∇Silent±Control∇
- 1 名前:フィア63 投稿日:2004/09/13(月) 11:00
- CPはミキティとあややです。
よっすぃとごっちんもほんの少し絡んでます。
処女作なので、上手く書けるか不安ですが、
楽しんでもらえるよに頑張りたいと思うので
ぜひ、読んでみてください。
- 2 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:05
-
『会える機会が少なくなるから寂しくなるね。頑張って』
- 3 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:07
- 亜弥からのコメントはそれだけだった。
本当の気持ちなんて相手の立場にならなければ、わからない。
- 4 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:11
-
美貴がモーニング娘。に加入して、1年が経とうとしている。
加入する前に抱いていた、たくさんの不安は思えばあっという間に消え去ってしまっていた。
- 5 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:19
-
楽屋ではおきまりの辻、加護が中心となって騒がしい。
そんななか、中央に置かれたテーブルに向かい合わせに座った美貴とひとみはそんな騒がしさとは裏腹に独特な空気をかもちだし、自然と誰も入り込めなくさせていた。
「最近、あややとはどうなの?」
その名前を聞くと何かが揺らぐ・・・
「そう言えば、ここんとこ会ってないなぁ」
「それって、そろそろ破局の気配?」
「何言ってんの。会える時間がないんだよ」
「なるほどね・・・」
- 6 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:25
-
ひとみに見つめられるとなんだか胸騒ぎがする。
ひとみの瞳はカラーコンタクトが入っているからという理由ではなく、ただたんに美しい。
天才的にカワイイと言うよりは、天才的に美しいと言ったほうが正しい気がする。
そんな顔に見つめられたら、誰だって・・・。
「今日さ、泊まりに行っていい?」
断る理由はないと言えば、嘘になる。
むしろ、断らなければならない気がする。
「いいっしょ?」
きっと、それをわかっていて念を押したんだろう。
- 7 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:45
-
その夜、ひとみが来るのを待っていると美貴の携帯が鳴った。
その音が鳴ると嬉しくなる。
だけど、それと同じくらい苦しくもなる・・・。
『美貴たん、今何してたぁ?』
亜弥ちゃんはいつも変わらない声でそう聞く。
「今日は別に、なんもしてない」
『いつもなんもしてないじゃん』
そう言って笑う姿が、笑顔が、目に浮かぶ。
「そうそう、さっきテレビ見てて思ったんだけど、亜弥ちゃん髪の色変えた?」
テレビを通してでしか、変化に気づけなくなった。
『それ、けっこう前だよぉ。・・・そか、最近会ってないもんね』
「ねぇ、いつ頃会えそう?」
『じゃあ今日、美貴たんち泊まりに行くぅ』
「え?」
『え?ってなに』
「いや、ちょ・・・今日は」
インターフォンが鳴った。
『もしや先客?だぁれ?』
できれば知られたくなかった。
だけど、そこで隠したらよけいにダメだと思って。
「よっちゃんが・・・」
『そうなんだ。じゃあ切るね』
隠してるつもりでも、すぐにわかる。
「ごめん・・・」
『じゃね』
どこか、寂しそうだった。
- 8 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 11:51
-
「さっき、あややでしょ。電話の相手」
そう言いながらソファに座る美貴のすぐ隣に腰を降ろした。
「そうだけど」
異様に近い。
こんなに近くにいるのが亜弥じゃないというのが美貴にとって変な感覚だった。
「あのさぁ」
「ん?」
ひとみのほうを向くと、予想していたより遥かに近いところから見つめられていることに気づき、とっさに目を逸らしてしまった。
「なんでいつも目、逸らすの?」
「別に、逸らしてなんか・・・」
- 9 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:01
-
「じゃこっち見てよ」
ためらいながらも振り向いた瞬間、ひとみは美貴を抱き寄せると耳元で囁いた。
「あたしじゃダメ?」
だいたい嫌な予感というものは当ってしまう。
「よっちゃん・・・?」
「冗談だよ」
すぐに体を放したけど、ひとみはすぐに美貴の腰に手を廻す。
美貴は熱いものを体に感じ始めていた。
このままじゃ・・・
「よっちゃん・・・」
そう言う美貴を見て、ひとみはふふっと笑った。
「やっぱ帰るわ」
ひとみはそう言うと何事もなかったかのように帰っていった。
- 10 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:04
-
やっぱり、美貴を試してる。
そう思って焦ってしまう自分がいた。
このままじゃ、
ヤバイ・・・。
- 11 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:11
-
ホントにヤバイかも・・・。
そう思ったときにはもう繋がっていた。
『たん、どしたの?』
なんにも知らないはずなのに、
「今日、泊まんない?」
『え、よっすぃは?』
「帰った」
『行く。じゃあ今から行く』
会うのが少し、恐いんだ・・・。
- 12 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:23
-
さっきとは逆にソファに座る。
そして、今度は美貴が亜弥の腰に手を廻す。
「久しぶりだね」
そのままゆっくり手をのばして、指先で亜弥の太股を撫でる。
「えっち・・・」
そう言いながらも、美貴の首に腕を廻し、抱き寄せる。
「チュウしたい?」
ここまでしておいて何を言う。
「したいくせに」
始めは確かめ合うようにし始めたキスも、そのうちに次第と深まってゆく。
それでも、滅多にすることのないディープキスは美貴が先に舌を入れたことによって始められた。
「美貴たん、今日どうしたの?」
久しぶりに会ったからという理由は偽りにしか過ぎなくて、
「なんで?」
ホントはこうしてれば、何も考えなくてすむから・・・。
「こんな美貴たんも、大好き・・・」
そう恥ずかしそうに微笑む唇はすぐに、熱を持たない美貴の唇に塞がれた。
- 13 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:30
-
昨日は少しやりすぎたかな・・・。
朝、美貴は目を覚ますとそのことばかり気になった。
結局、昨日は美貴が責め続けたせいで、ほとんど睡眠時間を得ることができなかったのだ。
「ゴメン亜弥ちゃん。昨日、嫌だった?」
隣に寄り添っている亜弥は少し照れながら美貴を見つめて首を振った。
「ぜーんぜん嫌じゃないよぉ」
心の奥がひしひしと締め付けられる。
なんでかな・・・。
- 14 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:35
-
その日は亜弥とモーニング娘。が同じ歌番組に出演することになっていた。
だから、美貴と亜弥は一緒に現場に向かった。
亜弥の楽屋の前で別れようとした時、ちょうど娘。の楽屋からひとみが出てきた。
