雪の季節

1 名前:恋唯 投稿日:2004/09/30(木) 20:46
はじめまして。恋唯(こい)といいます。
いっつも読んでばっかりだったんですが思い切って書いてみよう
と思います。
ちゃんとした文章になってるか不安なんですが読んで貰えると
嬉しいです。

2 名前:恋唯 投稿日:2004/09/30(木) 20:47
「さむ…っ!」

12月。
バイトが終わってドアを開けると、ザッと冷たい風が吹き抜けた。

そういや今年は大寒波が来るとかニュースで言ってたっけ。

何気なく空を見上げると灰色の雲が空いっぱいに広がっていた。
「雪、降るかも。」
思わず笑みがこぼれる。

アタシは小さい頃からとりわけ冬が大好きだった。
真っ白ですっごくキレイな、雪の季節だから。
そういえば雪が降るたびに夜遅くまで外で遊んでたなぁ。おっきくなってからは、
そんなことしなくなったけど今でも雪が降ると止むまで外で見てたくなる。
…ってそれじゃぁまだ子供だなぁ、アタシ。
3 名前:恋唯 投稿日:2004/09/30(木) 20:48
ひとり苦笑いを浮かべて歩いてると、フイに鼻の奥がツンと痛んだ。
忘れるワケが無い。この大好きな感覚。
「…雪だぁ…!」
この冬初めての雪が音も無くハラハラと舞い落ちてくる。
アタシはうれしくって思わず走り出しちゃいそうになった。

ザっ、ザっ。ザっ、ザっ。
ほんの少し積もった雪の上を歩く。
ザっ、ザっ。ザっ、ザっ。
この感じも好き。

気が付けば、もうウチのマンションが目の前にあった。
雪のせいで忘れてたけども、かなり寒い。
アタシはポケットから鍵をとりだすと小走りで先を急いだ。

---そしたら、目の前に女の子。
てか、…何も着ないで道端に倒れてるんですけど!?

これってかなりヤバイよね!?
裸の女の子が雪の中、倒れてるなんてそぅとぅヤバイよね!?
事件だよ!事件!!
…ってんなこと言ってる場合かよ!このままじゃこの子死んじゃうじゃん!!

アタシは急いで彼女を抱えあげると、とりあえず自分の部屋に連れて行く事にした。
「ねぇ!どうしたの!?」
雪のように真っ白な肌。
雪のように冷たい肌。
「大丈夫!?」
返事は無い。
あせったアタシはマンションの階段を駆け上がるとクツも脱がずに
彼女をベッドの上に寝かせた。
4 名前:恋唯 投稿日:2004/09/30(木) 20:49
「…んん…」
暖房を最高温度にして何か女の子に着せるものを探してると雪の中に倒れてた
彼女はゆっくりと目を開けた。…そして。
「あっつい!!…窓開けて!!」

はぁ??
5 名前:恋唯 投稿日:2004/09/30(木) 20:52
あ。
タイトルのとこに名前入れたまんまでした;

次回更新は明日になります。遅れたらごめんなさい。
6 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/01(金) 11:49
面白そうな話ですね、期待してます。
更新はそんな焦らんでいいんで……。
7 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/01(金) 21:18
暖房を切った所為で雪のぱらつく外並みに寒いアタシの部屋。

彼女はそれでもあついから何も着ずにこのままでいたいと喚いたんだけども
それは流石にヤバイので(アタシの理性が…)昔使っていたノースリーブの真っ白な
ワンピースを着させた。

「ねぇ、君、名前は?」
「…。わかんないです。」
一瞬沈黙を置いてキョトンとしたように答える。
…こっちがキョトンとしたいんだけど。
自分の名前がわかんないって、…もしかして記憶喪失とか?
―――ありえる。
だってこの子素っ裸で道端に倒れてたんだよ?
誰かに襲われてショックで記憶が飛んじゃったとか。
ついでに身体の温度を感じる部分もおかしくなちゃったとしたら?
ちょい無理やりだけど、考えられなくもない!!
8 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/01(金) 21:19
「あ、あの〜」
「へ?あぁ何?」
「あなたの名前は?」
あぁ、そっか。
目が覚めたら知らない人の部屋にいたんだもんね。自己紹介忘れてた。
「アタシは吉澤ひとみ。土に口って書いて吉…って、んなことどうでもいいな。」
ははって笑ったら彼女も笑顔になった。キレイな子だなぁ。

「―――で、とりあえず君さ、一回家に帰った方がいいんじゃ…」
って自分の名前も分かんないんだ。家がどこにあるなんて覚えてないよね…。
思ったとおり彼女はふるふると首を振った。
きっと行く宛てもないんだろう、下を向いて今にも泣き出しそう。弱ったなぁ…。
9 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/01(金) 21:19
「じゃぁ何か思い出すまでここにいていいよ。な?」
ほっとく訳にはいかないっしょ。
とは言っても年下って結構苦手なんだよな〜。
実際にはそんな年齢変わんないんだろうけど…。

「ホントですか?ありがとうございます。…で、あのぅ私、名前とか…」
「名前?…そっか本当の名前思い出すまで何か付けとこうか。何かと不便だし。」
アタシは、んー。と考えるフリ。
本当は彼女を見た瞬間に勝手に頭の中で考えてた名前があった。
10 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/01(金) 21:20
「…『さゆ』っての、どうかな?」
11 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/01(金) 21:20
これはアタシが小さい頃大好きだった絵本に出てくる雪の国のお姫様の名前。
初雪の日に突然現れた彼女にはぴったりだと思う。
それに彼女は本物のお姫様のようにかわいらしいし。

「『さゆ』…?」
「うん…。…ダメ、かな?」
「いえ!すっごい嬉しいです。さゆ…私の名前…。」
そういうと『さゆ』はとても無邪気に笑った。
その笑顔が半端なくかわいくってアタシはがらにも無くドキドキしてしまう。

「…じゃぁ、さゆ、これからよろしくな?」
「ハイ!よろしくお願いします!!」
―――ってゆーかこの笑顔はマジ反則だと思う…。

それから初雪の日に道端で倒れてた少女(しかも裸で)、さゆと
その子を偶然助けたアタシの、共同生活が始まった。
12 名前:恋唯 投稿日:2004/10/01(金) 21:34
更新しました。

>>6 メカ沢β様
わぁ〜レスされてる!すっごい嬉しいです。
き、期待(滝汗
…がんばります。でも最初なんでホント読み流す程度で見ててくださいw
自分じゃ意味分かってても他人から見たらワケわからん文章になってるかも知れないので…。

なんせ書くほうとしては新人ですんでツッコミなどなど、何かあればご指摘頂けると嬉しいです。
13 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/02(土) 18:15
更新お疲れ様です。
このカップリングははじめて見ました、どちらも推しメンなのでなんだか嬉しいです。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/02(土) 19:29
おおっ!面白そうなのハケーン。
作者さんがんがってくださーい。
15 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:47
アタシがバイトに出てる間、家の事はさゆがやってくれる。料理したり、洗濯したり…。
家に置いてくれてる感謝の気持ちを込めて、だとは思うんだけども、
全部悪意があるようにしか思えない仕上がりようで。
でもそれに慣れた今では今日は何を仕出かしたのかって
家に帰るのがちょっと楽しみにもなってたりする。
まぁ、かなり高かった古着とまっさらのジーンズを一緒に洗われた時は涙がちょびっと
込み上げてきたけども。


そんなこんなで彼女を助けてから数週間後、アタシは一人警察署に来ていた。
10代の女の子に出てる捜索願、被害届けなんかから、さゆらしき人はいないか
探してもらっているのだ。
でも一向にさゆと思しき人物の情報さえも入ってこない。
…さゆ、あんたは何処からやって来たのさ?
16 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:47
アタシが肩を落として家に帰るといつものように笑顔でお出迎え。
さゆはこの寒さの中相変わらずノースリーブですごしている。
1月半ばだというのに暖房もつけずにだ(アタシがつけようとしてもつけさせてくんない…)
「ねぇ、寒くない?」
薄着のさゆを心配しての言葉じゃなく完全防寒の自分に対しての問いかけみたいな言葉。
…だって家の中なのに白い息が出るくらい寒いんだよ?
「うん!全然大丈夫ですよ!」

―――。やっぱこの笑顔はダメだって、マジ。寒さなんてどっか行っちゃう感じ。

「お医者さんも元気な証拠!って言ってたじゃないですか。」
そうなのだ。おかしく思って病院に連れて行っても、どこにも異常が無いと言われる。
身体だけじゃない。脳にも異常なんて無いらしく記憶喪失などではないと言われた。
どの病院に言っても一緒。『異常なし』。
ほんとこの子は不思議だらけな子だ。
17 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:48
「…。さゆ、」
でも早くホントの家に帰りたいよね?
「すぐにお父さんとお母さん見つけてやっかんね。もうちょい待ってて。」
励まそうと言ったつもりなんだけども、さゆの顔に少し哀しい笑顔が浮かんだ。
「吉澤さんごめんなさい。…迷惑かけちゃって。」
あぁ、もう。
その泣きそうな顔も反則。
いちいちドキドキしちゃうあたしがいるよ。
「らしくないよ、そんな顔すんなって。さ、ご飯食べよ!今日は何作ってくれたの?」
18 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:48
さゆはどうしてさっきあんな顔をしたんだろうか。
もしかして両親いないとか?…捜索願も出てないんだし、ありえるかも。
ヤなこと言っちゃったかな…。
それに、さゆはずっとここにいて幸せなの?
一日中家の中にいて、つまんなくないだろうか。
普通なら学校行って帰りに友達と遊びに行ったりする年頃だろうにさぁ…。
19 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:48
アタシはさゆの作った甘いハンバーグをモグモグさせながらすごく不安になった。
「結構おいしくないですか?さゆちゃんスペシャル!」
「…、んん。…そうだね…。」
さゆの幸せとかを考える前にアタシはこの子の天然ぶりを心配しなくちゃな…。
20 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:49
今日も今日でアタシはバイトをしていた。
生活費が倍になったんだ、うちの家計は火の車。
さゆを追い出そうなんて全く思わないが。

今もさゆは一人うちでアタシを待ってんだろうなー。
なんか友達でも出来たら寂しくないのに。
「あ。」
一瞬アタシの脳裏にある二人組みが浮かんだ。
「ダメだって、あのマセガキ共は。」
でもなぁ〜あいつらさゆと同い年くらいなんだよな〜…。

その『あいつら』とはうちのお隣さんのバカップル、亀井絵里と田中れいな。
高校生のくせに同棲なんてしている。
でも表向きは家賃節約のために一緒に住んでる仲良しなお友達同士。
それを理由にされちゃ親たちだってOKせざるを得ない。
21 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:49
「でもな〜ま、いいや!同年代のやつ等といた方が楽しいよね!」
アタシは小さく決心するとケータイを取り出しカチカチと二人の名前を選び出した。

バイトが終わるとアタシは全速力でうちに帰った。
絵里とれいなにさゆの話し相手になってくれと頼んだはいいが、
やっぱり心配でしょうがなかったのだ。
でも、そんな心配もドアの前に立ったのと同時に消え去った。
――中から3人の笑い声が聞こえる。
「…あいつらに頼んで良かった。」

自然と嬉しくなる。
今まであの子の笑った『声』を聞いた事がなかったから。
…ぶっ倒れそうなくらいかわいらしい笑顔は死ぬほど見てんだけどね。
22 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:50
ゆっくりドアを開けると、さゆがいつものようにタタタッと走ってきてお出迎え。
「おかえりなさーい♪」
―――何回見ても慣れない。可愛すぎ。
ふぅー。冷静に、冷静に、っと。
「ただいま。」
女子高時代に培った完璧な王子様スマイル。
まさかこんなとこで役立つとはなぁ。

さゆから少し遅れて絵里とれいなも奥から出てくる。
「吉澤さん、おかえりなさい!」
「おー!ただいま!」
この二人ならこんなかわいい笑顔向けられても普通にしてられんのに。
23 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/03(日) 15:51
「ねぇー、ここ暖房壊れてんですか?」
「そーそー!れいな等、凍えるかと思たですよー!」
「それから!さゆになんか着せるものないんですか?こんな寒いのにありえないです」
「ありえれいなー!」

『かわいい笑顔』なんて褒め言葉撤回。
ブーブー文句ばっか言いやがって!(特に最後のれいなの言葉なにさ!?)
アタシだっていっつも凍死寸前なんだよ!さゆが暖房もつけさせてくんないのに!
どっちかっつったら被害者なの!

「絵里、れいなー私、平気だよ?ちょっとお部屋ん中じゃあっついくらい。」
「えぇー!さゆって変わっとーけんね!」
「そっかなぁ?ホントはずっと外に出てたいくらいだよ。」
「それはダメ!元気なのはわかったけど風邪引いちゃうでしょ?」
「ハァーイ…」
さゆはしぶしぶ返事。
隣で絵里とれいなが、吉澤さんさゆのお母さんみたいってクスクス笑ってた。
24 名前:恋唯 投稿日:2004/10/03(日) 16:02
お休みなので大量更新♪
でも更新するたびに不安で不安でw文章ちゃんと繋がってますかね…?

>>13 メカ沢β様
自分でもこのカップリングはあまり見た事がないですw
最初は他のCPで書いてたんですけど、どうも動かしにくくて…。
よっすぃ主役にしたかったんで相手役誰にしようかなーって考えてて、
で、最近自分の中でぐいぐい来てる道重さんに決定したワケですw

>>14 名無飼育さん
応援ありがとうございます。がんばります!
25 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/03(日) 18:13
更新お疲れ様です。
この後どう話が動いていくのかとても楽しみです。
しっかしさゆはすごいなぁ……。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 21:44
めずらしい組み合わせで、とても惹かれるCPです。
頑張ってください。
27 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/05(火) 23:13
『お母さん』か。
ってかさゆにとってのアタシって何?

恋人?――ではないし。
友達?――これもなぁ。
家族?――んー。ちょっと違うなぁ。
命の恩人?――まぁ正解っちゃ正解だけど…。
じゃあ、ただの同居人?…にしちゃーもっと親しい関係だと思うし。

…。ホントに何なんだろう?
てか、アタシにとってのさゆは――何?
28 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/05(火) 23:14
最初は、このままこの子を放って置いたら死んでしまうと思ったから。
だから一緒に住み始めたんだ。
なのにいつの間にかアタシの生活の中心にはさゆがいて…。

―――好きなんだ。きっと。

おかしいと思うかも知んないけど、この気持ちを言葉で表せって言われたら
…それしか浮かばない。
突然目の前に現れた女の子。
本当の名前も、年も、何もかも分からないのに。
…アタシはさゆに恋しているんだ。
29 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/05(火) 23:14
「えっくしゅっ!!」
ずずーっと音を立てて鼻をすするのはれいな。
きっと、この部屋の寒さに耐えられなくなったのだろう。
「れいな大丈夫?…あ。」
絵里は時計を見るとそろそろ帰りますと立ち上がった。もう10時を回っている。
アタシが帰ってきたのが7時前、
二人は昼間からここにいたんだから結構長いこといた事になる。

「今日アリガトな。また、さゆ頼むわ。」
「任せといて下さい!」
ね、とれいなに笑いかける絵里。
れいなもニコッと笑って、おう!と返事をした。
30 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/05(火) 23:15
騒がしい二人が帰ると部屋の中はしんと静まり返って余計に寒く感じた。
アタシはそれを紛らわすためにテレビのスイッチを手に取る。

…やめた。

今年の冬は本当に寒い。
現に初雪の日から今日まで東京じゃ毎日のように雪が降ってる。
こんなのは観測史上初のことらしく、今ニュースではその話題ばっかりだ。
テレビをつけてもそればっか。…見てるだけで寒くなる。
――それなのに、この不思議ッ子、さゆと言ったら…。

「ねぇ、さゆ本当に寒くないわけ!?」
「全然。」

医者には大丈夫だって言われたんだけども、やっぱどっかの感覚が麻痺してんだと思う。
おかしいもん。
うん。――おかしい。
いくら暑いのが苦手っつったってノースリーブで平然と、
なんて誰が見てもおかしいでしょう?
31 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/05(火) 23:15
「でも、手…こんなに冷たいよ?」
さゆの手を掴むとそれはまるで氷のような冷たさで、ひどく心配になる。
「だ…!大丈夫ですって!」

「さゆ?」
「な、んでもないです。大丈夫です!」

そう言うとさゆは慌ててアタシの手を振り払い、そのまま部屋を出て行ってしまった。

アタシはしばらく呆気にとられてバタンと閉められたドアを見つめていた。
「何?…てか、そんな嫌だったワケ?…ってちょいショック受けてっし、――ダサ。」

今までは、どっちかっていうときゃーきゃー言い寄られる方だった。
…こんなキモチ初めてだ。
――すっごい胸が苦しいよ。
32 名前:恋唯 投稿日:2004/10/05(火) 23:24
寒い寒い書いてますが今年は暖冬らしいですw
でも今はこの冬がどうとか言うより週末の台風が心配…。
か、香川コン行くのに〜…!

>>25 メカ沢β様
更新の度に読んでくださりありがとうございます!!
すごい励みになります。

>>26 名無飼育さん
CP負け(?)しないようにがんばります!^^

33 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/06(水) 09:27
更新お疲れ様です。
台風に負けないように頑張ってください。
34 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:52
「さゆー」
風がざぁざぁ音を立てて、アタシの体温を奪ってく。

さゆを追っかけて外に出たはいいけど、全然あの子の行く宛がわからなくって…。
本当に自分はさゆのことなんも知んないんだなー、ってちょっと悲しくなる。

「あ゛ぁ〜!マジさっびぃ!!」
容赦なく吹き付ける冷たい風。
何十分も走り回ったものの、寒さに耐え切れなくなったアタシは諦めて家に帰ることにした。

その時だ。

風はパッと止み、その代わりに真っ白な粉雪が舞い出した。
風が止んだ所為か、なんか雪があったかいような感じがして、すごく不思議。

「さゆだ。」
これは、さゆだ。
さゆがこの雪を降らせてんだ。

よくわかんないんだけど頭の隅っこでそんなことを思った。
夜空を見上げると、そこには闇の中に聳え立つうちのマンション。なんか不気味だなぁ。
35 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:52
「さゆー、ここいんのー?」
初めて入る屋上。
あの後アタシは急いでマンションのテッペンまで駆け上がった。
なんか、さゆがそこにいる気がしたんだ。

そこからはチカチカ光るネオンが遠くのほうに見えてすごく綺麗。
…でもそんなの二の次で。
「吉澤さん…?」
アタシは目の前に一人たたずむさゆに目を奪われていた。
36 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:53
雲の切れ間から射す月の光に照らされて彼女の白いワンピースが淡い光を放ってる。
まるでさゆ自身が光ってるみたい。

―――キレイ。

さゆは雪の似合う子だなと思った。
アタシの大好きな雪の似合う子。アタシの大好きな子。
37 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:53
「どうしたんですか?」

「…、どーしたって、あんたを探しに来たんだけどぉ。」
「――どうしてですか?」
「…どーしてって…。さゆ行くトコないんでしょ?連れ戻すため。」
真剣にそう言ったら目の前のお姫様は暫くの沈黙の後、くすりと笑った。

「それじゃぁ私、逃げ出した子みたいじゃないですか。
 私、そんなことしませんよ。ずーっと吉澤さんのそばにいたいもん!」

さゆの笑顔が眩し過ぎて目の前が真っ白になってく。
なんでこの子はこんな言葉を自信たっぷりに言えるんだろう?
その言葉を言ったら相手がどんな事を思うんだろうとか、他人から見たらどうだろうとか、
そんな無駄な物怖じはせず、思ったまま発せられる言葉。
…悪く言えばただの自己チューなんだけどw
38 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:54
「さっきは、なんかビックリしちゃって…。
 で、すっごい身体が熱かったんでここに来たんです。落ち着いたら戻るつもりでしたよ。」

濡れた様な綺麗な瞳がアタシを見つめる。――だからそれは反則なんだって。
どんな君の表情も見てみたい。きっと全部かわいいんだろうな。
例えば。
今、アタシが告白したらさゆはどんな顔をするんだろう?どんなことを思うんだろう?
…見てみたい。
不意にこの口から「好きだよ」って言葉が飛び出しそうになるよ。

「そっかぁ、なんか心配して損しちゃったなぁ。
 じゃあ、アタシは先戻ってっから。カギ開けとくし何時でも帰っといで。」
39 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/11(月) 22:54
でも。
実際そんな言葉、口が裂けても言えないだろうな。
アタシはさゆと違って卑怯な臆病者だから。二人の関係がダメになちゃうのが恐いんだ。

屋上のでっかいドアを開けながらアタシの目から何故か涙が溢れそうになった。
――片思いって切ねぇー。
40 名前:恋唯 投稿日:2004/10/11(月) 22:58
更新しました。

>>33 メカ沢β様
ありがとうございます。願いが通じたのか台風は関東の方へ反れてくれて、無事ライブが行われました。
やっぱ生は最高ですねー。
娘。さんにたくさん元気を貰ったんで、これからの更新も頑張りますよ^^
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/15(金) 00:48
どう進んでいくのかな??気になります!
42 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:06
「よっしざわさん♪」
本日のさゆのご機嫌はちょー最高。
「…なんだよ?」
そしてアタシのご機嫌はちょー最悪。

なんでかって?
せっかく貰った3連休。第一日目からさゆはアタシとの約束をすっぽかして
お隣さん家に遊びに行ってたから。

「第二日曜はバイトないからどっか行こうって言ってたよね、アタシ」
イライラ。イライラ。
なのにさゆは、さっきからすーーっごい楽しそうな笑顔。
「…、まぁ、それはいいや。でさー今日、2人ん家行って何してたの?」
「ひみつです!」

キャワ!!
――じゃねぇよ、自分。ウインクに惑わされんなっ。怒ってんだよ今は。
だって、アタシすんげー楽しみにしてたんだよ?
今日はどっかにお出かけして。明日、明後日は家でいろんなこと話そう!とか考えてたんだ。
なんか、ちょー惨めじゃね?
さゆはこんな気持ちわかってくんないよね?勝手気ままなお姫様だもん。
43 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:06
「もういいや。アタシ先寝るから。」
こんなトコでキれても仕方ないのにさ、ホント嫌な性格だなアタシ。
ほら、あんなに笑ってたさゆが寂しそうな顔。胸がズキズキする…。
「ね、…まだ9時ですよ?」
「…いいじゃん別に。眠いんだって。」
そっけなくそう言うとアタシは自分の寝室へ向かう。
さゆが入ってこないから唯一、暖房が点けられて暖かいはずの部屋なのに
バタンと後ろ手にドアを閉めると何故かリビングよりも寒く感じた。

「あー、大人げねぇー」
自己嫌悪。
なんでさゆの前じゃ素直になれないんだろ?ホントはそんなに怒ってもないのにさ。
こんなことしたら明日明後日、気まずくなっちゃうのにさ…アタシのバカ。
44 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:06
「吉澤さん起きろー。」

目を開けると目の前にれいな。
アタシはビックリして力いっぱい目を擦った。

「…なんでアンタがいんの?」
当たり前の質問。だってここはアタシん家で、しかもアタシの寝室なのだから。
一緒に住んでるさゆだってあんまし入った事無いのに、おかしいでしょう?ふつう。
45 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:07
「起しに来たんですよ。さゆに頼まれたとです。」
「…さゆに?」
れいなはこくんと頷く。
「ここ、暑くて入れらんいうから。」
そしてあきれたような顔。アタシも同じような表情をれいなに見せた。
「ああ、そうだね。」
それからエアコンに目をやる。
これでもエコを心がけてるから比較的地球には優しい温度設定なんだけどなー。
愛しいあの子にとっては暖房を点けること自体、優しくないらしい。
「さゆって変わりもんっちゃね。」
「――アタシもいつも思うよ…。」
そんな同情のような言葉を貰ってアタシは思わず苦笑した。
46 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:07
「てか、起こすにしちゃ早くねぇ?」
時計を見るとまだ朝の8時。
今日バイトがないってのはさゆも知ってるはずだし…。
「だって今日、月曜やもん。れいな等ガッコ行くし、頼むんやったら今しかなくないですか?
 なんか、さゆ、はよ吉澤さんと話がしたいみたいなんですよ。」
47 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/15(金) 23:07
眠い目を擦ってカレンダーを睨みつける。そっか、そういや学校って月曜からだったな。
去年、高校を卒業したばっかなのに
ずっとバイト漬けだったせいかそんな当たり前の事も忘れかけてた。
曜日感覚なんてとっくの昔に無くしちゃったし。

