smile on me
- 1 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 15:34
- さて、黄板からやってきました。
月にもまだ容量がありますが、こちらでは以前と同じくあやみきだらけかと。
白板はあやみき中心、月はその他色々…
そのような形で進めて行きたいと思いますので、よろしくお願い致します。
- 2 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 15:37
- リビングから離れたベッドルームで一人寝転がる。
とにかくやる事がいっぱいで休みは殆どなかったから。
久しぶりに安眠しようかと思ってベッドの横にあった雑誌も読まず
に目を閉じた。
だけど何か物足りない。
至らない不快感と、物足りなさ。
そう思って美貴はベッドから飛び降りリビングに向かった。
- 3 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 15:40
-
「亜弥ちゃん」
バタンとドアを閉め、軽く溜め息をつきながら恋人の名を呼ぶ。
案の定、勉強中だった。
最近では一人で寝られないくらい中毒症状が出ている美貴。
それは彼女がいないから。
「ん、どしたの?寝るんじゃないの?」
「…眠れない」
「じゃこっちで寝てれば?暖房つければ暖かいし…」
「違う、寒いんじゃない」
分かってよ。
一緒にいたいけど、そう口に出来ない。
苦しい思い。
- 4 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 15:45
-
不思議そうに首を傾げて、堅苦しい制服のブレザーを脱ぐ彼女。
傍にあったハンガーにかけ壁掛けにかける。
「さっきまで散々眠いって言ってたじゃん」
「…ちがうんだよ、眠れないの」
「だからなんで?」
「……なんでも」
やや不服ぎみな亜弥ちゃんは再びシャーペンを握る。
なんだよ。
もっとかまってくれれば、言えそうなのに。
放ったらかしにされた美貴は正座をくずして座り、真剣な眼差しで
参考書と戦う彼女を睨んだ。
「じゃあ、何したいの?」
「…わかんない」
「わかんないって…じゃあずっとそうしてれば」
「うー…」
受験だから時間がないのは分る。
でももっとかまって欲しい。
- 5 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 15:49
-
試しにさぐりで、亜弥ちゃんの肩にこてんと頭を置いてみる。
ウザがられるのは予想できる。
でももっと甘えたい。
「…なぁーによぉ、どうしたのってば」
「…うー…」
ようやく彼女の口から甘い声が漏れる。
いつものリラックスしている時の表情だ。
これならもっと、甘えられる。
「…いっしょに、寝よ」
「ダーメ。あたし勉強しなきゃいけないの」
「わかってるよ。美貴が眠るまで一緒にいてって」
「いるじゃん、ここに」
「……もーいい」
へんくつばっかりこねる亜弥ちゃんは嫌いだ。
美貴の気持ち知ってるくせに、そうやって遠回しにするから。
- 6 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 15:55
-
「嘘だよ。おいでみきたん」
「…うー」
「分かったから。眠れるまでだっこしててあげるから」
やっと骨が折れたのか、亜弥ちゃんは優しい笑顔でだるっ気満々の
美貴をぎゅっと抱きすくめた。
亜弥ちゃん的には体勢がきついと思うけど。
「う゛ー…」
「にゃは、みきたんワンコみたい」
「…亜弥ちゃんがかわいすぎるんだい」
「えぇ?」
「もー…好きだー」
妙に正直な美貴は、べらべら照れる言葉を喋りまくる。
普段、常に思っている事をぶちまけた。
亜弥ちゃんの顔が見えないことをいいことに、愛の言葉を次々と。
「たん、いつも言ってくれないのにね」
「えー?」
「好き、とか」
「…まぁ。でもいつも思ってるよ」
「ほんとぉ?」
「本当だよぉ、好き好き」
- 7 名前:僕の魔法使い 投稿日:2004/11/12(金) 16:00
- 眠くなってくる。
いや、激しく眠い。
でも、目を閉じたら亜弥ちゃんは離れる。
「んぅー…」
「どさくさに紛れてどこ触ってんの」
「胸」
「バカ、離れろぉ」
「……いー匂い」
文句を言いながらも、美貴を引き剥がそうとしない。
やっぱり亜弥ちゃんは美貴に、美貴は亜弥ちゃんに甘い。
「…ちゅーしてくれたら寝る」
「あたしのキスは安くないんですけど」
「うそだ、軽々しくしてきたくせに」
「それは付き合う前でしょ」
「よーっぽど美貴の事好きだったんだ、亜弥ちゃん」
「……そうだよ、悪い?」
いえ、全然。
ニカッと笑って、そっと目を閉じた。
亜弥ちゃんの顔は見えないけど、かわりに唇が降りてくる。
何度も甘いキスをしながら、美貴はいつのまにか眠りに
落ちてゆく。
魔法のような、甘い夢を見るように願いながら。
FIN
- 8 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 16:01
- 一発目はやっぱり甘いあやみき。
家族シリーズもまだまだ続きますw
- 9 名前:前スレ817 投稿日:2004/11/12(金) 16:29
- ハァ━━━━*´Д`━━━━ン!!!!!!
言った通り金魚の糞のようについてきました。
一発目からあまあまで、これからもっと楽しみです。
- 10 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:19
-
「んっ…ん…」
「……かわいい」
終りを告げたキスをして、ふぅとベッドに横たわる。
少しばかり汗をかいた後、亜弥ちゃんを抱きしめた。
「…ねぇ、好き…」
「ん?何か言った?」
「んーん、何でもない…」
本当はしっかり聞いていた。
好き、って言ったんだ。
こういう夜はあの時を思い出す。未だ覚えている、初めての夜。
- 11 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:24
-
バスルームから聞こえてくるシャワーの音。
水が跳ねる度に美貴の心臓はバクンと高鳴ってくる。
何だろうこの気持ち。
複雑な気持ちが煎り混ざる中、本当に今夜亜弥ちゃんと結ばれると
思うと入社試験よりも緊張する。
先にシャワーを終えた美貴は生乾きの髪をくしゃっとかいて、ベッドを
殴った。
「…たん?」
「ふぇっ!び、びっくりした」
「にゃはっ、へんなのぉ」
至って冷静に見える亜弥ちゃんは、実はそんな事なくて。
バスローブから覗く白い肌に鼓動を打ちながら、ゴクリと息を飲んだ。
「…大丈夫?」
「ん、ヘーキだよ?」
無言になりつつある部屋。
その沈黙を破るように、美貴は飛びつくように亜弥ちゃんをベッドに押し倒した。
- 12 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:27
-
もちろん亜弥ちゃんにとっては、初めての経験。
美貴はどうやってしてあげればいいのか分らないまま、本番を迎えた。
いや、もちろん練習とかはしないからね。
まずは怯えないように唇から、首筋までキスを続けていた気がする。
「ん…っ…はぁ…」
「亜弥ちゃん…」
段々息が荒くなって、美貴もそれに伴って呼吸が苦しくなる。
何でだろう、キスをしているだけで息苦しいなんて。
そして舌を這わせたのは胸。
頂を含み吸ったり転がしたりすると、声にならないように亜弥ちゃんは
身をよじっていた。
- 13 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:33
-
「ぁっ…やぅ…んっ」
「うー…可愛いよぉ」
「ひゃぁっ…あっ…」
胸からおへそにかけて舌を滑らせると、一層息が荒くなる。
ダメだ、緊張して舌が震える。
「…やっ、ダメッ!」
「何で?」
「きたないっ…ってばぁ…」
「そんな事ないよ」
必死に拒否する亜弥ちゃんをよけて、無理矢理っぽく足を開く。
そこの中心にあつくキスをして舌を這わせた。
「んぁっ…んっ、んっ…ふぁぁ!」
「亜弥ちゃん…キモチいい?」
「んっ…やぁーっ!ふぁふぁぁぁっ…」
亜弥ちゃんの声が愛おしい。
もっともっと感じて欲しくて、強くソコを吸う。
時々甘噛みしたり舌を入れると聞いた事のないような甘い声が漏れてくる。
- 14 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:38
-
「んっ…いっ…た…」
「ごめっ…ごめん!」
「ん…だいじょぶだよ?」
痛がる亜弥ちゃんを見ていると、もうこれ以上したらいけない気がした。
でも亜弥ちゃんは涙を堪えていつもの笑顔を見せて。
頬を近付けると、やさしくキスをしてくれた。
それが合図だと分かって、亜弥ちゃんを抱きしめながら。
「んぁっ…んっ、んっんっんっ…やぁぁっ!」
「…亜弥ちゃん…亜弥…」
「ぁっぁっぁっ…ぅんっ…」
そして、亜弥ちゃんは高い声と共に美貴の腕に倒れこんだ。
「あぅんっ…んっぁぁぁぁぁぁっっ!!」
- 15 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:41
-
「…だいじょうぶ?」
「うん、…ん、気持ちかった」
「そ、そっか…」
不安が全部剥ぎ取れて、安堵が美貴を包んだ。
亜弥ちゃんが眠ろうとする美貴の頬や目尻にキスするもんだから
眠れなくて、結局次の日の仕事には遅刻していった。
部長には新婚ボケもほどほどにと言われた事も、覚えている。
- 16 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:44
-
「…んー…眠い…」
「ほぉら!みきたんお仕事遅れちゃうよぉ?」
「……亜弥ちゃぁんっ」
「キャッ!」
エプロン姿が美しい亜弥ちゃんの腰をぐっと抱いて、布団に引きずる。
朝の情事も、悪くなかったりして。
「なぁによ、あたしする事いっぱいあるんだから離して!」
「ヤだ。ちゅーしてくれるまで離さないよん」
「んもぉ、エロたん」
ぐいっと亜弥ちゃんの両手首を掴み、美貴は寝ぼけまなこで亜弥ちゃんを押し倒す。
唇が降りてくるのを待って、目をとじた。
- 17 名前:はじめての夜 投稿日:2004/11/12(金) 20:48
-
ぺしんっ
「いだぁっ!」
「フザけてないで起きるのっ、遅刻しても知らないからね」
「いー…酷い」
「わかったよ、からかっただけですぅー」
亜弥ちゃんは美貴の手をすり抜け、額をパシンとひっぱたいた。
痛がる美貴を呆れてぎゅっと抱きしめて唇にちゅっとキス。
「…ワンモアプリーズ」
「ばぁか。ほら、早く着替えて下降りて来てよ?」
「はーい」
美貴のお願いを軽く笑ってかわし、ワイシャツを手渡す。
やっぱりこういうエプロン姿の亜弥ちゃんが一番好きだな。
そんな事を思いながら、亜弥ちゃんを抱きしめていた腕を名残り
惜しく解いた。
昨日の夜の出来事は、夢じゃなかったと噛み締められるのが毎日なんだけど。
FIN
- 18 名前:証千 投稿日:2004/11/12(金) 20:50
- お、お、甘いw
この後は田亀に力を注ごうかと計画を練っていたりします。
もちろんあやみきもあるので御安心を。
>9様 毎度ありがとうございます。ついて来て下さり本当に安心するばかりで…
これからも都度よろしくお願い致します。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 21:57
- 新スレおめでとうございます。
いやぁ…血を吐き出しそうになるくらい甘いですねw
あやみきって素晴らしいと再確認しました。
新婚さんは色んな妄想が膨らみますなぁ…ムッハー
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 00:40
- おぉ、甘いですねぇ!!
家族シリーズ大好きです。
やっぱりあやみきはよいですねぇ。
田亀も大好きなのでこれからも楽しみにしています!
- 21 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 02:29
- ハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!
前スレから追っかけて来ました。
甘い甘い…とろけそう。今宵も(;´Д`)ハァハァさせていただきました。
田亀リクしたの自分なので、すっごく楽しみです。
- 22 名前:証千 投稿日:2004/11/13(土) 07:39
- レスありがとうございます。
>19様 吐血ですか?どうぞハンカチで血を拭いて下さいませw
駄文ですがどんどん胸焼けしていただければ幸いです。
>20様 園児からどう成長するのか御覧下さいませ。
甘いあやみきは書きやすいのでw
>21様 追っかけありがとうございます!駄文ですがエロ含みは
苦手…でも楽しんで頂けたようなので光栄でございます。
では、田亀の成長とともにあやみきを御覧下さい。
- 23 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 07:43
-
「おはよぉー亜弥ちゃん」
「おはようみきたん。ちゃんと早く起きたじゃん、えらいっ!」
「当たり前だよぉ、絵里の入学式ぐらいちゃんと起きるよ」
アイロン済みのワイシャツを着ながらコーヒーをすする。
そう、今日は特別な大イベントがあるから珍しく早起きした。
何かって?
それはもう絵里にとっての青春のステージであって……
「みーきたん、ほらっ」
「へ…ぇ…」
ふわっとしたスカートに、紺色のブレザーが良く似合う絵里。
振り向きざまに笑った絵里が、すんごく可愛い事に気がついた。
「へぇ、似合うじゃんよ」
「そう?れいなに見せてこよっ」
「ダッ、ダメェ!!」
「なんでよぉ」
「ダメ!とにかくだめ!!」
何を言ってるんだかこの娘は。
とにかく、今日は中学校の入学式。
- 24 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 07:47
-
「友達いっぱいできるかなぁ?」
「できるよー、ママもいっぱいいたよ?」
「そっかぁ、頑張ろーっ!」
亜弥ちゃんが動くたび付いて回るのは昔から変わらない絵里。
結局いつまでもママッコなんだよなぁ。美貴にはあまり寄り付かないくせに。
反抗期が来るなんて思えないくらい、亜弥ちゃんとは仲が良い。
「じゃ、そろそろ行こっか?」
「うん!」
「じゃ、れいなくん呼んでおいで」
「れ、れいなくん!?」
やっぱりそういう事ね。
もちろん中学校は隣人の吉澤家の子供であるれいなくんと同じ。
絵里は相当喜んでいて、クラスも一緒だったらいいなぁと色々言っている。
が、美貴はそれが一番心配だ。
- 25 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 07:52
-
「れーいなっ!似合う?似合う?」
「し、知らん…あんまり騒ぐな」
「なんでよぉ、れいなってばぁ」
「っ…に、似合うとるよ…これでよかやろっ」
「やったぁ!」
何だよこの甘〜い空気はよ。
やさぐれぎみの美貴を横目にイチャつく絵里とれいなくん。
中学生の分際で何をしてるっつーの。
「みきたんってば、目怖すぎ」
「はっ…」
「ふふっ、ほら行こ?」
「う、うん」
美貴とは正反対に面白そうな顔をしているのは亜弥ちゃん。
さっと腕をからませて、美貴の心配などそっちのけだ。
亜弥ちゃんってなんか慣れてるよなぁ、こういうの。
まあ結婚するのが早かったからその分絵里の気持ちがよく分るんだろう。
絵里はいまだにしつこくれいなくんと並んで会話している。
ああもう、何だよ。
- 26 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 07:56
-
「あぁーっ!見てれいなっ、同じクラス!!」
「へっ?またっ?」
「スッゴーイ、新記録達成だぁ!!」
ああそうかい。
鼻で笑いそうになった美貴の横では絵里が凄く嬉しそうに跳ねている。
またれいなくんと同じクラスになったらしい。
それもそうだ。保育園、小学校とずーーっと同じクラスだから。
「えへっ、また一緒だねっ」
「…頼むから隣の席だけにはなりませんように」
「何それひっどい!」
「絵里が横にいちゃうるさくてなんも出来んからな」
「むっかつく!」
「ふんっ」
また口げんかをおっぱじめた。
どうせまた仲直りするくせに。
ギッと睨むような視線を切り替え、制服姿の二人をマジマジと見つめる。
…何か悔しいけど似合うな二人とも。
中学校入学、これから何か起こりそうな予感がするんだけども。
- 27 名前:証千 投稿日:2004/11/13(土) 07:57
- こんな感じでよろしかったでしょうか…
田亀は殆どはじめてかもしれませんがw
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 14:58
- 更新お疲れ様です。
自分も前スレからくっついて参りました。
田亀が成長してもなお甘いあやみきが楽しみです!
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 15:23
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
前スレで移転の報告を見てすっ飛んできました
田亀もいい感じに成長してきてこれからが楽しみです
藤本さん家のご夫婦はもう結婚10周年過ぎてしまったんですね
ちょっと結婚記念日の話も読んでみたいななんてw
更新お待ちしています
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 16:55
- ふふ…ニヤニヤしっぱなしです。
年を感じさせないラブラブ…そしてニヤけてしまそうな田亀。
ちゃいこーです。
- 31 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 19:04
- 入学式初っぱなから肩が重い。
なぜなら、真横に問題の根源があるから。
「れいなってばぁー、どしたの?」
「…ハァ、何でもない」
「んぅ?へんなれいな」
「もうどうでもよか…」
れいな、れいな。
なつっこく何度も自身の名前を呼ばれる。
もう慣れたけど、やっぱり絵里は思春期にさしかかる一歩手前の女の子。
何度か意識したことも、ないわけじゃない。
だから余計に腹がたって、思ってもいない事を口に出してしまう。
- 32 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 19:08
-
「れいな、かえろっ」
「あーごめん、今日さゆと帰るけん」
「…さゆって…?」
「ん、同じ委員会の子」
「…女の子?」
「そやけど。なん?」
「……ばかっ、れいなのばーか」
「は?ちょ、絵里?」
もしかして、絵里のカンに触るような事を言ったのだろうか。
いつものように一緒に下校しようと声をかけてきた絵里の誘いを
断ったつもりが、逆に怒らせてしまった。
全くもって絵里の思っている事はわからん。
我侭で、自分勝手。
怒りながら教室から出ていった絵里を放っておき、そのままさゆと下校する事にした。
- 33 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/13(土) 19:15
-
「……?」
なんだか周りが鬱陶しい。
れいなが廊下を通る度にざわざわと女の子達が騒ぎはじめる。
何かしたっけ?
そう思って横で並んで歩くさゆに訊ねた。
「れいなって鈍感」
「は?」
「みーんな注目してるのに、ぜんっぜん気付かないんだもんー」
「何がよ?」
「れいな、モテてるんだよ?」
は?
ザワつく波を見る事なく、さゆとは無言のまま下校した。
なんだろう。このもやもや感は。
- 34 名前:証千 投稿日:2004/11/13(土) 19:16
- 一応田中さん視点も。
青春の憤りを表現してみたのですが…
どうだったでしょうかw
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/14(日) 08:58
- うわわわ。゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!
二人が中学生っていう思春期にさしかかり、これからどうなることやら…
期待してます!!
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 00:08
- 凄く好きな感じです!!
あやみきの熟年っぽい感じとれなさゆの初々しさがもろツボです。
続き期待してます頑張ってください。
- 37 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:21
-
「ねえ、おとーさん」
「ん?」
こんな事、親父に聞いて分るのだろうか。
ましてや自分の父親に訊ねるのだからそれなりに相談事ってことになる。
ソファに寝転んでいるお父さんに、真剣な眼差しで問いかけた。
「とーさんの初恋って、いつね?」
「は?なんだいきなり」
「お母さんと結婚したのが22ん時やろ?」
「まあ、そうだけど。もしかして、れいなは初恋でも迎えたか?」
「ばっ、バカな事言わんで、誰が絵里なんか…」
「絵里?れいな、絵里ちゃんの事好きなのか?」
「…あ゛」
ばか、何言ってん。
何で絵里が出てくるのか自分でもわからなかった。
ただ一番身近な存在を頭に思い浮かべただけ。
それだけ。それだけのはずなんだ。
- 38 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:26
-
「違うばい、何であんなガキっぽいの…」
「おぉ?じゃあなんでそんな事聞いてきたりしたんだ?」
「べ、べつに…今日絵里の様子がおかしかったから…」
「ほぉー、よく見てるんだ」
「そ、そんなことなか!!目につくだけやけん!」
ホント、ただ目につくだけ。
いつもちょろちょろしおって、ジャマ臭い。
何するにも、れいながいなきゃ何もできん。
そんなやつ。べつになんでもなか。
「まぁー…父さんは梨華ちゃん一筋だったからなぁ」
「あっそ。聞かんばほうがよかった」
「まあまあそんな事言わないで」
「んな事言って、母さんが実家に帰ったのは誰のせいね」
「そ、それは…」
この親父に聞いても全く説得力がない。
そう直感した。
3日前、お父さんの一方的な理由でおかーさんは神奈川の実家に帰ってしまった。
ほぼ夫婦ゲンカ。
そしてそれに巻き込まれてれなまで神奈川へ連れてかれそうになったときには
さすがに焦った。
「
- 39 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:28
-
「…もうよか、寝る」
「おーい。結局お前が言いたかったのはなんだったんだ」
「……お父さんに聞いてもわからん。自分で考えるけん」
なんだろうこの気持ち。
何で、絵里ん事ばっか考えて。
気にしてしまうんだろう。
- 40 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:32
-
「あわわわっ、い、行ってきまぁす!!」
「みきたん忘れてるってばぁ!」
「え?他になんか忘れ物…あ」
人前でよくもそんな事ができるたい。
家の前で堂々とキスばしよって。
本当に絵里のお父さんとお母さんは仲がいい。
「…ん、行ってらっしゃいっ」
「うん!行ってくる!」
冬に暖房がいらんな、絵里の家は。
れなの前で堂々といちゃつく二人を流し、絵里を待った。
やっぱり気持ち悪い。もやもやすんのはらしくない。
絵里に聞かないとわからないし、自分一人では考えられない。
「…あれ?どしたのれいなくん」
「絵里ん事待ってる」
「珍しいねぇー。待ってて、今呼んでくるから」
「ども」
ちゃんと話せんと、わからん。
- 41 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:37
-
「行ってらっしゃ〜い」
「…行ってきます」
明るい絵里のお母さんとは対象に、絵里はれなを見た瞬間にそっぽを向く。
尚も笑おうとしない。
いつもくっつきまわる絵里じゃなかった。
なん、調子狂う。
「…なんね。せっかく人が待ってやったのに」
「別に、待っててなんて言ってないもん」
「あーそうか。じゃあ明日から一人で行けばいいやん」
殆ど喋ろうとしない絵里に腹が立ち、とろとろ歩く絵里を追いこしてからふっと振り向いた。
なんね、人が優しくしようとしてんのに。
我侭やし、勝手やし。
嫌いなのに、なんかほっとけん。やから腹たつ。
- 42 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:41
-
「やっ…やだぁ!」
「…絵里?」
「やだっ、やだよ!」
振り向いてみると、絵里はいまにも泣きそうな表情をして。
ぐっと零れるのを我慢しているようだった。
いつまでたっても泣き虫やけん。
結局、れなの後についてくるだけやから。
「…何が嫌なん。自分から勝手に怒ってたくせに」
「だって…やだもん。れいないなきゃ、つまんないもん」
「じゃあなんで怒ってんの。れなにはわからん」
何でハッキリせん。
何でちゃんと話してくれん。
うやむやな事言われても、れなには通じんから。
泣きそうな絵里を追いこして、走って学校に行く。
後を振り向きたくなかった。
- 43 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/15(月) 22:47
-
「おはよーれいな」
「ん、はよ」
朝から気分悪い。
絵里は多分泣いてるんだろう。
人足先に学校についたれなは、隣の絵里の席を見た。
「あれ?絵里どうしたの?」
「あー…そのうち来ると思うけど」
「珍しいね、れいな一人で来るなんて…ケンカでもしたの?」
「…そう、かも分らん」
ケンカと違う、微妙な関係。
いつからこんなに面倒臭く、絵里は成長したんだろう。
- 44 名前:証千 投稿日:2004/11/15(月) 22:48
- なんだかハッキリしないなぁこの二人w
ええとここであやみきを載せたいと思います。
目障りだったらスルーよろです。
- 45 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 22:54
-
ガシャ−ン
「やば、どうする?」
「逃げる。後よろしくまいちゃん」
「はっ?ちょ、ちょっと!!」
「ゴルァ−そこのバカ共ぉ!!!」
「やば、とにかく逃げよう」
超問題児の美貴とまいちゃんはとっても仲良し。
なにをするにも一緒で、中学の時からの大親友であり。
もちろんバレーボールで窓ガラスを割っちゃった時も、同罪ってわけで。
- 46 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 22:57
-
「反省文は見逃して。お願いだから」
「今さら何を言って…」
「マジ反省してるって。これからは教室でやるから」
「バレーボールは屋外でやれと言ってるんだ!」
「えーだって外寒いしぃ」
結局指導員の先生に見つかり生徒指導室に連行され。
くどくどと同じ事を何度も言われる。
「…まあいい、今度やったら反省文じゃ済まさないぞ」
「いやん、何する気?」
「………いいから早く帰れ」
「「失礼しましたぁー」」
くっくっく、先生からかうのって本当に楽しい。
生徒指導室を出た後、まいちゃんと顔を見合わせて大爆笑。
学校ってこういうのしか楽しみがないからなぁ。
- 47 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:01
-
「あ、ちょっと美貴」
「ん?」
「ほらあの子、何だっけアンタの彼女」
「…あぁーホントだ」
「ホントだって、いいの?」
「何が?」
「話し掛けてくるとか」
近くて遠い、彼女の存在。
手を伸ばせばすぐに届くのに。
すぐにつき離してしまうから、触れるのを拒む。
こんなにも、好きなのに。
- 48 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:05
-
「…いいんじゃないの?別に」
「臆病だねあんたも。ま、いいけど」
「臆病って。そんなんじゃないけどさ」
「じゃ何?扱いにくいってか?」
「…ある意味、ね」
かなりの強敵。もとい、美貴の弱点。
彼女はすぐに美貴の心をうばって、痛くさせた。
触れる事さえ容易くない、扱い要注意の彼女。
「…行ってくれば?彼女サンの所」
「皮肉っぽいなぁ。自分が独り身だからって」
「うっさい」
まいちゃんはけらけら笑ってブレザーのポケットに手を突っ込んだ。
ま、たまにはまいちゃんの助言を使ってみるか。
余裕余裕。
- 49 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:10
-
「あーや」
「ほぇ?」
亜弥。だって、恥ずかしい。
とっさに言わなきゃよかった。軽く後悔しながらぽけっとする彼女を後から抱きしめた。
やばい、可愛いよ。
「み…きたん?びっくりしたぁー…」
「美貴以外の誰が亜弥なんて呼ぶの。つか呼んだ奴消すから」
「だって急に呼び捨てだから…何かあったのかなぁって…」
そんな不安そうな顔して。そこまで美貴を追いやる気なの?
亜弥ちゃんは美貴に心を許していない。
薄々感づいていた。甘えてくれなかったり、わがままを言ってくれなかったり。
遠慮して、いつもあとで泣きそうになってる亜弥ちゃんを見ると美貴は心が痛くて堪らない。
好きだから。
好き。その一言が言えない。
- 50 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:14
-
「ん、香水…?」
「へ?ああ、まいちゃんに付けられちゃってさぁ。キツイでしょ?」
「…んーん、いい匂いだよ?」
ウソ。
本当の事、言ってくれていいんだってば。
いつも仲良くしているまいちゃんを、亜弥ちゃんは悔しく思ってる。
絶対そうなんだ。
いつもまいちゃんの話になると、亜弥ちゃんはあんまり喋らなくなって。
そっか。と言って笑うだけだから。
「…たん?」
「なぁに?」
「もうちょっと、こうしてていい?」
不安げに訊ねたその瞳が愛しくて。
何も言わずにただ抱きしめて、愛しさが募った。
伝えなきゃ、ずっと亜弥ちゃんはこのまま。
このまま美貴に甘えないまま、ずっと抱えてる。
そんなのは嫌だから。
- 51 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:20
-
「…き…」
「ほぇ?」
「好きだよ、亜弥ちゃん」
頬のあたりにキスをしながら、我ながら恥ずかしく思う。
小声だったから聞こえてるかどうか不安だったけど。
亜弥ちゃんは泣きそうな顔をして、美貴の肩に顔を埋めた。
「好き。大好きだから、もっと美貴の事見てよ」
「…ん…でもっ、たんの重荷になりたくないっ…から」
「いいってば。亜弥ちゃんのわがままだって、全部叶えたいんだよ。
美貴は十分亜弥ちゃんに甘えてるけど、甘えられないと美貴、寂しいんだよ」
「…でもっ…あたしめんどくさいよっ?嫉妬もいっぱいするし…」
「してよ、いっぱい。美貴は亜弥ちゃんしか見てないし、亜弥ちゃんは美貴の事しか見ないで欲しい」
全部全部、受け止める。
絶対に落とさない愛の形。
それが亜弥ちゃんとの愛だから。
分かって欲しい。美貴は亜弥ちゃんが、世界で一番好きなんだってこと。
- 52 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:23
-
「それに、知ってるし。まいちゃんの事話すと、亜弥ちゃんすぐに喋らなくなっちゃうから」
「…ん…」
「気にしないでいいよ。美貴だって亜弥ちゃんが他の誰かと喋ってるだけで腹たつし」
「……ほんとに?」
「本当だよ。そんだけ美貴は独占欲強いし、嫉妬心も亜弥ちゃんより何倍も上のつもりだけど?」
亜弥ちゃんに負けないくらい、亜弥ちゃんの事想ってる。
だから今まで、ごめん。
美貴も正直になれなくて、ごめんね。
「亜弥ちゃんから聞いてないんだけど」
「ふぇ…?」
「言ってよ」
君の口から聞きたい。
- 53 名前:好き 投稿日:2004/11/15(月) 23:27
-
事を察したのか、亜弥ちゃんは美貴の耳に唇を寄せて小さく言った。
それだけで美貴は嬉しすぎて。
亜弥ちゃんがたまらなく可愛くて、大好きで。
「みきたん、大好き」
うん、ありがとう。
そう言ってそっと亜弥ちゃんを壁にもたれさせ、頬を撫でた。
ずっと触れられなかった亜弥ちゃんの心に、やっと手が届いた。
そんな気がして、初めてのキスを思い出す。
「…もぉー、大好きだってば」
唇を交わす前に、そう言って。
リップで潤った亜弥ちゃんの唇に深く口付けた。
- 54 名前:証千 投稿日:2004/11/15(月) 23:28
- ああ何だか書いててこっぱずかしい…
一応上のは終りです。
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 23:30
- リアルタイム!
甘々!!
最高!!!
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/16(火) 00:21
- 甘いなぁ〜。ニヤニヤしながら読みました。
吉澤家の詳細もキボンヌとか言ってみたり…。
- 57 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:27
-
「えー…教科書31頁の問5をー…」
なんや、意味わからん。
授業が始まっても絵里はむすっと黙ったままで、こちらを見ようともしない。
ただ教科書とノートに目を落とし、全く眼中にない様子だ。
そこまで無視せんでもいいのに。
つか、これじゃあれなが期待してるみたいやん。
「田中、答えてみろ」
「へ…へ?」
「なんだ、わからんのか?」
「え…あ、はい…」
「ちゃんと聞いてろよー博多っ子」
どっと教室が笑いに包まれた。
博多は余計じゃ。
いつもはその光景を見て笑っている絵里は、一人無表情で何も喋ろうとしない。
やっぱだめ。
- 58 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:32
-
「ごめん、今日は絵里と帰るけん。悪い」
さゆの前で手を合わせて軽く頭を下げる。
何が原因かわからん。でも放っておけん。
帰りの時には絵里にちゃんと言おう。話さなきゃ、何がなんだかわからん。
「いいけど…その絵里って子とれいな、仲良いの?」
「なん、急に?」
「…べつに、ちょっと気になっただけ」
「……?べつに仲ええわけやないけど。なんか、ほっとけんだけ」
「え…?」
「れなにもわからん。でもほっといたらいかん気がするけん」
今までの事。
これからの事。
いつも絵里と一緒にいた気がする、この十何年間。
何するにも一緒。というか、絵里がれなにくっつきまわっとっただけかもしれん。
でも、なぜか拒否できなかった。
傍にいる事が、当たり前だったからかもしれない。
- 59 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:36
-
「絵里!」
「…れ…いな?」
なかなか来ない絵里を、下駄箱で待ち続けた。
きっとれなと一緒にならんように、時間をずらそうと思ってたんだろう。
そんな事で誤魔化そうとするなんて、アホなやつだ。
「…何、してんの?」
「絵里ん事待っとったばい。はよ、帰ろ?」
「いいよべつに、無理しなくたって」
なんでつっけんどんなん。
何で怒ってるん。
そう聞いたら、きっと絵里は黙りこくって泣いてしまう。
だから出来るだけ腹が立たないように、努めて冷静に答えた。
- 60 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:40
-
「…さゆって子、れいなの事好きなんだよ?」
「は?」
突拍子もなく、言いずらそうに絵里は小さい声で言った。
あの、さゆが。れなの事、好いとる。
わざわざ博多弁で言い直し、絵里は小さく頷く。
そんなん、ありえん。
「何言ってん。さゆがれなの事好いとるわけ…」
「聞いちゃったんだもん、友達から」
「…マジ、で?」
「……うん」
で、何で絵里が怒る事になるん。
そう尋ねると、絵里は信じられないというような表情でふいっと後を向いてしまった。
なんね、何がいかんのや。
- 61 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:42
-
「鈍感」
「え…?」
さゆにも言われた、そんな事。
でも当たってるから言い返せない。
なんや、ドキドキする。絵里はちょっとだけ悔しそうに、ふぅと溜め息をついた。
「なんでわかんないのっ、ばかれいな」
「なんが…」
「れいなが好きなのっ、それだけだもんっ……」
れいなが好き。
れいなが好き。
それだけ。
は?
- 62 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:45
-
「…なんか、答えてよ…」
「や、やけどんな事突然言われても…」
「もしかして全然気付かなかったの?」
だって知らんもん、そげな事。
絵里が言ってるのはきっと、恋人としての好き。
でもれなが思ってるのは、友達として。
なん。意味がようわからん。
「…そら、好きやけど…やけんわからんよ」
「何でよっ…」
「ずっと友達って言うたやん、絵里が…」
その言葉がつっかえてたのかもしれない。
進もうと思っても、その片言が邪魔をして。
れなと絵里の距離を、狭めていたのかも、しれない。
- 63 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:49
-
「…やけん…好きの意味がようわからん」
中途半端な気持ちのまま、絵里を傷つけたくはない。
まだわからん、本当に。
しばらく考えても答えが見つかるかどうかは自信なんてない。
でも、きっとなにかそれに代わるものがあるはず。
「…いいよっ、今のまんまがいい」
「絵里…?」
「いいよ、絵里、待ってるから。れいなの気持ちが分るまで、ずっと片思いしてるもん」
「……へ?」
「もういいやっ。もう、いいよ」
あっけなく絵里は乾いたように返事をした。
でも、最後にかえした言葉の中には。
泣きそうな絵里の瞳と、泣きそうな絵里の声が混ざっていた。
- 64 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:52
-
「ただいまー」
これで、良かったんだ。
そう言い聞かせながら、絵里と家の前で別れた。
それはいつものやりとりで、いつもの別れだったはず。
なのに、スッキリせん。
「おかえりれいな♪」
妙に高い声が耳に届く。あれ、これって。
「れ…?おかあさん?」
「おかえりっ、御飯出来てるよ」
「どしたん……もう帰ってきたの?」
「だっていつまでもあっちにいるわけにもいかないでしょ?」
「で、でもおとうさんとは…」
「ふふっ、早く御飯にしよっ?ね?」
夫婦って、こんな単純なもんなのか。
ルンルン気分のお母さんに手を引っ張られ、デレデレしているお父さん
と目を合わせた。
- 65 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:55
-
「ただいまー」
やれやれやっと仕事が切り上がった。
今回の企画はなんとかやっとこで通れそうだから必死で考え上げた。
ダメ出しは何度も上司から喰らったものの、死にものぐるいで働いた成果だ。
さてそんな仕事が終った後、我が家に帰ってきた。
「おかえりパパっ!」
「…あれ?絵里…どしたのエプロンなんかして」
「今日はねぇ、ママの代わりに絵里が夕御飯作ったの!」
「ほ、本当に?」
妙にウッキウキな絵里と、ワケありな笑いを浮かべている亜弥ちゃん。
何がどうしたの、急に。
- 66 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 21:59
-
「どういう風の吹き回し?絵里が料理するなんて…」
「さぁー?パパにはわかんないよねぇー絵里?」
「えへへぇー、パパには秘密ぅー。ねぇーママ?」
「ねーっ」
何さ、パパをのけものにしちゃってさ。
絵里と亜弥ちゃんは相づちを打ちながら食卓に食器を並び始める。
「…え…これ?絵里が作ったって…」
「そう!」
目の前にあるのは、カレー。
新婚時に何回食べたか分らない程口にした、あのカレー。
あは…あははは…やっぱり子は母に似るってね。
- 67 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 22:01
-
「…美味し?」
「うんっ、美味しいよ」
「ママが作ったのと、どっちが美味しい?」
「ふっ…ぐ!?」
亜弥ちゃんのカレーと、絵里が作ったカレー。
これってある意味究極の選択だよね。
ヲイ、ちょっと待て。
「…え…ど、どっちも…変わらない…ような…」
「えぇーひっどーい、みきたんいつも美味しいって言ってたくせに」
「お、美味しいんだけどぉぉ…飽きたっていうかぁ…」
「じゃあもう作ってあげないもん」
「あああああごめん!」
ぷいっとそっぽを向いてしまった亜弥ちゃんは御立腹。
その横で絵里は面白そうに眺めている。
…なんだよ、二人して。いつから女の人が強くなったんだよこの家は。
- 68 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 22:05
-
「ねぇ、みきたん?」
「んー」
「絵里ね、失恋したんだって」
「…え?」
失 恋。
思春期にはそういうものが幾度となくあり、成功も失敗もある。
それを絵里は、迎えた。
「相手っていうのがねー…」
「れいなくん、でしょ…?」
「…御名答。ふふっ、そうやってふて腐れないの」
ベッドで俯せになる美貴を、亜弥ちゃんは優しく抱き上げる。
とうとう、絵里はれいなくんとそういう関係になってしまった。
大袈裟かもしれないけど。
美貴にとって大事な娘だから。絵里の気持ちを、一番分かってやりたい。
- 69 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 22:08
-
「大丈夫。ちゃーんと絵里も受け止めてるってさ」
「…ん」
「心配しなくても平気だよ、絵里は強いから。なんたって…」
「亜弥ちゃんの子、だもんね。ふははっ」
そうだね。
絵里は、亜弥ちゃんみたいに明るくて、元気で、いつでも強きな女の子。
素敵な所がいっぱいある、魅力たっぷりの女の子。
まだまだ美貴も、うじうじしてられないか。
「たまに弱虫な所も、あるけどね。みきたんに似て」
「え…それは…」
「にゃはっ。みきたんと、あたしの子、でしょ?」
美貴と亜弥ちゃんが結婚していなかったら、この世に絵里はいなかった。
だから一緒に愛して、一緒に育てて行こうって決めたんだよね。
- 70 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 22:13
-
「れいなくんだって適当に決めたわけじゃないと思うよ。
ちゃんと絵里の事分かってるから、自分の気持ちにウソつくの、嫌だったんじゃないかな」
そう言えば、そうか。
れいなくんはもしかしたら、親よりも絵里の事を分かっていたかもしれない。
運動会ではいつも絵里の後押しをして、絵里の弱い所も全部すくってあげてた。
親である亜弥ちゃんと美貴の、カバーをしてたんだ。
「…分かったよ。もう、なんも言わないよ」
「そう。それでこそ親ってもんだよ」
「亜弥ちゃんは、落ち着いてるね。いつまでたっても高校生だよ」
「にゃはは、永遠の若さって?」
「そ。美貴だけの亜弥ちゃんだし?」
「なぁに調子乗ってんのよ。もう寝よ?」
「…ふははっ。おやすみ、亜弥ちゃん」
おやすみ、みきたん。
そうだよね。ずっと抱きしめて、ずっと傍にいるんだ、美貴の亜弥ちゃん。
絵里もいつか、そんな人を見つけて、一緒に暮らしていく。
認めなきゃいけない。
親ばかも程程に、って事か。
- 71 名前:わからんっちゃ。 投稿日:2004/11/16(火) 22:20
-
「行ってきまーす!」
「たん、忘れ物っ!」
「あ…そっか行ってきますのキ…」
「ばか、さっきしたでしょ。ハンカチ!」
「あはは、そっか。行ってきます!」
朝からラブラブです、藤本家。
絵里はいつもと変わらず朝は元気だし、れいなくんとの間もつっかかり無さそう。
よかった、元気そうで。
「おはよれいなっ!」
「う、わっ!きゅ、急に抱きつくなバカ!」
「えへへーっ、今日も待っててくれたんだ?」
「しょ、しょうがなくやってば…先行ったら怒るやろどうせ…」
「ふふっ、じゃ、行こっか」
…あっちもよろしいようで。
女の子ってころころ変わるから美貴もたまに分らなくなる。
怒ったり、泣いたり、笑ったり。
亜弥ちゃんを見ていると、よく分かる。
なんとなく絵里の昔の亜弥ちゃんに近付いてきてるな。
やっぱ、大人っぽい。
「はぁ…離れんか」
「やーだ」
「なんね、昨日まで怒ってたくせに…せやかられなはまだ絵里ん事…」
「分かってるよ。それまで一緒にいたい」
「……あーもう…」
れいなくんも、お疲れさま。
「わからんっちゃ、女の子って…」
FIN
- 72 名前:証千 投稿日:2004/11/16(火) 22:25
- あぁー…田亀完結。
>28様 中学生なのに亀井さんはまだ保育園生に見え…(ry
しっかりものの田中さんは好きです、結構。
>29様 結婚記念日…書きたいのですが相当長くなっちゃいそうなので
やめておきますwそれにしてもそのような事を言っていただけるととても
嬉しく思います。これからもどんどん言って下さればできる限り答えてゆきたいと
思っておりますのでw
>30様 ニヤニヤニヤニヤしちゃってかまわないです(笑
>55様 タイトルからして単純…ですが甘かったでしょうか?
ありがとうございます。
>56様 リアルタイム読者様、お疲れさまでしたw
吉澤家ですかぁ…いしよしは自分苦手なのであまりそれは書けなさそうです…
すいません、なんせ駄文なもので。
- 73 名前:年下・年上 投稿日:2004/11/16(火) 22:32
-
「おねーちゃぁん、だっこぉ」
「えぇー…もう少しだから我慢してよぉー」
「やぁだ!あるけないぃぃ!」
とんだワガママを言い出す弟。
いらいらしてしまうのを抑えて、泣き出しそうな顔を指先でちょいと撫でる。
お願いだから、あとちょっとだから歩いてくれないかなぁ?
「帰ったらお菓子作ってあげるからっ、ね?もうちょっとだけ我慢して?」
これなら素直に言う事を聞いてくれるだろう。
子供だからお菓子ぐらいでなんとか……
「やーだぁ!!だっこだっこだっこだっこだっこだっこだっこだっこぉ!!」
「わ、わかったから!わかったから泣かないで!」
ああ、なんて甘いんだろう。
買い物袋を片手で三つ持ちながら、よいしょと抱き上げる。
別にたいして重くないんだけど、片手に三つがキツい。
- 74 名前:年下・年上 投稿日:2004/11/16(火) 22:37
-
「う…ちょ、ちょっと待って…」
「やーっ…やだぁ!あるくのいやぁ!」
ダダをこねはじめる。
ああもう!ママも一緒に来てくれればよかった。
「あのね、お姉ちゃん荷物いっぱいあるから、美貴の事だっこできないの。分る?」
「いーやぁだ!だっこ!!」
ダンダンと地団駄を踏み、周りの注目を集めてしまう。
これじゃあ姉のあたしが泣かしてるみたいじゃん。
誤解されるまえに、荷物を下に下ろして抱きしめてあげる。
「…うー…うっく…」
「それじゃー…あ、走ってお家まで競走しよっ?」
「や、だっ…」
そっか。そうだよね歩きたくないのに走るなんて冗談じゃないよね。
- 75 名前:年下・年上 投稿日:2004/11/16(火) 22:41
-
「ちゅぅ、ちゅうがいいっ」
「は?」
急に好奇心たっぷりの顔で、泣き顔が嬉しそうに変わる。
何を期待してるんだと思ったら、前々からやってたあの遊びの事か。
以前遊びでちゅうちゅうおでこやらにキスしまくってたらそれが楽しかった
らしく、それ以来癖になっている。
「わかった。おうち帰ったらいっぱいしよ?」
「やたぁー!それじゃあるくっ」
「よしっ、良い子だぁ」
ほっ。
全くダダこねたりお姉ちゃんの心を掴んだり忙しい子供だ。
何だかんだ言ってあたしは、この子にめっちゃめちゃ甘い。
なんでだろう?
- 76 名前:年下・年上 投稿日:2004/11/16(火) 22:44
-
「んっ、みきがもつのぉっ」
「え?」
「かして、かしてっ!」
あたしの片手にある小さな袋をぐっと引っ張り、強きの眼差しだ。
どうやらあたしの真似をしたいらしい。
子供らしい可愛い事をするものだ。
「あのね、おねえちゃんがさっきだっこしてくれたからね」
「え…」
「おかえしにね、みきがてつだってあげるの!」
さっきまでの泣き顔はどこへやら。
うきうきと笑って、あたしから小さな買い物袋を受け取った。
いいことしてくれるじゃん。
って事は、只単にあたしの真似っこをしたわけじゃないんだ。
「ふふっ、ありがと」
「えへへっ」
やっぱ可愛い。あたしは当分この子に甘くしていくだろう。
年上なのに…あんまり差がないように感じるのは何でだろう?
FIN
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 09:36
- みきたん可愛ぃすぎ!!作者さん、いつも素敵なお話をどうもありがとうございます。リクなんかしてもよろしいでしょうか?ごまっとう、後浦なつみなどで一緒の甘いあやごまなんかを…よろしければお願いします。
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/18(木) 13:36
- 森の動物、亜弥ぴょんと美貴うーるのお話なんか見てみたいです!
積極的な亜弥ぴょんと照れ屋の美貴うーる。
やりにくかったらスルーでお願いします。
- 79 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 16:02
-
宝物って何?
雑誌やテレビなどの場面でよく質問される。
まあ、宝物って一言だったらいっぱいあるけど。
友達とか、家族とか、今の仕事とか。
あっけなく言ったら、たぶん君が宝物。
- 80 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 16:04
-
「おー、ごっちんおはよ」
「おはよよっすぃ」
「寝坊せずによくきたな」
「大きなお世話だって」
親友、もといライバル宣言をした彼女とはとても仲が良い。
モーニングを卒業した後も、こうやってスポフェスの打ち合わせ時とか
にもちゃんと一緒にいる。
なんか、性格は結構食い違うんだけど、マイペースだから落ち着く。
そんな揺らぎが、段々自分自身を困らせる。
- 81 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 16:08
-
「やべ、よしざー退散」
「何で、どこいくの?」
「ごっちんってば鈍すぎ。よしざー、目で殺されそうだよ」
ぶるっとわざと身震いをして軽く目配せをするよっすぃ。
不思議に思ってよっすぃの目線を辿ると、ぱっと目を逸らすあの子がいた。
なんだ、そういう事。
「ああ、まっつーの事」
「ああってお前。とにかくウチは邪魔なんで、ミキティんとこ行くよ」
「って、そっちこそほったらかしじゃんミキティの事」
「いーんだよ、ちゃんと分かってくれてるから、ウチの彼女は」
皮肉っぽくんべっと舌を出して、よっすぃは席を移動した。
すると別の席に座っていたミキティを背後から襲い掛かる形で抱きしめている。
あれが一種の愛情表現か。
溜め息をつきながら、珍しくミキティ以外の子と戯れるまっつーを眺めた。
- 82 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 16:11
-
別に、一緒にいたくないわけじゃない。
むしろちゃんと傍にいたい。
でもそういう事が出来にくい時ってある。
気が引けてちゃんと向きあう事ができなくて、まっつんはどこかしら
で寂しい思いをしている。
そんな事は百も承知だ。
でもごとーは、よっすぃみたいに素直じゃない。
恥ずかしっ気たっぷりのミキティをいじめるよっすぃは、いつだって
ストレートだ。
時々、ある意味で尊敬できる。
- 83 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 16:20
-
「…それじゃ、当日はこんな感じになります。
予定と多少異なる事情があると想定されますので、随時連絡したいと思います」
スタッフからの説明が終り、終止ぼけっとした様子であまり聞いていなかった。
ようやく目が覚めてみんなが解散する頃には、よっすぃもミキティも
ハローのみんながほぼ各自の仕事に戻っていた。
「だーいじょうぶぅ?」
「…あ、れ、まっつー」
「にゃは、もうみんないないよ?」
ちょっとだけ困ったように笑ったまっつーの顔で、無関心な脳が
反応した。
- 84 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 22:27
- あ、そうだ。さっきまで騒いでたよっすぃーとか、誰かしらと交信してたかおりんとか
いつのまにかいなくなっているのに気付く。
やば、仕事行かなきゃ。
「っん、ありがと…なんかボーッとしてた」
「うん、どっか遠く見て溜め息ついてた…」
「…まっつー?」
何でそんな不安げな表情するの?
言葉で伝えなくても、こうやって抱きとめれば分る。
すっと腕を伸ばすと、躊躇いなくにゃはっと笑ってごとーの胸に収まった。
- 85 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 22:31
-
まっつーはごとーにベタ惚れだ。
それは自信を持って言える。
だってすごく、もんのすごく可愛い表情をするから。
ごとーの前にだけ見せてくれる笑顔が、すごく好きだから。
舞い上がってるだけ、なんて事じゃ終らせない。
本気で愛されてるって思える程。
でも、だからこそ、彼女は正直なれない。
スーパーアイドルだからって、一人の女の子。
なんのへんてつもない、ちょっと照れ屋な女の子。
そんなギャップに、惹かれていった。
- 86 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 22:34
-
「…お仕事、いいの?」
「そろそろ行かなきゃ、だね」
「あたしはまだ平気だけど…ごっちんは早くしないと」
「いいよ、もう。どうでもいい」
大事な収録でさえ忘れる程、このままずっと抱きしめていたいと思う。
抱きしめた腕は降り解かれる事なく、振り解く事もなく。
二人の短い時間だけが、ただ流れていく。
「…ごっちん?」
「んー」
「さっき、吉澤さんと何話してたか…聞いたら、怒る…?」
- 87 名前:存在価値で決まるもの 投稿日:2004/11/18(木) 22:37
-
ほら、ね。
確信犯的な瞳で、不安げに尋ねてくる。
言う間でもない。彼女もそう思ってるだろうけど。
言葉がないと不安なんだ。
それはごとーも、一緒だよ。
「…怒んないよ。まあ、でも結構重要な事だけど」
「何…?」
「んー?それはねー」
ちょっとだけ焦らすように、まっつーの髪を撫でる。
そっと手ぐしで指を通すと、サラサラと心地よく髪がまとわりつく。
誰も知らない、二人だけの事情。
「まっつーがどんだけ素敵かって、自慢してたんだ」
FIN
- 88 名前:証千 投稿日:2004/11/18(木) 22:38
- >77様 リクエストありがとうございます。
あやごま…書いてみましたがどうだったでしょうか。
久しぶりに書いてみました。すんません、度々駄文で。
>78様 みきう〜るにあやぴょん…二人の懐かしい仲むつまじい光景が
目に浮かびます……w
設定など詳しく教えて頂けたのでありがたいです。
ありがとうございます。
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 23:07
- 作者さんのあやみきは甘々で可愛くて、ごまが絡むとなんだかちょっと大人風味で好きだなぁ…
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/19(金) 00:45
- あやごま、リクした者です。なんか…良いですね。マイルドな甘さ…。しつこくもなく足りなくもなく。素敵です。
- 91 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:20
-
あたしの恋人は謎に包まれすぎている。
年上の、かっちょいいやつ。
でもどこか抜けていて、愛嬌がありすぎるやつ。
そんなあいつが、あたしは大好きだ。
「…その件は後回し。色々する事あるから忙しいんだよ」
多分、仕事の話なんだと思う。
あくまであたしの考えだけど。
だって、誰と話してるのって聞いても、誤魔化されちゃう。
何かと秘密を持っている、あたしの恋人。
- 92 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:23
-
「は?それはそっちの都合でしょ?
美貴にカンケーないし。もちろん手切れ金は払ったんでしょ?
だったらもう放っておけばいいじゃん」
って、ワケわかんない。
かなり危ない会話を、平然と繰り返している。
あたしとの二人っきりの時間にも、あいつは絶え間なく電話と繋がっている。
しかも、いつもの声じゃなく、えらくドスのきいた声。
「もういいよ。あんたがやらないなら美貴が殺っとくから。
そういう事で。もう手出すなよ、無駄な事したら許さないからね」
ピッ。
- 93 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:26
-
「…ふぅ、調子こきやがって…。で、何の話だったっけ?」
パッと表情を変えて、にこっとあたしに笑いかける。
なんでそうころころ変わるんだろう。
電話の相手が誰だかわからないから、適当に予測する事も気が引ける。
「…ねえ、一つ聞いていい?」
「なぁに?」
「いつも、誰と電話してるの?お仕事の人…」
「そそそそそそうだよ、しし仕事のひと…だよ」
コロン、と甘えるように飛びついてくるも、あたしが質問をすると
サーッと顔が青ざめる。
どもる口調は、明らかに怪しい。
- 94 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:29
-
「…そっか」
「う、うん」
それ以上は聞けなかった。
なんか、見てると可哀想だから。
知らない方がいいのかもしれない。あたしにも、彼女にも。
「…心配、しないでね。何でもないから」
「してないよ、うん」
「冷たい…」
「あたし、秘密にされるの嫌いだから」
秘密とか、隠し事とかされるとダメなんだ。
あたし以外の違う人と、キスしてたらとか。
浮気とか知らない人だけど、そうやって隠されるとやっぱ、気分悪い。
分かってるくせに、言わないんだもん。
- 95 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:31
-
「あのー…さ、言ったら引かれると思うんだけど」
「引かないよ。今さら」
「…う…あの、ね…」
彼女から言ってくれるのなら、一歩も譲らずちゃんと受け止めよう。
付き合う時にそう決めた。
謎・謎・謎。そんな彼女が、たまにいらつく。
「…実は、美貴……」
- 96 名前:不思議空間無限大 投稿日:2004/11/19(金) 13:33
-
あたしの恋人は謎に包まれすぎている。
年上の、かっちょいーやつ。
でもどこか抜けていて、愛嬌がありすぎるやつ。
そんなみきたんが、あたしは大好きだ。
FIN
- 97 名前:証千 投稿日:2004/11/19(金) 16:20
- いやはや何が書きたかったのやら。
さて、次はみきう〜るとあやぴょんのラブラブ大作戦。
甘々を目指します。
- 98 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:22
-
ここは山奥の小さな小さな村。
たくさんの動物達が仲良く暮らしている、はず。
「みきうーる捕まえたっ!」
「うぁぁぁ!!は、離してぇぇ!」
仲が良い、筈。
- 99 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:25
-
逃げまどう迷える羊、みきうーると。
それを追い掛けるウサギのあやぴょん。
二人は仲が良い。いや、そうでもない。
あやぴょんが一方的なため、みきうーるは逃げまどうのだ。
そして今日も必死で森の中を駆け巡る、二匹。
「ハッ…ハッ…くるしっ…い…」
「待ってってばぁ!」
「や、やだよ!そしたらあやぴょん、ミキに抱きつくから!」
今にも泣きそうな顔をして、自慢の俊足をかっ飛ばす。
だがあやぴょんも負けてはいない。
しっかりと後ろにいるのだ。
- 100 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:28
-
やっぱり、羊はウサギに勝てない。
「はぁ…はぁ…負けたよ…もう…」
「にゃは、やっと認めたぁ」
「でっ、でも…あやぴょんの事、好きなわけじゃないよっ」
「いいもんっ、絶対振り向かせてみるから♪」
「う…そぉ…」
ふんだりけったりな毎日。
それはあやぴょんがいるから、とみきうーるは考える。
しっかりとみきうーるに抱きつき、窒息させるほどに好きと言う。
どうもこれがカユイようだ、みきうーるにとっては。
- 101 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:33
-
「やっ、待って待って待って待って!」
「何よぉ」
「何しようとしてんのあやぴょん!?」
「何って、恋人同士がする事」
「こ、恋人ぉ?」
あやぴょんはすかさずみきうーるの頬に唇を寄せるものの、おっかな
びっくりなみきうーるは身を引いた。
それに不服そうなあやぴょんはむっと頬を膨らませる。
「恋人じゃないってば!あやぴょんってばっ」
「何でぇ?みきうーるは、あやぴょんの事、嫌い?」
「…う…」
あやぴょんの潤んだ瞳を見てしまうと、みきうーるは何も言えなくなる。
ただその瞳に踊らされて、されるがままになり。
最終的には、わがままを聞いてしまう。
たとえ、自分の意志とは反対な行動でも。
- 102 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:36
-
ちゅっ
「…は、離れてよぉ…」
勇気を振り絞り、ちゅっとあやぴょんの頬にちゅうをした。
無言のままのあやぴょんを不思議に思い、ふっと顔を覗きこむみきうーる。
ちょっとだけ心配したみきうーるは。
後悔する。
「ん…んっ!?」
「にゃはは、みきうーるの唇ゲットォ♪」
素早くみきうーるの唇を狙い、キスを奪われてしまった。
そうだ、こういうやつだという事を忘れていた。
油断もスキもないウサギだ。
みきうーるは触れられた唇を拭い、流れる冷や汗をぶるぶるとふるった。
- 103 名前:みきう〜るに惚れて 投稿日:2004/11/19(金) 16:40
-
「にゃふふ、大好き♪」
「ぐっ…うぅ…」
そして今日も、あやぴょんに負けてしまう。
明日こそはと決意するも、みきうーるが勝つ日は程遠い。
無理矢理手を握られ、村に戻る。
「ねえねえもう一回みきうーるからちゅーして?」
「そんなこっぱずかしい事するかぁ!」
口ではそう言うものの、ぎゅっとあやぴょんの手を握り返した。
この後、あやぴょんがみきうーるの唇を再び奪った事は、言うまでもない。
FIN
- 104 名前:証千 投稿日:2004/11/19(金) 16:41
- こんなんでよろしかったでしょうか?
