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- 1 名前:バービー 投稿日:2005/01/24(月) 17:53
- 久々に少しだけ復帰させて頂きたく、
短編をちょこちょこ書いていこうかと思っております。
基本的には吉絡みです。
最初の方は昔サイトに載せてた文を再掲載予定。
ストック溜まるまで..
亀更新になるかもですが、宜しくお願い致します。
- 2 名前:所詮、うわごと。 投稿日:2005/01/24(月) 17:56
-
「あーぁ…」
解放感があたしを呑み込んで、甘い溜め息をついた君が、そっとあたしを自分の傍に引き寄せる
「そんなにしちゃ、痛いよ」
「ん、分かってる」
「さっき、我慢するってゆったのに」
時々嫌になるくらい、
君は私の感情をかき混ぜるくせに、そうやっていつもあたしを丸め込もうとする
あたしがひとりでいる時、
暗闇の中、睫を涙で濡らして淋しさで死んでしまうんじゃないかっていうくらい
恐い夜を過ごしてること、知らないはずなのに
君は変わらない優しさと強さで、あたしを眠らせてくれるんだよね
- 3 名前:所詮、うわごと。 投稿日:2005/01/24(月) 17:59
-
あたしは、恋愛をしなくても生きていける自信はあるけれど、
恋愛をしながら優しく、正しく生きていける自信はない
君を好きになりながら、誰かに優しくなんて出来ないよ
だから、そんなあたしを君も分かって欲しいんだよ
もっと分かって、どうして分かんないの、
もうそんな言葉言い飽きたし、聞かせすぎたかも
硬い空気っていうのはどうしてこんなに痛いんだろう
欲しくて欲しくて仕方ないのに、手に入らない悔しさとか嫌で嫌で仕方ないのに
やらなきゃ行けない時の憂鬱感とか、何だかそういう感じの辛さに似ている
まるで裏切られたような
でも別に誰かに裏切られた訳でもなくて、単に自分に負けているだけなんだ
己との勝負に勝てることなんてあるのかな
それともただ逃げてるだけなのかな
本当はみんなちゃんと知っているはずなのに不必要な知識や自分の盲目さに紛れて
結局分からないままになってしまっている
頭では分かってるのに、どうして切ること、出来ないのかな
- 4 名前:所詮、うわごと。 投稿日:2005/01/24(月) 18:01
-
漏れる吐息すら奪う
唇を柔らかく噛んで
首筋にキスをして
歯茎を舐めて
胸に触れて、脱がせて、見つめて、溶けそうな舌で、
「ねぇってば」
「無理」
「なんで、」
「あたしがしたいの。…ごっちんと、したいの。あたしが…」
糸が切れたように、もうどうしようもなくなっていく
自分では到底押さえられない欲望と衝動が溢れ出す
あたしを好きだって言うなら、もう二度と誰にも笑いかけないで
その笑顔を誰にも
- 5 名前:所詮、うわごと。 投稿日:2005/01/24(月) 18:04
-
柔らかい場所を辿る指を追いながら、不確かなものに縋っている
この温もりすら永遠ではなくて、この感情にすら確信はなくて
君でないと、救われないことばかりなのに
君は、あたしであっても救われることはないんだろうし
いくらでも並べられる、蜂蜜みたいな言葉は所詮戯言だ
遊びなんでしょ
セックスの時、吐き気がしそうな位優しい君は切ないだけなのに
ただ単に
言い訳にしている、だけだよ
「愛してるよ」
「…、ん…」
ねぇ 淋しいよ
- 6 名前:バービー 投稿日:2005/01/24(月) 18:05
- 一発目は吉後でした。
もう少ししたらもう一本載せます。
- 7 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:11
-
「怒ってる?」
「…いや、怒ってはないけどさ」
「別にそんなことしなくても、言ってくれれば良かったのに」
風邪を引いたと嘘を吐いて、いかにも弱ってるような文面のメールを送ってやった。
君は相変わらず逃げも隠れもせずにあたしの元へ来る。
「ごめんね」
君は困ったように眉間に皺を寄せて笑う。指で鼻先を擽る。
あたしはそれに目を瞑る。
愛しいなぁ、もう。
- 8 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:12
-
「あ。何これ、珍しいもんあんじゃん」
「…あぁそれね。何か掃除したら出てきてさ。見てみようかなって思って」
「ふぅん…」
「よっすぃー、好きだよね?星」
「うん。めっちゃ好き」
静かに星図に見入る君の横顔を見ながら、あたしは溜息を吐く。
- 9 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:17
-
どちらからともなく、視線が絡まる。
一瞬どうしていいか分からなくて、あたしは口を横に引いて笑う。君は笑わなかった。
「…やっぱ怒ってんの…」
あたしはその肩に顔を埋める。
「怒ってないよ」
「…怒ってる」
頭を撫でて、好きだよと呟く君の声。
「もうちょっと、こうしててもいい?」
「嫌」
「…なん、」
「こんだけじゃやだ。我慢できない」
情けない顔に、あたしはどうしようもなく愛しくなった。泣きたくなるほどの衝動。
あたしは君を好きで、君はあたしを好きだって言う
ねぇそんな単純なことがこの上なく幸せなの。
おんなじとこに生まれて、そんで、あたしを見つけてくれてありがとう。
世界はなんてキレーなんだろね。そう思わない?
