血の枷
- 1 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:39
- 小説自体初挑戦で本当に至らない者ですが、どうぞ宜しくお願いします。
*注意書きとお願い*
・更新が不定期なのが嫌な方
・一人称ウダウダ(簡潔でない)が嫌な方
・カップリングが気に入らない方
・基本的にsageが嬉しいです。
以上駄文ですが、貴方の目に掠って、ご一読頂ければ嬉しいです。
- 2 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:41
-
あたしが何したっていうの?
いつも一緒に居ただけだ
それが間違ってるなんていうのなら
あたしは間違ったままで良い
子供のままでいい
誰にも、あんたにだって認められなくて良い
- 3 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:42
-
ただ、あなただけが許してくれたら
何だってどうでも良い。
- 4 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:43
-
血が 騒ぐ
- 5 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:46
-
- 6 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 00:46
-
「美貴様、外を御覧下さい。」
眠い目を擦り、カーテンを開け窓の外を見る。
真っ白だった。
「うわぁ……なにあれぇ!!!」
「そうですねぇ。あれは…ってお待ち下さい!!」
「うあぁ、すごいな!!すごいな!!」
一面の白銀の世界にただただ圧倒される。
初めて見る、全部が白い世界。
空からは無数の氷の粒が降ってきていて、どんどん積もる。
これ以上積もると、家が埋まってしまうのではないか…そんな心配をしながら、雪に見蕩れていた。
「まっったくもう、風邪をおひきになったらどうするのですか!」
ふわっとした感触がして、パジャマの上からストールを羽織らされた。
全身が冷え始めている事にこの時気付く。
- 7 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 00:52
-
「美貴様、どうですか?北海道は」
「え〜、すごいよばあや。おうちが埋まっちゃうよー。雪ってここまで積もるものなの?」
「ふふふ、おうちは埋まりませぬよ美貴様。心配御無用です。ふふ、北海道は東京とはひと味違いますぞ。」
婆やが優しい目をしながら、しゃがんで目を合わせてくる。
「そっか、埋まらないならよかったよかった。…さっむいねぇ、ほっかいどう。」
婆やに甘えながら抱きつくと、目線がふいに高くなった。
「あまえんぼですねぇ、美貴様は。よしよし。」
抱きかかえられて頬ずりされる。くすぐったい。
「美貴様。」
「なぁに?ばあや」
「どんな時でも心は正しく持つのですよ。正しく持つということは、強くなくてはならない。」
「つよく?」
「そうです。強くなる為には、惑わされてはなりませぬ。
強くなる為には、沢山の事を知らなければならない。
自分に素直でなければならない。
思いやりを持たなければならない。
……まだまだありますが、これらを持ったならば
美貴様には『芯』という確かな強い心が出来る。」
「うーんむずかしいなぁ…心を正しく持つのは。」
「ふふふ。そうです。心を正しく持つ事は、難しい事なんです。
いつか美貴様にも分かる日がきますよ。」
- 8 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 00:54
-
そう言う婆やの目は遠くを見ていた。
一面の銀世界に負けないくらい奇麗で、優しくて、深くて、とて
も格好よかった。
「…みき、今はわかんないけど、おっきくなったら正しい人になる!!!」
「そうですねぇ。婆やも見届けとうございますぞ。ささ、ここは
寒い、身支度いたしましょうか。」
「はぁ〜い。朝ご飯食べたらお外で遊んでくる。」
「はいはい。元気ですねぇ、美貴様は、ふふふ。」
- 9 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 00:57
-
身支度を終え、マフラーとコートで小さな雪だるまになったあた
しは、屋敷の庭で遊んだ。
東京から、父の都合で北海道へ越してきて3ヶ月。
母はあたしを生んですぐに亡くなったそうだ。
広すぎる庭で一人いつも遊んでいた。
回りには大きな屋敷が幾つもあったけれど、一つ一つの屋敷が
大きな柵で囲ってあって、それはまるで"近付くな"と言われて
いるようで、幼心にいつも得体の知れぬ恐怖感を植え付けられ
近付くことができなかった。
そしてなお、屋敷の外へ出るには父の許可が必要だった。
母との記憶はない。
友達も、居なかった。
いつも、淋しかった。
- 10 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 00:59
-
「……っく……えっく……」
雪だるまを作るのに夢中だったあたしは、その音で手を止めた。
何の音だろう。かすかに聞こえてくる。
「……えぇん……」
…誰かが泣いている?どこから聞こえるのか。あたしはその音が
する方へと、まるで導かれるように近寄って行った。
屋敷の中は静まりかえっていて、泣き声だけが大きく聞こえたよ
うな気がした。
庭園を通り、花壇を踏まないように気をつけ、屋敷の端まで駆け寄った。すると、柵の外に小さな女の子を発見した。
雪で真っ白になった大きな木の幹に、真っ黒な服を着たその小さな女の子はうずくまっていた。
- 11 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:01
-
「どうしたの?」
小さな女の子は、ピクッと声に反応して顔をあげかけたみたいだ
ったけど、また俯いてしまった。
しばし困惑してしまった。
うーんどうしよう。
ーーーーーー心を正しく。
そうだ。
あたしは今きた道を走って戻って、屋敷の中へ入る。
「ばあや!門を開けて!!」
「あらあら、どうなさいました?」
「はぁ、はぁ。あー……はぁ。」
「…何かあったのですか?」
あたしの神妙な顔に、婆やが静かに呼びかける。
「あのね、えっと…心をね、ただしくもたなきゃいけないの!!」
そう告げると、婆やは読んでいた書物を机に置き立ち上がる。眼
鏡を外し胸元にぶら下げ、あたしの側まできてニコリとし、頭を
撫でた。
「かしこまりました。」
- 12 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:03
-
あたしはそのまま門へ向かって走って行った。
ギ…ギギギギィ……
すぐに門が開いた。あの子が居る所まで駆けて行く。
「大丈夫?どうして、泣いて、いるの?」
呼吸が落ち着かないまま喋りかける。
すると、やっと顔をあげてくれた。
「っく……っく……」
目から大きな涙が次から次へと零れてくる。
…落ち着かせようとあたしは微笑みかけ、彼女の頭を撫でてみた。
「……っ……」
しばらく撫でて、そっとハンカチで目尻の涙を拭うと、やっと泣き止んでくれた。
- 13 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:05
-
目が真っ赤だなぁ。
あたしのコートと同じ色だよ。
「…あのね、パパがね、とーくにいっちゃったの……お星様になったの…もう二度と会えないって…………」
「……お星様?…二度と?」
「うん……っえ、えぇ〜ん」
また泣き出した。
「…大丈夫だよ!!」
「……ふ?」
「お星様になったらのなら、会えなくなっちゃうけどさ…でも、いっつも空から見守っていてくれるよ!!」
「……」
「それに……そうだ!!みきが君のパパの代わり…は無理だけどさ、お姉ちゃんになるよ!!」
- 14 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:07
-
「……え?」
顔を再びあげた彼女の涙が止まった。
「あっ、でも、パパには負けちゃうかもしんないけどさ、なんたって、お星様だからね!!でも…」
「………私のおねいちゃん?……ほんと?」
目を潤ませ、彼女が見つめてくる。
あたしは微笑み、再び涙を拭ってあげる。
「うん。ばあやが言ってるけど、おんなににごんはないんだよ」
「にごん?」
「うん。よくわかんないけど…よかったら君のお姉ちゃんになりたいな。」
「……ほんとに?」
「うん。」
「……へへっ。…うれしい…。」
恥ずかしそうに目を伏せながら、彼女は涙でくしゃくしゃだった顔をふにゃ、とさせて、笑った。
- 15 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:08
-
かわいいなぁ。
- 16 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:09
-
「笑ったほうが、かわいいよ。」
「え?」
「うん。笑ったほうが、かわいいよ。」
なぜか彼女の頬は赤くなり、そのまま俯いてしまった。
すると、木の上から雪の塊がドサッと落ちてきた。
- 17 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:10
-
「……ぷはっ。うわぁ…雪ってすごいねぇ。あはは。」
「ぷっ…雪まみれだよ……あはははっ」
しばらく二人で、今起きた出来事に笑った。
冷たい感触に背筋が震えるはずなのに、どうしてか、あったかかった。
「……なまえ、なまえなんていうの?」
「ん?ふじもとみきだよ。はじめまして。君は?」
「わたしは」
- 18 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:12
-
今思えば、あの一面の銀世界で出会ったのは
「わたしの名前は」
偶然なんかじゃなくて、必然だったんだよ。
「まつうらあや」
日に照らされて奇麗に輝く、雪の様な君に会えたのは
運命だったんだ
この時は幼な過ぎて、わからなかったけれど
- 19 名前:1 白い世界 投稿日:2004/09/11(土) 01:13
-
でも
あたしは正しかった
- 20 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 01:19
- 初更新終わります。次も頑張ります。
ご感想お待ちしてます。
- 21 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/11(土) 01:36
- 911 ご冥福お祈りいたします。
- 22 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/09/11(土) 13:27
- 次元黒猫さま
はじめまして。
おもしろそうです。
続きを期待して待ってます!
- 23 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/12(日) 14:35
- >>22 ななしのよっすぃ〜様
いえいえ、こちらこそ、初めまして!!
第1号の読者様に(TдT)初めてのレスに(TдT)
おもしろそうなんて(TдT)トンデモナイ…
頑張ります。
- 24 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/12(日) 14:39
- 眠さ限界で、私事で申し訳ないのですが…
ちょっぴり更新します
- 25 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:44
-
出入りの厳しい藤本家だったけれど、婆やが父への連絡を上手く
誤魔化してくれたお陰で、亜弥ちゃんとは仲良くなれた。
亜弥ちゃんは隣のお屋敷に住んでいるらしい。
亜弥ちゃんのお屋敷にも、なんだかなぁ似たようなばあやがいて。
二人の屋敷の行き来は、不便がなかった。
「美貴様、この前はご立派でございました。」
「このまえ?」
「ううっ…幼いながらも、亜弥様に対する気遣い。正しい心でござ いますぞ。」
どうやら亜弥ちゃんのパパが亡くなった、あのお葬式の日の出来 事を、婆やは陰ながら見守っていたらしい。
いつの間に…
「婆やは…婆やは……ううっ…」
「泣かないでばあや。」
婆やの涙をハンカチで拭ってあげる。
- 26 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:46
-
そんな事をしていたら、いつものあの軽快な足音が遠くから響いてきた。
…きた。
「みーーーきーーーーたーーーーんーーー…」
この屋敷はただっぴろいから、亜弥ちゃんの声にエコーがかかりまくる。
タタタタタタタタタタタタ……タタタタタタ……ダダダダ!!!!
「はぁっ、はぁ…みきたぁん!!」
「あ、亜ゃ…」
- 27 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:48
- あたしの姿を確認すると、あたしがまだ言い終わってないのに彼女
に押し倒された。
ぎぅぅと抱きつかれる。
「みきたぁん、あいたかっっ…たぁ。」
「おとといもいっしょに遊んだじゃない、あやちゃん。」
「みきたんとは毎日会わなきゃいやなの。やなの。」
「そっかぁ。でもね、みきもね、会いたかったよ」
頬を膨らまして、あたしをキッと睨みながら、これでもか?
と言う位甘い声を出す彼女が愛しくて、あたしもぎゅっと
抱き返す。
- 28 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:52
-
「ぅへへぇ…嬉し「ぅへへぇって、笑い方おかしいよ、亜弥ちゃ
ん。」
「ふふふ、美貴様、突っ込みが早過ぎますぞ。亜弥様こんにちは。」
「あっ、保田おばあちゃま、こんにちわ。」
ヒラヒラのドレスを着た亜弥ちゃんは、裾をちょいっともちあげて
挨拶をした。
「んっ…まぁ。可愛らしい事。美貴様もちゃんと亜弥様のような挨
拶の仕方をしてくれれば婆やも…」
「だってぇ、あいさつはハグでいいじゃな〜い」
「まぁっ。よくありませぬぞ。いいですか、洋式の挨拶にも美学と
いうものがあり、婆やは美貴様の躾という大事な…」
こうなると婆やの話は長くなる。
「わかったよ、わかった。あっ、亜弥ちゃん今日はお庭でかくれん
ぼしようよ!!」
「うんっ!!」
「こりゃっ!!美貴様、マフラー…」
- 29 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:53
-
* * * * * * * * * * * * * * *
- 30 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:54
-
「はーち、きゅーう、じゅう!!も〜いいかい?」
「まぁだだよ」
「も〜いいかい?」
「………」
- 31 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:56
- あたしは亜弥ちゃんの居る所から結構離れた、大きなモミの木の
後ろに隠れた。
息を殺して、亜弥ちゃんの様子を伺う。
亜弥ちゃんは空を仰いで、目を閉じていた。
粉雪がハラハラと亜弥ちゃんに降り注ぐ。
空気が、凛としてる。
笑ってる。
- 32 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:57
-
奇麗
- 33 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 14:58
-
亜弥ちゃんは静かに目を開けて、こっちへ向かってきた。
あたしは慌てて身を隠す。
「た〜ん〜はどっこかなぁ〜」
歌う様にスキップして向かってくる。
って、なんでこっちってわかるの!?
あたしは身を小さくした。
「あーーたんみ〜っけ!!」
「うわぁ!!」
- 34 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 15:01
-
背後から首に腕を巻き付けられた。
「なっ…なんでここって分かったの?」
「んー?なんでだろう?…こうやってね、目を閉じてたら分かっ
たの。」
「…すごいなぁ亜弥ちゃん。でもみきがどこにいるかなんてすぐ
に分かっちゃうじゃない…んー、鬼ごっこやめて、雪だるまつ
くろっか?」
「えへへ…うん。」
寒さで鼻を赤く染めながら、お互いの肩についた雪を払い合った。
- 35 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 15:05
-
それから日が暮れるまで、懸命に雪だるまを作ったね
いつだって二人で、はしゃいで、笑って
寒くなったら あっため合って
- 36 名前:2 六感 投稿日:2004/09/12(日) 15:10
-
例えどんなに距離ができたとしても、あなたは六感であたしをすぐ
に見つけてくれたのに
あたしは
- 37 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/12(日) 15:34
- 更新、終了します。
少ないorz
おかしいなぁ…半年以上練ったはずなのに…あ、眠いから少ない
のか…はい、言い訳ですごめんなさいorz
少しずつですが、マイペースですが、進めて行きたいと思って
います。
頑張ります(`・ω・´)
- 38 名前:証千 投稿日:2004/09/14(火) 20:25
- ふぁ〜…イイですね、こういうあやみき。
私も書いてますがここまでははてしなく無理です。
乙でした。
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/15(水) 01:07
- 更新乙です。
実にイイ!!!こういうあやみき、初めて読みました。
でもなんとなく痛くなりそうな予感…って、自分だけですかね?(汗
- 40 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/16(木) 06:10
- >>38 証千様
うわ!!びびびつくりしました。作者様からのレスを初めて頂きまし
た。(初めてずくしでドキドキですw)
証千様の作品拝見させて頂いてます。ほのぼのがとても心地よいです(*´Д`)
>>39 名無し読者様
実にイイ…実にイイ… |)彡 サッ
お目に止まって光栄です(TдT)
タイトルからして既に痛い(自分でつけといて言うなよ
ので、お察し頂いたその予感は…乞うご期待…はい今自
分にプレッシャーかけましたよ。はいw 頑張ります。
過去のお話がしばらく続きます。
幼少期の話は短いのですが、今回で終わりです。
- 41 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/16(木) 06:13
- しまった自分で上げたorz
少しですが更新します。
- 42 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:18
-
「今帰ったぞ。」
「お帰りなさいませ、旦那様。」
「あ…お父様、お帰りなさい。」
いつも帰宅が遅い父が、めずらしく今日は夕食に間に合った。
「今日は………。」
「わかっております旦那様。」
婆やと何か小声で話し合っているようだ。
…何喋ってるんだろう。横目でチラチラ何度も盗んでいたせいで、あたしの
ナイフとフォークの早さは落ちる一方だった。
- 43 名前:3 夜行 投稿日:2004/09/16(木) 06:21
-
あたしの父は、大手IT会社の社長をしている。
大人の事情ってやつで、いつも朝早くに出て、夜遅くに帰宅する。
そんな父が今日は珍しく帰りが早かった。
「美貴…お前に大事な話があるんだ」
「…え?」
なんだろう、全くかまってくれない父があたしに話?
