ミステリ短編スレ

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/20(土) 23:08
このスレはミステリー専用の短編スレです。

 【ルール】
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
 森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
 なお、レス数の下限はありません。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
 次の人に終了したことを明示してください。
・問題編・解答編を分ける場合はそう明記した上で、間は空けても1週間以内に
 必ず解答編を上げてください。
・殺人事件も可です。ただしその場合はsageまたはochiでお願いします。
 ミステリーとして成立していれば基本的にはなんでもアリです。
・問題編・解答編と分けた場合、メル欄解答はアリとします。
ただし直接ネタバレを書き込むのは厳禁です。
作者の方でメル欄解答が嫌だという方はお手数ですが断りを入れてください。 
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。

 【注意】
・死んだりするのが嫌なマジファソの方は見ることをご遠慮下さい。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/20(土) 23:09
では一発目、問題編解答編分けます。
3 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:10
ロジックダウト【問題編】
4 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:11

 ツアーの楽しみの一つ、それは遠征先に立ち寄るホテル。
 職業柄色んな所を飛び回る私達にとって、これは欠かせないものだった。
 美味しい食べ物にほっぺが落ちそうになったり、気持ちのいい温泉に骨まで浸かったり。
 特に次の日は移動日で何もないなんてなれば、みんな好き放題に遊んだり暴れたり。
 先輩達なんかはお酒を浴びるほど飲んだりする。
 今日は一体どんなホテルなのか、期待を胸に私達はバスから降りた。

 「着いた〜!」

 早速身体を大きく伸ばしたのは石川さん。その声を聞いた瞬間、我先に我先にと、

 「キショい。」
 「キショい。」

 競うように藤本さんと矢口さんが口走った。
 いつもの事だから誰も石川さんを哀れんだりはしない。

 「よっすぃ〜!」

 それは吉澤さんに泣きついても同じことだった。
5 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:12

 今回のホテルは一人一部屋。10階の12部屋を使えることになった。
 部屋の並びは、

 高橋 藤本 亀井 矢口 吉澤 小川
        廊下
 新垣 石川 道重 飯田 紺野 田中

 部屋番号は高橋さんが1001、新垣さんが1002、藤本さんが1003・・・
 と言う風にジグザグになっていた。つまり私の部屋は1005。
 この並びになったのはホント偶然、というかホテル側の気まぐれらしい。
 ホテル側からしたら私達の交友関係の細かいところなんて分かるわけないから、
 こんなもんなんだろう。

 渡された鍵には部屋番が書いてあった。でも一人だけ困った顔をしている人がいた。

 「あれ、剥げてて分かんない。」

 首をかしげたのは矢口さん。でもすぐに、

 「まあいいや、よっすぃ〜の隣って覚えておこう。」

 お酒たくさん飲む気なんだろうな、なんてふと思った。
6 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:12

 とりあえず部屋の中に入ると、意外にシンプルな造りだった。
 ベッドは二つ。奥のベッドに荷物を置くと、手前のベッドの上に思い切り転がった。

 「・・・疲れた。」

 正直もういっぱいっぱい。1日2回のコンサートは正直多いと思う。
 しばらくして起き上がると、奥の方へと歩いた。
 障子を開けると、小さな机に椅子がこれまた二つ。
 大きく開けた窓からは夜景が一面に広がっていた。

 「ん〜、1万ドルくらいでしょーか〜。」

 変なことを呟いて、自分で勝手に笑う。
 荷物から服を取り出すと、とりあえず私はお風呂に入ることにした。
 汗がまだ流しきれてないし、なんだか窓の景色を見てると気持ちよくなってきたから。
7 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:14

 ―――**
 今回私達が泊まったホテルは食事がポイントのようだった。
 福岡は魚が美味しい、とれいなの自慢通りにお刺身は絶品だった。
 私は大満足。さゆも白身魚は美容にいいの、と私の分まで奪う勢い。
 間一髪でそれを制するとさゆはぷくーっと頬を膨らませて不機嫌そうに笑った。

