last teenager.
- 1 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/16(木) 01:49
-
- last teenager. -
- 2 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 01:51
-
僕等には、限りなく無限に広がる可能性がある。
手を伸ばせば何だって掴める。
手を伸ばせば雲にだって手が届く。
空だって飛べる。
いつまでも泣いてるガキじゃないし、
汚い大人なんかじゃない。
あれだめ、これだめ、って
決まりやら規則やら何かしら縛られて、
下ばっかみてるヤツらとは違う。
僕等に似合うのは自由って言葉。
今を生きてる僕等には、何だって出来る。
今、僕等は19歳。
ラスト・ティーンエイジャーだ。
- 3 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 01:55
-
目が覚めた。夢か。
目の前には延々と喋ってる教授。
コイツの名前は何だっけ??
90分の講義はそろそろ終わりそう。
今日のランチは何だろう。
ってか、何で私はこのガッコーに来たんだっけ。
親に進学進学言われてテキトーに決めた。
二流のこの芸大の私の学科じゃあ、
デッサンでささっと描けば誰でも受かる。
絵は前から好きだったし。
<デザイン>なんて名前だけ。親はそれで満足してる。
私は何やってんの?
こんなワケわかんない講義なんか聞いて、
毎日でる課題と睨めっこして。
はぁ。くだんない。ため息ばっか。
私は何がしたいんだろ。
19歳じゃん。十代最後じゃん。
このままダラーーーって時間だけ流れてくなら、
私は何のために生きてんだか。
高校の時もただ毎日をいきてたってゆーか。
人並みに遊んで、人並みに彼氏つくって。
彼氏か。一度でも本気になった?
大切に想う人、いた?
アイツの名前は何だっけ。
アイツの顔はどんなんだっけ。
テキトーに接してきた人の存在なんて、
私にはどうでもいい。
私は何がしたいの。
私は何かしたいの。
一歩踏み出そうとしても、
私の足首には見えない鎖が巻きつけられて、
どこにも行けない。
半径3メートルの世界。
つまんない。
自由自由って、叫んでられんのは夢の中だけ。
- 4 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 01:57
-
[よっちゃーん今日のランチエビフライだって!]
遠くで美貴の声がする。
私の名前はひとみ。
よく女の子は名前で呼ばれるけど、
私はあまり名前で呼ばれない。
私の場合、吉澤ひとみという名前から、
皆いつの間にかよっすぃ〜とかヨシコとかよっちゃんと呼ぶようになってた。
「マジー?アタシエビとかヤなんだけどー」
[えーじゃあアタシ食べるしー]
県外じゃなくて地元の大学にしたから
同じ高校の人も多いし、友達の友達みたいなカンジで
知り合いも多い。なにせ二流大。誰でも入れるしね。
そのせいかまだ<女子高生>が体から離れない。
つまりは幼いのだ。
キモいオタク系の男が友達にぶつかる。
[いってーし!んなの?あたってんだけど!]
[ウザ!てかキモ!逝け!アハハ…]
手をパンパン叩いて笑う友達。
オタク君はすまなそうにそそくさと立ち去る。
あの人は何のためにココにいんだろ。
の前に私だよね。
言っておくけど私のグループは決してギャルってわけじゃない。
ワカイ子は皆こんなカンジ。まぁ根はいいんだよ。
[あー課題やってないし!]
[ヤバくない?寺田にまた言われるよー]
[あーどうしよ〜!まぁいっか!ねぇねぇ今日どこで飲みする?]
課題の話からそれて、飲みの話へと。
こんなカンジで話は進む。
私はカレーを食べながら、ふと窓の外に目をやる。
- 5 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 01:59
-
やさしい風が走る。
茶色くて、肩より少し長めの、サラサラの髪がなびく。
キレイな人。
彼女が瞬きをするたびに、私の心が静かに鳴る。
時間が、ゆっくり流れる。
女の私でも見とれるくらい。
その人は柱の陰に隠れて見えなくなった。
ここの学生かな。キレイな人。
[…こ!よーしーこ!!]
真希がテーブルをドンドン叩く。
「えっ?あーごめん聞いてない。」
[んぁ〜もークールガールはぁ〜!まいちんの家で飲み!行くっしょ?]
「あーハイハイ。行く行く。」
[じゃあ決まり!!]
あの人、誰だったんだろ。
- 6 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:01
-
大学に入って二ヶ月。
ありえない事が起こった。
私と同じ学科の女の子。たまーに話すカンジの子に
呼び出され、私は衝撃的な事を言われた。
〔アタシね、実は、あの、
吉澤さんの事好きなの。
クールで、だけどさりげなく優しくて。
アタシと付き合って欲しい。〕
は?と思った。その子はあゆみちゃんと言って、
誰が見てもカワイイ系で、
明るくて、それで、、、何!?
- 7 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:02
-
「え?待って。イミわかんないし。
付き合うって。え?好きって。何?」
〔えとね、恋愛感情で、好きって意味なんだけど。〕
「え?待ってよ。レズって事?
…悪いけど私そーゆー趣味ないし。
付き合うなら普通に男だし。
あゆみちゃんカワイイんだからさぁ、
ヘンな目で見られるだけだしキモチワルイし止めなよ。
そーゆーのは思春期の一時的なもんだって聞いたしさ。」
するとあゆみちゃんの目からたくさんの涙がこぼれ落ちる。
〔分かった。ありがとう。
だけどね、だけど…私は今まで女の子しか好きに
なった事しかないし、真剣なの。
キモチワルイって思う…のも…しょうがないと思う。
だけど、人を好きになるのは自由…じゃない?
私は吉澤さん…に自分の気持ちを…伝えたかっただけだから〕
小さな体が震えている。私は困ってしまった。
「あー…ごめん。ごめんね。あの…ごめん」
大丈夫、そう言って彼女は去ってしまった。
- 8 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:04
-
家について、部屋でぼんやり壁を眺める。
あゆみちゃんはたしか男の中で人気があった気がする。
カワイイしやせてるし優しいし。
なんで私なんだろ。
机に向かって鏡を取り出し、目の前の顔を睨み付ける。
私は髪もショートで、まぁボーイッシュなカンジだし、
だけど今までだって相手はもちろん男だし、
クールだとはよく言われるけど、
だからって別に。えー?あんなカワイイのに。
しかしレズっているんだホントに。
あ、私本人目の前にしてキモいって言っちゃったじゃん!
最悪…。あーでもきまずー…明日からどーしよぉ…
- 9 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:04
-
[アンタ、なーにブツブツ言ってんの?]
はっとして振り返るとそこには母が一人。
もちろんこんな暑苦しいオバハンが二人以上いたら困るけど。
どーやら心の中で呟いてたつもりが口に出てたみたい…。
「別に?何?用ある時はさぁノックしてよ。別にたいした用じゃないだろーけど…」
[あ、そう。じゃあご飯いらないのね。お母さんアンタの分も食べちゃうから。]
「…いただきます。」
悔しいく思いつつ、鏡を閉じて机から離れる。
とにかく今日の事は忘れよう。すっかり忘れよう。
二階から階段で降りてる時、母にたずねる。
「今日何?」
[カツオのたたきー]
カツオー?また魚じゃん。
魚…魚…さ…鮎…鮎…あゆみ…。
ああぁぁ…かなりこじつけじゃん。離れないじゃん。
すんごい遠いじゃん。
その日、皿の上の普通のカツオのたたきが、
私には丸や三角のよーな、変な形に見えた。
- 10 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:06
-
翌日。専門科目の講義では学科が同じ人ばかりの為、
あゆみちゃんとはどうしても顔を合わせなければならない。
私の席からあゆみちゃんはすぐ近くにいた。
気まずい空気が二人の間にだけ流れている。
そうとは全く知らない、というか考えもしない、
この気まずいテリトリーに一人の侵入者。
笑顔で近づいてくる真希。
[ねぇねぇヨシコぉ〜あんた柴田さんにコクられたんでしょ?]
柴田さんとはあゆみちゃんの苗字である。
あゆみちゃんが、ピクッと動く。
「は?何いきなり。」
[芸学のアタシの友達がさぁ昨日見ちゃったんだって!
あ、大丈夫。その子口堅いからさっ]
アホか。口が堅いって、もう既にアンタに言ってんだろが。
[柴田さんあんなカワイイのにねぇ〜もったいなぁい。
まさかヨシコ。OKしちゃった??]
私は勢いよく立った。
「やめてよ気持ち悪い!」
それを聞いた人達がびっくりしていっせいに私に注目した。
少しの沈黙の後、講義室の中には
また普段と変わりない声があふれ出す。
ただ一人私に注目しなかった彼女は俯いたまま。
- 11 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:07
-
恥ずかしく思いつつ座り、
目の前の真希の腕を思い切りつねる。
[イタタタタ!ちょっ…ヨシコ!!]
「二度とこの話は誰にもしないでよ。
芸学の子にもそう言って。」
[わかったから!痛いし!]
そしてやっと離してやった腕は赤ーくなってた。
はっとして、私はあゆみちゃんに聞こえるように付け足す。
「それに芸学の子。肝心なとこ聞いてないし。
私の事好きって言ったのはあゆみちゃんの友達で、
頼まれたんだって。」
[あ、そーなのぉ?つーか男なら自分で言えって〜
ん?つかそれなら別に話してもよくない?]
あ。慌てつつ、平静を装いこう言う。
「…男がキモかったの。プリ見たら。
もういいじゃん。だから私にもあゆみちゃんにも
言わないで。ハイ封印。」
ハイハイ封印ね、と拝む仕草で真希は体をなおす。講師が入って来たのだ。
あゆみちゃん聞こえたかな。
あーなんでこんないちいち気にしなきゃいけないの。
また気持ち悪いって言っちゃったしさ。
はぁ。めんどくさいよ…マジで。
- 12 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:08
-
食堂は込み合っていて、食券を買うのにも時間がかかる。
隣の列には、あゆみちゃんと友達が楽しそうに話していた。
私に気づいたあゆみちゃんは、気まずそうにこう言った。
〔あの、さっきは、ありがとね。〕
「えっ。」
〔えと、アタシじゃなくて友達がって。〕
「いや、その方がいいかなって。」
〔ごめんね。ありがとう。〕
「いや別に。」
なんで私はこんなぶっきらぼうにしか言えないかな。
そのまま前を向き、とりあえずこれで一安心だ。
- 13 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:09
-
梅雨に入り、雨の日が続く。
太陽はどこかに引っ越すし、青空は引きこもる。
雨雲ばかりがはしゃいでる。
ジメジメしてるし暑苦しいし雨は止まないし。
誰もがこんな天気は嫌いだ。
私も嫌いだった。
ある日、めずらしく雨が降らない日があった。
かといって晴れてるわけじゃなく、雲は待機してる。
雨が降らない=晴れと無理矢理こじつけた私は傘を持たずに大学へ行った。
午後の講義がない私は先にあがる。
正面のホールに到着。
- 14 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:10
-
ザアアアアアアーーーーー
呆然と立ち尽くす。
目の前には傘、傘、傘の海。
皆目覚ましテレビの天気予報をしっかり見てきたんだ。
そして目覚ましを見忘れたがちゃっかりモンの何人かはさっそく傘をカリパクし、
傘置き場には傘が一本もない。
今日は一人だし、辺りに知り合いもいない。
チッと女の子らしからぬ舌打ちをし、
諦めてバス停まで猛ダッシュする。
こんな必死に走ったのは小学生の徒競走以来だ。
- 15 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:11
-
ブロォォォーーーー
目の前で、愛しのバスは走り去る。
はぁぁぁぁーー!?
バス停に立ち尽くす。
傘を持った人達は普通にバスに座っている。
せめて傘を置いていけよ。なぜならこのバス停、
ベンチも屋根もない。
不運にもつぎのバスは20分後。
私は何か悪いことしたか?
昨日の夕飯でチンジャオロースのピーマンをのけて食った。
肉ばっか食った。ピーマンの神の仕業か?
ピーマンめ。
さてどうしよう。
このまま待って見ず知らずの人に哀れな目で見られるか。
または大学へもう一度ダッシュでもどるか。
だが確実に擦れ違う人には哀れな目で見られる。
雨の日の傘を持たない人間はほんとーにカワイソウだ。
雨は本降りになって、勢いを増す。
あーどうするよ。
チッ。
また舌打ちし、ずぶぬれの靴を睨んでいた。
- 16 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:12
-
すると突然、
私に雨が降らなくなった。
靴は濡れてるけど、雨はかかってない。
ザァァーと雨の音は止まない。
顔を上げると、
私の頭上には傘。薄いピンクの。
ゆっくり左側を見る。
あ。
いつか食堂でみた、あの人だった。
目も、鼻も、口も、何もかもが整っていた。
キレイな人。
目が透き通っていた。
- 17 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:13
-
「あの…」
彼女はニッコリ笑って、首をかしげた。
その仕草はとても可愛らしく、
私の顔が赤くなってるのが自分で分かる。
「あの、大丈夫です。」
そう言うと彼女はこう答える。
『私もバス、待ってるの。一緒に待と』
そしてまた微笑む。
固まってしまった。
「すいません…」
そう言って、私は俯いた。どうしよう。
すると、私の頬に、フッと柔らかな感触。
彼女が小さなタオルを私にあてた。
『キレイなお顔がぬれちゃって』
そう言って私の顔を優しく拭いてくれた。
「いえそんな…あ、自分で…」
タオルを受け取って、自分で拭いた。
彼女はまたニッコリ笑った。
そしてタオルを握り締め、またたたずむ。
バスが来る20分。長かった。
いや短かった?
私は俯いたままで。
何も話せずにいた。
- 18 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:14
-
バスが来るまでの間、私達の後ろには数人並んでた。
ブロォォォ…
やっとバスが来た。隣の彼女に頭を下げる。
すると彼女はまた優しく微笑む。
次々とバスに乗り込み、自分の手の中に握り締めているタオルに気づく。
あ、と思って彼女に話しかけようとする。
- 19 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:15
-
え?
いない?
外を見ると、ただ一人残る彼女がいた。
え?
プシュー
ドアが閉まる。
ドアの向こうの彼女は、
笑顔で私にそっと手を振る。
え?なんで?
彼女はくるりと背を向ける。
薄いピンクの傘は大学へと向かう。
え?
小さくなってくピンクの傘。
その下に伸びるのはスカートと細く、キレイな足。
滝のような雨は、彼女だけは優しく包んでいた。
彼女の元には虹もかかるんじゃないだろうか。
- 20 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:15
-
バスの座席に着いて、窓の外を見る。
相変わらず雨は街から出て行かない。
彼女は、私の為にバスが来るまで待っててくれたの?
だよね?だってさぁ…
でも、キレイな人だったな。
あの時間に来るなら3、4年だよね?
ハーー。
あ?
タオル!!!!
これ!あの人のじゃん!
どうしよ…返さなきゃ。
タオルを裏返す。
また裏返す。
はっ。名前なんて書いてないよね。
子供じゃないんだから。
正面に向きなおす。
えーーと。
どうしたらいいんよ。
いや返しゃーいいんだよ。
今度はいつ会えるかな。
- 21 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 02:16
-
これが私の
最後の十代の大切な思い出の始まり。
いや、あの日食堂で
彼女を見つけた時から
もう始まってたのかも。
そして、
今まで生きてきた中で
最も輝いた日々の始まり。
- 22 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/16(木) 02:25
-
はじめまして。群青リアリティ.と申します
これは以前、私が別なサイトで書いたものを
登場人物等修正したものです
既に完成している作品なので
多少手直しに時間がかかりますが
更新は早いと思います
初心者ですし、あまり文章も得意では無いですが
お暇な時にでも読んで下さると嬉しいです
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/16(木) 03:29
- 始めまして。
楽しみに待ってます。頑張ってください。
(あんまりレスをつけない方が良いですかね?)
- 24 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/16(木) 18:42
- >>23
ありがとうございます
レス大歓迎でございます
- 25 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:45
-
- 26 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:45
-
洗ったタオルをカバンに常備。
最近、
移動するのにも何するのにも
キョロキョロ。
ますます口数は減り、
はた目キョドりがち。
ますますクールガール。
&ドウシチャッタのヒトミちゃん。
いない。
しょうがない。
探しに出ますか。
- 27 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:46
-
そこで亜弥が手を挙げた。
[ハイーカラオケに参りますー]
「あ、ごめんパス」
[え〜なんでよっすぃー?]
「ん〜とりあえず図書館行くわ」
の、発言に一同注目。
[よっすぃーが図書館!?]
[何で!?]
[つーか最近変だよね!?]
[ハイ、マジメぶんなー]
[世界で最も行かなそうな人物がぁぁ!!]
[図書館って何かあんの?メシ食えんの?]
[どーしたんでしょ?]
[マジメぶんなー]
[最近ますます冷たいよねぇぇ]
[まぁ優しいヨシコなんてキモいけどねー]
[あーだよね。よっすぃーの冷たさって快感っ]
[マゾ笑!?]
[マジメぶんなー]
[ヨシコママはあんないいキャラしてんのに誰に似たんだか]
[よっすぃーはきっと橋の下で拾われたんだよ]
[あーそっかそっか!]
ハイ、冷めてんの一名。
3人はかなりの勢いで喋り捲る。
てか途中で趣旨がずれてないか?
私は冷徹人間か?
- 28 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:47
-
そんな3人からさっさと離れる。
ここ最近ずっと探してるがいない。
まぁ探してるっつってもただ周り見るだけだし。
とりあえず図書館だな。
周っていなかったら校門で待ってればいいし。
- 29 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:49
-
いた。
こんな簡単に見つかるもんか?
