ノベレットサクセス
- 1 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/04(金) 23:12
- 他愛も無い短編集
- 2 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:13
-
窓からは春を思わせるような心地よい風が吹いた
テレビに熱中していた筈の自分を忘れ、しばらくその風を感じていた
音も映像も見る気がしなくてただ、頬に当たる生暖かいとも言える風を浴びた
暦の上では立春
洗濯物を干していた彼女がそう言った直後、美貴はああというように相づちを打った
- 3 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:13
-
「冬も終ったんだ」
「いや?暦の上でだから、まーまだ半々ってトコじゃないの?」
「…どっち?ハッキリできない?」
「あたしに、聞かないでよ」
年下なんだから
彼女は決まって、その言葉を美貴に零すのだ
美貴よりも年下なんだから、美貴が知っていなきゃおかしいとでも言うような瞳だ
それに美貴は負けたかのようにカゴの中から洗濯物を一枚取り出して亜弥に渡した
亜弥は思い直したようにニコリと笑って、爽やかに濡れたシャツを美貴の手から受け取った
- 4 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:14
-
「春になったらー、何する?」
「何って。今まで通りじゃん?仕事して、仕事して、仕事」
「それはそうだけどぉ。ね?」
亜弥の意味ありがちな視線をさっそうと避けた美貴は苦笑いして、亜弥に肩をばしんと叩かれる
痛いよ、と文句を言うが本当は体して痛みはない
コンサートもあるし、もしかしたら新しい子だって入ってくるかもしれないし
美貴にとって娘。の中に在る出来事は今や普通ではなかった
面倒な事をしたりするし、やりたくもない事を融通聞かず通されてしまう
これは今さらに言えた事ではないが、なんとなく嫌気が差す事が多くなっているのだ
- 5 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:15
-
その思いを遮るかのように、亜弥は横から口を出してくる
「いいじゃん。みきたんは自分の思った通りにやれば」
「…まー、そういう性格なのは自覚してますけど」
「うん。だからさ、いいんだよ」
「…は?」
「みきたんはみきたん。あたしはあたし。みんなはみんな」
なんて自己中心的な考え方
美貴は迷う事なくそう亜弥に突っ込んだが、亜弥はただにひひと笑っているだけだった
思いのまま動けばいいだなんて、全く二人にはぴったりと当てはまる答えだ
- 6 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:15
-
美貴の言葉と亜弥の言葉が交差する
けれど答えは他愛もない、本気でもないただの冗句が混じっている
そんな空間でも許せている
美貴はなんとなく気持ちが悪い鬱憤を、この空間で癒しているのだ
「デートしようね、いーっぱい」
「仕事が無かったらね」
「ちゅーもしようね」
「気が乗ってたらね」
「みきたん」
空だけが二人を見下ろしていた
濡れた洗濯物と立ち隠る春を知らせる風
- 7 名前:春とふたりと洗濯物と 投稿日:2005/02/04(金) 23:16
-
薄い亜弥の影が美貴の額に重なって、一瞬で離れた
勝ち誇ったような亜弥の笑顔は犬のような表情をしていて、美貴は額を撫でつつ一緒に笑う事にした
「ずっと好きよ」
「…んー」
洗濯物は何時の間にか乾いていて、時は夕方となっていた
そんな事に気付かない程時間は経っていた
一体、何時間何分ベランダに足を出して二人でお喋りを繰り返していたのだろう
春風の悪戯だと美貴は言い訳をした
けれど亜弥は、生乾きの洗濯物を見てぷんすかと怒り出すのだった
おしまい。
- 8 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/04(金) 23:17
- 最初はあやみきでした
御意見など頂ければ幸いです
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 23:48
- キレイな文章ですね。こういう感じ好きです。これからも期待させていただきます。
- 10 名前:読み屋 投稿日:2005/02/05(土) 00:28
- 透明感のある風景、こんな言葉がふと思い浮かべさせられます
次も期待してます
- 11 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:39
-
「あのさぁ、美貴は亜弥ちゃんの便利屋じゃないんだよ?」
そんな解り切った事を面と向かって言われたら、亜弥だって落ち込む
ただ申し訳ない気持ちと開き直りがざわざわと胸をくすぐるのだ
時刻は深夜2時だった
どうしても逢いたくて、顔が見たくて無意識に電話をかけていた
そしたら、美貴の答えはあっさりとしていて亜弥を不安にさせた
毎度の事だったが、こんなにも美貴を想う自分は変だと気付く
たった一度の人生を美貴の為にすべて使い切っても良い、と豪語出来る程の愛情を持ち合わせているし
なによりも亜弥には美貴だけしかいないこと
- 12 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:39
-
女の子に恋するって、変だよね?
とっくに知っている事を自問自答していてもラチは明かなかった
ボヤけてくる視界と共に、脳内に眠気という不可抗力が襲ってくる
期待はもうしなかった
目が覚めたらきっと美貴がいて、おはようと言って頬を撫でてくれる事を夢見るのも馬鹿らしい
だからもう考えるのはやめて、亜弥はするりと眠りについてしまった
- 13 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:40
- ドルンバルンと不可解な爆音を出す大型バイクにもたれかかり、美貴は携帯をジーンズのポケットに入れた
空には大量の怪しい雲が浮かび上がっていてまるで美貴を見下しているかのようだ
そんな現象にはもう慣れている美貴にはどうってことなく、ただ電話を切ってしまったことを少しばかり後悔した
どうしてだろう
優しくすればするほど、自分は腹黒くなる気がするんだ
美貴は誰にも打ち明ける事なくその思いを一人でに秘めている
信頼している亜弥にでさえも冷たくして結局は自分がいちばん傷付いているということも知らずにだ
- 14 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:40
-
「悪い事なんかしてないのに」
夜空が語りかけている
美貴を見下ろして、たくさんの星達と一緒になって美貴を叱っているような黒光り
首が痛くなっても美貴は空を見上げる事を止めなかった
瞼を閉じる事も動く事もなく、じっと星達からの叱りを受けていた
- 15 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:41
-
「…美貴が悪いのか」
大型バイクは再び爆音と共にコンビニの駐輪場から飛び出して行った
ポイ捨てしてしまった吸いかけの煙草の事が少し心配だったけれど、今はそんな時間を気にしている暇は無かった
まだ口内に残るラッキーストライクの渋い味が、美貴の鼓動と重なるのが分かった
- 16 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:42
- *
美貴と亜弥は手を繋いで、お互いに笑い合っていた
暖かい天候で、今立っている土の上からにょきにょきと花々が咲いてくるような程の温もりだ
突然美貴は亜弥の手を振り解いて、小さく笑い頭をぽんぽんと撫でた
亜弥はその意味がよくわからなくて、切ない程に憂う美貴の手をもう一度握ろうと手を伸ばした
けれどもう美貴はいなかった
ただ最後まで笑顔を絶やさなかった事しか、亜弥の夢の中では記憶されていなかった
*
- 17 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:42
-
「おはよう」
目を開けると同時に囁かれた一言は、ほんのすこし照れくさそうだった
美貴はベッドの横に座って穏やかな目つきで亜弥の頬を撫でた
きっとこれは夢の続きなんだ
美貴は消えたんじゃない
また戻ってきてくれたんだ
囈言のような事を亜弥が呟くと、美貴は怪訝そうな顔をして苦笑した
やがて亜弥を抱き起こし、ぎゅっと肩を優しく抱くのだった
- 18 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:43
-
「…な、んでいるの……?」
「しょうがないから便利屋になってあげようと思ったんだよ」
「いつから…?」
「昨日、電話貰って1時間ぐらい経った頃、かな」
まんざら嫌そうでもない笑顔の美貴と、寝起きでぽかんとした亜弥
ばーか、と捨て台詞を残し美貴は台所へと歩む
その背中から亜弥はしばらく目が離せなかった
期待を裏切らない恋人だ
一生に一度こんな経験をするなんて珍しすぎると亜弥は心を弾ませる
- 19 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:43
-
「たんっ、みきたん!」
「っだ、な、に」
夜にあったお互いの出来事を二人とも知らない
だからこそこんな偶然や必然が許されるのだけれど、美貴は亜弥に背後から抱きつかれバランスを崩す
焦げそうになる目玉焼きだけが、美貴と亜弥の姿を見ていた
「ほんとーに、便利屋さんになってくれる?」
「あぁ、なってあげるよ。けどその分満足させてよ」
「わぁーかってるもん、あたしが保証する」
「…亜弥ちゃんの保証じゃなぁ」
「なによぉ!」
美貴はひっそりと、夜空に輝いていた星達にありがとうと述べた
亜弥が美貴の頬を抓ると夢から覚めたかのように美貴は、痛い痛いと暴れ出す
- 20 名前:すてきな便利屋さん 投稿日:2005/02/05(土) 13:43
-
二人分の目玉焼きはとっくに焦げてしまい、残りの卵は一つもなかった
買い物に行こうと亜弥が言ったものの、美貴は面倒だと断り傍にあった食パンを取り出しトースターに放り込む
パンはもちろん、二枚
おしまい。
- 21 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/05(土) 13:46
- 同じ物ですいません
>名無飼育さん
期待して頂くと大変嬉しいのですが、答えられるかどうか心配です。
ありがとうございます。
>読み屋さん
久しぶりの飼育で結構緊張している身心地です。
文章力は無いですが頑張って更新して行きたいと思います。
- 22 名前:9の人 投稿日:2005/02/05(土) 18:06
- 今回のお話も素敵でしたよ。なんか読んでいて羨ましくなっちゃう二人です。
- 23 名前:名無し 投稿日:2005/02/05(土) 21:54
- あやみき好きです!
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/12(土) 19:40
- あやみきいいですね。
- 25 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:52
-
朝目が覚めた途端頬に冷たい風を浴びた
少々機嫌を損ねた美貴は起き上がりひとつ欠伸をしてからのそりとベッドから這い出る
いつもの朝
けれどいつも以上に身体がだるいのは確かだった
何回したんだろう
脳内で軽い計算を済ませると、水を胃に流し込みふふっと苦笑した
下腹部ににぶい痛みが残っている朝はとても心地が良い事に変わりは無かった
- 26 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:52
-
ベランダの引き戸が開いていた
うんせ、ほいせ、と拍子抜けしたかけ声が聞こえてくる
パジャマのままだったけれど上にブランケットを羽織りベランダをひょいと覗き込む
何故かその人の背中が広く大きく見えてすこし笑えた
「精が出ますねよっちゃんさん」
「おぅ、頑張ってますよみきちゃんさん」
鼻頭をごしごしと擦り振り向いた吉澤はにこりと笑っておはようと言った
植木鉢を何個か揃え、土に肥料を入れて吉澤が一息着くと美貴はベランダに備えてあるイスに腰掛けた
よく晴れた良い日和だった
雲がひとつもない天気はこの所御無沙汰だったせいか太陽が珍しく微笑んでいる
- 27 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:53
-
「何埋めてんの?」
「やさい。埋めてるんじゃなくて植えてるんだよ」
「そら分かってるよ。何埋めてるのって聞いてんの」
「だからぁ。…まいっか。えとね」
堂々とした美貴の出で立ちと態度はもう慣れた
いちいち逆鱗に触れるのは好ましく無いと考えた吉澤は指摘することも面倒で、脇に置いてある小さな袋を美貴に見せた
緑色の野菜がパッケージとなっている絵でなんとなくは理解できたが、ふいに疑問に思った
- 28 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:53
-
「なんで野菜なんか」
「自給自足生活始めました。なんつって」
「へぇー」
「そこ突っ込むとこだよみきちゃんさん」
「ああそっか」
スコップを持ち出してにへへと笑った吉澤はもうひとつのスコップを美貴の手に握らせた
首を傾げて吉澤を見ると、確かにその目にはうきうきしたような輝きが増している
言いたい事はなんとなくわかったがはっきり言って乗り気にはなれなかった
「やだよ」
「そんなー、手伝ってよ。種植えてお終いだから、ね?」
「……や、美貴気分悪いモン。重い植木鉢なんか美貴持てなーい」
「………」
「ひくなよ馬鹿」
思わず振り上げたスコップを土の中に差し、袋の封を開けて種をぱらぱらとまいた
ギョッとするやいなや、思わず笑みを漏らした横顔を見逃しはしなかった
- 29 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:54
-
昨日の声も表情もなにもかも
いつまでも残されていて
溶けないで残っている
カラダに染みてずしんと感じる
ぼぅっとする吉澤の頬を、思いきり抓る
鈍い痺れに襲われた吉澤は我にかえった
- 30 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:54
-
「いひゃ、いはい、みひはんはん」
「ねぇこっちはいつ生えてくるの?」
「生えてくるってその言い方も何か…えと、い、1ヶ月ぐらいじゃないかな」
「……ふぅん」
美貴が指差した鉢植えは、少しひび割れていて色褪せている
それとなく触れて持ち上げるとズシリと重みがあって、すぐにごとりと置き戻してしまった
物珍しそうにする美貴を見て、吉澤は不器用そうに唇を動かそうともごもごする
気付くことに恐れるのは容易い
だからなおさら むずかしかった
- 31 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:55
-
「それ、さ。花の種植えたんだ」
「へぇ」
「なんの花なのかわかんないんだけど、たぶん綺麗だと思うんだ」
「うん」
「みきちゃんさんにあげるよ」
「は?」
「花が咲いたら、みきちゃんさんにあげるんだ」
もうすこしで咲く
だから待っていて、その時まで
- 32 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:55
-
「…美貴?」
ほのかに暑くかすかに寒気が残る夜中の二時四十九分
俯せに枕に顔を押し付けて呼吸をする
酸素が足りない、と身体が喋り出すように美貴は溜め息をついた
吉澤は美貴の露になった背中を優しく撫でて名前を呼んだ
美貴 そう、呼んだ
- 33 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:55
-
「あー…嫌だった?」
「ちがう」
「ごめんね、下手だったっしょ」
「うん」
「……いてーな。今のけっこーいてぇな」
「あはは」
冷えきった吉澤の体温をゆっくりとあたためながら、首筋に顔を埋めた
香水と布団の匂いが混ざり本物がどちらか解らなくなるような錯覚にも陥った
とろりとろりと夢の中に微睡む前に、吉澤は美貴に呼び掛けた
壊れやすいものを扱うように、そっと
「おやすみ」
- 34 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:56
-
+ + +
「…ははっ、馬鹿じゃん」
「なんで」
「もらっても美貴、枯らしちゃうよ」
「枯れないって」
「何でよ?」
「美貴ちゃんさんみたいに、綺麗な花だから枯れないよ」
「はずかすぃー、やっべぇ。死にそー」
身体中が水を欲していた
乾いた乾燥地帯は潤いを求めて顔を真っ赤に火照らせた
もちろん視点も合わないその目はおぼつかずに吉澤に捕らえられて、逃げられはしなかった
- 35 名前:はれたあさ、にぶいいたみ 投稿日:2005/02/12(土) 21:56
-
「さ、御飯作るから戻ろ」
「馬鹿、最低」
「え」
「美貴はよっちゃんさんみたいに綺麗じゃないだからそういうことゆーな」
捨て台詞は吐き出したような響きだった
それでも、うれしかった
おしまい。
- 36 名前:三田苦労酢 投稿日:2005/02/12(土) 21:59
- 即興で作った物なので曝したくなかったのですがやってしまいました
お目汚しになります
すいません
>9の人さん
二度の御訪問ありがとうございます。
体した話ではありませんが読んでいただけると思ったら幸いです。
>名無さん
私もです。ってかイチ推しです。
>名無し読者さん
これから多分あやみきだらけになると思います。
みきよしなども書きたいです。
- 37 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/12(土) 22:01
- HN間違えたorz
駄文さらしたくないのでかくしてきます
- 38 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/12(土) 22:01
- 次回はあやみきです(多分
- 39 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:11
-
体温計の音が亜弥の脳を覚醒させた
ピピピと何回かのアラームと共にぱちりと目をあけると、氷枕をわきに挟み口に冷却シートの箱をくわえてやってくる美貴の顔がボヤけて見えた
くわえていた箱をぺっと吐き出すと顎をがくがくと調えて、氷枕を普通の枕と取り替えた
部屋の温度は30度
亜弥の身体は十分火照っているのにも関わらず、何故か室温は下がらない
「ホラ、体温計かして」
「う」
鼻声が美貴の声に答える
こんな声で美貴と会話はしたくなかったが、恥じている場合ではないと諦めた
脇に差していた体温計をそのまま美貴に渡しひんやりとした氷枕に頭を委ね目を閉じる
- 40 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:12
-
体温計を見るや否や怪訝そうな顔をしてふぅと息をつく
そんなに高かった?
