Ark
- 1 名前:鷹雷 投稿日:2005/02/06(日) 18:43
- ただの便乗スレです。
気の向くままに更新予定。
- 2 名前:死の灰 投稿日:2005/02/06(日) 18:52
-
あるものは白い天使が降りて来たと言い、
またあるものは、漆黒の鴉が翼を広げて空を覆っていたのだと言い、
またあるものは、銀の流線型がばらまいたのだと言った。
それが、絶望の始まりだとは、知ることも無く。
- 3 名前:死の灰 投稿日:2005/02/06(日) 20:39
-
それに触れたものには、例外なく死が訪れた。
皮膚を侵し、内部組織を侵し、全てを腐らせていった。
全身に浴びたものなど、数分で絶命した。
人はこの空から降ってくる恐ろしい存在に名前を付けることにした。
名前をつけると言うことは即ち、その存在を呪うという事。
彼らはそれを、「死の灰」と呼んだ。
- 4 名前:死の灰 投稿日:2005/02/06(日) 20:47
-
あさ美はずっと窓の外の景色を見つめ続けていた。
それしかすることが、なかった。
何重にも外気から守られた、閉塞した空間。
そこに充満するのは、退屈以外の何者でもない。
死の灰がこの世の人々に認知されてから、様々な方策が施された。
灰から身を守るための防護服、外気を完全に遮断する装置。
しかしながら防護服においては100%安全を保障するものでは
なく、悲しいニュースは後を絶たなかった。
故に、外出すること自体が命がけの行為だと言っても過言ではな
かった。
- 5 名前:死の灰 投稿日:2005/02/08(火) 13:08
- 死の灰は、しんしんと静かに降り積もる。
人間の命を瞬時に奪う灰。しかし、それは人間以外の生物に何の
影響も及ぼさなかった。
何人もの高名な科学者が灰の分析に挑戦したものの、ことごとく
失敗に終わった。中には、実験中の事故で死の灰を吸引し命を落
としたものすらいた。
人々はこの未知なる恐怖の前に、ただただ跪くしかない。
あさ美も無論その一人で。
こうやって窓の外の白く染められた景色を見ることだけが、彼女
の日常。空を覆い尽くす灰白によって太陽の光すら遮られた、モ
ノクロームの世界。それが彼女の全てだった。
- 6 名前:死の灰 投稿日:2005/02/08(火) 13:15
- その時だった。
あさ美は、見た。
単色に塗りつぶされた空に、ひとつの影がよぎるのを。
最初は何かの見間違いのように思われた。
天井のしみが光加減によって人の顔に見えたりすることがあるよう
に、それもまた色の濃淡によってそう見えただけの話だと。
けれども、それは決して目の錯覚ではなかった。
空をゆったりと飛んでいるその物体。
それは。
翼の生えた、少女だった。
- 7 名前:死の灰 投稿日:2005/02/08(火) 13:24
- 遠くからなのでよくは見えなかったが、その少女は明らかに背中
に翼を生やし、まるで死の灰の舞う大気を攪拌するかのようにゆ
っくりと翼をはためかせて飛んでいた。
自分の目を疑った後は、自分の今おかれている状況を疑った。
つまり、これは夢であって、目が覚めると窓の外で悠々と飛んで
いる少女の姿などどこにもない。
けれどその仮想さえ、否定されてしまう。
視界ははっきりとしていたし、遠くから自分が先ほど加湿のため
に火にかけた薬缶のかたかた鳴る音が聞こえていた。鼻から息を
大きく吸い込めば少し湿った部屋の匂いがしたし、両手を頬に当
てると掌から暖かな体温が伝わってきた。
夢ではないとすれば、あれは。
- 8 名前:死の灰 投稿日:2005/02/08(火) 13:38
- あの少女が人間だとすれば。
この死の灰が漂う外界において、命を維持することなどできない
はずだった。
あさ美は一度だけ、死の灰に倒れた人間を見たことがあった。
月に一度の、食料の買出しに行った時のこと。
防護服の故障か何かで、死の灰を吸い込んでしまったようだった。
その男の顔色は防護服越しからでもわかるほどに黒く変色し、苦悶
のうちに死んでいったと思しきその表情は、さながら地獄の亡者の
ようだった。
あさ美は道端で倒れている男から、目が離せなかった。
灰の影響からか、くるりと向いた白目が真っ赤に染まっていた。
あさ美はまるでそれが、緋色の宝玉のように思えてならなかった。
しかし、その観察も長くは続かなかった。
異変に気づき、駆け寄ってくる警察の人間。
死の灰が降り注ぐようになってから、外で長時間過ごすことは条
