弱気なボクのサンタクロース
- 1 名前:風道 投稿日:2004/10/10(日) 15:38
- 初めて小説を書きます。気を引き締めていきます。
カップリングはこんごまメイン、かな?という感じで。
ちょっとだけ愛しくて
ちょっとだけ切ない物語が書ければな、と思ってます。
- 2 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/10(日) 15:39
-
秋が来ていた。もうすぐ冬だっていう気配を漂わせながら。
キミはただ笑っていた。微笑んでいた。
そんなキミを見て、あたしはどんな顔をしていたんだろうか。
今となってはわからない。そんな、アタシのバカなお話だ。
- 3 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/10(日) 15:40
-
キレイな線を描いて飛行機が飛んでいるのを、教室の窓からぼんやりと見ていた。
学校なんてだるいだけ。
ちょっとした友達と騒いでそれで終わり。
成績は大変優秀ですが、協調性がないようです。なんて通信簿によく書かれたこと。
そんなの通信簿に書かれたって見せる相手なんていなかった。
きっと、アタシの事情を聞けばみんな同情する。
同情なんてこれっぽっちもいらないから、アタシは笑う。
でもいざってなったときは不幸な事情もそれなりに都合よく使える。
そんなときは心の中で"バーカ"なんていって、アタシは心で心底笑う。同情する相手に対して
ギヴアンドテイクとか、そういうのしてもらったことない。
いいじゃん。あたしは普通の人間関係なんてどうでもいい。
だって、それがアタシだから。ゴトウマキという人間はそんなもんだ。
「ごっちん、今日どうする?」
隣の席のよしこがアタシにウキウキしながら話しかけてきた。
よしこ、ことヨシザワヒトミは中学の頃からの付き合い。
どうでもいい人間関係の中で唯一アタシについてくる苦労モンだ。
どうする?ってのは放課後のことかな。
アタシはぼんやりと黒板の上の時計を見た。時刻は3:00
放課後まで10分、か。
「どうでもいいや」
「それじゃ、どうでもいいや」
だるそうに言うあたしの言葉を真似してよしこはククッと笑う。
そんなにアタシを怒らせたいのかな、よしこは。なんてね。こういうやつだから仕方がない。
「よっちゃん、今日もフラれた系?」
右隣のフジモトミキがひょっこりでてきて笑う。
美貴とは高校に入ってからの友達。アタシと同様に人間関係だるい組
だからよく二人でいることは多いし、ケンカもしたことない。
「だるいっしょ」がお互いの口癖。
「フラれたー。ごっちん、最近ノリ悪いんだもんなぁ。」
「最近?いつもじゃない?」
「アイタタター」
アタシが言うとよしこはダメージを受けたフリをする。
バカなやつだけど、そこがかわいい。
アタシたちがふざけてるといつのまにか授業は終わってしまった。
後は帰りのHRってとこだけど、アタシと美貴は鞄を持つ。
- 4 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/10(日) 15:40
-
HR?だるいっしょ。それもうちらの口癖だから。
「じゃあね、よっちゃん」
「バイ。よしこ」
「あいよー」
担任が来る前にアタシたちはそそくさと教室を後にする。
最後の授業まで出てたんだから、立派なもんだ。
よしこは逆にそういう風にそそくさと帰るのがめんどくさいタイプなので
いつもHR前にバイバイする。
職員室の前をそっと通りに抜けて、下駄箱へ1分未満で到着。
お互い靴を取って、履く。
「ごっちんさぁ、今年どうすんの?」
「何が?」
「クリスマスってやつ」
美貴は爪を見ながら、言う。
アタシははぁ?と頭の中で今日の日付を確認。
まだアンタ、10月でしょーが。どうすんの?ってレベルか?
でもまぁ、美貴はなんだかんだいってイベント事が好きなやつだからね。
- 5 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/10(日) 15:41
-
アタシはローファーを履いて、かかとをトントンして背伸び。
「クリスマス…ねぇ?そこらへんの男にプレゼントもらって終わるぐらい。」
「あーごっちんには仕事があったか」
「そう。男をだましてお金儲け、ってか」
アタシの天職。男をある程度だましてプレゼントをもらっては質屋に売る。
そうやってお小遣いを稼いでる。下手にバイトするより数倍稼げる。
将来はお水系がいいんじゃない?なんていわれるけど、そこまで愛想ばっかし使うのも疲れる。
「クリスマスは稼ぎ時だしねぇ。去年は五人からもらったんだっけ?」
「まあね。自分へのプレゼント、かな。」
「ふーん。ごっちんってやっぱごっちんだわ。」
なんて美貴は笑う。
そんな美貴こそどうすんの?なんてアタシは質問返し。
「さあ。最近お気に入りの子いるからその子とすごすかも。」
「へー。恋ってやつ?」
「まさか。だまされてあげてるんだよ。」
美貴こそ、やっぱり美貴じゃん。
なんていってお互いに笑いあった。
- 6 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/10(日) 15:41
-
恋愛、友情、全てがだるい。あたしたち二人はずっとそうだ。
美貴は何があってこうなったか知らないけれど、多分アタシと似たようなモノを持っているんだろう
だから時々無性に美貴に惹かれるし、美貴をほしいと思うことがある。
なんて、これこそアタシっぽくないけれど。
「しっかし、雨降りそうだね、コレ」
美貴がそういって空を指差す。
さっきまで晴れていた空は、一気に曇り始めていた。
「また台風くるってやつ?」
「かもね。速めに帰ったほうがいいかもね、ごっちん」
「え?美貴は帰らないの?」
「ちょっとヤボ用。」
そういって、舌をチロっとだす美貴。
へーめずらしいじゃん。なんて一言いってやるあたし。
そのまま、美貴とはお互い明日休むかーなんていって、学校からすぐの喫茶店前で別れた。
- 7 名前:風道 投稿日:2004/10/10(日) 15:42
- こんな感じで進んでいきます。今日は初なのでこれにて。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/10(日) 19:33
- おぉ、良いカンジですね。
次回更新待ってます。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 20:19
- こんごまという事で読んでみました。
書き方がソフトで親しみが感じられて好きです。
頑張ってくださいー。
- 10 名前:風道 投稿日:2004/10/11(月) 21:33
-
感想ありがとうございますm(_ _)m
>>8 名無飼育さん
良い感じだと思われて嬉しいです。
こんな調子で書いていくのでよければ見守っててください!
>>9 名無飼育さん
ありがとうございます!こんごまは自分の中で1番好きなCPです。
親しみを感じてもらえて嬉しいです。これからがんばっていきます!
- 11 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:36
-
アタシの家は高校からそれほど遠くない。
電車1本使って、まあ20分ぐらいだ。1駅でつくし、駅からもそれほど歩かない。
めんどくさいときは原チャリでいったりするけれど。
そんなわけで、今日も電車にのって帰ってきた。
地元の駅につくとあめがざぁざぁ降り始めていた。
美貴の言うとおり早めに帰ってきたんだけどな、なんて苦笑い。
カサを買うお金もなく、アタシはコンビニのカサ立てにささっているカサを頂戴する。
家まで10分。後で返しておくよ、カサの持ち主さん。
雨は段々激しくなってくる。
秋の雨ってなんでこんなに寒いんだろう。
冷たくて、寒くて、雨自体好きじゃないけど、秋の雨はもっと嫌いだ。
何か思い出させる気がするから。
トボトボと歩いて、自分のマンションについた。
鍵をとりだして、オートロックをあけ、マンションの中へ入る。
エレベーターの中にはってあるカレンダーを見て、明日は燃えるゴミの日だということに気づく。
あーあー、だるいけどださなきゃな。分別めんどくさいからペットボトルも捨てようか。
なんて、くだらない生活のこと考えながら自分の階へ。
チンッ
エレベーターがついて、10階に下りる。
アタシは鍵を指でくるくると振り回し、自分の部屋へ。
しかし…進んでいくうちに我が家の前に大きな影があることに気づいた。
そう、真っ赤な洋服をきた女の子の影が。
- 12 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:36
-
今日、何日だっけ。
そうそう、季節はまだ10月中旬。ついこの前アタシ18歳になったんだよね。
だから、こんな目を疑う光景は、ないと思うんだけど。
うん…ないと思うんだけどな…。
だって、10月にクリスマスなんか、ないでしょ?
目の前に居るサンタクロースさん。
- 13 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:37
-
ドアの前でうずくまってる少女…はサンタクロースの格好をしていた。
赤い帽子に、赤い服。トナカイはいないけど。(いたら大変だ)
女の子は、寒そうにぶるぶると震えている。
うずくまってるせいで顔が見えない。
どこの会社だよ、今からクリスマス気分なオメデタイ会社は。
「ちょっと」
思いっきり冷たい声で、少女をトントンと起こした。
少女は顔をゆっくりあげて、アタシのほうをむく。
「ほえ」
いや、ほえ、じゃなくてさ…でも、ふーん、結構かわいいじゃんか。
なんっていうか素朴な感じ?純粋そうな目とかアタシと正反対。
ほっぺが少し赤いけど、田舎っこかな。
ま、そんなことはどうでもいい。
サンタクロースなんて、アタシにいらない。
「アンタ、何?」
目をパチパチする少女にアタシは問いかける。
少女は「はぃ!?」なんて一瞬驚いてあたりを見回した。
そして納得したようにうなづくとお尻をポンポン、として立ち上がった。
身長差、結構あるんだ。ふーん、普通のかわいい女の子って感じ。
その変な格好をのぞけば。
「あ、あの…ハンコもらえますか」
「は?」
「た、宅配便なんです」
もじもじしながら言う女の子。
アタシは「あー宅配便か」なんて納得して、家に鍵をまわしてドアをあけた。
玄関にあるハンコをとって彼女が差し出してきた紙にハンコを押す。
なになに?サンタクロース宅配…ね。変な宅配便だ。
- 14 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:37
-
「はい。これでいい?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「それで、荷物は?」
手をだして催促すると彼女はうつむいた。
そして、少し照れたように笑う。
は?荷物だせってはやく。寒いんだから雨ふっててさ
アタシが少しイライラしはじめると彼女はテレながらいった
「あ、あの…私なんです」
「…は?」
「私が、届けられた荷物です。」
ちなみに返品不可なんです、と小声で。
- 15 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:37
-
………………………………
………………………………
…は?
- 16 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:38
-
………変な宗教が増えたもんだ。
ああ、寒い。寒い。さ、家に入ろう。
「あの!シカトしないでください…。」
家に入ろうとしたところで彼女に止められる。
だからさ、アタシはこれ以上あんたの宗教に付き合ってる暇はないんだって。
「うち、無宗教だから」
「へ?…ああ、いえ!これは宗教じゃないです…。」
「じゃあ、何?オレオレ詐欺?」
「あれは極悪ですよね…って違います!詐欺じゃありません!」
じゃあなんだっていうんだよ。
アタシはため息1つ。彼女も軽いため息。
どーなってんのこの子。
- 17 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/11(月) 21:38
-
「…あの、その…詳しくお話いたしますので、あがらせていただいてもよろしいでしょうか」
彼女はそういった。キリッとなった顔。いきなり真剣だ。
ったく…めんどうな宗教だ。アタシは無宗教だっていうのに。
こんな子を家にいれるはずがない。普通はそうだ。
しかし、このときのあたしは家にはいって温まるのが最優先だったので
しぶしぶ了承した。
「すぐでてけよ」
なんて呟き、彼女は聞いていない。
いれたが、最後。真っ赤なサンタクロース。
- 18 名前:風道 投稿日:2004/10/11(月) 21:39
- 本日はここまでです。中途半端ですいません。(汗
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/12(火) 19:13
- ユニークそうな設定!紺野さんの説明待ってます。
- 20 名前:風道 投稿日:2004/10/15(金) 23:15
-
本日更新します。
>>19 名無飼育さん
ユニークな設定と思われてよかったです。これからどんどん紺野さんが
おばかなことをしていくので、どうぞ見守っててあげてください。
- 21 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:16
-
めんどくさいことになった。マジで。
この広いリビングに誰かがいることなんてかなり久しぶりなんじゃないかな。
もっともこの子がマトモな人間なら、だけど。
アタシはいすにすわってるもじもじした女の子を見てため息。
どうやらサンタのミニスカが恥ずかしいらしい。
…まぁ、似合ってなくはないけどね。
「で…単刀直入に頼むわ。いっとくけど宗教は…」
「宗教じゃないです…。」
「はいはい」
アタシは彼女の真向かいにすわる。
けっこーかわいいのに…宗教なんかにはまっちゃってなぁ。
なんて思ったり。まあ、宗教じゃないらしいけど?知ったこっちゃない。
アタシがぼんやり彼女を眺めると、彼女はまたキリッとした顔立ちになりはなし始めた。
「私は、あの、サンタクロースなんです」
「そりゃ、見ればね。」
何を言い出すかと思えばそんなこと、なんてアタシはククッと笑う。
けれど彼女の目は真剣そのものだ。その目にすこし、ドキリとなる。
「後藤さんの考えているサンタとは違います。」
「…は?」
「私は、人間ではありません。えっと、姿形は人間ですけれど」
「アンタ…なにいってんの?」
「ここからは宗教とか言われても仕方がない話になるんですけれど…話の腰を折らないでいただければ幸いです」
と、一礼する彼女。
そこまで礼儀正しく頼まれれば、従わないわけにいかない。
アタシはしょうがないから、黙って聞いてやることにした。
- 22 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:16
-
「この世界には、神とかそういうものがあるのです。
多分、後藤さんが考えているように、天国と地獄のような風景が。
私は現実世界で生きた死後、天国へ召されました。あの、宗教じゃないですよ?
そして私は輪廻転生をすべく天国で事務関係の仕事につきました。
結構、エクセルとかワードとか大変なんです…。はい…。
あ、それでですね、今年初めてサンタクロースに任命されまして
お恥ずかしい話ですが、新米サンタクロースです。
あ、あのサンタというのはですね」
「…ねぇ」
ごめん、たまらなくなったから話を折らせてもらう。
「もっと簡潔に。用途を言って。頭痛いわ。」
「あああ、は、はい!すいません。」
ではっ、と再び意気込む彼女。
「サンタとは2種類いまして、子供に夢を与えるサンタと
神様から任命された人を幸せにするサンタがいるんです。
私はそれで後藤真希さんをクリスマスまでに幸せにするという任務を与えられました。」
…頭痛がひどくなっていくのは絶対こいつのせいだ。
- 23 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:17
-
嘘だ。
バカだ。
なにいってんだ。
バカにしようと口から何か言おうと思っても声がでない。
口がパクパク動くだけ。
彼女はアタシをじっとみている。その瞳はまっすぐできれいだ。
「証明しなければいけないんですが…えっとほしいものはありますか?」
そう問いかけても声がでない。
あ、すいません。口を挟まれないように声を消してたんです、なんて彼女が言うと
スッとアタシの声がでてきた
「ななな…なにこれ」
怖い。ありえない。なんだこの子。超能力者か…。
でも当の本人はいたって普通の顔。…意味不明だ。マジで。
「あの…ほしいものは」
そうなお言う彼女にアタシは苦し紛れに「ケーキ20個」といった。
わかりました、と笑顔でうなづいた彼女は少しの間目を閉じると…
ドスッ…
ケーキ20個があらわれた。
彼女の頭の上に。ぐちゃりと
「……すいません…なにぶん、新米なもので…」
しかし、アタシは見たのだ。超能力まがいなものを。
間違いなく、間違いなく突然ケーキが彼女の頭にいきなりあらわれた。
見るも無残なぐちゃぐちゃな形で。
- 24 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:17
-
えっと…こういうときどうすればいい?いつものアタシ。
そうだ、いつものアタシなら冷静を保ってこういうはずだ。「手品かなんか?うまいね」って。
そういってあざ笑ってやれ。
けれど、口からでた答えは
「アンタ…あたしを幸せにするの?」
なんて疑問。
彼女はパァってケーキまみれの顔でにっこり笑う。
「はい!完璧です!!」
まだ信じきったわけじゃない。
けれど、信じないわけにはいかないような”気”がした。
どうしてたが、わからない。
彼女の目が無垢だからか
彼女のオーラがほかとは違ったからか
彼女の後ろに神がついているからか
理由はわからないけれど、なぜだか、アタシはその時黙ってしまった。
- 25 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:19
- 彼女は黙ったアタシを見て、ちょっと心配そうに伺う。
「あの…やはり迷惑だったでしょうか」
「…え?」
「いきなり幸せにさせます、なんて…ちょっと失礼、ですよね…。」
と、しょんぼりしている。
…なんっていうか、よくわかんないけど、頭よさそうな顔して(実際頭いいかもだけど)なんかちょっと抜けてる仕草は、新鮮だ。
「幽霊なの?」
「へ?」
「アンタは幽霊なの?」
疑問に思ったことを聞いてみる。
先ほどの話ではこの子は幽霊で、天国にいるっていう設定なわけでしょ。
だったらそこから疑問にならなくてはいけない。
アタシが聞くと彼女はうつむいた。
「はい。…私は幽霊…みたいなものです。
でも、この任務中は人間の頃の体を与えてもらいました。
なので、一応…その人間という感じでお願いします。」
どういうお願いだろうか。
アタシは天井を見た。
どーしてこーなったんだっけ?
えっと、確かあたしはいつも通り、帰宅して、ただ雨とかふっていやだなあとか思って
家について…いきなり女の子が座っていて……わっかんない、なぁ。
- 26 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/15(金) 23:20
- とりあえず、もうめんどくさい。
ええい、宗教でもなんでもいい。信じてるワケでもなんでもない。めんどくさい。
「好きにすれば」
アタシはそういって、ため息をついた。
大体幸せにするってどうやってすんの。ったく…マジめんどくさい。
かわいいのが救いだけど。このサンタ。
「あ、あ、ありがとうございます!!」
女の子はそういって、何度もお辞儀をした。
アタシはボーっとそのお辞儀を見ている。ふん…信じたわけじゃないさ。
一通りお礼の言葉を述べると女の子はいそいそと荷物を広げた。
おい…おい、おい
「えっと、その…あの、私はどこの部屋使えばよろしいでしょうか?」
手に持ってるのはさっきはなかった大きなリュック。
住み込みサンタってこの世に存在するもんなのか。
こういうのってどうなの…。
どうでもいいよ、もう。考えるのめんどくさい。
「…とりあえず、アタシの部屋の隣…でいいよ…。」
これは、夢だ。
心の中で100回ほど呟く
意味がわからなすぎて、アタシはふらふらと部屋に戻った。
ベットにダイヴ
眠ればなんとかなるだろう。白昼夢?オーケイ、そんぐらいがまだマシ。
- 27 名前:風道 投稿日:2004/10/15(金) 23:20
- 本日はここまで更新!ということにします。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 00:30
- 季節外れのスレタイだなとか思って(失礼)読んでみたらよいじゃないですか
二人のすれ違いぶりが読んでて楽しいです
サンタの紺野さんがもろに映像として浮かびました…あいくるしい
期待してます
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/17(日) 13:40
- おおっ、なんか面白そうな作品だ
このカプ好きなんで、期待してます
- 30 名前:風道 投稿日:2004/10/20(水) 20:02
-
感想ありがとうございます
>>28 名無飼育さん
これからの季節かなぁっと思っておもいつきました。
ほのぼのな物語がかけたらなぁと思っています。
サンタ姿はきっと紺野さんにはまってるでしょう!
期待にこたえられるようにがんばります!!
>>29 名無飼育さん
おもしろそうだなんて、ありがとうございます。
自分もこんごま大好きなんで、がんばって書いていきたいと思います。
- 31 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:03
-
頭の中でグルグルグル、考えている。
さっきのは夢か現実か。
冷静な頭をもったアタシは、とりあえず現実40%という考えを導き出す。
残りの60%を信じて、ベットから起きた。
とりあえず、ご飯何か食べなくちゃ。
あーあ、めんどくさい。
制服からジャージに着替えて、うん、と背伸び。
そしてドアをあけて、リビングへ
そこにいた彼女を見て、大きなため息
「ど、どうも」
…夢じゃなかったってやつ。
- 32 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:05
-
とりあえず、ソファに座って、彼女を凝視。
テレビじゃなくて彼女を凝視。
ねぇ、その衣装、いつ脱ぐの?
「…あ、あの…なんでしょうか」
凝視されたことに気づき、彼女は真っ赤になってあたしにいう。
なんでしょうか?だって。アタシがいいたいっつうの。なんであんたがいるんですかって。
イライラして口調が乱暴になりつつある夕焼け時。
っつーか、名前まだ知らないんだけど。
怒るに怒れない。叫ぶに叫べれない。
「アンタ、名前は」
「あ…す、すいません。言うの忘れてました。」
なんてまたお辞儀。いいから早くしてよね
「えっと、紺野あさ美と申します。」
そういって、にっこり。
サンタの名前は紺野あさ美、らしい。
普通すぎで、またこれが宗教っぽい。あーもう、名前なんてわかりゃどうでもいいけどさ。
アタシは「あっそ」と返事をして、ゴロンとソファに横たわった。
- 33 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:05
-
紺野、は相変わらずイスに座っていてアタシの反応を少し待っているようだった。
そんな期待をされても、反応なんてする気はない。
とりあえず着替えれば、とかも言う気にはならない。
アタシは共同生活とか全然したことないし、そういうのって自分に合わないってわかってる。
今まで遊んできたやつらも一緒に住もう、とかいってきたけど、言われたらそれでバイバイ。
自分に合わないことは排除するのがアタシ流。
だから、こーいうのってはっきりいって気に食わない。
自分の空間に、こいつがいるの。
- 34 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:05
- 「あのさ…紺野、だっけ」
イライラがつのって、紺野を見る。
紺野は相変わらず、ガチガチな感じ。
アンタがここに住むっていったんでしょーが。
「は、はい」
「この家に絶対すまなきゃいけないわけ?」
「はい…マニュアルにはそう書いています。あの、迷惑でしょうか?」
おどおどとしてそんなことを言う。
そんなことをいいやがるこの子。
アタシははっきりとした言葉を口にした
「うん。迷惑。」
「ですが、決まりなので。こればっかりは。」
さらりといいやがった。
神様ってやつが、いたとしたらどうにかしてほしい。
あ、いや…いるんだっけ
んじゃ、これは神様のせいなんだっけ?
アタシもう絶対宗教とか信じないから。
アタシはまた軽く頭痛がした。
共同生活は嫌いなのに、なんでこうなるんだよ
- 35 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:06
- 「でも、その…後藤さんのご迷惑になるようなことはいたしません。」
「…はぁ」
「光熱費はあがってしまいますが…家にずっといますし、干渉しない…つもりです。」
なんだもう、わけわかんない。
わけわかんないからまたどうでもいいとか思っちゃう。
でもここで思ったら終わりだ。どうでもよくないこと、今からしようとしてるから。
ふと、紺野を見ると少しおびえてる感じがした。
そりゃ、いきなり知らない人の家にきてすまなきゃいけないんだもんな。
一応、この子も人間だし…でもなぁ…。
っつか、人間ってよりは犬っぽい。
「じゃあ、ペットみたいなもんなんだ」
「は、はぃ!?」
「いいよもう。ペットで。もー、自由にしてくれ。とりあえず着替えて」
その赤い服は頭が痛くなる。
とりあえず神からの使命とかもういらないから、だからとりあえず着替えて。
紺野はすぐアタシの隣の部屋にいく。
- 36 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/10/20(水) 20:06
-
そして、10分後。ふつーの紺野がでてきた
「こういう服きるの久しぶりです。」
なんて、嬉しそうに笑った。
笑うがいいさ、アタシのペット。職業がサンタだろうがなんだろうがいいよ、もう。
アタシははぁ…とため息をついてソファにうなだれた。
もう、なんでもいいや
誰か、アタシのこの1日を笑ってやってくれないか?
だって、アタシには10月なのにサンタクロースがきたんだって
おもしろいわ…。あー…笑えるわ…。
- 37 名前:風道 投稿日:2004/10/20(水) 20:06
- 少量更新です。またすぐ更新します!
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 20:21
- 後藤さん自虐的ー。
変わる日が来るのかなと思いつつ更新楽しみにしてます。
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 23:54
- そりゃ投げやりにもなるわ、いきなりサンタに来られちゃ(w
普通のかっこの紺野さんとどうなることやら
- 40 名前:風道 投稿日:2004/10/24(日) 19:48
-
感想ありがとうございます。
>>38 名無飼育さん
後藤さんの自虐的な性格が直ればいいなぁと紺野サンタ大活躍の予定です☆
紺野サンタの活躍(?)をご期待くださいw
>>39 名無飼育さん
後藤さんじゃなくても、サンタがきたらびびりますよねw
これからどんどんからんでいく予定です!
では本日の更新です。
- 41 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:49
- ――――――――――――――――――
「なんであんなに使えないかな…」
家事やらせても、だめだし、洗濯機まわさせても、洗剤いれわすれるし
掃除させても、掃除機のスイッチいれないでやってるし。
これほどまで使えないやつだとは思えなかった。
二度手間のいいところで、いつもより疲労がピークだ。
ありえないほど使えないやつの職業はサンタクロース。
ぶつぶつと文句を言うあたしに対していつも一言
「でも、民家の進入とトナカイの操作はうまいです!」
…そんなん役にたつわけないでしょうが。
そういっていつもアタシはイライラ。でも、鈍いサンタはイライラなアタシに気づかない。
これってどうなの…マジで。
できることといえば、朝の見送りと、夕飯の買い物、ぐらいだということを
3日目にして気づいた。
- 42 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:50
- 「ありえない…」
「さっきから何ぶつぶついってんの、ごっちん」
隣の席のよしこが、アタシの顔を不思議そうにのぞく。
いつのまにかグチを声にだしてた…不覚。
アタシの人権のためにも、変な宗教家と共同生活してることだけは極秘にしなければ。
顔をコロッと変えて、よしこに笑顔でアタシはみつめた
「いやぁ、今日はいい天気だなぁって」
「そう?めっちゃ雨ふってんじゃん。」
…そうだった。窓の外の荒れ模様をみてため息1つ。
ま、アタシの部屋にはすでに台風がきてるけどね。台風の目はあのサンタ。
っつーか、掃除機の電源ぐらいスイッチ1つでいれれるんだから、覚えて、掃除でもしてほしい。
「変なごっちーん。何か隠しごと?」
「まーま、よっちゃん。ごっちんには100も隠し事あるんだからさ。」
あんま詮索するなぁ、なんて笑いながら美貴がいう。
…ったく、気のきくやつだなって思う。美貴はいっつもよしことアタシの間にはいってくれる。
アタシがいやがるそのタイミングをわかってるから、美貴はすごい。
アタシは美貴をみて、少し気が楽になる。
「ま、そういうことで」
「うっわ、ごっちんって今日もミステリアス。」
「いつもでしょ」
なんてサラリと軽く流した。ナナメ45度の視線で。
これがアタシ。そう、これでいいんだ。
ため息なんてらしくない。
あいつのために日常を振り回されるのなんて…
- 43 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:50
-
らしくない。
- 44 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:50
-
「だから、なんでこうなってんの」
部屋をあけた瞬間、頭がまた痛くなった。
学校を終えてやっと家に帰った途端、目の前の光景を疑った。
だってそこには犬がいたから。ドックIn我が家。…マジありえないって。
そして目の前にはちゃっかり紺野あさ美。ありえないマジで。
「紺野」
アタシの目をおどおどと見てる紺野にむかってでた声は思ったほどトーンが低い。
相当イラついてるんじゃないのアタシ。
「は、はぃ」
いつも以上におどおどしている。
まだであって何日もたっていないけど、この子が結構アタシを恐れているのは知っている。
だったらなんでアタシの神経を逆撫でするようなことするわけ?