目を閉じながら亜弥が訊ねると美貴は少しばかりうなり体温計のスイッチをオフにした
窓ががたがたと音を立てる
雪が降り出しそうな程の寒さなのに、もうすぐ春
そう思っても亜弥の上がり続ける体温は止められず、ただ美貴の垂れた指を数本握るだけだった
「三十八度五分」
「……う゛ー」
「美貴がバイト休みじゃなかったら、亜弥ちゃん死んでたかもね」
嫌味っぽく、冗談混じりに美貴は亜弥の手を握り返した
それでも今の亜弥にはそれが冗談には聞こえず少しだけむっとするのだった
でも確かに今日、美貴の仕事が入っていたならこうやって亜弥を看病してくれることもなかった
- 41 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:12
-
そう考えるとその位の冗談は軽い物だった
「なんか食べたい?」
「む゛り、吐きそう」
「…あぁそ。じゃあ熱下がるまで何にも受け付けないか」
「…ん」
ぽりぽりと頭をかきながらかけていたメガネを外して小さく欠伸をした
料理などまともにしない美貴だったが、ここぞという時にはなんとかやってのける
ましてその相手が恋人であればと亜弥も密かに思っていたのだ
けれど今の状態では身体が食べ物を拒否している
せっかくだが、今はゆっくり胃を休めたい
- 42 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:13
-
「つまんね」
「…え?」
「だって亜弥ちゃん寝込んでるし美貴つまんない」
「つまんないって…じゃあお話しようよ」
「いいよ。てか早く寝な」
「眠れないのっ」
眠気は見事にふっとんでしまった
クラクラするような状態ではあるが決して眠いわけではない
少し身体を起こして、ベッド下で座り込んでいる美貴の肩に顎を乗せる
時計の秒針がカチカチと時を刻む
雑音は全くない
音と言えば、お互いの呼吸だけが聞こえる
- 43 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:13
-
「あついよ」
「…うぇ?」
「亜弥ちゃん、あついよ」
前髪をあげてゴムで止めているため亜弥の額は全開になっている
そっと手を伸ばして亜弥の額につけると、そこはかなり高温になっていた
ふーっと息を吹き掛けても、その熱は冷める事はない
亜弥が不貞腐れ唇を尖らすと美貴はその唇に
噛み付いた
「…っいったいっ!!バカ、いたいっ」
案の定痛かったらしく、ばしんと美貴の頬を叩いた
強くしたわけではなかったが部屋には確かに響く音だった
- 44 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:14
-
「なんてことすんのっ、プルップルの唇に!」
「…や、うまそーだったからつい」
「食べ物じゃないのぉ」
しつこく自分の唇をさわり、痛い痛いと恨めし気に美貴を睨みながら亜弥は言う
美貴はと言えばのほほんとした表情で何故か嬉しそうに亜弥を見つめるだけ
風邪の症状でさえも驚いた美貴の行動にはほとほと呆れてくる
「ねぇねぇ、食べたい」
「…は?」
「もっと、食べたいな」
ベッドに寝転がった亜弥に、優しくそう言った
真剣な眼差しでも甘い瞳
亜弥が大好きな美貴亜弥が大嫌いなその瞳
始まりの合図と共に、熱が上がる事を心配する余地もなかった
- 45 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:14
-
ガリッ
「…っっくぁ、いっっ……」
仕返しは少し強すぎたのかも知れない
亜弥はわずかな後悔を抱いたものの内心ざまあみろと言ったような悪戯な微笑みだ
血は出ていなかった
けれど出血間近とカウントダウンが出来そうな程、亜弥に噛まれた美貴の唇は赤くなっていた
- 46 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:15
-
「な、にする…いったいっ」
「みきたんが最初にやったんだもん。仕返しだもん」
「だからって…ヤベ、まじで痛い」
「つーん。知らない」
あれ、あたし
「…ねぇ、なんか亜弥ちゃん元気じゃない?」
「……あ」
「熱下がってんじゃないの」
体温計が示す温度は一体、何度になっているんだろう
美貴が素早く体温計を持ち直し亜弥の脇に差そうとパジャマのボタンに手をかけた
- 47 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:15
-
「バッ、自分でやる!」
「ちっ」
ささやかな抵抗だろうか
- 48 名前:体温上昇に比例するものは何か 投稿日:2005/02/13(日) 22:16
-
「…はーん、三十七度…」
「わ、少し下がってる」
美貴は心外と言った表情で体温計をまじまじと見つめた
亜弥は驚きながら嬉しそうに笑い、美貴の肩に手を回した
「さっき、ごめんね。痛かった?」
「痛かったって何度も言ったでしょ。マジでやらないでよ」
「だってジャマだったから」
まだ赤い美貴の唇に、亜弥はそっと触れた
さっきの亜弥の体温と同じくらい、とても熱かった
「こんどは噛まないから」
「キスしよう」
熱は下がった
けれどまた違う熱が出そうで、怖かった
おしまい。
- 49 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/13(日) 22:17
- 予告通りあやみきでした
何がしたかったんだかわけわからんorz
- 50 名前:名無し 投稿日:2005/02/16(水) 21:05
- やっぱりあやみき最高っス!
次回更新も待ってます〜
- 51 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:03
-
自分は一体何がしたかったんだ
そんな自己嫌悪に包まれてあたしはただ折れた鍵を拾う
なんでこんなに、もろく作られているんだろう
鍵ってものはもっとぴかぴかに光ってて、落としたぐらいじゃ折れないもので
溜め息を吐いても色はくすんだりしない物じゃなかったっけ
「…あー」
気付けばもう日付けは変わっていた
チクショー
おめでとうって、言い忘れたじゃんか
- 52 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:03
-
彼女が帰ってこなくなりもう二週間も経った
自分的には随分待ったつもりなのに
たぶん彼女は知らない
ずっとひとりで、待ち続けている事を
彼女のアパートは何度か訪ねた
けれどもうそこは何も無い空間となっていて
大家さんが言ってた
つい最近、出て行ったよって
もう残る物は何もなくなったってことだ
笑うしか無い
友達に慰めてもらうぐらいならせめて忘れようと努力した
努力して努力して努力してたくさん笑った
でも笑えなかった
チクショー
さっさとあやまっときゃよかった
- 53 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:04
-
艶かしい感触と異なる笑顔
あたしは許されない罰と刑を受ける事になった
触れた体温は彼女とは全く似ても似つかない
快感を感じる事は一切無かった
なのに人恋しくて
さみしくて
さわっちゃいけないものに、手を出して
気持ち悪くて、自分が死ぬ程嫌いになった
いっそこのまま死んでしまおうかと思ったけど
やっぱり好きで仕方なかったから
もうすこし待とうかなぁって考えた
それでも彼女が帰ってこなかったら?
もうそういう事は考えないって決めたのに
いつまでもあたしは小心者だ
チクショー
あいたい あいたい
- 54 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:04
-
もう我慢が出来なくて
とうとうあたしは泣いたんだ
だれにも聞こえないように
子供のように涙を流した
泣いたって何が戻るわけじゃない
だけど人間ってそういう理屈なんかどうだってよくて
ただ泣いて泣いて、自分を取り戻す
けどあたしは取り戻せない
全てを失ったも同然だ
彼女があたしの全てだったように、あたしは終ってしまう
自分で終らせたような物なのにたまらなく哀しくて
後ろに忍び寄る影にも気付かない程、目は暗んでいた
「反省した?」
とうとう天に召される時が来たようだった
- 55 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:05
-
幻聴まで聞こえるんだから
無駄な事だったけど
あたしは不意に振り返って、しなやかな足に顔をぶつけた
「ヤダ、顔びちょびちょ。かっこわるー」
「…だ…」
「誰?って聞かないでよ。馬鹿みたいじゃん、あたしら」
その高い声に終止癒されている間に
涙は彼女に移っていた
頬を濡らして静かに、泣いていた
あたしのせいだったから
君のせいだったから
- 56 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:05
-
「い、しかわ」
「なによ、よしざわ」
「ごめ、ごめんごめんなさい」
「…意外と、反省してるんだ」
「ごめん石…、梨華ちゃん、ごめんなさいごめん」
狂ったように頭を下げ続けた
キチガイだって思われてもよかった
それよりも彼女の怒ったような困ったような顔が見たくて
夢じゃなければもう欲しいものはなかった
はやく彼女があたしに、優しい笑顔を向けてくれることだけを祈った
- 57 名前:運命か引力か 投稿日:2005/02/19(土) 09:06
-
彼女はあたしを抱きしめてこう言った
「傍にいてって、言って」
「そばにいて」
「愛してるって、言って」
「あいしてる」
嘘をつく気にはなれなかった
何故か正直にぽとぽとと言葉が、生まれてくるから
チクショー
なんでこんなに、すきなんだ
おしまい。
- 58 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/19(土) 09:07
- 一応いしよし。
初めて書きました。
>名無しさん
レスありがとうございます。
あやみきは今の所増える予定なので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/20(日) 01:34
- いしよしいいですね!
どーしても離れられない、切っても切れない、ってのがいしよしだと思ってるもので。
次作も期待してます。
- 60 名前:いつかその時までに 投稿日:2005/02/22(火) 22:23
-
ぎゅうっと小指と小指を結んだその瞬間、微かな痛みを感じた
けれどそれは喜びであり
傷みというものではなかった
亜弥がさも嬉しそうに笑うと、美貴も笑う
その柔らかい笑顔になにもかも吸い込まれそうで、安心する
さらさらの髪が風に揺れると美貴の茶色い髪もゆらゆらと揺れた
「みきたん、二人乗りしたーい」
「転んで怪我でもしたら自慢の顔が台なしだよ」
「…単にやりたくないんでしょ、どーせ」
「ばれたか」
にししとばかりに意地悪く美貴は目配せすると、亜弥は美貴の引いている自転車のサドルをぺしっと叩いた
- 61 名前:いつかその時までに 投稿日:2005/02/22(火) 22:24
-
「さっきの約束って、何だったの?」
「んー?なーんでもないよ」
「まあ、だいたいわかってるけど」
「なんだ、知ってるじゃん」
「でも直接は聞いて無いよ」
最もだと言うように、亜弥は大袈裟に頷く
夕日が綺麗なオレンジ色をしているせいなのか美貴の頬はそれによく似た色に変わってゆく
亜弥はそれを見逃さなかった
小馬鹿にしたようにとことこと美貴の先を歩み、振り向きざまにべっと舌を出した
「あたしの自己満足だけどさ」
「それでも、いいよ」
「みきたんが、あたし以外の人に惚れちゃわないようにね」
「ぶっ」
誤魔化した方がいいのだろうと思ったけれどやっぱり嘘はつけなかった
亜弥が言葉を言い残す前に、美貴は前につんのめりながら自転車を止めうなだれる
なんでそういうこと、かんがえたりするんだろうな
- 62 名前:いつかその時までに 投稿日:2005/02/22(火) 22:24
-
「あー、笑ってる」
「だって、余りにも下らないっつーかくさいっつーか」
「下らないって…大事な事だよ」
「…ま、そりゃそうだけど」
うまく言えたら苦労はしないのに
そう思った美貴の事など考えず、亜弥は美貴に身を委ねるように抱きすくめられる
美貴の首にまかれたマフラーのせいで少しちくちくしたけれど
そんなことはすこしも、気に止めなかった
- 63 名前:いつかその時までに 投稿日:2005/02/22(火) 22:25
-
「で、守ってくれるの?」
「亜弥ちゃんが美貴にこうしてくる限りはね」
「…なんかはぐらかしてる」
「ああもう、うるさいな。亜弥ちゃんに惚れてます、美貴は」
ヤケになったようにも聞こえた美貴の言葉は透き通って、空に浮かんでしまいそうだった
けれど、浮かんでしまう前に、亜弥がしっかりとつかみ取った
誰にも渡さない
そう告げるかのように、亜弥は背伸びをして美貴の唇を欲した
「破ったら、泣いてやる」
「…泣かれたら、こまる」
「みきたん」
「ん」
「好き」
- 64 名前:いつかその時までに 投稿日:2005/02/22(火) 22:25
-
どうかこの気持ちが消える前に
少しでも長く、一緒にいられるように
約束にはこんな意味が詰められていたなんて、美貴にはよく解らなかったけれど
きちんと伝わってればいいなと、亜弥は思った
おしまい。
- 65 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/22(火) 22:27
- 定番。
>名無飼育さん
何分処女カプだったので不安だったのですが読んで頂けただけでとても嬉しいです。
温かいお言葉身に染みます。
いつかまた書いてみたいと思います。
- 66 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/22(火) 22:29
- 設定か何か案がありましたらお気軽にカキコして下さると嬉しいです
シチュを決めていただけると幸いです
- 67 名前:読み屋 投稿日:2005/02/23(水) 00:18
- 良いです
何度も読み返しても飽きません
いつも新鮮な感覚で非常に良いです
あえてリクするとしたセンチメンタルな感じがいいです
では次の作品も頑張ってください
- 68 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:21
- 距離が縮まるたびにいつも思う
私はここにいていいのか、と
マグカップに手を伸ばした矢先しつこい程の視線を感じたのでとっさに手をひっこめた
何?といつものように尋ねたかったがそうはいかない雰囲気を出している
このままでいるのも気が済まないという美貴の思考により、読んでいた新聞をバサッとたたみはじめる
「あー、トイレ行ってくる」
「わざわざ言わなくてもいいよ、みきたん」
「厳密に言うとそうさせたのは亜弥ちゃんだけど」
「え?」
気付かないフリをしているだけでも、亜弥の心の中は砂漠のようにザラザラになってしまう
その事を知るはずもない美貴はただ亜弥の淀んだ目から目を離さずにいた
不機嫌ならばもっと自分に甘えてくる筈だしこのようなパターンはまれに見ない
ある意味、興味をそそった
- 69 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:21
-
「やけに、大人しいんだね」
「…みきたんはくっつきたいの?」
「別に。違うけど」
違うけど、何だ
居づらくなる空気が堪らなく嫌だった
この状態を作り上げたのは他の誰でも無い美貴ではあったが次の段階に進む事は難関だ
無論、亜弥も察して黙りこくっている
誰がこの圧された無を破るのか
そればかり考えていた
- 70 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:22
-
「アタシさ、わかんなくなった」
「…うーん?」
「みきたんに重いって思われるの、嫌だし。軽いって思われるのも、ヤ」
「あぁ」
「だからこういう空気、大嫌い」
自分に仕向けられた痛みの言葉ではないのに
やけに美貴の心臓はキリキリと傷む
どう切り出すかは自分次第であるのに何も言葉が見つからない
ただ俯くばかりの亜弥を、続けて自分もうなだれるしか、術が無かったような気がした
- 71 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:22
-
「でも」
「うん」
「でも、みきたんが好き。カナリ、自己中だと思う。だけど、嘘は言わない約束だから」
「そうだね」
「みきたんがあたしをどう思うかなんて、つい最近考えたばっかなんだ。
あたし、先ばっか走っちゃうから。みきたん、疲れてるかなーって」
わざとよそ見をして、美貴と目を合わせる事を拒んだ
決して弱味を見せてはいけないと、きちんと頭に叩き込んでいるからこその行動
美貴はしっかりと見切っていた
だからこそ、後を追うように投げかけた言葉が、あった
「らしくないね。亜弥ちゃんにしては」
「みきたんに言われたら、あたしどうなるのよ」
「どうもならないよ。亜弥ちゃんは。美貴だって、ぎりぎりまで考えてるんだから」
言い訳と思われても、美貴にとってはどうでもいい事だった
亜弥の返事が怖くて、おそれていたという事実でもあった
それよりも亜弥の本心が、今の美貴には一番必要な物
- 72 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:23
-
「あたしの事も、考えてよ」
弱々しく言った亜弥の声が何時にも増して寂し気に聞こえた
気のせいにすることは出来ない
なぜならその涙を見逃してはいけなかったから
- 73 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:23
-
「突っ走ってる亜弥ちゃんでもいいよ。重かったり軽かったりしてもいいから」
「うそ、絶対嫌いになるよ」
「ならない。ぜったい、ならない」
保証は出来ない
でも、証明は出来る
好きになればなるほど変わって行く
私もあなたも、すべてのものが変化してゆく
だから私は怖いの
あなたにさようならと言われてしまうような気がするから
- 74 名前:理由 投稿日:2005/02/23(水) 22:23
-
パリン、と音を立てて亜弥の一部分が壊れた
美貴の胸元で涙を流す亜弥は幼く、か弱い
けれど人一倍、気持ちは強い
もう涙を流させないように
亜弥のために、何をすれば良いのか
美貴はそれだけを考える事にした
おしまい。
- 75 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/02/23(水) 22:25
- 更新具合が好調です
センチにという事で書いてみましたが、どうだったでしょうか
>読み屋さん
そんな勿体無いお言葉をかけてもらえるなんて感謝しまくりです。
たびたび読んで頂いているようなのでとても嬉しいです。
センチになったんですかね?
