M。ストーリー

1 名前: k 投稿日:2004/09/30(木) 00:34

森版で書いていたものです。
あちらの容量が一杯になったのでこちらに来ました。
あやみきの短篇、中篇を書いています。
駄文ですが読んでくれたら嬉しいです。


それではどうぞ・・・

2 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:35


 = 本当は?・・・ =


3 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:36

「お騒がせしてすいませんでした。もう大丈夫です」

明るく、一人、一人。スタッフの前で挨拶をするのは
つい最近まで「急性咽頭炎」という病気にかかっていた女の子。
藤本美貴。


スタッフへの挨拶も終えて楽屋へ戻る。

楽屋へと戻る途中、廊下にメールの着信音が響いた。


「ん・・メールだ。・・・誰だろう」

メールを開いてみる。

「亜弥ちゃんからだ・・・・えっと、何々・・・」

メールの相手は藤本美貴の最愛の彼女、松浦亜弥。


4 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:38

「えっと・・・」


【 みきたん今日から仕事復帰だって?
病み上がりなんだからあんまりムリしちゃだめだよ?
じゃ、お仕事頑張ってね

亜弥より     】



「・・・・亜弥ちゃん、これって嫌がらせ?」

メールの内容は美貴への励ましのメール。
いつもならこのメールに美貴も喜ぶのだが、このメールだけは素直に受け取ることが
出来ない美貴。なぜなら・・・・


5 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:39


= 美貴が風邪をひく二日前 =



「亜弥ちゃーん、お泊りに来たよー」

颯爽と愛カギを使って、亜弥の家のドアを開ける。
そして愛しの彼女が抱きついてくるのを玄関で待つ。


「・・・・・」

― シーン・・・・ 

「・・・亜弥ちゃーん?」


彼女がお出迎えに来るのを待つがいつまでたっても来ない。
おかしいと思った美貴は靴を脱ぎ、亜弥を探す。


「亜弥ちゃん?いないの?」

ひとつひとつ、部屋をのぞく。


「あやちゃ・・・あ・・亜弥ちゃん?」

リビングの方を見るとそこには亜弥がいた。だが・・・


6 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:40


「亜弥ちゃんどうしたの?ミキが来たのに出迎えにもこないで」

ちょっと拗ねたように美貴に背を向けている彼女に問いかける。
すると亜弥が美貴のほうへと振り返った。


「みきたん・・・いらっしゃい・・・」

ミキの方へと顔を向けた亜弥ちゃん。でもその顔はいつものフニャっとした顔じゃなく
トロンとした表情(カオ)をしていた。

「亜弥ちゃんどしたの?目がトローンとなってるけど?」

近づき、彼女の顔をのぞく。


「うーん、何かちょっとだるくて・・・ごめんね、お出迎えしてあげれなくて・・・」
「いや、別にいいけど・・・疲れてる?」
「うーん、そういうんじゃないとは思うんだけど・・・」


7 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:41


「「・・・・」」

疲れてはいないと言いながらも目をトロンとしながら美貴を見る亜弥。

「・・・・」
「ん?みきたんどうかした?」
「・・・いや、別に・・・」
「そう?顔がちょっと赤いように見えるけど・・・あ、今、お茶入れてあげるね」

亜弥ちゃんはミキの顔を不思議そうに見ながらもお茶の準備をしにキッチンの方へと行ってしまった。

ミキはその後姿をボーと見ていた。

『 どうしよう。
何かトロンとした目の亜弥ちゃんに今、ミキすっごいいけないことしそう 』


目がトロンとなっている亜弥ちゃん。
その目が潤んでいるように見えてみられているミキとしてはその顔が誘っているようにしか見えない。


8 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:42


『 うーん・・・やばい。亜弥ちゃんにキスしたくなっちった 』

突然沸き起こった衝動にミキは困惑した。


『 うーん、いきなりしたら亜弥ちゃん怒りそうだし・・・
  それに今日の亜弥ちゃんはいつもと違うから手出しにくいなぁ・・・』

一人、悶々と考えていたらキッチンの方から可愛らしい声が聞こえてきた。



「クシュっ!」

可愛らしいクシャミが聞こえてきてミキはキッチンの方へと向かった。


「・・・・うー・・・さむい」
「・・・亜弥ちゃん、ひょっとして風邪なの?」
「うーどうだろ。でもちょっと肌寒いかなぁ・・・」

そう言って、鼻をグシュグシュする亜弥ちゃん。
それってどうみても風邪でしょ?



鼻声の亜弥ちゃんを見ながらミキは心配するとともにちょっとしたあることを思いついた。


『 !・・・いいこと思いついた。これならミキの願望も果たせる 』


9 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:43


「ねえ、亜弥ちゃん。それって風邪だよ」
「そうかなぁ」
「そうだって、こういうのは風邪の引き始めが肝心なんだから、早くなおさなきゃ」
「でも、今お薬切らしてるからなぁ・・・じゃあ、すぐ買ってくるね」

薬を買いに行こうとした亜弥を美貴が止める。

「それなら大丈夫。ミキ、すごく良く効く薬持ってるよ。試す?」
「え、よく効く薬?みきたん持ってんの?試す試す!
 よかったー。今日みきたんが来てくれて」

ニコニコとミキに抱きつく亜弥ちゃんにミキはしてやったりの顔でニヤリ。


「試す?・・・じゃあ、今からミキが言うことちゃんと聞いてよ?」
「?・・・うん」

ワケが分からないが取り合えず頷く亜弥。

「じゃあ、まず服脱いでからベッドに入って」
「・・・・は?」

ミキの発言に驚きの声をあげる亜弥ちゃん。
でもミキはその声を無視して続ける。

「いや、は?じゃなくて。ほら服脱いで」
「な、なんで服ぬぐの!?」

ニコニコ顔のミキとは対照的に焦った顔で聞いてくる亜弥ちゃん。


10 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:44


「な、なんで!?・・ちょっとそれって・・・」
「ん?やだなぁ亜弥ちゃん。
 ミキは亜弥ちゃんに早く治ってほしいから言ってるのに」
「え、そうなの?」
「そうだよ、ひどいよ亜弥ちゃん」

まだ疑っている亜弥ちゃんにミキは泣きまねをする。

「あ、ご、ごめんね。そうだよね、みきたんはアタシのために言ってんだよね」


泣きまねをするミキに亜弥ちゃんはオロオロしながらも洋服を脱いでいく。
ミキはそれを泣きまねをしながら覗く。


『ふっ、亜弥ちゃん、引っかかりすぎ』


心の中でニヤリとしていると亜弥ちゃんが服を脱ぎ終わりベッドへと入っていく。
ミキはそれを確認すると次の段階へと進めていった。


11 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:45


「じゃあ、亜弥ちゃんさっそく試してみようか」
「・・・うん」



― ゴソゴソ ―

「・・・みきたん?」
「ん、なに?」
「いや、なんでみきたんも脱ぐの?」
「ん?治療の為」
「そ、そうなの・・・」


顔を赤くしながら亜弥ちゃんはミキが脱ぐのを見ていたけど、ミキと目が合うと
すぐに背を向けた。
その亜弥ちゃんの行動にミキは少しだけ気に食わない気持ちがでた。


『むっ?亜弥ちゃんなんで背を向けるのさ・・・・よーし・・』


服を全部脱いだミキは、背を向けている亜弥ちゃんのベッドにスルリと潜り込んだ。


12 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:48


「・・・!・・みきたん・・・」
「んー?」
「な、なんで一緒のベッドに入るのさ・・」
「亜弥ちゃんの風邪を治すため(はーと)」
「あの・・・!!みきたん・・冷たい」
「亜弥ちゃんはすごい熱いね。これは早く治さなきゃ」


背を向けている亜弥ちゃんを後ろから抱きしめると
声にならない悲鳴を亜弥ちゃんがあげた。
まー今、外から帰ってきたミキの体は冷えているから風邪で少し体が熱い亜弥ちゃんには
すごい冷たく感じるだろうな。

そんなことを考えながら亜弥ちゃんを抱きしめる手に力を込める。

「ん・・・みき・・たん・・」
「亜弥ちゃん、こっち向いて」
「や・・・だって・・・」
「ほら、こっち向いて」
「ん・・・だ・・・め、・・・みきたん・・・はずかしいよ・・」


13 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:49


熱のせいか亜弥ちゃんの体はすごく熱くて汗ばんでいる。
喋るときも少しだけ呼吸が荒くて、それがミキを余計そそらせる材料となった。


「はら、いい子だから・・・ね?」
「あ、ダメ・・・ん!・・・はっ・・・んー・・」


まだ少しだけ抵抗している亜弥ちゃんを強引にミキの方に向かせてキスをする。

亜弥ちゃんは突然のことで拒否ろうとするんだけど、
ミキはそれを強く抱き寄せて阻止をする。


「・・・ん・・は・・・みき・・・たん・・ん・・」


熱のせいで体が思うように力が入らない亜弥ちゃんはミキにされるがままになっている。
ミキは抵抗しない亜弥ちゃんをいいことに軽いキスから深いキスへと変えていく。



14 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:50


「はっ・・・ん・・はぁ・・・みきたん・・」
「・・ん、亜弥ちゃん」

亜弥ちゃんの声を聴きながらミキは亜弥ちゃんの口の中へと舌を入れる。
舌を入れた亜弥ちゃんの中はミキが思ったよりも熱くて・・・甘くて・・・・
その熱さを感じれば感じるほど・・・その甘さを味わえば味わうほど・・
ミキの頭は亜弥ちゃんしか・・・亜弥ちゃんが欲しいという感情しか生まれてこない。


『んー・・・やっぱり、亜弥ちゃん少しだけ熱があるなぁ・・』

舌を絡めながら、亜弥ちゃんの体温を感じる。
ミキは亜弥ちゃんの体温を感じながら名残おしいけど、唇をはなす。

「ん・・・はぁ・・・」

苦しそうに息を整える亜弥ちゃん。
その姿にせっかく止めておいたミキの欲求が疼きだす。

『亜弥ちゃん可愛いなあ・・・』

そんなことを思っていると亜弥ちゃんが息も絶え絶えに聞いてきた。




15 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:52


「・・はぁ・・みきたん・・これって、どういう治療なの?」
「え?」
「だからこれって・・」
「あー・・・これね・・・」
「・・うん」

息も絶え絶えに聞く亜弥ちゃんにミキはすっきりと答える。


「亜弥ちゃん、風邪なんて汗かけばすぐに治るんだよ 
 だから、軽く運動して汗かけば治るって」
「は!?」
「それに風邪って人に移せば治るって言うじゃん。それならミキに移せばいいんだし。
 あと、寒い時とかは裸で抱き合えば暖かいって言うっしょ?」
「!!」
「と、いうことで亜弥ちゃん・・・」

ミキの言葉に亜弥ちゃんは顔を真っ赤にする。
その顔にミキは我慢が出来ず亜弥ちゃんに顔を近づける。



16 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:53


「と、いうことで亜弥ちゃん、もう一回キスしようよ」

そう言って、ミキは亜弥ちゃんにキスをしようと顔を近づけた。

「・・・だれがそんな風にして治してって頼んだのよ!!」
「!!!あ、亜弥ちゃん!?入ってる!マジで入ってる!ミキ死んじゃう」

ミキのやり方に怒った亜弥ちゃんはミキの首を絞める。
その締め方が見事にミキのけい動脈を押さえていてミキの意識は失神寸前

って亜弥ちゃん、ミキマジでヤバイんですけど・・・
アイドルが殺人なんてシャレになんないから・・・


「もう、バカたん!エロたん!なにがよく効く薬よ。少しは反省しなさい!」
「え!?・・・て、わー!亜弥ちゃんごめんなさい」

三途の河が見えそうになったミキはようやく亜弥ちゃんに手を離してもらったと思ったら、
毛布一枚と一緒にベランダに放り出されてカギを閉まられてしまった。

「えっ?亜弥ちゃんマジなの?いくらまだ夏っていっても夜は冷えるんですけど・・・」
「・・・・・」
「亜弥ちゃーん?」
「・・・・・」
「・・・マジですか!?」




17 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:55


「はぁー・・・ほんとあの時は大変だったなぁ・・・」


あの後、ミキは必死に謝って家に入れてもらったんだけど
さすがに毛布一枚で外に一時間はきつかった。
あれが原因で風邪を引いたミキはそれがひどくなって急性咽頭炎になったんだよね。
いや、自分から蒔いた、身からでたサビなんだけどさ。


「・・・言えないよなぁ・・・」


あまりにもバカすぎて誰にも言えない。
これがミキが風邪を引いた理由(ワケ)。
心配していた皆には口が裂けても言えない風邪の真相。


「皆も風邪には気をつけようね!・・・・ふっ、どんなシメだよ。それ・・・」


一人突っ込みをしながらミキは楽屋へと戻っていった。



18 名前:本当は?・・・ 投稿日:2004/09/30(木) 00:58






ノノハヽ
从;VoV)亜弥ちゃんミキあの後、風邪引いたんだけど・・・・


                     
ツーン!エロたんなんか知りませーん 从#‘ 。‘)



・・・エロたん・・・ 川_| ̄|○川





                        FIN





19 名前: k 投稿日:2004/09/30(木) 01:01


・・・・如何だったでしょう?

引越し一発目ということで短篇を一つ。
藤本さんの風邪の原因がこれだったらなぁ・・・


・・・って、そんな妄想あるかぁぁぁぁ (ノ`Д´)ノ ==== ┻━━┻


あやみきゴトが消滅ってなんじゃあぁぁぁ(ノ`Д´)ノ ==== ┻━━┻



狽ヘっ・・・失礼しました。
いまさら遅いですがあやみきの鬱憤を短篇で晴らしてみましたw


前と同じように歌をネタにした短篇や中篇を書いていくので感想などありましたら
どんなことでもいいから書いてもらえれば嬉しいです。


・・・それでは今回はこれで失礼します。



20 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/30(木) 18:59
森から飛んできました。
あやみきゴト中止の傷はあやみき小説を読むことで癒したいと思います・゚・(ノД`)・゚・。
ところで亜弥ちゃん美貴様のたくらみに気付くの遅すぎw
21 名前: k 投稿日:2004/10/03(日) 09:53

更新開始

22 名前: k 投稿日:2004/10/03(日) 09:54


 = 妹?恋人?どっちが好きなの? =

23 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:55


誰も居なくなった放課後の教室で談笑に花を咲かせる女の子たち。




「ねぇー今月の見た?」
「見た、見た。チョーカッコよくない?」
「だよねぇ、マジ、カッコイイ」


今、女子高生の間で一人のモデルが話題に上っている。

モデル雑誌『 ann ann 』の専属モデル


= 藤本美貴 =


半年前くらいから雑誌に載りだし、彼女が出ている雑誌の売上は彼女が出ていない号と比べると2倍近くも差が出るくらい。
彼女一人が出るだけで雑誌の売上はケタが倍に伸びるほど今、売れに売れているモデルなのだ。


24 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:55


「ねぇ、亜弥もそう思うでしょ?」
「えっ?」
「だからーこのモデルの子。ミキティ!」

友達に雑誌を目の前で開かれたあたしは、どアップに迫った彼女の雑誌を見ながら
適当に返す。

「んー・・・そうだね、カッコイイんじゃない?」
「何よー、その適当な返事はー?」
「あー、ダメダメ。亜弥にその雑誌見せても意味ないから」
「なんでよー?」
「だってねー・・・」

あたしの横にいたもう一人の友達があたしの目の前から雑誌を取り上げる。
放課後の談話に花を咲かせていたあたしだけど時計を見て話を切り出す。

「ごめん、あたし行かなきゃ。じゃっ!また明日ね」
「バイバイ。お姉さんによろしくねー」
「うん、バイバイ」

自分の鞄を手に取り友達との会話から抜け出すと、あたしは急いで靴箱へと向かっていた。


25 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:56


「・・・ねえ、さっきの話だけど」
「何?」
「なんで、亜弥にその雑誌見せてもダメなわけ?」
「シスコンだから」
「は?」
「だから、あの子ものすごいお姉ちゃん子なの。どんないい男だろうと綺麗な子だろうと
 お姉ちゃんには適わないわけ」
「なに、そんなに亜弥のお姉さんって、綺麗なの?」
「んー、あたしも見たことはないけど。
でも、あの自分大好きの亜弥が好きなくらいだからやっぱ、綺麗なんじゃないの?」
「へー、それは初耳」
「ああそうか、あんたクラスが違うからね。あの子いつもお姉さんの話ばっかするよ」
「そうなんだ」
「うん、優しくて、頭が良くて、何でも出来るんだって」
「へー・・・なら、この雑誌見せても意味無いわね」
「そういうこと。ねえ、それより今日この後・・・」

亜弥が居なくなったあとも彼女たちのお喋りが途絶えることはなかった。


26 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:57


「はあ、はあ、はあ、」

息を切らしながら校門までを急ぐ亜弥。
あと、数十メートルというところで、人影が見えた。

「あっ!お姉ちゃん」

校門の壁にも垂れながら帽子を目深に被りながら誰かを持っている人物。
はたから見れば、帽子を目深に被っている姿は怪しく見えるが見慣れている
亜弥にとってはどんなに遠くにいても見つけられる。

「ごめんね、お姉ちゃん待った?」

息を切らしながら自分を待っていてくれた姉に両手を合わせて謝る。

「うんん。今、来たところだよ。それより走っちゃ危ないじゃん」
「だって、お姉ちゃん待たせるわけにはいかないもん」
「亜弥ちゃんは優しいなぁ」

そう言って、あたしの頭を撫でるお姉ちゃん。
撫でる手つきが優しくてあたしも笑顔になる。


27 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:57


「えへへ」
「・・・帰ろっか」
「うん!」

ニコニコしながらお姉ちゃんの腕へと手をまわす。

「でも、お姉ちゃん、毎日迎えに来なくてもいいのに」
「何言ってんの。亜弥ちゃんが卒業するまでは面倒見るって約束したでしょうが」
「でも、お姉ちゃんお仕事が最近忙しそうだし・・・」
「亜弥ちゃんは心配しなくても大丈夫。そこはマネージャーさんと話つけてるし。
 それより今日はどんなことがあったの?」

あたしのオデコにデコピンをかましながらお姉ちゃんが聞いてくる。

「今日も相変わらずお姉ちゃんの話題で持ちきりだったよ」
「へー」
「今日なんかね、お姉ちゃんの雑誌見せてどう思う?だって。」
「それで亜弥ちゃんはなんて返したのさ?」
「カッコイイんじゃない?って、返した」
「なんで、そこでギモン系なの?」
「だって、あそこでウンって言ったらあたし口を滑らしそうだし・・・」

そう、ホントだったらあたしも言いたかった。でも・・・


28 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:58


「・・・ごめんね、マネージャーとの約束だから・・・」
「ぜっ、全然!お姉ちゃんは悪くないもん!」

申し訳なさそうに謝るお姉ちゃんにあたしは顔を何度も横に振って否定する。

「だって、お姉ちゃんと姉妹っていうのを内緒にするって約束で一緒に住んでるんだし
 それにお迎えだってそうなんでしょ?」
「・・・そうだね」

そう、あたしの自慢のお姉ちゃんはなんとあの『藤本美貴』なのだ。
じつはあたしとお姉ちゃんが姉妹っていうのは誰も知らない。
お姉ちゃんがモデルをする際、事務所の人にそのことは隠すように言われたからだ。
なんかそういう風に謎めいたモデルっていうのをコンセプトに売りに出すというのが
事務所の人の考えなんだって。

だから、お姉ちゃんの名前もお母さんの旧姓を使っている。
でも、あたしとお姉ちゃんの秘密はそれだけじゃない。


29 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 09:59

あたしとお姉ちゃんは戸籍上は姉妹だけど血は繋がっていない。
これは事務所も知らないことなんだ。

「ねえ、お姉ちゃん・・・」
「んー?」
「お父さんたちが亡くなってからそろそろ一年が経つね」
「・・・そうだね」
「お墓参り、行ける?」

あたしの問いにお姉ちゃんが呆れた顔をした。

「行かなきゃ、親不孝でしょうが」
「・・・そうだけどさ・・」
「それに、あたしを引き取ってくれた人たちだよ。行かなきゃそれこそ罰当たりじゃん」
「・・・うん」

お姉ちゃんとあたしは血が繋がっていない。
あたしのお父さんとお母さんがお姉ちゃんが赤ん坊の頃に引き取って育てた。

この話はお姉ちゃんが18歳のときに聞かされた話。
まだ、雪も解け始めた寒い季節にお姉ちゃんはあたしの家の前で一枚の紙切れと一緒に
寝かされていた。
紙切れには一言だけ。

『 名前は美貴です。 』

ただ、それだけ書かれた紙が置かれた寒い日にお姉ちゃんは捨てられた。


30 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:00


お姉ちゃんを保護したお父さんたちは最初、施設に預けたらしいけど気になって引き取ったらしい。その頃はあたしも生まれてなかったから子供が欲しかったお母さんが引き取るって言って、そのままお姉ちゃんを養子にしたんだって。

それから2年後。あたしが生まれたけどお母さんたちはあたしとお姉ちゃんを分け隔てなく可愛がって育てた。

その話をお姉ちゃんは静かに聞いていた。
話を聞き終わったあと、お姉ちゃんは自分がホントの子供ではないのは知っていたと、
話した。
家族の誰にも似ていないのを疑問に感じて自分で戸籍を調べたそうだ。
その話にお父さんたちは驚いていたけど、お姉ちゃんは続けてこう言った。

「でも、父さんと母さんがミキと亜弥ちゃんを平等に愛してくれたから
ミキは父さんたちの娘でいられた。
あの日、ミキを引き取ったことにすごく感謝してます。」


あたしは初めて聞かされた事実にただ驚くことしかできないのに、
そう言って、正座をして頭を下げるお姉ちゃんにあたしはなんて芯が強い人なんだろうって思った。


31 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:02


「来月の中ごろぐらいだっけ?」
「・・・うん。ホント、1年ってあっという間だね」


あたしたちを平等に可愛がってくれた両親も一年前に交通事故で亡くなってしまった。
まだ成人していないあたしたち二人を親戚がどうするか決めかねていたとき、お姉ちゃんが口をひらいた。


『あたしが亜弥の面倒をみます。亜弥が成人するまであたしが親代わりになります』 

『成人もしていないのに二人っきりで暮らすのは無理だよ。
 せめて亜弥ちゃんだけでも親戚に預けなさい』

『嫌です。亜弥はあたしにとっては唯一の家族なんです。
 これ以上あたしから家族を奪わないでください。お願いします』

反対する親戚を押し切ってお姉ちゃんはあたしを引き取った。


『生活費の援助は受けない』

それがあたしを引き取る条件だった。
そしてお姉ちゃんは合格確実と言われた大学への進学を諦めて、モデルの仕事をしながらあたしを養ってくれている。


32 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:03


「お姉ちゃん、今日の夕飯って何?」
「亜弥ちゃんは何が食べたい?」
「あたしはお姉ちゃんが作るものならなんでも好き!」
「・・・亜弥ちゃん・・」
「なにー?どうしたのお姉ちゃ・・きゃー!」

うるうるしているお姉ちゃんの顔をのぞき込もうとしたら抱きつかれた。

「亜弥ちゃんはお姉ちゃん思いのいい子だねー」
「お姉ちゃん苦しいよー」
「いいの、これも姉妹のスキンシップのひとつなんだから。」
「ワケわかんないー」

じゃれつきながら家への道を帰る。
あたしはこの時間が一番好き。
父さんたちが居なくなってから淋しい思いをしないのもお姉ちゃんがいるおかげ。
だからあたしはお姉ちゃんのことが世界で一番好き。





お姉ちゃんもそうだよね?


33 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:04


「・・・ただいまぁ・・・疲れたよう・・」
「お帰りなさい。・・・お姉ちゃん大丈夫?」
「・・・ダメ、ミキもう死ぬかも・・・」
「ええ!?嫌だよう、お姉ちゃんが死んじゃあ・・・」
「あはは、冗談だよ。でも今日は疲れたよ」
「・・・最近、特に忙しそうだね」
「うん・・・・モデルの仕事以外にも、CMとかの仕事が入るようになってさ」

心底、疲れたというような顔をしながら家へと帰ってきたお姉ちゃん。
ここのところ、モデルの仕事以外に色々な仕事が入るようになってきたお姉ちゃんはどんな仕事でも引き受けるようにしているみたい。

「・・・仕事、減らすことは出来ないの?」
「うーん・・・でもモデルだけだと食っていくのもやっとだし、今の仕事を受けてから  
 は大分、給料とかあがったからさー・・・」
「でも、体とか壊したら元も子もないよ?」
「亜弥ちゃんはそんな心配しなくてもいいの。それよりミキ、疲れたからお風呂に入るね。亜弥ちゃんは先に寝てていいよ」

そう言って、お姉ちゃんはお風呂場へと行ってしまった。


34 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:05


「あっ、お姉ちゃん、ご飯は・・・」

呼び止めようとしたけど、お風呂場へと向かうその足取りがあまりにもふらつきながら
歩いているのを見てあたしは最後まで声をかけることが出来なった。

仕方が無いのでテーブルに置いてあるご飯を片付けるために台所へと向かう。
あの様子じゃあ、疲れていてご飯も食べれないだろう。
ご飯をラップで包みながら亜弥はため息をもらす。

「はあー、最近、お姉ちゃんとお喋りしてないなぁ・・・」

食器も片付けた後、亜弥は美貴が出てくるまでソファで座って待つことにした。

最近のお姉ちゃんは仕事を多く入れている。
そのため、毎日の日課だったあたしの迎えも最近では
週に三日ぐらいまでに回数が減った。

「あんまり、無理はしないでよ・・・」

美貴が載っている雑誌を見ながら亜弥は呟く。



35 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:06


「あれ?亜弥ちゃんまだ起きてたの?」

お風呂から上がった美貴は肩にタオルを掛けながらソファに座っている亜弥に声をかける。

「・・・うん」
「もう12時回ってるじゃん。いくら明日休みだからって夜更かしはダメだよ」
「・・・うん」
「亜弥ちゃん?」

あたしの気の無い返事に気づいてお姉ちゃんが隣に座る。

「・・・何かあった?」
「・・・うんん」
「元気ないように見えるよ?」

あたしの髪を梳きながら優しい声で聞いてくるお姉ちゃん。
なんで、こんな時でもあたしに優しいんだろう。
疲れているならあたしの相手なんかせずに早く眠ればいいのに・・・


こんな時でもお姉ちゃんの優しさを感じてあたしは泣きたくなった。



36 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:07


「亜弥ちゃ・・・って!?」

髪を撫でているお姉ちゃんにあたしは抱きついた。

「び、びっくりしたー」
「お姉ちゃん・・・」
「んーどしたあ?」
「あたしのせい?」
「え?」
「あたしがいるからお姉ちゃん、そんなに無理してお仕事してるの?」
「・・・・」
「あたしに苦労させない為に無理してるならあたし・・・」

お姉ちゃんに抱きついている手に力を込める。

「もしそうなら、あたし・・・」
「違うよ、亜弥ちゃん」
「でも・・・」
「ミキ、今の仕事がすごく面白くてさ」
「え?」

お姉ちゃんの顔を見ると優しく笑いかけてくれた。



37 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:08


「最初は生活のためにって始めた仕事だけどさ、今、モデル以外に仕事してるでしょ?」
「うん」
「それが以外に面白くてね、結構こっちの世界にミキ、興味が出てきてさ。
それをマネージャーに話したら色々、仕事持ってきてくれてね。」
「・・・そうなんだ」
「だからミキは今きてる仕事はどんなものでも引き受けてみようと思ってさ・・・
 でも、ごめんね。そのせいで亜弥ちゃんには淋しい思いをさせちゃっているけど」
「あたしは平気だよ。だってお姉ちゃんが好きで選んだことならあたし応援するし、
でも・・・」
「でも?」
「・・・やっぱりちょっとは淋しかった」
「そっか」
「ん、でも、もう大丈夫。だってあたしのために無理しているんじゃないってのが分かったし・・・でも、ほんとに体だけは気をつけてね」
「うん、大丈夫だよ」

安心させるようにあたしの頭をお姉ちゃんが撫でてくれる。
それが心地よくてあたしはいつの間にか眠りの世界へと落ちていった。



38 名前: 妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/03(日) 10:09


「・・・亜弥ちゃん?」
「・・・・」

体の重みを感じたあたしは亜弥ちゃんを見る。
顔をのぞくと気持ちよさそうに眠っていた。

「・・・寝ちゃったか」

髪を撫でると心なしか亜弥ちゃんの顔が嬉しそうに見えた。

「ん・・・おねえちゃん・・・だいすき・・・」

気持ちよさそうに寝ている亜弥ちゃんを見て自然と顔が綻ぶのが自分でも分かる。
あたしのただひとりの家族。

大切な家族。

大切な妹。

たいせつな・・・

「・・・お姉ちゃん・・・か」

あたしはそれ以上深く考えず、亜弥ちゃんの重みを感じながら目を閉じた。



39 名前: k 投稿日:2004/10/03(日) 10:11


更新終了

・・・如何だったでしょうか?

今回は歌ネタではないので上手く書けているか分かりませんが読んでいただけると嬉しいいです。


20>>名無し読者さま

ありがとうございます。

あやみきゴト消滅・゚・(ノД`)・゚・。
こんな駄文でも少しは癒されていたら嬉しいです。

今回のものはそこまで長くは無いのですがキリがいいところで
終わろうと考えているので、あと何回かの短い更新量が続くと思います。


・・・それでは今回はこれで失礼します。


40 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/03(日) 13:29
いい!すごく良いです!
あやみきごと中止の痛手がまだ癒えていないあやみきファンには
たまりません。
作者さん、続き楽しみに待ってます!がんばって下さい!!
41 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/03(日) 19:22
涙と萌えなしでは語れません。
エエ話や( つд∩)エ-ン
42 名前: k 投稿日:2004/10/06(水) 07:46

更新、開始

43 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:48


「ねえ、昨日のドラマ見た?」
「見た!ミキティって、モデルだけでなくて演技も出来るんだね」
「ねえー!しかも今の役って、チョーはまってない?」
「思う、思う!何かミキティって・・・」

今日も相変わらずあたしの周りではお姉ちゃんの話題で持ちきり。
最近ではCM以外にドラマの仕事とほんと休む暇がないほどだ。

「んー・・・はぁ・・・・」

周りのクラスメイトのその話を聞きながらあたしは溜息を漏らす。

「ん?亜弥どうしたのさ、溜息なんかついて」
「・・・最近、お姉ちゃんが忙しくて一緒にご飯とか食べてないんだ・・・」
「相変わらず、亜弥はお姉さん子だねー」

友達は苦笑いしながらあたしの話を聞いてくる。
だって、ほんとに最近お姉ちゃんの仕事が増えすぎて一緒に帰るどころか
夕飯を食べる時間さえ無い。
そりゃあ、お姉ちゃんが人気が出るのは妹としては嬉しいんだけどさ・・・

44 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:48


「はあー・・・・」
「亜弥―、そんな溜息つかないでよー」
「・・・だってぇ・・・」
「・・・ねえ、今もお姉さんが夕飯とか作ってくれてんの?」
「ん?・・・うん、あたしが学校から帰ってくるころにはテーブルに準備されてるよ」
「そっかー・・・」
「なに?」
「いや、たまには亜弥が作ったらどうかなあと思って」
「あたしが?」
「そっ、日頃の感謝も込めてさ。お姉さん喜ぶと思うよ」
「でも、あたしが帰る頃にはもう準備とかされてるし・・・」
「それは、ほら、たまには外食しようとかなんとか言ってさ、んで、亜弥が先に帰って
 ご飯を作ったりとかさ」
「なるほど!そうすればあたしが作れるね」

友達の提案にあたしのさっきまでの溜息は吹き飛ぶ。
早速、お姉ちゃんに仕事のスケジュール確認をするためメールを送ろうと携帯を開いた。


45 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:49



「えーと、・・あれ?メールが来てる。気がつかなかった」

あたしの携帯に1件のメールが届いていた。
開いてみると、なんとお姉ちゃんから。しかも内容が・・・

「え?うそ!?きゃー、あたしってばツイテる」

あたしの突然の声に隣に座っていた友達が何事かと聞いてくる。

「何よ、亜弥。急に大声だして」
「ほら、これ見てよ」

あたしは嬉しさから友達に今きた、メールを見せる。

『 亜弥ちゃん、今日ミキ、仕事が早く終わりそうだからたまには外食とかする? 』


「おー、良かったじゃん。あっちから誘ってきて。これであとは亜弥が上手いこと言って
 夕飯を作ればいいわけだ」
「うん!」

こうも事が上手くいくとは思わなかったあたしは早速、お姉ちゃんに返事を打つ。



46 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:50



『 いいよ、ねぇお姉ちゃん。待ち合わせはお家にしていい?色々、準備とかあるしさ 』


「送信っと」

手際よくメールを打ち送信する。
あとはお姉ちゃんがオッケーすればいいだけだ。

「あっ、でもお姉ちゃんがオッケーしなかったらどうしよう」

さきほどまでの浮かれ気分から急に不安になる。
不安になりながら美貴の返事を待つ亜弥。

軽快に鳴り響くメール受信音。

「きた!」

亜弥はものすごい速さでメールを開く。
美貴からの返事は

『 亜弥ちゃんがそうしたいならミキは別にいいけど。じゃあ、6時までには
  家に着くようにするから。あっ、あと、亜弥ちゃんが好きなケーキもお土産に
  持ってくるから。楽しみにしててね 』

「やった!」

美貴の返事を見た亜弥は携帯を握りしめてガッツポーズ。


47 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:51


「上手くいった?」
「うん!あっ、あたし今から早退するね。先生には上手いこと言っておいて」
「はいはい、頑張りなよ」
「ありがと」

ヒラヒラと手を振る友達にあたしお礼を言って、急いで家へと帰った。



「えへへ、何作ろうかな」

家へ帰る前に食材の調達にスーパーへと足を運ぶ。
感謝を込めて作るものだから出来ればお姉ちゃんの好きなものを作ろう。
食材を見ながらお姉ちゃんの好きそうなものを次々に籠へと入れていく。



「よーし、作るぞー」

エプロンをして腕まくり。
お姉ちゃんが帰ってくるまであと二時間とちょっと。
それまでには作らなければいけない。

「・・・お姉ちゃん、喜んでくれるといいな・・・」

慣れない手つきだが愛情込めて一生懸命、料理を作る。



48 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:51


「出来たー」

出来上がった料理を器に盛り付けテーブルへと飾っていく。

「よし、完璧!」

ビーフシチューにハンバーグ、それとポテトサラダ。
所狭しと並べられた料理を見て亜弥は満足気に微笑むが

「・・・作りすぎたかな?・・・」

張り切りすぎて作りすぎた料理に自分でも苦笑いをしつつ時計を見る。
美貴が帰ってくるまでまだ30分はあった。

「よかった、お姉ちゃんが帰ってくるまでにはどうにか間に合った」

最後にカードに一言添えてテーブルに置いておく。


「疲れたー・・・・お姉ちゃんが来るまで少しだけ休もう」

普段、慣れないことをして疲れたあたしはお姉ちゃんが帰ってくるまでソファに横になることにした。



49 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:53


「ありがとうございました」

ミキは礼を言いながらマネージャーの車を降りる。
亜弥ちゃんとの待ち合わせの時間はとっくに過ぎていて、急いで家へと帰る。

「亜弥ちゃん、ただいま!ごめんね、遅くなって」

亜弥ちゃんが居るはずであろうリビングへと急いで向かう。
だけどミキの目に入ったのは誰も居ない部屋とそして台所に所狭しと置かれている料理。


「亜弥ちゃん?いないの?」

料理が並べられているテーブルへと向かう。


「うわぁ・・・皆、ミキの好きなものばかり・・・」

並べられている料理を眺めていると一枚のカードが置かれているのに気がついた。


『  お姉ちゃんへ

   いつもお仕事ご苦労様です。日頃の感謝を込めて作りました。
   優しくていつもニコニコ笑っているお姉ちゃんの笑顔があたしは
   大好きです。これからもずっと側にいてね。

                         亜弥より    』



50 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:53


「ホント、亜弥ちゃんは可愛いことばっかするよなあ」

カードを読んだあと目頭を押さえる。
これを作った張本人を探す。

「・・ん・・・」

声がして美貴は後ろを振り返った。
そこには制服姿で眠っている亜弥がいた。
美貴は起こさないように静かにそっと亜弥に近寄る。


「・・・亜弥ちゃん」

起こさないよう小声で亜弥の名前を呼ぶ。
よっぽど疲れたのか亜弥は気持ちよさそうに寝ている。
その亜弥に美貴は優しく頬へと触れる。



51 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:54


「・・・・・・」

優しく亜弥の頬を撫でながら美貴は亜弥の唇へと目線を移す。

「・・・・・」

美貴は無意識に手を頬から唇へと移動させていた。

柔らかい感触。
美貴はゆっくりと亜弥の唇をかたどる様に撫でた。

「・・・ん・・」

亜弥の声に美貴の体が揺れる。
慌てて手を離し亜弥の顔を見る。

「・・ん・・・お姉ちゃん?」
「・・・ただいま」

まだ少し、寝ぼけ眼の亜弥の頭を優しく撫でる。

亜弥は美貴が帰っているのが分かって嬉しそうに微笑む。

「・・・・」

その顔に美貴はなんとも言えない気持ちになりながら亜弥に料理のことを訊ねた。



52 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:55


「あそこの料理、亜弥ちゃんが作ってくれたの?」
「!・・・・う・・ん、いつもお姉ちゃんが作ってくれるから・・・
 たまにはあたしが作ろうかなって・・・」

ホントなら美貴が帰ってくる前に目を覚まして驚かせるつもりだったのだが、
先に料理を見られてしまい恥ずかしくなる亜弥。


「ね、食べていい?」
「え?」
「亜弥ちゃんの料理、ミキ食べたいんだけど」

そう言って、テーブルに着き、料理を見渡す美貴。

「亜弥ちゃん」
「ふえ!?」
「ぷっ、何変な声だしてんの。ほら、早く食べようよ」
「う、うん」

お姉ちゃんに促されてあたしは慌てて席に着いた。

「いただきます」
「い、いただきます」

お姉ちゃんは両手を合わせて料理に箸をつけた。



53 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:56


「ん!おいしい」
「ほ、ほんと?」
「うん、すごい美味しいよ」

そう言って、お姉ちゃんはどんどんあたしが作った料理を食べていく。
あたしもそれを見ながら自分が作った料理を食べる。

「あ、ほんとだ。おいしい・・・」

以外に美味しい自分の料理に自分自身がびっくりする。
それを聞いたお姉ちゃんがびっくりした顔をする。

「亜弥ちゃん、味見しないで作ったの?」
「だって、時間がなかったから料理の本で見よう見まねで作ったし・・・」
「・・・亜弥ちゃんはすごいね」
「そう?」
「うん、安心した。これならミキが居なくても大丈夫だね」
「え?」
「亜弥ちゃん、おかわり」


『どういう意味?』

お姉ちゃんが言った言葉にあたしは聞き返そうとしたけど、お姉ちゃんが差し出すお茶碗に邪魔されて聞けなかった。



54 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:57


ごはんも食べ終わり、食器を片付けようと立ち上がろうとしたらお姉ちゃんに止められた。

「あ、亜弥ちゃん、片付けはミキがするよ」
「でも、お姉ちゃん疲れてるし、これくらいあたし一人で出来るよ?」
「いいの、いいの。亜弥ちゃんの手料理をご馳走になったお礼」
「でも・・・」
「いいから、亜弥ちゃんこそ今日はこんなに沢山の料理を作って疲れたでしょ?
 さきにお風呂に入りなよ」

お姉ちゃんはあたしが手に持っていた食器を手に取って、
あたしにお風呂に入るように言った。

「・・・お姉ちゃんがそう言うなら・・・じゃあ、さきに入るね?」
「うん、ゆっくり浸かっといで」

お姉ちゃんはそう言って、食器を洗い始めた。



55 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:57


「ふー・・・気持ちいい・・・」

バスタブに自分の好きな桃の香りのする入浴剤を入れてゆっくりと今日の疲れを癒す。


「どういう意味・・・だったのかな・・・」

自分が言った言葉はお風呂場には響かず、お湯の中へと静かに消える。

「やっぱ、最近のお姉ちゃん変だ」

特にどうとは言えないが、でも何かが前とは違う。
今の仕事が面白いと言い、仕事を増やしたのは分かるが明らかに増やしすぎだった。
まるで、あたしといるのを避けているよう。

「・・・でも、態度はいつもと一緒なんだよね・・・」

だからといって、美貴の亜弥に対する態度は変わらない。
いつものように優しい面倒見の良い姉なのには変わらない。



56 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:58


「うーん・・・・ブクブクブク・・・」

あまり良くない頭で考えるがいくら考えても的確な答えが見つからない。

「・・・・ぷはぁ!」

バスタブに潜って考えてもやっぱり見つからない。

「きっと、気のせいだよね・・・」

見つからない答えを探してもしょうがない。
亜弥は考えることをやめ、のぼせる前にお風呂をでた。



57 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:58

「お姉ちゃーん、お風呂でたよー」

タオルで頭を拭きながら亜弥は美貴がいるリビングへと向かう。
そこにはなにやら真剣に本を読んでいる美貴がいた。

「?お姉ちゃん、何読んでるの?」

読んでいるものを覗く。
美貴が持っている本を見るとそれは台本だった。

「あ、それって今やっているドラマの台本?」
「ん?・・・ああ、うん。ちょっと今回のヤツがセリフが長くてさ、
 家で覚えようと思って持ってきたんだ」
「ふーん」

お姉ちゃんを見ると真剣に読んでいる。
邪魔しちゃ悪いかなと思い、あたしは部屋に戻ろうとした。

「あ、亜弥ちゃん、ケーキ買ってきたから食べようよ」

部屋に戻ろうとしたあたしにお姉ちゃんが声をかける。

「え、でもお姉ちゃんセリフ覚えるんでしょ?」
「ん、大体、頭に入ったからもういいよ」

そういって、美貴は台本を横に置く。


58 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 07:59


「もういいの?」
「うん、ほら早く食べよ。買ってきたケーキ、亜弥ちゃんが好きな桃のタルトだよ」

美貴は冷蔵庫からケーキを取り出し、皿へと移す。

「紅茶でいい?」
「うん」

二人分の紅茶とケーキを盆にのせ、美貴がソファへと歩いてくる。

「はい」
「ありがと」
「ここのケーキ屋さん、すっごい美味しいんだよ。今度亜弥ちゃんも食べに行こうよ」
「うん」
「はい、口開けて」
「え・・・」
「美味しいよ?」
「・・・ん」

タルトを一口サイズにして亜弥の前に差し出す。
亜弥がキョトンとしていると美貴は亜弥が口を開くのをニコニコしながら待っていた。



59 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 08:00


『やっぱり気のせいか』

お風呂場で考えいていたようなことは今の美貴からは感じられない。
やっぱりあれは気のせいなんだと、自分に安心させ亜弥はタルトを一口食べる。


「おいしい!」
「へへ、でしょ?ミキ、これ食べたとき絶対亜弥ちゃんが好きになると思ったもん」
「お姉ちゃん、ぜったい今度ここのお店に連れて行ってよ」
「うん、じゃあ今度休みが取れたときにでも行こう」
「えへへ、絶対だよ」


二人でタルトを食べさせあいながら久しぶりの時間を楽しむ。
やっぱり、お姉ちゃんが側にいるのが一番楽しい。
あたしは改めてお姉ちゃんとの時間の大切さを知った。


60 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/06(水) 08:00


ケーキも食べ終えお皿を美貴が片付ける。
それを亜弥は後ろから眺めていたがふと、ソファの横にある台本が目に入った。

今、お姉ちゃんがやっているドラマの台本。

「・・・・」

あまり、深く考えずに台本を取る。
ペラペラと台本を捲るとそこには沢山の書き込みがしてあって、
お姉ちゃんの努力が分かる。

「・・・ねえ、お姉ちゃんが今やっているドラマの役って確か先生の役だったよね」
「んー?・・・うん、主役の友人役でしかも女子高の先生っていうベタなやつ」
「ドラマ、大変?」
「どうだろう、ミキはこの仕事やり始めたばっかだから覚えるものが多すぎてあまり
 よく分からないなぁ」
「そっか・・・」

美貴との取り留めの無い会話をしながら台本を捲る亜弥の手が止まる。
付箋紙で印をつけているページ。
次回のものらしい。まだそこには何も書き込みはされていない。


その回の台本を読んでいたあたしの手が止まる。



61 名前: k 投稿日:2004/10/06(水) 08:02

 更新終了

・・・如何だったでしょうか



40>>名無し飼育さま

ありがとうございます。
あやみきゴトは無くなりましたがチラホラとあやみきの話が出てきているので
それを栄養ドリンクに頑張りたいと思います。


41>>名無し読者さま

感想ありがとうございます。
萌えと感動なしでは語れない。
確かにあやみきにはそれがありますねw
この話に萌えどころがあるかは分かりませんが読んでいて少しは面白いと
思っていただければ嬉しいです。



今回の話は長くは無いのでなるべく早くの更新を心がけたいと思います。

・・・それでは今回はこれで失礼します。




62 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/06(水) 21:06
くわ〜。
焦らしますね、作者さん(笑)
すごいいいっす!!
続き、待ってます。
63 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/07(木) 01:56
ええ子やな〜。泣けてきます。
まじで。
64 名前: k 投稿日:2004/10/10(日) 03:07

更新開始


65 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:09


「・・・よし、片付け終了っと」

洗い物を終え、美貴はエプロンで手を拭く。
エプロンも片付けて亜弥の元へ行くと亜弥が真剣に台本を読んでいた。

「亜弥ちゃん、台本なんて読んで面白い?」
「・・・・」
「亜弥ちゃん?」

台本を読んでいる亜弥に話かけるが返事をしない。
再度呼びかけようとしたら亜弥が美貴のほうへと顔を向けた。

「お姉ちゃん、これ次の回のヤツ?」

そう言って、台本を開き美貴に見せる。

「ん?・・・そうだね、次回のやつだけど。それがどうかした?」
「・・・キスするの?」
「はい!?」

亜弥の突拍子の無い言葉に美貴は驚きの声をあげる。

「だって、これに書いてるよ」

そう言って、そのシーンの場所を指す亜弥。



66 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:10


亜弥が指した台本を見て美貴は目を見開く。
なぜならそこは、さっき自分が真剣に読んでいたところだった。
亜弥にそのことを指摘されて美貴はうろたえる。

「あ、いや、これは、・・そのなんていうか・・
 キスシーンはあるけど無いって言うか・・その・・」

うろたえすぎて自分でも何を言っているか分からない。
とにかく今の美貴は誰が見ても分かるくらい顔が真っ赤になっていた。


「・・ねえ、お姉ちゃんこれ、生徒とするって書いてあるけど」

そんな美貴にお構いなく亜弥は台本を目で追っていく。
台本に書かれている内容は大雑把に言えばこうだった。

美貴に憧れる生徒が美貴を呼び出し告白する。
美貴はそれを断るが生徒は諦めきれない。
どうしていいか分からず困惑している美貴に生徒がキスをしてくれたら諦めると言いい、
美貴はその生徒にキスをする、というものだった。



67 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:11


ベタな話ではあるが亜弥はその台本を読めば読むほど、ムカついてきた。
何でそんなにムカつくのかは分からないが、とりあえず、大好きな姉がキス(しかも、人前で)するのが嫌だということにしておいた。


さてその本人はというと、・・・・まだ分からない言葉であたふたとしていた。

亜弥はムカついていたがその美貴の行動が可笑しくて心の中で笑う。
いつもは頼れる姉がこんなに動揺しているのを見るのが初めてだった亜弥はちょっとした悪ふざけを思いついた。


「ねえ、お姉ちゃん・・・」
「ふえ?な、なに?」
「あたしでキスシーンの練習する?」
「は?」

上目遣いで聞いてくるあたしにお姉ちゃんは今まで見たこと無いくらいに目を見開いて
驚いた。

「ねっ、練習する?」
「な、な、何言ってんの、亜弥ちゃん!?」
「嫌?」
「い、イヤとかじゃなくて・・・」

顔を真っ赤にしてうろたえるお姉ちゃんにあたしは笑いを堪えるのに限界。
これ以上、からかうのはカワイソウと思ったあたしは特上の笑顔でお姉ちゃんに言った。



68 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:13


「にゃはは、冗談ですぅー」
「は?・・・冗談?」
「ウ・ソ。本気にした?にゃはは」
「亜弥ちゃーん?」
「だってーお姉ちゃんがオロオロしてる姿なんて見たこと無かったんだもーん」
「だからって、・・・ハアー・・・」

お姉ちゃんは冗談っていうのが分かったせいか妙にホッとした顔で溜息をついた。

「お姉ちゃん?」

溜息をついたあとちょっと考え込むように顔を天井に向けて目をつぶるお姉ちゃんを見て、
ちょっと、イタズラが過ぎたかなと思ったあたしはお姉ちゃんの顔を覗き込んだ。

「おねえ・・きゃっ!?」
「大人をからかうんじゃありませーん」

顔を覗き込もうとしたらお姉ちゃんの手があたしの頬を掴んだ。

「おねえひゃん、いひゃいー」
「お姉ちゃんをからかった罰」
「大人気ないー」
「ほー、どの口が言うのかなー?」
「やー!いたーい!ごめんなさーい」
「分かればよろしい」
「・・・お姉ちゃん、急にするなんて卑怯だよー」

手を離したお姉ちゃんにあたしは頬を擦りながら抗議。


69 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:14


「大人をからかう亜弥ちゃんが悪い」
「・・・・まだ成人してないくせに」
「何か言った?」
「・・・言ってませーん」

抗議するあたしにお姉ちゃんが軽い睨みをきかす。
あたしはその目に渋々降参の旗印を上げる。


「ほら亜弥ちゃん、もういいでしょ。台本返しな」

お姉ちゃんがあたしから台本を取り上げようとした。

「ヤダ。まだ読む」

でもあたしはさっきのシーンの続きが気になって台本を後ろに隠した。

「こら、隠さないで返しなさい」
「いーやーだー」
「あ、こら!待て」
「こっちまでおいでー」

あたしは台本を持ってお姉ちゃんから逃げ出す。
それを見たお姉ちゃんは慌てて追いかける。



70 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:15


「こーら!逃げないで台本を渡しなさい」
「嫌ですぅ。返してほしかったら捕まえてごらん」
「言ったなー。待て!」
「にゃはは」

あたしの挑発に乗ったお姉ちゃんはあたしを捕まえようとして追いかける。
あたしも捕まらないようにお姉ちゃんの手から寸でのところで避けて逃げる。

それがちょっとした鬼ごっこのようであたしは楽しくなった。
だって、久しぶりにお姉ちゃんとジャレついてんだもん。

「はー、はー、はー、・・・亜弥ちゃん、逃げ足速すぎ」
「降参?降参?」

お姉ちゃんからは一歩離れてあたしは得意気に笑う。
その顔にお姉ちゃんは苦笑いしている。

「ぜぇ、はぁ・・・誰が・・・あっ・・」
「ん?」
「スキあり!」
「え?きゃー!」

なんてこと。あたしのバカ!こんな古典的なものに引っかかるなんて。

あたしは横を向いたお姉ちゃんにつられて一緒に同じ方向を見た。
お姉ちゃんはその隙をついてあたしに飛びついてきた。



71 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:16


「捕まえた」
「ズルイ!」
「なんとでも。ほら返しなさい」
「やだー」
「あ、こら暴れるな!あばれたら・・・」
「うー!・・・あっ、きゃ!?」
「危ない!・・・っと」

お姉ちゃんから逃れようとジタバタもがいていたあしはバランスを崩して
倒れそうになった。

「イッターい・・・」
「痛つつ・・・」

そして案の定、倒れそうになったあたしはお姉ちゃんを巻き込んでソファに倒れた。



72 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:17


「いってー・・・亜弥ちゃん、大丈夫?」
「・・・・」
「亜弥ちゃん?」
「あ、う、うん」

ソファへと倒れたあたしとお姉ちゃん。
お姉ちゃんはすぐさまあたしに声をかけるがあたしは応えることが出来ないでいた。



応える事が出来なかったのはあたしとお姉ちゃんの体勢の所為。


「・・・亜弥ちゃん?」
「・・・」

お姉ちゃんがあたしの上へと覆いかぶさり、
その状態はまるで組み敷かれているような体勢で・・・
上から見下ろすお姉ちゃんをあたしは何も言えず見上げていた。
そんなあたしの態度にお姉ちゃんも何も言わずあたしを見下ろす。



「「・・・・・・」」


お互い何も言わずに見つめあう。
最初に言葉を発したのは美貴の方からだった。



73 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:19


「・・・キスしたら、諦めるんだね?」
「え?」
「・・・一度・・・だけだよ」
「おねえ・・ちゃん・・なにいって・・」

お姉ちゃんの突然の言葉にあたしは困惑するが、
そのセリフにあたしは何か引っかかるものを感じた。

『 お姉ちゃんのこのセリフって・・・』

あたしの頭に先ほど読んでいた台本がよぎった。
そう、お姉ちゃんのこの言葉は台本の言葉(セリフ)。

僅かに目を潤ませ、あたしを見下ろすお姉ちゃんにあたしは目を逸らすことも、
冗談でかわすことも出来ない。

「・・・じゃあ、するよ?」

そんなあたしにお姉ちゃんは顔を近づけていく。

『 え!?ちょ、ちょっと待って・・・ 』

どんどん近づいてくる顔にあたしはパニくる。
あと数センチ、唇が触れそうになってあたしは目をギュッと瞑った。



74 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:20


『 キスされる 』

そう思ったあたしは目をギュッと瞑った。


「・・・・くっ・・・ぷっ・・・・」
「・・・・・?」

目を瞑っていたあたしの上から聞こえてきたのは笑いを堪えた笑い声。
その声にあたしはそっと目をあける。


「っくく・・・亜弥ちゃん、マジに取んないでよ・・・冗談なのに」
「・・・冗談?」
「あはは、やっぱ妹相手じゃあ、練習にはなんないね」
「・・・練習・・」

目を開けたあたしにお姉ちゃんは意地悪そうな顔で笑っていた。

「・・・冗談だったの?」
「・・・そうだよ」

そう言って笑うお姉ちゃんに、あたしはさっきのは揄われていたものだと知って、
顔が真っ赤になるのを感じた。

「もう!お姉ちゃんのバカ!すごいビックリしたんだからね!」
「あはは、ごめん、ごめん。少し悪ふざけが過ぎたよ」

そう言ってお姉ちゃんは体を起こした。



75 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:22


「よっと・・・亜弥ちゃん、痛いところはない?」
「・・・うん、大丈夫」
「だから暴れると危ないって言ったのに」
「そんなこと言ったって・・・」
「ほら、もう悪ふざけもお終い。もう寝なさい」
「・・・うん、おやすみなさい」

お姉ちゃんから離れて自分の部屋へと向かう。
あたしは恥ずかしくてお姉ちゃんの顔を見ずに自分の部屋へと戻っていった。




トタトタと階段を上る音とドアが閉まる音が響く。


「・・・ハア・・・そろそろ限界かな?・・・・」

亜弥ちゃんが部屋に入ったのを確認してから呟く。
そのひとり言は誰に聞かれることもなく部屋の中へと消えていった。



76 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/10(日) 03:24


更新終了

短いけど、更新しました。



62>>名無飼育さま

ありがとうございます。
焦らされているところで短い更新で申し訳ないですが
今しばらく何回かの更新にお付き合いくださいませ。


63>>名無し読者さま

泣けます?w
自分的には最後の方で泣きが入る予定なんですが、こんな駄文でも
感動してくださるのはありがたいです。



次の更新はもう少し多めにしたいと思います。

・・・それでは今回はこれで失礼します。



77 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/10(日) 05:50
ドキドキした〜。
藤本さんの最後の言葉が気になります。
引き続き更新お待ちしております!
78 名前: k 投稿日:2004/10/15(金) 16:11

更新開始

79 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:13


あたしがお姉ちゃんに料理を作ってから一週間がたった。
相変わらずお姉ちゃんは仕事が忙しくて一緒に過す時間は無い。

「来週のお墓参り、お姉ちゃん行けるかな・・・・」

学校への帰り道、一人呟く。
最近は一人で帰るのにも慣れてきた。


あの日のあんなことがあってからのあたしは変だった。
理由は分からないけど、お姉ちゃんの顔を見るとあの時の真剣にあたしを見る顔が浮かんできて顔が赤くなって、まともにお姉ちゃんの顔を見れなくなってしまった。

「はあ・・・」

最近はこんな溜息しか出てこない。
ほんと、あたしどうしちゃったのかなぁ。



80 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:14


「はあ・・・・・・ん?」

何度目かになる溜息をつきながら家へと帰る途中、あたしは何かに気づく。

―  ジィーーーーー  ―

「・・・・」

誰かに見られているような気配。
まただ。
最近、学校に帰る途中でよく人の視線の気配らしきものを感じるようになった。
らしきものというのは、振り返ってもそこには誰もいないから。
視線を感じたほうに振り返るけど、誰もいない。
最初は気のせいかな?と思っていたんだけどこうも続くとそれは気のせいではなくなった。
確実に誰かに見られている。



―  ジィーーーーー ―

『 うーー、やっぱり誰かに見られているよう 』

確かに感じる視線にあたしは怖さを感じつつ、それを確かめる勇気がないので
いつもより倍以上の速さで家へと帰っていった。



81 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:14


「はぁ・・・はぁ・・・怖かった・・・」

自分の家が見えるとすぐさま駆け込んだあたし。
今日のは特に怖かった。

「な、なんで、今日はずっと尾いてくるのさ・・・」

いつもはすぐに消える気配が今日に限って家まで尾いてきて、
それに恐怖を感じたあたし。


「・・はあ・・・走ったから喉渇いたな・・・」

最後は全速力で家へと走ってきたので喉がすごく渇いたあたしは台所へと足を運んだ。


「・・ん・・・はあ・・おいしい・・・」

走って熱くなっている体に冷たいお水が喉を閏おす。
もう一度飲もうと、お水を注ごうとしたあたしの後ろから急に声がした。



82 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:15


「・・お帰り・・亜弥ちゃん」
「ひゃあ!?」

誰もいないと思っていた家から急に声が聞こえあたしは思わず大声を出してしまった。

「亜弥ちゃん、驚きすぎだよ」
「お、お姉ちゃん!?」

後ろを振り返るとソファにクッションを抱きながらお姉ちゃんが座っていた。

「え、帰っていたの!?」
「・・・うん、今日は珍しく早く上がったから。
 久しぶりに亜弥ちゃんを迎えに行こうかなと思っていたけど、時間が早いからちょっと昼寝しとこうと思ってさ。でも、ミキ寝過ごしたみたいだね」
「あ・・・ごめんね。起こしちゃって」
「・・ん、いや、そろそろ起きなきゃいけなかったし・・・」

そう言いながら、寝癖を直しているお姉ちゃんはまだ少し眠そうな顔をしていた。



83 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:16


「「・・・・・」」

二人の間に沈黙が流れる。
この沈黙もあの日から度々、続いているものだった。

「あ、あのお姉・・・」
「亜弥ちゃん」

沈黙に耐え切れなくて口を開こうとしたらお姉ちゃんに遮られた。

「な、何?」
「・・・・」

眠け顔から真面目な顔になったお姉ちゃんにあたしは何か言い知れぬ不安を感じた。

「お姉ちゃん?」
「・・亜弥ちゃん、来週から叔父さんのところから学校に通いなさい」
「え?」
「ここよりは叔父さんのところが学校にも近いし、家に帰っても叔父さんたちがいるから
 心配ないし、それに・・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」

淡々と喋るお姉ちゃんをあたしは慌てて止める。



84 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:17


「ちょっと待って!急になに言い出すの!?」
「・・・急じゃないよ。前から考えていたことだよ・・・」
「前からって!・・・・」
「とにかく、亜弥ちゃんは来週から叔父さんの家から通いなさい。
 荷物とかはミキがちょっとずつ運んでおくから」
「!・・そんな勝手に決めないでよ。あたしは嫌だよ!」
「・・もう叔父さんには話をしているし、了承ももらったから」
「だから、勝手に!・・・」

何の感情も見せないような顔で喋るお姉ちゃんにあたしはますます、混乱してきた。

『 なんで?どうしてお姉ちゃんはこんな事を言ってるの?
  あたし、お姉ちゃんの気に触るようなことしたの?  』


今の事態に混乱しているあたしの頭には色々なことが浮かびすぎて何も考えることが出来なかった。



85 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:18


「・・とにかく、亜弥ちゃんは来週から叔父さんのところ・・・」
「お姉ちゃんは、・・・あたしが嫌いになったの?」
「・・・・・」
「あたしの面倒を見るのが嫌になったから、だからあたしを叔父さんのところに
 預けるの?」
「・・・亜弥ちゃん」

あたしは頬に伝う涙を拭うこともせずにお姉ちゃんを見つめて言う。

「答えてよ・・・あたしが嫌いになったの?」
「・・・・」
「・・・こたえてよ」
「・・・・」
「答えるのも嫌なくらい・・・あたしのことが嫌いなんだ・・」
「・・・亜弥ちゃ・・」
「分かった。来週からじゃなくて今から叔父さんのところに行く」
「亜弥ちゃん?」
「お姉ちゃんはあたしのこと嫌いなんでしょ!?なら、今から叔父さんのところに行く!」
「亜弥ちゃん!」



86 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:19


あたしのことが嫌いなのかという問いに何も言わないお姉ちゃんの顔が答えのような気がして、あたしはたまらず玄関へと走り出した。

とにかく今はお姉ちゃんの顔だけは見たくなかった。
あたしを呼ぶお姉ちゃんの声を振り切って玄関のドアを開ける。





― パシャ ―

突然の眩しさに目が眩む。

『 !! え!?なに今の?』

眩しさに目を閉じていた瞼を開ける。
そこにはカメラを持った男の人と、女の人がいた。

「すいませーん、ここの家の人ですよねぇ?」
「な、何ですか?あなたたちは!」

突然、女の人が駆け寄ったと思ったらあたしの前に機械らしきものを突きつけてきた。



87 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:20


『 えっ?これって、テープレコーダー? 』

突然、突きつけられたものにあたしは目を丸くする。

「ちょっといくつか聞きたいことがあるんですけど・・・」
「何ですか?突・・」
「藤本美貴さんとはどういう関係ですか?」
「・・え?」
「だから、藤本さんとの関係ですよ。・・・一緒に住んでますよね?」
「な、何言って・・・」

あたしの驚きとはよそに女の人は平然と聞いてくる。

「呆けてもダメですよ。あなたと藤本さんがこの家から一緒に出てくるところを
 何度も見かけているんですから」
「え?」
「あなた、松浦さんっていうんですよね?どうして名字が違う藤本さんと一緒に住んでるんですか?親戚にしては似てませんよねぇ?藤本さんとはどういう関係ですか?」

次々に質問をくりだすその女の人にあたしはなにも言えず立ち尽くす。

『 この人たちだったんだ。最近あたしの周りにいたのは・・・ 』

誰かに見られている気配は美貴のことを調べていた記者だったと知った亜弥は愕然とする。



88 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:21


「どういう関係なんですか?」
「どういうって・・・」

質問に答えきれない亜弥に女の人がどんどん距離を詰めて聞いてくる。

『 どうしよう。お姉ちゃんと姉妹っていうのは隠さなきゃいけないのに・・・ 』

どんどん迫る記者に亜弥が困惑していると突然後ろから抱きすくめられた。


「何、してるんですか?」

顔を見なくても分かる、聞き覚えのある声とその感触に安堵を覚える亜弥。

「・・・何、してるんですか・・・」

突然抱きしめたのが美貴だと分かった亜弥は安心したが、今の体勢に気づいて焦りだした。

『 お、お姉ちゃん、この体勢はまずいよ 』

亜弥の腰に手を回してまるで自分のものだと言わんばかりに亜弥の体に密着している美貴。
その体勢に気づいて亜弥はすぐに離れようとしたが、美貴がきつく抱きしめ離そうとしな
い。



89 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:21


「何、してるんですか?」

亜弥の焦りとは逆に美貴の声は静かで、怒りを含んだ低い声を発していた。

「・・・あの、その・・」

美貴の突然の出現とその怒りを顕にした態度と声に、先ほどまで勢いよく質問していた
記者も美貴に質問が出来ないほど、美貴の態度に萎縮していた。


「あたしの妹に何をしてるのかと聞いているんです」
「い、妹?」
「そうです。この子はあたしの妹です。
 事情があり、母の旧姓を名乗ってますがこの子はあたしの妹で一緒に住んでるんです」
「な、何故、旧姓を名乗ってるんですか?」
「それは事務所に聞いてください」

怒気を含んだ声で記者の質問に答えたお姉ちゃんはそのままあたしを抱き寄せて家に入い
ろうとしたんだけど、記者の人はそれだけじゃ納得しなかったのか、さらに質問しようと
した。



90 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:22


「待ってください!ホントのところはどういう関係なんですか?」
「だから・・・・」
「旧姓を使うってコトはなにか言えないようなことがあるからなじゃないですか?」
「・・・どういうイミですか?」
「言えないってことは疚しいことがあるからでしょう?何も疚しいことが無ければ隠す必要はないんだし」
「なっ!?」

その質問にあたしはカチンときた。
まるでお姉ちゃんを悪者みたいな言い方をした記者にあたしは反論しようとして身を乗りだそうとした。

「別にそちらがどう思おうが勝手です」
「・・・認めるんですか?」
「それは事務所に聞いてください」

反論しようとしたあたしを制してお姉ちゃんが答えた。


91 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:23


「・・・もういいですよね」

記者の挑発めいた言葉にお姉ちゃんは冷静に応えて家の中へ入ろうとした。

「・・・それじゃあいいです。妹さんに聞きますので」
「・・・・」

ドアを閉めようとしたお姉ちゃんの手が止まる。

「藤本さんが答える気が無いのならそちらの妹さんに聞けば・・!」

お姉ちゃんから期待するような答えが聞けなかった記者が吐き出した言葉を途中で飲み込
む。それはお姉ちゃんが今まで見たことが無いような冷たい目で記者を見ていたから。

「・・・言っておきますが、あたしに関することで妹を巻き込むようなことがあれば
 あたしは何するか分かりませんよ?」
「・・・・」
「いいですか?」
「・・・・わ、分かりました」

お姉ちゃんの冷たい目と言葉に押され記者の人たちは足早にその場を立ち去った。



92 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:24


「「・・・・・」」

記者が帰っていったのを確認して家へと入る。
玄関先で二人して立ち尽くし、お互い言葉を発しない。


溜息ともいえるような言葉を発したのはお姉ちゃんだった。


「ふー、参ったなぁ・・・事務所に何て言おう」
「・・ごめんなさい・・・」
「なんで亜弥ちゃんが謝るの?」
「だって、あたしがいるとお姉ちゃん困ってばっか・・・」
「別に、亜弥ちゃんのせいじゃないよ」
「でも・・」
「これは、ミキと事務所の問題。だから亜弥ちゃんは関係ない」


『 関係ない 』

まるで突き放されたような言葉にあたしはショックを受ける。



93 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:25


『 関係ない 』

その言葉にあたしは顔を俯かせる。


「亜弥ちゃん?」
「そう・・だよね・・・関係ないよね・・・」
「亜弥ちゃ・・」
「別にあたしとお姉ちゃんは姉妹って言っても血は繋がっていないんだし・・」
「・・・・」
「あたしがいないほうが何かと都合がいいよね」
「亜弥ちゃん・・」
「お姉ちゃん、あたしやっぱり今から叔父さんの家に行くね」
「・・・・」
「また、さっきみたいなことがあるかもしれないし・・・」

あたしは顔を上げずに言う。だってそうしなきゃ絶対お姉ちゃんは困る。
こんな泣いた顔なんか見せたら優しいお姉ちゃんのことだもん。
絶対困った顔をするに違いない。



94 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:26


「うん、そうする。今から叔父さん家に行くね」
「・・・・」

顔を見せないようにあたしは玄関へと向かう。

「・・・今までありがとね。」
「・・・・」

顔を見ずにあたしはお姉ちゃんにお礼の言葉を言う。
何も言わないお姉ちゃんの視線を受けながらあたしはドアを開けようとした。

「・・・じゃあ・・・・!」

さよならの言葉とともに玄関のドアを開けようとしたあたしの体が後ろへと引っ張られて
いった。
あたしが後ろに倒れたのはお姉ちゃんがあたしの体を強く抱く締めたから。

「・・・・お姉ちゃん?」
「ごめん、亜弥ちゃん」
「・・・どうして・・・何にも言ってくれなかったの?」
「・・ごめん」
「謝って・・ばっか・・・じゃ・・分かんないよ・・」
「ごめん」


ようやく言葉を発したお姉ちゃんはただ謝り続けている。
あたしは、お姉ちゃんが引き止めたことに嬉しさを感じて涙を流す。



95 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:26


「ごめん、・・・ごめん・・・亜弥ちゃん・・・ごめん・・」
「・・・お姉ちゃん」

さっきからずっと謝るお姉ちゃんのほうに体を向けなおす。
俯きながら謝り続けるお姉ちゃんの顔を両手で包みこむ。


「お姉ちゃん、あたしを見て?」
「・・・・」
「もう一度聞くよ?・・・あたしのこと嫌いになった?」
「・・・」
「お姉ちゃん答えて」

あたしの少しだけキツイ口調にお姉ちゃんが顔をあげる。
その顔はとても苦しそうで・・・見ているあたしも辛くなるくらい・・・
お姉ちゃんの顔はまるで何かに耐えているようだった。



96 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:27


苦しそうにしているお姉ちゃんにあたしは目を逸らさずに見つめる。
今、ここで何も聞かずにお姉ちゃんと向き合わなければあたしは一生後悔する。
何故そう思ったかは分からない。
けど、今のあたしはとにかく何でもいいお姉ちゃんの気持ちが知りたかった。

「・・・あたしのこと嫌いになったの?」
「・・・・」

お姉ちゃんは何も言わずに静かに顔を横に振った。

「あたしのこと、嫌いじゃない?」
「・・・・」

お姉ちゃんは静かに顔を頷かせる。
嫌われてはいない。
その答えにあたしはホッとする。


『嫌われてはいない』

そのことに安心したお姉ちゃんに一番聞きたかったことを聞く。


「・・・じゃあ、なんで離れて暮らそうなんて言うの?」

あたしが一番聞きたかったこと。
嫌いでないなら離れて暮す必要は無いはず。
何故、お姉ちゃんがそんなことを理由も言わずに言い出したのか
あたしが一番知りたかったことをあたしはお姉ちゃんに聞いた。


97 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:28


「・・・どうして、離れて暮らさなきゃいけないの?」
「・・・それは・・」

お姉ちゃんの目を離さずに言葉を待つ。

「それは?・・・」
「・・・」
「それは・・・なに?・・」
「・・・・」
「・・・こたえてよ・・・」
「・・・・」

お姉ちゃんはその問いかけには答えずまた、貝のように口を閉ざした。
その態度に苛立ちを感じる。・・・もう、限界だった。

「・・・答えてよ!あたしのことを嫌ってないなら!」
「あやちゃ・・」
「嫌いじゃないなら何で離れて暮す必要があるの!なんで理由を言ってくれないのよ!」

お姉ちゃんの態度に苛立ちを感じたあたしはそれをぶちまける様にお姉ちゃんを責める言
葉へと変えていく。


「・・・お願いだから・・・こたえてよ・・・」

止まっていた涙がまた溢れ出す。
もうダメだ。
お姉ちゃんの気持ちが分からない。



98 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:30


「嫌いなら嫌いって言ってよ!あたしを傷つけない為に言わないでいるならそんな優しさいらない!
 あたしはお姉ちゃんのホントの気持ちが知りたいだけなのに!・・」
「・・・亜弥ちゃん」

あたしはお姉ちゃんの胸に顔を預けながら泣き叫ぶ

「お願いだから言ってよ!・・・あたしはどんな言葉でも受け止めるから!
 傷つかないから!」
「・・・」
「ねえ、あたしのこと嫌いになったの?」
「違う!」

力強く言うお姉ちゃんにあたしは顔を上げる。
その顔はとても苦しそうにあたしを見ている。

「・・・もう限界なんだ・・・」

お姉ちゃんは苦しそうに言葉を吐き出した。

「もう限界なんだよ・・・」
「限界って、なにが・・・」

吐き出した言葉をかみ締めるようにお姉ちゃんは顔を上に向け目を閉じた。
そして、ゆっくり目を開けるとあたしのほうへと顔を向けた。

「おねえちゃ・・・」
「ごめん、亜弥ちゃん・・」
「え・・・ん!?」



何に対して謝っているのか分からないあたしにお姉ちゃんがキスをしてきた。



99 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/15(金) 16:33

更新終了


・・・どう見てもコレって長いですよね?

