距離
- 1 名前:あろ 投稿日:2004/08/29(日) 03:32
- はじめて小説を書かせていただきます。
吉澤メインで、CPはよしごま。
その他お姉さん娘。さんたちが、ちらほらと。
よろしくおねがいします。
- 2 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:36
- 「よしこ〜」
あ、ごっちんだ。
「なに?」
振り返った瞬間。
どんっと、体に大きな塊・・・、いや、
ごっちんがぶつかってきた。
一瞬ぐらっと体が揺らいだけれど、きちんと受け止める。
ぎゅっと抱きしめてあげると、満面の笑みで、私を見つめてきた。
ごっちんの、この笑顔。大好きだなぁ。
- 3 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:41
- 「今日、帰りよってもいい〜?」
聞いてるけど、拒絶しない事が前提の質問なんだよね。
断ると、後が長いんだ。
ごっちんは、すねたら徹底的に私を避けるんだから。
「うん、いいよ」
聞かなくたって平気で遊びに来るのに、
いちいち聞く理由は・・・わかってる。
約束する時、ごっちんはきまってキスしてほしいんだ。
なぜかなんて、知らないけどね。
ちゅ。
・・・もう一回。
・・・・・・・もういいかなぁ?
そっと目を開けると、
ごっちんの顔は真っ赤に染まっていた。
- 4 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:44
- 二人で家までゆっくり歩いていく。
ごっちんの家は・・・私の家の隣で。
ごっちんは私の幼馴染で。
だから、いちいちウチにきてもいい?
なんて、聞く必要はないわけ。
どっちの家に行くのかなんていわなくても、
ごっちんの足は我が家に向かっている。
かわいいごっちん。
体中で、行動で、私のことを好きだって表現してくれる、
いとしい、いとしい存在。
- 5 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:48
- 好きだ、と先に言葉にしたのはごっちんだったけど、
ごっちんだって、私の気持ちには気がついていたはず。
好き、と口にしたときの、ごっちんの涙を、私はきっと忘れない。
きらきらひかって、それはホントに宝石みたいで。
純粋な想いの雫は、あっという間に私の心を支配した。
真っ白なごっちんの気持ちが、
ストレートに伝わってきた。
ごっちんは、偉大だ。
- 6 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:53
- 「よしこ〜」
お風呂から出てきたごっちんは、なんの断りもなく
わたしの前にストン、と腰を下ろした。
それから、手にしていたタオルを頭の上にぽんっとのせる。
だから私も、何も言わずにタオルを手にとって、
髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回しながら乾かし始めた。
・・・髪の毛の下に見える、白い項はとりあえず見ないふりで。
「はい、だいぶ乾いたよ。ドライヤーかけといで」
「うん、ありがと」
ぱたぱたとスリッパを引きずりながら歩いていく、後姿が可愛い。
ごっちんのことはすごく甘やかしたい。
だってこんなにも、かわいいから。
- 7 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 03:59
- ごっちんとの毎日は、いつもこんなだね。
学校行って、帰ってきたらごっちんがうちにきて。
ご飯食べて、宿題して、テレビ見て・・・。
お風呂はいって。少し話をしたら、もう眠る時間が来るんだ。
ごっちんは眠くなると家にかえるのが面倒になるみたいで、
そのまま寝ちゃうから、
自分の部屋にはあまり帰らないよね。
付き合い始めてからは、特にそんな日が増えた。
そんなごっちんは、本当に大事な宝物。
- 8 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 04:02
- んで、いつもどおり、お風呂に入った後の他愛もない話の後、
布団に入ると。
ごっちんがもぞもぞと・・・後ろ向きに寄って来たから。
ぎゅっと抱きしめる。
・・・わざと、腕が胸にあたるように、ね。
ごっちんは、体の向きを変えて、私の胸元にキスをくれた。
そう、これは夜が始まる合図なんだ。
- 9 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 04:03
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 10 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 04:07
- 寝息を立てているごっちんはまるで子猫みたいにまるくなって。
私にぴったりとくっついたまま、熟睡してるみたい。
目じりに少しだけ涙が残っているのを見て、
無理をさせてしまったのかな、と思う。
ごっちんを抱いていると、気持ちが荒れ狂う。
かわいくて、淫らなごっちん。
でも、抱いた後は、なんともいえない、すがすがしい気持ちになるんだ。
きっと、あの時と同じ。
頬に伝う、あの、「好き」の涙を見たときと、同じくらい。
真っ白な涙を見たときと、同じくらい。
だから、私はごっちんとだけは、絶対に離れられない。
ねぇ、ごっちん。
一生・・・離さないからね?
- 11 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 04:08
- プロローグ1。
よしごま(吉澤視点)でした。
- 12 名前:プロローグ1(吉×後) 投稿日:2004/08/29(日) 04:09
- ええっと、プロローグが何回か続いた後、
本筋が始まる予定です。
- 13 名前:あろ 投稿日:2004/08/29(日) 04:10
- なので、プロローグは、
本筋への前提として、読んで頂けたら、
と思います。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 04:11
- 面白そう!頑張ってください!
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 05:17
- いいですねー。
かわいくて淫らなごっちん・・・
見てみたいよーーーー
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 10:46
- よしごまだーーーー。
期待してます。
- 17 名前:ym 投稿日:2004/08/29(日) 22:35
- すっごい楽しみデス!!
頑張って下さい♪♪
- 18 名前:あろ 投稿日:2004/08/30(月) 00:51
- レス、ありがとうございます。
15>名無し飼育さん
淫らでかわいいごっちん。
書くかどうかは・・・
話の流れに頼るところですけど、
楽しんでいただければいいかなぁ、と
おもいます。
16>名無飼育さん
よしごまです。
作者の推しの一つですね。
楽しんでいただければ幸いです。
17>ym様
とても嬉しいです。
期待に添えるようなものが
書けるといいんですけど。
よしごま好きと言って下さっている
方の後でもうしわけないような気持ちですが
プロローグ2(矢口×石川) 更新です。
- 19 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 00:55
- 彼女のことを特に気にしていたわけじゃない。
なのに、ある時、彼女の送っている視線の意味に、
オイラは気が付いてしまった。
声をかけずにはいられなかった。
それまでは、ほとんど2人きりで話をすることなんてなかったのに。
それほどに、そのときの彼女は美しく・・・悲しく見えてしまったから。
- 20 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 00:57
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 21 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 00:59
- 「矢口さん、今日いい?」
彼女がいつもの笑顔でオイラを誘う。
それは、甘い恋人同士の誘いのようで、
実は全くそうではないのだけれど。
思う相手をこの手で抱けない感情を、
違う相手にぶつけるだけの行為を、
あれから何度オイラ達は繰り返したのだろう。
- 22 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:03
- 「ん、いいよぉ〜」
彼女に微笑み返す。
仲のいいカップルを装って。
「仲、いいねぇ」
からかう声の持ち主が、おいらの片思いの相手だ。
バイト先の可愛い制服を着て、ひらひらと近寄ってくる。
「でしょ〜?」
片思いの彼女の笑顔に比例して、気持ちが冷えていく。
オイラは弱い。
今さっき、オイラを誘った声の持ち主も。
- 23 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:03
-
・・・・・・・・・・・・・・・・
- 24 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:08
- 「吉澤が好きなんでしょ?」
オイラはあの日、彼女に聞いた。
ただひたすらに彼女の幼馴染であり、
オイラの後輩である「吉澤」を見つめつづける彼女に。
そして、彼女はこう答えた。
「うん、でもね。よっすぃはごっちんとは別れないと思うの。
だから、私はよっすぃに好きだなんていわないつもり。
でも、そのまま見てるのは悔しいから・・・、
ぐちゃぐちゃに引っ掻き回して、
私のことを絶対に忘れられないようにしたい」
あ、暗い。
そう思った。
- 25 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:10
- なのに、考え方はものすごく暗い反面、
話をしている時の石川は、きらきらと輝いていた。
だから、オイラは
「オイラと付き合わない?」
なんてこと、言っちゃったんだ。
- 26 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:11
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 27 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:16
- 「あ、オイラ今日帰り遅くなるからさ、梨華ちゃん家に行ってていいよ」
「うん、わかった。じゃぁ後でね、矢口さん」
「じゃぁね〜」
ばいばい、と手を振って彼女を見送る。
一応今はバイト中だし、これ以上話してるわけにはいかないよね。
体だけは動かしながら、
頭の中で、色々考える。
思うんだ。
今日、オイラは家に帰ったらきっと彼女に抱かれるんだ。
でも、お互いに違う相手を思いながらでも、
あの優しい快感に翻弄されるのは嫌いじゃない。
オイラ達の恋愛がこういう形でしか昇華できないのであれば、
オイラはこの痛みを喜んで胸に抱きとめる。
石川と一緒に。
きっと、ずっと。
- 28 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:17
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 29 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:17
- ・・・・・・・・・・・・・・・・
- 30 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:17
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 31 名前:プロローグ2(矢×石) 投稿日:2004/08/30(月) 01:18
- プロローグ2(矢口×石川)矢口視点
更新終了です。
- 32 名前:あろ 投稿日:2004/08/30(月) 01:23
- 次は、
少しさがるまで待ってから更新する予定です。
よろしくお願いします。
- 33 名前:あろ 投稿日:2004/09/01(水) 01:06
- プロローグ3(石川×吉澤)更新です。
- 34 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:09
- 白い肌に紅く残っている情事の跡を、
ため息と共に見つめる。
きつく、きつく肌に残っている紅い跡は、
彼女の激しい想いのうちを表しているかのようで。
跡をつけられたとき、痛みで思わず
彼女の目をみてしまったのがいけなかった。
- 35 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:13
- 「一度だけでいいの」
彼女を思いやるのなら、断るべきだったと分かっている。
「よっすぃを、抱きたい」
そんなような意味の言葉を呟いた彼女の、
胸のうちでどんな葛藤があったのか。
一度でもそんなことを考えた、吉澤は負けたのだ。
彼女の想いの大きさに。
この体に残る紅いあとは、彼女の勝利の印。
彼女が自分を愛してくれていたという、そのことの印だ。
- 36 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:18
- 彼女の腕の中で乱れることに抵抗はなかった。
それほどに甘く、優しく、激しく、彼女は吉澤を翻弄した。
「よっすぃ、跡・・・つけてもいい?」
「・・・え・・・?」
その波の中にいる最中、ふいに現実に戻されて、
彼女をみた。
自分を見ている彼女と目が合って・・・。
自分はそうとう驚いた表情を晒したと思う。
だって、彼女は泣いていた。
静かに、静かに。
「梨華ちゃん?」
呼びかけると、
少し笑ってあの子は、
私の心臓の上に、紅く残るような口付けをしたんだ。
- 37 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:23
- その後は夜明けまで、一度も言葉を交わすことはなく。
吉澤の上げる甘い声と、
2人の吐息だけがその存在を主張するかのように、
暗闇に澄んだ音楽として部屋に響き渡った。
そして、夜が明けて。
夜のままの姿で寝ている吉澤の隣から彼女は抜け出して、
何も言わずにその部屋から去っていったのだった。
- 38 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:26
- なんともいえない、
この気持ちをどう表現するべきなのか。
胸にしこりのように残っている、重く、苦しい気持ちはなんなのか。
彼女の気持ちに気がつかないままで終わればよかったのに。
いいよ、と答えるのではなかった。
彼女の瞳を、あの時、のぞき見るのではなかった。
後悔は遅く。
ああ、彼女に辛い思いをさせてしまった、これは自分への罰なのだ。
この紅い後が消えるまでは、この気持ちを引きずるのだろう。
吉澤は、ぼんやりとそんなことを思った。
- 39 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:27
- ・・・・・・・・・・・
- 40 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:28
- ・・・・・・・・
- 41 名前:プロローグ3(石×吉) 投稿日:2004/09/01(水) 01:28
- ・・・・・・・・・・・・・・
- 42 名前:あろ 投稿日:2004/09/01(水) 01:31
- プロローグ3(石川×吉澤) 吉澤視点
更新終了です。
よしごま・・・ですが、
よしごまじゃないプロローグばかりで
ごめんなさい。
次はごっちん視点の更新になりそうです。
- 43 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 20:54
- 私の彼女は、よく、もう本当にしょっちゅう、浮気する。
嫌になるくらい、簡単に。
理由なんてない。
断れなかった。
それだけだよ。
「だって、ぜったいにごっちん以上の人なんていないんだから、
気にしなくても大丈夫だよ」
わかってる、きっと、よっすぃにはよっすぃの理由があって、
だから、ごとーが浮気したって、よっすぃの元に戻るのなら、
よっすぃは怒ったり、傷ついたりしないで、
ごとーを受け入れてくれるだろう。
でもねぇ、あんまりおもしろくないよ。
ふつーは、さ。
- 44 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 20:58
- だから、ごとーはそんなうわさを聞くたびに機嫌が悪くなる。
よっすぃは、最近そのことにようやく気がついたらしくて、
『ごとーにばれないようにそっと浮気する』
ことにしたらしく、そんなうわさを耳にする回数がこの3ヶ月くらいで
格段に減った。
でも、浮気を止めてないあたり、どうかと思うけど。
いい加減、往生際が悪いよね。
そんなに浮気したいのかな、よっすぃは。
そんなに浮気するのが、楽しい?
- 45 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 21:00
- どんなによっすぃが隠して浮気してても、
もともとの付き合いが長いせいで(幼馴染だし)
なんとなく気がつくんだよね。
- 46 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 21:08
- 「ねぇ、よしこ、今日ごとーんち泊まりに来てよ〜」
「・・・・ごっちんの家に?」
「ダメ?いつもよしこんちだから、たまにはいーじゃん」
「そうだね。・・・・でも今日はダメだよ」
「え!どーして?」
「だって、いとこが泊まりに来るんだよ、今日」
「そんなのごとー知らない・・・」
「あ、ごめんね、ごっちん。明日・・あさってだったら」
「わかったよ、じゃぁあさってね!約束だよ!!」
先週はよしこの都合であえない日が何日かあった。
だから、なにかしらあるんじゃないかと思ってたんだけど、
どうやらごとーの勘はビンゴだったみたい。
泊まりに来るんだったらさ、ごとーを
家に呼べばいいじゃん?
いつもだったら「じゃぁうちに来れば?」
って言うくせに。
泊まれないって事はさ、・・・浮気の痕が
体に残ってるってことじゃん・・・。
- 47 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 21:14
- 相手、誰だろう。
気になる・・・。
「よしこ、先週さ、誰かと遊びに行った?」
「・・・なんで?」
「先週ほとんどあえなかったじゃん」
「ああ・・・、ん〜・・・小川と買い物行って、
矢口先輩とご飯食べいって。あとは久しぶりに梨華ちゃんが
泊まりに来たくらい」
え、梨華ちゃん泊まったの・・・?ってことは。
梨華ちゃん、なのかなぁ・・・浮気相手。
なんかちょっと微妙。
「梨華ちゃん、泊まったんだ・・・・。した?」
「・・・なにを?」
「べつにぃ」
「あのね、幼馴染なんだし、泊まるのくらいふつうでしょ?」
ふつうに、浮気したわけね。
- 48 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 21:18
- 「じゃ、よしこ、あさって絶対泊まりにきてね!!」
「・・・?うん?行くけど・・・?」
にこにこ笑ってるけど、ごとーが怒ってるの
絶対に気がついてるはず。
どこまで黙ってられるかな、梨華ちゃんとの浮気。
「お風呂一緒にはいろうね」
「いつも一緒に入ってるでしょ?」
「一緒に寝るんだよ」
「・・・どうしたの、ごっちん?」
どうしたの、って・・・。
冷静を装ってるのかねぇ、それで。
顔が引きつってるけど。
こっちが言いたいくらい。
よしこ、どうしたの?顔が引きつってるよ、って。
- 49 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/05(日) 21:21
- プロローグ4(吉澤×後藤)前編 後藤視点
更新終了です。
- 50 名前:あろ 投稿日:2004/09/05(日) 21:22
- 予定通り終わりませんでした。
後編は早ければ今晩中に。
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/05(日) 21:38
- ごっちんが可愛そうだ。
お仕置きですね。
後編も楽しみに待ってます。
- 52 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/09(木) 04:26
- よしこの体がだんだんと後ろにひいていく。
「いつも一緒に、ね。そんな感じで・・・梨華ちゃんとも
一緒に入ったんだね、お風呂」
話の核心に触れる。
「お布団にも一緒に入って」
「ごっちん、何いってんの?」
もうかえるよ。
そういってバッグをとりあげたのは動揺の証。
怒ってる振りして、たぶん心臓はバクバクのはず。
「うそついたってね、そんなにくっきりアトがついてたら
バレバレなんだけど」
「・・・っ」
首と、胸。抑えてるけど・・・。
胸のなんて見えるはずないじゃん。
ちょっとむかっとしてみたり。
「あさって・・・。覚えといてね」
「ご・・・・ごめん、ごっちん!!!」
- 53 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/09(木) 04:28
- はい、後藤の勝ちね。
今回は意外とあっさりと負けをみとめたなぁ。
なんかよっぽど後ろめたかったんだろうな。
だけど、後藤以外の人を、よしこが抱くなんて、
赦せないんだからね、ほんとに。
本当は。
「いっつもごめんっていうけど。
その割には何度もおんなじことするよね。これ何回目?」
「う・・・・う〜ん・・・・」
「どんな理由があったって、浮気は浮気なんだからね」
「・・・うん」
「断れないとか、ほんとにもういい加減にしてね」
優しく問い詰めてるつもりなんだけど、
涙が出るのはこらえられなかった。
認めさせたいくせに、認められたらやっぱり傷つく。
「私が好きなのは、本当にごっちんだけなんだよ」
「・・・・・」
「ホントに、ごめん」
- 54 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/09(木) 04:32
- 「なんていうか、話の流れで・・・そんなつもりで
泊まりに来たわけじゃなかったと、思うんだけど」
しどろもどろなよしこが、本当はいとおしくてたまらない。
浮気してるよしこは、嫌いだけど、
いいわけしてるよしこは嫌いじゃない。
かわいいよしこ。
ごとーだけを見てくれたらどんなにいいか。
想像しないわけじゃないけど、
ごとーのことは本当に大切にしてくれるから、
その優しさをほかの人に分けてあげてもいいかな、て、
ちらっと思ったりもするんだけど。ちらっと。
まぁ、でもやっぱり浮気は・・・ねぇ。
「浮気、これが最後だよね」
「うん」
「じゃぁ、ゆるす」
「・・・・ありがと」
- 55 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/09(木) 04:33
- 本当に最後だなんて全然思ってないけど。
よしこは、即答してるけど。
だから絶対無理だと思うんだ。反省してないよね。
でもね。
抱きしめてくれるから。
まぁ、いっか・・・。
- 56 名前:プロローグ4(吉×後) 投稿日:2004/09/09(木) 04:34
- プロローグ4(吉澤×後藤)後編 後藤視点
更新終了です。
- 57 名前:あろ 投稿日:2004/09/09(木) 04:35
- 現実世界では到底ありえない
ごっちんの心の広さ。
よしこの浮気癖・・・(浮気しすぎだし)
ありえないことを楽しむ世界・・・?ということで、
その辺はご容赦ください。
- 58 名前:あろ 投稿日:2004/09/09(木) 04:42
- 51>名無飼育さま
ごっちんは可愛そうです。
これから更に可愛そうになってく予感です。
でも、ごっちんにはいつまでも
かわいくいてもらいたいと思います。
お仕置きはこれからたっぷりと・・・。
- 59 名前:プロローグ5(石×吉) 投稿日:2004/09/09(木) 05:01
- いまさら。
そう後悔したって遅いんだって、分かってる。
あんなこと、よっすぃに頼むんじゃなかった。
よっすぃを、抱くのではなかった。
腕の中で眠っている彼女は、一応恋人。
だけど、私達の関係が体だけの寂しさを紛らわすためのものだって、
彼女もきっと知っている。
後悔してるのは、浮気したことじゃない。
よっすぃを抱いた、と彼女・・・矢口さんは知ってる。
そうする、と伝えたから。
彼女はその時なにもいわないで、ただ笑ってた。
それでも、次の日の朝、泣きながら帰ってきた私を、
眠れるまで抱きしめてくれた。
優しいこの人のことを、どうして好きにならなかったのだろう。
どうして、よっすぃ・・・なんだろう。
- 60 名前:プロローグ5(石×吉) 投稿日:2004/09/09(木) 05:02
- 後悔してるのは。
よっすぃにとってはただの『浮気』だってことを、
分かってしまったから。
そこになにかしら、感情が見えるんじゃないかな、とか
すこしは気持ちが揺れてくれるんじゃないかな、
なんていう甘い期待がいけなかった。
それともうひとつ。
矢口さんを抱いている時、矢口さんの一つ一つの仕草が
よっすぃと重なってしまうようになってしまったから。
- 61 名前:プロローグ5(石×吉) 投稿日:2004/09/09(木) 05:06
- 矢口さんが、よっすぃと同じ仕草を見せるたびに、心が揺れる。
体がアツくなる。
この腕にもう一度抱きたい、と思わせる。
矢口さんとよっすぃが重なるたびに、心の中に後悔の渦が押し寄せる。
矢口さん。
ごめんなさい。
よっすぃを忘れるために抱いているのに。
それでもいい、と赦してもらっているのに。
よっすぃを思い出させる矢口さんの仕草の一つ一つが・・・・・つらくて。
抱かなければ良かった。
あの肌の熱さを知らなければ良かった。
頭の中でよっすぃの何度も何度も抱いて、
その仕草を矢口さんと重ねて。
私って、最低。
- 62 名前:プロローグ5(石×吉) 投稿日:2004/09/09(木) 05:06
- ちょっと短いですが、
プロローグ5(石川×吉澤) 石川視点
更新終了です。
- 63 名前:あろ 投稿日:2004/09/09(木) 05:09
- 一番初めに「いしよしごま」と書くべきだったかな、と
ちょっと後悔しています。
でも、本音を言うと「いしよしごま」でも
なくなる予定です。
- 64 名前:あろ 投稿日:2004/09/09(木) 05:11
- プロローグは全10回くらいの予定です。
あと少なくとも2人、メインで出てくる娘。がいます。
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/17(金) 06:12
- プロローグ長ぇw
面白いです頑張ってください
- 66 名前:あろ 投稿日:2004/09/21(火) 00:05
- ずいぶんと間があいてしまいましたが、
次の更新です。
>65 名無飼育さま。
長いですよね(汗
長いと思いつつも、
文章力のなさで、
削ることも出来ませんでした。
でも、楽しんでいただけると、とても嬉しいです。
- 67 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:14
- 「・・・っあ」
「吉澤・・・腰、あげて」
「ん・・・っ」
「足、開いて・・・?」
「・・・・あ、あ、あぁ・・っ」
あなたの腕の温かさに溺れているのだ。
優しく、自分を抱いてくれる腕は大好きだから。
「イッてもいいよ」
「ひぁ・・・ぁぁあああっ・・・」
「うん、かわいい」
「い、・・いいださ・・っ」
「かおりでしょ?」
「ん、ん、ん・・・・・っ」
無条件で自分を受け入れてくれる存在。
ごっちんと付き合っていくためには、どうしても必要だった。
この腕の、温かさが。
- 68 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:15
- 「ほら、名前呼んで・・・?」
「か、おり・・・」
「よくできました」
「・・・・っあああぁあぁぁっ!!!」
体中があつい。
快感が体中を支配して、
だから私はあっさりと自分の意識を手放した。
- 69 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:19
- 「吉澤?おきて」
「・・・ん・・」
どのくらい時間が経ったのか、
いつも圭織が使っている紺色の毛布に
自分が包まれているのを知る。
ゆっくりと起き上がって周りを見ると、
圭織は近くのイスに座っていた。
その手が自分の額にあてられていたのを知って、
胸が熱くなる。
「ありがと」
「どういたしまして。もう帰る時間でしょ?」
「うん。・・・また、来るね」
「いつでもどうぞ」
いつでも受け止めてくれる、
甘えさせてくれる存在。
- 70 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:21
- ごっちんとはまった区別の次元で、
圭織のことを・・・愛している。
こんなの、都合のいい言い訳だって分かってるけど。
圭織はいつでもやさしくて、
いつでも甘えさせてくれて、
暖かくて。
その場から離れたくなくなるような
空間を生み出してくれる人なんだ。
- 71 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:23
- だから、ごっちんは圭織の存在を知らない。
どんなに今まで浮気してても赦してくれたごっちんだけど、
圭織のことがばれたら、圭織のことは赦してくれないだろうって、
そんな気がするから。
圭織には二度とあえなくなるだろうって、
そんな予感がするから。
このぬくもりは手放せないんだ。
だって、ごっちん。
あなたを愛しつづけるためには、
必要なものだから。
- 72 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:24
- プロローグ6(飯田×吉澤) 吉澤視点
更新終了です。
- 73 名前:プロローグ6(飯×吉) 投稿日:2004/09/21(火) 00:24
- ええと、ようやく本編につながる話が出てきましたよ。
でも、もう一つ、続けて更新してしまいます。
次も吉澤さん視点で。
- 74 名前:あろ 投稿日:2004/09/21(火) 00:25
- 間違えました。
次は吉澤さんじゃなかった。
安倍さんでした。
- 75 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/21(火) 00:28
- あ、また見てる。
講義の最中、圭織があらぬ方向に視線を向けていることが時々ある。
なにかんがえてるんだろ。
最初はそんな単純な疑問だった。
だって、好きなヒトのことは何でも知りたくなるでしょ?
だから、なっちは聞いたんだ。
「いつも、なにみてるの?」って。
- 76 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/21(火) 00:30
- 圭織は笑ってた。
あ、ごまかそうとしてるんだ。
なっちはそう思ったから、
しつこく、何回も、何回も聞いた。
でも、圭織が答えてくれないことに苛立って、
・・・攻めるような顔になってたんだ、と思う。
困った顔をしてようやく圭織がくれた答えは
「高等部、懐かしいなぁと思ってさ。思い出に浸ってたんだよ」
恥ずかしいからあんまり人に言いたくなかったんだけどね。
そういって笑った圭織の顔を見て、なっちは愕然とした。
だって。
嘘ついた顔、してた。
- 77 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/21(火) 00:33
- どう聞いたって答えをくれないのなら、自分で答えを探そう。
そう思って、なっちは作戦を変えた。
圭織の生活から、ヒントを探り出すことにしたんだ。
そうして、一ヶ月くらい・・・かな。
注意して圭織を見てたら、
時々携帯のメールを見てすっごいニコニコしてる時があるって分かった。
そんな日は決まってなっちとは一緒に帰ってくれない。
なにかあるんだ、って確信するには
充分だと思うでしょ?
- 78 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/21(火) 00:37
- いっぱい悩んで。
なっちの片思いだから、
こんな卑怯なことしちゃいけない。
後をつけるなんて、友達としてもサイテーだし。
圭織がなっちのこと大事に思ってくれてるんだったら
いつかきっとなっちにも話してくれるはずだ、とか。
圭織は相談とかあんまりする人じゃないし、
自分で決めたい人だから、
結論がでたらまたきっとなっちだけの友達になってくれるはず、とか。
でも、でも。
がまんできなかった。
後をつけよう、って決めた頃には、
もう自分は何をしているのか分からないくらい、
暗い気持ちでいっぱいになってた。
- 79 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/21(火) 00:38
- プロローグ7(安倍×飯田)前編 安倍視点
更新終了です。
- 80 名前:あろ 投稿日:2004/09/21(火) 00:41
- このプロローグには一つ一つ
実はサブタイトルがついてます。
プロローグが終了したら、
まとめて公開予定。
- 81 名前:あろ 投稿日:2004/09/21(火) 00:44
- 次の更新は出来れば今週中に。
- 82 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:29
- 冷静な判断なんて、出来てなかった。
この卑怯な行動を例え知られてしまったとしても、
大好きな彼女が心を奪われているものを、どうしても知りたかったから。
でも、つけていった先は、圭織のアパートで、
だから、なっちは自分の勘違いなんだ、
圭織は嘘なんてついてなかったんだ、ってすごく安心した。
- 83 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:31
- なっちはただ勘違いしてただけなんだ。
きっとほしかった本が手に入る予定でもあったんだろうとか、
美術展のチケットが手に入ったとか。
そういう趣味の世界を圭織は共有したがらない。
だからなっちも圭織の部屋に入ったことはないんだよね。
だから、だから
家で誰かと待ち合わせしてる可能性なんて、
これっぽっちも考えてなかったのに。
- 84 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:35
- ほっとして、つめていた息を吐き出して。
それまでのドキドキが重く体中にのしかかっていたのを、
深呼吸して追い出した、そのときだった。
なっちの横をすれ違っていった、
彼女の行く先を眼で追ってしまったのは、何か予感させるものが
あったからかなぁ・・・・。
中性的なヒト。
あ、背が高いんだ。
金髪・・・?
目がおっきい。
色が白い。
ん〜・・・だけど、女の子だよね。多分。
- 85 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:36
- でも、でも、ちょっとまって。
なっち、なんだかちょっとパニックしてるみたい。
だってどうして、
彼女が圭織の部屋にはいっていくの・・・・?
- 86 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:44
- 表から見えるくらい大きな窓の側で、
きっと夕日をたくさんに浴びていて、
彼女の髪の毛はきらきらと光ってた。
圭織はそんな彼女を
見たこともないような笑顔で優しく抱きよせて・・・
なっちの目の前で、・・・キス、した。
- 87 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 00:46
- その時、いつまでなっちがその場にいて、
どうやってそこから帰ったのか、正直、ほとんど覚えてない。
彼女が圭織の母校の後輩で、
圭織がいつも見てるあの校舎に通っているのだと分かったのは、
それから2ヶ月くらい経った頃だった。
- 88 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 01:10
- 「あ、飯田さん・・・」
「吉澤?」
なにしてんの、こんなとこで。
町で偶然遭ってしまったから、知りたくもない名前も知ってしまった。
いつもは一緒になんて行かない本屋さんに、
無理やりついていったら、偶然に。
そう、本当に偶然に。
彼女は圭織が捜していたのと同じ本を手にしてた。
「吉澤、その本・・・?」
「飯田さんが捜してるって言ってたから」
暇だったし、捜しに来てみたんだけれども、なんて言って。
でも、何よりも印象に残ったのは、
彼女の名前でも、その親しげな態度でもなくて、
笑った彼女の笑顔が悔しいほど圭織に似てたことだった。
- 89 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 01:13
- 圭織は、また、外を見てる。
彼女のことでも考えているのかな。
ねぇ、あなたの視線の先に、ほんのわずかでも
私がうつっていたことがありますか。
私はあなたを
好きでいてもいいですか?
- 90 名前:プロローグ7(安×飯) 投稿日:2004/09/27(月) 01:14
- プロローグ7(安倍×飯田)後編 安倍視点
更新終了です。
- 91 名前:あろ 投稿日:2004/09/27(月) 01:19
- 本編に関係する人間関係はこんな感じです。
今のところ登場するのはこれまでに出てきた6人(少ない・・・?)
