ブルーアイ・ファンタジア
- 1 名前:サパナー 投稿日:2004/10/29(金) 23:34
- 剣と魔法のファンタジーを書いてみようかと思います。
題名には特に意味はありません、主人公は高橋さんですが
なるべくオールキャストでいきたいと思います。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2004/10/29(金) 23:37
-
「何が・・・何が起こってるんや!?」
煙が辺りを覆いつくす森の中を十歳ほどの少女が息を切らせて走っている。
その表情は不安そうに目を見開き、煙の立ち昇る一点を見つめていた。
「村の皆は!? いったい何なんやよ!?」
少女は立ち止まり自らの生まれ育った村の方向を険しい表情で眺める。
そして、動物達はそんな少女にはお構いなしに逆方向に走り去っていく。
その姿は火の手から逃げているのではなく、まるで何かに怯えている
かのようだ。
「いったい・・・何が・・・?」
顔に付いたすすを手で払い、少女は再び走りだそうとする。
しかし、その行く手を遮るように黒い影が立ちふさがった。
その姿は人間の大人位の身長で全身が毛で覆われており、猪のような
顔をした異形の怪物。
そんな怪物が3体、少女の前に現れたのだ。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2004/10/29(金) 23:39
-
「ひいっ!! オ・・・オーク?」
少女は村の木こりのおじさんが話してくれた森の奥に住むオークという
怪物の事を思い出していた。
森の奥底、お日様の光も歪められてしまうほどの濃い瘴気に包まれた
場所にオーク達は住んでいるといわれている。
その性格は残忍で迷い込んだ人間の手足をザギザの刀で切り裂いて
数日間晒し者にした後に食べてしまうのだという。
そのオーク達が目の前にいる。
薄汚れた革鎧に身を包み、手にはノコギリのような刀を持ち、涎を垂ら
しながら赤く光る目で少女を睨み付けている。
「誰か・・・助けて」
少女は恐怖で動くことも出来ず、悲鳴すら上げる事も出来ずに立ち尽くす。
それを見てオーク達は歪んだ笑みを浮かべながら少女を取り囲み始める。
明らかに恐怖に震える獲物をあざ笑い、そして蹂躙することを愉しんでい
るかのようだ。
それは正しく邪悪な闇の心を満足させる為だけに存在している怪物だった。
そして、オークの魔の手が少女に伸びようとした瞬間、その腰に下がって
いた棒のような物が落ちる。
そして、それは突然に少女の視界に入ってきた。
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2004/10/29(金) 23:40
-
(何?・・・手?・・・人の手!? ブレスレット!!)
オークが落としたのは人の腕、しかもその手首に巻かれたブレスレットは
少女にとって日常の光景に刻み込まれた物。
とても、とても大切な人の持ち物。
姉妹のように仲の好かった幼馴染の宝物。
「やっ・・・・・・!!」
今度は恐怖ではなく怒りと絶望のあまり声を上げる事が出来ない。
声を出す行為自体忘れてしまうほどの絶望に頭の中が支配されていく。
少女の周りの空気が揺らぎ、その姿をぼやけさせる。
明らかに尋常ではない力が少女の中から湧き出してくる。
そして、顔を上げた少女の眼が青く輝いた。
- 5 名前:プロローグ 投稿日:2004/10/29(金) 23:41
-
「許さない・・・殺してやる!!」
冷たく凍りつくような声が少女の口から発せられ、その言葉に込められた
強烈な殺気にオーク達はその身を呪縛される。
次の瞬間、少女は目の前のオークに向かって走る。
そのスピードはまさに一瞬、正気に戻ったオークが刀を振り上げたときには
すでに懐に飛び込んでいた。
振り上げた腕にその細い腕を絡め背後に回り込みながらひざ裏に強力な
蹴りを放ち、その勢いを利用してオークが倒れこむのとは逆方向に肘を決
めながら回転して倒れこむ。
その一連の動作がほんの一瞬、瞬きをするほどの時間に完了していた。
そして、腕を折られたオークが起き上がり少女に向き直った瞬間、
血しぶきが宙を舞う。
残り2体のオークは喉笛を断ち切られ膝から倒れこみ、その間には