長くないって自分で言いながら、いざ書いてみると長すぎ!
頭で妄想するのと書いてみるじゃ全然ちがいますなぁw




77>>名無飼育さま

すいません。やっとウチの美貴さんが動きます。
自分としてはあと2回くらいの更新でまとめたいと思うんですが
どうなるか分かりませんw
なのでどうか、長い目で見ていてくださいw



・・・今回はこれで失礼します。




100 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/15(金) 19:06
ああ〜ああ〜〜!!美貴様、素敵です。
続き気になりすぎて壊れそう(ぇ
出来るだけ早く続きをお願いします(泣
頑張ってください。
101 名前: k 投稿日:2004/10/18(月) 01:33


 更新開始


102 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:34


お姉ちゃんが何に対してあたしに謝っていたのか分からなかった。
分かったことといえば、キスされているということだけ。


「ん!・・・お姉・・ちゃん・・・んん・・」

突然キスされたあたしはびっくりして唇を離そうとするけど
お姉ちゃんはあたしの頭を強く抱きかかえ離してくれない。

「・・はっ・・んっ・・・」

強いけど優しく何度も唇を重ねられる。
離すどころかさらに深くなるキスにあたしのアタマは熱くて溶けそうな感覚に陥る。


ようやく唇を離すと、お姉ちゃんは消えいるような掠れた声であたしの耳元で呟いた。

「・・んかじゃない」
「・・・え?」
「嫌いなんかじゃない・・・好きすぎて・・・亜弥ちゃんのことがどうしようもないくらい好きすぎて・・自分でも抑えきれないくらい・・・亜弥ちゃんのことが・・・すきで・・・」
「え・・・」
「・・・もう、ミキは亜弥ちゃんのことを妹としては見れないんだよ・・・だから・・・
 一緒に住むわけには・・・これ以上亜弥ちゃんの側にいるわけには・・」

あたしを抱きしめながら、苦しいものを吐き出すようにお姉ちゃんは言う。
抱きしめられているあたしはお姉ちゃんの言葉を理解しきれずにいた。



103 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:36


え・・・あたしキスされて・・・

す・・き?・・・お姉ちゃんが?

誰を・・・?・・あたし?・・・


お姉ちゃんの言葉と行動が飲み込めない。
今の状況を理解できないほどあたしの頭はグチャグチャだった。


「限界だった。ミキのことを姉として慕ってくれている亜弥ちゃんに
 ミキはいつかその思いに潰されて亜弥ちゃんを傷つける。それを考えると怖くて・・・」
「・・・・」

まだ混乱しているあたしにお姉ちゃんは弱々しく話す。
こんな弱気なお姉ちゃんを見るのは初めてだった。

「・・・別々に暮すというのに亜弥ちゃんはきっと反対すると思った。
 でも、いつか亜弥ちゃんを傷つけるくらいなら・・・
 今、離れれば亜弥ちゃんはミキのいない生活にも慣れてくれる。
 ・・・勝手に決めたミキのことなんか嫌いになって・・」
「!!」
「・・・亜弥ちゃんがその時にどれだけ傷つくかなんて考えないヤツのことなんか嫌いになって、・・・ミキとさえ一緒に住まなければ亜弥ちゃんは傷つかないなんて勝手に考えているヤツの事なんて嫌いに・・・なっ・・・て・・・」
「・・・お姉ちゃん・・・」



104 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:37


「・・・だから・・・離れて暮らすことも亜弥ちゃんには相談なしで決めた」
「・・・・」

あたしの体を強く抱きしめる腕の力とは反対に吐き出される弱々しい言葉。


『 お姉ちゃんがあたしを好き 』

その言葉に戸惑いながらも、くすぐったいような気持ちが今、自分の中で生まれているのをあたしは確かに感じていた。



― お姉ちゃんの抱きしめる力は苦しいけど安心する ―


― お姉ちゃんの言葉は戸惑いを生んだけど嬉しさをあたしにくれる ―



自分の中で生まれてくる感情を一つ、一つあたしは確かめるように感じる。
確かめた感情(キモチ)はあたしの中で確実な答え(キモチ)を弾きだす。



105 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:38


「・・・ごめん、亜弥ちゃん」
「え・・・?」

お姉ちゃんは抱きしめていた腕の力を揺るめ、あたしの体を離す。


「・・・亜弥ちゃんには、ミキの気持ちを言う気なんて・・・無かった・・・
 でも、これで最後だから・・・」
「・・・さい・・・ご?」

そう言うお姉ちゃんの目はとても淋しそうに小さく笑っていて、あたしはその表情(カオ)
に不安な気持ちが沸き起こる。

「・・・・おねえちゃん?」
「亜弥ちゃん、やっぱりミキたちは離れて暮らそう。それがお互いのためにいいんだよ」
「な、なんで!?」
「・・・さっきも言ったようにミキは亜弥ちゃんをもう妹として見ることはできない。
 それに、ミキと一緒にいることで亜弥ちゃんがさっきのような人(記者)たちに何を言われるか分からないし・・・」
「あたしは別に何いわれたって!・・・」


― そんなの構わない!

そう言おうとしたあたしをお姉ちゃんが制す。


106 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:40


「・・・亜弥ちゃんがよくても、ミキは嫌だよ。
 ミキの為に亜弥ちゃんが嫌な思いするのは・・・
 だから離れて暮らした方がお互いに傷つかなくてすむんだよ」
 
寂しそうにあたしを見ながら言うお姉ちゃんにあたしは何も言えなくなる。
でも・・・


「・・・お姉ちゃん」
「なに?」
「・・・・」

あたしの顔を見るお姉ちゃんの顔は諦めにも似ていた。
その顔を見てあたしのなかで何かが切れた。


「・・・勝手に決めないでよ」
「・・・え?・・」


あたしの低い声にお姉ちゃんは戸惑いの声をあげた。



107 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:41


「・・・だから、勝手に決めないでって言ってんの!」
「あ・・亜弥ちゃん?・・・」
「なんで勝手にあたしのことを決めるわけ!」
「だからそれは、ミキは亜弥ちゃんのこと・・・それにミキの仕事で亜弥ちゃんに迷惑が・・」
「だからそれが勝手だって言ってんの!」


― そうよ・・・そうよ!
  お姉ちゃんは勝手よ!なんでも自分で決めて、あたしには一言も相談なしで!
  そのくせ、自分の気持ちを言うだけ言ったらあたしの気持ちなんか聞きもしないで
  勝手に諦めて!・・・


お姉ちゃんの言葉と態度に切れたあたしの感情は昂ぶり、頭で考えるよりも先に口が動いた。

「なんで、勝手に決めつけるわけ?あたしがお姉ちゃんの気持ちに迷惑するなんて
 ホントに思ってんの?っていうか、言う前から諦めないでくれる?
 そんな風に何も言わないで諦められて勝手に別居話持ち出されても困るんですけど・・」
「え・・・は、はい。すいません・・・え?あ、あの亜弥ちゃん?・・・」

切れたあたしにお姉ちゃんは戸惑い顔。
そりゃ、そうよね。だってあたしがお姉ちゃんに対して怒るなんて今までに一度も無いん
だもん。でも今日は、っていうか、今だけはあたしはお姉ちゃんの態度に怒りを感じる。



108 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:43


「それに何?離れて暮らした方がお互い傷つかないですむって?何その勝手な言い分!
 人間なんだよ?傷つかない人なんていないわけ無いじゃない!
 好きな人同士だって、ケンカすれば傷つけるようなこと言うことだってあるし、
 それでダメになる人もいる。・・・でも、それでも自分のこと分かってほしいから
 相手に向き合って気持ちをぶつけるんでしょ!お姉ちゃんのは単なる言い訳じゃない!」
「・・・イイワケ・・・」
「そうよ!自分が傷つくのが怖いからあたしを理由にして諦めてるだけじゃない!
 これのどこがお互いの為なのよ!単なる自分勝手じゃない!」
「あやちゃ・・」
「それに言ったじゃない!」
「え・・・?」
「あたしの側にずっといるって!約束したじゃない!お父さんたちが亡くなった時・・・
 約束したじゃない・・・」

感情が昂ぶったせいだろうか、あたしの目から大量の涙が溢れ出す。
でもあたしは溢れ出した涙も、感情(コトバ)も、止めることはせずにはきだした。



109 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:44


「・・・約束・・したじゃない・・・」
「・・約束・・・」

吐き出される声が段々小さくなり亜弥は美貴の胸へと顔を埋めた。
美貴はそんな亜弥の背中へとゆっくり手を回しながら亜弥と約束をしたあのときのことを
思い出す。



◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇


= 美貴と亜弥の両親が亡くなった夜 =



あの時・・・美貴と亜弥ちゃんの両親が亡くなったあの時、ミキは学校の友達と二泊三日
の旅行に出かけていた。そして、旅行中の突然の知らせにミキはすぐに旅行を中止して家
へと戻って行った。


『亜弥ちゃん!父さんたちが事故にあったって!?』
『・・・おねえちゃん・・』


急いで家へと戻ったミキが見たのは顔に白い布を被せられ横になっている二人と、
その側で放心状態になっている亜弥ちゃんだった。

『・・おねえちゃん・・おかあさんと・・・おとうさんが・・・』
『・・・父さん・・・母さん・・・』


両親の死は交通事故だった。
居眠り運転をする車が父さんたちを乗せていた車に突っ込んできた。
二人とも即死だったらしい。葬式のときに親戚の叔父さんが言っていた。
まるでいつも夕方から見ていたニュースのような出来事。
それが自分たちに襲い掛かるなんて。



110 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:45


亜弥ちゃんは葬式の間、ずっと言葉を喋らなかった。
まるで思考を閉ざすように・・・
両親の死を受け入れることが出来ず、かといって、受け入れるにはあまりにも突然すぎて彼女には重すぎたんだろう。

『・・・亜弥ちゃん・・』
『・・・・』

ミキの呼びかけにも応えない。
彼女の目はミキの顔を映すことはことなくただ、空を捉えていた。


『あやちゃ・・』
『・・二人を誰が引き取ろう・・・』

もう一度、亜弥ちゃんの名前を呼ぼうとしたミキの耳に親戚たちの話声が聞こえた。
まだ成人していないミキと亜弥ちゃん。誰かがミキと亜弥ちゃんの後見人にならなければなかった。

『・・二人一緒は・・別々に・・・』
『・・・・』

その二人を引き取る話を隣の部屋でしていた親戚の中にミキは足を向けていた。



111 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:47


『・・やっぱり・・ん?美貴ちゃん、どうかしたかい?』
『・・あたしが・・みます・・』
『え?』
『・・あたしが亜弥ちゃんの面倒をみます・・・』
『何を言って・・』
『あたしが亜弥の面倒をみます。亜弥が成人するまであたしが親代わりになります』 
『成人もしていないのに二人っきりで暮らすのは無理だよ。せめて亜弥ちゃんだけでも親戚に預けなさい』
『嫌です。亜弥はあたしにとっては唯一の家族なんです。
 これ以上あたしから家族を奪わないでください。お願いします』


気づいたらミキは親戚の前で土下座をして頼み込んでいた。
あんな状態の亜弥ちゃんを放っておくなんてミキには出来なかった。



112 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:48


『亜弥ちゃん・・・』
『・・・・』


親戚たちも帰り、家にはミキと亜弥ちゃん、それと灰になって骨壷へと納められた両親だけが残った。

『亜弥ちゃん』
『・・・・』

二人の遺影の前に座り、じっと写真を見つめている亜弥ちゃん。
その亜弥ちゃんをミキは後ろからそっと、抱きしめた。


『・・・亜弥ちゃん』
『・・・・』
『・・明日からはミキと二人だけでこの家で暮らそう?父さんと、母さんとの思い出が詰まったこの家で・・・』
『・・・・』


何も言わない亜弥ちゃんを抱きしめながらミキは思った。

『そういえば、ミキは亜弥ちゃんが泣いているところを見ていない』

駆けつけた時には亜弥ちゃんは放心状態で、泣いているところをミキは見ていない。
その後も、葬式の時でさえ亜弥ちゃんは涙を見せてはいなかった。



113 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:49


『・・・亜弥ちゃん』
『・・・』

亜弥ちゃんは今、両親の死を受け入れようと必死なんだろう。
理不尽に訪れた死に対して怒ることも、悲しむこともせずに、受け入れるのに必死すぎて涙を流すことさえ出来なくて・・・

『亜弥ちゃん、もう誰もいないよ?』
『・・・・』
『もう、ミキと亜弥ちゃんと、父さんたちだけだから・・・泣いても大丈夫だから・・・』
『・・・・』
『偉かったね、ミキが来るまで父さんたちの側にずっといて泣かずによく頑張ったね』
『・・・』
『でも亜弥ちゃん・・・泣かなきゃ父さんたち、心配して天国に行けないよ?』
『・・・え』

ミキの言葉に亜弥ちゃんが小さく返す。
その声は少しだけ掠れていた。



114 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:51


ミキの言葉に顔を向ける亜弥ちゃん。ミキは優しく微笑み、亜弥ちゃんの顔を両手で包み
込んだ。

『亜弥ちゃん泣くっていうのはね、何かを受け入れるときに必要なものなんだよ』
『・・・・』
『涙はね、辛い時や悲しいとき、嬉しい時に流れてきたりするでしょ?
 そういう時、ヒトっていうのは心の中で状況(感情)を受け止めているときなんだよ。』
『・・うけとめる・・・』
『うん、亜弥ちゃんは今、父さんたちを亡くして悲しく辛い状況にいるよね?』
『・・・うん』
『でも、亜弥ちゃんの心は突然すぎるこの状況にまだ受け止めきれずにいる。だから、父さんたちが亡くなっても泣けずにいる。そんな亜弥ちゃんを父さんたちはどう思うだろう?』
『・・・・』
『きっと悲しむと思うよ。亜弥ちゃんが・・・・亜弥が父さんたちの死を受け入れることが出来ずにいる。父さんたちの死を受け入れられない亜弥を置いていくのは心配だ・・・て、心配しすぎて今頃、天国の門の前で立ち往生してるかも?』
『・・・そんなのヤダ・・・』
『うん、だから亜弥ちゃん・・・・泣こう?父さんたちのためにも、心配しなくてもいいよって
 自分には頼りないけどお姉ちゃんがいるから一人じゃないから心配しないで天国で幸せになってって
 ・・・そういう気持ちを込めて泣いてあげよう?』
『・・・泣いてあげる・・・』

ミキの言葉を聞いた亜弥ちゃんの顔が涙で染まる。
目からは大粒の涙を零す亜弥ちゃん。
そんな亜弥ちゃんをミキはそっと、胸の中に抱き寄せる。



115 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:53


『・・っく・・おとう・・さん・・・おか・・あ・・さん・・』

ミキの胸の中で肩を震わせ泣いている亜弥ちゃん。
でも、まだ我慢してるのだろう。
亜弥ちゃんは声を殺して泣いている。


『・・・亜弥ちゃん、声だして泣いてごらん。父さんたちにも聞こえるように。
 声だせばすごく楽になるから』

まだ声を殺して泣いている亜弥ちゃんの髪を撫でてあげる。
すると、それが合図だったかのように亜弥ちゃんは声を出して大声で泣いた。


『うわぁぁぁぁぁぁん・・・・』
『・・・泣いていいよ。ミキが側にいるから・・・ずっと亜弥ちゃんの側にいるから
 ミキは亜弥ちゃんの側から離れたりしないから・・・約束するから・・・』


ミキは亜弥ちゃんが泣き止むまでずっと彼女を抱きしめていた。



116 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:54

117 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:55


「約束したじゃない・・・ずっと側にいるって」
「・・・・」

ミキの胸の中で泣きじゃくる亜弥ちゃん。


「亜弥ちゃん・・・」
「・・・お姉ちゃんのウソつき・・・」
「・・・・ミキで・・・・いいの?」
「・・お姉ちゃんじゃなきゃヤダ・・・・」
「でも、ミキがいたら亜弥ちゃんが・・・」
「あたしはお姉ちゃんがいればそれでいい・・・お姉ちゃんが側にいてくれたら
 周りから何言われたって構わない・・・」
「・・・・」

ミキの背中に腕を回し強く抱きつく亜弥ちゃん。
亜弥ちゃんの声が、涙がミキの後悔を大きくさせる。


なんでミキは亜弥ちゃんから離れようと思ったんだろう。
ミキの腕の中で泣く亜弥ちゃんを何があっても守るってあの日、父さんや母さんに・・・自分の心に誓ったはずなのに・・・



118 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:56


「・・お姉ちゃんがいたから、あたしはお父さんたちの死も受け入れることが出来た。
 お姉ちゃんが側にいてくれたから淋しい思いもせずにすんだ・・・なのに、またあたしを一人にするの?・・・お父さんたちが亡くなったときみたいに・・・」
「・・・亜弥ちゃん・・・」
「・・くっ・・はな・・れないで・・・あたしの側に・・いてよ・・」
「ごめん・・亜弥ちゃん、ごめん・・・」
「謝らないでいいから・・・側にいてよ・・・」

亜弥ちゃんのミキに抱きつく腕の力がどれだけ亜弥ちゃんを悲しませ傷つけたのかわかる。
ミキは自分の心に強く問いかけた。


おい、こらミキ!
亜弥ちゃんをここまで泣かしておいて逃げるのか?
父さんと母さんとの約束も守らず自分勝手な気持ちを亜弥ちゃんに押し付けるだけ押し付けて、傷つけるだけ傷つけて楽なほうに逃げるのか?
こんなにも、ミキを必要としている亜弥ちゃんを放っといて逃げるのか?



自分の心に問いかけて答えを探す。・・いや、答えなんて最初から決まってる。



119 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:58


「亜弥ちゃん・・・」
「・・・・」
「亜弥ちゃん約束する、ミキはもう自分の気持ちから逃げない。
 ずっと、亜弥ちゃんの側にいるよ」
「・・・ホント?」
「うん、ずっと側にいる。っていうか亜弥ちゃんの側にいさせて?」

ミキの言葉に顔をあげる亜弥ちゃん。
その顔は涙でぬれていた。

「・・・亜弥ちゃん・・」
「・・ん・・おねえちゃん」

涙で濡れた顔に優しくキスをしていく。
亜弥ちゃんを傷つけた謝罪の意とこれからは隠さない愛情の意を込めて。

「今度こそ、約束する。ミキは亜弥ちゃんの側を離れたりしない」
「・・ん・・・今度、ウソついたらハリセンボン飲ますかんね」

カワイイことを言いながらミキのキスを受け止める亜弥ちゃん。
目、オデコ、頬、顔のあちこちにキスをしながらミキは最後に亜弥ちゃんの唇へとキスを落とした。


「・・・亜弥ちゃんが好きだよ」
「・・・ん・・あたしも好き」



この日、ミキと亜弥ちゃんは姉妹から恋人同士となった。



120 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 01:59



「・・・亜弥ちゃん、お花かして」
「はい」
「ありがとう、あっ、そこのお水も取ってもらえる?」
「あっ、それはあたしがする」
「そう?んじゃお願い」
「うん」


『 松浦家ノ墓 』

そう書かれたお墓の前にあたしとお姉ちゃんは立っている。
今日はお父さんたちのお墓参りの日。
お姉ちゃんは仕事が忙しい中、わざわざ1日お休みをもらった。
あたしも今日は平日で学校だったけど休んだ。


花も添えてお水もかけ、あたしとお姉ちゃんは静かに手を合わした。


「「・・・・」」

手を合わしながら横目でチラっとお姉ちゃんを見る。
真剣に手を合わしているお姉ちゃん。何を思っているんだろう。



121 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:00


「「・・・・」」

手を合わすのも終わったけどお姉ちゃんはまだ、お父さんたちのお墓に黙ったまま
顔を向けていた。


「・・・お姉ちゃん、お父さんたちと何話したの?」
「んー?・・・ミキと亜弥ちゃんのこと・・・かな」
「あたしとお姉ちゃんのこと?」
「うん、父さんたちに断りを入れていた」
「断りって?・・・」

お姉ちゃんの言っていることがいまいちわからなくてあたしはオウム返しに聞いていた。
すると、お姉ちゃんがあたしのほうに顔を向けてニコリと笑う。

『うっ・・・カワイイ・・・』

ニコリと笑うお姉ちゃんの顔に思わず見とれる。



122 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:01


あの日、・・・って言ってもまだ一週間も経ってないけど、お姉ちゃんのあたしを見る顔がすごく変わった。
あたしのことをすごく愛おしそうにみる。
その度にあたしの顔は真っ赤になるんだけど・・・


「そ、それで、なんの断りをいれたの?」

やっぱりまだそんな風に見てくるお姉ちゃんの目に慣れないあたしはどうしても照れてしまい、お姉ちゃんの顔をまともには見れずに聞いてみる。

「亜ー弥ちゃん、ちゃんとこっち見てくれないとお姉ちゃん、淋しいんだけどなー」

そんなお姉ちゃんは照れているあたしに気づいて意地悪なことを言う。

「もう、そうやってまたからかう!」
「あはは、ごめん。だって亜弥ちゃんが可愛くて」
「そ、それはもう何回も聞いたから!だからお父さんたちになんて断りいれたのか教えてよ」

顔を赤くしながらお姉ちゃんにもう一度聞いてみる。


「・・・うん、父さんたちに亜弥ちゃんと付き合うことを許してもらっていた」
「え?・・・」

あたしは驚いて思わずお姉ちゃんの方へと顔を向ける。
お姉ちゃんはそんなあたしを見ながら優しい笑みを浮かべた。



123 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:02


「許してもらう為に父さんと母さんにミキの気持ちを全部話していた」
「お姉ちゃんの気持ち?」
「うん、ミキが亜弥ちゃんのこといつから好きだったか、それで悩んでいたとか、とにか  
 くミキの亜弥ちゃんを想う気持ちを全部、父さんたちに隠さず話した」
「・・・お姉ちゃんって、いつからあたしのこと・・・好きだったの?」

あたしがお姉ちゃんへの気持ちに気づいたのはあの時だったけど、お姉ちゃんはそうじゃない。その質問をするのはお姉ちゃんに失礼かなって思ったけど、あたしは知りたくて聞いてみた。

「うーん、まあ今だからぶっちゃけ言うけど、亜弥ちゃんのことを好きになったのは
 亜弥ちゃんが生まれたとき・・かな」
「え!?そんな前からなの?」

お姉ちゃんの質問の答えにあたしはさらに驚く。

「うん、亜弥ちゃんが生まれてきた時、父さんに連れられて新生児室に行ったんだ。
 その時、小さいけど元気に泣く亜弥ちゃんをミキは見つけた。あ。その時はその赤ちゃんが亜弥ちゃんだって知らなかったんだ」
「そうなの?」
「うん、ただ元気に泣いているその子に何故かは分からないけど目が離せなくてさ。
 父さんの手を離してその子のところに行って、泣かないでって頭を撫でたんだ。
 そしたら父さんが『 その子が美貴の妹だよ 』ってミキに言ってね。
 ミキが亜弥ちゃんをもう一度見たら亜弥ちゃんさっきまで泣いていたのに泣き止んでミキのことじっと見てたんだ・・はは、生まれたばかりの赤ちゃんなんだから目なんて見えるはず無いのにね・・でも、ミキにはそう見えたんだ」

その時のことを思い出しているのかお姉ちゃんは懐かしそうに話している。



124 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:04


「・・・そのときのミキは妹っていう意味をよくは分かっていなかったけど、ミキより小さい亜弥ちゃんがすごく可愛くて、守りたいっていう気持ちがあったのを覚えている」
「・・・お姉ちゃん」
「その時から、亜弥ちゃんはミキの中で一番、大切な存在になった。って言っても、これが恋だと自覚するのはまだ先なんだけどね。
 でも、うん。亜弥ちゃんをいつから好きっていえば多分この時からだろうね」

顔を少し赤らめながら話すお姉ちゃんにあたしはウルウルと目を潤ませる。
まさか、そんな前からあたしのことを好きだなんて知らなかった。

「それから・・って!?な、なんで亜弥ちゃん泣きそうなの!?」

目を潤ますあたしに気づいてお姉ちゃんは焦り顔。

「だってぇ、お姉ちゃんがそんな前から想っていたなんて知らなかったんだもん」
「はは、だからって泣きそうにしないでよ。それにまだ話の続きがあるんだからさ」
「・・・うん」

あたしは泣くのを堪えてお姉ちゃんの話に耳を傾ける。



125 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:05


「それから、亜弥ちゃんはミキの中で一番の大切な存在になったけど、これが恋なんだって気づいたのは自分の戸籍を見てから」
「え?」
「じつはさ、ミキ別に皆に似てないから戸籍を調べたわけじゃなかったんだ。
 ほんとは亜弥ちゃんを妹として見てない自分がいるって気づいてさ
 それで怖くなって調べたんだ」
「怖くなって?」
「・・・うん、亜弥ちゃんを妹として大切にしている気持ちはあった。だけど、その気持ちがちょっとずつ変わってきてね。・・・・段々女性らしくなる亜弥ちゃんを見ていると・・・なんか、壊したいっていうか・・・自分のものにしたいって思ってきてさ・・・その、・・・性的に・・ね・・」
「・・・・」

顔を赤らめて最後のほうを声を小さくして恥ずかしそうに言うお姉ちゃんにあたしはその意味が分かって釣られて赤くなる。

「・・だから、妹に対してこんな気持ちを抱くのは変だと思ってさ。
 結構悩んでいたんだ、この気持ちに名前を付けるのを」

そう言うお姉ちゃんはとても苦しそうにしていた。
あたしはそんなお姉ちゃんの手を両手で握った。



126 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:07


「・・・戸籍を調べたのも確かめたかったからなんだ・・・・ひょっとしたらミキと亜弥ちゃんは血が繋がってないかもしれない。それならこの気持ちに理由を付けることが出来る。だから、調べるときはものすごく緊張したよ。普通は、自分が父さんたちの本当の子じゃないっていうのを知って驚くべきなのに、ミキは亜弥ちゃんと血が繋がっていないことを喜んだ。・・・はは、ほんとミキって自分勝手だよね」
「そんなことないよ」

自虐的に笑うお姉ちゃんにあたしは握った手に力を込める。


「それから、亜弥ちゃんとは血が繋がっていないことに安心はしたけど、臆病なミキは亜弥ちゃんに気持ちを伝えるなんて考えなかった。
 亜弥ちゃんを欲しいっていう気持ちはあったけど、ミキのことを姉として慕っている亜弥ちゃんを自分の気持ちのまま動けば絶対に泣かしてしまうっていうのが分かっていたから・・・亜弥ちゃんのミキに向ける笑顔を失う。・・・そう思ったら怖くて、だから自分の気持ちに蓋をして閉じ込めた」
「そうなんだ」

お姉ちゃんの話から、どれだけお姉ちゃんが苦しんでいたのかが伝わってくる。


「でもごめんね。結局ミキは自分の気持ちに蓋をしても亜弥ちゃんを泣かしてしまった」
「・・・もう謝らなくてもいいよ、だって最終的にはお姉ちゃんはあたしにちゃんと自分の気持ちを言ったんだし・・・それにお姉ちゃんが言わなきゃあたしも自分の気持ちに気づかないままだったもん」


あたしがそう言うとお姉ちゃんはいつもの優しい笑顔をあたしに向けてくれた。
うん、やっぱりあたしはお姉ちゃんのこの顔が一番好き。

「えへへ、嬉しいな、お姉ちゃんと恋人になれて」
「・・・うん、ミキも嬉しいよ」

お互いハニカミながら見つめあう。



127 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:09


「松浦亜弥さん」
「はい?」

二人で見つめ合っていると、急に声のトーンを落としてお姉ちゃんが真面目な顔になる。

「わたし、藤本美貴は松浦亜弥をもう妹としては見れません」
「・・・はい」
「でも、松浦亜弥をこれからは藤本美貴の一生を賭けて幸せにします。・・・だから」
「・・・・」
「ミキの側にずっといてください」
「・・・はい」


あたしの返事にお姉ちゃんは嬉しそうに笑った。そしてお姉ちゃんはポケットから小さな箱を取り出した。


ちいさな箱には二つのリング。



128 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:11


「お姉ちゃん、これって・・・」
「ん・・・一応給料三か月分ってやつ?」

小さな箱に入っていた二つのリングの一つに小さな光る石。

「この石って・・・」
「・・・ほんとはカッコよく大きいのにしたかったけどさ、まだ新米なんで小さいやつしか買えなかったんだけど・・・一応、亜弥ちゃんの誕生石にしてみたんだ」

照れながら指輪を取り出すお姉ちゃん。


「亜弥ちゃん、受け取ってもらえる?」
「・・・聞かなくても分かるでしょ」
「うん、でも一応確認取らないとね」

そう言って笑いながら取り出した指輪をゆっくりとあたしの指へとはめていく。
その手は少しだけ震えていた。



129 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:12


「・・・・良かった、サイズが合っていて」

ホッとしながらあたしの手を満足気に見るお姉ちゃん。
そして、もう一つの指輪を箱から取り出した。

「亜弥ちゃんからもしてくれる?」
「うん」

あたしは短く返事をしてお姉ちゃんから指輪を受け取る。


「藤本美貴さん」
「はい」
「わたし、松浦亜弥は藤本美貴を一生賭けて愛します。・・・だから」
「・・・・」
「あたしの側から離れずにあたしを愛すと誓ってください」
「・・はい、誓います」


お姉ちゃんの手を取り指輪をはめていく。
その動作を静かに見つめるお姉ちゃん。
指輪をはめたあたしの手を取るとお姉ちゃんはあたしの手にキスを一つ落とした。



130 名前:妹?恋人?どっちが好きなの? 投稿日:2004/10/18(月) 02:14


「・・・愛してるよ亜弥ちゃん」
「うん・・・わたしも」


顔を近づけて誓いのキス

お墓の前で重なり合う影



ん?ここがどこだか分かってるかって?
もちろん、分かってますとも

お墓の前で・・・なんて関係ない


だって、誓いのキスだよ?


やっぱ、お父さんたちの前でしなきゃ意味がないでしょう?




あ、そうだ、この甘くて長いキスが終わったらお姉ちゃんに聞いてみよ。

あたしのこと妹、恋人、どっちのほうが好きなのか。


まっ、お姉ちゃんのことだから、きっとどっちも好きっていいそうだけど・・・ね?






                          END



131 名前: k 投稿日:2004/10/18(月) 02:17


更新終了 アーンド お話終了


そして・・・

77>>名無飼育

77>>名無し読者


今、間違いに気づきました川_| ̄|○川
すいません、名無し読者さま。



・・・なんか、最後のほう無理やりな終わり方になってしまったような気がする。
とは言え、あれが今の自分の技量だし_| ̄|○


100>>名無し読者さま

キリがいいところで二回に分けようかなと思ったんですが、続きが気になりすぎて
壊れそうということなので、一気に更新しましたw

まあ、最終回二時間スペシャルみたいな感じで読んでもらえたらいいですw


いま、つぎのモノを書いているんですがそれがいつ、出来るか分かりません。
なので、次の更新は未定ですが気長に待ってもらえたら、そして、読んでもらえたら
嬉しいです。


・・・・それでは今回はこれで失礼します。



132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/18(月) 15:36
お疲れさまでした( ´∀`)つ旦~~
次の更新楽しみにしています。
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/18(月) 21:05
良かったですよ!毎回すんごく楽しみにしてました。
最終回スペシャル、堪能です。
また、作品読ませてくださいね。
134 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/22(金) 21:26
少し傷つきましたがお気になさらず…(ウソウソw)
ハッピーエンドで良かったです。自分も毎回楽しみにしてました。
次回作も絶対読ませていただきます。
135 名前: k 投稿日:2004/10/24(日) 11:10


短篇をひとつ・・・


136 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:12


会いたいけど会えない


あなたを好きなきもちの分だけ


会えない悲しさも大きくなる


わたしは小さな箱にあなたへの気持ちをつめ込み


光も届かない海の底へと箱を投げる



137 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:13


「会いたいよ・・・」


箱を投げた海を見ながら呟く。


箱の中の空気が泡となって


海の底から空へと昇っていく。



あなたと会ってからのわたしはまるで沈没船のモンキーガール



船の底であなたが来るのを待っている沈没船のモンキーガール



138 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:15


海の底へと沈んだ船には財宝が眠っている。


あなたと過ごした思い出の財宝(たから)・・・




「いっそ、嫌いになれたらいいのに・・・」


会えば嬉しくなり


会えなければ悲しくなる


会えない思いが募り、嫌いになれたらどんなに楽かといつも思う



139 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:15


「ミキたん・・会いたいよ」


誰もいない部屋であなたの匂いが染み付いた枕を抱きしめる


わたしはあなたと会ってから沈没船のモンキーガール


海の底へと沈んだ船の中で財宝を見守るモンキーガール


あなたに会えた日はその思い出を財宝の中に隠して


会えない日はあなたとの思い出の財宝(たから)を取り出して眺めてる


だからわたしは沈没船のモンキーガール


海の底へと沈んだ船の中で財宝を見守るモンキーガール



140 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:16


「会いたいな」


会えない悲しさが私を溺れさす


あなたに会えない悲しみの海へと



「会いたい」


会えない悲しみが涙の海へと変わる


あなたはいつもわたしが沈みそうになったら引き上げてくれる


その度にわたしは悲しみの海から空が見える地方へと引き戻される



141 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:17


「会いたいよぅ」


わたしを引き上げたあなたはわたしを抱きしめるとまたすぐに遠くへ行ってしまう


残されたわたしは独りあなたが抱きしめた温もりを抱え


また悲しみの海へと身を沈める


そして今日もまたわたしは涙の海で溺れる


あなたが拾い上げるその日まで



142 名前:沈没船のモンキーガール 投稿日:2004/10/24(日) 11:19

わたしは沈没船のモンキーガール


あなた以外には引き上げられない沈没船のモンキーガール


そして今日もまたわたしは涙の海で溺れる


あなたが拾い上げるその日まで




わたしは沈没船のモンキーガール



あなた以外には引き上げられない沈没船のモンキーガール






                       END


143 名前: k 投稿日:2004/10/24(日) 11:21

短篇終了


・・・何が書きたかったんだろう?

一応、アヤンキーとかけたつもりなんですが・・・

いや、ちょっと次のものを書く前の気晴らしに
書いたんですが落ちがいまいち、よく分からなくなってしまった。
勉強してきます。


132>>名無飼育さま

ありがたく頂きますw  ~~旦(´∀` )
次の更新までまた間があきますが一服しながらゆっくりとお待ちください。


133>>名無飼育さま

最終回スペシャル堪能して頂きましたかw
次のものが出来るまでの間の短篇を書きましたので
読んでもらえたら嬉しいです。


134>>名無し読者さま

うっ!・・傷つきましたか
すいません、自分でも何であの時間違えたのか未だに分からないんですが・・・
こんな読んでくれている読者さまの名前を間違えるやつですが
次も読んでもらえたらうれしいです。



今、次に載せるものを書いている途中ですが
まだ、もう少しかかりそうです。
それで、というわけではないのですが
もし、自分が書いたもの中(前作の『桜の木の下で』を含む)で
続きが見たいというものがありましたらリクしてください。
短いものになるとは思いますがリクに応えられるものは書きたいと思います。



・・・それでは今回はこれで失礼します。



144 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/28(木) 12:28

続編でなくてもリクをしていいんですか?
あやみき以外のものとか・・・例えば、れなみきとか・・・
だめならいいですが、もし出来るならお願いします。


145 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/28(木) 14:17
『 上海ハニー 』の続編なぞ見られたら嬉しいです。
その後の二人の恋の行方が気になります。
やりにくければスルーでお願いします。
146 名前: k 投稿日:2004/10/31(日) 11:08


更新開始

147 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:09


「ごめん、れいな待った?」
「いいえ、大丈夫です」
「そっか、よかった」

夏もそろそろ終わり、夜風の寒さが感じられるこの頃、れいなは美貴ねぇをホテルの近くの公園へと呼び出した。


「あーコンサートも明日で終わりかぁ・・・なんかあっという間だね」
「そうですね」
「最近は夜とかも冷え込むし、もう夏も終わるねぇ」
「そうですね」

さっきから同じ相槌しか打たないれいなに美貴ねぇは気にしないで会話をしていく。
れいなが呼び出した理由も聞かずに・・・



148 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:10


「そうだ、れいな花火しない?」
「えっ・・・」
「実はここに来る前にコンビ二に寄っていてさ、んで、これ見つけた」

そう言って、右手に持っていた袋をれいなの前に持ってくる。
コンビ二の名前が書いてある袋、その中にはお菓子や飲み物があった。
そしてその横に夏には必ず見かける花火があった。


「・・・なんで花火なんて買ったんですか?」
「んー?・・・いや、レジの横に在庫処分って書いてあったからさぁ。
 安いんで買ったんだけど・・・やらない?」
「あ、いや、せっかくなんでやります」

美貴ねぇのマユが少し下がり気味になったのでれいなは慌てて、
袋の中の花火を取り出した。
そんなれいなに美貴ねぇは嬉しそうに袋の中をのぞき込んだ。


「打ち上げ花火は音が響くから線香花火にしたんだ」
「あー・・・小さい頃によくしました」
「今はしないの?」
「そう・・・ですね、そういえば最近は花火やった記憶がないですね」
「そうなんだ」
「はい」

花火を袋から取り出しながら自分がいつまで花火をやっていたかを思い出すが、
いつやったかは思い出せない。
どうしてだろうと思いながら線香花火を一本取り出す。



149 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:10


「あ、ちょっと待ってて」

美貴ねぇはそう言って水のみ場があるほうへと走っていった。


「やっぱ、あと片付けはちゃんとしなきゃね」

小走りで帰ってきた美貴ねぇはどこから持ってきたのか、小さなバケツに水を入れて持ってきた。

「どこにあったんです?」
「砂場。子供の忘れ物みたい。じゃあ、やろうか」

そういって、ポケットから使い捨てライターを取り出す美貴ねぇ。


『そういやこの人、何気に周りに気を使う人だったっけ』

れいなはぼんやりと美貴ねぇの顔を見ながら思った。



150 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:11


花火の先にライターを近づける。
結構、この瞬間が好きだったりする。
いつ着くか分からないスリルみたいなものを感じるから。


「・・・キレイですね」
「うん・・・煙が目に滲みるけどね」

そう言った美貴ねぇを見るとホントに目を潤ませながら花火を見ていた。
その姿にれいなは思わず噴出す。


「あっ、何笑ってんだよう」
「はは、だって滲みるなら煙がこないほうに行けばいいのに、
我慢して花火してるんだもん」
「あ・・・そうか」

美貴ねぇは今気づいたと言わんばかりに慌てて煙が来ないほうに体の向きを変えた。
その姿が可笑しくてれいなはまた、笑った。



151 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:11


「あーあ・・もう終わりかぁ」
「結構、楽しかったですね」
「でも、もうちょっとしたかったな」


最後の一本をやり終え、バケツに突っ込む。
公園には花火の匂いがまだ残っていた。


「「・・・・」」

花火もやり終え、近くのイスへと腰掛ける。
さっきとはうって変わって、美貴ねぇは何も喋らないから、れいなも黙ってしまう。


「・・・何で呼び出したのか、聞かないんですか?」

どう切り出そう迷ってこんなことを聞いてみる。
美貴ねぇは月を見ながら応えた。

「れいなが言いたくないなら聞かないよ」
「そうですか」
「うん」
「そう・・・ですか」
「うん」
「「・・・・・」」

そうして、また沈黙が続く。
れいながどう話そうかとキッカケを探していると横から鼻歌が聞こえてきた。
なんの歌かは分からないけど、そのメロディはとても落ち着いた感じで好きな曲だった。



152 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:12


鼻歌のせいか、れいなの心はとても穏やかに落ち着けた。
今なら、話せるかもしれない。

「・・・振られました」
「・・・そっか」
「はい」

『 振られた 』

ただその一言を言っただけなのに美貴ねぇはそれを知っていたかのようにれいなの言葉を受け入れた。普通、そう言われたら色々聞いてくるはずなのに美貴ねぇは何も聞かずにれいなの言葉を受け入れてくれた。その優しさにやっぱり、このヒトは気を使うヒトなんだなと改めて思った。


「はい、『 好きな人がいるんだ 』って・・・そう言って振られました」

話を切り出せたことによりれいなはポツリ、ポツリと話し始める。


今日、好きな人に振られた。
いつも一緒にいた子。口には出せなかったけどずっと好きだった。
その子に今日、ナイショだよって耳元で囁かれた。



153 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:13


「れいな、それ聞いた時、すごい泣きたいくらいショックだったんですよね」
「・・・」
「でも、彼女がすごく恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに言うから、れいなも何も言えなくて・・・ただ、笑うしかなくて・・」
「・・・」


彼女に言われた言葉を思い出す。
頬を染めながら言われた言葉。

『れいなだけに言うからナイショだよ?』

そう言って好きな人がいると告白した彼女。
れいなはそんな彼女にさえドキドキしていた。
そのことを思い出して自分の心のなかで苦笑いをした。


「好きだったのになぁ」

そう呟いた後、涙で目の前がぼやけてきた。

彼女を好きだった。
想いを伝えることは出来なかったけど、れいなはそれを後悔したりしない。
だって、彼女を好きになったおかげでヒトを大切にする気持ちを知ったから。



154 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:14


「・・・れいな」
「はい?」

名前を呼ばれて美貴ねぇの方を向くとまだ月を眺めていた。

「・・・」
「美貴ねぇ?」

月を眺めていた美貴ねぇがれいなのほうへと顔を向けた。


「偉かったね」
「え?」
「れいなは偉いよ」
「な、に言って・・・」
「ちゃんと、好きな子を最後まで笑って見てたんだから偉いよ」
「・・・そう・・ですか?・・・ただの強がりですよ?」
「強がりでも、自分の気持ちを隠して好きな人の前で笑うってのは中々出来ないよ。
 だから、れいなは偉い」

そう言って、美貴ねぇはれいなの頭を撫でた。
まるで、道端で転んだ子供が泣くのを堪えたのを褒めるような手つきで。
そんな美貴ねぇの優しい声と言葉に我慢していたものが溢れだしそうになる。

美貴ねぇを見ると何故か同じように泣きそうな顔になっていた。
その顔を見て、笑いそうになった。



155 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:15


今日、れいなは振られた。
告白はしていないがその相手に好きな人がいると告げられた。
告る前に玉砕した自分の恋。
滑稽すぎて笑うしかなかった。


彼女と別れてから一人、楽屋へと戻った。
その途中で松浦さんと楽しそう話している美貴ねぇに会った。


今思うと、どうしてれいなは美貴ねぇを呼び止め、公園に呼び出したんだろう。
誰かに自分の・・・告白出来なかった気持ちを聞いてほしかったから?
だったら、美貴ねぇでなくてもよかった筈だ。
だけど、れいなは大勢のメンバーの中から美貴ねぇを選んでいた。
そして、気がついたら美貴ねぇと公園で会う約束をしていた。


月が青白く光る夜の公園に・・・



156 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:15


「れいな」
「何ですか?」
「もし、髪きりに行くならミキも一緒に行ってあげるよ」
「え?」
「よく言うじゃん?失恋したから髪をきるってやつ。あれ、ミキが付き合ってもいいよ」

れいなの顔を見ながら言う美貴ねぇは照れていた。
照れるくらいなら言わなきゃいいのに、
そんな美貴ねぇを見て可愛いヒトだなと思った。


「美貴ねぇ・・・以外に古いね」
「はあ?」
「今どき、失恋で髪を切るなんて古いって」
「な!?ヒトが慰めてやってんのに」
「頼んでないよ」
「うわ!生意気」

だけど、れいなはそんな美貴ねぇの言葉を素直に受け取らずに生意気な言葉で返した。
もちろんそれは美貴ねぇと一緒で照れているからなんだけどさ
美貴ねぇも分かっているみたいで、笑いながら返してくる。



157 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:16


ああ、なんでれいなは美貴ねぇを呼び出したのか今、分かったような気がする。
多分、美貴ねぇなら聞いてくれると思ったからだ。
れいなの言葉も気持ちも何も聞かずに受け入れてくれると思ったから、
れいなは美貴ねぇをここに呼んだんだ。



れいなは気持ちを誰かに聞いて欲しかった。
だけど、誰かに自分の気持ちに対して何も言われたくはなかった。
話を聞いてもらって、相手の意見を聞かないなんて失礼かもしれないけど、でもれいなは
ただ、自分の気持ちを聞いてくれる相手が欲しかっただけなんだ。



暫く、美貴ねぇとジャレた後、れいなも月を見上げた。
暗い夜空にポツンと浮き、青白く輝いている月はどこか淋しそうに見えた。



158 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:17


「淋しそうに見えるよね」
「え?」
「・・・月」
「あっ・・・うん」


月を見上げていたれいなに美貴ねぇが言う。
れいなと同じように見ているなんて思ってなかったからちょっと、びっくりした。


「でも、一生懸命でカワイイよね」
「は?」
「月だよ。一生懸命、自分はここにいるんだって教えてるじゃん」
「そう?れいなには淋しそうにしか見えん」
「はは、れいなにはそう見えるか」
「美貴ねぇにはどう見えるの?」
「うーん・・・今は嬉しそうに見える」
「・・・やっぱ美貴ねぇの考え方はわかんないや」
「そう?」
「うん」


淋しそうといいながら今度は嬉しいという。
美貴ねぇの言葉は正反対でれいなにはよく分からなかった。



159 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:18


「なんで嬉しそうに見えるの?」
「ミキ達が見てるから」
「は?」
「淋しいって言っていた月にミキ達が気づいてあげたから、月が嬉しそうに笑ってる」

そう言って、美貴ねぇは愛しそうに月を見上げた。
やっぱり、れいなは美貴ねぇが言っていることが分からない。


「・・・美貴ねぇは今、誰のことを考えてるの?」
「え?」
「だって、目がすごい優しいんだもん」
「・・・何気に失礼だな、ミキがいつもは目つきが悪いみたいじゃん」
「ホントのことだし」
「・・・れいな、今日は生意気だな」
「いつもこうです。それより誰を思い出してたの?」
「・・・亜弥ちゃん」
「松浦さん?」
「うん」


月を見上げたまま美貴ねぇはこたえる。
やっぱり、目は優しいままだった。



160 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:19


「亜弥ちゃんって、このお月様に似てるんだ」
「松浦さんが?」

れいなも美貴ねぇから視線を外し、月を見上げる。
月は淋しそうに輝いている。


「・・・松浦さんって、淋しがり屋なの?」
「んー?・・・そうじゃないけどさ、さっきミキが言ったじゃん?
 淋しそうに見えるけどカワイイって」
「うん」
「亜弥ちゃんもさ、ミキに自分のこと見て欲しくて色々、仕掛けるわけよ?
 それはもうこっちが呆れるくらい下らないこととか」

そう言いながら話す美貴ねぇの横顔はどこか嬉しそうに見えた。

「そんでさ、こっちが気づくとものすごく嬉しそうにしちゃってさ。
 何だろ?動物に例えたら子犬かな?多分、犬ならすごいシッポとか振ってるね。
 そんくらい、嬉しいって顔にだしてさ。そんな亜弥ちゃんみたらカワイイヤツって思ってさ」
「・・・それって、惚気?」
「はあ!?これのどこが惚気なのさ?」
「いや、全部?っていうか、ようは月が松浦さんに似ていて、思い出してニヤケていたと」「な!?さっきは優しそうとか言っていたくせに」
「今はニヤケているようにしか見えんもん」
「くっ、やっぱ、今日のれいなは生意気だ」


たぶん、図星を差されたからだろう。
美貴ねぇはれいなに反論できなくてそっぽを向いてしまった。
そんな子供みたいな態度を取る美貴ねぇが可笑しくてれいなは笑った。



161 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:20


その後は美貴ねぇをからかったり、くだらない話をしながら大笑いしたり、
自分が今日、失恋したなんて忘れるくらい色々なことを美貴ねぇと話した。


「・・・そろそろ帰るか」
「・・・うん」


美貴ねぇが時計を見ながら言った。
れいなとしてはもう少しいたかったけど、そろそろホテルに戻らないとヤバイ時間になっていたので美貴ねぇの言葉に頷いた。

コンビ二で買ったものを片付けて公園をでる。
美貴ねぇがれいなより少しだけ前を歩く。
そんな美貴ねぇの後ろ姿をれいなは歩きながら見てみる。

「・・・」

何も言わない背中はれいなにはとても大きく見えた。



162 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:20


「・・・今日は来てくれてありがとう」

れいなより先に歩く美貴ねぇには聞こえないように呟く。




今日、来てくれてありがとう


れいなの気持ちを聞いてくれてありがとう


くだらない話をしてくれてありがとう


笑わせてくれてありがとう


褒めてくれてありがとう


頭を撫でてくれてありがとう



なにも聞かず、側にいてくれてありがとう




色々な気持ちを込めてありがとうと呟く。



163 名前:サンキュ 投稿日:2004/10/31(日) 11:22


「れいな?帰るよ」
「・・・うん、今行く」

いつの間にか立ち止まっていたれいなに美貴ねぇが声をかける。



公園を出る前、暗い空の中にポツンと浮いてる月を見上げる。
小さい頃にやった花火の記憶はあまり思い出せないけど、
きっとこの花火だけはずっと覚えているんだろうな。




花火の匂いが残る公園でれいなはなぜかそう思った。







                       END



164 名前: k 投稿日:2004/10/31(日) 11:24


・・・如何だったでしょう?


初めてあやみき以外のものを書きました。
れなみきなのに微妙にあやみきw


よかった。リクが来ていたよ・゚・(ノД`)・゚・。

じつは一週間待ってみて、もしリクが無ければそのまま、新しいものへいこうかなと
思っていたので、リクがされていてうれしいです・゚・(ノД`)・゚・。


144>>名無し読者さま

リクありがとうございました。
一応、あやみき以外のもので、れなみきと書いていたので
短いですが書いてみたんですがどうでしょうか?
あやみき以外のものを書くのは初めてなので
どう書いていいか分からなかったんですが満足できていれば嬉しいです


145>>名無し読者さま

リクありがとうございます。
「上海ハニー」の続編ですか?
あれは一度、続編で苦労したヤツなんですが、せっかくのリクなので書かせてもらいます。
その後の二人の恋の行方ですね?
分かりました。いつ、更新するとは断言できませんが必ず、書きますので少しの間お待ち下さい。


・・・・それでは今回はこれで失礼します。

165 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 18:37
更新お疲れさまでした。
ところでれいなは誰に失恋したんでしょうか?
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 22:10
そうそう!それそれ!
自分もそれが気になるね。
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 03:55
読んでる間ずっと美和の声が頭から離れませんでしたw
面白かったです。
リクはまだ受け付けてもらえるのかな?
出来るなら美貴紺をお願いしたいのですが…。


>>165
ネタバレ…。・゚・(ノД`)・゚・。
168 名前:ぁーゃ。 投稿日:2004/11/02(火) 02:30
れなみき(あや)良かったです!こんな美貴たんが大好きっo(・∀・)リク、良ろしければ、甘めなあやみきでぉ願ぃしますm(__)m
169 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/03(水) 19:02
子犬な亜弥ちゃんハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! 
170 名前:k 投稿日:2004/11/04(木) 03:56

短編です。

171 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 03:57



優柔不断の君が決めたんだ。


ミキはそれでいいよ


だって、悩んだんでしょ?


いっぱい悩んで考えて、それで決めたんだよね?


なら、ミキはそれでいいよ



それが君の決めた答えなら・・・



172 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 03:58


「好きな人が・・・できました・・・」

顔を俯かせ、声を振るわせながら言う君の姿をミキはどんな顔で見ていただろう。


すごい、怒った顔していたかな?


それとも、泣きそうだったかな?


ミキに分かることといえば、今、ミキの目の前で顔を俯かせている君が
泣くのを堪えているということだけ。



「・・・そっか」

君が泣くのを堪えているのが分かるから

ミキは君の顔を見ずに、それだけしか言えなくて


「・・・誰って、聞いてもいい?・・・」

君がミキの前で泣くのを堪えている理由が分かるから

ミキはわざと君の口から言うように聞いたりする。



173 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 03:59


「・・・誰って、聞いてもいい?・・・」
「・・・」

ミキの言葉に押し黙る君。

分かってる、君の好きな人が誰かぐらい。

でも、やっぱり君の口から聞きたいんだ。

だって、好きな人の名前を言わない君は、まだミキのものだから・・・


「ミキの知ってる人?」
「・・ごめん・・なさい・・」
「ねえ、好きな人って誰?」
「・・・・」
「紺ちゃん・・・」
「・・ごめ・・な・・い・・」
「ごっちん?」


ミキの口から出てきた名前に君の体が揺れる。



174 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:00


『 やっぱりな 』

分かりきった答えを心の中でため息と共に吐き捨てる。


君は隠していたつもりかもしれないけど、

君の態度を見ればすぐに分かったよ。

だって、君はミキに見せる優しい笑顔とは別にごっちんのことを見ていたんだもん。

ねぇ、その表情(カオ)に名前を付けるとしたら何ていうと思う?

分からない?

ホントは気づいていたでしょ?ごっちんに会ったときに。


そう、『 恋する女の子 』だよ。


君はごっちんをそんな表情で見ていたんだよ。気づいてた?