- 45 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:52
-
ため息、1つ、して大きく息を吸い込んだ
「なにそれ」
「…あの、犬、です…。」
「見ればわかる」
子犬はアタシに恐れたのか、紺野のほうへかけよった。
っつか、部屋汚れるから玄関においとけ、せめて
イライラがつのる
「拾ってきたとかいったら殴る。」
「…えっと、お買い物をしてた途中についてきちゃったんです。」
「アンタはどっかの小学生か。おいて来い。」
冷たい声で一渇。紺野はどんどん小さくなる。
別にこれはアタシが悪いわけじゃない。だってどんな理由があったって紺野は居候で
この家の主導権はアタシにあるわけだ。
「…でも、捨てたりしたら、その、かわいそうです。」
「へぇ」
かわいそう、ね
…それじゃあ、アタシも充分かわいそうですよ。
「いいか、紺野。アタシは100歩譲ってあんたを家にいれてやってんだ。」
「…で、でも…」
「いーから。早く行け」
アタシはそういって紺野と犬を外にほうりだす。
…マジありえない。っつかアタシ生き物は大嫌いだっての。
人間も犬も猫も鳥も、だいっきらいだ。
- 46 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:52
-
アタシはすぐ部屋にはいってベットにダイヴ。
ありえないほどのこの疲労感。
ちっとも幸せになんかなってない。っつかむしろ不幸だ。
「マジ…どーなってんの」
ぼんやり天井を見上げる。
紺野あさ美。コンノアサミ…なんなんだ。
1日目に家の前にたっていて、返品不可人物だといわれた。
2日目にしょうがないから家にすませたけど、家事もロクにできなかった
3日目に家に帰ったら挙句の果てに犬を拾ってきやがった
ストレスがたまりにたまる
どうなってんだよ、神様
「はぁ…」
- 47 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:53
- ぼんやりと目をあける。まだ制服のままだった…皺のこっちゃうよ。
携帯をみると6時ちょうど。あれから2時間ほどたっている様子だ。
まあ、紺野もそろそろ帰ってきてるだろう。申し訳なさそうな顔でもしてんのかな。
ジャージに着替えて、リビングへ向かう。
「・・・まだ、か」
けれど、真っ暗なリビングには誰もいなかった。
紺野もいなければ犬もいない。そして靴もなかった。
「アホらしい」
リビングの電気をとテレビをつけてソファに静まる。
勝手にどこでもおいてくればいいんだ。
アタシにサンタも犬も必要ない。
- 48 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:54
- そう思っていた矢先に、ドアが開いた音がした。
ガチャリ…
重々しいドアの音が部屋に響く。
アタシはため息ついて玄関のほうへ歩いていった。
その瞬間、もう怒り、というか呆れた、というか
頭痛もせずただあきれ果てた
玄関にいたのは、紺野で、その腕の中には犬を抱えていて
紺野はすっごい申し訳なさそうな顔をしていて、犬は…はしゃいでる。
とりあえず、とりあえず、玄関の電気をつける。
明かりがあっても同じ。犬はいるし、紺野はいる。
なんだってこのサンタクロースはアタシをこんなにも不幸にさせるんだ
- 49 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:54
-
「おいてこれなかった…ってやつ」
「…はい。世話は私がします…その間に、飼い主を探しますので…あの…」
怒鳴る気もうせてアタシは大きなため息。
なんだってサンタクロースは、アタシがいらないものをプレゼントするんだ。
昔からそうだったよ、アタシのサンタクロースはさ。
紺野、アンタもそういう風にアタシをゆすぶっていくわけ。
アタシは何をされても変化なんてしないんだ。
犬をかっても絶対アタシは何もしない。
だから、もう、アンタごとどうでもいいんだ
- 50 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:57
-
「…アタシの部屋にいれないで、リビングでくつろいでるときにいれないで。」
「え?!あ、はい!」
「それから1ヶ月以内に飼い主探して。見つけ出さないとあたしが捨てに行く。」
そんなのはすごく嫌だったけど
こんなアタシだって動物を捨てる行為はできないから。
でもそうでもしないと、憂鬱な気分は撤回されそうになかった。
こんなことってマジでありなの?
いきなり、サンタがきて犬もきて
ドッキリでしたーって今言われたらそれはもう万歳三唱。
でもカメラなんてどこにもなくて…それにアタシ一般ピーポーだし。
…紺野と犬を見て、再びため息。
紺野は目を輝かせてるけど……
あーあ
一人で優雅に暮らしてた大き目の部屋は、あっという間に狭く感じるようになるんだ。
- 51 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:57
- ―――――――――――
「紺野、しょうゆとって」
「あ、はい」
とりあえず、ご飯を食べる。
紺野は家事がすっごく下手なので、料理もあたしが作る。
といっても今日は秋刀魚。焼くだけだ。
それでも紺野は本当においしそうに食べる。その顔だけはアタシは好きだと思う。
「なんか、すいません」
「んあ?」
「色々、ご迷惑ばかりをかけてしまって…」
紺野はペコリ、とお辞儀をする。
まったくだよ、とアタシはそのお辞儀を見ない。
怒ってんだこれでも。アタシは紺野とさっきから目をあわせてやらない。
- 52 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:58
- 「掃除と皿洗いぐらいはできるようになったら」
「ふぇ?あ、ああ、はい!」
アタシがそういうと心得ます、と紺野。
ったく…なんか疲れるわ…ペース乱されっぱなし。
アタシは足元にいた子犬をじっとみつめる。
リビングでまだくつろいでないから、いるのはかまわないけど
「どうしましょうか」
秋刀魚を一口、パクッと食べた紺野が言った。
これ以上何をするつもりだよ、とアタシは秋刀魚をほぐしながらジッと彼女を見る。
魚はまだあるのに大根おろしがなくなっているバランスの悪い食べ方はアタシの昔からの食べ方だなぁ。
- 53 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 19:59
- 「名前、です」
「…はぁ?」
「犬の、お名前どうしましょうか…。」
そういってもぐっとご飯を食べる紺野。視線は上のほうだ。
アタシはどうでもよくて秋刀魚を再びほぐした
「どうでもいいよ。どうせいなくなるんだから」
「でも、一応、名前ぐらいは…」
「じゃあ、勝手に決めれば」
あんたが拾ってきたんだから
といって、アタシもご飯を一口。
紺野はそうですかぁ…と考え始める
「それじゃあ、サンタってのはどうですか?」
「イヤ」
「な、なんでですか」
「これ以上変なサンタが増えたら本物に失礼。」
- 54 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/10/24(日) 20:00
- 「いや、だから、私・・・本物のサンタなんですけれど…」
紺野はそういってしょんぼりした。
ふん、勝手にしろ。アタシは秋刀魚を食べ終わって、ごちそうさま
紺野はまだ食べているみたいだけど、そんなのおかまいなしで自分の食器を片付ける
「あ!あの、私洗いますので、いいです」
紺野はご飯をまた一口食べてそういった。
そう、それならよかった。と子犬を睨みつけて、あたしはソファへ移動した。
テレビではバカな芸能人たちが笑顔をうっている。
でも、こんなやつらより、バカな日常がここに発生している。
どうしろっていうのマジで。
紺野が本物のサンタクロースなんて未だに信じれない。
というか、やっぱり変な宗教家だ。
「きゃっ・・・!」
・・・とりあえず、お皿割られたら、すぐさまキレてやろうか。
アタシはため息をついてまぶたをとじた。
ああ・・・でもなんだか、他人じゃない気がすんのは・・・なんでだろうか・・・・・・
- 55 名前:風道 投稿日:2004/10/24(日) 20:01
-
今日は以上です。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 23:52
- 多め更新、お疲れ様です。
この厭世的な後藤さんが紺ちゃんに感化されて
どんなふうに変わっていくのか、大変楽しみです。
がんばってください。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 01:57
- うわ紺野さんマジ使えねー
迷惑かけるのだけは一人前のような
でも可愛い…くそ
頑張れ後藤さん
- 58 名前:風道 投稿日:2004/11/01(月) 09:42
-
本日はこれから更新です。
>>56 名無飼育さん
感想ありがとうございます。後藤さんの性格とか、そういうの
このサンタさんがすっぽり、丸めるというか、サンタなりにがんばっていきます(きっと
楽しみだなんて光栄です!がんばります☆
>>57 名無飼育さん
迷惑かけるのだけは1人前wってのはあたってますね。
使えないサンタですが、後藤さんの周りをウロチョロします☆
後藤さん…耐えるのみですね。
- 59 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:43
-
あれから、色々すごして
紺野は基本的にバカな子だと気づいた。
お風呂に入って考え事をするとのぼせて倒れたりするし
スポンジに洗剤をつけずに洗ったりする。
大変なのは抜けてる、とかそういうレベルじゃないということだ。
そして良く寝る。おもしろいほど良く寝る。
アタシが学校にいるとき多分紺野はずっと寝てるんじゃないかなと思う。
それはそれで静かでいいけど、犬がほえ始めるから起きてほしいときもある。
そんなわけで、紺野はバカでどーしようもない子だとおもう。そして使えない。
いや、そんな子と同居するアタシもアタシ、だけどさ…神様の命令ならしかたがないけどさ…
「アンタ、さぁ」
「…はい」
「犬…アタシの部屋にいれるなっていったよね」
学校から帰ると犬がアタシのベットの上で寝ていた。
まあ、それならまだいいけど、なんだってアタシの一番のお気に入りの場所にくるんだ。
アタシはまたイラついて寝ていた紺野を起こす。
- 60 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:44
-
「すいませんでした!サンタにはよく言っておきますので…」
「…いや、だからサンタっつーのはやめろ」
アンタもサンタなんだろ一応。そういって制服をハンガーにかけた。
紺野は「あ」と気づいたようにあたしに近寄り、ハンガーを取り上げる。
私がやりますので、と一言。
最近はこういう小さなところも世話しようとがんばっている。三年寝太郎のくせに。
「あんたこの家にきて何日目だっけ」
「今日で5日目になります。」
「…あっそ」
なんだか長いような5日間だったなぁ、とアタシはあくびをした。
いきなりの共同生活は大変で、あれ以来サンタの衣装をきない紺野に苦労されられっぱなしだ。
もしかしてこいつ、ただの家出人なんじゃないか、とかそういうこと考えるけど
紺野はアタシの家庭事情とか絶対詮索してこないし、だから別に聞かない。
早く出て行け、と思うけど、それよりも早く家事を覚えてくれ、と思う。それってどうなの。
- 61 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:45
-
あれ?そういえば、なんで紺野ここにいるんだっけ?
ああ、アタシを幸せにするとかなんとかって…幸せにすらなってないよ?
「そーいえば、幸せになってないんだけど」
ジャージをはおって、今まで脱いだものを紺野がハンガーにかける様子を見ていた。
紺野は「ふぇ」とまたあの間抜けな声をだして振り向いた。
「…すいません。任務を忘れるとこでした。」
おい。アタシはこけそうになった。
アンタいちおー宗教かもしんないけどアタシとこ幸せにするとかいって強制的にここに住んだんだから
だったらそれわすれんなっつーの。…もうあきれるどころじゃないって。
紺野は私ってだめですねぇ、と言わんばかりの表情とため息をして、しばらくうつむいた。
そして考えたように「うん!」と独り言をいうと、アタシのほうをむく。キリッとした表情で。
- 62 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:45
-
「えっと、何かしたいことありますか」
「…はぁ?」
「何かしたいこと、何かされたいこと。もしくはほしいもの。大きなものはできませんけど」
そういって紺野はうつむく。
そりゃね、したいことといえば、一人の時間とかほしいけどね。そればっかりはいえない。
紺野傷つくだろうし、人を傷つけるのもめんどくさいしね。あーどうしよっかな。
その気になればどんなものでも紺野はかなえようと努力しようとするんだろうけど
でもそんな簡単に思いつくものはない。だって別にどうでもいいんだもん。
「夕飯食べ終わったら答えるわ」
「そうですか。わかりました。あ、あの夕飯の買い物してきたのは冷蔵庫に全部いれましたので」
「はいよ」
アタシは部屋を後にしてキッチンへ向かった。
小さな頃から一人暮らしのおかげで料理だけは誰にも負けないと思っている。
その証拠っつうのは変だけど、紺野は何をつくっても満足そうに食べてくれるし
ただあの犬にもご飯を作るのは正直かなりだるいけど、あと1ヶ月の辛抱だ。
っつーか、なんでアタシが辛抱しなきゃいけないわけ。
- 63 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:45
-
それ考えちゃまたイライラしちゃうからパス。
アタシはザクザク、と野菜をきって、ため息。
もー何度目だ。今日もよしこに言われた。「最近のごっちんは変だ」って。
そりゃ変にもなるって部屋がこんなに騒がしいんじゃ・・・
「キャー。サンタそっちにいっちゃだめです!!」
『ガッシャーン』
「それは私のですー!返してください。」
…あんた、犬にも敬語かよ。
幽霊だか、なんだかよくわからないけど、一人と一匹のサンタクロースはバカばっかりだ。
- 64 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:46
- しばらくして夕飯もできると紺野はタイミングを察したかのようにリビングに現れた。
「掃除と洗濯、やっておきました。あと、今お風呂掃除もしたところです。」
「…そう。」
5日前よりも自分の立場(居候)がわかってきてるのか
紺野は掃除とかそういうのやるようになってきた。それでも掃除機にはびびりっぱなしだ。
洗濯機を回すとき、時々洗剤入れ忘れるけど。それはむかつくけど、仕方がない。
アタシの苦労は実際少しずつ減ってきているし、前より騒がしいが、少しキレイな部屋だと思う。
別に紺野を正当化してるわけじゃないけど。でもまあ、否定はできない。一応がんばってるらしいから。
「じゃ、これ並べて。あと犬にこれ。」
「あ、ありがとうございます。」
紺野に犬につくったご飯を渡すと紺野はすぐそれをもって自分の部屋に持っていった。
リビングにあまりいれてほしくないというとすぐ犬を部屋につれていく。
紺野は一応物分りのいい子だとおもう。バカだけど。トロイけど。
すぐさま、犬にご飯を運び終えた紺野は、今度はアタシたちのご飯をテーブルに並べる。
そうして、すぐにご飯を食べれる状態になった。
- 65 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:46
-
「いただきます」
丁寧にお辞儀して紺野が言う。そして一口、「おいしいです」と笑う。
当たり前だ。これでおいしくなかったら切れるところだ。
でもその一言は、悪いもんでもない。
アタシもご飯を食べる。うん、まぁまぁ。
今日は簡単なブタのしょうが焼き。それでも紺野はおいしいです、おいしいです、と繰り返す。
ほんっと食べるのがすきなんだなって思う。っつかそれしか頭にないのか。
ふと、そんな紺野を見てたら先ほどの質問を思い出した。
アタシがほしいもの、してもらいたいもの、させたいもの。
アタシは今、何がしたいのだろうか。
言われて気づく。
アタシは今ほしいものも、してもらいたいことも、させたいことも、何もない。
その原点が「めんどくさい」という言葉からはじまっているようで、そうでもない。
アタシは「何をすれば自分に得するか」がちょっとわからないバカな子だから。
紺野のことバカバカいってるわりに、自分もバカだったなぁ。
「幸せって…」
「ふえぇ?ど、どうしました?」
「幸せってどんなこというの。」
その時、気づいた。
アタシ、幸せを知らない。
…めまい、がした。
- 66 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:47
-
とりあえず、それは保留にして。とアタシは紺野にいって
ご飯を食べ終えて、部屋に戻った。紺野はまだ食べ終えてなくて一人きりのご飯になってしまったけど
そんなのは仕方がない。アタシは一人になりたかったんだから。
アタシが席をたつと紺野は「後藤さん…」と何かを言いかけたけど、そんなのは聞きたくなくてすぐ部屋にいった。
「幸せ…か」
ハッピーとか、そういうのやっぱりよくわからない。
小さい頃から両親が側にいなかったし、でもそれなりに生きてきた。
けれど「幸せだなぁ」とか感じたことはなかった。逆に「不幸だなぁ」と感じたこともない。
それはなんでだろうか。どうしてだろうか。
- 67 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:47
-
ベットから起き上がって、机の引き出しをあける。
そこにあった1つのバタフライナイフをそっとなぞった。
冷たい、ひんやりとした手触り。
アタシにとって幸せはなんなのか。教えてよ……。
コンコンッ
不意にドアがノックされてアタシは引き出しをすぐしめた。
紺野しかいないから、絶対紺野なんだろうけど。
- 68 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:48
-
「はい」
アタシは、部屋の電気をつけて、ドアをあけた。
そこにはやっぱり紺野がいて、やっぱり心配そうな顔をしていた。
他人に干渉されるのは苦手だから、こういう顔されると困ってしまう。
どうせ「どうしたんですか」とか聞くのだろうから。そうするとアタシは「なんでもない」ってケロッといえる。
よし、オーケイ。
「あの…」
「んあ?」
「お風呂できたので、入ってください」
はい、とタオルを渡された。は?フロ?なにそれ…
- 69 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:49
-
…詮索しないの?アタシがなんでいきなり部屋にかえって、食卓でさ「幸せってなに」とか意味不明なこといったのに。
アンタは詮索しないの?普通って、するんじゃないの?
びっくりして、目を丸くしてしまう。
紺野は「どうしたんですか?」とまた笑顔。
その行動にいつもよりすこし戸惑ってしまう。
別に、心配されたいわけじゃないけれど
逆に、心配されたくないわけだけど
なんだろう、胸が少しちくりと痛んだ。
「ありがとう。」
アタシはタオルを受け取り、紺野にそういった。
瞬間、紺野はびっくりした顔する。
え?なに?変なこと言った?あたし。
- 70 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:49
-
「後藤さんに、初めて言われちゃいました。」
「は?」
「ありがとう、って」
そういって恥ずかしそうにうつむいた。
アンタ、照れすぎだから。
でも、そういえば初めて言った。そういえば、初めて普通のトーンの声だった。
そういえば、初めて、うざいと思わなかった。
「…それぐらい言うよ。んじゃ」
アタシはたまらなく恥ずかしくなって、急いでバスルームへ向かった。
なんだ、なんなんだ。ペース乱されっぱなしだ。
- 71 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/01(月) 09:49
-
意味不明、なんでアタシお礼をいった
意味不明、なんでアタシこんなになきそうなんだ
「…ありがとう、か」
今まで、紺野に…いや、誰にも…言ったことない言葉。
バカじゃないのアタシ。なにやってんのあたし。
…ああ、どうでもよく、ないわ。
幸せってなんなんだ、ありがとうってなんなんだ。
初めてどうでもよくない、と思った。バスルームの中。熱を吸収していった。
- 72 名前:風道 投稿日:2004/11/01(月) 09:49
- 本日は以上ですたい。
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 20:35
- ここまでほのぼのきてて今回一気にぐっときました
二人の微妙なやりとりとか会話のすれ違いが組み合わさって
後藤さんの素朴な心中がするっと出てきたあたり、ほんとよかった
これからどうなるのかなあ
- 74 名前:56 投稿日:2004/11/03(水) 22:52
- テーマとしては説教じみた感じがするものですが
風道さんの書き方だと自然で良いですねぇ
いやらしくないもってきかたで心地良いです
更新量も適度で満足ですたい。
次回の更新も楽しみに待ってます。
- 75 名前:風道 投稿日:2004/11/07(日) 18:48
- 涙が止まらない放課後で、泣きそうになった風道です。
あれはこんごまの唄ですよね?とか思います。
>>73 名無飼育さん
ありがとうございます。すれ違い具合が微妙に書いてて楽しいです。こんごまは。
これから、どんどんサンタと後藤さんの心を書いていきたいと思います。
>>74 56さん
そうですね、説教っぽいかもしれません。でも、自然にかけたみたいで
嬉しいです!ありがとうございます!!
週1ペース更新となりつつありますが、見守ってください。
では、本日更新です。
- 76 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:49
-
真希って名前、嫌いなんだ。
アタシには真実も、希望もないからさ。
そんなことをいうと、あの人は笑ってくれた。
ばーか、って一言。
その一言でどれだけ、アタシは救われたんだろう。どうでもいいとさえ思うほど…
ああ、ねぇ、幸せって…なんだろうか。あの時、聞いておけばよかったんだ。
「おはようございますっ」
朝7時
目覚ましの音と紺野が起こしてくれる。
嫌な夢からすーっと抜けれる瞬間。
- 77 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:49
-
アタシはうっすらと目をあけて、紺野がそこにいることを確認するとすばやくベットから飛び起きた。
「…アンタ、勝手に部屋に入るなっていったじゃん。…ふぁ」
「で、でも…後藤さん全然起きてくれないんです…。」
アタシはうーん、と背伸びをする。
昨日あれからフロでのぼせてしまって、寝付けなくて寝たのは夜中の2時。
紺野ほど睡眠をほしがるわけではないけれど、やっぱ5時間はつらい。
っつか、こういうときこそさぼりたいのに、起こされる。それがありえない。
でも紺野はここに押しかけてきたときから、なぜか7時に起こしてくる。
アタシが学校に行くには起きなければいけないのは朝の7時。
それがわかるのは勘なのか、たまたまなのか。それともサンタだからなのか。理由はしらない。
- 78 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:49
-
「まず、いいや。」
「あの、後藤さん…」
部屋からでようとすると、パジャマの袖をひっぱられた。なんだよ、もう。
これから顔つくって制服きて、学校いかなきゃいけないんだっての。アンタが朝早く起こしてくれたおかげで。
「おはよう、聞いてません…。」
おどおどしながら紺野がいう。
あのさ、おどおどするぐらいなら、いうなってのそんぐらいのこと。
なんとなく腹がたったからアタシは「おはよう」と棒読みでいった。
「はいっ。おはようございます。」
とびきりの笑顔でかえってきた挨拶は、すがすがしい朝と似ている雰囲気。
やってられない。
- 79 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:50
-
歯を磨きながら、ボーっと顔を見る。
少し目の下にできているクマ。ったく…昨日考えすぎたかな。
ま、どうでもいいんだけど。昨日のことは今日に関係ない。
歯をみがきおえて、うーんと背伸び。
はぁ…だるい。
ガチャリ
洗面所からでると、足元に犬がいた。
こっちをずっと見ている。あたしも負けずに見てやる。
そういえば、まともに犬見なかったけど、雑種なんだろうけど雑種っぽくはない。
どっかでなんかの血統がまじってんのかな。ま、どうでもいいけど。
いきなり室内でかったのに、あまりほえないところをみると、もともと室内用として飼われてたのかな。
まあいいや
アタシは部屋にもどって、制服に着替える。
10月にはいってブレザーになった制服はなんだか重い気がする。
高校3年生。みんなは受験モードだけど、アタシは他人事。
そういえば、今日進路相談だっけ、とネクタイをしめながらふと思い出した。
- 80 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:50
-
制服に着替え、準備を終えると、アタシはリビングへ。
紺野はぼんやりとソファにすわり、犬と戯れている。朝日を見ながら
「紺野。」
「は、はい!」
一声かけるとすぐ振り向く。…よほどこいつのほうが犬みたいだ。
アタシは紺野に近づいて、手短に用件を伝えた。
「今日は進路相談あるから、多少遅れる。」
「あ、はい」
「それと今日はカレー作るから。材料かっといて」
はい、お金。と2000円ほど紺野に渡した。
絶対そんなにはかからないだろうけど、紺野は無一文だ。それが怖い。
別に心配なんかしてないけど。ただつかまったとき呼び出されるのがめんどくさいだけ。
「わかりました。」
「じゃ、いってくる。」
そういって、鞄をもち、玄関へ。
紺野はとことこ、と後ろをついてきて、あたしを見送る。
「いってらっしゃいませ。」
そういって、お辞儀をした。
アタシは軽く「ん」といって、ドアをあけた。
さあ、学校だ。軽い気持ちでいってやろーじゃないか。
- 81 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:50
-
「オッス!ごっちん。今日も美人だね」
駅に着く前によしこに声をかけられた。朝からテンションが相変わらず高い。
アタシも朝からサンタにかかわって、テンションは低くはない。
よしこに「おす」と挨拶をかえして、ぼんやりと歩く。
「なぁーんか、最近ごっちん変だよね」
「またいうか。」
「うん。いつでも何度でも、あなたを見つめてるからね」
そんなキザなことをいってよしこは笑う。
昔からジゴロで、女の子にモテモテで、多くの女を泣かしてきたよしこ。
その本心はいつも謎だ。干渉はしないけど、時々思う。こいつこそが謎が多いんじゃないかって。
「そのセリフ何人につかった?」
「数え切れないねー。」
「だろうよ。」
よしこはめちゃくちゃ女にもてて、しかもめちゃくちゃ女遊びが激しい。
本人はいつだって本気だよ、というけれどそれがあんまり信じれない。
よしこはいっつもアタシの横で笑っている。ばーか、口とじろって。
- 82 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:51
-
「しかし、ごっちんよ。最近思うんだが」
電車の中でさっきより近くに接近したよしこが小声でいう。
車内は朝のラッシュでかなり混雑している。
あと5分ほどの我慢、だな。
「なに?」
「…犬でも飼い始めたの?」
「は!?」
ザワッ
つい大きな声をだしてしまい、周囲がアタシをいっせいに見る。
くっ…不覚。こんなことで注目されるなんて最悪だ。
しばらくして、電車のドアがあき、高校のある駅へ到着。
アタシはさっきの質問をしたよしこを睨んだ。
「なんだよー。制服に犬の毛がついてたからさぁー。聞いてみただけじゃんか」
よしこはそういってうーんと背伸び。
犬の毛、ねぇ…。そういえば、昨日アタシの部屋に入ってきてたしな。
帰ったら紺野に言わないと。怒鳴らないと気がすまない。
- 83 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:51
-
「おはよー。」
ガバッ、と美貴がアタシとよしこに飛び掛ってきた。
重いっての、とよしことアタシは美貴を睨む。
「なんだよ。美貴から熱い抱擁してやったのにさ」
「いらないし。」
「冷たいねごっちんは。で、なんの話してたわけ?」
美貴はよしことアタシの間に入り込む。
強引だ、まったく。別にいいけど。コイツの隣は嫌いじゃない。
「ごっちんが犬を飼っている、という疑惑が浮上してね」
「えぇ?ごっちんがぁ?どうなの、それ」
「…そこまで驚かれるとなんか腹立つんだけど」
「まぁまぁ。で、どうなのよ?」
よしこに聞かれる。っつか、そこまで大した問題でもない。
ただ今犬が1匹いるだけのことだ。
イメージないかもしんないけど、あたしがしてることじゃないし
- 84 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:51
-
「飼ってるというか、置いてる。」
「へ?置いてる?」
「ん。1ヶ月間だけ。その間に飼い主を探してもらってる。」
「誰に?」
「さあ」
サンタ、だなんていえない。けれど、紺野の存在をバラしたくはなかった。
なんでだろうか。別に従姉妹だとかそういうの適当に言えばよかったんだけど。
紺野を知られたくはなかった。
「へーえ。今度みせにいかせてよ」
「やめてよ。置いてるだけなんだからそういうの。」
よしこにそうキツく断って、アタシは歩調をはやめた。
特にきにもせずよしこは「そっか」と笑う。
美貴は何も言わずにボーっとしていた。
- 85 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:52
-
気がつけば、11:32分、今日も定刻どおりに空に飛行機が飛んでいる。
この時間に必ず。雨の日は見えないけれど、晴れていると少し見える。
それがすき、なのかもしれない。アタシ。だって、暇さえあれば教室の窓の向こうの飛行機を探してる。
「今日、ごっちん進路相談じゃない?」
「あー、うん。」
くるくるとシャーペンを指でまわす。
よしこは「進路かぁー」とイスのうえであぐらをかいてぼんやり。
美貴は寝ている。こいつもよく寝るやつだ。
進路…とアタシはシャーペンでノートに書いてみる。
目標も何もない。やりたいことも、ない。
今どおり、普通に暮らしていければいい。きっと社会は許してくれるだろうけど
アタシの担任はきっと許してくれない。
「よしこは、進路どーすんの?」
アタシがそういうとよしこはうーんとうなる。
- 86 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:52
-
「とりあえず、進学かな。」
「ふぅん。」
よしこはまぁまぁの成績だからどっかの大学には入れるだろう。
問題は成績もロクにとってない、っつうか卒業も危ない、アタシ。
紺野に頭よくなりたいっていっそ言っちゃおうかな。…なんて、バカらしい。
「美貴はねぇ」
「…アンタ起きてたの?」
「まぁまぁ起きてた」
今まで寝てた美貴がうーんと背伸び。だるそうに首をコキッとならす
「美貴は、旅にでたいな」
「は?」
「だっから美貴は旅にでたいの。というわけでフリーター」
わざわざみんなに言うことでもないけどね、と美貴は笑う。
へぇー、それいいじゃんなんてよしこ
アタシは、というとあっけにとられていた
- 87 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:52
-
美貴が旅だって?またガラにもないことを言いやがる。
大体そういうのってすっごいめんどくさいだけじゃん。よくまあ、やる気になること。
「で?ごっちんは?」
なぜだか、イライラしはじめるアタシを見て美貴が質問してくる。
アタシ…か。ふと、話題の発端が自分だということに気づいて改めて考える。
「とりあえずフリーター。なんもやる気なし。」
そういって、進路と書いたノートをとじた。
せめてアタシになにか目標だとか希望だとかそういうのがあれば、進路もできあがるんだろう。
けれど、残念ながらそんなものはない。いつだってアタシはクールですごしてきた。
失ったもの、なんかないよ
「ごっちんらしいや」
ほら、よしこもそういってる。これでいいんだ、これで。
- 88 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:52
-
「いいわけないやろ!」
放課後、教室にて一喝された。
担任の中澤先生、は今日も厳しい。
30歳を超えてるらしいけど、とりあえず美人で、すごい怖い。
元ヤンキーだったらしいってのはうわさだけど、あながち外れてはなさそうだ。
「ったく、これだから後藤は…。ええか?今の世の中フリーターなんかじゃ食べていけないんやで?」
「充分わかってるよ」
「だったら、もうちょっとまじめに考えとき。今から進学の準備だって間に合うんやから」
「……だってだるいんだもの。センセ」
そういってアタシは一方的に席をたった。
中澤先生は頭をかかえてアタシを見ている。
仕方がないじゃん。めんどくさいんだから。どうでもいいじゃん。アタシのことなんて。
- 89 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:53
- 「…後藤、アンタには夢とかそういうのないんか?」
教室をでようとしてドアをあけると、先生が一言そういった。
そんな質問、いまさらアタシにいうわけ?