奪った刀を構えた少女が青い眼に冷徹な光を湛え佇んでいる。
最後のオークがその状況を理解した瞬間、その眉間には少女に奪わ
れた自らの刀が突き刺さっていた。
「マキ・・・姉・・・ちゃん」
少女の青い眼はその光を急速に失い始め、それとともに辺りに撒き散ら
していた強烈な殺気はその小さな体の中に収められていく。
そして少女の意識は闇へと包まれていった。
深い・・・深い・・・闇の世界へと。
- 6 名前:第一章 01 投稿日:2004/10/29(金) 23:43
-
「つーか、どこだよここ!?」
複雑に入り組んだ木々の迷路を小さな影が縫うように駆け抜けていく。
その姿は旅装束に身を包んだ小柄な女性のようだがスピードが尋常ではない。
まるで小型の獣の如く機敏な動き、とても人間に実現できる動きとは思えなかった。
「相手は・・・3・・・4・・・5人か、めんどくせーな、距離のある内に仕掛けるか」
小柄な女性は走りながら懐から御札のような物を取り出す。
その札には幾何学模様と式字といわれる古代東方文字が書かれている。
「まったく、これ一枚でいくらすると思ってんだよ〜」
小柄な女性はそう言うと前方の大岩を跳び越し、陰に身を隠しながら空中に
複雑な印を描き、取り出した御札をそこにかさねる。
すると、御札は光を発し人の姿に変化していく。
光が収まるとそこには術を使った女性と瓜二つの人形が姿を現していた。
- 7 名前:第一章01 投稿日:2004/10/29(金) 23:44
-
「行け!!」
掛け声と共に二人は大岩をはさんで別方向に走り出す。
それと入れ替わるように五つの人影が大岩の上に現れる。
人影は逡巡した後、二手に分かれた。
(よし! 二人なら何とかいける!)
小柄な女性は再び深い森に入ると懐から小さな袋を取り出し上空になげる。
その袋が木々の高さと同じ位置に達した瞬間、爆音と共に強烈な閃光を放ち、
半径十数メートルを光の中に取り込んだ。
光の中では金属音が数回。
白い光のドームが消え去ると、そこには両刃の剣が生えた手甲を右手にはめた
女性が、全身黒装束に包まれた死体二体を見下ろしながら立っていた。
- 8 名前:第一章 01 投稿日:2004/10/29(金) 23:46
-
「このマリー様を捕まえようったってそーはいかないってーの!!」
自らをマリーといった小柄な女性は右手の剣を手甲に納めると横たわる死体の
様子を調べ始める。
改めて倒れている死体と比べるとマリーの身長はかなり小さい。
その身長は12、3歳の少女と変わらない背丈で、しかし顔はしっかりと化粧をした
大人の女性の顔をしている。
「こいつら『ガザガーン』の忍びか? 集団で来られると厄介だな〜」
そう呟くとマリーは立ち上がって再び深い森の中へと入っていった。
- 9 名前:第一章 02 投稿日:2004/10/29(金) 23:47
-
「何てゆ〜か、完全に道に迷ってまったな〜」
深い森の中、道なき道を歩く少女はその口からもれる呟きとは裏腹に、
まるで困った様子も見せずにのほほんとした笑顔を浮かべている。
そのいでたちは白を基調とした服装に意匠をこらした胸当てをつけ、
手足には動きを阻害しない程度の装備を付けた軽武装の戦士といった
姿である。
そんな少女が腰に手を当て深い森の木々の隙間からもれる光を頼りに
辺りを見渡している。
「道もわからんし弁当でも食べながら〜どうすっか考えよっかな〜」
相変わらずのんきな口調で腰から下げたレイピアを鞘ごと外し、近くの
岩に腰をかけ、リュックの中から食料を取り出す。
薄くスライスされた干し肉と輪切りにされたトマトをパンに挟み、細かく
刻んだチーズを振りかけ、最後に小さな皮袋に詰めたソースを掛けて
出来上がったのは、こんな場所には似つかわしくない彩り鮮やかな
サンドウィッチ。
- 10 名前:第一章 02 投稿日:2004/10/29(金) 23:49
-
「う〜おいしそっ!」
少女は出来上がったサンドウィッチを満足そうに見ながら一気に頬張
ろうと大口を開けて身構える。
その瞬間、目の前に何かが降ってきた。
突然視界を遮った存在は少女を飛び越して走り去っていく。
さらにその後を追うように三体の黒い人影が目の前を走りぬけていく。
突然の出来事に茫然自失となった少女だが、目の前に広がった光景に