アタシがそんなどーでもいいことを考えてる間、れいなはずっとこっちを見ていた。
それも、なんかよくわかんない笑顔で。

――絵里のニヤニヤ病がうつったのかな?
48 名前:恋唯 投稿日:2004/10/15(金) 23:13
更新しました。

>>41 名無飼育さん
レスを頂けるとたった一言だけでも、読んでくれてる人がいるんだなーってすごく励みになります。
これからも読み続けて貰えるように頑張ります。
49 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/24(日) 01:17
役目を終えたれいなが部屋を出て行くと、
アタシはとりあえず適当な服を羽織いリビングへ。

そこにはさゆが俯き加減に座ってて
昨日の事で怒ってんのかなと、少し不安になる。
「さゆー?」
恐る恐る名前を呼ぶと彼女はパッと顔をあげた。

「あ!おはよーございます」
「うん、おはよう。」
あれ?結構ふつうじゃん。うん、いい笑顔だ。
「あの!」
さゆは急に立ち上がるとアタシの手をとって歩き出した。
「おい!どこ行くの?」
アタシの左手にさゆの右手はやっぱりすごく冷たい。
「ねぇ、さゆ!」
いくら呼びかけてもさゆは止まらない。アタシはそのまま屋上に連れて行かれた。
50 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/24(日) 01:18
屋上では前来たときと同じように白い雪が少しパラついていた。
ホント、今年はどうなってんだ?ずっと雪ばっかじゃん。
「何よ?こんなとこ連れて来て。」
「あのー…」
そこから何十秒か沈黙。
アタシはその間、風がさゆの髪をなびかせるのをじっと見ていた。

「今日なんの日かわかりますか?」
51 名前:恋唯 投稿日:2004/10/24(日) 01:25
かなり少量ですが更新しました。

台風&テスト期間でなかなか更新できなかったんです…
うちの地域では台風の被害がすごかったんで2日も学校が休校。
そのせいで月曜からもテスト期間ですorz

来週から元の更新ペースに戻ると思います。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/24(日) 13:36
待ってました!!更新お疲れ様です。台風大変でしたねー。テストも頑張って下さい。
53 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/31(日) 07:29
更新お疲れ様です。
しかしまぁなんて気になる所で切ってるんだか……いやはや憎いですねぇ。
テストは気合で乗り越えてください、あと努力も。
54 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:23
…なんだ?
さっきカレンダー見たのになぁ。
赤い印なかったし、第一れいな達は学校行ったんだから普通に平日じゃんね?
「えーーっとね」
頭をがしがし。もうギブだ。

「ごめん、わかんねーや」
「えー?絵里とれいなはみんな知ってるって言ってたのにな〜…。」
さゆは一人困った顔。
てかやっぱあの二人が絡んでんのか。いい予感しねぇー。
昨日の事だって二人がいなきゃさゆはアタシといたんだし。

「ホントに分かんないんですか?」
「う…ん。ごめん教えて?」
「もう!なんで分かんないんですか!」
さゆはかわいらしくアタシを睨みつけると言葉を続ける。
55 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:24
「今日はー…バレンタインですよぅ!」

そして顔を真っ赤にして小さな袋をアタシに渡した。
「――そうか、今日14か…!そっか、そっか…すっかり忘れてたや。」
高校行ってた時は物凄かったのになー…って。
「さゆ、バレンタインって何の日か知ってる?」

だってこの子何も覚えてないんだよ?(医者的には記憶喪失じゃないらしいけど…)
バレンタインも絵里とれいなに教えてもらっただけだもんね。

「はい!好きな人にチョコを渡して告白するんですよね!」
ねぇ。
今めっちゃさらっと言ったけど、さゆアタシの事好きなの?
ちょい待て。
ここで自惚れてアタシもさゆの事好きだよなんて言ってみ?
私ピンクが好きなんですー、レベルの好きだったらすげー気まずくなんない?
56 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:24
「あのさぁー、バレンタインの好きってのはー…なんつーの?そのー…」
「義理じゃないですよ!本命です!」
絵里がそう言いなさいって言ってました!なんてさゆはめちゃめちゃ笑顔で言う。
「本命…ってどーゆー意味か知ってる?」
「ハイ!絵里とれいなにちゃんと教えてもらいましたよ。」

…。
57 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:25
「さゆー…ピンク好き?」
「好きです!」

「じゃぁ吉澤さんは?」
「好きです!」
58 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:25
うー…。同じトーン…!
これはどうなんだろうか?何?いやいやわっかんない!
――パニクってんな、アタシ。
なぁ、絵里とれいな。さゆにこんなラブリーなイベント教えてくれたのは嬉しいんだけど
もーちょっとちゃんと教えてやってくれ。
さゆのオツムはおめーらが思うほど良くないんだよ!(失礼

「んなら、ピンクとアタシ、どっちが好き?」
「もっちろん吉澤さん!!」
よーし!!
…でもピンク(色)<アタシ(人間)でホントの『好き』って判断すんのもなー…。
59 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:25
あ。
いい質問見っけ。

「さゆ自身とアタシ。どっちが好き?」
いままで一回もその事については触れてこなかったけど、さゆは自分が大好きだ。
鏡を見てはかわいいを連発。
これでさゆの答えが『吉澤さん』なら本当に大好きってことだよね?

「えー…私と吉澤さんですかー?」
低い声をあげて考え込むさゆ。さぁどっちだ?答えて。
「やっぱりー」
…うん、うん!
60 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:26
「吉澤さんが一番です!」

…。
やっばい…!ちょーーー嬉しい!!!
何、両想いなの?アタシ達!!ちょっとマジ、マジ、暴れだしちゃうくれー嬉しい!!

「吉澤さんはー私のこと好きですか?」
いつも自身満々のさゆが不安げな顔。
ごめんな?アタシが素直じゃないからそんな顔させちゃってるね。
「うん。アタシもさゆのこと、大好きだよ?」
ドキドキする…!せっかく貰ったチョコ、握りつぶしちゃいそうだよ。

「ホントですか?…嬉しい!!」
さゆはそう、とびっきりの笑顔で笑った。
あぁ、眩し過ぎてクラクラしちゃうよ。
61 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:27
「あ、あと、あの…昨日は約束守れなくてごめんなさい。それ、作ってて…。」
アタシの手の中の袋を指して言う。結構律儀なんだな、さゆって。
「いいよ。一生懸命これ作っててくれたんだからさ、
 アタシのほうこそ何も知んなくてさゆに冷たく当たっちゃったね。」
そう明るく笑ったら、さゆの顔もまた明るくなった。
うん、いい感じ。

ふぅ。
アタシは短いため息をして、さゆの元に近づく。
「さゆ、大好き。」
そして二回目の告白の後、アタシはそっと彼女にキスをした。
62 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:28
「でも、なんで外なの?寒いし。」
小降りだった雪もだんだん本格的に降り出してきて屋上じゃかなり寒い。
加えて風が半端なく吹き付けるもんだからアタシの身体はもう限界を向えていた。
「だって告白なんてしたらすっごい熱くなっちゃうと思ったんですもん。」
「イヤイヤ、部屋ん中だって十分寒いし。」
軽くつっこんだらさゆは何故か黙り込んでしまった。
…なんかアタシ何か変な事言ったっけ?

「そうなんですよ。私ホント暑いのダメで。」
しばらくしてさゆはそう笑って答えたけどその笑顔にはいつもの元気がなくて、
少し不安になる。でもそんな想いはさゆと恋人になれた嬉しさのほうが上で
すぐに頭からどっかに消えてってしまった。
63 名前:雪の季節 投稿日:2004/10/31(日) 16:28
その時のアタシにはさゆが見せた笑顔の意味とその裏に隠されたこの子の運命を
知る事なんてできなかったんだ。
64 名前:恋唯 投稿日:2004/10/31(日) 16:34
更新しました。
結構勢いで書いたんでちゃんと文章になってるかな…?

>>52 名無飼育さん
わわわ…待っていて下さったなんてすげー嬉しいです。
頑張ります!

>>53 メカ沢β様
レスありがとうございます。テストはなんとか乗り越えましたよ^^
結果はorzって感じでしたがw
65 名前:メカ沢β 投稿日:2004/10/31(日) 16:56
更新お疲れです。(本日二回目)
そうだった……幸せばかりを見詰めようとしていたせいで
さゆの設定(あくまで私の予想の設定)を忘れていた!!
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 17:52
いい雰囲気ですが…なんだか嫌な予感も拭えないですねぇ
あくまで自分の予感なので外れてほしいのですが(ニガワラ
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 13:06
新鮮なカップリングでいいですね。
設定もなんだか面白いのでこれからも期待してます。
ここの道重さんと一緒に暮らしたら
風邪ひきまくりですね(ニガワラ
68 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:53
花や草木が次々と芽吹きだす3月。
もうだいぶ外も暖かくなってきている。…ハズなのに。
やはり、今年の気候はおかしいのか一向に暖かくならない。
それどころか、まだ冷たい雪が我がもの顔にこの街を白く染めていた。

アタシとさゆの関係といえば、それはもう良好で。
絵里とれいなに負けないくらいラブラブな毎日を過ごしていた。

ただ、極端に暑いのが苦手なさゆはキスするのも、ぎゅって抱きしめるのも、
手ぇ繋ぐのでさえ外でしかさせてくれない。
「ホント、さゆって変な子…。」
バイト先でもアタシはずっとさゆの事ばっか考えてた。
それはもう店長に怒られちゃうくらい、ずーっと。

もう流石に慣れてきたけどもやっぱさゆは変だ。
まぁ、考える内容はそんなことばっかなんだけどね。
69 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:53
そしてバイトが終わるとアタシは一目散に家へダッシュする。
今日も季節外れの白い息。季節外れの冷たい雪。
それが何故かなんて今まで考えた事無かった。
だってこんな寒い冬は何年かに一度やってくるし、
冬好きなアタシとしては結構嬉しかったりもするから。

でも、あたしはその日知る事になるんだ。
この季節外れの雪の理由を。
70 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:53
「ただいまー。」
部屋の電気は消えていた。さゆもいない。
きっと屋上だろう。
最近は絵里とれいなとは遊ばずに一人でそこにいる事が多いから。

アタシは適当に荷物を置くとなんとなく愛しい恋人に早く会いたくて屋上に向かった。
タッタッタと屋上に続く階段を駆け上がると、そこには重い扉。
頭のどっかに「先に進んじゃいけない」って声が聞こえた気がしたけど
そんなの無視してアタシは扉に手をかけた。
71 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:54
ギィっと重い音が鳴った次の瞬間、アタシの目の前に広がったのは真っ白な世界。
その中心にさゆはいた。
柔らかな光を身にまとい、静かに夜空を見上げている。

そしてアタシの頭の中は今までにないほどに混乱していた。

――白く光るさゆの身体を透して屋上に積もった雪が見える。――

そんな信じられない光景がこの目に飛び込んできていたのだ。
とにかく、アタシはさゆの姿を見て何か夢でも見ている気分になっていた。
72 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:54
「さゆ…?」
ぴんと張った空気に恐る恐る振動を。
その声に驚いたのかさゆは一瞬ビクッとしてゆっくりこちらを振り返った。
そして、彼女が完全に振り向くのと同時に深深と降り続けてた雪がピタリと止む。

「――吉澤さんっ…!!」
さゆがそう声を発した時には、その身体も元の色を取り戻し
あたりに広がってた真っ白な光もいつの間にか消えていた。
「……」
奇妙な光景を前にアタシの脳は限界を迎える。
気を抜くと意識がどっかに飛ばされちゃう感じ。
73 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:55
さゆは初めかなり動揺した様子だったけど、今は落ち着いた目でこっちを見つめていた。
すぅっと、さゆの息を吸う音があたしの耳に届く。
とても静かな夜だ。
74 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/01(月) 22:55
「…吉澤さん、私ずっと…黙ってた事があるんです。」
どうしよう、今、何も考えられないや…。
ただたださゆの声が空気を震わせ、アタシの鼓膜に届くだけ。
「私、…実は―――」
75 名前:恋唯 投稿日:2004/11/01(月) 23:05
更新しました。

>>65 メカ沢β様
さゆの設定(メカ沢β様の予想の設定)…きっと当たっておりますw
読者さんがちょっとでもビックリできるような文章目指して頑張ります!…があまり期待せずにw

>>66 名無飼育さん
いい雰囲気って言ってもらえたのが素直に嬉しいです^^
嫌な予感は……どうなるんでしょうかねw

>>67 名無飼育さん
ですねw
さゆの設定の為に(もうほとんどばれてますが…)よっちゃんには寒さに耐えてもらわないと…!

76 名前:メカ沢β 投稿日:2004/11/02(火) 08:31
更新お疲れ様です。
切ない……でもイイ!!
77 名前:プリン 投稿日:2004/11/07(日) 16:44
更新お疲れ様です♪
一気に読みましたです…w
このカップリングは珍しいですよね。なんか新鮮(?
めちゃんこいいところで切りましたねー(w
続き期待してます。頑張ってください!
78 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:33
次の言葉を聞いた時、
ピタッと止まったままだったアタシの脳ミソがぐるぐるフル回転し始めた。
79 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:33
 ―――初雪の日に突然現れた女の子

              さゆ――…雪の国のお姫様の名前…――

     「雪の似合う子だなぁ」   
              
                    さゆがこの雪を降らせてるんだ―――
80 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:33
「………。」

ドクドクと心臓の音がウルサイ。
その時のアタシは瞬きも忘れてしまうくらい動揺していた。

もしも。
さゆの言ってる事が本当だったら
アタシがこれまでずっと不思議に思ってたことだって、その全てに説明が付く。
初雪の日から毎日のように雪が降り続けた理由も、
この季節外れの寒さの理由も、
異常なくらいこの子が暑さを避ける理由も、全部全部、説明が付いてしまう。
81 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:34


「私、…実は―――雪の、…雪の化身なんです。」
82 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:34
だけどそんなこと「ハイそうですか」ってすぐに信じられると思う?
無理だよ。やっぱ頭がついてこない。当たり前でしょ?

強い目でこっちを見つめるさゆに、アタシはフルフルと首を横に振った。
それでもさゆはすごく強い目をしてアタシをまっすぐに見つめる。

「信じられないのは、わかります。――でも…本当の事だから。」
そういうと彼女はすっとその手を空にかざした。
また、あの真っ白な光があたりを包みだす。

これは夢なんだと信じたかった。でも、それはできなかった。

さゆの手を合図にゆっくりと舞い落ちてくる雪。
それがアタシの頬を掠めた時、
雪は確かに冷たくて…これは現実なんだって思い知らされた気がした。
――信じるしかないじゃないか。
…さゆは人間じゃないんだって。雪の化身なんだって。
83 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:34
「黙ってて、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい…」
さゆの声が震えてる。今にも泣き出しちゃいそうだ。
ねぇ、そんな苦しそうに謝んないでよぉ…。

「さゆ、大丈夫だよ?」
一体何が『大丈夫』なのかは言った本人が一番分かってないんだけど
とにかく、『大丈夫』。
その頃にはアタシの脳ミソも大分落ち着きを取り戻していた。
今は何より、この子を元の笑顔に戻してやる事が一番。
84 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:35
「でも、私、ずっと吉澤さんに何も言わなかった…」
「いいの。アタシは大丈夫。だから謝んなくてもいい。」
さゆは何も言わずにこくりと頷く。
アタシは、まだ泣きそうな顔を見せる彼女に近寄るとそっとそのほっぺに手を添えた。

あぁ。だからこんなに冷たい肌をしてるんだね…。

暫くしてさゆは不安げにその口を開いた。
「私のこと、嫌いにならないですか?」
「――、はは。何でよ?さゆは、『さゆ』。違うの?」
「そうですけど…。私人間じゃないんですよ?」
「だから、かんけーねぇって。アタシはさゆが好き。嫌いになる理由なんてないよ。」
ね?って笑いかけたらさゆはようやく笑顔を見せてくれた。やっぱりさゆは笑顔がいい。
85 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:35
でも、またすぐにその表情は曇る。
それは不安で不安でしょうが無いといったような、顔。

「私、…ずっと吉澤さんのそばにいてもいいですか?一緒にいたい…」

さゆの目からポロリと零れた涙は頬を伝うと同時に氷に変わり、パンと地面に弾けた。

「一緒に…――」
『一緒にいればいいよ。』そんな言葉を言いかけて、やめた。
もし、このまま春が来るとさゆはどうなってしまうのだろうか…?
86 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/15(月) 23:35
「でも。私は雪の化身だから――」

それ以上言わないで、さゆ…

「あったかくなると、――溶けて消えてしまいます。雪のように…」

…。本日二回目のフリーズ。
今回のはどうやら一回目のにも増して強烈なものらしい。
87 名前:恋唯 投稿日:2004/11/15(月) 23:44
久々更新しました。
吉澤さんの脳ミソが回復するまでまたちょっくら休憩w
次回更新は今週中に…したいなぁ。

この話の中で一番大事なとこなのに頭の中で思ってることが上手く文章に出来ない…orz
ホント文章書くのって大変ですよね。他の作者様にリスペクトです…!

>>76 メカ沢β様
いつも読んでいただいてありがとうございます^^励みになります!

>>77 プリン様
一気に読んでくださったのですか…!ありがとうございます。
期待に…答えられたでしょうか??――頑張ります!
88 名前:名無し§ 投稿日:2004/11/19(金) 21:13
軽く泣いてしまいました…まだ、これからなのに…


このカップリング好きです。
これからも頑張ってください
89 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/21(日) 15:25
沈黙はそう長く続かなかった。さゆがそれを破ったから。
「私は、――ずっと吉澤さんのそばにいたい。」
「…さゆ、アタシもずっと一緒にいたいよ。でも、」
それは無理なんだ。
寒い冬の次には、暖かい春が来る。アタシ達の世界じゃそう決まってるんだよ。
「大丈夫です。…要は、春が来なきゃいいんですから。」

「え…――?」
90 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/21(日) 15:26
「私は意志を持った雪の化身です。
 他の雪たちを自由に操れる、降らせる事が出来る。だから――」
「それはダメだよ。」
アタシは最後までさゆの言葉を聞かずにキッパリとそう言った。
少し声が震えていたかもしれない。

「もう今は春なんだ。なのに、ほら。」
足元の雪を見つめる。さゆもアタシの目線の先を追った。
「こんなのが続けば地球がおかしくなっちゃう。もう、その力を使うのは良くないよ。」
「でも…!」
「ワガママ、言わないで…?」
91 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/21(日) 15:26
キツイ言い方なのはわかってる。胸がズキズキする。
アタシはじっとさゆの目を見つめた。
その目からはぽろぽろと綺麗な涙が次々に零れ落ちていた。
そんな顔、見たくないんだって。さゆには笑っていて欲しいんだって。
どうしてさゆは、こんな運命を背負って生れて来たんだろう?
自分の力じゃどうしようもなくって、すごく悔しい。
92 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/21(日) 15:29
「ワガママでもいいです。私は、吉澤さんとずっと一緒にいる…!」
「――さゆ、わかってよ…?」
「私の気持ち、わかってくんないのは吉澤さんの方ですっ!私、まだ生きていたい!!」

そう叫んだ瞬間、さゆは消えた。
正確には、雪の姿に変わり、風に乗ってどっかに行っちゃった。
非現実的な事が続きすぎた所為か
さゆが雪に変わっても、アタシはあんまりびっくりしなかった。
93 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/21(日) 15:29
「…さゆ!」
真っ暗な空を睨みつける。
「さゆーーッ!!」
いくら呼んでも、返事は返ってこない。

その日の夜中、アタシは起きてさゆを待ってたけど、結局彼女は家に戻らなかった。
94 名前:恋唯 投稿日:2004/11/21(日) 15:32
少量ですが更新しました。

>>88 名無し§様
>軽く泣いてしまいました…まだ、これからなのに…
なんて嬉しいコメント!!こっちは嬉しくって泣いてしまいそうですw
がんばりますっ!

95 名前:名無し§ 投稿日:2004/11/23(火) 18:46
ま…またしても…!(涙
お互い切な過ぎるよー!
これからドーなるんでしょーか?
96 名前:メカ沢β 投稿日:2004/11/26(金) 10:48
更新お疲れ様です。
切ないとはこういうことなんですね、いやはや……。
私は北海道在住なんですが、雪を見る度思い出してしまいそうです。
97 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:25
それから数日間、アタシはろくに睡眠もとらずにさゆを待ち続けていた。
あの日からテレビはずっと点けっ放し。
さゆがいないだけでテレビを消す気力もなくなっちゃうんだ、って自分で苦笑い。

こんな調子で、もしこのまま「その時」が来たらアタシは一体どうなっちゃうんだろうか?
恐くて恐くてしょうがない。
そのくらい、アタシの中であの子はおっきな存在なんだ。
98 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:25
「さゆー…」
窓にぴったりとくっついて名前を呼んでみる。当然返事は無い。
かわりに真っ白な雪がパラパラと降り続いていた。

「もう、その力、使っちゃダメっつったじゃん…」
3月も後半。
雪を降らせてないと少しずつ彼女の身体が溶けてっちゃうんだろう。
「苦しいよね…?ごめんね…?」
分かってあげられない苦しさと、どうすることも出来ない悔しさで、涙が出てくる。
でもさゆは、もっと辛いんだよね。本当にごめん。
99 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:26
「お願い。帰ってきて…。」
さゆに会いたい。会ってあの子をちょっとでも楽にしてあげたい、笑顔にしてあげたい。
このままお別れなんて死んでもヤだかんね…。


次の日。
雪は降らなかった。雲ひとつ無い――晴れ。
青白く部屋の中を照らすテレビは、何日ぶりかの晴れだってこの晴天を祝ってる。
でもそれとは逆にアタシの心の中は物凄い不安でいっぱいだった。
100 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:26
雪が降ってないってことは、さゆが雪を降らせてないってこと。
さゆが雪を降らせてないってことは―――…
ダメだ。
悪い方向に考えが行っちゃう。
101 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:26
アタシは少しでも落ち着くために目を閉じて深呼吸をする。
そして、これで良かったんじゃないか、って自分に言い聞かせようとした。
でもやっぱ、それは出来なかった。
確かに、このままさゆが消えてしまえば、春が来る。あったかい春が。
だけどそれじゃダメなんだ。
さゆに苦しい思いをさせたまま、もう会えなくなるなんてそれだけは絶対にイヤだ。

「アタシがなんとかしてあげなきゃ…。だから、さゆ、…生きてて…。」
102 名前:恋唯 投稿日:2004/11/28(日) 13:33
更新しました。

>>95 名無し§様
いや〜そう言って貰って物凄くうれしいです。
このお話もそろそろ終盤。がんばりますね。

>>96 メカ沢β様
北海道の方なんですか!自分はこんな話を書いときながら積もった雪を見たことがないという…(汗
関西の太平洋側なんで滅多に雪降らないんですよね〜。
103 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:51
そんな時だった。
ふっとさゆが戻ってきた気がして、アタシは急いで屋上への階段を駆け上がった。

「さゆっ!!」
さゆはそこにいた。
日が当たらないようにでっかいタンクの影に隠れて座っている。
「さゆ、大丈夫?」
彼女の目に力が無い。きっとこの天気の所為だ。
104 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:51
さゆはアタシに気が付くとこっちを見て言った。
「今日は、雪、降らせませんでしたよ?」
偉いでしょう?
誇らしげに笑うアタシの恋人。
どうしてこのワガママお姫様はこんなにもケナゲなんだろう…。
「うん。すごく偉いよ…」
雪を降らせて無いとこんなにも身体が弱っちゃうっていうのに――。
105 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 13:52
アタシは静かにさゆに歩み寄ると、始めてあった時の様にそっと彼女を抱き上げた。
ひとつ違うのは、その身体にあの時のような冷たさがないってこと。
「とりあえず部屋戻ろう。」
こくりと頷くさゆ。今にも消えちゃいそうなくらい、元気がない。

この子に一体何をしてあげられるんだろうか?
アタシの目からこぼれた涙が一粒、彼女の頬を濡らした。
106 名前:恋唯 投稿日:2004/11/28(日) 13:52
もいっちょ更新。
107 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 14:22
「これが春の天気なんですね。」
さゆはじっと窓の外を眺めて言う。
「私、雪の季節しか知らなかったから。」
冷房をガンガンに効かせた部屋で、大分体調も回復したのかいつもの笑顔を見せてくれる。
アタシはさゆに近寄ってそっとそのほっぺに触れてみた。
よかった。もう体温も元のそれに戻っったみたい。

