ここにいるぜぇ!
- 1 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 07:38
- 作者→ひさし。
登場人物は娘。の小川麻琴と高橋愛です。
小川麻琴の主観で書くことにしました。
筋は最後まで書いたので、完結します。
ちょっと説法くさくなり、自分の文章にムカついたんですけど、
これも自分の一部分ですので、認めつつ書いていこうと思うます。
- 2 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 07:46
-
「ここにいるぜぇ!」
"からっぽ"で何もない感じ。
今日、集合時間に遅れる言い訳を考えながら二度寝して。
そのせいで省略された朝ごはんをニ度寝のせいにして。
あまり仲良くない友達と同じ場所で同じ言葉で「日々同じだね」と同じ挨拶をして。
そのいつもと変わらない事を必死に守る。
今日一日の駄目出しをしながら、ご飯を食べて。
きっと効果があるであろう半身浴して、可愛い自分を想像して。
きっと激変するだろう明日を想い、寝る。
私の1日は、きっと正しく流れ、きっと忙しい。
でもでも、絶えず変るはずなのに、差し出す足は後ろ向き。
絶えない嘘の言葉は、みんなの耳を通りぬけ、私の耳も通りぬけ、私の周りでぷかぷか。
そんな"からっぽ"をしたがえ、私はここにいる。
何もない、空っぽ。何もない。
- 3 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 07:50
-
1
ガラス越しに広がる曖昧な空顔。晴れもしない、雨もふらない空。
きっとこの空は私の心の中にあって、私を写すように街を照らしている。
いきなりだけど、わたしは思う。
きっと世の中に住む人というのは"からっぽ"と"まんぷく"に分けられるはず。つまりは中身がない人と中身がある人にね。
私はどうかと言うと、もちろん"からっぽ"な方だと思う。
そんなことに想いふけってしまうのは、窓の先の先にある黄色い建物のせいである。
あの建物は、たくさんの建物の中からでも一番に目立っている。
- 4 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 07:54
- まるで周りの建物が緑の茂で、その黄色い建物が茂から「にょきっ」と頭を出しているキリンのよう。
ここに来た時から気になっていた。あいつも絶対に"からっぽ"なやつのはず。
あーでもしないと目立たないのか、もともと目立っているから目立つのか。
わかんない。でも、きっと目立つように黄づくめにしているはず。
外見のみで、中身がないんだ。直感だけど、私と同じで、きっとそう。
曖昧な空の光が窓を照らし、その光で反射するガラスは、キリンと私の顔を重ねる。
「もしもーし、まこっちゃ〜ん」
私の妄想を妨げ、現実にもどしてくれる声。
この声は、ぷかぷかと浮いてるワタクシ小川麻琴をぐいぐいっと地上に引きおろす。
さらに一本調子で音の切れ目のない声音。でも顔が可愛いと、声も可愛く聞こえる。
- 5 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 07:59
- 少し乱れた髪は、潤いを失わず真直ぐ下へと落ちている。
汗で少しテカった顔に浮かぶ、つぶらな瞳。目のふちをいっぱいいっぱいに黒目が占めている。
黒ジャージを着ていてもわかる細身。
私みたいにずんどうじゃなくて、くっきりはっきりしている。
私より鼻も小さくて高いし、まつげも多くて長い。
私のなで肩とちがって、綺麗な山肩。その肩につながっている鎖骨もまた綺麗なんだな、これが。
私は、いっつもハッキリしない自分の鎖骨を触って、鎖骨ラインができないかなぁって願ってるのに。
顔は顔で、私の顔のようなエラがなくて、すっきりした顔をつくっている。
私の角ばった頬と違って、愛の顔には角張りなんてない。
こーゆうふうに見ていると、愛は"まんぷく"な方なんだと感じる。
- 6 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:01
- 中身があると、全てが正しくなる。
全てが許される女の子、高橋愛ちゃん。
「んんんんっ!?」
ふつうにビビってみる。というかビビる。心臓ばくばく。
「いや、だから。マコっちゃん!」
肩を揺する愛。
「おうおうおうおうおう…」
肩を揺らされながら反応するアタシ。
「また、口をあけながら妄想してたよ」
やべ。この癖、なおんね。
- 7 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:04
- 「というか、いつも驚きすぎだよ」
「へへ…」
さすがに妄想が深いせいか、愛が遠かった。
心の声が聞こえてそうな感じ。
心臓のばくばくも止まらない。
休日を平日だと思い、携帯のアラームで起きてしまい。
それに気づかなくて、心臓をばくばくさせながら、昨日どこかに放った携帯を必死に探している、そのときの気持ちに似ている。
本心、冷静でないくせに、冷静を装う。
「そんなに妄想していいの?」
「妄想、趣味だから、さ」
- 8 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:07
- 「さっきのダンス練習、忘れたの?」
そう言えば、そうだった。
愛の声は、地上に降ろしてくれるどころか、より現実の世界へと引っ張り戻してくれる。
休日にやることを前から計画してたのに、気がついたら休日の夜だったりする、そのときの気持ちに似ている。
本心、冷静でないくせに、冷静を装う。
「ちょっと、キリンのせいで…」
「え? キリン?」
はぁ?って愛の顔。眉毛の曲がり具合が最高。
でも、そんな事を思ってる場合じゃない!