大学中探すカンジのイメージだったんですが。
いきなりゴール、みたいな。
しかし。声が掛けられない。
彼女は中庭のベンチで本を読んでいた。
隣には木があって、緑が、キレイで、
んで、ほんの少しの風が
彼女の髪にいたずらしてる。
空は梅雨の時期とは思えない青空。
彼女は真っ白のワンピース。
なんてゆーか。
天使ってもんが
もしいるなら
- 30 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:50
-
私はしばらく彼女に見入ってしまった。
するとあの瞬き。
私の心が鳴る。
そして静かに彼女は顔をあげる。
彼女は真直ぐ私を見つめる。
そしてそっと私に微笑んだ。
あの目に、あの笑顔に吸い込まれる。
「あのっ!」
バカみたいにでかい声。
私はベンチに近づく。
「タオル、ありがとうございました。
傘も、すいません。助かりました。」
タオルを差し出す。
彼女は未だ私を見つめたまま、微笑み、タオルを受け取る。
私はただただその目を見るだけ。
- 31 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:50
-
そして彼女は読んでいた本を閉じ、
ベンチを横にずれ、
空いた部分をポンポンッと叩く。
へ?座れって事?
私は隣にちょこんと座る。
『アナタ、一年生?』
あ、声、こんな可愛かったっけ?
「え?あ、ハイ。あの、何年ですか?」
『何年でしょお?』
「え、っと、…四年?あ、三年」
彼女はほぉぉーーと私を見て頷く。急いで付け足す。
「あ。えっと、なんか、おしとやかってか、キレイだから」
またまたほぉぉーーと頷く。
そして首をかしげこう聞いてきた。
『おなまえは?』
背中がジーーっと熱くなりつつ答える。
「吉澤。吉澤ひとみです。あの、先輩は?」
『山田セツ』
- 32 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:52
-
絶句。
たとえ昭和生まれといえど、末期ではないか。
山田とゆう苗字なんだから名前くらい。
あ、山田さん、セツさんごめんなさい。
だって、この人、あんまりキレイだから。
れいな、とか、さゆみ、とか。…さ。
『せっちゃんでいいよ』
また微笑む。はぁ…と私。突然立ち上がる彼女…せっちゃん。
『じゃあ行こっかっ』
は?と彼女を見る。
いきなりぐいっと腕をひっぱられ彼女は走り出す。
がっしり掴まれたままだから、もちろん私も走る。
じゃなきゃ引きずられる。
ってか、せっちゃん。
本、おきっぱですけど?
中庭のベンチに残されたのは本。
と、下に落ちてたのは
羽根、だろうか?
- 33 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:52
-
到着地は駐輪場。
そして目の前には一台のチャリ。
「あの?」
『乗ってみて?』
乗る。
眉間にシワ。口はへの字。
仁王立ちチャリンコまたがりバージョンってとこ?
「あの?」
天使せっちゃんは柔らかく微笑む。
『海行こ?』
は?
『こんなイイ天気、もったいないじゃん?』
え?
『あたしスカートだし、吉澤さんパンツだし』
そして自分の荷物を籠に入れ後ろに乗る。
私にしっかりしがみ付く。
『しゅっぱーつ!』
- 34 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:53
-
え?
海って電車で行くんじゃ?
私は正面を向いたまま聞く。
「あの、海って、ここからまずバスで駅まで行って
電車に乗り換えて、でー、駅4つ越して塚原海岸前で降りんですよね?」
『うん!電車だとねっ』
「これチャリですよね?」
『うん!チャリだねっ』
「チャリでいくんです…よね?」
『うん!頑張ろうっ』
頑張ろう?って漕ぐのは、頑張るのは私だけじゃ?
「えっ…なんでチャリなんですか?」
『え?だって自転車あるし。』
あるしじゃないよ。
『きっと大学→駅→海より、大学→海の方が直線距離短いよっ』
きっとかよ。てか直線距離て何。
- 35 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:54
-
無理です。そう言おうと振り返ると、
私の背中にあごをぴったりつけ、
上目遣いでみる、天使。
『ヤダ?』
「…出発。」
わーいと無邪気に喜ぶ後ろの天使。いや、小悪魔?
この小悪魔も小悪魔だが、
その小悪魔に萌えてる私は何だ?
梅雨に似合わない青空の下、
平々凡々に生きてきた19歳は
その後ろに天使かもしくは悪魔を乗せて、
天国か地獄への道を、
チャリと呼ばれる乗り物でひたすら進む。
- 36 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:55
-
海沿いの国道を進む。
といっても、海なんぞ全然見えない。
確かに海沿いなのだが隣はずっと崖のような岩続き。
平たんな道であるのがせめてもの救い。
けど二人乗りを漕いでるわけだから
さっきからずっと漕いでるわけだから
疲れるんですけど。
後ろのせっちゃん。
暑いネェ、とか、青いネェ、とか、何かの鼻歌とか、
すんごい楽そうなんですけど。
かといって、何を話しかけたらいいのかさっぱりわからない。
私は彼女を天使と思った。
もちろん今もそう思っている。
だけど小悪魔にも思える。
それでいて、お姫様なのだ。
ツンツンしたカンジじゃなくて、
空気が、優しいってか、あの日の雨みたく、
何もかもが、どんな危険なものでも
彼女だけは優しく包まれそうな気がする。
- 37 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:56
-
一時間。
私はひたすらチャリを漕ぐ。
たまにせっちゃんが気まぐれに話しかける。
それに軽い返事をするだけ。
目の前には短いトンネル。
トンネルをくぐる。
突然、強くしがみ付くせっちゃん。
なんでかしらないが照れつつ、それを出さずに聞く。
「どうかしました?」
『…海のにおい』
「え?」
- 38 名前:last 投稿日:2004/12/16(木) 18:56
-
パアッ
トンネルをぬけると、
左側一面海だった。
『海ぃ!!!』
「ほんとだっ!!」
空は青く。
雲は白く。
どこまでも続く青い海。
『急げ♪急げ♪』
背中をトントン叩いてせかすせっちゃん。つられて私も
「いそげっいそげっ」
ガラにもなく。回転数がアップする
- 39 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:58
-
やっとの思いで塚原海岸に到着。
チャリをとめるとキャーと騒いでバックを掴んでさっさと行ってしまう。おい。いいけどさ。
ふぅとため息。
続く砂浜。
目を閉じる。
海のにおい。
やまない波音。
『吉澤さァーん!』
目を開くと、
砂浜と、波と、海。そして彼女。やっぱり天使だ。
少し色黒だけど。少し、ね。
白いワンピースが風に揺れる。
『早くぅ!冷たいよぉ』
そりゃね。まだ梅雨だし。
走って天使の元へ向かう。
脱ぎ捨てられた靴の隣で私も靴を脱ぐ。天使には靴はいらない。
「つめたっ!」
『でしょぉ?』
私の両手を握り締め顔を覗き込んでくる。
まぁ…と目を逸らして返事。この目を見たらアウトだ。
- 40 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:59
-
彼女の話を聞きながらしばらくの間波とじゃれる。
少し休もう、と私はすぐ近くの店でジュースとお菓子を買ってきた。
砂浜に二人並んで座る。
「オレンジとコーヒーどっちがいいですか?」
『オレンジぃ!あたし好きなの』
「やっぱり。」
『なぁに?』
「別に。」
ふーんとお菓子をパクパク食べる。
少しの勇気をこめて呼びかける。
「せっちゃん?」
彼女は海を見たまま。
「あの、セツ先輩?」
見たまま。
シカトですか??
「あの!先輩!」
ぱっっと私を見て、いつものように微笑む。
- 41 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 18:59
-
『なぁに?』
「先輩は学科何ですか?」
『吉澤さんは?』
「映像です」
『そーなんだぁ〜…建築』
「建築?へぇ芸学かと思いました」
『そーお?』
「建築の三年生って今何やってるんですか?」
『え?わかんないなぁ』
「えぇ?なんでっ…」
『吉澤さんは?』
「え?あー。とりあえず今は一人一台カメラ渡されて…」
『吉澤さんて優しいね』
は?自分で聞いといて最後まで聞かずいきなり何ですか?
「そんな事一度もいわれませんけど」
『えーそぉ?』
「はい。冷たいとかはしょっちゅう。」
『優しいよぉ。てか優し過ぎるよぉ。バカだよぉ。』
は?バカって何ですか?
『普通本当に自転車でここまでこないよー会って間もないのに。
変わってる。』
変わってるのは先輩の方ですよ。
- 42 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/16(木) 19:00
-
『あ、あたしもお菓子持ってたはず!』
持ってたバックを逆さにして探す。
ペンケースからペンはでるわ、財布からカード小銭でるわ、お構いなし。
ペンをペンケースにしまう。
カードを財布に…
あ、学生証。
…ん?
学籍番号2004…?
今年じゃん。
学科 メディアデザイン
え?
生年月日 1985年8月2日
タメじゃん。
氏名 石川 梨華
っは?
- 43 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/16(木) 21:51
- いしよしキタァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*☆
いいね〜謎めいた梨華ちゃん、それに振り回される吉。
次回更新楽しみにしてます。
- 44 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/17(金) 15:03
- >>43
ありがとうございます
少し更新です
- 45 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:05
-
- 46 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:06
-
『あったームースポッキー♪食べる?』
満面の笑顔と、その正面には冷え切った顔。
「これ、この写真。アナタだよね?」
『そぉだよ』
「一年じゃん」
『うん』
「タメじゃん」
『うん』
「メディアじゃん」
『うん』
「名前、石川梨華ってゆーの?」
『そう!夏生まれなのーだからこんな黒いのーヤダよぉー
冬ならあたし絶対白いもん。でもパパが付けてくれた名前だし、ね?
梨華って!カワイイでしょ??』
- 47 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:06
-
しばしの沈黙。
そして。
「はぁ!?
何?嘘ついてたわけ??
三年じゃないじゃん。建築でもないじゃん。
てゆーか誰だよセツって!何よセツって!」
じーっと見つめるせっちゃん。いや、石川梨華。
『だってぇ、あたし、別に三年って言ってないよ?』
まぁ思い起こせばたしかに。
『それにあたしの年で山田セツってなかなかいないし』
いるかもしんないじゃん。
『ひとみちゃん信じるんだもーーん』
さっきまで吉澤さんじゃなかった?なんかくすぐったいんですけど。
『なんか可愛くてさーあ♪
どこまでひっかかるかなぁって。
建築って言ってみた☆先に映像って言ってたらバレてたねぇ
でも建築三年なにやるの?は焦ったぁ〜』
言ってみた☆って何?
- 48 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:07
-
天使じゃない。
腰の辺りにシッポが見えます。
黒いです。
なんですかこれは?
なんなんですか?
私は何でここまで来てんの?
この女の何に惹かれた?
雰囲気?たしかに天使のような気がしたんだけど。
全っっっ然違うし。
なんだこの女。
- 49 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:11
-
帰る。
そう言おうとして彼女の方に向きなおす
と、
目の前に彼女の顔。
キレイな顔。
茶色の髪がかすかになびく。
彼女が顔を近づける。
右へそれて
耳元で囁く。
『あたしの勝ちだね』
そして顔を引く。
また目の前に彼女。
彼女が、ゆっくりと、瞬きする。
私の心が静かに鳴る。
響くのは、心臓の鼓動と、遠くに波音。
そして、微笑む、石川梨華。
柔らかく。暖かい笑顔。
優しくて、可愛くて、愛おしい。
キミは天使だ。
- 50 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:13
-
どうでもいいや。
彼女は彼女だ。
この気まぐれな天使やらお姫やら。
私は、彼女といたいと思った。
自分以外の人を求めたことがない。
自分だけで十分だった。
なのに今は、
この隣に無邪気に笑う彼女が
どうしてこんなに。こんなに。
- 51 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:14
-
陽も暮れかかり、帰る頃。
チャリの前で立ち止まる。
大学の駐輪場を思い出す。
念のため、確かめてみる。
「このチャリ、誰の?」
ニッコリ笑ってこう答える。
『わかんない。
朝見たらカギかかって無かったの』
やっぱりね。
ホラ、シッポ、出てるよ。
- 52 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:14
-
帰りももちろん私が自転車を漕ぐ。
後ろで彼女は携帯をいじってる。
携帯を…え?
それ私のなんですけど。
「なにしてんの?人のケータイで」
『あたしの番号入れといたからね〜』
何も言わずにまた正面を向く。
チャリーン
はっとしてまた後ろを向く。
「だからさ…何してんの人のケータイで」
『え?写メとってんだよぉ』
当然のように言う。
いいや。もう相手にすんのはよそう。
- 53 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:16
-
それから。
チャリーン
チャリーン
チャリーン
チャリーン
チャリーン
チャリーン
チャチャチャチャリーン
とりまくってる。
私のケータイで。通り行く景色を片っ端からとっている。
いいね。楽しそうで。
- 54 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:17
-
大学に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。
自転車を元の場所に戻す。
彼女が自転車に謝る。
『ごめんね。ひとみちゃんが勝手にさぁ。困ったやつでさぁ。
でもホントはいい子なんだよっ』
なーーーに言ってんだこの女。
「石川さん、じゃあ私帰るから。」
じっと見てくる。
「…何?」
『石川さん?』
「石川さん。あんた石川じゃん」
『どーして?あたしはひとみちゃんって親しみをこめて呼んでるのに。
あたし達その程度のカンケーなんだね…』
いじけたフリをする。あくまで、フリ。
むしろ全然親しい関係じゃない気が。
「じゃあ何て?」
『ん〜梨・華!梨華って呼んでひとみちゃん!』
「…。でも私は普段よっすぃーとか呼ばれてるから
そっちのほうがいいかな。なんかひとみちゃんて呼ばれないから
なんかキショイ。」
『え?じゃあ誰もひとみちゃんて呼んでないの?』
「え?あぁ、うん。」
『おっけぇ!じゃあひとみちゃんで!あたしこっちだから〜じゃあねひとみちゃん♪』
え?だからヤダっつってんのに。聞いてないね人の話。
たのしそーに帰ってく。
本当に何者だ?
- 55 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:18
-
家に着いた頃にはもうぐったり。
そのままベットに倒れこむ。
石川梨華。
はじめて見た時から彼女はずっと大人に見えた。
おしとやかで、キレイで。
今日も、あの中庭にいた彼女は
まさに天使だった。
今日一日で印象はズイブンと変わるもんだ。
タメかよあれで。幼いっつうか。
しかも梨華だし。セツって…。
はぁ…疲れた
けど、楽しかった。
服にほんの少し潮のかおりが残ってる。
目を閉じると
波音が聞こえ
海が見える。
そして、目の前の、石…
ぱっと目を開く。
…。…。
寝よう。
- 56 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/17(金) 15:20
-
翌日。バッチリ筋肉痛。
ますます無口のひとみちゃん。
横でぺチャぺチャ喋っていた美貴が何気なく私のケータイを開く。
すると、美貴が驚く。
私を見る。
[よっちゃん…誰??]
あ?と私もケータイをのぞく。
私の待受け画面は、彼女になっていた。
昨日は疲れてすぐ寝たし今朝携帯を開かなかった。
しかも勝負写メだあの女。
[きれーーーだれこれ?]
何々!?と群がる友達。
[よっちゃんがアイドルの待受にしてんの〜モデルさん?]
え!?よっすぃーが!?待受は時計のままのよっすぃーが!?とまた始まる。
[で、その人誰なの?]
「…トモダチ…」
ますます騒ぎ出す。なんで友達が待受なのかその子誰なんだ見せろ見せろとうるさい。
「勝手に変えられたのっ。みせないー…」
適当にピクチャーを見て他の壁紙にしようとしたら、
昨日の写メがたくさん入っていた。
海。
空。
真っ直ぐ続く道路。
コンビニの前でママと手をつなぐ子供。
私の背中。
石川梨華自身の写メもいくつかあった。
画面の石川は無邪気に笑っている。
しかし、こうして見ると石川梨華はやはりどこか大人びている。
美貴がアイドルだかモデルだか間違うのも無理はない。
アイツはキレイだ。
海の待受にして群がる友達を追い払う。
今、何してんだろう。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 18:34
- いいっす!!
- 58 名前:fenlir 投稿日:2004/12/17(金) 21:27
- 初めましてfenlirと申します。
今日拝見しました。とてもいい感じですね。
最近ちょっと小説のカテゴリーで『いしよし』不足を感じていたので
今後も期待していますね。更新お疲れ様でした。
- 59 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/18(土) 00:09
- >>57
嬉しいです。ありがとうございます。
>>58 fenlir様
はじめまして。
ありがとうございます。
また少し更新しますね
- 60 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:11
-
- 61 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:13
-
ある日、飲みをしていた私は
明け方に自宅に帰り、ずっっと寝ていた。
「…んぁ…」
時計を見る。
1時32分。
「…はぁぁぁ!?」
急いで下へ降りる。
「ちょっと!!なんで起こしてくんなかったのぉ!」
母はのんきに午後は○○おもいっきりテレビをみたまま言う。
[お母さん何度も起こしましたー
でもアンタがうるさいあっちいけってゆーんだもん]
「ゆーんだもん??起こしてよ!頑張ってよ!
学校だよ?学生なの!がーくーせーい!!あぁーー!!」
急いで支度をしながら母に怒鳴る。
「今日は演習のある日なんだから!
昨日言ったじゃんかぁ!」
[ちょっと〜みのさんの声が聞こえないでしょ?]