初めて書いた気がします、あやや攻めw
- 105 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/19(金) 16:52
- よろしかったらお願いします
同級生の高橋さんと松浦さん(+藤本さん)
- 106 名前:名無し 投稿日:2004/11/19(金) 21:17
- あやみき最高です。
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/19(金) 22:13
- 羊の焦り具合がキャワイイ!
ありがとうございました!!
- 108 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:33
-
彼女とケンカした。
ほんの数週間前の時、他愛もない事で一方的に怒った。
そして彼女は、もういいと言ってメールも電話もくれない。
というか、こっちからしてもきっと返ってこないんだろう。
「ごっちん?」
「…ああ、やぐっつぁんか」
「ああって。ミキティかと思った?」
図星。
- 109 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:36
-
「早く謝っちゃえば?」
「…それができたら、苦労してないよ」
「あはは、それもそうだ。それじゃ、ずっとこのままでいいの?」
「…そら、いいわけないよ」
なんちゅうか、只単にごめんと言うのが苦しい。
謝っても許してくれなかったら。
もし、最悪で別れを告げられたら。
「ネガティブだなぁ。どっかの黒いキショイやつになっちゃうぞ」
「それは無理。有り得ない」
論外。いや、圏外?
心の中で苦笑し、梨華ちゃんを思い出した。
- 110 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:39
-
「らしくない、よなぁ。もっとガンガン行けよ」
「…ガンガン、ねぇ」
「ミキティはそんな心の狭い女かい?」
「……いや」
優しくて、可愛くて、綺麗で。
大好きだ。
欠点なんて一つもない。
ごとーだけ、一人占めできる存在。
「じゃ、レッツゴー」
「え?」
「隣のダンススタジオで寝てるよ。グースカね」
やぐっつぁんは壁を軽く叩いて、呆れ気味に言った。
チャンスだって、言いたいの?
- 111 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:42
-
ガチャッ
わ、本当に寝てる。
おそるおそるスタジオの重いドアを開けると、パイプイスに座って
こっくりこっくりと眠るミキティ。
近付いて行くと、たまに小さく寝言を言う。
こんな表情、久しぶりに見た気がする。
「…っ」
伸ばした手を引いて、ギュッと拳を作った。
だめだ、触れられない。
あと一歩、あと一歩で届く。
数週間前のように、二人の時間が戻ってくる。
そう思い、彼女の頬にそっと触れた。
- 112 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:43
-
「…ん…」
起きる様子はなさそうで、少し眉をひそめた。
安眠を妨害してしまったのだろうか。
そうは思っていても、彼女に触れる指は止められなかった。
頬、唇、髪。
すべてがいとしい。
- 113 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:46
-
スタジオの中は少し寒くて、暖房がついていなかった。
黒いトレーナーの裾を寝ながら絞り、首を軽く回しまたふぅと息をつく。
起きているんだか、寝ているんだか分らない。
そんな姿に自然と両手を伸ばし、彼女を抱きしめていた。
久しぶりの彼女の匂い。
声、そして心。
もっと触れたい。もっと近くにいたい。
まだ寝ている様子の彼女の首筋に、しゃがみこんで顔を埋めた。
- 114 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:47
-
「……っ…ゃ…ん…?」
「…ミキティ?」
グズるような声とともに、少しだけ目を開けたようだった。
その瞬間、心臓が跳ねる。
「…亜弥…ちゃん?」
- 115 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:50
-
なんだか笑いが込み上げてくる。
なんで、まっつーとごとーを間違えるんだよ。
「ふっ…あっは、寝ぼけすぎ…」
「…ふぇ…?」
寝ぼけ眼のキミ。
ごとーと目を合わせるなり、わけがわからないような瞳を向けてくる。
その瞳がとても愛らしくて、ぎゅっともう一度抱きしめた。
「んぅ…ごっちん…」
「…そう、だよ」
ようやく理解できたのか、ごとーの名前を呼んだ。
あれ、怒ってないよ。
なんだ。不安に思ってたのは、ごとーだけだったのか。
- 116 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:54
-
ぽんぽん、と背中をさすりながら寝言を言い続けるミキティを抱きとめる。
ミキティの匂いにくすぐられて、ごとーまで眠りに落ちそうだった。
「…ごめん、ね」
「……ん…」
「いっぱいヤな思いしたよね。ごめん」
「……すき…」
たった一言の過ちで、傷つけていた。
もしかしたらそうかもしれない。
ミキティは今寝ぼけているから何も言わないけれど。
何となくそう考えた。
零れるように出した言葉は、予想外の告白。
「妙に、甘えてくれるんだね」
「……んぅっ…」
「ありがと。嬉しいよ」
「…はずかしい…」
「あっは。じゃ、もっと恥ずかしくしてあげる」
本当の仲直り。
- 117 名前:眠気 投稿日:2004/11/19(金) 22:57
-
グイとこすりつけた唇と重なる心。
時が止まったかのようにゆっくりゆらめく、彼女の瞳。
圧倒されるような色気だった。
「…ずっとしてなかったから、忘れそうだったよ」
「ずっとって、そう?」
「もう、キスもできなくなるのかとか、思ったよ」
不安でたまらなかった。
でも今は、幸せで満ちている。
それは寝ぼけ眼の、キミのパワー。
眠気が覚めてキスをした頃には、再び唇が重なっていた。
FIN
- 118 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:00
-
「ばか。みきたんのばか」
そう何回もばかと言われても。
抗議する間もなく、何度も同じ言葉を美貴に繰り返す。
「ちょっと、本当に馬鹿になったらどうしてくれるのさ」
「…いいもん、そしたらみきたんなんて知らないからっ」
「ああそう。じゃあ知らなくていいよ」
ワザと。
いつもこうだ、美貴が真面目な顔してこう言えば、亜弥ちゃんは泣きそうな顔をして。
傍にあった枕を力強く美貴の後頭部に投げ付けた。
- 119 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:03
-
「いったいなぁ…何」
「ほんとうに、本当に知らないからっ…」
「ああ、そうなの」
美貴はとことん亜弥ちゃんを虐めるのが好きだ。
面白いんだもん、反応がワンパターンだし。
美貴自身悪い事をしたと思ってやってるわけじゃない。
彼女との約束を破ってしまったのは、別にそうしようと思ってやったわけじゃないし。
でも、亜弥ちゃんは美貴を強気に見つめて悔しそうにベッドに座る。
- 120 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:06
-
「…っ…ぇっ…」
「…あらら…泣いちゃった」
子供か、この子は。
呆れる程に馬鹿なのはそっちじゃないか。
そうは思いながらも、泣いてしまった亜弥ちゃんに背を向けたまま
レポートを書きすすめる。
あのね、明日提出なんだ。だからちょっと静かにしてて欲しい。
「…っばかぁ、みきたんのばかっ…」
「一応大学生ー。亜弥ちゃんが思う程バカじゃない」
「っじゃあなんで約束やぶったりすんのぉっ…」
「忙しかったんだもん。電話で言った筈」
手を休める事なく、そのまま返答する。
ちょっとした意地悪。
- 121 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:10
-
堪り兼ねて、シャーペンを机の上に置いてテレビも消した。
後になって、結構やりすぎたかも。
と思ったからだ。
「みきたんっ、あたしの事どうでもいいんだぁっ」
「…あのねぇ、どうでもよかったらこういう事してあげないよ」
「じゃあっ、じゃあなんで…」
「じゃあばっかナシ。そしたら美貴、何にも言えなくなる」
ベッドの前にしゃがみこんで、亜弥ちゃんの涙を拭き取った。
高校生のくせに、幼稚園児みたく泣くんだから。
できるだけ優しく頬を撫でてから、手の甲にキスを落とした。
- 122 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:13
-
「…あたしはっ、みきたんが好きなのぉっ」
「ハイハイ」
「…だからっ、そういう事言わないでよぉっ」
「うんうん」
「そういうみきたん…嫌いなんだもんっ」
「ああ、うん」
嫌いなんて、ウソついて。
本当は美貴の嫌いな所、一つもないでしょ?
勝ち誇ったような笑顔で、亜弥ちゃんの顔を覗き込んだ。
そしたらむかついたような表情で、美貴の頬を抓る。
いたいってば、と言っても、美貴は笑顔だ。
何でだろう。なんか、からかいたくなるんだよ、亜弥ちゃんの事。
- 123 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:16
-
「で、言いたい事はそれだけ?」
「違うっ、もっといっぱいある…」
「何?」
「…機嫌悪いと、すぐ怒る…」
「うん」
「あんまりかまってくれない…」
「うん」
「……えっちの時、すっごい意地悪…」
そんなの、当たり前じゃん。
亜弥ちゃんが可愛くてたまんないんだもん。
ぎゅっと抱きしめて、耳元で囁く。
見なくてもわかる。亜弥ちゃんの赤く染まってゆく頬と耳。
- 124 名前:イイワケ 投稿日:2004/11/20(土) 18:20
-
「ふぅん。で、そういう美貴が好きなんだ」
「…そぉだよ」
「エロい美貴も、機嫌悪い時の美貴も、全部」
「……嫌い、だけど…」
「ふふん、素直じゃないなぁ」
「ひゃっ…」
さっきよりももっと赤く染まる彼女が愛しくて。
耳をちょっと舐めて、こめかみにキスをした。
「イイワケ上手でしょ、美貴って」
「…悔しいけど、認める」
「約束やぶった罪滅ぼしって事で。朝まで寝かせないよん」
何でそんな事するのかって?
そりゃあ。ねえ。
亜弥ちゃんが、可愛過ぎるから。
潤った唇を塞ぎながら、亜弥ちゃんの甘い味を確かめる。
その行為さえ全て愛しい。
そうは言っても、デートのイイワケにはならないかもしれない。
FIN
- 125 名前:証千 投稿日:2004/11/20(土) 18:21
- いやー。美貴様エロすぎたかしら…
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/21(日) 00:53
- いやいや、美貴様はこれくらいで丁度イイっす・・・w
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 14:21
- あやみき、かなり良かったです!
リクなんですが、れなみき姉妹が松浦さんを取り合う…みたいなのお願いします。やりにくかったらスルーで良いんで出来たらお願いします。
- 128 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:11
-
みきたん。
こんな甘ったるいアダ名は正直カンベンだった。
恥ずかしいじゃん、人込みの中で、大声で呼ばれたらさぁ。
でも、許しちゃってる。
美貴が唯一甘えられる、あの子にだけは。
- 129 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:13
-
「みきたん!帰ろ!」
「うん、いいよ」
いつものように、下駄箱で待ち合わせ。
少し遅れてきた亜弥ちゃんは、悪びる様子もなく笑顔だ。
もちろん美貴だって機嫌が悪くなければむかつくことなんてない。
多分、亜弥ちゃんだから許す事。
特に約束を結ぶ事もなく、亜弥ちゃんとはなんとなく毎日下校している。
暗黙の了解。ってやつで、互いに別下校するコトはめったにない。
- 130 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:15
-
「…たん?」
「……」
「みきたんってばぁ」
「…へっ?」
なんで人の話、聞いてないかなぁ。
それは亜弥ちゃんもでしょ。
そう返す間もなく、また頭がぼーっとしてくる。
最近の美貴はおかしい。
なんだか亜弥ちゃんと一緒にいると、そわそわして落ち着かないんだ。
仕種一つ一つが気になって、何でだろうと首を傾げたいくらいに。
その点、意味が分らない様子の亜弥ちゃんはムッとして御立腹。
すかさず気付いて、ごめんねと笑って謝った。
- 131 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:18
-
「…なんか、あったの?」
「いや、なんもないよ」
「じゃあ、何でアタシの話聞いてないの…?」
「…う、うん。ごめん」
何頷いてんだ、自分。
ふるふると心の中で頭を振って、自分はどうかしてると言い聞かせる。
なんだか返って、亜弥ちゃんを不安にさせてしまったようだ。
ちょっと俯いて、溜め息をつきながらもう一度美貴の方を見上げた。
ドキッ
「邪魔、だよね。アタシ」
「…え?」
「なんかさ、最近のみきたん、つまんないって顔してるよ。あたしといると」
そんなコト。
そう言い返す前に、亜弥ちゃんは美貴の言葉を遮った。
- 132 名前:友達 投稿日:2004/11/21(日) 17:20
-
そんな瞳で、見ないで欲しい。
亜弥ちゃんは美貴を、おかしくする。
きっとどこかで美貴は、亜弥ちゃんのコトを避けてる。
自覚してる。随分前から。
「…そんな事、ないよ」
振り絞って出した声は、説得力のまるでないか細い声。
自動車のエンジン音にも負けそうな、とてもとても小さい声。
きっと分らない。
亜弥ちゃんには、美貴の気持ちが、分らない。
- 133 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:26
-
「…そんな事ないなら、何でそういう顔するのかなぁ…」
フッと笑った亜弥ちゃんの笑顔は、すごく寂しそうだった。
呆れたようにも聞こえる。
亜弥ちゃんが美貴を想う、美貴は亜弥ちゃんを想う。
気持ちがきっと違う。だから美貴は、こんなにも不器用。
美貴のキモチは、伝えられないと決まってる。
この関係が壊れるくらいなら、言わない方がいいんだ。
- 134 名前:友達。 投稿日:2004/11/21(日) 17:35
-
「何にも、言わないんだ?」
さっきまで、笑いあえたのに。
下駄箱で待ち合わせた時には、普通だったんだよ。
「…ごめ…」
「あたし用あるから、バイバイ」
「亜弥、亜弥ちゃん!」
「…ばいばいっ、みきたん」
みきたん。
彼女が美貴の事をそう呼んだのは、それが最後だった。
FIN
- 135 名前:証千 投稿日:2004/11/21(日) 17:36
- うわー。終り方が微妙ですがお許しを…
>126様 普段から相当なえ…
なんでもありません。断じて何も。
>127様 ほぉ、良いネタをお持ちでw
うまく書けるか分りませんが、頑張ってみたいと思います。
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 20:34
- あやみき甘々希望です。
ヤンタン、すごかったですねぇ・・・。
- 137 名前:127 投稿日:2004/11/22(月) 14:25
- リク受け付けて頂きありがとうございます!ここの小説が大好きなもので…期待してますっ。
- 138 名前:証千 投稿日:2004/11/22(月) 22:13
- 結構前に頂いたリクで、松高+藤本というリクがあったの
ですが…
マイナーカップリングは苦手とします作者です。
リクをして頂いた読者様、すみませんが出来かねます…
すんません。
- 139 名前:ドロボー猫 投稿日:2004/11/22(月) 22:19
-
「ちょっとたんってば!」
「なにー」
「待って!!」
「美貴待つのキライー」
不機嫌そうな顔でスタスタとあたしより先に歩く。
そんなに怒らなくたっていいのに。
ちょっと拗ねた顔をしてみせると、みきたんはキッとあたしを睨む。
「腹たつ。その顔」
「いたいっ」
「そんな顔されたら、チュ−したくなるじゃん」
頬を抓られて、瞬時にふっと笑うみきたん。
あたしだって。
みきたんにそんな顔されたら、何も言えなくなる。
- 140 名前:ドロボー猫 投稿日:2004/11/22(月) 22:24
-
「…意味わかんない、みきたんって…」
「え?」
「怒ったり、そういう事したり…」
不安にさせられたり。
期待しちゃったり。
あたしだって、苦労してるのに。
みきたんは勝手すぎるんだ。
嫉妬するだけして、つっけんどんな態度とる。
「…亜弥ちゃんのせいだよ」
「……え?」
「亜弥ちゃんのせいで、美貴はおかしくなったの」
勝ち誇ったような顔されたら、むかつくよ。
そう言ったらみきたんは、むっとするような表情を作った。
- 141 名前:ドロボー猫 投稿日:2004/11/22(月) 22:29
-
「…も、いいよ。早く授業行きな」
「え?」
「もういいっての。じゃね」
あたしの肩を抱いていた手は振りほどかれて、あたしに手を振る。
何。一体、どういう事。
「…っ…みきたん!」
ふい、と振りかえったみきたんに、大声で言った。
「……大好き」
「うん。知ってるよ」
最後に勝つのは、やっぱりみきたん。
FIN
- 142 名前:証千 投稿日:2004/11/22(月) 22:31
- 何が書きたかったんだか…
>136様 ヤンタン…涙が出るほど愛を感じましたw
美貴様は亜弥ちゃんの事が死ぬほど好きだということが確定。
>137様 いえいえw駄文でしたが、喜んで頂き幸いです。
- 143 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 11:33
-
ケンカする程仲が良い。
そんなレッテル、張り付けないで欲しい。
「どけぇぇぇっっ!!」
「うぎゃぁぁぁ!」
玄関までの競走は、絶対に美貴に譲る事。
暗黙のルールだというのに、妹は聞きもせず反抗的だ。
- 144 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 11:36
-
「何すっとみきねぇ!!」
「そこに突っ立ってるれいなが悪い」
「だからって…」
「いらっしゃい亜弥ちゃん。ゆっくりしてってね」
ふん。亜弥ちゃんは美貴のものだって決まってるんだよ。
困惑してる亜弥ちゃんの肩を抱くと、れいなは鬼の形相で美貴を睨む。
姉にそんな反抗的な態度取っていいと思ってんの?
「お邪魔します。あれ、妹さん?」
「まあね。つか早く美貴の部屋行こ」
「ちょっと待ちみきねぇ、何ねその扱い」
「別に」
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/23(火) 14:11
- 設定がツボすぎます!
期待大!!
- 146 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 16:31
-
れいなに取られないよう、亜弥ちゃんの手を握って部屋に向かう。
大体、写真見たぐらいで惚れるなよ人の彼女に。
こんな事になるなら見せなきゃよかった。
「たんってば、妹さんはいいの?」
「どうでもいい。激しくどうでもいい。さ、行こ」
折角苦労して捕まえた彼女なんだから。
ここで逃してたまるか。
階段したで恨めしそうにするれいなに、Vサインをする。
- 147 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 16:33
-
「ねえねえ、れいなっていうの?」
「は?」
「妹さん」
「えーまあうん。それよかさぁ」
「ほぇ?」
何でれいなの事いちいち気にするんだよ。
多少むっときながら、亜弥ちゃんの肩に手をまわす。
「キス、しよ」
誰もいない、美貴と亜弥ちゃんだけ。
今がチャンスって所でしょう。
- 148 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 16:36
-
ガチャ
「みきねぇーっ」
「ハッ?」
「…っ…」
唇が重なるまで、あと2cmの所で。
邪魔が入った。
「何!?っていうか勝手に入ってくるな!」
「べつにー。みきねぇが変な事しとらんか見にきただけやん」
「っ…この邪魔者!でてけ!」
「嫌。放っておいたら、松浦さんに何するか分かったもんやなし」
亜弥ちゃんは呆気にとられて呆然としている。
全くだよ。こいつのせいでキスもその後の予定も崩れた。
- 149 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 16:39
-
「あ、あのっ!」
「「何!?」」
れいなとの言い合いの最中、少し怒ったような声が入ってきた。
しまった。亜弥ちゃんをほったらかしにしてた。
「たん、あたしもう帰る」
「え…へっ?ど、どうして…」
「最初っから下心丸出しだったもん、たん」
「ち、違うよぉっ…」
この期に及んでなんて事を。
迫り寄る亜弥ちゃんに抵抗出来ず、とんとんと階段を降りてゆく。
ちょ、ちょっと待ってよ。
- 150 名前:争奪戦 投稿日:2004/11/23(火) 16:41
-
バタンッ
「…亜弥…ちゃん……」
「ザマ−ミロ」
何もかも、うまくいく筈だったのに。
玄関の扉が閉まる音を見送り、美貴はその場で崩れる。
せっかく、せっかくのチャンスが。
全てれいなのせいだ。
「…ふざけんなぁぁ!どうしてくれるんだよぉ!」
「れな、何もしとらん。みきねぇのせいやろ」
「キスまで出来そうだったんだぞ!?それを…それをぉぉ!」
「別れたらええやん。したら、れなが…」
「させるかそんな事ぉ!」
FIN
- 151 名前:証千 投稿日:2004/11/23(火) 16:43
- こんなのでよろしかったでしょうか…?
>145様 設定は適当に思い付きだったのですが…
ありがとうございますw
- 152 名前:137 投稿日:2004/11/23(火) 18:15
- リク受けありがとうございます!!かなり良かったです。これからも頑張って下さいね!
- 153 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:08
-
アルバイト先のビデオ屋で、夜間時事に仕事を変えられてしまった。
店長は体調不良。
先輩は有給を取ってたり、同僚はシフトを変えてくれず今日は一人きりだ。
真夜中のレンタルビデオ屋って、不気味だ。
ウィーン
「いらっしゃいま…せ」
自動ドアからやってきたのは、いつもの常連。
表情を全く変化させず、いつもラブロマンスのコーナーへ足早に去ってゆく女性。
美貴よりも頭二つ分ぐらい背の高い、目の大きな美人さん。
でもどっか上の空。
なんとなく観察していくうちに、どことなく人間とはかけ離れてる人だと分かった。
- 154 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:11
-
「ありがとうございましたー」
結局また、彼女は不気味さを漂わすようなビデオを借りて行った。
返却日は守るのだけれど、なぜかビデオが巻き戻されていない。
横着しすぎだ。
最初は注意したものの、常習犯だという事が分り、美貴は骨が折れた。
仕方がなく、返却されたビデオは自分で巻き戻してから棚に戻す始末だ。
ウィーン
「いらっしゃい…ま…せ…」
「こんばんは藤本さん♪」
「……うーわ…」
まだめんどくさい客が、やってきた。
- 155 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:13
-
彼女の名は、吉澤ひとみ。
夜な夜なこのビデオ屋にやってきては、美貴に交際を迫る。
やっとこで追い出したとしても、また次の夜にやってくるものだから
美貴も飽き飽きしている。
「何ですか、今日は」
「やだなぁそんな顔しないでよ。綺麗な顔が台なし♪」
「用ないなら帰って下さい。営業妨害」
「営業?誰も人いないけど」
そういう問題じゃないんだよ。
余りの怒りとウザさに鉄拳を喰らわす一歩前。
アルバイトの職を失うわけにはいかず、ここは許して拳をやわらげる。
- 156 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:17
-
「んーと…じゃあなんかお勧めのビデオある?」
「…フレディ&ジョンソン」
「それは彼女と一緒に見た」
「なんだ、いるんじゃないですか」
「ああいるよー。でももう別れちゃった」
「え?」
「っていうかフラれちった。寂しい一人暮らしだよ」
へぇ。この人も色々苦労してるんだ。
なんて、もう少しで流される所だった。
「って事で。僕と付き合う気はないかい?」
「無い」
「うわ、即答。それじゃーちょっとでもいいから慰めてよん」
「嫌です。だったらビデオでも見て気をなおして下さい」
「冷たいなぁ。じゃ、あれ借りるよ」
「え?」
不満そうに指を差した先には、とんでもないビデオがあった。
- 157 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:19
-
「…エ、エロビデオ?」
「馬鹿、いくらなんでも見る訳ないでしょ。その横」
「……あ、ああ」
びっくりした。
その横ね。ああびっくりした。
心臓がひっくり返るかと思った。
「同じ棚に置いておくなよなぁー。失礼しちゃうな」
「だって貴方なら見兼ねないでしょう」
「えぇ、酷いよ美貴ちゃん。ぼくが見たいのは君のヌ−…」
「ビデオの角で頭殴りますよ」
「オゥ怖い」
思わず振り上げたビデオに冗談ではないと察したのか、即座にガードする。
本当だったらどうする気だよ。
- 158 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:21
-
「じゃ、一週間で」
「ちょっと態度冷たいー。もっと笑顔笑顔」
「…ありがとうございました」
「うーわー。ま、いっか。また明日来るねー」
「来ないで下さいねー」
ああ、疲れた。
すぐ追い出すつもりだったのに、20分程話しちゃったよ。
あの人と付き合ったらろくな事ないだろうに。
何度も女泣かせしてきたんだ、きっと。
あのこなれた仕種が妙に引っ掛かる。
なんて。美貴には関係ないし。
だって、もうそういう人いるから。
- 159 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:25
-
ウィーン
「いらっしゃいませー…って、亜弥ちゃん?」
「こーんばんは♪」
「ちょっと、何やってんのこんな遅くに」
真夜中に女子高生が制服のままフラフラしてたら危ないよ。
なんとなく的外れな事を亜弥ちゃんに指摘してしまった。
そう、この女子高生。
美貴の彼女さんなのです。
「何って、会いたかったんだもん」
「明日でも会えるでしょ?とにかくこんな遅くに来ちゃダメ」
「なんで?」
「亜弥ちゃん未成年でしょ」
「みきたんと二つしかかわんないもん」
「オバカ。美貴はハタチ、亜弥ちゃんは18歳」
しかも夜中に制服とか、美貴的に反則だから。
なんかそそられるじゃん。
え?的外れだって?
- 160 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:28
-
「…ったく、家まで送るから、帰ろ」
「みきたん仕事は?」
「え?いいよそんなもん」
制服の亜弥ちゃんを見たらなんかやる気なくなっちゃった。
いや、ヤる気はあるんだけど。
明日先輩に怒られようがなんだろうが美貴はもう仕事なんかしたくなくなっちゃったよ。
変な客がいっぱい来るんだからさ。
「じゃーみきたんの家泊まる」
「えぇ?親心配するよ?」
「いいもん別に。どうせ帰ってこないよ」
「だーめ。せめて連絡してないと、美貴が許さない」
むぅ、とむくれる亜弥ちゃんを他所目に店のシャッターを閉める。
まだ閉店時間までかなりあるけど。
- 161 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:33
-
亜弥ちゃんちは結構複雑らしい。
両親とも共働きで、妹ちゃんは寮学校にいるから家族は殆どバラバラ。
だから両親は仕事が一段落するまで、亜弥ちゃんは広い家にひとりぼっち。
人一倍寂しがりやだから、いつも美貴がいてあげなきゃいけないんだけど。
美貴は美貴で仕事もいろいろ掛け持ちしてるし、会える時間は限られてる。
当の亜弥ちゃんは忙しい美貴の事を配慮してくれて遠慮してるけど。
甘える時はちゃんと甘えてくれるから、美貴も安心していられる。
街灯が少ない夜の道。
寒い秋の夜は、白い吐息がよく目立った。
「みきたん、手ぇ繋いでいい?」
「ん。つなごっか」
毎日、寂しいんだよね。
美貴の前では可愛く笑ってみせる亜弥ちゃん。
でも、亜弥ちゃんなりにいっぱい、重いもの抱えてるんだね。
- 162 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:37
-
「じゃ、おやすみ」
「うぅー…やだぁ、さっき会ったばっかなのに…」
そんな目で見ないで。
亜弥ちゃんに、しちゃいけないことしちゃいそうだから。
名残惜しそうに美貴の両手を握って、上目遣い。
そんな事したってどうしようもないんだよ。
分かってよ。
亜弥ちゃんちの前で、今にも泣きそうな顔をされる。
「ね?明日学校休みだし、美貴も少しなら時間あるから。明日会おう?」
「……やだ…」
「そんな事言ったら、美貴困るよ?」
うん。色んな意味で困っちゃうんだよ。
- 163 名前:_ 投稿日:2004/11/23(火) 19:41
-
「……じゃぁ、泊まってって?」
「は?」
「ママもパパもいないし…ね?」
「あ…あの、いいの?」
「いいの。それならみきたんも、心配しないでしょ?」
じゃあ、お言葉に甘えて。
返事をする前にうんと頷いて、亜弥ちゃんは笑ってくれた。
もうだめ。
とことん甘い。美貴は亜弥ちゃんに甘過ぎる。
あーあ。先輩には怒られるだろうし、同僚には文句言われるだろう。
ま、いっか。
「二人っきりだから、いっぱいちゅーも出来るしね♪」
「い、いや…あの…」
「なぁに?」
「…それ以上の事、しちゃダメ?」
FIN
- 164 名前:証千 投稿日:2004/11/23(火) 19:41
- 年齢設定が違うのをお許し下さい。
何が書きたかったんだろう…
ネタ切れです。激しく。
- 165 名前:証千 投稿日:2004/11/23(火) 19:42
- >152様 いいえ、リクを頂くと頑張れるのでw
- 166 名前:名無し 投稿日:2004/11/23(火) 20:24
-
家庭教師と生徒の設定でお願いします。
やりづらければスルーで構いません。
- 167 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 22:27
- よしみき?と思ったらあやみきでかなりハイテンションで読みました。あやみき最高!あの…亜弥ちゃんとみきたんの中身が入れ代わるみたいなのリクしていいですか?出来れば裏有りで…いつもは亜弥ちゃんに色々してるみきたんが亜弥ちゃんの体を手に入れたら…という。出来たらでいいのでお願いします。
- 168 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:07
-
みきたん
「んー?」
「…なーんでもない」
「なら呼ぶなよっ」
ツッコミされても、今は何も反応できない。
みきたんが、そんな風に笑うと。
あたし、どうしていいのかわかんないんだよ。
「元気ないなぁ。どうしたの」
「何でも無い、よ」
ウソ。
何でも無い訳、ない。
- 169 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:09
-
「ほんと、どうしたの?変だよ、亜弥ちゃん」
「いつも通りだよぉ」
「そう?なら、いいんだけど」
「…だけど、何よ?」
「そういう亜弥ちゃん、似合わないよ」
簡単そうに、そういう事言っちゃう。
その度に、あたしがどれだけ傷付いてるか、みきたんは知らない。
無神経で、あたしの事なんか、本当はちゃんと見てるはず無い。
だってこんなにも、あたしが苦しんでるのに。
見向きもしないで。
- 170 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:10
-
「亜弥ちゃん」
「え…?」
急に振り返ると、みきたんはつかつかと近付いてくる。
何かを企むような、無邪気な子供の瞳。
やめて。
密かに胸を打つあたしの心が、破けないうちに。
ギュッと目をつぶって、みきたんの表情が見えないようにした。
- 171 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:12
-
ふわっ
そんな感じの温かさが、唇に伝わった。
ナミダが出そうなくらい、嬉しかったけど。
その反面、すごく胸が痛かった。
泣きそうになるあたしの顔を、見知らぬフリしてる。
「へへ、元気、出た?」
「…うんっ、出たよ」
「そっか。良かった」
そんな風に、笑わないで。
- 172 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:14
-
全部、嘘。
ねえ気付いてよ。
「恥ずかしい事、しちゃったなぁ」
「……え?」
「いくら遊びって言ってもさ、クサかったか」
うん、そうだね。
照れくさそうに笑うみきたん。
ダメだ。堪えられない。
何にも知らない、みきたんが嫌いだった。
あたしの事、何も分かって無い。
なのに、勝手に心奪って、勝手にキスして。
- 173 名前:冗談じゃない関係 投稿日:2004/11/25(木) 18:17
-
言ってしまえば、全てが終る。
分かってるから何も言えない。
このまま、仲が良い二人で終る方がいい。
「…ホンットに、恥ずかしいよ」
「亜弥ちゃんがそんな事言うなんて珍しいね」
「……ホント、馬鹿みたい」
馬鹿みたい。
風にまかせた涙はそのまま地に落ちて、二度と乾かなかった。
FIN
- 174 名前:証千 投稿日:2004/11/25(木) 18:20
- >166様 家庭教師と生徒ですね。
できたらやってみたいと思います。ありがとうございました。
>167様 おぉぉー…難しそうな設定……w
よく吟味した上で出直してみます。ネタ提供嬉しく思います。
…できるかなぁ…?
時が来たら書いてみたいと思います。
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/25(木) 19:11
- 何じゃこりゃああああああああ…ora
- 176 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/25(木) 21:46
- 更新お疲れ様です。
作者さんのあやみき、甘いのも痛いのも最高です!!
藤本さん視点の「冗談じゃない関係」も読みたかったり(ry
- 177 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:27
-
「…せんせぇ」
「…んー」
「わかんないよぉ」
小さな円机に突っ伏し、シャーペンを右手で弄びながら先生を上目遣い。
勉強する事など放ったらかし。
ブォ−と不気味な音を放つストーブの音も、寒い家の外も。
そんな事は気にならず、家庭教師の顔ばかり見ている。
- 178 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:30
-
「…どこが?」
「ココ…解けないよぉ」
「この公式を使って、それにこれをかける。OK?」
「……おーけぃ…」
「よし。じゃあもう一度やってみて」
にこっと笑う先生の顔。
亜弥はこの先生が大好きだ。
生徒に甘く、それでいて真面目で誠実。
家庭教師というポイントも亜弥は手放せない。
最近はこの家庭教師のおかげで成績もまずまず上がった。
しかし、亜弥はこの先生にゾッコンだ。
またこの先生も、亜弥にまんざらでもない。
- 179 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:33
-
数学の問題を解く間も、先生が気になってしょうがない。
雑誌を何冊か慣れた様子で本棚から取り出し、パラパラと捲り出す。
亜弥はそれがいやなわけではない。
分らない所があれば、分るまで教えてくれる。
ちょっとくらいのわがままは、素直に聞いてくれる。
でも、もうちょっとかまって欲しい。
「せんせぇ?」
「ん?終ったの?」
「…今日は、勉強したくない…」
「えぇ?」
少し困惑した様子で雑誌をフローリングに置き、亜弥に答える。
わざと。
わざと、勉強を放棄したのだ。
- 180 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:36
-
「なんで?」
「…だぁって…テストも終ったし…」
「でも、週2回なんだからやらなきゃ」
「……そうだけどぉ」
それは、先生に会いたいだけだもん。
そうは言えない亜弥は、ぐずるばかり。
先生が困ってしまう事は分かっていても、たまにはこういう時だってある。
先生と色んな話がしたくて、こうやって我侭を言うのだ。
それを、先生も分かっているが。
「…よしっ、じゃあこれ終ったら、休もうか」
「ほんとうっ?」
「うん。ただし、満点を取ったらね」
「ほぇ?」
- 181 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:38
-
先生が出した、亜弥への課題。
それは国語の漢字10問テスト。
科目の中で、亜弥が一番苦手とする分野だ。
それを先生は分かっていて、勝ち誇ったような笑顔を見せる。
亜弥はそれが悔しくて、やる気を出そうと頷いてしまった。
「…うー……」
ココ、何だっけ。
たしかこんなかんじ…あれ、違ったっけ?
机には消しゴムのカスが広がる。
先生はその様子を見て、解答用紙を覗き込んだりする。
その度、先生の髪が亜弥の頬に当たるもんだから。
顔が赤くならないように、ぐっと縮こまった。
- 182 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:41
-
「…3…2…1…終り!」
「え、もう?」
「終りだよー。はい丸つけね」
「…うぅ」
前回よりも自信はある。でも、あやふやだ。
満点をとれる確率は想定できない。
黙々と赤ペンで丸をつけだす先生を見つめながら、心臓が高鳴る。
満点とったら、先生とおしゃべりできる。
でも、満点じゃなかったら、このままずっと黙ったまま勉強する。
赤ペンを机に置いた先生は、にこりと笑った。
- 183 名前:教える事 投稿日:2004/11/26(金) 15:45
-
「あはっ、ほらっ」
ぴらっと解答用紙を亜弥に見せて、良かったねと言う先生。
赤ペンでつけられたその点数は、見事満点。
「やったぁっ!じゃあじゃあっ、お話しよっ?」
「うん、いいよ。ただし、10分だけ」
「う…なんでぇ…?」
「だめだめ、ちゃんときっちり2時間やらなきゃ」
「…せんせいの、意地悪…」
先生は何故か嬉しそうに、解答用紙を亜弥に渡す。
そんな些細なイジワルが、亜弥にとって嬉しいやら哀しいやら。
亜弥の気持ちを知らない先生は、こんな意地悪をいつもする。
その気持ちを理解するまでには、どのくらいかかるのだろうか。
FIN
- 184 名前:証千 投稿日:2004/11/26(金) 16:51
- >175様 狂気の雄叫びでしょうかw
>176様 藤本さん視点、チャレンジしてみます。いずれw
それにしてもそんなお言葉を頂くとは光栄です。
ありがとうございます。
- 185 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:44
-
時々、ぼぅっとしながら窓の外を見る。
もちろん、何にも聞こえないんだけど。
「…………」
なんて言ってんの。もう一度言って。
昔は少しも気にする事なく、友達と絶えずおしゃべりばかりしてた。
楽しくて、楽しくて仕方がなかった。
でも、今はそれができない。
- 186 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:46
-
トントン
「ん?」
誰かに肩をつつかれ、ぱっと振り向く。
ああ、なんだ。
みきたん。何してんの?
「…なんでもないよ、外、見てただけ」
そっか。じゃ、あたしもそうする。
ゆっくりした口調で、亜弥ちゃんは唇を動かす。
手話は使えるけど、できるだけ喋るようにしているんだ。
亜弥ちゃん、遠慮、してるのかもしれない。
- 187 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:49
-
外にいても、部屋の中にいても、独りっきり。
周りなんて、気にしなくてもいい。
最初はそうやって、落ち込んでばっかだった。
でも、いざとなるとすごく寂しくて。
聞こえないって事が、こんなにも悲しい事だったなんて知らなかった。
前はテレビだってラジオだって、気楽に見たり聴いたりしてたのに。
今は、何も聞こえない。
何も、感じ取れない。
ま、しょうがない。か。
- 188 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:51
- 4年前に、耳に激しい痛みが襲った。
耳鳴りが続いて、周りの音が聞こえにくくなった。
何日かして頭痛、吐き気がもよおしてきた。
病院に行くのを拒んだ美貴は、何ヶ月もそのままにして。
何でも無いと自分に言い聞かせてきた。
で、結局それが全部、悪かった。
- 189 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:52
-
部屋の中で独り、MDウォークマンを大音量で聴いていた。
最近流行のミュージックバンド。
美貴のお気に入りだった。
軽快な音に心地よさを感じ、ふと目を閉じた、その時。
「…っ…うぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
- 190 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:55
- 何が起こったの
なんで 何も聞こえないの
大音量で響いていたはずの音楽は急に鳴り止んで
辺がとても、静かだった
何も無い 水の中 音が無い 美貴の部屋
原因不明だった。
その後病院に運ばれた美貴は、医者からそう告げられた。
今までに例のない、奇妙な発症だという。
今でもわからない。
なぜ神様は、美貴の音を奪ったのか。
- 191 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 19:57
-
しばらく、外に出られなくなった美貴は。
部屋の中に閉じこもって、ただベッドの中に潜り込んでいた。
あ
と言葉を出す事も怖い。
自分の発した言葉が、わからなかったからだ。
今なんて言ったんだっけ。
あれ、これ、なんて言うんだっけ。
何も言えない自分が、酷く馬鹿らしくて。
もう、死んでしまいたいと思い。
机の引き出しから、カッターを取り出した事もあった。
そんな美貴を助けてくれたのが、他でも無い亜弥ちゃんだった。
- 192 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:00
-
あなた、耳、聞こえないの?
通院していた当時、待ち合い室で出会った彼女。
高校の制服に身を包み、かわいらしい笑顔でそう尋ねてきた。
なぜか腹が立った。
彼女が悪いわけじゃない。
ただ、自分が『聞こえない人』と思われるのが、いやだったから。
「………」
そっか。あたしは、松浦亜弥。あなた、なんていうの?
興味津々な感じで、ゆっくりとした口調で喋る。
その時、実感した。
美貴は、障害者なんだ。
耳の聞こえない 聴覚障害者
- 193 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:03
- それから通院していくうちに、美貴と亜弥ちゃんは打ち解けあっていった。
亜弥ちゃん、どんな声してるんだろう。
きっと、優しくて、女の子らしい声なんだろうな。
自然に触れていくうちに、そんな事が頭を巡って。
亜弥ちゃんを好きになるのに、時間はいらなかった。
その時亜弥ちゃんは内耳炎で通院していた。
外耳炎や中耳炎とはわけが違い、美貴とまではいかないけど結構大変な耳病だった。
あたし、手話サークル入ってるの。
「そっか。美貴も、習い始めたばっかだけど」
本当に?じゃあ、教えあいっこしよ。
「うん。これから、勉強しなきゃな」
いつのまにか、気付いてた。
これから、美貴はどうすればいいのか。
残りの人生を、どう生きるのか。
- 194 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:06
-
私、藤本美貴。ハイ、やってみて。
「…こう?」
そう!じゃあ、次は……
手話とか、障害者の使う会話のケースには余り興味がなかった。
でも、今は自分がその立場。
しっかりと向き合って行かなきゃいけないと、亜弥ちゃんと出会って知った。
じゃあねー。これ、わかる?
「……え……?」
あなたが、好き。みきたんの事、愛してる。
亜弥ちゃんの綺麗な手が描いた、告白。
それを目を追いかけた美貴は、顔が真っ赤になっていただろう。
- 195 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:10
-
ねーねー、みきたん
ねえってば、聞いてる?…あ…ごめん。
「いいよ、別に。気にしないでよそんな事で」
…だって…
そんな亜弥ちゃんが、好きでたまらなかった。
そのくらい気にするわけないのに。
亜弥ちゃんは、人一倍美貴の事、想ってくれてるからこそ。
だと思ってた。
ガマンできなくて、誰もいない二人きりの部屋で。
はじめてキスをした。
……たんの、ばか。
馬鹿でかまわなかった。
亜弥ちゃんの、傍にいられるなら。
耳が聴こえないぶん、恥ずかしい事も平気で言えちゃう。
なんだかそんな自分が、好きに思えてきたのもこの頃だ。
- 196 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:14
-
みきたん。
「何?」
みきたんって、すごく綺麗な声してる。
そうかな。
そう返事をかえすと、亜弥ちゃんは笑顔でうんと頷いた。
みきたんの声、好きだもん。
「あはは、ありがとう。でも、美貴は亜弥ちゃんの声、わかんないからなぁ」
何となくそう漏らした直後。
亜弥ちゃんは俯いて、唇を噛み締めていた。
- 197 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:18
-
傷つけるつもりじゃないんだけどな。
美貴はもう慣れちゃったからな。
聞こえない事に対する、反応とか。
「そんな顔しないでよ。ただそう思っただけだから」
…だってぇ。みきたん…
「本当の気持ちだよ。聞けるもんなら、すごく聞きたい」
神様に願っても、叶わないからしょうがない。
何度もそう思ってきた。
一度なってしまったものは、二度と戻る事ない。
- 198 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:20
-
あたしの声、そんなに聞いてみたいの?
「うん」
もしかしたら、みきたんの思ってるような声じゃないかもよ?
「そんな事ないよ」
そっと亜弥ちゃんを抱き寄せて、髪にキスを落とす。
そんな事、有り得ない。
美貴が好きになった亜弥ちゃんなんだ。
そんな事は、ない。
「自信あるよ」
そう言うと、亜弥ちゃんは美貴の耳に唇を寄せて。
そぅっと、美貴の名を呼んだ。
- 199 名前:声 投稿日:2004/11/26(金) 20:22
-
みきたん
聞こえた?
「うん。ばっちり、ね」
甘くて、優しくて、なんて心地が良いんだろう。
神様がくれた、3秒間の幸せ。
亜弥ちゃんの声がくれた、大切な音。
FIN
- 200 名前:証千 投稿日:2004/11/26(金) 20:22
- 衝動に駆られて書いてしまった…
- 201 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/11/26(金) 20:40
- うわぁ・・・素晴らしいです。
切ない中にも暖かさがあって(*´Д`)
続きとか期待しちゃってよいですか?
- 202 名前:名無し 投稿日:2004/11/26(金) 21:50
- リク受けありがとうございました!
「声」もすごくよかったです。
- 203 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/26(金) 23:08
- 『声』すっごい良かったです。かなり良い。めちゃくちゃ良い。良すぎて言葉にならない程…。
- 204 名前:wool 投稿日:2004/11/26(金) 23:37
- 初めまして。今までカキコする勇気が無く、ずっとROMってた者です。
吉後松藤が三度の飯より大好き。
正直、あやみきを好きになれたのは証千さんのあやみきのお陰なのです。感謝してます。
毎日更新、楽しみにしてます。頑張って下さい!!
長文お許しをっ。
- 205 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/27(土) 00:49
- 素晴らしい作品たくさん上げてくれていつも感謝してます。
「声」良過ぎます。感動しました。
更新頑張ってください。
- 206 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 20:49
-
闇を紡ぐその中に 一筋のヒカリあり
- 207 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 20:51
-
真夜中の1時過ぎ。
あたりは真っ暗だが、街灯がちらほらと覗く町中。
大きなバックを持ち、息も絶え絶えにひたすら走り続ける少女、そこにあり。
「…っ…ハァ…」
ここまでくれば大丈夫だろう。
そう思った少女は一旦カバンを地面に置き、真っ暗な夜空を見上げた。
東京の空は汚い。
この間叔母の家に行った際に見たあの星空は、東京では見られない。
そう思い返すと、なんだか切なくなるのだった。
- 208 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 20:54
- この少女、名を亜弥と言う。
容姿端麗、成績優秀の女学校のトップ的存在だ。
人見知りもなく、人当たりが良いので誰からも好かれる存在にあった。
だが、残念ながら家庭環境には恵まれていなかった。
財閥家の長女として生まれるも、亜弥は全く存在を感じさせない子供だ。
父親と母親は休日にも殆ど帰ってこず、大きな屋敷の中に一人きり。
こんな生活を、もう18年も続けていたそんな頃。
亜弥は思い立った。
どうせこのまま縛られるなら、紐を解いて自由になろうと。
- 209 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 20:57
-
亜弥はひたすらに、自由というものに憧れていた。
何しろ18年間、屋敷にこもりきりだったからだ。
外出はするが、縛られている事に変わりは無かった。
あの家にいれば、後に財閥の後を引き継ぐ事になってしまう。
そんな肩書きは、亜弥には重すぎたのだ。
走り続けていく中、いつの間にか繁華街に辿り着いていた。
スーツを着た大人達 大人ぶる子供 遠くを見つめてボヤけている人々
それは、まるで亜弥にとって異世界のようだった。
- 210 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:02
-
ふと足を止めている間、数人の男達が亜弥に振り向いた。
亜弥はそれに気付かず、辺を見回すばかり。
これはチャンス。とばかりに、男達は足取り軽く亜弥に近寄ってくる。
「ちょっとぉ、君幾つ?」
「え…あの、えと…18、です」
「ふーん…それなら大丈夫ジャン。じゃ、楽しいトコ行かない?」
「…え…ちょ、ちょっと!」
急に数人の男達から声をかけられた亜弥は、何とも素直に受け答えてしまう。
すると男達は一斉に目を合わせ、亜弥の手首を強く掴んだ。
優しさのかけらもない 握力だけが力の男達
- 211 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:07
-
ガンッ ガランッッ
「!?」
「…?」
ドラム缶を蹴飛ばすような、けたたましい乱暴な音が繁華街に鳴り響いた。
驚いた数人の男達は、その音を察知すると急に顔が青ざめる。
亜弥は素早くそれを感じ取り、とっさに手首を振り払う。
その音の行方など 気にする事なく
「ッ…っざけんなよこのガキがぁっ!!」
「まだやんの?しつこいと女から嫌われるよ」
「んだと…テメ−のツラ、二度とココに現れないようにしてもいいっつうのか?」
「ふーん。できるなら、やってみせてよ」
「……殺すっ…!」
殺す
激しい罵声を嘆く一人の男と、帽子を深く被った人物
それは亜弥が背伸びをして、やっと見える光景だった。
- 212 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:11
-
「…ッ…やべえぞ、またあのヒトだ」
「どうするよ…オレ達まで見つかったらヤられっぞ」
さっきまで亜弥を取りかこんでいた男達は、足早にその場を去ってゆく。
あの男達が怯む程の人物が、あの帽子らしい。
ファンクなサングラスで容姿は全くわからなかったが、発せられる声のまま、亜弥は現場に近付いてゆく。
ガァンッ ドガッ
目を覆いたくなるような喧嘩。
初めてみた殴り合いに、亜弥は怯む事なくその光景を見続けた。
これが、生きる証。
知らず知らずのうちに、その光景に目を奪われていたのだ。
- 213 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:14
-
「もう終り?つまんないなぁ」
頬に掠り傷を追った帽子の人物は微笑んで、ゴミ箱の近くに横たわる男の肩を蹴飛ばす。
その微笑みは、悪魔のような悪戯だ。
「…っグ…ァッ」
「言っておくけど。美貴に勝つなんて百億万年早いから。じゃ〜ね」
語尾に相手を陥れるような鋭い瞳を見せた、美貴という帽子の人物。
亜弥はその人物に、首を傾げた。
相手の男よりも随分背が低く、まだ顔も若い。
繁華街では、年齢も体格も関係ないのだろうか。
亜弥は不可思議な部分に触れ、疑問に思うのだった。
- 214 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:19
-
素早く踵をかえし、現場を後にしようとする帽子の人物。
どうやら名を、美貴というらしい。
亜弥はその美貴という人物の背中を見送り、目を丸くする。
すると、その視線を感じ取ったのか、美貴はふいと振り返った。
その時、微かにサングラスから覗いた瞳が、印象的だった。
「…何?」
一瞬不可解な表情を見せるも、すぐにふにゃっと笑う。
さっきまでの、怒りと侮辱に満ちた笑顔とは違う、柔らかな笑顔。
亜弥はぎゅっと手を握りしめて、緊張を解く。
- 215 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:22
-
「…あ、あのっ」
「ハイ。何でございましょう?」
「ほっぺ…大丈夫ですか…っ…」
「…ハイ?」
しまった。
亜弥はとっさにそう思った。
何で引き止めたのだろう。亜弥自身も気付かない程、あの光景に熱中していたのだ。
頬に軽い傷を負ったその人物は、亜弥の言葉に気付き手で確かめている。
「あ、ああ。ヘーキ。ありがとね」
かすり傷程度だったが、亜弥は何を思い立ったのかカバンから消毒液を取り出す。
その行動に、美貴という帽子の人物は目を踊らせる。
一体、何をするのだろう、と。
- 216 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:25
-
タタタ、と駆け寄り、ティッシュに消毒液を含ませ、ぴたりと美貴の頬にあてた。
「……あの…」
「…ハイ、絆創膏」
「え。あ、どうも」
成りゆき上、美貴はなんとなく渡された絆創膏を受け取り、頬に張り付けた。
何でこんな事、されてるししてるんだろう。
お互いが、同じようにそう思っていた。
「…あははっ、おもしろいなぁ。君、誰?」
「あたしっ、松浦亜弥っていうんです」
「そっか、亜弥、ね。亜弥ちゃんかぁ、可愛いなぁ」
おそらく、このやりとりは美貴の十八番なのだろう。
亜弥は瞬時に理解した。
妙に女慣れした口調が、亜弥はあまり気に入らなかったのだが。
すぐに思い立った。
このヒトの事、もっと知りたい。
- 217 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:28
-
「で、こんな夜遅くに健全な女の子が何してるの?」
「…え…」
「あ、当てる。美貴が当てるから、ちょっと待ってて」
嬉しそうにそう言った美貴の言葉に、少しだけ動揺する。
「家出。でしょ」
亜弥は、素直に頷くしかなかった。
おそらく、このヒトになら話しても支障はない。
そう思ったからだ。
「…ま、いいけど。美貴は、藤本美貴。よろしく」
「……あ…れ?」
「うん、何?」
パッとサングラスと帽子をとった美貴の姿を見て、亜弥は目を丸くする。
女。だったのだ。
- 218 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:32
-
「えぇー、酷い。美貴は魚座のA型、れっきとした女だよ」
冗談混じりに亜弥の言葉を受け取った美貴。
まさに、男勝りな喧嘩腰だったため、亜弥が勘違いするのも無理はないのだが。
「だ、だって男の人とまともに喧嘩してたから…」
「え?あんなの男の値に入らないような奴だって」
「…そう…なんですか…」
「まあま、ところで亜弥ちゃんっていくつ?」
「18です」
「おー、美貴は19。いっこ違いだ。敬語やめよ、堅苦しい」
「でも今会ったばっかですよ?」
「そんなの関係ない。だって亜弥ちゃん、かわいいから」
てへへ、と照れたように笑ったその笑顔に。
亜弥は心を打ち抜かれた。
たとえ、それが女であっても。
そんな事は関係なく、わずか30分で恋に落ちたのだ。
- 219 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/27(土) 21:36
-
「行く所ないなら、しばらく置いてあげてもいいよ」
「…え?」
「放っておけば売春だか風俗だか、売り飛ばされるのがオチだしね」
「…本当に?」
「うん。とくに、亜弥ちゃんみたいな美少女はね」
なんて口が上手いんだろう。
お世辞でも亜弥は、素直に嬉しかった。
なんでだか、美貴にはまってゆく。
そんな自分が、いる事に気が付いた。
「…家出したワケは、きちんと聞くけどね」
「……う、ん」
「今は、何にも言わなくていいから。ね…?」
「ひゃっ…」
美貴は亜弥の肩を優しく抱いて、耳元でそう囁いた。
白い冬の吐息が、亜弥に近付いて。
一目惚れだと気付くには、時間は必要なかった。
- 220 名前:証千 投稿日:2004/11/27(土) 21:40
- 更新はここまで。
結構また長くなるかもしれません。
>201様 続編!?そんなお言葉を頂き嬉しい限りです。
できれば…いつか、いつかチャレンジしてみようかと……
>202様 いいえ、どういたしましてw声の反響が良いようなので
作者は狂気乱舞です。
>203様 そんな言葉は勿体無い…ですが本当に嬉しいですw
>204様 長文、むしろ温かく承ります。
そこまで言っていただけると、書き甲斐があります。
小説書いててよかったですwありがとうございます。
>205様 いいえ、レスを頂くこっちも感謝感謝でございます。
ありがとうございました。
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/27(土) 21:44
- みきたんカッコイイ!
おもしろそうなお話ですね。期待してます!
- 222 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 16:52
-
手に伝わる、あったかい温度。
嬉しくて頬が赤くなるのを堪えて、美貴に連れられる亜弥。
そこでふと、忘れかけていた事を思い出す。
あたし、本当にこの人信じていいんだよね?