例によって硬く禁じられていた。もちろん、市民の安全を守るため
である。
倒れた男は搬送され、あさ美は交番まで連れて行かれた挙句大目玉
を食らう羽目になった。それでも。
彼女の死の灰に対する興味は、それこそ空から舞い落ち降り積もる
灰のように静かに、そして深く蓄積されていくのだった。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 00:24
- どうやら色んな意味で向いていないので、趣向を変えることに。
拙作を色々といじりつつ。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 00:34
- 今日の課題:
「紺野あさ美とは?」
さて、このスレッドの>>2-9は当初紺野、つまりモーニング娘。の
紺野あさ美を主人公として想定しつつ書き進められたものである。
紺野が翼の生えた少女と出会い、死の灰の謎やら何やらの全貌が
明らかになる、という内容だったのだが今となっては語っても仕方
がないので、ここまでにしておいて。
筆者がこの物語を綴ることを諦めた大きな理由。
それはひとえに、「この『あさ美』と名付けられた人間は、果たして
紺野足り得るのか」ということであった。周りを飛ぶ妖精さんが何か
違うことを囁いているがまったく聞こえない。何のことやら。
では、紺野が紺野であるためには、一体どういう要素が必要なのだろ
う。今日はそこについて考えたい。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 00:36
- まずはこの文章から見ていただきたい。
この死の灰が漂う外界において、命を維持することなどできない
はずだった。
少女は一度だけ、死の灰に倒れた人間を見たことがあった。
月に一度の、食料の買出しに行った時のこと。
防護服の故障か何かで、死の灰を吸い込んでしまったようだった。
その男の顔色は防護服越しからでもわかるほどに黒く変色し、苦悶
のうちに死んでいったと思しきその表情は、さながら地獄の亡者の
ようだった。
少女は道端で倒れている男から、目が離せなかった。
灰の影響からか、くるりと向いた白目が真っ赤に染まっていた。
あさ美はまるでそれが、緋色の宝玉のように思えてならなかった。
しかし、その観察も長くは続かなかった。
異変に気づき、駆け寄ってくる警察の人間。
死の灰が降り注ぐようになってから、外で長時間過ごすことは条
例によって硬く禁じられていた。もちろん、市民の安全を守るため
である。
倒れた男は搬送され、少女は交番まで連れて行かれた挙句大目玉
を食らう羽目になった。それでも。
彼女の死の灰に対する興味は、それこそ空から舞い落ち降り積もる
灰のように静かに、そして深く蓄積されていくのだった。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 00:42
- これは先ほどの拙作の一部をいじったものである。
簡単に言えば「あさ美」の部分を「少女」に置換しただけなのだが。
しかしながら、これを見ただけで少女が紺野であると理解できる人
間は果たしてどれだけいるのだろうか。
恐らく、ほとんどいないであろう。
それもそのはず、この文章において紺野を紺野として存在させている
のは他ならぬ「あさ美」という名前だけだからだ。
唯一であり全てである要素を取り除いてしまったのだから、少女が誰
だかわからなくなっても当然なのである。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:05
- それでは、次に「紺野」「あさ美」という名称以外の「紺野あさ美」
を形作る要素を羅列してみよう。
容貌に関する表現:
ふっくらとした頬
やや大きめの顔
大きな瞳
肉付きの良い唇
など
スキルに関する表現:
勉強ができる
運動神経が良い
など
性格に関する表現:
真面目
おとなしい(内省的)
思慮深い
食いしん坊
など
台詞表現:
「完璧です」
その他雑誌・テレビ・ラジオなどでの発言
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:13
- 上記要素はとりあえずは個人的見解なので、ヲタの方はあまり目く
じらを立てないでいただきたい。
さらに、キーワード的な言葉の使い方として、
タンポポ(三期)・音痴・空手・離れ(ry