「うわぁ、よっすぃ久しぶりぃ」
無邪気に手を振る亜弥。
それに応えながらもひとみ視線は美貴へと向けられる。
- 15 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:42
-
「昨日の続き、いつにする?」
二人の間にいる亜弥は何のことだかわからない。
だけど、ちっとも予想がつかないわけではなかった。
「ねぇ、いつならいい?」
ひとみはその直後、亜弥の目の前で堂々と美貴を抱き寄せた。
「今日の夜がいいな・・・」
美貴の耳元で囁いた。
もしかしたら、亜弥にも聞こえていたのかもしれない・・・。
「ちょっ・・・よっちゃん」
「冗談だよ」
美貴のほうから慌てて体を放した。
- 16 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:45
-
かわすことのできない、わずかに感じる弱い視線が
美貴の心に、痛いほどに突き刺さる・・・。
- 17 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:54
-
「じ、じゃあ行くね・・・」
早くこの場から離れたかった。
ひとみに囁かれて、頬が一瞬で赤く染まった美貴を見ることは亜弥にとって耐えられないことだった。
「ちょっと待って」
ひとみはそんな亜弥の気持ちをわかっていながらも、呼び止めた。
「な、なに?」
「首についてるから、バレないようにね」
亜弥は楽屋へ入ると鏡を見た。
思った通り、首には昨日美貴がつけたキスマークがくっきりと痕を残していた。
そこを指で確かめるようになぞりながら、こぼれそうになる涙を必死に抑えていた。
もしかしたらもう、こぼれてしまっていたのかもしれない。
- 18 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 12:59
-
そろそろね、耐えられなくなっちゃうよ・・・。
- 19 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:13
-
番組の収録中、生放送なのにも関わらず美貴は気になって、気づけば亜弥のことばかり見ていた。
たまたま、そんな美貴の隣に座ったひとみはカメラに映っていないときを見計らって、マイクに声が入らないように気をつけて美貴に話し掛けた。
「見すぎだよ」
はっとして何も言わずに素早く振り向く。
「もしかして、怒ってる?」
怒るという表現は間違っている気がする。
でも、この気持ちを表現する言葉が見つからない。
- 20 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:18
-
「泣いてたよね」
二人とも気づいていた。
「なんでかね」
「ゴメン、後でにしよ。その話し・・・」
そして、ちょうど亜弥のトークの番になった。
普段と何も変わらなく司会者に笑顔を見せる亜弥。
何も考えられなくなっている美貴はモニターに映る亜弥の笑顔を無心で見つめ続けていた。
- 21 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:27
-
ひとみは楽屋に戻ると帰り支度をしている美貴に話しの続きを持ち出した。
「でさ、さっきの話しなんだけど・・・」
「あのさ、亜弥ちゃんのいる前で今日みたいな事しないで」
「じゃあ、あややがいないところでならいいってコト?」
ひとみの笑顔を見て美貴は呆れた。
「よっちゃんだって見たでしょ。亜弥ちゃん泣いてたじゃん」
深い溜め息を短く吐くと、付け足した。
「亜弥ちゃんの泣いたとこ、見たくないの」
なんで?とひとみは顔であらわした。
「亜弥ちゃんが泣くと、美貴はつらくなるの・・・」
その言葉はひとみを黙らせた。
「だから、冗談でもやめて。んじゃね」
だけど、それは美貴を思っての事だった。
何もなかったかのように振舞っていても、
亜弥の涙は確実に、強がる美貴を
目いっぱい不安にさせていた。
- 22 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:28
-
会えない時は愛しくて、会えば苦しくなるなんて・・・。
会えない時間が長すぎたせいなのかな。
- 23 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:36
-
「おまたせ、亜弥ちゃん」
美貴はわざと何もなかったかのように亜弥の楽屋に入った。
「これからどっか行く?それとも帰る?」
そして、そんな美貴に亜弥もいつも通りの笑顔で微笑みかけた。
「亜弥ちゃんち行きたい」
「泊まってくぅ?」
「もちろん泊まりで」
「うひゃあ、やった!」
美貴と亜弥が寄り添って帰るのをひとみは後ろから見つめていた。
- 24 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:45
-
「ねぇ、美貴たん?」
眠りかけていた美貴はだらしなく虚ろな返事をした。
「あたしとよっすぃ、どっちがスキ?」
だけど、その問い掛けのせいで完全に目が覚めてしまった。
「何言ってんの。亜弥ちゃんに決まってるじゃん」
「でも、よっすぃにせまられたら・・・しちゃうでしょ?」
「なんでそんなこと言うの?」
美貴は内心、次は何を言われるのかとハラハラしていた。
「よっすぃに抱きしめられた時の美貴たん、顔赤くなってたよ」
美貴を抱きしめる力が強くなっている。
「あんな美貴たん、見たことなかったから・・・」
そのせいで、亜弥ちゃんの気持ちは言葉にしなくたって伝わってくる。
少し恐かった。
美貴の気持ちも、伝わってるんじゃないかって・・・。
- 25 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:50
-
「美貴がスキなのは、亜弥ちゃんだけだもん」
ホントは美貴もわかんなくて、
「わかってるよぉ」
いつか壊れるんじゃないかって。
「なら、そんなこと言わないでよ」
美貴、おかしくなっちゃったのかな・・・。
「うん、ゴメンね。おやすみぃ」
そして、美貴は亜弥を優しくも力強く抱きしめながら眠りについた。
- 26 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/13(月) 13:51
-
そうやって言われれば言われるほど、
疑っちゃうのよ、あたし。
だけど、信じてる・・・。
- 27 名前:フィア63 投稿日:2004/09/13(月) 14:00
-
少し短いですが、ひとまず今日はこの辺で。
次の更新は、できるだけ早めにするつもりでいます。
次回、話しは急展開の事態をむかえます(ごっちん登場予定です)
お付き合いして下さると、とても嬉しいです。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 14:20
- なかなか良さげな雰囲気ですね。
揺れるミキティがいい感じです。
期待してます。頑張ってください。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 16:12
- 揺れる想いー体中感じてー
これからの展開を楽しみにしています
- 30 名前:キラリ☆ 投稿日:2004/09/14(火) 03:13
- なんか…すっごぃ良さ気な雰囲気…引き込まれるってぃぅか…。まっつぅ好きなんで頑張ってくださぃねっ。期待大ですっ!!