「いいからみのさんとか!そこの定期とって!」
[違うわよみのさん!その女が悪いの!
も〜これだから若いお嫁さんには甘いんだからぁーガツンよガツン!!]
心の中でこんのババァーと叫び、自ら定期を握り締め急いで家を出る。
- 62 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:14
-
大学に着いた頃には3時近くなっていた。
演習室のドアをそっと開ける。
[あっよっすぃーおっそいよ。寝てたでしょ?]
「寝てたよ!亜弥起きれたなら起こしてよ!」
[なーに言ってんの何回も電話したし〜寝癖!後ろ]
着信は6件も入っていた。メールも。爆睡してた。
[吉澤。今来たんか。]
教授の寺田だ。
「あ、ハイ。」
[ったく。遅れるんやない。今日はこの前説明した編集ソフトで
チームに分かれて編集の練習や。あと課題出してないのはお前だけやぞ。]
バックからテープを取り出し寺田に渡す。寺田がそれをチェックする。
- 63 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:15
-
[ん?吉澤。コマ撮りはどないしたん?]
「え?コマ撮り?」
[コマ撮りもやれってゆーたやろ?プリントにも書いとったはずやろ?]
プリントを見る。確かに書いてあった。
[吉澤。お前話も聞かん、プリントも見てへんのか?]
演習室は騒がしかったが、皆の視線の先に私がいる事はわかった。
[よぅ見てみぃーや。これなんかピントがズレとるで。
お前はこっちの家族連れに合わせたかったんやろ?
バックにもあってないし、何考えてんねん。]
私は何も言わずにただ寺田を見る。
[お前は何のコースや?映像やろ?こんなの基礎の基礎やぞ?
これも出来ひんで何が出来んじゃ?あ?
編集はええから取り直して来い!]
突き出されたテープを受け取り、カメラを持って部屋を出る。
皆見てないフリ。
- 64 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:16
-
別に。
別に入りたくて入ったんじゃないし。
こんなとこ誰でも入れんじゃん。
寺田のやつマジウザいし。
イライラしながら先を進む。
外の広場では講義のない人々がそれぞれの時間を過ごしている。
何撮るか。
っあームカつく寺田。
カメラの準備は出来たが何も撮る気がしない。
はぁ。ほんとつまんない。
あー私、ほんっとなんのタメに生きてんだか。
飲みして?遊んで?
このままダラダラ生活して、就職もテキトーで、
んでババァになってくんでしょ?
イミないし。
こんな毎日。
- 65 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:18
-
適当にとった映像を寺田に渡し、あとは編集の練習に加わる。
隣のチームの美貴がそっと話しかける。
[マジムカつくし寺田。何あれ]
あぁ、と返事をする。
今となっちゃどーでもいい。
この演習が終わってうちに帰るバスに乗ってる頃、
私は、あぁ今日も一日終わった。
明日までの課題あったっけ、って思うんだろう。
私の一日は、地面から5センチの高さで過ぎてゆく。
特にこれといって障害物もなく、そしてこれ以上上がりもしない。
どんどん縮まって、ハイ終了。そんなもん。
どーでもいいよ。
- 66 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:19
-
遅刻と課題の罰に、私は寺田のコピーを手伝わされ、
帰る頃には日が暮れていた。
外ではギターを弾いてるやつがいた。
もう見えねぇだろっ。と一人突っ込む。
チラ見しつつそいつの横を通りすぎると、
無駄に甲高い声がした。
『ひとみちゃーーーーーん』
あ。
「梨華。」
- 67 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:20
-
あの日以降。
『……なんだって〜ひとみちゃん知ってた?ねぇ知ってた??』
「へー知らないし。で、石川はどうだったの?」
『…え?』
「え?だから石川はどうだったの?」
『…』
スタスタスタスタ
「ちょっと!待ってよ石川!?」
『…』
スタスタスタスタ
「石川!聞いてんの?」
『…』
スタタタタタタ
くるり
眉間にシワを寄せ、
ほそーい目で睨んで来る。
- 68 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:24
-
口を尖らせ、ますますアヒル…
『石川じゃありません。』
は?
「え?お前石川じゃん。い・し・か・わ。」
『お前じゃないですーーー!
石川だけど石川じゃないですーーー!!
梨・華・っ!
梨華だもん!』
「何言ってんの。だもんて。キショ。」
『…梨華って呼ばなきゃ知らない。しーらない!』
とまた一人先を急ぐ。いくつだよ。
「おーい石川。」
『…』
「石川さァーん。」
『…』
「石川さまァー?」
ピタッ スタスタスタ
今止まったよね?
しょーがない。
少し、恥ずいけど。
「梨華ー。」
超高速で振り返る。
マンガでゆーと、線がすんごい書かれてるカンジ?
『なぁーにひとみちゃん?』
はぁ。子供だなぁ。
でもその振り返って見せてくれた笑顔が、
私の頬を赤く染めた。
気づかれない程度に。
それからは、
石川と呼んでも振り向いてくれない。
梨華と呼ばないと振り向いてくれない。
- 69 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:29
-
ギターボーイのバックをグニっと踏んで石川梨華登場。
ギターボーイがムッとした顔で石川の背中をにらみ付ける。
すると石川はクルリと振り返り、首をかしげ、ニッコリ微笑む。
『ごめんなさい』
ギターボーイはいえいえ大丈夫ぅとか言ってヘラヘラ笑う。
今お前顔見る前まで睨んでただろーが。
そして向き直り、私の手を握りブンブン振り回しながら歩き出す。
なんだコイツは。
『ねぇねぇひとみちゃーん今日広場で何とってたの?』
「え?なんで?」
『見えたからっ』
「別に。」
『えーーーなにぃ?ふーーーーん。まぁそれよりもね。』
立ち止まる。
私より背の低い石川は見上げてこう言う。
『何か悩み事があるのかぁい?』
驚いた。こんなこと言われたことがない。
真希をはじめとする友達いわく、
[ヨシコは強いから自分で解決するタイプだよねぇ]
らしい。
だから悩み事の心配などされたことはほとんどない。
「…別に。なんで?」
- 70 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:31
-
あたしはね、人の目で気持ちが解るんだよ』
得意げにそう彼女は言った。
『広場にいたひとみちゃん。気持ちがどっかにいってたよ。』
私はつい最近この人と知り合ったばかりなのに。
『そんな目じゃいいものはとれないぞぉ!』
わざとらしく言う。
私はフッと笑った。
確かに。ゆーとおりでございます。
「まぁね。」
『あたしにはなしてごらぁあん?』
「別に。」
『キミは「別にぃ」しか言えんのかいっ』
私のマネをしたようだが、こんなにふてぶてしいのか??
- 71 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:35
-
『ひとみちゃんはさ、温度が低いよ。月みたい。しかも裏側ー。
誰にも見せない、みたいな?
笑おうよー楽しくいこうよ。
きっとほんとのひとみちゃんはこんなんじゃないよ。
若いんだから。
今しか出来ない事今やらないでどうするの?
くだんない事でバカみたいに笑って、
どーでもいいことで大泣きして。
ただがむしゃらに走るの。そんでウワァーって叫ぶの。
世界の中心は自分だぁ!くらいに。
ブレーキなんてうちらは知りませーん。
うちら十代だよ?最後の十代だよ。
子供でもないし、大人でもないの。
昨日もないの。明日もないの。
今しかないの。この瞬間だよ。』
- 72 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:36
-
大きな身振り手振りで梨華は一人で喋ってる。
でもどうして?梨華は私の心を透かしてるの?
私の心の中だけの葛藤を、梨華は見抜き、
言葉ですこしずつふりほどいてゆく。
こんな感覚は今までになかった。
思わず、笑ってしまう。
「…ふっ…あはっ。」
それを見た梨華が笑う。
『かわいくなぁい』
「いーし別に。」
『うそうそひとみちゃぁん☆』
ぴったり寄り添う梨華。なんだろうこの気持ちは。
これまでの数年間の心のモヤが
ただの、今のたった数分の事で、
梨華の言葉で晴れた気がする。
このモヤを、どうしたいかを梨華は言葉にしてくれたんだ。
隣で無邪気に笑う彼女を見て
いつかの感情がまたUターンしてきた。
恥ずかしくて、目をそらしてしまう。
梨華の言う、
くだんない事でバカみたいに笑って、
どーでもいいことで大泣きして、
ただがむしゃらに走り、ウワァーって叫ぶ。
世界の中心は自分だぁ!と。
その時、
隣にいるのは、梨華であって欲しいと思う。
なんでかしんないけど。
- 73 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:38
-
食堂で、真希、亜弥、美貴の四人でご飯を食べていた。
[あ、まいだ!]
まいは芸学だが美貴を通して知り合った。
[あ〜皆何食べてるの?]
私はカレー。美貴と亜弥はスパゲッティ。
そして真希はダイエットと称してピスタチオばかり食べている。
意味あんの?
「まいちんはもう食べたの?」
[んーんまだ。今ね、友達トイレ行ってて。]
突然後ろから抱きつかれる。
「あぁ!?」
『ひっとみちゃーん』
[あ!この間の待受のコ!キレーー!]
[きれーー!何よっすぃー友達!?]
『こんにちは。ひとみちゃんがいつもお世話になってます』
おしとやかぶる梨華。すっかり騙される友達。ハハ…
- 74 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:39
-
梨華とは学校以外でも会う事が少しずつ増えていた。
梨華はよく笑う子で、一緒にいて楽しい。
公園でずっと喋っただけの時もある。
特に何処かに遊びに行かなくても、私は梨華との時間が好きだった。
たしかに、
あの時なんでワンピースだったか知らないが
梨華は普段お姉系のカッコで、
そのうえこんな笑顔を見たら誰でもみとれる。
まぁ、私もその一人だったけど…
「ああメディアのコ」
[えーいいなぁヨシコ〜]
[モデルさんみたーい]
「ご飯は?」
『あたし今日は午前だけだから。外からひとみちゃん見えたからさっ
じゃあ明後日の8時ね。バイバイ』
あの笑顔で、優しく手を振る。
- 75 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 00:40
-
梨華が去ったあと、キャーキャー騒ぐ三人。めずらしく美貴まで。
[えーマジかわいいんだけど!!]
[明後日って何?]
「え、遊ぶんだけど…」
[プリとってよ!それちょーだいよぉ!]
[遊ぶってずるい!それはズルくないかい!?]
何がよ。
[んぁ〜異議なぁーし!!]
何でよ。
[よっすぃーにくっついてうちらも遊ぶし!!]
[異議なぁーーーし!!!]
勝手にしろ。
妄想の膨らむばかりの三人。
梨華の笑顔の虜だ。
ただ一人、まいだけは笑っていなかった。
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 01:40
- 更新はやいですね〜
まいちんどうしたんだ〜
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 14:09
- パクリ?それとも・・・
- 78 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/18(土) 15:18
- >>76
>>77
更新早いからパクリと思われたのかな(汗
前にも書いたんですが
これは別な名前で別なところで
かいてたもので、その登場人物を
娘。系に変えたり、
あと文書を少し訂正したり程度なので
更新が早いです。
元の作品で今の梨華ちゃんにあたる役、といいますか、
その人の外見的モデルが梨華ちゃんだったので。
(ただ単に梨華ちゃんが好きだったので)
これは自分の2作目で、小説を書くきっかけが
いしよし小説を読んだからで、
一般の方が書いてるとは思えない作品ばかりで。
感動したりすごい笑ったり、
楽しませていただきました。
恩返しではないですが、
いしよし小説を書いて載せようと思いました。
他の作者さんほど上手にかけませんが
読んでいただけると嬉しいです。
- 79 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:19
-
- 80 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:20
-
[ヨシコ、ちょっと、いい?]
まいに呼ばれる。私はスプーンに残ったカレーをゴクリと飲み込み
コップ片手にまいの後を追う。
「何?」
まいちんはいつになく真剣な眼差しを私に向ける。
[あのさ、さっきの子、友達?]
「あ?あぁーあれ?うん。まぁ。一応。」
[もしかして、名前、石川梨華?]
「あぁまいちん知ってんの?そうそうリカ。」
まいは驚き、というより、やっぱり、という顔をして黙る。
言いにくそうに少しずつ口を開く。
[あのね、あたしは、ヨシコの友達だから、ゆーんだけど…]
「?」
[石川梨華とは付き合わないほうがいよ。]
え?
- 81 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:22
-
まいとは美貴達と一緒によく遊ぶ。
周りが幼いせいか、まいはしっかり者だ。
マジメとかじゃなくて、筋が通ってるし
遊びと真剣をちゃんと分けられるヤツ。
だからまいちんとは真剣な話が出来たりするし、
私はまいちんを信用してる。
だからこそ今のまいちんの発言が信じられないのだ。
「…何?まいちん。いきなり。」
[ごめんねヨシコ。失礼だとは分かってるけど、
けどヨシコは大事な友達だから]
話がさっぱり見えなかった。
[あたし、高校、東学区じゃん?青コー]
私達の住んでるとこらへんの高校の学区は東と西に分かれていた。
私や美貴は西、まいは東の高校出身だった。
「うん。青原高でしょ?わかるわかる。」
[でね、あのコも、東だったんだけど…]
「あ、梨華?へぇ…」
[明光女学ってわかる?そこの子でさ。青コーの近くで]
「明光ジョガク!?お嬢じゃん!っへぇぇ〜ほぅほぅ。」
[…でね、けっこう、有名だったんだよね。あのコ]
「あぁ、まあねー。かわいいからねー。」
- 82 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:23
-
[パクリ女って呼ばれてたの]
え?
最初はイミが分からなかった。
「え?え?ま、マネっこって事?」
[違うんだけど…あのね。
人の男を、パクル。]
え?
[他人の事だから、影で言うのは悪い事なんだけど。
人の彼氏とったり。
その、ヤリまくってた、って。
男から金、貢がせたり。
オヤジ相手に体売ったり、してたって。]
え?
誰が?
「何言って、んの。まさかぁ、梨華が…?
何ゆーのまいちん」
まいちんだからこそこんな事を嘘や不確かな噂としては言わない。
- 83 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:24
-
[ほんと、ゴメン。
けどあたしの友達も、彼氏、とられたんだ。
<石川梨華>に。
今日生で本人見たの初めてで、
プリと写真でしか見たことなくて、
昔は、なんだろ、キレイ系のギャル?ってゆーのかな。
カンチガイ系じゃなくて、たしかにかわいいんだけどさ。]
「…。」
[あの子に泣かされてるコ、いっぱいいるから。
ヨシコ、心配だし。]
「…。」
[あ、でも、同じ名前で違うコかもしれない、し!]
まいちんはいいヤツだ。
[ごめんねヨシコ。]
まいは申し訳なさそうに言う。
「いいよ。心配してくれてありがとう。」
食券の販売機の方でまいを呼ぶ声がする。
[あ、じゃあ、行くね。]
「うん。」
- 84 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:25
-
テーブルに戻ると、三人はまだ梨華の話をしていた。
[いいなぁよっすぃー]
[あの笑顔はヤバイ]
[スタイルかなりいいし!]
三人は憧れの梨華の姿を作り上げる。
きっと梨華はそのあらゆる期待に応えられるだろう。
梨華は。
私に見せた笑顔は、ニセモノ?
- 85 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:26
-
梨華とはゴハンを食べに行く約束をしていた。
駅前での待ち合わせ。
駅に行くと、梨華が先に来ていた。
ケータイで時間を確認したり。
大型ビジョンを眺めたり。
行きかう人々を目で追ったり。
柱の文字を指でなぞったり。
何度声をかけられただろう。
梨華が放つオーラは、周りの人と比べ物にならなかった。
どの角度からみても完璧で、
今まさに撮影をしているような。
茶色のストレートの髪からのぞく
透き通る肌。整った鼻。
あの目。
- 86 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:27
-
梨華に話しかけようとした時、
まいの言葉が響いた。
この二日間、ずっとそればかり。
話で聞くそのオンナは、私の最も嫌いなタイプの女だ。
それが梨華だなんて。
- 87 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:28
-
梨華のケータイが鳴る。
『あ、ひとみちゃん?
あたしもぉ着いたよーーはやくはやくっ孤独死するぅぅ』
「…ごめん。今日急に用事入ってさ。家にいなきゃいけなくなって。
今日、行けないわ。」
『えぇぇぇーーーーー!?』
「ごめん。」
『どーしても?』
「うん。」
『どーしてもぉ?』
「うん。」
『ひとみちゃんの家が火事で無くなってもぉ?』
「…ノンキにゴハン食べれないです。」
『だねぇ〜そっかぁ。あーぁぁぁ、残念。また行こーゼッタイ』
「うん。じゃあ。ごめんね。」
『このぉーー!うん!じゃあねい』
ケータイを閉じる、梨華。
はぁ、とため息をつき、
寂しそうに駅の中へと消えていった。
- 88 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:29
-
最低。梨華じゃないかもしれないのに。
それに、もし、梨華だったとしても、
今はそんな。
その話を聞いただけなのに。
私は梨華を避けてしまった。
- 89 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:33
-
あったはずの予定を自ら無くして暇になった私。
コンビニで雑誌を立ち読みしていた。
すると私の携帯が鳴った。番号は登録されてない。
誰だ?
「ハイ。」
[ひとみ?]
「そーだけど。」
[やっぱひとみじゃーん!!前!前!]
ガラスの向こうに携帯片手にこっちに手を振る男が一人。横にもう一人。
二人はコンビニに入ってきた。
[よー元気かよ?]
