百葉のヒトハ

1 名前:aru 投稿日:2004/08/31(火) 23:59
それは漆黒の空を駆ける星々の軌跡
それは蝉の死骸に群がる蟻々の本能
それは離れ離れになった仲間達の記憶

ふたりの少女は流れ星流れる夜空を見上げていた

愛する人の死を受け入れた者 受け入れなかった者 受け継いだ者

恋だの愛だのにこころ狂わされる人々

新たな獲物を狙う殺人者

黒猫を思わす黒衣の君

老人と少女


それは

『 百葉のヒトハ 』


2 名前:百葉のヒトハ 投稿日:2004/09/01(水) 01:13






3 名前:百葉のヒトハ 投稿日:2004/09/01(水) 22:29

6th leaf  『 青海の君 』

4 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/01(水) 22:53
いつもなら、外の世界など全く気にしない私だが、その日は何故だか違った。
何か予兆があったのかもしれない。
朝、目が覚めると、閉めきっていたカーテンを開け、外を覗いてみた。
眩しさに一瞬目が眩んだ。
小雨が降っていた。
外出するなら晴天よりも雨空が好い。傘で他人の視線を遮ることができる。
外出の必要を感じていたので、この天気をありがたいと思った。

手足を動かす度、年老いた身体が悲鳴を上げた。
日に日に関節の痛みが酷くなる。
手摺りに支えられながら階段を下りた。
玄関に差し込まれた新聞を取り、ダイニングルームでささやかな朝食をとった。
指先をインクで汚しながら新聞を捲る。
気に留まる記事は無く、食事もすぐに終えた。

部屋の隅に埃が目立ってきている。洗わなくてはならない衣服も溜まっていた。
今の朝食で買い溜めしていた食料が尽きたばかり、買い出しにも行かなければならない。
やるべき事がいくつもあったが、全てが億劫だった。
僅かな時間だが問題を先送りにして、いつものように書斎に篭ることにした。
5 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/03(金) 00:34
雨脚が強まったのか、窓を打つ音が大きくなった。
読み掛けのダーウィンを閉じ、溜息をつく。
内容が頭に入ってこない。
雨音が気に障るわけでも、ましてや老いの所為でもない。
頭の中に自ずと浮かんでくるのは、誰でもない、ハンナの顔だった。

丸々とした顔。赤みを帯びた艶のある頬。意志の強さを感じさせる黒い瞳。大きな口。
その顔に笑みが絶えることは無かった。
今、私の身に降りかかっている様々な問題は、全て、彼女がいなくなった事に起因した。
―――言葉通り、彼女はこの世からいなくなってしまった。
6 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/07(火) 22:08
長年、私の身の回りの世話を、家政婦であるハンナが担ってくれた。
失って初めて気づく大切なモノ。
彼女の存在は、まさしくそれだった。
彼女にどんなに助けられていたか、今更のように思い、寂寥の念に駆られた。

歩くにも不自由する身、老人独りの生活は何かと苦労するだろう。
たとえ先が短いとしても、明日の事を考えなければならない。
どうしたものか。
意にせず、再び溜め息が漏れた。
こんな時、ハンナがいてくれたら。
そうすれば、ハンナがいなくなってしまった事を他愛も無く解決してくれるだろう。

馬鹿げたロジックに自ら苦笑した。
しばらくすると、苦笑は自嘲に変わった。
老いてなお、生き続ける意味が、価値が、この私にあるのだろうか。

ハンナが聞いたら、何、馬鹿な事を言ってるのだと、笑い飛ばすに違いない。
7 名前:アポロ 投稿日:2004/09/10(金) 20:42
おぉ、新しいトコ発見。
8 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/11(土) 05:34
人それぞれにそれぞれの世界があり、その大きさを測るのに、
人生で関わりを持った人の数を定規としたのなら、私の世界は驚くほど小さいだろう。
ここ数年、私の世界を占めていたのは、家政婦のハンナ、クライン書店の店主、銀行、
およそこの三つに限られた。
実際には、大部分を占めているのは私自身だった。

