君の匂いは僕のもの
- 1 名前:証千 投稿日:2004/09/11(土) 22:03
- 黄板でもごまっとうの短編を書いていました。
あちらを終了させましたので、こちらにやってきた身です。
こちらでもあやみきが多くなると思います。
ネタ提供も募集中なので駄文でよければ気軽にどうぞ。
- 2 名前:あや☆ 投稿日:2004/09/11(土) 23:05
- 新スレぉめでとぉござぃます♪黄板でもROMらせてもらってました☆ぁのー…生意気ながら…リクしても良ろしぃでしょーか?みきあやごまっ。みたぃな…モテ亜弥希望ですっ♪ぉ時間がぁればょろしくぉ願ぃします☆長レスすみませんゞ
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/11(土) 23:28
- 新スレおめでとうございますっ。
リクいいですか・・・・?あやごまなんですが・・・・;;
某シャンプーのCMを見たごっちんが発情しちゃうみたいな・・・・。
無理そうなら結構ですのでっ;;
- 4 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:12
-
「…たぁん、離してよぅ」
「ダメ。離したらごっちんの所行くでしょ」
「行かないよ。あたしお仕事が…」
「仕事もクソもあるかい!!美貴の亜弥ちゃんをごっちんに取られたら…」
「あたしは誰のものでもありません!」
ギュウッと抱きしめられて捕獲されたあたし。
犯人は大親友、藤本美貴。通称みきたん。
自分で言うのも何だけど、彼女はあたしの事が大好きらしい。
でも、みきたんだけじゃないみたい。
- 5 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:15
-
「……ミ−キティィィィ」
「ごっちん?」
瞳をメラメラ燃やし、あたしを。いや、みきたんを睨んでいるごっちん。
まあ最近ではこういうシチュエーションがおおい。
ごっちんもあたしの事が、好きらしいから。
「まっつーこっちおいで!!!」
「や…あたしは仕事が…」
「ちょっとごっちん!美貴の亜弥ちゃん誑かさないでよ」
「誑かしてるのはそっち!」
「ひゃっ!?」
グイッと腰を引っ張られて、ごっちんの胸の中へ。
あたしとみきたんより背が高いからなんとなく落ち着く。
別に特別な感情を持ってるわけじゃないんだけど。
- 6 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:18
-
「はっ…離してよ!!」
「ヤだね。まっつーも離れたくないでしょ?」
「や…あのあたしはお仕事…」
「嫌がってんだろ!亜弥ちゃんもこっち!!!」
ああだこうだ煩い二人。
にしてもあたしはごっちんの両手でガードされちゃってるから逃げられない。
肩を落とすあたしをそっちのけで口論が続く。
ここはビシッと言うしかないね。
- 7 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:22
-
「あのね二人共……」
「「亜弥ちゃんは・まっつーは黙ってて!!!」」
二人の声がシンクロして、鼓膜が破れるかと思った。
相当、あたしにキてるらしい。
愛されちゃって困ります、松浦亜弥。
あ、自慢じゃないよ。
「…くそ、この際まっつーに決めてもらおう」
「そうだよ、亜弥ちゃんはどうなの?」
「や、別に…どうって…」
「「どっちか選んで!!」」
じぃーっと二人の視線を浴びて、どうする事もできないあたし。
二人共あたしの大事な人だし、どちらかを選ぶなんて事はできない。
「…あ…」
ピーン。いいこと思い付いちゃった。
- 8 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:25
-
「よっ…吉澤さん!!」
「ハ!?」
「ヘ!?」
偶然にも廊下を通りかかった救いの手。
ギョッとした表情でこちらを向いて、危うい状況だと把握したらしく
いそいそと立ち去ろうとした所を引き止めた。
この際誰でもいい。
この状況を壊してくれるのなら。
「よっ…よっすぃ!?どういうつもり!??」
「ハ!?う、ウチ!?」
「亜弥ちゃん本当によっちゃんさんが好きなの!??」
二人、いや三人に問いつめられるあたし。
もしかしてさらに面倒臭い事になっちゃった?
- 9 名前:shall we love? 投稿日:2004/09/12(日) 13:30
-
「なんでウチ…ってうわぁ!?」
すいません、吉澤さん。
ごっちんの胸から抜け出して、ガバッと吉澤さんに抱きついた。
みきたんとごっちんを選ぶくらいなら、吉澤さんに縋ったほうがマシ。
つくり笑顔で吉澤さんのすり寄る。
これで二人とも諦めてくれるだろう。
「ああああああやややや……」
「よっすぃ、長年親友だと思って来たけど今回ばかりは冗談じゃないよ」
「美貴もだね。美貴の亜弥ちゃんを横取りするような真似するなんてさ」
「ちがうちがうちがうちがうちがう!!ウチにこんな心当たりは…」
「「問答無用!!」」
「ウギャァ−ッッッッッ!!!!」
ダメだこりゃ。
猛スピードで廊下を駆け抜けていった。
っつうか、あたしは放置なのね。
「……あたしあんまり目立ってないよね」
気のせいってことにしておこう。
FIN
- 10 名前:そそる色気 投稿日:2004/09/12(日) 13:34
-
『 大切にしてくれますか? 』
ヤバい。
何、この劇的な美しさというかカワイさというか。
ブラウン管の彼女にへばりついて硬直してしまう程。
こんな表情、初めてみた。
「ちょーっと…恥ずかしいなぁ。あんまり見ないでよ」
「えっ」
だってだって。
あんまりにも可愛過ぎる。
ごとーの手を引いて、TVから遠ざけようとするまっつー。
いつもは自分大好きビームを出してるくせに、ごとーの前だと
恥じらう乙女に変身する。
- 11 名前:そそる色気 投稿日:2004/09/12(日) 13:38
-
「…今日一緒にお風呂入ろうよ」
「やぁだ、何言ってんのごっちん」
「べ、別に下心とかじゃなくて……」
「下心じゃん!」
一度でいいから生シャンプー姿を拝みたい。
そうお願いしたけどあっさり断られてしまった。
「ごっちんエロいんだもん」
「そんな事無…」
「ある。エロすぎ」
「何の根拠があって…」
「だぁってスタジオとかで会う度に胸触ってくるでしょう?」
「だって柔らか…」
「馬鹿」
トホホ。
どさくさに紛れて胸を触ろうとしたらまくらで殴られた。
- 12 名前:そそる色気 投稿日:2004/09/12(日) 13:42
-
「あ…またやってる」
まっつーが台所に行っている間、またあのCMが。
まさか彼女がシャンプーのコマーシャルをやるとは思っていなくて、予想外だった。
色気ムンムンな表情で、TVの前の視聴者を誘っているとしか思えないくらい可愛い。
「だぁっ…チャンネル変えてよ!」
「ヤダ。録画しておこうかな〜」
「ナッ…ちょっとごっちん!!」
「ふへへっ」
ソファの上でじゃれあって、リモコンの争奪戦が始まった。
口では煩く言うまっつーでも、そんなに気合いを入れて奪おうともしてない。
ごとーの上に乗っかり、脇腹をくすぐられる。
「うぁ!無理無理!!」
「にゃははぁ、お返しだい!!」
「うぎゃぁっ、くすぐったい!!」
- 13 名前:そそる色気 投稿日:2004/09/12(日) 13:47
-
「…あんましつこいと、倍返しするよん」
「ふぇ…きゃぁっ!?」
くるりと体勢を交代。
ごとーが上で、まっつーが下にしかれる状態になった。
もう、ヤる気満々だよ。
「ちょ…ごっちん!」
「あーんなCM契約するのが悪いんだい」
「なんでよっ!?」
「色気出し過ぎ。ごとーを誘ってる風にしか見えない」
白い首筋がたまんなく性感帯を刺激する。
えらのあたりからキスをして、首、鎖骨にもキスを落とす。
その度に何度も聞いた甘い声が理性をふっとばそうとする。
- 14 名前:そそる色気 投稿日:2004/09/12(日) 13:54
-
「ふっ…んぅっ…」
「強がりだなぁ、声ガマンしないでよ」
「してなっ…ぁぅ…」
「…耳弱いねぇ」
まっつーの最大の弱点、耳。
暇つぶしにまっつーの耳をいじっていると異常に色っぽい声を出す
のに気がついたごとーは、それ以来集中攻撃をする。
「やぁっ…ぁんっ……」
「…あはっ、下が寂しいかにゃ?」
それから、あんな事して、こんな事して。
終った後に、肩で息をするまっつーにまた発情したごとー。
まあ結局は第三ラウンドまでヤってしまったんだよ。
あのシャンプーのCMがいけないんだ。
そうに決まってる。
FIN
- 15 名前:証千 投稿日:2004/09/12(日) 13:55
-
>2様 初レスありがとうございます。
リクエストにお答えできたのやら…最後は微妙でした。
すんません。
>3様 私もあのCMはツボでございます(笑
見る度に萌えてしまいます。
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/12(日) 17:17
- いいっす作者様w
甘いあやみきが見たいなぁ…なんて…
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/12(日) 18:03
- 新スレおめでとうございます。
前スレから読ませて頂きました。毎日要チェックですよw
はぁ〜素晴らしい。あのCMはイイ!ですよね。もし相手が美貴様だったら…(萌え
え〜と、自分もあやみき読みたかったり…
- 18 名前:あや☆ 投稿日:2004/09/12(日) 19:42
- リク受けぁりがとぅござぃます♪良かったです♪ゃっぱ作者サンのあやみき・あやごまゎ最高です♪
- 19 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:13
-
「…おぉ、亜弥ちゃんいらっしゃい」
「えへへっ、来ちゃった」
ドライフラワーの花束を丁寧に積んでいた店員さん。
あたしがココ最近通いつめているお花屋さんで働いている、大学生。
学校の先生の結婚祝にお花を買いに行ったのをキッカケにあたしと店員
さんは仲良くなった。
「今日、どうしたの?」
「…んーとね、みきたんに教えてもらいたい事があって」
「そっか。じゃあここ座って待っててくれる?」
「うん!」
エプロンを取って、店の奥に入っていったみきたん。
いつの間にか名前で呼ばれるような関係になってて、みきたんは年上だけど
年齢差を感じさせないような人。
そんなみきたんに、あたしは最近踊らされている気がする。
優しくされると凄くドキドキして。
手を握られるだけでいちいち反応して。
笑顔かけられるとめちゃめちゃ嬉しくて。
こんな感情を打ち消すためにも、極力意識しないようにはしていた。
- 20 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:20
-
「お待たせー。んで、聞きたい事って?」
急に肩をトンとつつかれて、我に返った。
「ん?何?」
「や…ううん、なんでもない。
あのね、妹の誕生日にあげたい花があるんだけどぉ…」
「うんうん」
「どんなのがいいかなーって」
「ほうほう」
立続けに首を振り、ニコッと笑った。
その度にあたしの心臓はどこか疼いてしょうがない。
「そぉーかー…妹ちゃんねぇ」
「妹、花が好きだから」
「そうなんだ、じゃあ尚更責任重大だなぁ美貴」
ポリポリと頬をかいて、イスに腰掛けたみきたん。
仕事中なのに、迷惑じゃないのかな。
あたしがいたら邪魔じゃないのかな。
そんな事を考えながら、真面目に唸るみきたんの横顔を覗く。
- 21 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:25
-
「ねぇ、みきたん」
「んー…ん?」
「今、お仕事中なのに…あたしにかまってていいの?」
「ヘ?ああ別に平気。美貴だって亜弥ちゃんと話してたいよ」
「ホント…?」
「うんうん。亜弥ちゃんならいつでも大歓迎だから」
良かった。
みきたんの手が、あたしの髪の毛を滑る。
ほんのりと花の香りがして、いい心地だった。
「…あ!アレがいい」
「え?」
思い出したかのように、すぐそこにあったガラスケースから
一本の花を取り出した。
「…ほら、いい匂いでしょ」
「わ…ホントだぁ」
みきたんが見せてくれたのは、白いユリの花。
純白でなめらかなその花びらは触れただけで落としてしまいそうだった。
- 22 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:35
-
「純潔、温かい無垢な人」
「え?」
「へへっ、ユリの花言葉だよ」
「みきたん、良く知ってるね」
「まーね。大学で勉強してるんだ、花言葉」
ユリは家族愛にはピッタリだとみきたんは言った。
しばらく白いユリを見つめていると、みきたんは可笑しそうにあたし
を見て微笑む。
「な、何よぅ」
「へへ、可愛いなぁって」
「…え…」
「亜弥ちゃん、よく家族の話してくれるじゃん?
なぁんかさ…一生懸命で、すっごい可愛い」
ユリをガラスケースに戻して、みきたんはそう言ってくれた。
まともに目を合わせられない。
「…花言葉って、すっごく不思議なんだよー」
「え?」
「外見が凄く綺麗でもね、花言葉はそれを裏付けるようなものだったりするんだよ」
「へぇ〜…あ、これ綺麗」
ガラスケースに入っていたドライフラワーを手にして、みきたんに見せた。
するとみきたんは吹き出して大笑いし始めた。
「な、何っ…?」
「アハハハハッッッ!!あー…可笑しい…」
「何でよ?」
「だって…ソレ…弟切草…っ…」
「だっ…だから何でっ?」
みきたんは軽く咳払いをして、あたしの肩を引き寄せた。
「弟切草の花言葉はね、『復讐』だよ」
- 23 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:39
-
「ちょっ…えぇ!??」
「アハハハハハハ!!」
「何でそんな花がここにあるの!?売り物にならないんじゃ…」
「売る為にあるんじゃないよ、弟切草は貴重だからあんまり出回ってないし。
この間友達が持って来たのをそのままにしておいただけ」
バッとみきたんから離れて、すこし怒ってみせた。
何さ、復讐って。
自分で綺麗だって言ったけどまさかそんな花言葉だったとは。
「花は見かけに寄らないでしょ?そこが面白いんだな〜」
「ふーん…」
「あ、でも亜弥ちゃんのほうが面白いかも」
「え?」
「からかいがいがあるっつうか…楽しいよ、亜弥ちゃん」
ピンッと額を弾かれて、悪戯な笑みを浮かべたみきたん。
あたしはこの人に恋をしている。
その瞬間、はっきりと自覚する事ができた。
- 24 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:43
-
「…ね、亜弥ちゃん」
「何?」
「ここに、二つの花束があります」
「うん…」
「どっちか1つ、選んで欲しい」
「え…」
「真面目に言ってるんだ、美貴」
急に真剣な眼差しで、あたしの目を見つめる。
何かを伝えようとしているのが分った。
でも、まともに目を見られない。
「こっちが、アイビー。こっちが、ベゴニア」
あたしの前に差し出した、二つの花束。
アイビーは薄いピンク色。
ベゴニアは赤色。
何の意味があるんだろう。そのときは全然意味が分らなかった。
- 25 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:47
-
「…花言葉、は?」
「え…あ…それは言えない…」
「何で…?」
「ぐ…じゃ、じゃあアイビーだけ…」
隠す必要性が理解できなかったけど、それ以上は問いつめなかった。
何故かみきたんは顔を赤くして、アイビーとベゴニアを交互に見ている。
「…んと、アイビーは…永遠の友情」
「…永遠の…友情?」
どういう意味なの?
そう尋ねたかったけど、反対に恐かった。
みきたんが一体あたしに何を言おうとしているのか。
この二つの花束の花言葉は、何か関係があるのか。
それすらも考える事を止めさせたのは、あたしが想うみきたんのせい。
- 26 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:52
-
「どっちか…選んで下さいっ」
「ぇ…あの…」
必死で、赤くなってる顔を隠してるのが分った。
「……永遠の…友情……」
そんなの、イヤだ。
身勝手にもそう思ったあたしは、アイビーから目を背けた。
そして。
「……ベゴニア、選んだよ……?」
か細く告げると、みきたんは目を丸くして下げていた頭をバッと振り上げた。
驚いて後ろに退いたあたしは、受け取ったベゴニアを凝視した。
「……花言葉…教えて?」
「…そ、それは…」
「何で…教えてくれないの?」
「…教えたくないわけじゃ…いやでも…」
何かもごもご呟いて、いつものみきたんじゃない。
お互いドキドキしているようで、会話が少し途切れてしまった。
- 27 名前:花のコトバ 投稿日:2004/09/12(日) 20:55
-
「か……片思い」
「…え…?」
唇を噛み締めて、こぼれるような声で告げられた。
「愛の告白、片思い……だよ…」
ベゴニアは、愛を告げる花。
赤く情熱的に、伴い優しく滑らかに。
それがベゴニアの花言葉だった。
「好き、なんだ。亜弥ちゃんの事が」
愛の言葉、花のコトバ。
変わらない思いは、それぞれ。
FIN
- 28 名前:証千 投稿日:2004/09/12(日) 20:59
-
>16様 甘いんだかなんだか…微妙で終っちゃいましたが(笑
一応甘くしておいたつもりなんですが。
まだ砂糖が足りなかったかとw
>17様 これからはあやみきを殆どで書くつもりなので御安心を(笑
ありがとうございます。
>18様 いえ、期待に添えられたならこっちも満足です!
ありがとうございました。
- 29 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/12(日) 21:10
- やっぱいいなぁこの二人。
私も素敵な恋がしたいものですw
- 30 名前:3 投稿日:2004/09/13(月) 11:03
- リクに答えていただきありがとうございますっ。
あのCMヤバイです・・・・ハマってます・・・。
モテあやも最高でした!
お暇がありましたら、ごまみきお願いしてもよろしいでしょうか・・・?
それでは。これからも期待してます!
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 01:57
- 花言葉すごく良かったです!なにげに勉強になりましたしw
- 32 名前:あや☆ 投稿日:2004/09/14(火) 14:46
- 『花言葉』かなり素敵でした!!やっぱあやみきゎ良ぃですね♪後×松←藤みたいなのぉ時間がぁればぉ願ぃします。
- 33 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 19:46
-
「よっちゃん」
「ん?」
「……まだ、行かないで」
「へ…?」
地面に俯いたまま、あたしの指を掴む。
たまに、ほんのたまにこういう事がある。
「…どしたん?」
ワケなんか知ってる。
でも、言葉に出せない彼女を労りはしない。
君の口から、聞きたいんだ。
- 34 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 19:49
-
「…ヤだ」
少し、涙ぐむ君の瞳。
一瞬にしてあたしのハートを奪った瞳。
これ以上、彼女を責めはしない。
「もうちょっと、こうしてよっか」
「…ん」
そっと彼女の背中をさすり、抱き寄せる。
その背中は寂しさと悔しさが混じった感情で溢れている事に気がつく。
この子は強い子なんかじゃない。
本当は寂しがりやで、意地っ張りで、繊細な子だ。
- 35 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 19:53
-
別れ際でこんなにも素を出した彼女を初めて見た。
いつもの笑顔は無く、あたしの肩に埋まって静かに呼吸をする。
こんな一時が、一番好きなあたし。
「寂しがりやだね、君は」
「…うっさい」
「ははっ、戻った」
「……だもん」
「ん?」
一言が聞こえなくて、耳を彼女の近くに寄せた。
「…好きじゃなかったら、こういう事しないもん」
ずきゅん。
確実にあたしの痛い所を突いた。
なんちゅう可愛いやつなんだ。
- 36 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 20:00
-
「…恥ずかしいなら言わなくていいのに」
「は、恥ずかしくない!!」
「ウッソ。顔チョー真っ赤」
赤く染まる彼女の頬を、かすめるように撫でる。
「…期間限定だから、こういう雰囲気」
「…どういう意味?」
「年に一度のスペシャルデーだよ、今日」
「だから何で…」
そう言いかける彼女を無視して。
動き出した唇を塞いだ。
ギュッと目を閉じて、あたしの上着の袖を掴む。
何度もしているキスなのに、彼女は決して慣れない。
戸惑って、照れまくって、抵抗もできないでいる。
そんな彼女を愛していいのは、あたしだけって決まってる。
- 37 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 20:07
-
静かに唇を離され、パッとそっぽを向いてしまった。
茶色い髪の毛で赤い頬を隠そうとも、あたしにはバレバレで。
「…一晩だけ、傍にいてやってもいいぜ?」
「いーよ別に」
「んだよ、大事な彼女を一晩中癒してやるっていうのに」
「……」
「何か言えよ」
「…優しいね、よっちゃんは」
「あん?」
パッと顔を上げたかと思うと、ニコッと笑ってあたしの胸に
どんっとぶつかってきた。
「…優し過ぎるから、困るんだよ」
「へ?」
「……誰にでも優しいから…時々ヤになる…から…」
「……マジ?」
「…そういうのウザい…?」
上目遣いできゅんとした瞳をあたしに向ける。
相当、あたしは彼女に惚れてるようだ。
- 38 名前:永遠の二人 投稿日:2004/09/14(火) 20:13
-
「馬鹿言ってんじゃないよ」
「……え」
「あたしは他の誰かに優しく出来ない人見知り人間だから」
「そんな事な…」
「ある」
君にだけ、心を許してもいいと思った。
素直になれる誰か。それが彼女だから。
「あたしは、今目の前にいる人だけ愛したいんだよ」
髪の毛ごと抱きしめて。
彼女の反応を確かめる間もなく、愛だけがあたしの想いを包む。
「もっと甘えろ。ウチに」
「…悔しいんだもん」
「悔しくたって何だって、あたしはよそ見しないでちゃんと見てる」
「……わかった」
「ハイよろしい」
ほんのちょっとの愛があれば。
少しでも愛があれば、それだけであたしは何だってできる。
それが二人だけの永遠なんだから。
FIN
- 39 名前:証千 投稿日:2004/09/14(火) 20:19
- なんとなく、甘くしたみきよし。
ミキティの名前がおそらく一度も登場していないので
どのカップリングだか分らなかった方、すみません。
>29様 いいですねぇ…現実にありえるのですかね(笑
>30様 ごまみきっすね、了解しました。
甘い方がいいですかね?それとも痛いのとか…w
>31様 私結構調べたんですアレ(笑
調べながら何でこんな事してるんだろう…とか思ってたりw
>32様 リクありがとうございます。ごまあやの甘いのにに藤乱入みたいな
感じでよろしいですかね?
- 40 名前:名無し。 投稿日:2004/09/14(火) 20:31
- とっても愛を感じましたw
- 41 名前:3 投稿日:2004/09/14(火) 21:06
- ごまみき書いていただけるんですか!?
ありがとうございます!!
・・・・・・で、できれば・・・甘いのでお願いします・・・・;;
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 21:35
- 甘いみきよし最高!
大好物です。
- 43 名前:よろしくセンパイ 投稿日:2004/09/14(火) 22:47
-
「…どしたの、美貴ちゃん」
「え…?あ?」
「ぼーっとして。死んだような顔してたよ」
へらへら笑いながら、美貴の乱れた髪をなおしてくれた。
1つ年下なのに、凄く大人っぽく見える彼女。
一応、美貴の恋人。
「なんだかなぁ…美貴って権力ないなって思った」
「何で」
「だって美貴、ごっちんより先輩なんだよ?
なのに立場逆っていうかさぁ」
「しゃーないじゃん、美貴ちゃんごとーより背低いし」
「でもさぁ…」
「キスも手繋ぐのも自分から出来ないでしょ?」
「…ごめんなさいねー」
冗談っぽく睨んでくるごっちんの頭をナデナデ。
そりゃあ恥ずかしくて出来ないさ。
キスだとか、そういうロマンがある事は美貴に出来やしない。
むしろ求める方がおかしい。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/14(火) 22:51
- 亜弥ちゃんの事が好きで好きで堪らない藤本さん。
二人が付き合い始めて1ヶ月くらい。
照れ屋の藤本さんは亜弥ちゃんとのデートで手をつなくだけで精一杯。
本心では亜弥ちゃんとキス(それ以上の事も)したくて悶々。
もしできたらこんな感じのが見たいです!
- 45 名前:よろしくセンパイ 投稿日:2004/09/14(火) 22:53
-
「…ごとーが告白しても、美貴ちゃん頷いただけだし?」
「だって言えなかったんだもん」
「後輩から告られて怖じけずいたって?」
「ちっがいますぅ。ハズかったんですぅー」
「……ハハッ、かわえぇねー美貴ちゃんは」
「ふあぁっ!?」
ぽてん、と倒れるように美貴の膝に頭を乗せて来たごっちん。
顔をふにゃっとして笑うもんだから自然と美貴もそれにあわせる。
「あー…柔らか」
「変態」
「変態って…せめて馬鹿って言ってよ」
「ちょ…ちょっと、ここですんの?」
「何か不都合でも?」
「いや、大アリだから。や、や、ホラ人来る!」
「見えん」
バッと膝から飛び上がり、美貴の首に腕を絡ませるごっちん。
顔近っ。
ごっちんの計画上、このままキスをする予定なんだと美貴は悟った。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/14(火) 22:53
- ごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・。
- 47 名前:よろしくセンパイ 投稿日:2004/09/14(火) 23:00
-
−−−ちゅっ
「馬鹿」
「イヤじゃないくせに」
「…腹たつな。年上の言う事聞け!」
「年下の我侭くらい聞くのが大人だろー」
「くっ…」
「いぇい、勝った」
小さくブイサインをして、ごっちんは美貴の唇を奪った。
ふんにゃりした笑顔が美貴をダメにする。
言う事聞いてあげないと、泣き出しそうだから。
「ガッコ−終ったら遊ぶかい?」
「あー…どうしよ、美貴ちょっと用あるんだけど」
「じゃ待ってる。何の用事?」
「ラブレターの返事しなきゃいけない」
「あっそう…。ってハ!?」
「何さ」
「ざけんな、ラブレターって何」
「何って」
先日、男子にラブレターなるものをもらった。
とりあえず受け取った美貴は即座に返事をする事ができず、今日まで引っ張っていた。
返事をしてあげないとあっちが勘違いしそうだったので交際をお断りしようかと
男子を放課後呼び出した。
- 48 名前:よろしくセンパイ 投稿日:2004/09/14(火) 23:09
-
「誰、そいつ」
「あー…わかんない。内容見て無い」
「……んで、何て返事するのさ」
「言う間でも無い。丁重にお断り致します」
「…そか」
心無しかホッとした様子のごっちんが、とても可愛かった。
子供らしい一面があるんだと新しい発見に終止感動した。
「…嫉妬…」
「そんなんじゃないっ」
「だよねぇーごっちんがそんな子供っぽいガキくさい事するわけないよねぇ〜?」
「……じゃーそいつと付き合えよ!」
「何で怒るの」
「……美貴ちゃんがヤな事言い出すからいけないんだ」
「へ?」
がばっとごっちんの下に組みしかれた美貴。
何をするつもりかと思ったら、どうやら嫉妬の炎にかられたらしい。
…嬉しいような、これからの事に不安を抱くような。
「っつうかさ…下コンクリだから美貴痛いんだぁ」
「痛く無いようにしてあげるよ」
「そっちじゃない!どけぇ!」
「……そーゆー美貴ちゃん、嫌いだ」
「えぇ?」
「ごとーの事ふざけてからかう美貴ちゃん、嫌い」
「は?」
「…まー、お仕置きって事で♪」
「まっ…何すん…脱がすなぁ!!!」
バシバシごっちんの背中を叩く物の、まったく言う事を聞かない。
- 49 名前:よろしくセンパイ 投稿日:2004/09/14(火) 23:15
-
「はだけてるよ」
「誰のせい、誰の」
「寒いでしょ、早くブラ直し…」
「黙れ」
「ハーイ」
はだけた制服を直して、結局は最後までいったという結末。
美貴の抵抗空しく、ごっちんの勢力には勝てなかった。
「ったく…何で外でするかなぁ」
「したかったんだもん」
「…何で」
「美貴ちゃんがウザい事言うから」
「え?」
「ごとーの物に手出すやつは許されないの。分った?」
「はい?」
「…よろしくね、先輩」
謎の言葉を残し、ごっちんは屋上から去って行った。
全く持って意味が分らない。
乱れたスカートを直しつつ、ふぅと溜め息をついた。
FIN
- 50 名前:3 投稿日:2004/09/15(水) 21:07
- リクに答えていただきありがとうございます!
やっぱり、ごっちんは狼ですねぇ・・・・。(w
作者さんのごまみき最高です!
ありがとうございました!
- 51 名前:証千 投稿日:2004/09/16(木) 22:39
- >44様 ネタ提供ありがとうございます。
そうですね…初恋に溺れる美貴様もよろしいかとw
是非扱わさせてもらいます。
>50様 いいえ、また何かありましたら駄文ですがどうぞw
こちらこそです。
- 52 名前:微恋 投稿日:2004/09/16(木) 22:48
-
ピロリン ピロリン
「…あ、亜弥ちゃんだ」
恋人からの電話。
それは美貴をウキウキさせるものでもあり、どん底へと突き落とす物でもある。
3回目の着信音で高鳴りを抑え、電話に出た。
「もしもし」
『たん?今なにやってる?』
「え…い、今?えと、暇だけど」
『そっかぁ、暇かぁ〜』
「うん…?」
にゃははと意味ありげに笑い、ちゃぽんと水が跳ねる音が聞こえた。
ふんふんとリズムにあわせ、電話の向こうでは妙にエコーがかかってる。
『じゃーさ、アタシんちこない?』
「え……」
『何よ、ヤなの?』
「そ…んな事ないよ。分った、すぐ行く」
『よぉーし、待ってるね♪』
パシャン、と大きく水が跳ねる音。
「…もしかして…お風呂中だったり……」
電話を切った後、あらぬ妄想をして鼻血を出してしまった。
- 53 名前:微恋 投稿日:2004/09/16(木) 22:53
-
彼女の事が大好きだ。
嘘じゃないけど。
それを行動に移せないのが美貴の照れ屋な一部分。
イヤな言い方になるけど、言葉で言えば欲求不満。
餌に飢えた狼と言っても過言じゃない。
そんな心持ちの中、亜弥ちゃんは無神経。
四つん這いで上目遣いして抱きつくわ、みだりに手を握られるわ。
誘ってんのか遊んでんのか、こっちとしては区別に困る。
別に…その下心がないといったら嘘になる。
特別、彼女は可愛いから。
亜弥ちゃんは美貴の事が好きだという事は知ってる。
でも、キスは絶対にしてこない。
多分まだ、恐いとか、恥ずかしいとか。
それは美貴も同じ。でもしたい。
「……結局お泊まりか…」
刺激が強過ぎるんだ。
- 54 名前:微恋 投稿日:2004/09/16(木) 22:58
-
ピンポーン
「おじゃましまー…すぅぅぅっ…」
「うへへぇ〜、いらっしゃい」
ドアを開けた瞬間、彼女に飛びつかれる。
残された美貴の両手はあわあわしてて、亜弥ちゃんの背中を撫でる
事すら出来なかった。
情けないなぁ。って思うんだけどさ。
「みきたんだぁ」
「他の誰がいるっての」
「やだな、みきたんじゃなきゃこんな事しないもん」
「あー…そうね…」
「あ、照れた?」
「…照れてないっ」
「嘘だー、顔が真っ赤ですぅ」
「………」
誰のせいだ。
亜弥ちゃんが美貴をこうさせてる。
好きでたまんないから自分がむかつく。
赤くなった頬を抑えて、亜弥ちゃんに握られた右手をもう一度見つめなおした。
- 55 名前:証千 投稿日:2004/09/16(木) 22:59
- 短いですが更新終り。
デートというよりヤらしいシチュになってしまいました。
ごめんなさい。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/17(金) 07:56
- おっ、どーなるのこの二人
期待してまーす
- 57 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:30
-
「アイスティーでいいよね?」
「うん」
ふるふると首を振って、妄想を消した。
平常心平常心。
チラリと亜弥ちゃんのほうを向くと、タンクトップから覗く白い肌
に目を奪われる。
「…どしたのたん?」
「や、なんでもない…」
「……?へんなみきたん」
汗をかくアイスティーのコップに手を触れ、持て余す。
飲む訳でも無く、誤魔化すだけ。
「んぎゃっ!?」
「…ごめっ…痛かった?」
「だ、大丈夫」
左手の薬指を、キュッと握られた。
その時美貴は紙で指を切ってしまい、絆創膏をしていた。
予想外にも急に手を握られるとは。
- 58 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:34
-
変にそぐわない声を上げた美貴に驚き、亜弥ちゃんは心配そうな
表情を浮かべて美貴を見つめた。
別に痛くは無かったけど。
亜弥ちゃんの潤んだ瞳が痛い。
「痛く無いよ、ビックリしただけ」
「…ごめん、ね?」
可愛い。
もう一度絆創膏が貼られた指を優しく包んでくれる。
柔らかくて、温かい亜弥ちゃんの手。
乾燥しかかってる、美貴の手。
何を欲しがる訳でもなく、ただ見つめあった。
- 59 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:41
-
「…ごめ…帰る!」
「え…たん?」
いてもたってもいられなかった。
このままじゃいけない気がしたから。
いつか美貴は、亜弥ちゃんに酷い事をしてしまいそうで。
自分で自分の事を抑えられるかわかんない。
急いで靴を履いて、後ろを振り返る事もできずに。
「待ってたん!!」
「なっ…ちょ…ごめんっ…」
「帰っちゃヤだ!!何で…?何で!?」
「いでぇっ!?いででっ、亜弥ちゃん!??」
「あたしがケガした指握ったから!?」
「そうじゃなくて…いだだだだ!!」
ギュギュギュギュギュ
肩をぐらぐら揺らされて、思いっきり掴まれた。
これこそ予想外の展開。
亜弥ちゃんは今にも泣き出しそうで、美貴を頑に見つめ続けてる。
分ってよ、亜弥ちゃん。
- 60 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:43
-
「かっ…帰らないから!!離して!!」
「や…ヤダぁっ…みきたんっ…」
「あー…泣かないでよぅ…」
とうとう泣きじゃくって、美貴の胸にぶつかってきた。
泣きたいのはこっちだ。
そう思ったけど、そうもいかない。
亜弥ちゃんは美貴の事好きだから。
だからこんなに心配して泣いてくれてるんだ。
亜弥ちゃんの涙がそう言っていた。
- 61 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:48
-
「亜弥ちゃんはなんにも悪く無いよ」
「…っ…?」
「……亜弥ちゃん、可愛過ぎるんだよ」
「え…?」
可愛すぎて、好きすぎるから。
美貴は自分を抑えられなくなりそうだから。
そう思って逃げようとした。
「…キス…とか、できない臆病者だし…」
「!?」
「だから亜弥ちゃんに重さ感じさせてるんじゃないかと思って…」
「何で……?」
「欲求不満……になりそうなんだよ、美貴…」
顔から湯気が出てもおかしくないくらい、熱い。
- 62 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:52
-
「…嫌、だよね…まだ…」
「……」
「そのっ…ステップを踏んでから…だけど…」
「ヤじゃないよ」
「美貴は…え…?」
「嫌、じゃない」
きゅっと美貴の腰に手を回して、鼓動が伝わってくる。
「みきたんとなら…嫌じゃないもん」
「え!??じゃ、じゃあ何でキスとかしてくれなかったの…」
「言える訳ないでしょ!?したいとかなんとかさぁ…」
「だ、だって…」
つまり。
相思相愛。
これが、本当の相思相愛?
- 63 名前:微恋 投稿日:2004/09/17(金) 20:53
-
朝目覚めたら、隣に亜弥ちゃんがいる。
いつもの夜明けと違い全く眠気がない。
今まで一番、素敵な朝だった。
彼女と共に、愛を確かめた。
FIN
- 64 名前:証千 投稿日:2004/09/17(金) 20:56
-
あー、微妙w
すみません駄文で。
えぇと、もう1つリクがありましたのでそちらを書こうかと。
後×松←藤で。
最初予定していたものとはちょいと違うのですが…。
時間があれば暇つぶしにでもどうぞ。
- 65 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:00
-
「ね、みきたん」
「ん?」
不意に亜弥ちゃんがふった、あの言葉。
ずっと忘れる事はなくて今でも後悔してる。
「あたし、ごっちんの事、好きなんだ」
そっか。上手く行くと、いいね。
そう明るく答えて、彼女と別々に家路についた。
明るくなんて出来た物か。
認めたくない。
なんて最低な事考えてるんだ、美貴は。
好きでたまらない。
彼女の事が。
- 66 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:03
-
親友だと思ってたのに。
違う目で見てたっていうのか美貴は。
馬鹿らしくて、亜弥ちゃんへの想いを何度も忘れようとした。
でも、そんな事は不可能で。
素直に愛してると感じられたのは、つい最近の事。
なのに。
「ミキティ、久しぶりじゃん」
ポン、と肩に手を置かれた。
今、一番会いたくなくて、一番考えたくない人。
- 67 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:11
- 自動販売機のヴーという音すら、うざったく。
尚も彼女は美貴の隣のイスに座り1つ溜め息をついた。
こんなにも美貴を苦しめる、悪戯でもないかぎり悪者にはなり得ない彼女。
「元気ないじゃん、どったの?」
ひょいと美貴の顔色を伺い、ふふっと笑った。
誰のせいだと思う?
そう聞こうとしたけど、聞ける筈もなく。
只、彼女に何の感情を持つ事もできなかった。
友達とも、他人でも、知り合いでもなんでもない。
ただの彼女。
「あ、今日はまっつーいないのね」
「………ああ、うん」
「ダメじゃん、放っておいたら浮気でも…」
「亜弥ちゃんとはそういうのじゃない」
「……え…」
彼女の言葉を遮るように、口早に答えた。
みんな勘違いしてる。
美貴は亜弥ちゃんの特別でも何でもない。
ただの、友達。
それが嫌で堪らない。
- 68 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:14
-
「そう、だったんだ」
「…うん」
「でもさっ、付き合っちゃえば?」
「…え」
「まっつーだってミキティの事好きだと思うよ?」
分ったふうな事言うなよ。
思わずそう言いかけて、言葉を塞いだ。
何にも知らないくせに。
何も分ってないくせに。
違うんだ。
ごっちんは悪くないのに。
全部、美貴が悪い。
- 69 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:20
-
「…有り得ない、よ」
「何で?」
「いいからさ…、もうやめよ、この話」
「えぇー、いいじゃん、相思相愛なんじゃ……」
「うるさい!!!!」
怒鳴り付けた暴言は、美貴自身に向けられながらごっちんへとぶつかった。
ホント、最低。
誰もいない楽屋の角にある廊下。
その廊下で、美貴の叫んだ言葉が響く。
「……ごめん、無神経…だった…」
「違う…」
「もう、ごとー行くわ。ホント、ゴメン」
「違う!!」
乱暴にごっちんの手首を掴み、振り向かせた。
感情なんてものはない。伝えなきゃいけないって思ったから。
亜弥ちゃんの代わりに、美貴ができる事。
今は1つしかない。
- 70 名前:刹期 投稿日:2004/09/17(金) 21:23
-
「違う……そうじゃない……っ…」
「…ミキティ…」
「ホント…馬鹿だよ美貴……」
情けない。
たった1つの、事さえ出来やしない無力。
諦めたくても諦められない恋だから。
だから、忘れたい。
「……っ…ごっちんは…勝手だよ……」
きつく締めていたごっちんの手首を解いた。
手に力が入らなくて、悔しさの言葉を吐くしかなかった。
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/18(土) 00:37
- 微恋良かったです!
作者さんの文読みやすくて好きです。
これからも頑張ってください!
- 72 名前:刹期 投稿日:2004/09/18(土) 15:34
-
ごっちんも亜弥ちゃんも、嫌いだ。
「ごっちんは優し過ぎるから、人の気持ちが分らないんだっ…」
それは美貴の方なのに。
ソファに倒れこむように座り、声を抑えた。
「…ごとー、気付かないうちに…何かした…かな…」
「そうじゃないってば!!!」
「じゃあ何…?なんで、ミキティがそんな…」
「亜弥ちゃんのためだよ!!」
「え…?」
お節介だと思うけど。
親友だもん、親友だから。
- 73 名前:刹期 投稿日:2004/09/18(土) 15:38
-
「…っ…美貴は…こんな卑怯な事しかできないから……」
亜弥ちゃんが、笑って喜んでくれるのなら。
美貴は何だってするさ。
それが、亜弥ちゃんにもごっちんにも良い事になるだろうから。
「亜弥ちゃんは、ごっちんの事が好きなんだよ」
これが真実ならば。
美貴の恋は終ったのだろう。
- 74 名前:刹期 投稿日:2004/09/18(土) 15:41
-
「まっつー…が…?嘘、嘘だよ、有り得ない…」
「嘘でこんな事、言えないよ…」
現実にあるから、こんなにも哀しい。
ごっちんは信じられないという様子で地面に目を泳がせる。
最後に美貴が亜弥ちゃんにしてあげられた事は、こういう事だった。
彼女は何を想うだろう。
親友が手助けして、片思いを実らせてあげて。
美貴って、すっごくヤなやつだ。
- 75 名前:刹期 投稿日:2004/09/18(土) 15:43
-
月明かりの下で、携帯のディスプレイに目を通す。
二人は、お互いを信じあう事が出来た。
「みじめ、だよな。美貴って」
どこまでもお人好しなんだ。美貴ってやつは。
微かに笑って送られて来たメールを消去した。
嫌がらせの思いで消したわけじゃない。
彼女を忘れる手段は、これしかないのだから。
- 76 名前:刹期 投稿日:2004/09/18(土) 15:46
-
大人になるまで、幾つもの恋をして。
やっとの事で本当の幸せを手に入れるんだ。
1つの失恋も、幸せの一部になるのかもしれない。
シナリオなんていらない、本当の愛。
全部教えてくれたんだね、亜弥ちゃん。
FIN
- 77 名前:証千 投稿日:2004/09/18(土) 15:51
- またしても。ビミョー。
以上、ミキティの失恋物語でした。
>71樣 駄文にもかかわらず目を通して頂き光栄です。
ありがとうございました。
- 78 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:26
-
腹筋50回を2セット。
腕立て伏せ100回を3セット。
そしてボールシューティング50回。
「よんじゅぅしちっ…よんじゅうはち…よんじゅうくぅぅっ…ごじゅぅ!!!」
独り、部室前で孤独に筋トレをこなすあたし。
放課後、他のみんなはやる気がなくて練習に出てこない。
あたしはフットサル部副主将、2年3組松浦亜弥。
一応ここのエースでフォワードをやってます。
- 79 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:31
-
「…いい加減腹割れるよね」
いくら女子といえど、筋トレばかりやっていたらそのうち腹筋が割れてしまう。
夏になると毎回水着を着るのが嫌になる程鍛えているからだ。
ガツン、と腹筋を殴って解けたスパイクのひもを結びなおした。
「サボってんなよ、へたっぴ」
背後から皮肉混じりの声が聞こえた。
とっさに判断したその声は、あたしの天敵であった。
「…サボってなんかない。アンタと違うもん」
「それはどうもすみません。美貴だって毎日サボってるわけじゃないよ」
「嘘。月に2回ぐらいしか練習でないくせに」
「分ったよ、今日は真面目に最後までやります。ふくぶちょー」
「…だったら早くボール用意して!」
「はいはい」
大嫌い。
わざと冷たく言い放ったものの、全く怖じ気付く様子もない。
副部長のあたしに反抗してばかりの部員。
藤本美貴。
- 80 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:38
-
「…部長は?」
「見ての通り、みんなサボりだよ」
「そろそろ存続危ないんじゃない、この部」
来年の新学期で新入部員が4人に満たなければ、フットサル部は廃部。
校長の権力には逆らえず、顧問の先生からそう告げられた。
先輩達は引退も近く、そのせいか部活に全く来なくなっていた。
二人きりで練習なんてできやしない。
まして、こいつと。
「…みき、たん」
「……何、急に昔のアダナで」
「べ、別にっ。なんとなく思い出したから…」
「…ふーん。別にいいけど」
優しくて、強くて、いつでも格好よかった。
なのに高校入学してから、みきたんは変わった。
- 81 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:44
-
小学校、中学校、高校とみきたんとは同じ学校だった。
すごく仲が良くて、あたしは本当に大好きだったけど。
みきたんは突然変わった。
悪い子達と付き合うようになって、なんでも投げやりになった。
同じ学校にいるのにあまり話す事もなくなって、殆ど友達関係はなくなって。
適当な部活を選び、あまり練習に出る事もなく。
それがあたしと同じフットサル部だった。
ドンッとボールを蹴って、ゴールに弾ませる。
「…ナイス、シュート…」
「どうも」
部活に出ないくせに、プレイはピカイチ。
もともとスポーツは得意な方だったからっていうのもある。
身体能力は変わってないんだ、とつくづく思ってしまう。
でも、前みたいに笑いかけてくれる事は少なくなった。
もちろん、あたしから笑いかける事もなく。
- 82 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:50
-
「ねえ副部長」
「…何?」
「一緒に帰ろう」
「へっ…!?」
「前みたいに、タマにはさ」
練習後、ボールを倉庫に片づけながらそう口にした。
一緒に帰るなど、凄く久しぶりのような気がする。
なによりみきたんの口からそのような言葉が出るなんて。
ポカンとするあたしを凝視して、みきたんは片付けを済ます。
今日のみきたんは、おかしい。
「下校時刻過ぎるよ、早く」
「あ…うん」
手招きをして下駄箱で待っていてくれた。
中学の時はいつもこうしてあたしを待っていて。
走ってみきたんの元へかけてゆくと、やんわりと笑って。
でも今は。
よそ見をして決してあたしを目を合わせようとしない。
そんな事も、もう慣れてしまったあたし。
- 83 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/18(土) 16:56
-
「…みきたん」
「何?」
「……何で急に帰ろうなんて言うの?」
「……別に、独りで帰らせるの危ないし」
「でも毎日1人で帰ってるよ?」
「…日が落ちるのが早いからだよ」
軽く誤魔化されて、頭をはたかれた。
ムカッときたけどそれは抑えて、なんだか懐かしい気持ちに浸れた。
「そっちだって」
「え?」
「何で昔みたいにアダナで呼ぶの?」
「…な、なんとなくだってば」
「高校入ってから一度も呼ばなかったのに」
「……そっちもじゃん」
「?」
「そっちだって、あたしの事名前で呼ばなくなったよ?」
「…あー」
なんとなく。寂しかった。
昔は『亜弥ちゃん』『みきたん』って呼び合ってた。
それが『副部長』って呼ばれるようになってから、なんとなく寂しかった。
前みたいに、仲良くなりたい。
密かにあたしはそう思っていたのかもしれない。
嫌いな筈なのに、気になってしょうがない。
- 84 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/18(土) 18:24
- 更新乙です。
あやみきだ〜〜!ありがとうございますw。
二人はどうなるか楽しみです。
- 85 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:12
-
「…前みたいに、笑ってくんないし」
何言ってるんだろうあたし。
こんな事言うつもりないのに、口が勝手に動く。
それは本心であり、偽りでもあった。
みきたんは驚いたようにあたしの目を見て少し俯き加減になった。
「…自分でも、変わったって思う」
「え?」
「何だろ…よくわかんないけど。人に優しくするのが凄く苦手になった」
少しだけ、みきたんの口角が緩んだ。
前のように温かく、やんわりとした大好きな笑顔。
本当は、こんな姿なのに。
変わってしまったみきたんをあたしは嫌うようにしていた。
近寄り難くして、あたしの方から突き放していたのかもしれない。
- 86 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:17
-
「周りの環境が変わったからっていうのもあるけど、それだけじゃない」
みきたんが寂しそうにする言葉を、あたしは何も言わずに受け止めた。
歩くペースは遅くなり、日没は早まる。
「亜弥ちゃんとも、喋りづらくなった」
「…あたしっ…」
「何でかって聞かれると、正直美貴も分らないんだ。
いつの間にか、優しくしなきゃいけない人、見失ってたから」
「みきた…」
ガリッ、と石と靴が混ざりあう音。
あたしが何かを言う前に、みきたんは振り向いて瞳をあたしに向けた。
「それが、亜弥ちゃんだった」
ふと気がつく。みきたんはあたしの事を昔の呼び名で呼んだ。
それと同時に、体中に懐かしい匂いが浸透する。
- 87 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:25
-
「部活なんか、出られるわけないよ」
「…え…?」
「毎日、もどかしい思いしてボール蹴るなんて」
「どういう意味…?」
すぅーっと深呼吸をして、みきたんはあたしを抱き締める力を弱くした。
前までしていたお遊びのごっことは違う。
違う感情を、みきたんから受け取ってしまった。
「亜弥ちゃんが、好きだから」
好き。みきたんがあたしに言ったその言葉は、前まで口にしていた
物とは違う事に気付かされた。
「…高校入ってから、亜弥ちゃんが美貴から離れてくのに気付いたんだ。
どうってことないって思ってた。でも、もう仲良くなれないだって聞かされた
気がしたから、凄く恐かったんだ」
「たんっ…?」
「……っ…もう、遅い…かな。仲良くしちゃいけない…?」
違う。違うよ。
- 88 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:31
-
ぐすん、と鼻をすする音が聞こえる。
泣いてる?
昔からあたしにだけは決して悲しむ姿を見せなかったみきたん。
そんな彼女が今、あたしを抱いて涙を流している。
あたしはそれが信じられなくて、何を言うまでもなく背中を撫でた。
「…あたし、馬鹿だ」
「っ…?」
「……こんなに大切な人、忘れようとしてたんだもん」
みきたん、大好き。
『亜弥ちゃんっ、一緒に帰ろう?』
『…ごめんね、亜弥ちゃん』
『美貴も亜弥ちゃんの事、一番大切だよ』
何もかも、忘れちゃいけない事だった。
- 89 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:36
-
変わらないもの。
それは、みきたんがあたしを想ってくれてる気持ちだった。
「…っ…ホント、遅いよ、みきたん」
「……ごめ、ん…」
「意地っ張りな所だけは変わってないんだから」
「…亜弥ちゃんだって…素直じゃない」
お互いの顔を見つめあって、何かわかんないけどおかしかった。
みきたんの赤く腫れた目と、赤く染まったあたしの頬を撫でて。
- 90 名前:LOVE VICTORY 投稿日:2004/09/19(日) 19:42
-
「っていうかさぁ…好きなら好きって早く言ってよ」
「だ、だって言える訳無いじゃん」
「…あたしだってどう接していいのかわかんなかったんだから」
「それは美貴も同じだよ…」
昔みたいに、たわいもない事で爆笑して。
昔みたいに、帰る時はふざけあって寄り道したり。
でも、あたし達が戻りたいのはそんな関係じゃなくて。
「…手、繋ぐ…から、右手!」
「えぇ?」
「い、いいから!」
無理矢理右手をギュッと握られて、ずんずん先に歩くみきたん。
ぶっきらぼうで、女心が分ってない、彼女のやりかた。
そうだ、これがそうなんだ。
これが、愛してるって気持ち。
FIN
- 91 名前:証千 投稿日:2004/09/19(日) 19:44
- 友達なんだか恋人なんだか微妙な感じ…。
まあ毎度の事ですが。
>84樣 最近甘いのを御無沙汰しているので書こうかと思ってます。
…そりゃあもう糖分控えめにはしていられないので…w
失礼しました。
- 92 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:04
-
「やい、おまえのかあさんどこにいるんだ?」
「みなしごだー!みーなしご!みーなしご!」
「ちがうもんっ、ママはもうすぐかえってくるもん!!」
小学校で唯一楽しみだった給食の一時を終え、窓の外をチラリを見下ろす。
3人程の男子が、1人の女の子を囲んでなにやらわいわい騒ぐ姿が見受けられた。
どうも仲良くしているようには見えない。
…これは助けなければ。
直感的に、美貴の野生の血が騒いだのは小学校3年生の時だった。
- 93 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:08
-
「「「みーなしご!みーなしご!」」」
下駄箱で靴を大急ぎで履き替え、とことこと現場に走った。
女の子は泣きじゃくって座り込み、3人の男子はわあわあ『みなしご』
コールを送っている。
古典的ないじめ、嫌がらせだった。
美貴は当時から正義感溢れる豊かな少女だった。
もちろん目の当たりにした光景から目を反らす事など出来たはずがない。
それどころか、むしろやつらをぶっ叩くつもりで。
「えぐっ…うぇぇっ…」
おぉ、びゅーてぃふぉー。
座り込んで泣いていた女の子は予想以上に可愛い子。
これは助けなければ。
命にかえてでも。
- 94 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:15
-
「何やってんだよお前ら!!!!」
「うわっ、デコがきたぁ!!」
「にげろ!」
「でこっぱちにされるぞぉ!」
「んだとオラァ!??」
何がデコだ。
何がでこっぱちにされるだ。
年上に向かって暴言を吐いた男子3人をこてんぱんにした美貴は、泣きじゃくる
女の子に近寄ってぺたんと地面に座った。
「…大丈夫?とにかく泣かないでよ」
「えぐっ…うえぇっ…ぐすんっ…」
「あ…あー…ほらほら、美貴でこっぱちでしょ?」
泣き止もうとしない女の子をなだめる為、美貴は最終手段に出た。
自慢、でもないけど当時からデコが広かった為笑いのネタにもなる。
前髪をまくしあげ、広いデコを見せてみた。
「ふっ…あはははぁっ…」
「あ、あ、笑った」
「おでこひろーいっ」
「ぐっ…」
恥ずかしくなった美貴はおでこをかくし、女の子を立ち上がらせた。
おしりについた砂をはらってあげると、またニコッと笑顔をみせてくれる。
その笑顔が妙に可愛くて、みるみるうちに美貴はその子を守ってあげたいという衝動に駆られた。
- 95 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:21
-
ドタタタタタタタタタタタタタタタ………
「藤本ーっ!廊下を走るな!!!」
「あー、ハイハイすんませーんっ」
あれから月日、いや年月は流れた。
小学3年生だった美貴は高校3年生になった。
相変わらずのやんちゃ、いや無邪気ぶりで高校生活をエンジョイしまくってる。
デコの広さは変わらないけどさ。フンッ。
そして、あの泣き虫女の子はというと。
「ちょっとみきたん!?何そのカッコ!?」
ちっ、見つかった。
もろもろ私服姿で学校に登校した美貴は、風紀委員である彼女に見つかってしまった。
毎度毎度の事だが、今日という今日は許されないっぽい。
- 96 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:28
-
「うるさいなぁ、堅い事言わないでよ」
「堅い事もなにも規則やぶりすぎなの!!職員室行くよ!」
「えぇっ!?ヤだよぉ」
「ヤだもなんもないの!ほらっ!」
「いーやぁだー!!!っ…それっ」
「なっ…きゃぁぁっ!???」
してやったり。
ひょい、と彼女を持ち上げて廊下を駆け抜ける。
ジーパンにトレーナーだから美貴にとっては十分動きやすい素材だ。
それに比べて彼女は制服のミニスカにセーター。
「降ろしてよぉっ!!!!!」
「ヤだね〜だ。このまま屋上まで駆け抜けろ〜♪」
「ちょっ…みきたぁん!!!」
「パンツ見えるよ」
「馬鹿ぁっ!!!!」
細みの彼女をお姫さまだっこする事なんて容易い容易い。
パンツが見えるとかどうとかうるさいので肩から降ろして両手で
抱く事にした。
え?走ってる途中でそんな事できるのかって?
まあそれは作者に聞いてよ。
- 97 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:36
-
「御到着〜」
「………」
「妙に大人しいね、亜弥ちゃん」
「っ…馬鹿!!」
「いてぇっ」
ごんっと頭を殴って、ひょいと美貴の両手から飛び退いた。
アクティブな子だなぁ。
まあそれは美貴も同じなんだけど。
「一時間目サボろうよ」
「絶対にヤ。あたし授業は落としたくないの」
「真面目ちゃんだねぇー…」
「…っ?」
寒い寒い12月。
冷え性の美貴としては誰かの暖かみに触れたいわけで。
背後から亜弥ちゃんを抱きすくめて屋上の景色を眺めた。
「…みきたんって、変わんないよね…」
「え?」
「正義感強くて、お調子者で、誰にでもほいほい優しくて…」
「ん?最後の方、声のトーンが下がらなかったかにゃぁ?」
「べっ、別にそんな事ないもん…」
「ふっふっふー、かわいいなぁ」
「……馬鹿っ」
ああ、楽しい。
彼女をからかう事より楽しい事なんてない。
- 98 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:43
-
「でさ、結局どうする?」
「え?」
「サボっちゃおうぜぇ〜」
「ヤです。もう時間ないから行く」
「ちぇっ、学級委員兼風紀委員は頭が堅いんだから」
「これが普通なの!」
「…昔は泣き虫で甘えん坊だったくせに」
「!??」
彼女は唐突の事に驚いて顔を真っ赤にする。
ふふっ、ホント可愛い。
「小学生の時なんかさぁ、みきたんと結婚する〜っつって…」
「い、言ってない!!!」
「大好きーとか、ほっぺにチューとかされたんだけどなぁ〜…」
「してないもん!!!そんな事っ…」
「嘘だね〜、美貴ははっきり覚えてますー」
勝ち誇ったように亜弥ちゃんの赤く染まった頬にキスをする。
仕様がない、という感じで観念したのか美貴の胸に納まる彼女。
結局は美貴の事好きなくせに。
高校までついてきたのはどこのどいつだってーの。
ああ、一応中学、高校、大学付属なんだけどさ。
- 99 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:47
-
「やった、美貴の勝ち」
「……ムカツク…」
「そんな事言って美貴の事大好きなくせに」
「嫌いだもん」
「嘘つくな。あんな事やこんな事した仲じゃん」
「なっ…まだキスしかしてないでしょ!??」
「え?まだって事はこれからしてもいいっつうこと?」
「っ…やっぱ嫌いっ…」
「ふふん」
いつもそうなんだから。
美貴が亜弥ちゃんに悪戯を仕掛けるたび、『みきたんなんかダイッキライ』って。
半泣きで言うもんだから最初の頃は信じてたけど。
今はそんなのハッタリだって分った。
恥ずかしがりやの彼女だから、美貴がこうでも言わないと分らないみたいだし。
- 100 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 20:56
-
「…明日私服で学校来たら今度こそ只じゃおかないからね」
「いやん、こわ〜い」
「馬鹿言わないでよ、ホントに心配してんだよ?」
「え?」
小学生の頃とはうってかわって、彼女は本当に大人っぽくなった。
中学校に入ってからだと思うけど、元々良かった頭がさらに天才化した。
しみじみと彼女の成長に感心していた頃に、亜弥ちゃんはふと美貴の目を
真剣に見つめ始めた。
「ホントに…卒業できなかったらあたしヤだよ?」
「なぁに言ってんのさ、卒業出来なかったら出来なかったで…」
「それが馬鹿だって言ってんの!!大体勉強なんて体育しか出来ないし
普段の生活習慣だって悪いだから!!」
「は、ハイ…」
美貴の事、心配してる。
今年高校に入学してきたとは思えないくらい、大人っぽい子だ。
昔の甘えん坊の面影は少しも無くて、美貴を支えてくれる。
こりゃー成績表で1取ってる場合じゃないな。
「わかった。分ったから。明日は制服で行くよ」
「本当に?」
「明日だけね」
「……ったくもう」
「そんじゃ、教室までお送り致します。お姫さま?」
スッと紳士的に手を差し伸べて、にこっと微笑む。
こういう美貴のギャグに乗ってくれるのは亜弥ちゃんしかいないから。
- 101 名前:幼馴染み? 投稿日:2004/09/19(日) 21:00
-
「ホンットに……馬鹿なんだから……」
「へへっ、じゃ出発〜」
「みきたん手冷たい!!」
「亜弥ちゃんあっためてよー」
「ヤだよぉ、手離せっ」
「酷っ。じゃあくっついてやるっ」
「ちょっ…邪魔!!!みきたんっ!」
「ふへへっ〜、大好き〜」
「ちょーっとぉ!!!バカでかい声で叫ばないでよぉっ!!」
べたっと亜弥ちゃんにひっついて屋上を後にした。
結局亜弥ちゃんが教室に帰る頃には一時間目はとうに終了していて。
後から美貴はこっぴどく亜弥ちゃんに叱られてしまいました。
え?結局二人の関係は何なのかって?
…それは、読者の皆さんにお任せします。
まあ何を言おうが美貴と亜弥ちゃんの愛は不滅です。
「もうっ…みきたんなんかダイッキライ!!!!」
「あはは〜」
FIN
- 102 名前:証千 投稿日:2004/09/19(日) 21:01
-
あ、甘かったのでしょうか……(返事待ち
恋人同士なんだかふざけあいなんだか意味わからん。
すんません。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/19(日) 21:17
- 更新乙です!久々にリアルタイムで読みました♪
甘いですよw。
今回の二人の関係は…
川*VvV)<友達以上恋人未満ですかね、へへへ(笑)
…だと思いま〜す(バカ
これからも頑張ってください!
