a snob

1 名前:ソラ 投稿日:2004/10/02(土) 11:18
こちらに連載させて頂くのは初めてになります、ソラです。
アンリアル、学園物でよしみきです。
内容的にはかなりディープな感じで、若干黒くてヘビーです。
その他そのあたりの年齢層のメンバーも登場予定です。

頑張って完結を目指すので、宜しくお願いいたします。

2 名前:ソラ 投稿日:2004/10/02(土) 11:19





明日もし世界が終わるとしてもその瞬間まで溶け合っていたい。





3 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:22

「ねぇ」
「…んー?」

ふわり、と鼻腔を掠める美貴の匂いにひとみは眉根を寄せた。

「香水変えた?」

瞬間美貴の表情が曇り、俯いたその仕草で大体のことはわかった。
…また、やったんだ。
厭味だと分かりながら、大袈裟に溜息を吐く。
「……で、今夜はどこの社長さん?」
「…」
顔を覗き込んで、不安を取り除くようにそっと抱きしめて、
背中を撫でて、問いかける。

「…今日は社長じゃないよ。なんか、地主?みたいな人」

そんなひとみに安心したのか、
美貴は甘えた仕草でひとみの胸に身を預ける。
「ナマでヤられた。…でも、8枚くれたし…ごはんも奢りだし」
「デキてたらどうすんだよ、それ…」
「…たぶん、ダイジョブ。」
それだけ言うと、美貴はゆっくりとひとみの頬に手を添えた。
いかにも愛しいものを愛でるように、唇をなぞる。

キ ス し て

強請るような目線と、唇の動きに煽られて
ひとみは乱暴に唇を寄せる。


4 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:25


「…ん、…」

美貴の息が上がり、甘い声が漏れ出したことを確認すると
そこでひとみは手を止めた。

「…なぁんで、…」
「シャワー」

「ん?」
「ちゃんと、そいつの匂い落としてきて」
拗ねたような口振りに、美貴は声を潜めて笑う。

「…心配しなくても、美貴、よっちゃんだけだよ?」
「そんなのわかってる」

「美貴、よっちゃんがいないと死んじゃうから」

5 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:26

もし美貴が死んだら、よっちゃんも一緒に死んでくれる?



それが美貴の口癖で、聞かれるたびにその目の色が本気であることを悟る。
自分たちは、異常なのかもしれない。
だけど近くにいれば求め合う衝動が抑えきれない。
とめどなく、何かが溢れ出してくる。

それが愛情なのかすらわからない。
けれど、愛し方なんて互いに依存することしか知らないのだ。






6 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:27

――――


「…おはよぉ、よしこ。でっかいアクビだねぇ」
んは、と鼻から抜けたような声で笑いながら机に手がかかる。

「ごっちんか。…おはよ」

「あんま悪さばっかしてると、そのうちバチ当たっても知んないよー?」
「…してないよ、別に」
「………ふーん?」
「何だよ。…見すぎだよ、自分」
「…コレ……」
制服のカッターの下の、昨夜の名残りを指でなぞりながら真希は悪戯っぽく微笑んだ。

「ずいぶんハマっちゃってんね、あのコに」

「別に。普通じゃん。付き合ってんだからやることやるだけ」
「相変わらずクールですねー…全然変わんないよね」
「あんたに言われたくないよ」
ひとみは笑いながら、真希の髪にそっと触れた。

「…もうあのコに言った?」
「ウチらが付き合ってたこと?」
手入れの行き届いた指先をいじりながら、ほんの少し不満気な顔で真希が尋ねた。
7 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:28

「言ってない」

「…そーなんだ?」
「っていうか、一生言わないかも」

8 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:29



「…ッ、ん、よっちゃ……」
「何、まだ欲しいの?」

唇が離れるのを嫌がった。
じれったい様に、ひとみの髪に指を絡めて強引に引き寄せる。
それを嬉しいみたいに、笑う。

あー、もうだめ。
死んじゃいそう。よっちゃんに触られると即効だ。
我慢なんかできないよ。
最近我慢強くなったはずなのにな…


「悪い、今日は余裕…ない」
強請る前に、ひとみの口から謝罪が漏れる。
滅多にないそのことに美貴は少し驚いて、嬉しくて唇に噛み付く。
中へ進んでいく指の動きに頭がおかしくなりそうだ。

キスを繰り返して、繰り返しても、まだまだ足りない。

「舌…」
「…ん、…」

ひとみがそれだけ言うと、美貴は意味を理解して精一杯に舌を絡ませる。
9 名前:a snob 投稿日:2004/10/02(土) 11:31

「あんま嵌りすぎるとヤバイんじゃないのー?吉澤さん。」
余裕たっぷりの笑みで、ぼんやりした意識を戻してくるように真希が言う。

「…んなことないよ、別に」
「半端じゃないよ、ミキティは。いろんな意味でさ」



「そんなの最初からわかってる」

「…アンタみたいのに抱え切れるのかあたしは心配なんだけどね」
「大きなお世話だ」
「何でもいいけど、こないだみたいにコレも盗聴されてないよね…?」
「たぶん」

「あの悪い癖はやめさせるべきだよ、恋人としては」


わかってるって、マジで。
振り切るように煙草の箱を取り出して、顎で戸口を指す。
「行きますかッ」
先ほどまでの口調と一変して、明るい声で真希が立つ。
小走りで屋上の階段に上る。
その背中を軽く笑いながら見つめていると、携帯の電子音が鳴った。