頭の中にマイクがあって口というスピカーから、常に声として出しているのかも。
全然、制御できないスピーカー。これはやばいね。
- 9 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:14
- きっと窓の向こうのキリンがそうさせてるに違いない。かっらぽのくせに!
でもでも最近のわたしって、妄想と現実が同じ感覚になっている気がする。
これはもっとやばいね。
何てこたえようかなって考えてたら愛が「あぁあぁ。ダンスの先生の事? キリンみたいに目立ってるよね。機敏だし、高いとこにいる感じだし!」と納得!って顔でいう。
「あー……、そうね」
そうくるか、と思いながらも、ちょっと腕組みして片足に体重をかけて妄想。
何もないキリンと何でもできるキリンかぁ……。
「最近、キリン先生。麻琴を突っつくよね。」
私の妄想の言葉尻に愛がかぶせてくる。
最後まで妄想させろよ、と思いつつ、さっきのダンス練習のことを頭の中で思いめぐらせてみる。
- 10 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:18
- 「ちゃんとやってんだけどね。」
そう言わせたかったのか、すかさず愛は「そうなんだよね。麻琴はちゃんとやってんのにね!」と手を組んで怒り気味に言った。
「わかってないんだよ、キリンは!」
愛の興奮は高まる。舌が追いついてないよ、愛ちゃん。
「もう、先生はキリンで決定なんだ」
「いいんよ、キリンで。首が長すぎて、ちゃんと麻琴のことを見てないんだよ!」
いつもながら、うまくないね、愛ちゃん。
「先生が本当のキリンなら、私は嘘のキリンだね」
呟く。私が思わない事を言うから、愛はわかんないって顔している。
誰もいない5階の長い廊下の真ん中。こんなところに2人でつったっているのは、ダンスの復習をするため。
- 11 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:25
- さっき、ダンスの練習中に怒られたんだよね。愛が言うキリン先生にね。
建物のキリンと愛に夢中で、私がモーニング娘というアイドルということさえ、頭から消してた。
そうなってくると、モーニング娘に入るためのオーディションすら受けてなかった気がしてくる。
今日はモーニング娘。の歌振付の合わせ日で、ダンスの練習をしていたのである。
さっきキリンにすごく怒られて、ヘコんでここにいるんだけど。
何故か愛もついてきた。こっちに来てひとりになりたかったんだけどさ。
ひょっとして私がかわいそうなのかな。
そんな感じがしてきて、私は愛に少しムカついている。
だけど、私。今、どこにいるんだろ。ぜんぜん地についてないよう。
ぷかぷかと浮いていって、しまいには消えてなくなりそう。
「まぁ、私が悪いから」
- 12 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:27
- 「そうかな? 私の方が下手なのに。キリンはちゃんと見てないんだって、真琴のこと!」
「そうでもないよ」
「そうなの?」
「そうでもないよ」
ここ最近、愛と一緒にいる時間が長い。
何故か長い、心地よいというか安心するというか。
いわゆる親友なんだと思う。
「どっちだよ」
愛はどっちでもない私の答えにご不満のよう。
でも、ほんとどっちだよ。今の私ってどっちにもつかなよう。
- 13 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:28
- 「はは」ほとんど気の抜けた笑いしかできない。
愛は完璧。
愛を追い抜けば完璧になれるのかな?
愛は、私が一度も目を合わせないことに気づいてるかな?
愛は、会話と会話の間の微妙な間に気がついてるかな?
愛は、私がずっと愛と比べていることに気がついているかな?
この妄想は消えない。この現実は消えない。
過去も消えないし、未来も消えない。
私がいる場所はここだけ?
私が在るのは誰のせい?
- 14 名前:ひさし 投稿日:2005/01/01(土) 08:29
- あそこのダンスのフリができないのは愛のせい?
あそこの歌の部分ができないは、キリンのせい?
私、小川麻琴の妄想は宇宙まで続く。
- 15 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/01/01(土) 09:48
- 新年初作品、お疲れ様です。
全部、HNで統一しているけど
レスと話に関しては区分けした方が良いんではと・・・。
余計なお世話である事は承知で敢えて言わせてもらいました。
楽しみにしてますので頑張ってください。
- 16 名前:ピアス 投稿日:2005/01/05(水) 23:39
- スゴく面白い予感がそこかしこからします。
どうなっていくのか、楽しみにして待たせていただきます。
- 17 名前:ひさし 投稿日:2005/01/06(木) 09:50
- >>マシュー利樹さん
ご忠告ありがとうございます。
確かに,わっかりにくいですね。改善いたします。
>>ピアスさん
そう言ってもらうと,嬉しいです。
- 18 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 09:53
-
2
さっきの話でいう,ダンス練習に時を戻す。
つまりは、私が何故にへコんでいるか。その理由。
私は愛が言うよーに、この回想では振付の先生の名を"キリン先生"と呼ぶことにする。
- 19 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 09:57
- 「じゃ、やろうか」というキリン先生の声で振付の全体練習が始まる。
コンビニで買っておいた水を飲みほす。
水は、なんだか体にいいらしい。最近、ハマりぎみ。すぐ飽きる気もするけど。
ダンス練習場には、愛も私も含めて先輩達が何人かいる。
私たちは前方に対して縦4列となる。私たちに向かいにキリン先生。
キリン先生は女性で、とっても熱血。あちぃあちぃ人。
わたしのお母さんぐらいの歳かな? 40台半ばぐらい?
