ONE NIGHT ROMANCE
- 1 名前:四季 投稿日:2004/12/26(日) 19:37
- ガキさん語りの短編集。
サスペンスドラマのような展開だと思って下さい。
- 2 名前:ONE NIGHT ROMANCE 投稿日:2004/12/26(日) 19:38
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街の一角にあるこじんまりとしたバーに、新垣はいた
マスターと呼ばれる新垣は、あらゆる対人関係を描き
そして真夜中の何時かに店を閉める
今宵お送りする物語りは、決して忘れられない記憶となるだろう
- 3 名前:ONE NIGHT ROMANCE 投稿日:2004/12/26(日) 19:39
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繁盛しているとは思えない程、光りが儚く輝いている小さなバー
だがしかし、意外にこの店を訪れる客は多い
その人々は皆、心に何かを抱えている客ばかりだ
そんな傷や歓びを癒す、一人のマスター
黒髪が印象的、幼い顔だちが目立つマスターが切り盛りしている
怪しい微笑みからかもし出される闇は誰もが後ずさりをするが
それもまた引き寄せられる良点だ
「…今宵送るは一輪の薔薇と放浪者のヒストリー。しかと御覧下さいませ…」
グラスに注ぐ淡いオレンジのミモザが記憶している
真っ赤な薔薇と、見窄らしい放浪者を、鮮明に
- 4 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:39
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その日、梨華はとても急いでいた
こんな忙しさでは約束の時間に間に合わない
水商売をしている故、他の客から移った香水の香りはとてもきつい
その香りは吐きたくなる程汚らわしい
だがその香りを落とす暇はなく、ミュールを鳴らし約束の公園へ走り出す
何年ぶりだろう、この胸の高鳴り
初めて逢ったあの場所を忘れられる筈もなかった
そしてまたその相手も、梨華を待ちかねていた
久しぶりに感じる温度を待ちわびて、寒空の下で星を眺めながら
結ばれない筈だった二人の歯車は回り始め
新たに愛を紡ごうと
- 5 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:40
-
「っ…ハァッ」
カッカッと階段をせわしなく駆け上がる音
放浪者はそれにいち早く気付き、砂利を蹴飛ばし走り出す
「梨華!」
「……ひー…ちゃん?」
激しく燃えた真っ赤な口紅が、暗闇の中でも分る
それはこの放浪者だけが知っている事
ぐっと強く梨華を抱き締めると、グゥと嗚咽を漏らす
梨華はその腕を優しく受け止め、必死に背中をさすった
ずっと感じたかった温もりが
今この手の中に、しっかりと握られた
それは運命にも近かった
- 6 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:40
-
「逢いたかった…」
二人が同時に口にしたこの言葉を、今も私は忘れられない
- 7 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:41
-
吉澤ひとみ
梨華の全てであり、最愛の恋人である
齢21だが仕事に着く事もなく、街を放浪していた
よく知られた放浪者だ
私はそう彼女の事を呼んでいる
夢だけを追い掛けるその放浪者は、とても寂しがりやだった
誰かの手、体温を誰よりも欲していた
生まれつきの性だろう、愛というものに人一倍憧れを持っていたからだ
そんな放浪者は、ある日気晴らしにホステスクラブに訪れた
この中の女は誰しも愛を知っている
誰でも良かった
とにかくすがりつくものが欲しかった
当時の放浪者は、現実などどうでもよかったのだ
そして、運命を知る事になった
- 8 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:41
- 花瓶に飾られる花よりも貴高く美しく
真っ赤な一輪の薔薇に、放浪者は恋をした
薔薇は梨華と言った
店で使う名前とはちがう、本名であった
梨華もまた、この放浪者を信じた
放浪者に恋をした薔薇は、永遠の愛を告白した
そしてまた、放浪者もそれに精一杯答えた
だが、その愛も長くはなかった
- 9 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:42
-
「…借金?」
「ああ、アパートも解約された」
「…もしかして、払ってないの?」
「払える程の金もないんだよ」
