) 19:34
- 更新お疲れ様です。
あいぼんのオカン最高ですw
次回も頑張ってください。
- 48 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/04(土) 12:37
- 作者さん続きお願いします。
- 49 名前:作者 投稿日:2004/09/06(月) 01:20
-
作者です。
夏休みも終わりましたね。(遅)
もう少し早く更新したかったのですが私事がたてこみ、遅くなってしまいました。
<< 46 名無し読者 様
今回辻さんのキャラには少々難儀しております(笑)
「〜れす」をつかわない辻さんに作者も違和ry
<< 47
<< 48 名無し飼育 様
おまたせしました。マターリ更新でよければ
今後もお付き合いお願いします。
今回の更新です。
- 50 名前:作者 投稿日:2004/09/06(月) 01:20
-
〜二人で見た日々〜
第三話 なんとなく‥なんとなく‥
- 51 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:21
-
閑かさや 岩にしみいる 蝉の声(松尾芭蕉)
- 52 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:22
- なんとも風流な俳句である
静寂の中でも蝉の声だけが岩にしみとおるように聞こえてくる‥
季節を愛そう 生き物を愛そう
芭蕉は一日とて休むことのない蝉の声を命の尊さにみたてて語りたかったのだろう
そんな芭蕉の思いは時代を越えてもきっと現代の人々に届いて……
- 53 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:22
- 「あああーーーーーーーーー っついねんなぁーーーーーーもぉーーーーー!!!!!」
「あ、あいぼん!そんなにおっきな声だしたら近所迷惑だよ。」
「だって暑いねんもん‥‥ってミンミンミンミンミンうるさいねんーーっ!!バカゼミーーっ!!!
よけいあっつく感じんねん!!!」
届いていなかったようである‥‥
岩にしみいるどころか大岩をも破壊してしまいそうな亜依の大声は近くを通っていた人達を
すべて希美の家に振り向かせてしまうほど大きかった。
パタパタ‥パタパタ‥
「もう八月も終わりやねんのになんで毎日こんなにあっついねん!」
ところかまわずシャツを大きくまくりあげてパタパタと風を入れる亜依の姿は、
清楚な少女とはほど遠い、ただのオッサン。
「だ、だめだよあいぼん。外から見えちゃうよ。」
そんな亜依を希美は慌てて止めにかかる。
けっこう良いコンビのようだ。
- 54 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:23
- 夏休みもあと少し
亜依は午前中の勉強を済ますと、いつものように希美の家に遊びに来ていた。
希美と出会って一ヶ月余り、二人は十年物の友達のように仲良くなっていた。
もともとの波長は合っていたのであろう。希美も出逢った頃に比べると、格段に笑顔も口数も増えていた。
「な―― のの!夏休みの宿題終わったん?」
「うん。もう大分前に終わってるよ。」
「うそやん!‥‥後でちょっとみせてな!」
希美は二学期から亜依と同じ中学校に通うことが決まっている。
本来転校生の希美には夏休みの宿題はないはずなのだが‥
「稲葉センセも厳しいよなぁー!宿題はちゃんとやってこいって‥」
「別に気にしてないよぉー!でも宿題は自分でやろーねぇ。」
「せやな‥オカンにばれたらまたしばかれるかんな!」
「そうそう!」
- 55 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:23
- こういうことである。
夏休みの初め、母親と一緒に中学校へ行った希美は学年主任の稲葉に
「希美ちゃんはもうココの生徒になったんだから、ちゃんと宿題やってくるんやでー。」
と、当たり前のようにいわれたのである。
しかし、当の希美は転校生だからといって特別扱いしない稲葉に好感を持ったようである。
「ののはめっちゃ頭ええやねんもんなぁー。こないだ前のガッコの通知表(ほぼムリヤリ)見せてもらったけど、
10ばっかりやったもんなぁー。」
「そんなことないよぉーー。英語は苦手だもん。」
「あるって!こないだうちのオカンにも「頭の中身も希美ちゃんに似てほしかったわぁー」ってイヤミゆわれたわ。」
「あ‥ごめんねあいぼん‥」
「あ、や、そんな意味ちゃうねん。」
希美にはどうやら触れては欲しくない「何か」があるらしい。
亜依もそれが何か薄々感じているのだが、あえて触れることはしない。
「ごめんなぁのの!チューしたるから堪忍したって。」
「えっ!へっ!もーやだーあいぼーーーん!」
「愛してるでーののーーっ」
亜依には暗い空気を吹き飛ばすパワーがある。
暗い雰囲気になりかけていたこの場も、亜依という名の台風に全て吹き飛ばされてしまったようだ。
- 56 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:24
- 「ところで、あいぼんこれからどうする?ののはこれから本屋に行こうと思っているんだけど?」
ちなみに希美は亜依につけてもらったあだ名が気にいったらしく、最近一人称を「私」から「のの」に変えた。
「本屋かぁ‥‥」
希美の趣味は読書である。
この街の商店街の本屋は都会に負けないほど大きく、初めて亜依に案内されて来たときは
隅から隅まで店内を周り、一冊の本を買うのに一時間近くかけていた。
「うちは遠慮しとくわ。ちょっとそのへん散歩して今日は帰るわ。」
愛読書がほぼ漫画である亜依にとってはあまり気分が乗らず今回は断った。
「そっかー。だめだよーあいぼん!漫画ばっかり読んでちゃ。」
「生意気言うようになったのー!この八重歯!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 57 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:24
- 「とはいっても、別になんもないんねんけど‥」
希美の家を出た亜依。特に目的があるわけでもなく、近くの土手をぽてぽて歩いていた。
「やっぱ暑いなぁー。帽子被ってくればよかったなぁ」
確かに今日の日差しは八月の終わりを感じさせない強い日差しが照りつけている。
帽子でも被っていなければ日射病になってしまいそうな感がある。
「とくになんもないし早めにかえっとこ」
そのときふと河原近くの市営グラウンドで歓声が聞こえてくるのが聞こえた。
何かの試合が行われているらしい。
「なんやサッカー‥とちゃうみたいやけど、女やし。」
その競技が「フットサル」というのを知らない亜依は特に興味もわかずぼんやりと眺めていた。
「暑いのによー頑張っているなぁー。真っ黒に日焼けして。」
グラウンドを所狭しと走り回る戦乙女達はみんなスポーツに汗をし、健康的に日焼けされていた。
「あのベンチに座って声援送ってるピンクいおねーちゃんもよー焼けとる。」
- 58 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:24
- ピィ ピィ―――
「終わったんかな? さーてもうかえろっかな!」
くる、と家路に方向に向ける。
グラウンドに背を向けた亜依にかすかに声が聞こえた。
「勝………たよ……華ちゃ…」
「ひ……ちゃ……おめ…………」
グラウンドの中心にいた二人は嬉しそうに抱き合っていた。
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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 59 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:25
- 「ごちそうさまー。」
「なん?亜依!残すなんて珍しい。」
「なんとなーく食欲ないねん。今日帽子かぶらんと外歩いたから暑さにやられたんかも‥」
「気ぃつけえやーそれ以上頭悪うなったら受験やばいんちゃう?」
「うっさいわ!‥‥あーー大声出したらクラクラきたわ‥‥」
「大丈夫なんか亜依?今日は勉強はせんと早く寝たほうがええで」
「でもなぁオトン。まだ宿題が少し残ってんねん。」
亜依の父親は母親と違い非常に亜依に甘い。一人娘だから無理もないが‥
「そうや!甘い顔したら亜依の為にもならん!やることはきっちりやらなきゃアカン!」
「わかっとるわー。じゃあごちそうさん!」
「後で冷たいもん差し入れたるから気合入れて頑張りや!」
「うん。あんがとな」
- 60 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:25
- それから部屋にもどった亜依は少々のけだるさをおぼえながらも、母親からの差し入れのアイスをほおばりながら、
なんとか残りの宿題を終わらせ、床についた。
「あー!まだぼーっとするなぁ‥もう寝よ寝よ。」
頭に熱を下げるシートを乗せ眼を閉じる。
…………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
- 61 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:26
- その晩亜依は夢を見た。
「…長……生……もが………」
……………………………………………………………
……………………………………………………………
……………………………………………………………
「はじ……て…………これ…ら………だよ」
……………………………………………………………
……………………………………………………………
……………………………………………………………
「先生………亜…の熱………お願い…す。」
……………………………………………………………
……………………………………………………………
……………………………………………………………
女の子は泣いていた 夢の中の女の子はずっと泣いていた。
女の子は笑っていた 夢の中の女の子はやっと笑った。
そして女の子は大きくなった。
- 62 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:26
- ……………………………………………………………
……………………………………………………………
……………チュンチュン
「朝?‥‥ふぁーーーーーーっ!なんや変な夢見た‥‥」
ベットから降りた亜依はうーーん!と伸びをした。
「よう寝たから昨日より楽になったわ。」
シャー!!
カーテンを一気にめくる。今日も快晴のようだ。
「今日も暑そうやな。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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- 63 名前:第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 投稿日:2004/09/06(月) 01:27
- 第三話 なんとなく‥なんとなく‥ 終了です。
ほとんど進展なかったですね。嘘吐きな作者をどうか許してください。
あの人達の本編合流はもう少しです。
次回もよろしくお願いします。
- 64 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/07(火) 18:14
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
更新おつかれ様です。
梨華ちゃんも出てくるみたいですね〜
なんかワクワクです!
次回も頑張ってください。
- 65 名前:小説の人 投稿日:2004/09/07(火) 22:21
- はじめまして。そして更新お疲れ様です
夏も終わって嫌な気分になるこの時期ですが
この小説の続きを楽しみに生きてみますw
それにしても四期全員登場でこれからどうなっていくんでしょう…
- 66 名前:作者 投稿日:2004/09/12(日) 21:25
- (ダメ)作者でございます。
今回第四話を更新予定だったのですが、私事の立て込みと、第四話の
加筆、修正が必要と感じ、今回はお休みさせていただきます。
この駄小説を読んでくださっている皆様。マターリ作者をお許しください。
レス返しだけでも‥‥
<<64 名無し飼育 様
いつも読んでくださって有難うございます。
作者は四期メンバーの「家族愛」的な雰囲気が大好きです。
同じグループでなくてもきっと四人の絆は変わらないでしょう。
<<65 小説の人 様
あ、有難うございます(涙)そういって頂けると作者冥利につきるというものです。
ぜひまた感想を聞かせてください。
それではまた次回に‥ m(_ _)m
- 67 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/13(月) 10:22
- そうですか・・・・
とても残念ですけど作者さんがお休みなさるなら
仕方ありません。
四話も期待してたんですが…、お疲れ様でした。
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 11:51
- >>66 今回(今週)の更新っていう意味ですよね?
次回(来週)の更新を楽しみに待っています。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/15(水) 20:54
- 良い雰囲気ですね。更新楽しみに待ってます。
- 70 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/20(月) 21:54
- 作者さん待ち
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/20(月) 23:27
- おいらも待ってるよ〜
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 13:50
- マタ―リ待っています。
- 73 名前:作者 投稿日:2004/09/23(木) 04:32
- (ダメ)作者です。
遅くなりました‥‥い、言い訳はしません。
どうかこれからもこの(ダメ)作者を見捨てずに、また読んでやってください。
たくさんのレスありがとうございます。
>>67 名無し飼育 様
作者の文章能力のなさで、どうやら誤解をさせてしまったようですね。
マターリはしても、放置だけはしませんのでぜひまた感想をお願いします。
>>68 名無飼育さん 様
フォロー有難うございます。
来週どころか再来週になってしまい、ゴメンなさい。
>>69 名無飼育さん 様
こういうほのぼの雰囲気好きなんです。
このほのぼのが続けばいいんですが‥(え?)
>>70 名無し飼育 様
>>71 名無飼育さん 様
>>71 名無飼育さん 様
お待たせいたしました。感想もお待ちしております。
今回の更新です。
- 74 名前:作者 投稿日:2004/09/23(木) 04:32
-
〜二人で見た日々〜
第四話 出逢い 運命 そして‥‥
- 75 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:33
-
出逢いとは、平凡な日常にもありふれているたった一瞬の出来事
それを今でも鮮明に覚えているのは、なにかに導かれて出逢ったとあのとき感じたからかもしれない
映画のワンシーンのようでなくても、一生忘れられない出逢いがある
それを運命と呼ぶのでしょう‥‥‥
- 76 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:34
-
九月一日
夏休みも終わり、新学期のはじまりである。
夏休みの終わりを嘆く者 一月振りの学友との再開を楽しみにする者
塾や夏期講習から開放されて喜ぶ者
悲喜交々である。
よく晴れた新学期の朝。
遠くから見たら双子が歩いているように見える二人が
何かを話しながら学校へと足を進めていた。
- 77 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:35
-
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「なーのの、大丈夫やって!心配いらへんって!」
夏休み中に亜依の家の隣に引越してきた「辻家」その娘 ”のの”こと”希美”
今日から亜依と同じ中学校に通う。
亜依とは「友達」以上と呼べる仲になっていたのだが、今日は今朝から笑顔を見せていない。
その理由は‥‥
「‥‥だってあいぼんと違うクラスになっちゃったら‥のの‥ひとりだもん。」
「だ――っから大丈夫やって!うちのクラスなぁ、他のクラスより一人少ないねん。絶対同じクラスになれるって!