目の前が、また紅く染まる気がした。



10 名前:プリン 投稿日:2004/10/02(土) 13:31
更新お疲れ様です♪
はじめましてー。

みきよし(・∀・)イイ!ですねw
最近多くて嬉しいんですよ♪
完結までずっとついていくんで頑張ってくださいw(ジャマ
次回の更新も待ってます。頑張ってください。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/03(日) 15:37
みきよし発見しました。
いいですね〜。3人の関係がどうなってゆくのか…
次の更新をお待ちしています。
12 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 00:29
ミキティの設定に惚れましたw
楽しみにしています。頑張ってください。
13 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:31
結局、携帯の呼び出し音は予想通り美貴だった。
どうやら教室から出るひとみと真希の姿を彼女は見ていたらしかった。
唇を噛んで、一瞬ためらった後気がつけばダイヤルしていた。番号なら覚えている。
「ちょっとぉ、みきたん!あたしの話聞いてないでしょぉ?」
隣で口を尖らせる亜弥を無視し、美貴は出るまでのコール数を頭でカウントしていた。
束縛家とか、重いとか、抱えきれない、とかそんな言葉は聞き飽きていた。


別に運命の相手じゃなかったってだけ…

別れを告げられるたびに言い聞かせていたその言葉は、きっと今回は通用しない。
きっとよっちゃんを失えば、美貴は死ぬと思う。
…死んだら、パパとママにも会えるのかナ……なんて…


14 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:32

「もしもし」
「今、どこ?」
「……ごっちんと、屋上に来てる」


「あのね、美貴もう帰りたい。…一緒に帰ろ?」

「……マジかよ」
「…よっちゃんと二人だけになりたいんだもん」

うっわー、もう完璧聞いてないねー、てか何?帰んのー?
熱心にマスカラを塗りながらも口は達者な亜弥を横目に、美貴は電話に唇を押し付ける。

「…ね、帰ろ?……」




15 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:33

電気を付ける間もなく、ひとみの白い腕が美貴の首に優しく巻きつき、
そのまま体を引き寄せられ、柔らかい口付けを落とされる。

暖かい舌に唇をなぞられ、衣服の中の忍び込んだ冷たい指先が肌を上を忙しなく蠢く。

纏わり付く衣服をじれったそうに捲くり上げ、
現れた小さな胸の先端に唇を寄せたひとみの息は既に上がっていた。美貴も。
長く白い指が下着を纏ったままの美貴を弄りた。
下着越しに感じるひとみの柔らかな指の腹の感触に美貴は小さく震え、
握ったままだった鍵が力の抜けた掌からするりと落ちる。
フローリングに叩きつけられたキーホルダーが、カチャリと小さな音を立てた。
16 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:35

二人で借りたこの部屋は、無機質で、生活感のまるでない空間だった。
まあ、それでいいと言えば、それでいいのだが。

吐息交じりに繰り返される愛の言葉と、熱っぽい愛撫に塗れた酷く扇情的なセックス。
潤んだ瞳と上気した薔薇色の頬で「好き」だとか「気持ちいいよ」だとか
掠れた声で囁かれる度にひとみは、正直、同性相手によくこんなセックスが出来るものだと思う。
そして、それを抱く自分自身も、きっとどうかしている。
この部屋を使わなくなる日が来たら、その時自分はどうなるんだろう。

か細い美貴の白い体を抱きながら、ひとみは快楽と共にやって来た漠然とした不安に目を閉じた。
17 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:36





「ないじゃん」
行為の後、ベットヘッドに置いてあったタバコの箱を開けてみると、中は空だった。
そういえば帰り際に全部吸ってしまったんだと思い出し、
ひとみは面倒くさそうに頭を掻くと、隣で眠る美貴を起こさないよう、そっとベットを降りる。
注意を払ったつもりだったが、それでもスプリングはギシリと小さな音を立てた。
午後11時。
この時間だと近所の自動販売機は動いていない。
コンビニまでぶらぶら歩いていくか。
そう思いながら、ひとみはハンガーに掛けてあった薄手のブルゾンに手を延ばした。

18 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:38
外は思いの他寒かった。
タバコのついでに買ってしまった、チョコレートが幾つか入ったコンビニ袋をぶら下げながら、
暗い空の下を時折小さく身震いをしながら、それでも急ぐ事はせず、のんびりと歩く。