などが代表的だろうか。最後のは個人的…げほげほ。
娘。小説界隈においては、これらの要素が複数組み合わさることによっ
てはじめて「紺野あさ美」は完成する。名前を使うことなく上記の
表現をまったく使うことなく紺野あさ美を表現することができる作
者がいるとすればその人は大変文章に長けた人だと言えよう。
それでは試しに、先に使った拙作の一文をいじって「紺野あさ美」を
表現してみることにする。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:18
-
この死の灰が漂う外界において、命を維持することなどできない
はずだった。
少女は一度だけ、死の灰に倒れた人間を見たことがあった。それは
彼女がジャンピングスクワットをしながら外を歩いていた時のこと。
防護服の故障か何かで、死の灰を吸い込んでしまったようだった。
その男の顔色は防護服越しからでもわかるほどに黒く変色し、苦悶
のうちに死んでいったと思しきその表情は、さながら地獄の亡者の
ようだった。
少女は道端で倒れている男から、目が離せなかった。
ふくよかな頬を震わせながら、倒れている男に顔を近づける。
灰の影響からか、くるりと向いた白目が真っ赤に染まっていた。
少女はその赤さに思わず、
「アヒャ…」
と声を漏らさずにはいられなかった。
しかし、その観察も長くは続かなかった。
異変に気づき、駆け寄ってくる警察の人間。
死の灰が降り注ぐようになってから、外で長時間過ごすことは条
例によって硬く禁じられていた。もちろん、市民の安全を守るため
である。
倒れた男は搬送され、少女は交番まで連れて行かれた挙句大目玉
を食らう羽目になった。それでも。
彼女の死の灰に対する興味は、それこそ空から舞い落ち降り積もる
灰のように静かに、そして深く蓄積されていくのだった。
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:27
-
どうだろうか。
話の内容はともかく、上記文章を読んだ上で少女が「紺野あさ美」
だと理解する人は最初のパターンより増えたのではないだろうか。
今回の例では明らかにわかりやすい要素を選んでそれを文章に付与
したが、本気で文章を書くのなら内的要素に紺野あさ美らしさをつ
け加えたほうがいいだろう。
これから挙げる例はあくまでも一例であるが、例えば、
・倒れている男に「大丈夫ですか?」と声をかけさせてみる (思慮深さ)
・自ら警察に連絡させたり、近くに歩いている人を探させてみる (真面目)
・男の防護服を剥ぎ取り、中をじっくり観察させる (ヲタク気質)
・それらしき専門用語をしゃべらせてみる (勉強ができる)
などの要素を付け加えてみると、より紺野らしさが出るのではない
だろうか。まあ挫折した身なので、あまり説得力はないだろうが。
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:35
- 次回は案内板のマターリスレで紺野について語られた書き込みを
参考に、多角的に紺野あさ美とは? について考えていきたい。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/10(木) 22:32
- なんだか面白くなってきた
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/16(水) 22:25
- 小説の方の更新待ってます
- 20 名前:死の灰 投稿日:2005/02/17(木) 22:38
- あさ美は壁にかけてあった防護服を乱暴にはぎ取ると、それを身に着けて
外へと飛び出した。
あの少女を追いかけなければならない。
それはたぶん、あさ美の中に突如芽生えた本能のようなもの。
その本能に逆らうすべを、彼女は知らなかった。
家を出ると、灰色の世界へと駆け出していった。
- 21 名前:死の灰 投稿日:2005/02/17(木) 22:52
- 幸いなことに、少女の飛行速度はそれほど速くなかった。
そんなことは露ほども理解することなく。
ただ、全身を駆動させて灰を掻き分け走っていた。
灰から身を守る防護服。
つまり機密性に富んでいるわけで、その状態で激しい運動をすれば
どうなるかなんて、あさ美にはわかりきったことのはずだった。
それでも、翼の生えた少女を追いかけることをやめられない。
何のために?ただの好奇心?会って話がしたい?