もしなれなくても友達なんてすーーぐ出来るって!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
(あかん‥重症や)
どうやら亜依と違うクラスになり、一人ぼっちになることを恐れているようだ。
もともと希美は人見知りをするほうであり、あまり知らない人とは積極的に喋ろうとはしない。
転校生ということもあり、クラスで浮いた存在になってしまうかもしれないと希美は考えてしまっている。
- 78 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:36
-
(心配せんでもええのに‥‥)
そう声を出して希美に伝えたかったが本当に思いつめた顔をした希美を見て、
あまり無責任な事も言えないと感じ、口をつぐんだ。
(どーしよ‥‥)
「おはよーあいぼーん!!!」
どう希美に声をかけていいか考えていた亜依に誰かが声をかける。
「おー!!なっちゃ――ん!!久しぶりやぁーーん!!」
「なっちゃん」こと奈津美である。亜依の仲の良い友達の中の一人であり、同じクラスでもある。
「ホント久しぶりやねーー。図書館に一緒に行ったっきり逢ってなかったもんねぇー‥‥ってアレ?あいぼんが二人いる‥」
「なっちゃん‥‥朝から高度なボケありがとう。紹介するわ!辻 希美ちゃんや!」
「辻‥さん?‥え?え?ごめん‥何組?」
「ちゃうちゃう。のの‥‥あー 希美ちゃんは転校生なんや」
「は?なんで転校生をもうあいぼんが知ってるの?」
「え――っとなあ‥‥」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 79 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:37
-
「そっかー!お隣に引越してきたんだぁー!‥で、あいぼんが悪の道に引きずりこんだ。と、」
「なんでやねん!!なぁのの!」
「う、うん。」
「おんなじクラスになれるといいねぇー!ね?希美ちゃん」
「ありがとう‥」
「あ―― なっちゃん!ののはののやから‥‥ん?ののは希美ちゃん‥‥あれ?ちゃうわ‥」
「あーわかったわかった!あいぼんはもう希美ちゃんを「のの」ってあだ名で呼んでると、
それで私にもそう呼んでくれと、そういうことね!」
さすがに奈津美は亜依の言いたかったことを瞬時に読み取ってくれたようだ
「さすがなっちゃんやぁー!そのとおり!」
「伊達にあいぼんの友達やってないからね〜。それに私、古文得意だし!」
「どういう意味やねん!!」
希美はそんな二人のやりとりを見てクスクスと笑っていた。
「なんかひっかかる言い方やなぁ‥‥まあええわ。ほらのの!友達がもう、一人できたやん」
「うん!よろしく‥‥なっちゃん」
「よろしくーののちゃーん!」
- 80 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:37
-
「じゃあののは一回職員室に行かないといけないから。」
「おー、のの!またあとで逢おうな。おんなじクラスになれへんかったら
稲葉センセに直談判したるから大丈夫や。」
「うん!そのときはよろしくね。」
さっきまでは耳に入らなかった亜依の言葉も今の希美には受け止められるようだ。
うつむき気味だった表情も明るさを取り戻しつつある。
「おとなしそうな子やねーののちゃんって」
「そんなこと全然あらへん!はじめはうちもそう思っとったけど、仲良うなったら
毒吐きまくりや。昨日なんてなぁ‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「ののー見てみぃ!ウチこの夏で三キロも痩せたんやでぇ!やっぱ女はスリムでなきゃあかんからなぁ!
ののもアイスばっかり食うとらんでダイエットしたらどうやー。」
それを聞いてちょっとムッときた希美は亜依のおなかを触り、
「ほんとだぁー!若乃花から貴乃花に変わったぐらいは痩せたねぇー」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
- 81 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:38
-
「なーんてぬかしよったんやで!ほんま腹立つ!!」
「キャハハハハハハ!!!おもしろいじゃーん!でもさっきの雰囲気からは想像できないねぇー」
「猫かぶっとるだけや!まったく‥‥」
―――――――――――
違うんだよあいぼん‥あなたには人の良い所をひきだせる力があるんだよ‥‥
ののちゃんのそんな所を見られるのはきっとあいぼんだけ‥‥
ののちゃんだけじゃないよ 私だって
あいぼんを見るだけで元気がでてくるんだ‥‥
言うとなんか悔しいから言わないけどね
あいぼんのそういうところ‥‥大好きだよ
………………
- 82 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:38
-
「なーにボーっとしてんねん!なっちゃん!はよ行こ?」
「うん!二学期もよろしくねあいぼん!」
「???何のこと?」
「いーからいーから!!ホラ早くしないと遅れちゃうよー」
そして気づいていないんだろうね 純粋で鈍感な天使さん?
………………
- 83 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:39
-
教室に入った二人。他の友達との一月以上ぶりの再開の挨拶もそこそこに
亜依は自分の席に座り、手を組みブツブツと何かを呟いている。
「こい‥‥こい‥‥こい‥‥」
「な、なんか変なオーラがでてるよ、あいぼん。」
「いま校長センセと教頭センセと稲葉センセに電波送ってんねん!‥‥邪魔せんといて」
「が、頑張ってね。(眼がすわってるよ〜)」
ガララララ‥‥
「おーみんな久しぶりやなぁ!よーし!HRはじめるぞー」
きりーつ 礼
「「「「「「「おはようございまーす」」」」」」」 「こい‥こい‥」
ちゃくせーき
「さっそくやけど転校生を紹介する。男子ども喜べー!女の子やぞー!」
- 84 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:39
-
キタ━━( ‘д‘)━━( ‘д)━━( ‘)━━( )━━(‘ )━━(д‘ )━━(‘д‘ )━━━!!!!!
「辻!はいっておいでー」
ガララララ‥‥
「辻 希美ちゃんや!みんな仲良うせえよー!」
「辻 希美です。東京から来ました。みなさんよろしくお願いします。」
満面の笑顔をみんなに向ける。そしてもうひとつ‥‥
(よっしゃ――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!)
亜依も笑顔。また笑顔。
どうやら亜依の電波攻撃(?)は無事成功したようだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 85 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:40
-
「だからウチの言うとうりだったやろ!絶対一緒のクラスになれるって!」
「でも、ほんっとドキドキしたんだよー!あいぼんのクラス聞くの忘れてたから「一組」って言われても
同じクラスかどうか分からなくって‥寺田先生に「一組に加護亜依さんっていますか?」って聞いちゃって
「なんで加護の事知ってるん?」って聞き返されちゃって!それでね‥‥‥‥」
暗くよどんでいた事が嘘のよう。今朝の百倍くらいの明るさでしゃべりまくる希美
そして希美と同じくらい嬉しかった亜依もしゃべりまくる。
(鏡で自分自身に喋ってるみたい‥‥まるで双子。でも、ののちゃん別人みたい‥さすがあいぼんマジックだなぁ‥)
奈津美は亜依と希美を見て心の底からそう思った。
HRも終わり、帰りまでの残りの時間、緊張から開放された気分の二人は、
亜依の他の友達も加え談笑に花を咲かせていた。
亜依の仲立ちもあり、あっという間に友達がたくさん出来た希美は本当に嬉しそうだった。
- 86 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:40
-
「ののちゃんって東京から来たんだよねぇー!いいなぁー私も渋谷とか原宿に行ってみたいなー」
「んーでも人いっぱいで歩きにくいよ。」
「えー!でも芸能人とかにもいっぱい逢えるんでしょー!やっぱ行ってみたいなぁー!」
「「行きたい!行きたい!」」
いつのまにか話題は希美を中心とした東京の話で盛り上がっていた。
「東京はオシャレって感じやしー!ホラ見てよ、この雑誌!」
希美の隣にいた女の子がストリート雑誌を広げて皆に見せる。
「「何?何?」」
「この雑誌さぁー街で見かけたかわいい女の子とか、流行っている店とか紹介してるんやけど、
載ってる女の子のいた場所も店もほとんど渋谷とか原宿やもん。奈良で買ってんのに!!」
「あーそれで芸能界デビューとかしてる子いるよねー!知ってる知ってる!」
「この表紙にでてる子なんてさぁー!どのストリート雑誌でも特集組んでるよ!
芸能界デビュー間違いなしの超人気者なんだって!」
「どれー?みせてー」
亜依が身を乗り出して雑誌を覗き込む。
- 87 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:41
-
「なーんや。たいしたことあらへんやん!こーんな子よりもっと身近にスーパーアイドルがおるやん!」
「「「「「どこに?」」」」」
「目のまえにおるやん!可愛さでこのあいぼん様にかなう‥」
「じゃあそのうち皆で東京に行こうねぇーーもちろんののちゃんの案内で!」
「「「さんせーい!!!」」」
「放置かいっ!!」
亜依の訴えは完全無視!!奈津美の音頭によって亜依以外の結束は固まったようだ。
(東京‥か‥あんまりいい所じゃなかったな‥)
希美は内心少し複雑だったが、話が盛り上がっているのでそんな事は決して言わない。
そして東京にいた時の事を少し思い出しながら雑誌のページをペラペラめくっていた。
「なぁなぁ!ののはこんな黒っぽい子よりもウチのほうがかわいいと思うよなぁ
‥ってかそう言え!」
亜依は表紙に載っている女の子を指差し、希美に同意を求める。
「大丈夫!あいぼんは、ほんっと可愛いよ‥‥‥背丈が」
「ホンマ生意気言うようになったのーこの舌足らずーー!!」
「ハハハハ!ごめんごめんーー」
(でも今はひとりじゃない‥みんなが‥あいぼんがいるから‥)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 88 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:41
-
新しい学校生活の初日を大成功に収めた希美。
帰りの足取りも軽くなった。
「どや、みんなええ子達やったろー」
「うん!ホントみんないい人!大勢とこんなに喋ったのはじめてかもー。東京じゃ‥‥」
「?」
「う、ううんなんでもない。」
「‥‥そっか! なあちょっと本屋よってええ?今日発売の雑誌があんねん。」
「あーまた漫画でしょ!それに寄り道はだめだよー」
「まーまー!すぐ戻ってくるからちょっと待っててやー」
亜依は希美の返事を聞くこともなく、素早く本屋の中に消えていった。
残された希美は呆れ顔。
- 89 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:42
-
「えーと‥どこや」
希美を待たせるつもりはないのでさっさと目的の本を探す。
「あった、あった。」
目的の本を見つけ、束からとりだす。そのときふと隣においてある雑誌が目に付いた。
さっきみていた物とはまた違うストリート雑誌のようだ。
(さっきの表紙に載っとった子や。こっちにも表紙で出とるんや。人気あるんやなぁ‥
名前は‥‥石川‥梨華‥‥ふーん。ま、どーでもええけど。)
そういう類の雑誌に興味が沸かない亜依はその雑誌を手にとって見ることは無かった。
会計をしようとレジに向かうと、
そこににいた客がなにやら店員に話しかけているようだった。
「それじゃここと店の入り口に貼っておくからね!試合がんばってよ。」
「有難うございます。助かります。」
そう言うと、その客は店員に何かのポスター数枚を渡し、頭を下げていた。
- 90 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:42
-
(なにしとるん?そんなことより、はよどいてくれへんかなぁ。のの待たせてんのに‥)
「あっごめん!邪魔だったね」
亜依の無言の訴えが利いたのだろうか、その客は亜依に気付き体を横に寄せる。
「500円になります‥‥‥ちょうどお預かりします。ありがとうございましたー。」
会計を済まし希美のところに向かおうと踵を返す。
すると亜依の目にはさっきの客のドアップが映し出された。
「どぁっ!!な、な、なんですか?」
「キミ、フットサルって知ってる?」
「は?フ、フ、フ、フットサル?」
「そ、フットサル。」
いきなり顔のアップを見せられ、心臓がバクバクいってる亜依を知ってか知らないでか
その客は当たり前のように淡々と話を切り出していく。
「し、知らないですけど。‥というかあなたの事もウチ知らないですけど。(新手のナンパか?)」
「あーごめんごめん!実はさぁー今度近くの市営グラウンドでフットサルの公式戦やるんだけど、
時間があったらぜひ見にきて!」
そういうと、自分の持っていたポスターを広げ、亜依に見せる。
「(答えになってないやん!)あ、はい暇やったら。」
この人は話を聞かない人だと本能的に悟った亜依は、さっさと話を切り上げたいので
てきとうに相槌を打っておいた。
- 91 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:43
-
「やったー!絶対見に来てよ!大活躍してみせるから!」
Vサインをしながらそういうと、その謎の人物は店の外に出て走って去っていった。
(な、なんやあれ?‥‥ちゅーかフットサルってナニ?‥い、いやその前に
あんたダレ ―――――――――――――――!?!?!?)