「あのね、私、初めてお花を見たんですよ。
 私の所為でずっと雪ばっかだったのに、咲いてて…、すっごい感動したんです。」
さゆはすごく嬉しそうに自分の目で見た春の景色を報告してくれる。
さゆが楽しそうだとアタシも楽しい。
108 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 14:22
――と同時にアタシは物凄い不安を覚えていた。
こういう予感はいっつも的中する。
窓の外をじっと眺めるさゆは何かふっきれたような瞳をしていた。
109 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 14:22
「それで、私、思ったんです。この世界には春が無いといけないんだって。」
ダメだ。やっぱり嫌な予感は当たる。
どうしよう、すごく嫌だ。
『さゆがいなくなるんだったら春なんて来なくていい』
『ずっと一緒にいたい』
今まで考えてた事と正反対の言葉が頭の中を駆け巡る。
…どこまでワガママなんだよ、アタシは。さゆは、頑張って決心したっていうのに…。
アタシはなんでちゃんと受け止められないんだ…っ。
110 名前:雪の季節 投稿日:2004/11/28(日) 14:23
「吉澤さん。」
ふと、さゆに名前を呼ばれる。
溢れそうになった涙はすっとどこかへ消えた。
すごく安心するなぁ、さゆの声。
よし。もう心に決めたよ。さゆが望む事ならアタシはどんな辛い事でも耐えてみせる。

「何?」
「私は、もう雪を降らせません。そのうち、雪と同じように溶けてなくなっちゃいます。」
「――うん…」
「でも、ビクビクしながら、その時を待って生きるのは嫌なんです。」
「…うん。」
111 名前:恋唯 投稿日:2004/11/28(日) 14:24
えっと、ものすんごく中途半端ですがここで止めておきます。
次回更新で完結させる予定です。…多分。
112 名前:名無し§ 投稿日:2004/11/28(日) 17:55
最終話まで我慢しようと思ってんけど、
やっぱり無理でした(泣×2)

むっちゃ、嫌な終わり方や…
続きが読みたいような読みたくないような…

でもやっぱり、どーなっても読み続けやす!
113 名前:メカ沢β 投稿日:2004/11/29(月) 09:46
更新お疲れ様です。

生と死、出逢いと別れ。
彼女等にとって後者への思いが前者に対する思いを超えているような気がします。
いずれにしても、切ないものです。
114 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:18
「だから、…」
「何?」

「だから、吉澤さんの手で私を―――。」
115 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:18

     ■ ■ ■ ■
116 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:19
その日の夜、アタシ達はひとつになった。

さゆの色っぽい息遣い。上気した顔。熱を持つ――彼女の身体。
深いキスをするたびにさゆはここにいるんだと、これがさゆなんだと実感できる。
いつまでも、こうやって抱き合っていたい。
でも、これがお別れなんだよね…?
うれしさと哀しさが同時にこみ上げてきてアタシは涙に咽んだ。
ただただ、涙は止まらずに溢れ続け、さゆの真っ白な肌を濡らしていた。
117 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:19
「よ、しざわさん…」
「何?」
「なんか、すっごい、幸せです。」
「――うん、アタシもだよ。」
二人で微笑みあう。

そして、アタシは気付いた。
「もう、すぐみたいです、私…。」
さゆの身体がだんだんと薄くなっていく。
その身体越しにベッドのシーツがアタシの目に飛び込んできていた。
118 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:19
「…さゆ、」
『やっぱり行かないで』という言葉はグッと飲み込んで、アタシはもう一度笑顔を作る。
「なんか、恐くなって来ちゃいました。
 …もうすぐいなくなっちゃうんですよね、私…。」
さゆはアタシなんかよりもっと辛い思いをしてるんだから。
119 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:19
「ねぇ、さゆー、知ってる?雪は溶けて何処に行くか。」
そんなことを言ったら、さゆはふるふると首を振った。
「――空に昇ってね、いつかまた、ここに降りて来るんだよ。」
「ホントですか?」
「うん、本当だよ。いつか、きっと」

また、会えるよ。

そっと唇にキスすると、さゆはいつもの笑顔をアタシに見せた。
「吉澤さん、」
「ん?」
「…――大好き。」
120 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:20
次の瞬間、すごく眩しい光が目の前に広がった。
そして、アタシが目を開けたときには――腕の中にいたさゆは、いなくなっていた。

最期のさゆの言葉が胸に響く。
「アタシも、…大好きだよ、めっちゃ、愛してる…。」
121 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:20
翌朝、目が覚めると窓の外は雨。
しとしとと静かに降る、春の雨だ。

「さゆ。」
呼びかけても返事は返ってこない。アタシの恋人は天に昇ったんだ。
初雪の日に突然アタシの前に現れた雪の妖精は、アタシに素晴らしい思い出をくれた。
たった数ヶ月だったけど、さゆと過ごしたこの雪の季節を決して忘れないよ。
122 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:20
あたしの愛する人。
また、きっと会えるよね。
だからそれまで空からあたしを見守っててよ。
そんで、迷わずココに降りてきて。
それから、それから、また、いっぱい話をしよう?くだらない話を。
寒すぎるのは嫌だけどそこは耐えて見せっからさ(笑)
123 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:21
「なぁー、さゆ、聴いてんのー?」
窓を開けてさゆのいる空を睨みつけてみる。
したら、ほんの一瞬だけ春の雨は、真っ白な雪に姿を変えた。
「あはは。さゆ、すげー!」
124 名前:雪の季節 投稿日:2004/12/05(日) 13:21

そして再び降り出した春の雨は、
静かに街を濡らし、アタシ達に雪の季節の終わりを告げたんだ。

125 名前:恋唯 投稿日:2004/12/05(日) 13:27
えっと、一応完結です。

皆様の期待に答えられたかは分かりませんが自分なりに一生懸命頑張ってみました。
初めて書く連載小説…不安な事ばかりでしたが読んで下さった皆様、レスを下さった皆様、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。

また、なにか新しいお話が出来たら腕試しをする気持ちでここにアップしたいと思います。
それでは、またいつか。
126 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/05(日) 14:45
お疲れ様でした&感動をありがとう!
127 名前:名無し§ 投稿日:2004/12/05(日) 18:47
完結お疲れさまです!
この2人なら絶対また会えるはず!!


p.s.実はこの話のタイトルを見たときは、「あんまり好きじゃなさそう…」と思ったんやけど、
読んだら見事にはまってしまいました(笑)
タイトルだけで判断するのは良くないですな!

p.s.A
>92「−さゆ、わかってよ?」
「私の気持ち、わかってくんないのは吉澤さんの方ですっ!」
が、何か噛み合ってない…と思ったのは自分だけかな?^^;

長々と、まだ読んだことのない人にはネタバレになりそうなレス申し訳御座いません。

兎に角、こんな(自分の中では)名作を作ってくれて有り難うございました!!
次回作も期待大で待ってます!!
128 名前:名無し§ 投稿日:2004/12/05(日) 18:56
↑ごめんなさい。
「こんな」とか「(自分の中では)」なんて書いたら、メッチャ失礼ですよね。
本当に申し訳ないです。
129 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/05(日) 22:46
完結おめでとうございます。切なく爽やかで良かったと思います。 次回作も期待してますねー。
130 名前:メカ沢β 投稿日:2004/12/06(月) 10:27
完結おめでとうございます。

新鮮なカップリング、というのが第一印象でした。
読んでいくとそのカップリングがまたいい味が出ていて非常に感動しました。

北海道は昨日、大雪が降りました。
北海道は「雪の季節」に入りました。
131 名前:こい 投稿日:2004/12/22(水) 00:03
皆さんレスありがとうございます!いやぁ嬉しいですね!

>>126 名無し読者様
ありがとうございます。感動したって言ってもらえてすごい嬉しいです!

>>127 名無し§様
貴重な意見ありがとうございます。タイトルセンス…磨いていかなければっ!
p.s.Aみたいな書き込み、うれしかったりします^^自分だけが理解してても仕方ないっすからね。
これからもバンバンつっこんでいってもらえるとありがたいです。

129 >>名無飼育さん
切なく爽やか…なんていい響きなんだぁ。次回作期待ですか…。
今からうpするけど緊張しちゃいますw

130 >>メカ沢β 様
最初からずっとレスをつけてくださって本当にありがとうございます!
初レスを貰ったときは尊敬する作者様でもあるのですごい感動しちゃいましたよ(涙






132 名前:こい 投稿日:2004/12/22(水) 00:05
あ。そうそう。
HNをひらがなにしました。
いちいちカッコ書きで読み方書くのも面倒だなぁと思ってw

それでは今からクリスマスっぽいお話を一つ。
133 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:06
12月。
クリスマスも間近に迫ったこの時期、忙しいはずであるサンタクロースが一人、
大きな雲の上にちょこんと座り込んでいた。

トレードマークの真っ白なひげもなく、赤い服もまだブカブカ。
ただでさえ大きい帽子なのに頭が人並み外れて小さいため顔は良く見えないが、まだ若い。
見たところ10台そこそこだろう。
そんな少年サンタの彼がクリスマス前のこの時期に雲の上で何をしてるのかというと…

「はぁー、まじ、どうしよー…」

そう。彼は今、非常に悩んでいるのだ。仕事も手につかないほどに。
134 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:07
―――人間界―――

「ほんまなんやってー。信じてよ〜」
「絶対ウソやし。サンタなんかマジでおるわけないやん。」
「おらんでもおんの!だって見てんもんっ!」

教室中に響く声で喚く少女の名前は、亜弥。
年齢はあのサンタよりも少し下くらいだろう。
そして彼女がサンタを見たという話題は去年からずっと引っ張り続けているものである。

――まぁ、誰一人信じてはくれないのだが。
135 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:07
「じゃぁ亜弥ちゃん、写真撮ってきてよ!去年も見たんやったら今年も見るやろ〜?」
「う〜…、…ええよ!撮ってったるわぁ!」
結論から言うと亜弥はサンタクロースの写真を撮ることは出来なかった。
ずっとカメラを持って待っていたもののいつの間にか眠ってしまったのだ。
しかし朝目覚めたときにはプレゼントがちゃんと枕元に置いてあったため
来年の今頃も『サンタはいる派』として今と全く同じ話題で盛り上がる事になるのだろう。

そして亜弥が去年見たというサンタとは――、
そう。もちろん雲の上で一人項垂れている、あの少年サンタクロースである。
136 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:07
『サンタクロースは人に見られてはいけない』

これはサンタクロース界の掟である。
まぁ、中にはおっちょこちょいなサンタもいるので人に見られることしばしば。
人に見られたからといって特に何かがあるというわけではない。
彼を悩ませているのはサンタクロース界にあるもうひとつの掟の方だ。
137 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:08
――『一人の人間を愛してはならない』――

これは前者とは違い『鉄則』である。
全ての人を平等に愛し、心からのプレゼントを贈る。――彼らの仕事はこういうことだ。
だからこの掟を破るということは、
サンタがサンタである資格を無くす、ということになるのである。
138 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:08

そして彼はその危機に直面している。
――恋をしてしまったのだ。
始めて降りた人間界で出会った少女、亜弥に。
139 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:09
「あ〜、サンタなんて元々向いてなかったのかも…」
雪国出身(しかもまんなからへん)のくせに寒いのはマジ苦手だし、高いトコは怖いし、
おまけに姿を人に見られたし、その上その子を好きにスキになっちゃったんだよ?
ありえねー。

自分で言っておいて少年サンタは更に落ち込む。
「てか、サンタに生まれた時点で間違いだったんだよ。」
辺りを見回した後、彼は長いため息をつき、
んんっと気合いを入れるように空気を飲み込んだ。
140 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:09
「悩んでてもしゃーないか。」
元々彼は楽天的な性格だ。悩み事は似合わない。
パッと立ち上がるとピューっと指笛を鳴らし一匹のトナカイを呼び寄せた。

「また行くのかよ、ミキティ。」
トナカイはやれやれといったように言った。
どうやらこのサンタクロースの名前はミキティというらしい。
そのミキティサンタは鼻をかきながら「うっさい」と冷たく言い放ち
勢い良くそりに乗り込んだ。
141 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/22(水) 00:09
「女の子なんだからさー、その言葉遣いやめなよ」
――失礼。
どうやらこのサンタクロースは女の子らしい。
142 名前:こい 投稿日:2004/12/22(水) 00:11
まぁ、見ての通りあやみきです。
ありがちーな話になると思いますが、お付き合い宜しくです^^
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/22(水) 01:47
おっ、あやみき発見!!期待してます。作詩さん、頑張って!!!!
144 名前:名無し§ 投稿日:2004/12/22(水) 10:53
おぉ〜、新作来てた!

今回の話も面白そうですね(^^

っていうか、タイトルからして面白い(笑
145 名前:メカ沢β 投稿日:2004/12/22(水) 11:27
新作更新お疲れ様です。
雪が降っては「雪の季節」を思い出し、クリスマスが来ればこの作品を思い出すことになりそうです。
応援してます、頑張ってください!
146 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:40
ミキティサンタとトナカイは人間界に降りてきていた。
サンタクロースがクリスマスの日でもないのに人間界に降りるというのは
余程のことが無い限り禁止されている。

「親分サンタに叱られても俺は知らないぞー」
亜弥の家の前にそりをつけるとトナカイは言った。
「いーんだよ、『余程の理由』っつーのがあればいーんだから。」
「はん。ミキティにとっちゃ人間に会うってことが余程の理由なのかよ。
 そんだけの為にそり引っ張る俺の身にもなれっつーんだ。」
147 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:41
不満タラタラにそう言うトナカイをサンタはバシッと一殴り。
「ナマイキゆーな。」
「いってぇ!何すんだっ、この暴力サンタ!」
「あぁ?何って?もっかい言ってみな。真っ赤なお鼻のトナカイさんよぉ!」
トナカイもトナカイで「やんのかぁ?」とカンペキ戦闘体勢。
――てかこのサンタは本当に女の子なのだろうか…?

と、次の瞬間
ごちゃごちゃ騒いでた2人(正確には一人と一匹?)はピタッとその動きを止める。
そして人目につかない木の陰に急いで入った。
亜弥が妹らしき女の子2人と家の外に出てきたのだ。
148 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:41
「亜弥ちゃん、雪やで!」
「な!すっごい綺麗」
あまり雪の降らないこの地域に住む女の子たちにとって、積もった雪が余程珍しいのか
外に出るなり3人はぴょんぴょん跳ね回って喜んでいる。
特に一番下の妹のはしゃぎっぷりはすさまじく、慣れない雪に足をとられて
何度も何度も転んでしまっていた。

「も〜、何やっとん?」
そして亜弥はというとまだ小さな妹が転ぶ度に、
にゃははっとかわいらしい声をあげて起こしてあげている。
なんとも微笑ましい光景だ。
149 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:41
ミキティサンタとトナカイはしばらく身を隠しそんな様子をじっと見ていた。
「かわいーなぁ、3人とも!ってミキティには亜弥しか見えねーよな〜。――あれ?」
いつもならからかうなと一発頭を殴られるのにミキティはずっと亜弥を見つめたまま。

トナカイはなんだかつまらなくて、また雪と遊ぶ3人に視線を戻した。
150 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:42

「――決めた。」

151 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:42
ミキティはいきなりそう呟いた。と、同時に急いでそりに乗り込む。
「お、おい、いいのか!?亜弥まだ外に…」
「いいから!お願いっ!親分サンタのトコ行くよ!」
パチパチっと得意のダブルウインクを決めるとミキティはぐっとそりを引いた。
152 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:42
「失礼します!」
ミキティサンタは親分サンタの家に着くなりそりから飛び下りて
おもいっきり玄関のドアを叩いた。突然の弟子の訪問に驚いた親分サンタは
その大きな目をパチクリさせてミキティを中に入れる。
153 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:43


「人間になりたい…か。」

興奮気味のミキティの話を聞き終えた親分サンタは困ったように考え込んだ。
暖炉の前では、ミキティサンタのトナカイと親分サンタのトナカイが仲良く寝そべっている。
154 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:43
「ミキは…人間に恋をしました。――今度のクリスマス、全ての人たちに平等の愛を持って
 プレゼントを配れなかったら、ミキはサンタの資格を無くしちゃいます…。
 自分勝手なこと言ってんのはわかってます、でも…
 でも、その前にミキを人間にして下さいっ!お願いします…!!」

一気に捲し立てて、必死に頼み込むミキティ。
親分サンタは低く咳払いをして静かに口を開いた。
155 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:43
「…わしが、おまえを人間に変えることはそう難しい事ではない。」
じゃあ!と表情を明るくするミキティの言葉をさえぎって親分サンタは話を続ける。
「だが、サンタが人間に変る時、二つの世界の間にある時空が乱れてしまうんじゃよ。」

「つまり…、お前が人間になったとしても、
 世界の何処に飛ぶかも、いつの時代に飛ぶかも、わしらにはわからんのじゃ。」
それでも人間になりたいのか、という問いも最後まで聞かず
ミキティサンタは「なりたいです!」と叫んだ。
156 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:44
「うぅん…。だがなぁ、
 サンタの資格を失ったからと言ってここに住めなくなるわけじゃないんだし…。
 人間になって、その彼女に会うことなく一生を終えるかも知れん。――それに…」
急に親分サンタの声が弱くなる。

「…それに…?」
ミキティは慎重に聞き返した。
157 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:44
「人間になった時、お前はサンタクロースであった時の全ての記憶を無くす。」
床を見つめて強く言う親分サンタ。
ミキティは目を見開いたまま少しの間、全ての思考力がシャットダウンしてしまった。
そして、考える。

それなりのサンタの家庭に生まれ、それなりに家族は優しく、
それなりに幸せだった今までの生活。――その記憶を無くすというのか?
初めて人間界に降りた時のあのドキドキ感は?
クリスマスの朝に嬉しそうにプレゼントを開ける子供の笑顔を見たときの、あの達成感は?

それに。
亜弥のことを好きな、今のこの気持ちさえも忘れてしまうというのだろうか…?
158 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:45

暫くの間、沈黙が続く。
暖炉のパチパチという音がやけにうるさかった。
159 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:45

「――それでも。ミキは人間になりたいんです。」

キッパリと、ハッキリと、彼女は言った。
記憶を無くすということが「サンタクロースである自分」にとって
「死」を意味するということを分かっていながら。

「ミキはきっと、その人間を愛してるんです。
 たとえ忘れちゃってもそれが今のミキの気持ちです。――だから」
「…そうか。…お前の気持ちはわかった。」
親分サンタはとても優しげに大きな目を細めた。
160 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:45

「…ミキティ」
今まで静かに二人のやり取りを聞いていたトナカイが静かに声をかける。
「ミキティが人間になったら、もう…会えないのか?」
「――そう、なるね。」

ミキティが答えると、トナカイの瞳が少し揺れた。
そんな瞳を見てミキティはぎゅっと胸を押しつぶされた気分になる。
161 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:46
「ちょっとしかパートナー出来なかったけどさ、その鼻、結構夜道走んの便利だったよ?」
そう言ってミキティはトナカイの真っ赤な鼻に優しいキスを落とした。
二人の目からポロリと涙が零れる。

ほんの少しの間とはいえ、何万人のも子供に一緒に夢を運んだんだ。
何度も一緒に人間界に降りてはふざけて笑いあったんだ。

思い出が涙となって、次々に二人の目から溢れ出す。
「今までホント、ありがとう。」
「ミキティに礼言われるなんて、明日はこの雪の街がカンカン照りだなっ」
「っせーよ!んなこと言ってっとまた殴んぞ!?」
162 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/23(木) 01:46
そして、最後におもいっきり笑い合う。
それはまるで最後じゃないみたいなお別れだった。
163 名前:こい 投稿日:2004/12/23(木) 01:52
更新しました。

>>143 名無飼育さん
が、頑張ります…!レスありがとうございました^^

>>144 名無し§様
お!タイトル面白かったですか?最初に付けてたタイトルは長かったので断念したのですが、それが逆に良かったのかも知れないですねw

>>145 メカ沢β 様
ありがとうございますっ!クリスマス話なんでクリスマスまでには絶対更新したい…
頑張ります♪
164 名前:メカ沢β 投稿日:2004/12/23(木) 12:26
更新お疲れ様です。
159の藤本の台詞で「時をかける少女」の安倍を思い出してしまいました。
やはり人の気持ちとは素晴らしいものですね。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/23(木) 23:00
新作キテたー!今回のもファンタジー系でいいですね♪
166 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:56
「…それじゃあ、お願いします。」
決心したようにミキティサンタは親分サンタの前に立つ。

「いいか、ミキティ。お前はたった一人の人間を愛した。
 それは全ての人間を愛す我々サンタクロースにとって、してはならん事じゃ…」
ミキティは反省したように床を見つめた。
167 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:56
「――しかし、何かを本気で愛することはとっても大事な事だよ。」
彼はにっこり笑ってミキティの目の前に大きな手を翳した。

次の瞬間、辺りは真っ白な光に包まれ始めた。
それはそれは綺麗で、まるで雪のような光だった。

ミキティサンタは、その光の中で強く、強く、亜弥のことを想った。
168 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:57

     ■ ■ ■ ■
169 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:57
「ね、ね、聞いてっ!」

クリスマスの日。
すっかり大人の女性に近づいた、あの少女は大好きな恋人の手を引っ張った。
「昨日ね?クリスマスの特番に出たんだけどぉ、サンタの話してたのね?」
ニコニコと楽しそうに話し始める亜弥。
そして、その隣で幸せそうに笑う彼女の恋人。

「…まつーら、昔ね、…あ。笑わないでね!
 昔ぃ、――サンタクロース見たことあるんだよっ!」

物凄く自慢げに話す亜弥を見て、彼女の恋人である少女、
藤本美貴は豪快な笑い声を上げた。
170 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:58
「あーー!!笑わないでっつったじゃん!」
ヒーヒーと涙まで流してソファを叩く美貴。
笑わないでね、とは言われたもののあまりにも『あやや』らしい。

「ホントなんだってばー!中学入ったときくらいかな?…のクリスマスイブに見たの!
 本物のサンタってさぁ、まだ若いんだよ!でぶっちょなおじいさんじゃないの!
 私、びーーーっくりしちゃってさぁ…」
「はいはい。亜弥ちゃん、すごーい。」

「もう!みきたん信じてなーい!」
「んなアホなサンタは今頃クビになってるって。」
亜弥が見たというサンタクロースをバッサリ切り捨てると、
美貴は自分の後に隠した袋を彼女に見つからないようにそっとその右手で掴んだ。
171 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:58
「ホントに見たんだってばー!今もきっとサンタクロースやってるって!
 なーんで、そんな君は夢の無い事言うのかなぁー?」
「…。んなことよかさ、」

拗ねた様にぶつぶつ言う亜弥の手を空いたほうの手で掴む美貴。
そしてうしろの右手を亜弥の目の前に出した。

「…じゃーーん!クリスマスプレゼントっ!」
それまで自分の話を聞いてくれなくて
明らかにフキゲンだった亜弥の目がキラキラ輝きだす。
172 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:58
「…やっぱ、みきたん、だぁーいスキーー!!」
そう叫んでぎゅ〜っと照れる美貴に抱きつく亜弥。
「たんはぁ、まつーらのこと、好きぃ?」
そしてじぃっと美貴の目を見つめて言う。
すると、見る見るうちに美貴の顔は真っ赤に染まっていった。

「ねぇ!」
うじうじしてる美貴に痺れを切らせた亜弥は怒ったような顔を見せる。
と、いっても恐くない。むしろかわいい。
美貴は思わずふにゃっと笑いそうになったが亜弥は本当に怒ってるらしいのでぐっと堪えた。

「ねぇってばぁ〜」
「あー。…うん。――好き、だよ?」
「…にゃはは!たん、真っ赤んなってかわい〜〜!!」
173 名前:サンタやめます! 投稿日:2004/12/24(金) 01:59
「えへへ。まつーらの方がみきたん好きよ!」
「あはは!美貴のが亜弥ちゃんのこと好きーー!!」
「まつーらだって!」
「や、美貴だし。」
「まつーら!」
「美貴!!」

    :
    :
    :
    :

Happy merry Xmas!!


