A.I
- 1 名前:北風 投稿日:2004/10/20(水) 15:56
- 初めまして。北風と申します。
今までずっとROMってたのですが、自分でも書いてみたく
なったのでスレ立てました。
4.5.6期が主な登場人物かなと思います。
とりあえず、週3更新目指します。
では。
- 2 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:02
- 「え…?」
その知らせを聞いたのは、もう大分夜が更けてから。
突然の親友からの電話に半分寝ぼけなまこで応答した私は
彼女が発した言葉で、一気に現実に引き戻された。
『梨華ちゃんが死んじゃったの!!』
それから、彼女が何を言っていたのかは全く記憶にない。
電話越しに聞こえる情報は、全て私の頭を通り抜け、ただの音と
なってどこかへ消えていった。
- 3 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:05
- 『T病院にいるから』
これだけが唯一、私の脳内に引っかかった言葉だった。
こんな時間にどこ行くの、と私を呼び止める母の問いには答えず
私は家を飛び出して病院へと向かった。
今考えると自転車を使えば良かったとか思うのだが、そんな事を
考えている余裕すら、その時の私にはなかったのだ。
- 4 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:11
- 「ごっちん!!」
病院に着くと、私に電話をくれた親友…ごっちんが玄関前で
待っていてくれた。
「ミキティ…」
私は、暗い顔で俯いているごっちんの肩を強く揺すりながら
どうしてこんな事になったのかを尋ねた。
しかし、ごっちんはそっと私の右手に手をかけると一言
「知らない」
と首を振った。
- 5 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:24
- 二人で並んで病院の中に入る。
当に終わっている外来の待合室は電気が消されていて薄暗く
少し気味が悪かった。
「今、梨華ちゃん霊安室にいるから…」
階段を下り、暗い廊下を進んでいる時、ごっちんが言った。
「…ごっちんは会ったの?その…梨華ちゃんに…」
私が聞くと、ごっちんはコクッと首を縦に振り
「うん。私、一番最初にここ着いてさ。それで、梨華ちゃんと
一緒にいたら、ご両親来て…。結構居辛かったし、そろそろ
ミキティ来るかなって思って、出てきたんだ。」
- 6 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:30
- 「よっすぃには?」
するとごっちんは今度は首を横に振り、少し俯き加減になって
「言ってないよ。よっすぃには、梨華ちゃんのご両親から
伝えてもらうって…。」
私は「あぁ…」と呟いて、ごっちんと同じように
少しだけ顔を下に向けた。
コツ、コツ、コツ
人気のない廊下に、私とごっちんの規則正しい靴音が響く。
- 7 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:36
- 「…」
どれくらい進んだのだろうか。ふと、前方のほうが騒がしく
なっているのに気付き、私とごっちんは足を止めた。
「…警察?」
ごっちんが目を細めながら、目の前の人だかりを見つめた。
「ホントだ…」
最初は、事情聴取か何かだと思っていたけれど、それにしては
数が多いし、第一に、梨華ちゃんのお父さんが医者と看護婦を
怒鳴りつけている。何故かお母さんはいない。
「…何かあったのかな…?」
行ってみる?と言ったわけでもないのに、自然と足が早歩き
になった。胸がざわざわする。
- 8 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:41
- 「…」
遠目では分からなかったけど、怒鳴られている医者も看護婦も
真っ青な顔をしていて、警察の人たちもどこか尋常では
ない雰囲気を漂わせている。
「あの…」
ごっちんが一番近くにいた警察の人に話しかける。
「何だ、君たちは。」
振り返ったその人は、40代くらいのおじさんで、私とごっちんを
交互に見つめながら
「部外者はすぐに出て行きなさい。ここは遊び場じゃない。」
この部屋にいる子の友達なんですけど…
そう反論しようとした時、それまで怒鳴り散らしていた
梨華ちゃんのお父さんが私たちに気が付いて手招きをした。
- 9 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/20(水) 16:46
- 「何かあったんですか?」
近づきながら尋ねると、お父さんはかなり険しい顔をして
「真希ちゃん、君はあの子の遺体を見たね?」
「え?あぁ…まぁ、ハイ。」
何を言い出すんだろうという表情で真希が頷く。
「真希ちゃんに美貴ちゃん。」
お父さんは何かを言い出し辛そうに少し視線を漂わせた。
そして、ちらっと部屋のの方を見ると、決心がついたのか
ふーっと息を吐き出し、言った。
「梨華の遺体が…消えた。」
- 10 名前:北風 投稿日:2004/10/20(水) 16:49
- えーっと、こんな感じなのですが、いかがでしょうか?