- 31 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 14:17
-
∇∇∇∇∇
- 32 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 14:25
-
次の日、亜弥は夕方まで仕事が入っていた。
美貴はオフだったので、亜弥と一緒に家を出てそのまま帰宅した。
何かを紛らわすためだけにつけたDVD。
それをぼーっと見つめていると携帯が鳴った。
その音で亜弥からではないことがすぐにわかった。
「もしもし?」
『今、何してた?』
電話をかけてきたのはひとみだった。
「インドアちゅう」
『やっぱり。一人っしょ?今から行くから』
ひとみは美貴の返事も聞かず、一方的に電話を切った。
「もう・・・」
- 33 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 14:38
-
それから5分も経たないうちにひとみはやって来た。
来て早々、ソファに座るとあっという間にくつろいでいた。
美貴のすぐ隣に腰を降ろしたけど、以前のような気配はまったく感じられなかった。
きっと、楽屋で言ったことをひとみはわかってくれたんだと美貴は思った。
「アイアムサムじゃん!これ一人で見てたんだ・・・」
「いいでしょ別にぃ」
そう思ったら、気づけば以前のように楽しく話していた。
亜弥に対する罪悪感もいつの間にか消え去ってしまっていた。
- 34 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 14:53
-
特別何をするわけでもなく、ただいろんな事を話していただけだった。
それなのにひとみの話しは何だかやけにおもしろくて、美貴はずっと笑いっぱなしだった。
「そろそろ帰るわ」
いつの間にか日は沈んで外は薄暗くなっていた。
楽しいと、時間の流れがやけに速く感じる。
「うん、じゃあね」
「って、見送ってくんないんだ」
「わかったよもぉ」
結局、亜弥ちゃんの気持ちなんて全然わかってないみたい・・・。
「あたしのコト嫌い?」
ひとみは靴を履くと美貴を見つめながら呟いた。
さっきまでのひとみの表情と声色が突然変わった気がして美貴は嫌な予感がした。
「別に嫌いじゃないけど」
ひとみは素早く顔を近づけてキスをしようとした。
「だから、冗談はやめ・・・」
それを拒んだ美貴をひとみは強引に抱き寄せると、そのまま向きを変えた。
そして、美貴の手首をゆっくりドアに押さえつけた。
ひとみの力は予想以上に強くて、それを逃れることは美貴には出来なかった。
- 35 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:06
-
「ホントにスキなんだって」
それに対しての美貴の言葉はひとみの唇で閉ざされた。
始めは抵抗した美貴も、そのうちに耳と頬が真っ赤に染まっていた。
長いキスだった。
唇が離れた一瞬、油断していた美貴に今度は舌を入れて責め始める。
ひとみは美貴の抵抗力が無くなってきたところを見計らって美貴の手首を押さえていた手を美貴の腰に廻した。
そして、自然と美貴もひとみの肩に腕を乗せて後ろで交差した。
腹が立つほどのテクニックで、なにもかも忘れて夢中にさせられていた。
- 36 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:14
-
きっと何もかも忘れたくて、だからわざと・・・
って、なにやってんだろ美貴。
こんなこと、絶対に許されないことなのに。
この気持ちは言葉にはきっと出来ない。
だから、いいわけだってできないんだ・・・。
- 37 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:23
-
携帯が鳴り出した。
美貴にはそれが誰からの電話なのか音でわかっていた。
その時点で、中断すべきだった。
ポケットから取り出したいのにそれをひとみが邪魔をする。
「よっ、ちゃん・・・」
「ダメ」
でも、やっと携帯を手に持つことが出来た時、美貴は耳をなめられ力が抜けて携帯を落としてしまった。
そして、また夢中にさせられていた。
- 38 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:32
-
そんな時、突然ドアが開いた。
そこには携帯を耳にあてたままの亜弥が立っていて、ひとみはちょうど目が合った。
その直後、美貴の携帯は鳴らなくなった・・・。
美貴が振り向くと携帯を片手に立ち尽くしている亜弥の姿が目に飛び込んできた。
亜弥の目には今にも涙が溢れそうになっていた。
それを見た美貴は今おかれているこの状況がどれほど大変なことかに気づいた。
むしろ、気づくのが遅すぎた・・・。
亜弥は振るえる手で口を押さえたまま走っていってしまった。
- 39 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:39
-
「亜弥ちゃん!」
美貴はすぐに追いかけた。
ちょうどエレベーターの前で後ろから手を掴んで引き留めた。
亜弥は振り向いて美貴の顔を見ると、その場に泣き崩れた。
すでに嗚咽を止められなくなっていた。
「違うから。ゴメン・・・ホントに違うから・・・」
美貴にはそう言って亜弥を抱きしめる事しか出来なかった。
しばらく経ってさめざめ泣いた後、泣き止んできた亜弥は美貴から体を放し、口を開いた。
「もう、わかんなくなっちゃった・・・」
- 40 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:44
-
何もかも全部、わかんなくなっちゃった・・・。
「美貴たんのコト、ぜーんぜんわかんないよ!」
なんて言えばいい?
「なんでよ、なんであんな事してんのよ!」
そして、美貴の体を何回も叩き続けた。
「ねぇ、美貴たん・・・」
なんて言えば・・・
「ゴメン。でも、美貴ホントに亜弥ちゃんのコト・・・」
時間がもどせる?
- 41 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:50
-
「もうそんなの聞きたくない!」
叩き続ける亜弥の手に美貴がそっと触れた。
「わかったから」
「わかってないよ・・・」
これ以上涙は見せたくないと思った亜弥は、次の涙がこぼれる前にエレベーターに乗った。
ドアが閉まる時、亜弥は美貴を見つめて言った。
「ずっと、信じてたのに・・・」
ドアが閉まった瞬間、美貴の目からいっきに涙が溢れ出した。
そう、美貴はなんにもわかってなかった。
わかるはずがなかった・・・。
- 42 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:53
-
いつから、こんなふうになっちゃったの?
こんなに、こんなにスキなのに
ねぇ、伝わらない・・・
- 43 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 15:59
-
美貴は涙を止められないまま部屋に戻った。玄関にはひとみが座っていた。
「悪いけど、帰って・・・」
「ゴメン、あたしのせいで・・・。こんな事になるなんて、」
「じゃあね・・・」
もう、誰の言葉も心に響かない・・・。
いくら泣いたって、何も変わらないことくらいわかってる。
それでも絶えることなく溢れる涙はどうしたらいい?
苦しいよ。
会いたくて苦しいよ。
ねぇ、どうしよう。こんなの初めてだよ・・・。
- 44 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:07
-
そんなことがあった次の日は恒例のハロープロジェクトコンサート全体打合せの日だった。
亜弥が一人で廊下を歩いていると、ちょうど前から真希がやってきた。
「あ、まっつー?どしたの、目かなり腫れてるけど」
昨晩、美貴と同じように泣き続けた亜弥の目は見事に腫れていた。
「いやぁ、ごっちん久しぶりぃ・・・」
「久しぶりぃ・・・って、話し変えないでよ」
「・・・ゴメン」
「で、ミキティと何があったの?」
同じくらい泣いたって、同じくらい傷ついたって、わからないことはたくさんある。
それならば、わからせてあげればいいのだと、
この時すでに微笑んでいたんだね。
- 45 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:18
-
「あっち行こ?」
美貴と何かあった時は必ず真希に相談してくるのに、この日はなぜか話そうとしない。
亜弥の様子がいつもと違う事は真希はすぐに気づいていた。
「・・・でぇそれから連絡とってない」
やっとの思いで、亜弥は今までの美貴とひとみの事を一通り真希に打ち明けた。
「ぶっちゃけ、よっすぃにせまられたらねぇ・・・。あの人、キスうまいから」
「ごっちん・・・」
「あ、ゴメン。それにしても今回ばかりは困ったね」
亜弥は深い溜め息を吐いて、ゆっくりと頷いた。
「でも、なんかねぇ・・・」
その後の言葉を言おうか、ためらう素振りを見せる亜弥の瞳はどこか弱々しく見えた。
「なにさ、言ってみ?」
そんな瞳の奥で何かが微笑んだ。
「・・・疲れた」
- 46 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:28
-
それから1時間後、打合せが始まった。
いつもだったら美貴と亜弥は隣に座るのに今回は自然と離れたところに座っていた。そして、ひとみも美貴の近くに座るのは控えた。
もちろん、まわりは不思議に思っていたけど誰一人として理由を聞く人はいなかった。
それだけ、深刻そうな顔をしてしまっていたから。
打合せが終わり、美貴が帰る支度をしていると珍しく真希がやってきて話しがあると言った。
2人は誰もいないミーティングルームに場所を移した。
「で、話しって?」
美貴の目も亜弥と同じく腫れていた。
真希の予想した以上に美貴の気分が悪いことを察した。
いつもクールな美貴のことだから、もっとあっさりしていると思っていた真希の考えは甘かった。
- 47 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:37
-
「なんでよっすぃとキスしたの?」
「誰から聞いたの?」
「まっつー」
これは二人だけの問題なはずなのに・・・。
「なに考えてんの。よっすぃのコトスキになっちゃった?」
美貴は首を横に振った。
「じゃ、なんで?」
どうして、それをごっちんが聞くの?