174 名前:こい 投稿日:2004/12/24(金) 02:07
一応このお話はこれで終わりです。
うぅん、終わり方がよく分からなかった…。

>>164 メカ沢β様
なつかしいですね〜「時をかける少女」。今度DVD引っ張り出して見てみようっと。

>>165 名無飼育さん
ファンタジー系ですか。ありがとうございます。
二つ連続アンリアルな感じでしたがこれからはリアルのやつなんかも書いていきたいなぁと思ってます。

175 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/24(金) 11:19
更新お疲れ様でした!私はこの終り方、結構好きですよ^^次はリアルがくるのかな?楽しみにしてます。
176 名前:メカ沢β 投稿日:2004/12/24(金) 11:29
更新、脱稿お疲れ様です。
いいなぁこんなほのぼのした、気持ちがほんわかしてくる話。
次回作も楽しみにしてます。
177 名前:名無し§ 投稿日:2004/12/24(金) 11:53
Σは、早っ!もう終わってる…
更新&完結お疲れさまです。
自分もこうゆうほのぼのした終わり方好きです。
次回作も期待大で待ってます!
178 名前:こい 投稿日:2004/12/26(日) 03:13
>>175 名無飼育さん
お、好きですか?この終わり方。
自分じゃ自信なかったんでそう言って貰えて嬉しいです。

>>176 メカ沢β様
毎度毎度、本当にレスありがとうございます!
自分もほのぼの系が大好きなんで、自分の書いた駄文もそう思って頂けてるのかと感無量ですw

>>177 名無し§様
すいません。雪の季節が結構長かったもので自分でも短っ!っと思ってしまいましたw


次はみきよしのSSになります。
179 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:14
「ミキティ」
「ん?」
「その寝グセ、いいかげん直したら?」
「ヤダ。」
180 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:14


181 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:15
朝。
ベッドの中でのまどろみタイムはよっちゃんの笑い声で見事に吹き飛ばされた。
理由はこう。
美貴のものすごい寝グセあたまをかんなり間近で見ちゃったから。

いやぁ、普段から髪の毛がぼっさぼさってことで有名な
この美貴本人でさえも、よっちゃんに鏡見せられた時にはびっくりしちゃったよ。
久々の大爆発だね。髪の毛たち自己主張しすぎ。

それにしてもよっちゃんさん、さっきから笑いすぎですよー。
182 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:15


183 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:16
「シャワーしてくりゃいいんでねーの?したら一発で直っしょ?」
「だから美貴は直さないっつってんの。」
朝食のパンを齧りながらよっちゃんはずっとクスクス笑ってる。

「なんでよー。
 まぁ、ぼっさぼさ頭のミキティもらしくて好きなんだけどー、よしざーとしては…」
ここまで言ったところでよっちゃんの視線が一瞬、美貴の髪の毛へ。

「ブハハ。」
そんなおかしいのかよ!…いやおかしいんだけどさ。
184 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:16
「やっぱシャワー行って来いって。笑っちゃうんだよ、その寝グセ。」
「やだー、直さないもん。」
「なんでー?」
「今日、仕事ないじゃん」
「んな問題じゃねーっつーの。ドライヤーくらいしろー」
「やぁだぁー」
「うわ、ガキみてぇ」
「美貴まだガキだしー」
「言い方ムカツクー」
185 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:16
ねぇ、よっちゃんさん。
なんで美貴がこの寝グセあたまを直したくないのか、わかる?

――それはね…大好きなよっちゃんが、腕枕しながら優しく撫でてくれた髪の毛だから。
シャワーなんかしたらちょっともったいない感じするじゃん?

恥ずかしいから教えてあげないけどさ。
186 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:17
「なぁ、なんで嫌なのさー?」
「やーだーかーらー」
「理由になってねぇ〜!」
「…じゃあ、よっちゃんさんが当ててみてよ。」
「えぇー?…あ。わかったかも!」

うそ、まじ?わかったの?当たってたらちょいはずいんだけど…。
ドキドキドキドキ…
187 名前:乙女心と寝グセあたま。 投稿日:2004/12/26(日) 03:17
「昨日、風呂上りにそのままミキティ襲っちゃったこと、怒ってんだ!まだ髪乾いてなか…」
「ちげーし!!このエロおやじ!」

ちょっと当たってるかも、とか思っちゃってドキドキしちゃったじゃんか!
もう!どんかんエロよしこには一生わかんないよーだ、美貴のちっちゃな乙女心なんて!
188 名前:こい 投稿日:2004/12/26(日) 03:19
終わり。


ふの〜…この終わり方も自信ねぇなーw
もっと勉強しなければ!
189 名前:名無し§ 投稿日:2004/12/26(日) 12:12
更新お疲れさまでう。
面白かったですよ^^
もっと自信持って下さいよ^^
ギャグ系もうまいですな。
次回作も楽しみに待ってますね!
190 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 13:06
短編もいいじゃないですか!みきよし大好きなんで嬉しいです!
191 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 18:02
何だか笑みが零れてくるようなほんわかした作品ですね。
次回も頑張って下さい。
自スレとは比べ物にならないほど、良いお話を拝見させて頂きました。
ありがとうございます。
192 名前:こい 投稿日:2005/01/04(火) 16:32
>>189 名無し§様
ありがとうございます。がんばってもっと自信…持ちます。

>>190 名無飼育さん
私もみきよし大好きです!自分の中の2大CPのひとつです。

>>191 名無飼育さん
はい!頑張ります。
ていうか、『ありがとうございます』なんてこちらの方がですよ!

193 名前:Do you know? 投稿日:2005/01/24(月) 21:43
知ってる。
よっちゃんと梨華ちゃんが付き合ってるってこと。
どんなにメンバーの前で何も無いような態度をとったって美貴の目はごまかせないよ?
だって、美貴はここに入ってきたときからずっとよっちゃんのこと見てきたんだもん。

美貴がモーニングに入ってきたとき、一番に話しかけてきたくれたのはよっちゃんだった。
眩しすぎるくらいの笑顔を、彼女は美貴に向けた。
その瞬間、美貴の中にあった不安やイライラはパッとどっかに消えてったんだ。
あぁ。美貴はこの人のこと好きだな、って思った。
194 名前:Do 投稿日:2005/01/24(月) 21:43
そんで、よっちゃんと話をするごとに美貴はどんどん彼女を好きになっていった。
あの子が梨華ちゃんと付き合ってるって気づいてからもそれは同じ。
冷めちゃうどころか、よっちゃんの好きな人は梨華ちゃんなんだって知った日
フカクにも美貴はまた彼女のことを好きになってしまった。

――笑顔を見たから。

よっちゃんがふと梨華ちゃんに向けたあの、笑顔を。
それは、あまりにも自然で、やわらかくって、…何より、すっごく幸せそうだった。
その笑顔が美貴に向けられたものだったら、どんなに嬉しかっただろう?
でも、そんなことはないんだと。
あの笑顔は梨華ちゃんの前でしか出てこないんだ、ということも美貴は知っていた。
195 名前:Do 投稿日:2005/01/24(月) 21:44

だからね、
せめて夢の中であの笑顔を見たいなって、美貴に向けて欲しいなって。
そう想って瞳を閉じるのによっちゃんのこと考えると切なくなって全然眠れないんだ。
196 名前:Do 投稿日:2005/01/24(月) 21:44
「みきちゃんさ〜ん♪」

美貴が毎晩キミを想って眠れないなんて、知りもせずに
よっちゃんは今日も美貴に笑いかけるんだ。
いつもみたく眩しい笑顔で。
梨華ちゃんに見せるそれとは、違う、笑顔で。



ねぇ、よっちゃん。
キミが美貴にそうやって笑いかけるたびに、この胸がズキズキ痛むこと、
貴方は、知ってる?


197 名前:こい 投稿日:2005/01/24(月) 21:46
あら、いつの間にかタイトル抜けてた…(汗
ふつうにいちばん上の「Do you know?」ですw
なんでだろうなー?多分知らん間に自分で消したんだろうけど…
198 名前:メカ沢β 投稿日:2005/01/24(月) 22:25
更新お疲れ様です。
ミキティらしいさっぱりとした感じではあるがやはりどこか切ない……ん〜素晴らしいです。
199 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/27(木) 23:35
あー新しいのキテた!いやーミキティが切なくて良いですな。
次回作も期待しておりまーす。
200 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:21

「フジモトー」
201 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:22
おいらが彼女の名前を呼ぶと、藤本は少し驚いたようにして振り向いた。
「…どうしたんですか?」
「どうしたって、お前がどーしたんだよ?」

202 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:22
今からちょうど10分くらい前、藤本は急に楽屋を出て行った。
バタンっ、と大きな音を鳴らしてドアは閉められたが
特に誰もその意味を考えようとはしなかった。
楽屋内はワイワイガヤガヤ、楽しくて穏やかな雰囲気に包まれていたし
藤本自身、よっすぃーと楽しそうに話しをしていた。
とにかく。彼女を怒らせてしまうような雰囲気なんて楽屋には微塵も無かった。

ただ、おいらには分かった。
その強く閉められたドアは彼女が残した何かしらのサインなんだと。

そんで、藤本を追っかけてきて今に至るってワケ。

203 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:23
「急に楽屋出てったりして…マジなんかあったの?」
「…。」
「――よっすぃーのこと?」
「…まぁ。」

どこに向かうわけでもなく、静かな廊下を二人で歩く。
なんとなく沈黙が続いて、ぺたぺたという足音だけがやけにうるさく響いていた。
204 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:23
「さっきまで普通に話してたじゃん。ケンカとかしたの?」
「いや。なんていうか…よっちゃんの笑顔見てたら切なくなっちゃったってとこですかね。」

藤本はフザケたように笑って見せたけど、その笑顔は全然笑ってなんかなかった。

「最近眠れてんの?」
「…いえ、あんまし…。」
「顔色悪いよー。今日は早く家帰って、寝ろ。」
「超めーれーけーだよー」
「おうよ。なんせおいらはリーダーですから。リーダー命令ね、これ。
 しかも記念すべき一発目だから。絶対に守るよーにっ!」
205 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:24
藤本が明るい雰囲気を欲しそうにしてたから、おいらもちょっとフザケて言ってみる。
とはいってもそんな簡単にこの空気が変わるわけでもなく、やっぱし空気は重いままだった。

それならそーで、おいらは前から言おうか言うまいか迷ってた事を言ってみる事にした。
『よっすぃーと石川が付き合ってる』ってこと知ってるのか、って。
したら、彼女から返ってきた答えは意外にもイエスだった。
二人の事を知ってるのは4期以上の子だけだったし
あの二人が最近仕事場でいちゃついてるところを全く見かけなくなってたから、
正直、面食らった。
206 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:24
「矢口さんはー、美貴がどんだけよっちゃんのこと見てるか知らないでしょー?」
藤本は少し自慢げに笑った。

「…知ってて、諦めないんだ?」
「――ていうか、好きなんですもん。」
「それが叶わない恋でも?」

ちょっとひどいことを言った。
それでも藤本は笑ったままだった。

「――ええ。」
207 名前:one-sided 投稿日:2005/02/05(土) 00:25
叶わない恋の片想い。
自分の好きな人は自分じゃない人が、好き。
それがどれだけ切ないかおいらは知ってる。

だってそれはおいらも同じだから。

好きだよ、藤本。
たとえキミが他の人のことを想っていても。

好きなんだ、すごく。

208 名前:こい 投稿日:2005/02/05(土) 00:37
Do you know?の続きだったりします。
美貴ちゃんを救ってやろうと思って書き始めたのにいつの間にか矢口さんまで切ない人になってしまった…w

>>198 メカ沢β様
毎回お褒めの言葉ありがとうございます^^
書くたびにレスをつけて下さってほんと感謝感謝です。これからもメカ沢β様に飽きられないようにがんばります!

>>199 名無飼育さん
>次回作も期待しておりまーす。
ちょっと続かせてみましたがどうでしたでしょうか…?
レスありがとうございました^^
209 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 10:10
更新お疲れ様です。矢口さん…切ねーっすね。すごく良いです。
あとリアル矢口さんにはリーダー命令バシバシ出して頑張ってもらいたいなと思いますた。
210 名前:名無し§ 投稿日:2005/02/10(木) 10:48
久しぶりに来たら新作始まってる!(アタリマエ
2人とも切ないですなぁ。
お互いに幸せになってほしいものです。
211 名前:こい 投稿日:2005/03/13(日) 20:02
せっかく、続いた短編を書いたんで続けてやろうかと思ったけどやめましたw
またバーっと出てきたら載せるかも知れませんが。

>>209
ですねー。新リーダー大変だとは思いますが頑張って欲しいものです。

>>210
どうも、お久しぶりです。新作つってもこれ以上は続きませんが(多分
脳内で二人を幸せにしてあげてくださいねw
212 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:03
あの日。
それは、とてもあっけなく終わりの時を迎えた。
213 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:04
近所の土手を1人ぶらぶらと歩く。空はどこまでも青く子供たちの笑い声で満たされていた。
風がさらさらと美貴の髪を踊らせて、通り過ぎる。
春にしてはとても冷たい風だった。
唇にくっついた髪をそっと指ではらって、また空を見上げる。

青い。本当に青い。

吸い込まれそうな空って言うのはこういう空のことを言うんだろうな、
そんなことをぼんやり考えてたらなんでかわかんないんだけど、ちょっと泣きそうになった。

「雲、一つくらい出てろっつーの。」
なんか切ない気分になるよ。
214 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:04
今日はあの日から初めてのオフで。ひとりぼっちの初めてのオフで。
どう過ごしていいかわかんなかったから
気分転換に散歩でもしようなんて思ったのが間違いだった。

逆に超センチメンタルじゃん、美貴。
215 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:05
「お母さーん」
美貴のちょっとうしろから男の子の声が聞こえた。
美貴は特に意味もなく振り向いてその子を見る。

「ね、これいいでしょー」
デパートかどっかで貰ったのだろうか、買い物袋を両手に持つ母親の周りを
嬉しそうに回る男の子の手には真っ赤な風船が握り締められていた。

かわいー
微笑ましいそんな光景に、美貴は小さく笑った。


「あ。」これは美貴の声。
「あっ!」で、これは男の子の声。

これらの二つの声は見事にハモった。
216 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:05
ザッと冷たい風が吹いたと思った瞬間、その子の手からふわっと風船が逃げた。
男の子はただ呆然として、まだ手の届く距離にあるそれをとろうとはしなかった。
その間に風に乗ってフワフワ上下しながらゆっくりと空へ昇っていく真っ赤な風船。
しばらくそんな様子を眺めた後、男の子は大きな声をあげて叫ぶ。

「あーーー!!僕の風船っ!」

頑張って風船をとろうと飛び跳ねるものの、もちろん風船にはもう届かない。
それでもその子は跳び続けていた。
そんな姿がなんか今の美貴自身とかぶって見えて思わず一人で苦笑い。
217 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:06
風船はもう届かないのに。
(亜弥ちゃんはもう戻らないのに。)

なんだかなー、わかるぞボウヤ。その気持ち。
知ってるんだよね。もう届かないなんてことは。それでも悪あがきせずにはいられない。
あぁ。切ないなー。
218 名前:センチメンタルスカイ 投稿日:2005/03/13(日) 20:06
美貴は、その男の子の風船が見えなくなるまで目で追いかける事にした。
この真っ赤な風船が青に消えたら、もう美貴の恋も終わりにすると心に決めて。


風船と空。赤と青のコントラストは、それはそれはめちゃくちゃキレイで。
いつの間にか空の中にぽつんと浮かんだ風船は美貴の瞳の中でユラユラと滲んで、
――消えた。
219 名前:こい 投稿日:2005/03/13(日) 20:09
ちょっと前に書いたやつを書き直してみました。
なんだかんだ忙しくってうp出来ないでいたら変に現実とリンクしてしまってw

最近、切な系しか書いてないなー
甘いの書きたいけど結構難しいもんですねぇ。
220 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 22:14
お。あやみきですかぁ。ん〜…切ない!
ミキティなにげに切ない役多いっすねw

あと、こいさんの書く甘いお話大好きなんで頑張って下さいね(もち切な系も好きですよ^^
221 名前:§ 投稿日:2005/03/16(水) 01:12
切ないっすねぇ〜
失恋と飛んでいった風船がマッチしてて
より一層切なさを引き出してますね
やっぱり巧いっす!^^
p.s.名無し取りましたw(ドーデモエエ
222 名前:こい 投稿日:2005/03/20(日) 02:28
>>220 名無飼育さん
そうですねー。美貴ちゃん好きなんでついつい登場させてしまうんです。
てか、ヲイラの幼稚な甘いお話大好きだなんて言ってもらえてかんなり嬉しいです!プ、プレッシャー!

>>221 §さん
う、巧い!?もったいないお言葉です…
あら名無し取ったんですね〜。これからもどうぞヨロシクです!

んでは、みじか〜いいしよしを一つ。
223 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:29
「うおー、あのビルすげー形。見てみ?」

一日のスケジュールを終えホテルへ向かうバスの中。
隣の席に座る私の恋人は窓に張り付いて子供みたいな声を上げる。
いつもなら寝てるだけの移動時間だって、よっすぃーが隣だとすっごく楽しい。
とはいえ、仕事終わりの疲れ切った体だ。
ユラユラ気持ちよく揺れるバスのせいで、私は数分もしないうちに意識を手放していた。

224 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:29
目を覚ましたとき、バスに乗り込んでから数十分しか経っていないんだろうけど
車内はもう薄暗くなっていた。

6時くらいかな、

そう思って窓の外を見ようと顔を横に向けたらばっちしよっすぃーと目が合った。
「あ、起きたんだ。」
「うん。…って、何?そのカッコ。」
225 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:30
よっすぃーはなんだかすこしおかしな姿勢でマジメ顔。
背もたれにもたれるワケでなく、前の席にもたれるワケでなく。
そんでもってちょっと斜め座りで。なんていうか結構疲れそうな座り方。
226 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:30
「え?…あぁ。石川寝ちゃってるし。起こしちゃったらかわいそうだなって、」
西日がすげー眩しいっしょ?

よっすぃーはいたずらっぽく笑いながらきちんと座りなおしてみせる。
「きゃ!…ホントだ。――そんなのカーテン閉めれば」
良かったのに、って言う前に
前の席で景色を見ながら楽しそうにおしゃべりしてる絵里とさゆに気づいた。
そっか、このバスのカーテンは前の席のと共用だから…。
――優しい人。

227 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:31

「よっちゃん、好きよ。」

突然告白なんてしてみたらよっすぃーはぶふっと噴き出す。
ったりめーだっつーの、ちっちゃい声でそう言う彼女の顔は
逆光のせいでよく見えなかったけど、きっと真っ赤なんだろうなぁ。

「ひとみちゃん、かわいー♪」
「ひとみちゃん言うなっ!」

228 名前:バスの中。 投稿日:2005/03/20(日) 02:31
バスは私たちを乗せて黄昏の中を走る。
ホテルに着いたら、今日はいつもより素直に甘えてみようかな?
ホントに本当に大好きよ、ひとみちゃん。

229 名前:こい 投稿日:2005/03/20(日) 02:35
終わりです。

どうなんだろ?微妙…
230 名前:名無しいしよし作者(くろ) 投稿日:2005/03/20(日) 15:19
こちらでは初めまして。
あなたが小説家だということに今まで気がつかなくて…。
なんてもったいない。
いしよしに惹かれて今日知って、最初から一気に読ませていただきました。
好きな作者さんがたくさんいるんですが、こいさんも今日からその中に入っていただきます(強制)
これからも期待していますよ。
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 19:56
わぁー!こいさんのいしよしキターーー!
ほのぼのしてて良いんじゃないですか?よっちゃんのさりげない優しさがGOOD!照れ屋さんなとこがまたいいっすね♪
232 名前:ひすい 投稿日:2005/03/21(月) 07:11
いしよし(≧ω≦)人(≧Д≦)人(≧◇≦)ばんざーい!!!

甘い甘い(*´∀`*)溶けますね。いいです!すごく(つДT)
よっすぃ〜カッケー!やっぱ、男前なよっすぃ〜が素敵ですねぇw
作者さん、ありがとうヽ(´▽`)ノ
233 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/22(火) 21:42
優しいよっすぃに(*´∀`)ポワワです。
いしよしもみきよしも期待してます(・∀・)アヒャ
234 名前:§ 投稿日:2005/03/24(木) 23:33
実は自分、石吉き…(殴
やけど、これはほのぼのしてて程よく甘くてイイです!
しかもよっすぃが優しく照れ屋なところが自分的にストライク!w
>>222
全然もったいなくないっすよ!
235 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:52
外は雨だった。
空気は変に生温くって、なんだか気持ち悪い。

「ふぅ。」

こんな日は気分まで最悪だ。
結露だらけの窓に張り付いて私は一つ、ため息を吐いた。
236 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:52

237 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:53
「なにひへん?」

うしろから変な声が聞こえたと思ったら、
よっちゃんがペコちゃんのキャンディーを咥えたまま突っ立っていた。
私が聞き取れない、と言った表情で彼女を見つめてると
よっちゃんは思い出したようにアメを口の中から出して笑う。
「何してん?」
238 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:53
「別に。…雨だなーと思って。」
「ふーん」
特に興味もなさそうな声をあげて、よっちゃんはキャンディーを咥え直した。

「よっちゃんは?」
なんでここにいんの?
私の隣に来て、じぃっと窓の外を眺めてる彼女に聞く。

「あ?アタシ?――あぁ!いしかー呼びに来たんだよっ。次、さつえー、梨華ちゃんの番。」
口の中でアメをカチャカチャ鳴らしながら器用に喋るよっちゃん。
私は、そう。とだけ呟いてまた窓の外に目線を戻した。

「『そう。』じゃねーよ。行かねーの?」
「…順番変えてもらってよ。私、最後でいいからさ。」

そう言ったら、よっちゃんは困ったように黙り込んでしまった。
――当たり前か。私ワガママすぎるよね。
239 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:54
「う・そ!もう行かなきゃ。」
ニコッと笑顔を作って隣を向くと、さっきまでヘラヘラ笑ってたよっちゃんが
いきなり真面目顔でこっちを見ていた。

――その顔、ズルイよ…。

240 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:55
「何があったか知んねーけどぉ、」
アメが全部溶けて棒だけになったペコちゃんキャンディーがぺっと乱暴に吐き出される。

「…辛い事があったらスグ、アタシに言えよ?」

ぶっきらぼうな振りして、よっちゃんはいつも嬉しい言葉を私にくれる。
そういうとこ、大好きだよ。
「うん。ごめん。――じゃ、遅れちゃうとヤバイからもう行くね?」
241 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:56
「つー…かぁ、そんな顔してちゃさつえー行けねぇだろぉ?」
しゃーねーなぁ、とかなんとか呟きながらよっちゃんはニヤニヤ笑って私の腕を掴む。
私がその意味を理解できないでいると、ゆっくりよっちゃんの顔が近づいてきて。
反射的に目を閉じた次の瞬間、
私の口の中はペコちゃんキャンディーのイチゴ味でいっぱいになった。

「…ん、ふっ…」

242 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:57
長いキスが終わって、目を開けると
そこにはガシガシと頭を掻いて私を見つめるよっちゃんの姿。

「…とりあえず、早く撮影行って来いっ」
「ふふ♪…うん!」

満面の笑みでよっちゃんにピースサインを決めると私は急いでスタジオへ走った。
よっちゃんのおかげで元気にもなれたし今日は――…って、私なんでブルーになってたんだ?
ん〜…。
――ま、いっか!

私が落ち込んだときはいつだって、よっちゃんが元気にしてくれるもんね!
へへっ。
243 名前:あめ 投稿日:2005/03/25(金) 03:57
終わり
244 名前:こい 投稿日:2005/03/25(金) 04:10
>>230 名無しいしよし作者(くろ)さん
わー!!兄ちゃん…さんじゃないですか!あ、どもこちらでは初めまして。
きょ、強制加入っすか?
まぁ、くろさんは自分の中の好きな作者様方の中にすでに入ってますがねw

>>231 名無飼育さん
さりげない優しさがよっちゃんのカッケーところなのです!

>>232 ひすいさん
いしよし(≧ω≦)人(≧Д≦)人(≧◇≦)ばんざーい!!!
えへへ。ヲイラもいしよし大好きです。
こんないしよしでも喜んでもらえて大変うれしいです!