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/21(火) 17:57
- ヤヴァイです…いじっぱり亜弥ちゃんカワイすぎです。
- 105 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 18:25
-
廊下の掲示板にはり出された一枚の紙を見て、美貴は脱力した。
「…んだよ、この小学生みたいな扱いは」
紙には、こう書かれていた。
『3−3 藤本美貴。 3−1 吉澤ひとみ。
放課後校舎裏の広場に集合。
何をするかはお楽しみ。 中澤教員より 』
「あぁっ、ムナクソ悪いっ!!」
「やめなよミキティ、往生際悪い」
「だってテストの補習プラスこれって…」
「中澤先生だからしょうがないだろ」
二人同時に溜め息をつき、鞄をひっつかんで校舎裏の広場へ向かった。
- 106 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 18:31
-
「…お、来たな馬鹿ども」
体育教師特有のジャージを身に纏い、校舎裏で待ち構える中澤先生。
ここでまた溜め息をつけば何をされるかわからない。
ぐっと悔しさを押し込んでよっちゃんとアイコンタクトをとる。
「で、なんすか」
「何やその口の聞き方は」
「べっつにぃ〜…いででっ!??」
よっちゃんが溜め息混じりにだるそうな返事をすると、耳をひっつかまれた。
ほら、こういう事になる。
気の毒そうによっちゃんを見送り、再度先生に確認をとる。
「で、何ですか、集合って」
「よくぞ聞いてくれたな藤本。これやこれ。じゃじゃ〜ん」
「「……帚……」」
中澤先生がどこからか持ち出したのはニ本の帚。
一体何をするんだろう、と思って中澤先生の後をひょいと覗く。
「……ん?亜弥ちゃん?」
「り、梨華ちゃん?」
先生の後に隠れるようにしていたのは美貴の後輩、すいーとはにー亜弥ちゃん。
そして同学年の梨華ちゃん。
一体何してんの。
- 107 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 18:36
-
「な、何してんの?」
「先生に頼まれてね、一緒に枯れ葉を掃除してくれって。
ほら、ひとみちゃんと美貴ちゃんだけじゃ人数足りないでしょう?』
「枯れ葉掃除!??み、美貴聞いてないよ!」
「だって今言ったんだもん。それで亜弥ちゃんも手伝ってくれるって。ね?」
「ハイ!あたしもやるから、みきたんも一緒にやろっ?」
愛しのハニーに上目遣いで言われちゃあ美貴だって断れない。
美貴が一番嫌いなランキングには掃除も入っているというのに。
でも亜弥ちゃんと一緒なら…
しょうがない。
「や、やります……」
「やりますやのうて、最初からやらせるつもりや。阿呆」
「ぐっ…ムカツク…」
「何か言うたか、アァ?」
「いえ、何も」
素直に帚を受け取り、亜弥ちゃんのニコリと笑った顔に只溜め息をつくしかなかった。
- 108 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 21:05
-
ザッザッザッザッ
「チッ、補習プラス外掃除なんて最悪」
「ったく…あのババー、今に見てろ」
「こらこら二人とも、先生がいないからそんな事言えるんでしょ?」
「だって梨華ちゃん…」
「いいから早く終らしちゃいなさい。亜弥ちゃんだってちゃんとやってるでしょ!」
「「へーい」」
梨華ちゃんに軽く頭をこづかれて、渋々と手を動かす。
全く、秋の終りは面倒くさい。
少し離れた所で亜弥ちゃんがせっせと働いている。
偉いなぁ。
こんな時こそいちゃいちゃしなきゃ。
そそくさとよっちゃんから離れ、亜弥ちゃんの元へ。
- 109 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 21:12
-
「そっち、手伝うよ」
「うん、ありがとみきたん」
特に落ち葉が酷いわけでもないのに率先して動く。
まあこんな時ぐらいしか格好つかないし?
「悪いね、わざわざ手伝ってもらって」
「ホントだよぉ。しかもみきたんが補習なんて知らなかった」
「…馬鹿だよどうせ。地理は嫌いなんですぅ」
「でも、みきたんが天才だったら気持ち悪いなぁ」
「なっ、何で!?」
「えへへぇ、馬鹿なたんが好きだもん」
「亜弥ちゃん…」
「みきたん…」
あと10センチ、あと5センチ。
亜弥ちゃんと美貴の距離が、少しづつ近くなる。
「そこ!いちゃついてんなよ!!!」
ばしんっ
「いってぇ!何すんだよよっちゃん!!」
「うるせっ。目の前でキスすんなばっきゃろぅ!」
「してないもん、しようとしただけだもん」
「ヘリクツはいらん!」
「よっちゃんだって梨華ちゃんとキスぐらいすればいいじゃん!!」
「バッ…ばっきゃろーっ!!あ、あいつとなんかするかよ!!」
美貴達の邪魔をしたよっちゃんに喝を入れる。
よっちゃんと梨華ちゃんは昔からの幼馴染みで、恋人の一歩手前。
後少しで付き合えそうな距離なのに。
よっちゃんは意地を張って気持ちを伝えようとしない。
- 110 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 21:18
-
「こら!!二人とも真面目にやりなさい!!ひとみちゃんもこっち!!」
甲高い声は美貴とよっちゃんのいざこざを止めさせた。
よっちゃんはまだ顔を赤くして素直に梨華ちゃんの方に振り向く。
ふふん、意外とシャイなんだから。
亜弥ちゃんとキス出来なかったぶんをぶっつけてやる。
「…ひとみちゃん、顔真っ赤だけど…」
「そ、そんな事無い…暑いだけだよ」
「ふーん…じゃあ焼き芋いらないね」
「え?芋?」
「ふふっ、こっち来て!亜弥ちゃんも美貴ちゃんも!」
枯れ葉の山を集めた所に駆け寄る梨華ちゃんを追ってみる。
よっちゃんは芋と聞いた瞬間顔を赤らめるのを止めて興味津々で走り出す。
全くゲンキンなんだから。
- 111 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/21(火) 21:26
-
「……サツマイモ。だよね?」
「ふふん、中澤先生が持って来てくれたの」
「焼き芋、するんですか?」
「おおー、やろうぜやろう」
「じゃあ火付けて美貴ちゃん」
「うん」
焼き芋なんて久しぶりだった。
木の葉がこんもり積もった上に、4本のサツマイモ。
何故か芋を見た瞬間ふと誰かを思い出したけど、気のせいという事にしておこう。
マッチをすり、木の葉の山に放り込む。
途端にオレンジ色の光りを放ち、静かに煙りが立つ。
「なんか、いいよねこういうの」
「だな。懐かしい感じ」
「昔、やったじゃない」
「え?」
「ひとみちゃんとあたしで、小学校の頃」
「や、やったっけ…」
「やだ、忘れたの?」
「わ、わかんない」
「…もぉっ、忘れっぽいなぁ」
二人だけにしかわからない思い出話に、よっちゃんははにかんでいる。
本当は多分、覚えているんだと思う。
ただの照れ隠しなんだけど、鈍感な梨華ちゃんは全く気付いてない。
「…何か、イイ感じだね、先輩達」
「うん…このまま上手くくっつけばいんだけど」
「…たん、手繋いでいい?」
制服のブレザーの裾を少し掴んで、ニコリと笑った亜弥ちゃん。
スルリと亜弥ちゃんの手を握って、うれしさに浸る。
これは焼き芋のおかげだろうか。
- 112 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/22(水) 18:43
-
「だぁっ、熱いっ」
「馬鹿ね、木の棒でさすのよ」
「わ、分ってる」
焦げた木の葉を取り払い、細い木の棒を焼き芋にさす。
木の葉が焦げた匂いと秋の風がとても心地よかった。
中澤先生でもこんな優しさを持っているとは。
取り出した芋をそっと二つにわると、甘い匂いが漂う。
黄色い芋に思わず亜弥ちゃんと顔を見合わせて顔が綻ぶ。
「ハイ、あーん」
「い、いいよっ、自分で食べる!!」
「何でよー、ひとみちゃんのケチ」
「け、ケチとか関係ないだろっ」
よっちゃんは梨華ちゃんが口へ持って行った芋をとっさに避ける。
露骨に照れなくても。
クスクス笑ってからかうと、さらに顔を赤くする。
まるで梨華ちゃんがお姉ちゃんみたいだ。
- 113 名前:焼き芋 投稿日:2004/09/22(水) 19:14
-
「たんも、あーん」
「へへっ」
きっと今の美貴はデレデレして顔がヤバい事になってる。
今に梨華ちゃんとよっちゃんもこうなるんだろうけど。
「うおーい、さっさと掃除再開せやー」
「げ、先生来た」
「お腹も一杯になったし、早く終らせましょ」
焼き芋を食べ終り、また帚を手にする。
この掃除の意味は一体何だったのだろう。
美貴達を戒める為なのか、テストで悪い点を取ったから改めさせるためか。
そこらへんは先生に疑問を抱きながらも、溜め息をつく暇もなく。
ただ焼き芋の甘い匂いだけが、秋の風に残った。
FIN
- 114 名前:会いたくて 投稿日:2004/09/22(水) 19:19
-
今すぐ、会いたい。
「…言えないし、ね」
たった一言のせつなさが伝えられなくて、携帯を閉じる。
忙しいんだもん、しょうがないよね。
そうは思ってても、あたしの中はアイツでいっぱいになってる。
肩が火照って溜め息ばかりが寂しさを走らせる。
どうにかしてこの寂しさを抑えられないだろうか。
それはきっと不可能。
このモヤモヤをかき消すのは、アイツだけしかできない事。
あたしだけオフで、あたしだけ寂しい思いしてる。
アイツだけ仕事があって、アイツだけ何にも知らないでいる。
好きだって分ってるのに。
- 115 名前:会いたくて 投稿日:2004/09/22(水) 19:25
-
『じゃ、またね』
『うん、バイバイ』
このやりとりを繰り返す度、何度も会いたいと願う。
鈍感な彼女はあたしの気持ちを知らずに、別れ際にはサッパリとした
淡白な笑顔をかけるだけ。
最後には何も言えなくて、あたしもつられて手を振ってしまう。
彼女に会ったのは一体いつだったっけ。
1…2… 1ヶ月ぐらい、前。
声が聞きたくて、電話をするけど。
会いたいとは言えない。
言ってしまえば、重いって思われる。
そんな所だけ臆病なあたしは、何もかも壊れそうなくらい哀しくなる。
今、何してるんだろう。
- 116 名前:会いたくて 投稿日:2004/09/22(水) 19:34
-
「……会い、たい…」
「うわぁっ!?」
突然背後から冷たい視線を感じ、驚いて振り返る。
美貴が打っていたメールの内容を、矢口さんに見られてしまったようだ。
「何すんですか背後から!!」
「惚気爆発のメールを堂々と楽屋で打つお前が悪いんじゃぁ!」
「だからって盗み見しないで下さい」
「盗まなかったら見ていいんだな?」
「そっ…そういう問題じゃないです!」
ああビックリした。
なんて恥ずかしい事をメールにしていたんだろう。
まあ、彼女にしか言えないけど。
パタンと携帯を閉じて、1つ溜め息をつく。
こんな気持ち、初めてだ。
心細くて、彼女の声が何より必要で。
今の美貴の虚ろな眼差しを見たら、きっと優しい言葉をかけてくれるだろう。
美貴にだけ甘えてくれる彼女は特別だから。
不安。 フアン。
すがりつきたいのは、彼女のやわらかい笑顔。
- 117 名前:会いたい 投稿日:2004/09/22(水) 19:38
-
「ミキティ、早く行くよ」
「へ…あ、はい」
「…仕事に支障するような事、しでかしたんか?」
「…や、なんでもないです」
「…それじゃ、もっと笑っとけ」
「ハイ?」
「何でもないで誤魔化せるような世界じゃないって、分ってんだろ?」
笑いたくない時でも、笑わなきゃいけないから。
矢口さんは美貴がモーニングに加入する以前、こう呟いた。
芸能界ってこういう所なんだって、思い知らされた気がしてならなかった。
でも、今の美貴には必要な人がいなきゃ。
頑張れる気なんか、これっぽっちも起きなかった。
- 118 名前:会いたくて 投稿日:2004/09/22(水) 19:43
-
「みきたん……」
ぽつり、ぽつりと出てくる愛しい名前。
「亜弥ちゃん」
ガチャッ、と鈍い音が玄関から聞こえる。
以心伝心。ってやつ?
「会いたかった」
FIN
- 119 名前:証千 投稿日:2004/09/22(水) 19:46
- 微妙ー。
しかも途中でタイトル間違えました。
脳内変換よろしくです。
なんだかなぁー…とりあえず『会いたくて』のやつは
頭んなかで番外編でも妄想しちゃってくれると嬉しいですw
>103樣 もう彼女達は恋人以上です。ハッキリ言ったらw
亜弥ちゃんのレッツは萌えすぎでした。死にます。
>104樣 最近は切ないのばっかり書いてるので亜弥ちゃんの
かわいらしさがアピールできていなかったのですが…まあ頑張っていきます!!
- 120 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 21:53
-
ミーン ミーン ミーン ミ〜〜ン
「っー……暑いよぉー……」
「もうすぐだから、もうすぐ」
「もうすぐもうすぐって…もう20分も歩いてるよぉ?」
「仕様がないでしょ、おばあちゃんのお墓は山奥にあるんだから」
「むぅー…」
山を超え谷を超え。松浦亜弥がやってきた。
いや、谷はないんだけど。
中学校生活最後の夏休みの31日にお墓参りしにきてるなんてあたしだけじゃないの?
自然と流れ出る汗を拭って儚く太陽を睨む。
今年の夏でおばあちゃんの20回忌だ。
もちろん15歳のあたしは、当然まだ生まれてもいない。
だから体しておばあちゃんに思いでがあるわけでもない。
家族だから。そういう理由だけで山奥を目指しママとパパ、妹と共に歩き続ける。
「…お、見えたぞー」
「ギャァッ。何あの有り様」
「……うわぁ、草とか木のびっぱなしじゃん」
「かきわけておばあちゃんのお墓探すわけ?」
「…そうするしかないだろ、ホラ行くぞ」
「うえぇ〜……」
パパが指差した先にあったのは、草や木がのびっぱなしの酷い有り様の墓地だった。
どこにおばあちゃんのお墓があるのかも分らない。
パパは草をかきわけてザッザッと進んでゆく。
むろん、あたしは渋々その後を追い掛けるしかなかった。
- 121 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 21:58
-
「…なんじゃこりゃ」
「コケ生えてるし。最悪ジャン」
「ま、まさか2年置いておいただけでこんなになるとは思わなかったな」
ようやくおばあちゃんのお墓を探し出したものの、これは酷い。
コケが生えまくって緑色。
2年程お墓参りをサボッていたため、こうなる事は予測していたらしい。
しばらくあたしと妹は唖然としてその光景を見つめるしかなかった。
「…逃げちゃお」
コケまみれの墓を掃除するくらいなら、ここらへんを探検しよう。
微かな冒険心が働いて、静かにそっと家族の元を離れる。
なんてったって健全な中学生だからね、冒険心ぐらいあるもん。
それにしてもサンダルで来なくてよかった。
奥に進むにつれて、お墓の道がぼこぼこになっている。
転ばないようにたったか進むのが楽しくて、自然と笑顔になってきた。
- 122 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:01
-
「うわぁっ…」
突然、突風が髪をくすぐる。
目を伏せて広い道にあるお墓の広場に出た。
こんな山奥に、綺麗な日がさす木漏れ日があるなんて。
さっきまでの暑さを忘れて、小鳥が鳴く声に耳を澄ます。
東京なんかじゃ聞けない、綺麗なさえずり。
「……え……」
誰?
微かに人の気配を感じた。
薄く呼吸する音が、あたしの耳をくすぐった。
誰か、いる。
- 123 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:06
-
小さいお墓のてっぺんに、器用に胡座をかいて座っている。
薄く日が射す場所を知り尽くしているかのように、瞳を空に向けて。
「……誰…?」
とっさに声をかけると、驚いたようにこちらを向いた。
近くで見てみると、女の子だという事が分る。
茶色い髪に、カーゴパンツにタンクトップ。
すごく綺麗な顔をして、あたしを見つめてる。
「…美貴。藤本、美貴」
そっと微笑んで、軽く頭を下げた。
笑うととても可愛い人で、つられてあたしも笑ってしまう。
何でだろう。何か、変な気持ち。
初対面の人に、興味が涌くのは。
- 124 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:12
-
「…珍しいね、こんな所に人が来るなんて…」
そう言うと、『美貴』と名乗ったその子はひょいとお墓から降りた。
そのままの笑顔であたしに笑いかける。
「珍しい……?」
「うん。ここらへんは人全然住んでないし…もしかしてあっちの人?」
「え…あ、うん…」
彼女の言う『あっち』とは、おそらく都会の事をさしているのだろうと察した。
一言だけ頷くと、納得したかのように彼女も頷いた。
不思議な人。
「…名前は?」
「あ…あたし?」
「えぇ?君以外の誰もいないよ?」
「あ…うん。松浦、亜弥」
「そっか、亜弥ちゃんか。可愛い名前だね」
「ふぇ…?」
「うん。さっき見た時、可愛いからビックリしたよ」
頭をがしがしかいて、頬を少し赤らめて。
可愛いと言ってくれた彼女。
人見知りをしないのか、自然とあたしの事を名前で呼んでくれた。
初対面の人にここまで心を許していいのかな。
一瞬だけそう思ったけど。
彼女の自然な笑顔に引き込まれて、そんな思いはすぐに無くなってしまった。
- 125 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:21
-
「こんな所で…何やってたの……?」
「うん?ああ、ここ美貴の場所なんだ」
「え…?」
「…まぁ、何でもいいじゃん」
サラッと誤魔化されて、さっきまで彼女が座っていたお墓をちらりと見た。
なんとバチあたりな事してたんだろう、この人。
今思えば結構酷な事してたんだなぁと気付く。
「あなた…」
「ああ、美貴って呼んでよ。そう呼ばれるの苦手なんだ」
「…じゃあ…うんと…たん…」
「た、たん?」
「ちゃん、じゃ在り来たりだなぁって…ヤ、かな?」
「…ううん、亜弥ちゃんみたいな可愛い子が呼んでくれるなら、いいよ」
爽やかにぱぁっと笑う。
初対面なのに、何であだ名付けちゃってるんだろう。
後で気付いてもんのすごく恥ずかしくなった。
夏の暑さよりも、彼女といる方がとても熱かったきがする。
- 126 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:34
-
「…お墓参りに、来たの?」
「あ、うん。おばあちゃんの」
「そっか。家族で来たんでしょ?どうして一人でいたの?」
「あ…まあ…」
お墓掃除から逃げて来たなんて、言えなかった。
なんとなく気が引けて、とっさに隠した事。
不思議そうにあたしを見つめて、ふっと笑われた。
「おばあちゃん、いつ亡くなったの?」
「あたしが産まれる前だよ。だから…あんま知らないんだ、亡くなった理由とか」
「…そっかぁ。でも、おばあちゃんがいたらって思う事、あったでしょ?」
「そりゃー…ね。パパの方のおばあちゃんも亡くなっちゃってるし…寂しかったかな」
母方、父方のおばあちゃんもいなくてすごく寂しかった時はあった。
友達がおばあちゃんに甘える姿を見て、とてもうらやましがった覚えがある。
「…みきたん、何でそんな事聞くの?」
「……んー。凄く、大事な事だから」
「何で…?」
「…残された人は、どういう風に生きればいいのか、分るかな?」
「……亡くなった人の、身内側ってこと?」
「うん、そうなるね」
死の事実を受け入れる事は、簡単な事ではない。
むしろ誰もが受け入れられる真実ではないのかもしれない。
だれの言葉だったっけ。
歴史上の人物が語っていた、一言、二言の詩。
哀しそうな瞳で、ぼこぼこの地面を二人並んで歩く。
みきたんは何故ここまであたしにこんな事を訪ねるのだろう。
疑問には思ったけど、きっとこれがみきたんにとって凄く、重要な事だというのが分った。
- 127 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:39
-
「亜弥ちゃんがもし、死んでしまったとしたら」
「…うん?」
「美貴だって、誰だって悲しむよ」
「今、会ったばっかりなのに…悲しむの?」
「…そりゃあそうだよ、今会ったとか関係無く、美貴は嫌だよ」
「…そっか」
「残された生きる人は、もう一度会いたいって思いが残るよね」
「…そう、だね」
「…夏のいつかに、魂は蘇るんだ」
「え?」
「まれにね、魂が宿って、消えた人々があらわれるって言われてる」
蝉が鳴き渡る、日だけが照る広場に。
ほんの一瞬、みきたんが言った一言があたしを突いた。
夏のある日に、魂は蘇る。
- 128 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:44
-
魂は、蘇る。
『…あれ、あんな所に花束……』
『ここらへんは事故が多いからなぁ…亡くなる人も多いんだ』
『へぇー…』
山奥に入る直前、ガードレールわきに儚く置かれた花束。
あたしは一目見た瞬間にその花が何かを物語っていると悟った。
パパに補足をされ、尚更胸をつねられた気がした。
「…ここらへんは、事故が多いんだ」
「……うん、知ってる」
「だから、それだけ魂が多い」
「…うん」
みきたん。
不思議と、全く恐くなかった。
冷たいみきたんの視線はあたしに何かを訴えていると、すぐに気付く。
- 129 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:53
-
「亜弥ーーーっ、亜弥ーー!!」
「お姉ちゃん!!帰るよー!!!」
ビクッと肩を跳ねさせて、後から聞こえる声に耳を澄ませる。
お墓の掃除が終って、恐らく手合わせも終ったんだろう。
「ごめんっ…あたし帰らなきゃ…」
「うん、ありがとう。一緒にいてくれて」
「…またここにいる?」
「……ずっといるよ。亜弥ちゃんが美貴の事を忘れない限り、ね?」
そっとあたしの手を握る。
ヒヤリとした感触が、あたしの両手に行き渡る。
「冬…冬になったら、またここにお墓参りに来るの!
だからその時っ…その時また会おうよ!!」
握られた手を、しっかりとあたしも握り返す。
あたたかいあたしの体温でみきたんの両手をあたためようとも、全く変わらないでいる。
冬になったら、また会える。
今度はいっぱいおしゃべりして、いっぱい思いで作りたい。
「…ごめん。それは、出来ないんだ」
そんなに哀しそうに、笑わないで。
そう言おうとして口を開こうとしたけど、動こうとしない。
ただみきたんの頬につたう涙を、見つめるしかない。
- 130 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 22:59
-
「亜弥!!早く帰るぞぉ!!」
バッと後を振り返ると、草をかきわけてきたパパだった。
額に汗を浮かべて、あたしを探しにきたんだ。
「みきたんあたしもうっ……」
パパに背を向けて、みきたんに話し掛けたつもりだった。
その時には、もう彼女はいない。
ただ蝉の鳴く声と、日ざしだけが射す広場。
あたしは、一体誰と会話をしていたんだろう。
「ねぇパパッ、さっきまであたしの前にいた女の子…っ…」
「女の子?…熱でもあるのか?」
「だってあたしさっきまで一緒にいたっ…」
「熱さでやられたんじゃないのか?さっきから一人言みたいにブツブツ喋ってると思ってたら…」
「嘘っ…何で…どういう、事…」
- 131 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 23:05
-
「本当なの!!さっきまで美貴っていう女の子と一緒にいて…」
「お姉ちゃんお墓掃除サボッて一人だけ夢見てるんだよ、ずるい!!」
「違うの!だから夢なんかじゃなくて…」
「馬鹿も休み休み言いなさい。ほら、帰りが遅くなるから車に乗りなさい」
山を下って駐車場まで来たものの、全く状況が理解できないでいた。
一体みきたんは何処へ消えたのだろう。
そんな思いが頭の中をぐるぐる回っていて、他の事など考えられなかった。
「ははっ、そう言えば、夏には墓にいる魂が蘇るっていうよなぁ」
「…えっ?」
「いやさ、その亡くなった人に会いたいっていう気持ちで、ごくまれに
あらわれるんだ。もしかしてソレに会ったのかもな?」
ドクン。と胸が鳴る。
みきたんは、もうこの世に存在しない人だった。
- 132 名前:幻カゲロウ 投稿日:2004/09/22(水) 23:16
-
パパが言っていた事は、みきたんが言っていた事と同じだった。
あたしはそれを信じたくなかった。
みきたんと過ごした数十分の間が嘘みたいに空白だったなんて。
『ここ、美貴の場所なんだ』
みきたんが胡座をかいて座っていたのは、自分のお墓だったんだ。
その墓にはお花も何も添えられていなくて、おばあちゃんのお墓以上に
汚れていた。
みきたんと会った後から、こんな事を思い出してしまう。
「……1997年兵庫県、姫路市○○通りで起きた悲惨な事故…」
被害者の高校1年生の少女、藤本美貴さんは居眠り運転中の犯人に
はねられ、20m離れたガードレールに激突。
偶然現場を目撃した女性によって即死が確認された。
古新聞を整理している途中、見かけたヒトコマ。
あの影は幻ではなかったのか。
果たして幻だったのだろうか。
あたし自身でさえ信じて良いのかいけないのかすら分らない。
あの夏の最後、彼女と過ごした数十分は何かを語っていたのだろう。
FIN
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 23:26
- 。・゚・(つД`)・゚・。
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/22(水) 23:36
- 感動とあやみきゴトがなくなった悔しさで・゚・(ノД`)・゚・。
- 135 名前:証千 投稿日:2004/09/23(木) 09:09
-
>133様 美貴様ー!!な感動はして頂けたでしょうかw
>134様 あやみきゴトの消滅は大ショックでした…
思わずことミックやらを引っぱりだして悔しさを紛らわしている自分にも
哀しいw
- 136 名前:魔法をかけて 投稿日:2004/09/23(木) 09:17
-
美貴はまんまと穴に落ちた。
信じられないくらい深い穴で、抜け出そうにも不可能な穴。
そして、ある魔法にかかってしまった。
恋という名の、黒魔術。
「みきたぁん、こんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ?」
部屋のテーブルに突っ伏してウトウトし始めた頃。
薄い毛布をかけて困ったように笑う彼女。
こんな一時が、一秒が、とても愛おしく思える。
「あ、ゴメン、起こしちゃった?」
「…ん…眠い…」
毛布をはね除けて、甘える猫の様に亜弥ちゃんの首に頬を寄せる。
桃の匂い、とでもいうのかな。
香水とは違う、美貴のお気に入りの匂い。
- 137 名前:魔法をかけて 投稿日:2004/09/23(木) 09:21
-
「なぁによぅ、甘えんぼだね今日は」
「…好き…」
「にゃはは、知ってるよーだ」
「……大好き」
一言、二言重ねて零す。
眠気が襲うと同時に、美貴は素直に亜弥ちゃんに甘えられる。
もちろん亜弥ちゃんに甘えていいのは、美貴だけって決まってるけど。
優しく頭を撫でて、彼女特有の笑顔を見せる。
「そんな眠いなら、ベッド行く?」
「…ヤだ、ここが…いい」
「もー、あたしだってこの体制辛いんだぞ?」
少し拗ねた素振りを見せるものの、心を許しているとしか見えない。
こうやって亜弥ちゃんに抱きしめられてる方が、眠りにまどろんでいられる。
- 138 名前:魔法をかけて 投稿日:2004/09/23(木) 09:24
-
亜弥ちゃんの魔法にかかったのは、およそ2年前。
親友から始まった恋は、はかなく散るしかないと思ってた。
でもその思いは、両思いという結果で咲いた。
嬉しくて嬉しくて、ますます好きが増えた。
大胆だけど照れ屋な亜弥ちゃんと過ごす時間は、美貴に必要不可欠な時間となって。
いつしかこの世で一番大切で大事な人となっていた。
甘い瞳で何かお願いごとされたら、鋭い眼光の美貴だって何も言えなくなる。
それ程、彼女が美貴にかけたマジックは濃い。
- 139 名前:魔法をかけて 投稿日:2004/09/23(木) 11:58
-
「昨日散々喋りまくってたから疲れちゃった?」
「…だって久しぶりに会えたから興奮して…」
「ふふ、みきたん早口だから何言ってたか全然覚えてないよ」
「酷いなぁー…」
麻酔を打たれたように段々と目蓋が閉じる。
もう少しだけ彼女の笑顔を見ていたいけど、眠気には勝てなかった。
美貴が寝息をたてると、亜弥ちゃんは背中をポンポンさすってくれる。
まるでお母さんに授乳されてる赤ん坊の様な気分だった。
「おやすみ、みきたん」
眠りについたら、君の夢を見たい。
そしたら僕も追い付くから。
一度だけ大きく呼吸をして、夢を見たい。
目が覚めるその時まで、君の夢を見させてよ。
愛という名の魔法を、君にもかける。
FIN
- 140 名前:証千 投稿日:2004/09/23(木) 12:00
- 珍しくほのぼの…甘かったのかなぁw
あやみきゴトが消滅してブルーな作者ですが頑張ります。
駄文でよろしかったらネタを頂くと作者は死ぬ程喜びますので。
- 141 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 12:45
-
また今日も、やられた。
「美貴ー、次体育だよ。移動移動」
「…ごめーん、ジャージ盗られたっぽいから先行ってて」
「またぁ?これで何回目さ?」
「…さーね」
まあ、こんな状況は月に一度はあるわけで。
自分にとっては大した事ではなくなっている。
ジャージだか、タオルだか、上履きだかが無くなるのは、大した事じゃない。
「体育も余裕持ってやってらんないねぇ〜モテモテくん」
「…成績下がったら困るんだけどな…」
「ジャージないから見学してるっきゃないじゃん?」
「よっすぃだって他人事じゃないでしょ、あんただって盗られるくせに」
「おいらは1回しかないもんね」
美貴の親友よっすぃも例外ではない。
男前だから女子高の中ではピカイチの存在。
でもって美貴と同様物が無くなる事が多い。
そんな事は、美貴達にとって何の変哲もない日常生活。
- 142 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 12:52
-
「美貴、帰ろ」
「おいっす」
ジャージが無くなった。とクラスの子達に漏らせばすぐに学校中に響き渡る。
それを予測した美貴はホームルームが終ると同時にすぐ下校する事にした。
よっすぃも美貴を気づかってくれているのか、いびつなウインクをかます。
「藤本先輩っ、さようなら!」
「はいさよなら」
下級生にわざわざさようならと声をかけられるのも毎日の事。
別に迷惑じゃないけど、何十人の中からわーきゃー黄色い声が飛ぶのはさすがに嫌いだ。
軽くあしらうとたちまちその声が涌く。
「藤本先輩にさよならって言われちゃった!」
「ちょっとずるいぃ!」
「明日も言えるといいなぁー」
ああ、面倒臭い。
肩を落として溜め息をつくと、ぽんぽんと慰めるようによっすぃが
肩をたたく。
こいつだって例外じゃないくせに。
- 143 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 12:58
-
「…わぁお、ぐれいとだね。1…2…3…4…5…収穫は5枚のラブレタ〜♪」
「……よっすぃ、あげるよ」
「酷いなお前、乙女心を踏みにじるなよ」
「だってこういうの苦手。ハイ」
「おいっ、ちょっと…」
下駄箱につめこまれていたラブレターらしきもの。
全くもって困る。
数枚の手紙をよっすぃに預け、その場を後にする。
ああいう手紙が一番苦手。どうしていいのか分らなくなるから。
「ったく…お、カワイ子ちゃんはっけーん」
「ハ?」
「…ほら、あの子あの子。前からよしざー、目付けてたんだ」
「顔で選びすぎだよ、酷いな」
「……おめーに言われたくないやい。ちょっくら声かけてきてやる」
「行ってらっしゃい。遅くならないようにするのよ」
「分ったよ母さん!!」
「……バーカ」
ナンパ師吉澤ひとみが目を付けていたのは、一年生。
美貴は視力が悪いから遠くから見ただけじゃわからなかったけど、
よっすぃが言うにはとびきり可愛い子らしい。
顔で選んでナンボと言う彼女だから、大体は予想できる。
ナンパで何人もの女の子を物にしてきたのも、よっすぃの凄い所。
軽く冗句を言うと、それに乗ってくれるのも彼女の良い所だ。
- 144 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 13:02
-
「ちょっとそこの彼女ー」
「…はい?」
たったかと走って行くと、すぐさま下級生に声をかけるよっすぃ。
髪をわざとらしくかきあげる様は誰がどう見たって遊び人だ。
遠くから冷めた目で見つめる美貴に気付かず、よっすぃはナンパを続けた。
「君可愛いねぇ、どっか遊び行かない?」
なんてベタなセリフだ。
頭をかかえて首をふる。
呆れて物もいえないようなナンパの仕方だけど、これに引っ掛かる女の子は多い。
昭和初期のナンパだというのに。
いつものように、あの子も引っ掛かってしまうのだろう。
そう思っていた。
- 145 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 13:10
-
「…遠慮しておきます。じゃあさようなら」
「へっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「すいません、あたし興味ないんです」
「……え…」
「3年の吉澤先輩ですよね?」
「あ…あ…」
「じゃ、失礼します」
…やるな、あの女の子。
ほほうと感心してしまう程の丁重な断わり方に終止感動。
まさか、よっすぃがナンパに失敗するとは。
男顔負けのスウィートフェイスにハマらない奴はいないと賭けていた
だけにさすがの美貴も驚く。
「お疲れ、よっすぃ。さ、帰ろうか」
「あ…あ…あ…」
「…大丈夫?おーい、おいってば」
「あ………あ………」
当のよっすぃは放心状態で、『あ』の単語しか口にしない。
初めてナンパを失敗させたせいで相当のショックを与えられたようだった。
呆れて物も言えないと言っては可哀想なので、そのまま彼女を宥めるしかなかった。
「…あの子、何て名前だった?」
「ぐすん、知るわけないやい…」
「…結構骨のある子だなぁ、面白そう」
「ぁぁ?ウチに興味ないって言いやがったんだぞ!?」
「だから面白そうだって」
あの挑発的な瞳。
凛とした顔だちと身ぶり。
ふーん、面白そうな子だ。
- 146 名前:証千 投稿日:2004/09/23(木) 13:10
-
まあこんな感じで。
ちょっと長くなるかもしれませんが。
- 147 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 13:37
- おーっ!おーっ!おーっ!
何だかドキドキワクワクするかも!w
続きを期待!o(^∇^)o ワクワク
- 148 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 14:24
- 期待期待♪
二人ゴト消滅で作者さん同様そうとう凹んでます(T_T)
あの子の名前はもちろん・・・。
- 149 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 16:50
- 同じく続き期待です!!
あの子はもちろん…w
だといいです!
- 150 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 17:07
-
「名前は松浦亜弥」
「へぇ」
「1986年6月26日生まれの蟹座。ちなみにB型」
「うん」
「そして…この学校全体のアイドル的存在」
「ほー」
メモをぐしゃっと握りしめて悔しさを表現するよっすぃ。
相当昨日の悔しさを引きずっているようだった。
初めてのショックから立ち直れず、その松浦亜弥という下級生の
事を色々リサーチしたらしい。
「で、そんな事してどうすんの?」
「決まってるだろ、ウチの魅力を気付かせるんだよ」
「へぇー…」
「他の子とは食い付きが違うなぁ…不思議な子だよ全く…」
「食い付きって…女の子を食い物扱いしないの」
「うがぁ!!とにかくウチはあの子を落とす!絶対に!」
「……ガンバッテね」
フラれた悔しさをバネに、下級生を絶対物にしてやる。
堂々と宣言した彼女にただ拍手を送るしかなかった。
それにしても、あの下級生。
美貴の好奇心をそそるものがある。
よっすぃのナンパを断ったあの時の笑顔がひっかかって離れなかった。
ううん、なんだろう。
- 151 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 17:14
-
「ヤだ」
「頼む」
「ヤ」
「たーのーむ!」
「何で美貴が一年生の教室行かなきゃいけないんだよ!!」
よっすぃが唐突に美貴に懇願する。
その松浦亜弥という子を呼び出して欲しい、という。
「ほら、ウチが行ったらまた印象悪くしちゃうだろ?」
「印象良くしたいんでしょ?だったら自分で…」
「チッチッチ、そういうもんじゃないんだよ。親友の頼みだ、聞いてくれよぅ」
「ヤ」
「くっそ……じゃあ、じゃあ焼肉奢る」
「やる。もちろん引き受ける」
「…ゲンキンなやつ」
「何か言った?」
「いえ別に」
焼肉とひきかえに、美貴がよっすぃの背中を押す。
という形で交渉は成立した。
焼肉のためなら何だってしてやる精神が働いた美貴は、その下級生への
好奇心など忘れてすぐさま一年生の教室へ向かった。
- 152 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 17:18
-
それにしても。
「ねぇ、アレ藤本先輩……」
「ほんとだっ、何で一年生の階にいるんだろ…」
「もしかして後輩に彼女がいるとか…」
「ウッソ!?マジ!?」
やっぱり来なきゃよかった。
押し寄せてくる後悔の波にもまれて、一年生の黄色い声から耳を
背けるしかなかった。
誰が後輩と付き合うかっての。
美貴はそういう恋愛に興味がな……
「お、いたいた」
4人程の輪を作って廊下でおしゃべりをしている女子グループ。
その輪の中に、あの子がいた。
何故かわからないけど、その子は美貴を覚えているのかこちらを
伺っているようだ。
ええと、こんな時はどうしたら。
- 153 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 17:24
-
思いきって声をかけてみよう。
んーと…ああ、『よっすぃに頼まれて来た』って言えばいいだね。
そうかそうだよ。
後輩と関わる事なんてあんまりないから、妙に雰囲気間違った感じ。
「ちょっとちょっと、先輩がこっちくるよ!!」
「マジで?アタシ!?」
「うそぉっ!?」
違う違う。勘違いすんなよそこの女子。
軽く勘違い娘達を睨み、松浦亜弥に向かってゆく。
「…えと、松浦、さんだよね?」
「藤本先輩ですよね?」
「へ、あ、はい」
「昨日、吉澤先輩の後にいたんで、覚えてます」
「ああ、そうなんだ」
はしっこにいただけなのに、よく覚えてたもんだなぁ。
オウム返しに質問されてしまい、たじろぐ暇もなく解答する。
するとその子はにっこりと満足げに笑った。
「いきなりなんだけど、よっすぃが君に用があるって」
「よっすぃ…?…ああ、吉澤先輩ですか?」
「うん、そう」
「…すいません、吉澤先輩に謝っておいてくれますか?」
「え?」
「あたし、ホント、興味ないんで」
うわ。
よっすぃがこのとびきりの笑顔を見たらさらに悲しむんだろう。
にっこりと微笑んで即答したその子をただ唖然と見つめるしかなかった。
- 154 名前:my schooll life 投稿日:2004/09/23(木) 18:22
-
「なんか、珍しい子だね、君って」
「…そう、ですか?」
「あのよっすぃに眼中ナシなんてさ、面白いなぁって」
「だってあたし、好きな人いますし」
ああ、そうなんだ。
そう思うやいなや、彼女の様子がおかしい。
潤んだ瞳で美貴を見つめ、何かを訴えたがってる。
ちょっとまってよ、この状況はあれしかないじゃんか。
「あたし、藤本先輩が好きですから」
このシチュエーションは過去に何百回も経験した。
でもこんな展開になるなんて、聞いてない。
- 155 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 18:30
-
「あの、ちょっと状況整理していい?」
「ハイ、どうぞ」
もう一度復習しよう!
よっすぃの好きな子(?)がこの松浦亜弥。
美貴はよっすぃの手助けをしようと思ってこの子を呼び出そうとした。
そして今。
何故美貴は告白されているのかという問題が残る。
「あー…ごめん、美貴そういうの…」
「あたし一途ですよ?」
「う…そういうのじゃないんだ。あんまり付き合うとか…」
「あたしじゃ、ダメですか?」
反則じゃないの、その上目遣いって。
いくら冷たい美貴だって、女の子につっけんどんなんか出来ない。
何度も告白をされた事はあったけど、この子のような押し方をされた事は
一度もなかった。
でもこの子は、よっすぃの……
「本当に、先輩が好きなんです」
むむむむ。
ずいっと潤んだ瞳を向けられては、美貴だって何もできやしない。
可愛い女の子って、これを武器にするから苦手だ。
- 156 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 18:36
-
「……じゃあ…美貴でよければ…」
自然と唇が動きだし、とんでもない事を言ってしまった。
何でだろう?
後々そう後悔したもののもう遅く、彼女の瞳は最高潮にハートが浮かんでいる。
おいおい、マジかよ。
「キス、していいですかっ?」
「ハァッ!??何言ってんの!?」
「…先輩としたいんです…」
ちょっと待て。
つけあがってんじゃねえのかこのガキめ。
一瞬そうキレかけてしまった心を抑えて反論する。
第一高校一年生の分際でキスとかどうとか言う方がおかしいだろう。
何?考えが親父くさいって?
ほっといてくれ。
「あのね、今付き合うって言っちゃったけどそれは…」
ちゅっ
もう遅かった。
一瞬にして美貴の唇は奪われ、悪戯的な笑みを浮かべる松浦亜弥。
確信犯と言っても過言ではない。
まんまと美貴はこいつの作戦にのっかってしまったのだろうか。
今までのよっすぃのデータとは予想外の結果だ。
- 157 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 18:41
-
「じゃ、さよならっ♪」
「ちょっと待てぇ!!」
「何ですか?もう一度します?」
「違う。付き合うっていうの撤回」
「何でですかぁ!?」
「ふざけんな!美貴の唇奪いやがって!」
「好きじゃなかったらしません」
ぐっとブレザーの裾を掴まれて、またも上目遣い。
こいつの十八番だな。
もう騙されるものか。
年下相手にムキになる美貴もどうかと思うけど。
「君みたいな猫かぶりには付き合う気ないからね」
「猫かぶりだなんて失礼です。あたし本気なんですから」
「それは分ったから。でも…」
でも。
その後の言葉が出なくて、喉の奥でつっかえた。
間近で彼女の顔を見ると、信じられないくらい綺麗。
可愛い子の代表。と言っても過言じゃない。
違うってば。
何考えてるんだ美貴。
- 158 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 18:44
-
唇に、また温かいモノが触れた。
ホント美貴って負けず嫌い。
自分から唇を寄せて、重ねてしまう。
何でだろう。
無意識のうちに、キスをしていた。
「っ…だぁぁ!!悔しい!」
「先輩?」
「ああっ…もうっ!!」
好きになってしまった。
しかも、年下を。
恋愛なんて興味ないってツンとしてたつもりだったのに。
言葉にならなくて悔しさを嘆く。
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 19:27
- ・・・っだぁぁぁぁぁぁ!!!
やられた・・・。
- 160 名前:my school life 投稿日:2004/09/23(木) 19:29
-
「みきたぁぁ〜ん!!!」
「うげっ、亜弥ちゃん!?」
それからそれから。
恋人宣言をしてから1ヶ月後、亜弥ちゃんは本気で美貴の事が好きなんだと判明した。
廊下で会う度抱きついてちゅーしてこうとするわ、ワイシャツのボタン2つあけて
色気アピールしてくるわ。
散々な目にあっている。
「ラブってんじゃねぇよぉ!!ちくしょー!」
「ハッ…よっすぃいたんだ」
「こんにちは、吉澤先輩♪それよりみきたん、一緒に帰ろ?」
「ああハイハイ」
本当にごめんね、よっすぃ。
美貴と亜弥ちゃんの関係を知ったよっすぃはさらに撃沈。
一週間程口を聞いてはくれなかった。
しかし最近また新たな恋に目覚めたらしく、必要に追いかけている。
ちゅっ
「…また目を離すとこの子はーっ…」
「ほっぺだもん、口じゃないよ?」
「もう亜弥ちゃんとはキスしません。じゃあね」
「ちょっとぉ!一緒に帰るんじゃないのぉっ!?」
ダ−ッシュ。
毎日毎日、この子のおかげで楽しいです。
思えば恋愛に興味がなかった美貴を変えたのは亜弥ちゃんだった。
亜弥ちゃんと付き合い出して、ジャージの盗難もなくなった。
おそらく他の子達は美貴に彼女が出来たのに気がひけたんだろう。
「止まらないとまたちゅーするぞぉ!!」
「えぇっ!?」
こういうのも、悪くない?
FIN
- 161 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 19:29
- あやみきゴトがなくなって、作者様のあやみきだけが生きがいw
- 162 名前:証千 投稿日:2004/09/23(木) 19:32
-
>147様 ドキドキして頂いて良かったですw
微甘でしたが目を通してもらえて嬉しい限りです。
>147様 あの子とはやはりあの子でした…w
予想通りでしたかね?
>148様 期待してもらえて嬉しい限りです!!
ありがとうございます。
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/23(木) 20:36
- >>159 です。
間に挟んでしまって申し訳・・・_| ̄|○
- 164 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/23(木) 20:57
-
「Zz…Zz…んへへっ…」
「先生!藤本先生!!お迎えのお母さん方がいらっしゃいますよ!!」
「んへっ…ハッ!?もうお迎えの時間!?」
教員室の机に突っ伏し、『重要』と書かれている書類にヨダレを垂らす。
寝言をブツブツと繰り返すも、肩を揺らされてガバッと起き上がった。
仕事中に爆睡するなどもっての他だというのに。
「藤本先生!名札は!?」
「あああっ、忘れてたぁっ!!」
「いつも言ってるでしょう?園児達や親御さん達の前では名札を忘れないの!!」
「はいぃ!!」
急いで机の隅にあった、『ふじもと みき』と平仮名で書かれた
名札を雑に左胸に付ける。
この春、晴れてこのハロー幼稚園の教員となった新人。
「みきせんせぇっ!!のんが泣いてる!!」
「今行くよぉぉーっ!!」
園児に大人気、藤本美貴先生だ。
- 165 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/23(木) 21:07
-
「のんが悪いねんで!!」
「…っちがうもんっ!!あいぼんが悪いんれす!!」
ギャアギャアと喧嘩をしているのはちびっこ二人組、加護亜依と辻希美だ。
うさぎ組の仲良し二人組と言われているが、しばしば喧嘩をしては仲直りをする。
藤本はこの二人組に頭を悩ませているのだ。
「こらっ、二人とも喧嘩はめっ」
「せやて、のんがあいぼんの絵本取ったんや!!」
「ちがぁうもんっ、あいぼんが悪いんれすぅぅ!!」
「あぁー…のの泣かないのぉ。よしよし」
「ふんっ、みきせんせーに甘えるばっかりやのんは」
ふんぞりかえって最後に勝ったのは亜依だった。
希美は泣きじゃくり藤本におんぶをされて宥められる。
新人の藤本にとって、園児との関わりは一番苦手でもあり、一番幸せな時間でもある。
しかし毎日のように繰り返されては頭を悩ませる二人組なのだ。
「みきせんせぇ、絵里のママはぁ?」
「…あっ、そうだお迎え来てるんだった!ちょ、ちょっと待っててね」
手の甲に一日のスケジュールを書いておかなければすぐに忘れてしまう性格ゆえ、
先程上司の先生に言われた事をすっかり忘れていたのだ。
園児にねだられ、即座に迎えに来た母親達を迎える。
- 166 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/23(木) 21:15
-
「じゃ、また明日ね絵里ちゃん」
「うんっ、ばいばいみきせんせぇ!!」
「ハイさよなら〜っ」
「また明日ね、あいぼんっ」
「…ふんっ」
「コラ!先生にちゃんとさよならしいや!」
「……さようなら」
「ハイさようならっ」
藤本が受け持つひよこ組の園児数は20人。
大体の母親が迎えを終え、ひよこ組の教室には一人だけが残る。
藤本が教室に戻ると、教室の片隅でつみ木をして遊ぶ姿。
「…ねーちゃん、遅いなぁ」
「ふふっ、寂しいのよっすぃ?」
「そんなんじゃねーけど…別に毎日の事だし」
「それじゃ、亜弥ちゃん来るまで美貴先生と遊ぼっか」
「おぅ」
毎日一人5時半まで教室で迎えを待つ園児。
吉澤ひとみ。
ボーイッシュな顔立ちゆえ、男の子に見えるが一応女の子である。
ひとみには母親がいない。
ひとみが産まれてすぐに亡くなり、今はひとみの姉と父で暮らしているのだ。
一人片隅で楽しそうにつみ木をする姿を見て、藤本はいつも侘びしい思いをするのだった。
- 167 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/23(木) 21:21
-
「亜弥ちゃん、学校まだ終ってないのかなぁ?」
「…お腹空いた。亜弥ねぇの御飯、美味しいんだぞ?」
「うん、美貴も食べた事あるよ」
「何で?」
「えへへっ、亜弥ちゃんがこの間持って来てくれたんだ〜」
そして、ひとみの姉である亜弥。
5歳のひとみとは10歳も離れているが、とても仲が良い姉妹だ。
藤本がこの幼稚園に来てしばらく、教員としていけない感情を抱いてしまったのも亜弥がきっかけだった。
「みきせんせー、亜弥ねぇの事狙ってんだ」
「べ、別にそんな事ないよ」
「怪しいなぁ〜せんせー」
「大人をからかうんじゃない!!」
藤本は、ひとみの姉、保護者代理の亜弥に恋をしているのだ。
一目見た瞬間に心を奪われ、一目惚れだそうだ。
「まー、ねえちゃんモテるしな」
「だっ、誰に?」
「へへー、教えてやんないもんね」
「教えてよぉ!!」
「ヤだね〜」
きゃっきゃと追いかけっこをして、教室中を走り回る二人。
どう見ても教員と園児には見えないのだが。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/24(金) 00:22
- 意外にも藤本さん保育士似合いますね〜
- 169 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/24(金) 19:33
-
「すいません!!遅れました!!!」
「…あ!ねぇちゃん!!」
追いかけっこの最中、息を切らせて教室に入ったのは亜弥だった。
ひとみは姉を見つけるなり膝に抱きついて嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「ああ、亜弥ちゃん。今日は遅かったんだね」
「すいません、部活が延長しちゃって…」
「あのね、みきせんせぇって亜弥ねぇの事…」
「わーわーわーわー!!!!!よ、よっすぃ!!」
「えぇ?先生なんですかぁ?」
ひとみがとっさに藤本に相づちを打ち、ニヤリと笑う。
亜弥もそれを見て不思議そうに藤本を見つめ、首をかしげた。
当の本人は顔を赤くして焦り、ひとみを軽く睨む。
「先生?」
「は、ハイッ?」
「あの…もし、良かったらなんですけど…」
「…なに?」
「日曜の夜、空いてますか?」
「へっ?」
「あのっ…その…うちで御飯一緒しないかなぁって…」
藤本の顔が一気にゆでダコ状態になる。
ボンッと効果音が吹き出そうなくらい表情を変え、亜弥の恥ずかしそうな
告白をもう一度頭でリピートする。
- 170 名前:よい子の味方 投稿日:2004/09/24(金) 19:41
-
「もし、良かったらなんですけど…」
「い、行く!!全然暇だしっ…っていうか行っていいの!?」
「是非!ね、ひとみもいいでしょ?」
「…へへっ、せんせぇなら良いよ」
「よ、よっすぃ…」
照れくさそうにエプロンをぐっと握り、藤本はしばし興奮に浸る。
幼稚園の先生をやっていて良かった。
と改めて思うのだった。
まあ、別の意味でだが。
「…それじゃあ、さようならっ!!」
「う、うんバイバイッ!!」
「じゃあなみきせんせーっ!日曜日いっぱい遊ぼうなぁっ!!」
「おー!ばいばーいっ!!」
ひとみは亜弥と手を繋いで藤本に元気良く手を振る。
藤本は亜弥に鼻を伸ばしながらもそれを抑えて笑顔で応じた。
すかさずスケジュール帳を開き、ボールペンで日曜の欄に印を付ける。
「…っ…いやっほぅ!!!!!!」
園中に響き渡る程の歓喜の声を上げた。
その後園長に叱りを受けた事は園児達も知るよしもないが。
FIN
- 171 名前:証千 投稿日:2004/09/24(金) 19:43
-
>159様 甘過ぎて呼吸困難に陥ってしまったのなら深くお詫び申し上げます。
なんて言葉は私にはもったいないですね。
歓喜の御感想ありがとうございました!
>168様 意外にも似合うかもしれませんねぇw
まあ根は優しい美貴様ですから。
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 22:13
- もうたまんないね!(;´д` )
- 173 名前:月光ロマン 投稿日:2004/09/25(土) 09:05
-
もう我慢出来なくなって、君に会いに行った。
すると君は驚いて、いつもの笑顔で『いらっしゃい』と言ってくれた。
大好きな筈なんだけど、その笑顔を見る度不安になる。
いつか他の誰かに、その愛しい笑顔を盗られる気がするから。
* * * * * *
「…んっ…っ…」
その柔らかい唇を塞ぐと、小さく喉が鳴る。
そっと目を開くと、君のピンクに染まった頬が覗く。
もうめちゃめちゃにしてしまいたいほど、可愛い。
- 174 名前:月光ロマン 投稿日:2004/09/25(土) 09:12
-
唇を離すと、目を合わせずにギュッと腰に手を巻かれた。
呼吸が震えているのが分って、いつもの様に彼女の背中を撫でる。
キスが終ると必ず恒例になってる事だ。
「…も、寝る?」
背中を撫でながら、彼女に問いかける。
首をふるふると振って、更にぎゅっと力をこめられた。
「…ダメだよ、明日早いんだからさ。ねっ?」
「……」
宥めるように頭を撫でると、何も言わずに首にキスをされた。
どうやら了承してくれたようで、スッと立ち上がる。
珍しく甘えたがりな彼女の後姿が印象に残って、自分もベッドに
行く。
- 175 名前:月光ロマン 投稿日:2004/09/25(土) 10:53
-
「…ぜんっぜん眠くないんだけど」
「いつもは仕事中でも眠い眠いって言ってるくせに…」
「だってさぁ…」
「だって、何?」
ベッドの中で何度も寝返りを打ってつまらなさそうにぼやく。
だらだらとした口調で喋りつつ、頭はあたしの腕の上。
つまり、腕枕をしているため彼女は甘えてくるのだ。
「…だって。せっかく一緒にいるんだから…もっと一杯なんか喋りたいじゃん」
『せっかく』という部分に強く力をこめて恥ずかしそうに呟いた。
変なやつだ。いつも一緒にいるのにも関わらず、照れくさいをこんな言葉
で表わしている。
今宵は満月。
何かが起こるかと予測してみたい気分だ。
- 176 名前:月光ロマン 投稿日:2004/09/25(土) 10:57
-
「…一緒に寝ようよ」
「だからぁ!何か喋りたいの美貴は!」
「喋らなくたってウチはミキティの傍にいられればいいと思うけど」
「…へっ?」
「だから、寝ようよ」
言わなきゃよかったかも。
早く寝たいがために彼女をぎゅーっと強く抱きしめて、あえて意地悪な
事を口走る。
本当の事だから、サラッと言えたのかもしれない。
「…ずるい」
「何が?」
「よっちゃんさんは、いつもずるいよ」
「……何で?」
ウチの耳をいじって、犬のような眼で何かを訴える。
ずるいのは、そっちだ。
- 177 名前:月光ロマン 投稿日:2004/09/25(土) 11:04
-
そこから先の言葉は教えてはくれなかった。
きっとウチに何かを思って欲しかったのか、それっきりだ。
ずるい、とも言えるのは君の可愛さだというのに。
目蓋にそっとキスを落とすと、肩をビクッと跳ねらせて眠りに落ちる彼女。
窓の外の世界に目をやると、どこからか狼が出てきそうな夜空。
黄色く、黄金色ともいえる満月をどこかで狙っているかのように、狼は
いつか現れるだろう。
思えば彼女を愛しく思うようになったのも、この満月のせいだ。
月明かりの元でキスをして、たった1つだけの宝物を手に入れる事ができた。
そっと手のひらを広げて、満月を握りしめる。
まるでこの世の全てを手に入れた気分だった。
今宵は満月。
月明かりが、愛を告げる夜。
FIN
- 178 名前:証千 投稿日:2004/09/25(土) 11:05
- みきよしを1つ。
前回のような甘さは足りなかったでしょうか。
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 14:41
- う〜〜〜〜んマイルドな甘さだ(´□`)
- 180 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 16:02
- 絶妙な甘さです…作者さまちゃいこーですw
- 181 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/25(土) 16:08
-
ここは北海道の真ん中らへん。
そして山の奥の奥の奥の奥にある、何の変哲もない旅館。
しかし、そこにいる従業員は何の変哲もありすぎる。
「こらぁぁ!!お客さまに出す料理を勝手に食うなぁぁ!!」
旅館の外で餌をつまむ鳥達が、いっせいに飛び立った。
- 182 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/25(土) 16:13
-
「げっ、女将に見つかった」
「逃げろなのれすっ」
「こら待てぇ!!」
着物姿にもかかわらず、全力疾走で旅館中を駆け回る。
口をもぐもぐさせて先頭を走るのは、料理長の吉澤ひとみ。
遅れてどたどた走るのは料理長の弟子、辻希美。
そして、その二人を追い掛けるのが女将の藤本美貴。
20歳という若さで女将を継ぎ、唯一誠実な人物である。
だが、その若女将にも弱い所があるのだ。
- 183 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/25(土) 16:21
-
「あ、亜弥ちゃんなのれす!!」
「よし、味方につかせるぞ!」
「ラジャーッ!」
女将の唯一の弱点。それは、この少女である。
「こらぁっ、みきたん!!」
「だぁっ!?あ、亜弥ちゃん!?」
口をアヒルにして両手を腰につき、女将をキッと睨むこの少女。
女将その少女の手前で急停止し、ドギマギした様子で少女を見つめる。
「松浦ぁ、女将がいじめるんだよ〜」
「のん達に包丁振り上げて追いかけてくるのれす」
「んな事するかぁ!!ご、誤解だよ亜弥ちゃ…」
「言い訳しないのたん!いくら料理長達がイタズラしたからって包丁振り上げるのはめっ!」
「そんなぁぁっ…」
ビシッと女将の前で人指し指を突き付け、スッキリした様子で少女は言い切る。
当の女将はヘナヘナ状態で床に座り込み、あと一歩で涙を流す勢いだ。
吉澤と辻はというとホッとした様子でとてとてと玄関から去るのだった。
- 184 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/25(土) 16:27
-
「ほら、美貴ちゃん邪魔邪魔。掃除が出来ないでしょ?」
「あぁぁぁぁ…亜弥ちゃんに嫌われたぁぁぁ…」
「いいから早く退きなさい!檜の間の手取り終ってないでしょ!?
早く行ってシーツと枕の準備してきてよ!」
「女将をコキ使うってのかぁ!!それに美貴ちゃんって呼ぶな!!」
「ハイハイ、分ったわよ。お・か・み!!」
吐き捨てるように言われ、女将はますます落ち込むのだった。
この旅館の従業員である恋人の松浦亜弥にこっぴどく言われた事を引きずるまま、
同じく従業員である石川梨華に激をとばされる。
渋々トントンと階段を上がり、真っ白のシーツを見つめ溜め息を漏らす女将。
恋人との喧嘩はしょっちゅうなのだが、いつもこの様に落ち込むのが癖らしい。
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/25(土) 18:27
- おもしろいっす!