「…みき、たん…?」
「んー」
「…何も、聞かないんだね」
「何が?」
笑って亜弥の手を握り返す横顔が、月明かりで更に格好よくうつる。
亜弥はそれに流されそうになるが、頭をふるふると振って思い起こす。
一目惚れの恐ろしさを信じ難くも、二人はすぐに打ち解けあった。
亜弥ちゃん、みきたんと呼び合い、一方的に手を繋いでも、ただ笑うだけの美貴。
- 223 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 16:55
-
「…あたしが、何で家出したのか、とか」
「そんなのどうだっていいよ」
「え…」
「まあ、気になるけど。今は、そんな事聞く必要もないかと」
「…それで、みきたんはいいの?」
「うん。美貴はね。だって、亜弥ちゃんと一緒にいるのに、そんなの関係ないじゃん」
歯を見せて、ナハハと笑う美貴に、何も言う事が出来ない。
みきたんは、知らなくてもいいんだろうけど。
亜弥は人知れず、家出の事実を後悔していた。
何も家を出る事、なかったかもしれない。
でも、こうしていなかったらみきたんとも出会えてなかった。
そう考えると、もうどうでもよくなってきたのだ。
- 224 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:00
-
「あー、散らかってるけど気にしないでね」
「…これ、散らかってるって言うの?」
繁華街を抜けた美貴の家は程近く、重苦しい会話など全く気にする事なく。
美貴は照れくさそうにガチャリとマンションの扉を開けた。
中は至ってシンプル。必要最低限以外のものは、殆ど無い無空間な部屋だった。
「いーなぁ、一人暮らしって」
「まー家族と一緒にいるよかマシ」
「…そう、なの?」
「家族ったって、血繋がって無いけどね」
聞いてはいけない事に、触れてしまった。
亜弥はその時の美貴の表情を、見逃さなかった。
美貴は自分の事で精一杯なのだが、わざわざ通りすがりの亜弥の事を気にかけて。
何でそこまでしてくれるの?
そう尋ねたかったが、美貴の返事が怖かった。
- 225 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:03
-
ぱたぱたと忙しく走り回り、ソファの周りにあった雑貨を片付ける。
取りあえずそこらへんに座ってていいよと言われ、そのままぽすんと腰掛ける。
なんだか落ち着かない。
人の家だから、とかじゃなくて。
「あ、風呂壊れてるんだ、ゴメンね。シャワ−なら使えるよ」
「先にいいの?」
「いいよいいよ、着替はあるんだよね?」
「うんっ、ありがとう」
さっきまでの美貴とは、大違いだった。
繁華街での美貴は、きっと凶暴で乱暴な存在なのだろう。
だが、亜弥に見せる笑顔はとびきりの極上ものだ。
浮かれている間もほんのわずか、亜弥はそそくさとシャワーを浴びる事にした。
- 226 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:05
-
「……これから、どうしよー…」
一見、楽観的なものの言い方だが、亜弥は数時間経ってやっと事の重大さに気付く。
学校は?
取りあえず休む。
パパはママは?
…そんなの知らない。
みきたんは?
「………どうしよぉ…」
美貴の家に居座るのには、気が引けた。
好きだからとかじゃなく、美貴の都合上、このままずっとというわけにはいかないだろう。
- 227 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:11
-
「…たぁん…?」
シャワーを浴びて髪を乾かした後、リビングに戻ると。
そこにはソファに気絶したように倒れ、目を閉じて寝ている様子の美貴がいた。
さっきの喧嘩の事で、きっと疲れているんだろう。
そう思って、ソファの下に座り、美貴の寝顔を眺める。
やっぱ、かわいい。やっぱ、かっこいい。
寝顔ですら、惚れてしまう程の容姿。
「…ァ−…」
「みきたん?」
「ぁー…や…ちゃん?」
「にゃは、疲れちゃったんでしょ?」
「…うん、久しぶりに肩使っちゃってさぁ…」
ぐったりとした美貴の肩をぽんぽんとやり、美貴は嬉しそうに微笑む。
このまま、一緒がいい。
お互いがその瞬間、同じ事を思っていた。
「美貴のベッド、使って良いよ」
「わ、悪いよ」
「…んじゃー、一緒に寝るぅ?」
美貴の目が悪戯に光ったのを、亜弥は見逃さなかった。
- 228 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:14
-
ぎゅっと亜弥の首に手を巻き付け、いひひと笑う。
「冗談だよ。でも、一人じゃ寂しいから一緒に寝よ」
「…何かしないって、誓うなら」
「しないしない。健全な女子高生にヤらしい事なんかしないよ」
「…みきたんならしそう」
「何それぇ?酷いー。じゃあさ、抱き締めるぐらい、いいでしょ?」
いたずらっこは何をするか分らない。
突然立ち上がったと思うと、亜弥をぎゅっと抱きすくめて言った。
亜弥は美貴という人物が、まだ何ものなのか、はっきりと分かっていなかった。
ただ、優しくて、亜弥に甘くて、ちょっとえっちな人。
ただ、それだけの人だと思っていた。
- 229 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:18
-
朝が明け、亜弥が目覚めた時には、ベッドの横にはすでに誰もいなかった。
寝ぼけ眼のまま目をこすり、着信がある携帯をいじる。
やはりその主は美貴だった。
「…朝早くにごめんね。ちょっとヤボがあって出かけてくる…」
ヤボって何よ。
美貴の簡潔なメールを読み上げて、少しだけフキゲンになった。
「何々…お昼には帰ってくるから、絶対一人でどっか行かないでね…」
美貴が指している、どこかというのは、あの繁華街の事だろう。
亜弥は直感的に思った。
昨日の今日であるからには、美貴も心配してくれているのだろう。
なんとなく、嬉しくなる。
- 230 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/11/29(月) 17:25
-
それから、美貴の部屋に一人取り残された亜弥はというと。
部屋の中を色々と掃除したり、学校の友達から送られてきたメールを読み返したり。
だが、返信は出来なかった。
そんな事をすれば、心配されるし、親に伝わってしまったら一貫の終りだ。
「…心配、してんのかなぁ」
今頃、父と母はどうしているのだろう。
高校生ながらの反抗期、父と母は不安定な亜弥を放ってばかりいた。
そのせいで、亜弥は追い詰められ家出にまで駆け込む始末。
小さい頃、母と一緒にお菓子を作ったり。
父親にどこか連れて行ってもらったり、おねだりをしたり。
そんな記憶が、亜弥には無かった。
それは、美貴も同じだ。
昨夜ベッドの中、美貴は明るくそう言ったのだ。
『美貴、産まれてすぐにお母さん死んじゃってさ。お父さんはショック
で蒸発しちゃうし、親戚もいないから里子に出されて』
『本当の家族になれると思ってたのに、あっちは金目宛だったから
美貴の事なんてどうでもよかったわけよ。だから、亜弥ちゃんと同じ家出っ子だよ。
中卒のまんま、東京に逃げてきて、それで今ってわけ』
なんだか、明るく語る美貴の瞳が可哀想で仕方がなかった。
みきたんは、あたしよりも数倍辛い思いしてきてる。
ただ暇だから、あの繁華街の世界にいるわけじゃないんだ。
亜弥は余りそのことに触れないようにして、美貴の腕に包まれ眠りについた。
- 231 名前:証千 投稿日:2004/11/29(月) 17:26
- >221様 なんだかとろとろしてて話の内容が遅いのですが…
見て下さりありがとうございました。
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/29(月) 17:52
- おもしろいです!
こういうの大好き!!
- 233 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 13:57
-
「取り引き、だって?」
煙ったい室内の中で、数人のスーツを着た男達が美貴を囲む。
美貴はというと、パイプイスに座らされ、機嫌の悪そうな顔を浮かべて。
「…そうだ、お前にヤクの取り引きを任せたい」
「で、何で美貴なわけ」
「この街でお前は有名だろう?いいカモが付いてくるってもんさ」
「……ふーん」
美貴は正直、薬やら犯罪に手を染めるのはあまり好きでは無い。
だがこの状況になっては、悩み所だ。
冷静をよそおうものの、数人の男は美貴をじろじろ舐めるように睨む。
ここで喧嘩をしても、勝てるわけがない。
- 234 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:01
-
「もちろん報酬はある」
ガタンと銀色のケースを美貴の目の前に置き、トントンと指で突く。
にんまりと笑った男達に目線を合わせぬよう、ケースを開けた。
「…金、か…」
中に詰めてあったのは美貴の想像をこえる程の大金だった。
体して興味を持たず、ケースの鍵を閉めたその瞬間、男は美貴の肩にぽんと手をやる。
「悪いけど、抜ける」
「…何故だ?」
「金もいらないし、何しろ薬はめっぽう苦手でね」
ニヤリと男に向かって笑みを投げかけると、あざ笑うかのように男は返す。
このまま帰すものかと言わんばかりの目だ。
- 235 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:08
-
「……姐さんが黙っちゃいないんだよ、お前がいないとなぁ」
脅すような口調には慣れっこの美貴だったが、この一言で体が硬直する。
一度離れたパイプイスにもう一度腰掛け、腕を組む。
男達は知っていた。
美貴の弱味を、上手く握り操ろうとしているのだ。
「…姐さんはお前の事を慕ってる。断わりでもしたら、とんじまうぜ?」
暴力団組員の組長の妻である、裕子には、美貴が東京に来た頃から世話にはなっていた。
その部下達に口を挟まれては、何も言えないと気付いたのだ。
「…ほーんの少しでいいんだ、そこらへんのヤツに、高く売り付けりゃぁ…」
「…っ…」
「考えておいてくれよ?じゃあな」
肩をばしばしと叩かれ、意妙な笑いを堪える男達を睨むしかなかった。
美貴は、これ以上何かを考える事を拒んだ。
ただ、大切なものを失わないようにと、不吉な予感を思うまでは。
- 236 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:11
- とんでもない事に巻き込まれた。
美貴は後々そう後悔するようになる。
急な呼び出しを喰らったと思えば、マトモに受け入れられないような内容。
だいたいの事は予想していたが、まさかこうなるとは。
家に帰れば亜弥があの笑顔で迎えてくれる。
きっと、どこ行ってたの?と尋ねてくるんだろう。
正直に言えば、きっと亜弥は美貴の家を出て行ってしまう。
そうなれば、美貴はどん底だ。
やっと見つけた、大切な人だから。
美貴は軽々しく亜弥の事を見ていたわけではなかったのだ。
- 237 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:16
-
「…ハァッ…ハァッ…美貴!!」
「……よっちゃん?」
繁華街へ続く道を歩く中で、妙な人物に出くわす。
とぼとぼを虚ろな背中を振り向かせたのは、美貴の友人だった。
「何、突然。今日バイトだったんじゃ…」
「そんな事どうでもいいんだよ!おまえっ、ここから逃げた方がいい!」
「…は?」
「さっきウチの店に来たんだ、例のやつらが」
例のやつら。
美貴には思い当たる節がありすぎた。
「…何人?」
「わかんないけど…でも、お前の事言ってた、絶対探し出すって」
「……もしかして…」
さっきの暴力団員。
美貴はとっさに吉澤に投げかけると、多分と頷いた。
- 238 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:22
-
「中澤組、だよ」
「ヤバいんじゃないの?美貴、早く逃げろよっ」
「……いや、そんな事してる暇ない」
「何で…」
「よっちゃん、店のコ集めてきてくんない?」
美貴は覚悟の上だった。
ヤクザや暴力団と何度もやり合った事はあったが、裕子の引き入る中澤組
と他の組はわけが違う。
美貴は不敵に笑うと、さっきまでの不安がどこかに行ってしまった
かのように、吉澤に尋ねた。
「多ければ多い程イイから。ちょっと、危ないかもだけど。OK?」
「…っしゃあねえな、分かったよ。サラシ巻いてくるよ」
「ありがと!!それでこそ友達だよ」
こうなったら、逃げるだけじゃ無理だ。
美貴は繁華街を突き抜け、吉澤と一緒にその店へ向かう事にした。
ごめん、ちょっと時間かかりそう。
美貴は素早くメールを打ち、送信ボタンを押した。
亜弥へ送る、最後のメールを。
- 239 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:29
-
「…姐さん、どうします?やっぱりもう少し待ってた方が…」
「……そんな事言うて、アンタらがやらんかったせいやろ?」
「す、すいませんでした…」
「今日中、やな。あのコを引っ張りだして、説得する」
「…口だけで聞きますかね?」
「いやなぁ…」
店の奥で煙草を吸い、部下は慌てながら急いで灰皿を取り出す。
その最中、裕子は嫌味気にニヤッと笑みを零した。
「聞かん坊には、体張ってもらわんと、なぁ?」
ジュッと灰皿に煙草を押し付けると、高らかな笑い声を漏らす裕子。
部下は恐る恐るごくりと唾を飲み込んだ。
「…あのコに幸せなんか別けてあげるもんかいな。吐き気がする」
最後に静かに笑うと、裕子は再び部下を連れ外に出回る事にした。
時間が経つのを忘れ、美貴を標的にして。
- 240 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:35
-
『……アンタ、どないしたん?』
凍えるような冬の日、捨てられたペットのような表情の美貴に笑いかけた。
あたたかくて、とても優しい人だ。
美貴はその女に連れられ、初めて情という触れた。
『ほうか、家出か。中学卒業したばっかやろ?えらい事すんなぁ』
『…裕子さんは、いつからここにいるんですか?』
『アタシ?そやなぁ…アンタと同じぐらいやろかな』
裕子は美貴の事を妹のように可愛がっていた。
この街で暮らすためのルールや、暗黙の掟なども美貴に教え込んだのも裕子だった。
美貴も、そんな優しい裕子をとても慕っていた。
『…アンタは優しい子やな、アタシなんかに笑ってくれて…』
それが裕子の口癖だと、美貴が気付くのにはそう時間は要らなかった。
なんせ毎日のように、そう漏らしていたからだ。
美貴は意味が余り理解できなかったものの、褒められているような気が
してとても嬉しかったのを覚えていた。
裕子が、変わってしまう前までは。
- 241 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:39
-
『スマンなぁ、アタシ、結婚すんねん』
『え…え?』
『アンタも一人で生きる事、学ぶべきやしな。ま、頑張り』
『ゆ、裕子さん?ちょ、ちょっと!』
当初ホステスで働いていた裕子の下働きとして勤めていた美貴は、裕子が
残した言葉に困惑しながらも仕事を1年程続けていた。
そして裕子は、一体どこに消えたのか。
1年余り突き止めたものの、誰も教えてはくれなかった。
自立するべく繁華街で生活し、喧嘩というものを覚えた。
裕子に会う為、それもあった。
でもそれ以上に、優しさが足りなかった。
裕子が消えて、落ち着かなくなった。
喧嘩で高ぶった感情を押さえ込んでいたのかもしれない。
- 242 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:42
- それから何ヶ月か後、ついに裕子の居場所を突き止めたのだ。
だが時は待ってくれては、いなかった。
暴力団組員の妻となっていた事を知った美貴は、それ以上知るのを拒んだのだ。
ここから先は踏み入れてはいけない。そう感じたからだ。
お互いの人生を干渉するのは決して良い事ではない。
裕子が一番最初に教えてくれた事だ。
そして、亜弥に出会った。
裕子がいなくなってから、何とか自分を保っていたつもりだった美貴は。
亜弥に触れられて、新しい感情が芽生えた事に気付いたのだ。
この、温かさ。
これが、優しさっていうんだ。
- 243 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:47
-
ガァンッ
「…ハァッ…つ、疲れたぁ…」
「ナイスファイトよっちゃん。でも、ありがと付き合ってくれて」
「いいや、古き友人を大切にするのも義務だしね」
へへっ、と得意げに笑った吉澤を見て、段々と痛みが押し寄せてきた。
暴力団組員が来たせいで、吉澤の働くバーは滅茶苦茶な状態になっていた。
ガラスや雑具が散乱し、あたりに倒れこむ複数の部下達。
そして吉澤が最後に片付けた組員は倒れこみ、微かに唸ったまま床に伏せている。
「…じゃ、ボス退治に行きますか?」
「……待って、よっちゃん」
「何?今さらビビんなよ」
軽く吉澤が美貴の肩を叩いたが、美貴の痙攣は止まらない。
体中がビクビクと震える。
妙なだるさが、体の中に残る。
- 244 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:50
-
裕子に会うのは、裕子が美貴の前から消えてから初めてだ。
なぜか体が反応し、美貴の行く手を阻んでいる。
「……なぁ、忘れろよ?あんなババァ、ただの根性悪…」
「分かってる…もう、分かってるよ」
優しかった裕子。美貴に厳しかった裕子。
でも、変わった。美貴に、二度と優しくしてくれる事は、ない。
吉澤の言葉は、美貴を尚更苦しませた。
本当の幸せを見つけてん。ホンマに、スマンなぁ。
本当の幸せってなんですか?
裕子さん、ねえってば。
- 245 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:53
-
「……みきたん、遅いよぉー……」
美貴からニ件目のメールを受け取った亜弥は、不満たっぷりだ。
昼には帰ると一件目にはあった。
それから何があったか知らないが、ニ件目には少しおくれるとある。
ヤボ用。 美貴にとってのヤボ用は、昨夜のような喧嘩の出来事であろうか。
亜弥は終っていた嫌な気持ちをまた思い返してしまった。
唐突に、予感がしたのだ。
美貴が、今何をしているか。どこにいるのか。
- 246 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 14:57
-
亜弥ちゃん 待ってて、すぐ帰るから
ドクン、と亜弥の胸が鳴った。
美貴と出会った瞬間に起きた、あの高鳴りではない。
何か不吉な予感が、胸を走ったのだ。
どこにいるか分らないけど、とにかくあそこに行けばいい。
美貴の言った事を忘れ、すぐさま玄関に向かう亜弥。
絶対、独りでどっか行っちゃダメだからね。
亜弥は繁華街に行こうと思い立ったのだ。
美貴があれ程危険だと言った事も忘れ、駆け出す。
- 247 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:01
-
みきたん どこにいるの?
マンションの階段を駆け降り、ばくばくと心臓が高鳴る。
一体何をしているのか、亜弥には想像もつかなかった。
自由気侭な美貴の性格は、短い時間の中でもすぐに分る程。
でも、美貴の思考までは分らないのだ。
階段を降りるとマンションの玄関である自動ドアまで辿り着き、ドア
を抜け繁華街へと進む道を右に曲がった、その時。
「…ッんっ、んんっ!!!」
「……悪いね、お嬢ちゃん。上の命令なんだ」
鼻に付く匂い 両手を押さえ込まれる力 大柄な男
そう思ううちに、亜弥は眠りに落ちた。
- 248 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:04
-
もう何も 怖く無い
亜弥に消毒してもらった頬を自らの手で触り、歯を食いしばった。
あちこち服についた血痕を拭って、店の奥へと進む美貴。
ごめん、よっちゃん。先行くよ。
イスに倒れこみ、血で真っ赤になったTシャツの吉澤を見つめ呟いた。
組員の幹部に仕掛けられ、吉澤は気を失っている。
この扉の先に、裕子がいる。
ギィと不吉な音をたてるドアを開け、向こうを目指した。
- 249 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:09
-
フゥッと灰色の煙を吹かし、ニヤッと笑う裕子の横顔。
前よりも化粧が濃く、昔の面影は消えかけていた。
睨んだ瞬間、美貴は一歩後ずさる。
違う、裕子さんじゃない。
そう拒んでも、付いて回ってくる記憶。
「……久しぶりやな、美貴……」
「…早く、出て行け」
「このガキ姐さんに…っ!」
「ええからアンタは黙っとり」
美貴は裕子を頑に睨み続けた。
友人を傷付けた事、美貴の前から消えた事。そして現状を闇に隠していた事。
すべてが、裕子の全てが憎らしかった。
昔のようには戻れない。美貴もそう感じたからだ。
- 250 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:11
-
裕子は部下を下がらせると、すっと立ち上がる。
美貴はそれを伺うように目で追う。
「…しばらくぶりやん。なんや、大きくなって」
「……どうして、ですか…」
「態度も大きくなったってかぁ?ま、それも成長の証か」
「はぐらかさないで下さい!!」
美貴が大きく怒鳴り声を上げると、裕子はふっと笑ってソファに腰を降ろした。
わからない。
裕子がなぜ自分にこんな事をするのか。
一体、美貴が何をしたのか。
- 251 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:19
-
「……アタシは、もうアンタが思ってるような人間じゃないねん」
前みたいに、素直に笑う事できひんのよ。
確かに裕子が美貴に見せた笑顔は、明らかに作り物だった。
心の底から溢れる笑顔。
裕子は、嫁いでから真実を見失った。
「…腐ったんよ。何もかも。アタシの周りにいる全ての人間が、うざったらしくて仕方ないねん」
「でもなんでそんなっ…」
「当然、アンタの事も忘れた。一緒に笑った事も、楽しかった事も、全部な」
そう言った裕子は、泣いていた。
静かに、声をあげる事もなく、昔のように、寂し気に。
- 252 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:25
-
『裕子さん』
『んー?』
『幸せって、美貴にも来ますかね?』
『…そら、来るんとちゃうの?』
『いつですか?』
『そんなん知らんわ。でも、アンタ次第やな』
『美貴、ですか?』
幸せって、何がこめられてるの?
美貴にも、いつかきっと来るのかな?
ひたすら憧れていた幸せに、手が届くのはいつだろう。
美貴は幼い頃からそう思い続けていた。
裕福な家庭など、持った事がない。
美貴はひとりぼっちのまま、生きて行くのだろうか。
そう思って、裕子に尋ねた事があった。
裕子は物憂気に美貴をそっと抱きしめて、愛おしそうに呟いた。
『ええ子にしてたら、きっと来る。アンタなりの、幸せがな』
その翌日、裕子は失踪した。
そして、今の裕子がいる。
- 253 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:29
-
「…アンタに幸せ、あげる気ないねん」
「じゃあなんであんな事言ったんですか!美貴、美貴ずっと…」
「アタシが辛い思いして、アンタだけ幸せになるなんて許さへん!」
お母さん 美貴は しあわせになっちゃいけないの?
お父さん 美貴は ずっとひとりぼっちなの?
そんなの、違うよ。
裕子がそうくれた。だから美貴は 精一杯生きようと 決めた
「…アンタの幸せ、奪ってやる…全部、消えればええねん」
「……っ…え…」
裕子の一言で、扉の向こうから声が聞こえてくる。
美貴が聞き慣れた、あの声。
- 254 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:33
-
亜弥ちゃん
「亜弥ちゃんに何したんだよ!!」
「…何もせえへん、ただ眠らせただけやのに…もう起きてしまったんやね」
「っ…裕子さん、亜弥ちゃんを返して下さい…」
裕子は少し考えてから、美貴に向かってこう言った。
その瞬間、美貴は堪えていた糸を、自ら切ってしまう。
「言ったやろ?アンタの幸せ、ぶち壊すって」
美貴は、無我夢中で扉の向こうへと駆け出して行った。
だがそれも空しく、部下の数人に取り押さえられる。
なんで なんでこんな事するの
アンタの幸せは アタシの幸せ それだけで 十分やろ
優しい裕子の言葉が今も染み付いて離れない。
でも、もう関係なかった。
ただ、今一番大切なもの。それが、亜弥だから。
- 255 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:39
-
「離せっ…っつってんだろ!!」
「このガキッ…なんて力だ…」
部下の腹部や顔を殴りつけ、他の男達に殴りかかる。
裕子はそれと止めもせず、ただ哀し気に見つめるだけだ。
そして部下達を振りきり、扉の向こうに手をかけ声のする方に駆け寄った。
「…っ亜弥ちゃん!亜弥ちゃん!!」
「たぁんっ、みきたぁんっ…」
「何やってんの…家から出ちゃダメって言ったでしょ?」
「だって、だって…」
イスに座らされていた亜弥をぎゅっと抱き上げ、必死に言葉を投げかける。
亜弥は泣きそうに声を震わせて、美貴に抱きつく。
「…たんっ…」
「……ごめんね、寂しかったんだよね。もっと早く帰るつもりだったんだけど…」
「ばかぁっ!あたしっ…心配だったからっ…」
「ごめん、ごめんね。……でも、まだ帰れないんだ」
まだ、やり残した事、あるから。
裕子に振り向き、美貴は亜弥をなだめつかつかと迫り寄る。
裕子はどうどうとしていて、一歩もたじろぐ事がない。
- 256 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:44
-
パァンッ
美貴は、思いきり裕子の頬を引っぱたいた。
これまでのぶんを、取りかえす為に。
少なくとも、裕子には目を覚まして欲しかったんだと思う。
力の限りだし尽くした手の平は、ジンジンと傷んだ。
裕子はあっけにとられたような顔をして、また小さく笑った。
「…お願い、ですから…美貴の幸せ、とらないで…」
「……藤本」
「やっと、やっと見つけた幸せなんです。絶対、失いたくないんです…」
昔、裕子が美貴にしてくれたように。
美貴は力を振り絞って、泣きながら裕子を抱きしめた。
温かいぬくもりはなかったけれど それは同情という形ではなかった。
「……アンタは、ホンマに優しい子やね…」
「…ッ裕子さん…」
「ホンマに、バカが付くくらい優しい子…」
それは、これまでの事を謝る裕子なりの言葉だった。
- 257 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:53
-
「…悲しい思いさせて、悪かったな。八つ当たりが過ぎたわ」
誰か助けて
裕子は微かにサインを送っていたのだ。
極道の道をきわめればきわめるほどに痛みが増す。
後悔をしても、もう遅かった。
ちょうどその頃、繁華街の裏で活躍する美貴の噂を聞いた。
どうやら街の中心的存在になっていると耳にしたのだ。
きっとアイツは幸せだろう
何もかも 街の全てを握って
いつしかそれが、妬ましく思えて。
そして、美貴を傷付けた。
- 258 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 15:57
-
耳を澄ますとサイレンの音が聞こえる。
やはり、警察が来てしまったようだ。
「…ありがとうな。元気で暮らせ」
「裕子さ…」
「隠れたってしゃあないし。しばらくサツの世話になるわ」
「……あの…」
「なん?」
「…今度は、幸せを見つけておいて下さい」
本当の、幸せを。
美貴がそういうと、分かってると言ったような表情で裕子は頷いた。
全てを取り戻して。全てが幸せで満ちるように。
美貴は裕子に、そう言いかけた。
- 259 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 16:00
-
「…で、君はこの事件に関与していると疑惑が出ているのだが?」
「美貴はカンケー無い。取り引きの役を勧められただけだって」
「……ほぉー、じゃあなんで服が血まみれなのか説明してみるか?」
それは…と言いかけた瞬間、ノックの音で遮られた。
美貴は会話が中断したためホッとするものの、すぐに別の話題に変えられた。
「一緒にいた女の子とは、どういう関係かな?」
「う…あ…それは…」
家出した亜弥ちゃんを、かくまってあげた。
なんて言えるわけない。
「……言えないのなら、留置所にぶちこまれちゃうよ?」
それはカンベン。
そう言いかけた瞬間、取り調べ室に飛び込んで来たのは
- 260 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 16:05
-
「みきたん!!」
「あ、亜弥ちゃん?」
ガバァッと美貴に抱きつき、不安そうな瞳の亜弥がいた。
刑事はあきれ顔で、ほら見ろと言ったような顔だ。
「あ、亜弥ちゃん…家に帰ったんじゃ…」
「帰ったよ!帰ったけどパパとママは色々うるさいしみきたん
の事悪く言うし…っ…ほっとけないもん!!」
「で、でもここにいるとまずいんじゃ…」
「いいの!もう帰れるんだよ?」
「…え?」
刑事は悔しそうな顔をして、美貴に説明を始める。
一例の暴力団事件に関与はしていた美貴だったが、薬の取り引きには参加していない。
暴行罪で逮捕される所だったが、相手は全員組員だったためなんとか釈放。
「…悔しいが、もう帰っていいぞ」
「ほ、本当に!?」
「だが…お前は街でも警察によく顔を知られている。行動には気をつけるように…」
実は、何回か警察の世話になった事はあった。
だが、いつもなんとか罪から逃れられている。
「ねっ、帰ろう?」
「う、うん」
- 261 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 16:08
-
「帰るって、どこに?」
「決まってるでしょ、みきたんの家」
「…亜弥ちゃんは、どうするの?」
もう両親には、知らされていた。
一度家に返されたものの、両親共に呆れるばかりだったのだ。
しまいに美貴の事に触れられた時には、再度家を飛び出していた。
「って、まずいんじゃないの?」
「…だって、あの家にいたくない」
「そうかもしれないけど…ねえ、亜弥ちゃん?」
「……たん?」
美貴は立ち止まって、亜弥を振り向かせ抱きしめた。
疲れ果てていた美貴だったが、そんな事も気にする事なく。
- 262 名前:証千 投稿日:2004/12/01(水) 16:10
- ふはぁ…大量更新…?
そろそろ完結です。
>232様 ありがとうございます。黒い雰囲気は苦手ですが…
多分ハッピーエンドになるかもしれないような…
- 263 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 18:30
-
「美貴は、亜弥ちゃんの事が好きだよ」
そう言えば、言ってなかったっけ。
少し恥じらう美貴の目線には、今にも泣き出しそうな亜弥がいる。
なんせ、産まれて初めての告白だ。
しかも、お互いに。
「あの…だからさ、亜弥ちゃんが美貴と一緒にいたいのは分るんだけど…
やっぱ、家族の所、帰った方がい…」
「みきたん」
「うん?」
ぎゅっと抱きついて来た亜弥の温かさ。
やっぱり、一番大事なもの。美貴は体温で感じ取った。
「…ありがとう。みきたんがそう言うなら、そうする」
「そっか。それなら、美貴も安心する」
「……ママとパパは許せないけど」
「そんな事言わないでさ。お母さん達、きっと心配してたよ」
「そうかなぁ?」
家族って、そういうものだと思うよ。
家庭の輪を知らない美貴は、あまり自信を持って言う事が出来なかった。
でも、亜弥は嬉しそうににっこり笑って、頷いた。
うらやましいとは思った。
でもそれ以上に、美貴も幸せを掴んだ気がして。
- 264 名前:暗闇か天光 投稿日:2004/12/01(水) 18:33
-
誰もが自由に持てるもの
それはきっと 世界中の誰もが打ち当たる大切なもの
「たん、またほっぺ擦りむいてる」
「え?」
「にゃは、最初に会った時とおんなじだね」
「…あはは、そうだね」
初めて会った時 たぶん、その時から幸せのシッポは見えていた筈
暗闇から抜け出して 一緒に目指そう
闇の中にある 幸せの光
FIN
- 265 名前:証千 投稿日:2004/12/01(水) 18:35
- 終りが微妙だったので完結させちゃいました。
なんだか投げやりになったぽ…
よっちゃんが放置なのは作者が面倒臭がりだからです。
次は、前々から考えていたネタを。
『smile on me』のタイトルで不器用な2人にチャレンジしてみます。
では。
- 266 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:36
- 気が付くといつも一緒にいた。
2人の関係は、16年も続いている。
そして、亜弥が高校に入学した今も変わらず、2人は一緒。
甘えたがる亜弥に対し、美貴は至って冷静なのだが。
そんな2人の 甘酸っぱい恋のお話
- 267 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:37
- 「みきたんみきたんみきたんみきたんみきたんみきた…」
「うるっさいなぁ…何?」
「にゃはっ、呼んでみただけぇ」
「…うわ、腹たつ」
美貴のベッドの上で、特徴的な笑い声を上げてゴロゴロするのは
美貴の幼馴染み、亜弥。
そしてデスクに向かいテキストを開く、至って真面目な高校生。
メガネの似合う、亜弥曰く王子様。
困惑する美貴の姿でさえ、亜弥には輝いて見えるのだ。
- 268 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:38
- 『たんっ、ぜったいぜったいけっこんしようねっ?』
『…あーハイハイ分かった分かった』
『やくそく!ゆびきりっ、ゆーびーきーりー!!』
『うるっさいなぁっ』
あの頃に指きりなどしなければよかった。
美貴は18歳になった今、約10年前の事を思い出す。
その時は冗談だろうと思って適当に相づちを打っていたものの、どうやら本気らしい。
それは最近になって気付かされた。
- 269 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:38
- 「あ、そだ。これあげるよ」
「え?」
美貴はデスクの引き出しから小さな袋を取り出す。
何々?と興味津々な亜弥の手に、ぽいっと落とした。
「前から欲しいって、言ってた気がしたから」
「…ピアス?ほんとに、くれるのっ?」
「いらないなら美貴がもらうけど」
「ううん!!嬉しいっ…」
思い掛けない美貴のプレゼントに、亜弥は感無量と言った表情。
あきれ顔の美貴は静かに笑って、亜弥の隣にぽすんと座った。
そして、亜弥はにんまり笑い、美貴を押し倒す。
- 270 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:39
- 「重い」
「……たん」
「何」
「めっちゃくちゃ、大好き!」
「…それはどうも…」
ぎゅうぎゅう抱きつかれ、美貴は疲れた様子でそのままにしておく。
亜弥はもらったピアスそっちのけで、美貴の疲れ顔を嬉しそうに眺める。
相当、亜弥は美貴に惚れているのだ。
- 271 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:45
- 亜弥の家は、美貴の家から徒歩15秒。
一軒家のお隣さん同士だ。
幼い頃から亜弥の一方的なラブアピールを受けている美貴は
飽き飽きしながらも長年親友を続けている。
そう、親友を。
- 272 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:45
- 「…たん…」
メガネをしたまま、亜弥を腕枕する格好で眠る美貴。
それを見つめる亜弥は、恋する乙女の瞳だ。
かっこいい。かわいい。
亜弥にとって、美貴はそんな存在。
大抵のわがままは嫌々ながらちゃんと聞いてくれて、悩みにも乗ってくれる。
そんな美貴が、亜弥は大好きだ。
いつまでたっても、友達のラインから切り出せない。
疎ましい関係が、嫌になってきた。
- 273 名前:smile on me 投稿日:2004/12/01(水) 21:46
- 恋人。の形になれるように、亜弥は必死に美貴を振り向かせようと頑張って来た。
でも、美貴は決して亜弥の気持ちに答えてはくれない。
分かっているくせに、向き合ってくれないのだ。
そして亜弥は考えた。
今年こそ、美貴を振り向かせてみせる。
その決行日は、12月のメインイベントでもある、聖なる日クリスマス。
こんなロマンチックな日和はないと、亜弥は目を輝かせる。
クリスマスに、何かが起きるのを期待して。
- 274 名前:証千 投稿日:2004/12/01(水) 21:46
- ってな事で、クリスマス・イヴぐらいに完結予定です。
- 275 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/01(水) 23:08
- うわっ!すごく好きな感じ♪
続き、楽しみにしてます!!
いつも更新が早いから嬉しいです。
- 276 名前:wool 投稿日:2004/12/02(木) 01:33
- 『暗闇か天光』お疲れ様でした。
あーゆーハードちっくな雰囲気好きです。ハピエンドで良かった。さりげによちぃが出ててニヤリ。
『smile on me』も楽しみつつ期待しています。頑張ってください。
- 277 名前:smile on me 投稿日:2004/12/02(木) 18:56
- 「…じゃあ、当日はこうなるらしいんで、すみやかに行動願います」
「「「はーい!」」」
教壇を静かに降り、すたすたと自分の席へ戻る美貴。
それを横目で追う真希ことごっちんの目が、妙に厭らしい事に気付く。
「さっすが学級委員、言う事が違うね」
「何で?」
「なんか、テキパキしちゃって、かっくいぃ〜みきたん」
「やめろその呼び方」
「なんで?」
「…なんでも」
亜弥以外に、みきたんと呼ばれるなんて。
美貴はなんとなく、恥ずかし気があったのだ。
からかう真希を放っておき、さっさと下校する事に決めた。
- 278 名前:smile on me 投稿日:2004/12/02(木) 18:57
- 「藤本先輩!」
美貴の後を追ってくる、亜弥と同じ学年の下級生達。
振り返ると下級生はきゃっきゃとはしゃぎ、美貴に手を振って走り去って行った。
「…なんだありゃ」
そう、自分はモテるらしい。
あまりにも自覚が足りず、つい最近言われて気付いた事だ。
なんて、そんな事があっても美貴は動じない。
全く興味を示す様子もなく、スタスタと階段を上がっていく。
わがままお姫さまの命令により、下級生のクラスまでお迎えに上がるために。
- 279 名前:smile on me 投稿日:2004/12/02(木) 18:58
- 亜弥のクラスまで着き、教室に一歩足を踏み入れ本人を探す。
だが、周りの視線がうざすぎる。
下級生の憧れの的である、美貴が来ては大変な事になるのだ。
まだその事が理解できていない美貴は、嬉しそうな悔しそうな顔をする亜弥を見つけた。
「何なに!?ふたり、どういう関係っ?」
「や、何の関係もないから。つか早く帰ろ」
「ちょ、みきたんっ…」
さぞ邪魔くさそうに他の下級生を振りきり、亜弥の手首を掴み階段まで向かう。
亜弥は驚いた様子でなすがままにされ、美貴の不機嫌そうな顔を伺う。
もしかして、怒らせた?
- 280 名前:smile on me 投稿日:2004/12/02(木) 18:58
- 「…っ…いったいってば!」
「……帰ろう、早く」
「…怒った?」
「何で」
「あたしが、一緒に帰ろうって言って、ああいう事になったから」
「…別に。怒っちゃいないけど、ウザかった」
冷たくあしらう美貴に、亜弥は唇を尖らせた。
美貴はそれに目もくれず、ずんずんと亜弥の先を歩く。
昨日、優しかったのに。なんで、冷たくするの。
亜弥は美貴に直接そう言いたかった。
でも、言えるわけない。
言ってしまえば、もっと美貴の機嫌を損ねて、嫌われてしまうかもしれない。
いくら長年一緒にいたとしても、亜弥はそれだけは出来なかった。
- 281 名前:smile on me 投稿日:2004/12/02(木) 18:59
- 「…ごめん。もう、そういう事言わないから」
「違う」
「……じゃあ何よぅ」
「一緒に帰らないなんて言って無いし」
美貴は、放ったらかしにされた亜弥の手を握って、呟く。
かすかな声だったけれど、亜弥は感じ取った。
「…じゃあ、明日も一緒に帰っていい?」
「…勝手にすれば?亜弥ちゃんが、そうしたいなら」
じゃあ、そうするもん。
調子にのって美貴の頬にキスをすると、美貴は驚きを隠せない。
繋いでいた亜弥の手を振り解いて、走り出す。
それを亜弥は全速力で追う。
いつのまにか美貴の不機嫌は直っていて、とても嬉しそうに笑う。
自分でもよくわからない、複雑な亜弥への思いを抱えながら。
- 282 名前:証千 投稿日:2004/12/02(木) 19:01
- 美貴様ちょっと黒かったかな……?
>275様 続き楽しみと言われると頑張りが増えますw
>276様 よっすぃごめんねよっすぃ…
脇役でしたがなんとなく出してみたかったのです。
- 283 名前:孤独なカウボーイ 投稿日:2004/12/03(金) 00:55
- 月の方でいしごまをリクさせて頂いた788のものです☆★
早速読ませていただきました!もう文句なしで最高です。甘い甘い!ごっちんには強い梨華ちゃんが大好きです!(笑)
引き続きこちらも読ませて頂きます。頑張って下さい(´∀`)
- 284 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:23
-
休日の朝、美貴は珍しく朝早くに目が覚めた。
何故だか分らない。
昨夜遅くまで定期テストの予習をしていたのにも関わらず、眠気が全く無いのだ。
いつもの休日ならば、昼頃に亜弥に起こされるまで眠っているのに。
何も予定は無いが、たまにはこういうのも良い。
朝からなんとなくそんな気分だった美貴はさっそうと起き上がり、洗面台に向かった。
カーテンを開け、隣の窓を覗く。
まだ、カーテンは閉まっていた。
珍しい、まだ亜弥が起きていない。
休日でさえ美貴にお節介をやく亜弥は、毎日家にやってくる。
だが、今朝は遅い。
首を傾げながらも、体して気にする様子も無く頭をかいた。
- 285 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:23
-
とあるハンバーガーショップ。
まだガラガラの店内で苛立ちながら足をタンタンと踏む、少女。
「…遅い…」
自動ドアが開いたその時、息を切らせて走ってくる、もう一人の少女。
「ごめんっ、待ったぁ?」
「待った。亜弥の事だから、想像はしてたけど」
不機嫌そうに笑った友人は、すぐに機嫌を直してくれた。
亜弥がコーラとポテトを奢ったおかげで。
- 286 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:24
- 持つべきものは、友達でしょっ?
急な亜弥の一言で、朝早く駆け込んだハンバーガーショップ。
亜弥の友人、高橋愛はネムそうな目をこすり亜弥の話に淡々と耳を傾ける。
「で、相談って?」
「愛には言ったよね?あたしのお隣さんの事」
「…ああ、藤本先輩?」
「そうっ、みきたん!」
さも嬉しそうにポテトを摘む亜弥を見て、愛は眉をしかめながら言った。
それに亜弥は怪訝そうに抗議する。
- 287 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:24
- 「なによぉっ」
「何って…あの先輩の事はカンベンだよ」
「何でっ」
「だって、とばっちり来たら怖いもん」
そりゃあそうかもしれないけど。
みきたんは本当は優しくって、心が広いんだよっ。
愛にそう言っても、無理と言った風に首を横に振られる。
「う〜っ…じゃあどうしたらいいのっ」
「他の人に言ってよ、あさ美ちゃんとか」
「紺ちゃん…は…」
「…ま、無理か」
不適切な事を言った、と愛は笑いコーラをテーブルに置いた。
恋愛にオクテな友達に恋愛の相談をしても無理だろう。
亜弥はすぐに察したからだ。
- 288 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:25
- 「…しょーがないっ、協力してあげるよ」
「本当!?」
「たーだし、料金付き」
「お金取る気…?」
「嘘だよ。後払いでいいんで♪」
意地悪な目つきの愛の視線を受け、亜弥の方が骨が折れる。
「で、先輩のナニよ」
「あの…さぁ、もうすぐアレじゃん?」
「あれ?アレって、亜弥先月に終ったばっかじゃなかったっけ」
「ち、違うよぉ!!」
「え?じゃあなに……あ、あぁ!」
わざとらしい。
亜弥の頬が赤くなる前に、愛は手を打ってやけに大袈裟なリアクションだ。
- 289 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:26
- 「へぇ〜、今さらなんだ」
「な、何よ」
「だってもう何年もの付き合いでしょ?今さら?」
「…そんな勇気ありませんー…」
「まあま、肩落とさないで」
愛の励ましにも一向にテンションは上がらない。
俯き加減の亜弥に、愛もなぜか肩を落とす。
「クリスマスに告白ねぇー…。それで、どうするの?」
「…え、えっ?」
「アンタ、その為にあたしを呼んだんじゃないの?わざわざ休日の早朝に」
そうだ、そうだった。
休日、の部分を強く主張する愛に、ゴメンと頭を下げた。
- 290 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:26
-
「…あの…さぁ、ど、どうやったら…みきたん、振り向いてくれる…かなぁ…?」
そんな要素、亜弥には一杯ある筈だけど?
皮肉っぽっくそう言い放った愛は再び不機嫌そうになる。
亜弥は顔を真っ赤にしてどもる。
「何人ものファンに愛想振りまいてるくせに、本命には弱いんだねぇー」
「あ、当たり前じゃん!…みきたんなんかに、通じないよぉ…」
「へぇ。鈍感だったりするんだ?」
「そう!なんだよねぇ…」
人一倍、亜弥の事を分かっているはずなんだけど。
- 291 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:27
- ふぅと溜め息をついた亜弥は、飲み干したコーラをガシャガシャ言わせる愛を睨んだ。
あたしを睨まないでよ。
愛は微かに笑ってコップを弄ぶ。
「そりゃー、あたしは本気だぁ!って押せばいいんじゃん」
「それが分かってくれないんだもん…」
「じゃーいっそしちゃえば?」
「な、何を」
愛は亜弥をほのめかし、くいくいっと人指し指で亜弥の耳を寄せた。
ニヤニヤ笑う愛を不思議に思った亜弥は、半信半疑で立ち上がる。
- 292 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:28
- 「ばっ…で、できるわけないじゃんそんなことぉぉぉ!!」
赤かった顔がさらに赤くなる。
愛は面白そうに笑いながら、どうどうと亜弥をしずめようとする。
「いいじゃん、その位の色気なんか亜弥、ありまくりだよ」
「だっ、だからってそんな事誘うなんてっ…」
「まあねー、藤本先輩って頭硬そうだしぃ、興味ないかもね、エッチには」
再びケラケラ笑い出す愛に怒り浸透しながら、席につく。
全く、ふざけないでよ。
そんな言葉は、愛には無駄だった。
「…取りあえずさぁ、ぶつかってくれば?」
「え…」
「先輩だって、亜弥の事、何とも思って無いってこたぁ、ないと思うけど」
「どういう事…?」
「だからぁ、ちょっとは気にしてるんじゃないの?亜弥の事も」
ま、でも藤本先輩モテるしねー。
愛の語尾に俊殺された亜弥は、ガクンとテーブルに倒れる。
美貴にとって、所詮亜弥は友達まで?
そんな想いが、頭の中を巡る。
わかんない、みきたんの事。 好きなのに、わかんないよ。
- 293 名前:smile on me 投稿日:2004/12/07(火) 21:28
- 「…おはよ…」
「珍しい、今朝は早いんだね」
「…あれ、亜弥ちゃんやっぱ来てないんだ」
下に降りてみても、リビングにいたのは母と父だけだった。
何だか静かなリビング。
それはきっといつもいる亜弥がいないからだ。
「ねえ、亜弥ちゃん家にいるのかな」
「さぁ?朝ゴミ捨てに行ったら駅の方まで走って行ったけど?」
「…ふーん」
なんだ、つまんない。
カッと頭を過った感情を一気にねじ伏せた。
美貴、なんで今そんな事思ったんだろ。
うるさいのがいなくなって、休日を優雅に過ごせる筈なのに。
引きずったら、面倒臭い事になる。
ブンブンと頭を振って、溜め息をついた。
- 294 名前:証千 投稿日:2004/12/07(火) 21:29
- 更新終了。
>283様 いしごまは余り書いた事がなかったのでドキドキでしたが…
喜んで頂けたようなので、幸いですw
- 295 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/08(水) 11:47
- 面白い!やっぱ面白い!!
- 296 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/08(水) 20:25
- う〜ん、こんな展開大好きです!
- 297 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 17:57
- 「ただいまー」
亜弥の事など忘れ、午後から図書館に行った美貴。
日が暮れる頃には帰宅し、リビングに足を踏み入れた。
しかし、亜弥はいない。
朝から見ていない馴れた顔がないというものは、何だか寂しい。
なんて考えちゃいない。
ぶるっと身震いしながらぽすんとソファに腰掛けた。
- 298 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 17:58
- 「えぇ?まだ帰ってない?」
「そうなのよぉ、美貴ちゃん知らないわよねぇ?」
「…はぁ」
「あの子ったら、朝早く出かけて何も言わないんだもの」
いち早く亜弥の玄関まで辿った美貴は、更に不審に思う。
ママさんにまで伝達無しに出かけるなんて。
「てっきり美貴ちゃんのお家にお邪魔してるのかと思ったんだけど…」
「…あ、じゃあ電話してみます」
「お願いできる?」
亜弥の母にぺこりと頭を下げ、携帯を開いて亜弥のダイアルを探す。
って、何不安になってんだろ。
一度指の動きを止め、また現れた『変』な気持ちが蠢いた。
- 299 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:02
- その頃
「ねぇ〜…帰ろうよ愛ー…」
「何言ってんの、まだ!」
シッ!と人指し指を口元にあて、眉をしかめる愛。
なんであたしがこんな事。舞台で繰り広げられる優雅な劇。
亜弥にとって、宝塚とはそのような物だった。
愛に気付かれない様にカバンから引っ張り出した携帯。
履歴を見ても、誰からも着信はない。
圏外。
みきたん、心配してるかなぁ
「ちょっと亜弥!ちゃんと見て無いと勿体無いっ!」
「…わかったよぅ」
結局愛から逃れる事は出来ず、舞台が終るまで付き合う羽目に。
亜弥から誘った示談にも関わらず。
- 300 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:02
- 「…繋がらないし………」
あの馬鹿。
ピッとボタンをプッシュして携帯を閉じる。
亜弥が行きそうな所は殆ど探した。
学校も、行きつけの店も。
空はいつの間にか夜と呼べる程の暗さになっていた。
頼むから、もうちょっとだけ明るくしてよ。
美貴は心の隅でそう思いながら、再び街に駆けだした。
どこにいるんだよ。
いつのまにか、焦りがかかる。
- 301 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:03
- 「…どぉーしよう……」
ママに怒られる。いや、パパにお説教される。
門限を堂々と破ってしまった。それに連絡もなしに。
ビクビクとした心持ちで電車に乗り込み、携帯を覗く。
着信 一件
美貴からのメールだった。
どうやら電話も一件入れたらしい。
でも、内容を見るのが怖い。
きっと怒ってる。絶対怒ってる。
前にもこんな事があった。亜弥が中学2年生の時だった。
何気ない親子ゲンカが発端で、亜弥が家出をしかけた時。
美貴は呆れてその手を掴み、うまくなだめられたのだ。
あの時は優しかったのになぁ。
美貴がいないにも関わらず、拗ねてみる。
なんだか場違いな事してるなぁ。
そうは思っていても、美貴の事を思うと悔しくて仕方がない。
とうとう、家の玄関前
自分でも呆れてしまうほどの馬鹿をやってしまった。
怖くてドアノブに手を触れられない。
本当はこんな時間まで遊ぶつもりはなかったんだけど。
というか、愛のせいで。
と言ってもイイワケにしかならない事を亜弥は分かっていた。
所詮、全部自分がやった事なんだから。
そう思い、思いきってガチャリと玄関扉を開いた。
- 302 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:04
- ぱっと顔を上げると、きっとママかパパが凄い形相であたしを見下ろす。
そんな想像はすでに準備済みだった。
でも、違った。
怖い形相、というのは当てはまる。
でも、その顔は亜弥が大好きなもので。
それに伴って、亜弥が一番怖いものでもあった。
みきたん
「……たん…?」
亜弥の前に立ちはだかり待ち構えていたのは、意外にも美貴だった。
得意、いや本人曰く自然体の目つきがギラギラ光る。
亜弥はそれに慣れっこだったが、同時に苦手でもある。
だって、冗談無しに本気なんだもん。
- 303 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:04
- 「……何やってんの、こんな時間まで」
「…ごめん、なさい」
自分が思っていたよりも結構遅い。
時計を見てぎょっとした。
さっきまで明るかった空も、そう言えば暗くなりかけている。
美貴は頑に真剣な表情を崩さない。
いつもよりも冷たい目つきで、亜弥を睨み続ける。
「…した…?」
「アァ?」
「………心配、してくれたの?」
ドスの効いた声に怯むも、亜弥は最後まで言い切る。
- 304 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:05
- 「そうだよ。悪い?」
開き直るような形だけど。
美貴は頬を赤らめて、頭をかきながら片手を腰にあてる。
「…今度こんな事したら、縁切るよ。マジに」
「や、やだっ!」
「じゃあ次回から改める事」
「はぁい…」
不服気に拗ねた亜弥を見兼ねて、美貴は吹き出した。
ホント、空気が読めないやつ。
怒られてるって事、分かってる?
- 305 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:05
- 「…みきたん」
「何?」
「こんど、今度あたしがまた門限やぶったら、どうする?」
ぎゅっと拳をつくって、おずおずと尋ねた。
美貴は怪訝そうな顔をしてから、ふっと笑った。
なんか、吹っ切れちゃったな。
何もかも、どうでもよくなる程。
亜弥の笑顔が妙に、憎たらしくて。
抱きしめたんだ、亜弥ちゃんの事。
「たんっ…?」
「探しに行くよ。どんなに遠くに行っても」
ちゃんと、美貴の傍にいてよ。
そうは言えなかった。
そんな事言ったら、こんな関係続けてられない。
だから、卑怯な事しちゃったんだ。
心残りと言えば、それぐらいだ。
「…やっぱみきたんってカッコいい」
「は?」
「……増々、惚れちゃうじゃん…」
「え?何か言った?」
「にゃはっ、なんでもないよーん」
「なんだよ、気になる」
「鈍感なみきたんには言えません」
「じゃあ馬鹿な亜弥ちゃんとは一緒にいません」
「やっ、やだ!!」
「バーカ。ホントに馬鹿。んな事嘘だよ」
ずっと一緒がいいよ。
- 306 名前:smile on me 投稿日:2004/12/10(金) 18:06
- 美貴が初めて見せたかもしれない、亜弥へ贈る本当の言葉。
照れながらそう言うと、亜弥は嬉しそうな顔で美貴にダイブする。
それは始まりに過ぎない、美貴の気持ち。
まだまだ伝え切れて無い、亜弥の気持ち。
きっと、言葉にしたら全てが終ってしまう気がして
互いに、そう思っているのかもしれない
- 307 名前:証千 投稿日:2004/12/10(金) 18:08
- 更新しました。
>295様 ありがとうございます。下手な設定ですがどうぞよろしくお願いします。
>296様 こじれるような話ですが、ありがとうございますw
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/10(金) 21:45
- 素晴らしいです!あやみきは最高じゃーーーー!!
- 309 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 16:46
- 不器用な二人が可愛らしくて何度も見てしまいました。
鈍い藤本さん、亜弥ちゃんの想いに気付いてあげて!!