批判、苦情、意見、どんどんお待ちしています。
時間があればまた後ほど…
では。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 22:24
- すごく気になる・・・
ありきたりですが期待してます。
- 12 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/21(木) 21:58
- 「梨華ちゃんが死んだ上に遺体がない?!どういう事だよ!!」
「…」
「そもそも、何で教えてくれなかったの?!事後報告ってひどいよ!!」
「…ごめん…」
私と真希は、目の前にいるもう一人の親友の剣幕に押されてお互い黙った
まま、彼女から視線を逸らせた。
「それでいて、明後日お葬式?嫌だよ。
私、梨華ちゃんの遺体見てないもん。信じられないよ!!」
- 13 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/21(木) 22:05
- 彼女はそう言うと、私たちに背を向けて家の中へ入って
行ってしまった。
「…やっぱりムリか…」
ごっちんが、閉められたドアを見つめながら言った。
私はただ頷き、彼女がいるであろう二階の部屋の窓を見上げる。
「そりゃそうだよね。だって、突然自分の彼女が死んで
しかも遺体が消えましたなんて言って、嘘だって思わない
方がおかしいもん…。」
「やっぱり、言うの止めた方が良かったのかな…?」
私の質問にごっちんは答えず、ただ曖昧に「あー」と唸り
私と同じように二階を見上げると
「帰ろ。ここでこうしててもしょうがない。」
と言って先に歩き始めてしまった。
- 14 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 07:56
- 「え、ちょっと待ってよ!」
私は慌ててごっちんの後を追う。
曲がり角を曲がる寸前に、もう一度彼女の家を振り返る。
黒っぽい屋根の周りの家より少しだけ大きい彼女の家。
その二階の閉められたカーテンの向こうに彼女はいる。
今、彼女が何を思っているのか。私たちにはわからない。
「ミキティ、置いてくよ?」
大分前を歩いていたごっちんが足を止めて私を振り返る。
「あ、うん。ごめん・・・」
私は小走りでごっちんの隣まで行き、無言のまま並んで歩いた。
- 15 名前:北風 投稿日:2004/10/23(土) 07:59
- >名無し飼育さん様
ありがとうございます!作者の職業が学生なもんで
更新は少量、レス返しが次回という事があるかもしれませんが
頑張るんでよろしくお願いします!
- 16 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 13:01
- 「やっぱ・・・微妙な心境だよね。」
ごっちんはため息をつきながら、途中で買ってきた花を添える
「ここ、空っぽなんだもんね・・・」
そう言いながら私も火をつけた線香をおく。
石川家之墓、と書かれたその場所に私たちは言葉もなく
立っていた。線香の煙が風に吹かれて私の横を通っていく。
「よっすぃ、大丈夫かな?」
私はさっきまで会っていたもう一人の親友、吉澤ひとみの事を
考えていた。
梨華ちゃんとは恋人同士にあった彼女には辛すぎる事実。
私だって未だに信じられない。けど、実際に梨華ちゃんの遺体は
消え、ただ死んだという現実だけが残っている。
- 17 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:11
- 「誰が何のために、なんて考えたってしょうがないよね・・・」
ごっちんがため息と一緒にそんな言葉を吐き出した。
「だって、理解できないもん。普通は・・・」
梨華ちゃんの遺体がどこかに持ち去られ、何かに使われている。
それは、私にとって考えるだけでも気持ちの悪い事だった。
「でも、いつまでも考え込んでいるわけにはいかないんだよ。」
「どういう事?」
「私たちの時計はまだ動いてるって事。どんなに落ち込んだって
考え込んだって、時間は過ぎていくんだよ。」
私には、ごっちんの言っている意味が分からなかった。
いや、分かっていたからこそ、ごっちんから視線を逸らし
梨華ちゃんのお墓を見たのかもしれない。
- 18 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:19
- 「・・・・・・・?」
何となく、誰かの視線を感じた。
「どうしたの?」
急に振り返った私にごっちんが不思議そうな視線を向ける。
「あ、いや・・・」
もう一度振り返ってみても、誰もいない。
時刻は午後5時。
そろそろこんな所にいる時間ではなくなって来ている。
私は幽霊やおばけ何てものは信じていない。けど、その代わり
コソコソ隠れて人の行動を見ている人間の方がよっぽど怖かった。
- 19 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:27
- ごっちんに帰ろう、と告げ、私たちは元来た道を戻り始める。
「結構暗くなってきちゃったね。」
ごっちんはそう言いながら、無意識のうちに早歩きになっている
私の後を付いて来た。
梨華ちゃんのお墓はいわゆる山の上にあって、行きは上り
帰りは下り坂となる。山といっても麓から十五分足らずで登れて
しまう程度の山なのだけど、それでも木々に囲まれているせいか
見通しが悪く、夕方に一人で歩くにはかなりの勇気を要する。
今はごっちんが一緒だけど、それでも女子高生二人というのも
大分、心細い。
- 20 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:34
- 「ねぇ・・・ミキティ・・・」
ふと、ごっちんが足を止め、私の服の裾をつかんだ。
「え、どうしたの?」
振り返ってみて私はある事に気がついた。
「・・・・・・」
車が一台、私たちの後を付いて来ている。
車は黒塗りの普通の乗用車だが、私たちが止まったのを見て
ピタッと停止した。
「何・・・怖いんだけど・・・」
「ごっちん、見ちゃダメ。無視して歩こう・・・」
しかし、車は私たちが歩き出すと同じように発車した。
「ちょっと・・・絶対付いて来てるって・・・」
私とごっちんは顔を見合わせ、お互い頷き合う。
そして、足下を見ると同時に暗い坂道を駆け出した。
- 21 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:41
- 「ミキティ、あの車まだ追ってくるよ!!」
私は走りながら後ろを振り返る。車は、速度こそ遅いものの
確実に私たちを追っていた。
「こっちに遊歩道があるからそっちに逃げよう!そこなら
車は追って来れない!!遊歩道からも下に降りられるから・・・」
私はそう言うと、丁度『遊歩道』と書かれた看板を見つけ
その隣にあった階段を駆け下りた。
ごっちんがきちんとついて来ている事を確認しつつ
どんどん下へ降りる。やがてごっちんの
「ミキティ、もう追ってこないみたい・・・」
という声で、私は階段の中腹ら変にぐったりと腰を下ろした。
- 22 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:46
- はぁはぁと息を整えつつ、私の所より数段上にいるごっちんに
「大丈夫?」
と訪ねると、まだ喋れる状態じゃないみたいだったけどごっちんは
ぐっと親指を立ててみせ『大丈夫』というサインを送ってくれた。
――にしても、あの車、何だったんだろう・・・?