「ねぇ、ミキティ・・・」
美貴は込み上げてくる想いを伝えられない自分に腹が立っていた。
「美貴にもわかんないよ!」
その苛立ちを抑えきれずに声を張り上げてしまった。
「なんであんなことしちゃったのか、美貴にもわかんないの」
「じゃあ、まっつーのことはどう思ってんの?」
亜弥が少しずつ変わり始めていることを真希はただ、
伝えたかっただけだった。
「ってか思ったんだけどさ」
その苛立ちは真希にも向けられていた。
「ごっちんには関係ないじゃん」
美貴と亜弥の間に真希が入ってくることが美貴には理解できなかった。
- 48 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:43
-
「ね、なんで?」
亜弥の事を思ってしたことは、もしかしたらただのおせっかいだったのかもしれないと真希は思った。
「あたし関係ない、のかな・・・」
そう言う真希の顔も見ないで、美貴は黙って頷いた。
そんな美貴の態度に真希は腹が立った。
「でも、一つだけ言わせてよ」
だけど、ちゃんと伝えておかないと。
「まっつー、なんか変なの・・・」
亜弥の瞳の奥に潜む何かは、今も微笑み続けてるに違いない。
「もしかしたら、ミキティから離れていっちゃうかもよ・・・」
真希がなんと言おうと美貴には聞こえない。
- 49 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:50
-
その日の夜、美貴の携帯が鳴った。
『美貴たん、』
どこか予想してたけど、やっぱりすごく不安だったから、
『美貴たんに会いたいよ、』
もう一度声が聞けて、涙が出るくらい嬉しかったよ・・・。
『会いたい・・・』
電話は繋いだままで美貴は玄関へ向かうと、急いで靴を履いてドアを開けた。
勢い良く開けると、そこには同じように携帯を耳に当てたままの亜弥が立っていた。
「美貴も会いたかった。すんごく、会いたかったの・・・」
- 50 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 16:53
-
同じくらい弱いから、弱すぎるから、会えない時間が長すぎて二人はおかしくなっちゃったんだよね・・・。
それで、同じくらい不安にさせて、不安になって・・・。
そのせいで、たまに会うのが恐くなって、苦しかったんだよね。
・・・そうだよね?
- 51 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 17:00
-
「ありがと、美貴たん・・・」
信じてた。
そう、信じてたのに・・・。
あまりにもうまくいき過ぎていて疑うことを忘れてしまっていた。
「今までホントに、」
相手の表情から事の重大さを改めて実感することとなった。
「ありがとね・・・」
今までに感じたことが無いくらいの「後悔」というなの罪悪感が、今になって再び胸を締め付け始める。
「どしたの?亜弥ちゃん・・・」
それは今の美貴にとって、一番の仕打ちだった。
「別れよぅ・・・」
先に涙が頬に伝ったのは亜弥のほうだった。
それでも、意味も無くつくられた笑顔は美貴のすべてを壊し始めていた。
- 52 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 17:06
-
「嫌だ・・・」
吐き出すように小さく呟いた。
「そんなこと、言わないでよ・・・」
どうして?
美貴の瞳は、視線を下げる亜弥の瞳を鮮明に捕らえ続けるのだけど、どうしても顔をあげてくれない。
「美貴のコト・・・嫌いになった?」
だから美貴がそう言うと、やっと亜弥は顔をあげた。
「美貴ね、亜弥ちゃんのコトすんごいスキだよ?美貴ね、亜弥ちゃんがいないとダメだって気づいたの。だからさっ・・・」
次から次へと溢れ出す想いとともに、涙も止まらない。
「だから・・・美貴は亜弥ちゃんがいないとダメになっちゃうの」
少しずつ近づいて、いつの間にか美貴は亜弥を強く抱きしめていた。
だけど、いくら腕の力を強めても亜弥はそれに応えてくれなかった。
- 53 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 17:15
-
「もっと早く、気づいてよ・・・」
その言葉は美貴の心を鷲掴みにした。
美貴ははっ、として埋めていた顔をあげると
亜弥は涙を流しながらも、その口元だけは穏やかに微笑んでいた。
「亜弥ちゃん・・・」
情けない声が口から洩れた。
「別れたいの」
そして、また心が呟く。
どうして?
まるでそれが聞こえていたかのように亜弥はそれに応えた。
「疲れちゃったの。だから・・・」
「じゃあ、なんで泣いてるの」
「美貴たんのコト、大好きだからだよ」
一瞬、ほっとした。
「それならさ・・・」
だけどその一瞬は、本当に一瞬だった。
「だけど、美貴たんはあたしを裏切ったじゃない!」
美貴にもわかったよ、ごっちん。
「もう疲れちゃったの、追うだけなんて」
そして、真希の言っていた言葉を思い出す。
『まっつー、なんか変なの・・・』
これは、今までの美貴に対する復習なのかもしれない。
「今度は美貴たんがあたしを追う番だよ・・・」
亜弥の瞳の奥の何かが微笑んだ・・・。
- 54 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 17:21
-
亜弥は誰かに電話を掛けた。
「もしもし、ごっちん?」
亜弥の瞳は美貴を捕らえて放さない。
そのせいでまるで金縛りにでもあっているかのように
美貴の体は動けない・・・。
「今からぁ、会えない?」
かすかに聞こえる真希の『どうしたの?』という声。
「ごっちんに会いたいの。今から家に来て?・・・うん、じゃあね」
通話を切った瞬間に亜弥の口元が微笑んだ。
そして、今まで感じたことがない想い。
それは確実に、『嫉妬』というモノだった。
- 55 名前:∇Silent±Control∇ 投稿日:2004/09/14(火) 17:29
-
「じゃね、美貴たん」
去ろうとする亜弥の手をとっさに掴んだ。
「亜弥ちゃん!」
「急がないと、ごっちんが来ちゃうよ」
そう言って掴んだ手はあっという間に美貴の手からすり抜けた。
涙を必死に止めると、
美貴はひとみに電話を掛けた。
「もしもし、よっちゃんさん?」
『ミキティ、あの・・・ゴメン。あたし、もうあんな事しないからさ』
また、1からやりのやり直しだと考えれば苦にならない。
「うん、だから明日から普通に・・・なんだろうな、前にみたいにさっ」
『うん、わかった』
「よろしく。んじゃね」
本当にもう、キミしか見えなくなっちゃった・・・。
- 56 名前:フィア63 投稿日:2004/09/14(火) 17:46
-
レス、ありがとうございますvvv
>28
ありがとうございます。
期待に応えられるように頑張りますvvv
>29
(笑)ぜひ、次回も読んでみて下さいvvv
>30
現実のまっつーとはちょっとイメージが
違ってしまうかもしれませんが・・・すいません
でも、ぜひ次回も読んでみてくださいvvv
次の更新は、いつになるかまだわかりませんが
できるだけ早めにするつもりなので・・・
それでは、また。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 18:32
- 作者さん、マジ最高です!
次回も楽しみにお待ちしております!!
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/15(水) 01:37
- 素晴らしい! ああ、あやみき、痛いよ(涙
はぁ〜作者さんの処女作なんて信じられません。
続きすごく気になります。頑張ってください。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/16(土) 17:10
- 復習は、復讐じゃないんですか
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/16(土) 22:16
- さっき全部読んで一気にはまりましたw
亜弥ちゃんのミステリアスなところに惹き込まれますね。次回更新お待ちしてます!
