カルアミルクU -EZ a GO GO mix-

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/06(月) 02:15
短編
諸事情によりあんまりレス返せません
2 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:17
夢を、見る。

ツアー先のベッドは、不快ではないけれどもいつだって冷たくて、
旅先の真夜中に目が覚めることもそう珍しいことではない。
ことに最近は眠りが浅くなってきている。
薄っぺらいシーツと毛布はとうの昔にはがされていて、隣には
つい先刻まで時間を共にした彼女が、穏やかな顔で寝息を立てる。

備え付けの冷蔵庫から音を立てないようにミネラルを引っ張り出すと、
一息で半分ほどを飲み干して、申し訳程度に置かれた鏡の前に腰を下ろす。

・・・・・・ああ、まただ。

そして私は、確定された過去と無限ループする未来に向かって、
一つだけため息をついた。
3 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:17
暗闇のなかに微かに映し出される自分の顔を見ながら、
夢の内容を反芻しようとして、やめた。
そうすることに意味があるようには思えなかった上に、どうにもならないことに
とっくに気がついているからだ。

膨張し続けていく不安と不満は、例えるなら膨らみ続ける風船のように
その都度形を変えながら決して止まることを知らず、そしてまた私はそれから
逃げることも叶わずに永遠に追いつめられ続けていく。

繰り返されてきた過去を思い出してみても、それは既に遠い記憶の中の
心象風景にしか過ぎず、現在の私の感情の動きを解析するのに何の役にも
立ちはしない。
4 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:18
港に着いた船から、旅人が降りていくように。
使い古した櫛の歯が欠けていくように。
一人、また一人。時には二人。
降りていった仲間たちの心の内は知れず。

事件でも事故でもなく、それがただのシステムと知れてからは極力冷静でいたつもりだった。
ブラウン管の中で少しばかり頭の足りない自分を過剰に演出し始めたのもその頃から。
その反動かもしれない。
オフは無口でいることが多くなった。
眠りが浅くなった。
柄にも無く考え込む時間が増えた。

そんな時に限って、彼女はそれに気づく。

「・・・・・・眠れないの?」

――― そして、ほら、今も。これ以上なく卑怯なタイミング。
5 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:18

「・・・・・・いや、別に」

私はそれだけ言うと、また鏡の中の自分に視線を戻した。
きっと彼女は、彼女自身が私の心を押し潰し続ける要因の一つであることを
理解していないのだろうと思う。
そのことを責めても仕方がないし、間違いなく訪れる未来を変えられないのであれば、
ただ自己満足を得るためだけに彼女の心に傷を残すよりは、黙っていたほうがよっぽどいい。

――― わかっている。わかっているけれど。

彼女のあり方はとても正しくて、疑問を差し挟む余地などありはしない。
システムを受け入れ、確定された未来とその後の未来に目を向けるのであれば。
それは降りていく者の都合で、残される者への配慮などないに等しいとしても。

それでも、問い詰めて泣かせて謝らせたい衝動に駆られるのを、止められない。
6 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:19
例えば今すぐ彼女を押し倒して、さっきまでと同じように、熱を共にし声をあげさせたとしても、
何の解決にもなりはしない。きっと彼女は戸惑いながらもそれに付き合ってくれるだろうし、
その優しさが恐らくはとても痛いものであることにも気づいている。
たとえ現在が彼女から始まった関係だとしても。

「・・・・・・何でもない。何でもないよ」

そっと目を閉じて、自分を落ち着かせるように私は呟く。
同時に、微かな重みを肩に感じ、冷たい手のひらが私の両腕を優しく掴む。

「何か、あるんだったら」

ああ、言わないで。お願いだから。これ以上私を困らせないで。
何かはあなたなのだから。

「相談、乗るよ」
7 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:19
頭の中枢がくらくらと眩暈をはじめ、彼女の優しさに全てを知る。

何かは、あなた ――― そう、気づいていた。
システムだの何だの心の中ですりかえてみたって、結論は一つしかない。
彼女がいなくなることを消化できていないだけなのだ。
膨張し続ける不安も不満も、全てはそこから来ていることに、目を背けたままで。

確定した未来を変える方法だって ――― 例えばこのまま二人でどこかへ逃げ出して
しまってもいいのだし ――― いくらでもあるに違いないのに。
消化できないままに抗う気にもなれず、ただ徒に夜を重ねるだけしかできない
自分への苛立たしさ。