自己紹介をしていただいた、というところでしょうか。
- 92 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:23
- 「よっすぃ、最近元気ないね〜」
何気ない梨華ちゃんのひと言が胸に突き刺さる。
心配してくれてるんだって分かってるけど、
正直放っといてほしかった。
だってさ。
自業自得って言うのはまさにそのとおりで、
この痛みの原因は、間違いなく梨華ちゃんであり、ウチ自身なんだ。
- 93 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:26
- おととい、ひさしぶりにごっちんとふたりっきりでご飯を食べにいったんだけど、
突然、ごっちんが言ったんだ。
「梨華ちゃん、ごとーのこと好きじゃないの、知ってた?」
本当に、本当にウチは気がつかなかったんだ。
梨華ちゃんがずっと好きでいてくれたことも、ごっちんと対立してたことも。
誓って言うけど、それがわかっていれば梨華ちゃんと浮気なんて絶対にしなかった。
あ、いや、
浮気してるのがそもそもまずいわけだけども・・・。
- 94 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:34
- 「よしこが一緒の時は平気なんだけど。ごとーと二人だけになると・・・」
ごっちんが言うには、雰囲気が全然違うんだって。
梨華ちゃん本人が意識してやっていることだろうから、
ウチには分からなくて当然だとごっちんは笑っていってくれたけど。
その笑顔が心に痛い。
ウチを思いやって言ってくれてるのがわかるから。
で、この間のう、・・浮気からどうも梨華ちゃんが強気で、
あからさまに言葉に出してごっちんを攻撃してるみたいで、
ごっちんも隠すことが出来なくなったみたい。
ごっちんはすごく落ち込んでた。
だってごっちんは、梨華ちゃんのことを嫌いじゃないからね。
ウチは。
自分がした事が、2人のバランスを崩してしまったのだと、
今更だけど、
浮気したこと以上に、それだけでも充分なのに、
もっとたくさんごっちんを傷つけてしまったことを知った。
- 95 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:38
- ごっちんの感じてる痛みは、
ウチのせいだって分かってる。
あんなに守ってあげたいと思っていたのに、
梨華ちゃんと自分とのバランスを保つために、
ごっちんが必死で守ってきたバランスを、あっけなく崩してしまったんだ。
ごっちんは、何もしなくていいって言った。
これは、梨華ちゃんとごっちんの問題だから、
ごっちんは自分で何とかしたいんだって。
よしこが、ごとーの事好きでいてくれるの知ってるから大丈夫。
ただちょっと元気になりたくて、よしこに話しただけだから、
ごとーが傷ついた時は慰めてね?
そんなかわいい、かっこいいことを言ってたと思うけども。
- 96 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:41
- だけども!!
これは梨華ちゃんと、ウチとの問題でもあるわけで。
ウチが梨華ちゃんに抱かれたことで、
梨華ちゃんの心に変化がおきちゃったってことだよね。
でもなぁ、矢口先輩に聞くのもなんだかなぁ、という気がするし、
さすがに。
直接梨華ちゃんに聞くのも・・・ごっちんにたいして、
梨華ちゃんがアレになりそうな気がするしね。
- 97 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:43
- 結局、梨華ちゃんを家に呼んでご飯を食べたりしてるわけだけども、
なんだか妙にハイテンションな梨華ちゃんに微妙な警戒心がわいてくる。
誘ったのは失敗だったかな。
家とかじゃなくて、どっかお店にすればよかった。
梨華ちゃん、今日誘った原因、わかってるっぽい感じがする・・・。
- 98 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:49
- 「よっすぃ、私になんか話でもあるの?」
突然梨華ちゃんがそういったのは、
布団に入って、電気を消した直後だった。
来たか、と思ったけど、
ゆっくり知らん振りをする。
「いや、別に。・・・なんで?」
「だってよっすぃの誘いって、すごいめずらしいし」
「・・・そう?」
そうだよぉ、と高い声で笑う彼女はあまりにも不自然だった。
だって梨華ちゃんはこういう話をする時に、
声に出して笑ったりは、決してするヒトじゃない。
言葉に出して、牽制されたくないと思ったのかな。
それだったらそれでいい。
これが少しでも牽制になってくれるのならば。
きちんとごっちんを守ってあげられない自分が
すごく悔しいけれど。
- 99 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:53
- 梨華ちゃんもごっちんも大事な幼馴染で。
ごっちんのことは本当に大切なヒトになって、
梨華ちゃんは別の意味で、大事な友達のはずだったのに。
ウチがたった一人を選んだから、
少しずつ、別の道を歩くようになったのかもしれない。
でも、寂しいね、梨華ちゃん。
もちろん、迷うまでもなくごっちんの手を離して
梨華ちゃんを選ぶなんて事、しないんだけど。
ウチの中で、大事な友達の枠を越えることのない存在だったから。
というよりも、その枠の中に絶対的に存在する人だから、かな。
ごっちんは、この寂しさを黙って、
ウチのために耐えてくれていたのかな、
そう思うとなきたくなってくる。
だからウチは、
この寂しさに耐えることが出来るんだよ。
- 100 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:55
- 梨華ちゃん、決定的な別れはこないだろうけど、
距離が開いてしまうことを、本当に寂しいと思うよ。
もしかしたら、
梨華ちゃんもこんな寂しさを感じてくれてるのかもしれないね。
だって、
・・・幼馴染なんだから、ね。
- 101 名前:プロローグ8(吉澤) 投稿日:2004/09/27(月) 01:56
- プロローグ8(吉澤)
更新終了です。
なんかもう全てが終わったかのようなプロローグですが、
まだ始まってもいない。
- 102 名前:あろ 投稿日:2004/09/27(月) 01:58
- プロローグは次で終了。
ちなみに矢口×吉澤です。
- 103 名前:あろ 投稿日:2004/09/27(月) 02:00
- 次の更新は、早ければ今週中に、
遅ければ・・・来週の今日くらい。
- 104 名前:プロローグ9(矢×吉) 投稿日:2004/09/27(月) 16:56
- 「おっす」
「・・・矢口先輩」
久しぶりに二人だけで話す機会が出来た、放課後。
夕日が暖かく教室を染めて、
そんな郷愁を誘うような雰囲気と、
2人の表情とはおよそかけ離れてはいたけれど。
「石川・・・梨華ちゃんから聞いたけど」
「・・・すみません」
「よっすぃ、・・・本当に梨華ちゃんがよっすぃのこと
好きだったの知らなかったんだね」
「・・・・・・」
「知ってたら、よっすぃだったら断ったよね、そんな誘い」
そっと顔を上げると、矢口の優しい微笑みに出会って、
吉澤は言葉を失う。
何もかも分かっていて赦してくれる優しさは大好きだけれど・・・痛い。
「すみませんでした。軽い気持ちで・・・踏み越えるべきではなかったです」
「そうだね」
ずきん。
胸が痛む。
「ごっつぁんのことで頭がいっぱいだった?
それとも別に浮気相手でもいたの?
梨華ちゃんの気持ちに、全然気がつかなかったって・・・!!」
- 105 名前:プロローグ9(矢×吉) 投稿日:2004/09/27(月) 17:02
- 言い訳なんで出来るはずがない。
鈍感だったとひと言で済ますのは簡単だけれど、
そんな言葉でごまかすことが出来ない傷を、
きっと彼女の胸に刻んでしまったのだろう。
断るのは角が立つ。
「一度だけなら」
そう言う事は自分にとってあまりにも簡単すぎて、
だから、石川が自分を誘ってきた時、
「喧嘩でもしたの?憂さ晴らし?」
そういったら彼女は笑ったから、それを信じてしまったのだ。
「一度だけでいいから。ごっちんにも言わないし。お願い」
その言葉の必死さを、勘違いしてしまった。
梨華ちゃんだって、
矢口先輩にばれた時のことを考えて行動してるんだろうし、
浮気しようって決めたんだろうなぁ、とか。
どうしようかとためらったのは、ほんの一瞬だった。
- 106 名前:プロローグ9(矢×吉) 投稿日:2004/09/27(月) 17:06
- 「梨華ちゃんが、おいらを抱くたびに泣くんだ。
よっすぃを思い出して泣いてるんだよ。
・・・いままでは、一度だってそんなことなかったのに・・・っ!」
あの日から。
吉澤と後藤の関係こそは変わらなかったけど、
吉澤と石川、後藤と石川、それから矢口と石川のバランスが
見事に崩れてしまったのだ。
体の関係くらいで・・・?
いや、ちがう。
肌を重ねることの持つ誘惑をよく知っているから分かる。
その誘惑を振り切るのは、実はとても難しいってことが。
- 107 名前:プロローグ9(矢×吉) 投稿日:2004/09/27(月) 17:11
- 「梨華ちゃんと、きちんと話をしてみようと思います」
「よっすぃ」
「うやむやにしようと思ってて、・・・すみませんでした」
自覚はあったんだね、と笑う矢口に、
吉澤も、今度はきちんと向かい合うことが出来た。
この弱さと訣別する時が来たのかもしれない。
きっと、ごっちんとの約束のとおり、
浮気をしなくてすむような日も、そう遠くないうちに訪れるだろう。
- 108 名前:プロローグ9(矢×吉) 投稿日:2004/09/27(月) 17:12
- プロローグ9(矢口×吉澤) 更新終了です。
これでプロローグはおしまいです。
- 109 名前:あろ 投稿日:2004/09/27(月) 17:14
- 次はようやく本編に突入。
- 110 名前:あろ 投稿日:2004/09/27(月) 17:14
- 更新は早ければ今週中に。
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/29(水) 04:04
- はぁはぁはぁすんげー長いプロローグだったよ・・・。
本編の前にプロローグでお腹一杯になった気分(w
でも次回から本編に突入のようなのでこれからどうなるのか
期待大o(^∇^)o ワクワク
- 112 名前:@携帯 投稿日:2004/09/29(水) 20:54
- いや〜オモシロイっす。人間関係の絡み合いがイイ!あっちにフラフラこっちにフラフラの吉にはっきりしろ!と言いたいもののニヤニヤしながら読んでます。登場人物は少なくないと思いますよ。これからも頑張ってください。つーかまだプロローグってのがスゴイですねw
- 113 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:11
- 「矢口〜!こんなとこでなにしてんの?」
「あ、なっち!あのね、高校のね、後輩とご飯食べに来たんだ。
紹介するね、石川と、後藤と、吉澤」
「はじめまして、石川です」
律儀に返事をしたのは石川だ。吉澤と後藤は軽く会釈をしただけ。
「で、こっちがオイラとバイトが一緒のなっちと・・・・」
「あ、圭織だよ。矢口会うの初めてだっけ?大学の同期なんだ」
こんな偶然があってもいいのだろうか。
吉澤は生きた心地がしなかった。
とっさに「はじめまして」を言うことが出来なかった。
つながってしまった。
そう思った。
- 114 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:13
- ある日の放課後。
矢口・石川と、吉澤・後藤が喫茶店でのんびり話をしていた。
違和感に溢れる、なんとも誤魔化し難い微妙な雰囲気に、
誰もが気がつかないふりをしながら。
そんなところに、安倍・飯田が入ってきたのだ。
一瞬吉澤と飯田は目を合わせる。
しかし、吉澤はそのまま視線をはずした。
後藤のことを、飯田は知っているから、
知らないふりをしてくれるだろうと分かっていた。
知らない人とただ目が合っただけだ。
そんなふりをしても飯田はなにも言わないだろう。
後藤はそんな吉澤の様子に気がつかないようで、
ただ目の前にある料理を、気が進まないように、
のつのつと片付けていた。
こんな偶然もあるものなのかと、そっとため息を押し殺した、その時。
安倍の一声に吉澤はショックを受けた。
- 115 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:14
- 「あれ?矢口?こんなところでなにしてんの〜?」
あからさまに吉澤と視線を合わせない安倍は、
その様子に乱れる自分の気持ちを差し置いておけば
とりあえず問題ない。
ただ、
矢口と安倍が知りあいだったことが、吉澤に警鐘をならしていた。
いつか訪れるであろうと、漠然と思っていた飯田との別れ。
そのカウントダウンが始まってしまったのだと、分かった。
道が交差してしまえば、なかったことには出来ないのだから。
その場では矢口と安倍の明るい声が響いていて。
飯田はいつもどおり、静かに、二人の話を聞いている。
石川は矢口の話に時々口をはさみながら参加していて、
後藤と、吉澤はふたりだけ、
なんだか取り残されたかのようにその場に座っていた。
その時、突然安倍が後藤に向かって話しかけた。
- 116 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:16
- 「ねぇ、後藤さんは吉澤さんと仲いいの?」
その問いかけに、2人ともはっとしたように顔を上げる。
この場で、それを問うのかと、
動悸の激しさとはうらはらに、
冷静に頭が動く。
覚悟を決める。
「え・・?あ、はぁ・・・」
こんな時なのに。
こまったように自分を見る後藤は可愛くて、
吉澤はおもわず後藤に微笑み返してしまった。
「じゃぁさ・・・吉澤さんをなっちにちょうだい?」
「えっ・・・?」
その瞬間、全員が安倍に注目した。
安倍はなおも言葉を続ける。
- 117 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:17
- 「だって、吉澤さん可愛いし。
別に女の子どうしだってなっちはかまわないし」
「だから。なっちに譲ってよ」
「吉澤さんだって、女の子好きそうな感じだしね」
その言葉に、我に返ったように矢口が、乾いた笑い声で、安倍に言う。
「なにいってんの、なっちのそんな冗談、初めて聞いたよ・・・」
「そう?」
「もう、よっすぃだって、ごっつぁんだって困っちゃうじゃん」
「あ・・・」
よかった。
- 118 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:18
- 止まっていた時間はそっと動き出す。
吉澤はそっと詰めていた息を吐き出した。
こんなところ、早いうちに出たほうがいい。
後藤の表情が青ざめているのも気になる。
テーブルの下で、そっと吉澤の手を握ってきた、
後藤のそんな気持ちを考えても
今は2人きりでいたほうがよさそうで。
「なっち、圭織はもうかえるよ」
「え〜?」
「用事があるって言ったでしょ。じゃあ、またね」
「え、なっちも一緒に行くよ。じゃぁね、矢口に、梨華ちゃんに、後藤さんに・・・吉澤さん」
「なっち、また後でね。今日シフト入ってるよね?」
「あ、今日休むんだ〜・・・・」
他愛もない会話を耳の遠くで聞きながら、
後藤の手を取って、吉澤は席を立った。
そのまま何も言わないで、飯田と、安倍の側を通り抜ける。
一瞬。
飯田と触れ合った肌の暖かさに、
涙がこぼれそうになった。
- 119 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:19
- ふりむいて、名前を呼びたい。・・・呼ばれたい。
そんな誘惑が吉澤を襲う。
だけど、目の前にある後藤の笑顔を
手放すことはやっぱり出来なくて・・・・・
後藤の手をしっかりと握って。
外へと飛び出した。
「なっちは・・・吉澤のことが好きなの?」
矢口は、ふたりが何も言わずに外に出て行ったわけを、
勘違いして、そっと安倍に問う。
飯田は出て行った吉澤たちの後姿を追っているのか外を見たままで、
石川はじっと机を見つめていた。
「吉澤さんを、なっちにちょうだい?」
この発言は、禁句だった。
- 120 名前:距離 投稿日:2004/10/04(月) 05:20
- もちろん飯田と吉澤の関係は安倍以外の人間は知らない。
後藤と吉澤の関係を、安倍は確信してはいなかった。
だから、確かめたつもりだったのだけれども。
「好き?う〜ん・・・。吉澤さんよりは矢口のほうが好きかな」
「なっち」
飯田がやめろと言いたそうな口調で安倍を諌めた。
それが、かえって安倍の言動に拍車をかける。
「だってね、・・・吉澤さん、
圭織とも付き合ってるのに、ヒドくない?」
「「え・・・?」」
石川が顔を上げて安倍を見る。
矢口は、その場に固まってしまった。
- 121 名前:あろ 投稿日:2004/10/04(月) 05:22
- 短いですが唐突に本文の始まりです。
- 122 名前:あろ 投稿日:2004/10/04(月) 05:34
- >111 名無飼育様
読んでいただけた事がとても嬉しいです。
正直書いてる本人が息切れをして、
予定していたよりも3つほど話を省いてしまいました。
本文がわけのわからないことにならなければ、と心配しています(汗
期待に添えるようにがんばります。
>112 @携帯様
レス、ありがとうございます。
とても嬉しいです。
フラフラしている吉には、これからたっぷりとお仕置きを
したいところですが。どうなるのでしょう。
登場人物に関しては、ふと時代錯誤なのかと我に返ってしまうことも
しばしばですが、そういっていただけるとほっとします。
これからも読んでいただければと思います。
- 123 名前:あろ 投稿日:2004/10/04(月) 05:36
- 次回更新はいつものとおり、
早ければ今週中に。
- 124 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 12:47
- やばい。面白い。
安部さんは要注意ですね
- 125 名前:翡翠 投稿日:2004/10/04(月) 13:37
- 初めて、読ませていただきました!
すごいはまっちゃいました・・・。
私は、よしごまが好きなのでこのままよしごまで
いってほしいけど・・・いろんな人に手を出す
よっすぃ〜も楽しみ・・・。
続き楽しみにしてます!
- 126 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 16:11
- 暴言吐きまくるなっちがとっても・・・w
- 127 名前: 名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 05:17
- このドロドロした感じ大好きです
すっごく読みやすいし、
「はじめて小説を書かせていただきます。」が信じられません
- 128 名前:@携帯ではなく今日はパソ 投稿日:2004/10/06(水) 21:35
- こういう安倍さんかなり好きですw
あぁ〜よしごまが心配だ〜
次回も頑張ってください。
- 129 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 05:47
- 飯田はそっとため息をつくと、一度立ち上がった席に座りなおし、
安倍にも座るように促した。
「なっち、吉澤と圭織のこと、いつから気がついてたの?」
「・・・・・・3ヶ月前から」
「じゃあ、きくけど。どうしてなっちがそれを嫌がるの?
後藤と吉澤のことを知ってて、
吉澤に付き合って、って頼んだの圭織なんだよ」
「・・・っ、だって!そんなの圭織がかわいそうじゃん。
なっちはやだよ、圭織がいつも我慢してるような関係なんて!!
なっちは、圭織のこと心配だから・・・!」
最初は知らなかった。フタマタかけてるなんて。
吉澤はそんなこと出来そうな感じではないし、
2人がお互いの事好きで、だからつきあってるんだろうって。
だから、あきらめなきゃ。
なっちは、圭織のこと、あきらめなきゃ・・・。
- 130 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 05:52
- なのに、どうしても、圭織の好きなあのことのことを知りたくなって、
高等部まで来たら、
後藤と吉澤は、本当に仲良さそうに手をつないで出てきたから。
あれ、この2人、付き合ってるの・・・?
そんな陳腐なフレーズが頭に浮かんだ。
赦せなくて。
圭織のこと、一番に大事にしてくれないなんて、本当に赦せなくて。
傷つけたくて。
圭織から引き離したくて・・・。
- 131 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 05:57
- 「吉澤さんなんて嫌い。吉澤さんのこと、なっちは好きじゃない」
「なっち・・・・」
矢口は呟く。
オイラは失恋したんだ。
同姓を相手に、こんなにも唐突に、
知りたくもない情報を手に入れてしまった自分の不幸を少しだけ嘆く。
同時に、なっちを苦しめている後輩のことを、
少しだけ憎く思った。
良さを知っている。
悪いとこも分かってる。
だから、どんなふうになっちを傷つけたのか、
嫌というくらいによくわかってしまうから。
それにしても、
吉澤はどうしてこうもお馬鹿なのか。
ばれないようにもっと上手くやれよ、と
思ったのは内緒だ。
- 132 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 05:58
- 「ねぇ、なっち。圭織のこと心配してくれてありがとうね。
でもね、圭織は一人になるよりは、ヒトのものでも吉澤が時々でも、
側にいてくれるほうが、幸せなの。
何倍も、何倍も、その一瞬だけ、幸せになれるの。
だからね、吉澤のこと・・・責めないでほしい。
きっと、吉澤だから、別れるって言うと思うから。
圭織のことは、・・・選んでくれないと思うから」
圭織の告白は、石川の胸を震わせた。
私とは、たった一度の浮気で終わらせたのに。
ううん。
その一度でさえも、
矢口と自分とのために与えてくれた一回であったのに、
どうして、私でさえ知らないこのヒトと、
吉澤は何度も関係を結んでいるのか。
- 133 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 05:59
- 浮気性なことは知っていた。
だってうわさでよく耳にするから。
「吉澤さん、この間あのこと一緒にいたよ」
そんな話、何十回も聞いたけど。
だけど、このヒトの場合は何かそれとは違ってる。
いままで、よっすぃは浮気を必死で隠そうとはしなかった。
私との関係でさえ、ごっちんは気がついてるっぽい。
なのに、
どうしてこのヒトのことだけは今まで誰にも、ごっちんにも、
知られないような努力をしてまで続けてきたの?
暗い闇が石川を覆い始める。
- 134 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 06:06
- ごっちんならまだ赦せた。
お互いに惹かれあっていく過程を間近で見ていたから、
強く強く引き合っていく2人のことを嫉妬で狂いそうになりながら、
ある意味これが運命なのだと、冷静に理解している自分がいた。
諦められない、これは自分の弱さだと、
自身に納得させることが出来ていた。
頭の中では、の話だけど。
なのに、どうしてこのヒトを
吉澤ひとみという人間が求めたのか。
飯田さんは自分から求めたようなことを言ったけど、
それだけでは続かないことを知っている。
よっすぃは、そんな人間じゃない。
自分の気持ちがないままに、同情だけで浮気を続ける人じゃない。
浮気の一回は、これ以上吉澤を好きにはならないでという、
約束に対する報酬のようなもので、
それでさえ、
あるときは後藤を守るために与えたものであったりもしたことを
石川は何かの折に吉澤から聞いていた。
そんな都合のいい話、と、なんとなく思ったことを石川は覚えている。
だけど、
その一度だけ、というのが吉澤が確かに後藤に示していた歪んだ愛情だった。
- 135 名前:距離 投稿日:2004/10/07(木) 06:07
-
「一度きり」ということの意味を、その重さを。
それは後藤が吉澤を信じつづけられる、ある意味唯一の真実だから。
- 136 名前:あろ 投稿日:2004/10/07(木) 06:08
- 短いですが、更新終了です。
- 137 名前:あろ 投稿日:2004/10/07(木) 06:16
- >124 名無飼育さま
安倍さん。
今後も話を進める上でキーパーソンになってくれれば、と
思っていますが、どうでしょう。楽しんでいただければ幸いです。
おもしろい、といっていただけるのが恐縮ですが嬉しいです。
>125 翡翠さま
よしごま。作者も好きですが、
果たして幸せになれるのか不安になってきたところですよ。
とりあえず、しばらくはラブラブなよしごまはあまりみられないかも、
と思うわけです。今のところですが。
読んでいただけて嬉しいです。
- 138 名前:あろ 投稿日:2004/10/07(木) 06:25
- >126 名無飼育さま
レス、ありがとうございます。
こんななっちは書いている本人の趣味ですが、
好きになってもらえて嬉しいです。
>127 名無飼育さま
レスありがとうございます。
試行錯誤している最中なので、
どのくらいの量を一度に更新するべきなのか、とか
色々考えてしまうわけですが、それでも読みやすい、と
言ってくださる方がいて、すこしほっとしました。
これからも読んでいただければ嬉しいです。
>127 名無飼育さま
- 139 名前:あろ 投稿日:2004/10/07(木) 06:32
- あれ・・・、なんかおかしいですね、すみません。
>128 @携帯ではなく今日はパソさま
よしごまが心配になってしまう理由はただ
吉がふらふらしすぎることにあるのですよね、きっと
なっちにはこれからも暴走してもらう予定です。
また読んでくださいね。
- 140 名前:あろ 投稿日:2004/10/07(木) 06:33
- 次回更新は、来週の月曜日くらいまでにできると
いいかな、と思っています。
- 141 名前:@携帯改め名無し携帯 投稿日:2004/10/07(木) 08:50
- 皆が皆、それぞれに苦しんでいて痛い想いが伝わってきます。
石川さん不憫だなぁと思いながらも一番可哀想なのはやっぱ後藤さん?
それもこれも吉澤さんのせいなんですよね(ニガワラ
でもそんなフラフラ吉も安倍さん同様にかなり好きですw
次回も頑張って下さい。
- 142 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 12:41
- どろどろですね。最高ですw
今後の展開に期待してます。
- 143 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:18
- 「飯田さんは、・・・ううん、よっすぃは、
浮気を何度も続けられる人間じゃありません」
「石川・・・?」
矢口が石川を見るが、石川の視線はまっすぐに飯田を捉えている。
強い意志をもっている、あの黒く濡れた瞳が、威嚇するように飯田を見据えていた。
「よっすぃはごっちんのこと、本気で好きなんです」
「うん、わかってるよ」
「だから、今までだって何度も浮気してたけど、絶対に一度だけだったんです」
「・・・・・うん」
「どうして・・・、どうして飯田さんだけは、特別なんですか?」
- 144 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:19
- 安倍が石川を見た。
それから飯田が口を開こうとする前に、石川をとがめる。
「そんなこと、圭織が知ってるわけないじゃん。
深い意味なんてないよ、浮気だよ?
圭織は被害者だよ。そんな何度も浮気してるなんて、
ぜんぜんだめじゃん。吉澤さん、さいてーだよ!!!」
石川はちらっと安倍のほうをみるが、そのまま視線を飯田に戻した。
矢口はそれをみながらそっとため息をつく。
安倍のその言葉がまったく石川にとって意味を持たないことは
矢口にも分かった。
吉澤の、まったくひとりよがりの「誠意」をしっていたからだ。
そう、まったく自分勝手ではあるけれど。
「飯田さん、答えてください」
- 145 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:21
- 飯田は石川に微笑んだ。
そういわれることが、まるで名誉であるとでもいうように、
曇りのない、笑顔。
「圭織は、吉澤が圭織と続けてる理由はいえないけど。でも、
後藤さんの事がすごく好きだって言ってた。
付き合い始める前に、圭織はそのこと知ってたよ。
知ってて圭織は吉澤にひかれた。
圭織は諦められなかった。いまでも、・・・諦めたくないよ。
吉澤が、本当に圭織のこといらないっていうまでは、
後藤さんには悪いけど、別れたくない。だから、
後藤さんには言わないでほしい」
圭織は、ただそれだけなの。
そういうと、席をたって喫茶店からゆっくりと出て行った飯田の、
後姿はとてもきれいで、迷いのないことが良く分かる。
安倍はうつむいたまま、こんどは追いかけることはしなかった。
- 146 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:21
- 「なっち、・・・・大丈夫?」
「やぐちぃ・・・・」
「石川も、・・・とりあえず、ここでて2人とも矢口の家においでよ」
矢口が会計を済ませ、静かに声をかける。
二人を促して喫茶店をでると、
矢口はそっとため息をついた。
こんなとき、自分ひとりだけが失恋にもひたれないのか。
そればかりか、別の相手を想って落ち込む相手を慰める役なのか。
自分の不幸をそっと嘆きながら、夜の闇に身を投げ出す。
季節は秋。
薄着の肌に夜風が染みる頃の話。
- 147 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:22
- 本当に短くてごめんなさい。
更新終了です。
月曜日までに、と書いたのに火曜日になってしまいました。
- 148 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:24
- このもう少し先まで話は決まっているのですが、
一回にどのくらい更新するのがいいのか、
いまいちよく分かりません。
でも、次の更新は今週中に出来ると思うので、
今回はこの辺で。
- 149 名前:あろ 投稿日:2004/10/12(火) 02:30
- >141 @携帯改め名無し携帯さま
毎回読んでいただいてしかも感想をいただいてるということが
本当に嬉しく感じます。
一番かわいそうなのは、ごっちんかなっちというところでしょうか。
石川さんには矢口さんがいるので、ということで。
>142 名無飼育さま
レス、ありがとうございます。
どれくらいドロドロに出来るのか。
悩んでいるところですが、当分の間は安倍さんに
がんばってもらうつもりです。
あくまでも、つもりですが。
- 150 名前:名無し携帯 投稿日:2004/10/12(火) 16:36
- いやはや…カオリそれでいいんかい!とツッコミたくなりました(ニヤニヤ
よしごまの動向が気になります。この人間関係のもつれあいからまだまだ目が離せませんね。
次回も頑張ってください。
- 151 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:14
- 「ごっちん・・・大丈夫?」
後藤の手を握って、吉澤は後藤に話し掛ける。
後藤は俯いたまま一言も話してくれなくて、結局家についてしまった。
家に着いた今も、
吉澤の手を離さないで、ただ隣に座っている。
ただ、ぎゅっと握ったままで。
「・・・・ごっちん?」
何を気にして俯いているのか、
正直なところ思い当たることがありすぎて、
なんと言っていいのか分からない。
困ってただそっと肩を抱き寄せようとした、その時。
- 152 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:15
- 「よしこは、みんなに優しいから・・・・」
「え?」
「みんなに優しいから、ごとーは何にもいえなくなっちゃうんだよ」
「ごっちん?」
「優しいだけなの知ってるから、浮気してても、赦せちゃうし、
誰かに告られてても、文句も言えなくなっちゃうんだよ・・・」
「ご、ごめ・・・」
「梨華ちゃんとご飯食べに行くの、今日嫌だったよ!
でも、我慢したのに、なんであんな知らないヒトにまで、
あんなこと言われなきゃいけないの!?」
「・・・・あ、えっと・・・・」
ばれてない。
すこしほっとして、後藤を今度はきちんと抱きしめた。
- 153 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:17
- 「大丈夫だよ、ごっちん。多分うちらのことからかっただけだって。
本気でそんなこと想ってないよ」
「わかってるよ、わかったけど、・・・・けどっ・・・っ!」
あんな言い方しなくたっていいじゃん。
わかってるよ。
狭い世界で生きてるから、矢口先輩や、梨華ちゃんという
理解者がそばにいてくれてること。
同級生のみんなが、
うちらの関係を冷やかすことなく見てくれてるって事。
言われなくたって、痛いくらいにわかってる。
だけど、今、この気持ちは間違いなく本物で、
よしこの事が好きで、好きで、本当に好きで。
何があっても一緒にいたいと思えることを。
そして自分を大事にしてくれてるよしこの気持ちを、
「女の子好きそうだし」
あのひと言で、あのヒトはけなした。
- 154 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:18
- 「よしこのこと、あんなふうに言うなんて赦せない!!