亜依は大声で叫びたかったが店内だったのでグッと我慢した。
(ハッ!そんな事考えてる場合ちゃうかった。のの待たせてるんや!)
???の世界から帰還した亜依はようやく希美を待たせていることを思い出し、
同じく店の外へと駆けていった。
- 92 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:43
-
「おっそーーい!あいぼん」
「ごめん!ごめん!」
- 93 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:43
-
- 94 名前:第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 投稿日:2004/09/23(木) 04:44
-
まだ暑かった新学期の日、はじめてよっちゃんと逢ったよね。
ウチははっきり覚えてる!まああんな出逢いかたやったから
よけいに印象深かったけど(笑)。
よっちゃんも覚えてる言うとったけどホンマなんかな?
だってあんとき名前も言わなかったんやで、男かと思ってたわ。
でも‥よっちゃんと出逢えてホンマよかった。
運命ってあるんかもな‥‥
神様はおらんと思ってたけど、その事だけは感謝してる。
恥ずかしいから言えへんけどな!
いつか‥言える日がくればいいな‥‥
おやすみよっちゃん! また明日‥
――――― 亜依の日記より
- 95 名前:作者 投稿日:2004/09/23(木) 04:44
-
第四話 出逢い 運命 そして‥‥ 終了です。
次回もよろしくお願いします。
- 96 名前:作者 投稿日:2004/09/23(木) 04:51
-
補足を少し‥‥
奈津美というキャラは作者が三秒で考えたオリジナルキャラです。
安倍さんではありませんw
名前は知り合いより無断で借用しましたw
ちなみに関西弁は加護さんほど達者ではありませんw
作者は結構オリキャラは好きです。(自由に性格を決められるので)
- 97 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/24(金) 17:09
- キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
久しぶりの更新おつかれ様です。
やっとでよっちゃん登場!!
あいぼんとの出逢い方がイイですね〜。
次回も楽しみに待ってま〜す。
- 98 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 00:26
- 更新お疲れ様です。
なんかほんとに良い感じですね(ボキャブラリー貧困だなジブン)。
端々に見え隠れする雰囲気から、完結までの限られた時間を
登場人物たちと大事にすごしていきたいな〜と思います。
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/01(金) 20:16
- 良いね良いね続き待ってるよ
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 22:38
- 二度目いや3度目?の出会いはどんな感じになるんだろう?
- 101 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 01:26
- 作者さん!ぜひ続きをお願いします!!
- 102 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 19:15
- ・・・待ってます。
- 103 名前:作者 投稿日:2004/11/14(日) 13:58
- 作者です。前回更新から約50日。もう‥申し開きもありません。ただ一言、
ごめんなさい〜!m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m
実は‥事情がありまして、作者のモチベーションがググンとさがっておりました。
筆は進まず、ネタも浮かばず‥最悪の状態でした。
でも、なんとか自分的に解決をし、ここの所なんとかモチベーションも上がってまいりました。
勝手で申し訳ありませんが今回から何とか復活しようと思います。
長いトコ生存報告もレス返しもせずに本当にすみませんでした。
これからもマターリ更新しかお約束できませんが(もうこんなに空けません。緊急時には必ず報告します。)
この『〜二人で見た日々〜』をこれからもよろしくお願いします。m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m
レスありがとうございます
>>97 名無し飼育 様
今回から吉澤さんが本格参戦です。
この二人の出逢い方。作者も結構気に入っております。w
>>98 名無飼育さん 様
とても丁寧な感想有難うございます。
ラストはもう決まっているのですがお気に召すかどうか、いまから心配です‥w
>>100 名無飼育さん 様
この小説の隠れテーマは「出逢い」と「運命」でございます。
三度目の出逢い、ぜひご堪能を(え?
>>99 名無飼育さん 様
>>101 名無飼育さん 様
>>102 名無飼育さん 様
本当に × ∞ お待たせいたしました。これからもどうぞよろしく。
- 104 名前:作者 投稿日:2004/11/14(日) 13:59
- 今回の更新ですが、かな〜り長いです。いままでの三、四倍あります。
「こんなに休んで大量更新するのなら分けて早めに更新しろ!」という声が聞こえてくるようです。
しかし、話の流れ上、分けるのが難しいと感じたため、こうなりました。
この日曜日、この作品を時間つぶしにマッタリと読んでくれれば大変嬉しいです。
それと、もうひとつ。
今回をもって、この『〜二人で見た日々〜』の第一部を終了という事で更新させて頂きます。
特に第何部と分けるつもりはなかったのですが、ご了承ください。
そして、次回更新予定の番外編を挟み、第二部を始めたいと思っています。
どうぞよろしくおねがいいたします。
今回の更新です
- 105 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:00
-
- 106 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:01
-
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
‥‥‥‥‥ねぇ‥ママ?‥‥‥‥‥
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
‥‥‥‥‥ねぇ‥ママ‥‥‥ママってば‥‥‥‥‥
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
空高く集まった雲が淡い紫色に映る夕暮れ時。
ソファーで母親の腕に抱かれていた娘が先ほどから母親の反応を伺っているのだが返答がない。
部屋には娘の声と時計の秒針の音が代わる代わる静寂を打ち消していた。
- 107 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:01
-
「ママ!」
「‥‥えっ?どうしたの麻美?」
「どうしたのじゃないよぉ〜何度も呼んだのにぃ!」
しびれを切らした娘がいっそう声を張り上げると、
やっと娘の声に気付いた母親がゴメンゴメンと言って娘をなだめようとしていた。
「ごめんねぇ〜麻美。ママ、ちょっと考え事してた。」
「はやく本の続き読んでよぉ〜。‥‥‥‥‥‥ママ?‥‥‥なんで泣いてるの?」
「えっ?」
娘に言われてハッとした母親は自分の瞼に手の甲を当て、自分が涙を流していることに気がついた。
「どうしてママ泣いてるの?麻美がおっきな声出したから?ごめんね、ごめんねママ。」
「ち、ちがうのよ麻美。眼にゴミがはいっただけ。ちょ、ちょっとママ顔洗ってくるね。」
「ママ‥‥」
- 108 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:02
-
眼にゴミが入ったなど子供にでも明らかに嘘だと分かるのだが、それでも娘に泣き顔を見られたくなかったのか、
エプロンで顔を隠しながら、母親は洗面所へ駆けていった。
「‥‥‥パパぁ!」
その場に残され、居た堪れなくなった娘、麻美は父親に助けを求め、父親の胸に飛び込んだ。
「ねぇパパ‥なんでママ泣いちゃったの?麻美のせい?ごめんなさぁぃ‥‥」
薄く涙を浮かべ眼を伏せる麻美に父親は優しく微笑んで頭を撫でる。
「心配することないよ麻美。ママは感動屋さんだからあの本を読んでて涙が出ちゃったんだ。麻美のせいじゃないよ。」
「ほんと?麻美のせいじゃないの?」
「ああ‥ママは昔から泣き虫なんだぞぉ!」
「そっかぁ。ママは泣き虫なんだぁ。」
「だから麻美は強くならなきゃだめだぞぉ!」
「うん!もう麻美は泣かないよ。」
「よーしいい子だ。」
そう言ってもう一度娘の頭を優しく撫でる。
(‥‥奈津美‥‥やっぱりまだ辛いだろうな‥‥‥‥‥加護さんの事‥)
- 109 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:02
-
(あいぼん‥‥‥‥‥‥あいぼぉんっっ‥‥っく‥)
母親 ― 奈津美は声を殺して泣いていた。
あの時何も出来なかった自分に悔しくて泣いていた。
親友に何もしてやれなかった自分に悔しくて泣いていた。
「もう‥十年になるのにね‥‥」
(吉澤さん‥‥石川さん‥‥ののちゃん‥‥
‥‥‥あいぼん‥‥‥‥私は‥まっすぐに生きているかな‥‥)
‥‥‥‥‥‥‥
- 110 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:03
-
「麻美、おまたせー!ゴメンね!本の続き読んだげる。」
奈津美がリビングに戻ってきた。
すると麻美が奈津美の腰にしがみつき、目を輝かせながら興奮した口調で言った。
「ママー!麻美は強くなるからね!それで泣き虫なママを守ってあげるからねぇー!」
「え、麻美?‥‥‥‥あなたぁ?なんか余計な事言った?」
ジロっと父親の方を睨む!
睨まれた本人はとぼけ顔。
「まったく‥」
娘の方に向き直った奈津美は、小さな娘の目線にあわせるようにしゃがみこみ、頬に両手を添える。
「‥‥そっか。麻美‥強くなってね‥‥」
あいぼんように‥‥強くなってね‥‥
‥‥‥‥‥‥‥
- 111 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:03
-
「えっと‥どこまで読んだっけ?」
「もーう!‥‥えとねー!あいぼんがぁ、よっちゃんと初めて逢ったとこまでだよぅ!」
「‥‥‥そうだったね‥‥じゃあ続きを読むね。」
「うん。」
【私がよっちゃんと初めて出逢ったのは、あいぼんとよっちゃんが本屋で出逢ってから十日後、
フットサルの試合をあいぼんと一緒に見に行ったときでした。
でも、あいぼんもそうだったけど、「フットサル」ってなんだか知らなくて、
しかもよっちゃんの事をあいぼんは男だって言ってたし、はじめは行こうかどうか迷っていました。
でも何故か私とあいぼんはその日、確かに市営グラウンドに行ったんです。
理由は確か‥‥ ―――――――――――― 】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 112 名前:―――――――――― 投稿日:2004/11/14(日) 14:04
-
〜二人で見た日々〜
第五話 男前な彼女とアイドルと
- 113 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:04
- 「ねぇあいぼん?確か明日じゃなかったっけ?本屋で逢った人との‥‥」
「ああ、せやったなぁ!あのー訳の分からん男の人の‥‥なんやっけ?
ふっとさる?っちゅー試合がなんたら‥」
「行くの?あいぼん?」
「えー!行かへんよぉ。絶対あれはナンパやで、あまりに可愛いウチを
見たモンやから声かけたんちゃう?」
「(それはないと思うけど‥‥)いいの?その人あいぼんが行くって言ったら
すごく喜んでたんじゃないの?」
「それが手なんやって!あんなんホイホイついてったらウチの操があぶないわ!」
「か、考えすぎだよあいぼん。‥‥‥」
「それに、ののも明日用事があるんやろ。一人で行くんもいややし。」
「うーん‥‥ごめんねー」
- 114 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:05
- 二学期も10日が過ぎた。
やっと残暑も落ち着きを見せてきた土曜日の午後。
学校は午前中で終わりなので、亜依の家でお昼ご飯を一緒に食べていた亜依と希美。
思い出したように話に出てきた「男の人」とは、新学期の日、亜依が本屋で偶然出逢った人物である。
この人物は亜依に自分が出場するフットサルの試合を見にきて欲しいと言う。
「せっかくの休みやし、いちいち市営グラウンドまでいくのもメンドいし、
オカンもうるさいやろうし、やっぱええわ。」
「‥‥そうだね、受験勉強もあるしね。」
「せっかくの日曜ぐらい受験の事忘れさせてーな!」
「あかんよ、あいぼん!」
「パクるな!東京人!」
「いいじゃーん!今は関西人だもーん。」
アハハハハハ‥‥‥ ――――――
- 115 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:05
-
- 116 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:05
-
【そう。本当なら私逹はあの日市営グラウンドには行かないはずだったんです。
でも、やっぱり私達が出逢う事は運命だったのかもしれません。だって‥‥ 】
- 117 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:06
-
- 118 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:07
- トントントントントン‥‥‥
誰かが2階へあがって来たようである。
「亜依ー!急で悪いんやけど、明日一緒に市営グラウンドまでついて来てくれる?手伝ってほしいんよぉ。」
「「え?」」
ついつい二人同時に言葉を発してしまう。
「あ、希美ちゃんいらっしゃーい。―――――― じゃあ亜依。明日早起きしてね。
希美ちゃーん。ごゆっくりね。」
声の主は亜依の母親。亜依はいきなりの事に唖然としつつも、なんとか現実の世界に戻り、
用件だけ済ませ去っていこうとする母親にささやかな抵抗を試みる。
「ちょ、ちょ、ちょっとまってー!そんな、結論だけ言われても訳がわからんちゅーねん!