悲しいね。バカみたい。
振り向いて、中澤せんせぇを見てると思い切り冷たい声がノドからでてきた
「そんなもの、もう捨てたよ」
- 90 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:53
-
夢、なんて、どうでもいいってそう思わせてくれた人がいるからさ。
夢、なんて、愛、なんて、希望、なんて、どうでもいいんだって、思ったからさ。
- 91 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:53
-
ドアをしめて、廊下を歩く。
夕焼けが、キレイだな。もう、沈みかけているけれど。
家に帰ればまたイライラするような気がする。だから、今だけは夕日を眺めて心穏やかにしておこう
進路…か
相変わらずお金はいっぱいある。もうすこしだけアタシは、無気力でいたいなぁ。
と、いうか今はそういうの考えたくない。逃げてるっていわれてもいいよ。
あたしはいつだって、戦闘放棄の人生だから。マシンガンもつより、そっちのほうがマシだからさ
「ごっちーん!!」
正門をくぐったあたりで、名前を呼ばれた。
その声は、聞き覚えがあって、うん、まあよしこだろうな、と思って後ろを振り向いた。
- 92 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:54
- 「今お帰りですか」
自転車が、アタシの横にとまって、よしこはにっこりと笑った。
電車通学の彼女がなぜ自転車にのっているのか、そんな疑問が頭に浮かんだ。
しかし、よしこはアタシが質問する前に、さらりと答えた。
「あー、これはそこらへんにあったのを頂戴してきただけだから」
いしし、と笑うよしこ。それは立派な窃盗罪だけど、アタシはそれを責めるつもりはなかった。
むしろちょうどいいと思った。あたしは今モヤモヤしてる気分だったから。
「…にっけ、させろ」
そういって、アタシは鞄をせおい、よしこの後ろに乗った。
よしこは必死にバランスをたもつ。いきなり乗るなよ、なんて怒ったりしてるけど。
よしこの背中越しに見えた夕焼けは、真っ赤で少し切なかった。
秋の夕焼けはあんまり好きじゃない。だって、会いたくなるから。誰に?そんなの聞くのは野暮だ。
- 93 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:54
-
「どこまでいけばいい?よしこバスにご乗車ありがとーございます。」
ふざけた声で、よしこはそういった。
おまえはネコバスか、なんて笑ってあたしはかえす。
よしこは大きな声で笑った。
「今日はごっちん送っていくよ。」
「サンキュー。でも遠いだろけど」
「わかってるよ。そこは根性と男前でカヴァー」
よしこはチャリをこぎはじめる。
最初はゆっくり、でも、だんだんとなまぬるいスピードで、チャリがアタシの家へむかっていく。
きっとよしこはよしこなりに最近変なアタシを励まそうとしてくれてるんだろう。
まあ最近変なのは紺野のせいであって、それは大丈夫なんだけど
でも今日は絶妙のタイミングだよ。アタシが、ちょっぴり感傷モードにはいったからさ。
「こうやってさ、ごっちん乗せてさ、ニッケすんとさわかんだよね」
「なにが?」
「えー?ごっちんの体重?」
「…ばぁか」
- 94 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:54
-
コツン、と頭をよしこの背中にあてた。
気にもせず彼女はチャリをこぐ。
アタシはなぜか無性にせつなくなる。せつなくなって、泣きそうになる。
家に帰れば、あのサンタがいて、犬がいて、大丈夫。アタシはきっとうまくだるそうにできる。
けれどどうすればいいんだろう。
夕焼けを見てあの人に会いたくなったら、どうすればいいのだろうか
それこそ紺野はかなえてくれるのだろうか。探し出してくれるのだろうか。
別にアタシはあの人に会いたいわけじゃなくて、会って聞きたいんだ。
だって、アタシが幸せを知らないの、気づいちゃったからさ。あのバカサンタのせいで。
- 95 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:55
- ねぇ、幸せってなに?って。夢ってなに?って。
そっと瞳とじてあの人の言っていた言葉を思い出した。
ねぇ、真希
哀しいけれど幸せな日々は
いつか
始ったり
終わったり
するんだろうか
「それでは、次のニュースです」
なんて具合に
もしそうだったら、あたしたちの意味はなくなっちゃうのかもね
ああ、なんでこんなに鮮明に
彼女の言葉がきざまれてるんだろうか。
- 96 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/07(日) 18:55
-
それでは次のニュースです。
それでは次のニュースです。
それでは次のニュースです。
そのニュースにきっとアタシはいなかったんだろうな。いや、あたしが、それから抜け出した?
そう思って、よしこの背中にぎゅっとしがみついた。
「お、体重しられたくないってか」
「バカ」
秋の夕暮れどきの日だった。
あの人によくにた体温にふれて、まぶたの裏にあの人を思い浮かばせて
ごめん、紺野。アタシの幸せって結構手ごわいよ。どうする?サンタさん。
- 97 名前:風道 投稿日:2004/11/07(日) 18:56
- 大量更新?です。今回は紺野あんまり出演ナシということで。
涙が止まらない放課後なわけです(何
- 98 名前:56 投稿日:2004/11/07(日) 21:29
- …本当にこれ、処女作ですか?
親とか友達に幸せとか夢とかの話をされるより
見ず知らずの風道さんの文章を目で追ってるほうが切実さを感じます
「あの人」を思い巡らしつつ、次回の更新を待ちたいを思います。
お疲れさまでした。
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/08(月) 18:23
- 紺野さんはカレーにもカボチャいれそうだとか思いつつ。
更新お疲れ様です。後藤さんは無気力な女性役がマッチするなぁ…。
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 19:12
- こんごまという文字に誘われてふらふらやってきました。
かーなーり面白いですねぇ!こんこん可愛いっ!
やはり、こんごまは最強ですなあw
次の更新楽しみに待ってます。頑張ってくださいー!
- 101 名前:風道 投稿日:2004/11/16(火) 23:51
- 本日更新します。少しおくれましたが…
>>98 56さん
誰かに見てもらう、公表するという意味ではこれが処女作です。
今まで短編は時々書いていましたから。
56さんの感想は、すごい嬉しいです。ありがとうございます。
そんなことまでいってもらえて…。
「あの人」はいったいだれなんでしょうか?
もうちょっと出現お待ちくださいね☆
>>99 名無飼育さん
確かに紺野さんはカボチャを大量に買ってきそうですよね!
カボチャカレーつくってくださいといわんばかりに!
後藤さんは無気力キャラがぴったりで、書きやすいです!
>>100 名無飼育さん
こんごまは最強ですね。自分は一番書きやすいと思いますw
面白いだなんてありがとうございます。これからもがんばります!!
では本日更新します☆
- 102 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:52
-
幸せのルートなんてのは、きっとすごく複雑で、回り道とかそういうのあるいから
アタシはそれを見つけることすらできないのかもしれない。
そんなことを思った。
どうすればいいかなんてわからない。
「後藤さん?」
「なに?」
「お洗濯ほしておきましたから」
どうも、と一言紺野にいっておく。
昨日2けつを長時間してたために少し腰を痛めてしまった。
なので、せっかくの土曜日。週休二日制万歳的に、アタシはソファでごろごろしていた。
誰かと暮らし始めて、はじめての週末。朝からアタシは紺野の意外な面ばかりをみている。
- 103 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:52
-
まず朝起きると紺野はまだ寝ていた。いつもはアタシより早いのに。
9時だってのに、起きていない。いつもは無理して早く起きているのだろうか。
別に起こさなくたっていいんだけど、紺野が起きていないのが不思議でアタシは部屋にはいっていった。
意外と寝顔が、かわいい。意外って失礼かな。
でも寝起きはよくって…朝からアタシが作ったオムライスをばくばく食べて
昨日のカボチャカレーもいいですけど、オムライスも最高です!なんていっていた。
いや、あんた、昨日カボチャかってきすぎだから、なんてつっこみをいれたくて仕方がなかったけど。
ご飯を食べたら、すぐお仕事である食器あらいや、掃除、洗濯をやってくれている。
結構働いてるんじゃないかなって思った。
学校から帰宅してたら全部終わってたのは昼間がんばってくれてるからで
ここは褒めるべきか、いやみをいうべきか迷ったけれど
迷うこと自体がらじゃなくてあたしはただ黙っていた。
- 104 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:52
-
「くしゅんっ!」
いきおいのいいくしゃみが後ろから聞こえた。
アタシは振り向き、紺野が「うー」といいながら鼻をすするのを見つめる。
寒そうだ。部屋が寒いのは窓をあけているからで、なんで窓をあけてるかっていうと
うちのマンションの近くにある金木犀の香りを楽しみたかったから。
「へぇー…サンタも風邪ひくんだ?」
大丈夫とはいわずに雑誌をめくりながら紺野にいった。
「私はサンタの前に人間なので、そりゃ風邪だってひきます。…でも今は風邪ひいてませんから」
寒くないですよ、と気を使わせていう紺野。
人間ねぇ…前は幽霊みたいなもんとかいってたけど
- 105 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:54
-
「金木犀の香り、いいですね」
紺野はそういって微笑んだ。
そうだね、とアタシは相槌を打つ。
そういえば、あの人も金木犀の香りを愛してた。
あの人と別れても嫌いになれなかったあの人との思い出を連想させるものは思えば金木犀だけかもしれない。
「今日はご予定あるんですか?」
「ないけど」
「それじゃあ、あのお散歩いきませんか。トナカイの。」
「は?!」
トナカイ!?
アタシは驚いて紺野を見る。
すると紺野の足元には犬がすりよっていた。
「…トナカイって名前にしたの?」
脱力して紺野にいうと「サンタじゃ紛らわしいかなって思ったんです」といわれた。
…あのさ、犬にトナカイってつけるやついるかな?
アタシの知り合ってきたやつの中には絶対いない。
「…っつか、トナカイで決定?」
「はい。ぴったりだと思いませんか?」
満面の笑みでそういってきやがったので、アタシは一言。
「思わない。」
そういうと、紺野はやっぱり、しゅん、とした。
わかりやすいサンタクロースさんだこと。おもしろい、やつだな。最近そう思えてきた。
- 106 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:55
-
結局アタシは紺野と犬(トナカイ?)の散歩につきあった。
1人でいけ、と散々いったけれど、ついていくことにした。
理由は紺野が「では、迷ったら警察に道ききにいきますね。後藤さんの家のサンタです、と」いったからだ。
別に、迷ってもいいし、警察に道をきいてもいい。
けれど我が家のサンタだなんていわれたら、変な噂がたちかねない。
そんなことを思ってしかたがなく、付き合うことにした。
川原を紺野と歩く。
なんだか少しバカバカしいことをしてるようでならない。
だってこのアタシがなんで、こんなやつとお散歩だなんて。キャラじゃない。
紺野の隣には、犬がとことこ、と離れることなく歩いている。
- 107 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:55
-
金木犀の香りは、川原に充満していた。
こうやってゆっくりと周りの風景をみつめるのは久しぶりだ。
「あ、キャッチボールしてますね」
紺野が川原にいる少年たちを指をさしていった。
指のほうをみると、少年たちは楽しそうにキャッチボールをしている。
少年のよこにはお父さんらしきひとがいて、キャッチボールを見守っている。
何の違和感もない風景。当たり前のような風景。
アタシは味わったことがないけれど、きっと穏やかな行為なのだろう。
ああいうのが、家族、とかそういうことをいうのかな。
間近でみたことがない、キャッチボール。やったこともなければ…やる環境でもなかった。
だって…いなかったじゃん、あいつら。親とか。さ
- 108 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:56
-
「やったこと、ないや」
「え?」
「いや、別に」
ふいに口から言葉がでてしまい、アタシはあせった。
やったことないとかそんなの紺野に関係なくて、むしろ、どうでもよくて。
アタシはなんだかよくわからない感情を隠すために歩くスピードを早くした。
けれど、そのスピードに紺野はついてこなくて
立ち止まって何か考えてる様子だった。
どうしたの?と聞こうと思って近づこうとしたら、紺野はいきなり顔をあげてアタシをみた。
「ちょっとまっててください!!」
「は!?」
「絶対ここでまっててください!!」
「ちょっ!?あんたなにいって…!?」
必死にそういって、紺野はアタシと犬を残して猛ダッシュしてどこかにいってしまった。
追いかけようと思って足を動かしたけれど意外に早い足には追いつけそうにもない。
いつも転びそうに歩いてるのに、どうしてこういうときだけ転ばないで風のように走り抜けるんだ?
- 109 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:56
-
っつか、意味がわからない。
「なんだよ、アイツ」
アタシはいらついた。
足元にいる犬。川原で声をだしてキャッチボールしている少年たち。
そして、ダッシュでどこかにいった紺野。
意味不明なことをしてるやつが一番むかつく。
それに肌寒いこんなところにまっててくださいだぁ?
あいつ、誰にものをいってるんだ。
けれど、動くことはできなくて
紺野がいなくなって寂しそうにしている犬としばらく川原で待っていた…。
- 110 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:56
- 20分もたっただろうか
川原に腰をかけていると、紺野が息をきらしてアタシのところへやってきた。
「なにやってた…」
文句をつけようとして紺野を見ると、腕の中にグローブとボールがあった。
それは先ほどまでアタシの目の前で繰り広げられていた少年がもっていたような感じの…
紺野は息をきらしてひざをがくがくいわせてる。
…もしかして、これを買いにいったとか?いや、お金はどうした?いや、そういうんじゃなくて
何気なくいった言葉を、その一言をきみをのがさず聞いて
そして、きみを走り回ってそのグローブをみつけてきたのか?
どうでもいいことじゃない?
それって、すっごくどうでもいいことで、アタシがただやってないってだけで。
呆然と紺野をみつめるアタシに紺野は微笑んだ。
- 111 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:57
-
「私、体弱くて運動とかあんまできなくて、でもやってみたかったんです、キャッチボール。」
「…だからって…」
「やりませんか?私、後藤さんとただキャッチボールがやりたくて。それだけなんです。」
相変わらず微笑んでる紺野。
ねぇ、サンタってこんなにお人よしなわけ?ああ、そうじゃなかったら子供になんかプレゼントをくばらないか。
アタシはなぜか、紺野からグローブを受け取った。
考えることなんて全然なくて
ただ、グローブを受け取った。
受け取った瞬間、二度とあうことはない父親の顔が浮かんできた。
黙っていつもアタシを見て、アタシと別れるときも、涙目になっていたアイツの顔が。
- 112 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:57
-
「後藤さん、いきますよー!!」
川原におりて、紺野がはりきってボールをなげる。
アタシはそれを受け取った。
こうやってキャッチボールってやるんだ?
初めて知った。
そっか、ボールってこんな意味もってたんだ。
誰かとつながりあってるって確認できる意味。
相手のボールを受け取るって難しくて、でも…あったかいもんなんだ。
「…バカ、どこになげてんの」
アタシの後ろにいったボールをなげた紺野にお決まりのお小言。
けれど、言いたい言葉はこんなんじゃなくて
でも、きっと口にだせないから、ボールにたくした。
「わっ…後藤さん…おっきくなげすぎですよ」
今度もサンタが文句をいう番で、アタシは「あー」とやる気のない答え。
なんだ、アタシ…なんだ、あのサンタクロース。なんだ、この感情。
- 113 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:58
- お人よしで、バカで、単純で、もしかしたら紺野はそんな人物なのかもしれない。
今まで生きてきてそんな人物にかかわってきたけどバカにするだけだった。
でも…なんでだろ。なんだろ、なんかアタシ考えてきた。
「おっ…」
「あ、ちゃんととれましたね!後藤さん!」
「うるさいっ」
思いっきり、投げ返した。
小さな頃、誰かにこうやってもらえたことなんてなくて、あのことがあってから、1人で生きていきて
あの人と出会っても、こんなバカげたことしなかったけれど
バカげたことなんじゃない。これは。
「だっから…ちゃんとここ狙ってなげろって」
ボールを投げあうあたしたちは、どんな風景になってるんだろうか。
それこそ先ほどキャッチボールをしてた少年たちのように幸せみたいな風景になってるのだろうか。
- 114 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:58
-
アタシは幸せをしらない。
だから、どうしたっていうんだろう。
知らなければ、探せばいいのかもしれない。この、お人よしサンタクロースと。
でもそんなこと、口がさけてもいえないから
とりあえず、どうでもいいふりして、どうでもよくない感じで、彼女にボールをなげた。
- 115 名前:弱気な僕のサンタクロース 投稿日:2004/11/16(火) 23:59
-
届くのだろうか、いつか、アタシの気持ちは。
届くのだろうか、いつか、アタシの手は、幸せに。
よくわからないから、ボールをおもいっきり
サンタクロースになげてみた。受け取れよ、バカ。
- 116 名前:風道 投稿日:2004/11/17(水) 00:00
-
本日の更新は以上です☆
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/17(水) 19:12
- 最後の一行すごくよい
この一行で後藤さんの考えてること感じてること心持が腑に落ちた
しかし天然は強いねよかったね後藤さん
- 118 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 00:55
- とてもいいですね。ここのお話。
ごっちんがどう変わっていくのか、とても楽しみです。
- 119 名前:風道 投稿日:2004/11/23(火) 23:44
- 本日少量更新します!すぐに続きを更新しますので…
>>117 名無飼育さん
ありがとうございます!!最後の一行ですか。
なんだか、スッと書いてしまいました。後藤の気持ちと自分の気持ちを重ね合わせたような。
しかし、天然は強いですね(w
>>118 名無飼育さん
いいお話だなんて(涙
ありがとうございます。ごっちんはこれからいろいろありますが
サンタがなんとかしてくれると思います(w
では、更新します
- 120 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:45
- 紺野との生活があたしの中ではとりあえず一段落したように思えていた。
まぁ、なんというかたった1週間だけど、なれた。
紺野だからなんだと思う。あたしが怒っても、自己主張をあまりせず、干渉してこない紺野だからこそ。
まるで空気みたいだ。いるのかいないのかよくわかんない。いないんじゃないのか。
1週間前までの印象とかそういうのはちょっと変わっていた。
とりあえず、共同生活に慣れ始めている自分がいるということはちゃんと確認しておこう。ガラじゃないけどさ。
「どしたの、ごっちん。普通の顔してるけど」
「普通の顔しちゃいけないわけ?」
「いや、だって普通のごっちんって久しぶりに見たからさ。」
よしこはそういって先ほど買ったたこ焼きを大きな口をあけて食べた。
くだらない授業を抜け出してきたあたしたちは公園のベンチで、たこ焼きをお互いほおばる。
よしことアタシは今日はおさぼり。美貴は…学校自体きてないってやつで。
- 121 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:45
- 「ヤニすいてー」
「でたよ、エセ喫煙者が。」
「んったよ。部活終わったんだもん。ちょっくら吸ったっていいじゃんか。」
そういって、よしこは鞄の中から数本しかはいっていないタバコを取り出す。
あのね、キャスターってあんた、親父くさいから。まぁ、つっこまないけど。
っつか部活終わる前から吸ってたじゃんか。調子こいて一緒に何度かすったけど。
…あれは人間がすえるものとは思えない。これがアタシのタバコの感想。
よくあの人はすえてたなぁ…。なんて少し感傷的。ガラじゃありませんって
「っつか、なんか飲みたい。」
「自販でかってくれば」
よしこにそういってアタシは自販に向かう。あたしだって飲みたかった。
自販の前にたって財布を開いた。
100円玉が3枚。
あれ?小銭こんなに少なかったっけ?
- 122 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:45
- 冷静に財布を眺める。
お札は2枚。夏目漱石さん。
…え?
今日は何日だろうか?慌てて携帯を開いた。10月27日
いつもよりお金の減りがダイブはやい。
そうか、アタシは今、二人暮らしで、しかも生活費は全部アタシもちなんだ。
…そりゃ予定よりお金もなくなるって。
「どうしたの?ごっちん。あ、わかった!コーラか緑茶悩んでるんでしょ?オー、ベイベーそれは間をとってウーロン茶さ!」
いや、意味わかんないから。
つっこんで、ため息。
とりあえず、飲み物は買わないことにした。
2300円
…財布をどうやって眺めても…2300円
- 123 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:46
-
…生活できるか?2300円
- 124 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:46
- よしこと別れて、昼の街をぶらぶらした。
お金がないから、銀行へよる。運よく今日はカードをもっていた。いつもなら机の上に出しっぱなしなのに。
まぁ、紺野に注意されて財布にしまったんだよね。
ATMの前にたって、カードを機械にいれる。
ウィーン、なんて機械音
暗証番号は…****、と。
残高は、40万円ちょっとあった。
そんなにいれなくてもアタシ生活できるんですけど?あの父親の顔がよぎる。
いつ思い出しても「ごめん」しかいえないあの情けない父親。
思い出して、胸クソが悪くなった。
10万円ほど引き落とした。
二人暮らしってやつはどんぐらいかかるんだろうか?
…っつーか、あの犬をいれれば二人と一匹暮らし、か。
金のかかるサンタクロースとトナカイだこと。
- 125 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:46
- 「ただいま」
―――シーン
返事はない。いつもだったら「おかえりなさい」と紺野が飛んでくるところなんだろうけど。
でもそれはない。だって今は午後1時。紺野はアタシのよそうだと寝ているはずだ。
アイツ、アタシが学校いってる間は多分ねてるから…。
紺野に貸している部屋をそーっとあける。
ベットと、大きめな荷物が、2,3個あるぐらいの無機質な白い部屋。
紺野はベットの上にすやすや、と寝息をたてていた。
なんっていうかよく寝る子だこと。
アタシは紺野の眉間に手をのばして、眉毛を八の字にする。
へぇ、おもしろい顔だ。
しばらくほっぺをのばしたり、紺野の顔で遊んでみる。
へぇ、人間ってこういう体温もってるんだ、なんて当たり前のこと実感してみたりして
そんなこんなしてると、紺野が「う…」と声をだして、目を覚ました。
- 126 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:46
- 「ふぇ…」
眠たそうに重いまぶたをあける紺野。
焦点がさだまっていない目は、ぱちり、ぱちり、とまばたきを繰り返す。
そして、焦点がさだまる。アタシと目があう。
「……えぇ!?!?」
一気に驚いた紺野は、目をおっきくしてがばっとベットから起き上がった。
ふむ。かなり動揺してるみたいだ。まぁ、そりゃそっか。
帰ってくるはずのない時間帯にアタシがいて、しかもほっぺをつねってたんだから。
「え?なんで?ふぇ!?」
相変わらず混乱してる彼女のほっぺから手をはなし、目覚まし時計をつかんで、見せた。
1時をちょっとすぎてる時間を紺野は確認してまた驚いた。
- 127 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:47
- 「あの、学校はどうしたんですか?」
「さぼった。この様子じゃ掃除はできてるけど買い物にはいってないよね?」
「あ、はい。すいません」
いや、別にあやまることじゃなくて。そっか、午前中は掃除で午後は昼寝してそんで買い物にいくのか。
紺野の1日って…サンタらしくないなぁ、と実感した。
紺野はあくびを1つして、ベットから降りて、少しおどおどしながらアタシを見る。
そういえばいつの間にか足元に犬がいる。どこいってたんだ、こいつ。
- 128 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/23(火) 23:47
- 「アタシ早く帰ってきたから買い物いくよ。たまには。」
「え?いいんですか…?」
「でも荷物もちたくないから、ついてきて」
「あ、はい!」
満面の笑みで紺野がうなづいた。
…サンタってのはどうしてこうもおひとよしなんだろうか。
だってさ、普通荷物もちたくないから、ついてきて、なんてね、アタシのワガママなんじゃないのかな。
でもまぁ、家においてやってんだ。いいか。
制服から私服に着替えて、アタシは紺野をつれて近くのスーパーにいった。
相変わらず歩くのが遅くていらだったけれど、こういうペースもあるんだとものわかりのいい自分がいた。
- 129 名前:風道 投稿日:2004/11/23(火) 23:47
- すいません。中途半端ですが、今日はここまで、で☆
- 130 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/24(水) 23:33
- 更新おつかれさまです。
紺ちゃんみたいなサンタさん。うちにもやってこないかなあ…
と本気で思ってみたりして(笑)
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/25(木) 17:10
- 一気に読みました!おもしろーい!
続きがめっちゃ気になります!
これからも頑張って下さいね☆
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/26(金) 21:52
- 続きが気になりますね。
期待してます。
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/26(金) 22:39
- 役に立ってきてるようでやはり使えないっぽいこんこん萌え
後藤さんがお昼寝サンタのほっぺ伸ばして遊んでる図ににやけてしまいましたよ
- 134 名前:風道 投稿日:2004/11/30(火) 22:28
- 本日更新します★
>>130 名無飼育さん
ありがとうございます。サンタ…自分もきてほしいです。
クリスマスは一人ぼっちなんで…紺野サンタプリーズ!!
>>131 名無飼育さん
おもしろいだなんてありがとうございます!!
これからもがんばります!紺野サンタが街をいきます!(w
>>132 名無飼育さん
期待ありがとございます。ご期待に答えれるかわかりませんが
全力で書いていきたいです。
>>133 名無飼育さん
役にたってるようでやっぱり使えないサンタです(w
紺野サンタのほっぺはよくのびるらしく、後藤さんのお気に入りのお遊びということで★
では更新します!
- 135 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:29
- 「じゃ、カゴもって」
「はい。」
大型スーパーについて、あたしたちは買い物を進める。
今日は何にしようかなんて考えながら、野菜の値段とか見ていく。
っつか、野菜高いから。なんてつっこみしながら。
「そういえば嫌いなものある?」
「特にはないです。なんでも食べますよ。」
すごく嬉しそうな顔で食材を眺める紺野。食材をながめて「あ、おいしそう」なんて眉毛を八の字にして。
食べ物のことに関するとかなりご機嫌で積極的になる弱気なサンタクロース。
紺野から食べるってこと取り上げたらどうなるんだろう。
例えばオムライスとか目の前にだして紺野が食べようとしたときにサッと奪うとか。
…怒ったりするのかな?
おもしろそうだから今度やってみるか。
- 136 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:29
- 「今日の夕飯はなんですか?」
「…決めてない。お金あるから好きなものいれていいよ。」
「あ、はい。ありがとうございます」
紺野はそういって、カボチャを手に取ろうとした。
が、そればっかりは…と阻止した。
「それはだめ」
「え…なんでもいれていいっていったじゃないですか」
「毎日カボチャ買われてこられたんじゃあ困る。まだ家に何個あるとおもってんの?」
そういってアタシは紺野の手からカボチャを取り上げた。
紺野はしょんぼりと肩を落とす。
だってしかたがないじゃん。まだ家にかぼちゃ5個もあるんだよ。
いくら金があっても…っつかかぼちゃ代で生活費がなくなりそうで怖い。
- 137 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:29
- 「紺野って変なところでトボけてるよね」
「え?い、いやそんなことは…完璧です。」
「完璧じゃないから。」
アタシは買い物を進めていく。二人だからきっと多く買ってももてるだろう。
お菓子なんかも久しぶりに買っていく。
紺野は「いいですねぇ」なんて、アタシがカゴに食べ物をいれるたびに呟いていた。
お会計:5432円
まぁ、いっぱい食べ物かったし、こんなもんだよね。
横で驚いてる紺野をみてなんだかおかしくなった。
「後藤さんって…」
「んあ?」
「いつもこうやって買い物してたんですか?」
袋につめてる最中、紺野がボーゼンとしながら口を開いた。
いつもこうやって、というのは金額のことだろうか。
そりゃ今日は結構買い物してたほうだけど。何日間分まとめてかったし。
- 138 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:30
- 「まあ、ね」
いつもがいつもってわけじゃないけれど、アタシはうなづいた。
めんどくさかったのかもしれない。紺野との会話が。
でも、その一言…が、少しだけ紺野の表情を曇らせてしまった。
「そう、ですか」
袋にいれるはずのにんじんがなかなか、紺野の手から離れずにいた。
曇った表情の視線は袋をずっとみていた。
何だかよくわからないが、これがキマヅイ雰囲気ってやつかもしれない。
アタシは紺野の手にあったにんじんを奪い自分の袋にいれた。
紺野はなんだかぽかーんとして、口をあけたり、しめたりしてた。
- 139 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:30
- スーパーをでて二人で歩いた。
行くときと変わらないテンポ。なんだか開いてるのは足並みだけじゃなくて二人の距離みたいで。
…アタシはそういうのめんどくさいんだ。だから、さ
アタシはなんだかいらついて、後ろを振り向いた。
紺野は振り向いたアタシをみて少しびっくりしている。
「何」
「ふぇ!?い、いや…どっちかというと私のセリフなんですけど」
「そうじゃなくてさ」
アタシは紺野を少しきつく睨んでため息をついた。
紺野はすいません、といったように小さくなった。
- 140 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:30
- 「…何が原因?どうしてそうやって黙ってるの。」
「す、すいません」
「謝らなくていいから、理由をきかせて」
めんどくさいんだってば。そういうの。
だから、早くお互い言いたいことがあったら言えばいいじゃんか。
紺野は迷ったように何度か「あ・・・」と口にだそうとするが、なかなか話したがらない。
アタシはとりあえずそんな紺野を待ってみた。
「えっと、ですね…いつもそんなにお金使っちゃって大丈夫なのかなあ、と」
「はぁ!?」
「す、すいません!なんだか心配になっちゃったんです!!」
そういってぺこり、とお辞儀をするとスーパーの袋からじゃがいもが飛び出てきそうで
アタシは驚いて紺野のもっている袋を奪った。
その行動がずっと曇っていた紺野の表情を変えてしまったけれど。
- 141 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:31
- 「あ、あの…」
「じゃがいもの落ちそうだったから。」
「あ、ありがとうございます!」
紺野はまたお辞儀をした。
腰が低いサンタクロースってめずらしい。
アタシは袋を返すのめんどくさくて、そのまま歩き出した。
あ、でも言い忘れてたな…とくるり、とまた紺野のほうを振り向いた。
「お金」
「はい?!」
「お金の心配しなくていい。あたし、毎月結構もらってんだ。生活費別に。だから大丈夫。」
「そ、そうなんですかぁ」
まだ納得しきっていない紺野。
アタシは思い切って金額をだしてみることにした。
- 142 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:31
- 「家賃代と水道・ガス・電気は全部親持ち。生活費は少なくて月15万、多いときは30万超える。だから大丈夫。」
でもそれをいった後にまた後悔というかなんだか変な気分になった。
だって紺野が魚みたいに口をパクパクしはじめたから。
「えっ…えええ…じゅうご…」
金魚みたい。
そういったら、サンタクロースでも怒るのだろうか。
アタシは足元にあった小石を思い切り蹴った。
他人に話すには金額がでかいことぐらい知ってる。けれど、紺野は他人じゃなくてサンタだから。だからいいんだ。
「金なんて意味ないのにね。それが愛情だと思ってるのかな。きっと。」
小さく呟いてみた。
きっと紺野には聞こえてないだろう。
そう思って歩き始めた。
けれど
「そう思ってませんよ。きっと。」
小さな声で後ろから彼女が呟いた。
お互い独り言状態。でもそれでも、なんだか心が痛い。
- 143 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:31
- 「お金、使いすぎるのクセなんだ。9歳のころから1人暮らしだったから。使ってないと不安なのかもしれない。」
でもそこまで依存してないけれど
っていうかアタシなんでそんなことはなしてるんだっけ?