嫌でもこっちの気持ちを上げてくれる人。
愛はこの人をキリンだと言う。
始めは、はぁ?って思ったけど。でも、そうかもしれない。
- 20 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:02
- 顔を見入ると動物っぽいし。色黒肌が麒麟の茶っこい部分と似ているし。
それとあの眼。
私は、動物園がけっこう好きで、たまに行ったりするんだけど。
そこでキリンを見たときはやられたね。
足も長いんだけど,それより首がすっごく長くて、すっごい高いところから、わたしを見てくるの。
身体はそっぽ向いているのに、顔だけがこっち向いてて。あのすっごい黒目でこっちを見るの。
全てを知ってるように、全てを見透かしているように。
そんな眼。このキリンの眼に、キリン先生の眼は似ているんだ。
ここまで考えると、いろんなところが一致してくる。
耳とか同じ気がするし、普段ゆっくりなところとかも同じ気がするし。
- 21 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:05
- 高いところから見ていて、偉そうなところも。
やべ、まじキリンだ! キリンそのものだ!
ちょっとニヤける。
そんな妄想を今していても,この回想の練習は続いている。
早く終わらないかなぁ。自分で時計の針を回してやりたいよ。
そんなことばっか思ってたな。
「麻琴、気持ちがこないよ!」
あえて目線を合わせずに言う、キリン先生お得意の仕草。
たしかに集中はしてないね、わたし。
言うことは正しいだけにムカつく。
今日、先生による6回目のお言葉だ。
- 22 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:06
- 愛は1回。
つーか、あたしが駄目なのは愛のフォローしてるからだよ。
キリンに怒られると、緊張して死にそうだよ、わたし。
でもでも、わたしのどこまでを知ってるんだよ。
「ちゃんとやってますよ」
今日のお口は制御不能。
気持ちを見透かされたようでムカつく。なに見透かしてるツモリしてるんだよって感じ。
キリン先生だって駄目なところ、いっぱいいっぱいあるくせに。
なんかムカムカが上から降ってくる。
出たものは仕方がないので、続けてみる。
- 23 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:07
- 「ダンスの振りも忘れてないし、ちゃんとやってますよ!」
キリン先生は目を合わせない。
ある意味、こえー。
そして、言い放つ。
「どこがだよ」
静かになる稽古場。
周りの視線をいっぱいに感じる、きっと可哀想とか思れてるよ。
とっても消えたい気分。
練習を妨げたくないのかキリン先生は「麻琴はこっちに来て。みんなは、続けて」と手で招き入れる仕草をしながら言った。
なんかキレた。
- 24 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:09
- 私だけを責めてくるのが許せなくなってきた。
愛のファローをしつつ、先輩に迷惑かけずにやってんじゃん。よく見ろよ!
「先生が言ってること、全部やってんじゃん! それに愛よりできてるし!」
顔はきっと必死。両手をおっぴろげて、一本調子で切れることのない声をあげる。
まるでミュージカルみたいな動きをして、キリン先生へ汚い言葉をぶつける。
こんなとこ、こんな顔、こんな声、こんな仕草、こんな言葉。先輩に見られたくないし、愛に見られたくない。
「愛は関係ないんだよ、麻琴」
キリン先生は腕を組み、身体はこちらに向けず、顔だけをこちらに合わせた。
- 25 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:10
- 「そこにいる麻琴の話をしてるんだよ。わかってる? アンタなんだよ。
麻琴は今、どこにいるの?ん?
麻琴が今やりたいから、そこにいるんでしょ?
そこにいるなら、がんばるなんて、あたりまえなんだよ。
人と比べんな、自分自身と比べろよ。やるのは麻琴自身なんだからさぁ。
自分のやっていることに、愛のせにして言い訳をすんな。言い訳を理由にすんな。
麻琴がやりたいことは、愛を独占することなの?