>>233 名無飼育さん
ようこそいらっしゃいました^^
自分だっていしよしもみきよしも期待してます(・∀・)アヒャ w
○○さんに期待されたもんですから、そっこーでこのやつを書いてみました。

>>234 §さん
スイマセン、スイマセン。
またもやいしよしを書いてしまいました…w懲りずにまた来てやって下さいね。

245 名前:TETRA 投稿日:2005/03/25(金) 19:45
懲りずにまた来ちゃいました!w
っていうか自分がこいさんの小説読まへん訳ないっす^^
いやぁ〜今回もペコキャンイチゴ味位甘いっすね〜

p.s.こいさんの書く小説は甘いのも切ないのもすきです!
でもこいさんの方がも〜っと好きです!(殴

246 名前:名無しいしよし作者(くろ) 投稿日:2005/03/25(金) 23:27
更新お疲れさまです。
ぶっきらぼうだけど優しいよっすぃ〜に、名古屋ラストを思い出しました。

p.s.好きな作者だなんてすごく照れます。
247 名前:ひすい 投稿日:2005/03/26(土) 05:16
待ってました〜♪
よっすぃ〜優しいなぁ。・゜・(ノД`)・゜・。おいちゃん泣けちゃうよ。
二人が幸せでいてくれたら、おいちゃんも幸せなんですよ。

作者さんありがとう・・・。
寒い冬も寂しい気持ちも忘れられる時間をくれてありがとう。
248 名前:名無しの忍者Y 投稿日:2005/03/26(土) 14:02
更新お疲れ様です。
私はこいさんの作品を最近知りました。
よしさゆ最高です。もちろん他の作品もとてもステキです。
今更よしさゆの感想を書くのもどうかと思ったんですが
でも思い切って書かせていただきます。
続きが読みたいな〜なんて思っちゃってます。
季節的に無理でしょうが、また冬になって思い出していただけたら嬉しいです。
これからも頑張ってください。
249 名前:名無し読者 投稿日:2005/03/29(火) 04:58
はじめまして。作者さんの作品読ませていただきました。
天才を発見したと思いました。かなりいいです!
これからもがんばってください。応援してます。
更新おつかれさまでした。
250 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:39
まいちんと2人で遊んだ後、アタシ達はまいちんの家でちょっと遅い夕食をとっていた。

「アヤカ、拗ねちゃうんじゃない?」
まいちんは何がそんなに楽しいのか、さっきからアタシと2人でとった写メを
これでもかというほどアヤカに送りつけてる。
多分この前アヤカがまいちんに内緒でウチに泊まりに来た復讐なんだろうけど。
全く、2人で何を張り合ってるんだか…

「モテる女は辛いよ。なんだこの三角かんけー」
「三角どこじゃないって。
 ハローの皆もよしこのこと狙ってるからね、昼ドラ並にドロドロだよー」
「こわっ」

アタシは怯えたようなフリをしてソファの上で身体をよじる。
したら、ちょっとオーバーになりすぎてまいちんに大笑いされた。
251 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:39
「まー、まい達のは冗談としてさー、本気でよっしーのこと狙ってる子いると思うの。まい」

開けようとしてるビンの蓋が余程堅いのか、しかめっ面で話しを続けるまいちん。
アタシはその話しをハイハイと聞き流しながら、彼女からビンを奪い取った。
「ねー、まいの話し聞いてんの?」
「あぁ、聞いてる聞いてる。うわ、マジかてーな、このビン。むぎー!」
「聞いて無いじゃん、もー」

まいちんは話しを続けるのをあきらめて次はビンと格闘するアタシを観察しだした。
しばらくそんな様子を見た後、彼女は思い出したように口を開く。
252 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:40

「よっちゃんはバリア張り過ぎなんだよー」
「…?何それ。誰のマネ?」

くそぅ。開かねー

「美貴。」
「へ?…あっ!開いた。」

『美貴』って名前を聞いてちょっと動揺した。
動揺してビンが開いたと思ったら、…中身が飛び出た。
あーあ、手についちゃったよ…汚ねー

「ぷっ。よしこちゃんと開けなよ!」
まいちんは持ってたクッションをバシバシ叩いて大ウケ。
って、笑うなよ!せっかくお前のために開けてやったのにぃ!
「だー、もう最悪だよー…。手ぇ洗ってくる…」
253 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:41
まだ一人で笑ってるまいちんの横を通ってアタシはキッチンへ向かった。
…ミキティがまいちんにそんなこと言ってたんだー。
つーかバリアってどういう意味なんだろ?
そうまいちんに問いかけようと蛇口に手をかけてリビングを振り返ったその時だった。
あ゛ーーーー!!というまいちんの叫び声が部屋中に響き渡る。
急にどうしたんだよ、なんて暢気に言いながらアタシはきゅっと蛇口をひねった。

「…み、水出しちゃダメーーー!!」
「はぁ?」

254 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:41
バシャーーーー!!!

……。時既に遅し。
蛇口から噴水のように噴出す水。水道の周りは水浸し、もちろんアタシも。
そうそう、知らない人のために言っておくけどもまいちんちの水道は
前にアタシが遊びに来た時から壊れていたりする。

「つーー…。まいちん、まだ直してなかったんだ…」
「え、えへへー。よしこごめんねー?」

その後はモノグサまいちんのせいで水の処理にてんやわんやで。
結局、アタシが一番聞きたかったミキティの話しはそこで終わってしまった。

255 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:42

256 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:42
翌朝。

「はよー。」
「おはよーございまーす。
 あれ?吉澤さん何かあったんですかー?めっちゃ疲れた顔してますよ?」
「おー、麻琴聞いてくれよー。あんね?」

麻琴に昨日のこと一部始終話してたらなんかまたムカついてきたぞ。
ちきしょう。
次行った時まだ直ってなかったら、そっこーで大家呼んでやるんだからっ
(怖くて壊れたときから言ってないらしい)
257 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:42
バシッ。

握りこぶしを作ってまいちんへの怒りを表現してたら頭に軽い衝撃。
「いってー」
見上げたらそこに台本をひらひらさせて笑ってるミキティが立っていた。
「何ひとりで怒ってんの?」
「…あれ、麻琴は?」

さっきまで隣に座っていたハズなのに、ふと気づくと楽屋にはアタシとミキティだけ。
「辻ちゃんが来てどっか行っちゃったよー」
ミキティは台本をぽんと机の上に投げて麻琴が座ってた席に腰を下ろす。
隣に座ったからといって特に何を話すでもなく、楽屋には久々に静寂が訪れた。
258 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:43
――。気まずい。
いや、いつもなら大した事ないんだけども
昨日まいちんが言ってたことが気になって、なんだかキンチョーしてしまう。


バリアってどーゆー意味なんだよー


「…あ。」
「!…なんでよっちゃんがソレ知ってんの?」

やべー、声に出しちゃった。
ゆっくりミキティの方を向いたら彼女はちょっと驚いた呆れ顔。
「まいちゃんに聞いたんだ?」
別に隠してもしょうがないんでアタシは素直に頷いた。
259 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:43

260 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:44
「よっちゃんは、いつもバリア張ってんだよ」
「…。いや、だからその意味がわからん。」
「じゃあそれはよっちゃんが無意識に張ってるってことじゃん。」
「バリアを?」

ミキティは首だけで頷くと体ごとこっちを向いてアタシを見つめた。
――ホント綺麗な顔してんなーコイツ。ドキドキする。


「よっちゃんさんはぁ、いーっつもニコニコしてて誰も自分のテリトリーに入れないの。」
「…そっかぁ?」
気づかないフリをしたけど結構図星かもしれない。――と思う。
261 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:45
「笑顔のバリア。巧いこと誰も傷つけずに自分から遠ざけてんだよ、それ。」
「……」
何も言い返せなくって、固まってしまった。
今、誰か楽屋に戻ってきたらビックリするぞー
2人して黙り込んで見つめ合っちゃってるんだもん。

♪♪♪〜

実際には数秒間の。アタシにとってはすごく長い沈黙を破ったのはアタシのケータイだった。
262 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:45
助かった、と思った。
だってこれ以上ミキティに突っ込まれたら、それこそアタシのバリアってやつが
壊されてしまうんじゃないかって怖くなったから。

「ちょいゴメンねー」
ケータイを手に取るとアタシは急いで楽屋を出た。
普段ならふつーにその場で電話に出るんだけど、
アタシはどうしてもこの空気から逃れたかった。
263 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:45

264 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:45
『ふーん、そんなこと言われたんだ〜』
電話の相手はまいちんで。アタシはさっきミキティに言われたことを全部話した。
「なー、まいちんもそーゆー風に思う?」

すごく情けない声だと思う。
こんな声、まいちんかアヤカだけにしか聞かせられないだろうなー
265 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:46
まいちんはアタシの問いに少し考えてから「うん」と答えた。
『昔はね、まいもそー思ってたかも。でも今はちょっと違うかな?』
「じゃあ今はどー思ってんのさ?」
『少なくともまい達が3人でいるときは美貴の言うバリアってのは取れてんじゃない?』
「ふー…ん」
『あのさー、まい思うんだけど
 よしこはもうちょっと他の人にも頼っていいんだと思うよ。まい達だけにじゃなくってさ』

無理だよ、って言おうとしたら「よしこには無理だと思うけど」
って先に言われてしまった。――まいちんは結構なんでもお見通しだなぁ。
266 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:46
『てゆーかさぁ、よっしーって美貴が好きでしょう?』

「ぶはは」
『なーんで笑うのさっ、まいの勘違いだった?』
「――いや。…ホントにまいちんは全部お見通しだなーと思って。」

すげーな、マジで。なんでバレてんだ…
まさか、アタシって顔に出るタイプなのか?ミキティにまでバレてたらヤバくね?

「なんでわかったのさ?」
『なんとなくだよ。アヤカもそうじゃないかって言ってたし』
「2人ともこえーよ。アタシのこと見すぎだろ」
『怖いってなんだよー。でもよっしーのこと見てんのはまい達だけじゃないよ?』
「は?あと誰いんのさ?」
『美貴だよ。』

『だって普通に接してるだけじゃ気づかないよー。そのバリアってのに。』
267 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:47


「吉澤さーん、本番始まっちゃうよ〜!」


「あ、ごめん。麻琴呼んでんや。本番だってー」
『おー頑張ってこいよ。…美貴のこともね〜♪ふははっ』
「うるへー。んじゃ、切るよ」

まいちんが電話の向こうでまだひとりはしゃいでっからこっちから一方的に切ってやった。
人のおせっかいやいてる暇があんなら自分ちの水道管直しやがれ。…ったく。
268 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:47

269 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:49
仕事が終わって、帰りの支度をしてたらミキティが話しかけてきた。
最初は「そのピアスどこで買ったの?」とか他愛ない会話をしてたんだけど
アタシはどうしてもさっきの話しの続きがしたくて強引に話しをそっちにもってった。


「前から思ってたけどミキティって、すんげーズバズバ言うよね〜」
「それが美貴のいいところだから。自分で言うなっつーの、ねぇ?」
ミキティはいひひっと笑ってアタシに同意を求めた。
でもアタシは返事を返してる余裕なんてなくてずっと彼女を見つめたまんまだった。
270 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:49

「――そうやって遠慮無しに突っ込んでくっからさー、
 …ミキティはもう、アタシの心の中に入り込んじゃってるんだよ…。」

これは告白だった。アタシなりに精一杯の、告白だった。
じって瞳を見つめてたら彼女にもこのキモチが伝わったらしく
でっかい目をさらにでっかくして見つめ返された。
271 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:50

「美貴はぁ、…よっちゃんの心の中には入れないと思ってた。」

泣き笑いのような表情で彼女は続けた。

「そこら中に『立入禁止』って看板立てられてるみたいで。
 もう、これ以上は入ってくんなってゆー笑顔で美貴を見るから。
 美貴は、よっちゃんの心の中には入れないんだって、そう思ってた。」

零れそうになった涙はとうとう重力に耐え切れなくなって彼女の頬をつたう。
アタシは急いで彼女の華奢な身体を抱きしめると
今度はキチンと『好きだよ』っていう告白をした。
ミキティはコクコクとアタシの胸の中で頷く。
そんな彼女がすごくかわいくって、
アタシはミキティのサラサラな髪の毛にそっとキスを落とした。
272 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:50
今、2人の距離はゼロで。心の距離もゼロで。
なんだか、すんごく安心する。
今までまいちんやアヤカでさえ触れなかったアタシの心の中の何かを
ミキティがぎゅって抱きしめてくれてるんだって思う。
273 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:50
「よっちゃん、」
「ん?」
「美貴も好き。」
「…うん。えへへ」

今日、家に帰ったら真っ先にまいちんとアヤカにこのことを報告しよう。
いつもはアタシのこととりあってぎゃーぎゃー言ってっけど
あの2人なら、たぶん自分のこと以上に喜んでくれると思う。
アタシは本当に良い親友を持ったなぁ、なんて。
274 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:51

「ねぇねぇ、よっちゃん」
「何?」
「今日、美貴よっちゃんち泊まりに言ってもいいかな?」


……2人に報告すんのは明日にしよう。うん、そうしよう。
ごめんよ、アタシの大好きな親友たち…
275 名前:バリア 投稿日:2005/04/04(月) 00:52
終わり
276 名前:こい 投稿日:2005/04/04(月) 00:58
ただ、まいちゃんの家の水道のことを書いてみたかったんです。
それからまいちゃん独特の呼び方(美貴とよっしー)を使ってみたかったw
吉澤里田アヤカの3人好きだー
277 名前:こい 投稿日:2005/04/04(月) 01:13
>>245 TETRA さん
ん?TETRA さん…?
>でもこいさんの方がも〜っと好きです!(殴
じゃぁ、ヲイラの方がも〜っと好(ry

>>246 名無しいしよし作者(くろ)さん
照れないで下さいよー、まじで好きなんですからw
名古屋ラストは良かったですねー、よっちゃんらしくて好きだ。

>>247 ひすいさん
>二人が幸せでいてくれたら、おいちゃんも幸せなんですよ。
おいちゃんだって幸せです(キッパリ
>寒い冬も寂しい気持ちも忘れられる時間をくれてありがとう。
ひすいさんに何があったんだ?wこんな駄文でよければ悪い事はどんどん忘れちゃってください

>>248 名無しの忍者Yさん
こんなとこまで来てくれてありがとうございます^^
やっぱり忍者ってのは神出鬼没なものですね!w

>>249 名無し読者さん
て、て、天才ーー!?ビクーリして画面の前で噴出してしまいました(笑
「やっぱりただのアフォじゃん。」って思われないように頑張ります…!
レスありがとうございましたー


278 名前:名無し飼育 投稿日:2005/04/04(月) 23:53
更新お疲れ様でした。
まいちん家の水道事件がネタになってて面白かったです。
てか、まいちんは美貴様のこと「美貴」って呼んでるのかー。知らなかった
279 名前:名無しいしよし作者(くろ) 投稿日:2005/04/06(水) 00:26
更新お疲れ様でした。
毎日のように覗かせてもらっていて、たまたま見なかった日に更新されてたー(笑)
この作品にこれ以上のタイトルはないですね。
作者さんは、本当によっすぃ〜のことをよく観察しておられて感心しました。
280 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/07(木) 20:12
この話すごく好きです。みきよしもですけどまいちんがいいですねー。
よっちゃんがよっちゃんらしく描かれていてすげーと思いました。
こいさんのみきよしこれからも期待大です(あといしよしもw)。
281 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/16(土) 18:09
とてもいい話しでした。
里田さんもみきよしも、いろんな出来事も、ぜんぶすごく自然に描かれていて。
ほんとに面白かったです。
282 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:48
私が彼女に初めて会ったのは、ある雨上がりの夜のことだった。
残業が終わって外に出ると昼過ぎから降り続いていた雨はもうすっかり止んでいた。

「よかったー」

傘を持ってきてなかったので助かった、
そう思いながら私は、水溜りに月が映る夜の道を歩き出した。

駅までの近道、路地裏をどんどん進んでいく。
少し歩いていると、斜め前の方からバシャバシャという音が聞こえてきた。
私はふとそちらの方に視線を移す。

「ん?」
283 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:48
目を凝らすと、そこにいたのはひとり水溜りで遊んでる、…明らかに変な人。
その人は雨は止んでいるのに傘を差して、子供みたいに水溜りの上を選んで歩いていた。
距離があるのではっきりはわからないけど、たぶん女の人だろう。
…まぁ、そういうのはどうでも良くて、こういう変な人は無視するのが一番だ。
私はしっかり前だけを見ると足を速めた。

「……。」

スタスタスタスタ。――視界の端っこでバシャバシャ水溜りを鳴らす人。
スタスタスタスタ。――彼女の傘がチラチラと目に映る。

気になる。すごく。
私はほんのちょっとだけ、そう自分に言い聞かせると彼女のほうに目を向けた。
しまった、
と思った。彼女と目がばっちし合って、つい足を止めてしまったのだ。
284 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:49

285 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:49
人気のない夜のオフィスビル街。
ビルとビルの間で私は次の一歩を踏み出せずにいた。
なぜか彼女から視線をはずせない。

「…どーしたのー?」

そんな私に見かねたのか、抑揚のない声で彼女が言った。
何故そのまま自分の前から去っていかないのか、早く行きなよ、といったような調子だった。

「あ、あのー」

そのときの私は何を思ったのだろうか、気が付くと彼女のほうに歩み寄っていた。
傘のせいで表情はわからないけど、向こうも驚いた様子だ。

「…、何?知り合いだっけ?」

怪訝そうな顔で聞いて、彼女は傘をたたむ。
そしてすぐ横にある小さなビルの階段に座り込んだ。
月明かりにさらされた彼女はビックリするほど美しい顔立ちをしていた。

「ここ、濡れてないから大丈夫だよ。」

そう言って自分の隣のスペースをパンパンと手で叩く。
逃げるにはまだ遅くなかったと思う。
こういう変わった人とは関わらない方がいいんだ。
頭の中ではそう思ったけど、私は吸い込まれるようにして彼女の横に腰を下ろした。
286 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:50
じぃっと綺麗なひとみで顔を覗き込まれた。
すごくドキドキした。

「…な、なんですか?」
「知り合いー…じゃないよね?忘れてるだけだったらごめん。アタシ物忘れ激しいから。」
「あ、いえ。全然、知り合いとかじゃないです…」
「あっそう。アンタ変わった人だねー。ふつーの人はアタシなんか無視して行っちゃうよ?」

私はなんだか返答に困ってしまって彼女の手に視線を落とした。
指はすらっと長くって、爪は綺麗に切りそろえられてる。
『変な人』って思ってたけど、もしかしたら案外ちゃんとした人かもしれないと感じた。
それを彼女に伝えたらクスクスと面白そうに笑われた。
やっぱりアンタ変な人だよ、と。

「…あなたには言われたくないけど。」
「だろーね。アタシもそう思う。」

そう言ってまた笑う。それは子供みたいにすごく無邪気な笑顔で。
私の心臓が一瞬、ドクっと動いたのがわかった。
287 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:50

288 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:50
「名前は?」
「へ?」
「アンタの名前。」
「石川、…梨華。」

話しをしたのはホント少しだけだったんだけど信頼できる人だと思った。
だから素直に名前を言ったんだ。

「あなたは?」
「吉澤ひとみ。」

彼女はそう言うとにっこり笑ってみせた。
私はこの人の笑顔に弱いなと思った。そして、もっとこの笑顔を見ていたいとも。

「じゃあ、ひとみちゃんだね!」

私がそう言ったら、彼女は露骨に嫌な顔をしたけども
反論する間を与えずに、呼び方は『ひとみちゃん』で押し通した。

「やっぱ梨華ちゃんって変な人。」
「梨華ちゃん?」
「だってアンタが下の名前で呼んでくんだから、アタシがそう呼んでも文句ないっしょ?」
「うん。」
「ん。」

なんか、嬉しかった。
呼び方だけでこんなに人に近づけたと感じるのは初めてだった。
289 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:50

290 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:51
「ひとみちゃんってすっごい変わってるよねー。」
「アタシに言わせりゃ梨華ちゃんもだけどね。」
「そういうんじゃなくって、」
「わかってるよ。どうしてこういうことしてんのか、でしょ?」

二人同時にビショビショに濡れたひとみちゃんの靴に目を向ける。
雨上がりに傘を差してひとり水溜りで遊ぶ。どう考えても怪しい行動だ。
私はうん、と頷いてその理由を聞いた。
なんでだろうねー、ひとみちゃんはそう言いながら空を仰いだ。

「なんか水溜りで遊びたくなったんだよ。そんだけ。」

にひひっと笑い声を漏らす彼女の視線の先は明るく輝く月へ。
私も彼女に倣って月を見上げる。満月がちょっと欠けたような形をしていた。
291 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:51
「んー、ちょい違うか。や、違うことはないんだけど」

言いたい事がまとまらないのかひとみちゃんは乱暴に自分の髪を乱した。

「なんつーかね、変わった事して人にかまって欲しかったん、だよねー…」

最後の方をごまかしたのは何故だろう。きっとこれが彼女の本心だから。
ふと視線を彼女に戻すと、ひどく頼りない瞳をしていてビックリした。
なんだろう。
それはすごく繊細で、触っただけでほろりと散ってしまう花びらのようだった。
だけどその表情はすぐに隠されてしまう。
ふにゃりと笑ったひとみちゃんの横顔には、さっきみたいな脆さはひとつも映ってなかった。

「……。」

ひとみちゃんは月を見上げたまんま、
私はひとみちゃんを見つめたまんま、しばらく沈黙が続いた。
不思議と嫌な感じではない。
水を含んだ空気が私達の間を埋めていた。
292 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:52
「さ。あんまりアタシなんかと話してたら電車なくなっちゃうよ」

急に立ち上がってひとみちゃんはパンパンとズボンの汚れを払った。
私は帰るように促されてもその場に座ったまま動かなかった。

「…どーしたよ?ほら立てって」
「やだ。」
「なんでぇ?」
「――もうちょっと一緒にいたいの。」
「……。」
「ううん。もうちょっとなんかじゃない。私、ずっとひとみちゃんと一緒にいたいよ?」

変に語尾がかわいらしく響いちゃって、なんか悔しい。
というか「私、急に何言ってんだ?」と、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
ひとみちゃんの顔は固まったままだった。
293 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:52

「――それって告白ぅ?」

ふへへ。ひとみちゃんはすごく嬉しそうに笑った。
彼女が月を背にしていたせいか、それとも私の気のせいか、
どことなく泣いてるようにも見えた。
私は小さく頷く。私はひとみちゃんに恋をしてるんだ、そう思った。

「うん。ひとみちゃんって、なんか放っておけないんだもん。」

差し出された手をとって、私も立ち上がる。

「そんなん言われたの初めてだー。アタシって結構ほっとかれて育ったから。」
「だからじゃないの?放っておけないのは。」

そうなの?――たぶんね。
あんま理由になってないと思うんだけど――そうかなぁ?
294 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:54
それからホントに他愛ない会話をしながら二人で雨上がりの路地裏を歩いた。
なんだかドキドキしちゃって、私は二つの影を見つめたまんま。

「ねぇ、梨華ちゃん」

ザッという砂利の音がしてひとみちゃんは足を止めた。
少し行き過ぎた私は急いで彼女のほうを振り返る。

「ちゅーしていい?」
「…どうぞ、」


月が作り出す二つの影は、ほんの一瞬だけひとつになった。
それは、ある雨上がりの夜の出来事。
295 名前:雨上がりの夜 投稿日:2005/05/26(木) 22:55
おわり
296 名前:こい 投稿日:2005/05/26(木) 23:11
だいぶ下がってる状態からageるのってすごく気が引ける…
それもこんな駄文で申し訳。そろそろ更新しなきゃなーと勢いで書きましたw

>>278 名無し飼育さん
水道ネタはフレッツで見てからどっかで使ってやろうと思ってたのですよ。
面白いって言って下さってありがとうございますー

>>279 名無しいしよし作者(くろ)さん
またまた足を運んでくださってありがとうございます!
>作者さんは、本当によっすぃ〜のことをよく観察しておられて感心しました。
よっすぃ〜観察は自分にとって生きがいですから(藁

>>280 名無飼育さん
まいちゃんいいっすか?いや〜嬉しいです!
あ、あと期待されるとめっちゃ臆病者のヲイラにとってはかなりのプレッシャーでつ
適当に読み流して置いてくださいな w

>>281 名無飼育さん
自然に描けていたというのはすげー嬉しいお言葉です。
自然に描くというのは自分の中で結構大きなテーマにしてることなんで。


297 名前:くろ 投稿日:2005/05/28(土) 03:19
更新お疲れ様でした。待ってましたよ。
作者さんのペースでいいので、次回作も楽しみにしています。
298 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/03(金) 21:22
描写がていねいで、ビルの谷間の光景がぱっと浮かんできました。
吉澤さんのちょっと不思議な雰囲気に、読んでいてどきどきしました。
ラストシーンもとても綺麗でした。次もたのしみにしています。
299 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:05
「吉澤さん、今日駅まで一緒に帰りません?」


昼過ぎ頃、早めに仕事が終わって帰りの支度をしていたら、高橋が急にそう言った。
「はぁ?」なんていう声を上げそうになって、ぐっと飲み込む。
「え?」ならともかく「はぁ?」は返答の声としてはあまりにも失礼だ。