そして、そんな君にごっちんも恋をしてた。



175 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:01


「そっか、ごっちんか・・・」
「・・・」
「紺ちゃん・・・」
「ごめん・・なさい・・」
「・・・」

ミキの言葉に泣くのを堪えていた君の肩が震えだした。
『やっぱり』から『確実』へと変わるミキの失恋。


「紺ちゃん」
「ごめんなさい」
「・・・」
「ごめん・・なさい」
「・・・」


ミキの顔を見ずに謝り続ける君に


『ミキはそんな紺ちゃんを見たいわけじゃあ・・ないんだけどな・・』


心の中でため息を一つ落とす。



176 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:03


君と会ったのは今みたいな桜が咲く時期で

君は桜の木の下に立っていて

お決まりのようにそんな君にミキが一目ぼれして

それから、センパイと後輩の関係から恋人同士になった

お決まり過ぎてヒトに話すのが恥ずかしいくらいで

でもミキは一生懸命、君を好きになって君もそれに応えてくれて

ミキはすごく幸せだった


だから・・さ、だから、ちょっとだけ悔しくてさ


君がごっちんに惹かれていくのが分かるのが悔しくて、ミキの心から離れていくのが分かっていたから、君の心変わりに気づかないふりをして



177 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:04


「紺ちゃん・・・もういいから」
「ごめんさない・・ごめんなさい・・」
「もういいよ。もう、充分、紺ちゃんの気持ちは分かったから」


君がどんなに悩んで苦しんだか、分かったから
もう、謝らなくていいから

せめてミキにもう一度だけ顔を見せてよ


「紺ちゃん」
「・・・」

ミキの呼びかけに顔をあげない君は今、どんな気持ちなのかな

今の雰囲気とは別に場違いなことを考える。

そして、その場違いな考え消して携帯を取り出し、メールを送る。


パタン、と携帯を閉じて君を見るけど、君はまだ肩を震わせ俯いている。



178 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:06


「紺ちゃん」
「・・・」

まだ肩を震わせている君を見ながら小さく息を吐く。

「・・・紺ちゃん、ミキ、紺ちゃんの笑っている顔がすごい好きだよ?」
「・・・」
「だからさ、最後くらいは笑ってほしいな」
「・・・わたしは・・美貴さんに・・好き・・で・・いてもらえる・・資格なんて・・」
「紺ちゃんがそう思っていても、ミキは紺ちゃんの笑った顔が好きだよ」

やっと、言葉を発した君の言葉は自分を責める言葉で

だから、ミキはそれを遮った。

最後くらいは笑っていてほしいから。


「紺ちゃんがごっちんのことを好きになっても、ミキはそれは仕方がないと思っている。
 だって、ヒトを好きになる気持ちを止めるなんて誰にも出来ないでしょ?
 だから、紺ちゃん、ミキのことはもう気にしなくていいから・・・
 自分の気持ちに正直になっていいから・・・」

多分、ミキがこんなことを言えば君がどういう風に考えるかなんて分かってはいたけど、
言わずにはいられなかった。
だって、君のこんな姿なんてミキは初めて見たから。



179 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:08


俯いていた君が顔をあげる。

すごく辛そうに口を歪めている君。

その口からミキは彼女が言おうとしている言葉を待つ。


「なん・・で・・そんなに・・・優しく出来るん・・ですか・・」
「・・・」
「わたしは・・美貴さんのこと・・もう・・」


やっぱりね。
自分が想像していた言葉を言う彼女。
彼女がどう言うかなんて分かっていたからミキはあえてこう言うしかなかった。


「それはね・・・」



君の笑顔も


君の仕草も


君の言葉も


すべてミキのためにだけあると信じていたから


こんな風に自分の好きな人が他のヒトを好きになって振られるっていうのはカッコ悪すぎてどうかと思うけどさ・・・


でも、ミキはそんな風にカッコ悪くてもそれ以上に君が好きなんだよ

だからこそ手を振ることが出来るんだよ

ミキが手を振ることで君が悲しまないのなら・・・



180 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:10


「それは、紺ちゃんにこれ以上泣かれたくないから」
「え・・・」
「言ったでしょ?ミキは紺ちゃんの笑った顔が好きだって。
 ミキは紺ちゃんが笑ってくれるならどんなことだってするよ。紺ちゃんを悲しませる原因がミキにあるなら、・・・ミキは紺ちゃんに振られることだって出来る」
「・・美貴さん・・」
「って、振っている相手にこんなこと言われても嬉しくないか。あはは・・」
「・・・」


そろそろ、彼女を解放してあげよう。

これ以上、ミキといても彼女が苦しむだけだ。



181 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:11


「・・・紺ちゃん、もし、少しでもミキのことを好きなら・・さ、
 自分の気持ちに正直になってよ。ミキに遠慮して自分の気持ちを隠すのだけは絶対にしないでよ。もし、そういうことされたらミキが惨めになる」
「美貴さん」
「今・・・ごっちんを呼んだ」
「え?」
「さっき、メールした。ここに来るようにって」
「な・・んで・・」

君はミキの言葉に驚きと戸惑いの表情を見せる。


「言ったじゃん。紺ちゃんが笑ってくれるならミキはどんなことでもするって。
 今の紺ちゃんを笑わせてくれるのはミキじゃなくてごっちんなんだよ」
「でも・・」
「紺ちゃん、ミキのこと少しでも好きだったなら、ミキの最後のお願いきいてよ。
・・・自分の気持ちは隠さないで・・・それでさ・・笑っていてよ・・・」
「・・・美貴さん・・」
「じゃあ、ミキはもう行くね」
「あ・・・」

伝票を取って、レジの方へと歩いていく。
振り向いてもう一度君の顔を見たかったけど、それはしないでおこうと思った。



182 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:12


「美貴さん!」

ドアに手をかけようとするミキを君が呼ぶ。
その声に振り返ると、目に涙を溜めながらも必死に笑っている君がいた。

「・・・・ありがとう」

最後にミキの為に笑ってくれた君のその姿に少し切なくなるけど必死に笑っている君にミキも応える。


「・・・ふぅ・・・」

一人、店を出ながら空を見上げる。

春の木漏れ日が暖かいとても澄んだ空。

「・・・・」

駅へと歩きながらメールを開く。
さっき、ごっちんへと送った送信メール。



「  振られた。
   んでもって、紺ちゃんを泣かした。
   今、駅前のカフェにいるから行ってあげて

                      美貴     」



183 名前:鮮やかなもの 投稿日:2004/11/04(木) 04:14


「カッコつけ過ぎたかなぁ」

パタンと、目を通したメールを閉じて、ポケットに携帯を入れる。


「・・風が冷たいや・・・」

暖かい木漏れ日のはずなのに、心にはぽっかりと穴があいて、
そこから冷たい風が通り過ぎる

きっと、この穴もいずれ閉じていくだろう。

君以外のヒトを好きになることで


「上手くいくといいな、・・・あの二人・・」



君の笑顔も

君の仕草も

君の言葉も

すべてミキのためにだけあると信じていたから

こんな風な終わり方はカッコ悪いけど

ミキは君のことが好きだから・・


だから笑って手を振るよ



鮮やかな君との思い出を胸にしまいながら



笑って手を振るよ




                         END



184 名前: k 投稿日:2004/11/04(木) 04:15

短編、終了

167の名無飼育さんのリクでした。

ELTの「 鮮やかなもの 」から美貴紺を書いてみました。
うーん・・・やっぱり、あやみき以外をかくのは難しいですね。


165>>名無飼育さま
166>>名無飼育さま

れいなの失恋相手が気になりますかw
実はあれは、あえて名前を出さないようにしました。
ヒントとしては、れいなのセリフの中に『いつも一緒にいた子』です。
まあ、同期の中の誰かなんですが、好きな方を選んでくださいw


167>>名無飼育さま

リクありがとうございました。
美貴紺、どうだったでしょうか?
ほんとはもう少し話の先を考えていたんですが、あれ以上書いてしまうと
松浦さんが出てきそうだったのでw
って、それ以前にごっちんが出ているから美貴紺じゃないし・・・_| ̄|○


168>>ぁーゃ。さま

感想、ありがとうございます。
甘めのあやみきですか?
うーん・・・わかりました。リクに応えられそうなら書きたいと思います。
でも、期待はしないでいてくださいw


169>>名無し読者さま

いや、何か松浦さんは子犬のイメージがあったんで
まさか、そこでハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! 
するとは思いませんでしたw



・・・・それでは今回はこれで失礼します。



185 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 00:55
167です。
リク受け付けてくださってありがとうございました。
藤本さんいいヤツだ。・゚・(ノД`)・゚・。
紺野さんがんがったね後藤さんと幸せにね。・゚・(ノД`)・゚・。
あやみきも好きなんで
松浦さんに出てきてもらっても良かったのにw
では次回更新お待ちしておりますです。
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 04:46
良い
187 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/08(月) 20:10
作者さんのバカ
はまっちゃったじゃんかぁ
・・・作者さんが、作者さんの作品が大好きですw
188 名前:k 投稿日:2004/11/14(日) 11:03

 短編です

189 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:04


「ねぇ、みきたんアレ食べたい!」

亜弥が指したほうへ顔を向ける美貴。

「・・・やだ」

それを一言で却下する。

「えー!?・・・じゃあ、あれは?」
「・・・いや」
「えー!?・・じゃあ・・」
「・・・亜弥ちゃん」
「なぁに?」
「・・・なんでそんなにミキに甘いものを薦めるわけ?」

藤本美貴はさきほどから自分に甘いものばかり食べさせたがる幼なじみの松浦亜弥に
うんざりするような口調で聞いてみた。



190 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:05


「だって・・・」
「だって・・なに?」
「だって、せっかくみきたんとお出かけしてるのに、みきたんスタスタと歩いていくんだもん」
「・・・」
「周りには美味しそうなケーキ屋さんとか、クレープ屋さんとかあるのに・・」
「・・・亜弥ちゃん」
「なに?」
「ミキ、本屋に行くって最初に言ったよね?家の近くの小さい本屋じゃ探しているものが
 ないから、駅前のでっかい本屋に行くって」
「うん、言ったね」
「本買ったらすぐに家に帰るから追いてきてもつまんないよって、
 亜弥ちゃんにミキ、言ったよね?」
「うん、言ったね」
「・・・」

美貴の呆れた口調に嬉しそうに答える亜弥。美貴はそれをみて軽いため息をつく。



191 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:05


「・・・はぁ・・・亜弥ちゃん」
「なに?みきたん」
「それならどうしてミキに追いていきたのさ?」
「だって、みきたんとお出かけしたかったんだもん」
「・・・」

堂々巡り。
美貴は呆れてまた軽くため息をつく。

この幼なじみ、何故かいつも勝手にミキの後ろに追いてきては我侭なことばかり言う。
ミキがどんなに冷たくしても追いていきて、最後には決まってこう言う。


「だって、みきたんの側にいたいんだもん」
「・・・またそれだよ」

何回と同じセリフにミキも呆れてモノが言えなくなる。



192 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:06


「・・・みきたん・・」
「・・・」

ほら、きた。
亜弥ちゃんは最後には決まってミキの側にいたいと言い、そして最後には決まって同じ行動を取る。


「・・・みきたんは亜弥のこと嫌い?」
「・・・」

涙を溜めながら上目遣いで聞いてくる亜弥ちゃん。
その姿はさながら親に怒られて泣くのを堪えている子供のよう。

「・・・・」
「・・嫌い?亜弥のこと・・」
「・・・ばーか」

まったく、どこからそんなセリフを覚えてきたんだか・・・
涙目の幼なじみの頭を軽く小突いてからミキはまた前へと歩きだした。



193 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:06


「あ、みきたん待ってよぅ」
「早く来ないと買ってやんないぞ」
「え?」
「クレープ、食べるんでしょ?」
「う、うん!」

足早に歩くミキの手を取って、子供のように喜ぶ亜弥ちゃん。
そんな亜弥ちゃんの顔を見て、ミキは苦笑いする。


「現金なやつ。まじ、子供みてぇ」
「む、子供じゃないもん」
「クレープくらいで喜ぶなんて子供じゃん」
「みきたんの意地悪」
「・・・亜弥ちゃんにだけね」
「え?何?みきたん」
「・・・別になんでもない」


チっ聞こえてたのか。
聞こえないように小さく呟いた言葉も亜弥ちゃんは聞き逃さない。
いつでもどこでも全身でミキにぶつかってくる。



194 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:07


「えー!?みきたん、いま絶対なんか言った!」
「言ってない」
「言ったモン!」
「あーもう!うるさいなぁ。あんまりうるさいとクレープ買ってやんないぞ」
「えーやだぁ」

途端に大人しくなる亜弥ちゃん。
まったく・・・コロコロと表情を変える亜弥ちゃんは飽きやすいミキが見ていても飽きない。そのくらい表情が豊かだ。


「あは、うそだよ」
「もう、みきたん!」


だからミキもそんな亜弥ちゃんの顔が見たくてつい意地悪なことを言ったりする。


「ほら」
「わーい、ありがとうみきたん」

ミキが買ってあげたクレープを美味しそうに食べる亜弥ちゃん。
その顔ときたら、幸せそうにするもんだから買ったこっちも思わず嬉しくなる。



195 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:08


「美味しいー!」
「・・はいはい」


幸せいっぱいの顔でクレープをほうばる亜弥ちゃん。
ミキはそれを呆れながら見ている。


= 甘いもの =

チョコにパフェにケーキにアイスクリーム。
ミキはそういうものが実は苦手だったりする。
なんか甘ったるすぎて、受け付けない。


じゃあ、甘いもので好きなものは無いのかといわれれば、・・・無いとは言い切れない。




196 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:08


「・・・・」
「ん?みきたんも食べる?」
「・・・いらない」
「でも、モノ欲しそうに見てたじゃん」
「見てないよ」
「見てたもん」
「見てないって」
「むー・・・みきたんの意地っ張り」

ミキにクレープを食べさそうとした亜弥ちゃんをミキは拒否る。
亜弥ちゃんは拒否ったミキにそっぽを向いて、またクレープをかじりだした。


『・・・ばーか。見てたのはクレープじゃあないっての 』


また美味しそうにクレープにかじりつく亜弥ちゃんをミキはこっそりと見る。


甘いものは苦手だけど好きなものがひとつある。それは・・・



197 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:09


「みーきたん」
「なに?」
「これ、すっごい美味しいから食べてみて?」
「・・・」

さっきミキに拒否られたことなどもう忘れたようにミキの前にクレープを差し出す亜弥ちゃん。

「はい」
「ミキはいいよ」
「絶対美味しいから。ね?食べてみて?」
「・・・」
「はい。あーん」
「・・・」
「どう・美味しい?」
「・・・まあまあ」


亜弥ちゃんが差し出したクレープを一口かじって感想を言う。
やっぱり、甘ったるくてミキには好きになれそうに無い。
いつも食べる度にもう食べないでおこうと思うんだけど、何故か食べてしまう。



198 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:10


なんで、好きになれないものをまた食べるかって?


んなの決まってるじゃん。
亜弥ちゃんが美味しいからってすすめるから。

ハイ、そうです。ミキ、亜弥ちゃんにはとっても甘いんです。
んでもって、ミキに甘えてくるそんな亜弥ちゃんが好きなんです。

だからいつも上目遣いで甘えてくる亜弥ちゃんにミキは逆らえない。
亜弥ちゃんにお願いされると何故か聞いてしまう。


「えー!?美味しいけどなぁ」
「ミキには甘すぎるよ」
「そっかぁ・・・」
「・・・」
「じゃあ、今度みきたんが好きそうな甘いもの探してきてあげるね」
「・・・・甘いものはひとつで充分」
「ん?何か言った?」
「・・・別に」

クレープをかじりながらミキの方へと顔を向ける亜弥ちゃんにそっぽを向きながらミキは口の中へと広がった甘いものを感じる。



199 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 11:11


甘いものは苦手だけど好きなものがひとつある。それは・・・


ミキに甘えてくる亜弥ちゃん。


甘いものは苦手だけど、甘えてくる亜弥ちゃんは好き。
んなの、恥ずかしくて本人には言えないけど・・・

『っていうか、言ったら絶対亜弥ちゃんのことだ。きっと色々我侭言うに決まってる』



ミキに甘えてくる亜弥ちゃんをミキは好きでたまらない。





藤本美貴 


嫌いなもの   甘いもの


好きなもの   ミキに甘えてくる亜弥ちゃん




「みきたん、次はアレが食べたい!」
「・・・・イヤです」





                      END



200 名前: k 投稿日:2004/11/14(日) 11:13

短編、終了

「 甘いもの 」  藤本さん視点でした。

夜にまたもう一つ、同じタイトルの短編を載せます。
レスはその時に返します。


201 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/14(日) 15:40
ハフ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!!
なんたるキャワイさ!
夜更新が楽しみです。
202 名前: k 投稿日:2004/11/14(日) 22:50

更新開始

203 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:51


女の子といえば甘いもの。


チョコにパフェにケーキにアイスクリーム、それからうーんと甘い恋愛映画。


甘いとつくものには目がないのが女の子。


女の子は甘いものを手にいれて幸せにつかる。・・・・のはずなんだけど。



204 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:51


「みきたん、遅い!」
「ごめん。寝坊した」
「もう!せっかくの初デートなのに」
「だからごめんって。それより早く行こうよ」
「あっ、もうみきたん!」


初めてのデートに遅刻してきたくせにスタスタと歩き出すみきたん。
もう!少しは反省の態度を見せなさい。
っと、怒ってる場合じゃない。せっかくのデートなんだから笑顔にしなきゃ。

スタスタと前を歩くみきたんの横に急ぎ足で並ぶ。



205 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:52


みきたんとは高校の先輩と後輩の関係だった。

入学式の日に大きすぎる校舎の中で迷子になっているあたしにみきたんが声をかけた。
最初は独りで心細いっていうのがあって、みきたんに声をかけられたときはすごく嬉しかった。不安になっているあたしにみきたんが色々話しかけながら体育館まで連れて行ってくれて、体育館につく頃にはあたしの不安もなくなっていた。


「じゃあ、ミキは行くね」
「あ、あのセンパイ!」
「ん?なに?」
「ありがとうございました」
「・・・入学おめでとう」
「・・・」

そう言って、みきたんは去って言った。
その姿にあたしはドキドキする心臓を必死に抑えていた。


入学式のときに好きになってしまった先輩。
それからは、必死にあたしの存在をアピールしまくって、アタックしまくって、
やっとつい最近、みきたんに告白をしてオーケーをもらった。

そして今日がみきたんと恋人になってから初めてのデートなのだ。



206 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:53


「亜弥ちゃん?」
「・・・・」
「おーい?亜弥ちゃん?」
「ふぇ!?な、なに?」
「いや、亜弥ちゃん、呼んでも返事しないでボーとしてたから・・」
「あ、ははは。な、何でもない!それより早くいこ」


ヤバイ、ヤバイ。回想にちょっと飛んでたよ。
みきたんが目の前に手を振ってるのに気づかないなんて。

今日のデートの目的地は映画館。
ずっと見たかった恋愛映画をみきたんと見に行く。
でも、みきたんが遅刻したから映画はとっくに始まっていて、次のが始まるまで一時間以上は時間が空いてしまった。
でもいいんだ。だって次のヤツが始まるまでの間、みきたんと一緒にあっちこっち回って見れるし・・・



207 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:54


「みきたん、歩くの速いよ」
「あ、ごめん」
「いや、べつにいいけど。ねっ、そんなに急がなくても次の上映時間まで間があるし、
 どっかでお茶でもして時間をつぶそうよ」
「んー・・・いいけど」
「じゃあ、あそこのカフェにいこ?友達があの店のパフェがすごく美味しいって言ってたんだ」
「あー・・・亜弥ちゃんごめん、ミキ甘いものはちょっと」

近くのカフェに行こうとみきたんを誘ったけどみきたんは渋い顔。



208 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:54


「え?みきたん甘いもの嫌いなの?」
「んー・・嫌いじゃないけど好きでもないかな」
「えー!?女の子なのに」
「別に男のヒトでも甘いものが好きな人はいるでしょう」

あたしの驚きの声にみきたんは苦笑いをする。
でも、今までみきたんと一緒にいて甘いものが苦手なんて知らなかったから
あたしとしてはそのことにすごく驚いた。


「でも、女の子なんだから・・・少しくらいは好きじゃない?」
「んー・・・甘いものねぇ・・・」
「別にお菓子とかじゃなくても・・ほら、可愛い小物屋さんとか甘―い雰囲気たっぷりの恋愛映画とか・・それから、えーと・・・」
「うわー亜弥ちゃん、それ全部ミキの苦手なやつばかり」
「えー!?みきたんそういうのも駄目なのぉ?」
「だって、ミキ甘ったるくてベタベタしたものとか苦手だし」
「・・・」

そんなぁ・・・ウソでしょう?・・
今日見る映画って、ものすごく甘い雰囲気たっぷりの恋愛映画なのに・・・
みきたんを映画に誘うとき何見たいか聞いたらなんでもいいって言うからこれにしたのに。



209 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:55


あたしはみきたんのその言葉にショックを受ける。けどみきたんはそれに気づかずスタスタと前を歩く。

「・・・・」

今、あたしの周りには可愛いお店がいっぱい並んでいるのにみきたんは見向きもしない。


『・・・今日はせっかくみきたんとのデートなのに・・』


みきたんは学校ではあたしにほとんど構ってくれない。
構ってくれるのはお昼休みの時だけで、登下校時間なんかは一人でさっさと行くし、
休み時間は寝ていてあたしが横にいても起きてくれない。
唯一、みきたんとイチャイチャできるお昼休みだってヒトがいたらみきたんはあたしから離れようとするし・・・


『だから今日のデート、すごい楽しみにしてたのに・・』


スタスタと歩いていくみきたん。あたしはそんなみきたんの半歩後ろをついて歩く。



210 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:56


『・・・あーあ、みきたんともっとラブラブしたいのに・・・』

前を歩くみきたんを恨めしそうに見る。

「・・・・」

リュックを片手に下げて歩くみきたん。
もう片方の手はぷらぷらとさせている。


『手とか繋いだらウザがられるかな?・・・』

さっきの言葉を聞いていつものように美貴にひっつくことが出来なくなった亜弥。
ぷらぷらさせている美貴の左手をもの欲しそうにみている。
それに気づいたのか美貴が亜弥の方へと振り向いた。



211 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:57


「亜弥ちゃん、どしたの?」
「・・え?」
「なんか元気ないように見えるけど?」
「・・・・」
「あ、ひょっとしてさっき言っていたパフェが食べたかったの?なら戻ろうか?」
「・・・それはもういい」
「いいの?ならなんでそんなに元気ないのさ」
「・・・手」
「・・・て?」
「みきたんと手とか繋いであちこちの店とか回りたかったのに・・・」
「・・・のに?」
「でも、みきたん甘いものが苦手って・・・ベタベタするのが嫌いって・・・」
「・・・・」

みきたんの言葉を思い出して泣きそうになる。
でも、それはあたしの我侭だからみきたんは悪くない。だから絶対に泣けない。


「・・・・」

顔を俯かせて泣くのを堪えていると、不意に鼻に甘い香りが広がった。



212 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:58


「はい、亜弥ちゃん」
「え?」

呼ばれて顔をあげるとそこには甘い香りをしたクレープを持ったみきたんがいた。

「え?みきたん?」
「はい」
「え?あのこれ・・・」
「そこで売っていたから。クレープ亜弥ちゃんは嫌い?」
「嫌いじゃないけど・・」
「じゃあ、あげる」

そう言って、あたしの手にクレープを持たせるみきたん。
あたしは呆然としながらそのクレープを受け取った。


「あ、ありがとう」
「・・・ん」
「・・美味しい」
「・・・良かった」

みきたんがくれたクレープを一口かじる。
口の中には甘いクリームの味が広がる。



213 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 22:59


「・・亜弥ちゃん」
「ん?なに?」
「ミキ、確かに甘いものは苦手だよ?」
「・・・」
「でも、亜弥ちゃんに泣かれるのはもっと苦手」
「・・え?」

みきたんの顔を見るとものすごく優しい目であたしを見ていた。

「亜弥ちゃんが泣きそうな顔するとミキはすごく困る」
「・・・みきたん」
「だから、亜弥ちゃんはミキにもっと甘えていいよ」
「・・だって、みきたん・・甘いものが苦手って・・」
「うん、言った。でも亜弥ちゃんだけは特別」
「え?」
「ミキ、甘いお菓子とか恋愛映画って苦手だけど、ミキに甘えてくる亜弥ちゃんは
 好きだよ」
「!!」

そう言って、あたしの手を繋ぐみきたん。
その仕草がとても自然で優しくて、あたしの心臓は初めてみきたんに会ったときのように激しく鼓動をしていた。



214 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 23:00


「みきたん・・・て・・」
「ん?」
「・・みきたんと手繋いでいる」
「・・うん、繋いでいるね」

あたしのわけの分からない言葉にみきたんは優しく目を細めながら笑いかける。

「・・・甘えてもいいの?」
「うん」
「手とかも繋いでいいの?」
「うん、いいよ」
「学校で・・」
「あ、それはカンベン」

あたしの言葉を途中で区切るみきたん。
あたしがみきたんの顔を見るとみきたんは照れたように鼻をかいた。

「・・学校は・・ね?・・皆がいるし・・どこで見られているか分からないし・・」
「でも、あたしはもっとみきたんとイチャイチャしたい」
「うーん・・・ミキも亜弥ちゃんが甘えてくるのは嬉しいんだけど、周りがなぁ・・
 色々言ってきて煩いんだよなぁ・・」

あたしの我侭にみきたんは困ったような顔をする。

「・・じゃあ、学校では我慢するから・・」
「ん?」
「今は・・・みきたんとラブラブしたい」
「・・・うん、いいよ」

あたしの我侭にみきたんは嬉しそうに頷いた。


215 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 23:01


嬉しそうにクレープをほおばる。
その右には優しい目で見つめるみきたん。
はたから見ても分かるくらいラブラブな二人。

「えへへ」
「嬉しそうだね、亜弥ちゃん」
「だって、みきたんとイチャイチャしてるんだもん」
「・・・そっか」


結局、映画館はやめにして街をブラブラと歩くことにしたあたしたち。
みきたんは恋愛映画でもいいって言ってくれたけど、好きな人には無理はさせたくないしね。それに最初の予定とは違ったけど今、こうしてみきたんと手を繋いでデートを満喫中。これだけであたしは満足。



216 名前:甘いもの 投稿日:2004/11/14(日) 23:03


「ごめんね、亜弥ちゃん。甘いものが苦手な恋人で」
「えへへ、いいよ。だってわたしには甘いんでしょ?それなら問題なし。
 うーんとデートでみきたんに甘えてラブラブするもん」
「あはは、そうしてくれるとミキも嬉しいな」


繋いでいた手を恋人繋ぎに変えて今日のデートを楽しむ。
やっぱりデートはこうでなきゃね。
あ、そうだ。今度のデートではもっと、みきたんとイチャイチャできるコースを考えておこう。

次のデートでの決意を新たに甘い雰囲気をだしながらあたしとみきたんの初デートはこうして終わった。






「ねえ、みきたん。今度は遊園地に行こう!」
「あ、亜弥ちゃん、ミキ遊園地はちょっと・・・」





                         END



217 名前: k 投稿日:2004/11/14(日) 23:04


短編、終了。

「 甘いもの 」 松浦さん視点でした。


この短編は168のぁーゃ。さまからのリクを元に書いたものです。
タイトルは「 甘いもの 」になっているけど、この話自体、甘い・・・かな?
自分では精一杯甘くしたつもりなんですがw

最初、松浦さん視点だけの話が浮かんだのですが短いと思ったので、藤本さん視点を考えたら話が2つ、出来上がったのでそれを載せました。

一応、二つとも話しの設定は違いますが、どちらも「 甘いもの 」をタイトルにしているので、「 クレープ 」という甘いお菓子を2つの話しに盛り込みました。



185>>名無飼育さま

あれでよかったですかね?
あやみき以外は不慣れなもので、どうしてもハッピーエンドにはもっていけなかったんですが。


186>>名無飼育さま

あはは。簡潔な感想ありがとうございます。
次回も読んでもらえるよう頑張りたいと思います。


187>>名無飼育さま

感想、ありがとうございます。
そこから抜けれそうですかw
こんな駄文ですが読んでもらえれば嬉しいです。


201>>名無し読者さま

おお!?もう感想が。
ありがとうございます。
夜の部、松浦さん視点如何だったでしょうか?
甘いあやみきを書いたつもりですが上手く書けているかどうか・・・
でも、朝の部の藤本さんにハフ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!!
しているみたいなんで、少し安心しましたw



それでは今回は失礼します。



218 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/15(月) 01:37
甘いのしっかり頂きました!
219 名前:ぁーゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 11:00
甘ぃぁゃみきに癒されました!
220 名前:k 投稿日:2004/11/25(木) 22:13

  短編


221 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:14


「・・・歌詞・・ですか?」
「そう、何でもいいから恋愛でも友情でも。短い歌詞を書くこと」
「はぁ・・」

マネージャーから渡された一枚の紙切れ。
今度のラジオ番組でするものらしい。
ミキと共演する安倍さんたちも書いてくるらしい。


「あ、これっていつまでに出せばいいんですか?」
「あ、それ3日後には出して」
「はあ!?ものすごく早いじゃないですか」
「ごめん。悪いけど3日後には取りにくるから。
 何でも、友達とかそういうのでもいいから、とにかく書いてきて」
「・・・分かりました」
「じゃ、よろしくね」

ミキの返事を聞くとマネージャーは急いで次の打ち合わせ場所へと走っていった。


「・・・ミキ、こういうもの苦手なのに」

何も書いていない紙切れを見ながら軽いため息をついた。




222 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:15


「・・うーん・・・」

仕事も終わり、家に帰るがいっこうに歌詞が浮かばない。
マネージャーは何でもいいと言ったがこの何でもいいが結構、困ったりする。


「・・・タイトルとかあれば考えやすいのに」


ベッドに寝ころがりながら考えるがやっぱり何も浮かばない。
時間を見るとそろそろ日付が変わろうとする時間になっていた。


「・・・うーん・・・いいや、明日考えよう」

紙と鉛筆を放り出し、ミキは寝る準備をする。
明日は運がいい事に半日のオフが貰えた。
だからこういうのは明日考えよう。


そう考えミキは目を閉じ、眠りについた。



223 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:16


「どれにしよう」

一枚の紙を机に置き、腕を組みながら考える。

歌詞のテーマは恋愛か友情、どちらかにしようというのは決めた。
しかし、この二つのうち、どちらを書くかをミキは決めかねていた。

「・・・恋愛は・・書こうと思えば書けるだろうけど、でもイマイチ乗り気・・はしないなぁ。ってことは友情かなぁ・・」

二つのうち一つが消えれば必然的に残るのは一つ。
でも、ミキはそれさえも渋っていた。

最後に残ったものは友情。
と、言えば友達のことだ。そうなると当然、あの子のことを書くことになるだろう。


「こっちは書きやすいけど、また何か言われそう・・・」


そう思ったが手は鉛筆を持ち、すでに書く準備に入っている。

「ま、いいや。時間も無いし」

ミキはテーマを決めると早速、歌詞へと取り掛かった。



224 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:18


「・・・さて、何を書こうか」

テーマは決まったのに手は動かず。
いや、書きたいことは一杯あるけどそれをどう書こうかで手が止まってしまった。

「うーん・・・意外に作詞って難しい・・」

改めて、曲を作るヒトたちのすごさを感じた。

「・・うーん・・書けない」

握っていた鉛筆をほうり投げ体を倒す。
中々浮かんでこない歌詞にミキは頭が痛くなってきた。

「うーん・・・あ・・」

悩んでいると、ふとミキの頭にある言葉が蘇る。

『 歌うときは気持ちを込めて、自分の体験したこととか、感じたこととかそういう気持ちを込めて歌えばいい 』

前にミキが歌のことで悩んでいるときに言われた言葉。
誰に言われたかは思い出せないけど、その言葉だけは何故か憶えている。


「気持ちか・・・」

誰に言われたか思い出せない言葉を思い出しながらミキは寝ていた体を起こし、また鉛筆を握る。

歌がそうなら作詞も出来るはず。
自分が感じたことを言葉にのせればいいだけだ。

やっと、書きたいものが分かってきたミキは何も書かれていない紙に鉛筆を走らせた。



225 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:18


「亜弥ちゃんはいつも笑顔・・・」


彼女のことを書くならまず彼女のことを思い浮かべなければいけない。
ミキは亜弥ちゃんのことを思いながら歌詞を書いていく。


・・・いつも笑っている亜弥ちゃん。


『 みーきたん 』
『 なに?亜弥ちゃん 』
『 えへへ 』
『 なんだよう 』
『 ただ呼んだだけ 』
『 なにそれ 』
『 えへへ 』

君はいつもミキに笑顔を向けていた。
だから君が笑うとミキもつられて笑った。
だって、君の笑った顔はミキを笑顔にする力があるんだもん。




そんないつも笑顔な亜弥ちゃんはミキの一番のトモダチ



226 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:19


彼女はいつだって笑顔。
でもたまにミキに対してすごく怒る時がある
そんな時はケンカだってする。


『 もう!みきたんの馬鹿! 』
『 なんでミキが馬鹿なのさ! 』
『 なんでも、とにかくみきたんの馬鹿!嫌い! 』
『 ふん!ミキだってキライだよ! 』


君との初めてのケンカ。
君がなにに対して怒っているのかが分からなかったからミキも負けじと怒って、
まるで子供のようなケンカを君とした。
その時は二人とも一週間ぐらい口をきかなくて、結局ミキのほうが折れて謝った。




そんなケンカをしても亜弥ちゃんはミキの一番のトモダチ





227 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:20


亜弥ちゃんはとてもミキのことを分かってくれる。


ミキがさびしいときにはいつも側にいて話をきいてくれる。
たとえ、明日の朝に仕事が入っていても・・・

そんな亜弥ちゃんの声はミキ心を軽くする。

ただミキの話に相槌を打つだけなのに。


不思議だよ。

君の声はミキの心を軽くさせ素直な気持ちを引き出してくれる。

だから

君の前でだけはミキも素直になれる。




228 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:21


亜弥ちゃんはミキの一番のともだち。
だから亜弥ちゃんが泣くとミキも泣きたくなる。


『・・・亜弥ちゃん・・』
『・・っく・・みき・・たん・・』
『・・・・』
『・・っく・・うっ・・く・・』
『・・亜弥ちゃん』



でも、ミキはそのときは一緒に泣かずに笑ってあげる。
亜弥ちゃんがいつもミキにしてくれるように。

『 元気だしな 』って、

泣くのをこらえて笑ってあげる。


そうすると君は泣きやんで笑顔を見せようとする。

だから亜弥ちゃんが泣くとミキは泣くのをこらえて笑ってあげる。





229 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:22


亜弥ちゃんはミキの一番のトモダチ。

どんなときでも側にいてくれる。

だから亜弥ちゃん。

君がさびしいときはいつだって飛んでくよ。

そのときはうまくことばが見つからないかもしれないけど

でも、ミキの声が君の心を少しでも癒すなら

そのときはうまくことばが見つからないかもしれないけど

笑って相槌を打つだけでいいかな?




亜弥ちゃんはミキの一番のトモダチだから・・・





230 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:24


「・・・なんか友達っていうよりは・・カップルみたいな歌詞みたい・・
 しかも、これ絶対亜弥ちゃんには見せられないや」

自分が書いたものを一から読み直してみる。
ミキの亜弥ちゃんに対してのキモチをただ思って書いていみたら、
なんだか友達にあてる詞じゃなくて、好きな人にあてる言葉のようになってしまった。
しかも、ものすごく恥ずかしい。
多分っていうか、絶対普段のミキが言わないようなことまで書いているし。


「・・・うーん、もう少しだけ短くしてもっと簡単にすればいい・・かな?」

最初は白紙だった紙にはミキの字がぎっしり埋まっている。
これ以上書ける隙間がないほどに埋め尽くされたミキの亜弥ちゃんへの言葉(おもい)。


その言葉たちをもう少しだけ簡単にして書いてみる。




231 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:25


あなたと会って もうすぐ 4年
気付いてた?

初めて待ち合わした 交差点
憶えてる?

2人で

買い物したり
写真撮ったり
映画見たり

いつも笑ってる

でも

ケンカしたり
言い合ったり
電話で朝まで話したり

あなたの前だと 私は
ビックリしちゃうけど
素直になれる

不思議です

だから今日は伝えたい

そんなあなたに


あなただから 「大好きだよ」




232 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:26


「・・・できた・・・」

鉛筆を置いて手首をグルグルさせる。
ずっと鉛筆を握っていた右手が痛い。

「・・うーん・・・やっぱりこれカップルの歌詞みたい」

短くまとめた歌詞を見るがやっぱり、どうしても友達というよりは恋人にあてたような歌詞になってしまった。
だけど、これ以上はミキも直しようがない。


「・・・まっいいか。ミキ、亜弥ちゃんのこと好きだし・・」


書き直しできないものは出来ないとすっぱり諦め、ミキは新しい紙に手直しした歌詞を書き写した。


この歌詞があとからどんなダメだしをだされるかは知らずに・・・


「・・・タイトルは・・・」

書き写した後、紙の一番上のほうにタイトルを入れる。


「・・・考えなくても決まっているか」


亜弥ちゃんのことをおもって書いた歌詞。
タイトルは考えなくてもすぐに浮かんできた。


「タイトルは・・・『 気持ち 』・・と」




233 名前:キミはともだち 投稿日:2004/11/25(木) 22:27


君が笑ったらミキもつられて笑う


君が怒ったらミキも負けずに怒る


でも、ミキがさびしいときにはもう少しだけつきあって話をきいて

それだけで

ただ君が相槌を打つその声だけで

ミキの心は羽根がついたように軽くなって

素直になれるんだ



亜弥ちゃんがいないとミキは本当に困る

はなれていてもずっとミキの胸の中には亜弥ちゃんがいるんだよ


つまりそういうこと


亜弥ちゃんはミキの一番のトモダチ



つまりそういうこと

君がいないとミキは本当に困るんだ


だからずっと側にいて欲しい


ミキの一番のトモダチとして・・・







                     FIN




234 名前: k 投稿日:2004/11/25(木) 22:29


短編終了


平井堅の「 キミはともだち 」をヤンタンの藤本さんの歌詞とリンクさせてみた。

藤本さんが照れながら読みあげるのを聴いて、逆に聴いているほうが恥ずかしくなりましたw


あともうひとつ短編を載せる予定なのでレスはそのときに返します。

235 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/25(木) 23:53
ヤンタン、最高でしたね。
作者さんの短編も最高でした。
236 名前:k 投稿日:2004/11/26(金) 07:17

更新開始

237 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:18


「お疲れ様でしたー」
「あ、藤本一緒に帰ろう?」
「安倍さん?」

今日の仕事も終わり、荷物をまとめて帰ろうとするミキに安倍さんが声をかける。
安倍さんのほうから誘うなんて珍しい。
なんて思いながらミキは下まで安倍さんと一緒に帰る。


「今日のラジオも結構大変だったね」
「そうですね」
「藤本、すごい照れていたし」
「そ、それは言わないでくださいよ」

エレベーターに乗り、下に降りるまでのあいだ今日の仕事の話をする。
今日はラジオで自分が書いてきた歌詞を読むものだった。



238 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:18


「でも藤本あれ、絶対松浦に見せた方がいいしょっ?」
「は、はあ!?な、何言ってるんですか。絶対嫌です!」
「でも、あれは松浦も喜ぶんじゃない?」
「よ、喜ぶとかじゃなくて!安倍さんも知ってるでしょう?ミキがそういうの苦手だって」
「でもねぇ・・・」
「とにかく、絶対亜弥ちゃんには今日のことは言わないでくださいよ?」
「なっちが言わなくてもいずれバレルでしょ」
「そ、それでもです!それじゃあ、お疲れ様でした」
「はいはい、お疲れー」

エレベータが下に着き、ドアが開くと共に安倍さんに挨拶をしてもうダッシュでかけていく。


「・・・相変わらず藤本は照れ屋だべ」

走り出す藤本の背中を見ながらなつみは笑いを堪えていた。



239 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:19


「はぁ・・・疲れた」

家へと着いたミキは部屋着に着替えてベッドにダイブ。
ベッドのクッションはミキの体をほどよく受け止めながら少しだけ軋む音をだした。


「・・・安倍さんも何を言うんだか・・・」

さっきのなつみとの会話を思い出しながら美貴はベッドの側へと放り出した鞄を見る。

「・・・」

体を起こして鞄のほうへと歩み寄る。
手探りで鞄を漁っていると一枚の紙切れがミキの手を掠めた。
その紙を掴み上げ、またミキはベッドへと寝転がる。


「・・・まじ、これってラブレターみたい・・」

取り出した紙切れを自分の顔のほうまで持っていき、それを目で読み上げる。

ミキが手にしているものは今日、ラジオで読み上げた自分が書いた歌詞。
書いているときはカップルみたいな詩だとは思っても、そこまで恥ずかしいとは思わなかった。でも、さんまさんたちの反応で自分が書いたものが友達にあてるものではなくて、好きな人に書く詩みたいだと分かってこれを読あげるときはすごく恥ずかしくなった。

恥ずかしすぎて、まともにトークが出来なかったし・・・



240 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:20


「・・・亜弥ちゃんと出会ってもう四年経つのかぁ」

目を閉じながら亜弥ちゃんと出会ったときのことを思い出す。


亜弥ちゃんとはコンサートで席が隣同士になったのがキッカケで仲良くなった。
メルアドを交換し、社交辞令で言った今度二人で遊ぼうという言葉を真に受けた亜弥ちゃんとほんとに二人で遊びに行ってそこからどんどん二人の仲が深まっていった。


「ほんと、カップルみたいな詩だ・・・」

ミキと亜弥ちゃんは誰が見ても分かるくらい仲がいい。
だから周りからもバカップルなんて言われてからかわれたりもする。


「・・・でも付き合ってるわけじゃないし・・・」

ミキと亜弥ちゃんは誰が見ても分かるくらい仲がいい。
だから周りからもバカップルなんて言われてからかわれたりもする。
だけど・・・



241 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:21


「付き合っているわけじゃあないけど、・・・でもないとも言い切れないか」

彼女のことを思い出しながらポツリと呟く。

言い切れないのはミキの彼女に対する態度。
だって彼女に対してのミキの態度は周りと比べても分かりやすいくらい違う。

他のメンバーの頼みごとは渋々でも彼女のお願いは何でもきいてあげるし、他のメンバーには甘えられなくても彼女には素直に甘えることが出来る。
だから周りにもそういう風に言われても仕方がない。


「・・・まあ、お互い恋愛と友愛っていったら恋愛の気持ちの方が強いだろうし・・・」

それは彼女の目を見れば分かることだし、ミキの態度を見れば分かることだった。


「・・・だからなおさらこんなもの見せられないっての」


もう一度、顔のところまで紙をあげて今度は声に出して読んでみる。



242 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:22


あなたと会って もうすぐ 4年気づいてた?

初めて待ち合わせした交差点、憶えてる?

2人で

買い物したり
写真撮ったり
映画見たり

いつも笑ってる

でも

ケンカしたり
言い合ったり
電話で朝まで話したり

あなたの前だと 私はビックリしちゃうけど素直になれる

不思議です

だから今日は伝えたい

そんなあなたに


あなただから 「大好きだよ」




243 名前:きみはともだち ― キモチ ― 投稿日:2004/11/26(金) 07:23


「・・・やっぱ恥ずかしい・・・」

読み上げて一人顔を真っ赤にする。


この詩には短いけどミキの気持ちがいっぱい詰まっている。
四年間という、長いようでまだまだ短い亜弥ちゃんと出会ったときからのミキの気持ちが。


「・・・そんなあなたに・・・あなただから 大好きだよ・・・」

亜弥ちゃんには見せられない恥ずかしいミキの気持ちが詰まった詩。
最後の方を読んでみる。
何でだろう?ただ紙に書いてあることを読んでいるだけなのに心の中はすごく優しい気持ちになる。これが心を動かされるということだろうか?


そういう気持ちを感じる自分が妙に恥ずかしいけど嬉しい気持ちになる。


「・・・なんかこういうのもいいか・・な」


嬉しい気持ちを心の中で感じながら目を閉じる。
薄れていく意識の中で聞きなれた着信音が聞こえてくる。
だけどミキはそれを取らずに目を瞑り続ける。
だって、それが誰か分かっているから。
だからミキはその電話は取らないでおこうと思った。


― 今日くらいは彼女の声を聴かないで眠ろう ―


そう思ったミキは聞こえてくるメロディを子守唄にしながら眠りへとついた。





                           END

244 名前: k 投稿日:2004/11/26(金) 07:25


更新、終了。

ちょっと短い「 きみはともだち 」のその後の藤本さん。

最後の方は照れ屋な藤本さんを書きたかったんですが
イマイチ、文章力が足りなかった_| ̄|○
しかも、PCの調子が悪くてすぐに更新するはずだったのに、朝から更新。
眠いですw


218>>名無し読者さま

お腹、壊しませんでしたw
甘い話を書くのは苦手なんですが気に入ってもらったみたいで嬉しいです。


219>>ぁーゃ。さま

良かった。癒されましたかw
リクであやみきの甘いものということでしたが、こういうので良かったですかね?



235>>名無飼育さま

ありがとうございます。
ヤンタン最高!
ホント、もう藤本さん以上に照れてラジオを聴いてましたw




・・・・眠いので今回はこれで失礼します。



245 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/26(金) 23:25
ヤンタン聞いて歌詞に激しく興奮しましたが
その歌詞を作る過程での藤本さんの心情を想像した方が興奮する事に気付きましたw
246 名前:k 投稿日:2004/11/29(月) 21:03

更新開始


247 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:05


上海ハニー 番外編 「よし!デート日和」


248 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:07


「・・・・よ、よし!か、かけるぞ」


左手に携帯電話を持ち、右手で番号を押す。
全部の番号を押し終え、最後は通話ボタンを押すだけ。
その手は痙攣が起きたように震えている。


― ピッ 

通話ボタンを押し、恐る恐る携帯を耳へと持っていく。


さて、ここまでの作業に一時間もかけているやつは誰かというと、上海ハニーでお馴染の
目つきが怖くて恋人いない歴、年の数の藤本美貴で・・・ぐはぁ!


「・・・今は余計なことは言わないように」





す、すいません(;´Д`)          (VoV从 分かった?




249 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:07


― プルルル
       ドキドキ ―
― プルルル
       ドキドキ ―


コール音が長く続く。
その間、ミキの心臓はものすごく緊張している。


「・・・出れない状態なのかな?」

「・・もしもし?・・」

中々取らない電話に、諦めて電話を切ろうとしたら受話器の向こうから可愛らしい声が聞こえてきた。
聞こえてきた声に耳から話した携帯を慌ててまた耳元へと持っていく。



250 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:09


「も、もしもし!」
「あ、みきたん?ごめんね。すぐに電話取れなくて。今、勉強しに図書館にいたから・・」
「い、いや、全然平気だよ!・・・あ、それより今電話大丈夫?」
「うん!今、外に出たから平気」
「そう、あ、ごめんね?急に電話して」
「うんん、ちょっと煮詰まっていたから、みきたんの声が聴けて嬉しい」
「亜弥ちゃん・・」
「それより、何か用があったんでしょ?」
「あ・・うん、じつはね・・」

繋がらなかった電話から亜弥の声が聞けた美貴は嬉しくて、すっかり自分が亜弥に電話をかけた理由を忘れていた。
亜弥の質問に美貴はその理由を思い出し、またさっきの緊張が美貴を襲いだした。


「あ、あのさ・・」
「うん?」
「実は、友達から遊園地の無料(ただ)券貰ってさ、
 それで、その亜弥ちゃんが良かったら今度の日曜に行かないかなって・・・」
「・・遊園地?」
「・・うん。今度の日曜までが有効期限みたいでさ。
 それでせっかく貰ったのに使わないのは勿体無いかなって」
「・・・」

今日、美貴が亜弥に電話をかけた理由。
それは亜弥ちゃんをデートに誘うこと。



251 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:10


あの海での出会いの後、亜弥ちゃんと正式なお付き合い?をしたミキなんだけど、
実は、二人で遊びに行くということが一回も無かった。

まあまだ出会って一ヶ月だし、それに亜弥ちゃんとは住んでる所が違うからそうそう、会えない訳で・・・でも、メルアドと電話番号を交換したから、毎日のように連絡は取り合ってんだけどさ。


「・・・あの、駄目・・かな・・」
「・・・・」

せっかく一時間かけて電話をして勇気を振り絞って誘っているのに、肝心の彼女は電話の向こうで黙ったまま。
その沈黙が妙に怖かったりするんですが・・・


「・・あ、の亜弥・・ちゃん?」
「・・・期限が切れそうだからあたしを誘うの?」
「え?」
「みきたんは、遊園地に行きたいからあたしを誘うの?行ければ誰でもいいの?」
「亜弥ちゃん?」
「・・・」


ありゃりゃ、なんか変な方に雲行きが行ってない?
はぁ・・・やっぱこんな回りくどい言い方じゃあ亜弥ちゃんに失礼だよなぁ。



252 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:11


「・・亜弥ちゃん」
「・・・」
「ミキが悪かった。回りくどい言い方して・・・
 ホントはミキが亜弥ちゃんと遊びたいだけなんだ。
 別に亜弥ちゃんと遊べればミキはどこでもいいんだけど、
 友達から貰ったせっかくの券だからさ。
 どうせなら亜弥ちゃんと行きたいと思って・・」
「みきたん・・」
「でも、亜弥ちゃんが無理なら・・」
「行けるよ!っていうか絶対行く!」
「亜弥ちゃん?」
「・・・ごめんなさい。みきたんがせっかく誘ってくれたのにあんな言いかたして・・」


亜弥ちゃんのションボリした声が聞こえる。
その声にミキの中で亜弥ちゃんへの度合いがさらに大きくなっていく。




253 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/11/29(月) 21:13


「いいよ、ミキも言い方が悪かったし。・・・それじゃあ、日曜にミキと遊園地に行ってくれる?」
「うん!」
「へへ、良かった。・・あ、ごめんね。こんな長く電話して。じゃあ、亜弥ちゃん今度の日曜に駅前で待ち合わせでいい?」
「うん」
「オッケー・・じゃあ、時間とか決まったらまた連絡するから。じゃあね」
「うん、みきたん・・」
「・・何?」
「これって・・・デートだよね?」
「え?・・あ・・」
「えへへ、日曜楽しみにしてるね。じゃあ連絡待ってるから」

そう言って、さっきとは違って嬉しそうに亜弥ちゃんは電話を切った。
ミキはというと、そんな亜弥ちゃんの言葉に電話を耳に当てたまま暫く固まっていた。



254 名前: k 投稿日:2004/11/29(月) 21:17


短いですが更新、終了。


145:名無し読者さまからのリクで上海ハニーの続編です。
その後の二人をちょっとだけ書かせてもらいます。


245>>名無し読者さま

ヤンタンを激しく興奮どころか、本人より激しく照れながら聞いてましたw
いや、ほんと藤本さんはどうやってあの歌詞を書いていたんだろう?
松浦さんが羨ましいですw



今回の上海ハニーの続編は少しだけ長くなる予定なので
更新は少なくなると思います。


・・・それでは今回はこれで失礼します。



255 名前:k 投稿日:2004/12/03(金) 01:01

更新開始

256 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:04


待ちに待った、亜弥ちゃんとのデートの当日。
いつもは朝起きるのが苦手で目覚ましが鳴ってもなかなか起きないミキだけど、
今日は目覚ましが鳴る前に起きた。


「うーん・・・どれにしようかな・・」

自分のベッドに沢山の服を並べて今日着ていく服を選ぶがなかなか決められない。
いつもなら、適当にするのだが今日はなんていったって、亜弥ちゃんとのデート。
やっぱりそれなりに決めなければ。


「・・・よし、これにしよう」

起きてから三十分、ようやく今日着ていく服を選ぶ。
時計をチラリと見るがまだ待ち合わせには2時間もあった。


「・・・どんだけ早起きしてんだよ、ミキは・・・」

あまりの早起きに自分でも苦笑いしながらミキは準備をしていった。




257 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:06


十時に駅前に待ち合わせ。
昨日、亜弥にメールで連絡したことを確認する。

待ち合わせの駅はちょうど、二人の中間の距離にしておいた。
本当なら亜弥の住んでる町の駅でも美貴はよかったのだが、亜弥がどうしてもといい、この駅での待ち合わせになったのだ。


「・・・ちょっと、早く着きすぎたな」

時計を見ると、まだ時間には二十分もあった。


「まあいいか。亜弥ちゃんとの初めての待ち合わせだし」

時計を見ながらニヤニヤとする。
美貴は亜弥との待ち合わせに浮かれているので、美貴のニヤケ顔に周りの通行人が避けているのに気づいていない。

改めて言うが、藤本美貴は目つきが怖くて恋人いない歴が歳のか・・ぐはぁ!!!!


「だから、余計なことは言うなって」



川VvV)もう一回、しばこうか?      (´Д `;) ご、ごめんなさい




258 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:07


亜弥を待ちながら周りを見渡す。
日曜なだけにヒトが多い。
少しだけ、この人の多さに美貴は酔いそうになる。


「なんでこんなにヒトが多いんだよ!」

それは日曜だから・・・
というのは美貴の頭には無く、美貴はこの人ごみの多さに不機嫌になっていった。
その美貴の不機嫌のオーラに美貴と同じように待っているヒトが美貴から離れているのに美貴は気づいていない。


「はあ・・亜弥ちゃんはまだかな・・」

もう少しで待ち合わせの時間になる。


「みきたん!」

時計を見ていると亜弥の声が聞こえた。
美貴は人ごみの中から亜弥を探す。


「あ!亜弥ちゃん!」

人ごみの中から亜弥を探し当てた美貴。
たとえウォーリーを探せが出来なくとも、それが亜弥に変われば瞬時に探し出せる自信が美貴にはあった。


「亜弥ちゃん!」
「みきたん!」

亜弥が嬉しそうに美貴のもとへと駆け寄っていく。
その姿に口元が緩む。




259 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:08


「ごめんなさい。待ちましたか?」
「いや、美貴も今来たところだよ。
 それより、この人ごみの中でよく美貴を見つけられたね」
「え?・・・あ、の・・みきたんの周り誰もいなかったんですけど」
「は?・・・あ」

何故か美貴の質問にぎごちなくなる答える亜弥。
亜弥の言うように周りを見渡すと美貴の周りには誰もいなかった。


「・・・はは・・また怖がられたのかな・・・」

自分の周りに誰もいなかったのに気づかなくて少しだけショックを受ける美貴。
そんな美貴を亜弥が慌てて慰めた。


「あ、でも、そのおかげですぐに見つけられたし・・」
「うん・・そうだね」

亜弥に慰められるがやっぱり少しだけへこむ。
目つきが悪いと怖がられるのはもう慣れたがなにもこんな亜弥とのデートの日にまで
怖がられるとは・・・
分かってはいたが少しだけ美貴はへこんだ。



260 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:09


「あ、そうだ!あのね・・」

へこんでいる美貴に亜弥が話題を変える。


「さっきね、梨華ちゃんからメールがきて、梨華ちゃんたちも今日はデートするって言ってました!」
「へーそうなの?」
「うん!しかもさやかさんたちとダブルデートって言ってましたよ!」
「へ?ダブルデート?」
「うん。梨華ちゃんと吉澤さん、さやかさんと後藤さんと四人で遊びに行くんだって言ってました」
「・・・・」
「ん?どうしました?」
「あ、いや別に・・・ちょっと嫌な予感が・・」


亜弥ちゃんの言葉にミキは嫌な考えが過ぎった。


『そういうや、あの券って、ごっちんから貰ったんだよな』

後藤から無料券を貰ったときのことを思い出す美貴。

261 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:10


『ミキティ、これあげる』
『何?これ』
『遊園地の無料(ただ)券。これ、今週までなんだけどさ、いちーちゃんが忙しくて行けそうにもなくてさ。捨てるのももったいないからミキティにあげるよ』
『でも、ミキ遊園地なんて行かないし・・・』
『あややと行けばいいじゃん』
『え、亜弥ちゃんと?』
『そう、二人ともまだデートらしいこととかしてないでしょ。ならコレを理由にして誘えばいいじゃん』
『・・・・ごっちん』
『んあ?』
『ありがとう』
『いえいえ、じゃあ上手くやってよ』
『うん!』


ごっちんから券を貰ったミキは有頂天で亜弥ちゃんにどうやって言おうかって考えてたんだよね。


『・・・ごっちん、どしたの?』
『あ、よしこ。今度の日曜、梨華ちゃんたちと遊園地でダブルデートしない?』
『?・・・いいけど、ミキティは?』
『あは!それならもう手は打ったから』
『ふーん?・・・それならいいけど』


なんて、ミキの後ろでそんな会話を二人がしてるとも知らずに・・・




262 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:11


「・・・・」

そういや、ごっちんが直前まで色々と聞いてきたよな。
待ち合わせはどこなのかとか、時間は何時だとか。

なぜか嫌な考えが拭いきらないミキは思わず考え込んでしまった。
隣に亜弥ちゃんがいるのも忘れて。


「・・・痛て!」

ミキの腕に軽く痛みがはしった。
振り向いてみるとそこには怒った顔の亜弥ちゃん。


「亜弥ちゃん?」
「・・・何考えていたんですか?」
「え?」
「せっかくのデートなのに。難しい顔して、こっちを向いてくれないし・・・」

亜弥ちゃんは口を尖らして抗議する。
何か前にも見た光景だよね?

そんなことを思っていたら亜弥ちゃんが足早に歩き出した。



263 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:12


「あ、亜弥ちゃん!」
「・・・」
「ごめん、亜弥ちゃんがいるのに考え事なんかして」
「・・・」
「今からは亜弥ちゃんのことだけ考えるから、ね?ごめん」
「・・・」
「・・・亜弥ちゃーん(泣)」

スタスタとミキの前を歩く亜弥ちゃんをミキは情けない声でついていく。


「亜弥ちゃん、ごめんってば!」

なおも先に歩く亜弥ちゃんの手を取る。
ふいに亜弥ちゃんが足を止めてミキの方に振り向いた。


「亜弥ちゃ・・!」
「・・・」

亜弥ちゃんがミキの方に顔を向ける。
その顔は拗ねたような、泣くのを堪えているようなそんな顔をしてミキを見ていた。


「・・・みきたんの、バカ」
「・・・ごめんね、亜弥ちゃん」
「もういいです。せっかくのデートでケンカなんてしたくないから・・」
「亜弥ちゃん」

彼女の手がミキの手を強く握る。
その手の温度にドキドキしながらミキもごめんなさいの気持ちを込めて優しく彼女の手を握り返した。



264 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:13


「亜弥ちゃんは遊園地とかは好きなの?」
「好きですよ。結構りかちゃん達とも行きます」
「へーそうなんだ」
「みきたんは?」
「ミキ?ミキはあまり行った記憶はないなぁ」
「そうなんですか?」
「うん」

彼女と遊園地に向かいながら他愛の無い話をする。
どうやらさっきのことはもう怒ってないみたいだ。
そのことに少し安心した。


「亜弥ちゃん、お昼どうする?」
「あ、あたし作ってきました」
「え?」
「あの、サンドイッチとか簡単なものなんですけど・・・」
「亜弥ちゃんが?」
「・・はい」

そう言って少し顔を赤らめる彼女。
ミキは亜弥ちゃんのそんな姿が可愛く思えた。



265 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:14


「あの、嫌でした?」
「へ?」
「お弁当、作ってくるの・・」

何も言わずに彼女を見ていたミキに亜弥ちゃんが不安げな顔をする。
その顔を見て、ミキは慌てて答えた。


「いや、全然嫌じゃないよ!むしろワザワザ作ってきてもらって嬉しいぐらいだよ! 
 楽しみだなぁ、亜弥ちゃんのお弁当」
「本当?」
「うん!ホント、ホント!」
「えへへ、良かったぁ」

ミキの言葉に嬉しそうにする亜弥ちゃん。
ハア・・・まじ可愛いすぎだよ・・

亜弥ちゃんは、ミキの言葉が嬉しかったのか早く早くとミキを急かす。
その姿にミキの頬は緩みっぱなし。


「みきたん、早く行きましょう」
「うん」

ミキも先を行く亜弥ちゃんの後を追う。


・・・さて、皆さんもう気づいているかも知れませんが、亜弥ちゃんが敬語です。
ミキとの電話のときは普通に喋っていたのに今日は敬語です。
別に亜弥ちゃんは怒ってはいません。けど敬語です。
それは何故かというと・・・




亜弥ちゃんは好きな人と二人っきりになると敬語になるのです(本人談)




266 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:15


『 好きな人の前だと敬語になる 』 


好きなタイプの前だと自分を出せずに敬語になる亜弥ちゃん。
市井さんや石川さんとか知っている人の前だと素の自分を出せるらしいんだけど、
前にもそれが原因で好きな人とも上手くいかなかったとかで、結構そのことにコンプレックスを持っているらしい。


そのことにミキも最初はビックリしたんだけどね。
最初は敬語で喋るからミキの目つきが悪くて引かれたのかなって思っていたからさ。
ミキとしてはそんなのは関係なくてむしろ、自分の顔にコンプレックス持っていたからさ、亜弥ちゃんに嫌われたらどうしようってそればっか考えていたし。
だから、亜弥ちゃんがあの海でのお別れのときにミキのことをもっと知りたいから嫌いにならないでって言ったときには驚いた。

まあ結局、その日は好きと告白はしなかったものの、お互いが気にかけているということが分かって、二人ともメルアドと電話番号の交換だけで満足したんだよね。

それからは、毎日のように連絡を取り合ったんだけど、結構これが苦労したんだよ。
だって、亜弥ちゃんメールでも電話でも敬語だし。
ミキとしては亜弥ちゃんに絶対敬語をなくしてあげるって宣言したから、亜弥ちゃんに敬語を止めるようにあの手この手を使ったんだよね。
まあ、そのかいがあってか、亜弥ちゃんは電話では敬語を喋らなくなったんだけど・・・



267 名前:上海ハニー 番外編  投稿日:2004/12/03(金) 01:16


「亜弥ちゃん」
「ん?何ですか?」
「・・・・」
「みきたん?」
「いや、遊園地楽しみだね」
「そうですね」

ミキのなんてことはない会話に楽しそうに答える亜弥ちゃんだけど、ミキは心の中で軽いため息をついた。


『あー・・・やっぱり、まだ敬語だ・・』

敬語を話す亜弥に少々がっかりになる美貴。


『けっこう、ここ一ヶ月で少しは進展したと思ってたのになぁ』

メールでも電話でも敬語だった亜弥ちゃんをここ一ヶ月でどうにか敬語を止めさせたミキ。
だから、今日のデートでも少し期待をしていた。
ひょっとしたら亜弥ちゃんが普通に喋ってくれるのではないかと。


「どうかしました?」
「え?」
「なんか少しだけ浮かない顔してるように見えるから・・・」
「・・・いや、今日ちょっと早起きしすぎたから少しだけ眠くて・・」

亜弥ちゃんに心配されないように言う。


「みきたんも、早起きしたんですか?」
「も、ってことは亜弥ちゃんも早起きしたの?」
「えへへ、だって今日のデートすごい楽しみにしてたから」
「・・・そうなんだ」

ミキの顔を見て、可愛らしく笑う亜弥ちゃん。


『ミキってば馬鹿だよなぁ。亜弥ちゃんは純粋にミキのことを好きでいてくれるのに・・
 よし、今日はせっかくのデート日和なんだから亜弥ちゃんとのデートを楽しもう』


亜弥の笑顔を見てミキはさっきまで自分が考えていたことが馬鹿らしくなってきた。
そして、そんな考えを捨て、今日くらいは何も考えずに楽しもうと思った。




268 名前: k 投稿日:2004/12/03(金) 01:18

更新、終了


269 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/03(金) 12:29
相変わらず面白い...!
二人の関係がもどかしい(笑)
270 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/04(土) 01:07
上海ハニーの続編リクした者です。
お礼が遅くなり心苦しい限りです。ありがとうございました!
最っ高におもしろいです!!
はちゃめちゃなデートになりそうな予感…w
271 名前:k 投稿日:2004/12/06(月) 08:28

更新開始


272 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:32


今日くらいは何も考えずに楽しもう。

ミキはついさっきまでそう考えていた。なのに・・・


「・・・なんで、ごっちんたちがいるのさ」

遊園地に辿りついたミキと亜弥ちゃん。
そこには何故か入り口で待っているごっちんと市井さん、そしてよっちゃんと石川さんがいた。
驚くミキと亜弥ちゃんにごっちんが声をかける。

「あは、ミキティ遅いよ」
「いや、遅いよじゃなくて、なんでここにいるのかな?」

ミキは極力優しく聞いてあげた。
この後の怒りのために。


「いやぁ、よしこたちとダブルデートしようと思ったらさ、
なんか、あややとミキティがデートっていうから。せっかくだから一緒にどうかなって・・・」
「・・・」

相変わらず、ふにゃっとした顔で言うごっちん。

『デートも何もあんた、前日までミキから詳しくどこにいくとか聞いてたじゃん。
 っていうか、この券くれたのごっちんでしょうが!』

そんなごっちんに、ミキは言いたいことを心の中でツッこむ。

「・・・ごっちん、たしか市井さんは今日は忙しいんじゃ」
「あは、たしかにいちーちゃんはゴトウとデートで忙しいよ」
「・・・」

もはや開いた口が塞がらない。
というか、今のごっちんに何を聞いても無駄だろう。
ミキは怒るのをやめて諦めてこの状況を受け入れることにした。




( ´Д`)<あは♪       いや、あは♪じゃなくて・・>(VoV;从



273 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:33


「はぁ・・・またこのメンバーか・・・」

せっかく今日は亜弥ちゃんと二人きりでデートだと思っていたのに・・・

遊園地に入りながら、軽くため息をついているとよっちゃんがミキのところに来た。

「ミキティ、ごめんね。せっかくのデートなのに・・・」
「・・・なら、なんで来たんだよ」
「いやぁ、ごっちんが誘うから何も考えずに来ちゃって」
「はあ・・もういいよ。この券だってごっちんから貰ったもんだから、ミキも文句が言える立場じゃないし」
「ああ、それだけどさ。この券、ごっちんがわざわざミキティにって、準備したんだよ」
「え?」

よっちゃんの予想だにしない言葉にミキは顔をあげる。

「ごっちんが、最近ミキティが亜弥ちゃんに会えなくて元気がないからって。
 ウチやごっちんの口からリカちゃんや市井さんの話を羨ましそうに聞くミキティに
 元気になるようにってごっちんが準備したんだよ」
「ごっちんが・・・」

ごっちんのほうを見ると市井さんにじゃれていた。

「ごっちん・・・」
「ね?だからごっちんのことは怒らないで」
「そんなの・・怒れるわけ無いじゃんか」
「そ、よかった」

あの券をわざわざミキのために準備してくれたごっちんを怒るなんて出来るわけ無いじゃん。っていうか、逆にそんな気遣いをしてくれたごっちんに感謝したいくらいだ。



274 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:34


「・・でも、よっちゃん・・」
「ん?なに?」
「ミキと亜弥ちゃんのデートをセッティングしてくれたのは感謝するけど、なんでそこに
 よっちゃんたちが加わるのかな?」
「え?・・それは・・その・・デバガメ?・・・あははは・・」
「・・・」
「ご、ごめんなさい!!」