やや不機嫌気味な表情を覗かせた放浪者の瞳はとても、幼く見えた
私は何の気もなく頼まれた酒を出したが
確信していた
その幼い瞳から見せる、動揺を
「なんでもっと早く言わないの…」
「言ったらどうにかなった?」
「あたしがなんとかしたのに」
「そんなこと、頼めるわけないだろ」
梨華の忙しさを見れば、放浪者も解らないわけではなかった
店では相当な額を稼いでいるのだろうと感付いていた
だが恋人とは言え、迷惑はかけたくなかったのだ
- 10 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:42
- 放浪者は酒を一気に飲み干し、肩で息をする
私は幾度となくこの二人の光景を目にしてきた
だがそろそろ、と言った所だった
その時私は悟った
薔薇の刺は、放浪者でさえ貫けないのだと
「……どこ行ってたの?」
「…悪い、ずっと待たせて」
「そんなこと聞いてない。何処に行ってたの?」
真夜中の公園には誰一人いない
白い吐息がやけに目立つ、この冬一番の冷え込みだった
放浪者は梨華と目も合わせず、しばらくネオンの光りを見続けた
だが梨華も折れない
- 11 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:43
-
「……色々。色んな所に、逃げてた」
「なんでそんなに勝手な事」
「梨華ちゃんに言ったら、絶対止められるだろうと思って」
放浪者はとても幸せそうな笑顔でそう言った
逃げていた
あえて放浪者はそう口にしたのだ
「でも、もう逃げない。どこにもいかない」
「嘘」
「嘘じゃない。行くかもしれないけど、帰ってくるよ、すぐに」
「期待させないで!!」
- 12 名前:薔薇、そして永遠 投稿日:2004/12/26(日) 19:43
-
怪しく光る、紫、赤、黄色など気味の悪い色とりどりの光り
放浪者はそんな幻想を諦め、真直ぐに梨華だけを見つめた
涙を浮かばせる梨華に、永久の約束を果たす為
「……期待させるのが、あたしの癖っぽいんだよ」
軽くはにかんだ放浪者は、諦めた夢をまた拾い直す
そしてその後押しをするのが、梨華だ
永遠とは言葉のみで、その後を果たすものは数少ない
だが、私は信じている
二人は永遠に、輝く愛となるだろう、と
第一話・薔薇、そして永遠・
- 13 名前:まもなく開店 投稿日:2004/12/26(日) 19:44
-
「その後、水商売をしていた彼女は店を辞めました。放浪者は仕事を探す為毎日彼女と街に出歩いています。
彼女達が本当に幸せになったのかは、私にも予想ができません。なんせこれは−−」
私が創った、お話ですから
one night romance………
- 14 名前:四季 投稿日:2004/12/26(日) 19:45
- 今回はこんな所で。
御意見などどしどしどうぞ。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/27(月) 17:06
- ガキさんがこんな設定で登場するとは。
サスペンスドラマ、世にも奇妙な物語…
そんな世界観が描かれてますね。
次回も期待しています。
- 16 名前:四季 投稿日:2004/12/28(火) 14:53
- 更新開始
- 17 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:54
-
無くした物
それは彼女にとってかけがえのない宝物だった
- 18 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:55
-
私が彼女と出会ったのは、バーをはじめてすぐ
見事な容姿と冷血なその表情は見るからに温かみを無くしていた
心が無かったようにも見えたからだ
何も注文する事なく、ただ俯いて口を開こうともしない
カランと氷が裂決する音に反応したのは突然の事だった
私と目が合うと、彼女は不器用に微笑む
その時、ほんの少しだけ大人っぽい彼女が幼く見えた
「…何も要らない。そんな顔してますね」
「へぇ、御名答」
「構わないですよ。何も求めちゃいませんから」
あくまで冷静な私の対応に驚いたのか、さっきよりも口角が緩む
恐らく彼女を怖がらない私に興味を抱いたのだろう
- 19 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:55
-
「……っ…」
「…どうかしましたか?」
「いや、少しね」
サッと手首を隠す仕種はとても、焦っていた
白い包帯が赤く染まっている
傷は深いようだった
私は感付く
すでに滅んだ彼女の心を、そっとすくうように
- 20 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:56