「…うん、いいけど」

断る理由なんてなかったので、アタシはそう答えた。
ただ、「けど」なんて言葉を付けてしまった事に少し後悔する。
嫌がってるように思われちゃったかな?アタシは高橋の顔色を窺った。
300 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:05
それから、なんで高橋はアタシを誘ったんだろうと考えた。
確かに高橋とは帰る方向が同じだし、誘っても何の問題も無いんだけどさ。
でも、方向が同じってだけなら他にもメンバーがいるのに。なんでアタシなんだ?
もっと軽く話せる子とかと一緒に帰ったほうが楽しいと思うんだけどなー。

アタシはアタシが誘われたことを不思議に思いながらケータイをかばんにつめこんだ。
…高橋と二人っきりって何話していいかわかんなくて、苦手なんだよなー。

「んじゃ、帰んべ。」
「はい。」

アタシは彼女に気づかれぬよう一つため息をして言う。
高橋は笑顔で頷いて、アタシはこの子の意図を掴めない。
301 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:06
高橋の家は、今日の現場から駅3つ分くらいのところ。
そんなに遠い距離ではないので歩いて帰るという。
平日の昼間で人も少ないし、散歩がてらそれくらいの距離を歩くのもいいだろう。
高橋と別れるのは一つ目の駅。アタシはそこから電車に乗る。

「今日、天気いいねー。あっちー」
「ですね。」
「……。あ、うん。」

近いんだし家まで送ってあげたらいいんだけども
そんなにも長い時間、高橋と会話を続ける自信はアタシにはない。
さぁ、どうやってこの気まずい空気を乗り切ろうか。
アタシは頭を悩ませながら彼女の隣を歩いた。
302 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:06
「高橋って歩くの速いよね、結構。」
「そうですか?あーしせっかちなんですってー」
「ああ、そっか」
「はい。」
「……。」

会話終了。
なにやってんだ、アタシ。「ああ、そうか」なんて言ったら話しが終わっちゃうじゃないか。
はぁ…、駅まであとどれくらいだろう?死ぬほど長い気がするな…。
もう一度小さくため息。
ふと見た高橋は特に楽しそうでもなく、そして特に気まずいなんて思ってる様でもなく
あくまでも普通に、マイペースに、アタシの横を歩いていた。
高橋って案外ナゾな子だよなー。

それから特になんの会話も無いまま、あっても2言3言で。
5回以上続いたときには自分を褒めてあげたかった。
そのうちアタシは高橋と会話というものをするのは、かなり難しいんだいうことにと気づく。
ガキさんのことをちょっと見直しつつアタシはとりあえず早く駅について欲しいと願った。
303 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:07
……。気まずいなー、やっぱ何か話してた方がいいのかなー。
あの時、用があるから、とか気の利いたうその一つでもついときゃよかった。

高橋は今、何を考えながら歩いているのだろうか?
アタシは横目で彼女の様子を窺う。
長いストレートの髪が陽の光に溶け込んでるみたいに輝いていてすごくキレイ…
ウエーブがかかってるのも大人っぽくていいけど、
さらさら風になびく今日みたいな髪型も好きだなー。

てくてくとマイペースに歩く高橋に気づかれないようにして、アタシは高橋観察を続ける。

高橋って目ぇでっけぇよなー、かわいいなー
まつげなげー、肌きれー、スタイルいいなー。などなど。

304 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:07
「吉澤さん」

いつの間にかぽーっと高橋に見惚れてたら、急に名前を呼ばれてアタシは思わず声を上げる。
ずっと見てたことを気づかれたのかと思って、焦った。
高橋はおろおろするアタシを見てどうしたんですかー?と顔にしわを寄せて笑う。

「や、別に…。何?」

高橋のこの笑顔好きだなー。

「何、っていうかー。…ほら、駅着きましたよ。」
「あ、…れ?」

高橋が指差す目的地の駅を見てアタシはまたしても変な声を上げてしまう。
高橋はそれがツボだったのか、さっきみたな笑顔で笑った。

…てか、もう駅なの?早くない?

永遠に続くみたいな駅までの気まずい時間は、着いてみると何故だか一瞬間に感じられた。
アタシは心の中でうろたえる。
もう少し、…一緒にいたかった、なんて思ってみたり。
305 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:08
「じゃあ、あーし行くんで。」

アタシの心の中なんて知らない高橋はにこっと笑って片手を挙げると
お疲れ様でしたー、とお辞儀をして足を進めだした。

「え?あ、…」

アタシはその場に突っ立ったまま。
待って高橋、まだ帰らないで。
心の中で叫んだ。声に出すことは出来ない。彼女を追いかけることも、出来ない。
臆病な自分がイヤになる。
待ってよ高橋、もうちょっと一緒にいようよ…!
声に出来ない声が体の中を駆け回った。
306 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:08
どきどきと心臓が鳴っている。
アタシは風になびく高橋の後ろ髪をぼーっと立ち尽くしたまま見ながら
「やべー。恋かも知んない。」なんて、頭の隅っこの方で思った。
高橋のさらさらの髪の毛が眩しかった。
307 名前:恋をした日 投稿日:2005/06/10(金) 23:09
終わり。
308 名前:こい 投稿日:2005/06/10(金) 23:12
ついに書いてしまいました。よしたか。
今5番目くらいに好きなカプです。微妙です。
そこらへんもよしたからしくって良いのではないかと…w
309 名前:こい 投稿日:2005/06/10(金) 23:14
>>297 くろさん
毎回来てくださって蟻です。すごい嬉しいです。

>>298 名無飼育さん
ありがとうございます。全部嬉しいお言葉ばかりで…
ちょっこす感動しました。
310 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/10(金) 23:24
ついにキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ちょっとかなりやばいくらいドキドキしてしまいました。
微妙さがたまりません。っていか吉が可愛い(*´∀`)ポワワ
(できれば)続け!と言ってみるテストw
311 名前:くろ 投稿日:2005/06/14(火) 00:40
ハロモニの心理テストの回を見たあとに読んだから、余計におもしろかったです。
312 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 13:42
いいですねー、この話もですが全体の雰囲気が
もうフワフワ的な感じで読み進みます(w
よしごまキボンとか言ってみたり言わなかったり
313 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:38
「次はー…後藤。」

大き目の講義室に年老いた教授の声が響いた。
アタシは机に伏せていた体を起こしキョロキョロと辺りを見渡す。
英語の授業中。出席番号順に、和訳をするという問題が回って来たようだ。

「ん、後藤は休みか?」

なんだよ。せっかく出席とってなかったのにこれじゃあ、バレちゃうじゃん。
しょうがないなぁ…
前の方の学生を見ながらそんなことを聞く教授を見てアタシはすっと立ち上がった。

なんだ、寝てたのかー?教授はそう言って、もう一度問題の英文を読み上げた。
アタシは難なくすらっと答えて見せる。
周りの学生達はクスクスと笑っている。教授はそのワケを分かってない。
なんせアタシは「後藤」なんていう苗字ではないのだから。
なりすまし。教授ひとり騙せれば十分である。
314 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:39
「ごっちん休みなんだ?」

アタシが答え終わって席に座るとコソコソ近づいてきた美貴が聞いた。

「みたいだね。」

アタシはそう彼女に答える。

「あれ、知らなかったの?」

美貴の言葉に無言で頷くアタシ。
不機嫌さが顔の出てたのだろうか、美貴は小さく笑って肩をすくめた。

「そんな怒んなってー。連絡来なかったくらいでー」
「昨日も休んでんの、ごっちん。アタシにメールもなしで。
 てか今日は授業終わったら遊び行こうって約束してたんだぜー?」
「ドタキャンされたんだ。せっかくのデートなのにね、かわいそー」
「キャンセルもされてねーの。連絡がねぇんだって。」
315 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:39
アタシは、はぁっとため息をついて机に突っ伏す。
美貴は少しの間黙ってから、言った。


――それってごっちんに何かあったとかじゃなくって?事故とかさぁ


……。
一瞬間、瞬きをするのさえ忘れた。そして突然ガバッと体を起こす。
美貴はビックリしたのか、まん丸い目をしてこっちを見た。

「そっか…。そんな考え、浮かびもしなかった…」

美貴ごめん、あと任すわ。
急に心配になってきたアタシは机の下でガサガサと帰る支度をする。

「えぇー…順番回ってきたら、美貴どうしたらいいのさ…」
「大丈夫!『よ』なんかそうそう回って来ないって!」

じゃね。
美貴の肩をぽんっと叩くとアタシはこっそり講義室を抜け出した。
316 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:40
ごっちん、無事…だよ、ねぇ?
ごっちん、ごっちん、ごっちん、ごっちん、ごっちん……

アタシは急いでタクシーに乗り込むと
ポケットからケータイを取り出して、最新の履歴を呼び出した。
そして乱暴に耳に押し付ける。
プルルルル…、数十秒のコールの後、ピッという短い電子音が鳴った。

「もしもし!ごっちん――…」

電話に出たのは留守番電話サービスセンターのお姉さん。
焦りすぎか、アタシ。…ダサっ。
アタシは静かにケータイを閉じた。
そして、ごっちんの家に早く着くことを願う。

「運転手さん、急いでくださいね」
317 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:40
ごっちんのアパートに着くと、呼び鈴を鳴らすのも煩わしく、合鍵を使ってドアを開ける。
ドカドカと恋人の家に上がりこんで、…アタシは絶句した。

「あれ。よしこじゃん。どーしたのー?」

あまりにも普通。あまりにもマイペース。
ごっちんはぼけーっとして、ボリボリと音を立てながらお菓子なんか頬張ってる。
心配損もいいとこじゃん。あきれた…

「あのさ、さっきケータイに電話したんだけども」
「あー、ごめん。今まで寝てた。」

「…で。大学は?」
「だって起きたら昼前なんだもん。
 そんで、お腹減ったからってご飯食べてたらもう1昼過ぎてるし。めんどくさいじゃん?」

ははー。ごっちんらしい理由だこと。
アタシは一気に脱力してその場に座り込む。

「じゃあさ、ごっちん。デートの約束、覚えてる?」
「……んーー?」

疑問形かよ。確実に忘れてるじゃん。
なんだそのぬはーって笑顔は(ちょっとかわいいじゃねーか…
アタシはとりあえずかばんをソファのところに置くとドカっと音を立ててベッドに座った。
怒ってるんだぞ、ってことをアピールしたかったんだけどなぁ。
ごっちんは謝りもせずに、アタシの上に乗っかって甘えてくる。

「ねぇ、よしこー。今日泊まってくんでしょ?」
「泊まらない。」
「な〜んでー?」

ごっちんは不機嫌そうに喚いてアタシを押し倒した。
そして、チュっチュっとほっぺに2回、軽くキスをする。
だめだ、だめだ。ここで許しちゃったらとアタシのあの心配はなんだったんだっつーの。
318 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:41
「二日も連絡無しで?アタシがどんだけ心配したと思ってんの?」

ごっちんに上から見下ろされたままアタシはそう言った。
実際に心配したのは美貴に言われてからの数十分なんだけど
長さの問題じゃないと思うから黙っておくことにした。だって本当に心から心配したんだ。

「んーー。いっぱい?」
「…、そう。いっぱい。」

アタシはなんだかあきれちゃってため息を漏らす。
そしたらそれを見たごっちんが初めて申し訳なさそうな顔をした。
その顔はずるい。そんな顔されちゃあ…。

「よしこ、ゴメンね?」
「…、別に、いいけど。」

ああ、もう。ほらね。
その顔を見て、結局アタシはキミを許してしまうんだ。
でも今日は結構耐えた方だと思うよ、まぁまぁ。キスされても許さなかったんだし。

「よかったー。よしこなかなか笑わないからさ、許してくんないのかと思った」
「んなワケねーって。でも、今度からは休む時くれぇメール入れるように!」
「おっけー、了解。心配かけちゃったんだね、ごめんね」

ちゅ。
今度は唇にキスが降って来る。
ニヤニヤ笑ってるアタシ。

「で。今日は泊まってくの?」
「……。ごっちんがどぉぉおしても、っつーんならね。…泊まってあげてもいいけど」
「やりぃ!」

この恋は惚れたもんの負け。
アタシの連敗記録はまだまだ破られそうにない。

はぁ…。よわよわじゃん、アタシ。
319 名前:連戦連敗 投稿日:2005/07/19(火) 00:41
終わり。
320 名前:こい 投稿日:2005/07/19(火) 00:49
>>310 名無飼育さん
喜びすぎですよー。続き?…スマソ。なんか難しいですorz

>>311 くろさん
ナイスタイミングです、くろさん。あれはなかなかのよしたか祭りでしたね…w

>>312 名無飼育さん
さて。よしごま、書いてみましたが御希望に添えられたでしょうか?
実はワタクシ、よしごまを書くのは初めてでして…なんというか、好きなんですけど、書けないのですよ。
というわけで、こんなもんで許してください。マジで。
お粗末さまでしたー(逃
321 名前:TETRA−TM 投稿日:2005/07/19(火) 01:18
お久しぶりです!

更新お疲れ様様です。やっぱり作者さん大好きだ−−!

『恋をした日』
よっすぃ〜高橋さんにやられましたねw

『連戦連敗』
よっすぃ〜後藤さんにやられっぱなしですねw
何連敗してるんだw

次回も楽しみに待ってます!
322 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/19(火) 21:48
ヘタレよしこさん最高です。
323 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/20(水) 02:25
ごとーさんにやられました(w
324 名前:くろ 投稿日:2005/07/20(水) 10:31
久々にキテター!
作者さんのペースでいいと言っておきながら、実はちょこちょこ覗いてました。
よしごま、ちゃんと書けてましたよ。
そろそろいしよしなんぞを…といってみるテスト
325 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/24(日) 21:20
ウヒョー! よ し ご ま じゃないですか!!
まさかこいさんの よ し ご ま が読めるとはw
ごっちん可愛いよごっちん(*´∀`)
326 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:22
「たかはしー、今日さ、一緒に帰らない?」

この言葉を言うのに、すごく勇気がいった。
この前、高橋が同じことを言ったときも
こんな風に勇気を出して言ってくれたのなら、すごく嬉しい。

今日はこの前高橋と2人で帰った日と同じスタジオでの撮影。
アタシは朝から軽く緊張していた。
あの日からのアタシは少し変だ。高橋と一緒にいるとドキドキする。

アタシは、彼女に恋をしている。
327 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:23
仕事が終わったのは空がオレンジ色に染まる頃だった。

「よしざーさんっ、帰りましょー」
「おう」

妙に上機嫌な高橋と、この前と全く同じ道を歩く。
そして、残念ながらこの前と全く同じように会話も弾まない。
でも、今日は理由が違う。なんとなく話が出来ないんじゃなくて、緊張するから、話せない。
すごく、ドキドキするんだ。好きな子と一緒に歩いてるってだけで、こんなにも。

アタシは高橋の隣は歩かずに斜め後ろ辺りから彼女のキレイな髪の毛と横顔を見つめていた。
全部がオレンジ色で、すごくすごくキレイだった。
328 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:24
「吉澤さん」
「…何?」
「駅です。着きましたよ。」
「あ、あぁ。ホントだ…」

もう駅か…。高橋といるとどうしてこんなに時間が早く過ぎてっちゃうんだろう。

それにしても、本当にこの前一緒に帰った時と同じような展開だな。
アタシは思わずくすりと笑ってしまった。高橋もそれに気がついたのかクスクスと笑う。
あぁ、やっぱりアタシはこの子の笑顔が大好きだ。
もっと、もっと一緒にいたいと思った。

「今日はさぁ、高橋んちの近くの駅まで歩くよ。そっから電車に乗る。」
「えぇっ?でも、いいんですか?結構距離…」
「いいの!ほら、行くぞー」

少し強引に高橋の手をとって歩き出す。

夕焼けが赤くてよかった。
真っ赤なアタシの顔を隠してくれて、よかった。
329 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:24
駅、2つ分。アタシ達に残された時間。
ただでさえ高橋といるときの時間は短いのに、やっぱり会話はなかなかできなくって
貴重なこの時間をアタシは無言のままどんどんと浪費していく。
どこか気まずい空気が辺りに流れている。なんか悔しい。

繋いだままの手から、この気持ちが伝わればいいのに。

――キミが好きだから、緊張しちゃって言葉が出てこないんだ。キミの事好き過ぎて…。

キミに恋する気持ち、バレたくないのに、伝わって欲しいだなんて。
矛盾してるなぁ、なんて思った。
330 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:25
3つ目の駅の近く、つまり彼女と別れる駅の近くまで来たとき
急に高橋がアタシの名前を呼んだ。アタシはどうしたの、と彼女を振り返る。

「雨、降りそうやないですか?」
「雨?」

高橋はこくんと頷いて雨のにおいがすると言った。
そーいえば…確かに。
熱いアスファルトのにおいと、湿っぽい埃のにおいが混じったような
あの独特の雨のにおいがアタシの鼻を掠めた。
と、次の瞬間、アタシのほっぺたの上で何かが弾ける。

「雨や」
「うわー、降って来ちゃった」

大粒の雨がぽつっぽつっと地面に跡を付けていく。
さっきまでキレイなオレンジをしていた空も一面気味の悪い明るさに包まれている。
けっこうな雨になりそうだ。

「しゃーねぇ…、走ろっか」
「…はい」

手をぎゅっと握り直すとアタシ達は駅を目指し、走り出した。
331 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:26
ザァザァザァ…――

もうすぐ駅というところまで来た頃には雨は激しさを増し
まさに「バケツをひっくり返したような」という表現がぴったりと当てはまっていた。
当然2人とも服も髪の毛ももう濡れるところがないというくらいに濡れていた。

「よしざわさんっ」
「何っ?」

ぐしゅぐしゅと靴を鳴らしながら走っていると、高橋がいきなり繋いだ手に力をこめた。

「あーしんち、こっちなんで」

そして右側に折れる道を指して言う。…お別れのときだ。

「おー、そっか。気ぃつけて帰れよ」

すごく残念だったけど、高橋と別れるのはイヤだったけど
生憎、帰らないで、なんて可愛い言葉を言えるような性格は持ち合わせていないので
無理やりに、なんでもないようなフリをしてバイバイを言った。
332 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:27
「…でなくって、」

でも、その「バイバイ」を止めたのは高橋だった。
ちょうど信号が赤になってアタシ達の時間は少しだけ引き延ばされた。
高橋はその後の言葉をなかなか続けられなくて2人の間に沈黙が訪れる。
大きな音を立てて、雨は地面に叩きつけられていた。

「――雨、こんなんやし、あーしんちで雨宿りしてって下さいっ」
「……。え、いや…いーよ、いーよ。駅そこじゃん。」

それに、今更雨宿りしても、ねぇ?
びちゃびちゃに濡れたTシャツをつまんではははっと笑ってみせる。

高橋の雨に濡れた髪の毛と睫毛が妙に色っぽくって、…一緒にいるのが怖くなった。
だって、これ以上一緒にいたらキミをめちゃくちゃにしてしまいそうだったから。

「…でも、風邪とか引いたら大変やし、」
「大丈夫だよ。駅着いたらすぐに迎え――」
「ダメやし!!」
「え?」

高橋がいきなり大きな声で叫んだから、すこしびっくりした。
高橋は言ってから「しまった」というような顔をする。

「あ…、ダメなんです。その、あの、とにかく寄ってって下さい」
「え?あぁ、うん…」

呆気にとられたままアタシは何故か首を縦に振ってしまった。

「やった」

信号が青に変わって、今度は高橋がアタシの手を引っ張る。

「あ、おい!たかはしー」
「……」
「なぁって、あいちゃーん!」
「……」

全く聞いちゃいない。
結局、高橋は、それから一度も振り向くことなく
強引に自分のマンションまで、アタシを引っ張って行った。
333 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:28
「うわー、マジなんだこれって感じ…。滝じゃん、滝。」

なんとなく居づらくて、高橋んちに入ってすぐアタシは窓に張り付いた。
ばさっ。突然、うしろから乱暴に、でっかいバスタオルをかぶせらる。

「とりあえず、それで拭いといてください」

お風呂の水入れてくるんで。高橋はそれだけ言うとそそくさと部屋を出て行った。
なんか、変なの。
アタシは言われたとおりガシガシと髪の毛を拭きながら、主のいなくなった部屋を見渡す。
へー、結構キレイにしてるんじゃん。

……ってか、

「――…っはぁ〜〜…!!」

息が詰まるかと思った。
ドキドキしすぎて心臓が痛い。
高橋んちに来れた事、嬉しいんだけど、…早く逃げ出してしまいたい気分に襲われる。
334 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:29
カチャ。

部屋のドアが開く音がして、アタシはとっさに高橋が出て行く前と同じポーズをとった。
窓にへばりついてから「なんか不自然なことをしてしまったなぁ」と後悔。

「あ。」
「…どうしたんです?」

高橋はドアの辺りで怪訝そうな顔をして聞いた。

「雨、止んでんの。なんだ超通り雨だったんじゃん」
「ありゃー、ちょうど一番降っとるときに外出てたんですね」

高橋もアタシの隣に来て窓の外を覗く。
心臓がドクッと跳ね上がったのが分かった。

「あー、あ、じゃあアタシもう帰るわ」
「…え?」

心臓の音を聞かれるんじゃないかと怖くなった。
その時、高橋が一瞬すごく寂しそうな顔をした(気がした)。
まだ濡れたままの髪の毛がやっぱりどこか色っぽくって、無駄にドキドキする。

「帰るんですか?」
「え、あ、うん…」
「……。」
「……。」

そこから、長い沈黙が続いた。
せっかく家に上げてくれたのに、すぐ帰っちゃ、やっぱ失礼だよな…
申し訳ない気持ちでいっぱいになって高橋の顔をちらっと覗うと――

彼女のまつ毛が濡れていた。
雨のせいじゃない。…涙の、せい。
335 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:30
「たっ、高橋!?」

アタシは突然の涙に焦って彼女の肩を掴んだ。
高橋は伏し目がちの瞳で言う。

「吉澤さんは、あーしのことキライなんですか?」
「はぁっ…!?」
「だって…あーしとはあんま話しとかしてくれへんし、今日やってすぐ帰ろうとするしっ」

高橋は急に顔をあげてアタシのことを見据えた。
違う、と説明しようとしたけど高橋があまりにも真剣な目でアタシを見るから、できなかった。

「でも、あたしは」
「……」
「吉澤さんのことすっごい好きやのに…!」

突然の告白に言葉を失うアタシと、強い目でアタシを見つめる高橋。
自分のへたれっぷりと高橋の真っ直ぐっぷりに、アタシは思わず笑ってしまった。
でも結局、思ってることは同じなんだって思ったらやっぱり可笑しい。

「なっ、なんですか?」
「いや、なんか…、似てるなぁと思って」
「…似てる?」
「高橋だって、アタシとはあんまし話してくんないじゃんか」

くすくすと笑いながら言った。
高橋は消え入るような小さな声で言う。

「それは…、吉澤さんとおったら緊張してまうがし、」
「だから、それが同じなんだって。アタシも高橋といると緊張するよ?」
「え…、どういう」
「だーかーらー。――アタシも好きだっつってんの、高橋のこと」

笑みがこぼれて仕方がない。
だって、高橋のビックリしたその表情、すげー可愛いんだもん。
336 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:32
「え、えぇぇえぇぇ〜!??」
「あははっ。ってぇことだ!わかったかっ」

まだ目を見開いたままフリーズしてる高橋のおでこを突っついて
ついでにその可愛いおでこにキスをした。

「……!」
「へへー。愛ちゃんかぁ〜い〜」

真っ赤になった高橋をギュ〜って抱きしめて今度は髪の毛にキスを落とす。
したら、彼女はしばらくしてから不服そうな声をあげた。

「吉澤さん、」
「ん?」
「チューはくちにするもんやよ!」

ちゅ。

「ワぁオ!高橋さんって結構だいたんー」

高橋はいたずらっぽく、いひひーっと笑ってみせる。
…か、かわいいー

「じゃあ、アタシからのお返しね。」
「え?…っ!……ふぅっ…ん…」

してやったり、って感じ?
キスは唇に、なんて言った高橋が悪いんだぞ。
でも、まぁ、こんなオトナ〜なキスは想像してなかったか。ごめんね。

しょうがない、か。今日はこの辺でやめておいてあげるよ。
だって2人の時間はまだまだ始まったばっかり。
まずは突然の夕立に感謝、っと。
337 名前:雨降って地固まる、みたいな 投稿日:2005/07/28(木) 22:33
おわり
338 名前:こい 投稿日:2005/07/28(木) 22:35
はぁ、疲れた。なんか想像してより長くなってしまったなぁ。
というわけでまたまたよしたか書いちゃいました。
>>310 名無飼育さんのリク一回断ったくせにね。スミマセン;
339 名前:こい 投稿日:2005/07/28(木) 22:48
>>321 TETRA−TM さん
お久しぶりです。TMがついてパワーアップ?w
また見に来てくださいねー^^