愛は愛、麻琴は麻琴。
麻琴がやってることは愛を利用して、逃げてんだよ。
他人を言い訳にして、自分のことを人のせいにして。
そんな事して、逃げてんじゃないよ」
- 26 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:11
- 稽古場は物音ひとつせず。私の口は無意識と心の声を拾わない。
言い返す言葉なし。
私の視界はキリン先生に捕われ、がくんがくんと目の前を揺らす。
やばい…、ここから逃げないと。
ここにいる自分が許せない。
消えたい。恥ずかしい。泣きたい。
消えたい気持ちは足にも伝わり、そのまま稽古場の外へと私を走らせた。
出るときの先生の声も聞かず、先輩も見ずに走った。
すぐに、愛がついてくるのがわかった。
ついてくんなよ、一人で泣きたい。全部、私のせいにされてんだよ。
崖っぷちじゃなくて、もう崖から落ちてるんだよ。
- 27 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:14
- ---
今に時を戻す。
キリン先生の怒りから逃げて、無駄に長い廊下で愛と一緒につったっているところ。
つまりは、さっき愛と話していた続き。
さっきから、愛との会話が微妙にかみあってないのは、変な怒られ方をしたから。
ベランダの手すりに両肘を置き、手のひらを両頬に当てて顔を支える。
曖昧な空模様は街を包み、私を閉じ込める。
- 28 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:16
- 私の中の曖昧な心模様は、曖昧な私を閉じ込める。私は私に閉じ込められてる。
やっぱり、目の先には建物のキリン。家々の間からにょきっと顔を出している。
今、キリンを見ながら、必死にやってることがある。
それは、ダンスのキリン先生に怒られた、というかキレられた事の1行1行について、頭中で反論すること。
キリンは、なーんもわかってないよ、まったく。
鼻から一息、口からため息。
でも結局、ここから逃げ出さないのは、何かに期待しているからなのかなぁ。
きっと、誰かが助けてくれたら、ちゃんとやるのになぁ。
口から一息、鼻からため息。
「だからさぁ」
- 29 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:17
- ぎょっとして、頬杖が崩れる。
一本調子な天の声に引っぱられる。
「んんんっ?」
後ろから愛が私の服をつかんでいる。
「妄想してないで練習しようよ」
ため息すら消す、愛の声。
「あー、ごめん」
そーいや、愛がいたんだよなぁ。
来てほしくなかったけど、来てくれて嬉しかった。
来てほしくて、来てほしくなかった。
- 30 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:18
- その繰り返し。でも、その気持ちを隠す。
愛を考える度にキリンの言葉が頭に響く。
愛を利用してるだけ…。
そんな思いをはね飛ばすように私は「はやく、稽古場にもどりなよ」とダンス稽古場に続く方へ手を向ける。
「いい、麻琴とここにいる」
愛の口はきびしくなり、それを隠すかのように顔を下げた。
「いや、邪魔。いっていいよ。というかいって」
私は口はいっそうきびしくなり、それを隠すかのように顔を下げた。
「一人にやりたいし。一人でやるから」
愛の口は横一線となる。それを見せたくないのかくるりと背を向ける。
- 31 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:21
- 結んだ髪は背を向けると共に,キリンのしっぽのようにゆれ、私のあげたおそろいのピアスもつられてゆれる。
「麻琴にとって愛は邪魔なの?」
愛の真直ぐな言葉に、私は口をつむってしまう。
2人の間に流れる微妙な空気。核心に触れない言葉は、たくさんの沈黙を生む。
愛は私の言葉を期待しているせいか、肩をこっち向けたそうな仕草をする。
私は、もっともっと違うことが言いたはずなのに。
愛は私の言葉を待つ仕草をしながらも、ゆっくりと歩き出す。
今、すぐにでも手を伸ばしたいけれど、背を向けて歩いていく愛の背中には届いてはいけないんだ。
そんな気がする。これが私と愛の差なんだ。
愛が通路を曲がり姿を消しても、ため息は消えない。
- 32 名前:2 投稿日:2005/01/06(木) 10:22
- ため息を体に込め、目線を曖昧な空へと向ける。先にはキリン。
ただ目立つだけで、中身なんてない。
まるで、私みたい…、なんだよね?
「行って…、行ってみようかな」
ため息に混じって言葉が出た。
そんな自分に笑う。
もどるに戻れないし、行ってみようかな。
なーんか、あのキリンに会ってみたいし。
小さな目的をもち、不思議に爽快感が生まれてきた。
本当にしなきゃいけないことを隠して。
逃げる、という言葉を隠して。
- 33 名前:ひさし 投稿日:2005/01/06(木) 10:24
- 2終了。
脱字が多くて,意味がわかりにくて,すいません。
これから改善は,してゆくつもりです。
がんばりやす。
- 34 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 21:57
-
3
歩くことはきっと好きなんだよね。
休みの日は、近所を散歩したりするし。
近い距離なら歩くし。
新しいお店を発見したり、考えをまとめたり、風景を見たり。
私が地方から出てきて、東京に住み始めた時も近所をよく散歩してた。
- 35 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 21:59
- 思い出すなぁ。
私は遠くにあるキリンを見ながら一歩一歩と足を進める。
キリンは幾度も高い建物の影に隠れたが、見失うたびにひょっこりと出てくる。
キリンを見失わないよう、さらに足を進める。
でもキリン先生はわかってないよなぁ。
足を1つ1つ進めると共に、キリン先生の言葉の1つ1つに反論してゆく。
だけど、うまい反論ができない自分がいる。
帰ったらどうしよう。というか帰っていいのかなぁ?
