【未成年】

1 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 02:31


【未成年】

2 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 02:32


3 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 02:33

ねぇ

あなたはいつも違うところばかり見てる
あたしのことは全然見てくれなくて

いつもあたしのことを考えてほしいから
指輪をつけてて欲しいのに
人目につくからって
あなたはつけてくれない

だからせめて
見るたびにあたしを思い出してくれるように
無理言って置いてもらった
ガラスの時計

ねぇ

あれはまだ

あなたの部屋に置いてある?
4 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:34

5 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:34

ちょっとした事なら我慢できる。それが大人だろう。
自分の気持ちをそのままぶつける。それが子供だろう。
でもあの頃のあたしは我慢なんて出来なかった。頑張って背伸びをしたはずなのに。
でもあの頃のあたしは素直になれなかった。そんな気持ちはもう少ししかなかったから。

きっとそれは彼女も同じだった。

仕事とか意地だとか、そんなものが無かったら、
あたしか彼女が、もう少し大人だったり素直だったら、きっと毎日笑っていられただろう。
6 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:35

「すみません!!」

レッスン場に一際高い声が響く。
「お前のせいで皆にも迷惑かかるんだからね?
 足引っ張ってるんだからね!?ハイ続き!」
夏は厳しく怒鳴りつける。もっかいもっかい、とメンバー同士言い合う。

予定通りの時間に振り付けの練習は終わり、今日はそれぞれあとは帰るだけ。
タオルで顔を覆う少女に、安倍が話しかけた。
「気にしなくていいよ梨華ちゃん。なっちも実は間違ってたんだよね〜
 バレてたらなっちがコラ〜って言われてたよ」
顔をあげ、安倍の笑顔を見て石川は少し安心した。
安倍の優しさが嬉しかった。
7 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:36

「そうよ。いちいち気にしてんじゃないわよアンタ。」
保田も隣のロッカーから声をかけた。
「ハイ、ありがとうございます。」
石川は少しだけ笑った。
次々にお疲れーと言って帰ってゆく。飯田は携帯で話しながら。
後藤も二人で楽しそうに笑い合いドアを出て行った。

石川も急いでロッカーの荷物を取り出し、ドアを閉める。
ふと、安倍と保田からかけられた言葉を思い出す。

気にしなくていいよ
8 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:37

…そう言ってくれたらいいのに
ただ一言かけてくれるだけでいいいのに

ひとみちゃんから聞きたかったのに


石川はバックのチャックを一気に閉めた。
9 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:38

「よっすぃーケータイ鳴ってるよ。」
吉澤は後藤と一緒にもう既にバスに乗り込んで、テレビの話をしていて
後藤と話してるのに夢中で気づかなかった。
マナーモードにしていて、ストラップがガチャガチャ動いていた。
ディスプレイを見ると石川からだった。
「もしもしー。」
「あ、よっすぃー?」
「んー」
「今どこ?」
「バスの中ー」
「…あー、家帰るの?」
「んー」
「そうなんだ。」
「じゃあお疲れ様。」
「あのっ、…お疲れ様。」
吉澤は自分が言い終えた後そのまま切った。それをそのままカバンに突っ込む。
10 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:38

後藤がおかしの袋を開け、吉澤に向ける。
「梨華ちゃん?」
「んー。」
「なんてー?」
「お疲れってー。」
「えーゴトーには来ないよぉーズルイズルイ!
 梨華ちゃんにチェンメ回してやる〜。」
「ごっちん嫌われてんだよぉ〜。」
無邪気にメールを見る後藤に優しく笑いかける。
吉澤も携帯を覗き込んで二人でメールを選んでいた。
11 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:39

一方石川は、途中で切られた携帯を握り締めていた。
夏に叱られたのは自分が悪いのだが、無性に腹が立って来る。
でもそんな事たいした事じゃない。


どうせまたごっちんと一緒でしょ?

あたし達、付き合ってるんだよね?
12 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:40

2000年、4期メンバーとして加入した石川と吉澤。
石川にとって吉澤は憧れだった。
ネガティブな石川にとって、吉澤は自分より年下なのに大人っぽく、
同じ女の子から見ても完璧な容姿を持っていたからだ。
同期として吉澤と一緒に頑張ろうと石川は意気込んだ。

同期として。

吉澤はプッチモニに加入し、同い年の後藤とは気が合い
二人は直ぐに仲良くなる。
自分の同期である吉澤が後藤に取られるのは嫌だった。
13 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:41

同期として、メンバーとしてではない吉澤への感情には
すぐに気づいた。
自分でもよく解っていた。
そしてそんな自分に嫌悪感を抱く。
吉澤には嫌われたくない、ただそれだけだった。
最初は。

人間は欲があるもので、
次々と求めてしまう。物足りないと感じてしまう。
14 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:41

後藤とばかりいて、自分に構ってくれない事の寂しさ。
自分にちょっかい出してくれた時の嬉しさ。
何気なく抱きしめてくれた時。

石川は吉澤を自分だけのものにしたかった。
その考え方は幼かった。小学生が友達を取り合うように。
しかし石川は確実に好意を抱いていた。
15 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:42

「ホラ、何してんの。行くよ石川!」
保田が呼ぶ。
携帯をポケットにしまいバックを持って部屋をあとにした。

そうよ
気にしなくていいじゃない
ひとみちゃんが冷たいことなんて
いつもの事じゃない

今日が付き合って半年の記念日だって
覚えてないことなんて
たいした事ないよ
16 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:42

17 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:43

「いいよ。」


あの時も優しく笑ってくれた
そのままキスしてくれた
あたしの頬に触れた手はすごく冷たかったけど
ひとみちゃんはすごく暖かかった


クリスマスにだなんて
梨華ちゃんらしいねって


雪は降らないし
月は見えないし
ただよく晴れた日で

18 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:44

強く優しく抱きしめてくれた
ひとみちゃんのにおいがした
抱きしめても抱きしめても足りなくて
ひとつになりたかった
どんなに腕を回しても頭をずらしてもこすれる
体が邪魔をする
ひとつになりたかった

嬉しくて涙が出た
あんな幸せな日はそれまでなかった

あたしはひとみちゃんに スキ と言って
恋人にしてくださいってお願いした
19 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:44


20 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:44

ひとみちゃん
ひとみちゃんはいつもあたしに意地悪するし
キショイキショイってよく言うし
男の子みたいに振舞う所があるけど

あたしは
たまにみせてくれるその優しさと
その笑顔が大好きなの

もう一度 あの時みたいに抱きしめて
21 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:45

22 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:46

「石川?」
別のバスの中、保田の隣に座る石川の目から涙が溢れていた。
石川は、そのまま保田に顔を向ける。
「何ですか保田さん。」
「何ですかじゃないわよアンタ!!
 …どうしたの?」
大きな声を出してしまったが、疲れている周りと、
何より石川の事を考えて保田は声を潜めた。
石川は涙に気づき、手でそのまま拭った。
「大丈夫です。本当に、大丈夫です。」
23 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:46

保田は石川の教育係りであるし、
石川がネガティブなのもよく理解している。
「センターって大役だし、大変だけど、
 つんくさんも夏先生も石川に期待してんだから。
 でも気、楽にしなよ?」
保田は夏に叱られたことや、
新曲で初のセンターを受け持つ故に
石川は気が弱っていると思い、石川の背を優しくさすった。
24 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:47

吉澤との事は誰も知らない。
石川は直ぐにでもメンバーに言いたかったが、
吉澤がそれを許さなかった。
もちろん後藤も知らないし、誰にも相談できなかった。

「大丈夫です!チャーミー頑張る!」
「おー!そうそう!頑張りなさい!」
その声を聞いた矢口がキショイぞーと横から入ってくる。
「コラ矢口っ!
 不安なら何でも言いなさい。
 なっちとかゴトーに相談したり、ね?」
25 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:47

後藤。
石川は後藤が嫌いだった。
いや、後藤は好きだ。
ただ吉澤と仲のよい後藤が嫌いなのだ。吉澤が心許す後藤が。
どう考えても後藤は悪くない。
石川の幼さゆえの後藤に対する感情だった。
今や後藤はモーニング娘。の顔であるし、一番人気で年下でも貫禄ですらある。
石川にも優しく接してくれる。後藤に彼氏がいる事も解ってる。
だが石川はいつ吉澤に後藤がとられるか不安でしょうがなかった。
強い嫉妬心があった。
26 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:48

テレビや雑誌、他のメンバーといる時は何ら変わりの無い吉澤。
しかし二人になると違った。
吉澤の石川への態度は冷たいというよりもそっけなかった。
無関心のようにも感じられる。
石川にとってそれは苦痛である事に間違いない。
吉澤の気持ちが解らなかった。本人に聞く勇気もなかった。
だが石川は吉澤が好きであるし、キス以上の関係にもなっている。


吉澤は自分に対して愛がないのかもしれない。
思い浮かぶたびに必死に考えないようにした。
27 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:49

何より
吉澤は石川に対して
一度も好きだと言ったことが無い

それでも時折見せてくれる優しさや
アルトの声
かけてくれる言葉
笑顔が
石川を溺れさせるのだった。
28 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 02:49
 
29 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 02:57
はじめまして
群青リアリティ.と申します

空板で一度書かせていただきました
続きを書く予定なのであのままにします ごめんなさい

似たようなタイトルですが別の話です
課題よりこっち優先にしてなんとかあと数日に迫った日までに
書き上げたいと思います
一応【未成年】というてーまの話なので

レスいただけるとカナリ嬉しいです
お暇な時にでも読んでください
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/14(金) 09:11
イイ!!!!期待しちゃいますよ
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/14(金) 19:55
おお〜。空とはまた違った雰囲気がありますね。頑張ってください。
32 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 22:59
>>30
>>31

ありがとうございます
あと5日で仕上がるか心配だ…

過去のいしよしの歴史を見てると
どー見ても仲良いというのばかりで
どー見ても仲良いじゃんと思われても
その辺はスルーして下さい 許して下さい
33 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/14(金) 22:59
 
34 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:06
バタン

暗い部屋へと戻る。
吉澤には部屋の鍵を渡してある。
靴はない。
リビングの電気をつけ、そのままキッチンに向かい
冷蔵庫を開ける。
中にはたくさんの料理。吉澤の好きな食べ物ばかりだ。
昨晩から作り始め、用意をしておいた。
ミネラルウォーターをとり、冷蔵庫を閉める。

もう一度

石川は携帯を取り出し吉澤に電話する。
35 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:07
「もしもーし」
「あ、よっすぃー?もうお家着いた?」
「んー。今からご飯。」
石川は小さく息を吸い、恐る恐る尋ねた。
「そう…ねぇ、今から来れない?」
「あーもう家だし。ごめんね。」
「…ねぇひとみちゃん、今日何の日かわかる?」
少しの沈黙。
やはり、どこか期待してしまう。

「何?何かあんの?」

「…ううん。何でもないの。ごめんね疲れてるのに。おやすみ。」
「おやすみー。」
36 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:07

ひとみちゃん
どうして隣にいてくれないの


バスの中で届いた後藤からのチェーンメールを思い出す。
最後に後藤からのメッセージが付け加えられていた。
[よっすぃーにだけズルいよぉー!ゴトーにもヨロシク☆]
後藤は何も知らない。余計に石川の心を締め付ける。

石川は一人で涙した。
吉澤のぬくもりが少しも感じられない部屋で。
37 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:08
「よっすぃーご飯の前にお風呂入っておいでってー」
後藤の部屋でくつろぐ吉澤に声をかけた。
「ごっちん先いいよ。」
「いいよいいよお客さんだしー」
「あとがいいのーごっちん先ー」
「じゃあ一緒に入ろっか!」
「やぁだ!ホラホラ!」
後藤はお先ーと言って部屋から出て行く。
38 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:09
ベットの上に横になる。
携帯を開き、スケジュールを見る。今日の所にはマークがついていた。
今日で半年。吉澤は忘れていたわけではない。
だが今はこうして後藤の家に泊まりに来ている。
石川が何を言いたいのかよく解っていた。

ハッキリ言えばいいのに

吉澤は石川のそんな所が嫌だった。
自分に遠慮して言いたいことを言わないこと。
時々石川がを嫌いになる。腹が立ったりする。
自分でも時々なぜ相手にしてるか不思議に思う。
バリバリの女の子。かなりのマイナス思考。
すぐに泣くし、すぐに謝る。
いつも感じる視線。
39 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:10
石川がどれだけ楽しみにしていたか、想像できる。
けど今日はそんな気分ではなかった。
ただそれだけ。
自分に悪意は無かった。身勝手だとも思わなかった。
自分は自分。
石川は合わせてくれればいい。

何気なくいじっていた携帯を閉じた。
後藤の部屋は無音となる。
40 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:10
 
41 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:11
翌日。
楽屋のドアを開けると後藤と吉澤がテーブルで仲良くしゃべっていた。
またか、石川はおはようとだけ声をかけて椅子に座る。
「ねぇねぇ梨華ちゃん聞いてよ〜」
後藤が石川に話しかけてくる。正直今は話したくない気分。
それでも笑顔で応える。
「なぁにごっちん。」
「よっすぃー昨日ユデタマゴ4個も食べたんだよーすごくない?
 ホント好きだよねぇ。」
石川の顔が一瞬曇る。
「…へぇ。それ、いつの話?」
「え?キノーだってば。昨日家に泊まりに来たんだよねよっすぃー」
「うん。」
ニコニコしながら頷く吉澤。
42 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:12

何よそれ

「おかーさんがよっすぃーユデタマゴ好きって知ってるから
 いっぱい茹でてたんだけどすっごい食べるんだもん。」
「えーおいしいじゃん。ねぇ梨華ちゃん?」
吉澤は普通に聞いてくる。石川は返事すら出来なかった。
後藤の携帯が着信を知らせ、後藤は携帯を持ったまま外へ出て行った。

「なんでだろーなぁゆで卵、うまいのに。」
雑誌をめくりながら言った。石川は昨日から我慢していたものを一気にぶつける。
43 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:12
「何よそれ!!」
吉澤は顔をあげる。
「昨日はもう家だって、来れないって、なんでごっちんの家にいんのよ!?」
雑誌を閉じ、目の前にあった烏龍茶を紙コップに注ぐ。
軽く笑いながら。
「誰もアタシの家なんて言ってないよ?」
左手で蓋を閉め、紙コップへと伸ばす。
「暇だったから泊まりに行ったんだよねぇ」
紙コップが唇に触れる前に、石川の手が飛んできた。
払いのけられた紙コップから烏龍茶が飛び出し、手元の雑誌にこぼれる。
44 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:14
「あーあ。」
表情なく。
「雑誌、ぬれちゃったー」

目の前の石川は既に泣いていた。
「そんな…に、ごっちんと一緒にいたいなら、ごっちんと付き合えば?」
吉澤がフッと笑った。
「何言ってんの。ごっちんも普通に男が好きなんだから。」
45 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:14
少し烏龍茶がついた吉澤の左手がテーブルの上にある。
あと数センチ。吉澤の手に触れたかった。
「あ…あたしだって、ゆで卵、いっぱい作って、た、のに…」
涙を流しながら吉澤の手に、ほんの少しだけ触れる。

冷たかった。

「昨日は、付き合って、半年の記念日だったんだよ?」

顔をあげた石川は吉澤と目があう。
吉澤は石川から目線をずらそうとしない。
強い瞳でジッと見据え、最後に笑った。
46 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:15
「そんなの知ってるよ」

え?知ってるのに?

何で?


どうしてごっちんの家なんて行くの?
どうして一緒にいてくれないの?