は?誰だお前。
[何?シンペーの友達?]
[元カノ!高校のときの!]
[マジ?お前にはもったいねーな!]
と、目の前で繰り広げられる会話。
あぁ、シンペーか。忘れてた。
つーか。番号消せよ。
[コンビニはやっぱ涼しいな!
でもなんかゆっくり喋れないからマック行こ!]
…えぇー
- 90 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:34
-
というわけで、なぜかマックへ。
[オレ、シンペーと同じ大学でさ〜]
へぇ
[こいつうっせぇんだよ講義中〜]
ほー
[この前コイツふられてさぁ]
で?
[慰めてやろうと思って?友情?みたいな!?]
…。
一度は付き合った事があるシンペー。私の様子を見て
私がどーゆーやつか思い出したらしい。
[お、おめぇうっせーよ!ベラベラしゃべんな!
あー、ひとみはどう?大学?]
「どうって。別に普通だよ。」
[あ、そう?ひとみは春野の芸大なんだよ]
[マジ?芸大行ってんの!?ひとみちゃん絵上手いんだねぇ〜]
凡人め。芸大=絵上手いとは。
つーか馴れ馴れしく呼ぶなアホが。
[ってことは春野だよね?]
今言ったろーが。
[じゃあさ、イシカワリカ、知ってる?]
- 91 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:36
-
イシカワリカ
嫌な予感がした。
「…さぁ。何そのコ?」
[え?石川梨華って春野なの!?]
「え?シンペー知ってるの??」
[いや、けっこう有名じゃん?あーまぁ俺らと学区違うから]
[で、オレは学区一緒]
「で、そのコがどうしたの?」
[へぇぇ〜まだ有名じゃないんだね。ま、そのうちそのうち。]
「シンペー。」
[え、あぁ…男遊び激しいっつーか、ヤバかったんだけどね。
俺見たことないけど、ま、確かに誰が見てもかわいいんだって。]
[オレの友達も何人か、ね〜!!まぁそうしたけりゃ
色々買ってあげたりしなきゃなんだけど]
[でも明光ジョガクってお嬢だろ?なにも貢がせなくてもさぁ]
[それはオレもしらないけどさーいやぁオレも春野に行けば
石川梨華と遊べたカモなぁ〜]
- 92 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:37
-
こいつらの話してる石川梨華ってダレ?
ゼッタイ、私の知ってる梨華じゃない。
絶対、違う。
- 93 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/18(土) 15:38
-
ガタンとイスが音をたてた。
立ったまま私は二人に言う。
「じゃあ、行くから。」
カバンを持って出口へと向かう。
自動ドアが開くと蒸し暑い外の空気が私の顔にへばりつく。
キモチワルイ。
[ひとみ!]
シンペーが後を追ってきた。
「何?」
[別に、知り合いじゃないんだろ?]
「だから?」
[いや、ならいいんだけど…関わり持たないほうがいいかも。]
「…。」
[たぶん、女友達いねーよ]
[いたとしても、過去形。あとは表面上とか。
男友達は、さ。わかんだろ。いい話聞かないし。だからさ…]
「わかったよ。ご忠告ありがとう。」
私はそういい残し先を急いだ。
別に行く所なんかないのに。
それはシンペーの優しさである事もよくわかってる。
でもそれは梨華じゃない。
梨華じゃない。
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 16:27
- 梨華ちゃんがなんだか・・・
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 21:28
- 更新お疲れ様です。
いやぁ〜最初読んだ時どっかで読んだ事あるなぁ〜って思ってたら
やはりそうでしたか!
イヤイヤいしよしバージョンもなかなかどうしてピッタリきてますよw
ではがんばってください。
- 96 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/19(日) 23:41
- >>94
梨華ちゃん黒いです
>>95
パクリ疑惑が晴れたみたいですねw
あっちでも読んで頂いたみたいで
ありがとうございます
- 97 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:42
-
- 98 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:43
-
梨華じゃないと言い聞かせても、私は梨華と距離を置いてしまった。
梨華はそれに感づいたのか、梨華も私に接しなくなった。
あんなにひとみちゃんひとみちゃんって言ってたのに。
- 99 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:43
-
夏休み前、課題に追われていてただでさえ忙しいのに
私は大失敗をしてしまった。
その日二時間以上時間をかけて編集していたのが
一気に消えてしまった。
急いでまた開いたけど
保存していなかったのでその日の分はまたやり直しになった。
原因は私があるボタンを押したため。
警告がでて消えてしまった。
詰めの作業だった為、チームの皆は落胆していた。
[…でも、なんで急に消えたりしたんだろ?先生に聞いてみようよ]
気を利かせた同じチームの子がそう言ってくれて
先生に聞いてみたが、どうやら私が色々押したのが原因らしい。
どっと疲れてしまった。
「ごめん今日の分は私やるから、皆帰って。」
[あ、でもっ]
「いいよ。だいたい覚えてるし。皆であれこれ言いながらやったから
時間もかかったわけだから。大丈夫。」
- 100 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:44
-
と、いうわけで、私は一人残って作業する事になった。
しかし、マックなんぞ使った事がない。
パソコンなんてしらない。
映像に入ったものの、私はこの系統は全く知識がなかった。
これは時間がかかると見込んで、売店にパンを買いに行った。
- 101 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:45
-
あ。
梨華だ。
梨華は男女数人で楽しそうに笑ってた。
すごい大笑いしてんだけど、でも、梨華のスタイルは崩れる事無く
梨華を中心としていた。
なんだよ。私がいなくてもいいんじゃん。
別に梨華にとって私は。
友達いるじゃんか。
パンをすこし潰してしまった。
強く握り締めすぎた。
行かなきゃ。時間ないし。
- 102 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:46
-
残ってくれた助手の人に手伝ってもらいながら進め、
終わったのは9時を過ぎていた。
はぁ。
ったく、なんでこんなん。
なんかすべてがめんどうなんですけど。
なんもしたくない。
- 103 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:47
-
駅をうろついていたら
巨大モニターにアイドル達が映ってた。
バカにしてはいたが、
彼女達は仕事して頑張ってんだよね。
自分の夢とか、そーゆーの。
路上でギターを弾いてる高校生くらいの少年達。
ゲーセンから出てくる女子高生。プリ見てはしゃいでる。
皆の顔が生き生きしてて、私だけが死んでるようだった。
私は、何してるんだろう。
- 104 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:47
-
急に梨華に会いたくなった。
けど、会いづらい。
私は切符を買った。
行き先は、<塚原海岸前>
- 105 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:48
-
もう夜だし、海にはほとんど人がいなかった。
ただ、空は晴れていて、月が出ている。
月が海を照らしてて、砂浜にもその光を向けてる。
夜の海は、世界の果てみたい。
すべてを沈めそうで、
少し、ゾクっとする。
世界は蒼かった。
静かだった。
聞こえるのは、波音。
- 106 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:49
-
『ひとみちゃん?』
目の前には海。海。
足元は砂。砂。
そして私の後ろには、梨華。
梨華?
- 107 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:49
-
「…なにしてんの!?」
久しぶりにデカい声をだした。
『ひとみちゃーーーん!!!』
そう言って抱きついてきた。
あまりの勢いに倒れこむ。
背中と腕に砂がついた。
梨華の顔はハッキリみえない。
けどこの蒼い世界に梨華はいる。
私の顔のすぐ上に梨華の顔がある。この前みたいに。こんなにも近くに。
キレイだった。
- 108 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:50
-
「なんでいんの?…何してんの?」
『いーじゃんそんなこと。
それより今は、ここで会えた事に、運命を感じるぅぅ』
梨華が顔をうずめて。首に腕を回して。
ヤバい。なんか、ドキドキするんです、けど。
横に転がり、空を仰ぐ。そして肘をついて私のすぐ横になり、
砂のついた私の頬をつつく。
『ツンツン。そう思わないかぁい?』
ねぇねぇと無邪気に笑う梨華。
私はただただ、彼女を見つめていた。
- 109 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:51
-
それから。
なんでかしらないけど、
今日の出来事、
自分の想ってる事、
感じる事、
どうでもいい事、
息つく暇なく私は喋った。
その間梨華は何も言わずじっと私の話を聞いてくれた。
さんざん喋って、喋りつくしたら、
あと何を話していいかわからず黙り込んでしまった。
顔を上げて梨華を見る。
梨華はニッコリ笑った。
- 110 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:53
-
『ひとみちゃんがたくさんしゃべってくれて嬉しいよ。』
彼女は近づいて私にもたれかかった。
『ひとみちゃんの考えてるコト、知りたかった。』
私の左手に梨華の右手が重なる。
『ひとみちゃんは月みたいって、いったでしょ?
理由はあれだけじゃないよ。
月は静かなの。キレイなの。
いつもみんなを見守ってて。
昼間を明るくするのが太陽なら
夜に光を与えるのは月。
世界を蒼くするの。』
梨華は左手を空に伸ばす。
右手と左手は、静かに、そっと絡み合う。
世界を蒼く。
- 111 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:53
-
頭を肩に乗せたまま梨華は言う。
『愛は蒼い色。
アタシは赤じゃないと思う。
静かに、そっと、浸透してく。
誰もが心の中に持っていて。
そっと、そっと。』
梨華は私の耳に顔を近づけ、
今、ココにはふたりしかいないのに
他の誰にも聞こえないように
ゆっくりと、そっとこう言った。
『ひとみちゃんはアタシのお月サマ。
アタシを蒼く染めてる』
- 112 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:55
-
蒼く。
私はこの話はしてない。
梨華も今の世界を、蒼、と表現するの?
梨華を見る。
私の肩にあごをのせ、悪戯っぽく笑う。
「じゃあ、梨華は太陽なの?」
それを聞いてふっと笑う。
『うんうんうん。じゃあアタシは太陽ね。』
首を傾げて言う。これは。マズイ。
- 113 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/19(日) 23:56
-
そっと彼女が瞬きする。
梨華の瞳に私がうつり、
私の瞳に梨華がうつる。
『じゃあ、アタシ達、二人でいたらなんだって出来るね。』
私の頬に、砂のついた手と、梨華の唇がふれる。一瞬だけ。
梨華はまた微笑む。
蒼い光に照らされて。
再び寄りかかり彼女は海を見ていた。
私の左手は梨華の右手と重なったまま。
キレイな横顔。
私は
石川梨華が
好きだ
- 114 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 21:57
-
うがぁぁああぁぁああああぁーーー
ふうぅ。
いつの間にやら朝でした。
アタイ、どうやって帰ってきたんだっけ。
んなことより、んなことより。
好きになっちゃったぢゃん。
うがぁあぁああぁああぁあぁぁあーーーー
どうするよ私。どうするよ。
ったくあーーーもう。はぁ。
あの女め。余計なことを…
どうしようか。どうしようか…
部屋の中をウロウロ。ウロウロ。
[ひーとーみーゴハンーおきなさーーーい]
…とりあえずメシだね母ちゃんよ。
- 115 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
-
大学の門を過ぎて、皆オハヨーオハヨー言ってる。
もうすっかりこの街には夏が居座ってる。
強い日差しがウザいけど、夏ってカンジだ。
空も青いわー
『おはよーひとみちゃん!』
と、(私の中だけで)噂の彼女が。
ド、ドキドキする。。。とりあえず普通におはようだよね?そうだよね?
っって誰に聞いてんだよ私!アホか!いやアホじゃない…
いやアホならアホなりに…っしゃー言いいますか!!(←一瞬の自分との会話)
「お、おはよ…」
『ねー昨日の内P見たぁ?あ、ひとみちゃん見てないんだっけ?まぁたフカワがさー…
あ、なっちゃんおはよー!!じゃあね〜講義中寝るなよっ☆』
- 116 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 21:59
-
え?
友達のもとへ走り去っていく梨華。男二人と女二人で仲良く歩いてく。
なんだよそれーーー!!
こっちは緊張してんのに!ってか昨日のは夢?
いや夢なんかじゃないよ。けど、じゃあ何さあれは。
つーか行くなよアイツぅぅ
ってかコラーーそこの男!梨華に話しかけんな!
このやろーデレデレしやがって。お前なんかお前なんか…
残念だったなぁ梨華は私に(ほっぺだけど)チューしたんだぞっ
バーカバーカバァ……
って、何いってんの私。私らしくないじゃん…
ってかさ、
私、かなり好きなんじゃん。梨華のこと。
- 117 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:00
-
[ねぇねぇねぇ〜よっすぃーー今日はいつになく冷めてんじゃん?
聞いてんの?よっすぃ?よぉっすぃ〜]
亜弥が配布されたプリントでバシバシたたいてくる。
うっさいなぁぁーーよし。
<一睨み>
[…ハイ…。]
[やめときな亜弥ちゃん。今日よっちゃん機嫌悪そっ]
「別に悪くないよ。」
[…すっごい悪いクセに…]
隣でボソッと呟く亜弥をもう一度睨み付け、無言になったのを確かめ席を立つ。
[よっちゃんもう始まるよ?]
「んートイレ。」
あーあなんだかなぁ。どうしようか。
いやどうも出来ないけど。
あーなんかめんどくさい。出席とってもらおっかな。
トイレどころか既に食堂でボーっとしていた。
- 118 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:00
-
〔吉澤さん?〕
顔をあげると、あ、あゆみちゃんだ。
「あ、おはよー」
〔おはよう。今講義中じゃない?〕
「あぁ〜なんかめんどくさくて。
…ってあゆみちゃんもじゃん。」
〔あ、アタシもめんどくさくて…〕
見合わせて、お互い笑う。あーあゆみちゃんもサボったりするのかぁ。
ん?あゆみちゃん??
- 119 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:01
-
そうか!!
相談出来る人といったらこの子しかいないじゃん!!
「あゆみちゃん!まぁ座って!語ろうよ!語り合おうよ!!」
突然の私の変貌に座らざるをえない雰囲気であゆみちゃんはおびえたカンジ。
ジュースを置いて、真っ直ぐ彼女を見つめる。
あゆみちゃんは何がなんだかわからない様子。
「わたくし、好きな人が出来ました。」
神妙に話し始める。驚いた様子のあゆみちゃん。
それよりも驚いたのは次の一言。
- 120 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:02
-
〔それって女の子?〕
「なんでしってんの!?」
食堂中に響いた私の声。あぁ…恥ずかしいよぅ…
ニッコリ笑う春奈ちゃん。
〔ついでに、相手は石川梨華さんじゃない?〕
私は一人で顔を真っ赤にしていた。汗が出るのは暑いからじゃない。
固まっている私を心配した彼女は慌ててこうつけたした。
〔あ、だって、アタシに相談するってことは女の子かなぁって思ってさ。
それに、石川さんといる所よく見かけるし。バレバレってわけじゃないから安心して。〕
「あ、あ、ああ。そうか。あ、だよね。あはは。
え、でも、なんで梨華のこと?」
〔あんなに可愛かったらすぐ有名になるよぉ。
アタシの男友達の間でも人気あるよ?〕
あーそうなんだぁ、と思いつつ、そいつらの存在が非常にジャマに感じられる。
- 121 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:02
-
とりあえず私は梨華との事をあゆみちゃんに話した。
ひととおり話したあと、あゆみちゃんから意外な返事をもらった。
〔吉澤さん。変わったね。〕
「へ?そお?あ、髪少し伸びたからかな。あとちょっとお腹出て来て…」
〔そうじゃないよ!ってかお腹見たことないよ〜
なんかね、前よりあったかくなった気がする。話し方も、表情も。
石川さんといる時、すっごい笑顔だし、今もいい顔しながら喋ってたよ。〕
「え、そおかな?」
〔ほら、今も〕
自分では気づかなかった。梨華はよく笑う。
いつの間にか梨華といる自分は笑顔だったんだ。
- 122 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:03
-
「んーなんで、ほっぺにしたんだろう。
あーでも女の子同士じゃよくある事だもんね。
特別な意味はナイよねぇ…。」
〔あ、でもさ、嫌いな人にはしないじゃん?〕
「これから嫌われるかもね…」
〔ちょっと!何言ってんの!〕
笑ってバシっと叩かれる。うー何気に痛いっすよお姉さん。
「いやぁあゆみちゃんと話せて良かったよ!これを機会に仲良くなろう!」
〔うん!あゆみでいいよ。私は…〕
「よっすぃーでいいよ!亜弥とかそー呼んでるし!」
〔うん!よろしくねよっすぃ〜〕
「うん!えへへへへ…」
うわぁキモい…恋する私はこうまでキモいんだね。。。
- 123 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:04
-
そんな事をしてたら講義はもう終わっていた。
私の出席は真希がとってくれたらしい。
この夏、私はまた一人友達が増えた。
夏の一番暑い時期。
気づかないうちにもうその入り口の門はくぐってたみたいだ。
- 124 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:04
-
すっかりあゆみちゃ、いやいやあゆみと仲良くなった。
夏休み前のテスト期間。にも関わらず、その日は
真希とまいちんとあゆみの四人でカラオケに行く約束をしていた。
「じゃあ、6時半に駅前ね。」
[おっけぇーー]
皆と別れて、食堂の自販機でジュースを買った。
ガコッ
落ちてきたジュースを拾おうとしたら別な手が伸びてきた。
プシュッ ゴクゴクゴク
『っあー おいしっ!!』
「…何飲んでんの。」
『いーでしょぉ?ひとみちゃんのものはあたしのものっ』
ジュースを取り返す。梨華の目はキラキラしてる。何かいい事思いついたんだな。
- 125 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:05
-
何?」
『海行こぉーー』
私のアロハの裾をグイグイひっぱって甘えていう。あぅー可愛い…
「悪いけど今日用事あるから。」
『あゆみちゃんて子?』
「え!?なんで?」
『なんか最近仲いーよね』
「え、別に。」
『あゆみちゃんカワイイもんね』
「梨華と違ってスナオですから。」
『あたしだってスナオじゃん。あたしだってカワイイじゃんー』
「イタイ子だなー自分でいわないでよ。」
『えー。えーえーえーーーー』
「何?」
『あたしとは遊んでくれないのーーー』
「だから今日は無理だってば。」
『いいですよ。いーですよ!