何を話してくれるのかな。
絵本の話かなぁ。それとも、今度一緒にどこかに遊びに連れてって
くれるのかなぁ。この前新しくできた遊園地なんか行ってみたいなぁ。
純粋に父の愛情が欲しかった。望んでいた。
- 44 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:23
-
「美貴…」
「はい、お父様…」
父の表情がだんだんと険しくなる。
「隣の屋敷に、松浦さんという方が住んでいる…」
「……はい。」
「その方の主人が先日亡くなってしまったのだ…。
…そこで私の仕事上、少し問題が起きてしまった。」
ぽつぽつと父が喋る。
突然だされた『松浦』という言葉に、脈が早くなった。
あたしが亜弥ちゃんと仲良くしているのがバレてしまったのだろう
か?
そんな見当違いの心配で、ただただ俯いていた。
- 45 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:25
-
「そこでなんだが、私は再婚をしなければならない。」
「さいこん…?」
「そうだ。…早く言うと、お前に新しい母ができる事になる。」
「お…かあ…さん?」
「そうだ。…そして、妹もできる事になる。」
「いっ…いもうとも?…」
「…そうだ。」
お母さんに妹…?しかも、亜弥ちゃんが?
そんな今迄夢に描いていた事が、現実にありえないと分かっていた
事が、今現実として目の前に突き出された。
あたしの暗かった心に、一筋の光が差した瞬間だった。
- 46 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:27
-
「っ…うっ、嬉しいです、お父様。」
「そうか。…話は以上だ。」
父はそこまで話すと、あたしに背を向けて、書斎へと行ってしまった。
「美貴様…。」
「ばあや!!やったよすごいよ、あやちゃんがいもうとになるん
だって!!それからね、それから、おかあさんも!!」
「…その様ですね。」
婆やが遠くを見た。
「美貴様…」
「なあに?」
- 47 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:29
-
「…亜弥様を、大事にするのですぞ。」
婆やは、慈しむような、泣きそうな、そんな表情をした。
- 48 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:32
-
婆やがこの時見せた表情の意味が、その頃は分かる筈なんてなかった。
この時は、あたしに母と妹ができること…亜弥ちゃんが妹になって
くれる事が、純粋に嬉しかった。わくわくしていたんだ。
そして母は愛情を注いでくれるんだと、父はいつも居ないけれど、
笑ってくれないけれど、母ならばきっときっと、絵本で見た様な、
理想の愛情をあたしに注いでくれるものなんだと…思った。
- 49 名前:3 夜光 投稿日:2004/09/16(木) 06:38
-
でも
婆やが見せたあの表情の意味が理解できる今
あたしはただひたすらに血を流す
ばあや
助けて
寒い
外の風はその晩、狂った様に吹き荒れていた。
- 50 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/16(木) 07:06
-
…早速しでかしました。ごめんなさい
>>43 ×夜行
○夜光
川 ●v●)y─┛<使えない作者だな。プッ
从 ‘ 。‘)<たんなんでサングラス?
川 ●v●)y─┛<眼光がすご…マカーらしい。
色々ごめんなさい。マイペースですが頑張ります(´・ω・`)
- 51 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/19(日) 09:32
- 更新します。
- 52 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:34
-
「おはよう、美貴」
「あー…おぁよー」
「何その気の抜けた返事。初日から。てか元気してたー?」
「…あー……」
「…やる気ねぇな。あ、課題やった?」
「あー…課題ねぇ……って、やってない!!」
「へぇーそうなんだ。あたししーらね。」
「ちょっと待ってよ、よっすぃー」
- 53 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:37
-
桜舞う4月。あたしは今日から高校3年生。
茶色にチェックのプリーツスカートで、上は黒のブレザーに赤色の
ネクタイ、コンハイにローファーに…何説明してんだあたしキモイ。
可愛いと定評のこの制服も、着慣れた服だし、何も新しい気持ちも
わいてこない。
昨日まで春休みだったあたしは、まだ春休み感覚が…
「待ってってば、写さしてよ!!」
「…ってか、なんか間違ってる。あんた頭いいでしょうが」
「いやそんなこと知ってるけど、やってないものはやってない!」
「知ってんのかよ!しかも開き直りやがったな。」
- 54 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:40
-
そんな突っ込みをかけてくるこの親友は吉澤ひとみ。
あたしが高校に入学してからずっと、つるんでいる、いわば腐れ縁。
頭いいし、
ーー黙っていれば相当可愛いのに…
「なんだって?」
「ん?ひとみちゃんは今日も可愛いな〜って思って。」
「聞こえたっつーの。」
ぎゃあぎゃあといい争ういつもと変わらない風景。
今日は気温も暖かく、正に春。東京は暖かい。入学式にはもってこい。
- 55 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:44
-
あたしは北海道から舞い戻ってきて、中学から東京に住んでいる。
再婚した父と母の都合でこっちにきた。私立の女子高に通っている。
しかもいいトコの。
だってあたし、お金持ちだもん…じゃなくて、まぁ、自分でいうの
もなんだけど、英才教育が行き届いている環境で育ったから、それなりに。
「ねぇ、あれあややじゃない!?」
「いやっ、なにあれ、まじ可愛い。」
「ほんとだぁ〜、可愛いねぇ。」
「うそーやっと高校生になったのね!!」
「きゃぁ!!」
なんだこの嬌声は。幻聴じゃないよね。
「ねぇよっすぃー、今亜弥ちゃん可愛いって言った?」
「ん?あたしは言ってないけど…ほら、あの辺にいるあいつらが。
まぁ、可愛いなぁ、でへへとは思ってるけど…」
「…やっぱりこうなったかってお前もかよっ。でへへはキモイ」
「突っ込みはやっ。」
- 56 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:47
-
「あややぁ〜、今日から一年生だね!!」
「ぴっかぴかだねぇ。」
「制服似合ってるねぇ。」
「あ、先輩方、今日からよろしくお願いします。」
「「「いやーーーーー」」」
なんか三人くらい、嬌声じゃ足らずに話かけてる連中が、奇声を
あげやがった。しかし亜弥ちゃんも礼儀正しいなおい。
知ってたけど…。
あーもうイライラしてきた。
だから嫌だったんだ、あたしと同じ高校に通わすの。
- 57 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:48
-
「あたしが学校案内しようか?」
「…やめろ。お前まで悩みの種を増やさないでくれ。」
「えぇ〜っ、美貴たんこわぁーい」
「…………」
「…わ、わかってるって。そんなに睨むなよ。殺す気?」
「はぁあ。疲れた……もういこ。」
「あぁっ、美貴まだ話終わってな…」
あたしは朝から疲れている。
今朝だって凄い格闘したんだ。
昨日の夜…あたしの部屋で…
- 58 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:53
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 59 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 09:57
-
「みきたんみきたん、明日からおんなじ学校だね。」
「そうだね。」
「みきたんみきたん、明日からおんなじ制服だね。」
「そうだね。」
「みきたんみきたん、あたし可愛いでしょ?」
「そうだね。」
ソファーに座って、テレビを見ながら膝枕をさせられているあたし
に、彼女はいつものように甘えてくる。
「…みきたんみきたん、明日から自転車の後ろ乗せてね。」
「そうだね…って、それはイヤ!!」
「なぁんで!!そうだねしか言ってなかったくせに!!」
「それとこれとは…あぁもう…お父様にバレて怒られるのは美貴な
んだよ。わかってよ。」
「だって、二人乗りしてみたいの!!たんとしたいの〜わっかんな
いかなこの気持ち!!」
- 60 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 10:01
-
キラキラキラ…
「だからね……絶対目立つしブツブツブツ」
亜弥ちゃんはバッと起き上がった。
……来る…来るぞ…きっと来る〜きっと来る〜奇跡は起こる〜……
…古いな…美貴…
彼女は、座ってるあたしの正面に回ってきて、あたしの膝の上に座
る。そして両手をあたしの首にかけ、おでこをくっつけて、おねだ
り体勢に入る。
ほーら来た。
…あたしは昔からコレに弱い。
知っててやるんだから…。
「……してみたい。」
くりくりお目めが、あたしの目をみつめる。
なんだろう、なんか…あたしが何を考えているのか全部ばれちゃい
そうで、いつもこれをされると負けてしまう。
…単にあの目に弱いっていう訳じゃないんだよ…
- 61 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 10:04
-
「……わかったよ、でも明日からじゃなくて、1、2週間経ってか
らね。」
「ぬぅ…分かった。」
満足したのか、亜弥ちゃんはにっこり微笑んだ。
「みきたん、大好きー♪」
「はいはい…」
それから、ほっぺやおでこやら口やらにちゅっちゅっされて、亜弥
ちゃんは元の体勢に戻る。
べたべたべたべた。いつもの事だ。
亜弥ちゃんにはいつも負けちゃうんだ。勝ちたくても何故か勝てな
いあたし。…おかしいなぁ、なんで?
結局そうやって甘やかしてきて…再婚してからだから…かれこれも
う10年以上か。
どうなのあたし。溺愛だよね?わかってるけれど。
- 62 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 10:08
-
可愛すぎて、大事で大事で仕様が無いこの妹は、いつの間にか眠っ
てしまった。よっこらせっと…あーおも…とか言ったら、殺される
なぁ。
ベッドにそっと寝かせて、あたしも横に入る。寝顔は…もいつも
可愛いのにな…。
もう高校1年か…あんなに小さかったのに、時間が経つのは早いな。
同じ高校か…害虫退治がまた大変だな。
血はつながってないけれど、あたしはいつも、あんたの側にいて、
守ってあげるから。
そんな小さな誓いを、一緒に寝る時は、いつもたてていた。
- 63 名前:4 1年 投稿日:2004/09/19(日) 10:11
-
翌朝。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ…
がちゃ。
「んー…ふぁあ。」
目が覚めて…
動けない。
「亜弥ちゃ…」
「んー…たん…」
ぎゅうぎゅうに抱きつかれている。
「起きて、亜弥ちゃん。」
「………」
「せめて離して、亜弥ちゃん。」
「………」
「んっ、このっ……」
「………」
「はーーなーーーせーーーー」
- 64 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/19(日) 10:35
- 〆マス(更新終了)
自分で書いといて何ですが…何この人たち。甘っ(余興という事で
ミキティのお姉ちゃんぶりが伝わる様に書いてるつもりです…
まだストックがあるので、余裕ができ次第更新します。
当分穏やかな流れになりそうです。多分w
- 65 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/23(木) 00:34
- 更新します。
- 66 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:37
-
「新入生代表、藤本亜弥」
「はいっ。」
「はぁっ!?」
一気に生徒達の視線があたしに集まる。
…しまった、声がでか過ぎた。
只今入学式真っ最中。
「あ……失礼。コホン」
『クックックッ…美貴、声がでかい。』
小さく笑うよっすぃーがぼそぼそと話しかけてきた。
『笑うな!!ってゆーか何あれ!?』
『何って、新入生代表の挨拶でしょ。』
『じゃなくて、何で亜弥ちゃんなの!?』
『えー、入試トップだったからじゃん?美貴知らなかったの?って
ゆーかお前も二年前読んでたじゃん。』
そういえば読んだかも…ってあれ、トップだからなの!?ってあたし
亜弥ちゃんから何も聞いてないんですけど。
つうか昨日あたしの膝の上でくーくー寝てた気が…
そんな亜弥ちゃんは、静かに席から立ち上がって、壇上へ向かう。
凛と歩く彼女の、なんだか気品溢れる様を、あたしはただ呆けな
がら目で追っていた。
- 67 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:39
-
「春うららかな今日この日、私たち生徒一同は……」
あたしが呆けて三分経過…
『凄いね亜弥ちゃん、原稿一回も見てないよ。流石姉妹じゃん。』
『………』
ぼーっと見ていたら、亜弥ちゃんと視線がぶつかった。
- 68 名前:∬´▽`) 投稿日:∬´▽`)
- ∬´▽`)
- 69 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:42
-
途端彼女は、誰にも解らないように不敵に口元をつり上げ
ほんとうに微かに、するりと笑った。
- 70 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:44
-
「以上、生徒代表、藤本亜弥。」
…あんにゃろう…わざと教えてなかったな。帰ったら覚えて…
「「「あややさいこーーー!!」」」
「ありがとうございます皆様。」
亜弥ちゃんは満面の笑みで応える。お前はアイドルか!!ってか
入学式だろ、静粛にしろよ。
おい先生方注意……って、先生方にこやかーー。
好きにして。
- 71 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:45
-
* * * * * * * * * * * * * * *
- 72 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:47
-
「いやぁ、美貴面白かったー。一人で悶々百面相してんだもん。」
「あーそう。笑いたければ、笑えば。…もうかーえろ。」
入学式が終わって、教室から帰ろうとすると、くいと、袖を引っ張
られた。
「帰る?何いってんのーー新入生の学校案内しなきゃ。」
「学校案内?あーーそ。これまた聞いてないんだけど…」
「あたしが中澤先生に頼まれてさ、藤本もつれてこいって。」
「あーーそう、もう突っ込み所満載だけど、好きにしてよ。」
そういってよっすぃーにずるずると腕を引っ張られて、朝礼台の所
に集合している新入生の元へ向かう…いや向かってもらう。
「あー!!ひとみちゃん達遅いぃ、も〜!!」
「ごめんごめん梨華ちゃん、美貴のせいなんだよー、ここまで引っ
張ってくるのに苦労した。」
「こら、藤本!!何だそのやる気の無さは。」
「ごめんなさいやぐっつぁん。」
「やぐっつぁん…ってなんか違和感が…」
「あーもうあんたら、はよ新入生案内してきぃや。」
どうやら新入生案内をまかされたのはあたし達四人らしい。
中澤が選びそうなメンツだな。あの年増美人好きだからなぁ……。
ん?もちろん美貴も入ってるよ。
新入生達はあたし達をみて何やら囁きあっている。
もうどうでもいい。
どうやら2班に分けて、案内をするらしい。
- 73 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:50
-
「えーっとぉ、これから案内をさせてもらう、石川梨華です。よろ
しくお願いしまぁす。好きな色はピンクでーす。」
「「「「「よろしくおねがいしまーす。」」」」」
「はい。」
「「ピンク好きって、先輩可愛いですねーー。」」
「えへへ、なんでも聞いちゃってねーー。」
梨華ちゃんがいきなり自己紹介をはじめる。っておい、自己紹介な
んか要らないだろう。ピンクは余計だろ。
ってかノリいいなこの新入生。梨華ちゃんはニコニコでおじぎをし
た。そして目であたしに訴えかける。
「…………」
『ちょっと、自己紹介しなよ!!』
梨華ちゃんが耳打ちしてくる。
『なんで、必要ないじゃん!!どうせ忘れられるって。』
『先輩っていうのは第一印象が大事よ!!』
『うわきしょっ。』
『いいでしょ別に。きしょいは余計よ!!あーーーもう』
ごにょごにょしてると、どっかから殺気を感じた。
あ、亜弥ちゃん発見。
…亜弥ちゃんがもの凄い勢いであたしを睨んでいる。
なに!?なんかあたし悪い事した!?と目で訴えるも、効かず。
- 74 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:52
-
「もうしょうがないなーー。こっちに居る無愛想…クールなのが
藤本美貴ちゃんことミキティでーす。かっこいい美人でしょ、
うふふ。」
「キモじゃなくて…どうも。……藤本です。」
「「「「いやーーーんステキィ〜ミキティ!!!」」」」
「「二人ともつきあってるんですかぁーー」」
ちょっと照れてるところが可愛いだの、ぎゃあぎゃあと新入生が叫
んでいる。
あっはっはっ、元気良過ぎだろこの新入生。
しっかし一人もの凄い睨んでるなぁ。誰かなぁ、あっはっは。
「えーーっ、付き合ってるかは秘密でぇーす!」
……おい石川。
「いや、間違ってる!!付き合ってるとかありえない!!」
「「「否定する所があやしいですーーせんぱぁい!!」」」
「ちっがぁあああう!!!」
- 75 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:54
-
ぎゃあぎゃあぎゃあと梨華ちゃんと新入生は喋りつつ、学校の各所
を回って行く。なんだこのノリは…ありえないだろ。まぁ、架空の
女子高だし…架空?