「好きだね、そーゆーの。」
47 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:16
触れていた手を自分から離した。

「…何?何それ…ごっちんばっかり。いつもいつも…」
「ごっちんはカンケーないでしょ。」
「ごっちんなんて、ごっちんなんて大嫌い!!
 いなくなっちゃえばいいのに!!」

次の瞬間、石川は襟を掴まれた。

「ごっちんはアタシの大事なトモダチなんだよ。
 次言ったら殴るから」
48 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:17
吉澤の瞳。
大好きな吉澤の瞳。
それが今自分自身を睨み付けている。
手を放したと同時に石川は立ち上がり楽屋から出て行った。

すぐに矢口が入ってきた。
「おーよっすぃー。今石川がものすごーい勢いで走ってたんだけど?」
「おトイレですよートイレトイレ。」
「え?だって石川は…」
「何ですか?」
「あぁ何でもない何でもない。へぇートイレねぇ。そう、トイレ。ふーーんおっかしいなぁ〜?」
49 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:18
そう独り言を言う矢口を不思議に思いつつ、雑誌に目をやる。
もう読む気もしなく、テーブルの隅へとやり、再び烏龍茶に手を伸ばす。
こぼれたらまた注げばいい。


隅へと追いやられた雑誌。
少しずつ、少しずつ染み込んでいく。
気づかないうちに。


だがそれもいつかは渇く
50 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/14(金) 23:19
 
51 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2005/01/15(土) 02:30
こういういしよし好きです!
時代も懐かしいし、浸れますね〜。
楽しみにしてます
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 06:47
りかちゃん〜〜〜〜〜〜(T。T)泣〜〜〜

応援します☆
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 13:16
うわぁ…
続き期待してます。
54 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/15(土) 20:38
>>ラヴ梨〜様
>>52
>>53

ありがとうございます

めちゃイケでいしよしが…(*´∀`)
55 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:39
 
56 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:41
ガコンッ

自販機からお茶を取り出す。
カチッ カチッ
うまく蓋が開かない。指が震える。
吉澤のあんな表情は初めて見た。
吉澤が悪いのに、それでも怒らせてしまったことを石川は後悔した。


ごっちんも普通に男が好きなんだから


ごっちんもってどういう意味?
吉澤がモーニング娘。加入前に男と付き合っていた事は本人から聞いて石川も知っている。
女子生徒から好意を持たれ困ったというのも聞いた。
つまりは吉澤はノーマルなのだ。人気はあっても女には興味が無い。
自分のことはどう思っているんだろう。
ますます吉澤に対する不安が大きくなってゆく。
57 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:43
しばらくして楽屋に戻ると後藤も戻ってきて他のメンバーもいた。
吉澤はというと加護とお菓子を食べている。
「梨華ちゃんどこ行ってたのぉーお菓子持ってきたよー。」
「梨華ちゃんも食べる?コレちょっと辛いけど美味いよ。」
お菓子を食べながら手招きする。顔もいたって普通。
何事も無かったように。

いつものこと

喧嘩をしても次会う時は何も無かったように振舞う。
吉澤の考えてることが全くわからない。

「うん。いただきまーす。」
気にしないようにしよう。いつも言い聞かせていた。
58 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:43
そうとはいっても吉澤に嫌われたくは無い。
撮影のあとプッチモ二とタンポポの仕事がそれぞれある。

本体での撮影終了後、それぞれ次の仕事場に移動。
その際吉澤にメールを送った。

[本文]
さっきはごめんね。あ
たし言い過ぎちゃった
。ごっちんの事悪く言
ってごめんなさい。

携帯を閉じ、腕を絡めて来る加護に笑顔をむける。
これが吉澤なら。
いつも考えてしまう。
59 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:45
タンポポの仕事も終わり、急いでバックの中の携帯を開く。


新着メール 2件


はやる気持ちを抑え、開いてみると姉と保田からだった。
センターに問い合わせても吉澤からのメールは無かった。
吉澤からメールが来ないのもいつものこと。
よく携帯をいじってる吉澤から。
いつものこと。
60 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:46
こんなのいつものこと
たいしたこと無い

何百回これを自分に言い聞かせたことか。
言い聞かせても、解っていても、涙が出てしまう。

付き合う前の方がメールをくれたかもしれない。
付き合う前の方が話しかけてくれたかもしれない。
付き合う前の方が優しかったかもしれない。

互いの距離も。


それでも弱い石川の心を支えているのは、
自分が吉澤の恋人であるということ。
61 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:47
 
62 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:48
カメラの前で見せるお調子者の吉澤。
メンバー同士でふざけているのを見るとどうみても子供だ。
二人でいる時の吉澤。

どれが本当の顔なのか、そう考えてはみるが
きっとどれも吉澤の顔なのだろう。
すごくクールで、かなりのアホ。
大人で子供。
どれも吉澤の持つ魅力で魅了されるのは石川だけではなく、メンバーも同じだ。

カメラの前やメンバーの前なら吉澤は普通に接してくれる。
目が合えば微笑んでくれる。
当然石川のテンションはあがるし、ついつい話しかけてしまう。
カメラの前だろうが何だろうが関係ない。
自然と笑顔がこぼれる。
63 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:48
元々、負けず嫌いの石川。
センターを勤めてきた安倍、後藤に負けないように、
新曲ザ☆ピ〜ス!のセンター、女の子キャラをやりきった。
衣装に石川の持つ色気も加え、人気も急上昇した。
三人祭での待遇も考えると、つんくの石川推しがよくわかる。
シングルの売り上げも好調。
カラオケや着信メロディーランキングも上位を占めた。
モーニング娘。の石川梨華の名は広まった。
ソロの写真集発売も決まり、忙しい夏を迎える。
64 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:49
 
65 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:50
タンポポの仕事をしていた日、携帯が鳴った。
その着メロを聞いて一瞬動きが止まる。
吉澤に設定した着メロだ。
急いで携帯を開き、新着メールを見る。


[本文]
今日9時頃行くねー


ただそれだけ。たったの一行。
それでも石川の胸が高鳴る。
吉澤が自分の家に来るのは久しぶりだった。
直ぐに返信した。
今日は石川は8時頃に終わる。
いそいで帰って部屋を片付け、買い物に行けばなんとか間に合うだろう。

早く仕事終わらないかな

何を作ろうか等、石川はその日の夜の事で頭がいっぱいだった。
66 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:52
しかし


まるで神様が石川に意地悪するように時間が押して押して押して、
終わったのは結局10時過ぎだった。
泣きたい気持ちで吉澤に電話しても出ない。
タクシーで急いで帰る。
近くのスーパーで降り、食材を一気に買い込んでスーパーを出る頃は11時過ぎになっていた。
両手に荷物を抱え、マンションまで走る。
夏で涼しい格好をしているがそれでも汗をかく。暑い。
生ぬるい空気をかき分け走りながら、吉澤を思う。
何より吉澤が家にいるかが心配だった。
マンション前に着いて、自分の部屋を探す。
三階の、左から、1、2、…
電気が着いている。

「いる!」

満面の笑みを浮かべた石川は玄関ホールへと走った。
67 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:53
ガチャッ

吉澤のスニーカーが綺麗に並んである。
キッチンに荷物多いてリビングへ向かう。
ソファーの背もたれから、白い手が伸びていた。

雑誌や服など、散らかっていたはずなのに整頓されている。
吉澤がやってくれたんだろう。
68 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:54
近づくと、吉澤が眠っていた。
白く綺麗な肌。
綺麗な顔。
完璧な。
外国のお人形のようだ。もしくはお姫様。

わたしだけのひとみちゃん。


ソファーのむかいに座り込み、吉澤の寝顔を見る。
なんて綺麗なんだろう。
見とれてしまう。
69 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:55
吉澤がゆっくり目を開く。
それでも石川は吉澤から目を離せずにいた。


「梨華ちゃん?」
目をこする。

「寝てたぁ」
ふにゃりと笑う。
石川の胸を締め付ける。
愛しい。

「うん。」
吉澤の右手に触れる。暖かい。
70 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:56
「ごめんね、仕事、伸びちゃったの。お腹空いたでしょ?
 今ゴハンつくるね。」
一度立ち上がり、またしゃがみこむ。
吉澤の頬にそっとキスをした。
吉澤はまだ目がうつろで。

照れくさそうに微笑むと、石川はキッチンに向かっていった。


スーパーの袋からパスタを取り出し、大きな鍋に水を入れ火にかける。
火は弱めにし、その間ひき肉を取り出し、ミートソースを作り始めた。
リビングからテレビの音がする。
見るとソファーからちょこんと座った吉澤の金髪が見える。
クスッと小さく笑い、そのままサラダを作る準備に取り掛かった。
71 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:57
皿にみずみずしいレタスを乗せ回りにきゅうりや切ったゆで卵、セロリをのせた。
ミートソースも完成し、あとは茹でるだけ。
途中強くした鍋を見るとそろそろ沸騰しそう。
洗ったミニトマトを軽く水気をきると、冷蔵庫を閉める音。
タンクトップの吉澤。
オレンジジュースのペットボトルをごくごくと飲む。
白い肌。
長い首の喉が動く。
見ていると吉澤が横目で見てきた。
気づいて、ミニトマトを半分に切ってサラダの上にのせた。
72 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 20:58
近づく吉澤。
「スパゲッチぃーミートソース味?」
首を傾げて言うその仕草があまりにも可愛く、
パスタの袋を開けながら石川は笑って頷いた。
「スパゲッチぃーだよ。」
ふーんといいながらミニトマトに手を伸ばして口に運んだ。
ダメだよぉと注意し、鍋を見るとブクブク言っている。やっと沸騰したようだ。
73 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 21:00
その時、
ゆっくり、石川の腰に手を回し吉澤が横からキスをした。
さっきまで吉澤が飲んでいたオレンジジュースの味。
次第に腰を抱く力が強くなり、深いキスになる。
石川の首筋へと移動する。

「ダメ…お湯が…もうすぐ出来るから…」

それでも吉澤はキスをやめない。右手で石川の腰を抱き左手で髪を撫でる。

「ひとみちゃん…ダメだってばぁ…」

鎖骨にキスをしながら手を伸ばす。
ブクブク言ってた鍋は静かになった。
74 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 21:03
「ホラ、治まったよ。」
もう一度唇にキスをした。

「アタシは無理だけど。」
背中からTシャツの中に手を回しキスをしながらホックをはずす。

「だめ…汗、かいてるからァ…」
それでも吉澤はキスをやめない。手の動きも。

「…大丈夫だって」
目を見て微笑みかけた。石川の好きな笑顔。
吉澤には逆らえない。しかしそれは石川の望むこと。


あたしだけのひとみちゃん


石川はそのまま体を預けた。
75 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/15(土) 21:04
 
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 22:53
やべっ!ちょー面白い
77 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/16(日) 15:55
面白い!。
更新待ってます。
78 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/16(日) 21:54
>>76
>>77通りすがりの者様

ありがとうございます

19までに終わらないかもしれない…。・゚・(ノ∀`)・゚・。
79 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 21:55
 
80 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 21:58
うっすらと目をあけた吉澤は光を感じた。
「朝…」
「まだ夜だよ。」
小さく呟くと後ろから声がした。
カーテンが開いててそこから外の光が入る。逆光のせいか、少し体を起こした石川の顔がよく見えなかった。
「暑かったから、窓少し開けてたの。閉める?」
いや、とこたえて体を石川の方にむける。
石川はそれに合わせ自分も横になった。

だんだん目が慣れてきて、吉澤が石川の髪へと手を伸ばす。
「…濡れてる。」
「あ…さっきね、ひとみちゃんが寝てる間にシャワー浴びてきたの。」
まだ眠そうに吉澤は自分の髪をただ撫でている。
久しぶりの幸せを石川は強く噛み締めた。
81 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 21:59
「今何時ー」
髪から手を放し、大きく伸びをしながら石川に時間を尋ねる。
「そろそろ2時になるくらいかな。」
隣においておいた携帯で確認した。
小さくうなり、またタオルケットの中に潜り込む。
「ひとみちゃん…」
「んー」
「あたし、指輪が欲しい。」
82 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:02
タオルケットの中から吉澤がヌッと顔を出した。
「何、急に?」
それがまるでもぐら叩きのもぐらのようで石川は少し笑ってしまった。
吉澤がボーッと見てくる。
「あ、ごめん。あのね、なんか、欲しいなーって。」
手探りで吉澤の手を見つけ、握り締める。
「ブランドとかじゃなくていいの。お揃いで欲しいの。」
「ペアリング?」
「そう!」


「んーいいや。」
手を放し、石川に背を向けた。
急に独りになった気がしてすぐに石川は後ろから抱きついた。
離れないで。

「どうして?」
背を向けたまま吉澤はポツリポツリと話し始める。
83 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:03
「目立つでしょ?指輪って。
 ファンの人ってそーゆーのよく見てそうだしー
 うちらがお揃いの付けてたら何でって思うじゃん?」
吉澤の背に額をつけ、吉澤のぬくもりを感じる。
白くて綺麗な肌。
「そんなの思わないよォ。ただ仲良いとか、だから、ね?」
「メンバーにだって言われるよ。」
「…いいじゃないそのくらい。」

石川はどうしても指輪が欲しかった。
値段も色も形も関係ない。
ただ吉澤との愛を形に表した、確かなモノが欲しかった。

しかし吉澤の考えは石川とは違った。
84 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:04
「指輪なんて意味無いじゃん。
 どこの誰が作ったのかもわかんない、他人が作ったもんなんかで
 縛られたくないよ。」

「指輪で繋ぎ止められてるってカンジ」

「指輪を結んでるのは赤い糸じゃなくてただの鉄の鎖だよ」



何でそんな事言うのよ

あたしは ひとみちゃんがあたしを愛してくれてる事実が欲しいの

あたしはひとみちゃんが欲しいの
85 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:05
ひとみを抱きしめる手に力がこもる。
するとやっと吉澤は振り向いてくれた。
「痛いって梨華ちゃん。」
「あ、ごめん。」
吉澤の体から手を放す。
「梨華ちゃんお腹減った。アタシ昼から何にも食べてないんだよねー。」
ふうっとため息。

「何よぉ…ひとみちゃんが…」
「何?」
少しニヤついてる。分かってるくせに…
下に脱ぎ捨てられた服に手を伸ばし着替える。
「今茹でて来るからちょっと待っててね。」


キッチンに戻り再び鍋に火をかける。
サラダはさっき起きた時に冷蔵庫にしまっておいた。
茹で上がってから出そう。
86 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:06
沸騰した鍋にパスタを入れる。
すると玄関の方で物音がした。
一瞬、帽子にTシャツ姿の吉澤の背中が見えた。
「ひとみちゃん!?」

玄関へ行くとしゃがみこんでスニーカーを履いている。
「待って!もうすぐ出来るから!」
石川は背中から抱きつく。
「放してよ梨華ちゃん。ちょっとコンビニ行くだけだから。」
「…何しに行くのよ。こんな時間に行ったら危ないよ。」
「オレンジジュース買いに。さっき全部飲んじゃったから。
 ほら、梨華ちゃんは用意しといてね。」
石川の腕をほどいて、吉澤はそのままドアを開けて出て行った。
87 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:06
バタン


玄関に一人残された石川は、ボーッとドアを眺める。
自分が帰ってきた時に脱いだ靴がバラバラに転がっていた。
相当急いだのだろう。
それを並べて立ち上がり、キッチンへむかい再び鍋の前に立つ。
コンビニはすぐ近く。
すぐに帰ってくるよね。

10分経ち、パスタも茹で上がり皿に盛り付け、
サラダと一緒にテーブルに並べる。
ガラスのコップを二つ並べて。
88 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:07
 
89 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:08
カーテンを開けると空は昨日から引き続き曇り空。
だがところどころ晴れてる部分もあった。
途切れ途切れに光が見えた。

雲の隙間から姿を現したのは満月だった。


「今日、満月か…」


月を見るとなんでこんなに悲しくなるんだろう。
あんなに綺麗なのに。
90 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:08
せっかく見えた月に、次々と雲が重なっていく。
雲に連れ去られるように。
隙間から見せた月の光も見えなくなってしまった。


ひとみちゃん


帰ってきて 早く帰ってきて
お願い


どこにも行かないで
91 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:09
 
92 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:09
「梨華ちゃん?」

石川は椅子に座りながら涙を流していた。
吉澤の存在に気づき、両手で目をこする。

「ごめーん遅くなって。ジャンプ読んでたー続きが気になってさ。」
テーブルの上にゴトンとオレンジジュースの入った袋を置いた。

「もう、戻って来ないと思った…」
鼻をすすりながら涙声で言った。
そう言う石川を見て、吉澤は小さく笑った。
正面に、石川を見上げるようにしゃがみこんだ。
93 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:10
「戻って来たよ。」
手に持っていたものを石川に見せる。
「あ…」
それはつい最近発売したばかりの石川の初のソロ写真集だった。
「マネージャーさんに貰ったんだけどね。
 コンビニに売ってたから買って来たー表紙の梨華ちゃんすんげー見てくんだもん。
 まだ見てなかったし、一緒に見ようと思って。」
まぁ本人ここにいるけどねーなんていいながら笑う。

まだグズグズ言っている石川を見て、
急に神妙な顔つきになった吉澤は写真集を床の上に置いた。
94 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:11
立ち膝をつき手を伸ばして涙に触れる。
唇を近づけ、涙の痕に合わせて唇を這わせる。

石川の細い腰に手をまわし、下から石川の唇を欲しがる様に
急速に、それでも優しく
キスをした。

涙を流しながら座る少女
その唇を奪う少女

白い横顔の首から顎にかけてのラインは本当に綺麗だった。
その先にいる石川もまた


「泣かないで」
小さくつぶやく声は
石川の好きなアルトの声
95 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:11

ねぇ ひとみちゃん

あたし勘違いしてもいいい?