 食事が終わると私達は一斉に部屋へと散っていった。
 コンサートの後で大分時間も遅い。まさか9時過ぎにご飯を食べる事になるとは思いもしなかった。
 みんなそれぞれの部屋に戻ると、落ち着いてから動き出す。
 私はさゆとれいなにあらかじめご飯のときに話していた。

 「11:30くらいに絵里の部屋に集合。」

 それまでの1時間半はそれぞれ自由に、ということで話がまとまった。
 私はとりあえず鞄の中からトランプやUNO等ゲーム類を探し当て、
 机に置くと夜景を見ることにした。

 ・・・・ちょっと長すぎたかな。
 そんな事を考えていると、部屋のドアノブが回るがした。
 入ってきたのはさゆだった。

 「早いね。」
 「暇なの。」

 考える事は一緒らしい。
8 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:14

 私達は通常階を貸しきって泊まる(別室もスタッフさんたちが埋める)から、
 誰も寝るまで鍵をかけない。いつでも誰でもどうぞご自由に、というスタンスだ。
 階に不審人物がいたらそれだけでスタッフさんが様子を見に走るから、
 なんの不安もなかった。
 だからドアが開いても私は何も思わないし、さゆも平気で入って来る。
 さゆは机の上に置いてあったトランプを拾い上げると、黒色と赤色に仕分けを始めた。

 「スピードやろ。」
 「れいなが来るまでやってよっか。ちょっと貸して。」

 20枚くらいトランプを借りると、私もさゆと同じように仕分けをした。
9 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:15

 れいなが私の部屋に訪れたのはそれから30分ほど経過した11:30頃、
 時間通りだった。
 何故かすごく不機嫌そうで、乱暴にドアを開けると力任せにドアを閉めた。
 ものすごい音に私は思わず手に持っていたトランプをぼとぼとと落としてしまう。
 全く動じないさゆはその間に一気にトランプを置いた。

 「勝ったー!」
 「あ!さゆ今のはずるいって!」
 「勝ちは勝ち。れいなどうしたの?」

 さゆはくるっとイライラが止まらないれいなの方を見た。
 れいなは枕をベッドシーツの中から強引に取り出すとそれを夢中で叩く。

 「あのチビ!!なにと!!なにと!!!死ね!死ね!!」

 れいな様ご乱心です。
 なんだかよく分からないけどここで何かしたらとばっちりを食らうに違いない。
 そう直感した私達はとりあえずれいなは放っておいてスピードを続ける事にした。
10 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:16

 れいなが落ち着いたのは日付が変わった頃だった。
 UNOをしようということになってトランプをしまい、配り始める。

 「7枚くらい?」
 「そんなもんじゃなか?」

 カードを3つの山に分けてさばいていく。
 その途中、さゆが妙に廊下の方を気にしていた。

 「どうしたの?」
 「なんか変な音がするの。」

 言われて耳を澄ますと、廊下の方でなんだかズルズルよく分からない音が僅かに聞こえた。
 UNOを置いてゆっくりとベッドを通り過ぎ、そっとドアを開ける。
 しかし開けた先には誰もいなかったし、何もなかった。

 「・・・・なんだったんだろ。」

 絨毯の上を数歩、裸足で歩いて辺りを見回す。でもやっぱり何もない。
 諦めて部屋に戻って椅子に座り、手札を見ると、私は苦笑せざるを得なかった。

 「やりやがったな二人とも。」

 私がそう言うと二人はにやっと笑った。
11 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:17

 ―――**
 朝、目覚めは隣の部屋の叫び声。私は起きると眠たい目を無理矢理こじ開け、時計を見た。
 朝の5:00。まだ全然寝れる時間なのに、誰だよ・・・。
 さゆも起きてしまったらしい。目を軽くこすっている。
 二人でフラフラとスリッパを履いて外に出ると、横の部屋をノックする。
 ドアには鍵がかかっていなかった。