うーん。
10月もそろそろ中盤を向かえる。
- 36 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:00
- 空は高く、空気は澄み。空をおおう雲から光が満ちている。
高い光雲と低い雨雲の間に光は指し、ニシカラヒガシエ、空にいっぱいの線を引く。
"同類だけど線を引く"
漫画の台詞にあったんだけど、其れを見た瞬間にハッときた。
私は子供の頃から線を引くのが大好きだった。
砂に線を引き、校庭に白線を引き、人と人との間に線を引く。
この人はこの枠。この人達はこの類。この人は、あっち。この人達は同類。
線を引きつくしても、私は安心しない。私はこの同類の人達にも安心しない。
同類だけど、私の気持ちはわかるはずがない。そっちには行かない。
私は自分の形にそって線を引いている。
- 37 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:01
- 私が愛に納得できないのは、こーゆうところからきてるのかも。
なんで愛は私のことを、もっともっと思ってくれないんだろう、とか。
なんで愛はもっともっと積極的に引っ張ってくれないんだろう、とか。
愛は友達のはずなのに。
考えることが頭の中でぐるぐるしてて、足取りもぐるぐる。
集中しすぎて、建物のキリン、そのものを見失なっちゃった。
視線を左右に振り分け、キリンを探す。
ん?
「んん?」
見上げる私。見下ろすキリン。
- 38 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:02
- 「おお! 上かぁ」
なんか、キリンの真下まで来てたよう。
だけど…「ふつうだなぁ」。建物を前にして、おもわず口から言葉が出る。
なぜなら、ただの建物だから。でも、変。
その建物は、黄色の正方形状の三階建てのつくり。一見したら普通な建物。
でも屋上にキリン。黄色いキリン。
この三階建ての屋上には、黄色いキリンのオブジェが立っていて、周りを見下ろしている。
両隣にある建物を従えて、違和感は抜群によい。
このオブジェ自体に違和感があり威圧感あるんだ。
角張りがない流線型のライン。アヒルよりとんがった口。きれいですらりと長い首。
- 39 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:03
- 頭の先っぽにちょこんとついた耳。肉づきの少ないおしりからは、愛のポニーテールのような綺麗なしっぽ。
で、眼。キリンの眼。
やっぱり、私が動物園で見た本物のキリンの眼と同じだ。
すっごい高いところから、わたしを見てくる。全てを知ってるように、全てを見透かしているように。あの眼と同じ。
目線を目の前に戻してみると、そこには木で作られたドアがある。
そのドアには、紐で木板がつるされていて、その木板に白色でOPENと書いてある。
「お店?」
このキリンの建物は、お店なのかな?
でも、メニューとか出てないし。看板もないし。でも、OPENなんだから、入ってもいいんだよね?うーん…。
いったい、キリンの下で何やってんだ?
- 40 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:05
- 厚い木のドアに両手を置き、体重を押し込む。
だんだんと視界は開かれてゆく。1つ1つ確かめるように目に入れていく。
机に椅子に棚に…、ぜんぶ木だ。
少し荒めで太い木目からは温かみが出ている。なんか懐かしい感じがする。なんか昔を思い出す感じ。
「いらっしゃ〜い」
妄想の世界へと入ろうとする寸前で私を呼び戻す女性の声。そんな声が奥から聞こえる。
なんか愛の声みたい。ふふ…。
キリンが出てきたら笑うなぁ、そんなことを思う。
そうしていると奥から木床を打つ靴音。それをたずさえ、女性が出てくる。
「え〜と、え〜。」
- 41 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:08
- 口から出す言葉を選ぶ。と共に女性の姿を見入る。
女性は体の線が細い大人な姿、そして優しい目。顔の1つ1つのパーツがはっきりしている。
黒パーカーの下には白Tシャツ、ワンポイントでキリンの絵が描いてある。
前髪1つも残さずに頭の上にもっていき、きつく結んでいる。
一通りの疑問が大盛りだけど「なんのお店なんでしょう、、、か?」と、1つぶつけてみる。
そしたら、女性は女性で、うーん…、と手を組んで悩み出した。
というか悩むべきことなの?