亜弥ちゃんに対してだけはヘタレ女将ってのがツボです。
- 186 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/26(日) 09:02
-
「…む?」
階段を上がり、檜の間に到着すると部屋の中からおばさんの声がする。
変に思った女将は麸に耳をあて、その声の主を探る。
「ったく、この旅館の設備もどうかしてるやんなぁ〜」
「露天風呂は絶景だけど室風呂が狭いしー」
「料理はうまいけど女将はものすごい形相やしなぁ」
きゃははと楽しそうな笑い声。
どうやら二人いるようだ。
素早くその声の主を誰だか察した女将は、怒り浸透でふすまを乱暴にひく。
「…ッ…働けぇぇぇぇ!!!!」
「あ、見つかってしもた」
「しょうがない、仕事に戻るか」
「このクソ従業員どもがぁぁ!!!」
女将御乱心。
ぺちゃくちゃ仕事を放ったらかしておしゃべりをしていたのはこの二人。
料理長の弟子である辻の母、裕子。
そしてその横でせんべいをつまむ仲居頭の保田圭。
よく仕事を放棄してこの様にサボる癖があるのだが、女将はこれにいつも
頭を悩ませているのだ。
- 187 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/26(日) 09:14
-
「大体仲居頭の保田さんが何でサボってばっかりなんですかぁ!」
「だってジャンケンで負けたから仕方なく負かされたんだもの」
「だからって…っていうか裕子さんも!早く大浴場掃除して下さいよ!!」
「年上をこきつかうっちゅうんか!??」
「冗談じゃないですよ美貴は女将ですよ女将!!!」
「しるかそんなもん!!前の大女将はなぁお前と違くてもっとおしとやかな方やったぞ!」
「お母さんと美貴を比べないで下さい!!」
言う事を聞かない仲居とこの旅館の最大責任者である女将の対決。
もう見るのがバカバカしくなってきた保田は素直に従う事にしたらしく
飽き飽きした様子で階段を降りて行った。
「チキショー、いつか見てろよあのおばさんめ…ののとは大違いだ」
娘である希美とは大違い。
とはよくいったもので、まあ似たような親子なのだ。
雇わなきゃよかった。
後々後悔しても遅かったので、女将は終止溜め息をつきまくる。
「……みきたん?」
「ぁ、亜弥ちゃん」
ひょこっと現れたのは、先程美貴と喧嘩(?)をした亜弥だった。
突然の登場に驚きながらも女将は隣に座る亜弥の視線から逃れられなかった。
「ふふっ、疲れちゃった?」
「うん…もうなにがなんだか、女将って大変だなぁって…」
「…そーだよねぇ、料理長の吉澤さんに、弟子ののの。
仲居のあたしとぉー、梨華さんと、保田さん、裕子さん」
「あはは、6人だけなんだけどねぇー…」
「もっとおっきな旅館はもっといっぱいの人数だからね」
「…あーあ、ろくに給料も払えてないし、美貴ってサイテーだよ…」
たった6人の従業員達を養うのはこの旅館では簡単な事ではなかった。
住み込みで働かせているが、客は少なく大して繁盛はしていないのだ。
昔は大人数の客がやってきたものだが、バブルが弾けると共に訪れる客も
年々と減っている。
- 188 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/26(日) 09:25
-
「宿泊料金だって下げても下げてもお客さん来ないしさぁー…」
「で、でも泊まってってくれるお客さんは料理が美味しいっていつも…」
「料理しかないじゃん、ウリが…」
「えーと、えと…露天風呂の景色が綺麗だって!!」
「…あはは、二つしか長所がない旅館…か…」
「みきたぁぁん!」
ついには女将である自己嫌悪に浸ってしまうのだ。
重大な責任を背負った女将は隠れた疲労を亜弥にぶちまける。
すると亜弥は焦って女将をなだめるが、何も耳に聞こえない女将。
「…お母さんにもっと色んな事教わればよかったなぁー…」
「……お母ちゃん、商売上手だったもんねぇー」
「美貴と違ってね」
「そ、そゆこと言ったんじゃないよ!?みきたんだってお客さんが
来れば一生懸命女将として接客するでしょ?そういうのが、お母ちゃんと
うりふたつだなって…思うよ?」
「…亜弥ちゃん」
美貴の母親、大女将は、美貴の成人に亡くなったのだ。
跡継ぎがこの美貴しかおらず、破綻状態にあった旅館を立ち直らせたのが
この女将、藤本美貴。
なんとかして伝統を残せないものかと精一杯地主に懇願した所、なんとか
旅館を再建する事が叶った。
そして、女将が亡くなる前に母親が残した物。
「…着物だけ残して死ぬなんてさぁ、セコいよねお母さん」
「ふふっ、でもこの着物来てる時のお母ちゃん、すっごく綺麗だったよ」
「どうせ美貴が来ても宝の持ち腐れさ」
「違うよぅ、みきたんが着てもすっごく綺麗だもん」
「……亜弥ちゃんの仲居姿も綺麗だよ」
「…みきたん?」
「……ごめんね、さっき」
「…ううん、あたしも悪かった」
「じゃ、仲直り、ね?」
「みきた…」
「目、閉じて」
なんだかいい雰囲気だ。
着物がシワになるのもそっちのけで、女将は亜弥の上に覆い被さる。
旅館の一角で、しかも女将がこのような事をして良いのだろうか。
第三者の心配をよそに、二人の唇が重なる一歩前。
- 189 名前:the 旅館 投稿日:2004/09/26(日) 09:32
-
「ちょっとよっすぃ!!さっき喋ってた女の人誰よ!?」
「ご、誤解だよ梨華ちゃん!お客さんに道を訪ねられて…」
「そうやっていつも言い訳するのが貴方の御法度でしょ!嘘ついても無駄よ!」
「うわぁぁぁすいませんすいません!ちょ、ちょっと綺麗な人だなぁって…」
「いい加減にしてよぉ!!!もう別れましょう!!」
「えぇっ!?そりゃないよ!!もうしませんからぁぁっ」
「いーえ別れます!!」
突然鳴り響いた痴話げんか。
その正体は料理長の吉澤と、仲居の石川。
何気なく交際をしていた二人の痴話ゲンカは毎日の事だが、亜弥と女将の
シチュエーションはぶっ壊れてしまった。
「…何か凄いね、梨華さんたち」
「あンのヤローっ…」
「みきたん抑えて!!」
「さっさと働けっつってんだろぉぉぉ!!!!!」
女将の怒鳴り声が旅館の外まで鳴り響く。
まあこれはほんの日常の一部だったりするので、訪れる客は気にしてはいない。
年中無休騒がしい、愛が溢れるこの旅館。
あなたも一度、おいでませ。
FIN
- 190 名前:証千 投稿日:2004/09/26(日) 09:38
-
こんな女将いません。世界中の何処探しても。
レス返しが遅れて申し訳ないです。
>172樣 もうたまんね〜w
その一言、しかと受け止めました。ありがとうございます。
>179樣 マイルドな甘さでしたか!次回はビターな甘さに
変えておきましょうかw
>180樣 キャメイさんがこんな所に…あやみきワールド崩壊の危機ですなw
あやみき好きの作者ですが、6期は全員好きです。
雑談すいません。ありがとうございます。
>185様 ヘタティ美貴様万歳です。
亜弥ちゃんは美貴様の強敵って事で……
ちなみに、女将が着用していた着物はハロモニお正月スペシャルの時を
御想像下さいw
ふと思い付いたので。髪型はあいぼんが絶賛した浴衣の時のアレです…。
ああ、何妄想してるんだろうw
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/26(日) 10:07
- いいとこだったのに〜
こんな旅館に泊まってみたいものですw
作者様の妄想力に乾杯です!
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/26(日) 13:18
- 作者様…ぐっじょぶです。
リクなんですが…いいですかね?
雪の日のあやみきなんていうのを…見たいのですが…
よければお願いします。
- 193 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 16:57
-
「みきたん!!早くぅ!」
「ちょっと待ってよ…寒いってばぁぁ…」
元気に雪世界を駆け回る亜弥ちゃん。
いくら愛しき恋人と言えども、この寒い日に一緒にいてあげられる程美貴は優しくない。
っていうのはほんの口先だけ。
亜弥ちゃんに甘々な美貴は、仕様がなく雪が降り積もる公園にやってきた。
「今さら雪見ても感動も何もないやい…」
「何か言ったみきたん?」
「いえ別に…」
「全くもぉ、ロマンチックの欠片もないんだから!」
「だって寒いだけだしぃー…」
ぶつぶつ小言を言い始めた美貴に亜弥ちゃんはムッとした様子で仁王立ちする。
そんな顔されても可愛いだけだっての。
そう言えばきっと亜弥ちゃんはにゃははと笑って抱きしめてくれるだろうに。
でも今はそんな気分にはなれないので、亜弥ちゃんを放ってベンチに座り込む。
ベンチには雪が積もっていたのでうざったくバッサバッサと払い落とす。
まったくもう、東京に来てまで雪掻きは嫌だよ。
夏が大好きな美貴にとって、北海道だか東北だか雪だかそんなもんはいらないのだ。
- 194 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:02
-
「みーきたん!!雪だるま作ろっ!!」
「ヤだ」
「何で!!」
「手袋してるとはいえ雪を触るなんて自殺行為に等しいね」
「さっきベンチの雪はらいおとしてたじゃんか!」
「…分ったよ、作ればいいんでしょ作れば」
渋々ベンチから離れ、雪だるまを作る事にした。
わがままお嬢様の言う事を聞かないと、機嫌を損ねる事になるから。
降ったばかりの雪を二人でかきあつめ、少しづつ丸くしてゆく。
美貴は頭、亜弥ちゃんは同体。
「うぁー、うまく丸まらない」
「みきたん北海道出身なら雪に慣れてると思ったのにぃー…」
「だって最近こんな事しないからさぁーっ…あ…」
「どしたのみきたん?」
「…ふへへっ」
美貴の心に、突然悪戯心が涌く。
壊れかけた小さい雪の玉を掌で転がし、キョトンとするターゲットを目掛ける。
- 195 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:05
-
ばさっ
「…た〜ん〜っっ!!!!!やったなぁぁ!!!」
「うわぁっ、マジ恐い!」
見事投げ付けた雪玉は、亜弥ちゃんの額にヒット。
頬を膨らませて怒りながら走り回る美貴を追いかけて来た。
こういう張り合いが楽しくて、何度も雪合戦をする。
美貴の額にぶつかったり、亜弥ちゃんの…胸にぶつけたり。
別に下心はないよ。うん、ないよ。
「ふはっ…はぁっ…疲れた」
「ホント…疲れたぁぁ」
亜弥ちゃんが座り込み、美貴はその背中にもたれ掛かる。
すると亜弥ちゃんも美貴の背中に寄り掛かってにゃははと笑い出す。
久しぶりの雪合戦でマジになりすぎてしまった。
息を切らせ、暑くなったので羽織っていたジャンパーを脱ぐ。
- 196 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:11
-
「…へへっ、喉乾いたね」
「自販機行く?」
「うん!」
確か公園の隣に自動販売機があったはず。
そう思い出した美貴は立ち上がると、亜弥ちゃんは甘えて立とうとしない。
そんな可愛らしさに答えてあげようと、背中に両手をまわして抱きかかえた。
しかし。
前足を一歩出そうとした瞬間、地面が雪でぬかるんで滑りそうだ。
「ふあぁぁっっ!?」
「きゃぁっ…みきたんっ!!!」
「亜弥ちゃ…引っ張ったら…」
ズルッと漫画のような展開で派手にコケてしまった。
とっさに亜弥ちゃんは美貴のトレーナーの裾を引っ張ったので、二人とも同時に雪の上に倒れる。
幸いにも頭は打っていなかったので、美貴は大丈夫だった。
でも美貴の下敷きになってしまった亜弥ちゃんは一体。
「あ、亜弥ちゃん大丈夫!?どこもケガしてな…」
「…ヘーキ、どこも痛くないよ」
「…良かった。って…」
- 197 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:15
-
こ、この状態は。
美貴が亜弥ちゃんに覆い被さるような。
そう、今にも危ない雰囲気をかもしだしている。
下敷きになっている亜弥ちゃんは寒さのせいか恥ずかしさのせいか
頬を真っ赤にして、ただ美貴を見つめる。
雪の中でしちゃうっていうのも…悪くないかな。
「…やっ…ちょっとたん!?」
「大丈夫、誰も来ないから…」
「そ、そうじゃなくてぇっ…カゼひいちゃうよぉ!!」
「ひかないよ」
「じゃなくてっ…あたしが裸になったら…」
「…じゃあ、キスだけ…」
不思議だ。雪というシチュエーションだけで彼女が色気ムンムンに見えて仕方ない。
しどろもどろの亜弥ちゃんをそっちのけで喉元を舐める。
でも亜弥ちゃんは抵抗しまくるので、キスだけという事にした。
- 198 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:20
-
「んっ…ふぅっ……」
まずは、軽く触れながら序序に舌をいれる。
まだ亜弥ちゃんからは入ってこれないので、美貴からするしかない。
ぐっと美貴の背中を抱きしめて、亜弥ちゃんは抵抗ともいえる甘い声を出す。
これが美貴の欲をそそるんだ。
「やっ…んぅ…」
口内を味わった後、じっくりと唇を舐める。
柔らかくて、ほんのりリップクリームの香りがする。
呼吸がしにくいのか、時折苦しそうに息を荒くして切な気な目で美貴を見た。
「…っ…もうっ…やぁっ…」
「あと…5分」
「…早くっ…自販機行こうよぅっ…」
「……わかった」
あと少しで泣いてしまいそうな瞳。
美貴はこれに弱い。素直に従って、亜弥ちゃんを起こした。
起き上がった亜弥ちゃんは少しだけ怒った様子で、美貴を睨む。
- 199 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:24
-
「…亜弥ちゃん?怒んないでよ〜」
「エロタンなんて知らないもんっ」
「え、エロタンて…」
テレビの前のみんなにミキティじゃなくてエロタンって言われたらどうしよう。
とっさに馬鹿げた事を考えてしまい、亜弥ちゃんの後を追う。
本当に怒ってはいないものの、拗ねてしまった彼女を押さえるには結構頭を使う。
「わ、分った。今度から家でするから…」
「そういう事じゃないのぉっ!ホントにえっちの事しか頭にないんだから!!」
「そ、そんな事ないよぉ。亜弥ちゃんの事しか考えてないからだよぉ…」
苦し紛れの弁明を聞き入る事もなく、雪の道をザッザと進む亜弥ちゃん。
自販機の前までくると、小銭を入れてココアを押す。
え?美貴の分は?
「あーっ、美味し」
「あの、美貴のは…」
「自分で買えば」
「……ふんっ」
そう言うなら、こっちだって考えがある。
- 200 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:30
-
亜弥ちゃんが口に含もうとしたホットココアの缶を奪い取り、イッキに飲み干す。
すんごく熱くて、喉がグッと鳴った。
後で馬鹿な事をしたと思って後悔したけど、更に怒った様子の亜弥ちゃんを見て勝ち誇ったような気分になる。
「ばかぁ!!何すんの!!」
「へっへ〜ん、亜弥ちゃんがぼぉーっとしてるのが悪いんだよーだ」
「なっ…」
ああ、舌をちょっと焼けどした。
そんな事を気にせず、ココアの缶ブタの部分をぺろっと舐めた。
まあ、間接キスだから亜弥ちゃんに向けてこういう意地悪もしたくなる。
すると亜弥ちゃんはさっきみたいに顔を真っ赤にして美貴から缶を奪い取った。
「っ…ほんとにえっちなんだから!!!!」
「あ、捨てたな」
「捨てなかったら何するつもりだったの…!?」
「べっつに〜。もういいから、帰ろうよ。寒いし」
「…ふんっ」
「あ、コラ」
差し出した手をバシッとはたかれて、雪道を先に歩こうとする亜弥ちゃん。
意地悪が効いたようで、相当怒ってる。
- 201 名前:白い恋人 投稿日:2004/09/26(日) 17:35
-
無理矢理亜弥ちゃんの右手を、手袋を外して握った。
直に温もりが伝わってくるので冷たい美貴の手にはちょうど良い体温だった。
それに気付いた亜弥ちゃんはキッと美貴を睨む。
それでも、手を振り払おうとしなかった。
「…嫌じゃない、でしょ?」
「っ…」
「もうしないよ。する時は家でするから」
「……ばーか」
「ふふん、馬鹿だもん、どうせ」
キッパリ開き直った美貴は、少し笑った亜弥ちゃんの頬にキスをする。
驚いた亜弥ちゃんは頬をさすって、いつもの笑顔を見せてくれる。
意地っ張りだけど、美貴にはこうやって素直。
「来年も、大雪降るかな?」
「…降らないで欲しいんだけど」
「積もったら、また来ようね?」
「……うん、二人でね!」
強く握った亜弥ちゃんの温もりは、忘れる事はないだろう。
FIN
- 202 名前:亜弥☆ 投稿日:2004/09/26(日) 19:18
- 血がっ…足りませんっ。
あやみき癒されますね♪しかもェロ入ると激しくャバぃ…!あやごまも好きですけどっ、あやみき最強っ☆作者サンこれからも素敵なぉ話期待してますっっ
- 203 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/26(日) 21:13
- わぁお!リクに答えて頂き幸せです!!
いいですよ、甘いです!!
- 204 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/26(日) 21:36
-
パタパタパタパタ…
「ひぃっ!?」
看護士さんがせわしなく小走りする音でさえビビッてしまう。
あたしは夜中の病院が大嫌いだ。
何故あたしが病院にいるのかというと。
それはほんの5日前。
…恥ずかしい話、階段から見事落ちて骨をポッキリやっちゃいました。
しかも複雑骨折で全治1ヶ月半。
入院する事になったのはいいけれど、夜中の尿意には堪らなく恐怖が押し寄せる。
しかも、あたしの病室は個室。
ただでさえホラー映画とかダメなのに、夜中の病院はカンベンしてほしい。
パパやママに愚痴っても『もう高校3年生なんだから』と相手にしてくれない。
自分でも情けないとは思うよ。
高3にもなって夜のトイレに行けないなんて。
- 205 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/26(日) 21:39
-
「うぅー…トイレ行きたいよぅ…」
不自由な左手を首からつりさげた布を右手でもてあそぶ。
トイレに行きたくてたまらない。
ベッドの中で何度も寝返りをうつも、尿意は納まらない。
やっぱり我慢は体に良くない。
そう決心して、病室のドアをそっと開ける。
消灯時間はとっくに過ぎている、夜中の2時。
廊下には誰もいるはずがなく、いるのはきっと巡回の看護士さんだけ。
どうせなら大部屋で友達作りたかった。
場違いな事を考えて。一歩一歩暗がりの廊下を歩く。
- 206 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/26(日) 21:41
-
カチャン
「!??」
微かに物音が響く。
小さな物音でも、あたしの心臓には強く刻まれる。
あともう少しでトイレだ。
目標に少しづつ進み、あともうちょっとでトイレに行ける。
そう思ってるんだけど、足が震えて力が出ない。
トイレの中でお化けが出たらどうしよう。
幼稚園児並の想像をしただけで震え上がってしまう。
あたし自身ですら何をしたいのか分らなくなって来た、その時。
- 207 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/26(日) 21:49
-
「…何、やってんの?」
「きゃぁぁぁ!???」
背後から誰かに肩をたたかれた。
誰!?誰!? とテンパッてしまい後を振り向く事が出来なかった。
今にも気を失う程の絶叫を上げて、そのまま病室に戻ろうと足を一歩前に出す直前。
「ちょ、ちょっと!奇声上げて勝手に逃げないでよ!!」
「やっ…離してぇ!!」
「ハ!?変質者とかじゃないよ!?」
「ふぇっ…」
廊下が暗いのと、涙が溢れて視界がぼやけるので全く人かどうかも確認できない。
とっさに手首を掴まれて、あたしはまた絶叫する。
「あぁー…泣いちゃったよ…」
「ふぇぇっ…だっ…誰ぇっ?」
「誰って…一応人間。ホラ、入院患者」
不覚にも大ビビリしてしまい泣きじゃくるあたしを見て、その人は自分の左手をさす。
「あ…骨折…?」
「そー。君もみたいだね。…複雑骨折?」
「う、うん」
「美貴も。…あ、泣き止んだ」
「え…」
トイレの明かりを付けたその人の顔が、ハッキリと目にうつった。
薄く頬に残る水滴を、優しくパジャマで拭ってくれたその人。
確信した。
運命の人だと。
- 208 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/26(日) 21:55
-
ザザ−ッ
その人は、1週間前に入院してきた患者で、美貴という。
少し茶色がかかった髪で、笑うととっても可愛い人。
あたふたして泣きじゃくるあたしに優しくしてくれて、連れションまでしてしまった。
その綺麗な笑顔に、あたしは何だか変な気分。
「…あはは、我慢してたの?」
「だ、だって怖かったんだもん…」
「女の子らしいねぇ…ねえ、名前は?」
「亜弥。103号室だよ」
「そっかぁ、じゃ亜弥ちゃんね」
「え?」
「美貴は何でもいいや。ねっ、亜弥ちゃん?」
目尻がふにゃっとして、すっごく可愛い。
名前を呼ばれるとドキドキして、素直に目を合わせられない。
「じゃ…みきたん!!」
「へ?」
「美貴、だから…たん!」
「…んはは、へんなカンジ…ま、いっか」
照れる姿が、ますますあたしのツボだった。
病院での出会いは、突然。
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/28(火) 02:10
- 待ってます。
- 210 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/28(火) 02:10
- 待ってます。
- 211 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/28(火) 16:41
- 病棟での出会いって、いいっすねぇw
- 212 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/28(火) 18:37
-
「あ…そろそろ部屋戻らないと」
「えっ、もう?」
「だって見つかったら怒られるよ?」
「んなのそれはそれでいいじゃん。美貴の部屋おいでよ」
「…いーの?」
「いいよぉ。ただし、見つかった時は同罪って事で。OK?」
「……おっけー!!」
本当によかったのかわかんないけど。
みきたんにそう言われると、あたしの心はふっと軽くなる。
今さっき出会ったばかりなのに、こんなに親しくしてくれる事が
信じられなかった。
ペタペタと二人のスリッパの音が廊下に響いて、誰かに聞こえてしまわないように。
- 213 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/28(火) 18:42
-
「…おじゃまします…」
「あははっ、いらっしゃい」
みきたんの病室はあたしと同じ個室。
ベッド横には家族の写真が置いてあって、みきたんは嬉しそうに話してくれた。
「もーめんどくさいから、いっその事一緒に寝ちゃおっか?」
「えぇっ!??」
「あ、イヤだった?」
「ち、違う!!でも…いいのかなぁ…」
「いいよいいよ。朝早く起きて自分の病室戻ればバレないよ」
二人で。
そう言われた瞬間、鼓動が早くなった。
女の子同士で寝ることなんかしょっちゅうなのに。
もしかして、みきたんだから……?
「ん?美貴の顔に何かついてる?」
「う、ううん!!」
「ふははっ、変な亜弥ちゃん」
二人でベッドに入って、布団を優しくかけてくれる。
みきたんの顔をじっと見つめていた事がばれて、急に恥ずかしくなってきた。
- 214 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/28(火) 18:46
-
「…みきたん、起きてる?」
「うん。起きてるよぉ」
クルッと寝相を向き返し、ニコリと笑う。
もしかして起こしちゃったかな、と思ったけどまだ寝てなかったみたい。
「…手、どうして折っちゃったの?」
「アハハ、馬鹿にしない?」
「し、しないよぉ」
「……階段から、落ちた」
「…えぇっ?」
「ほらぁっ、馬鹿みたいって思ったでしょ…」
「ち、違う!あたしも…そうなの!!あたしも階段から落ちて…」
「うわぁ、偶然だぁーっ。何か気ぃ合うねぇ」
まさか怪我のワケまで同じだとは思わなかった。
気楽そうに偶然と口にするみきたんだけど、あたしはそうは思えなかった。
これって、運命だよ。
- 215 名前:おやすみ 投稿日:2004/09/28(火) 20:41
-
「退院したら、一緒に遊ぼ?」
「いいのっ!?」
「うん。年下の友達なんて、亜弥ちゃんぐらいだしー…美貴は亜弥ちゃん好きだよ」
「す…好きって…」
「もぉいいじゃん、寝よ寝よ」
最後には照れて、何も言ってくれなかった。
これって、絶対に運命。
ああ、怪我して良かった。入院して初めて思った。
「…亜弥ちゃん」
「何っ…?」
「…おや、すみ」
カァッと熱が昇ってきて、布団を頭まですっぽりかぶる。
おやすみ みきたん。
FIN
- 216 名前:証千 投稿日:2004/09/28(火) 20:45
-
>202様 血が足りないのでは輸血を!!
こんなもんじゃ輸血にもなりません駄文です。
でもありがとうございます。
>203様 甘かったですか?最近あまり書いてないので衰えがちですが…
嬉しいです。
>209・210様 今まで更新がおかしい位はやかったので少し
ペースを落とそうかと思っていた矢先…待って頂き光栄です。
不安にさせてしまったようなので、すみませんでした。
>211様 左手骨折したのは実体験です。私情なのですがw
まあそんな運命的な出会いはないっつう結果でしたが。
ああ馬鹿らしい。
- 217 名前:煙と夜風 投稿日:2004/09/28(火) 20:57
-
「たん!!だぁめってば!!」
「う、わ」
口にしていた一本の煙草を、ぱっと取り上げられた。
いつもの様にお節介炸裂で少し邪魔くさい。
それでも美貴は渋々言う事を聞いて、持っていた全ての煙草を取り上げられた。
「体に悪いって言ってるでしょ!?」
「だってもうハタチじゃん美貴…」
「みきたんは吸いすぎなのぉ!一日に1箱無くなるペースなんて…」
「うるさいなぁっ…もう…」
「うるさくない!!」
キンキンするような声を上げて、恋人はふくれっつらをする。
別のポケットに隠しておいた最後の一本を口に含もうとする直前、キッと
睨まれしょうがなくゴミ箱へ投げた。
「当分煙草吸っちゃダメだからね?」
「…あーいよ…」
「分ってんの!?」
「…多分、ね」
「たぁん!??」
心配してくれてるのは、分ってる。
痛いくらい分ってるんだけど。
呆れてベランダの外へ逃げた亜弥ちゃんの背中を見つめて、美貴は只吸い殻を指で弄ぶ。
- 218 名前:煙と夜風 投稿日:2004/09/28(火) 21:02
-
2つ年下の彼女は、高校3年生だ。
美貴が高校3年の時、駅のプラットホームで煙草を吸っている現場を目撃されて
それから交際が始まった。
亜弥ちゃんが最初に美貴に放った言葉は、何かを刺激させられるようなもの。
『あなたっ、死にたいの!??』
ホント、びっくりした。
見ず知らずの年下にああだこうだ言われて正直カチンと来た。
でも、悪い気分じゃなかったから。
すごく可愛くて。
すごく楽しくて。
彼女を知るうちに、恋ってものをしていた。
- 219 名前:煙と夜風 投稿日:2004/09/28(火) 21:09
-
「ヨケーなお世話だっつうのに…ね」
ハタチになった今でも、亜弥ちゃんは美貴にうるさい。
煙草は一日3本まで。
と規則を決められても、美貴は守ろうとしない。
そんな事を繰り返す美貴に愛想をつかす事もなく、彼女はひた向きに美貴を見つめてる。
こんな自分の、どこがいいんだろう。
時々、いやいつも思ってる。
「…亜弥ちゃん」
「馬鹿たん」
「分ってるよそんな事」
「…煙草臭い」
「言うな、それを」
すっかり煙草のにおいが染み付いたトレーナーに鼻をくっつけ、物思いに寄せる彼女。
くさいなら離れればいいのに。
そう思っても、美貴は亜弥ちゃんを抱きしめて夜空を見上げてみる。
「願い事、したよ」
「…何を願ったの?」
「みきたんが、煙草をやめますように」
そっか。
一言だけ返事をすると、亜弥ちゃんはまた呆れたように溜め息をつく。
美貴が煙草をやめる事など、とうてい無理な話。
彼女もきっと分ってる。だから美貴は本気でかえせるわけがない。
- 220 名前:煙と夜空 投稿日:2004/09/28(火) 21:14
-
ひとつだけ、流れ星に願った亜弥ちゃんの思い。
美貴は叶えられそうもなかった。
「…やっぱ、やめ」
「何で?」
「制服ににおい移ったら困るもん」
「冷た…」
ぐいっと美貴を押しやって、嫌味な笑顔を向けられた。
少し寂しくて反論しようとする美貴の唇を、静かに塞がれる。
「…やっぱ煙草くさい?」
「うん。でも半分はみきたんの匂いだから、いいの」
「それで亜弥ちゃんは納得できるの?」
「……許して、あげる」
「…どーもありがとう」
頬をぺちぺちなでられて、自然と美貴も笑顔になる。
半分は煙草、もう半分は美貴の匂いだってさ。
- 221 名前:煙と夜空 投稿日:2004/09/28(火) 21:21
-
「…も、帰る?」
「うん。明日も学校、あるし」
「じゃ送ってく」
「んーん。大丈夫だよ、まだ早いから」
「…そっか。じゃ気をつけてね」
短くされた制服スカートの裾を直して、ニコッと笑う。
帰り際玄関の外で大きく手を振るもんだから、恥ずかしくなって小さく振り返す。
高校生なんだけど、あどけなさが取り切れてないんだよなぁ。
ガラス製のテーブルの上に置いてあるライター。
そして、テレビの上にあるラッキーストライク。
「…シュ−ット」
ストン、と綺麗に入った二つのごみ。
すぐにまた拾う事ができる、何気ないごみだった。
FIN
- 222 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/28(火) 23:36
- イイね!何かそれ・・・すんごいわかる!
- 223 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/29(水) 07:20
- 「おやすみ」すっげ良かったです!
できれば続編なぞ見る事ができましたら嬉しい限りです。
朝起きるとなぜか亜弥ちゃんは藤本さんにしっかり抱き付いてて、
藤本さんはその愛くるしい寝顔を見て思わず…みたいな。
やりにくかったらスルーして下さい。
- 224 名前:_ 投稿日:2004/09/29(水) 17:15
-
「…ごめん、なさい。そういうの、あんま得意じゃないんだ」
恋に得意も不得意もない。
そんな事は分ってる。
でも、好きじゃないのに付き合う事なんか、できない。
目の前にいる下級生は涙を浮かべて唇を噛み締めている。
ほんと、ごめんね。
「…分りました…失礼しますっ…」
「あ…その、本当にごめんね?」
「いえっ…」
なんか、美貴が悪者みたい。
ついにその子の頬には涙がつたっている。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
頭をポリポリとかいて、不可解に考えてみた。
- 225 名前:_ 投稿日:2004/09/29(水) 17:22
-
「…うーわ、可哀想ー」
「だ、だって本当の事だし」
「だからお前は腐ってるっつの。天然オーラ出しまくりだし」
「何のオーラ?」
「……鈍感。カッコよすぎビーム炸裂なんだよ君は」
「んぅ?よっちゃんに言われても説得力な…」
「お黙り」
美貴って腐ってるのかな。
しかも天然なのかな。
最近いやがらせか分らないけど、下駄箱に大量の手紙が入ってるし
誕生日には机の中に小さい箱やらなんやら入ってる事が多い。
その事を親友のよっちゃんに相談した所、頭をひっぱたかれてこう言われた。
「…お前は、モテすぎてんの!!バーカ!」
「えっ!?イジメじゃないの!?だって上履きとか無くなってるし…」
「このドバカ!!ウチに対する皮肉か!??」
「そ、そんなんじゃないよぉ…」
だって、気味が悪いじゃんか。
上履きやらジャージやら盗難されてイジメ以外に何がある。
よく下級生に呼び出されたりするけど、それはただの告白で…
「お前ブッコロス!!この天然魔性!!」
「うわぁっ、な、なんでぇっ!!」
よっちゃん曰く、美貴はこの学校のみんなに好かれてるらしい。
- 226 名前:_ 投稿日:2004/09/29(水) 17:36
-
「…ふぃ〜…やっとまいたか」
屋上から2階まで追いかけて来たよっちゃんをまいて、息を落ち着かせる。
やっと今になって下駄箱に入っていた大量の手紙は、いじめじゃなくて
ラブレターだという事が理解できた。
「…返事って、書いた方がいいのかな……」
えぇっと…この間入ってたのは12枚…ああ、あれは捨てちゃったんだっけ。
あ、朝来た時にまた入ってたような…えっとあれは机の中にしまっておいて…
指を折って呪文のようなものを唱える。
とにかく、不幸の手紙とかだと思い込んでいたから少し心が軽くなった。
「んと…えと…」
今朝の分と、この間の分を換算しながらとてとてと廊下を歩く。
こういう計算は苦手だから美貴としては喜んで良いのか困っていいのか分らない。
えぇーと、つまり合計で16枚なわけだからしてー…
「16たす2は…っ…うぎゃっ!?」
「キャァッ!?すっ、すいません!!!」
ドデン、と腰を床に強打してしまった。
計算しながら歩いてたもんだから、前をちゃんと見てなかった。
そのせいか誰かと衝突してしまったようで、回りには書類が散らばってる。
「うー…いててて…」
「すいません!!どこが痛いです…か……」
「あー、体した事ないからヘーキっぽい。そっちは大丈夫?」
「…あ…ふ、藤本…先輩…ですよねっ?」
「う?美貴の事?それより大丈夫…あ、ここ血ぃ出てる」
「えっ!?あ…」
「保健室行こっか。書類は後で片付けすればいいし。おいで」
「…あ…」
ぶつかった拍子で、その子はひざ小僧を切っていた。
なんだかボーッとして顔が赤くなってる。
もしかして美貴、ぶつかった時なんかしちゃったかな。
- 227 名前:_ 投稿日:2004/09/29(水) 17:41
-
「…もしかして、歩けない?そんなに深く切っちゃった!?」
「やっ…だ、大丈夫っ…」
「とにかく、保健室!!」
「…ふぁっ!??」
慌ててその子の手を取って階段をおりる。
顔も赤いし、もしかしたら熱だってあるかもしれない。
段を降りる時にその子の肩を抱いて少しづつ段差を超える。
「だっ、大丈夫です!!!そんな事までしてもらわなくてもっ…」
「や、でも具合悪そうだよ。美貴のせいだし…何かあったら困るよ」
「…やさしい…」
「え?」
「な、何でもないです!!」
肩を抱いた瞬間、少しビクンッと跳ねた。
触られるの嫌だったかなと思って尋ねても、なんだかどもってばかりいる。
ついてくんなよ。とか思ってたりするかな。
少し不安になりながらも、保健室までたどりついた。
- 228 名前:_ 投稿日:2004/09/29(水) 17:48
-
「…えーと消毒液…あった。それとばんそーこー…」
「あのっ…」
「ん?」
「……先輩っ…授業あるのに…」
「いいよ別に、次は社会科だからサボれるし」
保健室には先生も生徒もいなかった。
このまま一人にさせておくわけにはいかないので、応急処置をする。
慣れない手付きでひざ小僧にガーゼをあてると、またも顔を真っ赤にして慌ててる。
何か、へんな子だなぁ。
「…えと、何年生?」
「1年…です」
「そっかー。美貴は3年だよ」
「…知ってます、有名ですから…」
「え?何で?」
「先輩、カッコいいってみんな言ってますし…」
「…んぅ?そっかな…。名前、なんてーの?」
「松浦…亜弥です」
「そっかー、亜弥ちゃんかー」
なんだか、可愛らしい子だな。
あんま喋る子じゃないけど、言葉遣いも丁寧だし一年生に見えなかった。
さっきから俯き加減で美貴の目を一度も見てくれないけど。
少し寂しいなとか重いながら、ガーゼをテープで止める。
- 229 名前:証千 投稿日:2004/09/29(水) 21:01
-
>223様 駄文にもかかわらずありがとうございますw
何かありましたらリクでもどうぞお願いします!
>224様 続編は…あまり考えていません…すいません。
でもリクの方を載せて頂きます!!
ありがとうございます!
- 230 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/29(水) 23:06
- う〜ん。イイ!!!
続き待ってます。
- 231 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/30(木) 00:11
- うほほっ!
美貴ちゃんやさしぃ〜!!
その優しさが罪だよ!(w
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/30(木) 01:14
- リク採用ありがとうございます!ほんとすいません。
新作イイ感じです!
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/30(木) 16:13
- リクいいですか?
みきごまお願いします。
- 234 名前:_ 投稿日:2004/09/30(木) 18:13
-
「…これでよしっ。立てる?」
「大丈夫ですっ…けど…」
「けど?」
「やっ、何でもないです!!」
首を傾げて顔を覗き込むと、ばっと後ずさった。
何か気に触る事しちゃったのかな、本当に。
「じゃ、教室まで帰れる?美貴はさっきの書類片付けないと…」
「いいですいいです!!あたしがやっておきますから!!」
「えぇー…美貴が勝手にぶつかっちゃって亜弥ちゃん怪我しちゃったんだし…」
「ほ、ほんとに大丈夫ですから!!」
ものすごい慌てようで手をブンブンふる。
そこまで拒否しなくても、と思った。
でもこれは美貴の責任だし、放っておくわけにはいかなかった。
「いーって、亜弥ちゃんは教室帰りな?ね?」
「はっ…い…」
少し感情的に、亜弥ちゃんの肩に手をおく。
素直にこくりと頷いてくれたので一件落着。
だけど。
- 235 名前:_ 投稿日:2004/09/30(木) 18:17
-
「あ…あのっ!!!」
「ん?やっぱ送ってあげようか?」
「そうじゃ…なくてっ…」
「…?」
何だかまた様子がおかしい。
どこかに目を泳がせて、小さく地団駄を踏んでいる。
「…好き、なんですっ…」
「ハイ?」
「……藤本、先輩が…好きなんです!!」
「ふぇぇ!??美貴ぃ!?」
唐突に口を開いて出て来た言葉は、一言だった。
何度も何度も聞いた言葉だったけど、まさかこの状況で告白されてしまうとは。
ああ、今日で2回目だよ。
美貴がオドオドしている間にも、亜弥ちゃんは真っ赤にのぼせた顔を俯かせている。
美貴はどうすればいいっていうの!!
- 236 名前:_ 投稿日:2004/09/30(木) 18:22
-
「ふぁ…あの…亜弥ちゃん…」
「ごめっ…んなさい…」
急に泣き出す亜弥ちゃんは、目を赤くしている。
これって美貴のせいなの?
頭ではそう思っていても、美貴は泣いている子を見るのが弱い。
女の子に泣かれてしまった事は数知れないけど、亜弥ちゃんが泣いているのを
見るとなんだかもやもやする。
からっぽの手を宙に泳がせて、どうすればいいのか迷う。
結局は。
「…あの、ちょっとごめんね亜弥ちゃん」
「っ…!!?」
まふっ、ってカンジの表現。
美貴はどうしようもなくて、目の前にいる亜弥ちゃんをそっと抱き寄せる。
こういう事、一方的にされた事はあるけど、した事はなかった。
だからどうしていいのかわかんなくて。
自然と亜弥ちゃんの瞳に、引き寄せられた。
- 237 名前:_ 投稿日:2004/09/30(木) 18:29
-
「…あのね、ヤな気持ちにさせると思うけど、言うね」
「……はい…」
「美貴、正直そういうの苦手なんだ」
「……」
「あぁっ、でもでもっ…嫌いとかじゃないよ。絶対ないから」
「…はい」
「…なんてゆうかさ…美貴、飽きっぽいし。本当に好きじゃないと付き合うっていう気にはなれないんだ」
初恋だって、高3にもなってまだないし。
もちろん付き合うなんて考えてもなかった。
本当に、本当に大好きな人ができるまで、初恋はとっておこうと。
どこかで考えていたのかも知れない。
「…亜弥ちゃんの事は、好きだけど…あの、好きっていうのは…」
「分ってます…」
「……だから、ね。美貴、ちゃんと好きになりたいって思うよ?」
「え…?」
「亜弥ちゃんの事、ちゃんと見てたいなぁって。思った」
今まで全く興味がなかった、恋愛。
なんだけど、少しはいいかもしれない。
亜弥ちゃんを少しだけ強く抱きしめて、そう思った。
「…待ってて、くれる?」
「……いいんですか?待ってても…」
「うん、っていうか、待っててよ」
「…じゃあ、ずっと先輩の事、想ってていいんですか?」
「……あははっ、美貴でいいなら、ありがとう」
恋に引き寄せられた出会い。
亜弥ちゃんだから、美貴はこういう気分になれたのかも、しれない。
FIN
- 238 名前:証千 投稿日:2004/09/30(木) 18:32
-
学園物が只無性に書きたかっただけなんです。
お許しを…。
>230様 思い付きで考えた出会い…w
馬鹿らしいですがおつき合いありがとうございます。
>231様 鈍く天然な美貴様…実際にそうっぽいですよねw
>232様 申し訳ないです…でも読んで頂きありがたや。
リクは喜んで書きたいと思います。
>233様 みきごまですね、承知しました!!
- 239 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/30(木) 19:11
- 幸せな気持ちになりました。
- 240 名前:目覚め 投稿日:2004/09/30(木) 21:52
-
朝目覚めたら、キスをしよう。
世界がうらやむような、神様だって妬くような。
そんなキスが、君としたい。
- 241 名前:目覚め 投稿日:2004/10/01(金) 19:35
-
夢から覚める瞬間。美貴はそれが嫌いだ。
ぱちりと片目を開けると、そこにあるのは天井。
そりゃそうだよな。とか思いながらくせ毛を整えてまた瞳を閉じる。
ちょっとまて、何か苦しいぞ。
「…う、え?」
どうも右手が動かないと思った。
それプラス、何だか柔らかい刺激が腕を覆っている。
案の定、この子だ。
「…何でひっついてるかなぁ」
まあ、こういう所が可愛いんだけど。
すやすやと気持ちよさそうに眠っているのは亜弥ちゃんだった。
ガッチリと美貴の右腕にひっつき、肩に顔を埋めている。
時々寝言が聞こえて、それもまた可愛らしい。
- 242 名前:目覚め 投稿日:2004/10/01(金) 19:37
-
このままにしておこうか。
それとも無理矢理引き剥がそうか。
答えは1つ。
このままにしておこう。
そっと髪に触れると、少しだけ笑ったような気がした。
「…かわいいぞ、こんにゃろー」
もしかして起きてやしないだろうな。
そう疑う間もなく、額にキスをする。
全く気付かない様子の眠りの姫はまた嬉しそうに笑う。
- 243 名前:目覚め 投稿日:2004/10/01(金) 19:39
-
「…たぁん…」
ほんと、可愛いな。
寝言かなんか知らないけど、美貴の名前を呼んでる。
パジャマのボタンがひとつ外れていて、胸が見えそうだ。
目を背けようとするけど、神経がそれに集中しているから無理。
そこで美貴は考えた。
- 244 名前:目覚め 投稿日:2004/10/01(金) 19:44
-
キスだけならいいだろう。
そっと柔らかそうな唇に触れて、その感触を確かめる。
彼女に触れられるのは美貴だけで、また美貴に触れられるのも彼女だけ。
そう思うとなんて自分は幸せなんだと実感する。
「…起きてない、か」
唇を離してぽつりと呟く。
まだ亜弥ちゃんは深い眠りに落ちているようだった。
そして何度も、繰り返す。
「…ヤバ、くせになるかも」
こういうスリリングな事が、美貴は好きだったりする。
もしも彼女が起き上がって、美貴がした行為に気付いたとしても。
亜弥ちゃんは笑って許してくれるんだろう。
彼女が起きるまで、美貴はしばらく深い口付けを堪能していた。
FIN
- 245 名前:証千 投稿日:2004/10/01(金) 19:45
-
>239様 レスを頂き作者も幸せでございます。
体したものではないのですがありがとうございました。
- 246 名前:証千 投稿日:2004/10/01(金) 19:45
- えーとリク頂きましたごまみきですが。
とりあえず設定決めてから書こうと思うので。
- 247 名前:亜弥☆ 投稿日:2004/10/01(金) 20:21
- あやみき激キャワッッッ…
作者サンのあやみき…らぶですっ…最高ッッッ!!
- 248 名前:ブラック無糖 投稿日:2004/10/01(金) 20:57
-
ガコンッ
なんでもない。
ただ、なんとなくコーヒーが飲みたかった。
「…最後まで飲めるかな…」
無責任極まりない発言をして、コーヒーを取り出す。
120円を無駄にしないために、美貴は缶蓋を開けた。
ごくり
「にがぁぁー……」
断念。
- 249 名前:ブラック無糖 投稿日:2004/10/01(金) 21:00
-
こんなもん苦すぎて飲めねぇよ。
と逆ギレしかけた美貴だったけど、何とか抑えて両手で缶を握りしめる。
もうちょっと大人になってから飲んでみよう。
そう心に決めた瞬間、後から誰かにフワリと抱きしめられる。
「コーヒーなんか持って、何やってんの?」
「ご、ごっちん」
畜生。
こんな時にごっちんに会ってしまうとは。
あたふたしてコーヒーに目をやると、はは〜んという目でごっちんは美貴を伺う。
「ミキティは子供だね〜」
「なっ…」
「ごとー、無糖でもヨユー」
「…むっかつくんだけどぉーっ…」
パッと美貴の手からコーヒーを奪い取り、まじまじと見つめる。
ハイハイ、どうせ美貴はガキですよ。
砂糖めいっぱい入れないと飲めませんよ。
- 250 名前:ブラック無糖 投稿日:2004/10/01(金) 21:07
-
「これ、飲んで良い?」
「ダメ。まだ飲む」
「嘘。ミキティ飲めないじゃん」
「…の、飲むんだもん。返してよっ」
「どーしよっかなー」
途端にいじわるモードに入ったごっちん。
美貴より背が高いごっちんは、いとも簡単そうにコーヒーを高く上げた。
当然、美貴はぴょんぴょん跳ねて取りかえそうとする。
はっきり言って、すんごく悔しい。
年上にも関わらずコーヒーが飲めない事を馬鹿にされた事。
それと背が低い事を改めて実感させられた事。
「かっ、返してよ!!」
「分った分った。返すよ」
「ったくもぉ…」
へらへら笑いながらごっちんは手を下げてコーヒーを返した。
美貴をいじるのに飽きたらしい。
「…で、何でコーヒーなんか買ったの?」
「……何となく。チャレンジしてみようかと…」
「随分無駄な事するねー」
「…うっさいなぁ!悪い?」
「悪いとは言わないけど…らしくないなーと思いまして」
「え?」
頭をぽりぽりかきながら、ごっちんはよそ見をしてそう言った。
何が面白いんだよ。
またへへっと笑うごっちんに向けて冷たい視線を送る。
- 251 名前:ブラック無糖 投稿日:2004/10/01(金) 21:12
-
「ミキティってさぁ、あんまそういう事しなさそうだなって」
「何で?」
「もっと考えが安易なのかと思ってた。興味ない事には一切目向きもしないし」
「そう、かな?」
「んはは、意外な発見てやつ。ごとー見つけちゃったー」
「…見つけられちゃった」
得意げに笑うごっちんは、何だか嬉しそうだった。
子供みたいに無邪気に笑うと、美貴は何も言えなくなる。
ソコが、ごっちんのずるい所。
「…やっぱ、あげる」
「え?これ、くれんの?」
「うん。何か気が変わっちゃった」
「ゲンキンだねぇー。ま、いっか」
「うん、いいのっ」
もう、コーヒーなんてどうでもよくなってた。
そもそも買った理由なんてよくわかんないし。
大人な雰囲気を気取りたかっただけなのかもしれないし。
はたまたただの思い付きだったり。
- 252 名前:ブラック無糖 投稿日:2004/10/01(金) 21:17
-
「…19歳のくせに、まだガキっぽいしねミキティ」
「何ぃ!?」
「でもそゆとこ、好きだよ」
「…へっ?」
「天然で、ガキっぽいミキティがごとーは好き。じゃーね」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!!」
「アハ、待たないよ」
ひらひらと手を振り、さっそうとどこかに消えようとするごっちん。
ガキは余計だ。
そう言いたくても顔が熱くて言葉が出ない。
改めてそんな事を言われると、美貴だってどうしていいのかわからないし。
コーヒーが飲めたって、飲めなくたって。
美貴はただ、ごっちんの甘い感情が欲しかっただけなのかもしれない。
必要に欲しがってたわけじゃないんだけど。
ブレイクタイムにほんの少しのコーヒーが、美貴を元気にさせるんだ。
FIN
- 253 名前:証千 投稿日:2004/10/01(金) 21:18
-
>247様 亜弥ちゃんのセリフが少なくてごめんなさいでした(笑
ベッドのシーンは殆どこんな感じが多いような…
- 254 名前:一匹狼 投稿日:2004/10/03(日) 15:14
-
いつだってあの子は、一人が好き。
誰にもついていかず、誰にも飼われず。
ただ一人で、生きて行く。
餌をあげようとすれば噛み付いて。
優しささえ武器にしてしまう、そんな狼くん。
- 255 名前:一匹狼 投稿日:2004/10/03(日) 15:17
-
上っ面の笑顔だけで、本当は誰にも心を開いていない。
もちろん、あたしにも。
お手、お代わりと命じても言う事を聞かない。
あたしが微笑んでも、微笑む返す事はあまりない。
それでもあたしは、どうしても一人にはさせておけないから。
干渉するのをめっぽう嫌う狼。
でも放っておけない。
時折見せる愛らしさが、あたしは大好きだから。
- 256 名前:一匹狼 投稿日:2004/10/03(日) 15:19
-
あともう少し。
ほんのちょっと、優しくなってくれたら。
笑いあって一緒にいられるんだと思う。
それでも、それは我侭にすぎない。
そっぽ向いて愛想を振りまけない狼だから、いつも引きこもる。
本当は、好きって言えない。
臆病なあたし。
あたしを引き寄せて抱き締める行為は、嘘にすぎない。
愛したい。
- 257 名前:一匹狼 投稿日:2004/10/03(日) 15:23
-
月が覗く度、あの子は何かを思って目を閉じる。
その瞳に吸い込まれるあたしを、冷たく閉ざして誤魔化される。
頭を撫でても、何も応じる事はなく夜は更けて。
そして明日も、一人と一匹の暮らし。
小さく肩を噛むと、微かに笑って眠りにつく。
狼くんとあたし。
FIN
- 258 名前:証千 投稿日:2004/10/03(日) 15:24
- 一応あやみきって事で。
ちなみに狼くんはあの人ですw
- 259 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:27
-
『待ってぇっ、おかーさんっ!!!行っちゃヤダァァ!』
『ごめん…ごめんね、美貴…』
『美貴も一緒に行くのぉ!!やぁだぁー!!!』
『…っ…』
あの時、お母さんは泣きながら美貴を抱きしめていた。
困った顔を浮かべて、涙を拭う事もなくただ美貴を強く抱きしめていた。
もちろんあの時の事は鮮明に覚えている。
とにかく哀しくて、わけが分らなくて、ただ孤独感が込み上げていた。
お母さんは、最後にこう言っていなくなった。
『…っ…美貴が良い子にしてれば…お母さん、戻ってくるから…』
ふっとした笑顔が、なおさら美貴を傷付けた事も知らずに。
お母さんは大きなキャリーバッグを持って、玄関のドアを静かに閉めた。
軋んだドアノブの音だけが、2LDKのマンションに響いた。
- 260 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:33
-
「…あ、ひこうき雲」
やんわりとした青空に、一本の線が貫く。
ゆっくりと手のヒラをかえし、ひこうきを追ってみた。
グッと雲を手で押しつぶす。
なんだか不思議な気分だ。
ゆっくりと瞳を閉じて、周りの音に耳を澄ます。
河原で子供が遊ぶ声。
楽しそうに会話する親子の声。
犬が元気に走り回って、時折吠える声。
美貴が探している声は、どこにも見当たらない。
「…たん?」
「…亜弥ちゃん」
ピッカピカの制服に身を包んだ、可愛らしい高校生。
懐っこく美貴に笑顔で応じ、寝転ぶ美貴の隣に控えめに座った。
「また、雲見てるの?」
「うん。今日は空が高いから」
「ふふっ、低くても1時間以上眺めてるよ?」
「…空が、好きだからね」
ぽつりぽつりと、他愛もない会話。
それでも、二人にとっては貴重な時間。
- 261 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:40
-
「…空って、世界と繋がってるんだよね」
「……何?突然」
「みきたんはあたしと出会った時、そう言ったよ?」
「言ったっけ…」
「言った言った。かなしそーに空見上げて、独り言みたいに」
空は、広くもあり狭くもある。
昔お父さんに教わった。
空は広ければ広い程、人に何かを告げてくれる。
それは狭ければ狭い程、人を反動させる。
そして世界と人々は繋がり、人は一歩強くなれる。
優しく微笑んだお父さんは、僅か5歳の美貴にそう教えてくれた。
美貴にその教えを守って欲しかったと今ではそう思っている。
だけど今は、もう会えない。
空という荒野に放たれて、お父さんはそこで永遠の眠りについたから。
- 262 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:46
-
「…ずっと待ってるのにね」
「え?」
「……良い子にして待ってるのに、だぁれも迎えに来てくれないや」
お母さんが言った一言を、まだ守っているのに。
誰にも愛されず、美貴は育って来た。
親戚家をたらい回しにされ、行き着いた所は何もない。
空白を埋めてくれるただ一人の存在を、美貴は待ち続けている。
「…違うよ、たん」
「ん?」
「…アタシが、待ってるもん」
愛が欲しい。
何ものに変わらない、カタチが欲しい。
「…一人にさせないよ?」
くっと力を込めて、亜弥ちゃんは美貴を胸に導く。
儚い程熱く鼓動を打っている心臓の音が、美貴を響かせる。
たった1つの、愛がそこにあるのが分った。
- 263 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:50
-
あの時に流した、同じ涙が溢れ出す。
寂しくて苦しくて、狭いアパートに一人きり。
泣く事しか分らなくて、他に何もする事が出来なかったあの日。
ただ、頑に待ち続ける。
お母さんにもう一度愛されたくて。
もう10年も経つ。
「…アタシ、みきたんの事好きだもん…」
あったかいよ。
溢れ出す涙を拭う事も忘れて、亜弥ちゃんの言葉に鼓動を打つ。
これが人の愛情なんだ。
清らかな亜弥ちゃんの瞳が、錯覚のように見えた。
まるで、昔の思いでを引き出すように。
- 264 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 17:58
-
『…この子の名前、どうするあなた?』
『女の子かぁー…予想外だよなぁ』
『そうね…でも、とても綺麗な目をしてる…』
『お前にそっくりだなぁ。…そうだ、これにしよう』
『え…?』
ぼんやりと、二つの影が見えた。
大柄な片方の人は、紙に何か走り書きをしている。
もう片方は、不思議そうにその紙を覗き込んでいる。
『…美しく、綺麗な貴高い心を持って欲しい…だから、な?』
『ふふっ、あなたらしいわね…』
『ははっ、お前は、今日から美貴だぞ。俺達の、大事な娘だからな』
ありがとう、お父さん、お母さん。
涙がぽつっと地面を湿らせるのが分って、再び目を開ける。
「…あたしが、みきたんを愛してあげるから」
「……亜弥ちゃんが?」
「うん。みきたんが悲しんだぶんだけ、辛かったぶんだけ、愛したいの」
「…どっかに、消えたりしない…?」
「ううん、しないよ。ずっと、みきたんの傍にいたいの」
そっと小指を、美貴の小指に絡ませた。
亜弥ちゃんは柔らかい笑顔を見せて、そっと唇にキスをする。
- 265 名前:絆 投稿日:2004/10/03(日) 18:00
-
美貴は、ずっとずっと待ち続けていた。
温かい愛を。
温かい優しさを。
温かい笑顔を。
いつかきっと、帰ってくる。
美貴が良い子にしていれば、きっと戻ってくる。
そう信じて、確かな愛を包むように。
美貴は今、一番大切なものを見つけた。
FIN
- 266 名前:証千 投稿日:2004/10/03(日) 18:01
- 何かちょっと悲しかったかなぁー…。
- 267 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/03(日) 19:43
- 「絆」を読んで…なぜか涙が止まらない。
いい話、ありがとうございます。
- 268 名前:亜弥 投稿日:2004/10/04(月) 05:53
- 『絆』感動モノでした!!
最近ゎリアルでもぉ泊まりとか五〇サンバースディとかォールスターなどあやみきが…あやみき好きな私にゎ嬉しぃこと尽くしですっ。
- 269 名前:横顔 投稿日:2004/10/05(火) 17:54
-
ただ、ボォーっとしてるだけ。
ごとーは雑誌をパラパラ捲って、時たまテレビを覗く。
そしてその横に座っている彼女は、ウトウトしながら同じくテレビを覗いている。
ああ、眠いんだね。
そう察したごとーは微笑みながら眠りにつきそうな彼女を見つめ続ける。
雑誌をぽいと投げ出して、テレビを消す。
何となく、興味を引かれた。
- 270 名前:横顔 投稿日:2004/10/05(火) 17:58
-
「…んー…」
「ベッド、行けば?」
「…いー。まだ寝ない」
軽く頭を振って、ニコッと笑う。
ごとーに遠慮しているのか、眠くないという態度をとる。
そんな事したってもうバレバレなんだから。
そう思っていても、可愛い彼女の言う事だからそっとしておく事にした。
「…へっくし!」
「ほら、ね。ごとーはいいから、寝てなよ」
「…ごっちんがよくても美貴はヤなの」
「なんで?」
「…なんでもっ」
寒がりの彼女にとって布団をかけずに居眠りするのは風邪の元。
そう言うも、聞かずによく分らない事を言って聞かない。
- 271 名前:横顔 投稿日:2004/10/05(火) 18:02
-
…可愛いな。
またウトウトしながら、こっくりこっくりと首を動かす。
昨日の仕事が遅くて、満足に寝られなかったんだろう。
なのにわざわざごとーといてくれてる。
こういう時は意地っ張りでも、ほんとは優しい子だから。
急に彼女を抱きしめたい欲情に駆られる。
わけもなく、腕で包みたかったから。
下心なんて忘れて、ただゆっくりと傍にいてあげたい。
そっと伸ばした両腕で、優しく彼女を包み込む。
- 272 名前:横顔 投稿日:2004/10/05(火) 18:06
-
「…んなっ!?ご、ごっちん?」
抱き締めるなり、驚いて奇声を上げられた。
そんなに顔を赤くしなくても。
そうは思っていてもごとーは何も言わず、赤く染まる頬にすり寄せる。
「寝て、いいよ」
「この状態で…?」
「ヘーキ。ミキティが思ってるような事、しないから」
「べっ、別に何も思ってな…」
「いいから。ね」
大人しく身をごとーに預け、瞳を閉じる。
まだピンク色の頬を保ったまま、ごとーの首に甘えるように喉を鳴らす。
照れ隠しをするさまがまた、好きでたまらない。
- 273 名前:横顔 投稿日:2004/10/05(火) 18:11
-
ようやく安堵の空気が流れて、彼女も少しづつ眠りに入る。
それとは対象に、ごとーに眠気は全く無い。
一人だけ夢の世界に入るなんてずるい話だ。
だから、ごとーにも欲しいものがあった。
「…起きたら、怒られるよね」
寝息をたてる彼女の頬を撫でて、そっと唇に近付く。
堪らなく愛しい、彼女の眠り。
FIN
- 274 名前:証千 投稿日:2004/10/05(火) 18:13
- 多分久々のごまみき。
久々と思っているのは私だけだとw
>267様 私の駄文で泣かせてしまうとは…恐縮でございます。
でもありがたいです。
>268様 良かったですか?ありがとうございます。
最近はメディア上でもあやみきが多くて堪りませんなぁw
あやコンは萌えすぎました。
- 275 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 18:42
-
それは遠い昔の出来事でした。
ある国の王子様と、お姫様の恋のお話。
二人は愛しあい、信じあい、永遠の愛を誓いました。
とある小さな国の、大きな大きな愛のお話。
- 276 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 21:54
-
「姫、準備はよろしいですか?」
「……」
使用人の言葉にも耳を傾けず、ムスッとしてドレスに目をやる少女。
使用人は困ったように首をかしげるも、その様子を全く気にする事もなく
少女は鏡に映る自分を溜め息混じりで見つめ続ける。
「…ハァ、お気持ちは十分分るのですが…」
「じゃあお父様に言ってよ!!絶対婚約なんかしないんだから!!」
「う…そ、それは…」
言葉を詰まらせる使用人と、今にも泣き出しそうな少女。
勢い余ってイスから立ち上がったものの、また腰を降ろす。
「…そろそろ、お時間です…」
「……わかったわよっ…」
ふんっとふんぞり返った少女は、使用人に連れられて化粧室を出る。
とある城の、お姫様のお話。
- 277 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 21:59
-
「…亜弥姫、御機嫌を直しては…」
「ふざけないでよ、こんな時に」
「……私共、恐縮ではございますが一番に姫の幸せを願っているのですから…」
「ああうるさい!!もうこの際婚約でもなんでもしてやるわよ!!それでいいんでしょ!?」
「……ハァ…」
馬車の中で姫の声が鳴り響く。
周りの使用人達はビクッと肩を跳ねらせ、終止沈黙が続いた。
なぜこの姫が御機嫌ナナメなのかといえば。
父親である王の令に従い、ある城の王子と婚約を結べというものだったのだ。
それに姫は納得がゆかず、機嫌が悪いのだ。
勝手に親に決められた道を歩くなんて。と反するも、王は全く姫の気持ちなど
聞いてくれるわけがなかった。
- 278 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:03
-
知らない土地の、知らない王子と結婚するなんて。
もしいけすかないやつで、好みから論外だったなら。
そう考えると先が思いやられると考えていた姫は今にも泣き出しそうだ。
勢いで言ってしまったものの、やはり死にたいほど見知らぬ王子と婚約なんて
嫌だと思っている。
無責任的な使用人の言葉に腹を立て、一切口も聞かずとうとう婚約者のいる城に到着。
「…姫、お足下に気を付けて…」
「分ってるよっ」
使用人の手も借りず馬車から降り、まじまじと城を眺める。
その頃、城の中では。
- 279 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:09
-
「……いたか!?」
「いえ、どこにも…」
「全く王子と来たら…早く捜せ!!姫様が御到着される前に!!」
「はい!!」
せわしなく城中を駆け回る使用人達。
その使用人達を息を切らせながら物陰に隠れる人物が、いた。
「…くそっ、婚約なんてしてたまるかっ!!」
吐き捨てるように言ったのはこの城の王子、美貴。
タイミングを見計らっては物陰にかくれ、まるでかくれんぼをしているかのようだ。
何故王子がこんな事をしているのかといえば。
ある城のお姫様と、婚約を結べという王様の令だった。
その令を今日告げられた王子は慌てふためき城の中に隠れているのだ。
「ったく、勝手に婚約者決められるなんてふざけんなよっつの」
使用人達がいなくなったのを見計らい、汚れた服をはらう。
フンッと得意げに溜め息をついた後、背後に誰かがいるのに気付く。
「見つけましたよ王子!!!」
「ふわぁぁ!???」
「さあ、姫がお待ちです」
「はっ、はなせよぉ〜〜〜!!!!!」
使用人達に巨大網で捕われた王子は敢え無く御用。
ズルズルと引きずられ、大広間へと連れて行かれるのだった。
- 280 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:14
-
「…姫、姫!」
「…………」
「あ、挨拶ぐらいして下さいっ!!」
「……どーも」
「姫!!」
大広間では。
相も変わらず亜弥姫はムスッとして席につく。
婚約者である王子の両親がいるにも関わらず、完全無視を続ける。
それを見た使用人達は慌てて姫をなだめ、なんとかその場を丸める事ができた。
バーンッッッ
「王子、確保しました!!!!」
「はっ、離せよぉっ!!このバッキャロー!!!」
「な、なんとはしたない!!口を慎むのだ美貴!」
「ふんっ、うっせーよ!!」
突然大広間の扉が開き、出て来たのは網にかかった王子。
ギョッとした様子の姫はおっかなびっくりで『王子』と呼ばれた網に
かかっている人物を覗き込む。
- 281 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:19
-
「…なんと…まあ…」
「うむ…」
姫の両親は怪訝そうな顔をし、王子を凝視する。
それに使用人、姫も続く。
網で王子の顔がよく確認出来ず、姫は目を凝らし見続けた。
「とっ、とにかく姫の隣に座りなさい!!」
「いーやーだ!!美貴は婚約なんかゴメンなの!!」
「いいから席につくんだ!!早く座れっ!!」
「…っチッ、分ったよ」
顔を真っ赤にして激怒する王子の父。
それを見た姫は、目を丸くする。
いや、違った。
姫の視線の先には、隣の席に座る王子にあった。
- 282 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:22
-
目つきが悪く、格好はなんともだらしがない。
ロングパンツに黒いパーカー、擦り切れたシューズ。
ふんぞりかえって姫の真横のイスに座り、あたりを見回す。
その瞬間、ハッと姫と王子の視線がばっちり合う。
「……ども」
ぱっきゅん。
大広間に、アニメのような効果音が響いた。
王子と姫の間にだけ流れた、甘い雰囲気が。
照れくさそうに軽く姫に頭を下げ、再度目を見つめあう。
姫は、王子に一目惚れをしたのだ。
- 283 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/05(火) 22:27
-
「あっ…あのっ!!」
「…ん?美貴?」
「あの…お話、しましょう!!」
「ハ?」
ぼーっと口を開け、王子は姫のすっとんきょうな考えに驚く。
急に手を握られ、キラキラとした瞳で訴えられた。
ドキッとした鼓動を、王子自身もその時点では気付かずにいたのだが。
「あ、あの…アンタ…」
「いいじゃないか美貴っ、庭園で散歩でもしてきなさい!!」
「ハァッ!?だから美貴は婚約なんて…う…」
うるうるの眼差し。
姫のかたくなな瞳に負けてしまった王子は、渋々手を握られつつ庭園に向かう事に。
二つの城の使用人達はホッとした様子で食事をし直す。
照れくさそうに握られる手を歯がゆく思いながら、王子は溜め息をついた。
こんな筈じゃなかったのに。
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/06(水) 00:28
- ウヒー!!イイヨーイイヨー
こんな話大好き!