自分が社会に馴染まないとつくづく思い知らされた少年時代。
人との接触を避ける為に私が篭ったのは、紙と文字から成る本の世界だった。
幸いにして、家には沢山の書物があり、
そのほとんどを読み尽くしても、町には二つの図書館があった。
友人を作ることなく、本の世界に没頭する毎日。
いつしか私はペンを執り、夢想とも妄想ともいえる、頭に浮かんでくる取り留めの無いものを、
誰に見せるでもなく、ただ、漠然とした何かの証として書き残し始めた。

運命の悪戯から、それが数冊の本になり、その印税が細々とした今の生活を支えてくれていた。

物理的でなく、精神的なものを世界の大きさの基準としたのなら、
私の世界は驚くほど広いだろう。
たとえそこに、自分しかいなかったとしても。
9 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/11(土) 05:37
居間の時計が11時を知らせた。
雨は相変わらず激しく降っている。
閉じていた本を開き、頭から再び読み始めた。

10 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/11(土) 05:39
久しく聞いていなかったノッカーの音が、雨音に紛れて幽かにした。
老いた耳を澄ます。
しばらくして、また数回鳴った。
空耳でないと判り、おもむろに立ち上がると、ゆっくりとした足取りで階下に下りた。

玄関の扉には灰色の硝子が嵌め込まれていて、外に立つ訪問者を黒い影として映していた。
小さな影だった。
足下の形から察するにスカートを穿いている。
つまり、女性なわけだ。
11 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/15(水) 01:46
そういえば、昔、雪宵の祭でクラスメイトが派手な女装をして、街中を練り歩いた事があった。
母親のぼろのスカートを穿き、胸に供え用のパンを入れ、
顔にはピエロの様に真っ白になるまでおしろいを塗りたくっていた。

彼らは私の家にもやって来て、私もそれに加わるよう強引に誘った。
しかし、私が頑なに拒むと、彼らは一様に白けた顔になり、すぐに帰ってしまった。
私は屋根裏の小さな窓から通りを眺め、楽しそうに笑うクラスメイトの背中を静かに見送った。
心の中は、後悔と淋しさでいっぱいだった。
女装に興味があったわけでは勿論ない。
ただ、誰かと意味も無く、愚行を犯す事に強く惹かれたのだ。
遠ざかっていく笑い声。
不意に涙が込み上げ、泣きそうになったのを今でも憶えている。

その頃の私は、人との関わりを拒みながら、一方で強く求めていた。
人が当たり前のように交わす友情や愛情に、人以上に憧れの気持ちがあった。
だが、そんな気持ちを抱えたまま、ずっとどうする事もできなかった。
12 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/09/15(水) 01:49
誰だろう。

記憶を探ったが、外の人物に思い当たる節が見つからなかった。
鍵を外し、扉を僅かばかり開けた。

10センチの隙間の向こう、追われた小動物を想わす潤んだ瞳があった。
13 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/11/07(日) 00:00



14 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/11/07(日) 00:05
図書館からの帰り道、街角を彷徨う一匹の黒猫に出会った。
その日も雨が降っていて、借りたばかりの本が濡れないよう、
シャツの中に入れて不格好に走っていた。

仔猫の震えた鳴き声がして、私は足を止めた。
親猫とはぐれたのだろうか、小さな黒猫が路地裏から顔を出して、
道を往き交う人々に向かって懸命に自分の存在を知らせようとしていた。
私のほかに猫に気を留める人はいなかった。雨降りの為、足早に通り過ぎていく。

猫が私を見た。
可哀想だと思ったが、思っただけで、手を差し伸べることはなかった。
私は猫に背を向けると、家へと再び駆け出した。
家に辿り着くまで一度も振り返らなかった。
玄関に立ち、そこで初めて後ろを振り返ったが、猫の姿が当然見えるわけがなかった。