2人で悩む空間。…ちょっと妙。
そうしていると、女性が思いついたようにキラリと目を輝かせ言い出した。
「何かを作りましょう屋、、かな?」
- 42 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:09
- 「えっ?」
「えっ?だから何かを作りましょう屋…」
わかんないよって顔してみる。
「まー…、お客様を見て私がかってに作るって感じ? まぁ、細かく決めてないんだよ。アハハ…。」
頭をかく。大きく笑う。後、咳付き。
容姿は美しく、年は20代後半に見える、でも大らかで気さくな雰囲気だ。
こちらの気持ちが勝手に和んでくる。
やっぱ顔って大事、…だな。
「じゃあ、飲み物だけで…」
女性がっえ?って顔でみる。
「飲み物だけ?」
- 43 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:11
- まぁ、ご飯を食べると思って来たわけでないし。お腹も空いてないしね。これはしかたない。
「そーですね。ちょっとお腹に入ってるので」
「あー、そう。かなり、いきこんでるんだけどね。まぁ仕方ないか」
かなり残念そうな顔。しっかし、わっかりやすい人だなぁ。
彼女は腕を組みながら部屋の奥へと歩く。奥には小さな小箱がいくつも置いてあるテーブルがある。
その小さな小箱にはそれぞれ違う茶葉があるようで、彼女はそのテーブルの前で腕を組んだまま考えている。
私、茶葉が欲しくて、1回あつめようとしたんだけど、茶の種類とか多くて断念したんだよなぁ。
とか思いながら椅子に座って部屋を見わたしていたら、彼女が出来たての茶を私の前へと置いた。
- 44 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:15
- 可愛いカップの中で、茶葉のかけらはお茶の表面をぐるぐると回る。
ぐるぐる。ぐるぐる。
私が人生を1周したような気がすると共に、地球は太陽を回り、太陽系は天の川を回る。
私が山手線に乗って、居眠りで1周したと共に、実は山手線を2周していて、どうせならと3周する。
私が愛に貸したCDは、友達に貸され、その友達に貸され、私に貸され、見忘れてたと言う愛に再び貸す。
ぐるぐる、ぐるぐる。
ぐるぐる、ぐるぐる。
私はいつまで同じとこで回っているのかなぁ。
でも、私の周りを太陽が回ってるように見えても、実は私たちが太陽を回ってるわけだし。
どっちが回ってかなんて分からないんだよね。
だから全部、私のせいじゃないんだ。
だから目なんて回らなくていい。
- 45 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:17
- 「悩んでるねぇ」
「あっ、わかります?」
「なんかね、思いふけりまくりだからさ。」
「はは」
「何に悩んでいるか分からないし、私が勝手に言うんだけど」
「はい」
「物事はあんがい簡単なものだと思うの。人は物事を難しくしすぎなのよ」
うんとうなずくと、彼女が隣に座る。
彼女は視線を窓の方へと向ける、つられて私も向ける。
窓を飾るふわふわのカーテンの下、小さなベットがある。
- 46 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:21
- 木目がしっかりした小さな木のベットにピンク色のレースがかかっている。
もしかして、赤ちゃん?
私の目線からはベットの中は見えないのだけど、度々赤ちゃんらしき手や足が外へと出ているのを確認できる。
「赤ちゃんですか?」
「そう」
そう笑顔で言うと、聞こえてたのかのように、赤ちゃんが泣きだした。
彼女は立ちあがり、心配そうな顔をして、赤ちゃんのいる方へと早足で向かった。
そうして彼女は満面の笑顔で赤ちゃんと対面している。
そんな笑顔でこちらを向き「こっち、こっち」と手招いている。
さっきの心配な顔と満面の笑みとの差も驚きつつも、赤ちゃんのほうへといく。
- 47 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:25
- 足を前へと前へと伸ばすたびに、赤ちゃんの姿が少しずつ見えてくる。
綺麗な白と綺麗な黒のはっきりした小さな目、つやがある細い髪の毛、綺麗なもちもち頬っぺ。
「可愛いぃ」
その姿はとて無防備に見えて、くりくりの瞳でこっちを見てくる。
さっきのように赤ちゃんは泣き叫ぶだけ、なにもできない。
そう思い、自分と重ねた。
泣くだけで何もできない。なにもしない。
「私の娘なの」
「そうなんですか。やっぱり可愛いですね」
- 48 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:26
- 私は赤ん坊なのかも。
駄々こねて叫ぶだけの赤ん坊。
やばい、私のひきつっている心が、子供にバレそう。
この子の真っ直ぐでくりくりの眼、私の身体をその場へと釘付けにさせ、私の心を縦にも横にも揺らす。
そしてこの眼は、あの眼と似ているんだ。
あのキリンの眼に。
きっと私の心が真っ直ぐじゃないから、真っ直ぐ見返せないんだろうね。
あたしゃ、赤ちゃん以下か…。しゅんとくるね。
こんな気持ちを誤魔化すのは笑うしかないね。
赤ちゃんに向かって、誤魔化しでにこりと笑う。
- 49 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:28
- ついで、頬を膨らませて目を中央に寄せて、ぷるぷると顔を左右に振ってみる。
ぷるぷるぷるぷるぷる。
「うあ〜」面白かったようで、笑ってくれた。
やっぱ可愛いなぁ。
もう1回、もう1回。
ぷるぷるぷるぷるぷる。
「あはははっはは」
こんどは私の顔を見ていたお母さんがかろやかに笑う。
口を1度、への文字にして笑いを溜めてから、いっきに笑う。この赤ちゃんと同じだ。
- 50 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:29
- 「今の顔いいねぇ」
「あら〜、見てましたか」
照れ隠しに頭をかく。はずかし。
「ところで、さっきの」
「ん〜?」
「物事は単純っていう…」
「あー、それ。赤ちゃんって何もできないと思うでしょ?」
あ、この人もキリンの眼を持つ人だ。私の考えていることなんてお見通し。
「えー、はい。」
- 51 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:32
- 「赤ちゃんは何もできない存在とか思われてるけど。実は豊かな感情があって。
嫉妬したり怒ったり悲しかったりしているの。で、そーゆうことをちゃんと泣き声で表現してるの。
しっかりと嫌だ、怖い、不安などを表現するのよ。空っぽじゃないの」
「さっきのもすぐにわかったんですか?」
こくりとうなずく。
「さっきのは、私はここにいるよ、ってこと。やっぱ1人じゃ寂しいんだよね。
最近は特にそう。少しでも離れると私を呼ぶの。まぁなんせ、このベットからは木の天井と窓から見える空だけだものね。
私、赤ちゃんを見てると、物事は単純でいいんじゃないかなって思うの。」
「単純?」
「そう、赤ちゃんと同じ。『今、何をする』ってこと」
真剣なまなざしをむける。まるでキリンの眼のように見とおす。
- 52 名前:3 投稿日:2005/01/15(土) 22:33
- 「もう、考えは何周もしてるんでしょ?もう、わかっているんだよね。
あーだこーだ言ってもしょうがない。信じて、やるかやらないか決めるだけだもの」
これを聞いて、私は思い知らされた。
同じ問いをして同じ答えを出して、私は何百周も同じところを回っている。
私が悩む限りこのぐるぐるは止まらない。
私が空っぽと思うのは見ようとしないだけ、私は私を出していいんだ。
私は私から逃げていることを知っている。
私はやらないままでいたくない自分を知っている。
私は愛が大切な友達ということを知っている。
私は歌が大好きな自分を知っている。
私は何がしたい?