初対面の人間に、あんな言い方、ありえないよ・・・」
吉澤は、静かに激しく怒っている後藤に正面から向き直る。
困ったように笑って、ごまかすように、なだめるように言葉を紡いだ。
「まぁ、浮気しょっちゅうしてるのは事実だしね、
なんともいえなかったけど。
・・・ごっちんが、そう思ってくれてるのが何よりも嬉しいよ」
今は、さっきの落ち込んでる気持ちよりも、
ごっちんのことばを聞いて、すごく幸せになってる。
ねぇ、ごっちんといたらうちは誰よりも幸せになれるよ。
安倍さんの・・・あの言葉はさ、教訓として聞いておく。
ごっちん、ありがとね。
今日、梨華ちゃんとご飯食べに行ってくれて。
笑顔と、暖かい抱擁と共に、後藤に与えられる吉澤の言葉は、
後藤にとってはいつも特別で、
それは吉澤にとっても同じ事。
- 155 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:19
- 必要な時に、必要な慰めを与えられるお互いを、
よく分かっているからこその、信頼であり、愛情なのだ。
それは浮気とか、
そういった体のことに左右されるような一時的なものでは
とても埋められるようなことではなくて、
後藤が吉澤の浮気を赦せるのも、結局のところ、
吉澤と自分との距離が一番近いところにあって、
お互いがお互いを一番理解しあっているという信頼に他ならなかった。
- 156 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:20
- ・・・これは誰もが陥りやすい罠で。
いつも口にしていたからといって、それが全てとは限らないのに。
後藤と吉澤は、この罠に2人ともきれいにはまっていたのだ。
飯田圭織という人物を通して。
後藤はまだ知らなかった。
吉澤が飯田圭織という人物に心を惹かれているということ。
歯車が少しづつ、狂い始めているということを。
- 157 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/10/17(日) 01:26
- いつもならごっちんと2人でいるはずの週末なのに、
今週は法事とやらで遠くの親戚の家に行ってる。
この部屋にひとりでいるとき、
ごっちんがいないことは年に一回あるかないかって
いうくらい珍しいことだから、なんだか落ち着かない。
久しぶりの一人の時間は、穏やかだけど少し物足りない。
かわいい恋人のことを考えながら、ベッドの上でごろごろ。
それから優しい浮気相手のことを考える。。
そしたら、それにつられて安倍さんと矢口さん、
そして梨華ちゃんの顔が浮かんできて、
なんだか一気に憂鬱になってしまった。
- 158 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/10/17(日) 01:27
- なんでこんなことしてるんだろ、私。
ごっちんだけで充分じゃない?
可愛い、可愛い、彼女。
だけど、理由はわかってる。
ごっちんといると、何でも言うことを聞いてあげたくなるから、
どこかで無理をしてしまう自分がいるんだ。
付き合い始めてからのごっちんは、
その無理を当たり前のように受け止めるようになった。
だから、ウチも当たり前のように、それを与えた。
無理をしていた反動は、言葉でも、態度でもなく、体に表れた。
食欲がなくなって、微熱が続く。
風邪をひいたら、ごっちんは、とても優しくしてくれる。
2.3日すると治るんだけど、
一ヶ月くらいすると、また風邪を引いてしまって。
おかしいといって、病院に行ったけれど、特に異常はないといわれた。
ごっちんの表情が、心配でだんだん曇っていくのがすごく嫌だったから、
風邪をひかないように気をつけてたんだけど、全然だめで。
- 159 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/10/17(日) 01:27
-
そんな時、圭織に・・・・であったんだ。
- 160 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:30
- 更新終了です。
挿話は次回で完結。すぐに本編に戻ります。
次回更新は来週末・・・月、火くらいまでに。
- 161 名前:あろ 投稿日:2004/10/17(日) 01:35
- >150 名無し携帯さま
レスありがとうございます。
圭織と吉澤の関係はこれから徐々に
明らかになっていくとおもいます。
ごっちんに注目、といったところですかね。
あんまり・・・出てこないですけど(汗
- 162 名前:名無し携帯 投稿日:2004/10/18(月) 00:53
- 更新お疲れ様です。
ごっちんお怒りモードでも吉澤さんは違う意味でヒヤヒヤ
してるわけですか(ニガワラ
優しすぎる吉澤さんに振り回されるまわりの皆さんに
とりあえず頑張れ、と言いたいw
次回も頑張ってください。
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 13:09
- ドロドロですね〜
でもこういうのイイ!
楽しみにしてます。頑張ってください。
- 164 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/11/09(火) 23:51
- 始めてあったのは、校内ではなく、図書館だった。
古びれたこの町の図書館は、訪れるヒトは本当に少ないけれど、
そのなかで、圭織はすごく目立ってた。
目当ての本を手に取ったとき、すぐ近くにいた圭織と目が合って・・・。
圭織と話をするようになったんだ。
一週間に、一度か、二度。
図書館で会ったら、話をするようになった。
何も知らない彼女には、何でも話せるような気持ちになってた。
ごっちんは、本をあまり読まないから、図書館についてくることはなかったし。
時間も30分って、決めてた。
長すぎず、短すぎず。
時間もきっちり守って、通うようにして。
圭織は、そういうことを全部、受け止めてくれた。
とりとめもない、わかりづらいウチの話を、一生懸命聞いてくれた。
それだけで充分だったけど、ある日、圭織の家に来ないかと誘われた。
そして、・・・抱かれた。
- 165 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/11/09(火) 23:52
- 自分が受身でいるということの幸せを、
教えてくれたのは圭織だった。
圭織は大人で。優しくて。
だけど、ごっちんのことを愛してる。
付き合うようになってから、ごっちんは本当に可愛くなった。
あの笑顔は、ウチの宝物。
ごっちんは、かけがえのない人で。
圭織と会うな、といわれても、私は生きていけるけど、
ごっちんを失ったら、私は気がおかしくなってしまうだろう。
ごっちんは、特別だから。
私の・・・相手として、
圭織は、圭織でなくてもよかったのかもしれないけど。
ごっちんは、ごっちんでなくてはいけなかった。
- 166 名前:挿話・・・出会い 投稿日:2004/11/09(火) 23:53
- それがきっと、圭織の不幸なんだろう。
圭織でなくてもよかったけど、圭織でよかった。
少なくとも私はそう思ってるけど、
この世界にごっちんがいる限り、
ウチと圭織が付き合うって事はありえなくて、
だから・・・。
圭織とは別れるべきなんだろう、と思う。
ごろん、と寝返りを打って、目をつぶる。
一人きりの部屋で、一人でベッドの上で。
あの手を離す、勇気がほしいけど。
想像するだけで、胃が痛くなる。
こんな中途半端な自分を、赦したくはないのに。
ため息をつく。
一人で部屋にいるのは、好きじゃない。
最近は、特に。
出来れば、先送りしたい問題ばかりで、息が詰まる。
・・・ごっちんの笑顔に、会いたい・・・・。
- 167 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:54
- 「圭織・・・飯田さん」
「吉澤」
手を伸ばして、圭織の頬に触れると、
圭織はその手に自分の手を重ねて、それから
私の体を空いているほうの手でぎゅっと抱きよせた。
こんな風に抱き合うことなんて今までに一度もなかった。
今までの距離がよかったのに。
近すぎず、離れすぎず、激しすぎず、冷めていない彼女との距離が、
心地よかったのに。
やっぱりこんなこと、長くは続かないんだ。
2人をほしがった、自分への罰かもしれない。
- 168 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:55
- 久しぶりに飯田と会う時間の出来た平日の夕方のこと。
後藤の家では毎週一回必ず、家族でご飯を食べる約束の日がある。
仕事で忙しい母親と姉、後藤、そして弟の予定をあわせることは難しいけど、
一週間に一度だけは、と家族で決めた約束の日を、
後藤はきちんと守っていた。
だから、家には遅くならないと帰ってこない。
飯田と決まって会えるのは一週間のうち、この日だけで
それもこの間のバッティングがあってからは、
安倍の視線もあり、お互いにおとなしくしておいたほうがいいよね、と
あうのをやめていたから、
実に一ヶ月近く、二人きりにはならなかった。
図書館で、少し話をする程度。
会わないよりはましだったけど、
それでも寂しさは募る。
- 169 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:56
- 自分から会わない、と決めるのと、
周りの事情で、合わない、と決めるのとは、
似ているようで違っていて、
その差は大きく心に負担になる。
負担は、この想いに加速をつけた。
- 170 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:57
- 別れないといけない。
ごっちんを守るために、私は圭織の手を離れるべきであり。
そしてそれは、先々を考えれば、圭織のためでもあるはずで。
「吉澤、なにかんがえてるの?」
「ん〜・・・。カオリンの事」
「・・・そう、でもそれだけじゃない顔してた。
あの子のことも、考えてたでしょ」
「うん」
「隠さないのが吉澤らしいね。・・・お風呂はいる?」
- 171 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:58
- これは圭織と、私の始まりの合図。
でも今日は、抱かれるよりも、抱きしめられたい気持ちだった。
圭織の行動はいつも正解で、
私の心をぎゅっとつかみとる。
あの暖かい胸に抱かれた時、久しぶりに呼吸をしてる自分を実感した。
私の戸惑いで、圭織は、今日は抱かれたくない、ということに
感づいたようで、キッチンに向かった。
圭織のきれいな髪の毛をじっと見つめながら、
ベージュのクッションを胸に抱きとめて、ソファに座る。
私のために、圭織が用意してくれたクッション。
隣にある濃紺のおそろいを、圭織がいつも使っている。
この間までと、何の代わりもない部屋だけど、
何かが違う。
そう、多分、私の気持ちだけが。
ただの浮気が、不倫になってしまった予感。
いつでも離れられるはずの恋が、
離れられない恋愛に変わっていく予感。
- 172 名前:距離 投稿日:2004/11/09(火) 23:59
- だけど、ごっちんの手は離さないと決めているのに、
私はどうするつもりなんだろう。
どうしたいのかなんて、わかってる。
別れたくない、二人と。
でも、どちらかの手を取らなきゃいけない。
そしてその手は間違いなく、ごっちんにつながっている。
結論。
圭織と・・・別れる。
- 173 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:00
- 「吉澤?どうしたの??」
圭織が紅茶の入ったカップを持ってソファに座ると同時に、
驚いたように私を見た。
「どうして、泣いてるの?」
「・・・え?」
涙、でてるよ。
笑って胸に抱きとめてくれるから、余計に涙が止まらなくなった。
本当に離れたくない。
別れたくないのに。
ぎゅっとめをつぶって涙よとまれ、と自分を律するけれど、
心が悲鳴をあげている。
こんなの、いやだ、って。
どうして、ごっちん一人じゃだめなんだろう。
どうして、ごっちんだけで、満たされないことを知ってしまったんだろう。
きっと、圭織だけでもだめで、ごっちんだけでもだめなはずなのに。
どうして、一人だけを選ばなきゃいけないんだろう。
- 174 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:02
- 「圭織・・・圭織と、離れたくないよ・・・」
「吉澤?」
「離れたくないけど・・・。離れなきゃいけないよね?」
「・・・・・・」
「圭織は、・・・安倍さんが言ったように、幸せにならなきゃ」
「・・・・・・」
「だけど、別れるって、言いたくないんだ・・・・・・」
「・・・・吉澤」
どうしようもないわがままを、搾り出すように伝えた私を、
圭織はいつものように、優しく抱きしめてくれた。
圭織が、
私の決心が出来るまでの時間を待っていてくれることは知ってたけど、
それに甘えすぎたのかもしれない。
短く感じたけれど、半年の間彼女がたった一人に愛される権利を奪ったのは、
紛れもなく私自身で。
安倍さんの言葉は、痛かったけれど確かに真実だから。
だって圭織なら、自分だけを愛してくれるヒトを探すことは、
けして難しいことじゃない。
こんなにも、暖かい人だから。
「圭織は・・・・別れたい?」
卑怯な質問をした、と言った瞬間に吉澤は後悔した。
しかし、撤回するよりも早く、「ううん」と返事が返ってきてしまい、
なんとなく嫌な気持ちのままだまってしまう。
飯田はそんな気持ちを察したのだろう、
嘘のない言葉を、吉澤に与えた。
- 175 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:05
- 「私の時間はいつでも私が自由にしてるんだよ?
吉澤の誘いを断らないのは、それが私の幸せだから。
別れたいと思ったら、私は「終わりにしよう」って、とっくに言ってるよ」
まっすぐな言葉が、心に染み渡る。
だけど、言わなきゃ。
「私はいつでも圭織に癒されてばっかりで、圭織に何もあげられないのに」
「私?もらってるよ?幸せな時間。それから・・・」
抱きごこちのいい体とか?
とっさに顔が赤くなるのを吉澤は止められなかった。
言葉に詰まってただ瞳を伏せただけの彼女を、そっとソファに押し倒す。
飯田は吉澤に近づきながら、
恥ずかしそうなそぶりをみせる彼女の何を後藤が求めて、
何を後藤が知っているのかをふと考える。
- 176 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:07
- 自分の手の中で、思うように乱れる彼女が、
ほかの女の子を抱くなんてこと、想像が出来なくて。
愛されるために生まれて来たような子が、
ほかの子を、こんなに必死に愛しぬこうとしていることに、
違和感を感じてしまう。
でも、石川の言い分を聞いていると、
今の彼女と吉澤との出会いは
それがまるで運命とでも言うかのようで。
(浮気何度もしてたんでしょ?
・・・この子の願望にだれも気がつかなかったのかしらね)
吉澤の、さらさらした白い肌に手を滑らせながら、
体のあちこちに口付けながら、
飯田は思う。
柔軟だからこそ、
周りは簡単に騙されてしまうのかもしれない。
この整った中性的な趣に、
思考を遮断させられてしまうのかもしれない。
だから、彼女自身を見つけ出した人にしか、
彼女の本心を見ることは出来ないのだろう。
柔軟な顔の陰に隠れている、彼女のゆるぎない頑固な本心。
そして、それを始めに見つけたのが
あの、後藤という少女だったんだろう、と。
- 177 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:08
- 「・・・・んっ・・・」
静かに、その薄い唇からもれる艶めいた声は、
もっと、と催促しているかのようで、
飯田の体中に戦慄がはしる。
できるだけ優しい笑顔を吉澤には見せようと思っているけれど、
こういったときだけは、それがとても難しく。
本能的な欲望に身を任せて抱いてしまいたいと思ってしまうのは、
吉澤が相手だからだろうか。
吉澤を、舌で、手で、追い詰めながら、
飯田は、静かにこの恋の行方を思った。
- 178 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:09
- 「・・・・圭織・・・?」
「おはよ。っても夜だけどね。なんか食べる?」
「ん〜・・・・ん・・・・・」
目覚めたかと思ったがしかし、
そのままうとうととまた眠りに入ってしまいそうな彼女を、
無理やり、でも優しくもう一度起こす。
「吉澤、吉澤。ご飯食べないと。
もうしばらくしたら帰んなきゃいけないでしょ?起きて。ね?」
「うん・・・・。ご飯、なに?」
「いくら丼。好きでしょ?頼んでおいたから。食べてって」
「いくら丼久しぶりかも・・・」
のそのそと起きだしてキッチンのテーブルにつくと、
用意されていた冷たいお茶をゆっくりと飲み干す。
お茶が減っていくにつれて、
徐々に吉澤の表情がしっかりしてくるのがおかしくて、
飯田は、一人、笑いをかみ殺した。
- 179 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:10
- 「・・・なに?何で笑うの?」
「な〜んでもないよ、ほら、さっさと食べる!」
「いただきます」
誰かと一緒にご飯を食べるというのが久しぶりだと思った。
こうやってささやかな幸せをかみ締めているのを吉澤は知らないのだろう。
誰かを待ってみる時間と。
誰かを思ってみる時間。
振り回されていることへの小さな優越感。
それから振り回している相手への限りない愛情。
- 180 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:10
- 飯田の毎日というのはまったく閉鎖的で、
興味のあるもの以外には本当に色がなく、
大学生として生活しているのが不思議なくらいだ。
もちろんこれにはきちんとした理由がある。
高校の進路相談のときに大学には進まない、と言い張る彼女に
外に出て社会に触れていないと、あんたはどこかに行ってしまいそうだから、
というのは母親の言い分だったが、
大学というのは両親を安心させるのに十分な選択肢だった。
迷ったけれど、養われている身分では両親に反抗し続けるのは難しく。
両親が選んだ大学は高校の付属で、
単純に手っ取り早くといった感じで勧めてきたのだろうけれど、
実は大好きな美術を専攻することができる、という魅力があった。
同じ大学内には音楽科もあって、そこからもれて聞こえてくる音楽を、
好きだと思っていたから、進学を決意したのだった。
安倍は、大学こそは同じだが、専攻は音楽科である。
高校から一緒だった彼女が同じ大学内にいたときには
とても驚いた。
安倍は飯田が同じ大学に進んだのを知っていたらしいけれど。
- 181 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:12
- 「圭織?どうしたの?」
ほわほわとした低いトーンが現実に引き戻す。
なんでもないよ、と言ってからご飯を食べ始めた。
もしかして自分はずっと吉澤を見つめながら考え事をしていたのだろうか?
少しだけ恥ずかしいような気持ちになりながら、
今度はきちんと食べることに専念する。
「ごちそうさま〜!あー。幸せだぁ・・・・」
その吉澤の笑顔につられて圭織も笑う。
食べ終わった食器を台所までもっていくと、吉澤が
帰り支度を始めていた。
もう・・そんな時間かぁ。
そう思ったとき、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろ?うちを訪ねてくる人なんていないなんだけど」
「もしかして、安倍さん、とか・・・」
一瞬だけ合わせた視線が鋭く心に響いたのを思い出して、
吉澤は少し暗い気持ちで言う。
「まさか。なっちは圭織が人をうちに入れるの好きじゃないって知ってるし」
「え?」
「だから、吉澤は特別なの」
「・・・・・・・」
「ちょっとまっててね」
飯田が玄関に向かっていくのを見送り、
帰り支度を始めた時だった。
- 182 名前:距離 投稿日:2004/11/10(水) 00:12
- 更新終了です、
- 183 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:13
- 一ヶ月も間があいてしまってもうしわけありませんでした。
- 184 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:19
- >162 名無し携帯様
レスありがとうございます!
吉澤さんにもっとたくさんの人が振り回されてくれると
いいんですけどね(違
>163 名無飼育様
読んでくださって、ありがとうございます。
ドロドロは、もっとドロドロになってくれることが希望ですが、
なかなか上手くいきませんね。
楽しんでいただければ幸いです。
- 185 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:21
- 次の更新は、
早ければ来週の今ごろに。
ちょっとあてになりませんが、ちゃんと更新します。
- 186 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:21
-
・・・・・・・・・・・・・・
- 187 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:21
- ・・・・・・・・・・・
- 188 名前:あろ 投稿日:2004/11/10(水) 00:22
- ・・・・・・・・・・・・・・
- 189 名前:翡翠 投稿日:2004/11/16(火) 17:01
- またまた、お邪魔しています!
誰が来たんだ・・・?
続き、楽しみにしてま〜す☆
- 190 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:42
- 「こんばんは。石川ですけど」
「石川・・・?ああ、吉澤の同級生ね」
「はい。・・・ごっちんも一緒です」
「・・・・・・・・!!」
息が、止まるかと思った。
吉澤はその場からうごくことができなくなる。
なんで、
なんで・・・・?
「どうして・・・?」
同じような呟きを飯田が石川に返しているのが聞こえた。
そして。
「なっちがつれてきたの」
安倍の声が、玄関の方から突き刺さるように、吉澤の心臓に届いた。
- 191 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:43
- 安倍さん?
ああ、そうか。
彼女なら、梨華ちゃんを連れてくる理由も、
ごっちんを連れてくる理由も、あり余るくらいある。
この暖かな時間は、
こうやって突然に引き裂かれてしまうのか。
そう思って、吉澤はその場にへなへなと座り込んでしまう。
ああ、でもごっちんがいるのなら、
こんな姿を見せるわけには行かない。
彼女は今、とても傷ついているだろうから。
裏切られた、と涙を流しているだろうから。
誤らなければ。
もう、二度と圭織にはあわないと、約束をあげなれけば。
もう二度と浮気なんてしないと、今度こそ本気の約束をあげなければ。
頭は後藤のことを中心に動こうとするけれど、
視界に入る飯田の背中に寂しさを覚えて、
その場から一ミリも動くことが出来ない。
だって、
だって、ようやく分かったけれど。
私は、ごっちんとは全く違う方法で、
圭織のことを、
こんなにも離したくないって、思ってる。
このまま自分を奪っていってほしいと思えるくらいに
- 192 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:44
- そう、これはごっちんに対する
本気の裏切りだ。
自分の気持ちに気がついたときから、
その悲劇は幕を開け、
終わろうとしていた圭織との道が
新たな方向に展開していこうとしているのを
吉澤は知った。
同時に、
飯田も、
後藤も、
穏やかであると思っていた毎日が、
荒れていくであろう予感を漠然と感じ取り、
二人の間には石川も安倍も存在していたけれど、
ただ二人だけがいるかのように、
にらむわけでもなく、
静かに、静かに、お互いを見ていた。
それぞれの中に見える吉澤の存在を、
心の中に堅く握り締めて。
その時、確かに何かがはじまったのだ。
- 193 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:45
- 「なっち。・・・帰ってくれる?」
「どうして?せっかく来たのに家に上げてくれたっていいじゃん」
「・・・・・・」
「話を聞きたいって、後藤さんが言ってるから、
わざわざつれてきてあげたんだよ」
「・・・悪いけど。今日は無理だよ。別の日にしてくれるかな」
「せっかく一緒にいるんだから、一回で話が済むでしょ?圭織だって、
これ以上悩む必要ないし」
これは吉澤さんと後藤さんの問題なんだから。
そう付け加えると、
その場に立ったまま動けない後藤の腕を安倍がひいて、
飯田の前に立たせた。
「あ・・・」
「そんなに遠慮することないよ。後藤さん。
石川さんと一緒に吉澤さんを
部屋から連れ出して、外で話して来ればいいよ。ね?」
- 194 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:46
- きちんと捕まえておかないとだめだよ、って、
笑顔で安倍さんが言うから、
ごとーはその笑顔に従うしかないじゃん。
後藤は自分自身を納得させようとする。
だって、浮気してるよしこが本当は一番悪い。
・・・そうだ、本当は安倍さんの言うとおり、
よしこが、一番悪いんだ。
でも、きっとよしこは謝ってくるはずだから、
いつものように赦してあげればいいよね?
大丈夫。
よしこの気持ちが離れてるわけじゃないんだから。
- 195 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:47
- 「よしこ、・・・帰ろう?」
「ごっちん」
「よっすぃ、もうごっちん裏切っちゃだめだよ。帰ろ?」
「梨華ちゃ・・・」
ごっちんの表情が青ざめているのも、
梨華ちゃんの笑顔がなんだかこわく感じるのも、
全部ウチのせい。
分かってる。
だから、ウチは帰らなきゃ。
「飯田さん、ウチ、・・・帰りますね」
「吉澤」
「ありがとうございました。
ご飯おいしかったです。借りてる本はまた今度お返ししますから」
「吉澤・・・っ」
「本当に、・・・ありがとうございました」
「よしこ!!」
- 196 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:47
- ごっちんが目に涙をためて叫んだ。
そんな台詞、聞きたくないだろう。
わかってるよ、ごめんね、ごっちん。
だけど、言わなきゃ。
そのあとで君にはウチの時間をすべてあげるから。
もうきっと、
ほかの誰にも奪われることのないだろう時間を。
「おじゃましました」
梨華ちゃんがそういって扉を閉める時も、圭織のほうは見なかった。
だって泣くわけには行かない。
ごっちんの目の前で。
圭織の目の前で。
なんていいわけすればいい?
2人とも本気で愛してる。なんて、
そんな都合のいい台詞、通じるわけがないんだ。
- 197 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:48
- だけど、
本気でうちのことを愛してくれている二人を
うちが愛し返せるのがたった一人だとするなら、
その一人はやっぱり、ごっちんでしかありえないから。
「よしこの・・・馬鹿」
「ごっちん?」
「浮気相手のところに、踏み込ませるようなの、サイテーだよ?」
「・・・ご、ごめんなさい」
「こんなの二度とやだからね!!」
「ホントにごめん」
「馬鹿・・・」
ごっちんは・・・また、そうやって赦そうとしてくれてる。
一度だってもう別れるなんて、言われたことはない。
ごっちんがうちを好きだといってくれる、その気持ちを
疑ったことはない。
だけど、ねぇごっちん。
そんなに浮気してても、
うちがごっちんを愛してないって考えないんだね?
わけも聞かずに。
うちのこと、信じちゃうんだね。
- 198 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:49
- 「よっすぃ。・・・もう浮気しちゃだめだよ?」
「梨華ちゃん・・・」
「私も!誘ったの悪かったけど。
ごっちんのこと、ずっと羨ましいって思ってて、忘れられなかったの、悪かったけど。
こんな裏切りかたしたら、だめだよ?」
「梨華ちゃんがそんなこというなんて、ごとーちょっと驚きかも」
「・・・ずっと言おうと思ってた。ごっちん。ごめんなさい」
梨華ちゃんは、少し泣いた。
いままで、ごっちんに辛くして、ごめんなさい。
分かってたの、ごっちんのせいじゃない。
よっすぃが私を選んでくれなかったのは、
ごっちんのせいじゃないって。
だけど、どうしても諦められなかった。
ごめんなさい。
よっすぃを好きでいて・・・ごめんなさい。
突然どうしてそんなことを言い出すのか、
ウチには良く分からなかった。
だけど、ごっちんとなかよくできるのなら、
ごっちんの笑顔がまた増えるから、
それはきっとすごくいいことだろうと思った。
- 199 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:49
- 「ごっちん、よかったね。
それから・・・浮気して、本当にごめん。
ごめんね。・・・ごめんなさい」
抱きしめて、
ごっちんの耳元でささやいた。
ごっちんの耳には愛の言葉に届いただろうか?
でも、正直なところ、
自分に対する戒めだった。
- 200 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:50
- ごっちんは、
二度と圭織とあってはいけないとは、言わなかったから。
自分から圭織に会いに行かないように。
だってそうでもしないと、
圭織との関係を終わりには出来ない。
この誘惑に打ち勝つ自信がない。
わかってしまったんだ。
圭織を愛してるって。
ごっちんと同じくらい。
もしかしたら・・・ううん、そんなことはないだろうけど。
愛してるって。
- 201 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:51
- もし、次に圭織と会って、
それをごっちんに見られたら。
ごっちんはきっとウチをせめない。
自分をせめるだろう。
そして、自分の気持ちをどんどん自分の中に閉じ込めていってしまうだろう。
ごっちんの弱さを知ったあの日に、
ごっちんを守ると自分に誓った。
同じようにごっちんを傷つけるのは、
ほかの誰であってもいいけれど、
ウチであってはいけない。
だから、
心の中で君に誓うよ。
もう、圭織とは会わないって。
- 202 名前:距離 投稿日:2004/12/06(月) 01:51
- 更新終了です。
- 203 名前:あろ 投稿日:2004/12/06(月) 01:55
- >189 翡翠さま
レス、ありがとうございます。
読んでくださっているのが本当に嬉しく思います。
予想通りの展開になっているのではないかと思われますが(汗
楽しんでいただければ幸いです。
- 204 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/08(水) 20:55
- おぉ!更新されてるw
フラフラよっすぃは今後どうするんでしょーかねえ
- 205 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:14
- 「圭織」
「・・・帰ってくれる?」
「どうして?」
「家の中に他人は入れないの、しってるでしょ?」
「なっちは・・・他人なの?」
「今まで圭織がなっちを部屋に入れたことがあった?」
「ない、けど・・・」
「ねぇ・・・満足?圭織から、吉澤を取り上げて。
吉澤を傷つけて」
「だって、なっちは間違ってないよ」
そうだね、と圭織はいって、少しだけ笑った。
なっちは間違ってないよ。
だけど、圭織にとっては正しくなかっただけなんだよね。
そんなこといわれたってなっちには何のことを言われてるのか
よく分からなかった。
だけどたった一つ確信できたのは、
圭織は吉澤さんを取り戻そうとするだろう、ということ。
圭織は納得していない。
吉澤さんのありがとうも、
後藤さんの存在も圭織を納得させることは出来なかった。
なっちは、どうするべきなんだろう。
なっちは、どうしたいんだろう?
自分の心だから、そんなのすぐにわかるよ。
吉澤さんを圭織にあわせないようにする。
圭織が吉澤さんを取り戻すことが出来ないように。
なっちには、圭織の考えてることが正しいなんて思えないし、
正直なところ、吉澤さんよりもなっちのほうがよっぽど
圭織の事分かってる自信もあるからね。
この2人はもう二度と会ってはいけない二人なんだ。
- 206 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:20
- その頃、吉澤と後藤を見送った石川はその足で矢口の家に向かっていた。
何度かメールがはいっていたから、きっと家に入れてくれるつもりなのだろう。
とりあえず矢口には後藤と吉澤と和解したことを伝えておきたかった。
何の連絡もせずに家に来て、そのままチャイムを鳴らしたが、程なくして鍵を開ける
音がする。
「石川?」
「やっぱり待っててくれたんですね」
「うん・・・。いってきたんでしょ?なっちとごっつぁんと・・・吉澤んトコ」
「はい。よっすぃはもう飯田さんには二度と会わないって。
ごっちんとも仲直りしたし、これで一件落着〜って感じですよぉ」
結局いつもどおり、ただの浮気だったんですよ。
石川が明るい声で言うから、そうだったんだ、と納得して。
とりあえずなっちの様子だけは聞いておきたいなぁと、
矢口は顔を上げた。
梨華ちゃんは、少しも笑っていなかった。
石川、と声をかけることも出来ない。
梨華ちゃん、と抱きつくことも出来ない。
何を考えているのか分からないけれど、その厳しい表情に
なにか予想以上に複雑な事が起こりそうなのだということは
簡単に予想がついた。
一緒に行ってとなっちに誘われたのにことわったのは、
後輩のことを考えて気が重かったからだったが、
こういった結果を決して予測していなかったわけではなくて。
それでも出来るだけの笑顔で石川の側に立って、
ただじっと同じ夜景を見つめること。
それが矢口に出来る精一杯の思いやりだった。
- 207 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:22
- なっちは今ごろ落ち込んでいるのだろう。
一人で部屋にいて、考え込んでいるのかもしれない。
そう考えて、一人でいなくてもいい環境に少しだけ感謝する。
きっとこの関係をいつか清算しなければならないような日が来るだろうけど。
それはそう遠い日のことではないようで、
矢口は少しだけ切なくなった。
おいらはさ、
なっちのこと確かに好きだけど、でも、
梨華ちゃんと一緒にいる時間はそれでも矢口にとっては特別だったからさ。
どうしても受け止めてもらえないと分かっている気持ちを引きずっていても
笑うことが出来たのはほかでもない、梨華ちゃんのおかげだと思うからさ。
だから梨華ちゃんが笑顔を失うことがないように、心から願うよ。
おいらに笑顔をくれたほかでもない梨華ちゃんだから。
- 208 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:31
- それぞれがそれぞれの気持ちと戦っていた頃、
そもそもの元凶である吉澤もまた、
後藤を相手に自分のしたことを深く、深く後悔していた。
それはしかし、後藤を傷つけた、その一点に関しての後悔ではあったけれど。
「よしこ。よしことずっと一緒にいられるよね?」
ひとしきりウチの部屋で泣いた後、ごっちんがぽつんと不安そうに呟いた。
「不安になった?・・・ウチは、ごっちんとずっと一緒にいたいよ」
そんなこといった。
その言葉を聞いて、嬉しそうに笑ってくれるごっちんの笑顔に胃がズキン、と痛むのが分かる。
口だけかもしれないじゃん。
浮気した後なんだし。
なのにどうして、そんなに素直にウチのことを追いかけてくれるの?