- 310 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 16:47
- すいませんageてしまいました…
逝ってきます
- 311 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:45
-
「ふぁ…眠っ…」
こつこつと歩き出すローファーの音と、白い吐息の朝。
マフラーに鼻を埋めながら小さくクシャミをする美貴
と、左側にいる亜弥
「亜弥ちゃんのせいだ」
「なんであたし?」
「……なんでもだよっ」
「何よぉっ、気になるぅ」
しつこい程に美貴に迫る亜弥は絶えず笑顔だ。
それとは対象に美貴はげんなりして青白い顔。
明らかに寝不足だという事が目に見えている。
- 312 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:45
-
「は、離せっ」
「いいじゃん誰もいないんだしぃ」
「そういう事じゃなくて…あ」
いつものふざけあいの最中、美貴は恥ずかしながら手を振り解き
ちょうど交差点に差し掛かる所に、見なれている顔が。
「ごっちん!」
「…んぁ?」
亜弥はとっさに美貴の後にかくれ、ギュッとブレザーの裾を握りしめた。
美貴の呼びかけに気付いた真希はねむそうな目をこすりながら特有の笑顔を見せる。
よかった、助かった。
亜弥に捕われていた美貴に安堵が訪れる。
- 313 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:46
-
「おっはーミキティ」
「ん、おはよ。偶然じゃん、一緒に行く?」
「んぇ?そっちの彼女さんはいいの?」
知っているにも関わらず、真希はニヤニヤしながら亜弥の方を見やる。
美貴はギョッとしながら戸惑う亜弥から身を引いた。
「違うから。っていうかわざわざ言わなくても…」
「あは、ごめんね。おはよう、亜弥ちゃん」
「お…はよう、ございます…」
この人が、ごっちん。
いつも美貴が話している人って、この人だったんだ。
同じ高校にも関わらず、亜弥は美貴の友達である真希の事をあまり知らなかった。
大体で言えば、これが初対面。
とっつきにくいタイプではない亜弥だったが、美貴の友達と聞けばわけがちがう。
- 314 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:46
-
キレイだ。近くで見ると、噂よりも結構大人っぽくて笑顔が格好良い。
ま、みきたんには負けるけど。
「へぇ、これが実物ねぇ。ミキティが言う通り、可愛いじゃん」
「ほぇ?みきたんが…?」
「でっ、デタラメ言うなよぉ!!!!美貴そんな事一言も言った事ないし!」
「うそぉ〜、寝言で言ってたんだけどなぁ」
「知らないってば!!っつかごっちん亜弥ちゃんの事知ってるでしょ!?」
「んはは、そうムキにならないで」
バクバクと鳴りを高める心臓は、確かに美貴のものだった。
それに伴い、亜弥は惑いながら困惑する美貴をじっと見上げる。
そうだよ、そうだよね。
みきたんがあたしの事周りの人に喋るなんて、ないもん。
- 315 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:47
-
一瞬でも期待した気持ちが、とてつもなく気持ちが悪かった
楽しそうに会話する真希と美貴の光景を見るのは、辛かった。
あたしといるとき、あんな顔して笑わない。
後藤先輩キレイだし、頭もよさそうだし。あたしだって、可愛いけど。
でも、みきたんは
「…亜弥ちゃん?」
「ふぇっ!?」
「なぁにボーッとしてんの…頭大丈夫?」
ケラケラとバカにするように亜弥の額にデコピン。
気付くともう校門の前にいた。
- 316 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:47
-
「あ、元々大丈夫じゃないから平気か」
「ち、違うもん!か、考え事してただけ…」
「ふぅん、何考えてたって?」
「…そ、それは」
みきたんと、後藤先輩の事。
なんて言えるわけがなく、ぺちっと美貴の隙をついて頬を引っぱたいた。
軽く叩いたから美貴もそれに答えて、逃げる亜弥を追い掛ける。
こんな時がずっと続けいいのに。
でも、気持ちを伝えなきゃいけないんだよ。
女の子が想う、女の子への気持ちは届きそうに無い。
まして、美貴だとしたら。
- 317 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:48
-
「あ゛っ!?コラ、メガネッ!!」
「にゃはっ、こっちこっち〜♪」
急に足を止め、くるりと振り返り美貴のメガネを奪い取る。
とっさのことに抵抗できなかった美貴は焦って亜弥を追いかけようとする。
そこでベルが鳴り、亜弥にメガネを持ち去られてしまった。
「あー…もう、一時間目どうしてくれんだよっ」
ガクンとうなだれた美貴を、下駄箱の後に隠れて盗み見る亜弥。
あたしって、なにがしたいんだろう。
みきたんを振り向かせたい、だけなんだけど。
小さな溜め息は美貴に届く筈がなく、ただ美貴のメガネを指でいじくるだけだった。
- 318 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:48
- 「…あークソッ、黒板が見えないっ」
案の定、一時間目の英語では全く黒板の文字が見えず。
隣の席である真希のノートを写す羽目に。
ああ、今日は当てられなくてよかった。
「朝までかけてたじゃん、あのメガネ」
「…盗られたんだよ、バカに」
「バカって、よっすぃ?」
「や、それもバカだけど。よっちゃんを上回るバカが存在してるんだよ」
亜弥ちゃん、何のつもりだよ。
クシュンと真希の後の後の席で小さくくしゃみをした吉澤をくすりと笑い、美貴は
大急ぎで一年生の教室へ走り出した。
亜弥に盗られたメガネを、取り戻すために。
- 319 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:49
- 独りで来なきゃよかった。
後々後悔するのは分かっていたが、次の授業に間に合わせるために急ぎ過ぎた。
やはり一年生からの視線は熱い。
じろじろと下から上まで眺められては、こちらとら機嫌は悪くなる。
さっさと事を済まさないと。
「あー、亜弥ー」
「何?」
「アンタの片思い人が来てるよ」
「え?」
何よその言い方。
愛にそう言い返す前に、しどろもどろする美貴の元へ駆け寄る。
その姿を見て愛は何かを企むような目つきだ。
- 320 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:49
-
「みきたんっ?何やってんの…」
「何やってんのじゃないよ。メガネ、返して」
ピッと自分の目を指差して、亜弥は思い出したかのようにブレザーのポッケを探る。
多少イラつき気味の美貴を察して、亜弥は大急ぎ。
「…ん…」
「はぁ、疲れた。一時間目、どんだけ美貴が苦労したと思ってんの」
「ご、ごめんなさい…」
「……?」
なんだか亜弥の様子がへん。
朝はキャッキャとうるさい程に騒がしかったのに、今はなんだか暗い。
まあ、赤ん坊のような精神年齢だからこういう事もある。
美貴はたいして気にする事もなく、メガネをかける。
- 321 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:50
-
「あ…のさ、たん?」
「は?」
「えっと…」
「ん?」
さっさと言えよ。美貴がキれそうになってそう言いかける直前、授業開始のベルが鳴った。
「やべっ。亜弥ちゃん、何?」
ギュッと唇を噛むけれど、肝心の聞きたい事が言えない。
真面目に怒り出しそうな美貴に、亜弥は決心してにゃはっと笑ってみせた。
- 322 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:50
-
「お弁当っ、一緒に食べよっ?」
「…あ?ああ、別にいいけど」
「じゃあお昼になったら裏庭にいるからっ、じゃねっ!」
「は?ちょ、亜弥ちゃ…」
「みきたん、遅れちゃうよ?」
「っ…あああやばいやばいっ」
みきたんのばか。みきたんのどんかん。みきたんのあほ。みきたんのぼけっ。
どんなに美貴のせいにしても、言えない自分が全部悪い。
本当は、違うのに。
明るくしてみせるほうが、むしろ辛かった。
どうしても、朝の事が引っ掛かって。
真希と美貴の関係が、ずっとずっと気になって。
でも、言えない。
あたしは、そこまで言う必要はないんじゃないかって。
- 323 名前:smile on me 投稿日:2004/12/12(日) 19:51
-
「…たん……」
廊下で佇む亜弥の肩をポンとつついた、愛の奇妙な笑い。
なんだか憎たらしかった。
「あーあ、藤本先輩ってば大馬鹿だねぇ」
「お、おおばか…」
「ズバリ、亜弥は後藤先輩と藤本先輩の事で悩んでいるでしょう」
「な、なんでわか…」
「アンタのその顔でバッチリだよ。トイレ行って見て来れば?」
なんでそこまで知ってるの?
そう言うや否や、愛はまたふふっと笑って教室へ戻って行った。
『だからぁ、ちょっとは気にしてるんじゃないの?亜弥の事も』
その言葉、信じて良いの?
- 324 名前:証千 投稿日:2004/12/12(日) 19:52
- 更新終了。
クリスマスイヴにちょうど完結できるのかどうやら…w
いや、間に合うんですけどね
>308様 最高と言っていただけるには程遠いのですが…
嬉しいです。
>309様 ぶきっちょなあやみきは書くの楽しいです。
ありがとうございます。
ageても平気ですよ、ちょうど更新したのでお気になさらず。
- 325 名前:作者 投稿日:2004/12/12(日) 19:53
- かくし
- 326 名前:作者 投稿日:2004/12/12(日) 19:53
- もういっこ
- 327 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/14(火) 03:29
- 亜弥ちゃんの揺れる想い。
届くといいですね。
更新待ってます!
- 328 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:42
-
「美貴ー、早く食べちゃってよー」
「はぁい」
塾から帰ってきて、眠い目をしょぼしょぼさせながらとる夕食。
テレビを見る目も段々辛い。
ちょっと勉強しすぎたかな。
なんていつも以上に気張る美貴。
「なんか、静かだね」
「亜弥ちゃんがいないから、じゃない?」
美貴の母はいたずらっぽく笑うと、美貴もそっかと笑って頷いた。
この間亜弥が門限やぶりで帰ってきて以後、藤本家には静けさが訪れる。
亜弥が執拗に迫る行動も、最近はとくにない。
- 329 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:44
-
「行ってあげれば?」
「な、なんでよ」
「何かあったかもしれないじゃん、亜弥ちゃんに」
食器を洗いながら、美貴に促すように顎をさした。
なんでそんな事わざわざ
そう言いかけたけれど、箸を止めて考えた。
今日学校でメガネの取り合いをしてから、なんかへんだった。
弁当を一緒に食べたはいいけれど、全然喋らなかったし。
俯いてばかりで、美貴も会話が浮かばず、結局殆ど無言のまま。
まあ、思春期だし何かあってもおかしくないな。
そう考えてさっさと箸を進める。
でも、なんだかモヤッとして仕方がない。
- 330 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:44
-
「ごちそうさま」
「え?もういいの…ってどこいくの?」
「すぐ帰るよ」
一度外したメガネをかけて、再びコートを羽織った。
すぐ隣の家に行くのに、別にコートはいらないけれど。
玄関で靴の紐を結ぶその時、美貴はふっと思い出した。
昔、小学校の時。
玄関から亜弥の家に遊びにいく事はとても少なかったのを思い返した。
どこから遊びに行くのかと言えば、美貴の部屋の窓。
ジャンプして屋根に飛び乗ればすぐに届く距離だったので、身の軽い子供には容易い事だった。
しかしその現場を美貴の母に見つかりこっぴどく怒られてから、その習慣は無くなった。
美貴が高学年になるにつれて、亜弥の家に遊びに行く事も減った。
あっちから無理矢理押し掛けてくる事はあっても、美貴自身から声をかける事は少ない。
美貴の部屋の窓から、お互いに喋ったり、つたってお互いの家で遊んだり。
- 331 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:45
- いつの間にか、消えたこと。
美貴は結んだ紐靴を解いて、タタタと階段を駆け上がった。
バタンと部屋の扉を開けると、さっき着たコートを脱ぎ窓を勢いよく開けた。
亜弥の部屋には、まだ明かりがついていた。
時計を見ると、時刻は夜の11時を回っている。
まだ起きてて当然なのに、なぜかホッとして。
なんで息荒くしてるんだろ。
はっと気付いた行動に照れくささを残し、ガッと窓のふちに足をかける。
慎重に、ゆっくり。外の誰かにばれたら通報され兼ねない。
- 332 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:45
-
ミシッ
「…?」
キッとイスの向きを変えた亜弥は、カーテンの閉まっている窓を見た。
気のせい。
そう思って再び机に戻った。
「………」
好きなのに。ぜんっぜんわかんないよ。
みきたんの気持ち、わかんない。
思わせぶりな事して、あたしの気、引いてばっか。
つっけんどんな事するから、もっと好きになっちゃう。
いつからこんなに好きなのか、分らない程。
亜弥は美貴の事を想っていた。
もうすぐやってくるイヴ、そしてクリスマス。
一緒に過ごしたいけど。でも、みきたんはどうなのかな。
- 333 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:46
-
壁にたくさん貼ってある、写真。
その中には、美貴と映っている写真が圧倒的に多い。
幼稚園、小学校、中学校、高校。
亜弥が美貴の腰に手を当てて、ばっちりの笑顔。
それと対象に、美貴はそっぽを向いて頬を赤らめている。
中学校の頃からかけ始めた美貴のメガネが、亜弥の心を胸うつ。
こんなにも、好きがいっぱいある。
- 334 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:46
-
ドタンッ
「ぐっ…や、やばいっ…」
不覚。藤本美貴、幼馴染みにこんな不様な姿を見せる訳にはいかない。
不注意にも屋根から足を滑らせ、今現在とても危険な状態。
屋根の端に必死に掴まり、足をバタつかせる。
落ちたら、直下の垣根に落ちる。
いや、落ちた方がいいかもしれない。
でも大怪我を負い兼ねない。そっちのほうが不様だ。
バレーボールで鍛えた足腰、腕っぷしを発揮するも、ジタバタ暴れるだけ。
こんな事してたらそのうち亜弥ちゃんにみつか……
- 335 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:46
- ガラッ
「…誰か、いる…?」
見つかった。
ガチガチとかじかむ手足を堪えて、聞こえてくるその声。
怯えてるのがすぐに分る。
ここで名を出したらきっと笑われる。年上のくせに、と。
どうしようと迷っている間に、亜弥が口を開いた。
「…たん、でしょ?」
「……っ…た、すけて…」
もう、ダメ。
- 336 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:47
-
そう思いかけた瞬間に、亜弥が窓からひょいと身を乗り出してぐっと美貴の両手を掴んだ。
ずっ、ずっと美貴の体を引きずって、屋根の上にあげる。
それにしても、何で分かったの?
そう言いかける前に、亜弥は吹き出して大笑いを始める。
やっぱり、こうなる。
たすけて、なんて言ったら、絶対バカにされる。
亜弥よりも年上で、強い存在の筈の、美貴が。
「にゃはははっ、なぁーにやってんのふぉ、ホントにぃ」
「…うるさいな」
冷えた頬に、温かい手が触れる。
ほんのわずかな時間の間で、こんなに冷えるとは。
亜弥は突然の訪問に、笑顔を見せた。
なんでこう、期待に答えてくれるのかわからないぐらい。
好き。
- 337 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:48
-
こうなるなら、玄関から来た方が良かった。
亜弥に温かいコーヒーを差し出されて、一息つく美貴は後悔する。
相変わらずケラケラ笑う亜弥は、壁にあるコルクから一枚写真を剥がした。
「…ねえ、何でわかったの」
「ふぇ?」
「屋根にいたのが、美貴だって」
亜弥の毛布に包まる美貴は、また笑い出す亜弥に問いかけた。
「笑うな。もう忘れてよ」
「だぁってぇ、みきたんチョ−必死なんだもん」
「で、何でよ」
「……それはねぇー」
亜弥は写真を片手に持ちながら、美貴が座るベッドの横に腰を降ろす。
知ってるもん、みきたんの事なら、なんでも。
そう言いたかった。
- 338 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:48
-
けれど、そんな事、言えるぐらいの勇気なんか持って無い。
「ま、しつこいぐらい付き合い長いからね」
「あぁー、何その言い方ぁー」
「もう腐れ縁だよ」
亜弥の写真をぱっと奪い、思い出したかのようにふっと笑う美貴。
さぐりを入れるような企みの笑顔ではなく、純粋な瞳。
亜弥は、それを卑怯だと思う。
こんなにも夢中にさせといて、そんなフリしないでよ。
「これ、去年のクリスマスのだっけ?」
物思いに耽る亜弥に、不意に言葉を投げかける美貴。
亜弥はそれに気付くと、うんと笑顔で頷いた。
- 339 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:48
-
「去年、亜弥ちゃんは受験だったから」
「そうだよぉ、あたしだけハブられて、勉強尽くし!」
「そんなの美貴だって同じだったんだよ」
「みきたんは頭良いじゃんっ、あたしバカだもん」
「ああ、そっか」
「納得しないでよ!」
みきたんと少しでも一緒にいたかったから。
すっごく、今までに無いぐらい勉強して、合格したんだもん。
そもそも美貴と同じ高校に行く事は偶然だったものの、俄然やる気をかきたてた。
毎日美貴といられるなら、そのぐらい。
亜弥は両親に豪語し、合格を決意したその直後猛勉強を始めたのだ。
クリスマスのその日、亜弥は一人部屋で勉強。
下に行けば、家族みんなでワイワイやっているのに、何で自分だけ。
そんな事は思わず、ひたすらペンを進めていたその時。
小さなノックと共に、ひょこっと現れたメガネ。
亜弥はそれを見ると、ペンを置いてにこりと笑った。
- 340 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:49
-
『さぼってないか、見に来た』
そんなひねくれた美貴の一言でも、亜弥は十分嬉しかった。
そそくさと差し出したのは、ちょっと小さいクリスマスケーキ。
『ありがと、みきたん』
『これ食べたら、風呂入って早く寝なよ』
『ダメだって、まだ終って無い…』
『無理したら、一番いけないんだよ。わかんない所あったら、いつでも聞いていいから』
ぶっきらぼうにそう言った美貴は、亜弥にケーキを渡してさっと部屋から出て行った。
そんな事しか出来ない愛情表現が、すごく愛おしく感じて。
勉強どころじゃなくなった亜弥は、出て行った美貴の腕をぐっと掴んで引っ張り戻す。
『な、何』
『写真っ、取ろ!』
『へ?』
ぐいと引っぱりもどされた美貴は、カーペットの上に座らされる。
そして亜弥は机の中からポラロイドカメラを取り出して、微笑む。
- 341 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:49
-
『何で?』
『息抜き、いいでしょ?』
『いいよ美貴は。自分好きなんでしょ?自分撮ればいいじゃん』
『いいの。もう飽きたから。それより、みきたんとがいい』
『ハァ?』
『あたしが合格したら、この写真、もらっても、いい?』
『ちょっと待って、話がそれ…』
『ハイッチーズ』
パシャッ
一瞬のスキをついて、美貴の頬にキスをかました聖なるショット。
いつまでも、大切に。高校に合格した亜弥は、約束通り写真を大事に持っている。
- 342 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:50
-
「…亜弥ちゃん?」
「ふぇ?」
ほらまた聞いて無い。
美貴に笑いながら指摘され、それに応じて亜弥は微笑んだ。
全く聞いて無かった。
ずっと、去年の事を考えていて。
「あーあ…今年ももう少しで終りだー……」
「…んー」
「あ、そうだ、クリスマスがあんだっけ」
「…そだね」
「……なんだよ、変なの」
「…え?」
「美貴の話、聞いて無いだろ」
コツンと亜弥の額を小突く美貴は、呆れた様子で笑って。
亜弥はすこしムッとした様子で頬を膨らました。
クリスマスが近付くにつれて、疲れてゆく心。
それと反対に、膨れてゆく美貴への気持ち。
- 343 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:50
-
「暇なら、一緒にいてやってもいいけど」
「…え…?」
「クリスマス、どうせ暇でしょ」
「…みき、たん?」
「……美貴も暇だし、する事ないし。他の子、みんな用事あるっていうから」
遠回しな言い方だけれど、確かに美貴は亜弥に言った。
クリスマス、一緒に過ごそう。
まだ早いけれど、涙が零れそうだった。
- 344 名前:smile on me 投稿日:2004/12/15(水) 21:51
- 「…たぁーんっ…」
「何」
「……すきー…」
「スキー?」
「ちがうっ、たんのあほっ」
ぼこん、と喰らった枕を笑いながらカバーするも、気付いているこの気持ち。
一緒にいたいんだ、亜弥ちゃんと。
素直にそう言えたなら、どんなに楽だろう。
やっと分かった、本当の事。
美貴は、亜弥ちゃんの事、友達に思えないんだ。
- 345 名前:証千 投稿日:2004/12/15(水) 21:55
- 美貴様の気持ち、発覚。
次回更新日、完結かと。
イヴに合わせたかったのですが、どうなることやら…
>327様 さてどうなることやら…
ラブラブなあやみきを書きたいのですがねw
- 346 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 01:29
- おおっ、こ、これは…!!
- 347 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:07
-
「っ…重い…」
担任から持たされた多重の荷物。
ゼェハァと息を吐くも、誰も手伝ってはくれなかった。
渡り廊下を過ぎた後、よいしょと体勢を立て直す。
ふとグラウンドの脇を見ると、小さく俯いた女の子と、真希。
あ、あの子。
メガネを外して、目をこらしてよく見てみる。
「じゃ、そういう事で。またあとでねん♪」
「ご、ごとーさ…」
「あーあー、後で聞くから」
小さく俯いた女の子が、顔を真っ赤にして真希に何か抗議している。
対象に真希はと言えばへらへら笑いながら、美貴を見つけ楽しそうにスキップを踏んでこちらに向かってくる。
- 348 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:07
-
「…あの子、紺野さんだっけ」
「うん、そだよ」
「……へぇーえ。後輩なんかと何してたの?」
「何って。うちら付き合ってるし」
「…へ!?」
ドサリと教科書やら教材が美貴の足元に落ちる。
一瞬顔を歪めた美貴は、数分うなりながら真希に問いただす。
「か、彼女…なの?」
「うん、まあ」
「…い、いたんだ、ごっちんに」
「なんで?」
「や、そういうの面倒派じゃなかった?」
「そうだけど。ま、紺野は特別だよ」
とくべつ?
- 349 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:08
- ブルッと身震いして、意味あり気な微笑みを浮かべる真希は、美貴から見てとても幸せそうだった。
そんなに良い事が、紺野って子とあったのかな?
珍しく真希が乙女のような表情をしているのに気付き、美貴はとっさに話を続けた。
「で、なんの話?」
「んーと、25日を一緒に過ごそうと提案した」
「25日?それって」
「クリスマスだよ」
美貴が言うよりも早く、真希はにやっと笑ってそう言った。
やけに嬉しそうなのは、あの紺野という子に相当気を寄せているからだろう。
「でもその後輩、嬉しそうじゃなかったね」
「まー、ごとーが一方的に言っただけだから」
「え」
「ヘーキだよ。紺野はごとーの言う事に逆らえない」
明るく言った真希の言葉に、何だか寒気を覚えた。
でも、そういう事、ちゃんと考える人だったんだ。
- 350 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:08
- 普段はいつもおちゃらけていて、ロマンチストな面は見せない真希。
いつもこうだったら、あの紺野って子、困るんだろうな。
すでにいなくなった後輩のいた所を見つめ、ふーんと相づちを打った。
「でさ、ミキティはどうなの?」
「は?」
「クリスマスに、誰かと過ごす、とか」
「…あー…」
いる、けど。
けどって何?
…さあ。
何でよ、教えてよ。
知らなくていいじゃん。
ごとーは言ったのにー。ずるい。
- 351 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:09
-
体した事じゃないでしょー。
何となく、口に出しづらかった。
真希は執拗に美貴に迫り寄るも、美貴は笑いながらそれを避ける。
重い荷物をぽいと残し、教室に走って逃げた。
真希にからかわれるのが面倒だから、言わなかった。
でもそれだけじゃない。なんだか、いらついてしょうがなかったから。
亜弥の事。自分の事。はぐらかすことしか、術はなかった。
ガヤガヤとした教室に、一点の机に集中してあつまる人混み。
何かを喋るたびに、キャーやら黄色い声が聞こえてくる。
それに飽き飽きしながら、少しふてくされている亜弥がいた。
- 352 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:09
-
「でねっ、藤本先輩ってー…」
「マジ!?ね、亜弥それ本当!?」
ばっと集まってくる友人達を睨みながら、葛藤する気持ちを堪えた。
愛のバカ。
心身共に疲れ果てる程、愛には呆れてしまう。
「…喋らないでって言った…」
「ごめんごめん、だってみんながさぁー」
「愛のばかぁぁぁ!みんなに誤解されちゃったじゃんかぁ!」
事の発端は、愛の喋り癖。
口がそうそう硬くは無い愛に、美貴との相談をしたのが間違いだった。
おしゃべりな愛が、この問題を喋らずにはいられない事は予測していた筈だった。
でも親友の一人だから、真剣に悩み相談をしたのに。
見事約束は一週間程で打ち消され、クラス中に広まった。
少しだけ涙目になる亜弥に、ギョッとした愛は慌てて頭を下げる。
- 353 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:10
-
「…マジ、ごめんね?こんなに広まるって思って無くて…」
「…もーいいもん…」
「あぁぁ、泣かないでよぉー」
ポタリと亜弥の涙が零れた瞬間、愛はもう一度頭を下げる。
その様子を、見逃さなかった人物がいた。
「ねっ、あさ美ちゃんもフォローしてっ!」
「えぇ?」
しっかりと二人の会話を聞いていた事を振り切って、わざと驚いて見せる。
美貴と同じく、メガネの似合う光った女の子。
「わ、私そそそそんなことっ…」
「いーじゃんっ、あさ美ちゃん恋人いるんだからそれぐらいのそうだ…あ!!」
「ああああ愛ちゃんっっ!??」
禁句ワードその2。
亜弥と愛の友達、あさ美こと、紺野あさ美には恋人がいる。
紛れも無く、その相手は美貴の一親友、後藤真希だと言う事を。
- 354 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:10
-
「ウッソォ!?紺ちゃん、後藤先輩とつきあっ…」
「亜弥静かにっ!!」
ガッと亜弥とあさ美の首根っこを掴み、皆が気付かぬうちに廊下に引っ張り出す愛。
あっという間の出来事に、無論クラスメイトは誰一人気付く事はなかった。
「う、ウソ…」
「愛ちゃぁん…」
「ご、ごめん。口が滑った」
アンタの口が滑ったは何十回も聞いた。
愛を睨みながら、涙が枯れた亜弥はそう言った。
すると愛は縮こまりながらも、顔を赤らめるあさ美の肩にポンと手を乗せた。
「って事で、アドバイスよろしく」
「…わかんないよそんな事」
「……もういいよ愛。アンタにはもう愛想が尽きたから」
「そんな事言わないで!今度こそ、絶対!!」
「…もぉっ」
- 355 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:11
- 亜弥と美貴は、あんな事やこんな事までしている仲。
愛が噂を広めた本人と言えるが、こんな事が美貴にまで知られたら。
そんな事を考えると、死にたい気分に陥る。
みきたんとはそんなんじゃないのに。
愛を恨むも、もう事は進んでいる。
「あ…あの…」
「何、あさ美ちゃん?」
「私、クリスマス、後藤さんと過ごすんだけど…」
「え…?」
「ちがっ、あの嫌味とかじゃないよ?」
亜弥は耳を疑った。
「だからそのっ…あ、亜弥ちゃんも…藤本先輩と…」
「は、もう約束したんだよねぇ?」
「…愛…それ以上言ったら…」
「ごめん、また口が滑った」
いっそガムテープで口を封じてしまいたい程の、余計な一言。
あさ美は困惑しながら、再びぐずりだす亜弥の背中を撫でた。
もう、美貴からその約束はもらったけれど。
- 356 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:12
-
一度決めた告白への気持ちは薄れていた。
「亜弥のいくじなしー」
「…っ…」
「あれほどあたしが言ったのに、聞いて無かったわけ?」
「あ、愛ちゃ…」
「あさ美ちゃんは黙ってて。いっそぶっちゃけるから」
いつの間にか開き直るような形に亜弥は怒りを覚えるが、愛にはかなわない。
だって、本当の事を言われちゃ、何も言い返せなかった。
「アンタ、本当に好きなんでしょ?」
そんなの、当たり前だよ
「何言われるか分かんないから、ビビッてるだけのくせに。
藤本先輩だって、そこまでバカじゃないと思うけど、あたしは」
あさ美は愛の後に隠れるような形で、歯を食いしばる亜弥を悲しそうに見つめていた。
- 357 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:12
-
愛は亜弥のためを思って言っている。
それは自分でも分かっていた。
「前にも言ったよ。先輩は、アンタの事、ちゃんと見てるよって」
美貴は亜弥の一番近くで、いつも傍にいて
怒るとすごく、いやかなり、怖いけれど
笑いかけてくる笑顔が、大好きだから
優しくしてくれる美貴が、大好きだから
ぶわっと溢れ出した亜弥の涙を、優しく受け止める愛とあさ美。
なんだかんだ言って、愛は亜弥の事をちゃんと見ていた。
それに、あさ美だって。
- 358 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:13
-
「もう時間ないんだからっ、バッチリ決めてこいよっ!!」
「ふぇっ!?」
「頑張ってねっ、亜弥ちゃん」
あさ美の純真な微笑みと、愛の厳しい喝。
「…ありがと…」
「うん、元気だしてよ。あたしら、協力するから」
「えっ?あたし…も?」
「当たり前じゃん。ま、あさ美ちゃんは後藤先輩とが限度?」
「あ、愛ちゃん!!」
この時ばかりは、愛とあさ美に感謝した。
クリスマスに、しっかりと自分の気持ちを美貴に届ける事。
約束するよ。みきたん、待っててくれるかな。
- 359 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:13
-
「…ハクシュンッ」
「誰かに噂されてんじゃないのー。恋バナとか?」
「無いよ。早く帰ろ」
「あれ、亜弥ちゃんはいいの?」
ズキン。今迎えに行こうとした自分を責めた。
なんでだか、放っておいたら昔のように迷子になってしまうのではないか。
なんて下らない事を今さら考えてしまう自分はおかしい。
真希はニヤニヤしながらカバンを持ち直し、美貴にふざけ混じりで抱きついた。
「はぁーなれろよ…」
「いーじゃんみきたんー」
「っ茶化すなっ!!」
ジタバタと抵抗する美貴も、ふざけてくる真希を軽く受ける。
この時は、なんでもないただの遊びだった。
真希の余計な行動があるまでは。
- 360 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:14
-
「亜弥ー、一緒に帰ろ」
「あ、ごめんあたし……」
「亜弥は先輩と帰るんでしょ〜?」
「ち、違うもん!みきたんとはもう帰らな…」
「なんでー?かっこいい恋人なんでしょ?」
「ちがうってば!」
今の所は。なのだが。
そこは念をおすものの、クラスメイト達は笑いながら下駄箱へ走る。
亜弥の後でくすくすと笑いをこらえる、愛を除いては。
多少後悔しながらローファーに履き替え、昇降口を出たその直後。
見たくも無い、会いたかった人に出くわす。
この事があるまでは、二人は『仲が良かった』で終ったのかも、しれない。
- 361 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:14
-
「わっ、ちょっ…ごっちん!?」
「へっへへー」
美貴と真希がふざけあって、よろめきながら亜弥の目の前にいる。
紛れも無くそれは、この間見た風景とだぶって見えた。
じりじりと迫る真希の悪戯顔が、美貴を焦らせる。
その瞬間、唇がほんの少しの間、重なった。
「わっ…ちょ、何すんだよ!!」
「いいじゃん、減るもんじゃなし」
「何言って…大体ごっちんにはあの後輩が…」
「紺野ぉ?だってキスしようとすると逃げちゃうしさー…って…」
「あぁ?」
怒り混じりで唇を拭う美貴の目線には、見なれたあの表情がいた。
- 362 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:15
- 真希はあーあ、と溜め息をつき、何故か猛スピードで校門を駆け抜けて。
そこに残ったのは、呆然とする亜弥と それに気付いた美貴の二人だけ。
「…あぁ、まだ帰ってなかっ…」
「ッ…キライ…」
「…え?」
ギュッと握りしめた亜弥の手のひらを、美貴は見逃さなかった。
はっとするその瞬間、亜弥の瞳に浮かぶ涙も、全て遅かった。
- 363 名前:smile on me 投稿日:2004/12/17(金) 20:15
-
「いなくなっちゃえばいいんだっ…」
「…亜弥ちゃん?」
「みきたんなんか、あたしの傍にいなくていい」
「……何?」
ほんのわずかに漏らした亜弥の言葉が、聞き取れなかった。
それはくぐもった声で、涙が滲んでいたから。
美貴のことが、大好きで、大好きで
でも、もう終った
それが二人の、行き違い
「……嫌いだよ…みきたんなんかっ、大っ嫌い……っ…」
最後に聞こえたのは、亜弥のか細い、美貴に向けた言葉。
とても痛くて、とても切なかった、その言葉。
美貴の横を走り去っていった亜弥の背中を、見続ける事も出来ずに。
追い掛ける事なんて、もう遅かった。
- 364 名前:証千 投稿日:2004/12/17(金) 20:16
- すいません、完結は無理でした。
無責任だぁー……
イヴが…イヴがぁぁぁ
>346様 そろそろ完結です。修羅場ですが…
- 365 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 21:11
- あぁぁ!何してるんだ美貴帝!!
…次回も楽しみにしています
亜弥ちゃんが可哀想…でも見たいw
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 21:18
- うぎゃ〜〜〜!!
早く、、続きを早く。。。
- 367 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/17(金) 23:50
- 後藤ヌッコロ…
- 368 名前:wool 投稿日:2004/12/18(土) 00:22
- 更新お疲れ様です。
うあー…まっつー切ないなぁ。ホント美貴様は罪作りですな(w
まっつー、挫けず頑張って!!(w
次回更新も気長に待たせて頂きますー。
- 369 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:16
-
あたしの好きな人 めんどくさがりや
あたしの好きな人 すっごく優しい
あたしの好きな人 怒るとめちゃめちゃ恐い
それがあたしの好きな人
〜smile on me番外編〜
- 370 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:17
-
「みきたんこっち手伝ってよぉ」
「は?」
「もぉっ、話聞いて無いー」
ホコリ立つ亜弥の部屋の中は、まるでゴミ箱。
服やら本やら、紙屑やら。
普段はとても綺麗好きな亜弥が、どうして。
事の始まりは数時間前、亜弥が美貴の部屋に押し掛けて来た事から。
- 371 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:17
-
「な、何」
「年に一度の大掃除。手伝って?」
「はっ?」
「あたしの部屋、広いから一人じゃ大変なんだよねー」
くるりと振り返り、上目遣いで美貴の服の裾を掴む。
そんな目にはもう騙されない。
何年間一緒にいると思ってるんだ。
案の定、美貴は亜弥の手を振り払って机に向かった。
「いやだよ。何で美貴が亜弥ちゃんの部屋の掃除なんか…」
「むぅっ、友達でしょー」
「うそ、そうだっけ」
「あぁ!さいってー!!」
「冗談だよ。だって美貴忙しいし」
テキストをとんとんと纏め、亜弥の言葉を無理矢理遮った。
だいたい、部屋の片付けなんて口実だろう。
ただ自分と一緒にいたいだけ。そのぐらいは美貴にも予想できていた。
- 372 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:18
-
「忙しいって、何するの?」
「い、色々だよ」
「あ、嘘ついてる」
「な…」
「みきたん、嘘つくと髪の毛触るから」
ああ、そうだったっけ。
何度も亜弥に指摘された嫌な癖を、また言われてしまった。
とっさに手を弄ぶが、すでにおそし。
亜弥は意味ありな笑顔で美貴の腕をしっかりと掴み、亜弥の家へと連行した。
「…たんってばぁ、何見て……だぁっ!!」
その大掃除の中、美貴は一人ベッドに座りアルバムを広げている。
じっと見つめる美貴の元に、亜弥が駆け寄るがすぐに顔が赤く染まった。
- 373 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:18
-
「な、なんでこんな古いのがっ…」
「さあ?中に入ってたよ」
「し、しまってよぉ!」
「あっはは、おばさんに見せてこよー」
「ちょっ、たぁん!?」
美貴が見つけた一枚 亜弥の恥ずかしいショットだった。
この家の近くにある池で遊んでいた途中、亜弥が足を滑らせ水の中にドボンする手前の瞬間。
撮影者はおそらく、美貴。
年代を見てみると、亜弥が6歳、美貴が8歳の頃。
美貴が空中で写真を泳がせ、それを亜弥が背伸びして奪おうとする。
美貴は至っておもしろそうな顔だ。
- 374 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:19
-
「あ、ほら他にも」
「何っ…あぁっ、これみきたんの…」
「あぁぁぁぁぁっ!?あ、亜弥ちゃん待っ…」
「かわいーみきたん発見ー!」
「亜弥ちゃんってば!!」
亜弥が見つけたのは、美貴の七五三の写真。
何故こんなものが松浦家にあるのかが、不思議だが。
「なんで持ってるのさ…」
「あたしがみきたんのママに頼んで焼きまししてもらったー」
「何でっ」
「可愛いから♪でもしばらくぶりだぁ、着物のみきたん」
「ぐっ…」
してやられた。終止悔しがる美貴を面白そうに眺める亜弥。
って、こんな事してる場合じゃない。
- 375 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:19
-
「ねえ掃除は?」
「ちょっと待って、まだ見たい」
「亜弥ちゃんが掃除するって言って美貴まで巻き添えにしたくせに…」
「あーこれ懐かしい」
聞いちゃいない。どっちだよ、人の話を聞かないのは。
七五三の写真を胸ポケットにそそくさとしまいながら、そう思った。
熱心にアルバムを見つめる亜弥の目は、幼い頃そのもの。
横目で美貴は、真剣な亜弥を観察する。
「みきたん、変わったよ」
「…え?」
「昔はさぁ、もっと優しかったもん」
「…そう?」
「そうだよぉ。いつも笑ってて、あたしにだけすごく優しかった」
皮肉っぽくそう言った亜弥にたじろぐ暇もなく、亜弥はアルバムを閉じた。
自覚はあっても、そんな昔の事、覚えちゃいない。
必死に自分に言い聞かせながら、思い出してしまう記憶。
- 376 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:20
- 「中3ぐらいからー、冷たくなって。かまってくれないんだもん」
「……あー、そう?」
「ちゅーもさせてくれない」
「そりゃ当たり前!」
美貴の頬に迫って来た唇を素早く避けて、笑い混じりで額を叩いた。
亜弥が冗談でやってるのか、本気なのかわからないから、怖いのだ。
本気になったら、そりゃ、ねえ?
焦る気持ちを隠しているのは本当だ。だけど、それが爆発したら。
きっと亜弥を悲しませる。そう思ったから。
- 377 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:20
-
「ま、いいや」
「え?」
「みきたん、今でも素直だから」
「…ふぅん」
「あたし、そういうみきたんが一番好きだよ」
「………へぇ…」
少しつっかえた亜弥の言葉を、素直に受け入れる事もできない。
無力だ。美貴はそう思った。
美貴の肩に寄り掛かり、ゆっくりと目を閉じた。
その頭を撫でる事も、もちろん亜弥のように頬にキスをすることも。
何も出来やしない。だから、このまま。
- 378 名前:smile on me 投稿日:2004/12/18(土) 11:22
-
一体大掃除はどこへやら。美貴はそう思いつつ、美貴も目を閉じた。
目を覚ませば、きっとなにもかも上手くいっている。
まるで、自分に言い聞かせるかのように。
二人の想いは、いずれ重なることなんだろう。
smile on me and one love
- 379 名前:証千 投稿日:2004/12/18(土) 11:26
- ちょっとした番外編を出してみました。
クリスマスが待ち遠しい作者です。
ごまっとうカモン〜
>365様 すいません、どうしてもごっちんをどうにかして…w
>366様 続きはイヴに、もしくはイヴ前に…
どうなることやら(笑
>367様 どうしてもごっちんに何かをやらせたかった作者です。
イジメないで…(´ω`)
>368様 切ないのが書きたかっただけ。と言えばそれはそれ…(ry
気長にお待ち下さい。
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/19(日) 18:16
- 番外編、楽しめました
本編の完結を楽しみに待っています
- 381 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:07
-
亜弥ちゃん、泣いてた
違う、美貴のせいじゃない
ごっちんが、ごっちんがいけないんだ
人のせいにすればする程、美貴は罪悪感に近い感情を抑えきれない。
決して自分が悪いわけじゃない。
そう言い聞かせても、亜弥が見せた涙を思い出すとどうしようもない。
本気じゃなかった。ましてあんなことしてくるなんて思ってなかった。
しかも亜弥が偶然に居合わせては言い訳の仕様もない。
って、何で言い訳する必要があるわけ?
- 382 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:08
-
自問自答を繰り返しても、誰からも答えは返ってこなかった。
一人きりの部屋、制服のままベッドにうずくまる美貴。
無論、隣の部屋を見ても、カーテンは閉まったまま、明かりもついていなかった。
それを見て美貴は溜め息をつかずにいられない。
この間の様に窓から屋根までつたっていけば、亜弥は気付いてくれるだろうか。
そんなことをしても、きっと亜弥の機嫌は直らない。
むしろまた、亜弥を泣かせてしまうかもしれない。
美貴はただ、心の中で傷む罪悪感を責めるばかりだった。
夕食も食べる気にならず、何もする気が起きない。
机に置きっぱなしにしたテキストに目をやるものの、ペンを握る力は残されていなかった。
- 383 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:08
-
ごめん
「そんなこと言っても…」
じゃあ自分はどうしたいんだろ?
「…わかんないよぉ」
近くにあった枕をひっつかんで、棚に乱暴に投げ飛ばした。
ボンッという音がして、棚に置いてあった写真立てがゴトッと床に落ちる。
美貴はそれに気付いても、拾おうとは思わなかった。
ずっとこのままにしておけば、楽になるのかな。
このままのほうが、亜弥ちゃんも美貴も、めんどくさくならない。
そんなんじゃ、ダメだ。
- 384 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:09
-
ごめん
「そんなこと言っても…」
じゃあ自分はどうしたいんだろ?
「…わかんないよぉ」
近くにあった枕をひっつかんで、棚に乱暴に投げ飛ばした。
ボンッという音がして、棚に置いてあった写真立てがゴトッと床に落ちる。
美貴はそれに気付いても、拾おうとは思わなかった。
ずっとこのままにしておけば、楽になるのかな。
このままのほうが、亜弥ちゃんも美貴も、めんどくさくならない。
そんなんじゃ、ダメだ。
- 385 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:10
- 後藤先輩は、みきたんの事が好きなんだ
それでみきたんも、後藤先輩の事が好き
見たくはなかった光景を思い出しては、ベッドのシーツを湿らせる。
微かな嗚咽が漏れる亜弥の部屋には、亜弥しかいない。
いつもの恐い声とか、亜弥に笑いかけるあの優しい声も。
聞こえない。今は、聞きたくなかった。
クリスマス、せっかく言いたかったのにな。
でも、今さら言ったらみきたんに迷惑かかっちゃう。
諦めよ、うん、そうしよう。
そんなこと、不可能なのに。
- 386 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:10
- 涙は止まらず、ギュッと毛布を握りしめる。
一緒にいようねって、言ったじゃん。
嘘つき。やっぱりみきたんは、あたしに嘘をつく。
優しい嘘、つまらない嘘
そして最後に、美貴は亜弥を傷付けた
幼い事しかできなかった亜弥を、面倒くさいフリをして優しくして
想いを伝える事なく、その優しさをなげつけられて
あたし、思い上がりすぎじゃん。
あーあ、バカみたい。
亜弥は愛にメールを送り、そのまま目を閉じた。
全てを忘れたいが一心で、もう考えるのをやめた。
最後にしよう。そう決めた。
- 387 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:10
- 「美貴ー、早く起きなさい」
「…っ起きてるよぉっ、うっさいな…」
「機嫌悪いわね、何かあったの?」
「……別になんもないよ」
ぶっきらぼうにそう答えた美貴はタンタンと階段を降り、パンを一枚くわえてネクタイを結んだ。
母の対応にムッときたのか、パンをもぐもぐと食べながら携帯を除く。
着信は、真希。
心の中で静かに舌打ちをした美貴は、メールの内容を目で追って読む。
呆れる程の真希の明るさにはさすがに腸が煮えくり返る。
『やっほぅ☆★ 昨日はごめんねぇ〜、ちょっとしたストレス発散って事で許してねん♪』
乱暴に携帯を閉じた美貴は、真希のメールを即刻削除した。
誰のせいでもない、自分の責任なのに。
真希のメールに腹が立ってもしようがない事は分かってはいたが、気分が悪い。
- 388 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:11
-
「…逝ってきます」
「ちょっと漢字間違ってるわよ」
「行ってきます!」
バァンッと玄関のドアを閉め、ちらりと隣家の様子を伺う。
いつも通り、なんのへんてつもない松浦家。
ふっと溜め息をついて、メガネの曇りを拭き取った。
迎えに行くか、それとも先に学校へ向かうか。
ぐっと目を瞑って、ぱちりと目を見開く。
ダッシュ
最短記録で学校へ辿り着いた美貴は肩で息をして、深く深呼吸。
この意気地なし。
心の中で自分を戒め、ガツンと下駄箱の角に頭をぶつけた。
いつも通り。いつも通り。
- 389 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:11
- 「おはよぉ〜みきちー」
「…ん、はよ」
「おや、元気ないねぇ」
「……元気もなにもないよ」
「おっとそんな発言いけないよ、もっと笑って」
「…よっちゃんはいいね」
「WHY?」
「……」
悩みが無さそうで。
そう言おうとした口を自ら塞ぎ、吉澤からそそくさと逃げる。
久しぶりだ、こんなにネガティブな自分。
しかも亜弥のことでここまで精神的に追い詰められては授業所ではない。
いつも通りに行くはずが…
「すいませんっ、藤本先輩いますかっ!?」
ガラッと教室のドアを開けて、早々に堂々とした声を名乗り挙げた、見た事のある後輩。
- 390 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:12
-
近くにいた吉澤はニヤリと笑みを浮かべ、ぴっと美貴を指差す。
わけがわからない美貴は、つかつかと近付いてくる後輩に手首をガシリと掴まれる。
れ、連行?
「ちょ、あの」
「あ、愛ちゃん乱暴すぎじゃ…」
「あさ美ちゃんは黙っててっ!」
ピシャリと言い放った、愛という女の子。
どうやら赤のバッジ、一年生の様だった。
愛の後にいる大人しそうでもじもじしているのは……
あれ、ごっちんの彼女さん?
「うぁ、紺野じゃーん」
「ごっ、ごとうさ…」
「おいでおいで、一緒にあそぼー…って美貴は何をして…」
「あさ美ちゃんっ、藤本先輩っ、行きますよ!!」
「へっ!?み、美貴はなにを…」
「いいから!!」
- 391 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:12
- ぐぐっと手首に加わる恐ろしい程の握力に対抗できず、美貴は愛に連れられる。
後ろからちょこちょことついてくるのは真希の恋人、あさ美。
よくよく考えると、二人とも亜弥の同級生のようだ。
で、美貴は一体どこに連れて行かれるの?
一年生の階まで連れてこられた美貴は、突然ぱしりと手首を離された。
さすがに上級生が下級生にこんなことまでされては、美貴だって黙ってはいられない。
キッと愛を睨んだが、美貴は初めて眼力で敗北を知った。
「…どういうつもり?」
「な、何が」
「亜弥に、何したんですか?」
ズキリと核心的な所を、美貴はまんまと突かれた。
- 392 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:13
- おそらく亜弥の友人である二人は、事を知ったんだろう。
美貴をジロリと脅かすように睨む愛の目は、本気だという事がわかる。
「…何って」
「亜弥、いつもと同じでしたけど…貴方の事、全く口にしないんです」
「……いつもは、先輩のこと、楽しそうに話すんです、亜弥ちゃん」
ねえちょっと聞いてよぉ、みきたんがねっ
今日またみきたんがぁ
一緒に帰ろうってみきたんが言ってくれてぇ
- 393 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:13
- 「…あの子、隠してるけど本当はっ…」
「分かってるよそんなこと」
「じゃあなんで一言も喋らないんです…っ…」
「知った風な口聞くな!!!!!」
シンと静まり返る一年生の階には、大勢の下級生達が集まっていた。
中心にいる三人は目つきを変えず、周りの音など聞こえていない。
亜弥ちゃん、ごめん。こんなこと言っても、もう遅いかもしれないけど。
ぐっと唇を噛んで、愛の目をギンと睨む。
- 394 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:13
-
「…っ…謝りたいよ、美貴だって。でもそんなことしたって、無理だよ」
「無理なんてそんなことわからないじゃないですか!」
「分かってるんだよ!美貴は…美貴は亜弥ちゃんのことなら何でも知ってるっ…」
「嘘、です。アンタは亜弥の気持ちなんて全然知らないくせにっ…」
「愛ちゃんダメッ!」
「……っ…あさ美ちゃん…」
あさ美が愛の腕を掴むまで、愛は一心不乱で気持ちを爆発させていた。
素早くそれを察したあさ美は愛をなだめ、美貴の事を優しく見つめた。
「…余計なお世話でした、すいません。でも、これだけは言わせて欲しいんです」
「……」
「亜弥ちゃんは藤本さんのせいで酷く傷ついている筈なんです」
「それは…っ」
「でも、亜弥ちゃんはすごく明るくて、そんな顔誰にも見せてなくて」
あさ美は続けた。愛が俯いて涙するまで、続けた。
- 395 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:14
-
「じきに、亜弥ちゃんは想い出してしまうでしょう。でもそれを受け止めるのが、貴方ですよ?」
にっこりと優しく微笑んだあさ美は愛の肩を包み、ぺこりと一礼して教室へ戻って行った。
美貴はただ、そこに立ち尽くすしかなかった。
愛の言葉とあさ美の言葉に、一点の矛盾はなかったから。
自分は間違っていた。怯えてばかりで、亜弥の事など全く分ろうともしてなかった。
深い傷が美貴に押し寄せる。でもそんなことに気を遣っている場合ではない。
亜弥ちゃん 亜弥ちゃん 亜弥ちゃん
好きなのに。美貴のせいだよ。ごめんね。鈍感だった。本当にごめん。
- 396 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:14
- 言葉を並べても、亜弥は美貴に笑顔を見せる事も、目をあわせる事も。
できないのだろう。
「あー疲れたぁっ、理数系って精神力使うんだよねぇー」
「……亜弥」
「あ、次お弁当だぁっ。あれ、紺ちゃん妙に静かだね、お弁当前なのに」
「亜弥」
バシンと机に教科書を置き、愛は腫れぼったい目で亜弥を見続けた。
いつも通りの笑顔に、痛くて仕様がない思いを隠してる。
そう思うとなおさら、愛は心が痛くてたまらなかった。
それはあさ美も同じで、お昼前だというのに静かにイスに座っている。
- 397 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:15
-
「アンタ、諦めたってワケ?」
「なにがぁ?」
「何がじゃなくて。藤本せんぱ…」
「それはもういーのっ、忘れてよ、ねっ?」
「亜…」
「マジで、もうカンベンして?たいしたことじゃ、ないからさ」
みきたんの事、全部忘れるよ。
夜遅くに届いたメールの内容は、とても楽しそうに語られていて。
そして今も、元気そうに話して。
愛のどこかの糸が、プツリと切れた
- 398 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:15
-
ドガンッと近くにあったイスを蹴飛ばし、位置がずれた机はあさ美の机に当たった。
ビクリと反応したあさ美には目もくれず、愛はニ度目の怒りをぶちまけた。
親友だからこそ、言わなくちゃいけない。
一度決めた事をひん曲げるようなやつは、アタシの友達なんかじゃないから。
「…ふざけないでよ、たいしたことじゃないって、何?」
「ちょっと、何マジになって…」
「アタシはアンタが先輩の事諦められるような人間だって思ってない」
「そんなことないって…」
「亜弥、言ってたじゃんっ、先輩にちゃんと気持ち伝えるって!!なのに…なんで今さら…」
「……愛にはわかんないよ」
亜弥はとことん愛の苛立ちに触れる
- 399 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:16
-
「あぁどうせあたしにはわかんないよ。アンタが先輩の事どれくらい好きかなんて、どうだっていいね」
「じゃあほっといてよ!」
「ほっとけるわけないじゃん!!…っ…親友なんだからっ、ほっとけないの!!」
「…愛」
「……あんたの我侭、とことん付き合うって決めたんだからさぁ…」
とん、と後から愛の肩に手をかけたあさ美も、静かにこくりと頷き亜弥を抱きしめた。
しっかりと見せた、亜弥の涙を見逃さず。
こう物語っていた。
「…っ…諦めてないよ…ヒックッ…」
「それでいいのっ」
「わ、私と愛ちゃんも諦めないからっ、ね?」
「そうだよ。言ったでしょ?親友だって」
涙を浮かべる亜弥の肩をバシンと叩いた愛は、にこっと笑いかけた。
さっきまでの怒りが嘘のように、いつもの悪戯な愛に戻っていた。
- 400 名前:smile on me 投稿日:2004/12/21(火) 21:16
- もう逃げない。あたしは、みきたんの事が好き。
ただ美貴の事を想うだけで、こんなにも胸が熱くなる。
紛れもない、これは本当の気持ちだから。
- 401 名前:証千 投稿日:2004/12/21(火) 21:19
- 松浦さんの挫折加減と言い高橋さんのキャラといい…
とことん堕ちるとこまで堕ちてますね作者は。
しかも完結が出来ずじまい……
今度こそ、今度こそと言いながらそびれまくっています。
すんません。
>380様 完結が出来ずすいませんでした。
次回なんとか頑張ります。
- 402 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/21(火) 23:01
- みんな頑張れ!作者さんも頑張って!!
更新待ってます!
- 403 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/22(水) 21:46
- じれったいけどやみつき!
亜弥ちゃんの想いが届く事を祈っています。
- 404 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:23
-
変質者出没!注意!