「あ、これ独り言だから」
そうつけたして、前へ、前へ、足を動かせる。
後ろにはぴったりサンタクロースが。多分うつむきながらついてきている。
「親は親じゃない。金しか与えない人間。そうとしか思えない。それでいいんだ。」
なんだか、吐き出してる。
ずっとたまっていたものを、こんな青空の下、きみに吐き出している。
いいことなのか、わるいことなのかわかんない。
ただ右手のじゃがいものがはいってる袋が重かった。少しだけ。
- 144 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:31
- 「それでいいなら、それでいいと思います。」
後ろから、言葉が聞こえてきた。
「お金よりも、親よりも大切な何かがきっとあなたに見つかりますよ」
そう優しい声が、耳に届く。
アタシは振り向こうとおもって…やめた。
だって彼女は忘れたようにつけたしたから
「あ、これ、私の独り言ですから。お気になさらずに。」
- 145 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:32
- なんだか、スーッとどっかが軽くなった気がした。
彼女は一体なんなんだろうか。
サンタクロース?それだけ。それだけなのか。
アタシはきっとこれからこいつにぽろっと、あの事を話してしまうのだろう。
そして、アタシの醜い部分を見せてしまうのだろう。
ありのまま全てもしかしたら、ぶつけるかもしれない。
その時このサンタクロースは、笑っていてくれるのだろうか。
もし、笑っていなくてもそれまでだ。
- 146 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:32
-
目をつむるといつだって、アタシを思い出、恐怖が支配する。
そんな支配からは抜け出すために「どうでも」よくした。
けれど、もう無理だ。
あたしの世界に真っ赤なサンタクロースがはいってきたから。
心のドアに鍵をかけなくてよかったのか。かけたほうがよかったのか。
それはきっともう少したてばわかるだろう。
「…みつける。ぜったいに」
執念にも似た言葉をそっと吐き出した。
- 147 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/11/30(火) 22:33
-
その日からアタシは自分自身にウソをつくことをやめようと思った。
…ずっと逃げてた「あのこと」に向き合わなければいけない。
もう、そろそろ解放してあげよう。
あのときの自分といまの自分を。
- 148 名前:風道 投稿日:2004/11/30(火) 22:34
-
本日は以上です!
これから物語が動く予定…です!!
- 149 名前:56 投稿日:2004/12/01(水) 17:07
- ぅあああっなんだろう!?
あのことってなんだろう!?
9歳から一人暮らしっつーのも凄いですね。
なるほど、料理が上手くなるわけだ。
次回の更新もがんばってください
- 150 名前:56 投稿日:2004/12/01(水) 17:19
- おっと…(汗
気配りの無いレス、すいませんでした
- 151 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/01(水) 18:13
- 更新おつかれさまです。
ごっちん、確実に成長してますね。すばらしいです。
「あのこと」というのは一体なんなんでしょう?気になります。
- 152 名前:konkon 投稿日:2004/12/04(土) 13:37
- 初めまして、白版、緑版で書いているkonkonといいます。
めちゃくちゃいい描画ですね〜・・・
こんごまサイコーです!
今後のごっちんとコンコンの関係の発展に期待ですね♪
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/04(土) 16:51
- こんごまにハマりそうです…
- 154 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/04(土) 19:37
- 今、どの作品よりも一番に大好きなお話です♪
本当におもしろいです!
これからも頑張って下さいね!
- 155 名前:風道 投稿日:2004/12/04(土) 23:39
-
本日更新します♪
>>149 56さん
感想ありがとうございます★あのこと、とはなんでしょうね!?(w
それが後藤真希を動かしてるものでもあり、恐怖でもあります。
ではこれからのストーリーにご注目を!ってちゃんとした文章になるか
心配ですが…!がんばります!!
>>151 名無飼育さん
感想ありがとうございます★そうですね、後藤さんは確実に成長してますね!
「あのこと」はこれから徐々にあかされていきます!
>>152 konkonさん
感想ありがとうございます★実はkonkonさんの「DREAMER」をずっと見てます!
いい描写だなんて…恐縮ですm(_ _)m
ごっちんとコンコンの関係の発展…期待に応えれるようにがんばります!
>>153 名無飼育さん
感想ありがとうございます★はまりましょう!こんごまに★
>>154 名無飼育さん
感想ありがとうございます★どの作品よりもって…ありがとうございます!
すごいうれしいです。これからもがんばりますので応援よろしくお願いします!
では本日、いきます。
- 156 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:41
- 携帯電話っていうのは便利だと思った。
どこに相手がいるかすぐつきとめれる。でも、つきとめる勇気すら、ないんだけど。
「どうしたんですか?」
「…別に」
目の前にいる紺野は不思議そうな顔をして紅茶を飲んだ。
アタシはさっきから携帯電話とにらめっこ。勝ち負けのないにらめっこ勝負だ。
なんでにらめっこしてるかっていうと、あろうことかこの部屋の家賃を不動産から請求されたから。
賃貸マンションの家賃はちょっとでも遅れるとうるさい。
これは払ってる親の責任なんだけど、それをどうつたえればいいのかわからない。
電話番号は知っているけれど、その番号をコールしたことはない。
こういうときってどうすればいいんだろう。
つい最近、自分自身にウソをつくことをやめよーとか思ったけど
ウソをつく前にどうすればいいかわかんないなんて致命的。
- 157 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:41
- 「…なにかあったんですか?」
「あったといえばあったかもしれない。」
「そうですか」
あ、でたよ。紺野サンタの軽い放置プレイ。まぁ、楽だからいいんだけど。
アタシはため息をついて携帯をしまった。
紺野と一緒にいれたはずの紅茶はいつのまにか冷めていてなんだか微妙な気分になった。
「…ったくなんで家賃払ってないんだよ。」
ぶつぶつと呟いてテレビのチャンネルをまわした。
まわした瞬間「あっ」と紺野がつぶやく。
何?あんた、アンパンマンなんて見てたの?再放送だよ。あれ。
「どうしたんですか、後藤さん」
「別に。アンパンマンがうざかっただけ。愛と勇気だけが友達らしいし」
「あ、あの、愛と勇気って大切だと思いますよ?」
控えめにしかもまじめにそんなこと言われても困る。
っていうか、こいつは…アタシのペース乱しすぎだから。
アタシはそんな紺野と手に持ってる紙にたいして、ため息をついた。
- 158 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:42
-
「もう、どうしたんですか?」
紺野はアタシの大げさなため息にまた質問した。
紙を、紺野に渡す。なんだか、このことは黙っていられなくて。
なんだか、紺野が部屋にいて当然だと思えてきて。
この部屋の問題だと思ってしまった。
「家賃未納入…2か月分ですか…?」
「らしいね。家賃親持ちなんだけど。…ったく、仕送りはくるのに。最悪。」
機嫌が悪くなるあたしを紺野は「まぁまぁ」なんていってなだめる。
けれど機嫌だって悪くなるよ。このことによって親にコンタクトとんなきゃいけなくなったんだ。
最悪。その一言につきる。
- 159 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:43
-
「どうにかしてよ。あんたサンタでしょ?」
「後藤さん…都合のいいときだけサンタ扱いしないでください」
「はいはい」
アタシは近くにあった携帯を再び開いた。
親の名前のところまでスクロールする。通話ボタンはまだ押せない。
こういうときってどうすればいいのかな。
「かけにくいんですか?」
紺野が携帯をのぞいて、アタシに問いかけた。
まぁね、とアタシはうなづく。だってもう、何もかかわっていないんだ親になんて。
やっぱり、キマヅイ。
きっと世界に親と長いこと関わっていないで生きてきた子供なんてたくさんいるんだろう。
アタシもその中の1人。親がいなくたって金さえあれば、と生きてきた子供だ。
そのアタシが、リングにあがらなきゃいけない。親との電話、家庭というリングへ。
赤コーナー・後藤真希、なんてね。
- 160 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:43
-
アタシがそんなくだらないことを考えていたら、手にもっていた携帯の重みがなくなった。
横をみると、携帯を奪った紺野が一生懸命操作している。
「な、なにやってん―――」
言い切らないうちに紺野は、通話ボタンを思い切り押した。
アタシは急いで、紺野から携帯を取り戻す。
キッ、と思い切り睨んだ。紺野はすっかり小さくなって「すみません」と呟いた。
謝罪の言葉なんてどうでもいい。あたしは携帯電話をにらんだ。
いまさら、止めることなんてできない。その電話を。
アタシは大きくため息をして、再び紺野を睨んで、携帯を持ち直した。
耳にそっと携帯をあてると無情にも、コール音が聞こえてくる。
そう、「家庭」へとつなぐ音が、響いた。
- 161 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:44
-
長く、コール音が続き、あたしはその長さにいらついた。
電話に出る気がないんじゃないかと、思って耳を離した瞬間、「プチッ」と音がした。
「もしもし」
向こうから聞こえた声を、必死で記憶の中にいる人物にあてはめていく。
その声は、アタシの父親、という役目の男だった。
記憶の中で「マキ」とアタシを呼んだ顔を思い出す。
「…アタシだけど」
なぜだか、ひどく動揺した。そして、ひどく緊張をした。
9年ぶりに聞く家族の声とかいうやつにアタシは思考がおいつかなかった。
心の準備とかほしかった。くそ、あのサンタめ。
電話の向こうの相手も動揺しているみたいだった。そりゃね、娘らしきやつからいきなり電話きたんだ。ビビるか。
『あ、あぁ…マキか。久しぶりだ、なぁ?ど、どうした、急に』
それでも、動揺しすぎだなんて思ってしまったけれど。
ああ、なんだかアタシのほうが上手みたいだ。
- 162 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:44
-
「家賃2ヶ月未納入。」
『え?』
「払ってくれないと困るんだけど。」
『…家賃のことか。すまない。家内に任せておいてしまってな。今日払っておくよ』
ああ、そうですか。とアタシはため息。
家内、ねぇ。
あんなクソ女の話聞きたくもないよ。
一瞬、思い出す。嫌味ったらしいあの香水の匂いを。
頭をぶんっとふって、心を落ち着かせた。
「用件それだけだから」
『あっ、まて!マキ!』
きろうとしたアタシを必死にやつは呼び止めた。
なんだよ。頼むよ、もう限界なんだ。家庭に触れるのは。
- 163 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:44
-
『おまえの今後のことで話がある。近いうちに会いたい。…また連絡してもいいか?』
「話って、なに。会わなきゃいけないの?」
『今後のことだ。卒業したらどうするか、とか。色々だ。』
アタシはからだが震えた。
あいつに会わなきゃいけないの?
バカいわないで。無理、無理だ。
- 164 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:45
-
裏切り者、アタシを捨てたくせに。何が、今後のことだ。
- 165 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:45
-
驚いたのは思った言葉が、そのまま口からでてしまったこと。
きづいたときに、電話の向こうのアイツは、無言だった。
そして、アタシの手の平は、いつのまにか、サンタの手の中にあった。
- 166 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:45
-
『…そのことについても、話をしたいんだ。』
切なそうなアイツの声。
ふざけないで。捨てたものに責任おいなよ。
アタシはその言葉はいわずに、静かにボタンを押した。
- 167 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:46
-
もう、話すべき言葉が見つからなかった。
否定、悪口、そういったもの、全て言おうと思えば、いえる。
けれど、無理。
アイツと話してると家庭を思い出す。幸せな風景を思い出してしまう。
アタシは、たまらなくなって横にいた紺野をぐいっ、とひっぱった。
紺野を抱きしめて、なぜか震えているからだを落ち着かせようとする。
紺野は抵抗もせず、だまって抱きしめられている。
- 168 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:46
- 例えば、大きなぬいぐるみでも、子犬でも、他人でも、夜の街に飛び散ってるウソの欠片でも。
アタシは自分を落ち着かせれるのならば、誰だっていいと思う。
けれど、目の前にいたのは大きなぬいぐるみでも、他人でもなくてたまたまサンタクロースだった。
アタシが、抱きしめた瞬間、背中に腕をまわして、遠慮がちに抱き返してくれたサンタクロースだった。
それは、大きなぬいぐるみでも、子犬でも、他人でも…ウソの欠片でも、してくれないこと。
アタシは、いつのまにかサンタクロースの体温に「安心」をみつけてしまった。
そして、震えが段々おさまってきた。
けれど頭の中に何度もリピートする父親の声と記憶の隅にある女の香水の匂い。あの階段の光景。
それがずっと頭の中で、暴れまわってる。震えはとまっても、いつもの「アタシ」が取り戻せなくなりそうだった。
- 169 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/04(土) 23:47
- 「大丈夫、ここに、いますよ。」
そんなことを、腕の中にいる紺野がつぶやいた。
その瞬間、ハッとする。
あたしの腕の中にいる紺野を。紺野があたしの腕の中にいることを。
1人ぼっちではなくて、この空間には頼りないけれどサンタクロースがいるってことを。
アタシは、なんとか、彼女を腕の中から解放して、いつものゴトウマキに戻った。
けれど、紺野は困ったような顔をして、アタシをみつめていた。
わかってる。紺野。アンタがアタシのコト、知ろうとしてること。
それが幸せへのルートだってことも。
でも、もうちょっとまって。まだ、思い出したくないんだ。
逃げたくないけれど、逃げたくないと思ったけれど…
階段の下を見下ろすアタシ。騒ぎ出す群集。
お願い、もう少しだけ、そこに記憶を…いかせないで。
- 170 名前:風道 投稿日:2004/12/04(土) 23:47
-
本日はここまで!です★
- 171 名前:konkon 投稿日:2004/12/05(日) 00:19
- うぉぉぉっ!
リアルタイムで読ませていただきました!
ごっちんがコンコンを抱きしめて・・・
ごっちんの過去には何があったんでしょうか?
それにしてもコンコン、以外と強引なんですね〜。
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/05(日) 13:36
- 更新おつかれさまです。
紺ちゃんサンタにごっちんはだいぶ救われているようですね。
ごっちんの過去というものは、とても重く辛いものなんでしょうね…
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/09(木) 21:53
- 更新お疲れですー!
こんこん、ごっちんを救ってあげてー!!
- 174 名前:風道 投稿日:2004/12/13(月) 23:07
- 更新します★
>>171 konkonさん
リアルタイムでみてくださってありがとうございます!
ごっちんの過去はとても重い、と私的には思っています。
紺野さんも時には強引です。なんてたってサンタですから(w
>>172 名無飼育さん
感想ありがとうございます!サンタは後藤さんをなにげなく救ってる様子で(w
でもぼけぼけなサンタさん。性格がまったくちがうからこそ、なんですかね。
ごっちんの過去は…動き出します!
>>173 名無飼育さん
ありがとうございます!こんこんにすくってほしいですね!がんばれサンタ!
では…更新します。
- 175 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:08
-
夜の街をふらふら歩いてる。
家に帰えっても、どういう顔をすればいいのかわからない。
心配かけさせたくない?違う。
見られたくない。こんなアタシは。
「もうやめなよ」
横にいたよしこが呆れ顔でつぶやいた。
アタシはよしこに何も言わない。言える状況じゃなかった。
真剣勝負ってやつで、今は。そう、プーさんと。
「あっ…」
やっとプーさんがクレーンからアタシに通じる穴に落ちた。
1200円のプーさんをアタシは誇らしげに抱いた。
「ごっちん…そんなクマ小僧なんぞ、クレーンゲームしなくてもさぁ…どっかで安く売ってるって」
「うるさいバカ」
「…はいはい」
よしこの呆れ顔を睨んであたしは携帯を開いた。
夜の9時。そろそろ制服でうろつくにはゲーセンもうるさくなるころだ。
アタシはうるさいゲーセンを後にした。
- 176 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:09
-
最近まともに家に帰っていない。
あの電話をしてからもう5日もたっていて、電話はこない。
けれど家には帰りたくなかった。だから、こうやって前みたいに夜遊び。
きまってよしこがついてくるんだけど最近はうざい。
「ごっちん、そろそろ家に帰れば?」
なんて決まって言うんだ。
だったらついてこなければいいのに。
「じゃあ、帰れば?」
振り向いて睨んだ。けれど、よしこにアタシのにらみなんかきかなくて
よしこは気にせず携帯を開いた。
「あ、藤本美貴から着信きてたよー。ごめん、電話するわ」
「そう」
よしこはそういって人がいないところにいって電話をかけにいった。
街の喧騒が耳障りだ。アタシも近くにある公園に移動した。
最近は0時過ぎに家に帰っている。
紺野はいつもソファで寝ていて、あたしは毛布をかけてそっと声をかけないでいる。
彼女と話すのはなんだか、申し訳ない。
そういえば食事も作ってない。けれど、おいてるお金は減っていたからコンビニ弁当でも食べてるんだろう。
- 177 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:10
-
別にいきなり紺野が電話をしかけたのがイヤだったわけじゃないし、怒っていない。
けれど、アタシは…このままだと紺野に泣きつきそうなぐらい弱っていて
あれからならない携帯電話をにぎりしめている。
紺野に会わないように、朝は早く起きて学校に行く。
担任である裕ちゃんに頼んで保健室でしばらく寝させてもらう。
そんな生活を5日、繰り返していた。
そりゃ、紺野だって不思議に思うだろうし、心配してるんだと思う。
アタシだってできるなら心配させたくない。けれど、こればっかりはしょうがない。
しょうがない?何がしょうがないんだろうか
結局アタシは逃げている。
父親から、「家庭」から、あの時初めて触れた人の体温から…
彼女の顔が浮かんでアタシは頭をふった。どうしようもできない、こんなアタシは。
よしこは電話を終えてあったかいウーロン茶をかってきてくれた。
おごり?と聞くとうなづいた。
隣に座ってキャスターを一本、よしこは吸い始めた。
- 178 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:10
-
「いっつも急に、だよね」
「なにが」
「夜遊び、ケンカ、盗み…ストレス発散に使うのもいいけど急だよ。いつも」
「うるさい」
アタシはよしこからもらったウーロン茶を飲んだ。あったかい。
暖かいペットボトルからふいにサンタの体温を思い出してしまう。
「あの時は、もうちょっとやばかったけど。知らない男についてったし。クレーンゲームやるだけ今はまだましか」
そういってよしこはフッと笑った。
わかりきった笑顔がむかつく。こんなときだけ自分は頼りがいがあるやつですよって顔。
なんだよ、いつもはヘタレのくせに。
大体…あの時なんて言葉使わないで。こんなときにまで「あの人」を思い出させないで。
「ごっちんさ、なんか…間抜けだよね」
「は?」
「後ろの正面だあれ、って。ずっと思ってそう。振り返ればいいのに。別に怖くないのに。後ろにいる誰かに恐れてる。」
よしこはそういって、タバコを口にふくんだ。
わけのわからないことをよく言う子だ。
後ろの正面?いないに決まってる。いたら振り向いてるさ。大体、後ろの正面ってどういうことよ。
わけのわからないあたしを見てよしこは笑った。
何か言おうと思ったけれどうまく言葉がでてこない。
「さ、家に帰ろうか」
そういって背中をポンッと押されて、アタシはとりあえずウーロン茶を飲み干した。
- 179 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:11
-
10時前に家につくのは5日ぶりかな。
よしこにおくられた後、きまづそうに家の前に立つあたし。
別に堂々とすればいい。そう、堂々とこのドアをあければいいんだ。
鍵をまわして、ため息をついた。
ガチャリ
ドアってこんなに重かったっけ?
「ただいま」
今はその言葉を言う相手がいる。だから、めんどくさい。
リビングで音がした。
アタシは靴をぬいで、真っ暗なリビングへ進んだ。
リビングのソファには紺野がいた。
真っ暗な部屋でヒザをかかえている。
まるで…昔のアタシみたい。その姿と記憶がリンクする。
紺野はアタシに気づくと眠たい目をこすって、アタシのそばにきた。
久しぶりに顔を見た気がする。
…ねぇ、やせた?
- 180 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:11
-
「お、おかえりなさい!後藤さん。」
健気?純粋?そんな言葉はどうでもよくて。
こんな笑顔できる彼女がにくいと思った。率直に。
きっとこの子にはアタシみたいな悲惨な出来事とか全然なくて
のほほんとサンタなんかやってんだろう、と。
醜い感情が、ありとあらゆるところからでてきてアタシは彼女を見れなくなった。
「後藤さん…?」
久しぶりに会った彼女の目には真っ黒なクマができてることには気づいたのに
どうしようもない自分を棚にあげて、アタシは…
「うるさい。」
そういってしまった。
- 181 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:12
-
シーンとしている部屋は最初からなのに空気はどうしてこんなに重くなるんだろう。
でも気配りとかそういうのに頭がまわってくれない。
こういうときにかぎってアタシは不器用だ。へたに自分に介入してきた他人をどうすることもできない。
紺野は悲しい顔をした。それが普通なのにアタシはその顔を見たくなかった。
どうしてそんな顔ができるのかと羨ましかったのかもしれないけど。
アタシは背中をむけて、自分の部屋にはいった。
音を大きくたててドアをしめると、アタシは自分の携帯を床になげつけた。
こんなものさえなくなれば不安にならない。…でもそんなのはちがくて。逃げられなくて過去からは。
どうにでもなれ、とアタシは制服をぬぎ、ジャージに着替えようとした。
そんなとき、ドアがあいた。
「後藤さん…」
ノックもせずにはいってくるなんて、紺野らしくなかった。
だから警戒しなかった。あたしは紺野に背中をみせてしまった。
過去を封じ込めている背中に。
- 182 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:14
-
「みるな!!」
大きな声をだして、アタシは振り向いた。
彼女はアタシの背中の小さな後に気づかないだろうけれど、それはたまらないほどの恐怖。
紺野はびっくりした顔をしていた。っていうか、泣きそうな顔だった。
でも、きっとアタシも泣きそうだ。
「どうしたんですか…?」
そういうのが精一杯のようだった。
震えていた声が。
一直線な大きな目がアタシを捕らえていた。
でも、どうしようもなくて。せつないほど、アタシは感情がうまくまわらなくて。
「やめて…おねがい、でていって」
「で、でも」
「ごめん、寝たいの。眠いの。ごめん。ごめん…」
謝罪する必要があるのかないのか。
そんなことすら思えなかった。紺野…紺野…ひたすら頭の中で名前をよびながら睨んだ。
本当はあの腕の中に飛び込みたいのかもしれないあたし。けれど、そんなことできなくて。
体温にふれたい、大丈夫ですか?って優しい声でいってほしい。だってそれは紺野ができるただ唯一の癒しだと思う。
けれど…癒される資格なんてきっとないから。
- 183 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:15
-
アタシも紺野もなにもいわなくなってしまい、キマヅイ雰囲気になった。
…そして、紺野は下をむいて、息をはきだした。
「すみません…。明日は早く帰ってきてくださいね」
精一杯の笑顔が、アタシにはどうしても重くて。
きみの腕の中の体温を感じたいけれどそんな資格なんてなくて。
きっと癒されない過去の傷をいつまでもひきずっていくのがお似合いのような気がして。
そっと紺野がしめたドア
ああ、こんなにもこの部屋は暗かったんだっけ?
背中についてる小さなアト。もう、どうすればいいのかもわからない。
- 184 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:16
-
「後ろの正面だあれ、って。ずっと思ってそう。振り返ればいいのに。別に怖くないのに。後ろにいる誰かに恐れてる。」
- 185 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/13(月) 23:18
-
そうなのかな。
床にある粉々の携帯電話をひろった。
どうでもよくなんかない。
紺野…ごめん、もう一回この部屋にはいってきてくれないか。
そんなこともとめてもどうにもならない。
助けて。
助けて。
男の子が、苦しんでるんだ。
母親が、アタシに押し付けるんだタバコを。
後ろなんか振り向けない。いつだって、誰かがいるんだ。
助けて
だれか
だれか
…ねぇ、お願い。
- 186 名前:風道 投稿日:2004/12/13(月) 23:18
- 本日はここまで!です★
- 187 名前:konkon 投稿日:2004/12/13(月) 23:45
- またもや運よくリアルタイム!
ごっちんがせつなすぎる・・・
紺ちゃんが優しすぎる・・・
もう一言でいうならマジ最高です!
やっぱりもう一言(マテ
紺ちゃん、サンタならごっちんを幸せにしてあげてください!
次の更新待ってます♪
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/14(火) 11:20
- ごっちん。・゚・(ノД`)・゚・。
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/15(水) 15:29
- 更新おつかれさまです。
あうー…切なすぎます…。
でも、きっと紺ちゃんサンタが何とかしてくれるはずです。
- 190 名前:風道 投稿日:2004/12/17(金) 01:51
- 本日更新!ちなみにこのストーリーはクリスマス過ぎても続きます(汗
冬には完結できるとイイナー…
>>187 konkonさん
おお!またもやリアルタイムですか!?今回はどうでしょう!?
でも嬉しいかぎりです★
そんなに褒めないでください〜照れますw
サンタは幸せにすることができるんでしょうか?
まだまだ続く物語にご注目を…♪
>>188 名無読者さん
ごっちん…重く苦しい過去は今回…少し見れます★
>>189 名無飼育さん
切ないですね…冬にピッタシかもしれません(ぇ
紺野サンタはどこまでがんばれるんでしょうか。
下手な文章ですがよろしくおねがいします。
では更新します!