恐らく誘拐目的じゃない。だって誘拐が目当てなら何も車で
追いかけて来なくても 、待ち伏せをしていればいい話だ。
まぁ、そこまで頭の回らないバカだったのかもしれないが・・・
いずれにせよ、もう逃げ切ったのだから心配はない。
・・・そう思ったのが間違いだった。
- 23 名前:1.始まり 投稿日:2004/10/23(土) 14:51
- 「ミキティ後ろ!!」
「え?・・・っ・・・!」
振り返ろうとした瞬間、私の口と鼻に何かを押さえつけられた。
「う・・・くっ・・・」
抵抗してみるものの、かなり強い力で押さえつけられているせいで
ちっともその物が外れる気配がない。それどころか急に力が抜けて
気が遠くなって来た。
視界に霞がかかって頭の中がぼんやりしている。
「ごめんな。君らにはちょっと付き合ってもらうよ。」
意識がなくなる寸前、私の頭上でそんな女の声がした・・・
- 24 名前:北風 投稿日:2004/10/23(土) 14:52
- とりあえず一章「始まり」終了です。
続きはまた夜にでも・・・
- 25 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 20:46
- 「…ティ!…ミキティ!」
「…?」
目を開けると、目の前にはごっちんがいて、心配そうに私の顔を
覗き込んでいた。その隣には何故か…
「よっすぃ…?」
ごっちんと同じように私を覗き込むよっすぃの姿が。
「え…何?何で…」
重たい頭を上げ、何とか起き上がり、ふるふると頭を振る。
ぼんやりとした頭がだんだんクリアになってきて、それと同時に
私は自分の身に起きた出来事を鮮明に思い出した。
- 26 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 20:50
- 「え、ここ何なの?」
「わかんない…。私も今起きたところなんだ。」
ごっちんはチラッとよっすぃに目をやり
「そういえば、何でよっすぃこんな所にいるの?」
しかし、よっすぃも「分からない」と首を振る。
話によると、私とごっちんが帰った後、よっすぃのお母さんが
買い物に出かけ、1人で留守番をしていたら玄関のベルが鳴り
それに出た途端に私やごっちんと同じように捕まったらしい。
「私が気が付いたのは車の中なんだけど…隣に二人がいた時は
ちょっとびっくりした…。」
- 27 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 20:57
- どうやら私たち三人を捕まえたのは四人組の女。
その中の一人は二十歳前後、残りの三人は中高生くらい
の少女たちらしい。
「え、でも、そんな人たちがウチら捕まえて何の得になるの?」
「だから分からないって。」
私の問いにごっちんがイライラした様子で答える。私は部屋の中
を見渡してみた。灰色の壁に天井。同じ色のドアには鉄格子。
それはなんだか牢屋のようで、私は
「ここ、怖いよ…」
ごっちんとよっすぃも同じように部屋を見渡して「そうだね」と
頷く。外からは何の音もしない。窓がないおかげで
ここがどこなのかも分からない。
- 28 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 21:18
- 「この鉄格子…外れないかな?」
ごっちんがそう言って、よっと鉄格子を掴みガタガタと揺らす。
「…ダメっぽいね。」
ごっちんがそう言った、その時だった。
――ズキューン
「……?!」
突然銃声が聞こえ、ごっちんの右肩から血が噴出した。
「なっ、何?」
床に蹲って肩を抑えているごっちんに近づく。どうやら弾は
掠った程度で済んでいるようだ。
- 29 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 21:52
- 「うるさい。」
鉄格子の隙間から入ってきた、まだ幼いだろう少女の声。
「うるさいって、あんたたちが勝手に連れてきたんでしょ?
ここどこなの?あと、友達のケガの手当てしたいんだけど!」
私がそう怒鳴ると、相手は誰かと話をしているらしく、暫くの
沈黙があった。そして
「手荒な行為、失礼しました。」
がちゃっという音と共にドアが開き、一人の少女が顔を出した。
「怪我をしている方はこちらへ。」
さっき「うるさい」と言った少女とは別の声。
この少女は見た限りでは年は十四か十五といったところ。」
- 30 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/23(土) 21:58
- 少女はごっちんに近寄り
「別の部屋で手当てを致しますので…」
しかし、怪我のせいだろうか。ごっちんはピクリとも動かず
じっと下を向いている。強く抑えてはいるものの血が止まらず
肩と左手の間からドクドクと血が溢れ出てきている。
それを見た少女は「あー…」と呟くと、右手の人差し指を
右耳に持っていき
「あー、紺野さんですか?さゆみですけど。
あの、れいなが怪我させちゃった方、ちょっと動けないよう
なので、こっちに来てもらえます?」
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/23(土) 22:03
- 面白そうですね。
期待してます。
- 32 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/24(日) 21:58
- すごく続きが気になります。
更新待ってます。
- 33 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 19:51
- 自分の事をさゆみ、と言った少女はそれから一言二言言葉を交わした後
指を耳から外し
「聞こえていたかもしれませんが、そちらの方をここで治療する事に
なりましたので、あとの二人の方は外にいる係の者に従ってください。」
と、私とよっすぃを見ながら言った。
私はこんな状況でバラバラになるのが不安で、その場から動けなかった。
隣にいるよっすぃも同じ気持ちのようだ。
「大丈夫ですよ。」
不意に聞こえた声にドアの方を見ると、救急箱らしき物を手にした少女が
立っていた。さゆみが言っていた紺野だろうか?