ごめんねごっちん。
こんなこと聞けないよ
でも、
まっすぐにウチを好きでいてくれるその眼差しを、
裏切るのはもうやめようと決めたから。
その言葉を、ウチも素直に信じてみるね。
「早く寝ようよ〜」
おなじ布団に潜り込むと、余計なことを考えないように、
吉澤は後藤を強く抱きしめる。
この暖かさに幸せを感じて眠りにつけたこともあったのに、
今日は眠れそうにないな、と吉澤はそっとため息をつき、
それから目を閉じた。
- 209 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:32
- 遠くぼんやりとした景色の向こうに、幼い日の後藤が見える。
家で喧嘩をして飛び出してきたのだろう。
パジャマだけの姿で、吉澤の家の扉を叩き、
何も言わずに部屋までまっすぐに入ってきた。
吉澤の親はなれたもので、
何の干渉もせずに後藤を部屋に通したが、吉澤は少し驚いていた。
喧嘩をして家を飛び出すなんて事を今まで後藤がしたことはなかったからだ。
笑っても、泣いても、吉澤が聞くのは
「喧嘩しちゃったんだよね」
そんな感じの、つまりは事後報告だった。
黙ったまま、パジャマ姿で、吉澤の隣に座って
黙ったまま、何をするわけでもなく雑誌を手にとり。
吉澤は思った。
なにか、よほど傷つくことがあったのだろうと。
- 210 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:33
- それから2週間くらいして、その原因がわかった。
その日は朝から後藤は弟と喧嘩をして、だから後藤は家に帰っても
何かと面白くなく、夕方ご飯の時に些細なことで言い合いになったようで。
手を出さない後藤が手を出したというのだからよほど頭にきていたのだろう。
喧嘩はいつもより少しだけ大事になり、弟は殴り合いの弾みで上から落ちてきた
ダンボールの下敷きとなり、右腕に大きな傷を負った。
両親が弟を病院に連れて行った間に吉澤の家に飛び込んできたようだった。
怒っているだけなのかと思った、あの時の後藤は、
自分の行動をよほど後悔していたようで、
だからといって謝ることの出来ない自分をよほどせめていたようで。
あれから後藤が弟と喧嘩したという話を、一度も聴いたことがない。
後藤はなにに対してもあまり怒ることがなくなり、
吉澤の部屋でじっと黙っている日を過ごすことが少しだけ増えた。
心配だったけれど、何が出来るわけでもないと、
吉澤はただ、後藤が部屋に来た時には後藤の好きなお菓子をあげられるように
母親に頼んで後藤のお菓子を用意してもらっていた。
- 211 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:35
- 付き合うようになって、初めて知ったことがある。
よしこの側にいたら、何でも赦してもらえる気がしてたから、あの頃。
自分が悪いんだけど、もう喧嘩なんて絶対出来ないって思ってたからさ。
でも、喧嘩してもよしこだけはウチのこと、好きでいてくれるって思いたかったし、
いつもよしこは黙って待ってくれてたから、すごく嬉しくて。
なんでもないようにいったごっちんのあの言葉は
好きといわれる何倍も重みがあったし、嬉しかったかもしれない。
何でも受け止めてくれるといわれているように聞こえた言葉は、
だけど今ではほんの少しだけ・・・重い。
- 212 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:43
- ごめん、ごっちんから逃げてただけだってわかってる。
浮気したのも、
その場限りの愛情の受け渡しを楽しんだだけ。
本当に好きなのはごっちんだって思ってるけど、
そう思わせてただけなのかな。
そう自分に言い聞かせてただけなのかな。
本当はもう、・・・手を離したいと思っていたのかな。
自分のそんな中途半端な同情を、
愛情と勘違いしてたのかな。
もうよく、わからなくなっちゃったよ。
だけど、だけどね。
もう傷つけることは出来ない。
やっぱりごっちんはウチにとって大事な人であることに変わりはなくて、
それは好きっていう気持ちだけじゃないのかもしれないけど、
だから。
やっぱりもう、圭織とは会わないよ。
- 213 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:49
- しかし、事は既に吉澤の手を離れ、
それぞれの気持ちにはそれぞれの手の中で、
どんどんと膨らんでいた。
飯田には、飯田の思いがあり、
安倍には、安倍の思いがある。
人を想う気持ちは、
簡単には・・・・とめられないのだ。
そしてそれは、
吉澤とて同じ事。
- 214 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:50
- 飯田から、吉澤の携帯にメールが届いたのは、
あの夜から2週間後のことだった。
差出人の名前をよんで、思わず周りを見回す自分に苦笑いがこみ上げる。
なんだかんだと約束したくせに、
未練がましく飯田と会いたいと思う自分の女々しさをあざ笑う冷静な気持ちと、
反面動悸が激しくなって、どんどん顔が熱くなるのがわかった。
後藤が机にうつぶせになって寝たままなのを確認してから、
そっと席を立ちトイレに向かう。
“一度都合のいい日に連絡を下さい。
あと一回でもいいから、・・・吉澤に会いたい“
携帯を握る手に力がこもる。
わかっている。
返事をすれば会うだけではすまなくなる。
飯田のメールは、つまりそう言うことだ。
終わらせるのならこのまま、
続けるのなら・・・。
選択権を与えてくれる優しさと残酷さを始めて吉澤は思った。
携帯を握り締めたまま、堅く目を閉じてため息をつく。
- 215 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:50
- わかってるよ。
もうこれ以上ごっちんは裏切らないと決めた。
ごっちんはそれを信じてくれた。
後藤とおそらく圭織のことが原因で和解してくれた石川を思った。
石川の存在がありながら、今回の話にはほとんどかかわることをしなかった矢口を思った。
それをすべて裏切ることは、吉澤には出来ない。
しかし、もう二度と会わないと返事をするのには抵抗があり。
返事をせずに、それを返事だと理解してもらうことにする。
返事をしないと決めるのも未練だとわかっているけど、
さようならというべきなのだろうけれど、
言わないことで気持ちが伝わってくれないだろうか。
確かに私はあなたのことを好きでした、と。
もう一度ため息をつきながら吉澤は思った。
後藤の手を離さない理由は本当に些細な、だけど
吉澤にとっては重い理由だ。
- 216 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:53
- しばらくしてトイレから戻ると、後藤が目を覚まして吉澤を捜していた。
どうしたの、と目で質問されたので、
トイレの方向を指さして、
それから後藤の隣に座ってみる。
よしこ、と後藤が笑いかけるので、
なに、と返事をする。
なんでもないようなことで、
後藤が実は安心しているのだということを
何かで聞いてから、
普段のやり取りを実はとても大事にするようにしていた。
吉澤にとってはたいした違いのないような事を、
後藤は直感で不安と感じたり、安心したりすることがあるのだそうで。
嘘をつくことが上手ではない吉澤の精一杯は、
「いつもどおり」を心がけること。
簡単のようでとても難しく、だから見破られることもしばしばだったけれど。
- 217 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:53
- 何も変わらないと、
ずっと一緒にいるということを相手にわかってもらうことが
こんなに難しいとは思わなかった。
そう思ったときも会ったけれど、
隣にいたいと思ってくれることが、吉澤にとっては何よりも嬉しい。
授業が始まって、
後藤と石川とノートの切れ端をまわしながら、
その日の放課後の予定を立てる一方で、
実は飯田からのメールのことを考えていたのは、
だから吉澤だけの秘密だ。
今ごろなにしてるんだろう。
何を考えてこのメールを送ってきてくれたのだろう。
考え始めると、会いたくて、あいたくて
どうしようもなくなる気持ちが少しずつ湧いてくる。
会わないと決めた、と自分を戒めれば戒めるほど、
会いたくなってしまうのはどうしてだろう。
どうして、こんなにも自分を求めてくれるのか、
こんなに簡単に心を奪われてしまうのは、どうしてなのだろう・・・。
- 218 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:54
- 「よしこ、よしこ・・・!」
はっと我に返って後藤を見ると、同時にクラスメイト全員の視線を
全身に感じてしまい、しまった、と思うが時既に遅く。
教師が自分に向かって文句を言いながら近づいてくるのに、
思わずため息をついて、更に怒りを買い。
とにかくついてない日だ、と確かに思うのに、
その割に心が弾んでいる理由にはあえて気がつかない振りをした。
わかってるよ、ともう何度も、自分に言い聞かせたことを
また、頭の中で繰り返す。
ウチには、ごっちんしかいないんだから、さ。
- 219 名前:距離 投稿日:2004/12/21(火) 00:58
- 更新終了です。
- 220 名前:あろ 投稿日:2004/12/21(火) 01:03
- >204 名無飼育さま
更新がね、なかなか約束通りにいかなくなってしまったので
予告するのはやめたんです(汗
ふらふらよっすぃもそろそろ・・・ね。
レスありがとうございます!
- 221 名前:あろ 投稿日:2004/12/21(火) 01:06
- 次回予告。
ようやくごっちん視点&なっち登場・・・予定。
よっすぃの思い通りに事は運んでいくのか。
ってところですかね。
読んでいただければ嬉しいです。
- 222 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 22:59
- ぐちゃぐちゃ悩んでるよっすぃにはもっと悩んでほしいですねw
このじりじりとした緊張感がいいです。今後も頑張ってください。
- 223 名前:翡翠 投稿日:2004/12/21(火) 23:32
- 話に引き込まれちゃいました。
後藤さんの気持ちも飯田さんの気持ちも安倍さんの
気持ちも吉澤さんの気持ちも同じ女として
わかっちゃうので心苦しい・・・(苦笑)
でも、やっぱり私はよしごま派の人間なので
遠回りしても最終的にはよしごまでハッピーエンドに
なってくれると・・・いいな。
- 224 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:30
- 後藤はその時、なんの気もなく、ただ表に目をやっただけだった。
しかし突然視界に入ってきた人物をみて、思わず吉澤の姿を探してしまう。
吉澤は丁度教室の扉を開けて後藤を捜しているところだった様子で。
後藤の胸が、どくん、と強く波打つ。
大丈夫、よしこはずっと学校にいたはずだし。
「どこいってたの」
「トイレ」
目で交わされた会話に、なんとなく不自然なものを感じたけれど、
それはしかし嘘をついたということではないようで、後藤はほっとした。
外にいたのは、まちがいなく飯田圭織その人だったからだ。
- 225 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:32
- あのひとは、だめだよ。
だってよしこは、あの人の家でご飯まで食べてた。
あんなにリラックスしてる顔、
いままでごとーだけの宝物だったのに。
きっとよしこに会いに来たんだ。
よしこを奪おうとしてるんだ。
そんなの絶対に、赦さない。
授業が始まってしばらくすると、後藤はそっと携帯を取り出した。
アドレスは聞いたからわかってる。
あとはメールすればいいだけだ。
なっちはわかってくれる。
あの人はダメだって事。
飯田さんだけは、ダメだって事を。
- 226 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:34
- 後藤はただ吉澤を思った。
彼女の優しさを好きだと思った。
優柔不断なところでさえ愛せると思った。
今までに与えてくれたたくさんの幸せを、思った。
だけど、後藤は気がつかない。
相手の何もかもを受け入れてしまうことが、
愛情ではないということ。
お互いを理解するために、必要なことが、何か。
後藤はそうやって今まで吉澤と築き上げてきた愛情を、
愛情のような形のものに閉じ込めてしまっているのだという事に気がつかない。
そうして、更に自分が深みにはまっていることにも。
よしこはごとーの大事な人。
だから、だれにも渡すことなんて出来ない。
だれにも、渡さない。
- 227 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:37
- 『飯田さんが学校に来てます。 後藤』
『吉澤さんに会ってるの? なっち』
『よしことは会ってないと思う。ずっと教室にいるし、携帯もみてない』
『なら、今日は圭織のいないところから下校してね。2人をあわせちゃダメだよ?』
『はい。ありがとうございます』
後藤と安倍の秘密のメール。
後藤はほんの少しワクワクしていた。
そして、ほんの少し不安だった。
今までこんな風によしこのことでメールしたことなんてなかった。
そんな必要なかったからなんだけど。
そんな気持ちになったことなかった。
どんなに浮気したって、こんなに不安になったことなかったのにな。
自分の中にこれほど激しい波があることを
後藤は今まで自覚することはなかった。
熱く、時に痛みさえ感じるほどに心臓が痛む。
吉澤のことを想う時に、そして、
飯田のことを考える時に、
そういった感覚に支配されることは嫌だったけれど、
しかしそれを楽しんでいる自分がいることも、
後藤はわかっていた。
- 228 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:43
- 本当は浮気なんて赦したくない。
だけど、しちゃうんだから仕方ないでしょ。
それがよしこなんだから、しょーがない。
そんな風に言い聞かせてたのは、
きっとそういって自分をいつでも受け入れてくれる
よしこみたいになりたかったから。
そういうよしこを、好きだから。
だけど。
本当のごとーは、そういうこと全部赦したくなくて。
自分の側から離したくなくて。
自分以外の誰かに目を向けるなんて事。
それだけは、絶対に赦さないからね。
- 229 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:45
- 両手で携帯を握り締めて、そっと飯田の居たあたりを見ると、
まだその場でじっと校庭を見つめているその人影を見つけることが出来た。
どうしてあんなに絵になる人なんだろう。
きれいな人。
よしこよりもきれいかも。
髪の毛が長くて、風になびいているのがまるで小説に出てくるどこかの
シーンのように、
または、映画のシーンのように。
なによりもその表情が誰を思っているのか一目でわかるくらいに幸せそうで、
・・・なんだかすこし、嫌だ。
よしこは、あげない。
よしこは、ごとーのものだから。
後藤の瞳が鈍く光る。
- 230 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:46
- 「梨華ちゃん、お願いがあるんだけど」
「ごっちん?あれ、よっすぃは一緒じゃないの?」
「うん、ちょっとね・・・。今日よしこと一緒にごとーんち行ってくれない?」
突然なに?ときれいな眉を少ししかめて石川が後藤を見る。
実はさ、飯田さんがね・・・
事情をきいて石川はもちろん、とOKし、
後藤はその場からゆっくりと離れていった。
向かう先はもちろん、彼女のところだ。
- 231 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:51
- これは戦いだ、と後藤は思った。
心が騒ぐ。
体中に緊張が走る。
けれど、そのドキドキは例えようもなく後藤を興奮させた。
よしこを取り戻す戦い。
後藤にきがついて目を上げた飯田の瞳に映った彼女に、
飯田は少し驚いた様子で、声をかけた。
「あなたが、『ごっちん』ね」
そう、それが始まりの合図。
戦いの火蓋は確かに今、きられたのだ。
- 232 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:52
-
石川と2人で歩く帰り道は少し懐かしくて、
吉澤は石川が一人で話をしているのに相槌を打ちながら夕日を見上げた。
オレンジ色に2人を染めている太陽が少しまぶしく、少しだけ胸に痛い。
石川にあわせてゆっくり歩くのも、
相槌を打ちながら笑うのも、
石川が当たり前のようにいつも後藤がいるのと逆側にいるのも、
何もかもが懐かしく感じる。
後藤がそばにいるときには、目に入っていなかったことだけれど、
それだけ2人でいる時間が多かったということだろう。
- 233 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:53
- 「なんかさ」
突然口をはさんだ吉澤に何かと石川が目を上げると、
そこには、
みたこともない表情をした吉澤がいて、石川は言葉を失う。
何も言えずにただ見ているだけの石川に、
少しだけ不思議そうな顔をしながら、
吉澤が先を続ける。
- 234 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:54
- 「色々、ありがとうね、梨華ちゃん」
「え?」
「なかなか、直接言えなかったし、はっきり言えなかったし、・・・ほら、
矢口さんとかにもさ、色々言われたりしてたんだけど。
ウチがはっきりしなかったから、傷つけて。ごめん」
なにを今更、と石川が笑うのもわかってて、だけど吉澤は言わずにはいられなかった。
石川の優しさを思った。
「ありがとう」
「なにいってんの。ごっちんのこと・・・大事にしてあげてね」
「うん」
「浮気、だめだよ」
「うん」
「飯田さんに会うのもね」
「・・・うん」
吉澤が一瞬躊躇したのを石川は見逃さない。
しかし、それについて言及するのは止めておいた。
- 235 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 16:59
- 吉澤はおそらく飯田のことを好きになっているのだと
石川は考えてる。
だけど、鈍い吉澤のことだからまだ自分の気持ちをはっきり自覚してはいないだろうし。
後藤のことを思って行動にはなかなか移さないだろうし。
きっとこのまま飯田と会うことがなければ後藤だけの吉澤でいられるはず。
それを望んでしまうのは自分の未練だとわかってはいるけれども。
ごっちんなら、と思ってしまう、それは自分の弱さだって、わかってるけど。
「じゃあ、またね」
「あ?ごっちんとこ行かないの?」
「やっぱ今日はやめとく。ごっちんにごめんって言っておいて」
「そっか。じゃぁ・・・」
「またあした、ね」
バイバイ。
笑顔で石川に別れを告げると、吉澤は自分の家に入る。
後藤が家に帰ってきたらすぐに連絡が来るはずで、
今までのように吉澤の部屋でのんびりするだけのこと。
けれど。
ほとんどが今までと同じ生活の中で、
たった一つ、
飯田に別れを告げたあの夜から変わってしまったことがあった。
気持ちは既に、
吉澤の行動にまで影響を及ぼしていたのだ。
あれほど慎重に今までと違う生活はしないと気を配っているくせに、
たった一つ、
けれど、決定的な違いが。
- 236 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 17:29
- 更新終了です。
- 237 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 17:35
- >222 名無飼育さま
レス、ありがとうございます。
よしこは一応主役なだけに、たくさん迷走してもらいたいですね。
落ち着いちゃうとつまら(ry
また読んでくださいね。
>223 翡翠さま
いつも、読んでいただいてありがとうございます。
感想をいただけるのがとても嬉しいです。
よしごまですね、そう書いたんですよね最初に(汗
あんまりよしごまっぽくないですけども。
とりあえずごっちんが作者の手を離れて・・・
なので、先はどうなるのかわかりませんが、楽しんでいただければと思います。
- 238 名前:あろ 投稿日:2004/12/27(月) 17:36
- 目標は年内もう一回更新。
- 239 名前: 名無飼育さん 投稿日:2004/12/27(月) 21:12
- 更新乙です。続き気になる〜!
- 240 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/27(月) 22:19
- いいとこで終わってる。
早く続きを読みたいです。
- 241 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:12
- 「あなた、『ごっちん』ね。吉澤がよくごっちんっていってたから、
なんだか後藤さんって言うと違和感があるんだよね・・・」
「・・・別にどっちでもいいですけど」
飯田があえて吉澤の名前を出してきたことに、後藤はすぐに気がついた。
だって、目が違う。
自分を見る、彼女の瞳。
吉澤と一緒にいたとき、安倍さん・・・なっちと話をしていた時だって、
こんな目はしていなかった。
こんな、何も移していないような、うつろな目・・・、なんか嫌だ。
- 242 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:13
- 「よっすぃ・・・よしこなら、もういませんよ」
「そっか。で、『ごっちん』はあたしになんの用?」
「いちいち聞かなくてもわかってるくせに。
・・・よしこに近づかないで」
「いや」
「なっ・・・!」
「そんなこといわれる筋合い、ないし」
「・・っ、よしこは私の彼女です!私と付き合ってるんです。
すごい、迷惑です」
「吉澤から、直接わかれようって言われてない。だから圭織のなかでは
まだ終わってないんだよね。ごっちんということは、聞けないよ」
- 243 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:16
- 何を言っているんだ、と後藤は思った。
だけど、それ以上に最後の一言がショックだった。
まだ終わってないって?
始まっていたことがそもそもの問題だっていうのに・・・っ!!
衝撃は後藤が何かを思うよりも早く涙となって後藤の頬をつたった。
この人の前でなんて泣きたくなかった。
だけど、
だけど、あまりにも酷い。
私の存在は、この人がこんなにあっさりとあしらえるほど、
よしこにとっても軽いものだったの?
そんなこと、知りたくなかった。
- 244 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:17
- 後藤の目から涙がぽろぽろと溢れてくるのを見て、
飯田の胸がずきんと痛んだ。
燃えるような瞳。
その嫉妬の中には彼女の吉澤に対する愛情がよく見える。
それはもちろん、
自分がきっと持つことが出来ないであろう感情の嵐なのだろう。
吉澤が想う以上に彼女は吉澤のことが好きで、
しかしきっと、そういったものを吉澤には見せていないはずだ。
もしみせているのなら、
そんな彼女を放って吉澤が浮気するなんて事、ありえないから。
- 245 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:21
- 「吉澤のことが好き?」
「答える必要、ないですよね?付き合ってるんです」
「ああ、そうねぇ。じゃあ、圭織と対等のつもりなんだ?」
「対等?たかが浮気相手のくせに!」
「たかが浮気相手よ?そんなことよくわかってるわ。
なのにあなたはどうしてそんなに怒ってるの?」
浮気なんて初めてじゃなかったんでしょ。
なのにどうして今回はだめなの?
飯田の問いに後藤は答えられない。
自分では決して出したくはない答えがそこにあることを知っているからだ。
吉澤の、これは本気の恋なんだって事。
浮気になんて、ならない。
浮気なら、ここまで心を乱されることはなかったはずなのに。
そんなことないはず、
そんなことしないはず、
そんなこと、よしこはいわないはず。
思い過ごしてきたかもしれない、
数々の吉澤の言動。
よしこのことを信頼しすぎていたんだ。
後藤は、自分が信じていたモノが少しずつ、
崩れていくのを感じていた。
- 246 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:24
- 吉澤の飯田との関係が発覚してからもう既に2週間以上がたつ。
吉澤は後藤と石川以外との接点を持たなくなり、
必然的に後藤と要る時間が増えていた。
それなのに、
ただの一度も抱かれていないのはどうして?
キスもしてくれないのは・・・どうして?
ずっと聞きたかった。
でも、後藤からは聞けなかった。
誘うことすら出来なかった。
いままではどうやってそんなことしてたんだろ。
そう、不思議になるくらい、
拒絶されることがこわくて。
こわくて、たまらなくて・・・。
ただ、吉澤の気が向かないだけなのだろうと、
思い過ごそうとして心に重く残っていた、小さな事。
疑ってみればそれがどれだけ大きな意味を持つのか、
よく考えなくてもわかる。
- 247 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:25
- ただ隣同士で寝るだけ、それでも一緒に過ごした夜だって
何度かあった。
そんなときは決まってぐっすり眠ることが出来た。
誰のものでもない、彼女は自分だけの彼女。
しかし、隣の家にいるとわかっていても別々の布団で眠らなければならない夜は
夜中に何度も目が覚めて、そのたびに例えようのない不安に晒された。
そのたびに、
吉澤ではなくて、安倍にメールをしている自分がいた。
安倍のメールは後藤に安心をくれたから。
「圭織は吉澤さんとはあわせないから大丈夫」
「圭織はほかの人になんて長く興味を持ったことなかったから、大丈夫」
「大丈夫、わかれる必要なんてない」
大丈夫だよ、とその一言を見て眠りにつく。
そんな時間を繰り返している最中に飯田が学校に現われたのだ。
- 248 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:26
- そんなに自分が不安に思っていたくせに、
安倍さんに・・・、なっちにメールしなければ安心して
眠れないほど気にかけていたくせに、
よしこを疑う事がまるで全てのおしまいを暗示するかのように、
気にならないふりをしてた。
- 249 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:28
- だけど、たとえよしこが本気で飯田さんのこと好きだったとしても、
よしこは譲れない。
手放せない。
よしこは、ごとーの大切な人だから。
- 250 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:29
- 「どうしても、譲れないからです。ごとーはよしこと絶対にわかれませんから」
失礼します。
今の後藤にはそれだけ言うのが精一杯だった。
家に帰れば吉澤が自分を待っていてくれるだろう。
優しく抱きしめてくれるだろう。
キスはしてくれなくても、どうしたの?と聞いてくれるだろう。
ずっと一緒にいるじゃん、と笑ってくれるだろうから。
あとからあとから溢れる涙をないものにしたくて
後藤はその場から走って家に向かった。
絶対に。
そう、絶対に、よしこは飯田さんだけにはわたさない。
あんな人にわたしてたまるもんか。
- 251 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:33
- 年内の更新はこれで終了です。
- 252 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:34
- 年明けは安倍さん登場予定です。
- 253 名前:あろ 投稿日:2004/12/30(木) 17:36
- >239 名無飼育さま
楽しみにしていただけて光栄です。
そんな気持ちがとっても励みになりました。
レス、ありがとうございます。
>240 名無飼育さま
レス、ありがとうございます。
予想通りの展開になりましたでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです。
- 254 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/04(火) 22:24
- ごっちんがんばれ
でも飯田さんの気持ちも分かる
せつないねえ
- 255 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:19
- 「久しぶりね。ごっつぁん。元気だった?」
「なっち・・・」
「ほら、泣かないの」
やさしく後藤の頬をなでる彼女の手のひらに、
吉澤の手の暖かさを思い出してしまったけれど、
思い出したことで意外と涙はすぐに止まってくれた。
泣いていたって、彼女を取り戻せるわけじゃない。
よく吉澤と来ていたこのファミレスは、
家族向けの場所のようで夜10時を過ぎてくると
ほとんど人がいなくなる。
まわりに人がいない、しかし明るく寂しくはないこの場所で、
後藤と安倍は待ち合わせをした。
場所を決めたのは後藤だったけれど、これはもしかしたらあてつけのような
気持ちもあったのかもしれない、と後で思って少しだけ悲しくなる。
吉澤はきっとそれを聞いても何も思わないだろうと思えたから。
後藤と2人でよく会っていた場所で、ほかの人と会っていたって。
後藤が吉澤に内緒で、誰かとご飯を食べていたって。
吉澤の心には、きっと響かない。
ごとーのような気持ちには、きっとならない。
今のままでは。
- 256 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:21
- 「飯田さんと会ったんだ。話をして・・・帰ってきちゃったんだけど」
「圭織は諦めない様子だったでしょ」
「うん」
「きっとね、きっと人に言われて諦めることが嫌なんじゃないかな。
吉澤さんが連絡を取らなければ圭織だって諦めるよ。
それはなっちがよくわかってる」
「そうかな・・・」
「そうだよ。ごっつぁんはそんな心配しなくても大丈夫。
吉澤さんさえ、きちんと捕まえていれば。ね?
吉澤さんと付き合ってるのはごっつぁんなんだから」
「・・・うん」
「圭織も、しばらくすればあんまり学校にいけなくなると思うんだ。
多分。今だから自由な時間もたくさんあるけど」
大学の講義の関係で、
実技の作品を提出しなければならない期限がもうすぐなのだという。
そういったところで決して手を抜かない飯田を知っているからこその安倍の発言だった。
- 257 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:22
- モデルがいる。それだけで制限されることは増えてくるのだと以前に飯田が漏らしたことがあって、それを放棄しようと、あるいは簡単に済ませようとしないのが、
すごく圭織らしいねといったことを覚えていたからだ。
飯田の作る作品が安部は大好きで、
製作過程を観に何度も学科の違う校舎まで足を運んだこともあった。
途中を見られることを嫌う飯田にしてはめずらしい、と飯田と共通の友人が言って、
その言葉に優越感を感じていたのがはるか昔のことに思える。
でも、と安倍は思った。
なっちはすぐに圭織の一番の友達に戻れる。
圭織はあの夜、吉澤さんを追い出したあの夜でさえ、
なっちを笑って追い返しただけだった。
次の日も、普通に話をしてくれた。
なっちの一番は圭織だから、
圭織の一番だってきっとなっちになる。
いつか、きっと。
- 258 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:23
- 「ねぇ、なっち」
「ん?」
「ごとーはね、・・・よしこを飯田さんにはわたさないって決めたんだ。
飯田さんにだけは渡さないって。だって・・・」
飯田さん、よしこは本気で飯田さんのこと好きみたいな言い方、するんだもん。
「そんなことあるわけないじゃんね」
言う後藤の目が少しも笑っていないことに安倍の胸が痛む。
だけど、後藤がそれを否定するように、
安倍もまたそれを真実だと認めるわけにはいかなかった。
圭織はわたせない。
圭織を大事に出来ない、吉澤さんなんかに。
言葉には出せないけど、
同じような気持ちを共有しているのだと安倍は思った。
だからこそ余計に吉澤が赦せないのかもしれない。
後藤の立場はもしかしたら安倍だったかもしれないと、
同情すればするほど。
- 259 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:24
- 「いっそのこと、吉澤さんの首に縄でもつけちゃえば?」
「あはっ、それ、いいねー」
「そうすればさ・・・」
そうすれば、もう誰も振り回されなくてもすむ。
飯田と安倍は吉澤のいない元の生活に戻り、後藤は思う人を自分の手の中に治められる。
石川と矢口もまた、今までどおり二人の関係を続けていくだろう。
安倍は飯田に片思いのまま。
それだって今よりは全然まし。
飯田に相手がいる今の状況よりは。
- 260 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:26
- ほんの少しの思いつきで言っただけだけれど、
思いのほかその話題で盛り上がりかえる頃にはもう2時を回っていた。
安倍は少し心配そうに後藤を見て、送ろうかと声をかけるが
後藤はすぐ近くだから大丈夫だという。
安倍がタクシーを待つ間、
後藤はそっと安倍に近寄って、一言呟いた。
「なっちがいてくれて本当によかった」
利害が一致しただけだけれど、
こんなに近い友達はいままで吉澤以外にはいなかったから、
吉澤のことで相談なんて出来なかった。
そう笑顔で付け加える彼女は本当にきれいで、
安倍は少し羨ましく思う。
こんなにきれいだったら、
あるいは吉澤さんのようだったら、
いまのなっち以外の誰かだったら、
圭織は振り向いてくれたのかな。
しかし、すぐにそんな考えはふりはらった。
今の安倍なつみを圭織が好きになってくれなければ意味がないのだ。
だから、そのためにはなっちはなんだってできるよ。
- 261 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:27
- 予想よりも早く着いたタクシーに乗り込んで後藤と別れ、
家に帰る頃には安倍はとても安心していた。
これ以上吉澤が後藤の目を盗んで飯田と会うことは不可能だろう。
そして後藤から話を聞く限り、
吉澤が自ら後藤の手を話すことはありえなそうで、
それは何度か見た吉澤という人間の性格から安倍自身もそう思っていた。
これでなっちは圭織の一番になる。
- 262 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:27
- ・・・・・・・
- 263 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:28
- ・・・・・・・
- 264 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:29
- 後藤の様子がおかしい、と最初に気がついたのはやはり吉澤だった。
しきりに外を気にして急に駆け出していくこともある。
しかしその先を追おうとすると決まって石川に用事を言いつけられるのだ。
仕方がないので一度後藤に直接原因を聞こうとしたら、
「なんでそんなこと知りたがるの?」と逆に詰め寄られ、
結局うやむやにされた。
一度だけなら記憶にも留まらないようなことだっただろう。
でも、二週間も続くと気にしたくなくても目に入ってくるというもので。
一時間、二時間戻ってこないこともあるけれど、
もともと保健室などで授業をサボる癖のある彼女は、
教師からもまたか、という目で見られているので特に問題にはならなかった。
でもさ、それにしたって、あまりにも不自然だよねぇ・・・。
- 265 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:29
- 考えて、結局石川にカマをかけてみることにする。
本来あまりこういうことは好きじゃないんだけど、
心配だし、と自分にたくさん言い訳もして。
石川が自分に近寄ってくるタイミングで、石川が話し始めるよりも早く、さりげなく、
独り言のように。不自然じゃないように・・・
「ごっちん、外見てなに考えてんだろ・・・・」
石川の前でそれとなく呟くと、ぎくっ、と体を動かすのがわかって、
やはり自分には知られたくない何かがそこにあることを確信した。
ふう、とため息をついて石川の顔をみる。
「ねぇ、なにやってんの2人で?」
「なっ、なんでもないよ」
「あんなにごっちん不自然なのにさぁ。いくらウチでも気がつくっていう話だよね」
「だからぁ、何にもないって!」
キンキンと響く石川の声を聞くのはひさしぶりだけど、こんな時きまって彼女は
なにかしらやましいところがあるのだ。
さて、どうやって白状してもらおうかと思っているところに後藤が輪に加わってきたので、
とりあえず話を中断する。
あからさまにほっとしている石川に、唐突にただ一つの答えにたどり着いた。
- 266 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:30
- ごっちんがウチに隠したいことって、考えなくたって一つしかないじゃん。
圭織・・・?
