wish

1 名前:K0 投稿日:2005/02/08(火) 02:29
はじめまして。

週1くらいでのんびり書いていきます。



2 名前: 投稿日:2005/02/08(火) 02:34

なんにもなかったんです...。

本当に何もなかったんです...。

そのころは、ただ毎日が退屈で、緩やかで、穏やかで...。

秋の空のようにのんびりしていて...。

私は無気力で...。

学校にいっても何もなくて...。

だから、バイトでもしようと思って...。

でも、きっかけって、いっつも理由なんかないでしょ...。

私もそうでした...。
3 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/08(火) 02:45

なにげに面接を受けたバイトに通った。
小さな本屋だ。
美貴にしてみれば上出来だった。
基本的に、面接の段階で怖がられて大体は落とされるし、
かといって、居酒屋はもういやっだたし。
たまたま、本を探しに入った小さな本屋で美貴はバイト募集の張り紙を見て
面接を受けたら、案外素直に通った。

店長の安部さんいわく、
「いやぁ〜、最初はやめようと思ったんだけどね、履歴書見たら同郷っしょ!
だから、なっちビビっときたのね〜。この子はいい子だって!」
ということらしい。

それに、従業員が4人で遅番にもう一人ほしかった。という都合にもしっくり
はまったみたいだった。

4 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/09(水) 23:55

悪くない。
先輩の矢口さんに仕事を教わりながら1週間が過ぎた。
矢口さんはフリーターだ。
将来はパソコンで某ライ○ドアぶっ潰す!!
のが夢らしい。
美貴にはパソコンでどう立ち向かうかはわからないが、
夢があるだけうらやましく思えた。

悪くない。
ここでの時間は悪くなかった。
そこそこ忙しく。矢口さんは面白く。店長(安部さん)は天然だ。
美貴のつっこみのセンスが最大限に冴える。
そして、みんなやさしかった。

「そういえばミキティーの歓迎会まだやってねーよね。」
矢口さんが突然そういったのは出勤の10日目だった。

「いやぁ。いいですよ別に。美貴あんまり得意じゃないんですよね。」
「そんなこというなよぉ〜。こういうのは大事なんだからさ。」

5 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:01

美貴はほんとのところ人と絡むのが苦手だった。
特に飲み会の類は極力避けて通ってきた。
おかげで大学3年目の今ではほとんど誘われることがない。

「なに?ミキティ〜はお酒が苦手なのかよ〜。」
「いやぁ...。別にそんなことはないんですけど。」
「だったら。ミキティ〜の歓迎会するぅ。絶対するのぉ。」

矢口さんは子供口調でだだっこを始めてた。

「あんた子供かよ!!。」
「でたぁ〜。必殺みきてぃ〜の突っ込み〜。」

いやいや見たまんま言っただけだし...。

6 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:10

「てか。必殺みきてぃ〜の突込みってそのまんまだし。」
「おぉ。2連発...。」

矢口さんはニヤニヤしている。
どうやら美貴のつっこみがよっぽど好きみたいだ。

「いやぁ。みんなと顔合わせたほうがいいでしょ。早番の人も
あったことないじゃんかよ。」

確かに矢口さんの言うとおりだ。
美貴はこの10日間ずっと6時から出勤している。
早番の人は朝9時から夕方の4時までで、美貴がくるまでの間は
安部さんと矢口さんが二人で店にいる。
だから美貴は早番の3人を知らない。

「早番の人って、来るんですか?歓迎会やるとしたら。」
「あぁ。余裕で来るよ。あいつら暇そぉ〜〜だもん。」
「矢口さんも同じじゃないですか。」
「オイラはいそがし〜んだよ。日夜ライ○ドアをつぶす計画を...。」
「はいはい。それはもう毎日聞いてますから。」
「ちくしょー。学生の分際でぇぇ。」

矢口さんは悔しそうだった。
7 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:16

「とにかくミキティーの歓迎会やるの!もう決定なの!
明後日の夜店閉めてからだから11時からな。」
「いや。今そこまで決めなくても。美貴まだ行くか決め
てないし。」
「だから。決定なんだって。おめぇ〜以外みんな参加だ
からさ。話も通してるし。なっちもやる気満々だから。」

え?決まってる?どういうこと?