気に要りませんでしたら、申し訳ないです。
- 76 名前:読み屋 投稿日:2005/02/24(木) 00:25
- センチな感じにはならなかったんですが、
なかなかの物ですね
それではまた次回作お待ちしております
- 77 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:43
- ひどく自分が愚かに思える
毎日の事
なのに、離れてくれないから
悩んだ
- 78 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:43
-
独占欲というものはしつこく味の濃い妬み心の事を言う
まさに、そんな言葉がぴったり
何考えてんだろ
馬鹿みたい
自分だけ見て欲しいとか 自分だけのモノにしておきたいとか
重いんだっつの
わかってる、わかってるよ
- 79 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:44
-
けど押さえつければ押さえ付ける程 自分が汚くなって行く
見てるだけで胸がキュッとなって
目が合ってもぜんぜん嬉しくなくて、辛い
嫌われる
恐くて、怖くて
体育座りしながら、湿ってきた目頭をぐりぐりとこする
- 80 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:44
-
「ばかやろう」
そーだ美貴は馬鹿だ
気付かせてくれたのは、紛れも無くあんただった
- 81 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:44
-
「なんだよ、さっきからシカトして。嫌なやつ」
「……うっさい」
「…泣きながら言われてもさ」
見るな
美貴は、強くてカッコよくてかわいくて
プライドが高いあたしを、崩してくれたのはあんただけど
許せない
- 82 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:45
-
頬に触れた体温が美貴の汚い心を溶かして
どんどん涙が溢れてくる
その涙をすくうように
優しく頭を撫でてくれる
「どっか行けとか言うなよ。心配すんだろ」
「だってよっちゃんが美貴を見るから」
「あ?なんつった?ぜんっぜん、聞ーこーえーなーい!」
抱きしめられたら、離れたくなくなる
やめて欲しいのに
ああ、ダメなんだって
心が欲してるから
- 83 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:45
-
耳元で聞こえた掠れた声が、鼓膜を振動させて
ぱちんと美貴の中の何かを震えさせた
「好きなんだから、ほっとけないよ」
恥ずかしいことを
さらっと言ってのけて
また美貴を寂しくさせて
温かくもさせてくれるから
- 84 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:46
-
傷付くのに
早く気づけ
そんな、蒼い目で見るな
もっと美貴が、ワガママになってしまう
「よっちゃん」
「なんだ」
「好き、愛してる」
「おぅ。それでよし」
自己満足だってよかった
- 85 名前:fruity lover 投稿日:2005/03/08(火) 20:46
-
ただ彼女が美貴を見て、愛してくれればよかったハズなのに
求めてたんだって
はっきり分かっちゃったよ
柔らかい笑顔もぶっきらぼうな彼女ごと
ただ、愛したいって思ってた
ああだから
もうすこし、このままがいい
おしまい
- 86 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/08(火) 20:50
- 久々の更新でした
なんだかこの調子だとあやみき、みきよしで進行するかもしれません
>読み屋さん
御希望に添えられず申し訳無いです。
文章力が無い上に発想も浮かばずなもので。
温かいお言葉ありがとうございました。
- 87 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/03/08(火) 21:21
- 更新お疲れ様です。
あやみきもみきよしも好物なので、このままでお願いします(笑
あやみきが陽なら、みきよしは陰と言う感じがします。
- 88 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:52
- あたしにとっての汚点と言えば数え切れない程あると思う
いくら周りの温度が高くてもあたしを冷ます事は出来ないし
考えを受け止めてくれる人の存在すら否定しまくっていた
だからこそ良いタイミングだった
彼女のおかげであたしは、当分パーシャルな思考に戻れなくなった
- 89 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:53
-
宿題を済ませていない亜弥の面倒を見るのは嫌いではなかった
元々頭が悪いわけでもないあたしが勉強を教えるのは少し偏っていたけれど、何となく嫌だという気分にはならなかったから
シャーペンを握って唇を噛み締める彼女の表情は訝し気で
亜弥の一番苦手な英語の教科書を開くあたしはパラパラとページを捲って机に肘を付く
こうしてまじまじと彼女の顔を見るのも久しぶりかもしれない
あたしの方が1、2個年上にも関わらずこうした関係を保っていられるのは何のおかげなのかわからないけど
あたしはかなり長い時間、彼女と共に過ごしていると思う
はっきりと据えて見える彼女の輪郭は相変わらず、世間一般で言う「可愛い」などとあらわせる
ふと亜弥がこちらを見て頬を膨らませ笑うと、あたしは教科書を閉じてこう言った
「……よそ見する暇あったら英単語覚えな」
「…真希ってそういうトコうざい。言われなくたって分ってるってば」
「じゃあ早く英文完成させてよ」
「……つづりがわかんないのっ!」
あたしはわざと意地悪い笑顔で亜弥が握っているシャーペンを取って一つの頴英単語を書いてみせた
- 90 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:53
-
「これらの戯曲は彼等達の処女作だ」
ど忘れなのか簡単な単語を書き間違える彼女は熟、鈍臭い
「virgin…これもう習ったよね?」
「習ったけどこんなの使わないもん」
「…ああそう。意味は知ってたんでしょ?」
「うん。初めての、ってことでしょ」
「まあ、うん」
あたしからシャーペンを奪い取った彼女は悔しそうに唸りテキストに向かう
その姿を見ながらあたしは完全に想像をしてしまっていた
- 91 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:54
-
「亜弥」
「んー…?」
「亜弥って処女だよね?」
あたしはおそらく興味があったからこんな風に聞いたんだと思う
沈黙が訪れるだろうとは既に想像がついていた
聞いて良かったのか
あたしは後でそう悩んで
ふっと笑顔を浮かべる
カチリと時計の針は動く
伴う事はなく亜弥は黙りこくり、淀んだ瞳であたしを睨んだ
きつく、無視してしまいたいほどあたしは狂いそうだった
- 92 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:54
-
「…じゃなかったら、真希、どうするの」
「まず相手が誰なのかって聞くけど。それと」
「止めて」
俯いた亜弥は音も出さずにそのままの時を保っていた
何をしだすのかと思ってあたしが溜め息を着くけれど
彼女は微動だにしない
馬鹿な事をしたのかもしれない
たいした思いも無いくせに彼女にとってあたしは無神経だと映ったらしい
もちろんあたしは
伸びてきた彼女の髪を梳いて呟く
宛もなく残されたむき出しの感情を露にせざるを得なくて
「悪かった」
ぽつりと、はっきりと
- 93 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:54
-
二度程頭をぽんと叩くように撫でると、ようやく彼女が首を上げた
悔しそうな表情と複雑な笑顔が滲み出てあたしを微笑ませる
多分恐れている
あたしを
「…いないモン、そんな人」
「そうだと思ってたけど。なんか気になったから」
「何で?」
「気になるから」
「……だから、何でよ?」
「亜弥が気になるから」
「え?」
わざと声を細めて、できるだけ低く呟いた
顔を上げてあたしが笑う瞬間、亜弥は首を傾げてあたしの顔を覗き込む
- 94 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:55
-
余計な事だった
好きなんて関係違いの感情だったからかな
わざとらしいあたしの笑顔が気に入らなかったのか、彼女はお門違いだと言うようにあたしの頭を叩く
「真希ってさぁ」
「なに」
「あたし、期待してるかもしれないんだよ」
「…話が違うんじゃないの?」
「真希のそういう所あたしほっとけないんだよね、なんていうかさ。たまにザクッとくるようなサドっぽさ強いけど」
「……へぇー」
「気に入ってるけど。真希ちゃんの、そういう性格」
くるりと振り返って笑ってみせた亜弥の笑顔は今までに見た事無いような
子供からすっかり抜けた雰囲気を漂わせていた
もう違うのかもしれない
あたしと同じぐらいの距離に近付いてる
そう気付かせるように、亜弥はあたしを慕っている
- 95 名前:バージンロードはまだ遠い 投稿日:2005/03/12(土) 20:55
-
だから
「わざとちゃん付けしないでよ、気持ち悪いから」
「あ、言ったな」
「…めちゃめちゃ喜んで良いワケ?あたしってば」
「何が?」
「……傷付けてもあたしを悪く思ったりしなければとっくにバージン奪ってるよ」
「………またそのハナシ?」
「亜弥があたしを好きなら手っ取り早いけど」
彼女を傷つける事なら容易い
あたしの行動ひとつひとつが彼女の全てだと主張できる
威張り利かす事でも簡単だ
けれど
まだすこし怖いんだって
たぶん彼女は気付いてる
おしまい。
- 96 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/12(土) 20:58
- 後→松。
むずかしいですね。
あやみきとみきよしとか言ってたくせにこういうのも書いてみたかったり。
>名無に飼育さん
そうですね、CPにも色々な印象がありますからね
あやみきは書くネタがいっぱいあるんですけどみきよしはと言えば…
妄想力だけが頼りです
- 97 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/12(土) 21:16
- あやごまいいですね
ごっちんのサディスティックさが切ない…
- 98 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 00:07
- このスレにハマりました。あやみき・あやごまイイです!
- 99 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:05
- 真っ赤なリンゴの皮を剥く彼女は果物ナイフを器用に扱う
次々とテーブルの上に重なる皮には薄く実が残っている程
自慢げな笑顔を覗かせる彼女はざくりと果実に刃を入れた
白い彼女の肌と真っ赤なリンゴの色はとてもよく合っていて
それなりに絵になっているものだ
- 100 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:05
-
「はい」
「ありがと」
「それにしても、何で急に」
「ん?」
「リンゴ食べたいなんて言い出して。普段フルーツなんか食べないくせに?」
嫌味っぽく言った彼女は
爪楊枝を二本持ってきてぶすりとリンゴに刺した
「別に」
「まあいいけど。食べたいなら自分で剥いてよ」
「…あのさ、美貴が料理しないこと知ってて言うんだよね?」
「もちろん。けどアンタはさぁ」
「分ってるよ亜弥ちゃんより年上だよ」
「なによその言い方ぁ」
冷めた口調ではなかったけれど確実に亜弥ちゃんは美貴をしっかりと見ていて
急にふにゃりとした笑顔に変えてしまう
アイドルなりの表現だと同業者の美貴にだってそれぐらい解る
けれど美貴の前で見せる彼女はとても柔らかく
扱いづらい存在
- 101 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:06
-
「リンゴぐらい剥けるよ。本気出せばね」
言い訳混じりの言葉に亜弥ちゃんはぷっと吹き出した
食べかけのリンゴを放った彼女はイスの上であぐらをかき、手を叩いて笑う
特徴のある彼女の笑い声は嫌いじゃない
ただ今はあまり心地よい物じゃなかった
- 102 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:06
-
「ふてくされてんだ、みきたん」
「違うけど。そうかもしれないけど」
「どっち?」
「亜弥ちゃんが剥けばいいんだよ、美貴のためにさ」
「何、なんで、あたしがずっと傍にいなきゃいけないって事?」
「まあそうだね」
「……この、だぼぉー」
初めて聞いた兵庫訛りは迫力も何もあらず
笑う美貴の声を遮って、亜弥ちゃんは頬を赤くしながらリンゴを口に放り込む
もう食べる気がしなくなってきた
黄色く変色したリンゴ
- 103 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:07
-
「……もういっか」
「え?」
「もう、いいから。わかったよ」
「…なに、何っ?何の話して…」
「明日もリンゴ、剥いてよ。美貴の目の前でリンゴ剥いててよ」
今まで溜めてた嫌な気持ちが洗われてゆくような感覚
考え続けてた事なんか忘れて、不思議なこの揺れが美貴をすくって
亜弥ちゃんにこの想いが届けば何よりだけど
きょとんとする亜弥ちゃんはもう気付いてる?
もう、美貴も気付いてる
- 104 名前:林檎を剥く女 投稿日:2005/03/13(日) 18:07
-
「…嫌、って言ったら?あたしがみきたんを嫌いで」
「フーン。有り得ないねそんなこと」
「……そうやって言い切るから、あたしが不安になるってことも分ってないくせに」
「わかんなくていいな、そういう事は。けど」
最後の黄色いリンゴに爪楊枝を刺して亜弥ちゃんの口元に持って行く
味は変わらず甘酸っぱいだけだけど
「亜弥ちゃんは美貴のためにいなきゃいけないって。知ってた?」
ずっと、しばらくはね
おしまい。
- 105 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/13(日) 18:12
- リンゴの花言葉は「選択」というらしいです
実と花じゃ大違いなんですけどね
花屋店員の作者から豆知識でした
それと、タイトルをあえて変えてみました
普通に考えたら「林檎の皮を剥く」という事なんですがね
めんどくさかっただけという事では無くうわなにをするやめろ
>名無飼育さん
なんかリアルで考えたら後藤さんて危ない雰囲気あるんですよね
好きな人には何でもしてしまうみたいな
なんていうのは想像でございます
>名無飼育さん
いやー、はまる程のモノは生憎揃えていませんがね
お世辞でも嬉しいです
作者の事だからすぐに飽き(ry
頑張ります
- 106 名前:読み屋 投稿日:2005/03/14(月) 00:43
- これ結構好きです。なんだか・・・なんというか・・・なかなかいいですねぇw
なんかあなたすごいかもしれません
どんどんがんばっちゃってください
- 107 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/16(水) 15:08
- こんな二人も良い
なんて思わせてくれました
- 108 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:07
- 頭の中でイメージした恋愛は全く意味を持たない物だった
蹴散らされた後に残された犬のように吉澤は携帯から目を逸らす
こんなことするべきじゃなかった
まるで真逆の事を後々後悔している自分が居る
それだけでもこの気持ちは治まりきれないと言うのに
どうしてもあたしを邪魔する
恋ってモノ
- 109 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:07
-
「…ねぇ。よっすぃ?」
「何ー」
「言わないんだ」
「え?」
わざとらしく笑顔を作ってみせた真希に、吉澤は過敏に反応した
持っていたシャーペンをくるくると回していた時の事だった
聞いていないふりをすると尚更真希は訝し気にする吉澤を面白がって遊ぶ
相手にするのも疲れるのだが、放っておけばつけあがる
そう思った吉澤はくるりと振り返ってイスにどさりと座り込む
- 110 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:08
-
「あのなぁ、そういう事は」
「放っておいて欲しいんでしょ?でもダメだよ」
「……だーっ、いちいち突っ込み返すなよ。まるで」
「ミキティみたい?」
「…るせーよ」
ぽこんと教科書を丸めて真希の頭を殴ると、吉澤はそのまま教室から出て行ってしまった
真希は相変わらず面白そうに目だけで吉澤を追う
真希にとってはそれがとても楽しみがいがある「遊び」のようなものであった
言わないんだ?
言えないだけ
握りこぶしを作って思いきり壁にぶつけた
苛立ちと焦りが混ざる汗は拭いても拭いてもとまらない
唇を噛み締めると、なんとなく鉄の味がする
血は出ていない筈なのに
- 111 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:08
-
「………くそー」
頬が熱くなる
- 112 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:09
-
「…吉澤、サンだっけ?えとー…」
「…………あんた誰?」
「…美貴に向かってアンタって。…そういうアンタは何組って聞きたかったんだけど」
「3組。あんたは?」
「うーわむかつく。1組」
「何?」
「これ」
「は?」
美貴と知り合ったのはつい最近の事だった
越してきた美貴が紙袋を手に部活後のあたしにソレを渡してきて
傲慢な態度
と言ってもおかしくはなかったと思う
言われるがままに紙袋を受け取って、美貴の顔を見た
相変わらずむすっとしていて愛想のあの字もないぐらいの顔
なんだこいつ
印象なんてそのぐらいで済んでいた
- 113 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:09
-
「マフラー」
「……君が?」
「違う。有り得ない。石川からだよ、石川梨華」
「……誰それ」
「…え?」
「誰だよ。っつか気持ち悪いな急に」
「知らなかったのか…。と、とにかく梨華ちゃんがあんたの事好きなんだってさ」
「……へー。で?」
「で?じゃなくて。答えは?」
「や、何それ。そんなのすぐ決められないよ」
「何で?」
ぎらりと光った美貴の目がとても印象に残っている
相手の顔も知らないあたしを想ってる石川って人の代打、っていうのは分ったけど
なんで急にってことだけが頭を巡っていた
ブレザーのポケットに手を突っ込んだままの彼女はイライラしているようで
次の瞬間に舌打ちをかます
- 114 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:09
-
「さっさと決めてくんない?美貴帰りたいんだけど」
「…あのな、あんたが勝手にコレ渡しに来たんだよ?悪いけどこれ石川って人に返しておいて」
「ヤだめんどくさい。とっておくぐらいの気持ちもないわけ?」
「きもちわりぃだろ普通。顔も知らない子からもらったマフラーなんて」
「あーもう。美貴、面倒な事嫌いなの。これ受け取ってお終い。じゃあねっ」
「はっ?ちょ、ちょっと待て!!」
唐突すぎる彼女のペースはとてもあたしに追いつけるようなモノじゃなくて
苛立った美貴はあたしに紙袋を押し付けて
そのまま走って校門を出て行った
追いかけてみようかと思ったけれど
彼女は速すぎた
あたしが追いつけない女なんて、初めて見たような気がした
- 115 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:10
-
そしてあたしはその後、マフラーをくれた主のクラスを訪れた
教室に入った途端にざわめいたのは言う間でも無く
途端にあたしの視界には、あの女 美貴が侵入してきた
「…返しに来たって事?」
「当たり前だって。こんなのもらっても困る」
「梨華ちゃん傷付くよー。あんた、何人の女の子泣かせてきたか分ってる?」
「そんなのあっちが悪いんだから。とにかくあたしは」
入り口でそんな口論を繰り返しているうちに、あたしはとんでもない事をしたと気付かされてしまった
キレそうになる美貴の隣に、その梨華って子が肩を震わせて
あたしを睨んでた
やっちゃったっていう気分と同時に、面倒な事したっていう最低な気分にもなった
あたしが悪者になれば終る事だったのに
変な所だけマメなあたしは、泣いている彼女に紙袋を返した
- 116 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:10
-
嬉しくもなんともなかった
好きになってくれてありがとうなんて言えるわけもなく
彼女の頬から涙が流れるのを見ても、何とも思えなくなっている自分がいた
- 117 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:10
-
「これで良かったんだよ」
「そう、かもね」
「…さっきまであんなにボロクソ言ってたくせに?」
「だってあんた見てるうちにそうなってたんだもん。おかしいけど」
「いい加減あんたってやめろ。他人じゃないんだから」
「……何それ、キモチワルイ」
「うるせぇ」
その後に、また彼女はあたしの元にやってきた
部活なんかに集中出来る筈も無く、彼女はあたしを馬鹿にし続けたような笑顔で言う
梨華っていう子はどうしたの?