だけど、もう2ヶ月も連絡してないのに?
あの時のメールだって、返事してないのに?
ただ、一回きりのメールだったのに?
まさか、でも、もしかしたら・・・?
顔がどんどん熱くなるのがわかって、
とりあえず吉澤はトイレに行こうと席を立つ。
- 267 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:31
- 後藤は吉澤を不思議そうに見遣って、それから一言こういった。
「よしこ、顔が赤いよ?なに考えてるの?」
今まで吉澤にむけられたことがないような、冷たい声で一言。
それは、吉澤の心を凍りつかせるのに充分で、
胃のあたりがきゅっと絞られるように痛むのがわかった。
- 268 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:37
- 「なにも?トイレ行きたいんだけど・・・」
「そんなに急がなくたっていいじゃんね〜、梨華ちゃん」
「あ、そうだよねぇ。よっすぃったら」
あはは、と笑いあう彼女達を尻目に吉澤は背中に冷や汗が一筋伝っていくのがわかった。
なに、さっきのごっちん。
なにを見透かしてあんなこといったの?
いままで、あんな言い方、したことなかったのに。
動悸を抑えきれず、トイレの個室に入って大きくため息をついた。
圭織、いま近くにいるのかな。
今、学校にきてるのかな。
ううん、勘違いかもしれない。
だけど、もしかしたら。
ああ、だめだ、と吉澤は思った。
授業が始まるチャイムを聞いてそっとトイレを抜け出し、
そのまま校舎から出た。
大学部までは走って30分くらい。
大丈夫、会える。
追い返されるのならそれでいい。
勘違いだったら、それでもいい。
どんなに冷たい目をされても、
もしかしてあえなくても、
話を聞いてもらえなくても、
せめて最後に一言さようなら、と言いたい。
ありがとうといいたい。
その一心で、吉澤は走り出した。
- 269 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:39
- 吉澤が大学部へ向けて走り出した頃、
後藤は戻ってこない吉澤に対して不安を膨らませていた。
石川の話では後藤の様子を相当不信がっていたようで、
それならあの時の表情は、何かに気がついた後の?
そう、本当に腹立たしいけれど、飯田が学校に来ているのだと
分かったせいかもしれない。
- 270 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:40
- あのあとしばらく安倍の言うとおりに飯田が姿をあらわすことはなく、
しかしその反動のようにこの2週間は毎日同じ場所で、飯田は吉澤を待っていた。
後藤はいらいらを募らせていたのだ。
今日だって朝から2時間も言い合っていて。
最後はいつものように後藤が言葉を吐き捨て、そのまま教室から飯田を監視するだけ。
飯田はその場にじっとたたずんでいて、
側からみれば後藤と見詰め合っているようにも見える、
しかしその視線の先には自分ではなく、姿を見せない吉澤がいたのだろう。
それでも講義があるのかさっきようやく帰った飯田を見送った直後、
後藤が吉澤と石川の側にようやく近寄っていった時の
吉澤の突然の行動に直感的に不信なものを感じたのだけれど。
- 271 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:41
- あんな顔で突然トイレなんて、不自然にもほどがある。
あんな表情、学校で誰かがいるときにごとー以外の人になんか
みせないでよ。
誰かを想っている・・・恋してる、顔。
そう思った時、自分では思ってみないほど冷たい声が出たことも事実だ。
ねぇなんでもどってこないの?
よしこ、なにしてるの?
- 272 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:48
- 顔の前で握り合わせている手に、
少しづつ力が入っていく。
ごとーは、もう待たないよ。
もう、信用なんて出来ない。
戻って来る保証がないのなら、
・・・ごとーが、とりかえしにいく。
二度と、逢いになんて行きたくならないくらいに、
ううん、そう思ったって身動きが取れないように。
そう、自由になんてしてあげないから。
- 273 名前:距離 投稿日:2005/01/05(水) 23:49
- 更新終了です。
- 274 名前:あろ 投稿日:2005/01/05(水) 23:50
- 新年明けましておめでとうございます。
- 275 名前:あろ 投稿日:2005/01/05(水) 23:53
- >254 名無飼育さま
飯田さんはこういう役が似合うと個人的に思っております(汗
ごっちんにもいしかーさんにも
がんばってもらいたいところですね。
- 276 名前: 名無飼育さん 投稿日:2005/01/06(木) 08:00
- 明けましておめでとうございます
更新乙です。
この小説読んでるとゾクゾクしてきてdadai
- 277 名前: 名無飼育さん 投稿日:2005/01/06(木) 08:06
- ↑ミスです。スレ汚しごめんなさい
大好きです。続き楽しみにしてます。って言いたかったわけです・・・・
- 278 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:25
- 授業中だって教室をこっそり抜け出すことくらい、
今の高校生なら誰だって出来る。
石川にメモをまわして、それからそっと教室を抜け出し、
目指したトイレには吉澤の姿はなく。
「梨華ちゃん・・・」
「ね、安倍さんに連絡しようよ。
よっすぃが飯田さんの所にむかってるかもしれませんって」
「だめなんだ、今安倍さんドイツにいるんだよ」
音楽科のなかで、たった一人しか選ばれることのない
2週間の特別短期留学生に選ばれた安倍は、
丁度2週間前にドイツに旅立ち、
直後、飯田の学校訪問が頻繁になったのである。
今日帰ってくる予定だけれど、夜中になるだろうと言っていた。
彼女は今ごろ飛行機の中だ。
- 279 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:26
- 「おいかけよう!」
「うん」
吉澤の足は速いけれど、人の足には限界がある。
学校の鞄をもってきた石川と後藤とは違い、タクシーを拾うなんて事はできないはずだ。
先回りして、大学部の入り口で待つ。
この時間に飯田が学校を離れたということは講義のある証拠。
家に向かったのならあえないだろうしそれでいい。
大学部に戻っている飯田にあうことさえなければ。
また浮気しようとした、
よしこにはきちんとごとーがおしおきしなくちゃ。
もう二度とはなれないように。
そんな気持ちが起きないように。
- 280 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:28
- タクシーを捕まえ、それに飛び乗った2人が吉澤の姿を見つけたのは
それから10分もたたない頃だった。
さすがに靴は履き替えてあるものの、
制服で、こんな時間にひとりで走っていれば目立つのはあたりまえ。
金髪の彼女の髪が彼女の頬にまとわりついているのを、
ウザいとでもいうように手で払いのけながら走る吉澤を見ながら、
後藤は、こんなに真剣な表情を見るのは久しぶりだな、
ととどこか冷静な気持ちで思った。
誰を思ってそんなに必死で走っているのか、今は聞かないであげる。
だけど、
よしこはごとーのものなんだって、
忘れたらダメだよ。ね?
残酷な気持ちがものすごい勢いで
体の中にまるで毒のように回っていくのが後藤にはよくわかった。
この腕が、よしこをつかんで離さないって言ってる。
この体が、よしこを抱きしめて離さないって言ってる。
抱きしめて?
ううん、もう二度と逃げられないように後藤の体に縛り付けてあげる。
そう、もう二度と離れることのないように。
- 281 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:29
- 「・・・っちん、ごっちん??」
着いたよ、と石川の高い声ではっと我に返る。
そして自分が今考えていたことを思い起こして、思わず笑いが漏れた。
そんなことできるわけないのに、ね。
そんなよしこに一緒にいてもらっても意味がないことも確か。
なにより、今は飯田さんに心を奪われて入るけれど、
よしこはよしこなりに、ごとーのこと好きでいてくれてるのもわかってるから。
- 282 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:30
- 大学部の正門は想像していたのよりもだいぶ大きく、
その入り口が広いので、はたしてはよしこすぐに見つかるかな、
と一瞬だけ心配になるが、よくよく考えて制服姿の彼女は
捜さなくても目に入ってくるだろう、と思った。
石川と2人でそこに立っていると、
もちろん後藤たちも目立ってはいるけれど、
吉澤が入ってくるときに、
彼女からはすぐに見えない位置にいれば何も問題はない。
校舎は、正門を入ってまっすぐに続いているポプラ並木の両脇に
規則正しく並んでいて、多分、それぞれの学科がその道の行く先で
別れているのだろうと簡単に想像できるようなつくりだった。
ある一角にはキャンバスを片手に抱えた学生達が集まっていて、
またある一角には楽器や楽譜を抱えた学生が集まっている。
この集団の中に飯田が存在していることは、
なんだか少し想像できないけれど、
隣に安倍がいるのならそれもありかな、と思ってみたり。
何年後かに多分きっと自分も吉澤もこの校舎のどこか向こうの、
文学部とかの一角で、こんな風に一緒に笑っているんだ。
そうであってほしい。
そのときはもちろん、石川も、矢口も一緒で。
4人で笑って、遊びに行って、勉強もちょっとだけして。
そんな毎日が、何の疑いも心配もなく、続いてほしい。
- 283 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:31
- よしこがどこかにいなくなっちゃうなんて、やだよ。
目からぽろぽろと涙がこぼれてくるのを後藤は止められない。
「・・・・っ」
「ごっちん?ごっちん!どうしたの、ちょっと・・・・っ」
石川は慌てて、とりあえずどこか座れる場所を捜そうとあたりを見回した。
正門の見えるところにカフェのようなところがある。
泣いている後藤が極力目立たないように、そこへ移動することにした。
- 284 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:34
- しかし、丁度その時、飯田が正門への曲がり角を曲がったのだ。
(石川?・・・後藤!?なんでここに・・・?まさか・・・)
吉澤が、ここに向かっているのか。
その吉澤を2人で待ち伏せして。
また、圭織から引き離そうとしてるのね?
とっさに頭が働いて、出来ることはただ一つだと思った。
これは運命の選択。
ここで待っていれば十中八九、
吉澤と再会した瞬間に後藤と石川にもつかまるであろう。
それならば、高校への道を逆にたどれば良い。
高校から大学へつながる道は3つ。
そのうちの一つをいま通って帰ってきた。
彼女達に会わなかったのは、
彼女達が多分タクシーを使ったからだろう。
そうでなければ自分より早く大学に着いているわけがない。
高校を出た時、後藤の姿が教室にあるのを確認しているのだ。
タクシーが通るであろう大学から高校への道は・・・一つ。
吉澤が来る道も、
多分後藤たちも通ってきたタクシーの通る大通りだろう。
どうして道沿いで吉澤を捕まえなかったのかはわからないが、
これはチャンスだ。
もう一本の抜け道を彼女が知っているとは思えない。
ここであえなければ、次はまた更に遠くなる。
飯田はその道へ向かって正門からは見えないようにそっと走り始めた。
- 285 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:35
- 「ごっちん・・・?大丈夫?」
「・・・ん」
「どうして、・・・その」
「泣いたのか?なんでだろうね?」
もしかしたら、もうよしことは一緒にいられないのかな、とか
考えちゃったんだよね。
だって梨華ちゃんもさっきのよしこ、みたでしょ?
そういう後藤に石川はこう答える。
確かによっすぃは一生懸命走ってたよ。
だけど、そんな簡単に諦めていいの?
大事なよっすぃなんでしょ?
石川もまた、ここまで追いかけてきた後藤の気持ちを思うと、
まあ、確かにそうだけど、と簡単に認めるような発言はとても出来なかった。
吉澤の、本気の恋に気がついていても。
うん、わかってる。
石川の言葉を聞き、
正門のほうを見ながら後藤はにっこりと笑った。
そう、そんなに簡単に諦められるくらいなら、
今までの浮気だって赦してなんかあげなかった。
- 286 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:36
- そんなに好き勝手してたくせに、簡単にごとーのこと捨てるなんて。
絶対に、赦さない。
「諦めないよ。そんなことしないけど、でも、
前と同じようによしこはごとーの隣で笑ってくれるのかな。
後藤のことだけ見てくれて、後藤のことだけ好きでいてくれる
よしこでいてくれてるのかな、って、
・・・ちょっとだけ思った」
「そんなこと・・・」
「うん、そうだよね。わかってる。そんなこと心配する必要ないよね・・・」
10分、20分、と現われない吉澤を石川と2人で待ちながら、
同時に安倍からの連絡を後藤は待った。
帰ってきたらすぐに連絡くれるって言ってたし。
しかし不安は募るばかりだ。
あんなに一生懸命走ってたのに、学校にもどっちゃったのかな?
まだこないなんて、おかしい。
なんで、
どうして。
不安になるにつれ、口数も少なくなる。
- 287 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:37
- 1時間半が経ち、おそらくもう吉澤は現われないだろうということを
ようやく後藤が思い始めたとき、その場に一人の人物が現われた。
「ごっつぁん」
「・・・・矢口さん!?」
「ごめんね、私が呼んだの」
「帰るって言い出せないってさ、石川からメールがきたの。
ごっつぁん、とりあえず、今日はそのままオイラの家にきなよ」
「でも、よしこが家にいるかもしれないじゃん」
「・・・多分、いないと思うよ。さっき吉澤の家の前、通ってきた」
どくん。
心臓が高鳴る。
まさか、まさか、まさか・・・・・っ!!!
「ごっつぁん!!おちついて。まだ、一緒にいるって決まってるわけじゃない。
石川の話じゃ吉澤だって二人がどこに消えたのか、しらないはずでしょ?
捜してるのかもしれない。圭織の家の前、通ってきたけど電気ついてなかったし」
- 288 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:38
- 「「圭織・・・?」」
その呼び方に不自然なものを感じて石川と2人、矢口を見る。
小さな矢口はしまった、という表情をしつつもそれについては答えるつもりがないのは
明白で、ほらほら、と二人を促してその場から離れさせようとした。
「まって、矢口さ・・・」
「だーめ、もう時間だし、ここ閉まるし。なんだったらかけてもいいよ。
吉澤はここには現われない」
「・・・・・・だけど」
「待つなら家で待てば?だけどね、かえってくるかわからない人間を一人で、
吉澤の部屋で待たせるなんて事、オイラにはできない。
かといって後輩の家に勝手に乗り込む勇気もないしね、素直においらんちにおいで」
「ごっちん。矢口さんのいえからごっちんの家も近いしさ、ね?夜、気になったら
見に行けばいいよ」
「・・・・・・」
「ほら、とりあえず出るよ」
「・・・・うん」
ようやく頷いた後藤を促してその場から離れる矢口の示した先には
車が一台止まっていた。
車は矢口の友人で保田という女性のものらしい。
運転席でハンドルを握ったまま、何も言わずに3人を乗せて走り出す優しさを、
後藤はぼんやりと、ああ、こんな優しさ、よしこににてるなぁ、と思った。
暗闇に光るネオンが、とても、寂しく見えた夜の話。
- 289 名前:距離 投稿日:2005/01/18(火) 23:38
- 更新終了です。
- 290 名前:あろ 投稿日:2005/01/18(火) 23:39
- 話が同じトコでうろついている気がしないでもない。
そろそろ進展してもらわないと、ですね。
- 291 名前:あろ 投稿日:2005/01/18(火) 23:41
- >276 277 名無飼育さま
ありがとうございます。
この話はどろどろするのが目的で書いているようなものなので、
ぞくぞくしていただけるとは、とても嬉しいのです。
また、呼んでくださいね。
- 292 名前:あろ 投稿日:2005/01/18(火) 23:42
- 呼んで→読んでの間違いですね(汗
- 293 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 00:43
- ごっちんがんばれ
- 294 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 23:51
- 禁断症状が・・・
更新お待ちしております。
- 295 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/25(金) 14:12
- 更新お待ちしております
- 296 名前:あろ 投稿日:2005/03/17(木) 01:22
- あともう少ししたら
更新できそうです。
待ってくださってありがとうございます。
- 297 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/17(木) 17:21
- いつまでも待ってますよぉぉ
- 298 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/18(金) 18:43
- 一気に読まさせて頂きました。かなり切なくもあり恐さがある作品だと思います次回更新待ってます。
- 299 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:28
- 矢口と合流した石川、後藤が保田という女性の車に乗った頃、
飯田と吉澤は、中澤という女性の家に身を寄せていた。
大学から、吉澤の歩いているであろう道へ走り出した飯田が
吉澤と再開したのは、それから本当に2分もたたない頃で、
目の前に現われた飯田に吉澤が驚いている間に、
飯田が丁度側を通りかかったタクシーをとめ、
それに2人で乗り込んだのである。
ようやく事の成り行きを話すことが出来たのは
それから10分ほどして、
今目の前にいる彼女・・・中澤の家についてからだった。
そして、吉澤の話を聞いた飯田の判断で、
彼女の友人である中澤の家に行くことになったのである。
- 300 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:29
- 「なんや、突然やなー、圭織も」
「ごめんね裕ちゃん。夜・・・もう少し遅くなるまでいいんだ」
「うちはええけど。・・・そっちの子は学生さんやろ?」
「え、あ、・・・はい」
突然話を振られ、大きな目がさらに大きくなったのをみて、中澤は少し笑う。
人見知りするのだろう。そういう子には自分はあまり話し掛けないほうがよいと、
中澤は経験で知っていた。
飯田のほうに目線をやると、困ったように飯田が言葉を吐き出す。
「祐ちゃん、・・・お願い」
「はいはい、深くは聞かんよ。・・・圭織のお願いも久しぶりやし」
しかし、
人を威嚇するような見かけと、そのしゃべり口調とは正反対に、
彼女が吉澤と飯田に見せた優しさは、吉澤の緊張をほぐすのには充分だった。
- 301 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:30
- 中澤と飯田が話をしているのをぼーっと聞きながら、
吉澤は外を見た。
暗闇の中に、ぽつん、ぽつん、と窓から部屋の明かりが漏れている。
この光の集合体のどこかで、後藤と石川は吉澤を捜し、
いらいらしているのかもしれない、あるいは、泣いているのかもしれない。
泣かせないつもりだった。
- 302 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:31
- 大事な人だった。
今でも大事な人であることに変わりはない彼女。
それなのに、愛する人が出来てしまったのだという事。
はっきりさせると決めた、
もう二度と圭織には会わないと決めた自分の決意は、
しかし感情の前にあっけなく崩れ去り、
その結果が今後藤の側にはいないということなのだと思う。
しんどい?
そんな簡単な言葉にはならない。
久しぶりに圭織に会った時、自分の胸に浮かんだ喜び。
そのとき目の前に後藤の表情など浮かびはしなかった。
答えは既に出ていたはずなのに、
目をそらしていたのは、自分。
- 303 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:31
- 吉澤は自分が泣いていることに気がつかない。
苦しい、こんな思いがあることを始めて知った。
後藤と二人でいた、二人だけの思い出の中には
こんなに激しい感情の嵐が襲ってくることはなかった。
いつでも楽しくて、
明るくて、
気持ちよくて、
暖かくて。
時にすねる後藤の表情でさえもかわいらしいと思えた。
浮気した時に彼女が見せる涙を、
または、涙を流す彼女を、
宝物だと思っていた。
それは
愛情の証しだと思い、
さらにいとおしいと思った。
よしこ、と呼んでくれる彼女から
自分はどれだけ遠くに来てしまったのだろう。
- 304 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:32
- 「吉澤・・・?」
「なに?」
「どうして」
泣いているの、と暗に飯田の瞳が吉澤に訴え、その手のひらが頬に触れたことで、
涙は止まらなくなる。
それでも、もう泣かないと決めた。ずっと前に。
これはきっと、後藤のために流す最後の涙。
彼女への贖罪として。
もう二度と、彼女以外の人間のために泣くことはしないだろう、と
吉澤はぼんやり思った。
- 305 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:33
- 「けーたい・・」
「ん?」
「携帯、・・・学校に置いてきちゃったな、と思って」
「なんや、電話か?そこにあるの勝手に使ってええよ?」
「あー・・・、はい、ありがとうございます」
「後藤さんに、連絡をとりたいの?」
「・・・・・・・」
「圭織の携帯、つかってもいいよ」
差し出された携帯を手にとることをためらう。
最後の電話が彼女の携帯からでは、あまりにも酷いだろうかと、
その心に残る傷のことを少し思った。
だけど、ここまで何もかもを壊してしまった後なら、
そんなことは些細なことなのかもしれない。
自分が欺いてきたことに比べれば。
覚えているつもりはなかったけれど、
少し考えたらすぐに電話番号が頭の中に浮かんできた。
笑いがこぼれる。
こんなに近くに居た彼女の手を離して。
友達から離れて。
大事にしてくれた先輩を裏切って。
それでも手に入れたいと思う人の目の前で、
・・・彼女に別れの電話なんて、サイテー・・・。
- 306 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:34
- 2回もならないうちに電話に誰かが出たことがわかる。
深呼吸をして、もしもし、と問い掛けると
声の主にいきなり怒鳴られた。
「・・・・よっすぃ!吉澤!!!!なにやってんだよ!
これ、圭織の携帯だろ?はやくごっつぁんとこ帰ってこいよ。
いーかげん・・・っ」
はっきりしろ、という言葉を相手が飲み込んだのがわかって、
吉澤も言葉を紡いだ。
出てこないかもしれない、と思った言葉は、
意外とあっさりとその薄い唇からこぼれ出る。
「矢口先輩。・・・ごっちんにかわってもらえませんか?
・・・さようならはやっぱり、自分の口で言いたいから・・・」
「なっ、吉澤?」
「お願いします」
- 307 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:35
- 沈黙の後、もしもし、とかけられた懐かしい声は震えていた。
それは悲しみなのだろうか。
それとも裏切りに対する憎しみの表れなのだろうか。
いずれにしても、
あの暖かい声でよしこ、と呼ばれることはもうないのだ。
「ごっちん・・・」
「よしこ・・・帰っておいでよ。帰ってきてよぉ・・・」
「ごめん」
「いや、やだ、そんな人のところにいないで」
「今まで、ありがとね。ごっちんは最高の友達で、
・・・最高に大事な人だったよ」
「・・・・っ、聞かないからね!!!そんな台詞聞かない!
はやくかえってきてよぉっ!!」
「それは、できないよ。好きな人が・・・できたんだ」
泣き叫ぶ後藤を電話の向こうでなだめていたのはおそらく矢口先輩だろう。
変わって電話に出た石川が、「最悪・・・」と呟いた一言が
心の奥に響いた。
- 308 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:36
- ここで、自分ばかりが飯田の手を取るのはルール違反だと思う。
そう泣いたままの表情で飯田に告げる吉澤を、
飯田は手放せるはずが無いと言った。
飯田は中澤に吉澤を預け、携帯を持ったまま外へ出る。
心配しなくてもいいよ、という表情には余裕があった。
圭織にはこの結末がわかっていたのだろうか、と吉澤は思った。
「・・・もしもし、圭織だけど。・・・うん、矢口?
後藤さんは?」
『泣きつかれて寝てる。・・・吉澤の様子は?』
「ぼーっとしてるわ。でも吉澤は大丈夫だと思う。私もいるし、
・・・自分で出した結論だから」
『そっかぁ。・・・ごっつぁん、今日はうちに泊めるから、
心配しないで。吉澤を頼むね。圭織』
「矢口こそ。・・・ホントは関係ないのに」
『お馬鹿な後輩もつとね、苦労するんですよ、飯田さん』
「ふふ、そうね・・・」
『じゃあ、ね』
「うん」
- 309 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:37
- 矢口と飯田とは、実は飯田と吉澤が付き合い始めた頃からの知り合いだった。
飯田と一緒にいる吉澤を見て、矢口が驚いた表情をしたときが最初。
2度目に偶然会った時、
矢口の真っ青な表情を見て飯田から声をかけたのが始まりだ。
吉澤は矢口に知られていたことを、知らない。
飯田と話をしていくうちに、矢口の中で後藤よりも飯田のほうが
吉澤にはあっているのかもしれないと思い始めていたのは事実。
もちろん当人同士の気持ちがあってのことで、
それは大前提だけど、
圭織と出会ってから吉澤の浮気がなくなっていたこと、
吉澤が石川との関係にけりをつけられたこと
(きっかけは別にあったとしても、だ)
なによりも、吉澤の笑顔が増えたことに矢口は気がついていた。
後藤がダメだったというわけではない。
だけど、ふたりとも素直なようで、一番肝心な話が出来なかった。
お互いが大切すぎて、大切にしすぎるあまり、
道を誤り、相手を見誤ってしまったのだ。
矢口にとっては二人とも大事な後輩だからこそ、心から思う。
二人にとって、一番良いと思える道を二人が選択できるように、と。
- 310 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:39
- よしこが、よしこが、とわめく後藤を見て、
石川は最悪の事態が起きたのだと悟った。
よりにもよってこの状態で。
飯田さんから、といって出た電話の相手がよっすぃだったなんて。
彼女の携帯から別れの電話なんて。
ごっちんから逃げて学校を出たその足で、
飯田さんと会っていたなんて・・・。
わかっていたけど、目を離していた現実。
言葉で吉澤を縛ってきた、私や、ごっちんのしてきたことの結果なんだ。
そう、矢口さんはそれをわかっていて、
少し離れた立場でいたのかもしれない。
よっすぃのことを、心配して面倒をみてきたたった一人の先輩。
吉澤が慕ってきた理由もその辺にあるのかもしれない。
人の心の一番繊細な部分に触れる危うさをしっているから。
電話に出た時
言いたいことは尽きなかったけれど、
結局口に出せたのは「最悪」の一言だけ。
吉澤から帰ってきた「うん」の返事に、
自覚して行動に出たのだということがわかってよけいにいらついた。
しかし、石川に口を出す権利はなかった。
言葉で吉澤を縛ってきた、罰。
結果として後藤を一番傷つけることになった。
石川と後藤の前では、飯田さんが好き、と
決して口にしなかった吉澤の弱さに便乗した、石川と後藤の罰。
そのたった一言を、彼女から奪ったゆえに。
- 311 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:40
- ただ泣いている後藤を、
恋敵を、
好きな相手に振られた彼女を抱きしめる。
「今日はごっつぁんウチで寝かせてあげよう。梨華ちゃんはオイラと一緒の
布団でいいよね?」
「うん。・・・矢口さん、あしたごっちんはよっすぃに会うんだよね・・・」
「そうだね、まぁ、明日よっすぃが学校に来ればの話だけどね」
「来そう?」
「んー、微妙。・・・圭織次第って感じ」
「・・・矢口さん、よっすぃと飯田さんのこと、知ってたんでしょ?」
「・・・まぁ、偶然ね。吉澤はオイラが知ってること知らないはずだし、
偶然なんだよ、本当」
「じゃぁなんで、よっすぃを止めてくれなかったの?」
急に笑い出す矢口に、なんとなく石川は不機嫌になる。
しばらくしてごめん、と笑うことを止めた矢口はまじめな顔で石川に言った。
「本人が自覚してないのに、止めたほうがいいよ、って言うの、ありえなくない?」
- 312 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:41
- おそらく自覚したくはなかったのだろう気持ちも働いて、吉澤自身はぎりぎりまで
ただの浮気だと思っていたはず。
だからこそ、石川のことを吉澤に畳み掛けたのだ。
浮気と本気の違いを、自覚させるつもりだった。
しかし当の本人は事実浮気だと自覚していた石川を簡単に切り捨て、
後藤の元に戻ったつもりでいたのだから、とんだ茶番だったのかもしれない。
「おいらのしたことは梨華ちゃんを傷つけたかな。・・・ごめんね」
「ううん。それでも今は矢口さんと付き合ってて良かったって、思ってる」
「ありがと、梨華ちゃん。・・・あ〜、それにしてもなんでみんなそろって
あんなお馬鹿な子をすきになっちゃうんだろ」
「そんなお馬鹿な後輩の面倒を一番見てるんだから、矢口さんが一番わかってるでしょ?」
「・・・・・・まぁね」
- 313 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:42
- 自分だって立場が違ったらもしかしたら、と思わないことはない。けれど、
矢口はごめんだ、と思った。
自分だったら、少なくとも付き合っている間は自分だけをみてくれるほうがいい。
浮気だけはされなくない、そのくらいのプライドは持ち合わせているのだ。
こんなに小さな体だけれども。
優しい、だけど優柔不断で、繊細な彼女が、
弱い自分を隠すために選んだ自分の殻は、
世の中から見れば王子様のそれだった。
そういうことなのだろう。
後藤はその殻の内側にある彼女を知っていながら、
そんな彼女の内面を守ることに徹した。
その部分に触れることをしなかった。
しかし飯田は、
そんな彼女の内面こそを愛した。
違った二つの愛の形。
吉澤がなにを望んでいたのか、
答えを出したのは吉澤自身だ。
- 314 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:42
- 「ここまできたら、もうオイラ達にはなにもできないよ。
あとは、見守るだけ」
「そうですね」
寄り添う二つの影が見守っている彼女は、
夢の中でなにを思っているのだろうか。
- 315 名前:距離 投稿日:2005/03/21(月) 02:43
- 更新終了です。
- 316 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:49
- 大変お待たせしてしまって本当に申し訳ありませんでした。
待っていてくださってありがとうございます。
>293 名無飼育さま
ごっちん。
好きなのに、何でこんなに苦しんでるのでしょうね?