「休憩室の連絡ボード見てねーのかよ。」
「連絡ボード?書いてましたっけ。」
「あぁ。もおぅ。今行ってダッシュで見て来い。」

そう言われて美貴はレジのカウンターから追い出された。

8 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:21

まっすぐ店内奥のドアから休憩室に入った。
そして、連絡ボードを見る。

  ミキティ〜歓迎会
日時 来週の金曜閉店後
場所 どっかの居酒屋
参加者 石川 後藤 矢口
    安部 紺野 藤本

「....。」
なんだこれ、先週には決まってたのかよ。
早く言えよ。てか勝手に名前書くなよ。
美貴はあまりにつっこみどころ満載のボードを睨み付けた。
    
9 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:25

「あれぇ〜美貴ちゃん。なんだい?トイレかい?」

奥からのんびりとした声が聞こえた。
店長だ。

「店長。これいつから書いてたんですか?」
「あれ〜。美貴ちゃんに言い忘れてたね。先週だべ。
ごめんごめん。なっち忘れっぽいからさぁ。」

ニコニコした笑顔でさらりと店長はそういってくれた。

「でも歓迎会だから。美貴ちゃんくるっしょ?
だからなっちが名前書いてあげたんだ。いやぁ。
なっちの親切っしょ。
10 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:35

ゴゴゴゴゴ...。
今きっと美貴の中に悪魔が降りてきている。
大魔王が美貴の中に降りてきている。
そして、魔王は言う。「GO!」

「だったら早く言えよ童顔やろー。美貴の許可なく
話をすすめるな!出席に名前を書くな!筋を通せ筋
を。」
「ひぃ。美貴ちゃんおこっちゃだめだべさぁ。落ち
着いて落ち着いて。

安部さんは電気ショックでも浴びたかのようにビク
ッとして、美貴をなだめる。

「じゃあ美貴ちゃんこないべか?だったら中止だべ..。」
「だれも行かないなんていってないでしょ!」
「ほぇ?」

安部さんはきょとんとした。
もうやけだ。この軽薄どものために参加してやる。
ただ...。ひとつだけ。

「あとなぁ。美貴を歓迎するなら居酒屋じゃねー。焼肉
だ。肉を食わせろ。肉を。わかったか!」
「わかったべさ。居酒屋から焼肉に変更するべ。」
「わかればよろしい。では店長美貴仕事に戻ります。」

そういって美貴は休憩室をでた。
そのあと休憩室にはあっけに取られた店長だけになった。

11 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/10(木) 00:41

「おぅ。ミキティ。ちゃんと見たか?決定だからな。」
「矢口さん。居酒屋→焼肉に変更ですよ。」

カウンターで矢口さんが「あぁそうなんだ。」という顔をした。
美貴はニヤリと笑った。

「じゃあ美貴は店内巡回に行ってきます。」

そういって、美貴はカウンターを飛び出した。

「ミキティ〜。少年コミック倒れてるからよろしく。」
「了解です。」

悪くない。ここのバイトは悪くない。
美貴は久々に素がでてスッキリした。

そして、その歓迎会がこれから始まる話のきっかけだったとは
知る由もなかった。

そう。きっかけは何気ない普通の本屋の、普通の歓迎会...。
12 名前:k0 投稿日:2005/02/10(木) 00:42

更新終了です。
ゆっくり書いていきます。

13 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/11(金) 00:53
お馴染みメンバー集合ですね。今後まったりと更新待ってます。
14 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/11(金) 01:57

金曜日の夕方。空は茜色に染まっていた。
キレイだ。とてもキレイだ。何かに例えることができない。
それくらいキレイだ。
なんて、思いながらバスの窓から空を見上げていた。

バイト先まではバスで行く。街から少し離れたところにある学校。
そこからバスで街へと戻る。
美貴は一人でバスの中にいる時間が大好きだった。
この中なら一人で物思いにふけることができた。
特に物思いにふけることなど最近はないのだけれど。
でもふとした瞬間に去年のことを思い出す時がある。
でも今はいい..。今は忘れよう。まだそれと向き合うほど強くない。

バスは街へと入っていく。
茜色の空がたくさんのビルで隠される。
15 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/11(金) 02:03

『次は○○〜。○○〜。』
そんなことを考えてるとあっという間にバスは目的地に着く。
美貴は停車ボタンを押して、バスを降りる。
秋の夕方は肌寒い...。
美貴はジャケットの袖を伸ばして手を隠し、バイト先まで歩く。

「おはようございます。」
店に入り入り口横のカウンターにいる矢口さんに挨拶をする。
「おう!ミキティ〜おはよぉ〜。」
ちっこい矢口さんはそのちっこい体に似つかない大きな声で返事をする。

「おはようございます。」
もうひとつ声が聞こえた。
カウンターの奥からだ。ずいぶんおっとりした声だ。

16 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/11(金) 02:10

現れたのは、おっとりした顔つきの、目がとろ〜んとしている、
なんともほっぺたがぷっくらした女の子だった。
例えるなら....。たれぱんた?