他の子と遊ぶもん。もうお菓子作ってあげないからね。
もうひとみちゃんとは遊んでやんないから』
ジュースを取り返しスネて行ってしまった。
「おーい。大学生でしょーが。」
まあーーーったく可愛いんだから。
って、え?ジュース私のなんだけど。。。
- 126 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:06
-
真希の持っていた割引券を使い私達は歌いきった。
酒の飲み放題も頼んだので4人ともベロベロ。
多少は声かけられてもいいのに、
さすがにこうまで酔いまくってると、キタナイ。
[がぁぁーー明日のテストヤッバーー!!]
[もういいよー諦めようよ〜]
「カンニングすりゃいいじゃん」
〔あーヨシコずるいよぉ〜〕
なんてダラダラ歩いてたら、会ってしまった。
この時までは最高に楽しかったのに。
- 127 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:07
-
『ひとみちゃん?』
意識がハッキリしない。
よく目を凝らすと、目の前には3、4人の人がいて
そのうちの一人が私の名前を読んだ。
ハッキリしなくても、
その少し高めの可愛い声は良くわかる。
- 128 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:08
-
『あ、じゃあ明日ね、バイバイ』
一緒にいた友達に別れをつげて、その人は私の方へ駆け寄った。
『ちょっとぉ〜しっかりしてよ。大丈夫?』
「大丈夫大丈夫。ちょ、ちょうっと〜酔っただけーー」
『全然ちょっとじゃないよぉ。立てる?』
[あぁ〜!梨華ちゃんだ!あたしファンなの〜!!]
真希も酔ってて、お目当ての梨華にフラフラと抱きつく。
梨華は真希を受け止める。
片方の腕は私を支えて。細い腕で折れそうだった。
『こんにちは。真希ちゃんだよね?ひとみちゃんから聞いてるよ〜』
「ホント!?嬉しい〜てかあたしに<ちゃん>付けてくれるの嬉しーー」
真希が半目で話しかけ、困ったように笑う梨華。
二人を支えるのはキツいだろう。
腕も痛いはず。それを顔に出さないで
酔っ払いの相手をちゃんとしている。
ここまでは、ここまでは良かった。
- 129 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:08
-
4人とも酔っ払っていた。
それがまずかった。
私と真希の襟首がいきなり何者かに掴まれ、
グイッと引っ張られる。
[ゴエッ!!!]
「ちょっ!え?」
振り返ったら、私達を引っ張ったのはまいだった。
まいは随分飲んでいて、かなり酔っていた。
これがまずかった。
いつもは大人なまいがこのときは違った。
- 130 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:09
-
[アンタさぁ、あたしの友達にちょっかいださないでくれる?]
まいは梨華を睨みつけていた。しかもものすごい形相で。
何がなんだかわからない様子。
眉毛を八の字にして、睨みつけられたまま、一歩も動けない様子の梨華。
[あたし、あさみの友達なの。青コーの。]
青コーと聞いて、梨華は少し反応した。
[あさみはあたしの大親友なのォ!で、彼氏、鈴木健太。わかる?
ってか覚えてる?まあ、アンタにとって何十人のうちの一人だろうケド?]
梨華は明らかに困惑していた。口から言葉が出たこなかった。
まいはやっと放してくれたが、真希もあゆみも訳がわからず、
呆然としていた。
- 131 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:10
-
状況を察知したのは私だけで、一気に酔いが醒めた。
「ちょ、まいちん!」
私が醒めてもまいちんは全く醒めてない。
むしろフラフラしながらもまいちんはヒートアップ。
[あさみ達、3年もつづいたんだよ?なのにアンタのせいで!
あさみがどれだけ傷ついたと思ってるの?
今度はヨシコをダシに使うつもりなんでしょ?
ヨシコはあたしの大事な友達なの!!関わんないでよ!]
まいは昔の事を思い出したらしい。
友達の事を想って。いまにも泣きそうだ。
「まいちん。落ち着いてよ。もう、ずっと前の事じゃん」
そういってなだめた。ハッとして、直ぐ梨華を見ると、
梨華は私を見ていた。
梨華の顔色が変わった。
そして私も。
[明光ジョガクのパクリ女!自分でもわかってんでしょ?]
まいちんは私に体をあずけ、そのまま泣き出した。
梨華は黙ったまま。
私は何も言えず、その場は沈黙となった。
- 132 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:11
-
なのに。
さらに追い討ちが。
[ひとみじゃーーん]
本当に、男というものは空気が読めないヤツだ。
[なあんだよ〜みんな顔真っ赤で〜酔ってんのぉ??]
うっせーおめーもだろうが。
[皆さんこんにちはーー!ひとみの元カレ、シンペーです!お!真希じゃん!!]
真希はあぁ、と軽く返事をした。最悪の場面に現れた。
今火事が起こってんのに、コイツは火薬を持ってヘラヘラ現れた。
「…シンペー?ちょっと、悪いけど、はずして。」
[なぁんでだよーあ、待って!!
オーイ孝広ォ!こっち来いよ!]
- 133 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:12
-
そしてチャラチャラした男が向こうから来た。コイツも酔っていた。
[これがこの間話した春野の芸大の子!元カノ!]
[あぁ〜どうもー!]
[ほら、教えてやってよ!]
[シンペーの元カノだから教えちゃお〜う!
春野の芸大に石川梨華ってやつが行ってるから気をつけてね〜]
今の私の顔はどんなんだろう。誰かコイツを止めて。
[オレさぁそいつにいっぱいおごって、もの買ってさぁ、
寝たの一回だけよ?そしたら後はポーイ!だから。
もーぶん殴ってやりたいケド、他にも男、ってか奴隷?
何匹もいるしさぁ〜とにかく性悪女よ!
彼氏とられたくなかったら気つけろ〜あはは]
汚く笑った。もう何も言えなかった。
その場にいた真希とあゆみまで、真っ青になった。
- 134 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:12
-
シンペーが辺りを見渡す。視界に入ったのは、
キレイで整った顔をした、女の子。
[オイ!あの子ひとみの友達!?マジかわいーじゃん紹介してよ!!]
どれどれ、と孝広とかゆー男も振り向く。
シンペーがかわいいと言った子と目が合う。
コイツは一瞬にして酔いが醒めた。
それどころかコイツまで顔色が真っ青に。
[…どういう事だよ真平!!]
詰め寄る孝広。へ?とアホ面のシンペー。
そしてもう一度そっと振り返る。
- 135 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:14
-
『久しぶり。元気?』
梨華は冷たく笑った。
初めて見た。梨華のこんな表情。
[ふざけんな!オレ、お、オレ行くからな!!]
と、大急ぎで逃げていった。
一人、状況の読めないシンペー。
[へ?]
シンペーが、その子の方に顔を向ける。
『こんにちは。石川梨華です。』
梨華の目は、別人だった。
シンペーまで真っ青になり、何も言わずに逃げていった。
残されたのは、4人、と、石川梨華。
- 136 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:14
-
真希もあゆみも空気が読めたらしい。
でも私同様、声を出す事が出来ずにいた。
この沈黙を破ったのは、渦中の、石川梨華。
『ほんっと、バカな男ほどよく喋る。』
え?
信じられなかった。
ドスのきいた声。
梨華の冷たい微笑。
- 137 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:15
-
『ねぇあんた』
顔をあげ、見下すようにまいに話しかける。
まいはさっきまで酔った勢いで梨華に怒鳴ったが
今は梨華の眼光で動けずにいる。
『さっきの男の名前さぁーなんだっけ?もう覚えてねーし。
それに、いちいち名前覚えてないからねー
あのね、特徴とかで覚えんの。アゴとか車持ちとか。
女の名前も全然。ごめんねぇ?』
ニヤニヤ笑う。今、目の前にいるのは誰?
- 138 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:16
-
そして、彼女は私を見る。
『ひとみちゃーん。知ってたんだねーそれで良く付き合ってくれたねー
あ、でもあたしの事避けてた時もあったよね?よねェ?
まー同情で付き合ってくれたんだろうけど。
久しぶりに友達ゴッコしたしー
カワイイ子やってんのも疲れんだよねー』
何か、何か言わなきゃ。このままじゃ。
「…梨華、らしくないよ。
そんなの。」
『はぁ!?』
そう言って梨華は鼻で笑う。少しして、一人で笑い出した。
そして、最後に、フーッと大きなため息をついて、こう言った。
『梨華らしくない?あんたさぁ、バカじゃないの?
冗談ですか?ねぇ?あんたあたしの何知ってんの?
悪いけど、今、あんたが目の前にしてるのが、ホントのあたし。
明光ジョガクのパクリ女よ、ひ・と・み・ちゃん』
最後の部分、強調するようにワザとゆっくり言う。
返す言葉がなかった。
- 139 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:17
-
この雰囲気がめんどくさい、というように梨華は大きく伸びをし、
そしてゆっくり私の元へ歩み寄る。
顔を近づけ、私の目を見てこう言った。
『んじゃあ、あたし、帰るから。
今までありがとねひとみちゃん。』
彼女が静かに瞬きする。
今はどうしてこんなに悲しいんだろう。
梨華の目の奥が見えなかった。
梨華はくるりとまわって、駅の方へと向かって行った。
- 140 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:17
-
4人。
しばらく何も言わずただ立っていた。
〔…よっすぃー。〕
あゆみが口を開いた。
[い、今のは本当に梨華ちゃんなの?]
「だ、ね。」
[ごめん…アタシが、バーッて言わなきゃ…
やっぱり、あの顔、見たら…]
「いいよ。気にしないでまいちん。」
[でも…]
「大丈夫。あのさ、帰ろう、ね?」
今はこの場を去りたかった。
- 141 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:18
-
駅へ向かおうとした時、裾を引っ張られた。
いつも梨華がやること。ありえないけど、梨華じゃないかと思って振り返った。
〔よっすぃー。〕
あゆみだった。じっと私を見てる。
〔駅、先に行ったら?〕
あゆみは優しく笑う。
〔まいちんと真希ちゃんの事は任せて。大丈夫だから。〕
- 142 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:19
-
「…ごめん」
あゆみの肩をそっと叩いて駅に向かって走り出す。
後ろのほうで私を呼ぶ真希の声がする。駅までの道は
繁華街でまだ10時過ぎだから、人が多い。
酔っ払いのオヤジ。
女の子選んでる男達。
塾の帰りの子供。こんな時間に。
人の波ってのはホントにあるもんだ。
しっかしジャマだ。
早く、行かなきゃ。早く。
- 143 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:19
-
駅に着いた。とりあえず切符を買おう。
梨華は南学区の高校だから、住んでるとこも南のはず。
そっちにむかう切符を適当に買って、急いでホームへ向かう。
私が降りたのは3・4番線。終電はまだまだで、
人も多い。
奥まで行ってみる。
ベンチとか、売店のそばも見てみる。
息が切れる。
梨華だったら、どこで待ってんだろ。
- 144 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:20
-
梨華だったら…?
私は梨華の何を知ってんだろう?
私が見てきた梨華は、梨華が作ったキャラクターなんだろうか。
はぁ、苦しい。
私は梨華を何も知らない。のかな。
反対方向の奥も見てみよう。
体を反転させた時。
<まもなく5番線に…>
向かい側の5番線のホームでアナウンスが聞こえた。
5番線の、5…
あ。
- 145 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:21
-
柱に寄りかかって、うつむいてる人。
あれは、私の好きな人だ。
梨華だ。
声をはれば、届くかもしれない。
けど、声が出なかった。
梨華はいつも笑顔で、時々困ったような顔をするけど。
そして見た、今日のあの冷たい顔。
そして今見てるのは、悲しい顔。
こんな梨華は見たことがなかった。
何もかも梨華を優しく包み込む。
どんな人も、どんな空気も。
でも今は、誰もが梨華を見捨ててる。
誰も梨華を助けてくれない。そんな気がする。
梨華は、独りだ。
- 146 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:21
-
電車が近づく。
顔をあげようとしない。柱にそっと、寄りかかったまま。
あの柱はどんなに冷たいんだろう。
「梨華。」
こんな小さな声、聞こえるはずもなく。
私と梨華の間を鉄が遮る。
これも冷たい。
「梨華。」
今度は心の中で呼ぶ。
梨華に届かないだろうか。
- 147 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/21(火) 22:23
-
やがて鉄の塊が、ゆっくり、ゆっくりと動き出す。
5番線のホームは田舎の駅のように人気がなくなった。
あの柱に寄りかかっていた梨華も、今はいない。
夏なのに、ここでは蝉の声も聞こえない。
生温い風がホームに流れる。
どこかでケータイの音が聞こえる。
私のか、誰かのか。
梨華のいないホームを眺める。
このまま待ってれば、あの日の、白いワンピースを来た梨華が
戻ってくるような気がして、
あの柱を離れて、またひとみちゃんって
呼んでくれるような気がして。
ねぇ、梨華。
私、梨華って呼んだよね。
振り向いてよ。
また笑ってよ。
梨華がいない。
- 148 名前:ななしさん@ 投稿日:2004/12/21(火) 22:37
- 更新乙です。
やばい!面白いです。
- 149 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/23(木) 12:31
- 梨華ちゃん黒いがおもろい。
- 150 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/23(木) 17:39
-
>>148 ななしさん
やった。やったー
ありがとうございます
>>149
黒いですがサラッと読んでください
- 151 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 17:56
-
ケータイは私だった。
「ハイ。」
〔今、まいちゃんたちと別れたとこ。いた?石川さん。〕
「…いなかった。もう、行ったみたい。」
〔そっか。〕
「うん。ありがとね。私もこのまま帰るわ」
〔あ、あのさよっすぃー。〕
「んー?」
〔石川さんの事なんだけど。〕
「…」
〔アタシは、石川さん。
よっすぃーの前で見せてたのはホントの笑顔だと思う、よ。きっと。〕
「…」
〔だからさ、〕
「ありがと、あゆみ。ありがと。」
〔うん。じゃあ、おやすみ。〕
「おやすみ。」
ケータイを切る。
なんだか今日は、疲れちゃった。
色んなものを見すぎた気がする。
帰ろう。
じゃあね、梨華。
- 152 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 17:57
-
翌日、テストは普通にプリント見ながらやった。
講師の人は見回りなどせずうたたね。
ヒソヒソと応え合わせしたり。
こんなもんだ。
私は目の前にある問題から片付ける。
ほかの事は考えない。考えたくない。
[終わったーーー!!]
[夏休みだーー!!もう八月だしー
高校ん時はもっと早かったのにね。]
[食堂いこー]
[行こ行こ!!]
食堂に同じ学科の子7、8人でゾロゾロと向かった。
「私カフェでパン買って来るねー」
[あ、アタシも!]