- 191 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:51
-
目覚めるともう、朝ではなかった。
朝日ではなくて、夕陽が部屋をオレンジ色に染めていた。
アタシは体をおこして、床にある粉々になった携帯を見た。
「はぁ…」
バカなことをした。どうかしている。
感情に任せて物を壊したりするのは、アイツと一緒じゃないか。
頭はよくまわらない。今は一体何時なんだ?マクラもとのあまり役に立たない目覚まし時計を確認した。
PM4:00
なるほどね、どうりで夕陽なわけだ。
ベットから起き上がり、アタシは部屋から出た。
紺野がいる様子はなかった。でも、そのかわりにあの犬がいた。
トナカイとかいったっけ…。どうやらサンタは留守みたいだ。
「くぅん」
「…おまえは飯どーしてんだ?」
久しぶりに見る犬はどこか大きく見えた。たったちょっと目を放した隙に成長ってやつをしたのかもしれない。
アタシはかがんで、犬を見た。
捨てられた犬。けれど、拾われた犬。おまえはいいね、拾ってくれる人がいて。
- 192 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:51
-
くぅんとないた犬の頭をなでて洗面所へ。死にそうな顔をしている自分を笑った。
どうしろっていうんだ。紺野にまであたって。どうせ紺野だってアタシを軽蔑している。
水が冷たい。アタシも冷え切った人間だ。
服にすばやく着替えて、帽子を深くかぶった。
紺野は買い物に行ってるんだろうか…とにかく自分を隠したくてしょうがない。
夜の街に行けばきっと気分もまぎれるんだろう。
きみが帰ってこないうちに部屋をでる。きみに会いたくないんじゃなくて
こんな自分をみじめにさせたくないだけ。
- 193 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:52
-
どうせどこにいっても一人ぼっち。そう思ったからそう思うしかなかったから。
アタシの居場所はこのネオンが散らばっている場所にあるとおもった。
みんな笑顔を売り、笑顔を買う。あたしも売ろうとしていたんだ。けれどあの人に出会って…
でも、もうアタシなにもない。
- 194 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:52
-
「かわいいねぇー。一緒にプリクラとろーよ」
「いいけど、3万はとるよ?」
「はぁ?たけーし。ざけんじゃねーって!!」
くだらない男の話をかわして。暴力をふりそうになったら少しだけ速い足で通り過ぎる。
こんな街の騒がしさ久しぶりだ。紺野がきてからは学校に行って部屋に帰ってあいつをかまって…
健全的な生活を繰り返していた。でも、アタシはどこか虚しさを感じていた。
皮肉に鼻で笑っている自分に気づき、なんだか情けなくなった。
だって、アタシは紺野のように笑えない。
自分は汚れてると思う。
目も、耳も、鼻も、口も、手も、足も、心臓も。血で、涙で、キタイナイモノデ、アタシは汚れているんだと思う。
それじゃあなんで生きているのだろう。幸せを探しているのだろう。
みんな「幸せ」をほしがっている。だから、アタシは遠ざけた。
でも、小さな小さな真っ赤なサンタクロースがいったんだ。
「みつけましょう」って。
アタシはほしかったんだ、きっと。体温が。誰かの。
- 195 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:53
-
しばらくぶらついたけれど全然楽しくない。
アタシの場所はここじゃない気がした。
『後藤さん』
粉々になった携帯。見られた背中。
街の喧騒に耳をふさいだ。
まぶしいだけのネオンに目をふさいだ。
瞬間、あの人の顔を思い出した。でも、すぐあのたよりないサンタを思い出したんだ。
帰ろう。
こんなところにいたって、しかたがない。
どんなに騒がしい街でもアタシはここじゃ1人だ。
- 196 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:54
-
家に帰れば、あんなサンタでも、アタシは二人になれる。
あの子には、体温がある。あの子には心がある。それだけで充分なんだ。
どんなに自分が汚いと思えても、帰ろう。
帰ろう。
帰ろう。
帰ろう…。
そう思って、足を前に進めたとき、あたしは大きな壁にぶつかった。
ドンッ
痛くて顔をあげると、そこには見慣れた顔がたっていた。
「…真希!?」
目と目があう。
壁じゃなくて人間。そしてそいつは…
―――――タスケテ
心がそう叫んだ。
- 197 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:54
-
「後ろの正面だあれ」
- 198 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:54
- アタシは走り出した。逃げ出した。
ネオンがアタシの視界を明るく照らした。
しかし、ヤツは追ってくる。
アタシを「真希」と呼んだやつは追ってくる。
かなうはずもない脚力に、アタシは簡単につかまった。
「っつ…!!」
「なんで、逃げるんだ」
荒々しく聞こえてくる声に、耳をふさぎたかった。
掴まれた手を振りほどきたかった。
でも無駄。無駄なんだ。
目の前にある真実。コイツは――――
「電話がつながらなくて、心配でな。久しぶりだな、真希。」
そう、コイツは父親。きっとアタシの父親。
9年ぶりに見る、父親だった。
高価なスーツに身をまとって、ヒゲなんかはやして。
汚らしい。
こいつの血がはいってるとおもうと、汚らしいんだ。
掴まれた手を本気で振り回した。
「離して!痛い!」
「ああ、あ、すまない。」
アタシが睨むと父親はすぐに手を離した。
街路樹が風とともに揺れている。あたしの心もきっと揺れている。
ニゲダシタイ
でも、きっとニゲレナイ
- 199 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:54
-
「…成長したな」
静まった空気をなんとかしようとヤツはそんなことを言った。当たり前だ、何年前だと思ってるのアンタがアタシを手放したのは。イライラが募る。そして、恐怖。やだ、アンタには会いたくなかった。思い出さなきゃいけないじゃないか。
アタシは自分が動揺していることを隠そうとひたすらやつを睨んだ。
けれど、さすがはというかなんというか…父親であるヤツはびくりともしない。
「ちゃんと元気でやってるか気になってな。電話もつながらないし。さきほどお前の部屋にもいったんだが」
「は!?」
部屋にいった、という言葉に反応してしまった。
部屋に入られていたらどうしよう?紺野が…こいつの汚らわしい目で紺野をみていたらどうしよう。
「何も応答がなくてな…。帰ろうと思っていたんだ。
たまたま車で通りかかったらお前がいて…なんとなく面影が残っていてつい、捕まえてしまった。
驚いただろう。すまない」
ホッとする。
紺野のことがバレなかった。あの空間にこいつが足を踏み入れなかった。
アタシはホッとして、なんだか泣きそうになった。
- 200 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:55
-
助けて
いくら心でそういっても誰も助けに来ないことぐらい、知っている。
もし、あのサンタクロースが助けに…こないか。昨日アタシは彼女を突けはなしたんだ。
粉々の携帯電話と一緒に。
それでも目の前でタバコを吸う父親をにらみながら心の中でひたすらSOSをだす。
アタシはSOSを必死に出す。だってもう、頭の中がグルグルグルグルまわってんだ。
「その、ゆっくり話をしたいんだが…」
父親がそう言いかけた瞬間、ぐるぐる頭の中で映像がまわった。
母親と父親と弟とアタシ。幸せな風景なんてなくて…ただ背中が痛んだ。
あてられたタバコの熱を思い出した。
はなすもなにもない。
あたしにはあのときなにもかもうしなった。それをあなたは見てたでしょ?
だから…捨てたんだろ?
- 201 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:55
-
そう思ったら自然に手が父親の口元のタバコにのびていた。
「な?」
驚いた父親をよそにアタシはひどく冷静にそのタバコを掴んだ。
熱い?何も感じない。もうタバコの熱なんて慣れっこだ。
アタシはタバコをにぎりつぶし、地面に捨てた。
「なにしてるんだ?!大丈夫か!?」
驚かないでよ。そんなに。
あなたは見てたでしょ?母親にアタシがタバコを押し付けられてるのを。
背中に無数の小さな痕が残っているのを知っているでしょ?
大丈夫だよ。
こんな傷、増えても変わらない。
心の傷、なんてかっこいい言葉が当てはまるほどアタシは繊細でもないけれど
そのかわり、体の傷がアタシの過去を変わりに語ってくれるなら、この手のひらに新しくついた痕だって大歓迎だ。
- 202 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:56
-
ひどく冷静な自分とこいつに何か言いたくてしかたがない自分がいた。
いいよ、もう解放しようか。
アタシ、幸せになりたいもん。サンタクロースがいってたみたいにさ。
幸せになれるかしらないけれど、過去の傷そろそろだしてやりたい。自分のために。
ばかみたい、アタシ。でも、バカもいいか。たまには。
深呼吸をひとつ、おおげさにした。
街のネオンと騒音がうるさい。けれどこんなアタシと父親にはお似合いかもしれない。
さあ、言葉を言おう。今までいえなかった言葉を。
「ふざけるな…」
「え?どうした?真希。」
「呼ぶな」
「…ま、真希?」
捨ててしまったものはもどってこない。そう思い知らせてやるよ。
- 203 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:56
-
「ふざけないで!!何が話がしたい?バカじゃないの?アタシは何も話すことはないよ」
「なっ…」
「アンタは捨てたんだ。あたしを粗大ゴミのように。お金をあげるかわりに捨てたんだよ!!誰も拾ってくれなかった!
アンタは自分の名誉を守るため、あの不細工な妻を守るために…バカじゃないの!?アタシはもうあんたの娘じゃない。
捨てられたゴミなんだよ!!捨ててしまったものは戻ってこないんだよ」
捨てられた、粗大ゴミのよう。ああ、なんていい言葉だ。そう、そうなんだよ
アタシはあの時、捨てられたんだ
目の前のヤツはびっくりしたような悲しそうな顔をしていた。
そんな顔されても困る。こっちが悲しいんだ。
言葉は続いた。
- 204 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:58
-
「アタシが電話したのは家賃のことであって、アンタになんかなにも求めてない。
あんたがアタシを捨てる代償に金くれるっていったんだ。
だからそれをアタシは契約とおもってるんだ!もう関わらないでよ!」
「ま、真希…!俺はだな!」
「うるさい!!アンタだって関わりたくないんでしょ!?いい加減にして!!
アタシは…アタシはアンタの息子を ――――!!!!」
言いかけて、続きを言葉に出すのを…迷ってしまった。
さすがに続きを言うのは怖い。認めたくないから、今も。
そういいかけて、あたりが静まったとき
アタシは慌てふためく父親の後ろに、小さな姿を見つけた。
1人たたずんで、驚いた顔をしている…サンタクロースを。
- 205 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:58
-
「後藤さん…」
迎えに来てくれたの?
探しに来てくれたの?
街のネオンと騒音に似合わない少女。アタシを包んでくれる、優しいカタチ。
寒そうに、鼻を真っ赤にして。トナカイじゃないんだから。
瞬間、なんだか熱いものが目に浮かんできた。
聞かれた、と後悔することはなかった。
どうせ遅かれ早かれ知られることなんだ。
アタシは呆然と立っている父親から逃げ出して、奥のほうにいる紺野にかけよった。
「紺野!!」
紺野も呆然としている。
けれど、アタシが駆け寄った意味をしっているのか、ちゃんとした目をしていた。
- 206 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:58
-
アタシは紺野のちっちゃな手を掴む。
紺野はびっくりしていたけれど意図を飲み込む。
「はしって」
口だけ動かした。
アタシは紺野を連れて父親から逃げた。
相手の脚力から逃げられる自信なんてなかった。けれど、けれど…今なら逃げれる気がした。
サンタクロース、お願い。
そうひたすら願っていた。
「ご、後藤さん!!」
「お願い。お願いだから。アイツから逃げたいんだ!!」
「はい!!」
紺野は必死にアタシの足についてきた。
手は離さない。お互いしっかりとつながった。
奇跡かなんだかしらないけれど、父親はびくりとも動かなかった。
もしかしたらアタシの言葉を聴いてショックだったのかもしれない。
紺野とアタシは夜の街をかけぬけた。
できるだけ遠くへ。
あいつのいない場所へ。
早く、逃げ出したかった。
過去も、今も、未来も、もう必要なかった。
ひさしぶりに頬がぬれている気がした。
それが知られたくなくて握ってる手を、思わずさらにつよく握ってしまった。
- 207 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 01:59
-
このとき逃げ切れたのはもしかしたらサンタの奇跡かもしれない。
後からそう思った。
- 208 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 02:00
-
「あほ、らしい」
ゼエゼエとあれた息を整えてアタシはウーロン茶を一口飲んだ。
そういえば昨日もこの公園でウーロン茶のんだなぁ。
隣の紺野は言葉にならないほどゼエゼエ。アタシのウーロン茶を渡して飲ませる。
こくん、と一口、二口飲んだら少しだけあれた息がなおった。
「…ごめん」
「…いえ、こちらこそ」
なんでそうなるの、とアタシはクスッと笑った。
あんたなんにも悪いことしてないんだよ?きっとあの場所にいたのは心配して探しに着てくれたんだろうし。
アタシはなんだか急激に切なくなって、紺野に顔がみえないようにそっぽ向いた。
「あれ、アタシの父親」
「…はい」
「黙っててもしかたがないし。あんた、サンタだし。言うよ。アタシがなんでこうなってんのか」
いう覚悟とかは思ったより全然いらなくて
友達とか変なかたちにとらわれないサンタクロースにはなぜだか自然に話せる気がした。
だって弱いところ、いっぱいみせてしまった。今更隠しても仕方がない。
- 209 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 02:00
- 「後藤さん」
「ん?」
「ゆっくり、でいいですから」
そういってウーロン茶をかえした紺野をみて
どうしてこんなに優しくするのだろうと思ったけれど、それがきっと彼女の素なんだと思った。
きっと紺野には理解できないだろうな。あたしの醜い劣等感。
はぁー…とため息をついてアタシは深呼吸をした。
話すよ、あのことを。
きみに聞いてほしいから、しってほしいから、とかじゃなくてそんな簡単なものじゃなくて
ただ単に、自己満足。
意を決して、目をつむり、アタシは…言った。
- 210 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/17(金) 02:00
-
「殺したんだ。………………弟を。」
紺野の顔が曇ったのを感じて、アタシはそっぽ向いた。
- 211 名前:風道 投稿日:2004/12/17(金) 02:00
- 本日はここまでです!!
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/17(金) 10:53
- ついにごっちんの過去があきらかに!
かなりつらそうですね。
- 213 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 19:55
- いつも更新を楽しみにしています!
冬の間この作品を読んでいられる?かもなので
切ないけど、嬉しいです。
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 21:00
- 更新おつかれさまです。
ついに…ですね。
心して読みたいと思います。
- 215 名前:konkon 投稿日:2004/12/18(土) 00:56
- できればクリスマスがきてほしくない・・・
この小説が終わってほしくない・・・
などと思ってしまう自分が嫌いです(汗)
ごっちんの過去がいよいよ明白になりますね。
優しいkonkonはどう思うのか?
続きに期待してます!
- 216 名前:風道 投稿日:2004/12/21(火) 22:42
- 本日「過去」更新します!
そろそろクリスマスですね…クリスマスは飲み会か…。
風道のところに紺野サンタがほしい…。
>>212 名無し読者さん
これからごっちんの過去第一部を書きます!
つらくみえるかわかりませんが…相当、覚悟して書きましたので!
>>213 名無飼育さん
ありがとうございます(^ー^)
冬の間に終われればいいんですが…まったりとあせらずやっていきます!
>>214 名無飼育さん
ついに…更新します!心して書いたのでお願いします!
>>215 konkonさん
そこまで言われるとすごい嬉しいです!やる気いっぱいでてきます!
ごっちんの過去を紺野はどう包むか…
ここが正念場ですね、ごっちんと紺野。
では、更新します!
- 217 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:43
-
ねぇ、幸せな家庭な風景ってさ、ドラマとかでやってるけれど
そんなもの一度もみたことなかったよ。
ちょっと怖いけど優しい父親?ケーキを焼いてくれる母親?残念ながら見たことないや。
そのかわり、いつだってタバコの熱を体に覚えさせられたけれど。
- 218 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:43
-
紺野の顔をみないように、アタシは立ち上がった背中を向けた。
声が聞こえる範囲で、静かに…アタシは傷を開き始めた。
ううん、傷なんてもんじゃなくてただの思い出?笑っちゃうようなね。
「…アタシには一応、家族がいて…四人家族だった」
淡々と話す。
アタシはいつのまにか、過去の思い出に頭がいっちゃってた。
小さな小さな部屋。そこでアタシは生まれた。
多分、その頃はどこにだってありふれている「家族」だった気がする。
「そう、四人家族だった。
さえない父親と優しいお母さん。最初は三人だった。
父親も今じゃどっかのIT関連会社の社長だけれどそのころはさえないサラリーマンで。
小さかった家だったけれど、でも幸せだったんだと思う。よく、わからないけれど。幸せって…
なんて、これじゃあ…どっかのドラマみたいだ。」
カラッポになったウーロン茶をゴミ箱に投げた。
ガンッ!!
コロコロ....
空き缶ははいらなかったけれど。なんだか、無様だなぁ、アタシ。
後ろにいる紺野は聞いているだろうか。振り向こうとして、やめた。
彼女は聞いているだろう。だっていつだって忠実な子だ。
- 219 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:44
- 「…アタシが4歳の時に確か父親が事業を始めた。賭けだったんだと思う。そのせいで父親の顔を見ることは少なくなった。忙しかったんだね。かなり。お母さんは愛想をつかして、家をでていった。アタシを残して」
『お母さん…どこいくの…?』
『…さあ…よくわからないわ』
『まきもついてっちゃだぁめ?』
『…ついてこないで』
そこにあったのは完璧な拒絶、そして真っ暗な部屋。幼稚園から帰っても誰もいない部屋。
お茶の間のテレビを一緒に見る相手なんていなかった。
父親はそんなこと気にせずに仕事をしていた。
多分、その頃かまずに言えた言葉は「ほかほか弁当」ぐらいだった気がする。
「…うん。それで、まあ…孤独だった。かな」
ああ、どこからどこまで言えばいいんだろうか。
一瞬迷ってしまう。あたしの過去?重要な部分?どれが重要でどれがいらないものなんだろう。
でもそんな順番はつけれなくて。あたしはやっぱりバカなんだと思う。
「ゆっくりでいいですよ?」
いつのまにか隣にいた紺野がそういった。
やけに小さく見えた紺野の体はアタシの不安とか寂しさ全部を背負っているような気がした。
あせらなくていいから、ゆっくり?そうさせてもらうしかないみたいだ。
- 220 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:44
-
「それから、すぐ、だった気がする。あっという間に家が裕福になって、お世話する人もいた。
母親の代わりではないけれど、アタシはその人に甘えることができたし、大分救われたんだと思う。
けれど、アタシが6歳になるかならないかのとき、新しい母親がきたんだ」
「…継母、ですか」
「そう」
継母。…やっぱりそれは最悪なものだった。
ため息を1つ。思い出せ、あのことを。
『こんにちわ、真希ちゃん。』
『だあれ?』
『あなたの新しいママよ』
偽善に塗られた笑顔。今思えば、完璧でもなかったな、あの笑顔。
「そいつが家に来たときのこと覚えてる。香水の匂いをしつこいほど漂わせてアタシにあうなりすぐタバコに火をつけた。
今から思えば多分水商売あがりだったのかもね。」
「水商売…」
「…まさか、紺野…水商売ぐらい知ってるよね?」
「えーっと…完璧です」
…どうだかな。頭の上にハテナマークが浮かんでるけど?
でもそんなとぼけたきみにだからこそこうやって落ち着いて話せるんだろう。
もしこれが恋焦がれた相手だったら絶対いえないな。ま、恋なんてどうでもいいけど。
- 221 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:45
-
「父親に言われた「新しいお母さんだよ」って。でも、アタシは母親に新しいも古いもなかった。
アタシにとって母親はやっぱり実の母親で。どうしても、やっぱり認めれなかった。すごい6歳だよね」
『新しいお母さんだから、言うこと聞くんだぞ』
『新しい?じゃあ、真希のお母さんは古いの?』
『…変なことを聞くな。』
立ち去る父親。ひどく冷静な目でみてる新しい母親。
我ながらなんて冷めてる、というか…変な子供だったのだろうか。
普通の子供だったら継母にすぐ母親として甘えるんじゃないのか?
でも、それはできなかったんだ。
「すごくないですよ」
「ん?」
「全然、すごくないです。普通ですよ。子供は…本能で生きてますから。
きっとこの人は後藤さんの母親じゃない!って悟っちゃったんですよ。」
なんだかまじめな顔をして紺野がいった。
時々鋭いこと、すごいことを言うのには慣れたけれど、なんだかそれが悪くないね、アンタの場合。
さすがはサンタクロースなのかな。
- 222 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:45
-
「とにかく3人暮らしが始まって、すぐにアタシには弟ができた。
新しい母親に甘えたことなんてなかった。かわいくないガキにうつったんだろうな、母親からは。
でも、できなかった。だって、アタシはお母さんが戻ってきてくれると信じてたから」
普通に玄関あけてさ、小さな家に帰ってきてくれると信じてたから。
大好きなオムライスとハンバーグを作ってくれるなんて信じてたから。
かなわなかったけれど。願っていたから。
「継母によく「お母さんはどこ?」なんて素で質問してた。それを故意的に言うようになったのは結構早かったけれど。
小さなアタシは小さな反撃をしてたんだ。…こんな邪魔者いなくなれば、お母さん帰ってくるって思って。」
かなわなかったけどね、と小さく呟いた。
そういえば、お母さんは生きているのかな。もう、あってもアタシに気づきもしないんだろうけれど。
忘れられた人間は一番悲しい。…関係ないけれどね。
ひんやりとした公園はどこか静かで不気味だった。
隣の紺野は怖くないだろうか。でも、こいつの存在自体幽霊みたいなもんだしね。
このさいなんでもありだ、アタシ。感覚麻痺?昔からだよ。
- 223 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:46
-
「弟…ユウキは社長跡取りとしてそれは大事に育てられた。
でも、子育てって金じゃ解決できないから、継母はかなりのストレス溜め込んでたみたいでさー……
タバコ、押し付けられるようになったんだ。背中に」
「え…?」
「昨日、背中見られたくなかったのはそのせい。アタシの背中には多分、十数個のタバコの跡がある。」
『熱い!熱いよ!!』
『黙れ!このクソガキ!!うるさいんだよ!どいつもこいつも!』
『痛いよ!痛いよ!!お母さん』
『誰があんたの母親だ!バカいってんじゃないよ』
よく覚えている。初めてタバコを押し付けられた日。背中に何かがあてられて、瞬間、どこか溶けるような気がした。
その日はとても暑くて、アイスを食べようとしてて、そう、アイスと一緒にアタシの背中の一部はきっと溶けた。
- 224 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:46
-
紺野の顔が歪んでいた。切ないのだろうか、悲しいのだろうか。
でもごめんね、多分アタシが一番切ないし悲しい。残ってしまった跡は消せないから。
「小学校1年生になって、健康診断があって…背中の無数の跡に気づいた担任教師は母親に金で解決された。」
「そんなっ…!?」
「正義も敵もいないんだなーって思ったよ。何が正義の味方?いたら助けてよ、って。ゴレンジャーとかありえない。」
「…汚い…です」
「そう?でもアタシもどんどん汚くなっていったけど。」
どんどんどんどん、汚くなっていったアタシも。年を重ねるごとに背中を隠して
明るい話題に興味をしめさずに、汚いこと見てきたしやってきた。
『バカじゃないの?健康診断なんて。バレるじゃないか!このバカ!』
『…』
『かわいげないガキだね。さすがはあいつが父親だけあるわ!!』
- 225 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:47
- 『バカじゃないの?健康診断なんて。バレるじゃないか!このバカ!』
『…』
『かわいげないガキだね。さすがはあいつが父親だけあるわ!!』
「今思えば、あの継母が父親を愛してたとは思えないな。お金目当てでもあったと思うし。」
「お金、ですか。」
「それでもアタシには救いがあったんだと思う。…弟っていう存在が」
紺野が不意に顔をあげた。
驚くのはわかる。だってアタシいったもんね?「弟を殺した」って。
そう、それがアタシの矛盾点。アタシを救ってくれた弟を殺したっていう、さ。
- 226 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:47
-
「ユウキはすごいいい子でさ。アタシが背中にタバコ押し付けられた時とか、ずっと背中なでてくれたんだ。
そっちのほうが痛かったんだけど、ユウキは一生懸命「真希ちゃん大丈夫?」って。それが嬉しかった。」
『真希ちゃん、真希ちゃんなかないで』
『ないてないよ。大丈夫だよ。』
『真希ちゃんをこらしめるわるものはボクがゆるさないから』
アタシを苦しめてるのはきみのお母さんなんだよ、とはいえなかった。
幼い心にもそれはいっちゃいけないと思った。
- 227 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:47
- 「ユウキは本当に甘やかされて育ったんだ。
会社ものりにのってたし、跡取りとしての英才教育とかそういうの。
父親も甘かったし、母親も表面上は甘かった。…ユウキはいつも笑顔だったから、それを曇らせたくなかったから
別にタバコの熱さぐらい大丈夫だった」
なれればへーき、とアタシがいうと紺野はそっとアタシの背中に手をあてた。
大丈夫だってば、と笑ってもその手はどかしてくれそうになかった。
しょうがないのでほっとくことにした。
「…そんで、アタシが9歳の誕生日を迎えた後、小3のアタシはマセたガキだった。
背中にタバコの痕があるのみんなになぜかバレていて、いじめにもあっていたんだ」
『こいつの背中に黒いのいーっぱいあるんだぜー!!』
『やーい!不潔!!』
棒でたたかれて、擦り傷を作っては、継母に汚い、と摂関される。
よくアタシ精神異常にならなかったな、って思ったよ。
- 228 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:47
-
「それでも家に帰れば、いやな継母もいたけれどユウキは笑いかけてくれた。今日、幼稚園でこんなことがあった、とか。
アタシの赤いランドセルを無邪気に背負って楽しそうに走り回っていた。」
今でも思い出す。ユウキの無邪気な笑顔。
その頃のアタシにはそんな笑顔すでにできなくなっていて、でも、そんなユウキを見るとなんだか楽になった。
ユウキはアタシの本当の救いだったのかもしれない。
「でもユウキとすごす時間もそんなになかった。あたしの部屋にユウキがいると継母が怒ってさ。あんまり話できなかった」
「そんな…!」
「だからなのかな。アタシはストレスたまりまくってさ…もうどうにもならなかった。」
夜風が勢いよくふいた。
なぜか「寒く」はない。とても心地よい「風」
- 229 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:48
-
「ねぇ、紺野」
「はい」
「人、殺したことある?」
突然の質問に戸惑ったけれど紺野はちゃんと答えた。
「ないです。」
「じゃあ、誰かを殺したいって思ったことは?」
「…あります、けど」
「そうか」
少し意外な言葉をきいてアタシはびっくりした。
紺野はアタシのイメージの中では純粋で感情の起伏がなく、平和的な思考をもっていると思っていた。
なんだか意外な一面っていうの?感じたかもしれない。
公園は静かだった。本当に。
すぐ隣にいる紺野の息が聞こえてくる。
ああ、アタシは今独りじゃ無いんだ。こんなときにサンタが隣にいるってのもなんだか
変な気持ちだけれど。でも、独りじゃ無いんだ。
ねぇ、ユウキ。お姉ちゃん、言うよ。
静かな決意をする。手が震えているのに気づいたけれど仕方が無い。
- 230 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:50
-
「あれは…クリスマスが近かった頃。アタシは一人部屋にいた。ユウキが部屋にきていつもどおり姉弟の空気を楽しんだ。ユウキは相変わらずはしゃいでいたし、アタシも相変わらずユウキに癒されていた。
話題はクリスマスのプレゼントかなんかだったかな?アタシはもうすでにサンタなんかいないってわかってたんだけど
ユウキは信じててさ」
「サンタ、いますよ」
「…はいはい。ずいぶんと小柄で弱気だけどね」
「…ううぅ…」
紺野は落ち込む。アタシは紺野の頭を軽くポンポン、とした。
こんなやりとりができるほどアタシは冷静だった。相変わらず手は震えていたけれど。
- 231 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:50
- 「ユウキが部屋にいるのに気づいて継母が入ってきた。ユウキをしかりつけてあたしを殴った。
継母はユウキを部屋からでていかせて、アタシをしばらく殴りつけた。
メイドとかいっぱいいたけれど、部屋のそばで見ているだけ。
継母はしばらくアタシをしかりつけた。
結構時間がたって、継母が部屋をでていった瞬間、アタシも部屋を飛び出した」
『このクソがき!死んでしまえ!』
『すみません、すみません、すみません…』
『ふん!もういい!!ユウキ、いくよ!』
部屋を一心不乱に飛び出して、階段に向かう母親の後姿に飛びついた。
もう、頭の中が真っ白で、どうにかしてこの世界から抜け出したくて
おまえなんか、お母さんじゃない。ただの暴力女だって、殴られて赤い顔でなんどもわめいて
メイドたちがざわざわと集まってきた。
- 232 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:50
-
『どっかいけ!アタシのおかあさんをかえせ!』
『な、なにいってんの!?ちょ、やめなさい!このクソガキ!!』
『真希様、おやめください!!』
『うるさいうるさいうるさいうるさーーーいい!!!!』
- 233 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:51
- 「ちょうど、階段の下に帰宅してきた父親がいてね、アタシたちを見てやめろ!と叫んだ。
けれど全然とまらなくて。あたしたちは階段の上で、わめいていた。
ユウキはそんな様子を見て、何を思ったのかあたしのそばにいてあたしを止めた。
ああ、やっぱり継母のほうが大切なんだって思ったよ。」
『おねえちゃん、おかあさんをいじめないで』
『うるさい!!あんたなんかにわかるか!!あんたなんかに…なにがわかるんだ!!』
『おねえちゃん、ごめん、おねえちゃんやめて、おねがいだよ』
血のつながりの濃いほうに自然と味方したユウキ。
そんなユウキすらも悪者にうつってしまう。その目がにくかった。もう、どうにもならなかった。
「…それで、どうなったんですか?」
おそるおそる聞いてきた紺野にアタシは答えた。
- 234 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:51
-
「あたしの手は知らない間に、ユウキと継母を階段から落としていた。」
- 235 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:51
- 『おねえちゃーーん!!!』
ごろごろ、とユウキが落ちていく。アタシをよびながら落ちていく。
継母がおいていくのは何も思わなかった。むしろ、愉快だったのかもしれない。
でも、ユウキが落ちていく。小さな小さな体がぐるぐると転がって、ごろごろと落ちていく。
ここでカミナリなんかがなったらドラマみたいだ、なんて思えるんだろうけど残念ながら晴れている真っ暗な夜だった。
「父親の悲鳴とメイドの悲鳴。継母の無残な姿とユウキの青ざめた顔。…ひどかったよ」
- 236 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:51
-
大きな階段だった。
小さな子どもが落ちたらどうなるかなんてアタシ、ちゃんとわかっていた。
小さな子どもがアタシにあいにくるために一生懸命のぼってくる努力だってわかっていたんだ。
『おねぇ、ちゃん』
「アタシは…っ、その時…人殺しになったんだよ…」
あれ?
なんで涙がでてるんだ?