わが目を疑った。
なんとそこには踏み潰されて無残にも残飯と化したサンドウィッチの残骸が
地面に散乱しているのだ。
「サ・・・サ・・・ンド・・・ウィッチ・・・が」
悲しみにくれる少女の瞳は次の瞬間怒りに支配された。
「許さんよー!!!!!!!!!!!!」
少女は立て掛けてあったレイピアを掴むと、先ほど走り去った人影
を全速力で追いかけ始める。
食べ物の恨みが恐ろしいのか、それとも少女の元々の能力なのか、
おそらくその両方だろうが、通常では考えられないスピードで先ほど
の人影を追いかけていく。
「絶対!! ぶっとばすやよ――――!!」
- 11 名前:サパナー 投稿日:2004/10/29(金) 23:51
-
こんな感じでいきたいと思います。
あまり上手くないと思いますが、よければ見てやってください。
更新はゆっくりめになると思います。
- 12 名前:スペード 投稿日:2004/10/31(日) 00:38
- はじめまして。
おもしろそうですね。
続き期待してます。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 12:59
- 高橋さん主演のファンタジー物ですか。
珍しいですね。話も面白そうなんで期待してます。
- 14 名前:第一章 03 投稿日:2004/11/08(月) 21:39
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「そろそろ時間か? どうしたもんかなー」
マリーは悩んでいた。
先ほど倒した追っ手の二人とは別に、もう三人に顔を見られている。
本来なら倒しておくべきだが今から追いかけても見つかる保障は無い。
しかし、このままでは今後の活動に支障が出てしまう恐れがあり、今の
うちにこの場を離れるか追っ手を追いかけるか難しい選択である。
そして護符の効力が切れるのは時間の問題だ。
「よし!! 追いかけるか!!」
悩んではみたものの、決心したのか来た道を戻り始める。
再び走り出したマリーの顔は、獲物を狩る追撃者のそれになっていた。
- 15 名前:第一章 04 投稿日:2004/11/08(月) 21:40
-
「見つけた!! まつんやよー!!」
白い少女剣士は前方の開けた場所に立ち止まっている黒装束の男たちを
見つけると、その前に飛び出して怒りをぶちまけた。
「サンドウィッチー!! あんたら、どーしてくれるんやー!?」
胸を張って腰に手を当てながら怒りもあらわにまくし立てる。
「大体やねー、あんたら人がせっかく作ったサンドウィッチを踏み潰しといて
何も言わんで逃げるとはどーゆうことなんやー!? 人に迷惑かけたらちゃ
んとあやまらなあかんて、親に教わらんかったんかー!? そうや無くても
人としての常識とゆうもんがあるやろーてっ!! あぶな!!」
少女はいきなり飛んできたクナイを避けると、びっくりした顔をしながら身構えた。
- 16 名前:第一章 04 投稿日:2004/11/08(月) 21:42
-
「ちょっとー!! 危ないやろがー!! いきなり何するんやー!!」
黒装束の男たちは少女の声に耳を貸すことなく、片刃の小刀を抜いてじわりと
周りを取り囲み始める。
それは明らかに確かな殺気を放っており、少女を生きて返す気が無いという事
がはっきりと分かるほどだ。
その殺気を受けて少女の表情も一気に引き締まり、腰のレイピアを抜いて身構える。
「そっちがその気なら、こっちも容赦しないやよ!!」
- 17 名前:第一章 05 投稿日:2004/11/08(月) 21:44
-
前方に見える光景を一言で表現するならば、まさしく白銀の風。
一人の少女に一斉に襲い掛かる黒装束の男達を白銀の風が切り裂く。
それは、まさに一瞬の出来事だった。
刀を取り落とした黒装束の男達は全く同じタイミングでその場に崩れ落ち、
その中心にはレイピアを真横に構え片膝を付いた少女が微笑みを浮かべ
佇んでいる。
「すっげー!!」
マリーはその光景に思わず見とれてしまった。
血を流し倒れている黒装束の男達、その傍らに立つ美少女、その光景は
凄惨ではあるがどこか幻想的でもあった。
いつの間にか引き寄せられるように少女の方に足を踏み出す。
――― パキッ!!
