音楽

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 18:18
 俺は葬送行進曲を知らなかった。ベートベンの交響曲第5番を知らなかった。トッカータとフーガを知らなかった。もし頭のなかでずっと流れている音に名前があるなら、多分、そのどれにも似ていなかった。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 19:18
 眠ればオートマチックに記憶装置が動きだす。
 硝煙の匂い。
 銃爪の重さ。
 銃把の感触。
 排出された空薬莢がリノリウム貼りの床にぶつかる音。

 それから、音。頭のなかで鳴り止まない音楽。

 悪夢から目覚めてみれば、シーツは汗でぐっしょりとしていた。毎朝のことだ。俺が泊まってるホテルは毎日シーツを替えてくれる。毎晩毎晩、洗濯することなくまっさらな糊の利いたシーツで眠れるのはこの上な贅沢だった。起き抜けに湯の出るシャワーを誰に気兼ねすることなく浴びることができるのも。おれは頭からシャワーをかぶり、頭と顔を一緒に洗った。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 20:02
 鏡のなかには見慣れぬ顔がある。
 これが暫く前からの俺の顔だった。
 頭部と骨格の整形を繰り返し、声帯も人工のそれのに挿げ替えられた身体はもう、オリジナルからは程遠くなっている。
 身体を替えるたび、おれはまったく別の名前、別の経歴が与えられた。
 莫大な費用がかかる話だ。
 だが、俺の殺しの腕前はそれだけの価値があった。
 伸びた髪をドライアーで乾かしながら溜息を吐いた。
 今回の経歴は、これまで体験してきたなかでも飛びぬけてイカレてた。

 落ち目の芸能アイドルグループのメンバーと入れ替わって、標的を殺せ。

 実在の人間と入れ変わるのはこれが始めてではない。
 入れ替わった人間が、その後どうなったかまでは俺の関知するところではない。
 俺は組織のなかではもっとも小柄だったし、性別を偽るのもこれが最初ではなかった。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/09(日) 01:52
期待。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:45
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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