- 61 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:03
-
▽▽▽▼▽▼▽▽▽
- 62 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:10
-
次の日、ステージリハーサルが行われた。
モーニング娘。だけはどうしてもスケジュールが合わないため、他のメンバーよりも先に別格でリハーサルにはいった。
昨夜、美貴は亜弥の携帯に何度も電話を掛けた。それなのにすぐに留守番に切り替わってしまう。
メールを送っても、返事がこない。
だからといって、直接会いに行くという勇気は美貴にはなかった。
そして、どうすることも出来ないまま今日をむかえた。
- 63 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:16
-
もちろん、美貴が受けたダメージは予想通り大きすぎた。
そのせいでリハーサルはめちゃくちゃだった。
「藤本!なにがあったか知らないけど、そんなんでステージ立ってほしくないなぁ!」
どんなに振り付け師の先生に怒鳴られても、ちっとも美貴の耳には入らない。
いくら芸能人、アイドル、なんて言ったってしょせんは人間だから仕方のないこと。
心に強いダメージを受けてしまった人間はそれが解決するまで、使いものにならなくなってしまう。
リハーサルが終わると美貴はいろんな人から注意を受けた。
だけど、どれもこれも美貴には響かない。
真剣に謝っているつもりでも、どこか平謝りになってしまっていることに美貴は気づいていなかった。
- 64 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:23
-
リハーサルを終えるとすぐに次の仕事へ向かった。
移動中の車の中で何度もメールのセンター問い合わせボタンを押す。
『問い合わせ中・・・』の表示中は心臓が高鳴った。
だけど、『0件』と表示されるたびに胸がひどく締め付けられる。
そして、深いため息ひとつ・・・。
そのつど、亜弥と真希が昨夜なにをしていたのかを考えてしまう。
その考えは、必ず最悪な方向へと進むばかりでよけいに自分を追いつめていった。
やはり仕事に身が入らないため、行く先々で注意を受けた。
- 65 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:34
-
この日最後の仕事が終わると、美貴は矢口に呼び止められた。
「これから、藤本んち行っていい?」
わざわざ家にまで来て説教をされるのかと思った美貴は何か断る理由を探してた。
「あ、別に説教しに行くわけじゃないからさ。安心して?」
その口振りから本当に説教をしにくるわけじゃないのだと察知した美貴は逆によけい断りたい気持ちが強まった。
だけど仕方なく、首を縦に振った。
家に着くとすぐに始まった。
「もしかして、あややとなんかあったの?」
予想は的中。
「良かったら話してくれない?」
面倒くさい。と言えばただの強がり。
本当は、話したくない。それもあるし、自分のしでかしてしまった過ちをまた改めて口に出して説明したくなかった。
それに対してのコメントを良くも悪くも聞きたくはなかった。
今はそれを素直に受け止められないと思ったから。
- 66 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:42
-
「いろいろと・・・」
その続きが浮かんでこない。
「いろいろと?」
心配そうな瞳をしてそんなにのぞき込まれたって、それに応えることをしたくなかった。
「美貴が悪いんです。それで亜弥ちゃん怒っちゃった、っていうか・・・」
わざと矢口から視線を逸らし続けた。
「それ以上はちょっと、」
二人だけの問題なんで・・・。
喉まできて、飲み込んだ。
「実を言うとね、メンバーみんなすごい心配してて・・・」
美貴は亜弥のことばかり考えすぎて、そんなメンバーの気持ちになんかちっとも気づいてはいなかった。
「だけどね、みんな聞きづらかったみたいでさっ」
「メンバーの気持ちは嬉しいんですけど、矢口さん、今のことは言わないでもらいたいんですけど」
これ以上知られたくなかった。
「あ、うん。わかった、約束するけど・・・」
言葉をさえぎるようにタイミング良く矢口の携帯が鳴った。
どうやらメールが届いたらしい。
- 67 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:48
-
「なんか、お母さんから呼び出しかかっちゃった」
二人で玄関に向かう。靴を履きおえると矢口は振り返った。
「あんまり言いたくないけど、仕事してる時は態度に出さないように出来る限り努力しなよ?」
結局はお説教。
「はい、すいませんでした・・・」
そして、やっぱり平謝り。
それを聞いて矢口は短いため息をついた。
「最後にひとつ。大きなお世話だと思うけど、あややとは直接会ったほうがいいと思うけどな」
「え?」
「だって今日、携帯見て何回ため息ついた?」
- 68 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 10:56
-
美貴がセンター問い合わせをするたびにため息をついていたことを矢口は見逃していなかった。
「携帯なんかより、直接顔見て話した方がいいと思うな」
きっと、美貴が直接会いに行く勇気がないこともわかっていた。
「以上!大きなお世話でした。んじゃあまた明日」
矢口がいなくなった部屋の中は静かすぎて、美貴は無理矢理テレビをつけた。
そして、再びセンター問い合わせをしようとして指を止めた。
何かがふと頭をよぎって、携帯のスケジュールを見るとそこには今日から4日間、
『亜弥ちゃん、大阪』と入力してあった。
実は矢口の言葉が耳に残っていて、それをかき消そうとテレビをつけたのにその言葉は美貴の頭から離れなかった。
そして、決心した。
4日後、直接会いに行くことを・・・。
- 69 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:02
-
亜弥からなんの連絡もなく、真希とも連絡がとれないまま美貴にとって長いようであっという間に4日が経った。
その日の朝、目が覚めて携帯を見ると『新着メール。1件』と表示されてるのに気づいた美貴はものすごい早さで受信メールを開いた。
『今日の夜9時に家に来られる?』
亜弥からのメールはいつもより短いけれどその内容は美貴を喜ばせた。
『行けるよ!じゃあ9時に』
そのあと返事はこなかったけど、美貴はどこか安心することができた。
そのおかげでこの日の仕事は順調にこなすことができた。
夜。
時間よりも少し早めに亜弥のマンションについた。
- 70 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:09
-
「とりあえず、入って」
とりあえずってなに?
期待で胸を膨らませながらこの時を迎えたのに何か違う。
亜弥の態度はどこかよそよそしい。
「あのね、美貴ずっと亜弥ちゃんに会いたかっ・・・」
「わかってるよ」
美貴の言葉は即座にかき消された。
「だって、『会いたいよ』って何通もメールきたから」
よそよそしいという表現は少し間違っていたことに気づく。
「あ、そうだよね。でも、なんで返事くれなかったの?電話もでてくれなかったし」
「メールは面倒くさかったからで、電話はうるさいからずっとマナーモードにしてたの」
美貴に対する亜弥の態度は明らかに冷たい。
以前と比べれば、冷たすぎるほど。
- 71 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:14
-
必死のつくり笑顔はもう限界に近い。
少しでも気を抜けば涙が溢れてしまいそうで・・・。
「なにそれ・・・。え、じゃあなんで今日美貴を呼んだの?」
膝を両手で抱えてソファに座る亜弥の前に美貴は立つ。
「だって、会いたいっていうからさぁ」
てっきり、美貴に会いたくなってしかたがないのかと・・・
なんて勘違いもいいとこで、むしろそれは迷惑だったと言わんばかりに。
「そんな・・・」
美貴の瞳から一筋の光は消えた。
- 72 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:22
-
亜弥は立ち上がると美貴に近づいた。
「ずっと会いたかったとか言うけどさ、どうせやりたいだけでしょ?」
どうしてそんなこと言うの?