- 10 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:21
-
ひろいひろい星図のうえでふたり、頬と頬を合わせて眠る。
スピカが、リゲルが、髪の隙間に指のあいだにひそんでる。
見つけだして、その名を呼んで。
夕日が今を濡らしてゆく。
名前なんてつけられないような色彩に満たされてゆく部屋。
水槽の中みたいだ。だって何もかもがゆらゆらとしてる。色が染みてくる。濡れてゆく。近すぎる君の顔も。
口に出したことばは形をとって椅子の下に転がって、いつまでもいつまでもそこに残ってしまう気がした。
だから何も言わず、きっと嘘を吐いてしまうことが怖くて、ずっと何も言わずにいた。
「なんでさっきから何もしゃべんないの?」
君は笑う。その顔、好きだよ。ずっとずっと、そうだったよ。
100分の1秒の連続が今になって、そのうちの未来になっていく。
尋常でないふたり、ここでまどろんでる。奇跡のうたかただ。
- 11 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:24
-
「考えてたの。色々」
「色々って?」
「かんきょーのこととか」
「ホントかよ」
「ねぇ、星ってさ」
「今ね、遠くなっているらしいよ。ものすごいスピードで、離れてんだってさ」
「…何かあんま当てになんなさそうな話だなぁ」
- 12 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:27
-
本当なんだって、ねぇ信じてよ、とか繰り返すあたしに、
君ははいはいって言いながらそっとあたしの手を取ってそれを握る。
星がどんどん離れていく。
そんな宇宙の片隅で、君は、冷たい手だねこれ養命酒飲まなきゃね、とかささやいてる。
体ぜんぶで君が笑う、だからくすぐったくて。
莫迦らしい。
こういう馬鹿らしさなんです。日常は。だから愛せる。ここじゃあまるでちっぽけな微粒子なんだ。
蝶とか蟻よりも遥かに。
明日には繋がらない指先で、離れてくそのスピードはたぶん途方もない。
だから今は嘘とか、そういうの吐きたくない。触り合ってる、それだけでいい。
手に入ることのない宇宙の星には、縮めることなんてできない距離が横たわってる。
その遠さがやけに愛しい。
二人の距離もそんなふうだから。
- 13 名前:星屑の如く 投稿日:2005/01/24(月) 18:29
- 今日はさ。
淋しかったの、あたしは呟く。ただね、会いたくなったの。甘えたくなったの。
君は困ったように眉間に皺を寄せて笑う。指で鼻先を擽る。あたしはゆっくりと、抱きしめられる。
- 14 名前:バービー 投稿日:2005/01/24(月) 18:30
- とりあえず今日はこんなところで…
久々だから何だか勝手がわからないので緊張しております。
これから何卒よろしくです。
- 15 名前:名無読者 投稿日:2005/01/24(月) 19:04
- ドーモはじめまして。
バービーさんてあの?!
倉庫の作品は読ませていただいたことあるんですけど
リアルで読むの初めてなんで嬉しいです。
頑張ってください
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 21:49
- バービーさんキターーーー!
以前からバービーさんの作品は読んでて大好きでした。
楽しみにしてます。
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 22:28
- バービーさんだー!!うわっ、すげぇマジ嬉しいです。
これからも楽しみにしてます。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/24(月) 23:01
- バービーさんお久しぶりです。
ビックリしました。
復活うれしいな。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 02:23
- バービーさんじゃないですか!お久しぶりです。
ここでは名前は伏せておきますが、昔HPにちょくちょく顔出してた者です。
ちなみに好きな煙草はマルメンです(w
思いがけない復活、相当嬉しいです。
マターリと見守らせてもらいます。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 09:59
- よしごま不足の時代…復活すげぇうれしいです!
- 21 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:09
-
「あたしってさ、ちょっと年下の人と付き合ってて?それで主導権は向こうにあるみたいなんだ?」
白い首筋が、ソファの背に凭れてぐっと伸びた。
目は離すことが出来ずに、そぞろに追う。
「それってまんま、梨華ちゃんのことじゃん。つーか、梨華ちゃんじゃん。」
彼女の視線は無意識に、駆けずる速さであたしを捕らえた。
言葉に振り返れば、窓から差す下世話な程眩しい夕日が網膜を焼いた。
強すぎる不快な光にあたしは大仰な程に目を細める。
目尻の端にまで太陽光は浸透し、幾度か瞬きを繰り返してやり過ごす。
それに気付いたか否か、梨華ちゃんがブラインドを一息に降ろした。
光は薄い材質に一瞬で遮られ、姿を消した。
- 22 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:11
-
石川の実直な眼差しに気圧されて、言葉を濁した吉澤は曖昧に頷いて視線を落とす。
故意にそうした訳ではなかったが、今更彼女を直視できそうも無く、遮断されて床にへばり付いた光をねめつけるように睨む。
とても同じものとは思えない程、弱々しく儚いそれを靴の踵で踏みつけた。
底へ光がぎらりと刺す。
どうしようもなく感じた居た堪れなさに思わず顔を上げる。
至極自然な形で彼女と目線が交わった。
そっと目を伏せた彼女が、額をあたしに預けた。
あたしの指に耳朶がそっと触れ、薄い色をした産毛の甘さを直に感じる。
「好き。」
唇を合わせる瞬間に、梨華ちゃんが囁いた。
吐息とも思われるほどの小さな囁きであったが、あたしの鼓膜にはしかと響いた。
降りた彼女の瞼に僅か浮き出た血流がきれいで、圧倒された。
- 23 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:12
-
「あ、」
言いかけて、鼻を掻いて、下を向いて、赤らんで、飲み込んで、
あたしだって、などとは、どうしてまだ、とても言えたものではなく。
言葉にだってならずに。
むず痒い程の漠然さは、いつまでもじくじくとあたしを追い詰める。
今更に、本当に今更に、それを意識した。
否。意識させられた。
唇はささやかな所作で重なる。
眉間の皺はより一層深く刻まれた。
ふとずらした視線の先で、光が足先までを侵食していた。
消えていく錯覚に震えがした。
- 24 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:13
-
その短くも長い間に、一度でも梨華ちゃんの瞳が開かなくて良かったとあたしは思った。
思えば思うほどに切ない、情けない、やるせない、何がしたい、どれもしたい、一緒にいたい、
あたしは浅い呼吸に胸を絞られながら、息をひとしきり吸い込んだ。
彼女の髪に強く鼻先を埋める。
掻き抱かれた後頭部がどうにも熱く感ぜられ、石川はしなやかな吉澤の腕を一瞥して目を閉じた。
<BR>
先日一緒に入った店で購入した吉澤のスウェットの柔らかい素材からは馴れた香りがした。
充分すぎる程馴染んでいる。
石川は掌を背に回して、肩を幾度か撫でた。
強張っていた吉澤の背中が和らいでいることを、二人はゆっくりと感じた。
緩やかに瞼を開く。
「知ってるよ。」
思わず涙が滲んだ。
こめかみに押し当てた唇は泣くように震えた。
いつだって、それは伝わっていたので。
- 25 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:25
-
「ありがと」
「…ん?」
言わなくても分かってくれて。
梨華ちゃんといると、まるで子供に戻ったような心地がする。
表面的には甘えさせていても精神的に依存しているのは、それはやっぱりずっとあたしの方だ。
例えてみればそれは晴れた日の空気のように、懐かしい匂いがする。
あのブラインドのように、それは一息に下ろされる瞬間が来るのだろうか。
目を閉じて、頭を垂れて梨華ちゃんの首元に噛り付いた。
ダメ。これはあたしの。
絶対誰にもあげないんだから。
もう一度瞼を開くと、穏やかな笑顔が見えた。
やっぱりいつだって、悟られているのだろうか。不甲斐ないって、情けないって、甘えてるって思う?