-
「紺野」
なめらかで優しい後藤の声が、紺野は好きだった
周りからは軽蔑される後藤の存在を唯一認めている、たった一人の理解者でもある
そっと黒髪を撫でると、気付かないふりで紺野は本を閉じた
「愛してる」
私も
そう言えず口ごもった紺野に微笑みかけた後藤は、とても優しかった
割れたガラスの破片を掻き集めるように慎重な恋に興味はなかった後藤は、紺野に救われ
また紺野も、後藤に救われた
- 21 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:57
-
当時女子高校生だった紺野を、校門前で待ち伏せする後藤は皆から批難の目を浴びせられていた
紺野はそれを振りきり、たった一人の後藤を愛し始めた
紺野と出会う前まで、生きる希望を無くしていた後藤は
秘めた恋に没頭した
狂ったロボットは、誕生日に年の数だけプレゼントを渡した
最愛の恋人と過ごすその日は、二人にとって最高の記念日となる筈だった
その時が、来るまでは
- 22 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:57
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「離せよ」
胸倉を掴まれた後藤は怒りに満ちた瞳で相手に怯む事はなかった
一つだけの宝物を、まもるために
己が消えても、あいつだけは絶対になくすものか
自分は随分堕ちたものだ
自覚はしていたでも
特別なものを教えてくれた、紺野だけは
「あぁぁぁ!」
ユラリと怪しく光るナイフ
最後に見えたあの子の瞳
- 23 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:58
-
コンノハシンダ
モウモドラナイ
ロボットは壊れた
大切なものを、たったひとつの大事なものを
己の手で殺した
連続通り魔とはよく言った物だ
電柱や街の壁一面に張られた人物画を私は後に見かける事となった
もしこの通り魔が掴まり、死刑となったとしても
彼女 後藤は傷を背負い続ける
オマエガコロシタ オマエガコンノヲコロシタ
- 24 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:59
-
永遠に付きまとう言葉が何物にも替え難く
深く深く焼きつく
- 25 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 14:59
-
「…もし、紺野が生きいたらって思うんだ」
彼女は今も私の経営するバーによく立ち寄る
以前よりも明るく話すようにはなったが、時折見せる刹那な表情は痛い
そして、彼女はいつもの微笑みで語る
「きっとすごく、キレイになってる」
「ええ」
「昔のままの体温で、アタシを見るんだ」
夢に酔いしれている事は彼女でも分かっていたと私は思う
ただそれを何も言わず聞く事がいいと、私は何も言う気にもなれなかった
以前のままの笑顔が蘇れば、世界中の人々は悲しむ必要などはない
哲学的な事を並べた彼女はフッとろうそくの灯火を消した
- 26 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 15:00
-
「命が消えるって事は、また新しいものが生まれるって事なの?」
その日がいつか彼女に来るように
私は今でも切に願っている
仮面を被った本物の笑顔がいつか現れてしまえば
彼女はまた同じ事を繰り返してしまう
私はただ彼女に笑顔をかけ、一礼することしかできなかった
- 27 名前:愛に生きた思想家 投稿日:2004/12/28(火) 15:00
-
命の理由が見つかればこの世界は相当な馬鹿になるだろう
人間は平気で共食いと呼ばれる人を殺し続け
愛のない心をむやみに使い果たし、自分自身を傷付ける
彼女がまたこのバーを訪れたら、この話をしてみようと思う
新たな愛を探し、彷徨い続ける思想家に
第二話・愛に生きた思想家・完
- 28 名前:四季 投稿日:2004/12/28(火) 15:02
- こんごま、完。
>15名無飼育様
初レスありがとうございます。
御期待に添えられるかどうか不安ですが、頑張ります。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/30(木) 00:57
- 独特な時間がここには流れてますね
私好みです。
次の作品も楽しみです。
- 30 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:23
-
子供という生き物は、人一倍背伸びをしたがる
彼女はそんな幼い一面を持ったかわいい女の子だった