>>322 名無飼育さん
へタレいいですよねwよっちゃんってなんであんなにへタレが似合うんだろう(失礼

>>323 名無飼育さん
(*´ Д `)<……ぽ

>>324 くろさん
いしよしですね、了解しますた。…いつになるかはわかりませんがw
あー、くろさんのいしよしも読みたいなー、って言ってみるテスト。
また某所でも声かけてくれると嬉しいです。

>>325 名無飼育さん
初よしごまに(*´∀`)ってなってもらえるとは嬉しい限りです。
それにしてもよしごま難しいよよしごま…



340 名前:くろ 投稿日:2005/08/01(月) 03:37
更新お疲れ様です。
うん、二人ともよく頑張った。328の最後みたいな表現、自分はすごい好きです。
次回も期待しています。いしよしはまったりと待たせていただきます。
341 名前:ひすい 投稿日:2005/08/01(月) 11:11
タハハw来ちゃったw
いしよし夫妻に期待ですよほ(*´∀`*)
息抜きしちゃえよ〜!書いちゃえよ〜〜〜!w(悪魔よっすぃ〜風
342 名前:310 投稿日:2005/08/02(火) 21:59
ウヒョー!!つ い に き た
これはもちろん続きますよね?(強気w
よしごまにも(*´∀`)ポワワった節操なしです。あい。
343 名前:ななし 投稿日:2005/08/03(水) 04:03
吉愛キター!やっぱいいですね〜
344 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:17
あなたに会えない日が長く続くとき、私はとてつもない寂しさに襲われる。
すごくすごくすごく、あなたに会いたくなる。


「んじゃあ、会いに来りゃーいいんじゃねぇの?」

久しぶりにフットサルの練習日が重なった日。
よっすぃはスポーツドリンクを私に手渡しながら暢気にそう言う。

「簡単に言わないでよ…」

第一、そっちが忙しいからなんじゃん、なかなか会えないのは。
誰が悪いわけでもないし、そんなこと口に出してはいえないけどさ。

私は「あちー」なんて喚きながら隣に座ってくるよっすぃを軽く睨んで
ドリンクを乱暴に受け取り、かすかな苛立ちをそれで表現した。
――こっちはただ、よっすぃに会いたいだけなのっ

「もうっ…」
「なーに怒ってんだよ」
「なんでもなぁい」
「あっそ」

つまらなそうに呟いて、よっすぃは手に持ったボトルをいじりながら練習の様子を見始めた。
上手くゴールが決まったときなんかは、ハイタッチを求めたりなんかしちゃって
私はよっすぃの隣にいるのになんだかひとりぼっち。

…こっち、向いてくんないかなぁ

同じく手に持ったボトルをいじりながら私も練習を見る『フリ』をする。
そうして気付かれないようにしながら、本当はよっすぃのことばかり見つめていた。
345 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:18
「アタシに何か御用ですかぁ?そんなに見つめちゃイヤン」

…気付かれてた。
どうやら私の行動は見透かしやすいらしい。周りの人曰く。

「別によっすぃのことなんか見てないわよ」

バレてた事が恥ずかしくって何故だか怒ったような口調になってしまった。
よっすぃはそんな私をからかう様に笑う。

「見てたクセにぃ」

フットサルを見ながらも少しくらいは私のこと気にしてくれてたのかなと
内心喜んではみたものの、彼女の目線の先は未だにボールの行方ばかり。
せっかく久しぶりに何か話せる時間が空いたって言うのに、よっすぃはフットサルに夢中で。

…やっぱり、つまんない。

つまんない
つまんない
つまんない。
346 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:18
今度はわざと。
よっすぃのことを睨みつけるようにして、じぃぃって見つめた。

「……。」
「おー、右右!右空いてるよー」

気付いてるはずなのに、よっすぃは一向に私の方を向こうとしない。
…ねぇ、こっち、向いてよ。

「…。もういい。」
「はぁっ!?」

さっき受け取ったスポーツドリンクをよっすぃの肩口に押し付けて
私は、熱気と汗で蒸し返すコートから逃げ出した。

長い長い廊下には誰一人いなかった。
わざと足音を鳴らしながら私は歩く。
貴重なよっすぃとの時間だったのに、短気って言うのはやはり考え物だ。

なんで出て行くようなことをしたのかは自分でも良く分からなかった。

とりあえず、私の心の中はギリギリだった。
なんの口実もなしに毎日毎日よっすぃと会えていたモーニングを卒業して、
なかなかよっすぃに会えなくなって、寂しくて。
仕事で会ったときは2人の会話なんて出来るわけもなく、すぐにまた引き離されて。
それで今日みたいに空き時間が出来たと思ったら、あんな態度をとられて。
寂しくて、悔しくて、切なくて、…涙が溢れ出しそうで、どうしようもなかったんだ。
347 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:19
「梨華ちゃんっ」

バタバタと大きな音を立てて追いかけてきたよっすぃが私の左腕をつかんだ。
私は無言でその手を振り払う。
もう少し、素直になりたいものだけど、この強情な性格が許さない。
全くもってタチが悪い。

「待てって」

また、腕をつかまれる。そして、振り払う。これの連続。
何回繰り返しただろうか、いい加減同じ行為を繰り返すのが面倒になって
よっすぃの方を振り向いたら、なんだか小難しい顔をしてこっちを見ていた。

「どうしたんだよ、いきなり。なんかあった?」

寂しかった、なんて言える筈もなくて私はまた、前を向いて歩き出す。

「なぁ、」
「……」
「黙ってちゃ、わっかんねーんだけど」
「もう!よっすぃのせいだよ」

仕方無しにもう一度振り返ってそう言ったら、

「え?アタシ?…なんかしたっけ?」

なんて、よっすぃはめちゃくちゃ間抜けな顔をして自分を指差した。
私は不覚にも、その姿を見てくすっと笑ってしまう。
よっすぃの顔を見たら強情なこの性格も少しは素直になれるかもなんて思って
私はさっきの問いに答えることにした。
348 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:20
「…よっすぃが私のことかまってくんないから寂しかったんじゃん、ばか」

私がそう言ったら、よっすぃの間抜け顔が、少し驚いたような顔になって
それからすごく優しい笑顔になった。そんで、キスされた。ビックリした。

「よっ、すぃ…?」

驚きの声を上げると次は満面の笑み。…ホント、コロコロ変わるだこと。
私も人のこと言えないけどさ。
だって、ほら、また泣きそうになってる。でも今度は嬉し涙。

「わ、わっ…泣くなって」
「もとはと言えばよっすぃが全然こっち見てくれないのが悪いんじゃん…」
「や、それはぁ」

急によっすぃの声が弱々しくなって、私は首をかしげる。

「久しぶりに会って何話していいかわかんなかったんだよ…、なんか緊張しちゃって」
「…えぇ?だから、練習ばっか見てたの?」

耳を赤くしてこくんと頷くよっすぃ。
…ヤバイ、ものすごく可愛い。

私はよっすぃの首に両手を回して、こつんと軽くずつきをした。

「いで。」
「でも、結構、…てかかなりショックだったんだよ」
「うー…、ごめん」
「わかったら、よろしい」

いひひっと笑って今度は、私から唇を近づけた。
349 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:20
「でもさー、なんか私すっごい空回りしてなかった?」
「まぁね。急に出て行っちゃった時はマジびっくりした。
 でも、ま、梨華ちゃん空回りすんの得意じゃん。だからだいじょーぶだよ」
「その慰め嬉しくなぁい…」

嬉しくないという、そんな言葉に似合わず私の顔はなんだかニヤケちゃって
よっすぃにくすくすと笑われる。

「あれだね、なんだかんだで2人の時間、満喫できてんね」
「フフフ、だね。練習抜け出してきちゃったし」
「どーせなら、このまま2人でいっか?」

えっ?と顔をあげたらよっすぃはめちゃくちゃ本気顔で。
それがあまりにもかっこよかったから「だめだよ」のタイミングを逃してしまった。
「ね?」っとよっすぃのきれいな瞳に見つめられて思わず私は頷いてしまう。

「あ、でも、すぐ戻らなきゃダメだよ」

私の言葉によっすぃは生返事で、空いてるロッカールームはないかと
あちこち一人で探し回ってる。

「ねぇ、聞いてんの?」
「んー」
「聞いてないでしょ?」
「んー」
「もう!」
「…あっ!この部屋空いてるよ!」

行こ?キラキラの笑顔で手を差し出されて思わずそれをつかんでしまう私は
相当なよっすぃバカでしょうか?

とりあえず。監督、コーチ、それからチームの皆様、
ガッタスのキャプテンとワタクシは暫くの間、練習に戻れそうにありません…。
350 名前:不機嫌な日曜日 投稿日:2005/08/06(土) 04:21
おわり
351 名前:こい 投稿日:2005/08/06(土) 04:23
なんなんでしょうか、この話しは。
ええ、スランプです。いしよしスランプ。
頑張れ自分。
352 名前:こい 投稿日:2005/08/06(土) 04:30
>>340 くろさん
リクした方がまったり待つって言って下さってるのにこっちが焦って書いてしまいましたw
328の表現好きですか?ありがとうございます!いや〜嬉しいです。

>>341 ひすいさん
テンション高いっすよw悪魔怖えーしw

>>342 310さん
続きかどうかはわかんないけど、よしたかはまた書こうと思ってます。
新しいCPを書くのは結構楽しいもんだと気付きましたw

>>343 ななしさん
レスありがとうございます。最近愛ちゃん単品でもポワワってなりますよ。本気で。
353 名前:ひすい 投稿日:2005/08/06(土) 13:55
タハー(*´∀`*)
ラブな、ちょいエロキタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
乙ですよ。マジ、今回はごめんよwリクしちゃってw
てか、そんな早く書いてくれるとは思わなかったんだけどねぇ
甘い甘い、いしよしは最高だね!激甘スイーツだねヽ(´▽`)ノ
スランプってアラレちゃんかぃ?どこがスランプなんだと(ry

で、ひすいは結構テンション高めな人ですから。
以後、お見知りおきを・・・orz
354 名前:そーせき 投稿日:2005/08/06(土) 17:49
甘甘いしよしをありがとうございます!
その後のロッカールームでの出来事を考えると悶絶しそうです。
あぁ、ロッカールームになりてぇ・・・
355 名前:くろ 投稿日:2005/08/07(日) 23:39
おっと出遅れた。
早速リクにこたえていただきありがとうございます。
空回りな石川さんとそれに振り回される吉澤さん。
いしよしの日常を見ているようで、いろいろと妄想しちゃいました。
激しく続け!
356 名前:名無しのS 投稿日:2005/08/08(月) 10:59
こいさんのいしよしキテター!!
ありがとおっっ!!!
甘甘リアル、本当に嬉しいっす。
よっすぃバカの梨華ちゃん最高っっ!!

357 名前:名無し飼育 投稿日:2005/08/08(月) 11:49
甘甘いしよし大好きです!
最近いしよし小説が少なくなってたので
大感激です。作者さんありがとうございます!
358 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:54
遅い食事を終え、お店を出た途端、前を歩いてたよっすぃが急に足を止めた。
後ろにいた私は、急なブレーキが効かず彼女の背中にどんっと肩をぶつけてしまう。

「…どうしたの?」

急に止まらないでよ、私が言うとよっすぃは小さく微笑みながら空を指差した。

「梨華ちゃん、見てみ?」

なんだろう。
そう思いながら彼女が指差す方に目をやる。

「ほら、今日の星、めちゃくちゃ綺麗じゃない?」
「わぁ!ホントだ〜。なんか珍しいね。」

見上げた空にはキラキラと煌くたくさんの星たち。
東京ではあまり見ることのできない風景に
私たちは2人して足を止め、少しの間、星に見入っていた。
しばらくそうした後、「そう言えば」とよっすぃが口を開く。

「近くに公園あるけど行く?そこ、けっこー見晴らし良いよ」
「うん、行く!」

私が即答で頷くとよっすぃは子供みてー、なんて笑いながら私の手を優しくつかんで
ゆっくりと歩き出した。
359 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:55

360 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:55
よっすぃが連れて来てくれた場所は小高い丘の上にある公園。
隅っこの方には展望台みたいなスペースがあって、そこからはキラキラの星たちと
すっかり眠りに着いた穏やかな住宅街を見ることが出来た。

「おー。やっぱ、高いとこ来ると星、近く感じるよな」
「うん。すごい綺麗。」

そう笑ってよっすぃの方を見たら、彼女は
何かを思いついたようなイタズラっぽい笑顔を浮かべ、すぐに真剣な表情をした。

「梨華の方が綺麗だよ?」
「…やだ、よっちゃん!さむーーい!」
「なはは。一回言ってみたかったんだよ〜!カッコよかったでしょ?」

よっすぃは楽しそうに笑って私のことを後ろからぎゅっと抱きしめた。

「やぁだ〜。もうやめてよー」

さむい、さむい、と身をよじって彼女の温かい腕の中から逃げようとしたのは
あんなくさいセリフに不覚にも胸をドキドキさせてしまったから。

「逃げんなよ〜」
「キャー!よっちゃん、おやじみたーい!」
361 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:56

362 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:57
夜中の公園できゃーきゃーと追いかけっこをした後
よっすぃがどこからか引っ張り出してきたベンチに2人並んで腰を下ろした。
久しぶりに騒ぎまわって疲れたせいか、私たちは何もしゃべらずにずっと星ばかりを眺めた。
こうしていると星空に包まれてるような感覚を覚える。
いつの間にかウトウトとまどろんでしまって何時間もずっと空を見ていた。
たぶん今は、夜と言うよりは朝方と言った方が良い位の時間帯だろう。

「ねぇ、流れ星とか流れないかな?」

寝てるかも知れないと思いながらも、そう言ったら
よっすぃはクスクスと笑いながら私の肩を抱いてこつんと頭をぶつけて来た。

「さぁね。目ぇ瞑ったら降って来るかも?」
「瞑っちゃったら何も見えないじゃない」
「流れ星じゃないよ」
「え?…ん。」
363 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:58
星の代わりに降ってきたのはよっすぃの口づけ。
イタズラなキスは止まる事を知らず、次々に私の唇に降って来た。

「ちょ…!何すんの、ここ外だよ?」
「こんな時間に人がいるかよ」
「……。もう、」

じっと見つめられ、ほっぺたを優しい掌で包まれたら
次のキスが待ちきれなくなって、私は堪らず瞳を閉じた。

「んん…っ。ちゅ、ちゅ…ふぅ、…ん」

よっすぃの頭に両手を回し、私は夢中で彼女のキスに溺れる。
顔の角度を変え、何度も何度も丁寧に私に口づけてくるよっすぃ。
ふと右目を開けたら、空は随分と明るくなってきていた。

ドキドキする。
こんなところでこんなキスするなんて。

あと数十分もすれば動き出す街を下に、私たちは数え切れないほどの熱いキスを交わした。
364 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:59
「やぁっ、ん!…はぁ…ぁん…」

いきなりベンチの上に押し倒されて、よっすぃの舌が厭らしく私の首筋を這った。
私はよっすぃの頭を引き離そうと、必死に回した手に力を込める。
でも、よっすぃの優しいキスのせいで上手く力が入らず、結局何の抵抗にもならなかった。

「…ん、もう!…よっすぃ、…見て、ほらっ」

私は自分の力でよっすぃを引き離すのはムリだと感じ、次は右手でなんとか空を指さす。
そこでよっすぃはようやく顔をあげた。

「何?…って。もう朝じゃん。…さすがにココで続きはヤバイ?」
「当たり前じゃん、ばか!もうお家帰るよ」
「えぇ〜…」

ねぇ、見て、よっすぃ。
太陽だってほら、星たちを家に帰そうとしている。
だからね私たちも一緒に帰ろうよ。

「続きはぁ?」
「続きは…帰ってから、…ゆっくりしようね?」
「マジ?やったー」

さぁ、早く。
星たちがみんな帰ってしまう前に私たちも帰ろう。
お家には楽しいことがいっぱい待っているんだから。

365 名前:星降る夜のロマンチスト 投稿日:2005/08/10(水) 22:59
おわり。
366 名前:こい 投稿日:2005/08/10(水) 23:01
2連続でいしよしー。…甘ぁ
367 名前:こい 投稿日:2005/08/10(水) 23:13
>>353 ひすいさん
ちょいエロってレスを見て「どこが?」と読み返してしまったことは内緒w
次はちょいエロとやらに挑戦してみようと書いたのが今回のいしよしです。これが限界w

>>354 そーせきさん
ロッカールームになりたいとは新しい発想ですね、うん。
…自分もなりたい

>>355 くろさん
出遅れ上等!ちゃんと詠んで貰えるだけで嬉しいのです。
…気に入ってもらえたかどうか不安ですが、今回のもいしよしなので、また兄ちゃんさんに捧げたいと思います。

>>356 名無しのSさん
ありがとおっっ!!! ってレスにめちゃイケ運動会での藤本パパを思い出しました(どうでも良いw
うちのいしかーさんは相当なよっすぃバカなのでこれからもよろしくです。

>>357 名無し飼育さん
いしよしはまだまだ終わりませんYO!!
いしよしを書いただけでレス数が上がるのは流石だなぁと思いましたw




368 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/11(木) 02:11
更新お疲れ様です〜
甘〜い・・甘・甘・いしよし大好きです♪
又、読ませて下さいね!
369 名前:ひすい 投稿日:2005/08/11(木) 05:37
イイヨイイヨーwww
ちょいエロキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
ってか、知り合いのエロっておもしろいねwすげーイイヽ(´▽`)ノ
あぁ、ヤバイヤバイ。顔が緩みっぱなしでおかしい・・・
しかし、パワフルだなー朝まで一緒に起きてたのに朝から(ry
モテ吉・エロ吉・バカ吉が大好きなひすいは大満足ですよほ!乙カレー
370 名前:KUMO 投稿日:2005/08/11(木) 07:21
初めまして。いつも読ませて頂いてましたw
いしよし〜〜甘すぎる!イイ!
こいさんの作品大好きです。毎回楽しみ!!!!
またお願いします。








371 名前:くろ 投稿日:2005/08/11(木) 08:37
ハァ━━━;´Д`━━━ン!!!
連続のいしよし、ありがとうございます。
朝から砂糖吐きそうになりますた。
( ^▽^)<あまーい
すごくよかったです。大満足!

名無しのSさんへのレスで、藤本パパを思い出すこいさんてステキ!
372 名前:そーせき 投稿日:2005/08/11(木) 20:52
今回はベンチになりてぇ・・・
373 名前:ナナシ 投稿日:2005/08/13(土) 22:17
堪らず初レスです。
いしよし可愛い!!
ほのぼのしますた
374 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:32
ガヤガヤとした音の塊が美貴の耳に不快に響く。
様々な声の不協和音。
本来、一つひとつの意味を持つ音たちも、集まれば何の意味も持たない。
ただうるさいだけだ。

美貴は黙って一人、騒がしい楽屋を抜け出した。

375 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:32
あぁ。イライラする。
仕事のことも、プライベートのことも。
…もう、全部。全部、なんかムカつく。

「顔、怖いけど。」

美貴が廊下を歩いてると、いきなり声を掛けられた。
目の前に現れたそいつは、そんなことを言ってニヤニヤと笑っている。
――よっちゃん。
ムカついてる時には一番会いたくない人だ。

「…美貴はいつもこんな顔だよ」
「普段のミキティはも〜っとかわいいよぉ!」

美貴が不機嫌なこと気付いてるくせに。
いくら美貴が睨みつけても怯まずにそんな事が言えるのはよっちゃんだけだ。
ホントこういう時くらい、ほっといてよ。
マジどっか行け。美貴は更によっちゃんを睨みつける。
376 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:33
「だからそんな怒んなよ」
「怒ってねーよ、別に」
「怒ってる〜。てか顔こえー」
「うっさい。だまれ」

ほら、ピアスピアス。
美貴が止めた足を、また進ませようとすると
よっちゃんはクスクス笑いながら自分の耳をトントンと叩いて言った。

美貴は感情のバロメーターが極端な時、つまりは嬉しい時、もしくは機嫌が悪い時に
どうしてか必ずピアスを弄ってしまうクセがある。

これはよっちゃんが発見した美貴のクセだ。
見てない様なフリをして、いつも見てる。
美貴はキミの全部を見透かしたような、その綺麗な瞳が、キライだ。
377 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:33
「あ。待てよー」

美貴は黙ったまま歩き始める。
よっちゃんは美貴の後をついて来る。
ついて来んな、とか言ったらそっちに行くんだもん、なんて言われそうだから
やっぱり黙ったまま足を進めた。

「なぁ、ミキティ」
「何」
「ミキティってアタシのこと好きでしょう?」

こ、…いつ、いきなりバクダン落としやがった…!
美貴は余りにもビックリしすぎて、余りにも…その言葉が図星で。
一瞬、返すべき言葉を見失ってしまった。
ヤバイ。何か、早く言わなきゃ!

「す、好きじゃねーよ!」
「あはは!ミキティ焦ってるぅー」
「…いや、てかさ。何してんの」
「え?抱きしめてるんじゃん。怒ったミキサウルスをなだめるにはこれが一番でしょ」
「んなワケねーだろっ」

本当は、よっちゃんの言うとおりで。
なだめられてるというか、なんだか気分が楽になって。
抱しめられた事、すごい嬉しかった。
でも、そんなんで機嫌直してたら、それこそなんか
よっちゃんの思うとおりで、美貴の負けみたいで、すっごいムカつく。

美貴は嬉しい気持ちを悟られないように
よっちゃんを睨んだまま腰に回された長い両腕を静かに振りほどいた。
378 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:33
「近寄んないで。マジ殺すよ?」
「うわ。ミキティが言うと洒落にならん」

懲りる様子なくふざけた調子でよっちゃんは言って
行き場をなくした彼女の両手は高く上に挙げられた。降参のポーズ。

降参なんてする気ないくせに。美貴はふぅっとため息を吐いて歩くスピードを速めた。
ついて……来ないよっちゃん。
不思議に思って振り向くと、さっきの場所に止まったままのよっちゃんは少し首をかしげた。
どうして振り向いたんだ?というかんじ。

「……?」
「ついて来ないんだね。」
「近寄んなっつったのミキティでしょ?」

からかってるって様子ではなく。本気で言ってる、こいつ。

なんか変に律儀なトコ、すっげーかわいいんですけど。
美貴の言いつけどおりに、じっとその場にいる姿は
ご主人様に「待て」をくらってるワンちゃんみたい。
379 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:34
「よっちゃんは、うちのアン君よりもお利口さんだね」

アン君はまだ「待て」が出来ない。
美貴は間抜け面のよっちゃんに言う。

「ミキティはアン君よりもおバカさんだけどね」
「はぁあ!?」
「顔怖い。」
「さっきっからそればっかじゃん…」
「だってアン君はさぁ、アタシのこと見たら、しっぽ振って飛んで来るよ?素直で良い子。」
「…どーせ美貴は素直じゃないですよ」
「おろ。自覚ありぃ?」

よっちゃんはケタケタと明るく笑う。

自覚くらい、あるよ。
美貴は素直じゃない。特に、キミの前では。
キミの前だと美貴の口からは素直な言葉なんて出てきやしない。

だったらいっそ、しゃべることの出来ないアン君になりたいよ。
そしたらキミに伝えられるのに。
しっぽブンブン振り回してさぁ、「好きだよ」の気持ち。
380 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:34
「そろそろ楽屋戻んねーとヤバイんでねぇの?」
「あ、ホントだ。…美貴すぐ行くし先行っててよ」

悔しい。「一緒に行こう」の言葉が言えない。
そんな美貴を見てよっちゃんはからかうように笑うと、くるっと回って方向転換をした。
じゃね。そして、片手を挙げてスタスタと歩いていく。
それから何歩か歩いたところで思い出したように美貴のほうを振り向いた。

「そうそう。ミキティはアタシのこと好きじゃねーのかも知んないけど
 アタシは好きだよ。ミキティのこと。すっごく。」

にへっと笑ってよっちゃんは言う。
美貴が言いたくても言えない事を、いとも簡単に。
勝ち誇ったような笑みを浮かべてからよっちゃんはまた歩き出した。
ムカつく。けど、嬉しい。
心の中で喜ぶ美貴をほっといて、歩いていくよっちゃんの表情はきっと何事もなかったような
ものなのだろう。多分いつものニヤニヤ顔。…くそっ、やっぱムカつく。
381 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:34
「待ってよ、よっちゃん」

遠ざかって行くよっちゃんに向かって美貴が叫ぶと
彼女は不思議そうな顔をして再びこちらを向いた。

美貴はよっちゃんをじっと睨んだまま走って近づくと、その胸ぐらを掴んで、

「うお!?」


―――キスをした。


「…う、っそぉ」
「あんま美貴をからかうな」
382 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:35
素直になれない言葉なんて要らない。
だったら、行動に移せばいいだけのこと。
どうしても伝えたかった美貴の「好きだよ」の気持ちは、今のでちゃんと伝わったよね?