- 34 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 19:56
- 「別に変な事はしません。簡単な処置をしておくだけですよ。
このまま放って置くわけにもいきませんし・・・」
その少女はそう言いながらごっちんの側に屈み込み、持っていた
箱を開けた。注射針や包帯など、色々なものがきちんと
整理されて入っている。
「見ない方が良いですよ?」
そう言いいながらさゆみは再び耳に指を当て
「はい、紺野さん到着しました。え、後の二人をですか?
あの…それはちょっと……いえ。……分かりました。」
- 35 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 20:01
- 何だろう?と思っていると、さゆみが凄く言い辛そうな顔をして
「あの…お二人に会っていただきたい人がいるんですが…」
「会って欲しい人?」
誰の事だろうか。私はよっすぃと顔を見合わせて首を傾げた。
「…type02、リカだよ。」
紺野とも、さゆみとも違う声。さっき「うるさい」と言った
少女の声。
「…何なの、あんた。」
私は不快感を露にして尋ねる。すると少女はにやっと笑って
- 36 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 20:04
- 「そんな口の利き方すると、そっちの人みたいになりますよ?
ねぇ、藤本美貴さん…?」
「なっ…」
何なんだコイツは。何で私の名前を知っているんだ?
「ちょっとれいなっ、止めなよ…」
さゆみが慌てたように少女を窘める。少女の名前はれいなという
ようだ。にしても、コイツは何様のつもりなのだろう。
「さゆは黙ってな。…ほら、早く一緒に来てくださいよ。
あなた達の事、リカが待ってますよ?」
- 37 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 20:34
- 「リ・・・カ・・・?」
よっすぃが呟くように言ってれいなを見た。れいなは「あぁ…」
と言うと
「あなた、リカの恋人だったっていう…」
「だった、じゃない。」
咄嗟に私の口から出た言葉にれいなはふんっと鼻で笑い
「今のリカは、あなたの事なんか覚えちゃいない。」
「れいなっ!!」
さゆみがれいなを怒鳴りつける。れいなはおもしろくなさそうな
顔をして、さゆみを見た。さゆみは真剣な顔をして
「れいな。アンタ、言っていい事と悪い事の区別つかないの?」
- 38 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/25(月) 20:49
- それでもちっとも悪びれる様子もなく、涼し気な顔をしている
れいなにさゆみは一言
「絵里。」
と呟く。それはれいなにとって禁句の言葉だったのだろう。
一瞬たじろいだような表情を見せた後、さゆみを睨み
付けると、私たちの方を見て
「すみませんでした。…こちらへ。」
と、さっきとは打って変わった様子で言った。
――どういう事…?
さゆみを見ると、さゆみはぺこっと頭を下げる。
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/27(水) 00:31
- 面白いです。
この小説のページの続きを早く読みたいです。
応援しております。
- 40 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 15:21
- 事情が良く分からないまま、私とよっすぃはれいなの後について
廊下へ出た。
「ねぇ…ここ何なの?」
前を行くれいなに訪ねると、れいなは単調な声で
「長野の山奥です。表向きは製薬会社という事になってます。」
「表向き…?」
れいなはそれ以上何も言わずにただ黙って歩き続ける。そして
「ここがA館です。」
と1つのガラス張りのドアの前で立ち止まった。
れいなはドアの横についている数字のボタンを素早く押す。
するとピピッという電子音の後にガチャッとロックが外れる
ような音がした。
- 41 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 15:31
- 「…じゃあ、私はここで…」
私とよっすぃがドアを越えた事を確認すると、れいなは
一刻も早く立ち去りたいという顔をしてそう告げた。
「え、あんたは?」
「私は…入館許可が降りてないので…」
その時のれいなの顔。すごく寂しそうな気がしたのは気のせい
だったのかな?