考えても仕方の無いことだと思った。いや、考える余裕なんて
あるわけがない。すでに防護服の酸素は徐々にだが、薄くなり
つつある。あさ美は学生時代、陸上部に入っていた。死の灰が
降る前の話のことだ。けれど、そのあさ美をしても今彼女を襲う
低酸素状態は辛いものがあった。
- 22 名前:死の灰 投稿日:2005/02/17(木) 23:01
- 少女は立ち並ぶビル群の高さすれすれに飛んでいる。
もしかしたら、屋上に上れば彼女を捕まえられるかもしれない。
あさ美は通りかかった5階建てのアパートに、すぐさま飛び込んだ。
「何だね君は!」
外気と中を隔てる二つの部屋を通り抜けた途端に、マンションの
管理人らしき初老の男が立ち塞がる。
あさ美は防護服の頭部だけを外し、それから大きく息を吸ってから
正拳突きを男に叩き込んだ。
吹き抜ける風が、あさ美の頬をなでる。
振り返ることもせずに、再び屋上を目指して走り出した。
- 23 名前:死の灰 投稿日:2005/02/17(木) 23:11
- 行かなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ。
そんな言葉が頭をかすめる。
会ってどうするんだろうという考えはまったくなかったが、会え
ば何とかなるだろうという気はしていた。
いつもの自分らしくない。
でもそのいつもとは違う自分を受け入れられる。不思議な気分だ
った。でも、悪くない。
待つ間も惜しくて、エレベーターは使わずに階段を使った。
流れた汗が、目に染みてゆく。
額に張り付いた前髪ごと拭うと、あさ美は再び走り出すのだった。
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/17(木) 23:29
- 今日の課題:
またーりスレの紺野の回の書き込みについて
では世間の娘。小説書きはどのようなイメージで紺野を捉え、そして
実践しているのか。について考えてみよう。
まずはこれ。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/imp/1096122831/816
キャラ付けで優等生・おとなしい・丁寧語というキーワードが示されている。
興味深いのは異常な天才、の部分。
娘。小説界隈これだけ広ければ、時たまイレギュラー的なキャラ付けがなさ
れる場合がある。紺野におけるキ○ガイキャラというか、頭が良すぎて常人
ならざる考えを持ったキャラというのがそれに当たるのだと思う。
この最早変態と言ってもいいであろう紺野は意外と汎用性がある。記憶に
新しいのは「殺戒」の紺野や短編コンペで出された「ING」の紺野など
がそれに当たるだろうか。
ただ、このスレに登場する紺野にはいささか当てはめがたいキャラのように
思う。ある意味偏執的な部分はあるのかもしれないが。
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/17(木) 23:48
- 次行こうと思ったら、紺野自身に関する記述がもうなかった。
orz。
こんごまとかたかこん等のCP小説は多々あれど、紺野単品で
何かをするという話はまだそんなにはないということだろうか。
次回の考察は未定。
それでは。
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/20(日) 12:50
- おもしろい。
- 27 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:16
- 鉄製の頑丈な扉を開ける。
もう一度あさ美を襲う灰白色。
低く曇る空の向こうに少女はいた。
ゆっくりと、遠く、小さくなってゆく背中。
あさ美ははちきれんばかりの声で叫んだ。
「待って!!!!」
果たして。
あさ美の声は届いたのかどうか。
もともとそれほど大きくはない彼女の声。
腹の底から搾り出したとしても大した大きさにはならだいだろう。
それでも、だ。
少女はゆっくりと大きな輪を描いて、こちらへと戻ってきた。
屋上の床に降り積もった灰をふわっと舞い上がらせて、翼の少女は死の世界
へと降り立った。
- 28 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:23
- 肩に届くか届かないくらいの、栗色の髪。
着ている白いTシャツには、「Save Our Soul」と真っ赤な文字
でプリントされていた。
「ミキに…なんか用?」
少女は自分のことをミキと名乗った。
さっきまで大空を泳ぐために使われていた大きな羽は畳まれ、それ
にさえ目が行かなければ目の前の少女(とあさ美が思ったのは最初
だけで、良く見ると自分よりも年上に見えた)は普通の人間とほと
んど変わらないような気さえした。
彼女が防護服を着ていないということ以外は全く。
- 29 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:31