「ほら、よっちゃん!何ぼーっとしてんだよっ。帰るよー」

たったったっと数歩だけよっちゃんの前に出てから美貴は振り返って言う。
よっちゃんは得意の間抜け面で目をパチクリさせながらこくんと頷いた。

今度は美貴が勝ち誇った笑顔でキミを見る番。
なんでもお見通しのよっちゃんも
あの美貴が、自分からキスしてくるなんて思わなかったでしょ?
へへへ!

「あー、美貴からよっちゃんにひとつ忠告がある!」
「は?なんだよ」
「いつか、ちゃんと言葉でも伝えられるようになってみせるから!見とけっ」
「…うるへぇ!調子のんなぁ」

そう言ってウガー!っと叫びながら抱きついてくるよっちゃんは
今までに見たことがないくらいの幸せな笑顔をしていた。もちろん、それは美貴も同じ。


てか、結局、美貴の機嫌直ってんじゃんか。
……これも全部よっちゃんの計算どおりだったりして。
くやしー!――けど、まぁ…いっかな。
こういうのも美貴達らしくてさ。
383 名前:ご機嫌ナナメの後はスキ 投稿日:2005/08/17(水) 01:35
終わり
384 名前:こい 投稿日:2005/08/17(水) 01:39
久々のみきよし!!

「あめ」と「不機嫌な日曜日」足したような感じになってしまった…
385 名前:こい 投稿日:2005/08/17(水) 01:49
>>368 名無飼育さん
ありがとうございます。甘いのを書くのはなんかこっちが照れますw

>>369 ひすいさん
知り合いのエロ、って…w別人として読んで下され

>>370 KUMOさん
いやぁ、ヲイラの作品が好きだなんてすごい照れます
また読みに来てくださいね〜

>>371 くろさん
毎度どうも〜
でも、気持ちは分かりますよね?>藤本パパ

>>372 そーせきさん
そーせきさんの変身シリーズw今回はベンチですか!
…自分もなりたい

>>373 ナナシさん
堪らずレスとかすっごいうれしいです。またつけて貰えるように頑張ります!

386 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/17(水) 07:22
更新乙です
なうっ!素晴らしい…
あー、好きだよしみき…
387 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/17(水) 22:48
みきよし(*´∀`)ポワワ
388 名前:くろ 投稿日:2005/08/18(木) 23:32
更新乙です
素直になれないミキティが目に浮かびます
機嫌が悪い時にピアスを弄っちゃうクセって、リアルでもあるんですか?
389 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:39
備え付けの冷蔵庫からジュースを取り出して、ごくんごくんと喉に流し込む。
半分ほど飲んだところで缶を置き、ドカっと音を立ててベッドに飛び乗った。

ライブ終わりで地方のホテル。
明日もあるし早く寝なきゃなー、とか思いつつ時刻はすでに2時を回っていた。

「ふぅー」

今日も疲れた。もう、いいかげん寝るか
そう思って電気を消そうとしたときだ。
トントンという小さな音がアタシの耳にかすかに届いた。
…風?――なんてそんな吹いてないしな
まさかそんな時間に訪問者が来るとは思えないし。
ただの空耳かな。まだライブの余韻で耳が少しおかしいし。
390 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:40
トントンっ

……。やっぱ聞こえるよなぁ?
その音は入り口のほうから聞こえてきて、…多分、ドアをノックする音だ。
あたしは不審に思いながらも恐る恐る覗き窓を見た。

「…?」

――高橋っ!?

視界に飛び込んできたのは確かに高橋で、アタシは慌ててドアを開ける。

「どうした?」

高橋は何故だか少し泣きそうな顔をして突っ立っていた。

「とりあえず、中」

入って、と彼女の腕を掴んでアタシは更に驚いた。
すごい汗だ。

よく見てみると高橋の前髪は、汗のせいでおでこにぴたっと張り付いている。
パジャマ代わりのTシャツもぐしょぐしょだ。
391 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:42
「すごい汗じゃん、なんかあったの?」

ベッドに高橋を座らせて、アタシはその前にひざをつき彼女の濡れた髪の毛を梳かした。

「こわ、怖い夢、見たんです」
「…そっかぁ。怖かったね、よく頑張ったね」

こうやってアタシの部屋に来るってことは、頼られてるって思っちゃっていいのかな?
アタシはすごく嬉しくて、だから少しでも高橋を安心させたくて
出来るだけ優しく、優しく、彼女の髪の毛を梳かした。

それでも高橋は未だに不安げな顔をしてコクコクと首で頷くだけだ。
きっと、高橋にとって相当怖い夢だったんだろう
だってあの高橋がこんな夜中に訪ねてくるなんて。
アタシが寝てた場合も考慮して、チャイムを鳴らさなかったところは、やっぱりいつもの高橋らしいけどね。

「それってさ、どんな夢だったの?」

怖い夢をわざわざ思い出させるのは良くないとは分かっていても、どうにも気になっちゃって
そう訊いてみたら、高橋は少し躊躇した後おずおずとアタシの顔を指差した。

「…ア、アタシの夢?」

こくん。高橋は頷く。

「ちょ、え?…どんな夢よ、それ。怖い夢なんでしょ?」

アタシがめちゃくちゃ焦ってそう言うと、高橋はココに来て初めて首を横に振った。

「あ。ちが、…吉澤さんの夢見て、そんで、目ぇ覚めたら吉澤さんおらんで」

一呼吸置いて高橋は続ける。

「…めっちゃ怖くて、吉澤さんがあーしの前から消えてもうたんや、とか思て」

我慢できなかった。

高橋が詰りながらも何とかそこまで言ったところで
アタシは彼女を力いっぱい抱きしめていた。

――なんてかわいいんだろう
392 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:43
「アタシはちゃーんとここにいるよ。ね?」

頭を撫でて高橋の目を見ながら、諭すようにゆっくりと言う。
高橋は少し微笑んで頷いた。彼女が笑ってくれて、本当に心から嬉しかった。

キミの前から消えたりなんて絶対にしないよ。
だって、こんなにも大好きなんだ。

「…うし。明日も早いし、もう寝よっか」
「はい。」
「ん。」

もう一度よしよしをして、アタシは部屋の電気を消した。
ベッドは2つ。一応、違うベッドに入ったほうがいいかな
ちらりと高橋を窺うと、彼女は端っこに寄ってアタシの分のスペースを空けてくれていた。
思わず笑みが零れた。

ベッドに入ると、恋人らしく腕枕なんかしちゃったりして
くすくすと2人で照れ笑い。
すっごくぎこちないんだよ、これが。

「おやすみ」
「おやすみさい」

目を閉じて隣のキミを想う。
おやすみからほどなくして、高橋のかわいい寝息がアタシの耳元をくすぐった。
393 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:44
かわいいなぁ…

暫くの間、アタシは穏やかに眠る高橋を見つめていた。
そしたら、重大な忘れ物をしていたことに気付く。

おやすみのチュー、してないじゃん

これは痛恨のミスだ。
だってキスなんて数えるくらいしかしてないんだよ?(アタシがへたれなだけだけど)
こんな自然にキスにもっていけるチャンス、滅多にないし。

…今からでも遅くないかな?
あ、でも寝込みを襲うのは良くないし…。
でもでも。ほっぺたくらいなら、いいよね?

アタシは片肘で自分の身体を支えて高橋の寝顔を上から覗き込んだ。
スースーと寝息を立てる高橋は笑っているようにも見えた。

「さっきまで泣きそうだったくせにぃ」

今度、目が覚めたときはちゃんとそばにいてあげるからね。
もう怖い思いなんてさせないから。
安心しておやすみ、アタシの大好きな人。


――ちゅ。

今夜は夢でも君に会えそうだよ。
394 名前:グッナイ、マイラブ 投稿日:2005/09/04(日) 01:45
おわり
395 名前:こい 投稿日:2005/09/04(日) 01:46
よしたか?よしあい?
どっちで呼ぼうか迷ってきたな。それはそうと、書くたびに微妙になっていくんですが(出来が
396 名前:こい 投稿日:2005/09/04(日) 01:51
>>386 名無飼育さん
レスありがとうございます。素晴らしいだなんて照れちゃいますw

>>387 名無飼育さん
ホントみきよしって(*´∀`)ポワワ ってなりますよねw
自分もみきよし大好きです!

>>388 くろさん
兄ちゃんさん、ごめんw
自分で作りました。や、でもピアスを触るクセはちゃんとありますよ!結構触ってるとこ見ますし。
案外当ってるかも知れませんねー。
397 名前:TETRA 投稿日:2005/09/05(月) 00:29
バワーダウンバージョンw(殴
TMがついてパワーアップっていうかホンマは元々TMまでが名前ですからw

吉高だ−−−−
よっすぃ〜もっと積極的に行かな!w
全然微妙とちゃいますよ!
398 名前:くろ 投稿日:2005/09/05(月) 04:45
更新お疲れ様です
吉高はやっと微妙を乗り越えた気がします
399 名前:2人ぼっち 投稿日:2005/09/05(月) 21:36

2人して車の中に閉じ込められていた


「走れば行けるんじゃね?」
「バカじゃん。じゃあ、よっちゃん1人で行きなよ」

この駐車場から目的地のお店まで
美貴たち2人がずぶ濡れになるには十分な距離だった
それ位の雨がざぁざぁと降っていた

キミは何やらブツブツと呟きながら窓の外を睨んでいる
雨止みやがれ、とかそんなとこ
美貴は助手席に座ってキミのことばかり見ていた
400 名前:2人ぼっち 投稿日:2005/09/05(月) 21:37
「大体こんな雨の中食べ行こうっていう神経がわかんない」
「美貴だって、いいねーとか言ってたじゃん」
「あん時はまだこんなにも降ってなかったからさぁ」
「だからアタシもこんな雨降るとは思わなかったんだよ」

バチバチと車体にぶつかってくる大粒の雨がうるさい
うるさすぎて、なんだか逆にすごく静かだ

2人して車の中に閉じ込められていた
本当に2人っきりだった
401 名前:2人ぼっち 投稿日:2005/09/05(月) 21:38
「人いねー」
「ホントだよ。…てかさ、これ警報とか出てんじゃないの?」

アタシのせーじゃねぇぞー
キミの瞳がそう訴える

別によっちゃんのせいだとか言った覚えはないんだけどね
でも、キミがそういう風に思っちゃうような態度と言葉遣いをとったことは事実だよ

だってさ、悔しかしかったんだ
他の世界全部から隔離されたような、このたった2人だけの時間がひどく心地いいだなんて

キミにバレたら、どうせらかうように笑うんでしょ?
美貴かわいー、とか言ってさぁ
402 名前:2人ぼっち 投稿日:2005/09/05(月) 21:38
「どうする?止むまで待つ?」
「んー」

なんでもないようなフリをして頷くと、それ以上は何も言わないようにした
口を開いたら、好きの言葉が洪水みたく溢れ出してきちゃうような気がしていた

「んじゃ、まぁ待ちますか。」

キミもそう言った後は何も言葉を発しなかった

美貴と同じ気持ちなのかな?
だったらすごく嬉しいな

結局2人とも何もしゃべらないから、本当のところはわからないんだけど

ただ、優しいキミの左手が美貴の右手を掴んだだけ

雨はまだ、やみそうにない
403 名前:2人ぼっち 投稿日:2005/09/05(月) 21:38
おわり
404 名前:こい 投稿日:2005/09/05(月) 21:39
短いですねwみきよしでしたー
405 名前:こい 投稿日:2005/09/05(月) 21:44
>>397 TETRAさん
いままでTMつきでカキコして下さったことなかったからw
微妙じゃなかったですか?よかったー。まだまだ新しいCPなのでどう書けばいいかよくわからんのですよねw

>>398 くろさん
毎度どもー。ホント、いつもレス下さって嬉しい限りです
飽きさせないように頑張らねば!
406 名前:くろ 投稿日:2005/09/06(火) 08:54
更新乙です
こいさん、急いで書かれたのか401が…(笑)
でも大丈夫!ちゃんと二人の甘い空間が伝わってきましたよ
407 名前:7氏飼育 投稿日:2005/09/06(火) 18:25
あぁ・・・・これだよ、これこそみきよしの雰囲気だよ
408 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/06(火) 22:02
いいですね〜、この微妙な間柄。
みきよしに一番ぴったりな設定だと思います。
409 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 22:58
吉澤が後藤にハッピーバースデイを歌って
後藤が吉澤にいっぱいのありがとうを言って
それとおんなじ数だけのキスを交わす


2人して楽しく笑ってたのは、19歳の誕生日

その日、後藤がハタチになる日、彼女は1人退屈そうに部屋でテレビを見ていた
理由は簡単
誕生日を祝ってくれる恋人がいないから

恋人がいないというだけで、誕生日はなんのヘンテツもない日になってしまうのだなぁ
後藤はそう思った
410 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 22:58
…それにしてもヒマだった

友達からの誕生日メールはもう全てお礼の返事をしてしまっていたし
自分の誕生日に自分から誰かにメールを送るのはすごく寂しい人みたいに思える
こんな日に限って面白いテレビもない

こんなもんなのかなぁ?

去年の今日は幸せすぎたのだ
チャンネルをコロコロ変えながら後藤は小さく欠伸をする

よしこ、今頃どうしてるんだろ?

後藤と付き合っている時代から吉澤はかなりモテていたし(そのせいで何度もケンカをした)
新しい恋人なんか作っちゃって今は幸せに笑ってるのかもしれない

「ふぅ…」

諦めにも似たため息を吐き出すと後藤は1人で苦笑した

吉澤ばっかりだ。

別れてからもずっと、後藤の心の中に住み着いて離れない
411 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 22:59
「ごとーから振ったクセにねぇ」

それはタイミングの問題だった
色んな状況が重なって、誤解が生まれ、結論すれ違う
恋人同士によくあるパターンだ

別れを告げた日、(これは後藤の自惚れでも何でもないが)
吉澤は確かに後藤のことを愛していた
後藤が吉澤の涙を見たのはその日が最初で最後だった

あぁ、なんてことを言ってしまったんだ。

気付いた時にはもう遅い。
吉澤はもう後藤の前から去ってしまっていたし、
その時の後藤は彼女を追いかける勇気なんて持ち合わせていなかった

――それが2人の別れだ。
412 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:00
今でも1人になると思い出すのは吉澤のことばかり
今日みたいな特別な日は余計だ
楽しい思い出ばかりで、すごく厄介
吉澤に会いたくなってしまう

ねぇ、ごとーは今でも、よしこのことを愛しているよ

ぷちっとテレビを消すと、後藤は薄い上着を羽織って部屋を出た
すでに夜の11時を回っていて、外の空気は少しだけ肌寒かった

ぼんやりと行く宛もなく、ぶらぶらと夜の道を歩いた
そして行き着いた先は近所の公園
足が勝手に連れてきた。ここは2人の思い出の場所だ

恋の始まりも恋の終わりも全てこの場所から――
413 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:01
まさかこんなとこ来ちゃうなんてなぁ

別れて以来、後藤はこの公園を意図的に避けていた
自分への警告のためである

ここに近付いちゃいけない
吉澤のことを思い出して、忘れられなくなるだけだ

「……。でも、たまにはいっかな?」

ほら、ごとー誕生日だし。ねぇ?

誰に対してかよくわからない言い訳をして、後藤は公園の中に入って行った
避けて来ていたものの、本当はずっとここに来たかったのだ
だって、ここには優しい思い出が沢山詰まっているのだから
414 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:02
「え…?」

後藤はぴたりと立ち止まった。動くことが出来なくなった。

「…ごっちん」

目の前に思い人が立っていたのだから。

「よ、しこ?」

415 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:03
「なんでいるの?」

後藤が恐る恐る聞いた。吉澤は黙ったまま突っ立っていた
その顔は暗くてよく見えないが、やはり突然の後藤の登場に戸惑っているようだ

「…別に。」

少しして吉澤がそう答えた
後藤は、ふーん、とだけ興味なさげに呟いて夜空を見上げる

上を向いていないと泣いてしまいそうだった

思い出の場所で、自分の誕生日に、自分の前に、自分の大好きな人が現れるなんて
後藤にとってそれはあまりにも感動的だった
416 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:03
「……ごめん、ごっちん。今のウソ。」
「え?」
「別にとかじゃない。ちゃんと理由がある」

後藤は首をかしげた

「ここに来たら、ごっちんに逢えるって思ったんだ」
「……よしこ」
「ごっちんにおめでとう、って言える気がしてた」

なんとなくなんだけどね。予感が当ったみたい。

吉澤の笑顔がちらりと見えた
後藤もつられて笑った
一緒に涙も零れ落ちた

ものすごく嬉しかった
吉澤がそんな風に想ってここに来てくれただなんて
嬉しくて嬉しくて、涙は少しの間、後藤の頬を濡らし続けた
417 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:04
後藤はすぐにでも吉澤の胸に飛び込みたかった。でも、それはできなかった
吉澤と別れてからのこの数ヶ月で彼女は随分と臆病になっていたのだ

「ねぇ、ごっちん」
「ん?」
「……や、なんでもない」

だけど、それは吉澤も同じこと
言葉を濁した吉澤を見て、後藤はそれに気付く

ふぅ。
一つ深呼吸をして吉澤を見据えた

「よしこ、大好きだよ」

その言葉は空気を伝って吉澤の耳に届き、ゆっくりと彼女の心に染み込んでいった
後藤の心臓は今までにないくらいドキドキしていた
一年前の、幸せな彼女でさえ味わったことのない、自信に満ち溢れた胸の高鳴りだった

「……知ってるよ」

吉澤はそう言って、あははと嬉しそうに笑った
後藤も声をあげて笑う
418 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:04
その瞬間に予感がした
来年の自分の誕生日の素晴らしい予感
きっと21の誕生日も吉澤の隣で笑って迎えられる
もちろん、一年前のときのように恋人としてだ


「あー、じゃあ改めて。ごっちん、おめでと」
「うん、ありがと」
「へへへ…」
「あは」



ハッピーバースデイ トゥ マキ

419 名前:誕生日 投稿日:2005/09/23(金) 23:05
おわり
420 名前:こい 投稿日:2005/09/23(金) 23:06
なんとなく誕生日だし、書かねば!と思って書いたもの
展開速いしよくわかんない。もっとちゃんとした文章を書けるようにならないとな
421 名前:こい 投稿日:2005/09/23(金) 23:12
>>406 くろさん
兄ちゃんさん、しぃー!更新前読み直したときは自分でも気付かなかったくらいだし、別に大丈夫かなと思ってたら見事にばれちまったw

>>407 7氏飼育さん
もしかしたら、小説書き始めて一番嬉しい言葉かも知れないです。「みきよしの雰囲気」と言われるものが書けて良かった!

>>408 名無飼育さん
上に同じく。すごく嬉しいです。 ありがとうがざいました!
422 名前:こい 投稿日:2005/09/23(金) 23:13
がざいました、ってorz
423 名前:くろ 投稿日:2005/09/25(日) 03:22
更新お疲れ様です
読み手には十分伝わってますから、もっと自信を持っていいと思いますよ
424 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 22:31
待ってますよw
425 名前:教室にて 投稿日:2005/11/11(金) 22:51
カッカッカッと教室中に響くチョークの音。それ以外は、他に何も聞こえない。
6限は現代文の時間。
授業開始10分そこそこにして、クラスの3分の1以上が夢の中だ。

「れいなへ」
授業中に回って来た手紙に返事を書きながら、ひとつ欠伸をした。

なーんか、暇っちゃ。

返事を書き終えてコッソリと友達に回すと、特にすることもなくなってしまう。
ぎしぎしとイスを揺らしながら、何か面白いことはないかと何気なく窓の外に目をやった。
426 名前:教室にて 投稿日:2005/11/11(金) 22:52
あ。雨……

どおりでなんか暗いなぁと思っていたんだ。
なんだ、雨が降ってたのか。
一番窓側の席なのに気づかなかったなぁ。

特に意味もなく悔しい気持ちになりながら、ぼーっと遠くの赤い屋根を見た。
雨は、見えないくらいのか細さで、音も立てずに教室の窓から見える景色全部を濡らしていた。

そんな景色を見ながら、とっくの昔に写すのを諦めたノートに、新しく傘の絵を書き足す。
そして、雨が強まったらどうやって帰ろうかと考えた。

今日は傘を持ってきていない。
朝見た天気予報では雨が降るなんて言っていなかったのになぁ。くそぅ。
窓の外を睨んで気象予報士に軽く毒づくと、余所見しながら書いた傘の絵が
どんな風に仕上がってるのかと気になって、ノートに視線を落とした。
427 名前:教室にて 投稿日:2005/11/11(金) 22:52
「あ……」

無意識のうちに書いたのだろう。
さっき書いた傘の上にはハートが乗っかって、相合い傘のような絵が出来上がっていた。
もちろん、テキトーに書いたものだからあまり綺麗とはいえない。だけど。

くふふ。

1人笑いをかみ殺しながら、れいなはその傘の右側に自分の名前を書き込んだ。
もちろん左側には大好きな人の名前を。

――『絵里』
特別丁寧に書いてあげる。特別大切な人だから。
428 名前:教室にて 投稿日:2005/11/11(金) 22:53
「……。」

なんか、会いたくなってしまった。
自分でやっといてバカみたいだ、れいな。……はぁ。
悔しいけど、そんくらい大好きだよ、絵里。

ちらりと黒板の上に掛けてある時計に目を向ける。
残りの授業時間+ホームルームで放課後まであと45分ってとこ。

あーあ、はよ終わらんかな?

ノートをぱたりと閉じて、もう一度雨降りの空を眺めた。
放課後になったら2年の教室棟までダッシュして、絵里に会いに行こう。
そんで、今日は一緒に帰ろう。

雨が止まなければいい。
そしたら一つの傘で帰れるのに。

……って絵里が傘持っとらんかったら2人とも濡れちゃうじゃん。
まぁ、そん時はそん時で仲良く雨宿りしたら良いよね、絵里?

429 名前:教室にて 投稿日:2005/11/11(金) 22:53
終わり
430 名前:こい 投稿日:2005/11/11(金) 22:55
特に需要がないであろうれなえりを書いてみました。れいなが誕生日ってことで。
てか、れいなを主人公に書くの難しい…
431 名前:こい 投稿日:2005/11/11(金) 23:04
>>423 くろさん
ありがとうございます!でも自信ってなかなかつかないもので…w

>>424 名無飼育さん
あひゃ!待たれてたーーー!ありがとうございます

で、突然のことで大変申し訳ないのですが……今回の更新を持ってこのスレは終了にしたいと思います。
理由としまして、作者は受験生でございまして…(受験生がこの時期になにやってるんだ!ってつっこみはなしの方向でw
このスレを覗いててくださったみなさん、本当にありがとうございました。あと、最後の更新が吉絡みじゃなくってごめんなさい(汗
また時間ができたら飼育にお世話になろうかと考えてます。では。

432 名前:ロテ 投稿日:2005/11/12(土) 00:29
更新お疲れ様です。れなえり(*´д`*)
こいさんのお話いろいろと楽しませてもらいました。
どもありがとうです。受験がんがってくださいw
433 名前:くろ 投稿日:2005/11/12(土) 23:13
お疲れ様でした
いろんなCPが読めて楽しかったです
受験頑張って!
434 名前: 投稿日:2005/11/17(木) 09:50
お疲れ様でした〜!
こいさんのおかげでよしさゆにはまって今に至ります。
あの作品がなかったらどうなっていたんだろう?w
受験頑張ってくださいね。
息抜きがしたくなったら戻ってきてください!
435 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:25
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
436 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/30(金) 00:58
今日はじめてこのスレ見ました
雪の季節めちゃ良いんで感動しました
こいさんまたどっかでお会いできる日を楽しみにしてます

Converted by dat2html.pl v0.2