「え、私らここからどうすれば…」
私がそう言った、その時だった。
- 42 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 15:35
- 「…お客さん、ですか?」
私たちの後ろに現れた一人の少女。年は、れいなと同じくらい。
「…あぁ、矢口さんから連絡のあった…吉澤さんと藤本さん?」
私が頷くと、少女はにっこり笑って
「どうぞ、こちらへ。」
その少女に付いて行こうとして、私はちらっと後ろを見る。
「あれ…」
しかし、そこにれいなの姿はなかった。
――どこ、行ったんだろう…
「ミキティ」
よっすぃの呼ぶ声がして、我に帰った私は、ごめんごめんと
言いながら、少女とよっすぃの所へ駆け寄った。
- 43 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 15:57
- そんな3人の後ろ姿を、じっと見つめる少女がいた。
「れいな。」
愛はそんな少女に声をかける。
田中れいな…愛の可愛い後輩の一人。そして、type01・エリの
元恋人でもあった。
「高橋さん……」
いたずらが見つかった子供のような顔をして気まずそうに
愛の顔を見るれいなは、さっきまでのとげとげしさはなく
普通の少女そのものだった。
「どう、新しい3人。」
「あー…藤本さんと後藤さんは何て言うか…
結構逞しそうな感じがします。でも、吉澤さんは…」
- 44 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 16:03
- あの人は、彼女亡くしたばっかりだから…と呟くれいなの頭を
撫でながら、愛は1年前のれいなとさゆみを思い出していた。
『ふざけるな!』
『こんな所、ぶっつぶす!!』
れいながそう言いながら研究所にあったものを手当たり次第に
殴りつけたり投げ飛ばしたりしたのは記憶に新しい。
あの時は確かあさ美がみぞおちに一発食らわして大人しくさせた
んだっけ…
「まぁ、吉澤さんはともかくとして、後の二人はリカを見て
暴れだしそうだね…」
私が言うと、れいなは曖昧に頷いてから
「さっき…さゆの事、怒らせちゃったんです。」
「あぁ…」
- 45 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 16:10
- その話なら、さっきあさ美に聞いた。
愛はその時の話を思い出しながら
「さゆみが怒るのも無理はないと思うよ?」
「そうですよね…」
明らかにしょぼんとしているれいな。れいなのこんな姿は
珍しい。愛は俯いてしまったれいなの顔を覗き込みながら
「でも、れいなが3人に対してそんな行動とっちゃったのは
分からなくもないんだけどね。」
私だって…と言いかけて、愛は慌てて口をつぐんだ。
れいなの気持ちは、本当にその立場に立った人間にしか分から
ない。自分が軽々しく口にできる事じゃないと思ったのだ。
- 46 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 16:50
- 『愛ちゃん、聞こえてる?』
耳につけたイヤホンマイクから親友の声が聞こえてきて私は
「麻琴…何?」
『そこにさぁ、れいないない?』
「いるけど…」
ちらっとれいなを見ると、私ですか?と不思議そうな
顔をしている。
『あのさ、あさ美ちゃんが探してたよって伝えてくれない?』
「あさ美?」
そう聞き返したとき、れいなが「しまった」という顔をして
- 47 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 16:59
- 「私、あさ美さんに呼ばれてたんだった…」
と言うと、愛にぺこっと頭をさげ、足早にその場を後にした。
「あー、麻琴?れいな、今行ったから。」
ってか、何であさ美、自分のイヤホン使わないの?と聞くと
『何か、れいなに繋がらなかったらしい。』
との返事。
『私さ〜、これから後藤さん、だっけ?あの人の所に行って
リカの事、説明して来いとか言われたんだけど…』
「え、何で麻琴が?…お疲れさん。」
『何言ってんの?愛ちゃんもだよ。』
何で私まで…と聞きそうになって、今日の予定を思い出す。
確か、私と麻琴以外の皆は今日は仕事があるんだった。
- 48 名前:2.悪夢 投稿日:2004/10/27(水) 17:47
- 麻琴に、今から行くと伝えて通信を切る。
後藤さんのいるC館までの廊下を歩きながら、愛は
ふぅっと溜息をついた。
――後藤さん、手怪我してるから大丈夫だと思うけど…
不安がないといったらウソだった。
自分たちのやっている事を知ったらどう思うか…しかも、その
実験対象が自分の親友だと知ったら…
「…考えるの止めよう。」
とにかく今は、後藤さんに真実を伝えるんだ。
マニュアル通り、淡々とした口調で感情は表に出さずに…
やがて見えてきたC館への入り口に、愛はさっきよりも
大きくて重たい溜息をつき、キィッとドアを開けた――
- 49 名前:北風 投稿日:2004/10/27(水) 17:51
- 短いですが、更新終了です。
31.名無し飼育さん様>>
ありがとうございます。これからも頑張ります!
32.通りすがりの者様>>
ありがとうございます。これからも頑張ります!
39.名無飼育さん様>>
ありがとうございます。これからも頑張ります!
- 50 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/27(水) 18:58
- みんなの過去に何があったんでしょう?
実験対象って何の実験?続きが気になります。
更新待ってます。
- 51 名前:名無し 投稿日:2004/10/28(木) 20:15
- この話って元ネタありますよね?