なんでそんなことせなアカンの?」
「明日なぁ!市営グラウンドで‥えーと‥なんの試合やったっけなぁ?‥えーと」
- 119 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:07
- 「‥‥ひょっとしてフットサルの事」
「なんで知ってんのアンタ?」
「ちょっと‥‥小耳にはさんだんや」
「そう。その試合でなぁ!市の役員さんとか、来賓の人とか、見に来た人のためにいろいろ準備せなあかんねん。
それをうちの自治体でやることになったんよー。」
「それで?‥‥」
「ホンマはお父さんに頼もう思ったけど、明日急に出勤になったって言われてなぁ。」
「それで?‥‥」
「うちの担当は当日朝早く行って本部作りをするのな、机並べたりして。朝それをやればもう終わりやから
考え様によっては楽やろ?」
「それで?‥‥」
「‥なん?そんな重労働をかよわい母親ひとりにやらせるつもりなん?ほんま親不孝な娘やねぇ
希美ちゃん!こんな娘にだけは育っちゃだめやで!ほんま冷たいわぁ。」
「‥‥わかったわ‥‥(どうせ抵抗しても無駄や‥)」
「ホンマ?いやーやっぱ亜依はええ娘や。ほな明日よろしくな」
- 120 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:08
- 毅然とした表情を作り、チラリと母親を睨むも完全にスルー。
明日の亜依の予定はどうやら決まってしまったようだ。
しかし、友情とは素晴らしい。
相方のピンチを黙っては見過ごせないと、躊躇無く親友の母親にこう提案する。
「私も手伝います。」
「「え?」」
今度は母と娘のハーモニーが響き渡る。
「そしたら、もっと早く終わりますよね、あいぼんのお母さん?」
「え、でも辻さんは明日用事がある、いうてたようだったけど。家族で東京へ出かけるって‥‥」
「あ、でも別に私は行かなくても平気そうだし、大丈夫です。」
「でも‥‥やっぱええよ。辻さんにも悪いし、私と亜依だけでも大丈夫やから心配せんでええよ希美ちゃん。」
「のの、ありがとな‥‥その気持ちだけで十分やて。」
「でも‥やっぱりお手伝いしたいんです。今、お母さんに了解とってきますから、
ちょっと待っててください!」
「あ、ちょ、希美ちゃん?」
亜依の母親が止める間もなく希美は自分の家へ向かおうと、部屋を出て階段を駆け下りていった。
しかし、その表情は決して澱みの有る表情ではなく、暖かくて優しい表情だった。
- 121 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:08
- 「亜依‥希美ちゃんはええ子やな。あないな子はそうおらん。
大切にしなきゃあかんよ。」
「うん‥‥」
十分ほどして希美が戻ってきた。
入ってくるなり、屈託の無い笑顔をしながら両手でVサイン。
それを見た親子は顔を見合わせてゲラゲラと笑った。
希美は、何事かと膨れ面 亜依は、まるで子供みたいやと希美に悪戯っぽく笑いながら言った。
「なんだよー!あいぼーん!」
「おこちゃまやー!おこちゃまやー!」
そこから二人でバカ丸出しの会話が始まる。
母親はそんな二人を見てさらに大笑い。
―――そんなこんなで加護家の午後は平和に過ぎていった。
外を見るとまるでペンキで塗ったような青空が広がっている
低く集まった入道雲がこんな二人を見て笑っているかのように見えた
- 122 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:09
-
- 123 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:09
-
【ね。嘘みたいだけど本当の話。こうして私達はあいぼんのお母さんのおかげで
よっちゃん達に出逢うことが出来たんです。これって運命でしょ?‥‥ 】
- 124 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:09
-
- 125 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:10
- そして日曜日の朝がやってきた。
空には青い海が広がっている。まだ朝が早いということで少々肌寒く感じるが
スポーツを行うには絶好といえる日であろう。
約束どおり、母親と希美と共に市営グラウンドに来た亜依は、まだ眠いわと少々文句をつぶやきながらも
自分の為に家族との用事をキャンセルしてくれた希美にそんな弱音は見せられないと、黙々と作業を行っていた。
加護家の担当は大会の本部作り。
流石に重いパイプなどを運ばなければならない骨組みは前日のうちに組まれてあるが
テーブルや飲み物などの設置。記録用紙や筆記用具を並べたりと結構な忙しさだ。
希美がいなければもっと時間がかかっていたかも知れない。
ようやく作業がひと段落ついたのは、開会式のはじまる一時間ほど前だった。
「うん!これでOKやね。二人ともお疲れさん!とくに希美ちゃん。ホンマ助かったわぁ。
今日の昼御飯は希美ちゃんの好きなモン何でも作ってあげるからね。何がいい?」
「ホントですか?じゃあ……初めてあいぼんのお家行った時、食べたものがいいです。」
「O〜K!じゃあ班長さんに終了の報告してくるから、もちょっと待っててな。」
「はい!」「う〜い。」
亜依は芝生に腰掛け、う〜ん、と伸びをした。希美も当然隣に腰を掛ける。
「のの〜。今日はホントありがとな〜。ウチとオカンだけやったらまだ絶対終わってなかったで」
「もーー!さっきからお礼言われてばっかり。いいって言ってるのに〜」
笑いながらそう言い、亜依のほっぺをぷにっとつまむ。
- 126 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:10
- 「なーのの!ののは将来何になりたいん?」
「えっ?急に何、あいぼん?」
唐突にそんな事を言った亜依に希美はきょとんとした顔を向ける。
「ええやん!急に聞きたなった。」
「将来かぁ‥‥う―――――ん‥‥なりたいっていうか憧れの職業は‥作家さんかなぁ
‥‥‥‥‥ん?」
「作家かぁ!本好きなののにはぴったんこの職業かもなぁ。」
「‥‥‥‥‥‥?」
「ののやったらきっとなれるで!ウチが保証したる。んでなぁ!ウチの将来の夢聞きたいか?
聞きたいよなぁ!しゃあない、特別にののには教えたる。」
「‥‥‥‥‥」
「ウチの夢はやっぱ可愛いお嫁さんやなぁ‥アイドルになって、みんなのあいぼんになるんも捨てがたいけど
ウチは純真一途やからなぁ‥‥そんで運命の人を見つけて燃えるような恋をするんや!だからそれまでつまらん奴には
ぜったいひっかからん!大好きな人が現れるまで‥(モジモジ‥)‥この身は綺麗なままでいるんや。
ああ‥‥なんてウチは清楚な乙女なんやろう‥‥(うっとり‥)‥‥なぁ、ののもそう思うやろ!」
「‥‥‥‥‥」
反応が無い。
「聞いとんのかい!せっかくウチが美しい夢を語って、ん、の、に?」
そこで亜依はある異変に気がついた。
確かに希美はこちらを向いているが、気のせいか、目線が自分の顔より少し高い位置に向いている気がする。
そして、くちが少し開いてポカンとしたような顔になっている。
自分よりも別の何かに神経が向いてるようだ。
- 127 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:10
-
(後ろになんかあるん?)
亜依はその"なんか"を確かめようと後ろを振り向いてみる。
‥‥‥‥
- 128 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:11
-
‥‥‥‥
十数秒後 ―― 何故か頭の中が真っ白になってしまった亜依の思考には数日前の記憶が蘇った
本屋 ―― ストリート雑誌 ―― レジの前に人 ――
あのときと同じ‥‥レジを済ませて振り向いたら知らない人の顔のアップ
そう‥‥おんなじだ‥‥
ただひとつ違うのは‥‥‥
顔のアップが‥‥‥
前回の記憶よりも‥‥‥
近かった‥‥‥‥
- 129 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:11
-
‥‥‥‥
たっぷり10秒は止まった時間。
初めに出てくる言葉は当然‥‥‥‥‥
「「あああああああああああああああ!!!!!!!」」
振り向いた人間と振り向かれた人間
二人同時に奇声をあげ、同時に顔を離す。
「ののーっ!!ののーっ!」
はじめに行動を起こしたのは亜依
半分涙目になりながらも四つんばいの格好で移動し、まだぽかんと口があいている希美に抱きつく。
「ののーーっ!!ウチの大事な、ファ、ファーストキスを
どこぞの知らん男に奪われたーーっ!!初めては大好きな人って決めてたのにーーっ!!」
「ち、ちがうって!わざとじゃないって!まさか急に振り向くなんて‥‥」
「痴漢!変態男ーーっ!! うわーんののーーっ警察呼んでーーっ!!」
「け、警察って‥‥ほんっと事故なんだって!キミこの間本屋にいた子でしょ!「来てくれたんだー」って
声かけようとしたんだけど、人間違いだといけないから顔見ようと思ったら‥‥あ゛〜〜梨華ちゃ〜ん!助けてよー」
必死に誤解(?)を解こうとしている亜依にとっての「どこぞの知らん男」
後ろを振り向き、希美と同じようにぽかんと口をあけて立っている少女に向かって助けを求める。
「ひとみちゃん‥‥‥最低」
「ああああああ!!!!!!ちがうんだってぇーーーっ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 130 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:12
-
- 131 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:12
-
【あの時のよっちゃんの慌てようったらなかったです 私もずっとぽかんとしちゃって‥
私の腕の中であいぼんは泣き止まないし、梨華ちゃんは冷ややかな眼でよっちゃんを見てたし‥
ようやくみんなの誤解が解けたのはどのくらい後だったかな?‥‥‥‥ 】
- 132 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:12
-
- 133 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:13
- 「‥‥‥‥‥ホンマに女やったんか。」
「や、やっと信じてくれた? ハハ‥‥は、‥ハァ〜‥‥」
「あいぼ〜ん‥‥」
「ひとみちゃん‥‥」
あの後泣きじゃくる亜依をなだめて落ち着かせなんとか誤解を解いた「どこぞの知らん男」。
誤解とは ―――――
決して悪気はなかった事
そして ―――――
自分は女である事
とはいっても、最初はまったく信じてもらえず、
「吉澤ひとみ」と名前を名乗っても「証拠にならん!」と言われ、
泣く泣く周りを確認しながら、自分の胸に亜依の手をあて、ようやく信じてもらえたばかりだった。
- 134 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:13
- 「男やないのはわかったけど、ウチはまだ吉澤さんの事許したわけちゃうからな!」
「う‥‥まだ怒ってる?」
「当たり前や!だいたいなんであんな顔近づける必要あんねん!顔確かめるなら前回ったらええやん!」
もっともな話である。
「もういいじゃんあいぼん。吉澤さんもあんな謝ってくれたんだから許してあげようよ。」
「ののもののや!気ぃついてたならなんでウチに教えへんねん?ぼーっとしとってからに!」
「ごめーん‥‥だって‥‥」
「だって、なんや?」
「カッコ‥よかったんだもん‥‥」
「は?」
「だから‥その‥吉澤さんがカッコよくて‥見とれてた‥‥」
希美は少し頬を赤らめ、ひとみに聞こえないよう小さな声で亜依に恥ずかしそうに言った。
「あんな男女のどこがカッコええねん!まったく‥」
「あーひどっ!男女だって!よしこ傷ついたー!」
「なにがよしこや!‥‥それよりアンタ試合でるんちゃうん?こんなトコおってええん?」
- 135 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:14
- 「あー!…そろそろミーティングはじまるなぁ‥よっし!行くぞぉ!」
ひとみはスッと立ち上がると気合をいれて叫んだ。
その時、風ではあろうが周りの草花の大きくゆれ、ひとみの気合に呼応しているように見えた。
「えーっと‥名前教えてくれる?」
「‥‥ウチは加護亜依や。」
亜依は一瞬名前を教えようか躊躇ったが、さすがにもう怒りも大分収まり、
少しの会話しかしていないがこの人は悪い人ではないと感じたため素直に応じた。
「私は辻希美です。」
「亜依ちゃんに希美ちゃんか!いい名前だね。じゃ頑張ってくるからね、応援よろしく!」
と、亜依と希美の肩に手を置き、子供のように無邪気に微笑む。
この憎めない笑顔に亜依は苦笑いをする。
「いや、悪いけど今日はたまたま用事があってウチら来たんねん。んでもう用事も終わったから
これから帰るとこ‥‥」
「よーっし!今日はせっかく来てくれた二人の為に絶対勝ってみせるからね!!