 「失礼しまーす。・・・どうしたんですかぁ〜?」

 声も出ない。うっすらと歪んだ視界の先には、大慌てする金髪の先輩がいた。

 「財布が!オイラの財布が!あ!」

 突然バランスを崩して倒れる矢口さん。犯人は地面に転がっていたグラス。
 割れたら足に刺さる所。そんな風に怪我されたらたまったもんじゃない。
 明日からもツアーは続くんだ。
 
 「痛〜い・・・・。あ、頭痛い。」

 立ち上がったは良かったものの突然ベッドの上に倒れる。
 顔色はあまり良くない。どうやら昨晩大分飲んだらしい。

 「痛い痛い痛い痛い!痛すぎて割れる!死んじゃう〜!」

 ・・・まだ酔ってるのだろうか。矢口さんはクルクルベッド上を転がった。ふと背を向けると服が汚れていた。
 暴れすぎ。とにかくこんな朝早くから騒がないで欲しい。周りのみんなに迷惑だし。

 「うっさい!!矢口さんうっさい!!」

 と藤本さんがキレながら登場。低血圧なその顔は殺意が芽生えているようにも感じられて、
 一瞬寒気がした。
12 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:17

 藤本さんが現れて以降、早朝にも関わらず何人もの人が矢口さんの叫び声や
 藤本さんのツッコミで起きて矢口さんの部屋に集まった。
 集まったのは私の部屋で寝ていたれいな、新垣さん、紺野さんだった。
 残り5人は今も爆睡中。特に吉澤さんは隣の部屋なのによく寝れるな、と全員で感心した。

 頭によく冷えたタオルを当てて矢口さんを落ち着かせると、口を開いてもらった。
 とりあえず今現在分かっている情報は財布がない。それだけ。
 矢口さんはゴクゴクとコップいっぱいに注がれた水を飲み干すと、話し出した。

 「晩御飯食べた後お風呂入って、その後すぐに酒飲み出したのよ。」
 「偉く早いですね。」

 新垣さんが眉をハの字にさせる。なんだか呆れているように見えた。

 「で・・・記憶がない。」
 『早!!』
13 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:18

 なんて使えないんだ。全員がそう思っただろう。
 頭を抱える矢口さんを見て、不機嫌そうな顔をしたれいなが手を上げた。

 「矢口11時ごろれいなの部屋に来ちょった。」

 全員の視線が今度はれいなへ注がれる。
 れいなは今にも怒り狂いそうなところを必死にこらえて話を続けた。

 「すんごく酔っ払っとったみたいで、れいなに説教を30分以上しよった。
  満足すると「帰る」って一言だけ言って帰ったと。」

 部屋中を沈黙が走る。全員矢口さんを白い目で見つめた。
 矢口さんは一人大慌てに弁解している。

 「や、あの、その、田中、落ち着け、な?わざとじゃないんだ!
  無意識、えーっと無我。そう!無我の境地にいたのだよおいら!」
 「で。」

 会話を止めたのは紺野さんだった。落ち着いた表情を崩さない。

 「矢口さんその後の記憶は?」
14 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:19

 「それは任せろ!部屋に戻って中から鍵をかけて、タンスの中に財布を入れて寝たんだ!」

 それを聞いて即動いたのは新垣さん。
 タンスを開けると1段1段中を覗き込んだ。しかし当然そこに財布はなかった。
 さゆはそれを見て首を傾げると、矢口さんに聞いた。

 「朝起きて財布がなくてそこでずっと騒いでて、さゆ達が来たんですか?」
 「?そうだよ?」
 「さゆ何聞いてんの?」

 私がそう聞いても、さゆはボーっとしたような顔でなんだか考えていて、
 返答してくれなかった。話が進まなくなる、そう感じ取ったのか藤本さんは
 自ら率先して自分達の状況を語り出した。