それから数日、猫の鳴き声が耳から離れなかった。
借りてきた数冊の本はすぐに読み終えたが、内容をほとんど憶えていない。
本を返す為、図書館にまた足を運んだ。
あの日と同じ道を通ったが、路地裏に猫の姿はなかった。
15 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/11/07(日) 00:05



16 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/11/08(月) 23:53
少女だった。
扉の外、私の目の前に佇んでいるのは。

黒色のワンピースの服、その上に、同じく黒の外套を纏っている。
雨に濡れた黒髪が、寒さで赤くなった頬にぺたりと貼りついていた。
長い睫毛の上に、小さな玉となった雨粒が乗っかっている。
黒に近い茶色の瞳。
明らかに異国の血、東洋人の顔立ちだった。
傘は無く、庇からはみ出した背中が雨に打たれるままになっている。
足下には、使い古され、色がすっかり褪せた革のトランクが置かれていた。
17 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/11/11(木) 01:26
少女の肩が小刻みに震えていた。
ここ数日、冬の冷え込みが厳しさを増していた。
厚手の外套だったが、防寒の役目を充分に果たせていないようだった。

つぶらな瞳が真っ直ぐ私に向けられている。
目が合う。それを合図にするように、少女の口がおずおずと開かれた。

「あ、あの…、アルフレドさんでしょうか?」
少女の発した言葉が白く曇った。
「そうだが」
「あ、あの…、あたし、あの…」
言葉に詰まる。
イントネーションがおかしい。ひどく訛っていた。

「こんにちは。初めまして。私、タカハシ、アイといいます」
そう言って、少女は丁寧にお辞儀した。
今度は訛りが消えていた。おそらく、事前に考えていた言葉なのだろう。

タカハシ、アイ。
不思議な名前だ。
顔立ちと名前からして、ジャパニイズだろうか。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 21:39
これか そういえば同じ名前だ
19 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/12/02(木) 21:07
「突然の訪問、すみません。
あのう……、行き成りなお願いで申し訳ないのですが、
私をお手伝いとして雇っていただけないでしょうか」

思いもよらない言葉だった。

お手伝い。
その必要性を、今朝も思い知ったばかりだ。
冷たい食事。汚れた部屋。溜まった洗濯物。
家事には不慣れな上、体は言うことを聞いてくれない。
ハンナの代わりを探さなくてはならず、今日明日にも斡旋所へ赴くつもりでいた。

それにしても、これは偶然だろうか。
見ず知らずの少女が突然やって来て、お手伝いとして雇ってくれるよう申し出ている。
その疑問に答えるように、少女は言葉を続けた。
20 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/12/02(木) 21:12
「アルフレドさんの事はハンナさんから聞いていて…、
ハンナさんとは、前にお仕えしていたお屋敷で知り合ったんです。
ハンナさんがパーティーの臨時の料理係として来ていて。

お葬式であなたをお見かけしたんです。ずっと後ろの方におられましたよね?
ハンナさんの話から、もしかしたら、あなたがアルフレドさんではないかと思ったんです。
杖を突かれていましたよね。
お体の具合が悪いという事を聞いていたので、ハンナさんが亡くなって、
いろいろと不自由されているのではないかと思ったんです。

私、この前まであるお屋敷でメイドとして働いていたんですけど、
そこのご主人が亡くなられて、その所為で暇を出されてしまったんです。
身寄りも伝もないので、早く次の奉公先を見つけなければならないのですが、
斡旋所への登録も溢れているようで……。
そんな時、あなたのことを思い出したんです。
新しいお手伝いを探していらっしゃるのではないかと。
……それで、まだ新しい人を採用していないのでしたら、
よければ、私を雇っていただけないでしょうか」
21 名前:Dec.7.Sun. 投稿日:2004/12/02(木) 21:20
早口になったり、所々言葉に詰まったり。時折訛りが顔を覗かせ、聞き取りにくくなる。
それでも少女は一生懸命に言った。
言い終え、心配そうに私の反応を窺っている。