冷たい目でよっちゃんを見ると、よっちゃんは両手を拝むようにしてミキに謝りだした。


「だって、こんな面白そうなのってなかなかないし」
「・・よっちゃん」
「ひっ!ごめんなさい」
「はぁ・・・もういいや。そのかわり、ミキと亜弥ちゃんのジャマだけはしないでよ」
「それは勿論。ウチらだってデートなんだからそんな野暮なことはしないって」
「・・・だといいんだけど」

よっちゃんのその言葉に若干の不安を感じながらミキたちは遊園地へと入っていった。



275 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:36


「亜弥ちゃん」

石川さんたちとミキの前を歩く亜弥ちゃんに声をかける。


「なに?」
「ごめんね」
「なにが?」
「せっかく、二人で遊ぼうと思ったのに」
「ふふ、いいよ。大勢で遊ぶのも楽しいし」

亜弥ちゃんは気にしてないという風にミキの横へと並んだ。

「それより、みきたんのほうが実はがっかりしてるでしょ?」
「へ?」
「せっかくのデートなのに邪魔がはいって」
「な!?」
「あたり?」
「ぐっ・・・・あたりです」
「へへ、ビンゴ!」
「!!」

自信たっぷりにミキの気持ちを当てた亜弥ちゃんは嬉しそうに腕を絡めてくる。

『亜弥ちゃんって、市井さんたちがいる前だとホント、くっつくよなぁ』


その行動にミキは驚いたけど、絡めてくる腕を外そうとは思わなかった。
だって、そこに亜弥ちゃんの胸が当っているから。



276 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:36


『うーん・・・相変わらずナイスバディな胸で・・』

デレッと鼻の下が伸びそうになったときに、ごっちんと目があった。


『やーい・・ミキティのエロオヤジ。エロティ』
『・・・・』

口には出さないが目を見れば分かるごっちんの心の声。
亜弥ちゃんに腕を絡まれているから否定できるわけでもなく(単に外したくないだけ)
ミキはごっちんのその心の声にただ顔を真っ赤にするしかなかった。





( ´Д`)<・・・・         ごっちん、何その目は?>(VoV;从




277 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:37


「よーし、それじゃあ遊ぶとしますかぁ」
「「「「おー!」」」」
「・・・・」

・・・何故かよっちゃんがその場を仕切る。

「じゃあ、定番のアレ乗ろうぜ」

よっちゃんが嬉しそうにあるアトラクションを指す。
それを見て、ミキは顔が青くなるのが分かった。
よっちゃんが指したもの・・・それは絶叫系のものだった。

「あ、のよっちゃ・・」
「きゃー楽しそう!みきたん、早く行こう」
「あ、亜弥ちゃん、あのね・・・」
「いちーちゃんゴトウあーいうの苦手だからいちーちゃんの腕にしがみついていい?」
「はいはい」
「ごっ・・・」
「梨華ちゃん、怖かったらウチにしがみついていいからね」
「ひとみちゃんったら」
「・・・・」


ミキ以外の全員が喜んで絶叫系のアトラクションのほうへと歩いていく。


「・・・お願いだから誰かミキの話聞いてよ・・・」


涙目になりながらミキも皆の後をついていった。



278 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:38


ジェットコースターからは様々な声が聞こえてくる。


「「「きゃー!!!!」」」

可愛らしく叫ぶもの


「「うわー!!」」

楽しんで叫んでいるもの


そして・・・

「ぎゃー!!!!!」

本気で怖がって叫んでいるもの


実に様々な声が飛び交っていた。



「うー・・・気持ち悪い」

一人、よろよろとしながら歩く美貴。
他の四人は何でもないように楽しそうには話している。


「みきたん、大丈夫?」

よろよろと歩いている美貴を心配して亜弥が顔を覗き込む。

「うー・・だいじょう・・ぶ」

口では大丈夫と言いながらも美貴の顔をものすごく青ざめていた。


「少し休憩しよ。ね?」
「・・・うん」

近くにあったベンチへ亜弥に支えながら座る美貴。
亜弥はそんな美貴をとても心配そうに見ていた。



279 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:39


「あれ?ミキティ気分悪いの?」

ベンチに腰掛ける二人を見てひとみが声をかける。
そんなひとみに大丈夫だと言おうとした美貴を亜弥が制した。


「みきたん、昨日はあまり寝てないみたいでそれで少しだけ気分が悪くなったみたいなんです。」
「そうなんだ。んー・・・じゃあどうしようか。これからちょっと腹ごしらえに何か食いに行こうと思ってたんだけど」

時計を見ながら話すひとみ。
美貴も時計の方に目をやるとちょうど、お昼時の時間になっていた。


「あ、先に食べていていいですよ。みきたんの気分が良くなればすぐに合流しますから」
「そう?」
「はい。あたしたちのことは気にしないで食べに行ってきてください」
「あややが言うなら・・・じゃあ、ミキティのことお願いね」
「はい」

そう言って、よっちゃんはミキを亜弥ちゃんに預けて行ってしまった。
っていうか、よっちゃん。こんなカッコ悪いミキと亜弥ちゃんを二人っきりにさせないでよ。
そう言おうと思ってよっちゃんに手を伸ばすけど気分が悪くてそれは出来なかった。


「「・・・・」」

沈黙が二人を襲う。

ミキ、ものすごく居心地が悪いんですけど・・・



280 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:40


「みきたん」
「は、はい!」

亜弥ちゃんに急に呼ばれて声が裏返る。
そんなミキを亜弥ちゃんは可笑しそうに見ている。

「・・みきたん、ひょっとして絶叫系とか苦手でした?」
「・・あ、その・・・」
「やっぱり」
「・・・すいません」
「ふふ、なんで謝るんですか?」
「だって・・・」


カッコ悪いじゃん。
酔って情けない姿を見られるのって。
まあ、現にその状態を見られたミキはカッコ悪いけど。

「そいうのって、隠す方があとあとバレてカッコ悪いんじゃないですか?」
「うー・・・そうです」

ミキの情けない声に亜弥ちゃんはクスクスと笑い出す。

「乗る前に言えばいいのに」
「言おうとしたけど誰も聞いてくれなかった」

さっきのことを思い出して少しだけむくれてみる。
そんなミキに亜弥ちゃんはまた可笑しそうに笑い出す。



281 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:41


「みきたん」
「ん?なに?」
「まだ気分が悪い?」
「んー・・・まだグラグラする」
「そっか、じゃあちょっと待っていてくださいね?」

亜弥ちゃんは鞄から何かを取り出すと小走りで近くのお店へと走っていった。


「はい、みきたんここに頭を置いて?」
「え?」
「ここ」
「え・・・あの・・でも」

戻ってきた亜弥ちゃんが指した場所にミキは赤くなって戸惑う。
だって、亜弥ちゃんの指した場所がヒザなんだもん


「早く」
「え・・いや・・でもですね」
「もう、いいから」
「うわ!?」

まだ渋っているミキに亜弥ちゃんが強行手段に出る。
強引に亜弥ちゃんのヒザに頭を置かれた。
そう、いわゆるヒザ枕状態。



282 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:41


「はい、少し冷たいけど我慢してくださいね」
「え?・・ひゃ!?」

亜弥ちゃんのヒザに頭を置かれたと思ったらオデコに冷たいものを置かれた。
置かれたものは冷たく塗らされたハンカチ。
亜弥ちゃんがさっき、走って持ってきたものはコレだったんだと認識すると同時に今の状況を理解するミキ。

「あ、の亜弥ちゃん・・」
「今は喋らないでいいですよ。気分が悪いときは少し横になったほうがいいですから」
「・・う・・ゎぁ・・」

ハンカチに手を軽く乗せ、ミキの髪を優しく梳いていく亜弥ちゃん。
その行動に自分の顔が熱くなるのが分かる。今度は気分の悪さとは別の意味で頭がグラグラしてきた。


「「・・・・」」

何も喋るなといわれたけど、結構この間って精神的にきついよね?
いや、亜弥ちゃんはどうか分からないけど、ミキとしてはこの沈黙は恥ずかしさと情けなさですごいきついんですが・・・


緊張で体が強張っているのが分かる。
自分の意識が亜弥ちゃんの手と膝へと集中していく。




283 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:42


「ふふ」
「?」

緊張しているミキの頭の上から亜弥ちゃんの笑い声が聞こえた。

「・・亜弥ちゃん?」

ミキはハンカチをずらして亜弥ちゃんを見上げた。

「ん?」
「いや、亜弥ちゃんが笑っているから・・・」

見上げた亜弥ちゃんはミキのことを可愛らしく見下ろしている。
ただ、それだけなのにミキの心臓は高鳴っていく。


「なんで笑っていたの?」
「思い出していたから」
「え?」
「みきたんと出会った日のことを思い出していたんです」
「ミキと?・・・」

亜弥ちゃんの言葉に寝かしていたからだを起こす。




284 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:42


「ミキと会った日って、・・・あの海でのこと?」
「はい」

亜弥ちゃんはあの時のことを嬉しそうに話した。

「みきたんが吉澤さんとビーチバレーをしたときに二人とも倒れたときがありましたよね?」
「・・・うん」

あの時のことを思い出して少しだけ恥ずかしくなった。

「あの時、・・・倒れたみきたんと吉澤さんをパラソルの下まで運んだときにみきたんの顔に砂がついていたから濡れたタオルで拭いてあげてたんです」
「・・・へぇ・・・」
「それで新しいタオルでもう一度顔を拭くために鞄からタオルを取り出そうとしたらみきたんがあたしの手を掴んできて・・・」
「へ?」

亜弥ちゃんの口から思わないことが出てきて声が裏返った。

「手を掴まれたからみきたん、起きたのかなと思ったらまだ目を瞑っていて・・」
「・・・」
「それで、みきたん?って呼んだらものすごく嬉しそうな顔になって・・」
「・・・・」
「その寝顔がすごく可愛くて・・・」

亜弥ちゃんの言葉に顔がものすごい早さで赤くなる。
ミキってば、寝ているときに亜弥ちゃんの手を握るなんてなんて大胆な。




285 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:43


「そ、そうなんだ」
「みきたんの寝顔、とっても可愛かったですよ」
「あ、ありがとう」

亜弥ちゃんの言葉に照れてミキは鼻の頭を掻いた。

何なんだ?この雰囲気の甘さは?
マイちゃんがこの場にいたらきっと砂糖をはいているに違いない。
そのくらいミキと亜弥ちゃんの雰囲気は良かった。


「あ、亜弥ちゃん」
「なんです?」
「ミキ、お腹すいた」
「あ、じゃあ吉澤さんたちのところに戻りますか?」
「そうじゃなくて・・」
「ん?」
「いや、だから・・・」
「?」

言いにくそうにするミキに亜弥ちゃんはハテナ顔。
あーやっぱり言わなきゃ駄目なのね。




286 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:44


「あの、亜弥ちゃん。ミキお腹がすいたんだ」
「?・・・はい」
「だから、その・・・亜弥ちゃんが作ってきてくれた・・・」

言いにくそうに言ったミキに亜弥ちゃんはあっという顔をした。

「・・・あたしが作ってきたサンドイッチ、食べます?」
「うん!」

ミキが言いたかったことを亜弥ちゃんは理解してくれたみたい。
照れくさそうに鞄からお弁当箱を取り出した。


「もう・・・みきたん、お弁当が食べたいならそういえばいいのに」
「だって、なんか催促しているみたいで・・・」

鞄から取り出したお弁当箱のなかからは美味しそうなサンドイッチが。



287 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:45


「これ、全部亜弥ちゃんが作ったの?」
「はい」
「うわー・・・すごい美味しそう」

卵にハムにツナサンド。お弁当の中からは色とりどりのサンドイッチ。


「はい、どうぞ」
「いただきまーす」

亜弥ちゃんから渡されたサンドイッチを一口食べる。

「・・モグモグ・・」
「・・・美味しいですか?」
「・・・モグモグ・・・」
「・・みきたん?」
「・・・ゴクン」
「「・・・・」」
「亜弥ちゃん・・・え!?何で泣きそうなの!?」
「・・・だってみきたんが何も言わないから・・・」
「わー!?ごめん!美味しい!すごく美味しいから!」


もう一つ食べようと思って、亜弥ちゃんのほうを振り向いたら何故だか泣き顔の亜弥ちゃんに焦るミキ。




288 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:45


「ご、ごめんね亜弥ちゃん。美味しいからつい夢中で食べちゃって・・」
「・・・ほんとに?」
「ほんと!ほんと!だからほら!さっき食べたやつもう無いし」

そう言って、亜弥ちゃんに何もない両手を見せる。


「・・・美味しかった?」
「メチャクチャ!すっごい美味しかった!」
「えへへ良かった」

ミキのベタ褒めに亜弥ちゃんは泣きそうなのを堪えて笑顔を作る。
その顔にミキの心臓は矢で刺されたようにキューンとなった。


「あ、亜弥ちゃん次はこれ食べてもいい?」
「うん!」

泣き止んだことにホッとしてミキは次のサンドイッチに手をつけた。
その間、亜弥ちゃんはミキが食べる姿を優しい目で見ていた。




289 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:46


「ふー・・・ご馳走様でした」

お腹を擦りながら満腹をアピール。
亜弥ちゃんが作ってきたお弁当はものの見事にカラになった。

「亜弥ちゃん、美味しかったよ。ありがとう」
「にゃはは、どういたしまして。はい、みきたん」
「あ、ありがとう」

食後のお茶にと、亜弥ちゃんが注いでくれた紅茶を受け取る。

はぁ・・・亜弥ちゃんの作ったサンドイッチは美味しいし、なんかいい雰囲気だし、
すごい満足です。

ひとり、幸せに浸っていると亜弥ちゃんがミキの方へと向いた。


「みきたん、もう気分は良くなりました?」
「え?あ、うん。大分良くなったよ」

ミキの気分の良さを聞いてくる亜弥ちゃん。
そういやミキ、気分が悪かったんだよね。
今更ながら、自分がどういう状況でここに座ったのかを思い出す。



290 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:46


「気分がいいならそろそろ皆の所にいきます?」
「あ・・・」
「ん?」

返事を渋るミキに亜弥ちゃんは顔を斜めにして聞き返す。

「あ、の亜弥ちゃん・・」
「なんです?」
「もう少しここに居ていい?」
「え?」
「い、嫌ならいいよ!べ、別にミキ亜弥ちゃんに膝枕して欲しいとか思ってないし!」
「・・・」
「あ・・・」


思わず本音が出た口を押さえるがもう遅い。
亜弥ちゃんを見ると顔を真っ赤にしていた。

ミキはそんな亜弥ちゃんの顔をカワイイと思いながら心の中では逆切れ状態。

『だって亜弥ちゃんに膝枕してほしいんだもん!さっきは緊張して全然、感触とか分かんなかったんだもん!ミキ、お弁当とか食べた後に膝枕してもらうのが夢なんだもん!』


と、小さな夢を心の中で逆切れしながら語っているが亜弥の顔は赤くなったまま。




291 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:47


「あ、あの亜弥ちゃん今のは・・」
「・・・いいですよ」
「へ?」

今のは冗談でしたと言おうと思った美貴に亜弥は赤くしながら小さく頷く。


「え?あのあやちゃ・・」
「・・・いいですよ」

聞き間違いかと思ったミキに亜弥ちゃんは同じ言葉を繰り返してミキのお願いを受け入れた。


「い、いいの?」
「みきたんがしたいなら」
「い、嫌じゃない?」
「全然」

そう言って、足をきちんと閉じる亜弥ちゃん。
こ、これはいつでもいいってことですか?

亜弥ちゃんのほうを見ると照れたようにミキのことを見ていた。




292 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:48


「あ、じゃあ・・・失礼します」

亜弥ちゃんのヒザに頭を置くために体を少し斜めにする。
緊張しながら亜弥ちゃんのヒザへと少しずつ近づいていく。

「「・・・・」」

す、すごい緊張してきた。
斜めにした体を支える腕が若干プルプルしている。
ミキの夢が叶うまであと少し。
緊張と期待に胸を膨らませながらミキは亜弥ちゃんのヒザに頭を置こうとした。



― ピリリリリ


― ビクッ ―


突然の着信音にビックリして飛び起きる。


「な、何!?」
「みきたん、鞄から聞こえますよ」

亜弥ちゃんが指した方を向けるとミキの横に置いてあった自分の鞄からケータイの着信音が鳴り響いている。

鳴っているケータイを取り出すとそこには『 よっちゃん 』と書かれた文字。




293 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/06(月) 08:52


「・・・もしもし?」

ケータイを耳に当てるとザワザワとした騒音が聞こえる。
きっと、フード店の中からかけているんだろう。


『あ?もしもしミキティ?もう気分は大丈夫?』
「・・・うん」
『それなら、今、うちら休憩所のほうにいるから、ミキティとあややも早くおいでよ』
「・・・わかった」


ケータイを切り、亜弥ちゃんのほうを見ると片付けの準備をしている。


「電話、吉澤さんたちでした?」
「・・うん。今、休憩所のほうにいるから早くおいでって・・・」
「じゃあ、もう行きます?」
「・・・うん」

片付けをしながら聞いてくる亜弥ちゃんにミキはがっかりしながら答える。

『・・・亜弥ちゃんの膝枕・・・』

よっちゃんの電話でさっきの甘い雰囲気は全然ない。
せっせと片付けをする亜弥ちゃんを見ながらミキの小さな夢はユメに終わった。




从;VoV)<亜弥ちゃんの膝枕・・・    (( ( 从‘ 。‘)




294 名前: k 投稿日:2004/12/06(月) 08:58

更新終了


寸止め膝枕。



269>>名無飼育さま

ありがとうございます。
このデートで少しは二人が進展するよう頑張りますw


270>>名無し読者さま

リクありがとうございました。
期待に応えられるものが書けるか分かりませんが
楽しく読んでもらえれば嬉しいです。

今回はその後の二人なので、ちょっとだけ甘い雰囲気にもっていこうと
思っています。



・・・それでは、今回はこれで失礼します。



295 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/06(月) 22:51
吉澤め〜
作者様、何卒美貴様にもう一度チャンスを…
296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 13:52
上海ハニーの本編がわからない・・
297 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/12/11(土) 21:00
作者さんの前スレ『桜の木の下で』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1082540107/
上海ハニーは24からです。
他の作品も面白いのでぜひ読んでくださいね。
298 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/11(土) 22:42
教えてくれてありがとうございます!!
299 名前:k 投稿日:2004/12/12(日) 18:06

更新、開始


300 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:11


「あ、おーい!こっちだよ!」

休憩所に着いたミキと亜弥ちゃんは四人を探す。
すると後ろの方からミキたちを呼ぶ声。
振り向くと、四人が待っていた。


「ミキティ、気分はもういいの?」
「・・・うん」
「その割にはなんか浮かない顔しているね」
「・・・そう?」
「なんかあった?」
「・・・別に」

ミキのことを心配して色々聞いてくるごっちんにミキは不貞腐れて答える。
亜弥ちゃんの膝枕をジャマしたのはごっちんではないからミキはプイっと顔を逸らす。

ふと、よっちゃんたちの方を見るとこれでもかというくらいイチャついている。


『・・・ヒトのジャマしておいて・・・』

別にワザと美貴のジャマをしたわけではないひとみに美貴は怖いくらいの顔でひとみの方を睨む。





イチャ イチャ イチャ イチャ
( ^▽^) (^〜^0)             (VvV从<・・・・




 イチャ  イチャ
( ^▽^) (^〜^0)<ん?視線が・・・    (VvV从<・・・・




             クルっ            _, ,_
            (0^〜^)       (VvV从<・・・・





                            _, ,_ 
あ、あのミキティ?>(;0^〜^)          (VvV从<ヒトのジャマしてイチャ
                                 イチャするなよ






301 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:13


「あ、のミキティ何か怒ってる?」
「・・・別に」
「・・いや、そんな怒ってますよって顔で言われても説得力が・・・」
「・・よっちゃん」
「な、なに?」
「帰ったらお仕置きだから」
「は!?な、なんで!?」
「ミキの夢をジャマした罰」
「へ!?」
「そういうことだから」


そう言って、美貴はひとみにお仕置き宣言をすると、亜弥のほうへと歩いていった。
その姿をひとみはワケが分からないというように見ていた。



さて、お腹いっぱいになったところでまたアトラクションに乗っていく。
今度は亜弥ちゃんがそういうのを苦手というミキのことを考えてミキでも乗せそうなやつを選んでくれた。おかげでミキは酔うこともせずに楽しめることができた。




302 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:16


「じゃあ、次はどれにしようか?」
「んあ、いちいちゃん。そろそろ日が暮れるよ」
「あ、そうか。どうする?そろそろ出ようか?」

次々にアトラクションを乗りこなしていくうちに時間が過ぎ、日も暮れそうになっていた。
市井さんがそろそろ出ようかと提案するとごっちんが渋った。


「んあ、そうじゃなくてせっかく遊園地に来たんだからアレに乗らなきゃ」
「アレ?」

そう言ってごっちんが指したものを皆で見る。

「あれって、・・・観覧車?」


ごっちんが指したのもは観覧車だった。

「やっぱり、最後は観覧車でしょう!」

何故か得意げにごっちんが言う。

「じゃあ、これを乗ったらここを出てどっかにメシでも食いに行こうか」

ごっちんの提案によっちゃんが賛成してこの後の案を立てる。
それに皆が賛成してミキたちは観覧車のほうへと歩いていった。



303 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:16


「・・・ぅぁ・・」

「・・・ん?」
「どうしたの?みきたん」
「あ・・いや、今子供の声が・・」
「子供?」

観覧車へと向かう途中に子供の声が聞こえてきた。
辺りを見回すと、少し離れたところで子供が一人ポツンと立っていた。

「・・みきたん、あの子ひょっとして迷子・・かな?」
「どうだろう・・・でも、泣いているみたいだし・・・亜弥ちゃん、ちょっと待ってて」


ミキは亜弥ちゃんをその場に待たせ、泣いている子供のほうまで行ってみた。


「・・ひっ・・・っく・・まぁまぁ・・・」

泣いている子供の方に近づく。
どうやら、亜弥ちゃんがいうように迷子らしい。
必死に母親を呼んでいる。




304 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:18


「・・・おーい・・どしたぁ?ママとはぐれたのかぁ?」
「・・う?」
「迷子なのかい?」

ミキが声をかけると泣いていたその子は泣き止み、ミキの方をみた。

「・・ふっ・・うわぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「ふえ!?な、なんでミキを見て大泣きすんの!?」

・・・と思ったら盛大に泣き出しやがった。


「ちょ、泣くな!これじゃあ、ミキが泣かしてるみたいじゃん!」
「うわぁぁぁぁん・・・まぁま・・・」
「ど、どうしよう!?ほら、泣かないで。ミキがママを探してあげるから」

泣く子をあやすが一向に泣き止む気配がない。
ミキがその子を泣きそうになりながら見ていると、亜弥ちゃんが声をかけた。


「みきたん、どうしました?」
「あ、亜弥ちゃん。この子が泣きやまなくて・・・」


泣いているその子をよそにミキは亜弥ちゃんに泣きついた。



305 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:19


「よしよし。良い子だから泣かない。泣かない」
「・・・う?」

亜弥ちゃんが頭を撫でると大泣きしていた迷子の子は徐々に泣きやんでいった。

「ほっ・・・良かった。泣き止んだ」
「君、迷子なの?ママとはぐれたの?」
「・・・」

さっきまで大泣きだったその子は亜弥ちゃんの顔を見ると小さく頷いた。

「そっか。みきたん、この子迷子センターまで連れて行かないと」
「あ、そうだね。じゃあごっちんたちには先に行っていてもらうよ」

ミキはごっちんたちのほうまで走って行き迷子の子をセンターまで連れて行くことを伝えた。
そして、また急ぎ足で亜弥ちゃんの方へと向かっていった。


「じゃあ、亜弥ちゃん行こうか」
「おいで?ママの所まで連れて行ってあげるから」
「・・・まぁま?」
「うん、ママの所」

そう言って、亜弥ちゃんはその子の手を繋いだ。




306 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:20


手を繋がれたその子はヨタヨタと亜弥ちゃんに引かれて歩く。
歳はまだ・・・二才くらいかな?
可愛らしいピンクの洋服を着ている小さい女の子。
小さいその子は一生懸命亜弥ちゃんの手を握って歩いている。

「・・・ん?なに?」

亜弥ちゃんとその子の横をミキも一緒に歩いていると、その子が立ち止まってミキと亜弥ちゃんを交互に見始めた。

「・・・まぁま?」
「え?」
「・・・ぱぁぱ?」
「は?」


立ち止まってミキと亜弥ちゃんを見たと思ったらその子は急にミキと亜弥ちゃんを指してパパ、ママと言い始めた。
っていうか、ミキをパパって・・・・


「ぱぁぱ、てっ・・てっ・・」
「え?」

ミキのことをパパと呼び、手を伸ばしてくる。
ミキはそれが分からず、困っていると亜弥ちゃんが笑いながら声をかけた。

「みきたんとも手を繋ぎたいって」
「へ?ミキと」
「うん」
「てっ・・ぱぁぱ、てっ」

そう言って背伸びをしながらミキに手を伸ばすその子の手をミキもオズオズと掴む。
すると、その子は嬉しそうにミキに笑いかけた。




307 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:21


「えへへ」
「・・・」

純粋に、本当にミキと手を繋いでいるのが嬉しいと笑うその子に顔が真っ赤になる。
無邪気で可愛い。


『・・・こうすると親子みたいだな』

その子を真ん中にしながら三人で手を繋いで歩く。
その歩き方が親子みたいでミキは少しだけ嬉しくなった。


「親子・・・に見える」
「え?」
「なんか、子連れの夫婦みたいですね」


顔を赤くしながら嬉しそうに笑う亜弥ちゃん。
ミキも顔を赤くしながら亜弥ちゃんを見る。
だって、亜弥ちゃんもミキと同じように考えているなんて思わなかったから。




308 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:22


「・・ちゅかれた・・・」

不意にその子が足を止めその場に座り込む。
どうやら歩き疲れたらしい。
まあ、大人の足でセンターまでの距離は近くても子供にはすごく遠いだろう。


「疲れた?もう少しで着くんだけど・・・」

亜弥ちゃんがその子の目線に合わせてしゃがみ込む。

「・・・やぁ・・みあ・・ちゅかれた・・」
「みあ?」
「みきたん、この子の名前だよ」
「へー、みあっていうんだ」


『 みあ 』

どうやら、この子の名前らしい。
名前も聞かずにいたミキはそうとう間抜けだ。




309 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:23


「みあちゃん、もうちょっとだから頑張ろう?」
「うー・・やぁ・・」

相当疲れているのか、みあちゃんは、全然動いてくれない。
そんな、みあちゃんに亜弥ちゃんもさすがに困り顔。

ミキはそんな亜弥ちゃんをどうにか助けたくてあることを思いついた。
昔、自分がよくしてもらったこと。

「みーあ」
「う?」
「おいで?」

疲れて座り込んでいるみあちゃんに、ミキは手を差し出した。
その手をオズオズと掴むみあちゃん。
手を掴んだのを確認するとミキは力いっぱいこの子を持ち上げた。


「ほら!」
「ぅきゃあ!・・たかい・・たかい・・ぱぁぱ、たかーい」
「ほら、もう少しだから辛抱だぞ?」
「あい!」

ミキの問いかけに元気に答えるみあちゃん。
みあちゃんにミキがなにをしたかというと・・・


「みきたん、大丈夫ですか?」
「あー・・大丈夫。昔、よくミキもこうしてもらったから。子供って肩車とか好きなんだよね」
「そうなんだ」

そう、ミキがみあちゃんになにをしたかといえば、
自分の肩にみあちゃんを乗せた、いわゆる肩車をしてあげたのだ。
これにはみあちゃんも大喜び。ミキの頭の上ではしゃいでいる。




310 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:24


「たかーい・・・ぱぁぱ」
「痛!こーら、みあ、髪を引っ張るんじゃない」
「きゃー・・ぱぁぱ、こあーい」

そう言って、ミキの髪を引っ張ってイタズラするみあちゃん。
いや、こあーいじゃなくて、それ、全然怖がってないでしょ?
うー・・・子供になめられてるよ、ミキ。

「ほーら、みあちゃん。パパを苛めたらカワイソウだよ」
「パ、パパ!?」

亜弥ちゃんがミキのことをそう呼んで、みあちゃんをしかる。
亜弥ちゃんにそう呼ばれてミキは思わず、亜弥ちゃんのほうへと振り返る。
すると、亜弥ちゃんもみあちゃんと同じように悪戯っ子のような目でミキのことを見てきた。

「う?・・・ぱぁぱ、いちゃい?」
「そう、髪の毛引っ張ったらパパがカワイソウだよ。ごめんなさい、出来る?」
「あい!」

そう言って、元気よく返事をするみあちゃん。

「あ、亜弥ちゃん。パパって・・・」

ミキはというと、まるでみあちゃんの母親のようにしている亜弥ちゃんの顔を真っ赤にしながら
ただ見ているだけだった。



311 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:24


「・・ぱぁぱ」
「え?」
「ごめんちゃい」
「へ?・・・ああ、うん。もう怒ってないよ」
「いちゃい?」
「へ?・・ああ、うん、いたい・・」
「いちゃいのとんでちぇー」
「「・・・・」」

ミキの頭の上でごめんなさいをしたみあちゃんは、今度はミキの頭を撫でながらおまじないを唱えだした。
ミキはその仕草に思わず噴出した。
亜弥ちゃんを見ると、同じように笑っていた。


「ぱぁぱ」
「ん?」
「いちゃくなくなった?」
「あ・・・うん。みあのおまじないでもう痛くないよ。ありがとう」
「にゃはは」

ミキのことを頭の上から覗き込みながら聞いてくる、みあちゃん。
ほんと、こういう風にしてたらまるで家族みたいだ。
ミキがパパで、亜弥ちゃんがママ。
うん。なんかいいな、こういうの。


ミキと亜弥ちゃんとみあちゃん。
三人で家族の雰囲気を楽しんでいると、センターが見えてきた。




312 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:25


「美亜!」

センターのほうからみあちゃんを呼ぶ声。
そこに目を向けると、若い女の人と男の人が立っていた。
多分、みあちゃんの本当のお母さんなんだろう。


「まぁま!」

みあちゃんもお母さんを見つけたのか、ミキの上でジタバタと足を動かし始めた。
ミキは、そっとみあちゃんを降ろす。

「まぁま!」
「美亜!」

さっきまでミキたちに懐いていたのに、もう忘れたかのようにヨタヨタと本当のお母さんの所へ歩いていくみあちゃん。

お父さんがミキたちに気づいてお辞儀をする。
つられて、ミキたちもお辞儀を返す。
その時に美亜ちゃんのパパとママを見たのだが、何故、美亜ちゃんがミキと亜弥ちゃんをママ、パパと呼ぶのか美亜ちゃんのパパとママを見て納得した。


「・・・なんか、ミキたちに似てない?」
「・・・そうですね」


美亜ちゃんのパパとママはどことなくミキと亜弥ちゃんに似ていた。



313 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:26


「ありがとうございます。美亜をここまで連れて来てもらって」
「いえ、良かったね、美亜ちゃん。ママとパパに会えて」

お母さんの足にぴったりとくっついて離れない美亜ちゃんに亜弥ちゃんが声をかける。

「それじゃあ、あたしたちはこれで。・・・バイバイ美亜ちゃん」
「ありがとうございました」

親が見つかったのだからミキたちがここにいる理由はない。
挨拶をした後、美亜ちゃんにバイバイをして、その場を離れようとした。


「まぁま!ぱぁぱ!」

ミキたちの後ろから大きな声で呼ぶ美亜ちゃん。
二人して振り返ると、パパに肩車されながらミキたちに大きく手を振っている美亜ちゃんがいた。


「ぱぁぱ、まぁま!だいちゅきー!」

大きく手を振りながら大きな声で言う美亜ちゃん。
その横では本物のパパとママがニコニコ顔で見ていた。
ミキはその姿に少しだけ淋しくなったけど、美亜ちゃんに負けじと大きな声で手を振った。


「パパとママも美亜が好きだよー!」

そう大きな声で言うと美亜ちゃんが嬉しそうに笑った。


「ぱぁぱ、ばいばーい!」

美亜ちゃんは嬉しそうに手を振りながらミキたちと別れた。




314 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:26


「美亜ちゃん、可愛かったですね」
「うん」
「ちょっと、淋しいですね」
「そうだね」
「美亜ちゃんの手、暖かかったですね」
「・・うん」

観覧車までの道を歩きながら、少しだけ淋しい気持ちになる。
さっきまでミキと亜弥ちゃんの真ん中にいた美亜ちゃん。
ほんの僅かな時間だったけど、ほんのちょっとだけミキと亜弥ちゃんの子供だった美亜ちゃん。

さっきまで繋いでいた手が冷たく感じた。


「みきたん・・・」
「なに?」
「・・・・」
「亜弥ちゃん?」
「・・・手」
「て?」
「手、繋いでいいですか?」
「え?」
「駄目・・・ですか?」
「・・・どうぞ」


上目遣いで聞いてくる亜弥ちゃんにミキはオズオズと手を差し出した。
それを、亜弥ちゃんは恐る恐るといった感じで手を繋いだ。




315 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:27


「えへへ」
「・・・」

ミキと繋いだ手を嬉しそうに見る亜弥ちゃん。
そこでミキは気づく。
亜弥ちゃんがミキと二人きりの時に手を繋いでいることに。


『・・・亜弥ちゃんが市井さんたちがいないのにくっついたのってこれが初めてじゃあ・・・』

そう、亜弥ちゃんはミキと二人になるとあまりくっついたりしない。
市井さんや石川さんがいる前でしか素の自分を出せない亜弥ちゃんはいつもミキとはほんの一歩、距離を開けていた。

その亜弥ちゃんが自分から手を繋いできた。

さっきの膝枕はミキが気分が悪くなったのを少しでも楽になるようにと亜弥ちゃんが気遣ってしたものだった。だから、くっつくのとは少し違う。
でもこれは、確かに亜弥ちゃんからの意思表示。

亜弥ちゃんのミキに対してのキモチの意思表示だった。




316 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:28


「・・・亜弥ちゃんの手は、美亜ちゃんと同じで暖かいね」
「そうですか?」
「うん、あったかい」

繋いだ手に少しだけ力をこめる。
亜弥ちゃんがミキにしてくれたように、ミキも亜弥ちゃんに自分の気持ちの意思表示をする。


手を繋いでもいいかと聞いてきた亜弥ちゃんの心理はまだミキには分からない。
美亜ちゃんと別れて淋しいから繋いだかもしれないし、ただミキと手を繋ぎたいから言ってきたかもしれない。どちらも、ミキの都合のいいようにとれる。


でも、亜弥ちゃんのこの行動は、確かに亜弥ちゃん自身の気持ちの意思表示。
言葉はまだ敬語でも態度はミキへと心を開いてくれている。
それがミキにはとても嬉しかった。


だから、ミキも亜弥ちゃんの手を少しだけ、力を込めて握り返す。
ミキと亜弥ちゃんの距離が少しだけ縮んだ嬉しさを込めて。




317 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/12(日) 18:34

 
更新、終了。


_| ̄|○ 顔文字、失敗

藤本さんの顔が、
 _, ,_ 
(VvV从<イチャイチャするなよ

こうなるはずだったのに・・・_| ̄|○ 


みきあや親子。
お子さんは松浦さん似ですw



295>>名無し読者さま

ごめんなさい。藤本さんの松浦さんの膝枕はもう無いと・・ぐはっ!!!


す、すいません。考えておきます(;´Д`)      (VoV从 もう?無い?



296、298>>名無飼育さま

すいません。書く前に前スレの、と書くべきでした。
配慮がありませんでした。


297>>通りすがりの者さま

わざわざ、ありがとうございました。
それに、お褒めの言葉まで。ありがとうございます。m( )m


デートもそろそろ佳境に入ります。
藤本さんがどんなアクションを起こすかはまだ分かりませんが、
もうしばらく、このお話にお付き合いください。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。




318 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/12(日) 22:01
更新お疲れ様です。
あやみきも親子さんもキャワキャワ!ぼのぼのしてますね。
続き待ってます。更新頑張ってください。
319 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/14(火) 23:52
藤本、もっとガンガン行けよ!
お前がリードしないでどうするんだ!!
320 名前: k 投稿日:2004/12/20(月) 07:20

更新、開始

321 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:45


「すご・・・なに、この行列」

美亜ちゃんと別れて、観覧車の方へ向かったミキたち。
でも、そこには行列が出来ていた。


「おーい、ミキティ、あやや、こっちだよ」

キョロキョロと皆をさがしていたミキたちに気づいて、ごっちんが声をかける。


「ごっちん、なんかすごい人なんですけど・・・」
「んあ、そうだねぇ。皆、考えることは一緒なんだね」
「考えることって?」

ミキたちに声をかけたごっちんたちと合流する。
先に行っておいてと伝えていたので、ごっちんたちは結構最前列のほうで観覧車を待っていた。
おかげで、さして待たずに観覧車に乗れそうだ。


「ここの遊園地の観覧車のジンクスだよ」
「ジンクス?」

ごっちんの言っていることが分からないミキによっちゃんが教えてくれた。

何でも、この観覧車の頂上で、告白かまたはキスをするとその二人は結ばれるというジンクスがあるらしい。
どこの遊園地にでもありそうな話しにミキは呆れた。




322 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:46


「んな、縁結びの神社でもあるまいし・・・」

ミキはそんな観覧車のジンクスに鼻で笑うが、よっちゃんとごっちんはどうやら信じているらしい。
周りを見ると、確かにカップルばかりだった。


「ねぇ、ごっちん。もしかしてデートに遊園地を選んだのって・・」
「んあ・・ここの観覧車に乗る為」
「やっぱし」

ミキの問いに当然という顔をするごっちん。
まさかそんな理由で遊園地に来ていたとは思っていなかったミキは少しだけ呆れた。


「なんで市井さんと二人で来なかったの?」
「んあ?」
「いや、だからどうせなら市井さんとふたり・・」
「だって、ミキティはまだしてないでしょ?」
「え?」
「告白・・・まだちゃんとしてないでしょ?あややに」
「え・・・」

ミキの言葉を遮ったごっちんの口からは思わぬ言葉。


「ゴトウとよしこはもう告白して付き合ってるけど、
ミキティはまだ、あややに告白はしてないでしょう?」
「い、や・・そうだけど・・」
「だからほら、ちょうどいいキッカケになるでしょ?
 観覧車の頂上で告白すれば結ばれるって」
「・・・ひょっとしてごっちん、ミキの為に?」

ミキの言葉にごっちんはいつものフニャっとした顔をするだけ。
そういえば、よっちゃんが言っていた。この券はわざわざ、ごっちんが用意したって。



323 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:47


「ごっちん・・」
「んあ?」
「まだ、お礼言ってなかったよね。わざわざ券を準備してくれて嬉しかったよ。ありがとう」
「いえいえ、どうせミキティのことだからキッカケがなきゃ告白なんてしないだろうし」
「うぐっ!」
「まあ、だからミキティにはここの観覧車のことは内緒で遊園地の券をあげたんだけどさ」
「・・・ごっちん」
「と、いうわけだからばっちし決めるように」
「え?・・・・む、無理、無理、無理、無理!絶対無理だよ!そんな・・こく・・はくなんて」

ごっちんの言葉にミキは顔をこれでもかというくらいに真っ赤にして首を横にふる。
幸い、亜弥ちゃんは市井さんたちと話していてこっちの会話は聞かれていないけど、
そんな、ミキが亜弥ちゃんに告白なんて・・・出来るわけない。


「はぁ・・だからミキティには内緒にしたのに」
「へ?」
「よしことミキティに遊園地の券をあげたあと、相談したんだよね。
 ミキティに告白させることを言おうかどうか」
「そう・・だん?」
「うん。でも、よしこがミキティに言ったら絶対遊園地に行くのを渋るっていうから
 内緒にしていたんだ」
「よっちゃんが?」

・・・さすが幼なじみ。ミキのことをよく分かっている。

ごっちんはそんなミキを呆れたような顔で見ていたけど、それでも無理なものは無理。
ミキのことを考えて遊園地の券を準備してくれたごっちんには感謝するけど、でも、告白なんて・・・だって、全然心の準備とかしてないし、それになんて言えばいいのか考えてもいないのに・・




324 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:48


「絶対、ミキティはこういう風に言うって分かっていたから、直前まで言わなかったのに」
「だったら・・」
「ミキティ、ここまで来て言わないはないでしょう?」
「でも・・急に言われても」
「腹をくくればいいじゃん」
「んな、簡単に・・それに、まだ亜弥ちゃんに敬語・・・」
「敬語?」
「あ、いやなんでもない」

っと、これは亜弥ちゃんとミキとの約束だったんだ。



『 敬語を無くしたら言ってあげる 』

海で会ったときに亜弥ちゃんが言った言葉。
二人きりになると敬語になる亜弥ちゃん。
そんな亜弥ちゃんがミキに敬語を使わなくなったら、亜弥ちゃんのミキに対しての気持ちを言ってあげると、あの時、亜弥ちゃんはミキと約束をした。
そんな亜弥ちゃんにミキも、絶対に敬語をなくしてあげると亜弥ちゃんと約束をした。

だからお互い、気にはなっても告白はせずに付き合ってきた。



325 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:48


「もう、一ヶ月は経つでしょ?知り合って」
「あ・・うん」
「なら、告白してもいいんじゃない?」
「でも・・」
「大丈夫だよ。あややもきっとオーケーするから」

まだ戸惑っているミキに、ごっちんが後押しをする。
だけどミキは歯切れの悪い返事ばかり返す。


確かにお互い、気にはなっているけど・・・
ミキが告白しても亜弥ちゃんはオーケーしそうだけど・・・でも・・・

ごっちんの気遣いは嬉しいけど、ミキは亜弥ちゃんとの約束が頭の隅にあって、どうしても
決心がつかなかった。


そんな、生返事ばかりを返すミキによっちゃんが割って入る。


「まあまあ、ごっちん。そんな風に言ったら逆に告白しにくくなるって」
「むっ、よしこまで何言い出すのさ。せっかくのチャンスなのに」

ミキを説得しにかかっているごっちんは、よっちゃんに止められて納得いかないって顔になる。
でも、よっちゃんは気にせずにミキのほうを見た。




326 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:49


「こういうものはやっぱり、本人の気持ちが大事なんだから周りがどう言っても無理だよ」
「でもさぁ・・・」
「それに、ミキティとあややとの間で何か決まりごとのようなものが在るみたいだし?」
「え?・・・」

そう言って、ミキの顔を見るよっちゃんのその顔は、何もかも見通しているような顔をしていて、目が合ったミキは一瞬だけドキっとした。

「何?ミキティとあややの決まりごとって?」
「それは、二人にしか分からないよ。ね?ミキティ」
「・・・・」

よっちゃんの言葉にミキは黙ることしか出来なかった。
そして、そんなことを言うよっちゃんにミキは少しだけ、ほんの少しだけ腹がたった。


「・・・よっちゃん・・」
「ん?なに?」
「・・・」
「ミキティ?」
「やっぱ、よっちゃんムカつく」
「えぇ!?なんで!?」
「特に理由なし!」
「ぐは!」


ミキはよっちゃんの腹に一発、パンチを食らわした。
なんとなく、ミキと亜弥ちゃんの二人だけの約束によっちゃんが入り込んだのが気に食わなかった。
だから、ごっちんからの説得に助け舟を出してくれたよっちゃんに感謝をしながらも、ミキはぶっきら棒にしか返すことが出来なかった。




327 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:50


「んあ、仕方ないかぁ。ミキティが乗り気じゃないなら」
「・・・ごっちん、ごめんね。せっかく券とか準備してもらったのに」
「いいよ。ゴトウが勝手に計画したのも悪かったし。それにミキティとあややをデートさせてあげたいっていうのは、前かえら考えていたことだし」
「・・・ごっちん」
「あ、でも早く告白しないとあやや、誰かに取られちゃうぞ?」
「うん・・分かってる」

そう言ったミキに、ごっちんはまたいつものようにフニャっとした顔で笑った。
ミキはそんなごっちんの顔を見ながら、心の中で感謝をしていた。

『心配してくれてありがとう』・・と。




「・・・ご、ごっちん・・・」
「んあ?よしこ、そんなとこで何してんの?」
「・・・た、たすけて」
「んあ?」

ミキがごっちんの友情に感動している横でよっちゃんが腹を押さえながらごっちんに助けを求めていた。




( ´Д`)よしこ、何してんの?      (^〜^0川) ミ、ミキティのパンチがみぞおちに・・・


( ´Д`)大丈夫?            (^〜^0川) む、無理・・・ガク


( ´Д`)・・・んあ?          (゜〜゜0川) ・・・・




328 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:51


ごっちん、市井さん。


よっちゃん、石川さん。


そして、ミキと亜弥ちゃん。


という順番で観覧車が下りてくるのを待つ。



「いちいちゃん、観覧車楽しみだねぇ」
「そうだね」

「「・・・・」」


「観覧車に乗るなんていつくらいだろう?」
「ひとみちゃんは、高いところは平気?」
「うん。梨華ちゃんは?」
「あたしは、ちょっと苦手」
「へー、そうなんだ」
「うん」

「「・・・・」」


楽しく、手を繋ぎながらそれぞれが、観覧車が下りてくるまで会話を楽しそうに弾ませる。
だけど、ミキと亜弥ちゃんの間には会話が無い。
もちろん、手も繋いでいない。




329 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:51


一度、ごっちんたちの所に戻ってきたとき、ミキがごっちんに声をかけられるまでは
手はずっと、繋いでいた。
でも、ごっちんのミキを呼ぶ声が聞こえたと同時に亜弥ちゃんが手を離した。

ミキはそのときは、ごっちんの方に振り返って何でもないようなフリをしていたけど、
内心はちょっとだけ手を離されて淋しかった。


手を離した亜弥ちゃんはそのまま、石川さんたちのところへ。
ミキはその後姿をボーと見ていて、その間、全然こっちに振り返らない亜弥ちゃんに淋しさを感じていたけど、よっちゃんたちと観覧車の話をしながらその淋しさを紛らわせた。


そして、順番が近づくにつれてバラバラに並んでいたミキたちだけど、自然と組み合わせが決まっているかのように、さっきのような順番で並んでいた。

当然、ミキの横には亜弥ちゃんがいる
でも、お互い何も喋らない。
よそよそしいというか、緊張しているというか、多分、ごっちんたちと話していた観覧車で告白というのが、ミキの頭の隅には残っているせいか、ミキは何となく亜弥ちゃんに話かけづらくなっていた。


だから、意味も無く

「まだかな」

とか、

「疲れた」

とか、

ひとり言を言って亜弥ちゃんの顔を見ないようにしていた。




330 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:52


「やっと来た」

待ち続けて、10分くらいで観覧車が下りてきた。

「亜弥ちゃん、先に入りなよ」
「・・・うん」

乗っている人が降りたのを確認して、亜弥ちゃんを先に乗せる。
それに続いてミキも観覧車に乗り込む。

「・・ドア、閉めますのでシートに座ってください」
「あっ、はい」

観覧車の係りの人に言われて、ミキはシートに座る。
座った場所は亜弥ちゃんの正面。


その時、一瞬だけ亜弥ちゃんと目が合ったけどミキはすぐに逸らしてしまった。

あの時のミキの行動はただ、恥ずかしくてまともに亜弥ちゃんを見れなかったから、目を逸らしてしまっただけで、別にそれ以外は深い理由なんて無かった。
でも、亜弥ちゃんがそんなミキの態度に傷ついていたなんて、その時のミキは考えもしなかった。




331 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:54


「「・・・・」」


沈黙が続く観覧車の中。

何を話せばいいのか分からないミキはただ、観覧車の外ばかりを見ていた。


「・・・へえ・・・結構、遠くまで見えるんだ・・」

沈黙が耐え切れずミキはひとり喋る。
もちろん、それは亜弥ちゃんに対してではなくて完璧なひとり言。


ゆっくりと、回り続ける観覧車。
上のほうを覗くと、あと少しで頂上に着く。


「「・・・・」」



お互いの会話はまだ、ない。




332 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:54


『 この観覧車の頂上で告白かキスをするとその二人は永遠に結ばれるというジンクスがあるらしいよ 』


さっきのよっちゃんたちの言葉が頭を過ぎる。

その言葉に自分の心臓が早鐘のように脈うつ。


― 告白

今までも考えたことは無かったとは言い切れない。

ここ一ヶ月で、電話などでは敬語を喋らなくなった亜弥ちゃん。
毎日のように連絡を取り合えば、少しくらい良い雰囲気になる場面だってある。
その度にミキは亜弥ちゃんに何度、自分の気持ちを打ち明けようと思ったことか。

それでも、言わずにいたのは、亜弥ちゃんとの約束があったから。
亜弥ちゃんの敬語を無くしてあげるという約束。

そして、その約束が果たせたときには、迷わずに気持ちを打ち明けると自分にも約束をした。



それなのに、観覧車のジンクスを聞いただけで、

亜弥ちゃんがミキと二人きりの時に手を繋いだだけで、



約束した心が揺らいだ。



333 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:55


ゆっくりと回る観覧車。
頂上は見えているが、回る速度が遅いこの観覧車では頂上に着くまであと五分はかかるだろう。

「「・・・・」」

沈黙の空間。
その居心地の悪さに、さらにミキの心臓はさらに早く鼓動を打つ。
早く、この空間から抜け出したい。


「あ、あやちゃ」
「みきたん」

居心地の悪さをどうにかしたくてミキは亜弥ちゃんに話しかけようとしたが、それを亜弥ちゃん自身が遮る。


「な、なに?」
「隣、座ってもいい?」
「へ?」
「・・・みきたんの、横・・」
「あ・・・どうぞ」


亜弥ちゃんに指されたシート。
それをミキは少しだけ移動して、人が一人座れるスペースを作ると、
亜弥ちゃんが立ち上がり、ミキの横へと座った。



その時、少しだけ観覧車が揺れた。



334 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:56


「「・・・」」

亜弥ちゃんはミキの横に座るが何も喋らない。
ミキも急に亜弥ちゃんが横に座ることで彼女を身近に感じてしまい、
何を喋っていいか分からなくなった。


観覧車の外を見ながら会話を探す。

ふと、腕に暖かい感触がしてそこに目を向けると、ミキの腕を亜弥ちゃんが遠慮がちに掴んでいた。


「あ、あやちゃん?」
「・・・」

ミキの服の袖を掴みながら、亜弥ちゃんは俯いている。


「あやちゃ・・」
「何で、何も喋らないの?」
「え・・・」
「・・らいになった?」
「え?」

俯きながら喋る亜弥ちゃん。
その声はとても小さくてミキは聞き返す。




335 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/20(月) 07:57


「・・・あたしのこと、嫌いに・・った?」
「え?・・・亜弥ちゃん?」
「あたしが、まだ敬語で喋るから・・・嫌いになりましたか?」
「あ・・・」

ミキの袖を掴みながら顔をあげた亜弥ちゃん。
その目には涙が見えた。


「あたしのこと、嫌いだから・・もう喋るのも嫌・・ですか?」
「ち、ちが・・」

違う!と否定しようとした口がうまく開いてくれない。
それでも亜弥ちゃんはミキの言葉を待つように、見つめてくる。


な・・んで・・いきなり・・

涙目の亜弥ちゃんに見つめられ、頭も口もうまく動いてくれない。

亜弥ちゃんのその言葉にミキは何も言えずにいた。



336 名前: k 投稿日:2004/12/20(月) 07:58

更新、終了。

ほのぼのから一転。
・・・・あれ?変な方向へ・・・・


318>>名無し読者さま

ありがとうございます。
前回はほのぼのとしているろころでしたが、今回はちょっと、藤本さんに頑張ってもらおうと
思ったらこうなりましたw


319>>名無し読者さま

えー・・・こちらの藤本さんは自分が書いている作品の中でヘタレ中のヘタレなんですがw
このデートで少しは頑張ってもらおうとw


ちょっとどころか、かなり中途半端な所で切りましたが、多分、次で終われると思います。
それまで、この駄文にもう少し、お付き合いくださいませ。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。


337 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/20(月) 23:51
なんてとこで区切るんですか!!
寸止めプレイですか?
もう作者様のイジワル(笑)
338 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/21(火) 01:12
おおっと。
これからってとこで。
作者様、次回更新を首を長くしてお待ちしております!
339 名前:k 投稿日:2004/12/30(木) 13:47

更新、開始


340 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:49


嫌い?

        誰が?


ミキが?

        誰を?


亜弥ちゃんを?

        何で?


涙を目に浮かべながらミキを見つめる亜弥ちゃん。
思っても無い言葉にミキは、自分の態度がどれだけ亜弥ちゃんを不安にさせ、傷つけたか理解する。


「「・・・」」

涙目の亜弥ちゃん。

何も言えないミキ。


ほんの僅かだけど、お互いを見つめる。

そして、最初に目を逸らしたのは・・・亜弥ちゃんだった。


「ごめんなさい。変なこと聞いて」
「亜弥ちゃん、その・・」
「いつまでも敬語なんて、誰だって嫌ですよね」
「そんなこと・・・」
「今までありがとうございました」
「え?」
「こんなあたしに付き合ってくれて」
「な、に言って・・?」


亜弥ちゃんの言葉の意味が分からないミキは、ただ亜弥ちゃんを見つめることしか出来ない。



341 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:50


「もういいですよ、あたしに無理に付き合わなくても」


―ズキン

ミキの顔を見ずに喋る亜弥ちゃんにミキの心臓はチクチクと痛み出す。


「と、トモダチなのにずっと敬語で喋るヒトと付き合うよりも吉澤さんたちのように、
 砕けた会話が出来るヒトの方がみきたんも、気を遣わなくてもいいだろうし・・」


― チクチク チクチク


トモダチ・・・・無理に・・・気を遣う・・・

亜弥ちゃんの言葉の一つ一つがミキの胸を痛めつける。


どうして?さっきまであんなに雰囲気が良かったのに・・

今までありがとうって、なに?

なんで亜弥ちゃんはそんなことを言ってるんだろう・・

ミキの態度の所為?

何も喋らないミキに亜弥ちゃんは誤解している・・?

なら、ミキが亜弥ちゃんにすることは?

決まってる。ひとつしかない。



そう、誤解を解かなければ・・・




342 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:52


「ごめんなさい。変な話して・・・でも、今までこんなあたしに付き合ってくれたみきたんにお礼が言いたくて・・・」
「あやちゃ・・」
「はい、この話はもうおしまい!あ、あたし、前のシートに戻りますね」
「亜弥ちゃん!」


ミキの顔を見ることなく、自分だけで話をまとめた亜弥ちゃんはミキの横から立ち上がり戻ろうとした。
そんな亜弥ちゃんの手をミキは強く握った。


「・・みきたん?」
「なん・・で・・」
「え?」
「なんでミキの話も聞かずに勝手に話しを終わらせてんのさ!」
「・・え?きゃ!?」

掴んでいた亜弥ちゃんの手を引き寄せて、ミキは亜弥ちゃんを抱きしめた。
抱きしめた時に亜弥ちゃんが驚いた声を出したけど、それにもかまわず亜弥ちゃんを強く抱きしめた。



343 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:52


「なんで?亜弥ちゃん、まだミキの話聞いてない!なのに、なんで勝手に話が終わるの?」
「み、みきたん」
「ミキが亜弥ちゃんを嫌い?そんなこと・・あるわけない!嫌いどころか、亜弥ちゃんを好きすぎて、どうしていいか分からないのに・・・」
「え?・・」
「ミキは亜弥ちゃんが好きだ!あの海であった時からずっと、好きだった!」
「み、みきたん・・・」
「喋らないのだって、緊張してるからで・・・亜弥ちゃんのこと、好きすぎてこんな二人きりの空間で意識しないで喋る方がミキには無理なんだよ!」


亜弥ちゃんを強く抱きしめながらミキは胸の中に溜めていた亜弥ちゃんへの想いを打ち明けた。
そして亜弥ちゃんへの誤解を解くために伝えた想いは、亜弥ちゃんとの約束と自分への誓いをあっさりと破ってしまった。

だけどその時のミキには、亜弥ちゃんとの約束も自分への誓いも一欠けらも考えていなかった。
ミキの想いに亜弥ちゃんは応えてくれないかもしれないとかもそんなことは頭の隅にもなくて・・ただ、
今、この腕の中にいる亜弥ちゃんがミキの前からいなくなる。
それが一番、怖かった。



344 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:53


「・・・ごめん、何も喋らなくて・・・でも、それは亜弥ちゃんが嫌いだからじゃなくて、
 ごっちんたちと話していた観覧車のジンクスのせいっていうか・・・
 それで、変に意識して喋れなかったというか・・と、とにかく!
 ミキが亜弥ちゃんを嫌いになるなんて絶対にないから!」
「・・・」
「ごめん。亜弥ちゃんのことも考えずに・・・ミキの態度に亜弥ちゃん、傷ついたよね?
 ホント、ごめん・・・」
「・・・」
「・・・ごめん・・」

何も答えてくれない亜弥ちゃんにミキは謝罪の言葉を言い続ける。
ミキの態度に傷ついた亜弥ちゃんに、ミキはそれしか言うことが出来ないから・・・


「・・・みきたん」

抱きしめていたミキの背中に亜弥ちゃんが腕をそっと回す。


「・・今の言葉、本当ですか?」
「え?」
「・・・あたしのこと、嫌いじゃないって・・」
「・・・本当だよ」
「・・・」
「・・・好きだよ」
「・・・」


そう言うと、亜弥ちゃんの手が心なしか少しだけ力がこもったように感じられた。



345 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/30(木) 13:54


「・・みきたん」
「なに?」
「あ、の少しだけ腕を緩めてもらってもいいですか?」
「え?あっご、ごめん!」
「あっ!そんな急に動いたら・・きゃ!?」
「っうわ!?」


亜弥ちゃんの言葉でミキが今、どういう状態でいるのかが分かって、ミキは慌てて体を離した。
だけど、不安定な観覧車の中。
そんな所でヒトが動けば観覧車がどうなるか。

案の定、ミキの大げさな動きの所為で観覧車は大きく揺らいだ。
そして・・・


「「・・・・」」

ミキと亜弥ちゃん。



二人してお互いを見つめあう。




その差は、限りなく・・・近い。



346 名前:k 投稿日:2004/12/30(木) 13:57

すごい、短いですが更新、終了。

またもや、中途半端に切ってしまった。

夜にもう一度更新するのでレスはその時に返します。


347 名前:k 投稿日:2004/12/31(金) 00:20

更新、開始


348 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:21


「「・・・」」

シートに座る亜弥ちゃん。
その亜弥ちゃんの頭の上で両手をついているミキ。
そしてミキの片足は・・・
亜弥ちゃんを跨ぐように彼女が座るシートの上。


「「・・・」」

まだ少しだけ観覧車が揺れたまま、お互い何も言わずに見つめあう。

亜弥ちゃんの目にはミキが映っている。
きっと、ミキの目にも彼女が映っているだろう。


「あっ・・・の・・」
「・・・」

何か、言葉を言おうとしたけど喉が張り付いたように渇いた感じがしてうまく言葉が喋れない。
その間も亜弥ちゃんはずっと、ミキを見たまま。




349 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:22


「ご、ごめん。だいじょう・・ぶ?」
「・・・」
「あ・・の、亜弥ちゃん?」

どうにかして、言葉を発するが亜弥ちゃんはミキを見つめたまま。
しかも、微妙に目なんかも潤んでいたりするもんだから、ミキにとってはこの状態はきつかった。
まさに、蛇の生殺し状態ってやつ。


「・・き・・」
「え?」
「あたしも・・・好きです・・」
「あ、やちゃん・・?」
「好き・・です」
「・・・」

ミキを見つめたまま、顔を赤らめる彼女にもう理性が限界。
いや、さっさとミキがそこから体を退かせばいいだけの話なんだけど、
これまた、ミキの体も何故か亜弥ちゃんに見つめられたまま動けず。
まさに蛇の生殺し状態パート2みたいな・・・

って、ミキ何を言ってるんだろう?
ああ、ヤバイ。本格的に理性がヤバクなってきた。



350 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:23


「みきたんが・・好きです」
「・・・」

・・・ああ、亜弥ちゃん、そんな上目遣いで言わないで。
そんな目で見たら、ミキ死んじゃうから。

っていうか、もうミキの理性が死に掛けてますから・・・


「・・亜弥ちゃん」
「・・・」


って、ちょっと待て。

・・・何してんの?ねえ?ちょっと!そこの藤本さん!?
何で亜弥ちゃんの顔が近づいてんの?
っていうか、何、亜弥ちゃんの頬を右手で沿えてんだよ!


ミキの心の声とは裏腹に、ミキと亜弥ちゃんの顔はどんどん近づいていく。

わぁぁぁ!?ちょっと、ほ、本気ですんの!?
い、いや、別に亜弥ちゃんと、き、キス!をするのが嫌とかじゃないですよ?
ただ、こういうのはお互いに気持ちが通じ合ってから・・て、あぁそうか、亜弥ちゃんもミキが好きって言ったんだよね?なら、問題無し!無問題ってことで・・

って、違ぁぁぁぁぁう!

そうじゃなくて、せめてミキ(理性)がちゃんとしているときにしてぇぇぇぇ!!!

こんな、飛んでるときにしたら感触も何も憶えて(ry




351 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:24


「「・・・」」

お互いに見つめあう。
二人の顔が近づいていく。


「あやちゃん・・」
「・・・みき・・たん」

亜弥ちゃんの顔がミキの目ではもう全体を捉えきれないくらいに近くになると、亜弥ちゃんが目を閉じた。


「・・・」

い、いいの!?
こ、このままいっちゃってもいいんですか!?


「・・・・」

・・・ごく!
うわぁ・・亜弥ちゃん、ものすごい可愛すぎ。
目、閉じているだけなのに・・・なんで、こんなに色っぽいの?
い、いいよね?亜弥ちゃんも目、閉じているってことはそ・・の・・オッケーてことだよね?


ミキ(理性)の言うことを聞いてくれない身体はどんどん、亜弥ちゃんのほうへと近づいていく。
身体がそんなんだから、ミキも次第にその雰囲気に流されていく。



352 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:25


お互いの唇が触れそうになるまで、あと数センチ。
ミキも覚悟を決めて、目を閉じた。


― ピリリリリ

「きゃ?」
「うわ!?」

― ゴン!


観覧車の中に突然鳴り響いたケータイの音に二人して驚く。
しかも、亜弥ちゃんが驚いた拍子にミキを突き飛ばしたものだからミキは観覧車の窓で頭を打った。

「い、イタイ・・・」
「あ!ご、ごめんなさい!びっくりして・・」

頭を押さえて蹲るミキに亜弥ちゃんが慌てて、頭に手を当てる。

「ご、ごめんなさい。あ、の大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫だから・・・それよりケ―タイに出なくてもいいの?」
「あ、・・ごめんなさい・・」
「いや、大丈夫だよ」


ミキに申し訳なさそうに自分の鞄からケータイを取り出す亜弥ちゃん。
どうやら、電話ではなくて、メールのようだ。
慣れた手つきでケータイを動かしている。



353 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:26


『あ、危なかった』

亜弥ちゃんを見ながら、ミキは今起きたことを振り返っていた。

はぁ・・やばかった。
あのままいってたら、絶対キスしてたよ・・
やっぱ、いくらなんでもここでキスするのは不本意だよね・・・


亜弥ちゃんを見ると、顔を赤くしながらケータイを見ていた。


「・・・・」

・・・亜弥ちゃんもミキのことが好きなんだよね?