未成年だと分かっていたが私はあえてアルコールを差し出した
今思えば、単純に彼女をからかってみたかっただけだ
イングリッシュ・ボロの味は案の定美味いとは思わなかったらしい
すぐに苦い顔をしつつ、キリッとつんばってみせる彼女はやはり子供だった
幼気な表情が語る言葉は、確かに私の脳に記憶されている
- 31 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:24
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あたしには、あの人しかいないの
だから、絶対離さない
だって、大好きだもん
得意げな笑顔が特徴的な、女子高生はそう言った
午後21時をまわった時計を見つめ、熱っぽい瞳は愛に溢れていた
- 32 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:25
-
援助交際
一言で説明すればこの行為は犯罪だった
若い子供の身体を目当てに金額を考えない大人は山ほど居る
大人は子供に夢を与えるのが仕事だが、世の中の歯車は入れ違っていた
夢どころか間違った事を教え、未来へと繋ぐ糸を自分自身で引きちぎる
そんな世の中が、亜弥は大嫌いだった
だが考える程気持ちが悪くなる
何も記憶する気にもなれず、気が付くと暗黒な地に足を踏み入れていた
援助交際
犯してしまった事実など目もくれる暇はなかった
- 33 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:25
-
ある夜、ラブホテルの前に突っ立っている中年の男が通り縋った亜弥を誘った
呆然としながら作る偽物の笑顔はサイボーグの様だった
すぐに感じ取った感覚は消え去り、亜弥は言われるがまま男と腕を組む
間違った事だとは解っていながら、もう遅いと言い聞かせながら
ラブホテルを通り過ぎる人々は皆盲目のフリをして
自分達には関係がない
まるでそんな意が伝わってくるようだった
「ケーサツ呼ぶぞ、クソオヤジ」
顔を空に上げ、とびきり大きい声で叫んだ人物が亜弥の目の前に飛び込んで来た
周りの人々は怪訝そうな顔をしてはその場を後にする
しばらくして中年の男は、立ち止まる亜弥を連れてホテル内へと連れて行こうとする
- 34 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:26
-
「オイコラ、テメェだよ。待ちな」
「…い、行こう」
「行こうだぁ?ヤりたきゃ一人でヤりゃいいだろ」
「お前には関係ないだろ!なんなんだ急に…」
「黙れよ」
その時放たれた、ケモノの様な瞳が亜弥の心を打った
バクンと胸打つ鼓動は先程までの音とは違った
体中の細胞が、この人を呼んでいる
脳が反応する前に、亜弥は瞬きも忘れその人物に目をとられていた
- 35 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:26
-
「ほら、行こう」
「かっ、勝手な事っ…」
「マジでポリ公呼ばれたいのぉ?」
携帯を取り出しニコリと微笑んだ人物に、男は大急ぎでどこかへ逃亡して行った
その光景を呆然と見張る亜弥は、言葉も出ない
この人、他の大人とは違う
瞬時に感じ取った人物の画が描かれる
「…あの、ありがとうございます……」
「礼言う位ならラブホなんか行くなっつの。じゃね」
「ちょっ…待って!」
とっさに口から出た言葉に戸惑いながらも、すたすたとどこかへ行こうとする人物の腕を掴んだ
鋭いインスピレーションが頭を離れず、亜弥を惑わせる
それにあの心臓の音は偽りではなかった
- 36 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:27
-
「何?美貴忙しいんだけ…」
「ミキって言うの?あた、あたし亜弥」
「…はい?悪いけど自己紹介はいらな…」
「あたし、あなたの事が好きです」
「……ちょっと待って、何だって?」
美貴と名乗ったその人物の事が、特別に見えて仕方がなかった
怖かったけれど、優しいと思った
乱暴だったけれど、強いと思った
たったそれだけの行動で、亜弥を本気にさせたこの人物
亜弥に、恋を教えた人物でもあった
「好きです」
- 37 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:27
-
夢中になった恋は狂おしい程膨れ上がる
それと共に、美貴はしがみつかれた腕に温かい体温をもらった
初めて人に触れた感触を、ふたりは忘れる事がないように
- 38 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:28