「…へぇ」
近頃増えたもんだ。
軽くあしらいながら電柱に張ってあったはり紙を通り過ぎた。
ま、美貴には関係ないけど。
美貴に寄って集る男は多いが、そのような事をしてくる者は誰一人いない。
なぜかといえば、その理由は美貴自身にある。
メガネの奥に潜んだ眼力がただ一つの武器と言えるからだ。
「寒…」
夜遅くに塾の帰り道を歩いていても、通りすがる人々は美貴を避けていく。
そんな風に見えるのは美貴だけだろうか。
やっと家の手前まで来ると、今まで俯いていた頭をふっと仰ぐ。
- 405 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:23
-
「…あ」 「あ…」
ジャージを羽織って財布を片手にする亜弥。
そしてそんな亜弥を見つけ、呆然とする美貴。
タイミングがなんて悪い。
お互いがそう思った事だろう。
亜弥は美貴の事を全て受け入れ、決心をしたというものの。
あの一件以来、美貴と会話を全くしていなかった。
愛とあさ美からのアドバイスも水に流されたかのように、一向に進展はしていない。
美貴もそれは同じだった。
悩んで悩んだ末、逃げる事、避ける事しか出来なかった。
同じく見ず知らずの下級生に怒鳴られた美貴でも、亜弥と同じ気持ちだ。
- 406 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:23
-
そんな二人が、3日ぶりに会話を交わす。
「…どっか、行くの?」
「……ん…」
とことこと美貴が近付くと、亜弥は一歩身を引いた。
違う、こんなことがしたいんじゃないのに。
亜弥は必死にそう思いながらも、体が勝手に美貴を拒否しようとする。
ただ頷いただけの亜弥に気付き、美貴は次の言葉を選ぼうと頭を巡らせる。
でも、ほんの数秒沈黙が流れると、一気に寒さは増した。
約束した。一緒にいたい、亜弥ちゃんと過すって言ったのに。
- 407 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:24
-
美貴は数日前に、亜弥と何の変哲もない普段の生活を送っていたある日を思い出す。
クリスマス、どうせ暇なんでしょ?だったら一緒にいよっか。
亜弥ちゃんじゃなきゃ、こんな事言わない。
分かっていた。亜弥が好きだという気持ちは、確信的にある。
だけど言葉はうらはらで、余計に亜弥を傷付けたり、落ち込ませたり。
思いきり優しくして、もっと笑顔でいて欲しい。
そんな想いは、近くて遠い。
「……寒いでしょ、これ着て行けば」
「…え…」
「あとで返してくれれば、いいから」
肩にかけていたかばんをどさっと地面に投げ、素早くコートを脱ぎ亜弥に投げつける。
思いも寄らぬ美貴の行動に唖然とする亜弥を放って、美貴は目も合わさず玄関まで走った。
またやっちった。
心の中で舌打ちをして、自分を恨んだ。
- 408 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:24
-
優しくするつもりなのに。美貴は、素直になれないんだ。
美貴から渡されたコートをぎゅっと抱き、美貴が家に入るまで見送った。
本当は優しいくせに、ああいう表現しかできない。
亜弥はよくわかっていた美貴の生涯の癖に、ほんのすこし笑みを零す。
コートに頬を寄せると、ほんのりと美貴の匂いがした。
「…あとでって、いつ返せばいいんだよぅ…」
仲直り、できたのかな。
久しぶりに聞いた美貴の声が懐かしくて堪らなかった。
それだけで、満足なのに。
この気持ちは何だろう。
- 409 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:24
-
心臓がバクバク鳴ってる。心拍数が異常に早い。
玄関のドアを乱暴に閉めて、そのドアにべたりと寄り掛かり溜め息をつく。
亜弥の顔を見ただけで、何でこんなに動揺するんだろう。
それは簡潔に言えば、亜弥の事が気になるから。
「…あぁぁ、美貴の馬鹿…」
不器用だから。ああいう事しかできないんだ。
言い訳にもならない言葉を並べ、ひたすら頭を抱える。
こんなままじゃ、何も出来やしない。
クリスマスどころじゃ、ない。
- 410 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:25
-
そして、その日は早くもやってきた。
イヴに変更にしようと思ったが、既に遅し。
考える時間が少なすぎたのだ。
ショーウィンドウにへばりつき、ひたすらにアクセサリーと格闘する美貴。
本当は亜弥を連れて、選ばせたかった。
でもそんなことはできるはずもなく、泣く泣く渋谷まで足を運んだ。
「…高い」
値段はかなり張る。高額のものがよいというわけではないが、美貴のイメージ
としては安物よりは良いだろうというもの。
亜弥ちゃんが喜びそうなもの。
大体は想像できるが、今はあまり考えられなかった。
喧嘩したまま、クリスマスを迎えるなんて思ってなかったから。
「これ、ください」
- 411 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:25
-
諦めたようにアクセサリーを手に取り、レジまで駆けてゆく。
亜弥ちゃん、喜んでくれるかな。
淡い期待を望むばかり。美貴は亜弥の笑顔が見たかっただけなのだ。
- 412 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:26
-
「…おはよ…って、うわぁーっ…」
堂々と昼間から起床した亜弥を迎えたのは、白い雪達。
今年の初雪は、ホワイトクリスマスと重なった。
遅く起きてきた亜弥に呆れた妹と母は既に昼食を終え、食器を片付けている途中。
「今年はどうするの?クリスマス」
「え…?」
「おねえちゃん、恋人なんてどうせいないから一人ぃ?」
「ばっ…酷い!」
「えへへっ」
まだ、恋人じゃないけど。
うやむやな関係が痛ましくて、亜弥はそれ以上何も言えなかった。
真希と美貴の関係が未だに分らなくて、怯えているなんて。
あさ美の気持ちも分らなくはなかった。
恋人を奪われた気分のあさ美のほうが、もっと辛いはずなのに。
- 413 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:26
-
あたし、どこまでワガママなんだろう。
自覚はしていた。けれど、それ以上に嫉妬心が高ぶってくる。
「まあ、美貴ちゃんのママも呼んでくれるみたいだし」
「おねえちゃんずるい、美貴ちゃん取っちゃうんだもん」
「み、みきたんは誰のでもないでしょ」
ほんのすこしムッとした自分が、改めて美貴一筋だということが分る。
みきたんがどんな気持ちでも、あたしは言わなきゃ。
愛の言葉がよぎる。
亜弥ちゃん
笑顔でそう呼ぶ声がフラッシュバックして、涙が出そうだった。
亜弥の初恋は美貴。だから、挫けてる場合じゃない。
言うんだ。みきたんに、本当の気持ち。
- 414 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:26
-
「いらっしゃいませー!本日クリスマスケーキ販売終了となりまーす!」
あ、そういえば。
きっと亜弥ちゃんのママが買うんだろうけど、どうしよう。
プレゼントを購入した後、夕方になりつつ寒さが増す頃にサンタの格好をした店員がケーキの売り子をしている。
気の毒だ。そう思いながら、自然と足がケーキ屋に引き寄せられる。
ウィンドウには華やかな可愛らしいクリスマスケーキが並んでいる。
去年は亜弥ちゃん、全然クリスマス楽しんでなかった。
だから今年は、もっと笑って欲しいなぁ。
普段の美貴ならこんなことは思わない。
ただ今は、亜弥の事しか考えられなかった。
ごくりと息を飲んで、気付いた時には小さな箱を手にしていた。
- 415 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:27
-
「ごめんねぇ、ずっと待たせちゃって」
「いえっ、いつもですから…」
突然、美貴の母が亜弥を呼び出した。
それはまるで確信していたかのように、美貴の母は何もかも知っているようだ。
亜弥は不可思疑に思いながら、美貴の部屋に押し込められぱたりと扉を閉める。
毎日のように通った、美貴の部屋。
なんだか久しぶりに訪れた気がした。
いいのかな、勝手に。
いつもは勝手気侭にやってきては、美貴をからかっていたのに。
なぜかとても、緊張して落ち着かない。
美貴が亜弥を見たら、どんな顔をするだろう。
怒るかな、びっくりするかな。
亜弥はそればかり、考えて。
- 416 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:27
-
ふっと目を閉じた瞬間に、扉の開く音が聞こえた。
きっとおばさんだろう。そう思って首をふいとあげる。
だけど。
メガネをかけた、少し息遣いの荒い美貴が、そこにいた。
「…ああ、来てたんだ」
「ごっ、ごめん邪魔なら帰…」
「いいよ。いて」
冷たく言い放った美貴は、溜め息をついて亜弥の横に座る。
正直になるはずなのに。またやっちゃった。
これじゃ美貴の逆ギレみたいじゃん。
亜弥はというと、真直ぐに美貴を見る事ができず。
しばらく、沈黙が続いた。
- 417 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:28
-
あたし、この間まで、すっごく怒ってたはずなのに。
こんな形でさえ、美貴と話すのが嬉しかった。
怒りなんてものじゃなく、嬉しさが伝わる。
真希との事も、忘れたかのように。
「悪かった」
「…え?」
「自分で言うのもなんだけど、無神経だった。ごめん」
棒読み。
だけど、美貴の頬は確かに赤くなっていて。
心からの気持ちだと、亜弥に伝わった、
美貴、自分でこんなこと言って馬鹿じゃん。
そうは思っていても、もう遅い。
亜弥の目は涙ぐんでいて、美貴はとっさに目を逸らす。
やっと言えた、第一歩。
- 418 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:28
-
まだまだだけど、時間はまだあるんだから。
「…ごっちんはさ、ただの遊び半分だったんだよ。だから」
「き、気にしてない…」
「うそだ、泣いてたじゃん」
はっきりとこの目で見た。その瞬間に、とんでもないことをしたと後悔することになったから。
被害者は美貴だが、軽く促したのも悪かった。
核心をつかれた亜弥はぐっと唇を噛み締めるが、美貴は微笑む。
「…こんなこと、美貴が言うのはおかしいけど」
「…なに?」
「け、結構…つ、まんなかった…」
「え…」
「あ、亜弥ちゃんが、家に、来ないから」
どもってる。
美貴の照れる様子を、亜弥はじっと見続けた。
見るなよ、と美貴が抗議するまで。
- 419 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:28
-
「…ゆ、雪…すごい…ね」
「そだね…」
「……あの、さ」
言うんだ。
「…みきたん?」
切り出したのは、亜弥のほうからだった。
その声はいつもとは違い、とても落ち着いている。
あっけにとられているうちに、亜弥が俯いていた顔をあげた。
にこりと笑っていて、少し照れくさそうに。
そんなふうに、笑わないで。
美貴は、美貴はどうすればいいんだよ。
- 420 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 13:29
-
亜弥の言った言葉の意味が、全くわからなかった。
ただ、そのときは。
「…亜弥ちゃん」
「気付いてるくせに」
「…え」
「……気付いてるのに、言ってくれないんだよね、いっつも」
亜弥の言葉の先にあったのは、美貴があげたピアス。
まったく視界になかったわけではない。
だけど、いつも見ている事だから。鈍感な美貴故、亜弥も分かっていた。
でも、そんな些細な事が、亜弥には寂しかった。
- 421 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:50
-
「あたしの気持ちも、知ってるんでしょ?」
痛いくらい 嫌になるくらい
分かっていたのに、放ったらかしにしていた。
気付くのが恐くて、どうしていいのかわからなくて。
亜弥の事を避けて、どうにかして隠し通してきた。
だけど、結局傷付いたのは亜弥と美貴だった。
- 422 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:50
- 雪は、降り続く。
凍傷になるよりも、この気持ちが痛い。
近所のイルミネーションも見ている余裕はなく、ただ二人は黙りこくる。
美貴の部屋には、静かな空気が流れていた。
これで、良かった。
背負ってた重い荷物が、一気にとれた感じ。
でも、涙が止まらなかった。
雫を浮かべる亜弥の瞳を、一心に見る事もできない美貴は。
ただ悶々と、自問自答を繰り返して。
擦れ違っている事を、なおさら後悔した。
言わない方が、良い。
- 423 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:51
- でも、こんなままじゃ、前の二人にはもどれない。
部屋から駆け出して行く亜弥の手首を、強く掴んだ。
無意識だった。なんで、ここまでして亜弥を悲しませるのか。
一緒に過ごそうよ。素直に、そう言えたなら。
でもそれは、友達の感情ではなく。
愛している。 ストレートに言えば、こうなるから。
- 424 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:51
-
「…ったん…」
「好きだよ」
「……みきた…」
「だからそんな顔、しないで。美貴の目、ちゃんと見て」
不器用なんだ、ごめん。
鈍感だから、ごめん。
何度傷付けたか、わからないほど、美貴はこんなに亜弥ちゃんが好き。
今、素直に言えるんだ。
魔法にかかったみたいに、くさいこと言うけど。
ちゃんと聞いてて欲しいから。
「いつも、亜弥ちゃんの事考えてた。でも美貴、馬鹿だから言えなくて」
「…いいよみきたんってばっ…」
「よくない。言えなかったんだよ、怖くて」
友達として終ったら、恋人になる。
けれどそんな自信、なかった。
- 425 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:52
-
相応しい人が、他にもいる。美貴じゃなくても、別にいいんだ。
だけどそれは違った。
亜弥は美貴でなきゃ、美貴は亜弥でなきゃ。
「……ごめん、泣かせてばっかで」
「たん…」
「…美貴といても、面白い事ないかもしれないけど」
「そんなことっ…ない。昔から見てるもんっ…」
「だって、友達と恋人って…違うし…」
「あたしだって」
ぐいっと美貴の服の裾を掴み、くっと美貴を見上げた。
繋がる気持ち 重なる想い
- 426 名前:smile on me 投稿日:2004/12/24(金) 17:52
-
「みきたんのこと、大好きだから」
涙はもう枯れて出ないという程、亜弥は泣いた。
美貴はそれをぎこちなく受け止め、ほっと溜め息をつく。
こうしてよかったのか、元の関係のままが良かったのかは分らない。
でも、今はとても幸せだ。
引き裂けはしない、ふたりの笑顔。
「みきたんっ」
「…なに?」
「まだ、許してないからねっ」
「え?」
「……後藤先輩とキ…」
「わーわーわーわ!!!ごめんってば!」
その笑顔が、絶えないように。
笑って欲しい、僕だけに。
−smile on me− 完
- 427 名前:証千 投稿日:2004/12/24(金) 17:56
- 本編のsmile on meはこれにて完結です。
片想いを書いているとうだうだして飽きるぽ…
続編もあるので、後にアップしようと思います。
明日のごまっとうが待切れません。はい。
>402様 お待ち頂き有り難く思います。
中途半端な終らせ方でした、すいません。続編もあるので、よければどうぞ。
途中でした後紺もちまちま出てくるかと。
>403様 やはりあやみきは両思いでなければ。
書いててじれったかったですねw
- 428 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/24(金) 17:57
- 更新乙です!
素晴らしいクリスマスプレゼントでした。
あやみきに幸あれ
- 429 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/24(金) 21:55
- 最高でした!
ありがとう。
- 430 名前:何%の確率で 投稿日:2004/12/25(土) 16:39
-
もしなんらかのきっかけで、美貴が亜弥ちゃんを嫌いになったとしたら。
まあそんなことは無いだろうけど、もしってこともあるわけで。
そんな話を持ちかけたら、案の定亜弥ちゃんは拗ねた。
「いや、例えだから」
「例えに聞こえなかったぁ…」
「本気じゃないから。っていうか仮だよ」
「むぅー…」
怒りながらちょんまげの前髪を見せつけられても。
これでもかって程顔を近付けて、にひにひ笑い出す亜弥ちゃん。
- 431 名前:何%の確率で 投稿日:2004/12/25(土) 16:40
-
恐ろしいっていうか怖いっていうか。
やべ、襲われる。
「他の誰かに移る程、たんはタラシなんだ」
「なんでそういう話に飛ぶかなぁ…」
「だってそうじゃん!もしそうなったら、それしか理由がないっ!」
「そんな勝手に…」
「だってみきたんってば、誰にでもほいほい優しいから」
さっきまでニヤけてたくせに、ぷいっとそっぽを向いてシカト状態。
赤ん坊のような思考には付いて行けない。
もともと嫉妬深い亜弥ちゃんにこんな話をしたら、こうなるってことは予想できたけど。
- 432 名前:何%の確率で 投稿日:2004/12/25(土) 16:40
-
手なずけるのに時間はかかった。だから美貴は、亜弥ちゃんの事、結構知ってると思う。
「誰にでも優しかったら、こんな事する?」
そっぽを向いた亜弥ちゃんを背後から抱きすくめて、耳元で呟いた。
くすぐったそうに笑うその様は、さっきまで御立腹だったようには見えない。
単純っつうか、なんつうか。
そしていつものように、自然に求めあうキス。
亜弥ちゃんがしつこくちゅっちゅやってくるもんだから、抱いている手は離さず必死に避ける。
「なんだよぉ、ちゅーされるの嫌なのかぁ?」
「違うけど。くすぐったいんだってば」
「じゃあもっとしてやるー」
「わ、ストップ!」
なんて、じゃれあってるうちは当分安泰なのかな。
本気で喧嘩したことなんて何度もあるけど、結局仲直りしちゃう。
斬っても斬れない縁って、こういうことを言うんだろう。
FIN
- 433 名前:証千 投稿日:2004/12/25(土) 16:44
- ああ短い…お許し下さい。
さて今日は私の願望が叶ったクリスマスとなりました。
…ごまっとうカモンナ。
>428様 こんなものがクリスマスプレゼントなんて……
お世辞でもとても嬉しいです。
>429様 最高なんて勿体ないお言葉…感激です。
ありがとうございました。
- 434 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/25(土) 20:19
- 悶えました。
- 435 名前:証千 投稿日:2004/12/26(日) 12:48
- あやみきよし?
駄文ですがどうぞ。
- 436 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:49
-
男勝りな彼女の性格には慣れたつもりだった。
いつでも明るくて、プラス思考な元気野郎。
あたしはそんな美貴に、いつも元気をもらっていた。
- 437 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:49
-
「よっちゃん」
弾丸のようなキツい性格も、慣れっこだ。
人が何をどう思っていようが、自分の思っている事をガンガンぶつける。
なんていうか、こういうのを正義っていうんだと、あたしは常に思う。
「何?」
「ちょっと話あんだけど」
「マージでぇ?」
「都合悪いの?」
「いや、いっつぉーらいよ」
「なんだそりゃ」
だからあたしも、こんな元気野郎に合わせておどける。
彼女といるのは本当に楽しいから。
幼馴染みだとしても、何年時が経とうともずっと一緒だから。
- 438 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:50
-
でもそれは、純粋な心で続けているわけじゃない。
美貴があたしを呼び出す時は、大抵なにか悩みがあった時とか。
対人関係や、日常で何かうっぷんを晴らしたい時とか。
あたしはそれを、ただ黙って聞いていた。
でも、今回は違うということに気付いた。
こればかりは、あたしもただ聞いているだけじゃ済まなかった。
サバサバしている美貴からは有り得ないようなシラけた雰囲気をかもしだしている。
悲しいくらいに、切なかった。
- 439 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:50
-
「で、何?」
「…美貴さぁ、オカシーんだよ」
「お菓子?」
「ちっがくて。なんか、頭がボーッとすんの」
「いつもじゃないの?」
「違うってば!」
バシンとマジで肩をぶっ叩かれ、笑いながらそれを受け止めた。
でも本当は、そんな相談聞きたく無くて。
なんでかって聞かれたら、言いたくないけど。
あたしは美貴の事を、どうやら好きらしい。
何をしてても、こいつの顔ばっか出てきやがる。
- 440 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:51
-
そんな時に、美貴はあたしに恋愛の相談なんかしてきて。
あたしにどうしろっていうんだ。
でもそんな事、言えなかった。
あたしは、美貴の親友だから。親友として、一緒にいなきゃいけないから。
それ以上進むのには、神様だって味方してくれないし。
「……わーってるよ。恋とかしちゃってるんでしょ?」
あたしが唐突にそう訊ねると、美貴は照れくさそうに笑ってこくりと頷いた。
ほら、ね。
結局こうなんだ。あたしはいつも、ナンバーワンにはなれない。
小学校のかけっこだって、美貴には勝てなかった。
牛乳の早飲みだって、美貴には勝てなかった。
- 441 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:51
-
だからあたしは、美貴の全てをもらうことなんて、できっこない。
大人しく鎖に繋がれて、美貴の良い犬になってることしか、できない。
1年B組 松浦亜弥
はっと頭に浮かんだ名前を忘れる事なんてできなかった。
美貴の初恋なんだから、あたしがどうこう言う事はないけど。
親友として何か、助ける事が必要。
それだけが、あたしの役目。
- 442 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:52
-
「なんちゅうか…可愛いんだよ、うん」
「そら、見りゃ分るよ」
「それだけじゃなくて。礼儀正しいし、しっかりしてるし」
「……へぇ」
「なんかね、よっちゃんとは正反対みたいな」
ふぅん。
無邪気にそう言った美貴の顔は、さっきよりももっと赤くなっていて。
初めての恋に、夢中なんだという事が痛い程伝わってきた。
あたしと正反対って事は、女の子女の子してるコなんだ。
あたしみたいに嫌なヤツじゃなくて、すごく優しいコ。
こんなことで泣きたくなるような、あたしとは違ったコ。
- 443 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:52
-
「ね、どうしたらいいと思う?」
このまま違うどこかへ逃げたい気分になった。
美貴のいない世界。あたしが今望んでいるのはそれだけだった。
ダメなんだ。目なんか合わせられなくなって。目の前がボヤけて。
それでもあたしは、最後まで人形に成りきった。
美貴の前ではとびきりの笑顔で、いつものいじわるなよっちゃんでいた。
だけどその人形は、もうすぐでバラバラに分解しそうで。
- 444 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:54
-
「美貴らしく、やりゃあいいんじゃないの?」
いつでも明るくて、プラス思考な元気野郎。
それがいつもの美貴。
あたしの中に長年住み着いている、藤本美貴。
「……そーかぁ。じゃ、頑張ろっかな」
「うん、そうしろそうしろ」
「…よっちゃん?」
「ん?」
「何、何で泣いてんの?」
わっかんねぇ。悲しくもないのに、涙なんか出てら。
そう強がってみせると、美貴はあたしを見て変なヤツーと言った。
ただ、そんな美貴を忘れる事などできやしない。
だけどあたしが邪魔なら、素直に消えた方がよっぽど良い。
- 445 名前:がんばれ 投稿日:2004/12/26(日) 12:55
-
「うまくいくかなぁ」
頑張れ、美貴。
あたしはそう言って、トンと背中を押す事にした。
なみだは、もう、でない。
FIN
- 446 名前:証千 投稿日:2004/12/26(日) 12:57
- 両想いを書くのは難しいですよね、みきよしって。(言い訳ぽ
>434様 悶えちゃってくれてありがとうございましたw
- 447 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:51
-
遅い。
「……一体何やってんだか…」
朝の準備がとてつもなくのろまな亜弥ちゃんの事だから。
美貴は長い付き合いという関係を呪った。
そして登校前の玄関前での待ち合わせ。
約束した時刻を15分オーバーしている。
- 448 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:52
-
ガチャッ
「ごめんっ、待っ…」
「待ったよ。早く行こ」
「ちょっ、みきたん待って!!」
どんくさいっていうか、することなすこと遅い。
いら立ちの態度をあからさまにしていると、亜弥ちゃんは焦ったように美貴の後を追ってくる。
昔っから、そうだけど。
美貴の行くとこにちょろちょろついてっては泣き出したり、嬉しそうな顔をしたり。
「みきたんってば!」
「わっ、何っ」
「むぅ、怒んないでよ」
「誰のせい誰の。早く行かないと遅刻…」
掴まれた腕を解いて急ごうとする足を止められた。
一体何だと思うと、亜弥ちゃんは得意の上目遣いでこちらを見上げる。
- 449 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:53
-
反則だって。その目。
付き合うようになって亜弥ちゃんは美貴の弱味を握った。
まあ、それは本当なんだけど。
わざとシャツのボタンをやたら外したり、胸押し付けてきたり。
前までは分りきってたから気にならなかったけど。
恋人となったからには。ねぇ?
「…参ったよ」
「にゃはっ、あたしの勝ちぃ」
年上なのに、立場ってものがなくなった。
邪魔なメガネを外して、待ち構えている唇にキスをした。
結構、いやかなりの時間それを繰り返していたと思う。
- 450 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:53
-
「ハァッ…ハァッ…」
「おー、おはよミキティ」
「…おはよごっちん」
学年トップの秀才が、遅刻だなんて。
美貴のプライドが壊れてしまう前に、先生に見つからないよう席につく。
亜弥ちゃんは亜弥ちゃんで美貴を置いてさっさと走って行っちゃうし。
誘ったのはあっちなのに。
「藤本ー、珍しいな遅刻なんて」
日誌でバシバシと机を叩く担任。
見つかった。
- 451 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:54
-
「ねえっ、美貴はどうする?」
「は?」
机に雑誌を広げた友達達が、楽しそうに尋ねてくる。
なんのことか分らなくてその雑誌をひょいと覗く。
ああ、ハイハイ。
「バレンタイン?」
「そう!もうすぐじゃん?」
あー、もうそんな頃か。
ついこの間クリスマスやらお正月やらだと思ってたのに、もう2月。
そう言えば、亜弥ちゃんと付き合い出したのもクリスマスだった。
で、バレンタインか。
- 452 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:54
-
「美貴は今年も大収穫かー」
「え?何の?」
「だから、チョコ」
「……ああ」
「無理だって、ミキティうといから」
だって興味ないし。
そう言い返すと、友人達はヒ−とか言いながら美貴を軽く殴ったりする。
だって好きでもない人にチョコもらっても…
「ま、ミキティには亜弥ちゃんがい…」
「黙れごっちん」
「えー、いーじゃん」
ごっちんが亜弥ちゃんの事を切り出した途端、カァッと体温が上昇するのが分る。
冷ややかな視線を作っても、みんな笑ってばかりで美貴をひやかす。
こういうのがいやだから、周りにも言ってない。
亜弥ちゃんと、美貴のこと。
- 453 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:54
-
「欲しいんだ?」
「な、にを」
「亜弥ちゃんからのチョコ」
「いっ、いらないよ」
「まったまたぁ、強がっちゃってみきたん」
「その名前で呼ぶなぁぁ!」
『2月14日。さて、何の日?』
『は?』
『……たんのばか』
『へ?』
ってことが、毎年あったような気がした。
- 454 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:55
-
「みきたん?」
「へっ?」
教科書を読むフリをして、ずっと亜弥ちゃんの事を見てた。
その…あの、チョコの事を。
別に欲しいわけじゃない。でもくれるなら、受け取るけど。
毎年毎年もらってたけど、今年はわけがちがう。
だって、恋人になって初めて渡すチョコレートだし。
亜弥ちゃんを見てた事がばれたのか、教科書を奪われて不思議そうに美貴を見る。
苦笑いをして避けると、亜弥ちゃんは美貴の腕を引っ張りベッドの上に押し倒した。
- 455 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:55
-
「なぁに考えてたのかにゃ?」
「や、別に何も」
「うっそー。あたしの事見てたくせに」
「み、見てないよ」
「……じゃー何考えてたの?」
甘えるような瞳に吸い込まれそうで、終止ボーッとしてた。
ぱっと思い出したチョコの事で、顔が赤くなる。
「……チョコ」
「ん?」
「た、食べたいなと思って」
「んぅ?そんだけ?」
「は、はい」
何故か敬語になる。そしてあからさまにバレるような事を。
こっぱずかしくて言えない。
チョコが欲しいだとか期待してるだとか。
そんな美貴からは有り得ないようなお願いを亜弥ちゃんにするわけにはいかなかった。
その、メンツっていうかなんていうか。
- 456 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:56
-
そんな間に、亜弥ちゃんはにんまりと笑って美貴の上にどしんと乗っかる。
「ぐえっ」
「…かわいいこと考えちゃってぇ、みきたんってばかわいー」
「ち、違…その、欲しいとかそんなことっ…」
「隠さなくてもいいのに。亜弥ちゃんのチョコが欲しいって言えばいいじゃん」
「い、言えないよそんなこと」
メガネをぱっと取られて、頭をしつこいほど撫でてくる亜弥ちゃん。
ああ、ばれちゃった。
っていうか、そんなつもりじゃなかったのに。
ちょっと考えてただけなのに、しだいに欲しいって気持ちが高まっていた。
- 457 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:56
-
「…あ、でも楽しみがなくなっちゃったなぁ」
「え?」
「ドッキリ計画でも立てようかと思ってたのに」
「…あ、ああそういう事…」
「でも、みきたんから言ってくれたから許す!」
「なんだそりゃ…」
「ね、たん?」
ごろんと美貴の横に寝て、ぐいっと首を傾けられる。
軽くグキッと音がしたのは気のせいだろうか。
- 458 名前:sweet lover 投稿日:2004/12/26(日) 16:57
-
「…嬉しいぞぉ」
「……ん?」
「みきたん、大好き」
さも嬉しそうな声と、甘えたがる瞳。
そんなにチョコが欲しい美貴と、あげたい亜弥ちゃん。
なんかすごい、あっまい雰囲気。
「……誘ったのそっちだよね?」
「ふぇ?ばっ、みきたん!?」
「もう無理、ダメ」
「ちょっ…やぁっ」
チョコよりも、欲しいもの。
まあ常日頃から欲してるのは亜弥ちゃん自身ってことなんで。
頂いちゃいました。
バレンタインのお返しは、もっと甘くしてあげる。
そんな約束で、いいよね?
FIN
- 459 名前:証千 投稿日:2004/12/26(日) 16:57
- 一応smile on meの続編っぽいもの。
下手やな…
- 460 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 17:53
- 連続更新乙です。
…二人とも可愛いです。まさに女子高生みたいな。
変な表現ですがw
- 461 名前:wool 投稿日:2004/12/26(日) 21:28
- 更新お疲れ様です。
続編待ってましたーっ!!
精神的に受けっぽい藤本さんが好き。大好きです!!(w
- 462 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:49
- 藤本美貴 現在19歳
人生初、いや世界初の経験をしてしまった
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
朝起きて鏡を見たらびっくり仰天。
なんと、耳が、耳が。
「猫じゃん」
- 463 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:49
-
ピンと引っ張っても、猫
障り心地も、猫
藤本美貴、今日ペットショップに売り飛ばされます。
んなわけあるかぁぁぁっっ!!
ちょっとまって、状況を把握してみよう♪
・昨日まいちゃんちで飲み明かした
・酔っぱらって風呂にも入らずベッドに倒れた
・そして今ベッドの中にいる、不審な人物
やけに寝顔が可愛いのは、気のせいでしょうか。
- 464 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:50
-
「…だ、だれだろ…」
ぺろんと布団をめくると、すっげー可愛い顔した女の子。
もちろん全然、赤の他人。
もしや、この猫耳と関係があるんじゃ……
ぱちり
起きちゃったよ、おい。
「………んにゃぁ」
「だ、だだだだだれれれ、あああんた…」
「……?」
ハテナマークをつけたいのはこっちなんだけど。
- 465 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:51
- 眠そうな目をこすり、美貴の猫耳をまじまじと見る。
そ、そんなにおかしいかよこの耳が。
なんだかだんだん照れくさくなってきたぞ。
っつうか、なんかこの子…どっかで見たような気がしないでもな……
「…おはよっ、みきたんっ」
みきたん?ハァ?
何ほざいてんじゃボケと胸ぐらを掴みたい所だけど
だけど
この子、まいちゃんちの猫。だった、よね?
- 466 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:51
-
「あああああああややややややややや………」
「亜弥」
「…ほ、んもの…じゃないよね、だってあれは猫…」
「今はみきたんが猫だぁ」
まいちゃんの愛猫、亜弥ちゃん。
この目は、絶対亜弥ちゃんだよね?
この甘えようは、いつも美貴にすりよってくる亜弥ちゃんだよね?
で、何でヒューマンしい体してるわけ?
みきたんって呼び名は、まいちゃんが酔っぱらった時に呼ぶ名前で
美貴とまいちゃんと、この亜弥ちゃんしかしらない……
筈。
- 467 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:52
-
「………いれ、入れ代わってる…?」
「そう、みたいだね」
「しかも、亜弥ちゃんってしゃべれ…」
「うん、そうみたい」
にぱっと笑った笑顔、不覚にも可愛過ぎますから。
切腹したい所だけどそんな血を出してる暇はなくって。
この状況をいち早く把握しなきゃ、いけないわけで。
でも、無理だって。
美貴に今ひっついてる耳、亜弥ちゃんの毛色と同じだった白。
そんで、しつこいぐらいほわほわしてて。
本物じゃん。
- 468 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:52
-
「で、何で亜弥ちゃんがいるの?しかも美貴と夜を共にしたなんて」
「えぇ?わかんない。朝起きたらここに…」
「んなわけないだろが絶対にまいちゃんが何かしらしかけたはず……」
しまった。いつもより倍の形相で亜弥ちゃんに怒鳴っちゃった。
亜弥ちゃん、怒鳴り声とか大きい声、嫌いで。
いつも遊びにくる度、美貴がばかでかい声でまいちゃんと喧嘩したりすると、必ずベッドの下にかくれて。
まずった。
亜弥ちゃんの目は猫さながらのうるうるした瞳で、シュンと俯く。
- 469 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:53
-
「ごめ…ん、亜弥ちゃんのせいじゃなくってなんていうか…」
「あたし…みきたんになんかしちゃったのかな?」
「や、決してそのような事はないような有るようなでもないような…」
「……」
泣かないで泣かないで泣かないでー
館ひろしさんごめんね
あの白猫亜弥ちゃんが、今人間になってる。
しかも超可愛い。
美貴の好み。
で、このシチュエーションはいったい。
- 470 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:53
-
「……いいよ、謝らないで。亜弥ちゃん、おっきい声怖いよね、ごめん」
「みきたん…」
「あ、あのそれと…みきたんって呼ぶのはちょっとかんべ…」
「…たん♪」
「省くのもな…」
「たぁん♪」
はい、みきたんでーす。
なんかハートが鳴ってるよ。何だいこの胸のトキメキは。
- 471 名前:猫・人間 投稿日:2004/12/26(日) 21:54
-
まいちゃんにこのまま人間亜弥ちゃんを返すわけにはいかないし。
よし、決めたよ。
「元に戻るまで、うちにいなよ」
「ほんと?」
「うん。できればずっとでもいいけど」
「ほぇ?」
「いやなんでも」
まいちゃん、後で覚えてろよ。
でもこのときめきを忘れないように、亜弥ちゃんの頭を撫でた。
果たして、元に戻る日がくるのだろうか。
続け。
※未成年の飲酒はいけません良い子は真似しないでね♪
- 472 名前:証千 投稿日:2004/12/26(日) 21:56
- ね、もう作者ったらどうしちゃったんだろうね……
続くかどうかは読者様の反応次第って事で…
もういいですさようなら逝ってきます……w
>460様 まあ、美貴様はもう大人の女性ですがね。
やはり色気より食い気かと。
>461様 お待ちしていただけるとは…本望です。
受け美貴様を書くのは大変楽しかった…ようなw
- 473 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 22:00
- …出血多量で死んでもいいですか?
続編激しく希望です!
リアルタイムでした、作者さん乙!
- 474 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/26(日) 23:26
- …ぷはっ(萌え
二人ともキャワワです。続き書いてください!!
- 475 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 23:32
- ・・・きてます!きてます!
こんなん大好きです!!続き禿げしく期待してます!!
- 476 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:48
-
ヤンキーだとか元レディースだったとかそういう噂を流されてる美貴だけど。
めっちゃんこ可愛い乙女なわけ。
だって美貴、動物大好きですから。
「…たぁん?」
「なぁに?」
砂糖でどっろどろになったコーヒーってまさに美貴の事。
- 477 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:49
-
「あっついよぅ」
「へ?そう?」
笑い混じりで美貴の肩を軽く噛んだ亜弥ちゃん。
やばい、激可愛い。
って猫耳つけてる美貴が言えるセリフじゃない。
亜弥ちゃんが人間であることをいいことに、美貴は色々しほーだい。
もちろん亜弥ちゃんはこれが人間でいうなんだかわかってないし。
とっても幸せ。なんかわかんないけど。
後から亜弥ちゃんを抱きしめて、極楽気分。
あの白猫がこのかわいらしい人間の姿だとはまだ把握できないけど。
猫だろうがなんだろうがこの可愛さから離れられないね。
まいちゃんに返すつもりなんてないし。新しい猫でも買え。
- 478 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:49
-
「…たん?」
「んー?」
「……まいちゃん、あたしのこと嫌いになったのかな?」
「へっ?」
シュンとなった亜弥ちゃんは、うるうると美貴を見上げてそう言う。
そんな事言われても、美貴にはなにがなんだかさっぱりだし。
まいちゃんはまいちゃんで連絡しても繋がらないし。
…捨てられた…とか…
「そ、そんなことはないと思うけど…」
「だってあたし、昨日もらった御飯食べなかったし…まいちゃんの手、ひっかいたもん」
「大丈夫だって、まいちゃんは帰ってくるから」
「…ほんとぉ…?」
「ほ、ほんとだよ」
- 479 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:50
-
絶対返すわけないけど。
ここは口実として丸めておいた方がいい。
心配そうな亜弥ちゃんの頭を撫でると、にぱっと笑って美貴の猫耳を撫で返してきた。
あ、そうだ猫耳。
「おかしい話だよねぇ、何で亜弥ちゃんは人間の姿なわけ?」
「わかんない」
「耳はヒトの耳だし…」
「ふにゃぁっ!」
何、今の。
- 480 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:50
-
癖になりそうなとびきり甘い声が、亜弥ちゃんから漏れた。
亜弥ちゃんの耳をそっと撫でた瞬間に。
…ひっひっひ、いいこと思い付いちゃった。
顔が真っ赤な亜弥の耳元に唇を寄せて、ふっと息を吹き掛ける。
「やぁんっ」
笑いが止まらないっていうか。ニヤけが止まらない。
- 481 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:53
-
「…亜弥ちゃんは、美貴のこと好き?」
「す…きって?」
「美貴は、亜弥ちゃんの事好きだよ」
不思議そうに、ピンク色に染まった頬をすりよせてくる亜弥ちゃんに。
馬乗りするような形で、迫った。
「すき、だよ」
「本当に?」
「みきたん、遊んでくれるし、だっこしてくれるもん」
猫っぽさが残ったその幼い笑顔にみきたんはノックアウ。
それ以上の距離を縮める事はできず。
- 482 名前:猫に勝るエロさ 投稿日:2004/12/28(火) 11:54
-
だけど
ぺろっ
「……?」
「えへへぇっ」
ぺろっと出した舌で、美貴の唇をちょいと舐めた亜弥ちゃん。
キャワワな亜弥ちゃんに襲い掛かるまで、あと3秒。
「もう我慢出来ない!!」
「にゃぁっ!?」
FIN
- 483 名前:証千 投稿日:2004/12/28(火) 11:58
- 書いちゃったー…
もう続きは書かない事にします、こんなもの
>473様 リアルタイム、読者様も乙です。
体したものじゃないのですが、喜んで頂き光栄です。
>474様 久しぶりに甘い雰囲気が出てたので書きがいがありました。
ありがとうございますw
>475様 続編希望、皆様共々ありがとうございました。
後々考えずにだらだら書き続けていたら色々な問題点が浮上……
もうこれっきりにしましたw
- 484 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:39
-
「ずっと前から、好きでした」
いっそ逃げようか、この子を突き飛ばしてしまおうか。
なんて乱暴な事は出来ない。
周りを見渡すと見物客やらひそひそ話してるDQNとか。
ここは素直に
「ごめん。付き合うとか、興味ないんで」
ペコリと一礼して、その場を去る。
見物客をかき分けて教室に戻るのは一苦労だ。
こういう事が週に2回程起きて困っている。
いや、告白とかされるのも迷惑なんだけど。
もーっと困るものが、美貴にはある。
- 485 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:39
-
ベッドでふにゃふにゃ寝てる亜弥ちゃん。
全く人の家に来て寝るっていう生活はどうなってるわけ?
なんて文句も言える気になれず、一度下へ降りコーヒーを取りに行く。
うっかり机に置きっぱにしていた、下級生からの手紙。
亜弥ちゃんがそれを、見逃すわけなくて。
「……たん、これなぁに?」
とびきりの笑顔と比例している、怒りに満ちた亜弥ちゃんが待ち構えていた。
どうせこんなことになるだろうと予測はしていた。
やっぱりコーヒーを取りに行って戻ってきた頃、亜弥ちゃんはばっちりその手紙を読み終わってて。
いつのまに起きたんだか。
- 486 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:40
-
「何って。手紙?」
「誰からもらったのよ」
「知らない人」
「……なんで受け取ったりするのぉっ」
「なんでって。受け取るぐらいいいでしょ?」
別に付き合うとかするわけじゃないし。
亜弥ちゃんの頭をぽんと叩いて促そうとしても、ふくれっつら。
これ以上美貴のイメージ崩したく無いんだもん。
メガネかけてるだけで怖いとかおそれられちゃたまんないんだよ。
「…受け取った事もあるけどぉ」
「何」
「みきたん、色んな理由つけてるんでしょ?」
ギクッ
- 487 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:41
-
「あたしと付き合ってる事、なんで隠してるのよぉ」
むっとした顔の亜弥ちゃんは、すごく寂しそうだった。
そんな悪気があってやってるわけじゃないけど。
だって言いにくいじゃん。そんなこと。
確かに今日は、付き合う事に興味ないって言ったけど。
「……あたしといるの、そんなにヤ?」
「…や、そうじゃないけど」
「じゃ…なんでよぉ」
また泣き出した。
- 488 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:41
-
ついこの間、美貴が亜弥ちゃんとの約束を破って泣かれたし。
亜弥ちゃんの作った疑似卵焼きが不味くて文句を言ったら泣かれたし。
もう、めんどくさいったらない。
「……泣くやつがいるかぁ、ふつう…」
「だってぇっ…」
服の裾で涙を拭ってやっても、ぎゅって抱きしめても。
幼稚園児みたいに泣き続ける。
そんなに美貴が好きかよ。
- 489 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:42
-
「……は、ずかしいんだよ」
「…ふぇ?」
「わざわざそんなこと言うの、恥ずかしいんだよっ」
ぶっきらぼうに言ったから、もっと泣いちゃうかもしれないけど。
だってそれしかないんだよ。
亜弥ちゃんみたいにスパッと言えない。自分でも、イヤになるくらい。
「わかった。今度から言う。言うから泣くな」
「…うそだぁ」
「……そんなに美貴って信用ない?」
困り果てる美貴の事をずっと睨む亜弥ちゃん。
頬を撫でてちゅうをしても、目つきはずっと変わらないまま。
- 490 名前:_ 投稿日:2004/12/28(火) 16:42
-
「たん、わかってないもん…」
「そんな」
「鈍感みきたんなんか嫌いだっ」
「…言ったなこのヤロウ」
「にゃはぁ…んっ」
むかつくこのガキ。
でも、やっぱ好きだわ。
幼馴染みだから、じゃなくて。大事な恋人だから。
亜弥ちゃんの唇に触れながら、そんなことを思った。
FIN
- 491 名前:証千 投稿日:2004/12/28(火) 16:43
- smile on meのまたまた続編。
どうしても身勝手に書きたかっただけ…w
- 492 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 19:33
- 続編素晴らしいです!
さらなる続きを期待!
- 493 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 20:57
-
「……へぇー…」
とことん、視界にあたしを入れないっていう作戦か。
ダンスレッスンの合間、彼女はとても楽しそうだ。
まるで昨夜の出来事を知らないような顔。
あたしと目が合った途端、すぐに冷たい顔をしてふいと目線を変える。
結構、怒ってる。
でもあたしは、どうしようとか慌ててる雰囲気はない。
だって、どこかしらで彼女は機嫌を直すだろうし。
だけどなんだか、胸騒ぎが止まらなかった。
やべぇ。なんかドキドキする。
- 494 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 20:58
-
不規則な鼓動が、アイツの事を噂しているみたいに。
こんな気持ちが妙に居心地悪くて、あたしは無意識に動きだした。
何も気にしていないような笑顔を、ぶち壊してやる。
そんな気だった。
「美貴」
予想外の事に驚いてんだ、きっと。
後からギュッと抱きしめたから、どんな表情してるのかわかんないけど。
だけど、ひしひしと伝わってきた、気がする。
- 495 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 20:58
-
「ばっ…よっちゃ…」
「飯田さん、遅刻するかもしれないでよろしくー」
ばっと顔をあげた美貴の顔は、真っ赤だった。
みんなの前で、一度はこういうの見せつけたかったってのもあるけど。
でもあたしは、一番にお前の事考えてるよって。
伝えたかった。
彼女の細い手首を掴んで、スタジオの外に出る。
その間にも何か抗議の声をあげていたけど、あたしは聞く耳を持たなかった。
聞いたって、無駄だから。
スタジオの中はあつくって、あたしも美貴もTシャツだけ。
一度外に出ると、かなり寒い。
腰にトレーナーを巻いてるあたしは、平気だけど。
- 496 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 20:59
-
「はっ…なしてよ!」
「あ、わりぃ」
強く掴み過ぎた美貴の手は少し赤くなっていて。
あたしのどこかをチクリと傷ませた。
美貴は相変わらずあたしと目を合わそうとせず、肘を押さえてどこかを見続けて。
本当はあたしに、いっぱい言いたい事があるくせに。
恋愛に関しては、ホントにシロートだ。
「機嫌、直して下さい」
「…っはぁ?」
「怒ってんじゃん、フツーに」
「怒ってな…」
「嘘つくな」
顔に出てるくせに、無理に隠そうとする。
不器用なやつほど、言い訳っぽいことを言うんだ。
- 497 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 20:59
-
「昨日は完璧あたしが悪かった。スマン」
深く頭を下げた拍子に、ニット帽がぽんと落ちた。
そんな事も気にならないぐらい、あたしは美貴のことばっか考えて。
「…謝らなくても、いいよ」
「……のワリに、すんげー顔してますけど」
「ちがっ…」
「で、許してくれます?」
一歩踏み寄ると、表情を強張らせてぐっと目を瞑る。
正直じゃない上に、かわいく無い態度ばっかしやがる。
- 498 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 21:01
-
「……べつに、いいよ…もう」
とびきりの可愛さが、言葉のなかに詰まってる。
あたしはもう、こいつから離れられないんだ。
そう神様に言われたような気がした。
「じゃ、おいで」
ぱっと手を広げると、悔しそうにうーと唸りながらあたしに抱かれる。
歯を食いしばってまで、涙する事を拒むなんて。
そうとうな負けず嫌いだ。
- 499 名前:この世で一番 投稿日:2004/12/28(火) 21:01
-
「つか、さみぃ。戻るか」
「連れ出したのどこの誰だと思ってんの…?」
「だって余りにも怖かったからさー」
「…不安だったわけ?」
「……さーね」
この世でいちばん恐ろしいもの。
この世でいちばん好きなもの。
どっちにしろ、かけがえのないものだけど。
ちゅっと唇にキスをして、あたしはたったかスタジオに戻る。
呆然としながら、また怒り出す美貴を時折振り向いて茶化したり。
こんな日がいつまでもつづけば、あたしは世界一のしあわせもんだ。
FIN
- 500 名前:証千 投稿日:2004/12/28(火) 21:03
- 雪の方でリクがあったので書いてみました。
喧嘩の理由はなんだったかと言うと…
想像にお任せしますw
>492様 気が向いたらまた書いてみたいと思います。
ありがとうございましたw
- 501 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:13
- とにかくもう、頭ン中真っ白で何も考えられなかった。
ただ一つの宝物を、ドロボーなんかに盗られた気分で。
握りしめた携帯のストラップがゆらゆら揺れて、まるで美貴をからかってるみたい。
この世でたったひとり、美貴を愛してくれてるって、思ってたのに。
「…ごめっ…みきたん…」
泣かないで欲しかった。涙を流す彼女の顔も、ボヤけてしまう。
泣かないで。裏切られても尚、美貴は彼女を抱き締めることを諦めきれなかった。
とまれ、とまれ。
こぼれてくる雫に、そう訴えかけながら。
- 502 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:13
-
ずっとそばにいて、当たり前に笑ってくれる存在。
それが亜弥ちゃんだった。
でも、美貴が感じたその運命は、少しひん曲がってたのかもしれない。
そんな、高校時代の淡い初恋。
- 503 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:14
-
捨てたと思ってたのに、まだとっておいたなんて。
全く身に覚えがなかったものの、大事そうにアルバムにしまってあるのを見るとなんか笑えて来た。
美貴って結構、執念深いんだな。
自分でそう思ってしまう程、呆れるような切なさ。
ぴらっと指先で拾い上げた懐かしい写真は、少し色褪せていた。
可愛くて、優しくて、甘くて。女の子って感じがにじみ出ていた子だった。
少し怒りっぽくて甘えん坊で、いつでも笑っていて。
なんていうか、学校中のアイドル的存在だったかもしれない。
誰よりも人間らしさを感じさせる彼女は、美貴の胸をくすぐった。
でも、今でもわからないことがある。
なんでそのアイドルが、美貴なんかを好きになったのか。
たいして目立つわけでもなし、成績が良かったわけでもなし。
至って平凡な日々を送っていた美貴を、彼女は特別な目で見ていた。
- 504 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:14
-
桜が咲き誇っていた4月も過ぎ、彼女が入学して半年が経ったある日。
突然、彼女に呼び出された。
かくしきれない緊張を閉じ込めて、美貴は体育館裏へ走った。
- 505 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:14
-
「先輩」
「…何?」
「私と付き合って下さい」
単刀直入、一本勝負のような自信満々な瞳がやけに美しく映った。
呼び出された内容はたったそれだけだったことに、驚きをかくせない。
でも、すごく
嬉しかったんだ。
- 506 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:15
-
「今、付き合ってる人いないんですよね?」
「…何故そう思うの?」
「まつーらの勘です。当たってるでしょ?」
確かに当たってはいた。当時付き合っている人はいなかった。
だけどその時、彼女が本当に美貴の事を好きだったのかはわからない。
興味本位で近付いただけだとばかり思っていた。
けれど美貴はそれでも、彼女の事をもっと知りたいと思った。
「……へんな子だね、きみって」
「取り柄ですから」
「自慢気だなぁ」
「ってことは、OKですか?」
「そんなこと、まだ言って無いよ」
「早く言って下さいよ」
「…やめとく」
「何で?」
「……もったいない気がするから」
「えぇ?」
「いいよ。きみの好きにすれば」
どんなことでも、許せる自信があったから。
- 507 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:16
-
答えはそれだけだった。付き合おう、とか、付き合えないとかじゃなく。
不器用なぶんだけ、言葉が見つからなかったからとも言える。
色に例えればピンクって感じがした彼女は、真っ青な空を泳ぐ。
美貴の腕を勝手に取りながら、おどけて笑うきみが可愛くて。
キレイな花よりも上流で、いとも簡単に美貴の心を奪った。
- 508 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:16
-
彼女は美貴にアダ名を付けた。
ミキ、ミキちゃん、ミキティ、ミキスケ、みきたん。
そして彼女だけが特別に使う名は、みきたんに決定された。
廊下を渡りながら大きい声で呼ぶもんだから、恥ずかしくてたまらなかったけど。
なつっこい彼女がとても、好きだったんだ。
- 509 名前:step by step 投稿日:2004/12/30(木) 20:17
-
「…何してんだろーなぁ…」
彼女はスタイルも顔もよかったから、きっとモデルかなんかになってるかな。
そんな想像ばかりが、写真を眺める美貴を見下ろした。
余計なお世話ばっかだけど、彼女が嫌がっていない事を願う。
今でも彼女の事が好きかと言われれば、素直に頷くしかないと思う。
だってこんなにも、きみが溢れてる。
亜弥ちゃんが幸せでいてくれたら、美貴も幸せだよ
もうかわす事のない約束を、アルバムのポケットにしまいこんだ。
FIN
- 510 名前:証千 投稿日:2004/12/30(木) 20:17
- 美貴様の初恋、初失恋。
こんな予定じゃなかったのに…
- 511 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:34
-
言葉を並べても尽くせない程、愛って深いもんだった。
とっても優しく包んでも、ひゅるりとどこかへ消えてしまった。
そんな大事な代物を、美貴はあっけなく降り解いちゃったんだ。
もう、どうにでもなれってヤケになってた。
ほんとうは、無くしたくない大切なものだったのに。
『忘年会やるけど、来るか?』
淡白で、だけど温かい先輩からのメールが携帯に届いた。
乗り気ではなかったけど、このウザッたい気持ちを吹き飛ばせるなら。
そう思ってすぐさま返事を送信した。
- 512 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:34
-
もう戻らないんだったら、ぐちゃぐちゃに頭がこんがらがるまで。
そんくらい、飲み明かした。
目の前がグラグラ揺れて、足下もおぼつかないまま。
「っだー!酒臭いぞミキティ!!」
「……気持ち悪っ…」
「や、やめろここで吐く…なぁぁぁぁぁ!!」
ごめん、ホントごめんね。
壊れ行く頭の中で、よっちゃんに謝罪の言葉を口にした。
白い吐息が、妙にロマンチックだった。
誰も通りそうもない夜道を、美貴はひとりきり。
内臓がふっとびそうなぐらい気分が悪くても、何故か有頂天じゃないといられなかった。
- 513 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:35
-
酔っぱらってたりしてなかったら、きっと一人で喚いて、泣いてた。
することもなくて、ただ涙を溢れさせて、わあわあ泣いてた。
結局、人間って一人になると何もできなくなる。
いつも強気な人程、日陰に投げ入れられるとどうして良いのか分らなくなって。
それが、今の美貴だ。
街灯に照らされる美貴は、世界で一番みじめで。
たった一つの大事なものを無くしただけで、こんなにも馬鹿みたいになる。
それほど、彼女の存在は大きかった。
- 514 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:35
-
無我夢中で走り続けた先に、何度も通い詰めたマンションが目の前にあった。
呆然と立ち尽くした後、自動ドアを駆け抜けてエレベーターのボタンを何度も強く押す。
ガツンと壁を殴ると、だらしなく流れる赤い液体。
拭う事も忘れて、階段を駆け上がる。
たった一言の過ちで、ここまで美貴が狂うなんて思ってなかった。
落とし物は誰かが拾って届けてくれるけど。こればかりは、どうしようもないから。
ドアノブを掴んで開くと、懐かしい匂いがした。
ごめん。これだけの言葉で、美貴は立ち直れるかもしれない。
- 515 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:36
-
バタリと玄関に倒れると、そのまま一気に気が遠くなる。
どうせ死ぬなら、こんな所じゃなくて、もっといい所がよかった。
なんて、酔っただけで死ぬ訳ないのに。
朦朧とした意識の中そればかり考えていたら、泣きそうな顔をしてる彼女がいた。
必死に涙をこらえているのが分って、精一杯手を伸ばす。
だけどもうちょっとの所で届かなくって、くいくいと動かしても、届かない。
身体は言う事を聞かないし、言葉を出す事もできない。
これじゃ寝たきりの老人だ。
「…馬鹿じゃないの…」
「うぇっ…?」
「馬鹿。……ばか…」
これほどまで、亜弥ちゃんを大事だと思う美貴は馬鹿なのかもしれない。
口には言えない気持ちがたくさん詰まった、今までの事も、現在のことも。
みーんな馬鹿ばっか。恋愛に関したら人間って、みんな馬鹿になる。
身に染みてわかったんだ。こんなに大切なモノ扱ったこと、ないから。
- 516 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:36
-
ぐすぐす言い始めた亜弥ちゃんはぺたりと足を崩して美貴の頭を膝に乗せた。
その感触がとても気持ち良くて、眠っちゃいそうだった。
だけどそんな暇はなくて、亜弥ちゃんの瞳から涙がこぼれそうなのがすぐに分かった。
なんとなく笑うと、亜弥ちゃんは美貴の頬を思いきり引っぱたいた。
痛くて痛くて、泣きそうだったけど。
嬉しくて嬉しくて、美貴はいっぱい泣いた。
「みきはあやちゃんのことあきらめられないから」
「わかってるよぉっ…」
「ごめん。ごめんね」
「それじゃ足んない!」
「ごめん、あやちゃんごめん」
美貴はろれつがまわらない。亜弥ちゃんは涙で声が出せない。
二人ともおかしくて、二人ともすごく必死だった。
一つのことに夢中になって、そのあとの事とか全然考えなかった。
- 517 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:37
-
「…みきたん?」
「ん…」
「よく素直に、謝りに来たね」
「……あぁ」
冬の寒い夜も、暖房がいらないくらいあっちぃベッドの中で、亜弥ちゃんは呟いた。
肩で息をする亜弥ちゃんは微笑んで、美貴にそう尋ねる。
軽く咳払いをして震える肩を抱き締めると、もっとあつくなった。
ドクドク上がり続ける体温と、鼓動が伝わってくる。
「でも、殆ど覚えてないよ。何でここに来たのか」
「え?」
「わかんない。身体が勝手に動いた」
「それで全力疾走してきたの?」
「うん。途中で吐いたりしてたから、死にそうだったけど」
けど、の所を強調すると、亜弥ちゃんは吹き出して笑い出す。
他愛のない話が妙に、懐かしかったからだと思う。
- 518 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:37
-
「…まさか意地っ張りのアンタが謝ると思わなかった」
「だから身体が勝手に動いたんだって。それだけだよ」
「それだけで、あんなに泣いたりする?」
「亜弥ちゃんだって泣いてたくせに」
「みきたんのが泣いてたー」
「亜弥ちゃんだよ」
「みきたん」
しばらくそんな言い合いが、何百回か続いた。
夜明けまでずっとずっと、その事を喋りまくって、目蓋が重くならないように我慢した。
美貴がもし酔っぱらってなかったら、亜弥ちゃんとこうやって抱きしめあってることもなかったと思う。
それとなく言い訳をしてしまえば、もっとヒビは広がってた。
- 519 名前:素敵な関係 投稿日:2005/01/01(土) 23:38
-
「二度とどっか行っちゃわないで」
「うん」
「ずっとあたしの傍にいて」
「うん」
「…わがまま言っても聞いて」
「うん」
「あたしの事、好きでいて」
到底守れそうもない約束ばかりだったけど、美貴はただ頷いた。
なんとか、頑張るよって事で。
「うん」
FIN
- 520 名前:証千 投稿日:2005/01/01(土) 23:39
- あけましておめでとうございます
新年早々ヤボな話を載せてしまいました。
読者の皆様、これからもよろしくお願い致します。
- 521 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 01:23
- 明けましておめでとうございます。
新年早々いいもん見させて頂きましたよw意地っ張りなのに素直になっちゃうミキティ(・∀・)イイ!!