- 285 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/06(水) 20:54
-
それにしたって、何を話せばいいんだ。
庭園にくり出した若い二人は手を繋ぎあい沈黙に落ちた。
正確に言えば、王子からすれば握られている手なのだが。
焦る王子に対し、尚も姫は恋する瞳で王子を見つめ続けている。
「…あの、名前…なんていうの?」
できるだけ、おびえさせないように。
やんわりとした口調で口角を緩まし尋ねた。
ただでさえ目つきが悪い事を自覚しているだけあり慣れている。
それを見た姫は更に胸を踊らせる。
「亜弥っ、亜弥です!!!」
「あ、そう…美貴は…」
「美貴っていうんですか?」
「ああ…うん」
「カワイイ……みきたんって読んでいいですか!?」
「ハッ!?み、みきたんだぁ!??」
プチンと切れそうになる糸を押え、ようやく自己紹介が終った。
終いには姫にみきたんとまで呼ばれてしまう。
マイペースな姫の行動にたじろぎながらも、王子はなすがまま庭園を歩き回るのだった。
- 286 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/06(水) 21:00
-
「みきたんみきたんっ、このお花綺麗!!」
「う…ああ…」
たったかと走り回る姫を脱力したように眺める王子。
この際婚約などどうでもよくなった王子は気を抜かして芝生に転がった。
自由気侭な人生を、この姫の為に全て注ぐというのか。
それを思うと王子は溜め息しか出るものがなかった。
「…亜弥、か」
無邪気に微笑む姫の姿が、王子は少し気になるようだった。
同世代の子と遊ぶ事などあまりなかった王子だったので何だか不思議な気分でいた。
それに、顔だって悪くない。
むしろ王子好みだ。
「あの…お姫さん?」
「えぇ?亜弥って呼んでよぉ」
「え、あ、亜弥…ちゃん」
「えへへっ、ありがとっ!!」
追いつけない姫のペースに振り回されるも、不意に笑顔を見せられるとドキッとする。
不可思議な感情を抱いている事に気付いた王子は焦って顔を背けた。
こんな感情を抱いたのは、初めてかも知れないと感じたからだ。
- 287 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/06(水) 21:06
-
「あっ、こっちにもお花!」
「ちょっ…そっちはダメッ!!!!」
姫はちょこまかと動き回り、芝生の向こうにある薔薇園に向かおうとする。
素早く察した王子は後を追って立ち上がった。
「ちょっ、待って!そっちは危ない!!」
「えぇ?ヘーキだよぉー…キャッ!???」
「っ…こっち!!」
姫が王子の言葉を遮るように薔薇園の入り口に踏み出した、その瞬間。
下にあった泥に足をとられ、身体共重力がなくなった。
「…あっぶなかったぁー…ここは泥がぬかるんでるから危ないって言おうとしたのに…」
「ご、ごめんなさい…」
とっさに王子が駆け寄り、倒れそうになる姫を抱きとめた。
すっぽりと王子の胸に納まった姫はドキドキと高鳴る鼓動を抱える。
- 288 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/06(水) 21:13
-
なんか、ヘンな感じだぞ。
王子も姫と同じく、熱く高鳴る鼓動に反応してしまった。
ジリジリと燃え盛るおかしな感情に、心が反応しているのだ。
微かに匂う姫の温もりを、王子のどこかを突く。
恋してるんだ。
「…あん、さ」
「何……?」
「こ、婚約…しちゃおっか…?」
「…えっ?」
「……だ、だから…婚約、しよう…よ」
精一杯のエスコートが、王子からのプロポーズだった。
歯を食いしばって頬を熱くなるのを抑えようとする。
「ほ、本当…?」
「…うん。何か、わかんないけど…好き、だよ。亜弥ちゃんが…」
「あ、あたしも!!みきたんが、好き!」
嬉しそうに笑う姫を、王子はにこやかに迎えた。
王子の初恋、姫の初恋。
思いは重なったようだ。
- 289 名前:証千 投稿日:2004/10/06(水) 21:14
- 少ないですが更新終了。
>284様 ファンタジーははっきし言って苦手なのですが(笑
応援よろしくです。ありがとうございます。
- 290 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/07(木) 07:32
-
こんな自分は初めてだ
王子はふとそう感じた。
今まで恋だの愛だの全く興味がなく、遊ぶ事しか考えていなかったのに。
目の前にいる少女が、堪らなく好きだ。
こんな美少女、ゴマンといるだろう。
でも、でも何か違う。
亜弥ちゃんは、何か違うんだ。
「…誓いの、キスを……」
教会では祝福の鐘が鳴り響く。
見事なウェディングドレスに身を包んだ姫にそっと手を差し伸べる王子。
婚約するつもりが、ついに結ばれてしまったのだ。
- 291 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/10/07(木) 07:36
-
「…たん、ちょっと待って」
「え?」
「……キスする前に、誓って欲しいの」
「…何?」
不安気に王子を見つめ、姫はそっと微笑んだ。
「…ずっと、一緒にいてくれる、よね…?」
その時の姫の表情は、王子も忘れる事が出来なかった。
不安気なその笑顔を、ゆっくりと撫でる。
「…もちろんさ、お姫様」
こうして二人は、大きな愛に包まれて結婚しました。
昔昔の、そのまた昔。
FIN
- 292 名前:証千 投稿日:2004/10/07(木) 07:37
- …完結。
ファンタジーのつもりがどんどん崩れてます。
まあそこらへんは脳内変換&スルーしちゃって下さい。
- 293 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 12:51
- うわーなんかすごくいいっすね(・∀・)
続編とか超読みたい…なんて言ってみたりw
- 294 名前:銀河 投稿日:2004/10/07(木) 17:43
-
これって、運命なんだよ
何千年もの歴史の中で、偶然に出会ったわけじゃない
きっと必然だった
引き付けあうチカラが、本当にあるのなら
夜の公園には誰もいなくて、二人きり
ただお互いの手を握りあって会話をすることもない
何も旋律がなくたって、分ってるから
冷たい空気が彼女の髪をなぜて美貴の鼻をくすぐる
空を見上げると数えきれない程の星が凛と輝いている
- 295 名前:銀河 投稿日:2004/10/07(木) 17:47
-
帰ろうか、と訪ねると何も言わずに頷いた
それだけで愛おしい気持ちが押し寄せる
これが偽りの時間ならば美貴はどうする事もできずにいるんだろう
寒い十月の風に煽られるように、美貴はそっと肩を抱いた
ふざけるように笑った彼女に同じように微笑む
美貴をオトしたこの笑顔
憎らしくも、全てが大好きだから
髪に鼻をよせて胸に引き寄せる
冗談じゃないよって事を、何も言わずに告げたくて
それを察してくれたのか美貴の首筋に優しく口付けをする
何故か美貴は、夜空に促されてしまった
- 296 名前:銀河 投稿日:2004/10/07(木) 17:51
-
離れないと誓って欲しい
でもその言葉を言うにはとても勇気がいるから
彼女にとって、凄く重荷になってしまうだろうから
言えずに、愛し続けてる
でも、でも君よ
愛したいっていう気持ちは変わらないから
流れ行く銀の色に祈ろう
未来でもなく、過去でもなく
今、ぼくらの事だけを
FIN
- 297 名前:証千 投稿日:2004/10/07(木) 17:53
-
短いですがあやみき。
>293様 そうですねぇ、まさか続編を希望される方がいるとは…感激です。
後々気紛れに書かせて頂きます。ありがとうございます。
- 298 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/08(金) 02:42
- 詩人ですなぁ。
グッときました。
- 299 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/08(金) 16:17
-
「いや〜っ、今日も大量大量♪」
ドサッと複数の紙袋を机の上に置く。
中身はチョコやら手編みのマフラーやら手紙やら。
少なくとも学年で一番プレゼントをもらっているのはこのプレイボーイだけだ。
周りのクラスメイト達はザワザワと騒ぎ始めた。
「これまた凄い数…直で貰ったの?」
「ま〜ね〜。あ、まいちんにはあげないよん♪」
「や、いらないし。欲しがったらアタシがどうなるかわかんないじゃん」
「それもそうだけどさぁ。嬉しいねぇ毎日プレゼントだらけで」
「毎日が誕生日ってか」
「お、うまい!」
軽く冗談を飛ばしあいながら、クラス中をどよめかせるこの人物。
究極のプレイボーイ、藤本美貴。
ワイルドなフェイスで多くの女子を湧かせる罪深き遊び人だ。
毎日が誕生日、と友達のまいが言うようにそれは事実である。
「で、アンタ亜弥ちゃんはどうすんの?」
「へっ?亜弥ちゃんがどうかした?」
「拗ねちゃうんじゃないのぉ〜?大事な恋人がこんなに…」
「まあまあ、心配ないよそこらへんは」
「何か手でもあんの?」
「…へへっ、まーねっ」
得意げに腕を組んで厭らしく微笑んだ。
その光景を尊敬するようにクラスメイト達は美貴に視線を注いでいた。
- 300 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/08(金) 16:29
-
「ちょーっと亜弥ぁ!!!!」
「なっ、何よ愛!!!」
「アンタこっち来なさい!!」
「いだっ、いたたたたっ…」
速攻で廊下を駆け抜けて来た友人に驚き身を引いてしまう。
が、腕を強く掴まれた途端屋上へと引きずられ何も言う隙がないのだった。
「あんたっ、どういうつもり!?」
「だから何が!?」
「今日の先輩の事!!!」
「……え…」
プレイボーイ美貴には、れっきとした恋人がいる。
それがこの美少女、松浦亜弥。
二つ下の亜弥は先輩である美貴と交際をしているのだが、最近はマンネリ化だ。
その事を多々気にしてはいる亜弥だが、今日の事で更に気が重くなった。
「…アンタ、悔しくないの?先輩がみんなにチヤホヤされんの見てて」
「……だって、みきたんホントにモテるんだもん」
「恋人だったらガツンと言えないのガツンと!?」
「ガツンって言ったって…あたしがそんな事言ったらみきたん束縛するみたいじゃん!!」
「どこまでお人好しなのアンタって人は…顔だけは一流なんだからもっとビシッとしてよ…」
ふがいない友達に脱力する愛。
何かと口を出してくる愛にたじろぐ亜弥だが、いつも相談には忠実にのって
くれるので助かっている。
しかし、お節介が強いのだ。
- 301 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/08(金) 18:41
-
「…重荷になるのが、イヤなの?」
ふぅ、と半諦めの様に愛は黙りこくる亜弥に尋ねた。
その言葉に下手に反応する亜弥は唇を噛み締める。
なんて分かりやすい子なんだ、と呆れかけた愛は最後に優しくこう言った。
「…告られたのは亜弥の方なんだよ?自信持ちなよ」
ポンッと背中を叩かれ、亜弥は少しだけ笑って愛の背中を叩き返す。
実を言えば付き合い始めたキッカケは美貴の方からだ。
そのままズルズルと付き合ううちに、段々と亜弥の方から思いを馳せる事が
多くなっていたのだ。
- 302 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/09(土) 08:22
-
あたしって、みきたんの何だろう。
そう思って溜め息をつく事もしばしば。
用もないのに会いたいやら電話するやら、なんて事は亜弥にとっては不可能だ。
美貴だけに引っ込み思案になりがちな亜弥ならではなのだ。
「……なーんか、自分でもわかんないよ…」
美貴の周りには数えきれない程のおのぼりさんがいる。
気にしないようにしている亜弥でも、美貴は来るもの拒まず。
たとえ恋人である亜弥がいても、おかまいなしなのだから。
- 303 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/09(土) 08:27
-
「ちょっと、美貴どこ行くの?」
「ん?ああ、マイハニーの所にね」
「は?マイハニー?」
「ふへへっ、甘い時間を過ごしてくるのさ」
グッとブイサインを困惑するまいに向け、不敵に笑う美貴。
「…マイハニー…ねぇ。だったらいつも一緒にいてあげなさいよ」
呆れたように長い髪をかきあげ、もの凄い速さで去ってゆく友人を見送った。
唯一の理解者であるまいだからこその事だった。
- 304 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/09(土) 09:34
-
「……お、いたいた」
案の定、亜弥はいつもの場所にいた。
いつもの場所とは、学校の屋上の事。
手すりに身を任せて、いつも溜め息ばかりついている。
その理由が美貴にあるとは知らず、そろりそろりと亜弥の背後に忍び寄る。
「…わっ!!!!」
「キャァッッ!????」
鼓膜が破れてしまいそうな声を上げ驚く亜弥。
対象におかしそうにケラケラ笑う美貴を見て、亜弥は唖然とする。
久しぶりに見た恋人に、何故か心臓がバクバク鳴っている。
「やっほ、亜弥ちゃん」
「お、驚かさないでよぅ!!」
「だってかぁいいんだもん」
「ふぁっ…」
意地悪そうに笑った美貴に手を引かれ抱きしめられる。
急な事だったので動転しながらも言われるがままになってしまう。
折角忘れようとしていた人物が、突然現れるなんて。
- 305 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/09(土) 09:39
-
さも愛おしそうに亜弥を抱きしめて微笑む美貴。
なぜこんなに嬉しそうな顔をしているんだろう、と亜弥は思ったものの
何となく自分も嬉しかった。
美貴とこうしていられるなら、と。
「しばらくぶり、だね」
「う、うん」
「最近違う子とばっか遊んでて…ごめんね、今日はずっと一緒にいるから」
「…んーん、別にいいよ」
「…怒ってる?」
「怒ってなんかないよ、みきたんが来てくれて嬉しいよ?」
美貴が他の子と遊ぶのは、それは決して本気ではないから。
そう分っていても亜弥はどこかで嫉妬に変化している事を十分承知だった。
気さくな美貴の事だから振りむくも振りむかないも女の子次第。
それが一番の不安だった。
- 306 名前:プレイボーイ 投稿日:2004/10/09(土) 09:46
-
「…他の子じゃ頼めない欲しいもの、あるんだけど」
「え…?」
「亜弥ちゃんから、もらいたい欲しいもの」
「あたし、から?」
「うん。亜弥ちゃんじゃなきゃダメだから…」
真面目な表情に変わった美貴を見て、亜弥は何かを察した。
美貴がもらいたい、ものは。
「…んっ…」
少し強めに、亜弥の唇を塞ぐ。
何も抵抗する事なく亜弥は目を閉じた。
「……亜弥ちゃん以外の子と、キスなんかしないから。ね?」
そう言って、美貴は亜弥のこめかみにちゅっとキスをする。
呆然と立ち尽くす亜弥をからかうように次々にちゅっちゅと連発。
「一番好きだから、安心してよ」
プレイボーイは、実は硬派。
FIN
- 307 名前:証千 投稿日:2004/10/09(土) 09:47
-
…まあ、モテティと押される亜弥ちゃんが書きたかっただけです。
すんません。
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/09(土) 11:14
- 朝一から甘いです。
亜弥ちゃん良かったね!
- 309 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/09(土) 13:47
- 遊びまくるミキティかっけーっす。
- 310 名前:_ 投稿日:2004/10/09(土) 13:58
-
「……っっ……」
屋上のガケッぷちに足を踏み入れたら、震えが止まらなかった。
死ぬ事なんて怖くない。
そう思うと自分でも呆れるくらいバカらしくなってくる。
どうせ死んだって何も変わらない事ぐらい、分っている筈なのに。
ガコンッ
誰かが屋上に入ってきたらしい。
別に誰が目撃したって、あたしはどうせ死ぬ。
むしろ目撃者がいるほうが、あの人だって死ぬ程後悔するだろう。
ヒタヒタと背後に歩み寄る影を無視して、深呼吸をする。
あたしは自殺するんだ。
- 311 名前:_ 投稿日:2004/10/09(土) 14:03
-
折角の恋愛も、折角の友達も。
全て消えてしまえば良い。
何もかもが、この世界が嫌で仕方がないから。
目を閉じて足を踏み出そうとする。
「…ねー、ちょっと」
いやにだるそうに、焦る様子もなく背後から声が聞こえる。
さっさと死なせてよ。
そう言おうと思っても、あたしの身体が許さなかった。
素早く振り向くと、そこにはあたしと同じくらいの女の子がいた。
キレイな顔をしている。
なぜか無性に腹が立って、とにかく言い返す。
「…邪魔しないでよ」
「邪魔するつもりはないけど。アンタ、死ぬの?」
「そうだよっ、悪い?」
「別に悪かないけどさ…いっこだけアドバイス」
「ハ…?」
冷たい視線であたしを睨むその女の子は、手すりに掴まってあるあたしの
手首をグッと掴んでこう言った。
- 312 名前:_ 投稿日:2004/10/09(土) 14:07
-
「…手首切ってから飛び下りた方がいいよ」
「な、何で…」
「残酷さ、増すじゃん。残された人がどんな風に思うか、考えてするもんだよ」
それから、走っている電車に突っ込むとかね。
薄ら笑いを浮かべた後、とんでもない事をしようとする。
「よっと」
「わっ…ちょ、ちょっと!!!」
素早くぐいっと、手すりの向こうにいるあたしを抱き上げた。
どこにそんなチカラがあるのか今思えば不思議だ。
だいたい、あたしと同じ年代ぐらいなのに。
その不思議な女の子はあたしをガケッぷちから離し、かけていた眼鏡をぱっと奪われた。
- 313 名前:_ 投稿日:2004/10/09(土) 14:15
-
「……わ、カワイイじゃん、自分」
「ちょっと…返してよ!!!」
「こんなもん…ほいっ」
「あっ!!」
眼鏡を奪った後、クスッと笑って空に投げた。
その眼鏡は宙を舞った後、何の疑いもなくビルの屋上を下ってゆく。
「…身替わりで眼鏡が死ねばいいんじゃん?」
「ふ、ふざけないでよ!!!」
「ふざけてんの、そっち」
「は…」
「簡単に死ぬとか、言うな」
あたしがかけていた眼鏡が、身替わりになったという事。
さっきまで邪魔するつもりはないだとか言っていたのに。
今度は人の生死までに首をつっこんでくるつもりらしい。
「…アンタさぁ、眼鏡外した方がカワイイじゃん。もったいないよ、死んだら」
「アンタにカンケーないでしょ!?」
「彼氏とか、いるんじゃないの?」
「……っ…」
片思いで終っちゃったから。
凄く空しくて、凄く悔しくて。
何だか、生きている意味なんて見つからなかったから。
「…失恋っつう、やつね」
わかりきったふうな口、聞かないでよ。
そう言おうと思ったけど上手く動かないでいる。
- 314 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/10(日) 01:46
- いいです。
更新待ってます。
- 315 名前:_ 投稿日:2004/10/10(日) 09:49
-
「…なぁんで、一回失敗しただけで死のうって思うかなぁ」
「……え…」
「自分、どんだけカワイイか知らないでしょ?」
ビッと指をあたしに向けて、得意げに笑った。
何でこんなに偉そうに言われなくちゃいけないの。
そうは思ったけどペースから抜けだせない。
「鏡見て、出直してこい。バカ!」
額をピンッと弾かれた。
この人、あたしに遠回しに死ぬなって言ってるらしい。
何か、フラれた時より何十倍も悔しい。
- 316 名前:_ 投稿日:2004/10/10(日) 10:03
-
「…君、名前は?」
「……亜弥」
「ふーん、顔と名前が一致するね」
「意味わかんない…んだけど…」
「よーするに」
あたし、死なないでよかったのかもしれない。
あんな奴にふられた事で死んでたら、自分はなんて愚かだったんだろうって。
もしこの子に出会ってなかったら、あたしは確実にこの世から消えてたんだろう。
「…けっこー、美貴のタイプ」
「…っは!?」
「ホラ、こういう刺激が生きてるって事だよ」
「な、何なのさっきから!!!」
「美貴は無駄に死人出したくないの。だから、亜弥ちゃんも一緒」
「勝手に名前で呼ばないでよ!大体…」
「ここで話すのもなんだし、喫茶店でも行こっか」
「ちょっ…離してよぉ!!」
これが、生きてるって証?
アホみたいにずっと笑顔のこいつに、そう教えてもらった。
今はまだ、あんまり信じられないけど。
生きてる証拠、今のあたしの気持ちなのかもしれない。
FIN
- 317 名前:証千 投稿日:2004/10/10(日) 10:06
- まあ、最後の松浦さんの気持ちってのは…
脳内変換してくれちゃえば分るでしょう(笑
>308様 朝から暇な作者です。朝の砂糖はどうだったでしょうか(笑
>309様 本当は優しいモっさん…愛がたっぷりです。
>314様 変な所でくぎってしまいすみません。
ありがとうございます。
- 318 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:09
-
「んでわ〜…かんぱーい!!」
「「「カンパーイ!!」」」
同時に大勢のビールジョッキが重なる音。
わあわあと早くも頬を赤らめる人、酒を控えてウ−ロン茶を飲む人。
頭にネクタイを巻いて酔っぱらうオヤジ。
みんなみんな、楽しそうに。
「……何か、あったんスか?」
「うーるせぇーんだよー…口出すんじゃねぇっ…」
「す、すいません」
「…うー…」
朦朧とする意識の中、美貴は胃にビールを納める。
居酒屋で一人、酒と自分に酔う今宵の晩。
飲まずにはいられなかった。
- 319 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:14
-
大好きな人に、ふられた。
ずっとずっと片思いで、とうとう想いを打ち明けたこの日。
胸が高鳴って。もしかしたらって、下らない事考えて。
でも、ダメだった。
その人は泣きそうになるのを抑えて、美貴にこう言った。
『ごめん』
その一言だけ。
そのごめんって言葉には、色んな思いが詰まってるって事を知った。
友達のままでいようって事、このままがいいよって事。
強がってみせた美貴の笑顔は、とんでもなく不細工だったに違いない。
「…もーっ…恋なんてしないぞぉーっ…」
「み、美貴さんここで寝ないでくださいよぉっ…」
「うるせぇっ、黙ってビール持ってこい!!」
「は、はい…」
こうやって誰かにあたらないと、美貴は美貴でなくなりそうだった。
何かにすがりつきたくて必死になる。
もう恋なんてしない。と誓っても、その公約はいつかちぎれる。
単純な美貴だからこそ、恋を諦める事も難しかった。
- 320 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:21
-
ヴ− ヴ− ヴ−
「美貴さん、携帯鳴ってますよ?」
「分ってるよ……はい、もしもしぃー」
バイブ音が心に染み渡る。
いやいや携帯を開き、耳にあてた。
『あ、ごとーだけど』
『ごっちん?……何か用?』
『何か用って、そっちが勝手にかけて勝手に切ったんじゃん』
『……いつの話?』
『1時間ぐらい前…覚えてないの?』
『…じぇーんじぇん覚えてましぇん…』
『すげー酔ってるし…今どこ?』
その着信は友人のごっちんからだった。
全く電話をした記憶がなかったものの、およそ1時間前に携帯を取り出した
事は微かに思い出せる。
『…駅前の、いざかや…』
『うちまで来れる…わけないか。そっちまで行くから絶対動かないでね』
『何でわざわざ来るんだよぉー…ばーかー…』
『放っておいたら何するかわかんないでしょ…さっきかかってきた時も様子おかしかったし』
『…うっさいなぁ、もぉーっ』
『心配してんのに何だその言い種…まあいいや、とにかく今すぐ行くからね』
『来んなっ、ばっきゃろーっ…』
酒でもうろうとした意識、イライラする頭脳。
思考回路はめちゃめちゃだった美貴は、ごっちんにまで八つ当たりをする。
一体、美貴は1時間前に何故ごっちんに電話をしたんだろう。
その事すら分らずに、ごっちんが迎えに来るのを待った。
- 321 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:28
-
ガラッ
「いらっしゃい!!」
「あの、目つき悪くて泥酔してる女の人いません?」
「ああ、美貴さんならあそこに…」
目つき悪いのは余計だ。
そんな文句を言う前に、ごっちんが美貴の方を見て呆れた様子で近付いてくる。
もうそろそろ終電が無くなるというのに、直前で来てくれたようだった。
酔っぱらった思考でごっちんの思い遣りに感謝。
「…よっ、ごっちん…」
「このバカ。何やってんのこんな遅くまで!」
「……だぁーって…」
「だって何」
「……もぉー…うっさい!!帰れ!」
「………」
大声でごっちんに怒鳴って、ビールをイッキのみする。
もうどうにでもなってしまえ。
健気な友人を困らせて、そして自分も困らせる。
酔っぱらった勢いもあったけど、すごく自分が情けなかった。
「…帰るなら、一緒に帰るよ、このドバカ」
「ちょっとぉっ…まだ帰らない!!」
「うるさい。すいません、おあいそお願いします」
「…っ…」
乱暴に美貴の腕を掴んで立ち上がらせるごっちん。
酔っていて力が出せなくて、抵抗の声を上げるもなすがままにされる。
仕方なくごっちんが支払いを済ませて、居酒屋を出る事になった。
- 322 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:33
-
居酒屋を出た後、ごっちんはフラつく美貴の手を握って駅へ向かう。
その横顔はとても怒っていて、冷たかった。
何故彼女が人の事でここまでしてくれるのか、美貴は不思議で仕様がない。
それが知りたくて、美貴はごっちんの手を振り解く。
「……何やってんの、早く帰るよ」
「い…やだっ…」
「…帰るよ」
少し強めに、手を握られて足早に歩くごっちん。
やっぱり怒っていた。
その表情は強張っていて、いつものごっちんではなかった。
「……ほらっ、これ最後の電車なんだから…」
「分ったよっ…」
そっと肩を抱いて、終電車にやっとこで乗る事ができた。
中には誰もいなくて、ぼやけた視界でも確認できる。
- 323 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 14:39
-
ガタンゴトン ガタンゴトン
「………」
揺れる電車の中、沈黙だけが続いた。
ごっちんは手すりに手をかけて、どこかを見つめるだけ。
美貴はボーッとして、同じようにどこかを見つめる。
「……何で、ここまで酔うかなぁ…」
「え…?」
「ミキティ、そんなに飲むタイプじゃないでしょ」
「……ん」
「何か、あったんだ?」
チラリと美貴の目を盗みみて、微かに鼻で笑った。
ちょっとムカッときたけど、素直にこくりと頷く。
こんな事話せるのは、正直ごっちんしかいないのかもしれない。
「……亜弥ちゃんに、フラれちゃった…」
プオーーーーーーッ
フゥと溜め息をついて、何かを知ったようにごっちんは黙る。
美貴は後悔と複雑な気持ちが混ざって、何も考える事が出来ずにいた。
「…こーんなに好きなのにさ…ごめんだって」
「だから、あんなに飲んだんだ」
「……そーだよ、悪い…?」
「…悪い、よ」
くしゃくしゃっと美貴の頭を撫でてまた溜め息。
ぽすん、とごっちんの肩に頭を置いて目をとじる。
これが夢であったら、どんなに幸せなんだろう。
- 324 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 19:09
-
「泣いちゃえ」
「…ヤだ」
絶対泣きたくない。
泣いて済んだら、亜弥ちゃんに申し訳ない気がして。
それに、ごっちんの前で涙を見せたくなかった。
何でこんな意地張ってるんだかわかんないけど。
でも、もう無理だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
「…ホントに泣いたな。よしよし」
恋のばかやろう。
美貴のばかやろう。
どんなに鼻水たらそうが、どんなに悔しかろうが。
きっと恋はそういうもんだという事を、改めて感じた。
失恋を引きずった方が負けになるし、これからは恋の勝ち組に入らなきゃ。
「うっ…うえぇぇっ…」
「…いっぱい泣いて、いっぱい恋してね、ミキティ」
そう言ったごっちんの声は掠れてて、もしかしたらもらい泣きしてくれていたのかもしれない。
ごっちんの顔すら覗く事も恥ずかしくてその時は分らなかった。
- 325 名前:アッシュ 投稿日:2004/10/10(日) 19:12
-
どんどん恋して、失恋してやる。
美貴が死んだら悲しんでくれる人、探すんだ。
そのためには、やっぱり辛い思いしなきゃいけない。
すがりつく美貴をぎゅっと抱きしめてくれるごっちん。
ちょっと、ドキッとしたりして。
二人きりの車両には、美貴の泣き声と電車の揺れる音だけが響いた。
そしてギザギザの愛を探しに行くんだ。
FIN
- 326 名前:証千 投稿日:2004/10/10(日) 19:12
- あやみき&みきごま。
なんじゃいこの設定。
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/10(日) 19:13
- 久しぶりに
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/10(日) 19:13
- かくしてみたりして
- 329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/10(日) 22:06
- おぉ〜何かいいね!こういう美貴も(w
この続きが見てみたくなった。
- 330 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 01:59
- 大奥みたいな感じでやって欲しいっす!
ミキティが王様で、亜弥ちゃんが使い。
二人が恋に落ちるみたいな!!
それを邪魔する人がいたら、文句なしです!!
- 331 名前:証千 投稿日:2004/10/11(月) 12:00
- 先にレス返しを。
>329様 あんな切ないのは書くつもりじゃ……w
続きですか!?気が向いたら書かせて頂こうかと思います!
ありがとうございます。
>330様 大奥のようなドラマチックにはならないと思いますが…
頑張ります(笑 ネタ提供ありがとうございます!!
設定はちょいちょい変わると思いますが…
- 332 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 13:33
-
「王子、こちらの件はいかがなさいますか…」
「王子、今日の予定時刻では…」
王子 王子 王子
「……疲れた」
もうこんな毎日ウンザリだ。
そう思っていても行動に移せないのが悔しい所。
とんでもなくでかいイスにふんぞりかえって、手を軽くクラップ。
ぱん ぱん
ガチャリ
「…失礼します。何か御用ですか、王子」
「あのさ、暇だから面白い事ない?」
美貴はこうやって毎日暇を潰す。
あ、もちろんこの城の王子としてやる事はたくさんあるんだよ。
でも美貴は仕事嫌いだからぜーんぶお父様に任せてるってわけ。
だからこの城の中では、両手を叩けばすぐに誰かとんでくる。
- 333 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 13:38
-
「…あ、王子に一つ報告がございました」
「ん?何?」
「少々お待ちを…おーい、入ってきなさい」
ペコリと一礼し、何やら誰か美貴に紹介するらしい。
新しいメイドかな?
「…新しく王子にお仕えします、亜弥と申します」
「王子の身の回りの世話をする事になってますので…王子?王子、聞いてますか?」
「…え…ああ、聞いてる聞いてる」
「専属のメイドとして、失礼のないように」
「ハイ」
なんて、なんて素敵なんだ。
新しく入ったメイドの子。
くりっとした目。
美しい容姿。
かわいらしい声。
まさに、美少女。
- 334 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 13:45
-
「では、私は失礼させて頂きます。くれぐれも失礼のないように」
「はい、十分承知でございます」
「あ…あ…」
もう一人の使いはまたペコリと一礼して部屋を出て行った。
『亜弥』と名乗ったメイドは美貴にニコリと微笑み、同じように一礼する。
なんだこのカンジ。
ふわふわして、どきどきして。
「あ、あ、あ、あ、…」
「亜弥。でございます、王子」
「あ、亜弥…亜弥、ちゃん」
「えぇっ?とんでもない、亜弥とお呼び下さい」
呼べるわけないじゃん。
他のメイドには普通に話し掛けられるのに、何でだろう。
た、多分、美貴と同い年ぐらいなのに…
「み、美貴がいいって言ってるんだから、呼ばせてよ」
「…王子が、仰るなら…」
「美貴の事は、王子じゃなくて…いいよ」
「そんなめっそうもない!!!」
「だ、ダメ…かな?」
確かに、お父様の前で馴れ馴れしくしていたら亜弥ちゃんの首があぶない。
「…じゃあ、二人だけの時…は?」
「では、なんて呼べば…」
「亜弥ちゃんの好きな呼び方でいいよ。もちろん、タメ語でね?」
「え、えぇっと…」
また悩む顔が超可愛い。
ヤバい、ヤバいよ。
- 335 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 13:47
-
「……みき、たん」
「へ?」
「…先程他のメイドの方が言ってたんです。王子は牛タンが好きだと…」
「あ、ああ。で、みきたん?」
「ハイ!」
亜弥ちゃんが、呼んでくれるなら。
顔がニヤけるのを我慢していつものスマイル。
こうして、たった数分で亜弥ちゃんとは打ち解けた。
そこには堅い関係はなくて。
友達が少なかった美貴にとって、最高のメイドさんになってくれた。
- 336 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 13:55
-
「……をしている!!!」
「すいませんっ、うっかり手を滑らせてしまいまして…」
「うっかりも何もあるか!!こっちに来い!!王様に処罰を下してもらわねば…」
ある日、広く長い大広間に怒鳴り声が響いた。
それは美貴の昼食を食べ終った頃、一角にある厨房からだった。
その怒鳴り声の隣に、震える声が聞こえた。
「ちょっ…何かあったの?」
「メイドの者が失敬をしたようで…」
「なっ、そんだけで怒らなくても………ちょっとどいて!!」
「あ、王子!」
よってたかって群がる使いの人たちを押し退けて厨房に入る。
たかが食器を割ったぐらいでうるさいったらありゃしない。
奥へ進んでゆくと、そこには美貴のお気に入りのメイドが。
「…亜弥、ちゃん」
「……みき、たんっ…」
そこにいたのは、怒鳴って顔が真っ赤になっているコックさん。
と、亜弥ちゃんだった。
どうやら亜弥ちゃんは手を滑らせて、美貴の食器を割ってしまったらしい。
そこでコックさんにこっぴどく怒鳴られ、亜弥ちゃんは涙を流していた。
「ちょっと、離してよ」
亜弥ちゃんの細い手首を捕まえ、お父様の部屋に向かおうとするコックさんを止めた。
なんか、許せない。
- 337 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 14:01
-
「お、王子!」
「いいから。美貴の食器なんかどうだっていいよ。だから、この子離して」
「で、ですが王様には…」
「いいから。こっち、おいで」
得意のガンつけでコックさんはビビッたようだ。
普段は美貴の一押しコックさんだったけど、何だか腹が立ってしょうがなかった。
涙を浮かべる亜弥ちゃんの手を握って、美貴の部屋へ向かう。
なんか、正義感溢れる少年みたいじゃん、美貴。
「ったく、下らない事で泣かしてさぁー…もう大丈夫だよ?」
「うっ…ぇぇっ…ごめんっ…なさいっ…」
「いいよいいよ。代わりの食器なんか腐る程あるんだよ?」
「だ、だってぇっ…みきたんにっ…嫌われたらどうしようって…っ」
「……っだぁぁー…」
お願いだから、そんな事言わないで。
お願いだから、そんな顔しないで。
泣きながら不安そうに言った亜弥ちゃんを、抱きしめたくなっちゃうから。
可愛くて可愛くて、仕方がないんだよ。
でも、抱き締める事なんかできない。
美貴は王子だけど、たった一人を抱き締める事もできない臆病者だから。
- 338 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 14:09
-
「…ねーっ、お父様お願い!!!」
「ダメだ」
「可愛い可愛い自分の子供が頼みごとしてるんだよ!?」
「何を言おうとダメなものはダメだ」
「ああっ、このくそオヤジ!!」
「なんだとこのくそガキが!!」
「「ウウーッ…」」
亜弥ちゃんはやっと泣き止んでメイドのお仕事に戻ったその夜。
美貴はどうしても、どうしても叶えたいお願いがあった。
それは。
「メイドを王子と一緒に寝かせるわけにはいかんのだ!!」
「だぁーから何で!??」
「そ、それは…その…み、身分のわけまえってものがだなぁ…」
「何が身分だよ!!自分はメイドと結婚したくせに!!」
「そ、それを言うな!!!」
「フンッ!」
自分の事を棚にあげてよく言えたものだ。
お父様は昔、城に仕えていた美しいメイド、つまり美貴のお母さまと
結婚した。
結婚するまでは、とんでもない障害がいくつもあったらしい。
「だったら亜弥ちゃんと一緒に寝たっていいだろ!!!」
「お前、淫らな事をするつもりじゃなかろうな…」
「そ、そ、そんな事しない!!」
…したいけど、そんな事できるもんか!!
ギャアギャアとお父様は美貴の言う事なすことにケチをつける。
と、そんな時。
- 339 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:05
-
「いいではないですか、王様」
そこに割って入ってきたのは、この城の専属音楽家のゴトウ。
キッと睨み付けると、嫌味な笑みを返された。
「だが、ミスター・ゴトウ…」
「王子頼みごとぐらい、丸く飲み込むのが王様ですよ?」
「……むぅ…貴方がそう言うのなら…」
ほんと、気にくわないやつ。
どこからかやってきて、嫌味っぽく喋りやがる。
美貴の天敵だ。
お父様にペコペコして、影では結構危ない事してるって噂だし…
「王子」
「……何」
「…良い夜を」
不敵な笑顔でどこかに去って行くゴトウ。
いつ見ても、美貴の鼻につくやつだ。
それにしても変なやつ。
美貴の事に対して肯定するなんて思ってもいなかった。
どうせ何か企んでいるに違いない。
「…美貴、ミスター・ゴトウに免じて許可する」
「あ、りがとう…ございます」
「では、もう眠りなさい」
何か、引っ掛かる。
でも亜弥ちゃんと一緒に寝られるなら。
そう思ったらうきうきする。
お父様の書斎を出て、急いで部屋に戻った。
- 340 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:07
-
バターンッ
「亜弥ちゃん!」
「どしたの?」
「お父様が、一緒に寝てもいいって!!」
「ほ、本当に?」
「うん!!早く着替えておいで!あんまり他の人に見られないように!」
「えへへっ、うん!!!」
ああ、なんて可愛いんだ。
可愛いメイド服からパジャマに変身する亜弥ちゃんもいいなぁー…
いやいや、違う違う。
- 341 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:11
-
「…みきたんっ!」
静かに扉を閉めて、ベッドの上に寝転がる美貴にとことこ近付く。
やっぱ、パジャマ姿はすんごく可愛くて。
ほんのりと石鹸の匂いがした。
「…えへへっ、ホントにいいのかなぁ?」
「何が?」
「だって、あたしメイドなのに…」
「いいんだよ。美貴は亜弥ちゃんがメイドだろうかなんだろうが、一緒にいたいんだ」
「…みきたん…」
感無量。
ウルウルの可愛い目で見つめられたら、もう何も言えなくなる。
はじめて亜弥ちゃんを見た時と、同じ。
「…じゃ、寝よっか」
「うん!!」
パチリ、と部屋の電気を消して、二人で布団の中に入った。
- 342 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:17
-
「…へくしっ」
「あ、寒い?」
「んーんっ、大丈夫」
寒がりの美貴ですら寒さを感じないんだけど。
かわいらしいくしゃみを聞いて、とっさに訊ねる。
あ、いいこと思い付いた。
「…たんっ?」
「こうすれば、あったかいよね?」
後ろ向きの亜弥ちゃんを、ギュッと抱きしめた。
もう、反射で。
柔らかくて、あったかい亜弥ちゃんの温もりは美貴なんかとは違う。
友達、大事な友達。
そんなんじゃないよ。
「好きだよ、亜弥ちゃん」
「…あたしも…って、言っていいのかな?」
「言って欲しい。亜弥ちゃんが、美貴の事、好きなら」
もう、この子以外好きになれないんじゃないか。
そう思わさせる程、彼女が愛しい。
声、笑う顔、泣く顔。
全部が、大好きだよ。
- 343 名前:あなたは召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:22
-
「あたしは…」
美貴の部屋には、二人だけ。
二人っきりで、愛しあいたい。
「あたしは、みきたんが好き」
何もかも大事にしたい。
全部ひっくるめて、大好きだよ。
そう言いながら、亜弥ちゃんは美貴の方に振り向いた。
「…キス、していい?」
「……ほっぺ、ならね」
ほっぺだけ、なんて言わずに。
ちゅっ、と音を立てて彼女の頬にキスを落とす。
当然ほっぺだけじゃ、満足できなくて。
少しづつ唇に攻めりより、口付けをする。
「…ほっぺだけって、言った」
「だって、可愛いんだもん」
少し不服そうに亜弥ちゃんは言う。
でも、決して抵抗はしてない。
だから、後少し、キスを続ける事にした。
最初は軽かったキス。
段々深いものに変わって、甘く感じる亜弥ちゃんの味。
息苦しそうに呼吸する音が、美貴の欲望をかきたてる。
もっと、もっと亜弥ちゃんが欲しい。
欲望のままに、激しく夜は更けていった。
- 344 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:28
-
翌朝
「…んぐぅー…」
ぐうぐうと爆睡する美貴の横には、亜弥ちゃんがいる。
本当なら起き上がってまた口付けをしたい。
そうは思っていても、眠くて身体が動かない。
「……たん?」
「…ぐー…ぐー…」
「みきたん王子、朝ですよん?」
「…ぇ…あ、亜弥ちゃん?」
「ふふっ、おはようございます。王子」
「う…あ…おは、おはよう」
何で?何で着替えてんの?
何でもうメイド服に着替えてるの?
寝起きだからボーッとしててうまく働かない頭脳。
そんな美貴を可笑しそうに茶化してわざと敬語をつかう亜弥ちゃん。
もしかして、昨日の情事は嘘だったとしたら。
「…えへへっ、早く起きるのだぁ」
「ふぇ…」
昨日、美貴が亜弥ちゃんにしたように。
頬にちゅっと音をたてて、キスをされた。
夢なんかじゃない。
- 345 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:32
-
「……」
「…みきたん?」
「………」
「…もしかして、今のヤだった?」
これ、現実だよね。
だったらもう思い残す事ないよ美貴。
目の前に、亜弥ちゃんがいる。
昨日愛しあった、大好きな人がいる。
「…ヤなんかじゃ、ないよ」
不安そうに首をかしげる亜弥ちゃんを、起き上がって抱き締める。
やっぱり、昨日と同じ愛しい匂いがした。
「……もっかい、していい?」
「…えっち?」
「ち、違うよぅ!!!!ちゅー!!!」
「あ、ああ、そっちか…」
「…何で残念そうにしてんのよ…」
「べ、別に…」
「たんのえっち!!もうしないもん!!」
「えっ!?ちょ、待ってよー!」
だってだって。
亜弥ちゃんが可愛過ぎるんだよ。
もうちょっとで唇が重なる所だったのに、ぷんすか怒った亜弥ちゃんは
美貴の部屋から出て行ってしまった。
でも、これは夢じゃない。
顔がニヤけて、ほっぺを抓って確認した。
- 346 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/11(月) 17:35
-
ガシャーーーーーーーーーーーーン
「……フッ」
あんな王子に渡して堪るか。
「……亜弥、か」
全ては、僕の手の中に。
- 347 名前:証千 投稿日:2004/10/11(月) 17:36
- 途中でタイトル間違えました。
脳内変換よろしくです…すんません、バカ作者で。
- 348 名前:330 投稿日:2004/10/11(月) 23:23
- いやー、最高です!!
続きを楽しみに待ってます!!!!
- 349 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/12(火) 18:29
- エロ王子キャワワ!!
続きが楽しみでございやす
- 350 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/13(水) 21:30
- メイドさんにもライバルが出現してほしい…と無理っぽいリクをしてみる
続き頑張ってください。
- 351 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:01
-
「ふんふんふ〜ん♪らったった〜♪」
もう、これまでにない位しあわせ。
亜弥ちゃんが来てから、美貴の人生は180度逆転した。
ホント、毎日楽しい。
亜弥ちゃんは美貴専属のメイドだからいつでも会えるし、好きな時に
キスだってできる。
ゴキゲンに鼻歌をうたったりすれば、それに答えて亜弥ちゃんも笑ってくれるし。
それに…それにね
「みきたんっ、あーん」
「あぁー」
なんて事だって、してくれる。
もちろん、お父様やお母さまがいない時だけね。
誰もいない二人っきりの大広間で、いちゃいちゃだってできる。
ああ、やっぱ幸せ。
- 352 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:06
-
コンコン
「は、はいっ!」
ちっ、こんな時に邪魔が。
亜弥ちゃんは急いで美貴の胸元から離れ、ドアの前に駆け寄った。
「…失礼致します、王子」
「……ゴト−?」
亜弥ちゃんとの時間を裂いたのは、キザな音楽家、ゴト−だった。
なんとなくそんな気はしていた。
いつだって間が悪い、こいつ。
ゴト−に聞こえないように舌打ちをしたら、亜弥ちゃんが焦ったように
美貴に耳打ちをする。
美貴がゴト−を嫌いなのは、決して一つの理由だけじゃない。
冷たい瞳や、人を見下したような性格はもちろんだけど。
そのずるいやりかたが、美貴は大嫌いだ。
- 353 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:22
-
「何か、用?」
亜弥ちゃんの肩に手を置いて、一歩引かせる。
こいつは亜弥ちゃんに何かとひっかかるのが美貴の難点だ。
そりゃあ、亜弥ちゃんはこの城のみんなの人気者だし。
可愛くて、よく仕事ができるから。
でもこいつは、何となくその一人とは違う気がしてくる。
「…いえ、王子は御関係のない事…。亜弥、君にちょっと用がある」
「…あたし…ですか?」
「今すぐ僕の書斎に来て欲しい。少しの間でいいんだ」
「っ…亜弥ちゃん、美貴のシーツ替えてくれるんでしょ?」
「それは他の者でもできるでしょう。王子はこれからお勉強の時間ですが…?」
「……みきたん?」
明らかに他の人に対する笑顔じゃない。
亜弥ちゃんは心配そうに美貴の顔を覗きこんで、そっと微笑んだ。
ゴトウをかばうように、美貴をなだめた。
なんでそんな事、すんだよ。
こいつが亜弥ちゃんに近付く理由なんて、何だっていいに決まってる。
「…外で待っている、すぐに来なさい」
「……ハイ」
扉が閉まる直前、ニコリと美貴だけに微笑んだ。
- 354 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:26
-
「……みきたん?」
「何…」
「ごめんね、ゴトウ様のお話が終ったら、すぐ行くから…ね?」
「……行くな、よ」
「え…?」
「あいつ、絶対おかしいよ。亜弥ちゃんに理由もなく近付いて…絶対おかしいよ」
「にゃははぁ、何心配してんのぉ〜」
「だ、だって…」
当の亜弥ちゃんは、全く気にしていなくて。
余計それが心配だった美貴は、唇を噛み締める。
亜弥ちゃんが一瞬美貴の不意をついて、唇に素早くキスをする。
そのキスを残して、亜弥ちゃんはゴトウの元に走って行った。
純粋な彼女だからこそ、それ以上美貴は何も言う事ができなかったんだと思う。
- 355 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:31
-
「……あのっ」
「…何だい?」
「お話って、何ですか?」
この子は純すぎる。
滑らかな絹のように、伸びやかな向日葵のように。
きっとそれがくすぐって僕に何かをもたらした。
そう、魔法のように。
「……今、言ってもいいんだね?」
「ゴトウ様の気に任せますけど……?」
「…ふっ、そうか…」
ただ、美しいものに引かれる。
ピアノを弾くような手付きでは壊れてしまいそうな程、美しい。
触れてみたいと僕はいつのまにか思っていた。
あの、王子が邪魔をするのなら、全てを破ってやると。
そう思う程、僕は亜弥というメイドを愛しているんだ。
- 356 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:37
-
「……君は、綺麗だね」
「は、ハイ?」
そっと、通路の壁に彼女を追いやった。
壁にもたれかかる彼女の柔らかい髪をなでて、それを愛でる。
「あ、あのっ…ゴトウ様…?」
「あいつの、どこがいいんだ…?」
「ハイ…っ?」
「あんなガキの、どこがいいっていうんだ…」
この子を射止めるには、まずはあの王子をいたぶってから。
そう決めていたものの、もう絶えられなかった。たった一人の無知な子供が多くの人々から愛を受けるのが、僕は昔から気に入ってはいない。
「…僕のものに、なってくれないか?」
答えてくれなくてもよかった。
彼女の唇に、触れられるなら。
- 357 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/15(金) 20:45
-
「………っ…ゴトウ!!!!!!!!!!!」
「…っ…みきたっ…」
「お前っ…お前何やってんだよ!!!!」
「やめてみきたん!!」
「亜弥ちゃんになんて事っ…」
「みきたんやめてっ!!」
もう、何も聞こえなかった。
一瞬だけ、彼女に触れられた事。
今シャツを掴まれている事も。
僕の目には、怒り狂う王子の姿しか、見えなかった。
「…っ…いいからっ、みきたん…」
「いいわけない!!ゴトウ…お前のした事はお父様に報告するっ…
もちろんそれだけじゃ済まさないぞ!??」
「……何でもすればいいだろう。所詮、父親無しでは何も出来ない犬ッコロが……」
首が飛んだって、いくら重い罰を背負おうとも。
もう何も考える気などない。
溢れる程の愛を受けたこいつが、僕に何を言うっていうんだ。
父親の権力だけを頼りにする
ただのガキが
たった一つの愛に溺れる事などは、許されてはいけないのだ。
- 358 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 20:46
- なんだか凄いシリアスになってしまったような…
こんなはずじゃなかったのに(笑
リクを下さった読者様、気にいらなかったらごめんなさい。
次回ぐらいで完結かと。
- 359 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 20:47
-
短編を。よしみきで。
- 360 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 20:48
-
きっとそれは、愛の表現だよね。
いつも丸め込んで考えるんだけど、そう思っていいんだろうか。
ふとした時にそういう空気が流れるのはお互い気付いてるんだけど。
言葉にできないから、ずっとずっと言ってくれないね。
アタシの気持ち、知ってる…と思うんだけどさぁ。
- 361 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:01
-
「みきた〜ん!!!!」
「亜弥ちゃぁぁん!!」
ああ、仲良いなぁ。
ホント、その位にしか思わなくて。
娘。とあややが共演すると、必ずあの子はあややに駆け寄って、いつも一緒にいる。
何か雰囲気似てて、たまに姉妹なんかに見えたりする。
見てて微笑ましいなぁ。って。
きゃあきゃあ遊ぶ二人を遠くで眺めていると、必ずと言っていい程こんな事を言われる。
「…ミキティ、取られちゃったね〜」
「……矢口、さん?」
悪戯っぽく微笑んだ矢口さんは、隣のソファに腰掛けた。
小さくても心は広い、アタシの先輩だ。
「そうっすね、仲良いですね」
「まるで恋人同士……ってそれだけかよ!!」
「ノリツッコミ下手…ってそれだけですけど?」
「……お前、腐ったミカンだな」
「え?よしざー、腐ってますか?」
「ああ、腐ってるよ」
呆れた口調に変わり、ハァ〜と頭を抱える矢口さん。
矢口さんの言いたい事は、よく分るんだけど。
- 362 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:05
-
「…だからぁ、嫉妬心って、ないわけ!?」
嫉妬、ですか?
そんなやりとりを何回か矢口さんと繰り返す。
別に体して考える事はないけど。
でもきっとアタシの心の隅に、置いてあるんだと思うけど。
ミキティとあややが仲良くしている所を見ても、ねぇ…
「きっと、嫉妬して欲しいって、思ってたりするかもよ?」
「や、どうかな」
「何でだよ、ソレ」
「ミキティに限って、そこまでは…」
彼女はとても性格がはっきりしている。
だからアタシもそれに惹かれたし、彼女自身もアタシを選んでくれた。
純粋に彼女を大事だと思っているけど、いまいち心が読めない。
あややには明るく笑いかける彼女には、色んな顔があるから。
- 363 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:10
-
例えば、二人きりの時。
ただ黙って雑誌を見ているか、携帯をいじっているか。
たまに話し掛ければ答えてくれるし、笑ってくれたりも、する。
不満は、決してないけど。
何か、何か違うよ。
ホントにアタシの事、そう思ってくれてるのかな。
って、思う事も少なくない。
だからって、それを聞く事も気が引ける。
だから、決めたんだよ。
このままが、いいんじゃない?って。
何もする事なく、お互い分りあってれば、それでいいって。
それきりあたしは、何も思う事なく彼女をフリーにさせて。
束縛されるのも嫌いだし、束縛するのも嫌だから。
悪魔でも、自然にね。
だから、話すキッカケもなくなりかけてるって、分ってるんだけどさ。
「…ダメなんじゃないの、そういう考え」
「え?」
「よっすぃって、いっつもそうじゃん?」
「……何が、ですか?」
「オイラ、そういうよっすぃ見るの、あんま好きくないんだよね」
不意に矢口さんが、真剣な目でしかとアタシを見る。
「…逃げてるの、そっちなんじゃ、ないの?」
逃げてる?
そんな事、ない。
そう正直に言い返す事は、出来なかった。
- 364 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:17
-
「…ミキティを自由にさせてるんじゃなくて、よっすぃは自分から手放してるんじゃないの?」
だって、それが一番良いんだ。
幾度となく、矢口さんにはそう言ったはず。
でも、矢口さんはアタシとは違う事を言った。
「ミキティの事、見て見ぬフリすんの、やめな」
「……見て、見ぬフリ……」
「そうだよ。ミキティがどう思ってるかなんて、ミキティにしか、わかんないっしょ?」
ミキティにしか。
彼女にしか、彼女の心は分らない。
確かにそれはそうだ。
いくら傍にいるあややでも、心を完全に見すかせるわけ、ないのか。
「いちばん大切だ。いちばん好きだ。って思える時が、いちばん通じ合う時なんだよ?」
ああ、そっか。
そんな簡単な事さえ、アタシは見失ってたんだ。
彼女を大事にしたいがために、手放してたって事、だよ。
でも、それってちがうんだ。
…やっぱ、ダメなんだ、アタシ。
- 365 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:21
-
「…よ〜っちゃぁんさん!!!」
「わっ!?」
いつの間にか矢口さんはいなくなってて、そこにいたのはアタシと元気に
笑うミキティだけだった。
なんか、マジックかなんかみたい。
いつも笑顔を絶やさないミキティを見て、矢口さんの言った事を
巡らす。
やっぱ、好きだわ、この子。
「…ん?どしたのよっちゃんさん」
「……好きだ」
「………ハ?」
「いちばん、好き、かも」
なんて伝えればいいか、わかんないし。
ロマンチックに、キザに言葉を回す事も知らない。
だからこう言って、わかってもらえればいい。
ホントの気持ちが、これだから。
- 366 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:34
-
「今まで、ゴメンね」
「…わ…」
何だか謝りたくて、その代わりに力一杯抱きしめて。
アタシの心を何度も揺さぶったその匂いが、また何かを訴えてる。
「…何か、ヘン。よっちゃんさん…」
「嫌?」
「ううんっ!!嫌じゃないっ…」
「……じゃあ、何で言ってくれないの?」
「…え…?」
「……寂しいとか、会いたい、とか、ね」
言って欲しかった。
本当は一緒にいたいんだよ、って。
彼女を抱き締めると、途端にそう思える。
もう彼女の頬は真っ赤で、何も言えそうもなかった。
そういう所が好きなんだと、また思えた。
「…あの、ね…美貴もほんとは…その…」
わかってる。
分ってるから、もういいよ?
そう言ってあげると、ふぅと息を吐いてアタシの腰をギュッと抱いてくれた。
これが精一杯の、愛し方なんだ。
そう思ってアタシも、何も言わない事にした。
- 367 名前:不器用な彼女なりに 投稿日:2004/10/15(金) 21:40
-
「……ミキティに言って欲しかったんだけど、ね」
「だ、だって…っ…」
「…照れてる、可愛い…」
「………うぅ…」
何故、あたしはこうなれたんだろう。
それは矢口さんのおかげ。ではなく。
きっとミキティ自身のおかげ、だと思う。
もちろん矢口さんの助言は確かだ。
でも
ミキティへの愛が見えたのは、ミキティがいたからだよね。
「…不器用だって、アタシは好きだよ。愛してる」
「……あり、がとう…」
「ずっと待ってるかんね。言ってくれるまで」
「………美貴が言えるまで、一緒にいてくれる…の?」
「うん。ずっとね」
やっぱりあたしは、こういう彼女が好きだ。
誰でもないこの照れ屋な子が、大好きだ。
いつか愛の言葉を口にしてくれるよ。
不器用な彼女は、素直に『愛してる』と。
FIN
- 368 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/15(金) 21:54
- ミキティかわいいよミキティ。
よっちゃんグッジョブ。てか矢口師匠かw
みきよしもいいですなームフーw
- 369 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/15(金) 22:34
- みきよし最高!!