あたし ひとみちゃんに愛されてるって思ってもいいよね?



月があたしから消えても ひとみちゃんはあたしの前から消えたりしない
月が照らさなくても ひとみちゃんがあたしを照らしてくれる
96 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:12
同時に 石川の頭をよぎる

もうこんな幸せな日はもう来ないかもしれない



目を閉じると
月が消えていくのが見えた
97 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/16(日) 22:12
 
98 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/17(月) 00:25
一気に引き込まれた。展開が読めないところがいい。
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/17(月) 14:02
マジで面白い!!!!!!
頑張ってください☆応援します!
100 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/19(水) 03:55
>>98
…正直自分でもどんな展開にしようかわから(ry
頑張ります

>>99
応援まことにありがたいです
101 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 03:57
 
102 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 03:58
16歳同士
世間からすれば
恋愛ごっこを楽しんでるだけ
本当の恋愛じゃない

女の子だらけだから
友情と愛情が混同してるって
子供同士って
思うかもしれない

たしかにあの頃
あたし達は幼かったけれど
あたしがあなたを想った気持ちは
嘘偽り無く
恋愛ごっこでもない
本当の「愛」だった
103 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 03:59


あの頃 それをハッキリ言えたなら どんなに楽だったろう
104 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 03:59
 
105 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 03:59
昨年以上に忙しい夏が過ぎていく。
24時間テレビ、そして新メンバーの加入という大きな転機のある8月だった。
石川と吉澤にとっては初の後輩で色々な不安もあった。
そもそも5期の加入は早すぎたとも考えられる。
確かに4期の加入から1年以上経っていたわけだが、
当時のモーニング娘。の人気は上昇中であったし現行メンバーで充分人気を維持できた。
後々、黄金時代と呼ばれる時期であった。
その時代に石川はセンターの座につくチャンスを得た。
当時、そして後藤脱退以降も石川がモーニング娘。にとって重要なポジションに立つであろうとは
オーディションの頃には予想できなかった。
106 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:00
石川と吉澤の距離はあの日以降縮まったかというとそうではなかった。
また普通の毎日に戻る。
あの日は本当にあったのだろうか。夢だったんじゃないか。
形には残らない。普通に過ごしていたら記憶でしか残らない。
それも日に日に薄れていく。

石川がモノに執着する理由だった。
107 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:00
加入二年目の夏も終わり、秋になった。
それでも仕事の忙しさは変わらず、淡々と毎日の仕事をこなしていく日々が続く。
笑いたくもない時だってもちろんある。
それでも笑顔が自分達の商品なのだ。
108 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:01
吉澤はごくたまに石川のマンションに現れ、朝にはいなくなっている。
石川と違って吉澤は高校に通っていた。
さすがに毎日通えるはずもないが、吉澤には高校の生活というものもある。
だからしょうがない。仕事に学校に。宿題だってあるだろうし友達だっているだろう。
吉澤には吉澤の生活があるのだから。

目を閉じるまで隣にあったぬくもりは、
目を開けると無くなっていた。
109 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:02
シーツに顔を埋める。吉澤のにおいが残っているような気がした。

こうして待っていればいつかは必ず振り向いてくれるかもしれない。
待っていれば。

時間まで石川は再び眠りについた。シーツが涙を拭き取ってくれた事を知らずに。
110 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:03
 
111 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:12


天才的美少女



それは吉澤に与えられた称号。
本人は特に意識するようなことはないが、周りから見れば吉澤にこそふさわしい称号であると思うだろう。
日に日に吉澤は美しくなってゆく。

石川の中であらゆる感情がうごめく。
吉澤のような美貌があれば。羨ましくもあり、同時に嫉妬してしまうのもある。
メンバーからも好かれている。

そして
こんな美貌を持った吉澤を男が放っておくはずがない。
吉澤の美しさと比例してそれが石川の不安を大きくさせる。
112 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:12
113 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:13
「そんなことないよー ハイハイ まあねーうん。」
楽屋に入ると携帯で楽しそうに話している吉澤を見つけた。
一瞬、石川と目が合うとパッとそらされ、吉澤はちょっとゴメンと言って電話を切った。
114 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:14
吉澤のそんな態度を見れば石川も当然不信感がつのる。
「打ち合わせだって。」
吉澤を見ながら言うものの、当の吉澤はハイハイと返事をし携帯をテーブルの上に置き、散らかったお菓子のゴミを集め始めた。
「誰と話してたの?」
怒りを露に尋ねた。あんなに楽しそうに、しかも自分が来たから切られたのでは気になってしょうがない。
そんな石川を見て吉澤は相手にもしなかった。
「別に。」
「あたしに言えないような人…!?」
自然と言葉が荒くなる。ゴミを片づけ終わった吉澤は立ち上がりそのまま楽屋から出て行こうとした。
「聞いてるの!答えてよ!」
もう今日は別々の仕事があるため吉澤とは会えない。吉澤の腕を掴んだ。
見ると吉澤は石川を見ていた。優しく髪を撫でながら笑いかけられる。

「梨華ちゃんに言えないような人なんていないよ。」
115 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:14
その言葉を聞き、安心すると同時に嬉しくなった石川は手を放した。
吉澤はそのまま続けた。


「アタシが誰と話そうが何しようが梨華ちゃんに関係ないからね。」

「言えないような人がいるいないじゃなくて 言う必要がないじゃん?」


愛しいはずの吉澤の笑顔が怖い。
116 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:15
「そーゆーのウザいから。」
石川の髪をすり抜けた吉澤の指は下へ降り、ドアのノブへと伸びた。



吉澤が出て行った後その場にしゃがみこんでしまった。立っていられない。
涙が止まらない。

なんであんな事言われたのに、あんな態度とられるのに、好きなんだろう。
愛してもくれないのに。
117 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:16
テーブルの上でバイブ音がした。吉澤が置いていった携帯が鳴っている。
無意識に手を伸ばし、開いてみると<ユージ>と表示された着信画面。
その画面の名前には見覚えがあった。


昔、吉澤が中学の時にとったプリクラを見せてくれた時。
吉澤の隣にいる男の下にはユージという文字。
それは吉澤の彼氏だった。


石川は即座に電源を切った。
118 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:16
「何してんの?」


携帯を握り締める石川、そして入り口に立つ吉澤。

石川が泣いてるのにも気にせず、携帯を石川の手からスッと抜き出してそのまま何も言わずに出て行こうとした。
「誰よユージって!!」

それは叫びにも近かった。石川だってわかっている。ユージが誰なのか。さっきまで
吉澤が楽しそうに話していたのは誰なのか。
「元カレ。」
ごく自然に、当たり前のように答えた。
119 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:17
絶望、とはこの事かも知れない。止まらない涙をぬぐいながら石川はたずねる。
「…ま…だ、つづいてるの…?」



お願い ひとみちゃん
違うって言って



「人のもん見るなんていい趣味ですね。」
そう言い放ち、吉澤は出て行った。
120 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:48
121 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:52

今なら欲しいものはすぐ手に入る
122 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:52
小さい頃
お姉ちゃんが持ってた自転車がうらやましくて
ママに泣いて買ってってお願いした

テレビにうつるおもちゃが欲しくて
テレビを叩けば出てくるかもって思って、よくスリッパで叩いた


雑誌のモデルさんは背も高いし足も長いし綺麗だし
いつかはあたしもあんな風になりたいと夢みた

テニスのボールを打ち返す分だけ
あたしは何かを得られるような気がした

内気なあたしが何かを

毎日放課後には机の横にかけてあるラケットを持ってコートにむかう
123 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:53
今は
ボールを打ち返さなくても
毎日仕事は入ってくる

あの教室にいた時みたいに
何十人のうちの一人に過ぎなかったあたしが
今はこうしてステージの上に立ってる

あたしにはたくさんのファンが出来て
曲を出す度に雑誌にはあたしの顔が載って

自転車なんか無くたって車があるし
タクシーに乗ってお金を渡すだけでいい

欲しいバックもかわいいお洋服も
買おうと思えばすぐに買える
124 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:54

でも


どんなにお仕事が順調でも
かわいいお洋服が買えても
ファンの人があたしを必要としてくれても



一番欲しいものが手に入らないければ何の意味も無い

ひとみちゃんには手がとどかない

ひとみちゃんがいなくちゃ意味が無い



どんなにボールを打ったって返ってこない
125 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:59
あたしはまだ16歳なんだよ
そんなに強くないんだから

これでも一生懸命頑張ってるんだよ

どうして見てくれないの

どうして解ってくれないの



もう 限界


誰か助けて



それでも 矛盾しているように
あたしが助けて欲しいのは
あたしの手を引っ張っていって欲しいのは

あたしが欲しいのは あなたなの
126 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/19(水) 04:59
127 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/19(水) 05:12
(0^〜^)<梨華ちゃん誕生日おめでとう! (^▽^*)

ということで石川さん20歳おめでとうございます

ですがこれ絶対に今日中に終わらない。・゚・(ノД`)・゚・。
よっちゃんがまだ未成年だから大丈夫という言い訳をしてもいーでしょうか
適当に終わらせるのも嫌なので
今日終わらなかったらごめんなさい
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/19(水) 05:41
なんか惹き込まれるようなものがありますね。
吉澤さんのキャラも良い感じです。こーいう吉澤さんはあまり見たことないです。
次の更新も楽しみにしています。頑張ってください。
それと、もしよかったら空板で書かれていた作品のタイトルを教えてください。
129 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/19(水) 23:33
>>128
ありがとうございます
空板のはlast teenager.というやつです。よろしければお暇な時にでもどうぞ
130 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/19(水) 23:40
【未成年】ですが梨華ちゃんがハタチになるまでに終わらせたいと進めましたが無理でした。それがすごく残念ですがこの先も続けるのでよかったら読んで下さい。
最後に再び

(0^〜^)(^▽^*)
梨華ちゃん誕生日おめでとう!
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/20(木) 00:44
よっちゃんのキャラがいいなぁ。それに黄金時代懐かしひ…
かたっぽがまだ未成年なので4月のあの日まではいいんじゃないっすかね。
132 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/22(土) 16:07
>>131
ありがとうございます。
ではお言葉に甘えて。。


少し更新します
133 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:07
 
134 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:08
なんかお前、疲れてない?」

オレンジジュースの氷をかきまぜながら向かい合って座ったユージが言った。
モーニング娘。に加入してすぐに別れてしまった。
ユージは今は埼玉の高校に通っていて今時の高校生らしく、
黒かった髪も茶色くなり耳にはピアスもしていた。顔は良いほうだったが
やはりまだ16歳ということであどけなさが残っている。
その日、地元のファミレスで吉澤はユージと食事をしていた。
135 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:10
「んなことないよー。」
「あ、俺写真集買ったよ。俺の友達も本屋でかわいーって。俺もさりげなくだよねーとか言って。」
「あぁ〜ありがと。」
ユージは吉澤と付き合っていた事を他人には言わなかった。もちろん二人が付き合っていた事を
知ってる人間もいるが、吉澤の写真やプリクラを見せびらかすような事はしなかった。
「ちょっと最近ねー、なんてゆーか、女友達と上手くいかないってゆーか。
 いちいち干渉してくんだもん。困るってゆーかウザいってゆ−か。」
「何それ。お前の事好きなんじゃねーの?中学の時からお前女に人気あったし。」
「いやそれはないけど。」
吉澤は苦笑した。オレンジジュースを飲みながらユージは続ける。
「まさかそれってモームスの誰かじゃないの?新メンバーとか?あぶねーじゃん気をつけろよ。」
「まさかまさか。ホントにただの友達だから。」
「…ならいーけど。」
136 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:11
「ねぇひとみー」
「んー?」
「もっかい付き合えない?」

吉澤は顔をあげた。目の前には真剣なユージの顔。
「俺たちケンカしたまま別れちゃったじゃん?俺けっこーコクられたりしたんだよ。可愛い子もいたし。
 でもやっぱ俺まだお前の事好きだし。お前がモームスだからじゃなくて。」
「…。」
137 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:11
吉澤が黙ったままオレンジジュースを見ていると、ユージが伝票を掴んで立ち上がった。
「ごめん急に。何言ってんだってカンジだよな。
 あのさ、お前こっちに住んでるんだしたまに会えりゃいーから。明日も早いだろ?帰ろ。」
「んー。」

ファミレスを出るとあたりはもう暗くなっていた。時間は6時半を過ぎていた。
ここから吉澤の家は歩いて行ける距離で、ユージの自転車の後ろにまたがり帰ることにした。
138 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:12
近くの公園に着いたあたりで吉澤はユージの背を叩く。
「ここでいーよ。少し歩きたいし。」
「あ、マジで?」
キキッとブレーキの音がし、電灯の下で降りる。
ユージの髪も吉澤の髪も二人が手を繋いで歩いてた頃よりずっと茶色くなっていた。
電灯の光が二人の髪を照らす。なんとなく時間が経った事を感じる。
「じゃあ俺バイトあるから。気をつけて帰れよ。」
「ユージ」
「ん?」
139 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:12
「さっきの 考えとくよ」

吉澤は足元の石を蹴りながら呟いた。ユージの自転車のハンドルを握る手に、力がこもる。
自転車を片手で掴んだまま、ユージは吉澤の腕を引っ張った。

「ひとみ キスしていい?」

吉澤は顔をあげ、そして目を瞑った。
ユージはそのまま引き寄せ、吉澤の唇に自分の唇をそっとあてる。
わずか1秒にも満たないキス。それでも昔の二人に戻った瞬間。
「じゃあ、また連絡して。」
笑顔をみせたユージは自転車にまたがりもと来た道を戻っていった。
140 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:13
久しぶりにしたユージとのキスは ほのかにオレンジの味がした。
そういえばさっきユージは飲んでいた。オレンジジュース。
罪悪感というものは無い。
キスくらいたいした事はない。ユージへの返事も。

吉澤はそのまま家へと歩き出した。



だけど あのオレンジの味が自分の胸を締め付けるのはなぜだろう
141 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:14
 
142 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:14
自分の部屋でベットに寝転びながらファイルをみる。
撮影でもらった写真や雑誌のページを切り抜いたものを母親がまとめてくれている。
「なつかしー」
パラパラとめくると石川とうつってる写真があった。
自分の髪はまだ黒くて肩まであるから加入したあたりの写真だろう。
石川が頬に顔をくっつけて笑っている。
いつから石川は自分のことが好きだったんだろう。
143 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:14
なんとなく、吉澤が接してきた女の子達の態度と似た傾向が石川にもありそれに気づいたのは
遅かったしそれもいつのことだったかもよく覚えていない。
そういえば石川が一人で喋っていた気がするが聞いてなかった為やはりわからない。
もしかしたらこの時既にそうだったのかもしれない。

ファイルを閉じて立ち上がり電気を消した。
再びベットに横になり布団に潜り込んだ。
うつぶせになり目を閉じ枕に顔を埋める。
144 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:15
石川は以前好きな男子がいた事を前に話していた。
別に女の子が好きなわけではないだろう、そう吉澤は思った。
自分に対してよくかっこいいと言ってくる。
それってつまりは自分を男の代用品としているんだろう。
中学のときもそうだった。
周りにいない分、ちょっとボーイッシュな女が一段とかっこよく見える。擬似恋愛をしてしまうのだ。
145 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:17
冗談じゃない アタシは男じゃない みんな男の姿をアタシに重ねているだけ
梨華ちゃんだってそうだ
かっこいい男に言い寄られたらどうせすぐにそっちに転がる
どうせ梨華ちゃんはアタシの事なんて本気で好きじゃない