梨華ちゃんもバッチシ応援してよっ!!」
最初は二人に、そして「梨華」と呼んだ少女にそれぞれ視線を向け、
ひとみは亜依の言葉を最後まで聞く事もなく矢継ぎ早にそう言うと
グラウンドを挟んで向こう側の集合場所らしいチラホラ人が集まりつつある場所へ小走りで駆けていった。
「アンタこの間もそやったけど人の話ちゃんと聞けーーっ!!」
亜依はこぶしを握り、背筋を伸ばし、小さくなっていくひとみにむかって大声を張り上げた。
しかし、無駄だということはなんとなく分かっていた‥‥
- 136 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:14
- 「ごめんねぇ!ひとみちゃんはいつもああだから。」
今度は今までひとみの隣にいた少女が二人に話しかけてきた。
「おたく、あんな人といて疲れへん?悪いけどウチ、ああいう軽そうな人は好きになれへんわ。」
「フフフ‥‥ひとみちゃんはいい子だよ。たま〜に人の話を聞かないで突っ走っちゃうところもあるけど。」
「たまに?ウチはいまのところ的中率100%や。‥‥もうええ‥のの!オカン遅いからこっちから行こうや。んで早いトコ帰ろ?」
亜依は肩で大きくため息をつき希美に同意を求めた。
「ええ〜!せっかくだから見ていこうよ〜。吉澤さんも出るんでしょ?」
「いやや!さっきも言うたけどウチはあの人どうも好きになれへん。帰ってもっかい寝る!」
「ええ〜っ!せっかく友達になれたんだからさぁ〜。ね?応援してこ?」
「そんなんなった覚えあれへん!!ののはあん人の事気に入ったみたいやからええけど、
ウチはパスや!だからもう帰る。」
「グスッ‥‥」
「え゛」
「‥‥あいぼんはぁ‥ののの事嫌いなんだぁ‥」
希美は顔を手で覆いヒックヒックと声を震わせる。
「な、なんで泣くねん!ちゃうって!大好きやって!」
「じゃあ‥のののお願い‥聞いてくれる?‥‥一緒に応援しよ?」
上目遣い+瞳潤ませ+涙声+服の裾つかみ
究極のお願い四連コンボ
これをくらった亜依には、もう選択肢はひとつしかなかった。
「‥‥わ、わかったわ。」
「やったー!あいぼん!大好きー!!」
そう言われ希美に抱きつかれ、顔を赤くした亜依の胸中は複雑だった。
「のの‥どこでこんな技覚えたんや‥」
「あいぼんの部屋にあったレディコミ〜!漫画もたまには役立つねー。」
(よりによってあん時買った漫画かい!あんなモン買わなきゃよかったわ!)
- 137 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:15
- その後ようやく戻ってきた母親に昼までには戻ってくると告げ、
亜依と希美と少女の三人は試合が良く見えるところへ移動し、少女が用意してきたビニールシートに腰をかけた。
開会式は10分ほどで終了し、そこではじめてこれから行うフットサルというものを知り、
少女からひとみがチームの中心選手であることも教えてもらった。
「改めてよろしくね!亜依ちゃんに希美ちゃん!」
「あ、はいよろしくお願いします。‥‥ところでお姉さんは選手じゃないんですか。」
希美が言う。
「あ、名前まだだったね!私は石川梨華 よろしくね!
ひとみちゃんとはお友達。でも私は選手じゃないの!今日はひとみちゃんの応援!」
(石川‥‥梨華?)
「なぁ!のの」
亜依が希美の袖をクイクイとひっぱる。
「石川さんってだれかに似てへん?」
「だれって誰?‥でも綺麗だよね。アイドルみたい。」
「う〜〜ん‥‥なんかつい最近似たような人見たような覚えあるんやけど‥‥気のせいかな?」
膝をかかえ頭をつけ考えこんでみるが思い出せないようだ。
「どうしたの?なんの話?」
梨華は不思議そうな顔をして、希美を挟んで向こう側にいる亜依に尋ねる。
「あの〜石川さん?」
「梨華でいいよ。それと敬語も気にしないでね!」
「あ〜‥じゃあ梨華ちゃん!ウチらどっかで‥‥」
「あ、吉澤さん出てきたよ!あいぼん!」
「ん?ああ‥ホンマや。」
梨華に疑問を問い掛けてみようとしたが、希美に声をかけられグラウンドに視線を向けてしまう。
もう一度梨華に視線を戻し、話し掛けようとしたが、梨華もひとみにむけて声援を送っていたのでやめておいた。
亜依も「まあ別にエエか」という感じで二人と共にグラウンドに視線を向けた。
- 138 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:15
- 「あっ!吉澤さんってキーパーなんだー。」
ひとみは試合開始の礼が終わると一目散に自軍のゴールの前に仁王立ちし、
「気合入れていこーぜ」と大声を張り上げ、味方のモチベーションをあげている。
「ふーん‥意外やなぁ。あの人やったら突進しながら敵ごとボールけっとばして
ゴール狙う方が似合うような気がすんねんけど。なー梨華ちゃん!」
本人がいない事をいいように、なかなか失礼な事を言ってくれる亜依。
どうやらさっきの事がまだ気に障っているらしい。
しかし梨華は特に気にする様子もなく、グラウンドにいるひとみを見たまま亜依に言った。
「うん‥‥じつはもともとひとみちゃんはピヴォっていうポジションで相手ゴールを狙う
チームのエースだったの。今はゴーレイロ‥‥キーパーだけどね。」
そう言った梨華の眼は何故か寂しげで、遠くを見つめてる感じがした。
ピィー!!
試合がはじまったようだ。
とたんにグラウンドをオレンジと黄色のユニフォームを着たニチームが入り混じる。
「こっちだパス!」
「前線、あいてる!」
「もっとあたって!」
様々な声が飛び交う。
「けっこう激しいモンなんやなぁ〜。」
亜依の言う通りフットサルはサッカーと違いグラウンドが狭くそれだけ接触プレーも多い。
それは女子であっても例外はなく、選手達は激しく体をぶつけあっている。
- 139 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:15
- 「フットサルはボール持っている選手に故意に体をぶつけたりすると反則だけど、
ボールを取りに行ったときやポジションをとろうとする時に結構体をつかうの。
試合中にケガをする時もよくあるわ‥‥もちろんキーパーも‥‥」
また梨華の眼がどこか寂しげに映っている気がした。
(梨華ちゃん‥‥‥?)
―――――――――――――――――――――
試合は一進一退の攻防
相手チームの激しい攻撃を懸命にシャットアウトするひとみ。
希美も梨華もひとみが活躍するたびに大きな声援をひとみに送る。
しかし亜依は先程の梨華の言葉が気になり、試合というよりもひとみばかりに眼がいってしまっていた。
「めっちゃ真剣な顔しとる。フットサル好きなんやなぁ‥‥」
ピィー!!
前半戦が終了したようだ。
両チーム共に得点はまだないがグラウンド全体を熱気が包んでおり、
試合を観戦しにきた人達から惜しみない拍手が選手達に送られていた。
- 140 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:16
- 「すごーい!吉澤さん。来たボール全部止めちゃってたよ!
吉澤さんがいたら勝てそうだね!ね!あいぼん?」
少し興奮気味に希美が亜依に話しかける。
「ん?んー!せやな‥」
ほとんど空返事で希美に返す。
「なあにぃ?まだ吉澤さんの事怒ってるの?」
頬をふくらませながら希美が言う。
「いや‥そうやないけど‥‥‥なぁ梨華ちゃん?」
「ん?どうしたの?」
「さっきから気になってることがあんねんけど‥‥聞いてええ?」
「あ、何かわからないルールとかあった?私でわかることだったら教えてあげられるけど‥‥」
「いや‥ちゃうねん。吉澤さんのことやねんけど‥」
「え、ひとみちゃん?」
「吉澤さん、なんでキーパーになったん?もとはシュートうつ人だったんやろ?なんか理由でもあるん?
‥‥試合見てたらな、やっぱあん人そっちのほうが似合うような気がすんねん。あ、今度はイヤミやないよ。」
「あいぼん?‥‥」と希美
そう、亜依にはさっきの梨華の言葉がずっと気になっていた。そして寂しそうだったあの眼‥‥
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
それを聞いた梨華は少し驚いた顔をし、微笑んでからベンチにいるひとみに眼を向ける。
そして少し考えてから亜依と希美に向かって話始めた。
「‥‥‥後半」
「えっ?」
「後半、ひとみちゃんをみていればわかると思う。」
「あ‥‥うん、わかった‥‥」
亜依はそれ以上なにも言わなかった。いや、言えなかったといったほうが正しいかもしれない。
梨華の眼はもう隠しきれないほど寂寥に満ちていた。
――――― そして後半戦がはじまった。
- 141 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:16
-
- 142 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:17
-
【人は誰でも背中に翼を持っていると私は思います。―― 優しさの翼、夢の翼、友情の翼‥‥
でも、私が見たよっちゃんの翼はとても大きく、真っ白で誰よりも輝いていました。
例えそれが ‥‥ だったとしても ―――――――――― 】
- 143 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:17
-
- 144 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:17
- 後半戦が始まるとより試合は熱気を増した。
どちらのチームも必死の形相で相手ゴールを狙っている。
ひとみも大きな声を出しながら必死に相手チームの攻撃を跳ね返している。
その表情は誰よりもこの試合を楽しんでいるように見えた。。
しかし ――― この場にいる何人かはひとみの異常に気付いていた。
「のの‥‥」
「うん‥‥ののにも分かった。」
「吉澤さん‥‥時々めっちゃ辛そうな顔しとる。‥膝おさえて‥‥
それと‥今気付いたけどあの人だけジャージはいてるよ‥な‥」
「なんでだろ‥やっぱあれだけ動いてたから疲れちゃってるのかな‥‥」
「でも‥‥よっく見てみると右足‥震えてるように見えるで‥‥梨華ちゃん?」
二人の言うようにひとみは笑顔の裏で苦痛に顔を歪めていた。
さらに時々右足の付け根を押さえ、震えを止めているようにも見える。
「うん‥‥よく見ないとわからないでしょ?‥普通に試合してるように見えるでしょ?‥‥
でも‥‥違うの」
梨華はひとみをずっと見ながらまるで独り言のように呟いた。
- 145 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:18
-
「だって‥‥ひとみちゃんの右足は‥‥‥義足‥だから‥」
- 146 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:18
-
一瞬時間が止まったような気がした。
義足?なんで?あんなに動いてるやん。ウチの眼の前何回も走りぬけたやん。
人の話聞かんと本屋飛び出てったやん。グラウンド走ってったやん。
体は辛そうでもあんな楽しそうに試合してるやん。
‥‥‥
「梨華ちゃん‥‥なんでなん?」
「‥‥‥」
「なんで‥ウチらにそんな話したん?ウチら今日逢ったばかりの‥‥た、他人やで。
同情でもしてもらいたいん?」
「ちょっとあいぼん!」
「聞きたいねん!‥なんで?」
相変わらず梨華はひとみの方を向いたまま表情を変えずにこう呟いた。
「‥‥‥わかんない」
「えっ?」
「わからないの‥ごめんね。」
「‥‥‥」
「誰にでもこんな話するわけじゃないの。ひとみちゃんにも止められてるし‥‥
でも二人を見てたらそんな気になったの‥‥不思議だね‥私って馬鹿なのかな?」
「ワケ‥‥わからんわ‥‥」
- 147 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:18
- 試合はいつの間に終盤を迎えていた。
三人の間にはもう会話はなかった。
だが、三人の見つめる先は同じ ‥‥ ひとみの姿
そうした時間が何分たったであろう。ひとみの顔がいままで見た中で最高の笑顔になった。
ハッとして反対側のゴールを見てみると味方の選手がガッツポーズをしながらひとみの方を向いていた。
同時に審判の笛がなる。
「ゴール‥‥したんだ‥」
この時、三人の内から発せられた言葉は希美のこの一言だけだった。
それから数十秒後、審判の長めの笛がグラウンドに鳴り響き、同時に歓声も沸きあがった。
- 148 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:19
- 笛が鳴り終わると歓声とともに、グラウンドにちらばっていた四人の選手がひとみにむかって走っていった。
声は聞こえないが、五人の表情を見ると、歓喜に満ち溢れているのがここからでも容易に分かった。
その時、ひとみが何かを思い出したかのように体をビクっとさせると、
三人にむけて拳を向けて、嬉しそうに何か叫んでいた。
「‥‥アホか‥この歓声で聞こえるかっちゅーねん‥ほんまアホや‥‥」
「おかしいでしょ‥‥片足が無くなって、誰でも落ち込んで当たり前なのに、ああやってひとみちゃんは‥‥」
「‥‥梨華ちゃん、ウチは同情せえへんよ!」
「あ‥‥‥」
「だって、同情する必要あらへんやん!」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥あんな楽しそうにフットサルしてるやん!」
「‥‥えっ?」
「あないなまっすぐ、楽しそうに生きている人に「可愛そう」なんかいったら
失礼なんちゃうの?‥‥なあのの!」
亜依は笑っていた。
「そうだよ!梨華ちゃん!吉澤さんの天使の羽は片方だけかもしれないけど
だれよりも輝いている‥真っ白で‥大きくて‥‥」
希美も笑っていた。
「亜依ちゃん‥希美ちゃん‥」
「こらー!のの!そんなくっさいセリフ似合わんっちゅーねん」
亜依が希美の頬を左右にひっぱり気が済んだところでパチンと離す。
「へへーんだっ!じゃあ「受験勉強もしないでマンガばっかり見てるあいぼんより
吉澤さんのほうがずっとスゴイ」って言った方が良かったのぉ〜?」
頬をさすりながら希美が言い返す。
- 149 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:19
- 「なんやとー!!また生意気言うんかーー!!このおこちゃまがー!!」
「キャーっ!!自分だっておこちゃまじゃんかーー!梨華ちゃん助けてーーっ!!」
希美が梨華の背中にピタっと張り付く。
「こらー!!のの!隠れとらんで出てこんかっ!!」
亜依は梨華の正面から梨華の背後にいる希美を捕まえようとする。
希美は亜依が右から乗り出してくると左に逃げる。左から来ると右に逃げる。
ちょうど、梨華を中心にして二人でグルグルと回っていた。
その光景はまさに母親の周りでふざけあっている双子の子供達のようであった。
(二人とも‥‥ありがとう‥‥)
梨華は二人に気付かれないよう、手の甲で眼の下を拭っていた。
- 150 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:20
- 「おおーい!何、三人で楽しそうな事やってんのさぁ!」
気が付くと、いつの間にかにひとみが、こちらに一番近いグラウンドの端に立ってこっちを見ていた。
「ううん!こっちの話ー!それよりひとみちゃん、勝ったね!おめでとー!」
「おーう!それよりさぁー、まだ暴れ足りないんだよねぇ〜!」
「「「は?」」」
「亜依ちゃん!私と遊ばない?フットサルやろうよ」
「は、はぁ?あんた今試合終わったばっかりやろ!それに他の試合始まるんちゃうんか?」
「ちょっとぐらいなら大丈夫だって!私がフットサルの面白さを教えてあげるよ」
ひとみはそう言って、まだ「アホか!アホか!」と言ってる亜依の言葉を無視しながら手を繋ぎ、
共に誰もいなくなったグラウンドに再び降りていった。
「さあ!おいでよ!」
ひとみは自分の足元にボールを置き両手を広げ、亜依を促す。
「うう‥‥この人、真性のアホや!何言っても聞かんし‥‥もう‥ヤケや!」
亜依は半ばヤケになってひとみにむかって行き、足元からボールを奪って行った。
「おっ!やるじゃ〜ん!」
「うっさい!ウチが勝ったら汚れた服のクリーニング代請求したるからな!」
「ええっ!そんな、ひどいよ〜!‥‥でもじゃあ私が勝ったらどうすんの?」
「そんときは‥‥ウチがチューしたる。」
「えっ!ホント?よ〜し!本気だしちゃお!」
「こ、こら、冗談や!何でそこで向かってくんねん!‥‥ああーーっとられたー!」
「これで亜依ちゃんのチュー、ゲットだねっ!」
得意気な顔をしてひとみが言う。
- 151 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:20
- 「アホ!まだ勝負はついとらん! ―― ののーっ!梨華ちゃーんっ!