と、亜弥ちゃんをみると、口を真一文字に結んで、目に涙を浮かべ
て俯いていた。
- 76 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:55
-
あ……やばい。泣いちゃう。
- 77 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:57
-
そのまま亜弥ちゃんは人の波を遮るように立ち止まって、逆方向に
向かって走って行った。
「えーーっと、次は保健室に向かいまーす。」
「梨華ちゃん、美貴ちょっとトイレ我慢できないからさ、あと任せ
た!!」
「「「え〜先輩行かないでーー」」」
「あーごめんね」
「ちょっ、美貴ちゃん…」
- 78 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:58
-
あたしは逆走する。あの馬鹿、どこ行った。
えーーと今まで回ってた所は…
……理科室……居ない。
……実習室……ここにも居ないな。
「あら、藤本。どうしたの?」
「あっ、飯田先生。」
職員室を通り過ぎようとしていると、廊下に飯田先生が居た。
「はぁっ、あ…やちゃん…、はっ、ふ…藤本、亜弥、見ませんでし
た?」
「藤本亜弥?あぁ…あの入学式の子か。」
「はっ…、はい。」
「あの子なら、階段駆け上がってったよ。」
「ありがとうございます。」
聞き届けてあたしは階段を駆け上がっていく。
「ちょっ、藤本〜…あ、そうか。姉妹…ね…」
- 79 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 00:59
-
2階は…居ないな。
3階も…………居ない。
どこだ…あたしは階段脇で立ち止まる。
と、ふっと風が頬をなでた。上を見る。
「…屋上?…。」
重い扉を開け、屋上へ出る。
「はぁっ、……はぁっ。…居ないし。」
- 80 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:01
-
うちの学校、屋上も広いんだよなぁ…。
貯水タンクが日に反射して、思わず目を細める。
春1番が吹き抜けて、あたしの汗を徐々に乾かしていく。
雲の流れが早くなる。
「っく……、うーっ……」
「い、居たぁ。はぁっ、はぁ……」
亜弥ちゃんは屋上の貯水タンクの裏側で、小さく丸まって座って
泣いていた。
あたしは呼吸を落ち着かせようと、深く息を吸う。
- 81 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:01
-
なんだか、どこかで見た風景だな。
- 82 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:03
-
「どうしたの、亜弥ちゃ……」
「うーーーっ!!」
あたしがしゃがんで、目線をあわせようとするやいなや、凄い勢い
で睨んできた。
…怖いから。あーあ、そんなに目を擦ったら、跡がつくでしょう。
「……目、赤いよ。」
「やだっ……」
「…いたっ。」
ハンカチをポケットから取り出して、涙を拭おうとした手を振払わ
れる。
亜弥ちゃんの爪が、手の甲をかすって、薄く血が滲んだ。
亜弥ちゃんは驚いた顔をして、それからまた俯いて泣きだした。
- 83 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:05
-
「…美貴、何か悪い事した?」
「……梨華ちゃんと仲良くしてるのが、そんなに気に入らなかった
んだ?」
「っく、…ち…がう、もん。」
「っそん、なんじゃ、…ない…」
「じゃあ、どうして?」
「た…ん、石…川せんぱ…いと…」
俯きながら、どんどん涙が溢れてくる。
「付き……あって、」
「ないから。絶対。…きしょいし。」
即否定。
石川、覚えておけよ…
「……ほん、…っく、とに?」
「うん。ありえないから。」
- 84 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:06
-
目を真っ赤にした彼女が、弱々しくあたしをみつめてきた。
やっと目を合わせた彼女を、そっと抱きしめる。
そして涙を拭う。
宥める。
フェンスに凭れ掛かって座って、足を伸ばしてその間に彼女をおい
て腕の中に閉じ込め、落ち着くまで髪をなでる。
不安げに揺れる亜弥ちゃんの目。
あたしは、目尻に唇をよせる。
彼女は大洪水の目を細め、あたしを見つめてくる。
頬を両手で包んで、それから親指で頬を撫でる。
すると、彼女の茶色の目の奥の揺れが、おさまった。
- 85 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:10
-
小さな頃から、亜弥ちゃんが泣く度にあたしはこんな風にして宥め
る。頭を撫でるだけじゃ、彼女の気が済まないようなので、こんな
形に自然となった。
この一連の流れはなんだか、儀式の様だ。
肌が、脳が、敏感に感じ取る。
まるで絵画の様に、無駄の無い空間を。
そして、彼女の純度を。
その証拠に、ほら、あたしの耳には彼女の声しか入ってこない。
「まぁったく、そんなくだらない事で、泣かないの。」
「うっ……だって、たんがとられちゃったって思ったら、頭の中が
カーっとなって、わけわかんなくなちゃったの!!」
「……前もなんか似たような事があった時さ、…あたし言ったはず
だよね。」
「………うん。」
- 86 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:12
-
あれはあたしが中学3年で彼女が中学1年の時。
卒業式が終わって、あたしは一個下の子に、体育館裏に呼び出され
た…で告白された。丁寧に断ったら、その子はあたしに抱きついて
きて、行かないで、側に居てと言った。
その時、その一部始終を亜弥ちゃんに見られてしまった。
そして、亜弥ちゃんはさっきの様な態度をとった。
「…でも、でも…」
亜弥ちゃんがあたしに上目を使ってくる。
「分かったよ……もいっかいだけ、言うよ?」
- 87 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:14
-
あたしは、亜弥ちゃんのおでこに自分のそれをつけて、上目を使う。
茶色の目の奥が微かに揺れた。
「…亜弥ちゃんが、美貴の宝物だよ。何よりも、一番大切な。」
「……」
「……ね?」
「うん。」
そう言って、おでこにちゅうして、彼女の鼻先を指で撫でた。
彼女は、目の奥に何かを含ませて、笑った。
- 88 名前:5 黙止 投稿日:2004/09/23(木) 01:16
-
それは、親愛の情を超えた、何か。
また、気付いてて気付かないふりをする。中学の時と、同じ様に。
何よりも、大事な妹だった。
あたしに衝けた傷を、そっと舐めた彼女を見て
あたしは黙止した。
- 89 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/23(木) 01:42
- 〆マス
ハイテンションな会話文、ごめんなさい…。分かってます。
それを覆い隠そうと、多めに更新…
そして早速またもやミス。
>>68 はスルーして下さい。見なかった事にして下さい。
( ゚Д゚)ハ?とか思いになられたら…orz
あと、個々の年齢設定が違う事を、お許し下さい。
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 01:48
- 初リアルタイム更新でドキドキです。
作者さん、いつも読ませていただいてます。面白いです!!
早くお互いの気持ちに気づいて素直になってほしい・・・。
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 11:53
- いいですねぇ〜。
嫉妬しちゃう亜弥ちゃんキャワ!!
乙でした。
- 92 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 01:48
-
「美貴、亜弥、お前達に話がある。」
朝食の席で、父は静かに言った。
「明日から2ヶ月、ロンドンに行って来る。嘉穂も一緒に行く。その間、くれ
ぐれも問題を起こさない事。以上。」
「はい。」
「わかりました。」
「特に美貴。お前の素行は最近目につく。分かってるな。」
「…分かっておりますわ、お父様。何の心配もおかけ致しませぬ様、日々細心
の注意を払うよう気をつけます。」
「お父様、私もいますし大丈夫ですわ、安心してロンドンへ行ってらっしゃい
ませ。」
- 93 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 01:52
-
父は席を立って、書斎へと向かって行ったた。
嘉穂…旧姓松浦嘉穂。今は藤本嘉穂。あたしの義母で、亜弥ちゃん
の本当の母親。母は毎朝早く、仕事へ出て行ってしまうので今は居
ない。
あの日父が再婚して、亜弥ちゃんは藤本家にやってきた。そして母
も一緒に。
母は、あたしの父と全く違って、あたしと亜弥ちゃんを心から愛し
てくれている。
あたしが熱をだしたりした時は、忙しい中でも付きっきりで看病し
てくれる。小さな頃から、遊園地につれて行ってくれたり、あたし
や亜弥ちゃんが相談事があったりした時話をちゃんと聞いてくれる。
母からの愛情を本当に感じた。
亜弥ちゃんとあたしを平等に愛してくれている。
- 94 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 01:55
-
結婚は、仕事上で成り立ったみたいらしいけれど、母は父を愛して
いるようだ。
父は…どうなんだろう。本当にわからない。寡黙で形式的な人。
体裁をいつも気にして。
「あー緊張した。お父様、やっぱし怖いな。」
亜弥ちゃんがぽつりと言った。
あたし達は父が席を立って、やっと朝食が胃に通るようになる。
それまで、マナーを気にして食事していたから。
父と食事を一緒にとる時は、大抵あたしたちに用事がある時のみ。
ていうか、会う機会すらあまりない。父親である事をたまに疑う。
- 95 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 01:57
-
「…あームカつくクソオヤジ。何考えてんだろうね、あの人。ママ
もどこがいいんやら。」
「えー、あたしにもわかんない。でもお父様かっこいいよね。ダン
ディで。」
「えぇ〜、どこが、美貴ダメ。」
「そんな事言ってるけど、たん、相当顔が似てるよ?」
亜弥ちゃんが頬杖をつきながら、潤んだ目を細めて笑ってみてくる。
…朝っぱらからなんつー目でみてくるんだこいつは。
思わず視線を逸らしてしまう。
あの日以来、亜弥ちゃんはなんつーか…桃色光線を放ってくる。多分、あたしの勘違いじゃなければ。いつもの亜弥ちゃんではないのだ。
- 96 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 01:59
-
ここは洋室で、天井付近にステンドグラスがはり巡らされていて
そこから漏れる光が少し眩しい。
なんとかって名前の世界的に有名なデザイナーの人がこの屋敷をデ
ザインしたらしいんだけど、一体この屋敷、幾らかかってんだろう。
椅子にせよテーブルにせよ、家具一式デザイナーズ。あのオヤジ何
考えてんだ。間違ってる。
あたしが、あたし達が本当に欲しいのは、そんなものじゃないのに。
- 97 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:01
-
「…えぇーやだ。そもそもあのインテリぶってんのが嫌。まぁイン
テリだけどねぇ、あーやだやだ。」
「ふふふ、インテリの娘はインテリじゃあないの?」
「…うるさいよ。ってか、亜弥ちゃん友達とどう?」
「うまくいってるにきまってるでしょ。あたしを誰だと思ってるの?
おほほほほ。」
「よくいうよ、泣いてた癖に。あの後大変だったんだからねー梨華
ちゃんにブーイングされて。」
「もお石川先輩の話はしないで。ていうかたん、石川先輩とあんま
り仲良くしないでね。」
顔面間近でキッと睨んで微笑む亜弥ちゃん。こわっ。
- 98 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:03
-
「だーから、なんでも無いっていったでしょ、まだ根に持ってるし!!」
「うるさいなぁ、女はしつこいものなんです〜。」
「美貴も女だよ!!」
「知ってますぅー。だいたいたん、デリカシーが無いっていうか、
乙女心をわかってない!!たまに女じゃなくな……」
ぎゃあぎゃあと言い合って、自室に戻って学校へ行く支度をすませる。
まだ時間があるから、眼鏡をかけてコーヒーを飲みながら新聞に目
を通す。
- 99 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:04
-
と、眼鏡がひょこひょこっと上下に揺れた。
「ほ・お・ら、インテリ。」
「…………。」
亜弥ちゃんがいつの間にか後ろに居て、悪戯される。
ほんといつの間に…忍者かあんたは!!
「セントラルパークで「……お父様、明日から居ないね。」
耳元で喋る亜弥ちゃんが、急に、大人っぽい声を出した。
- 100 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:06
-
「二人っきりだね。」
そういって後ろから抱きしめられる。
二人っきりじゃないし、お手伝いさんがいるじゃんって突っ込みた
かったけど、声が出なかった。
心音が上昇する。
あわわわ、どうしよう、ニューヨークタイムズどうしよう、てかな
んだこの空気。
てかなんで慌ててるんだ美貴。新聞に話しかけてるしっ!!
- 101 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:09
-
「どうしたの美貴たん、心音早いよ?」
妙に色っぽい声で話す亜弥ちゃん。ん?色っぽい?…あたしの胸元
あたりで手を交差してるから、あたしの心音を感じ取ったらしい。
ってか耳元で喋るな!!!ん?いつも喋ってるよな耳元で…ってか
なんでいつもされてる事を気にしてんだ?
あぁいつもと違うからか〜
そういうことかぁ〜…
…だっ、だれかこの桃色シェルターを破りに…
…あっ…いつもほとんんど二人っきりだった…
「べっ、別に、早くなんかないし…」
「ふふっ…そう?あたしの勘違いかな。」
「かっ、勘違いだよ、ほっ、ほらもう学校行かなきゃ!!」
- 102 名前:6 シェルター 投稿日:2004/09/28(火) 02:12
-
そういってあたしは立ち上がって、コンタクトを速攻でつけてチャ
リ置き場へと向かった。
そして家を出ようと門へ向かった。
「じゃあたん、いこっかー」
…そうだった、今日から後ろに乗っけてくんだったorz
亜弥ちゃんはちゃっかり門の前で待っていた。素早い。
あたしは心の中で涙しながら、思いっきり腰にしがみついてる亜弥
ちゃんとの明日からの二人っきりの生活(家政婦つき)を心配しな
がら、朝の空気を感じるのだった。
…心配って?…なんの?
- 103 名前:次元黒猫 投稿日:2004/09/28(火) 02:47
- 〆升
>>90 名無し飼育さん
リ、リアルタイムで読まれてたああぁ!!ε≡≡≡===---ヽ|
いつもお読みになって下さってるのですか…もう(TдT)感激
素直か…取り敢えず美貴たんが戸惑い出しました。
>>91 名無し飼育さん
レス、有難う御座います。
亜弥ちゃんは非常に分かり易い。自分に正直です。
今後の動向も気になって頂ければ、嬉しいです。
…ベタな悪戯を素敵な悪戯に変えてくれるあやみき。単に作者が眼鏡フェ(ry
レス、とても嬉しいです、原動力になります。
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/28(火) 02:52
- 90の書き込みした者です。またもやリアルタイムです(w
いいですねぇ〜。あやみき、やっぱいい!!
作者さん、最高です。
- 105 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/28(火) 09:42
- 更新乙です。
思わず「亜弥ちゃん、頑張れ〜!!」ってパソコンの前で叫びました(笑)
早く美貴様をピンクあやや色に染めちゃってください。
- 106 名前:証千 投稿日:2004/09/28(火) 21:26
- 桃色ビーム出し過ぎですw
二人とも可愛い!!