「亜弥ちゃん・・・」
こうさせちゃったのは美貴のせいだから、仕方のないことだって必死に自分に言い聞かせるけど、
「そんな声で呼ばないでよ」
もう少しで声が震えちゃって、まともに話せなくなっちゃうかも。
「ごめん」
「あたし明日早いから、さっさと・・・」
そう言いながら、背中にまわそうとした亜弥の腕を美貴は掴んだ。
「やっぱり美貴、今日はもう」
「帰るの?」
亜弥の腕を掴む美貴の手に自然と力がはいっていた。
「あんなに会いたいってメール送ってきたくせに、もう帰んの」
- 73 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:30
-
「こんな亜弥ちゃんに会いたかったわけじゃないから・・・」
美貴は亜弥の腕から手を放すと、亜弥はソファに座り直した。
「・・・じゃあね」
亜弥の視界に映る、去ってゆく美貴の後ろ姿は次第に何かが邪魔をしてかすんで見えなくなった。
だから、ドアの閉まる音だけで美貴が部屋から出ていったことを確認した。
ドアが閉まったと同時に美貴の中で何かがプツンと切れた。
- 74 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:38
-
近くに置いてあった携帯を手に取ると、ゆっくりボタンを押した。
『はい、』
「ごっちん・・・」
口に出した途端、声の震えを止められない。
『なに泣いてんの。どした?』
ほんの少し沈黙。
「あたし、どうしよっ・・・」
お互い周りが静かすぎるせいで亜弥のすすり泣く声がもろに真希の耳に響く。
「おかし、くなっちゃった、みたい・・・」
ひとみとキスをしている現場を見てしまったあの瞬間から亜弥自身、気づくことなく亜弥の何かは壊れてしまった。
それに一番最初に気づいたのは真希だった。
真希のおそれていることが起こってしまうのも、もう時間の問題なのかもしれない。
- 75 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:43
-
ドアを閉めた時すでに溢れだして、エレベーターの中ではもう涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
たった4日も会わないうちに人はあんまにも変わってしまえることを恐ろしくも悲しく思った。
美貴はエレベーターのなかで、バンッ、と鈍い音をたてておもいっきり壁を叩いた。
そのまま頭をかかえてうずくまると全身がわずかに痺れ始めていることに気づく。
呼吸も荒くなっていた。
1階に着きドアが開いたので立ち上がろうとした瞬間、
美貴の意識はそこで途絶えてしまった。
- 76 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:48
-
亜弥から電話がきた真希はすごく心配になって『すぐに行くから』と念を押して告げた。
それからタクシーを急がせ15分もしないうちにマンションに到着した。
エレベーターの前に立って上向きの矢印ボタンを押すとすぐにドアは開いたけど、視界の下にわずかに何かがかすめたので、少し視線を落とすと左の隅に人が倒れていた。
驚いて口を手で覆いながら、見開いた大きな瞳でそれが誰なのかすぐに認識する。
すぐに駆け寄って名前を呼んでも応答がないので、体を起こして軽く揺すってみた。
- 77 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 11:54
-
「てぃ?・・・きてぃ!」
誰だろう、この声・・・。
ゆっくりと目を開くとぼんやり映る真希の顔。
次第にはっきりと映るにつれてその表情から、すごく驚いていることに気がついた。
「どうしたの!大丈夫?」
「ごっちん・・・?」
そういえば・・・。
美貴は倒れてしまったことを思い出した。
ポケットから携帯を取り出して時間を見ると気を失ってからあまり時間が経っていないことがわかった。
「あれ・・・何でごっちん、ここにいんの?」
- 78 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:03
-
ゆっくりと立ち上がって、とりあえずエレベーターから降りた。
そして、近くにあった長椅子に美貴だけ座った。
「まっつーに用事があって・・・」
言われて、はっとする。
ここにいるということはそういうことしか考えられないことに今更気づく。
「ねぇ、ごっちん・・・」
弱々しい声でまるで独り言のように呟いた。
「美貴、亜弥ちゃんに嫌われちゃった・・・」
その言葉は真希に語りかけているわけでもなく、かといって独り言でもなく、自分自身に言い聞かせているように聞こえた。
「それは違よ、今のまっつーは」
「今の亜弥ちゃんはごっちんのこと好きなんじゃないかな・・・」
予想外の言葉に真希は少し戸惑った。
その戸惑いは美貴を誤解させてしまった。
「やっぱ、そうなんだ」
- 79 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:09
-
「もうキスとかしちゃったの?それとか」
「ねぇちょっと待ってよ」
真希は美貴の前に立った。
「なに言ってんの。あたしとまっつーは何もないよ?」
口にださなくとも真希を見つめる美貴の瞳が、嘘をつくな、と強く訴えかけている。
「ホントだよ。それにまっつーはまだミキティのこと、」
「もういいよ、ごっちん」
美貴はゆっくりと立ち上がった。
「美貴はもう必要なくなっちゃったんだよ・・・」
そう言って立ち去ろうとした瞬間、真希は美貴の両腕を掴んで放さない。
- 80 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:15
-
「しっかりしてよ!」
掴む力が強いことに真希は気づいていない。
それぐらい必死だった。
「ミキティがしっかりしないでどうすんの・・・」
「ごっちん?」
「あのね、今のまっつーはやっぱりどっかおかしいの」
「おかしい?」
真希は小刻みに頷いた。
「ミキティに冷たくしちゃうのもそのせいなんだよ、きっと」
「え、なんで」
「さっきまっつーから電話きて全部聞いたよ。もし、ミキティのこと嫌いになっちゃったんなら冷たくしたことに後悔して、泣いたりなんかしないでしょ?」
その言葉は美貴に強く響いた。
そして、5日ぶりに我にかえった。覚醒した。
- 81 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:18
-
「泣いてたの?」
美貴がやっとわかってくれたことにひとまず安心して、真希は掴んでいた手を放した。
「すごい心配になっちゃって急いで来たんだよ」
きっと自分もおかしくなりかけていたのかもしれないと思った美貴は密かに鳥肌が立った。
「それでね、ミキティにお願いがあるんだけど・・・」
- 82 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:23
-
インターフォン、3回。
押してみても、物音一つしない。
真希の脳裏に嫌な予感がよぎった。
ドアを開けて亜弥の名前を呼んでも応答がない。
急いで部屋の中を探すと亜弥はソファで携帯を握りしめながら眠っていた。
泣き疲れた顔をして眠っているのを見て、真希の胸は締め付けられた。
どうしようもなく抱きしめたい衝動にかられた真希はその気持ちをおさえるのに必死だった。
- 83 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:27
-
それから亜弥は一度も目を覚まさないまま朝を迎えた。
その間、真希は一睡もしないで亜弥のそばに寄り添っていた。
「あれ、ごっちん??」
腫れぼったい目をこすりながら亜弥は体を起こした。
「なんでいるの?!」
とぼけたその言葉に真希は一瞬驚いたけど、寝起きで寝ぼけているんだと思って納得した。
「とりあえず顔洗ってきなよ」
亜弥はまだ納得のいかない顔をしたまま言われた通り顔を洗いに行った。
- 84 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:34
-
真希はその間、喉が渇ききっているのに気づいて台所へ行くとコップに水を注いだ。
洗顔から戻ってきた亜弥はを見るとまだ表情が変わっていないので真希は不振に思った。
「ねぇごっちん、あたし目腫れてなぁい?」
「うん、だって昨日」
昨日の電話の様子ならこうなることくらい予想は出来ていたはず。
「なんでだぁ?別に泣いたりしてないんだけど・・・」
それを聞いた真希は持っていたコップを落とし掛けた。
「それよりごっちん、だからなんでいるんだっけ?いつ来たの?」
- 85 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:39
-
「まっつー、昨日の夜なにしてた?」
わざと知らないふりをして・・・。
この質問の答えを聞けばはっきりすること。
「え、夜?んーっと・・・別になんも。あ、んでぇソファ座ってたら眠っちゃったんだよあたし。よっぽど疲れてるんだね」
「そうだね・・・」
きっと、昨日の美貴とのことを隠してるわけじゃなく、ただたんに忘れてしまっているんだとはっきりとわかった。
その瞬間から真希は嘘をついて亜弥に話を合わせることにした。
そして、真希はどうして自分がいるのかを適当に言ってうまくその場をやり過ごした。
- 86 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/10/25(月) 12:42
-
できることなら、そのまま思い出さなければいい。
それを思い出したとき、またパニックになってしまうのが目に見えてるから。
- 87 名前:フィア63 投稿日:2004/10/25(月) 12:55
-
誤字がありました。ここで訂正します。
>53
×復習→○復讐 です。
なかなか時間がなく、更新するのに一ヶ月以上も経ってしまいました。
ごめんなさい。
>57
ありがとうございます。そう言って頂けるとすごく嬉しいです。
>58
続き、遅くなってすいませんでした。頑張ります!