- 18 名前:第一章 05 投稿日:2004/11/08(月) 21:45
-
踏み出したその足の下の小枝が悲鳴を上げた瞬間、少女と目が合う。
その目はサファイヤの如く青く美しい、そして氷山の如く冷たく怜悧な輝きを
放っており、吸い寄せられるように目が離せない。
(なに、敵・・・なの?)
マリーは自然と攻撃態勢を作る。
それは鍛えられた肉体が自動的に反応した結果であり、けして理性的に
考えた行動ではなかった。
(来る!!)
マリーがそう思った瞬間、少女は目の前に一足飛びで迫っていた。
切っ先が三つに見えるほどの高速の突きが眼前に迫る。
それを奇跡的な反射神経でかわすとレイピアを引くタイミングに合
わせてナイフを放つ。
しかし、それを少女はレイピアの一振りで弾いた。
- 19 名前:第一章 05 投稿日:2004/11/08(月) 21:47
-
(いける!!)
レイピアの切っ先がそれた瞬間を逃さずマリーは少女の懐に飛び込み
手甲に仕込まれた剣を袈裟懸けに振るう。
しかし剣が触れる瞬間、少女は体を沈ませて作った隙間に手首を返して
レイピアを割り込ませて受け止めた。
「マジ!?」
信じられない思いで後方に跳ぶマリーを、それ以上のスピードで少女が追う。
マリーは跳びながら背中に回した左手で空中に印を描く。
背中から通り抜けた印は服の心臓部分に縫い付けてあった御札に反応して
前方に光の盾を作り出す。
まさに紙一重、レイピアの切っ先が服を突き通し皮膚に触れる瞬間、術が発動
し少女を後方に弾き飛ばす。
「っぶね!!・・・え!?」
マリーは一瞬我が目を疑う。
目の前には先ほど使った物と同じ小さな袋が落ちているのだ。
切り裂かれた服の内ポケットには閃光弾の詰まった袋が収められていた。
そして、その結果起きる事は容易に想像ができる。
「やっば――――い!!」
- 20 名前:第一章 06 投稿日:2004/11/08(月) 21:48
-
「う〜ん。 サンドウィッチ〜むにゃ〜やよ〜」
「サンドウィッチ?・・・・・て、何なんだよこいつは?」
先ほどギリギリのところで命のやり取りをしていた相手とは思えない。
年の頃は16,7歳だろうか幸せそうな顔をして眠っている少女は、
とても美しい顔立ちをしていた。
肩より少し長い薄茶色の髪をストレートに伸ばし、美しい細工を施した
髪留めを付け、真珠のピアスを付けた姿は洗練された印象を与えるが
涎をたらし締りの無い笑顔を浮かべた表情はどこか田舎臭くもある。
いずれにしてもこんな姿を見たら危険人物とはとても思えない。
「縛っとくか」
とりあえず武器を取り上げロープでぐるぐる巻きにしてから担ぎ上げる。
子供のような小さな体格だが自分より大きな少女を難なく担ぎ、しかも
平然と歩き始める。
マリー自身もただ者ではないようだ。
- 21 名前:第一章 06 投稿日:2004/11/08(月) 21:50
-
「まったく、何でおいらがこんな事しなくちゃいけないんだよ」
「う〜ん、やよ〜むにゃむにゃ〜」
「うっさい!! ボケ!!」
とは言え置いて行く訳にはいかない事も確かだ。
こんな所に置いていったらガザガーンの追ってに殺されてしまうに決まっ
ているし、それでは寝覚めが悪い。
自分の身代わりに置いて行こうなどとは考えもしない、以外に真面目で
善良な性格をしているようだ。
「まー街道に出てから捨てとけばいいか。 あーめんどくせー」
- 22 名前:第一章 07 投稿日:2004/11/08(月) 21:51
-