終わりが見えている関係への、憎しみと哀しみ。
8 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:19
目を閉じたままの私の頬で、一筋何かが零れ落ちた。

ほんの少しだけ腕を掴む手に力が入り、けれども彼女は何も言わない。
俯いて軽く頭を振った私が立ち上がると、彼女の鼓動を背中に感じた。
手は腕から前へとまわり、少しだけ速くなった心臓の音に、自分がその行為に歓びを
感じていることを知る。
虜になっているのは、悲しいほどに自分。
振り返って彼女を抱き上げると、そのまま寝乱れたベッドへと放り投げた。

・・・・・・ああ、まただ。

そして今夜も何かを誤魔化していることに背を向けて。

私は夜に恋に堕ちていく。
9 名前:I'M A LOSER 投稿日:2004/09/06(月) 02:20
>>2-8 ヨシザワとイシカワ
10 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:40
例えば不意に見せる表情に戸惑ったり恋愛感情に似たものを感じたり。
誰かが普段見せないものを見せると、見せられた側の人間は
妙に焦ったりそこに違うものを見たり。

猫の目のようにくるくると変わり続ける表情を見るのは
嫌いではないのだけれど、決してそれが自分のモノになるとは
思っていないから、今日も楽屋の鏡の前で私は彼女を
眺め続ける。
11 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:40
小さな身体は時に誰よりも大きく見え、追いかけ続ける私たちの
揺ぎ無い目標であり、そのフットワークの軽さは時に私たちの
背中を蹴り上げて追い立てる。

遠く遠く、もっと遠くへ。

そんな彼女に依存し続けているのは、きっと多分に私たちが不甲斐ないせいでは
あるのだけれど、決して気分が悪いものではない。

だからこそ、たまに見せる物憂げな表情がなんだかとても切なくて、
隣に座っているだけでどこか落ち着かなくなる。
そういうときに話しかけても、たいていはにっこり笑って何も無かったように
返事を返してくれるのだけれど、たまに十回に一回くらい、まるで聞こえなかったかの
ように目を閉じていることがあったりして、話しかけた方はひどく不安になる。
12 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:41
この人はたぶん、物凄く欲深いのだと思う。
今いるところよりも、明日辿りつくところよりも、どこか別のところへ向けて走っている気がする。
ゴールを見失ったマラソンランナーのようにそこらへんを走り回って疲れ果てて、そのくせ
落ちているもの、目に入ったものを全部自分の懐にしまおうとする。

この人は一体何が欲しいのだろう。
この人は一体何になりたいのだろう。

それは今はいない人の背中かもしれないし、自分の理想像かもしれないし、
もっと他の別の何かかもしれない。

「矢口さん、今何か欲しいものってあります?」
13 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:41
そう言って尋ねると、彼女は少しだけ首を傾げて不思議そうな顔をしたあと、
にっこりと笑って答えた。

「んー、いっぱい」

今以上にこれ以上に。
抱えるものを増やしてどうしようというのだろう。
このままいったらいつか、その不安が私の心を締め付ける。

「それじゃ」
「何かヨシザワにあげてもいいものとかってありますか?」

彼女はやっぱり悪戯っぽく笑って答えた。

「髪の毛一本だってあげない」

なぜかその答にホッとして、未来のリーダー様がケチくさいことで、
なんて笑いながら私も応える。
14 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:42
所詮私たちはそんなに世間を知らない若造で、だからこそ凛とした
大人に憧れるのだけれど、そうそう身近にカッコいい大人がいるわけでも
なくて、いつだって不安に押し潰されそうになっている。

近くで見守るしかできないけれど、彼女がその背中を私たちに見せているうちは、
大人しく彼女の後ろについていこうと思う。

そして彼女が自分の弱さを私たちに見せるようになったときは、私たちが強く
なった証であると同時に、その姿に少しだけ寂しくなるんだろう。
15 名前:やさしい気持ち 投稿日:2004/09/06(月) 02:43
>>10-14 ヨシザワとヤグチ
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/06(月) 11:15
期待してます。頑張ってください
17 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:03
何となく、彼女を見ていることが多くなった。
理由があるといえばあり、ないといえば別に何もなく。