真希と二人で中央のらせん階段を上る。
- 153 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 17:58
-
「どれにすっかなー」
パンをとってグニッと潰してみたりする。
[ねぇヨシコ。]
「あー?」
[梨華ちゃんの事だけどさ]
そのままパンを見つめる。
[…ヤバくない?アタシ明光の友達いてさ、聞いた事あんだよね。
名前は聞いた事ないけどさ。
でもさ梨華ちゃんとは思わなかったよ、ほんと]
「そう。」
[アタシもまいちんも、ヨシコの友達だから言ってんだからね
気つけてよ。
昨日の事だから、ショックだろうけどさ。
他の子、美貴とか、言ってないから]
「うん。」
[じゃ先に行くからね]
私の背中をポンっと叩いて真希は何も買わずに戻って行った。
だよね。
関わらないほうがいいよね。
もう。
あんなヤバいヤツ。
- 154 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 17:59
-
真希やまいちんがそう思うのはしょうがない。
だけど、
あの悲しそうな梨華の顔を見たら
ほうっておけるはずない。
第一、この気持ちは。
私はもう、梨華が好きなんだから。
- 155 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 17:59
-
- 156 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:00
-
八月半ば。
今年は猛暑で35度を越す日ばかり続いている。
今日はあゆみと出かける約束をしてた。
約束の時間を15分過ぎてから、交差点の向こう側からあゆみが走ってくる。
〔ごめん!〕
「なんか足のほう溶けてきたんだけど。暑くて」
〔え〜立ってんじゃーん。アイスおごるからさっ。行こ〕
大地にしっかり足踏みしめて改札をぬけた。
そして電車で終点の宮町まで行く。
7、8年前に六条という新興住宅地が出来た。
六条は言わば高級住宅地。
少し高い位置にあって下には商店街や小学校など
普通の町が広がっている。それが宮町である。
私はまいちんに無理をいって、ある子と会う約束をしてもらった。
その子はまいちんと一緒の青原高校出身の子で、
中学はまいちんとは別の宮町中出身である。
六条の子供は宮町に通う。
そして、梨華の家は六条にあり、
今から会う子は中学時代、梨華と宮町中で過ごした子なのだ。
- 157 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:01
-
宮町へ向かう最中、窓の外を眺める。
ほんの少しだが田んぼが見える。
宮町は海とは反対方向だから、海は全く見えない。
〔あーぁバイトどうしよっかなぁ…〕
「あ、あゆみバイトしてないんだっけ?」
〔うんー先月までやってたんだけど
店長がキモくてさぁ。ゴハン行こうよーゴハン行こうよーって〕
「あぁキモいね。てかウザいね。」
〔でしょ?だからやめた。よっすぃーはコンビニ続いてんの?〕
「あぁやめたー続かないんだよね私。」
〔今プー?〕
「ブー。駅裏のちっちゃい店で、
手作りのアクセ売ってんのね。
そこでお店番してますよ。」
〔あぁ〜店番ね。えーいいなぁ楽しそう!〕
「うん。店長さんが一人で作ってんだけど、
この前シルバーアクセ作らせてもらったの。」
〔マジ?え?今付けてるやつ?〕
「え?あぁコレじゃないんだけどね。」
〔えーじゃあ今度見せてねっ〕
「うん。あーそろそろつくかな」
〔ねぇねぇあの子カワイくない?〕
「え、どれ?」
〔あの三人いるじゃん?女子高生。一番右の子〕
「えー私は真ん中だな。左は化粧濃すぎ。」
〔カワイイよーまあ梨華ちゃんには負けるけどね〕
「え?あぁ、そりゃあ梨華にはねぇ…やっぱ梨華はさぁ…」
〔ま、よっすぃーのものじゃないけど〕
「あゆみ。言うね。そーだけどさ。そーだけ…」
〔あーっ。つくよー〕
あゆみにさえぎられ、そして電車のドアが開く。
終点の宮町についた。
- 158 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:02
-
終点の宮町についた。
駅前は多少ビルが立ち並ぶ大通りが真っ直ぐ伸びてる。
その先には商店街、住宅地、そしてまっすぐ目をやると、
高い位置に六条の町が広がっている。
〔あれが六条かな?〕
「多分。なんか、輝かしいもん。」
〔待ち合わせどこだっけ?〕
「サイゼ。もういってよっか」
駅の一階にあるサイゼに向かった。
- 159 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:03
-
[いらっしゃいませー]
店内を見回した。まいに見せてもらったプリの顔の子を探すが
それらしい子はまだ来てない。
〔まいちゃんにも来てもらえば良かったかな。〕
「まいちん今日バイトだって。それに、あんまりまいちんも気が進まないと思うし。
わかりやすいようにここらへんに座ってよ。」
入り口の近くに座り、15分程度喋っていた。
- 160 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:03
-
〔あ、ねぇ、よっすぃー。あの子〕
入り口でキョロキョロしている子がいた。あの子だ。
「あの!」
私に気づいて席に来た。
[吉澤ひとみさんですか?]
「あ、ハイそうです。わざわざスイマセン。どうぞ座って下さい。
こっちは柴田あゆみって言います。」
あゆみが小さくお辞儀する。
[えと、私は高橋愛です]
もし私一人だったらなかなか話しかけられなかったろう。
あゆみがまいの話をして、打ち解ける事が出来た。
少し話して、あゆみが本題に切り替えて。
〔でね、今日は、石川さんのことなんだけど〕
すると意外な応えが。
- 161 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:04
-
[梨華ちゃんはあんな子じゃないよ。]
高橋さんは少しムキになったように言った。
何があんな、なのかは大体予想はついた。
私とあゆみお互い顔を見合わせ、また高橋さんにむける。
「あの、どういうこと?」
[梨華ちゃんは、すっごいいい子。
まいには言えなかった。他の子も変わった変わったって。
でも、梨華ちゃんは、ワザと遊んでたんだと思う。
本当は、寂しかったんだと思う。
それを、出さないでいたんだ、と、思う。]
その言葉にあの日の梨華を思い出す。
あの寂しそうな、顔。
- 162 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:05
-
〔石川さんは中学の時どうだったの?〕
[梨華ちゃんは素直で、明るくて、優しくて、本当にいい子だった。
かわいいし、みんなから好かれてる。笑顔の似合う子でさ。]
私の知ってる梨華じゃないか。話が読めない。じゃあなんで?
「梨華はどうして変わっちゃったんだろう。」
[…あのね、高1の春に
梨華ちゃんのお父さんが亡くなったの。]
- 163 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:05
-
お父さん。そういえば、梨華は家族の話をしたことがない。
唯一聞いた事があるのは、<梨華>という名前は
梨華のお父さんがつけた、ということだけ。
[梨華ちゃんは、お父さん子で。
高校の入学式の写真、見たことあるんだけど、
本当に梨華ちゃんはきれーだった。お父さんが隣にいて。
事故でなくなって、すごい、ショックで、学校もしばらく行けなかったみたい。]
〔でも、お父さんが亡くなったから…?〕
[ん…あのね、
亡くなった一ヶ月後に、
お母さんが再婚したの。]
「一ヵ月後!?」
- 164 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:06
-
〔どういう事!?〕
[梨華ちゃんの両親は共働きでさ。
片親じゃ、梨華が寂しいだろうから、って。
でも、相手はお母さんと同じ会社の人で、なんか、前…から、]
「…不倫てこと?」
[…多分。
お母さん達、あまり家にいなくなって。
梨華ちゃんはわかってたんだと思う。
それで、梨華ちゃんは、変わっちゃった。
お父さん亡くなったけど、梨華ちゃんの家は裕福だし、生活は困らなかったけど。
高校の時は全然連絡取らなくて、後は、わからないんだけど]
〔そっか…よっすぃー。〕
「うん。高橋さんありがと。話聞けて良かったよ。」
[ううん。あ、あたしバイトがあるから、]
「あ、ごめんね。ジュースおごるよ。来てくれたお礼。」
[ほんと?ありがとっ。じゃあ…]
そういって彼女は立ち上がり、笑顔だったが真剣な顔をした。
それを見て私も立ち上がる。
- 165 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:07
-
[梨華ちゃんを、助けてあげて。
元の梨華ちゃんに、戻してあげて。
あたし、何も出来なかった。]
その言葉には重みがあった。
高橋さんの目が言葉以上に訴えてくる。
私はただうなずいてみせた。
彼女は少し微笑んで、私とあゆみに別れを告げ、席をたった。
- 166 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:08
-
高橋さんに聞いた梨華の住所を手に六条行のバスへ乗った。
六条は歩道はレンガ、電信柱もなく、
緑がたくさんあった。本当にキレイな街だった。
どっかの奥様が、ちっちゃい犬を引き連れて散歩している。
〔す、すごいね。ちょーー立派じゃん〕
「金あるってカンジだなーすげーすげー」
六条3丁目。公園の向かい側に、そこはあった。
<石川>
大理石?よくわかんないけど、立派な表札。
大きな門。
三階立て、大きな窓。
庭は一件分の広さで、芝生できれいだった。
どっかの業者に任せてるんだろう。
バルコニーには洗濯物を干す竿なんかない。
「でかいね。」
〔でかいね。〕
「ぴ、ピンポン。する?」
〔いるかもしれないから。〕
- 167 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:09
-
ピンポーーン
…
ピンポーン
…
ピンポーーーーン
〔いないのかな〕
「いないね」
〔うん〕
「でかいな」
〔でかいね〕
「行こっか」
〔うん〕
- 168 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/23(木) 18:09
-
目の前に立つ立派な家。
庭もきれいだった。
だけど、花は無かった。
大きな窓はあった。
だけど、カーテンがしまっていた。
この家の壁は、
いつかの柱と同じ温度なんじゃないかと思った。
〔よっすぃー〕
「うん。」
石川の家を離れた。
公園。ここを梨華はお父さんと歩いたのかもしれない。
今は、ここを歩く事はないのかもしれない。
- 169 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:34
-
- 170 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:35
-
[吉澤ー今日あがっていいよー]
「あ、ハーイ」
今日はバイトの日。時刻は9時近くになっていた。
[そーいえばこのあいだ作ったアクセ。完成した?]
「あーもうちょっとなんですよ。」
[アンタ、センスいいよーなんだったら店に並べてもいいよ]
「いえいえ。へたクソで。でも作るの楽しいですよ。あ、じゃあお疲れでーす」
[ハイお疲れー]
店を出て、駅前に周り、老舗の団子屋へ入った。
[ずんだ2本、あんこ2本、ごま2本だからねっ!!]
と母親に買ってくるよう命じられたのだ。
めんどくさいがしょうがない。
ビニール袋をぶら下げて、団子屋をでる。
繁華街のほうへ目をやる。今日も人・人・人で溢れてる。
去年まで、私もあそこらへんをこの時間うろついていた。
別に何か目的があったワケじゃないけど、
毎日毎日プリ帳のページを増やしていった。
あー、あのコンビニでよく待ち合わせしたな。
コンビニの前で普通に座ってたな。
自分と友達が見えた。
私、あの時何考えてたんだろう。
来年の私は、今の私を見て、どー思うかな。
今の私は。
- 171 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:36
-
コンビニから二人出てきた。
中年のオヤジと、
え?梨華?
楽しそうに、話してる。
嫌な感じ。なんか、違う。
二人のあとをつける。
フラフラと歩いて、オヤジが梨華の顔を覗き込む。
そしてオヤジが腰に手をまわした。
その瞬間、私は頭に血が上って、
気づけば梨華の腕をガッシリ握っていた。
- 172 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:37
-
「帰るよ。」
私の顔を見た梨華は驚いていて、言葉が出なかった。
[ちょ、ちょっと、なんだよキミ。]
「うっせーよオヤジ」
[な、なんだと!]
『放してよ!何!』
「誰コイツ?」
私の手を振り払う。
『あたしのお父さん。何か問題ある?』
「梨華の大好きなお父さんをコイツと一緒にしていいの?」
黙ってうつむく梨華。
「また同じことすんの?
また同じ毎日繰り返すの?」
再び梨華の腕を掴む。今度は抵抗しなかった。
梨華をひっぱり駅へと向きなおす。
[おい、ちょっと…]
顔だけ振り返り、睨みつけて言った。
「一緒に警察行きましょうか?」
警察、と聞いてオヤジは一言も発しなくなった。
汚い大人。
この言葉が頭に浮かび、そのまま駅へと向かう。
- 173 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:38
-
切符売り場まで来たところ、何も言わなかった梨華がやっと口を開いた。
『放して!』
ここは素直に放してやる。
『せっかくの金、逃しちゃったじゃん。アンタ代わりに出してくれるの?』
「家に帰りな梨華。送ってくから。」
『聞いてんの!?アンタに関係ないじゃん!』
何も言わずに宮町行きの切符を二枚買う。
一枚とって梨華に渡す。大きくため息をつき、それをパッと取り
スタスタと改札へ向かう。
私も、ほっとして、梨華の後に続く。
『こなくていい。一人で帰る。』
「寄り道しないよーに見張ってやる。」
そう言った私を睨み、また一人で先に進んだ。
梨華は3人がけの席の端に座り、背もたれに体をあずける。
私は少し離れた所に立つ。
今日は人が少ない。
電車がゆっくり動き出す。
梨華は私に顔を見せずに、窓の外を見たまま。
いつもこうして窓の外見てんのかな。
一言も話さないまま、電車は宮町についた。
- 174 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:38
-
ホームに降り立ち、梨華がクルッと振り返る。
『あともういいから。帰ってよ。』
「家までついてくよ。夜はまだまだ長いからね。
不良娘だから。」
ふてぶてしく笑ってみせる。呆れ顔の梨華。ボソッと勝手にしろと言い、改札へ行く。
駅のバスプール。六条行きのに乗り、バスに揺られること20分。
六条1丁目でバスを降りた。
梨華は財布から定期を出した。
バスを降りて歩き始める。
後ろから話しかける。
「なんだよー定期あんなら言ってよ。買っちゃったじゃん。」
『自分が勝手に買ったんでしょ。』
振り向きもせず、ぶっきらぼうに答えた。
お、返事した。なんとなく嬉しい。ちょっと顔がニヤける。
見えてないから大丈夫だけど。
- 175 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:40
-
「っちーなぁ。コンビニないの?アイス食べよーよアイス。」
『…』
「シカトですか?シカトですかー?」
『…』
「シーーーーカーーー…」
『うっさい!無いの!』
「無いの!田舎じゃん!ド田舎じゃん。えーだっせ」
『こんなとこにコンビニ似合わないでしょ』
「おーーおー金持ち住宅だもんね。へー」
グルッと振り向き
ギロッと睨みつける梨華。
ちょっと怖い。
『普段喋んないクセに。ベラベラ喋んないでよ。』
「最近の私は喋んだよ」
『あぁ、仲良し友達いるもんねー』
そう言い放ちまた前を向き再び歩き出す。
え、あゆみの事か?
なんてやりとりをしているうちに、梨華の家の目前まで来た。
すると車庫の扉がゆっくりと開く。
- 176 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:40
-
どこぞの車かは知らないが、いかにも高そうな車が出てきた。
もちろん左ハンドル。
私達の前に来て、止まった。
梨華に表情はない。
運転席の窓が開く。
女性が乗っていた。歳は40越えてるのかというくらい、
若く見える。そしてキレイだった。
普通に考えて、梨華の母親だろう。
目元がなんとなく似てる気がする。
助手席には男の人がいた。
[梨華ちゃんのお友達?]
梨華は黙ったまま、目も合わせようとしない。
私ははじめまして、と軽く挨拶をした。
[ゆっくりしてってね。ピザでも頼みなさい、梨華ちゃん。]
梨華は車に一歩近づいた。
- 177 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:42
-
『もう帰って来んじゃねーよババア』
力なく、そして無表情で、静かに梨華は言った。
私は固まってしまった。
だが、梨華の母親は顔色ひとつかえず、私の方へ顔を向け、
「じゃあ」
とだけ言い、窓ガラスがゆっくりあがり、そのまま車は走り去って行った。
梨華は動かずにいた。
「梨華の、お母さんだよね。」
『違う。』
「でも…」
そう言う私を、キッとにらみ怒鳴った。
『あたしに母親なんかいない!!
パパしかいない!!』
梨華はそのまま走って門をあけ、ガチャンと門を閉めた。
私は急いで門に駆け寄った。
梨華は背を向けたまま。
- 178 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:42
-
「あの、ごめん。」
『…もういいでしょ。帰ってよ。』
「あー…うん。…あのさ!これ、団子!食べて。おいしいから。
ココ。ココにかけとくから。忘れないでよ。
そのままにしたら腐るからね。食べてよ。」
門のとってにビニール袋をかけて、その場を後にした。
公園の滑り台からそっと覗く。
しばらく、門に背を向けたまま立っていたが、
クルッと振り返り、門を開け、団子の入ったビニール袋を取り
じっとみつめる。
そしてそれを持って中に入って行った。
少し安心した。
六条1丁目のバス停までむかう。
梨華は父親の事をまだ引きずってる。
そして母親の事を嫌っているんだ。
梨華は今、あの大きな家で独りなんだ。
[ひとみ!アンタお団子どーしたの!ずんだ!あんこ!ごまァ!ま…]
「全部食った!!」
バタンッ
- 179 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:44
-
夏が終わっちゃう。
深夜、目が覚めた。
なんか、暑くて。変な夢見たわけじゃないんだけど。
部屋のカレンダーを見る。
八月ももう終わる。
アクセの店員と派遣やっての毎日。
飲みして。課題なんかなくて。
急にむなしくなる。
皆はこーゆー時あんのかな。
私だけなのかな。
店長とか、お母さんとか、先生とか。
こーゆー時あったのかな。
高校の時から
少し感じてたんだけど、考えないようにしてた。
来年になったら、私はハタチになって、
背中に重いもんが乗っかる。
そのかわりに、なんか大事なもんが無くなる。
もう一生手に入らない。
生まれ変わらない限り。
テレビで昔のヒット曲流して
この年はこんなんでしたとかやって、あー懐かしいって。
この時こんな事してたって、私は胸を張って言えるのある?
あ゙ーなんで私は。こんなダメなヤツなんだろう。
何も出来ないで。
つーか、何もしようとしてないんじゃん。
最悪。
- 180 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:44
-
隣の誰かが自分よりずっと幸せにみえる。
自分よりも良く思える。
なんでこうやって比べちゃうんだろう。
私は誰かの比較の対象にもなってない、って思う。
ベットの正面にある等身大の鏡。
あれに、ベットに腰掛けてる人が見える。
あー、あれ、私だよね。
こんな顔だっけ。
アンタ、何考えて生きてんの。
この部屋、別に広くないけど、
一人でいると、なんか、急に寂しくなる。
ホント、こんな事考えるのって自分だけじゃないかって思う。
あ、いや、きっと誰かもそう思ってるはず。多分。
- 181 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:46
-
机の上のプリントをとる。
見る。見るだけ。焦点は定まってない。
私は。だいたいは決まってるんだけど。
でも実力ないし。センスないし。
別に課題じゃないし。あーーあ
なんかもう、ヤダな。
- 182 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:47
-
こんな時も、
楽しい時も、悲しい時も、
バイトで忙しい時、
家でテレビ見てる時、
どんな時でも、
なんで、
梨華が出てくんだろう。
梨華の事ばっかり考えちゃう。
今何してるんだろーとか、
雨が上がって虹出た時、
あーこれ見てるかなぁとか。
こんなに人のコト考えたことないから、
なんてゆーか、会いたくて
苦しくなったり、してしまう。
きっと梨華は私の事をこうは思わないんだろうな。
ただの友達としか。
むしろ友達とも思ってないかも。
梨華は私を思う時はあるのかなぁ…ないよねェ
- 183 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:48
-
好き、とか、言っちゃったら、キモいかなやっぱり。
やっぱり変だもんね。
私、女だし。
梨華、女だし。カワイイし。
私、男と付き合ってきたのに。
…変、かなぁ。
<好き>に、理由はいらないのに。
<好き>な事がおかしいんだもんなこのセカイ。
私もちょっと前まではそうだったし。
あーぁ
梨華に、あいたい
- 184 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:48
-
- 185 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:49
-
[え?バイク?いいけど家にあるよ?]