私が無言のままでいるのに不安を感じたのか、少女は視線をさ迷わせた。
沈黙が続く。
私は空を見上げた。
一面、どんよりとした灰色の雲に覆われ、雨が止む気配はない。
視線を少女に戻す。
前髪から垂れた雨水が頬を伝い、少女が涙を流している様に見えた。


あの猫は、あの後どうなったのだろう。
誰かに拾われたのだろうか。
それとも、飢え死んだのだろうか。


私の口から漏れた溜め息が、白く曇る。
「ここは寒い。とりあえず中に入りなさい」
少女の瞳が僅かに輝いた。
22 名前:. 投稿日:2004/12/02(木) 21:23




23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/02(木) 21:34
『シロヤギさんとクロヤギさんの話』

シロヤギさんとクロヤギさんはモーニング娘。の大ファンです。
ある日二匹は、「飼育」という娘。を題材にした小説の溢れるサイトと出会いました。
数々の小説に触発され、二匹は筆を執ることになりました。
シロヤギさんは甘々な恋愛物を書きたかったのですが、元来少年漫画を愛読していた影響で、どうしても硬派なバトル物しか書けませんでした。
クロヤギさんはバリバリのアクション物を書きたかったのですが、同人経験が長かった所為もあり、萌えに特化したCP物しか書けませんでした。
そんな二匹が偶然から互いのスレを発見してしまいました。
二匹は愕然としてしまいます。
「「こんなにも面白い小説があったのか!」」
二匹は顔も知らない作者に打ちのめされ、二度と筆を執ることが出来なくなりました。
こうしてまた二つ、飼育に放棄スレが誕生したのです。 

おしまい
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/06(日) 07:58
ミキティから不条理なイジメを受けるゆいゆい


川 ´^`)「なんでアタシをいじめるん?」

川VvV)「自分の胸に訊いてみな」

川 ´^`)「???」

Σ( ^▽^)「そっか、美貴ちゃんがアタシを嫌いな理由はそれだったんだね」

川VvV)「お前は違う」
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/12(土) 23:36

『充分に発達した科学技術は魔法と見分けが付かない』―――アーサー・C・クラーク

『充分に発達した胸が男共を幸せにすることをあたしは充分知っている』―――松浦亜弥

『充分に発達した最新のブラは服の上からでは本物と見分けが付かないらしいが
 貧しいことを充分知られているあたしが今から着けても大丈夫かな亜弥ちゃん』―――藤本美貴

(貧しいのは胸であってあたしの生い立ちではないことを追記しておく―――藤本美貴)


26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/05(土) 21:51
川VvV)「あやや…」
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/16(土) 14:21
モーニング娘。を7年間ずっと見続けてゲシュタルト崩壊を起こした矢口真里


( ´ Д `)「知さんって誰ですか?」

「矢口」という字をずっと見続けてゲシュタルト崩壊を起こした後藤真希
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/16(土) 23:42
川o・-・)「この場合、「矢口」を「知」と統一して認識しているわけですから、
ゲシュタルト崩壊とは逆の現象ですよね」
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/16(土) 23:46
( ´ Д `)「んあ?」
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/29(金) 22:00
( ´ Д `)「んあーーー!!」
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/30(土) 05:25
『ウサギさんとカメさんの話』

ウサギさんとカメさんは娘。小説作者です。
ウサギさんは速筆です。読者を待たすことなくひたすら書いてひたすら更新します。
カメさんは遅筆です。一ヶ月放置もざらで、飽きれて読者も離れていきます。
カメさんはウサギさんに対して手も足も出ません。頭は上がらないし、シッポを巻いて逃げるだけです。
そんなカメさん、それでも一歩一歩、地道に進んでいるのですという話。
教訓なんて無いし、求めてもいけない。