- 107 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/05(火) 10:53
- こんな時間に更新。
- 108 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 10:55
-
本当に予想しなかった事が突然起こったりすると、人間頭の中が真
っ白になるもんだ。そしてすぐに、自分を自分と切り離して見てし
まうような感じがする。
その後にやってくる本当の実感は、なんていうんだろうか、本当に
当事者にしてみれば、負のパワーにせよ正のパワーにせよ、脳みそ
をハンマーで殴られる位の大きな力を感じる。
- 109 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 10:56
-
例えばあの例のテロリストがビルに突っ込んだ事件。
大きすぎる例えだけれど、あの時人々は一瞬、まるで映画のワンシ
ーンを見ているかのように思っただろう。
そう、まるで現実味の無い夢を見ているかのような。
その後にくるショックはとてつもなかった。
あたしの脳みそはハンマーで殴られる。
対応できない。
- 110 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 10:57
-
* * * * * * * * * * * * * * * *
- 111 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:00
-
「Please accept my trial order for Nepal,introductory…
if you read my novel,I'm so glad… 」
只今4限目英語の授業中。
あたしは窓際の席でぽけーっと呆けていた。
考えている事は…あのお姫さまの事である。
日に日に桃色になってきているお姫さま。
あたしはというと曖昧に誤魔化している日々。
彼女はガラスの靴を何度もあたしの目の前で落とすけれど、あたし
は見て見ぬふりをするんだ。
- 112 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:02
-
なんて夢も心もない王子…ってあたしが王子かよ。しかも何度も靴
落とすなんて、したたかじゃない?
…したたかじゃないな、どっちかっていうとマヌケだよね、あのお姫さま…
「Hey,Ms.Fujimoto.」
これからどうしよう2ヶ月間。確実に避けられない。
ん?あたしはどうして避けたいんだ?避けたいんじゃなくて、妹と
どうのこうのってのに問題があるんじゃ…って、妹だよ妹。少しば
かりドキドキしたってさ…
ん?ドキドキ?
「藤本!!」
「は、はい!!」
飯田先生がこっちを睨んでいる。そしてニッコリ笑った。
- 113 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:04
-
「Okay,Okay.Ms.Fujimoto,Answer this question.」
ああはいはい…
「Yes…well…When he wonders whether or not he decides
to buy the MIKI 1,he can examine…」
「…great.」
あたしが答えられたのが気に食わなかったのか、その時間飯田先生
にずっと執着された。
隣の席でよっすぃーが声を殺してずっと笑っていた。
飯田先生にはなんだか…何か思われてるのを感じるのは気のせいだ
ろうか。今日の件だけじゃないし。
- 114 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:06
-
と思った矢先に、授業が終わって飯田先生に耳元で話しかけられた。
「After school,Come on…my room.」
思わず周囲を見たけれど、誰にも囁かれるのは聞かれてないみたい
だった…
…よっすぃーを除いて。
「ねぇねぇ、飯田先生なんて?」
「…なんか放課後部屋にこいって。」
「ふぅん。なんだろねー」
「ニヤニヤしやがって。なんでもないでしょ…多分…」
「そっかなー。なんか飯田先生、美貴の事見てる目が…」
「…気のせい気のせい気のせい。」
「気のせいが多いねー。気のせいじゃなかったりして」
そう言ってよっすぃーは怪しい笑みを浮かべた。
「昼飯食いに、行こ〜」
「ああ…うん。」
- 115 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:07
-
* * * * * * * * * * * * * * * *
- 116 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:09
-
昼食を食べる気がしなかったあたしは、屋上の、梯子を登った所に
一番高い人目がつかないところがあって、そこであまり吸わない煙
草をふかした。
バレたら退学だな。その前にあのオヤジに殺されるっつーの。
大丈夫大丈夫、日々細心の注意を払っておりますわ〜。
煙が青空に向かって消えて行く。
雲の色と同化する。太陽が心地良くて目を細める。
- 117 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:11
-
「ねぇ美貴、好きな人いる?」
「…なに急に。」
「いやなんとなーく。おとしごろだし?」
「…わからない。」
「ふはっ、何それ。」
「なんてゆーか、好きなんだけど、恋とは違う…と思うし、恋する
ことは許されないし、その人以外考えたら殺されるし、みたいな。」
「…ふぅん。」
「ふぅんて…なに、そのいい方は〜」
あたしはその場で寝っ転がった。
呑気にカフェオレをジュージュー吸いながらあぐらをかいている
よっすぃーのパンツが丸見えな事は気にしないでおこう。
- 118 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:14
-
「大事で大事で仕様が無い人なんだけどね…」
「どう大事な人なの?」
「こう…言い過ぎだけど美貴の命さえも惜しくない位大事……」
「……みきたん……。」
「みきたんってきもちわる…って、うひゃぁあ!!!!」
誰かさんの顔がにょきっと生えてたの。にょきっと。
梯子に登りかけたまんまで、顔だけ見える、そんな状態。
「どどどどどど」
「噛み過ぎ。」
ちょっと、なんでここに亜弥ちゃんが居るの!?いつから!?
あたしは瞬時によっすぃーを睨む。
よっすぃーは蛇に睨まれたカエル。
- 119 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:18
-
「ちっ、ちがうよ、亜弥ちゃんが『しぃ〜』って…」
「いっ…いいつからこここに!?って、あっちい!!!」
「もー気をつけて。どこで何してるのかなって思ったら、こーん
な所で煙草なんか吸ってるし。素行がわるーい。」
「えっ、煙見えたの!?じゃあやばいんじゃないの、美貴?」
「ううん、だいじょぶみたい。ってか、なんだか分かんないけど多分
この辺に居るかなって。」
「へぇー流石姉妹だねぇ。」
ちょーちょちょっと待って。話が!!話が!!
「ど、ど、どの辺を聞かしたの!」
「たん、日本語変。」
「…はぁ、そういうことねー…ってことで邪魔者は退散します。美
貴あとでねー。」
そう言ってよっすぃーは立ち上がって、軽やかに梯子を降りて行った。
まってぇ〜よっちゃぁあああん!!
- 120 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:21
-
ほんと待って…ってか本当にどの辺りから聞かれてたんだろう。
あたしは血の気が引くのが分かった。
いやいや、落ち着け美貴。もしも全部聞かれてたとしても…
あっ、恋愛感情がうんぬんって言っちゃってる…やば…
風が前髪を揺らして、あたしの視界を邪魔する。丁度雲が光を遮っ
て、影を作る。亜弥ちゃんの顔をまともに見れない。
…沈黙。
耐えきれなくなった冷や汗ダラダラのあたしは、亜弥ちゃんの顔を
ちらっと盗み見た。
少し俯いて、少し泣きそうで、少し笑っていた。
- 121 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:24
-
「あたしさぁ…考えたんだ。」
「はははい。」
「…あたしがお荷物みたいになっちゃってるね、やっぱし。」
「…へ?」
「…恋愛できないよねそれじゃ。」
「や…」
「あたしは…今まで生きてきて、美貴たんしか考えられないの。何
をするにも。…あはは、どうしようもないねぇあたし。」
「ちょっ…」
「けど、そんなの自分勝手だよね、ごめんね。あたし…これから
はたんが安心できるようにするからね。」
完璧に、笑う。
言ってすぐ亜弥ちゃんは梯子を降りて行った。
呆然とする中で、妙に冷静な自分が居る。
…って事は全部聞かれてたんだ。
考えもしなかった事を亜弥ちゃんは言った。あたしに恋愛絡みで何
かあると、泣いてしまう亜弥ちゃん…。
- 122 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:25
-
安心できるように?何をする気なんだろうか。わからない…
一抹の不安を抱いたあたしは、この後、とんでもないハンマーが振
り下ろされる事にこの時まだ気付いてなかった。
- 123 名前:7 ピンクの幻 投稿日:2004/10/05(火) 11:27
-
何で躊躇してたんだろうね。
あたしがうじうじ悩んでさえいなければ、こんな事にはならなかっ
たはずなのに。
- 124 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/05(火) 11:32
- 〆益
早速訂正失礼します。
>>119
×「ううん、だいじょぶみたい。ってか、なんだか分かんないけど多分
この辺に居るかなって。」
○「ううん、だいじょぶみたい。ってか、なんだか分かんないけど多分
たんならこの辺に居るかなって。」
- 125 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/05(火) 12:01
- ズレてるしorz
>>104 名無し飼育様
またもリアルタイーーム|)彡 サッ
毎度毎度お目を通して下さって有難う御座います。
最高なんて言葉、めっそうもない。精進します!!
>>105 名無し飼育様
叫んで貰えて、こちらにも喝が入りました。
あやや色に染まるのはいつなんだろうか(殴
>>106 証千様
出し過ぎですか?w大丈夫、もう出る事はな…(殴
黒猫は証千様の更新の早さに毎回感嘆符が飛びまくりワケ
で。
時間ができ次第、また更新します。皆様のレス、とても嬉しいです。
- 126 名前:証千 投稿日:2004/10/05(火) 18:20
- お待ちしていました。
いいですね〜、こういう雰囲気が大好きです。
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 21:36
- 待ってましたよ、待ってました!!首をなが〜くして。。
今回はリアルタイムを逃しましたが(笑)
あ〜続きが激しく気になり過ぎる・・・。
ハンマー?ハンマァー!??
あぁぁぁぁ。
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/09(土) 11:34
- 亜弥ちゃん突っ走らなきゃいいけど…
更新お待ちしてます!
- 129 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/11(月) 10:52
- 体躯…体育の日更新。
- 130 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 10:56
-
しとしとと雨が降る。
雨粒が窓に当たってゆっくり下がって行く。どんよりとした雲。
天気予報では今日から梅雨入り。
あたしはパジャマのまま、働かない頭でコーヒーメーカーにフィルターを入れ
て、挽いた豆を入れ、出来上がるのをソファーにだらっと凭れ掛かって待った。
日々はいつもの様に過ぎている…はずなんだけど、おかしな事が起きている。
- 131 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 10:59
-
亜弥ちゃんが妙によそよそしいのだ。そう、妙に。
というのも、お風呂は一緒に入るんだけどいつも長風呂な彼女なの
にすぐに出て行ってしまったり。お風呂で一緒に見ている彼女のお
気に入りの番組も見ないで、すぐに出て行く。ご飯を食べる時、口
数がいつも多いのに少なかったり。学校が終わるといつも一緒に帰
ってるのに、帰らなかったり。暇になるとあたしの部屋にきて、あ
たしにべったりしてくるはずなのに、体はくっつけようとしなかっ
たり。
普通に会話はするんだけど…なんか、なんか妙によそよそしいのだ。
理由を問えば、『みきたんばなれ』と亜弥ちゃんは言う。
今迄みきたんに甘え過ぎてたから、そう言って苦笑い。
あたしはそれを淋しく思った。多分亜弥ちゃんも淋しがってやって
ることだろう。
- 132 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:01
-
今迄確かに甘やかせていたけれど、それはあたしも好きでやってた
こと。ってか当たり前の事だった。
それが急になくなったから、淋しかった。
妹はもう高校1年生で。
あたしたちの間に『大人になる事』が必要だと思ったから、
あたしは淋しいけれど仕方がないな、と割り切ろうと思った。
でも引っかかる。あの言葉、態度の変化。
わかってる。亜弥ちゃんがどんな気持ちでいるのか。
わかってる。あたしが亜弥ちゃんの気持ちをかわしてる事。
- 133 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:04
-
だらだらと支度をすませて、学校へ向かう。
今日は雨だから歩いて登校。出勤ラッシュでみんな、慌ただしく歩
いている。パシャパシャと水が何度も撥ねて、歩道にできている水
たまりが、みんなの足で何度も歪む。
しとしとと、雨は降る。
「たん。」
「ん?」
「あたし今日ちょっと遅くなるから、先ご飯食べてて。」
「わかった…今日なんかあるの?」
「ちょっとね…。」
最近は帰りが遅い亜弥ちゃん。
いつもなら、こっちが聞く前に、放課後の予定をあたしに話すのに
ね。
無駄に干渉し合わない…これも大人になる事に必要なのかな。
- 134 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:05
-
どんよりとした雲と、降り続ける雨を視界に入れる。
お揃いの赤い傘が二つ。
あじさいの花が、雨を喜んで奇麗に咲いている。
なんだか全てが、あたしたち二人の間にできた微妙な隙間を、埋め
てくれている気がした。
無性に淋しくなった。
- 135 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:08
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 136 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:10
-
「どう思うこれ?」
昼休み、さっき手渡された紙切れをこっそりよっすぃーに見せる。
辺りをサッと見渡してよっすぃーが受け取る。
「なになに……これ何てかいてんの?英語ワカリマセーン。」
「なんで英語で書くかな。まぁいいけどさ。」
「で、なんて?」
「えと、“この前こなかったね。今日来なかった場合、課題を増や
します。ずっと待ってます かおり”」
「ぶっ!!」
よっすぃーは飲みかけのお茶を吹き飛ばした。
盛大に吹き出したため、構内スペースに居る色んな人の視線が一瞬
集まった。
- 137 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:11
-
構内スペースっていうのはこの学校にある、まぁ多目的広場みたい
なもので、売店の近くにあって、生徒が昼食を取るのに普段は使わ
れている。カーペットの上にソファーが、大きく円を描く様にして
並んでいる。とても広くていいのだが、少しうるさいから普段は使
わない。雨が降るとあたしたちはここを使う。
1年、2年、3年と自然と別れて塊ができるんだけど、あたしたち
の学校の生徒はわりかし仲が良い。というか、上下関係が無いって
いうか。どうでもいいっていいうか。
「「よっすぃーきったな〜い!!」」
「不可抗力だっつーの!!」
- 138 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:13
-
2個下の辻・加護がよっすぃーに絡んできた。
亜弥ちゃんも紺ちゃんとなんか喋りながら、こっちを見て遠くで
笑っている。紺ちゃんと目が合って、深めにおじぎをされたので軽
く微笑んだ。
…待てよ、あたし怖がられてないか?
「あははは、いやーいいとばしっぷりだわ。」
「よっちゃんダメでしょ、公共施設を汚したら。」
やぐっつぁんと梨華ちゃんも絡んでくる。
「どいつもこいつもうるさいなぁ!!美貴が悪いんだって!!」
「えっ!!美貴なんも悪くないって!!」
「あっそうか、悪いのはいぃ「あああああ!!!」
よっすぃーの口を押さえ込む。
あーぶないあぶない!!もう少しで話が広まる所だった。
そのままよっすぃーの肩に手を回してごにょごにょと喋る。
- 139 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:15
-
『ちょっと、もう少しでバレるとこだったじゃん!!』
『ごーめんごめん、危ないところだった。』
「ちょっとそこ怪しいよ、何の話!?」
「よっちゃんやらしー。」
「「なになんのはなしー!?」」
ちょっと、ちょっとぉー、話がでかくなりそうじゃんか。てか、こ
んなこと亜弥ちゃんに聞かれたら最悪じゃん!!またなんか…
そう思ってちらっと見たら、楽しそうに紺ちゃんと喋っていた。
てか…あ…そうか、もう気にしなくていいのか。
しっかしあたしが複雑な気持ちで一人悶々としている側で、こいつ
らぎゃーぎゃーと…
「だーうっさい!!…おこちゃまは去れ!!」
あたしはそう言って、なんとか辻・加護を遠くに追いやれた。
- 140 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:20
-
やぐっつぁんと、梨華ちゃんと、よっすぃーとあたしで隅っこに移
動する。
「ミキティ、そりゃやばいわ。」
事の詳細を知ったやぐっつぁんが言う。
「いや〜ん、なんか危険な香りがするー。」
梨華ちゃんがムンクの叫び状態で身もだえる。
「危険な香りってか…ほんとに危険だよね美貴。」
よっすぃー、やっぱりあんただけなのね、親身になってくれるのは。
「で美貴行くべきだと思う?」
「「「行くべきだよ!!!」」」
「…ねぇ、楽しんでない!?」
「「「そんなことないよ!!!」」」
前言撤回、よっすぃーお前もかぁ!!