私は何をする?
私はこの答えを知っている。
私はここにいるって叫ぶんだ。
- 53 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:35
-
4
このドアを開ければ、ダンスの稽古場。
私はこのドアを豪快にぶち開ける。
気持ちが晴れてると、ドアの開け方ひとつ違う。
キリンの建物で感じた思いを身体に伝えたくて、私はすぐにダンス稽古場へと戻ってきた。
私はこれまで知らないまま、自分で一歩一歩と足を前へと出していたんだ。
- 54 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:36
- こんな大事なことを忘れちゃいけない。これまでを私は見ようとしなかった。それは私にとって…、"私"だけに大きなものなんだ。
こんな大事なことを逃げ出す理由にしちゃいけない。
「先生!私を見てください!」
お口の方も晴れやかです。
キリン先生は何も言わずに、私の踊る位置を手で指す。キリンの眼でどうぞって感じ。
気持ちを整え、髪を整え、背筋を伸ばして、息をゆっくりと出す。
この足を一つ前に出すのはとても怖くて、今でも逃げだすための100の理由を作ってしまうけど、私は私を信る。
恐怖を身体に入れて、私はここにいることを表現するんだ。今、私は歌を楽しむんだ。
- 55 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:38
- 差し出す足を前へ向ける。
うし!いこう!
私はあえて先輩達にも愛にも声をかけずに、キリンが指した場所に立つ。
みんな何かをいいたそうな顔をしてきたけれど、私を見てわかってくれたのか、何も言わずに待ってくれた。
振付の曲が流れる。
私と先生の勝負?愛との勝負? ううん、違う。自分との勝負。
私は音の上に乗って楽しさを表現する。
綺麗じゃなくてもいい。下手でもいい。
私は歌が好きなんだ。歌いたいんだ。
- 56 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:39
- ♪
夢の翼を広げ 自分をぶち破れ
何がしたい?と聞くけれど話せばビックリするじゃん
知らない事とか始めると超不安な 顔するじゃん
僕らはまだ夢の途中 みんなそうなんだ
言い訳などない チャンスはそこにある
一度きりの人生 お腹いっぱい学ぼう
夢の翼を広げ 自分をぶち破れ!
答えは幾つもあるんだと教えてくれた先輩
恋人の夢を知った時 何かジェラシー感じた
全てはまだ学ぶ途中 みんなそうなんだ
出会い そしてさよなら 笑顔は忘れない
歌は国境越えて何処までも進むよ
愛の翼を広げ 「I‘m Here!」 今ここで叫ぶぜぇ
♪
- 57 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:42
- 気づけどよい歌。
やっぱ、音楽は楽しいな。
曲は終わり、空間が静かとなる。
すこしたった後にキリン先生は手をパンと叩き、何も無かったように「20分後から始めるよ」と言った。
勝ったとかじゃなくて、気持ちをぶつけた感じ。
とどいたかな…
私は窓に目をやり、この稽古場から見えないけれど、建物の方のキリンを思い出した。
あの後で聞いたんだけど、あのキリンは楽しんでもらうためにあるんだって。
あの建物のキリンの近くに高速道路があり、そこを通る車に一時の和みとして見て欲しいそうです。
確かに東京の高速道路から見える風景はビルばっかで、つまんない。そう思った彼女が手製で作った。
- 58 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:45
- でも何故キリンなのか?それは単純に彼女がキリンのことを好きだから。
好きだからできる。好きだから3、4メートルもあるキリンを作ってしまえる。
好きだからキリンを通して、人にも楽しんで貰いたいと思うし、子供への愛情も表現できるし、こんな私ともお話ができる。
自身の中で"きらり"と輝くモノがすごく大事なんだ。
私はキリン先生の掛け声を聞くと、先輩たちに勝手に出てった事を謝った。
「どこいってたんだよー」「ちゃんとしなさい」「びっくりしたよ」など言ってくれた。
そしたら私がよくお話をする先輩が「何してたのよ」と聞いてきたので、
さっき赤ちゃんの前でやったように目を真ん中によせて、ぷるぷるぷるぷるぷる、とするの見せた。
「そんなことかよ」という総つっこみにありつつ、この仕草はキリン先生の案で曲中の振付に使われたりする。
きっとこの曲は私の心の中にあって、私を写して私を照らしている。
- 59 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:46
- きっとそう。そう信じてみることにする。
からっぽを逃げる理由にしている人。
ないことを逃げる理由にしている人。
逃げるための理由を創ってしまう人。