こっちきてこのエロ男女倒すん手伝ってーーっ!」
「よっし、まかせてーっ!ほら梨華ちゃんも!」
「え、え?私、今日スカート‥‥」
「大丈夫、大丈夫!」
「な、何が大丈夫なの?」
「なんとなく大丈夫な気がするっ!行こっ?」
「ええーーっ!!」
希美はよく分からない理由を梨華に告げ、さっきの二人のように、
手を繋いで二人の下に駆けていった。
「ちょ、ちょっとぉ!なんで希美ちゃんと梨華ちゃんが敵になってんのー!ずるいよー!」
「やかましっ!ウチの敵は、ののと梨華ちゃんの敵も同然やっ!」
「吉澤さーんっ!取っちゃうからねーっ!」
「もうっ!!ひとみちゃん!責任とってよー!」
――――――――
誰もいないグラウンドで四人の女の子が走り回っていた。
この光景に好奇の視線を送る者もいた。
ずっと見続けている者もいた。
無視している者もいた。
四人に向かって微笑んでいる者もいた。
しかし、時間にして数分‥‥ほんの数分だけだったが
- 152 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:20
-
――――― そこは四人だけの世界でした ―――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 153 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:21
-
- 154 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:21
- 「つ、疲れたぁ〜!明日、絶対筋肉痛やわ〜。」
「ののも‥‥」
「私も‥‥」
「なんだぁー!みんなだらしないなぁ〜!」
「あんたとは体の造りがちがうねん!こっちは乙女の柔肌やで!」
亜衣は呻くようにため息を漏らした
あの後、次の試合の審判に注意されるまで走り回っていた四人。頑丈なひとみ以外の三人はクタクタだった。
今日のひとみ達の試合は午前中の一試合のみ。
チームのミーティングが終わるのを待ち、再び四人が集まる頃には
もう太陽が一番高く上がろうとしている寸前だった。
「ねぇねぇ!この後、梨華ちゃんと昼ご飯一緒に食べに行くつもりだったんだけど、
一緒に行こうよ!ね?せっかく友達になれたんだし!」
と、ひとみ。「行かない?」と言わないところがひとみらしい。
「‥‥‥じゃあ、うちに来る〜?オカンがもう用意して待ってくれてると思うし。」
と、亜依。
「えっ!本当?やったぁ!一緒に行こうよー!吉澤さん 石川さん〜!」
と、希美。
「でも、迷惑でしょう?いきなり知らない人が二人も来たら。」
と、梨華。
「ん〜!かまへんよ〜。うちのオカン、お客さん好きやし。」
「マジでっ?亜依ちゃんちに行けるのっ?楽しみ〜!」
「いや、あんたは別に来んでもええで〜!梨華ちゃんだけおいで!」
亜依は梨華と手を繋ぐ。
「ええっ!やだやだ!私も行きたいよー!」
ひとみは頭を振り、情けない顔をした。
「もうっ!あいぼんたらぁ‥‥吉澤さん行こっ!」
希美はひとみと手を繋ぐ。
こうして四人は亜依の家へと向かった。
- 155 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:22
- 「ただいまぁ〜。なぁ、オカーン!」
「おう!おかえり〜!もうそろそろ出来るから手ぇ洗っておいでぇ〜!」
台所から母親の声が聞こえてきた。
「急やけど、二人増えてもええ?友達連れてきたんやけど‥用意できる?」
「おー!ええよ!希美ちゃんの為にいっぱ買い物しといたから、大丈夫や!」
「ホンマ?よかった!」
亜依はホッとした顔を見せ、玄関へ戻っていった。
「おばさん、ただいまです!」 「「おじゃまします。」」
「希美ちゃんおかえり〜!そちらの二人は、はじめましてやよね?」
「亜依ちゃんのお母さんですよね。はじめまして!吉澤です。」
「はじめまして。石川と申します。」
ひとみは人懐っこく笑い、梨華は丁寧に挨拶をした。
「まあまあ!かっこええお兄さんにかわいいお姉ちゃんやねぇ。いらっしゃい!」
母親は二人を順に見てそう言った。
「梨華ちゃん‥私ってそんなに男っぽい?」
「ひとみちゃん‥髪‥伸ばしてみよっか?」
「やっぱ親子だね!あいぼん!」
「のの!うっさい!」
「??」
‥‥‥
- 156 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:22
- 「なぁなぁ。ご飯の前にシャワー浴びへん!汗かいたから気持ち悪いわ!」
「そうやね!タオル出してしておくからサッパリしておいで!その間にご飯用意しておくから。」
そう言って母親は台所から出て行った。
「あ‥私は‥」
親子の言葉にひとみの顔から笑顔が消え、表情が曇る。
「あ‥‥そか。‥なぁなぁ吉澤さん。」
「亜依ちゃん‥あのね、私‥」
「うん‥さっき梨華ちゃんに聞いた‥足の事。」
「えっ?」
ひとみが梨華の方を向く。梨華は黙って頷いた。
- 157 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:23
- 「ええやん!関係あらへん!アンタはアンタや!アホなアンタは嫌やけど、
フットサルやってる時のアンタええ顔してた!ちょ〜〜〜っとだけカッコよかったで!」
「亜依ちゃん‥」
「ウチとののはそんないっぱいアホで、ちょっとだけかっこいいアンタを見て友達になったんや!だから‥‥」
亜依は最後まで言い切れなかった。
「ありがとう‥‥」
ひとみに抱きしめられたから‥‥
「こ、こら、やめえや!離してって!」
顔を真っ赤にしてひとみの背中をバシバシ叩く。
「本当に‥ありがとう‥亜依ちゃん、私と友達になってくれるんだ‥‥」
「う、うん。もうウチらは友達や!」
「‥‥‥友達だったら‥一緒にお風呂に入れるよね?」
「せやな‥友達やからお風呂‥‥‥うん?」
「ほんとうだねっ?やったぁ亜依ちゃんとお風呂だ〜♪一緒に背中流しっこしようねっ!!」
ガバっと亜依から体を離す。いたってその顔は笑顔。
「あ、あ、あ、あ、あ、」
「えっ?」
『アホか ――――― っ!!!』
ボカッ! ぐえっ!
今日何度目かわからない「アホか」の言葉。
その言葉とともにひとみの腹に放たれる亜依の拳。
そんな二人を見て‥‥
「もう!ひとみちゃんたら素直じゃないんだから。」
「ほ、本当に照れ隠し‥だよね‥」
三者三様ならぬ四者四様な四人。
きっとこれからも苦労は絶えないでしょう。
―――――――――――――――
―――――――――――――――
- 158 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:23
- 「吉澤さん‥大変やったんやろうね。よう頑張ったわ‥‥」
「は、はい。有難うございます。」
‥‥‥
「おばさん‥さっきから吉澤さんの事離さないね‥‥」
「うちのオカンなぁ‥感動ドキュメンタリー番組大好きやねん。
いつもハンカチ持ってテレビかじりついとる。言うんやなかったかなぁ‥‥」
シャワーを浴び、ようやく食卓についた四人
亜衣、希美、梨華の三人は満足気に料理を食べていた。
しかし、ひとみはというと、さっきからずっと亜依の母親の話相手になっており、
あまり料理にありつけないでいた。
それは何故かと言うと‥‥
亜依の母親の好意で、ひとみと梨華が帰る前までに汚れた服を洗濯してくれる事になり、
その時ひとみが汚れた服を脱ぎ、用意してくれた服に着替えるときに事情を説明した。
亜依の母親は涙ぐみながら話を聞き、現在に至る。
「なんか困ったことあったらなんでも言うてや。力になったるからな!」
ひとみの手を握り締めながら言う。
「は、はい。有難うございます。(それしか言えない‥)」
さすがのひとみも少々困り顔である。
「もう、オカンやめたりや!吉澤さん全然食べれてへんやん。ほら、もう洗濯機止まってるで!」
「とととと‥じゃあ吉澤さん!ゆっくりしてってな‥‥」
母親はそう言うと、洗面所に消えていった。
- 159 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:24
- 「ごめんなぁ。オカンに言うんやなかったわ。」
亜依が言う。
「いやいや!とっても優しいお母さんだね。関西の人は口調は荒いけど、
優しい人が多いって言うけど本当だね。亜依ちゃん達もそうだし。」
「えっ?吉澤さんってこっちの人ちゃうの?そういや言葉も標準語やん。なんで?」
不思議そうな表情でひとみに尋ねる。
「私ね。今年こっちに引っ越してきたばかりなんだぁ!それまではずっと埼玉に住んでた。」
「へ〜そうなん!梨華ちゃんは?」
「私は神奈川の横浜に今でも住んでるよ。」
「ふーん‥って、えええ?横浜?なんでここにおんの?」
「なんで‥ってひとみちゃんの応援に‥‥」
「いや、そうやなくて!応援の為に奈良までわざわざ来たん?」
と、亜依。
「うん。」
「で、今日横浜まで帰るの?」
と、希美。
「うん。そのつもりだよ。」
「わー!すごーい。そんなにフットサル好きなんだぁ。」
(そんなワケあるかい!こりゃただの友達ちゃうな‥‥)
亜依の勘がビビビと働く。
- 160 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:24
- 「そう‥だからもう少ししたら帰らなくちゃならないの‥‥せっかくお友達になれたのに‥寂しいね。」
「そっか‥しゃあないなぁ。もっと話したかったけど、梨華ちゃんも明日学校やろうし‥
今日中に帰らなきゃあかんのやろ?」
亜依が残念そうに呟く。
「ううん。明日学校は休みなの、開校記念日でね。でも午後から用事があるから
今日中にはこっちを出ないと‥‥」
「えっ?午後までに着けばいいんやったら明日の朝にこっち出ても間に合うんちゃうの?」
「そうなんだよー」
と、ひとみ
「急いで帰らなくても、またうちに泊まっていけばいいのにーっていってるんだけど、「あんまり迷惑かけれない」
なんていっちゃってさー。迷惑なわけないのに!梨華ちゃん聞かなくて!頑固なんだよ結構!」
「でも、この間も泊めてもらったばっかりだし、ひとみちゃんのご両親にもあんまり‥‥」
「じゃあ、ウチに泊まってや!そんならええやろ!」
亜依は無邪気にそう言って梨華を言いくるめようとする。
「そ、そんなめい‥」
「迷惑やないっ!オカンもきっと歓迎するで!梨華ちゃんが嫌ならあきらめるけど‥それじゃ寂しいやん。」
「でも‥」
「デモもストもないっ!それに梨華ちゃんともいろいろ話ししたいし!(さっきの事もな‥)」
「そうだよーののもいろいろお話したいよー。ねっ?」
「吉澤さんも泊まってってや!吉澤さんはええやろ?」
「本当っ?モチロンだよーっ」
満面の笑みで返す。
「さあっ!後は梨華ちゃんだけやで!」
「亜依ちゃん‥‥」
梨華が困ったように微笑む。
しかし、これだけのことをしてもらって、もう断る理由はなかった。
- 161 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:24
- 「じゃあ‥お邪魔させてもらっていいかな‥」
「もちろんや!明日は朝、オトンかオカンに頼んで車出してもらうから大丈夫。
じゃあ、オカンに言うてくるわ。」
亜依は母親に報告をしに洗面所まで駆けていった。
「わあ、すっごい楽しみー!ののもいまのうちに着替えとか取りに行こっ!」
続いて希美も玄関に駆けていった。
「梨華ちゃん‥なんか私、二人をずっと前から知ってるような気がするよ。」
「フフ‥前世で私達家族だったのかもね?」
梨華が悪戯っぽくそう言った。
―――――――――――――――
母親に了解を得に来た亜依。母親からの返事はもちろん"OK"
昼食を終えた二人と自宅から荷物を持ってきた希美との三人を連れて自分の部屋に行った。
そこで四人はいろいろな話をした。
それぞれの学校の話。フットサルの話。亜依の夢をひとみに砕かれた話。
ひとみと梨華が一緒に歩いていて同時に男女にナンパされた話。(男は梨華、女はひとみ)
それぞれの話に共に拍手し喝采し笑いあった。
そしてひとみの‥‥
- 162 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:25
- 「もう聞いたんだよね、この足の事‥‥」
ひとみがほんの少し笑いながら亜依と希美に言った。
「だから、それは‥‥」
「ううん、聞いて欲しいんだ。隠し事はしたくない‥友達だから。」
ひとみがそう言って。右足のジャージの裾を腿までまくる。
義足の部分が露になる。
「あ‥‥」
覚悟はしていたものの実際眼にしてしまうとさすがに心臓が高鳴った。
「医者に切断しなきゃならないって言われた時さ‥最初はどうしたらいいかわからなかったよ。」
「‥‥‥」
梨華は黙って聞いている。
「手術が終わって‥‥自分の右足を触れないって分かったとき、「ああ‥もうフットサルできないのかなぁ」って思った‥
でもさ、次の瞬間「負けないで」の曲が頭に流れてきてさぁ‥負けちゃいけないって思ったんだよね!」
「アンタらしい理由や‥」
静かに言った。
「そっから、足に負担かかるピヴォをあきらめて、これからはゴーレイロで頑張ろうって決めて、
リハビリと練習積んだんだ。最初はみんなに迷惑かけちゃったけど、レギュラー取れたときはホント嬉しかったなぁ‥。」
「吉澤さん‥‥」
と希美。
「アンタ強いわ!そんなん思える奴そうはおらん。」
「二人にもすごい感謝してるんだ。」
- 163 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:25
- 「「えっ?」」
「やっぱり‥この体になってから、いろんな人に優しくしてもらった‥それが時に辛かったんだ。同情されるのが‥‥
すごい自分勝手な事、言ってるのは分かってるんだけど、やっぱり自分でやれる事は自分でしたい!