矢口さんが偉大に見えたよ。
- 370 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 22:35
-
>348様 先日リクを頂きありがとうございました。
これからどうなるのかは作者にも不明……(笑
まあ温かく見守ってやってください。
>349様 最近はミキティからあやみき発言をなさるので…
こっち側としてはネタがつきな…(ry
>350様 結構長くなる予定なのでそれなりに…(謎
良い御考えをお持ちでらっしゃるんですねw
ありがとうございます、そのうち登場させてみようかと思います。
>368様 みきよしはいつもこんな感じなのですが…
ムフ−と感じられたなら作者としても満足です。
- 371 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 22:36
-
>369様 おぉ カキコ中にレスがついてたとは(笑
私の駄文の中では脇役に…ああすみません矢口さん。
でも立派な配役でしたw
- 372 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/15(金) 22:42
- 召し使いの話、もっと長くなること期待してもよいですか?w
修羅場萌え〜(・∀・)
- 373 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 22:43
-
飽きずにまだ更新w
- 374 名前:お弁当 投稿日:2004/10/15(金) 22:44
-
いつもあの人は、あそこにいる
美味しそうに御飯を噛み締めて、時折笑顔になる
いつしかその笑顔が あたしのお気に入りになるとは
- 375 名前:お弁当 投稿日:2004/10/15(金) 22:46
-
毎朝5時半起きで、あたしはある事をする。
きっちり制服の上からエプロンを着て、気合いを入れて。
美味しいね、って言ってくれるから。
明日も作ってね、って笑ってくれるから。
だから、あたしは毎朝お弁当を作る。
あの人のために、ね。
- 376 名前:お弁当 投稿日:2004/10/15(金) 22:52
-
「……おいし?」
「…ひょっひょまっへ」
「何言ってるかわかんないよぅ」
「んぐっ…っひょっほはっへっへは」
カラアゲ、ちょっとしょっぱかったかな。
卵焼き、カラが入ってたらどうしよう。
美味しくできでなくて、呆れられたらどうしよう。
でも、でもでも。
「…んぅ、美味しいよ、亜弥ちゃん」
「……えへへぇ、良かったぁ」
「ちょっと味が濃いけど、ごはんあるから大丈夫」
「…そっかぁー」
いつでもこう言ってくれるから、あたしも笑顔になる。
正直な感想が一番嬉しいんだけど、ちょっと寂しくもなる。
毎朝お弁当を作る甲斐があるし、早起きだって苦じゃない。
「明日、明日は何がいいっ?」
「んと…んと…食べたばっかだからわかんないよぉ」
「じゃあじゃあっ…和風と洋風どっちがいい?」
「えぇー…パンか米かってぇ?…んじゃパン」
「わかった!!サンドイッチでいい?」
「んー、亜弥ちゃんが作ってくれるんなら、何でも」
「…にゃははぁ」
そう言ってほっぺにキスをくれる、貴方。
みきたんはそうやって、『お返しだよ』と言う。
もちろん、あたしもそのキスだけで満足だから。
ソレ以上もソレ以下も、あたしは求めない。
- 377 名前:お弁当 投稿日:2004/10/15(金) 22:58
-
「んでも、悪いね、毎日」
「ううんっ、あたしが勝手にしてる事だもん」
「でもさぁー、美貴なんかしてあげられる事っつったら何もないし」
「ちゅーしてくれるよ?」
「そんだけじゃん」
「…えへへ、いいのっ」
「…そーゆー事か」
「そーゆー事っ」
自然と、いつの間にか距離が縮まって。
みきたんの細い腕のどこにあんな力があるのか分らないけど
ぐいっとあたしを抱き上げて、胡座の上に乗せる。
お昼の合間の時間が、あたしは大好きだったりする。
「…んー…お腹すいた」
「えぇ?足りなかった?」
「違うよ、そのお腹すいてるじゃない」
「え?」
あ、ここですんの?
あたしがそう言い終わる前に、唇を塞がれた。
「…ま、美貴の主食は亜弥ちゃんっていう美少女なんで」
「……ぶわぁーか。ちょっとどいてよっ」
「えぇー」
ずけずけと迫ってくるみきたんを手で制し、起き上がらせる。
ここまでくるとさすがに学校でするわけにはいかないしね。
- 378 名前:お弁当 投稿日:2004/10/15(金) 23:04
-
「美貴、超空腹なんですけどぉー」
「あっそ」
「何さ…目の前にいる御馳走を我慢してるんだぞ」
「一生ガマンしてなさいーだ」
「ふんっ、じゃあキスで我慢してやるよ」
「…にくったらしぃー」
もう何言っても無駄なのに。
自然と引き寄せられる力がみきたんにはあって。
何も言わなくても、あたしは目を閉じて唇を重ねる。
まあ愛の力だから、かな?
「家、帰ってから食べるか…」
「そーゆー問題じゃ…」
「ふふ、時間かけて食べた方が何倍も美味しいよねぇ〜♪」
「たん、言い方がヤラシーのぉ!!!」
「どうやって食べよっかなぁ〜」
「みきたん!??」
まあ、結局こういうわけ。
あたしはみきたんの大好物で。
お昼に持ってくるお弁当なんかより、あたしが目当てなのよ。
やれする事だのやれヤらしい事だの。
エロいみきたんはあたしは苦手だけどさ。
それでもみきたんのお弁当になっちゃったからには、尽くすしかないんだよね。
「決めた。今食べちゃおう」
「何言って…みきたんっ!?どこ触っ…」
「たっぷり味あわせてもらうよ〜ん」
「ちょっ…もうヤだぁぁ!!」
「いただきま〜す♪」
ゴチになられます。
FIN
- 379 名前:証千 投稿日:2004/10/15(金) 23:05
- ま、結局こういうオチ(笑
下手ですんません。
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 12:54
- …甘いです。ごちそうさまw
- 381 名前:きっと君にはかなわない 投稿日:2004/10/17(日) 20:35
-
「美貴ちゃん」
「ん?」
「……やっぱ好きだ」
「あ、ありがと」
やっぱ、大好き
のんの方が年下で、のんの方が少し背が低いけど
でも美貴ちゃんが、好きだ
正直に伝えたら こうやって美貴ちゃんは照れるから
たまにしか言わないけど
「…あのさぁ、辻ちゃんは美貴のどこがいいの?」
「全部」
「何かテキトーに聞こえる…」
「だってほんとだよ、美貴ちゃんの全部が好き」
「……そ…」
鼻にかかった声も 綺麗な手足も 優しい所も 全部が好きだよ
そう言ったら、美貴ちゃんは自分から聞いたのに興味なさ気にそっぽを向く
こういう所も、好きだけど
- 382 名前:きっと君にはかなわない 投稿日:2004/10/17(日) 20:39
-
「…でもさ、美貴と亜弥ちゃんって似てるじゃん」
「は?何であややが出てくるの?」
「や、例えだよ例え。…だったら、どっちでも良かったんじゃないかなぁーって…」
「……何で、そういう事、言うの?」
「だ、だって」
読んでいた雑誌を取り上げて、明らかに挙動不審な美貴ちゃんを問う
確かにあややと美貴ちゃんは似てる所がある
美少女な所とか 明るい所とか 底抜けな天然な所とか
「…違うジャン、全然」
「え?」
「のんが好きな美貴ちゃんは、違うよ」
「単純だけどさ。美貴ちゃんが、美貴ちゃんな所が好きだよ、のんは」
「…へ?」
「だから、大好きだよ」
自分でも、何言ってんだかわかんないけど
あややが持ってない所、美貴ちゃんはたくさん持ってるし
のんが好きな美貴ちゃんは、美貴ちゃん自身だから
- 383 名前:きっと君にはかなわない 投稿日:2004/10/17(日) 20:43
-
冷えている美貴ちゃんの身体を抱きしめて、匂いをかぐ
香水なんかじゃない、美貴ちゃんの匂いがのんは好き
大人っぽい美貴ちゃんだ
「……もう、そういう事聞かないでね、不安になるから」
「…ごめん」
「あやまんなくてもいいよ。ちゃんと分っててくれれば、それでいいよ」
「……ふふっ、ありがと」
「どう致しまして、あははっ」
少し背伸びして、頬にキスをしたら今度は美貴ちゃんからしてくれた
やっと手に入れた、高価で大事な宝物
やっとつかめた、君の心
のんは、きっと美貴ちゃんには、当分かなわないんだろう
FIN
- 384 名前:証千 投稿日:2004/10/17(日) 20:45
- …ののみき。
マ、マイナーだ…
もっと勉強してから書いた方が良いですね。見苦しい所すみませんでした。
一応王子とメイドさんのネタ考え中なんで、それの助作という事で。
暇があったらまたちらほら短編書くとおもいます
- 385 名前:証千 投稿日:2004/10/17(日) 20:45
-
>380様 お弁当の話はありがちだなぁなんて思ってたり…
でもありがとうございます。
- 386 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 20:56
-
美貴の恋人は、超面倒臭い。
かれこれ1年付き合っているわけで、思いでもたくさんある。
でも思いでって言っても、たいしたものじゃない。
遊園地に行くわけでもない 旅行するわけでもない
インドアな二人だから、お互いの家で写真を撮ったりするだけのデート。
別に、彼女が嫌いなわけじゃない
むしろ、好きだ
だけど彼女の我侭にはついていけない時もある
まあ、たいていついていけないけど
- 387 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:00
-
『みきたん、今すぐ来て』
深夜2時。とんでもない電話が美貴の携帯に着信した。
「ハ、ハァ?」
『今すぐ、来て』
「だって今夜の何時だと…」
『来なかったら、別れるから』
「な、何言ってんの…」
『本気だよ?みきたん、あたしと別れてもいいの?』
「わ、分ったから。行くから、今すぐ行くから」
おそらく、マジだ。
電話を切ってから溜め息混じりにそうおもった。
渋々コートを着て、玄関まで小走り。
「…なぁーにやってんだろう、美貴」
これから徹夜してレポートを仕上げようとする所だったのに。
でも彼女の言う事に逆らえはしない。
眠い目を擦り、靴を履いて部屋の電気を消し、暖かい家を出た。
- 388 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:03
-
「ひーっ…寒」
季節の変り目が早い秋。しかも深夜の夜の冷え込みは厳しい。
コートのポケットに両手を突っ込み、足早に彼女の家まで駆ける。
全く、自分は彼女に甘いと思う。
何を言われてもほいほい受けてしまうし、ヘタレだとも思ってる。
でも、それは絶対拒否しないから。
何だかんだ言って、美貴は彼女が好きだから
「…好きっつうか、なんつうか…」
この感情、うまく言い表せない。
単に好きという感情でここまでしてしまうものなのだろうか。
なんせ初恋だから美貴はそういう事に疎いのだ。
なんて考えている間に、もう彼女の家に到着してしまった。
- 389 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:07
-
ピーンポーン
「…入るよー」
インターフォンを押して、小声で勝手に承諾を得る
こんな事は日常茶飯事なのだけれど。
「…おじゃまします」
部屋の中は真っ暗で、誰もいないんじゃないか状態の暗闇
暗い所が大嫌いでホラー映画も苦手な彼女がこんな部屋に本当にいるのか。
手探りで明かりのスイッチを付けようとするも、手がかじかんで上手く行かない
ゴトッ
「……いる、の?」
突然の物音でたじろいだ美貴は、電気をつけるのをやめて音がする方へ近付く
暗闇の中で足をズリながら。
- 390 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:13
-
「…たん…」
「っ…亜弥ちゃん?ど、どしたの?」
不意に暗闇から、ドンッと美貴の胸に飛び込んでくるものが。
その温もりはすぐに伝わって着て、暗闇の中でも震えているのがすぐに分った
さっき電話で聞こえた彼女の声とは違い、とても掠れていた。
「泣いてる…の?」
「……っく……ぇっ…」
「あー…亜弥ちゃん…」
いつも明るくて、活発な彼女が泣いているなんて思えなかった、その時は。
ギュッと美貴を抱きしめて、声を噛み締めている。
それに答えてあげられたのか分らなかったけど、美貴も亜弥ちゃんを強く抱き締める。
こんな事しか、できないけど。
- 391 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:18
-
「とりあえず、電気つけよ?」
亜弥ちゃんをベッドの上に座らせようとしたけど、亜弥ちゃんはぐっと
美貴の手を掴んで離さなかった。
離れちゃ、ヤだ。って
嗚咽が漏れる声を抑えて、目を合わせないようにしてそう言った。
だから美貴は離れなかった。
暗い部屋の中、亜弥ちゃんの背中をポンポンってやって、ワケを聞く事にした。
「…どーしたの?何か言ってくれなきゃ、美貴わかんないよ?」
「わっ…かんないのぉっ…ひとりでっ…こわくっ…て…ぇっ…」
「電話くれた時は落ち着いてたのになぁ…。泣くの、我慢してた?」
「ふっ…ぇぇっ……」
「……あぁーまた泣く…」
お気にのシャツが涙でビショビショになってしまうのかな。
そう思う事も忘れて、彼女の髪を撫でる。
そこにあった感情は限り無く無限に近かったと思う。
ただ傍にいて欲しい。と言われたから、傍にいて。
でもそれは嫌じゃなくて。
ただ、美貴は亜弥ちゃんの傍にいるべき存在なんだと悟った。
- 392 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:26
-
とめどなく流れる涙を舌でなめとって、目尻にキスをする
すると苦しそうにしていた呼吸が落ち着いて、亜弥ちゃんは
美貴のお腹らへんに抱きつく。
「…ごっ…めん…夜遅いのに…」
「いいよ、眠気覚めちゃったし」
「…みきたんが来たら、もうワケわかんなくなっちゃって…」
「何で?」
「……わかんない。好きだもん…」
みきたんが好きだもん。
何回も聞かされたその言葉は、少し照れくさかった。
でも嬉しかった。
何故嬉しかったのかといえば、美貴も亜弥ちゃんが好きだから。
それしか理由がない事に気付く。
「…なんか筋が通ってないけど…ま、いっか」
「……今日、泊まってってくれる…?」
「ぁー…うん。美貴が帰ったら亜弥ちゃんまた泣いちゃうしね」
「…えへへっ、やったぁ」
「ちょーしのんなよ、お子様」
「みきたんと2個しかかわんないもんっ!!」
また始まった。他愛もない事で言い合いする。
ぷぅっと頬を膨らませ、泣き顔から怒り顔に変わる亜弥ちゃんの表情。
赤ちゃんかっつうの。
「…どっちにしろ、美貴がいなきゃ亜弥ちゃんはダメになるよ」
ぽすん、とベッドに寝転がった亜弥ちゃんの頬を撫でて言った。
その時の彼女の目は赤く腫れていたけど、どこか明るさに満ちていた。
- 393 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:30
-
我侭な彼女だけど、そんな彼女を愛せるのは美貴しかいない。
そう思うのは美貴の我侭だけど。
「…もう、寝なよ」
「……しないの?」
「したいの?」
「……んーん」
「なぁんだよ」
「だってみきたんが珍しく静かなんだもん」
「だって亜弥ちゃんが泣いたからする気なくなったんだもん」
「………むぅ」
「……ふふっ」
いつもなら何だかんだいってその可愛い彼女を求める美貴だけど。
何故か今晩はその気になれなかった。
彼女が泣いてしまった事
初めて美貴に弱い所を見せた事
なんだか気が薄れて、どうしようもなく彼女が好きでたまらなくなった
だからただ抱き締めるだけにしておこうと、そう思う。
- 394 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:39
-
「みきたん?」
「ん?」
「…おやすみ」
「ハイおやすみ」
「みきたん?」
「…何さ」
「……ちゅーしていい?」
「…どうぞ」
美貴の腕枕から離れ、唇にちゅっと音をたててキスをされた。
いつしても柔らかくて、いい香りがする彼女だ。
お返しに額や鼻頭に軽く口付けをするとまた唇にキスをされる。
結局こんな事を何回も繰り返している、いつものこと。
「…にゃははっ、みきたんかぁいい」
「そりゃどうも…うわっ、くすぐったい」
「へっへっへ〜」
「こらっっ…お返しだ!」
「キャァッ!?どこ触ってんのたん!!」
「ふん、お返しだよ」
脇腹をくすぐられた返却とでも言おうか。
胸に軽くタッチしたら、亜弥ちゃんは頬を赤くして美貴の足先を
蹴った。
「…ふぅ、本当に寝なさい」
「……ん……」
「うわ、早っ」
「……たぁーん…」
「何よ」
「………ちゅー」
「さっきしましたけど」
「ほんとに最後のちゅー!!!」
「わーかったから耳元でギャアギャア言わないの。ほら目閉じろよ」
「…むぅっ…」
少し乱暴に言ったらまた怒った。
ゲンキンなやつ。
引き寄せられるように唇を重ねて、また重ねる。
唇を舐めてまたそれを封じて、そんな行為を何度もする
- 395 名前:ひねくれた愛情 投稿日:2004/10/17(日) 21:46
-
ちょこっと出てきた彼女の舌に絡ませて、最後にチュッと唇を重ねた。
「……みきたんとすると、やめられなくなる」
「ああ、そう?」
「何か慣れてるんだもんみきたん」
「だって何度もしてるじゃん、亜弥ちゃんと」
「そうだけどぉー…えっちの時もすっごい……」
「上手いって?」
「……うん」
「亜弥ちゃんが感じやすいんだよ。だからやりやすいの」
「…あんま嬉しくないんだけどぉ」
「いいんだよ。美貴がしたいようにえっちしてるんだから」
「…納得できないなぁ…」
「じゃあ今確かめてみる?」
「やっ、いい!!」
赤く赤く染まる、頬。
何でだろう、また愛しく思う。
冗談は済まして、そのまま彼女を抱きしめて眠りについた。
色んな事をおしゃべりしながら。
亜弥ちゃんが完全に眠ったのを確認して、耳元で囁く
『愛してる』
FIN
- 396 名前:証千 投稿日:2004/10/17(日) 21:46
- ま、あやみき短編。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/17(日) 22:15
- 甘すぎてとろけそうです。
今夜はいい夢が見れそう。。。
- 398 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 23:06
- ごちそうさまです。w
- 399 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/19(火) 18:06
-
「っくっ…みきたんっ、待って!!」
無我夢中で走り続ける
周りの色なんか見えなくて 無色の美貴
追いかけてくる恋に 振り向く事ができなくて
「待って!!」
「はっ…なしてよぉっ!」
「ダメッ、離さない!」
「っ……」
いつもの茶色い瞳とは違った、彼女の瞳が怖かった
美貴の手首に印された赤い痕に目をやると、何故か痛ましい
何でこんなにもいらついて、うやむやな気持ちになるんだ
「…誤解、しないでっ…?」
亜弥ちゃんを取られた気がしてならない
誤解とか、そんなんじゃない
唇を重ねてしまった事は元には戻らないんだから
だから、こんなキモチ
- 400 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/19(火) 18:11
-
「お願い、ちゃんと、目見て?」
頬を両手で挟まれて、反らしていた顔を正面に。
違う、違うんだよ。って、亜弥ちゃんの目がそう言っているのが分った。
そんな事美貴だって分ってる。
だけど心がうらはらなんだよ。
「…あたしは、だいじょぶだよ。ちょっとびっくりしただけだから、ね?」
「……そういう、事じゃないって分ってるでしょっ…?」
「分ってる。でもみきたんが目反らしてたら、あたしだってみきたんの言いたい事わかんない」
言葉にしたくない。
なんて言って良いんだか、わかんないよ、美貴。
ゴトウが亜弥ちゃんの肩を強く抱いた事
唇を押し付けて亜弥ちゃんを奪った事
まさか、本当にそうだったなんて、知らなかったんだよ
- 401 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/19(火) 18:17
-
一人じゃ何もできないんだろう?
最後にそう言われた気がして、どうしていいか分らなかった
お父様の権限使って、自分勝手に生きてきた美貴だから
いざという時には、何もできないやつだから
ゴトウにそう言われた時は、何も言い返す事ができなかった
「…っ…情けないんだよぉっ…」
「え?」
「ゴトウの事だいっきらいな筈なのにっ…」
「みきた…」
「亜弥ちゃんにあんな事したやつなのに、何だか恨めないんだよ!!」
それは事実だったから
何でも完璧にこなすアイツを見て美貴は育ってきた
小さい頃から音楽教育ばかり受けて、同い年の美貴とは才能の差が明らかになっていて
だから余計悔しかった
美貴が出来ない事を、アイツは淡々とこなしてゆく
美貴が辛い時は、アイツは悠々と何もかもうまくいっていたんだ
どこかで美貴は、羨ましいと思っていたのかも知れない
- 402 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/19(火) 18:26
-
「…いいんだよ、恨んだりしなくたって」
「……っ…」
「そんな事出来る人じゃないよ、みきたんは」
涙が浮かぶ目尻をつねって、ニコッと笑った
つられて美貴は、笑ってしまう
「みきたんは、優しくて、あたしが一番大事な人」
「うん」
「一番キスしたいのは、みきたんと」
「…うん」
「ほらっ、もうやめて。あたしだってさっきの事思い出したくないのっ」
「……うん」
ゴトウがした事は、美貴が告げ口をすればすぐに下される刑だ
あわよくば追放だけでは済まされない事もある
でも、その権利は美貴にある
『所詮、父親無しでは何もできない犬ッコロ』
確かに美貴はそうだ
ゴトウの言った事に間違いはない
でも、アイツを消す事には繋がらなかった
アイツが亜弥ちゃんにした事は、もちろん許したくない
だけど、亜弥ちゃんは何も言わないから
「…ゴトウ様、もしかしていなくなったりする…の?」
「……本当はそうしたい所だけど。しないよ、それは」
「本当に?良かったぁ」
「……亜弥ちゃんが言うなら、美貴はそうする」
「…ありがとう。みきたん」
亜弥ちゃんは何が言いたいのかな
一瞬そう思った
でも聞けない
お人好しで優しい彼女の事
ただ、何も言う事ができなかった
- 403 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/19(火) 18:34
-
「…ミスター・ゴトウ、少しながら話がある」
どうやら漏れたらしいな。
書斎の扉に息を吹き掛け悟った。
とうとう僕の生き甲斐も消える事となった
「あー…他のメイドの者から聞いた話だ。確かかは知らぬが……」
「…ええ」
王様は躊躇っている
あのガキは僕の思惑通り父親に告げたらしい
これで満足なのだろう
ならば僕は消えよう
彼女に触れられたならば もう何も思う事はない
「…輩の専属メイドを存じているかね?」
「……亜弥の事、でございますか…」
「ああ、そうだ…」
王様の冷えた瞳が突き刺さる
専属音楽家として働いてきた僕の役職は誰が補うのだろう
そんな事を考え、俯き密かに笑った
「…通路でふしだらな行動をしたというのは…本当なのか?」
もったいぶるなよ
顔を上げて苦し気な王と表情を合わせる
お芝居にすぎないのだ
- 404 名前:証千 投稿日:2004/10/19(火) 18:37
- また微妙な…
後藤さんの黒い役はいい加減可哀想なので次回どうにかしましょう(笑
>397様 とろけちゃってください、存分にw
>398様 お休みなさい…駄文では悪い夢しか見られませんが。
- 405 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 15:18
- 微妙どころか(・∀・)イイ!!
メイドあややがものすごかわえー(*´д`*)
- 406 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:01
-
「…もし本当ならば、私としては処理をせねばならぬ。分るか?」
「……承知でございます、王様」
「…一番に信頼していた君がそのような事をするとは…残念だ」
そうさ
僕はロボット
言われた事を何だってこなすサイボーグ
もちろん誰にも逆らう事なく、無心で音を作り上げてきた
なすがままに、欲望のままに
崩れ落ちる。何もかもが、僕から消えてゆく。
僕には彼女に触れた想いしか残らない。
いつまでも、そうなのだろう。
バタンッ
「…お父様、それは違います」
「……美貴?勝手に入るでない。ここは…」
「ミスター・ゴトウ、すぐに書斎に戻るんだ」
「美貴、余計な事を言うな。下がれ」
僕にはあいつがわからない
今目の前で息をきらし、頑に王を睨む王子が、僕にはわからない
目を丸くしていると、ニッと微笑む
僕をかばおうというのか
- 407 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:08
-
「誤解です、お父様…」
「何がだ?」
「ミスター・ゴトウがメイドの亜弥によからぬ事をしたというのは…事実無根にあります」
「…矛盾しているが。得に美貴、お前は近くにいたと聞いたが…?」
何故だかわからない
ゴトウを傷付けたくはなかった
もしゴトウがこの城からいなくなれば、美貴はせいせいする
でも、無性にイライラした
こいつがいなくなれば、今までの事も忘れられるのに
「……っ…確かにいました。でもそのような事は目にもしていません」
「…王…子…?」
「…ううむ…ミスター・ゴトウ、どうなんだ?」
「っ…ゴトウ…」
すっごいカッコつけてるみたいだ
お前なんか、どうとでもなってしまえばいいんだ
本当はそう思ってる
でもそれをする気になれない
だから美貴は、お前をかばうんだ
頼むから 頼むから、何も言わずに頷いてくれ
- 408 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:14
-
「……ミスター・ゴトウ、本当にそのような行為をしたのか?」
俯いてないで 答えてくれ
正直に言う
美貴はお前が嫌いだ
だけど失いたくはない
何か言ってくれ
「……いいえ。僕は確かに、メイドに手を出しました」
「ゴトウッ…」
「…そうか。では荷物を整えろ。最後の忠告だ」
「お父様!!追放するまでもないことです、ゴトウは…」
「お前は黙っていなさい」
卑怯なあいつが、素直にこくりと頷くなんて
美貴は別の意味で、またあいつが嫌いになる
せっかく助けてやろうとしたのに
何で甘えられないんだよ
いつだってそうだったあいつが、大嫌いだ
大嫌いだ
- 409 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:25
-
「っ…待って下さい!!!!」
「…何だ美貴」
「ゴトウが追放されるなら、美貴もこの城を出ます」
「何を言って…」
「跡取りは他にいるんですか?美貴がいなくなれば、この城も全て無くなります」
「そういう問題じゃあな…」
「お願いです!!!」
あっけらかんとしているゴトウを背に、美貴は床に手をつけた
生まれてはじめてこういう事をした
「…お願いします、お父様……」
「何をするか美貴!!頭をあげろ!!」
「ゴトウを辞めさせないと誓って下さい!!」
「…美貴……」
何でこいつのために一生懸命なんだろうか
お父様に頭を下げてまで 普通ならこんな事しない
だけど だけど嫌だ
「……分った、分ったから。美貴、頭をあげなさい」
「王様…」
「…ミスター・ゴトウ。今回は王子に免じて罰は無しとする。
だが次にこのような事があれば、例外ではあるが……」
お父様はゆっくりと手をさしのべ、ゴトウと手を交わす
それと共に美貴は、ゴトウに微笑みかける事ができた
無性に嬉しい。素直にそう思う。
- 410 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:36
-
その後
うららかな春に包まれ、いつもの城の風景。
もちろん、あの後ゴトウの辞職は撤回されて。
必死に頭を下げた美貴は二度とお父様に服従しないと誓った。
そして、愛しのあの子とは……
「……離れろゴトウ!!!」
「ヤだね」
「…みきたぁん、あたしはどーすれば…」
「こんの恩知らず!!助けてやった事も忘れやがって…」
「誰も助けなんか求めてない。お前が勝手にした事だ」
「だぁー!!とにかく亜弥ちゃんから離れろ!!」
「嫌だと言ってるだろう」
はたまた、乱闘騒ぎの直前。
ゴトウは亜弥ちゃんにマジらしくすっぽり抱きしめて離さないわ
美貴にいつの間にかタメ語だわ。
助けてやらなければよかったと後悔している。
「同い年のお前に敬語使ってたなんて…ああ寒気がする」
「なんだとぉ!?つーか亜弥ちゃんは美貴の婚約者なんだよ!離せ!!」
「えぇっ!?み、みきたん…?」
「あ…う、あの、美貴は…その…そう思ってるけど……」
「…んーん、嫌じゃないっ。あたしも、あたしもみきたんと結婚したいもん…」
「亜弥ちゃん…?」
「みきたん……」
「…………」
ゴッ
「ああごめん、手が滑った」
「っつぁぁぁぁぁ!???目、目がぁぁ!!」
「ゴ、ゴトウ様!??」
こんにゃろう、いつか追い出してやる
ゴトウの放った右の拳が美貴の目に直撃した。
おまけに亜弥ちゃんはしっかりとゴトウに抱きしめられてて離れないし。
「
- 411 名前:君は召し使い 投稿日:2004/10/22(金) 16:42
-
「こら待てゴトウー!!!!」
「ミスター・ゴトウと呼んで欲しいな」
「もう二度と呼んでやるもんかぁぁ!!」
「みきたんダメェ!」
とにもかくにも
ラブラブな毎日を過ごせるのは、いつになるのやら
もちろん亜弥ちゃんとは結婚するつもりだよ
どんな障害があろうともね
でも
この三角関係はいつまでも 続きそうだ
FIN
- 412 名前:証千 投稿日:2004/10/22(金) 16:44
-
はぁ…終った。
もうなにもかも終りました。
当分中編は書かない事にします。見苦しいので。
>405様 やっと終りました。駄文ですが。
やはし自分は面倒くさがりなので中編やら長編は苦手です。
読んで下さりありがとうございました。
- 413 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/22(金) 22:38
- あははは!ミスター・ゴトウ最高!
- 414 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 16:35
-
「…みきたぁーん」
「……どしたの亜弥ちゃん?」
「………うぇー…」
「な、何」
いつも活発で元気な彼女が、トロンとした目つきでやってきた。
寂し気に息をつき、美貴の肩に頭を押し付けて、また小さく唸る。
また何か、学校でドジをやらかしたんだろう。
そう思って美貴は亜弥ちゃんの背中を優しく撫でてあげる。
「…学校でまた何かしたの?」
「……友達に、馬鹿にされた…」
「何で?」
「…みきたんに言っても、わかってくれないもん」
「んな事ないよ。聞くよ」
「…ぜったい、ぜったいぜったい笑ったりしない?」
「しないよ。亜弥ちゃんの言う事、馬鹿にしたりしない」
「…じゃ、言うね?」
そのくりくりした瞳を上目遣いにして、美貴を見上げる。
やっぱりこの子にはかなわない。
そう思って亜弥ちゃんの元に耳を寄せる。
また友達に馬鹿にされたというなら、彼女の事だ、どうせ大した事じゃない。
そう思ってた。
- 415 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 16:43
-
「…サンタって、いるよね?」
「ハイ?」
「…クリスマスに、サンタさんってプレゼントくれるんだよね?」
「え…え?」
「だからぁ…夜中に寝てる間、枕元にプレゼント置いてってくれる…」
ちなみに、この子は高校2年生です。
「だっはっはっはぁ!!!サ、サンタって…あーっはっはっはっは!!!」
何を言い出すかと思えば、そんな夢みたいな事。
純粋と言うか単純というか。
考える事がお子様なのはしょうがないけど、そんな事を友達に言えば馬鹿にされるに決まっている。
寝ている間にプレゼントがあるのはサンタがした事じゃない。
まさか本当に信じてたりするの、亜弥ちゃんは。
「な、何言ってんの亜弥ちゃん。あー、笑いが止まらな…」
「…笑わないって、言ったじゃん……」
「だ、だってあまりにも非現実的だったからさぁー」
昔っからの幼馴染みだから、分るけど。
高校生にもなってそんな考えを持ち合わせているとは思ってもいなくて。
まあ、そんな所が好きなんだけど。
笑い過ぎて涙が出てきた所で発作はおさまり、ふと亜弥ちゃんの方を見る。
「…ばかぁっ…みきたんのバカァ!!」
「へ…?亜弥ちゃ…」
「みきたんなら笑ったりしないと思ったから言ったのにっ…もう大っ嫌い!!」
「あ、亜弥ちゃん!!」
- 416 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 16:48
-
「…美貴、馬鹿なの…?」
ああ、やりすぎちゃったかな。
確かに笑ったりしないと言ったけど、予想外だったんだもん。
亜弥ちゃんは涙を浮かべて美貴に背を向け家に帰ってしまった。
…ちょっといじりすぎたか。
「…サンタ、ねぇ……」
亜弥ちゃんとはもう18年の付き合いになる。
何でも言い合える存在だったけど、今のは別にしておこう。
毎年クリスマスは一緒に過ごしたのに、突然あんな事を言い出すなんて。
しかもサンタがいるなんて本気で信じてたんだ。
そりゃあ、亜弥ちゃんちはお金持ちだし、ママやパパはもんのすごい甘いから
寝てる間にプレゼントあってもおかしくないわけで。
で、亜弥ちゃんはそれをサンタさんの贈り物だと今まで信じてたってことだ。
「…面倒な事、しちゃったなぁ」
とぼとぼと家路につき、携帯を開く。
クリスマスまで、あと3日しかないよ。
- 417 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 16:53
-
えぇと、どうすればいいんだろう。
メールでごめん、というのもたどたどしいよね。
っつうか美貴が謝るべきなのかな。
ああ、謝るべきだよね、亜弥ちゃん泣きそうだったもん。
…でもさ、サンタはいないんだよ、現実的に言っちゃえばね。
それを素直に告げるか、誤魔化して美貴も
『サンタさんにプレゼント、もらえるといいね!!』
なぁーんて……
事はしたくないよ。美貴、大学生だよ。大の大人だよ。
「ああ!!面倒だなぁ!!!」
…なんつって、美貴も昔は亜弥ちゃんみたいに純粋だったんだよねぇ。
とはいっても、美貴がサンタを信じていたのは幼稚園の頃だけだけど。
サンタの正体はうちのオヤジだという事を知って愕然としたね。
希望と夢を運ぶヒゲをはやした紳士的なおじいさんだと思っていたのにさ。
…でも、亜弥ちゃんもそう思ってたんだよね。
「…美貴、結構酷い事しちゃったよな…」
自己嫌悪。
一体、美貴はどうすれば。
- 418 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 16:58
-
「……ふぅーん、サンタねぇー…」
「お願い、何かいい案ない?」
大学の講議の合間、友達の梨華ちゃんに相談してみた。
参考になるか分らないけど。なんて言ったら怒られる。
どうして美貴がここまで必死になるのかといえば。
亜弥ちゃんは大事な妹みたいなもんだし、まあ亜弥ちゃんに甘々なのよ。
「…もとはといえば、美貴ちゃんが悪いんじゃない」
「だってサンタなんているわけないじゃん。美貴は事実を言っただけ…」
「いくら高校生と言えどもそれ位の夢は持ってる筈よ。美貴ちゃんのせいで
亜弥ちゃんの夢は崩れたのよ。しかも友達にも笑われたって言うじゃない。
一番信頼している美貴ちゃんにもそんな事言われたら、亜弥ちゃんだって泣きたくもなるわよ」
「……美貴が悪うございましたー…」
「それにしても、亜弥ちゃん。何でサンタにこだわるのかしら…」
「あ…そういえば…」
今までのクリスマスの中で、亜弥ちゃんは一度もそんな事を口にしなかった。
サンタの事とか、プレゼントはあれがいいだとか。
幼い小学生の時でさえ、大人しく亜弥ちゃんはクリスマスツリーを見つめてにこにこしているだけ。
だから美貴も何も言わずに、毎年過ごしてきた。
思い当たるふしなんて、それこそなかった。
- 419 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/23(土) 17:08
-
真っ白のおいしそうなケーキ。
美貴と亜弥ちゃんはそれを見つめて、幼い頃よく憧れていたものだ。
一緒に手を繋いで、おいしそうだねって。
クリスマス当日にならないと食べられないから、まだ食べちゃだめ!
って、伸ばした手をはたかれた事もあった。
「……他に、何かあったっけか…」
3年前のクリスマスは、何週間もかけて作ってくれたマフラーを亜弥ちゃん
からプレゼントされた。
亜弥ちゃんも大人になったなと思って、感動したよ。
結局糸がほつれたまんまで、一日でぼろぼろになっちゃって。
亜弥ちゃんは涙ぐんで、ごめんねって何度も謝って。
中学2年生でも、すっかり大人っぽくなった亜弥ちゃんを見て
美貴もしみじみきたもんだ。
でも、思ってる事は小学生並みなんだよなぁ。
そういう所が可愛くて、亜弥ちゃんが何か悪い事をしても、
美貴は甘い目で流してしまう。
だって、上目遣いされたら何も言えなくなっちゃうし。
大事な妹みたいに思ってたけど、今ではちょっと違う。
ずっと傍にいるからマヒしてたけど、家族とは違う感覚。
クリスマスに、言おうと思ってたんだけどな、この気持ち。
言えるかな。
亜弥ちゃんが、好きだって。
- 420 名前:証千 投稿日:2004/10/23(土) 17:09
- …随分昔にボツにしたネタを使ってみました。
ベタやなー。と思った方もいるでしょうがw
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 18:15
- いいですね。亜弥ちゃんが単純でおもろw
- 422 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:19
-
「…美貴、食器片付けられないから早く食べて」
「……クリスマス…サンタ…」
「ちょっと、聞いてる?」
「んぅー…サンタ…サンタァァー…」
晩御飯の肉を口にする事もなく、一人でサンタと格闘。
思えば今日はイヴだというのに、美貴は何もできずにいた。
亜弥ちゃんのためにできること。
サンタを馬鹿にした美貴が悪かったんだし、亜弥ちゃんになにか
してあげられる事があるはずだと思った。
だけど、何も思い付かない。
「ねえねえおかーさん、明日はクリスマスじゃん」
「うん。あ、アンタ亜弥ちゃんの所に泊まるんじゃないの?」
「え、ああ、た、多分…」
「プレゼントの一つや二つ用意してあげたら?亜弥ちゃんに」
「……プレゼント?」
そうだ、そうだよ。
藤本美貴、いいこと思い付きました。
- 423 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:24
-
「はぁ?サンタの衣装を貸せ?」
「お願いよっちゃん!!明日だけでいいんだ!!」
そうだ、美貴がサンタになればいい。
劇団員の友達、よっちゃんの所まで足を運んで頼み込む。
亜弥ちゃんと仲直りをするには、これしかないから。
計画通りに行くかわかんないけど、できることまでやりたい。
「…で、何に使うの?」
「え、えと…その…」
「んぅ?」
「…えと……」
亜弥ちゃんのために、サンタになりきる。
なんて言える訳がない。
「…お願い、理由は聞かないで」
「は?意味わかんねぇなぁ…ま、いいや。洗って返せよ?」
「あ、ありがとう!!」
よっちゃんは何も言わずサンタクロース変装セットを一式かしてくれた。
やっぱり持つべき者は友達。
なんて言ってる場合じゃなくて、次はプレゼントの用意だよ。
- 424 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:27
-
それにしたって、プレゼントは何をあげればいいんだろう。
亜弥ちゃんの趣味は大体分る。
でも、クリスマスだからこそあげられるものと言えば思い付かない。
ありきたりなものじゃあガッカリするだろうし、かといって高価なものは
大学生の美貴には程遠い。
とりあえずイチマルキューに駆け付け、ウィンドウにへばりつくだけ。
「…うー、高い……」
いや、買えなくはないんだよ。
一生懸命溜めた貯金を使えばね、買えなくはないんだよ。
でもバイト代を家にも入れなきゃいけないし、私情で使う事もあるし。
8万のリング買う事くらいは、できるんだよ。
- 425 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:30
-
『アタシ、これ欲しいんだよねぇー…』
『ん?…うげっ、ゼロが一個多い…』
『でしょ?パパに頼んでもさすがに買ってくれないしぃー…』
『そ、そっか…』
なんてやりとりを、何ヶ月前に亜弥ちゃんと交わした事があった。
ウィンドウの前を通り過ぎた瞬間ふと思い出して悩みまくる美貴。
買ってあげれば、喜ぶだろうなぁ。
みきたん、ありがとうって、可愛い顔で笑うんだろうなぁ。
なんとしても、カッコよく演出したい。
「……しゅいましぇん、これくらさい……」
「はい、かしこまりました」
ああ、貯金が減った。
- 426 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:34
-
「ねえねえ亜弥、今日予定ある?」
「え…無い…ともいえないんだけど……」
「何ぃ、恋人でもいるの?」
「ち、違うよぉ…違うけど……」
恋人じゃないもん。
そんなんじゃ、ないもん。
でも今年は過ごせないかもしれない。
なんか、すっごく恥ずかしくて。
カァッとなって、みきたんにあんな事言っちゃった。
せっかくの昨日のイヴも、勇気を出せずに誘えなくて。
今日のクリスマスなんて、仲直りもできなさそうだし。
みきたん、どう思ってるかな。
今、何してるかな。
なんかあたし、みきたんの事ばっか、考えてるよ。
- 427 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:41
-
毎年毎年、一緒に過ごしてきたクリスマスなのに。
これで壊れちゃうなんて、絶対ヤだ。
でも、あたしはみきたんにどうしたいのか、どうして欲しいのか
わかんない。
だから、何も出来ない。
学校から帰ってくると、テーブルに色んな料理が盛られている。
美味しそうなんて言葉は出てこない。
みきたんがいないなら、クリスマスなんて意味ないもん。
なげやりな気持ちになってきて、どうしようもなくみきたんの事想ってる。
「亜弥ー、美貴ちゃん誘わなくていいの?」
「え…でも……みきたん…」
「美貴ちゃん、何か予定、あるの?」
「わかんない…」
「残念ねぇ、今年は泊まらないのかしら……」
何でママが残念がるの。
ちょっとした疑問ながらも、受け止めてしまう。
みきたん、多分バイトあるよね。
もう大学生だもん、あたしとは付き合ってられないよ。
ますます不安が高まってきて、いてもたってもいられない。
「…っ…みきたんの所、行ってくる!!」
あやまんなきゃ。
あたしが悪いのかわかんないけど、とにかくみきたんに会って何か伝えたい。
一言だけでも、伝えたいよ。
- 428 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:48
-
「…え…みきたん、やっぱりいないんですか?」
「朝に家を飛び出してったきりまだ帰ってこないのよぉ。
さっき電話あって、遅くならないようにするって言っただけで切れちゃって…」
「…バイトとか、大学じゃないんですよね…?」
「さぁー…あの子ったら、講議さぼったのかしら……」
どこいっちゃったんだろう、みきたん。
みきたんのママさんにお辞儀をして、とぼとぼ家に帰る。
今夜はみきたんと一緒にすごせない。
そう思うとなんだか寂しさでいっぱいになる。
毎年一緒に過ごしてきたから、余計しんみりする。
みきたんがいないクリスマスなんか、つまんないよ。
アスファルトに落ちた雫を無視して唇を噛み締めた。
- 429 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 20:56
-
「くっそぉぉーっ、美貴の馬鹿ぁぁぁぁ!!!」
無い。無い無い無い無い無い無い無い無い。
預金通帳が、無い。
「美貴ちゃーん…あたし帰っていい…?」
「ダメ!!あれがなかったらおかーさんに殺される!」
「どうせ3万ぐらいしか残ってなかったんでしょ?だったらあきらめようよー」
「口座番号知られたらそれこそ大変だよ!!ってゆーか美貴にとっては
3万は大金なんだよ!!!ほらっ、もっとよく探して!!!」
確か…えとえと…銀行でお金降ろして…リング買って……
それから通帳をどこにやったか覚えてないんだよぉぉぉ!!!
駅を行ったりきたり、大学の講議が終った所で通りかかった梨華ちゃんに手伝ってもらう。
今日の講議をサボった美貴に罰があたったのか。
神を悔やんでも悔やみきれない。
さすがにお母さんには無くしたなんていえないし。
「…え!?もう七時!???」
「あたしのクリスマス返してよね、美貴ちゃん…」
「だぁぁ!!どこだよ預金通帳ー!!!って………」
なにやら、ジーパンの後ポッケに嫌なもこもこ感が。
「…あった……」
預金通帳、ハケーン。
- 430 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 21:01
-
「あったぁぁ!!」
「バカじゃないの!?ずっとポッケに入ってたんじゃないの!!」
「ご、ごめん。ああやれやれ、やっと帰れ……」
ようやく安堵の息をついた瞬間、駅のアナウンスに耳を疑った。
『えー…多大な降雪により○○線の運行が不可能となりました。
御利用の皆様にお詫びともに駅員共々出来るかぎり運行を早めたいと
心得ています………』
「…どうするのよ美貴ちゃん…」
「走って帰る」
「しょ、正気?ここから家まで何キロあると思って……」
「タクシーもバスもどうせ使えないよ。この足で帰ってやる!!」
「っていっても…この雪道を!?」
美貴に不可能はない。
電車なんかなくたって、絶対に12時までに帰るんだ。
亜弥ちゃんが待ってる。
クリスマスの少しの間でもいい、美貴がサンタになって、亜弥ちゃんを喜ばせるんだ。
トナカイなんていらない、本物よりカッコイイサンタになってやる。
- 431 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 21:07
-
テレビを見ても、みんなとおしゃべりしても。
つまんない。
「おねーちゃん、美貴ちゃん来ないのぉ?」
「え…あ、今年はムリみたいだね」
「えー、つまんないー」
「そうねぇー、美貴ちゃんどうしたのかしら…」
「そうだよな。毎年一緒にいたから、なんかなぁー…」
むくれる妹を促して、自分にも言い聞かせる。
光るクリスマスツリーも見る気がしなくて、料理も食べる気がしない。
足早にリビングから出て行き、お風呂に浸かって威圧感にひたる。
「……みきたん……」
一緒にお風呂入って、一緒にベッドでおやすみしたかった。
そしたら、サンタさんだって来てくれるよ。
サンタは本当にいるって、おじいちゃんがいってたから。
あたしって、相当子供っぽい事言ってる。
わかってる。でも、信じたいんだもん。
みきたんが、サンタさんになって、現れてくれないかなぁ。
「…来る訳ないし…ばっかみたい…」
ばしゃっと鏡にお湯をかけて、歪むあたしの顔。
これまでにないくらい可愛く無い、あたしの顔だった。
- 432 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 21:12
-
「…あれ?亜弥、もう寝るのか?」
「あ、うん。何か…疲れちゃって」
「そうか…じゃ、おやすみな」
「うん、おやすみパパ」
妹だってこんな時間に寝ないのに。
お風呂から上がって即座に寝る事にした。
時刻は10時半。まだみきたんは家にも帰っていないらしい。
軽く溜め息をついてベッドにダイブして、写真とにらめっこ。
去年、一昨年、一昨年の前、そのまた前、そのまたまた前………
ずっとずっと、傍にいたみきたん。
あたしがママに怒られて泣いている時、かばってくれたみきたん。
あたしがいじめられているとき、助けてくれたみきたん。
少しだけいじわるなみきたん。
でもすっごく優しいみきたん。
あたしが大好きな、みきたんがいない。
写真をベッドサイドに置いて目を閉じる。
お願い、サンタさん。
みきたんが、逢いに来てくれますように。
- 433 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 21:16
-
「ハァッ…ハァッ…お、おかーさん…み、水……」
「アンタ何してたの今まで。こんな時間に…」
「もう、何も聞かないで……はぁっ、くるし……」
「電車、止まってたんだってね。どうやって帰ってきたの?」
「……徒歩」
自慢の足を使って、我が家に到着したのは夜の11時。
なんとか12時に間に合う事ができた。
「あ、亜弥ちゃんち行ってくる…」
「こんな遅くに迷惑じゃないかしら…」
「大丈夫。ママさんに言えば通してくれる…ハァ…」
「…って、アンタ何よその格好」
「……触れないで。い、行ってきます…」
死ぬ程恥ずかしい。
帰ってくるなり貸してもらったサンタの衣装を着込みすぐに亜弥ちゃんちへ。
お母さんには変な目で見られるし道端で会う人には凝視される。
深く赤い帽子をかぶってカモフラージュするものの、警察に見つかれば御用だ。
でも、これも亜弥ちゃんのためだ。
大好きだから、大好きだから。
- 434 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 22:43
-
「ふっ…はぁっ…はぁっ…はぁー………」
亜弥ちゃんちについたものの。
家の明かりは消えてるし、肝心の亜弥ちゃんの部屋の電気も付いていない。
時刻は11時すぎを回っている。
もう松浦家のクリスマスは終ってしまった。
「…うそ……だろぉー……」
せっかくサンタの格好してきたのに。
亜弥ちゃんに会えないなんて、悲し過ぎる。
リングの入った小さい箱をぐっと握って、亜弥ちゃんちを望む。
「…不法侵入罪で捕まりませんよーにっ…よいしょっ…」
亜弥ちゃんちの間取りは大体知ってる。
だからってこんな事しちゃいけないんだけどね。
まずは手始めに壁にあるツッカケに足をかけ、するする屋根に登る。
結構身軽な方だから物音も起てずに登る事が出来た。
…これって、軽い犯罪だよね。マジに。
- 435 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 22:47
-
ガララ………
なんて不用心な。
亜弥ちゃんの部屋に辿り着き、不安定な足を整えて窓をそっと開ける。
鍵が開けっ放しだったのでホッとしたのも束の間、亜弥ちゃんを起こさないように
そぉーっと窓に足をかけた。
ギシッ
「ひっ…」
サッシの部分がきしみ、嫌な音を出す。
ベッドに目をやると、目を閉じて何事も無かったかのように眠る亜弥ちゃん。
よ、良かったぁ
「…おじゃまします…」
よし、なんとか成功。
無駄にふわふわするサンタの格好で少し汗をかいた。
しゃあない、ヒゲだけでもとるか。
- 436 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 22:53
-
「…っ…ん……」
「あ、あ、あ、起きないでぇっ…」
怪訝悪そうに眉にしわをよせて寝返りを打つ亜弥ちゃん。
焦りながらはだけた布団をかけなおし、寝顔を伺う。
やっぱ可愛い。
こんなに大人っぽかったっけ、亜弥ちゃんって。
この間までよちよち歩きしてたと思ってたのに、いつの間にか表情が大人になってる。
泣いたり怒ったり笑ったり。色んな亜弥ちゃんを、美貴は知ってる。
だけど、もっと知りたいと思うようになった。
亜弥ちゃんの、もっともっと可愛い所。
知りたいと、思うようになってる。
「…リング、置いておくね」
寝てる所、起こせないよ。
ポケットに入っているリングを枕元に置いて、そっと髪を撫でた。
ヴ− ヴ− ヴ− ヴ−
「わっ、ちょっ、静かに!!!」
最悪だ。
こんな時に携帯のバイブ音が亜弥ちゃんの部屋に響くとは。
急いで携帯を開いてみると、それは梨華ちゃんからのメール。
さっきの事で不満があったらしくぐちぐちと書き綴られてあった。
あのキショ女め。
「んっ…んぅー………」
「ゲッ、起きたっ…」
亜弥ちゃん、覚醒。
- 437 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 22:58
-
「……ん…誰ぇ…?」
「あ…う…え…」
目をぱちくりさせて、美貴を見つめる亜弥ちゃん。
なんて寝起きがいいんだ、こんな時に。
回りが暗いせいで美貴かどうかはまだ分かって無いらしく
不思議そうに伺っている。
「…服…赤い…」
「あ…あ…えと…さ、サンタ…なんですけど……」
「……サンタ、さん……?」
「そ、そう!プレゼント持ってきた…んだけど…」
どうあがいてもサンタじゃないだろ。
声はそのまんま鼻声だし、高いし。
でも少しの間でもいいから夢だと思っててくれ、亜弥ちゃん。
「…違う、サンタじゃない……」
「え…あ…あ…」
「……みきたん…でしょ…?」
「あ…えと…あの…さ、サンタ、です」
「嘘…。声で分るよぉ」
にゃはは、と寝起きで笑う亜弥ちゃん。
やっぱ、バレるよな、ふつーに。
つられて美貴も笑うと、亜弥ちゃんに赤い帽子を奪われた。
興味津々な様子だけど、少し怒ったカンジ。
- 438 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 23:04
-
「何やってんのぉ、人の部屋で」
「…だって、サンタだから許可はいらないかと……」
「なーに言ってんのよ、ふほーしんにゅーで逮捕するぅ!!」
「あ、あはは…」
あははじゃないよ。
早く言ってしまえ、美貴。
何のために来たと思ってるんだ。
「…ごめん、この間、笑ったりして」
「……え?」
「悪かった。バカにするような事言ったりして」
「…んーん、もういい。怒ってない」
「……大嫌い、なんでしょ?美貴の事…」
プチショックだった。
面と向かって言われた事なんか無かったし、しかも泣かれそうになったから。
唇を噛み締めて俯いてしまった亜弥ちゃんに投げかけても、返事は無い。
「…嘘だよ。ほんとーに言う訳、ないじゃんっ」
「……じゃ、大嫌いの反対だったりする?」
「…ほぇ?」
「美貴は、亜弥ちゃんの事、大好きだけど?」
温かい亜弥ちゃんの両手を握って、真直ぐ目を合わせる。
伝えたいんだ。この気持ち。
- 439 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/24(日) 23:09
-
「…その前に、プレゼント、頂戴」
「へ?」
「みきたんサンタの、プレゼントが欲しいな」
さっき枕元に置いたリングを、亜弥ちゃんの両手に握らせる。
8万もしたんだよ、大切にしてよね。
そうは言わなかったけど、言う間でもなかったかな。
「…リングだよ。この間、亜弥ちゃんが欲しいって言ってた」
「……あれ、すっごい高かったのに…?いいの?」
「うん。亜弥ちゃんに付けて欲しかったから」
本当はオソロがよかったんだけどね。
でもペアでかったら16万…ああおそろしや。
「…で、答えは?」
「んふふっ、これだよん♪」
亜弥ちゃんが出した返事は、美貴を狂わせるものだった。
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/25(月) 01:50
- くおおおおっ、いいとこで切りますね…
- 441 名前:サンタがくれたもの 投稿日:2004/10/25(月) 12:00
-
「……大好き、サンタさん」
うん、美貴も。
言わなくても通じ合ったよね、キスだけで。
もう、クリスマスは終っちゃうけど、ギリギリで間に合ったからいいや。
本当は一緒にいたかったんだけど、ね。
「…来年も、この格好してね」
「……カンベン…」
「えぇー、つまんないー」
「そんなぁぁ」
ぐいぐい袖を引っ張られて、好奇心一杯の瞳でえへへと笑う。
そんな風にされたら、毎年頑張るっきゃないのかな。
来年もよろしくね、よっちゃん。
「…たん?」
「何?」
二人で祝おう、この時を。
「メリークリスマス」
FIN
- 442 名前:証千 投稿日:2004/10/25(月) 12:03
-
>421様 書いた私も単……なのですがw
クリスマスまで後数カ月しかないですねぇ…またあやみきラジオやらないかなぁ(笑
>440様 ま、たいしたオチもないのですが。
あやみきネタがばんばん来ればもっと創作力が湧くんですけどね。
- 443 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 21:45
-
「たぁ、たぁん、待ってぇ」
「ああもううるさいなぁ……」
「みぃたん、たん」
小さい頃、亜弥ちゃんは小さなおぼつかない足取りで美貴のあとを追っかけ回していた。
いくら美貴がうざったそうにあしらおうとも、いつでも笑顔でみきたんと呼んで。
だから美貴も、本気で追い払おうとはしなかった。
なんか、怒る気にもなれなくて。
「うぁぁん」
「う…バカだな…。ほら、立って」
よちよち歩きの2歳児は走り回るからすぐにずっこける。
その度ぴーぴー泣くもんだから、美貴は見ていられなくてすぐに
おんぶやらだっこやらしてしまっていた。
- 444 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 21:48
-
小学校に上がったばかりの亜弥ちゃん。
「みきたんっ、みてみてランドセル!!!」
「あーあー分かってるよ、良かったね」
「あした、いっしょにがっこういこうね?」
「…んー」
曖昧な返事をしても、亜弥ちゃんは屈託のない笑顔。
だからただ頷くだけの美貴を見て、いつも亜弥ちゃんは不思議そうにしていた。
いつもついてくるばかりの亜弥ちゃんを、まんざらでもないかんじで
相手にしていたからだ。
- 445 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 21:52
-
ある日、亜弥ちゃんが泣いて帰ってきた。
「ぇっ…ふぇ…」
「どしたの、亜弥ちゃ…」
「ないのぉっ、たんにもらったぁっ…けしごむがないのぉっ!」
「…え…」
正直ね、消しゴム一つで泣くなんて思わなかった。
亜弥ちゃんが、美貴のものが何か欲しい。って言ったもんだから
適当にあった消しゴムをあげたら、数カ月後になくしてしまったという。
別に、そんな事で泣かなくても。
そう思って頭を撫でてやっても聞こうとせず、わんわん泣き続ける。
「…消しゴムでもなんでも、またあげるよ」
「たんっ…おこってない?」
「怒る訳ないじゃん。いいから泣かないの。もう二年生でしょ?」
「……うんっ!泣かない!」
どさくさに紛れて亜弥ちゃんに抱きつかれた時は、しょうがなくそのまま
にしてあげた。
なんとなく、引き剥がす事が出来なかったから。
- 446 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 21:59
-
そして、中学校。
初めて、亜弥ちゃんと怒鳴り合いの喧嘩をした。
理由なんかどうでもよくて、美貴がただ単にいらついてただけ。
何もしていない亜弥ちゃんに怒鳴り付け、亜弥ちゃんがまた泣いた。
泣かれるのがつくづく苦手な美貴はどうしようもなくて、その後何日も
口をきかなかった事がある。
「…悪かった」
美貴のその一言で、亜弥ちゃんは笑って美貴の頬にキスをした。
どこでこんな事覚えてきたんだか知らないけど、顔を真っ赤にして
立ち尽くす美貴は呆然と彼女の成長に気付かされる。
いつからか大人になって
いつからか美貴から離れてゆくのが分かった
「…みきたん、だいすき」
「……ふーん」
「浮気しちゃ、ダメだかんね」
「…意味わかんね」
サクラ舞う春頃、妬くように彼女が言った。
- 447 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:03
-
何にもしらない
知らない ふり
「みきたん、校門で待っててって言ったじゃん」
「…他の子と帰りゃいいでしょ。何でわざわざ…」
「たんとじゃなきゃ、ヤだもん…」
「……なーんでそうワガママ…」
「わがままじゃ、ないもん」
いい加減溜め息が出てしまう程、憎たらしい程の瞳。
また泣くのかよ。ああ、勝手に泣けよ。
美貴がそう言って校門に亜弥ちゃんを置き去りにした。
何でそんな事をしたのかは思い出せない。
きっと亜弥ちゃんを、美貴から離れさせるためだったんだと思う。
ちゃんと、自分の気持ちを確かめるためのものでも、あったんだと思う。
- 448 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:07
-
だからようやく気付いた。
ホントの気持ちがはっきりしてなかったら、亜弥ちゃんも自分も傷つける。
うだうだ言ってたら、また彼女は泣くから。
「…好きなんだよ。だから泣くな」
「だぁ…って…ぇっ…」
「……ああっ、むかつく…」
そう言って、唇で涙をせき止めた。
もう恥ずかしさなんかはなくて、ただ好きの気持ちがあった事。
それだけで、初めて彼女が好きだという事を実感した。
- 449 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:11
-
今の高校生活に至る、というわけ。
相変わらずの泣き虫は健在している。
何かあればすぐ泣いて、何かあればすぐ喜んで。
感情表現がまるで赤ん坊。
年下のくせに生意気で、反抗期にも入っている。
そんな子供をあやすのは、昔のまま美貴の役目だ。
「…たん、もっかい」
あぐらをかく美貴の膝の上に乗り、腰に両足を巻き付けて訴える瞳。
いつもは純粋な瞳をしているのに、どうしてこういう時になると美貴を
騒ぎ立たせるような小悪魔的な瞳をするんだろう。
美貴はそれが、堪らなく好きだ。
- 450 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:14
-
だから、こういう悪戯も嫌いじゃない
「…っみきたん?」
彼女が求めているのは、美貴からのキス。
そんなの分かってる。
だから、もっと満足させてあげたい。
でも、決して本気でやるわけじゃなくて。
ベッドに押し倒して、手首を押さえ付けてその上に体重をかけずにのっかる。
真剣な眼差しで甘い声をかけると、必死に瞳で抵抗をしているのが分る。
些細なイタズラで、また彼女は泣き出しそうだ
- 451 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:18
-
「…ウッソだよ、バーカ」
震える唇にキスを落とし、ひょいとベッドから降りる。
抵抗してるのに無理矢理なんてするわけがない。
ベッドで悔しそうに寝転んだまま、美貴を見つめ続ける。
「…何で、そゆことすんの」
「可愛いから。そんだけ」
「……そういうみきたん、嫌い」
「嫌いで結構。じゃバイバイ」
憎まれ口を言ったから、少し思い知らせてやろう。
そう思って即座に立ち上がり部屋から出ようとする。
「やっ…やだぁ!!」
ほら、ね。
- 452 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:24
-
後を振り返ると、亜弥ちゃんは泣きそうな瞳で美貴を見つめている。
またか。
慣れっこだからなんともないけど、やっぱり涙は嫌いだ。
そっと手を伸ばして抱きすくめると、ぐすん、という音が聞こえた。
背中をさすってやると泣き声がいっそう大きくなって面倒だ。
「…きっ…らい…じゃないもん…」
「分かってるってば。冗談で言ったんだよ」
「ほん…とにっ?」
「……わかんないやつだな。亜弥ちゃんに嫌われたら美貴は生きていけないっつーの」
明日、亜弥ちゃんに会えなかったら。
何も考えられない。
そんな事、考えたくもなかった。
- 453 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:28
-
「……えへぇ、だいすき…」
「知ってる。とっくに」
知り尽くしてる
彼女が美貴を 想うキモチ
「…たんは?」
「言わなきゃわかんないわけ?」
「……そうじゃないけど…」
「じゃあいいじゃん」
「…ばか」
言って欲しい
一言そう言えば済む事なのに
言い出せずに俯く彼女
ばかはそっちだ
- 454 名前:ちびっこ同盟 投稿日:2004/10/26(火) 22:30
-
いつのまにか傍にいて
いつのまにか好きだった
結局美貴は意地を捨てて 君に愛の言葉を告白した
受け止めてるなら わかってるはずだろ
「…せかいでいちばん、あいしてんだよ」
唇に口付けながら、彼女の耳元で大きく呟いた
FIN
- 455 名前:証千 投稿日:2004/10/26(火) 22:30
- お、お、お!