どう変えていくのか楽しみです。
- 52 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/02(火) 21:39
- 更新待ってます。
- 53 名前:2.悪夢 投稿日:2004/11/02(火) 22:21
- 「梨華ちゃん・・・?」
一瞬、夢だ。と思った。
「何・・・で?」
だって彼女は死んだはず。私は遺体は見ていないけど、彼女が死んだ
事は現実なんだ。なのにどうして…
「これがtype02、リカだよ。」
その声に振り向くと、そこには背の小さい、白衣を着た女性が一人。
「何なんですか、あなた。」
私が訪ねると、その人は「あ?」という顔をして
- 54 名前:2.悪夢 投稿日:2004/11/02(火) 22:48
- 「何だ、オイラの事聞いてなかったのか?ふーん…あ、オイラは矢口。
矢口真里。一応ここの工場長だ。」
その時、よっすぃが小さく「この人…」と呟いて
「この人、ウチらの事ここに連れて来た…」
「そうそう。あん時は手荒なマネして悪かったな。お前ら、あーでも
しないと来てくれなさそうだったから・・・」
――そんな事はもうどうでもいい…
私はただ、目の前のこの状況を説明して欲しかった。
さっきから色々な人の口から飛び出る「type02」という言葉、そして
梨華ちゃんの身に何が起きているのか…それが知りたかった。
- 55 名前:2.悪夢 投稿日:2004/11/02(火) 22:54
- 「えーと、藤本?お前、そんなピリピリするなよ。
きちんと今から説明してやっからさ。」
そこ、座れと言われてよっすぃと2人でソファに腰掛ける。
矢口という女は「何から説明しようかな…」と呟いてから
チラッとよっすぃに目を向け、次に私を見た。
「何ですか?」
「…睨むな。あ、いや…吉澤だっけ?そいつ、顔色悪いけど
大丈夫かって…」
よっすぃの方を見ると、確かに元々白い彼女はますます白くなり
というより血の気が引いて青白くなっていた。
「…ちょっと、大丈夫?」
よっすぃは私の問いに、軽く右手を上げて「うん」と頷くと
「話…お願いします…」
「あぁ…。あのな…」
- 56 名前:3.現実 投稿日:2004/11/02(火) 23:06
- 「ふざけるなっ!それって人体実験じゃない!!」
ケガの痛みのせいか、手をあげる事はしないにしても
目の前にいる真希の怒りは想像した通りのものだった。
愛は、先ほど上から送られてきた彼女のデータを頭の中で
思い浮かべる。
『後藤真希:リカの親友。何を考えているのかよくわからない
所があるが、キレた時の彼女には手のつけようがない。』
記憶が確かなら、ようするにケンカが相当強いですよ、みたいな
話だった気がする。
- 57 名前:3.現実 投稿日:2004/11/02(火) 23:09
- 「人の友達を玩具みたいにいじくって…あんた達には、正しい心
って物がないの?!」
真希のあまりの剣幕に、愛と麻琴は何も言えず、ただ黙って
なるべく真希と視線を合わせないように勤めていた。
――こんな時、れいなならどうするんだろう。
なぜかそんな考えが頭をよぎる。
普段から何事にも…いや、1つの事を除いて無関心な彼女なら
きっと何か冷ややかな言葉を浴びせるんだろう。まぁ、この場で
そんな事をしたら、逆に真希を挑発しそうな気がするが…
- 58 名前:3.現実 投稿日:2004/11/02(火) 23:15
- 「何か言ったら?!」
黙りこくった愛と麻琴に更に腹が立ったのだろう。
真希は立ち上がり2人の側まで行くと、ケガをしていない方の
手で愛の肩を強く掴み
「ねぇ、あんた達、何で何も言わないの?!
ただ梨華ちゃんの状況だけ説明されて、それでこっちが黙って
られると思ってるの?!」
――痛い…
それでも愛も麻琴も何もじっと沈黙を保っている。
やがて、真希は大きな溜息と共に愛から手を離し
2人の顔をじっと見つめた。
- 59 名前:3.現実 投稿日:2004/11/02(火) 23:19
- 「…もういいや。」
諦めたような、投げやりなような真希の言葉。
愛と麻琴が視線を向けると、真希は
「変だよ。ここ。」
とだけ言い、2人に背を向けて、ドアから出て行こうとした。
「あの、どこへ…?」
「ちょっと歩いてくるだけ。」
愛と麻琴は顔を見合わせて、真希の出て行った後のドアを
じっとみつめる。そして、2人そろって同時にドアに向かって
頭を下げた。
『ごめんなさい』
この気持ちが、真希に届く事を祈りながら…
- 60 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/03(水) 09:52
- 更新待ってました!
人体実験!?
自分の知ってる人って少しキツイですね{汗
続き待ってます。
- 61 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 20:58
- 「何か…中、大変な事になってますね…」
「そうですね…って、何盗み聞きしてるんですか。」
大きな段ボール箱を抱えたさゆみが、ドアの前で立ち尽くしているあさ美に
声をかける。けれど、あさ美はそこからどこうとはせず
「いや…だって、一応同期だから気になって…」
と言った。けれど、その顔は笑っている。
さゆみは気付かれないように軽く溜息をつくと
まぁ気持ちは分かりますけどね〜…と呟いて、ダンボールを抱え直した。
中からは、真希の怒鳴り声だけが聞こえてくる。きっと先輩たちは沈黙を
守り続けているんだろう。だってそれがルールだから…
そう思いながらさゆみはあさ美に、先行ってますと言って部屋から離れた。
- 62 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 21:21
- ――あそこにいると、思い出しちゃう…
さゆみは廊下を歩きながら、さっきの真希の声を思い出した。
――私たちの時は…れいながあんなだったんだよね。
それが今では…とそこまで考えてさゆみは思考を止めた。
これから先は考えるだけで気分が落ちる。