かさかさと小さな音を立ててコンビニ袋から小さなチョコレートを取り出すと、
薄い包装紙を破り、その四角い固形物を口の中に放り込んだ。
噛み砕くと中にはさくりとしたビスケットが入っている。

甘く蕩けるその味は、嫌という程耳にした、行為の最中の美貴の愛の囁きに、なんだか少し似ていた。
19 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:39

部屋に戻ってみると美貴は依然規則的な寝息を立て、気持ち良さそうに眠っていた。
薄暗い部屋の中にぼんやりと浮かんだ白い肌が妙に痛々しい。
寝顔に顔を近づけ、伏せられた睫毛の長さに少し戸惑いながらも、唇を落とす。
「ん、」
唇の感触に美貴がゆっくりと目を醒ました。
ドキリとしたが、寝起きの悪い美貴は自分が目を醒ますきっかけとなった行為に気付いていない様子だ。
けだるそうに髪を掻き上げてからひとみの方をぼんやりと眺め、まだ重い瞼を手で擦りながら口を開いた。

「何で服着てんの?」
「コンビニにタバコ買いに行っただけ。あ、いいもんあげる」
コンビニ袋から取り出したタバコを見せてから、再びがさがさと袋の中を漁り、
買ってきたチョコレートを軽く放り投げる。
「あ、チロルチョコ」
ぽつりと投げ出されたチョコレートを手に取ると、美貴は嬉しそうにそれを眺めた。
「ありがと」
20 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:41

でもどうせなら他のものが良かったと文句を並べる相手に、
別に美貴の為に買ってきたんじゃないと唇を尖らせると、
美貴は笑いながら「そっか」と答えてから、
行くんだったら美貴も誘ってくれれば良かったのにと拗ねる様に訴えた。
「涎垂らしながら気持ち良さそうに寝てたじゃん」
「垂らしてないよう」
ひとみがからかうと、今度は美貴が唇を尖らせた。


ムキになって否定するその態度が、
いくら人には言えない様なことをしていても高校生なんだと酷く安心してしまうのは、
子供じみた独占欲の延長線なのかもしれない。あせりなのかもしれない。
置いて行かれることへの?
美貴は、もしかしたらこの恋を、恋だと錯覚しているだけなのかもしれない。
いつか美貴自身がそれに気付き、自分から離れていく日が来るかもしれない。
―――そんな風に頭の隅で思っているからだと、ひとみは自覚していた。
もしそうであるのなら、このまま大人になんかならないで欲しい。
いつまでもこのままでいて欲しい。
ただ、ただただ貪欲に自分だけを求める子供でいて欲しい。
21 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:43

思わず美貴の肩に頬を寄せると、白く細い腕が体に優しく絡みつく。
背中を撫でる長い指が酷く心地いい。ひとみは美貴に体を預けたままゆっくりと目を閉じた。
「でも、良かった。起きたらいないかもって思ってたから」
「…なんで?」
「さっきさ、起きたらよっちゃんいて安心したけど、…いつもさ、いなかったらどうしよう、
もし、あたしのこと置いてったらどうしよう、って思っちゃうんだよね」
「…置いてかないよ」
小さな声で答えると、ひとみの両手が優しく頬を包み、ゆっくりと近づいた唇が美貴のそれに触れる。
室内が乾燥している所為か、寄せられた唇は少し乾いていた。
「最近色々考えてちゃって。美貴の事もういらなくなって、傍から離れてっちゃって、
この部屋二人で使う事なくなっちゃう時が来たらどうしようって思って。
そしたらさ、部屋入った途端たまんなくなって。
みっともなくてもいいから、すぐ欲しいって。絶対に、絶対に離れたくないなって」
息が詰まった。
美貴の不安はひとみのそれと同じもので、
苦しんでいたのは自分だけではなかったのだと思うと胸の奥の方で、
何かが大きく膨らんでいくのが分かった。


「ねえ、よっちゃん、美貴と同じ様に、美貴の事好き?みっともない位、美貴に恋してくれてる?」
胸の奥の何かが、音を立てず弾けた。
22 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:45

それは体内を駆け上がり、鼻腔をツンと刺激して涙腺を緩ませる。<BR>泣き顔を見られたくないと思いすぐに顔を伏せたが、喉から漏れる嗚咽が止まらない。<BR>
口元を手で覆い隠し、眉間に皺を寄せて涙を堪える。
それでも涙は流れ、ひとみの頬を濡らした。

自分だって情けない程、美貴に恋をしていると思った。



どうしてなんだろう。
いつの間に、こんなに好きになったんだろう。
相手がいなきゃ生きてかれないなんて、そんなの終わってるって思ってたのに。<BR>
馬鹿みたい。


こんな時どうして素直に、「同じだけ好きだよ」と、美貴に言ってやれないのか。
同じ位、いやもしかすると、溺れているのは自分の方なのに。
素直になれないのは、女同士だからという負い目なのか、それとも。
23 名前:a snob 投稿日:2004/10/06(水) 00:46