これ結構甘いんじゃないの!?
…なんて
- 456 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 22:31
- リアルターイム!!!!
激甘!!
- 457 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/27(水) 06:31
- 朝一からすっげ幸せな気分になれました。
甘々100%ですねw
- 458 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:38
-
惚気てんだ 美貴
なんつーか、身体がぽぅっと熱くなって
目はとろんとして、焦点は一直線
何でこんなキモチになるんだろう
幾度となく思った事がある
でも答えは見つからない
何で、好きなの?
そう聞かれても答えは分らない
仕種が好き。声が好き。ほわっとする匂いが好き。
- 459 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:39
-
そのぶん美貴は、人一倍こころがきつい
カチンとくると、自分がすごく嫌でたまらない
ちょっとでも、彼女に触れようものなら
そんな汚い気持ちを 抑えている
美貴しか許されない 彼女への領域
- 460 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:42
-
「よ、まっつー。今日もかわいーね」
「おはよぉー、どういたしまして♪」
「何かその笑顔、憎たらしいんだよなー」
「あははっ、これもアイドルの象徴だからね」
ごっちん
嫌いじゃない 決して、嫌いじゃない
だけど。モヤっとする。
ぞわぞわ気持ち悪い感覚が襲ってきて、一種の病に美貴は犯される
それは、嫉妬というもの
- 461 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:44
-
無造作に向けていた床への視線から離れ
楽しそうに会話する二人を遠くで見止める
一緒に会話に入ればいいんだけど
意地っぱりでとことん寂しがりやな美貴は
そんな慣れた事できない
だから 彼女と二人がいい
こういうの 束縛っていう。 知ってる。
- 462 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:47
-
「…おー、ミキティじゃーん。おっはー」
「ん、おはよ」
目ざといよね ごっちんは
何にでも気が付く良い子だっていうのは知ってる
だからこそ 少しフクザツ
「おはよ、みきたんっ」
うん、おはよう。
- 463 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:50
-
その一言が その声が 安心するよ
「ごとー、お邪魔っぽいんではけるね。ごゆっくり〜」
「何言ってんのごぉっちん、変に意識しなくてもいいよ」
「だーってさぁ、目の前でイチャつかれたらこっちまで恥ずかしいじゃん。じゃね」
気を遣ってるごっちん
公認だから、そういう配慮をしてくれてる
分かってるんだけどね
なんか ムズムズするや
- 464 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:52
-
「…だって、ごっちん。おもしろいねぇ」
「ん、そだね」
愛想笑いっぽく、同意する
軽く溜め息をつくと 彼女を心配させる
でも 出さずにいられない
ごめん
「元気ないぞぉ、元気が取り柄のワンコちゃん?」
「ワンコて…美貴は人間以下か」
「だってたん、あたしのワンコじゃん」
犬、か。
- 465 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 17:57
-
美貴は彼女だけに唯一甘えられる
素直になって何でも話せる
でも時には そうできない事もある
だから美貴は 亜弥ちゃんにとってのペット
普段はボールを追い駆け回るワンコでも
時には飼い主から離れたい時もある
たった一匹で 考えたい時もある
「…首輪とか、リードつけられちゃたまんないよ?」
「そんな事しないよ。あたしがいる限りみきたんは何処にも行けないから」
「…そだね。逃げようとも、逃げられないしね」
「逃げる気?」
「いえ、とんでもございません」
ずっと傍にいたい
そんな事言えないけど 言いたいけど
飼い主の亜弥ちゃんに保護責任がある
だから美貴は 飼い主に忠実に従う
- 466 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:00
-
「…んじゃ、ワンコからのお願い」
「なぁに?」
「……ちゅーして、いいですか?」
通路の壁に彼女を追いやり そっと肩を抱く
上目遣いぎみの瞳が 何かをそそる
完全カンペキの 確信犯
潤った唇に重ねようと 唇を近付ける
- 467 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:04
-
ぺちっ
「…何すんの」
「たん、唇荒れてる。痛いんだもん」
迫った美貴の頬に軽い平手をくらわした亜弥ちゃん
美貴の唇を指差して不満げにそう言った
痛い、とはキスをした時に柔らかい唇に荒れたカサつきが
刺さる、と言いたいらしい
「…注文が多い飼い主だね」
「だぁってヤなんだもん。ちゃんと塗りなさい」
「……じゃ舐めてよ」
真顔で 再び唇を迫る
- 468 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:08
-
小さい水音が 亜弥ちゃんの舌で奏でられる
カサついていた美貴の唇が湿って 美貴と彼女の舌が絡まる
濃いキスをしたのは幾度となくある
それでも美貴は 亜弥ちゃんの感触に慣れない
「…ごちそうさま、御主人様」
「エロスケ。エロタン。ヘンタイ」
「……罵声ですか、今度は。拒否らなかったくせに」
「…むぅ……」
散々な事を言われた後、濡れた唇で額に口付けた
エロだのなんだの どうだっていい
亜弥ちゃんの前では 美貴はエロだっていい
- 469 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:11
-
「じゃ、美貴もう行くから」
「…ばいばい」
たまたまスタジオが同じだっただけで 仕事は別々だ
ふっと笑いかけて手を離すものの彼女は執拗に見つめてくる
「ばいばい、するんじゃないの?」
「……電話、して、今日」
「分かった。だから離して?」
「…ん……」
何だかんだ言って美貴から離れられない
甘えん坊なのは 飼い主の方だ
- 470 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:17
-
______
「で、結局10分ロスしたと」
「すいません、飯田さん」
今思えばとてもスリリングな体験をした
公の場、通路であんな事やこんな事をしてしまったのだから
うる目で訴えられたら 美貴の制御心も消えて
甘い声で鳴く亜弥ちゃんに、声を抑えてと願うばかりだった
「…今度やったら、どうなるか分かってるね?」
「はい。もうしません」
「ヒッヒッヒ−、なぁにしてたんだろうねぇミキティ」
「…矢口さん」
お見通しなのだろうか
- 471 名前:桜色 桃色 投稿日:2004/10/27(水) 18:20
-
「なんか、美貴ちゃんほっぺが桜色やよ」
「そうかな」
「何か嬉しい事でもあったん?」
「…嬉しい事、ねぇ」
ピンク色とは違う 愛ちゃんの言う桜色とはどんな色だろう
そんな事を考える間に本番は始まる
桃色の想いならぬ 桜色の美貴
複雑な亜弥ちゃんへの気持ちは すっかり消え失せていた
FIN
- 472 名前:証千 投稿日:2004/10/27(水) 18:22
- ま、こんなかんじで。
微エロだなぁ……
>456様 リアルタイムで御覧になられたのですか、ありがとうございます。
体して見物というわけでもないのですが…どうもです。
>457様 朝の糖分は身体に良いと言われますので…
調子はいかがでしょうかw
- 473 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/27(水) 22:29
- 藤本さん、あんたなんちゅう所で!
誰が来るかわかんないじゃないですか!
……イイヨーイイヨーモットヤレ(・∀・)
- 474 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/28(木) 14:23
- このようなやりとりが実際行われていると想像したらビンビンです。
調子は上々です!
- 475 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 21:58
-
君からたくさん色んなものをもらったね
人を愛するという事
優しさという事
嫌うという事
でも もう、会いたくない
ごめんね
そう告げて よっちゃんさんから逃げた
- 476 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:00
-
好きだから別れた
分かっていて欲しい、これだけは。
嫌いになったんじゃない
好きで 好きで 大好きで
だから別れたかった
ジャマになる 美貴がいたら よっちゃんさんの邪魔になるよ
率直に伝えたかった
でも 自分が言った事に傷付くのが嫌だった
- 477 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:03
-
よっちゃんさんと連絡を途絶えて もう3日になる
ぞくぞくする恋愛の楽しみも
優しい貴方の温もりも
全て忘れたいと思っている頃
なんで 急に思い出しちゃうんだろう
美貴が電話をかけたきり、よっちゃんさんからの連絡は無く
美貴も携帯を着信拒否にした
声を聞いてしまったら 後戻り出来なくなってしまいそうだから
- 478 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:06
-
『ねぇミキティ』
『ミキティ』
『今度うち行っていい?』
『ねぇ』
やめて
もう優しい言葉は聞きたく無かった
聞こえてもいないのに耳を塞いで消そうとする
だけど 心が求めてる
- 479 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:08
-
「…ざけんな……」
ほんとにすきだよ
ミキティがだいすき
言ったばっかだろう ついこの間の事だよ
本気で 本気で好きなんだよ
だから君も 頷いてくれたんだと信じてる
ウチが何したっていうんだ
知らない間に彼女を傷付けていたのかもしれない
知らない間に
- 480 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:10
-
脱兎のごとく駆け上がる
無性に腹がたった。無責任すぎる彼女の言葉が 気に入らない。
勝手な事を言われて納得できるわけがない。
直接会って嫌われたっていい
もう嫌いなのかもしれない ウチの事が
だけどこのままじゃ 彼女の心が分らない
だから 知りたい
- 481 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:12
-
いつの間にか眠っていた
愛しい人が隣にいない 寂しい目覚め
今さら気付く大切さに目頭が熱くなってくる
自業自得
そんな言葉が 今の美貴にはピッタリだ
- 482 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:15
-
ジン、と熱が隠る背中に あの人が触れた
強く掴んでいるけれど 優しいあの人の体温だけど
「……納得いかねぇんだよ」
「よ、よっちゃんさ…」
「急に電話切られて、ウチがどんな思いしたと思ってんだよ」
その瞳は 怒りに満ちていた
凄く怖くて 目をちゃんと見れなくて
- 483 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:19
-
「…頼むからっ…勝手な事、すんなよぉ」
勝手?
「……ウチは、ミキティがいなきゃダメになる。だから傍から離れんな」
「っ…勝手なの…そっちじゃんっ…」
「思い込まれちゃたまんないんだよ!」
突然、美貴を叱るように怒鳴る
目を丸くする暇もなく よっちゃんさんは美貴を抱き上げる
- 484 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:22
-
「…ごめ…ん」
「何がそんなに不安なんだよ。…わかんないよ……」
違う
よっちゃんさんのせいじゃない
「…すきすぎて、美貴だってわかんないんだよぉっ!
よっちゃんさんの事ばっか気になって、すっごく恐くなるんだよ!」
孤独ばかりじゃない
二人だからすごくあったかい
そう思ってたけど、やっぱり美貴は独り
だからよっちゃんさんがいなくなれば 美貴はどうにかなってしまう
- 485 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:31
-
「……そんなん、ウチだって同じだっつの……」
「ウチには、勿体無いくらい可愛い人だから」
「本当にウチでいいのかって思う事もあるし」
「…でも、相思相愛だよ?」
ちょっと噛んだクサイセリフ。
顔を真っ赤にする美貴を 面白そうに眺めてる
- 486 名前:生まれし君 投稿日:2004/10/28(木) 22:34
-
「だからさ、変な事言い出さないでよ」
「ん…」
「すっげ不安になるから。もうヤメテね」
どっちにしろ美貴は よっちゃんさんを傷付けていたんだと分かった
離れるのが一番だったと思ってた
でもそれが余計に彼女にヒビをいれていた事になっていたなんて
大事なものはひとつだけ
きっとそれはまだ 言葉にはできない
いつかは また
FIN
- 487 名前:証千 投稿日:2004/10/28(木) 22:36
-
甘くないみきよし一本。
だめですわ、こういうの(笑
>473様 いけない事をしてしまうのが美貴様w
亜弥ちゃんに対して悪戯大好きですから、うちの美貴様は。
>474様 通路で普通あんな事してたら確実に見られて……
ああおそろしや。
- 488 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/29(金) 18:01
- メイドさんと似た話になっちゃうかもしれないけど、
あややがお姫様でそれを守る騎士のみきたん
身分違いの上に姫様には婚約者がいて…みたいな話を勝手に希望…
- 489 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/29(金) 21:38
- また作者さんのごまみきかあやごま読みたいです。
- 490 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/30(土) 01:43
- みきよしイイ!
ネガネガ美貴様もう一本よろ(ry
- 491 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 14:49
-
ドキッ
「ん?どしたの?」
「なっ…んでもない…」
変なミキティ。
何だかぽわわっとした表情で、いつものクールな彼女の面影が消えかかっている。
こういう時、ごとーもどうしていいのか正直わからない。
なんせ付き合ってまだ一週間も経ってない。
公園を散歩する中、沈黙が続く。
晴れた日の公園は噴水が美しく輝いて絶好のデート日和…なんだけど。
- 492 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 14:53
- 何も喋ってくれない。
ごとーが話し掛けると頷いて笑ってくれる、けど。
それだけじゃ、寂しいんだよ。
「…あのさ、ミキティ?」
「な…に?」
「緊張、しすぎ」
「し、してない…よ」
「してる。へんだよミキティ」
ごとーといても、面白くないのかな。
そう思ってちょっとキツめに言ってみる。
「ちがう…」
「ん?」
「つまんないとか、そんなんじゃないから…」
そっか。
精一杯振り絞ったかのように呟いたミキティの言葉に一言だけ返す。
十分分かったよ。
分かったけどさ、何か喋ってよ。
- 493 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 14:58
-
とりあえず噴水の近くのベンチに座る。
って、離れ過ぎだと思うんだけども。
「…もっとこっちおいでよ」
「え…?」
「…こないならこっちから行っちゃうけど?」
ああ、可愛いなぁ。
ごとーの惚れてるミキティはこういう人。
普段はズバズバ何でも行ってしまうミキティだけど、ごとーの前では
とってもシャイ。
だから手も繋ごうとしないし、ワガママも言わない。
そんな所がもどかしくも、やっぱりそこがツボだ。
「…かーわいい」
フンフンとミキティの匂いをかぐ。
ミキティを抱く手に力が入って、自然と迫り寄る形になる。
微かに身をよじりながらも、決して抵抗はしないミキティ。
ちょっとは感情出して欲しいんだけど。
- 494 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:02
-
「あ…暑いから離れてよごっちん!」
「何でまかせ言ってんの。10月だよ今」
初めて焦った声をあげるミキティ。
ごとーが頬にキスをしようとした途端、肩をぐいと押された。
行動に移そうとするとこうなってしまうのが彼女だ。
「恥ずかしがらなくてもいいのに。何がそんなに照れるのさ」
「…訳なんか知ってたら苦労しないよ」
「どうしようもなく、ってか。ごとーといてもつまんなくない?」
「……だからそうじゃないってば」
段々いらつく口調に変わるミキティ。
彼女なりに色々考えて、色々してるんだろうけどね。
ごとーにはどうしても分らない。ミキティの乙女心が。
- 495 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:06
-
「ぶきっちょだなぁ…」
素直な愛情表現。ごとーには容易くても、ミキティにとっては大きな壁だ。
だって好きだったら、もっと甘えて、もっとワガママ言ってくれていいのに。
どうもごとーの前では、ひじょーに乙女になってしまう。
まあごとーしか見られないミキティなんだけど。
「何も出来なくても、ごとーは一緒にいるよ。好きだから」
「…何で?何で、美貴みたいな面倒くさいのと付き合うの?」
「……あのねぇ、いい加減怒るよ?」
冗談まかしに笑って睨んでみる。
するとミキティの瞳が微かに揺らめくのが分る。
- 496 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:11
-
「何で好きなの?って聞かれてもさぁ、ごとーだって理由なんかわかんないよ」
一目惚れしたなんて言えない。
何で一目惚れしたのなんて、分らない。
恋って無意識のうちに覚醒してるもんだ。
初めて体験した恋愛の難しさにぶちあたった事もある。
でも諦めなかった。
誰よりも好きだから、誰にも取られたくないから。
「ごとーはミキティの事手放す気はないよ。だからもっと甘えていいんだよ?」
「…それがわかんないの美貴は!」
「……そーかい。まだわかんないかい」
もう怒ったよ。
カチンときた勢いでブチギレる。
- 497 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:16
-
「…っ!」
抑えてた欲望、かもしれなかった想い。
ずっとミキティとこうしたかった。
唇を離すと、寒さのせいでもあるピンク色の頬がもっと赤くなっていた。
ふぅと溜め息をついて、尚も彼女の髪を撫で続ける。
「…好きだからキスだってするんだよ。好きじゃなかったら抱きしめもしないしキスだってしない。お分かり?」
「…ぅ…」
「……あぁもう、可愛すぎ」
この地球上にこんな可愛いものがいていいのか。
潤目にかかっているミキティを抱きしめて、後に恥ずかしさが残る。
何も返事をしてくれなかった事にも少し怒ったけど、もうどうでもよくなった。
きっと、伝わったから。
- 498 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:19
-
「…も、帰ろ」
抱きしめていた腕を解いて公園の時計に目をやる。
何だかしてはいけない事をしてしまったような気がしてならない。
「…ごっちん!」
「へ?…あ…」
少し冷たくて、でもあったい彼女の手。
先に歩き出したごとーの左手をとって、堅く結ばれる。
なかなか大それた事してくれる。
- 499 名前:幸せがすぎるから 投稿日:2004/10/30(土) 15:25
-
「それでいいんだよ。よくできました♪」
「ばっ…か…」
「そういう馬鹿に惚れた君も馬鹿だぜベイベ−」
「…ほんっと馬鹿…」
君に誓うよ 多分きっと
もう一度キスしたかったけど、恥ずかしがる彼女には負ける。
何だってこなしてしまうミキティは好きだ。
でもこんな彼女は、何倍も大好きだ。
「…何でそんなに優しいの、ごっちんって」
「え?」
「…なんでもない」
薄く漏れたミキティの言葉が聞き取れず、もう一度言ってと頼んでも
意味ありげな笑みを浮かべて何も言ってくれなかった。
「…今、しあわせ?」
「は?」
「ミキティはごとーといて、幸せでしょうか?」
大好きな人が隣にいるだけで
大好きな人が言葉をくれるだけで
ごとーは幸せだよ
「……うん、幸せだよ」
そっか。
FIN
- 500 名前:証千 投稿日:2004/10/30(土) 15:29
- ああ駄文。涙止まらないわ…
Mステ感動w
あやみきだらけでワッショイです。
>488様 おお、ファンタジーものですね。
そうですかぁ、そんなお話をいつか書かせて頂きたいと思います。
大体書き終えたらお知らせ致しますので、今暫くお待ち下さい。
>489様 リクに答えさせて頂きました。結構甘いかなぁ…なんて。
あやごまも書こうと思っていた所なので、ありがとうございます。
>490様 ネガティー参上。という事でまたみきよしを書こうかと思います。
ネタが浮かびましたら乗せますので、お待ちを。
- 501 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 21:52
-
バシィンッ
「…ハァ…ハァッ…」
ムシャクシャして何もできない。
ただ目の前にあるボールを壁に向かって蹴り続けるだけ。
その行為は延々と続けられて、何の意識もなく。
誰もいない夜の公園で、打ち付けられるボールの音と息を荒くする美貴の呼吸だけが響く。
バシィッ
テンッ テンッ テンッ
狙いから外れたボールは草むらに隠れ、跳ねるのをやめた。
とうとうボールにまで見捨てられたか。
残酷な気分にしかなれない。自分を責める事しか、頭になかった。
- 502 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 21:56
-
『お前なんかチームにいらない』
だったら辞めてやるよ。
カァッと、一気に体中の熱気が隠って出た言葉。
ユニフォームを更衣室に叩き付け、美貴はフットサルを辞めた。
色褪せたマイボールを蹴り続け、自分にそう言い聞かせる。
薄汚れたスパイクも、試合の喜びを分かち合ったガッタスのユニフォームも。
全部グラウンドに置いてきた。
「…っくそぉ!」
それでも美貴は、ボールを蹴るのを止めなかった。
せっかく手に入れたチャンスも全部、美貴の一言で水の泡になった。
試合中に起こした事件の事は忘れたいのに。
自己嫌悪に陥って、どうしようもなくなる。
- 503 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:01
-
『暴力沙汰起こすなんて、このチームぶっ壊す気か?』
『実力より暴力使って卑怯だと思わないのか?』
『お前なんかいらないんだ。一人いなくなったって、何も変わりはしない』
コーチは怒鳴りあげて二言三言と美貴に投げ付けた。
フラッシュバックしてくる悔しさが尚も続いている。
相手チームの挑発に乗った美貴が悪い。
全て、美貴のせい。
怪我をしていた足を故意に踏まれ、瞬時に糸が切れた。
審判に耳も貸さず、確信犯の腹や顔を殴り続けた。
そして美貴は、フットサルに別れを告げた。
- 504 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:03
-
小さい頃から続けていたフットサルを諦めるのには、一生かかっても無理だ。
そんな事はとうに分かってる。
でも諦めなきゃいけない時も、ある。
今がその時なんだろう。
泥で汚れたサッカーボールをジャージの裾で磨き、話し掛ける。
「…ごめんね、裏切ったりして」
何度も辞めようと思った。
辛くて、悔しくて。
それでもずっと、続けてきた。
失ってしまったプレーも、失ってしまった信用も。
まだ全部、残ってる。
- 505 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:07
-
ポンッ
「いった…い…」
「ショボくれんなよ、そこの彼女」
後頭部に、やや硬いものが投げ付けられた。
誰もいないと思っていた夜の公園に、少し低い声が聞こえる。
昨日まで普通に一緒にいた、仲間の声が。
「…よっちゃん」
「危ないよ、こんな時間に」
思いのほか明るい表情をしていた、元チームメイトのよっちゃん。
ガッタス・フォワードの天才だ。
- 506 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:11
-
「何やってんの…?」
「こっちが聞きたいな。ウチはランニングに通りかかっただけ」
「…そ…」
顔を合わせるのも辛い。
ガッタスのみんなに迷惑をかけて、チームを小期間の試合出場停止処分に
してしまった事。
他にもまだ、たくさん理由はあった。
「…みんな、どうしてる?」
「どうもしてねーよ。ふつーに練習してる」
美貴がいなくても、どうって事ないんだよ。
結局はそういう事だ。
元々自分は戦力になっていたかも分らない。
存在など、気にかけているかどうかもどうでもよかった。
- 507 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:15
-
「…でも。みんな笑わなくなったよ」
え? と訪ねると、よっちゃんはか細く笑ってこう言う。
「ボール蹴ってても無表情でさ。活気がぜーんぜんないでやんの」
「…そっか」
「何でだか、わかる?」
わかんないよ。
一言だけそう言うと、美貴の手に持っているボールとよっちゃんの手に
あるボールをくっつけて呟いた。
「ミキティがいないから。全然やる気ないんだよ、みんな」
「…そんな事…」
「あるから言ってるんだよ。な?」
同情なのか、本心なのか分らない。
何を信じればいいのか、美貴だって分らない。」
- 508 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/10/30(土) 22:21
-
フワリ
「…っちゃんさ…」
「寂しい、よ。つまんないよ」
「…も、いいよ、わざわざそんな事…」
「本気だよ。もう一回、一緒にプレーしたいよ」
よっちゃんは、少しだけ詰まった声で美貴を抱き寄せた。
汗で冷えた身体が急激にあたたまるのが分る。
それよりも、よっちゃんの言った言葉に耳をくすぐられる。
「ミキティ、もう一度やろうよ。コーチにはウチが…」
「ううん、もういいんだ。美貴、みんなに凄い迷惑かけて…」
「そんなの関係ないよ。ウチはミキティが必要だよ」
「…ダメだって。そんな、理屈じゃない事、言っちゃ…ね?」
美貴は、最低だ。
皆に迷惑かけて、その上よっちゃんにまで辛い思いさせて。
美貴はただ、ボールが好きで、ゲームが好きで。
だから昨日まで頑張って追いかけてた。
好きなものだけ、ひとりじめしてた。
だけど、もう二度とグラウンドには戻れない。
- 509 名前:証千 投稿日:2004/10/30(土) 22:22
- まあ、サッカー物にしてみました。
ションボリ系のみきよしで。
明日には完結します。
- 510 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/31(日) 02:32
- みきごまスゴイ良かったです。
ミキティ可愛いし、ごっちんはカッコいいし!!
- 511 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 00:38
- ミキティwかーわーいーいーw
- 512 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:26
-
どうして美貴に、優しくするの
どうして美貴に、かまうの
「…そんな哀しそうな顔しないでよ」
昨日まで楽しそうにしてたんだっけ、美貴。
楽しくって仕方なかったっけ。
背の高いよっちゃんを見上げて、冷たく冷えた頬をつねった。
つくり笑顔までして、美貴はよっちゃんに笑って欲しかったから。
怒りはしないと思う。
優しい彼女だからこそ。
- 513 名前:sage 投稿日:2004/11/01(月) 21:29
-
「…いってー。痛いけど、いたくねー」
「え?」
「……ミキティの方が、もっと痛いでしょ」
痛い。
死ぬ程痛いよ。
「だったらウチも辞める」
「え…」
「つまんないし。フットサルもやる意味ない」
「なんで…」
「だから!」
ビクン、と肩が跳ねる。
グラウンドを駆ける彼女そのものが美貴の瞳に映ったからだ。
- 514 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:31
-
「…マジ、面白くないの。ミキティいなかったら、つまんないって」
一人抜けただけ
そんだけなんだよ。
よっちゃんが何か言う度に、美貴は変な気持ちにさせられる。
何でそんな事言うの。
「…ヤだ。つーか、ダメだよ」
「どうして」
「よっちゃんがいなかったら、ガッタスは潰れちゃうんだよ?」
「だったらミキティがいないウチだって潰れんだよ」
「…どういう、意味?」
わかんない
よっちゃんの言いたい事が わかんない
フットサルの事だけじゃないでしょ
よっちゃんが言いたいのは、きっとそれだけじゃない
- 515 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:35
-
「…おまえが好きなの。そんだけ」
突然よっちゃんが口を開いて出てきた言葉は、簡潔なもの。
よく耳を澄ませていないと聞こえないような、か細い声で。
お前って、美貴に指している事だよね。
なんでそんな事で、話反らしてるの。
「はっ…嘘…」
「ウソでこんな事言わない。他の奴だったら引き止めもしない」
「なんでこんな時に…」
「知らないよ!…そういう、うじうじしてるミキティ見たらむかついたんだよ」
むかついた
- 516 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:37
-
美貴もよっちゃんさんがむかつく。
ダイッキライ。
だけど、気付いた。
「……美貴じゃなかったら、引き止めたりしない?」
「そうだよ。ミキティだから、いて欲しいの」
美貴だから、いて欲しい
疑問を持つ事は理由を挙げたら切りが無かった。
でも美貴はそれ以上は何も言わない事にした。
フットサルの事、よっちゃんさんが打ち明けた事。
何が何だか飲み込めない。
- 517 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:41
-
「…イチからでもいいから、もっかい楽しい事したいでしょ?」
「……ん、したい」
「じゃ、戻ってきてくれる?」
素直に言えなかったから、ずっと閉じ込めてた。
誰かを頼らないと生きていけない美貴なのに、ずっと一人で。
「…ムチャクチャだよ、よっちゃん」
「ん、知ってる」
「……急に告ったり、戻れって言ったり」
「ん、分かってる」
チャンスは一回きりだよ。
一言だけ呟いて、よっちゃんは笑顔になった。
だから美貴も、精一杯笑った。
- 518 名前:蹴り飛ばす心 投稿日:2004/11/01(月) 21:44
-
「逃げたりしないから」
「ん」
「もっかい、やり直したい」
「ん」
口を開く事なく、よっちゃんは頷く。
ただそれだけで美貴も、よっちゃんが何が言いたいのか分かった気がした。
「おかえり」
公園を出て帰り道、よっちゃんはぽつりと照れくさそうに言った。
そして
「…ただいま」
なんてことないきっかけが、美貴自身を変えた事になったのかも、しれない
FIN
- 519 名前:証千 投稿日:2004/11/01(月) 21:46
- ああ…すいませんタイトル途中でまた間違えました。
作者は馬鹿なのでご了承下さい。
メール欄と普通間違えるかよ…というツッコミも受け付けません。
>510様 ありがとうございます。作者は新曲が好きすぎて堪らない勢いで
書いただけですのでw
>511様 かーわーいーいーw月板の方ではかわいらしいミキティばっかり
書いてる気がします…
- 520 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/02(火) 00:42
- メール欄と普通(ryなんつってw
いやいやみきよしはなんつーか変にベタベタしないほうが
もしかしたら萌えるのかもwヨカッタヨカッタ。
二人ともカコイイ!からかなぁ〜
でもたまには甘いのも読(ry
- 521 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:40
-
「…その傷、どしたの…?」
「え、ん、転んだ」
「嘘。うそばっかつかないで」
ついていい嘘、悪い嘘。
ごめん、ウチにはそれがわかんないんだ。
だからまた同じ事をくりかしてしまう。
その度君は、悲しい瞳で笑う。
- 522 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:43
-
「喧嘩ばっかりして、アンタ本当に馬鹿」
「…知ってる」
「お願いだから、もうやめてよ」
「……」
むかつく事がある度に、幾度となく人を殴る。
殴った後に残る赤い跡が、自分自身を傷つける事になっている。
とっさに包帯を巻いた左手を隠した。
「…あたしだって、馬鹿だから喧嘩してるわけじゃないよ」
「じゃあ何で…」
「色々あるの。それは美貴にも言えないの」
- 523 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:46
-
アイツに 触んな
チャラチャラしたナンパヤローの手首を掴み、エラを狙って殴り倒した。
今でもその時の感触は手に残っている。
骨が割れるような痛みと共に、心が崩れるのが分かった。
でも、ほんの一瞬の想いが爆発したから。
「そういうよっちゃんさん、見たく無い」
「…じゃあ見なきゃいいじゃん」
「そういう問題じゃないの、分かってるでしょ?」
彼女はあたしを好いている。
随分前から知っている事だ。
- 524 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:50
-
いつだって強気な彼女は、あたしの前では絶対に泣かない。
悔しい時も辛い時も、笑ってしのいでいるからだ。
そんな彼女を見る度に、あたしは心臓がキュッと締め付けられる。
「…手、痛い?」
「死ぬ程、ね」
「…っ…」
ポタリ、と一滴の雫が包帯の上に落ちた。
それは紛れも無く彼女が発した、最初のサインだという事に気付く。
「…っく…」
謝る事は出来なかった。
あたしが悪いんじゃ、ない。
- 525 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:53
-
「…泣くな…」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「美…」
「っ…なんで、わかんないのさぁっ…っ」
あたしもわかんねぇんだよ
わかりたくても わかんないことだってあんだよ
ただ、美貴が好きなだけだよ
シャツで涙を拭おうとする仕種を制して、抱き締める。
何の抵抗も無く泣き続ける彼女が、今のあたし異常に痛々しくて哀しかった。
- 526 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 19:56
-
「…美貴は、あたしの事嫌い?」
「……きらい、じゃない…っ…」
「…そっか。じゃ、好き?」
彼女は何も答えない。
いつもの事だ。疑問を投げかけても、瞬時に避ける事。
閉じ込めているあたしへの想いは、一度も聞いた事がない。
知ってるけど、聞きたい。
不安 という言葉だけが残ってるから。
- 527 名前:傷むココロ 投稿日:2004/11/02(火) 20:02
-
「…すきですきで、たまんないよ」
傷いんだね、君も。
唇を噛み締めてついた言葉は、待ちに待っていたものだった。
あたしを抱き締める腕に力が入っているのが分る。
「…美貴はっ、よっちゃんさんが喧嘩ばっかりするのが嫌いなのぉっ…」
「……ん」
「優しいよっちゃんさんなんか、嫌いなのぉっ…」
「…ん」
「でも、すきなんだよぅ…」
うん。
傷んでいるなら、治すよ。
僕も傷いから。
最後の涙が流れて、僕達は眠りについた。
左手の拳を、君の右手に包まれて。
FIN
- 528 名前:証千 投稿日:2004/11/02(火) 20:04
- よしみき。
最近こればっかり書いてる気が。
>520様 最近は書きっぱなしなのですがレスを頂くととてもありがたいです。
黄板は殆どあやみきオンリ−になってるので、こちらではごまみきやらばかり…
- 529 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:10
-
正義の味方。
誰彼構わず立ち向かい、悪を成敗する。
美貴はそんなヒーローに、憧れていた。
大きく翼を広げ、飛び立てる日を待ちわびて。
「なぁーに夢みたいな事抜かしてんだお前は!」
「いてっ」
「…ったく、明日までに記入して 提出しておけよ?」
「…へーい」
教師は矛盾している。
夢を語れ、と言うものの語った所ですぐに否定されてしまう。
美貴は間違っているのだろうか。
- 530 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:14
-
「アンタ、馬鹿じゃないの?」
「そんなの百も承知だよ。だから相談してんじゃん」
「だからって…ちょっとみきたん?」
「馬鹿が夢みたいな事言って何が悪いっていうのさ」
下級生の恋人にも、同じ事を言われた。
溜め息をついて頭を抱えている。
少しは感心してくれると思っていたから、余計に自分が馬鹿に思える。
彼女の意を無視して机から離れ、窓の外を眺める。
「…卒業するんならさぁ、もっと先の事考えようよ?」
「……考えてる、つもりだけど」
「考えてないでしょ。正義の味方なんて、馬鹿らしい」
飽き飽きした様子で、彼女も窓を覗きこむ。
親身になって考えてくれてるのは分る。
- 531 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:20
-
「…ヒーローになって、何がしたいの?」
「困ってる人、助けたい」
「無償で?」
「うん」
誰一人できやしない難しい事をしてみたい。
だからヒーローにだってなりたい。
そう思うとなんだか楽しくて、その笑顔を彼女に向けたらまた溜め息をつかれた。
「…みきたんって、変だよ」
「そうかな」
「お人好しを通り過ぎてる」
「そうかな」
「…馬鹿で、優しくて…」
だったら、亜弥ちゃんも変だよ。
そんな美貴を、好きになっちゃったんだから。
そう言ったら、亜弥ちゃんもそうだねって言って笑った。
- 532 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:24
-
「人の役にたちたいなら、もっと他の仕事もあるよ?」
「そりゃあ、そうだ」
「じゃあなんで?」
「…困ってる人助けるのに、お金はいらないから」
人は卑怯だ。
助ける引き換えに金だけを求め、本当は善意なんて存在していない。
そんな親を見てきた美貴は、卑怯な人間にだけはなりたくなかった。
神が生み出した人という生き物は贅沢で、強欲。
それは命というものがあるから。
だがそういう美貴も、その人間の一人だ。
- 533 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:29
-
「本能のままに動くから、美貴は」
「…そだね」
「だから亜弥ちゃんや学校が何を言っても、美貴は聞かないよ」
「……そっか」
ごめんね。でも、夢だからさ。
俯き加減の彼女を抱きしめて、瞳を閉じる。
色んな考えはたくさんある。でも諦めたくは無い。
自分だけの道を造りたいから。
「もし、本当に正義の味方になったら、最初に何するの?」
「…んー、出来る事なら、困ってる人のために、何かをする」
「……やっぱ、みきたんらしい」
美貴らしい。自分らしい。
よくわかんないや。
- 534 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:36
-
「みきたん」
「ん?」
「今、あたし困ってる」
「何で?」
「みきたんが好きすぎて」
唐突に美貴の頬に唇を寄せた。
短かったその行為の後、にゃはっと笑った。
それで彼女は困ってるのか。
「あんまり変な事言ってると、嫌いになるかも」
「…そっか、でも考えられずにいられないからね」
「あたしより大事なんだ?その夢って」
「……そうかもね。でも、今んとこ亜弥ちゃんが一位かな」
今んとこ、ね。
きっといつか、彼女を悲しませる事があるだろう。
美貴の我侭によって、終わりがくる事もあるだろう。
でも、諦められないんだ。
「…いーよ、背中押してあげるから」
「マジ?」
「夢が叶ったら、戻ってきてね。絶対に」
「約束するよ」
交わした二人のキスは、長く感じた。
美貴の夢が叶うまで、当分この子に付きっきりなんだろう。
FIN
- 535 名前:ヒーローという名の敵 投稿日:2004/11/03(水) 13:37
- あやみき。
無理矢理繋げた感じ。
- 536 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:06
-
過ちを犯す度、人は反省という飾りを身に纏う
それが如何なる形であっても必ず途切れる事はなく
後悔という卑怯の鎖に繋がれる
美貴はそんな奴だ
- 537 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:09
-
何気なく元気の無い空を覗き込む。
いつもと変わりない、つまらない風景。
黒板に目をやると、チョークを握りしめ不可解な表情をする先生と目が合う。
「藤本、授業中のよそ見はいかがなものか」
「…すみませんでした」
クラスの中にちょっとした笑いが起こる。
こんなのはもう慣れっこでも、教師の視線には嫌な気分にさせられる。
隣の席の梨華ちゃんは呆れた様子でシャーペンを美貴に突き付けた。
- 538 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:14
-
「もう、また注意されて」
「うん。だって授業つまんないし」
「そりゃ、楽しいわけないわよ」
何の為に学校に通っているんだろう。
美貴は日々そう思っている。
勉強尽くしの高校生活に、余り興味は無い。
梨華ちゃんはふっと溜め息をついて、庭園の中を眺めている。
「梨華ちゃんはガッコ−、楽しい?」
「…よくわかんないよ。楽しい時は、凄く楽しいけど」
「勉強もスポーツも出来る才女だもんね」
「何ソレ、皮肉っぽいじゃん」
「ははっ、冗談」
美貴と違って何でも出来る梨華ちゃん。
家柄も厳しくて、礼儀正しいせいか周りから好かれる。
- 539 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:16
-
美貴はというと、そうでもなかったりする。
成績は普通、梨華ちゃんみたいに可愛く振る舞う事も苦手だ。
別に自分が嫌いなわけじゃない。
取り柄、と言えるものがないからだ。
「そんな事。美貴ちゃんの声、好きだよ」
「は?それって取り柄も何も…」
「いいじゃない。聞いてるだけで良い気分になれたら、それだけで」
「……そっかなぁ」
そんな言葉を、あの子もかけてくれるだろうか。
- 540 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:18
-
「…誰が聞いても、文句の言い様のない声?」
「えぇ?例えが膨大だけど…そうかもね」
「……そっか」
じゃあ、きっとあの子もそうだよね。
舞い上がれば絶対に苦しむ。
分かっていても想わずにはいられなかった。
自然と目が合えば、それだけで十分だったのに。
どんどん自分が、あの子に染められて行く気がしてきた。
- 541 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:22
-
放課後のホームルームが終り、梨華ちゃんは進路相談室に向かった。
秀才は色々と苦労するもんだ。
昔から彼女を見てきている美貴は常々そう思っていた。
そして教室に残された美貴は、窓からグラウンドに目を落とした。
正確に言えばグラウンドの一角にある、テニスコートに。
ドキ ドキ
「……何してんだ、美貴」
ふるふると頭を振って考え直す。
ここから大声を出せば、きっとあの子は美貴に気付く。
一瞬そう思い酸素を思いきり吸った自分を諦めた。
- 542 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:25
-
これが、恋っていうんだ。
言わば初恋。
高校生にもなってとバカにされる事は承知だ。
でも、本当に恋をした。
影で覗く事しかできない、勇気のかけらもない見つめるだけの恋。
「…美貴ちゃん?」
「は…ああ、梨華ちゃんか」
「他に誰がいるっていうのよ」
「…そう、だよね」
梨華ちゃんは少し不服そうにして、教科書の詰め込まれたカバンを美貴にぶつけた。
進路相談に体した話題は無かったらしい。
教室を出る前に、もう一度テニスコートを振り返る。
そこにはやっぱり、溜め息が出る程可愛いあの子がいた。
- 543 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:29
-
3人ぐらいの下級生達が、梨華ちゃんに何かを渡して帰って行った。
不思議な光景ではない。
まあ、美貴は何度も目にしたことがあるから。
「憧れの先輩ってか」
「そう茶化さないでよ」
「いいね、慕われてて」
「そう?」
軽く笑った梨華ちゃんの表情は、困った顔して凄く嬉しそうな顔。
テニス部を引退してから、増々人気急上昇だ。
元部長というだけあって下級生からの視線も強い。
「美貴ちゃんだって、時々もらってるじゃない」
「…別に。もらったって嬉しくも無いよ」
「なんで?テニス部の子も黄色い声あげて騒いでるわよ」
「…え…」
そうだ。あの子は、梨華ちゃんの後輩だった。
- 544 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:33
-
「だっ、誰が?」
「え?1年生とか…」
「だから、具体的に誰?」
「具体的って…どうしたの美貴ちゃん?」
ふと我に返る。
やだな、ナルシストじゃん美貴。
必死に梨華ちゃんの肩を掴み聞き出していた。
あの子がもしかしたら、美貴の事を慕っていてくれたら。
なんてバカな事考えたりしてた自分がいた。
「…実は嬉しいんでしょ、噂されてて」
「そんなんじゃないよ。も、物好きだなって」
「ふふっ、素直じゃないんだから」
そうだ、美貴は素直じゃない。
ひねくれてるから、本当の気持ちも言えない。
- 545 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:37
-
「美貴ちゃん、次移動!」
「分かってるよ、すぐ行く」
せわしなく急かす梨華ちゃんに押され、急いで教科書を引っ張り出す。
美術の時間なんて一番嫌いだというのに。
待たせている梨華ちゃんに駆け寄り、ごめんと一言謝った。
「時間前に準備しておきなよ」
「だって…」
「だって何よ?」
ずっとテニスコートを眺めてたなんて言えやしない。
休み時間中でも、元気に制服でボールを追い掛けるあの子を見ていたなんて。
「…?ま、いいや。早く行こう」
「う…」
歩き出した途端、美貴の目はあの子を捕らえた。
複数の1年生と楽しそうに会話する、あの子を。
- 546 名前:序章 投稿日:2004/11/06(土) 09:42
-
「…美貴ちゃん?遅れちゃうよ?」
「あ…えと…うん…」
梨華ちゃんに促されるも、足が前に出ない。
ドキドキして、心臓もだめだ。
楽し気に会話するあの子のグループは、どんどん近付いて。
「…あ、石川先輩こんにちはぁ」
「あら亜弥ちゃん?こんにちは」
「……梨、梨華ちゃ…はやくいこ…」
「あ、そうだった。じゃあね亜弥ちゃん」
「ハイ、さようなら」
なんてことない会話。
その時、美貴は確信した。
亜弥ちゃんが好きだと。
- 547 名前:証千 投稿日:2004/11/06(土) 09:43
- またあやみき。
今回はちょっと長くなるかも。
- 548 名前:gung 投稿日:2004/11/06(土) 09:48
- リアルタイム(・∀・)キター!!
面白いっす!そして美貴帝がみょうに可愛いですw
- 549 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/06(土) 21:22
- おもしろい!
今回の藤本さんはえらく消極的ですね。
長めのお話期待してます。
- 550 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:04
-
「…美貴ちゃん」
「はぁ…」
「美貴ちゃんってば」
「…え、え?」
「ほら、もう授業終ったよ?」
梨華ちゃんに肩を叩かれて目が覚める。
美貴はどうやら異世界に紛れ込んでいたようだ。
教室を見渡すと、そこにあるのは試験管や実験用のガスバーナー。
「どうしたの、授業中もぼーっとして」
「い、いや何でも無い」
「最近美貴ちゃんおかしいよ、顔赤くしてばっかりで」
「な、なんでもないったら」
つい梨華ちゃんの正論に反してしまう。
ムキになってしまう美貴は、梨華ちゃんの言う通りおかしかった。
そう、亜弥ちゃんに会ってからなんだ。
心臓がドキドキして、廊下で擦れ違うだけで息が止まりそうになるから。
- 551 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:08
-
「梨華ちゃん、帰ろ」
「あ、うん。そうだ、あたしテニス部に用あるんだけど、いい?」
「え…」
思わずカバンを落としてしまうそうな衝撃だった。
たかがそれだけの事でまっ先にあの子の事を思い出したからだ。
どうしよう。先に帰ると言ってしまおうか。
でも、テニス部を覗いてみたい。
「…美貴ちゃん?」
「あ、いい、いいよ」
「そう?練習メニューの項目を見て行くだけだから、すぐ済むんだけど」
「…ああ、そう」
- 552 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:11
- 思えば、あの松浦亜弥ちゃんとは一度も話した事がない。
ただ毎日テニスをしている彼女に、いつの間にか惚れていただけ。
ただ、それだけ。
「う…や、やっぱここで待ってる」
「うん、すぐ済むからね」
なんて勇気がない。
別にあの子と会話しに行くんじゃないのに。
間近で亜弥ちゃんを見るのには、それだけ勇気がいる。
梨華ちゃんはテニスコートの近くにある水道に美貴を待たせ、
足早に駆けて行った。
- 553 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:13
-
一体、自分はどうすればいいのだろう。
水道場の横にある段差に座り、幾度となく溜め息をつく。
告白する勇気もありはしない。
話し掛ける勇気も持ち合わせていない。
でも、好きの気持ちを抑えていられない。
カバンを八つ当たりっぽく殴った瞬間、思わぬ出会いにでくわす。
- 554 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:16
-
やばい。
バッと視線を逸らす。
やばい。今、すごい目つきだったよね、美貴。
よりによって、本人が来るなんて。
美貴はどこかに視線を落とし、聞こえてくる水音を無視しようとする。
でも、間近で彼女の顔が見たい。
そんなややこしい思いが巡っている頃、キュッと蛇口を閉める音だけが耳に入った。
- 555 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:25
-
「誰か待ってるんですか?」
「…え?み、美貴?」
ズキュンとくるような声に肩が跳ねる。
案の定なつっこい子だ。
でも、今声をかけられると美貴としては嬉しいんだけど…
ああっ、なんていえばいいのかわかんない。
そうこうしている間に、彼女はにこっと美貴に笑いかけた。
美貴の心を咲くような、きれいな笑顔で。
- 556 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:28
-
「あ、もしかして石川先輩ですか?」
「え…あ…まあ…」
「いつも一緒にいますよね。仲良いんですねぇ」
「そ、うかな…」
「お名前、教えてください」
「…へ?」
「先輩、おもしろいんだもん」
なんか、鉄砲玉のような子だ。
どもる美貴に向かってほいほい質問を投げかけて。
屈託の無い笑顔をキープしている。
ある意味、天才的だと思った。
それ以前にいつのまにか緊張はほぐれ、彼女の笑顔につられてしまう。
- 557 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 14:33
-
「先輩、目が泳いでる」
「そっ、そんな事な…」
「にゃはっ、言った傍からぁ」
からかわれてるんだろうか。
可愛げのある表情は全く変化せずに美貴を眺めている。
疑わしく思えてくるような笑顔。
やっぱりそうだ。美貴は惚れ過ぎている。
「藤本…美貴」
「知ってます」
「え?」
「有名人ですもん。石川先輩と、ラブラブだって」
ごめん、もう一回言って。
美貴がその言葉を口にする間もなく、その子はテニスコートへと駆け出して行った。
はっきりと聞こえていたけれど、亜弥ちゃんの笑顔と共に残像が残った。
- 558 名前:証千 投稿日:2004/11/07(日) 14:34
- 更新はまた夜に。
返レスもその際にしたいと思います。
- 559 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/07(日) 14:37
- ううん、じれったい。美貴様純情過ぎます!
夜の更新お待ちしております!
- 560 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:16
-
じぃーっ
「何よ美貴ちゃん」
「…梨華ちゃんのせいだ」
「え?」
「変な誤解されちゃったじゃないかぁ…」
溜め息しか美貴には残されていなかった。
あの純な瞳、声が堪らなく好きだというのに。
ノートとにらめっこを続ける梨華ちゃんをうらめしく思う。
別に梨華ちゃんが悪いわけじゃない。
確かに可愛いしスタイルもいいから、美貴と恋人同士に見られてしまうのは
分るよ。うん分る。
だからって亜弥ちゃんに誤解されちゃ、美貴だってじっとしていられるわけがない。
- 561 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:18
-
「何が?」
「…理由は言えない…」
「何よ、気になるじゃない」
「……言ったら笑う」
「笑わない」
「笑う!」
「笑わない!」
頑になり、梨華ちゃんは美貴を睨み付けた。
そこまで気になるのなら言ってしまおう。
言え、言うんだ。
ゴクリと生唾を飲み、親友である梨華ちゃんに打ち明けた。
そして彼女は案の定、腹を抱えて笑い転げるのだった。
- 562 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:20
-
「あっはっはっは!あ、あたしと美貴ちゃんが付き合ってるってぇ?」
「そ、そうだよ」
「一体誰がそんな事言ったのよ?」
「…梨華ちゃんの、後輩…」
「あたしの?」
いつも梨華ちゃんを慕っている、あの子だよ。
そう言うと梨華ちゃんはすぐさま笑い出す。
キリが無い程の会話だ。
恥ずかしがる美貴の様子を伺い、上品に笑った。
「…ふぅん、好きなんだ、亜弥ちゃんの事」
「で、でっかい声で言わないでよ」
「意外だね、美貴ちゃんが亜弥ちゃんをねぇ〜」
「だから!」
「わかった。からかったりしない」
そう言いながらも頬が綻んでいる。
指摘した後、また苦笑するのだ。
- 563 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:26
-
「誤解されてるんでしょ?あたしの後輩全員に」
「らしいけど…」
「あたしは別に困る事はないけど、美貴ちゃんにとっては重大だね」
「そうだよ!変に噂されたら美貴だって言える事も言えないし…」
「何を言うの?」
「だっ、だからぁ…」
分かっている癖に。
いじわるな梨華ちゃんは美貴をからかい続ける。
いくら秀才でも、所詮美貴と同じ高校生だ。
彼女が笑う度に、大人の表情の梨華ちゃんを忘れる程の美貴。
- 564 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:30
-
「あたし達が無理に言い訳すれば噂は広まる可能性大よね」
「でもどうすればいいのさ」
「気を引いてみたらどうかしら?いっその事」
「は?」
「だから、成り済ますのよ。本当のカップルに」
「り、梨華ちゃんとぉ!?」
「他に何か上手く行く方法あるっていうの?」
「…ないけど…」
悪いけど、梨華ちゃんとそういうのはゴメンだ。
別に悪い意味じゃない。
長い付き合いだから今さらそんな事をするのは気が引ける。
対等な関係でありたいのは梨華ちゃんだって同じはずなのに。
「いい?美貴ちゃんのために言ってあげてるんだよ?」
「わ、わかるけどさぁ…なんでよりによって…」
「じゃあ他の人にしておく?」
「そ、そっちのほうはもっといやだ!」
誰かに伝えてしまえばあっというまに学校中に広まる。
そんなのは分り切っている事だ。
- 565 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:35
-
「もしこれが成功すれば、亜弥ちゃんは美貴ちゃんに振り向くかもよ?」
「そうかなぁ…」
「大丈夫だって。亜弥ちゃん単純だから」
「…何気なく酷いね」
不器用なウィンクをかまし、梨華ちゃんは再びノートに視線を移動させるのだった。
だいたい美貴よりも恋愛にうとい梨華ちゃんが計画した目論みなど成功するはずがない。
それでも美貴はなんとか、亜弥ちゃんの気を引きたかった。
たとえ、梨華ちゃんと疑似カップルになろうとも。
「…じゃ、明日からってことで…」
「成功の暁には?」
「ぐ…クレープ奢ります」
「まいどあり」
なんだかんだ言って計算高い。
面倒な事になりそうな親友を背中を見て、明日が憂鬱だった。
- 566 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:39
-
そして、翌朝。
「おはよ美貴」
「…おはよ」
「元気ないじゃん。どったの」
「……理由は聞かないで」
「?」
クラスメイトのよっちゃんに挨拶をされるも答える気にもなれなかった。
今日から梨華ちゃんと普段以上に行動を共にしなければならないと思うと
憂鬱で仕方がない。
あくまでも、疑似なんだけど。
「おはよう美貴ちゃん」
「…梨華ちゃんは何でそんなに元気かなぁ」
「別にいつもと変わらないけど。美貴ちゃんが元気ないだけでしょ」
「もう散々だよ…梨華ちゃんにのせられなきゃよかった」
「こっちだってほぼボランティアでやってあげてるんだからありがたいと思ってよね」
「…あーあ…」
果たしてこんな計画でうまくいくんだろうか。
どちらかというと梨華ちゃんは楽しんでいる様子だ。
- 567 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:42
-
「だいたい美貴ちゃんは…」
「なんでよ、梨華ちゃんが余計な事するから…」
当分続きそうなこの会話。
途切れる事も忘れ朝っぱらから教科書を広げる梨華ちゃんと口論を
続けている最中、とんでもない来客がクラスへやってきた。
「おーい美貴」
「何よっちゃん!」
「1年のキャワイー子がお待ちかねだけど」
「は!?美貴今いそがし…い!??」
よっちゃんが指差した先には、まさに本物。
何でこうタイミング悪く登場してくれるんだろう、亜弥ちゃんは。
- 568 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:44
-
「ヒュ−ッ、モテるね青年」
「うるっさいよっちゃん…」
「ほら、チャンスじゃない。行ってきなよ美貴ちゃん」
「…う…ん」
目が合った途端、にこりと笑う亜弥ちゃん。
嬉しいんだけどタイミングが悪すぎる。
おそらく梨華ちゃんとの言い合いの現場も目撃していただろう。
やっぱり変な事するんじゃなかった。
後々後悔しながらぎこちなく亜弥ちゃんが待つ廊下へ歩き出す。
重苦しい梨華ちゃんの笑顔と、可愛げのある亜弥ちゃんの笑顔が痛かった。
- 569 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:47
-
「な、なに…?」
「先輩、昨日落とし物しましたよね?」
「…え?」
「これ、水道場に落ちてましたよ」
スッと白い手から差し出されたのは、美貴の名札。
そうだ。
ブレザーについていないと思って探したけどなかったんだっけ。
ぼーっとしている間に名札を受け取る。
「あ…りがとう…」
「……あの、先輩?」
「はいぃ!」
「…ふっ、にゃははっ」
「え…え?」
ダメだ。
そのにゃははとかいう笑い声を聞くだけで、心臓が高鳴る。
こんなにも好きなのに。
名札を握ったまま、可愛く笑う亜弥ちゃんを呆然と見果てる。
一体何で笑っているのだろう。
- 570 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:51
-
「やっぱり、先輩面白い」
「へっ?」
「ほら、そういう反応。ずーっと面白いなぁって思ってたんです」
「…そう…かな」
「にゃははっ、可愛い」
ドキンと胸に針が突き刺さる。
可愛いのは、亜弥ちゃんの方なのに。
言われてしまった美貴は立ち尽くす。
「…やっぱ、同じクラスなんですね。石川先輩と」
「ひょえ!?」
「いいですね、付き合ってて同じクラスだなんて」
「………あ…えと…うん」
「じゃ、失礼します」
「あ…ちょ、ちょっとぉ!」
違う。違うんだって。
今にも涙を流しそうな美貴とは対照的に、何事も無いような亜弥ちゃんの笑顔。
違うと言いかけた瞬間、またも亜弥ちゃんは元気に駆けていってしまった。
なんて無力だ。
- 571 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 19:56
-
「…もう、死にたい」
「たかがその位の事言われたからって、泣かないでよ」
「もう止める!梨華ちゃんのせいだ!」
「止めるって…まだ1時間も経って無いわよ契約してから」
「契約って…とにかくやっぱりこういうのは良く無い!」
机に突っ伏してひたすら考え尽くす。
その横であきれ顔の梨華ちゃんを見るのも堪え難かった。
疑似とはいえ、親友と付き合っているなんて辛過ぎる。
しまいには亜弥ちゃんに確信的な事を言わせてしまったら、どうしようもない。
「…で、どうしたいの美貴ちゃんは?」
「ど、どうって…」
「好きなんでしょ?だったらあたしとの事、ちゃんと否定してくれば?」
「自分で散々言ってたくせに!」
「悪かったわよ。無責任な事言ったのは謝る。これからちゃんと考えるから」
もうダメだよ。
好きなんて言える自信ない。
もともとヘタレなんだよ美貴は。ああどうぞヘタティと呼んでくれ。
やさぐれる美貴の傍で梨華ちゃんはひたすら泣き続ける美貴を見守っている。
- 572 名前:序章 投稿日:2004/11/07(日) 20:01
-
「あのさ、ぶっちゃけちゃっていい?」
「何を?」
「美貴ちゃんには厳しく言わないと分らないだろうし…傷付けたらごめんね」
「…ぅん…」
正直傷付くのはごめんだ。
亜弥ちゃんの事で頭がいっぱいなのにどうでもいい梨華ちゃんの言動で
さらにダメージを与えられるなんて。
それでも美貴は頭を上げて涙を拭った。
「あたしから見たさっきの光景によると、亜弥ちゃんは美貴ちゃんに一切興味はなさそう」
「…ぅ…」
「しかもいつもと同じ表情の上に胸がキュルルンとなっている様子も全くなし」
「……」
「亜弥ちゃんと手が触れた時美貴ちゃんは胸がドキッとしたでしょうけど、
亜弥ちゃんは何も感情を抱いていないように見えたわ」
「ようするに、亜弥ちゃんは少しもちっとも美貴ちゃんに恋愛感情を抱いていないってこと」
撃沈。
- 573 名前:証千 投稿日:2004/11/07(日) 20:08
-
>548様 ミキティーはえらく消極的なんです今回w
押せ押せな亜弥ちゃんは至って冷静なキャラ…どうなるんでしょうかね(笑
>549様 長くなると誤字脱字などが多くなると思いますが…
ありがたやです。今後もよろしくお願いします。
- 574 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/07(日) 20:12
- 更新お疲れ様です。リアルタイムでしたw
何気に梨華ちゃんは酷いですね。冷静な亜弥ちゃん、なんか新鮮です。
美貴様、頑張れ〜!!そして、作者さんも頑張ってくださ〜い!