- 141 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:21
-
* * * * * * * * * * * * * * *
- 142 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:26
-
かくしてあたしは放課後、無茶苦茶な事を言い出した飯田先生の元
へと向かった。
やぐっつぁんは用があって帰ったけど、よっすぃーと梨華ちゃんが
ついてきてくれた。ってか、一人で行くのはちょっと心配だから、
外で話を聞いててもらうことにした。
- 143 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:28
-
飯田先生はなんていうか、みんなに好かれてて気さくな人で、生徒
の相談にもよく乗ってくれているいい先生。あたしが2年の半ば位
に転勤してきた。
でも…良い先生なんだけれど…何故かあたしにはこう…スキンシッ
プが多めってか…あたし一人見る目がこうなんか違うっていうか…
鈍感じゃないと自分では思うので、多分気のせいではなければ…
コンコン…
「入って。」
「し、失礼します。」
- 144 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:30
-
飯田先生は机に向かって仕事しているみたいだった。
本棚には英語の本やら、色々びっしりつまっている。
まじまじと先生の部屋の中を見るのは初めてだ。
ふと、飾られた写真に目が行った。
少し遠い所に写真はあって、よくは見えなかった。
女の人と二人で、仲よさそうに写っているのはわかった。
飯田先生は静かにペンを置くと、椅子に座ったまま、こっちに向き
直った。
「藤本…」
「は、はい。」
先生はとてつもなく切ない顔で、あたしをみつめてきた。
その目力になんだか魔法がかかったように、視線を外す事ができな
くなる。
- 145 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:32
-
やばい…これはやばいんでないの?…
あたしの心音がトントン早打ってるのがわかる。
苦笑しながら背筋に冷たいものが走った。
見つめ合う事約10秒。
先生は静かに口を開いた。
『Miki…listen…』
うわきた!!英語できた!!しかもあたしの名前呼び捨てかよ…
ってそんなどうでもいいとこにあたしつっこんでる場合じゃない!!
聞いてって、何を!?いやぁああ助けて〜!!!この間2秒。
- 146 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:35
-
『なっ…なにをですか?』
あっ…つい英語で反応してしまった。しまった。
『あのね…私、初めてあなたに会った時に、すごく驚いたの。』
『どっ、どど、どうしてですか!?』
『あたしのね、恋人に似てるなって。彼女、もう今はこの世にいな
いんだけどね。』
『え……。』
『もう亡くなって大分たつんだけれど。』
『そっ、そうですか…。』
『初めて見た時、正直言って…生まれ変わり?って思ったくらい
に。』
『……』
『それからずっと、ずっと…美貴だけを見てきたの。』
はい?パードゥン?
先生はスッと立ち上がった。
一歩一歩、静かにあたしに近付いてくる。
何も考えられない。
あたしは呆然と目で追っているだけ。
- 147 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:39
-
先生はそのまま少しかがんで、あたしと視線の高さを合わせてきた。
そして膝に手を置いて、また、見つめてくる。
射ぬかれる
『せんせっ……』
- 148 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:41
-
キス、された。
何も考えられない。
『先生って、言わないで。』
- 149 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:42
-
先生は徐にあたしのシャツを開いて、鎖骨の端を吸った。
そのまま唇が首筋を這ってくる。
- 150 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:43
-
- 151 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:45
-
…遠くであたしが叫んでいる。
こっちこーい、こっちに早くくるんだ美貴!!
ちょっ、ちょっちょっ、ちょーー!!
あわわわわわわ…
どうしようどうしようどうしよう!!!!!
助けてよっすぃー梨華ちゃん!!
…あれ、声にならない!!!
心の中で叫ぶもむなしく、声が出てこない。
びっくりすると人間声がでないもんなんだ…ってそんな場合じゃ
なーーーい!!!おおおちつけ美貴、そっ、そうだ!!!
あたしの脳内電球が、プロの照明並に光る。美白効果万歳!!
- 152 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/11(月) 11:46
-
『先生!!あたしは!!』
ぐっと先生の肩を掴む。
『あああたしは、亡くなった先生の恋人なんかじゃない!!』
『っ……』
『あた、あたしは、藤本美貴です!!』
あたしは先生をはねのけて、そのまま廊下を走って逃亡した。
遠くでよっすぃーと梨華ちゃんが何か言ってた気がした。
- 153 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/11(月) 11:54
- 〆松
…エロテロリスト、イイダン・オブ・ジョ(ry
略に無理が…w 決して今回のタイトルはこういう意味ではありません。
誤解しないで下さい…
- 154 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/11(月) 12:17
-
>>126 証千様
雰囲気が良い…有難う御座います。なんだかなぁな所が多々
ありますが、頑張ります(´・ω・`)
>>127 名無し飼育様
待ち過ぎて首が大変な事に!!wすいません、ひたすら御免な
さい(´・ω・`)不定期ですが、これからも読んで頂ければ嬉
しいです。リアルタイムって、マメにチェックしなければなかな
か遭遇しませんよね。期待して下さって、ほんと…嬉し涙
>>128 名無し読者様
お待たせしてすいません(´・ω・`)むしろ突っ走ってるのが
ミキティっていう。今後も宜しくお願いします。
読んで下さる方にいつも助けられています。
次回もいつになるやらですが、宜しくお願いします。
- 155 名前:証千 投稿日:2004/10/11(月) 13:24
- やた!!一番のりゲットです(笑
飯田さん…恐ろしいよ飯田さん……
- 156 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 21:59
- えええぇぇぇー(´Д`)
ミキティ必死だよ。面白すぎるよこんな展開。
あややの真意も気になるし…。
次回更新まで正座して待ってます。
- 157 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/27(水) 23:30
- あたた…足が痺れてくる…
更新待ってます
- 158 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/31(日) 19:22
- ワッペンは左、あややも左、更新します。
- 159 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/31(日) 19:28
- と思ったら書類の調子がorz
暫くお待ち下さい。
- 160 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 21:21
- 待ちますよ
- 161 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/31(日) 22:51
- お待たせ致しました。不具合解消。
再び更新します。
- 162 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 22:53
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 163 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 22:54
-
お風呂場に置いた数個のキャンドルに火を灯す。
オレンジ色がゆらゆらと水面に映る。
ポチャン…ポチャ…
濡れた髪から水滴が落ちてきて、あたしの頬に当たる。
頬を滑って、顎からまた落ちて、胸元でお湯の中に溶け込んだ。
重力には逆らえない。自然の理。
- 164 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 22:55
-
そう、キスされた事は突然だったから、逆らえなかったんだ…
変に理由を付けて、さっきの出来事を正当化しようとしているアホ
な自分に苦笑する。
あたしに衝けた赤い痕。先生の気持ちの強さが、分かる。
驚いた。動転した。
足を運んだあたしもあたしだけれど。周りに乗せられて押し切られ
た部分もあるのは確かだけれど。
- 165 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 22:57
-
けれど、あたしの中でずっとひかかっていた事があったんだ。
授業中やすれ違った時に、あたしに訴えかけてくる、先生の、
あの目。
『絶望の挟間を彷徨っていた、でもやっと生きる希望を見つけたんだ。』
そう訴えている様な気がしてならなくて。それ程あの目は多くを語っていて。
何より彼女は大人で、先生で。
リスクを負う事を考えもしないで、あんな行動をとるのは考え難い。
最も、衝動的な感情に突き動かされてあんな行動を取ったのだとし
ても、それは彼女にとって計算外の事だったと考える事もできるワケで。
だから……ブクブクブク
- 166 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 22:59
-
死んだ人間は、もうこの世に居ないんだ。そう、存在しない。
けれど、先生の中ではまだ、生きているんだ。そして、あたしに彼
女の面影を求めている。
その気持ちをわかってあげる事はできない。当事者にしか、本当の
痛みはわからない。
そんな先生の気持ちに応える事はできないよ…
でも…話を聞くことだけは、してあげられる。
そして、あたしはあたしであって、亡くなった彼女は彼女だって、
わからせてあげなきゃ。先生も辛いはずだよな…。
- 167 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:00
-
* * * * * * * * * * * * * * * *
- 168 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:01
-
リビングでお茶を飲もうとグラスを取り出して注いで、メールをチェックする。
遠くで家政婦さんの声が微かにした。亜弥ちゃんが帰ってきたみたいだ。
只今午後9時半前…って遅いなこら。
- 169 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:03
-
「ただいまー。」
「ちょっと…帰ってくんの遅すぎやしませんか?」
「そう?あーもう外土砂降りでさぁ、びしょびしょだよ〜お風呂お風呂。」
「……早く入っておいで、風邪引くから。」
「は〜い。」
「ご飯は?」
「あーいい、いらない。食べてきたから〜。」
「へ?食べてきたって〜?あっ…ちょっ…」
喋りながら移動している亜弥ちゃんの声が、フェードアウトして行く。
こんな遅くに帰ってきて、しかも連絡一本いれずに、心配してたん
だぞ…
- 170 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:04
-
……って、しまった心配してなかった…
- 171 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:05
-
だって飯田先生の事で頭いっぱいいっぱいだったんだから仕方ない
でしょうが!!!って誰に弁解してんだよ美貴!!
でもメールくらい入れててもよくない?まぁ美貴も入れるべきだっ
たと思うけどさぁ…
しっかしこんなこと初めてだよな。
後で問いただしてやる…
- 172 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:07
-
* * * * * * * * * * * * * * * *
- 173 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:08
-
「亜弥ちゃん、帰ってくるの、遅過ぎやしませんか?」
自室のソファの上であぐらをかいて、腕を組み、睨み付ける。
「ちょっとね…」
まだ濡れ気味の髪を拭きながら部屋に入ってきた亜弥ちゃんは、あ
たしを一瞥し、いつもの様にあたしの部屋の寝室へとドライヤーを
取りに行ってしまった。
気に食わない。
ちょっとって何だよ、ちょっとって、えぇ?あたしには言えない事
だったりするの?
- 174 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:10
-
ウ゛ォーーーーー
ドライヤーの音が、会話の始まりを嫌がる様に、呑気に鳴り始める。
ソファの前のテーブルの上に鏡を置いて、髪を乾かし始める亜弥ちゃん。
その鏡に映る、自分でいうのもなんだけど、怖いあたしの目。
黙々と髪を乾かしている自分大好きな妹は、あたしの顔なんて見
ず。
と、亜弥ちゃんの手が止まった。あたしの胸元辺りをみている。
何?何なの?どうせあたしは貧(ry
- 175 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:12
-
「……みきたん、その赤いの、どうしたの?」
「へ?」
だぁ、しまった!!!亜弥ちゃんの不穏な動きを考えながらソファ
で待ってたから、上はキャミしか着てなかった!!!
やばい!!てか亜弥ちゃんの目が怖い!!
亜弥ちゃんはあたしの鎖骨を凝視して、ドライヤーの電源を切って
立ち上がり、静かにあたしの隣に座った。
「かっ…蚊にさされた!!」
「……なんでそんな分かりやすい嘘つくかな。」
「うっ…うそじゃないもん、かだもん…。」
「…白状なさい。」
「…はい。」
- 176 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:13
-
事の始終を話した。
話しながら、亜弥ちゃんの表情がだんだん無くなっていく。
そして話の最後には微笑んでいた。
「そっか…そんな事があったんだね。」
うっ、わっ、怖っ。
二度目の完璧な笑顔に、あたしはピキンと凍てつく。
- 177 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:14
-
所謂アイドルスマイル。
商用の笑みを讃えた彼女の目線は、確かにあたしを捉えているのだけれど…
誰を、どこを、本当に捉えているのかわからない。
ねぇ、なにを思って笑っているの?
口元が引き攣る。
それから亜弥ちゃんはその笑顔のまま、口を開いた。
- 178 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:16
-
「けどあたしにはどうだっていい事だね…。」
「……え?」
「…あっそうだ、たんに言ってなかったけど、あたし彼氏できたの
ね。それで今日は遅くなっちゃった。ごめんね。」
- 179 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:16
-
- 180 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:17
-
今日は雨だねーみたいな、数学の時間眠っちゃったーぐらいな、そ
んな日常である当たり前の事を話すように、亜弥ちゃんは言う。
どうだっていいしねーみたいな。彼氏いるんだーみたいな。
- 181 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:18
-
ハンマーで殴られた。
あたしの時間は止まる。
- 182 名前:8 テロリスト 投稿日:2004/10/31(日) 23:20
-
「そういうことだから、みきたん……もしもーし、聞いてる?」
「おーい…た〜ん…」
「…もうあたし疲れたから寝るね、おやすみ。」
パタン。
あたしの部屋のドアが閉まったみたいだ。
ここはあたしの部屋だ。
テロリストは亜弥ちゃん。
予告もなしに、突っ込んできた。
- 183 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/31(日) 23:42
- 〆俟つ
>>155 証千様
お待たせ致しました、間が空いて申し訳無い。
レス有り難う御座います。
飯田さんは悲しい人で…家の藤本さんはお人好し…
単なるヘ(ry
>>156 名無し飼育様
お待たせ致しました、間が空いて申し訳無い。
レス有り難う御座います。
えええぇぇぇー(´Д`) という声が再び聞こえて…
正座、その心構え、倣いたいと思います(´・ω・`)
>>157 名無し飼育様
从*‘ 。‘)つ■旦<座布団とお茶、どうぞ。
お待たせ致しました、間が空いて申し訳無い。
レス有り難う御座います。不定期で申し訳無い。
>>160 名無し飼育様
お待たせ致しました、レス有り難う御座います。
不具合は解消されました。(;´Д`)ナントカ
- 184 名前:次元黒猫 投稿日:2004/10/31(日) 23:50
-
今回の展開は前から考えていた事の一つです。
ここで持ってきたのはアレですけれども…エロテロリスト
ではなく、こっちが本当に言いたかった意味で(殴
事の真意は途中からあやや視点に変わりますので、そこで
明らかになります。
まだ、美貴たん視点は続きます。
現在多忙です。次回は忙しさがまた、一山こえた頃に。
レス、励みになります。
- 185 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 23:53
- うわああぁぁマジかよおおぉぉ!!
………すいません取り乱しました。
なんなんだ、なにを企んでるあやや…。
ということで大人しく続き待ってます。
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/01(月) 03:15
- 何てこったい…
- 187 名前:次元黒猫 投稿日:2004/11/10(水) 02:57
- 皆様レスありがとうございます。
勝手ながら返事は次の更新時にさせて頂きます。
というのもですね、ちょっとした短編をですねこそっと…
最近出たあやみきMステの、亜弥ちゃんの衣装の色の板に
川VoV)<長いんだよ
書いてみました。恥ずかしいから、遠回しに。
実はこれ、没ったやつを再浮上させたやつです。
よろしければ、お暇な時にでも、そちらも読んで頂ければなぁと。
川VoV)<じゃあこっちも更新しろよ。
|)彡
|・)<もう暫くお待ち下さい。あっちの感想もお待ちしてます。
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/20(土) 17:25
- 気長に待ってますよぉ〜
次元黒猫さんギャンバって!