さゆみは、そんな思いを振り払うようにわざとらしく
「これ、安倍さんに持って行けばいいんだよね」
と独り言にしては大きい声で呟いた。
そんな事をしていたせいで注意力が散漫になっていたのだろう。
さゆみは目の前のドアに気付かず
「あっ…!」
思いっきりぶつかってしまった。
- 63 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 21:28
- 「ちょ…何してんの?」
聞き覚えのある声に振り返ると、驚いた顔のれいなが立っていた。
「あ、いや…ぶつかっちゃって…」
見れば分かるよ。とれいなは呟く。
「……そうじゃなくて、何で一人でこんな大きな箱抱えて歩いてるのかって
聞いてるの。」
「…そういうれいなこそ、何してるの?」
さゆみが逆に尋ねると、れいなは「ん?」という顔をして
「あ、そうだ。あさ美さん、見なかった?」
あさ美さんなら、さっきまで一緒にいたけど…
「え、どこにいたの?」
「えっと…後藤さんだっけ?あの人のいる部屋の前。」
一瞬、れいなが気まずそうな顔をしたのが分かった。
さゆみもさっきの出来事を思い出して、れいなから視線を外す。
- 64 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 21:33
- しばしの沈黙。
先に言葉を発したのはれいなだった。
「そっか。ありがとう。」
それだけ言って、この場から逃げるように去って行くれいな。
その背中を見つめていたら、再びさゆみの脳裏をあの事がよぎった。
『絶対許さない』
『こんな所、ぶっ壊してやる』
初めてここ来た時、れいなはそう叫びながら近くにいた人を手当たり次第に
容赦なく殴りつけた。その後、れいなだけ個室に入れられて…いや、あれは
監禁されていたと言った方が正しいのかもしれないが、とにかくそんな風に
してれいなは大人しくなるまで部屋から出る事を禁じられていた。
- 65 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 21:40
- れいなと別行動になって、どれくらい経ってからだろう。
『ごめんね、さゆ…』
『警備の仕事なんだ…』
彼女に何があったのかは分からない。
れいなは突然、自分はここの仲間として働くと言い出したのだ。
何度理由を聞いてもたった一言
『…気持ちが変わったんだよ』
それから3日後の事だった。
真里に呼ばれてA館に行ったさゆみは、そこで何故か
「いいか、今度れいなが誰かの言う事聞かなかったら、一言
『絵里』って言えばいい」
と告げられた。
お前が、一番れいなをコントロールしやすいんだ、とも。
- 66 名前:3.現実 投稿日:2004/11/04(木) 21:47
- 理由を聞いても教えてくれない。ただ「そう言えばいいんだ」と言われた。
でも、それじゃあ納得がいかない。
さゆみは理由を知っていて、尚且つ自分に教えてくれそうな先輩を探し出して
所内の人があまり来ない所に呼び出した。
「知ってますよね?」
「…」
目の前にいるのは、愛。さゆみが少しきつい口調でもう一度
「理由、知ってますよね?」
と聞くと、諦めたようにこくっと首を縦に振った。
「教えてください。」
その時、愛はさゆみの瞳を見ていた。興味本位とかではなくて、本気で
親友を心配している瞳。愛はふぅっと溜息をつき、さゆみに
「他言しないように」
と前置きすると、れいなと真里の間にあったやりとりを話し始めた。
- 67 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 10:35
- 「何ですか、話って。」
壁、床、天井全てがコンクリートでできた汚くて狭い部屋。
その部屋の隅で膝を抱えて座っていたれいなは
ドアから入ってきた人物を半ば睨みつけるように言った。
「お前なぁ…年上に対する敬意ってモノはないのか?」
「あんた達みたいなのに敬意なんて持つわけがない。」
その言葉に真里は深く溜息をつくと、れいなに
「来い」
何で私が、と言うれいなに真里は
「エリに会わしてやる。」
すると、それまでの挑戦的な表情がすっと消え、れいなは少し戸惑った
ような表情を浮かべ「絵里…」と呟く。
- 68 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 10:43
- ――やっぱり、コイツにはエリが一番よく効くな。
そんな事を考えながら廊下を歩く真里の後ろを
れいなは静かに付いて行く。やがて、真里はドアの前まで来ると
「いいか、この先にエリはいる。詳しい事は中で話すけど
エリの事見て前みたいに暴れるんじゃないぞ。」
とれいなに言った。れいなが頷いた事を確認すると、真里は
ドアのロックを外し、れいなをドアを入ってすぐ隣にある部屋
へ通した。
「エリ、例のヤツ連れて来たぞ。」
真里の言葉に、ソファに座っていた少女が立ち上がる。
その少女を見て、れいなは言葉を失った。
- 69 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 10:50
- 「絵里…」
間違いない。自分の親友でもあり、愛していた絵里だった。
「エリ、こいつが田中れいな。お前の恋人だったヤツだよ。」
――だった、じゃない。
れいなは真里を睨みつける。
けど、心は完全に絵里に向いていた。
「絵里、死んだなんてウソだったんだよね?!だって、ここにいる
のは絵里だもんね?!」
エリは黙ってれいなを見つめている。
やがて、絵里の口から発せられた言葉に、れいなは凍りついた。
- 70 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 10:58
- 「私の…コイビト…だった人…なんですよね?」
「えっ…」
何言ってんの絵里、れいなだよ。忘れたの?
よく一緒に遊んだじゃない!私とさゆと絵里で!!
絵里、いつも『れいな』って私に抱きついてきたでしょ?!
私の事呼んでよ!れいなって!!