「ふーん、まあ雑魚が何人殺されようと俺の知ったこっちゃ無いが、問題は
これをやった奴がどこまで見たか・・・?」
「今はまだ準備が整っていない。 依りも手に入れていないし場所も確保
出来ていませんよ」
黒装束の男達の死体を前に二人の男たちが何やら話し合っている。
一人は全身を黒に塗り上げたプレートメイルを身に着けた戦士で、意匠を
こらした鎧と飾り布に刺繍された山羊の紋章からガザガーンの騎士、それ
もかなり高い身分の者だとゆうことが判る。
一方もう一人は灰色のローブに全身を覆われた明らかに魔道士と思われ
る姿をした少年で、そのフードの中の顔は12,3歳の美少年である。
- 23 名前:第一章 07 投稿日:2004/11/08(月) 21:53
-
「いずれにしろわが国が軍備を増強している事は他国にも知れていますし
探りを入れてくるのは当然でしょう」
魔道士の少年は黒い騎士に対して自らの見解をのべる。
しかし、その声には全く感情がこもっておらず美しい顔立ちとあいまって
まるで人形が喋っているかのようだ。
「まあ、その部分だったらいくら知られようと構わんが、卵を所有している事
だけは知られる訳にはいかんぞ」
それに対して黒い騎士は言葉の中に他者を嘲笑する響きを含ませ、その
事をまるで隠そうとしない。
しかし、それに対しても魔道士の少年はまるで気にする事も無く、表情ひと
つ変えずに懐から黒い水晶を取り出した。
- 24 名前:第一章 07 投稿日:2004/11/08(月) 21:54
-
「冥界の惨華、暗殺の猟犬、血の盟約に従い我が意に答えよ
・・・・・ディバウル!!」
少年の唱えるマジックワードに反応し黒水晶が深紫の光を放ち始める。
黒水晶は少年の手を離れ空中に浮いた後二つに分離し黒装束の死体
に吸い込まれていく。
そして深紫の光が全身に広がったとき、それは起こった。
二体の死体が徐々にその形を変え始めたのだ。
一体は地中に根を張り出した青黒い植物へと姿を変え、もう一体は四本足の
獣へと姿を変えていった。
ただしその姿は通常では在りえないおぞましい外観をしている。
植物は人の形をしているが全身が捻じ曲がった蔦に覆われ、さらに体のいた
るところに毒々しい色の蕾を備えている。
獣の方は夜の闇より濃い黒の体毛に覆われ、鋭い牙は口外に飛び出し意思
が在るかのように蠢いている。
いずれも魔界の生物がこの世に具現化した姿のようだ。
- 25 名前:第一章 07 投稿日:2004/11/08(月) 21:55
-
「こいつらに追わせるのか?」
「死体に籠められた残留思念が追跡に役立ちますから適任でしょう」
「まあ、その件はお前に任せる。 必ず殺せ、もちろん背後関係もな」
「判りました」
魔道士の少年は表情を変えず陶磁器のような顔で再び呪文を唱える。
「魔界の幻霧、時さえも惑わす無常を共に纏わせよ・・・・・バフォード!」
再び唱えられたマジックワードに反応し、暗黒の霧が地面より湧き出して
魔道士の少年と魔物を覆い隠す。
次に霧が薄れ消えたとき、その場には魔道士の少年と魔物の姿は跡形も
無くなっていた。
「行ったか。 気味の悪い餓鬼だが使える物は使わせてもらうとしよう」
黒い騎士は魔道士の少年が消えた辺りを侮蔑の表情で眺めながら吐き
捨てると、踵を返して歩き出した。
- 26 名前:第一章 08 投稿日:2004/11/08(月) 22:08
-
「アイって言います。人呼んで放浪の美少女剣士アイとはあーしの事です」
「しらねーよ!! あーしって何だよ!! 何語だよ、てゆーか自分で美少女