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 23:12
- 更新待っています。
作者さんのペースで頑張ってください。
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 20:23
- 今年はもう更新来ないのかなぁ…
でも作者様、マターリ待ってますよ
- 191 名前:次元黒猫 投稿日:2004/12/18(土) 03:17
- お返事を最初に。
皆様お待たせしてすいませんでした。
マイペースな黒猫です(゚Д(
更に申し訳ない事を申しますと…黒猫スランプに陥ってしまいました。
誠に勝手なのは承知なのですが、今回更新分をもって、この話の更新を一旦止めたいと思います。
不本意な形で載せるのはやはり皆様に対して失礼に値するものだと思いますので、どうぞご容赦下さい。
納得のいく形に持って行ってまた再開します。
時間がかかると思いますがどうかそれまで、お待ち頂けたら嬉しい限りです。
お詫びと言ってはなんですが、そのお待ちして頂いている時間、推敲と並行して短編を載せたいと思っております。
勝手な作者で(´・ω・`)
今回交信分と短編、逝きます
- 192 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:23
-
「亜弥ちゃんちょっと、こっちきて座ってごらん。」
「?…うん。」
「あのね、なんでそんな大事な話美貴に黙ってたの?」
「大事な話って?」
「あははとぼけて…彼氏の事だよ。」
亜弥ちゃんがビクッとした。
そらそうだ、最後の部分、いつもの3倍くらいドスを聞かせて喋ったもんね。
まぁ、いつもは可愛い声なんだけどねあたし。
あたしは今相当怖い顔をしている。実に不愉快。
- 193 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:24
- あの後から今までの三日間…無心のあたしは無心で寝ず、無心で登
校して、無心で帰宅して、自室に帰ってきた途端、フッと、色んな
感情があたしに襲ってきた。
今もぐるぐると体中で回っている。そして、その中で一番大きな感
情、怒り。
今日も帰りが遅かった亜弥ちゃんに、あたしの怒りは、沸点を超え
た。
「たん、こわいよ…。」
「そりゃ怖くもなるっつーの。」
「…黙ってたっていうか、言う機会がなかったんだもん。」
「そっか。まぁそれはどうでもいいや。で、どんな男なの?」
「…なんでたんにそこまで言わなきゃなんないの?」
「なんでって、その男…まぁいいや。どこの学校の人?」
「だから!!なんでそこまで言わなきゃなんないのって!!」
「言うも何も、許さないからね美貴は!!」
- 194 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:26
-
あたしの罵声がガラスを振動させる音。
我ながら支離滅裂な事を言ってるな。でも仕方ない。
あたしの起爆スイッチを押したのはあんただよ。
あたしに突っ込んできたのは、あんただよ。
「許さないって…何それ!!何でそんな事たんにいちいち許可貰わ
なきゃなんないの!?」
「うわ!!そんな事よく言えるな、あたしは何があろうがあんた
の姉なんだよ!!」
「…何それ…」
「とにかく絶対許さないから。まぁ言わなくてもいいよ、調べるから。」
- 195 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:27
-
携帯をとっ掴んで、部屋の外へ出ようとドアノブに手をかけると、亜弥ちゃんが
あたしの服をとっ掴んできた。
「何するの!?やめてよ!!!」
「絶対許さないからね!!!」
「何お姉ちゃんぶってんの!?ホントのお姉ちゃんじゃない癖にさぁ!!大体た…」
- 196 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:29
-
はっ、と短い吐息が漏れた。
ああそっか、そうだった。
あたしは顔をしかめて、歯を食いしばる。
怒りは瞬時に、とてつもない悲しみに変わった。
- 197 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:30
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 198 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:31
-
バシャッ バシャ バシャッ
水を思いきり撥ねる音が鼓膜を振動させる。
あたしはそれっきり何も言わず、家を後にした。
外は土砂降りで、雨に打たれながら、ただひたすら走った。
さっき口の中が切れたみたいで、血の、鉄の味がする。でも痛みはない。
- 199 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:32
-
「はっ、はぁっ、は…」
ここはどこだろう。無我夢中で走ったから、わからない。
髪から落ちてきた雫が、視界を邪魔して、ぼやけさせる。
梅雨時の独特な匂いが立ちこめる。
ブランコ?…ここは公園か。
五感はしっかりしている事がわかる。
夜空を見上げると、沢山の矢が降ってきているみたいに感じる。
矢はあたしに、突き刺さる。
出血多量だよ…輸血して。
- 200 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:33
-
あ…亜弥ちゃんとあたしは血が繋がってないから、あたしの血を彼女にあげたり、
貰ったりできないんだよね。
なんだよ亜弥ちゃんの言う通り、姉貴ぶってんじゃんあたし。
わかってる、わかってる。血が繋がってるって事が全てではないこと。
でも、でも…
- 201 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:34
-
心と心が繋がってるけど、命と命を繋ぐものは何も無い事に改めて気付かされる。
涙が 止まらない。
わかってる、わかってる。感情に任せて、彼女が吐き捨てた言葉だって。
でも 現実。
こんな風に思う事っておかしいのかな。
- 202 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:35
-
記憶がフラッシュバックする
雪の中 紅いコート 目の紅い亜弥ちゃん
初めて 姉妹になった 満面の笑みの亜弥ちゃん
悪ガキ いじめ 仕返し 泣き笑いの亜弥ちゃん
小学生 夏休み 虫 怯える亜弥ちゃん
中学生 キッチン 料理 指を切った 処置 照れ笑いの亜弥ちゃん
夏 浴衣の亜弥ちゃん 水着の亜弥ちゃん 奇麗になった亜弥ちゃん
ソファ 二人きり 艶のある声をだした亜弥ちゃん
- 203 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:40
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 204 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:42
-
大事な大事なタカラモノ
それはどんな形や色を持っているのか、存在自体がなんなのか分からない
でも薄い膜がその周りを囲って、守ってる
無音の世界でぽつん、とそのタカラモノはある
ゆらゆらと…深い深い海の底の様にある様にも見える
- 205 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:43
-
何年も 何年も その様子は変わらなかった
ある日 膜にヒビが入ってしまって、そのタカラモノはそこから無くなってしまう
どうして無くなるの?
酷いよ
ーーーーき!!
あんなに大事な タカラモノ 二度とないよ
ーーーみき!!
あたしは…
「……どう…したら…」
「美貴!!…っ…大丈夫!?」
- 206 名前:9 フラッシュバック 投稿日:2004/12/18(土) 03:45
-
なに…これ…
ぼやけている視界じゃ何なのか、ほとんど認識できない。
「よかったぁ、通りがかったらブッ倒れてるからさー死んでるかと思ったじゃんばかぁ!!」
…よっすぃー?
「…あたま…い…た…」
「あぁいい、いい、無理に喋らないで寝てて。」
温かい声に安堵して、フッと意識が途切れた。
- 207 名前:次元黒猫 投稿日:2004/12/18(土) 04:02
-
以上をもちまして、血の枷の更新を一旦止めさせて頂きます。
勝手な作者で申し訳ございません。
お詫びといってはなんですが、短編も書きました。
エロい表現と不快な表現が、それぞれ小さじ1/2程含まれますので
お嫌いな方はこの話、すっ飛ばして下さい。
- 208 名前:次元黒猫 投稿日:2004/12/18(土) 04:06
-
取り扱い注意 : えろ・不快1/2(小さじ)
- 209 名前:次元黒猫 投稿日:2004/12/18(土) 04:09
-
短篇1『危うい距離感』
- 210 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:11
-
必要以上、君には会わないようにしているんだ
それはお互いの暗黙のルール
社会に出ている大人の一人だから 常識はあるし
この世界を上手に渡って行く術だってある程度 心得ているし
そう 関係を長く続ける術だって 解っているし
お互いが一番の理解者だから、お互いに距離の取り方なんて十二分に承知しているはずだったのに
- 211 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:12
-
- 212 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:14
-
「もう着ちゃうの?」
「うん」
辺りが薄らと明るくなってきた早朝。
亜弥は美貴を引き止めようと、その背中へ呼びかけた。
「もうちょっと…このままで」
美貴の手を強引に掴んで、ベッドの中へと引っ張り込む。
- 213 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:15
-
「あーやちゃん」
「んー?」
首筋に顔を埋めながら、空返事を美貴に仕返す。
これから美貴は仕事だというのに。お互い解っているはずなのに。
そうやって、また。
「亜弥ちゃんってさぁ、年上なんだよねぇ…」
「んーそれはアフレコだから。」
「もー甘えたきゃ、彼氏に続き、してもらいなよ。」
「…みきたん冷たい。会うの、久しぶりなのに。」
「やめてよ、そういう事言うの…」
- 214 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:17
-
美貴は亜弥を引きはがし、再びベッドから立ち上がると、床に散らばった二人分の服から
自分のを探り出し、着始めた。
美貴は亜弥へと視線を投げた。亜弥は美貴をじっと見ている。
見つめ合う。
車の走り抜ける音が僅かに聞こえてくる。
「解ってる癖に」
「解ってる癖に」
数秒の沈黙は、おうむ返しをされた美貴の苦笑で破綻した。
- 215 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:20
-
昨日美貴は、会いたいから来て、といういつもの唐突な連絡を受けてタクシーに乗り込んだ。
寒さでかじかむ手を摺り合わせながら、亜弥の家のドアが開くのを待っていた。
ガチャリという音の後、すぐさま亜弥が飛びついてきて、狂った様なキスをしながら
互いの服を脱がせ合い、ベッドへと雪崩れ込んだ。おおよそ日本人らしからぬ画。
いつもの事。ドアの開く音は、始まりの合図。
こんな関係になったのはいつからだったか。
友達以上で恋人未満の、耐えきれない関係を壊したのはどちらが先だったのだろうか。
そんな曖昧な記憶が脳裏をよぎった。
そんなのどうでもいいか、美貴は苦笑した。
- 216 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:21
-
「何ニヤついてんの?やーらしー」
「…昨日の亜弥ちゃんを思い出してただけだよ」
ベッドに肘をついて、こちらを見上げる亜弥の方がイヤらしい。
シーツの隙間の誘惑に乗ってしまうのは時間も危うくなるし、苦笑した理由は
口にだせなかったので、美貴はあえて亜弥のからかいに乗る事にした。
「思い出し笑いする人って、やらしいんだってさ。やだーへんた〜い」
「そっちこそ昨日…」
「えー何?聞こえなーい」
「……のど乾いた」
軽く亜弥を流して、美貴はリビングへと向かった。
- 217 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:23
-
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスへ注ぎ、一気に喉へと流し込む。
エアコンが付けっぱなしだった様で、リビングは既に暖かかった。
角にある間接照明のぼわーっとした明かりが、美貴の顔に陰影を作る。
某有名店で一緒に購入したグラスが、鈍く光っている。
革のソファに座って、メンソールの煙草に火をつける。
携帯をチェックすると、彼氏からもメールが1件入っていた。
"今日今から仕事だろ?亜弥ちゃんとは、ほどほどにね"
「何をほどほどになんだよ…」
舌打ちしながら、携帯をソファの脇へと追いやる。
- 218 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:26
-
「仕事まであと45分か…」
互いに彼氏の事は大事にしているし、それなりに愛している。
しかしどうしても、相手の精神年齢に不満を感じる部分もあって。
肉体的にも問題がある部分もあって。
何より違う生き物の気持ちを理解するには難点が多くて。
そんな山積みの問題も、美貴にとっては面白い事ではあるのだが。
「やばいなぁ」
またも、亜弥との距離を縮めたくなった。
しかしそれは互いに決めた暗黙のルールを破る事になる。
- 219 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:28
-
亜弥と美貴は関係を壊した後も今まで通り、互いに一線をおいて、クールに付き合ってきた。
そうでなければ、焦げて朽ちるのが目に見えている関係だから。
そうなるのは怖い事だし、そうはなりたくない。
こんな世界で生きているんだから、何より経験は多い方が生き易い。
自分の隙間を埋めてくれるのは、多い方が良い。
そう、1番穏便に過ごす方法は解っている。
でも
二人きりの空間で目と目が合った途端、狂ってしまうのはどうして。
だから一線置いているのだけれど、もっと狂いたくなるのはどうして。
心の片隅に静かに燃える、矛盾した火種。
狂ってしまう理由は自身の中で消化できるが、これ以上を求める理由が鎮火できずにいる。
- 220 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:30
-
「どーしよ…鎮まるかな…」
「何をしずめるの?」
ソファに頭を乗せ天井を仰いでいた美貴の視界に、逆さまの亜弥の顔が飛び込んできた。
「何って…。船が沈むから盛り上がると思って…」
「は?なんでいきなり…船?」
「いや、ねぇ、タイタニ…んっ」
亜弥は、内心慌て出した美貴の頬を両手で固定し、唇で続きを塞いだ。
あぁどうしよう、何も考えられない。
これでは鎮まりそうもないではないか。
むしろ火に油を注いでいるようなものだ。
何度もついばんだキスの後、美貴の思考を奪うかの様に、亜弥の舌が差し込まれてくる。
美貴はそれに応えながら、亜弥の頭を引き寄せた。
- 221 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:31
-
「えへ、反対ってやりにくい。」
「もう…こっちにおいでよ。」
悪戯に笑う亜弥は小走りに隣へと近寄ってきて、美貴の膝上に跨がる。
「って服着てないのかよ!」
「んだって、暑くて」
上下赤のインナーだけ身につけていた亜弥に軽く突っ込みをいれ、ため息をつきながらその腰に腕を回した。
- 222 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:34
-
「ねぇたん、鎮めるって…あたしとの熱をでしょ?」
「ぶっ!」
思わず吹き出してしまった美貴の目を、至極近くで亜弥の目が覗きこむ。
「いや…ね、あたしもそう…思ってた。」
「……」
「あたしも…鎮まりそうにないの。どうしよう。」
なんてこった、こいつは美貴のドッペルゲンガーか。
何もタイミングまで同じでなくてもいいのに。
”どんな事しても 無駄って訳?”
美貴は亜弥への愛しさが込み上げてきて、亜弥の胸に顔を埋め抱きしめた。
- 223 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:35
-
「じゃあ…さ、今より会う回数を増やして?それから、あたしの事をちょっとでも多めに…
大切にしてくれますか?」
少しだけ苦しそうな息づかいが、美貴の耳に届く。
「……ねぇ、足りないのは美貴もだって事、解ってるんでしょ?」
「え…」
「美貴だってもっと亜弥ちゃん……ね?」
鼻先で谷間を擦り、回した腕の力を強めると、亜弥は甘い吐息を漏らした。
「美貴たん…もうちょっと時間あるみたい」
「え?」
亜弥は美貴を労る様にそっと組み敷くと、困惑する美貴のシャツのボタンに手をかけた。
- 224 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:37
-
- 225 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:39
-
距離の測り方は十二分に解っているはずだったのに
だからなるべく会わない様にしていたはずだったのに
この熱は鎮まるどころか、もっと身を危険にさらしたいかの様に、じわじわと侵蝕していきそうだ。
まだ見ぬ感じ得ぬ世界が、怖い。
亜弥なら
でも
美貴なら
自分を壊さない方法を知っているような気がする
高め合える相手に託すこの予感が100あるとしたら、それは120
にも1200にも、如何様にでもなるということを、当人同士は未だ気付いていない。
「亜弥…ちゃん、もっと」
「ん…」
- 226 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:41
-
埋めるモノが多すぎても、そのモノ自体の個々の質が高くなければ、自身は埋まらない。
最初から牽制しあっていた距離の取り方は、意味をなさない事に気付くのは、いつになる事か。
お互いに頭の片隅で、ある終わりを感じた。
- 227 名前:危うい距離感 投稿日:2004/12/18(土) 04:42
-
「あー美貴たん、元気?」
「うん元気だよ、そっちは?」
「元気だよぉ。テレビの美貴たんに会ってるもーん。」
「ふっ、美貴もテレビの亜弥ちゃんに会ってるからー…」
「でね、本物にそろそろ会いたいんだけど、うち来てね」
「うんわかった、待ってて。」
〆
- 228 名前:次元黒猫 投稿日:2004/12/18(土) 04:56
- 個別にレス返しを
>>185 名無飼育様
レス有り難うございます。取り乱して頂いたのに一旦停止させて頂き
ます、振り回して申し訳ない。
>>186 名無し読者様
レス有り難うございます。展開も黒猫も何てこったいなのですが、
再開までお待ち頂けたら嬉しいです。
>>188 名無飼育様
お言葉に甘えさせて頂いています。これからもギャンバります!