女同士付き合うなんて先が見えない いつバレるかもわからない
キモいって思われたくない 皆から嫌われたくない
ファンの人だって離れちゃう 雑誌やニュースで何言われるかわかんないし

ユージなら
アタシをちゃんと女としてみてくれる
146 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:17
パッと目を開く。
「くだんない…」


好きな時にキスして
好きな時に寝ればいい


恋とか愛とか そんなの全部綺麗事
人間なんて欲望の塊なんだから
147 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:18
吉澤の部屋のカーテンはきっちり閉められていて、
部屋には外の光が少しも入らなかった。
いつも整理整頓され、余計な飾りなど無い部屋。
無機質な白い空間が広がっていた。
吉澤の呼吸だけがかろうじて熱を持っている。
148 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/22(土) 16:18
 
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 22:31
残念、男絡みか。。。
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/23(日) 02:40
>>149
ネタバレ。つーか嫌なら読むなよ
151 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/23(日) 05:01
更新お疲れでした。
次、期待しています。
152 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/23(日) 06:39
いい感じになってきましたね。
次も期待しています。頑張ってください。
153 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/24(月) 05:44
>>149
>>150
>>151
>>152
レスありがとうございます

ん〜と。。男が出てくるのが嫌だと思うならば…んー何とも言えない
まぁ自由に読んで下さい

また少しだけ更新します
梨華ちゃんの誕生日までにという事で少し焦り気味に更新しておりまして
しっかり書きたい所もダラッと流してしまいました
時間が延びたので今度は余裕持ちすぎで
加えてテストやら課題やら重なってますます更新が遅くなっておりますお許しを
154 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:45
 
155 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:45
今日は打ち合わせの日でメンバー全員が揃う。
部屋には続々とメンバーが入ってくる。5期の4人はまだ慣れていないようだ。
そんな4人に先輩である安倍や後藤が話しかける。
辻と加護は相変わらずお菓子を食べていていつも通りの楽屋風景だ。
156 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:46
石川は矢口と雑誌を読んでいた。
「梨華ちゃん恋人にしたいランキングに入ってるじゃん!」
「あ、ホントだー」
はっきり言って石川にはそんなランキングどうでもいい。
吉澤の事しか頭にないからである。
「そこもっと喜べよー嬉しいじゃん。ピース効果大きいね。」
「そんな事…」
騒がしい部屋に着メロが鳴り響く。それも日常茶飯事。
鳴っているのは吉澤の携帯だった。本人は今いない。
見つけた後藤が通話ボタンを押した。
157 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:48
「もしもーしユージ君?」

石川はすぐさま後藤を見た。<ユージ>から吉澤に電話が来ている。
しかも後藤は普通に会話をしていた。


なんで?

なんで電話来るのよ

なんでごっちん知ってるの
158 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:48
「あのねーよしこねー今トイレ行ってるからちょっと…あっ!来た来た!」
ドアを閉め吉澤が後藤に目をむける。
「よしこーユージ君。」
そう言って携帯を吉澤に差し出す。
「ちょっとごっちん何勝手に出てんだよ〜。」
笑いながら受け取り、また吉澤は部屋を出て行った。
159 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:49
呆然とそのやり取りを石川は見ていた。その石川に矢口が話しかける。
「ねぇねぇ梨華ちゃん。」
「…」
「梨華ちゃん!」
「…あ、はい。」
「ねぇ、ユージって誰?よっすぃーの彼氏?」
石川は泣きたい気持ちでいっぱいだった。
吉澤が付き合っているのは自分だと直ぐにでも言いたくなった。
160 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:49
「…知りませんよ。あたしが知ってるわけないじゃないですか。」
「えー仲いーじゃんキミタチ。あーでもよっすぃーくらい可愛かったらいて当然だよねー
 彼氏がうらやましいよねー。」
矢口が雑誌を突きながら石川の顔を覗き込む。
「梨華ちゃんもこんな風に可愛いとか言われてんだからさ彼氏作りなよー
 いつまでもよっすぃーよっすぃー言ってないでさ。」
161 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:51
それを聞いて顔を真っ赤にして否定する。
「いらないですよ彼氏なんて!!今はお仕事が一番なんです!!
 それによっすぃーよっすぃー言ってませんよ!!」
「あそぉ?マジになってんのかと思ってちょっと心配したよ。
 それならいいけどさー。」
矢口は思ったことをそのまま口にした。
162 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:51
それを聞いて気が沈む。やはりおかしいのだろうか。
それにマジになってるのか、って。
そして他のメンバーからもそう思われていたら。
自分はどう見られているんだろう。

そして吉澤はやはりあのユージという男と連絡をとっているという事実が
石川の気をますます沈めさせる。
163 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:51
 
164 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:52
トイレでばったりと後藤と出会う。
後藤はお〜っと手を軽くあげてそのまま手を洗う。鏡を見て軽く髪をなおす。
隣に無言で近づきぴったりくっつく石川が鏡にうつる。後藤の手が止まる。
水を流したまま後藤はソーッ右を向くと、直ぐ近くにある石川の顔。
「…何梨華ちゃん…」
「あのね…」
「ん…近いかな。うん。」
165 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:54
何も言わずに俯きそのまま動かないので、水を止め後藤が左に二歩ずれた。
「あのね…ユージって、誰か聞こうかなって思って。」
下をむいたまま口を尖らせていう。意味もなく爪をいじりながら。
そんな石川を見て何故そんな事を聞くのか後藤にはすぐにわかった。
フッ――コドモめ と後藤は目を細め小さく笑った。

「梨華ちゃんいーかげんよしこ離れしたほーがいいと思うよー。」
うんうんとうなずく後藤。さっき矢口に言われた事を思い出し少しムキになる。
166 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:55
「違うの!!そんなんじゃなくて!!
 ただね、ただその人とよっすぃーがどんな関係なのか知りたいの。
 気になるじゃん、ホラ、メンバーとして。あ、矢口さんも気になるって言ってたかなー」

頑張って繕ってみたものの後藤相手には全くきかない。
半ば呆れ気味の後藤。
後ろを見て、少し考えてから話し始める。
167 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:56
「てか梨華ちゃん聞いた事ないの?よしこの元カレだよ。」
「あるよ。あるもん。でも何で元カレが電話してくるの?もうカンケーないじゃん。」
「イロイロあるもんなのよ〜例えば元にもどるとか…」
「え…?」
石川の顔を見て少し迷ったが、まぁいっかと呟いてそのまま続ける。

「てかねーよしこユージ君にやりなおそうって言われたんだって。」

パッと顔をそらす。胸が痛い。
168 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:57
「ゴトー的にはくっついて欲しーのよ。んでダブルデートしたいのよ〜楽しみ楽しみ。」
再び鏡に向かって髪をなおしながら鏡越しに石川の背に話しかける。
「…それで…よっすぃーはどうするの…?」
「んー迷い中だって。付き合えばいーのに。けっこーかっこいーんだよユージ君。」


迷い中って何?
あたしがいるじゃん
あたしって何?



あたし 恋人じゃないの?


169 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:58
「てかよしこから聞いた方が早いでしょーよ。梨華ちゃんも彼氏つくっ…」
後藤が話してる途中でも石川はいたたまれなくなりその場から走って出て行った。
そんな石川を見てため息をつく。
「ほんと好きだねぇーよしこのこと。」


バタンと音がして、個室から出てきたのは吉澤だった。
170 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 05:59
そのまま何も言わずに手を洗う。
「ねぇ梨華ちゃん本気でよしこの事好きそーじゃない?」
まさかーと言って機械に手をつっこみ一気に乾燥させる。
「ごっちん喋りすぎーアタシ出られなかったじゃん。」
「いーじゃんほんとの事だしぃ〜梨華ちゃんどーなんだろ。なんか女子高にありそーじゃない?」
後藤が楽しそうに吉澤の顔を覗き込む。そんな後藤の頬を軽くつまみ外へと促した。

「さっきの話聞いてた?ダブルデートよろしくっ!」
「ごっちん気が早いよー」
吉澤は軽く流した。
ふと石川の顔が頭に浮かんだ。
後藤の話を聞いてどんな顔をしたか直ぐに想像できる。今頃何処かで泣いているだろう。
余計な事を言ってくれた。あーめんどくさい。

吉澤はそのくらいにしか思わなかった。
171 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 06:00
案の定、石川は一人泣いていた。別のトイレで。
泣いても泣いても涙が止まらない。いったいどこから出てくるんだろう。


誰かに相談できたら。
でもこんな事言えないし、吉澤にも止められている。
吉澤が慰めてくれたら…

吉澤は
172 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 06:01
自分は吉澤の恋人じゃなかったのか?
自分の思い過ごしだったんだろうか



自分が吉澤の恋人であるということ
これがどんなに辛くても言い聞かせてきた、紛れも無い事実だと思っていたのに
これだけが自分を支えていたのに

静かに、しかし着実に石川の心が崩れ始めていた。
173 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/24(月) 06:01
 
174 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 08:30
りかちゃん(泣)〜〜〜(T。T)よっすいのバカ!!!!!!
はい、応援します!
175 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 10:35
んほー!!
面白くなってまいりました!!

今後の梨華ちゃんに期待しまくりです。
176 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 18:06
もうお願い
幸せにしてあげて…
こっちが辛い…
177 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 20:46
梨華ちゃん、生誕週にまたえらいモンが・・・。
ま、しばらく見守りましょ。
178 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 23:37
なんか 痛いね・・
梨華ちゃんにもっと強さを・・
179 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 02:27
梨華ちゃん・゚・(ノД`)・゚・。
180 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 03:06
更新が早くて素晴らしいですね。
当然のことだとは思いますが感想は気にせず
作者さんの趣くままに書いてくださいね。
次回も楽しみにしています。
181 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 01:54
設定とかストーリーとかじゃなくて雰囲気がなんとなくNANAっぽいですね。
うん。それだけです。頑張ってください。
182 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/26(水) 04:09
ど、どうしようこんなにレス来た事ないから焦る(;´Д`A ```
とりあえずレスを。どうもヘタレ作者です


>>174
大いにバカと言ってやってください

>>175
んほ。ありがとうございます。

>>176
あぁ…ゴメンナサイ

>>177
せっかくの生誕週にスミマセン
梨華ちゃんをいじめてるわけでは無いということで。
梨華ちゃん大好きですから。めでたいのにゴメンナサイ石川さん

>>178
どうか強さを

>>179
では共に ・゚・(ノД`)・゚・。

>>180
ありがとうございます。たくさんレスがあると凄く嬉しいのが半分、
更新しなきゃと思うのが半分。ありがたいお言葉です

>>181
回想のところでしょうか。よくある使い方だし流れとしても必要なので。
なんとか頑張ります。


更新量、少。。
183 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:09
 
184 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:11
ゆっくり目を開くと、
保田の顔。

「…キャァーーーー!!!」

あまりの衝撃に石川はソファーから落ちてしまった。その物体が目を細くして睨んでくる
保田である事を確認出来たのはそれからだった。
「アンタ、大分失礼よ。」
眉を引きつらせながらコップを見せる。
「ホラ、いつまでも落ちてないで座りなさい。紅茶飲むでしょ?」
「スミマセン…」
一緒に落ちた毛布を掴み、再びソファーに座りなおした。

ティーパックを取り出し、コップに入れる。テーブルの上にあるポットからお湯が注がれる。
それを石川の前に差し出し、受け取ると紅茶の香りが漂ってくる。
一口飲み、コップを両手に包み込む。なんでこんなに暖かいのだろう。
185 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:12
そして毛布にソファーの自分にやっと気づく。
「あの、あたし何で…?」
「アンタね〜。廊下で倒れてたのよ?覚えてないの?」

たしかトイレで泣いてしまって、打ち合わせの時間だから涙を拭いて出て、
それから部屋まで…

よく覚えていない。
186 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:13
自分の分の紅茶も入れた保田が石川の隣に座る。ボーッした石川の背中をそっと撫でた。

「どした?」

石川が顔をあげ、すぐ隣の保田の顔を、目を見た。
ただ一言なのに、その言葉を聞いただけで石川の目から再び涙が落ちる。
子供が泣くように呼吸を乱しながら石川は苦しそうに泣いた。
泣き声を出さず、ただ苦しそうに。
当然、そんな石川を見て焦る保田。しかし何も言わずに石川の背をさすり続けた。
187 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:14
数分後、石川の呼吸が治まってきた。その間保田はティッシュで涙を拭いてやったり
鼻をかむのを手伝ってやった。保田は20歳で、普通に考えれば若いのだが、
周りがもっと若い分大人であるし、しっかりしている。16歳の石川にとって姉のような存在だ。
石川が落ち着いたところで、やっと話しかける。
「言いなさい。何がそんなに苦しいの。」
口をかたく結んだ石川は首を横に振った。唇を強く噛み締めて。
188 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:14
「アタシに言えない事?」
小さく頷く。それでもまだ少しずつ涙がこぼれ落ちる。それを優しくふき取りながら続けた。

「じゃあ誰になら言えるの?」

石川は目を閉じ、自分の手の甲で涙を拭き咳き込みながらも答えた。

「…ぃません…」
189 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:15
こんな辛そうな石川を見た事は無い。見ている保田までが苦しくなる。
仕事はかなり順調だし、大きくなる石川の人気は保田にも感じられる。家族とも仲は良いし
メンバー同士も上手くいっている。一体何がこんなにも石川を苦しめているのだろうか。

「どうしたのよアンタ。どうしたの…!?」

保田は石川の正面にしゃがみこみ肩を掴んだ。苦しそうに閉じていた目が少しずつ開く。
焦点の定まらない虚ろな目。もう石川は涙をぬぐう事すらしなかった。

「石川…?」

自分をみているのだろうか?確かにこっちを見ているが、それでも石川と視線が重ならない。
190 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:16
その時
聞き取れるかどうかの声を発した。震える唇から出た言葉。



ひとみちゃん



さっきまで石川のすすり泣く声しか音がしなかったこの部屋。
もし外の音が入ってきたり、音楽が鳴っていたら、聞こえなかっただろう。
無音の中に放たれた言葉は、予想もしないものだった。
191 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:17
自分の耳を疑う。でも今確かに、小さくともハッキリと聞こえた。
吉澤を呼ぶ声を。
肩に触れていた手が自然とおろされる。
保田の脳裏に石川と吉澤の姿が映し出された。加入して来た頃から現在にいたるまでの二人。
同期の年も近いメンバー。よく石川が吉澤にいじられている光景。楽しそうな石川の笑顔。
よっすぃーと呼ぶ石川の甘い声。
192 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:19
何で吉澤の

何で吉澤の名前が出てくるの

石川は何を見ているの

アンタの先に誰がいるの
193 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:20

まさか


保田の中でグルグルに絡まった糸が少しずつほどけていく。
しかし完全にはほどけない。見えない部分が多すぎる。
保田自身が無意識のうちに見えないように拒否しているのかもしれない。
194 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:21
心がどこかへ行ってしまったか、またはかなり奥底へ沈んでしまった目の前の石川を見て
浮かぶのは吉澤の顔ばかり。モーニング娘。のほかにプッチモニで共に活動していて
いつも明るい吉澤。そんな吉澤が急に遠く離れた、いや初対面の人間のような、
名前も何もわからないそんな存在に感じられた。

どうしてこんなに苦しんでいる石川の口から出たのが吉澤の名前なのか。
どうして『ひとみちゃん』なのか。
石川が助けを求めたいのが吉澤か、またはその逆か。

保田は石川の冷たい両手を包み込んだ。それしか保田には出来なかった。
何を言えばわからない。どうしたらいいかわからない。
自分を無力に感じた。
195 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:23
石川の両手の中にあるコップの紅茶は冷めてしまったが、最後まで石川はコップを持っていた。
コップから石川に熱が伝わり、コップには暖かさが残っているように感じられたからだ。
冷え切った両手はほんの少しでも温まっただろう。



時計の針だけが動く
196 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/26(水) 04:23
 
197 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 04:56
やっすー。・゚・(ノД`)・゚・。
198 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 12:13
今日も
梨華ちゃーん・゚・(ノД`)・゚・。
やすすー・゚・(ノД`)・゚・。