おしまい
32 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:34





33 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:38

 『義眼のムスメ』
34 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:39
意識を保ったまま眼球を取り出されるというのは、中々に得難い経験だ。
恐怖のあまり失禁するし、次の日には白髪がどっと増えていた。
今でも心の内では虎と馬が駆け回っている。
35 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:41
「君にお父さんを授けよう」
そう白衣の男は言った。
私は自分の父親を知らない。
遺伝子的に優れていたらしいが、今の自分は自身で築き上げたものだと自負している。
それでも何か、遺伝的特質を挙げろと言われたら、この愛嬌のあるサル顔かもしれない。

白衣の男が手に持っていた林檎を投げてよこした。
受けとめようと右手を出したが、右手は林檎を掠めることなく空を切り、
林檎は床に落ちて真っ二つに割れた。
「片眼だと遠近感が掴みにくいんだ。早く慣れないとな。―――こっちに来なさい」
男は私を椅子に座らせ、どこからか、手の平大の木の箱を取り出した。
蓋を開けると、白い布に何かが包まれていた。
男はそっと布を捲った。

白い球体。大きさはピンポン球くらい。
ガラスで出来ているのだろうか、表面はツルツルとした光沢を放っていた。
男はそれを私の右眼と対峙させた。
ドキリとする。
生物が本能的に感じる恐怖。
茶色の丸の中、漆黒の点がこちらを視ていた。
それは、眼球だった。
36 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:42
「オイッ、鬼太郎!」
突然、男が甲高い声を上げた。
「…何ですかそれ?」
「私のモノマネの十八番(おはこ)だ」
「???」
男の言うことは、相変わらずワケが分からない。
男は私の左の瞼を開くと、ぽっかりと空いた空間にそれを押し込んだ。
眼球を指で回転させ、黒の点が前を向くようにズレを修正する。
眼球が瞼の裏で動く度、何とも言えない奇妙な感覚が走り、身悶えしそうになる。
ぞわっと、腕に鳥肌が立った。
「最初の内は違和感があるだろうが、しばらくすれば慣れるだろう」
鏡を渡され、自分の顔をまじまじと見た。
一見すると元の顔に戻っていた。
しかしよく見ると、左眼はなんだかのっぺりとしていて、生気というか表情というものが感じられない。
私の不満げな顔を見て、
「なんだ、気に食わないのか? それは有名な職人が作ったものなんだぞ」
そう言われても、気に入らないものは気に入らない。
「ふん、こんなガラス玉―――」
私の呟きは、ドアの開く音にかき消された。
扉の奥から一人の少女が姿を現した。
37 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:44
「アンタの父親がビーカーに射精したとき、何をオカズにしていたか知ってる?」
そんなもの知りたくなかったが、色黒の少女は言葉を続けた。
「私の穿いてたパンツだよ。勃起(たた)ないって言うから、その場で脱いであげたの。
ちょっと汚れていたんだけど、その方が興奮するみたいで」
少女はウフフと笑った。
その笑い方が、何故か無性に癪に障った。