そう尋ねようとしたけど
美貴の放つ不思議なオーラに、なんとなくあたしは引いてしまって
笑って誤魔化してみた
- 118 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:11
-
「名前なんだっけ」
「吉澤。知ってるんじゃなかった?」
「違う。下の名前」
「ひとみ。悪く言うなよ、親が付けた名前なんだから」
「……なんか顔と合わない。偽名?」
「フザケンナッ」
「いや、冗談だから」
「そっちは?ナニ、美貴?」
「藤本。藤本美貴」
「…へぇー」
乾燥した秋風はとても冷たくて、ぶわりと吹き上がって髪を乱す
ぶるぶると頭を振って砂埃を払うと、美貴は笑ってあたしを見上げた
- 119 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/18(金) 19:11
-
「よく見ると綺麗じゃん、自分」
「うーわ、ナンパ?」
「んなワケあるかっ。人並みにってことだよ」
彼女はなんとなく、あたしと似ている所があった
たまに見せる意地や下らない見栄とか
一緒にいて、とても楽しかった
だから今になって考えると、面倒臭い事をしたと後悔もする
友達の方が良かった
そんなこと振り返っても遅かったなんて
この時は
気付いて無かったから
- 120 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/18(金) 19:12
- よしみき学園モノ。
すいません短編のくせに中編になりそうなんですごめんなさい。
レス返しは後に。
今回は吉→藤なかんじで。
- 121 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 21:32
- よっちゃんの想いが届くといいなー
なんて考えながら続き期待してます
- 122 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/22(火) 22:41
- ちょっとした短編を
- 123 名前:快晴でいと 投稿日:2005/03/22(火) 22:42
- さっきまで晴れていた空にむくむくとした雲が押し寄せてきた
むっとした表情で空を見上げて残念そうにする亜弥を見て、美貴はふっと宥めるように笑った
天気には逆らえないよ
そう投げかけた美貴に、亜弥は渋々こくりと頷いた
「むー、せっかくのデートなのに」
「雲があったって晴れてるじゃん」
「ダメなのー。みきたんってば鈍感」
「は?」
「んーん、なんでもない」
亜弥の手を引く美貴は理解し難いといった顔で首を傾げた
亜弥は意味あり気な笑みを残し、再び雲がかった空を見上げるのだった
- 124 名前:快晴でいと 投稿日:2005/03/22(火) 22:42
-
あ、うさぎ
あっちはー、くじらみたい
流れてくる雲を見つけては、何かに例えて無邪気に笑う亜弥
それを見た美貴も亜弥につられ空を見上げる
他にも色々な雲を見る事は出来たが、美貴にはよく分らなかった
うさぎとか、くじらには到底見えない
やはり亜弥には全てが面白いものとして映ってしまうのだろうと美貴は考えていた
自分には無いものを、たくさん持っている
美貴にとっての亜弥のイメージは莫大なものであり、単純なものでもあった
- 125 名前:快晴でいと 投稿日:2005/03/22(火) 22:43
-
「たんってば手ぇ離しちゃダメぇ」
「亜弥ちゃんが、歩くのが遅いから」
「そんなことないもん。みきたんが速いのー」
「わかったよ」
なんとなく亜弥と繋いでいた手を解いてしまった
その事に逸早く気付いた亜弥は後からとことこと駆けてくるなり、美貴の腕に飛びつく
苦笑しながら美貴の表情から溢れる嬉しそうな笑顔は何よりも亜弥を甘くさせるのだ
甘やかし過ぎか
美貴がそう思う事も少なくは無かった
- 126 名前:快晴でいと 投稿日:2005/03/22(火) 22:43
-
「晩御飯何がいい?」
「肉」
「昨日焼肉食べたよぉ」
「肉」
「野菜炒め。けってーい!」
「…え」
いつのまにか、雲はなくなっていた
おしまい。
- 127 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/22(火) 22:48
- みきよしの途中でしたが貯まってた短編があったので載せてみました
次回はみきよしを更新するつもりです
>読み屋さん
あなた、恐ろしい事をおっしゃいますね(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
いやいやいやそんなことはないので恐縮でございます
えーと応援のお言葉を頂きましたので精一杯頑張りたいと思います
毎度温かいレスありがとうございます
>名無飼育さん
こんな二人ってどんな二人?(何
自分では書いてて印象とか全くわかんないんですけど、そういう御感想を
頂くとありがたいです
ありがとうございました
- 128 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/27(日) 18:26
- 更新しまふ
- 129 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:26
- 真っ青の空に一枚の紙を掲げ、吉澤は深い溜め息をついた
赤色のサインペンで印されたマルやバツは見るに堪え難い
いち、に、さん…
バツを数え数え目で追ってみる
明らかにマルが少ないのが一目瞭然であるのにもかかわらず
ふと、寝転がるアスファルトに小柄な影が現れる
吉澤が片目を閉じるや否や影の主は吉澤の手から紙を奪い取った
「何だこれ、人間の取る点数?」
「…美貴?」
くすくすと笑いながら寝転がる吉澤の隣にちょこんと座り込む
酷く馬鹿にしたような目に変わりは無かった
- 130 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:27
-
「そういうおまえは」
「残念。赤点は免れました」
「…嘘だろ」
「今回はちゃんと勉強したからね」
誰かと違って
べっと舌を出して笑う美貴の肩を小突いた
ちゃんとかんがえてるんだなー
いつまでも自分と同じように遊んでばかりではなくやる事はやっている美貴に、吉澤は何となく劣等感を抱いた
そんなもんかな
そう言い聞かせるのが、一番だとも思った
- 131 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:27
-
「よっすぃー、帰ろー」
「おーう」
ホームルームの間、しばらく眠っていた吉澤は欠伸をひとつ
真希の声に振り向いてようやく目が覚めた
「テスト、どうだった?」
「いつもと同じ。ごっちんの脳レベルには程遠いよ」
「おなじようなもんじゃん」
「ま、そーだけど……あ」
誰もいなくなった1組の教室を通り過ぎると同時に、俯せでいる誰かの姿を捕らえた
- 132 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:28
-
机に突っ伏して恐らく眠っているだろう、さっきの自分と同じように見えた
誰だろうと思うよりもなんとなく予想は出来た
それにしても、誰も起こさないのかな
友達は少なく無い筈なのに、そこが一匹狼なんだろう
「ごっちん、先、帰ってて」
「どしたの?」
「ちょっと」
- 133 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:28
- がらんとした教室に踏み入ると、窓が少しだけ開いていた
なんか、死んでるみたいだな
呼吸は確認できるけれど、本当に死んでいるような寝顔だった
笑い所ではないと分っていても頬が緩んでしまう
「おーい…」
相変わらず冷たいラインにはっきりとした輪郭だ
ひとつひとつのパーツが整っていて、俗に言う美人なのだろう
フジモトミキという人物を形成するには十分すぎる程の感覚で
キレイだった
- 134 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:29
- 美貴の頭に手を伸ばそうとしたと同時に、携帯のバイブ音が鳴る
机の上に置いてあったせいで妙に派手な奇怪音にも聞こえた
出るべきなのだろうか
迷う事よりも、取りあえずこの音を止めた方が良い
怪訝そうな顔をしても未だ眠っている
しばらく、寝顔を見ていたかった
「…メール?」
カチ、と断続的に指が動いてしまう
- 135 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:29
-
勝手すぎるかもしれない行動だった
余計な事、というよりも、絶対にしてはいけないことというゾーンに踏み入っていた
「……っ」
心臓が震え出した
最低、だ
- 136 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:30
-
知りたかったから、見たんだっけ
もっと美貴の事知りたい
そうだったけど
馬鹿じゃんあたし
冷や汗が出てくると同時に美貴の携帯を机の上に置いた
着信してしまったメールを見た上、処理までしてしまったあたしの指は
汗で濡れていた
「……っ…っちゃん?」
「…へ…」
「……だぁぁーネム。…ホームルーム終って…って」
柔らかく笑った美貴の顔が、どうしようもなく怖かった
背中に背負わされた重い何かがとてもいたかったせいなのかそれとも
罪悪感だったのか
- 137 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:30
-
「ちょ、よっちゃん?」
目を合わせた瞬間、あたしの何かが切れた
どうやって教室を出て行ったのかとか
どうやって家に帰ったとか
覚えて無い
ただ覚えてた事
美貴の傍には誰かが
あたしとは正反対の、かっけー誰かがいるって事だけだった
- 138 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/27(日) 18:31
-
逢いたい
受信したメッセージには、そう印されていた
- 139 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/27(日) 18:35
- ふぅ…無駄に疲れる前半戦終了。
続きは後にでもうpしたいと思います。
>名無飼育さん
どうでしょうねー、さっさとくっ付いちゃえみたいな展開にならないようにします。
ぐだぐだしっぱなしですが温かい目で見守ってくれることを願います。
- 140 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:53
-
しょうがないのか
たぶん、しょうがない
- 141 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:54
-
「なんかよっすぃ顔が死んでる」
「……え?」
「聞いて無いじゃん。何かあったの?」
なにもないよ
ごっちんにはそう言って、安心させるようにぎゅっと抱きしめた
鈍いんだなぁ
やっぱりちがう匂いとカラダ
似てるんだけど、代わりにはならないって事だった
ごっちんは不思議そうにあたしを引き剥がして首を傾げた
ちがうんだよな
あたしは、こんなことしてる場合じゃないんだよな
- 142 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:54
-
とにかく、怖くてしょうがないという事が一番だった
前にもこんなことがあったけど
確かあたしに告ってきたヒトを見て美貴が言った一言
よかったね
確信してたのかな
あたしはなにも、答えなかった
「よっちゃん、おいってば」
ほら、こんな言葉だって
あたしの罪を重くする
- 143 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:55
-
廊下を歩く美貴にも、自分にもシカトをして
通り過ぎた瞬間には頭がいたくて倒れそうになるような錯覚に陥った
無理し過ぎた
それはあたしにも、美貴にも言える事だった
「ねえってば」
立ち止まって、あたしを呼ぶ声
少し苛立ったみたいでその声は強気だった
振り返って、いつもみたいにハグして
下らない話でもして
ね
「……んだよ、バカ」
そうだった
あたしは世界一の、大馬鹿者だった
- 144 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:55
- しばらくの間、吉澤は美貴と口を聞こうとしなかった
何かを暴いてしまった罰だと言い聞かせるように、淡々と時間は過ぎて行った
何度か試みた事もあった
でもそれはとても難しい事で
余計に美貴から離れる事になってしまう
「ねえ、ミキティと何かあったの?」
「…べつにー。なんもないよ」
「じゃ、何でごとーとずっといるの」
「いちゃ悪い?」
「そうじゃないけど。なんか、ヘンだから」
不機嫌そうに頬を膨らます真希を見て、吉澤は気を悪くする
周りまでこうなのか
そう思う事しか術はなかった
廊下で美貴と擦れ違う度に、視線が痛くてたまらない
遠くで笑ってる姿さえも心をズタズタにされる
やっと気付いたのがこの瞬間だった
なんで、ここまで苦しいんだろう
そう考えた時に出た答えは
美貴が好き
たったそれだけの理由が存在していた
- 145 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:56
- MDから流れる音楽は軽快で、まるで今日の天気のようだった
ここ1週間は快晴が続き雨雲に襲われる気配はちっとも訪れない
傘を差す心配は無くとも、心は常にドシャ降りだった
カミナリまで鳴りそうな勢い
美貴はギリギリの淵に立たされていた
「……なんで無視すんだっつの」
「え?美貴ちゃん何か言った?」
「大体美貴が何かしたかっての。勝手に怒ってんじゃねーよボケッ」
「…美貴ちゃん?」
「なんで」
ブツッと不快な音に遮られてMDは停止した
教室のざわめきよりもその音がやけに大きく聞こえて、美貴は腹立たしく思う
イヤホンを付けたまま階段を駆け下りる
さっきの軽快な音楽はもう美貴にとって聞く耳を持たない
ただ腸が煮えくり返る思いでいっぱいで
むかつく
- 146 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:56
- 職員室の窓からはよくグラウンドが見える
そのことを思い出すと即座に方向を変えて、職員室まで突っ走る
むかつく むかつく むかつく
吉澤に対する感情はそれだけではなかったけれど、とにかく腹が立った
無視されたらされたでいつもは何も、思っていなかったけれど
よりによって、あいつに
こっちから先に願い下げなのに
伝えたい事がたくさんありすぎた
「っおい、藤本!失礼しますぐらい言…」
「…っ…よしざわぁぁぁぁぁ!!さんねんさんくみよしざわひとみぃぃぃ!!!」
声が枯れるくらいに叫んだ
そう言えば彼女の名前をちゃんと呼んだのは初めてだったのかもしれない
周りの教員達が口をあんぐり開けている間に美貴は叫び続けた
グラウンドの中心部分でボールを蹴る、「むかつく人」に
- 147 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:57
-
「…ん?なんだあれ」
「……職員室だよね、あれ」
吉澤には聞こえなくとも、グラウンド周辺にいた生徒達にはよく聞こえていたらしい
指を差して何かを言い合う後輩達に気付くのも早かった
「…何してんの?」
「先輩じゃないんですか、あれ?」
「……は?」
「よしざわ、って…」
「…………マジかい」
目をこらさなくても、はっきりと映った姿に思わず身を隠そうかと思った
恐らく職員室にいる教員に取り押さえられているだろう
うるさい、などと喚く声が後から聞こえてくる
- 148 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:57
- 複数の教員を振り払って来ただろう美貴は窓の手すりに身を乗り出した
危ないと駆け寄ろうとしても、美貴の目は頑に自分を見ている事に気付く
こんなに遠くから見ているのに
どうしてわかってしまうんだろう
いますぐ駆け寄りたい
そう思ってしまった
- 149 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:57
-
「…なんで、無視すんだよぉー!!」
「………」
「ミキが、よっちゃんに、何したんだよ…っ」
「……なんも、なんもしてねぇよあたしが悪いんだよ!!」
「だから何!?」
「………おめぇ、耳かっぽじってよく聞け!!!」
真上から見上げた美貴の表情はとても
弱々しくて子供のようだった
全部あたしのせいだってことは分ってくれたらしく
すぐに強気な表情に変わった
嫌われるのを覚悟して告白する
もうどうなったって、あたしは美貴の一番になれないなんてことは
とうに理解してるつもりだからだ
- 150 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:58
-
「…携帯勝手に弄って、お前のオトコからのメール見たんだよ。お前が寝てる間にあたしは最低な事した大馬鹿モンなんだよ。あたしは美貴が思ってるような奴じゃないし、嫌いになってくれてもいいから。
けど好きなんだよ。美貴が好きなんだよ」
言い終わった直後に、発作が起きたような咳がとまらなかった
肩で息をするように意識が飛びそうな感覚にも陥った
ああ、目が熱い
そろそろ涙が出て来そうだ
- 151 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:58
-
「…携帯って、美貴の?」
「……ああ」
「……フーン」
「悪かったと思ってる。最低だとも思ってる」
「…わかってんじゃん」
「……え?」
「バカだ。やっぱりよっちゃんバカだ」
そんな事知ってる
そう言い返そうと顔を上げた瞬間に、窓から飛び下りる美貴の姿が映った
両手を広げて抱きとめると同時に、いつもと同じ感覚に襲われる
美貴の背中に手を回して気が付いた
- 152 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:59
-
「携帯見たのは許せない。でも違う」
「……なにが」
「もう別れた。キスもデートもセックスもしてないしそいつ、もういないよ」
「…じゃ、何であのメール」
「往生際悪いし断った。好きな人いるからって」
「なんで」
「よっちゃんしかいないじゃん他に」
もっと早く言ってよ
そう言うように、美貴は吉澤の頭をわしゃわしゃとかき混ぜた
夢じゃなかったら素直に喜べる
現実?