- 522 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:39
-
「ねぇ、みきたん?」
「ん」
「……ちゅう、しよ?」
「ん」
いつも騒がしい二人の空間とは違い、何故か甘い雰囲気が流れる美貴の部屋。
あぐらをかいた美貴の上に抱きつく亜弥はまるで子供の様だ。
美貴も抵抗することなく目を閉じて寝たふりをしつつ亜弥の匂いに浸る。
こんな時間がいつまでも続けばいいと思いながら。
そっと目を閉じた亜弥に、唇を重ね−−
「…みきねぇっ」
「うっせーな後に……し…」
何故。
- 523 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:39
-
「れっ、れいな…何やって…」
「何やってるじゃなかと。遊びにきてん」
「あそ、遊びに…ちょ、亜弥ちゃんちょっとどいて!」
部屋の扉を開けた、れいなと言う女の子。
少し拗ねたような瞳と思いきり背伸びをしたような口調。
なんせ中学生だ。美貴もその扱いには慣れない。
みきねぇ、と呼ぶのはれいなだけと分っていたのか、美貴の背筋に寒気を感じたのは言う間でもない。
何故、福岡に住んでいる彼女が美貴の家に来ているのかと言えば。
「こっちこい!!」
「乱暴せんね、痛い」
ベッドの上に取り残された亜弥。美貴に連行されるれいな。
- 524 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:40
-
あっけにとられているのは、やっぱり美貴と亜弥。
「何しに来た」
「お正月やけん、遊びに来た言うとう」
「連絡もなしにそんな…」
「従姉妹やし来ちゃいかん理由でもあんの?」
そう、従姉妹。
美貴とれいなは3歳違いのイトコ。
年に1度か2度会う仲だったが、ハタから見れば仲の良い姉妹のようだった。
れいなは美貴をよく慕い、美貴も本当の妹のように接していた。
が。
- 525 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:40
-
「なん、あの、松浦さんやっけ?」
「そう、だけど」
「仲ええんね。へぇ」
「な、なんだよ」
「れいなというものがありながら、浮気しとんねぇ」
「はっ、はぁっ!?」
腕にがしりと抱きついてくる様は、亜弥にも似ていた。
美貴は幻想を見たんだと頭を振るが、目の前にいるのは従姉妹のれいなだ。
「なっ、なんで美貴とれいなが…」
「忘れたん?言ったやん、みきねぇと結婚するって」
「し、知るか!ってか、もうちょっと小さい声で…」
「なんで?」
「亜弥ちゃんに聞こえたら美貴の人生おわ…」
「あたしに聞こえたら何だって?」
バンッと乱暴にドアを開く亜弥。そして顔面蒼白の美貴。
- 526 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:41
-
「…何してんの、ソレ」
「それと申しますと…だぁぁ!こ、これはちが…」
「何が違うの?」
「これは勝手にれいなが…」
「みきねぇが約束やぶったからやろぉ?れいなとけっ…」
「余計な事喋るなっ!!」
「結婚、ねぇ」
優しい表情を浮かべる亜弥と、油汗だらだらの美貴。
何を言っても言い訳にしかならないのだが、美貴は必死だ。
腕にくっつくれいなの事も、亜弥は忘れてはいない。
亜弥とれいなは顔見知りだったものの、会話をしたことはなかった。
そのせいかお互いの目には、火花が散っている。
美貴にははっきりとそれが見える。
- 527 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:41
-
「初めまして、の方が正しいよねぇ。れいなちゃん」
「…なん、この人。みきねぇのなんよ?」
「彼女だけど、何か文句ある?」
「亜弥ちゃんちょっと落ち着い…」
「みきたん黙って」
「…ハイそうですね黙ります」
まずい。このままじゃ美貴の命が抹消される。
いつのまにか攻めから外された美貴はおろおろするばかり。
火花を散らす二人の端でちんまりと黙るだけだった。
このふたり、どうしよ。
- 528 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:42
-
「美貴、食べないの?」
「……いらない」
「食べんと力入らんと」
「お前のせいだよお前の」
「れいな関係なかと。おばさん、ごちそうさま」
行儀良く手を合わせてそう言うと、台所に向かうれいな。
美貴は溜め息を吐きながられいなを睨んだ。
れいなが来たおかげで亜弥とは最悪。
わざわざ家に訪れても部屋に入れてくれず、メールも電話も拒否だ。
とことん怒っている。
- 529 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:42
-
「松浦さんって可愛いんやね」
「…だから何?」
「そう怒らんでよ。みきねぇのムキになる所面白かっただけやん」
「だからって…。もう美貴疲れた…死ぬ」
「諦めちゃえば?」
「は?」
「別れて、れいなと付き合うっていう案もあるし」
ああ、それもいいかも。
「んなワケあるか!」
「なんでよ、ええ案やのに」
「冗談言ってる場合じゃないんだよ」
れいなが来たおかげで、美貴も精神的に参って来た。
こういう時にはっきりと物を言えない美貴の性格上、どうしようもない。
亜弥が怒り出すと、修復には時間がかかる。
何度も経験していたことだ。
- 530 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:42
-
「そや、みきねぇの学校見たいんやけど」
「え?何で」
「高校見学!」
「っつかお前、福岡帰れ」
「なんで!せっかく東京来たんやし、みきねぇの学校見たいもん」
「去年見ただろ、文化祭」
「あれじゃつまらん!」
「だいたい今冬休みだしめんど…い!?」
「さっ、行こ!」
がしっと手を掴まれ、玄関まで引きずられる美貴。
決して抵抗はできない。年下に弱い性分なのだから。
こういうのを、世はヘタレと呼ぶ。
- 531 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:43
-
「みきねぇ早く!」
「ちょっ、待てっ…あ…」
れいなに手を引きずられ玄関前まで来た所で出くわす光景。
むすっとした表情の隣人、もとい美貴の恋人、亜弥。
なんでこうタイミングの悪い時に。
舌打ちをしたい気分だったが、ぐっとれいなに手を握られる。
対抗意識というものか。
- 532 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:43
-
「へぇ…。仲いいんだねぇ」
「そんなことな…離せっ」
「みきねぇ冷たいのぉーっ!」
「黙れ。…どっか行くの?」
「……べつに」
ポケットに手を突っ込んだ亜弥はそっぽを向く。
単純な拗ね方に吹き出しそうになったが、そんな場合ではない。
れいなの手を振り解き拗ねる亜弥と目を合わせた。
「あとで家おいで。映画見よ?」
「いい」
「…じゃ、冬休みの宿題教えてあ…」
「もう終った」
「……昼間のつづ…」
「あたし学校行かなきゃいけないから。じゃあね」
上目遣いだったけれど、その瞳はとても寂しそうに見えた。
今まで見た事のない亜弥が、見えたような気がして。
- 533 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:43
-
「……みきねぇ、やっぱ違う所行こ?」
「…悪い。用事出来た」
「…みきね…」
「ごめん。美貴、学校行かなきゃ」
「…なん。松浦さん、追い掛けるん?」
馬鹿にしたような口調がとても幼い。
美貴はれいなの性格を熟知している上、それがほんの我侭だという事が分る。
決して腹黒いやつじゃない。そう理解していた。
れいなの頭をぽんと撫でると、れいなは悔しそうに美貴を見上げた。
「そんなに、あの人がいいん?」
「うん。面倒だけどね」
「…れいなと、どこが違うと…?」
「……わかんない。だけど、大事な人だから」
れいなの事も大事だけど。それとは違うんだ。
れいなに微笑むと、諦めたかのように微笑み返す。
中学生とはこんなものだ。美貴はやっと分かった気がした。
- 534 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:44
-
「…あー、めんどい」
口癖のように呟くと、学校に向かい走り出した。
「…なんよ、つまらん」
悔しそうにそう口にしたれいなは、ほんの少しだけ嫉妬感を味わった。
- 535 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:44
-
「…あ、あった」
その頃、一足先に学校に着いた亜弥は自分の机の中を覗く。
冬休みの間に必要なテキストを学校に忘れたのだ。
外がまだ明るいのを確認すると、イスを引いてそこに腰掛ける。
少しばかり後悔した、さっきのこと。
美貴は優しいから、れいなの我侭を聞けないだけ。
ちゃんと理解はしていても、口が言う事を聞かない。
ついムキになって言い返すばかりで、自分に嫌気がさすほど美貴が好きだ。
自分は美貴の一番なのに。意地を張る事しかできない。
亜弥はそんな自分が、初めて可愛くない女に思えた。
- 536 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:44
-
「…それにしても」
遅れて学校に到着した美貴は、ひたすら学校の中を歩き回る。
何故亜弥が学校に来たのかという理由も知らず追いかけて来ても、どうすればいいのやら。
昇降口には亜弥の靴がある。
ってことは、中にいるはずだよねぇ?
「何組だっけ?」
一年の階まで来た所で、一部屋づつ見てまわる。
そのたびに、ほんのすこしだけ心臓が高鳴るのがわかった。
- 537 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:45
-
「…結婚…」
「……ん?」
ある教室を覗くと、やはり見なれた容姿がイスに腰掛けている。
やっぱりと言った様子で溜め息をつくが、歩み寄る事をやめてその場にしゃがみ込む美貴。
亜弥が何か呟いたのが、なんとなく気になった。
悩まし気なその表情が楽しくて、思わず微笑んだ。
「みきたんと結婚するの、あたしなのに」
「…へ…?」
「あたしの方が、先だもん……」
一人でこんな事言って、誰かに聞かれてたら相当恥ずかしい。
そう思いながら、亜弥は一人でに呟いた。
もちろんその教室には、美貴が。
- 538 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:45
-
確かに、亜弥は覚えていた。
美貴と幼い頃にかわした、ささやかな約束を。
座り込んだまま固まる美貴は、冷や汗を垂らしながらただじっとしている。
亜弥ちゃん、本気だったわけ?
次々と浮かんでくる想像がはち切れそうだった。
「…あ、やちゃん」
「……ほぇ…?」
居心地が悪そうに立ち上がる美貴に、呆然とする。
しばらくの間、静かな時間が流れた。
- 539 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:45
-
「いいいいいつからいたのっ…?」
「10分ぐらい…前から」
あからさまにどもって頬を赤くする亜弥が、とても幼く見えた。
その表情が小さい頃の亜弥と全く変わっていない事が、なんだか面白くて。
手に握っていた汗を拭って、近くにあった机の上にあぐらをかいて座った。
「きっ…聞いてた…?」
「まあ、バッチリ」
「なんで言ってくれなかったの!!」
「だ、だって声かけにくかったんだよ」
きっとすごく恥ずかしいんだろう。焦る亜弥が可愛くて、何となく笑顔になる。
高校生になった今でも、まだそんなことを言っているなんて思ってもいなかったけれど。
純粋に、嬉しかった。
恋人になる前まで何度も回想していた事が、今ではこんなにも心地良いなんて。
- 540 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:46
-
「…帰ろっか?」
「い、いい。みきたん先に帰って」
「……まだ怒ってんの?」
「ち、ちが…」
「それとも、聞かれたのが恥ずかしいって?」
わざと、わざとだ。
カッと体温が上がりそうな亜弥をからかうために。
「あははっ、ホント面白い、亜弥ちゃんって」
「……呆れてるんでしょ?別にいいもん……」
「嬉しかったよ」
「…え?」
ひょいと机から降り、イスに座る亜弥を後から抱き締める。
今なら何故か言えそうな気がしてならない。
思いも寄らぬ美貴の登場、行動に魅せられそうで、じっと黙る亜弥。
- 541 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:46
-
「最初は、また何言ってんだって思ったけど」
「……やっぱそうなんじゃん…」
「でも、嬉しいよ。まだ覚えてたなんてさ」
「…たん、忘れてたでしょ?」
「当たり前だよ。いつの話だよ」
冷静なツッコミが痛くても、抓られた頬が痛くても、亜弥は微笑んだ。
本当に忘れていたけど、思い出せてよかった。
心の奥でホッとした美貴は、夕暮れが近い事を思い出す。
「ま、オランダにでも生まれてたらよかったかもね」
「…なんでオランダ?」
「……知らないなら、いいや」
呆れて頬にキスをして、亜弥を抱き上げる。
このままでも幸せだけど、もしもオランダで二人が出会っていたなら。
きっととっくに結婚してたんだろうな。
そんなことを思いながら、意地っ張りな手を引いて学校を出た。
- 542 名前:_ 投稿日:2005/01/02(日) 16:47
-
「れいなちゃんは、いいの?」
「あんなの、ただの遊びだよ。中坊の事だからすぐ飽きるって」
「……ふーん」
「いちいち憎たらしいな亜弥ちゃんも」
繋いだ手を強く握られて、わざと痛いフリをする美貴。
怒りながら笑う亜弥の姿も。
夕暮れに照らされて、二人の影がひとつになったように見えた。
「…ケッコン、しよっか」
「ほぇ?みきたん、何か言った?」
「なんでもない」
このことは、亜弥と美貴以外誰にも内緒だ。
FIN
- 543 名前:証千 投稿日:2005/01/02(日) 16:47
- 引き続き、smile on meのお正月版。
なんとなく田中さんを出したかっただけw
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 20:23
- 個人的にこのシリーズが大好きです。
おもしろいです。
- 545 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/03(月) 17:42
- いいっすねぇ
田中さんがイイ味出してます
- 546 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:20
-
「んぁーあっ、眠いっ」
ぽかぽか陽気に誘われてお昼寝をしていたごっちんは、むくりと起床した。
まだ眠そうな瞳をごしごし擦って、空に浮かぶ青空を見てにこりと笑う。
その表情から目を逸らして、美貴も空を見上げた。
今の心情からは、考えられない程の綺麗な空。
やけにそれが、むかついて。
「…みきてぃってさ、案外粘り強いよね」
「何で?」
「興味ないコトにはやる気ないくせに、一度のめり込むと離れないってやつ」
「……ごっちんが言う?」
「あは、すんません」
冗談気味で睨み付けると、ごっちんはちっとも動じないでにこりと笑った。
なんで、こんなにおちゃらけてるんだろう。
いつも一緒にいるのに、全然わからない。
- 547 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:21
-
「まっつーには大事な人がいるんだよ」
「知ってらい」
「みきてぃよりも好きな人がいるんだよ」
「分かってらい」
「じゃー、なんで?」
しつこく靴の裏にくっついてくるガムのように、ごっちんは尋ねた。
知っている癖に、美貴の本心をむき出しにさせたいらしい。
どういうつもりなんだか分らないけれど。
友達のくせに、いや友達だから、こんな事を質問できるのかもしれない。
「こっちが聞きたいよ。何でこんなに好きなのか」
誰か、教えて。
常にそう思ってきたけど。誰も助けてくれない。
- 548 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:22
-
皮肉っぽかったかもしれないけど、ごっちんは何も考えて無さそうな表情だ。
相変わらずのマイペースにはこっちも呆れてしまう。
かと言って、このままにしておくわけにはいかなかった。
「ひっぺがしてやりたい。そのモヤモヤから」
「ごっちんにできる?」
「やってみなきゃ分かんないけど。自信はあるよ」
「……まぁじで?」
知りたく無かった、アナタの気持ち。ずっと分かってた、アナタの心。
ごっちんは、美貴のコトが好きなんだって。
- 549 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:22
-
地面に寝そべると、冷やされたコンクリートに背中をくすぐられた。
ボーッとする意識の中、ごっちんが美貴を見下ろす。
なんだか目にアツイものがこみあげてきて、それがぶわっと外に放出された。
涙。塩分を含んだような、しょっぱい水だ。
「シツレンジャーの隊員にしてあげようか?」
「…慰めてるの?」
「そんなワケございません。でも」
「何?」
「ごとーのコト、好きになる価値はあると思うよ」
好きにならせてみせるよ。なんたって、恋愛戦隊ですから。
誇らし気にニカッと笑ったごっちんが、なんだか面白かった。
逆にもっと、悲しくなったけど。
唇にごっちんの体温が重なっても、なんともなかった。
むしろ、欲しいと思った。
- 550 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:23
-
生暖かい舌が絡む口内。それに伴って上がる息。
亜弥ちゃんの代わりとは言わないけど。ごっちんなら、って思えた。
諦めちゃいないのに。何でだろ、すっごくめんどくさくなった。
これまで積み重ねた想いを蹴り飛ばして、ただ目の前にあるモノしか見えない。
制服のボタンを全部はずされて、美貴はめちゃくちゃになった。
広がる快感が、イヤに気持ちが良くて。
自分を信じる事が、怖くなくなった。
「ふぁっ…んんっ、んっ…やぁっっ」
「気持ちイイんでしょ?だったらもっとしてあげるよ」
「あぁぁぁぁっ…やぁっ…あぁんっ」
- 551 名前:失恋の続き 投稿日:2005/01/03(月) 21:23
-
痛い程愛されて、苦しみはなかった。
むしろ欲望に駆り立てられて、どんどん進みたくなる程に。
失恋のイタイ所って、最後だよね。
最後にごっちんはそう言った。
枯れた涙をぬぐい取って、とても笑顔になれるような気がしたから、美貴は。
そうだね、って言ったんだ。
FIN
- 552 名前:証千 投稿日:2005/01/03(月) 21:26
- ごまみき。ひっさしぶりにエロ書いちゃったw
>521様 シリーズ化となりつつあるような……(爆
なりませんね、アハハ。
>544様 面白いですか?書いてて楽しいんですけど面白いとは…w
ありがとうございました。
>545様 田中さん出したかっただけなんです正直(笑
グッジョブだったかと。個人的にw
- 553 名前:証千 投稿日:2005/01/03(月) 21:26
- エロなんでかくしときます
- 554 名前:証千 投稿日:2005/01/03(月) 21:26
- 次は何にしようかな
- 555 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 21:50
- 不良少年みきたんが学園のアイドルあややに惚れちゃう話とか個人的希望を言ってみる
- 556 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 23:21
- 不良みきたん…見たいですw
- 557 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 23:44
- >>555
それいいねと提案にのかってみる
- 558 名前:wool 投稿日:2005/01/05(水) 01:34
- あけおめですー(遅
今年ものんびりと憑いて逝きますよー(嫌
相変わらず更新のペースが早くて驚かされますが、無理せずマターリ頑張って下さいね。
- 559 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:56
-
「っ…じもと…!!」
「……っせぇな」
はっきり言うと、あたしは学校とか勉強とかめんどくさいわけでして。
お仲間同士楽しく勉学に励むのとか大嫌いなわけで。
つまり学校中のみんな、みんな美貴の敵なわけでして。
だから、信じられるものなんか無かった。
- 560 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:57
-
腕を強く掴んでくる先生も、上っ面だけ良いクラスメイトも。
今感じている腕の痛みすら。
かき消してしまいたいほど、うざい。
「っ…あっちの学校から苦情が来ているんだ!お前しか理由がな…」
「処分するなら勝手にすればいいだろ、さっさと退学してやるから離せよ…っ」
「そういう問題じゃあないんだ。さあ、こっちに来い」
「……っいった」
白黒の視界と痛みだす古傷。
強く引かれた腕が悲鳴を上げそうな程、判断能力が薄れていく。
どうしたらいいのか、どうすればいいのか。
美貴じゃない。あっちから殴ってきたんだ。
決して殴り返したりはしていない。そのまま地面に倒れて、気がついたら家のベッドで寝ていた。
たったそれだけの言葉が言えず、複数の教師に囲まれた。
怒鳴り声や、外見的に優しい声。
聞く耳はもうなかった。どうせ全て、自分達の位のためだけだから。
- 561 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:58
-
どうせ言ったって、無駄だけど。
何度も繰り替えし同じ目にあったことがある。
前に他校のやつを半殺しにするほどの喧嘩はあったけれど、それきり殆ど人を殴った事はない。
所詮、悪いやつは悪いやつってことだ。
「…先生はお前を退学にする気なんて無い。お前が直せばいい事だろう?」
素行が悪かったり、態度が悪かったり、普段の行いから出てくる面なんだから。
何の疑いもなく警察の言う事を信じる教師なんか、信じる価値もない。
あたしはただ頷いて職員室を出た。
ひたひたと廊下を歩く度、横切る生徒は目を疑うように指を差す。
- 562 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:58
-
またやったんだ。懲りない奴。
そう囁かれる度に、心がぼろぼろになっていくのが分かった。
- 563 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:58
-
「…えー、早川ー」
「はい」
「平山ー」
「はい」
「藤本ー」
他校との暴力沙汰があった翌日、美貴は学校を休んだ。
たいていこういう日が続く為担任はたいして気にも止めなかったが、唯一心を重くするクラスメイトがいた。
吉澤は静かに俯いて唇を噛み締めた。
吉澤ひとみ 美貴の数少ない友人だ。
「せんせー、なんで藤本さん休みなんですかぁー」
「さぁな、連絡もないしオレにも分らん」
口だけは巧い教師だ、と吉澤は呆れた様子で机に突っ伏した。
美貴の背負っているモノ。唯一の友人である吉澤は、全てを知っていた。
- 564 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 15:59
-
「美貴ー、入るわよ?」
気持ちが悪い。
適当な理由を付けて、美貴は学校を休んだ。
立続けに怒る出来事に対応出来ず甘えてしまうのが自分の欠点だ。自覚している。
母親の心配そうな声にも反応せず、ベッドに伏したままただ呼吸をする。
ズキンと痛み出す腕。シャツをめくり、痕をまじまじと眺めた。
青紫に染まった一部が痛々しく、美貴は目線を逸らし母親の姿を確認した。
ノックもなしに、まして了解も得ずに入ってきたのが気にらなかったらしい。
「……具合、どう?」
「別に。仕事、早く行きなよ」
「…今日は、夜からなの。だから…」
「あっそ。美貴寝るから、出てってくんない?」
言いたく無くても、口にしてしまう。
反抗期はとっくに過ぎた気がしていたが、まさかこんな遅くに出てくるとは。
母親は無言で美貴の髪を撫で、部屋から出て行った。
枕から顔をあげてその様子を見た後、一行のメールを送信した。
- 565 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:00
-
『学校、どう?』
他愛もないただの一言メール。
受信相手は吉澤だ。
ごろりと仰向けになって、壁に貼ってあるポスターを久しぶりに見返した。
オレンジ色のユニフォーム。背番号は6。
かつて目指していた夢も、飽きるほどに面倒になった。
ポスターに印刷されているフットサルチームの名前を指でなぞる。
吉澤から返信が来た。
内容を見ると、なんだか心を見透かされているようで思わず苦笑した。
冒頭はいつも通りだったが、サッカーボールの絵文字を見た途端に口角を緩める。
- 566 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:00
-
『部活だけでもいいから、来いよ。人数、只でさえ足りないんだからさ』
ただ一人、美貴の事を理解している吉澤は美貴の中でも大切だった。
良き理解者であり、相談者でもあった。
もうすぐ放課後を知らせるチャイムがこの家まで届く。
バッグにユニフォームを詰め込み、押し入れにしまったシューズを取り出す事にした。
- 567 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:01
-
「よっすぃ、ねえ」
「何?」
「今日、ミキティ来るの?」
「……あー、わかんね。一応メールしといたけど」
先程送信したメールを読み返し、ほいと真希に見せる。
すると、そっかと安心したように笑う。
後藤真希 ごっちんこと真希は、美貴と友人と呼べる程の関係ではなかった。
だが懐っこい真希の性で、美貴の事を特有のネーム「ミキティ」と呼んでいるのだ。
それに美貴は反応することもなく、ただ放っておいた。
なんだコイツ、と思うだけで。
「久しぶりに笑ってくれると、いいんだけど」
真希がそう言うと難しそうに微笑み返す吉澤の顔は、心底嬉しそうだった。
心を開こうとしない美貴をなんとかして、振り向かせたかったからだ。
- 568 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:01
-
トントントン、と静かに階段を降りちらりとリビングを覗いた。
久しぶりに身体を動かす楽しみをとっておきたいような、不思議な気持ちを美貴は抱いていた。
カチャとドアを開くと、予期せぬ出来事に美貴は足を一歩引く。
ミニソファで向かい合って座る、母親と見知らぬ男。
首を傾げていると、母親がその様子に気付いたのかにっこりと微笑んだ。
「美貴、もう大丈夫なの?」
「…ん、平気。部活行ってくる」
「そう。あ、それと紹介したい人がいるんだけど…」
キィンと痛み出す頭痛に覚醒され、美貴は無言でその場を立ち去った。
母親は後を追うが、それ以上何を言う事もない。
男は立ち上がって心配そうに美貴を見送り、ごめんなさいと謝る母親に優しく笑いかけた。
今さら母親に愛情を求めるなんて、自分はどうかしている。
嫉妬にも似た感情は抑えきれず、ポケットに手を突っ込み美貴はたちまち腹を立てる。
- 569 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:02
-
17歳と言えど、まだ内面的には子供だ。
ほんの少しだけ見ず知らずの男性を憎らしいと思う自分がバカバカしくてしょうがない。
父親が蒸発してからしばらく母子家庭だったため、このような気持ちを抱くのは当たり前だ。
社会を知らない美貴にとって、こんなに恥ずかしい事はないと思うのは仕方がないのかもしれない。
- 570 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:02
-
「よっすぃー!来た!ミキティ来たよ!!」
シュンと円を描いたボールを見送り、吉澤は声のする方へ振り返った。
すると嬉しそうに駆けてくる真希と後輩達は吉澤の首をがしりと締め付ける。
「久しぶりに良い試合できそうじゃん?ねっ?」
「…そうだね」
「嬉しく無いの?」
「いや…」
また楽しそうにゲームができるなら、それでいい。
吉澤は美貴が部活に出る度、そう思うのだ。
- 571 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:02
-
『ねーよっちゃん』
『ん?』
『レギュラー入れたら、美貴、絶対よっちゃんに負けないから』
得意げにピースをして見せた美貴は、とても輝いていた。
ライバルとして、友達として、仲間として。
大事な人であるから。
- 572 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:03
-
後輩に背中を押され、無理矢理来たというような顔をしてみせる美貴。
機嫌が悪いと見せ掛けるその瞳は、少し嬉しそうだ。
「…来てダイジョーブ?」
「馬鹿にすんな。誰だと思ってんだよ」
ボンッと美貴が投げ付けたボールを受け止める。
ニッと笑った美貴が珍しくて、楽しくて、面白くて、しょうがない。
「美貴様、ってか」
さ、練習練習。
- 573 名前:変える物と変わる人 投稿日:2005/01/05(水) 16:05
-
「ミキティのロッカー、まだあるからね」
「処分する勇気あんの?」
「んぁ、さすがにないっ」
久しぶりに使う、少し錆びたロッカーにカバンを入れて嬉しそうに笑う美貴。
初めて打ち解けたような気がして、つられて真希も笑った。
なんだ、結構イイコじゃん。
今まで持っていたイメージが全て嘘だったかのように、真希は美貴を「友達」として見るようになったのもこれが最初だった。
- 574 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:06
-
「ふ、ふざけんなよぉっ、今日はフットサル部が使…」
「こっちは顧問の許可取ってるんです!つべこべ言わないでこれどけて下さい!」
「そんな事聞いて無い!!陸上部は一昨日一面使ってただろ?」
「関係ないです!とにかくどいて下さい!」
ユニフォームに着替え部室から足早に出ると、吉澤と陸上部が口論をしている。
このような光景は毎度の事だったが、意外にも今回は後輩との言い争いだ。
「……んぁー、今日はあのコか」
「…は?」
「よっすぃが粘っても、あのコじゃ無理だなぁ」
あのコって?
- 575 名前:変える物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 16:06
-
美貴が真希にそう尋ねるか早く、吉澤はこちらへ全速力でやってくる。
するとガシリと美貴の両肩を掴んで口論の現場へ連行していった。
「……んぁーあ」
春夏秋冬関係なく、薄いランニングを着た陸上部とフットサル部は犬猿の中だ。
グラウンドが狭いため半面づつ使う公約となっていたが、情報が入れ違ったらしい。
吉澤に抗議をしている後輩に、真希は面倒臭そうに溜め息をついた。
その後輩がこの学園イチの要注意人物という事を、美貴は知らなかった。
- 576 名前:証千 投稿日:2005/01/05(水) 16:10
- 途中でタイトル間違えましたね。すいません…
「変える物と変える人」です。
果たしてちゃんとしたエンドになるか心配ですが…
なんとかしますw
っていうか、よっちゃん率が高いですね。
从‘ 。‘从 はこの後登場します。
>555様 わぁお。なリクエストありがとうございます。
創作意欲が湧き出てしまいにはこんな形になりましたが、頑張ってみます。
ありがとうございました。
>556様 不良なのかなんなんだか分らなくなってます。ハイ。
でも頑張ります。ありがとうです。
>557様 乗っかってくれてありがとうございました。
>558様 正月早々変な物を書いてしまい見苦しいったらありゃしない。
見て頂けるなんてありがたいですw
憑いてきて下さい。なんとか(爆
- 577 名前:証千 投稿日:2005/01/05(水) 22:17
- もういっかい更新
- 578 名前:証千 投稿日:2005/01/05(水) 22:19
- 何度もすいませんが、タイトルがまたまちがってま(ry
すいません馬鹿で。
「変わる物と変える人」です。
ややこしくなりましたが、変換よろしくお願いします。
- 579 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 22:19
-
「何だよ離…っ」
「ちょっと睨めばいいだけだから」
「ハ?」
美貴はまだ知らなかった。陸上部イチ、いや学園一の生徒である、この後輩の存在を。
凛とした目、白い肌、端麗過ぎる程の容姿。
部長の吉澤ですら何も言う事が出来なくさせる後輩とは、下級生に思えない程しっかりした人物だった。
- 580 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 22:20
-
「美貴、よろしく」
「え」
吉澤にぽん、と背中を押され、一斉に身を引く陸上部員。
この学園では一般的に美貴の存在は「危ない人」として扱われている。
多少カチンときたが、どこかへ消えて行った吉澤を探す暇もなく睨んでくる後輩と目を合わせる。
これが、亜弥と美貴の最初の出会いだった。
- 581 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/05(水) 22:20
-
「……………」
「あなた、藤本美貴ですよね?」
「…そうだけど」
「あたし、松浦亜弥って言います。1−B、松浦亜弥」
なんだこの下級生。
初めての印象と言えば、それしかなかった。
わざわざ長く自己紹介をし始めた亜弥にギョッとするが、立続けに物を言う亜弥を止められなかった。
普段なら睨みを効かせ追い払う美貴だが、それをする気にもなれない。
何でだか、この後輩にしてはいけない気がしたのだ。
何か厄介事を抱えるのは面倒と察したからだ。
- 582 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:43
-
「グラウンド、使いたいんだって?」
「はい。絶対譲りません」
「……すっごい根性してるんだね、アンタ」
「何でですか?」
「……ハハッ」
美貴の事見て、怖がってる他の子とは違う。何だか、とても変なやつだ。
声を出して笑うと、周りの部員達はドン引き状態だ。
あの藤本美貴が、こんな後輩に振り回されてるなんて。
きっとまわりはそう思っているだろう。
- 583 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:43
-
「…美貴っ、早く言えよ」
「……別に、いいじゃん。譲れば?」
「ハァ?お前何言ってる…」
「松浦だっけ?君」
「ハイ」
「覚えとく。グラウンド好きに使って良いよ」
見事に、やられた。
頭を抱えて笑い出す美貴の両肩をぐらぐらと揺する吉澤にも。
唖然とするフットサル部の後輩達も。
驚きながらも喜びの声をあげる陸上部員達も。
まるで聞こえなかった。あの後輩に、してやられた気がした。
なんなんだ、このキモチ。
- 584 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:44
-
美貴の様子に気付いた亜弥は、タタタと駆け寄り美貴にぺコリと頭を下げた。
妙な丁寧さに美貴は笑いを止めてニッと笑った。
「ありがとうございます。藤本先輩」
「……や、別に」
「あたしも、先輩の事、覚えておきます」
「…へぇ」
「っていうか、覚えちゃいました。もう」
「……何で?」
「あたし、センパイの事狙ってますから」
上目遣い気味で、亜弥を見下ろす美貴にそう告げた。
そのままグラウンドへと駆けて行く姿は妙に華憐で楽しそうにも見える。
そして亜弥が美貴に言った言葉の意味は
「………ヘンなやつ」
美貴を変えた、おかしな魔法でもあった。
- 585 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:45
-
「おい、美貴!!」
すたすたと一人で先を歩く美貴の手首を、吉澤は強めに掴んだ。
グラウンドを陸上部に譲ってしまったおかげでフットワークしかできなかったのだから、無理もない。
「ふざけんなって、お前が練習来るっていうから先輩のあたしがあんなやつに…」
「よっちゃんが仕向けたんでしょ、美貴に」
「だからって」
「ガキ相手にムキになるよりいいでしょ」
「……っおい!!」
自分でも何故だか分らない。あの後輩に、自分の心を横取りされた気がした。
怒りだしそうな吉澤を残し、美貴は歩道橋を駆けて行った。
しかもその道は家とは反対方向だったが、そんな事も気にせず走った。
家に帰っても、まだアイツがいる。
直感的にそう思ったからだ。
- 586 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:45
-
「……なんだよ、美貴のヤツ」
不貞腐れたような溜め息が、真っ白な吐息に変わった。
- 587 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:46
-
「…ねぇ、お母さん」
ト−ストをかじりながら、バタバタと忙しそうに小走りする母親に問いかけた。
学校に行くのはいつものように乗り気ではなかったが、何となく気分が良かったため今日は早起きだ。
「夕べのあの人、新しいヒト?」
紅茶を胃に流し込み、ガタリと席を立った美貴は聞きにくそうにそう言った。
驚いたように振り返った母は、俯き加減で美貴を強く抱き締める。
その柔な背中を抱き返す事はおろか、美貴は言葉を並べる事も出来ずにただ立ち尽くす。
「おかあさ…」
「ごめんね、美貴」
「……なんで、謝るの」
「ごめん、ごめんね」
そんな答えが欲しいんじゃない。違う。
そう言いかけるや否や、母はハンドバッグを持って玄関へ行ってしまった。
その後を追う事も何かを言う事もやめて、美貴も学校へ行く事にした。
もう、何を言っても無駄だと分かったからだ。
新しいお父さんなんか、いらない。美貴は、そんな人いらない。
- 588 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:47
-
「藤本」
「………」
「…いるな、よし。えー…」
出席を取る担任の表情は強張る。いつもの事だ。
返事をすることもなく、美貴は窓の外を眺めていた。
どこか上の空なのはいつものことだが、昨日の今日と言い美貴は少し変だった。
いつもは声も表情も堅く、冷たい態度をとる美貴とは違い、少し温かいのだ。
吉澤はそれとなく気付いていたが、あえて触れていない。
もし美貴の感に触るような事があれば、また何か騒ぎを起こし兼ねないからだ。
- 589 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:47
-
「メシ、庭園で食う?」
「……ん」
「購買行くか」
「ん」
髪をくしゃくしゃとかいて、一つ欠伸をしてもクラスの皆は何も言わなくなった。
ただ美貴を冷たい目で見る目は、未だに減る事はない。
この間起こった他校との事件も水に流された様で、もう呼び出しをもらうこともなかった。
カリカリしていた神経も何時の間にか治まり、しばらくはホッとできる生活が送れるだろうと吉澤は安心していた。
- 590 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:47
-
「うわ、混んでる」
どうやら来るのが遅かったらしい。購買所にはもう人が一杯溢れていた。
面倒臭そうに溜め息をついた美貴はふいと踵を返し教室へ戻ろうとする。
「おい、どこ行くんだよ」
「昼いいや。たいして腹空いて無いし」
「……捻くれんじゃねぇっつの。コロッケパンでいい?」
「いらないって。よっちゃ…」
あーあ。
人込みをかき分けて、背の高い彼女の姿が見えなくなるまで。
美貴は呆れた様子で購買所から一歩二歩と離れた。
なぁんで、美貴みたいなヤツに付き合ってんだろ。
- 591 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:48
-
「おばちゃん、コロッケパン二つ!」
「はい、丁度お終いだよ」
丁寧にニコリと笑った購買の店員に手をふって、微笑んで腕を組む美貴の元へ走った。
時々人の足を踏む感覚に罪悪感を抱く事もなく、吉澤も笑顔になる。
気付いていないから、あたしはこんなに尽くしてんのかな。
好きで、好きで、好きで ただ、それだけだ
- 592 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:48
-
「……ゲ」
「何?」
「美貴、場所変えよ。教室行こ」
「何で…」
「いるんだよ、あそこに」
庭園にあるベンチに腰掛けた途端、吉澤は美貴の腕をぐいと引っ張り耳元で囁いた。
指を差した先にあるのは、何となく見覚えのある下級生。
眉をしかめて見ると、美貴はあぁという風に軽く鼻で笑う程度だった。
- 593 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:49
-
「……1−B、松浦亜弥…か」
紺色のランニングから覗く白い肌を、美貴は忘れられなかった。
『あたし、センパイの事狙ってますから』
「ちょっと待ってて」
「え…お、おい!そっち行っちゃ…」
足が自然に動き出す。もちろん、あの不敵な笑顔の元へ。
- 594 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:50
-
なんだか引き寄せられるようなパワーを持っている、あの後輩。
美貴はこの後輩の名前や印象など、鮮明に覚えていた。
昨日の今日であるから、当たり前だが、そういう事ではない。
仕種、口調、笑顔。全部が、美貴のナカにあった。
- 595 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:50
-
「亜弥、場所移動しよ」
「ほぇ?何で?」
「あんたの後!さっきから睨んでるんだよぉ」
「…うしろ…」
慌て出す友人数名は、呆然とする亜弥を庭園に置き何処かへ走って逃げて行く。
素直に後を振り返ると、当たり前のようにいる美貴がいた。
ニヤリと危なげに笑った美貴は、ひょいとしゃがんでまじまじと亜弥の顔を見る。
「あ、藤本先輩だぁ。こんにちは」
「…ちは」
「なんですか?あたしの顔に何かついてます?」
「……いや…」
- 596 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:50
-
キュン キュン キュン
心臓が締め付けられるように鳴る。再びニヤリと笑った美貴は、亜弥の隣に座った。
亜弥は嫌がる様子も怖がる素振りも見せず、ただ美貴と顔を合わせる。
「……なんだ、あの二人……」
草影で見守るのは、不思議そうにその光景を見遣る吉澤だ。
あの女、美貴の事怖がらないなんて。
なんて度胸だと思う前に、大きな疑問があった。
- 597 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:51
-
学園のアイドルと呼ばれる松浦亜弥が、何で不良の美貴なんかに。
亜弥の学園一の称号とは、アイドルというネーム。
そして美貴の学園一の称号は、不良というレッテル。
似ても似つかない程の二人が、何故。
- 598 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:51
-
「…キミさぁ、顔、けっこー可愛いんだね」
「当たり前です。誰に向かって言ってるんですか?」
「ふぅん…胸もでかけりゃ態度もでかいんだ」
「ばっ…!!」
制服のシャツに手をかけ、慣れた手付きでひょいとボタンを外す。
ニヤリと笑って驚き除ける亜弥の手をぐいと引っ張った。
「離してっ…」
「キミ、美貴の事狙ってるんでしょ?こういうことされて、嫌なの?」
「いっ…やですよ!!」
「って」
パンッ、と乾いた音が美貴の耳に届く。
赤く腫れた右頬を察して、亜弥はくっと唇を噛み締め美貴を睨んだ。
あくまで冷静でいる美貴を、甘く見過ぎていた。
- 599 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:52
-
この人、あたしの事何とも思ってないわけ?
学園一のアイドルをコケにしているような、その瞳。
その黒さに何となく興味を持っていた亜弥としては、許されない事実だった。
しかも、ガキ呼ばわりされるなんて。
「……いってーな。キミじゃなかったら殴り返してたよ」
「…な、んで…」
「その顔に傷付けたら、美貴が悪者になるし」
「……あなた、あたしの事見て、何か思ったりしないの?」
「…さあ。ただ」
強く掴んでいた亜弥の手を解いて、首に腕を巻き付ける。
コツンと額を合わせ、亜弥の唇に触れた。
亜弥の体温は思った以上に高く、美貴の心を揺さぶった。
- 600 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:52
-
「惚れたかも。アンタに」
意地悪く微笑んだ美貴の顔はとても楽しそうだった。
からかっているわけでもないその表情は、今までとは違う何かを秘めていた。
赤く染まる亜弥の頬を撫でて、もう一度その唇に触れようとしたその瞬間
パンッ
- 601 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:53
-
「ふ、ふざけないでよ…何、アンタ…」
「そっちが美貴の事好きって言うから、美貴だってマジになってんだよ」
「じょ、冗談でしょ?アンタなんか好きでもなんでもないし…」
「じゃあ何で狙ってるとか、言ったの?」
それは
その次の言葉を探す為、亜弥は必死で身を捩る。
ザッと歩み寄る美貴から逃れる事は出来ないと確信するまで、時間がかかった。
こんなことになるなんて思ってなかった。
どうせ目もくれないだろうと思って口にした言葉が、美貴を本気にさせてしまった。
まさか本当に、近付いてくるなんて。
- 602 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:54
-
そもそも、友人の挑発に乗ってしまった自分が馬鹿だった。
「あの藤本美貴を落とせ」
冷酷な美貴の態度を亜弥もよく知っていたし、余り目に止める事はなかった。
けれど、亜弥なら出来ると言われてつい。
調子に乗らなければ、こんな危機に陥る事はなかった。
「君、色んな人にそういう事言ってるみたいだね」
「……知ってるなら…なんで」
「面白いと思って。アイドルを困らせるなんてさ」
「こ、困ってなんかないです…き、キスされたぐらいで…」
「つか、したことないでしょ?」
ズキン
- 603 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:55
-
「付きまとってやるよ。君が泣こうが、怒ろうが」
初めての屈辱感と、威圧感。
腰が抜けた様に動かない足を震わせる亜弥を見て、美貴は手を差し出した。
意外と優しい、なんて感情はどこにも存在しなかった。
目の前にいる美貴の事が、怖くてたまらない。
- 604 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:55
-
「……ねえ、ビビッてんなら美貴に関わらなきゃいいじゃん」
「………だ、だって…」
「性格悪い女。色んなヤツ泣かせたり悲しませたりして、それが楽しいんでしょ?」
「…アンタに関係ない…」
「関係ある。だって君の事好きだから」
ぎゅ、と亜弥を抱きしめて立たせると、そのまま校舎の中へ消えて行った美貴。
その後姿は何となく寂し気で、猫背気味だ。
亜弥は、まだ足が震えて言う事を聞かない。
美貴の存在自体が許せなくて、悔しくて仕方がなかった。
あんなやつ、もう関わらない。あたしに関係ない。
- 605 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/06(木) 13:55
-
学園一のアイドル松浦亜弥が初めて得た感情と焦り。
学園一の不良藤本美貴と出会い、全ての歯車が狂い始めた。
- 606 名前:証千 投稿日:2005/01/06(木) 13:57
- 無理矢理な設定をお許し下さい・゚・(ノД`)・゚・
リクして頂いた物とは結構別物ですし美貴様黒過ぎるし
取りあえず完結するまで頑張ります
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/06(木) 15:10
- 良いです…かなり。
なんか、ぞくぞく…ぃや、わくわくしました。これからどうなるのか…続き期待しまくってます。
- 608 名前:名無 投稿日:2005/01/06(木) 17:30
- うぅむ、美貴様素敵です
アイドルをビビらせるのは朝飯前って感じですねw
二人がどうなっていくのか、大期待でございます
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/07(金) 02:43
- ミキティーかっこいいっす!
続き楽しみにしてます。
- 610 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:27
-
「んだよ」
「…なんでもないよ」
「……?」
あまりにも近距離で見過ぎたか。
校舎に戻ってしまった美貴を追いかけたものの、渡したコロッケパンも食べようとしない。
それに、さっきのやりとり。
何をしていたのかは余り聞こえず、吉澤は直接美貴の口から聞きたいのだ。
怪しい物を見るような目つきで美貴は吉澤から身を引いた。
「…ちげーよ。さっき、何の話してたの?」
「……色々。よっちゃんには関係ないよ」
「ある。大有りだよ。最後の方なんか、あの松浦が怖がってたし」
ムキになった態度を剥き出しにして、吉澤は前のめりになる。
気になるのだ。
美貴が何故、必要以上に他人と接したがるのか、心変わりしたような表情なのか。
ともだちだから。
- 611 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:27
-
そんな理由じゃ済まされないのが、吉澤は気持ちだというのに、美貴は
気付かない。
「いつも愛想振りまいて、ほいほい恋人変えてるようなあいつになんで…」
「気になるんだよ」
「…え…」
「……あーも、色々あるんだって。よっちゃんは関係ないんだよ」
関係ないんだよ。
- 612 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:28
-
そう言ってチャイムが鳴る音と共に、美貴は教室を出て行った。
明らかに動揺しているような、震えた声が吉澤の耳を痺れさせたのだ。
気になるって、どういう意味で?
何でそんなに、あいつの事ばっか気にしてるんだよ。
これは、俗に言う嫉妬という妬ましい感情。
唇が切れそうな程食いしばり、落ち着かないようにドサッとイスに腰かけた。
一体、どうなってんだよ。
あたし、松浦に嫉妬してんのか?
- 613 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:28
-
「……あ、れ、藤本がいないな…。誰か知らないか?」
「サボりじゃないんすかー」
「ハハッ、つかいない方がラッキーじゃん?」
吉澤の後席でケラケラと笑うクラスメイト。
たいして美貴と親しいわけでもなし、会話をすることも全く無い、上辺だけの友人だ。
「うるせぇよ、黙れ」
怒りに満ちた吉澤の瞳に気付き、クラスメイトは笑うのを止めてそそくさと教科書を出し始めた。
何も知らないくせに、口を出すな。
本当はそう言いたかったが、これ以上余計な気持ちを増やしたくはなかった。
- 614 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:29
-
「…ほ、ほら、授業始めるぞ」
美貴が授業に出ない事はしばしばだが、昼食での事が一番気がかりだった。
変に照れていた様な美貴の冷めた表情が、吉澤の頭を過った。
- 615 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:29
-
何なの、あの人。
忘れようとしても、脳内が興奮して何度も熱を上げるような感覚。
目の前がフラついて、目を瞑ろうとも熱い記憶が蘇る。
あの厭らしい笑顔も、触れた唇の温度も、抱きしめられた瞬間も
「……亜弥?どしたの…?」
「なんでもない……ちょっと、保健室行ってくる」
「大丈夫?一緒に行ってあげようか?」
「いい、一人で平気だから」
友人が亜弥の肩に手をかけても、それを軽く振り払う素振りをする。
もう何も考えたくない程、気分が悪かった。
初めて味わったこの感覚を、全て消し去ってしまいたい。
アイドルという肩書きを消された事実に殴られたような感じだ。
- 616 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:30
-
「失礼しま−−あれ…」
重い頭を抱え、保健室のドアを開くが、誰もいない。
ひたひたと中に入れば、仄かに臭う薬剤。
そして無気味な人体模型と人間の骨格表。
化学室よりも気味が悪い、と言っても過言ではないだろう。
備え付けのベッドに腰掛けあたりを見渡す。
やっぱり誰もいないようで、もう一つのベッドにはカーテンが閉まっている。
- 617 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:30
-
「……誰か、いる…?」
微かに寝息が聞こえたような気がして、ベッドに近付いて耳を澄ます。
時折寝言のような声が聞こえてドキリとするが、すぐにまた近寄ってみる。
開けて、いいのかな
思いきってシャァッとカーテンを開けたその瞬間、布団を被った誰かがいた。
その誰かというと、すぐに分るだろうが。
- 618 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:31
-
「……あ」
一歩二歩、一気に後に下がり壁に張り付く。
今一番会いたくない、顔も見たくないやつ。
子供のように眠る、美貴の姿がそこにはあった。
- 619 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:31
-
ガシャン
「やばっ…」
一歩下がった時に、近くにあった金属製のトレイを落としてしまった。
結構、音、大きかったよね?
恐る恐るトレイを拾い上げ、ベッドの方をちらりと見遣った。
起きて、る?
- 620 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:32
-
「……………うっせぇな」
やや機嫌が悪い声色と、その表情。
むくりと起き上がり小さく欠伸をひとつ。
完全に起床してしまった。
ここで見つかれば、さっきのように襲われてしまうかもしれない。
それに、あの言葉。
『付きまとってやるよ。君が泣こうが、怒ろうが』
あの時の表情は、決して冗談ではなかった。
少なくとも本気でやりかねない人物だということははっきりと理解できている。
しかも、あたしの事、好きって言った?
- 621 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:32
-
冗談じゃない。と言わんばかりでとっさに机の後に身を隠した。
いくらなんでも、あんな告白の仕方ってない。
きっと嘘だろう。あの言葉を言われてからそう言い聞かせて来た。
あの藤本美貴が、あたしに告白するなんて有り得ない。
でも、目は本気だった。
だとしたら――
- 622 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:33
-
「……誰かいんの?」
「…っ」
軽く柔軟をして、静かに部屋中を歩き回る。
寝ぼけ眼だが、ほんわかした雰囲気を崩すような表情。
そっと美貴の様子を覗き見た瞬間、バクンと心臓が鳴った。
「せんせ、いないの?」
語尾に欠伸を付けて、ネムそうな声が亜弥の耳に届いた。
その時
やばい、こんな時に
- 623 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:33
-
「…へくしゅっ」
「あ?」
まずい。完全に、ばれた。
- 624 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:34
-
「…誰だよ、気持ち悪いな」
「!!」
思わず出たくしゃみの後、美貴が机の後まで回ってくる。
思わず視線を美貴の頭にやると、ふいっと振り返る美貴の顔がしっかりと見えた。
「…………あ?」
「…っ…」
「ちょ、待て!」
思わず立ち上がり、美貴の横を通り過ぎ無我夢中で走り出した。
顔なんか見たくない。ましてあんな目で見られたら。
狂うように胸が痛くて、壊れるように美貴の事が怖い。
何故だか自然に拒否反応が出ていて、それが収まらないのだ。
突然の事にもちろん驚いた美貴だったが、亜弥の瞳を見てさらにギョッとした。
泣いてた。
「……マズイ…」
亜弥が保健室を出て行った後、すぐに美貴は亜弥を追いかけた。
階段の方へ走って行く亜弥の姿を確認し、すぐに足を速める。
グングン縮まる二人の距離。速さは圧倒的に、美貴の勝ちだった。
- 625 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:34
-
ビュンと亜弥を追いこすと、足を止めて亜弥の肩をぐっと押さえ付けた。
振り払おうと抵抗しても、その力はとても強い。
こんな行動に亜弥が怖がっているなんて、美貴は知らずに。
乱暴な行動だと気付いていないのだ。
「待てって言ってんだよ!」
「はなっ…やだっ…!!」
「ごめん、悪かった。謝るから」
ドンと亜弥を壁に追いやり、背中を押し付けるとそっと力を緩め手を解いた。
恐怖感で思うように身体が動かず、ただその場に立ち尽くし涙を見せる亜弥。
そして申し訳無さそうに亜弥を見つめる美貴。
- 626 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:34
-
明らかに違った、美貴の表情。
とても悪い事をしたような、反省の色がくっきりと残っている。
悲しそうに亜弥を見下ろして目を少しだけ逸らす。
あの冷たい態度ではなく、心から亜弥を見ているのだと分かった。
立続けに発した謝罪の言葉に、亜弥は泣きながらも呆然とする。
涙を拭う手を、美貴はそっと握った。
ビクリと反応した亜弥だったが、それ以上の恐怖感はなかった。
何故かふわりとした美貴の手が、とても温かくて。
さっきのように、乱暴な堅い掌とは違った。
- 627 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:35
-
キツい元々の目つきは変わらないが、オーラが違う事を物語っている。
「……も、いいよ。迷惑かけてごめん。じゃね」
たぶん、美貴は君の事が――
次に言う言葉は、言えない。
カタチは出来ているけれど、定かなこの気持ちを伝えるには、重すぎた。
美貴は、亜弥が好き。
強気な目、作り物でもいい笑顔、白い肌。全て魅力的で、美貴を捕らえて離さない。
こんな感情は初めてだった。
洗いざらい亜弥に伝えたつもりだったけど、あんな上っ面は意味がない。
本当に、君の事が好きだ。とは言えるわけがないから。
- 628 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:35
-
「…っく…えっ…」
怖がってる。そりゃ、そうだよ。
見せ掛けの笑顔に騙される程、美貴は堕ちていない。
最初に見せた亜弥の笑顔は紛れもなく偽物だと言う事は最初から分かっていた。
だから、本物が見たい。
美貴だけが見られる、笑顔が欲しい。
- 629 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:36
-
「ちが…う…」
「…何が」
「こ、わいけどっ…きらいじゃない…っ」
「……意味が分かんない」
「だからっ…」
抱きしめられた瞬間に、何故気付かなかったんだろう。
- 630 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:36
-
初めて味わった屈辱感と敗北感。ただそれだけに酔いしれていたわけではない。
今までに感じた事のない熱い感情が存在していることを、隠していたのは亜弥もだった。
告白をされては受ける。付き合っては振る。
こんなもの、恋愛じゃない。
美貴が亜弥に伝える好きと、亜弥が思う好きは確かに違っていた。
けれど、この手を握られてから。
美貴の握った手を、強く強く握り返した。
あたし、こんな計画立てた覚え、ないのに。
予定は狂った。けれど、それも良かったのかもしれない。
- 631 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:37
-
「片思いでいさせて欲しいんだけど」
「……え」
「美貴、君につきまとうって言った」
「もし君が困っても」
「美貴は」
愛を知らない二人が、初めて知り得た気持ち。
「美貴は亜弥ちゃんのこと、諦めない」
初めて名前を呼んだ事に少々驚き気味な亜弥を、睨むように美貴は見続けた。
まだ怖がっているのを知りながら。不器用過ぎるのだ。
- 632 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:37
-
「…肩、思いっきり掴んで、ゴメン」
「……いいです。謝らなくて」
「………あのさ」
「…?」
「美貴、マジでストーカーくさいことするけど」
「……はい」
「迷惑かけるっていうかかけてるけど実際」
「…はい」
「………で、いいの?」
断る理由も、言い訳も見つからなかった。
必死に捜しまわった答えは、とても難しくて、とても簡単な答えだった。
「…あ、たしが…先輩の事好きになるまで、勝手にして下さい」
もう、どうにでもなれ。
投げやりになりかけた想いと、美貴の本気モードのスイッチが入ったのは同時だった。
本気の恋愛をしたことがないお互いは、案外お似合いなのかもしれない。
不貞腐れたような、亜弥の上目遣いに美貴はふっと笑顔になる。
- 633 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:38
-
本当の笑顔を教えてくれた、初めての恋。
本当の自分をさらけ出してくれた、初めての人。
どちらにしても、とても大切なものだった。
「…あ、の」
「何?」
「……て…を、離してくれたら…なと」
目線を下に落とすと、美貴の頬は一瞬で赤く染まり上がる。
パッと手を離し空いた感覚を制服のセーターにこすりつけた。
こんなのガラじゃない。
美貴自身、初めてのことだらけだったため、亜弥はクスッと頬を緩ませた。
この人、こんな人だったんだ。
- 634 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:38
-
「…好きにして、いいんだよね?」
「……どうぞ」
「じゃあ、美貴、君の事しか見ないようにするから。怖がらないように、頑張るから」
自分は、人一倍不器用だから。態度で表わすなんてもっての他だし。
焦ったような美貴の顔を見た亜弥は、トクンと胸を打った。
「……ずっと、好きだから……」
美貴は変わる。今よりも素直で、今よりも優しくなる。
亜弥に出会った事で、美貴の何もかもが変化した。
- 635 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 16:38
-
「……へぇ」
保健室のドアに背を預け、面白くなさそうに溜め息をつく、吉澤。
所詮、あたしと美貴は友達って事か。
辛そうに漏れた笑顔は、とても複雑だった。
ぐっと背伸びをして欠伸をすると、瞳に水が込み上げてくる。
それは涙だったのか、ただのしょっぱい水だったのか。
失恋を知った吉澤にしか、分らないのだろう。
- 636 名前:証千 投稿日:2005/01/08(土) 16:44
- 夜にまた更新します
よっちゃん…毎回脇役でごめんね(0^〜^)<酷いYO!
しかも失恋させちゃってすいませんでした
>607様 ありがとうございます。心温かいお言葉は勿体無い…
期待しないでくださいハイ
>608様 美貴様の変化が激しくなってるんですがそこは無視(ry
>609様 やはりこういうキャラが一番書きやすいです。
いや手抜きとかそんなんじゃないんですけどね決してw
- 637 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:26
-
「ねえ亜弥…」
「んー?」
「あの噂って、マジ?」
天下のアイドル松浦亜弥が、天下の不良藤本美貴と交際をしている。
情報はぐんぐん昇り、尾ひれをつけて亜弥の元に辿り着いた。
交際、ではない。
だが亜弥自身、美貴の一面に惹かれた部分は確かにあったのだが。
- 638 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:27
-
「あんた、ホントに実行しちゃったんだ」
「違う。あたしからじゃないもん」
「でも、亜弥から誘ったんでしょ?」
「……そぉだけど」
ぜっったい、みとめない。
心の中でそう叫ぶが、周りの友人達にそれが伝わるはずもなく。
天下のアイドルは天下の不良に負けたのだ。
その後もしつこくつきまとう美貴を迷惑だとは思わない亜弥だったが、もどかしい気持ちでいっぱいだ。
それは――
- 639 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:27
-
「ねえ、そろそろ美貴の事好きになった?」
毎日毎日、当たり前のように美貴は亜弥に投げかける。
その目はとても楽しそうで嬉しそうで、恋する瞳だ。
以前のような冷ややかなイメージは消えたものの、相変わらず頑固な性格は変わらない。
「…みきたんってさ、案外粘り強いね」
「悪い?つきまとって良いって、言ってたじゃん」
「そうだけど…」
ここまで諦めないとは。さすが美貴だ。
亜弥は美貴に、名前で呼ぶ事を許した。その代わり、亜弥も敬語を止めた。
ようやく環境が柔らかくなってきたものの、亜弥は依然としてアイドル路線を駆け巡る
はずだった。
- 640 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:28
-
心変わりと言えば、そうかもしれない。
美貴のラブコールを受けるようになってから、他の子に目がいかなくなったのだ。
それもこれも、みきたんのせい?