私が襲われたのは、UFAへの見せしめらしい。
眼球を抉るという行為は、そっちの世界では「敵対」と「脅迫」を意味するのだという。
迷惑な話だ。
確かに私はUFAの手により誕生した。だけど、とっくの昔に関係を断っている。
自らの手で自らの生活を送っていたのだ。ささやかな幸せを感じることのできる。
色黒の少女、私の先輩にあたるイシカワリカは――そう名乗った。
彼女はUFAと深く関わり、私の誕生の瞬間にも立ち会っていたらしい――大体の事情を説明してくれた。
私が襲われた経緯や、UFA、それを取り巻く敵対組織の状況。
驚いた事に、イシカワリカもUFAに敵対する組織に属しているのだという。
てっきりここはUFAの施設だと思っていた。廃棄された研究所を無断で使っているらしい。
白衣の男も元UFAの研究員。
どんな理由があったかの知らないが、彼も組織を裏切り、イシカワリカに協力していた。
38 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:45
「ウイルスですか?」
「そう、ウイルス」
なんだか突拍子も無い話になってきた。
「みんなが血まなこになって探している。オリジナルの5人の行方も含めてね」
リカの話によると、何者かの手により、UFAの研究所からあるウイルスが盗み出されたそうだ。
それが外に広まれば、人類の大多数が死ぬことになるという。
「犯人はアタシ達の中の誰かだと思うの。だから、バラバラになったみんなを探していた。
タカハシを見つけたのは偶然だったけど」
私には分からない。ウイルスなんか盗んでどうするの?
リカは言った。復讐だと。
UFAに対する、世界に対する。
リカは忌々しげに顔を歪める。リカもそれと同じ気持ちのようだった。
「もしかしたら、同じ事をアタシがやっていたかもしれない」
どうしてそこまで憎悪するのだろう。
私には分らないことばかり。
39 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:46
元の生活に戻るのは危険だし、どの道戻れないだろうから当分はここにいるようにと勧められ、素直に聞くことにした。
とは言ってもする事もなく、退屈な日々が続いた。
電力が辛うじて供給されていたが、放棄された研究所なのでほとんどのものが機能を失っていた。
私は与えられた狭い部屋にずっと篭っていた。

「おいっ、鬼太郎っ!」
「なんですか、父さん」
「こいつはひょっとすると、ぬらりひょんの仕業かもしれないぞ」
「なんですって!?」

(……目玉が父親? ナンだこりゃ?)

あまりにも退屈だったので、男が真似していた鬼太郎とかなんとかをネットで調べてみた。
ツッコミどころ満載のアニメーションだったが、観るうちにいつしかハマってしまった。
お気に入りの妖怪はヌリカベ。
大きな体に小っちゃな瞳が可愛いらしい。
40 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:47
一週間後、前触れもなくリカに呼ばれた。顔を合わせるのは数日振りだった。
「アンタに会わせたい奴がいる」
薄暗い廊下をリカの後ろについて歩いた。
私は以前から抱いていた疑問をぶつけてみた。
「どうしてUFAを憎んでいるんですか? 私達の生みの親ですよ」
リカは立ち止まり、私の顔をじっと見た。
「タカハシ…アンタ、セックスしたことある?」
「な、な、何言ってるんですか!?」
「真面目な話だよ。あるの? ないの?」
「………ない……です」
私は顔を真っ赤にし、消え入りそうな声で答えた。
「そう……」
リカはそれ以上何も言わなかった。再び歩き始める。
(訊いておいて、一体何なんですか!?)
41 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:49
ドアが開くと、そこには二人の人物がいた。中年の男性と少女。
「ヒトミ!」
リカは少女に駆け寄ると、抱きついてキスをした。
「おかえり」
「ただいま」
二人は顔を寄せ、小声で何か囁き合っている。
リカは今まで見せたことのない明るい表情をしていた。
ヒトミという少女が何か冗談を言ったようで、声を出して笑った。
(その笑顔が、ふと誰かに似ている気がした。……気のせいだろうか?)
二人の関係が気になったが、もっと気になるのはその横にいる男の方だった。
ブリーフ一枚しか穿いておらず、あとは裸。
手足を縛られ、目隠しされ、口には猿ぐつわを嵌められている。
身体の至る所にミミズ腫れの傷があった。傷はまだ新しい。

「紹介するよ」
リカはブーツで男のブリーフの下のブツを踏みつけた。
猿ぐつわされた口からくぐもった声が漏れる。
「こいつがアンタの父親だ」
42 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:51
初めて会ったときから感じていたことだけど…
言葉の端々から感じる、この人はあまり私を好きじゃないみたいだ。
どうしてなのかずっと疑問に思っていた。
その答が、私の父親だというこの男に秘められている気がした。