>>189 名無飼育様
全くもってマイペースかつ勝手な作者です。更新お待ち
して下さって有り難うございます。
>>190 名無飼育様
今年の残り更新数はまだメドが立っていませんが、マターリお待ち
下さるとこちらも助かります。
年末年始は忙しいので、更新のメドがまだ立っていません(´・ω・`)スマソ
こちらが勝手に色々決め進めましたが、感想等なんでもお待ちしております。
皆様のレス、励みになっています。
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 21:24
- 待ってましたよ次元さん!!!
血の伽が復活する事を願って待ってますので、頑張ってください!
- 230 名前:名無し飼育 投稿日:2005/01/20(木) 13:53
- 短編いいです!ただならぬセンスを感じる。
- 231 名前:次元黒猫 投稿日:2005/03/09(水) 01:55
-
短篇2『AETH』
- 232 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 01:58
-
Endless Repeat
ピッピッピッピッ
ルスバンデンワサービスセンターヘ オツナギイタシマス
ゴヨウノアルカタハ ハッシンオンノアトニ
ゴヨウケンヲ オハナシクダサイ
ピーーーー
- 233 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:00
-
「もしもし、美貴です。亜弥ちゃん…あのね…この前言ってたお店、どこにあ
んのか分かったよ、青山通り沿いの、ほら、美貴が鼻血でそうとか言って止
まっちゃったトコのあの小道。それで今度一緒に行こうねってかああああ」
プーッ、プーッ、プーッ
- 234 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:00
-
- 235 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:02
-
ピーーーー
「あー美貴です。あのね、美貴から言いたい事はね……だから…その…なんて
いうか…ほら…もう言いたい事わかるでしょ?付き合い長いんだし今更改ま
って言う事でもないんだけどさだっ」
プーッ、プーッ、プーッ
- 236 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:02
-
- 237 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:03
-
ピーーーー
「んーコホン。美貴です。亜弥ちゃん、あなたに何が起きても、美貴が守ったげる
から安心してね。何があっても美貴は、あなたの味方です…
…大好きだよ。」
- 238 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:06
-
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
- 239 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:08
-
ピーーーー
「もしもし、あなたが大好きな亜弥ちゃんだよ。メッセージ聞きました、そう
だね…今度のオフは、あの店…行こうね…で、おいしい物たくさん…食べ…
…っく……た…ん、今日、会って。会いたいっ」
プーッ、プーッ、プーッ
- 240 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:08
-
- 241 名前:AETH 投稿日:2005/03/09(水) 02:12
-
ルスバンデンワサービスセンターヘ オツナギイタシマス
ゴヨウノアルカタハ ハッシンオンノアトニ
ゴヨウケンヲ オハナシクダサイ
ピーーーー
「An eternal true heart,forever with you.」
Endless Repeat
- 242 名前:次元黒猫 投稿日:2005/03/09(水) 02:38
- 〆
駄文を読んで下さる皆様へ
間が随〜分と空いてしまいました、申し訳ないorz
冒頭でもいいましたが、本当に不定期ですorz
あけましておめでとうございます(エッ
ミキティ、二十歳のお誕生日、おめ…でとう…ござ…ウッ
>>229 名無飼育様
ほんと自己虫ですいません、そう言っていただけると本当、助かり
ますし、嬉しいです。
>>230 名無し飼育様
今回も短篇どころじゃない短短篇で申し訳ない。
センスか…センスか…センスか…←ちょっとスキップ。
あぁ、まじウザくてすいません。
短短篇、一つだけ載せてみました。
今思う一番の、黒猫の想いを書いてみました。
やっぱり恥ずかしい。
レス、とてもとても励みになっております。色々あることが、色々癒されています。
また何かできたら、次回。
案として、松ペン先生今日も指導中…とか考えてたり…
んーボツかな…ノシ
- 243 名前:次元黒猫 投稿日:2005/03/09(水) 02:42
- 勇気を出して、晒しあげ
- 244 名前:次元黒猫 投稿日:2005/03/09(水) 02:43
-
あ、やべ…
- 245 名前:次元黒猫 投稿日:2005/03/09(水) 02:44
- 失礼しました。
- 246 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 18:38
- 良かったです!今後も期待しています
- 247 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 08:52
-
- 248 名前:時限黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 08:53
-
あたしは猾い。
親友を束縛するのって、永遠にできない事なのかも。
何かカタチを作って独占するより、何倍も難しい事かもしれない。
’
でもやっぱりね、あなたの一番はあたしであって欲しいわけ。
でもやっぱりね、あたしの一番はあなたじゃないの。
なんて我が儘なあたしなんだって、わかってる。
なんて欲張りなあたしなんだって、わかってる。
- 249 名前:次元黒猫orz 投稿日:2005/06/09(木) 08:55
-
でもやっぱりね、あなたの一番はあたしであって欲しいわけ。
でもやっぱりね、あたしの一番はあなたじゃないの。
なんて我が儘なあたしなんだって、わかってる。
なんて欲張りなあたしなんだって、わかってる。
幸せになって欲しいし、幸せになりたい。
女の子として生まれたんだからさ、やっぱり、いつかはねぇ。
ねぇ美貴たん、あたしのすごい方法、聞きたい?
うっそ、ごめん、死んでも言えない。誰にも言えないの。
それは美貴たんーーーーーー
- 250 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 08:56
-
短篇3『じょうずなうそ/A』
- 251 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 08:57
-
「もう亜弥ちゃんなんかキライ」
亜弥にあった温もりが、遠ざかる。
美貴はソファから降り、更にカーペットの端にまで行って体育座りで亜弥へと背を向けた。
いましがたまで亜弥の足の間に収まって居たのに。
- 252 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 08:58
-
- 253 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:01
-
ここ1時間ほど亜弥はずっと、弾丸の様に喋り続ける美貴に対して、時折頑張って
表情を変えながら、美貴の話に相槌を打っていた。
オーバーリアクションなんて、カメラの前でしかしない。
でも今日は軽めにあややを織りまぜながら、喋っている。
亜弥は全く別のことを考えていた。自然と、その別の事へと考えが移ってしまっていた。
触れてくる美貴の心地よい体温、首筋から香る甘い香水の匂い、鼻をくすぐる髪、亜弥
の前では素の、耳障りのよいほんの少し低めの静かな声、亜弥の前で見せる、口角を
時折下げながら軽く笑う、淋しがり屋の口元、話しながら亜弥の手に手を絡ませてくる
その指先。
どれもいつもの美貴で。その存在は亜弥へと確かに安心をくれているの
に。
- 254 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:05
-
あぁもっと、奥まで触れたらいいのに。
「それでねー、愛ちゃんがまじウケんの。わからんって言った瞬間皆で爆笑してさぁ」
「あははまぁじでー、ウケル〜」
心の奥よりも、ずっとずうっと深いところに。
「お母さんが亜弥ちゃん亜弥ちゃんうるさくてさぁ、ま、美貴も亜弥ちゃんに
会いたいっていうのもあるけどさぁ」
「行く行く、近いうちに泊まる〜」
- 255 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:07
-
あいつとなら簡単にできる。
「a見てたらアンくんが美貴の膝に乗って来てさぁ、でそれ見せたらわんわん
言ってるんだよー、あ!!でもアンくんが写真ベロベロ舐めちゃってさー
ついでに足の爪で破れちゃってーだから替えちょーだい?だいじょーぶ、
それアンくん用で捨てたりしないから」
「いいよーじゃあアンくん用でも100冊ぐらいあげるー」
ぜんぶ、全部に触れるのになぁ。
「でね、やっぱ別れるって言われて…まぁ美貴もそろそろダメかなって思って
たんだけど実際言われるとキツイものがあって…ははっ」
「あはは、うけるー、そんなの気にすんなってー」
美貴はしばらく苦笑いをしていたが、やがて何も言わなくなってしまった。
- 256 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:08
-
やってもた。
ちゃんと聞いてたのに、言葉も選んでいたのに。
亜弥は苦笑いを浮かべる。
「…つか亜弥ちゃんたまぁに美貴の相談話、軽く流しちゃうよね」
「いやその…」
「……もーいいもん」
- 257 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:08
-
- 258 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:10
-
ヤバイ。今日のはヤバイ。
美貴が拗ねる事は多々ある。
でもそれは大抵、亜弥に仕様が無い原因がある、不可抗力の時で。
でも美貴だって、上の空で適当に応える時だってある。
「…みきたーん」
「…………」
美貴は近くにあったリモコンを手にとり、テレビのチャンネルをつけ、くるくると
局を回しはじめる。
1、3、4、5、6…
すると亜弥の出ている番組が映り出した。
美貴は10秒程その番組で止まる。美貴はあぐらをかき出した。
また局を回し始める。
今あたしが出てたのに。
3周ぐらいしたのだろうか、美貴は亜弥が出ている番組にチャンネルを固定した。
いつもなら美貴はテレビの亜弥に色々突っ込んだり、笑ったりしているのだが
今日は無言のままテレビをじーっと見ている。
- 259 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:12
-
『えー今度の曲はですね、すごい、大人っぽくて』
1分程経過すると、美貴は両手を軸にし、後ろへと座りながら後退してきた。
そして後ろ手でテーブルに乗っているポップコーンの袋を掴んで、四つん這いで
元の隅っこへ戻り、袋をバリッと開け、パクパクと食べ始める。
あくまで、こちらには絶対に顔を向けないぞ、という意思なのか。
美貴は相変わらず亜弥に背を向けている。
やば。
「…たーん」
「………」
亜弥がテレビの中で歌い始めた。
すると、背中からちょこんとはみ出して見える、あぐらをかいた膝の頭が
ちょこちょこと揺れ出した。
どうやら曲にノっている様だ。
美貴は相変わらず亜弥に背を向けている。
- 260 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:13
-
「たん、ごめんねぇ」
「…………いいよ、も」
美貴の首筋に鼻を埋めながら、亜弥は後ろから抱きついた。
ぶっきらぼうに美貴は返事したが、美貴の口元は微かだが笑っていた。
変わらずにその口角は下がっているけれど。
「ほんとごめん。あのね、仕事のことがあって、それぼーっと考えてたの」
「…ふーん…大丈夫なの?」
「うん!!」
「ぐぇっ、苦しい!!」
- 261 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:14
-
じたばたとじゃれあって、くすぐり合って、転げる。
美貴が上になって、亜弥が下になる。
カーペットにあった食べかけのポップコーンが、亜弥の手で弾かれてバラける。
美貴の足がテーブルに当たって、ガシャンと振動する。
笑って、怒って、からかって、涙ぐむ。
亜弥が上になって、美貴が下になる。
それでも2人は気にせずキャットファイトを続ける。
ふわふわのカーペットの毛が、空中を舞って落下する。
ふと気付くと、相手の笑い声と乱れた呼吸しか、互いの耳に入ってこなくなっていた。
- 262 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:15
-
「ねぇ亜弥ちゃん、美貴のこと1番好き?」
- 263 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:16
-
イヤに真剣な顔で美貴は亜弥を見つめる。
こういうことを言う美貴の表情にはいつも、遊びのニュアンスが入っているのだが
今日はそれが感じられない。
どっちが上に居るのだろうか。どっちが下に居るのだろうか。
暴れ過ぎた所為でもう、わからない。
近すぎる所為でもう、わからない。
- 264 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:17
-
「1番好きだよ」
亜弥は満面の笑みでうそをついた
- 265 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:18
-
- 266 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:19
-
あたしは猾い。
美貴たん、あたしはどんな嘘だってつける。
あなたと深く繋がるには、あまりにも方法が少ないから。
この舌は正直に回らない。
職業のせいってのもあるけど、隙を見せないのに慣れたのが、悲しくて痛いよ、美貴たん。
だってほら、今だって完璧に笑える。
- 267 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:22
-
でもどうか、言葉にしなくても伝わって欲しい。誰にどう思われたって構わない
あなたにだけ伝わって欲しい。
あたしが嘘をつくその意味を。
穢れを知らない純粋なその強い目に、その心に、ずっと映り続ける為の
あなたと繋がる汚れた術
ーーーーーあなたを、優しい嘘と温度で永遠に閉じ込める。
死ぬまで言えない。
- 268 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/06/09(木) 09:23
-
〆
- 269 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 09:50
-
まずお返事をば。
>>246 名無飼育さん様
こんな短篇過ぎる短篇にお返事ありがとう御座います。
約3ヶ月間更新しなかった事、言い訳はしません。申し訳ない。
今回のじょうずなうそはあややverなんですが、近いうちにミキティverを載せたい…いや
載せますんで、それまでしばしお待ち下さい。
それにしてもあやみきはいいですね。可愛らし過ぎて癒される。
それにしても個人的にkは気に入りませんがね、態度が。その隣の人は親切だっ(ry
レスにいつも助けられています。批評、感想、なんでもお待ちしております。
- 270 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 09:53
-
晒
- 271 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 09:53
-
し
- 272 名前:次元黒猫 投稿日:2005/06/09(木) 09:54
-
顎
- 273 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/09(木) 23:15
- さようなら
- 274 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/13(月) 00:11
- 待ってましたよ
- 275 名前:次元黒猫 投稿日:2005/08/26(金) 18:21
-
短篇3裏『じょうずなうそ/M』
- 276 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:24
-
美貴は甘い。
親友は、上手い具合に美貴を転がす。じょうずに嘘をつくんだ。
あの日は、美貴の所にこれなかった理由もわかるけど、一体何回ぐらい
あんたの一生のお願い聞けばいいのかな。
慣れたけどたまぁに自分で自分が嫌になる。結局受け入れる。
いっそのこと一線超えちゃえば楽なんだけど、女の子同士だもんねぇ。
なんていいながら、2人で笑い合いあってじゃれあってちゅう。
- 277 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:26
-
なんだろなぁ、この関係。姉妹じゃない、ただの友達でもない、親友って
言葉じゃ片付けられない。例えるなら、幼なじみみたい。
幸せになって欲しいし、幸せになりたい。
心からそう思う。
長い付き合いでさ、お互い色んな体験してきたしね。
だからやっぱりね、美貴の1番はあなたじゃないの。
だからやっぱりね、あなたの1番になりたいの。
- 278 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:27
-
ねぇ亜弥ちゃん、美貴の幼なじみなら察して
美貴も猾いんだよ
気付いてないんだね
あのね亜弥ちゃんーーーーーー
- 279 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:28
-
- 280 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:32
-
「もう亜弥ちゃんなんかキライ」
触れてくる亜弥の心地よい体温、後方からする亜弥の匂い、首筋に当たる可愛
い小鼻、美貴の前では素の、低めの溶けそうな甘い声、美貴の前で見せる、素
の笑い方、包み込む柔らかい胸と腕、手を絡ませると応えてくれるその白い指先。
美貴は傍にあった亜弥の温もりを、遠ざけた。
ソファから降りた時、美貴の視界の片隅に亜弥が苦虫を潰した様な表情をして
いるのが映った。
いましがたまで亜弥の足の間でぬくぬくとしていたのに。ぬくぬくとしていた
かったのに。
- 281 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:33
-
- 282 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:34
-
ここ30分ほど美貴はずっと、亜弥に向かって弾丸の様に話まくろうと
決心していた。久しぶりに会って話したい事が山ほどありすぎる、とい
う理由も無くはないが、それよりも敏感に感じ取ってしまったことがあ
る。
そう美貴を腕の中に閉じ込めている亜弥は、上の空。
亜弥の上の空には2種類ある。ちゃんと美貴の話を頭に入れている時
と、別の事を考えてしまって頭に入れていない時。
お互いに人の話をあまりちゃんと聞かない事が功を奏したのか、美貴に
は今の亜弥がどっちの上の空であるのか、容易に判断する事ができた。
判断の基準として、亜弥の表情にあややが入っているかどうか、といの
もあるが。
- 283 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:35
-
あぁもう、むかつく。
「それでねー、愛ちゃんがまじウケんの。わからんって言った瞬間皆で
爆笑してさぁ」
「あははまぁじでー、ウケル〜」
聞いてない。指先がじれったそうに動いている。
「お母さんが亜弥ちゃん亜弥ちゃんうるさくてさぁ、ま、美貴も亜弥
ちゃんに会いたいっていうのもあるけどさぁ」
「行く行く、近いうちに泊まる〜」
- 284 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:36
-
何考えてるかわかってるんだよ
「a見てたらアンくんが美貴の膝に乗って来てさぁ、でそれ見せたらわ
んわん言ってるんだよー、あ!!でもアンくんが写真ベロベロ舐め
ちゃってさーついでに足の爪で破れちゃってーだから替えちょーだ
い?だいじょーぶ、それアンくん用で捨てたりしないから」
「いいよーじゃあアンくん用でも100冊ぐらいあげるー」
美貴のこと考えて
「でね、やっぱ別れるって言われて…まぁ美貴もそろそろダメかなって
思ってたんだけど実際言われるとキツイものがあって…ははっ」
「あはは、うけるー、そんなの気にすんなってー」
- 285 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:37
-
やっぱりダメか
「…つか亜弥ちゃんたまぁに美貴の相談話、軽く流しちゃうよね」
「いやその…」
「……もーいいもん」
しかたないか
- 286 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:37
-
- 287 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:39
-
美貴も一緒で、亜弥を1番にはできない。
もどかしい距離、壊せない、壊したくない関係、苦しくて仕方が無い。
だからこうして拗ねて怒ったフリをして、行き場の無い気持ちを誤魔化してみる。
そして
こーしたら、見てくれるでしょ?