続きが楽しみです
199 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 16:54
もう本当に…
辛いの…
早く幸せにしてあげて…
200 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 22:32
199さん
ちょっとだけ自分のエゴがはいちゃってるかな。
作者さんはどうとるか分からないけど同じ読者としては
そーいうのは心に閉まっておいてほしいです。
生意気言ってごめんなさい。
201 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 22:41
あぁ〜〜梨華ちゃぁん・゚・(ノД`)・゚・。
辛いよ…(泣)続き楽しみしてます。
202 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 23:09
>200
これぐらいなら注意することないだろ、と俺は思うが

>作者さん
つまらんことで書き込みしてスマソ
203 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/27(木) 19:31
感情移入しすぎって言う方が正しいかもね。
204 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/01/29(土) 14:37
キツイ話ですね、すっごく気持ちが伝わってくるというか、少し半泣き 涙
でも続きがきになる。
更新待ってます。
205 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/01/29(土) 16:25
読者様レスありがとうございます。
自分としては読んでもらってレスをいただけると励みにもなりますし嬉しく思います。
誰か一人でもいつかこの作品を思い出してくれるように頑張ります。

また少量ですが更新。。
206 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:25
 
207 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:26
「梨華ちゃん!」

保田と石川が部屋へ入ると加護が抱きついてきた。どうやら打ち合わせはもう既に終わっていた
らしく、部屋には後藤と加護と辻が残っていた。石川を心配して待っていたようだ。
「もう具合大丈夫?」
下から加護がたずねる。
「うん。ごめんね。みんなも、心配かけてごめんなさい。」
無理にでも笑った。皆に心配をかけるわけにはいかない。意識したわけではない。
石川の中に、無意識に笑顔を作るシステムが出来ていた。これも一つの職業病なのだろうか。
最近の石川はメンバーに対してもそんな反応を見せてしまう。石川自身がそれに気づいていない。
208 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:26
普段と変わらない石川の笑顔を見て保田は背中に恐ろしいもの感じた。
何も変わらないのだ。いつもの石川と。
今日、急にさっきみたくなるはずは無い。
変わらぬ笑顔を見せ続ける石川は、きっと一人苦しんでいたのだ。
自分はそれを全く気づいてやれなかった。この弱く、まだ16歳の少女は一人で何を
抱え込んでいるのだろう。可愛らしい石川の笑顔に保田はほんの少し恐怖感を持つ。

後藤が近づき加護と石川を一気に抱き締める。
「心配したよ梨華ちゃ〜ん。仕事とか用事ある人は帰っちゃったけど
 皆心配してたんだから。」

「ありがとうごっちん。もう平気だから。」


…用事
209 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:27
「聞いてよ梨華ちゃん!今度の新曲よっすぃーセンターだって!!」
「え!?ホント?」
「ホントだよ〜ゴトーとなっちがサブにまわって、なんか宝塚チックみたい。」
「宝塚?」
「よっすぃー達が男役だってェー絶対かっこいーよね!」
「セリフもあるんだよー」

辻と加護が楽しそうに笑っている。吉澤のセンターは石川も素直に嬉しかった。
「すっごい楽しみ!見たい見たい!」
「いや梨華ちゃんも歌うんだからっ」
鋭く後藤の突っ込みが入り加護からも突っ込まれる。はたから見れば微笑ましい光景だ。
けど保田は笑えなかった。端で一人荷物をまとめる。

浮かぶのは、吉澤の顔ばかりだった。
210 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:27
翌日、プッチモニで仕事があった日。保田と吉澤が部屋で二人きりになった。
保田は石川との事を聞きだそうとしたがどう切り出していいかわからなかった。
しかし、意外にも吉澤から話しかけてきた。

「あ、保田さん。昨日梨華ちゃん大丈夫でした?」
雑誌の石川を見て思い出したのだろうか。吉澤が手にする雑誌はモーニング娘。の写真が
掲載されているページだった。
211 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:28
「あぁ。まあ何とか。」
「梨華ちゃん最近忙しいみたいだし。大丈夫かなー。」
「吉澤っ」
「…ハイ?」

あぐらをかいている吉澤から持ってる雑誌を取り上げた。
今チャンスを逃すわけにはいかない。

「アンタ、石川とはどうなのよ?」
かなり単刀直入な質問だ。でも回りくどく聞くよりはいいと思った。
吉澤の反応をうかがう。
「はぁい?何ですか急に?」
212 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:28
雑誌を返せ返せという素振りをみせる。まるで子供だ。
「だから、喧嘩とかしてない?イジメたりしてない?」
「しないっすよーそんなの。イジるけどアイジョーですよアイジョー。」

保田から雑誌を取り返し、ホホホと笑ってふざけてみせる。
そんな吉澤の態度を見て、やはり自分の思い過ごしではないかと感じる。
213 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:28
聞き間違いだろうか。いやたしかに聞いた。ひとみちゃんと。
別な人なのだろうか。石川はよっすぃーと呼んでいるし。
眉間にシワを寄せて考える。
そんな保田を見て、笑って真似をしだす吉澤。真似するなといっても
男子小学生のようにからかって騒いでいる。


保田は怒るのにも疲れて小さくため息をついた。


石川 アンタ何が不安なの
214 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:29
 
215 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:29
衝撃をあたえたガラスにヒビが入る
くもの巣のような透明な線 それってすごく綺麗に見える

透明なモノってなんかキレイじゃん
曇ってなくて 濁ってなくて
光があたればキラキラするし 完璧、みたいな


それに傷が入った時
傷を入れてやった時

ほんの少し 快楽を得る
自分も傷つくんだけど それよりも快楽が上回る
なんでだろう 優越感を感じる瞬間
216 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:30
いつ粉々になるかわからない
崩れる寸前 かろうじて姿を保っていられる状態
その境界線を引いていく 傷つけながら
もっともっと壊したくなる

欲望と興奮がアタシを動かす





少しくらい傷ついた方が キレイでしょ?
完璧なモノって壊したくなるじゃん
217 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:30
今思えば どうしてあんな風に感じたんだろう
何がアタシをそうさせたんだろう
傷つけてばかりいた ホントはそんな事したくなかったのに

ガラスはアタシ自身だったかもしれない


今でもアタシはガラスが好きだよ
あの時計は傷つけてないよ あの時計はあのままでキレイだから
218 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:31
 
219 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:31
レコーディングは順調に進む。メインで歌う三人は何度も歌い直したりはするが、
他のメンバーは個人で歌う部分ほとんどない割と早くすんだ。後藤がブースに入り
レコーディングしている最中、他のメンバーはすぐ隣の部屋でそれぞれ練習したり
くつろいだりしている。
石川はあれから一度も吉澤と会話も連絡もしていない。いつもは石川からするが、
出来なかった。その吉澤はというと、今回センターをつとめるという事で少し緊張
していた。何度も何度も練習している。


「よっすぃーよっすぃー」
「あー何だよ〜よっすぃーは今忙しい」
小声で歌を口ずさんでいる吉澤に加護が話しかける。
「セリフのとこやってよセリフ!」
220 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:31
今回の新曲、Mr.Moonlight〜愛のビッグバンド〜でもセリフがある。男役を演じる
吉澤が新メンバーの小川に向かって言うセリフだ。
出来る事なら小川と自分のパートを変えてほしい。石川はそんな子供みたいな事を
思った。ちょうど隣には小川がいて辻とそのセリフ部分について話していた。
「なんか吉澤さんに言われると緊張しますよ。」
「いいなーののとコーカンしてよー」
「えーズルイ。それあたしあたし。」
石川もその会話に混じって騒いでいた。周りにメンバーが、誰かがいると落ち着く。
221 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:32
「梨華ちゃんキショイって」

あっ…


向かい側の椅子に座って加護に腕を引っ張られている吉澤が笑いながら話しかけてきた。
隣の加護もキショイキショイと繰り返している。
吉澤から話しかけてくれた。いつもメンバーでいる時のように。あれから石川は
気まずさから吉澤との接触をなるべく避けていたが、久しぶりに話せた嬉しさの方が
大きくてそんな事も吹き飛んでしまった。
222 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:32
「何よキショイってー」
吉澤の隣が空いていたことをいいことに、加護に便乗して石川も吉澤の隣へ座り
さりげなく腕に触れる。加護はまだセリフを求めていた。加護の頭をポンポン叩く
吉澤に勇気をだして話しかける。
「…どう?上手く歌えそう?」
「なんかね、すんごい叫ぶとこあるじゃん?アーウッなんて言った事無いし、
 ちょっと不安。今歌えてもミュージックステーションとかでさ、チョー緊張して
 アァァアウゥッみたいに裏返ったら恥ずかしくない?」
223 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:33
そんな吉澤を想像するだけで笑える。石川は久しぶりに笑ったかもしれない。
いつも、いつも吉澤がこう接してくれればいいのに。そう思った。
なおも吉澤は石川にむかって話を続ける。
「てゆーかさァ、見たこのセリフ?恥ずかしくって言えねぇーよーコレ。
 家でね、練習してたら弟に見られてバカにされたんだから。」
吉澤は少し照れくさそうに笑った。
224 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:34

あぁ これもひとみちゃんなんだ


この吉澤の顔を見ると、嬉しいような、悲しいような気分になる。
今の吉澤には冷たい笑顔もない。このままでいて欲しいと思っても
現実はそう上手くはいかない。しかし今も現実であるのに変わりない。
いつもこんな風に笑ってくれたら。
いつもこのままのひとみちゃんでいてくれたら。
225 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:35
あたし以外の人にあなたの笑顔を見せないでよ

目の前の吉澤の笑顔を独り占めしたいと思った。もちろんそんな事吉澤に言えない。
言うつもりも無い。理由は嫌われたくないから。ウザがられたくないから。
どんなに苦しくても今のように吉澤が接するだけで、石川はその間苦しみも悲しみも
心の奥にしまわれて忘れられる。


でもそれは一時的に奥に行くだけであって石川の体から抜けるわけではない。
いつだって全身にまわる事が出来る。次々と蓄積されながら。
226 名前:【未成年】 投稿日:2005/01/29(土) 16:35
 
227 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/02(水) 18:55
次回も楽しみです

梨華ちゃんにシンクロして
毎回よっすぃにドキドキしっぱなしです(笑)
228 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/05(土) 19:58
どれが本当のよっすぃーなのか分からなくなりますね。 苦笑
かなりドキドキものです。
更新待ってます。

229 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 05:37
まだかな?
230 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/02/08(火) 11:52
レスだけ…

>>227
ありがとうございます。
優しい吉澤さんがいいんですけどね。

>>228 通りすがりの者様
ありがとうございます。
更新はもう少ーーしお待ち下さい

>>229
まだです。。


今課題を必死にやっておりこちらに手をつけられません。
放置してしまいましたが何ヶ月も放置するつもりもないので。
あと内容に少々行き詰っているというか書きたい事はあるんですが、
石と吉の話だけで行くか、未成年ということで
他メン2人程の話も石と吉ほどではないけど混ぜようか迷い中です。
ですがそのうちの一人が登場する頃にはとっくに未成年でなくなっていると
思われ、石川さんの時のようにあーぁと。

と、悩み中です。書いているうちに変更するかもしれませんし
とても適当な作者なのでお許しを。

というわけで更新はもう少ーし、お待ち下さい
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/10(木) 22:10
待ってますよ〜
232 名前: 投稿日:2005/02/11(金) 06:48
応援するよ☆

待ってます!
233 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/12(土) 15:36
まったりと更新待ってます。
234 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/15(火) 04:07
無理に話を変えなくていいんで、それより早く更新してください。
235 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/19(土) 00:47
>234さん

そんなに急かしちゃ作者さんに悪いですよ。
マターリいきましょう。
236 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/26(土) 06:58
放置かなぁ?
237 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/02/28(月) 12:07
遅くなってすみません
現在パソコンが壊れていて投稿する事が出来ません
(これは学校のパソコンから)
3月中には直る予定です。
とりあえず生存確認を…


>>231
ありがとうございます
本当にすみません

>>232 希様
ありがとうございます
もう少しお待ちくださいm(__)m

>>233 通りすがりの者様
いつもいつもありがとうございます

>>234
すみません汗 直り次第更新します

>>235
本当に申し訳ないです;´ Д `)

>>236
放置状態ですがもう少しお待ちください…


かなり前からもう少しもう少しと言ってる割に
全然更新出来てません ごめんなさい

あと2週間くらいかかるようなので
まだまだ更新出来ない、という事だけ報告を。
自分の小説を待ってる人が少なからずもいるという事が本当に嬉しく思い励みにもなります。
パソコンが戻って来たら直ぐに更新しますので
それまで再び失礼しますm(__)m
238 名前:235 投稿日:2005/03/02(水) 21:45
そんなに焦らずにゆっくりと御自分のペースで頑張って下さい!
応援しています。
239 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/03/03(木) 03:42
パソ戻って来た。・゚・(ノ∀`)・゚・。
二週間とかいって当初の予定よりずっと早く戻って来ました

>>238
優しいお言葉ありがとうございます
感激でございます


今日早速続きをかきました。
少ないですが更新します。
気づけば1ヶ月も;´ Д `)すみません
240 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:42
 
241 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:44
ピッ ピッ


リモコンのボタンを押して次々とチャンネルを変えるがどれもつまらない。
「あーもうっ!」
床にリモコンを投げ捨てる。吉澤はリビングのソファーに突っ伏した。

センターを任されたのはいいが、さすがにスムーズに上手くはいかない。
レコーディングも今までの何倍も時間がかかった。
次は振り付けの練習で、ダンスの苦手な吉澤にとって思ったようにいかず、
かなりストレスが溜まる。
最終の振り付け確認日までもう直ぐだが、上手く出来ない部分もあり
まだ完全とはいえない。センターという責任感が重くのしかかる。
上手く出来ない自分に対してイライラしていた。
242 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:44
「ひとみ、もうお風呂入って寝なさい。」
キッチンから母親の声がした。
「わかってるよぉうるさいなぁーいちいち言わないでよコドモじゃないんだから。」
起き上がって床のリモコンを拾い上げ電源を消した。



―まだまだコドモでしょ―心の中で小さく笑いつつ、母親はテーブルの上に
ジュースの入ったコップを置いた。吉澤家は口の利き方や挨拶など厳しく
しつけていたが、娘の苦労や文句を言いたくなる気持ちも両親はよく
理解しているのでそんな時は何も言わずに受け入れている。
「こーゆー時はさっさと寝る!朝起きたら新しい気持ちで頑張りなさい。」
ヘイヘーイと返事をし一気に飲み干し母親に空になったコップを押し付ける。
吉澤はそのまま風呂へとむかった。
243 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:45
最近疲れが溜まっているようだ。元気の無い娘の背中を見て少し不安になる。
モーニング娘。というアイドルである前にただの普通の女の子。
たった一人の娘である事に他ならない。
本人も考える事だろうが、同様に親も一度は考えるだろう。


もしモーニング娘。に入っていなかったら


娘は今とは比べ物にならないくらい自由に友達と遊んで普通の生活を
過ごす事が出来ただろう。普通の生活をさせてやれない。それは贅沢な
悩みではあるが、娘が悩んでたり疲れていたり、テレビで無理矢理笑顔を
作っているのを見ると、本当にこれで良かったんだろうかと思ってしまう。
244 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:46
しかしライブで活き活きとした娘の表情を見たり、自分の娘がたくさんの
ファンから愛されているという事、また今日一日起きた出来事を楽しそうに
話す娘を見ていると、とても幸せな気持ちになる。
今回センターに抜てきされたのも親としては喜ばずにはいられない。


普通に育ててきた、他の子と特に変わりない生活を送ってきた娘が
弱冠14歳で日本のトップアイドルグループに加入した。

娘が幸せならそれが何よりだ。好きなように生きて欲しい、母親は常に願っていた。
245 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:47
風呂からあがり、部屋に戻る。机の上の電気スタンドをつけてオレンジ色の
光が部屋に浮かぶ。髪をかわかしながら明日のスケジュールを確認する。

机の上に置いてある通学の際使っているカバンが目に入った。
あ、そう言えば宿題出てたんだ――思い出し、ため息が出る。学校は好きだが
たまに億劫になる。もちろん仕事も。
全部投げ出したい気持ちになる。皆はそう思わないんだろうか。
一気に疲れが出てきた気がして、髪が半乾きのまま
ベットに沈み込むように眠ってしまった。