「オリジナルやセカンドの中には普通の性交方法で妊娠し、出産した人もいる。
だけど、あたし達は子供を産むことができないんだ」
リカは怒りと悲しみのこもった声で言った。
私たちの身体は、いわば、人類の数百年に及ぶ人体実験の歴史、その成果だ。
サード以降には妊娠する機能が備わっていない。
代わりというに相応しいのか、それとも忌まわしいのか、不老の処置が施されている。
私の誕生に立ち会ったというリカが、今でも少女の外見をしているのはそのためだ。
(単純な推測だが、それがリカの、同性愛に走るきっかけだったのだろうか)
43 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:52
「で、どうする?」
リカは私に問うてきた。
「どうするって、何がですか?」
「こいつだよ。生かすも殺すもアンタ次第」
「殺すって……どうして…」
「あなたは憎くないの?」
ヒトミという少女が初めて私に口をきいた。
リカに向けるそれと違って、ヒトミの私を見る目はとても冷たかった。
「私は……この手で自分の父親を殺した」
何事でもないように、ヒトミは言った。
白く、スラリと伸びた指。その美しい手を赤く染めたというのだろうか。…自分の父親の血で。

リカやヒトミ、白衣の男
彼女たちの意思、思想、思惑、決意
愛情、絶望、憎悪、復讐心
それらと同調するものが、私の中に一欠けらも存在しなかった。
自分がひどく場違いな場所にいる気がした。
44 名前:_ 投稿日:2005/08/01(月) 04:53
「その人は、私の父親ではありません」
「?」
何を言ってるんだと、リカたちは訝しむ表情をした。
「私の父親はここにいます」
私はおもむろに、右手を左の瞼にあてた。
瞼を捲り、隙間に指を入れて眼球を外す。
それをみんなに向けて掲げた。
「オイッ、鬼太郎!」
精一杯のモノマネをする。
シーンと静まり返る室内。誰一人、クスリともしない。
「……やっぱり私は面白くないですね」
やっぱり私には、笑いの才能はないようだ。
45 名前:_ 投稿日:2005/09/17(土) 01:37
○ 親父の背中

46 名前:_ 投稿日:2005/09/17(土) 01:42
Θ<zzz 睡眠中
47 名前:_ 投稿日:2005/09/17(土) 01:43
◎<END  
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:46
( ・e・)ノ「アヤちゃん誕生日おめでとー!」
从' 。')「???」
川*'ー')「・・・」(このガキィ)
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:49
ショートコント「赤頭巾ちゃん」

从*´ ヮ`)<ねえねえ、みきねぇの目はどうしてそんなに鋭いっちゃ?
川VvV)<知らねえよ、生まれつきだよ
从*´ ヮ`)<みきねぇのおでこはどうしてそんなに広いっちゃ?
川VvV)<知らねえよ、生まれつきだっつってんだろ
从*´ ヮ`)<みきねぇの耳はどうしてそんなにいいっちゃ?
川VvV)<石川がキモイこと言ったら即座に反応できるようになってんだよ
从*´ ヮ`)<みきねぇはどうしてそんなに鼻をかむっちゃ?
川VvV)<ハナが出るからに決まってんだろ
从*´ ヮ`)<ハナクソには気をつけるっちゃ
川VvV)<うっせぇ
从*´ ヮ`)<みきねぇの舌はどうしてそんなに長いっちゃ?
川VvV)<そりゃあ……子供にゃ教えられねえなあ ニヤニヤ
从*´ ヮ`)<ど、どういうことっちゃ???
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:52
从*´ ヮ`)<この前「蛍の墓」を観たけど、みきねぇのセツ子のモノマネ、あんまり似てないっちゃ
川VvV)<うるせぇ、みんなにはバレてないんだから黙ってろよ。つーか、オマエの亜弥ちゃんのモノマネより何倍もマシだよ。大体オマエが亜弥ちゃんのモノマネをすること自体おこがましいんだよ。それと…前田健? アイツがTVで亜弥ちゃんのモノマネをする度にブッ殺したくなるんだけど、どうよ。あたしだってまだなのにCMで共演してんだぞ。そうそう、CMで思い出したけど、午後の紅茶だよ午後の紅茶。あの男、亜弥ちゃんに後ろから抱きついたりキスしようと迫ったりするあの男。この抑えきれない殺意はどうしたらいい? 殺っちゃってもいいか? えっ?
从*´ ヮ`)<でも、あややが好きなのはもう一人の男の方っちゃ。「大好きっ」って言ってたっちゃ
川VvV)<うるせえうるせえうるせえなんも聞こえねー。あっ、うる星やつらのラムちゃんのモノマネは似てんだろ。ダーリン好きだっちゃ!
从*´ ヮ`)<観たことないだっちゃ
川VvV)<これ見よがしに平成生まれをアピールしてんじゃねえ
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:54
从*´ ヮ`)<ねえねえ、みきねぇの胸はどうしてそんなに…