「可愛そうだから」じゃなくて「頑張って」って言って欲しい。普通に接して欲しい。私は全然不幸じゃないんだから!」
「うん‥‥」
「だから、私のこと知ってても普通に接してくれた二人の事‥すごい嬉しかった。」
ひとみが二人をじっと見る。
「も、もうええって!」
亜依の顔がみるみる赤くなっていく。
「だから‥‥お礼したいんだ!」
「‥‥‥‥‥」
「二人に‥‥‥」
「‥‥チューはいらんぞ!」
「‥‥バレた?」
「アンタはそっちのほうがお似合いや。」
亜依は大きく溜息をついた。
「さっ!よしこの話はこれでオシマイ!辛気臭い話してごめんね!もう別の話しようね。」
ひとみはいつもの人懐っこい表情を取り戻していた。
「‥‥‥のの!ちょっと。耳貸して」
「ん?」
なにやら亜依が希美に耳打ちしている。気のせいか希美の顔が少しずつ赤くなっている。
「わ、わかった。い、いいよ!」
「よし、いくで」
サササッ‥‥
希美から離れた亜依がひとみの左にひざまずく。
亜依から離れた希美がひとみの右にひざまずく。
- 164 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:25
- 「???」
間に挟まれたひとみは当然?顔。
「特別やで‥‥のの!せーの!」
「せ、せーの!」
チュッ チュッ
……………
今朝と同じく10秒は止まった時間。今回はひとみと梨華のみだが‥‥
「ええええええええええ」「‥‥」
「特別やからなー!いままで頑張ってきた分と今日の勝利賞や!」
「じゃ、じゃあ二回じゃ‥‥」
「アホ!ウチらのチューは高いんや!もうお終いや。」
「ははっ‥じゃあこれからも頑張るからその時はまたチューしてくれる?」
「ま、考えとくわ。」
「そっか‥‥ありがとうね!亜依ちゃんに希美ちゃん!」
「は、はい!(ドキドキ)」
「‥‥‥‥」
その時ひとみに向けられた視線の中で若干の殺気が含まれたものが存在したが
ひとみは気付いていなかった。
- 165 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:26
- 「それから!ウチの事は「あいぼん」って呼んでな!ウチのお気に入りのあだ名や!」
「あ、私の事も「のの」って呼んでください!あいぼんにつけてもらったんです。」
「わかった「あいぼん」に「のの」ね!あだ名もかわいいね。」
「梨華ちゃんもよろしくな!」
「‥‥‥えっ?あ、う、うん!「あいぼん」ちゃんに「のの」ちゃんね。わ、わかった。」
梨華は最初に希美、次に亜依をそれぞれ見ながらそう言った。
「梨華ちゃん‥‥逆や。ウチが「あいぼん」でののが「のの」!しかも「あいぼんちゃん」って‥‥」
「そ、そうだった?ごめんね‥‥」
その後、若干のしこりをはらいつつ、また四人は談義に華を咲かせていった。
それから‥‥
「んー!なんか小腹がすいたから、ちょっと下いってくるわー!」
亜依が空腹を訴えたようだ。
トントントン‥‥
数分後
トントントン‥‥
亜依が戻ってきた。
「だめや!ちょうど、お菓子もジュースも切れてたわ。ウチちょっと買出しいってくるわ!」
「あ、ののも行くよー!」
「あ、私が行ってくるよ!二人は待ってて!」
「ええて!お客さんやし!ウチらで行って来る。」
と、亜依が言うのだが、
「じゃ、行ってくるねー!」
ひとみは聞いてなかった。
- 166 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:26
- 「人の話を聞かんのもあそこまでいくと気持ちがええわ‥!」
あきれたように言った。
「ひとみちゃん一人で大丈夫かな‥‥」
「コンビニ近いし、まだ明るいし、大丈夫やろ‥それより‥なぁなぁ梨華ちゃん?」
「んー、なぁに?」
……………………………………………………………
……………………………………………………………
……………………………………………………………
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……………………………………………………………
- 167 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:26
-
- 168 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:27
-
………
チュンチュン‥‥‥
次の日の朝、加護家の前には一台の車。
「じゃあ、最初に吉澤さんの家に行って、それから奈良駅まで行くからね。」
「お願いします!」「すいません!何から何まで!」
ひとみと梨華は深く頭を下げた。
「吉澤さん!また今度応援行くからなっ!」
「おうっ!その時も絶対勝つからねっ!」
「梨華ちゃん!仕事頑張ってな!」
「うん!ありがと!また来るからね。」
亜依は二人にしばしの別れを告げた。
「それにしても、ののは何やっとんねん!「ちょっと待ってて!」って言ったっきり
ジブン家から出て来んで!」
「ごめーん!お待たせ!やっと見つかったよー!」
希美がすごい勢いで玄関から飛び出してきた。
「ののー?何探してたんや?」
- 169 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:28
- 「写真撮ろっ?」
希美が取り出したのはコンパクトカメラ
「写真?」
「そう!はじめて出逢った記念に!」
「おーいいねー!」
と、ひとみ。
「じゃあウチが撮ったるわ!希美ちゃん、貸して?」
亜依の母親がカメラマンを引き受けてくれるようだ。
「よっしゃ!じゃあウチん家をバックなぁ!」
「ハイハイ並んでー!バランス的に吉澤さんと石川さんが左右やね。」
テキパキと指示する。
左からひとみ、亜衣、希美、梨華
「じゃ、行くでー!‥‥ハイ、バター!」
亜依(寒っ!)
パシャ ―――――――
―――――――――――――――
―――――――――――――――
- 170 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:28
- 「じゃあ、行ってくるからなぁ。」
車が動き出してあっという間に小さくなっていく。
それでも車の二人と残った二人は互いが見えなくなるまで手を振っていた。
「いっちゃったね‥‥」
「また、すぐ逢えるやん!そんな顔すな!」
「‥‥そだね。じゃあののは家戻るから、また後でね!」
「おー!また後でなぁ‥‥」
二人は互いの家に戻って行った。
………
「まだ、一時間以上あるなぁ!ちょっと横になっとこ!」
亜依はリビングのソファーにゴロンと横になった。
「また、逢おうな‥‥」
………
- 171 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:29
- 「‥‥‥‥‥‥‥‥!‥‥‥‥‥‥‥依!‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥亜依!」
「ん‥‥あーオカン!お帰りー!」
「もうそろそろ準備せえやー!遅刻したらしばくからな!」
「わかっとるー!」
時計を見ると長針がちょうど、一周していた。
「二人ちゃんと、送ってきたー?」
亜依が眼を擦りながら言った。
「当たり前や!それにしても、二人ともホンマ礼儀正しくて‥‥アンタも見習いや!」
「(梨華ちゃんはともかく、吉澤さんは猫かぶっとったな!)」
心の中で呟く。
- 172 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:29
- 「それに、二人ともウチに負けんほど美形で!とくに吉澤さん!女にしとくにはもったいないんちゃう!」
「ほんまやな!でも名前だけは女らしいで、「ひとみ」やからな!」
「ひと‥‥み?」
「せや!名前だけは女らしいやろ!」
「‥‥‥吉澤さんの下の名前「ひとみ」いうの‥‥亜依?」
「だから、せやって!ああーーっと、もう着替えんと!」
「‥‥‥‥‥」
その時、亜依は母親に背を向けているので気付かなかった。
母親の顔色が若干青ざめていたのが‥‥‥
「ひとみ‥‥‥?」
- 173 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:30
- 「じゃあ行って来るでー」
制服に着替えた亜依が台所に隠れて見えない母親に向けてそう言った。
「ああ、行っといで‥‥」
覇気を失ったような母親の声はすでに玄関を出て外に飛び出した娘に聞こえる事は無かった。
「ののー!おまたせー」
すでに家の前に待っててくれた希美に挨拶をする。
「おはよー!あいぼーん!」
「さっき逢ったばっかりやん!」
「へへ‥‥そうだね。―― ねぇあいぼんコレ見て!」
希美がかばんの中から何かをちらつかせる。
「なんや?‥‥‥これ、さっきのカメラやん!」
「そう!まだフィルム残ってるけどさっきの写真早く現像したいから、
持っていくんだー!それで、帰りに出しに行く!」
「あれっ?じゃあ帰りに寄り道するんやー!ウチにはいつも「寄り道はだめだよー」
とか言ってるくせに!ののも悪い子やーん」
「もうっあいぼんの意地悪ー!!」
希美が頬を膨らませ、先にスタスタと歩き出す。」
- 174 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:30
-
「あっ‥冗談やてっ!ののっ!待ってーー!」
「知らなーいっ!」
- 175 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:30
-
- 176 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:31
-
【あの日撮った四人の写真 初めての写真 そして思い出‥‥今でも私の宝物です
思えばあの時から私達の運命の輪は回りはじめたのですね‥‥誰もが幸せだったあの時
‥‥‥‥でも、この日が同時に運命の輪が狂いはじめる日でもあったなんて―――――】
- 177 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:31
-
- 178 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:31
-
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
「‥‥‥‥‥‥‥達‥運‥の輪は‥じめた‥すね‥‥誰‥幸せだったあの時‥‥‥」
「‥‥‥スゥー‥‥‥」
「‥‥‥‥でも‥同時に運命の‥狂いはじ‥日でもあったなんて‥時は気付きもしませんでした。」
「‥‥‥スゥー‥‥‥‥スゥー‥‥」
「その日、あいぼんが‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥寝ちゃったのね‥」
奈津美がそっと麻美を抱き、ベッドに連れて行く。
「麻美‥‥おやすみ。」
おでこにそっとキスをすると再びリビングに足を向ける。
そしてソファーに腰をかけ、大きく溜息をついた。
- 179 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:32
-
「驚いたな‥‥その本。辻さんかい?」
さっきまでずっと黙って奈津美の朗読を聞いていた奈津美の亭主が口を開く。
「うん‥‥‥話は聞いてたんだけど、実際見てみると‥やっぱりびっくりしたわ。」
「そうか‥‥辻さん、夢を叶えたんだな‥‥。」
「そう‥‥それで本棚にしまっておいたら麻美が「この本読んで」だもん!驚いちゃった‥‥
これも運命だったりして‥‥‥ね‥‥なんちゃって」
奈津美がペロっと舌を出す。
「でも、今日は疲れちゃった‥‥先に休ませてもらっていい?」
「ああ‥ゆっくりお休み。」
その言葉を聞くと、奈津美は本を重そうに抱え、寝室へと入っていった。
………
「ふう‥」
横になった奈津美はもう一度大きな溜息をついた。そして‥‥
「あいぼん‥‥‥」
親友の名前をもう一度呟いた。
- 180 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:32
-
「ののちゃん‥‥‥」
奈津美は枕元にあった本を再び手にし、目の前に持ってきた。
「『二人で見た日々』か‥‥ののちゃん、おめでとう‥‥」
そう呟くと、本を持ったまま眼を閉じた。
………
吉澤さん‥‥石川さん‥‥ののちゃん‥‥あいぼん‥‥
まだまだ私は泣き虫で半人前な母親です‥‥‥
でも‥麻美が大きくなって私がもっと強くなったら‥
みんなのようにまっすぐに生きる事ができるようになったら
麻美に「ママはこんな素晴らしい人たちと友達だったんだよ」
って言ってもいい?‥‥ね?あいぼん‥‥‥‥‥
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥カチ‥
時計の秒針の音がいつまでも奈津美の耳の中で響いていた
- 181 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:33
-
- 182 名前:第五話 男前な彼女とアイドルと 投稿日:2004/11/14(日) 14:33
- 第五話 男前な彼女とアイドルと 終了です。
次回は番外編を更新したいと思います。
内容は今回の更新の中で不自然に省略している部分になります。
そして次々回からは第二部をはじめたいと思います。
それにしても、オリキャラ濃いなぁ‥加護さんの母親。名前必要かなぁ‥w
それと吉澤さん!主役の一人なのに今のところあんまり目立てなくてゴメンネ。
きっとあなたには第二部で活躍してもらいます。
それではこの辺で‥‥
次回もよろしくお願いします。
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 18:51
- 更新お疲れ様です。
更新されててめっちゃ嬉しいです。
ほんとに4期って良いですよね。
- 184 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 23:30
- 更新キテターー!!