応援、よろしくお願いします(汗
彼女にはもう少しがんばってもらわないと・・・話が・・・(汗
>294 名無飼育さま
禁断症状!?ごめんなさいです。本当に(汗
では、禁断症状が今後出ないように、
もう少しがんばります。
きちんと最後まで終わらせます。
もう少しかかりそうですけど、気長に待っていただけると幸いです。
>295 名無飼育さま
本当に、本当に、ごめんなさいです。
これからしばらくは更新していけそうです。
がんばります。
- 317 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:52
- >297 名無飼育さま
ありがとうございます!
でも、いつまでもお待たせするのは申し訳ないので、
これからはもう少しがんばりたいところです。
懲りずに読んでいただけると嬉しいです。
>298 通りすがりの者さま
読んでくださって、ありがとうございます。
あんなに長いプロローグから読んでくださったのですね(汗
でも、とても嬉しいです。
もっと自分の思う世界を描いていけたら、と思います。
また、読んでくださいね。
- 318 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:54
- 本当にこんなに長く間があいてしまったのに、
待っていますといっていただけたのは本当に嬉しいです。
なので、がんばって更新していきます。
話の先で迷っているので、一週間に一度、というのは無理ですが、
2ヶ月に一度にならないように(汗 気をつけます。
今回だけは、予告しておきます。
- 319 名前:次回予告。 投稿日:2005/03/21(月) 02:57
- ごっちんとなっちに活躍してもらう予定です。
まだまだ、幸せは遠くにある予感。
ごっちんとなっち、がんばれ(作者の気持ち)
よっすぃ・・・。
自業自得だよね(汗
そんな話です。
梨華ちゃんと矢口さんは必要以上にいい人な話。(ん?
4月半ばまでには更新したい気持ちです。
- 320 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:57
- ・・・・・・
- 321 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:58
- ・・・・・・
- 322 名前:あろ 投稿日:2005/03/21(月) 02:58
- ・・・・・・
- 323 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/21(月) 08:48
- 更新お疲れ様です。
ごっちんには頑張って欲しいです。
- 324 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/24(木) 21:44
- 更新お疲れさまです。 まさかこんな事になるなんて・・、かなり意外です。よっすぃーとごっちんの行く末は如何に!? まったりと次回更新待ってます。
- 325 名前:誕生日おめ! 投稿日:2005/04/13(水) 02:04
- 花びらがひらひら風に乗る、
一番きれいな季節の始まりに、あなたに出会った。
駅の構内にたたずんでいたあなたの横顔に、恋をした。
あなたがその時友達と話をしていたオーディションに、
衝動的に私も応募してしまったのを、後で少しだけ後悔した。
芸能界という新しい場所で、
あなたと仲良くなっていく中で、
あなたは私以外の別の人に恋をしていったから。
- 326 名前:誕生日おめ! 投稿日:2005/04/13(水) 02:07
- 大好きだと、言いたかった。
私を見て、といってみたかった。
一度だけでもいいから、気持ちを伝えたい、と思った。
それなのに、あなたは私の思いに気がついているかのように、
私があなたに近づこうと決意するたびに、
私の手のひらからすりぬけるように、
どこか遠くの誰かのところに飛んでいった。
あなたはいつでも自由で、
だれよりも孤独だったのに、
けして私のところには来てくれなかった。
- 327 名前:誕生日おめ! 投稿日:2005/04/13(水) 02:08
- 「・・・好き」
私以外の人に、あなたが何度も呟くのを、
聞きたくもないのに何度も何度も偶然聞いた。
悔しい、悲しい気持ちで、
何度も涙を流したのに。
- 328 名前:誕生日おめ! 投稿日:2005/04/13(水) 02:14
- 「わざと・・・?」
「んなの、やきもち妬いて欲しいからに決まってんじゃん。
偶然何回も梨華ちゃんのいるとこで、そんなことするわけないでしょ」
矢口さんだって、圭チャンだって知ってて協力してくれたの。
ごっちんだって、安倍さんと付き合ってたのしってんでしょ?
悪びれずに私を抱きながら言うあなたは、
もう二十歳になって、
ますますきれいになった。
その横顔は相変わらず孤独にみえるけれど、
だけど。
「・・・全部、かっこつけてるだけだって今だったらわかるんだけど」
「え、なに?」
私に口付けてくれる時の優しさは、
私に好きだといってくれたあの時から変わらないから、
全て、どうでもいいことに思えなくもない。
「ちょっとむかつくけど・・・」
誕生日、おめでとう。
- 329 名前:誕生日おめ! 投稿日:2005/04/13(水) 02:16
- いしよし、誕生日スペシャル更新でした。
・・・ほんとうはよしごまにしたかったけど、
本編がアレなだけに、今年は見送り。
よっすぃ、誕生日おめでと〜!!!
- 330 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 12:38
- 吉絡み小説大好きです!
作者さんの小説おもしろい
- 331 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 12:41
- 俺は吉受けが大すき〜♪
- 332 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/13(水) 22:35
- 更新お疲れさまです。 よっすぃー一日遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます。 作品よかったです、誕生日はやっぱりいいものです。次回更新待ってます。
- 333 名前:あろ 投稿日:2005/04/18(月) 03:01
- 本編が一応完結したので、あげたいと思っていたところ、
矢口さんの一件があり、
どうにもこうにも、こんな気持ちで本編をあげることが出来なくなって
しまいました。
ので、矢口さんと吉澤さんの物語。
勢いで書いたものですが、
ご容赦くださいませ。
- 334 名前:あろ 投稿日:2005/04/18(月) 03:02
- 久しぶりのその人からの着信に、不思議な予感はあったのだ。
“これはよい知らせじゃない”
一瞬だけためらって、それでも取り上げた電話の先から、
尋常ではなく震えた声が返ってきたから、
あまりあたって欲しくなかった予感が正しかった事を知る。
吉澤はきつく瞳を閉じて、それから
相手に伝わらないように、ゆっくりと長く息を吐き出した。
- 335 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:04
- だいたい明日は彼女の二十歳の誕生日で、
だから彼女はがらにもなく、十九歳最後の夜に、
思い出の中に深く沈んでいたのだ。
仕事が終わり、自宅に戻ったあとに、
自室に戻って久しぶりに手にとったアルバム。
それには娘。にはいってから集められた、数々の思い出が詰まっている。
瞬間を切り取っただけの写真には、
しかしその時間をよみがえらせる魔力がある。
最初から眺めようと手にとって・・・。
- 336 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:04
- そう、ちょうど2002年5月、あの記者会見のあった数週間前になるのだろうか?
コンサート終了後に、珍しく全員が集まって、みんなで何枚も何枚も
写真をとってもらったのだった。
その中の一枚を眺めていたその時。
2002年の改革の中に、気持ちが戻っていた、その時。
- 337 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:06
- あの時も、こんな風に着信があった。
何か不自然な時間帯に、メールではなくて、電話。
不思議に思いながら電話を取って。
電話を切ってからはパニックしてどうにもならなくなっていた。
(ごっちんがやめるって・・・!!!)
動揺している自分をとりあえず落ち着かせようと、
一日に何回か繰り返すメールチェックを、
無意識のうちにしていたのだと思う。
その時に、保田から届いたメールの内容に、
吉澤は初めて涙を流した。
夜中に一人で嗚咽をこらえながら朝を迎えたのだ。
- 338 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:07
- あの時の苦しみを乗り越えるまでに、2年。
それはしかし彼女達のせいではなくて、自身の弱さのせいだと
吉澤はもう気がついていた。
長かった。
取った電話の先で泣き叫んでいた後藤も。
“がんばれ”と自分を励ましてくれた保田も、共に、苦しんだ。
それでも抜け出すことの出来なかった自分自身の弱さを、
認めることでそこからようやく「離れる」ことが出来たと、・・・思っていたのに。
- 339 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:08
- 震える声の相手をなだめ、自宅からタクシーを呼ぶために、電話を切った。
事務所にいる、
今からきて欲しい、と気丈に伝えようとする相手の姿勢に、
例えようもない悲しみが込み上げてきた。
メンバーが離れていく悲しみを、
また体験するのか、と思うだけで憂鬱になった。
でも、自分はもうサブリーダーという立場になって、
ここで留まっているわけには行かないのだということは良くわかっていた。
タクシーに乗り込んで事務所に向かうまでの道のりを、
吉澤は外の暗闇を見つめながら考えにふける。
車のランプも、夜のネオンも、
今日はなんだか苦しそうに見えるな、と目をそらしたい気持ちに襲われた。
それでも、必死で外を見つめつづける。
この苦しみから目をそらさないこと。
それこそが、自分が学んだことなのだと自身に言い聞かせながら。
最近ではほとんど動揺するようなことがなくなったのに、
こんなに胸騒ぎがするのは、やっぱり今回はただ事ではない、という
確信があるからだ。
20歳は波乱のスタートになりそうだと、
吉澤はまたため息をついた。
- 340 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:11
- その時、突然の着信音に我に返り携帯を見る。
石川からのメールだった。
おめでとう、という言葉に時間が12時を過ぎたことを知って、
少しだけ笑った。
今ごろ部屋でのんびりとまいちんとあやかと話してる予定だったのになぁ。
そう思いながら返信する。
「態度も体もでかいけど、これからもよろしくね」
打ち返したこのメールの本当の意味を、石川はきっと後で知るだろうけれど。
- 341 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:12
- 事務所についてから案内された先に矢口がいた。
「ごめん、よっすぃ、ホントにごめん・・・」
「なにが、あったんですか?」
聞かされる一つ一つの事実に、いちいち動揺する自分が情けない、と吉澤は思った。
矢口の付き合っている相手のこと。
写真がフライデーに掲載される予定だということ。
・・・矢口が妊娠している、ということ。
「今日、さっきまで話をしてたんだけど。娘。を・・・」
息を切って涙をこらえる矢口の姿に、
言わなくても先を察した吉澤の表情が暗く、そして曇る。
「辞めることになると、思う」
ごめん、よっすぃ。
こんな終わり方でホントにごめん。
リーダー押し付けるみたいで、ホントに、ごめんなさい・・・。
- 342 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:12
- さすがに笑って話を最後まで聞くことは出来なかったけれど、
話をしている最中に矢口の手が無意識のうちにおなかを何度もさすったのを見て、
何もいえなくなった。
そこにある命を捨てて、娘。に残って欲しいとは言えなかったし、
言うつもりもなかった。
決心するまでにいたる過程を聞いて、
それは吉澤の大好きな矢口自身だと思ったから、
納得せざるを得なかった。
何度も謝る矢口に、笑顔で、
大丈夫です、元気で、元気な赤ちゃんを産んでくださいね、
大丈夫、私たちは矢口さんの分までがんばりますから。
吉澤は何度も、何度も伝えた。
- 343 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:14
- 矢口が帰ったあとに、
吉澤とスタッフとでしばらく話し合いが持たれ、
メンバーが呼ばれる頃には朝になっていた。
話を聞いている最中に、すでに泣き出したメンバーもいる。
矢口がこの場にいないことで、何かを悟ってしまったメンバーもいた。
動揺しない方がおかしいだろう。
泣いているメンバーを注意深く見守りながら、またひとつため息をつく。
矢口に彼氏がいることをほとんどのメンバーが知ってはいたが、
こんな形で終わりが来るのだとは予想もしていなかったから。
とりあえず5期は石川に任せ、
6期の相手をしながら吉澤は、矢口のことを思った。
「田中、道重、亀井。あんたたちなら、がんばれるよね?
一緒に・・・がんばれるよね?」
5期、そして藤本は忙しい時期のリハをしっているから、
次のコンサートまでの激動を乗り切ることは可能だろう。
しかし6期は、切羽詰ったリハを知らないはずだ。
動揺したこの状況でどこまで自分を取り戻せるか。
それが自分自身にかかっていることを吉澤はよく知っていた。
先に立って引っ張っていくことが、どれだけプレッシャーのあることなのか。
そして、いつも自分の前に立っていてくれた矢口に、
心からの感謝をする。
- 344 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:14
- これは、恩返しだと思えば、自分には出来る。
矢口にまかされたのだと思えば。
やるしかない。
事務所のビルから出て、空を見上げる。
徹夜あけの瞳には朝日が痛いくらいに染みて、
涙がすこしだけこぼれた。
太陽のようにまぶしかった、私達の太陽。
ううん、なによりも、
娘。にはいったときから自分を引っ張ってくれた、
私の太陽。
その喪失感に気がつかない振りをして、
吉澤はダンスレッスンへと向かった。
- 345 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:15
- 矢口真里がいなくなった、最初のコンサート直前。
開演予定時間をだいぶ過ぎていたのにもかかわらず、
メンバーだけの時間を与えてくれたスタッフに、
吉澤は感謝を伝えてから皆の顔を見渡す。
四日前とは見違えるほどの表情に少し安心しつつも、
ここがスタートなのだと自分自身に、
そしてメンバーに言い聞かせた。
ステージに立つ。
目の前に見えるファンの何人が、自分を受け入れてくれるのか、
矢口を受け入れてくれるのかは、今は考えない。
何度も文面を考えて、
伝えるべきことはこれだけ、と決めた。
あとは、落ち着いて言葉にするだけだ。
- 346 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:16
-
・・・・・・
- 347 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:17
-
コンサートが終わってから、6期の三人をそっと呼び寄せた。
「よくできてたね。お疲れ。夜もがんばってね」
それから5期の4人のところに向かう。
笑顔でお疲れ、といえば4人ともお疲れ様でした、と笑顔で返してくれる。
この4人には、これで伝わっているだろう。
藤本のところに向かった。
「ミキティ、これからよろしくね?」
「こっちこそ、がんばろうね」
静かに、しかし優しい声で返してくれる藤本に、
吉澤は心から感謝する。
この状況で、藤本がいる、と思うことは、
自分にとってとても大きな助けだ。
- 348 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:18
- 石川のところに向かった。
「梨華ちゃん・・・?」
「あ、よっすぃ」
いま、矢口さんにメールしてたトコ。
この会場に来てたみたいよ?少しだけ。
すぐに帰ったみたいだけどね。
よっすぃ、お疲れ様って・・・・・・
「「矢口さん!!!!」」
その場に突然現われた矢口の姿に思わず大声を出した二人を、
矢口は苦笑しながらたしなめた。
他のメンバーが来るとまずいから。
今は、動揺してるだろうし。ね?
梨華ちゃんの卒業が済むまでは会わないつもり。
だけど、一つだけ言っておきたくて。
三人で空いている部屋へと向かった。
無言だったけれど、懐かしい空間だ、と吉澤は思う。
こんな風に三人でいることが、実はとても好きだったのだけれど。
- 349 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:19
- 梨華ちゃん、卒業、見送れなくてほんとにごめん。
大丈夫、矢口さんの気持ちはわかってるから。体、気をつけてね・・・
笑顔で会話を交わすふたりを、なんかかっけーなー、と思いながら、
吉澤はぼーっと矢口を見つめた。
しばらく話をしてから、
じゃぁ、矢口見つからないうちに行くから、と出て行こうとした、
そのときだった。
- 350 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:20
- 「・・・・っ」
吉澤がこんな風に泣くことを誰が想像しただろうか。
子供のように、しゃくりあげて、
そんな自分をどうにもコントロール出来ないことに、
よけいに困って、それでも泣きつづける吉澤を。
- 351 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:21
- 矢口は少し困って、それから吉澤に近づいた。
「よっすぃが泣いているの、矢口を責めてる訳じゃないのはわかるから、
おちついて。ね?」
うん、うん、と頭だけで頷きながら、吉澤は必死で言葉を伝える。
ただ、寂しいんです。
ずっと、頼りにしてきたから。
ずっと、支えてもらってきたから。
矢口さんがいないことが、ただ、寂しいんです・・・。
聞いていた石川がそっと吉澤の背中をさすって、
そうだね、矢口さんはよっすぃの支えでいてくれたんだよね、と
静かに相槌を打つ。
- 352 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:22
- でも、本当は、
寂しいって言いたいんじゃないよね?
それだけじゃ、泣かないよね?
もう一度、頭だけで頷いて、それから、吉澤は大きく息を吸った。
今日一日だけで、
どれだけ矢口さんに支えてもらっていたのか、よくわかったから。
本当に、ありがとうございました。
きちんと、言葉にしたかったんです。
そんなようなことを言ったと思う。
やっぱり泣いてしまってきちんといえなかったけれど、
矢口は一度も吉澤から視線をそらさなかった。
- 353 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:23
- 石川が飲み物を取りに行く、と出て行って、
二人きりになったときに、矢口がそっと吉澤に告げる。
今日のよっすぃの言葉、矢口は本当に嬉しかった。
矢口こそ、ありがとうね。
よっすぃが、矢口に大事な言葉をくれたから、
安心してるから。
もう、新しい娘。になったんだって、わかったからさ。
育てたかいが会った、と軽く笑って、
矢口は石川と入れ違いに出て行った。
- 354 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:24
- 残った石川と吉澤は、
ふたりで静かに涙が収まるのを待ちながら、
矢口の思い出話に花を咲かす。
ほんの少しだけ。
だけど、立ち止まる時間が必要だと、思ったから。
ふたりだけでもいい。
矢口さんを、自分の言葉で見送ることが出来たから、
あとはきっとがんばれるだろう。
吉澤はそう思った。
ここをでたら、もう次を見て歩くのだ。
その景色にもう矢口はいないけれど、
かけがえのない、5期6期といったメンバーがいる。
自分達は、きっとがんばれるだろう。
石川と二人、微笑みあって決意を無言のままに交わす。
手をつないで、その部屋を離れた時には、
きっと二人の表情には一点の曇りもない。
背負っているのは明るい、透き通った未来だ。
それがまやかしだとしても、
自分達はそこにある、と信じること。
そこにたどり着く、と信じて進んでいくこと。
それが、娘。ということだと矢口真里が教えてくれたのだから。
- 355 名前:きずな。 投稿日:2005/04/18(月) 03:26
- きずな。更新終了です。
ええ、ところどころおかしな表現があったり、
吉澤さん一人称だったりそうじゃなかったり(この辺はいつもだけど)
感情のままに書いた文章でごめんなさい。
でも、どうしても書いておきたかったのです。
こんなに吉澤さん泣かなくてもいいし、
石川さんが優しくなくてもいいんだけど、
矢口さんと吉澤さんの間で話があったと信じたい。
そんなわがままから生まれた物語なのでした。
- 356 名前:あろ 投稿日:2005/04/18(月) 03:29
- と、いうわけで。
レスさせてください。
いつも、本当にありがとうございます。
よしごまって最初に書いてるのに、
いしよしとか、やぐよしとか、ほんとちょっと・・・
ありえない展開になってしまった。
ごめんなさい。
- 357 名前:あろ 投稿日:2005/04/18(月) 03:35
- >323 名無飼育さま。
読んでくださってありがとうございます。
そうですね、ごっちん、がんばってほしいとこです。
んー・・・、次回をお楽しみに、という感じですが、
また読んでくださいね。
>324 通りすがりの者さま。
レスありがとうございます。
意外ととってもらえるのはとても嬉しいです。
よっすぃも、ごっちんも見守っててくださいね。
- 358 名前:あろ 投稿日:2005/04/18(月) 03:44
- >330 名無飼育さま。
読んでくださってありがとうございます。
吉絡み大好きですか?
作者も大好物です。なんてったって、吉ひいきです。
面白いといっていただけるのは恐縮です、でも、とても嬉しいです。
また読んでくださいね。
>331 名無飼育さま。
レス、ありがとうございます。
吉受け大好きですか?
作者がここで書き始めたきっかけは、あまりにも吉受けがないために、
自分で書くしかない、と思い至ったという・・・。
これからもせいいっぱい吉受けを書いていきます。
よっすぃ女の子ですからね。
また、読んでくださいね。
>332 通りすがりの者さま。
レス、本当にありがとうございます。
いつも、更新待っていますといってくださるのがうれしいです。
本編を完結させたので、次こそは本編の更新です。
最後まであと2〜3回の予定。
また読んでくださいね。
ちなみに、前回の誕生日おめ、小説と、
やぐよし「きずな。」は本編とは全くかかわりがありません。
念のため。
今月中に、本編更新します。
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/18(月) 19:02
- 泣きました。
ネタバレしちゃいそうで怖いので多くを語れませんが
とにかくありがとうございました、と言わせてください。
本編のほうも楽しみに待っております。
- 360 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:21
- 教室には、いつもどおりの姿があった。
おはようと声を掛け合う同級生達にまぎれて
自分の席につく。
深呼吸。
すぐ隣を見れば後藤と石川が視界に入ってくるだろう。
もう一回。
決心して視線を横に向けると、
石川が少し困ったような表情で吉澤に「おはよう」といった。
「おはよう。・・・ごっちんは?」
「朝一緒に学校まできたんだけどね。私がトイレに言ってる隙に消えちゃった」
「そっか。・・・昨日はごめんね」
「ううん。もう、決めたのね」
「うん。嘘ついててホントごめん」
「・・・・・・」
「ごめんなさい・・・」
「そんな・・・」
- 361 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:22
- まだ失うことを恐れているの、と言いかけたそのときに石川には唐突にわかってしまった。
今、吉澤が心配しているのは後藤じゃない。
石川梨華、つまり自分自身だということ。
気にする吉澤がおかしくて、
石川は少し笑った。
なんだよ、とふてくされて声を返す姿が、なんだか懐かしい、とさえ思った。
そんなに遠くに来たわけじゃないのに、
どうしてそんな風に思ってしまうのか、答えは一つだ。
吉澤自身に、誰よりも大切な相手が出来たから。
優先順位をつけるなら、間違いなく石川の前にあるであろう存在。
この間、大学に向けて走っている吉澤をみて思った。
吉澤は最近本当にきれいになって、
その話す口調を除けばだれも男と間違えるなんて事はもうないだろう。
もちろん吉澤が意識すれば、そう変装することは出来るだろうけど、
きっともうそんな必要はないだろうな、と石川は思った。
だから、吉澤の目が赤くなっているのにも気がつかないふり、だ。
時が来れば、彼女とその話が出来る日が来るだろう。
そんな気がするから。
- 362 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:23
- 今はまだ、お互いにしみる傷口を相手から隠すのに精一杯だから、
友達をするだけでも時間がかかるだろう。
今までのように振舞うふりを。
それでも自分を無くしたくないと思ってほしいという、
わがままなんだろう。
石川はあえてその痛みを受け止めよう、と思う。
後藤のために、吉澤のために、そして自分のために。
そんなことを考えて、なんだか少し嬉しくなる自分を感じた。
- 363 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:23
- 授業が始まってしばらくして、
吉澤が教室を抜け出した。
笑顔で話をした後だったから、石川は気がつかなかったのだ。
吉澤の表情の変化に。
突然教室を抜け出した理由にも。
後々、石川はこれを長く後悔することになるのだった。
- 364 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:24
- 「ごっちん・・・?」
「よしこ?ここだよ」
授業が始まってしばらくして、後藤からメールがはいった。
『話がしたいから体育準備室に来て』
その文面に、何か危険な様子を感じなかったわけじゃない。
だけど、吉澤の正義感はその直感を吉澤に無視させた。
きちんと話をしたいと思うのは、当たり前。
だから、ここは自分が出て行くべきだと思った気持ちを否定できない。
だけど、自分はきっと弁解がしたいだろうから、というその気持ちの弱さを、
逆に利用されたのだと後々吉澤は痛いほど思い知ることになる。
- 365 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:25
- 跳び箱の一番上に足を組んで座っている後藤を、
暗がりの中でようやく見つけるまでに15秒くらいかかっただろうか。
泣いているかもしれないと思ったその顔になにも浮かんでいないことに、
吉澤の背筋に冷たいものが走った。
「ごっちん」
「今まであんなに自由にしてきたのに」
「・・・っ」
「どうしてそんなに簡単に裏切っちゃうのかなぁ・・・」
「・・・」
「ごとー、馬鹿だからわかんないよ。ちゃんと説明してくれなきゃ」
「ごめ・・・」
「そんなの聞きたくない」
「え・・・」
「ごめんとか、もういいからさ。よしこのごめんは聞き飽きたし。
いつもあんまり反省してないんだもん。意味ないし」
「・・・・・・」
「だからね、教えてほしいんだ。どうして飯田さんなの?」
- 366 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:26
- 「それは・・・」
吉澤は後藤の受けるであろうダメージをとっさに計算して、
説明できない、と判断した。
黙り込む吉澤にやっぱりね、と呟いて、
後藤は跳び箱から降りる。
「ゆっくり、話したいからさ。今日、・・・学校終わったらごとーんちまで来てね。
もうこれで最後だから」
最後だから、といった瞬間少しだけ後藤の瞳がゆれたのを、吉澤は見逃さなかった。
なんだかとても悲しい気持ちになったけれど、
うん、と返事をしてとりあえず教室に戻ることにする。
結局後藤はその日、一時間も授業に出ることはなかった。
- 367 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:26
- 授業が終わって石川が、吉澤に声をかけるのをためらったのは、
急ぐ様子なのは飯田に会いに行くのだと思ったからだ。
あのとき話し掛けていれば、
今と同じ未来にはならなかったかもしれない、と
思わない日はない。
後悔は先に立つことはないのだ。
- 368 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:27
- 後藤の家に着いたのと同じくらいに、後藤が玄関を空けたので、
おじゃましますもそこそこに後藤の部屋にあがる。
つい三日前にもきた部屋なのに、
なんだかとても久しぶりのような気がして、少しため息が出た。
それでもいつものように、荷物を置いて後藤の顔を見上げた、瞬間だった。
- 369 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:29
- 「・・・っ、なにっ!?」
「ん?大丈夫だよ、体に害はないから」
シュッと何かを吹きかけられたのは本当に突然だったから、
驚いた勢いでほとんど吸い込んでしまったのだ。
そして、声に出せたのは、それが最後で。
猛烈な眠気に襲われて、吉澤は意識を失った。
- 370 名前:距離 投稿日:2005/04/20(水) 03:29
- 更新終了です。
- 371 名前:あろ 投稿日:2005/04/20(水) 03:35
- >359 名無飼育さま。
レス、ありがとうございます。
最後の短編は、作者自身が、自分の気持ちの整理をつけるために
かいてしまったようなものなので、
ありがとうございますといっていただけるのが恐縮です。
新しいスタートを切ってもらいたいと思うばかりですね。
本編も、また読んでくださいね。
- 372 名前:あろ 投稿日:2005/04/20(水) 03:36
- ・・・・・
- 373 名前:Mirai 投稿日:2005/04/20(水) 11:34
- 更新楽しみにしてました。
ごっちん・・・何をしたの?
続き楽しみにしてます!
- 374 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/20(水) 14:05
- ごっ、ごっちん?
続きがすごく気になります。
楽しみに待ってます。
- 375 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:39
- 夢の中にいるのかと、最初は思った。
- 376 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:40
- 時々見る、真っ暗な中から抜け出せない夢を、
またみているのだと吉澤は思った。
しかし、どんなにあがいてもその暗闇から抜け出ることは出来なくて、
徐々に恐怖が体を支配していくのがわかった。
深呼吸をして落ち着かせようと思うのに、
苦しくなっていく。
これは夢だから大丈夫、と自分を奮い立たせるけれど、
感じる恐怖を、理性でなかったことには出来なくて。
「う、あ、あ、・・・・っ!」
恐怖が唇から零れ落ちた、そのときだった。
- 377 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:41
-
「・・・・?起きたの?」
「ごっちん・・・っ!」
くす、と笑い声が聞こえる。
冷めた笑い声だ。
でも、後藤の声だとわかって、
吉澤は少しづつ落ち着きを取り戻す。
知っている存在が、身近にあるということに。
「ごっちん、・・・」
「目隠ししてるからね、真っ暗でしょ?いまはずしてあげる。
・・・こわかった?」
目隠しをはずされて、徐々に目が光に慣れてくると、
どうやらどこかのホテルの一室だということがわかってきた。
そして、自分が夢の中にいたのでもないとわかって、
また少し、落ち着きを取り戻す。
それと同時に、どうして自分がこんな場所にいるのか、
こんな状態なのか、状況を追って思い出し、不快な気持ちになる。
- 378 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:42
- 「なんでこんな所に、って思ってるでしょ?
なっちにね、色々相談したらここ、おしえてくれたんだぁ・・・」
じゃら、という音を立てて後藤は手にしているものを吉澤の目の前に見せつけた。
「なっ、・・手錠!?」
「首輪もあるんだって、すごいよね、最近のラブホってさ。
だってよしこはごとーの側からはなれようとすんだもん。
捕まえとくにはさ、これしかないよねーって、話」
「・・・・え?」
「本気で、ごとーから逃げようとするからだよ」
「や、ちょっと・・・まって」
「待ってたら、逃げちゃうでしょ?だから、ごとーはもう、待たないよ。
よしこの言うことなんて聞かない」
話をしている間、後藤は満面の笑顔だった。
一点の曇りもない、彼女の最上級の笑顔。
後藤にむけて吉澤が好きだ、とささやいた時に後藤からかえってきた笑顔と、同じ。
幸せそうな、笑顔。
- 379 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:42
- 「・・・・ごっちん、・・・ごめ」
「ごめんなさいは聞かない。そんなことする必要ないからね?
だって、よしこはもう飯田さんには会えないんだから」
後藤が自分の喉を人差し指で二度、とんとん、と叩く。
視線で自分を見ろと促されているのにきがついて、不自由な体でどうにかして自分の首に触れようとしたが、上手くいかない。
「手もつないであるからね」
「・・・・手も?」
「首輪、もうはめてあるの」
「・・・・・・・」
「かわいいね、よしこ。犬みたい。・・・自分ではずせないでしょ。
手も動かせないから」
「・・・・ごっちん」
「もう、逃がさないからね」
- 380 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:43
- 後藤は笑顔で吉澤の髪を撫でているだけだ。
どうしてほしいの?と聞いても、このままでいいの、と答えるだけ。
ぽつん、ぽつんと昔話を始める後藤を、吉澤はただ見守ることしか出来なかった。
- 381 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:44
- 「ねぇ、梨華?後藤さんのおうちと、吉澤さんのおうちから電話があったんだけど、
あんた知らない?ふたりとも帰ってこないんだって」
え?