「…泣かないで、よっちゃん」
「……」
「よっちゃんが泣くと、美貴も泣いちゃうよ…」

悲しいことなんて何もないし、
ただ、愛し合っていればいいのに。



どうしてか、先の見えないことだらけだ。




24 名前:ソラ 投稿日:2004/10/06(水) 00:49
更新いたしました。
レス返しはまた明日にでもさせて頂きます。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/06(水) 01:40
暗くて静かな空間で読んだら非常に心に染みました。
なんか辛いなぁ…胸が痛いなぁ。
そんな気持ちを抱えながらも、見守っていきたいと思います。
頑張って下さい。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 00:58
更新お疲れ様です。
なんだかなぁ〜・・・
なんだろう・・・読み終わった後のこのモヤッとした空気・・・
なんか寂しい・・・。
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 17:59
乙です。
モヤッとボールを何個か投げたい気分なのは自分だけ?(笑
展開が楽しみです
28 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:13





よしこと、

はじめて会った日を、今もおぼえてる。

恥ずかしそうに目を逸らす顔とか、幼さの影の残る笑い顔とか。


いまも
見るたびに、ずっと一緒にいたいと思ってた気持ちを思い出してる。
永遠なんてないこと、わかってた。
変わらないものなんかないからさ、変わらないその時を一秒でも長くいて欲しかった。


29 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:16

隣には、寝息を立てているよしこがいる。
軽く、起きないように頬を撫でてみた。起きる気配なんて全く無くて。
まぁ、最近疲れてる感じだったしね。
あたしにだけ気を許してくれてるのとかも、そりゃ気付いてる。
それでも彼女は、苦しい。苦しいって言うか、苦しんでるって言うか。
あたしってあたしの知らない処で何回よしこを泣かしたんだろう。
この前偶然見てしまったのは、あたしを抱いた後によしこが泣いてて。
でもあたしはどうすることも出来なくて。本当にどうする事も出来なくて。
無力、ってこういう事なんだな、って初めて身に染みて思った。
そんで今もきっと、苦しんでて。
駄目だね。恋人失格かな、あたし。大好きなんだけど、好きなだけじゃ駄目なことっていっぱいあるよね。
好きだって言って、満足してるのはあたしだけど、そっからよしこ困るんだよ。
イケナイコト。
そればっかり思ってるから。
30 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:18
「…ばーか」

うわ、あたしがよしこに馬鹿って言うの初めてかもしんない。
でもさー、あたし的には事実だと思う。
よしこってば頭良いし、可愛いし、ね、揃ってるけど馬鹿なんだよね。どっか抜けてるんだよ。
打算的な癖に最後の最後で計算忘れるっていうかね、何、数学のテストで掛け算間違えるぐらい馬鹿だよね。
人間的に。
公式とか全部あってるんだけど、つまんないとこでミスってそんで馬鹿みたいに落ち込むの。
やっぱ馬鹿だよ。
いつもあたしのこと馬鹿っていうけど。それと同じで馬鹿なんだよ。


「…おばかさんだもんねー」

そんで絶対素直になんない。
イケナイコトだから。
あたしが好きだって言ってもよしこは困った顔する。
子供をなだめるみたいに相槌を打つ。
ね、馬鹿。
何、何でそうなるの。
好きなら好きって言えばいいじゃん。言い返してくれればすごい幸せなんですけど。
別に言い返したからってがんじがらめにするつもりないし?
31 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:20


「でもさー、何でそんな必死に隠すの?そんなに悪い事?バレてどうなるの。何でそんな自分を追い詰めるの?」

そうだよ。よく考えたらそこまでどうして自分を責めるの。
あたしを責めるならそれで理にかなってると思うんだけど。告白したのあたしだしさ。
わかんないんだよ。世間の目?いや、だからこうして隠れて付き合ってんじゃん。
ぶっちゃけバレつつあるじゃん。なのに何を怖がってんの。
亜弥とかにはバレてるし。何を恐れることがあるの。
あたしが好きって言って、よしこもあたしを好きなら好きって言えばいいのに。
わかんない。
あたし馬鹿だからわかんないよ。
教えてよ。一人でずっと困った顔してないでさ。
何のためにあたしがいるの。
何のためにあたしが告白したの。
何でそれを解らないの。
頭良いくせに。
32 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:23
「やっぱ馬鹿じゃんー」

ね、あたしに心配させないでおこうとか思ってんの?
無理だよーよしこ嘘下手だもん。あたしより下手だもん。特にあたしに関して下手だもん。
だから言って欲しい。
でもね、言いたくないんなら無理矢理聞くのもいやなんだ。
だから言ってくれるのを待ってるんだけど、でもよしこが何か言う日って、怖いんだよ。
もうやめにしよう。って、言われる気がしてさ。
よしこはずっとこの関係怖がっててさ、ずっとずっと怯えててさ、耐え切れないんでしょ?
何に怯えてるのか、わかんないけど。
何が不安なんだろうね。