>60
これからもよろしくお願いしますvvv
みなさん、レス本当にありがとうございます!
次回の更新は自分でもいつになるかわかりませんができるだけ早めにしたいと思ってます。
それでは、また。。。
- 88 名前:名無し 投稿日:2004/10/26(火) 18:27
- 最高、面白いです!!
次回を待ってます!!
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 23:40
- ひぎゃーー!!!(゜Д゜)
…取り乱してすいません。更新お待ちしておりました。
ヤバイですねこれは…。
次回もお待ちしております、頑張って下さい。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/05(金) 03:25
- 凄ぇ!早い展開で目が離せませんね。
更新待ってます!
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 06:01
- 作者さんまだ〜??
- 92 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 23:22
- まだかなぁ〜o(^-^)oルンルン
- 93 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 16:52
-
▽▽▼▽▽▼▽▽
- 94 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 16:59
-
『それでね、ミキティにお願いがあるんだけど…』
お願い、なんて言うから何かと思えば。
『しばらく、まっつーとは会わないで』
「…なんで?」
おかしくなっちゃった亜弥ちゃんを治せるのは美貴しかいないよ?
だって…
『まっつーがおかしくなった原因はミキティにあるから』
出した答えを胸に、美貴は家を出た。
- 95 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:07
- 「コンビニ行って来るけど、まっつーなんか食べたいもんある?」
忙しい日が続いたせいでいつの間にか冷蔵庫の中は空になっていた。
「食欲ないから別に」
「んじゃ、てきとーに買ってくるから」
ここからコンビニまで行って帰ってくるのにだいたい15分。
急いだとしても10分。
真希はそのくらいの時間でも亜弥をひとりにさせたくなかった。だけど、一緒に連れて行くのはいろいろと面倒なので仕方なく断念した。
真希が家を出て行ってすぐに亜弥はテレビをつけた。
何気なく見ているとドアの開く音がした。
はっとして我に返り、テーブルの上の真希の財布の存在に気がついた。
それを手にとって玄関に向かった。
「もう、財布忘れるなんてっ……?!」
- 96 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:21
- 相手の様子から、ついさっきまでここに真希が滞在していたことがわかった。
だけどこの時、そんなこと少しも気にとめなかった。
「やっぱり、亜弥ちゃんと別れるんなんて嫌だよ」
そんな美貴を見て、亜弥は昨夜のことを思い出した。
一瞬、はっとして、でも平然を装った。
「どうして別れなきゃいけないの?」
靴を脱いで亜弥に近づこうとした時、亜弥は口を開いた。
「知ってる?」
でも、美貴を見つめているその瞳は動揺を隠しきれないでいた。
そしてまた、もう一人の自分が現れているのがわかった。
「ごっちんってね、キスうまいんだよ」
亜弥の言っていることは嘘だと思った。
それがもし本当だとしても、今はそんな言葉にいちいちつまずかないと決めていた。
それを無視するかのよに美貴は亜弥へと近寄った。
「キスだけじゃなくて、他にも」
「だから?」
美貴が出した答え。それは、
なによりも一番大切なことなのについ見失っていたこと。
- 97 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:28
- 「もし、それが本当だとしても」
じわじわと距離が縮まってゆく。
「もし、亜弥ちゃんが美貴よりごっちんのほうが好きだって言ったとしも」
美貴に見つめられた亜弥はまるで金縛りにでもあっているかのように動けない。
「美貴は亜弥ちゃんが好きだから……」
その言葉はもちろん不快なものではなく、むしろずっと待ち望んでいたものだったから嬉しかった。
だけど、それを面と向かって言われた瞬間、苦しくなった。
今まで求めていた優しさや愛情が手に入ったにもかかわらず、それでもまだ喪失感に似た何かが胸を締め付ける。
それはきっと、
喪失感のような不安感。
そしてなによりも、もう、信じることが出来ないと知ってしまった自分への絶望。
「みきたんのこと、」
声を出した時、初めて自分が泣いていることに気づいた。
「もう、信じられない…」
- 98 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:33
-
言った瞬間に美貴の瞳が揺らぐのがわかった。
「それでも美貴は亜弥ちゃんが好き。大好きだよ」
たくさんの涙の滴が静かに頬を流れ落ちる。
「でも…」
亜弥の涙を美貴は冷たい指で優しく拭いながら、ゆっくりと顔を近づけた。
「信じてくれないなら、それでもいい…」
大切なのは相手に対する自分の気持ち。
「悔しいけど、それでも亜弥ちゃんのそばにいたいって思った」
それに対する亜弥の言葉は美貴の唇に塞がれた。
唇が触れた瞬間、そんな美貴の精一杯の優しさが全身に伝わって
とうとう亜弥の中の何かが音を立てて砕け散った。
- 99 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:42
- その瞬間、亜弥は美貴の体をおもいきり突き飛ばすと
その場にしゃがみ込んでしまった。
「亜弥ちゃん、ごめんね…」
美貴がしゃがんで亜弥に触れようとした時、ちょうどドアが開いた。
「…どしたの!」
途中で財布を忘れたことに気づいて引き返してきた真希が息を切らして現れた。
「ミキっ、…まっつー!」
真希が亜弥に走り寄って体に触れた瞬間、亜弥は悲鳴のような声を上げた。
そして、嗚咽を止められないままその場に泣き崩れた。
ついにこの時がきてしまった。
そう思ってため息をつく暇もなく真希はすぐに携帯を取り出すとマネージャーに電話を掛けた。
「もしもし?後藤ですけど…」
真希は前もって言っておいたみたいで詳しく説明しないでも伝わっていた。
「はい、今すぐ来て下さい。お願いします」
- 100 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 17:44
-
▽▽▼△▽▼▽△▼▽▽
- 101 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:00
- 『体調不良のため、松浦亜弥は今回のハロープロジェクトコンサートツアーには参加しません』
会場内に響き渡るアナウンス。
2度目は松浦亜弥を待ち望んでいたファンの声でアナウンスの声はかき消され聞こえなかった。
体調不良というのはただの偽りにしか過ぎない。
本当のことは事務所、マネージャー、そして、ハロープロジェクトのメンバーの中でもごくわずかの人しか知らなかった。
2回公演を無事に終わらせ急いで駆けつけてみても、そこには先客がいた。
精神病棟の一番奥にある部屋。
その部屋の前に置かれている長椅子に、まるで見張りでもしているかのように真希が座っていた。
- 102 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:11
- 美貴は気持ちを必死に抑えながら、真希に連れて行かれたところは病院の屋上だった。
わずかな沈黙のあと、真希は冷たい視線を美貴に向けた。
「会わないでって言ったじゃん」
真希のその言葉には怒りにも似た悲しみがむきだしになっていた。
「だって、美貴には亜弥ちゃんが必要で亜弥ちゃんも美貴が」
「やめて!もうこれ以上まっつーをおかしくさせないでよ」
「亜弥ちゃんがおかしくなったのは美貴のせいって言ったよね?」