- 575 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/08(月) 00:19
- 前途多難ですね。
藤本さんの恋が成就することを願っております。
- 576 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:17
-
少し言い過ぎたかも。
美貴ちゃんが肩を落とす中次の仕掛けを考える。
やっぱりオクテな美貴ちゃんをフォローするのは大変。
何で分るかって?それはもう長い付き合いだからよ。
「ごめん、今日は先帰るわ」
「え?何で…」
「気分悪い。…誰かのせいでね」
そんな妬まなくても。
そう言っても美貴ちゃんは頭を抱えてカバンを持ちそそくさと教室から出て行く。
よっぽど好きなんだ、亜弥ちゃんの事。
- 577 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:20
-
「あ、やってる」
テニスコートに足を運び、気持ちの良いボールの音が聞こえる。
やっぱり懐かしくて何度も聞き入ってしまう。
引退したっていうのにまだテニスがしたりないのよね。
ひときわ目立っているのが、美貴ちゃんの想い人亜弥ちゃん。
技術は1年生の中でも一番だし、性格もいいから他の学年の先輩にも
人気がある。
美貴ちゃんが惚れちゃうのも無理はない。
- 578 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:24
-
「あ、石川先輩!」
じろじろとネットに張り付き亜弥ちゃんを見過ぎていた。
不覚にも本人にばれてなんとなく気恥ずかしくなってくる。
「あ、うん久しぶり」
「え?最近来てますよね、コートによく…えっと、みきたん先輩と」
「…美貴ちゃんの事?」
「ハイ!1年生はみんなみきたんって呼んでますよ」
「え、ああそうなの」
意外にも意外。
目を丸くさせていると大体の話が分かって来た。
美貴ちゃんも結構おざなりにしてるんだ、そういう事。
「で、どうしたんですか?」
「ううん何でもないんだけど…そう、その美貴ちゃんの事」
やっと本題に入る事ができる。
- 579 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:30
-
「あたしと他校生の人が付き合ってるぅ?」
素頓狂な声で私の表情を伺う。
様子からしてあの噂はデマだったみたい。
「違いますよぉ、誰から聞いたんですか?」
「同じクラスの子とか…でもやっぱりデマなんだ」
「当たり前ですよぉ、あたし好きな人いますし」
「え!?」
爆弾発言ね。
ごめんなさい美貴ちゃん。とでも謝りたい気分になる。
へぇー、と平常心で頷きながらも美貴ちゃんに何故かごめんと心の中で謝罪をする。
って別に私が悪いわけじゃないんだよね。
「よければ…教えてもらっていい?」
「絶対、誰にも言わないなら…」
「うん!絶対に言わない!」
人によっちゃあどうなるか分らないけど。
亜弥ちゃんには悪いけどこっそりと教えてもらう事に。
前提として美貴ちゃんは例外でしょうね。
密かにそう思いながら、ぐぐっと亜弥ちゃんに身を寄せた。
- 580 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:34
-
「……そっか、そうなんだ」
「誰にも言わないで下さいね?」
「うん、分かってるって。じゃあ練習頑張ってね」
「ハイ!さようならっ」
亜弥ちゃんは嬉しそうに、恥ずかしそうにコートに戻って行った。
そっか、そうだったんだ。
ジャリッと小石を踏み付けながら、カバンを持って帰る事にする。
亜弥ちゃんが好きなのは、違う人。
亜弥ちゃんに聞いた瞬間、分かってはいたもののやっぱりあっけなかった。
美貴ちゃんに言った方がいいんだろうか。
どちらにしても、いずれ美貴ちゃんは事実を知る事になる。
だったら、その日がくるまで言わない方がいい。
きゅっと唇を噛んで、テニスコートを後にした。
- 581 名前:序章 投稿日:2004/11/10(水) 21:37
-
「おはよ、梨華ちゃん」
「………」
「おーい。おはよう」
「………」
「…梨華ちゃん?」
なんだ、変な梨華ちゃん。
ぼぅっとしてメガネがずれたまま本に目を落としている。
なんなんだ。
席につくも、梨華ちゃんは一点を見つめ続けている。
「…ねえ、美貴ちゃん」
「わっ、びっくりした。急に喋らないでよ」
パタン、と参考書を閉じてメガネをかけなおした梨華ちゃん。
何だかもじもじして気持ちが悪い。
眉間にシワをよせた美貴を察して、ふいと真顔になった。
- 582 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:24
-
「あのね、考えて考え抜いた事なんだけど」
「うん?」
「諦めた方がいい、亜弥ちゃんの事」
「…は!?」
ぎっとイスを美貴の方に寄せて迫る梨華ちゃん。
今まで散々あれこれ言っておいて、今さらなにを言い出すのかと思えば。
「そんな事できないよ!」
「分かってる、でもこのままじゃ勝ち目はないの!」
「勝ち目って何?」
「そ、それは…ううん、正直に想いを伝えないままじゃダメって事!」
「……わかってるって…」
「分かってない!」
バァンと机を壊すように叩き、美貴は目を丸くする。
真剣なのはいつもだけど、いつも異常に目が恐い。
まして、こんな事で。
- 583 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:26
-
「はっきりした方がいいと思うの。美貴ちゃんのためだよ?」
「で、でもそれは無…」
「じゃあ諦めた方がよっぽど楽よ。死ぬ程の想い抱えながら黙ってるっていうの?」
尚も机をバンバン叩き続ける。
分かってる、いや分かってない。
美貴は全然、梨華ちゃんに指摘されたこと、分かってない。
でも、どうしたらいいのかわかんないから。
何も言えずに遠くから見つめる事しかできない。
うやむやなまま、終るのは嫌だけど。
言葉に出来ない。
- 584 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:30
-
「…ね?美貴ちゃん。素直になってみなよ」
「……無理だよぉ」
「告白して振られるのが怖いっていうの?」
そうだよ、それが一番嫌で怖いんだ。
好きだから諦める。
そういう引き際も大切だと梨華ちゃんは言った。
「諦めろってあたしは言ったわ。でもそれは美貴ちゃんが決める事だよ?」
「…そう、だけど」
「自分にも、亜弥ちゃんにも正直にならなきゃ」
ポン、と美貴の肩に置かれた手は温かかった。
それは梨華ちゃんの言葉とともに、美貴に伝わってくる気がした。
美貴はどうしようもなく不器用で。
どうしようもなく素直じゃない。
でも、亜弥ちゃんの事が好き。
「…想い、伝えられるよね?」
「……う、ん…」
ありがとう、梨華ちゃん。
- 585 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:33
-
とは言ったものの。
「無理だってばぁ!!」
「何言ってんのよ、告白の口実はコレしかないでしょ!」
「い、一緒に帰るったって会話とか…」
「あーもーいちいち言わない!ファイトッ!!」
梨華ちゃんに背中を思いきり押され、下駄箱の隅から中央に追いやられる。
絶対無理だ。
亜弥ちゃんと一緒に下校するなんて、とても。
押された拍子にけつまづき、ドンッと誰かとぶつかる衝撃。
よろめきながら壁に手をつき、相手を確認しようと顔をあげる。
「ご、ごめんな……さい!?」
なんでこう、タイミングがいつも悪いの。
- 586 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:37
-
「ごっ、ごめん亜弥ちゃ…」
「いえ、大丈夫です。先輩は?」
「み、美貴はぜぜぜん平気!!」
どもりすぎ。
しかもキョドりすぎ。
またも亜弥ちゃんと偶然の出会いを果たし、しかも衝突なんて。
転んだ拍子にどこか怪我してないかと亜弥ちゃんに訊ねても笑顔だけが
かえってくる。
その笑顔が美貴をおかしくさせるっていうのに。
「…先輩、帰りは一人ですか?」
「や、いや…梨、梨華ちゃん待ってるんだけどぉぉー…」
「なぁんだ、一緒に帰ろうと思ったんですけど…」
「へっ!?」
でまかせを口走った美貴のバカン。
慌てふためく心を落ち着かせデマを撤回しようと焦る。
- 587 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:40
-
「じゃ、さようならっ」
「ちょちょちょ!!!」
「何ですか?」
「も、もし亜弥ちゃんがよければ一緒に帰らせて頂こうかと思いましてですね……」
「ふぇ?」
「梨華ちゃんなんかどうだっていいから、一緒に…帰ろう?」
ごめん、ごめんよ梨華ちゃん。
謝りながら亜弥ちゃんの顔色を伺う。
しかし、まばゆい程のカワイさが美貴の目を殺そうとする。
「ハイ!」
「ほ、ほんとに?」
「でも石川先輩…いいんですか?」
「い、いい!ほっとけばそのうち帰ると思うから……」
コレ、聞かれたら怒るよなぁ。
不安が残りつつも、常に笑顔で可愛い亜弥ちゃんと並んで帰る事にした。
予期せぬ出来事とともにニヤける顔を抑えて。
- 588 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:44
-
それにしても、いつ告白なんてすれば。
高鳴る鼓動を抑えつつ亜弥ちゃんと帰り道を歩く。
にしたって体した会話もない。
すぐに沈黙になってしまう。
この状況、一番嫌いかも。
「…先輩?」
「ひゃい!?」
「ぷっ…にゃははははぁ!」
「…え…え?」
沈黙をやぶったのは、紛れもなく亜弥ちゃんの方からだった。
急に美貴の表情を伺って笑い出す。
こんな事、前にもちょっとだけあったような気が。
しどろもどろしながら帰り道を歩き、亜弥ちゃんは笑いを必死に抑えている。
「せ、みきたん先輩ホント面白い!」
「え…み、みきたん先輩ぃ!?」
「あ、そう呼んでもいいですか?」
「ぜ、全然!!むしろ呼んでくれた方が…」
「ふぇ?」
「や、何でもない!」
みきたんって。みきたんって!
- 589 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:47
-
「あたしが話し掛ける度に面白い反応するんですもん」
「そ、そうかな…」
「んでもってその時の声が可愛いんですよ、みきたん先輩」
「や…そ、それはどうも…」
「にゃはははっ!」
顔が真っ赤になるくらい、亜弥ちゃんは吹き出して美貴の事をまじまじと見つめる。
やめてよ、そんな可愛い顔アップにしないで。
それにしても後輩からこう話し掛けられるのってこんなに嬉しいものだと思わなかった。
ましてや好きな後輩から。
「みきたん先輩って長いんで、みきたんでいいですか?」
「よ、呼び捨てで!?」
「ダメですか?」
ううん、ダメじゃない。
ダメじゃないけどさ。そういう瞳で見つめないで欲しい。
ホント、ヤバいくらい混乱するから美貴。
- 590 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:51
-
「い…いいよ…」
「やったぁ!みんなに自慢しよぉ〜っ!」
「じ、自慢?」
「そうですよぉ、みんな先輩の事かっこいいとか可愛いとか言って大変なんですよ?」
「…美貴?」
「ハイ!」
なんだ、そういう理由。
ガックシと亜弥ちゃんには分らないように肩を落とす。
なつっこいのはそいういうわけなんだか、期待してた美貴が馬鹿?
「みきたんは、好きな人とか、いるんですか?」
「ハ…美貴!?」
「プッ…にゃはっ、そうです」
ちょっとだけ笑って、美貴の事を指差す。
そういう質問は、受け付けたくないんだけれど。
- 591 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:55
-
「…い、る…けど」
「ホントですか?」
「うん…」
「にゃは、石川先輩だぁ」
「違うから!!!!」
カァッとあの時の記憶が蘇ってくる。
なんてゆうか、亜弥ちゃんの口から聞くのは一番嫌だ。
好きな人から、そういう誤解されるのってすごく辛い。
勢い余って極度の声を出してしまった。
亜弥ちゃんはビビッてしまったのか、表情を強張らせている。
「ご、ごめ…何やってんだろ…美貴」
「…すいません、余計な事言っちゃったみたいで」
「違うんだよ。……ホント、梨華ちゃんとはそういう関係じゃないから」
「……そうだったんですか」
「うん。ホントだから、誤解してる周りの子にも言っておいてくれるかな?」
「…ハイ!」
何で必死になるんだろう。
亜弥ちゃんは強張らせていた身体を溶かし、笑顔で頷いてくれた。
ごめん。ごめんね。
- 592 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 17:58
-
「…ふふっ、先輩どもらなくなった」
「え?」
「みきたん、あたしと普通に喋ってくれましたね」
「…あ」
いつの間にか、胸の高鳴りは控えめになっていた。
でもまだ頬が火照っているのが分る程。
何でだろう。亜弥ちゃんと会話するたび、段々好きになっていく。
何でだろう。ちゃんと目を見て話せる。
「そっかぁ、みきたんフリーなんですね」
「え?うん…まあ…」
「じゃ、あたしが狙っちゃおっかな」
「ッハ!??」
バクン。
心臓が破れる程の鼓動が響いた。
冗談にもならない事を言ってのける亜弥ちゃんは、急に深刻な眼差しに変わる。
- 593 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 18:01
-
にゃはっ。
「ジョーダンですよ、そんな恐れ多い事」
「え…え?」
「みきたんにあたしは勿体ないです。ですよね?」
ふふん、と勝ち誇るような笑みを漏らし、美貴にビッと人指し指を向けた。
そう。
でもいっこだけ違うよ。
無邪気な亜弥ちゃんに、心の中でそう語りかけた。
亜弥ちゃんは美貴に、勿体無いくらいの素敵な人。
にゃははと笑う亜弥ちゃんを見て、もうダメなんだと確信した。
- 594 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 18:05
- でも、うやむやなまま終らせたくない。
初恋なんだから、どうせならスッパリ諦めよう。
「亜弥ちゃん」
「ふぇ…みきたん?」
歩き出しそうな足を止め、ほがらかな笑顔が痛い。
「…美貴は、亜弥ちゃんの事が好きだよ」
嘘なんかじゃない。
本当だから、いつまでも遠くから見ていたかった。
でも、梨華ちゃんのおかげてここまでこれた。
だからちゃんと踏ん切りつけて諦める。
「…せん…みきたん?」
「本当だよ。うん、そんだけ。じゃあね」
ザァッと吹き抜ける風を仰いで、亜弥ちゃんに背を向けた。
もちろん特別な笑顔で手を振って。
キョトンとする亜弥ちゃんの表情は最後まで見えなかった。
堪え出る涙を、見せたくなかったから。
- 595 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 18:07
-
これが初恋。最後の初恋。
グッと手に力をこめてそう願った。
これが世界で一番、素敵な恋であったようにと。
「みきたっ…キャッ!!!」
「…っ亜弥ちゃん!?」
ギィィィッッという鋭い音が耳を突き抜け、美貴の足を止めた。
自転車のブレーキ音がけたたましく鳴り、亜弥ちゃんの悲鳴に近い声が美貴を引き止めたから。
- 596 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:25
-
駆け出して亜弥ちゃんの手首を掴み、急ブレーキを踏んだ自転車を避けた。
グッと掴んだその手首は細くて、白くて、たった一瞬でも分る程の愛しさ。
やっぱり美貴は、他の恋が出来ない運命に落ちたと。
「あっ、危ないみきたん!!」
「へ……うぁぁぁぁっ!」
自転車はそのまま通り過ぎ、亜弥ちゃんの手首を離したその時。
砂利にけつまづき、台風で増水したままの川にドバン。
- 597 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:30
-
「ブハッ!!う゛ぁっ…ゲホッ!」
「みきたんっ、みきたん!」
なんて馬鹿なんだろう。
川からなんとか上がった美貴は駆け寄る亜弥ちゃんの手を借りる。
握った手はやっぱり、温かい。
この温もりは一瞬の優しさだと分かっていても、離したくはなかった。
どんなにカッコ悪くて恥ずかしくても。
「ゲホッ…うぇぇっ」
「ごめんっ、ごめんなさいっ…たぁんっ…」
「な、泣かないでよ、亜弥ちゃんは何もしてな…」
「ビックリしてっ…あたしのせっ…い…」
「違うって、う…あの」
こんな事して、嫌われるよね。
そう思ってても、美貴は亜弥ちゃんの肩に置いた手を離す事は出来ず。
そのまま肩を抱いて胸に導いた。
こんな事しちゃ、いけないんだよ、本当は。
- 598 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:33
-
泣いてしまいたい程、泣いてくれる程亜弥ちゃんは優しいから。
美貴はそんな優しさに答える代わりに、亜弥ちゃんを抱き締める事しかできない。
濡れた制服をギュッと抱き返してくれて、一層想いが増してくる。
諦める事なんか、不可能だった。
「と、とにかく…うん、ごめん」
「っ…たんっ」
「うぁ…」
引き離した身体を、亜弥ちゃんは泣きながら抱き返して。
何度もごめんとあやまった。
美貴は泣く亜弥ちゃんの頭を撫でて、ほったらかしにしていた気持ちをぶちまけた。
- 599 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:38
-
「…亜弥ちゃん、さっき、驚いたよね」
「う…んっ」
「急だったから、美貴もワケわかんなくなって…でも、嘘じゃないよ」
「……ん」
「ずっと前から好きだったんだ。でも、亜弥ちゃんは美貴に興味ないから、諦めた」
「っ…」
パッと涙が滴る頬を上げて、美貴の言葉を飲む亜弥ちゃん。
少しだけ泣くのをやめて、美貴よりもずっと強気でいる。
「…でしょ?だから、もういいよ。このまんまが、ちょうどいいって諦めたんだよ」
「ちが…う…ちがうもんっ」
「え?」
「好きっ、みきたんが好き」
「亜弥ちゃ…」
涙を流す頬を拭おうとしたその時、亜弥ちゃんが美貴にとんでもない事をした。
望み通りの夢の中。まどろんでいたこの感触は夢じゃなかった。
重なった唇は濡れていて、たった5秒程の時間だった。
- 600 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:41
-
頭が痛い。
川に落ちた事がきっかけで頭痛と身体のだるさが残っている。
そして、あの時の一瞬。
思い出しただけで顔が真っ赤になって、ぽぉっとする。
びしょ濡れになった制服は着る事ができないので、今朝は一日中ジャージだ。
急に、亜弥ちゃんがキスをしてくるなんて。
そして、あの時言った言葉。
みきたんが好き。
- 601 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:44
-
「おはよう美貴ちゃん!」
「おは、よう」
やっぱりいつもの朝。
参考書を朝っぱらから開き勉強に没頭する梨華ちゃんに挨拶を返した。
妙に声のトーンが高いのは、昨日の事だろう。
「どうだったどうだった?」
「……まあ、よくわかんない」
「え?告白したんでしょ?」
「う…したけど…まだ信じられない」
「…どういう事?ちょっと美貴ちゃん!」
梨華ちゃんの言葉を振り切って教室から出て行く。
なんだかその話はしたくなかった。
亜弥ちゃんの事は好きだ。
でも、考えたくない。
あの時言った言葉は、真実か嘘かわからないままだから。
鵜のみにしたら、いけないと思ったから。
- 602 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:47
-
屋上の手すりにもたれかかり、昨日の感触を確かめるように唇をなぞった。
ウソみたいにまだ心地が残っているからだ。
あまり聞き取れないような屋上の扉の音が聞こえたものの、無視して空を眺める。
周りの音響もよく聞き取れないように感じたから。
「先輩」
「……ん?」
「みきたんっ」
「……亜弥ちゃんっ?」
ひらひらと靡く短いスカートが印象的な彼女。
紛れもなく昨日の犯人だった。
- 603 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 19:53
-
「……どしたの、こんな所で」
「石川先輩に聞いたんです。みきたん、多分ここにいるって」
親友の梨華ちゃんにはバレていたか。
いつも気分が悪い時には内緒で屋上にいくものの、梨華ちゃんには
バレているからだ。
それにしても、わざわざ現れるなんて。
「……みきたん、どうして喋らないんですか?」
「…え」
「あたしの事好きだったら、もっと笑って欲しいんです」
寂しそうに言った、亜弥ちゃん。
足を踏出すと、亜弥ちゃんはひとつ後ろに下がる。
「信じてないでしょ、あたしがみきたんの事好きだって」
「…っ…でも」
「あたし、冗談でああいう事言わないんですけど。結構傷ついてますよ」
みきたんが冷たいから。
そう言った亜弥ちゃんの瞳は悲し気で、寂し気。
違う。
好きすぎてどうしていいのかわかんなくて。信じられないだけ。
- 604 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 20:01
-
「ホントはみきたんの言ってた通り、最初はあんまり興味なかったんです。みきたんに」
「…そう」
「実は他に好きな人もいたりしてて」
「……うん」
「でも、昨日みきたんが言った言葉で変わったんです」
「…え?」
フワリと風が吹く。昨日と同じ、あたたかい風だった。
その温もりは亜弥ちゃんが抱きしめた代わりとなって。
今、直に繋がってくる。
「何かわかんないんですけど、一目惚れしたんです、みきたんに」
「……へ…」
「わざわざ川の中まで飛び込んじゃって、あたしの事守ってくれた」
「…亜…」
「そういうみきたんが、好き」
そうだよ。
美貴もそういう亜弥ちゃんが大好き。
ぎゅっと抱きしめた亜弥ちゃんの唇にキスをして、授業開始のチャイムが鳴るのを待った。
- 605 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 20:08
-
−−1ヶ月後−−
「美貴ちゃん、一緒に帰ろう」
「あ、ごめん、今日亜弥ちゃんと一緒に帰るんだ」
「え?亜弥ちゃん部活あるんじゃ…」
「えへへっ、デートすんだ。じゃあねっ」
「あ、ちょっと!」
梨華ちゃんには悪いけど、美貴は亜弥ちゃんと晴れてラブラブに。
夢みたいな展開に感謝をして毎日過ごしている。
美貴はあと数カ月で卒業だからそれまでの月日を充実して過ごす事ができている。
「…全く。なんなのよこの間までウジウジしてた子が」
「まー、女心ってそんなもんじゃないの」
「そうかなぁ…って、どうしたのひとみちゃん」
「いやべつに。それよか一緒に帰ろ、どうせ暇でしょ」
「何よその言い方」
ま、この二人も密かに恋の進展が続いてたりする。
- 606 名前:序章 投稿日:2004/11/12(金) 20:13
-
「デートって言っても、美貴の家つまんないよ?」
「ううん、いいもん。みきたんと一緒ならどこでもいい」
「あはっ、そっか」
相変わらず元気で可愛い亜弥ちゃん。
他に好きな子がいたのにも関わらず、美貴を選択した理由が未だによく分らなかったりする。
梨華ちゃんに後から聞いて美貴は唖然とした。
勝ち目やらなにやらと言っていたのはその事だったのかと納得出来る。
今さらだけど、亜弥ちゃんが前に好きだった子が誰なのかは分かっていない。
「…どしたの?」
「う、ううん。可愛いなぁって」
「ふぇ?誰が?」
「……内緒」
「えぇ、教えてよぉ」
「ひーみーつだよ」
そう、一生秘密かな。
始まったばっかりの恋は前途多難だっていうのはこれから分ると思う。
唇を噛み締めて悔しい思いをするかもしれない。
でも抱きしめたばかりの亜弥ちゃんを、手放す事は絶対にできない。
これから紡いでいく、序章の恋。
FIN
- 607 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 20:15
- はぁ、やっとこで完結。
何気なくあやみきりかだったかも…
>574様 最後は微妙に甘く仕上がりました。
リアルタイムの読者様もお疲れ様でしたwありがとうございます。
>574様 前途多難でもあやみきに不可能はございませんw
- 608 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:08
-
「ねぇ、何でよっちゃんは美貴と付き合ってんの?」
「え?」
テレビに視線を注ぐ彼女を背後から抱き締めるようにして一緒に時間を過ごす。
突然、視線を変えないまま彼女が訊く。
「何でって。何でも」
「それじゃ分らないよ。ねえ何で?」
「…何で…」
一度その点に執着すると離れないのが彼女の強い所。
そういう所に惚れてしまったんだけれど。
たまに面倒臭い事もある。
- 609 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:10
-
何で?と聞かれても、どう答えていいのか分らないからだ。
「…好きだから。でしょ」
「ちっがうの、そういう事じゃなくて」
「じゃあどういう事?」
「えーっとぉ」
あたしの手をとって遊ぶ。
そして、一言恥ずかし気にぽつりと零した。
「美貴のどこがいいのさ」
自虐的なコトバ。
- 610 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:12
-
「へぇ」
「どこがいいの」
付き合って三ヶ月目。
今さらそんな事を振り返るのか。
「どこって、全て」
「適当すぎるよ」
「適当じゃないよ、本当だって」
「…そーゆうのが欲しいんじゃないの、美貴は」
ダダをこねる幼稚園児のように、不貞腐れてしまう。
お姫さまは納得がいかないようだ。
「……じゃー、いくつか挙げるけどちゃんと聞いとけよ」
「うん」
スゥと吸い込み、べらべらと言いまくった。
- 611 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:16
-
「かわいいとこ、鼻声、照れるとこ、天然なとこ、馬鹿なとこ、
エロいとこ、エッチんときヤらしい声あげるとこ、優しいとこ、怖いとこ、
綺麗なとこ、歌がうまいとこ、映画見てすぐ泣くとこ、強いとこ、弱いとこ」
その他含め色々。
そう告げて全てのコトバが終った。
まだ言い足りない部分は、いっぱいあるけど。
「わかった?」
「…バカ」
「うん。バカを好きになった美貴もバカだよ」
「……そっか」
ホント、うちらってバカ。
- 612 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:20
-
きゅっとかたく手を握りあって、テレビに視線を注ぐ。
それ以後、美貴は余り喋らなかった。
じっと黙りこくり、あたしと目を合わせようとしない。
もしかして怒った?
なんとなく不安になり、そぉっと頬にキスをする。
「ばっ…何っ?」
「やっぱり怒っちょる。なぁに?」
「こっちが聞きたいんだけど」
「うん、こっちも聞きたい」
オウム返しでニコリと笑いかけると、美貴は悔しそうにしてあたしに
もたれかかってくる。
意地っ張りで、強くて弱いコイビトだ。
「…よっちゃんって、相当のエロだ」
「ふーん、そうかな」
「なんでこう、甘い事すんの」
「好きだから、じゃん?」
そう、それしか理由が見つからないもん。
そう言ったら頬をピンク色にして悔しそうに黙る。
うん。そういう所も好きだな。
- 613 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:26
-
「つかね。理由なんてないわけよ、好きになるのにはさ」
「…ふーん。じゃさっきの訂正してよ」
「いや、ヤだね。本当のことだから」
「なん…」
「ちょっとお黙り」
むっとする表情の美貴をぐっと抱え、ウルサイ唇を塞ぐ。
こうすれば5分間黙る事を、あたしは学んだ。
「あんさ、恋って難しいんだよ。分る?」
「…わかんない」
「じゃー悩め。どうしてウチが美貴の事好きなのか、一生悩んどけ」
刃向かう彼女の額にピンッとかまし、呆れ気味に言葉をかける。
納得がいかないのは伝わる。
でもしつこいよ。好きなんだから好きなの。理由はよくわかんないの。
「じゃ、美貴はあたしのどこがいいんだよ」
「…ぜんぶ」
「ほらな。そういう事だよ。だからもうヘンに追求するなよ」
「だって怖いんだよ」
「何が?」
ぎゅうっとあたしのトレーナーを掴み、上目遣いで顔を覗き込む。
この天然魔性、よくあたしの心を掴みやがる。
- 614 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:31
-
「よっちゃんが美貴から離れたら、すごく怖いんだよ」
何を言い出すかと思えば、またこんな疑問を持ちやがって。
下らない事はすぐ忘れるタチなのに、な。
「は?バカ」
「なんでっ…」
「離れるワケないじゃん。つか、離さない?」
そっちが離れたら、追いかけてやる。絶対に離さない。
もし取られたりしたら、取ったやつを憎んで。
あわよくば、殺す。
「嫉妬心強いんで、自分」
「…美…」
「あ、そっちも負けてないか」
結局お互いが一番大事な存在。
そんな事に気付いてない美貴は大馬鹿だ。
軽く頭をぽんぽんと撫でて額にキスを落とす。
- 615 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:36
-
「キスしたい、エッチしたいっつうのが好きって気持ちなんじゃん?」
カラダだけが欲しいっていうんじゃないけど。
でもなにもかもが愛しいから欲するんだよ。
分かっているくせに、そうやってかまってほしいオーラを出すんだから。
「好きじゃなかったらヤんないし」
「…こっちだってヤらせないよ。そこまで安くない」
「もうちょっと胸ありゃなぁ」
「ァ?」
「や、なんでもないっす」
ものすごい形相。
視線をかわし笑ってみせると、つられて美貴も笑う。
「あっそ、じゃあ他の女とヤりゃいじゃん」
「うーわかわいくねぇ。気持ちよくねーだろんなの」
「可愛い子だったら誰でも手出すくせに」
「バカ言うな。オレっちは美貴がいいんだよ」
「この男女っ!」
「ってぇ」
こんやろ、本気でエルボーかましやがった。
両手で抑えギブアップするもののしつこく殴り掛かる。
もちろんふざけているから。
本気でやられたら死ぬっつの。
- 616 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:38
-
「…ん?」
「今の事、本気で信じていんだよね?」
ぱっと攻撃をやめて、起き上がった拍子にぎゅっと抱きしめられる。
少しだけ、乱暴な拳が震えていた気がした。
「…美貴は、あたしの事が好き。ファイナルアンサー?」
「……ファイナルアンサー」
「じゃ、心配御無用。信じてオッケー」
「…マジ?」
「ドマジ」
真剣な瞳。
魔性の瞳にとりつかれたあたしは、見事抜けだせない罠。
- 617 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:43
-
引き寄せられた磁石はくっついて離れない。
軽く触れただけのキスから、熱い美貴の舌。
「…もー、マジで好き」
「……ふぅん」
「好き好き、愛してる」
「ウザッ」
「ウザイやつほど愛があるんだよ」
意地っ張りな美貴。
それでも強くて弱い、ウチだけの美貴。
「今夜は張り切っちゃお」
「ダメ。当分無しで」
「ハァ?ざけんな」
「うるさい、よっちゃんなんか死ね」
「なんでまた怒ってんだよぉ、美貴ぃ?」
「もういいっ、じゃまっ」
突然起こりだして機嫌を損ねた。
きっとあたしが口にする愛の言葉は、美貴にとってかなりの重さなんだろう。
だからこういう憎まれ口をたたいて、かまって欲しいとつっけんどんになる。
それにあたしは、そっと触れて撫でてあげる。
- 618 名前:名無しA 投稿日:2004/11/13(土) 13:48
- リクエストで・・
紺美貴か、あや紺を(あやみき紺でも)
新曲を聴いていたらなんとなく。
できればお願いします。
- 619 名前:そこんところ 投稿日:2004/11/13(土) 13:49
-
「おぉーい、藤本さん。モッさん。美貴」
「うるさいってばぁ…」
「素直じゃないなぁ。そういう子は嫌いだぞー」
びくっと跳ねた美貴の心。
パッと見でもすぐ分る程、動揺しているのが分る。
結局あたしがいなきゃ崩れるんだから。
「ほーら。泣くなよー」
「泣いてないし。離してよ」
「さっき一生離さないって誓ったばっか。だからキスしよ」
「は?」
答える間もあげることなく、何度も重ねた唇へ。
約束のキス、裏切りのキス。
幾度となく繰り返して来た。
「ぜってー約束やぶるなよ。破ったら怒るよ」
「あっそ…」
「そこんとこ、ヨロシク」
ボスン、とベッドに美貴を押し倒し、ポポイと衣服を脱がしていく。
溜め息をつきながら抵抗もせずただ照れている美貴に口付けて。
色んな事あるけど、結局美貴はあたしの事愛してるわけで。
あたしも美貴の事を心から愛してるんだよ。
そこんとこ、ちゃんとわかってるんだかわかってないんだか。
美貴の甘い声に耳を済ませながら、行為を続けるのであった。
FIN
- 620 名前:証千 投稿日:2004/11/13(土) 13:51
- 何か雰囲気がエロい。
みきよしって自然とエロくなる気がw
>618様 みきこんかあやこん…難しいっすねぇ。
作者としてはみきこんの方が書きやすいかも…という事でみきこんを
書かせて頂こうと思います。ありがとうございました。
- 621 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 16:36
- ニヤニヤニヤニヤしちゃいました。
みきよしイイっす!!なんだろうな〜この雰囲気。
エロいと言ってしまえばそれまでなんですけど
ちゃんとお互い欲しているっていうか…やっぱエロいのかw
- 622 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 19:47
- あれはうだるように暑い夏
たった一人の女性に出会った
とても寂しそうで とても楽しそうで
とても美しい たった一人の愛した人
今でも思い出せる
君との日々
- 623 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 19:51
-
「え?神社のお祭り?」
「そう!こっちで2人誘うから、よっちゃんも来なよ!」
学校の帰り道、友達の梨華ちゃんに誘われた。
たいして興味はなかったものの、どうしてもと言われたので渋々承諾する。
あまりダブルデートという形は好きではない。
面倒だし、気の合わない人とあたったらなおさらだ。
「6時30分に神社の境内前!絶対来てね!」
「ん…適当に行くよ」
「絶対だよ?絶対!」
彼女が夏の出会いに賭けていることは察するように分る。
友達の流れにのり、しょうがなくという事だ。
- 624 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 19:53
-
「あ、あった」
タンスの奥に入っていた、古い甚平。
これは昔無くなったじいちゃんが着ていたものだ。
でも決してあたしが着て似合わないというわけじゃない。
どうせあるなら着て行こう。
なぜか心が気分良く動き、甚平を腕に通した。
古くホコリっぽい匂いがして。
亡くなったじいちゃんを思い出させた。
- 625 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 19:58
-
「あっ、よっちゃーん!!」
案の定、梨華ちゃんは浴衣を着て来ていた。
やっぱり女の子女の子している格好はそれなりに似合っている。
適当に返事をかえし、梨華ちゃんの横にいる男をじろじろと眺めた。
「ねっ、お願い協力して!」
「いいけど…こっちの女の子は?」
「ああ、あたしの後輩の紺ちゃん。付き合ってあげてくんない?」
「え…でも会話なんてしたことな…」
「平気だって!じゃ適当にわかれましょ」
「え、ちょっと!」
相変わらず強引だ。
周りはカップルだらけ、周囲は屋台や夜店が出回っている。
微かに太鼓の音が聞こえて耳をすます。
ふいに目をやると、梨華ちゃんが連れて来た後輩の子。
俯き加減で喋ろうとしない。
しょうがない、取りあえず一緒にまわるか。
- 626 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 20:00
-
「……あのさ」
「はい…?」
「ん、いいやなんでもない」
会話が続かない。
ふったとしても曖昧な返事しか帰ってこず、こちら側もどうしていいのかわからない。
こういう雰囲気って嫌いだ。
タコ焼きの店に二人並んでいるカップル。
よく見たら梨華ちゃんとさっきの男だった。
何かチャライやつだ。
きっとまた泣き目にあう。なんとなくそう直感し、紺野という後輩
の手首をつかみ人込みを出た。
ここでお互い迷ったら元も子もない。
- 627 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 20:03
-
「はぁ…凄いなあの人の量」
「そう、ですね」
「取りあえずジュースかなんか買ってくるから、ここで待っててよ」
「ハ、ハイ」
扱いがへたくそだなぁと我ながら思う。
自分は結構周りから良く思われている方だ。
むしろモテると言っても過言ではない。
でも女の子の扱いははっきり言って不器用だ。
人込みをさけた木の下に紺野を待たせ、再び人の中へ混じってゆく。
なぜか目的地には辿りつかず、どんどん道から外れてゆく。
なんでだ?
そう思っても足は止まる事なく、屋台や夜店から離れ竹林の中へ
吸い寄せられる。
夢?ふと思った瞬間、グワァッと強い突風が襲って来た。
- 628 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 20:06
-
「…っ…ん…?」
風はウソのように止み、代わりに竹の鳴る音がピシッと聞こえる。
そして井戸の底から聞こえてきそうな奇妙な耳鳴り。
誰もいない場所に、いつのまにか来てしまった。
不思議に思い再び夜店の道へと足を運ぼうと一歩前にでようとする。
「っ!?」
動かない。
ガッチガチに石膏で固められたように、足が動かない。
背中に冷たい氷が刺さるような痛みがある。
ぐっと息を飲み、後ろを振り返った。
- 629 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 20:10
-
「こんばんは」
「……こん…ばんは」
それは人の笑顔だった。
驚きをかくせない程動揺している自身を落ち着かせ、声をかけてきた
女に取りあえず返事をする。
なんだ、あたしと同じ位の子だ。
だとしても、何だか変。
この人、なんか変だ。
「…なに、してるの?」
「友達探してる。貴方は?」
「あ…えと、道に迷っちゃって」
「迷った?迷う程この神社広くないけど……」
とっさにウソをついた。
いや、ウソじゃないのかもしれない。
だって自然に足が動いた。
何かの物語のような展開に不安を抱きつつ、その人が見せた笑顔に目を奪われた。
純粋な美しさに、かわいらしい声。
なんだか不思議な気分にさせられるような。
そんな女だった。
- 630 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/13(土) 20:14
-
「こんなところで友達探してる君もどうかと思うけど…」
「え?うん、まあそうかもね」
「なんだそれ。…そうだ、あたしもう行かなきゃ…」
「あたし?」
肝を抜かれたような、拍子抜けした表情。
もしかして誤解している。
いつも初対面の人には誤解される。
こうやってね。
「あなた、女の子?」
「そ、そうだけど。…あ、男だと思ってた?」
「うん…へぇー、女の子」
「…あんま見ないでくれる?」
じろじろ、まじまじとなめるように見つめる。
なんなんだこの女。
「名前、よかったら教えて?」
「あー、吉澤ひとみ。そっちは?」
「…美貴。藤本美貴」
藤本と名乗ったその女は。
妙に聞き覚えがあった。
- 631 名前:証千 投稿日:2004/11/13(土) 20:15
- あー…なんだかみきよしブーム到来です。
しかも季節が…ぁぁぁ。
季節はずれすぎますがよかったらどうぞ。
明日中には仕上げます。
- 632 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/14(日) 08:59
-
ピシリと風で竹が鳴る。
「っつか、もう行かなきゃ。人待たせてるんだ」
「…もう行っちゃうの?」
「へ?だって来たくてここに来た訳じゃないし。友達見つかるといいね、じゃ」
「ちょ、ちょっと待って!」
ぐわし、と腕を掴まれる。
浴衣に包まれたその姿から、どんくらいの力が出ているんだか。
「な、なに」
「お願い、一緒に探して」
「えぇ?だってあたしも…」
「すぐに見つかると思うから。お願い!」
「んな事言っても…」
無理がある。というか図々しい女だ。
初対面にここまで頼みごとをするとは。
あっけにとられるも、木の下に残して来た後輩を見捨てるわけにもいかない。
- 633 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/14(日) 09:03
-
「…ね?」
ね、って。
この人きっと彼氏やらなにやらいるんだろう。
だってこの表情はシロートじゃ使えない。
心を捕らえるような上目遣いはあたしには効かないが。
妙に気になった。この女、少し面白そうだと。
「…わかったよ。少しの時間だけだよ」
「そ?ありがとう。じゃ、行こうか」
「え…そっちは何もないよ?」
「いいんだって、多分こっちだから」
そう言って、竹やぶの中をぐんぐん進む彼女。
おかしいぞ。
この神社の裏には寺があり、寺の近くには何もないただの行き止まりだ。
安心したように足を進む彼女を追いかけ、仕様がなくついていく事にした。
何故かその時には後輩の事など忘れていて。
ただ目の前にいる女の後ろ姿を追い掛ける自分がいた。
- 634 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/14(日) 09:09
-
「ねぇっ、ちょっと!どこ行くんだ?」
「行けばわかるって。ほら、あそこの光り」
「え…?」
10分程林の中を歩いていると、愉快な音とともに明るい色の光りが見えて来た。
おかしい。こんな広い空間はここにはないはずだ。
ふと女の方を伺うも、美しい笑顔を見せるだけだった。
「…ちょ…どこだよここ」
「貴方がさっきまでいた場所。時代は違うけどね」
「え…え?」
目の前に広がる光景に目を奪われた。
さっきまであたしが梨華ちゃんと一緒にいた境内。
そして多くの人と夜店や屋台。
どういう事だ。
この寺の裏とは逆方向から来たはずなのに。
さっきまで聞こえていた太鼓が、勇ましく打たれている。
異世界。
女は面白そうに笑い、ふととんでもない事を口にした。
- 635 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/14(日) 09:23
-
「今貴方が暮らしているのは未来の世界」
「…何言って…」
「ここは過去に過ぎた想い出の場所。今は西暦何年?」
「二千四年…って…」
「ここは貴方が知らない世界、つまり過去の7月31日になるってわけ」
ハンマーで頭を殴られた衝撃が襲ってくる。
そんな事現実に起こりうるわけがない。
でも目の前で起きている事を信じるしかない、と言わんばかりの女。
過去にタイムスリップした。と言うのだ。
「じゃ、じゃあここはいつの時代なんだよ!」
「ざっと言えば大正時代後半。何年かはそのうち分るよ」
「大正って…って事は…」
「ふふっ、計算するのが頭痛いって顔してるよ」
そんなことあるわけない。
だって、大正後半って言ったら1945頃…戦時中だ。
「何でこんな所にって思ってるでしょ?」
「…あ、当たり前だろ!なんで…」
「過去の記憶が蘇った、って言えば早いかな。貴方自身になにか
きっかけがあったってこと」
笛や太鼓の音が響く中、彼女の眼に何かが映った。
- 636 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 01:09
- なんとも不思議な世界に迷いこんだようで…
続き楽しみにしております。
- 637 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/15(月) 22:01
-
「騙したのか…?」
「そんな人聞きの悪い。違うよ、協力して欲しかっただけ」
「何に?っていうか何であたしなん…」
「貴方じゃなきゃ出来ない事があったから呼んだんだよ」
意味深な返事に困惑を隠しきれない。
だいたいこの異世界自体、常識はずれ過ぎている。
正常じゃなきゃいけない。あたしはこの女に惑わされているだけだ。
なぜ、あたしを呼ぶ必要があったのか。
なぜ、あたしはここに来てしまったのか。
「協力って…何をするの?」
「あそこの境内まで行ってみれば分る…行こっ」
「ちょ、おい!!」
境内?
彼女が指差したのは、人込みからでもわかる神社の境内だった。
今あたしがいる世界は大正時代。
戦時の真只中で、神社の赤い鳥居が激しく印象的だった。
- 638 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/15(月) 22:06
-
「ちょっ…危ないよ」
「うぁっ」
よくも浴衣でそう走れるものだ。
カタカタと鳴らし境内まで走り行く彼女の手を掴んだ。
人込みのなかを素早く走るのに見兼ね、無意識だった。
「とにかくよく説明してよ。君だけ突っ走ってもあたし全然わかんな…」
「だから直に分るってば。美貴についてくればいいの」
どこからその自信がくるんだろう。
ニコリと笑った女は自信満々に言い放ち、ぎゅっとあたしの手を握り返す。
心無しかその握り返された手はつめたくも、何となく温もりがあった。
- 639 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/15(月) 22:14
-
「ほら、あそこ」
「…っ…ハァ、何?」
境内まで着き、あたしは肩で息をするのと対象に女は元気だ。
こいつ何ものだろう。
そう訪ねようとするとカンが鋭いのかすぐに睨まれるのだ。
女が指差した先には、境内の石段に座り込む男がいた。
「…あの人が何?」
「え、わかんないの?」
「わかんないって…うん」
「罰当たりだなぁ。よく見て御覧」
彼女はあたしの目を怪訝そうに見てから、もう一度石段の男を見直す。
……
「あ…れ?」
「同じ容姿、同じ甚平。もう分かったでしょ?」
呆れるようにポケットから時計を出し、不安そうに溜め息をつくその男。
紛れもなくその姿は、じいちゃんだという事が分かった。
- 640 名前:証千 投稿日:2004/11/15(月) 22:15
- ああ…少なくてすいません。
しかも完結できませんでした。ごめんなさい…
>636様 こういうパターンは作者の一番苦手な分野にもかかわらず…
どう足掻いても駄文。でもありがとうございます。
- 641 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 22:54
-
「吉澤人吉。あなたのお祖父さん」
「な…んで…なんで…」
「今はもう亡くなってるでしょう?」
当たり前だ。
なんで、どういう事だ。
死んだじいちゃんがここにいるのはおかしい事ではないかもしれない。
でも、でもこの女とあたしに何の関係があるっていうんだ。
はっとして女のほうを見ると、きゅっと唇を噛み締めて石段に座る
じいちゃんを見つめている。
「…ね、え…君、うちのじいちゃんと何か関係があるのか?」
「…大袈裟に言えば、あなたのおばあちゃんになってた女性、かもしれないなぁ」
「は…え?何言って…おいちょっと!」
あたしが呼び止める前に、女は駆け出してじいちゃんの方へ走ってゆく。
あいつがあたしのおばあちゃんになってたかもしれない?
全く意味が分らない上に、謎が多過ぎる。
「…っ…人吉さん!」
「え…あ、あっ…美貴…ちゃん…」
弱々しく返事をしたのは、やっぱりあのじいちゃんだった。
じいちゃんはあたしと容姿がそっくりだと、よくお母さんが言っていた
事は本当だった。
写真を見てもあまり感心がなかったのは、認めたくなかったから。
- 642 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 22:59
-
それに人吉、というのはじいちゃんの本名。
吉澤人吉。
女は若かりしじいちゃんへ嬉しそうに駆け寄る。
それに動転するじいちゃんの仕種は、やはりあたしとそっくりだ。
すかさず二人に歩み寄り、目の前にいるあたしと瓜二つのじいちゃん
の肩を掴もうとしたその時。
「…っ…あ…れ…」
「ここじゃ物体には触れないの。もちろん会話も出来ない」
「なんで…」
「それは美貴にもわかんないよ。あなたが好んでここに来たんだから」
「あのなぁ…ふざけるのも大概にしろよ!」
何がだよ、わけがわからない。
すかさず大声を上げて、動揺しているままのじいちゃんから女の
方へ視点を変える。
さっきから何なんだ。いずれ分るとか、そのうちとか。
あたしはそういう事が知りたいんじゃない。
なぜあたしはここに来て、なぜじいちゃんとこの女が関わっているのか。
それが一番知りたいのに。
- 643 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:01
-
「お前っ…お前、じいちゃんの何だったんだ?人吉さんって…どうして…」
「悪い?恋人同士だったんだよ、美貴と人吉さんは」
「…え……」
本当は言いたくなかった。
女はそんな表情を浮かべていた。
そういう事だった。
女は手に持ち合わせていた巾着をキュッと握り、あたしの方を頑に睨んだ。
その瞳は寂し気で、切な気で。
- 644 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:06
-
「あの…美貴ちゃん?どうした…」
「…ごめんっ、人吉さんっ…」
「え…っ…?」
振り絞るような声で一言、ごめんと呟く女。
そう言ってじいちゃんの甚平の裾を掴み、とっさに唇に口付けるのを
あたしは見逃さなかった。
けたたましい太鼓の音。
それは心臓の鳴りにも似ていた。
「ま、待てっ…ちょっとじいちゃん、何で追いかけないんだよ!」
「…美貴…ちゃん」
「じいちゃんってば!早く追い掛けろよ!」
女はからからと下駄を鳴らし、石道を走り抜いてゆく。
その光景を、じいちゃんはただ呆然と見行くだけ。
必死にあたしは、じいちゃんに訴えかけた。
でもその声は近くて遠く、聞こえるわけなんかない。
でも言わずにはいられなかった。
そういう衝動に、駆られてしまったから。
- 645 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:09
-
「はっ…ハッァ…待ってってば!!」
「離してっ…よぉっ!」
「離さない!あたしがちゃんと納得いくまで、ワケを説明してくれなきゃ…離さない!!」
「…っ…っく…」
「……っ離さない…ってば…」
古い大正の時代。
錆びるばかりの哀しい想いしか、残らなかった戦記の行き交う時だ。
儚い夢を持つばかりの若者は、みな逝ってしまったのだ。
この時代が、静かにそう告げていた。
いつの間にか泣き出す女を、必死に抱きしめていた。
泣くなら泣け、と言わんばかりに。
じいちゃんはこの女と、こんな事をしたのだろうか。
いや、おそらくキスをされたぐらいで仰天していたものだ。
カラダの触れあいも、会話も少なからずだろう。
- 646 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:14
-
「…人吉って、確かにあたしのじいちゃんだよ。
それは分かった。で、じいちゃんと君は恋人同士…だったんだ?」
「…そう、だよ。今は、違うけど…」
じいちゃんは、あたしのばあちゃんを残して逝ってしまった。
あたしが中学1年の時だ。
面白いじいちゃん。ばあちゃんにはへこへこしていたじいちゃん。
そんなじいちゃんが、大好きだった。
そんなじいちゃんは、この女と将来を誓いあった仲だった。
つまり、結婚を前提に交際をしていたのだ。
その事を女から告げられ、途端におかしな気持ちになる。
じゃあなぜ、この女は今のあたしのばあちゃんになっていないのか。
そう尋ねる暇もなく、女は語り始めた。
- 647 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:21
-
「…お祭りの後、この辺一体が焼けたって、知ってるでしょう?」
「…ああ、お父さんから聞いた事がある。
ここのお墓も全部、その空襲で亡くなった人のだって…」
たまに、じいちゃんは近所の老人会の人たちと墓参りに行っていたのを鮮明に
覚えている。
彼岸花を添えてやるんだ、と優しく笑っていたのを。
お父さんはそれを見て、毎年苦労しているなと言っていた。
「…それから、もうわかんない」
「え…?」
「もう、覚えてないんだ。焼けた後が、どうなったかなんて」
フワリと気持ちの悪い風が流れる。
生暖かい。でもどこか心地よい夏の夜風。
そっとあたしの手を握る女は、嬉しさの笑顔とは対象に涙を流して、こう言う。
信じたくない、事実がそこにはあった。
- 648 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:25
-
「空襲が起こった中で、人吉さんは必死に美貴を探した」
「…ああ…」
「でも、見つかるわけないもん」
「もう、その世にはいなかったから」
イタイ アツイ タスケテ
そんな言葉も許される事なく、女は人知れず息を引き取ったという。
誰も知らない、どこかしらで。
痛さも辛さもわからぬまま、消えて行った命の灯火。
それは天国に舞い上がる事なく、今も彷徨い続ける不乱な魂。
「…美貴、って言ったっけ?」
「うん」
「藤本、美貴」
「……覚えた?」
「…うん、すっかりね」
最後にふっと哀し気に笑った美貴の笑顔が、忘れられなかった。
昇る命はやがて温かい風に変わる。
目を閉じて、開いた頃にはもう、美貴の姿は影も形もないままだった。
- 649 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:28
-
「…っちゃん…よっちゃん!!」
「…ふっ…ぁ…ぁ…梨華ちゃん…?」
「何やってんの!?もう10時過ぎだよ!!」
「…へ…?」
目が覚めると、そこはあの神社の境内だった。
さっきまでいたあの異世界ではなく、現代の平成に戻っている。
もちろん目の前にいるのは、あきれ顔の梨華ちゃんだ。
あれは、ゆめだったのか。
「全くもう…何してたのよ?気絶してるし…」
「わかんない…あんまり…」
「あんまり?」
「思い出したく、ない」
「えぇ?」
あの女。美貴の事が、忘れられないような気がして。
- 650 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:31
-
「……なんだこの量」
翌日。
肩を入れたあたしは、押し入れの中から大量の段ボール箱を取り出した。
調べられずにはいられなかった。あの女の事を。
夢では、幻覚ではないのなら本当に実在したはずだ。
気になって夜も眠れない。
片っ端から、じいちゃんの写真を取り出して行く。
恋人同士だったなら、写真の一枚やニ枚はきっとある。
「…これは老人会の写真…違う。これはゲートボール…違う」
趣味の多かったじいちゃんは写真好きだ。
いつも誰かしらと一緒に映っていて、絶えまなく笑顔。
ふと真剣になって見てみると、やっぱりあたしとどこかが似ている。
自分でもそう思ってしまうくらい、気持ちがわるい。
- 651 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:33
-
「な…い…。やっぱないのかなぁぁー」
ゴロン、と脱力したように畳みに寝転がる。
やっぱりそんな昔の写真はない。
軽く断念していた。
その時だった。
「…ん…?何だ…?」
ハンガーにかけておいた、昨日の甚平のポケットの中。
何かかみ切れが入っているのに気がつく。
そう言えば。
あの甚平は、じいちゃんの遺品だ。
昔、あの大正から着ていた、唯一の遺品。
- 652 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:36
-
「…ッ…ウソ…だろ…」
素早く起き上がり、ポケットの中からその紙を取り出した。
入れた覚えのないかみ切れ。
震えそうな手をしっかりと固定し、しばらくして体中の力がぬけた。
あたしのじいちゃん、人吉の隣に寄り添うように並ぶ、あの女。
美貴の姿が、白黒の写真ながらも美しく写っている。
紛れもなく、この美しさは美貴だ。
仰天しながらも、その写真の裏を見る。
やっぱりそこには、圧倒されるようなじいちゃんの丁寧な字が印されていた。
- 653 名前:浴衣の似合う女 投稿日:2004/11/18(木) 23:39
-
『 7月7日 七夕で許嫁の美貴と 』
「…ウソ…じゃないか…」
これは現実。夢じゃなかった。
頬を自らひっぱたきながら、意外にも感心してしまう。
こんな事もあるもんだ。
じいちゃんの意地っ張りなのか、わざと『美貴』と印してある。
あのヘタレなじいちゃんが、女を呼び捨てできるわけがない。
きっと変な所で強きなじいちゃんは、こういう所でアピールしたかったんだろう。
ふっと笑いが込み上げ、夏雲を見上げた。
まっさらな青空に、少しだけ入道雲が流れる。
あの浴衣姿が見られないのは寂しいけれど。
きっと美貴は、天国にゆけたはず。
浴衣の似合う、最高の女だった。
素直に思える時がきっといつか、あたしに来るだろう。
FIN
- 654 名前:証千 投稿日:2004/11/18(木) 23:40
- やっと完結。
みきよしと言っていいのでしょうか…
で、リクを頂きましたみきこんは次回に。
難しそうですが…頑張ります。
- 655 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 23:41
- …リアルタイムで見ました。…感動しまくりです。
こういう作品大好きです。
よしみき最高!
- 656 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/19(金) 18:06
- 何だか作者様のみきよしにはまってしまいました一読者です。
切なくて寂しい…
でも見てしまいます。
- 657 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 19:59
-
これでおしまいにしよう
何度も気持ちにウソをついてきた
あと一日 あと一週間
あと一年 いや、ずっと永久に
- 658 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 20:01
-
手、繋ごうか。
とっさに投げかけた言葉を理解したのか、彼女は頷く事なく手を差し出した。
その手はとても冷たくて、いくら温めようとも冷えきっていてどうしようもなかった。
こうして夕暮れを歩くのも、これが最後。
彼女もそれを知っているだろうか。
- 659 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 20:05
-
今まで触れたくなかった、別れの意味。
辞典で調べても、きっと僕らの仲は載っていない。
オリジナルで、君への愛を紡いできたんだ。
「ねえ、何で笑ってんの?」
「…さあ?笑いたいから、じゃない?」
哀しくて 痛くて 切ないよ
そんな理由じゃ もう戻れないね
- 660 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 20:09
-
涙が出るくらいに、好きと言っておけばよかった。
ないがしろにした後悔が満ちあふれて、今破裂する。
「…バイバイ、しよっか」
「んー。したいなら、すればいいんじゃん?」
「……じゃあ、そっちから言ってよ」
「…なんて、言えばいいのかわかんないよっ」
君は嘘つき。
君はピエロ。
唇を噛んで、意地張って、零れる雫を堪えてる。
それは僕も同じだよ。
そうは言えなかった。
- 661 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 20:12
-
ぼくは、君が大好きだったよ。
堂々と言えたらいいのに。
卑怯な気持ちが溢れて、全部君に押し付けてるんだ。
許して欲しい。
「言って…よ。お願い」
「ヤだよ。そっちが、言って」
「っ言えるわけないだろぉ…?」
苦笑しながら、解けた指をぐっと握った。
もし神様がいるのなら。
この時を止めて、と願いたい。
- 662 名前:ピリオド 投稿日:2004/11/19(金) 20:14
-
冷たい北風が吹き荒れる。
それはこれからの僕らを後押ししているような、寂しい風だった。
「さようなら」
本当のさよならは。きっと無期限。
永久的に重なる事のないまばらなパズル。
ずれたピースはぐしゃぐしゃになって、ゴミ箱に入ってしまった。
君と僕の、ピリオド。
FIN
- 663 名前:証千 投稿日:2004/11/19(金) 20:16
- 何だこりゃ。
何のカップリングかは御自由にどうぞ。
それではみきこん、どぞ。
- 664 名前:適当じゃない恋愛 投稿日:2004/11/19(金) 20:20
-
「コンちゃん」
「はっ…い?」
「遠いよ」
「…ごめん…なさい」
謝らなくてもいいのに。
ビクビクしっぱなしの彼女は心臓がとびでそうな程肩を跳ねて
美貴を伺う。
なんか、面倒だよ。
- 665 名前:適当じゃない恋愛 投稿日:2004/11/19(金) 20:22
-
「いいからさ、もうちょっと近付いてもいいんじゃない?」
「は…はい…」
「や、無理にとは言わないけど」
ぽんぽん、と美貴の傍に来るように促す。
でも彼女は返事をするものの、どうしても席を移動する事ができない。
そんないじらしさが、好きなんだけれども。
「…ああ、もういいよ。美貴がそっちいく」
「ごめっ…んなさい…」
うっかり溜め息をついてしまい、ヤバい目つきになってたかもしれない。
不安は的中して、傍によったコンちゃんの表情はすごくビビっていた。
しょうがないんだよ。元々だもん。
「…ねぇ?」
「…ハイ…」
「美貴の事嫌…」
「好きです!!ぁ…ぅ…」
正直な所は認めよう。
じゃあなぜ離れようとするの。
- 666 名前:適当じゃない恋愛 投稿日:2004/11/19(金) 20:25
-
「…美貴もコンちゃん好きだよ。だからビビられると結構傷ついちゃうんだよ」
「……ごめんなさ…」
「謝らないでよ。美貴の顔が怖いのは分かってるから」
「怖い…とかじゃないんです…あの…」
「へ?」
言いにくそうに、頬を赤らめる。
何が言いたいんだろう?
ハッキリ喋れよ。なんてよっちゃんさんみたいな暴言は言わない美貴。
だから彼女が喋ってくれるまで、頑に待つ。
「…なんか…無理なんです。好きすぎて…」
「ほぉ…そうか。ありがとね」
「ひゃ…」
「そういうトコ、マジで好き」
ぎゅっと柔らかい彼女を抱きしめて、そのままベッドに押し倒す。
ヤバいなこりゃ。相当美貴はキている。
- 667 名前:適当じゃない恋愛 投稿日:2004/11/19(金) 20:28
-
「…不安にならなくてもいいよ。美貴も同じだよ」
「……ハイ…」
「返事が良いんで、素直なコンちゃんに御褒美あげまーす」
「えっ?ちょ…藤本さ…!?」
「目…閉じてよ」
ちょっと強引ぎみに潤った唇を奪った。
こうでもしないと、彼女は正直になれない。
まあ恋愛ってそんなもん。
どっちかがこうしないと、恋は進まないんだよ。
「…ぁ…っ…」
「ふっ、かーわいい」
キてます。美貴はこの子にキています。
FIN
- 668 名前:証千 投稿日:2004/11/19(金) 20:29
- なんだこりゃ。
すいません。リクをして下さった方、こんなんですいません。
- 669 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:09
-
パァンッ
「最っ低…っ」
そうだ。どうせあたしは、最低だ。
「…陰でコソコソやっときながらさぁ。ふざけないでよ」
「……ごめん」
「謝ったら警察いらないよ」
ガコンッと近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばす彼女。
それに伴い、あたしは内心ドキドキだ。
- 670 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:12
-
「…ほんと、ごめん。ごめんなさ…」
「もういい。アンタなんか知らない」
「あ…」
この世のものとは思えない程恐ろしい眼光を残し、彼女はスタスタと去ろうとする。
とっさに手が動いて、彼女の手首を掴んだ。
謝ったって怒るだけだけど。
このままにしておいたら、もっと酷い事になる。
そのまま抱き寄せて、彼女の匂いに浸る。
そっと唇を頬まで近付けようとしたその時。
バキンッ
- 671 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:15
-
「なめんなよ。死ねっ」
「う…いっつ…」
一瞬にして視界が真っ暗になった。
それは彼女が放った鉄拳によるもので、おそらくこれを喰らったのは
今回で3度目。
いい加減慣れろ。というものだが、その慣れが大変だ。
「…ほんとうに死んだら、悲しんでくれるかなぁ」
途端に彼女が目の前からいなくなると、すごく寂しくなって。
窓の外を覗く。
いや、だめだ。
想像を打ち消して、傷付いた唇のはしを治療するために保健室に向かった。
- 672 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:18
-
「…っ…う…」
「なんやねん、いちいちうるさい奴やな」
「だ、だって…」
アルコール消毒液をあてられ、ぎゅっと拳を作る。
液が傷口にしみて、すごく痛い。
いや、殴られた時よりは数倍マシだけど。
少し呆れ気味の中澤先生は、使用済の綿をゴミ箱に捨てながら困惑そうに尋ねてくる。
「で、その怪我は何してそうなったん」
「…殴られ…ました」
「誰に」
「…かのじょ」
そう口にするのも、いやだった。
- 673 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:22
-
「…また藤本絡みか…」
この保健室に来る理由は、殆どが彼女があたしに負わせた怪我のせい。
それ以外の理由で来た覚えはあまりない。
中澤先生は困ったような顔をして、もう一度尋ねる。
「…アンタ、何したんよ」
「…えっと、隣のクラスの子と、キスした…」
「……ハァ?」
正確に言うと、された。
だってあれは明らかに一方的な告白。
驚きながら返答に困っていたら、急にキスをされて。
その一部始終は、すぐに美貴に伝わってしまった。
- 674 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:27
-
「…アンタもとことん馬鹿やなぁ」
「何で、ですか」
「ヘコヘコし過ぎやねん。せやから彼女も巧く扱えんのとちゃうか」
「…そりゃあ、そうかもしれませんけど」
「せやろ。いっぺん怒鳴ったらええやん」
そんな事したら、虐殺される。
背筋に凍るような風が通った気がして身震いをする。
「…それにしても、藤本もようやるな」
「でしょう?体中キズだらけで…」
「他に何されてん、いつも」
「え…。一日一回は睨まれて、死ねって言われます」
その言葉をマトモに受け止めてしまうあたしは。
一時期ものすごく、彼女が気になってしようがなかった。
「…しゃあないな。それがあのコなりの、アピールなんやし」
彼女が好きな、あたしってなんだろう。
あたしが好きな、彼女ってなんだろう。
寂しがりやの、ひとりぼっちの彼女の事。
何故かほっとけない。
- 675 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:30
- あたしと美貴の出会いは、今からちょうど1年前。
手足が凍るような、冬の北海道に引っ越してきたあたしは。
ひとりぼっちの彼女。藤本美貴という女に、目を奪われた。
なんていうか、言葉じゃ表現できないほど。
綺麗だった。
雪がバックになる様は、とても美しくて。
滅多に笑顔を見せる事のない彼女が、あたしに向かって微笑んでくれた日には。
ものすごく浮かれて。ものすごく大好きだって事が、分かった。
でも、美貴は変わった。
あたしに笑いかける事もなくなって。
学校もサボりがちになった。
振り向いて欲しかった。
その一心で、あたしは美貴に電話をしたり、連絡を取り合おうと必死だった。
でも美貴は決してあたしに心を開く事を許さなかった。
- 676 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:34
-
「…アイツ、親の事、恨んでんねんなぁ。まだ…」
暖房がくすぶる雪の午後。
中澤先生がそっと語るように、足を組んであたしに言った。
美貴が変わってしまったきっかけ。
それは両親の離婚だった。
大好きだったお母さんに捨てられ、お父さんは失職して蒸発。
いくら高校生と言えども、美貴はめっぽう寂しかったに違いない。
おばあちゃんとおじいちゃんは美貴を引き取る事を拒んだ。
そして美貴は、一人きりで暮らしている。
「…美貴にとって、誰も彼も敵なんですよ。人っていうものを、見ようとしないから」
「……お前にも、か?」
どうでしょうね。自分、よくわかんないッス。
中澤先生に笑ってみせると、安心したようにすっと立ち上がった。
降り続ける雪にも、暖房のくすぶる音も。
美貴にとって、何も感じ取れないような、クズのような、ただの人の波。
あたしはそれが、今、一番哀しいんだ。
- 677 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:36
-
「何で、好きなんよ」
「え?」
何でそんなやつの事、好きでいる必要がある?