「…」

解りたいよ。
言ってくれなきゃわかんないこといっぱいあるから。
あたし、よしこ大好きだから。いつまでもこうしていたいから。解りたいよ。

「キスしていー?」







33 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:25







額に唇を落とされた夜、
ごっちんは優しすぎるんだと、思った。
あたしが怖がってるのはさ、別に世間体とかじゃないんだよ。
そりゃ、もちろんそれもあるけど?でもそれだけじゃないんだよ。
ごっちんなんだよ。
ごっちんを、引きずり落としてしまいそうで怖いんだよ。
あたしがごっちんをがんじがらめにしそうで怖いんだよ。
ごっちんの自由を全部奪ってしまいたいなんて思いそうで怖いんだよ。
だからいつも一歩下がるんだ。
あんたは優しすぎるから。
きっとそんなの大丈夫だなんていいそうだけど、でもごっちんやっぱ馬鹿だからさ。
馬鹿だから、最後まであたしを好きでいると思うんだよ。
それはやっぱ、違うと思うんだ。
ごっちんは普通に、幸せになるべきだと、思うから。
あたしなんかが、枷になっちゃいけないんだよ。
でもあたしだってやっぱ馬鹿だから、ごっちんの事それなりにちゃんと好きなんだけどな。


「いつかちゃんと聞かせてね?よしこ」


言ったってわかんないよ。



34 名前:a snob 投稿日:2004/10/07(木) 21:26


好きになると、いつも相手を縛り付けるあたしが、別れを告げたあの夏の日にも、
ごっちんは笑って言った。
「友達、やろうね」
何度も何度も泣きそうになりながら、あたしの顔を見て友達という言葉を繰り返した。
お願いだから傍にいさせてよ、そんな言葉が聞こえた気がして、あたしは心底後悔したんだった。






偶然でも運命でもいい、神様という対象に感謝したくなった。
好きという気持ちを知った日。
確かにあったはずだったのに。


もう恋なんて懲り懲りだ、すっかりそう思った日に美貴が現れたんだ。


35 名前:ソラ 投稿日:2004/10/07(木) 21:30
前回更新の際、半分寝ぼけていましてミスっている箇所が。
お目汚し申し訳ありませんが、どうか目をつぶって下さい…

今回はごっちん視点、途中よしこ視点での過去のお話でしたー。
さてさてこれからよしこは美貴に出会っていく訳ですが…
もう少し本編に入るまで序章に時間がかかりそうです。

皆さんあたたかいレスどうも有難うございます!
励みになります…頑張っていくので、どうぞよろしくお願いいたします!
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 22:18
過去の話も気になりますね。
悩みまくっているよしこさん結構好きです。
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/07(木) 23:28
更新お疲れ様です!!

なんかいいですねここのみきよしごま(*´Д`)ポワワ
つづき楽しみですww
38 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/10(日) 01:14
なんだろな・・・物語に漂う雰囲気が好きです。
上手に言えないんですけども。
長く、楽しんで行きたいです。頑張って下さい。
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/16(土) 00:19
面白いです
この先どうなるのか楽しみ
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/18(月) 09:29
危うい雰囲気がいいですね、上手く言えませんが。
期待しているので頑張ってください。
41 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 10:53




「転校生だって」

隣の席のまいが机に突っ伏しているひとみに声をかけた。


「…転校生?」
「なんかどうもワケありで転校してきたっぽいよ」
声を潜めながら、噂好きの彼女は言った。
「……ワケあり、ねぇ…」
別に興味ないや。
ふいに、窓際の席の真希に視線をやる。

ひとみの視線には気がついていないようだ。

真希は神妙そうな顔で教壇の方を睨んでいた。
黒板に書かれる名前と、鼻にかかったような甘ったるい女の声。
ひとみも同じように教壇をちらり、と見てまたすぐに元の体勢に戻った。
「…結構カワイイじゃん」
「え?何?よっすぃーなんか言った?」
まいが聞き返してきたので、ひとみは黙って首を振った。
42 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 10:55




「よっちゃん」
「…」
「ねーよっちゃぁ〜〜ん」
「…」
「…お腹へった」

そう言って体を小さく丸めて、居心地悪そうに唇を尖らす顔はちょっと可愛かった。
手元にはマスカラやら雑誌やらが散らかっていて、この場所はと言うと
まったく似つかわしくない区立図書館の自習室。

どうやら化粧を直すのも終わり、雑誌も読み終わり、さらに勉強をする訳でもなく
手持ち無沙汰そうだ。
「よっちゃーん。よっちゃんってば」
ひとみは、横で黙々と勉強をしている。
自習室には沢山の人が、各々勉強をしていて、
亜弥の声は十分聞こえていてうるさいくらいなのだが、甘ったるい声とその風貌に
男子達は一瞬睨みつけるようにこちらを見るのだが、すぐに視線を和らげる。
という訳で、誰も文句を言えないでいる。
43 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 10:56