 「密室からどうやって財布を取り出すかとかそう言う話はどうでもいいですけど、
  一応美貴は何もやってないって証明するために。」

 そこまですごい速さで口を回すと、藤本さんは一瞬間を置き、矢口さんの眼を見て再び話し出す。

 「美貴は美貴の部屋で梨華ちゃんとよっちゃんさんとお喋りしたりしてました。」
15 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:20

 ―――**
 PM11:30

 「よっちゃんさんもうのびてる。」
 「ホントだ。意外に酒弱いのよね〜。」

 美貴達3人も軽くチューハイとか飲んでたんですけど、よっちゃんさん真っ先に潰れて。
 ドアに挟まった状態で眠ってました。
 あんまりそこで寝てると風邪ひきそうだったんで、すぐに二人がかりで担いで
 よっちゃんさんの部屋まで運びました。

 「重!」
 「フットサルで大分痩せたと思ったのに・・・。」

 痩せても大柄だから充分重たいよっちゃんさんを部屋まで運んで、
 もう寝ようか、ってことになって美貴達は自分達の部屋に戻って鍵をかけて寝ました。
16 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:20

 「二人はまだ寝てるんじゃないですかね?」

 相変わらず不機嫌そうな藤本さん。
 その目つきはいつも以上に鋭くて、まるで刃物のようだった。
 近づいたら怪我しそうな、そんな感じ。よほど睡眠を邪魔された事がムカつくみたいだ。
 これ以上沈黙が続くと今にもキレかねない様子を見てか、新垣さんが仕方なしに口を開いた。

 「私は5期の4人であさ美ちゃんの部屋にいました。」
17 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:21

 ―――**
 PM11:00

 「何する何する?」
 『大貧民』
 「よしっ、じゃあやるかぁ!」

 私達はご飯を食べ終わったらすぐ部屋に集まってトランプをしてました。
 明日は移動日で休みだからいくら起きても平気だー、なんてはしゃいじゃってました。

 「うげっ」
 「愛ちゃん弱ーい。」

 ちなみに愛ちゃんの一人負けでした。
 で、1時間くらいやってたんですけど、日付が変わる前くらいから、

 「・・・・・。」
 「麻琴。」
 「はっ!!」

 まこっちゃんがうとうとし出したのでお開きになりました。
18 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:21
 
 まこっちゃんは今にも倒れそうなくらいに眠そうに向かいの自分の部屋へと歩いていきました。
 あさ美ちゃんは部屋とドアの間から顔を出して手を振ってくれたりして可愛かったです。
 愛ちゃんも寝ぼけてたみたいで、なんかドアをガチャガチャやってました。

 「どうしたの?」
 「あれ〜・・・。」

 不思議そうな顔をして鍵を取り出すと、すぐに鍵穴に突っ込んで中に入って、

 「なんでやろ〜。」

 なんて言ってました。
 その後私も部屋に戻ってサプリメントを取ってすぐに寝ました。
19 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:22

 ―――**
 新垣さんが話し終えると、矢口さんの視線は私達6期の方へと向けられた。
 その目は必死で余裕が全然窺えない。
 怖かったので私は勢いで一気に矢口さんに昨日の行動を全部話した。
 それを聞き終えた矢口さんは頭を抱えると、

 「二日酔いがぶり返してきた。」

 ベッドの上に倒れてしまった。この人リーダーになって大丈夫なんだろうか、
 ちょっとだけそんなことを考える。

 紺野さんが提案した。

 「まだなくなったと決まったわけではないですし、部屋の中隈なく探しましょう。」

 というわけで頭痛で動けない矢口さん以外の6人で部屋を漁り始めた。
 まず最初に新垣さんが今一度タンスに食いついた。
 私はバスルームの中に入ると、タオルを入れる棚を調べてみた。
 やっぱりそこには何もない。

 「・・・・。」

 一体どこへ行ったんだろう。
 それらしき姿はバスルームには少なくともなかった。
20 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:23