TVの反対側に私がいた頃から何となくは気になっていたけれども、
当時の私は彼女と同期の小さな女の子に視線が向いていたから、
彼女はただ大きな不思議な人、という以上の印象がなかった。

時の流れは不思議なもので。
あれから何年かが過ぎて。
18 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:03
後輩かつ同僚な立場から見ていても、何かが変わった気がする。
それは大切な同期がいなくなってしまったり、可愛がってた
後輩がいなくなってしまったり。
彼女自身がいなくなってしまったり。

よくわからないところで決まるよくわからない事情を、
彼女はとても割り切って眺めているような気がする。

その態度はとても大人に見えて、たまにもっと表に出せばいいのにと
思ったりもするけれども、私から見るととても頼もしい背中で
あったりする。
19 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:04
一言でいえば、カッコいい大人。
仕事も恋愛もプライベートもオフィシャルも。

こうやって楽屋で本を読んでいる姿さえも、ファニーフェイスな
私にはどうやってもたどりつけないカッコ良さだったりする。

だけど、ただそれを眺めているだけというのも芸がないと思ったのと、
私も同じことができるんだよって伝えたくなったので、
ちょっと彼女が困りそうな質問をしてみようと、少しばかり足りないアタマを
ひねってみた。

「――― どこにキスされると嬉しいですか?」
20 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:04
ありきたりなんか場所なんか許さない。
そんな感じで、本を読む彼女の後ろから耳元にささやきかける。
彼女は少し呆れた様子で、私の質問を聞き流した。

「それを訊いて?何か楽しいことでもあるの?」
「お望みなら」

彼女は大きく肩をすくめて一旦閉じた本を開くと、答には興味なさげに
また目を通し始めた。

「内緒よ。いい女には秘密があるの」

ぐうの音も出ない切り返し。
しかしここでめげるわけにもいかない。
サディスティックな感情が、ココロの奥底の方でちらちらと種火よりは強くなる。
21 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:05
なおも諦めずに彼女を眺め続ける私に、彼女は厳しい目で言葉を紡ぐ。

「いい加減にしなさい、ニイガキ」
「答えてくれたらいい加減にします」

意外と諦めが悪くてしつこい性格がこんなときに生きる。
彼女を困らせている時点で目的の半分は達しているのだけれど、お返しのキスを
まだしてない。

しょうがないわね、とため息をついた彼女は、口元に艶やかな微笑を浮かべて
こう答えた。

「・・・・・・爪先よ、ちっちゃなサディストさん?」
22 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:06
何もかも見抜いていた私よりもサディスティックなリーダーは、
手のひらの上で私を転がしつづけていただけだった。
きっとわたしが彼女の爪先にキスしても、彼女も私も嬉しくない。
その体勢を取るだけで嫌がるだろう。仲間という絆で繋がっているうちは。
手のひらの上でころがされた私は結局何もできないまま、また本を読み始めた
彼女の後姿を眺めるしかできないのだった。

そして、まだ絆が繋がっていることに安堵して、私はほっとするのだった。
23 名前:チャームポイント 投稿日:2004/09/12(日) 03:07
>>17-22 ニイガキとイイダ
24 名前:Tommorow never knows 投稿日:2004/09/20(月) 19:54
仕事中はともかくとしても、私たちと一緒にいるときはいつでもさゆみは
ニコニコと笑っていて、たまにおひさまみたいだな、なんて思う。
少し調子に乗りやすくて、少しとぼけていて、誰かさんほどではないにしろ
自分をとても可愛いと思っている彼女を見ていると、ちょっとだけ
憎たらしくなったりもする。

困らせるつもりは少しもなかったけれども、ちょっとだけ意地悪をしたくなって、
とても考え深そうな顔を作りながら、二人っきりになったときに
聞かせるともなく呟いてみた。

「小さいころにね、なんで明日は来ないんだろうって思ってた」
25 名前:Tommorow never knows 投稿日:2004/09/20(月) 19:55
案の定彼女は目をぱちくりとさせて、私の顔をまじまじと見つめ返してきた。

「明日になれば明日は今日になってしまって、明後日は明日の明日になるでしょう?」

難しい話は嫌いなんだろうか、彼女は少しだけ首を傾げて、それでも話の続きを
促すような仕草を見せた。
私はそんな彼女にお構いなく、どんどんと言葉を紡いでみる。
こんなこと言ったら変に思われるかな、なんて思いながら。