そうだった
- 153 名前:innocent approach 投稿日:2005/03/28(月) 14:59
-
「…ホントに。ほんとにキスもしてないんだよね?」
「当たり前じゃん。襲われそうになったけど殴ったら冷めた」
「……んだよ。なんだ」
「何?」
「ばかだ。あたし、ほんとにばかだ」
喜ぶよりも先に自分を呪った
でもすぐに目が覚めて、美貴の笑い顔が目に飛び込んでくる
なんですぐに気付かなかったんだろう
ちゃんと見ててくれた事に
しばらくはちゃんと考える事にした
友達よりも先に思い浮かぶ大事な事を
すぐ目の前にある大事なこと
おしまい。
- 154 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/28(月) 15:01
- ダラダラ続いて書く気も失せましたが何とか終りました。
えーと次からはまた短編に戻ります。
多分、小高です。
遅くなりますきっと。
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/29(火) 01:16
- みきよし良かったです
これからも期待してます
- 156 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/30(水) 18:25
- 仕事が片付き天にも昇る思いです
予定変更の短編を載せます
- 157 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:26
-
「お前は今幸せ?」
吉澤さんの口から出た言葉は形にするには余りにも可笑しくて
次の瞬間に吹き出したあたしを残酷に眺めた
何かの間違いかと思ってふと吉澤さんの顔を見ると
冗談じゃないって事が滲み出ていた
ベタベタな連ドラよりも緊迫した空気が漂う
吉澤さんが私に訊いてきた理由は意外とはっきりしていた
失恋とかそういうものを私は味わった事がない
だからこそ、吉澤さんにしか分らない事だった
「…さぁ、よくわかんな」
「何言ってんだ、見えないのかよ」
「見えないって?」
「お前になら見えると思ったのによぉー」
草の上でジタバタと暴れる吉澤さんはまるで子供みたいだった
それにしても、何の事やら
私が鈍いとは言い切れないような、謎
- 158 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:27
-
「なんの事ですか?」
「幸せだよ。あたしは持って無いからわかんないけど」
「……ハァ」
「はぁ、じゃないよ。で、どうなの?」
どうなのって言われても
- 159 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:27
-
久しぶりに真面目な吉澤さんは、まるで私を敵対してるようだった
なんか怖いなぁ
そう思うより先に、吉澤さんの事が可哀想になってくる
ああ、あたしのせいだったのかなぁ
なんてお節介に等しいけれど、考えてしまう
「吉澤さんは、藤本さんと居て幸せじゃなかっ」
「聞くな。それ以上言ったらぶっ殺す」
「…ごめんなさい。えと…」
「お前に聞いてんだよ」
どきり、と心臓を刺されたような感覚
聞いちゃいけなかったんだと、遅く後悔する私
- 160 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:27
-
「…はい、幸せだと思うんですけれども」
「……そうか。ならいい」
「理由は聞かないんですか?」
「これ以上人の幸せ見たく無いんでね」
「…すいません」
「謝らなくてもよい。でも聞く」
「え」
「おまえは、高橋と居て幸せなんだな。うん」
「まだ答えてませんけど。っていうか立場が逆では」
「違うのか?」
「…いえ、そうです」
人の幸せを好まない人ってゴマンといるけど
やっぱり吉澤さんは、とっても可哀想だと思った
優しくてたよりになるけど、時にサディスティックです
そんな所がかっこ良いんです
- 161 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:28
-
「美貴が持っててあたしには無かったから。だから終ったのかなぁ」
「…はい?」
「お前は幸せ持ってる。高橋も多分持ってる。だから幸せなんだよ」
「……そんなこと」
「いや。そんなもんだよ。だから、あたしは一生幸せになんかなれないよ」
そんなことない
そう言えたら私は吉澤さんよりも上になれたような気がした
フォローになってないよって後で言われて
少し悲しかった
幸せってそんなものなのかな
そう尋ねると吉澤さんは、案の定首を大きく縦に振って笑った
その笑顔が酷く優しくて
- 162 名前:moment 投稿日:2005/03/30(水) 18:28
-
「そろそろ帰るかぁ。付き合ってくれてサンキュ」
「いえ。おかげで会えなくなりましたけど」
「誰に?」
「…わざとですか?」
「わーってるよ。高橋に謝っておいて」
「……ハァ」
私は多分生涯、この人物を頼りに生きて行くと思う
例え本人が幸せを欲しがっていなくても、きっと私は干渉する
強く見えて脆い彼女を無性に放っておけないし
これからも頼っていきたいと思うから
幸せに飢えているというなら
どうにかしてあげたいなと思うけど
吉澤さんはいっぴきおおかみ
幸せを掴めるまで、きっと独りで生きるんだろう
おしまい。
- 163 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/03/30(水) 18:31
- 小高の予定だったのですが急きょ変更。
小高+吉→藤な感じで。
藤本さんに振られちゃった吉澤さん。
な関係が書きたかっただけです(爆
>名無飼育さん
みきよし、実はあやみきの次に好きなんですけど文章にするのは苦手なんです。
呼んで頂きありがとうございました。
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 16:42
- 何げなくよしまこがgoodです。
こんな関係好きだなぁ。
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 16:42
- ↑すいませんageてしまいました…
- 166 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/01(金) 14:05
- よっちぃが切ない。でもこんな役が個人的には好きです。
次回も頑張って下さい。
- 167 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 15:35
- 自分で自分の尾っぽを踏むわけにはいかなかった
なんとしてでも、彼女を自分のモノにしておきたいという欲求が
直下的に自分を照らしている事が明確だった
嫌われてでも近付きたいのかと自問自答するのはしょっちゅうだし
その答えを求める事も癖になりつつある
誰かに掴まる事も止めた
ただ彼女を引き止めたかった、それだけの事
- 168 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:39
-
その日は満月だった
意外にも自分の部屋の窓からよく見えたその満月はとても輝いて
身を隠すには十分すぎるほどの、黄金色だった
隙間風が頬に当たって春の夜には丁度良いくらいの生温い暖かさ
目を閉じると自然に彼女の事を考えてしまうのは反射と言っていいんだろうか
窓から盗み見た月は未だにあたしだけを照らしているようだ
カチコチと絶えまなく進み続ける置時計には
一瞬の隙もなく時を刻む
この時計の針を止めてしまえば、世界が終る
ちょっとした賭け事は嫌いじゃなかった
もしこの賭けが真実であればあたしは真っ先に、彼女に逢いに行くだろう
- 169 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:40
-
薄暗い夜道を見下ろすと、街灯が1、2個程しか点灯していない事に気が付く
こんな夜にふらふらする人は誰もいないし酔っぱらい以外の何者でもない
タッタッタと家の前を走る酔っぱらいらしきモノを、目で追う
飲んでいる割に軽快な走りだ
そんな感想を述べていられるのも、今のうちだった
いち、に、さん
道のタイルに沿ってステップを踏む彼女はとても、無邪気で子供っぽかった
大急ぎで窓を開け、目を丸くした
時を刻む時計はAM1:32
こんな夜中にあたしを見上げて、楽しそうに笑うのは彼女しかいなかった
- 170 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:40
-
「やっほぉ、ごっちん」
あっけにとられたというよりも妙に感心してしまった
とは言っても真夜中にも関わらず大声を出した彼女に戸惑いを感じた
月のせいだ
そう念じながら、あたしはあたしに手を振り続ける彼女に苦笑いを返した
リアクションをとるには不可能な出くわし方だ
「…ねぇ、場違いだって」
「そんなことないよ。あたしがこういう性格だって知ってるでしょ?」
「……まあそうだけど。ねえ、何してんの?」
「だから会いに来たの。ごっちんに」
「…」
喜んで良かったのかいまいちわからなくて、取りあえず玄関まで向かう
突発的すぎる彼女にはどうも悪いけれど都合が良過ぎるんじゃないかと思ってしまう
どうしてこうあたしの神経を疲れさせるのか
どうしてこう、あたしを切なくさせたがるのか
それだけが知りたかった
- 171 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:41
-
無造作に作られた自分の笑顔を疑った
気持ち悪い
こんな器用な事する自分がイヤで堪らなかった
「こーんばんは」
「…こんばんは。ってか、まっつー」
「ん?」
「あたしに会いに来たって本当?」
「うん。嘘付く理由がぬぁーい」
「なんでこんな遅くに」
「だってごっちん、昼間寝てるじゃん。電話してもメールしても反応無いし。夜行性だから困っちゃうよね、しかも時間帯バラバラで、あたし結構計算してるんだよ?ごっちんの行動って読めないから大変なんだけ」
「で、何?」
彼女を勝手に喋らせていると切りがないことは十分知っていた
冷たく言い放つと彼女はまだ足りない、と言う風にあたしに食ってかかってくる
- 172 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:42
- がしりと掴まれた腕は拒否反応を始めた
一瞬のうちに鳥肌が立ち、あたしを底へと追い詰める
その時だった
近くで犬が鳴いている
遠くの遠く、そのまた遠く
遠ぼえが深く響いて彼女を遮った
「…あたしさ、考えたんだよね」
面倒な事を放っておくとそれはとてつもない力を持ち出す
忘れかけていた事を彷佛させた彼女の事がとても憎く、愛おしかった
あたしの腕を掴んでいた手はするりと落ち、もう一つの手を組ませた
やはり街灯が少ないせいか彼女の顔が少しぼやける
それともあたしの目が何かを訴え始めたのだろうか
- 173 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:43
- 如何してここまで追い詰められるんだろう
それはあたしにも彼女にも分らないであろう難しい問題だった
幼い頃から良く知っている彼女の事だけれどどうしても解らない
親しくしていればそれで良かった
それだけのこと
変わらない物は何一つないと信じて疑わなかった
けれど
信じてるばかりじゃいけないって
初めて彼女の瞳を真直ぐ見られた気がした
「もし世界にあたしとごっちん、ミキたんしかいなかったら」
「…え?」
「今さ、何でミキティが出てくるんだって思ったでしょ?まあ焦らないで待ってよ」
「別に焦ってなんか」
「いるくせに。正直じゃないんだから、ごっちん」
これ以上自分を責めるものがあれば、何であろうと破壊出来た
そういうわけにもいかなくなったのは全て彼女のせいであり、他の何者でもない
言い当てられた事がとてもうざくて、あたしを遮るものを感じ取った
- 174 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:43
-
ミキティには悪いと思うけど
あんた、究極の敵だ
- 175 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:44
-
「……あたしはミキたんとごっちん、両方を選ぶんだよ。意味、解るよね?」
「…さぁ、わかんないね。分りたく無いよ」
「ごっちんには悪いと思ってる。でもあたしにだってわかんないことあるんだよ」
「両方選ぶなんて事は出来ないんだよ。そんな事が出来たらあたしはとっくに、諦めてるんだから」
「違う、違う」
「違うわけないよ。一度に二つの我侭は聞けない」
彼女に重い荷物を背負わせてしまったあたしはとんでもない犯罪者だ
いつまで、どこまで彼女の言う事を聞いてればいいのだろう
それだけの問題があたしに出されていた
答えは多分見つけにくい
どこかに隠れているとしてもあたしはきっと、探そうとは思えないからだ
暗がりでぼやける彼女は硬直して、あたしを睨んでいた
何であたしの言う事わかってくれないの?
とでも言いたげな、哀し気な瞳で
- 176 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:44
-
「…ワガママなんかじゃ無いもん、あたしはただ…」
「……泣くぐらいなら言わなきゃよかったよ、あたしだって。ねえ、ごめん」
「…なんでごっちんが謝るの?」
「まっつーの事、好きだから。後悔してるけど降伏はしないつもりだよ」
往生際が悪いと思われても別に気にはしなかった
それだけの印象でも何でも抱いてくれるだけであたしは幸せと思えるから
腕の中におさまった感情と彼女を抱きながらそう悟った
あまりにも小さく見えた彼女のあたたかさが、今のあたしにはちょうどよかった
餌を目の前にして伏せを命令された時の野良犬よりも意地が汚いと今さら思い知らされる
それでも良かったと思える自分は、相当汚れている
- 177 名前:サドンデスエレメント 投稿日:2005/04/03(日) 20:44
-
「好きだよ」
「……わかったよ、もう」
「でも片方は選べないんでしょ?もう理解したよいい加減に」
「ごめん」
「いいよ。それでもあたしは」
夢でもいいから感じていたかった
たったそれだけで、満足なら良いから
「それでも、いいから」
満月には感謝している
次の満月が出る事にはあたし自身が、変わっている事を願う
おしまい。
- 178 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/04/03(日) 20:50
-
sudden death
今回はみきあやごま。わかりにくいったらありゃしない。
話を作る上で「同点決勝方式のひとつ」ということにしました。
わかりにくいなんていう事は承知ですが。
>名無飼育さん
実はマイナーカプ好きの作者です。
思うように逝かず挫折しましたが。
ageの事は気になさらないでくださいね。
>名無飼育さん
彼女はあんな役ばかりでいい加減に何か考えようかと思います。
拝読してもらい嬉しい限りです。
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/04(月) 09:14
- あややが健気でうるっと来ました。
次回も待ってますね。
- 180 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/08(金) 10:17
- 良スレ発見
あやみきとあやごま大好きです
- 181 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:57
- 雨がドシャ降りのある夕方
彼女はベランダに出て、傘を差していた
どうしたの?と尋ねてもいつものように反応は薄く、ぼぅっとしている
それでも彼女の瞳は確実に私をとらえていたようだった
ただじっと、頑に私を見ている
ふわふわした感じの髪の毛先に光る雨の雫がなんとなく様になっていて
私も一緒に傘を持ってくる羽目になった
- 182 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:58
-
「あーあ、石川のせいだ」
「何でよ?」
「雨女。石川と居ると、何かしら雨降ってるんだよな」
「…それはそれは御迷惑おかけしてすいませんでした」
「ホントホント」
「そこ、否定する所…」
「そう?」
たまに毒を吐いたりするのはしょっちゅうで、からかわれることにも慣れてる
別に私が腹を立たせるわけでもなし、それはそれで彼女も楽しそうだから
あまり気にはしていないつもりだった
もし本気混じりの事を言われてしまっても、私は多分何も言えない
それは本当に彼女の事を考えているからこそ、出来るんだと思うから
多分、自意識過剰なんだ
- 183 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:58
-
「じゃあ、何で傘持ってこんな所に」
「別に。楽しいから」
「え?」
「いーじゃん、テレビなんか見てるよりこっちの方が」
変な所で気を遣っているのか、結構ロマンチシストでもある
だって、傘の柄を持つ手も凄い雨で濡れているのに気にもしないで
ずっと外を見ている
普段はガサツで何も考えていなさそうなのに、こんな時は真剣な目
そう言えば前にも、こんな事があった
- 184 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:59
-
「おまえ、思い出したんじゃないだろうな」
「へっ?」
「へっ?じゃないよ。余計な事、考えるな」
「…余計な事って、何の事だか知ってるの?」
「石川なんかが考えてる事位分ってるよ」
「……じゃあ、何?」
ザ−
聞いて良かったのか悪かったのか
それはきっと、私にも、彼女にも知るべきではないと思うから
バツの悪そうなしかめっつらがそう言っているような気がした
みるみるうちに視界が灰色く染まって行く
なんか私、ヤな女だ
手すりに肘を付いて誤魔化そうとする彼女のジャージの裾を強めに引っ張った
せめてもの「ごめん」という形にしたかったから
触れてはいけないものに触ってしまった罪は結構、重いんだと思う
- 185 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:59
-
「……乗り換えたとか勘違いすんなよな」
「…どういう、意味?」
「だから。美貴ちゃんにふられたから、石川と居るとか、そんなんじゃないからな」
「……え?」
雨音は静かに引いて、ふたつの傘をたたむ
なんだか、重く背負っていた罪悪感がどこかへ行った気分になった
多少怒り気味の彼女は私を見て苦笑いしながら手を握ってくれた
こんな日は久しぶり、いや初めてだったかもしれない
- 186 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 16:59
-
「…私、美貴ちゃんなんて一言も言ってないけど?」
「なっ、なんだよ違うの?」
「……ふふっ、なんでもない」
「何?なんだよキショイな」
「なんでそこでキショイになるのよ」
「突然笑い出すなよ」
彼女は私に一切の言葉を言おうとしないわけが、なんとなく分った
好きだなんて言えるはずもない、冗談でも言わない
そんな彼女のあたたかさに何となく触れてみたくて、私は今彼女と一緒に居る
たったそれだけの理由で
雨は止んで、たたんだ傘をそのままベランダに放置しておくことにした
私が片付けようとしても彼女がそれを止めるからだ
文句を言っても、聞く耳を持とうとしない
こだわりというものが人一倍強いのか、全く困ったもので
でも、だからこそ、彼女は私を選んでくれた
私が次に彼女にとって「余計な事」を口に出した時には、どうなっているんだろう
私はまだ、彼女の傍にいるんだろうか
おしまい。
- 187 名前:sepia 投稿日:2005/04/09(土) 17:04
- いしよし。よっちゃんの名前出て無いけど(マテ
>名無飼育さん
実際の松浦さんこんな感じの様な気がするんですよねー。
金曜日のせいで実際という所を今は余り考えたくないんですけど。
>名無飼育さん
良スレだなんてとんでもない。でもありがとうございます。
あやみき最近書いてないので次は載せたいと思いますー。
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/12(火) 20:48
- いしよし、良かったです。
こういう三角関係を書くのは得意なんですか?