 バスルームから出てくるとみんなそれぞれバラバラに財布を捜していて
 探す場所の方が見つからなかった。でも私は一人だけ変な行動を取っている娘を発見した。

 「さゆ。」

 ブチッ、ブチッ、ブチッ。

 「こーすると気持ちがいいの。」
 「いや、気持ちがいいとかそう言う問題じゃなくてさ・・・。」
 「だって・・・ほら。」

 さゆが爪先立ちになって指を伸ばす。
 さゆの指差した障子のてっぺんには穴が開いていた。
 確か障子は少しでも穴が開いたら張替えなければならないんだっけ。
 矢口さんホントにリーダーでいいのかな・・・?
 机の上にはグラスが一つ、ボトルと一緒に置きっぱなしになっていて、
 少しだけ酒臭かった。
21 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:23

 結局部屋の中に財布はなかった。
 矢口さんは冷静な判断ができない状態で、とりあえずメンバーのうちの誰かが
 犯人だと信じてやまない。確かに状況的にそれが自然なんだろう。

 「でも、矢口さん鍵かけて寝たんですよね?」

 それが最大の問題点。矢口さんが内側から鍵をかけたことで生まれた密室。
 この中からタンスの中に入っていた財布だけをすっと抜き出すなんて、
 可能とは思えない。でもさゆは一人、見当違いな質問。

 「矢口さん、ここ何号室か分かりますか?」
 「今関係ないだろ!・・こうなったら残った5人全員叩き起こし」
 「その必要はないです。」
 『え』

 声を挙げたのは意外な人物だった。少なくとも私にとっては。

 「さゆ、どうしたの?」
 「分かったの。財布がどこにあるのか。」
 『え?!』

 この発言には全員驚かずにはいられなかった。
 さっきから一番やる気がなさそうだったさゆが、こんな事を言うなんて、
 誰が予想しただろう。
22 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:25

 「で、どこにあるんだシゲさん!!」

 矢口さんは相変わらず余裕のない様子でさゆにしがみ付いた。

 「矢口さん落ち着いて。」

 私がなだめると、矢口さんはベッドの上にぽんと腰掛けた。
 さゆは矢口さんが座ったのを確認すると、口を開いた。

 「とりあえず、着いてきて。」

 そう言うとさゆは歩き出した。
 
 なんだか悔しい。
 気がついたら私はさゆが部屋から一歩足を出した瞬間、ちょっと大きめな声を出していた。

 「あ〜あそこか〜!」

 ただの負け惜しみ。それでしかなかったはずなのに。
 さゆは意外そうな顔をしたあとに、ニコッと笑ってみせた。

 「どこ?」

 とんでもないことを言ってくれたもんだ。
 解答を求められたなんだか意味もなく燃えてきた。
 恥かくくらいなら、勢いでいけるところまでいってしまおう。

 「勝つのは私だ金田一君!」
 『は?』

 でも部屋の空気がやけに冷たかった。
23 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/20(土) 23:26
問題編終わり。解答編に続く。

メル欄解答はご自由に。というか待ってます。
24 名前:287 投稿日:2004/11/20(土) 23:54
スレ立てご苦労様です。
25 名前:名無し 投稿日:2004/11/21(日) 01:13
うーん、なかなかわからないもんですね。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 02:15
難しいですね。
こういうの初めて真剣に考えました。
27 名前:名も無き読者 投稿日:2004/11/21(日) 13:35
スレ立てお疲れさまです。
うぐ、難しい・・・。(汗
妄想に近い推理の結果得られた答えなので自信が無いッス。
でわ解答編楽しみにしてまする。
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 15:19
スレ立てお疲れ様です
うーん、カチッとははまらなかったんだけどこれしかない気がするなぁ
解決編楽しみにしてます
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:51
ロジックダウト【解答編】
30 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:52

 さゆは相変わらずボーっとした顔をして、私を見ているんだか見ていないんだか、
 全然分からなかった。ていうか、なんで私は対抗意識を燃やしているんだろう。
 大体さゆが本当に分かっているかどうかも分からないのに。