「いつまでたっても明日は来なくて、寝て起きるといつも今日になってて、
 だから『また明日ね』とかって言われるととても困ってたの」

いつまでたっても今私が生きている時間は今日の延長線上で、だから将来とか明日とか
希望とかは考えないようにしていた。無邪気に明日を信じているような彼女とは違って。

だから、今私があなたといる時間もそうなのだと伝えてあげるのが、私の礼儀だろうと思う。
26 名前:Tommorow never knows 投稿日:2004/09/20(月) 19:55
とても好きでとても憎らしくて、でも明日はきっと来なくて今日の延長線上だから、私の気持ちは
きっと今日と変わらないのだと。
あなたといられる今この時間は、私にとってかけがえのないものだけれど、それ以上の関係には
なりえないと思っているから、だから―――

「――― あなたが、きらい」

伝わらなくても構わないと思ったけれど、やっぱり少しだけ寂しくて唇を噛みながらそう言うと、
また彼女は目をぱちくりとさせて、首を傾げた後で言った。

「絵里は、嘘つきだね」

決め付けるようなその言い方が少し癪に障ったので、私が問い詰めるように「何で?」と
訊くと、さゆみは笑いながらこう言うのだった。

「明日にでもならなきゃ、私のこと嫌いになれないくせに」

そして私は、明日が来ないことに今日も途方にくれるのだった。
27 名前:Tommorow never knows 投稿日:2004/09/20(月) 19:56
>>24-27 カメイとミチシゲ
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/20(月) 19:56
なんかかいてほしいのあったらいってください
29 名前:  投稿日:2004/09/20(月) 21:30
よしごま。両視点から今の関係を読んでみたいです。
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/20(月) 23:13
石黒さんと中澤さんの話が読んでみたいです。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 00:03
安倍さんと藤本さんの話を希望します。
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 00:06
後藤さんと松浦さん
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 09:22
石川さんと安倍さんでお願いしたいです。
互いに相手がいるのに浮気が本気にみたいな〜。
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 03:42
サブタイトルににやり
35 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 16:58
「例えばさあ」

ソファの上で寝転んでいたヒトミが、手にした雑誌から目を離さずに
不意に声をあげる。
マキはキッチンでコトコトと肉じゃがらしきものを煮込みながら「んあ?」と
返事を返した。

「いろんなことって試してみたくならない?」

ヒトミの唐突な質問はいつものことで、マキは別にその質問の内容を
確かめようとも思わず、鍋に蓋をすると何も答えないまま冷蔵庫の中から
今日の夕飯に使えそうなものをあさりはじめた。
36 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 16:58
「指とかさあ」
「自分で噛み付いてみて」
「そこで煮込んでる肉より柔らかいかもしれないなあとか」
「あっさり噛み切れちゃうかもしれないなあとか」
「試してみたくなったことない?」

「・・・・・・別にないなあ」

途切れ途切れの説明を聞き流しながらマキは笑う。
ぶっ飛んだ発想はヒトミらしいと思い、ヒトミはヒトミでマトモに質問について考えない
マキを少しだけ小憎らしいと思う。
37 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 16:58
例えば窓ガラスを何か硬いもので殴りつけてみたり、真っ白なワンピースに醤油をひっくり返してみたり、
そういう衝動に駆られることはあったにしても、自分や他人が傷つくようなことは―――ずっと昔大切だった人が
勝手なわがままで消えていったとき以外は――― あまりマキは考えたことがなくて、
少し臆病なのかもしれない、と自分で思っていたりもする。
逆に、臆病になったのはそれからかもしれない、とも。
だから、ヒトミが子供っぽい行動をとるときがあったりすると、マキはひどく心配性になって、
まるで母親のようにヒトミをたしなめるのだった。
なぜなら、子供は自傷行為を好むもので、他人を傷つけることを厭わないから。
38 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 16:59
「でもね、確かめたくなるんだよ」

ヒトミはそんなマキの気持ちを知ってか知らずか、無邪気な笑顔で言葉をつなぐ。
肉じゃがの匂いが部屋に広がって、魚の切り身を発見したマキがガスレンジに
それを乗せる。普段どおりの空間。