それでもいいさ。
- 26 名前:そういう必然性 投稿日:2005/01/25(火) 22:27
-
偶然によって引き合わされた必然性がいつもそこにはあるから
あたしは、それでいいと、思うんだ。
- 27 名前:バービー 投稿日:2005/01/25(火) 22:27
- さて、もう一本。
- 28 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:31
-
別にあたしはこんな不機嫌を丸出しにした寝起きで最悪な顔をしてるやつにわざわざ会いに来たってわけでもない。
しかし、
「ああ…みきてぃか。上がれば。」
と、ふてぶてしく言い放った彼女があまりにも起きぬけで、しかも半目だったりしたもんだから、
あたしは評判の店の名がでかでかと明記されたビニール袋に収まった10個入りのフルーツゼリーを思い切りぶつけて帰った。
と、いうことも出来たわけなのだが、つい先日彼女との約束を、
待ち合わせ15分前にドタキャンしたばっかだったからそれはやめておいた。
- 29 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:35
-
「よっすぃー今起きたの。」
一時すぎに行くねって言ったよな、というニュアンスを含ませて言ったつもりだったが、
起きてんのか寝てんのか分かんないような今の彼女の脳味噌を思うとそれは100分の1も伝わらなかったように思う。
その証拠に彼女は、あー、とか、うん、とかいった曖昧な返事の語尾さえあやふやだ。
とりあえず部屋に行こうと思って、スニーカーを脱いだ瞬間後ろから抱きすくめられた。
よっすぃーの身長をまざまざと思い知る。
「今日さ、親とか、いないし。」
しかも寝ぼけてる癖に言い訳とかしてるのに腹が立ったけれど、あたしは良心的なのだ。まあ、それなりには。
なのでその良心にまかせて、腕を引き、手摺によっすぃーを押し付けてキスをした。
いつもはきついぐらいの眼差しが、眠たいのか感じてんのか、何かとろんとしてて、あたしはたまらずキスをした。
あぁー何てうちらは若いんだろう、とひんやりした階段であたしは感慨深く考えた。一瞬だけ考えてすぐにやめた。
あたしもたぶんたいがい飢えていたのだった。
彼女は特に抵抗らしい抵抗も見せずに、されるがままになっていたけれど、
柔らかい舌を引き摺り出して、軽く噛んで、吸って、舐めると流石にくぐもった声でうめいた。
少し開いた唇の隙間から熱い息が漏れて、頬を掠める。
気が付けば家に足を踏み入れて五分も経たない内に、あたしは早くも欲しくなってしまったのだった。
「部…屋で、」
唐突に言われると、飢餓感が一層増した。
あと十五段はある階段が長い。部屋までの距離が遠い。
- 30 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:37
-
何かほんとに彼女は起きたばっかりだったらしくて、その辺に散らばってる見覚えのある服だとか、
充電器にささったままの携帯とかが無造作に散乱してる部屋に、あたしは彼女を押し倒した。
「ん…」
ほとんど無意識にキスをすると背中に慣れた腕の重みを感じた。
相変わらず目はとろんとしていて、普段の凄みが無い。
「寝てんじゃねーよ、こいつー。」
半ば夢ごこちな瞳に欲情を押し殺した声で言うと、
「寝てないし。つーかみきてぃヤリにきたわけ?今日がっつきすぎじゃないの。」
と言われた。
こんなこと言われるぐらいなら、押し殺す必要なんて無かった、とあたしは思った。
「うっさい。」
しかし、口調の割に大して怒っていないよっすぃーに、あたしはやたらと手触りのいいTシャツを捲って、体を弄りまわす。
彼女とのぎこちないセックスはリスクこそないものだったが、いや、むしろないから、頭の芯がひりひりするほどのめり込めた。
何も考えたくないときは決まって彼女の柔らかい体が良かった。
共有するものがあったような気がする。
- 31 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:39
-
「ん…ふ…」
鼻から抜ける声に、彼女の声にいつも息が止まりそうになる。
冗談とか比喩とかそういうレベルじゃなしに、あたしはこの声に対して、ただただ純粋にそう思う。
「ねー、…ほんとはやっぱ、したかったんじゃん?」
その言葉にあたしがちょっとムッとした顔を見せると、薄く笑った彼女が長い指先で焦らすようにあたしの前髪に触れた。
その顔がとても大人びて見えて、あたしは耐えられなかった。
どこでそんな顔を覚えてきたのかは知らないが、そんな風に笑わないでよと言ったら、殊のほかそれが切羽詰まった風に聞こえる。
考えたらあたしと彼女はまだ会って三年と満たない。
今更ながらにそのブランクとか、知らなかった頃の彼女に恋しさを覚える。変なの。
断続的に喘ぐ、普段は低めの彼女の声は、セックスの時だけは結構高くて嫌いじゃない。
- 32 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:41
-
「次はあたしの番ね…」
あの後、あたしの記憶が正しければ、三回ぐらいした気がする。
「えーぇ、やだぁ。もう疲れたし…」
あたしがストレートに不平不満を一遍に顔に出すと、彼女は全く動じずにいそいそとその薄めの唇で首筋にむしゃぶりついた。
「ね、よかった?」
しばらくしてから、彼女はそう言った。
「は?」
「あたしはよかったんですけど。」
よっすぃーは何だか真面目な面持ちで、冗談を言っているようには、とてもじゃないが見えなかった。
「いきなり何だよぅ、意味わかんないよ。」
まっすぐあたしをみている。
あーまたそんなでっかい眸であたしのこと見て。そんな見ないでって。
- 33 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:43
-
「知んないよ…」
あたしは視線を反らした。
知ってる。分かってる。全部分かってしまった。
こんなの、知らなきゃよかった。知らない方がずっとよかった。
あたしは顔を直視することが出来ずに、テーブルに置いたまんま、室温で暖められて水がだらだら出ているゼリーを見つめた。
「みきてぃ、どしたの?」
よっすぃーが呼んだ。
あれ、よっすぃーそんなに甘い声だったっけ。
「みきてぃ。」
彼女の指が頬に触れた。