 みんなの視線が私に集中している。とりあえず、やるしかないようだ。
 私は自分なりにこの事件を解決しようとあーだこーだ考えた。

 「で、誰なの?」
 「あ、ちょっと待ってください。言う事整理します。」

 勢いで言ったからこうなる。
 私は素早く部屋の周りを見渡した。
 一通り見回すと、この部屋には証拠が溢れている事に気がついた。
 それを組み合わせて、色々考える。そして結論に達した。
 あの人以外、ありえない。

 みんなを相当待たせた気がする。急ごう。
 私は自分の推理を信じて、口を開いた。
31 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:53

 「犯人は飯田さんです。」

 みんなの表情に驚きの色。何故だか少し気持ちがいい。さゆは表情一つ変えずに私を見ている。
 ・・・その心の内が読めないけど、とりあえず大丈夫かな?
 私は気持ちを落ち着かせると、話を続けた。

 「これを見てください。」

 私はさっき見た障子の穴を指差した。でも勿論穴は高すぎて全然届かない位置。

 「さゆ、ちょっと来て。」

 私はさゆを呼び寄せると、手を伸ばしてもらった。
 さゆでもギリギリ届くか届かないからくらいの位置。一番高い位置にある穴だ。

 「この穴、来た時からありましたか?」
 「・・・・なかった。」
 「では、誰が開けたんでしょう?」

 私の質問に、紺野さんは首をかしげながら答えた。

 「矢口さん?・・あ、でも無理か・・・。」

 一人納得した紺野さんの代わりに私は言った。

 「もし仮に矢口さんがこの穴を開けたとするならば、何か物を投げた、
  ということになります。でもそれらしきものは何も落ちていない。
  それにここで穴を開けたという事実を隠すメリットも特にない。
  財布の方が大事ですもんね。」
32 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:54

 私は脳をいつになくフル回転していた。今までの人生で多分一番くらいに。
 それっぽい言葉遣いに仕草。まるで役に入ってるような錯覚を覚える。

 「そしてさゆが届かない。となると必然的に残るは吉澤さんか、飯田さん。
  でも吉澤さんはずっと藤本さん達と一緒いた、そうですよね?」
 「うん。・・・ってか亀ちゃん喋り変。」
 「じゃあエリザベスのキャラで行きます?」
 「いやそれはいい。」

 藤本さんを納得させて、次に進む。

 「つまり、飯田さんは少なくとも昨日この部屋にいたことになります。
  そしてここに落ちているグラスと、机の上にあるグラス。そしてボトル。これが示す事。」
 「矢口さんと飯田さんは二人で酒飲んどったってこと?」

 矢口さんはその言葉を聞いてハッとした。

 「思い出した!カオリと二人でベロンベロンに酔ったんだ!
  それでその勢いで・・・田中の部屋に・・・・その・・・。」

 矢口さんはれいなの鋭い視線にたじたじだった。
 流石に酔って取った行動だし、騒ぎを起こしてこんな朝早くから起こしちゃったし、
 悪いなとは思っているんだろう。
33 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:55

 「矢口さんがれいなの部屋に行っている間も、飯田さんは部屋にいた。
  矢口さんが部屋に帰ってきて、財布をタンスに入れて寝た後、 
  それを抜き取って外へと出た・・・。」

 ここまで言うとなんだかすごい充実感を感じた。
 みんな納得した表情で頷いている。ただ一人、さゆを除いては。
 じーっと私の顔を眺めると、やがて呟いた。

 「惜しいの。」
 『え?』

 これで解決、さあ飯田さんの部屋へと行こうというときに腰を折られる。
 完璧だと思ったのに、さゆのその一言はなんでかよく分からないけど
 説得力があって、みんなの足が止まった。