今しがた、ミキに顔を赤くしながら告白をした亜弥ちゃんを思い出す。
白い肌の頬がほんのり赤くなり、目も潤んでいて、どこか大人の雰囲気を醸し出していた彼女。

「・・・」

・・・惜しいことしたかな?
イヤイヤ、これでよかったんだ。
誤解を解くためにとはいえ、自分の気持ちを打ち明けてしまった。
結果的には亜弥ちゃんも好きと言ってくれたけど、結局ミキは亜弥ちゃんとの約束を破ってしまった。
それを考えると、キスのときに邪魔が入ったのはミキにとってはいい歯止めになったんだから・・・

そう、約束を守れなかった罰だと思えばいいんだ。

亜弥ちゃんを見つめながら、頭が固い考えを巡らしていると、亜弥ちゃんと目が合った。



354 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:26


「・・・大丈夫?」
「ん・・もう痛くないよ」
「・・・ごめんなさい・・」
「いや、別に亜弥ちゃんが悪いわけじゃないから・・それより、もういいの?」

亜弥ちゃんが持っているケータイを指す。

「あ、うん。返事、返したから・・」
「そっか・・」
「・・うん」
「「・・・・」」

沈黙。

またもや観覧車内は静けさに襲われた。
だけど、さっきのような居心地の悪い空間ではなく、
気恥ずかしさと穏やかさが混ざった心地よい空間だった。



355 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:27


「亜弥ちゃん」
「は、はい?」
「そっち、座って良い?」
「え?」
「・・・亜弥ちゃんの隣」
「あ、・・・どうぞ」

床に座ったままのミキは亜弥ちゃんを見上げるように、
さっき亜弥ちゃんがミキに聞いてきたように聞く。
亜弥ちゃんもさっきのミキのように体を横にずらしてヒトが一人座れるスペースを作ってくれた。


「ありがと」
「・・いえ・・」

亜弥ちゃんが横にずれたのを確認して、隣へと座る。
座ると同時に亜弥ちゃんを見ると、ミキと目が合ったと同時に俯いてしまった。
そんな亜弥ちゃんを見て、心の中で噴出す。
まるで、さっきの自分を見ているようだ。



356 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:28


「・・・亜弥ちゃん」
「な、なに?」
「・・ごめんね」
「え?・・・」
「ミキの態度に亜弥ちゃん、傷ついたでしょ?」
「あ・・」
「ほんと、ごめん」

俯いている亜弥ちゃんの手を上からそっと置く。
今のミキはとても・・・普段の自分からは考えられないくらい、大胆な行動をしている。
自分から、手を握っていくなんて前まではありえなかった。


「み、みきたん」
「ん?」

亜弥ちゃんはミキが手を握ると一瞬だけ体を強張らせたけど、その後は力が抜けたように
ミキの手を握り返してきた。


「あの、なんでさっきは喋ってくれなかったの?」
「さっき?」
「・・うん」

ミキの手をもう片方の手で遊びながら聞いてくる。
それがイジケタ子供みたいで可愛いと思った。
そしてそんな亜弥ちゃんを見て、まだちゃんと誤解を解いてないことを思い出す。




357 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:29


・・・やっぱ、ちゃんと言わなきゃ駄目・・だよね?

俯きながらミキの手で遊ぶ亜弥ちゃんは、今言ったミキの言葉だけじゃ納得してないというようにも見えた。

もう、告白もしたんだからいいか・・言っても。


「あー・・それは・・観覧車のジンクスが・・」
「観覧車のジンクス?」
「・・うん。ごっちんたちにコレに乗る前に言われたんだよね。
 観覧車の頂上で告白かキスをすると、その二人は結ばれるって・・」
「え?」
「だーかーらー・・ミキは亜弥ちゃんとの約束も守らずにごっちんたちが言ったことに心が揺れていたの!それで、なんか緊張して亜弥ちゃんの顔をまともに見れなかったというか・・何喋っていいか分かんなかったというか・・」
「みきたん・・・それって、あたしに告白しようとしたってこと?」
「う!・・・まぁ・・そういうことだね」

さっきまで俯いていた亜弥ちゃんがミキの顔を見ながら聞いてくる。
今度は反対にミキが俯く。



358 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:29


「みきたん・・」
「なに?」
「あたしとの約束、覚えてくれていたんだ」
「・・・当たり前でしょ」
「えへへ・・嬉しいな」
「・・・怒ってないの?」
「ん?」
「ミキ、亜弥ちゃんとの約束守れてないのに・・」
「それを言うなら、あたしだって約束守れてないし」
「でも、亜弥ちゃんとミキとじゃ状況が・・」

言い訳ってわけではないけど、反論しようとしたミキの腕に亜弥ちゃんが腕を絡めてきた。

「みーきたん♪」
「なに?」
「にゃはは」
「・・亜弥ちゃん?」
「気づいてた?」
「え?」
「あたし、敬語じゃないよ?」
「え?・・・あっ」
「にゃはは」

亜弥ちゃんが目を三日月にして笑う。
彼女の言葉に敬語が無い。
それを彼女自身から気づかされたミキ。



359 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:32


彼女が敬語じゃない。その意味は・・・


「・・・亜弥ちゃん・・あ、の・・ひょっとしてミキのこと・・慣れた?」
「・・・うん」
「・・もう・・緊張もしてない?・・」
「・・・うん」

ミキの腕を絡みながら、彼女は照れたように頷く。

「・・いつ・・から・・」
「ほんとは、観覧車に乗ったときから・・」
「え?でも・・」

彼女はミキが告白する前はまだ敬語だったはず。

「あっ、でも観覧車の中で緊張はしていたよ?
 だって、もしみきたんが敬語じゃないあたしに気づかなかったらどうしようかなって・・・
 でも、気づく前にみきたん、何も喋らないからあたし嫌われたのかなって思ったし、・・・
 そしたら敬語に戻っちゃって・・」

そう言った彼女はあの時のことを思い出しているのかとても悲しそうに笑った。
そんな亜弥ちゃんを見て、ミキはとことん自分自身の行動の浅さに呆れていた。



360 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:34


「・・ごめんね・・」
「あっ、そんな意味で言ったんじゃなくて・・それにみきたんはちゃんと今、
 その理由を言ってくれたし・・」
「でも、ミキの態度で亜弥ちゃんを傷つけたのは事実だし・・ほんと、ごめん・・」
「・・ふふ、みきたん、さっきから謝ってばかり・・」
「だって・・ん」

まだ謝るミキの口を亜弥ちゃんが手で押さえる。

「もう気にしてないから・・それより、約束・・・」
「約束?」
「・・うん。二人の約束」

亜弥ちゃんの頬が薄いピンクに染まる。
その意味に気づいてミキは亜弥ちゃんの手を握りながら彼女のことを見つめる。

「・・亜弥ちゃん」
「・・なに?」
「教えてくれる?ミキのことどう思っているか」
「・・・いいよ。・・みきたんは・・優しくて、カッコよくて・・時折見せる横顔とかがすごく綺麗で、
 子供の様に笑った顔が可愛くて・・・自分の目の怖さにコンプレックスを持っているところとか、
 あたしが敬語を喋るまで告白もしないで律儀に約束を覚えているところとか、
 ・・そんなみきたんの全部が・・好き」




361 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:35


ミキの目をまっすぐに見つめ亜弥ちゃんが言う。

「・・・」
「みきたん?」
「あ、亜弥ちゃん・・」
「ん?」
「それ、ものすごい殺し文句だから」
「ふえ!?」
「そんな顔で言われたら、ミキの心臓が持たないよ」

亜弥ちゃんの言葉に体の体温が上昇する。
ミキはたまらず、彼女を抱きしめた。


「・・・ほんとだ。すごい心臓がドキドキしてる」
「亜弥ちゃんだからだよ」
「うん。嬉しい」

亜弥ちゃんもミキの背中へと腕を回す。
さっきまでの緊迫な空気はもう二人にはない。
あるのはお互いの気持ちが通じあった優しい居心地のいい空間だけだった。



362 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:37


それから、観覧車が回るまでの間ずっと手を握ってお喋りをしていた。
小さな観覧車だが回る速度が遅いからたっぷりと亜弥ちゃんとの二人だけの時間を楽しめた。

ふと、下を見るとよっちゃんたちが待っていた。
さきに乗った四人はもう観覧車を降りたようだ。
ミキたちの観覧車もそろそろ、地上に着こうとしている。

「みきたん」
「ん?」

下を見ていたミキに亜弥ちゃんが声をかける。

「観覧車のジンクス、覚えてる?」
「え?・・ああ、頂上で告白したらってやつ?」
「うん」
「覚えてるけど・・」
「じゃあ、みきたんがあたしに好きって言ったところがどこか覚えてる?」

まさか、そんな周りを見る状況じゃあなかったから自分が好きだと言った場所なんて
覚えているはずが無い。
でも、亜弥ちゃんは目をキラキラさせながらミキのことを見つめる。

「え?・・・あっ・・マジ?」
「えへへ、うん。実は観覧車の頂上でみきたんは好きって言ってくれたんだよ?
 みきたんは見えて無かったかもしれないけどさ」
「そ、そうなんだ」
「うん!」

嬉しそうに言う亜弥ちゃんにミキは顔が真っ赤になる。
・・・そっか、ミキ観覧車の上で告白したんだ。



363 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:38


「ん?でも何で亜弥ちゃんは分かったの?」
「それはね・・天使がいたから」
「・・天使?」
「うん。頂上に天使の像があったの。とっても小さくて多分、観覧車の上まで登らなきゃ見えないくらい、小さな天使の像」
「・・・天使」

亜弥ちゃんの言葉にミキはよっちゃんたちが言っていたジンクスに納得がいった。

「ふ・・あはは」
「みきたん?」
「あはは、なるほど。そういう意味だったんだ。あはは」
「・・みきたん?」

一人で勝手に笑うミキに亜弥ちゃんが不思議そうな顔をする。
そして、そんな風に見られているミキはごっちんの言葉を思い出していた。


『ミキティ、天使の祝福だよ』

ごっちんが観覧車に乗る前にミキに言った言葉。ミキは意味が分からず顔を捻ったがやっと、その意味の納得がいった。



364 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:40


「そうか、そういう意味ね」

・・あはは・・それは、うん効くはずだよ。だって、天使の前で告白するんだから。
ごっちん、確かにここの観覧車のジンクスは本物だよ。だってミキと亜弥ちゃんが両思いになったんだから。まさに、天使の祝福を受けたんだ。

ひとり、納得したように笑っていると亜弥ちゃんがミキの腕を掴んだ。

「みきたん、一人で笑ってないであたしとも喋ってよ」

うお!?亜弥ちゃん、それほんとに反則だから。
ミキの腕を掴んで上目遣いで見る亜弥ちゃんに現実に戻される。

「ごめん、ごめん。ここの観覧車のジンクスの意味がやっと分かってさ・・」
「もう、みきたんは考え込むと周りが見えなくなるんだから」
「ごめんって。でも、そっか。ミキ、観覧車の上で亜弥ちゃんに告白出来たんだ」
「うん、そうだよ」
「ってことは、ミキと亜弥ちゃんはずっと、一緒に結ばれるわけだ」
「・・うん」
「嬉しいな」
「・・あたしも」

ふたり、見つめあい笑いあう。

・・・ああ、ミキ、亜弥ちゃんと恋人になれたんだ。
夢じゃないんだ・・

亜弥ちゃんを見ながら幸せをかみ締めていると、下にいるよっちゃんたちが視界の端に映った。
ミキは亜弥ちゃんから目を逸らしてそちらを見る。
ごっちんが手を振っているのも見えた。




365 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:41


「もう着くのか。早いような長いような・・・亜弥ちゃん、そろそろ下りる準備しよう」
「・・うん」

下が見えたミキは降りる為に準備をする。
前の座席に置いてある自分の鞄を取る為に立ち上がった。

「・・みきたん」

その時、後ろからミキを呼ぶ亜弥ちゃんの声が聞こえた。

「ん?・・何、あやちゃ・・!?」
「「・・・・」」

呼ばれたミキは振り返ったけど正直、何が起こったのかすぐには分からなかった。
でも、一番最初に気づいたのは自分の唇に感じる柔らかい感触。

その次に気づいたのが赤くしながらミキからちょっとずつ遠ざかっていく亜弥ちゃんの顔。

「・・・さっき、観覧車の上で出来なかったから・・」

そして、ミキが亜弥ちゃんに何をされたのか頭が判断したのは亜弥ちゃんが発した言葉から。


「・・・・」

ミキは鞄を手にしながら動くことが出来ない。
あまりに突然のことで頭が判断しても体が動いてくれなかった。




366 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:42


・・・えーと、今ミキは亜弥ちゃんに何をされたの?
振り返ったら亜弥ちゃんの顔が近くにあって、それで・・

口元に手を当てる。
やけにリアルに残っている柔らかい感触。
それを確かめたと同時に顔が熱くなった。


亜弥ちゃんは頬を赤らめながら係りの人が開けたドアから観覧車を降りていく。
ミキはその後ろ姿を見ながらもまだ動けずにいた。

「・・・降りないんですか?」
「・・・」
「あの、降りてくれないと次のヒトが乗れないんですけど・・」
「みきたん?」
「・・・」
「?いいんですか?ドア閉めますよ?」
「・・・」

困り顔の係り員とその後ろでミキが降りるのを待つ亜弥ちゃん。
そして、そんな亜弥ちゃんたちの後ろで驚いた顔をした市井さんたちと
ニヤニヤしているよっちゃんとごっちん。

そんな四人の顔が視界に入っているのにミキは鞄を持ったまま立ち尽くす。



367 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:43


「・・それじゃあ・・閉めますよ?」
「みきたん?降りないの?」
「・・・」
「ああ!ヤバイ!お客さん、動き始めたんで閉めますよ?いいですね?」
「え!?みきたん?降りな・・・」

係員がドアを閉める。

―ガチャ

その音を聞いたと同時に我に返る美貴。



「ぁぁぁぁぁ亜弥ちゃん!?い、今・・って!ドアが開かない!?」

やっと、頭も体も動ける状態になったと思ったらドアを閉められた美貴。
そして美貴を乗せた観覧車は動き出す。
亜弥はそんなミキを目だけで追っていて、
ひとみたちは、そんな美貴を呆れた表情で見ていた。




368 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:44


一人、観覧車に取り残されたミキ。


「・・・・え・・マジですか?」

ようやく、自分の置かれた状態を把握した美貴だが無常にもゆっくりと観覧車は回り始める。
下を見ると亜弥ちゃんが心配そうにミキのことを見上げていた。


ゆっくりと回り始める観覧車。
一度乗っているから分かるが、小さいながらも回る速度が遅いこの観覧車は一周するまでゆうに、
十五分はかかる。
それまで、一人観覧車の中にいる美貴。

立っているのもなんなので、とりあえずシートに座ることにした。



369 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:44


「・・・・亜弥ちゃん」

自分の唇を擦りながら亜弥の名前を呟く。
降りる直前、美貴にキスをした亜弥。
突然のことだったが今でもはっきりと感触が残っている。

「・・亜弥ちゃんって、以外に大胆だな・・」

ニヤける口を手で押さえる。
きっと、観覧車を降りたらよっちゃんたちにからかわれるだろうな。

色々と言ってくるであろうひとみたちのことを考えながらも美貴はニヤける頬を引き締めることが出来なかった。


ゆっくりと回り続ける観覧車の中、観覧車がミキを愛しの彼女のもとへ運んでくれるのを待ちながら夕日が沈む空を見ていた。




370 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:46


「・・・って、なんで誰もいないの?」

観覧車を降りたミキを待っていたのは、ものすごい顔で怒っている係員だけで、
愛しの彼女どころか、ごっちんたちもいなかった。

係員に怒られ終わると、ミキのケータイが鳴った。

ケータイを見るとメールが1件。
差出人はよっちゃん。


『駅前のスタバにいるから』


短く送られたメール。


「・・・マジですか・・・ 川_| ̄|○川 」


今度こそ、一人取り残された美貴。
がっくりとヒザをつくがついたところで誰もいない。

そんな美貴をカップルたちが手を繋ぎながら通り過ぎる、




371 名前:上海ハニー 番外編 投稿日:2004/12/31(金) 00:48


藤本美貴。
目が怖くて恋人いない歴が年の数だった彼女もようやく愛しの彼女が出来た。
しかし、やっぱり藤本美貴。
最後のしめは一人淋し・・ふ、藤本さん・・苦しいです・・

「これはどういうことかな?」

い、いや・・もうネタが浮かばなくて一杯、いっぱ・・す、すいません・・ほんと、苦しいんで
ちょっと、腕を緩め・・

「知るか!だいたい、なんでいつも最後・・あっこら!しめようとするな!」


アレ(作者)の首に手を回しながら抗議する美貴。
そんな美貴を前回同様、綺麗な夕日が沈みながら見ていた。


「だから、勝手に・・亜弥ちゃーん・・アレ(作者)が苛めるー」

藤本さん、キショいから・・・


「うっさい!」





                       END?



372 名前: k 投稿日:2004/12/31(金) 00:50


更新終了。アーンド、番外編終了。


_| ̄|○


145:名無し読者さま。ほんとスイマセン。
リクしてもらってなんですが、マジで最後、ネタが浮かびませんでした。

番外編でその後の二人だったんで最後まで甘く行こうと
思っていたんですけど、途中から話が変になって、
そしたらこうなりました(^▽^;)<エヘ♪ 


337<<名無飼育さま

寸止めプレイどころか、放置プレイにしよう・・ぐ、ゴホゴホ!
いえ、なんでもないです。
実はあの時点ではまだ藤本さんをどう動かそうか考えていなかったので、
中途半端に切ってしまったんですが、結局、最後はまとまりが無い話になってしまって・・_| ̄|○


338<<名無し読者さま

長く待たせておきながら、最後がコレかよ!っていう突っ込みはナシで・・
いや、ほんと最後はマジでこうなるとは自分でも思ってなくてw
首を長くして待ってもらったのに最後がこれでほんと申し訳なく。


まあ、最後がアレなんですが、どうにかして年内でこの話が完結できてホッとしています。
次の作品は来年からになりますが、来年もこんな駄文を読んでもらえたら嬉しいです。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。

よいお年を・・・



373 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/31(金) 11:16
二人とも不器用ながら、とっても愛を感じます。
可愛いお話ありがとうございました。
374 名前:k 投稿日:2005/01/12(水) 01:00

更新、開始


375 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:01


「距離を感じることとかないの?」
「え?」


歌収録が始まるまでの待ち時間。
他愛のない話をしながら時間を潰していると、
ごっちんがいきなりそんなことを聞いてきた。


「美貴ちゃんとの距離。あんまり会えなかったりしたらさ、
 そういう風に感じたりしない?」
「うーん・・・」

唐突な質問に返すことが出来ない。
ごっちんって、いつも急に聞いたりするから聞いているこっちとしては話しが飛んだ感じがして、たまに困るときがある。




376 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:02


「・・・うーん、別にないなぁ。たんと距離を感じたことって」

唐突な質問ながら、その答えを探すが・・・

『 ゼロ 』

あたしとみきたん。
距離を感じたということは今迄で一度も無い。
あっ、みきたんはどうかは分からないけど・・・


「まったく感じたことは無いの?」
「うーん、無いねぇ。ほら、あたしとみきたんは繋がっているから」
「何で?」
「何って・・それはもちろん、愛のテレパシー?」
「・・・・」
「ごっちーん。そんな冷たい目で見ないでよぉ」

あたしの答えにごっちんは冷たい目で見てくる。
ひどい、冗談じゃなくて、結構本気で言った答えなのに。



377 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:03


「そっかぁ・・いいね。」

あたしの答えに納得がしたのか、してないのか。
ごっちんはそれだけ呟くとヒザを抱えた。


「なに?ごっちんは相手に距離を感じているの?」
「うーん・・どうだろう?最近、連絡しても中々繋がらないことがあるし・・」

気の無い返事を返すごっちん。
きっと、あの人のことを思い浮かべているんだろうな・・・


「ねぇ、ごっちん」
「ん?」
「淋しい?」
「・・・うん」
「なら、会いに行けば・・」
「ヤダ」
「なんで?」
「迷惑、かけたくない」
「メイワク?」
「・・・・」

あたしの言葉を遮ったごっちんは、さっきと同じようにヒザを抱えて黙り込んでしまった。
いつも、笑っているごっちんがそんな風にしているのを見るのが初めてだったあたしは、何故か切なくなった。



378 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:06


「あのさ、ごっちん」
「・・・」
「今から言うことは、単なるあたしのひとり言だから聞いていなくてもいいから」
「・・・」

あたしは、ごっちんの返事を確かめずに話し出す。

「さっき言っていた、あたしとみきたんとの間に距離を感じるかって、ごっちんが聞いてきたやつ。
 あれ、ほんとにあたしは感じたことが無いんだよね」
「・・・・」
「だってさ、恋愛なんて七転び八起きなんだしさ・・」
「・・え?」

ごっちんが顔を上げたけど、あたしはかまわずに話を続ける。

「恋愛って、一人でするんじゃなくて二人でするもんでしょ?
 それなら、ケンカしたり、すれ違ったり、いつも仲良くってわけにはいかないわけよ。
 あたしとみきたんだって、周りからはバカップルって言われるくらいイチャついているように見えるけど
 ケンカするときはするし、それが大きく発展して別れるってまでなることなんてしょっ中だし、
 それに、一時ほんとに別れたことあるし」
「え!?」
「・・まあ、すぐに戻ったけど」

ごっちんが、驚いてこっちを見るけどあたしは構わずに話続ける。



379 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:09


「でも、そんな風にして色々なことを乗り越えたから今までの絆みたいなものが築けたわけで・・
 つまり、何が言いたいかというと」
「・・・」
「ようは、恋愛なんて前向きに考えたモン勝ちってことで」
「前向き?」
「そっ!ようは考えかた次第ってやつ。
 あたしがみきたんと距離を感じないって思っているのも、ようは考えかた次第なんだな」
「・・・例えば?」
「例えば?・・うーん・・そうだね。もし、みきたんと連絡がつかないとして、
 やっぱりあたしもごっちんと同じように不安になって、一人でヒザを抱えていたりすると思う。
 でも、あたしはそんな時はこう思うようにしてる」
「・・・」
「連絡がつかないなら自分から会いにいっちゃえ!とか、今は会えなくて淋しいけど、会った時はうんと甘えちゃえ!って。
 ウジウジしてたって不安になるだけなら、どうせならみきたんと会うときまでに何がしたいか考えておこうって、あたしなら、そういう風にして前向きに考える。
 可笑しいでしょ?不安になってヒザを抱えているのに考えていることはみきたんに会った時のことで、全然、後ろ向きなことなんてひとつも考えていないんだ」
「・・・・」
「それにさ、まったく離れているわけじゃない。
 同じ空の下で過ごしているんだからすぐにまた会える。そう考えれば全然。不安にならないんだぁ」


そう、ようは考えかた次第。



380 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:10


「でもさ・・」

あたしの言葉に静かに耳を傾けていたごっちんが口を開いた。


「でも、そういう気持ちが相手にとって迷惑だったら?
 そう思っているのは自分だけで、相手はそう思ってなかったら?自分は会いたいのに相手は会いたくないかもしれない。そう考えたら・・」
「ごっちん、あたしが言ったことちゃんと聞いてた?」
「え?」

あたしは強い口調でごっちんの言葉を遮った。

「あたしとみきたんだって、色々あったんだよ?でも何もしなかったわけじゃない。
 ダメになりそうになった時だって、お互いに自分の気持ちをぶつけ合って、それでも一緒にいたいと思ったからお互いのことを理解して乗り越えたんだよ。
 ごっちんのは、単に自分の気持ちを言わずに理由をつけて逃げてるだけじゃん。」
「な!?」
「それにごっちん、自分が好きになった人でしょう?だったらその人のこと信じなきゃ」
「・・・・」
「そういう・・相手を想うっていう気持ちは絶対、相手に届いているよ。だから信じなきゃ」
「・・・」
「あたしは、そう思う」



381 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:11


あたしの少しだけ怒り口調にごっちんが顔を引いたけど、すぐに苦笑いの顔に戻った。

「あややってさ・・」
「ん?」
「すっごい!プラス思考の持ち主だよね」
「そう?」
「うん。ミキティが羨ましい」
「惚れないでね」
「いや、それは無いから」
「ヒッドーイ!」
「あはは」
「おっ!ごっちんが笑った」
「あは、そりゃあ笑うよ。あややの話聞いていたら自分が悩んでいたのが馬鹿みたいに思えてくるんだから」
「そうそう、こんな悩みなんてほっといて、もっと前向きにコトを考えなきゃ」
「あは、うん。そうだね、何事も前向きにだね」
「そうそう、前向きに」
「「あはは」」

さっきまでヒザを抱えて悩んでいたごっちんだけど、今はあたしと一緒に笑っている。
うん、やっぱりごっちんには笑顔が似合う。



382 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:12


「おっ!メールだ」

ごっちんのお悩み相談を解決したあたしのケータイが音も無く震えだす。
仕事中はマナーにしているんだった。

「んあ?誰?って聞かなくても分かるか」
「えへへ、たんからだぁ♪」

あたしはみきたんから来たメールの返事を急いで返す。

「・・送信っと」
「ミキティ、何て?」
「ん?今、何してる?だって」
「あややは何て返したの?」
「ごっちんと、時間潰してるって、あと、早くみきたんに会いたいって返した」
「・・それはそれは、相変わらずの惚気っぷりで」
「えへへ、いいでしょう」
「・・・ゴチソーサマ」

ごっちんに、みきたんとの惚気話をたっぷり聞かせているとスタッフさんに声をかけられ
た。あと少しで出番だからすぐに出れるようにしていておいてとのことだった。



383 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:14


あたしとごっちんは、まだ時間があったけど早めに楽屋を出て、スタジオの方で待機する
ことにした。


「あ、そうだ。ごっちん」
「ん?」
「あたしとみきたん、愛のテレパシーで繋がっているって言ったじゃん?」
「そういや、言ってたね」
「あれってさ、あながちウソでもないんだ」
「え?」
「うんとね、あたしがみきたんに会いたいなぁって考えているでしょ?
 そしたら、みきたんの方から会いに来たり、電話がかかってきたりするんだな。これが」
「まさか・・単なる偶然じゃないの?」
「それが、結構あるんだよね。そういうことが」
「へえ」
「だから、ごっちんも会いたいってテレパシーでも送れば相手が会いに来てくれるかもよ?」
「・・あややって、ほんと前向きな考えだね」

亜弥の言葉に真希は苦笑いを零す。
でも、その顔はどこか羨ましさが混じっていた。



384 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:15


「ごっちん、今、念じてみれば?」
「え?」
「安倍さんに会いたいって」
「・・・そんなの、いつも送ってるよ」
「念じ方が足りないんじゃないの?」
「・・念じ方の容量っていくつなの?」
「さあ?でも、すっごい会いたいって思えば届くかもよ?ほら、やってみて」
「今?」
「うん。今」
「あやや・・」
「ほら、文句は後で聞いてやるから、今は念じなさい」
「はいはい」
(ミキティも大変だな、こういう風にしていつもあややに振り回されてるんだろうな)

亜弥の言うことに呆れながらもとりあえず従う真希。


「・・・念じたよ」
「ちゃんと想った?」
「想ったよ。ちゃんとなっちのこと考えて」
「よし!ならきっと、ごっちんの想いは安倍さんに届いているよ」
「だと、いいけどね」

亜弥の言葉に少しだけ元気を分けられたような感じがした真希は、なんだか今、自分がし
た事が照れくさくなって、ぶっきら棒に返事を返した。



385 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:16


「それじゃ、そろそろ行こっか?」
「うん」

真希が先になり楽屋を出る。
ドアを開けようと手をかけると、何故かドアノブが遠ざかる。
不思議に思ってドアを見ると、突然人影が現れた。


「うわ!?」
「わっ!?っと、ごめん。ごっちん」
「え?あっミキティじゃん。びっくりした。急にドアが開くから」
「ごめん、ごめん。あ、そうだ。亜弥ちゃんいる?」
「んあ、いるよ。あやや・・」
「みきたーん!」
「わっと!亜弥ちゃん、急に飛びついたら危ないじゃん」
「うー・・ごめん。だって、みきたんが来るなんて思わなかったし」
「亜弥ちゃんが会いたいってメールくれたんでしょうが。それに、ミキだって会いたかったんだよ」
「えへへ、嬉しい。ね?ごっちん、想えば繋がるでしょ?」
「はいはい、愛のテレパシーね」

美貴に嬉しそうに抱きつきながら亜弥が言う。



386 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:17


「あれ?ごっちん、もう行くの?」
「邪魔しちゃ悪いから。先に行くよ」
「あっ、ごっちん」
「んあ?」

楽屋を出ようとした真希を美貴が引き止める。

「ミキと亜弥ちゃんが先に行くからさ、ごっちんは少し遅れてから楽屋出てくれない?」
「へ、何で?」
「いや、ごっちんに面会人が来ているから」
「面会?」

ミキティはそう言うと、半分開いていたドアを全開にした。

「え?誰・・」
「・・・」

真希に会いに来た人に、真希自身が驚く。
何故ならそれは今、会いたくて仕方が無い人物だったからだ。



387 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:18


「・・なっち?」
「・・・・」
「え?なん・・で・・」
「安倍さん、ずっとロビーの方でウロウロしてたんだよね」

何も喋らないなつみの代わりに美貴が口を開く。

「ずっと、ごっちんたちの楽屋の方を行ったり来たりしてさ。それで、ミキが声をかけたら、逃げようとしたんで、強引に連れて来た」
「強引って・・」
「だって安倍さん、ごっちんに連絡取らなかった理由とか言わずに帰ろうとするんだもん」
「理由?」

ごっちんが安倍さんを見るけど、安倍さんはずっと下を向いたまま。
そんな安倍さんの代わりにまたみきたんが口を開いた。

「安倍さんがごっちんに連絡を取らなかったのは迷惑かけたくなかったからだって」
「え?」
「・・・・」

驚いた表情で安倍さんをみるごっちん。
安倍さんはそんなごっちんの顔を見ずに俯いている。



388 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:19


「ほら、安倍さんは今自宅謹慎中でしょ?
それなのに、そんな時にごっちんが側にいたら絶対甘えてしまうから、だから連絡取りたくなかったんだって。ただでさえ、ごっちんは忙しいのにいつも頼ってばっかで、それなのに自分が甘えたら絶対迷惑かける。だから、ごっちんからの連絡も取らないようにしていたんだって」
 
俯く安倍さんの肩を抱きながらみきたんが安倍さんの気持ちを代弁する。


「なっち・・」
「・・ん。・・ね?」
「え?」
「ごめんね、ごっちん。なっち、自分のことばかりしか考えてなくて、ごっちんがどんな気持ちで連絡を取ろうとしたか考えもしなくて・・」
「・・なっち、もういいから」
「でも・・」
「もういいよ。こうしてなっちに会えたんだから」

そう言って、安倍さんを抱き寄せるごっちん。
安倍さんはごっちんの背中に手を回して泣きじゃくっていた。



389 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:20


「・・っく・・ごめんね。・・ごっ・・っく・・」
「・・・・」

泣きじゃくる安倍さんの背中をただ黙って撫でるごっちんの目にもうっすらと涙の色が見えた。


「ごっちん」
「あ、ごめん。ミキティとあややがいるの忘れていた」
「いやいや、ウチらのことは気にしなくていいんで。とりあえず、楽屋にでも入って二人で話でもしたら?」
「あ、うん。あっ、あやや・・スタジオには・・」
「はいはい、スタッフさんには言っておくから、あまり遅れないように」
「・・・ごめんね」
「にゃはは、ごっちんが素直だぁ。可愛い」
「こーら、亜弥ちゃん。茶化したダメじゃん」
「・・ごめんなさい」
「あはは、いいよ。ゴトウもあややに今日は助けられたし。ありがとね」
「にゃはは、どういたしまして」

なつみを抱き寄せながら笑う真希に亜弥も笑顔でこたえる。



390 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:22


「あ!そうだ、ごっちん」
「ん?」

楽屋へと入る二人を亜弥が呼び止める。

「届いたね。愛のテレパシー」
「・・・」
「やっぱ、二人も繋がってるんだね」
「・・・」
「にしし」


亜弥は悪戯っ子のような笑いで美貴を連れて、楽屋をでた。
そんな真希が顔を赤くしたのを遠ざかる亜弥は知らない。


「ごっちん?」
「・・・なっち」
「ん?」
「これからは、ゴトウは遠慮しないでなっちに気持ちを言っていくから」
「・・うん」
「だから、なっちもゴトウに気持ちを言って?なっちの言葉をゴトウも受け止めるからさ。
それで、二人で築いていこう?お互い離れていても繋がっているんだって思えるほど、お互いを結びつける強い絆を。そしたら、きっと大丈夫だから」
「ごっちん・・・」
「大丈夫だよ。二人が前向きに考えればきっと、大丈夫」



391 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:23


「ねぇ、亜弥ちゃん。愛のテレパシーって何?」
「んー?・・あたしとみきたんを繋ぐもの」
「ふーん?だけど、亜弥ちゃんからメールが来たときはびっくりしたよ」
「・・・なんで?」
「だって、突然『 安倍さんを連れてきて 』だもん。理由が分からなかったら意味不明だよ?あのメールは」
「でも、みきたんには事前に説明してたでしょ?」
「まあ、ごっちんが元気ないっていうのは亜弥ちゃんから聞いていたし、安倍さんが元気ないって言うのも矢口さんから聞いて知っていたからね。でも、安倍さんがロビーにいるのをミキが見つけて亜弥ちゃんにメールしなきゃあの二人、どうなってたことやら」

やらやれ、といった感じでみきたんがため息をついた。
そんな美貴をみて、亜弥は手を腰に当てた。



392 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:25


「なーに言ってんの。安倍さんがここに来たのもごっちんが呼んだからに決まってるでしょうが!」
「愛のテレパシーで?」
「もっちろん!」
「ところで、さっきから言ってるその愛のテレパシーって何なのさ?」
「もう、みきたん!さっきから言ってるじゃない!あたしとみきたんを繋ぐもの!
 つまり、お互いを必要としている恋人同士には絶対、繋がってるものなの」
「ふーん?・・・やっぱりよく分かんないけど、ようは亜弥ちゃんとミキはいつでもどんなに離れていても繋がっているってこと?」
「そういうこと」
「つまりは、いつでもどこでも以心伝心ってやつ?」
「そういうこと」
「なるほど、そういうことかぁ」

妙に納得したような顔でみきたんが笑う。
だけど、みきたんがこういう顔をしたときって、ホントはあまり分かってないときなんだよね。だけど、あえてあたしは言わない。
だって、分かってなくてもお互いの心が繋がっていればそれでいいんだから。



393 名前:以心伝心 投稿日:2005/01/12(水) 01:26


ようは、前向きにコトを考えること。



それが、お互いを繋ぐ唯一の方法。



そうすれば、きっと想いは届く。



それが二人の以心伝心。



それが二人の愛のテレパシー




       

                  END




394 名前: k 投稿日:2005/01/12(水) 01:29

更新、終了。

新年、初の短編。

しかも、セリフが多すぎて読みにくい気が・・・
背景描写も少しは頑張らねば _| ̄|○

後安のあやみき。
これまた、なんとも微妙な・・・


373>>名無飼育さま

感想、ありがとうございます。
良かった。こんなまとまりの無い駄文にレスがきてたよ・゚・(ノД`)・゚・。

いや、ホント最初は甘々なあやみきで行こうとしたのに、どこをどう間違ったのか、
最後はネタ切れというなんとも曖昧な文になってしまって・・_| ̄|○



次回から、またあやみきの短編、中篇などをを書いていきますので、
今年度もこんな駄文ですが読んでもらえたら嬉しいです。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。



395 名前:名無し 投稿日:2005/01/15(土) 21:45
作者さんの話はとても好きです。
次回も楽しみにしてます。
頑張ってください。
396 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/18(火) 19:17
お礼が遅れて申し訳ありません!
あやみきの甘々あり作者様と美貴様のバトルありと読んでて
非常に楽しかったです。
あの二人のこれからのラブラブっぷりが目に浮かびます。
ありがとうございました!!

397 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/18(火) 19:58
ageないほうが良いと思う
398 名前:k 投稿日:2005/01/22(土) 00:10

更新です。

399 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 00:12



ゆうきをだして さあそこからでておいで




いますぐ さあ そのてをのばし




ぼくにつかまっていいよ




400 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 00:49


最近、よく同じ夢を見る。


ミキが小さかった時の夢


ミキの隣で泣いている女の子


あれは誰だっただろう



401 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:10


「・・・ん・・・眩しい・・・」

カーテンの隙間から朝の光が射し込む。
その光の眩しさに眠りの世界から目を覚ます。


「・・・もう朝?・・・・ああと5分寝よ・・・」

自分の眠りを妨げた日の光を遮るようにミキは頭から毛布を被る。
次第に眠りそうになるミキの意識を再度、ジャマするものが音をたてて鳴り響く。


「・・・あーウルサイ!分かったよ!起きますよ!」

頭の上でガンガンに鳴っている目覚まし時計を強く叩き止め、
ベッドから起きだす。



402 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:13


「あー・・・ねむい・・・」

学校へ行く準備をしながら洗面台の鏡で自分の顔を見る。

「うっわー・・・ヒドイ顔・・・」

誰が見ても分かるくらいのクマがミキの目の下にできていた。


最近、眠れない日が続いている。
眠りが浅いというのもあるんだろうが、たぶん、最近よく見る夢のせいだろう。


ここ最近、同じ夢を見ることがある。

小さい時のミキが出てくる夢。
その小さなミキの隣に誰かいるんだけど、
その子の顔は黒く塗りつぶされたように見えない。
あれだけ、何度も見ている夢なのに思い出せない夢はミキの睡眠不足のタネになっていた。



403 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:16


「いってきまーす」

朝ごはんもそこそこに、鞄を片手に学校へと向かう。


「んー・・・いい天気」

家を出る前に見上げた空。
夏もそろそろ終わりになる頃だけど、空はまだ太陽が照りつけるほど真っ青だった。


ミキは晴れた日が好きだ。
天気がいい日は気持ちが軽くなる。
きっと晴々とした空が続いているからだろう。


気持ちが軽いから学校へ向かう足も軽くなる。
でも・・・


「あっ・・・亜弥ちゃん・・・」

足どりが軽かったミキの足がまるで重りをつけたように止まる。

ミキの目の前を歩く女の子。松浦亜弥ちゃん。
ミキと同じ学校に通っている2つ下の女の子。
隣に住んでいてミキとはいわゆる幼なじみの関係だった。



404 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:37


『 だった 』というのは、一方的に亜弥ちゃんがその関係を絶ったから。


ミキと亜弥ちゃんは幼なじみ。
家が隣同士だったミキたちは二才離れていることなんて関係なしに毎日、遊んでいた。
それはミキたちが大きくなっても変わることなく続いていた。


3週間前ぐらいだろうか。
急に亜弥ちゃんがミキの家に遊びに来なくなった。
いつも学校が終わるとすぐにミキの部屋に飛んでくるのが亜弥ちゃんの小さい頃からの日課だったのに、それが急に来なくなったのだ。


最初、ミキは今日はたまたま来ないだけなんだと考えていた。
でも、亜弥ちゃんは3日経っても来なかった。
こんなことは珍しかったので、何かあったのかなと思ってミキの方から亜弥ちゃん家に遊びに行ったんだけど・・・


『 あたし、部活(テニス部)に入ったからもう、みきたんとは遊ぶ時間ないから 』

それだけ言われて追い返された。



それからの亜弥ちゃんは部屋に遊びに来なくなるどころか
ミキに対して冷たい態度を取るようになった。



405 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:41


前を歩く亜弥ちゃんを見ながら思う。


『今日も一人で行くんだ』


前までは毎日、一緒に行っていた学校。
ミキが寝坊して、遅刻しても亜弥ちゃんは家の前で待っていてくれた。


「あ、亜弥ちゃん・・・おはよう・・・」

前を歩く亜弥ちゃんに恐る恐る声をかける。
ミキの声に気づいて前を歩いていた彼女が足を止める。


「・・・・」

足を止め、ミキの方を振り向くけど何も言わない。
ミキはもう一度、アイサツする。


「おはよう」
「・・・・」

やっぱり何も言わない・
ミキを見る亜弥ちゃんの目はどこか冷めた目をしていた。



406 名前:僕がキミを 投稿日:2005/01/22(土) 01:43


「・・・はよ・・」

暫くミキを見た後に小さな声で挨拶をする亜弥ちゃん。
これもあの日から変わっていない。
家だけでなく学校の中でも亜弥ちゃんはミキに声をかけなくなった。


声をかけるのはミキ。
亜弥ちゃんはそれに小さく冷たく返すだけ。

小さな声で挨拶を返した亜弥ちゃんは前を向き、足早に歩いていく。


「ほんとに・・・ミキが何したっていうのさ」

足早に歩いていく亜弥ちゃんを見ながらミキは溜息をつく。


『亜弥ちゃんの考えていることが分からない』

さっきまでの晴れやかな気持ちもなくなり、気を重くしてミキは学校へと向かった。



407 名前: k 投稿日:2005/01/22(土) 01:47


更新終了。

PCの調子がものすごく悪い_| ̄|○

今、気づいたけど前回のやつのタイトルが
『以心電信』→『以心伝心』になってる・・
気づくの遅すぎ _| ̄|○ 


今回のものはあやみきの学園ものです。
ひょっとして初めてかな?この設定は・・


395>>名無しさま

感想ありがとうございます。
今回のあやみきは初の学園ものなので、どうなるか分かりませんが
読んでもらえたら嬉しいです。



396>>名無し読者さま

いや、こちらこそ待たせてしまった割にはあのような続編しか書けずに
せっかくリクしていただいたのに申し訳ありません。
これからも日々精進してあやみきを書いていくので、
また読んでもらえたら嬉しいです。


397>>名無飼育さま

自分も最初ageていたのでびっくりしたんですが、
それほど気にしてないんでw
お気遣い、ありがとうございます。


今回は思っきし、見切り発車なんで、
更新が遅くなるか更新量が少ないかのどちらかになると
思いますが、読んでくれたら嬉しいです。



・・・それでは、今回はこれで失礼します。



408 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 01:50
さっそくリアルタイムで読んでしまいましたw
何か好きな感じの設定なので、続き、楽しみにしてます!!
頑張ってください。
409 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/22(土) 17:35
おもしろそうです!
亜弥ちゃんの真意が気になります
410 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/01(火) 20:13
寒さを吹き飛ばす甘々更新期待してます!
411 名前:k 投稿日:2005/02/05(土) 23:56

更新、開始。


412 名前:k 投稿日:2005/02/05(土) 23:57


教室につくなりミキは机を枕にして寝る体勢になる。
朝、一限目が始まるまでの少しの間、眠るのがミキの日課になっていた。


― ガヤガヤガヤ ―


「・・・・・」


クラスメイトたちのざわめきもミキには気にならない。
逆にその声が子守唄のようにミキの眠りを誘発する。


「・・うっそ!?マジで?」
「・・みたいだよ・・」
「亜弥ちゃんって、松浦亜弥?」


−ピクッ−

いつもは気にならないクラスメイトたちのウワサ話。
だがその話にミキは気になる名前を耳にする。

『 亜弥ちゃんって、松浦亜弥? 』

寝ている耳に入ってきたのは幼なじみの名前。
聞き間違いかと思いながらも、そのクラスメイトたちの話に耳を傾ける。



413 名前:k 投稿日:2005/02/05(土) 23:58


「・・・松浦さんとよっすぃーが?・・」
「うん・・二人でいるところ・・・」


「・・・・」

どうやら聞き間違いではなさそうだ。
確かに今、亜弥ちゃんの名前が出てきた。


「ほんとにあの二人だったの?」
「絶対そうだよ。何人か見ている人だっているし・・」
「でも、よっすぃーと・・・」


『よっすぃー・・・?』

聞き覚えのある名前。
よりによって亜弥ちゃん以外にミキが聞きたくない名前がもう一人出るとは。

「・・・・・」

ミキは思わず、二人の話をしているクラスメイトの所まで歩いていった。



414 名前:k 投稿日:2005/02/05(土) 23:59


「だって・・・ん?藤本さんどうしたの?」
「ねえ、その話もう少し詳しく聞かせてくれない?」
「え?・・・ひょっとして松浦亜弥ちゃんとよっすぃーのこと?」
「そう、それ」
「わ、わかった・・」

ミキはよっぽど怖い顔をしていたんだろう。
クラスメイトはミキの態度に怯えながら話してくれた。


クラスメイトの話はこうだった。

最近、放課後とかの時間を亜弥ちゃんとよっすぃーが一緒にいる所を見たヒトがいるとか。
しかも、二人が抱き合っているところを見たヒトもいるらしい。

最初、ミキはこの話を聞いたとき信じられなかった。
亜弥ちゃんが・・・しかもあのよっすぃーとだなんて。



415 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:01


「まさか、亜弥ちゃんに限ってあんなヤツと・・・・」

クラスメイトの話を聞いたあと、ミキは授業を受ける気にもなれず屋上に来ていた。


「ふー・・・」

フェンスに凭れ空を仰ぐ。
雲ひとつないほど真っ青な空が広がっているけど、ミキの心はくもり空って感じだ。


「ふー・・・・ん?」

ふと、グランドの方を見る。
ソフトボールの試合をしているんだろう。
その中に一人だけ浮いているやつがいた。


「・・・あいつ・・」

ミキは思わず、フェンスにかけている手に力を込める。



大勢の中で一人だけ派手な金髪をなびかせ、バットを持つ吉澤がいた。



416 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:02


よっすぃー・・・吉澤ひとみ

ミキとはクラスは違うが同学年。
長身でスタイルもよく顔も外人のような顔つきで学校では知らないやつがいないほど
目立った存在。
それでいて、勉強、スポーツとなんでもこなせる非の打ち所も無いやつ。

当然、そんな何でも出来るやつだからモテル。


「・・・アイツが亜弥ちゃんと?」

吉澤を見る美貴の顔つきが険しくなる。


「なんでよりによって、アイツなんだ・・・」


非の打ち所がないほど完璧な吉澤だが、一つだけ悪いウワサがあった。


『 遊び人 』

言い方は古いが吉澤は自分のルックス目当てにくる子に自分の好みの子がいれば必ず手を出すで有名だった。


「何でアイツなのさ・・・・亜弥ちゃん・・」


ミキは授業が終わるまでずっと吉澤を睨みつけていた。



417 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:03


「・・・はぁ・・・帰ろ・・・」

結局ミキは一限目の授業だけでなく、午前中の授業を全部さぼってしまった。


「一体、何がそんなにショックだったんだろう?・・・」

ミキは亜弥ちゃんと吉澤の話を聞いてから胸の中で沸き起こる苛立ち感に理由をつけかねていた。


評判が良くない吉澤だから?・・・
確かに、あんなヤツと亜弥ちゃんが付き合うのはミキは良くは思わない。
でも・・・やっぱり・・・多分・・・


「・・・亜弥ちゃんがミキに何も言わなかった・・・」

これが一番、ショックだった。
亜弥ちゃんとは小さい頃から何でも隠し事なしに付き合ってきた。
それなのにミキは亜弥ちゃんの口からではなくクラスメイトの口から吉澤のことを聞かされた。



418 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:05


「なんで何も言わないんだろう・・・」

ショックを受けながらミキは屋上の階段を降りていく。


「・・・あっ・・」

下から誰かが上がってきた。
よく見ると今、一番顔を見たくない吉澤だった。


「・・・あ?」

相手も気づいたらしい。
ほんの数秒だが顔を見つめあう。


「「・・・・」」

ミキは沸き起こる苛立ち感を抑えながら何も言わずに吉澤の横を通りすぎようとした。


「・・・ねぇ・・」

横を通り過ぎようとしたミキに吉澤が声をかける。



419 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:05


「・・・なに?」

声をかけた吉澤を睨みつけるように見る。
自分でも分かるくらい顔が険しくなっているのが分かる。
だけど、アイツはそんなミキの顔に臆することなく口を開いた。


「・・・あんた藤本さんだよね?」
「・・そうだけど、何?」
「いや・・・別に・・」


そう言ったまま、美貴を見つめる吉澤。

「用がないならもういい?」

吉澤の自分を見る目に苛立ちを感じたミキは不機嫌そうに吉澤の顔を見る。


「怖っ!・・・話に聞いていたのとは随分違うなぁ・・・」

ミキの態度にワザと怖がる素振りを見せる吉澤への苛立ちが募る。



420 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/06(日) 00:07


「さっきから何なのアンタ。ミキに言いたいことがあるならはっきり言えば?」
「はっきりねぇ・・・」

怒り顔の美貴にふざけた態度をとっていた吉澤の顔が急に真面目な顔になる。

「藤本さん・・・・松浦の何?」
「は?」
「だーかーらー・・松浦亜弥、どう思ってんの?アイツの事」


 『 あいつ 』

その言葉にミキは吉澤に対しての嫌悪感が大きくなるのを感じた。
まるでずっと昔から知っているような素振り。


「何で関係の無いあんたにそんなこと聞かれなきゃいけないのさ」
「んー?まぁ色々とね」
「色々って何?」
「んなことよりどう思ってんのさ。先に質問したのはこっちだよ」
「・・別にミキと亜弥ちゃんは幼なじみだよ」
「幼なじみねぇ」
「そうだよ、亜弥ちゃんはずっと小さい頃から一緒に育ってきた大事な・・・
 妹みたいな娘なんだ。だから亜弥ちゃんに近づくのはやめてくれない?」
「人聞きの悪い。近づいたのは松浦が先なのに」
「ウソだ!亜弥ちゃんがオマエみたいなやつに近づくわけが無い!」
「まあ、別にどう思おうといいけどさ。んじゃ、貴重な意見ありがとね」
「ちょっと!・・」

止める美貴の言葉を無視して吉澤は屋上へと上がって行った。


「何なんだ・・・アイツ・・」

ミキはしばらくアイツが上がっていった屋上の入り口を見ていた。



421 名前:k 投稿日:2005/02/06(日) 00:13


更新終了。

ああ・・ageちゃったよ_| ̄|○
しかも、タイトル途中まで違うし・・

やーっと!PCが直ったよ。。・゚・(ノД`)・゚・。
調子が悪いと思ったらイキナリ壊れた_| ̄|○
おかげでPCに突っ込んだデータが全部消えましたw


久しぶりの更新のくせに全然、話が進んでないです。
しかも、しばらく松浦さんは出ませんw



408>>名無飼育さま

ありがとうございます。
学園ものは初めてなので、どうなるか分かりませんが、
気長に更新を待っていてもらえたら嬉しいです。


409>>名無し読者さま

感想ありがとございます。
松浦さんの真意ですか?
それは作者にも分かりませんw


410>>名無し読者さま

えー・・と、多分、今回のは甘いあやみきにはならないかもしれないんですが・・
なるべく痛くない方向に持っていくように頑張ります。



・・・それでは、今回はこれで失礼します。



422 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 20:22
ドキドキ…
楽しみに待ってますね(*´∀`)
423 名前:k 投稿日:2005/02/12(土) 23:09

更新、開始

424 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/12(土) 23:12


「すっごいね、亜弥ちゃん」
「・・・うん」
「もう殆ど、この学校で知らない人はいないじゃない?」
「・・・うん」
「みっきー、うんばっかりだね」
「・・うん」
「うーん・・・こりゃ重症だな」


亜弥ちゃんと吉澤のウワサを聞いてから一週間が経っていた。
ミキがアイツと屋上で会った次の日ぐらいからウワサは急激に学校中に広まり、一週間経ったいま、もう誰も知らないんじゃないかというくらい、亜弥ちゃんとアイツとのウワサ話で学校中が持ちきりだった。


「みっきー、そんなに気になるなら本人に聞けば?」
「・・・うん」
「ちょっと、人の話ちゃんと聞いているの?」
「え?・・・あっ、な、何?マイちゃん」
「ハア・・・ほんとにこれは重症だね」


隣の席のマイちゃんが話しかけるけどミキは上の空。
マイちゃんはそんなミキを呆れた目で見ていた。

ずっと、・・あの日以来、ミキは亜弥ちゃんと吉澤のことだけ考えていた。
でも、考えるだけでミキは何も・・・亜弥ちゃんに本当の事を聞くどころか吉澤の所に行って、話を聞くことさえしていない。
ミキがした事といえばこの一週間を学校と家との往復で潰していたくらいだ。



425 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/12(土) 23:14


「・・・ねぇ、何でみっきーはよっすぃーに会った時に亜弥ちゃんのことちゃんと聞かなかったの?」
「だから、それはアイツが聞こうとしたらさっさと屋上に上がっていくから・・」
「でも、追いかけるとかできたでしょ?じゃなきゃ、家に帰ってから亜弥ちゃんに聞くとかさ。亜弥ちゃんとは家が隣同士なんだから」
「そりゃあ・・・ミキもそうしようとは思ったけど」
「思ったけど・・・何?」
「・・・亜弥ちゃんが会ってくれない」
「会ってくれない?」
「うん・・・会ってくれないどころか電話にも出てくれない」
「そりゃあ・・・・避けられてるね」
「うん・・・だからどうしようもなくてさ」


ハア・・・と溜息をこぼすミキにマイちゃんは何を言っていいのか分からない顔をしている。
きっと、ものすごく情けない顔をしているんだろうな。


「・・・なんで、亜弥ちゃんはミキに何も言ってくれないのかな・・」
「みっきー・・・」

本当のことが知りたくても当事者である亜弥ちゃんには会えず、
だからと言って、あの吉澤から聞くのも何だか嫌で、
ミキはここ一週間ぐらい悶々とした日々を送っていた。



426 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/12(土) 23:15


「みっきー多分、単なるウワサだよ。そこまで気にしなくてもいいんじゃない?」
「・・・うん」


マイちゃんが慰めてはくれるけどミキはどうにもあのウワサ話が単なるウワサには思えなかった。
屋上であった、吉澤の言葉。
亜弥ちゃんを知っている口ぶりとその態度。
そして・・・



何も言わない亜弥ちゃん。


ミキに会うことを避けている亜弥ちゃんのその態度がウワサを肯定しているようで、
ミキのムカついた気持ちは膨らむ一方だった。

せめて、亜弥ちゃんと話が出来ればこんなワケの分からない気持ちもしなくて済むのに・・・



427 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/12(土) 23:17


亜弥ちゃんと吉澤とのウワサが立ってから二週間が過ぎた頃、ミキは亜弥ちゃんと話す機会を手に入れることが出来た。


それは、母親から貰った機会だった。


「みきー!ちょっと、手伝ってもらえるー?」
「んー?なに、どしたのさ?」

二階の自分の部屋で勉強していたミキに母親が大きな声で自分を呼んでいる。
勉強を中断させ、下に降りてみると大きな袋を持った母親が玄関先に立っていた。


「・・・なに?その大きな荷物は?」
「早く、これ持って」
「え?ちょ、ちょっと」

下に降りてきたミキに母親はその袋を持たせる。

「これって・・・梨?」
「そう。母さんが勤めている会社のヒトが実家から送ってきたからって、
 皆におすそ分けしてたのよ」
「だからって、この量は多くない?」
「これでも、減らしてもらったほうよ」
「そ、そうなんだ」


袋いっぱいに入った梨を持たせられるミキ。
家族で食べきるにはあまりにも多すぎる量にミキは唖然とする。



428 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/12(土) 23:24


「ねえ、こんなには食べれないんじゃあ・・・」
「そうなのよ。だからお隣にもおすそ分けしようと思って。
 美貴、これ亜弥ちゃん家に持っていってよ」
「え?」

唖然としながら袋の中の梨を見ていると母親からとんでもないことを言われた。

「え?じゃなくて、夕食が終わってからでいいから。
 お隣の松浦さん家に届けてきてね」
「なんでミキが・・」
「母さん、ちょっと用事が出来て夕食作ったら出かけないといけないの。
 だから、お願いね」
「え、ちょっと、まっ・・・」

ミキは何か言おうとしたけど、母親はそのまま台所のほうへと歩いていった。


「・・・マジで?」

玄関に残されたのは、事の展開についていけずに呆然としているミキと、袋いっぱいに
入っている梨だけ。


「・・・亜弥ちゃんに・・会える?」

少しだけ淡い期待を抱きつつ、ミキも母親の後を追うように台所へと歩いていった。



429 名前: 投稿日:2005/02/12(土) 23:27


更新、終了。

・・・他のスレに間違って書き込んでしまった_| ̄|○
ごめんなさい。_| ̄|○


はぁ・・まったく話が進まず・・・
しかも更新量、少なっ!!
次回の更新では少しくらいは進展させねば・・


422>>名無飼育さま

ありがとうございます。
まったく話が進んでないんですが、気長に待っていてもらえると
嬉しいです。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。



430 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/13(日) 09:12
さて、ミキティどうするのかなぁ…
続き気になります。頑張ってください。
431 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/13(日) 21:21
あらー、頑張ってほしい所です
432 名前: 投稿日:2005/02/17(木) 23:16


更新開始

433 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:17


 午後七時 

母親に頼まれたものを持って、ミキは幼なじみの家の前で立ちつくしていた。


「・・・・」

目の前にあるインターフォン。
それに人差し指を向けながら緊張する美貴。


「・・はぁ、何、果物を持っていくだけで緊張してんだよ。ミキは」

そう、単なる幼なじみの家へ母親から頼まれたものを持っていく。
ただそれだけなのに、ミキの心臓はバクバクいうほど緊張していた。


「・・・よし」

意を決してインターフォンを押す。


― ピンポーン


さあ覚悟を決めよう。



434 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:18


「はーい?」

家の中から聞こえてきた声にドキリとする美貴。


「あら?美貴ちゃん久しぶりねぇ」

玄関のドアを開け、美貴を出迎えたのは亜弥の母親。
出迎えた人物に少々がっかりしながらそれを顔には出さずに笑顔でこたえる。


「久しぶりです。夜遅くからすみません。
 これ、母の会社からの頂き物なんですけど・・」

少々、他人行儀になりながらも頼まれていたものを渡す。


「あら?何かしら?」

亜弥の母親はニコニコしながら袋の中を覗く。
その顔に亜弥を思い出す美貴。


『ほんと、亜弥ちゃんっておばさん似だよなぁ』


先ほどの声といい、亜弥は母親にすごく似ていた。
そんな亜弥の母親を美貴はじっと見ていた。



435 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:19


「まぁ!美味しそうな梨。
 悪いわねぇ。お母さんにもお礼を言っておいてくれる?」
「あ、はい。じゃあ、夜分にお邪魔してすみませんでした」

亜弥の母親の顔をじっと見ていた美貴は慌てて挨拶をして帰ろうとする。


「あ、美貴ちゃん。ちょっと!」
「はい?」

美貴は玄関へと振り返り家を出ようとしたが亜弥の母親に引き止められる。


「美貴ちゃん少しだけ時間とかある?」
「え?・・・ああ、大丈夫・・ですけど?」
「じゃあ、ちょっと上がってもらえる?」
「え?」

美貴が戸惑っていると、亜弥の母親は二コリと笑った。

「だって、美貴ちゃんと久しぶりに会うんだもん。
 おばさん、美貴ちゃんとお茶がしたいんだけどダメかしら?」
「えっと・・」

亜弥ちゃんを思い出す顔で言うおばさんにミキが断れるはずがなかった。



436 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:20


「ダメかしら?」
「あ、大丈夫・・です」
「そう?良かった。じゃあ、上がって?」
「はい、お邪魔します」

玄関へと向けかけていた体を今度は亜弥ちゃんの家へと向きをかえる。


「ねっ?せっかくだから美貴ちゃんが持ってきてくれた梨でお茶でもしましょうか?」
「ああ、お構いなく・・」
「ふふ、美貴ちゃんったら。お隣さんでしょ?
 そんな他人行儀に畏まらなくてもいいのに」
「・・すみません」
「ふふ、だから、畏まらなくてもいいのよ。あ、今お茶入れるから座って?」
「あ、はい」


おばさんに軽く会釈しながらソファへと座る。



437 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:21


ソファへ座ると同時に部屋をキョロキョロと見回す。
ミキは何故かすごく緊張していた。
前までなら我が物顔でよく、この家に遊びに来ていたのに。
亜弥ちゃんと会わなくなってからは来づらくなっていたこの家は何故か他人の家のような気がして、ミキは少し居心地が悪くなっていた。


「亜弥はまだ帰ってこないのよ」
「え?」

おばさんが貰ったばかりの梨とお茶を持ってミキの前に座る。

「さっき、連絡があって部活で遅くなるんですって」
「そうなんですか?」
「ごめんね。せっかく美貴ちゃんが来ているのに」
「いえ、・・ミキは頼まれたものを持ってきただけですから」


おばさんの言葉に少しだけ目を伏せる。
申し訳なさそうに謝るおばさんにミキはそんなに亜弥ちゃんに会いたそうな顔をしていたのかと少し恥ずかしい気持ちになった。



438 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:23


「ありがとうございます」

差し出されたお茶に口をつける。
アッサムティーだろうか?
ちょっとだけ苦味がする紅茶はさっきまで緊張していたミキの心を解かした。


「・・美味しいです」
「ありがとう。この梨もすごく果汁があって甘くて美味しいわ」

おばさんと顔を見合わせながら笑いあう。
こうしてると、昔に戻ったみたいな錯覚に陥る。

亜弥ちゃんと笑いあっていたあの頃に・・・



439 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:23


緊張もほぐれミキはおばさんとの会話を楽しむ。


「じゃあ、美貴ちゃんは県外の大学を目指してるの?」
「まあ・・行けたらですけど」
「そうなんだ。じゃあ、美貴ちゃんがそこに受かったら家を出るのねぇ」
「・・受かったらですけど」
「なに言ってるの。美貴ちゃんなら大丈夫よ」
「はは、ありがとうございます」

などと、おばさんと会話を弾ませていると玄関のドアが開く音が聞こえた。
そして、それと同時にミキの動きを止める声も聞こえてきた。


「ただいまー」

そうミキが会いたくて、でも会うとは思ってなかった亜弥ちゃんが帰ってきたのだ。


440 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:24


「・・帰ってきたみたいね」
「・・・」

おばさんはミキに微笑むと亜弥ちゃんを出迎えに玄関へと向かう。
ミキはというと、紅茶のカップを持ったまま動けずにいた。

トタトタと廊下を歩く音が聞こえる。
亜弥ちゃんの部屋は必ずこのリビングを通らなければ行くことが出来ない。
そうなると、ここに居るミキと会うことになる。

そう考えただけで、先ほどまで収まっていた緊張感がまた騒ぎ出した。


「なに?ママってばニヤニヤしちゃって」
「別にー」
「?・・変なママ」


廊下から聞こえる会話。
どうやらおばさんはミキが来たことを亜弥ちゃんに伝えてはいないようだ。
その事がさらにミキの緊張を増大させた。



441 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:26


「亜弥、ご飯食べるでしょ?早く着替えてきなさい」
「はーい。ねえ、今日の晩ごは・・」

亜弥ちゃんが制服のネクタイを緩めながらリビングを通り過ぎる。
その時、ソファに座っていたミキと目が会った亜弥ちゃんが動きを止める。


「「・・・」」

お互いに見つめあって動かない。
ミキは久しぶりに見る亜弥ちゃんに会えて嬉しい気持ちが顔にでて亜弥ちゃんに微笑む。


「こんばんは」
「・・・」

ミキは勇気を出して挨拶をするが亜弥ちゃんは黙ってこっちを見たまま動こうとしない。
その亜弥ちゃんの目にミキは少しだけ傷つく。


『 何でここにいるの 』


明らかにミキの来訪を喜んではいないその目に、ミキは笑った顔を引っ込めた。



442 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:27


「亜弥?何突っ立っているの?ほら、久しぶりに美貴ちゃんも来ているんだから、早く着替えて、下に降りてきなさい」
「・・・」
「・・・」

亜弥ちゃんはおばさんの言葉も耳に入ってないようにミキを見る。


「亜弥?」
「・・いい」
「え?」
「ママ、あたし友達と食べてきたから夕飯はいらない」
「えっ?美貴ちゃんも来てるのに・・亜弥!?」

亜弥ちゃんはおばさんと言葉を交わすと、
ミキの方を見ずに自分の部屋へと上がっていった。

おばさんはそんな亜弥ちゃんの後姿をワケが分からないというように見ていた。


「どうしたのかしら?ごめんね、美貴ちゃん。あの子ったら最近変なのよ」
「いえ、気にしてませんから」


嘘だ。
ホントはものすごく亜弥ちゃんの態度に傷ついているのに・・・

申し訳なさそうに謝るおばさんにミキは笑って答える。



443 名前:僕がミキを 投稿日:2005/02/17(木) 23:28


「どうしたのかしら?久しぶりに美貴ちゃんが来てるっていうのに・・」
「・・きっと、学校で山ほど課題でも出されたんじゃないんですかね」

亜弥ちゃんの態度を不思議に思ったおばさんに取ってつけたようないい訳をする。
ミキと亜弥ちゃんが疎遠になっているなんて思ってもいないおばさんに対して心配かけまいとするせめてものいい訳だった。


「珍しい・・課題なんてあの子が真面目に取り組むなんて初めて見るわ」
「はは」

どうやら、ミキのいい訳は充分通用したようだ。


・・さて、亜弥ちゃんに会えたけど肝心なことが聞けなかったミキはこれ以上、ここに居ても仕方がないと思い席を立った。


「・・おばさん、ミキそろそろ・・」
「あっそうだわ!せっかくあの子がやる気を出して勉強してるなら何か、持っていってあげなきゃ。・・・そうだわ、ねっ美貴ちゃん?悪いけどこの美貴ちゃんから貰った美味しい梨を亜弥に持っていってもらえないかしら?」
「え?・・・」
「あたしが行くと、どうせあの子のことだから天邪鬼になって勉強を放り出すと思うの。
 でも、美貴ちゃんならあの子も素直に言うことを聞くし。いいかしら?」
「えっと・・」

いいかしら?なんて言われたその言葉にミキの断りが効くはずもなく、
ミキは戸惑いながらも、おばさんから梨が乗っかった皿を受け取った。


444 名前: 投稿日:2005/02/17(木) 23:29

更新、終了
相変わらず、更新量が少ない・・・
ちょっとだけ話が進んだ・・かな?