驚いて母親の方をみると、電話を持ったまま困惑した顔で受話器に向かって頭を下げている父親がいた。
「・・・もうすぐ帰ってくるんじゃないの?」
「こんなに遅くまで連絡がつかなかったことないって。あんたが知らないなら仕方ないけど・・・」
「う〜ん・・・・。ちょっとわかんない、かも」
「そう、わかったわ」
二人ともいない、そのことに疑問をもたなかったわけではないけれど、
隣の家にお互いがいるとわかってすごす今日は、昨日よりもしんどいのかもしれない。
そう考えたら、吉澤は飯田のところかもしれないし、
後藤は、最近仲が良くなった安倍さんのところにいってるのかもしれないし。
二人の今までの関係を、お互いの親は知らないだろうから、
あまり騒ぎ立てるのも微妙だし。
そうして石川がとった行動は、二人に対して、
「連絡がないって、親が心配してるよ?連絡してね」
たった、その一言のメールだった。
- 382 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:45
- 「・・・・メール?」
「みたいね。まって、チェックしてみる。・・・梨華ちゃんだ。よしこのもみてみるね」
「え・・?」
「みるに決まってるでしょ。ちゃんと読んであげるよ。・・・飯田さんからのメール以外は」
「・・・・・・ごっちん」
「家に連絡しろってさ。ごとー、電話かけてくるね。心配しないで」
こんなに身動きの出来ない状況で外に出て行かれたら、
それでなくても不安になる。
後藤の方をすがるようにして見上げると、
後藤は少し笑って吉澤にキスをした。
大丈夫、すぐに戻ってくるから。
- 383 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:45
- その笑顔を見て、吉澤はしまった、と思った。
不安が顔に出た。
それが後藤を笑顔にしたのなら、
・・・これ以上笑顔で後藤に接するわけにはいかない。
もう、ごっちんのもとには戻らないって、きめたから。
そうして、この日以来、吉澤は笑わなくなった。
冷たい表情。
頑固な意思。
そして、それらはすべて、後藤の行動に拍車をかける。
- 384 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:46
- 「ねぇよしこ、おなかすいたでしょ?ご飯、買ってきたからね?
・・・食べさせてあげる」
後藤から与えられる食事は、後藤が丁寧に吉澤の口元まで運んでくれる。
手錠も、首輪も、はずしてはもらえず、
吉澤は無表情にそれを食べた。
「よしこ、これ好きなんだよねぇ・・・?」
「・・・最近、食べてない。飯田さんが作ったほうがおいしかったから」
「・・・そう?じゃぁ、今度ごとーがつくってあげる」
「いらない」
「・・・・・・」
- 385 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:47
- トイレに行くことは出来ないから、こればかりは限界まで我慢をしたけれど、
どうにもならなかった。
小さい方の用事は後藤の手を借りて済ませたものの、
もう片方はどうにもならない。
このときとばかりに無表情に吉澤の頼みを拒絶する後藤の前に、吉澤が涙をながして、
それでようやくトイレに行くことを赦してもらった。
吉澤は日が経つにつれ、怒ることも泣くこともなくなり、
後藤は日が経つに連れて、吉澤に辛くあたるようになった。
- 386 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:47
- 「ねぇ、・・・よしこ」
後藤は、吉澤が泣き出すまで、辛くあたることを止めず、
感情を吐き出したところで、笑顔を見せるのだった。
吉澤は、そんな後藤の行動パターンをわかっていて、
どうしても、妥協して笑ったり、泣いたりすることが出来なかった。
理解してもらいたいというのは、甘えなのかもしれない。
けれども、最後まで自分自身で付き合っていきたいと、
そう思うほどには、後藤のことを責めきれないでいたからだ。
ここで、後藤の言いなりになることは吉澤にとってあまりにも簡単だった。
けれど、それでは、後藤を更に傷つけるだけなのだと、
鈍感な吉澤にもそれだけはわかったから。
- 387 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:48
- 後藤のうちにある苦しみを推し量る。
彼女の華のある、かわいらしい笑顔を奪ったのは、
まぎれもない、自分自身だとわかるからこそ、
そのまま、ここに留まって欲しくはなかった。
しかし、時間は過ぎてゆき、彼女自身の力ではもう、どうにもならないと
吉澤が諦めざるを得ない状況を認めたとき、
吉澤自身の体力の限界もすぐそこまで来ていた。
排泄をしたくない一心で、ご飯を拒絶していた結果だった。
- 388 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:51
- このままの状態でこれ以上長引かせれば、後藤が犯罪者になることは
あまりにも明確だった。
起き上がれなくなってしまったら。
話すことが出来なくなってしまったら。
泣きたい気持ちをこらえて、覚悟を決める。
後藤を犯罪者には出来ない。
どんなに恥ずかしくても、
この姿を誰か自分達以外の人に知ってもらえば、
とりあえずここから出ることが出来る。
残っているわずかな自由と、
わずかな体力を計算し、
空腹に朦朧とする意識を奮い立たせて、
吉澤は知恵を絞った。
拘束されてからすでに、一週間は過ぎていた。
- 389 名前:距離 投稿日:2005/04/22(金) 01:51
- 更新終了です。
- 390 名前:あろ 投稿日:2005/04/22(金) 01:57
- >373 Miraiさま
この先、ごっちんには2つの選択肢があったのです。
迷った末、この道を決めました。
楽しんで読んでいただければ幸いです。
楽しみにしていただけたのが、とても嬉しいです。
>374 名無飼育さま
私のイメージしているごっちんのイメージが、
そのまんまでてる感じですが、いかがでしょうか(汗
ごっちんの未来や、いかに。
また、読んでくださいね。
- 391 名前:あろ 投稿日:2005/04/22(金) 01:58
- 次回更新は今週末まで、かな・・・。
ちょびちょびラストまでいきたいと思います。
- 392 名前: 名無飼育さん 投稿日:2005/04/23(土) 22:45
- 更新乙です。
ネタバレになりそうなんで感想は控えますが、続きが楽しみです。
- 393 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:16
- その日、後藤はいつものようにホテルからそっと外に出て、
ご飯を買いにいった。
食の細くなっていく吉澤を気にして、最近は遠くの店まで出かけて、
吉澤の好物を買っていることに、吉澤は気がついていた。
足音が遠くなっていったことを確認してから、
自由になる両足で、大きな音を何度もたてた。
体中に痛みが響く。
体力の落ちた体で、何度も足を打ちつける行為は、
残っている彼女の体力を容赦なく奪い取っていった。
- 394 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:17
- しかし、これで、こんな日は確実におわると吉澤は信じていた。
なのに。
- 395 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:18
- 「なに・・・・、してるの?」
冷酷に響く、後藤の声。
汗が額に浮かび、息が上がっている。
吉澤は、失敗したのだ。
- 396 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:19
- 「やだ、やだぁっ!!!なにすんだよっ!」
後藤の心には、何も響かない。
吉澤の悲鳴も、
心からの懇願も、
何も。
怒りに任せ、吉澤が着ていた制服を引き裂く。
なにも、いらない。
よしこを、隠すようなものは何も。
- 397 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:20
- ただ一枚の薄布が、
自分と彼女を隔ててしまった大きなもののような気さえしてきて、
憎しみを込めて、彼女から引き剥がした。
無残な姿になった制服と下着は、
吉澤の腕の部分でまとまっている。
両足は、手錠をつかってベッドヘッドに
別々に止められていた。
戻ってきた後藤が一番最初にしたことだ。
- 398 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:21
- 逃がさない。
「また逃げようとするなんて・・・」
乱暴な口付けに、
この生活ですっかり乾いてしまった吉澤の唇の端が切れて、血がにじんでも。
「なんか嫌な予感がしたんだよね」
あらわになった両手首が、手錠の痕で痛々しく青あざになっているのをみても。
「戻って来て・・・よかったよ」
後藤は表情一つ変えない。
- 399 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:21
- 凶暴な予感に、吉澤は震えた。
後藤をどうにもならないくらいにおかしくさせたのが、自分だとわかっていた。
それでも、このまま後藤を受け入れるということは、
本能的に無理だった。
しかし、
後藤の暗い欲望の予感を、
止められる人間は、その場に誰もいない。
- 400 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:22
- 響く吉澤の悲鳴は後藤の欲望にさらに油を注ぐ。
あらわになったその白い肌に、
後藤は容赦なく支配者の印をきつく、きつく刻んだ。
痛みに震える肌のかすかなうごめきが、
例えようもないくらい静かに後藤に喜びを与える。
- 401 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:23
- 眦からこぼれる雫にそっと口付けるのは、吉澤の好きだったやり方だ。
後藤は思い出して口付けるけれど、
近づく後藤にただ怯えるだけの吉澤が
後藤が見せた一瞬の憂いに気付くはずはなくて。
「やだ、ごっちん、痛いよぉ・・・っ」
いや、いやだとただそれだけを伝える、
普段の彼女からは想像もつかない高く、そしてかすれた声が
後藤の心にはなんと甘く響いたことか。
後藤はその欲望のままに、吉澤を翻弄した。
痛みにむせび泣く音を聞くたびに、
より激しく彼女の内を蹂躙し、その熱さに酔った。
- 402 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:23
- 「いや・・・っ」
痛みに意識が朦朧として、
涙にぼやけている吉澤の視界に、自分の体を好き勝手にしている
彼女の姿が映る。
こんなに、激しい感情を知らなかった。
もう少し早くお互いに気がついていたのなら、
こんな過ちを踏まずには済んだかもしれない。
何度も、何度も繰り返して思っていたことだったけれど。
ただ、悲しくて、
痛みとは違う涙がこぼれ出た。
- 403 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:24
- 彼女だけをいとおしいと思っていた時間が自分の中に確かにあったことを
吉澤は知っている。
だけど、もう、伝わらないのだということがわかってしまった。
この裏切りを
裏切りと呼ぶ権利が自分にないことは十分わかっているけれど、
きっと自分には赦すことは出来ないだろうと思った。
それほどに、彼女に心を赦していたから。
それほどに、彼女と共に過ごした時間をいとおしいと思っていたから。
赦せない、自分が悲しくて苦しい。
同じように苦しい、とあがいている後藤を目の前にしながら、
何も出来ないのが本当に悔しい、けれど。
「いたい、いたいよぉ・・・っ」
手放したい意識を、与えられる痛みで何度も揺り起こされた。
目の前に自分がいることを認めない吉澤に苛立つ後藤の気持ちが、
たったひとつそれだけが、
吉澤には伝わらなかった。
- 404 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:25
- どれだけ時間が過ぎたのか、
自分が何をしているのかももはやわからなくなって、
ただ、ぼんやりと肢体を投げ出しているだけだ。
手錠や足枷は既にはずされていたが、
抵抗する体力も気力ももはや吉澤には残っていなかった。
黒く、いつも輝いていた吉澤の瞳は、
いまはただ、涙で濁ってうつろに悲しみを写しているだけだ。
- 405 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:25
- 甘く辛い責め苦の末、
吉澤がようやく意識を手放そうとした直前に、
たった一言彼女の呟きがもれて聞こえてきた。
・・・よしこ、大好き・・・
悲しい響きに、
吉澤の心が動かされることはなかったけれど。
- 406 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:26
- 体力の限界がきていた吉澤は、
後藤がその行為をやめて冷静になったときには、
すでに意識を失い、ぐったりとしていた。
「よしこ、よしこ・・・・・・?」
後藤の瞳に、今、吉澤はどのように映っているのだろう。
- 407 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:26
- 更新終了です。
- 408 名前:距離 投稿日:2005/04/24(日) 00:27
- ・・・・・・・
- 409 名前:あろ 投稿日:2005/04/24(日) 00:29
- >392 名無飼育さま
レス、ありがとうございます。
この先は何度も何度も迷った末に、
二人が選んだ道だと思ってます。
がんばって、最後まで更新します。
- 410 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 22:26
- 後藤さん怖いですね。
- 411 名前: 名無飼育さん 投稿日:2005/04/25(月) 04:45
- すごい展開・・・
ふたりはどこへ行くの?
- 412 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/25(月) 14:19
- 更新お疲れさまです。 こ、恐いです( ̄□ ̄;) なんともリアルなんでしょうか? 次回更新待ってます。
- 413 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/05/11(水) 12:15
- (・∀・ )っイイ!面白いダス!
吉受けに大満足〜♪今後の後藤さんに期待
- 414 名前:名無し飼育さん。 投稿日:2005/05/15(日) 00:37
- つづき読みたい
- 415 名前:翡翠 投稿日:2005/06/04(土) 15:07
- 続き待ってます
- 416 名前:飼育さん 投稿日:2005/06/26(日) 12:53
- めちゃ続きが読みたいです
作者さん乙です。
- 417 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/07/12(火) 21:20
- こえええぇぇぇーーっ!
黒ゴマに萌えました!
石川さんはよっすぃ〜の味方?それとも・・・
- 418 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/08/15(月) 10:23
- 萌えました、作者さん続きまだですか?
- 419 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/08/20(土) 22:24
- 続きが気になります(´Д`;)よっすぃ〜はどうなっちゃうんでしょう…。
作者さん頑張ってください!!
- 420 名前:あろ 投稿日:2005/08/23(火) 22:01
- 更新がとても遅くなってしまって申し訳ないです。
待ってくださっていた方、ありがとうございます。
今月中に更新します。
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 14:08
- 続き、読みたいと思います。急がずに頑張ってください。
- 422 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 20:45
- あろ様の小説ダイスキです
頑張ってください
- 423 名前:あろ 投稿日:2005/08/26(金) 11:55
- 大変お待たせしてしまって
申し訳ないです。更新です。
- 424 名前:距離 投稿日:2005/08/26(金) 11:57
- 覚めない夢の中で、
吉澤はただ暗闇を歩いていた。
自分の回りいっぱいに手を伸ばし、
何か触れるものはないかと注意しながら、
ひたすらに出口を捜していた。
泣きたいほど心細い気持ちになったとき、
耳に聞こえてきた声に、
必死で応答する。
「・・・っすぃ、よっすぃ・・・・!!」
「・・・・あ・・・・」
よかった、気がついたんだね、
そう微笑んだのは、矢口だった。
「せんぱ・・・・い?」
涙のいっぱいたまった瞳に、
またこの先輩を泣かせるようなことをしたのだと思って、
ガラガラの声ですみません、と呟くと、
矢口が少し驚いて、
それから少しだけ笑って「ちがうよ」と言われる。
優しく撫ででくれる手のひらの冷たさが気持ちよく、
ゆっくり目を閉じると、
もう一度眠りについた。
- 425 名前:距離 投稿日:2005/08/26(金) 12:00
- うとうとして、目を覚ますと必ず矢口が側にいるから、
吉澤は安心してねむりにつく。
しかし、眠りが深くなろうとすると、必ず暗闇に捕われるから、
長く眠っていることが出来ない。
眠いのに眠れないのが苦しくて、
何度目かに目を覚ました時に、涙を流す吉澤をみて、
矢口が苦しそうに「眠れないの?」と問い掛けた。
吉澤は考える。
眠れないことはないのだ、ただ暗闇が怖いだけ。
しかし、長く考えることは出来なかった。
どうしてか、起き上がっていると涙がとまらなくなるから、
目を閉じていたい。
目を閉じたら、この苦しい気持ちの中に留まっていることはない。
それが眠りが深くなるまでの、ほんの短い時間であっても。
- 426 名前:距離 投稿日:2005/08/26(金) 12:05
- 吉澤が自分になにが起きたのか、自覚することが出来たのは、
後藤によって矢口の家に吉澤が運び込まれてから、
一週間経ってからのことだった。
「なんで、矢口さんの家に・・・?」
「ごっちんが、電話かけてきた。
圭織と矢口とで迎えに行って・・・、ごっちんは今、家にいるよ。
梨華ちゃんが一緒にいるから、大丈夫」
後藤が自分を家に帰してくれたのだと知って、
意外な気持ちで矢口を見た。
少し困った風に矢口は付け足す。
「吉澤が、目を覚まさないって・・・泣いて電話かけてきたんだ。
あんたたち、一ヶ月近くあそこにいたんだよ。
なんかやバイと思って、とりあえず圭織に電話して。
・・・祐ちゃんに来てもらって、うちに運んだわけ」
「圭織・・・?」
目を覚ましてから、初めて彼女を見た。
涙で目を赤くはらしている姿に、吉澤は謝ることしか出来ない。
それでも、大丈夫?と気遣ってくれる姿があまりにも彼女らしくて、
吉澤は初めて二人に笑顔をみせた。
- 427 名前:距離 投稿日:2005/08/26(金) 12:05
- しばらくお互いを気遣う会話を交わしたあと、
うとうとと眠りに落ちた吉澤をみて、
よかった、と泣き出す飯田を、矢口は静かに慰める。
これでようやく、
飯田と吉澤の恋が、始まるのだ。
寒い寒い冬の最中に、
それでも一つの物語が、始まろうとしているのだと、
吉澤が背負ったものに目をつぶって、
矢口は静かに自身も目を閉じた。
- 428 名前:あろ 投稿日:2005/08/26(金) 12:23
- 更新終了です。
>410 名無飼育さま
ごっちん、一途なイメージなんですけどね(汗
>411 名無飼育さま
この話を始めるとき、この展開は、もうきっちり決まってたんですよね(汗
ラスト、二人が出す答えを見守っていただければと思います。
>412 通りすがりの者さま
ごっちん、好きなんですけどね・・・(汗
最後まで(こんなにおそくなっちゃったけど)よんでいただければと思います。
>413 名無し飼育さま
吉受け大好きですよ(笑
うれしい限りです。
>414 名無し飼育さま
ほんとに申し訳ないです(汗
>415 翡翠さま
ごめんなさい・・・(涙
- 429 名前:あろ 投稿日:2005/08/26(金) 12:33
- >416 飼育さま
まっていただいたのに、ほんとに申し訳ないです。
ありがとうございます。
>417 通りすがりの者さま
石川さんも、吉澤さんも後藤さんもリアルでは大好きです。
・・・が、ちょっとごっちんの扱い微妙ですかね(汗
石川さんについては続きを読んでいただければと思います。
>418 名無し飼育さま
ようやくお届けできました(汗
待っていただいてなによりです。
ラストまで今月中に行きたいと思います。
>419 名無し飼育さま
励ましをありがとうございます。
ようやく続きをお届けできそうです。
よっすいには最後までがんばってもらいますよ〜。
>421 名無飼育さま
ありがとうございます。
ようやく最後までお届けできそうです。
読んでいただければと思います。
>422 名無し飼育さま
ありがとうございます。
最後まで、今月中にお届けしたいと思います。
読んでいただければ幸いです。
- 430 名前:あろ 投稿日:2005/08/26(金) 12:33
- 短い更新で申し訳ないです。
- 431 名前:あろ 投稿日:2005/08/26(金) 12:34
- 次回更新でラストです。
今月中に更新します(汗
待っていただいて、本当にありがとうございます。
- 432 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/03(土) 22:29
- 待ってます
- 433 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 11:58
- 今回は萌えない
- 434 名前: 名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 19:46
- ごちん・・・終わっちゃうの?
- 435 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:20
- 桜が春の準備を始める頃、
吉澤は久しぶりに学校にその姿を現した。
決められた登校日にも学校にはこなかったからだ。
後藤とはあれ以来会うことはなくその日を迎えたが、
吉澤は後藤と視線を交わすことはなかった。
後藤も吉澤の方を見ようとはしない。
不自然に思った同級生達が石川にこそこそと耳打ちしているのを
視線の端に捕らえながら、吉澤は席についた。
懐かしいチャイムの音、
久しぶりに聞いたけれど、それも今日で最後だ。
高校の卒業式が始まろうとしていた。
- 436 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:22
- 彼女と過ごした日々は、
吉澤の高校時代の宝物になるだろう。
最後に一緒に過ごしたあの一ヶ月を、赦すことは出来ないけれど、
それでも時間が経って、
高校生の自分を思い返したとき、苦い思い出と共に、
ほんの少しだけ懐かしい、暖かい気持ちも思い出せるだろうと、
吉澤は漠然と思っていた。
卒業式のあと、飯田と待ち合わせしている。
二人で過ごす甘い時間に思いをはせて、吉澤は体育館へと向かっていった。
- 437 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:22
- 「梨華ちゃん・・・」
「大丈夫。よっすぃから、ごっちんはよろしくって、言われてるからね」
ずっと自分から離れない石川に、
少しだけ気を使って後藤は問い掛ける。
石川の悲しい嘘を後藤は見破っていたけれど、
何も言うことは出来なかった。
あの日、矢口を呼び出して吉澤を連れ出してもらったあと、
しばらく矢口の家にいたら、飯田が現われた。
なにを言われるか、
ほんの少しの覚悟をしたのだけれど、
飯田の視界には自分は全く入らなかった。
ただ、吉澤だけを映している彼女に、
吉澤はもう自分のところからは永遠に離れてしまったのだと、
ようやく認めることが出来た。
自分がしたことは赦されることじゃないと、
痛いくらいにわかっていたから。
- 438 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:23
- 矢口は、一言だけ、後藤に言った。
「二人でいた思い出の時間まで壊したのは、吉澤じゃない、あんた自身だよ」
涙すら、でてこなかった。
- 439 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:24
- 体育館に向かう途中に、石川と二人無言で歩きながら、
吉澤との思い出を追う。
思い出されるのは、笑顔の彼女だけだ。
怒ったりしない、
泣いたりしない、
笑顔の・・・・・・。
「・・・っく」
「ごっちん?」
失ったもの、自分のせいで最後には手放してしまったもの。
その存在がどれだけ大きかったか。
我慢できない、耐えられるはずがない。
あの視線の中に、
自分がもう存在することすら赦されないなんて。
どうして。
どうして・・・・。
大切な幼馴染であり、大事な友人でもあった。
彼女のことを愛してはいたけれど。
- 440 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:24
- 「梨華ちゃん。ちょっと・・・ごっちんと話があるんだけど」
だから、
懐かしい声がすぐ近くで響いたって、
夢なんだって思うしかなかった。
「・・・ごっちん?」
顔を上げることが出来ない。
その表情に憎しみが浮かんでいたら。
あるいは、・・・嫌悪が浮かんでいたら。
自分は耐えることが出来ないだろう、と思った。
「なんで、泣いてるの・・・?」
優しい、優しい響き。
この低めの声に、なんど癒されてきたかを思い知る。
- 441 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:25
- 「・・・じゃぁ、そのままでいいから。ちょっときいて」
最後があんなになっちゃったけど、
ごっちんとすごしてきた思い出をダメにしたくないから、
わがままかな、って思ったけど、
やっぱり最後に話しておきたかったんだ。
・・・あれは、赦せないけど。
でも、最初はウチが悪かったし。
ごっちんと付き合ってて、ホント楽しかったんだよ。
だけど、・・・好きな人が出来たんだ。
きちんと話しなくて、ごめんね。
ごっちんも、いいひと、みつけて幸せになってね。
・・・ずっと一緒にいるって言った、約束守れなくてごめん。
後藤は結局最後まで顔を上げることが出来なかった。
だから、吉澤がどんな表情をしてるか、
最後までわからなかった。
- 442 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:26
- 足音が少しづつ去っていくのを聞いて、
その後姿だけでも目に留めようと顔をあげたのだ。
そのひとが自分を振り返ってるなんて。
「・・・バイバイ」
そうだった。
この人はこんな状況だって、
こんな笑顔が出来る人だったんだ。
- 443 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:26
- 吉澤はその場を去って、
後藤は一人、そこに立ち止まった。
大きく深呼吸をして、体育館へ向かう。
今日は、卒業式。だけど、
時間が経てば、前へ向かって進めるかもしれない。
苦しみが何度自分を襲っても、
あの笑顔を思い出せば何とかなるような気がしてきた。
季節は、春。
桜はまだ、これから満開を迎えるのだ。
花が開いていくように、
自分の先にも明るい何かを新しく見つけられればいい。
悲しみの中、
それでも後藤は心から、そう願った。
- 444 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:27
- END
- 445 名前:距離 投稿日:2005/09/06(火) 05:27
- 更新終了です。
距離、本編もここでおしまいです。
- 446 名前:あろ 投稿日:2005/09/06(火) 05:33
- >432 名無飼育さま
更新、できました。
まっていただいて、本当にありがとうございます。
>433 名無し飼育さま
萌えませんよね・・・。ごめんなさい。
こんなに短かったら話もなにもないっていう(汗
反省します。また、読んでいただければと思います。
>434 名無飼育さま
ええと・・・本編はこれで終了です。
読んでいただいて、ありがとうございます。
- 447 名前:あろ 投稿日:2005/09/06(火) 05:35
- スレの容量がいっぱいになるまで、
スローペースにはなるかと思いますが、
吉受けベースオンリーな短編を上げていきたいと思います。
今度は基本はsageでお願いします。
- 448 名前:あろ 投稿日:2005/09/06(火) 05:37
- 今まで読んでくださった方、
待って下さった方、
レスを下さった方、
本当にありがとうございました。
最後まであげることが出来たのはひとえに皆様のおかげです。
- 449 名前:翡翠 投稿日:2005/09/08(木) 20:43
- 完結おめでとうございます!!
最後泣けました・・・。自分が、彼に浮気されたらって思うと
ごっちんの気持ちもわからなくないし・・・。
純粋に本当によっすぃ〜の事が好きだったんだなって思います。
よっすぃ〜は、ごっちんの為にも飯田さんと幸せにならないとバチが
あたりますよね(笑)
短編も、楽しみにしてますね。そして、長編の次回作があればまた
よしごま希望・・・(爆)
- 450 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/14(水) 21:40
- 更新お疲れ様です。完結おめでとうございます。
なんだか凄く興味深い作品でした。
ありがとうございます。
また短編など更新しましたら拝見しにまた来ますね。
あと今後こそはよしごまを・・・なんてことはあえて言わず。
本当にお疲れ様でした。
- 451 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:14
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 452 名前:あろ 投稿日:2006/01/30(月) 15:11
- 現モーニング娘。のとある一日。
リーダー×娘。たち、ってことで。
微エロ&長短のため、sage進行します。
- 453 名前:久住&吉澤 投稿日:2006/01/30(月) 15:17
- 「吉澤さ〜ん」
「何?」
「あのね、実家から〜、これ、送ってもらったんです〜」
小春の手のひらには、彼女の手には少しあまるくらいの大きさの、
梅干の入ったビン。
吉澤を見上げる表情はいつもの元気そのものだけれど、
小さな体で一人先輩の中にはいってがんばっている、
彼女の苦労を吉澤は少しだけ思った。
「いいね、ウチにも食わせてよ」
「はいっ!おいしいですよ〜」
じゃあ今日レッスンが終わってから家においで、と
軽く小春の頭をなでながら、吉澤が言う。
今度は少し、はにかみながら、はいっ、と返事をして、
去っていく後姿は、何年か前の同期一人を吉澤に思い出させた。
- 454 名前:久住&吉澤 投稿日:2006/01/30(月) 15:19
- ホームシックなのかな。
見上げられた表情は、吉澤に
「ひとりになりたくない」を告げていた。
もちろん吉澤には差し伸べられた手を
振り払う理由が無い。
気分転換になればいいけど、と
そんなことを思いながら、吉澤はまた、仕事に戻っていった。
- 455 名前:久住&吉澤 投稿日:2006/01/30(月) 15:27
- 「・・・・・・で、それで〜・・・」
「・・・・うん、・・・・・うん・・・」
レッスン後。
家に来て、ご飯を食べて、話をして。
話しつかれた彼女がうとうとと、
眠りにおちたのは、もう真夜中で。
吉澤は自分も寝る準備を済ませてから、
そっと小春を抱きかかえ、ベッドに乗せた。
今までの自分だったら、と
吉澤は苦笑する。
何事も無く寝かせるなんて事無かったのに。
まぁ、まだ子供すぎだし、いくらなんでも、なんて、
自分の中に潜んでいる、彼女をいとおしいと思う気持ちに
気がつかないふりをする。
今は、まだ。
眠る彼女の額にそっと口付け、
毛布を片手にベッドサイドに背中を預ける。
一番若いメンバーを、
見守るそんなリーダーの一日。
- 456 名前:久住&吉澤 投稿日:2006/01/30(月) 15:29
- 更新終了。
今回のテーマは「吉澤さん」と娘。たち。
です。
- 457 名前:あろ 投稿日:2006/01/30(月) 15:31
- 前作からずいぶん間が空いてしまいました。
読みに来てくださった方、
感想をレスしてくださったかた、
本当にありがとうございました。
今回は長短編ですが、基本コンセプトは変わりません。
(後藤さん出てきませんけど・・・)
楽しんで呼んでいただければと思います。
- 458 名前:あろ 投稿日:2006/01/30(月) 15:32
- 次回更新は早いうちに。
短いので間を空けないで更新したい気持ちです(汗
- 459 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 23:57
- おおっ、新作が!