文章がすごく好きです。
- 189 名前:ディスクローズの法則 投稿日:2005/04/19(火) 22:33
- せめて声が聞きたくて
電話片手に泣いてしまった自分に
きみはびっくりして、優しく許してくれた
「ふっふー、やっぱりたんにはあたしがいなきゃダメッ」
「…どうかな」
「なによソレ。強がっちゃって」
「それはこっちのセリフだよ」
「むぅっ」
「強がってんのは亜弥ちゃんの方だよ」
だから不安なんだよ
- 190 名前:ディスクローズの法則 投稿日:2005/04/19(火) 22:33
-
耳元で囁いたその言葉だけに、彼女は静かにこくりと頷いた
揺るぎない想いを美貴に注いで
その度に、我慢すればするほど募るいら立ちを自らにぶつける
そんなことは、して欲しくないんだってこと
ヒトリになって分ったんだよ
やっと、ごめんって言える
- 191 名前:ディスクローズの法則 投稿日:2005/04/19(火) 22:34
-
「みきたん、好きぃ」
「んー知ってる知ってる」
「ちゃんと聞いてよぉ!」
「聞いてるってば。亜弥ちゃんちょっと静かにね」
「もぉーおぉー!」
この瞬間だけ、いつまでもとっておくことは難しい
だから今すぐじゃなくてもいい
頬を膨らませて怒り出す彼女が、愛おしいと
そう思えることが、なにより大切だから
おしまい。
- 192 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/04/19(火) 22:40
- これこそ超短編。
3レスで終るとは…。あやみきですた。
>名無飼育さん
いやいや得意なんかじゃないです。むしろ苦手です。
でも内容を考えるのは好きですね、展開とか。
文章力が無いので全く意味がな(ry
次回はみきよしでも。気紛れであやごまorみきごまになるかもしれませんが。
新リーダーのよっちぃに期待です。
(0^〜^)<頑張るYO!
- 193 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/20(水) 15:54
- 超短編ということでしたが、良かったですよ。
よっちゃんにもこれから娘。を引っ張って行って欲しいですね。
次回も楽しみにしてます。
- 194 名前:― toi et moi ― 投稿日:2005/04/25(月) 22:27
-
つながってると、信じてる
- 195 名前:― toi et moi ― 投稿日:2005/04/25(月) 22:28
-
グラスから溢れ出した傷み
まだ叫び続けている心が知っていた
あの時の温もりを返してと私の心も呼んでいる
まだぼやけ続けてると言う事は、求めているということ
そんなこと、もう理解してるのに
もがいてももうつかみ取れない
彼女に甘える事も何かを強請る事も、ただの過去
我侭すぎたのは自分だったの
勝手すぎたのは、あなただったの
- 196 名前:― toi et moi ― 投稿日:2005/04/25(月) 22:28
-
ねぇ、みきたん
私のこと、嫌いになった?
無神経だったよね、あんな事言って
「そうだよ」なんて、みきたんが言えるわけない
最後まで優しくされた事で、余計往生際が悪くなった
全く、すべてあなたのせい
全部が全部想い出で終われそうにないんだから
びりびりに引き裂かれたみたいに
あたしはもう、あなたを感じる事はできない
- 197 名前:― toi et moi ― 投稿日:2005/04/25(月) 22:29
-
涙を流しても、支えてくれるあなたはいない
大丈夫だよと言ってくれる人も、もういないんだよ
ごめんねと謝る、その顔も見られない
可愛く微笑むあなたも、いない
「たん」
美貴ちゃん
ミキスケぇ
みきたーん
たん、たんってば
- 198 名前:― toi et moi ― 投稿日:2005/04/25(月) 22:30
-
「なんだよぉ」
今でもその声が、聞こえるんだよ
- 199 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/04/25(月) 22:34
- あやみきでした。
何だかもうこんにちは計画さんが色んな意味で大変そうですね。
CDジャケとPVはどうなるのかと。
ということだけ心配な作者でした。
>名無飼育さん
単に続きが書けなくなっただけ。とでも言うのでしょうか。
かなり暴力的な考えですが安易と受け取って下さい(何
次回は何を書こう。
何かリクでも下されば嬉しいです。
- 200 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/26(火) 02:56
- 外界のこととかわりとどうでもいいです。
日々妄想だけで生きてます。
ということで、みきあやが見たいです。
あやみきでなくみきあや。
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/29(金) 05:29
- 二人ゴトのせいであやみきを見ると異常に反応してしまいます。
ということで自分も、あやみきではなくみきあやを。
- 202 名前:追いかけた痕跡 投稿日:2005/05/01(日) 21:42
- 暗がりのなか、しゃがみこんだ彼女の肩をぽんと叩いた
予想してた通り反応は無くて俯いたまま、ぐすんという音が聞こえる
ここで諦めたフリをして、そっぽを向いたとすれば間違い無く、彼女は慌てて顔を上げるだろう
だけどそんな事をする気にもなれなくて大人しく彼女の横に座った
コンクリートの上だったから、少しお尻が痛かった
「帰ろうよ、亜弥ちゃん」
謝るより先に出た言葉は、躊躇という意味を知らない
ただ今一番したいことを口にしただけ
自分がおいてけぼりにされていると、きっと彼女は思ってる
- 203 名前:追いかけた痕跡 投稿日:2005/05/01(日) 21:43
-
ミキの自覚が足りない?
傷付けたことを未だに認めて無いのは確からしい
思い遣りなんて、苦手だ
- 204 名前:追いかけた痕跡 投稿日:2005/05/01(日) 21:43
-
不意に彼女が顔を上げて、少し赤く腫れた瞳を覗かせる
決してこちらと目を合わせる気はないらしい、どこか一点を見つめて
風になびく彼女の茶色い髪が鼻腔をくすぐる
できるだけ優しくその髪を撫でても、どうやら年期入りの傷は癒えない
目の前にある事だけ、考えるなんて到底無茶だっていうのに
「……しないでよ」
「ん?」
「優しくなんかしないでよ。あたし、もっとたんの事好きになっちゃう」
それがイチバン、怖い事?
- 205 名前:追いかけた痕跡 投稿日:2005/05/01(日) 21:44
-
自分の腕の中で嬉しそうに微笑んだ彼女とは、まるで別人のようだった
唇を噛み締めて必死に第二の涙を堪えてる
追い詰めたのは自分だったこと
気付くのが遅すぎた事
突き放して、甘えて、甘えさせて、愛したのも自分からだった
傷口が広がったなら塞いであげようと思ってたのに、我ながら鈍感で
違ったか
見て見ぬフリだった
これ以上、増やしたく無いだけで
- 206 名前:追いかけた痕跡 投稿日:2005/05/01(日) 21:44
-
「…なんで、美貴を嫌いにならないのか不思議だよ」
「あたしだってわかんないもん」
「……じゃあ、大丈夫。美貴も、何で亜弥ちゃんの事好きなのかわかんないから」
「…何それ」
「ごめん、悪かったってこと」
白い彼女の頬が、ほんの少し紅色に染まった
指でその頬を撫でると彼女は苦笑いをして、美貴の肩に顔を埋める
お互い素直じゃないから、たまに喧嘩するとこうなるって事を忘れていた
でも返って良い口実になったかもしれない
今度こそ嬉しそうに笑った彼女は美貴の頬にキスをした
こんな時思ってしまう
初恋がこの子であればよかったなと、馬鹿みたいな事を
おしまい。
- 207 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/01(日) 21:48
- リクエストを頂いたみきあやですた。
み、みきあや…。
>名無飼育さん
そうですね。それだけあればお腹は一杯。
まー七期さんも入った事ですしどうなるんでしょう。
リクエストに答えられて無くてすいません。みきあやは難しいです。
>名無飼育さん
二人ゴトがどこを探しても売っていません。書き起こしを見て(;´Д`)ハァハァするだけです。
買ったらじっくり見たいです。
同じくみきあやをリクして頂いたようで嬉しいです。
あやみきではなくみきあや…難解でした。
- 208 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:02
-
なんだろう、こう
遠くから見ている事が好きなんだよな
- 209 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:03
-
授業中にする事って言えば、いつもだいたい決まってる
消しゴムのカスをこれでもかという程集めて指でこねて遊ぶとか
あとはまあ、ね
ずっと、ずーっと彼女に視線を注いでるとか
見かけによらず勉強には執着するタイプで学年トップは譲らない
どこにその理性が隠れているのか不思議なんだけど
黒板とノートだけに集中している彼女は、なんだその
ミョーに綺麗、映えてるんだよな
時折頬を緩ませて笑顔になる表情とか、難しい問で頭をひねってる所とか
なんか、見とれる
だからいつもこう言われる
- 210 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:03
-
「見過ぎ」
「いやー、だってステキじゃないか」
「は?」
「普段も素敵だけど、数段、いや格別だよ」
「なんだよ、エロいなぁ」
そう、エロ目になってることに気付かない
- 211 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:06
- ニヤニヤしてしまうのはきっとおかしい
だけどそんな厭らしい意味じゃあないことは自覚してる
微笑ましいんだよな、うん
「ベーグル」
「ん?」
「ちょうだい」「いやだ」
- 212 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:07
- さらさらしたやや長い髪、目鼻立ちの良い顔
どこをとっても美人という言葉がピッタリの輪郭をしている
同い年に見えないんだよな、クソ
悔しいっちゅうか、憧れるとは違うんだけど
横から見る彼女からは色んなオーラが滲み出ているから、それを感じてたいし
そういうことは、言い訳になっちゃうのかな
ベーグルを口にすることが出来なかった彼女は、「ケチ」と零して唇を尖らせた
そんな幼い印象を持たせる表情はとても可愛い
うう、よくわからなくなってきたぞ
あたし、何が伝えたいんだろ
美貴ちゃんさんが好きなのは彼女も知ってると思うけど
なんか、なんかチガウってば
- 213 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:07
-
「み、きちゃん」
「ん?」
「好きだよ」
「うん」
「え、そんなリアクションあり?」
「んー?別に驚く事でもないじゃん」
う、玉砕
「だってー、ミキもおんなじ」
「え?」
「ミキもよっちゃんさんだいすきー」
不意に伸ばされた甘さ
彼女の笑顔から溢れ出るその甘さが、あたしをときめかせてる
- 214 名前:サイドウォッチング 投稿日:2005/05/02(月) 22:08
-
「ふへ、へっ」
「わ、よっちゃんさん照れてる」
「ちがわい、熱いんだい」
これで、いっか
彼女の横サイドで、一緒に笑って、いればいいんだよ
何だかんだ言って美貴ちゃんさんも照れ笑い
そのまま二人でばかみたいにずっと笑ってた
うーん、なんかちょっと違う?
でも嬉しかったんだ
手を伸ばせばすぐそこにいるし何も困らない
我侭にならないよう、できるだけ彼女を見ていたいと思った
おしまい。
- 215 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/02(月) 22:09
- みきよしをひとつ。
次回は何にしよう。何か提案があればカキコくださーい(死
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/02(月) 22:43
- あぁ情景が目に浮かびますねー。更新お疲れさまです!
次作は、卒業記念にいしよしおねがいできますか?甘ーいかんじでw
- 217 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:23
-
ドリンクを受け取っておもむろに口に含んだ
ごくごくと流れる液体は身体に吸収されて、脳内を活性化させる
えいくそ、なんだかどきどきしてきたぞ
ガラにもなく緊張してる
これから、あたしは強くなろうとしてるから
- 218 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:23
-
パタパタと遊び回るガキ二人
あーも、邪魔だっつのに
「おっはーよっちゃん」
「おー」
にひひと二人揃って同じ笑い顔
この顔、全然変わらない
調子に乗って「だぶるゆーでぇす」をやられた
そっか
二人きりで、がんばってんだよな
- 219 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:24
- あたしだけが変わらないのか
周りが変わって行くのに、あたしは大きくなれない
元々そういうの得意じゃないけど
だけど、なんかおいてけぼりにされた気持ちになる
毎日のように
そんなことないよ
って、何度もこいつには言われた
- 220 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:24
-
「もぉスグ始まるね」
「…あぁー、そうねぇ」
「もぉよっちゃん、乗り気じゃない?」
「乗れないよ。だって、すげぇ怖いもん」
「怖い?」
「うん。ソツギョーじゃなくて、その後が、ね」
矢口さん、吉澤はどうすればいいんでしょうか
こうやって時間が来るまで待ってて、いいんでしょうか
誰か教えて
隣にいるこいつに、負担かけさせるわけにはいかないんだよ
なぁ
ちょっとだけ泣くけど、からかうんじゃねーぞ
- 221 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:24
-
「ちょっとヤダ、早いよぉ」
「うるへぇ、わらうな」
「怖がらないで。よっちゃんなら出来るよ」
「っむりだよぉ」
「やってみなきゃ。私が、見ててあげるから」
「どうやってだよぉ」
「わかんない。でも、私が一番、よっちゃんのこと知ってる」
なあ
あたしはこんなに弱い人間だって、いつ知ったんだ
なあ
あたしはいつまでも成長出来ないから
行かないで
みんなが、あたしを頼るってこと
頼られるようなやつじゃないよ
なんで、こんなにこわいんだ
- 222 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:25
-
ぶさいくに泣きながら石川の胸をかりた
やさしく頭を撫でて、何度も何度も囁いた
大丈夫、って
おまえがいなくなったら、どうすりゃいいんだよ
だれがあたしを、認めてくれるんだよ
「もう行かないと。始まるよ」
「…っく」
「頑張ってよね、リーダー」
ずっとこの胸の中で甘えていたい
だけど、許してはくれない
- 223 名前:ありがとう 投稿日:2005/05/04(水) 11:26
-
あたしの背中をぽんと叩いた石川の目は、ちっとも潤んじゃいなかった
くっそ
あたしより出来ない事が多いくせに
こいつは、ものすごく、強い人間なんだ
ヒトリジャナイヨ
そっか
ありがと、石川
「…そつぎょー、おめでとう」
「わ、やっと言ってくれたぁ」
「うっせーよキショいな」
「なによそれ、さっきまであたしの胸で泣いてたくせにー」
「やめれキショイキショイ」
もうすぐ始まる卒業式
もう、後ろは見ない事にした
おしまい。
- 224 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/04(水) 11:33
- 卒業…。
残された時間頑張れ石川さん。
>名無飼育さん
甘く無くてごめんなさい。
リクエストを頂いたくせにこんなのしか出来なくてすいません。
また何かあればレスの方よろしくです。
- 225 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/04(水) 15:06
- いつも楽しみにさせてもらってます!
リクですが、みきよし(エ○有り)とか、宜しければお願いします…とか言ってみたり(汗
- 226 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:55
- 虚ろに揺れる瞳が、目を通していない雑誌へと向けられている
寝不足のせいか彼女は気が立っているようだった
こんなときこそそっとしてあげるべき、なんだろうけど
触れたがる指先を止める事はできなかった
「…みーきちゃん」
不意を突かれた彼女はビクンと肩を揺らし、壁に預けていた背を起こした
疲れ切った身体が必死にあたしに訴えている事が解る
今日は、勘弁して
言わずもがな、と言った所か
勘弁?そんなのあたしの知ったことじゃなかった
顎をくいと持ち上げて、柔らかそうな唇を奪った
抵抗しようとしない彼女の手をそっと握って、唇を舐めた
丁寧に、しつこく
- 227 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:56
- 開放してやると、掴んでいた手を振り払って自らの唇を拭う仕種
そのひとつひとつの行動が、あたしを狂わせる事をいい加減自覚して欲しいもんだ
色っぽい
艶かしい唇を、気が付けばまた貪っていた
上唇を甘噛みするように吸うと、微かに声が漏れる
その間にシャツの中に手を突っ込んで素早く下着のホックを外す
あたしも慣れたもんだ
まさか、こんなにハマるなんて思ってもなかったし
彼女があたしに心を許すなんて
- 228 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:56
-
「…よっちゃん?」
「…ん」
「今、じゃなきゃ、ダメ…?」
潤んだ瞳から、視線を外せなくなった
ベッドの上に組みしいた所で、彼女が苦しそうにそう零したから
首筋に顔を埋めてから答えを出した
にやりと口角を上げたあたしに、彼女はぐっと目を瞑る
「ダ・メ」
甘い匂いが鼻腔をくすぐる
しつこくない、香水とは違った爽やかな甘さ
- 229 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:57
- 彼女の弱点
あたしが懇願すれば、彼女は静かにこくりと頷く
羞恥心と、あたしへの「甘さ」が原因なんだろう
「っく…」
ピンと立ち上がった頂を舌で転がす
途切れ途切れに出る悩まし気な声
その声がもっと聞きたくて、あたしは容赦無く攻め続ける
だけど、その頑固さがじれったい
舌で転がすのを止めて、音を立ててピンク色のそれを吸う
- 230 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:57
-
「あぁぁっ!ヤッ…やだっ…」
「…なんで?」
「はぁんっ…」
感じてる?
ほら、よくあるじゃん
好きな子に凄く意地悪したくなる気持ち
好きだから、ちょっかい出したくなるんだよ
今も、こうやって
身に付けていた全てをとっぱらうと、あたしの手は彼女の下腹部へと伸びる
それを察した彼女は、あたしの首に腕を巻き付けてロックオン状態
頑にあたしの目を見つめてる訳はとっくに知ってる
- 231 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:57
-
にまっと笑って、ちゅっと唇にキスをした
かわいいかわいい、涙ぐんだその瞳
「…なんだよぉ?」
「……もぉ、ヤぁ…」
嫌なんて言われたら
もっと、触れたくなるじゃん
割れ目にそっと触れて少しづつ刺激する
その度に、彼女の堪え切れない声があたしの耳に届く
我慢出来ないんだ?
彼女の耳元でそう囁いて、指をぐっと押し込んだ
- 232 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:58
-
「…っはぁん、やっ、あんっ」
「…こっち向いて?」
「やだっ…やんっ…あっ、あっ」
この声が、セックスしている時の声は格段に美しい
あたしは地声の彼女も好きだけれど、この時が一番好きなのかもしれない
少し低めに喘ぐ彼女の全てが改めて愛おしいと感じられるからだ
「…っくぁ…ん」
絶頂を終えた彼女からは脱力が感じられる
それを理解したあたしは、完全に気が緩んだ彼女にちょっかいを出さずにいられない
これで終わりだと思うなよ?