「ね〜よっちゃんってば」
さんざん名前を呼ばれて、やっと手が止まる。と、やれやれと言ったふうで顔を上げた。
少し長めの髪の毛をうっとおしそうにかきあげると、はっきりとした二重に彩られた目がのぞく。
先ほどから名前を呼ばれ続けていたせいか、周りにいた人達は興味ありげにひとみを見る。
目を引くその容貌を。
やっと反応があったのが嬉しく亜弥が口を開こうとするより早く、ひとみがうるさいよとつぶやく。
「退屈なら、帰りなよ。亜弥」
「ええ〜〜〜。だって、外暑いしぃ」
季節は夏。
今は夕方だといっても、昼間の余熱でかなり暑い。
「じゃあ、静かにしてて」
そう言い放つとまたも、ノートと参考書に向かってしまう。
「・・・お腹へった・・・」
そうそっと主張してみるが、あっさりと無視される。
亜弥は仕方なく大人しく外でも眺める事にする。
静かになった隣をひとみはそっと伺ってみると、亜弥は窓の外を眺めている。

44 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 10:58

やれやれと思い、勉強に集中しようとすると、亜弥が何事か急に立ち上がった。
「亜弥?どした?」
「すぐもどる!」
そう言い残すと自習室を走って出て行った。
残されたひとみは訳が分らず、先程亜弥が見ていた外をのぞき見る。
そこは中庭で高校生らしき男4〜5人が小さな女の子を囲んでいる。

そこへ、亜弥が走って登場した。
「ナニやってんの、アイツら」
ひとみも自習室を出た。






45 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 10:59





ひとみが到着した時には全てが終了していた。

女の子が泣いていて、亜弥が女の子の目線までしゃがんで困っていた。
「亜弥」
「あ、よっちゃん。どうしよう、泣き止まないの。
ね、ほら、怖いお兄ちゃん達はもうどっか行っちゃったから大丈夫だよ?」
亜弥は振り向いてひとみに助けを求める。
ひとみも亜弥のとなりに同じようにしゃがむ。


と、その時どうやら少女の名前らしきを呼ぶ声が二人の背後から聞こえた。
「おねえちゃん」
女の子は走り出し、ひとみは立ち上がり振り向くと高校生らしき人が立っていた。
そして、女の子がおねえちゃんと呼んだ人物に飛びつくと、
その人物はすごい形相で亜弥とひとみを睨む。

46 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 11:00




完全に誤解されている。


そう悟るが、この状況ではもはや、誤解しない方が難しい。
「あの、あたしたち」
亜弥が声をかけようとするが、そいつは女の子の手を引くと行こうと言って行ってしまった。

「あーぁ…行っちゃった。やっぱり、勘違いされたかな」
「まぁ、この状況だけ見ればそうだろね」
ひとみはそう言うと中庭を抜けて敷地から出て行こうとする二人の背中をぼんやりと眺める。
すらりと伸びた手足と、あの鋭い目。

「…ね、さっきのってさ、今日来た転校生じゃなかった?」
「うそー?…でも、だとしたらちょっとやばいよね」
「……絶対、そうだった」
47 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 11:01

次の日。
相変わらず机に突っ伏して眠るひとみの向かいに
気だるそうな顔をして亜弥と真希が雑誌を広げて座っている。

「よっちゃん」
「…」
「ね、よっちゃんってば」
亜弥がひとみの肩を揺するとひとみはうるさいなぁと顔を上げた。
「あたし疲れてんだってば…」
ひとみの席の前に昨日のコ、―――やはりあの転校生だった、が立っていた。
二人が助けた女の子の姉とおぼしき人物だ。
俯きつつ二人を困ったような顔をして見ている。
昨日のような怒った顔でなく。
なんと言い出そうか考えあぐねているようだ。
「あのね、最初に言っとくけど昨日のはあたし達じゃないよ?」
亜弥はそう噛み付くが、ひとみに止められる。

48 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 11:03
明らかに、昨日のコトを怒ってここに来たわけではなさそうだ。

「うん。昨日妹から聞きました。助けてくれたって。すいませんでした」
そういうと丁寧に頭を下げた。
「でしょでしょー?あたしは助けたの!他校のやつらから、ね、よっちゃん」
亜弥はそう同意を求めるがひとみは無視して名前は?と問いかける。
唐突なセリフにえ?と困惑している。
「よっちゃん?」
「名前、なんていうの」
「…あ、美貴…」
「美貴か…」
所在なげに立ちすくむ美貴は、もう立ち去っていいものかどうか迷っているようだ。
亜弥はそんな美貴の腕をつかむとまぁ座んなよと空いている席に無理矢理座らせた。
「え?え??」
「転校してきて二日目でしょ?色々教えたげるよ。誤解も解けたことだし、ね、よっちゃん」
ひとみはあー、うん、とつぶやく。

真希の顔色をほんの少し伺いながら。
予想通り、不服そうな顔だ。
49 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 11:08