「…ここ数カ月考えても、わかんないですね。それは」
「じゃあ質問変える。どこが好きなん」
今も昔も、おぼろげだけど。
惚れちゃったんだよ、アイツに。
大好きなんだよ、アイツが。
- 678 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:40
-
「笑った顔。何よりも、誰よりも、大好きなんス」
怒りっぽいから、付き合うのは大変だけど。
そういう所がまだ好きで。
嫉妬しやすいから、機嫌なおすの大変だけど。
そういう所も、全部全部、大好き。
「…惚気かいな。ほんなら、行ってき。もう平気やろ。お前も、藤本も」
「恩にきます。さすが年の甲」
「関係あるかボケッ!さっさと出てけ!」
ありがと、裕ちゃん。
たまにあたしは、先生の事をこう呼ぶ。
なんだか嬉しくなった時や、悩みをぶちまけた時。
とてつもない力が、あたしに宿った気がして。
- 679 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:41
-
携帯を開いて、彼女の番号を押す。
どうせ電話をしても、出てくれる確率は極めて低い。
「……お願いだから…出てくれよぉー…?」
必死にボタンに託すその願い。
1分。いや、30秒でいい。
せめて声だけ、聞かせて。
- 680 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:44
-
『……ハイ?』
「み、美貴っ」
突然プッと音がして、受話器から聞こえる彼女の声。
とてつもなく低い声でビックリした。
なんて間が勿体ないと思って、慌てふためきながらも受話器を耳にあてた。
「あっ、あのっ…よっちゃん、だけど…」
『…何…』
自分でよっちゃんって言っちゃったよ。
恥ずかしいながらも焦って、低く暗い彼女の声をしっかりと受け止めた。
すごく、寂しそう。
すごく、あたしに逢いたがってる。
声のトーンで分るよ。
なんとなく受話器の向こうで笑うと、美貴は機嫌が悪そうにする。
- 681 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:47
-
「…あのさ、いま、どこにいると思う…?」
『…ハァ?ざけてんの?』
「ち、違うよ。あの…本気、で、聞いてます」
ヘタな事言うと、もっと不機嫌になるような気がして。
ビクビクしながらも、絶対に聞き逃さない美貴の吐息。
ああ、早く逢いたいんだけど。
『…どこにいんの…』
「……げ、玄関…前…」
『…ハッ?』
やばい。やばい、怒らせたかも。
美貴の家のアパート前玄関まで来たと告げると、さらに不機嫌そうな声が耳に届いた。
- 682 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:49
-
…扉、開けてくれるのかな。
美貴は何も言わずに電話を切って、2分程たつ。
開けてくれなかったらどうしよう。
帰るわけにはいかない。
この気持ちほったらかしてたら、美貴がキズ付く。
降り続く雪に願いを乗せて、冷たい手を擦りあわせた。
- 683 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:51
-
ガチャッ
「…ホントにいるし……」
「ご、ごめん」
「……風邪ひくよ。早く入って」
「あ、ありがとう」
やっぱり、怖い。
本当に玄関前にいる事に驚いた様子の美貴は、物凄く怖い顔で、
あたしを睨みながら部屋に入れてくれた。
何度か通ったこの部屋。
やっぱりあったかい美貴の匂いがして。
懐かしくて、堪らなかった。
最近はあんまり一緒にいる事がなかったから、かな。
- 684 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:54
-
「アンタ、バッカじゃないの…」
コトン、とテーブルにコーヒーを出してくれた美貴は。
呆れ気味を通り越して鼻で笑うように言った。
馬鹿。なのかも、こんな事してまで美貴と話したいなんて。
「…うん。でもさ、ちゃんと話したかったんだよ」
「何を」
「美貴の気持ちと、あたしの気持ち」
静かにそう言うと、部屋の時計の音も止まったかのような静寂が訪れた。
美貴には心外だったようで、コーヒーのマグカップを置いて俯いた。
- 685 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 20:58
-
「最近さ、あんま言う暇なかったけど、怒らないで聞いてね」
「…だから、何を」
「………ぜったい、怒らないでね?」
これって結構勇気がいる。
初めてこの言葉を口にした時よりも、ずっと。
「美貴の事、愛してるよ」
ウソはつけない、この気持ちには。
誰にもまけない強い気持ち。
あたしはすごく弱くて、泣き虫で、何もできないけど。
美貴にあげるこの気持ちは、誰にも負けない。
もしかしたら、ウザがるかもしれない。
美貴は、デリケートだから。
- 686 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:01
-
ふっと彼女を見ると、暖房のせいか、今の言葉のせいか、頬が真っ赤になってる。
指摘したら睨まれて、きっとさらに怒るんだろう。
でも、なんだかその表情を見ていたら。
昔の美貴を、思い出した。
『…美貴、ヤな所いっぱいあるよ?』
『ううん。全部好きだよ』
『…よっちゃんが好きな美貴だけじゃないよ?』
『そんな所ないよ。だからね』
告白をしたあの時。
無垢な瞳に惚れ惚れして、言ったんだ。
『美貴の事、愛してる』
- 687 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:09
-
おそるおそる、彼女の肩に手を伸ばし。
ぐっと抱き寄せた。
思えば久しぶりだ。こんな、あたたかい二人の時間は。
「…っちゃん…」
「…ぅん?」
「よっちゃんっ…」
うん。
最近の美貴は、あたしの事を、アンタとか、お前とか。
そんな呼び方しか、してくれなかった。
久しぶりに、よっちゃんと呼んでくれて。
内心、こころがあったかかったよ。
「…っ…ごめ…ん…」
「泣かなくてもいいよ。あたしは、全然平気だから」
「いっ…ぱいっ…傷付けてっ…痛い思いさせてっ…ごめ…」
「ちっとも痛くない。ちっとも傷付いてない」
それに、謝るのはこっちの方なのに。
美貴のこと、大好きなのに後ろムキで接してた。
本当は気付いて欲しかったんだよね。
もっとかまってよ。もっと、見てよって。
- 688 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:12
-
指先で美貴の涙をすくって、にこりと笑ってみせる。
当然、さっきのような怒りに満ちた表情はなかった。
あの時と同じ、綺麗で純な瞳。
あの時と同じ、あたしが惚れた美貴の笑顔。
もっともっと、見せてよ。
「…今日の事、あたしが悪かった。あっちが一方的だったとしても、そのまんまにしてたあたしが一番悪かったよ」
「……いや…だった?」
「何が?」
「…っ美貴が、いちいち怒ったりっ…すること…」
美貴があたしを殴る時。
それは決まって、理由がおなじ。
そんなのとっくに分かってるよ。
- 689 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:16
-
「ううん。美貴がちゃんとあたしの事、想ってるんだって分かってたよ」
「…っ…」
「顔、真っ赤。おもしろいなぁ」
「調子乗んなっ…」
「それに、怒りっぽい所も…」
ひっくるめて。受け止めるよ。
うるさい唇に、何ヶ月かぶりに触れた。
あたたかで、柔らかくて、いい匂いがする美貴の温もり。
「…ぜんぶ、大好き」
もうすこしだけ、時が止まってほしかった。
何度も美貴の唇に触れていたくて。
幾度となく、甘い口付けを交わす。
ほんのちょっとだけ、彼女よりも一歩リードできた気がした。
- 690 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:22
-
「おはよーっ」
次の日の朝、いつものように騒がしいクラスの中へ入ってゆく。
日常に溶け込んだ毎朝が、なんとなく楽しい。
寝癖でくしゃっとなった茶色の髪。
彼女を見つけると、なんだかニヤニヤしてくる。
「…何」
「い、いやべつに。おはよう」
「…おは、よう…」
かわいいんだから、髪ぐらいちゃんとしてくればいいのに。
そう言うと、じろっと睨まれる。
「…触んなっ」
「あ、ごめんごめん」
どうやら御立腹の様子。
ぱっとあたしの手を振り払い、頬を赤らめて教室を出てゆく。
なんだか、やっぱり素直じゃない。
- 691 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:23
-
なんか、嬉しいな。
昨日の一件が済んでも、美貴のつっけんどんで冷たい態度はあまり変わらない。
やっぱり、少しづつ時間を費やして行くしかないんだ。
すっきりした事を期に、再び中澤先生の元へ行く事にした。
- 692 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:27
-
ガラッ
「中澤先生ー…」
ガラリと保健室のドアを引くと、そこには先客が。
ダルそうな表情丸出しの美貴と。
なにやら嬉しそうな表情の、中澤先生。
でも美貴はあたしを見るなり、また頬を赤くしながらふいとそっぽを向く。
「よぉ。おはようさん」
「あ、おはようございます」
「ほれ、藤本。愛しのダーリンやで」
「ハァッ!?」
ガタンッとイスが倒れる音は、美貴が立ち上がった拍子でなったもの。
驚いて、たじろぐ美貴に視線を向けると、またぱっと視線をそらす。
初めて見た。美貴がこんなに取り乱すなんて。
「
- 693 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:31
-
「っ…美貴もう帰るっ…」
「ははっ、そうかそうか恥ずかしいんか」
「ちがっ…そんなんじゃないっ!!」
中澤先生がからかうと、尚美貴は顔を真っ赤にする。
なんか可愛い。
ムキになってる。美貴が。
怒りながらあたしの横を通り過ぎようとする美貴の脇腹に腕を通して抱きすくめた。
やっぱ、可愛いよ。
「なっ…ちょっ…よっちゃ…」
「ダーリンじゃ、ないの?」
久しぶりかも。こんなに、ビビらずに会話できたなんて。
照れまくる美貴が可愛くて、面白くて。
昔みたいな意地悪をしても、今なら大丈夫だと安心できた。
- 694 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:34
-
「はなっ…してよ!!」
「あ、もう授業始まる。先生、また後で来ます」
「そうかそうか、じゃあなぁ」
抵抗する美貴を抱いたまま、保健室の扉をピシャリとしめる。
ま、いっか。
後ででも、先生にはいくらでも話せるし。
保健室を出るなり、力ずくであたしの腕を降り解く美貴。
その目は酷く興奮していて、悔しそうだった。
「…っ…いつからそんなんなったのさ…」
「え?」
「…昔みたいにっ…そんな事するなんて…」
美貴の意味する言葉。
それはあたしに、十分に伝わってきた。
あたしは美貴に、美貴はあたしに怯えていたから。
こういう存分なスキンシップも、できななかった。
- 695 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:38
-
「…さあ?」
「さあって、わかんないのかよっ」
「でも。でも、素直に美貴と、そういう事したいって思うよ」
いっぱい遊んで、いっぱい喋って。
いっぱいキスして、いっぱい触れたい。
「ね。少しづつでいいよ。ちょっとでいいから、甘えてくれると嬉しいんだけど?」
「……そんな事したら、すっごく邪魔だよ」
「邪魔じゃないよ。死んでもいいくらい嬉しいよ」
「…じゃあ、嫉妬だっていっぱいする」
「そうして」
「……キスだって、セックスだってしたい」
どんとこい。かな。
「……しよ。いろんなこと。そんだけ、あたしは美貴の事、大事だよ」
できなかったこと。これから二人でいっぱいやろうよ。
また、一緒にいよう。
- 696 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:42
-
「……っ…いたいぃぃ…」
「またかいな。今度は何」
「…ぶたれた…」
「誰に」
「……かのじょ」
今度は平手打ち。
ヒリヒリする頬をかかえ、保健室にやってきた。
「お前は、藤本絡みになるとなんでそうなるかなぁ」
「…わからないです。流石に何も言えないんで…ッいたい…」
「前にも言うたやん。ガツン言えって」
「そんな事。…なんも言えないですよ、彼女には」
ちょっとした事がきっかけで。
美貴はまた、怒ってしまった。
最近はちょくちょくこんな事、繰り返しながら、恋人やってます。
- 697 名前:いてぇ 投稿日:2004/11/21(日) 21:44
-
「それでええのん?」
「いいんです。満足です」
「マゾかいな」
「ちっがいますよ。やめてください」
ま、言いなりになるのがあたしの役目みたいなものだし。
結局美貴は、そんなに怒ってないのに。
態度だけは大きくて、本当は素直になりたいんだ。
だけどあたしの前だと、何も言えなくなる。
だからこうやって、ぶたれてあげるのが一番良い。
って事に気がついた。
「それが愛情か」
「そうです」
痛い。でも、あったかいんだよ。
FIN
- 698 名前:証千 投稿日:2004/11/21(日) 21:45
- なんでみきよしを書くとこうなるんだろう…
シリアスなんだか馬鹿なんだか。
- 699 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 21:50
- 携帯からリアルタイムでドキドキさせてもらいました。
いやいやみきよし良いですよ。かなり萌えました。
よっちゃんの前だとかなり可愛い美貴様w
ヘタレかと思いきやちょっと格好いい…でもやっぱヘタレ
なよっちゃんw
面白かったです。今後も期待してます。
- 700 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 22:04
- お馬鹿な二人が大好きです。
- 701 名前:証千 投稿日:2004/11/22(月) 15:59
- 欲情しちゃった吉澤さん。いきます。
- 702 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:00
-
はっきり言っちゃいますと。
あたしは世界一の幸せものだ。
だって傍に、こんなにもステキな人がいるから。
- 703 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:03
-
もう、顔が火照っちゃう程ホレてる。
「…ねえ、アンタ顔やばいよ」
「え?」
「デレッとして、一人でニヤけてる」
まいちゃんに頬をつつかれ、思わず傍にあった鏡で確認。
うわ、本当だ。
さすがに梨華ちゃん並にはなりたくない。
「でも幸せすぎるんだよぉぉ」
「はぁーん。良かったね」
「って事で、よしざー行ってきます」
「どこへ」
「彼女の元へ」
キョトンとするまいちゃんにウィンクを飛ばした後、全力疾走。
はやく、はやく届くように。
はやくはやく、足を運んだ。
- 704 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:05
-
珍しく三つ編みされた髪。
無邪気に笑う横顔。
ヤバい。
「へーい、そこのお嬢さん」
冗談混じりに気取って、ジャージのポケットに手を突っ込み。
壁にもたれかかって彼女を呼んだ。
ちょっとくらいキザっても、いいかななんて。
- 705 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:09
-
「…なぁにしてんの、バーカ」
「へへ、こんにちは」
呆れ気味に笑いながら溜め息をつく。
くぅぅ、ステキすぎる。
何もかもがあたしのツボすぎて、また顔が綻びニヤける。
「で、何してんの三階で」
「カノジョに会いに来たの。悪い?」
バツがわるそうな表情を浮かべる。
せっかく会いにきたのに、そんな顔しないでよ。
そうは言わないけど、少しだけ不服そうにしてみると。
冗談だよ。と笑ってくれた。
彼女は、あたしの一個上の年齢。
つまり先輩だ。
- 706 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:11
-
「美貴に?」
「そう。キミに」
「つまんないんだけど」
「アハハ」
ツッコミに関しては厳しい。
だってただ、なんとなく会いたかったんだよ。
そう言うと、彼女はマトモに受ける事なく笑って流す。
全く。本気で言ってるのになぁ。
「…ふふっ、かーわいい」
もう、ダメだ。
抑えてたものが、プッツンと切れた。
- 707 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:17
-
「っ…よっ…」
「静かに。騒いだら、誰か来る」
唇を撫でたその時、少しだけ抵抗するかのようにあたしの名を呼んだ。
瞳は潤んでいて、明らかに動揺しているのが判る。
それを察して、彼女の心配を和らげるように、キスをする。
「…っん…ぁ…」
「……美貴…」
唇を舐めて、なんとなく上唇を甘噛みしながら舌を入れる。
甘い彼女の吐息と、抵抗するような声が時折漏れて。
さらにあたしの欲望を掻き立ててゆく。
- 708 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:22
-
急に、ぐいと肩を押されてキスを中断される。
やっぱ怒る。かな?
「こんなとこでっ…何すんの!」
「だって先輩が誘ったんじゃん」
「さ、誘ってなんか…」
「天然魔性のエロス。ってやつ」
知らないフリして、そういうオーラ出すんだから。
あたしはいつもそれに悩まされる。
可愛すぎて、どうしていいのか分らないんだ。
「じゃ、場所移動しようか?」
「そういう問題じゃな…」
「って言っても。すぐにでもあたしはする気満々だけど」
「は?ってちょっ…」
そう言ってから、もう一度唇を頂いた。
もう止められないもんね。
キスをしながら目を開けると、頑に舌を侵入させまいとがっちりガードしている。
そんな行為、無駄だって。
- 709 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 16:25
-
「…ちゅーが嫌なら、最後まで行く?」
「ぁんっ…っつぅ…」
「……了解」
何も言えないようにしてあげるよ。
そう言って耳に吐息を吹き掛けると、一層ヤらしい声が響く。
廊下でするのも、結構スリリングだ。
制服のボタンを手早く解きながら、首から鎖骨にかけて舐める。
焦らすのは好きじゃないけど
熱い瞳がもっと見たくて、わざとゆっくりと指を滑らせた。
- 710 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:14
-
「ふっ…ぅぁん…」
「…何だかんだ言って感じてるじゃんよ」
「うっ…さいっ…」
ひょい、と顔を上げてみると歯を食いしばる彼女がいる。
少しでも敏感な所に触れると、色気たっぷりの声をあげるもんだから。
調子に乗るあたしは、止められない。
ついに最終地点まで辿り着く。
慣れた手付きで下着をずらし、もう一度彼女の顔を見上げた。
「…ちょっ…よっちゃん!?」
「何?」
「ほ、本気で…」
「当たり前じゃん。こっちはやる気満々だよ」
いや、ヤる気満々か。
- 711 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:17
-
「ふっ…あっあっあっ…んっ…」
立ったままじゃキツかっただろうけど。
容赦なく指を奥まで突き立てる。
もっとその色っぽい表情が見たくて。
普段よりもずっと、いっぱい触れたかったから。
「…気持ちイイ?」
「んっ…ぁ…ぅぁんっ」
答える間もなく、ぐっと指に力を込める。
その度、彼女の声は高くなる。
- 712 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:19
-
指を抜いてから、頬にキスをする。
息が荒く、トロンとした瞳に吸い寄せられるように。
「…まだ、終りじゃないよ」
「…っ…?やっ…よっちゃん…?」
「……声、出来るだけガマンしてね」
感じやすいんだから、さ。
- 713 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:23
-
立ったままの彼女の腰まで足を降ろし。
ちょうど、股のあたりにあたしの頭がある。
スカートの中に少しお邪魔して、さっきまで性感帯になっていた部分に挨拶する。
「…んっやぁぁぁ…はぁんっ」
さっきとはまた違う、あたしをかき立てるその声。
舌に力をいれながら感じる部分を攻めていく。
わざとスカして、彼女からその言葉が出るまで何もしない。
ちょっとした意地悪を、してみた。
- 714 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:24
-
「…はぁっ…ね…ぇ、よっちゃ…」
「ん?」
「ちゃんっ…と…してよぉっ…」
「どうやってさ」
「……っ分かってる…でしょ」
だから、聞きたいんじゃん。
言わなくても分かってるけど。こうやって意地悪するの、結構好きかも。
ポイントを外して攻める間に、消えそうな声で彼女が言った。
- 715 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:27
-
「…っ…な…めて…」
お言葉通り、舌をイッキに使って舐めあげる。
するとさらに感じた声をあげた彼女。
あたしの頭を押し付けるような形で、彼女の手が首にまわる。
そのまま舌をナカに入れるようにして。
一気に突き立てた。
「っ…んぁっ…あっ、あっ、あっん…はぁぁんっ!」
- 716 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:30
-
ボカッ
「いった!!」
「このスケベ!誰かに見られてたらどうすんの!」
「えー。むしろ見られてたほうが、そっちも感じてたんじゃ…」
「殴るよ」
「ハイごめんなさい。もう何も言いません」
相当あたしは、彼女の尻にしかれている。
拳を作ってあたしの目の前に出す。
これを受けたらとんでもない事になるだろう。
「…でもさぁー、うまかったでしょ。あたし」
「…ハ?」
「感じてたじゃん。美貴だって」
ドキッと確信を突かれたかのようにカァッと赤くなる彼女。
やっぱりそうなんだ。
- 717 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:32
-
「エッチだけは、あたしの方が先輩だね」
「…っ…最低っ」
「えぇ?」
「何かと体ばっか求めてさ、よっちゃんって」
「んな事、ないよ」
「美貴のどこがいいの。体じゃなかったら、何」
急にそっぽを向いて、あたしの事を背中で睨んでる。
それがしっかり、伝わってきた。
- 718 名前:最低 投稿日:2004/11/22(月) 18:34
-
その背中がえらく憎たらしかった。
駆け付けて、後からぎゅっと抱き締める。
抵抗する暇なんて与えない。
「体も心も、好きだからエッチすんじゃん。あたしより年上だったら、そのくらいわかってよ」
その後、彼女はあたしになんて言ったか。
それはあたしと、美貴だけの秘密。
フツーに考えたら、分るかも、ね。
FIN
- 719 名前:証千 投稿日:2004/11/22(月) 18:35
- 久しぶりにちゃんとエロを書いた気が。
と思ってるのは私だけ?
- 720 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 20:11
- 更新乙です。
みきよしは何故かエロさを感じさせますよね。
読んでて、アドレナリンじゅわー でした。
- 721 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 20:46
- みきよしイイヨーイイヨー
- 722 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:23
- イイヨーイイヨーイイヨー(・∀・)
やっぱりみきよしはエロいなぁ。
お腹一杯になりました。ごちそうさまです。
- 723 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 20:00
- みきよしエロにハァハァです。
この組み合わせってなんかエロスを感じます。
- 724 名前:ao 投稿日:2004/11/24(水) 09:25
- リクエスト
高橋×藤本でお願いします
- 725 名前:アフォ 投稿日:2004/11/24(水) 22:19
- リクです。
作者さん、
ごまみきをお願いします!
- 726 名前:証千 投稿日:2004/11/26(金) 16:57
- >720様 アドレナリン爆発お疲れ様でした。
みきよしを書くとなんだか体が疲れます。マジでw
>721様 最近ブームです。勝手に。
>722様 何でだかエロに発展していってしまうんです。
お許しを……
>723様 ですよね。二人とも大人っぽくてなんだか…
>724様 みきたか、ですね。頑張ってみたいと思います!
>725様 甘めの方が良いですかね?
頑張ってみます。
- 727 名前:証千 投稿日:2004/11/26(金) 16:58
- ここでひとつ。
「いてぇ」の続編を無性に書きたくなった作者です。
駄文ですがさらしてみようと思います。
- 728 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:01
-
うるさいテレビのスイッチを消して、安心したような寝顔を見せる彼女。
なんだか顔が綻んで、こっちまであったかくなる。
この頃何かと疲れていたようだから、そのままにしておくことにした。
無防備に、大の字の形で寝息を立てている。
「…さーて。何しようかな」
元々シンプルな部屋だ。
夕方だし、夕飯の準備でもするか。
一緒に暮らしてるわけじゃないんだけど、最近では半同棲になってる。
彼女の家に行ったり来たりしてる間に、面倒だからこうなった。
だいぶ、美貴はあたしに心を許し始めている。
昔のようには、まだいかないけれど。
- 729 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:06
-
「ん…っ…」
フローリングに手をついて立ち上がると、微かに寝言を漏らす。
機嫌が悪そうに、眉間にシワをよせて。
少しだけ物音を出しただけなのに。敏感だなぁ。
「ごめんごめん…」
そっとベッドに腰掛けて、滑らかな髪を手ぐしでとかす。
起きてる時は、させてくれないから。
- 730 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:09
-
可愛い。
寝てる間に何かしたら、絶対あとで殴られるよなぁ。
血の気が引くような想像。
慌てて撫でていた手を引っ込め、キッチンに向かおうと立ちあがる。
ガンッ
「いっだぁぁぁっ!!っ…ってうわっ!」
伸ばした右足が、テーブルの角にぶつかり、思わず悲鳴をあげる。
それと同時に足が不安定になり、ベッドに倒れる形になってしまった。
つまり。
美貴を羽交い締めにするような、この体勢。
ちょうど大の字になった両手首を掴むような、怪しい一こま。
- 731 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:12
-
「……っ…!?」
「あ…起き…」
手首を掴んでしまったその時、うっすらと美貴の目があく。
これはやばい。
「っ…何、してんの…」
「や、これはあの…」
「……っ…」
ドガァッ
- 732 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:15
-
言い終わる前に、片足で腹を思いきり蹴られベッドから落ちる。
それと同時に、脇腹に激痛が走った。
「寝てる間に何してんの!?」
「ち、違うんだって!不可抗…」
「馬鹿ッ!!」
「…う…」
死ねとは言われなくなったけど。
最近はそれが馬鹿に変わった。
美貴の頬は真っ赤で、目は潤んでいた。
そんな気にさせる意思は無かったんだけど。
- 733 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:18
-
「…とりあえず、ごめん。でも違うからね?」
「何が」
「……テーブルに足ぶつけて、よろけてああいう形になっただけ…なんだけど」
「嘘」
「嘘じゃないよ、寝てる間になんかしないって…」
「起きてる間はするって?」
「そ、そういう事じゃ…」
「そういう事じゃん」
こんな不機嫌になっちゃうと、あとが面倒臭いんだよ。
一度怒っちゃうと機嫌取るのが大変だし、何より笑ってくれないのが辛い。
そういうつもりじゃなかったのに。
説明しても美貴は無表情で、リモコンのスイッチを押す。
- 734 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:21
-
こうなりゃ、自然に機嫌が直るのを待つしかない。
ダメもとでしばらく放っておく事にした。
いずれはふてくされてる機嫌も、直るだろうと考えた。
「…買い物行ってくるから」
「……」
返事はない。
何だよ、むかつくな。
逆ギレじゃないけど、なんだか腹が立ってきた。
大体あたしの不可抗力だっていうのに。
いつまでも自分勝手なら、こっちだってちょっとは反抗してやる。
そう思って、財布をポケットに入れて靴を履く。
その時、何だか背後に視線を感じた。
- 735 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:23
-
「……どう、したの?」
振り向くと、いつの間にやら、さっきまで怒っていた人が。
不思議に思って声をかけても、不機嫌な目つきは変わらない。
トレーナーのポケットに手をつっこんで、頑にあたしを見ている。
また、殴るんじゃないだろうな。
- 736 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:27
-
「やだ」
「…え?」
「買い物、いいよ。行かなくて」
「で、でも夕飯…」
「……っ…」
急に声が暗くなった美貴。
不安げに顔を覗き込んだら、泣きそうな顔をしてあたしに抱きつく。
何だ。何が起こったの。
「…美貴?」
「どこにも行かなくていい。…どっか行くなっ…」
「……さっきまで怒ってたくせに。どうしたのさ?
あたしに消えて欲しいんじゃないの?」
ほら、こうやって。
意地っぱりな彼女は、正直に伝えられない。
だからわざと意地悪して、自分の口から言わせるようにする。
- 737 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:30
-
「…よっちゃんは、美貴の傍にいなきゃいけないんだよ……」
ぽんぽんと背中を撫でてあげると、一層あたしを抱き締める力が強くなる。
うん、分かってるよ。
憎まれ口叩くのも、裏返しの言葉を言うのも。
全部、かまってほしいから。
「買い物行かないと御飯ないよー?」
「…じゃ、美貴も行く」
「外寒いよ」
「………」
「…嘘、一緒に行こ。手繋げば、あったかいよ」
学校の中で、手を繋ごうとしても美貴は拒否する。
恥ずかしがってるから。
でも家の中じゃどうも、甘えてくれるんだよね。
- 738 名前:ゆっくり 投稿日:2004/11/26(金) 17:32
-
「言っちゃえばいいのに…」
「何?」
「いや、別に」
「何が。言ってよ」
「いい。なんでもない」
「言え」
「…脅すなよ怖いなぁ」
冗談だよ、と笑って美貴は自分から手を絡めてくる。
こういう事もできるくせに。
ちゃんと言ってはくれないんだよ。
よっちゃんが、好きだって。
FIN
- 739 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/27(土) 11:39
- やっぱいいね、みきよしは。
- 740 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 15:54
-
近くて遠い あの人の存在
なんでもこなしてしまう、あの人に憧れて
目で追ってしまうあたしは おかしいのだろうか
- 741 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 15:56
-
「愛ちゃん。ねえってば」
「…は?」
「また観察?」
「うん、まあね」
観察。って、そんな風に言ったら悪く聞こえるかもしれない。
でも、あの人を見るのが好き。
「そんなに見てるなら、話し掛ければいいのに」
「麻琴にはわからん。あたしの気持ち」
「…そうなのかな…」
あたしから離れて、ぽてぽてと歩き出すマコトを後目に。
今だ、見つめつづける。
- 742 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 15:58
-
「…なんだ、あのコ……」
わ、目が合った。
ぱっと逸らすと、なんだかこっちに来る予感。
見過ぎたんやろか。
それとも、ウザかったとか。
とっさに顔が赤くなって、そっぽを向く。
「…あの、何か用?」
いえ、何も。
そう言えなくて。とっさにかけた、最初の言葉。
- 743 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 16:00
-
「好きなんです」
あんまり、違和感は感じなかった。
たぶん、本音だったから。
周りで、何匹かのカラスが鳴いている。できるだけそっちに耳をよせて、視線を合わせないようにした。
「美貴?に言ってるの?」
「ハイ」
「…へんなコだね…」
「……すいません」
「いや、謝らなくても」
突然、好きなんて言ったら、変に思われるのは当たり前。
でも、なんとなく言っちゃった。
なんでやろ。
- 744 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 16:02
-
「じゃあ、付き合っちゃおうか」
「え?」
「美貴の事、好きだったら、付き合おうか」
「いいんですか?」
「そっちが、いいなら」
なぜかあたしは、こくりと頷いていた。
理由は、わからない。
格好良くて、憧れてて。
でも、それが恋だったとは、確定してない。
- 745 名前:近距離で遠距離 投稿日:2004/11/27(土) 16:06
-
「じゃ、よろしくね」
「…へ?」
「握手」
恋人の、握手しよう。
この人、あたしに本気じゃない。
そんな事は察して分かっている。
でも、差し出された手を、握ってみたかった。
自然とあたしの右手は伸びていて、温かいぬくもりが感じられる。
「こちらこそ」
FIN
- 746 名前:証千 投稿日:2004/11/27(土) 16:07
- >739様 ありがとうございます。自分もよしみき・あやみき狂なので。
リクを頂きましたみきたか、書いてみました。
とっても駄文。かなり駄文。
すいませんでした。
ではもうひとつ、ごまみきを。
- 747 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:09
-
イライラ ムカムカ
何。アレ。
- 748 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:10
-
H.Pオールスターズの打ち合わせの最中。
全く持って腹が立つ。
触るな。話し掛けるな。
そんな汚い気持ちが、ごとーの中を駆け巡る。
本当はこんな事、思ってちゃいけないんだけど。
久しぶりだ。こんなドス黒い気持ち。
- 749 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:15
-
「なぁにそれ!よっちゃんのヘンターイ!」
「ちがうよ、何でそうなるんだよぉ」
「よっちゃんがへんな事言うからでしょ!ねー矢口さん?」
「オイラを巻き込むなよ!!」
いくらさ、親友と言えども。
自分の彼女にちょっかい出されるのって、すごく腹が立つ。
本気なんだか、ただの興味本位なんだか。
よしこはいつも、ごとーのものに手を出してはおちょくる。
昔っから、そうだった。
でもこればっかりは譲るわけにはいかない。
だいたいよしこ、梨華ちゃんがいるくせに浮気しやがって。
あ、違う違う浮気じゃないんだよ。認めちゃったらごとーの存在が……
「ごっつぁん、顔ヤバくなってるべ」
「アァ!?」
「……どうしたの、本当に」
「………なんだなっちか」
ごめんよなっち、今は何も考えられないんだ。
シツレンジャーよ。愛の手を。
- 750 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:18
-
なんだよ、ミキティ。
なんでそんなに、楽しそうなんだよ。
ごとーと一緒にいて、あんなに笑わないじゃんか。
「…ごっちん?」
やけに甘ったるい声。この声は。
「まっつー…」
「不機嫌だぁー。顔がヤバいもん」
「よく分かったね」
「勉強しましたからっ。にゃはは」
ピッと敬礼をして、ごとーもそれに合わせて敬礼。
なんだか和む。この癒し系の笑顔。
- 751 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:22
-
「みきたんの、事?」
さすが、ミキティの分身。
図星だと分かったまっつーは、ごとーを指差してにゃははと笑う。
なんでもお見通しなわけね。
ごとーの横に座ったまっつーは、顔を覗き込むようにして興味津々の眼差しだ。
「まあね…で、まっつーはミキティの所行かないの?」
「えぇ?だってごっちんが心配だったんだもん」
「あら、マジで?」
「ウッソ−。そんなわけないじゃん。吉澤さんに取られちゃった」
「…ああ、そっちもか」
ちらりと二人の方を見ると、まだバカ騒ぎしてる。
ムカムカする。キれそうな程。
「なんで、みきたんの所行かないの?」
「当たり前じゃん、よしこがいるし」
「ごっちんはみきたんの何よ?」
「恋人」
「じゃあ、友達の吉澤さんよりも上でしょ」
「は?」
「みきたん、取られちゃうよ?」
みきたん、取られちゃうよ?
- 752 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:27
-
何となく、分かってるじゃん、まっつーってば。
「…取られちゃう…ねえ…。よしこはそんな事しないよ」
「本当に?絶対?」
「一応親友だしね、腹たつけどそういう風には思いたく無い」
「でも、内心思ってるでしょ」
「…う…」
人の心が読めるの?
まっつーにそう言ってやりたい気分だった。
自信満々に言うもんだから、反論はできないし。
楽しそうに笑うミキティ。遠くから、見るだけのごとー。
「…やっぱダメだ。むかつく」
「じゃ、行ってらっしゃい♪」
トンと肩を押されて、足を踏出す。
- 753 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:33
-
「…よしこー。ちょっと」
「んぇ?ああごっちんかぁ。ちょっと待っててねミキティ」
「…うん?」
何がちょっと待っててねミキティ だ。
やっぱり確信犯。親友の一線を超えてやる。
まっつーの言った通りだ。よしこのエロパワーは計り知れなかった。
ふん、梨華ちゃんに言い付けてやる。
「何ごっちん?そんな怖い顔しちゃって〜」
「誰のせい誰の。ミキティから離れろ」
「え?何で?」
「何でも。イチャこかれちゃこっちだってたまんないんだよ」
「だから何故?ホワイ?」
至って笑顔のよしこに、マジになる寸前。
そのヘタレ顔、潰してやろうか。
「セクハラばっかしてると、梨華ちゃんに言い付けるよ」
「は!?それだけはカンベン…」
「りぃ〜かちゃぁーん、よしこがミキティにセクハ……」
「だぁぁぁ!ストップ!分かったから!退散しますから!!」
「それでいい」
- 754 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:36
-
これで邪魔は消え去った。
でも、まだ残ってる問題。
「あれ、よっちゃんは?」
「よしこは邪魔だから消した」
「け、消したって…」
「っていうかね、鈍すぎなのミキティは」
「何が?」
「んぁ!そういう所が…」
そういう所が、好きなんだけどっ。
そうは言えないからひねくれちゃうんだよごとーは。
少しは分かって欲しい。ごとーだって邪魔者を追い払うの大変なんだから。
自覚してよ、もっと。
「…わかってよ、そのくらい…」
「だからなぁにが?」
「むかつくのっ、ミキティがごとー以外の誰かと一緒にいるのが!」
言っちゃった。最高で最低のワガママだ。
- 755 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:39
-
肩で息をしてしまうくらい、感情が高ぶった。
ミキティは事を察したのか、ごとーから目を逸らす。
照れてるんだな。
だったら最初からやらないで欲しいんですけどっ。
「…よしこと喋ってるの見て、すんごく気分悪かった」
「うん」
「むかついて、腹立って、殴ってやろうかと思う程憎かった」
「…怖っ」
「そのぐらい、ミキティが好きなんだよ」
ちょっとは分かって、ごとーの事も考えて。
なんてお願いは、不器用な彼女にとって無理な難題。
だからそういう事、普段は言わないんだけど。
- 756 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:43
-
「…いやさ、美貴もその位は分かってるつもりだけど」
「じゃあなんでよ」
「ごっちんが、ずっと黙ってるから、いいかなって」
「はぁ?」
いいかな、も何もないよ。
人がどれだけ腹を立てたか知らないでしょあなた。
「美貴だって、ごっちんと同じ事、思った事ある」
体から力が抜けるような、ミキティの意地のはった声。
震えていて、抱きしめたら崩れてしまいそうなほど、か弱かった。
そのカタチが壊れないように、そっと抱きとめる。
「…ほんと?」
「……何回も聞かないでよ、恥ずかしいな」
「だったら何で言ってくれないのさ」
「そんな勝手な事言えるわけないじゃん!」
「ダメ!っていうか言え!」
- 757 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:45
-
「言ってくれないと、余計不安だよ」
ミキティはいつもクールだから。好き、とか言ってくれないから。
心配になる事も、多いんだよ。
そう言うと、ごめんと一言謝った。
謝罪の言葉が欲しかったわけじゃない。
「……とにかく。よしこと話さないで、金輪際」
「金輪際って…そういうわけには…」
「じゃあ半径5メートル以内には……」
「ちょ、ごっちん!!」
焦りまくるごとーの肩を掴んで、呆れ気味にこう言った。
- 758 名前:独占 投稿日:2004/11/27(土) 16:48
-
「そんな事しないでもいいから。ごっちんだけだよ」
恥ずかし気たっぷりの、ミキティ。
瞳は潤んでいて、すんごく色気がある。
ヤバい。
可愛すぎ。
「…ミキティ」
「ハイ?」
「ラブッ!!」
「ハ!?ス、ストップごっちん!!!」
「もう無理」
ソファに押し倒して、変身モードのごとー。
これは全てミキティのせい。
そしてごとーの独占欲のせい。
まあ、万事オッケー。
「ここでスるのは無理ぃぃ!!」
「んぁ?じゃあウチでヤる」
「そういう事じゃないってば!」
FIN
- 759 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/27(土) 18:14
- みきよしの続編よかったです。
不器用なミキティ萌え。
また書いていただけたら嬉しいです。
- 760 名前:アフォ 投稿日:2004/11/27(土) 19:47
- 725でごまみきリクしたものです。
さっそく書いて下さってありがとうございます。
やっぱりごまみきはいいですね〜!
またごまみき書いてください。
こんどは微エロで・・・
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/28(日) 17:21
- あやみきも書いて下さいな。
- 762 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 17:50
- 三日間、北海道の実家に帰っていた間、2LDKのマンションの中には、不機嫌空間が広がっていた。
何しろ、彼女がとても怒っていたから。
やっぱ、まずったかな。
家に帰ってる間、一本も電話しなかったし、メールもしなかった。
こりゃめんどうな事になりそうだ。
っていうか、もうなってる。
- 763 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 17:52
-
「おかえりっ、みきたん」
「…おか、えり」
「御飯にする?お風呂にする?」
「……あ、じゃあお風呂で…」
何も無かったような笑顔が、むしろ怖かった。
いつもなら
御飯にする?お風呂にする?それとも…あたし?
とか言ってくるのに。
やけに優しい笑顔が、いつのも亜弥ちゃんとは違う事にすぐさま気が付く。
目に見えたような怒り方だ。
- 764 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 17:54
-
足早に風呂を済ませ、御飯が並ぶ食卓へ。
きっとおいしい御飯がまっている。
なんて考えは、くつがえされた。
「…ね、ねえ…御飯、これだけ…?」
「そう、だけど。何か文句あるの?」
「何もないです。頂きます」
だからって、この夕食はないでしょう。
テーブルに置いてあったのは、カップラーメン一個。
やっぱり態度があからさますぎる。
裏表か。
- 765 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 17:57
-
「………どうしたもんかなぁ」
ラーメンを食べながら、視線をテレビから離さない亜弥ちゃんをただ見つめる。
声をかけても殆ど相づちをうたず、その言葉はつっけんどんだ。
いつもは御飯作ってくれてて、おいしい?ってしつこい程に聞いてくる。
なのに、一人きりの夕食なんて寂し過ぎる。
「…あの…亜弥ちゃん?」
「……何」
「…ごめん、ね?」
って言っても、何に対してのごめんなのか分らない。
3日間留守にしたこと、亜弥ちゃんに電話もメールも入れなかった事。
お土産のリクエストを聞かなかったこと……
「いいよ、別に」
絶対良く無いよね。その顔。
- 766 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 17:59
-
しかめっつらばかりで、美貴の目を見ようとしない。
せめて、さっきみたいに笑って欲しかった。
そんな怒ったような顔も、可愛いんだけど。
「…機嫌直して?」
「……ふんっ、みきたんなんか嫌いっ」
「そんなぁ…」
亜弥ちゃんを後ろから抱きしめても、答えてくれる優しい笑顔はない。
いつもならこれでちょちょいのちょいなのに。
- 767 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 18:02
-
「…あたしの事ほったらかすみきたんなんか、嫌いだもん…」
そう言えば、いつも一緒にいたからなぁ。
亜弥ちゃんってすごく寂しがり屋だから、独りになると泣きそうな顔になる。
でも、実家に帰るねって言った時には、別に何の変化もなかったけど。
本音隠して、美貴に遠慮してたんだ。
「…もう、ほったらかしにしないから…ね?」
「…うそ」
「嘘じゃないよ。じゃ、じゃあ」
- 768 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 18:04
-
「亜弥ちゃんの言う事、3つ叶えてあげる」
美貴は3日、亜弥ちゃんの傍を離れたわけだから。
そのぶん、払えばいいんだよ。
突発的にそう思い、亜弥ちゃんのお腹に手をまわして顔を覗き込んだ。
すると亜弥ちゃんは、少しだけ興味を持ったように聞き返した。
「…3つ?ほんとうに?」
「うんっ。何でもいいよ、できることなら」
「…じゃーねぇー」
ふふっ、と意味あり気な笑いを浮かべる亜弥ちゃん。
やばい。余計な事、言っちゃったかも。
- 769 名前:3日のブランク 投稿日:2004/11/28(日) 18:07
-
「…ちゅー、して?」
「え、え?」
「3日もしてないんだもん、ね?」
ね?って。
やっぱりこんな事だろうと思ったよ。
「…3日してないぶん、いっぱい返してもらうからね♪」
「は…ちょ、ちょっと亜弥ちゃん?」
突然、亜弥ちゃんが美貴を床に押し倒し頬にキスをする。
や、やばいかも。
「あ、亜弥ちゃ…んっ…」
3日のブランクって、こんな事になるわけ?
FIN
- 770 名前:証千 投稿日:2004/11/28(日) 19:41
- 軽いリクに答えてみました。
そういえば最近月ではあやみきを書いてなかったような。
>759様 みきよしはあやみきの次に好きなカップリングです。
気が向けばまた書きます。きっとw
>760様 またもリクを頂くとは…ありがたき幸せです。
エロは苦手ですが、チャレンジしてみようかと。
>761様 あやみき、書いてみました。
月ではその他もろもろが多いので、是非白板においで下さいませw
- 771 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 20:55
-
気持ちよさそうに眠ってる。
ホッとしてリビングに腰を降ろし、沈黙に包まれる部屋。
亜弥ちゃんが黙ると、こんなにも静かだったんだ。
久しぶりのリラックスタイムをくつろごうと、雑誌を広げた。
でも、つまんない。
独りでいたい筈なのに、妙にベッドで眠る亜弥ちゃんが気になる。
こういうのって、おかしいんだろうか。
求めてるものと、裏腹な意が出てきそう。
- 772 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 20:57
-
寝返りをうって、規則正しい寝息をたてている。
こういう時は、静かだからなぁ。
起きてる時は美貴にべったべったして、うるさいったらありゃしない。
ガムテープで口を塞ごうとも、そんなスキもないぐらいだ。
でも、憎めない。
なぜかって。
好きだから。死ぬ程ね。
- 773 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 20:59
-
なんで、こんなやつ好きになっちゃったんだろ。
自分で呆れてしまう程、美貴は亜弥ちゃんに夢中だ。
でも、態度は逆になっちゃうんだよね。
なんでだろ。素直になれなくて。
うるさいなぁとか、しつこい。
と思ってても、甘えてくる亜弥ちゃんを温かく受け止めてしまう。
それはやっぱり、愛があるから?
一時期迷った。
友達か、恋人か。線が引けなかったんだもん、怖くて。
でも亜弥ちゃんは、何でそんな事言うの?って、笑ってた。
当たり前じゃん。みきたんは、あたしのだし。
誰にも渡さないもん。
って、自信満々に言ったんだ。
だから、それを信じてる。
いつまでたっても子供のままの彼女を、受け止めようと思って。
- 774 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 21:02
-
くるり、とベッドの方を見てみると、可愛い寝顔を見せる亜弥ちゃんがいる。
美貴の前では、こんな寝顔を見せる。
もし他の誰かに亜弥ちゃんを取られてしまったら。
美貴は一体、どうするんだろう。
奪い返す勇気は持ってるんだろうか。それとも、一歩後退するんだろうか。
たぶん、何も無かったように逃げる。
それは亜弥ちゃんの愛に答える気がないわけじゃない。
好きだから、引き際も持っていろという事なんだろう。
勝手な解釈を繰り広げ、亜弥ちゃんの髪を梳く。
なめらかで、触り心地が良い。
- 775 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 21:04
-
「…たん…」
寝言言ってら。
クスリと美貴が笑うと、察するかのように亜弥ちゃんも笑う。
寝ながらよくも器用なものだ。
- 776 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 21:51
-
柔らかそうな唇に誘われて、段々距離が縮まる。
何故だか分らない。
キスをせがまれるのは、いつもの事なのに。
自分からしたいなんて思うのは、おかしいのかもしれない。
そして重なる2ミリ前
- 777 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 21:54
-
がばぁっ
「にゃっはっは、おはようみきたん♪」
「……起きてたのか…」
してやられた。
だいたい、上手くいくはずのなかった計画だった。
彼女が寝ている間に、唇を奪うなど。
亜弥ちゃんは急に飛び起き、美貴をベッドに押し倒した。
そのうえに馬乗りする形で亜弥ちゃんはひたすら笑っている。
「たんってば、あたしの唇狙うなんてヤらしいんだから」
「…別に…狙うってわけじゃ…」
「じゃーなんでちゅーしようとしたのかにゃぁ?」
全てお見通し。
そんな視線が、美貴に伝わってくる。
- 778 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 21:57
-
「っていうかさ、いつから起きてたの?」
「ぅんっとね、小3分前ぐらい」
「…なんだよ…」
「ふふっ、寝てる間になんてことしてくれちゃってんのさぁ」
妙に嬉しそうだね。
そう言う前に、ちゅっちゅと頬や額やらにキスを浴びた美貴。
だめだ、何も言えない。
「…じゃー、あたしが本物のちゅーをみきたんにあげましょう」
「いいや、いらない。遠慮しておく」
「なぁんで!自分からしたくせに」
「気が失せたって事で」
「だめぇ!するの!」
「ちょっ、亜弥ちゃんってば」
美貴が何か言う前に、亜弥ちゃんは聞く耳持たず。
再び美貴に、キスの嵐が押し寄せる。
- 779 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 22:00
-
結局何もかもお見通し。
恋人に隠れて何かしようなんて、不可能なハナシだった。
それがたとえ、亜弥ちゃんに対しての想いであっても。
すぐに嗅ぎ付け、お節介と言わんばかりの愛だ。
「…じゃ、恋人のちゅー、しよ…?」
「却下」
「なんでよぅ、ケチッ」
少しだけ、ほんの少しだけ大人な表情に見入られる事もあるけれど。
すぐに美貴の上でジタバタ暴れ出す様は、幼稚園児並だ。
そんな姿が可愛らしくて、なんとなく、彼女に答えてみる事にした。
なんとなく、だけど。
重ねた唇に、舌がからみ合う。
そんな世界が、二人の間で幾度となく繰り返されて。
- 780 名前:以心伝心 投稿日:2004/11/28(日) 22:02
- 亜弥ちゃんって口ばっか。
キスをすると、いつも思うんだけれど。
自信たっぷりのわりに、控えめ。
決して自分から舌は出してこないし、フレンチキスばかり。
だからちゃんと、美貴がリードするっきゃないんだ。
「…ちゅーしてる時のみきたんって、えろい」
「そっちがね」
「なんでよ」
「……すっげー、気持ち良いって顔してるから」
何もかも、一緒がいいから。
美貴もちょっとだけ、素直になるよ。
亜弥ちゃんの、前でならね。
FIN
- 781 名前:証千 投稿日:2004/11/28(日) 22:11
- またもあやみき。
ここでひとつごまみきを。
リクで頂きました微エロになるかどうかは…
- 782 名前:虚像と実像 投稿日:2004/11/28(日) 22:14
-
カーテンから漏れる微かな朝日
それと共に、目を覚ます彼女は第一声に飽き飽きしている。
「…もう、行ったのか」
残された書き置きに目を通し、寝癖がかかった髪をガシガシとかく。
こんな事はもう慣れっこだ。
美貴はそう自覚している。
だが、どこかで思っている。
寂しい と。
- 783 名前:虚像と実像 投稿日:2004/11/28(日) 22:17
-
行為の後、美貴はいつも幸せと後悔に浸る。
朝になれば、彼女はいないのだから。
歯磨き粉を適当に付け、ブラシを口に放り込む。
もごもごしながら口をゆすぎ、ついでに寝癖も直す。
タオルで顔を拭き、鏡を見ると
いつもの自分じゃない。そんな気がした。
彼女がいないと、どれだけ暇なんだか。
自分でも呆れてしまうような表情に、美貴は笑うしかなかった。
「……仕事、忙しいんだねぇ」
まるで他人事のように、残された書き置きを見直す。
きっちりとした、彼女らしい字画だ。
- 784 名前:虚像と実像 投稿日:2004/11/28(日) 22:20
-
彼女の前では、何故か自然になれる。
気を遣う事もなく、ありのままでいられるから。
だから、美貴は好んで彼女の傍に居る。
彼女もまた、美貴を好んでいるから。
満足は、していなかった。
毎日一緒にいられない事と、優し過ぎる彼女の性格。
美貴にとって、その二つが重要な難題なのだ。
ヴ− ヴー ヴ−
携帯のバイブ音の振動が伝わり、とっさに携帯に目をやった。
すると、何故か美貴の頬が緩む。
彼女からの、メールだった。
- 785 名前:虚像と実像 投稿日:2004/11/28(日) 22:24
-
『さすがにもう起きたよねぇ?おはよう^□^』
淡白な彼女からのメールは、何の変哲もない挨拶程度。
だが美貴は、そんな事でも嬉しいのだ。
ニヤけてしまうのが恐ろしいくらい、恋に没頭する。
自分でも、信じられないのだ。
『もう起きてるよ、さすがに(笑 今日は何時に帰ってくる?』
すぐに返事をしてから、1分程待つ。
するとすぐに、メールはかえってきた。
『多分8時ぐらい?かな?料理の一品ぐらい作っておいてねん♪』
美貴が料理を苦手なのを知っていての事だ。
ちょっとしたいじわるに、美貴は笑って誤魔化すように再びメールを返す。
こんなやりとりが、何回か続く。
- 786 名前:虚像と実像 投稿日:2004/11/29(月) 07:23
-
早く、早く。
夜が来るまで、あと何時間。
美貴はバカらしくても時計を見続けるのをやめなかった。
夜になったら一緒にいられるのに。
朝になると、何事もなかったかのように、一人になる。
掴んでは消えて、その繰り返し。
ぼんやりと映える太陽を目指しながら、携帯を握りしめるのだった。
FIN
- 787 名前:証千 投稿日:2004/11/29(月) 07:25
- 変な時間ですが更新しました。
次回はなにをかこうか……
- 788 名前:孤独なカウボーイ 投稿日:2004/11/29(月) 12:58
- 更新お疲れさまです。白の方も読ませて頂いております。
さっそくですがいしごまの甘いのを書いて頂きたいです…あやみき並の甘さで…
- 789 名前:アフォ 投稿日:2004/11/29(月) 20:15
- 証千様
またまたリクにこたえて下さって
ありがとうございます。
ごまみきよかったです!
- 790 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/29(月) 23:12
- こっちにあやみきキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
「3日のブランク」、「以心伝心」
両方とも最高に良かったです。
作者様のあやみきの泉は汲んでも汲んでも枯れませんね。
まさに短編あやみきの天才児!
- 791 名前:きまうとご 投稿日:2004/11/30(火) 20:30
- 全部読ましていただきました。
すっごく萌えました。
さっそくリクして申し訳ないのですが
ごまえり、ごまれな、など書いていただけないでしょうか?
マイナーですみません。
- 792 名前:ステップ 投稿日:2004/12/02(木) 16:24
-
ホップ ステップ ジャンプ
そしたらあなたに 近付ける
- 793 名前:ステップ 投稿日:2004/12/02(木) 16:27
-
「…やっぱかっこよかぁ…」
コンサートの最中、後藤さんの横浜蜃気楼に聞き入る。
経歴の差ってものを思い知らされる。
っていうか、それ以上に、かっこよすぎる。
どうしたらこんなふうに
どうしたらこうなるんだろう
そんな後藤さんへの、憧れの気持ちが高まって。
- 794 名前:ステップ 投稿日:2004/12/02(木) 16:29
-
「えぇ?なんだそりゃぁ」
「れな、真面目に言ってるんです」
あぐらをかいて、へらへら笑い出す後藤さん。
なん、本気やのに。
「どうしたらそんな格好良くなるかってぇ…そんな…」
照れながら、困惑するような表情を作る。
やっぱりそんな顔も、れなにとっては大人っぽく見えて仕方ない。
「簡単に言っちゃえば」
「はい」
- 795 名前:ステップ 投稿日:2004/12/02(木) 16:31
-
「頑張ること、かな」
そんな事はもうわかってるんやけど。
「だってそれしかないよぉー」
「ほんとうに、頑張ればれなも、なれるんですか?」
「…うーんとね」
って、そこで口籠られたら。
眉をしかめて、困ったような表情。
なんとなく、かっこよくて、可愛い。
「……頑張るって、人それぞれじゃん?」
「はい」
「だから、田中も田中なりに、頑張る事がいいと思うよ」
「は?」
へらっと笑ってみせた後藤さんの笑顔に流されそうになりながら。
あまりにも単純な返答。
- 796 名前:ステップ 投稿日:2004/12/02(木) 16:34
-
「マイペース。ごとーはいつもそうしてきたよ」
だから、ガンバッテね。
後藤さんは、そう言って楽屋から出て行った。
歌や踊りを何でもこなす後藤さんとは、ちょっと違う雰囲気。
普段はのんびりしてて、マイペース。
そっか、そうなんだ。
「…マイ、ペース……」
自分なりの、自分で作る大きな夢。
後藤さんは言わずとれなに、そう教えてくれた気がして。
「…よーっし、がんばろぉっ」
ホップ ステップ ジャンプ
そしたらあなたに 近付ける
FIN
- 797 名前:証千 投稿日:2004/12/02(木) 16:34
- リクを頂きましたれなごま。
なんかこういう雰囲気しかできなくて…すいません。
では、いしごま。
- 798 名前:オアズケ 投稿日:2004/12/02(木) 16:38
-
「って事で、しばらくは、ね?」
って事で。
どういう事だよ!
「だってごっちん疲れるんだもーん」
「そんなぁー…ごとー身が持たな…」
「そんな事言って、あたしの方がリスク高いの!」
むぅ。そう拗ねてみても、梨華ちゃんはそっぽを向いて読書。
だって、一週間もできないんだよ。わかる?
「…ケチ−」
「ケチで結構」
「…じゃあいいよ、浮気してやる」
「そんな事、ごっちんにできっこないでしょ」
ちょっと。今の言葉聞き捨てならないよ。
ごっちんには出来ないでしょ。
ごとーに勇気の欠片もない、みたいな言い方された。
- 799 名前:オアズケ 投稿日:2004/12/02(木) 16:42
-
「…何でそんな言い切れるのさぁ」
「何でって、それは」
「それは?」
読書をやめて、本を戸棚に戻す梨華ちゃんは。
ごとーの方に振り向いて、意地悪に笑った。
「ごっちんは、あたしの事が好きだから」
悔しいくらい、好きだよ。
ただ何も言う事ができなくて。それだけ、返事をしてみた。
むかつくくらい、梨華ちゃんの言った事が頭にリフレインする。
「でもそういう冗談やめてよね」
「なぜ」
「美貴ちゃんとか、狙ってるから」
「え?」
今の、嫉妬?
そう尋ねると、梨華ちゃんは唇を尖らせて。
「そうだよ」
と、優しく言った。
FIN
- 800 名前:証千 投稿日:2004/12/02(木) 16:45
- 短っ。
お許しを…
>788様 白の方まで目を通して頂けるとは…
いしごま、こんなんで良かったのでしょうか?
>789様 いえ、いつでもどうぞw
>790様 何を言いなさるのですかぁぁぁ!?
精神病院に行く事をお勧め致します。
>791様 何気なくこのカップリングは好きです。ありがとうございました。
リクの方ですが、ごまれなを推薦させて頂きました。
- 801 名前:きまうとご 投稿日:2004/12/02(木) 18:16
- ごまれな〜〜〜〜!
証千様、ごまれなありがとうございます。
ごっちんとれいなってなんかにてますよねぇ?
次回はぜひ、ごまえりをおねがいします。
- 802 名前:花束の向こう 投稿日:2004/12/02(木) 21:15
- あたしが考えてる事って、恐らくこの日本じゃありえない事。
でもそれほど、あたしはあの子が好きだ。
だから、変に思わないでね?
- 803 名前:花束の向こう 投稿日:2004/12/02(木) 21:17
-
花屋へ駆け込み、適当に綺麗で咲き誇る花を選んだ。
もうちょっとで閉店だったから、急ぎまくって。
勢い余ってお釣は要らないなんて事言っちゃったけど。
そうもいかず、走り出すあたしを追いかけた店員さん。
妙に嬉しくて 不安で
はやく はやく 喜んでくれる笑顔が見たかった
- 804 名前:花束の向こう 投稿日:2004/12/02(木) 21:19
-
ピンポーン
ガッチガチに震える両手を抑えて、花束を抱える。
軽く咳払いをして、リハーサル。
ぼそぼそと、彼女があたしを迎えるまで、リハは続く。
ガチャ
「よっちゃん?」
「ミキティ!」
「ハイ?」
独特の声、やっぱ好きだわ。
一瞬たりとも見逃さないよ、きみの事。
花束を見た瞬間、怪訝そうな顔をしてあたしの顔を覗き込む。
- 805 名前:花束の向こう 投稿日:2004/12/02(木) 21:20
-
受け止めてやる あたしときみの間に 何があろうとも
「結婚しよう」
きっと花束の向こうで 笑ってくれる君がいる
FIN
- 806 名前:証千 投稿日:2004/12/02(木) 21:25
- みきよし。短いですが。
しかも内容がクサイッ!
>801様 御訪問ありがとうございます。
唐突ですが、れなえりは白の方で書かせて頂きます。
ちゃんとした文になるかどうかは……w
作者の勝手な諸事情により、月の方の短編連載はこれにて完結。となります。
白の方にて、リクを受け付けさせて頂きます。
皆様、本当にありがとうございました。
更新ペースが早かったせいもあり、読者様には喜んで頂き感謝の気持ちでいっぱいです。
密かに古いネタも引っ張り出して何か考え中です。
では、白板の方で御会いしましょう。
- 807 名前:証千 投稿日:2004/12/03(金) 17:57
- 雪の方にスレ立てました。
Converted by dat2html.pl v0.2