キッと睨み付けると、美貴は嬉しそうに微笑んだ。
これが数カ月前まで凶暴だったあの不良とは、思えない。
- 641 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:43
-
多分、神様が言うならしょうがない。
だったらあたしは、初めてその言う事を聞くよ。
とうとう骨が折れたかのように、亜弥は美貴に微笑んだ。
ここまで追いかけてくる人、いなかった。
しかも、こんなやつがあたしの事好きになるなんて。
呆れた様に美貴を眺めていると、美貴は不思議そうに首を傾げた。
二人きりの空間、図書室でこの言葉を口にするのは少し、勿体無かった。
- 642 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:44
-
多分、神様が言うならしょうがない。
だったらあたしは、初めてその言う事を聞くよ。
とうとう骨が折れたかのように、亜弥は美貴に微笑んだ。
ここまで追いかけてくる人、いなかった。
しかも、こんなやつがあたしの事好きになるなんて。
呆れた様に美貴を眺めていると、美貴は不思議そうに首を傾げた。
二人きりの空間、図書室でこの言葉を口にするのは少し、勿体無かった。
- 643 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:44
-
「みきたん、あたしの事、ずっと見てられる自信ある?」
「…あるよ」
「どのくらい?」
「誰にも触らせないし、よそ見出来ない程夢中にさせてやるよ」
ふっと亜弥の髪に触れ、美貴はニッと笑った。
馴れ馴れしい美貴の態度には慣れたつもりだったが、こんなに恥ずかしい事はない。
くっと声を詰まらせて、声帯を震わせた。
「……みきたんって、変だ」
「…怖く無い?」
「んーん、すっごく怖い。今でもね。でも」
だけど、何時の間にかあたしは
- 644 名前:変わる物と変える人 投稿日:2005/01/08(土) 19:45
-
「夢中にさせてよ、あたしの事」
恋愛なんてキョーミなし。所詮楽しければ、それでいいじゃん?
そんなモットーがいつしか、消しゴムで綺麗に消された。
愛なんていらない。他人なんか認めない。だから自分も大嫌い。
飾りのついた気持ちはいつしか、恋によって打ち消された。
飽きない恋愛がいい。それが二人を、変えたんだから。
FIN
- 645 名前:証千 投稿日:2005/01/08(土) 19:47
- リクエストして頂いた物と大分逸れました
構成もメッチャクチャでした
サクサク行くはずだったのに…・゚・(ノД`)・゚・
すいませんでした
- 646 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/09(日) 06:19
- 643の藤本さんのセリフが微妙にジゴロっぽくてツボでしたw
- 647 名前:しないよ 投稿日:2005/01/09(日) 13:49
- お疲れ様です!
あやみきってなんかいいっすねー。
あやみきもいいんですけど、自分的に、作者様のいしよしもみたいな〜なんて(^▽^)
いしよしみきでも、いしよしあやでも…
石→吉←藤or石→吉←松みたいな。
スンマセン、スンマセン
- 648 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:16
-
シャーペンを片手に、机の上に顎をのせて頬を少し膨らます。
「わっかんない」とか言いながら苛立ちを抑えられない様だ。
ここはこうだよ、と教えてあげると不機嫌そうな顔をしてペンを進める。
そんな彼女の仕種一つ一つが、かわいらしくて仕方ない。
「ね゛ぇっ、ここ何!?」
「逆ギレ止めようよミキティ」
テキストをバンと手で叩いてごとーに文句を言い続ける。
そんなこと愚痴られても。
そう言っても聞かない事が分かっているので、丁寧に分らない問題を教えてあげる。
ていうか元々頭良いくせに、勉強嫌いだから困る。
同じ学年なのに留年でもされたらごとーの輝かしい大学ライフに支障がありまくるんだよ。
なんでかって?
そりゃ、付き合ってるから。
- 649 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:16
-
「っていうか授業でこんな所やってないし」
「いや、やったんだけどミキティいなかったでしょ」
「…美貴がいない時にやるのが悪い」
「……ああそぉ」
完全に開き直った彼女はシャーペンを投げ出して、ゴロンとホットカーペットの上に寝転がる。
飽きっぽいのは性だから、こんなことは目に見えていたんだけど。
むぅ、とふてくされた声を出しては、残されたあたしの背中を見続ける。
少し拗ねていて、つまらなさそうな顔をしている。
もちろん後を向いてるごとーはわかんないから、ただの予想なんだけど。
「ねぇごっちん」
聞こえないフリしたら、どんな反応するかな。
そんな時々あらわれるごとーの中の精神が、疼き出す。
ミキティと一緒にいると、何かしらイジワルしたくなるんだよ、なんとなくね。
だからごとーは黙々とテキストに文字を並べて、問題を解いて行く。
- 650 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:17
-
「……ぐぉーっちんってば。聞けよっ」
「だっ」
近くにあった枕を投げ付けられて、案の定不機嫌そうな声。
たぶん冗談なんだろうけど、結構痛かったりした。
しょうがないから振り返ると、制服のスカートを履いているにも関わらずあぐらをかく始末。
ねえ、女の子でしょ?
そう言うといつも「差別だ」って怒るから言わないんだけど。
スカートに視線を送っていると、もう一発枕を喰らった。
「どぉこ見てるんだよ、馬鹿」
「…そんな短いスカート履いてあぐらかく方が悪いでしょ」
ま、ごとーは自分の家だからふつーにジーパンだけど。
珍しく三つ編みとかしちゃって、ひっさしぶりに女の子らしいミキティ。
あぐらかいている所を覗けば、ほんとーに可愛いんだけどなぁ。
- 651 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:17
-
「今失礼な事考えたでしょ」
「…何で分かったの?」
「ずっと美貴の顔見てるから」
ちょっと照れた様子で、ミキティはつんと澄まして頬を赤くする。
ふふっ、マジ可愛いんだよねぇ、こういう姿は。
おっと、惚気が入った。
「べんきょ、しないの?」
「……する。けど」
「けど、何?」
よちよちと四つん這いで、ミキティのおでことごつんと合わせた。
にひっと笑ったけどその目はしっかり宙に泳いでいて不安に駆られている。
どうして不安になるのかって言ったら、ミキティは相当の照れ屋さんだから。
自分で言うと、キショいけど。
- 652 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:17
-
「いまは、ごっちんと喋りたい」
こんな一言がごとーをキュンとさせたり、苦しませたりする。
そんな単純な事が分らないミキティはホント、無神経っていうか天然。
ぎゅっと目をつぶる彼女の唇にちゅっ、と啄むようなキスをした。
反射的な行動なんだろうけど、ちっちゃい子供みたいな仕種が面白い。
そのまま、焦り出すミキティを放ってベッドにぼすんと沈ませる。
微かな抵抗を感じさせる両手に指を絡めて、唇を深く塞いだ。
「っ…ん…」
時折漏れる吐息や潤んだ瞳。シャツのボタンに手をかけた途端、唇を離された。
- 653 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:18
-
「…っこのヘンタイ……」
「……オアズケですか?」
「だ、誰もするなんて言って無いし!」
「誘ったじゃーん、ミキティから」
「してなっ…」
うるさい唇に、ちゅっと素早く口付けた。
最後に髪を撫でて、再び机に向かう。もちろん、何事もなかったようにね。
だってこれが一番、彼女を落ち着かせられる方法だから。
- 654 名前:_ 投稿日:2005/01/09(日) 21:18
-
「あ、ミキティ」
「…?」
グイッと口元を拭ったミキティの手を掴んで、ニッと笑いかけた。
「勉強終ったら、続きしようね」
獣のごとく襲い掛かるから、傷をつけるかもしれないけど。
それは愛の印ってことで、許してね。
「するかボケッ!」
「いだい、いだだだ」
FIN
- 655 名前:証千 投稿日:2005/01/09(日) 21:29
- ごまみき久しぶりにカイタ━━━(゚∀゚)━━━!!
強気な美貴様が書きたかったんですけどね
所詮文才がないのでここまで
>643様 なんか軽い人みたいになってしまいました。
いやこんなつもりじゃなかったんですが(爆
>645様 ハッ…そんなリクエストを頂くなんて……・゚・(ノД`)・゚・
実は狂喜乱舞してます。ありがとうございます。
三角関係ですね…難しいですがなんとかします。きっと(爆
少しお時間を頂きますが、それでもよろしいでしょうか?
- 656 名前:しないよ 投稿日:2005/01/09(日) 23:03
- ごまみきキター!
なんだかエ・ロ・イww
オイラのリク応えてくれるですか?
2005年はよい年じゃ〜!!
酉年生まれなオイラの要望聞いていただきありがとうございます。
時間かかっても待ちますよ。
- 657 名前:証千 投稿日:2005/01/10(月) 17:38
- 思えば今日は成人式
川?v?从(0^〜^)( ´Д`)(^▽^) <20歳!
85年組の着物姿が見たい今日この頃。
- 658 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/01/11(火) 01:11
- 後藤と吉澤は今年じゃないですよ…
今年は1984年4月2日〜1985年4月1日までですから…。
- 659 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/11(火) 07:34
- まあまあ、俺も慌てて思い返してみればそうだったからw
- 660 名前:物憂気に触れた指先 投稿日:2005/01/11(火) 19:25
-
言ってしまったらきっと、あたしはぶっこわれると思う。
だから黙っている。言葉にすることなく、ただ彼女と接している。
それだけで十分。そう思ってたあたしは、相当のバカヤローだ。
今になって、こんなにも寂しいなんて。
- 661 名前:物憂気に触れた指先 投稿日:2005/01/11(火) 19:25
-
「ねえよっちゃん?」
「何?」
「あのー、何だっけ。この間よっちゃんのイトコだって言ってた子」
「…ああ」
梨華ちゃん?
わざとらしくそう教えると、美貴はああそうだと納得したように頷く。
彼女が意味する事が以前から気に止めていたあたしを、気づかう事なく。
そんなサバサバした所が長所的な美貴は、あたしの横に座ってふふんと笑った。
その笑顔をいつまでも見ていたかった。
でも見ていると、あたしは彼女をどうにかしてしまいそうになるから。
ただあたしも、つまらない笑顔を作るだけだった。
- 662 名前:物憂気に触れた指先 投稿日:2005/01/11(火) 19:26
-
「大学生だよねぇ、大人っぽくてびっくりした」
「…そう?」
「うん、話した時も感じ良かったし。いいねぇ、あんなイトコがいて」
憧れという意味なのか、それともまた別の
考えるだけであたしは、何本か判断の糸が切れてしまいそうだった。
無駄にある独占欲が駆け巡って、彼女を困らせるだろう欲望がただ存在する。
伸ばしかけた手を思わず、血が流れる程握りしめた。
- 663 名前:物憂気に触れた指先 投稿日:2005/01/11(火) 19:26
-
「…そんだけ?」
「へ?」
「……んにゃ、何でもない」
子供っぽくて、我侭な感情だと思っている。でも、止まらない。
悪いけど。美貴が思ってる程あたしは、バカじゃないし。
こんなに溢れている欲望だって何もかも忘れられる程、落ちぶれちゃいない。
このまま黙っているか それとも言ってしまおうか
「よっちゃん」
無邪気に笑う君を、遠くから見つめているだけが、きっといい。
きっと、いちばんいい。
FIN
- 664 名前:証千 投稿日:2005/01/11(火) 19:31
- 逝ってこい的な間違いを犯した&リクエストに答えていない・゚・(ノД`)・゚・
すいません
自分が改めてどんだけだという事が分りました
>658様 大馬鹿でした。正月ボケだと思って見逃して下さいませ・゚・(ノД`)・゚・
御指摘ありがとうございます。
>659様 同志。 なんて調子は扱きません。
レス付けてもらい嬉しいです。どうもでした。
- 665 名前:証千 投稿日:2005/01/11(火) 19:32
- 私的満足気な駄文を何となく考えています
れなみき、あやみき、田亀がごっちゃごちゃになったオハナシをどうぞ
- 666 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:50
-
あの子を見ていると、ほんの少しだけ自分自身がおかしくなるような気がする。
ぺラリと教科書をめくって気を散らそうとしても、彼女を追い掛ける目線。
しばらく机の上に目を落としても、くいと首を上げて隣の席を覗き込んでしまう。
「…どうか、した?」
「はっ?」
はっ?じゃない。れな、今自分でそう言った?
慌てて首を振って、クスクス笑うその子を見ていると頭が壊れそうだ。
黒髪がぱらりと揺れて、窓から吹き抜ける冬の風に肌がピリリと痛む。
- 667 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:51
-
「な、なんでもなかとです…」
「敬語なんか使わなくていいのに、面白いね」
「お、おもしろ…?」
「れいな、だっけ?あたし、絵里。よろしくね」
くい、とポケットに突っ込んでいた手を取られて、握手。
なんつうか、親しみやすくて可愛い子なんだけど。
でもれなが思う事はそれだけじゃなかった。
理由なんてどうでもよかった。ただ、何でこんなに見とれてしまうんだろう。
転校初日から、なんだかれなは落ち着かん。
- 668 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:53
-
生まれも育ちも福岡県。だったれなは、色々わけがあって東京に引っ越す事になった。
中学3年生の大事な時に、東京に行かなくても。
そう言ったお母さんの意見を遮ったのは、れなの姉貴だった。
「こんな田舎より都会に住みたーい」と騒いだだけのことなんだけど。
「ね、今日学校どうだった?」
「……んぇ?」
新しく引っ越した家のリビングには、段ボールが燦爛している。
空っぽの箱を足で蹴っとばしながらやってきたのは、れなと3つ違いの姉貴。
高校生だけどすごく大人っぽくて、初めて会った時はすごく驚いた覚えがある。
まあ、事情は後で説明するけど。
- 669 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:53
-
「どうって…なんもなかよ」
「つまんないなぁ、かっこいい子とかいなかったわけ?」
「べ、べつに」
「お、図星図星」
中学生のれなより子供っぽくて嫌になる。
けど、普段は結構優しい姉貴だ。
「美貴ねぇこそ、どうだったん」
「いやぁー転校初日から洗礼受けちゃってさー大変だったよ」
「…洗礼?」
「体育館裏に呼び出されちった。おもしろかったなー」
「……は?」
- 670 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:54
-
体育館裏って、今どき。
目がテンになっている間に思い出した事。美貴ねぇは気分爽快っていう表情だ。
家族の前では落ち着いた性格なのに、学校に行くと変わっちゃうから困る。
これはしょうがないけど目つき悪いし、態度悪いし、サバサバしすぎてるし。
要するに、目付けられたんだ。
「…で、どうしたんその後?」
「んー?どうもしないよ。右ストレート喰らわしただけ」
「……おかぁさーん!美貴ねぇが今日」
「だぁぁぁ言うな!!」
喧嘩っぱやいし、気にいらない事があればすぐに武力行使。
すぐに口を塞がれてズルズルと美貴ねぇの部屋に連れられるれな。
美貴ねぇの最大の弱点は、お母さんだから。
- 671 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:54
-
バタンッ
「お母さんにバレたらどうなると思ってんだよっ」
「じゃあ殴らなきゃええのに…れなのせいやなかとよ」
「……色々あんだっつの。ガキにはわかんないよ」
「なんや、よくわからんっちゃ」
この話をすると、美貴ねぇはいつだって悲しそうな顔をする。
だかられなは、あんまり余計な事言わないようにするけど、我慢出来なくなる。
美貴ねぇが問題を起こすと、同じようにお母さんも悲しそうにするから。
遠慮とか、心配かけたくないとか、色々な事があるのはれなも分かっていた。
だけど、家族だから。家族だから、もやもやした気持ちでいるのは嫌だ。
- 672 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:55
-
「…昨日の夜、美貴ねぇ、おばさんに電話したっちゃろ?」
背中を完全にイスの背もたれに任せたれなは、少し起き上がって段ボールを片づける美貴ねぇに投げかけた。
ぴくりとも反応しない美貴ねぇは、完全に誤魔化してるみたいだった。
何の変哲もなかったかのように片付けを進めるその様は、とても寂しくて、怖かった。
『美貴ちゃんって言うの。れいな、仲良く出来る?』
お母さんの声に素直に頷く事が出来なくて、ただ美貴ねぇの顔をじっと睨んでた。
嘘でもいいから、とにかく笑顔でいなきゃいけない。
これから姉妹になるんだから。
美貴ねぇはたぶん、そう思っていたんだと思う。
東京生まれの都会っ子って聞いてたのに、なんか不自然な訛りが入ってて。
ひび割れたへたくそな笑顔がやけに必死で、可哀想だった。
- 673 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:56
-
美貴ねぇのお母さんは、美貴ねぇが小学生高学年に上がった頃から家に帰って来なくなった。
たまに帰って来ると美貴ねぇを抱きしめて、何度も何度も、泣きながら謝ってたって美貴ねぇはれなに言ってくれた。その話が本当か嘘か信じられなかったくらい、何も反応出来ずにただ聞いていたけど。
そして、美貴ねぇのお母さん――おばさんは
美貴ねぇが中学生に上がった時、最終的に離婚という形で終った。
- 674 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:58
-
それから2年経ったある日に、れなのお母さんと美貴ねぇのお父さんは福岡で出会った。
お父さんの仕事はとても忙しくて、しばしば出張に行く事が多かった事がきっかけだ。
お父さんは美貴ねぇに似てちょっと目つきが悪くて、でも本当はすごく優しくて。
初めて会った時に、頭を撫でてくれた。その時の事は何故か、詳しく覚えている。
そんな優しいお父さんは、れなのお父さんの事情を全く尋ねてくることはなかった。
れなが生まれた時から、父親はいないって事は当たり前に知ってたけどれな自身に寂しい思いをさせたくなかったんだと思う。だかられなも、新しいお父さんが大好きになった。
美貴ねぇと打ち解けるには、結構時間がかかったけど。
- 675 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:58
-
「…いま、何してるん?」
「さー。元気?って電話あっただけだし」
「会わんの?」
「会いたく無い」
からっぽの段ボールなのに、美貴ねぇが床に置いた途端すごく大きい音がした。
あからさまに驚いて見せると、美貴ねぇは余裕の笑顔でれなの頭を撫でる。
子供扱いされるのは大嫌いだと知っていながらの行動だ。
会いたく無い その気持ちも、わからなくはなかったけど。
れなには生まれつき、お父さんがいないから。
れなが感じる寂しいと、美貴ねぇが感じる寂しいは、違うものなのかもしれない。
- 676 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/11(火) 19:58
-
「今会ったら、美貴泣いちゃうから」
「……今何て言った?」
「なんでもねーよ。さ、御飯食べに行こ」
「なんっ、教えて!」
「やだよ」
ふざけてたのか、本気だったのか、瞬時には分らなかったけど。
本当は聞こえていたのに、れなはわざと聞き返した。
無意識ってわけじゃなかったけど、とくに理由はなかった。
いじっぱりで強い美貴ねぇが、とっても小さくて弱い女の子に見えたような。
そんな気がした。
- 677 名前:証千 投稿日:2005/01/11(火) 19:59
- 今回はこんな感じで。
まだ明確になってないので、次回にははっきりさせるかと。
- 678 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/11(火) 21:37
- 面白そうですね。この姉妹、大好きです!
続き楽しみしてます。
- 679 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 09:45
- 美貴れな姉妹、いいですねぇ。
どことなく不器用そうなふたりに惹かれます。
- 680 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:57
-
夢を見た。
夢なんて最近見ないから、すっかりその形を忘れていたちょうどその夜。
白いふわふわの雲に包まれて、天国みたいな所だった。
いや、天国なんて行った事ないけど。
あくまでも想像だけど、すごく気持ちが良かった。
で、隣に誰か居た。
黒髪が長めで、笑うと目が細くなって、歯が可愛い。
黒髪の、女の子だった。
- 681 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:58
-
トントン
『3時のおやつは?』
「文明堂…」
やばい、朝だったんだっけ。
合言葉を口にした美貴ねぇのスリッパが遠くなる。
慌ててベッドから這い出て時計を見ると、とっくに7時過ぎている。
ここの家から中学校まで、結構かかるんだよ。
「なっ、なんで早く起こさん!」
「だって気持ちよさそうにヨダレ垂らして寝てたんだもん」
「垂らしてなか!!」
「そんなこと言ってる場合かにゃ?」
意地悪く時計を指差す美貴ねぇは、フフンとむかつく程の笑顔だ。
とっくに制服に着替えている美貴ねぇを見ていたら腹が立って来たので、急いでれなも着替えた。
遅刻なんて有り得ない。転校したばっかでそんなことしたら恥ずかし過ぎる。
そんなどうでもいい事が頭を過っていた。
- 682 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:58
-
「美貴ちゃん、はいお弁当」
「んーありがと。今日何?」
「昨日のカラアゲ、美味しいって言ってたから入れたんだけど…」
「マジ?ありがと」
嬉しそうにお母さんからお弁当を受け取った美貴ねぇは、やけにルンルンだった。
なんでお母さんとれなへの態度があからさまに違うのか。
今気になるのはそれだけだった。
「じゃあお先に♪」
「ちょ、待ち!途中まで一緒に!」
「嫌だよー、美貴の人気度下がっちゃうじゃーん」
「なんよそれ」
「妹と恋人間違われたら大変だからね」
「……は…」
バイバイ♪ なんて♪付きの声を残し、がちゃんと玄関から出て行く。
なん、その言葉の意味は。
- 683 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:59
-
「…美貴ねぇぇぇ!!」
「行ってらっしゃーい」
急いで玄関を飛び出た後、まだエレベーターに乗っていた美貴ねぇの背中をとび蹴り。
エントランスに出るまでひたすら口げんかを繰り返しました。
- 684 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:59
-
side miki
「ねえねえ、藤本さんってずっと福岡に住んでたの?」
「あっちの学校ってどんな感じなの?」
「足長くて綺麗だよねぇー、羨ましい」
だから嫌だって言ったんだ。女子高なんて。
2日目の学園生活は、先日よりもさらに面倒な事になっていた。
昨日しっかり高学年におとしまえをつけたことで、美貴の好感度はアップした。
らしい。
いや、嬉しいんだけどね。結構有頂天なんだけど心ではね。
でもこういうべたべたしたのって、美貴苦手なんです。
- 685 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 10:59
-
イスに座るなりどっと人が押し寄せて来て、じろじろなめる様に眺めたり勝手にきゃあきゃあ騒ぐ子とか。
美貴、外見からしたらチーパッパのヤンキーだけど。
結構恥ずかしがり屋でシャイな女の子なんだよ。そこんところ分かってよ。
そろそろ顔が赤くなりかけてきた頃、美貴の腹時計が鳴る。
「…あ、あーもうお昼じゃんそれではみなさんまたあとで」
「えぇ、一緒に食べようよ」
「遠慮しとく。じゃあね」
素早くカバンからお弁当を抜き取り、教室から飛び出して行く。
特技のスマイルを生かしたおかげでまだ教室からは黄色い声が聞こえてくる。
ま、美貴って顔も良いしスタイルもまあまあだから、ね。
ナルじゃないけど。
- 686 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:00
-
「やったね、誰もいない」
一人が好き。それは嘘じゃなかった。
友達作るとかあんま得意じゃないし、どちらかというと単独行動が好きだ。
周りの環境に溶け込むとかめんどくさいし、遠慮するのはもっと嫌いだ。
だから、いつも一人だった。
お母さんがいた頃だって、お父さんが再婚した後だって、いつも美貴は一人だった。
いじめ、とかそういうのじゃない。
周りからは好かれていたけれど、それを美貴が受け入れなかっただけ。
友達なんていらない。それが美貴に一番ちょうどいいから。
- 687 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:00
-
誰もいない屋上に付いて、ど真ん中に腰を下ろす。
いいね、こういう空間。
なんて調子に乗ってゴロンと寝転がって、青く晴れた空を見上げた。
んー、キモチイ。
『美貴ねぇは冷たい。何でそんなに人嫌いなん?』
『嫌いじゃないよ。なんかうざったいだけ』
『…そんなの理由にならん。じゃあ、れいなのこと嫌いか?』
『……ちげーよ。大好きだよ。妹だからね』
不安そうに美貴を覗き込む瞳は、なんていうか心遣いたっぷりだった。
家族になってまだ幼い頃、れいなは薄々感付いていた。
ただ寂しいだけ。美貴は感情を面に出すのが、苦手なだけなんだよ。
お父さんはそう言っていた。
れいなのお母さんと美貴のお父さんが出会った福岡での事を、鮮明に覚えている。
ダランと垂れた美貴の肩を抱いて、そう耳元で囁いていた。
- 688 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:01
-
「…なんか、帰りたいな」
勢いだけで東京に行きたいとは言ったものの、やっぱり寂しかった。
久しぶりに帰ったけれど空気は汚いし人はうるさいし、落ち着きにくい。
都会は怖い所だ。
いや、そんな風には思ってないけれど。
やっぱ、美貴って変わったのかな。
家族が出来たから?まあ、理由を探したらそれしかないんだけど。
弁当を食べるのも忘れてただ空を眺めていた時、不意に重いドアが開く音がした。
- 689 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:01
-
「…亜弥、止めなって」
「なんでよ、せっかくここまで来たのに!」
「関わらない方がいいよ、変な人っぽいし…」
何だ、その視線は。
そう言いたくなる程の視線を美貴に向けているようだった。
女の子二人はそわそわしながら屋上の扉で地団駄を踏んでいる。
何か必死に言い合っている事だけが聞こえてくる。
「藤本先輩っ」
先輩。先輩って言ったら、美貴しかいないよね。
起き上がって振り向いてみると、もう一人の女の子を放ってこちらにやってくる下級生。
ぽかんと口を開きっぱなしにしていると、その子は急に吹き出し始めた。
- 690 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:02
-
見せ物じゃないんだけど。
そう言いかけた途端、ぺたんと座り込み美貴と同じ体勢になる。
アレ。この子、なんか見覚えが。
- 691 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:02
-
「昨日は、ありがとうございました」
「…きみ、だれ?」
「やだ、忘れたんですかぁ?」
「……は?」
「…あのですねぇ」
どこかで見た記憶はある。でも、喉でつっ変えて出て来ない感じ。
しかも、昨日って言ったよね、今。
昨日、昨日、昨日…
「もぉっ。あややですよ、松浦亜弥!」
あやや。
うん、聞き覚えはある。しかもこの甘ったるい声。
- 692 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:02
-
「あぁ、昨日の変な子」
「変って何ですかぁ!!」
転校初日に出会った変な下級生。やっと思い出した。
『えー福岡から引っ越して来た藤本美貴です。どーぞよろしく』
こんだけ。こんだけの自己紹介で美貴は体育館裏に呼び出されたんだよ。
世の中どうかしてるって。
確かに棒読みでダルそうな口調だったけどさ、呼び出す程のことでもないっしょ普通。
- 693 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:03
-
他のクラスにまで難くせつけた噂が広がって、放課後にその時がやってきた頃。
同級生になんでこんなインネンつけられなきゃいけないんだ。
しばしにらみ合っていたその時、体育館通路をうっかり通過して現場を目撃してしまった見ず知らずの下級生。
1年生だったみたいで、明らかに動揺しまくっているようだった。
「何見てんだよ、オメ−」
名前も知らない同級生は美貴から視点を外し、ビクリと肩を跳ねさせた下級生に眼は移動していた。
完全に怖がってんじゃん。
「…テメ−もこいつと同じ様にしてやるぞ、さっさとどっか行けよっ」
「ちょい待ち、この子関係ないでしょ」
「……ホンットうぜぇやつだな、人の事ナメ腐りやがってっ…」
「やめろってんだよ」
余りにも言う事聞かないから、ね。
- 694 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:03
-
ただでさえ凄いメイクしてるくせに、その色変えて下級生の腕掴んだもんだから。
結構美貴も頭に来てボディーに一発お見舞いしちゃったんだよ。
別にたいした根拠はなかったけど、なんて言うか。
弱いものいじめっていうのはよくないと思ったから。ね、そんだけだよそんだけ。
だって目ぇウルウルさせて今にも泣きそうなんだよ。
いくら人嫌いの美貴だからって、こんな子放っておけないわけで。
「…で、大丈夫?」
「……は、い…」
「この学校ってこんなんばっかなわけ?こんな所転校してくるんじゃなかった」
「あ、あのっ!」
きゅ、とブレザーを掴まれたと思って振り向くと、何かすごい物言いた気な顔してるその子。
だからさ。こういうのが大嫌いなわけ。こう、ありがとうとか言われるのはカユイんだよ。
だけど
そんな顔されたら、動けない。上目遣いで見上げられたら、困る。
- 695 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:04
-
「あたしっ、松浦亜弥って言うんです」
「…へ?」
「あとぉ、あややって呼ばれてるんでそれでもいいんですけどぉ」
「…何言って…」
「先輩、今日転校して来たんですよね?」
「……まあ…」
「分らない事があったら、いつでも聞いて下さいね」
甘ったるい。何だこの喋り方と言いウルウルさせた瞳と言い。
不思議とそれはむかつくような感情ではなかった。
勝手に握手されたり自己紹介してたり、なんちゅう自分勝手なやつだとは思ったけど。
一瞬の嵐はすぐに去った。
その場で呆然とする美貴は、一人でに切なくなっていた。
なんでだか、わからないけど。
「あやや」と言った、その下級生。
特徴的な笑顔とこの喋り具合。
- 696 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:05
-
「…ああハイ、思い出した」
「ホントですかぁ?」
「いやでも思い出すような性格してるよね、きみって」
「そうですか?」
「……ほら、そういう所」
いやぁ、女の子だなぁ。
美貴も一応女だけど、こんなにぶりぶりした子初めて見たような気がする。
まあそれなりに顔も可愛いし、変な人だけどこういう女の子が世の中のオトコを食い物にするんだな。
「って、話が逸れちゃったんですけどぉ」
「うん」
「あたしと付き合って下さい」
「はい?」
なんか一方的に美貴の手握っちゃってにゃははとか笑ってるんだけど。
それに、何だこの突然な展開は。
- 697 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:05
-
「だからぁ、好きなんです先輩の事」
「……ああ、そう」
「ああ、そう。じゃなくてぇ!」
「…え」
「あたしと付き合ってみる価値はありますよ?」
みょーに自信満々に言い張るその子の目はギラギラ光っている。
無気味な笑顔がちょっと怖くて身を引くと、むっとしたような表情で肩をぐっと掴まれた。
美貴の事、好きなんだ。へー、ふぅん。
じゃ、いっか。
- 698 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:06
-
「いいよべつに」
「え?」
「付き合おっか」
理由なんてものは、なかった。
ただ、目の前にいる変な女の子が美貴を好きだって言ってくれたから。
愛してくれるなら、好きにしろ。
投げやりな言葉が頭内を駆け巡った。
「冗談ならいりませんけど」
「ジョーダンじゃないよ。マジでもないけどね」
「そんな形で、満足するんですか?」
「……さぁ」
- 699 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/15(土) 11:06
-
美貴の心を満タンにしてくれるなら 愛をぜんぶちょうだい
乾ききって潤せない
愛が欲しい それだけだよ
変な女の子は美貴に微笑んでくれた
だから美貴はその笑顔にちょんとキスをした
何でもいい 愛をくれ
- 700 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/15(土) 11:11
- 楽しくなってきました!
イイ感じです!!
- 701 名前:トウマ 投稿日:2005/01/15(土) 23:48
- 続きが気になりますっ!
亜弥ちゃん、藤本さんに愛をあげて!!
- 702 名前:孤独なカウボーイ 投稿日:2005/01/17(月) 01:10
- 更新お疲れ様です
あぁーまたまた目の離せない展開に!
これからが亜弥ちゃんの腕の見せどころですね。
- 703 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:22
-
体育の後の昼食は食欲が沸かない。
そんな無駄話を、出来たばかりの友達と繰り返していたその時、れなを横切るあの子。
なんとなく振り返って、溜め息を漏らしたくなる。
「…なぁに?」
「なっ」
見られた。のかわからないけど、急に振り返って特徴的な笑顔を向けられた。
焦ってしどろもどろしている間に、友達達は先にグラウンドへと行ってしまっていた。
その後を追い掛ける事とか、目の前で起きている事を理解することとか。
両方を考える事なんて、とうに無理だった。
- 704 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:23
-
「…絵里、た、体育、やらんの?」
「え?」
「制服…」
「あ、うん」
短かめのスカートに一瞬目をやってしまい、とっさに視線を逸らす。
気付かれなかった様なのでホッとしている間に、絵里はなんとなく寂しそうにグラウンドを見つめて溜め息をつく。
すっかり忘れていた事を、思い出させた。
何だか余計な口を挟んでしまったみたいで、申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。
「ご、ごめん」
「んーん、いいよ。早く行かないと先生に怒られるよ、行こう」
「うぁっ」
その華奢な身体に、どんなパワーが秘められているのか。
どきどきしながら佇んでいると、絵里はれなの手を掴んで階段を降りて行く。
- 705 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:24
-
大人しそうなのに、どっか抜けてておかしいやつ。
絵里と仲良くなり初めて、れなはそれとなく一部分を見始めている。
「れいなっ」
「な、なん」
「行ってらっしゃいっ」
パッと手を離されたかと思うと、そこはグラウンド前の昇降口で。
ぼぅっとしているれなに、小さく手を振る絵里がいた。
そっか。
絵里は保健室で休んでなきゃいけないから、ああそうか。
れなも手を振り返すと、何故だか楽しそうに微笑んで行ってしまった。
一瞬の出来事だったけど、温もりが手に確かに残っている。
「行ってきます」
授業開始のベルはとっくに鳴っていた。
ダッシュでグラウンドの中心へと走ったけれど、当然間に合わなくて先生に怒られた。
- 706 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:24
-
「…れ?」
体育が終って弁当の時間になっても、絵里は保健室から戻って来なかった。
隣の席には誰もいなくて、何だか時間がずれたような感じがした。
「絵里、病院だってさ」
「…へ?」
「週に1回早退して病院行ってんだって。でも最近調子悪いみたいだよ」
「……そう、なんだ」
友達が横から口を出して、特に興味無さそうにそう言った。
からっぽの空間は、落ち着かなかった。
- 707 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:24
-
絵里は生まれつき身体が病弱だって。絵里と初めて話した後に他の友達からそう聞いた。
確かに細いし、大人しいしそんなはっちゃけた子じゃないことはすぐにわかったけど。
なんだか軽い病気じゃないみたいだから、周りも気を遣って絵里を遊びに誘う事も少ないらしい。
クラスに一人や二人そんな子がいてもおかしくないはずなのに。
れなは、その事が気になって仕方がなかった。
直接絵里に聞く事なんて出来やしないし、かといって周りに詮索するのもいやだ。
結局自分は無力なんだという事を改めて自覚して、考えるのをやめた。
やめたけど、しっかりと根付いた気持ちは本物だった。
「絵里が好きじゃぁぁーーー」
ベッドに顔を押し付けて、誰にも聞こえないように叫んだ。
- 708 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:25
-
それから何もする気が起きなくて、ベッドに俯せたまま2時間ぐらい眠ってしまった。
その間に美貴ねぇも帰ってきたみたいで、リビングの方からがさごそと音が聞こえてくる。
「美貴ねぇ?」
制服のままリビングのソファに寝転がってうなだれている。
部屋から顔を出したままじゃ、美貴ねぇの顔はよくわからなくて。
リビングに歩いて行き、顔をひょいと覗き込んだ。
「顔赤い」
「…知るか」
「着替えんと。スカートぐしゃぐしゃになっとぉ」
「わーったよぉ」
素早く起き上がると、女とは思えないような素行で制服を脱ぎ始めた。
思わず目を逸らして台所に行き、紅茶を入れる事にした。
- 709 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:26
-
それから何もする気が起きなくて、ベッドに俯せたまま2時間ぐらい眠ってしまった。
その間に美貴ねぇも帰ってきたみたいで、リビングの方からがさごそと音が聞こえてくる。
「美貴ねぇ?」
制服のままリビングのソファに寝転がってうなだれている。
部屋から顔を出したままじゃ、美貴ねぇの顔はよくわからなくて。
リビングに歩いて行き、顔をひょいと覗き込んだ。
「顔赤い」
「…知るか」
「着替えんと。スカートぐしゃぐしゃになっとぉ」
「わーったよぉ」
素早く起き上がると、女とは思えないような素行で制服を脱ぎ始めた。
思わず目を逸らして台所に行き、紅茶を入れる事にした。
- 710 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:26
-
ケラケラと笑いながらそう言った美貴ねぇの目は、真剣だった。
急にそんな気持ち悪い事を言うなんてどうかしてる。
「だ、だれと」
「下級生の変な子と」
「…変な子と付き合ってん?」
「変は変なんだけど、結構可愛いんだ」
嬉しそうに、でも怖い顔でにひひと笑った。
変なのは美貴ねぇだと言いたかったけど、そのままにしておいた。
だって、なんだか安心するから。
ニヤニヤとおかしな笑顔だけど、妙にれなは安心出来た。
きっと、掴まってられるものを手に入れたからだと思う。
ポーッとして頬が赤くなっている美貴ねぇを見ていて、そう思った。
- 711 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:27
-
「…美貴ちゃん、御飯、美味しくない?」
「……美貴ねぇっ」
「いだっ」
不安そうに美貴ねぇの顔を覗き込んだお母さんを察して、美貴ねぇの足を思いきり蹴飛ばした。
何食わぬ顔で御飯を食べ続けるお父さんはテレビを見ているから気付いてないけど。
スネにヒットしたのか、美貴ねぇは予想以上に痛がっている。
「ち、違う。美味しいよ。でもあんまりお腹空いてないんだ」
「そう?じゃあラップかけておくけど…」
「い、いい!今食べるから」
急いで箸を早めた美貴ねぇはれなを一睨みして御飯をかき込んだ。
お母さんは安心したように微笑んで、れなにも食べるように促す。
様子がおかしいことは夕方からだと分かっていたけど、きっかけはさっきの発言。
- 712 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:28
-
『キスしちゃった』
恋人としての間柄なのか、ふざけてしたのかもれなには分らない。
だいたいそんな事を突発的に口にした美貴ねぇは、何を考えているんだか。
元々美貴ねぇは顔も綺麗だし、スタイルも良いから男女関係なく好かれてるけど、ヘンな潔癖性があるせいか恋人なんて欲しがるわけないのに。
もしかして、美貴ねぇの人嫌い性が治ったとか―――
「…誰なんだろ、キスした人って」
美貴ねぇが恋をしたなんて。考えてもまともに受け入れられない。
もしかしてれな、嫉妬してる?
そんなことない。だって姉妹だよ、そんなこと思う訳ないんだから。
しかも好きな人なんてもういるし。ああだめだ、そんな事考えだしたらまた
「れいな、風呂空いた」
3時のおやつは文明堂。の合言葉もナシに、美貴ねぇは濡れた髪を拭きながら沈黙を破った。
- 713 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:28
- side miki
一体どんなつもりで、あの子は美貴を好きと言ったんだろう。
違う意味で呼び出しを喰らい、あの屋上で待ちながら黙々と考え始めた。
美貴自身に恋愛的要素があるとはどう考えても同意はできない。
単にからかうだけの告白だったのかもしれない。なんてことを今さら思ってみたりした。
「センパイ」
キスをした。触れるだけだった。でも実感はあった。
- 714 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:29
-
「わー、ホントに来たぁ」
「…きみが呼んだんだよね?」
「きみって止めて下さい。名前でどうぞ」
わざとらしく名札を見せつけたその子は、自信アリアリな笑顔。
どこからその自信が出てくるのか、美貴には分らなかった。
松浦亜弥。確かそう言った。
「亜弥」
「やぁだ、何か恥ずかしい」
「亜弥ちゃん」
「あ、そっちのほうがいいかも」
「…ねぇ、亜弥ちゃんは」
「美貴、だからみきたん。可愛いでしょっ?」
美貴のどこが好きなの?
そう聞くつもりだったのに、言葉を遮られて嬉しそうにそう言った。
色々考えた末、美貴の呼び名はみきたんになったらしい。
フザけた名前。そんなの今まで誰にも付けられた事がない。
だけどあまりにもウキウキして言ったもんだから、美貴は何も言えなかった。
っていうか。何も言っちゃいけないような気がしたから。
- 715 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:30
-
「みきたんは、あたしの恋人だね」
「…そうなんだ」
「昨日OKしたじゃないですかぁ」
「……もしかして、本気だったりした?」
「あたしはいつでも本気ですぅー」
シラけた雰囲気が流れた。だけどそれはとても面白い空気感だったと思う。
一分一秒がとても長く感じられた。きっと亜弥ちゃんもそう思ってたんじゃないかな。
「先輩は、みきたんは冗談だったんですか?」
急に不安そうに顔をしかめた亜弥ちゃんは、くいと美貴の腕を引き寄せてコツンと額と額をぶつけられた。
ちょっと寄り目で、含み笑いで、可愛かった。
- 716 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:30
-
「だったら、どうする?」
諦めるか。それともついて回ってくるか。
どっちの判断も瞬時には下せなかった。
亜弥ちゃんの瞳は頑に、美貴を見つめていた。
「それでもいい。あたしはみきたんが――」
「わかった」
これ以上美貴が亜弥ちゃんを苛めるような事を言ったとしたら。
傷付けてしまうと思った。
- 717 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:30
-
お互いの事なんかぜんっぜん知らないけど、昔から知っているような匂いがした。
抱きしめたら急に心臓の奥を引っ掻き回されるような微痛に襲われた。
だけどそれは、快感に近い痛み。
「美貴はまだ亜弥ちゃんのこと好きじゃない」
「でもそばにいてほしい」
「美貴のこと、本当に好きなら美貴だって――」
誰でもいいから 誰でもいいんだ でもそうじゃなかったのかもしれない
美貴の事、愛してくれるんだったら
そばにいて、なにも言わなくてもいいから
- 718 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:31
-
「ダイジョウブ。みきたんはぜぇぇーったい、あたしを好きになるから」
保証は?
ない。でも愛してあげる。
今の言葉、覚えておくよ。
うん。覚えておいてね。
何で美貴はあの時、付き合うなんて言ったんだろう。
ただ単に掴まり所が欲しかっただけと言えばそれでおしまいなのに。
どうしてだろう。美貴の中の誰かが、亜弥ちゃんを呼んでる。
- 719 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/17(月) 18:31
-
「たん」
「…略しちゃうんだ」
「あのね」
絶対に離さない。離したくない人が出来たよ。
頬に柔らかい感触と、あたたかい温もりがジンと伝わってくる。
くすぐったかったけど
すごく、すごくしあわせな気分になった
「好きよ、みきたん」
好きだよ。しばらくしたら、亜弥ちゃんにそう言ってあげるつもりだ。
- 720 名前:証千 投稿日:2005/01/17(月) 18:37
- あやみき率高。
でも次回はれなえりを発展させるつもりです。
返レス遅れました、すいません。
>678様 れなみきって姉妹設定が一番やりやすいんですよね。
安易な考えの作者をお許し下さいませw
>679様 ヘタレっぽいですよね、何だか。
>700様 イイ感じ?ですかね?
嬉しいです。作者冥利につきます!
>701様 レスありがとうございます。サイトの方も毎日巡回させて
頂いてますので、駄文ですがこちらもよろしくです。
>702様 こういうねちっこいキャラは私的に書きやすいんですよねw
ありがとうございました。
- 721 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/17(月) 18:37
- かくし
- 722 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/17(月) 18:37
- そいやっ
- 723 名前:証千 投稿日:2005/01/17(月) 18:38
- あ、それと雪板での連載が遅れていて申し訳ございません。
只今執筆中です。お許し下さい・゚・(ノД`)・゚・
- 724 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:24
-
授業中に手紙を書いていたり、隣の机の子と喋っていたり。
でもれなはそんな事に気をまわしている場合じゃなかった。
もちろん教科書もノートもそっちのけで、真横ばかり気にしている。
「…なぁにれいな?」
「…な、なんでもなか」
「ずーっと見られてるんだけど、絵里」
「絵里、具合悪いんと違うか?」
図星というような顔をして、絵里はふにゃっと笑った。
そんな表情で誤魔化されるほどれなは馬鹿じゃない。
朝から顔が青白くて、俯いて少し肩が震えていたくせに一言も喋らないし。
無理しているんだってことはすぐに分かった。
気付かないフリして微笑んでいる絵里は、すごく華奢で、哀しかった。
痛々しいっていうのかな、こっちまで胸がキリキリ鳴るんだよ。
- 725 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:24
-
「そんなことないよ、元気だもん」
「嘘つかんでもよか、絵里、朝から何も喋らんし」
「大丈夫だって、なんともないっ…」
身を乗り出して、れなの肩をバシンと叩いたその時。
絵里の身体がぐらりと揺れたような気がして、目を見開いた。
「ちょっ、絵里!」
絵里の肩を揺すっても、苦しそうに呼吸をしているだけ。
だらんとした手を拾っても反応はない。
- 726 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:25
-
ぐらりとれなの肩に頭を乗せる絵里を、手放す事は出来なかった。
- 727 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:26
-
先生と養護教員が奥で会話をする声が聞こえる。
落ち着いたように眠る絵里の寝顔は、病人みたいで。いや病人なんだけど。
いつも楽しそうに笑う絵里とは、全然違う感じだった。
重度の貧血症。本当の病名は解らないけど、養護教員はそう言っていた。
十分に睡眠や食事を採れば治るような貧血ではないということはれなにも何となく理解ができた。
それに、自分の事を何より分かっている筈の絵里にもコントロールが利かない様だった。
自然に伸びる手を引っ込める事も止めて、そぅっと絵里の手を握った。
恥ずかしいとかそんなことを思う暇もなくて、ただ目の前の絵里の事しか考えられない。
あぁ、こんなにも好きなんだ。
体温上昇が激しくなっても、絵里から目を離す事を止めなかった。
傍にいてあげたい。そんな想いが沸々と沸き上がってくる。
- 728 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:26
-
「…れ、…いな」
「ぁいっ!?」
痛いくらいに握り返された手を見た後、一気に頬へ熱が移動する。
「ばっ、まだ起き…」
「ヘーキ。もう慣れてるから」
「…慣れてるって、そんなら何で無理してまで学校来るん!」
「好きなんだもん」
ドキリ
一向に繋がれた手は解く事もなくて、絵里は不服そうに頬を膨らました。
すごく可愛くて、でもそれをずっと見ているわけにはいかないからわざと目を逸らした。
好きなんだもん。
そう言った絵里の瞳が、期待に溢れている。
- 729 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:27
-
「す、すすすきって」
「え?学校が好きって…」
「……あ、ああ」
「皆と一緒に勉強出来るだけでいいの。部屋で一人でいるなんてつまんないもん」
「…絵里」
「運動はダメってお医者さんに言われてるから、体育は無理なんだけどね。
あはっ、だから絵里運動神経悪いんだよねぇ」
学校に来るのが楽しくて、嬉しくてしょうがない。
絵里が笑って言うもんだから、れなの心は寂しくてしょうがなかった。
健康とは言えない絵里の身体でも、毎日満足していられるのに。
れな、何やってん。
今まで暮らしていた毎日が馬鹿らしく思えてきた。
- 730 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:27
-
「れいな」
「…なん…?」
「ありがと」
「……なんで、お礼なんか…」
「えぇ?わかんない。なんか、言いたくなった」
ばか。
そんな顔するな。れな、どうしていいかわかんなくなるっていうのに。
「れーいな」
「…?」
「好き」
グイッと引っ張られた手が少し痛んだ。でも、それどころじゃなかった。
- 731 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:28
-
絵里の胸に顔を押し付けられて、身動きが取れない。
ドクドクと反動する心臓の音が直に伝わってきて、熱い。
絵里はれなの髪を撫でて、何度も何度も名前を呼んでくれた。
なんでこんなことするん。
そう言いたくても、口が上手く動かない。
「心配してくれて、嬉しかった。それでね、優しいれいなが好き」
「え、り…」
「れいなは、絵里の事どう思ってる?」
優しくなんかしてない。でも、好きな人だから自然と動いちゃうんだ。
ただそれだけなのに、絵里はどうしてれなをくすぐるんだろう。
仕種や言葉の一部一部で、れなをおかしくするのに。
- 732 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:28
-
れなの事なんか、好きにならないほうがいいのかもしれないのに。
でもれなは、死ぬ程絵里が―――
「好きだよ。絵里んこと、好いとう」
ひょいと顔を上げて、絵里を見上げた。
もう泣いてしまいそうな程苦しかったけど、精一杯言った気持ちの方が強かった。
絵里はにっこり笑って、れなを見下ろす。
「…も、う無理せんと。れな教室もど…」
「えぇーっ、まだお話しようよ」
「えぇーっじゃなくて…れな、おかしくなる」
「なんで?」
「…あんなぁ」
イライラしてもどかしい気持ちをぶちまけた。
- 733 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:28
-
「好きすぎて頭ぶっ壊れる。やけん、絵里の事傷付ける」
美貴ねぇが言ってた。人を好きになると、己を見失うよって。
どこでそんなのを学んだのかは知らないけど、今れなは究極にそんな状態だから。
事を知ったのか絵里は真っ赤に頬を染めて唇を噛み締める。
だから言いたくなかったのに。
「…れいな、えっちだ」
「ち、違う。やからあんま近付くなっ」
「やだ」
「なん…」
「れいなのこと、好きだもん」
ああ、もうだめだ。
壊れた。
れなの事そんな目で見つめて、確信犯だとしか思えない位。
- 734 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:29
-
「もう言わんでよかっ」
「なんでー」
黙っていればきっと辛い片思いだったのかもしれない。
きっかけなんて柔いものだったけど、結局れなは絵里と両思いになりました。
へろへろになりつつある体力が、持ちそうにない。
- 735 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:37
-
side miki
嫌な噂が回ったらしい。
「…は…」
「ねえ、本当なの?」
「…なに、ソレ」
「屋上で、見た人がいるって」
見られていない自信はあったのに(ノ∀`) アチャー
なんて冗談こいてる場合じゃない。心配そうな顔をしてるくせに内心興味津々だろうクラスメイトは妙な噂を聞き
つけ、美貴に尋ねた。
屋上で亜弥ちゃんとキスをした事 しかも、2回も。
- 736 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:38
-
誰かがそれを見ていたらしく、大変如何わしい迷惑的なデマが流れた。
それは、美貴と亜弥ちゃんがセフレだという馬鹿馬鹿しいおはなしだった。
キスしたくらいで。
よっぽど亜弥ちゃんって子は有力者なんだろう。
しかも何でセフレなんだろ。誰も恋人同士として見ないわけね。
裏がありそうな子だとは思っていたけど、やっぱりこういう被害を受ける側になった。
っていうか、なんてリアクションしていいのかわからない。
廊下を歩いていてもひそひそうるさいしいい加減ブチ切れる頃なんだけど。
まとまらないので、亜弥ちゃんに聞く事にした。
- 737 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:39
-
「セフレって何?」
知ってそうで知らないワード。
まさかこの言葉自体を知らないと来たらどう教えていいものか。
よそ見をして考え込んでいると、亜弥ちゃんは不思議そうに美貴の顔を覗き込む。
あくまでも教養として教えなきゃいけないわけだけどどうやって説明しようか。
あーめんどくせー
「だー…。身体だけの付き合いってコトだよ」
「セックスフレンドって事?」
「知ってるじゃん」
「略すからわかんなかったんですぅー」
幼い顔してるくせに、そういうことはさっぱりと言っちゃうんだね。
苦笑いをする美貴とは対象に、亜弥ちゃんはちょっと拗ねた風に笑った。
ああ、やっぱり。
付き合ってんだよね、ウチら。だから亜弥ちゃん、そうやって悔しそうに笑うのかな。
だったらなんか、美貴、悪い気分じゃないかもしれない。
- 738 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:39
-
「…ねえ、怒った?」
「怒ったっていうか…そう見られるのはしょうがないけどぉ」
「何で」
「だってあたし、可愛いし」
「…あー」
ま、実際可愛いけど。自分で言っちゃう所がまた凄い。
得意げに笑った笑顔が特徴的で、今まで見た表情の中で一番可愛かった。
ってか、なんで急にこんな事。
- 739 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:39
-
「みきたーん?」
「え?」
「みきたんもかわいーよ」
「…あ、そう」
「ツンとしてるけど、本当は優しいんだね」
ちょっと首を傾げて微笑んだ亜弥ちゃん。
からかうような口調でも、それなりに美貴に何かを言いたかったんだと思う。
年下にこんな事言われて、素直に嬉しくなっちゃう美貴もおかしいんだけど、ね。
だって、はじめて言われたような気がしたんだ。
優しいんだね。
まあ、自ら友達無くすような事ばっかしてきた自分にとっての事だけど。
- 740 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:40
-
「うち、おいでよ」
「え?」
「美貴の家。あそぼ」
無性に今目の前にいる亜弥ちゃんの事をかまいたくなった自分がいた。
数少ない友人を家に招く事なんてそれこそなかったのに、美貴ってばどうかしてる。
「じゃ、おじゃましちゃおっかな」
「うん。おじゃましちゃえ」
「日本語ヘンー」
「亜弥ちゃんに言われたくないよ」
なんとなく、手を繋いでみた。美貴みたいに冷たくなくて、あったかい手だった。
美貴、亜弥ちゃんに染められかけてる。
いっそこのまま、なんて考えてる美貴は亜弥ちゃん以上に馬鹿かもしれない。
- 741 名前:ハートフル 投稿日:2005/01/22(土) 11:42
-
「何してあそぶー?」
「ババ抜き」
「みきたん、小学生じゃないんだから」
なにをして、あそぼうかな
- 742 名前:証千 投稿日:2005/01/22(土) 11:42
- 更新しました。
最後の言葉が厭らしく見えるのは作者だけでしょうかw
- 743 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/22(土) 12:20
- 田亀が初々しくていいですね
ミキティなにするのかな
- 744 名前:マカロニ 投稿日:2005/01/22(土) 13:22
- 初めてカキコしました(^O^)
あやみき好きなのに、すごく田亀があやみきより甘く感じました!良かったです♪作者さん頑張ってください〜
- 745 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 20:37
- なにをして、あそぶのかなw
- 746 名前:wool 投稿日:2005/01/24(月) 17:53
- お久です。多忙な日々に気付けば久々のカキコになってしまいました。申し訳。
証千さんのお話で田亀に好感が持ててきましたw 二人とも初々しくて可愛いし、受け気味な田中さんがだいぶツボっす!!