「うん。今から取りに行っていい?」
[えー?いいけど。もう夜だけど、今からでもいいの?]
「うん。大丈夫。今から行くから、駅まで来てくんない?」
[わかったーじゃあね]
「ありがとーじゃあね。」
高三の夏に、私は車の免許をとった。
けどここらへんはバスも多いし、電車もある。
大学自体も近いし、免許なんかいらなかった。
だから別に車を買う必要もなかった。
今からまいちんにバイク、といっても、原チャだけど、
それを今から借りに行く。
今は夏休み中で、まいはバイクを自宅に置いている。
まいとは宮町の一つ前の駅の安立で待ち合わせをする事にした。
この夏が終わる前に、私はどうしてもやらなければならないことがある。
じゃなきゃ、絶対後悔する、と思うから。
私はこの、今の一瞬一瞬を大事にしなきゃいけない。
- 186 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:50
-
[ヨシコ〜!]
「ごめんわざわざ。ありがとー」
[いいよーでもなんでバイク?]
「いやぁ、車持ってないし、それにずっと運転してなかったから怖いしさ。
バイクはまいちんに何度か乗せてもらってるし。
返すの明日でもいい?」
[いいよー事故んないでね!これオキニなんだから。]
「え?バイクの心配すか?」
[じょーだん。じょーーーだん。じゃあはいこれカギね]
「ありがとー」
- 187 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:50
-
梨華は着信表示を見て、出るか少し迷った。
リビングには、このケータイのバイブ音だけが静かに響いている。
『…ハイ』
「あ、出た。今家?」
『それが?』
「だから家?」
『家だけどそれがどーしたっつってんの!』
「カーテンオープンプリーズ」
サアッ
- 188 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:51
-
30センチ程度開いたカーテンからケータイを持った梨華が現れた。
家の前にいる私に驚いてる。
『何してんの?』
「今から出てこれる?」
『無理。』
「どーせ暇だろ。」
『忙しい!』
「すっげー部屋着だし。」
『…』
「テキトーに着替えて出て来て。早くね」
次にはプツッと切れていた。
えと、変じゃなかったかな。
っってか切られた。
出てこなかったりして。
いやクル。てか来い。
- 189 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:52
-
5分経過
来ないし!!
いやまだ5分じゃん。まだ5分じゃん。
気にすんなアタシ!
1分が一時間みたい。
はぁ。
10分経過
…。
け、化粧してんだよね。
オシャレしてんだよね。
大丈夫。絶対、うん。よし。
あぁもうヤダ。
あーぁ。ヤダ。ヤダ。
- 190 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:53
-
バタン
私は時速100キロで振り返る。
ドアの前に梨華が立っていた。
けど、ロクに梨華の顔も見れず、すぐに原チャにまたがる。
まいの原チャはスクーターのようなの形とは違っていて
よくある原チャのイメージとは異なる、普通のバイク。
けど小さい。
後ろに荷物を乗せられる部分がある。
ママチャリの後ろにある部分のようなものだ。
そこに人一人座れる。
「ハイ、メット。」
前をむいたまま、後ろにヘルメットを置く。
門を開ける音。
閉める音。
『小さいし。』
「いいからいいから」
『…』
メットをとってカチッとはめる音がした。
梨華が後ろに乗り、私の腰に手をまわす。
あの日みたいだ。
- 191 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/24(金) 13:54
-
エンジンをふかして、走り出す。
10時近い六条の街は静まり返っていて、バイクの音が響く。
宮町におりる大通りを走る。
後ろで梨華の声が聞こえる。
『ねぇ!聞いてんの!』
「あー?」
『どこ行くのって聞いてんの!』
「どこって、海。」
『聞こえねーし!こっち向いて言えよ』
「だーかーらぁ、海だっつの。後ろ向いたらあぶねっつの」
『ハァ!?海!?バイクで?しかもこんな小さいので?
一時間以上かかんじゃん!電車の方が絶対早いし!』
「いーじゃん別に。涼しいじゃん。」
『降ろしてよ!』
「じゃあ飛び降りれば。」
『ハァ!?ンなの?ちょっと!ちょっと!』
「おかいもの〜たのしすーぎーるわぁ〜♪なんなの〜…」
『…』
無駄だと諦めたらしい。
梨華は黙って私の後ろに乗ったまま。
よかった。
残暑厳しい中だが、もう夜は涼しい。
もうあと数歩でも歩けば、秋はやってくるだろう。
快晴とまではいかないが、
風もあって今日はいい天気だった。
月がひとり、雲と離れて浮かんでた。
海までの道は大体わかる。
問題は、
捕まらない事。
おまわりさんにね。
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/25(土) 01:19
- 青い感じがイイ。このまま突っ走れ。
- 193 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/25(土) 14:04
- めりぃくりすます
>>192
ありがとうございます
突っ走るどころか失速かも。
- 194 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:06
-
- 195 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:06
-
結局、地元の駅周辺から海までは近道を通り、
一時間かからず予想以上に早く海についた。
砂浜は静かだった。
普段なら花火をしてるグループが何組かあるはず。
でも今日は周辺には誰もいなかった。
バイクを止めた。梨華が降りて何も言わずに後ろにメットを置く。
私も降りて、波へとむかう。
途中ではいてたサンダルをそのまま脱ぎ捨て。
水が冷たくて、気持ちいい。
振り返る。
今日、やっとまともに梨華を見た。
雲にジャマされずに、月明かりは梨華を照らす。
梨華が、不思議なくらいハッキリしてる。
- 196 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:07
-
肩にかかるくらい、
左で分けてそのままおろしたサラサラの茶色い髪。
白いキャミソールで、鎖骨がくっきり浮かび上がってる。
ひざが隠れるくらいの長さの薄いピンクのスカート。
そこから細い足がまっすぐ伸びる。
梨華は裸足になっていた。
両手にミュールをぶら下げて。
指の隙間に砂が隠れて。
そして梨華はほとんど化粧をしていなかった。
眉をかいたくらい。
彼女は元が別格なんだろう。
完璧という言葉があてはまる。
そんな顔立ち。
- 197 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:08
-
落としていた目線を、私と合わせる。
『で、何か用?』
足元の砂を梨華のほうへその場で蹴る。
「別に。」
『用もないのにこんな所まで連れて来たの?ばっかじゃないの?』
「悪い?会いたかっただけなんだけど。」
梨華はまた目線を足元に落とす。
『…。』
「自分もうミュールぬいでんじゃん。梨華だって海好きでしょ?
いつだっけ、テスト前だ。梨華一人で来てたし。」
『…。』
「もう夏も終わるしさ。最後に梨華と来たかったんだよねー。」
『…。』
「聞いてんの?」
『…。』
「り…」
いきなり顔をあげた梨華は私にめがけて思い切り
持っていたミュールを投げつけた。
「…いっ…!」
一つは太ももに、もう一つは顔にあたった。
頬に少し傷がついた。
- 198 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:09
-
『なんなの!?アンタなんなの?何がしたいの?』
叫び声に近い声で梨華は私にむかって怒鳴る。
『アンタの友達も言ってたでしょ?
あたしと関わんなって。あたしがどーゆーヤツかわかってんでしょ?
何!?何したいわけ?
同情?くだんない友達ゴッコ?
アンタに付き合ってる暇なんかねーし!!』
痛い。ほっぺ。手をあてる。
ちょっと、血が出てる。痛い。
でもそれ以上に、梨華は痛がってる。多分。
『聞いてんの?』
歩み寄り、私の腕を掴もうとする。
それを逆に私が梨華の腕を掴む。
梨華は必死に振りほどこうとする。
私は梨華の腕を放さない。
もう片方の手を使って、私の腕を引っ張る。
梨華はムキになり、少し息があがる。
- 199 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:10
-
「解ってるよ。」
梨華の動きが止まる。
梨華は下をみたまま。
私は梨華に向かって言う。
届きますように。
「解ってるよ。
梨華は独りなんでしょ。」
肩が規則正しく上下してる。
「高校でも、大学でも、ホントの自分じゃなかった。」
「閉じたまんま。ずっと独り。」
- 200 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:11
-
顔を上げた梨華は、私を睨んだ。
けどその目は赤かった。
梨華は私の腕を放す、というより、
梨華自身、私の腕を掴んでいた。
薄いピンクの爪が私の腕にくい込む。
何も言わずに、ただ唇を噛んでいた。
「付け加えますと、
何がしたいっつうとこ。
えー、そちらがおっしゃったんですケド。
一字一句おぼえてないけど。
バカみたいに笑って、んで泣いて、
ウワァーって叫ぶ。
世界の中心は自分だぁ!と。
今しかないっつーなら、
その時を
梨華といたいだけ。
それだけ。」
- 201 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:12
-
梨華と私の手がゆっくりほどける。
お互い向き合って立つ。
何も言わない。
私の中で心臓の音が鳴る。
波音も一緒に。
少し手が震えてる。
梨華に掴まれたからじゃない。
ポケットに手を突っ込み、中で握り締め
それを梨華の前に差し出す。
握った手をそっと開く。
「これ、ずいぶん遅れたけど
誕生日プレゼント。」
梨華は何も言わずにそれに右手を伸ばした。
「今、バイトしてて。
店長が自分でアクセ作ってたりすんのね。
で、私もシルバーアクセ作りに挑戦しまして。
んで、で、それは、梨華に。ネックレス。
イメージは、太陽、です。」
- 202 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:14
-
元の基本の形は円。
だけどただの円じゃつまらないし、
色々デザインを考えてみた。
何個も作った。
周りに付けた炎を表すものは、
同時に<天使の羽>の意味を込めた。
そんなの恥ずかしくて言えないけど。
そして梨華は左手の人指し指で
そっとなぞる。
「見て。」
梨華が顔を上げる。
私は胸元に手をやった。
「これ。
ガチガチでいびつなんだけど、
これは、あのー、月のイメージで。
勝手にオソロで作っちゃった。
自分のはさっさと出来たんだけどさ。けっこーテキトーで。」
ヘラッ笑ってみせた。
すぐ顔が強張ってしまったけど。
もう一度、梨華は太陽のネックレスへ目をやる。
グッと握り締め、
腕を下ろした。
下を見たまま、梨華は言った。
『バカじゃないの?』
- 203 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:18
-
『やめてよ。こんなの。』
体が凍りつく。
一瞬にして後悔する。
言わなきゃ良かった。
作らなきゃ良かった。
連れてこなきゃ良かった。
会わなければ…
私は涙が出そうになった。
泣いてしまいたかった。
- 204 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:19
-
けど私の涙よりも先に落ちたのは、
梨華の涙だった。
『バカ…ほんと…何、考えてんの…』
下を向いたまま、途切れ途切れに、震えた声で。
梨華はゆっくり顔をあげた。
梨華の顔は、子供のようだった。
耳まで真っ赤にして、泣いていた。
食いしばって、泣くのを必死で我慢して。
私は梨華を抱きしめた。
そっと、背中をさする。
さっきまで私を頑なに拒んでいた両腕は、
私の背中にまわった。
- 205 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:19
-
梨華が最後に人前で泣いたのはいつなんだろう。
お父さんが亡くなった時から、
梨華は人前で泣かなかったかもしれない。
感情を表さなかったかもしれない。
泣いたとしても、
笑ったとしても、
心のそこからではないのかもしれない。
こんな事を考えているうちに
梨華は少しずつ落ち着いてきた。
息も元に戻っている。
梨華の手が私から離れるのと同時に
私も梨華を放した。
自分の手の甲で、頬をつたった涙をぬぐった。
左、右。
右の頬に手をあてたままとまる。
深く、ため息をつく。
- 206 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:20
-
「落ち着いた?」
無言で頷く。
私は梨華の少し乱れた髪をそっとなおしてやる。
『ありがと』
小さく、けど確かにそう言った。
ゆるむ口元を必死におさえる。
「あ?何だって?」
『だから、…ありがと』
「ちょっと、周りうるさくて聞こえないんだけど。」
とワザと耳に手をあてて聞くフリをする。
すかさず梨華の右足は私の腰にヒットする。
「いたっ!!」
『聞こえてるクセに』
と下を見たまま言う。
- 207 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:21
-
私の右手をとり、さっき渡したネックレスを手のひらにのせる。
回れ右をした梨華は私に背を向けた状態になり、
後ろ髪を少し持ち上げたまま止まる。
え?付けろってこと?ですよね。
無駄に咳払いをし、梨華の首をかすり、そして後ろでとめた。
髪をなおし、向き直る。
梨華の首に、私が作ったネックレスがかかっていた。
『どうですか。』
声こそは少々ぶっきらぼうではあったが、
まだ少し赤い目をした梨華は、小さく、優しく笑った。
あまりの可愛さに、顔が赤くなる自分がわかる。
どうか暗くて見えませんように。
気持ちを抑えて言う。
「いいんじゃないですか。」
二発目がくるのか、もっと何か無いの、とか来ると思いきや、
ネックレスに手を当て、梨華はもう一度微笑んだ。
だめだ。
マジでかわいい。
- 208 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:21
-
- 209 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:22
-
二人座って海を眺める。
梨華が口を開いた。
『ここさ、よくパパと来たの』
懐かしそうに話す。
砂浜に手をのせる。
『六条に引っ越す前も、六条に引越ししてからも
パパと…家族三人で来た。楽しかった。』
右手で砂を掴む。
『パパはずっと遠くまで泳げて。
遠くから、梨華、って大きく手を振って』
持ち上げて、握り締める。
けど、隙間から砂はサラサラと落ちてしまう。
『あたしは、パパが大好きだった。
けど、パパ、死んじゃった。』
- 210 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:23
-
『朝、いつもみたくパパは会社に行ったの。
朝食の時、お友達は出来た?ってあたしに聞いた。
出来たよって。今日はカラオケに行くんだって行ったの。
そしたらパパは、あまり遅くまで遊ぶなよって。
今日は早く帰れるからって。
あたしはじゃあ早く帰るって言って、それで、
パパは時間だからって、席を立って、
…ママがカバンを渡して。
行って来るよ、って。
それで、あたしは、行ってらっしゃい、って。』
少しずつ、梨華の声が震えてく。
『あたしはその日、早く帰ったの。
最後までいなかった。
急いで帰って。
ママはその日、7時前に帰ってきた。
パパとはあまり夕飯を一緒に出来なかったから、
その日あたしは嬉しくて、ママと一緒に夕飯を作ったの。
でも、ね、パパ、早く帰るって行ったのに、
来ないの。
電話も、つながらないの。
会議でも入ったんでしょって。
そしたらね、
電話来たの。
パパからじゃ、なかった。
病院から、だった。
バイクが、…。
パパに。
朝、いつもと、変わらなかったの。本当に。
いつもみたく、いつ、も、と…』
また梨華の目から、落ちてく。
- 211 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 14:24
-
「いいよ。梨華。もういいよ。」
しかし梨華は続けた。
『あたしは悲しくて。
もう死にたいと思った。
パパが、いないんだもん。
なのに、
なのにあの人は、
梨華がかわいそうだから
梨華が寂しいだろうから、って、
すぐに再婚。
一ヶ月だよ?周りには梨華のため、梨華のためって。
あたしは前に何度かその人を見たことがあった。
街で。
ママと二人でいたのを。
バカみたいに、あたしは何も疑わなかった。
同じ会社の人だし。
何より、それまでのあたしは幸せで、
何も、何も。
家にいたときもあった。
何も疑わなかった。
あたしは幸せという言葉しかしらなかった。
再婚して、
アイツが、やっと一緒になれたね、って。
それを聞くまで、何も。
こんな一番近くの人から裏切られたあたしは
誰を、信じればいいの?』
- 212 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/25(土) 15:20
- 梨華ちゃん〜。・゚・(ノД`)・゚・。ウエエェェン
- 213 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/25(土) 17:51
- 再びめりぃくりすます
>>212
では自分も。
レスだ。・゚・(ノ∀`)・゚・。ウワァァン
最後まで行きます
- 214 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 17:55
-
梨華の涙は止まらない。
目を閉じる。
梨華の心の声も聞こえる。すごく、苦しい。
『近所の人は、あたしをみればかわいそうに、って。
ガッコーの担任はあたしの前で、
みんなの前で、
石川さんは今大変悲しんでいます。
皆で助け合いましょう。だって。
ウケんでしょ?何それって。
- 215 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 17:56
-
全部どうでも良くなった。
アイツは、母親はあたしから離れていった。
あたしは街を一人で歩いた。
バカみたいにいろんなやつが話しかけてくる。
色んなやつと寝た。
オヤジとも。何人と寝たか覚えてない。誰と寝たかも覚えてない。
ひとみちゃんの元彼の友達だっけ?