私もその一人なんですけど、その人が空っぽなのか、そうじゃないのか、それは結局のところわかんないんだよね。
だから、信じてみることにする。
この悩みと希望からくる"ぐるぐる"の連鎖を止めるには信じるしかない。
信じて今やるしかないんだもん。
自分の奥で"きらり"と輝く、他の何にでも形容できないカタチ、そんなカタチがあることを信じて。
それは私を表現する上で大事な輝きなんだ。
- 60 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:47
-
「麻琴」
後ろから愛が私の服をつかむ。だた聞き取るには難しく、とても細い声。
私は少しびっくりして身体を揺らす。だけど、私をつかむ愛の手ですぐ身体を立て直す。
「なーに、いきなし」
愛は少し頭を下げ、口は横一線となり眉は形を変え、今にでも泣きそうだ。
- 61 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:53
- どこか見たことある仕草に、愛を追いだした時のことを思い出した。
私ってほんと、ひどい人間だな…。
「麻琴は愛を利用しているだけなの? 私は必要ないの?」
利用しているだけ…、これはキリン先生が私に言ってたことだね。
服をつかむ愛の力が強くなってくる。私はその手をやさしく取り、愛の腕を下へと下げた。
愛の手を私の手でぎゅっと包む。
物事は単純。
今、私は自分を信じる。
この手と手の先に感じる温もりを信じる。
それを言葉を出すんだ。
- 62 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:55
- 「愛」
その言葉を聞き、愛は私を上目で見る。周りを包むやさしい光により、愛の目は私を写す。
私はしかりと愛の目をとらえる。真っ直ぐと見る。
正直な気持ちを愛に伝えたい。
「愛を利用していたのかもしれない。愛が邪魔だったのかもしれない」
自分といるときは避けて。
違う娘といると嫉妬して。
「でも違ったの。愛がいてくれるから、私は努力するんだよ」
いつも愛に救われている。
「愛はすごいんだよ、私に持ってないものを持ってる、尊敬してるの」
- 63 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 22:59
- いつでも愛のことを考えていた。
「愛を考えてて、私にも私だけのものがあるんだって思ったの」
愛との会話や共にすごした時間が私を成長させてくれた。
「これは愛がいたから気づけたんだよ」
愛がいなかったら私じゃない。
「私は愛が必要なの」
だから愛は友達なんだ。
いつもいる友達に自分の気持ちを伝えるのは恥ずかしい。
でも言葉でしか伝えられないことがある。
愛は目にためていた涙を床に落とし、ぺたんと腰を床に落とした。
- 64 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 23:00
- 私は愛を支えようと背中に手をまわし抱きかかえる。
愛は涙声で「友達でいいの?」と言い、私を抱きしめ返した。
私は私の気持ちを愛に伝えたい。
「違うよ」
ふふんと笑ってやる。
「ぜんぜん!全然、違うよ」
「えっ?」
愛の耳元でささやく。
「親友だよ」
- 65 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 23:01
-
からっぽで何もない感じ。
集合時間に遅れる言い訳を考えながら二度寝して。
そのせいで省略された朝ごはんをニ度寝のせいにして。
あまり仲良くない友達と同じ場所で同じ言葉で「日々同じだね」と挨拶して。
そのいつもと変わらない事を必死に守る。
今日一日の駄目出しをしながら、ご飯を食べて。
きっと効果がある半身浴して、可愛い自分を想像して。
きっと激変するだろう明日を想い、寝る。
私の1日は、きっと正しく流れ、きっと忙しい。
- 66 名前:4 投稿日:2005/01/15(土) 23:02
- 絶えず変る未来に向かって、差し出す足は前に向き。
絶えない愛の言葉は、私を幸せにさせる。
私たちを包む曖昧でやさしい光、私たちを表現している?
暖かいキリンの眼、私たちを見守っている?
私は私が信じると決めた事を"今"この瞬間やる。
そう決めた。
もし愛が"まんぷく"でも、もし私が"空っぽ"だとしても。
私は愛が好き。
私は歌が好き。
これだけで十分に満たせるのかも。
だから私は歌う。
ここにいるぜぇ!
- 67 名前:ひさし 投稿日:2005/01/15(土) 23:03
- 終わり。
- 68 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/01/17(月) 17:45
- お疲れ様です。
面白かったです。
特に、最後のまとめ方が上手いなと思いました。
(生意気言ってすみません。)
次回作、楽しみにしてます。
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