「確かめない方がいいこともあるよ」

マキは一言だけ答えると、味噌汁をつくるためにお湯をわかす。

例えば、この心地よい日常がいつまでつづくのだろうとか、いつか互いを嫌いになる日が来るのだろうかとか、
単なる友達ではなく、かといって二人の関係をうまく言い表せる言葉もないな、とか。
あまり考えても意味のないことかもしれないけれども、たまにマキは考える。
それの答はいつもひとつで、自分やヒトミを傷つけるような事態が起きないようにしよう、と
思うばかりなのだけれども、そのせいで食欲がなくなったりもする。
39 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 16:59
そんなことを思い出して、ふとため息をついたマキがソファの上のヒトミを見ると、
ヒトミは何もかもをわかったような顔で笑っていた。

「大丈夫だよう、どこにもいかないよお」
「・・・・・・なんかムカつく」
「うそうそうそ、だからはやくごはんちょうだい」

そうやって二人の毎日は、曖昧な関係のまま続いていくのだった。
40 名前:過食症の君と拒食症の僕 投稿日:2004/09/23(木) 17:00
>>35-39 ヨシザワとゴトウ
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 00:39
過食症の君と拒食症の僕、雰囲気が好きでした。
リクが多くて大変そうですが、がんばってください。
42 名前:29 投稿日:2004/09/24(金) 17:58
ありがとうございます。感激です。
そうですよね。なんて言っていいのかわからない・・・
あいまいな・・・。
でもそこに確固たる何かが今もある。あって欲しい。
そう思っています。
43 名前:Drunkard Terry 投稿日:2004/09/27(月) 00:17
「飲んでも飲んでも酔わへんのやったら最初から飲まなええやないか」と
理不尽なくだを巻いていた酔っ払いは、どこの誰だったか。
「酔わないんじゃなくてペースを考えて飲んでるだけだ」と何度言っても
「うるさい飲め」としか言わなかった彼女が、なぜかいま
目の前にいる。
つまみに出した漬物はとっくに底をついていて、彼女が本物の
京女ならば、さっさと尻尾を巻いて帰るところだが、酔っ払った彼女に
そんな遠まわしなやり方は通用しないことも知っている。

つまりは今、酔っ払いの戯言につき合わされている。
44 名前:Drunkard Terry 投稿日:2004/09/27(月) 00:18
つくづく馬鹿だなあと思う。彼女を、ではなく自分を。
真夜中の襲撃にもかかわらず部屋に入れてやり、冷たい水を出したあとで
ビールとつまみを用意して、いつ終わるともしれない話に耳を傾ける。
子供が目を覚まさないでいてくれるのは心底助かっている。家庭円満は何より大事。

そんなことを考えていると、正面に座った彼女からお呼びがかかる。
こういうときは本当にめざとい。

「何ボーっと考え事しとるんやあ」
「裕ちゃんのこと考えてたに決まってるでしょう」

昔からこう言っておけば彼女は満足で、今日もまたとても満足らしかった。

「そうかそうか、裕ちゃんのこと考えとってくれたんかあ」
45 名前:Drunkard Terry 投稿日:2004/09/27(月) 00:18
「楽しかったなあ」
「そうだね、楽しかったね」
「あんなに楽しかった時期はなかったなあ」

飛び飛びの話に相槌をうつ。
過去を振り返る趣味はないけれども、彼女が振り返りたくなる気持ちも微かには理解できる。
それはけれど、思い出の中に閉じ込めておくべきもので、なにより私は現状にとても
満足しているし、彼女たちの環境に戻りたいとはあまり思わない。

それは彼女も一緒で、「あんなに」と言う時点で過去のことと割り切っていることがわかる。
それでもきっと二十代のほとんどを捧げた、甘美な時間を大切にしたいのだろう。
その思いは否定するべきものでもないし、されるものでもない。
46 名前:Drunkard Terry 投稿日:2004/09/27(月) 00:19
うつらうつらしはじめた彼女のために布団を敷こうと、キッチンを出る。
なんでこんなに優しいんだろうと思いながら、私もお酒がまわったのか思考がうまく
まとまらない。

優しいのは自分?
優しいのは彼女?