この指はこんなに愛しいものだったっけ。
「みきてぃてば、」
それにも答えられずに、ゼリーの底から流れる水滴を見つめ続けた。
意味なんかまるでない。
それでも、あたしは顔を上げることが出来なかった。目の淵がちりちりと熱い。
- 34 名前:それは恋か 投稿日:2005/01/25(火) 22:44
-
「あーー!!!よっすぃーさぁ!」
そのまま大声を上げて軋む体に鞭打ったあたしは、勢いと腹筋に任せて起き上がり、彼女を押し倒し、
鬱陶しい程綺麗にと生えた睫毛のちょっと上、反射的に降りた瞼にキスをした。
「もぉ、目開けないでよ、睫毛くすぐったい。」
妙にぎこちない風になってしまったが、あたしにはそれが心地よかった。
彼女も不機嫌ではなかったし、いっそ楽しそうに、
「みきてぃ何か今日体温高ぇ。」
と言った。
今、もしかしたら、あたしの顔はちょっと赤いんじゃないだろうか。耳まで、赤いんじゃないだろうか。
あー…尚更、目は開けてほしくない。
- 35 名前:バービー 投稿日:2005/01/25(火) 22:54
- いしよしにみきよしでした。
>>15
有難うございます。
倉庫の作品読んで下さったとは嬉しいやら恥ずかしいやら…
これからも宜しくお願いいたします。
>>16
有難うございます!!!以前からご存知だったとは光栄です。
作風は合いも変わらず成長しておりませんが、何卒宜しくです(w
>>17
嬉しいお言葉有難うございます。
暖かく歓迎して下さってホッとしてます。
いや、すっかり過去の人になっている今日この頃ですが…
全て妄想の上で成り立っていますので問題なし。
>>18
有難うございます!!!
亀更新にそのうちなっていくと思いますが、どうぞ見守って下さい
>>19
覚えてます!!!
こんなところで再会出来るとは何とも嬉しい悲鳴ですね。
私も自分が復活するとは予期せぬ出来事でした(w
娘状況何もしらないんですが…
これからも宜しくお願いしますー。
>>20
不足なんですか!?よしごまは永遠なり…なり…
あのまったり感は誰にも出せません。私の最愛コンビです(w
と言いつつ、今回はいしよしにみきよしだったり…
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 21:44
- なんだか初めて見たようなストーリーの空気感ですね。
楽しみに待っています。
- 37 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 23:11
- それぞれがらしくて魅力的ですワクワクしちゃう
バービーさんの世界を満喫しております
これからもマターリ頑張って下さい
- 38 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 10:53
-
永遠のモラトリアムなんてさ、この世には存在しないんだよ。
そう言いながら、君はいっそ楽しそうに笑う。
いつもあたしに向ける笑顔は、あんなに苦しそうなのに。
- 39 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 10:54
-
「なーんか、真里ちゃん機嫌悪いね?」
「っせーなぁ…別に普通だよ」
益々膨れた頬に音を立ててキスをする。
「…何」
「セックスの後の恋人同士の甘ぁい時間は普通じゃないですか」
「誰が恋人だよ…」
試すようにいつもと同じトーンで。
面と向かって否定されると、こんなにもショックは大きいのか、
と馬鹿の一つ覚えのように気違いじみたセックスを繰り返して半日を消化してしまった。
ベッドの上に倒れ込む。
ああ…と、諦めとも未練ともつかない声が洩れる。
掌で隠した表情は、きっといつも通り引きつった笑顔だ。
さっき濡らした髪が頭を押し付けることで、シーツを湿らせる。
- 40 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 10:57
-
「よっすぃー?…後藤が待ってるんじゃないの」
「…帰りたくない」
ちらりと目を遣ったベッドサイドのゴミ箱の中には数えるのも嫌になるくらいのティッシュペーパーとかが溢れている。
そんな生々しい光景に目を瞑り、もう一度、帰りたくない、そう言った。
愚図る子供を咎める親のような、呆れた瞳の色。
「よっすぃー」
「…嘘だよ、本気なワケないじゃないすか。恋人でもあるまいし」
笑いながら起き上がる。開いた唇が何かを言いたそうにしながら、何も言わない。
自分で自分の傷を抉る。胸の奥が、チクチクするんだ。息苦しいんだ。
せめて、もっと違う形で出会っていれば、この我儘も聞き入れて貰えたのだろうか。或いは。
「出会いたくなかったなぁ」
恋い焦がれる苦しさ等知らなくて良かった。
茶化した言葉で、本音を吐く。
いくら抱いても、手に入らない。
こんな事なら、いっそのこと出会わなければ良かった。
その身体の上を通り過ぎた、数え切れない男や女達に嫉妬する位なら。
- 41 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 10:59
-
「…何言ってんの…馬鹿な事言ってないで、ほら」
何で分かってくれないんだよ。
何で本気にしてくれないんだよ。
そんなもんなの。もっとあたしが欲しいなら形振りかまわず求めてみればいいじゃん。
後藤なんかにとられたくない、あたしだけ見てって。
何、結局アンタ弱いだけなんじゃないの。
憤りと、安堵。
そう思ってはいても関係を終わりにはしたくない。それだけの為に。
ベッドを降りたその背中を追って、不意を突いて腕の中に引き寄せた。
何処まで行っても平行線を辿る関係、決して交わらずに、一定の距離を保って。
「好きだよ」
長い、沈黙。
「…分かってる」
気持ちが、伝わったかどうかなんて問題じゃないのだと知った。
掻き抱いたその身体、するりと擦り抜けて、シャツを羽織る。
- 42 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 10:59
-
それ以上の接触を暗に拒否されて、溜めていた息を吐き出した。
床に散らばった服を集め、袖を通していく。
リアリティなんて求めちゃいけない。ここには愛も絶望すらも無い。
いつも届かないこの声が虚しいんだ。
君の姿が消えたはずのこころが、また痛みを取り戻す。