泣いたらバカみたいじゃん。女々しいよ。バカだ。泣いたって事実は事実。こんな惨めな加害者になりたくない。
手で、涙をぬぐうより先に、紺野が涙をぬぐってくれていた。
背伸びをして、涙をぬぐってくれていた。
その手が暖かかった。
- 237 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:52
- 「…ユウキは息をしていなかった。メイドとか一斉にユウキに群がった。
誰一人アタシに駆け寄る人はいなかった。…父親ぐらいかな。まき、まき!って。」
ああ、そういえばあの時、父親はものすごく悲しそうな顔をしてアタシに抱きついた。
なによりも先に。
それに少しだけ嬉しかった自分が、気持ち悪い。
「…ユウキは病院に搬送されたけれど…小さな体が大きな階段から落ちたらもう、虫の息だった。
ユウキは死んじゃったよ。頭から赤い血をたらして、まぶたをピクピクさせて。」
- 238 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:52
-
おねえちゃん、ごめんね
病院で小さな声でそういわれた。母親は治療中だったのでそこには父親とアタシしかいなかった。
アタシはずっとユウキの手を握っていた。だんだん冷たくなっていくのがわかった。
ああ、死ぬってこういうことなんだな、と思った。すごく実感した。その時自分の罪も理解した。
- 239 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:52
- 「アタシはその時、人殺しになったんだ」
押されてしまった「人殺し」という烙印。9歳でもわかった、その烙印が重い、ということを。
泣き叫んだ、想いっきり。
- 240 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:53
-
「そして、父親が息たえたユウキの背中をアタシにみせたんだ。
…ユウキ…も、タバコの痕があった。アタシより、多かった・・・。」
アタシ、だけじゃなかったんだ。
自分だけが受けているとおもったよく言う「虐待」
けれどそれはまったくの勘違いで。ユウキも同じ苦しみを持っていて
それをユウキも抱えていて、あたしを頼ってきていたのに
アタシは何もしてあげれなかった。
自分だけが、といつも…自分のことしか考えてあげれなかったんだ…。
- 241 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:53
-
「アタシは…唯一の存在をこの手で消してしまったんだよ」
- 242 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/21(火) 22:54
-
『ねぇ、おねえちゃん。ボクたち、ずっと一緒だよね』
『うん。ユウキはあたしのこと置いていかないよね?』
『あたりまえだよ!ぼくね、幼稚園の先生にだれがすきって聞かれて、おねえちゃんって答えたんだ』
笑顔ができなかったあたし
あたしにだけしか笑顔ができなかったユウキ
苦しみは同じだったはずなのに、もしかしたらユウキのほうが多かったのかもしれないのに
アタシはこの手で「弟を殺した」。
それだけが、9歳のアタシに残った事実だったんだ。
- 243 名前:風道 投稿日:2004/12/21(火) 22:54
-
本日はここまで、です!
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 23:02
- 更新おつかれさまです。
リアルタイムで読ませていただきました。
重い。とても重いです。なんだか、胸がしめつけられます。
ごっちん、きっと辛かったでしょうね。
- 245 名前:konkon 投稿日:2004/12/22(水) 00:17
- 交信お待ちしておりました〜。
ごっちん・・・辛い過去を負ってしまって・・・(泣)
重すぎる・・・悲しすぎです。
紺ちゃん、がんばってごっちんを
助けてあげてくれ〜!
- 246 名前:風道 投稿日:2004/12/25(土) 01:46
- メリークリスマス!
クリスマスに引越しの手伝いをしてきた風道サンタです…。
レス返しを☆
>>244 名無飼育さん
感想ありがとうございます。
「重い」ですね。ごっちんの苦しみは重い、です。
そこでどうなるか、どうするのかサンタクロース…て感じですね☆
>>245 konkonさん
感想ありがとうございます。
ごっちんの「過去」を紺野はどう見守るのか。
自分なりに考えても、少しだけ頼りになる紺野サンタとのお話をかいてみました!
助けれるのか…紺野サンタ!
本日はクリスマスということなので普通に更新した後
「クリスマス短編」を書きます。
…喜んでいただければ幸いです。
- 247 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:47
-
深く、深呼吸をして、隣にいた紺野の顔を見た。
紺野の目にはキラキラしてる涙がひっついていた。
驚かなかった。どうして泣いてるの?なんて質問する意味がないんだと思う。
たとえ、アタシに同情して泣いてるとしても、それはそれでよかった。
「……その後、母親が足骨折してて、騒動になる前にすばやくアタシは一人暮らしをセッティングされた。
…あの家で眠るのはもうできなかったし、あの階段をのぼるたんびに吐き気がした。
メイドの目も冷たかった。…ユウキの葬式のどたばたの間にアタシは後藤家から消えた」
「それで…一人暮らしを?」
「うん。全部、父親がやってくれて。最初は世話人いたけど、なんだか一人でできるようになって…それで」
完璧な独立を手に入れた9歳のアタシ。
完璧な孤独を手に入れた9歳のアタシ。
そんな寂しいアタシは、どんどん汚くなっていった。
そして恐れているいつだって。家族殺しという肩書きを背負ってる自分がバレないように、と。
- 248 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:47
-
「…うん、まぁ…そんな感じ、アタシ」
誰だって孤独だという文字をみるとなんだか鼻で笑ってしまう。
アタシほど孤独なヤツなんてきっといない。自意識過剰かもしれないけれど。
9歳で全てを失った子?それが成長してどうなる?こうなるしかないでしょ
溢れきった涙のしずくを手にとって笑うと、あたしはなぜだかふいにとなりにいる紺野を抱きしめていた。
紺野は当たり前のようにアタシに身をゆだねる。
きっと、こうしてる二人は映画のワンシーンのような恋人なんだろうか
でも、それはちがっていて、あたしは彼女に無理矢理傷を押し付けた愚かな高校生
彼女はその傷を押し付けられた小さなサンタクロース。
- 249 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:47
-
しばらくして、アタシは紺野を抱きしめている腕をほどいた。
こんなことしたって、アタシの罪はかわらない。アタシがしてきたことはかわらない。
けれど、どうしても甘えてしまう「体温」というものに。
紺野はうつむいて、ボソッと呟いた。
「後藤さん」
「ん?」
「…どうしたいんですか?」
当たり前のように、その質問はまっすぐとアタシにむけられた。
傷をさらけだしたアタシにその質問をするのは少しだけ残酷だった。
でも「大変でしたね」とかそんな言葉よりそれは意味があったような気がした。
アタシはため息をついてジャージの袖で顔をふいた。
- 250 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:48
-
どうしたいか、どうすればいいか
「わからない…」
「わかってるんじゃないですか?」
わからないと呟くアタシに紺野はおそるおそるいった。
気が強そうにいっても、紺野の手は震えている。
それがきみの優しさだと気づかないわけにはいかない
「逃げてばかりいては、だめだと思うんです。」
「…」
「私は、幸せとかそういうのとか、そんなのより、あなたの抱え込んでいるもの全て出し切ってほしいんです」
「…どうしろっていうの?」
そして紺野は笑顔でアタシにいった。
- 251 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:48
-
「お墓参りにいきましょう。今から」
耳を疑った。
…バカじゃないの?とは言いたくてもいえなかった。
かわりに笑いがこみ上げてきた。
おもしろくて、おかしくて、なんだかバカみたいで、アタシはこんなときにおもいっきり笑ってしまった。
紺野はきょとん、としている。
ねぇ、だって、今からお墓参りって。場所も知らないのに…ねぇ?
「なにいってんの。お墓参りなんてできるわけないじゃん」
「…そう、ですか?」
「そうだよ。場所も知らないし、行く手段すらないし。…それにもう、こんな夜遅い…」
「手段は、あると思いますよ」
え?なんていった?
と、呟くきみの視線をみる。
その視線の先はアタシじゃなくて、あたしの後ろだった。
アタシは慌てて、後ろを振り向いた。
- 252 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:49
-
後ろにはまるで何時間もアタシを待っていたかのように車が止まっている。
中には…人が。いや、あたしの父親がいた。
プップー、とタイミングよくクラクションが1つなる。
アタシを待っていたのかはよくわからない。
けれど、あの時真っ先にかけよってきた父親の体温を少し思い出した。
- 253 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:49
-
「魔法使いのカボチャの馬車じゃないですけど…あの車でなら、いけますよね?」
サンタクロースがシンデレラかたるなよ。
アタシは少し笑った。
あの車にのったらアタシもう笑えないよ?それでもいいかな。
「もちろん、サンタさんも一緒に行くんでしょ?」
「まだクリスマスじゃないですけどね」
「…フライングできたくせに。」
「…お仕事ですから。そ、それよりも、どうするんですか?」
まっすぐとアタシを見るサンタクロース。
答えなんか1つしかない。
わかってる今しかないんだ。この足で、あの車にむかって、ありのままの傷を父親にぶつけるのも今しかないんだ。
- 254 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:50
-
「…あの車のシート…昔親子3人で乗った小さな車より豪華だと思う?」
「ええ、エアコンも完璧についてると思います。」
「…あの車に乗ってる男は昔アタシの頭をなでてくれた人だと思う?」
「…ええ、きっと大きな手のひらは同じだと思いますよ。どんなに高価なものをまとっていても」
わかってる。
もう逃げられない。
アタシは勇者でもなんでもないけれど、もうボスにむかわなきゃいけない。
本当のボスはもっと後にでてくるんだけど。
- 255 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:50
-
アタシは勇者なんかになれないけれど
今、「戦い」に向かうとしたら、装備するのは剣でも魔法の杖でもなんでもなくて
そう、アタシが装備するのは「サンタクロース」
行き先は、あの車に乗ってユウキのお墓へ。
車に向かって一歩歩き出す足は、少しだけ重かったけれど。
目をつむればユウキの苦しそうな顔がいつだって思い浮かぶけれど
このさいだから、いってみようか。
- 256 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2004/12/25(土) 01:50
-
「魔法のカボチャの馬車がよかったなー、アタシ」
「…おいしそうですよね」
「…食べるのかよ」
くだらないことをいって、笑う。
ねぇ、ユウキ。このサンタクロースどう思う?
バカみたいだよね。
でも、コイツなかなかいいこと言うんだよ。
少しだけ認めてあげる。
さあ、いこうか。カボチャの馬車じゃないけどさ、あんたが稼いで買ったBMWに乗り込みにいくよ。
あんたに、今…ぶつかりにいくよ。
- 257 名前:風道 投稿日:2004/12/25(土) 01:51
-
サンタは本日ここまで、です。
今回は短編を用意しています。
リアル(?)でもないこんごま、です。
サンタクロースとは別にして読んでください☆
- 258 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:52
- ぜぇぜぇ、と息を切らす私。
それを熱くみつめるあなた。
外の風が窓に当たって、ガタンと勢いよく窓が揺れた。
静かな静かなこの部屋に私の息と外の風の音だけが響く。
「紺野…」
息きらす私にかけより、あなたはそっと私の名前を呟く。
ああ、素敵です、後藤さん。でも…
「もっと、ちゃんと踊りなよ〜。はい、もう一回。」
…なんで私にマツケンサンバUの踊りをマスターさせようとするんですか…
- 259 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:52
-
―白い天使が降りてくる―
- 260 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:53
-
12月24日、クリスマスイブです。
日本だけかもしれませんが、今日は恋人たちが愛を確かめあう日
…その、私にも付き合って2年目になる恋人がいまして。…そう、後藤さんっていう。
お仕事が夕方早くに終わって、真っ先に後藤さんのお部屋にきました。
一緒にすごすのが2回目のクリスマス。去年は一緒に少し高めのシティホテルに泊まりました。
今回は落ち着いて家で過ごそう、といわれたので後藤さんのお部屋に一心不乱に向かいました。
愛ちゃんに「あさ美ちゃんはええなー」と羨ましがられ
まこっちゃんに「クリスマスはおイモケーキ?」と冷やかされ
理沙ちゃんに「クリスマスプレゼントは後藤さん?」といじられ
あなたが待っている幸せな風景が広がる家へやってきたのに…
- 261 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:53
-
私が部屋にいくなり、後藤さんは最近買ったらしいマツケンサンバU振り付け完全マニュアルDVDをテレビに流し
「おかえり」とか「逢いたかったよ」とかそんな甘い言葉一言も言わず、ただ
「踊って」
と、無表情で言いました。
私はその無表情に驚き、付き合う前の先輩後輩みたいな感じですぐさま「はい!」と返事をし
荷物をおいて、コートをぬいで、踊り始めました。
1回目踊って、「あはは、紺野うまいね」なんて言葉を期待してたんですがもう一回踊る雰囲気になり
2回目、3回目、4回目…と続き7回も休憩ナシに踊らされた私。
そして先ほどの一言。
…ひどいです。
- 262 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:53
-
「…そんなに睨まないでよ。ほんのジョーダンだってば」
後藤さんはそういってあはは、と笑いました。
…睨んだつもりなかったんですけど、どうやらそんな表情になってたみたいです。
どうやら、8回目突入はないみたいで…よかった。
…っていうか、私…なんで踊ってたんですか。
後藤さんは相変わらずのほほん、としていてあくびを1つ。
…私がしたいくらいです、後藤さん。なんてのは言えず。
とりあえず後藤さんが座っているソファに、ちょこんと座りました。
「なんで、マツケンサンバUなんですか?」
「この前買ったから」
…ではなくて、ですね。
- 263 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:54
- 「いや、あの…なんで踊らすんですか?」
「紺野が踊ってるのみたかったからなぁ」
ほらまた、「なんとなく」なことを私にやらせる。
いつもそうです、後藤さんは。…いつだって面白そうなことを私にやらせて楽しむ。
まぁ…クリスマスイブにマツケンサンバUを踊らされるのも…貴重な体験ですけどね。
「毎年やろうか?クリスマスイブはマツケンサンバU」
「…やろうかってやってるの私だけじゃないですか。っていうかイヤです」
「アタシは楽しいんだけどな」
「…誰が楽しませてると思ってるんですか。」
「んー?かわいい紺野。」
そういって、ふにゃっと笑った後、後藤さんは私のおでこに軽くチュッとしました。
…そんなことされてもだまされませんからね。
- 264 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:54
-
「ほっぺ、ふくらんでるよ」
指摘されて気づく。無意識のクセ、です。
いまどきほっぺふくらましておこる子なんているんだ、とよく後藤さんに昔は笑われました…。
後藤さんはふにふに、と私のほっぺをつかんで遊び始めました。
もう、後藤さんやめてくださいよ、なんていってもしらんぷり。
「今日どーしようかな、と思ったんだけどさ」
「ひゃい」
「…なんもしないことにした」
「ふぇふぇ!?」
ええ!?と叫んだつもりが、ほっぺのせいでふぇふぇ!?になってしまいました。
後藤さんはそれがおもしろかったらしく、笑っています。
…もう、恥ずかしいです。
「…いやー…なんっていうかね?いっつもイベントごとは結構考えるじゃん。それで結構遊びに行くじゃん?
今年はもうそんな体力ないかなーと思って」
「ありますよ!」
「…マツケンサンバ踊っちゃうぐらい?」
「それは踊らせたんじゃないですか!っていうか、マツケンサンバUです。」
私がそういうと、後藤さんはまた笑いました。
…なにかおかしいこといいましたっけ?
ひとしきり、後藤さんは笑うとまじめな顔をしました。
- 265 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:54
- 「っつーのはウソで。とりあえずさ、でかけるから。コートきてください。」
「あ、はい!」
「…5分したら外の公園に来て。」
後藤さんはそういって急いで部屋をでていきました。
え?公園…ですか?
驚く私の声も聞き入れずに後藤さんはいってしまいました。
とりあえず、つけっぱなしのDVDプレーヤーの電源を落として、私はコートをはおります。
…なんでマツケンサンバUだったんでしょうか。
5分きっちりたって部屋をでました。
うわ…寒い。ホッカイロもってくればよかった…。
北海道生まれの私でもこっちにきてから温かい気候に体がなれてしまって最近は東京の寒さもだめです。
はぁーとはく息が白い。
- 266 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:55
-
公園はすぐ近くにあります。
小さな公園も少しだけイルミネーションが飾られていてきれいです。
後藤さんはぽつん、とベンチに座っていました。
「ごくろうさま。寒いでしょ?」
「はい…。」
「手をつなけばあったかいって知ってた?」
「ふふっ、知りませんでした。」
後藤さんはにっこりと笑って手をさしのべてきました。
私は黙ってその手に自分の手をかさねます。
最初は少しだけ怖かった私の恋人さん。
最近は怖い、なんてあんまり思わなくなったな…おこるとやっぱり怖いけれど
でも、子どもっぽくて笑顔が優しくて、甘えん坊で…今じゃかわいい恋人さんです。
ひょっとすると私のほうが大人っぽいのでは?と思うときありますけれど
…やっぱり後藤さんのほうが大人っぽいんですよね…。
手をぶらんぶらんとふって後藤さんはご機嫌そうに笑いました。
私もつられて笑います。
- 267 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:55
-
「…んー…そんでさ…今からさ、クリスマスツリー買いにいかない?」
「唐突ですね…どこにですか?もうすぐお店しまっちゃいますよ」
もう夜の6時です。早くいかなきゃ…しまっちゃいますよ。
私は携帯をひらいて、表示してる時刻を後藤さんにつたえました。
すると後藤さんは「大丈夫」と一言。
「大丈夫。紺野は明日から風邪をひいて5日間お仕事できないからさ」
「え!?…っていうか、ツリーとなんの関係が…」
「マネージャーにもいってあるし大丈夫。今回はいろんな人に感謝しなきゃね?特にけーちゃんとかよしことか」
「…だから、何の関係があるんですか、クリスマスツリーと。」
大体、保田さんと吉澤さんにはいつも感謝してますよ…。
意味がわからなく、私は後藤さんをじっとみつめます。
こういうとき結構とんでもないこと言うんですよね、後藤さん。
「よし、じゃあ買いに行こうか。」
「あ、はい。どこにですか?」
- 268 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:55
-
「え?フィンランド。」
- 269 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:56
-
…ふぇ?
- 270 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:56
- あの…あなたが何かしらするということは予想してました。
でも…フィンランドは…さすがに予想できませんでしたよ…。
驚いている私を見てニッと笑う後藤さん。手には飛行機のチケットが2枚ありました。
…私、夢みてるみたいです。ええ、いろいろとありえなくて
「マツケンサンバUがクリスマスプレゼントだと思った?」
「それはないです、けど」
ある意味そっちのほうが普通でよかったのかもしれません。
いつのまにか足元には見慣れた私の旅行バックが。
…愛ちゃんか、まこっちゃんか、あのマユゲか…私の部屋に勝手に入って荷物をつめて後藤さんに渡したのでしょう。
そこまでは予想できるんですけどフィンランドって
…もう、色々とありえませんよ
- 271 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:57
- 「本物のサンタみにいって、ツリーかってこようよ。今からいけば明日の朝にはつくよ。それに…」
「…なんですか?」
「ありえないこと、してみたいじゃん。思い切り。紺野と二人でしてみたいんだ」
少しだけ理性が抑えるかもしれないけれど、大丈夫アタシがいるから
なんて後藤さんがかっこよくいってしまう。
そういわれたらついていくしかないじゃないですか。
かっこいいあなたのかっこいい計画。フィンランド旅行、喜ぶべきですよね
「メリークリスマスなんてフィンランドでいったほうがかっこいいじゃん」
- 272 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:57
-
キキィ、とナイスタイミングで車が公園に止まる。
振り向くとそこには保田さんが車の中にいた。
「早く空港にいかないと間に合わないわよ!」
はいはい、せっかちだねぇ、なんて後藤さん。
私は握られている手をぎゅっと握ります。
拒否権なんてありえません。わかってます。このさい…あなたとフィンランドに行くべきなんです。
ありきたりなクリスマスなんてどうでもいいんですよね?
日本を飛び出してまで私を喜ばせたかったんですか?
いや、そうじゃないんですよね。きっと「二人」で喜びたかったんですよね。
- 273 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:58
-
「明日から紺野、風邪ひいて仕事休むことになってるんだからね。心してひくように」
「風邪に心もあるんでしょうか…」
「あるよ。あ、忘れてた」
後藤さんは忘れてた、といって手を離して私を抱きしめました。
急に抱きしめられてびっくりした私。
「大好きだよ」
低くつぶやかれて、唇があわせられる。
やっぱりかっこいい私の恋人さん。
2年目のクリスマスをフィンランドで過ごそうとする恋人さん。
大好きです、私も。
だからフィンランドまでいくんですよ?…普通の私ならありえませんよ?
- 274 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:58
- しばらく唇をあわした後、ポケットになにかをいれられたみたいで私はポケットを探りました。
後藤さんもポケットの中に手をいれます。
おんなじこと二人でしてますね、いつも。
私のポケットの中には後藤さんからのプレゼントが。
後藤さんのポケットの中には私からのプレゼントが。
「…紺野もやるようになったねぇ」
「ありがとうございます」
「ま、アタシのフィンランド計画には届かないけどー」
「…そこまではできませんよ。」
あけたプレゼントは教えません。
大切な大切な宝物が一個ふえて、きっとフィンランドでもいっぱい増えるはずです。
- 275 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:58
-
「はやくしなさいよー!迎えにきてやってんだから、みせつけるなー。」
保田さんがせかして、私たちは「はーい」と元気よく答えました。
あなたと二人ならどこにいっても幸せなんです。
私にたりないものを持っている大切な恋人が、いつだって私の幸せの種。
どこにでもついていきます。でも、あんまり意地悪やめてくださいね?
愛しています。飛行機の中でたくさんはなしましょう。
そして、いつだって二人で手をつなぎましょう。
白い天使が舞い降りるフィンランドで熱い、キスをあなたとできたらいいなぁ。
かっこいいあなたのことですからしてくれますよね?
「あったりまえじゃん」
考えてることがわかってるように笑う後藤さん。
もう、本当に意地悪しないでくださいよ?
- 276 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:59
- 大切な大切なあなたへ。破天荒なことばっかりするあなたへ。
やんちゃで、かわいくて、かっこよくて、たまに怒りっぽいあなたへ。
・・・3年目のクリスマスに少しだけ期待をこめて
愛しています、いつだって、誰よりも。
あなたもそうですよね?
後藤さん、大好きです。
- 277 名前:白い天使が降りてくる 投稿日:2004/12/25(土) 01:59
-
エンド☆
- 278 名前:風道 投稿日:2004/12/25(土) 02:00
-
と、いうわけでクリスマス短編でした☆
メリークリスマス!☆
- 279 名前:茜丸 投稿日:2004/12/25(土) 13:20
- メリークリスマス!
風道サンタさんからクリスマスプレゼントが届いた〜!
ありがとうございますっ!とても楽しく読ませてもらいました^^
いつまでも逃げてばかりではだめですよね。
お墓参りをすることで、きっと前に進めるはずです。
後藤さん行く末をしっかり見守りたいと思います…!
後藤さんも紺野さんもがんばれー!
マツケンサンバ…!(笑)一生懸命に踊る紺野さんが目に浮かびます!
そして、サンタクロースの故郷フィンランドにまで行ってしまうという
後藤さんの行動力!…かっこいいです(笑)
きっとふたりで幸せな時間を過ごしたでしょうね。微笑ましいです^^
- 280 名前:konkon 投稿日:2004/12/26(日) 05:09
- メリクリ・・・ちょっと遅れてしまった(泣)
こんごまはやっぱいいですね〜。
フィンランドはちょっち驚きですが、
紺ちゃんのことを想うごっちんがやっぱ可愛いです♪
- 281 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 15:26
- みんな、ネタバレには気を付けてねっ。・゚・(ノД`)・゚・
- 282 名前:茜丸 投稿日:2004/12/28(火) 01:17
- >>281さん
本当にごめんなさい!!!ネタバレは絶対に禁止だったのに
私としたら、思いっきり書いてしまいました!
自分のことしか考えてませんでした。
以後気を付けますっ…!本当にすみません!!
作者さまも、すみませんでした!
- 283 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/30(木) 15:50
- 更新お疲れさまです!
作者さまが書くこんごま最高っすね!!
もうごっちんもこんこんも好きすぎる〜!
弱気なサンタクロースも気になるなあ…
ごっちん、がんばれ!!こんこんもー
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 00:05
- 初めて読みました!面白いです!!
こんごま好きになりそうです…!
- 285 名前:風道 投稿日:2005/01/04(火) 01:31
- あけましておめでとうございます!
更新遅くなりました…少しゴダゴダで…。
レス返し!
>>279&>>282 茜丸さん
感想ありがとうございます!楽しく読んでいただけて嬉しいかぎりです☆
ネタバレは気をつけてくださいね☆
でも、感想くれてすごいうれしいです!
自分も踊る紺野を想像しながら書いててすごく楽しくなりました。
ごっちんのプチ鬼畜ぶりも(w 本当にこんごまが好きだなと実感しました。
サンタクロースはまだまだ続くますのでよろしくお願いします
>>280 konkonさん
あけましておめでとうございます。
自分の中ではごっちんは時々予測つかない行動を起こすような気がして
フィンランドも何もかもしてしまうような…そんな紺野の彼女さんです。
クリスマス短編ではごっちんがサンタに。
弱気なサンタでは紺野がサンタに…サンタまみれですね(汗
>>281 名無飼育さん
ご指摘ありがとうございます。自分もネタバレしないように気をつけます!
読んでくれてありがとうございます☆
>>283 名無飼育さん
感想ありがとうございます。最高だなんて…嬉しいです^^
これからもよいこんごまをかけるように努力していきます♪
弱気なサンタはどうなることやら(w
これからもごっちんと紺野の話にお付き合いください
>>284 名無飼育さん
感想ありがとうございます☆こんごま好きになっちゃってください!w
では今年初めての更新です。
- 286 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:35
-
車に近づいていくと、車から父親がでてきた。
タバコの火をじめんで消すとアタシに手をあげた。
不器用な笑い方はどうやらこいつとアタシ、似てるみたいだ。そう思った。
紺野の肩を抱き、一歩ずつ、車に近づいた。
「…大丈夫だったか。…真希。」
申し訳なさそうな顔をしている父親はあの時と同じ。
アタシを家から追い出したときと、まったく同じだった。
人間、年をとっても案外、表情なんてものは変わらないかもしれない。
アタシは紺野の肩をだき、何も言わず車に乗った。
「その子は友達か?」
「…友達?」
笑いがこみ上げてきた。
そうか、はたから見ればうちら、でこぼこな友達ってところなんだ。少しだけおもしろい。
肩をだかれて顔を真っ赤にしてる紺野を見てそうさらにおもしろくなった。
父親は車に乗ってアタシに何を言えばいいか迷っている。
「…ユウキにあわせて」
「何をっ…」
「お墓案内して。それぐらいの義務、あんたにはあるでしょ?」
アタシがそういうと父親は何も言わずにアクセルを踏んだ。
車のエンジン音が大きい。…昔の親子3人で乗っていた車をふと、思い出した。
紺野は隣で緊張してるのか黙っている。結構いいこと言うくせに実行に移すときは頼りないな、こいつ。
- 287 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:35
- 車はネオンの街を瞬く間に駆け抜けた。
低くかかっている車内の音楽はクラシック。笑ってしまうほど昔から変わっていない。
お母さんが好きだった音楽はクラシック。どこまでも、ばかげている。
「…おまえは、どうするつもりなんだ」
小さく父親が呟いた。
アタシは街のネオンをみながら答えた。
「わからない。だから、ユウキに会いに行くんだ」
アタシがこの世から消してしまった小さな魂、そして大きな存在に会いに行く。
そんなにかっこいいものじゃなくて、アタシ、全然よわっちい。
けれどそんなアタシだからこそ、ユウキに会いに行くんだろう。よくわからないけど。
人間誰しも孤独で、弱くて、バカげているのならば、その言葉通りの人間なんだろうな、アタシ。
よくわからないけれど、アタシは相当バカだってことだ。それに気づかせてくれたのがアホなサンタってのも面白い。
街のネオンを抜けて、静かな住宅街に入った。
ちらほらと住宅街の家には明かりがついている。あったかいようなつめたいような明かり。
「…後藤さん」
「ん?」
「…ユウキくんってかわいかったですか?」
ふいに紺野がそんなことを聞いてきた。あたしは住宅街の明かりを見て黙ってうなづいた。
かわいくないはずない。あたしの弟だよ?