優しいのは彼女。
私の生活にちょっとした事件と夢と思い出をもたらしてくれる彼女。
そしてそれは彼女もわかっていることだろう。
47 名前:Drunkard Terry 投稿日:2004/09/27(月) 00:20
>>43-46 イシグロとナカザワ
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/01(金) 22:00
反応がないのでもうやめます
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/02(土) 06:02
なんで!?
結構好きなのに
50 名前:30 投稿日:2004/10/03(日) 13:57
遅くなりましたが中澤さんと石黒さんの話ありがとうございました。
レスが遅れてしまった私の言うことではないかも知れませんが、レスの数=読者の数ではありません。
更新を楽しみにしている人間だっています。
全然見当違いなことだったらごめんなさい。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/03(日) 15:26
見てる人もたくさんいると思いますよ。
ただレスをつけるのに遠慮する人だっていると思います。
もちろん私も読者です。
中途半端にやめてしまうのは勿体無いのでは?
出過ぎた事をすいません。
更新楽しみに待っています。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 00:17
じゃあかきます
53 名前:休日 投稿日:2004/10/05(火) 16:57
待ち合わせの前にふらふらと街を歩いて、すっかり鞄は重くなってしまっていた。
オープンカフェの一角に置かれたテーブルに腰と鞄を下ろして、コーヒーを
ブラックで頼む。
オフの日の一人歩きは結構クセになっていて、意外と一般人に溶け込んでしまえる
自分が嫌いではない。嫌いではないけれど、なんとなく手持ち無沙汰に思える。
ずっと―――2年以上―――前なら、一人でいることに何の違和感も感じなかったし、
平気でこうしていられたけれど、今はあの騒がしい楽屋が少しだけ愛しい。

やがて頼んだコーヒーが運ばれてくると、美貴は鞄から適当に一冊の雑誌を
抜き出してパラパラとめくりはじめた。
54 名前:休日 投稿日:2004/10/05(火) 16:57
雑誌のグラビアには美貴のかつての先輩がにこやかな顔で笑っていて、
それに付随していくつかのインタビューが載っていた。

―――ソロは楽しい?
大変だけど楽しい。
―――ソロになって変わったことはある?
楽屋がね、一人きりだから少し寂しいときもある。

それらのインタビューを読み流しながら、美貴は身勝手なこと言ってるな、と笑う。
昔から一人になりたかったくせして、いざなってみたら寂しいだなんて。
笑いながら、逆のルートを辿った自分の身を振り返って、彼女は自分をどう思って
いたのだろうかと、少し胸を痛めた。
55 名前:休日 投稿日:2004/10/05(火) 16:58
美貴はなんとなく物悲しくなって、ブラックのコーヒーに砂糖を一さじだけ入れた。
同時に携帯が静かな音で震えて、メールの着信を告げる。
待ち合わせの相手から少し遅れる旨の連絡で、美貴は気にしないように、とだけ
返信してまた雑誌に目を落とす。
写真の笑顔は変わらずでなんとなくホッとして、美貴は甘くなったコーヒーを飲み干すと、
待ち合わせの相手とこれから何をしようかと考えた。

「遅くなってごめんねえ」
「構わないですよ」
「いろいろ買ったねえ」
「はい」
「さて、どこに行く?」
「安倍さんの好きなところでいいですよ」
56 名前:休日 投稿日:2004/10/05(火) 16:58
>>53-55 フジモトとアベ
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 08:49
深い事何も考えてなさそうな安倍さん
何か冷めた感じでクールな藤本さんが
短い文でも伝わってきますね
58 名前:31 投稿日:2004/10/08(金) 00:11
安倍藤本を希望したものです。
素敵な休日をありがとうございました。
59 名前:抱きしめたい 投稿日:2004/10/21(木) 09:02
「たとえ同じユニットでも、価値観が同じ必要はないよねえ」

そういってアヤは少しだけ喧嘩腰になってマキをからかう。
それはグループから独立した人間と、最初から一人きりだった人間の価値観の
違いかもしれない。

「価値観ねえ」と小さく笑ったマキはアヤの整った髪を撫でる。
「難しいこと考えすぎなんじゃない?」
「別に難しいことじゃないですよ」

喧嘩腰だと思っていたアヤの瞳は少しだけ潤んでいて、今の状態に何か不満でも
あるのだろうかとマキは不思議に思う。
60 名前:抱きしめたい 投稿日:2004/10/21(木) 09:03
「同じものばかり見て、同じものだけ良いと思って、同じものだけ好きじゃないと
 一緒にやってけないっていうのはおかしいですよう」