- あさ美の思考ははっきり言ってしまうと完全にストップしていた。
灰色の空を飛ぶ少女を見つけて走ってここまで来たものの、それで
何をどうこうしようなんていう考えは何もなかった。
そして、目の前の光景。
ミキには翼が生えている。
防護服を、来ていない。
それだけで十分だった。目の前のそれがホログラムだったり、ロボ
ットだという仮想はあさ美の前には1ミリの意味すら持ち得ない。
「あのさあ、言いたいことがあるんだったらはっきり言ってくれな
いかなあ。ミキだって、そんなに暇なわけじゃないし」
ミキは眉間にしわを寄せ、不機嫌そうに言った。
その目つきが、よく研磨されたナイフを思わせてあさ美を威嚇する。
会話の無い状態が、しばらく続く。
あさ美の思考はフル回転。
あなたは一体何者?どうして空を飛んでいるの?防護服を着てなくて
平気なのちょっと顔が怖いよ足がすらっとしててうらやましいそうい
えばミキってどんな字書くの…
実にさまざまな言葉が行き交い、ソーダの泡のように消滅してゆく。
だから、次のミキの言葉はあさ美にとって驚きだった。
- 30 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:38
- 「何者、って。そんなことに急に答えられないし。防護服を着て
ないのは、それがミキに意味の無いものだから。顔が怖いのは生
まれつきだし。まあ足長いのは自慢だから…ってどこ見てる?ほ
っといてよ。ミキのミは美しいのミで、キは貴いのキ。どう、こ
れで満足?」
あさ美はこくこくと小さくうなずいてから、はっとした。
この人、もしかして。
「そう。ミキは、あんたの心を読めちゃうんだ」
ミキの先回り。あさ美は空気の足りない金魚のように口をぱくぱく
させることしかできなかった。
- 31 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:46
- 「え、っと。はい…」
あさ美は完全に沈黙の海に沈んでいってしまう。
漫画の世界だけだと思っていたことが、事実として目の前に示され
ている。何もかもが信じられない世界。
けれどもこれは夢でも何でもない。現実は、空からちらちらと降っ
てくる死の灰が教えてくれる。
ミキの胸の「Save Our Soul」の真っ赤な文字が、目にひりひりし
て痛かった。頭文字をあわせるとSOS。案外、そういう語源なの
かもしれない。
すると、ミキはふふん、と鼻でせせら笑った。
ばかばかしい、と言わんばかりの嘲笑だった。
- 32 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:56
- 「何がおかしいんですか!」
あさ美は憤慨した。
SOSのことではない。ここに導かれたようにやって来たこと自体
馬鹿にされたような気がしたのだ。
「SOSって、モールス信号をアルファベットにしただけだから。
私たちの魂を助けてくれなんて、そんな高尚な意味はない。だから」
ミキは畳んでいた翼を一気に広げ、はためかせる。雪のように積も
っていた灰が、羽毛のように舞い広がった。
「あんたたちがいくら救われたいと願っても、そんなことは何の
意味もない。灰は、降り続ける」
さめた表情だ、とあさ美は思った。少なくとも、灰を被る側の人間
(ミキをそう呼ぶとすれば)のする顔じゃない。
- 33 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:58
-
そうして、ミキは屋上を飛び去っていった。
あっと言う間の出来事。
あさ美は、翼がゆっくりと揺れ動くのを、だまって見送ることしか
できなかった。
防護服にこもる熱が、ただうっとおしいだけだった。
- 34 名前:死の灰 投稿日:2005/02/24(木) 02:59
-
…了。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/24(木) 03:00
- ochi
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/24(木) 15:28
- 面白かったです。
他の曲がどのような作品になるのか、楽しみにしてます。
- 37 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/01(火) 16:02
- 面白いね。
次の更新が楽しみだ。
- 38 名前:まさき 投稿日:2005/03/31(木) 00:10
- 凄く面白いですね!!
続き大期待です!!
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:06
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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