130>>名無し読者さま

ありがとうございます。
まだ全然松浦さんが出てこないので話が進まないのですが、
次回あたりには話しが進むよう頑張ります。


131>>名無飼育さま

ほんと、ここの藤本さんには頑張って欲しいです(人まかせ
次回には展開があるよう話しに波をつけたいと思うので。
気長に待っていて欲しいです。


・・・それでは今回はこれで失礼します。


445 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/23(水) 20:49
・・・続き、すんごい気になります。
面白いっす。
446 名前: 投稿日:2005/02/24(木) 12:16

更新、開始

447 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:18


「・・・」

梨が乗っかった皿を両手で持ち、亜弥ちゃんの部屋の前で立ち尽くす。
とはいえ、ずっとこうしているわけにもいかないのでミキは思い切って亜弥ちゃんの部屋のドアをノックする。


― コン・・・コン

遠慮がちにドアをノックする音はミキの態度を表しているように思えた。
腹をくくると決めたはずなのに、いざ本人を目の前にしてこの様だ。


「・・・あ、のミキだけど・・」

ドアを叩いても返事は無い。
当たり前か。亜弥ちゃんはミキに会うことを嫌がっているんだ。その本人相手に快く喋る人なんていないだろう。


「あの・・おばさんが、亜弥ちゃんに差し入れって・・」


無視されるのは分かってはいた。
だけど、ミキはおばさんに亜弥ちゃんへ差し入れを持っていくよう頼まれている。
せめて、話が出来ないにしてもこの梨だけは亜弥ちゃんに手渡したい。



448 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:19


「・・あの、亜弥ちゃん?」

返事が返ってこない亜弥ちゃんの部屋の前でもう5分ぐらい立っている。
ミキはもう一回だけ、亜弥ちゃんに呼びかける。
これで、返事が無ければ諦めよう。
そう思っていた。


「・・亜弥ちゃん」
「・・・入っていいよ」
「え?・・」
「つっ立っていないで、入れば?」


もう一度ノックをしようとしたら突然開かれたドア。
そこには無愛想に立っている亜弥ちゃん。


「・・・入らないの?」
「え?あっ!は、入ります!」


開かれたドアを前にボーと立っていたミキに亜弥ちゃんが少し怒り口調で言う。
その言葉を聞いてミキは慌てて亜弥ちゃんの部屋へと入った。



449 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:21


「・・・」

亜弥ちゃんはミキを部屋へと招き入れると自分の机への椅子へと腰掛けた。
ミキがそれを黙ったまま見ていると、亜弥ちゃんがミキの方に顔を向けた。

「それ、何?」
「え?」
「皿に乗せてるやつ。・・リンゴ?」
「あ、これミキのお母さんが会社から貰ってきたものなんだ。
 多く貰ったんで亜弥ちゃんの所にも持っていきなさいって、お母さんが言うから・・」
「ふーん」

大して興味も無かったのか亜弥ちゃんは皿から視線を外した。


「「・・・・」」

沈黙に包まれる部屋。

「あ・・じゃあこれ、美味しいから・・」

肝心なことが聞けず、かといって何か話題になるものを探すが見つからない。
ミキは自分のへタレさに情けなさを感じながら亜弥ちゃんの机の横に皿を置くと部屋を出ようとした。



450 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:22


「・・座れば?」
「え?」
「人の部屋に来ておいて、すぐ帰るのは失礼じゃない?」

亜弥ちゃんの言葉に一瞬、目を丸くする。
その言葉は昔よく言われた言葉。



『みきたん、人の部屋に来ておいてすぐ帰るのは失礼なんだよ?』 
『えー?でも、ミキはお母さんから頼まれたものを持ってきただけだし・・・』
『だから、それがダメなの!用件だけ終わらしてすぐ帰るなんてあたしがつまんない!』
『・・亜弥ちゃん、それってただ、亜弥ちゃんの相手をしろってことなんじゃ・・』
『えへへ』
『・・はぁ・・はいはい、分かりましたよ』



昔、よく亜弥ちゃんの家に用事がある度に言われていた言葉。


「え?あ、の・・」

まさかその言葉を今の亜弥から聞けると思わなかった美貴は戸惑う。
だが、亜弥はそんな美貴の態度などお構いなしに口を開く。


「だから、座れば?」
「いいの?」
「・・嫌なら帰れば?」
「ぜ、全然嫌じゃないよ!・・じゃあ、座るね」

遠慮がちに亜弥のベッドへと腰掛ける。



451 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:23


『どうしたのかな?』

先ほどとはうって変わって亜弥の美貴に対する態度は違っていた。
言葉自体の刺々しさはあるものの、美貴とリビングで会ったときのような拒絶感が無くなっていた。
そのことに美貴は戸惑うが久しぶりに亜弥の部屋へ来た嬉しさに顔を引き締めることが出来なかった。


「・・なに笑ってんの?」
「あ・・いや、別に」
「変なの」


顔の頬が緩んでいるミキを亜弥ちゃんが訝しげに見ていたのでミキは慌てて、その頬を引き締めた。
亜弥ちゃんはそんなミキを更に訝しげに見ていたが特に気にすることも無く立ち上がり、ベランダのほうへと歩いていった。

亜弥ちゃんの部屋にはベランダがある。そして、そのベランダはミキの部屋の窓のすぐ近く。前は夜遅くまで亜弥ちゃんと窓から顔を出しながらお喋りしていたっけ?

そんなことを思い出しながら亜弥ちゃんがベランダから来るのを待つが、亜弥ちゃんが来る気配は無い。



452 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:25


「・・亜弥ちゃん?」

ベランダから中々戻ってこない亜弥ちゃんに声をかける。


「・・何?」
「あ・・いや、何してるのかなって・・」
「・・・別に・・ただ、星を見ていただけ」

ベランダを覗くと亜弥ちゃんがミキに背を向け夜空を見上げていた。


『嫌がるかな?』

そう思いながらミキはそっと、亜弥ちゃんの隣へと並んだ。
だけど、亜弥ちゃんは嫌がることもなく黙ってミキが横に並ぶのを見ていた。


亜弥ちゃんの横に並んでいる。
ただそれだけなのにそれが昔に戻ったようでミキは嬉しくなった。



453 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:26


「・・ホントだ。今日は星がよく見えるね。・・あっ!流れ星だ」
「・・・」
「すごい・・・滅多に星なんて見れないのに、流れ星も見れるなんて・・」
「・・・」

見上げた夜空には無数の星が散らばっていて、星が見えないと言われている東京の星も見ようと思えば見えるということをこの時、ミキは知った。


「「・・・」」


ミキはそっと、亜弥ちゃんを覗き見た。
ただ、じっと星を見ている亜弥ちゃん。
その顔は星に何かを祈る乙女のようで・・
そして、その横顔はとても綺麗で・・
いつの間に彼女はこんなに大人びた表情をするようになったんだろう?

その表情に戸惑いながらも何故か胸が少しだけ早くなるのをミキは感じていた。


454 名前:僕がキミを 投稿日:2005/02/24(木) 12:28


星を見上げる亜弥ちゃんに声をかける。

「・・・何か・・お願いした?」
「え?」
「じっと星を見てたから・・」
「・・なんでそんなこと聞くわけ?」
「・・あ、ごめん。・・」
「・・・」

ドキドキしながら話すミキに亜弥ちゃんは冷たく返す。
でも、ミキはこうして亜弥ちゃんの横に並んで星を見ていることが嬉しくて、
前みたいに戻った気がして嬉しくて・・・


だから亜弥ちゃんの態度に気づかなかった。



知らなかったんだ。

ミキの言葉を亜弥ちゃんがどんな風にして受け取っていたかなんて・・


知らなかったんだ。

あの言葉が亜弥ちゃんを傷つけていたなんて・・・



その時のミキは知らなかったんだ。



455 名前: 投稿日:2005/02/24(木) 12:29


更新終了


・・・話しに波をつけられない_| ̄|○

うーん、頭で構想しているところでは話しの終わりまで
出来ているのに、文章にすると中々、難しいですねw


445>>名無飼育さま

ありがとございます。
続きが気になっているとのことですが、ダラダラ話を延ばしてすみません。
自分でもさっさと話をまとめて更新したいんですが、どうにも上手く文章を
書くことが出来なくて・・・こんな更新の量が少ない駄文ですが待っていてもらえると
嬉しいです。


・・・それでは、今回はこれで失礼します。



456 名前:445 投稿日:2005/02/24(木) 21:41
駄文だなんてそんなことないっす。
待ってます、楽しみにしてます。
がんばってくださいね。
457 名前:名無し 投稿日:2005/02/25(金) 00:23
待ってます。がんばってください。
458 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/27(日) 20:57
うおおおおおおおおおお
どういうことですか?
気になる気になる気になる!!
459 名前: 投稿日:2005/03/05(土) 18:10

更新、開始

460 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:11


暫く、星を眺めていたミキと亜弥ちゃんだけど、肌寒くなったので部屋に戻ることにした。


「「・・・」」

亜弥ちゃんは自分の椅子へ、ミキは亜弥ちゃんのベッドに腰掛ける。
だけどお互いに会話が無い。
その沈黙が気まずくてミキは亜弥ちゃんに話しかける。


「亜弥ちゃん、部活頑張ってるみたいだね。大変?」
「・・・別に」
「そ、そっかー、勉強と部活の両立は大変だろうけど頑張ってね」
「・・・」

話をするけど今いち盛り上がらない。というか、会話が続かない。


「「・・・」」

再び沈黙。


ミキは亜弥ちゃんに聞けずにいた。

『吉澤とのウワサは本当なの?』

一番聞きたいこと。
その吉澤とのことをどう切り出していいのか、ミキは迷っていた。


461 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:12


「・・何か、聞きたいことがあるんじゃないの?」
「え・・」

不意に、亜弥ちゃんが口を開く。


「・・聞きたいことがあるから、理由をつけてここに来たんじゃないの?」
「・・・」

その目に圧倒される。
まるで、

『 言いたいことがあるならはっきり言えばいい。 』

そう言っているようで・・・
ミキはそんな亜弥ちゃんを見ながらゴクリと唾を飲み込み言葉を発した。


「あ、あのウワサって本当なの?」
「ウワサって?」
「・・亜弥ちゃんと・・吉澤のこと・・」
「・・別にみきたんには関係ないでしょ」
「・・・」

冷たく言い返される。
亜弥ちゃんの態度は拒絶というよりは苛立ちに近かった。
その態度にミキは戸惑う。


462 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:14


「あやちゃ・・」
「聞きたいことってそれだけ?なら、話すことは何もないから・・」
「・・・」
「それだけならもう帰ってよ」

冷めた声でミキを見ながら亜弥ちゃんが言う。
その態度に少しだけ傷つく。けど、ここで引き下がっては駄目だ。


「・・ミキは亜弥ちゃんに幸せになって欲しいって思ってる」
「何、突然・・・」
「亜弥ちゃんはミキにとって妹みたいな存在だから・・大切な妹には幸せになって欲しい」
「・・・」

その時、亜弥ちゃんの目が少しだけ揺らいだ気がした。けど、ミキはそれに気づくことなく言葉を続ける。


「大切な亜弥ちゃんだから・・・ミキは亜弥ちゃんが幸せになれるならどんなことだってしてあげたい。・・あの、さっき見た流れ星のように・・・亜弥ちゃんが望むものは何でも叶えてあげたい」
「・・・」
「だけど・・あいつは・・」


そう言って、途中で言葉を飲み込む。


463 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:16


「だけど・・あいつは・・」


吉澤は絶対に亜弥ちゃんを傷つける。
そんなヤツに亜弥ちゃんが関わるのはミキは嫌だ。

幼なじみとして、ずっと小さいときからミキは亜弥ちゃんを見てきたんだ。
そんな妹みたいな存在の亜弥ちゃんをあんな悪い噂があるやつとなんて付き合わせたくはないんだ。


亜弥ちゃんが心配だから・・
その気持ちをこの言葉にのせる。


「・・あんなヤツとは付き合わないほうがいい」
「・・・」


自分の気持ちを乗せた言葉を吐き出す。
だけど、亜弥ちゃんはそんなミキをただじっと見ているだけだった。

464 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:17


美貴が喋り終えると再び沈黙が訪れた。
その間、何を考えているのか亜弥はただじっと美貴を見ていた。
美貴はそんな亜弥にもう一度、吉澤とのことを聞こうとする。


「吉澤とは・・」
「・・みきたんは・・流れ星になりたいわけ?」
「え?・・」
「あたしのお願いは何でも叶えてくれるんでしょ」
「あ・・うん」

美貴の言葉を遮り話す亜弥に美貴は戸惑いながら亜弥の言葉に耳を傾ける。


「うん・・ミキは出来れば亜弥ちゃんのお願いは何でも叶えてあげたいと思ってる」
「・・・ふーん」
「・・・」


美貴の言葉を聞きながら顔を横へと背ける亜弥。
その表情や態度が明らかに先ほどとは違うことに美貴は戸惑った。


465 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:19


「・・・」
「・・・」

美貴に顔を背けながら何かを考え込んでいる亜弥。
そんな亜弥の態度に戸惑う美貴。

二人の間に静けさが生まれる。

「あの?あやちゃ・・」
「じゃあ叶えてよ」
「・・え?」
「あたしのお願いきいてくれるんでしょ?」
「・・・うん」

美貴の方へ振り向きながら喋る亜弥に戸惑いながらも頷く美貴。

「じゃあキスさせてよ」
「は?」
「・・出来ないわけ?」
「え・・いや、出来るけど・・」
「じゃあするね」

そう言って美貴に近づく亜弥。


466 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:21


「あ、の・・亜弥ちゃん?」
「・・なに?」
「いや、・・キス・・するの?」
「そうだよ」
「・・えっと」
「出来るんでしょ?」
「え?・・あ、うん」

戸惑いながらも頷く美貴。


美貴は困惑していた。
確かに先ほどまで亜弥は苛立ち感を持っていて、
美貴に対して拒絶する態度をちらつかせていた。しかし、今の亜弥からはそういうものが無く、むしろ何を考えているか分からない。
その態度の変化が美貴の思考を混乱させた。


467 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:23


『急にどうしたんだろう?』

ミキは戸惑っていた。
亜弥ちゃんがお願いしたものに対してではなく
さっきとは違う亜弥ちゃんの態度にたいして。

どうして亜弥ちゃんは突然、こんなお願いをしてきたのだろう?
吉澤とのことを聞いた途端に亜弥ちゃんは態度を一変させ、今は何を考えているのか分からない。
それくらい、今の亜弥ちゃんの表情は無表情だった。

だけど、ミキは亜弥ちゃんのお願いはどんなものでも叶えてあげたい。
その気持ちに偽りはない。だから、このお願いも叶えるつもりだ。
それにキスなんて小さい頃からホッペに何度もしていることなんだから、亜弥ちゃんのお願いを聞いた後にもう一度吉澤とのことを聞けばいい。


そう、ミキは深く考えずにいた。

なぜ、亜弥ちゃんが突然こんな事を言ってきたのか・・
亜弥ちゃんが言うキスとミキが思っているキスの意味の違いを考えもしないで・・


考えもせずに受け入れてしまった、亜弥ちゃんのお願い。
思えば、この時からもうあの頃の二人には戻れないことをミキは気づくべきだったのかもしれない。


468 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:24


ミキの前に立つと亜弥ちゃんはミキを見下ろしながら顔を近づけてきたので目を閉じる。


『そういや、小さい頃とかよく結婚式ごっことかして遊びでキスしたっけ?』

美貴はあの頃のことを思い出し、顔が綻ぶ。
それに気づいて亜弥が直前で止まる。


「・・なに、笑ってんの?」
「ん?いや、小さい頃とか結婚式ごっことかいってよくこうやってホッペにキスとかして遊んだなぁと思って・・」
「・・・」
「やっぱ、亜弥ちゃんもまだ子供なんだね」
「・・・にやけてないで口閉じてよ」
「はいはい」

この時、ミキは目を閉じていて亜弥ちゃんがどんな顔をしているか分からなかった。
だから亜弥ちゃんの言葉を流しながらミキはキスが来るのを待った。


469 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:25


亜弥ちゃんとはキスなんて何回もした。
もともと、亜弥ちゃんはスキンシップが好きな子だった。
だから、よくふざけてミキにキスを迫ったりしていたし、ほんとに軽いやつとかは何回もした。
そう、スキンシップのひとつとして・・


「・・ん!?」

ミキは亜弥ちゃんからのキスを待っていた。
もちろんそれは、軽いヤツだと思っていた。でも、今亜弥ちゃんからされているキスは・・


「ん・・・ちょっ・・亜弥ちゃん!?」

触れるようなキスではなく、噛み付くような激しいキス。
驚くミキに亜弥ちゃんはなおもキスをする。
そのキスにミキは思わず顔を離そうとしたけど、亜弥ちゃんがミキの頭を押さえていて動かせない。


470 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:26


「ん!・・・っ」

亜弥ちゃんの舌がミキの口を割って入ってきた。
口の中で暴れまくる亜弥ちゃんの舌。
それを敏感に感じ取るミキの舌は次第に快感を生んでいく。


「んっ・・は・・」

キスをしながらミキに覆いかぶさってくる亜弥ちゃん。
その亜弥ちゃんの体をキスで力が抜けてきたミキの体は支えきれずにベッドに倒れこんだ。
それでも亜弥ちゃんはキスをやめずにミキを強く求める。

「はっ・・あやちゃ・・」


次第にミキの頭は亜弥ちゃんのキスでマヒしたように快感にのまれていく。
その快感にのまれながらミキが手を亜弥ちゃんの首にまわそうとした時、亜弥ちゃんがゆっくりと唇を離した。

471 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:29


「はぁ・・あやちゃん?」
「・・・・」

キスに頭が朦朧としながらミキは亜弥ちゃんを見る。
けれど、ミキの赤い顔とは反対に亜弥ちゃんの顔は冷たくミキを見下ろしていた。


「あやちゃ・・」
「あたしはもう・・・子供じゃない」

ミキの言葉を遮る亜弥ちゃん。
その目はさっきの冷たい目ではなく、どこか怒りを含んだ目。


「・・帰ってよ」

ミキから体を離して顔を背ける亜弥ちゃん。


「・・帰ってよ。いつも・・・いつまでも子供扱いするみきたんなんか嫌いよ!
 出ていって!」
「・・・亜弥ちゃん」

ミキから背を向ける亜弥ちゃんを追うようにミキも立ちあがる。


472 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/05(土) 18:30


「帰って・・」
「・・・・」

亜弥ちゃんの言葉にミキはどうすることも、何も言うことも出来ずに立ちつくしていた。


「・・・」

何も言えず、立ちつくしているミキに亜弥ちゃんは冷たく言う。


「・・もう、あたしのこと妹だなんて言わないで。あたしには・・・みきたんなんか必要ない」


その言葉にショックを受ける。
亜弥ちゃんからの完全な拒絶の言葉。


「・・わかった、ごめん。帰るよ・・」

ショックを受けながら亜弥ちゃんの横を通り抜けた。


この時、ミキがもう少し勇気を持って亜弥ちゃんと向かい合っていれば、
あんな思いさせずにすんだのに・・・・

この後の出来事に後悔するなんてその時のミキは思いもしなかった。


473 名前: 投稿日:2005/03/05(土) 18:32

更新終了。



・・・・ _| ̄|○



ちょっとどころか、かなり凹んでいる作者です。
・・・立ち直れるかな?



456、457>> 445さま、名無しさま

ありがとうございます。
ようやく話しの折り返し地点というか、動きに変化をつけることが出来ました。


458>>名無し読者さま

あー・・・すみません。引っ張るようなことを書いておきながら全然、話しが進まなくて。
もうしばらく、叫びながらお待ちくださいw



自分でも思った以上に凹んでいる作者ですが、なるべく早い更新を心がけたいとおもいます。


・・・それでは今回はこれで失礼します。


474 名前:ケロポン 投稿日:2005/03/06(日) 00:35
にょ〜!どうなんの?何が起こるの?気になる〜!亜弥ちゃ〜ん!
475 名前:名無し読者 投稿日:2005/03/06(日) 00:41
作者さん、元気だして!あやみきは永遠だから問題ないですよ〜だ!
続き期待してますので頑張ってください。
476 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/06(日) 02:00
私も凹んでるからダイジョブ!!(?)
作者さん、一緒にあやみきを信じて頑張りましょ。
477 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/06(日) 20:10
あやみきはガチですよ!!
金曜日になんか惑わされないで!!
478 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/08(火) 02:24
僕の脳内ではあやみきが付き合ってることになってます。
そうやって思い込んだなら、それが真実になるんです。
ということで作者さんも巷で騒がれてる事などスルーして頑張って下さい。
479 名前: 投稿日:2005/03/21(月) 23:22

更新開始

480 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:23


「はぁ・・・」
「・・・・」
「ふぅ・・・」
「・・・・」

何度目になるか分からないため息をつきながら、ミキは菓子パンを口へと運ぶ。
昨日、亜弥ちゃんとキスをしてからミキは悶々としていた。


どうして、亜弥ちゃんはミキにあんなキスをしたんだろう?
それに、突然怒ったりして・・・


「はぁ・・」


昨日、亜弥ちゃんの家を逃げるようにおばさんにも挨拶もせずに出て行ったミキ。
家に着いても考えることは亜弥ちゃんのことばかり。



亜弥ちゃんの態度。

亜弥ちゃんとのキス。

そして・・

『 あたしには・・・みきたんなんか必要ない 』


亜弥ちゃんの拒絶の言葉。


481 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:25


「ふぅ・・」
「・・・・」


いくら考えてもやっぱり亜弥ちゃんの気持ちがわからない。

何度目かになるため息をつきながらパンを一口齧ろうとしたら、
横から突然、ミキのパンを奪っていく黒い影。


「・・・マイちゃん、それミキのお昼・・」
「・・・」
「あの?聞こえてますか?」


ミキの話に返事もせずにパンを口に運ぶマイちゃん。
っていうか、それミキのお昼・・・

最後の一口を口に入れるとマイちゃんがミキのほうへと顔を向けた。


「・・・暗い」
「え?」
「みっきー暗すぎ!んな暗い顔でご飯なんか食べても美味しくないでしょう!」
「・・はぁ・・・っていうか、ミキのお昼半分以上はマイちゃんが今、食べたんですけど・・」
「みっきーが暗い顔で食べているからだよ」
「はあ?」

人のお昼を取っておいて悪びれもしないマイちゃんにミキは呆れた声をあげる。
っていうか、この人は何がしたかったんだ?


482 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:25


「・・みっきー」
「な、何?」

ずいっと、ミキのほうへ近づくマイちゃんにミキは思わず、体ごと仰け反る。

「吐け」
「は?」

突然、真顔で一言。
ほんと、マイちゃん。何がしたいのさ?


「だぁかぁらぁ・・みっきーのため息の原因を吐けって言ってんの!」
「な、げ、原因って・・・・何も無いよ?」
「ウソだね。みっきーが原因もなく暗いなんてあり得ないね。
 普段、何も考えてないのがみっきーなのに!」
「・・・」

即答。
何か、そこまではっきり言われたらミキが何も考えないお気楽人間に聞こえるんですけど?・・


マイちゃんの言葉に口を尖らせながらもミキは何も言えずにいた。
だって、亜弥ちゃんのことで悩んでいるのは確かだし・・


483 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:26


「みっきーが暗い顔するなんて、よっぽどのことがない限りあり得ないね」
「・・・」
「しかも、朝からずっとため息ばっか」
「・・・」

マイちゃんの言葉に返す言葉が見つからない。
ミキがひざを抱え込むとマイちゃんが静かな口調で聞いてきた。


「・・・あたしには言えないこと?」
「・・・そう・・じゃなくて」


言ってしまおうか?
一人で悩んでも答えが出ないのなら。
せめて、ミキの気持ちだけでも・・・


「・・・じつは・・さ・・」
「・・うん」

ミキはひとつ、小さな息を吐き出しながら自分の気持ちを吐き出した。


484 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:28


「そっかー・・亜弥ちゃんとそんなことが」
「・・うん」

ミキはマイちゃんに昨日の出来事を話した。

亜弥ちゃんのミキへの態度

吉澤との関係。

亜弥ちゃんの気持ち。

吉澤と亜弥ちゃんの関係にモヤモヤしている自分のこと

そして、キスのこと・・・


今までのことを全部、マイちゃんが言うように吐き出した。
そうすると、そのおかげなのか少しはミキの気持ちのモヤモヤ感も和らいだ。


「ねぇ・・・みっきー・・」
「なに?」

マイちゃんは黙ってミキの話を聞いてくれたけど、少し考え込むように口を開いた。


485 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:30


「キスしてどう思った?」
「は?」
「だから、亜弥ちゃんとのキス。どう感じた?」

マイちゃんの突然の質問にミキは目を丸くする。


「どうって・・」
「だから、キスされてどう思った?ドキドキした?」
「・・・ドキドキした」
「それから?」
「・・それからって・・」
「同姓同士で気持ち悪いと思った?それとも気持ちよかった?」
「えっと・・き、気持ちよかったです」


恥ずかしすぎてボソボソと喋るミキ。
っていうかマイちゃん何聞いいてんのさ!?
マイちゃんの質問に顔を真っ赤にするミキ。
でも、マイちゃんはそんなミキにお構いなく納得したような顔をする。


486 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:31


「そっかー。なら、みっきーは亜弥ちゃんが好きなんだよ」
「え?な、何でそうなるの?」
「だって、キスされてドキドキしたんでしょ?」
「そりゃあ・・したけど。でも、そんなキスだけで人の気持ちを決めないでよ」
「だって、そういうもんだよ。
 好きな人以外からのキスなんて気持ち良くてもドキドキはしないよ」

何故か得意げに人差し指を立てながら言うマイちゃん。でも・・

「で、でも、そのドキドキだって急にされたからしたのかもしれないじゃん。
 ましてや、軽いキスかと思ったら、あんな・・は、激しいやつなんてされたら」
「ふー・・・みっきーは自分のことになると鈍いよなぁ」
「な!?」
「じゃあ試そう」
「え?」


やれやれといった感じでマイちゃんが大げさなため息をつく。
その動作にミキはカチンときてマイちゃんのほうへと顔を向ける。


487 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:32


「マイちゃんそれってどういう・・」
「試すが一番だよ。みっきー」
「だから、何を・・」

マイちゃんの言った意味が分からず聞き返すが、マイちゃんはそれには答えずに
ミキのほうへと顔を近づけてくる。

「えっ・・ちょ!?マイちゃん?」
「頭で理解してないみたいだから・・直接体験したほうがいいでしょ?」

そう言って、ミキに覆いかぶさり顔を近づけるマイちゃん。


「わっ・・ちょっと待って、マイちゃん!」
「待ったなし」

なおも顔を近づけてくるマイちゃんに、上から押し倒されているミキは身動きが取れない。

「みっきー、往生際が悪いよ」
「そんなこと・・んー!!」

反論しようとしたら口を塞がれた。でも・・


488 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:33


「んー!?・・・・」
「「・・・・」」
「・・・どう?」
「・・どうって・・今の・・」

ミキから体を離してマイちゃんが聞いてくる。

「どう思った?」
「え?」
「あたしにキスはされたくないって、思わなかった?」
「・・正直、そう思った」
「なんで?」
「なんでって・・そりゃあマイちゃんはミキの友達なんだから・・
 ミキは友達とは冗談でもそういうのは出来ないよ」
「亜弥ちゃんは?」
「え?」
「亜弥ちゃんならされてもいいんだ?」
「亜弥ちゃんは幼馴染で・・」
「でもキスだよ?」
「・・・・」

マイちゃんの質問に返すことが出来ない。


489 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:35


「・・じゃあ、違った角度から聞くね」
「・・・何?」
「もし、あたしがさっき本当にみきーにキスしてたら、みっきーはドキドキした?」
「ごめん。それも正直しなかったと思う」
「あは、みっきー即答だね」

感じたことをそのまま言う。
そんなミキにマイちゃんが笑った。


「じゃあ、亜弥ちゃんのことどう思っているのか自分でも、もう分かったよね?」
「・・・」
「みっきーが亜弥ちゃんにキスされてドキドキしたのも、
 冷たくされていらないって言われてショック受けているのも、
 亜弥ちゃんのことを妹として見ているからじゃなくて、好きな子としてみているからだって」
「・・・・」


マイちゃんが優しく諭すように話す。
ミキはその言葉を聞きながら考える。


ミキが亜弥ちゃんを好き・・・

確かにミキは亜弥ちゃんを好きだ。でも、それは幼馴染として・・

じゃあ、このモヤモヤは?

キスされてドキドキするのは?

亜弥ちゃんの・・


亜弥ちゃんのことを考えるだけで心が痛くなるのはどうして?

490 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:37


何も答えずにいるミキの頭をマイちゃんが優しく撫でた。


「・・多分、みっきーと亜弥ちゃんは近くにいすぎたんだね」
「え?」

マイちゃんの言葉に俯きかけていた頭を上げる。

「お互いのことを必要としすぎていて・・・近くにいすぎて・・」
「・・・」
「近くにいるから相手が自分のことどう思っているか分からなくて・・」
「・・・」

マイちゃんがミキの頭を撫でながら優しい口調で話す。
ミキはきっと情けない顔でマイちゃんを見ているに違いない。


「ほら、みっきー」
「え?」
「これが好きな人との理想の距離」

マイちゃんは頭を撫でるのを止めてミキの体から数歩離れた。

491 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:37

「ほら、こうすれば相手の全体が見えるでしょ?」
「・・・うん」
「こうやって、相手が見えていたらその相手がどう思っているか分かる」
「そう・・なの?」

マイちゃんの言葉を理解してないミキにマイちゃんは苦笑いをこぼした。

「なら、みっきー試しにあたしを傷つけるようなこと言ってみて?」
「え・・」
「何でもいいよ」
「えっと・・じゃあ・・・マイちゃんなんか・・・嫌い」
「・・・」
「わー!?嘘!マイちゃん、嘘だから!そんな顔しないでよ」


ぼそぼそと舞の悪口を言う美貴。
その言葉を聞いた途端、舞が顔を手で覆う。


492 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:38

マイちゃんの泣きそうな顔に慌てるミキ。
っていうか、言わせたのマイちゃんなのに、なんでミキこんなに罪悪感があるの?


「・・ほら、みっきーには今、自分の言葉で傷つく相手が見えたでしょ?」
「え?・・ああ、うん」

慌てているミキとは反対にマイちゃんは顔をパッと上げ得意げな顔になる。
けど、そんな顔もつかの間でマイちゃんは真面目な顔でミキを見つめた。


「マイちゃん?」
「・・これが、相手との理想の距離。
 でも、みっきーと亜弥ちゃんの距離はこれくらい」
「えっ、ちょっと、マイちゃん!?」

真面目な顔つきになったと思ったら今度はどんどんミキのほうへと近づいてくる。

「え、ちょっと・・」

驚くミキにマイちゃんはさらに近づいてくる。


「これが、みっきーと亜弥ちゃんの距離」
「・・・え・・こ、これ?」
「うん、そう」

マイちゃんがミキに言ったその距離はとても近くて・・・
相手の顔なんか全然、見えないくらい近すぎて・・


ミキとマイちゃんの距離はゼロに近かった。

493 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:40


「これがミキと亜弥ちゃんの距離・・・」
「そっ、すぐにでも相手を抱きしめられる距離が今の・・
 というか、幼馴染だったみっきーと亜弥ちゃんとの距離。
 これじゃあ相手の顔なんて見えないでしょ?」
「・・・うん」

ミキが手を伸ばせばマイちゃんに触れられる。
これがミキと亜弥ちゃんの距離。


「別にさ、この距離が悪いとは言わないよ?
 確かにこの距離なら相手がすぐ側にいるし、相手の体温を感じることが出来て安心もする。
 でも・・」
「でも?」
「もし、相手がそれで満足できなかったら・・どうする?」
「え?」


ミキは体を離してマイちゃんを見る。

494 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:41


「例えば、相手が・・・みっきーがその距離に・・その安心感に満足出来ず、自分を見て欲しかったら、・・みっきーならどうする?」
「多分、相手から離れようとするかも・・」
「じゃあ、相手にその気が無かったら?逆に相手はその安心感だけで満足していたら?」
「・・悲しくて、自分を見て欲しくて、それに気づかない相手に対して怒りをおぼえるかもしれない。・・・こっちの勝手な都合だけど・・」
「・・ここまで言えば分かるよね?」
「・・・うん。ミキは馬鹿だ。亜弥ちゃんはミキと向き合おうとしていたのにそれに気づきもしないで・・・」


今までの亜弥ちゃんの行動を思い出す。
突然、ミキから離れた亜弥ちゃん。
そんな亜弥ちゃんをミキはただ戸惑うだけで、亜弥ちゃんの気持ちを知ろうともしなかった。


「・・・あやちゃん」

亜弥ちゃんのことが大切だからいつでも守れるよう側にいようと思っていたのに・・
いつの間にか顔も見えないくらい近い距離にいることに気づきもしないで、亜弥ちゃんのこと見ようともしないで・・・
ずっと、自分が亜弥ちゃんを守った気でいて・・・


自分の馬鹿さ加減に呆れて涙が出てくる。

495 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:42


「・・みっきー」

涙を流すミキをマイちゃんがそっと抱きしめる。


「別に、みっきーだけが悪いんじゃあないんだよ?多分、亜弥ちゃんも自分を見て欲しくて、けど、どうしていいか分からなかったからああいう行動を取っただけだし」
「・・でも、ミキはそれに気づいてあげれなかった」
「そう・・だね。近くにいすぎたせいで、みっきーは亜弥ちゃんのことを見ていなかった。でも、今は違うよね?」
「え?・・」

顔を上げたミキにマイちゃんが優しくミキの涙を拭う。


「今は二人ともお互いがちゃんと見える距離にいる。まあ、その距離のとり方はちょっといいとは言えなかったけど」
「・・うん」
「なら、あとはみっきー次第だよ。亜弥ちゃんはみっきーに対してボールを投げたんだから」
「ボール?」
「そう。亜弥ちゃんの気持ちのボール」

マイちゃんはミキの頭に手を置くと優しく微笑えんだ。

496 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:43


「亜弥ちゃんの・・・気持ちのボール」
「後はみっきーがそれをどうするかだよ。
 そのボールを受け取ってもいいし、見ないフリして受け取らなくてもいい」
「・・・・」
「・・まあ、受け取ってもそれを返さなきゃ意味はないけど」
「・・・」
「だから、後はみっきー次第。
 それに、みっきーはもう、亜弥ちゃんからそのボールを受け取ったんだから。
 それをどう返すかはみっきーが決めること。分かった?」
「うん。ありがとう、マイちゃん」

頷くミキにマイちゃんは満足そうに微笑む。


「ほんと、みっきーには手を焼かされるよ」
「・・・ごめん」
「おっと、それはあたしに言う言葉ではないでしょう?」
「あ・・・ありがとう」
「・・よろしい。でもさ?あたしにお礼を言うなら亜弥ちゃんのこと、ちゃんとしてからにしてよ?」
「・・・うん、分かってる」
「さーて、そろそろ昼休みも終わるし教室に戻ろっか?」
「うん」

立ち上がり手を差し出すマイちゃんにミキも笑って応える。

497 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:44


昼休みも終わる時間になるので、二人屋上から出ようとしたらマイちゃんが屋上のドアの前で立ち止まった。


「?・・マイちゃん?」
「ねえ・・みっきー・・」
「何?」

マイちゃんが静かにミキのほうへと振り返る。


「みっきー、もう一度質問するね」
「・・うん?」
「亜弥ちゃんのこと、どう思ってる?」
「・・・・」

マイちゃんが真剣な顔でミキを見る。
その目をミキは逸らせずにいた。


「・・・どう思ってる?」
「・・・」

答えないミキにマイちゃんがもう一度、聞いてくる。

「・・・」

ミキは目を閉じ、亜弥ちゃんの顔を思い浮かべる。


「ミキは・・」


ミキはもう、目をそらさない。

498 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:44


「ミキは亜弥ちゃんのことが好き」
「・・それは、妹として?」
「違う!」
「・・・じゃあ、どういう意味で好きなの?」


まるで、ミキの気持ちを確かめるように・・
マイちゃんの言葉はミキの答えを知っているかのように聞いてくる。


「ミキの・・・・亜弥ちゃんの側にいるのはミキでないと嫌だ。ミキの隣にいるのも亜弥ちゃんでないと嫌だ。他の誰かが亜弥ちゃんの隣にいるのは見たくない!」

力強く、今の自分の気持ちをマイちゃんにはっきりと言う。


「・・そっか・・」

マイちゃんはミキの言葉に満足気に笑うと屋上のドアを開けた。

499 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:46


マイちゃんにミキの気持ちを話したその夜、ミキは夢を見た。
あの、いつもの夢だ。

相変わらず、隣の子は黒く塗りつぶされたように顔が見えない。
これもいつものことだった。けど・・

今日の夢は違っていた。


その子とミキが手を繋いで歩いている。
そこは真っ暗で、どこを歩いているのかさえ分からない。

何も見えない暗闇に、小さいミキは不安で足を止める。
だけど、不安で立ち止まるミキの手をその子が掴み引いていく。
まるで、大丈夫だよとミキを安心させるように・・

手を引かれながら歩いていくと薄っすらと先の方が明るく光っていた。
ミキはそれに気づいて引かれていた手を繋ぎ直し、今度はその子をミキが引っ張る。

どんどん近づく明かりにミキは足を速ませる。
自分の体さえ見えないほど暗かった周りもその明るさで段々、はっきりとしてくる。

明かりに近づいていくと小さなドアが見えた。

『 ほら、もうすぐ出口だよ 』

なぜ、それが出口と思ったのか。
小さなミキはそれに向かってその子と走り出す。

ドアの前まで辿り着き、息を弾ませながらそのドアを見上げる。


『 さあ、ここから出よう? 』

ぎゅっとその子の手を掴み、開ける前にその子のほうへと振り返る。


そこには・・・

500 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:46


「・・・・」

朝の光に目を覚ましたミキ。

暫く寝起きで冴えない頭のままボーとする。
今さっきまでみていた夢。


「・・・はは・・なんだ・・ミキ、とっくに答え・・だしていたんだ・・・」

自分があれほど悩まされ睡眠不足にまで陥っていた毎晩見る夢。
その夢の意味をやっと理解したミキは独り言を呟きながら起き上がる。


「あれは確かにミキと亜弥ちゃんだった・・・」

ベッドから抜け出し、窓のそばまで歩み寄る。
美貴の見ている先にはカーテンで閉じられた亜弥ちゃんの部屋。


「・・あやちゃん・・」

閉じられた窓は亜弥ちゃんの心。
ミキが気づかなかった亜弥ちゃんのミキへの気持ち。

501 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/21(月) 23:48


亜弥ちゃんの部屋とミキの部屋はとても近くて、超えようと思えば簡単に飛び越えられる。
だけど、閉じられた窓からは入れない。

どうすれば亜弥ちゃんの元へ行ける?


・・・決まってる。亜弥ちゃんの窓をミキが・・いや、亜弥ちゃんが開ければいいんだ。

けど、それには亜弥ちゃんにミキを気がつかさなければ駄目だ。
亜弥ちゃんに気づいてもらい、ミキのほうへと振り向かせる。

じゃあ、どうすれば亜弥ちゃんが気づく?


・・・決まってる。呼べばいいんだ。亜弥ちゃんをミキが・・・


ミキの気持ちを込めた声で、亜弥ちゃんを呼べばいいんだ。


「亜弥ちゃん、・・今度は逃げないから・・」

締め切った窓を見ながら呟く。


空を見ると晴々とした天気がそこにはあった。

502 名前: 投稿日:2005/03/21(月) 23:50


更新終了


ふー・・・大分間があきましたが、
沢山の人から励ましてもらいやっと立ち直りました(遅!


さて、これから下り坂を転がるように(どんな例えだ)
話しに流れをつけていこうと思っているんですがどうなるか、
作者自身も分かりませんw
うーん・・どうしようかな?


474>>ケロポンさま

はい、残念ながら今回は松浦さんは出てきませんでしたが、
次回に何かが起こりますw


475>>名無し読者さま

ありがとうございます。
大分立ち直れました。


476>>名無飼育さま

ありがとうございます。
わたしの凹みは大分直りましたがそちらの凹みは大丈夫ですか?
はい、これからもあやみきを信じてがんばります。


477>>名無飼育さま

ありがとうございます。
あやみきはガチ!
金曜日なんかシャボン玉―!!(イミわからん


478>>名無飼育さま

ありがとうございます。
そうだ!信じればそれが真実だ!
確かにそう思えば傷は軽い?ですね。
っということでこれからも拙いあやみき小説ですが読んでもらえたら嬉しいです。



・・・それでは今回は失礼します。


503 名前:ケロポン 投稿日:2005/03/22(火) 00:00
更新お疲れ様です。次回に何かあるんですか!楽しみだ!
まいちゃんいいやつやなぁ(*^_^*)
504 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/22(火) 18:00
これぞミキティとまいちゃんのイメージ。と言った感じですね。
次も期待しています。
505 名前: 投稿日:2005/03/30(水) 23:52

更新開始

506 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/30(水) 23:53


「いってきまーす」

朝ごはんもそこそこにミキは家を出た。
自分の・・・亜弥ちゃんへの気持ちに気づいてからまだ三日も経っていないけど、ミキの心はとても晴れた空のように気持ち良かった。


「んー・・・いい天気」

家を出る前に見上げた空には晴れ渡った青空。
学校へ向かう途中、亜弥ちゃんの家のほうを見る。

もうすでに出た後なのか、亜弥ちゃんが家から出てくる気配は無い。
いつものミキなら気にするだろうけど今日だけは違っていた。
きっと、あの夢の意味が分かったからだろう。

「いってきます。・・・待っていてね?亜弥ちゃん」

ミキは亜弥ちゃんの家の前で小さく挨拶をすると、スカートを翻しながら学校への道を急いだ。


507 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/30(水) 23:54


教室に着くとマイちゃんがミキの席の前までやってきた。

「おっはー、みっきー」
「おはよう。マイちゃん」

笑顔で挨拶を返すミキにマイちゃんがじっと顔をのぞき込む。

「・・・なに?」
「いや、いつものみっきーだなと思って」
「え?」
「うん、昨日の悩みは吹っ切れたみたいだね」
「ちょっ!?・・もうマイちゃん!」


よしよし、とマイちゃんはミキの髪をぐちゃぐちゃにしながら自分の席へと戻っていった。
ミキはそんなマイちゃんの行動に文句を言うが顔は笑っている。

分かっている。これはマイちゃんなりの気遣いなんだってことを。
だからミキもそれを真に受けることなんてしないで流す。

「・・ありがとね、マイちゃん」

小さな声でお礼を言う。

昨日、マイちゃんに言われたようにお礼は亜弥ちゃんのことがちゃんと解決できてからしようとミキは決めた。
だから、ミキは小さな声だけで感謝の気持ちを表した。


508 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/30(水) 23:55


お昼休みも終わりに近づくころ、ミキは校舎の中を散歩していた。

いつもならマイちゃんとダラダラしながら午後の授業が始まるまで屋上でのんびりしているんだけど、マイちゃんが生徒会の会議が入ったとか言ってお昼も食べずに行ってしまったのでミキは一人、仕方なく屋上で食べていた。
それから、昼ごはんを食べ終えたミキは余っていた昼休みの時間を潰すべく散歩でもしておこうと中庭へと足をむけた。


「けど、マイちゃんが生徒会長っていうのもねぇ・・・」

散歩をしながら一人ごとを言う。


「まあ、面倒見はいいけど・・」

一人、校舎の渡り廊下を歩く。
今は昼休みのせいか、ほとんどの人は教室に入っており、廊下はミキ一人しかいなかった。


「あー・・結構昼休みも長いよなぁ」

いつも舞と時間を潰している美貴にとっては今日の昼休みは長く感じた。
だからこそ美貴は散歩でもして時間を潰そうと考えたわけだが、それさえも長く感じた。


「あと、二十分もあるよ」

時計を見ながら時間を確認するとまだ時間がある。
どうしようかと、廊下から中庭に目を向けると、見覚えのある後ろ姿が美貴の目に入ってきた。

509 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/30(水) 23:55


「あれって・・吉澤?」

派手な金髪の髪は遠くにいても目立つ。
美貴が視線を吉澤の方へ向けるともう一人、見覚えのある人物が目に入ってきた。


「・・・亜弥ちゃん?」

美貴の目に映ったのは幼なじみの亜弥。
そんな美貴の頭の中であのウワサが蘇る。


『 松浦さんとよっすぃーが・・・二人が抱き合っているところを・・・ 』


あのウワサが頭の中でこだまする。
所詮、ウワサだと気にすることも無かった噂が目の前にある。

ミキは二人を確認すると同時に中庭の奥へと歩いていく二人の後を追った。


510 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/30(水) 23:56


二人が中庭の奥へ行くのを確認してから二階の渡り廊下へと上がっていく。

中庭は校舎から少し離れているためか、滅多に人が来ない上に人目につきにくい。
唯一、見渡せるのが校舎と校舎を繋ぐ二階の渡り廊下だけ。
だがその渡り廊下さえ、今は昼休みのため人が通らない。

隠れる、というのは変な言い方だが人目につきたくないのなら中庭は絶好の隠れ場所だった。

「・・・いた」

二階へと駆け足で上がって行き、二人を探す。
二人は校舎の影に隠れ何やら話しをしている。

「・・・亜弥ちゃん」

美貴はそう呟くと悔しい表情になった。
吉澤と話す亜弥が笑っていたからだ。


「・・あんな楽しそうに笑う亜弥ちゃんなんて久しぶりに見た」

あの笑顔をいつも横で見ていたのはミキなのに・・・

不意に吉澤への羨望の感情が美貴を襲う。

511 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:00


「亜弥ちゃん、なんでアイツと・・」

美貴は悔しそうな顔をしながら二人を見つめていたが、楽しげに話しているの二人の様子に内心ホッとしていた。

確かに、亜弥が自分以外の相手に笑顔でいることは美貴の胸を痛くさせた。だが美貴は別のものに安心をしていた。


「・・・ウワサとは・・違う」

そう、二人はただ楽しそうに話していた。
美貴が聞いた噂の内容とはほど遠い。

吉澤と亜弥の態度は恋人というよりは親しい友人に近かった。
それが唯一、美貴を安心させた。


「大丈夫・・・まだ亜弥ちゃんは誰のものでもない・・」

小さな声で呟く。
まるで、自分自身を安心させるように。

512 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:02


「・・・」

二人は美貴に気づいていない。
二人からは隠れるようにしている美貴なのだから、当然気づくはずはない。
だが気づかない亜弥に、それが自分などもう必要ないから気づく必要もないのだと言われているようで、美貴の胸は苦しくなる。

吉澤に笑顔を向ける亜弥に美貴の心は針が突き刺さったようにチクリ、チクリと痛み出しそれが波紋のように体中に広がりだす。


「・・・亜弥ちゃん・・・」

二人の様子を見ていた美貴。
ウワサが違っていたことに安心はしたがやはり、二人が楽しくしているのを見るのは嫌だった。


これ以上、二人がいるところなんて見たくない。
そう思ったときだった。

「・・・!!」

二人の様子を見ていた美貴の目が一瞬だが怯む。


吉澤と目が合ったからだ。


513 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:02


ドクドクとなる心臓の音。

『・・・気の・・せい?』

吉澤と目が合ったことで美貴の心臓は跳ね上がり、鼓動が速く鳴る。


― ドク ドク ドク ドク

「・・・・」

速くなる心音。

それはとても心地の良いものじゃない。
まるでこれから起こることへの不安を暗示するような鼓動。



― ドク ドク ドク ドク


静まる気配の無い心臓の音。

それが波紋となって体中に渦巻く。

その音を聞きたくなくて美貴は目を閉じる。
514 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:04


『 悪い予感ほどよく当たるものだ 』

誰が言ったかは知らないがそれはどうやら本当らしい。


「・・・っ・・亜弥・・ちゃ・・」

美貴は小さな声で呟く。



自分の目の前にある光景。



速くなる鼓動。



それらすべてが美貴の胸を苦しませた。

515 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:04


「亜弥ちゃん・・・」

痛む胸の鼓動にミキは胸の辺りを手で押さえた。

うっすらと開けた目に映った光景。


亜弥ちゃんの腰に手を回す吉澤。

吉澤への首へと手を回す亜弥ちゃんの手。


ミキの目に映ったのはきつく抱き合う二人の姿。


― ドク ドク ドク ドク


心臓の鼓動がさっきよりも速くなる。

目に見えないはずの鼓動が体の中で渦巻き黒い形となる。


美貴の中で嫉妬という黒い感情が生まれる。


516 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:06


「・・あや・ちゃ・・」

美貴の顔が苦痛で歪む。



『 触るな 触るな 触るな 触るな 触るな 触るな 』


湧きおこる感情。

黒い塊。

痛みに似た嫉妬感。

それは美貴には止められないほど早く、大きく膨らんでいく。
そして・・


「さわるな!!!!」   

破裂しそうなほど膨れ上がった塊。
その塊をえぐり出すように美貴は廊下のガラス窓へとぶちまけた。


517 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:06


「・・っは・・」


右手に微かな痛み。

呼吸が荒くなる。

心臓が苦しい。

息が、思うように吸えない。



「ふ・・・藤本・・さん?」

美貴を呼ぶ声。
その声質には驚きと怯えが孕んでいる。

声がしたほうへと目を向けると、何故か心配気に見つめるクラスメイトが立っていた。


518 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:07


「・・・なに?」
「え?・・あっ・・あの右手・・大丈夫?」
「右手?」

痛いものをみるように右手を見るクラスメイトの視線を追う。
その先には赤い色の液体を出している右手。

どうやらガラスで手を切ってしまったようだ。
ああ、さっきの痛みはこれかと。どこか他人事のように感じながら右手を見る。


「・・ん、別に大丈夫」
「で、でも血が出ているし保健室に行かなきゃ・・」
「・・・」

心配そうにみるクラスメイトの目は本当に美貴のことを心配しているからだろう。
しかし今の美貴にはそれさえもどうでもよく鬱陶しいと感じた。


519 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:08


「藤本さん?」
「ん?・・ああ、そうだね。ごめん、保健室に行くことを先生に伝えてもらってもいい?」
「うん、わかった。それより大丈夫?」
「大丈夫だよ。たいした事ないから」
「・・・でも、・・」
「じゃ、お願いね」


まだ何か言いた気なクラスメイトに背を向ける。
数名の生徒が教室から顔を出しながら何事かとザワつく。


「・・・・」

当事者でない者たちの好奇とも言える視線に美貴は気づかないフリをする。
他のクラスメイトの視線を背に受けながら美貴は保健室へと向かった。


辺りに少しだけの騒がしさと、黒い感情が形となって表現(あらわ)れた割れたガラス窓だけを残して・・・


520 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:09


「失礼します」

保健室のドアを開ける。
ガタついた音をたてることもなくドアは開いた。


「・・・せんせい?」

辺りを見回すが誰もいない。
どうやら昼休みということで席を外しているみたいだ。
こういう時こそいるべきでは?と美貴は思いながら医療セットが置かれている戸棚を開け、ホータイと消毒液を取る。


「・・いっ!・・っう・・」

ティッシュに薬をつけ切ったところを消毒する。
思ったより深く切れているらしい。
ティッシュを当て、血を拭うが切り口からはジワリと血が滲み出てくる。
仕方がないので血が止まるまでティッシュで傷口を押さえる。

521 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:10


「・・・・」

押さえた手を眺めながらさっきの光景を思い出す。


抱き合う二人。

楽しそうに笑う亜弥ちゃん。


何もかも噂のとおりだった。

押さえる手に力が篭る。

522 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:16


「なん・・で・・」

美貴は苦しそうに目を瞑る。



知りたくなかった。

           ― あんなウワサなんて


見たくなかった。

           ― 抱き合う姿なんて


見たく・・



「・・・見なきゃよかった。あんな・・」






   楽しそうに笑う亜弥ちゃんなんて



523 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:17


「・・・亜弥ちゃん・・」

滲む視界と震える右手。


「・・・痛っ!」

右手に痛みが襲う。
手の隙間から流れる赤い血。

押さえていた手をどかしてみると、白から赤へと変わった紙がそこにあるだけ。
吸い取る水分の許容範囲がすでに超えてしまった紙はもはや何の使い道もない。


「・・・」

真っ赤というよりは赤黒いその紙を美貴は握り締めごみクズへと投げ捨てる。


『ボトっ』

と水分を含んだ音を出しながら紙はごみクズの中へと収まった。


524 名前:僕がキミを 投稿日:2005/03/31(木) 00:18


「・・・気持ち悪い」

グルグル、グルグル。

何かが頭のなかで回る感覚がする。

美貴は戸棚から何枚かのガーゼを取り出すと、大雑把に怪我をした右手に乗せ
ホータイでぐるぐると巻く。

テーブルの横にある利用者カードを手に取り、乱暴に文字を書く。
怪我のために医療用具を使ったことと、気分が悪いからベッドで横になると書いた紙を見やすい所に置いた美貴は乱暴にカーテンを閉めるとそのまま、ベッドへと横になった。


「・・・」

倒れこんだベッドから天井を見上げる。

何の模様もないただの天井。
それを睨みつけるように見上げるが気持ちの悪い気分は変わらない。

頭の中を回り続けている『何か』。
その『何か』が塊となる。


「・・・」

睨みつけていた天井から目線を外し、目を閉じる。


『 今は何も考えたくない 』

美貴はきつく目を閉じるとそのまま意識を深く手放した。

525 名前: 投稿日:2005/03/31(木) 00:19


更新終了。


前回、大げさに何か起こるとか言っておきながら・・・こんなのしか書けなかった。

えー・・中々話しが転がってくれないので、藤本さん自身を転がしてみましたw


503>>ケロポンさま

すみません、楽しみに待たせたくせに藤本さんをハッピーにするどころか、
転がしてしまいました。


504>>名無飼育さま

ありがとうございます。
そうですね。里田さんと藤本さんのイメージって、
気の許せる親友って感じなんですよね。


えー・・次回からの更新なんですが諸事情により、不定期というか、不明というか、いつ更新できるとは言えない状況になりまして、中途半端なところで申し訳ないのですが、なるべく早く更新できるように心がけますのでしばらくの間お待ちください。


・・・それでは今回はこれで失礼します。


526 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 16:47
ううーん続きが気になります。
美貴さんの行動に期待。
527 名前:名無し 投稿日:2005/03/31(木) 21:30
「僕がキミを」ってHYの曲ですよね?  
528 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 22:25
あげるな
529 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/06(水) 05:31
やばいくらい続きが気になります!
次回更新まってます。頑張ってください。
530 名前:k 投稿日:2005/04/30(土) 00:16

更新開始

531 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:17


暗い


黒い


真っ黒な闇



何も見えない

そこにミキは一人立ち尽くしていた。


「・・・・どこだよここ」

呟く声は響くことなく暗闇へと消えていく。


「あれって・・・光?」

辺りを見回すと、遠く、ずっと遠くに明かりのようなものが見えた。
その光を目印のように歩いていく。


532 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:18


遠くにあるように感じた光は意外にも近くて、ミキは光の前に来ると足を止めた。

目の前にポツンと浮いている球体の光。
この球体が光の発信源だと理解する。


「何だろう?」

球体の中には何処かの風景が写っている。
ミキがそれに触ろうと手を伸ばした瞬間、球体は音もなくはじけ飛んだ。


「!!何?!」

弾け飛んだ球体のひかりの眩しさに思わず目を瞑る。


「・・なに、今の・・・」

眩しさに目を瞑っていたミキはゆっくりと目を開けた。
目を開けた先には見知らぬ公園の風景。

・・・いや、違う。
ミキはこの公園を知っている?

どこだっけと思い出していると、後ろから子供の声が聞こえてきた。
その声に振り返る。


533 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:19


砂場で一人の女の子が遊んでいた。
小さな手で砂の山を作っている。


「・・・あれは・・」

面影のある女の子。

どこかで見た風景。


ミキは必死に思い出そうとした。


自分の中の遠い記憶(オモイデ)を・・


534 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:19


『うえーん』

突然聞こえてきた泣き声にミキはハッと顔を向けた。

砂場で遊んでいた女の子を三人の男の子が囲んでいる。
泣いている女の子の横には崩れた砂山。
それを面白そうに見下ろしている男の子たち。

すぐにそれが、女の子をいじめているんだと分かった。


「・・ちょっと!」

その子たちのほうへ注意しようと砂場に向かったミキの横を黒い影が通り過ぎる。


『ちょっと!アンタたちなに女の子いじめてるのよ!』
『うわ!?』

ミキの横を通り過ぎた黒い影は男の子たちに一直線に向かっていくといきなり、とび蹴りしてきた。


その光景にちょっとびっくりした。


535 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:23


『アンタたち恥ずかしくないの?女の子をいじめたりして!』
『なんだよお前!』
『お前じゃない!あたしにはちゃんとミキっていう名前があるんだ』
『なにおう!お前生意気だぞ!』
『なに?やる気?』

「・・・・」
・・・どうやら飛び蹴りを食らわした黒い影はミキらしい。

「なにこれ?・・・アレって、小さいころのミキ?」

今の状況が全然分からないミキは混乱した。


『生意気なやつ。やっちゃえ!』

男の子たちはその子(ミキ)を囲みだした。

ヤバイかな?
さすがにその光景を見てミキは止めようと思ったんだけど・・・


536 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:24


『クソ!覚えてろよ!』

捨て科白を吐いて公園を後にした男の子たち。

『べーだ!』

三対一という不利な状況にもかかわらず、小さなミキは傷だらけになりながらも男の子たちに勝った。


『・・大丈夫?』
『・・・っく・・・ひっく・・』
『あの男の子たちはミキがやっつけたから・・・』

砂場で泣き崩れている女の子に小さなミキは声をかける。
その光景を見て、ミキは思い出した。

そうだ。これは亜弥ちゃんと初めて出会ったときだ。
ここは、あの時の公園だ。
今はもうない、二人が出会った公園。


537 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:26


ミキの家の近くには公園があった。
今はその公園もなくなって駐車場になっちゃったけど、ミキは毎日その公園が無くなるまでココで遊んでいたことを思い出す。

そして亜弥ちゃんと出会ったときも、いつものように公園で遊ぼうとしたときだった。

いつものように、お気に入りのブランコで遊ぼうとしたら砂場のほうから聞こえてきた泣き声にミキは足を止めた。


三人の男の子が砂場で遊んでいる女の子が作った山を意地悪して壊していた。
その光景を見たミキは何も考えずにその子のところに走っていったんだ。


『・・っく・・ひっく・・』
『・・・・』

まだ泣き止まない小さな亜弥ちゃん。
そんな亜弥ちゃんを見ながらミキは崩れた山を新しく作り直していた。

この時のミキは亜弥ちゃんにどうしても泣き止んで欲しくて崩れた山を一生懸命作っていたっけ?