咳き込みながらも、だんだんと規則正しくなる吉澤の寝息。
整って大人びた顔立ちだが、まだあどけなさの残るその顔を
オレンジの光が優しく包み込んでいた。
外がどんなに冷えていても、家の中は暖かかった。
246 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:47
 
247 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:48
「今日木曜日だったんだ。」
石川はしまったという顔をしてマンション前のゴミ捨て場前でうなだれる。
木曜は燃えるゴミの日だった。普段料理をしないので食事は専ら
外食だったりスーパーやコンビニの弁当。ゴミはどんどん溜まり
ベランダに大きなゴミ袋が2個並んでる。月曜も朝忙しくて出せなかった。

「めんどくさぁーい。ママがいればなぁ…」
こんな時に一人暮らしは面倒だとつくづく思う。今までは母親がなんでも
やってくれた。料理も掃除も洗濯も。一人でブツブツ文句を言いながら
エントランスに入る。
248 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:49
落葉が2、3枚入り込んでいた。日もすっかり暮れタクシーから
降りたときほんの少し肌寒く感じた。思えばもう10月で秋だ。
忙しすぎて四季というものをゆっくり味わう暇などない。
エレベーターのボタンを押し、中学時代を思い出す。

秋になったらメニューが変わるのだ。夏はとにかく体力付けの為の走り込みが多い。
新人戦や冬の大会を目指し秋は技術的なものを身に着ける時期だった。
あの頃あんな曲を聴いてたな 色々思い出しているうちに三階につき、
カツカツと音を立てながら廊下を進み部屋の前に着いた。
249 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:50
鍵穴に鍵を差し込む。回そうとすると

ガチャッ

「…え?」

回した鍵を元に戻す。ドアノブに手をかけてそっと引いてみた。
開いてる。


朝、鍵をかけ忘れたかもしれない。
という考えより先に浮かんだのは。
250 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:51
ゆっくりドアを開くと、そこには石川の靴ではない、
しかし いつもいつもその靴がそこに置いてあって欲しい、
そんな靴がキッチリ並んでいた。



自分の靴を脱ぎ捨て、持っていたバッグもコンビニの袋も玄関に
置き捨ててリビングへと急いだ。
251 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:51
ソファーの背もたれからのぞかせる見慣れた後ろ頭。
首だけ振り返り、石川の大好きな大きな瞳と目が合う。

「おっかえりーー」

右手をあげブラブラと振った。

「ひとみちゃん!」


走っていってソファーの後ろに座り込む。
両手を背もたれにかけ、
吉澤の顔が見えないから立ち膝になり、あごを背もたれにのせた
両手の間にくっつけて上目で吉澤を見た。
顔だけ後ろを振り返っていた吉澤も体を反転させ向き直した。
252 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:53
「おかえりー」

ポンと石川の頭に手を置く。石川は嬉しそうに答えた。

「ただいまっ」

直ぐにニヤッと吉澤が笑う。
「なんか犬みたい。チンチンの体制っぽくない?
 ほーれ、チンチン。お手。お手お手。」
そう言う吉澤に、なによぉとふてくされてみるが笑みを隠し切れない。
嬉しくて嬉しくてワンワンッと吠えてみる。
即座に 寒いよ、と突き放され、吉澤は前を向いてしまう。
ブーッと頬を膨らませても見てくれないし、
とりあえず玄関に置き捨てた荷物を取りに戻る。
253 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:53
吉澤の前のテーブルにドサッと荷物を置き、上に着ていたジャケットを脱ぐ。
部屋を見渡すといつもの通り綺麗になっていた。いつも吉澤が何も言わずに
片付けてくれるのだが、それは嬉しい反面、恥ずかしいのもある。
女の子らしくキレイにしなきゃとは思っても整理整頓というのが苦手だ。

「来るなら来るって言ってくれればいいのに。
 そしたらちゃんとお部屋も片付けたし、何か買ってきたのにぃー。」
そう言いながら寝室のドアを開けクローゼットに脱いだジャケットをしまう。
普段ならそのままソファーに脱ぎ捨てるが、吉澤の手前上、だらしない所は
見せられないし見せたくないので片付けてみせた。
254 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:54
その間、コンビニの袋を覗き込む吉澤。
「あぁどーりで。冷蔵庫、すっからかんだね。」
ハッとしてすぐさま部屋着に着替えてリビングに戻る。
中を覗き込んでいる吉澤から袋を取り返しキッチンへと向かった。
中にはコンビニで買った弁当、翌朝の分のパンとペットボトルの飲み物が入っていた。

「そ、そんな事ないもん。よ…ひとみちゃん、お腹空いてる?
 余りものであたしがササッと作るから…」
そう言って冷蔵庫を開けると吉澤の言ったとおりすっからかんだった。

「余りものすらないじゃん。」
リビングから声がする。
しかし石川は自分の部屋の冷蔵庫の中に見慣れないものを見つけた。
255 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:55
夕食に使えそうな材料なんかなくてすっからかんではあるが、
その代わりに缶ビール3本と缶チューハイ2本が入っていた。

「お腹すいたーピザとろうよ。あたしピザハットがいい。」
吉澤は冷蔵庫の隣に来てデリバリーのチラシをあさる。

「…何これ?」
「えー?どれー?」
「これ!」
ビールを掴んで吉澤の目の前に突きつける。
「え、それビールだよ。」
そう言ってピザハットのチラシを見つけ出しキッチンのテーブルに広げた。
「何にしよっかなー。」
ビールをドンッとテーブルの上に置き冷蔵庫を力いっぱい閉める。
256 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:56
その音に驚いて顔を上げると石川は眉間にシワを寄せていた。
「ビールなんて見れば分かるよ!何でビールがここにあるのよ!」
「何でって飲もうと思って買ってきたんじゃん。で、どれがいい?」

「何考えてるのよひとみちゃん!お酒なんてあたし達まだ早いじゃない!」
「皆飲んでるよ。別にたいしたことないじゃん酒くらい。」
「もし買ってるところ見られたらどうするの!?写真撮られたらどうするのよ!
 他のメンバーにも迷惑かかるし、ひとみちゃんだって怒られちゃうんだから。
 ちゃんとそーゆー事考えてよ!」
257 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:57
ワザとらしく、石川にあてつけるように大きくため息をついた。
「梨華ちゃんて本当マジメだよね。梨華ちゃんとタメの人なんて普通に
 飲んでるよ。いーからさ、どれ?アタシさ、デリシャス4がいいんだけど。
 コレでいーい?いーよね。決定。」
まだ怒っている石川を完全に無視して電話をかけ始めた。
吉澤も何か言ってくればいいのだが、こう相手にされないとこの怒りを何処に
向ければいいか分からず、ビールを掴み冷蔵庫の中に突っ込んだ。
電話をしてる吉澤の隣をすり抜けて寝室へと向かった。
258 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:58
注文し終えた吉澤は開けっ放しの寝室のドアに向かって声をかける。
「30分で届くってー。だから20分したら届くよー」
寝室から出てきた石川は風呂に入る準備をして出てきた。

「ちょ、聞いてんの?あと20分で来るんだってば。梨華ちゃん風呂長いじゃん。」
わざとらしくそっぽを向いて、わざとらしく無視して石川はバスルームへ
消えていった。そんな石川の背を見ていたが、特に気にもせずソファーに戻り
ピザが来るまでさっきまで見ていたテレビの続きを見ることにした。
259 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 03:59
浴槽に浸かっていた石川は少しでも長く風呂に居てやろうと思った。
それが今石川に出来る吉澤への微かな、かつ一番の反抗である。
待たせてイライラさせてやろうという魂胆。
この時、石川はピザが冷めるという事に全く気づいてない。


石川はプロ意識が高かった。
やはり入った当時はまだ半分夢のような感じで特に意識する事はなかったが、
センターをつとめた事は石川自身にとってかなり大きな事だった。
これによりプロ意識はいっそう高まり仕事をキチッとこなす事に精を出した。
仕事柄いつ何処で撮られるか分からないため、問題になるような事は避けていた。
自分だけではなく、メンバーの事も考えて。
260 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 04:00
石川には吉澤がそういった意識が低いように感じられた。
仕事というよりも後藤と楽しんでるようにしか見えないときもある。
今楽しければそれでいいというような吉澤の仕事に対する姿勢。
そんな不満を抱えていても言えるはずが無い。
さっきみたく『マジメだね』の一言で片付けられてしまうから。

石川はもっともっと上を目指したかった。自分の好きなアーティストのように
たくさんのファンに囲まれて歌を歌っていきたいという気持ちがあった。
だからこそ吉澤のそんな軽率な行動が許せない。
それが吉澤じゃなかったら、後輩や年下であったりしたら足を引っ張らないで
と言いたいくらいだ。
もちろん飲んだり遊んだりしている先輩メンバーには言えるはずも無く。
261 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/03(木) 04:01
 
262 名前: 投稿日:2005/03/03(木) 11:56
やった!!!お帰りなさい☆

更新お疲れ様でした。
面白かったです。次、待ってますよ♪
263 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/03(木) 16:42
更新お疲れ様です。そしてお帰りなさい 嬉
うーん、やっぱり正反対の二人にはかなり大きな壁のようで。
今一度お聞きしたいことが、この当時の年齢って高校生ですよね?
次回更新待ってます。
264 名前:ひすい 投稿日:2005/03/06(日) 22:43
いいっすねー。リアルな設定大好物なんで!
作者さん、学校も小説も頑張ってください(*´∀`*)

現在の二人がどうなってるのかすごく気になっている、一読者でしたw
265 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/07(月) 19:55
更新キター!お疲れ様です
また吉澤さんにどきどきする日が始まります(笑

次回も楽しみにしています。
266 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:16
>>262 希様
あ、ただいまー 
どうもありがとうございます

>>263 通りすがりの者様
ありがとうございます
ハイ 高校生の年齢です 多分。 石川→高2 吉澤→高1 のハズ

>>264 ひすい様
ありがとうございます
今ドキドキワクワクの春休みです(*´∀`*)

>>265
ありがとうございます
自分もレスにドキドキしてます


では更新
267 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:16
 
268 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:17

「ほい。」

テレビを見ていた吉澤の頬に冷たい感触。
視線を上にずらすとバックに蛍光灯の光を浴びたユージがいた。
光に少し目がくらみ、ボーッとユージの顔を見る。
そんな吉澤を見ながらユージは愛嬌のある笑顔を見せペチペチと吉澤の頬にあてた。

頬に触れた冷たいものを掴む。水滴が少し頬に残った。

プシュッ

隣に座ったユージがフタをあけてゴクゴクと飲む。
「っあーうめぇーー!」
吉澤に手渡されたものはビールだった。
「ビールじゃん。どしたのコレ?」
「今下からこっそり持ってきた。オヤジ用。」
「ユージいつから飲んでるの?」
「オヤジが酔ってる時たまに飲ませてくれる。
 けどかーちゃんが飲むなってうるさいんだよね。ひとみは?」
「んー飲んだこと無いな」
「マジで?飲んでみ飲んでみ。」
269 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:18
まじまじと缶ビールを見る。ビールは焼肉で中澤がよく飲んでいるのを
目にしていたが、自分はまだお酒は飲まないものだと思っていた。
しかし隣のユージは普通に飲んでいる。ビールを飲んでいるユージが
知らぬ間にほんの少し、自分より進んでいるように見えた。
小学生の頃から知っているユージが。

付き合っているわけではないが吉澤は自分とユージは”一緒”であると思っている。
見てきたもの、触れてきたもの、歩く早さも、その歩幅も。
ユージは常に隣にいるものだと思っている。
自分が前を進んだとしてもユージの背中が見えるのは嫌だった。
ユージが自分から離れる事も同様に。ユージが高校の友達と遊ぶ話を聞いたりすると、
相手が男であれ女であれ、嫌悪感を抱いた。ハッキリしたものではないし、なぜ
そんな感情を抱くかも分からず、あまり意識しないようにした。
270 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:23
プシュッ


たかがビールに何故こんなにドキドキしているのか。
中をのぞくと気泡がシュワシュワと音をたて湧き上がる。
「ほれイッキ!イッキ!」
隣のユージの声が聞こえないくらい自分の心臓の音が頭の中に響く。
グッと缶を持ち、目を閉じ、一気に喉に流し込む。
271 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:24

「まぁぁずぅぅ…」


一口飲んでそれをユージに渡した。
「にがっ…まずぅーー」
「いやいや俺も最初はそーだったよ。ちょーマズっ!って思ったもん。
 なんで大人はこんなの飲めるんだろって。」
「うぁーにがーい」
自分の分のビールを飲んでるユージはそんな吉澤を見て笑った。
「お前そればっかじゃん。慣れれば大丈夫だよ。
 あ!じゃあチューハイは?かーちゃんがたまに飲むんだけど
 ピーチ味のがあったはず。とってくる!」
そう言って部屋を出て行った。
272 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:24
その間、部屋を見渡す。
小学生の頃からよく遊びに来ていた。あの頃よりインテリアは随分変わった。
殺風景ではあるがそれなりに気を使っている。あまり物を置いてないせいか
広く見え、壁にはユージの好きなバンドのポスターがでかでかと貼ってある。
棚にはCDがずらっと並んでて窓の近くの机には教科書や参考書。あまり
使われていないようだ。ユージの家は近所で母親同士も仲が良い。母親達は
2人が付き合ってると思っているが、特に何も言わないのでその事を
当の本人達は知らない。

たまに来るこの部屋は模様替えもここ何ヶ月の間はしていない。どこもかわって
いないのだが吉澤には違って見えた。何かが増えたのか 何かが減ったのか。
物を一つ一つ覚えているわけではないけど、変わってしまったように感じられる。
この部屋のよくわからない居心地の悪さを早く消し去りたいと吉澤は思った。
273 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:25
「せいこーう!ジャーン!ほらっ」
ドアをそっと閉めたユージはキンキンに冷えた缶チューハイを吉澤に手渡した。
一見ジュースにも見えるが[お酒]とちゃんと書いてある。
手渡されてそのままフタを開ける。



これを飲めば



誰かに決められたわけでもない。義務でもない。これを飲む事でこの居心地の
悪さが解消されると思った。飲めばまたユージの隣に立つことが出来る。
今の自分にとってユージの隣が一番の居場所なんだと吉澤は信じていた。
274 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:26
恋愛感情とは別に、ユージの存在は絶対的なモノでありそれを他者に干渉される
のも、侵食されるのも、破壊されるのも許せない事だった。ユージが自分から
離れる事も。どうしてそこまでユージに固執してしまうのかわからない吉澤は
それはただ単に小学校から一緒の自分のパートナーだから、と考えた。

パートナーとは常に”一緒”。



炭酸混じりの透明な液体を口に含む。喉の奥へ奥へと流し込む。
自分の体を、血液の中を異物が侵入していく。それがどんどん行き渡り、内側から
皮膚へと染み込み、吉澤の全体を包み込んだ。

275 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:27
「ひとみ待て待て。イッキしなくていいから。」
手を止められ、唇につけられた缶を奪われた。
「うぉっ!お前マジでイッキしたの?」
ユージが持つ缶は空になっていた。
「無理しなくていいのにー。どう?全然飲みやすいっしょビールより。」
「んー。」
気の抜けた返事をした。
「まぁビールも飲みたきゃ飲めよ。ここ置くね。」
すぐ隣であぐらをかくユージの横にさっき一口飲んだ缶ビールが置いてある。

さすがにすぐ手を伸ばそうとは思わなかった。初めて体内にアルコールが入ったが
ほんの少し瞼が重いくらい。感覚はジュースに近く、両親ともにお酒を飲むので
もしかしたら自分はアルコールに強い体質なのかもしれないと思った。

これで一歩踏み出した。その先にはユージがいる。

あとはもう片方の足を前に出すだけ。



ユージが歩くならアタシも歩けばいい
何も難しい事じゃない
ユージの隣に居るのがアタシなんだから

276 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:27
その後ビールを少しずつ飲みながらそのままテレビを見続け9時近くになったので
家へ帰ることにした。一人で帰れると言っても夜道は危険としつこくユージが言うので
結局吉澤の家の前までユージと2人、歩いて帰った。