- 288 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:35
-
「ここだ」
しばらくして、静かな寺の前で車が止まった。
夜のお寺は真っ暗で、静かで…不気味な感じ。
けれど、ここにユウキがいる…そう思うと不気味とは感じなかった。
父親が車を降りた。続けてアタシと紺野も降りる。
どうやらサンタはこういうところに慣れてないらしく、震えている。
…おまえ、おばけみたいなもんじゃないのー?なんて少しおもしろい。
「…変わってるな。こんな暗い時に。」
「変わってるよ。なんせ、弟殺し、だから」
口に出してしまえば少しだけ楽になるような気がしていってみた。
父親は黙って前を歩いた。どうやら案内してくれる気はあるようだ。
アタシは小さくなって震えている紺野の手をひっぱって、父親の後を歩いた。
…幽霊なんて怖くないといったら嘘になるけれど今はあんまし怖くない。
ユウキの眠っている、というお墓は大きかった。ユウキ自身は小さいのにお墓は大きい。
うちの財力じゃこれぐらいのお墓立てるぐらい簡単なんだな。
父親は手をあわせた。紺野も手をあわせた。アタシは…手をあわせれなかった。
- 289 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:36
-
ユウキは黒いお墓に眠っている。眠っている?そんなもんじゃない。
小さな小さな生命はあのときに確かに消えた。もうどこにもない。
フッと息を吹きかけてしまえば消えそうな命。誰しもそれは同じ。けれど、ユウキはもっと小さな、小さな命だった。
「…ユウキとおまえがいなくなって何もかも変わった。…俺は父親失格だ。」
「…ならアタシだって姉、子ども失格なんじゃない。
弱音は後で吐いて。…ユウキの前で言わないで。ユウキの前では…立派な父親でありなよ」
アタシがそういうと、父親はびっくりした。
それから静かに「車で待っている」と呟いてお墓の前から消えた。
アタシとサンタ…そしてユウキ。この静かな墓地には3人しかいない。
正直このシチュエーションってマジ怖い。けれど、怖くない。大丈夫。
- 290 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:36
- 「…ユウキ…」
そっと墓石に触れた。墓石は冷たい。
「冷たい」
「…後藤さんの体温があったかいからですよ。」
紺野がそういって、墓石に触れているアタシの手に自分の手を重ねた。
「…どうすればいいか、わかんないな」
ここにきた今も、どうすればいいのかわからない。
アタシはどうあがいても、弟殺し。それは変わらない。一生背負い続ける「罪」
ユウキがここにいる意味。それはアタシがユウキを殺したことをまた実感させた。
「こんなくらいところ、ユウキは嫌いだよ。…寂しいじゃんか。…あたしがいれたんだけど」
立っていられなくなって、しゃがみこんでしまった。
また、涙がでた。自分が可哀想だと思うから涙がでるのかはわからない。
涙ってなんだこんなに流れても止まらないんだろうか。
とにかく、アタシは、泣いた。ふと、隣を見ると紺野も少し泣いててびっくりした。
「なんで泣いてるの?」
「…ユウキくんの分、泣いてるんです。」
彼女の言い分は少しだけおかしかったけれど、ユウキの分、彼女が泣いてくれるならそれはそれでいい。
- 291 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:37
- 「…ここにはユウキくん、いませんよ」
ふと、紺野が墓石に触れてそういった。さっきまで震えていた声は、ちゃんとしている。
変わりにアタシの声が震えた。なんだか、おかしなうちらだ。
「どうして?」
「だって、こんな寒いところ、いたくないじゃないですか。」
「…まぁ、そうだけど」
「きっと、ユウキくんはあなたの心の中に…なんて月並みですけど」
でも、死んだ人はお墓のしたにはいないんです。
肉体は死んでも魂は永遠に生き続ける。
ユウキくんを忘れていない人がいれば、いるほど、ユウキくんは生き続けるんです。
紺野がゆっくりとそういった。
アタシの心の中にユウキはいきてる。
…どこかのドラマであったようなセリフ。月並みなセリフ。けれど、なぜかその言葉に説得力があった。
- 292 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:37
- 「…どうしたら、いいんだろう。アタシは何ができるだろう?」
懺悔とかそういうのしてもユウキは報われない。ユウキにできることがあればなんでもする。
「死んだ人が一番恐れるのは…忘れられることです。…存在を、忘れられること」
「忘れない。忘れるはずないよ。」
「時々でいいから、思い出してほしい。死んだ顔よりも、笑顔を、思い出してほしい」
「…こんの?」
お墓の前にたっている紺野は、いつもの紺野じゃないみたいだった。
アタシは紺野に手をのばそうとしたけれど、手がうまくあがらなかった。
「よく遊んだときのこととか、よく話したこととか…うらんでない、ってはいえないけど…でも、お願い、苦しむより笑顔を見せて」
「なにいって…」
「お姉ちゃんの笑顔、ボク、大好きなんだ」
一瞬…紺野の姿がユウキに見えた。
小さなユウキが、そういっているように聞こえた。
- 293 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:37
- 「…なんて、ユウキくんがいってるように聞こえます。」
アタシは紺野の肩に手を置いた。
…ユウキだった?今。なんて、間抜けなことを思いながら。
「きっと、ユウキくんのほうが大人かもしれません。死んだ人間は色々考えますから」
「わかったような口だね」
「ええ、サンタですし…それに私も…」
「え?」
「…いえ、なんでもないです」
紺野はそういうと、お墓の前からゆっくり離れた。
ここにユウキはいない、といわれたらそうなんだと思う。
ユウキのほうが大人だといわれたら、そうなのかもしれない。
- 294 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:37
- アタシのしたこと、弟殺しという罪は一生消えない。それは当たり前で「重い」もの。
9歳のアタシがしたことは、18歳のアタシに大きく痕をつけている。
傷、と呼べたら楽。被害者のフリできたら、楽。家庭内暴力に悩んだすえの9歳の犯行と新聞にでていたら
きっとおえらい心理学者とかはアタシを責めないでガードしてくれた。
けれど、そんなんじゃない。アタシは「逃げちゃ」いけない。
一人ぼっちになったアタシは死ぬことを選ばなかった。手段はいくらでもあったのに「怖い」かったから。
アタシは「生きる」ことを選んだ。ユウキのためでもなくて自分のためで…
ユウキにできることはもう、ない。
けれどアタシは逃げることはもう、ない。
ユウキを殺した罪を、一生背負っていく。アタシの心の中にユウキが生きているというなら
「それすらも、愛していくしかない」
自分自身を愛することはまだできないけれど
受け入れて生きていくなんてかっこいいことはいえないけれど
- 295 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:38
- 「…あなたの罪は消えない。でも、ユウキくんも消えない。ユウキくんの笑顔も…。」
ああ、どうして、紺野のセリフは妙に説得力があるんだろうか。
変なサンタクロース。言葉すらも「プレゼント」に変えてしまうのか。
「ユウキ…おねえちゃん、ずっとユウキのこと覚えてる。当たり前かもしれないけど。ユウキの笑顔、覚えてる」
お墓に、ではなく、胸の中にいるユウキに語りかけた。
「あと、お姉ちゃん…まだうまく笑えないけど…いつか笑えるようになるから」
笑顔、なんて忘れてた。忘れようとしていた。ユウキを殺したアタシに「笑顔」なんていらない、と。
でも、ユウキが望むなら…アタシ自身のためにも…笑えるようになるよ。
難しいけど…笑顔なんて、きっとフッとしたときにでてくるんだろうから。
- 296 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:39
-
冷たく、やさしい風があたしの頬をなでた。
ざわざわ、と木々がゆれた。
ユウキが、笑った気がした。
- 297 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:40
- 「…帰ろうか、紺野」
「はい」
紺野はまっすぐ、嬉しそうにアタシにかけよった。
もしかしたら、コイツがいなければアタシは一生こうすることはなかったんだろうか。
ユウキについて必死に考えることもなかった…きっと逃げてばかりだったんだと思う。
「後藤さん!見てください」
「んあ?」
「星、でてますよ!」
上を指差す紺野。その指の先を見てみる。
小さな、小さな星が、頭上に輝いていた。
それはユウキみたいな、きれいな星。
死んだ人はお星様になる、なんて昔聞いて鼻で笑ったけど今ならそれ少しだけ信じれる。
- 298 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:41
-
「…いこうか」
「あ、はい」
前に足を動かす。
でも、うまく、機能しなくて…もつれた足は…アタシの視線を道へと導いていった。
ふらりと視界が揺れた
「ご、後藤さん!?」
強い、衝撃が体が走った。どうやら、アタシ…倒れたみたいだ。
うっすらと意識がなくなっていく…ああ、そういえば最近…眠れなかった…な
『お姉ちゃん、ボク、お姉ちゃんが大好きだよ』
ユウキ…おねえちゃん、ちょっとは前に進めた、かなぁ?
ああ…だめだ、眠い…。
意識が遠のくのを感じた。なぜかあったかいのは隣にユウキがいてくれたような気がした。
- 299 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/04(火) 01:42
-
アタシ、きっと、いつか、ユウキみたく、笑うから
そう遠のく意識の中で何回も、繰り返した。
- 300 名前:風道 投稿日:2005/01/04(火) 01:43
-
今回の更新はここまで、です。
早速誤字脱字とか発見しましたが…すみません。
さて、自分は明日から少し旅にでることになりました。
次回の更新は1月11日以降になる予定です。ヨロシクお願いします!
- 301 名前:konkon 投稿日:2005/01/04(火) 19:49
- あけおめです!
ごっちん・・・(泣)
コンコンにも何かあったのでしょうか?
続きを待ってます〜!
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/05(水) 13:47
- あけましておめでとうございます!
今年も作者様のお話についていきまーす^^
ごっちん、きっともう大丈夫ですよね。
はぁ…よく頑張りました。
紺ちゃんのパワーはすごいです。
次の更新待ってます!
- 303 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/07(金) 23:17
- 重いなあ
後藤さんもサンタも頑張れ
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/08(土) 23:19
- こんこんに支えられて、ごっちん、一歩前進ですね。よかった。
次の更新が楽しみだなあ。
- 305 名前:風道 投稿日:2005/01/17(月) 23:02
- 本日更新します!旅から帰ってきた風道…遅ればせながらの更新です。
>>301 konkonさん
今年もよろしくお願いします^^。紺野にも紺野なりの過去が…!?
ごっちんの1つの成長が、今回、書き切れたらいいなと思います。
>>302 名無飼育さん
今年もよろしくお願いします^^。ついてきてください><!がんばります!
後藤さんのがんばった姿、弱弱しい姿がかなり多かったと思います今回。
これからどうなるのか、見ていてください。
>>303 名無飼育さん
重いですね…この話は重い感じです。
後藤と紺野のがんばって運命に向かう姿が書けたらな、と思います。
>>304 名無飼育さん
後藤さん一歩前進です。マイナスからのスタートでも一生懸命、前に…。
- 306 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:02
-
おっきな手。
おっきなおっきーな手。
真希はお父さんの手、大好きだよ。
太陽みたくあったかくておーきいんだ。
真希をだっこしたりするおっきくて、力強い手。大好きだよ…ずっと…ずっと…
- 307 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:04
-
「…ん」
目のあたりに光があたるような気がして、目をあけた。
いつもの朝の風景。…つまり、アタシは自分の部屋のベットで寝ていた。
昨日、この部屋までたどり着いた記憶はない。
どうしてアタシ、ここに?
ベットから起き上がるとなんとなく疑問が解決したような気がした。
ベットサイドに紺野がベットにに頬杖ついて寝ている。
どうやらあの後、倒れたらしいな…アタシ。
ぼんやりとしていた頭をたたいて、機能させる。
秋が終わりかけて冬に入ろうとしてるのに…紺野はベットにも入らないで、アタシを見ていたのだろう。
サンタだって風邪ひくっていってたじゃん…。寒いのにさ、風邪ひくっての。
そっと、紺野を起こさないようにベットから抜けて、近くに寄った。
- 308 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:05
- 「ん・・・ふぬ・・・」
小さな声をだして、またむにゃむにゃと夢の世界にいく紺野。
ゆっくり、ゆっくりと、そっと、彼女の腕を掴み、ベットへ移動させる。
神経を使う仕事だな、これ。
以外に軽い彼女…。最近そういえばちゃんと食べさせたなかったな、と思った。
今日は昨日お世話になったお返しに何かリクエストに応えてあげよう。
- 309 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:06
-
パタン
紺野を自分のベットへ無事移動させてアタシは部屋をでた。
寒い…と呟きながら洗面所へ向かう。
洗面所のドアノブに手をかけたとき、アタシはリビングにいる存在に気づいた。
ソファから伸びている足。
くたくたになったスーツ。
テーブルにある高価な腕時計。
目を瞑って眠るは、私の父親…口をあけて間抜けみたい。
驚きはしなかった。
当たり前だろうな。紺野一人じゃアタシをここまで連れてこれなかっただろうし。
ため息1つ、口から自然にでた。
とりあえず、リビングを見て洗面所で顔を洗った。
私服に着替える。時間は…朝の7時。本日水曜日だけど、まぁいいや。学校放棄。
急いで準備を整えるとアタシは再びリビングへ。
コーヒーメーカーを起動させて、コーヒーの準備をする。
父親は朝は必ずブラックコーヒー。それはきっと今でも変わってないはずだ。
冷蔵庫をあけて卵2つとベーコンを取り出して簡単に朝食を作る。
トースターにパンをいれて、速攻勝負で朝食作り。
そう、理由なんて考えずに。ただ、体が動いてた。
父親への朝食作り。
- 310 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:06
-
「ん…お…」
匂いと音に気づいて、父親はソファから起き上がった。
寝癖がついてる頭。視点が定まってなさそうなとぼけた顔。
不覚にも日曜日のお父さんを連想させた。
「まだ寝かせてくれよ。今日は休みだろ、真希」なんて今にもいいそうな
あの頃のお父さん。
頭をふって、アタシはちょうどよくできあがった朝食をテーブルに並べた。
無表情を保て、と頭に言い聞かせて、ぼんやりしてる父親に出来るだけ低い声で、話しかけた。
- 311 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:07
-
「朝ごはん、できたから。」
「…お?…あー…おお!あ、ありがとうな、真希」
頭が中々まわっていない父親は昨日のあの頑固そうな顔からは連想できないふにゃっとした笑顔で笑った。
一瞬、ユウキの笑顔を思い出した。やっぱり、親子は似てるものなんだな。
コーヒーをだして、アタシはテレビをつけた。
父親はテーブルにつき、朝食を食べ始める。
不思議で当たり前のような感覚。
もし、あのまま父親が再婚してなければ、こんな感じだったのかな。
アタシが朝食作って、朝は学校まで車で送ってもらって、テストで起こられて、三者面談でキマヅイ思いして
ドラマであるようなことが、アタシは感じ取れたのかな。
「…おいしい。うん、このコーヒーも。」
「安物だけど。」
「ああ、でもおいしいよ」
なんだか憎たらしくてアタシはジロリ、と父親の顔を見た。
父親はまだ寝ぼけているのか、スローペースでご飯を食べていく。
もし、ここにお母さんがいたら?
…考えるのはやめようよ。自分に言い聞かせた。
- 312 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:07
- 「昨日、どうも。」
「ん?」
「ここまで運んできてくれたみたいだし」
ありがとう、の五文字が中々うまくでない。いらだってチャンネルを変えた。
朝から芸能人の別れただの、熱愛だのくだらないこと報道してるニュース。
そんなニュースを見るわけでもないのにただ眺めた。
どうしても、父親のほうは向けなかった。
「ああ…いや、紺野さんがほとんどお前の世話してくれてな…ただ指示に従っただけだよ、私は」
「ふーん」
ま、想像できるけど。
紺野のことだからパニックになりながらも、父親を使ってここまで運んできてくれたんだ。
アタシが寝てるベットにずーっとついてて。で、父親にも毛布とか渡してさ…。
- 313 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:08
- 「彼女みたいな友達がおまえにいてよかった。安心したよ。」
「…友達じゃない」
「え?」
なんとなく「友達」という言葉がはがゆくてアタシは否定した。
友達じゃない。
紺野はアタシの…サンタクロース。
「一緒に暮らしてる。…少し前から。」
「そうか。高校が一緒なのか?」
「知らない。紺野のことはあまり知らない。年齢と名前だけ。ある日であっただけの子だから。」
そう、アタシは紺野のことをサンタということですませて、知ろうとしてなかった。
紺野について何も知らない自分を改めて再確認する。
どこに住んでたとか、生きてたとき何をしてた、とか…サンタ自体バカにして何も知ろうとしなかったけど
でも、ここまでアタシを見せて、相手を知らないってのはなんとなくフェアじゃないような気がした。
- 314 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:08
- 「すごいな、お前たちは」
「は?」
「何も知らない間だったのに、立派な信頼関係があるじゃないか。お前は紺野さんをあきらかに昨日必要としていたし、
紺野さんはお前のそばにずっといた。…心配そうに、温かく見守っていたよ。いまどきあんな子がいるなんてなぁ」
最後のセリフは親父くさかったけれど、父親の言葉はなんだか照れくさかった。
アタシ、そんなに紺野を必要としてないよ、なんて必死に否定したくなる。
父親はコーヒーを飲みながら、うんうん、とうなづいた。
- 315 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:09
- 「真希、おっきくなったな」
「…そりゃ、ね」
「私は何も出来なかった。この9年間、金の工面しかできなかった。後悔、してるんだ」
朝から深い話。でも、避けられない。
アタシは黙って父親の話を聞いた。
「それでも、父親ヅラさせてくれないか?これから…」
真剣な声でそういった父親。アタシは…なんでだろうか、嬉しかった。
憎んで、憎んで、憎みきった父親。でも…それでもアタシを見捨てないでいてくれた。
それだけでいいのか、悪いのか、よくわかんないけど
アタシはそっと、呟いてみた。
- 316 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:09
-
「お父さん」
- 317 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:09
-
声が、震えていた。少しだけ涙目になっている自分に気が付いた。
後藤真希、18歳…とりあえずの一歩を踏み出せた気がする。
- 318 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:09
-
仕事にいく、といって出て行った「お父さん」
またきてもいいか、とおどおどしながらいった「お父さん」
うなづいた「娘」のアタシ。
家族が、そこにあった。
- 319 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:10
-
「紺野、そろそろ起きろ」
「…ひゃい…」
「…起きろって。ほら、出かけるよ。」
「…あと、2分…」
「2分とか細かいし。はい、起きて」
ベットの中の紺野をたたき起こして、もう昼になった日差しを部屋にいれるべく、カーテンをあけた。
寒そうな空。でも、どこかすがすがしい…なんてガラじゃないけどさ
「ふぇ…ごとうしゃん…どうしたんですかぁ?…ふぁ」
未だ寝ぼけてる紺野の頭を自然となでた。
昔、ユウキにそうやってしたように、ゆっくりと、なでてみた。
- 320 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:10
- 「携帯、買いに行こう。紺野の分も。」
「け、けいたい!?」
一気に目を大きくてやっと起きた紺野。
アタシはそんな紺野を笑った。いちいちリアクションが古いなぁ…って。
「そう。携帯。紺野の分も買えって言われたから」
「ふぇ?誰にですか?」
目をぱちくりする紺野から目をそらして、多分、顔が少しだけゆるんでる自分を恥ずかしがるように
しらじらしくいってみた。
「お父さんに。買えってお金、もらったから」
そういって、紺野をみた。
紺野は満面の笑みだった。やっぱり、「お父さん」に反応しちゃったか
- 321 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:10
- 「後藤さん!」
「んあ?」
「行きましょう!えっと、今すぐ」
「だから、そのつもりだって」
ものすごく嬉しそうな紺野。そんなにアタシが、お父さんとの関係を一歩進めたことが嬉しいの?
それはきみがサンタだから?それとも純粋に?
そんなのは聞かなくてもわかる。紺野は純粋に嬉しいんだ。きっと。
「いいけど、紺野。パジャマのまま、外にはいけないなぁ。」
「ふぇ?…ああああ!き、着替えてきます」
「んあ、お願いします。」
慌てふためく紺野を見て笑いがこみ上げてくる。
さて、携帯買いに行こうか。そろそろ、よしこと美貴に連絡しないと心配してんだろ。
机の上にあるユウキの写真を見た。
- 322 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:10
- 罪は変わらない。
問題は解決していない。
でも、少しだけ進んだ。ねぇ、ユウキ、少しだけ、さ。
アタシ一人の力じゃないけど…あのどうしようもないサンタのおかげでもあるけど
でも、進めたよ、ユウキ。
「ごとうさん!おまたせしましたー!!」
「…紺野、靴下、ばらばらだよ。赤と青だよ」
「…ちょっとまっててくださーい!!」
アタシの捨てられた記憶は永遠になくならない。
けれど、アタシは家族を受け入れる心の準備をしようと思うんだ。
- 323 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:11
- あの日、このマンションに置かれたアタシ。
あの日、このマンションででいった「あの人」…まだぽっかりと穴があいてる存在。
まだ、アタシの心のつっかりはたくさんある。けど、「どうでもいい」より、今は「なんとかなる」
ねぇ、ユウキ。
後ろ向きのバカよりだったらさ、前向きのバカのほうがまだマシだよね?
「後藤さん!おまたせしました!!」
「おー…紺野、それ、ネタ?」
「え?何がですか?」
「値札、ついてますけど。紺野、2000円?」
「あああああ!!!ちょ、ちょっとまってください」
…まぁ、慌てすぎなバカはいただけないけど。
- 324 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/01/17(月) 23:12
-
ま、よろしく。サンタクロースさん。
- 325 名前:風道 投稿日:2005/01/17(月) 23:15
-
本日はここまでです。
いきなり訂正にはいりますm(_ _)m
>>318
仕事にいく、といって出て行った「お父さん」
またきてもいいか、とおどおどしながらいった「お父さん」
うなづいた「娘」のアタシ。
家族が、そこにあった。
は正しくは
→それからしばらくぎこちなくもあり、照れくさくもある空間をアタシと「お父さん」は過ごした。
そして、コーヒーを飲み終わり仕事にいく、といって出て行った「お父さん」
またきてもいいか、とおどおどしながらいった「お父さん」
うなづいた「娘」のアタシ。
家族が、そこにあった。
です。お手数ですが頭の中で上手に思い浮かべてください。
すいません…。痛恨…。
ではまた更新します!
- 326 名前:konkon 投稿日:2005/01/18(火) 00:20
- ごっちん・・・強くなりましたね〜。
紺ちゃんの慌てぶりがサイコーです♪
家族の絆って大切ですよね〜。
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/18(火) 03:19
- 今回はしみじみしてほのぼのして読んでて泣き笑いみたいな気持ちになった
こんなふうに親子関係をメインに描いたお話は珍しいと思う
難儀な葛藤抱えた後藤さんがすごくはまっててドラマで見たくなった
いや読んでて脳内でドラマの映像になってた
応援してます
- 328 名前:風道 投稿日:2005/02/04(金) 14:46
-
更新かなり遅れましたすみません!!
大学のテストや実習、レポートが一気にきてしまったので…
本日からマメに更新開始です!!
>>326 konkonさん
感想ありがとうございます&レス返し遅れてすみません!!
家族の絆は大切ですね。自分にはものすごく大切です。
紺様はやはり紺様なので、慌てんぼうのサンタクロースです(w
>>327 名無飼育さん
感想ありがとうございます&レス返し遅れてすみません。
そうですね、親子関係の話は珍しいかもしれません。
自分でもこんなに大きなドラマになってびっくりしてるし、嬉しいです。
これからは少し違った話もでてきますが、応援よろしくおねがします。
では少し短いですが更新です。
- 329 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:47
-
久しぶりの騒がしさ。
久しぶりの生ぬるい空気。
そういえば、アタシ学生だったんだと納得してしまう、そんな友達の笑顔。
まぁ、かなり機嫌悪そうだけど、友達の笑顔ってやつはなくて。
- 330 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:47
-
「…オイ、このお騒がせヤロー。」
久しぶりの友達に対して、それかよ…
口が悪いねぇ、よしこは相変わらず。でも、それより美貴の目つきの悪さのほうが怖いな。
なんだかんだいって、1週間ほどアタシは学校を休んでいて、携帯も壊してしまったからこの二人とは連絡をとってなかった。
さっきも職員室にいったら中澤裕子センセーにかなりの勢いで怒鳴られた。
「…お騒がせしました。」
「まったくだよ。ごっちんのドアホ。あれから学校こねーんだもん。マジありえねぇ」
「…なんかあったの?」
相変わらずのよしこと美貴。
アタシはとりあえず自分の席に座ると携帯をとりだして二人のほうに差し出した。
- 331 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:48
- 「まー…色々あって。携帯壊れたから新しくした。二人の番号入れなおすから」
アタシがそういうと、よしこは携帯を見て目をまんまるくして、美貴は表情一つ変えずに自分の番号を見せた。
「…ごっちんにしては凝ったデザインのやつ買ったね。いっつもシンプルイズベストじゃんか」
「あ、そういえばそうだ。ごっちんらしくないね?」
それを言われるとものすごく困る。
アタシは目を合わせないように「そぅお?」と白々しく言った。
…シンプルなやつにしたかったんだよ、シンプルなやつに…
選ぶ時にめちゃくちゃ迷ったあのサンタクロースは、あたしがシンプルなやつを買うといったら寂しそうな顔して
『こっちの凝ってるデザインのにしませんか…?』
とかいって上目遣いでジーっと。…軽く捨てられた子犬みたいな目つきにして。
おそろいのやつにしたかったらしい。…だから妥協。
- 332 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:48
-
「まーいいから。そんな気分もあるんだって」
「へぇ〜。ごっちんに気分ね〜。…めずらしいじゃん。さては!?いい感じのひとでもできたの?!」
…よしこ…百歩譲って鋭い。まぁ、別にいい感じではないけど、あの子がもう生活の一部になってるのは確か。
ハニーでもなんでもないけど、フレンドでもなくて、単なる同居人…でもなくて。
「気持ち悪い」関係?うん、それがしっくりくる。
「いいよなー。学校サボってランデブーか。」
「よっちゃん、ランデブーってかなり古い。」
「いいから!で、どーなのよ?ごっちん」
二人の視線がアタシにくる。
…否定するわけでもなく、肯定するわけでもないんだけどな…。
- 333 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:48
-
「だから、ちょっとした心境の変化!!」
「なるほどね。じゃあ、じっくりコトコトその「心境の変化」ってやつを聞きますか?」
「黙秘権。」
「ないから。今のごっちんにはないから。」
学校、こなきゃよかったかも。よしこの言葉攻めと美貴の目つきに勝てるわけないじゃん。
…っつか、あのバカサンタのせい?やっぱり。
途方にくれているとあの鬼教師が教室に入ってきた。
いつもの日常ってやつもかなりいい感じジャン。二人に責められながらそう思った。
- 334 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:49
-
けれど、ここまで責められても困るわけで。
- 335 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:49
- 「しっかしさぁ、なんでそこまで黙るかなぁー」
「…よしこ、そろそろ殺すよ。」
「よっちゃん死んだら、美貴がごっちん殺すよ。」
…何この連携プレー。しかもちゃっかりアタシ、マックおごらされてるし。
放課後になっても二人の攻撃は続き、夕焼けの中延長戦となった。
っつーか、マジ帰りたいんだけど。久しぶりにあのサンタに夕飯作ってあげたいし。
「でも、ごっちん無事でよかった。」
「死んでるかと思った?」
「んー…前までは生きてる顔してなかったからね。ありえねーほど。」
よしこのなんでもわかってるような顔が昔はむかついてたけど、今はなんとなく有難いと思う。
…だから早く帰らせてくださいってば。
- 336 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:50
- アタシは携帯を開いて時刻を確認した。…18時ちょい過ぎ。しかも紺野からメールが届いてるというオマケ付き。
内容は「今夜帰ってきますよね?」とあった。
初メールがこんなんじゃ、思いやられるな。
昨日必死に携帯になれようとしてた紺野。必死でこの短いメールうったんだろうなーなんて思って
ますます帰りたくなったアタシ。多分、帰らせたくないこの二人。
こうなったら強行突破か
「それじゃ、そろそろ帰る!」
「…えー、もうちょい話そうよー。なんか最近付き合い悪いよごっちん」
「だから!ご飯作らなきゃいけないの!」
「マックで食っていけばいいじゃん」
美貴の冷静なツッコミ。一撃だよそれ。
アタシはとりあえず荷物をすばやくまとめて、席をたった。
するとよしこと美貴もすばやく荷物をまとめ、後ろについてくる。
「何?」
「いや、ただごっちんの部屋いこうかなと思って。ね、ミキティ」
「ね、よっちゃん」
…だからその連携プレーやめて。マジで。
- 337 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/04(金) 14:52
-
後ろについてくる金魚のフン。
もうマジで覚悟しなきゃいけないわけ?
…とりあえず携帯を開いてアタシは紺野にメールをうった。
「友達がくるからクローゼットに隠れてて」
…なんだかなぁ。
なんだかんだいってお世話になった紺野にこれが初メールなんて。
感謝もなにもないよね。ごめんね。
でも、自然とあふれ出てくる感情。アタシについてくる喜怒哀楽。
それがうざいほど嬉しいとか、ガラじゃないけど
アタシはきっと少しずつ笑えてるような気がするんだ。
「ごっちーん、早く歩いてよー」
…いや、この二人かなりうざいけど。
- 338 名前:風道 投稿日:2005/02/04(金) 14:52
-
今回はここまで、です。
すぐに更新します!!
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 23:32
- 更新&大学生活お疲れ様です。
なんかいいですね、この空気というか、日常というか、
読んでて笑顔になっちゃいました。
この二人の連係プレー大好きだなあ…
これからも無理せず頑張ってください。
- 340 名前:konkon 投稿日:2005/02/05(土) 14:03
- 交信お疲れさまです。
紺ちゃんを想うごっちんが超可愛いです!
よっすぃ&ミキティもなかなか・・・
なんだかんだでごっちんを心配して・・・るんですよね?
大学生活共々がんばってください。
- 341 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/19(土) 20:29
- 待ってます
- 342 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/20(日) 12:58
- おもしろいですね♪一気に読んでしまった。
- 343 名前:風道 投稿日:2005/02/25(金) 19:28
-
更新遅れてすみません…。追試でしたorz
とりあえず追試も終わり、バイトも終わりなんとか普段の生活に戻ったので
更新したいと思います。ほのぼのから一気に…、な話になりそうですが(汗
>>339 名無飼育さん
感想ありがとうございます&更新遅れてすみません!!
みきよしコンビは相変わらずの様子です。みきよしたちはごっちんが大好きなので(w
無理せず、少しずつ更新していきますので、どうぞよろしくおねがいします!
>>340 konkonさん
感想ありがとうございます&更新おくれましたー!(汗
ごっちんも少しずつ紺野のことを認めてきているというか…
少しずつだけど、ちゃんと思ってるようです。
よしみきはごっちん大好きなので(w
大学もがんばります!
>>341 名無飼育さん
ありがとうございます。まっていただけて。やっとの更新です。
これからも読んでやってください。
>>342 名無飼育さん
おもしろいだなんてありがとうございます!!これからも
ちょくちょく更新していくので、よろしくおねがいします。
さて、更新します!