『・・っく・・・おやまつくるの?』
『うん、そうだよ。一緒に作る?』
『うん』

まだ少し鼻を啜りながら小さな亜弥ちゃんは頷いた。


538 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:27


『『出来たーーー』』

小さな亜弥ちゃんとミキが作った砂の山。
さっき亜弥ちゃんが作ったものよりは大きな砂山に泣いていた小さな亜弥ちゃんも大喜び。
出来た砂山を嬉しそうに眺めている。


『あ!なにするの?!』

出来たばかりの砂山を小さなミキが横から穴を掘っていく。
その光景に亜弥ちゃんが大きな声を出してやめさせようとする。


『だめ!せっかく作ったのに壊しちゃ』
『大丈夫だよ。ほらキミも掘ってよ』

小さなミキは亜弥ちゃんの手を取り、砂山を掘らす。
砂山を掘っていくミキに亜弥ちゃんもゆっくりとミキと同じように穴を掘り出した。


539 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:28


『ゆっくり掘っていってね』
『ぅ、ウン』

小さな二人はちょっとずつ、穴を掘り出していく。


『ほら、繋がった』

穴を掘り出してしばらく。
小さな手が砂山の中で出会った。


『わ!?トンネル!』
『そうだよ。砂山のトンネルだよ』

小さなミキが作ろうとしたものがトンネルだと分かった亜弥ちゃんは、また嬉しそうにトンネルだぁなんて言いながらミキの手を掴んでいる。
そんな亜弥ちゃんを見て、小さなミキも嬉しそうにしている。

『あたしはミキ。藤本美貴。キミの名前は?』
『アヤ!松浦亜弥』

トンネルの中で手を繋ぎながら自己紹介。


これがミキと亜弥ちゃんの初めての出会い。


540 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:29


亜弥ちゃんがミキの隣に引っ越してきた子だっていうのが分かって、ミキと亜弥ちゃんはすぐに仲良くなった。

そして、その日は暗くなるまでずっと二人で遊んでいた。
心配になったミキたちの両親が公園に探しに来るまでずっと二人で。


「・・・・」

砂山で遊んでいる二人を見て、昔のことを思い出したミキ。

いつも一緒だったミキと亜弥ちゃん。
亜弥ちゃんはすごい泣き虫で、何でもないことでいちいち泣いたりした。
その都度、泣き虫の亜弥ちゃんを笑わせるのがミキの役目だった。


二人を見ると楽しそうに遊んでいる。
子供特有の笑い声をあげながら。

「・・・・」

お日様のように笑っている亜弥ちゃん。
あの笑顔をミキは毎日のように見ていた。

だけど今は・・・


541 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:30


「・・・ん・・」

目を開けると白い天井が目に入る。
どこだっけと思い出しているとカーテンが開かれた。
そこには心配そうにミキを見つめるマイちゃん。

「あ・・みっきー・・起きた?」
「・・・ん」

重い頭とダルイ体を起こす。

「マイちゃん、今って何時?」
「え?あ、えっと、今はもう放課後だよ。ショートも終わったからみっきーの荷物も持ってきたよ」
「ありがとう」

そう言って、ミキのカバンを持ち上げてみせるマイちゃんにミキは一言お礼を言う。
あの昼休みから一時間以上近く経ったんだと再度認識すると、頭がズキリと痛み出した。
その痛みに思わず頭を押さえる。

「ちょっ!?・・みっきー大丈夫!?」

痛み出す頭を押さえているミキにマイちゃんが心配そうに駆け寄る。


542 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:33


「ん、大丈夫。」
「でも・・・」
「ほんとに大丈夫だから」

ミキの体を支えるマイちゃんをやんわりと退ける。
そんなミキをマイちゃんが心配そうに眉を寄せる。

「みっきー、何か・・・あった?」
「・・・・」
「教室、戻ってきたときにクラスメイトから聞いたけど・・・・」
「・・・・」
「・・・その手・・・みっきーが割ったガラスで怪我したんだって?」
「・・・・」
「・・・ひょっとして、亜弥ちゃんと何かあった?」
「・・・」


『亜弥ちゃん』

その名前にミキの中の黒い『何か』が疼きだす。

543 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:34

「何か・・あった?」
「・・・・」

ミキの顔を覗き込むマイちゃんの顔はとても心配そうで、だけど今のミキにはそれがとても煩わしくて、痛む頭と比例してその気持ちが大きくなって・・


「・・・・・・は・・い」
「え?」

大きくなっていくこの気持ちをどうにかして止めようとするのだけど、止まらなくて・・・


「マイちゃんには関係ない!もうほっといてよ!」

気がついたらミキは大きな声でマイちゃんを怒鳴りつけていた。

544 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:35


「ちょっ!?みっきー?」

声を荒げて叫ぶミキにマイちゃんが驚く。
分かってる。これが完璧な八つ当たりだってことくらい。
でも、今のミキには人に対する優しさなんて持ち合わせていなかった。

「もうどうだっていいんだよ!話したって何も変わらない!」
「みっきー?・・・」
「それとも何?マイちゃんに言えばどうにかなるの?!」
「・・・・」


やばい

「ミキの気持ちなんて知らないくせに!」

どうしよう

「何かあった?なんて簡単に聞かないでよ!」

とまらない

感情が昂ぶりすぎてとめることが出来ない。
マイちゃんが傷ついた顔をしているのが分かるのに、ミキの口からは拒絶の言葉しか出てこない。



「マイちゃんにミキの苦しみなんて分かるわけない!」



545 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:36


消毒液の匂いがするこの部屋にはミキとマイちゃんしかいなくて



その二人の間には重たい空気しか流れていなくて



けれど、二人の間にその空気をどうにかするなんて考えはなくて



お互いただじっとにらみ合うように見つめるしか出来なかった。




546 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:38


「「・・・・」」


沈黙が続く保健室。

マイちゃんに対して、一方的に感情をぶつけてしまったミキは言ってしまった後の後悔と、後には引けない気まずさから目を逸らした。


「・・・はぁー」

ミキの頭の上から聞こえてきたため息。
そのため息には呆れた感じの音がこもっていた。

その呆れたような感じに聞こえてきたため息に、ミキはムッときてマイちゃんのほうに顔を向けようとしたら、ミキより先にマイちゃんがミキの横へと座ってきた。
その行動に思わずマイちゃんのほうを見るとマイちゃんは怒ってますって顔でミキの顔を横目で見ていた。

「・・・みっきーのバーカ」
「な!?」
「ばーか、ばーか、ばーか」
「ちょっと!まいちゃん言い過・・・」
「ばーか、ばーか。・・・なに言ってんの?人の気持ち?そんなもの簡単に分かるわけないでしょうが。なに当たり前のこと言ってんのさ!」
「って!」

バカバカと連呼されたと思ったら頭を思いっきり叩かれた。
その衝撃にさっきまで重たい痛みを感じていた頭が揺れる。


547 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:38


「いったぁい・・・」
「当然。痛いように強く叩いたんだから」
「少しくらい手加減しても・・・・」
「馬鹿なこと言うみっきーが悪い」
「・・なにそれ」

悪びれもせずに言うマイちゃん。
そんなマイちゃんをミキは頭を擦りながら恨めしそうに見る。
普段のミキならここで言い返すところだけど、今日は何も言えなかった。


だって、消えてるんだもん。

さっきまで二人の間に流れていたイヤな空気が。

無くなっているんだもん。


「・・・なんだよ、それ」

頭を押さえて呟く。
マイちゃんがミキの頭を叩いたお陰なのか、さっきまでの険悪のような空気は無くなり、そしていつの間にか、ミキの頭の重たい痛みも消えていた。


548 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:39


「「・・・・・」」

再び沈黙の保健室。
だけどさっきまでのイヤな空気は無い。
だから、というのもおかしいけどミキはすんなりと言葉を吐き出すことが出来た。


「あの・・・ごめんね。ひどいこと言って」
「・・ん」
「別にマイちゃんのこと信用してないとかそういうことじゃなくて・・・」
「分かってるよ。あれが感情任せに言った言葉だってことくらい。」
「・・・まいちゃん」

にっこりと笑うマイちゃんにミキの後悔の心が少しだけ晴れる。
マイちゃんの言葉にほっとしたミキは右手をみた。
キレイに巻きなおされたホータイ。


「マイちゃん、この怪我の手当てやり直したのってマイちゃん?」
「え?ううん。あたしじゃないよ。きた時にはそうなっていたし。保健の先生じゃないの?」
「そっか・・・」

右手を擦りながら傷があった場所を手で辿る。



549 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:41


ミキが右手を擦っているとマイちゃんが遠慮がちに聞いてきた。

「みっきー・・もう一回聞くけど、亜弥ちゃんと何かあった?」
「・・・」
「言いたくないなら無理には聞かないけど・・・」
「・・・の・・りだった」
「え?」
「亜弥ちゃんと吉澤。ウワサ通りだったんだ」
「それって・・」
「・・・中庭で抱き合っていた」
「・・・」
「二人とも楽しそうに・・」

その後の言葉が続かない。
あの出来事を思い出すだけで、胸の中の『何か』がざわめきだしてミキの心を苦しくさせていく。


550 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:42


「・・・それで、みっきーはどうするの?」
「・・・・・」
「亜弥ちゃんのこと・・」
「・・分からない」
「え?」
「どうしていいか・・・分からないんだ」

右手を擦りながらちょっとずつ気持ちを吐き出していく。

「亜弥ちゃんと吉澤が抱き合っているのを見たとき、自分の中にある大きな黒い塊に飲み込まれそうになって、・・・ううん、もうとっくに飲み込まれていて・・怖かった」
「・・・・」
「その塊が嫉妬だっていうのは分かっていた。でも、あんなにどうにかなっちゃいそうなくらい苦しくて、つらいものだって知らなかった」
「みっきー・・」
「亜弥ちゃんの側にいられないのがこんなに苦しいことなんだって、遅いかもしれないけどその時、初めて気づいたんだ」
「それなら亜弥ちゃんに気持ちを伝えれば・・」
「笑ってた」
「え?」

ミキに何か言おうとするマイちゃんの言葉を遮る。


551 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:44


「吉澤といる時の亜弥ちゃん、すごい笑っていた。あんな風に笑う亜弥ちゃん、久しぶりに見たきがした」
「・・・・」
「昔から亜弥ちゃんが泣いているとき、笑わしてあげるのがミキの役目だったんだ。
 泣いている亜弥ちゃんを笑わして、側にいるのが・・・
でもそれも、もう必要がないのかもしれない」
「みっきー」
「もう分からないんだ。亜弥ちゃんの気持ちが・・・」


好きなのに。

大切だって気づいたのに。

ボールだって受け取ったのに。


「ボールを受け取っても返す相手がいないんじゃあ・・意味ないよ」


まるで昔遊んだボール投げみたい。
最初は楽しく投げ合っていたのに、取り損ねたボールを捜している間に相手は他の子と遊んでいて、やっと探し当てたボールは投げ返す相手がいなくて、一人立ち尽くしていた。


そのボールをただ持ち続けて。


552 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:46


「でも好きだよね?」
「・・・え?」

まるで確かめるような口調で、マイちゃんが口を開く。
その言葉に顔をあげると、マイちゃんがそっとミキの右手に手を重ねてきた。


「好きだから、ボールを投げた亜弥ちゃんの気持ちが分からなくて、それでみっきーはどうしていいか分かんないんだよね?」
「・・・」

その言葉にゆっくりと頷く。

「そっか。それならあたしがみっきーに言えることはひとつだけだよ」
「・・なに?」
「逃げないで」
「・・・・・」

マイちゃんはそう言うとミキの右手を力強く握り締めた。

「さっきも言ったけど人の気持ちなんて分からなくて当たり前なんだよ。
 っていうか、分からないから面白いの。分かる?」
「・・・よく・・分かんない」
「つまりさ、最初から相手の気持ちとか分かっていたらそれは答えを知っていることになるの。最初から答えが出ているクイズ番組なんてつまらないでしょ?それと一緒。分かんないから一生懸命答えを探すの。相手の言葉を聞くの。
そしてその中からその人の答え(キモチ)を探すの」
「・・・キモチ・・」

マイちゃんが言った言葉に耳を傾ける。


553 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:48


「そう。みっきーはまだ亜弥ちゃんの気持ちを見つけていない」
「でも、亜弥ちゃんは吉澤と・・」
「それ、本人にちゃんと聞いていないんでしょ?」
「・・・え?」
「関係ないとは言われたけど、二人が付き合っているって、みっきーは亜弥ちゃんの口から聞いたの?」
「・・・聞いてない」
「なら、まだ分からないよ。確かに二人は中庭で抱き合っていたかもしれないけど、それが亜弥ちゃんの気持ちの答えとは限らないんだし」
「でも、マイちゃん・・」
「なに?」
「まだ、大丈夫かな?遅くないかな?」
「それは、みっきー次第だよ。返すボールは投げてみないと分からない」

そう言って、マイちゃんはミキを抱き寄せた。

「頑張れ、みっきー。
どんな結果になってもあたしはみっきーの側にいて話を聞いてあげるから」
「・・・マイちゃん」

マイちゃんの優しい言葉にミキの目からポロポロと涙がこぼれる。
ミキはマイちゃんを傷つけたのに、マイちゃんはそんなミキを優しく受け止めてくれる。


554 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:50


そうだ、逃げないって決めたんだ。
ミキのキモチを込めた声で亜弥ちゃんを呼ぶって決めたんだ。

だから逃げちゃだめだ。


「・・・マイちゃん。ありがとう」
「もう大丈夫?」
「うん。もう絶対逃げないって決めた」
「そっか」

マイちゃんの胸の中をやんわりと抜け出し笑顔を作る。
ミキのその顔を見てマイちゃんも笑う。

「よし。今日の朝に見たみっきーの顔だ」
「なにそれ?」
「もう大丈夫だねってこと!」
「わっ!?ちょっともう!」

マイちゃんはにっこりと微笑むとミキの髪をグシャグシャと撫でた。


「・・・さーて、帰りますか?」
「うん」

ベッドから起き上がる。
外を見ると、うっすらと空が赤みかかっていた。


555 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:50


他愛のない話をしながらマイちゃんと二人、靴箱までの道をゆっくりと歩く。

廊下の窓から見える夕焼け空はどこか小さいころに遊んだ公園を思い出させて、懐かしく感じた。

「み、みっきー・・」
「え?」

話しをしながら歩いていたら、マイちゃんが足を止めた。
そんなマイちゃんを見ると、靴箱のほうをみて動かない。

そのマイちゃんが見ている靴箱のほうへと視線を向けようとしたら、聞き覚えのある声。

「そんなことないですよ」
「そうかぁ?」

靴箱の前で楽しそうに話をする二つの声。

「・・・・」

亜弥ちゃんと吉澤だ。


556 名前:僕がキミを 投稿日:2005/04/30(土) 00:52


「ちょっ、みっきー!?」

ミキを呼び止めるマイちゃんの声を無視してミキは二人のもとへと歩き出した。

二人は楽しそうに話していてミキが近づいているのに気づかない。
ミキは亜弥ちゃんに近づくと、その腕を取って振り向かせた。

「!!?」
「ちょっと話しがあるんだけどいい?」
「え?な、なんで・・」

突然、腕を掴まれた亜弥ちゃんは驚いて腕を振り解こうとしたけど、ミキの顔を見ると動きを止めた。なんでここにミキがいるのか考えているようだった。

戸惑い顔の亜弥ちゃんの視線を受けつつミキはしっかりと腕を掴む。

今度はミキがボールを(キモチ)を投げる番って決めたんだ。






もう逃げないって決めたんだ。



557 名前: 投稿日:2005/04/30(土) 00:54

更新終了。


久しぶりに更新。
こう間が空くと話しの流れが微妙に変だと感じるのは自分だけでしょうか?w



526>>名無飼育さま

藤本さんの行動に期待していたようなのに、話がだらだらとしていてすみません。
どうにも自分が書く藤本さんは何故かいつも後ろ向きですw
まあ、次回はがんばってビシっと決める藤本さんを書きたいと思います。


527>>名無しさま

はい。HYの曲です。


528>>名無飼育さま

ありがとうございます。
次回、ビシっとバシッと藤本さんには決めて欲しいですねw



えー・・・今、新しい仕事が入ったために、まったく書けない状態が続いてます。
多分、しばらく更新は不定期になると思います。
なので、次回も気長に待っていてもらえたら嬉しいです。


・・・それでは今回はこれで失礼します。



558 名前:ケロポン 投稿日:2005/05/02(月) 08:36
更新お疲れ様です。待ってました!
この二人の関係すごいいいですねぇ
動き始めた藤本さん。次もまったり待ってますんでどうぞマイペースで頑張ってくださいな。
559 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/28(土) 07:50
うーあー…続きが気になります。
更新待ってまーす。
560 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/10(金) 23:10
お待ちしてます
561 名前:名無しマスク 投稿日:2005/08/11(木) 15:19
ずっと読んでいたのですが、作者さんの話面白いですねぇ^^
今回の最後らへんとかを読んでいると、
とてもこの後が気になってしまいました。
色々とお忙しいかもしれませんが、少しずつの更新で
全然構いませんので続きお待ちしております。。。
562 名前:k 投稿日:2005/08/16(火) 21:07


久しぶりの更新です

563 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:09


腕を掴み、亜弥ちゃんを見つめる。


その目は揺れたまま。


理解しようとする頭と


この状況に理解(ついていけない)できない頭。



亜弥ちゃんはまだ、困惑していた。




564 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:11


「・・話しがしたいんだけど、いいかな?」
「・・・」

亜弥ちゃんの目を見つめ、言葉が返ってくるのを待つ。


不安気にゆれている目

何か言いたげな口

そのひとつ、ひとつを見逃さずにミキは亜弥ちゃんを見つめ続けた。


「あやちゃ・・」
「おぉ!藤本さんってば、強引だなぁ」

不安気な亜弥ちゃんの顔を見つめていると、横から茶化すような笑い声。


「・・・なに?」

ミキは茶化すような笑い声の相手を冷たく見た。
けれど吉澤はそんなミキを見ても、笑った顔を崩すどころかますます、にやけた顔をやめようとはしなかった。
その顔は屋上の階段で出会った、あの時と変わらなかった。



565 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:12


「怖いなぁ。そんなに睨まなくてもいいじゃん」
「・・・・」

ほんとうに怖がってはいない吉澤の態度。
その態度にあの時のように苛立ちが募る。


「・・ねえ。藤本さん」
「なに?」

苛立ちとともに吉澤をきつく睨む。
だけど吉澤はそんなミキに気にすることもなく亜弥ちゃんの肩へと手を置いた。



そう、まるでミキを挑発するかのように。




566 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:14


亜弥ちゃんの肩へと手を置きながら吉澤がミキのほうを見た。


「真剣なところ悪いけど、松浦はウチと帰るんだよね」
「きゃっ」
「!!」

そう言って、自分の元へと亜弥ちゃんを引き寄せる吉澤。
それを見た瞬間ミキの心の中で黒い塊があふれ出す。


「な?松浦」
「よ、吉澤せんぱい」
「・・・・・」

亜弥ちゃんの肩へと手を置きながら笑顔を見せる吉澤に、亜弥ちゃんの顔も心なしかホッとしたような表情を見せる。

この二人のやり取りがミキを嫉妬の塊へと導いていく。


567 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:16


「な?松浦」
「吉澤せんぱい」


亜弥ちゃんに笑顔を見せる吉澤。

安心したように吉澤の顔を見つめる亜弥ちゃん。


それはミキが今、一番見たくない顔だった。


「そういうことだから藤本さ・・」
「悪いけど、亜弥ちゃんはミキと帰るから」
「え?・・きゃ!?」

二人のやり取りにミキは自然に体が動いていた。
吉澤のほうへと納められていた亜弥ちゃんの腕を取って少し強めにミキの方へと抱き寄せた。
よろけながらミキの方へと向かってきた亜弥ちゃんを優しく抱きとめると今度は強く抱きしめた。



568 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:19


亜弥ちゃんを抱きとめ、吉澤のほうへと視線を向ける。


「ミキは亜弥ちゃんと話したいことがあるんだ。だから悪いけど吉澤さん・・」
「・・何?」
「悪いけど、一人で帰ってくれる?」
「・・・・」


お互い睨むとまではいかないが、じっと顔をみつめ視線を逸らさない。



『 亜弥ちゃんに触るな 』

言葉には出さずに態度で吉澤へと示す。

亜弥ちゃんを抱きとめ離さない。
これが、今のミキの気持ちだから。


「そんなに大切な話しなんだ?」
「そうだよ」
「・・・ふーん」
「・・・・」
「「・・・・・」」


吉澤に強い視線をぶつける。
まるでお互いの心の中を探るように・・・



569 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:20


暫くお互い視線を逸らさずにいたけど、不意に吉澤が亜弥ちゃんのほうへと顔をむけた。


「松浦、ウチ用事を思い出したから先に帰るね」
「え?よ、吉澤せんぱい!?」

吉澤の言葉に亜弥ちゃんがミキから離れようとする。
その顔は不安に染まっていて・・

そんな亜弥ちゃんを見て、ミキは苦しくなる。
ミキよりも吉澤へと信頼を置いている亜弥ちゃんを見て・・


「松浦、心配しなくても大丈夫だよ」
「・・・・」
「大丈夫」

不安気な顔で見る亜弥ちゃんに吉澤は優しい顔で笑う。
その顔はミキが初めて見る顔だった。



570 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:21


「そんじゃあウチは帰るから、松浦も藤本さんと帰ること。分かった?」
「でも・・」
「松浦」
「・・・はい」
「よろしい」
「・・・・」


亜弥ちゃんに何か言いたげな視線を向ける吉澤の強い視線に、亜弥ちゃんは戸惑いながらも吉澤の言葉に頷く。
それを確認した吉澤は満足気に笑うと軽く手を上げて去っていった。
吉澤の姿が見えなくなっても見続ける亜弥ちゃん。
その姿に心の中がキリキリと痛み出す。

嫉妬が心の中で渦巻く。


「・・みっきー」

そんなキモチで亜弥ちゃんを見ていると後ろからミキを遠慮がちに呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、優しい顔でマイちゃんがミキを見ていた。



571 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:23


「あ・・ごめん、マイちゃん、ミキ・・」
「分かってる。あたしも用事があるから先に帰るね?」
「あ・・うん」
「じゃあね、みっきー。・・・亜弥ちゃんも、ばいばい」
「・・・さようなら」

ミキの肩にポンと手を置いて帰っていったマイちゃんに、亜弥ちゃんが小声で返す。
その声は緊張しているような、戸惑いを孕んでいるような声で、ミキには判断がつかなかった。


「・・・亜弥ちゃん」
「・・・・」

誰も居ない下駄箱で、亜弥ちゃんと二人。
掴んでいた腕を放し、亜弥ちゃんに声をかける。


亜弥ちゃんにキスされる前までのミキはあんなに緊張していたけど、今のミキは緊張どころかすごく落ち着いていた。



572 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:25


「亜弥ちゃん、帰ろうか?」
「・・・あたしに話したいことがあるんじゃないの?」
「うん、ある。だけどここではしたくない」
「・・・・」
「帰りながら話そうか」
「・・別にどこで話しても・・」
「じゃあ、帰りながら話そうよ」


まだミキと話すことに戸惑っているのか、亜弥ちゃんは歯切れ悪く返す。
そんな亜弥ちゃんの態度をミキは強引に肯定へと受け取り、歩き出す。
だけど亜弥ちゃんがついてくる気配はない。
後ろを振り向くと亜弥ちゃんはまだ、立ち止まっていた。


「亜弥ちゃん?」
「・・・」

下唇を噛み締めミキのことをジッと見ている。


「亜弥ちゃん・・・」

ミキを見る亜弥ちゃんの目は不安に満ちていた。



573 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:26


「亜弥ちゃん・・」
「・・・」
「亜弥ちゃん・・ミキ、亜弥ちゃんに伝えたいことがあるんだ」
「・・・・」
「だから、・・・一緒に帰ろう?」


何も言わずに見つめてくる亜弥ちゃんにミキは力強く見つめ返し、言葉を言う。
本当ならいつも亜弥ちゃんと帰っていた時のように手を差し伸べたかった。
でも、今の亜弥ちゃんはきっとミキを受け入れないだろう。


亜弥ちゃんの気持ちに気づきもしなかったミキには・・・


「・・・亜弥ちゃん」

だからミキは心の中で手を差し伸べた。


亜弥ちゃんがその手を取ることを切に願いながら。



574 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:27


「「・・・・」」

亜弥ちゃんとミキ、二人見つめあったまま。

どれくらいそうしていただろう。
ふいに亜弥ちゃんから小さな息がもれた。


「・・わかった。一緒に帰るから・・」
「ほんとに?」
「ホントだってば、だからそんなに睨まないでよ」
「別ににらんで・・」
「たん、昔から目つきが悪い」
「・・・・」

それを言われると何も言えなくなる。
亜弥ちゃんの言葉に軽くへこんでいると、亜弥ちゃんがミキの前を歩き出した。



575 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:29


「あ、あやちゃ・・」
「ほら、帰るんでしょ?」
「え?・・」
「えっじゃなくて、帰るんでしょ?」
「あ・・・うん」

ミキの前を歩き出した亜弥ちゃんが振り返りながら言う。
その言葉にミキは一瞬、戸惑ってしまった。
いや、別にここまできて怖気ついたとかそうじゃなくて・・・


「みきたん?」
「へ?」
「だから、へっじゃなくて、帰るなら足止めてないで歩いてよ」
「え?・・あっ、ごめん」
「もう、みきたんが帰ろうって言ったんでしょう?」


足を止めたままのミキに亜弥ちゃんが呆れたような顔をする。
だけどミキはまだ戸惑ったまま。
戸惑ってしまったのは、亜弥ちゃんの表情のせい。


「みきたん?」


亜弥ちゃんの顔から不安気な表情がなくなっていたから。



576 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:30


あれほど不安気な顔でミキと帰ることを躊躇っていた亜弥ちゃんがその表情を変え、ミキの顔を真っ直ぐに見つめる。


「みきたん?・・帰るんでしょ?」
「・・・うん」
「じゃあ歩いてよ」
「・・・うん」

立ち止まって見ているミキに亜弥ちゃんは前へと振り向き歩いていく。
それを見て、ミキは慌てて亜弥ちゃんの後を追う。


「・・・・」

亜弥ちゃんの後姿。

ミキより二、三歩、先を歩く亜弥ちゃんの後ろ姿を見てミキはようやく亜弥ちゃんのあの表情の意味を知った。



『 亜弥ちゃんも覚悟を決めたんだ 』



577 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:32


「「・・・・」」

家へと帰る道。

お互い覚悟は出来たものの学校を出てからまだ一言も喋っていない。


『さて、どう切り出そうかな?』

亜弥ちゃんの後ろをついてきた足を速め、横へと並ぶ。
勢いよく亜弥ちゃんを吉澤から自分の元に引き寄せたとはいえ、ミキはどうしていいか分
からなかった。


『まったく、さっきまでの勢いはどこにいったんだか・・・』

いざ本人を目の前にして話を切り出すことが出来ない自分の情けなさに苦笑いをしながらミキは自分の想いに考えを巡らした。


亜弥ちゃんが自分から離れてしまった寂しさ。


吉澤との関係に嫉妬している自分。


そして、自分をどう思っているのかという不安な気持ち。


今のミキの中にはたくさんの気持ちが混ざり合い、亜弥ちゃんに対してどう伝えたらいいのか分からなかった。



578 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:33


「・・・・」

ちらりと隣の亜弥ちゃんをのぞき見る。
猫背のミキと違って背筋をキレイに伸ばして歩く亜弥ちゃん。
顔は前をまっすぐにみて歩いている。

まっすぐに前を見つめる亜弥ちゃんの顔は、あの時亜弥ちゃんの部屋のベランダで流れ星を見たときと同じようにキレイだった。


「・・・」

その横顔に釘付けになると同時に自分の気持ちが大きくなるのを感じる。

『ミキ、亜弥ちゃんが隣にいないとやっぱりダメだ・・』


亜弥ちゃんの横にいると居心地がいいしそして何より、安心する。
改めて、亜弥ちゃんの存在が自分にとってどれだけ大切か感じた。


『・・よし!』

自分の気持ちを確認するとミキは大きく息を吸った。



579 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:35


「亜弥ちゃん」
「・・なに?」
「ミキ、亜弥ちゃんに伝えたいことがあるって、言ったよね?」
「・・うん」
「でも、伝える前に亜弥ちゃんに聞きたいことがあるんだ」
「・・なに?」
「吉澤との関係」
「・・・・」

その言葉に亜弥ちゃんは足を止め、ミキのほうへと顔を向けた。


「前、聞いたとき関係ないっていわれたけど・・でも、ミキは本当のことが知りたい」
「・・・・」
「本当にウワサになっているように吉澤とは・・」
「前にも言ったけどみきたんには関係ないでしょ」
「関係がなきゃ聞いちゃだめなの?」
「・・・」

やっぱり前と同じようにミキには関係ないと言う亜弥ちゃんにミキは少し語尾を強めて反論する。するとミキのその言葉に亜弥ちゃんが言葉を詰まらした。



580 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:37


「関係がなきゃ・・・聞いちゃダメかな?」
「・・・・」
「亜弥ちゃん・・」
「・・・・」

問いかけるミキに亜弥ちゃんは黙ったまま。
ミキのほうを見る亜弥ちゃんの目は何かに耐えているように見えた。


「・・こたえて・・くれないんだ」
「・・・・」
「今日、亜弥ちゃんと吉澤が一緒にいるところ・・見たんだ」
「・・・・」
「抱き合って・・たよね?・・・最初は何かの見間違いかなって・・思ったんだけど、ミキが亜弥ちゃんの姿を見間違えるわけないし、それにあんな派手な金髪しているヤツなんて学校のなかにはアイツしかいないし・・・なんで?なんで亜弥ちゃんはミキに何も言ってくれないの?前はあんなに仲良くて、隠し事もなかったじゃん。なのに、どうしてこの事だけは言ってくれないの?」
「・・・・」
「何か・・言ってよ」
「・・・」

マイちゃんが言ったように相手の口(コトバ)から答え(キモチ)を見つけ出したいのに・・
どんな答えになっても自分の気持ちを伝えようと覚悟したのに・・・

口を開かない亜弥ちゃんに泣きたくなってくる。


581 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:39


「亜弥ちゃん」
「・・・は・・で・・」
「・・え?」

何も答えない亜弥ちゃんをきっとミキは泣きそうな顔で見ているに違いない。
そんなミキに亜弥ちゃんが小さく何かを呟いた。


「亜弥ちゃん、今・・」
「隠していたのはみきたんでしょ!?」
「え?」

呟いた言葉が聞き取れなくて聞き返そうとしたら、突然亜弥ちゃんが叫んだ。


「ミキが隠していたって・・亜弥ちゃん、一体何のこ・・」
「あたしに何も言わずに離れようとしたのはみきたんでしょ!」
「離れるって・・ミキが?亜弥ちゃん、何のこと言っているのか分からないよ」

突然、何かに耐えることをやめたように亜弥ちゃんがミキを怒鳴る。


それはとても激しい感情で。

その感情は亜弥ちゃんから初めて見るものだった。



582 名前:僕がキミを 投稿日:2005/08/16(火) 21:41


「亜弥・・!」

何のことか分らず聞き返そうと思ったミキの言葉が詰まる。
それは亜弥ちゃんの目から涙が伝っていたから。


「あやちゃ・・」
「あたしに何も言わずに決めたくせに・・あたしのこと、妹としか見てないみきたんにあたしのことなんて関係ないでしょう!」
「亜弥ちゃん、落ち着いて?ミキ、亜弥ちゃんが何を言っているのか分からな・・」
「あたしはもうみきたんが知っている『亜弥』じゃない!」
「亜弥ちゃん!?」


掴んでいた腕を振り解いて亜弥ちゃんがミキの前から走り出した。
ワケが分らないミキは亜弥ちゃんを捕まえよと手を伸ばすがもう少しというところでそれは届かなかった。


「亜弥ちゃん!!」

去っていく亜弥ちゃんを追うこともせずに立ち尽くす。

結局、亜弥ちゃんからは何も聞けないまま。
そしてなにも伝えることが出来ないまま、亜弥ちゃんはミキの前からいなくなった。







583 名前:k 投稿日:2005/08/16(火) 21:43


更新、終了。


・・・放置期間三ヶ月近く _| ̄|○


ごめんなさい。ここまで空くなんて自分でも思いませんでした。



558>>ケロポンさま

ありがとうございます。
こんな駄文をまったり待ってくれるなんて・゚・(ノД`)・゚・。
ついに動いた藤本さんですが今回は松浦さんが逃げましたw


559>>名無飼育さま

ありがとうございます。
約三ヶ月ぶりの更新なのに更新量が少なくて申し訳なく。
何分、時間が取れないもので次回も気長に待っていてもらえれば嬉しいです。


560>>名無飼育さま

お待たせしましたw


561>>名無しマスクさま

こんな駄文をずっと読んでいてくださったようでありがとうございます。
しかも面白いなんて・゚・(ノД`)・゚・。
今回、長い間空いていたのに更新量が少なくて申し訳ないですが
次回はなるべく早く更新するのでそれまで気長に待っていてもらえたら嬉しいです。



次回も今回同様、いつ更新出来るかは分りませんが放置だけはしませんので
気長に待っていてもらえたら嬉しいです。

・・・それでは今回はこれで失礼します。



584 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/17(水) 00:56
更新お疲れ様です。
面白いです、相変わらず。待っていた甲斐がありました。
これからも待ちます。がむばってください。
585 名前:ケロポン 投稿日:2005/08/17(水) 01:16
待ってました!更新お疲れ様です。
逃げちゃったか…頑張れもっさん!乙女心はムツカシイ(笑)
586 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/17(水) 17:30
待ってましたよ作者さん!更新お疲れ様です。
587 名前:名無しマスク 投稿日:2005/08/18(木) 15:31
更新お疲れ様です。
気になっていた続きを読めてとても嬉しいです。
でもまた次回がかなり気になってしまいました。。(汗
お二人さんの関係が少しでも良い方向に進むように期待しつつ、作者さんの
おっしゃった通り、気長に待ちたいと思いますw
588 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/20(土) 01:41
待ってた(σ゚Д゚)σYo!!
589 名前:名無し読者 投稿日:2005/09/15(木) 02:03
続き気になります!!頑張ってください。お待ちしてますよ♪
590 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:03

更新、開始。

591 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:03


ゆうきをだして 


さあそこからでておいで


いますぐ さあ 


そのてをのばし


ぼくにつかまっていいよ



592 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:04


「亜弥ちゃん・・どうして・・」

走り去った亜弥に美貴は呆然とする。

亜弥はどうしてそこまで頑なに自分を拒むのだろう。

吉澤とのウワサが本当だから?

だから美貴の気持ちも聞かずに関係ないと言い張ったのだろうか?

それとも別の理由が?

亜弥が言っていた『美貴が最初に自分から離れた』という言葉。

その言葉が美貴の頭の中をグルグルと駆け巡る。



593 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:05


「亜弥ちゃん・・」
「あーあ、逃げられた」
「!?」

亜弥ちゃんが走り去ったほうを見ているミキの後ろから呆れた声。
その声に振り向くとそこには壁へともたれながら亜弥ちゃんが走った方を見ている吉澤がいた。

「・・あんた、いつからそこに・・」
「いやぁ、たまたま通りかかったら藤本さんと松浦の声が聞こえてきてさぁ・・何か言い合っているみたいだから面白そうと思って・・」
「・・・・」
「あれ?言い返さないんだ」


からかうような口調。


「まあ、あれじゃあ逃げられても仕方ないかぁ」
「・・・・」


笑い方。


「けど松浦も藤本さんのどこがいいのかな。・・・ね?」
「・・・・」

どこかヒトを見下しているような目。


吉澤の言葉の一つ一つがミキを苛立たせる。だけど今は吉澤に構っている場合じゃない。



594 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:06


「悪いけど、今はあんたの相手をしている場合じゃないんだよね」
「・・・・冷たいなぁ」
「・・・」
「松浦はアンタと会った小さいときの約束をずっと憶えていたのに」
「・・・え?」

まだ冷やかす態度をとる吉澤の言葉を無視して、亜弥ちゃんの後を追いかけようとしたミキに吉澤が声をかける。

その言葉にミキは足を止めた。


「今、なんて・・」
「・・・二度は言わない」
「何それ?・・だいたいあんた亜弥ちゃんとどういう関係なの?」
「関係って、・・松浦から聞いてるでしょ?」
「・・・亜弥ちゃんは・・ミキには関係ないって・・」
「ふーん・・なら藤本さんにはいう必要もないね」
「!!・・ふざけないでよ!」

からかいの態度にミキは吉澤のほうへと詰め寄る。



595 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:06


「・・熱くなるなよ、松浦に逃げられたからって」
「・・いい加減にしてよ」
「別にホントのことじゃん」
「・・っ!」

その言葉にミキの中で何かが弾けた。
吉澤の襟元を掴み引き寄せる。


「アンタに何が分る!?ミキがどれほど亜弥ちゃんを大切にしてきたか知らないくせに!」
「・・・」

目の前で怒鳴りあげるミキに吉澤は無表情なままミキを見ている。
それが余計ミキを苛立たせる。まるで『それが何?』って言っているように見えて・・


「ミキが・・・ミキがどれだけ・・・」


だから何もかも、

ムカつく気持ちも、

泣きたい気持ちも、



「・・亜弥ちゃんを好きか知らないくせに!」



全部まぜこんで叫んだ。



596 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:07


夕焼けが染まる空で想いをぶつける。

ぶつけた相手は亜弥ちゃんではなくミキが一番嫉妬を感じている吉澤で

つまりそれは一番、言いたくない相手だったわけで

でもなにより一番、ミキの亜弥ちゃんへの気持ちを知っていて・・いや、分らせなければいけない相手だった。


そう、伝えたかった亜弥ちゃんよりも・・・


「・・あんたには解らないよ。一番、側にいてほしい相手がミキの前から・・いなくなったんだ。そんな気持ちを・・アンタに分るわけない!!」


気持ちをぶつけたあと吉澤を睨む。
すると吉澤は大きくため息を零した。



597 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:08


「藤本さんさぁ・・その言葉(キモチ)、松浦に言った?」
「何言って・・・今は関係な・・」
「松浦にその言葉を言ったかって聞いてるの!」
「・・・・」

怒りを露にしているミキに対して吉澤は話を聞いていなかったようにミキにこんなことを聞いてきた。

そんな事を聞く吉澤の、思いのほか強いその眼差しにミキは黙ってしまった。


「ちゃんと伝えた?」
「・・・それはだから、言う前に亜弥ちゃんが・・」
「そうじゃなくて、藤本さんが松浦を好きだと気づく前・・・つまり幼馴染だったころでもいいからその言葉を言ったことがある?」
「それは・・」


もちろん。と、言いかけて口を閉じる。



598 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:09


小さいころに出会った亜弥ちゃん。

いつも側にいて守ってきた。

亜弥ちゃんが泣けば、泣き止むまでずっと側にいたし、

亜弥ちゃんが落ち込んだら笑うまでずっと喋っていた。

それは亜弥ちゃんが好きだったから。

笑っている亜弥ちゃんの顔を見るのが好きだったから、ミキはずっとそうしてきた。

だけど・・

「・・・言葉(キモチ)を・・言う・・」

亜弥ちゃんを好きだという気持ちをミキは一回でもいいから亜弥ちゃんに言ったことがあっただろうか。

言葉にのせて・・ちゃんと亜弥ちゃんに気持ちを伝えたことがあっただろうか・・・



599 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:10


「・・それは・・」

もちろん。といいかけて口を閉じる。

ミキはいつも亜弥ちゃんを大切にしてきた。

だけど、その気持ちを言葉にのせていない。

態度ではそうしてきたけど、言葉で亜弥ちゃんにちゃんと伝えたことは無い。

だって、その気持ちが恋だと気づいたのは最近だから。

小さい時からミキの心の中で芽生えていたものが恋心だって気づいたのは、鈍いかもしれないけどあの時、亜弥ちゃんにキスされた時だから・・・

だからミキはこの気持ちを小さいときから持ち続けていたのに、亜弥ちゃんに伝えるということは無かった。


600 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:11


「・・・それは・・」
「無いんだ?」
「・・・」

言いよどんでいるミキに吉澤が否定の言葉を吐き出す。
その言葉があたっているだけにミキは言い返せず俯いてしまう。


「あー・・そんな泣きそうな顔するなよ」
「べ、別に泣いてなんて・・」

その言葉に思わず顔を上げる。

「嘘だよ。っていうか、泣きそうって顔よりはすごい不安そうな顔しているよ。今の藤本さん」
「・・・・」
「・・・藤本さんはホントに松浦のことが好きなんだねぇ」
「・・何言って・・そんなの当たり前・・」

からかい口調の吉澤の言葉に反論しようとしたけどミキの言葉は途中で止まってしまった。
だって、吉澤の顔には人を馬鹿にしたような態度が一切無かったから。

その顔は靴箱で亜弥ちゃんに見せた時と同じでとても優しい眼をしていたから・・


601 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:12


「吉澤・・さん?」
「松浦はウチに相談してただけだよ」
「・・・え?」
「全然、自分の気持ちに気づいてくれない幼馴染の側にいるのは辛いって。どうすれば想いを伝えることが出来るか・・消すことができるかって・・ウチに相談しにきたんだよ」
「・・・消す?」
「松浦も極端だよなぁ」

吉澤の言葉にミキが眉をしかめる。
その顔を見て吉澤は軽く苦笑いをした。


「・・でも松浦はすごい悩んでたんだよ。自分の気持ちを打ち明けることに。それならいっそ、諦めた方がいいかもしれないって・・そう思うくらい・・悩んでたんだよ」
「・・・亜弥ちゃんが・・」

その言葉に唖然とする。
亜弥ちゃんが悩んでいるなんて気づきもしなかった。


602 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:13


「だけど、ウチに相談しに来たときの松浦は悩みすぎて周りが見えてなかったからね。だからウチがそんな急いで答えを出さなくてもって、言ったんだけどさ・・でも、やっぱそうは言っても松浦も不安になっていたみたいだから。それでウチがある提案をしたんだよね」
「・・提案?」
「決めたのは松浦だけどね」
「どんな提案したわけ?」
「・・・聞いてから怒るなよ?」
「怒るようなことなの?」
「・・・・まぁ・・」

『人によっては・・・』と吉澤は小さな声で返事をして苦笑いをした。


「松浦からの話じゃあ、藤本さんは松浦の気持ちに気づいていないって言っていたからさ、なら藤本さんが松浦をどう思っているか試せばって提案したの」
「ミキを試す?」
「そっ、松浦が誰かと付き合っているっていう噂を流して反応を見ればって。でも、実在しない人と噂になってもイミがないからウチがその役を買ってでたの」
「じゃあ、抱き合っていたとかっていうウワサは・・・」
「あれはウチが友達に頼んで流してもらった」
「な!?」

さらりと言ってのける吉澤にミキは唖然とする。
散々、ミキが気にしていたウワサ。それが本人が流したヤツだったなんて。


603 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:14


「ウワサは流してもらったけどそれだけじゃあ信憑性が無いから松浦には直接藤本さんが聞きにくるまでは何も応えるなって言ったの」
「・・あのウワサは・・・吉澤さんが流したの?」
「そう」
「ってことは、・・亜弥ちゃんと抱き合っていたのは・・・」
「・・・・」

ミキの言葉に黙る吉澤。

「「・・・」」

お互い黙ったまま。
ミキは吉澤の言葉にウワサの話をまとめてみる。


『 亜弥ちゃんと吉澤が抱き合っていた 』

というウワサ。これは吉澤がミキの反応を見るために提案したもので実際にはそんなことは無かった。


・・・ということは・・


604 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:14


「吉澤さん」
「・・・はい」
「もう一度聞くけどウワサを流したのは吉澤さんなんだよね?」
「・・・はい」
「じゃあ、ウワサが流れている間に吉澤さんと亜弥ちゃんの間にウワサのようなことは何も無かったんだよね?」
「・・・はい」


ミキのひとつ、ひとつの質問に短い返事で答えていく吉澤さん。
その返事にミキは安心するんだけどひとつ気になる点が・・

何も無かったという吉澤さん。じゃあ何で、・・・何で、今日・・・


「じゃあなんで今日、亜弥ちゃんと抱き合っていたの?」
「それは・・・」

ミキが気になった点。

それは今日見た、中庭での出来事。
そのことを聞くと吉澤さんは顔を引きつらせた。


605 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:15


「今日亜弥ちゃんと中庭にいたよね?ミキ、見てたんだよ!」
「だから、それは・・」
「あのウワサはミキを試すヤツなんでしょ!?ならする必要ないじゃん!」
「だから・・・」
「ミキがあれ見てどれだけムカついたと思ってるの!?」
「だからそれは松浦が仕掛けたんだってば!」
「・・・はあ!?」

大きな声で詰め寄るミキに吉澤はタジタジになりながら大きな声を張り上げた。
っていうか、今亜弥ちゃんって言った?


「今、何て言ったの?」
「だからあれは松浦が仕掛けたの!」
「亜弥ちゃんが?」
「そう!中庭で松浦と話しているときに藤本さんがいるのが見えたからそれを松浦に言ったら、突然抱きついてきたんだよ!」

吉澤さんの言葉に目を丸くする。


「本当に亜弥ちゃんから抱きついてきたの?」
「本当だよ。最初はウチもびっくりしたけど松浦が何も言わずに合わせろなんて言うから・・・あいつ、最初は笑って話していたのに藤本さんの名前出した途端に、暗い顔するから、ウチもしょうがなく松浦に合わせたんだよ。そしたら藤本さんはガラスを壊すし・・」
「あれは・・・」

と言いかけて口を閉じる。


606 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:16


「・・亜弥ちゃん、ミキの名前聞いた途端に暗くなったの?」
「そうだよ。藤本さんがいなくなってもずっと暗い顔してたんだよ」
「なんで?」
「それは・・・本人に聞けよ」

吉澤さんは理由は知っているけど言いにくいことなのか言葉を濁した。


「吉澤さん、知ってるの?亜弥ちゃんが暗くなった理由」
「・・・まあ、あの後強引に聞きだしたから」
「なら・・なら教えてよ!なんで亜弥ちゃん、ミキの名前聞くだけで暗くなったの?」
「だからそれは・・」
「教えてよ!」
「・・・・」


よほどミキはすごい顔していたのか、吉澤さんは少し顔を引き気味にしていたけど、軽く
ため息をこぼした。


607 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:17


「はぁ・・言うから。話すからそんな顔で見ないで」
「ホント?」
「ホントだってば」
「じゃあ話して」
「・・・はぁ、じつは・・」

吉澤さんはため息をひとつ零しながらあの時のことを話してくれた。

「藤本さん、昨日屋上で里田さんといたでしょ?」
「え?・・・いたけど。いつもマイちゃんとは屋上でお昼食べてるし。・・それが何?」
「・・・・」
「え?ちょっ・・何黙ってるの?」

ミキの問いかけに吉澤さんは何ともいえないような顔をした。
その顔が余計にミキの不安を煽る。


608 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:17


「見てたんだよ」
「え?」
「松浦が、藤本さんと里田さんがいるところ。それも一部始終」
「亜弥ちゃんが見てた?・・・一部始終・・・って、ひょっとして?」
「そのまさか。里田さんが藤本さんにキスするところを松浦は見てたんだよ」
「え?・・・な、何で亜弥ちゃんが屋上に来るの?」
「そんなのは知らないよ。たまたまなのか、それとも藤本さんに用があったのかは知らないけど、とにかく松浦は屋上での出来事を見ていました。マル・・と」

どこか棒読みないい方で吉澤さんは答えた。
っていうか、あれを亜弥ちゃんが見ていた・・・?


「・・・ねえ、藤本さんは里田さんとは何もないわけ?実際のところ」
「・・へ?・・マイちゃんと・・?」

あの時のことを思い出していたミキに吉澤さんが聞いてくる。
実際、あるもないもマイちゃんとは友達だから何もあるわけないし、でも昨日のことを誰かが見ればいくらキスしていないと言っても遠めからじゃあ、そう見えるかもしれない。
ましてやあの時、マイちゃんはミキに覆いかぶさるようにしていたわけだから本当にキスしているかなんて近くで見なきゃ分からないだろうし・・・


609 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:18


「・・おーい・・藤本さーん。帰っておいで」
「・・へ?」

吉澤さんがミキの前で手を振っている。
どうやらボーとしていたようだ。

「この様子じゃあ松浦が見たのは勘違いのようだね」
「あ・・・当たり前だよ。ミキは好きな人としか・・そういうのはしないよ・・」

あの時ことを思い出し声が小さくなる。
まさか亜弥ちゃんが見ていたなんて・・
ひょっとして、亜弥ちゃんが言っていた『ミキが最初に離れた』っていうのはこれの事なのかな?
亜弥ちゃんがミキとマイちゃんの関係を誤解して、それで亜弥ちゃんはミキにあんなことを・・・


亜弥ちゃんが言ったことが頭の中でグルグルと駆け回る。


610 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:18


「・・おーい・・藤本さん・・・もう一回帰っておいで」
「・・・え?・・・・あ・・ごめん」
「いや、まあ別にいいけど」

亜弥ちゃんのことを考えているミキの目の前で手を降る吉澤さんにまたもやミキの意識は飛んでいた。

「ねえ・・・亜弥ちゃんがミキとマイちゃんとの屋上でのやり取りをみていたということは・・・」
「・・・・・」
「亜弥ちゃんが吉澤さんと中庭で抱き合っていたのは・・・」
「・・・仕返し・・だね」
「!!!」
「・・・悪い言い方を・・すればね」

ミキの不安気な顔に吉澤さんは言葉を付け加えた。苦笑いをしながら・・


611 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:19


「はあ・・・まさか亜弥ちゃんが見てるなんて」
「お気の毒」

吉澤さんは同情してか労わりの言葉をかけてくれるけど、ミキはあの時のことを思い出して自分の馬鹿さ加減が嫌になってきた。

亜弥ちゃんにキスされたときに自分の気持ちに気づいていれば、マイちゃんと屋上であんなことせずに亜弥ちゃんを傷つけることもなかったかもしれないのに・・


「亜弥ちゃん、ミキとマイちゃんがいるところ見て、一瞬だけど不安気な顔になったんだ。きっと、ミキとマイちゃんが付き合っていると思って・・・それであんな顔したのかもしれない・・・」

靴箱で亜弥ちゃんと会ったときのことを思い出す。

最初はミキに驚いていた亜弥ちゃんだけど後ろにマイちゃんがいるのが分かると一瞬だけ顔をしかめた。
今ならなんであの時亜弥ちゃんがそんな顔をしたのか分かる気がする。


612 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:19


「ねえ亜弥ちゃんの仕返しって、ヤキモチ・・からだよね?」
「分かりやすく言えばね」
「はぁ・・・ミキの馬鹿。なんでいつも亜弥ちゃんを傷つけるようなことばかりしてるんだろう」
「まあ藤本さんの気持ちも分からないではないけど。でも、あれはさすがにしてないとしてもマズイでしょう」
「・・・吉澤さんもそう思う?」
「思う。・・けど松浦のヤキモチも極端すぎるとは思うけどね」
「・・はは」

その言葉に思わず笑ってしまった。

「理由を聞いたときはさすがにやりすぎだって松浦を怒ったけど、松浦も相当動揺してたみたいだよ。藤本さんと里田さんがキスしているところを見て、自分の中にある嫉妬心を押さえ切れなかったってさ」
「亜弥ちゃんが・・・嫉妬?」
「うん。藤本さんが自分以外の誰かの側で楽しそうに笑っているのを・・・藤本さんが誰かに触られているのを見ると、自分でもどうしようもないほど黒い塊が体中を駆け巡るって松浦・・言ってた」
「・・・・」

ミキとマイちゃんのキスシーン(未遂だけど)を見て、ヤキモチを焼いた亜弥ちゃん。
その気持ちの形が現れたのがミキの見たあの中庭で吉澤さんと抱き合っているところだったんだ。


613 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:20


「亜弥ちゃんも、ミキと同じで苦しんでいたんだ・・」

中庭で吉澤さんと亜弥ちゃんが抱き合っているのを見たとき、ミキはものすごい嫉妬にかられた。
自分ではとても抑えきれない感情に・・・

でも、それは亜弥ちゃんも同じだった。

相手のことが好きすぎて

溢れてくる感情を持て余して、

自分ではどうすることも出来なくて苦しんで


ねえ亜弥ちゃん

ミキたち二人して自分のことばかり考えてたんだね。

自分だけがつらいと思って、相手も同じことを思っているかもなんて全然考えてなくて

可笑しいね。

二人して同じ気持ちになっていたなんて


614 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:21


「あまり松浦を責めないでくれよな」
「え?・・」
「やり方は少しどうかと思ったけど、あいつなりに悩んで苦しんだ結果、そういう行動を取っただけだから・・」
「そんなの・・分かってるよ。ミキだって同じ思いをしてきたんだから」
「そっか、それなら良かった」
「・・・・」

吉澤さんはミキの言葉を聞くとすごく安心したように笑った。
それを見て、なんとなくこの人のことが少しだけ分かったように思えた。

「ねえ、吉澤さん。ひとつ聞いていい?」
「ん?なに」
「亜弥ちゃん、ミキに『ミキが最初に離れた』って言ったんだ」
「・・・・」
「最初は、ミキとマイちゃんの関係を誤解してって、思ったんだけど何かそれだけじゃあないような気がして」
「・・・・」


ミキの質問に吉澤さんが真剣な顔になる。


615 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:22


「亜弥ちゃんがミキを避けた理由が他にあるようなきがして・・吉澤さんは亜弥ちゃんからどんな相談をされたの?」
「他に理由があると思うなら、松浦に直接聞きなよ」
「・・・吉澤さんは、知ってるの?」
「・・・・」
「吉澤さん!」
「これだけは藤本さんが松浦に直接聞いたほうがいい」
「・・え?」
「人にばっか聞かないで自分で答えを探せって言ってるの」
「それは・・分かってるけど」

急に突き放されたように感じてミキは不安になってきた。


「藤本さんが松浦のことを本気で好きなら分かるんじゃない?」
「・・ミキに分かるかな?」
「さあ?どうだろう」
「・・・どっちだよ」

突き放されたような言葉なのにその中にはミキを後押ししてくれるような、吉澤さんなりの励ましの気持ちがあるような感じがして、ミキは笑って頷いた。


616 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:23


「うん、そうだね。亜弥ちゃんのことが好きならきっと分かる」
「・・なんだ、もう立ち直ったのか。つまらないなぁ。藤本さんをからかうの意外に面白いのに」
「はは、残念でした。そう何度もからかわれたくないから」
「それなら後は藤本さんに任せた。・・ほら早く松浦を追いかけなきゃ」
「あ・・・そうだ亜弥ちゃん!」

吉澤さんのその言葉で亜弥ちゃんのことを思い出す。


「そうだよ、亜弥ちゃんを見つけなきゃ。今度はミキが誤解を説かないと」
「今度はちゃんと松浦に伝えなよ」
「うん。じゃあミキ行くね」
「・・ああ、頑張れよ」
「うん!」

吉澤が片手を挙げた美貴に応える。
美貴はというと吉澤が応えるのを確認したと同時に走って行った。


「・・まったく世話が焼ける二人だよ・・ん?」

亜弥を追いかける美貴を見ていた吉澤が何かに気づく。
走り去ったはずの美貴は吉澤に向かってきたのだ。


617 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:24


「はぁ・・はぁ・・いい忘れたことがあるん・・だけど」
「・・何?」
「ん・・・あの・・ありがとね」
「・・・へ?」
「あんたのこと、誤解してた。悩んでいる亜弥ちゃんを支えてくれてありがとう。
 苦しんでいる亜弥ちゃんの側にいてくれてありがとう」
「ああ・・まぁ・・」
「それだけ言いたかったんだ。じゃあミキ行くね」
「・・ああ」

そういって美貴は亜弥を追いかけ走り出した。
吉澤はそんな美貴をずっと見ていたが美貴が吉澤の視界から姿を見えなくなってから急に笑い出した。


「っく・・あははは!・・あれが松浦の言っていた『みきたん』ってやつか。なるほどね。松浦が好きになるわけだ。・・くく・・おもしれぇ・・く・・あはは」


ウワサを鵜呑みにして散々ヒトのことを目の敵にしていたくせに、本当のことが分ると疑うこともせずにそれを受け入れる。
単純というか素直というか、藤本美貴という人物を知らないヒトにはきっと変なヤツとしか映らないのだろうなと吉澤は思った。
まあ、そんな美貴をからかう自分もあまりヒトのことは言えないのだが。

そう思いながら吉澤の笑い声はしばらく止まることはなかった。


618 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:24


「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

ミキのもとから走り去った亜弥ちゃんを追いかけるけど見つからない。
家へ戻っているかと思って亜弥ちゃん家に行ったけど、おばさんからはまだ帰ってきてないと言われた。

息を切らしながら亜弥ちゃんのことを尋ねるミキにおばさんは心配そうにしていたけど、ミキは亜弥ちゃんに急用があるからと一言だけ言っておばさんのもとから走り出した。


「はぁ・・はぁ・・どこいったんだろう」

辺りはそろそろ日も沈みかけてきて夕暮れの空に夜の色が見え始めていた。
今でさえ亜弥ちゃんを探すのに苦労しているのに日が沈んだら余計に亜弥ちゃんを探せなくなる。
ミキの心に不安と焦りが生まれる。


619 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:25


「亜弥ちゃんが行きそうなところは・・」

思い当たるところを探すけど亜弥ちゃんは見つからない。
他に行きそうなところはないかと考えるが気ばかり焦って思いつかない。


「亜弥ちゃんが行きそうなところ・・行きそうな・・」


『松浦はアンタと会った小さいときの約束をずっと憶えていたのに』

ふいに吉澤が言った言葉が頭の中を横切った。


「・・ミキと出会った・・?・・・あ!」

吉澤の言葉にあの場所を思いだす。


「・・・公園の丘の・・木・・?」

ミキはそう呟くとその場所へと走り出した。


620 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:26


ミキと亜弥ちゃんが出会った公園。
今はもう駐車場に変わっているけど唯一、変わっていないものがあった。
それは公園の丘にある一本の木。

樹齢何百年っていう大きな大木。

小さいころ遊んでいた公園には少しだけ小高い丘があってそこには一本の大木があった。本当なら駐車場が作られるときにその木もなくなる筈だった。でも、昔からそこにある大木を切るのはもったいないからって住民が抗議してその木だけは残すことになった。


「はぁ・・はぁ・・亜弥ちゃん・・」

その場所へ走りながらあの日のことを思い出す。
亜弥ちゃんと初めて会った日。あの時、約束したあの日のことを・・


621 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:27


『亜弥ちゃん、向こうに大きな木があるんだ。そこからはミキたちが住んでいる町が見えるんだよ』
『・・木?』

亜弥ちゃんと初めて会った日、すぐに仲良くなったミキは亜弥ちゃんをあの木へと連れて行った。その木は丘にある為かミキたちの町が見下ろせるほど見晴らしがいい場所にあった。ミキはそこから見える風景が好きで、公園の中で一番のお気に入りの場所がここだった。

『うん。そこはミキの一番のお気に入りなんだ』
『みきたんの・・一番好きな場所?』
『うん。亜弥ちゃん行ってみたい?』
『うん!』


だから仲良くなった亜弥ちゃんにその風景を見せたくて、亜弥ちゃんを丘にある木へと連れていったんだ。


622 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:27


『亜弥ちゃんは木登りできる?』
『・・木登り?』
『うん。丘の木ってちょっと大きくて高いんだ。亜弥ちゃん小さいから登れるかなって』
『むぅ・・大丈夫だもん!アヤ、木登りできるもん』

丘の上へ上がる途中、亜弥ちゃんに木登りが出来るかと聞いたら亜弥ちゃんが口を尖らせた。ミキの子どもあつかいの言葉が気に入らなかったようだ(実際、二人とも子どもなんだけど)。口を尖らす亜弥ちゃんを見てミキは慌てて亜弥ちゃんを宥めた。


『ほら、すごいでしょ?』
『わぁ・・』

丘の木を見上げる亜弥ちゃんが驚きの声を上げる。
公園のほうからでも大きく見えた木は間近でみるとさらに大きかった。

『大きいねぇ・・』
『ほら、亜弥ちゃんここに足をかけて』
『え?・・あ』

まだ木を見上げ続ける亜弥ちゃんに木に登るように声をかけると慌てて登り始めた。
ミキはそんな亜弥ちゃんの一歩下から亜弥ちゃんが落ちないように支えていた。


623 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:28


『そう、そこに足をかけて・・手は離しちゃだめだよ』
『う、うん』

ゆっくりと少しずつ。
さっきまで足をつけていた地面から離れていく。

亜弥ちゃんはそんなに木登りをしたことがないのか怖がりながら木に登っていく。
ミキは亜弥ちゃんの体を支えながらお気に入りの場所へと亜弥ちゃんを誘導していった。

『・・ほら亜弥ちゃん。ここに座って』
『うん』

ようやくお気に入りの場所へと到達。
ヒトが二人座っても折れない太い木の枝へ亜弥ちゃんを座らせるとミキは後ろから亜弥ちゃんを抱きこむように座る。もちろん、亜弥ちゃんが落ちないためだ


『ほら亜弥ちゃん見て』
『わぁ・・・すごーい!』

目の前に広がる風景に亜弥ちゃんが大きな声で叫ぶ。


『あ!アヤのお家が見える!』

町を眺めながら嬉々として嬉しそうに自分の家を指す亜弥ちゃん。そんな亜弥ちゃんを見てミキはこの場所に亜弥ちゃんを連れてきて良かったと本当に思った。
思えばあの頃からミキは亜弥ちゃんの笑顔が好きだった。初めて会ったあの時から・・
亜弥ちゃんの笑顔をずっと見たいと思っていた。


624 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:29


「はぁ・・はぁ・・はぁ」

両膝に手をついて息を整える。


「はぁ・・はぁ・・ん・・はぁ・・亜弥ちゃん・・」

息を整え見上げた場所にはあの丘の木。

亜弥ちゃんとの約束の場所。


「はぁ・・はぁ・・よし!」

一歩、足をかけるとミキは一気に丘の木へと続く道を上りはじめた。


625 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:30


『亜弥ちゃん、そろそろ帰ろうか?』
『えーもう!?』
『だってほら、もう日が沈むし』

ミキが指した空には真っ赤な夕日。
町の風景を地平線にして沈もうとしている。


『みきたん、沈むまで見たい』
『でも日が沈んだら空が暗くなって降りるときに足元が見えなくて危ないよ?明るいうちに帰ろうよ・・』
『ヤダぁ・・みたい』
『でもぅ・・』
『みきたん・・』

両手を組んでお願いポーズの亜弥ちゃん。


『んー・・わかった。でもこれ見たらすぐに帰るよ?』
『うん!ありがとうみきたん』

結局ミキが折れてしまって夕日が沈むまでそこにいることになった。


626 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:31


『あーあ、沈んだぁ』

半分ほど沈んでいた夕日が地平線の中へと消えていく。
沈み夕日を亜弥ちゃんが残念そうな声をだしながら見ていたがミキは降りる為に立ち上がった。

『亜弥ちゃん、さっき登ったのを降りるだけでいいからね。ゆっくり降りるんだよ?』
『うん』

木にしがみつきながらゆっくりと降りる。
今度は先にミキが降りて亜弥ちゃんを待った。


『・・よし。はい亜弥ちゃん、こっからジャンプして』

ミキはとっくに降りていてあとは亜弥ちゃんが飛び降りれば家へ帰ることが出来る。
両手をあげて亜弥ちゃんが降りてくるのを待つけど亜弥ちゃんは木にしがみついたまま。


『亜弥ちゃん?』
『・・こわい』
『へ?』
『みきたん・・こあいよぅ・・』

あと少しというところで亜弥ちゃんが降りるのを怖がる。
確かにこの高さはちょっと高いかもしれないけど飛び降りない高さじゃない。
でも自分の身長より高い木を飛び降りるのは幼稚園の亜弥ちゃんには怖いようでずっと木にしがみついたまま。


627 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:32


『亜弥ちゃん大丈夫だからぴょんって飛べば終わりだから・・ほら、おいで』
『ヤダぁ・・くらくてこわいもん』
『だから明るいうちに帰ろうって言ったのに・・』
『みきたん・・』

少しだけ呆れた声をだすミキの上から涙声の亜弥ちゃん。

『ふぅ・・ミキがそっちにいくから待ってて?』
『ふぇ?・・うん』

今にも泣きそうな亜弥ちゃんを迎えにミキは降りた木にもう一度登り始めた。
すぐそこだけど暗くて木のくぼみが中々見えない木登りは結構苦戦した。


『ほら亜弥ちゃん』

落ちないようにゆっくりと登ってやっと亜弥ちゃんのもとへたどり着く。
そして亜弥ちゃんの前へと手を差し伸べる。


628 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:32


『ふえ・・みきたーん・・』
『わっと!?・・亜弥ちゃん、泣くのは後。降りるからミキにしがみついてて』
『・・うん』

手を差し伸べたミキに飛びつく亜弥ちゃんを木から落ちそうになりながら受け止める。
亜弥ちゃんはミキにしがみつきながら目に涙をためている。


『亜弥ちゃん、怖かったら目閉じてていいからね』
『・・うん』

ミキの服にきつくしがみつきながら亜弥ちゃんは目を閉じた。
亜弥ちゃんを抱きかかえながらゆっくり降りる。
ミキのほうが二つ年が上で体も大きいとはいっても小さな子どもが人を抱えて降りるのはすごく大変で、すぐそこに地面が見えてもミキは中々降りることができなかった。


『・・あと・・ちょっと・・』

暗い中をゆっくり降りていく。
亜弥ちゃんはミキの背中に手をまわしてがっちりと掴んでいる。
そのせいでミキは足元がよく見えていなかった。


629 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:33


『・・よし・・つい・・たって!?』

あと少しというところで木からすべり落ちる。
その時、ミキは足を捻ってしまった。


『・・いたぁ・・』
『みきたん・・大丈夫?』

足を捻ったミキは泣きそうな声をだす。
そんなミキを上に乗っかっていた亜弥ちゃんが心配そうに見ている。


『う・・ん。大丈・・いて!?』

上に乗っかっている亜弥ちゃんを下ろして立ち上がろうとしたミキの左足から強い痛みがはしる。その痛みにたまらず大声をだしてしまった。


630 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:34


『いたぁい・・げ!?・・血がでてる・・』

痛む足を見るとそこには大きな擦り傷。
多分、滑り落ちたときにできたんだろう。

『ふ・・ぇ・・ひっく・・う・・ぅわーん・・』
『え!?なんで亜弥ちゃんが泣くの!?』

血が出ている左足を押さえていたら突然亜弥ちゃんが泣き出した。


『っひ・・うっ・・だっ・・て・・みき・・た・・血・・でて・・』
『出てるけど大丈夫だよ。こんなケガすぐに治るし・・』

ミキの足を見ながらボロボロと泣く亜弥ちゃん。
本当ならケガしているミキが泣く場面のはずなのに亜弥ちゃんが大泣きするから泣くタイミングをなくしたというか、とにかくミキがケガで泣くことはなかった。


『亜弥ちゃん、ミキは平気だから泣かないで。ね?』
『・・っく・・う・・』
『・・どうしよ・・』

ミキがケガで泣くことはなかたけど中々泣き止まない亜弥ちゃんにお手上げ状態。


631 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:35


『亜弥ちゃん・・』
『っく・・えっ・・ごめんな・・さ・い』
『謝らないでいいから・・泣き止んでよう』
『・・くっ・・アヤ悪い子。・・だか・・・っら・・もう・・みき・・たんっ・・と・・遊べない・・』
『へ?何言ってんの?』
『ママが・・お友達にケガさせたら・・っく・・う・・ダメって・・悪い子とは遊べないって・・』
『あー・・・』

しゃくりあげながら話す亜弥ちゃんの言葉を何とか聞き取る。
その言葉を聞いてミキは苦笑いをする。
多分、亜弥ちゃんのママが悪いことしちゃダメって教えるために言ったんだろうけど、今の亜弥ちゃんには効果抜群で、ミキのケガなんて擦り傷程度なのにそのケガが自分の所為だと思っている亜弥ちゃんはもうミキと遊べないと思い込んでいる。


632 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:36


『・・ふぅ・・』

チラっとケガをしている自分の左足を見てミキは息をひとつ零した。


『亜弥ちゃん』
『・・っく・・ごめん・・なさ・・ごめ・・』
『亜弥ちゃん、ミキの足は大丈夫だよ。ほら見て』
『・・・っく・・う・・』

顔を両手で隠しながら泣いている亜弥ちゃんがミキのほうへと顔を向ける。

泣いている亜弥ちゃんの前にいるのは真っ直ぐに立っているミキ。
左足はズキズキと痛むけど、それを顔には出さずに亜弥ちゃんの前に笑いながら立つ。


『ほらね、ミキは大丈夫だから泣かないの』
『でもみきたん、足から血・・でてる』


真っ直ぐにミキが立っているのにそれでもまだ不安なのか亜弥ちゃんは涙目でミキの左足を見ている。


633 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:36


『大丈夫だって。こんなの消毒すればすぐに治るって』
『・・でも、アヤは・・みきたんにケガさせた・・』
『ケガぐらいでミキは亜弥ちゃんを嫌いにならないし、もう遊ばないなんて言わないよ』
『・・・ホントに?』
『ホントだってば、だから泣くのはもうお終い。亜弥ちゃんは笑ったほう可愛いんだから、ほら、笑って』