亜弥はひとみが美貴の事を気に入ったのを感じて、そう気を利かせたのだ。<BR>
ひとみが人を気に入るのは珍しい。ましてや、会って間もない様な同じ世代の人間に。<BR>
どうにも最近のひとみは、見ていて少し寂しかった。<BR>
<BR>
<BR>
…一度の恋が終わったからって、恋なんてもうしないなんて、そんなのもったいないよ。<BR>
ね?よっちゃん…<BR>
<BR>

亜弥は嬉しくて、ついついいらぬおせっかいを焼く。
さらに、やれ、前の学校はどこだとか、彼氏はいるのかとか、ずけずけと質問していた。
それに美貴は少し戸惑いながらも丁寧に答えていた。
「前は、北海道に住んでたんです」
「なぁんで敬語なのー、もっとリラックスしなよ!」
亜弥はそう言って美貴の背中をバンバンと叩く。
それまで黙って聞いていたひとみは
「亜弥、次移動でしょ?もうチャイム鳴るよ?」
と言い放つ。
「え〜一緒にサボるよう」
抗議の声をあげる。
「あんた実験、当番って言ってなかった?」
が、ひとみの座った目で睨まれ、教科書を掴んで拗ねたような顔で出て行った。
50 名前:a snob 投稿日:2004/10/20(水) 11:11

「…授業行かなくて平気なの?」
「……あ、もう帰ろうと思ってたとこだから…」
「…」
「…」
残されたひとみと美貴に沈黙が降りる。
そこで、ひとみがきまり悪そうに口を開いた。
「…ごめんね、亜弥うるさくて。悪気はないんだよ」
そうひとみが言うと、美貴は少し笑顔を見せた。
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。それよりも、あの・・・名前まだ聞いてなかった」
「あたしは吉澤。あいつは亜弥。松浦亜弥」
「吉澤さん、松浦さん…あの、昨日はホントにごめんなさい。あたし、勝手に勘違いしちゃって…
家に帰ってから妹に助けてもらったって聞いて、どうしようかと思って…
お礼も言いたいし、謝りたいし…だけどどこのクラスかわかんないし…」
「で、都合よく同じクラスだったわけだ?」
「……だね。」
笑い合う。
「…ホント、ありがとね」
美貴はそう言うと、ひとみの隣に腰を下ろした。
どうやら少し話をしていくようだ。

真希のことが少し気になったが、ひとみも話をしてみることにした。



51 名前:ソラ 投稿日:2004/10/20(水) 11:14
ま、また改行ミスを……すみませんすみません(涙


やっと出会ってくれました、この二人。
ここからがドロドロなんです…

今回もレス、ありがとうございます。
雰囲気気に入って下さっていると聞くと本当に嬉しいです。
これからも頑張りますので、どうか宜しくお願いします!
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 16:03
更新お疲れ様です。
ドロドロ…この爽やかさからどう変わっていくのか興味深いです。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 00:14
続き待ってます
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/07(日) 20:20
物凄く期待
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 22:01
面白いですね。
続きが凄く気になります。
56 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:10



その日から、4人はいつも一緒にいるようになった。
最初こそ不満そうな真希だったが、もともとの人付き合いに対してのフラットさも影響し、
すぐに打ち解け、盛り上げ役の亜弥は最近ずっと上機嫌だ。

今日もいつものように、4人で帰路についていた。


「ホント体力あるよなぁ、あの3人」
「…あはは、自分だって同い年じゃん」
「や、マジでマジで。特に亜弥なんかネジ切れるまではしゃぎ回ってるから」

前方ではしゃいでいる皆を眺めている。
「よっちゃんはさ、無愛想だけど友達は沢山いるんだね。ちょっと驚いたよ」
無愛想は余計だろ・・ひとみはそう思うが、
さっきの表情を微塵も感じさせないほど、明るくふざける美貴にまあいいかと思う。
57 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:13

そこへ、亜弥が買い込んだかき氷やらクレープやらを持って間に割り込んでくる。
「美貴たぁん。かき氷食べるー?クレープもあるよ」
そう、勢いよく差し出したかき氷のカップに刺さっていたスプーンが反動で落ちて
美貴の長袖がかき氷のシロップでよごれた。
「わ!美貴たんゴメン」
「亜弥〜」
ひとみはスプーンを拾い上げる。
亜弥は慌ててポケットを探るが、もとよりハンカチやらを持っている訳もない。
美貴はいいよ大丈夫と自分のハンカチを取り出すと、かき氷でブルーに染まった袖を拭く。


「そういえば、美貴たんいっつも長袖着てるけど、なんで?」

別に深い意味があって聞いた訳でもなく、そう問うた。
今は季節は夏だし、日は落ちても昼間の熱でかなり暑い。
それなのに、美貴はいつも長袖のシャツを着ていた。
「・・・」
黙ってしまった美貴に亜弥は首をかしげる。
ひとみは美貴がたまに見せる寂しげな表情をここでもしたことに、口を開きかけるが、
それよりも美貴の方が早く、笑顔を作った顔を上げると、クーラーがダメなんだよと言う。
そして、そんな事よりもと言う感じでクレープ食べたいと亜弥が左手に持っていたクレープを受け取った。
58 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:14