- 344 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:30
-
ガチャリ
鍵をさして、重いドアをあけた。後ろには金魚のフン組。
ニヤニヤしている表情が少し、いや、大分うざい。
…メール通りにしておけばいいけどな、紺野。と思ったらすぐに玄関先にある靴。
バカ、靴ぐらい隠しておけよ…。と、ひっそりとため息。
「ごっちんこんな靴はいてたっけ?」
鋭いよしこ。
何も言わずに微笑んでる美貴。
…神様仏様紺野様…どうかこの二人にバレませんように。
「…昔の靴。とりあえずあがってお茶飲んだら帰って」
クールに接すれば「いつものごっちんだ。じゃあ帰るね」とか言うはず。
アタシはとりあえず二人をリビングにとおすと紺野の部屋にはいり、バレないように静かにクローゼットを覗いた。
ちょこん、とクローゼットの中にたたずむ、サンタ。
哀れ、サンタクロース。哀れ、アタシ。同時にクローゼットの中にうずくまってる紺野とため息をついた。
- 345 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:31
-
「・・・」
「・・・」
無言の紺野。無言のアタシ。
少しだけおびえた目をしていて、それはアタシの良心をいためた。
大きな声をだせばバレるのでアタシは紺野の口に手をあてて、ひきよせた。
小さな声で彼女の耳元に呟こうとする寸前、彼女が思いのほか近くにいるのでドキッとした。
…何やってんだアタシ。冷静になって、呟く。
「よしこと美貴がきちゃって、紺野がいるのバレたら後々めんどうだから30分ぐらいここにいて」
「…ひゃい」
附に落ちなさそうだが、しょうがない。大体ここはアタシの部屋なんだから。
…ってこういうところがダメなんだだろうなアタシ。
ごめん、と小さく呟いてアタシはクローゼットをしめた。…何やってるんだろうあたし。いや、あたしたち。
- 346 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:33
- リビングへ戻るとよしこと美貴が、ニヤニヤしていた。よしこのニヤニヤは少し怖いけれど。
「ごっちん、お茶〜!」
「…ったく」
よしこと美貴はソファにだらしくなく座ってアタシにお茶を催促。
でも、その目は何かを探しているように思える。
…鋭いよね、キミタチ。
アタシは場の空気をごまかすために、いつもは邪魔がってる犬をリビングにつれてきた。
よしこと美貴は目の色かえて犬を抱き寄せる。
「お!?やっぱ犬かぁ〜。ごっちん前預かってるっていってたもんね」
「かわいいじゃん。名前は?」
…名前を聞かれてハッとする。確か…トナカイだよね?
「トナカイ」
「はぁ?!どんだけ意味不明なのごっちーん!!」
「じゃあ、サンタはどこですかー?」
よしこと美貴がもろくそに笑う。うるさい、バカ。
しかも美貴の笑いながらいった「サンタはどこですか」って…めっちゃくちゃタイムリーだし。
答えはクローゼットの中です。…なんていえるわけもなく。
- 347 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:33
- アタシは何も答えず紅茶をポットから注いだ。
「はい、飲んだら帰れ」
「えー?なんかごっちん本当に冷たいねぇ。どうしたの?」
「別に。はい、よしこ、灰皿」
タバコを吸うかもしれない、とよしこに灰皿を渡すと、携帯が震えた。メールだ。差出人は絶対的に紺野。
見えないようにすばやく画面を切り替えてメールを見た。「寒いです」と一言メール。
ごめんね、紺野。今すぐクローゼットの中からだしてやりたいよ。
けど、この二人に見つかったらめんどくさいことになることは間違いないんだ。特によしこには…
よしこはアタシの何もかもをしってるやつ。だから、紺野のことだけはバレたくない。
「…ごっちんさぁ、犬のために早く帰りたがってたわけ?」
「預かってる犬だし、世話しないといけないじゃん」
「けど、ちゃんと犬のえさやってるみたいよ、ほれ」
よしこに指摘されてトナカイのえさ皿を見た。…失態。紺野がどうやらえさをあげてたみたいだ。
アタシは慌てて「そうだね」と答えるけど、時すでに遅し。もうしょうがない、紹介しようか…そう思ってたち上がった瞬間、ドンッと大きな音がした。
- 348 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:34
- 「なに、今の音…」
美貴が呟く。よしこがにやり、とする。
アタシは大きくため息をついた。あの音は紺野の部屋からだ。間違いなく、彼女はクローゼットの中で姿勢を崩したのか
なんかの拍子で倒れてしまったのだろう。…しょうがないな。紺野を責めることはできないし
責められるのはあたしだし。自分のエゴのために彼女を隠してたんだ。
「…ちょっとみてくる」
よしこと美貴をおいて、紺野の部屋をあけた。
紺野は泣きそうな顔をして、クローゼットの前にちょこん、と体育すわりをしていた。
少し驚いた。そんなに暗闇が怖かったのか。落ち着いて部屋のドアをしめて、すぐ駆け寄った。
「…ごめん。もう、でてきていいよ」
「…はい」
「どうした?」
震えている肩を掴んで、顔を見た。青ざめた顔。さっきまではそんな顔してなかったのに。
それに数十分しかここに隠してなかったのに…。いや、隠したこと自体に悲しんでるのかもしれない。
…ったく、女ってややこしい。
- 349 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:34
- って、あたしも女だけど。アタシは自然と彼女を抱きしめて落ち着かせようとしていた。
この前彼女があたしにしてくれたように。優しく、さりげなく。
ああ、落ち着かせる側ってこんなにいつも優しい気分になれるのかな。
そして、相手のことをいつも以上に考えるのだろうか。
「紺野?」
「…怖いんです…暗闇が…」
ポツリ、とそう呟いた。暗闇が怖い?そんなの誰だっておんなじだ。
アタシだって怖い。…夜は少しの明かりがないと何かを失いそうに思える。
「…ごめん。よしこと美貴っていう友達に紺野がみつかるとちょっと色々紺野が騒がれると思って」
「・・・」
「もう大丈夫。少し、部屋で休んでな」
はい、と小さく呟く紺野の笑顔に少しだけ不安になった。そういえばいつもこの笑顔だ。
アタシはいつだって彼女に救われてきたけど、どうなんだろうな。彼女は本当にいつも笑ってるのかな。
余計なことを考えるなと自分に言い聞かせて、部屋の電気をつけた。
- 350 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:36
- そっとドアをしめて、ため息をつくと目の前にはあのコンビが。
「…詳しく話を聞かせてもらおうか、ごっちん」
「部屋の中の子は?」
ええ、いけにえはアタシだけで充分だ。
にっこりしてるよしこと無表情の美貴。どっちも強敵だな。
とりあえず、リビングに戻って、お茶を飲んだ。うん、おいしい。
二人の目が、紺野の説明を求めていたので、カップをおいて、簡単に話すことにした。
「…居候ってとこだよ」
「ほんとに?」
苦し紛れにそういうとよしこは冷たい表情で追求してきた。美貴はなんだか困った表情をしているように思える。
アタシはため息を1つ、ついて無理矢理笑った。本当は紺野のことはなしたくなかった。
何か大切なものが1つなくなりそうで怖かった。…そんな感情初めてだったのでアタシは戸惑っていた。
いつもなら、ここでキレたりして、二人を追い出すだろう。けれど、こんなアタシでもそれなりに
この二人は大切な存在なんだと気づき始めている。そして、よしこが、怖いことも。
だから、心配しないで、と無理矢理笑顔を作ってやった。
- 351 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:36
- 「…少し身体の弱い子なんだ。療養のためにおいている。クリスマスにはいなく…いや、帰るよ」
そういって、笑った。よしこと美貴は一瞬で表情が凍った。
いなくなるって死ぬみたいじゃないか。紺野はそう、帰るだけだ。
なんてたってサンタクロース。ボケボケでちゃんと歩けるか不安なサンタクロース。
アタシを幸せにするためにやってきたサンタクロース。
クリスマスには帰っちゃうサンタクロース。
なんだ、この感情。気持ち悪い。まだまだクリスマスまで時間はあるし、紺野なんて少しうざいし。
でも、早く帰ればいいのに、と上手に思えない。
変なのはアタシだったみたいだ。
- 352 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:37
- 「そっかぁ!なら今度にでも紹介してよ、ごっちん」
「迷惑にならなければ、でいいからね」
よしこと美貴はそういって、にっこり笑った。…また変な気、使わせたかな。
それでもいいだろう。あたしは今、自分の感情に戸惑いを隠せないんだから。
時計の針の音が、やけに部屋に響いた。うちら三人にこの静けさは馬鹿みたいだよね。
「あ、やべ!美貴これから塾だったんだ」
何か言わなきゃ、と思った時、美貴が大きな声でそういった。携帯を開いて本気であせってる。
塾?ハァ?あの藤本美貴様が?よしこは慌てる美貴をみてクスリ、と笑った。
「え?美貴、塾なんていきはじめたの?」
「ごっちんが散々学校休んでた時期にいきはじめたの。美貴は帰るけど、よっちゃんは?」
「もう少し、いるわ」
じゃあ、よっちゃんあんまり長居しないようにね、と美貴が言うとよしこははーいと生返事をした。
アタシは美貴をマンションのしたまで見送ることにした。
- 353 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:39
- 外は相変わらず冷たい空気で、不思議と寒いと感じなかった。もうこの気温になれる時期なんだ。
そうだ、もう冬だ。クリスマスがやってくるのかもしれないんだ。いや、かも、じゃなくて、くるんだ。
息は白く冷たい。息が白いのは、アタシ自身があったかい証拠…、うん。
「…じゃあ、よっちゃんとこヨロシク」
「うん。まぁ、あんまりいさせないけどね。あいつ、図に乗るから」
「いえてる」
マンションのエレベーターにのり、二人顔を見合わせて笑った。
「あの美貴が、塾か」
「あのごっちんが、同居か」
おもしろいことばかり起こってる。一言で言える、そう「ガラじゃない」ね。
多分、いろんなことが起こってるんだ、アタシの知らないところで。
「…ごっちんさ、よっちゃんにもうちょっと説明しなきゃだめだよ。」
「…必要あるかな」
「あるんじゃない?よっちゃん、ごっちんのことになると性格変わるから」
そういう美貴の顔は少しだけ曇っていた。とりあえず、うん、とうなづいておく。
アンタもじゃん、美貴。よしこのことになると性格変わるんじゃないの?なんて、これは余計か。
感情っていろんなことに気がついて、いろんなことを考えるようになるんだね。
エレベーターを降りて、美貴を見送った。後姿は相変わらず、凛としていた。
- 354 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:39
- 急いで、部屋に戻るとよしこはソファにだらしなく座ってぼんやりとテレビを見ていた。
「…いつまでいる気?」
「ごっちんが笑ったら帰るよ」
やけに冷静な声が耳に付く。少しむかつく言い方だった。牛乳を冷蔵庫にいれてため息をついた。
よしこは普段と変わらない表情だったけれどどこか涼しげな顔をしていた。
「何か言いたいことあるの?」
「…あるっちゃあるけどね」
ニヤッと笑ってうーんと背伸びをするよしこ。なんなんだ、コイツ。付き合いが長いけれどよくつかめない。
いや、わかる。わかるけど、わかりたくない。だってよしこはあたしが一番怖いと思えるやつだ。
情けないけど、よしこは怖い。それは美貴だって知ってることだと思う。
- 355 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:39
- 「さっきの子、大切にしなよ。前みたいにならないように。」
「…バカなこというな。」
「はいはい、ごめんね」
前みたい…なんていうなよ。言われた瞬間、ヒザががたがたした。
もう、大丈夫だと脳に言い聞かせる。よしこは言ったことを後悔したように眉をしかめている。
後悔するなら言わないでほしいな。もう割り切れるようになったんだから、父親のことも、あの人のことも。
「BANG!!」
「何、それ」
「ごっちんを撃った。…あのさ、ガラにもないこと言うけど、聞いてよ」
よしこは立ち上がって、荷物を持ち、にっこりと笑った。
何?とあたしがため息混じりに言うとよしこらしくない口調で淡々と言い始めた。
- 356 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:39
- 「ごっちんをあのことから救えるの、あたしだけだよ」
「は?」
「…あの子何も知らないんでしょ?あの子じゃ無理だよ。…あたしだけだよ、ごっちん」
あなたを救えるのは。
言うと思った。と案外簡単に脳がよしこの言葉をすばやく処理した。
よしこはにっこりとまた笑顔になった。はぁ…緊張させないでよね、このバカ。
時々まじめな顔になるよしこは、アタシを少しだけ恐怖にさせる。それが、少し怖いって感じ。
「っての、言いたかったっていうか…。心配なんだよ、ごっちんのことが」
「ん、サンキュ」
「…ごっちんがどこか遠くにいっちゃいそうでね。ま、ついていくけれど」
よしこはそういって、じゃあ、また学校で、とにっこり手を振って部屋をでていった。
相変わらず…だな、よしこも美貴も。アタシのこと考えすぎなんじゃない?
でも、嬉しい気持ちも、あるけどさ。
- 357 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:40
- よしこのことはあえて見送らなかったし、何よりそこまでする義務があたしにはなかった。
早く紺野の様子を見に行きたかった。急いで、部屋のドアの前まで行く。
それでもなぜかノックできずにぼんやりとしてしまった。
あのこと…か。よしこもしつこい女だと思う。もう少し美貴を見習ってほしい。
まぁ、よしこがこんなことを言うのはいつものことなんだ。
アタシが弱ってるのを何よりも楽しみに見るのはいつだってよしこだ。
そしてアタシの周りをウロチョロする。最近じゃ、弱ってるとこ見せてなかったから不思議だったんだろう。
カンが鋭い。きっとアタシが紺野に救われたこともちゃんとわかってる。
「…紺野…、入るよ」
ドアをノックして部屋に入った。今はそんなことより、紺野が心配だった。
- 358 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:41
-
「あ、後藤さん…」
「もう大丈夫?」
「ふぇ?何がですか…?」
「…はぁ…」
…ったく、心配させないでよね。このアホサンタクロース。
マイペースなのか何なのかよくわかんないけど、どうやらさっきのことは全然気にしてないらしい。
…最近結構無理させてたから疲れてたんだろう。うん、そういうことにしておけ。
「ごめんね、友達がうざくて。」
「いえ、後で紹介してくださいね?」
「無理。あいつらはアンタにとっては有害だよ」
え?と聞き返す紺野に、はぁ、とため息をつく。きっとよしこと紺野は違う人種。
あわせられないな…よしこのことだから、きっと紺野に抱きついて、キスでもするだろう。あのバカ。
美貴は…何もしなさそうだけど。いや、そのよしこを殴るくらいか。思い切り。
- 359 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:42
- ―――ごっちんを救えるのはあたしだけだよ―――
数分前に言われた言葉。
それが本当だとすれば、アタシは紺野にこれ以上負担をかけてはいけないとおもう。
どうしようもなくトロくて、アホで、おっちょこちょいなサンタだけにさ、もう大丈夫だよ、といってやる。
アタシの幸せを探しにきた紺野。…紺野は何でサンタなんだろう…
「後藤さん?」
「…んあ?」
「お腹…すいたんですけど」
困ったような顔の紺野。ああ、そういえばこの子、めちゃくちゃお腹すかせてんだっけ。
今日はいつもより腕をかけて夕飯を作ろうかと思ったけれど、めんどくさいからオムライスでいいや。
- 360 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:42
- 「いつものオムライスでいい?」
「は、はい!!」
嬉しそうに笑う紺野。足元にはいつのまにかトナカイが紺野にすりよっていた。
ったく、どっちが犬なのかわかんないな。…どっちも犬か。うん、紺野はサンタじゃなくて犬か。
「んじゃ、いくよ。犬」
「…あの、それってトナカイのことですよね?」
「……さ、がんばって作るか」
「後藤さん…」
相変わらずからかいやすいやつだ。
アタシはうーん、と背伸びをしてキッチンへ向かう。紺野はお風呂の準備に取り掛かるそうだ。
さっき、うずくまっていた紺野を見て、少しだけ不安になった。
少しだけ昔の自分を思い出した。…アタシ、もしかして自分のことしか見てなかった、相当。
紺野も何かあったんだろうか?
- 361 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:42
- ―――あの子じゃ、無理だよ―――
よしこの言葉が、またよみがえる。そうだね、一緒に暮らしててもまだ距離がある。
感情はうまく、機能しても、少しだけ残ってる不安。
とりあえず、喜怒哀楽を失わないように…紺野を不安にさせないように。
笑えるように。よしこと美貴という仲間を頼りに、日々歩いていこう。
クリスマスなんて、本当にくるのかな。
- 362 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/02/25(金) 19:44
-
「あの人のこと、言ってないんでしょ」
言うわけないじゃん。これは、父親よりももっと難しい。
恋愛話なんて、幸せへの手がかりもない。
今のアタシに必要なのは、心配しすぎる友達と、サンタクロースだけ。
今のアタシは、それだけで充分、幸せへの道を探している。
- 363 名前:風道 投稿日:2005/02/25(金) 19:45
- また中途半端なところで終わってしまいました。
後藤真希、吉澤ひとみ、藤本美貴の関係が自分的には大好きなのです。
思いすぎる友情?みたいな。
…と、ネタバレになってしまいますね。
次回の更新をお楽しみに。
- 364 名前:konkon 投稿日:2005/02/26(土) 01:12
- 更新お疲れさまです。
紺ちゃんの過去・・・何があったのでしょうか?
ごっちんと紺ちゃんの行方が気になります。
できればハッピーエンドで・・・って無茶は言わずに
続きを楽しみにして待ってます。
- 365 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/01(火) 19:48
- おぉ更新されてる!
かなり好きな作品なので嬉しいです。
これからどうなるか楽しみに待ってます。
- 366 名前:風道 投稿日:2005/03/17(木) 07:05
-
更新遅れております、風道です。
実は個人的な理由により、4月までの更新ができなくなりました。
本当に申し訳ございません。
4月から、気持ちをいれかえて物語を書いていこうと思います。
紺野サンタは後藤を救えるのか、私にもわからないし
後藤が紺野サンタをどうするのかもわからないけれど
この二人の物語を、改めてじっくり4月まで考えて
できるかぎりいい文章をつづって生きたいと思います。
では、また4月まで!!ほんとにすみません!!(汗
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/17(木) 12:39
- がんがれやー!待ってるぞ!
- 368 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/08(金) 20:49
- 待ってます
- 369 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/04/10(日) 22:24
- 待 っ て ま す 。
頑張って!!
- 370 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/19(火) 19:23
- 待ってます!すっごく楽しいです!ハマりました!
- 371 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/26(火) 19:06
- 一気にはまってしまいました。すごくおもしろいです。
ごっちんの過去のシーンはぼろぼろ泣いてしまいました…。
小説で泣いたのは久しぶりです。(爆)
お忙しいみたいで、プレッシャーにならないといいのですが…。
続きも楽しみにしています。
- 372 名前:名無し待ち 投稿日:2005/05/16(月) 21:36
- 待ってます!!
- 373 名前:風道 投稿日:2005/05/26(木) 22:04
- 大変放置してしまってすいません。
作者の風道です。新しい生活が始まってうまく時間がとれませんでした。
言い訳にすぎないですが、すいません。
この作品は絶対に放置しませんので、よろしくおねがいします。
時間をうまく見つけて更新していきたいな、と思います。
では、短いですが生存報告とお詫びになります。
よければ待っててください!!m(_ _)m
- 374 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/27(金) 09:37
- 生存報告乙です。
作者さんが書き続けてくれるなら
いつまででも待ちますよ。
新しい生活も頑張ってください。
- 375 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/29(日) 16:07
- 報告あんがと
超待つ がんばれ
- 376 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/06(月) 23:48
- 待ってますよー
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/08(水) 20:42
- 真夏のクリスマスもまたよし 一年後のクリスマスもまたよろしw
そんくらい待ってる^^
- 378 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/13(月) 17:25
- ↑に同じ
- 379 名前:名無し待ち 投稿日:2005/07/15(金) 05:25
- 待望保全
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/30(土) 17:48
- ず〜っと待ってます♪頑張ってください!!
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/05(金) 15:14
- 今日始めて読みました。めっちゃおもしろいです。上手いですね!
更新待ってます。
- 382 名前:名無し飼育 投稿日:2005/08/16(火) 19:00
- 後紺最高待ち!!
- 383 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/25(木) 01:26
- これもやはり生存報告から3ヶ月以上経過ということになってしまうのかしらん
というわけで念のために生存報告おながいします作者さん
- 384 名前:風道 投稿日:2005/09/09(金) 04:00
-
お久しぶりです。
本当に更新停滞していてすいません。生存報告もなしにすいません。
最近やっと時間がとれました。相変わらず忙しいですが
これからまったりと更新していくつもりです。
ではまず先に更新します。
- 385 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:01
-
『プラモデルを作ったことがあるかい?』
「…ないけど?」
『プラモデルというものはね、パーツがあって、それを自分で組み立てていくんだ。非常に面白い』
「そう」
『だが、パーツが足りないんだ』
「なぜ?」
『…完全になれない、この世のおきてが邪魔しているのさ…不完全だから愛しいのだろうケド。』
…何を?
……何を?
………な に?
- 386 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:01
-
「…っ」
いやな夢というものは、呼吸、体温をこれほどまで異常にさせるらしい。
息苦しくて、目が覚めた。熱い…今は少し肌寒い季節のはずなのに、とても熱い。
呼吸は乱れていて、身体全体が重く感じた。
風邪…ではない。ただの体調不良…ってかそれを風邪っていうんじゃないの?
自分の健康への言い訳を頭の中でずらずら言い述べて、ベットサイドにつかまって立ち上がった。
いざすすめやキッチン…何の唄だっけ?早く、水が…のみたい。
キッチンにたどり着いて、冷蔵庫から冷え切ったミネラルウォーターを手に取った。
ソファに座り、熱い体温を覚ますべく、冷たい水を一気に流し込む。
おいしい…。
リビングにおいてある時計は夜中の3時を示している。
なんだよ、幽霊がでやすい時間帯ジャン…。なんてガラにもなく迷信にびびってみる。
夜中の3時…か。
「…いつもついてない、な…この時間帯は」
呟き、再び目を閉じた。
夜中の3時は別れ際…もう、どうでもいいことだけれど。
- 387 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:02
-
目を瞑り、過去に浸ろうかと思ったところに、タイミングよく奥の部屋のドアが開く音がした。
小さな足音がおそるおそる床を踏みしめている。ああ、紺野か…。
そうだ、アイツ幽霊みたいなもんだった。
幽霊が同居してるんだ…大丈夫だろうな。
「後藤さん…?」
おそるおそる紺野はあたしを確かめるように声をかけ、近づいてきた。
リビングの電気をつけなかったのは、月明かりがキレイに部屋にはいっているからだろうか。充分に明るい。
月明かりのおかげで、部屋の暗闇は、青い海のような、どこか安らかな場所になっていた。
- 388 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:02
-
「他に誰かいたら怖いね」
「…そうですね」
からかうように返したのに、紺野は落ち着いて側によってきた。
紺野は夜が好きなのか、昼みたいに挙動不審ではない。いや、夜の暗闇が彼女を落ち着かせているのか。
よくはわからないけれど静かに会話ができるならそれでいい。
水をまた一口飲んで、自分の心臓の音が段々静かになっていくのを感じていった。
「どうかしたんですか?」
どこからか取り出したタオルをアタシのおでこにあてて、汗をぬぐってくれた。
やめてほしい、これじゃあ、甘えてるみたいだ。すぐさま小さな手から、タオルを取り上げて自分でふいた。
思ったよりも汗をかいていて、悪夢をみたことを実感した。…でもどんな夢だったか覚えていない。
「悪い夢を見た…んだと思う。」
「思う?」
「覚えていないんだ。…悪夢ほど、後に残るものはないのに」
それはラッキーなことなのか、夢をみじんも覚えていなかった。
- 389 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:03
-
それよりもアタシの腐った脳みそは目の前に居る紺野が、こんなにきれいな女性だったのかとあろうことか興奮していた。
月明かりの下にうつる女の人は昼よりも、数倍も魅力が上がるらしい。
今日は満月ではない。明るすぎない月明かりが、彼女を魅力的に写していた。
バカげている、あたしの脳みそ。
「大丈夫だよ。紺野」
「…ならいいですけど…」
心配そうな紺野の顔を見て、少し昔を思い出しそうになった。ああ、昔…ほんの少しの間、よし子もこんな表情をしていた。
あたしを心配しているんだけど、ほっておけない…もしかしたら、よし子は今もこんな表情なのかもしれない。
…心配かけてばかりなんだろうな。
よし子とまるでかぶりそうにもない紺野を見てそう思ってしまうなんて…あたしって結構よし子のこと気にしてるんだな。
変に自分で納得してしまった。
- 390 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:04
-
「…満月じゃなくて良かったですね」
考え事をしていると、あたしを落ち着かせるためか、ふいに紺野がそんなことを呟いた。
アタシの隣にすわって、ちょこんと体育座りをしながら、一点をみつめている。
「なぜ?」
「満月は…好きじゃないんです。」
なんとなく、わかる。
なんだか完璧すぎる丸い大きな満月は、見る人々を不安にさせる。月は生命の神秘だ、とか月がなければ地球は生まれなかったとか、そんな大きな話を真に受けたわけじゃないけれど、大きすぎるんだよ月は。
だから、不安になる。
だって、あたしたちは生まれながらにして不完全。埋め合わせのパーツなんて見つける人は世の中に一握りしかいれないんだろう。
- 391 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:04
-
「紺野は…」
「はい?」
「紺野はいったい、どこにいるんだろう」
もし、きみがここにいて、きみが埋め合わせのパーツを求めているのならばそれを探してあげれるかもしれない。
けれど、ふと、思った。
紺野はここにいない。きっと、あたしの知ってる紺野は、全てじゃない。
知りたい、と思っているけれどうまくいかない。
また、失うのだから。
「何をいってるんですか?」
そう返してきた紺野をみないで、水を飲み干した。
紺野はどこにいるのか、それが気になったけどここで明確にはできなかった。
あたしの心臓の音は少し早くまた鳴り出した。
- 392 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:05
-
「さあ…きっと、寝ぼけてるんだなアタシ」
昔、そう昔…埋め合わせれるパーツをみつけたんだ。
けれど、ささいなことでそのパーツは埋め合わせれなくなった。
サイズがあわなかったんだ。
そのパーツをもってた人はあたしにいったよ
「人は何かを求めて、手に入れて満足したら、どこか空虚を感じる。ならば、手に入れないほうが少し幸せさ」
そうかな…疑問に思うけど、あたしはそのパーツを手に入れたら、次は幸せという名のものにたどり着くと思うんだ。
けど、その人はそう言い放った。
ふと思い出した。あたしは、これからどうすればいいんだろうか?
横に居る紺野はいつのまにか、寝息をたてていた。…眠いのに無理して側に居てくれたんだろうか。
- 393 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:05
- 悪夢にはじまり、考え込んじゃった。今日はついていないな。ついていないついでに、学校をサボろうか。
よし子はアタシを救うというけれど、彼女は無理だと思う。
アタシはとりあえずいま、自分が救われたいとはおもっていないと思う。
だって、もう救われたんだと思うから。
24時間営業のサンタクロースに。
ならば、どうしようか…
もう、オムライスも飽きただろうな…さあ、ゆっくり満月を待ってみようかな。
とりあえず、よだれをあたしのパジャマにたらさないでね、サンタクロースさん。
- 394 名前:弱気なボクのサンタクロース 投稿日:2005/09/09(金) 04:09
-
この、突然襲ってきた感情はなんなのだろうか。
虚しく感じては希望を見出している。
ねぇ、紺野…
あたしの感情はどこへ向かうのだろうか?
紺野が差し出してくれるその小さな手は本当に幸せへとたどり着くのだろうか?
その幸せは何を持って、幸せというのだろう。
ふと小さくうずくまって震えていた紺野を思い出した。
なぜか少し寂しくなって、空を見上げた。
明日というか今日は晴れるだろうけど、学校をサボろう。
多分太陽は普通にのぼってきて、この部屋を明るくする。
その頃には、この感情もなくなるだろう。
ねぇ…
アンタはそうやって一生パーツをうめないつもり?
届かないセリフを少し、小さな声で吐き出した。
あれは夜中3時の別れ。
今はもういない、彼女へのセリフ。
- 395 名前:風道 投稿日:2005/09/09(金) 04:11
- 更新しました。
久しぶりだったので、変な文章かもしれませんが多めにみてください。
本当にすいません。
待っていてくれた全ての人々に感謝をこめて
これからまったりですが更新をしていきたいと思います。
本当に、本当に、ありがとうございます。
がんばります。本当にありがとうございます!!
- 396 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/09(金) 18:07
- 交信お疲れ様でした〜
待 っ て ま し た !!
作者さんも多忙みたいですので、無理の無い交信をしてください♪
ずっと待ってますので^^
- 397 名前:名無し飼育 投稿日:2005/09/10(土) 00:25
- 更新乙乙乙乙乙!!!!!
久々に更新してるなんてやりますな…www
まぁ誰かさんみたいにマイペースでwww
- 398 名前:377 投稿日:2005/09/14(水) 13:20
- 戻ってきてくれてアリガトー!
楽しみにしてるよん
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 22:48
- 待ってます!!がんばってください♪
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/04(金) 18:16
- 待ってます〜^^いい季節になってきましたね♪
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/28(月) 22:50
- まってます♪すごく楽しいです!
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:26
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 403 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 19:58
- イブですな…
- 404 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 23:23
- まってます。
- 405 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/22(日) 19:11
- 作者さんの後紺、最高です♪
続き待ってます
- 406 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/15(水) 20:22
- 落ちるかなあ…
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