あやみきももちろん楽しませてもらっておりますー。
- 747 名前:静寂の時間 投稿日:2005/02/04(金) 22:37
-
「っ…っくぁぁん!」
何度目かの絶頂
逃げられない快感が、しっかりと彼女に伝わっている
大丈夫だよと言うようにあたしは美貴の腕ごと抱きしめた
怖い事じゃないんだよ
愛し合っているなら、普通の事なんだから
好きという感情は存在しているのだろうか
その答えは美貴にも、あたしにも解らなかった
ただ、今だけがいい
- 748 名前:静寂の時間 投稿日:2005/02/04(金) 22:38
-
「よっちゃ…ぅんっ」
「好き、好きだよ美貴」
愛はない でも彼女を抱く事を止めなかった
ビクンとしなる美貴の身体、声、瞳
あたしをおかしくさせるのに変わりはないのに
なのにあたしは、何考えてるんだろ
「っく…はぁんっ」
「声、もっと」
快感に溺れる音感が震えて何も無い部屋にこだまする
- 749 名前:静寂の時間 投稿日:2005/02/04(金) 22:38
- 決して清純ではない
でもその空間、あたしは堪らなく好きだ
この時だけをいつまでも
永遠に近く、静寂に満ちた二人でいいから
「好きっ…よっちゃぁん、あぁっ…」
夜は止まない どこまでも
FIN
- 750 名前:証千 投稿日:2005/02/04(金) 22:43
- 忙しさ故、只今本編は執筆中です。
短い吉藤を載せておきましたが、後日に本編は更新予定です。
遅れがちですいません。
>743様 田亀は中学生日記のイメージが強くて(笑
もっと大人っぽく仕上がると良いのですが(爆
>744様 カキコありがとうございます。
最近執筆から離れがちなので、有り難いお言葉嬉しく思います。
>745様 それは、秘密ですw
>746様 忙しい中こんな駄文を閲覧して頂き光栄です。
たいして更新も出来ていないのですが、よろしくお願い致します。
遅ればせながら飯田さんの卒業をしみじみと噛み締めました。
そして驚愕のショートカットw
亀井さんも似合ってると思います。
以上でw
- 751 名前:証千 投稿日:2005/02/04(金) 22:44
- エロなんで隠して
- 752 名前:証千 投稿日:2005/02/04(金) 22:44
- もうひとつ
- 753 名前:名無し飼育 投稿日:2005/02/05(土) 01:40
- よしみきとかマジ勘弁…
- 754 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 03:19
- ならどっかいけよ
元々作者さんは他のスレでもみきよし書いてんだよ
- 755 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 03:19
- kakushi
- 756 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 03:20
- かくし
- 757 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 03:20
- 隠し
- 758 名前:名無し飼育 投稿日:2005/02/05(土) 21:05
- >>754
俺はあやみきが好きなんだよ
みきよしなんてキモいんだよ
- 759 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 22:29
- ならどこかへ消えろ。わざわざ書き込むな。
作者さん、頑張ってください。
- 760 名前:名無し飼育 投稿日:2005/02/05(土) 23:25
- >>759
うるせー氏ねうんこ太郎
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 23:45
- 忙しい中更新お疲れ様です。
自分はなぜかショートカットの飯田さんよりパーマの後藤さんに驚きました。
本編楽しみにしてます。作者さんのペースで頑張ってください。
- 762 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/06(日) 01:09
- まあまあ、みんなモチツケ。スレ汚しはだめよん。といいつつ自分もw
作者様スレ汚し失礼致しました。
- 763 名前:トウマ 投稿日:2005/02/06(日) 02:38
- 本編も執筆中ですか!!
本編、楽しみにしてます。
何して遊ぶのか、激しく気になってますw
- 764 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:14
-
趣味の幅でも広げればこんな暇は無いのに、美貴は何だって恋愛なんかしてるんだろ。
しかも、はまっちゃってるとか。
「たん?」
真横を歩くおんなのこは、美貴をまじまじと見つめてふふっと笑った。
あー、これって現実。
なぜか掴まれたブレザーの裾を解く事が出来なくて、しばらくそのまま立ち止まって呆然とした。
何のつもりなんだろ。このコってば。
- 765 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:15
-
「何考えてたの?」
「…やー、亜弥ちゃんって可愛いなーと思いまして」
「ふふ、知ってるもん」
「あ、そ」
自信たっぷりな所が一番の理由かもしれないなぁ。
美貴のちょっと後を歩くようにしながら、それでも裾を離す事は無かった。
美貴も、まあ嫌じゃあないし。
むしろ、うれしかった。
- 766 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:16
-
「おじゃましまーす」
いそいそと家に上がった亜弥ちゃんは、興味津々な眼差しでリビングを見渡した。
そんなに珍しいものはないんだけど。
まあ、美貴の暮らしが気になってたんだろう。と勝手に解釈した。
「多分夕方にならないと親帰って来ないから、ゆっくりしていいよ」
「うんっ」
いやーに嬉しそう。
やっぱこれって、美貴だけが見られる亜弥ちゃんなのかな。なんて考えた。
- 767 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:16
-
恋愛とかしたことないからこの考えってどうなのかわかんないけど、どうな―――
「みきたん」
「…え?」
「座って?」
「あ、え、うん」
何気なしに台所に行こうとした美貴を引き止めた、柔らかい亜弥ちゃんの手。
ふと美貴を見上げるその目は色素が薄くて、茶色でくりくりして。
放心する直前になって、何が起きたのか我に返った。
言われるがままに亜弥ちゃんの隣に座って、いやにマジっぽい顔を覗き込む。
さっきまで笑ってたのに。なぜか亜弥ちゃんは、黙って美貴の手を握った。
- 768 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:17
-
「へ?」
「…あのね」
すこし強めに訴えた亜弥ちゃんの引っ張る力が、美貴の体重ごと奪っていった。
前に感じたやわらかさが、頬に満ちていく。
- 769 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:18
-
「えへへぇ」
「…ど、どしたの?」
「……なぁんか、したくなっただけ」
そう言ってはにかんだ亜弥ちゃんは美貴の頬を撫でて
そんなことされたら、どうかしてしまいそうになって
美貴を見つめる亜弥ちゃんを、どうにかしてしまいそうになった
潤った唇が美貴をもっと欲しがっている錯覚に陥った
ちがう。
- 770 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/13(日) 18:18
-
「亜弥ちゃん」
強く強く引っ張った細い腕
強く強く思った欲望
時折漏れる亜弥ちゃんの声も苦し気な美貴の脳も
ぜんぶ飲み込んでしまいたいくらいのキスをした
やっとわかった
美貴は、亜弥ちゃんが好きなんだってこと
- 771 名前:証千 投稿日:2005/02/13(日) 18:20
- 遅くなってすいません
しかも量が少なくてすいません
お詫びに短編を載せたいと思います
では後程 从‘ 。‘从 <バレンタインSP!
- 772 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:28
-
欲しい 欲しい 欲しい
「チョコが欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!」
バレンタインデーとは、セントバレンタインが死去した事から始まっている歴史である
なぜ命日を祝う日と制定したのだろう
というような前置きはどうでもいい
- 773 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:29
-
「よっちゃん、うるさい」
「だって、だって欲しいじゃないか。こんなステキな日は無いぞっ」
「もらってくればいいじゃん。よっちゃんなら出来ない事ないし」
「違う…違うんだ、バレンタインという日はそんな物じゃあないんだよ」
「じゃあどんな物さ」
「教えてやろう、愛を知らない君に」
お前だけには言われたく無い。
そう言い返すや否や、美貴の友人である吉澤ひとみは熱血のごとく机の上に乗り出しキッと美貴を睨んだ。
- 774 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:29
-
「好きな子からのチョコレートとはどんなものだろうか」
「…まあ、もらえば嬉しいねぇ」
「だがしかし。興味の無い他人からもらうチョコなど嬉しくもなんともない。だろ?」
「……それ今に始まった事じゃないんじゃ…」
「だからアタシはチョコが欲しいんだぁぁぁ!!!」
ガタガタと美貴の机を揺さぶり叫ぶ友人を見て溜め息を漏らす事も、もう慣れた。
毎年このような行動をとるということは大体推測できたし、2、3日経てば治まる事も知っていた。
付き合いが長ければ長い程親身になれるはずなのに、全くそういう気も起きない。
- 775 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:30
-
「そこであたしは考えた」
「ほぉ」
「今年こそ、本命からのチョコをゲットするべし」
「でも今日がバレンタインだよ。今からじゃ無…」
「そんな戯言は聞きたくないんだぁぁぁ!!」
今度はバンバンと机を叩く始末。
ほとほと呆れて言葉も出なくなってきた頃、なんとなく予感していた出来事が起こる。
ガラッと勢い良く開けられたドアで、美貴はどんよりした気持ちをさらに高める事になってしまった。
- 776 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:30
-
「みっきたぁん!セーントバレンタ…」
「だー、いらないいらないいらないっ!」
「むぅ!まだあげてないのにっ!!」
ガシリと腕を組まされ、やけに笑顔を強調する亜弥を美貴はうんざりと言った表情で項垂れた。
松浦亜弥 美貴を想ってはや二ヶ月の後輩である。
「いいよ、遠慮しとく」
「なんでよぅ、一生懸命作ったのに!」
「だいたい美貴チョコ嫌いだし亜弥ちゃんも苦手だし」
「でも、嫌いじゃないんでしょ?」
「え?や、まあそうだけどでも…」
「だいじょーぶっ!みきたんはずぇぇったいあたしに惚れちゃうから!」
「そんな保証はずぇぇったい無いから。って何すん…ふ!が、がっ!!」
キラリと光った亜弥の瞳から目を逸らした瞬間、口を無理矢理開けさせられ異物感が口内に広がる。
- 777 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:31
-
咳き込む美貴を放り、亜弥はえへへと微笑んでわくわくしながら美貴の発作が治まるのを待った。
ゲヘゲホとむせ返り異物をとっさに飲み込んでしまった美貴は、なんとか呼吸を取り戻す。
広がった甘い匂いと味で、頭がクラクラした。
「えへへぇ、美味しかったでしょ?」
「……え?」
舌でざらりと確認した甘さは程よく、甘いもの嫌いの美貴にはちょうどよかった。
ごくりと唾を飲むと、まだ残るチョコレートのほろ苦さ。
美味しい。かもしれない。
- 778 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:31
-
「…う、まぁ」
「やったぁっ!みきたんに誉めてもらっちゃった」
「ちが、誉めたんじゃない!」
「でもおいしかったんでしょ?」
「……そ、そうだけど」
「じゃあ、もういっこ。みきたんにあげる」
「えぇ?…んっ!?」
チョコレートよりも甘いかもしれない亜弥の匂いが、しゅうと鼻腔をくすぐった。
柔らかい感触と甘い匂いでボーッとする脳を叩き起こし、顔を熱くする。
ぱっと美貴の首に回した腕を解くと、亜弥は照れながらにゃははと笑った。
これって。これって。
- 779 名前:バレンタインの悲劇・喜劇? 投稿日:2005/02/13(日) 19:32
-
「…なっ、あやちゃ…」
「今度はもっとスゴイの、勉強してきまぁす!」
「そ、そそそうじゃなくッ…亜弥ちゃん!!」
何度も何度も唇をブレザーの裾で拭った。
でもあの心地は拭っても拭ってもとれる事はなかった。
企むような亜弥の笑顔を放心状態で見送り、唇を指でなぞった。
やっぱりまだ残る、あの匂い。
「…なんなんだよ、あのコ」
チョコレートにも勝る亜弥の力に、美貴は圧倒された。
「ちくしょぉ、なんで美貴ばっかり!!」
かすかに涙を浮かべ、吉澤が握りしめるその小さな箱にはうすく書かれていた。
『義理チョコ』と。
FIN
- 780 名前:証千 投稿日:2005/02/13(日) 19:37
- 以上、バレンタインスペシャルをお送りしました。
吉澤さんを大変可哀想なキャラにしてしまったことをお詫び致しますw
当日に載せたかったのですが出来そうになかったので、先に載せておきました。
本編の方もどんどん進ませたいと思うので、ご了承くださいませ。
>753様 お気に召さなかったですか。それではスルーの方向でよろしくお願いします。
>761様 後藤さんもお見事なパーマで(ry
いや、あれはあれで似合ってたので良いと思いますw
>762様 お心づかいありがとうございました。
>763様 結局二人の遊びは…w
ホムペの更新、いつも期待して待ちわびているのでお互い頑張りましょう!
- 781 名前:名無し 投稿日:2005/02/19(土) 15:16
- 面白かったです
吉澤さんかわいそうだけどウケました!
- 782 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:06
-
「あ?」
鍵穴に鍵を差すはずがなんとなくドアノブに手をかけた。
玄関のドアはがちゃと音を立てて開く。
乱雑に脱ぎ捨てられたローファーはやっぱり、みきねぇの物。
帰ってきてるんだ。
そう思って差したままの鍵を抜いて靴を脱ぐ。
- 783 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:07
-
「みきねぇ?」
そのままリビングへと歩み寄ると、ふたつの薄い影が見えた。
ソファに沈む美貴ねぇ。
ひとりで寝てるんだと最初は思ったけど。
ムクリと起き上がった美貴ねぇの隣には、予想外にも可愛い女の子が座っていて。
みきねぇが優しく頭を撫でると嬉しそうに笑顔を零す。
- 784 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:07
-
なにが起こっていたのかは、だいたい分かった。
中学生でも想像できてしまう事だからなんとなくその場に居づらくなって。
リビングから見えない位置につったって、何回か深く呼吸をした。
みきねぇの大事な人なんだって、すぐにわかったから。
- 785 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:08
-
「…あ、ヤバ」
「ん?」
「忘れてた、あたし帰んなきゃ」
「なんか、用事?」
「……んー、そんなとこ」
くつろいでいた時間を遮るように亜弥ちゃんはすくっと立ち上がった。
忘れる程の用事だから、たいしたことないよって言ってたけどなんだか焦っていたような気がした。
携帯の電源を切っていたせいか着信が凄かったらしい。
すごく、焦った表情をしていたから。
- 786 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:08
-
「みきたん」
「え?」
「…あたしね、妹いるんだ、二人」
「へぇー、そうなんだ」
「でね、幼稚園のお迎え行かなきゃいけなくて…」
「…あぁ、そういう事か」
別れ際、亜弥ちゃんは言いにくそうに美貴の腕の中でそう呟いた。
そう隠すような事でもないなに、なんか申し訳なさそうな顔をして。
意外だった。
美貴が勝手にイメージ作ってたせいもあったけど、年下の子供を面倒見るような感じじゃなかったし。
あの焦った表情は、そういうことだったんだって納得した。
- 787 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:09
-
「じゃ、バイバイ」
「うん。気をつけてね」
ちゃんと幼稚園まで送ってあげればよかったのに。
変な所で恥ずかしくて。
マンションの下で手を振って、たったか走って行く亜弥ちゃんを見送った。
背中さえ愛しい。そう感じたのはこれが初めてだった。
- 788 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:09
-
「…あー、疲れた。つか何時の間に帰ってたっけ、れいな」
「……気のせいやろ」
「…そーか、気のせいか」
単純な姉だ。
バカみたいに納得したみきねぇはそのままソファに倒れてすぅすぅと眠りはじめた。
疲れたって事は、二人で何してたんかわかりゃしない。
深くまで想像するのは嫌だったので、そのままにしておく事にした。
あの可愛い人、誰やったんやろ。
それだけがれなの頭の中を駆け巡る。
制服は同じだった事はわかったけど、たぶん年下だった。
- 789 名前:ハートフル 投稿日:2005/02/19(土) 19:09
-
って
「想像せんね、れなの馬鹿」
みきねぇにとって大事な人。
れなに関係なか。なのに何で、気にするんだろう。
- 790 名前:証千 投稿日:2005/02/19(土) 19:12
- フンヌ−!!
進展したくせに更新遅くて申し訳無いです。
勝手ながら今連載している物を一時休載しようかと。
あ、以前のように放棄したりは絶対にしませんので予めご了承下さい。
身勝手な作者をお許し下さい読者の皆様…
>781様 面白かったですか?よっちゃんが余りにも可哀想で他になにか
案は無かったのかと思えば無くはなかったようなw
レスありがとうございました。
- 791 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:07
- 今日に限って失敗するなんて。
特別に、過ごしたかったなぁ。
「…あー繋がんないし」
自分が悪いってことは十分に分かってる。
彼女に対しては最も優柔不断だし、平気で傷付けちゃうし。
こういう時の自分が一番嫌いで憎らしい。
だけど、あの子には嫌われたくないから。
「美貴ちゃん?」
「…何?」
「そんな、急に睨まないでよ。八つ当たり無し」
「八つ当たりって…」
「連絡、無いんだ?」
「……うるさいよ」
声が聞きたい。それだけなのに。
- 792 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:08
-
確かに八つ当たりはしてる。心配そうに見つめる梨華ちゃんまでむかついてくるんだから。
ちがう、こんなことしたいわけじゃない。
一目でもいいから、逢いたい。
それで、おめでとうって言わせたい。
特別に、祝って欲しい。
ああもう、何がしたいんだろ。
「トイレ行ってくる」
「10分で戻れよー、リハ始まるから」
「分かってます」
リハーサルだって。気が散ってできないだろうな。
- 793 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:08
-
妙に落ち着いてるのは自信があるから?違う。
むしろ、大人になった自分が嫌だったのかもしれない。
美貴の背中を見つめる矢口さんは、どこか不安そうだった。
ごめんね、矢口さん。
そっか。美貴、ハタチなんだっけ。
キュッと蛇口を捻って、鏡を見ながら改めて思った。
酒も飲めるし煙草も吸える年なんだって、思った。
いや、煙草はさすがに吸わないけど。
ぼぅっと鏡を見ていると、後でぼやける誰かの姿。
不意に視点を合わせると、見なれた白い肩に特有の表情。
夢だったら、さっさと覚めてほしかった。
- 794 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:09
-
「なっさけないなぁー、藤本クン」
「……あ、やちゃん?」
「そう。みきたんが今いっちばーん欲しがってる、アタシ。松浦亜弥でぇーす」
あどけない笑顔に吸い込まれそうで、振り返った。
偽物だとは思わなかったけど、これは現実じゃない。そう思った。
だけど今、目の前にいる姿を信じたくて。
アイドル調で喋る亜弥ちゃんを見て、どっと重荷がとれた気がした。
「…もしもし?たん、目が泳いでる」
「亜弥ちゃん…だよね?」
「何言ってんの、あんたの恋人じゃん」
「な、なんで…」
「うん?」
「おこ、怒ってると思ってた…」
拗ねた子供のような口調に戻った亜弥ちゃんは、溜め息をついて美貴を見た。
- 795 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:09
-
寂しそうで、潤んでいる瞳。
喧嘩したこと、引きずってる。
美貴だけじゃなくて、亜弥ちゃんだって。
「怒ってるよ。すんごい、ね」
「…うん」
「だけど、もういい」
「…へ?」
「みきたんの泣きそうな顔見たら、吹っ飛んじゃった」
年上なのに、いつまでたっても美貴は亜弥ちゃんに頼ってて。
なのにプライドがジャマして、亜弥ちゃんのこと傷付けちゃうから。
このまま一緒にいていいのかなって、不安になったりもしたけど。
ダメだ。
亜弥ちゃんがいないと、美貴はダメなんだ。
- 796 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:10
-
「亜弥ちゃぁん…」
「よしよし、いいこでちゅねー」
恥ずかしいってことよりも、身を任せる事にいっぱいいっぱいだった。
頭撫でられてすごく嬉しくて、泣きそうになるまで耐えた。
亜弥ちゃんの匂いから離れたく無くて、腕をやさしく離されるまで抱きしめた。
- 797 名前:オメデトウ 投稿日:2005/02/26(土) 18:10
-
「誕生日、おめでとう」
「う、ん。ありがとう」
「このこのぉ、もうハタチじゃんかぁー」
「え、へへ…」
「じゃ、プレゼントあげる」
「…へ?」
「……世界でいちばん、イイモノだもん」
頬が赤くなって、明らかに無理してる亜弥ちゃん。
なのに、美貴より強がってて。
唇に柔らかいものが触れた時は、もう離れちゃいけないんだって確信した。
「へへっ、ちゅうしちゃった」
「…亜弥ちゃん」
「ん?」
「もっと、プレゼントちょうだい」
ごめんねって言葉よりも、好きすぎて。
トイレだから誰か来るっていう心配もよそに、夢中で柔らかい唇を貪った。
誕生日は、特別な一日になったかな?
FIN
- 798 名前:証千 投稿日:2005/02/26(土) 18:12
- 美貴さん誕生日オメデトウっす。
思うように書けず全く頭が働かない作者でした。
久しぶりにあやみきを書いたような気が…
とにかく、二十歳の誕生日おめでとう帝。
- 799 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/28(月) 23:04
- ううーん、マンダム
- 800 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:49
- 外がぽかぽかし始めて、何となく眠くなってくるオフの午後。
窓を開放しっぱなしだったせいか頬に温かい風が吹いてくる。
春の雰囲気に酔いしれベッドで大の字でいる美貴の腹に感じる、重圧
。ぐ…るじ……
「む、たん寝ちゃダメっ」
「……勘弁、降りて降りて…っクハッ」
「だってあたしがつまんないでしょ!だーめーぇぇ…」
「分ったから、分ったから降りて。寝ないから」
「本当?」
「…ああ、ほんとほんと」
弱いです どうしても、亜弥ちゃんには弱いんです
- 801 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:50
-
あーあなんて思いながら頭をかきかき。
相変わらず亜弥ちゃんには勝てない自分がとても情けないと思う。
腹の上に乗られてもあんな潤った瞳で見つめられちゃ何も抵抗できない。し
頭撫でてあげてにっこりするしかないんだもん。
ハタチになっても亜弥ちゃんに甘い自分はどうかしてる。
っていうかそんな亜弥ちゃんもどうかして―――
「みきたん、これ、なぁに?」
「え?」
亜弥ちゃんの柔らかい声に振り返って悶々する気持ちを抑えつつ。
亜弥ちゃんが手にしているポラ写真に目をやった。
えぇー…とこれは。
ああ、コンサートの合間にシゲさんと撮ったような……あぁぁぁ
- 802 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:51
-
「なぁーに、これ?」
キス写真。
何で家にあるの的な衝撃だけど、よくよく考えればよっちゃんが勝手に撮ったやつで。
それをうっかり持って帰ってきちゃったんだっけ。
捨てるのもシゲさんに悪いしどうしようかと思ってたら…とってあったんだ。
「ち、違うこれは」
「ふーんそっかいつもあたしにちゅーするみたいに色んな子としてるんだぁ」
「誤解だよ亜弥ちゃ」
「…たんの…」
「え?」
身を乗り出して美貴の肩に手を置いた亜弥ちゃんは、美貴の左頬を掴み
- 803 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:52
-
「いだぁぁぁいっ!あ、亜弥ひゃんいはっ」
「ばかたん!浮気者!!」
「違うんだってばっ…いだい、いだだだっ」
思いきりつねられた。
- 804 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:52
-
いだいいだいいだいスカルプチャーが刺さって痛いっ。
涙目の美貴を見てやっと亜弥ちゃんは手を離してくれたけど、ぷいっとそっぽを向かれた。
そんな、美貴のせいじゃないのに。
言い訳は通用しないみたいで、亜弥ちゃんは唇尖らして機嫌が悪くなる。
いつもはキスしちゃえば直る機嫌も、今は余計な事になるような。
アタフタしているうちに、亜弥ちゃんはキッと美貴を睨んでぽつりとこう言った。
「……ヤだもん…」
「…ふぇ…?」
「たんは、あたしのなのに。他の子に、あげたくないもん…」
「……あ、亜弥ちゃん?」
「…分ってるよ?遊びだって事ぐらい。でも…ヤだ」
膝を抱いて呟いた亜弥ちゃんはふてくされてて、美貴をまた睨む。
- 805 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:52
-
何考えてもごめんって言葉しか言えないけど、手を精一杯伸ばして亜弥ちゃんの頭を撫でた。
顔を上げた亜弥ちゃんは嫌そうに唇を噛み締めるけど、抵抗はしない。
こいつ、本当に美貴の事好きだな。
知ってるけど。やっぱり、嬉しいな。
「もう、しないよ。亜弥ちゃん以外の子と、キスもしない」
「嘘だ。たんに言っても無駄」
「…じゃあ最初から言わなくても良かったんじゃ…」
「もぉ!たんには乙女心がわかんないの!!」
「……ハァ、すいません」
「………ばか。でも」
「…ん?」
「……信じるから。あたししか、見ないって」
いつもそうなんだけどなぁ。
- 806 名前:キスの言い訳 投稿日:2005/03/22(火) 17:53
-
亜弥ちゃんは少し笑って、美貴の胸に飛び込む。
少し脇腹が痛んだけど、笑顔で受け止める。
当分は、他のメンバーとも遊べないかな。
亜弥ちゃんの唇にキスを落として、そんなことを考えた。
FIN
- 807 名前:証千 投稿日:2005/03/22(火) 17:54
- えーと遅い更新申し訳ないです。
多忙のためパソコンに触れる機会があまりなく、執筆も滞り…
放置だけはしないのでとりあえず短編を更新しました。
これからも遅くなりそうですがよろしくお願い致します。
- 808 名前:証千 投稿日:2005/03/22(火) 17:55
- 一応かくしておきます
- 809 名前:証千 投稿日:2005/03/22(火) 17:55
- 雪の方も更新しなければ…
- 810 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 07:41
- 更新きてたー!!
甘いです!
- 811 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:05
- 目が覚めると、何故か生温いベッドの上で感じる誰かのぬくもり。
ふざけてよっちゃんが入って来たのかと思って「このスケベオヤジ」と布団を剥がしたんだけど。
誰ですか。
華奢で白い肩の、しかも薄着っぽいオンナノコがこちらを見ている。
女の子。どこからどう見ても女の子。
よからぬことを犯してしまったとか思うより先に、恐怖で満たされた精神。
空白の昨晩、美貴は一体何をしたんでしょう。
- 812 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:06
-
「いらっしゃいませ!!」
一応、焼肉屋「藤本帝」。いや「藤本亭」の娘やってます。
結構でかい店の割に従業員が少なくて毎日のようにパシらされる日々。
給料は貰えないわ肉は食わせてくれないわで結構安い扱いされてる。
しかもこのアイドル級の笑顔は自分でも信じられない。
酔っぱらったクソ親父とかゲ○をトイレでぶちかましたリーマンに多少苛立ちを覚えるけどそれでもガマンにガマンを重ねて、「あ、大丈夫ですよぉ」なんて事を笑顔で言うんだから。
大丈夫じゃないっつの。排泄物処理は人間において最大に嫌悪感を感じる作業だっつの。
- 813 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:06
-
「ミキティ、3番テーブル行ってきて」
「えぇ?今忙しいんだからよっちゃん行ってよ、レジだって誰もいないんだから」
「…だ、だってよぉ…アレ」
「あ?」
唯一の女従業員、美貴の1個年下よっちゃん。
見た目は男だけど実は自称乙女の大馬鹿犬のよっちゃんは、こっそり美貴に耳打ちをしてテーブルを見遣った。
こそこそ喋りやがって変な所で女の子丸出しなんだから。
テーブルではビールジョッキ片手に酔いまくってるリーマンが5、6人程ドンチャン騒ぎ。
だから個室連れて行けっつったのに。
- 814 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:07
-
「やだよ、関わりたく無い。よっちゃん早いとこ追っ払ってよ」
「無理だよまだいる気だぜ?閉店時間もまだまだだし、帰れなんて言えるわけないじゃん」
「ああもうこの男女。もういいよ、美貴が行く」
「…だったら最初から行けばいいのに」
額にネクタイ巻いてぎゃはぎゃは騒いでるやつらには1発言うしかない。
言って済まなけりゃ鉄拳でも喰らわす所だけどここは抑えて、睨みきかせて終らせてやるか。
捨て台詞によっちゃんが残して行った言葉を胸に、ほろ酔い気分の群れ達のテーブルに立ちはだかる。
「すいませぇん、周りのお客さまに御迷惑がかかりますのでお静かにして頂けますかぁ?」
「まあまあ堅い事言わずに、ほら姉ちゃんも飲めよっ!」
「いや仕事中なので。っていうかそれよりもお静かにしていただければ…」
「なんだぁ!?部長の言う事が聞けないのかぁ?」
「や、ですからそういうことでは」
「んだよ、つまんねぇなぁ。胸は無さそうだけど、口だけは達者な女だなぁ」
「はっはっは!その通りです部長!」
手に持っていたビールグラスにビキッとヒビが入ったのが分った。
これはもう睨む所じゃおさまらないことが自分でも理解できる。しかも胸の事を指摘されたのが一番、一番ぐさりと突き刺さったのにも関わらず、このクソ共は。
- 815 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:07
-
オヤジ達に向けるまでもなく、テーブルに向かって振り下ろそうとした拳に力を込めた。
ここは物に当たってびびらせれば丸くおさまるだろう。
「あのぉっ、うるさいんですけど!!」
熱を持った拳を止めたのは、一人の女の子だった。
振り上げた拳を店内エプロンのポケットに突っ込んでいた美貴の隣で、女の子はオヤジ達
にそう叫んだ。
なんだこのコ。
厨房の影にかくれてるよっちゃんでさえ驚いてるや。
にしても、女の子が叫んだ瞬間に店内の温度は一気に下がった。無論オヤジ達も無言になる。
- 816 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:08
-
「…な、なんだおまえはっ!」
「何だじゃありません。うるさいんですってば」
「ガ、ガキのくせに大人に何言うんだ!!」
「ガキじゃありません高校生です!あなた達がうるさいから食事が出来ないんです!」
「なんだぁ〜女子高生かぁ?悪かった悪かった、じゃあ一緒に酒でも飲もうや」
「ちょ、離して下さい!」
「お詫びだよ、ほんのね…」
ぷつん。
なんていうんだ、その。多分美貴の中にある堪忍袋の緒っていうのが、音を起てて切れた。
こんな最低な客は今までで初めてだと思う。
女子高生と名乗った女の子の手を無理矢理掴んで厭らしい笑みを浮かべるオヤジ達。
その瞬間に、さっき躊躇った拳をテーブルの上に放った。
- 817 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:08
-
ガシャァン
「…………やっちゃったよ、オイ…」
ごめんよっちゃん。一緒に無期のトイレ掃除、付き合ってよ。
- 818 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:12
-
「…本店の割引券を差し上げますので、お帰り下さい」
「ヒッ…き、君たち帰るぞぉっ!!」
「は…はいっ!!」
ひきつったツラを下げて、手渡した割引券をひったくりオヤジ達は大急ぎで帰って行った。
少しジンジンする拳を他所にふと横を見ると、震えてる女の子。
え、ちょっと。
な、泣いてる…?
- 819 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:13
-
「ひっ…っく…」
「ご、ごめん…大丈夫?え、えと…わぁっ」
腰にきゅっと巻き付く腕に、思わず声をあげてしまった。
泣き出した女の子は美貴に抱きついてそのままぐすぐす。
周りにはポカンとしたお客さんがいて、こんな所を一斉に見られたら大変な事に。
でも、泣いてる子を放っておくのは美貴の良心が痛む。
見た目はごついって言われるけど実は泣きに弱いんだよ。ふん。
それにしても…なんか、結構可愛い子だぁ……
「亜弥ぁ!どうしたんお前!?…さてはお前かこのヤルォォ!!」
「うぎゃぁぁぁぁっ!?」
「違うのっ、パパ違うのぉ!!」
「何が違うねんダボォッ、帰るぞっ!」
両腕をゴツイ体格の男に掴まれて悲鳴をあげた美貴は、そのまま女の子を手放してしまった。
どうやらこの女の子のパパらしく、女の子は必死にパパに抵抗していた。
だ…だめだ、意識が飛ぶ……
- 820 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:14
-
―オヤジからの説教後シーン―
「あのっ、助けてくれてありがとうございました!」
「…いや、むしろこっちが助かった…ような気がしないでもないような…」
「……かっこ、良かったです。店員さんがおじさん達にキレちゃった時」
「かっこ、良かった…かなぁ、あ、ありがと」
ぽわわーんとした空気で、女の子は美貴の事をかっこ良かったと言ってくれた。
これなら無期のトイレ掃除(よっちゃんもね)もラクにこなせそうだった。
オヤジから説教をされた後、女の子のパパは誤解だったということでオヤジに謝ってきた。
「昔ママを賭けて恋敵だったやつに激似やった」などとわけのわからないことを述べて謝ったそうだ。
女の子は申し訳無さそうに美貴にまで頭を下げて、また少し涙を浮かべていたけど、美貴が大丈夫だよと言うと安心したように笑ってくれた。
- 821 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:15
-
その後に、女の子のパパに酒をこれでもかと飲まされたんだっけ。
「お詫びやお詫び」と言ってありったけの酒を突っ込まれた挙げ句、そのまま店でうちのオヤジと従業員で宴会状態に。結局美貴が追い払ったオヤジ達と同じ状況だったと思う。
「みきたん、大丈夫?飲み過ぎだよ?」
「えへへ、平気だよぉー。亜弥ちゃんも飲もうよぉ」
「ダメだよぉあたしまだ高校生だもん」
「えぇーっ」
…って、膝枕してもらってビール片手に甘えまくってた……。
そうだ、亜弥ちゃんって言うんだっけ。
笑顔がすっごく可愛くて、甘ったるいくらいの声で「みきたん」なんていう
こっぱずかしい名前で美貴を呼んでた。
で、宴会は店が閉店してからも続いて…って、残ってたお客さんどうしたんだろ?
オヤジの事だから追っ払っちゃったとか……
…そっか。じゃあ亜弥ちゃんのパパ、まだ下で寝てるんだ。
夜中じゅう飲んでたから酔いつぶれてるだろう。…だから、亜弥ちゃんが美貴のベッドで寝てるんだ。
「にゃふふ、一緒にねよぉっ?」
こんなセリフを美貴は、恥ずかし気もなく亜弥ちゃんに言ってのけたんだよね。
失神しそう。
- 822 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:16
-
「…あの、えと…亜弥ちゃん?朝だから起き…」
「……たん」
「はいみきたんです。…じゃなくて、ねえ?」
「…んぅ、まだ眠いぃ」
ねえ、こんな子と朝まで一緒だったんだっけ。
目をぎゅっと瞑って駄々をこねる姿はまるで幼い子供のようだった。
相手は女の子だとは言え、夜を共にしてて何で何もしなかったんだろう。
正気の脳だったら迷わず手を出してたかもしれない。
って、そんな危ない事は考えないで。
ぶっかぶかのティーシャツに、多分下着だけ履いてるんだと思うけど丸まって眠ってる。
こんなドラマみたいなシチュエーションって普通じゃ有り得ない。
- 823 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:16
-
「…取りあえず、下行こ…」
二日酔いでフラフラの頭を抱え、静かに階段を降りた。
亜弥ちゃん起こしたらいけないからね。
- 824 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:17
- 案の定、店の厨房に繋がるまでの居間には大の字で眠る亜弥ちゃんのパパとうちのオヤジ。
従業員の人達は帰ったらしく、その上飲み散らかしや食べ散らかしのゴミまで綺麗に片付けてってくれたようですっかり昨晩とは違った様子。
オヤジの脇腹を一ケリして、取りあえず顔を洗いに洗面台へ。
ちくしょー、シャワーも浴びないと。昨日のごたごたで風呂も入ってない。
パシャパシャと冷たい水を顔に浴びる。
えいくそ、つめたい。
「あ、タオルタオル…」
「はいっ」
「ありがと」
手探りで探すと突き当たる柔らかいもの。
あ、タオルだ。
誰だか知らないけど渡してくれた人ありが……
- 825 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:17
-
「うわぁぁ!?あ、亜弥…」
「にゃはぁ、おはよ」
「おは、おはよう……」
引きつった笑顔でいると、亜弥ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
起きちゃったのね、いつのまにか。
タオルで顔をふきふき、至らぬ思いが込み上げて来る。
だってそのぶっかぶかのシャツで美貴を見ないでよ。
目線が…どこに合わせればいいのかわかんないじゃんか。
なんでジャージを貸してあげなかったんだろう。むしろこっちの方が良かったとか、昨日の美貴はそう思ったのか!?えぇ!?
- 826 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:18
-
「ごめんね、昨日は色々迷惑かけちゃって。パパ起こして帰るから…」
「や、や…まだいいよ、お父さん起きるまで大丈夫だから」
「でも…」
「い、いいから!どっちにしろ…うちのオヤジもまだ起きないと思うし…」
「…あの、みきたん?」
「……は、はいっ?」
その身体が、その目が美貴をがっちがちに固まらせる。
もじもじと指を弄んで美貴を見上げるその姿はすごく可愛らしくて。
昨日みたいにぎゅっと抱きしめてあげたいんだけど、そうはいかないからガマンして。
おずおずと口を開いた亜弥ちゃんに、にやにやしながら阿呆なツラをさらす。
「…お、風呂…貸してくれる?」
「……あ、ああお風呂!そ、そうだよね昨日美貴も入ってないしっ…ち、っちがくて、美貴と一緒に入ろうとかそんな遠回しな事は一切考えていないわけで…」
「…ぷっ」
「……う…」
「にゃははぁっ、たんってばかわいぃー」
「………ごめん」
最低。なんて下劣そして卑劣な事を言ってしまったんだろう。
- 827 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:18
- 亜弥ちゃんは笑ってくれてるけど、うっかりというかしっかり言ってしまったこっちの身は大変な事になってる。
一緒に入ろうって、馬鹿じゃん美貴。
つい本音…なのかな、ぽろっと口から出た。
「いーよ。一緒に入ろ?」
「へ…へっ?」
「にゃはっ、洗いっこしようねぇっ」
「う、うん!」
すみからすみまで、ね。
- 828 名前:上塩タン焼き226円 投稿日:2005/04/16(土) 21:19
-
焼肉屋での出会いは、美貴にものすごい出来事をもたらしました。
酔っぱらいにキレてテーブルをへこませたり、無期のトイレ掃除を命じられたけどそれよりも大切なこと。
これ、恋っていうの?
亜弥ちゃんに恋してしまいました。
さて、これから焼肉屋「藤本亭」はどうなるんでしょう。
つづく。
- 829 名前:証千 投稿日:2005/04/16(土) 21:23
- えー長期に渡り更新をしていなくて申し訳ないです。
代わりと言っては何ですが中編を載せました。
つづきます一応。前回書いてたあやみきれなも次次回ぐらいに載せたいです。
こんなに仕事が忙しくなるなんて聞いて無い・゚・(ノД`)・゚・
次回更新は未定ですが頑張って早めにしたいと重います。
ps、雪の更新はしばらくお待ち下さい。これ以上放置にならぬよう努めます故。
>810様 こんな作者をお待ち頂きありがとうございました。
たいした物も書けませんが何とぞよろしくです。
- 830 名前:証千 投稿日:2005/04/16(土) 21:24
- 矢口さんの件については異常に冷静なワタシ。
好きなのに何でなんでしょう(知るか
- 831 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 07:39
- 更新お待ちしていました。
ベッドインしちゃった二人、どうなるんでしょうかw
- 832 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/23(土) 12:49
- >>831
ネタバレには注意しようね。
- 833 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/12(木) 22:48
- 証千さん、こちらも雪板も更新お待ちしております…マジで。
- 834 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/14(木) 23:08
- まだかなあ
- 835 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/17(日) 05:05
- 待ってます待ってます。
藤本亭はどーなるん?
- 836 名前:証千 投稿日:2005/08/13(土) 02:16
- えー…まず最初に一言。
待って下さっていた読者の方々、申し訳ございませんでした…
約4ヶ月に渡る放置プレイによりこちらの方も元々無い腕が更に鈍っております。
焼肉の方のストックがPCの不具合により帳消し(ノ`Д´)ノ┻┻゜.*':。
そのため書き直しの間、ちょこちょこと短編をあげたいと思います。
自分勝手で申し訳…
ではよければどうぞ。前作のsmile on meと似たようなお話です。
- 837 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:17
- えー、もうすぐで亜弥ちゃんの大好きなドラマが始まる夜の9時きっかし。
何でこんな実況口調なのかと言うと、ミキの幼馴染みもとい恋人亜弥ちゃんがまだ家に帰って来ないのです。
門限をとっくにすぎたきょうび、パパさんはうろちょろしながら落ち着かない様子で怒りを露にしてる。
ママさんはゆったりとした感じで、心配して家にやってきたミキにお茶を入れてくれた。
下の妹達はふわぁと欠伸をしてそれぞれの寝室に戻っちゃった。明日も学校あるし。
っていうか、それは亜弥ちゃんも同じの筈なのに。
- 838 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:17
-
「…遅い。おそいおそいおそいおそいおそ」
「パパ落ち着きぃ。いらん妄想しすぎやで」
「…せやかてママ、亜弥が見知らぬ男とケッタイな事しとったらどないすんねん!」
「パパさん、妄想さらに膨らまし過ぎ」
「せや、美貴ちゃんの言う通りやのに」
見知らぬ男とケッタイな事ねぇ…
んなことあったらそいつブッ殺して墓場逝きにしてる所だけど。
カチカチと時計の針が進むなか、突然ガチャッと玄関のドアが開く音が。
パパさんは猛烈な勢いで玄関に向って走り、途中で飼ってる犬の尻尾を踏んづけてった。
美貴とママさんはノソノソとその後を追いかけて、取りあえずホッと一息。
にしても、門限破るなんて珍しいなぁ。
- 839 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:17
-
「あ…あ…亜弥…」
「おかえり亜弥ちゃ…ってよっちゃん?」
「あれ?みきちーもいたんだ。こんば…」
「ワ、ワイの娘に何したんじゃこのヴォケェェェ!しばいたるで!!」
「へ?ってグァァァ」
今のパパさんを止められるのは、誰もいなかったんだろうな。
- 840 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:18
-
あっと言う間に美貴の友達よっちゃんはパパさんのアッパーでブッ倒れてしまった。
えーと、このままじゃ読者の人に内容が伝わらないんでまた説明しまーす。
亜弥ちゃんは高校の友達とショッピングに行った帰り、バッタリ美貴と共通の友達よっちゃんに会った。
久しぶりに会ったもんでゲーセンとか色んな所まわって遊んでたらもうこんな時間。
慌てる亜弥ちゃんを紳士的にバイクで家まで送ってあげたのは良いけれど、そこをパパさんは勘違い。
なんせ男勝りな格好ばっかしてるよっちゃん。そこらへんのチャラ男と間違えちゃったのね。
パッと見美形の男子にしか見えないから、殴られてもしょうがなかったか。
- 841 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:18
-
と言う訳で、パパさんが顎にバンソウコウ貼っつけたよっちゃんに土下座してます。
「ホンマにすまんかった。誤解とは言え、女の子に関西風スペシャルアッパーくらわしてしまうなんて…」
「いやいや、全然平気ですよ慣れてますから。ちょっちびっくりしたけど。関西風カッケー」
「そうだよパパさん。よっちゃん、人を殴った事無いけど殴られた事はたくさんあるんだから」
「そうそう過去の惨劇が蘇るなー…ってみきちー」
「ハイハイ。で、亜弥ちゃん?」
冗談混じりの反省会が終って、ソファにちょこんと座るちいさな姿。
よっちゃんがいたとは言え、門限破りはそれなりに叱るべきだ。よっちゃんが代わりに謝ったとしても、結局は亜弥ちゃんの責任だしね。
- 842 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:18
- 「亜弥」
「……ごめん、なさい」
「連れ回したあたしも悪かったんで、そんなに怒らないでやって下さい」
「こんな夜遅くに未成年引っ張ってくバカはよっちゃんしかいないけどね」
「…ごもっともっす」
「まあええやないの、亜弥も反省しとるみたいやし。なぁ?」
「……ん」
パパさんは静かに頷いて、亜弥ちゃんの頭をぽんぽんと撫でてあげてた。
いやー、やっぱり父子愛っていうのが溢れてるね松浦家。
よっちゃんはそれを見送った後必要以上に「関西カッケー」と連呼して、自慢の中古バイクに乗ってさっそうと帰って行った。
亜弥ちゃんはしょんぼりしながら美貴を見ると、はぁと溜め息をついた。
ははーん、よく反省してるようだね。
- 843 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:19
-
「よかったね、パパさん許してくれて」
「んー…でも」
「ん?」
「この間パパにおねだりしといたアクセ、ダメになっちゃうかなぁ」
「……そっちか」
父親の娘溺愛を良い事に、亜弥ちゃんは残念そうにまた溜め息をついた。
そしたら今度は「いいや、みきたんに買ってもらう」だって。大学生にそんな金はないっていうのに。
そんなニッコニコ顔で言われてもどうすることも出来ないっつの。
あー、そんな上目遣いで肩に頭乗っけて甘い声出したって美貴には通用しないよ?
絶対買ってやらない…ぜったい…ぜったいに
- 844 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:19
-
「……おかね、たまったら」
「…にゃふふー♪みきたん大好きぃ」
だいすき、ねぇ。何度も言われたけど、むず痒い言葉だなぁ。
- 845 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:20
- 「ねえ、よっちゃんとどこで会ったの?」
「えーと…なんか、女の人とどっかから出てきたときに…」
「……女の人?どっかって、どこ?」
「えとね、なんかピンクい建物から」
………orz。
(0^〜^)<可愛いコ大好きだYO!
なアイツの事だからそんな事だろうと思ったけど。
ホント見境が無いからあぶなっかしくてしょうがない。可愛ければ誰でも良いんだから。
それにピンクい建物っつったらラ○ホしかないじゃん。亜弥ちゃんが疎いから知らなくて良かったけど
教育上に悪すぎる。
- 846 名前:_ 投稿日:2005/08/13(土) 02:20
-
「なんか変な事されなかった?」
「?んーん、何にも。あ、だけど」
「だけど?」
「よっちゃんにね、ナース服着せてもらったんだぁ」
「っはぁぁ?」
「憧れだったから、嬉しかったぁ〜。また遊ぼうかなぁ」
「だめ、ぜっっっっっっったいダメ」
何されるかわかりゃしない。
ついにコスプレにまで手を伸ばしてたのか…。
てか亜弥ちゃんにナース服着せた時点であいつの死は決定だな。
「あ、写真撮ってもらったから今度取りに行かなきゃ」
「……ほ、ほしいな」
「え?」
「な、なんでもない……」
くそ、欲しいよ。
FIN…
- 847 名前:証千 投稿日:2005/08/13(土) 02:24
- ああ…書き方を忘れますよもう(マテ
たくさんレスを頂いて申し訳ない思いと不謹慎な気持ちが入り混じってます。
返レスは後程させて頂きます。
では。
- 848 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/14(日) 00:41
- 証千さんおかえり!!
待ってましたよw
- 849 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:41
- あちこちの木には蝉がへばりついて、これでもとミンミン言わせてる。
八月もそろそろ終るっていうのに暑さは増すばかりで美貴も夏バテ気味だ。
毎年恒例、宿題はまだ終らせてない訳で毎日遊びまくってたら当然後味が悪かった。
「あっちーよー」
「図書館行けば涼しいって」
「…なあ、ホントに行くの?」
食べかけのだったアイスを一気に口に入れて、よっちゃんは訊ねた。
今さら引き返す訳にも行かないじゃん。クーラー無い自分の部屋にいるより何倍も良い。
なのに、友達のよっちゃんはあんまり乗り気じゃない。
- 850 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:41
-
「いいじゃん、梨華ちゃんだっているんだから」
「…それが嫌なんだってばぁ」
「何で」
「お節介するし、うざったい」
梨華ちゃんっていうのはよっちゃんの恋人。美貴達の一個上で女子大生。
お嬢様高校に通ってて才女だから、よっちゃん通じて友達になってからは勉強をよく教えてもらったりしてる。
家もちょー大金持ちだから図書館なんかでバイトしなくてもいいのに、何故か去年の冬からずっと勤めてる。
人見知りを直したいっていのと、本が好きだからってよっちゃんが言ってた。
…人見知りねぇ。そんなことないと思うんだけど。
- 851 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:42
-
「涼しー。…ちょっと、何してんのそんな所で」
「…あいつ、いない?」
「いないわけないでしょ。ほら行こうよ」
「あわわ」
自分の彼女恐れてどうすんの。
植木の影にかくれてたよっちゃんを引きずっていざ図書館へ。
「べつにいいじゃん、勉強しに来たんだから」
「え、そうなの?」
「…あのさ、美貴の話聞いてた?取りあえずあそこの席行こ」
- 852 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:42
- やっぱり夏休みなだけあって、特別図書館に来る人が多いみたいだ。
美貴達は宿題やってないからそれの為だけど。
席も空席が少なくて、ちょうど窓口の近くにある席しか空いて無かった。
それを見たよっちゃんはあからさまに嫌な顔をして、渋々どすんと腰をおろした。
「あ」
「何?」
「…あれ、松浦じゃない?」
「えっ!?」
よっちゃんが不意に指差した先を慌てて見ると、見慣れた横顔。
- 853 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:43
-
「さては、あたしらと同じ目的か?」
「や…それは無いでしょ。亜弥ちゃん、宿題溜めないタイプだよ」
「じゃあ何してんだろ」
「さぁ…」
美貴達と違って真面目だから。宿題関係なく勉強してるんだと思うけど。
随分真剣な顔してノートに参考書うつしてる。
…かっわいいなぁ。
- 854 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:43
-
「あれ…美貴ちゃん?」
「ゲッ…ぅぁ…」
ボーッと亜弥ちゃんを見てたら、背後から何か高い声。
するとよっちゃんは凄く苦い顔をして、途端に頬が綻ぶ梨華ちゃんを横目で睨んだ。
そこまで嫌う事無いのに。ま、本音はあるんだろうけど。
図書館用のエプロンをしておっとりした感じは、やっぱキレイなんだけどなぁ。
性格も良いし、汚点は無いと思うけど。
「珍しいね、図書館に来るなんて」
「あー、宿題やってないからさ。美貴もよっちゃんも」
「えぇ、よっちゃんも?美貴ちゃん、私で良ければ教えるから」
「…るせー、仕事中に油売ってんなよ。お前いなくても出来るっつの」
まーた憎まれ口叩いてる。
素直じゃないっていうか、そこまで強がらなくてもいいのに。
梨華ちゃんは慣れてるみたいで、笑いながら交わしてるけど。可哀想だなぁ。
- 855 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:43
-
ていうか、ズルイじゃん。美貴だけ独りじゃん。
あそこに、美貴の恋人だっているのに。
「み、美貴参考書取ってくる」
よっちゃんと梨華ちゃんが言い合ってる間に、こっそり席を立つ。
いやだって、近くにいるのに喋らない状況って絶えられないじゃん。
夏休み中忙しくて(亜弥ちゃんが)全然遊べなかったから、その分たくさん喋りたい。
この際勉強なんかどうでもいいや。
- 856 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:44
-
驚かそうと思って、そろそろと後から近付く。
参考書と睨めっこするその表情に、おあずけをされた気分だった。
「…みきたん」
「へ?」
「……逢いたいな」
肩に手を触れる直前、亜弥ちゃんがぽつりとそう零した。
ノートと参考書の傍らにあった携帯を握りしめて、美貴とのメールの履歴を巡らせている。
後に、美貴がいることも知らないで。
まったく、可愛い事するなぁ。
- 857 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:44
-
「そんなに、逢いたかった?」
「…ふぇ?」
周りに人が沢山いることも忘れて、後から亜弥ちゃんを抱きしめた。
ひんやりと冷たくなった亜弥ちゃんの肌が気持ち良くて、このまま眠りたくなる。
久しぶりの感触、亜弥ちゃんの匂い。
抵抗する様子もなくて、そっと目を開けると顔を真っ赤にさせてる。
色白だった頬はピンク色に染まってて、キスでもしてやろうかと思ったけどさすがにここじゃ無理。
- 858 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:45
-
「たんっ…なにしてんのぉ?」
「んー?亜弥ちゃんが逢いたいって言うから、飛んできた」
「ウソだぁ、だってそれさっき言ったばっかだもん」
激カワイイ。
抱きしめた腕を解いて、亜弥ちゃんは美貴を見上げてそう言った。
ホントは放ったらかしの宿題を片づけに来たなんて、バカにされるから言わない。
遠くでよっちゃんが口を動かして「めざわり」なんて言ってる。
ふん、そっちだってさっきからいちゃついてたくせに。
- 859 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:45
-
「勉強、終ったんでしょ?これからデートしよ」
「え?で、でもまだ塾の課題…」
「いーじゃん。それよりミキ、亜弥ちゃんといっぱいちゅーしたい…」
「ばっ、エロたん…」
「へへっ」
触れたい、キスしたい。
ずっと逢えなかったんだから、これくらいの我侭許してくれるよね?
- 860 名前:_ 投稿日:2005/08/14(日) 14:45
-
「…あーあ、見てらんないよ」
「よっちゃん、私達もこれから何処か行く?」
「バッ、バカヤロお前となんて行かねーよ!」
「えぇーたまにはいいじゃない」
「うるせうるせ、さっさと仕事しろ」
FIN
- 861 名前:証千 投稿日:2005/08/14(日) 14:52
- …はぁ、暑苦しい(何
誤字脱字多いと思われます。目を瞑って下さい。
では返レスを。
>831様 レスありがとうございまーす。藤本亭、もうちょっとお待ち下さい。
>832様 あらら、御丁寧にどうもです。ありがとうございました。
>833様 スミマセン随分お待たせ致しました。・゚・(ノД`)・゚・雪の方も何とかがんがりまつ…
>834様 やっとこ更新致しました。お待ちしたみたいで申し訳orz
>835様 藤本亭、只今執筆中にあります。もう少しお待ちを…
>847様 還ってきました。もうすぐで死ぬ所でした。
レスを下さった皆様ありがとうございました。
長い放置プレイにもかかわらず待っていてくれた読者様もいたようで…感激です。
では後程。
- 862 名前:佑貴 投稿日:2005/08/15(月) 21:55
- おもろい!!更新町
- 863 名前:ノンストップ! 投稿日:2005/08/20(土) 02:33
-
「あーやばい禁断症状」
「ごとー、掃除さぼりの言い訳もう考えられないよ」
「てきとーによろしく」
もう、こうなるとダメだ。
頭の中が、ぜんぶあの子でいっぱいになっちゃうから。
禁断症状が出るといつだってどこだって逢いに行く。
授業中だろうが、なんだろうが。
- 864 名前:ノンストップ! 投稿日:2005/08/20(土) 02:33
-
「あーやーちゃぁん」
自分でも自覚してるよわかってるよ。
キショッ。っていつも梨華ちゃんに吐き捨ててるセリフを、自分に言いたくなる。
だけど、ねぇ。
それに笑顔で答えてくれて、ぎゅっとしてくれるんだよ?
このくらいの不快感、周りも認めてくれるよ。
亜弥ちゃんのクラス、いっぱい人いるけどね。まあ美貴だったら平気だろうけど。
- 865 名前:ノンストップ! 投稿日:2005/08/20(土) 02:34
-
「わぁっ…ちょ、たんっ?」
「にひひ、やっほ」
「やっほ、じゃない!また掃除さぼってるー」
「だって亜弥ちゃんに逢いたかったんだもーん」
「もぉー、たんは可愛いなぁ」
あー良い匂い…亜弥ちゃんって赤ちゃんみたいに白い肌だからかな、
香水とか作り物の香りじゃなくてあったかい匂いがする。
こんなこと言った時点でもうセクハラ親父化してるよ。
でも、いいや。亜弥ちゃん、かわいいし。
くっそー、誰もいなきゃキスしてるっていうか押し倒してヤる手前なんだけど。
- 866 名前:ノンストップ! 投稿日:2005/08/20(土) 02:34
-
「亜弥ちゃん屋上行こ屋上」
「屋上?何するの?」
「んー、保健体育の実技?」
「ふぇ?なにそれ?」
「いいからいいから、教えてあげる」
屋上なら、ねぇ。誰もいないし、ねぇ?
亜弥ちゃんが鈍くて良かった。たまに勘付いて逃げるけど。
顔真っ赤にしてチョー可愛いんだよ。結局最後は押し倒してヤッ(ry
ま、今日は青空授業ということで。
しっかりいただきました。
- 867 名前:証千 投稿日:2005/08/20(土) 02:36
- あー…微エロとでも言うんでしょうかね。
あやみきでこういうの最近書けないんで丁度良かった。
>862様 更新待ちしてくれる人がいたんだ…なんか泣きそうです・゚・(ノД`)・゚・
- 868 名前:証千 投稿日:2005/08/20(土) 02:37
- だ…すいません忘れてました。
866の後に続きがあります。
- 869 名前:_ 投稿日:2005/08/20(土) 02:39
-
*おまけ
「バカァッ!授業遅れちゃうじゃんかぁっ…」
「いいじゃん一回くらい。ね、もっかいヤ…」
「しない!みきたんエッチのことしか考えて無いもん」
「そ、そんなことな…ま、待って亜弥ちゃん!」
「知らない!」
FIN
- 870 名前:証千 投稿日:2005/08/24(水) 00:10
- 容量危なげになりそうなんでこれからは雪のスレに。
このスレで書き途中でしたお話もいずれあっちに載せたいと思います。
では雪のスレで。
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