「飲むには時間早すぎたな。また今度ね。おばちゃんにバレないよーにしろよ。」
「ハイハイ。」
「あ、でも顔色変わってないし大丈夫っぽい。実は強かったりして。」
「どうだろね。少ししか飲んでないしさ。」
「まあまた今度飲もっ。多分お前俺より強いなきっと。」
「ハイハイ。それじゃおやすみー」
277 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:29
ユージを背にし門に手をかけたところで右腕をグッと掴まれ、
振り向いた正面にユージの顔があった。
そのまま顔をずらし吉澤の顔へと近づいてくる。


吉澤は目を開けたまま動かなかった。


そのまま顔を近づけたユージだが唇に触れる直前で制止し、顔を離して吉澤の右腕を
掴んでいた左手をおろした。
「おやすみユージ。」
「…おー。おやすみ。」



門を閉め、振り返ることなく吉澤家の中へと消えていった。
バタンとドアを閉めてフーッと息を吐き靴を脱いだ。


「したきゃすればいーのに」


無表情のままボソッと小さく呟いてリビングに向かってただいまーと言い、
2階の部屋へ上がっていった。





そんな吉澤の背を見つめていたままユージはしばらくそこに佇んでいた。


外に吹く秋の風が一本の木を荒々しく揺さぶる。
278 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:30
 
279 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:31
玄関で声がする。ピザが届いたようだ。
浴槽に深く浸かり、あと20分は出ないでやろうと目論む石川。
すると ガチャッ と音がして、

「ピザ届いたー」

とノックもせずに風呂のドアが開けた吉澤と目が合う。片手にはピザの箱を持っている。
慌てて風呂の中で体育座りをし、向きを変えて背中を見せた。

「ちょ、ちょっとぉ!!勝手に開けないでよ!外で話せばいいじゃん!」

吉澤を背にして文句を言う。

「今更隠されてもねぇ」

そっと振り向くと案の定、ニヤニヤと笑って見下ろしていた。

「は、早く閉めてよっ…!」

手で閉める動作をすると鼻で笑ってガチャッと音を立てドアを閉めた。確かに今更
隠す必要は無いがやはりなんとなく恥ずかしい。悔しくなり、絶対長風呂してやろう
と意気込む石川だった。
280 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:32
しょうがないそろそろ出てやるか、とやっと風呂からあがる。
着替えながら吉澤の顔を想像し、それだけで楽しくなっていた。


「あースッキリしたぁ〜」


聞こえるようにワザと大きめに言う。
肩にタオルをかけて濡れた髪のままリビングへ向かう。ソファーからはいつもの
頭が飛び出ていた。声に気づいて振り返った吉澤の顔は何らいつもと変わりない。
その吉澤にフフッと不適に微笑んでソファーに近づく。


視界に入ったのはリビングのテーブル

281 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:33
…の上の既に半分無くなっていたピザ。





「た、食べたの!?」
「え?食べたけど?」
当然、というような顔で聞き返してくる。
しかもピザの箱は開けたままですっかり冷めていてトロトロチーズも固まっていた。
ピザの前に倒れるようにしゃがみこむ。長風呂した意味が無かった。


「……何で食べてるのよぉ!!!」
キッと吉澤を、睨んでも決して怖くない潤んだ目で睨んだ。
282 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:33
「ピザ届いたって教えてやったじゃん。だいたいアタシがすぐ届くよって
 教えたのにもかかわらず、お風呂に入ったのはアナタでしょ?」

「待っててくれたっていいじゃない!ピザってゆーのは皆で食べるから
 楽しいんだから!お互い引っ張ってチーズが伸びて具がそっちいっちゃったりして
 それあたしのーとか言ってそれでかじってピザを引っ張ってチーズを伸ばしながら
 あたしの方が長いーって競争しながら食べるものでしょ?
 ピザってそーゆーものでしょ!?」

「はぁ?何言ってんの。だから腹減ったって言ったじゃん。ねぇテレビ聞こえないから
 静かにしてくれない?」

「それになんでフタ開けっ放しにするのよ!ほらぁ見てよチーズ固まっちゃったよっ
 お風呂だって入ったら次の人の為にフタ閉めるでしょ?ピザも一緒よ!」

「うるさいなーそんなのレンジでチンすりゃいーじゃん。聞こえないっつーの。」

「レンジでチン!?ピザ屋さんとうちのレンジを一緒にしないでよ!
 だいたいねぇ、あたしデリシャス4がいいなんて一言も言ってないでしょ?
 勝手に決めないでよ!」

「あーもー何なのさっきから。ウザい。うるさい。聞こえない。」

「何よ…何よ…こんな全然可愛くもない子のドコがいいのよ…。」
283 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:34
ピザから今度はテレビに偶然映っている他の事務所の女の子へと移行してしまった。
こんなうるさいのは相手にしてられないと、吉澤は余っていた皿を石川の前に置く。

「ハイ皿。チンしてさっさと食ってよ。食わないならアタシが食うから。」

全く相手にしてくれない悔しさもあるが、皿とピザを自分の方に引き寄せる。
ふと目線をずらすと空になった缶ビールが2つテーブルの上に堂々と置かれていた。
顔色一つ変えない吉澤。全く酔ってもいない。ビールの存在をすっかり忘れていた
石川はそれを見て黙りこくってしまった。吉澤にとっては静かになったのでテレビの
音がよく聞こえるから特に気にも留めない。立ち上がり、残りのピザの入った
ダンボールと皿を持って黙ったままキッチンへ移動した。
284 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:36
2ピースを皿に乗せて、レンジの中へ入れボタンを押した。
ヴーッと音を出し、ピザがゆっくりと中で回り始める。
お酒を許したわけではない。思い出して再びイライラし出した。



何が一番嫌かというと、自分の知らない吉澤の顔があったこと。
自分が知らないところで吉澤が酒を、新しいものに手をつけたこと。
どうして?いつから?誰から? 気になっても聞けない。
本当のことを聞きたいのに本当のことを聴きたくない。



吉澤にとっての自分の存在意義が何なのか。


悲しさと寂しさがつのる。




規則的に一方向にまわるピザがだんだん温まり湯気を出し始めた。
レンジの中いっぱいに広がる。
チーズも温まりプチプチと音を立てている。

[とりけし]ボタンを押さずに石川はレンジの中を眺めていた
見えない何かを探していたのだろうか
285 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/08(火) 05:37
 
286 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/10(木) 15:25
更新お疲れ様です。
続き期待してます。
287 名前:ひすい 投稿日:2005/03/15(火) 08:18
梨華ちゃんせつねぇ(つДT)

更新頑張ってくださいm(._.)m ペコッ
288 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/16(水) 13:35
うぁー高校生でこんなクールな人初めて見たと思います。石川さん切な過ぎます(T_T) 次回更新待ってます。
289 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/25(金) 04:07
梨華ちゃんせつな過ぎる・゚・(ノД`)・゚・。
290 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/25(金) 04:54
次回待ってます。
291 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/03/26(土) 04:16
>>286
ありがとうございます
期待に添えられるかどうか…

>>287 ひすい様
ありがとうございますm(._.)m ペコッ

>>288 通りすがりの者様
ありがとうございます
随分と冷め吉ですよね

>>289
ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。

>>290
次回でございます


前回の更新から時間経ってしまいました 申し訳

それではちょい更新
292 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:17
 
293 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:17
ピーッ ピーッ ピーッ


レンジの中のテーブルが止まった。気づいた石川は棚からピンク色の
ガラスコップを取り出しテーブルの上に置く。冷蔵庫から出した
ペットボトルの烏龍茶をガラスコップに注ぐ。あまりに冷たいと体が
すぐに冷えてしまうから氷は入れない。烏龍茶を冷蔵庫に戻して、
レンジのドアを開けるとピザのにおいが中からあふれ出て、キッチンに
充満した。

ガラスコップと皿を持ってリビングへ。ソファーとテーブルの間に座り
込み、後ろの吉澤の様子を伺う。片方の肘掛に肘を乗せて頭を固定し
目を閉じていた。石川は腰にあるリモコンにそっと手を伸ばしテレビの
電源を消した。
294 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:18
「見てんだけどー」

消した途端、後ろからの低い声にビクッとした。振り向くと肘を突いて
目を閉じたままだった。もう片方の手で、細く長い首をポリポリと
かいている。

「見てないでしょ。」

「聞いてんの。つけてー」

しぶしぶ石川は電源を入れる。部屋にうるさい音が再び流れ込む。
せっかく2人きりになったのだから、テレビなんか見ないで話をしたい。
テレビの音なんかではなく、吉澤の声を聞きたい。石川はほんの少し
音量を下げた。ピザを食べながらテレビを見る。内容は頭に入ってこな
かった。吉澤に話しかける言葉を探している。この沈黙を消したかった。
いつも、何でもいいから、話していたい。時折盗み見るが、以前目を閉
じたままの吉澤。左手には缶ビール。
295 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:19
「明日振りの確認最後だね。大丈夫?」

石川は吉澤がダンスを苦手としている事はよく知っている。石川は初めて
センターに立つというのが経験済みであるから、歌やダンスに対する
プレッシャーも理解してるつもりだ。その上で吉澤に声をかけた。

「何が?」

目を見開いて聞き返してきた。表情はあまり良くない。言葉を選びながら答えた。

「え、上手く出来ないところとか、ここが不安とか、ないかなって…」

「何?じゃあ梨華ちゃんが先生の変わりに教えてくれんの?
 梨華ちゃんが変わりに踊ってくれんの?」

「そんなんじゃ…」

「アタシと違って梨華ちゃんダンス上手いもんね。ヘッタくそーとか思ってんの?」

「違うよ…そんな事言ってないよ?あたしは…」


「じゃあさ、どーでもいいっしょ?いちいち聞かないでよ。」
296 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:19
立ち上がり、缶ビールを一気に飲み干す。テーブルの上に缶を置いて
そのまま風呂に行ってしまった。


そんなつもりじゃないのに
なんでちゃんと聞いてくれないの

なんでわかってくれないの


涙をこらえながらピザを食べる。我慢する必要は無かったが、もう
泣きたくなかった。どんどん自分が惨めになっていく気がするから。
吉澤の言葉を遮って自分の気持ちをぶつければいいのに、いざ吉澤の
前に立つと言えない。嫌われたくないのと、ただ好きだという真っ直ぐ
な気持ちがあるから。あの顔を、あの目を見てると何も言えなくなる。
297 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:20
 
298 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:20
体を洗い終え、シャンプーをして、リンスを流す。顔を上げると顔面に
勢いよくお湯が降り注ぐ。立ったままシャワーを浴びるのが好きだった。
すごく気持ちがいい。風呂にはシャワーの音、自分の身体に当たる音、
床に流れ落ちる音だけが響く。それ以外の全ての音を遮断して耳から
入り、脳内に響く。

実は明日の最終振り付け確認は不安があった。大体は出来るが、いざ
本番になって注意されたくないし、周りに迷惑かける訳にはいかない
から。同期の辻加護、新しく入った五期にもいい所を見せてやりたい。
そんな中、石川のマンションへと足がむかった。なんとなく顔が見たく
なったから。
299 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:22
少しイライラしていた。
不安からストレスがきていた。
石川の言いたい事だってよく解っている。けどあたってしまう。


何言ってんだろ
けどなんかムカツク



自分を嫌う。
シャワーの水と共に、醜い部分が全て流れてしまえばいいのにと思った。


自分の体が全部溶けて 流れてしまえば




首を折り曲げるとシャワーがうなじにあたる。

「きもちいー」
300 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:22
左右に首を振りながら、左腕を右手で上下にこする。下を向いていると
自分の体が目に入る。

白いカラダを、胸から腹へ、足へと水が伝ってゆく。

自分の体をまじまじと見つめ、白いなぁと思った。
ふと石川の褐色の肌を思い出す。
フッと笑いがこみ上げてくる。
何したらあんなに黒くなるんだろうと不思議に思った。

自分の白い肌を見、石川の褐色の肌を思い出すと、
だんだんと石川を欲してきた。


ハンドルを回し、シャワーを止めた。
301 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:22
 
302 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:23
歯を磨いてから、缶ビールやピザの空き箱を片付け、使った皿を洗う
事にした。シンクの前に立つと同時に、風呂の方でドアの開く音がした。
吉澤が風呂から上がったようだ。さてどんな顔で、なんて言って話し
かければいいんだろうか。機嫌をそこねて帰ってしまうかもしれない。
どうしようと悩みながら水をボールの中に落とす。


パチンッ


「えっ?」


キッチンとリビングの電気が同時に消える。
サァーッと水が皿に流れ落ちる。石川の手が暗闇をさ迷う。
シンクの向かいにある照明を点けようとして。
303 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:24
突然だった



長い腕が伸びてきて強く抱き締められる




首筋に温かい唇が這う

髪と白い指が絡まる

大きな手に強く優しく遊ばれる胸




突然の快楽が襲う
304 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:24


「…っはぁっ…」



持っていたスポンジが落ちた。
立っていられない程の刺激に石川は目を閉じた。声が漏れるのを必死でこらえる。
相手が誰か。
一人しかいない。
石川の求める腕、指、体、そして心を持った人だ。


自分の背中にピッタリくっついた体に少し違和感を感じた。
自分の体を包んでいる腕に触れる。
305 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:25
水滴が付いていた。
快感に苦しみながらうっすらと目を開け、ゆっくり体を反転させる。
奥の風呂の明かりだけがついていて、廊下を渡り光がほんの少し届いている。


その光が照らしたのは、髪から水が滴り落ちる吉澤の裸であった。
床には吉澤の歩いた水跡が残っている。

わずかなオレンジ色の光に照らされた吉澤の裸を見た石川は、
その裸が美しくかつ官能的に感じた。その体に触れたいと思った。





石川を今度は正面から抱き締め、顔を離し、じっと見つめる。
そして唇を食べるような深いキスをした。口内で舌と舌が絡み合う。

時折顔に、濡れた髪が擦れる。
手を回すと、もちろん背中も腰も濡れていた。
306 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:25
キスの合間に吉澤に訴えかける。

「ひ…ちゃん…あっ……カゼ…ひくぅ……よぉ…」

石川の言う事に聞く耳も立てず、ピンク色のパジャマのボタンを
荒々しくはずし、パジャマの上を床に投げつける。
下に何も着ていなかったので胸が露になる。
キスをしながらその先端に触れるか触れないかで胸の上を指先が這う。
307 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:26
両手でパジャマのズボンを一気に引き下げる。
自分の足だけではもう体を支えられない石川は、後ろのシンクに手をついた。
下には吉澤がしゃがみこみ、片足ずつズボンから足を引き抜いている。


ガコンッ


シンクの中のボールに水が溜まり、ボールの中で不安定に重なっていた皿が
崩れ音を立てた。皿は静かに水の中に沈んでいき、ボトボトと水がボールに
落ちる音が響く。

意識が朦朧としていた石川
その音によって呼び戻される。
キスに夢中だった為、水を流したままでいた事を忘れていた。
308 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:26
片足をあげてズボンを脱ぎながら体の向きを変えて手を伸ばし水を止める。
さっきまで響いていた音が無くなった。
同時に立ち上がった吉澤は、石川の首に顔を埋めて直に胸に触れる。
再び快楽尾の世界に引きずり込まれた石川の体と脳に強い刺激が走る。

水の音が消えて、唇で吸う音、荒い息遣い、甘いと吐息が部屋の空気を振動する。
元々、石川には水の音など関係なかった。吉澤はそれ以上に。



吉澤に抱き締められ 体が触れ合い 石川の体も濡れてゆく

309 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:28
ショーツに手をかけた時、その両手に自分の手を重ねて止める。

「ここじゃヤダ。ベットに連れてってくれなきゃヤダ。」

イヤイヤと首を横に振ってお願いした。
そんな石川を見て、心の中で小さく笑い、それを顔に出さずに頷いた。
恥ずかしがる石川を見て、可愛いと思った。

早く目の前の裸の石川を抱きたいと思った。
310 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:28
手をずらして腰に回し、抱き上げる。
抱っこしたまま部屋へと向かった。

「動くなって 重いんだから」
「重くないもん」

キャッキャッと上で暴れる石川に文句を言いながら、半開きのドアを押し開ける。
311 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:28
ベットに、石川を下にして2人で倒れこむ。