作者さんがいなくなってしまったかと思いました・・・お疲れ様です。
四期も(何処となくアフォな)よしかごも(・∀・)イイ!w
こんな小説を待っていました。
次回も期待してます!
- 185 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/16(火) 16:07
- うん!面白い!
- 186 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 14:01
- 更新お疲れ様です!
よっちゃんの意外な過去にドキドキ…
番外編も楽しみに待ってます。
- 187 名前:作者 投稿日:2004/11/28(日) 18:05
- すいません…今週もお休みします。m(__)m
きっと来週こそは m(__)m
レスのお返事もその時に m(__)m
続きの構想は出来ているのですが文章に起こす時間が… m(__)m
(‘д')<< 言い訳すんなや!
まったくです…それでは… m(__)m
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/28(日) 23:27
- いやいや作者さんの作品好きなんでまったり待ってるんでそんなに気にしないで。
。
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/01(水) 22:09
- 時間がないのなら仕方ありませんよ^^;
作者さんがお暇な時でいいですし。
待ってます!
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/09(木) 15:03
- 作者さん待ちホ
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/15(水) 20:35
- こ…更新を
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 10:56
- まだかなまだかな
- 193 名前:名無飼育 投稿日:2005/01/03(月) 16:41
- 番外編楽しみにしてます
- 194 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 18:54
- この小説の四期好きなんです
ここで終わってしまうのが勿体無い気がします
作者さんよろしくです。(_ _)
- 195 名前:作者 投稿日:2005/01/15(土) 19:41
- すいません。すいません。すいません。
生きています。
年末より予定外の忙しさで、全く休みが取れていないんです。
何度も生存報告だけでは心苦しいと思い、控えておりました。
続きを書くつもりも、もちろんあります。
しかし、まだしばらくは一日も休みがとれそうにないんです。(涙)
いつもいつも口ばっかりの駄作者で本当に申し訳ありません。
一日でも早く更新ができるように精一杯がんばります。
みなさんからの更新を待ってくれるレスが今の疲れきった私のカラダを
支えてくれます。本当に有難うございます。
どうか、これからも支えてやってください。
よろしくお願いします。
- 196 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/18(火) 20:34
- まったり待ってるんで気にしないで。
続き書いてくれる意思表示さえあれば待ってれるんで。
それより休みないってことだけど体大切にね。
- 197 名前:名無しのY 投稿日:2005/01/24(月) 13:07
- 第五話が更新されてた事に気付かった自分って・・・
とてもいいです!更に先が気になりました。
って、プレッシャーになっちゃうと申し訳ないんで、この辺で。
お休みが早く来る事を祈ってますので、頑張ってください。
次回の更新を楽しみにまったりとお待ちしております。
- 198 名前:名無しのLorR 投稿日:2005/01/25(火) 00:20
- 四期は奇跡ですね。
運命の輪がどのように狂い始めたのか気になりますが
マターリお待ちしておりますのでお体を大切にお仕事頑張ってください。
- 199 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 23:36
- 加護ちゃん誕生日保全
- 200 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/15(火) 22:14
- 待ってますー
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/17(木) 00:51
-
- 202 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/20(日) 00:28
- …待ちます
- 203 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 15:52
- もうすぐ4月です。
お待ちしています
- 204 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 17:26
- >>195の言葉を信じて待っています。
- 205 名前:っヵ± 投稿日:2005/04/17(日) 20:43
- もぅ、書かなぃんですヵぁ???
- 206 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/26(火) 18:44
- 今日初めて読ませてもらいました。
これからがすごく期待できるストーリーなのに
ここで終わってしまうのが勿体無いです。
4期好きである私の為にも、続きお願いします!!
- 207 名前:君の瞳は2ボルト 投稿日:2005/05/04(水) 13:18
- ゴールデンウィークもお忙しいんでしょうか
生存報告だけでもお願いします
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/11(水) 15:33
- hozen
- 209 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/25(水) 19:04
- 続き待ってます!
- 210 名前:作者(生存報告) 投稿日:2005/05/29(日) 22:08
- 恥と知りつつも生存報告をさせていただきます。
まだ待ってくれている方がいてくださるのでしょうか…
ああ…でも保全レスがいっぱい。嬉しい!
本当に申し訳ありません。GW明けぐらいからやっと週1ぐらいで休めるようになり
執筆活動も少しずつ再開していたのですが
飼育より個サイト様の五月、六月の聖誕祭の寄贈作品を優先させてしまいした。 m(_ _)m
現在この小説も少しずつではありますが執筆を再開しています。
何度もいい加減な事を言って信用も何もありませんが、一日でも早く再開できるようにするつもりです。
どうぞその時はよろしくお願いします。
- 211 名前:っヵ± 投稿日:2005/05/31(火) 20:13
- 待ってマス!!!(^-^)
- 212 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/02(木) 22:24
- 作者さんの生存報告が聞けて何よりです!
マターリで構いませんので続き頑張って下さい^^
- 213 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/05(日) 22:06
- 生存報告きてた〜(t_t)
いつまでもおまちしております。
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/29(水) 23:07
- まだまだ待ちます!!
- 215 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/16(土) 21:36
-
hozen
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/30(土) 20:54
- いつまでも待ってるよ。
更新はできなくてもたまに顔見せてくれると嬉しいな♪
- 217 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/14(日) 02:05
- 作者さんきてー!!
- 218 名前:名無し保全 投稿日:2005/08/16(火) 22:45
- 倉庫落ちだけはどうか…。
生存報告待っています。
- 219 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/18(木) 23:36
- 待ってます
- 220 名前:作者 投稿日:2005/08/21(日) 23:15
- 近日中に、必ず‥必ず更新しますので
どうかスレを残しといてください。
お願いします。 m(_ _)m
- 221 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/23(火) 00:31
- 作者さんきた〜
よかった〜(t_t)
待ってますね
- 222 名前:名無し飼育 投稿日:2005/08/23(火) 22:46
- 心配しないで下さい^^
いつまでも待ちますので
- 223 名前:名無し飼育 投稿日:2005/09/16(金) 00:24
- 待ちます待ちます!
- 224 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 08:44
- そろそろ…
待ってます
- 225 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 01:39
- よしかごネタもあったことだし^^
まだまだ待ってます!
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/04(火) 16:50
- また読み直しながら待っております
- 227 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/09(日) 23:54
- 諦めてなんてあげないんだから
- 228 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/09(水) 19:05
- 粘り強く保全
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/17(木) 11:42
- 一年… ・゜・(ノД`)・゜・
待ってます
- 230 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 10:03
- このままフェイドアウトさせないよ保全
- 231 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:35
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 232 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 01:36
- 作者さ〜ん!
この物語途中で止めてしまうの勿体無いって!
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 15:46
- 待ち待ち・・・
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/28(土) 12:52
- マジで帰って来てーっ!!!
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 23:43
- あいぼんの誕生日に期待してたんだけど・・・
- 236 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/10(金) 10:26
- いろいろ大変でしょうが信じて待っています。
- 237 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/11(土) 01:54
- 加護喫煙だもんね
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/11(土) 10:03
- 更新と勘違いしたからあげないで
- 239 名前:作者 投稿日:2006/02/12(日) 20:50
- 生存報告をさせて頂きます。
1年以上の放置をしているこんな作者にたくさんの感想や保全レスを下さった皆様、
本当に有難うございます
この作品は必ず完結させます。約束いたします。
ですが今は心身ともに少々疲れております。どうか、もう少しお待ちください。
作者は必ず帰ってきます。
どうかその時はあの子の笑顔も再び見れますように‥
管理人様
このスレを残していただくようお願いします
- 240 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/13(月) 18:16
- 作者さん生存報告ありがとう つД`)・゜・
待ちます!この小説が続く限りは・・
- 241 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/14(火) 04:13
- ・・・よかった・・・これであの子も笑顔で帰ってきてくれる気がする
- 242 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/07(火) 16:09
- 移転したから何板にあるのか分からなかった・・・
- 243 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/11(火) 16:13
- 待ちます
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 22:37
- 久しぶりに読み直した。
やっぱりこの話し好きだ。
作者さんのお帰りお待ちしてます。
- 245 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/10(土) 15:55
- 帰ってきてくれますよね?
- 246 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/04(火) 19:27
- まだまだぁ!
- 247 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/03(木) 21:43
- そろそろスレ整理の季節なんで生存報告だけでもお願いします。
- 248 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/08(火) 01:16
- 作者さん生存報告お願いします。
- 249 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 22:17
- ホント待ってますよ。
- 250 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 23:59
- 私も待ってます
- 251 名前:作者 投稿日:2006/08/12(土) 00:20
- 生存報告させて頂きます。。
もう‥本当に何もかも申し訳ございません。
- 252 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/12(土) 02:50
- よかったーーーーー!
- 253 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/14(月) 18:47
- 生存報告キテターッ(^-^)!!!!!
いつまでも待ってますよ
- 254 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/04(月) 08:08
- 私も待ってますね
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/13(月) 23:36
- 待ってます
- 256 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/09(火) 23:26
- よっすぃー卒業でくじけそうな私に活力を…
- 257 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/26(金) 13:23
- I bileave
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/19(月) 10:04
- 絶対あきらめないから!
- 259 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/25(日) 01:28
- ( ´D`) < あいぼん‥おかえり‥
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/30(金) 21:36
- あいぼん・・・_| ̄|○
- 261 名前:四期ファン 投稿日:2007/07/29(日) 20:33
- 戻って来ないんですか?
ずっと待ってるんですけど
- 262 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/29(日) 23:49
-
- 263 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 16:16
- 作者様お気持ちは察しますがどうかこの作品だけは
見捨てないで下さいお願いします。
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