いびつな気持ちがまたかたちを持ってしまう。
- 43 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 11:00
-
それ以上の接触を暗に拒否されて、溜めていた息を吐き出した。
床に散らばった服を集め、袖を通していく。
リアリティなんて求めちゃいけない。ここには愛も絶望すらも無い。
いつも届かないこの声が虚しいんだ。
君の姿が消えたはずのこころが、また痛みを取り戻す。
いびつな気持ちがまたかたちを持ってしまう。
ああ、
ぎゅってしたい。
この腕の中に閉じ込めて全部自分のものに出来たなら。
- 44 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 11:01
-
じっと彼女を見つめる。
「ねぇ」
肩の上に顔を寄せて、至近距離の瞳を見る。
「…ごっちんと別れよっかな」
薄い布越しにただ体温が伝わる。濡れた髪のせいで、彼女の服が湿って、熱が伝わる。
鼓動まで伝わりそうだ。
「そんなことしたら怒るから。分かってるでしょ?」
「…じゃぁ、ちゃんとあたしのこと好きって言ってよ」
「…」
「ねぇ」
頬が熱くなる。触れ合った部分が溶けていくみたいに、体温がせり上がる。
「…たまにはあたしのお願い聞いてよ…」
自分の欲望を振り切るように、言葉を搾り出した。
- 45 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 11:02
-
「…ごめん、何か変だね。…また来るわ」
「…ん」
それでお仕舞い。
だけれどこの遣り取りだけが、重い枷になる。
身動きの取れないほど枷に雁字搦めにされた身体は、それでも愛しくて。
声を立てて、嗤った。
- 46 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 11:03
-
憂鬱な朝方の光につまづきながら、ひとつのため息を落として泣いて、泣いて、乞うて、
愛してる君を知りたい。
のどが嗄れるくらいに潰れるくらいに何度も何度も愛してるって言わせたい。
抱きしめるのと同じ強さで癒えない傷を付けてしまいたい。
あたしだけの部屋に閉じ込めたい。
毎日、あたしの好きな服を着せて好きな音楽を聴かせて好きな本を読ませてあたしの帰りを待たせて。
ぜんぶ分かり合えたら
こんなに胸を焦がすこともないのに、どうせ明日も、なんにも変わらないんだ。
- 47 名前:理由 投稿日:2005/01/27(木) 11:05
-
「ただいま」
「おかえりー、待ってたよ」
玄関でごっちんが待っていた。
ドアを開けて、あたしはしばらく突っ立っていた。夢から醒めたみたいに。
不思議そうな顔で彼女は首を傾げて、じっと見つめる。
「…よっすぃー」
「ん、」
「………おかえり」
その四文字に、どれほど深い意味があるのかは二人の間で容易なことだった。
いつもそれを言う彼女の目は、少し寂しい。
けれど、それは本当に、心から安堵している目でもある。
首元に纏わりつく彼女の甘い髪の匂いを感じながら、そっと背中に手を回す。
今頃あの人は、どうしているだろうか。
あたしのいない隣を少しでも寂しいと思っているなら、それだけでいいのに
- 48 名前:バービー 投稿日:2005/01/27(木) 11:12
- 吉矢後でした。
>>43のところ二重ミスです。申し訳ありません。
>>36
飼育では珍しいかもしれないですね。
サイトとかだとこういう作風の作品多いんですが(w
なるべくオリジナリティ出したいんですが、
私が書くと全部同じような感じに…
>>37
有難うございます。
ずぶっと嵌まり込んでしまって下さい…フフ(怖
いやいや、これからも宜しくお願いしますー。
- 49 名前:17 投稿日:2005/01/27(木) 23:48
- 上手く説明できないのですが>46の一行目がすごく胸に響きました。
バービーさんの文体というか空気感がやっぱりすごく好きです。
- 50 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/28(金) 02:57
- ああ、よしごまの神バービー様が帰ってきてる
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/28(金) 09:33
- バービーさん、お帰りなさい!!
以前からひっそり読まして貰ってました。
よしごまも好きですが、バービーさんのやぐよしが大好きでした!!
- 52 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:13
-
「よっすぃーは最近なんか他の友達と遊んじゃってさー、あんま会えないんだよねー」
「この前よっすぃーと行ったイタリアンの店、マジおいしくってさぁ〜。」
「早くよっすぃーと仕事したいなー。すっごい楽しみ。」
やんないの、とあたしは聞いた。恐ろしく冷めた声を出したと、自分で思った。
- 53 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:15
- <FONT size="-1">
あたしだって暇じゃないんですけど、とさっきより抑え目のトーンで言い募る。
何ガツガツしてんの?変なの。と携帯を弄る手もそのままに、
一息に答えたごっちんは相変わらず背中を向けたままだ。
一度も振り向かない。鳴り止まない携帯の電子音が今頃になってひどく耳障りに聞こえだした。
こめかみを指で潰す。
何、何様だと思ってんの。
性格悪いのも程々にしろ、このやろー。メールなんかしやがって。
うるさいから、せめてキー操作音くらい消せ。
と言えないあたしは、代わりに指先でテーブルを二度小突いた。
そのまま指を淵に掛けておいたら、今度は指先の色が無くなって、白くなっていた。
きっと気が付かない内に力が入っていたのだろう。
あたしは、やたらとでかいごっちんのベッドに背中から倒れこむ。
指先は色を取り戻したかは定かでは無かったが、緩く拳を握り締めた。
- 54 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:17
-
切り揃えた短い爪が掌を掠った。
暫く目を瞑ってそうしていると、ごっちんが上からあたしの顔を覗き込んで、
じょーだん。やる?