枕の上に敷いていたピンクのタオルで頭を拭いてやる。
金髪の細い髪。
優しく、傷つけぬように丁寧に。


その行為に気にせず体を下へと移動する。
ショーツをゆっくり引き下げる。
腰を少し浮かせて曲げて上に伸びた足から脱がせる。
手の届かない場所に頭が移動してしまったし、自分の下半身が露になった
恥ずかしさから、そのタオルを自分の顔の上に被せて隠す。

するとタオルの上から指先で顔の輪郭、瞼や鼻をなぞられる。
指が唇の上にとまった瞬間、タオルを引き剥がされる。
312 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:29
目の前にあったのは、愛しいヒトの顔。


久しぶりに見た優しい笑顔だった。




石川の目元から涙がスッと垂れる。





気づいた吉澤はそれを指先でぬぐって、頬を撫でた。
313 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:33
「なんで泣くのー」


ゆっくり撫でる吉澤の手に自分の手を重ねる。

「なんでもない」

自然と笑みがこぼれた。吉澤からも。

鼻の頭にキスをし、再び見詰め合う。



唇から零れた声は 大好きなアルトの声



 アタシのかわいい梨華ちゃん



もう一度 涙が流れた

次に唇と唇が触れた時
吉澤の体が石川の体に沈んでいった

溶けていった
314 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:34
欲したはその褐色の体


求めたものはその白い体と心





気づいていなかった

欲したのは体だけではなかった事を




重なる手

絡まる指


2人の影が一つになった
315 名前:【未成年】 投稿日:2005/03/26(土) 04:34
 
316 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/03/26(土) 04:42
更新終了

か、書けない…書きづらい



本日石川さん吉澤さんにお会いしてきます
(*^▽^(^〜^0)
317 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 08:22
更新来た!!!ずっと待ってたよ!!
お疲れ様でした。
今回も面白かったです。
よっちゃんはさ、ちょっとひどくない???
318 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 17:19
更新お疲れ様です。
石川さんの心のまままっすぐひたむきに愛せる強さと
信じきれず心開けず気持ちを持て余す弱さを持つ吉澤さん
たとえるなら白と黒の対極のふたりが強く惹かれ合う運命的なもの
ここのふたりにはそのいしよしの持つ宿命性をとても感じます
319 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/26(土) 19:49
更新お疲れさまです。 一体どちらが本当の吉澤ひとみなんでしょう? これではあまりにも寂し過ぎます(;-_-+ よい結末を願いながら、次回更新待ってます。
320 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/04/11(月) 04:41
レスだけ…

>>317
ありがとうございます。
待ってただなんてずっと待ってただなんて

>>318
あぁ…ありがとうございます
読者様が書いた方が良いような気がします…
ステキなレスありがとうございます

>>319 通りすがりの者様
ありがとうございます
結末というより次回すら見えないこの先です(自分で
321 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/04/11(月) 04:50
いつも読んでいただきありがとうございます
毎度恒例言い訳タイムです

そもそもこれは石川さんの20歳の誕生日までに
仕上げる予定でした。予定でした。
ですが全く終わらず、じゃあよっちゃんの日まで、という事になりました。

そして明日はその日です。
終わりません。半分も行ってません。すみません。

明日はせっかくなんで更新を予定しています。
2人とも20歳を迎えてしまいますが
12日以降も続けようと思います。

私本人としても2人がまだタイトルのうちにこれを
終わらせたかったのですが、上手くいきませんでした。

ヘタレ作者を許してください。
では失礼します。
322 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:17
 
323 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:18
まだあたりは暗い四時頃、寒気を感じた吉澤は目が覚めた。
見ると自分の体が半分はみ出していて、布団の多くは石川が占領していた。

「なんだよぉ…」

ボソッと呟いて石川の顔を見る。

すっかり夢の世界にいる彼女。
年上とは思えない幼い無防備な顔がそこにはあった。
324 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:18
手を伸ばし、指先が額に触れる。
人差し指を、額から、鼻へとなぞる。
そして唇へと移動した時、石川が唇をわずかに開いた為、指先をほんの少し
咥えるようになった。
石川の柔らかい唇の感触が、指先の神経を伝って吉澤の心を刺激する。


何かいたずらしてやろうという気になり布団を一気に剥がす。
石川の上に覆いかぶさり、横になっていた体を正面に向ける。

生まれたままの姿で、しかしもう赤ん坊でもない少女でもないその身体。
その身体はいやらしく、美しくもあり、目のやり場に困るというよりは
ジッと見ていたくなるような魅力を持っていた。
325 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:19
胸のすぐ上に強く唇を当てる。

「…んっ…」

少しだけ肩をびくつかせたが、気づかずに眠ったまま。
そして唇の跡が残った。

じっと石川の顔を見つめていて一人で照れくさくなった吉澤は横に移動して
剥いだ布団を元に戻した。石川の体を自分の方に向けさせ、ピッタリと寄り添い
腰に手を回す。2人が包まれるように布団を直した。なおも眠ったままの石川。
頬を指先で突いたり、アゴを掴んだりして石川をオモチャにして一人で遊ぶ。
326 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:19
んんーと言いながら顔を吉澤の胸元にあて、自然と手も腰へと回る。
寝息が吉澤の肌に当たる。たまに唇も。
素肌同士が擦れ合うのがちょっぴり恥ずかしくて顔を埋めた。


石川の髪からシャンプーの良い香りがする。
自分の髪からも同じ香りがする、という事になんだか照れくさくなってしまった。
顔を覗き込むと、自分の腕の中で静かに寝息をたて眠り続けている。
その顔がなんだか幸せそうに見えた。微笑んでいるように見えた。
327 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:20
それは吉澤自身である事に気付かなかった

自分が今どんな顔で石川を見つめているのか

眠っている石川はその吉澤の顔を見ることが出来ない




唇に優しくキスをして、再び眠りについた。


328 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:20
 
329 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:22
「どうしよ…」

鏡の前に立って自分の胸元に指を当てる。
クッキリと跡が残っていた。
いつつけられたんだろう。
…その最中は夢中で、いつつけられたか分からない。

「アトはつけないでって言ってあるのにぃ…」
330 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:23
リビングに戻るといつもの定位置・ソファーでテレビを見ている彼女。


「ひとみちゃん見てよコレ」

隣に座って自分のその跡を見せる。何食わぬ顔でその跡を見る。
口を尖らせてコレコレとその部分をつつく。


手をついて、その跡の部分をペロッと舐める。
急な事なので石川の顔が一気に赤面する。
331 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:23
「ちょっと!」

「何?舐めて欲しいんじゃないのー?」

「え、ち、違うよもぅ!アトつけちゃダメって言ってるのに…」

慌てる石川に対して相手もせずに知らん顔。
はぁっとため息をついてソファーをたって洗面所へと戻る。
石川の後姿を窓ガラス越しに見て、ニッと笑った。
332 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:24
「ファンデーションでなんとかごまかせるかな」

それに新曲の衣装はここまで見えないで隠れるはず。
あとは普段の着替えで見られないように気をつければいいかと思った。

跡をつけられるのは困るが、内心嬉しかった。
吉澤がつけてくれたこの跡。
カタチとして残るから。消えてはしまうけど、今確実にこうして残っている。
むしろ誰かに見せたいくらい。これをつけたのは吉澤だと言いたいくらい。



愛してくれてる証拠だ



そう思うようにした。
そう思えば、少しは救われる気がするから。
333 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:24
 
334 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:25
最終の振り付け確認は順調に進んで、ビデオも撮り終わり無事に終了した。
振付師の夏に呼ばれ、よくやったと誉められた吉澤はやっと安堵と、
そして確かな自信を手に入れた。


それ以外にも仕事はたくさんある。
打ち合わせやPV撮影、雑誌のインタビュー等毎日スケジュールが詰まっている。




この頃の石川は毎日が幸せだった。


「跡」があるから。
何度もそこに手を当て、その跡を見ていた。
335 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:25
PV撮影当日。
衣装を身にまとって現れた吉澤に再び恋をした。
自分の理想の王子様が目の前にいる。



センターで男役の吉澤のスーツ姿はかなりさまになっていて他のメンバーが
ひっきりなしに抱きついている。そんな光景を見て石川が嫉妬しないはずが無い。
デレデレで頬を緩みっぱなしの吉澤に、腕を絡めたりベタベタしてるメンバー。
336 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:25
嫉妬心でいっぱいでしまいには悲しくなって、一人で休憩室に向かい、
自販機の前に立つ。

「何よ…全然カッコよくないもん…」

アイスレモンティーのボタンを押し、下からパックを取り出す。
パックの後ろからストローを引きちぎり、穴に差し込んで口に含む。
隅に移動して壁に向かってため息をついた。
ため息をつく毎に幸せが逃げていくと聞いたことがある。

「あたし、いーっぱい幸せ逃げてるよねぇ…」
337 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:26
「そうだねぇ」



振り返ると、白いスーツ姿の吉澤が立っていた。


「アタシもレモンティー飲もうかな」

そう言って自販機ではなく、そのまま隅へと進んでいく。
壁の隅に石川を追いやる形になり、石川の持ってるレモンティーのストローに
手を伸ばして、かがみこんで口に咥えた。パックを持ったまま、急に現れた事と、
目の前の吉澤にドキドキしながらその口元をじっと見る。

「どうしたの?」

声をかけると、飲みながら上目遣いで見てくる吉澤に更にドキッとする。
ストローから口を離して、手をパックを持っている石川の手に添えた。

「皆でいんのに一人だけフラーッてどっか行くからさぁ」
338 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:26
それを聞いて、自分の所に来てくれたことを知って嬉しくなる。
同時に先程見た光景も出てきてしまった。

「だってひとみちゃん…」

「アタシのカッコ似合わないですか?」

「そんな事ないよ!!!」

予想以上の即答に吉澤は苦笑する。皆といた頃から石川の視線には気付いていたし
その時以上に今の石川の顔がさっきから赤いままだ。

「妬かないでよー」

「別に妬いてないもん」
339 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:27
「え、妬いてくれないの?」

ワザと寂しそうな顔をしてみせる。石川はずっと恥ずかしそうな顔。

「寂しー」

そう言ってもっと石川を壁へと追いやる。
壁に背中をぴったりくっつけた状態。
パックから手を離し、後ろの壁に手をついた。
何処に目をやっていいかわからず、俯いたままの石川。

「梨華ちゃん」
340 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:27
顔を上げた途端唇を塞がれる。
唇は擦れ合い、数秒して離れた。

突然の事なのでその間石川は固まってしまった。
大勢いるときは、腕を絡ませるとキショイキショイといってイジるが
仕事場などで2人でいるときは手を繋ぐのも嫌がった。いつも人目を
気にしていた。その吉澤が突然キスをした。

「ひとみちゃん…いつもと違う…」

「衣装のせいかなーそんな気分ー」

じゃあ相手は誰でもいいの?と聞きたかったがそんな事は言えない。
突然のキスは驚いたが、嬉しいという気持ちでいっぱいだった。
341 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:27
石川の赤い衣装の胸元のリボンを、指をフック状にして下へ引っ張り
中を覗き込む。

「ひとみちゃん!?」

「消えちゃったねー」

「あ…うん」

吉澤が残した跡は日も経ち、無くなっていた。
毎日毎日その跡を見て消えていくのを惜しんだ。

すると吉澤は衣装の白いリボンを緩めた。わけが分からず、何も言えずに
吉澤を見る。吉澤は気にせずにリボンをほどいて、ボタンをはずし両手で
左右に胸元を開ける。はだけた様に石川の胸元が露になり、ブラも見えて
いる。呆然としている石川を一瞬見上げ、不敵に微笑んだ。
342 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:28
その笑った唇が、次の瞬間、石川の胸元へと運ばれた。



強く唇を当てられる。


「…あぁっ…」


全身が痺れ上がる。



唇の離れた胸元には、しっかりと「跡」が残っていた。
343 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:29
「またついちゃったねー」


両手を離して微笑んだ。
直ぐに胸元に手をあてて隠す。これまでになく顔が熱くなっているのがわかる。
熱いのは顔だけでない。

「嫌だった?」

石川の手からレモンティーを取って飲みながらたずねる。両手の開いた石川は
急いでボタンを閉めて、リボンをしめようとするが慌ててしまって上手く結べ
ない。

「いつもこんな事絶対しないのに…」

「今日は特別ー」

「人に見られたらどうするの」

「まーまー」

パックの中身を全部飲み干してゴミ箱に投げる。


「また消えたらつけてあげるよ」

344 名前:【未成年】 投稿日:2005/04/12(火) 17:29
 
345 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/04/12(火) 17:32
( ^▽^)<よっちゃん誕生日おめでとう! (^〜^0)

ということで吉澤さん20歳おめでとうございます


急いで書いたので雑になってしまいました。。
346 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 01:05
すげえドキドキしてしまいました。
よっちゃんの行動のひとつひとつにいちいち反応する石川さんのようにw
これからどうなっていくのか展開が読めず楽しみです。
347 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 14:22
甘い甘い☆
更新お疲れ様です。
348 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/13(水) 17:38
更新お疲れさまです。 一日遅いですがよっすぃーお誕生日おめでとうございます。 Σムムッ何やらかなり甘くなってるじゃあありませんか。 次回更新待ってます。
349 名前:知つぁん 投稿日:2005/04/14(木) 20:30
更新お疲れです!!
よっすぃ〜の誕生日祝うの忘れてた!!
でもよっすぃ〜娘。のリーダーおめでとうございます・・・
350 名前:ひすい 投稿日:2005/04/17(日) 11:42
キャー♪よっすぃ〜素敵(*´∀`*)
甘いの大好物ですヽ(´▽`)ノ特に、このほんのりエロ加減がw

よっすぃ〜リーダー・・・頑張ってね(つДT)長野で会おうね。。。
梨華ちゃんも、それまでは支えてあげて欲しいです。はい。
やぐ・・(号泣)
351 名前:パンナコッタ 投稿日:2005/04/30(土) 14:24
更新お疲れ様です。甘くて好きです。次の更新待ってます。
352 名前: 投稿日:2005/05/08(日) 12:24
梨華ちゃん卒業おめでとう!!(>v<O)

次回待ってます☆
353 名前:LOVE 投稿日:2005/05/09(月) 09:11
なんとなくタイトルに惹かれて一気に読ませていただきました。
なんかもぉ…切ないよ、梨華ちゃん。
ってか、梨華ちゃんと自分が重なるのでかなり引き込まれてます。

更新頑張ってください。マターリ待ってます。
354 名前:知つぁん 投稿日:2005/05/10(火) 19:59
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/blue/1105637519/352>>
上げてあったから更新されたかと思った・・・
355 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/06/23(木) 02:53
放棄ですか?
考えすぎはよくないですよ。頭がバクハツします。
当初考えていたストーリーで完結してみてはいかがですか?
放棄よりは納得いくと思いますよ。
356 名前:名無し飼育 投稿日:2005/08/04(木) 21:46
続きが気になります。作者さん頑張ってください。
357 名前:群青リアリティ. 投稿日:2005/08/05(金) 00:31
長い長い放置をお許し下さい。

気づけば3ヶ月も放置していました。
大学とバイトでPCにむかう時間が無く、
というのは言い訳になりますが、
やっと時間に余裕が出来ました。


出来たら来週中には更新したいと思っております。
待ってくれていた方が一人でもいたというのは励みになりました。
本当にすみません。そしてありがとうございます。


もう少しだけお待ち下さいm(_ _)m
358 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/05(金) 15:33
ずっと待っていました。
作者さんからの応答があるなんて…本当にうれしいです。
359 名前:知つぁん 投稿日:2005/08/06(土) 09:31
放置かと思っちゃいましたよw
作者さんの生存報告があってとてもうれしいですww
これからも頑張ってくださいw
360 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/08/20(土) 07:20
あれ?まだだった。
361 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 04:14
まだかな
362 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/09/07(水) 01:05
もう無理なんですか?
363 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/07(水) 08:23
>>362
そんなわけない! 信じるんだ。
364 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/21(水) 19:53
まだかな
365 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/13(日) 03:21
まってまーす
366 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 00:24
まだかな
367 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/17(木) 04:31
もったいないなぁ
368 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/18(金) 16:51
最終生存報告から三ヵ月が経ちました。
また生存報告だけでも良いので、よろしくお願いしますm(__)m
369 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:30
突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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