絵里の肩をつかんで揺すりながらそう叫ぶれいな。
「私…サユ、知ってる…けど…レイナ、分からない…」
呟くようにそう言ってれいなから離れたエリは、2人の様子を
少し離れた位置から見つめていた真里の後ろに隠れるように
逃げ、そして、怯えた小さな子供のように
「レイナ、怖い…」
- 71 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 11:11
- そんな絵里を呆然と見つめるれいな。真里はエリに
「エリ、お前はもう戻っていい。」
絵里は真里にペコッと頭を下げ、れいなの前を俯き加減に
通り過ぎ、そのまま部屋を出て行った。
「…まぁ…座れ。」
真里は突っ立ったままのれいなに声をかける。
しかし、れいなは動かない。
さっきの真里との約束が頭を掠め、れいなは拳を握って
今にも暴れだしそうな感情を必死で抑えていた。
「じゃあ、立ったまま聞け。あのな、アイツはウチらの実験の成功第一号
なんだ。これは前にも言ったよな?」
- 72 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 11:18
- れいなは何も言わない。けれど真里はそのまま続けた。
「ウチらの実験は…あ、コレも前に言ったか。まぁいい。
ウチらの実験の目的は、人間の再生だ。
ようするに、死んだ人間をもう一度生き返らせる。」
何に反応したのか、ぴくっと、れいなの肩が動く。
「けど、誰でも良いってモンじゃない。若くて、健康なヤツ。
つまり、エリみたいに自分で命を捨てた奴や、事故で死んだ
奴が実験の対象になる。」
そこまで喋り、真里はれいなの反応を窺った。
れいなは先ほどまでとは違い、どこか遠くを見るように
ぼーっとしている。その瞳は虚ろで、何も映っていない。
- 73 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 11:24
- 「さっき、アイツが成功作だって言っただろ?けど、本当は
欠陥がある。でも、これはどうしようもない事なんだけどな。
…アイツは、お前の事を何一つ覚えていない。もちろん、お前と
過ごした日の事も、お前があいつに言った言葉も、何も。」
「…」
「けど、道重さゆみの事は覚えている。何故かは分からない。
ただ、どうやらこの実験をすると、一番そいつにとって大切な
想い出が、全部消えてしまうという事だけは分かっている。」
ここからが本題だ、と真里はれいなの側まで行き
少し背伸びをしながられいなの耳元で囁くように言った。
- 74 名前:3.現実 投稿日:2004/11/12(金) 11:33
- 「今、色々なデータを元にして、お前との記憶をエリに移植
しようという研究をしている。データはほぼ揃った。どこから
そのデータを集めて来たかは言えないけど、絶対の情報だし
間違いはないことも確認済みだ。あとはエリに記憶を入れる
だけなんだけど…」
「『…お前が大人しくしてれば記憶は移植してやる。けどここで
あともう一度面倒を起こしたら、その時はエリを処分する。』
…矢口さんはれいなにそう言ったの。」
信じられなかった。愛さんは私から視線を逸らし
「私も、その場に居たわけじゃないから、それ以上の事は何も
知らないんだよ。」
と呟く。その表情は俯いているので良く分からないけど、きっと
本当に今までの話は誰かに聞いただけなんだろう。
- 75 名前:北風 投稿日:2004/11/12(金) 11:43
- 少ないですが、更新終了です!
>名無し様
あ、バレてしまいましたか(笑
そうです、これは作者がある日何気なく全館まとめて買った
とある漫画が元になっています!
>通りすがりの者様
今回、少しだけ田中さんたちの過去を出してみました。
これからはまた藤本さんたちに戻ります☆
- 76 名前:北風 投稿日:2004/11/12(金) 11:47
- 一番最後のレスで少々気が抜けたようで…訂正です。
信じられなかった。愛さんは私から視線を逸らし
「私も、その場に居たわけじゃないから、それ以上の事は何も
知らないんだよ。」
と呟く。その表情は俯いているので良く分からないけど、きっと
本当に今までの話は誰かに聞いただけなんだろう。
これを
――信じられない。
愛はさゆみから視線を逸らし
「私もその場に居たわけじゃないから、それ以上の事は何も
知らないんだよ。」
と呟いた。その表情は俯いているので良く分からないけど
本当に、今までの話は誰かに聞いただけなんだろう…
とさゆみは思う。
に、直してください。どうも読み返すと視点がばらばらで…
基本的にこれは藤本さん視点で進みますので本当なら藤本さんが
「私」それ以外は全員第三者視点で書くはずでした。
分かり辛くてスミマセン。精進します。。。
- 77 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/12(金) 21:36
- 一番大切な人だけの記憶が消える…悲しいですね。
早く移植を。
れいなさんにはそんなことが…
でもある意味では良い実験じゃないですか。
ということは梨華さんも同じ?…
う〜続きが気になります。更新待ってます。
- 78 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/10(月) 15:34
- いつまでも更新待ってます。
- 79 名前:北風 投稿日:2005/01/17(月) 18:17
- 2ヶ月以上も放置でスミマセン。。。
今、テスト等で忙しく中々更新する時間がありません。
でも、必ず更新はしますのでもうしばらくお待ちください。
- 80 名前:you 投稿日:2005/01/23(日) 03:53
- pa-tona- no pakuri dayona?
- 81 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/29(土) 14:55
- 更新いつまでも待ってます。
- 82 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/02(水) 22:00
- まだまだ待ってます。
- 83 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/18(水) 19:28
- 生存報告だけでもお願いします。 保全します。
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 18:07
- 必ず、、、
- 85 名前:北風 投稿日:2005/06/26(日) 21:40
- こんばんは。お久しぶりです。
なんだか、かなり間を空けてしまってすみません。
まさか、まだ待ってくださる方がいるとは思っていなかったので
すごく嬉しかったです。
ありがとうございます。
必ず完結させるので、もうしばらくお待ちください。
本当に、待っていてくださる読者の皆様には感謝しています。
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/27(月) 01:23
- 待ってます!
- 87 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/09(金) 13:25
- 大量な待ち続け文を書いてしまい、荒らしのようになったことを深くお詫びもうしあげます。
ゆっくりでいいので、作者様が帰ってくる日を楽しみに待ってます。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:21
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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