そしてアヤは一人で活動していた頃の自分を切々と訴え始め、いかに自分が気楽で
責任が重くてやりがいがあったかを語るのだ。
「だってわけわかんないユニットとかって腹立ちません?一人のほうが楽しいのに」

マキはある程度仕事と割り切っているのでそうでもなかったが、アヤの言い分は少し
理解できたので、何も言わずにまたアヤの髪を撫でてやった。
「期間限定なら最初からやんなきゃいいのに」
そういってやるせなく突っ伏すアヤを見ていると、何も言わなかったけれど何か
言わなければいけない気がして、マキは手近にあったジュースを一気に飲み干して、
次の言葉を探した。
61 名前:抱きしめたい 投稿日:2004/10/21(木) 09:03
「まああたしも難しいことはわかんないけどさ」
「少なくともイヤなものはイヤで、恥ずかしいと思うことが同じなことは必要でない?」
「好きなことも、だけど」

「ほえ?」
「まっつんのいま泣いてる顔は、結構嫌いじゃない」

マキは慰めているのかいないのか、アヤの顎を人差し指と親指で持ち上げて自分の顔を
近づける。
「このまま押し倒して朝までキスして慰めてあげようか?」
62 名前:抱きしめたい 投稿日:2004/10/21(木) 09:04
少しだけ目の離れた美形が自分の唇に近づくのを見て、アヤは椅子ごと後ろにのけぞって
倒れ、そして何かを少し考えたあとで、慌てたようにこう言った。

「その趣味はないし、何より価値観が違うと思う」

マキは笑って、「それでいいんだよ」と言い、アヤは自分がからかわれたことを知るのだった。
63 名前:抱きしめたい 投稿日:2004/10/21(木) 09:04
>>59-62 マツウラとゴトウ
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 16:24
更新乙でした。
いいですね、微妙な二人の関係…
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 20:02
好きな空気感ですw
66 名前:Eyes to me 投稿日:2004/12/13(月) 18:48
「何を見てるのか気になりません?」

誰が、というのはわかりきっているので、安倍は石川の言葉に
何も言わずにただ笑顔だけを返す。
自分も矢口に対して同じことを考えたりすることもあるからだ。

「ホントに、何考えてるんだろう」

石川の視線の先には、いつもどおりおどけている吉澤の後姿。
67 名前:Eyes to me 投稿日:2004/12/13(月) 18:49
「ときどきあの瞳を抉り出して自分にはめたくなるんですよ」
「何が映っているのかなって」

半ば冗談とも思えない口調で石川が呟く。
適当な返事を返すのもはばかられたので、安倍はただ一言だけ
石川をからかうつもりで答えてやった。

「そこまでいうなら抉り出してきてあげようか?」

それを口にして安倍は背中がゾクゾクするような感覚に襲われる。
自分が矢口の瞳を手に入れたらどんな感じだろう。
68 名前:Eyes to me 投稿日:2004/12/13(月) 18:49
しかし石川は毅然とそれを断る。

「だめですよ」
「なんで?」
「自分で抉り出さなきゃ。そしたら、最後に彼女の瞳に映るのは私でしょう?」

石川の答えを聞いて、安倍はもう一度静かに笑った。
自分も同じことを考えていたからだ。

そして、実は石川のことを好ましく思っている自分に気づく。
同じ価値観を持つ石川となら、きっと二人は上手くいくだろうな、と。
69 名前:Eyes to me 投稿日:2004/12/13(月) 18:49
>>66-68 アベとイシカワ
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/13(月) 18:50
陸消化
71 名前:sage 投稿日:2005/01/01(土) 13:57
すごく好きな文です
雰囲気とか描写が素晴らしい

リクとかしていいんでしょうか?
いいなら藤本×田中を…
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/11(月) 16:57
イチイ×ゴトウ×ヨシザワ
がみたい
73 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2005/05/22(日) 19:20
いしよし!いしよし!
いしよし〜!!
74 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/03(金) 03:19
よしごまがみたいよ!!!
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/13(月) 12:51
すごい。面白いです。
イシカワとフジモトがみたいような。

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