と悪びれた風もなしに言った。
一瞬、何が冗談だったのかも分からなかったが、携帯のフリップをばちんと畳む音が聞こえたので、やらせてくれるんだなということだけはしっかりと分かった。
肘を立てて上半身を起こすと、向かい合って座るように促される。
みきてぃ、こっち向いて。ばんざーい。という、ごっちんの舌ったらずな掛け声にせがまれて両手を上げる。
今日の彼女の機嫌はとても良いらしく、柄にも無くへらへらと笑みを浮かべながらあたしのカットソーを捲り上げている。
あたしは黙って両腕を上げた。もう何も言いたくはなかったし、考えたくも無かった。
脱がす速度はあまりにゆっくりで、あたしは段々と腕が痺れてきてきつくなってきた。
持ち上げた両腕の筋肉だけに意識を集中させると、神経が研ぎ澄まされた。あたしはいつだって真剣なのだ。
- 55 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:21
-
やっと脱がされた服だったが、今度は、
かわいいじゃんとか、これどこのブランドだとか何とか、彼女が褒め称えて弄りまわしている。
うんざりしたあたしは、これ以上焦らされてはたまんないと、自分より長身のごっちんをやっとベッドに押し倒した。
あっけなくバランスを崩して倒れた彼女の手は未だカットソーを掴んだままだった。
そのままあたしの胸の下で「んぐ」だの「むぅ」だのうめいている。
感じた吐息は既に熱かった。
なんつーか、欲してる。ように感じる。
絡めとった舌は濡れてて、熱かった。
ほら、離せ離せ、あたしの服は。欲しいならあげるから。
てゆーか、それ近所の店のセールで1900円のヤツだって。
そう言いながら、ごっちんの首にむしゃぶりついたのは無意識だった。
横目でちらとあたしの服を盗み見ると、
ごっちんの手は先程の誉め具合がウソのように、しっかりと離されていた。
現金なやつめ。
- 56 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:23
-
そのままもつれ合うようにして、彼女のシャツを剥ぐ。
やけに純情ぶった色のそれは何度見ても腹立たしいので、緩くきつく噛んでやる。
喘ぎ声が尚更大きくなった。
「っ…」
ごっちんの喘ぎ声の半分くらいは演技だろうと思うけど、
鼻に掛かった上擦った声にどきっとしてしまうことには違いない。
もう片方も爪を立てて抓ってやると、今度は声も出せないくらい本気で感じていた。
「ごっちん、機嫌よくないですか?」
「んーー…?っ…」
薄い脇腹に唇を這わすと、ごっちんはあたしの髪を掴んで撫で回した。
根元から掴むので少し突っ張った。
「ほら機嫌、いいんじゃん。」
「…っ、に、いきなり…」
「明日よっすぃーと会うんだ?」
「関係ないじゃ…ん。」
結構彼女にとってはきつい状況だと言うのに、薄目を開けてあたしを睨んだ。
強気な態度だったけれど、あたしは構わず話を続ける。
- 57 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:24
-
「じゃあ、よっすぃーのこと好き?」
「はぁっ…?」
「だからー、よっすぃーのこと好きかって聞いてんの」
「好き好き、ちょー好き。…何でっ?」
- 58 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:26
-
覗き込んで覗った表情は苦しそうなだけで何も分からない。
しかし、さも当然という口振りのごっちんに、じゃああんた何で美貴としてんだよと言おうとしたけれど、
それはひどく根本的な問題だったし、堂々巡りは目に見えていたので止した。
「ふーん…」
一連の会話はひどくぎこちなかった。きっと普段から会話がないためだ。
それは、交わすあたしたちの会話が非生産的なせいだからだろうか。
それともあたしが彼女の好きなものについての教養を増やす気がないからだろうか。
どちらも違うように思えた。
もっと根底に問題がある気がした。
あたしは指を沈めながら、被害者面しちゃってさ、と努めて優しく言ってやった。
「…え?」
「何でもないです」
「何それ…っ…訳、わかんない…」
そっかそっか、あたしはいつだって君が分かんないよ。
そう思いながら指を動かすのに勤しむあたしをよそに、首に二本の腕を巻きつけたごっちんはもうあんあんやっていた。
掛けられた首が少し痛んだが、知らないふりをしてあげた。
思えば最初からあたしたちは何一つとして在り得てはいけなかった。
それは具体的に言えば、あたしたちが付き合ってる訳でもないのにセックスを始めた三ヶ月前のことや、
ごっちんがよっすぃーと付き合っているのにも関わらずあたしとするのを止めない今のことだ。
- 59 名前:正当な恋なんて 投稿日:2005/02/03(木) 21:27
-
もしごっちんが、あたしと在り得ないセックスをしていることについて訳が分かることがあるならば、関係は今後変わっていくのだろうか。
薄ぼんやりと浮かんだビジョンに思わず悲しくなったが、それでもあたしは指を止めなかった。
ひとまず、このセックスを終わらせてから考えよう、それからでも遅くない。
そう考えて、いつも同じタイミングでそれを思うことを思い出した。
三ヶ月間、律儀なほど同じタイミングでそれを思っていたことを思い出した。やっと、思い出していた。
- 60 名前:バービー 投稿日:2005/02/03(木) 21:34
- 藤後でした。この三角関係いいなぁ…おいしいなぁ…(w
もう一本上げます。
- 61 名前:夢のあとに 投稿日:2005/02/03(木) 22:05
-
キスする時に震える睫毛とか
身体に染み込んだその甘い香りとか
そういうものは包めないから
冷たい手の平で 弦が切れるまで弾いて。
「…本当はさ。もっと、一緒にいたかった」
「……うん」
「もっと、いっぱい思い出作りたかった」
「ん…」
「もっと、もっと好きになりたかったんだよ?」
「…うん…わかるよ、わかる。」
- 62 名前:夢のあとに 投稿日:2005/02/03(木) 22:06
-
こんなこと、言いたいんじゃなかった。
別れにくい女のベスト5ってこんな女なのかなーなんて、
まぁある種修羅場とも言える状況のくせに、当人であるくせに、
頭の端っこでぼんやりとそんなことまで考えていた。
机の木目を見つめて、頑として動かないその視線の読みは取れない。
結局美貴は、いつまで経ってもよっちゃんの考えてることとか思ってることとか求めてることとか、
なんにも分かってあげられなかったのかもしれない。
だけど、ただただ燃えて燃え尽きているだけの美貴達の恋は、
じわじわとゆっくり、だけど確実に、何かに侵食されていたのだった。