その時。
背後から不躾な声がひとみや美貴達にあびせられた。



「あれ〜?盗撮マニアの藤本じゃ〜ん。こんなトコロでなにしてんの〜?」


びくりと美貴の肩が震える。
ひとみと真希、亜弥は声をした方を振り返ると、
転校してきた時の美貴と同じ制服を着た高校生3、4人がこちらを見ていた。
「…なんだよ、あんた」
「アンタ達たち、どこの高校か知んないけど、藤本のこと知っててつるんでんの?」
けばけばしい化粧を施したリーダー格の女が最初に口を開く。



59 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:16


「こいつ、こんな虫も殺せないようなカワイ〜顔してて、悪魔だから」
「それとも、もうなんか決定的な写真とか撮られちゃったりした?」

口々に彼女達から出る言葉に、3人は眉間に皺を寄せる。
「はぁ?何言ってんの」
真希が真顔で、対峙する。ひとみは俯いたまま、身じろぎひとつしない美貴を見つめる。
真希のにらみに少しびびった高校生達は後ずさるが、さらに続ける。

「何、ってホントの事言ってんだよ。なんなら本人に聞いてみれば?」


そう言って、視線を美貴へ向ける。
「ねぇ、藤本。援交、盗撮、盗聴、それをネタにした恐喝、かつあげ。全部ホントのことでしょ?」
美貴は未だ、うつむいたままだ。

「無視してないで、なんとか言えよ!アンタは転校して何もなかった様な顔してるけど、
 全員がお前を許した訳じゃ無いってこと、忘れんなよ?!」
60 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:18





「…忘れてない。忘れてないし…何もなかったなんて思ってない」

消え入りそうな声で、美貴が言葉を発する。


「…自分でしたこと、は…ちゃんと分かってる」
「…美貴」
ひとみはまったく事情が飲み込めないが、表情で彼女達言っていることが、でたらめではない事を悟る。
悟って、驚きを隠し切れない。

美貴が、盗撮?

恐喝?援助交際?

「訳わかんない因縁つけてんじゃないよ。美貴たんがそんなことするワケない」
「亜弥、やめときな」
亜弥が相手に近づこうと、歩み寄るのをひとみが止めると、美貴がごめんとつぶやいた。
「ごめん…。その人たちが言っている事は全部ホントなんだ」
そして美貴は彼らの真正面に向くと、ごめんなさいと深々と頭を下げた。
その背中を、何も言い出せずに見守るしかなかった。

美貴の前の学校の生徒達は頭を下げている美貴を
汚いものでも見るかのような蔑んだ目で一瞥すると、何も言わずにそのままそこを去って行った。
61 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:19

「美貴…ちょっと、待って。謝る前に説明して、訳わかんねーよ」

ひとみは美貴の腕を掴むと、美貴はあからさまにびくりとした。そして、小さく震える。
口を噤む、真希と亜弥。
「…よっちゃん…」
「説明しろよ。なんだよ、盗撮って…援交って」

「よっちゃん…さっきの人たちが言ってた通りで…と…っ盗撮したネタで…お・・おか、ねをゆすって」

一生懸命言葉を繋ぐ美貴だが、どうしても言葉がうまく出てこない。
そして、一瞬ひどく哀しそうな顔をすると、泣き笑いの様な表情をした。

「美貴…皆と知り合えて、仲良くしてもらった間、ホントに楽しかった・・・ごめん」
美貴はそう言うと、ひとみの手をそっと外す。
62 名前:a snob 投稿日:2004/11/23(火) 23:21

ありがと、と小さく言うと、ひとみたちを置いてその場を振り返らずに雑踏の中へ消えて行ってしまった。
「美貴…ちょっと待ちなよ、ワケわかんないじゃん」
ひとみは、いまいましげに足を蹴り上げた。


「…よっちゃん。美貴たんが盗撮って、ホントなのかな」
亜弥が呆然とつぶやく。


「・・・っかんないよ」
「なんだか…想像できない」
真希はそう言うと雑踏の中へ消えて行った美貴の背中を目で追った。


その日を境に、美貴は学校を休んだ。





63 名前:ソラ 投稿日:2004/11/23(火) 23:23
更新が遅くなってしまって本当にすみません。
マイペースで頑張っていくので、どうぞ見守ってやって下さい。

最近のみきよしにドキドキです。
前髪切ったよっちゃんが可愛くてたまらん!
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/24(水) 10:31
更新ありがとうございます。
あまり無理せずに、作者さんのペースで頑張って下さい。
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/10(金) 01:34
待ってるよ!
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/15(水) 15:28
続きが読みたいよー
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 01:38
マイペースでもいいですので完結はさせてください。
お願いします。この作品大好きですので。
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 23:15
待ってます。
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/29(土) 23:20
続きが読みたいよー。
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 19:45
待ってます。頑張れ!

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