そう告げるように、あたしは彼女の腰に腕を回した
- 233 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:58
- 途端に暴れ出す足を押さえ、彼女の顔を覗き込む
案の定顔を真っ赤にして、必死に抵抗しているのが解る
まだ感じているであろう割れ目に舌を這わせる
舌先で堅くなっている部分を刺激すると、格段に甘い声
「やぁぁっ、はぁっ…ん」
舌を中まで沈めると、途端にエロティックさが増す彼女の声
ああもう、病みつきになりそうだ
「んっ…はぁ、やだ、よっちゃんっ…」
二度目の絶頂を、ようやく終えたらしい
へへ、と笑って上から見下ろす彼女の顔はまだ赤くなっていた
優しく頬を撫でて軽めのキスを何度も、ちゅ、ちゅっと降らせる
するとグイと体勢を変えて、横に寝転んでしまった
- 234 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:59
-
「あ、怒った?」
冗談混じりに背中を抱き締めると、首をこちらに向けてギロリ
睨んでるつもりなんだろうけど、今のあたしにはちっとも効果がないこと
火照った瞳で睨まれたって、余計気持ちが抑えられなくなる
「バカ、よっちゃん」
「そーですとも」
「…余計疲れた。当分やらせない」
「え、マジで?」
「嘘だよ、バカ」
そう言って、美貴はあたしの額にキスをした
久しぶり、というか初めてのような気がした
彼女からキスをもらうことは普段無いし、髪を撫でてもらうことも無い
- 235 名前:甘味料使用 投稿日:2005/05/05(木) 16:59
- 抱き締める腕をぎゅっと抓られた
大袈裟に反応すると、小馬鹿にするように意地悪く笑われた
さっきと顔が違うじゃねぇか
「…やべ、したくなってきた」
「ば、やめてよもう無理だって」
「ふふ、かわいいなぁ」
「ちょっ…ん」
どこにも逃がさない
と言わんばかりで、唇を再び奪う
あたしには彼女が必要なんであって、彼女にはあたしが絶対に必要不可欠
誰が保証できるかなんて解らないけど
少なくとも、今だけは一緒に居たいと思う
「…好きだ、美貴」
「や、よっちゃんキモい」
「んだと、お仕置きだ」
「はぁんっ」
甘い、この時間を
おしまい。
- 236 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/05(木) 17:04
- 久しぶりにみきよしエロ書きました。
まさかこんなリクエストを頂くとは思って無かったので結構
ウキウキしながら書いてました。
>名無飼育さん
こんなものを楽しんで頂き嬉しいです。
リクエスト、こんなものでよろしかったでしょうか?
久しぶりに本格的なエロを書いてしまいました。
- 237 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/05(木) 17:05
- エロなんでかくしときます
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/05(木) 17:05
- もいっちょ
- 239 名前:225 投稿日:2005/05/05(木) 20:43
- リクこたえて下さって有難う御座いました!
すっごいドキドキしながら読みましたよー。美貴さん可愛すぎです!
有難う御座いましたー。
- 240 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/06(金) 19:44
- あやみきの激甘とか、できればお願いします!
- 241 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/07(土) 02:56
- 俺もみきあや見たいです…
- 242 名前:名無しいしよし 投稿日:2005/05/08(日) 00:28
- いしよし、アンリアル、エロあり希望します!
甘〜くてエロ〜いの、作者たんおねがいします。
- 243 名前:216 投稿日:2005/05/08(日) 14:49
- リク答えていただいてありがとうございます!
梨華ちゃんの卒業を迎えていしよしセカンドステージへ。
みきよしも甘ーくていいですねw
いつもチェックしてるので頑張ってください。
- 244 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:27
- 教室から見る風景というのは実につまらない
つまらなくさせているのは肝心の観察物であって、興味の対象が逸れているわけではない
あーイライラする
がたん、と乱暴にイスから立ち上がると、美貴はそのまま教室から出て行ってしまった
あっけらかんとする教師、そして周りのクラスメイト
授業中だろうが何だろうが美貴には関係なかった
- 245 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:27
-
嫉妬
つまらない妬みは好まない筈だったのに
これじゃ、こっちが仕掛けたみたいじゃん
- 246 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:28
- 誰かとほんの少しでも会話をすると
こう、頭の隅っこにある感情が沸々と何か問いかけて来る
触るな
これが今の正直な気持ち
もしも自分がこんな思いをぶつけられたら、どうなってるだろう
恐らくうざったいとしか感じられない
どう考えても良い方向には行かない
だけど
好きなんだから、しょうがない
楽しそうに友達とおしゃべりを交わす彼女は
アイドル的な存在で可愛さを振りまいている
特別な笑顔じゃない
自分だけに、特別に見せている笑顔じゃないとわかってても
- 247 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:28
- 彼女を取り巻く邪魔を蹴散らす事しか考えられない
何気なく眼で遮る事は出来ても、証明をすることはできない
彼女が自分の物だと主張できる物が何一つないから
かなり、寂しかった
亜弥にとっての美貴
高校の先輩であり、大切な存在である
それは一部の対象で、恋人ということ
どうやって惹かれあったのかなどは、殆ど覚えていないけれど
一瞬のうちに美貴に魅せられるようになった
ほとんど授業は受けず、それでも成績は常にそこそこの位
秘められたる「何か」
それは美貴の自称ではあったが、何となく亜弥もそれを信じるようになった
何をするにも雑で、飽きっぽく冷め易い
だけど本当は優しくて、温かい人
- 248 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:28
-
みきたん、と慣れ親しんだトクベツな呼び名
それが亜弥にとって、美貴への愛着だった
「あー、サボリだ」
頬を指でつん、と突かれて目覚める
目を開けるとにゃははと微笑む亜弥がいることに気付く
そう言えば授業を抜け出して1時間程経っている筈
きょろきょろと辺を見渡しても時計はない
そうだ、ここは屋上
- 249 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:29
-
「みきたんさぁ、さっきこっち見てた?」
くるり、と踵を返して亜弥が尋ねる
得意げなその笑顔はいつ見ても健気で、美貴を和ます所があった
しかし質問に答えるよりも解答が難しく
べっと舌を出して誤魔化す
「なによぉ」
「亜弥ちゃんじゃない、男の子見てた」
「…え?」
「なんか、仲良さそうだったから」
皮肉っぽくなったかな
亜弥に背を向けてフェンスに手をかけると、急に虚しくなる
やっぱり言わなければよかった
後悔とは違う、妙な距離がうまれないようにと願うばかりだった
亜弥に寄り付く虫は少なく無いから
だから、こうやって回りくどくても口にする
- 250 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:29
-
「まあ、いいけどさ」
よくない
亜弥の方に振り返ると、唇に何かが掠める感覚
疑う暇もなく理解できた亜弥の行動はいつも、突然だ
少し頬を赤くして悪戯に微笑まれると美貴のペースはいつも崩されてしまう
そんな弱味を、亜弥は全て握っている
- 251 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:30
-
だから美貴は
亜弥ちゃんに全部見透かされて
「みきたんは、私の事好きでしょう?」
「…ん」
「だめ、ちゃんと言って」
切な気な目がこっちを見て、真直ぐに伝える
よそ見をするわけにもいかないからこちらもじっと伺う
どうやら、様子を見るだけじゃダメなんだ
- 252 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:30
-
「好きだよ」
傷付けてしまうくらい
ボロボロになるくらいに
「ふふ、みきたん以外に興味ないもーん」
「…え?」
「だからぁ、引っ付いてくる男の子にも誰もカンケーないの!みきたんなの!」
「…は、ははっ」
「……ホントはさぁ、もっとしてほしいんだよ?」
ギュッと握られる両手
一本一本優しく包まれて、絡めるお互いの指
少し背伸びをして美貴の耳元に唇を持ってくると、彼女はこう言った
- 253 名前:カタチ 投稿日:2005/05/13(金) 22:31
-
「ヤキモチ…ね?」
素直になるのが一番高率が良いのかもしれない
全てが愛らしい彼女にはどうしても勝てない事が分かった
悪戯な笑顔も、惑わせる瞳も
勝ち目なんかないなぁ
「本当はそいつらを殴りたい程苦労してるけどさ」
「うわ、暴力はんたーい」
「…そうさせてんの誰だよ」
「なに?」
「べつに」
おしまい。
- 254 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/13(金) 22:34
- あやみきでした。
この中ではちょっと藤本さんの方が背が高いなんてことになってます。
あくまで勝手な構想です。
実際そんなイメージなんですがね。
>225さん
みきよしをリクしてくれた方ですね。ありがとうございました。
エロなんてあんましかかないので不安だったんですけど、反応があったので
良かったですー。
>名無飼育さん
えー、書いてみましたあんまし甘くありません。
極端に考えるとダメです。すんません。
>名無飼育さん
たいしたものが出来ません。一応書いてみたのでどうぞ。
>名無いしよしさん
甘ーいのですね。エロは…どうなるかわかりませんが頑張ります。
カキコありがとうございましたー。
- 255 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/13(金) 22:36
- だー、最後の方への返レス忘れてました。
>216様
自分の中ではみきよしとあやみきがツボです。
またなにかあればお気軽にどうぞです。
えーと次回は多分いしよし。
エロは期待しない方が良いと思われます。
- 256 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/13(金) 22:36
- 流し
- 257 名前:さくしゃ 投稿日:2005/05/15(日) 14:01
- リクエストを頂きましたいしよしですが。
すんごい逸れてます。設定もクソもない様です。
リクエストをして下さった読者様には本当に申し訳ないですorz
こんなものですがどうぞ。
- 258 名前:おわかれ 投稿日:2005/05/15(日) 14:03
- 私、一緒にいられないんだ
傍にいたら死んじゃう、よっちゃんが死んじゃうよ
だからもうバイバイだよ
ごめんね
- 259 名前:おわかれ 投稿日:2005/05/15(日) 14:03
- 痛々しく痕が残った手首の傷
哀れむような周りの反応にはもう慣れた
その度にあたしは笑って解釈しなければならない
解ってるなら訊くな
本当は、奥底で思ってる事
もう長袖を着るのは止めた
カモフラージュの欠片も無い行為だったことに気付いたから
隠す必要はない
あっけらかんとした結果だったけど、今ではそう思えるようになった
でもあの時の事は忘れて無い
忘れようとしても、未だ彼女が許してくれないから
想い出をとっておくのは趣味じゃない
だけど、色々な物が詰まってる
- 260 名前:おわかれ 投稿日:2005/05/15(日) 14:03
-
あたしは時々、家の中に引きこもる癖がついてしまった
何か嫌な事があるとすぐに殻に閉じこもるのは昔からの事だったけど
彼女が居なくなってからその癖というものは酷くなってしまった
支えてくれる誰かが欲しい
言葉にしたことは無かったけれど、本当は寂しくて
後に気配を感じる
そう思った時には、何となく後ろを振り返って
彼女がいないか確かめる
本当に死んだのかと
考える事が多くなった
- 261 名前:おわかれ 投稿日:2005/05/15(日) 14:04
-
灰色に化した彼女の写真
見つめる度に思い返してしまうから
引き裂いた瞬間に胸の奥で突っかえていた何かがぽろりと落ちた
ごめんね
微かに揺らいだカーテンの奥から聞こえる
隠れてないで出てきてよ
声にならない思いを振り回すと、一層大きくなるその声
- 262 名前:おしまい 投稿日:2005/05/15(日) 14:04
-
涙というものを流したその時に
あたしは一生、この罰を償えるだろうかと懺悔した
被害者と加害者の世界
助けてと訴える事さえ錯乱してしまう
聞こえる
居るならば、もう一度逢いたいとあたしは叫んだ
おしまい。
- 263 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/15(日) 14:07
- エロは書けません。いしよしのエロはできま(ry
描写に困り果てまして結果的にこうなってしまいました。
言い訳はここまで…として。
かなり違う方向に飛びました。甘くも無い。
一旦ここでリクエストを中止にしたいと思います。
えー、今回のような事もかなりあると思いますので読者樣の不快を
煽る訳にもいかず…。
よろしくお願いします。
- 264 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:09
-
あたし以外の女に触れないで
がちがちの彼女は震えながらそう言った
びっくりして目を丸くするあたしに、泣きながらそう言ったんだ
腰が抜けた
あんなに脆い美貴を見たのは、これが初めてだったから
もっと強くてもっと逞しいだなんてあたしの思い違いだった
雨でびしょびしょに濡れた服
雫を零す綺麗な髪をすくって、キスをした
これが最初で最後のキスにならないよう
あたしは壊れ物を扱うように、美貴を抱いた
- 265 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:09
-
こほん、と小さく咳をした彼女は頭を抱えてソファに項垂れた
無理もないだろう、昨夜びしょ濡れであたしのマンションに駆け込んできたんだから
そんで、風呂にも入らないで濡れたまま、ずっと
「よっちゃん」
高らかに悦びを表現していた全ての甘さ
飲み込んでしまいたいくらいの、愛しさ
- 266 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:10
-
やや苦しそうに唸りながらソファに俯せる美貴はあたしの名を呼ぶ
ぜぇはぁと肩で息をしながら、手であたしをこまねく
悪いが、ベッドは今使えない
びしょびしょのまま飛び込んだシーツは今、洗濯中だから
正座を崩した座り方で美貴はあたしを抱きしめる
立ったままの姿勢は辛かったけれど、止めれば腕の中にいるお姫さまは御立腹だ
コツンと額と額をぶつけると、鈍く微笑う彼女がいる
静かに眠っていればいいのに、あたしの傍でこうしていたいようだ
「きのうの、忘れて」
「…え?」
「もう、いいや」
突如終わりを告げたハグとキス
あたしの肩につかまりながら、美貴は俯いてそう言ったのだ
- 267 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:10
-
なんとなくだけど
彼女が昨日、傘も持たずに雨に打たれていた訳が解った気がした
「…こんなことでさぁ、ミキ、よっちゃんにウザいって思われたく無いし」
束縛が嫌なら、いっそ逃がそうか
どこまでもリードは長い
首輪をするよりも、ずっと楽なんだからね
- 268 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:11
-
あたしは犬じゃないけど
彼女を知ってから、触れてからこの匂いを忘れた事は無い
奥深くを貫いたのはこれが初めてだったけど、ずっと変わって無い物がある
おいで
- 269 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:11
-
「…こっちの身も知って欲しいよ」
「……なにが」
「苦労してるのはそっちだけじゃないって事」
ねえ、知らないくせに
つきまとう影とか邪魔なものを全て焼き払ってしまいたいよ
何かを確かめるかのように美貴を抱き上げた
膝の上でまた涙を流しそうな彼女はとても麗しくて、特別甘い表情
はねのけてそばにいくよ
- 270 名前:レインコートの裏地 投稿日:2005/05/24(火) 22:12
-
「好きだよ美貴」
もったいぶらないで、こっちにおいで
もっと近くに寄って、あたしを鎖でつないでよ
そして頑丈な鍵を付けて欲しいんだ
甘くとろけそうなその、君の笑顔で
おしまい。
- 271 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/24(火) 22:14
- 甘いんだか暗いんだか。
フレッツの吉澤誕の画像に燃え尽きました。美貴様がよっちゃんを狙っていたのは言わずもがな。
みきよし(;´Д`)ハァハァ
- 272 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/05/24(火) 23:50
- 甘暗ーい!あまぐらいよオザワさーん!笑
楽しませていただきました。ゴチソウサマです。
次も期待してます。
- 273 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:49
- 持て余す時間は、いくらでもあるから
ほんのすこしでもいい、触れさせてくれれば
- 274 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:49
- 終った後の喪失感ったらない
目眩がするのはいつものこと、立ちくらみが酷かった
ふたつのくりくりとした瞳は美貴を見上げて、にこりと笑う
その笑顔が愛しくて、さらさらと髪を撫でてやった
小猿のようにきゃっきゃと遊び回る彼女はまるで、妹のような存在だった
いつでもニコニコしていて、愛想がよくて
美貴とは似ても似つかない程の性格の持ち主だ
でもただひとつ、共通点がある
サミシインダネ
- 275 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:50
-
「たーん、喉乾いた」
「はいはい」
手足をバタつかせてベッドの上に転がる彼女
コップ一杯の水を与えてやると、飛びつくようにごくりと飲み干す
そんなに喉がかわいていたの?
そう尋ねると、大きく頷いてカランと氷が音を立てた
タオルケットを一枚羽織っただけの彼女のカラダは異常に艶かしい
目をおおいたくなる程の色気というか、エロさが秘められている
自分の1、2個年下なだけなのに、妙な間隔が空いているのはそのせいだ
- 276 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:50
-
ふくよかな胸
くっきりとした輪郭、ぷるっとした唇
触れたい
キスしたい
「たん?」
おかわり、とコップを差し出す
なにも知らないような顔で美貴に甘えたがる、彼女の癖は直らないようだ
無意識に伸びた手に何とかブレーキをかけた
もう何度となく思いとどまったけれど、止まらない欲望
必要の無い独占欲
恋愛感情とは違うんじゃない?