 「まず、密室の説明ができてないの。」
 「あ。」

 迂闊だった。矢口さんは鍵をかけて寝た、と証言していた。
 でも今の私の推理だとそれが崩れてしまう。

 「それに。」

 更にさゆは続けた。

 「飯田さんじゃないの。」
34 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:55

 誰も何も言わない。ただ、みんなの視線が痛い・・・。
 でもここで反論しないと負けた。意味もなく勝負意識を燃やした私は言い返そうと試みた。

 「でも」
 「飯田さんは確かに部屋にいた。でも動機がないの。」

 確かにそれを言われると、飯田さんはお金に困っている事はない。
 むしろ貯蓄をしていると言う噂もあった。

 「そ、そんな事言ったら他のみんなもないよ!」
 「そう。」

 私の反撃にも、さゆは笑顔だった。

 「そこがポイント。誰にも動機がないの。れいな以外。」

 全員の視線が一気にれいなに集まる。れいなは大慌てで反論した。

 「ちょ、れいなはさゆとずっと」
 「うん。れいなはずっとさゆ達と一緒にいて、寝たのも一緒の部屋。だから無理なの。」
 「でも寝ている間に抜け出せば」
 「矢口さんの部屋は鍵かかってたでしょ?」

 何を言っても言い返される。なんとなく分かった。
 私は間違った答えを無理矢理正当化しようとしている。
 いつもぼっとしているさゆに負けるのがなんとなく悔しいのかもしれない。
 でも、もういいか。私は一歩引くと、黙ってさゆの推理を聞くことにした。
35 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:56

 「矢口さん、ここ何号室でしたっけ?」

 いきなりの質問に矢口さんはカチンと来たようだ。すぐに言い返す。

 「だから関係」
 「分からないんですよね?」
 「・・・・はい。」
 『えーー?!』

 矢口さんは小さな体を更に小さくさせて凹んでいる。
 なんだかすごく可愛かった。

 「矢口さんは多分、鍵はしっかり持ってれいなのところに行ったと思うの。
  でもその帰り、鍵を見ると部屋番が剥げていて一の位の1と7の区別が付かない。
  でも矢口さんには自分の部屋の手がかりがあったの。」
 「手がかり。」
 「それは矢口さんが来た時に言ったことば。」
36 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:57

 「まあいいや、よっすぃ〜の隣って覚えておこう。」

37 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:57

 「でも、吉澤さんは別の部屋にいた。藤本さんの部屋で酔っ払って潰れて、
  ドアに挟まってた。それを見て矢口さんは思った。「ああ、この隣か。」
  そして入った部屋は、1001。高橋さんの部屋なの。」

 矢口さんお顔はとにかく驚いていて、まるで高橋さんみたいな顔になっていた。
 金魚みたいにパクパク口を開けたり閉じたり。
 横に立っていた藤本さんは耐え切れずにプッと噴出していた。

 「で、鍵をかけて財布を入れて、お休みなさい。」
 「でも矢口さんが起きたのはこ・・・・。」

 途中まで言って新垣さんの口の動きが止まった。それを見て私も気づいた。
 昨日の夜の奇妙な現象を。

 「高橋さんは何故か鍵をガチャガチャやってから部屋に入った、って言っていましたよね?」
 「うん。じゃあ矢口さんが中にいたってこと?」
 「そういうことになります。高橋さんは中に入って驚く。矢口が寝ている。」
38 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:58

 「ごめん。」
 「いや愛ちゃんいませんし。」
 「ごめん。」

 矢口さんが本当にちっちゃく映る。
 ベッドの上に乗っかると矢口さんは枕を抱えて顔を隠した。
 なんか今日ホント可愛いなこの人。

 「そこで高橋さんはこうすることにしたの。「矢口さんを部屋まで運ぼう」って。
  そしてさゆ達の部屋を通る時、矢口さんを引きずって歩いた。
  矢口さん軽いし。それがその背中の汚れです。
  それにさゆ達の部屋の前を通る引きずる音が聞こえたの。」