「言った。だってそうじゃん」
「ってことはさ…」
美貴は遠くを見つめ亜弥のすべてを思い浮かべた。
「それほど美貴のこと好きになってくれたってことだよね」
それを言葉にした時の美貴の笑みに真希は気を取られた。
「嬉しいよ、すごい。だって、美貴もそうだから…」
やっと、本当の自分の気持ちにたどり着くことが出来た。
- 103 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:16
- 真希はその言葉を鼻で嘲笑った。
「そんなこと、わかってたよ」
そんな二人の間に入れないことくらいはじめからわかっていたこと。
それでも苦しむ姿は見たくなかった。
「だからせめて…まっつーが言うまで」
あの笑顔にいつも助けられてた。
だけど、その笑顔の素は必ずこの人だった。
そう思うとなんだかすごく悔しくて、どうしても自分のものにしたかった。
「ミキティに会いたいって言うまで、」
ほんの少し、微かに真希の声が震える。
「会わないって、約束して?」
叶わないと判っていながら、捨てきれない儚い希望。
「…うん」
きっとこれが、与えられた最後のチャンス。
- 104 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:23
-
目が覚めることを望むべきなのか、望まないべきなのか。
そんな考えをいくら巡らせてもその時は訪れる。
深い眠りからゆっくりと抜け出してきた彼女にとっさに掛けた言葉は、
「おはよっ」
いくら言葉を考えて用意していても、それはすべて伝わらないことを判っていた。
だから、今はとにかく名前がでないように…。
「あたし、寝てた?」
「うん。だから、おはよっって」
このまま時間が止まってしまえばいい。
「そっか。あのさ…みき」
「まっつー、喉乾いてない?なんか買ってこようか」
このまま時間が止まってしまえばいい。
「みきたんは?」
このまま時間が……。
「さぁ…」
その時、涙が溢れそうになって真希は初めて目を逸らしてしまった。
「そういえば明日のライブ」
「みきたんに会いたい…」
タイムオーバー。
- 105 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:29
- 「みきたんに会わせて?」
きっと、そのまま視線を合わせたりしたものなら確実に涙が溢れる気がして。
「わかったよ…」
だから、そのまま部屋から出ようとした。
それなのに…。
「ごっちん、」
ドアに手を掛けた時、ふいに呼び止められて振り返ることなく立ち止まった。
「ありがとね」
その言葉はなぜかとてつもなく切なくて、大粒の涙が真希の頬を濡らした。
何度手で拭っても、無駄だとわかり真希は諦めてそのまま振り返ると出来る限りの笑顔をつくってそれに応えた。
部屋から出てからしばらくの間、真希は涙を止められなかった。
- 106 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:35
- 「みきたん?」
その言葉は出会ってから何千回と聞いたはずなのに、
「みきたん…」
こんなに幸福を感じることなんて今までにはなかっただろう。
これからもずっと、そんな気持ちを感じ続けていたい。
「亜弥ちゃん」
不安いっぱいに支配された亜弥の表情はそれを聞いて一瞬にして和らいだ。
「もう、寂しくなんかないよ?」
どうしても伝えたいことは言葉にしなきゃ伝わらない。
「美貴がそばにいるから…」
亜弥はゆっくり体を起こして立ち上がった。
「ずっと、亜弥ちゃんのそばにいるから」
亜弥は涙をこらえるためにほんの少し間があいた。
「……ずっと?」
美貴は頷きながら距離を縮めた。
「そう。ずーっと」
「ずーーーー…」
美貴は亜弥の言葉をキスで塞いだ。
- 107 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:39
- 「大丈夫。…信じていいよ」
亜弥の瞳から静かに涙がこぼれ落ちた。
もはや止めることなど出来なくなっていた。
「少しずつでいいからさ……」
亜弥は溢れる想いを言葉に出来ず、思わず美貴の体に抱きついた。
「大好きだよ、亜弥ちゃん」
二人の気持ちが重なった瞬間、とてつもない幸福感がお互いの心に満ち溢れた。
「あたしも大好き。ずっと…」
亜弥を抱きしめる美貴の腕の力が少し強まった。
- 108 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:39
-
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
- 109 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:51
- 「ただいまー」
それから二人はすぐに一緒に暮らし始めた。
「おかえりっ!!」
亜弥は慌てたように立ち上がると玄関に走って勢いよく美貴に抱きついた。
「なんかいいね、新婚さんみたいで」
亜弥は自分で言って頬を赤らめた。
「なぁに言ってんのさっ」
そんな亜弥を美貴は目一杯、優しく抱き締めた。
「ねぇ、みきたん?」
「…ん?」
今、この瞬間があることがどんなに幸せなことだろうと美貴は思ってにやけそうになるのを必死に隠した。
「みきたんがモー娘。さんに入るの、すんごく嫌だったのね?」
「うん。…だった?」
「二人きりで会える時間が少なくなっちゃうと思ったから。…でも、」
美貴は亜弥を抱き締める腕の力を強めた。
「もう、平気だよ」
それに応えるように亜弥の腕の力も強まった。
「今、すんごぉく幸せだから」
「うん」
「きっと、これからもずっと…」
距離を置く必要なんてなかった。
「きっとじゃないでしょ?これからもずっと、二人でいるんだよ」
素直に想いを伝えることは難しいけど、伝えないでいるといつかは壊れてしまうから。
「ずっと?」
相思相愛がいい。
「そう、ずーっと」
お互いが信じ合えれば、なおいい。
「…ありがとう、みきたん」
亜弥が顔を近づけると自然と美貴も距離を縮めて鼻先が触れた。
「もう離さないからね」
そんな美貴の言葉に亜弥は小さく吹き出した。
「それ、ちょっとくさすぎない?」
「うっさいっ」
唇が触れ合った瞬間、計り知れないほどの幸福感が二人を包み込んだ。
- 110 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:55
-
相思相愛がいい。
お互いが同じくらい大好きでいられることがなによりも幸せ。
だから、自分の気持ちを素直に表現しようと決めた。
これからも、ずっと……。
- 111 名前:▽Silent±Control▽ 投稿日:2004/12/13(月) 18:57
-
▽▽▽±▽END▽±▽▽▽
- 112 名前:フィア63 投稿日:2004/12/13(月) 19:06
- 自分でも思っていた以上に更新が遅れてしまったことをお詫びします。
そして、今回で完結です。
今までおつき合いしてくださった方々、みなさんのレスのおかげでここまでこれました。
本当にありがとうございました。
いい話が思いつきましたら、また書きたいと思っています。
その時は、今回よりもうまく書けるようになっていることを願います(笑)
それでは、早めですが
メリークリスマス♪
そして、
よいお年を…。(って、早すぎだろっっ!!!)
笑。
- 113 名前:読み屋 投稿日:2004/12/13(月) 23:45
- いやぁーなかなか良かったですよ!
初めての作品ですか?
すごいです
最高に感動できるコレクションがまた増えました
より良い作品ができましたら、また聞かせてください
- 114 名前:名無し 投稿日:2004/12/15(水) 13:30
- おつかれさまです!!
ホント良かったです!
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/06(木) 09:57
- あやみき、あやごま、堪能させて頂きました。
かなり良かったです。
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