親友に言われても、なにひとつ信じ難かった
思いのままに行動出来ないなんて苦しすぎて、むかむかする
こうやって美貴に甘えたがる彼女に、なにをすればいいのか
その答えをずっと、探してる
- 277 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:51
-
セックスじゃ繋げられない物がある
最初からそんなこと知ってる
- 278 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:51
-
ぐいっと腕引っ張られる感覚に陥った
フローリングに膝をついてしゃがみこむ体勢になると、唇に何かが触れた
柔らかい、本当に求めていたものだった
ゆっくりと目を閉じると、久しぶりに感じる普通のキス
深いまろやかなものじゃなかったけど、すごく気持ちが良かった
この子は、なんでも知っているんだ
美貴が何を考えているのか、すぐに勘付く
「おーかーわーりーってば。たん、ひとのはなし聞いてなーい」
「…だからって、キスする?」
「こうでもしないと、あたしの事見てくれないじゃん」
- 279 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:52
- 柔らかい手をそっと握ると、ぎゅっと強めに握り返して来る力
こんなちいさな身体にどんなパワーがあるのか知りたいくらい、切ない温もり
美貴は、どこを見てるんだろう
いま目の前にいる彼女が愛おしいという事
だけど、言葉には出来ない錯覚という事
すべて嘘じゃない、紛れも無い真実だという事
亜弥ちゃん、美貴は言ってもいいんですか
貴女が好きなんですよと伝えてもいいんですか
言ってしまっても、傷付かないですか
言ってしまったら、全てが壊れますか
- 280 名前:_ 投稿日:2005/05/28(土) 22:52
-
「みきたん、ちゅうして」
なすがまま、そうするしか術がない
すべすべした白い肌に見とれながら、唇を合わせた
潤った唇はやっぱり亜弥ちゃんのモノであって、舌で舐めるとさらに柔らかく感じる
その時の声を聞く度に、美貴のどこかは痺れて行く
むちゃくちゃにしたいという、欲望が溢れてくる
終らない罪悪感
影で罵る孤独感
「…たん、好き」
彼女の胸をまさぐる美貴に、苦しそうにそう呼び掛ける
吸って、噛んで、もっともっと声を出させる
こうすることで自己満足なんだから
「ふっ…ん、んっ」
そしてまた、広がる傷口
おしまい。
- 281 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/05/28(土) 22:54
- 久しぶりに暗いあやみきを書きました。
最近あまり書いて無かったなぁ…
>名無し飼育さん
あまぐらーい。っていうのがちょうどいいかな、みきよし的には。
甘々は難しいです。今度また書きたいな。
- 282 名前:みきみき 投稿日:2005/05/28(土) 23:00
- やっぱあやみきゎ最高だね!!
作者さんあやみきいっぱい書いてください♪
- 283 名前:さよならが、言えなくて 投稿日:2005/06/12(日) 16:25
- 見つけた
とうに息は上がってる
ゼェハァなんて格好悪く登場出来やしないから、唾を飲み込んで呼吸を整える
寒空の下で、何時間彷徨っただろう
華奢な身体でいつものように微笑う彼女はいつもと違って、星に照らされていたせいかとても美しかった
思わず見とれてしまう程、いつのまにか綺麗になっていたんだ
タタタと最後の力を振り絞り、彼女の手を掴んだ
びくん、と驚いたように振り向いた彼女の髪からは、お風呂で洗い立ての匂いがした
美貴だと知った直後、唇を噛み締めて、寂しそうに目を逸らす
意地っぱりで、弱い彼女の特徴でもあった
途端に掴んだ手を叩かれて、そっぽを向く
いつもの美貴ならむかついて、そのまま放置していた筈だけど
「亜弥ちゃん、帰ろう」
そっと呼び掛けて、頭を撫でてあげた
まるで子供を扱うかのように、できるだけ傷付けないように
- 284 名前:さよならが、言えなくて 投稿日:2005/06/12(日) 16:26
- 目に涙を溜めて、我慢なんかしないで
いっそ声を上げて、泣いちゃえばいいのに
恋人なんて肩書きを、まだ捨てたく無いんだよね
「…なんで、ここにいるのさ」
「捜してたから。…おかげでドラマ見逃しちゃったけど」
「じゃあ録画すればいいのに」
「ビデオセットしてる暇なんか無かった」
そう言い放った矢先に、亜弥ちゃんを抱き寄せた
あなた以外に大事なものなんてないんだよ
恥ずかしいけど、本当はこういう事をサラッと何気なく言いたかった
だけどやっぱり、気持ちがとおせんぼしている
痛々しくて冷えきった掌のあかぎれが、亜弥ちゃんのすべすべした頬に触れた
- 285 名前:さよならが、言えなくて 投稿日:2005/06/12(日) 16:26
- 白くて弾力のある、柔らかい頬だ
ぷにぷにと指で突いて遊んでいると、悔しそうに美貴を見上げる瞳が可愛かった
まだ好きなんだよ
静かにそっと、誰かが美貴に耳打ちをした気がした
「…みきたんのこと、諦めたいんだよぅ」
「うん」
「でも、好きなの。たんの事ぶったけど、嫌いじゃないの」
「うん」
「………好き」
あぁ
彼女を抱く腕に力を込めたけれど、それとは正反対に美貴の心は弱々しかった
誰かに蹴飛ばされればすぐに脆く折れてしまいそうな程に
なんだか胃が痛くなって来るような、愛しさってなんだろう
彼女はここまで、美貴を愛してくれてるから
美貴は、それに応えるべきなんだ
- 286 名前:さよならが、言えなくて 投稿日:2005/06/12(日) 16:27
-
パンと乾いた音が広がって、それに伴った美貴の赤い頬
もう赤くはなっていないけど、少しシビれていた
振り向きざまに、亜弥ちゃんの泣きじゃくった顔が見えてたっけ
「美貴も、亜弥ちゃんが好きだよ」
そのあとのことは、覚えて無い
ただ、しばらくの間二人で抱き合って、キスばかりをしていたような気がする
そこにあったのは確かにお互いの温もりだった
感触を忘れてしまわないように、ずっと亜弥ちゃんを抱きしめていた
時が経っても壊れる愛なんてない
教えてもらう前から、人間誰もが知ってる事
おしまい。
- 287 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/06/12(日) 16:28
- 結構久しぶり?の更新でした。
もっと甘いのが書きたかったのに。
>みきみきさん
はい、書きます。でもたまに浮気することもあります。
- 288 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:16
- エアコンから吹く風は冷たく、汗をかいて寝そべるあたしにはぴったりの風だった
初夏の長い長い坂道を愛車(チャリ)ですっとばしで来たもんだからシャツが汗でひっつく程
なのに、そんな事を気にする予感も見せない彼女はテレビに没頭する
呼び出しておいて、あたしを放置するのはスケジュール通りらしい
エアコンがフォーと音を立てて、また冷たい空気を放出した
あたしは目を瞑ってそれを受けながら、さらにシャツを捲りうちわで風を送る
「もはや女じゃないよねよっちゃんって」
「しっつれーだなぁ。美貴に言われたくないよ」
「エアコン消す」
「あー待って、あと少し」
「嫌だよ、美貴寒い」
冷え性からか、彼女の部屋は真夏でも室温は常に一定だ
エアコンをつける事も少ないようで、最初にリモコンを取った時に埃がまとわりついていたほどだ
もっぱら扇風機か窓を開けるのが主義だという
嫌々と首を振るも、うちわで仰ぎ続けるあたしを見てどうやら骨が折れたらしい
不機嫌そうに諦めて、一度手に取ったリモコンをあたしに投げ付けた
- 289 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:16
-
「へへ、ありがと」
「熱っちぃ地球はどうなんの」
「分ってるよ、あとちょっとだけだから」
「いいよ。犬みたいに舌出して、暑がってる姿見たくないから」
「イヌゥ?」
「そ、犬」
美貴はあたしを、犬と言った
かおりんに飼いならされる自信は無かったけど、こいつならちょっといいかもと思ったのは内緒だ
- 290 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:17
- 差し出された冷たいアイスティーをごくごくと飲み干す
おかわりと、お望み通りに舌を出してみせると呆れたような顔でコップについでくれる
誰かにそっくりだよ、よっちゃんって
紅茶をつぐ間、彼女は小さくぽつりと呟いた気がした
あたしは気付かないフリをしようとしたけど、明らかに耳に届いた事で無視するわけにはいかなかった
「誰?」
「当ててみて」
「…そっくりって?」
「ヒント。色白で、美貴に一番近い子」
当てつけなのか、試してるのか
どうやら彼女の計算には、あたしは付いて行けないようだった
色が白くて彼女に一番近い人
考える暇も与えてくれず、あたしは言い切るように口にした
無理をしてたわけじゃない
ただ、その人物に嫉妬していたことは確かだけれど
- 291 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:17
-
「松浦?」
「なんか、似てるんだよね。性格とかじゃなくて」
「へえ」
「落ち着くっていうか、安心するっていうか」
誤魔化すようにごくりと喉を鳴らし、液体を飲み切る
味を感じる事もなく、胸の導火線に火を付けるように
「よっちゃんは?」
喉を通りかかった液体が、逆戻り
- 292 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:18
-
「ブッ…ゴホッ!」
「ちょ、きったな」
「なっ、なにが」
彼女は時々、あたしにとってよからぬことを質問したがる
だいたい質問の筋がおかしいんじゃないか
- 293 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:18
-
「なんであたしの話になる」
「ちょっとふってみたんだよ話を。何動揺してんの?」
「しっ、してない。だいたい今、松浦の事言ってたじゃんか」
「だから、よっちゃんは美貴と居てどうなのって」
今日の彼女は何故かとても器用なことを訊く
逃げまどうようなあたしの心臓をがしりと鷲掴みにして、離してくれなさそうだ
いつものペースを奪われたようであたしは居心地が悪かった
さっきまで抱いていた気持ちとかは関係無く
照れる様子なんかなくて、真直ぐにあたしを見る彼女の目に少し怯えていた
「言ってよ」
ぐいぐいとあたしに詰め寄る身体
おかしい事になったのは、美貴のせいなのかあたしの切り出しが悪かったのか
彼女の手で触れられた自分の頬はやけに熱かった
- 294 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:18
-
「あたしは」
「うん」
「美貴のこと、好きだよ」
「知ってる。そんな事聞いて無いよ。よっちゃんにとって、美貴はナニ?」
悪戯な笑顔が妖艶で
まるで、美貴の人が変わった様にエロっぽかった気がする
普段と違った声
あたしにテクを強請る時の、あの甘い声で
- 295 名前:夏 投稿日:2005/06/19(日) 17:19
-
「大事、だよ」
体温が上昇していることを、見破られたかもしれない
それもそうだろう、美貴はあたしの膝に乗ってあたしを抱き締めるから
あたし自身汗臭い筈なのにそれすら感じさせない
なぜなら美貴の香水で、完全に脳や鼻腔がマヒしていたからだろう
言葉が欲しかったわけじゃないんだ
こうしてあげた方が、手っ取り早かった
「エアコンもういいや」
「暑くないの?」
「いんや、暑いけど。このままがいいだろ?」
「よっちゃんがそうしたいなら」
「じゃ、そうするよ」
リモコンを片手に、美貴の唇に触れて激しいキスを交わした
元々暑かった部屋が蒸してくるような感じに襲われた
だけど不思議と、汗が湧き出るような暑さではなかったと思う
ヤキモチだったことは、まだ美貴にはバレてないようなので、そのままキスを続ける事にした
さっきのあたしのように、赤い舌を出してキスを強請る美貴はとても可愛かった
おしまい。
- 296 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/06/19(日) 17:22
-
甘いかもしれない吉藤。
吉澤さんにとって自分はは何なのかっていうのを藤本さんは
聞きたくてしょうがなかったっていう流れにしといてください。
あー、もっとエロ書きたいな(死
- 297 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 21:34
- 更新乙です。藤本さんの誘い受け的な言葉が心にジンと来ますね。
実際もこんな感じだと思いますw
- 298 名前:ナキムシ記念日 投稿日:2005/07/03(日) 15:19
-
+
Crybaby anniversary +
- 299 名前:ナキムシ記念日 投稿日:2005/07/03(日) 15:20
- 触れられていた指先が、体温が、離れて行くのを感じた
必死に抵抗しようとはしない自分の強がりに、そろそろ飽きれ始めた頃
れいなの中の何かが、プツリと音をたてて切れた
理性の裏にかくれた我侭の細胞でうめつくされてゆく
いかないで
「やだぁぁぁぁぁ!!!みきねぇぇ!!」
わんわんと子供のように泣叫ぶれいなを見て、彼女は困惑する
当たり前だ、れいなは、人前でこんな姿を見せる程無防備な人間じゃない
意地の張り合い勝負だって、彼女には負けず劣らずのはずだった
でもそれはれいなの勝手な思い込みにすぎなくて
泣叫ぶ自分に対して、もっと強く生きろと言い聞かせた
- 300 名前:ナキムシ記念日 投稿日:2005/07/03(日) 15:21
-
「どこにも行かないで、そばにいてよぉ」
ぐすん、と鼻をすする音
自分の行為だと思っていたけれど、どうやられいなではない
れいなをぎゅっと抱き寄せて、彼女は静かに涙を溜め始めていた
どうして泣いてるの?
そう訊ねたかったけれど、構っていられないくらいれいなも泣いていた
あくまで、神経は狂っていた
「みきねぇっ、嫌いにならないで」
「ちがうよ、ごめん。ごめんねれいな」
嘘みたいに優しい言葉が、彼女のすすり泣きから溢れた
自分が流した涙は身体中に染みてジンジンと痛んだけれど、もう平気だった
彼女に肩を抱かれた瞬間、どっと何かが押し寄せて来る感覚
好きだ
素直にこう思った事は初めてで、彼女も多分知らない事
- 301 名前:ナキムシ記念日 投稿日:2005/07/03(日) 15:21
-
「ごめんね」
みきねぇは、前みたいに綺麗に笑ってくれた
れいなの頭を撫でて、元々美人な彼女の顔がすごく美しく見えた
腰に腕を巻き付けて苦しくなるくらい抱き締めると、微かに漏れた微笑み
ミキのこと、キライにならない?
そっと耳打ちしてくれた言葉は、単純で歯がゆい質問だった
- 302 名前:ナキムシ記念日 投稿日:2005/07/03(日) 15:21
-
「スキ。みきねぇ、大好き」
ピンク色の頬にキスをすると、また泣きそうになる
それはれいなも彼女もおなじようで、顔を見合わせながら笑いあってた
どこにもいかないよ
泣きつかれて眠ってしまったれいなに、みきねぇはそう言ったような気がした。
おしまい。
- 303 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/07/03(日) 15:23
- またもや久々更新。かなり久しぶりに書いたれなみきを載せてみました。
この二人好きなんですけど書くのむずかしいです。学びました。
>名無飼育さん
藤本さんの場合は天然ぽいですね。無意識にみたいな。
- 304 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:23
- 亜弥ちゃんは美貴にいつもこう言う
「しょうがないじゃん、仕事だもん」
よっぽどこの言葉が好きなのか、いつの間にか関係は終っていた
別に寂しさはどこにも残ってない
無性に亜弥ちゃんの彼氏が、憎たらしかっただけ
- 305 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:24
-
ごめん、今日無理
簡潔なメールは寝起きの美貴よりも、冷たくて何の変哲もない文章
今さらどうこう言える問題でもないので、メールは返信しない
逢いたいなんて我侭はきっと、もう亜弥ちゃんには通用しないと思ったから
何も予定が無い今日
ドタキャンなんて慣れっこだったけど、涙が出るくらい悔しい
- 306 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:24
-
『私のお友達、ミキティ…藤本ミキティがですねぇ』
彼女の口癖が変わったと同時に、何かが変わり始めていた
――そっか
友達だったんだっけ、亜弥ちゃんと美貴は
親友で、何も遠慮する事なく話し合えて、お互い信頼してる
友達だった
- 307 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:25
-
否定なんて出来ない
引き際が肝心だなんて言葉、使った事無いけどすごくそんな気分だった
- 308 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:25
-
亜弥ちゃんからキスをしてきて、亜弥ちゃんから迫ってきて
美貴はただそれを受けて、待ってるだけの立場だった筈なのに
どうしてこんなに求めてるんだろう
どうしてこんなに哀しいんだろう
彼女を失った
他の誰かに奪われた
こんなに自分の中が亜弥ちゃんでいっぱいになるなんて、思って無かった
『みきたんちょう好きぃー』
嬉しかったんだ
冗談でも本気でも、どっちでも構わなくて、その言葉が嬉しかった
- 309 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:26
-
『あの人とはそんなんじゃないよ。ただの友達』
信じてた
本当は疑うべきだったけど、亜弥ちゃんの考えにどっぷりはまってた
ただ頷いて、飲み込むことしかなかった
- 310 名前:final stage 投稿日:2005/07/24(日) 09:26
-
こんなに好きなのに、伝えられなかった
弄ばれた気分は不思議となくて、だけど思い出とも言えない
キスしてる瞬間に何度も言おうと思ったけど、結局言えずじまいになって
亜弥ちゃんのカラダもすべて、彼氏の物だと思えば思う程悔しくなって
余計に虚しくなるんだ
忘れたい事なのに
全部、亜弥ちゃんのせいで忘れられなくなった
――美貴、亜弥ちゃんが好き
留守電に込めた、最期の言葉
おしまい。
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