アイツの事も…覚えてないの。
どんなに肌を合わせても、皆冷たくて、冷たくて。
欲しいもの買っても買わせても、何も嬉しくなくて。
自分が欲しいものもわかんない。
けどあの家にいたら、あたしは、ダメになっちゃう。
どこかで誰かといないと、息がつまりそうだった。
汚いでしょ。あたし。
あの日、あの、海で会った日。
あたし、よく一人で行ってて。
あたしはひとみちゃんと…ひとみちゃんに…。
自分が素直に、笑える相手がいて、嬉しくて…』
梨華は立ち上がり、海へと歩く。
梨華の足を、海が暖める。
- 216 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 17:57
-
『昔の事忘れられた。
ひとみちゃんといると。
でも、もう、ダメだと思った。
もう、ひとみちゃんは、あたし…から、離れちゃうって。
寂しくて。
なんか、かな、しくっ…て。』
振り返った梨華。
まだ、涙を流している。
梨華の話はちゃんと聞いてる。
だけど、あまりにも、その梨華がキレイで、
見とれてしまった。
梨華が胸のネックレスを握り締める。
鼻をすする。
右手で涙をぬぐう。
私も立ち上がり、梨華の正面へと歩み寄る。
月は未だ彼女を照らす。
波音も、いつしか黙りこむ。
無の世界。
蒼の世界。
誰も来ないで。
ジャマしないで。
- 217 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 17:58
-
眉毛をハの字にして、
さっきから泣いてる、愛しい人。
風が私と梨華の間を抜ける。
梨華の髪が、フワッと流れる。
『嬉しいよ。
ひとみちゃん。
ありがとぉ。
…ありがとぉ…』
途切れ途切れに。
梨華の頬をつたう涙をぬぐう。
少し目にかかった前髪を右手でなおす。
そのまま髪に指を通す。
抵抗もなく、すり抜ける。
ネックレスを握っていた手に触れる。
指は首筋へと。
焼けた肌。
半歩、梨華に近づく。
梨華は私を見上げてる。
- 218 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 17:59
-
静かに、瞬きをする。
私の心が、鳴ってる。
指はそのまま流れ、梨華の唇に触れる。そっと。
薄いピンク色。
小さな唇。
左手を、梨華の肩に乗せる。
指を唇から離し、そっと頬に手をそえる。
少し、顔をずらして。
ゆっくり。
二人の前髪が重なる。
ゆっくり。
時間が止まる。
心臓の、音。
肩を掴む。
無の世界
触れるだけのキス。
蒼の世界
見てるのは、あの月だけ。
- 219 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:02
-
- 220 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:02
-
離れる唇。
離れる二人。
梨華の視線は明らかに私に向いている。
それはわかる。
わかるけど…顔を上げられない。
どうしよう。
どうしよう。
冗談…なんて言えないし。
好きって言っちゃおうか。
でも今のでわかるよね普通。
てか、普通、キモがられない!?
もしかして私今ヤバい事した!?
てか、キスって…
- 221 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:04
-
頭の中がグルグル。
ミリオネアの第一問を今聞かれても
私は答えられないだろう。
もしくはありもしない「…J!」と叫び
ファイナルアンサー!と言ってしまいそうなくらい。
みのもびっくり
客もびっくり
私もびっくり
してやったり
…何考えてんだこんな時に!!
私は、どーすりゃいいの…
おかあさーん…
本当に、どうしよ…
一人で考え込んでいる。
しかし、この場には二人の人間がいるのだ。
『…ひとみちゃん?』
- 222 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:04
-
きた。
ひとみって、アタシですよね。多分。
あぁ…いくしかないよね。
いくしかないよ。
よし。
顔をあげる。
やはり梨華は私を見つめていた。
「あのね、梨華。」
『もしかしてあたしの事スキなの?』
- 223 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:05
-
っっはぁぁーーーーー!?
先に言われたーーー!!!
私は今放心状態だ。
きっと無表情。
この動揺がおもいっきり顔に表れなかったのがせめてもの救い。
心臓に槍投げの槍を突き刺されたような気持ち。
しかし、二発目。
『とか言って。まさかねぇ〜。』
- 224 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:06
-
…え?
いや違うんだって!!
あってんだって!!
そんなニッコリ笑わないでよ。
自分で涙を拭いて、もうどうやら吹っ切れたらしい。
私の良く知る梨華の顔。
だけどこっちは終わっちゃいない。
『えへへーなぁんかヘンなカンジ。
ひとみちゃんとだって。なんか恥ずかしいねーヘンなのぉ〜』
そう言ってまた海へと向き直り、向かってくる波と挌闘してる。
細い体。
エイッとか言ってる。
梨華は全く気づいていない。
私の気持ちに。
ここで話を変えられる。
- 225 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:07
-
だけど、
蒼はもう深く染み込んでしまった。
この世界梨華が静かに光ってる。
言いたくて言えない言葉を
言いたくて言えない気持ちを
届けたい人に
いつも隣にいるキミに
愛しいアナタに
壊れてしまうかもしれない関係
二人の思い出
何気ない会話
リセットできない
ゲームじゃない
最後になるかもしれない
二度とならない着メロ
私の名前を呼ぶ声
全ての不安を
蒼が消す
<愛は蒼い色>
- 226 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:09
-
「好きだよ。」
顔だけ私に。
『あたしもひとみちゃんが大好きだよ。』
優しい笑顔。
流れる髪。
トーンを落とし、
静かに、ゆっくり、もう一度言う。
「違う。
ホントに、好き。」
優しい笑顔が消える。
体ごと私に。
『え?』
『…ひとみちゃん?』
波の音がする。
二人の間隔。
その空間にあるのが何か知らないけど、
お願いだから、
近づけて。
梨華を連れていかないで。
- 227 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:09
-
「一緒にいたい。
好き。」
言葉が見つからない。
うまいのがそこら辺に落ちてればいいのに。
そのままにしか伝えられない。
「なんか、変だよね私。
自分でもわかんないけど。
別に、あの、女の子が好きだったわけじゃなくて。
だから、なんてゆーか、
梨華が好きなの。
キモチワルイと思うかもしれない。
だけど…。」
唾をのむ。
落ち着いて。
自分の言葉で。
きっと、きっと。
「友達としてじゃない。
素直に、好き、梨華が。」
梨華の目を見て言う。
梨華の表情は、変わらない。
細い足が一歩前へ。もう一歩。
もう一歩。
私の前で止まる。
- 228 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:10
-
たった今、死にそうな思いで告白したのに、
目の前の梨華を見て、依然、暢気に私は梨華に見惚れている。
吸い込まれそうな瞳。
本当に、キレイなんだ。
ゆっくりあがる梨華の両腕。
私の腰をすり抜け、
後ろで組まれる小さな手。
そして引き寄せられる。
その動作はゆっくりだったが、
あまりにも突然の事。
私の手は宙を彷徨う。
- 229 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:11
-
私の鼻に自分の鼻をこすりつける。
そしていつもの上目遣いで、得意そうに微笑む。
『ねぇ、今の緊張した?』
え?
何を言い出すかと思ったら。
『聞いてるぅ?』
少し口を尖らせる。
私の腰を組んだ手でつつく。
『さすがに女の子から告白されるのは初めてだなぁ〜』
何を暢気な。てゆーか空気を読め。
しかし恥ずかしいのは変わりない。
告白した後で、
その相手に抱きつかれているんだから。
- 230 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/25(土) 18:11
- おっ!更新されてる
いいねいいね(*´Д`)ポワワ
- 231 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:12
-
「私だってコクんの初めてだし。」
『あーそっかぁ今まではコクられっぱなしなんだね〜』
ニヤニヤ笑ってる。
可愛げのない笑い。
というものは今の梨華に存在しない。
こんな近くに顔があるのも困る。
『じゃああたしが誰よりも一番?』
「そうだよ」
思いのほか即答。自分で気づいてまた恥ずかし率上昇。
思わず顔を背けてしまう。
それを見た梨華はクスクス笑う。
いつの間にか梨華のペースだ。
『ちょっと〜こっち見てよー』
「…」
『ひとみちゃーんっ』
「…」
『ホラッ!』
腰に回していた手をほどき
右向け右の私の顔を正面へと正す。
次の瞬間。
- 232 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:13
-
優しく押し付けるように
再び重なる唇
梨華のまぶたが見える
長いまつげ
やがて唇は離れ
ゆっくり目を開く、梨華。
もう一度目をつむる。
左に首を傾げ、
そっと目を開き
私と視線を合わせ
笑う。
- 233 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:13
-
今度は私が抱き寄せる。
きつく、きつく抱きしめる。
ここで放したら
梨華は消えてしまうかもしれない。
こめかみあたりに唇をあてる。
髪の香りがする。
ほんの少しだけ放して
そのまま梨華の唇へ。
下唇をついばみ
次に上唇を。
そのまま唇を這わせ
首筋へと。
放して、くっきり出た鎖骨の上に
そっとキスをする。
- 234 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:14
-
いきなり私の肩を掴み体を離す。
また首を傾げて笑う。
『おーしまいっ』
あっけにとられる私。
その私を置き去りにして
バイクの元へと走る。
メットをぎこちなくかぶりながら眠いー帰るよーと叫んでる。
なんなんだ一体。
ため息とともに笑みがこぼれる。
ヘンな奴。
振り返ると海。
さっきから打ち寄せる波は
今までとは違う感じがした。
次に来るのはいつだろう。
隣にいるのは誰だろう。
- 235 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:15
-
空に独りぼっちで浮かぶお月サマ
だけど月は独りじゃない。
月が輝いているのは
太陽のおかげ。
太陽の光を反射して、月は輝けるんだから。
月には太陽がいなきゃダメなんだ。
『はーやくぅーひとみちゃんっ』
愛しい人の声がする。
行きますか。
それじゃあね
バイクにまたがりハンドルを握る。
私の腰には誰かさんの腕が巻きつく。
背中が温かい。
- 236 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:16
-
やがて夜は明けるだろう
地球のどこかではもう朝を迎えている
蒼の世界が終わりを告げる時
それは太陽が空を染める頃
ほんの少しの間
蒼と赤は混じりあう
それは何度も何度も繰り返され
千年の夜を越える
そしてこの夏もまた過ぎて行く
いつもと違う
最後の夏
- 237 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:16
-
- 238 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:17
-
少し焼けた肌の女子高生たち。
半袖、素足にローファーの姿から
カーデの姿に変わってる。
髪が妙に黒いコ。
なぜかカチカチに黒いコ。後ろから茶髪が覗いてる。
世間では夏休みも終わり学校が始まった。
休み明けでまだ慣れず
バスでうたた寝。
そんな子達を見るとなんだかゴクローサンと言いたくなる。
大学生の夏休みは長い。
9月末まで続く。
窓の外を見ると
色とりどりのランドセルを背負った小学生が
並んでゆっくり歩いている。
私の頃は赤と黒しかいなかったのに。
たまにピンクとか。
アイツ小学生のクセにランドセル背負ってない。
背負え。
バスは駅へと向かう。
- 239 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:18
-
『遅いよ。遅い。何時間待ったと思ってるの?あたしがどんな思いで…』
「5分しか経ってないじゃん」
『あーなぁに食べよっかなー』
私達の会話はたまに一方通行。
達、って、この相手は誰かといいますと、
石川梨華です。
あの後、梨華はまいちんと会って謝った。
さすがにまいちんも直ぐには受け止められないだろう。
しかし今の梨華は今までの梨華とは違っていた。
というよりは、元の梨華に戻ったんだ。
梨華の家はまだギクシャクしたまま。
けど、私が梨華を守ってやりたい。
- 240 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:19
-
梨華の胸には私の作ったアクセが光ってる。
私に会うときはいつもコレをしてるみたい。
他の時は知らないけどね。
私達は別に付き合ってるわけじゃない。
梨華に付き合おうとも言ってないし。
何より梨華は一度も私に好きだと言った事がない。
いや、言ってはくれるんだけど
『あたしひとみちゃんスキだよー』
と普通に。それはどういう意味なんだよと。
が、梨華は街中であろうがどこであろうが
気にせず構わず
手を繋ぐし腕を組む。
それはまあ別にいいが、困った事に
平気でキスをする。ほっぺだけじゃなく。
- 241 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:19
-
「何すんの!!」
『え?なんで?』
「何すんの!!」
『え?あたしの事スキなくせにぃ〜』
と普通に返してくる。
間違ってはないが。
まったくその自身はどっから出てくんだか。
しかもイヤミもなく
勝ち誇ったように言うのでもなく
サラッと言うもんだから。
ホントわけわかんないヤツ。
時々化粧品売り場へ来てあれこれ言い合う。
一緒に服を買いに行ってそれぞれ選びあう。
梨華とこうしているのが好きなんだ。
- 242 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:20
-
夏は過ぎてしまった。
私にとって最後の夏だった。
きっと今までこの最後の夏も
いつもと変わりないんだろうって思ってた。
どこか冷めた自分がいた。
最近、よく変わったと言われる。
誰のおかげかはよく解ってる。
私が彼女に何を出来たかわからない。
だけど私は彼女から大事なものをもらった。
なんてゆーか、
人を大切に想う気持ち。
今まで私はそんなの無かった。
- 243 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:21
-
『 ひとみちゃん 』
今も彼女はこうして私の名前を呼んでくれる。
夏を過ぎても私の名前を呼んでくれる。
これから辛い事もあるだろう。
悲しい事も、嫌な事も。
だけどそれはあって当たり前。
毎日いーことだらけじゃ、そんな人生つまんないじゃん。
価値観、世界観?難しい言葉は私には良くわかんない。
とにかく、今この胸にあるモノは
それまでにない大切なモノ。
私はコレを大事にしなきゃ。
- 244 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:21
-
- 245 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:22
-
「自然でいいよ!なんかウソくさいんですけど。」
『えーーモデルに対して文句多すぎじゃない?お金取るよ。』
「は?今日の昼おごったじゃん。」
『今日だけじゃないでしょーーー?
いいよ別に。
もういい。
いいです。
サヨナラー』
「待って!
あーわかったよ。いいです梨華サン。」
もう一度レンズ越しに彼女を見る。
オードリーにまけないくらい…これは言い過ぎだけど。
大学で配布されたチラシ。
写真コンテスト。
課題というわけじゃない。
だけど私は応募する事にした。
カメラマンになりたいわけじゃない。
だけど、今学んでる事を将来に繋げたい。
もちろん大賞なんかとれるはずないけど。
ま、参加賞でCD券貰えるし。
これはモデルさんには内緒だけど。
色々な顔を見てきた。
けどやっぱり、この笑顔が一番かな。
- 246 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:23
-
瞳の力は不思議なもんだ。
梨華の瞳は心を奪う。
『なんか今日曇ってるねー昨日いい天気だったのに。
ひとみちゃん雨女でしょ?やだねーーコレ』
「ちょっと人のせいにしないでよ。
もっと前から撮っとけばよかったなぁ」
『え?何?』
「だからさぁ。
…海とかで撮れば良かったかなあって」
カメラを持つ私の腕に伸びてくるもう一つの腕。
その方向を見ると、
愛しいキミの顔。
近づけてくる唇。
おもわず目を閉じる。
しかしそれはずれて私の唇の右端に触れる。
眉間にシワを寄せて目を開くと
悪戯っぽく笑うキミ。
キミは私の耳に口をあててこう呟く。
『じゃあ、いこっか。海』
- 247 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:24
-
子供でも大人でもない僕等。
今、次のステージのギリギリに立って
大人と
社会と
時には自分と闘ってる。
それが僕等。ラスト・ティーンエイジャー
この心を忘れないように
この目にこの胸にしっかり焼き付けよう。焦がす程に。
今しかないこの時を。
ブレーキなんてうちらに無い、だっけ。
- 248 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:25
-
どこまでも行ける。
道がなけりゃ作ればいい。
立ち入り禁止もカンケーない。
今しかないこの時を。
その時、隣にいるのは僕も
別な誰かも、誰であっても
自分の大切な人であるなら
余計に輝くもんじゃない?
あの日キミを見つけてからの時間。
雨の日、傘を持ったキミも
海でのキミも
ホームに立つキミも
月に照らされたキミも。
全て同じ大切な人。
愛する人。
「 梨華 」
今なら、必ずキミは振り向いてくれる。
愛は蒼い色
- 249 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:26
-
今日も月と太陽は
どこかで誰かを照らしてる。
二人は手を繋ぐ事は出来ないけど、
二人の光が重なる時がある。
蒼と赤が混じりあう場所
そこには境界線なんて存在しない
境目を消せ
限りなく同化した
全てを包み込む世界
- 250 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:27
-
今日も月と太陽は
それぞれ、何処かの誰かの胸元で輝いている。
- 251 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:27
-
- 252 名前:last teenager. 投稿日:2004/12/25(土) 18:28
-
- 253 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/25(土) 18:30
-
- last teenager. -
以上で終了です。
読んでくださった方々ありがとうございます
- 254 名前:ななしさん@ 投稿日:2004/12/25(土) 22:31
- 完結お疲れ様でした。
面白かったです。海が見たくなりました。
- 255 名前:fenlir 投稿日:2004/12/26(日) 02:11
- 完結お疲れ様でした。
ここ数日でググッとクライマックスまで来てて
とても面白く拝見させてもらいました。
次にまた何か書かれるのでしょうか?マターリとお待ちしてよいですか?w
いずれにしてもお疲れ様でした。
- 256 名前:群青リアリティ. 投稿日:2004/12/28(火) 01:34
- >>230
こんな所にレスが。ありがとうございます
>>254
ななしさん@様
ありがとうございます。載せた甲斐がありました。万歳
>>255
fenlir様
ありがとうございます
マターリお待ちになって下さいマターリと
また書くつもりです
その時はまた読んで頂けると嬉しいです
- 257 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 09:42
- 一気に読みました。面白かったっす。次回も期待!
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 18:05
- すげ〜おもしろかったんで続編書いてほしい
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