- 亜弥は夜の世界を捨て、美貴だけを見るようになった
冷たい一面しか知らない美貴の顔を、もっと知りたい
そう思うようになるには時間は必要なかった
「ミキたん、あーん」
「い、いいよ自分で食べるから」
「だってたん、こぼしてる」
「…あ」
二人で顔を見合わせて、苦笑するこの空間
美貴の鼻先についたアイスクリームを、亜弥が指先で拭き取る
それに照れくさそうにお礼を言う美貴も、いつのまにか亜弥に恋をしていた
ぶっきらぼうだけれど、亜弥にはどうしてか甘くなってしまう
こんな自分が信じられなかったけれど、どうしようもない現実だった
- 39 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:28
-
「もぉ、ちっちゃいこじゃないんだから」
「う…」
「ミキたんってば、あたしがいなきゃ何にも出来ないんだもんねー?」
「……うるさいなぁ」
この時を、大事にしよう
二人が想った願いが、いつまでも続きますように
一緒に過ごした大切な日々も、大好きなお互いのことは宝物
ずっとずっと、宝物
刻々と近付く別れの時間が、来る事も知らずに
- 40 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:29
-
「亜弥ちゃん」
いつものように、美貴は笑顔で亜弥の額にキスを落とす
そっと亜弥が微笑むと、美貴も同じように笑う
出会うまで知らなかった温もりを、お互いが欲していた
人知れず育んでいた恋は、実ったはずだった
「どう…したの?」
「ちょっと出かけてくるね。すぐ戻るから」
「……どこ行くの?」
「そう遠く無い所だよ。すぐ、戻るよ」
- 41 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:30
-
あの時、ちゃんと美貴の目を見ていればよかった
そんな後悔がしばらくの間、亜弥を縛り付けるのだった
すぐ、戻る
美貴は確かに、亜弥にそう言った
その言葉を最後に、彼女は3年もの間亜弥の元に戻る事はなかった
- 42 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:30
-
「今日、恋人が帰ってくるの」
「それは、よかった」
「早く会いたい」
「…」
純真なその瞳は、美貴への愛を物語っていた
わずか18歳の夢は、ただ一つ、美貴と結ばれる事
ささやかな夢であり、莫大な夢でもあった
「怒らないんですね」
「どうして?」
「だって彼女は、あなたを3年も待たせたんですよ」
「……そうだっけ」
気軽に肩をすくめて見せた亜弥は、忘れたかのようにふるまう
きっとそんなことはないんだろう
潤んだ瞳が、記憶の奥から覗く
- 43 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:31
-
「…怒る暇もなかった。いない間、色んな事が有り過ぎて」
美貴がいない間 それは彼女の時が止まった事と同じだった
全てを捧げた恋を一度終らせた美貴には、それほどの責任があった
けれど亜弥はそれを憎む事も、羨む事もなかった
彼女とは永遠の別れは有り得ないと、豪語したからだ
純粋な発言は、久々に私の心を突いた
「……もうすぐ、ですね」
「うん。…来てくれるかな?」
ふいに私を見上げた彼女は、少しだけ不安そうだった
私事を申すのはいけないと思い、にこりと微笑む事にした
すると亜弥は、赤ん坊のような笑顔に戻る
- 44 名前:彼女達の幸せ 投稿日:2004/12/30(木) 21:32
-
時計の針が知らす、彼女へのメッセージ
美貴が送った信号は、きっと亜弥に届く
カランと鳴る小鐘の音と共に、二人に幸せが降り注ぐ
まるで、亜弥と美貴の愛を見守る天使が舞い降りたかのように
第3話・彼女達の幸せ・完
- 45 名前:四季 投稿日:2004/12/30(木) 21:34
- 今回はあやみき。
>29名無飼育様
独特な時間…考え付いた言葉を並べてるだけですので、体して良い
対象にはならないかと。
楽しんで頂けたようなので嬉しい限りです。
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 00:13
- うん、良かった
有り余る程二人の想いが溢れてますね
- 47 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/24(木) 23:53
- 一気に読まさせて頂きました。 ちょっと短編の様で面白いです。今度はどんな人が登場するんでしょうか? 次回更新待ってます。
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