 さゆは矢口さんの背中を指差した。
 見てみると、そういえばさっき汚れに気がついていた自分を思い出し、
 少し悔しい気分になった。

 「あれ、それじゃあ密室は結局どうなん?矢口さんの話だと鍵かかってたっちゃ。」

 確かにそうだ。
 さっき私に密室の説明ができてないと言ったあれはなんだったんだろう。
 でもさゆはあくまで笑顔で、答えた。

 「密室なんて最初からないの。」

39 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/22(月) 23:59

 『はっ?!』

 全員の目が点になる。勿論、私も含めて。
 一人だけ笑顔のさゆは、そのまま続ける。

 「矢口さん言いましたよね?
  「朝起きて財布がなくてそこでずっと騒いでて、さゆ達が来たんですか?」
  っていう質問に「そうだよ」って。」
 「ああ、さっきのやつか。・・・うん、答えた。」
 「なら密室なはずないじゃないですか。」
 「・・・・・あーーー!!」

 矢口さんは大声を出すと頭に響いたらしくすぐに頭を抑えた。

 「鍵がかかってたらさゆ達が入ってこれるわけないの。」

 ウィンクをするさゆに、みんなに土下座する矢口さん。
 この後高橋さんが起きた後部屋に行くと、無事財布が見つかった。
40 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:01

 ―――**
 「でもさ。」
 「何?」
 「密室じゃないのって、飯田さんでも通用するよね?」
 「だって汚れ。」
 「あ、そうか。・・・さゆよく分かったね。」

 2人でベッドに寝転がりながら、話した。
 さゆの推理力には本当に驚かされた。泳がされた私はすごく間抜けだったけれど、
 その鮮やかな推理に怒る気を失った上にちょっとだけ感動してしまった。
 
 「あれ、なんとなく分かってたの。」
 「え?どうして?」

 更に驚かせてくれるのか、この娘は。一個下なのにとんでもないな。

 「絵里の部屋に来る時、吉澤さんもう廊下とドアの間で寝てたの。
  だから間違えるかも、って。そしたら本当に間違えた。」

 それを聞いて私も笑ってしまった。なんて間抜けな話なんだろう。
 矢口さんが部屋番を覚えていれば或いは起こらなかったかもしれないこの事件を、
 あらかじめ予期していた。

 「でも部屋番を間違えるなんて本当に酔っ払いでもないとしないことなのに」
 「矢口さんが吉澤さんの隣って覚えるって言った瞬間にもう酔っ払う気だなって。
  第一今日仕事ないし。」

41 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:01

 なんでもない顔をして言ってのけるさゆ。
 その姿はまるでスーパーマンみたいだった。かっこよすぎる。

 「さゆ・・・金田一越えてるよ。」
 「さゆは金田一より可愛いの。」
 「うん可愛い。遥かに可愛い。」

 さゆは満足そうに笑顔を見せると一言、付け足した。

 「もう一つ、ああやって解いた理由があるの。」
 「何?」
 「朝早くから起こされて眠かったの。」

 さゆはそういったら最後、目を閉じて寝てしまった。

 「早・・・。」

 その早業に驚きつつも、その寝顔を見ながら、私は呟いた。

 「1万ドルくらいですかね〜。」
 「100万。」
 「あっそ。」

 そう言って軽く笑うと、私もさゆの横に転がってゆっくりと目を閉じた。


42 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:01
 
43 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:01
 
44 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:01
おわり。
45 名前:ロジックダウト 投稿日:2004/11/23(火) 00:02
ロジックダウト、これにて終了とさせていただきます。
次の方、どうぞ。
46 名前:28 投稿日:2004/11/23(火) 02:29
お疲れ様でした
ひどい推理を開陳して恥ずかしい限りです
47 名前:名も無き読者 投稿日:2004/11/23(火) 14:46
妄想し過ぎた。。。_| ̄|○
でも楽しかったデス、お疲れサマでした。
次の方にも期待します。
48 名前:ori 投稿日:2005/08/13(土) 01:35
面白いスレッド発見です。
でもこのままじゃ倉庫行きになってしまいますね。
作者様の生存報告がないならオジャマしようかしら?
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/25(木) 18:54
フリーなので
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:55
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。


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