とかゆうなよ!!」
「すいません・・・で、あたしのーサンドウィッチをあの真っ黒な服着た奴らが
ふんずけてったんで〜頭きてまったんです」
「でってなんだよでって、しかも微妙に訛り消してるし、目も青くないし!!」
自らをアイと名乗った少女とその訛りにもーれつな勢いで突っ込みを入れる
小柄な女性は、お互いのテンションが全く合わないまま会話を続けている。
「んで〜マリーさんはあんなとこで何してたんですかー?」
「質問に答えろよ!!」
アイはマリーの質問に全く答えずニコニコ笑顔で話しかけている。
その姿はとても青い目の狂戦士とは思えない無邪気で朗らか田舎娘
といった感じで先程まで纏っていた殺気は微塵も感じさせない。
むしろその全身からは穏やかなお日様のような気が溢れ出ている。
その気に当てられたのかマリーの怒りも段々と薄れていく。
- 27 名前:第一章 08 投稿日:2004/11/08(月) 22:10
-
「もーいいよ。 おいらだけ怒ってるのも何か馬鹿みたいだし、突然襲い
掛かってきた事は忘れることにする。 さっきも言ったようにおいらの名前
はマリー、『バザールーン』を拠点にしてる行商人なんだ」
「何で森の中にいたんやろか?」
「ガザガーンに商売しに行ってたんだけどね、まあ近道ってゆうかさ森を
抜けた方がが早く帰れるから・・・ アイちゃんこそ何してたの?」
なんだかんだでアイのペースに巻き込まれてしまったのかさっきまで怒っ
てたのに今はもう友達のように馴染んでいる。
「わー!! あーしもバザールーンに行こうと思ってたとこやよ!!」
「なんだったら一緒に行く?」
「行く、行く、行きますー!! や〜実は道に迷ってたとこだったんですよー!!」
「やっぱりかよ。 そんなとこじゃないかと思った。 マリー様のお供にしてやるか
ら感謝するように」
「ありがとございますー」
「じゃっ、荷物持ってね」
「えー!!」
「つれてかないよ!」
「すいません。 ごめんなさい。 つれてってください」
すでに二人の間には不思議な上下関係が出来上がっているようだ。
それは同じ学校の先輩後輩のような感じだろうか、その会話にはある種の
気安さが溢れていた。
「よし、それじゃー出発!!」
「お―――!!」
マリーの掛け声と共に、小さな大人と田舎者剣士のデコボココンビは
交易都市『バザールーン』に向けて歩き出した。
- 28 名前:サパナー 投稿日:2004/11/08(月) 22:26
- 今日の更新はここまでです。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
>12 スペードさん
どうもありがとうございます。
何とか期待に答えれるように頑張ってみます。
今後ともよろしくお願いします。
>13 名無飼育さん
面白くなるように頑張りたいと思います。
しかし、はじめてから言うのもなんですが、
高橋さんの訛りを表現するのに手間取ってます(笑)
- 29 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/09(火) 13:21
- おもしろい!
高橋がかわいいなあ
- 30 名前:konkon 投稿日:2004/11/10(水) 01:09
- 白版でRPG書いてるkonkonといいます。
愛ちゃん主演!何か響きがいいですね〜w
とても面白いです!
続きも大期待です♪
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