青虫が紫陽花の葉を齧るみたく、少しずつ周りからなくなってって、核心に触れて、芯がなくなる。
なんていうか、どろりとした社会という底なし沼にはまったっていうか。
誰も傷つけたくない。そんな幸せならいらない。みんなが幸せになれる方法を。
そんなのは全部きれいごとだ。しょうもなさすぎる。大体リアリティがない。
誰かの哀しみの上に誰かの幸せがあって、人間はいつもそれを求めてる、だから汚れてんだ。
いつか、よっちゃんが言ってたことを思い出す。
- 63 名前:夢のあとに 投稿日:2005/02/03(木) 22:07
-
「お願いだからさ、とりあえず頭上げてよ」
「……」
「そんな態度とられたらさ、こっちだって対応に困るじゃん?」
なに言ってんの。何で美貴キレてんの。
その頬を濡らす涙を、掬ってあげようとしても、しても、だめだ。うまくいかない。
ねぇ、切なさなら全部美貴が持っていってあげる。
いつだって濁りのない声で 消えない足跡をくれたその優しい抱擁を
いつかまた別の誰かの為に、ちゃんと残しておけるように。
- 64 名前:夢のあとに 投稿日:2005/02/03(木) 22:08
-
「…ごめん、よっちゃん……」
心に溶け出した涙がふたりを呼び合い 惹かれるままに抱き合った。
何もかもを捨てていくように愛し合えたなら みんな みんな 幸せになれたのかもね。
中途半端に欲張りだから、人間は馬鹿になっちゃうんじゃないかな。
引き合う力は強すぎて、
ふたり別々に生まれてきた意味を失してしまった。
落していくキスの哀しい響きをその耳に残して、離れなければならない意思が求める衝動を呼んでる。
- 65 名前:夢のあとに 投稿日:2005/02/03(木) 22:10
-
欲しいのは、君よりも高い位置。
見下ろすことの出来る視界簡単に抱きしめることの出来る身長
体温に遮られて ぼやけて行く世界はもういらないと思った。
守られたい訳じゃ無い 泣かせて欲しい訳じゃ無いんだ。
切れかかった蛍光燈が 鬱陶しく瞬きして 眉の辺りが痛んでくる。
気持ち悪いくらいに白い肌を照らす人工色
壊したくて、ぎゅっと目を閉じた。
明日起きれば、きっとこのリアル夢は、きっと覚めるから。
- 66 名前:バービー 投稿日:2005/02/03(木) 22:18
- …という訳で(0^〜^0)帝でした。
>>49
有難うございます、と素直に受け取ってみる…(w
いえいえ。とんでもございません。もうほんとに、語彙力のない自分を
憎みつつ、必死です。
17さんにレスして頂けるとはものすごい嬉しいです!小躍り状態。
>>50
神なんて滅相もないです!!ただ過去作があるってだけで。
今の作品も昔のものを加筆修正しているものですし(w
早くストック溜まれば中篇程度の新作を掲載しようと思ってるのですが
>>51
やぐよし私も好きです!!書くのは結構難儀ですが(w
独特の空気と身長差がたまらないっス。
成長のない筆者ですが、これからも宜しくお願いいたします
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 23:40
- どっちの話もなんだか深いですね…
裏読みしまくって読みました。
- 68 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:03
-
ぼんやりと爪先を見ていた。
形の良い爪には、何だかよくわからないがクロコダイル模様のネイルが張り付いている。
ふいに形の良い親指が甘えた仕草であたしの頬を引っ掻いた。
ああ、舐めろということか。
すんなりと口に入れた。
あたしには恋人がいる。
その恋人は、とっても可愛くて、あたしはその人のことが好きだ。
けれど、彼女と会えない日があまりに多すぎて、あたしは淋しくてたまらなかった。
電話越しのキスとかさ、マジで、もういいから。
歌の歌詞みたいな甘い言葉とかそんなんじゃなくて、もっと、そうじゃなくて。
冷たい受話器を握り締めて、声を押し殺して泣いてること、ほんとは受話器がいつも泣いていること、
相変わらず鈍感な恋人はそれさえ、今も気付かないままでいるし、あたしはそれを分かろうとしていなかったし。
いつの間にか、あたしの中の恋人の存在がずっと薄くなっていることに気づきたくはなかった。
今目の前にいる友人とは、ただの友人でいたかった。
- 69 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:04
-
そんなことを考えながら、
口の中でふやけた指の先端をしつこく舐め上げていると、くすぐったいと抗議の声が上がったので、
あたしはいい気になって、今度は音を出してねぶった。
「もういいよ。もう、いい。」
彼女はあたしの顔を壊れ物でも触るかのように大事に、両手で抱えてそっと引き剥がした。
そしてあたしの唇と彼女の指の間を唾液の糸が繋いでいるのを見て、ものすごく嬉しそうな顔をして、
背を掻き抱いて、額にキスをした。
瞼にキスをした。
鼻の頭にキスをした。
唇にキスをした。
彼女とは、友達だった。
「…ね、何かあったんでしょ?」
「なにが」
「あややと」
「…別になんもないし。つーかよっすぃーの方が悩みありそうな顔してる」
一瞬の沈黙。
長い睫毛が伏せられていて、あたしがそれに触れようとした瞬間に彼女は顔を上げた
- 70 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:05
-
「あたしにはあるからじゃない?」
話してとせがむあたしをごまかし笑いでも、彼女は拒んだ。
どうしてと聞くと友達を失くしそうな気がする、と相変わらずにやけた顔で言い放つ。
彼女はいつも哀しそうに笑った。寂しそうに笑った。
その横顔には孤独の影が見えるような気さえ、していた。
宿る孤独が、心地いいものなのか、それとも辛くて仕方ないものなのか、未だにあたしは分からない。
あたし達の関係がうまくいく秘訣は、決して恋愛関係に陥らないこと。
お互いにそれは分かりすぎるほどに分かっている。
ごく自然な流れで、あたしのうなじを舌でまさぐりながら、彼女は夢見ごこちで、
いてくれて嬉しいよ、とか、ずっとここにいればいいのに、とか、あたしのこと好きって言ってみて、とかそういうことを止め処なく囁いていた。
それらの言葉はどれもたまらなく重たくて、それらの重みはどれもたまらなく心地よかったのだけど、
あたしはそれら全部に律儀に受け答えをしながら、与えられる気持ちのいいことに没頭していった。押し潰されてしまいそうだった。
肩とか鎖骨とか、そのあたりにぴりりとした痛みを感じて、あ、まただな、とやんわり思いながら、そのまま流した。