川VvV)<お前が言うなッ!!
  ⊂彡☆));`ヮ´;)ノ < ふじもっと☆れいなっと
   パシーン
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:59
(マ_ネ)<「後浦なつみ」にもう一人加わり、新しいユニットができます

( ´ Д `)。。。(もう一人って誰だろう?)
从‘ 。‘)。。。(よかったぁ。正直この三人だけなのキツかったんだよね)
(●´ー`)。。。(四人になっても「なつみ」の名前は残して欲しいなぁ)

( ^▽^)ノ<石川梨華で〜す! みんなヨロシクね〜!
( ´ Д `)从‘ 。‘)(●´ー`)<・・・・・・
( ^▽^)<あ、あれ? どうしたのみんな?

( ´ Д `)。。。(梨華ちゃんかぁ…。よっしぃが良かったなぁ)
从‘ 。‘)。。。(石川さんかぁ…。みきたんが良かったなぁ)
(●´ー`)。。。(石川かぁ…。石後浦なつみ……後浦川なつみ……後石浦なつみ…)
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 02:02
(●´ー`)。。。(後石松なつみ……ごと石松なつみ……ごっつ石松なつみ……ハッ!)

(●´ー`)<いっそのこと「安倍なつみwithガッツ石松」てのはどう?
( ´ Д `)从‘ 。‘)( ^▽^)。。。(また安倍さんがワケ分かんないこと言ってる)

(マ_ネ)<ちなみにユニット名は「DEF.DIVA」に決まりました

( ´ Д `)从‘ 。‘)( ^▽^)(●´ー`)<デ、デフ…?(ヨメナイ…)   ←四人とも基本バカ

(マ_ネ)<この四人で紅白に出るからね(断定)

( ´ Д `)。。。(紅白で自分の歌、まともに歌ったことがない気がする…)
从‘ 。‘)。。。(今年もソロは無理か…。オリコン1位(断定)の「気がつけばあなた」という名曲があるのに…)
( ^▽^)。。。(やっぱ美勇伝じゃ無理なのかなぁ。岡田ちゃん、三好ちゃん、リーダーがんばるからね)
(●´ー`)。。。(去年の大晦日、何してたっけ?)

(マ_ネ)<念を押しとくけど、紅白までの三ヶ月間……何もするなよ

(●´ー`)<みんな気をつけようね!
( ´ Д `)从‘ 。‘)( ^▽^)<・・・・・・ (お前が言うなという目で安倍を見る三人)
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 02:13
川 ´^`)<あきらめるのはまだ早いで。もしかしたらバックダンサーとして、あたしのオッパイがNHKホールを揺るがすかも知れへん
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/16(日) 22:42
ひょうめんちょうりょく【表面張力】
液体の表面に働いて、内部に引っ張り込もうとする力。〔水滴が丸くなったり コップのふち一杯に入った水が、こぼれそうでこぼれなかったりする現象などは、この力による。また、この様な状態を「つるつるいっぱい」と言うが、福井限定の方言であり、決して標準語ではない〕
―――新明解国語辞典より抜粋
56 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:11
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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