前作、すごく好きでした
今回も更新を楽しみにしてます
- 460 名前:小川&吉澤 投稿日:2006/02/02(木) 23:28
- テレビを見て、やいのやいのと騒ぎ立て、
お菓子代わりのサラダをつまみながら、DVDの品評会。
時間が騒がしく過ぎていく。
そんな中で、一瞬できた沈黙があった。
あ、やばい。
吉澤がそう思った時にはすでに、
麻琴の顔は目の前に振ってきているところで・・・。
「いいですか?」
- 461 名前:小川&吉澤 投稿日:2006/02/02(木) 23:34
- 返事なんて待ってたこと、一度もないじゃんか。
心の中で毒づくのもいつものことだ。
初めて、麻琴と「こんな」関係になったときも
かなり強引で、
それ以来、事を重ねるたびに、
ああじゃない、こうじゃない、と文句を付けていたのに、
コイツはめげない。
回数だけを積み上げて、テクニックも身につけた。
今では上手なだけにしまつにおえない、と
吉澤はなんだかふにおちないのだ。けれど。
- 462 名前:小川&吉澤 投稿日:2006/02/02(木) 23:39
- ぐるぐると快感の波に飲み込まれてしまう。
「・・・・っあ」
「もっと、声だしてよ」
イヤイヤと首を振るのも、涙が流れるのも、
わけがわからなくなって最後にはしがみついてしまうのも。
いつもいつも、なし崩しに「はじまって」しまうのも。
「っ・・・、まこと・・・」
「よしざわさん?」
「みんな・・・まことのせいだ・・・っ・・・」
「え、なんですか急に」
そう、抱かれるこの腕が、気持ちいいのも、全部。
- 463 名前:小川&吉澤 投稿日:2006/02/02(木) 23:40
- 更新終了です。
全員分いけるかな〜・・・。
そういえば、長短→超短 の間違いでした(汗
- 464 名前:小川&吉澤 投稿日:2006/02/02(木) 23:43
- >459 名無飼育さま
楽しみにしていただけることが。とってもうれしいです。
前回のように長くはならない上に、あんまり意味の無い話に
なる予定ですが(汗
気晴らし、息抜きによんでいただければと思います。
レス、ありがとうございます。
- 465 名前:あろ 投稿日:2006/02/02(木) 23:44
- なるべく早く次も更新します。
- 466 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/03(金) 04:00
- 「吉澤さん」とメンバーとの組み合わせはあるようでなかなかないので
更新が楽しみです
- 467 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/04(土) 23:13
- 「ガキさんの笑顔ってすきだなぁ・・・」
「そうですか!?ありがとうございます!新垣も
吉澤さんの笑顔好きですよ〜!」
あ、ありがとう。
少し照れながら、吉澤は返事をした。
ちがうんだけどな、と思いながら。
うん、ガキさんの笑顔は好きなんだ。それはホント。
でも、この言葉は、ガキさんの心に触れたくて投げかけた言葉。
流してほしいわけじゃなかったんだけど・・・。
- 468 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:07
- 明るい、屈託の無い笑顔、といのではなく、
まぶしく明るい笑顔。
その笑顔の裏で、キミがどれだけ涙をのんできたのか。
アイドルが同じようにみな背負う「誤解」の重さや、
「中傷」といったようなことを、
キミも同じように背負っていた。
そんなガキさんの強いところや、弱いところに、
ちょっと触れてみたいって、思ってみたんだ。
- 469 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:11
- 失敗したか、と軽く落ち込んでみたけれど、
そのあとの仕事に追われて、
吉澤は結局新垣とその日その後話をすることは無く別れた。
思い出したのは、夜、ホテルのお風呂に入っている時で、
そのときだってあまり深くは考えずに、
よし、ガキさんとちょっと娘。について語ってみよう、なんて。
お風呂上り、まだほかほかと体から湯気が立っていそうなくらいのときに、
新垣の部屋をノックしたのだ。
- 470 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:15
- 「ガキさ〜ん、おきてる?吉澤だけど・・・」
返事がないので、とりあえず、と押してみた扉は簡単にひらいてしまって、
帰って吉澤は焦る。
それでもそっと、部屋に入っていったところで、
ソファに横になっている新垣を見つけた。
その日はちょうど事務所で集合するようじがあり、
ファンレターや、プレゼントをみな受け取っていたのを
吉澤は急に思い出した。
新垣の手には届いたファンレターがしっかりと握られていて。
閉じている瞳からほほに、涙のあとが残っていた。
- 471 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:18
- 触れてはいけないものに、不用意に自分が触れてしまったのだと思って、
吉澤は手土産にと持ってきた新垣の好物をテーブルに置き、
毛布をそっとかけたあと、部屋を出た。
部屋から新垣にメールを送る。
それが、今の自分にできる精一杯のことだと、信じて。
『ガキさん寝てるとこ勝手に入っちゃってゴメンネ。
今日は一日お疲れ様でした。
また明日も、元気な笑顔を楽しみにしてるよ。
おやすみなさい。』
- 472 名前:新垣&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:20
- 弱さを土台にした、
芯のある笑顔。
笑顔の強さを、知ったリーダーの一日。
「ガキさん、好きだなぁ・・・」
つぶやく吉澤からは自然と笑顔がこぼれていた。
- 473 名前:あろ 投稿日:2006/02/05(日) 00:21
- 続けて更新します。
- 474 名前:亀井&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:24
- 香港のホテルから眼下に広がる夜景は、
なんだか吉澤を落ち着かなくさせていた。
これは仕事、と知らず知らずのうちに
体に力が入りすぎてしまうのは、
ここ最近の吉澤の悪いクセだ。
夜景を見てるときくらい、
何もかも忘れてしまえばいいのに。
自分でも思うのだけれど。
「吉澤さん、お茶ですよ〜」
- 475 名前:亀井&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:28
- のん気な声にハッと振り向くと、
そこにはいつもよりほんの少し「大人びた」雰囲気の
亀井がいた。
「・・・あれ?」
「扉にスリッパ挟まってましたよ。考え事してました?」
「ん、いや、ぼーっとしてただけ・・・・・っ!?」
唇に、突然おとされたキスは、
吉澤を動揺させた。
なのに。
「大丈夫ですよ」
ムリヤリあわせられた視線に、
全身が赤くなるのがわかった。
「大丈夫。・・・ね?」
えりにまかせてください。
- 476 名前:亀井&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:32
- 彼女がそういって自分をベッドにうながす。
そのあとを自分は奴隷のようについていくのか。
ぼんやりと考える。
だけど。
「大丈夫・・・」
なんだろう、亀井のいつもよりすこし低めの声は、
その日の吉澤の心に触れたのだと思う。
「・・・ふ・・・っ」
自分よりも年下で、
自分よりも小さい彼女の腕の中で、
吉澤は声を漏らした。
- 477 名前:亀井&吉澤 投稿日:2006/02/05(日) 00:36
- 「吉澤さん」
「吉澤さん・・・」
かけてくれる声があまりにも気持ちよくて。
もっと名前を呼んで、なんて、普段では他の人には
決して伝えない甘えを、声にする。
この快感のなかでなら、おぼれてもいい。
彼女の腕の中は、実はこんなにも安心できるのか、と
事後の気だるい空気の中、
吉澤は思ったのだった。
- 478 名前:あろ 投稿日:2006/02/05(日) 00:37
- 更新終了です。
- 479 名前:あろ 投稿日:2006/02/05(日) 00:39
- 今の時点で出来上がっていないのが道重さん(汗
難しいかな、と思ったけれど、
以外にすんなりと話が出来上がったのが田中さんでした。
ちなみに最初に出来上がったのは久住さんです。
- 480 名前:あろ 投稿日:2006/02/05(日) 00:43
- >466 名無飼育さま
吉澤さんは「いしよし」という大きな壁がありますよね。
あまりにもはまりすぎていて、
私はあまり他の組み合わせが思いつきませんでした。
いろいろあって、リーダーになった吉澤さんが、
今の娘。たちとどんな風に過ごしてるのかな、と
現実ありえないけれど、
ありえない現実を想像してみたくなったのです。
内容のある話ではありませんが、楽しんでいただければと思います。
レスありがとうございます(^^)
- 481 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/11(火) 00:39
- もう書かないんですか?
- 482 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/11(火) 04:21
- まだ期待して待ってまっす
- 483 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/23(日) 22:32
- 待ってます
- 484 名前:藤本&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:40
- 「やっぱ、上の雰囲気ってグループに出るんだと思うわけよ、ミキは」
「んー・・・そうかなぁ・・・そうなんだろうなぁ」
「ま、今のモーニング、悪くないと思うけど?」
何が不満なの、とオネーサンの顔で
藤本は自分のひざの上にのっている、
吉澤のほおを、そっとなでる。
「いや、・・・いいんだけど。たいした問題もなくて」
みんなかわいくて。
自分をしたってくれて。
吉澤さん、とたててくれる。
こんなにふがいのない自分を。
- 485 名前:藤本&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:43
- だからこそ、いまは余計にがんばらないと、と
思うのだけれど。
「ミキはね・・・、今のミキは、今のメンバーじゃなければ
いなかったと思う。6期ではいってるのに、
サブリーダーとかね。でも、よっちゃんがいなかったら、
ミキは娘。にもなれなかったよ」
何が不満なの。
もう一度そういって、笑いかけるその人を、
今度は吉澤が自分のほうに無理やり引き寄せる。
体をおる、そんな体制苦しいのだろうに、キスを拒まない。
実は、自分にだけは甘い彼女を、吉澤は、大好きだ。
- 486 名前:藤本&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:47
- 吉澤は、だから藤本だけには特別な言葉をあげるのだ。
「ミキティありがと。・・・大好きだよぉ」
「ミキも、よっちゃんのこと、好きよ」
激しくない、暖かい、彼女の繊細なところは、
吉澤に充分な眠りを与える。
吉澤が夢に落ちていく瞬間まで、
藤本は決して体を動かさない。
そんな思いやりがうれしくて。
・・・切なくて。
「好きだよ」
体をあわせるよりも、心を通わせる幸せ。
吉澤は、藤本のひざの上で、
そんなことをふと思った。
- 487 名前:田中&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:50
- 「吉澤さーん!」
「田中?なにしてんの、こんなとこで」
「買い物っスよ」
「あ、そう」
じゃあね、と吉澤が通り過ぎたいところを、
田中にがしっとつかまれて、
30分後、吉澤は田中の部屋にいた。
コタツの周りに腰を下ろし、
田中が飲み物を取りに行く。
一応気を使ってくれているのだろう。
がんばりやの彼女の、やさしいところ。
吉澤はいいなぁ、と思う。
- 488 名前:田中&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:53
- ふと、コタツの上に仮歌の入っているMDが大量に
つまれているのが目に入ってきた。
何度も何度も聞いているのだろう。
手持ち無沙汰でなんとなく、手に取ったMDは
「ザ☆ピース」。
「吉澤さんも、やっぱりそのころが一番ですか・・・?」
急に振ってきた声のトーンに、
しまった、と思いながら、冷静を装って答える。
「あのころはあのころ。
今は今。・・・でしょ?」
吉澤はたって田中の頭をクシャッとなでる。
「やっぱり悪いから・・・って、田中?」
今にもなきそうな彼女を見て、
吉澤がほうっておけるはずもなく。
- 489 名前:田中&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 10:55
- その一時間後には
吉澤の腕の中で、
すやすやと眠っている田中の姿があった。
(抱きついて泣き始めたのをなだめてたら、
たまたまそういう雰囲気になっただけだって・・・。
犯罪じゃない、犯罪じゃないよ・・・)
このギャップは罪だ、と
ため息をつく、吉澤だった。
- 490 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:01
- 「星を見に、いきませんか?」
何を思って道重が吉澤にそういったのか、
吉澤にはよくわからなかった。けれど、その誘いを断ることはしない。
自分が一番「落ちていた」時期に入ってきた6期の3人には、
実はひそかに負い目があった。
必要としたときがあったかもしれないのに、助けてあげられなかった。
「間違えて」目が合ったときだけ、しまったと思いながら、
手を伸ばした。
そんな時期が自分の中に確かにあったのを、吉澤は自覚していた。
待ち合わせの時間を決めた後、道重は
「吉澤さん、デートなんですからおめかししてきてくださいね」
と笑って去っていった。
- 491 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:05
- 仕事が終わってそのまま出かける予定なのに、
おめかしなんて無理じゃないか。
ぶつぶつ言いながらも、化粧をなおし、
ドライヤーをあて、
控え室で雑誌をよんでいると、道重が来た。
「やだー、吉澤さんお化粧してます?」
こいつ、と吉澤はため息をつきながら、道重と外に
出て行く。ひとりキャッキャと内容のない話をしながら、
道重は先を歩いていた。
捕まえたタクシーが連れて行ってくれたのは、
わずか5分先にある有名なビル。
道重はそのビルの屋上、の上に吉澤を導いた。
- 492 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:07
- 星と道重が言ったのは、ビルの光のことだったのか、と
なんとなく納得をしながら、二人でコンクリートの上に腰を
おろした。
静かだけれど、静かではない場所。
夜は特に、なんだか神妙な気持ちにさせるのだけれど、
道重は一人鼻歌を歌うままだ。
それならそれでもいいやと、
吉澤は少し音の外れる鼻歌を、
夜景を見ながら聞いていた。
- 493 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:11
- 「さゆのこと、みんなかわいいねって言ってくれるけど、
みんな好きでいてくれてるのかなって考えたら、
急に眠れなくなって。でも、えりも、れいなも、
すごくがんばってる。そんなことばっかり考えてたら
二人に遅れちゃうし。でも、・・・なんか怖くて」
突然道重が話を始めた。
一人じゃこんなとここれないけど、
えりとれいなとは来たくなかった。
5期の先輩たちには心配をかけたくなかった。
でも、吉澤さんならって。
吉澤さんはさゆのこと、嫌いにならないって、
そう思えたから・・・。
突然ごめんなさい、とつぶやく道重が、
なんだかとてもいとおしく思えて、
吉澤はそっと肩を抱いた。
こんな自分でも、
頼ってくれてありがとう。
心から思う。
- 494 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:14
- それからしばらく道重の不満や不安を聞いて。
後ろ向きな気持ちをひととおり(本当にひととおり、だ)
聞いた後、
吉澤は道重が自分の言葉を待ってくれていることに気がついた。
吉澤は道重を抱き寄せる。
「ひととおり、思ってることは話せたみたいだね。
じゃあ、道重は明日からは前向きにまたがんばるんだよ。
今の娘。のお姫様は道重なんだからね」
- 495 名前:道重&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:16
- はい、と返事をする道重は、
年よりも少し大人びた、女性の笑顔をみせたあと、
がんばります、と今度は元気よく、返事をして見せた。
立派に娘。のお姫様をやり遂げてくれるだろう。
その先は、これからのがんばり次第だ。
がんばれよ、若人。
年寄りじみたことを思ってみる。
吉澤の20歳の冬の出来事。
- 496 名前:高橋&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:20
- 「高橋?」
「吉澤さん・・・」
矢口「前」リーダーが突然娘。をやめたとき、
吉澤と高橋を除いて、みな泣き崩れていた。
その日、吉澤はひとり事務所に残され、
メンバーに大分遅れて自分のマンションに戻ったのだ。
春といってもまだ肌寒いころ。
冷え切った体で高橋はそこにいた。
吉澤のマンションの、扉の前に。
吉澤は、部屋に彼女を招きいれ、
話もそこそこに彼女を抱いた。
彼女がそれを求めたからだ。
たすけて、と。
- 497 名前:高橋&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:40
- 激しく、というよりも、
何も考えることのできないように、
静かに意地悪く吉澤は高橋を抱いた。
名前を呼ぶこともままならないくらいに、
高橋はその波に酔う。
たすけて、と
つぶやくように動く唇を、やさしくふさいで、
快感の、渦の中にそっと押し戻し、
その時間が終わることのないように錯覚を与えてあげる。
吉澤さん・・・。
吐息が吉澤の心を震わすのは、
決して快感のせいではないことを吉澤はわかっていたけれども。
- 498 名前:高橋&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:41
- 長い夜が明け、
朝を迎えるころには、
いつもどおりの高橋が、そこにいた。
「じゃぁ、また明日」
高橋は笑顔で去っていった。
- 499 名前:高橋&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:44
- 「で・・・、今日はどうしたの?」
紅白の前日。もう遅い時間。
高橋は吉澤の部屋の前に立っていた。
次の日、彼女は立派に歌い上げた。
それからも何度か高橋は吉澤を訪ね、
そのたびに吉澤は高橋を黙って抱いた。
吉澤は、黙っていても与えられることがある何か。
差し伸べられた腕をとって上げられることの幸福を
思った。
高橋愛が高橋愛であるために。
- 500 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:46
- 桜の花びらを見るたびに。
あるいは、
白いワンピースが翻るのを、見るたびに。
焼き芋を見るたびに。
「思い出すよ、紺野の事」
あるいは。
サッカーボールが転がっていくのを見るたびに。
- 501 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:51
- 「だってしってるもん!
吉澤さんだってのんちゃんやあいぼんが
いちばんかわいいんじゃないか!!
かわいい二人が、元気でいればいいって
あれだけいってたじゃないか!!」
初めて吉澤にくってかかってきたとき、
紺野の唇から、最後に漏れてきた言葉。
吉澤は、
紺野からそんな言葉を聞いたことが、
何よりも切なくて、悔しかった。
「あんた、本気でそんなこと思ってんの。
自分がそんなにかわいいの?
ののやあいぼんと比べないと、
安心できないの?」
自分ができないことをほかの人のせいにして、
満足?
唇からもれた言葉は、思っていたよりも冷たくて、
吉澤自身もはっとしたけれど、
とめることはできなかった。
他でもない、相手が紺野だったから。
- 502 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:53
- 隣には石川もいて、
紺野に一生懸命話をしようとしていたけれど、
吉澤には目の前の紺野しか見えていなかった。
それは、娘。であることの誇りと、
メンバーを守らないといけない、という気持ちも
あったかもしれない。
でもなによりも、
自分を貶める紺野の姿が、
悔しかったからだ。
- 503 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 11:55
- そのあと結局紺野は納得したのか、
落ち着いたのか、
すみませんでした、と「いつもの」笑顔で、
吉澤と石川に頭を下げた。
その後のガッタスでの活躍は
目を見張るものがあったし、
紺野自身も、楽しそうにしていた。
卒業、という話が出たときには、
紺野の中でいろいろなことに踏ん切りがついた、ということなのだと、
納得もしたのだけれど。
- 504 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 12:01
- 「で、今日は何・・・てか、
これは何?なんの冗談?」
目を覚ませば目の前には紺野。
吉澤はホテルの部屋でひとり寝ているはずで、
だから、ここには紺野はいないはずなのだけれども。
「吉澤さんに、私をしっかりとおぼえていてもらおうと思って」
にっこり笑う紺野の両手は吉澤をしっかりつかんで離さない。
さすがキーパー、なんて思う余裕を、
紺野にゆっくりと奪われていく。
「吉澤さんにありがとうをいいたくて」
口付けを。
ひらひらと舞う、桜の花びらのように、
淡い色の唇は、化粧をしているときよりもよほど艶っぽい。
「最後の最後に、私の一番近くに来てくれて、うれしかったです」
好きです、と体にふれるその手のひらは
シフォンのスカートを思い出させるほど心地よく、
やわらかく、暖かい。
- 505 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 12:02
- 「・・・っ、こ・・・、紺野・・・っ」
何も言わなくていいです。
ただ、覚えてもらいたいだけ。
紺野のこんな姿を知っているのは
吉澤さんだけだから。
娘。のなかで、吉澤さんだけだから・・・。
- 506 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 12:05
- 「・・ぁ・・・っ」
私も、吉澤さんの事、絶対に忘れません。
「や・・・」
だから、だから。
どうかがんばって。
娘。をそしてガッタスの責任を一人でおってる人。
「・・ん・・・っっぁあっ・・・」
どうか。
倒れてしまうことのないように。
- 507 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 12:07
- 吉澤の体中、
余すところなく口付け、手で追い、
そして奥深くを、蹂躙した。
その苦しみの中、
紺野の声だけに吉澤は酔った。
大事なメンバーの誰一人、
その手から離したくないと、
心のそこから願っていたその人に、
せめてやさしいさよならをと、
紺野が思っていることは、吉澤には伝わっていた。
- 508 名前:紺野&吉澤 投稿日:2006/07/31(月) 12:11
- おやすみなさい。
ひどくしてしまったかもしれない。
気を失ってしまった吉澤をベッドにきちんと寝かせ、
紺野は部屋を去った。
しばらくして、
吉澤は目を覚まし、
スンとのどを鳴らしてからシャワーを浴びようとして、
思いとどまった。
顔を洗って今日は寝てしまおう。
こんな悲しい日は、寝てしまおう。
ねぇ、紺野。
夢だったと、笑ってくる朝がくるかもしれないのだから。
- 509 名前:あろ 投稿日:2006/07/31(月) 12:12
- 更新終了です。
紺野さん編のみ、当初の予定から変更しました。
時間がたってしまったので(汗。
待ってくださった方、
本当にありがとうございました。
- 510 名前:あろ 投稿日:2006/07/31(月) 12:14
- 吉澤さん+メンバー編は終了です。
エロチックな話ですみませんでした。
- 511 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 00:17
- 各メンバーの気持ちが伝わってきてそれぞれとても面白かった
- 512 名前:sage 投稿日:2006/08/19(土) 18:37
- 吉澤受けはさいこーでした
- 513 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/19(土) 19:47
- >>512
sageという名でageてちゃ世話ないわな。pgr
”sage”はメール欄に入力すんだよ。
- 514 名前:あろ 投稿日:2006/10/10(火) 11:55
- >511 名無飼育さま
ありがとうございます(^^)
こんな想像があってもいいかなと、勝手に思って
つくってみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
>512 様
私も、個人的に大好きです。吉受け(笑
今後もちょこちょこと書いていきたいので、
また読んでくださいね。
- 515 名前:あろ 投稿日:2006/10/10(火) 11:57
- 新しく少し長めの話を始めたいと思っています。
吉澤さんメインで、現メンバーは皆出てきます。
よろしくお願いします。
- 516 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 11:58
- プロローグ
白いドレスが翻る。
髪が風の居場所を教える。
ドレスの裾をそっと押さえながら、
あなたは私を振り返った。
「なぁに?」
ドラマのような、映画のような台詞でも、
あなたが言うのなら自然で、心地よかった。
あなたの隣は、私の居場所。
揺るぐことはないと、ずっと思ってた。
うぬぼれではなく、お互いがそうであったと、
今でも。
今でも心から、あなたを想う―――――
- 517 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 11:58
- 美の妖精――フルートの三美――
練習室の一角で、
楽譜を床一面に広げながら、わいわいと、
話をしている三人組がいた。
さゆみ、えり、れいな。
彼女たちはいつも喧嘩ばかりで、
今日も今日とて例外はなく、
本人たちいわく「前向きな話し合い」を
展開している。
「だから、ちがうって・・・。フォルテの意味しらんと!?」
「フォルテをフォルテって理解するだけで、強く吹くことしかできない
れいなにいわれたくないもん。フォルテでも、ここはメインパートじゃないんだから、
こう・・・」
自分のフルートを手繰り寄せ、すっと口元に寄せる。
そのしぐさが絵になるあたり、さすが「三美」の一人といえるのだろう。
えりは、そっとフルートに音をのせ始めた。
「さゆみは〜、もっと、繊細な音がいいなぁ。もっときれいに出せるでしょ?」
えりにならい、フルートをとる。
れいなもれいなで、フルートを手にして、二人の音を聞き比べ、
ふんふん、と難しそうな顔をして楽譜を覗き込んだ。
「ああ〜・・・」
「・・・でね、ここはこう・・・」
会話も音色も果てしなく。
ブルーハーモニー楽団のフルート3人の毎日は、
音を楽しみ、会話を楽しみ、過ぎてゆく。
- 518 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 11:58
- 新人の葛藤―――始まりはいつでも苦難がともなう―――
「久住、今日はどこからレッスンなの?」
「今日はサックスからです〜」
毎日、毎日、音あわせお願いします、
指導お願いします、と
あちこちのパートに回ること、半年。
音感は良い。
久住の奏でている音色に惹かれて、スカウトは
何回も久住の実家に通ったのだと聞いている。
ただ、入ってきてわかった久住の弱点。
それは、
チューニングという概念がなかった事だった。
毎日、毎日、他のパートのチューニングを聞きながら、自らも音を合わせる特訓を、
続けている。
根性は感心するが、本人は楽しくないだろう。
「がんばれよ」
通りがかりの藤本が声をかけた。
笑顔は大事。
一度見に来て、とスカウトに言われてコンサートを見に行ったとき、
メインのだれよりも藤本の「音」に最初心を奪われた。
終わってもしばらく席から動けなくて、
大分遅くなってから駅に向かった久住は、
偶然藤本に駅であったのだ。
藤本は覚えてないだろう。
視線を彼女から動かすことができなくて、
しばらく見つめていたら、藤本は気がついてふっと、笑ってくれた。
その後すぐに別の電車に乗ってしまったのだけど。
この楽団に入ると決めたとき、覚悟を決めた。
「なかないで、がんばる。笑顔を忘れない。藤本さんに覚えてもらえるように」
誓いは久住に力を与えた。
今日もチューニングに意気揚々と向かっていく。
- 519 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 11:59
- 女神、と呼ばれる所以―――ヴァイオリニスト―――
ブルーハーモニー楽団。
ヴァイオリニストにはかつて伝説と呼ばれた美女がいた。
おそらく大方の楽曲に関してコンサートマスターをつとめ、
楽団は彼女の音をこよなく愛し、
指揮者もまた、彼女の音を愛した。
彼女もまた楽団を愛し、
楽団員を愛し、
音楽を愛した。
技術だけを上げるのなら、
楽団内にもっと上手に奏でる人材はいくらでもいたが、
楽団員の音に合わせ、指揮者にあわせ、音楽を奏でる天才は
彼女以外にはいなかった。
彼女の損失。
楽団は大きな傷を負った。
それは今から2年前の話。
- 520 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 11:59
- サブ、とよばれる天才達――――ヴィオラ・チェロ―――
雰囲気が和む、というのだろうか?
彼女たちの音色には、皆が癒される。
その技術には目を見張るものがあり、
その音色には心を惹かれる。
体を振動し、めぐる音色はそこに集う人々に
一時の一体感を与え、
音楽の扉を開く。
・・・と、言われている。
コンサートに限って言えば、だ。
「あいちゃん〜!!!」
「なん?」
「またぐちゃぐちゃになってるじゃん!!もう〜」
「りさちゃんは色々気にしすぎだと思うよ」
「まこっちゃんまで!」
だってここは、練習室なんだよ?
皆練習してるのはいいよ。
でも自分のことばっかで!!!
ここが一番汚いんだよ〜!!
だから金管は、とか言われちゃうジャン!
「そんなこと言う人間ここにはおらんよ?」
わかってるけど!
口ばっかり達者で!!
りさの怒りは募るばかり。
部屋中を片付けて回るりさを尻目に
楽器を吹き続ける三人―――あい、まこと、こんの―――
「あ、りさちゃん、今日あの店いくやろ?」
「え?あ、いくいく〜!!!」
「おいしーんだよね、うちもいく!」
「わたしも〜」
あそこのパスタ、こんどはクリーム味に挑戦するよ、とか
パスタはトマト系が王道でしょ、なんて。
りさの扱いもよく心得ている3人。
一日は当たり前のように過ぎていく。
- 521 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 12:00
- アンサンブル―――第一、第二ヴァイオリン―――
「ごとーはここから、やるよ?」
「・・・・・・・」
「え、こっちがいいの?なんで?」
「・・・・・・・」
「ああ、そっかぁ・・・、ごとーがそこ苦手なのしってんだね、よしこは」
「・・・・・・・」
「うん、わかるよ、大丈夫」
静かに、静かに音楽が流れる。
水のように、風のように。
自然に。
彼女の大好きな音楽。
そして、私の好きな音楽。
自然な音楽。
ただ、流れる。
ただ、流れるように。あなたのもとへ。
ヴァイオリンが好きでよかった。
ヴァイオリンを続けていて、良かった。
この音楽はあなたの元に流れるのだから。
「よしこ、だめだよ。ごとーの音をちゃんと聞いてくれなきゃ・・・」
おねがい、とつぶやくごっちんを、見上げてしまった、と思う。
「ほら、だめじゃん、よっすぃ」
「・・・・・・・」
ごめんね、と手話で伝えるのはもどかしく。
「じゃぁ、もう一回だね」
けいちゃんが、楽譜をめくってくれる。
ここには優しい時間がある。
でも決して時間が流れていくことはない。
わかっている。
時間を止めてるのは私。
早く良くならなきゃ、と思うのに。
「・・・・・・・・」
音色に音を乗せる。
ファーストのごっちんはいつでもまっすぐで、情熱的。
セカンドのけいちゃんは冷静に音を空気に乗せてくれる。
わたしはファーストでごっちんの隣で音を風にする。
風になれ、空気になれ。
あなたのそばに、いつまでもこの音色がとどまる様に。
- 522 名前:風に舞う 投稿日:2006/10/10(火) 12:02
- 更新終了です。
>518 サックス→フルートの間違いです。
ごめんなさい。
- 523 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/13(金) 14:32
- 楽しみに続き待ってます
- 524 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/20(金) 23:02
- 待ってました!今回の話も面白そうだ
- 525 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/05(日) 16:03
- 吉澤さんの役柄が新しい感じですね!どんな話になっていくのか楽しみです
- 526 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 23:46
- 待ってます
- 527 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/04(月) 23:28
- 待ってますよ〜
- 528 名前:あろ 投稿日:2006/12/16(土) 02:13
- こんばんわ。
遅くなってしまっていてもうしわけありません。
ちゃんとアップするので、
もう少し待ってください。
更新の際、きちんとまたレスさせていただきます。
ほんとにごめんなさい。
まっていただいてありがとうございます!
- 529 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/30(土) 15:41
- 楽しみに待ってます。
- 530 名前:風に舞う 投稿日:2007/05/25(金) 23:27
- 「吉澤さ〜ん!!!」
チューニングのレッスンが終わった後、
久住は必ず吉澤の部屋に通っていた。
久住のヴァイオリンの音はとてもきれいだけど、
時々チューニングがずれることと、雑になってしまうのが
欠点だった。
だけど、メンバーの誰もが知っている。
吉澤と久住がデュエットするとき、
久住の音がずれることはないのだ。
毎日チューニングが終わってからの1時間程、
久住は大好きな曲を吉澤とデュエットして、
気分転換をする。
吉澤の久住を見る目は、他の誰を見るときよりも、
厳しくて優しい。
後藤と保田は気がついていた。
「音楽以外に目を向けているのは久住といるときだけなんだよね」
久住は吉澤が立ち上がるための杖になってくれるのだろうか、と。
- 531 名前:風に舞う 投稿日:2007/05/25(金) 23:27
- 風に、音がのる、と吉澤は思うのだ。
久住の音は風に乗る。
時々だけど、他の誰よりも吉澤の音を風に乗せてくれる。
それは吉澤を何よりも癒してくれる。
きっと、彼女の元へも届いているはず。
努力を欠かさない彼女、ダレよりも一生懸命な彼女のことだから、
一生懸命な彼女の音に、必死に耳を傾けてくれているだろう、と思う。
ヴァイオリンを弾きながら、吉澤はふと笑う。
久住と目があうと、久住はにっこり、笑って深呼吸をした。
彼女のテンポは元気で本当に愛らしい。
この季節の風にふさわしい・・・
「久住!いい加減にしなさいよ、よっちゃん練習できないじゃない」
- 532 名前:風に舞う 投稿日:2007/05/25(金) 23:28
- 突然扉を開けて音を割られる。
藤本だった。
「よっちゃん、ミキとも音あわせて?」
吉澤ははっと目が覚めたように、仕方がないなぁ、と
ため息をついて笑った。
久住のほうを見て、またね、と口だけで言葉を放つ。
久住もわかっていた。
藤本さんが現れたらこの時間はおしまい。
レッスンに戻ること。
なぜか、藤本が頻繁に邪魔をするようになってから、
吉澤に言われたことだった。
正直ちょっとショックだったけれど、
言うことを聞いていた。
藤本のことは相変わらず好きだったし、
この時間を少しでも失いたくない、と思ったからだ。
- 533 名前:風に舞う 投稿日:2007/05/25(金) 23:35
- 「だけどさー・・・」
吉澤さんも、いつもいつもなんだから、
たまには小春を優先してくれてもいいじゃん。
藤本さんも、たまには小春を優先してくれてもいいじゃん。
どうしてもそう思ってしまう自分もいるのだけれど。
「あ、小春ちゃん」
「道重さん・・・」
声をかけてくれたのはフルートの有名トリオだった。
道重は、何かと小春の世話を焼いてくれる。
手厳しいところもあるけれど、
基本的にはこの先輩の事が小春は大好きだった。
時々、怖いときもあるけれど。
- 534 名前:風に舞う 投稿日:2007/05/25(金) 23:35
- 吉澤さんのところに行ってたんだね〜。そろそろ練習の時間?」
「そうです〜」
亀井が楽譜をひらひらさせながら久住に問う。
いわれて久住は気がついた。
レッスンの時間だったんだ。
そんなに早く時間が過ぎてたんだ、と。
「早くいかんと、遅刻するよ?」
田中がフルートを軽く振りながら久住に言った。
久住もそうですね、とあわててお辞儀をして、レッスンへ向かうことにした。
もう、夕方になる。
夜が来るのは早いのだ。
- 535 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 12:51
- まだ待っていてもいいですか?
応援してます。
- 536 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/11(火) 22:50
- 待ち続けます
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