指が重ねられたあたしの指もまたとても重たかった。
けれどあたしは、彼女の下で声をあげながら、その感触を愛しく思ったせいで言わなくていいことを言うことにした。
- 71 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:07
-
「今日電話あった。」
彼女はすぐに起き上がって、傍にあるあたしの携帯を力いっぱいに毟り取って、着信履歴を凝視していた。
あたしもとりあえず起き上がってそれを見ていた。ついでに他の着信履歴も確かめているようだった。
よっすぃーあたしの携帯を見るなんて、初めてのことだ。
「誰。」
少しだけ手が震えているみたいだった。こんなに動揺するとは思わなかったので、驚いてしまった。
でも後には引けなかったし、もう引くつもりもなかった。
「亜弥ちゃん。明後日会えるんだって。」
意外にすらすらと言葉が出た。
もしかしたら、ちょっと嬉しそうな顔をしてしまったかもしれないなぁなんて思いながら目を反らした。
まあ所詮お互いに繋ぎの関係だったわけだし?ねぇ、そう思ってるんでしょう。
「相手してくれて、どーもありがとね」
そう言いながら、あたしは彼女の熱いてのひらで頬を愛撫された時に
どうしようもない虚脱感でいっぱいになってしまうことを思い出していた。
あたしは、恋人の手より、ずっと、ずっとこっちの手の方が欲しいくせに。
そんなことどうして言えよう。
その温度があたしたちを現実へと引き戻して、それが度重なってあたしたちのごっこ遊びは終わっていくのだろうと
あたしは勝手に推測していたのだが、実際のところ、あたしたちのごっこ遊びに終止符を打ったのは、
そういった曖昧なものではなくて、何てことはない携帯電話、それだけだったのだ。
- 72 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:08
-
思いがけずこの非現実的な生活に終わりを告げた侵入者を緩和させようと、
わざとらしいぐらいに、まるでペットのような仕草で、愛玩してもらえそうな仕草で、裸足の足に擦り寄った。
形の良い爪には、何だかよくわからないがクロコダイル模様のネイルが張り付いている。
今度は舐めたりはしなかった。ごっこ遊びはもう終わったのだ。
そしてあたしのことを力のない目で見て、ちょっと苦しそうな顔をして口を開いた。
「そっちには、あたしの気持ちは、一生かかっても分かんなさそうだよね。」
そう言っている割に、彼女のその言葉は貪欲で、諦めの表情は微塵もなかった。
「うん、あたしもそう思うよ。」
そのことを知っていたので、ただこう言って頷いたが、
一生かかってもあたしにその気持ちが分からないようにまた、
一生かかっても彼女にあたしの気持ちは分からないのだ。
伝わらないのだ。平行線なのだ。
- 73 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:10
-
「以心伝心って言葉、知ってる?」
「知ってるよ、それぐらい。…まあ、正直意味はあんまわかんないけど」
「…よくあることなんだけど」
人っていうのは、無意識のうちに自分の感情を抑制する機能が絶対に備わっていると思う。
その機能は本当の感情を隠したいとか、偽りたいとか思うときに瞬時に働く。
それも、自分では気づかないぐらい、恐ろしいぐらい冷静に、流暢に、つらつらと。
「亜弥ちゃんに電話かけたらよく、話し中ってことがあってさ」
「…うん」
「がっかりして電話切ったら向こうもそうで、後でおんなじ時にかけてたんだね、って笑いあうことがよくあんだよね」
「…」
「ごめん、面白くなかった?」
彼女は瞬きなんかしてないんじゃないかっていう位、ずっと、ずっとあたしを見ていた。
「…いや、面白いよ。…以心伝心」
「そう。以心伝心」
- 74 名前:夜明け前には 投稿日:2005/02/09(水) 00:11
-
きれいな目尻に軽く唇を寄せると、しょっぱいとかそういうことを感じるひまもなく、涙が口に入ってきた。
あたしは彼女の柔らかな涙をしばらくの間ずっと舐め続けていた。
彼女は一向に泣き止む気配がなくて、舌は塩辛くて、すこし痺れた。
最後に舐め上げたとき、とても情けない顔をして、あたしを見ていた。
そんな顔をさせるためにあたしと彼女はこんな関係になったわけじゃなかったんだと思う。
でもあたしは亜弥ちゃんのほうが好きだから。そんなことはこれが最後だとしたって言わないでおくけど。そんなことはずっと前から知っていると思うけど。
友達のままならきっとうまくいってた。
セックスなんてしなかったらずっとうまくいってた。
この二つのことにもっと早く気づかなければいけなかった。
あたしは泣きそうな顔をしているかもしれないけれどほんとうはあまりかなしくない、はずだ、だってそうでなくちゃ、そうでなければ、
- 75 名前:バービー 投稿日:2005/02/09(水) 00:13
- という訳で吉藤。藤吉?
>>67
有難うございます。
作者自身はかなり浅い人間ですが(w色々裏づけはあったり、なかったり…
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/20(日) 00:32
- ため息が出ました
すごく切ないです
次も楽しみにしてまーす!
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/28(月) 12:14
- バ、バービーさんだ……復活ありがとうございます!!
HPやってらした頃も今の文章もとても素敵で好きで溜まりません本当あなたが大好きです!
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 23:20
- バービーさんの作品は、いろいろと読んでました。
っで、初めてレスします!
作品に引き込まれる、文章力は凄過ぎです。
次の更新も楽しみにしています!!!
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/24(木) 00:08
- バービーさんのよしごまってたまらんっ!!
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/09(木) 05:33
- そろそろ読みたいな
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/07(日) 04:32
- 生存報告だけでもお願いしたい
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