「…みきたーん」
「…………」
美貴は近くにあったリモコンを手にとり、テレビのチャンネルをつけ、
くるくると局を回しはじめる。
1、3、4、5、6…
すると亜弥の出ている番組が映り出した。
美貴は10秒程その番組で止まる。美貴はあぐらをかき出す。
また局を回し始める。
ふーんだ。ばか。
3周ぐらいしたのだろうか、美貴は亜弥が出ている番組にチャンネルを
固定した。
いつもなら亜弥の膝枕で、ツッコミして大爆笑しているのに。
- 288 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:41
-
『今度の曲はですね、すごい、大人っぽくて』
あーこれお揃のやつだ…
1分程経過すると、美貴は両手を軸にし、後ろへと座りながら後退して
きた。そして後ろ手でテーブルに乗っているポップコーンの袋を乱雑に
とっ掴んで、四つん這いで元の隅っこへ戻り、袋をバリッと開け、パク
パクと食べ始める。心底怒っている、フリをする。
美貴は相変わらず亜弥に背を向ける。
ほら、早く。
「…たーん」
「………」
亜弥がテレビの中で歌い始めた。掌のポップコーンで遊ぶ。
音が体内へと入って来て、リズムを無意識の内に刻み出す美貴。
職業病なのか、ホントは機嫌が悪くはないというアピールなのか。
どっちともとれるその後ろ姿に亜弥は、悪戯心を抑えられず手元にあっ
たクッションを投げ付けた。
美貴は口の端で笑った。
美貴は相変わらず亜弥に背を向ける。
- 289 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:43
-
「たん、ごめんねぇ」
「…………いいよ、も」
やっときてくれたか。
美貴の首筋に埋まる亜弥の顔は、切なげに揺れている。
亜弥が美貴を大事にしていることは充分承知しているから。
その声を聞くと、何でも許してしまう。
いや、その存在が美貴の中ではとっくの昔にもう許されているのだろう。
「ほんとごめん。あのね、仕事のことがあって、それぼーっと考えてたの」
「…ふーん…大丈夫なの?」
「うん!!」
「ぐぇっ、苦しい!!」
- 290 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:44
-
じたばたとじゃれあって、くすぐり合って、転げる。
美貴が上になって、亜弥が下になる。
カーペットにあった食べかけのポップコーンが、亜弥の手で弾かれて少しバラける。
美貴の足がテーブルに当たって、ガシャンと振動する。
笑って、怒って、からかって、涙ぐむ。
亜弥が上になって、美貴が下になる。
それでも2人は気にせずキャットファイトを続ける。
ふわふわのカーペットの毛が、空中を舞って落下する。
ふと気付くと、相手の笑い声と乱れた呼吸しか、互いの耳に入ってこなくなっていた。
- 291 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:45
-
「ねぇ亜弥ちゃん、美貴のこと1番好き?」
- 292 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:46
-
真剣な顔で美貴は亜弥を見つめる。下らない事を聞いているのは重々承知で。
どっちが上に居るのだろうか。どっちが下に居るのだろうか。
暴れ過ぎた所為でもう、わからない。
近すぎる所為でもう、わからない。
- 293 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:47
-
「1番好きだよ」
嘘つき。
美貴は満面の笑みで応えた。
- 294 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:47
-
- 295 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:48
-
美貴も、猾い。
こうやって今日もまた、亜弥ちゃんの1番になれる。
こうやって今日もまた、美貴の1番は亜弥ちゃんなんだって思えたでしょ。
幾らでも嘘をついていいよ。全部わかってるから。
どうあがいてもお互い1番にはできないのもわかってるから。
何があっても全部許すから。
その茶褐色の綺麗な目に、強い芯に、ずっと映り続ける為の
あなたに仕掛けた甘受の罠
ーーーーー美貴の甘さに永遠に溺れさせるの。
もう逃げられないし逃がさない
- 296 名前:じょうずなうそ 投稿日:2005/08/26(金) 18:49
-
〆
- 297 名前:次元黒猫 投稿日:2005/08/26(金) 19:04
-
『じょうずなうそA/M』は完結です。
上手な嘘をつけていない2人を見て頂けると幸いです。
すぐに載せたかったのですが空いてしまいました、申し訳ない
マイペース人間ですが、こうやってレスを貰えるととても嬉しいです。
>>273 名無し飼育さん
お目汚し失礼しました、ありがとうございました
>>274 名無し飼育さん
ありがとうございます。待っていて下さって助かっています
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/26(金) 22:12
- 待ってたよ黒猫さん。
- 299 名前:次元黒猫 投稿日:2005/10/03(月) 17:59
- 更新します
- 300 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:01
-
吸い込まれるようにベッドに沈み込んだ
根暗と言われようがなんと言われようが構わない
睡魔に抵抗する気さえなく、重い瞼をそのままシャットダウンさせた
- 301 名前:次元炉猫 投稿日:2005/10/03(月) 18:01
-
- 302 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:03
-
カーテンの隙間から漏れてくる光で目を覚ました。
働かない頭が夢と現実の間を揺れている。
「…はぁ」
無意識に吐き出した気怠い溜め息の音で、ようやく現実に戻ってこれた。
どうやら悪い夢をみたようだ。内容はあまり覚えていないのだけれど
見たくなかったあの夢を見た様なきがして、軽く舌打ちをしてまう。
枕元に置いてあった携帯を乱暴に手にとって、時間を確認する。
14時30分。そんなに寝たのか。
昨日仕事が終わったのが11時で、寝る支度をしてから3秒で寝たものだから
約12時間は寝ていることになる。
疲れている。その事をはっきりと自覚する。
- 303 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:05
-
現に寝覚めは最悪なものだし、体の疲れはどうやら抜け切っていないようだ。
ここの所、仕事が忙し過ぎてまともにゆっくりした記憶がない。
目覚ましは全部切って携帯もマナーにしておいたのに、誰にも邪魔
されずに大好きな睡眠は沢山とれたはずなのに。
「…あいつか」
記憶の中にある相手が脳裏に現れ、美貴は虚ろな目をして遠くへと視線を投げる。
身を焦がすような恋ではなかったが、どこか冷めていた部分があったし、忙しさ
がどうしてもお互いを遠ざけてしまった。
仕方ない。4文字で片付けてしまった恋。
- 304 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:07
-
「…子供だったのかな」
気を持ち直そうと携帯を弄ると、どうやら寝ている間に亜弥から電話とメールが
一件ずつ来ていたようだった。
すぐに電話をかけ直すのは不機嫌丸出しすぎるので、メールを1通送信して立ち上がる。
「鬱陶しい」
美貴はバスルームへと向かった。
- 305 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:07
-
- 306 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:09
-
グラスになみなみと注いだお茶を、美貴は一気に喉へと流し込んだ。
「っぷはー」
思わず豪快に出てしまった、自分の声に驚く。
ふはっ…中年オヤジかよ
自嘲気味に笑いながら、反射的に心の中で毒づく。
ノリツッコミとか、寒いな。
いつも美貴が何かする度に、笑いながら突っ込んでくれたり、何か落ち込む様な
事があれば、寄り添って体温を分けてくれたり、嬉しい事があった時は共に喜ん
でいてくれたり。
そんな当たり前の様に側に居た人は、今は側に居ない事を思い知らされる。
- 307 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:12
-
テーブルに置いたグラスが、やけに大きな音をたてた気がした。
現状何も変わったことはない。そう、何も。ただ単に疲れているだけだ。
仲間とも適度な距離を保てている。近過ぎず、遠過ぎず。
仲間に対して心の内を晒すことなんて、とうの昔に諦めていた事だ。斜に構えて
常に無愛想に振舞うことすら、もう違和感を感じない。日々をたんたんとこなせ
ている。与えられたものに対して抵抗するなんて無意味な事は表には出さず、波
に乗れているはずだ。
欲が無いと言われればそれまでだけれど、多くは求めていない。そう、多くは。
白と黒で統一させたこの部屋は、いつも喧騒から美貴を隔離して落
ち着きをくれるはずなのに、今日は何故か静かに佇み過ぎていた。
「夢なのに…」
タオルで纏めきれず漏れた髪の毛から、水滴が一つ床へと落ちる。
淋しさは募る
心の拠り所を求めるように、美貴は足早に寝室へと向かった。
- 308 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:13
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- 309 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:14
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『お風呂あがったら電話しなさい』
「もしもし、美貴」
「うん」
「…………」
「……なんか、疲れてない?」
あぁ、いつもの亜弥の声だ。いつもの亜弥の声なのに。
美貴を労るようにうかがうその声に、少しだけ泣きそうになる。
美貴は目頭の熱さを誤魔化す様に上を向き、携帯を持つ手をかえた。
- 310 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:16
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「うん疲れてるけど…ねー今なにしてるの」
「ん、今仕事終わってマネージャーさんに送ってもらってる」
「……てかさぁ、今日泊まりにきてよ」
「ふははっ、いいよぉ言われると思ってたし…んーでも9時くらいになるよ、
そっち行くの」
「いいよ。待ってるもん」
「うん……あのさ?」
「ん?」
「……過ぎたことだけど、あのね、自分の気持ちが強すぎて、みきたんの深い所
が見えなかっただけ。強がってたのに気付いてあげられなかっただけ。それだ
けのことだったの。オトナとか子供とか関係ないんだよ。…だから後悔なんて
しなくっていい、あたしは、みきたんが充分好きだったってこと見てきた。あ
んたを一番わかってる…つもりよ?」
「…ははっ、つもりって何だよ…」
「だからぁ…あたしがついてる、何も心配しなくていい」
- 311 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:19
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あぁもう。
この人は、美貴を惚れさせたいのか。
いや既にもう惚れているけれど。
徐々に声のトーンを落とす柔らかい亜弥の声が、美貴に刺さった棘を取り除いて
いく。こうして自然に涙が溢れてくる。泣かせてくれる。いつも吐けない弱音を
吐く度に、こうやって美貴を素直にさせてくれる。諭す様ないつもの口調は、や
っぱり安心させてくれる。そう、ありのままの自分を出せるのだ。
しかしあまりにもストレート過ぎる言葉で美貴の心を丸裸にするものだから
照れてしまい、思わず泣きながらもくしゃっと笑ってしまった。
- 312 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:21
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「ねぇ亜弥ちゃん、好き」
「ふははっなによ突然、あたしも好きよ?」
「ちがーくてぇ…美貴は亜弥ちゃんよりも美貴の方が亜弥ちゃんを好きだって
いいたいのーグスッ…」
「意味分かんない、って泣いてんじゃん!!」
「…泣いてないもん、何?美貴の片思いなの?」
「そんなことないよぉ、好きに決まってんじゃん、あ、今鼻水すすったべ」
「…鼻炎だもんアホグスッ」
「…もぉー待ってて、今日いーくーかーらぁ〜」
「ははっ…可愛い」
「ぶっ、何それ、いつもみたいに突っ込んでよウザイって」
「やだ…可愛い」
「にゃっははやーだぁ、みきたんも可愛い」
- 313 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:22
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- 314 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:23
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窓を開けバルコニーに出て、眼下を見渡す。
自宅から少し離れた所にある教会から、第九が聞こえてきた。
懺悔の部屋で、牧師に独白したみたいだなと美貴は思った。
心の内をぶちまけて、更に許しを貰えたような、救われたような。
同じ立場でかつ最も自分を理解してくれる、運命みたいな人が当たり前のように
側にいてくれること。
神様亜弥ちゃんをありがとう
これからも何度となく許されて、救われて。
そして何度でもいいから許して、救ってあげたい。
『ついてこいよ』華奢だけれどその大きな背中についていくよ。
そして負けられないな、と希望を与えてくれる彼女に感謝する。
「てか罪は犯してねーよ」
自身への反射的なツッコミに、今度は笑みがこぼれた。
- 315 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:23
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- 316 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:25
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それから美貴は亜弥が来るまでに模様替えをしようと決意した。
といっても白と黒でコーディネイトしたこの部屋は落ち着くので、例え母親に
『魔女みたい』等と言われても変えるつもりはサラサラない。
ベッドカバーは黒でいい。もちのろん、吸い込まれる様に眠る事ができるから
というのが前提だけれど何より、黒のシーツに白い肌は映えるから。
なんて亜弥にそう伝えたら『きゃーみきたんエロイ』と一蹴された。
綺麗に可愛く見せる事に命かけてます、エロイけど。
秋が深まりそうなこの日、気分転換だけれど、部分的に鮮やかな色を足してみよう
そう思って美貴はインテリアショップへと出かけた。
- 317 名前:モノクロ懺悔 投稿日:2005/10/03(月) 18:26
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〆
- 318 名前:次元黒猫 投稿日:2005/10/03(月) 18:31
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>>298 名無し飼育様
大変お待たせしています。
読んで下さってありがとうございます。・゚・(ノД`)・゚・。
マイペースにも程はありますが、見守って頂ければ幸いです。
- 319 名前:次元黒猫 投稿日:2005/10/03(月) 18:51
- 見返してみると既に一年経った事に気がつきました(今更)
長編所に短篇を載せ続けてすいません。申し訳ない。
血の枷についてはあれから大分話は進んだのですが
肝心な所が書けず変わらずで滞っています。
ただ昇華させたい気持ちがあるので、いずれ書き終えたその時にはと思ってます。
時間はかかりそうですが、待っていて欲しいです。
読んで下さる方に感謝しています。一年経ちましたがこれからも宜しくお願いします
- 320 名前:次元黒猫 投稿日:2005/10/03(月) 18:52
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更新age
- 321 名前:名無し 投稿日:2005/10/03(月) 19:40
- 待ってます!!あやみき(>_<)!
- 322 名前:次元黒猫 投稿日:2005/10/03(月) 20:13
- >>321 名無し様 早いレスありがとうございます
全く差し支えないのですが頭にタイトル入れ忘れましたorz
短篇4『モノクロ懺悔』
でした失礼しました
- 323 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/21(月) 17:08
- 待ってますよ
- 324 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:44
- まだまだ
- 325 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:25
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 326 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 03:31
- 待ってます。
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 22:24
- まだねばる
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 08:49
- 待っています
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