まだ眉毛を八の字にしてミキを見る亜弥ちゃんの頭を撫でると、亜弥ちゃんの顔が泣き顔から笑顔へと変わっていく。


『・・えへへ』
『あは・・やっと笑った』

笑顔を見せる亜弥ちゃんに安心してミキも笑顔になる。
泣き止んだ亜弥ちゃんと笑いあっていると、遠くからミキたちを呼ぶ声が聞こえた。
どうやらいつまでたっても帰ってこないミキたちをお母さんたちが探しに来たらしい。
辺りを見ると真っ暗で夜空には星が出ていた。


遅くまで遊んだ上にケガをしているミキたちにお母さんたちはものすごく怒った。
こっ酷く怒られたおかげで結局、ミキが頑張って亜弥ちゃんを笑顔にしたのに亜弥ちゃんは亜弥ちゃんのママに怒られて大泣き。
ミキも足のケガ以外に頭に大きなコブを作って二人して泣きながら家へと帰った。


634 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:37


『じゃあ亜弥ちゃん、バイバイ』
『うん、・・・・あっみきたん!』
『ん?』

亜弥ちゃんと亜弥ちゃんのママが家に入るのを見てからミキも家の中に入ろうとしたら大きな声で呼ばれた。


『なに?どしたの亜弥ちゃん』
『あのね・・』

ミキの方へと走ってきた亜弥ちゃんだけど何故か下を向いてモジモジしている。
どうしたのなと思って亜弥ちゃんの顔をのぞき込むと亜弥ちゃんが顔を上げた。


『みきたん、今日は遊んでくれてありがとう。あとケガさせてごめんなさい』
『へ?・・ああ、別にこのくらい平気だよ』
『みきたん、明日もアヤと遊んでくれる?』
『もちろん、ミキも亜弥ちゃんと遊びたいもん』
『ホント?』
『ホント』
『えへへ』

ミキの言葉に嬉しそうに笑う亜弥ちゃんを見て嬉しくなる。


635 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:38


『はい、亜弥ちゃん手だして』
『て?』
『うん、約束しよう』

笑ってくれる亜弥ちゃんが嬉しくてミキはもっと亜弥ちゃんを喜ばせたいと思った。


『はい、手だして』
『うん』

ミキが小指を差し出すと亜弥ちゃんは嬉しそうに絡めてきた。


『ゆーびきりげーんまーん・・』

歌にのせての指きりげんまん。
歌い終わると亜弥ちゃんは嬉しそうに絡めていた指を離した。


『じゃあまた明日ね亜弥ちゃん』
『あ・・みきたん』
『ん?』
『もうひとつだけ約束していい?』
『もうひとつ?』
『・・だめ?』
『・・・いいよ、何?』
『あのね・・・・』


636 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:39


「はぁ・・ハぁ・・ハァ・・」

一気に階段を駆け上ったから、せっかく整えた息がまた乱れる。
乱れた呼吸を繰り返しながらミキは目の前にある木を見上げた。


「ハァ・・ハァ・・みつけた」

ミキのお気に入りだった場所に座り夕焼けの染まる町を見下ろしている亜弥ちゃん。


「亜弥ちゃん」
「・・みきたん」
「亜弥ちゃん、ごめん。ミキ、何にも気づかなくて」
「・・・・」
「ウワサのことは吉澤さんから聞いた。吉澤さんとは何もなかったって。あれはミキの気持ちを試すために流したものだって」
「・・・吉澤さんに会ったの?」
「うん。亜弥ちゃんがどれだけ苦しんでいたかも・・・ごめんね、亜弥ちゃん。ミキ、自分のことばかり考えていて、亜弥ちゃんがなんでミキにそんな態度ばかりとるのか考えもしないで。亜弥ちゃんが悩んでいるのにも気づいてあげられなかった」
「・・・・・」
「ねえ亜弥ちゃん、そこから降りてきてよ。ミキの話しを聞いてほしいんだ」
「・・むりだよ・・」
「え?」

やっと見つけた亜弥ちゃん。
吉澤さんから話しを聞いたミキは亜弥ちゃんに気持ちを伝えたくて、亜弥ちゃんに木から降りるように頼むけど亜弥ちゃんは顔を曇らせ降りようとしない。


637 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:40


「どうして?ミキ、亜弥ちゃんに伝えたいことがあるんだ。だからそこから降りてきてよ」
「・・・できない」
「だから何で!?」
「・・吉澤さんから聞いてんでしょ?・・あたしがみきたんを試すためにウソをついたって」
「・・・聞いたよ?でも、それはミキが亜弥ちゃんのことをどう思っているか不安になったから試したって・・・」
「それでも!」

ミキの言葉を遮り亜弥ちゃんが叫ぶ。


「それでも、あたしがみきたんを・・自分勝手な想いでみきたんを傷つけたのに・・・違いはない・・」
「・・・亜弥ちゃん」

亜弥ちゃんは声を小さくし顔を俯いた。


「あたしは・・みきたんと向き合う資格は・・・」
「亜弥ちゃん・・」
「もうあの頃には・・戻れない」

両手を顔にあてる亜弥ちゃん。
声は出していないけど肩を震わせている彼女が泣いているのはすぐに分かった。


638 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:41


声を殺して泣く彼女に昔のことが重なる。
あの時も亜弥ちゃんはミキにケガをさせた(傷つけた)ことに対して泣いていた。

「・・・亜弥ちゃん」
「・・・・」
「亜弥ちゃん、昔の約束・・覚えてる?」
「・・・・」
「亜弥ちゃんと初めて会ったときに、二人の家の前で約束したよね?」
「・・・・」
「ひとつは、また遊ぼうねって約束。もうひとつは・・」

俯く亜弥ちゃんを見上げながらあの時のことを思い出す。



「亜弥ちゃんの側にずっといる」



これが二人が最初に交わした約束。



639 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:42


『じゃあまた明日ね。亜弥ちゃん』
『あ・・みきたん』
『ん?』
『もうひとつだけ約束していい?』
『もうひとつ?』
『・・だめ?』
『・・・いいよ、何?』
『あのね・・・・』


あの時、亜弥ちゃんは顔を赤くしながらミキに言った。


『アヤ、みきたんのこと好きだからずっと一緒にいたい』
『え?』
『・・・だめ?』
『・・いいよ。ミキも亜弥ちゃんのこと好きだから。じゃあ、ミキが亜弥ちゃんの側にずっといて、亜弥ちゃんをイジメるやつから守ってあげる』
『ほんと?みきたん、ずっとアヤの側にいてくれるの?』
『うん。ずっと側にいるよ』
『えへへ。みきたん、だぁい好きぃ』
『わ!?』

ミキの言葉に亜弥ちゃんが飛びついてきた。
抱きついてきた亜弥ちゃんにびっくりしたけどミキもそれを受け止めた。

思えば、これが亜弥ちゃんのミキに対しての初めての告白だったかもしれない。


640 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:43


「ごめんね亜弥ちゃん。ミキ、亜弥ちゃんと約束したのに・・忘れちゃいけないことだったのに、自分のことばかり考えて亜弥ちゃんの気持ちに気づかなかった」


約束したものは、子どもだけにとても純粋なもので・・
だけど、大人になるにつれてあの頃の気持ちは思い出のまま記憶の奥へと沈んでいった。


「・・亜弥ちゃん、昔のことを忘れていたミキが今さらこんなこと言うのはすごい
自分勝手だって分かっているけど、ミキのお願いを聞いてほしいんだ」
「・・・・」

亜弥ちゃんが顔をあげミキを見下ろす。
目には涙をためている。
その泣き顔は昔と何も変わらない。

「・・・亜弥ちゃん」

亜弥ちゃんを見上げ、ミキは想いを込めて言葉を吐いた。




「亜弥ちゃんの側にいさせてほしい」




641 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:44


「・・亜弥ちゃんの側にいさせてほしい。小さいときに約束したことを、今度こそ守らせてほしい」
「・・・・・」
「・・亜弥ちゃん」

願いを込めるように彼女を見上げ続ける。


「・・・あたしは・・」

目に涙をため、ミキを見ていた亜弥ちゃんが口を開く。


「あたしはもう昔のあたしじゃない。・・純粋にみきたんだけを見ていた・・たんだけを好きだったアヤじゃない。・・あたしは・・自分のためなら平気でみきたんを試すような・・もうあたしは、みきたんが好きだって言ってくれた・・あたしじゃない・・」
「亜弥ちゃん・・」
「今さら、・・みきたんを傷つけたあたしが、・・・たんに守られる資格なんて・・ない」

亜弥ちゃんの頬に一滴の涙が伝う。


642 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:45


「あたしは・・・みきたんのこと・・」
「・・・・」

亜弥ちゃんが泣いている。
結局ミキは亜弥ちゃんを泣かしてばかりだ。子どものときに約束したことをひとつも守っちゃいない。

ミキを前にして涙を流す亜弥ちゃんを見て、自分自身に対して苛立ちが生まれてくる。
これが、・・・これがマイちゃんの言っていた相手との理想の距離なの?
相手の顔をみて、相手の言葉を聞くことが出来る。
確かに相手が何を思っているか、この距離なら知ることが出来る。
でも・・・


「あたしはみきたんを・・」
「・・・亜弥ちゃん」

亜弥ちゃんが泣いているのに何も出来ない自分がいる。
泣いている亜弥ちゃんを今すぐにでも抱きしめたいのに・・・

それが出来ないこの距離にミキは苛立ってくる。


643 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:46


「・・・あたしは・・・」
「・・・亜弥ちゃん、今からそっちに行くから動かないでね」
「え?・・」

亜弥ちゃんに返事を待たずにミキは木へと登りだした。


『届かないなら、自分から近づけばいい』

亜弥ちゃんとの距離に苛立ちを感じたミキ中で何かが弾けた。


「亜弥ちゃん、今そっちに行くから・・・」
「みきたん・・」

お互いの気持ちをぶつけたのに、まだ受け入れられない亜弥ちゃん。
二人の距離が相手の顔も・・声も聞ける理想の距離で、それが届かないと感じるのならそれは別のキョリ(感情)があるから。


644 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:47


『あたしは昔のアヤじゃない!』

亜弥ちゃんが叫んだ言葉(キモチ)

昔(幼馴染の頃)に囚われ前に進むことが出来ない。
足かせになっている言葉。

二人とも覚悟を決めたのに、前に進めないのは亜弥ちゃんがそれに囚われているから。

だったら伝えなきゃ。

ミキが好きなのは亜弥ちゃんだって。


幼馴染だったころの亜弥ちゃんも

今の亜弥ちゃんも

そしてこれからの亜弥ちゃんも

亜弥ちゃんがどんなに変わったと言ったとしてもミキが好きなのは目の前にいる亜弥ちゃんだって


伝えなきゃ


645 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:48


「ふぅ・・やっと登れた」
「みきたん・・」

久しぶりの木登りに苦戦しながらもミキは亜弥ちゃん近くまでたどり着いた。


「亜弥ちゃん」
「・・・」

目を真っ赤にさせ涙を流す亜弥ちゃん。
早くその泣き顔を消して、笑った亜弥ちゃんの顔を見たい。


「亜弥ちゃん、ミキが側にいたいんだ。亜弥ちゃんがミキの側にいたくないって言っても、ミキが亜弥ちゃんの側にいたいんだよ。・・・それに、ミキが側にいて欲しいのは今、目の前にいる亜弥ちゃんなんだよ?ミキは小さい時から亜弥ちゃんしか見ていなかった。今の亜弥ちゃんも昔の亜弥ちゃんもミキにとっては変わらない。今も昔もない!」
「みきたん」
 
亜弥ちゃんの顔が涙で滲んでいく。

ごめんね、亜弥ちゃん。
鈍感な幼馴染で。でも今、勇気をだして言うから・・



「ミキは亜弥ちゃんが好きだよ」




646 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:49


夕焼けが染まるこの木で

あの頃から変わらない気持ちを伝える


「好きだよ。ずっと小さい時から、亜弥ちゃんしか見ていなかった。この気持ちにウソはない。ミキは亜弥ちゃんが好きだ」
「・・みきたん」
「亜弥ちゃんも同じ気持ちでしょ?」
「でも、・・あたしはみきたんに・・」
「そんなの気にしていない。ミキが亜弥ちゃんと同じ立場でもそうしてる。誰だって言葉で伝えて欲しい。相手のことが分からなくなったら試してしまう。でもそれって、相手が好きだからでしょ?」
「だけど、あたしは・・ん」

まだ自分がしたことを気にしている亜弥ちゃんの口を手で塞ぐ。


「亜弥ちゃん、ミキが聞きたいのはそんな言葉じゃない。亜弥ちゃんの気持ちが聞きたいだけ。怖かったらあの時みたいに目を閉じていてもいいから・・・不安ならミキにしがみつけばいいから・・・だから亜弥ちゃん、怖がらずに、ミキに気持ちを聞かせて欲しい」

そう言って、亜弥ちゃんのほうへと手を差し出す。

あの時のように・・・

この手を掴んで欲しいと願いながら


647 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:50


「亜弥ちゃん・・」
「・・・」

差し出したミキの手を戸惑いながら見ている亜弥ちゃん。
だけどしばらくして軽く目を閉じるとミキのほうへと目を向けた。


「あたしは・・・」
「あたしは?」



― ほら ゆうきをだして そこからでておいで



「・・・あたしは、・・みきたんのことが・・・」
「ミキのことが・・?」



― いますぐ そのてをのばして




「すき」



― このてに つかまっていいよ





648 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:51


「あたしは・・みきたんが・・すき・・」
「ミキも・・好きだよ」
「・・みきたん!!」

亜弥ちゃんがミキの手を掴み飛び込んでくる。
それをミキはしっかりと受け止める。


「みきたん・・みきたん・・・たん・・・」
「・・やっとでてきた」

ミキの中で泣きじゃくる亜弥ちゃんを強く抱きしめる。


「不安にさせて・・ごめんね」

泣きじゃくる亜弥ちゃんにミキの精一杯の謝罪の言葉を言う。


「たん・・ごめん・・・ごめん・・なさい・・」
「・・うん・・」

亜弥ちゃんが泣いている間、ミキはずっと亜弥ちゃんの頭を撫でつづけていた。


649 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:52


亜弥ちゃんと沈む夕日を眺めながら言葉を交わす。


「・・久しぶりだなぁここで夕日を見るのって」
「みきたん、ごめんね。ずっと冷たい態度ばかりとって・・」
「もういいよ。気づかなかったミキが悪いんだし」
「でも・・」
「すとっぷ!」

まだ謝りつづける亜弥ちゃんをミキは手で制した。


「亜弥ちゃん謝りすぎ」
「だって・・・」
「・・お互い様ってことで・・いいんじゃない?」
「・・みきたん」
「それより亜弥ちゃん」
「なに?」
「これからは幼馴染じゃあなくなるけど、亜弥ちゃんのこと・・・大切にするから」
「・・・うん」
「・・・・・」
「みきたん?・・きゃ!?」
「ごめん、恥ずかしくてまともに亜弥ちゃんの顔、見れないや」
「・・・みきたん」

何か言ったあとがすごい恥ずかしくなってミキはたまらず亜弥ちゃんを抱きしめた。
多分、ものすごい顔が赤くなっているはず。
亜弥ちゃんもミキのそんな気持ちが分かったのか、何も言わずにそっとミキの背中へ腕を回した。


650 名前:僕がキミを 投稿日:2005/09/19(月) 03:54


辺りはもう真っ暗になり、夕日は町を地平線としながら沈んでいく。

「夕日が沈んでいくね」
「・・うん」

ミキはこの沈む夕日を見ながら思った


ミキたちはまだ子どもで、些細なことで傷ついたり傷つけあったりするけど

でも一生懸命、想いをぶつけあえばきっと大丈夫だと思うんだ

だからこれからは怖がらずに出て行こうよ

ミキはどんな亜弥ちゃんでも受け止める自信があるからさ

もう一人で悩まないでよ

離れたりしないで

ミキがずっと側にいてあげるから

ミキが亜弥ちゃんの一番近くにいて、ずっと見ていてあげるから

だからもう一人で泣いたりしないで


夕日が沈む中、もう泣かなくていいよって気持ちを込めて
ミキはもう一度亜弥ちゃんを強く抱きしめた






                       END


651 名前:k 投稿日:2005/09/19(月) 03:57

更新、終了。


見切り発車ではじめてからやく七ヶ月。やっと纏め上げることができました。
話しの骨組みは出来ているのに中々、うまく書くことが出来ずに何度、ラストを書き直したか・゚・(ノД`)・゚・。
とりあえず、今回は間があきすぎたので一気に更新をしました。


584>>名無飼育さま

お待たせしました。
待たせた甲斐があったかは分かりませんがどうにか書き上げましたのでお読みください。


585>>ケロポンさま

前回、松浦さんに逃げられた藤本さんですが、どうにか追いつきました。
中々女心が分からない藤本さんでしたが今回は頑張ってもらいました。


586>>名無飼育さま

ありがとうございます。長らくお待たせしました。


587>>名無しマスクさま

続きが気になるところを長らくお待たせしました。
どうにかこの話しもハッピーエンドに持っていくことが出来ました。


588>>名無飼育さま

待たせました(σ゚Д゚)σYo!!


589>>名無し読者さま

ありがとうございます。お待たせしました。


えー・・今回のこのお話はこれで終わりですが、次回からは松浦さん視点を書きたいと思います。これもまたいつの更新になるかは分かりませんが近いうちに書き上げますので、また気長にお待ちくださいましたら嬉しいです。


・・・それでは今回はこれで失礼します。


652 名前:名無しマスク 投稿日:2005/09/19(月) 11:42
もう、なんていうか・・・。
とりあえず今まで更新お疲れ様でした。
完結まで読めて、今、めっちゃ余韻に浸ってます。。。
ありきたりですが、ほんと「よかった!」です。

次回の松浦さん視点もすでに気になっている次第でございます。
気長に待ってますので、何卒頑張ってください。
653 名前:ひろ〜し〜 投稿日:2005/09/19(月) 19:49
こんにちわ。
なんかスゴィです。
あたたかくて優しい感じで・・・
なんか上手く説明できない感じです。
とりあえず良かったです!

頑張ってください。
654 名前:ケロポン 投稿日:2005/09/20(火) 00:42
お疲れ様です。いやぁなんちゅうかもぉいい話ですなぁ…
よっちゃんいいやつやってんなぁ(笑)
この2人はもう大丈夫そうですね。亜弥ちゃん脱出おめでとう。
次回の松浦さん視点も楽しみに待たせていただきます。
655 名前: 投稿日:2005/10/09(日) 03:20


容量がいっぱいになりそうなんで、新しくスレを立てました。

銀板 M。S.2
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1128794775/l50


ここでのレス返しは新しい板でさせて頂きます。

656 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 22:45
まだまだ更新待ってます!
次回も頑張ってください
657 名前: 投稿日:2005/12/21(水) 00:03

容量が少しあまっているので、短編を載せます。

658 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:04


「・・・寒い」
「みきたん、さっきからそればっかり言ってるよ?」
「だって寒いんだもん!」
「なんでそんな格好でコタツにまで入って寒いのよ!」

コタツに入りながら猫みたいに丸まってミキは寒さに震えていた。
そんなミキを呆れた目で見ている亜弥ちゃん。

・・・っていうか、


「・・・なんで、そんな格好で亜弥ちゃんは寒くないわけ?」

風呂あがりな為か、亜弥ちゃんは半そでのシャツを着て頭をガシガシと拭いている。


「寒くないわけ?って・・・たん、あんたも一緒にお風呂入っていたのになんでもう寒がってんのよ?」
「・・・うるさい。お風呂の後は部屋の空気の温度差で余計寒くなるんだい」
「ふは!なにそれ?」

子どものように口を尖らすミキを亜弥ちゃんは可笑しそうに見ている。


659 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:05


「あはは」
「もう、笑うなぁ」
「だって・・あはは」
「たくっ・・・あれ?亜弥ちゃん、そのシャツ・・・」
「ん?気づいた?」

ミキが指したシャツを亜弥ちゃんは親指と人差し指で軽く摘んだ。


「そっ。だれかさんからの二ヶ月遅れの誕生日プレゼント」

そう言うと、亜弥ちゃんは意地悪そうに笑った。


「・・・まだ根に持って・・・」
「なに?」
「なんでも。っていうか、ミキそのシャツ以外に長袖のシャツもあげたと思うんだけど」
「あれはまだ着てない」
「なんで?」
「だって、みきたんにこのシャツ着てるのまだ見せて無かったし」

そう言って、亜弥ちゃんはキッチンへと向かった。
多分、飲み物を取りに行ったのだろう。


「・・・そうだっけ?」
「そうだよ。だってあたしがこれ貰ってからみきたんの家に泊まりに来たのって今日が初めてだし」
「そう・・・?」
「うん」

冷蔵庫の中を物色しながら亜弥ちゃんが答える。
そうだったかなと、ミキは思い出しながら彼女を見ていた。


660 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:06


白い、半そでのシャツと長袖のシャツ。

それをミキは彼女の誕生日の二ヵ月後に誕生日プレゼントとしてあげた。
もちろん、それはおまけみたいなもの。ちゃんとしたものは亜弥ちゃんがリクエストしたものをあげた。

なんで、おまけみたいに二枚のシャツをあげたかと言うと・・・


「・・・付き合ってもう一年は経つんだよね」

彼女には聞こえないくらいに呟く。


それは、ミキだけの秘密のおまじない。


冬がはじまるころに付き合いだしたふたりが、

今年の冬も、

ずっとその先も。


ずっと一緒に過ごせるためのおまじない。


661 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:06


「そういえばさ、」
「ん?」
「北海道って、もう雪とか降ってるのかな?」
「さあ?まだじゃないかな。だって最近になってから、冬らしく寒くなってきたし」
「そっかぁ・・・でも北海道の雪っていいよねぇ」
「・・・・」

そう言って、亜弥ちゃんは羨ましい声を出しながらまだ、冷蔵庫の中を物色していた。

・・なにをそんなに迷ってるんだか。

彼女の横顔を見ながら、一年前を思い出す。


亜弥ちゃんとは高1のときに知り合った。
部活の後輩と先輩の関係。
ミキの学校は中高のエスカレーター式で、よく後輩の指導の一環として中学にバレーを教えに行っていた。その時に彼女と知り合った。

何をどう懐かれたのか、亜弥ちゃんはミキのことを気に入ったようで。中学と高校の校舎が隣同士ということもあって、時間さえあればよくミキのところへ来ていた。

ミキも可愛い後輩が懐くのは悪い気はしなかったし、だから亜弥ちゃんはミキの後輩の中では一番、可愛がっていた。

そして、そんな先輩、後輩の関係が3年続いてミキも高校を卒業する年になった時、亜弥ちゃんから告白されて付き合うようになった。


662 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:07


「みきたん、明日の大学は何時から?」
「へ?」
「大学」

亜弥ちゃんが冷蔵庫のドアから顔を出しながら聞いてくる。


「明日は午後から。だから午前中はゆっくり出来るけど?」
「やった!じゃあ今日は遅くまで起きても大丈夫だね?」
「まあ・・・」
「えへへ」
「・・・・」

ミキの返答に亜弥ちゃんは嬉しそうに笑った。
可愛いなぁと正直に思う。

今日みたいに、夜も冷え込む日が続くような冬がはじまる季節の日に、ミキは亜弥ちゃんから告白された。
正直戸惑った。だって、可愛い後輩としてしか見ていなかったから。
でも、ミキの前で顔を真っ赤にしながら泣きそうになっている亜弥ちゃんを見て、自分の気持ちに気づいた。

彼女の泣き顔なんて見たくないなって・・・それより笑った顔を見せて欲しい。

そう思ったら、彼女を抱きしめて告白を受けていた。


「そんなに嬉しい?」
「えー?だってさぁ・・・」

冷蔵庫から飲み物を取り出し、こっちに来る亜弥ちゃんに尋ねる。

・・・っていうか、松浦さん。その手に持っているものは・・・何?


663 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:09


「松浦さん。その手にあるものは?」
「なにって・・・・・・・ビール?」
「ば!?・・・あんた未成年でしょうが!何お酒なんて持ってきてるの!」
「いいじゃん。高校生でも飲んでいる人いるんだし」
「そういう問題じゃない!・・て、開けて飲もうとするな!」

ミキの言葉などお構いなく缶のプルタブを開けようとする亜弥ちゃんからお酒を取り上げる。そんなミキを亜弥ちゃんは恨めしそうに見る。


「・・・たんだって飲むくせに」
「あたしはもう二十歳になったから飲んでもいいの!」
「・・・ケチ」
「はぁ!?」
「いいもーん。たんが居ない時に隠れて飲むから」
「・・・亜弥ちゃん」
「・・・・ウソです、ごめんなさい」

たく、何てこと言うんだこの子は。
はあ・・亜弥ちゃんとはもう4年以上の付き合いになるけど、まさかお酒が飲める子だったなんて。

4年の付き合いだからそれなりに相手のことを分かっているつもりだけど、未だにミキは亜弥ちゃんについてよく知らないようだ。


664 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:10


「あーあ、早く大人にいなりた・・・・たん、目がこあい・・・」

・・・まだ言うか。

ミキが睨んでいるせいか亜弥ちゃんは渋々、冷えた紅茶のペットボトルを冷蔵庫から取り出した。その間もミキの手には冷えた缶ビールが開けられずに収められている。
温くなった体をコタツから抜け出し、そのビールを冷蔵庫に戻すには少しだけ億劫になったミキはそのまま、プルタブへと手をかけた。


プシュっ

開けた缶ビールからは炭酸が抜け出る音が聞こえた。
その音を聞きながら、一口、飲み込む。
炭酸が喉を潤し、爽快感が生まれる。


「・・・・・亜弥ちゃん、そんな羨ましそうに見ないでよ」
「・・・・たんのケチィ。一口くらい飲ましてもいいのに」
「だから、あんたまだ未成年でしょうが!」

まだしつこく食らいついてくる亜弥ちゃんにキレのいい正論を食らわす。だけど、亜弥ちゃんは気にせずにこっちを見てくる。

・・・っぐ、いつのまにこんな悪い子になったんだ・・・?


「・・・一口だけだよ?」
「やた!たん、ありがとう」

ミキはとうとう、視線に耐えられずに缶ビールを渡した。


665 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:11


「・・ん・・・・」
「・・・・・」

嬉しそうにビールを飲む横顔を見る。

飲みっぷりいいなぁ・・・

「・・ぷはぁ!・・おいしー!みきたん、ありがとう!」
「・・・ん」

お酒を飲む彼女を初めて見るけど、美味しそうに飲んでいる。
最後は、オヤジくさかったけどその顔も可愛いなと不覚にも思ってしまった。
付き合ってから色んな彼女の顔を見てきたつもりだけど、どうやらミキはまだ、彼女の全部を見せてもらってはいないようだ。
ミキを見ながらはにかむ彼女にドキドキしながら、亜弥ちゃんからビールを受け取ると、それを一口、口に含んだ。


「まったく。ビールなんて、どっからそんなこと覚えたのよ?」
「ん?・・中澤さん」
「・・・・はあ!?」

今、なんつった?

中澤さん?

中澤さんって、ミキがバイトしているケーキ屋さんの店長の?

あの中澤さん?


666 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:11


「なんで亜弥ちゃんの口から中澤さんの名前が出るの?」
「だって、メル友だし」
「・・・なにそれ?聞いてないけど」
「だって、この前食事に誘われたときにメルアド交換したから」
「はあ!?・・食事っていつ?っていうかそんなしょっ中、会ってるわけ?」
「んーと、確か・・・」

なんて言いながら指を折り曲げる亜弥ちゃん。
っていうか、そんな何回も食事してるなんて聞いてないし。
それどころかメル友なんて今、知ったし。

ヒトが一生懸命、バイトに励んでいるときに・・・・

亜弥ちゃんの無邪気な顔で指を数えるその姿にムカムカと腹が立ってきた。

あまりにムカッ腹が立って、思わず手に持っているビールを一気に飲み干す。
すると当然、一気に流し込んだアルコールにミキの体は熱くなる。


「ちょ!?みきたん、顔が真っ赤だよ?大丈夫?」
「んー?」

アルコールを一気に体の中にいれたミキの顔は勢いよく真っ赤な色へと染まった。
そのミキの顔を見て亜弥ちゃんは慌ててミキの前に駆け寄った。


667 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:15


「・・・何だよう。ミキが必死にバイト頑張ってるときに・・・しかも中澤さんと・・・」
「へ?そんなこと・・きゃ!?」

ミキの元へと駆け寄ってきた亜弥ちゃんを腕の中に閉じ込める。


「去年のクリスマスはミキ、受験で亜弥ちゃんと過ごせなかったから今年はクリスマスプレゼントも兼ねて、冬休みに入ったらどっか旅行にでも行こうと思ったのにぃ・・・」
「・・・え?」
「その為に、時間も惜しんでバイトしてるのにぃ・・」
「みきたん・・」

腕に閉じ込めた亜弥ちゃんを子どものように拗ねながら更にミキは強く抱きしめた。
亜弥ちゃんも、おずおずとミキの背中へと手を回す。


「もう、亜弥ちゃんはミキなんかいらないんだぁ」
「そんなことないってば」
「じゃあ、なんで中澤さんと食事にいくんだよぅ」

駄々っ子のように亜弥ちゃんにしがみつくミキに、亜弥ちゃんはミキ以上に甘い声で、


「それはぁ・・・」

なんて、言いながらミキの首筋へと顔を寄せてくる。

・・・ちくしょう、可愛すぎだぞ!!


668 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:16


一気にお酒を飲んでしまったみきたんは、それだけで酔ってしまったようで、可愛い声を出しながらあたしを強く抱きしめた。

そんなみきたんが可愛くて、あたしも嬉しくてみきたんの背中へと腕を回した。


「えへへ、みきたんからのヤキモチだぁ」
「なんだよう。みきがヤキモチやいたら駄目なわけ?」
「んーん・・そうじゃなくてメチャクチャ嬉しい」

だって、久しぶりの甘い雰囲気。

最近、バイトばかり入れてるみきたんに不満を感じてはいたものの、その理由があたしとのクリスマスの為だと分かったら怒るどころか、嬉しいに決まってんでしょ?!
しかも、中澤さんにヤキモチやいちゃって。

・・・あー!もうみきたん可愛すぎ!!!


「・・・・」
「みきたん?」

嬉しくて、みきたんの首筋に犬のように擦り寄っていたら、たんが何も言わなくなってしまった。
黙っているみきたんを見上げたらトロンとした目であたしを見ていた。


669 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:17


「みきた・・・」
「あーもう!亜弥ちゃん可愛いすぎ!」
「ふえ?・・・きゃ!?ちょっ!待ってみきたん!」
「やだ!」

大声で叫んだかと思えばみきたんからキスの嵐。
ホッペやオデコ。顔のあちこちにキスをされる。


「亜弥ちゃん・・・」
「え?・・・あ・・ん・・」

優しい目で見つめられ、そっと甘い唇付けをしてくる。
彼女の口からは、さっき一気に飲んだアルコールの匂いがするけど、それさえも甘い吐息で掻き消される。


「ん・・・はあ・・あ・・・みきたん・・」

彼女の吐息を首筋に感じる。
優しく、そこに何度もキスをされる。


「ん・・・・みき・・たん・・?」

顔を首筋へと移動した彼女が動きをぴたりと止める。
声を掛けるけど返事はナシ。


670 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:18


「え・・・・?・・・寝ちゃったの・・・?」

顔を覗き込むとスヤスヤと寝息を立てる彼女の横顔。
その顔に、がっくりと力が抜ける。


「もう!みきたんの馬鹿!ヒトをその気にさせて途中で寝るなぁ!!」

耳元で叫ぶが起きる気配は無い。
仕方なくあたしは、そこから抜け出しベッドから毛布を持ってくる。


「あーあ、せっかく中澤さんからアドバイス受けたのに・・・たんのばか」
「・・・ん」
「・・・・・」

気持ち良さそうに眠る彼女に今さらボヤいても仕方が無い。

最近バイトが忙しくて全然会えなかったあたしは、みきたんのバイト先の中澤さんに相談をしていた。どうしたら、たんをその気にさせることが出来るか・・と。


「だから、慣れないお酒も飲めるように頑張ったのにぃ・・」
「んー・・亜弥ちゃん・・」
「もう!」

付き合って一年経つけど、相変わらずキス止まりのあたしたち。
一年の記念にそろそろ、次の段階へ・・と考えているあたしに中澤さんが色々とアドバイスをくれた。

さっきのお酒もメル友っていうのも、みんな中澤さんの受け入り。
メル友にヤキモチをやいたみきたんがお酒を飲めば、勢いであたしに迫るかなと思って、一芝居打ったのに・・・


671 名前:冬がはじまるよ 投稿日:2005/12/21(水) 00:19


「なーんで、ビール一本で酔いつぶれるのよ」
「んー・・・」

まさか、みきたんがここまでお酒に弱かったなんて計算外。
みきたんの眉間をグリグリと指で押す。


「はあ・・・でもいっか。思いがけないみきたんの気持ちも聞けたし」

ぐりぐりとした指をどけて、頭を撫でるとみきたんが笑った。


「あー可愛いすぎ!みきたん、好き!」

そう言って、寝ている彼女に抱きつく。

「ん・・・亜弥ちゃん」

寝ているはずのみきたんがあたしを抱きしめた。
寝ている時でさえ、あたしを求めてくるみきたんに嬉しさを感じきれない。


「二人の中は進展できなかったけど、今日はこれでかんべんしてあげる。・・・クリスマスは楽しみにしているからね。・・・みきたん?」


寝ている彼女にキスをする。

二度目の二人の冬がはじまる夜。寝ているみきたんに囁き、彼女の温もりを感じながらあたしは静かに目を閉じた。





                        END



672 名前:k 投稿日:2005/12/21(水) 00:22


短編、終了

結構、前に書いたやつです。
ホントは新しくたてたスレに載せたかったのですが、
まだ終わっていないものの途中に書くのは嫌だったんで、こちらに載せました。


656>>名無飼育さま

書き込み、ありがとございます。
ここのスレは容量がいっぱいになったので、新しいのを立てたのですが、
まだ少しだけ容量が余っているので、短編をかきました。読んでくれたら嬉しいです。


まだ容量があるみたいなので、こちらでは短編などを載せて再利用したいと思います。



・・・それでは、失礼します。



673 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/21(水) 09:34
甘い・・・。
最高ですっ!!!
674 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 13:54
可愛いー!!
何寝てるの藤本さんっ!早く起きてー!!松浦さんがー!!
お酒弱い藤本さん可愛いです。
675 名前: 投稿日:2005/12/27(火) 00:47

短編です。
676 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:47


彼女とのデートが急に駄目になって、家の中でゴロゴロしているのも嫌だったから、気晴らしに外にでた。


「・・・あ、亜弥ちゃん」

気晴らしに出かけた帰りのコンビニでほんの少し、前を歩いている彼女を見かけた。


「こんなところで会うなんて、やっぱりミキと亜弥ちゃんってば運命だね」

なんて、彼女に会えた嬉しさでさっきまで沈んでいた気分が浮いてくる。

677 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:48


彼女は普段はあまり着ないような服装で。

多分、会ったばかりの頃のミキじゃ気づかないくらい。

彼女の服装はオシャレというよりは変装に近いような格好だった。


「・・・どこ行くのかな?」

急な仕事が入って、デートが駄目になったと彼女は言っていた。


「・・後をつけてみようか?」

ほんの少し芽生えた悪戯心。

678 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:48


白いシャツに黒のジャケットとジーンズ。それに、顔を隠すための帽子。
被っていた帽子を目深に被り直し、いざ尾行開始。


「・・・へへ、なんかスパイになった気分」

気分はまるで映画に出てくるスパイってところ。
芽生えた悪戯心に、子どもに返ったような感覚に陥る。


「さて、ターゲットは・・・」


少しだけ遠くを歩く彼女の後をつける。


679 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:49


「・・・・」

前を歩く彼女。
ミキが後ろにいるなんて気づいてもいない。

偶然見かけたとき、不安になった。
だって、仕事のはずの彼女がこんなところにいるんだもん。

もしかして、ミキ以外のヒトと・・・

なんて、思ったりしたし。
でも、ミキはそんな考えをすぐに消した。


「亜弥ちゃんに限ってそんなことあるわけない」

そう、だって信じてる。

彼女のこと。

二人で過ごした時間が、そんな簡単に崩れるなんてあるわけない。

680 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:50


「・・ほんと、どこ行くんだろう?」

つけてから、そんなに歩いていないけど彼女が向かっているところはどう見ても、仕事とは関係ないところ。


「愛ちゃんと待ち合わせしてるのかな?」

彼女の親友の愛ちゃんを思い出す。

よく、彼女は愛ちゃんの相談にのっていた。


「きっと今日も相談されて、それでミキには仕事だって言って愛ちゃんの相談に乗ってるのかも」

単純なミキはそう考えていた。


「・・今度、会った時に愛ちゃんと会っていたんでしょ?なんて、言ったらびっくりするかな?」

驚き顔の彼女を思い浮かべ、一人にやける。


681 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:50


待ち合わせの場所らしいところに着いた彼女は、誰かを探している模様。


「・・はあ・・ミキってば馬鹿みたい。後なんかつけても面白いものなんて無いのに。・・・家に帰って、借りてきたビデオでも見ようっと」

最後まで尾行することも出来ない役立たずのスパイは、自分がしていることが馬鹿らしくなって、家に帰ろうとした。


「・・・だいたい、もう少し自分の彼女を信用・・・」

自分の行動が馬鹿らしくて、家に帰ろうとしたミキの目があるものに止まる。


それは、辺りを気にしながら黒い高級車にまで近づく彼女の姿。

682 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:51


「・・・うそ・・でしょ?・・・」

彼女が近づく高級車から、スーツを着た男のヒトが手をあげた。


「・・・・」

嫌な鼓動をあげて、心臓が急スピードで高鳴りだす。
それが的中するかのように、彼女はゆっくりと男のヒトに近づき、周りを気にしながらキスをした。


「・・・はは・・・まじ・・?」

・・・シャレになんない。夢なら覚めてよ。

目の前で起きた出来事に眩暈を覚えた。
高級車は乗り込んだ彼女を乗せてどこかへと走り出した。

その間、ずっとその場所を見つめていた。

683 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:51


あの後、どうやって帰ってきたのかほとんど覚えていない。


「・・・・」

大して重くも無い家のドアを、力なく開けると鍵を閉めた。
借りてきた荷物とコンビニで買ったものをテーブルに置き、近くのソファへと座った。


喪失感

脱力感

どちらにも似て、全然違うものがミキの肩にのしかかる。


「・・・真実って、こんな簡単に分かるもので、重いんだ・・」

口に出したとたん、肩にのしかかっていたもの(真実)が重みをました。

684 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:52


「真実がこんなに辛いなんて・・・」

ミキはスパイ失格だ。
真実を知るのがこんなにも辛いものなんて・・・


「こんなに辛いなら、ミキはスパイになれないな・・・」

自虐的なことを言葉にして気持ちを軽くしてみる。

でも、口にしたところで真実を変えることも、気持ちを軽くすることも出来ない。

どうせなら、悪い夢だと覚めて欲しいと思う。

685 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:53

「・・・亜弥ちゃん、どうして・・・」

今まで過ごしてきた彼女の笑顔を思い出す。


『 みきたんは、あたしのこと好き? 』
『 ・・なに、突然? 』
『 いいから、答えて 』
『 ・・・好きだよ 』
『 あたしも、みきたんが世界で一番好き。他のヒトなんて目に入らないくらい。みきたんがいれば、それだけで幸せだよ? 』

嬉しそうに笑いながら答えてくれたのに・・・・


「・・全部、ウソだったの・・?」

静かに、目から涙がこぼれた。


686 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:53


信じてる。

亜弥ちゃんのこと、全部。

何があっても、信じてる。

でも・・・


「亜弥ちゃんが欲しいものって、何だったの・・?」

ウソをついてまで、みきといるのが亜弥ちゃんにとっては幸せだったの?


目からは、大量の涙が溢れてきて、あしたの仕事のことなんて気にもせずに泣き明かした。


687 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:54


目を開けると外は薄っすらと明るくなっていて、いつの間にか自分が寝てしまったんだということに気づく。


洗面台に立って、顔を覗き込む。
泣きはらした目が腫れている。


「・・・夢じゃなかったんだ・・」

腫れた目に昨日のことは夢じゃないんだと思い出す。


「・・・ひどい顔・・」

自分の顔を見て、苦笑い。

顔を覗き込んでいると、メールの着信音が鳴り響いた。


688 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:54


部屋に鳴り響いている携帯を手に取って、メールを見る。


『  おはよう。昨日はごめんね。
   今日は早く終わるから、仕事が終わったら
   そっちにいくね
                     亜弥    』

メールを見て、閉じる。
一昨日までなら喜んでいたメールだけど、今は沈む気分にさせる。


「・・・・」

悩んだ末、彼女に返信をする。

『 待っている 』

返事を返すと、携帯をベッドに放り投げた。


689 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:55


きっとミキは今日、彼女に別れを告げるだろう。

昨日のことを話しながら・・・



でもさ、亜弥ちゃん。

これだけは覚えておいてよ。

ミキは亜弥ちゃんが好きだった。

たとえ、亜弥ちゃんの愛情がウソだったとしても。

そんなウソが見抜けないくらい、好きだったんだ。

だから、亜弥ちゃん。

覚えておいて。


690 名前:SPY 投稿日:2005/12/27(火) 00:56


「ミキは亜弥ちゃんのこと、ずっと好きでいる自信があるから」

だから、忘れないで、覚えていて。

ミキが亜弥ちゃんのこと、好きだったっていうことを。

そして・・・

いつか、ほんの一瞬でもいいから思い出してよ。




ウソも見抜けなかった間抜けなスパイがいたってことを。





                          END


691 名前: 投稿日:2005/12/27(火) 00:57


短編、終了。

これも前に書いていたものです。
前回と違って甘くはないですが、これもあやみきというこでw


672>>名無飼育さま

ありがとうございます。
ホントなら時期を合わせてから載せたかったのですが、間に合いませんでしたw


674>>名無飼育さま

ありがとうございます。
お酒に弱い藤本さん。何となく、藤本さんは酔ったら甘えたがるかなと思って、こう書きました。


・・・それでは、失礼します。

692 名前:タケ 投稿日:2005/12/27(火) 22:02
すっごい切ない
でも最後のほうの言葉は一つ一つ心に染みました!
次回はぜひ甘甘なヤツお願いします
693 名前:ケロポン 投稿日:2005/12/28(水) 22:17
まっきーシリーズですね!なるほど美貴亜弥でこうもしっくりくるとは…さすがです(笑)次の更新も楽しみに待ってます!
694 名前:k 投稿日:2005/12/30(金) 01:22

短編です
695 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:24

「みきたんのばか!」

大きな音と共に亜弥ちゃんは楽屋を出て行った。
ミキはワケが分からないまま、叩かれた右頬を押さえていた。


「ミキティ、あややに何したんだよ」
「何って、別にミキは何も・・・」
「んあ・・でも、あの様子からして怒っていたじゃん」
「だから、ミキは何もしてないってば」
「ホントに?美貴ちゃんが知らないだけで、亜弥ちゃんに何かしたんじゃないの?」
「だから、ミキは何もしてないって!・・・・・なんで、ごっちんと梨華ちゃんが娘。の楽屋にいるの?」

何度も同じことを聞かれて切れそうになったミキはあることに気づく。

696 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:26

「娘。の楽屋に亜弥ちゃんが遊びに来ていたから、亜弥ちゃんがいるのは知っていたけど、なんで、もう娘。じゃないごっちんと梨華ちゃんがいるのさ?」
「「え?なんでって大晦日の仕事が終わったあとの打ち上げの相談しに来たにきまってるでしょ」」
「でしょって、そんな声揃えられても」

綺麗にハモッタ二人に呆れつつよっちゃんのほうを見てみる。
ミキの視線に気づいたのか、よっちゃんはニコっと笑った。

・・・いや、笑ってないでミキの質問に答えてよ。


さっきから誰ひとり、ミキの話に耳を向けていないことに嫌になってきた。

697 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:27

「何人かのメンバーと今年最後の仕事が終わったら飲み会しようって、計画していて、それで、吉澤さんと後藤さんと石川さんが幹事をすることになって、今、お二人が空き時間にその相談をしにいらしたんですよ」
「そうなんだ。ありがとう紺ちゃん」
「完璧です」

ミキをよそに盛り上がっている三人にドス黒い睨みを利かそうとスタンバっていると、紺ちゃんがそっと、教えてくれた。

うん、紺ちゃんはいい子だね。

と、頭をナデナデしていたミキだけど、話が全然、進んでいないことに気づく。

698 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:27

「梨華ちゃんとごっちんがいる理由は分かったけど、亜弥ちゃんの問題は解決してないじゃん」
「「「あ、そうだったね」」」
「・・お前ら」

やっと、騒ぎの元である話に戻ったっていうのに、三人はのん気な返事をする。
ここで切れて暴れたら、意味がないので大人なミキは心を落ち着かせて話を戻した。


「そういや、ミキティとあややは何の話をしてたわけ?」
「え?」
「んあ、そうだね。話の途中であややが怒ったってことは、それが原因かもしれないわけだ」
「何の話って・・・別に、大晦日の後の話をしていて・・」
「大晦日の後?」

梨華ちゃんが首を斜めにして聞いてくる。

699 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:28

そう、ミキはただ亜弥ちゃんと大晦日の日のことを話していただけ。
さっき紺ちゃんが言っていたメンバーとの飲み会に参加するってことを話していたら、突然亜弥ちゃんの顔が不機嫌になってきて、それで・・・

「それで、ミキティはあややになんて言ったのさ?」
「だから、亜弥ちゃんはまだ仕事があるんだよね。ならミキは先に皆と楽しんでおくからって・・そしたら急にホッペを叩かれた」

そう言って、ミキは叩かれた頬を押さえた。

そんなミキを三人がジーと見ていたかと思えば顔を見合わせて、

「「「なんだ。じゃあやっぱりそっちに原因があったんだ」」」
「・・・・・」

なんて、また声を揃えてハモリやがった。

700 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:29

「だから、なんでミキが悪いわけ?」
「なんでって・・」
「美貴ちゃん、駄目じゃない。可愛い彼女にそんなこと言っちゃ」
「んあ、そうだよ、ミキティ。一人寂しく仕事をするあややにそんなこと言っちゃ」
「だから・・・て、ちょっと待って。なんで亜弥ちゃんがミキの彼女になるわけ?」
「「「違うの?」」」
「・・だから、三人でハモルな。・・・そうだよ、亜弥ちゃんとは仲がいいだけで、別に付き合っているとか・・」
「「「・・・・」」」

なんだ、その目は。
なんで三人揃って、ミキを哀れむような目で見る。
701 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:30

「ねえ、ミキティそれ本気で思ってるわけ?」
「本気って・・」
「返答しだいじゃ・・・怒るよ?」
「な、なんでミキが怒られるわけ!?」
「いいから、あややのことどう思ってるわけ?」
「・・・・」

ごっちんの言葉に押し黙ってしまう。

亜弥ちゃんのことどう思っているかなんて・・・考えたことがないって言ったらウソになるけど・・

「ミキティ、素直にならないとあやや、愛想つかして他の人の所にいくよ?それでもいいの?」
「・・・・・」

よっちゃんがごっちんの右横から言う。

「そうよ、美貴ちゃん。お互い気にし合っていること分かっているくせに、見ないふりしてたら、亜弥ちゃんも美貴ちゃんのこと信じられなくなるよ」
「・・・・」

今度は梨華ちゃんが左横から言ってくる。

まったく、三人揃って何だって言うんだよ。

702 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:30

「・・・・・・」
「「ミキティ!」」
「美貴ちゃん!」

ミキは何も言わずに楽屋を出ようとした。
そんなミキに三人が呼び止める。

「・・・言われなくても、そんくらいミキだって分かってるよ」

三人に捨て台詞を吐いて、楽屋を飛び出した。

「はあ・・・世話が焼ける末っ子だな」
「んあ、あれで娘。の中では一番年上だからタチがわるいね」
「でも、そんな妹たちが上手くいってほしいのがお姉ちゃんたちの役目だしね?」

そう言って、梨華ちゃんが二人にニコりと微笑む。
二人も同じように笑い返して。

「「当然でしょ」」

とまた、ハモッタ。


703 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:31

「たくっ・・・どこにいるんだよ」

楽屋を出て行った亜弥ちゃんを探すけど、見つからない。
心当たりがあるところはほとんど探した。

「残っているのは・・・・」

ミキは上へと続く階段を見上げた。
704 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:32
もう、みきたんのばか。なんでいつもあんな言い方しか出来ないのよ。

あたしは娘。の楽屋を出たあと、真っ先に屋上へと向かった。

『ミキは他の子と遊んでおくから、亜弥ちゃんも大晦日楽しんできなよ』

さっきみきたんに言われた言葉を思い出し、また腹が立ってきた。

「いくら、照れ屋で不器用だからって、あんな言い方しなくてもいいじゃない」

大晦日。仕事が終わったら一緒に過ごそうと彼女を誘ったのに、それをあんな言い方されたんじゃあ、誰だって傷つく。
705 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:33

「・・・みきたんは、やっぱりあたしのことは親友としか・・見てないの?」

屋上から見える景色に呟く。

知り合ってから、すぐに好きになったみきたん。
あたしなりに好きのアプローチをしてきたつもりなのに、みきたんはそれをはぐらかしてばかり。

みきたんの気持ちを知りたくて、素っ気無い態度をとったりしたこともあった。
そんな時は彼女のほうから近づいてきてくれたけど、ただそれだけで、決定的なことは何も言わない。
706 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:33

「はあ・・なんか、手綱がない綱引きをしてるみたい・・」

手綱を強く引いたり、緩めたり、相手がどうでるか出方を見合っていて、全然勝負がつかない。だからいつまでたっても、どちらかに近づくなんてことがない。

「・・・・みきたんのばぁか」
「馬鹿で悪かったね」
「え・・?」

後ろから聞こえた声に振り向く。
そこには、苦笑いをしながらみきたんが立っていた。
707 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:34

エレベータが降りてくるのが待ちきれなくて、ミキは非常階段を駆け上った。


『素直にならないとあやや、誰かに取られるよ?』

「・・・・」

分かってる。自分が意地になって曖昧な態度を取っていたことくらい。
居心地が良かったんだよ。亜弥ちゃんの気持ちが・・・

みきのことを真っ直ぐに見つめてくる亜弥ちゃんの目がくすぐったくて、居心地がよくて・・・でも、だからその分、怖かった。

ミキの中であやちゃんの度合いが増してきて。
708 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:34

『幸せにしてあげたい』

なんて、いつも心の中では思っていても、それをどういう風にすればいいかなんて具体的なことは分かんなくて・・・

『ねえ、みきたん、いつも一緒にいれたらいいね?』

ぶつけてくる気持ちがあまりに純粋すぎて、それをどう返したらいいか分かんなくて・・
そう思ったら曖昧な態度しか取れなくなっていた。
709 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:35

「はあ・・はあ・・着いた」

屋上に着くと彼女を探す。

「・・亜弥ちゃん」

ミキに脊を向け、屋上にたつ彼女を見つける。
後ろ姿の彼女はどこか寂しそうで、その原因がミキにあるのかと思うと心が痛んだ。
710 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:36

「・・・みきたんは、やっぱりあたしのことは親友としか・・見てないの?」

そんなわけない。親友なんて言葉じゃ言い表せないくらい、亜弥ちゃんのこと大切に想ってる。

「はあ・・なんか、手綱がない綱引きをしてるみたい・・」

はは、確かに。中々勝負がつかないみたいだけど、でももう終わりにしようか?

「・・・・みきたんのばぁか」
「馬鹿で悪かったね」
「え・・?」

ミキが近づいていることにまったく気づかない彼女に苦笑いをしながら、ミキは亜弥ちゃんへ話しかけた。
711 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:36

「な・・なんでいるの?」
「ミキがいたら駄目なの?」
「・・・・」

あ・・・やばい。また意地悪な態度を取ってしまった。
急に現れたミキに困惑している亜弥ちゃんの横にそっと並ぶ。

ミキが来ても逃げなかった彼女にほっとしつつ、ミキはポケットに入っている箱を握り締めた。
712 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:37

「亜弥ちゃん」
「な、なに?」
「・・・・」

まだビクついている彼女に苦笑いを零して、ミキは心の中で深呼吸を一つした。



「好きです。ミキと付き合ってください」


713 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:37

精一杯の気持ちを込めて、彼女に告白する。

「・・・・・」
「・・・亜弥ちゃん?」
「・・・き・・?」
「へ?」
「本気で言ってるの?」
「こんなこと冗談で言えるほどミキは軽くないよ」
「・・・み、きたん」
「・・・返事は?」

涙ぐんでいる彼女が可愛くて、抱きしめたい気持ちになったけどそれを我慢して返事がくるのを待つ。
714 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:39

「そんなの、分かってるでしょ?」
「言ってくれなきゃわかんない」
「いつも言ってるのにはぐらかしていたのはみきたんでしょ?」
「それを言われたら何も言えないけど、・・・でも、もう一度聞きたい。亜弥ちゃんの気持ち」

ずるいかなって思ったけど、ミキはあえて亜弥ちゃんに聞いてみた。

「そんなの、あたしも好きに決まってるでしょ!」

そう言って、亜弥ちゃんはミキに飛びついてきた。
715 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:40

「バカみきたん!」
「ごめん」
「なんで、もっと早く言わないわけ!?」
「だから、ごめんってば」
「大体、みきたんはいつも・・ん」

ミキにしがみついて、耳元でキャンキャン吠えている亜弥ちゃん。
あまりにウルサイから、その口を塞いでやった。
716 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:41

「・・・ごめんね?」
「・・・・許す」

唇を離して、もう一度謝ると今度は大人しくなった。

「大晦日は何時に終わりそう?」
「え?」
「亜弥ちゃんが終わるころに迎えにくるよ」
「でも、みきたん皆と飲みに行くんでしょ?」
「亜弥ちゃんが終わるまではね。でも、飲まずに待っているから・・亜弥ちゃんが仕事終ったあとに、一緒に初詣にでも行こうよ」
「・・・・」

今まで、素っ気無い態度を取った分、素直な気持ちで亜弥ちゃんに接してみる。
だけど、亜弥ちゃんはそんなミキを信じられないものを見たような顔で見ている。

・・・なんだ、ミキは素直になったらそんなに変なのか?
717 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:41

「みきたん、無理してない」
「してない」
「だって、すごい優しいし・・」
「・・・嫌ならいいよ」
「もう、拗ねないでよ」
「別に拗ねてない」

拗ねているくせに、子どもみたいに口を尖らして亜弥ちゃんにソッポ向く。

「にゃは、みきたん可愛い」
「うわ!?」

だけど、亜弥ちゃんはそんなミキにお構いなしに抱きついてくる。
718 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:42

「みきたん、だぁいすき!」
「はいはい」

あやちゃんの気持ちを込めたハグにミキも少しばかり応える。

亜弥ちゃんの体からはチョコレートみたいな甘い匂いがした。

「あ・・・そうだ。忘れるとことだった」

まだ抱きついている亜弥ちゃんを引き剥がしてポケットにある箱を取り出す。

「・・・みきたん?」

亜弥ちゃんはそんなミキを不思議そうに見ている。

「ホントはクリスマスに渡したかったけど・・」

そう言って、ミキはぶっきら棒に亜弥ちゃんに箱を渡した。
719 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:43

「・・・みきたん、これって・・」

亜弥ちゃんが箱の中を見ると、涙ぐんだ。

「・・・・亜弥ちゃんにあげる」

ミキは顔を真っ赤にしながら箱の中のものを取り出して、亜弥ちゃんのの指にはめて上げた。

亜弥ちゃんの手にはちいさなリング。

亜弥ちゃんに告白するときに渡そうと思って買っておいたリング。でも、意地っ張りなミキはそれを渡せずにずっと持っていた。
720 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:44

「みきたぁぁぁん」

亜弥ちゃんは手にあるリングを見ると、本格的に泣き出した。

「・・・なんで、泣くのさ?」
「だって、だってぇ・・・嬉しいだもん」
「・・喜んでくれたみたいだね」

うわぁぁん、なんて声を出しながら泣いている亜弥ちゃんの背中を抱き寄せながら、ミキは屋上から見える景色に目を寄せた。


このリングには二つの意味を込めている。


一つは、亜弥ちゃんを幸せにしてみせるっていう誓いの意味。

そして、もう一つは・・・

721 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:47


「亜弥ちゃん、世界で一番、幸せな恋をしよう?」


二人がいくつになってもずっと一緒に笑いあっていこう。

お婆ちゃんになった時の亜弥ちゃんの目に出来るシワが、全部、みきたんのせいなんだからねって言われるくらい、ずっとミキの側で笑っていてよ。

もう、みきなんかでいいのかなって、悩んだりしないからさ。


「世界で一番、素敵な恋をして、幸せになろうよ」


それを目標にすれば、きっと二人は大丈夫だよ。




722 名前:NO.1 投稿日:2005/12/30(金) 01:52

亜弥ちゃんはミキの言った意味が分かったのか、すごい幸せそうに微笑んだ。

うん、この笑顔があればきっと大丈夫。

だって、亜弥ちゃんの笑顔はミキにすごいパワーをくれるから。

だから二人はなにがあっても大丈夫。



「 世界で一番、素敵な恋をしよう 」


ミキはもう一度、亜弥ちゃんにキスをして強く抱きしめた。




                           END
723 名前: 投稿日:2005/12/30(金) 01:57

短編終了。

容量が足りないかもって思ったのに、全然大丈夫でしたw


692>>タケさま

ありがとうございます。
今回は甘くしたつもりなので、ぜひ読んでください。


693>>ケロポンさま

よく分かりましたねw
そうです、牧原さんの曲からいくつか短編を書いてみました。
あやみきって意外になんでもいけるなって、書いてて思いましたw


まだ容量があるみたいなので、また短編を書いたらここに載せたいと思いますが、今年の更新は今回で終りたいと思います。


・・・それでは、失礼します。よいお年を・・・


724 名前:タケ 投稿日:2005/12/31(土) 04:01
すばらしい
しょっぱなから甘々じゃなくてこういう一捻りあるストーリーもいいですねぇ!
次も期待してます
725 名前:K 投稿日:2006/01/17(火) 23:20

短編です。
726 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:21


「あー!!もうなんで捕まらないのよ!」

さっきから腰に手を当て、タクシーが来るのを待っているのに全然つかまらない。


「みきたんのやつ・・・・待っていなさいよ」

気持ちはもうすでに殴りこみをかけている。


727 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:22


「あたしというものがいながら・・」

仕事が終わるころに入ってきたバッドなニュース。
それを聞いて、あたしは取るものも取らずに飛び出した。



(;`.∀´)<ちょ!?松浦まだ仕事が!・・
           
          緊急事態なんで帰ります!>(( 从‘ 。‘)

728 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:25


「あたしには残業だっていったくせに・・」

付き合っている恋人が他の子と食事をしているとのメール。
そのメールを見て、今まで我慢していたものが切れた。


「これで、何回目だと思ってるの!?今日こそは動かない証拠みつけてやる!」

携帯を握り締め、腕を高々と上げる。

毎回、おなじことをする恋人のみきたん。
尻が軽いにもほどがある。




―その時の藤本さん


(・ 。.・*从(VvV川 <さあ焼肉だ〜

        (‘ д‘  )<あ!ミキティが浮気しとる。
               のの、あややにメールや!
        ( *´D`)/ <へい!がってんれす!

(0^〜^)<いや、あいぼん。ウチもいるんだけど・・浮気って・・

729 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:26


「だから、なんでタクシーが捕まらないわけ!?こうしている間にもあの馬鹿が・・」

かれこれ、もう十分近くまっているけど、タクシーが一台も通らない。
気持ちは焦る一方。




― その頃の藤本さん


川#VvV)<シゲさんは可愛いねぇ
     (・ 。.・*从<当然です!でも藤本さんに言われると照れちゃいます

(;0^〜^)<・・・ミキティ、ひょっとして酔ってる?
     (VvV#川<そんなことありま千円!   (*・ 。.・*从

(;0^〜^)<寒!ミキティ、あまり調子にのるとあややが・・・

730 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:29


「あー!!!!遅い!寒い!暗すぎる!」

一向に来ないタクシーを待ち続けてもう53分が経過した。しかも、段々空も暗くなって気温が下がりはじめたせいで、夜風が冷たい。


「ちょ!?・・ウソでしょう?!」

しかも、最悪。チラホラと雨が降ってきた。


「もう!これも全部みんな、アホみきたんのせいだー!!」




―その頃の藤本さん


     (´ ヮ`从<カラオケ〜
   (・ 。.・*从 ( ^▽^#)<ハッピー?!!!
(VvV#川<二次会だー!

       (^〜^0;)<ミキティ、いい加減に・・・うるせぇ!!って、
              ・・・何で梨華ちゃんがいるの?しかも人数増えてるし・・
 
 
731 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:30


「はあ・・・お腹すいた」

雨が降ってきたからビルの陰で雨宿り。
それでも、一向にタクシーが来る気配はない。


「・・・なに、してるんだろう。あたし・・・」

浮気モノのみきたんの所に乗り込んで、今日こそは証拠を掴もうとしたはずなのに・・・

タクシーがくるのを待っている間、ずっとイライラしていた。
でも、それと同時に胸もドキドキしていた。

胸騒ぎとかそういうのじゃないけど、みきたんが他の子といるっていうのを聞いてからずっと、鳴り止まない。


732 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:30


「・・・みきたんは、あたしのものなのに・・・」

周りに気を使うみきたんはもてる。しかも、本人にはその気がないのに相手の子とかに優しくするもんだから、向こうから迫られるなんてしょっ中。

その都度、あたしはヤキモチをやいてみきたんに可愛くない姿をみせている。


「・・・ぐす・・・みきたんのばかぁ・・・」


なんだか、急に空しくなってきた。


733 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:31


「・・・帰ろう・・」

急な空しさにイライラもドキドキも収まる。
1時間たっても来ないタクシーを待っている間に馬鹿らしくなってきた。

雨も止んだのでトボトボと家へと帰る。


帰り道でコンビニに寄って、ビールを一本買って行く。


「・・・あ、星が見える」

雨が曇り空を持っていったせいか、星がちらほらと見えた。

734 名前:TAXI 投稿日:2006/01/17(火) 23:35


「・・・・・・」

見上げた星があまりに綺麗に見えたから、なんだかどうでも良くなったきた。

だから・・・


「・・・今日くらいは信じてやるか」

あたしは買ってきたビールを飲んで、大人しく寝ようと思った。




―その頃の藤本さん


みきねぇ、うまか・・>从´ ヮ`)   (VvV#川<恋の浮かれモード・・フォー!!

从*・ 。.・*从(#^▽^#)<きゃー美貴ちゃぁん!
(;0^〜^)<ミキティ、だからあまり調子にのるのは・・





「・・・・やっぱり許すのやめ様かな?」



                  
                      END

735 名前:K 投稿日:2006/01/17(火) 23:37

短編、終了

リンドバーグの『 TAXI 』から短編を書いてみました。
AAって、ズレたりして結構、難しいですねw


724>>タケさま

ありがとうございます。
甘いものを書く時って、なぜか自分の場合はこうなってしまうんですよねw


また、短編を書きあげたら載せたいと思います。


・・・それでは、失礼します。


736 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/15(水) 01:45
次回作期待してます!!
737 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 19:49
待ってますよぉ〜
738 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/21(火) 21:44
リクさせてもらいます。
基本的に自分はベッタベタで甘々なのが好きなのでw


お酒を飲み慣れない藤本さんがメンバーに無理矢理飲まされて
普段ではとてもできないほど松浦さんに甘えてみたりとか、
思ってても口には出さないことをポロッと言っちゃったりして
ふたりの想いの強さを再確認みたいな

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