「おはよう...。ございます。」
美貴はその子にむかって挨拶をした。
その子はニコッと笑った。う〜ん、なんともますますたれぱんだ。
すると矢口さんが、
「そーだ。ミキティ〜初めてだよな!こいつ紺野。紺野あさ美。
もう一人の遅番の子だよ。」
と紹介してくれた。
「なんかの試験でしばらく休んでたんだよ。まぁ今日から復帰だ
から仲良くな。」
ということらしい。
17 名前:k0 投稿日:2005/02/11(金) 02:11

少し更新。

レスありがとうございます。
18 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/13(日) 01:51

「はじめまして。藤本美貴です。よろしくお願いします。」
美貴は紺野たるたれぱんだに深々と頭を下げて挨拶した。
「はじめまして。紺野あさ美と申します。よろしくお願いします。」
紺野も丁寧に頭を下げる。
「じゃあ美貴エプロンつけてきます。」
そう言って美貴は休憩室に入っていった。

休憩室に入るとテーブルにうつ伏せで眠っている店長がいた。
なんとも穏やかな寝顔だ。
美貴はそんな店長を起こさないように静かにロッカーをあけて、
エプロンを取り出して、着替えた。

まだ店に出るまで時間はある。
美貴は手提げかばんから買ってきたウーロン茶を取り出すと、
眠っている店長の迎えに座った。
ほんとに穏やかな寝顔だ...。
美貴はそんなことを思いながらウーロン茶に口をつけた。
19 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/13(日) 01:58

美貴は知っている...。
こんな穏やかな寝顔をする人がもう一人いることを...。
でも、思い出したくない。
辛くなるから。

店長がピクッと動いた。
そして、美貴の目の前でゆっくり起き上がる。
目は薄く開いていた。うつぶせのせいか前髪に寝癖がついていた。
そして、ゆっくりと目を開く。そして、唇がゆっくり開かれた。
「あれ?なっち寝ちゃってのかい?」
「...。」
いや、そんなの聞かれても...。知らないし。
美貴は軽く唖然とした。
もうここにきてしばらくたつけど、やっぱり店長は天然なのだ。

「いや..。美貴に聞かれてもわからないし。」
「え?あぁ。美貴ちゃんおはよ〜。今から出勤かい?」
おいおい。つっこみ無視かよ!
なんて思い、この人には一生勝てないと思いながら、
「はい!。」
なんて、笑顔で答えてみたりした。
20 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/13(日) 02:06

「そっかぁ。もうそんな時間かい。なっちね、お昼食べたらちょ〜っと
眠くなっちゃって、そしたら紺ちゃんがきてね、これなら矢口一人で店
内じゃないから、ちょ〜っとだけ寝ようと思って寝ちゃったんだよね。」
なんて、まるで店長の自覚すらない発言をテヘテヘと笑いながらしゃべ
る店長がとてもすばらしく思えた...。ある意味で。
「それに今夜飲み会だべ!美貴ちゃんの好きな焼肉っしょ!なっち体力
温存もしてたんだべ。えらくないかい?」
と立派に言う店長。
飲み会ってそんなに体力使うのかよ!ビシッ!
と心の中で激しくつっこみながら、苦笑いをする美貴。

だめだ...。疲れる。
店長とここで話してたら疲れる..。てか倒れる..。
そう思った美貴は、
「それじゃあ。美貴店に出ます。」
といって、休憩室から出た。
21 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/13(日) 02:17

まっすぐレジカウンターに向かうと、紺野さん(一応)と矢口さんが
二人で本の加工をしていた。
矢口さんは美貴の顔を見るなり、
「おう。ミキティーどうした。げっそりしてるぞ。大丈夫か?」
なんて、真剣な顔で言われた。
「え?多分大丈夫ですよ...。」
なんて返してみたが、確かにげっそりしてるかもしれない。
店長には勝てない...。つっこみきれない...。
ていうか、天然ボケの、天然キャラには何をやっても疲れる。
そして、紺野さんは、
「疲れたら、ユ○ケル!完璧です!」
と、美貴にエプロンのポケットからそれを取り出して美貴にくれた。
「天才たるものいつでも栄養補給です!」
なんて自信満々に言いながら。
美貴は「ありがとう。」といってそれを受け取り、
お客さんに見えないように、ぬるいユ○ケルを飲みながら、
たれぱんだ=不思議キャラ、なんて思いながら少し笑った。

だが、出だしがこんなのでも今日は歓迎会。
歓迎会=焼肉!
こんなとこで躓くわけにはいかない...。そう!
「美貴から肉を取ったら何が残るの!」
なんて叫びながら立ち上がった美貴を、
紺野さんと矢口さんはびっくりした顔で見た。

美貴も十分変な人である...。
22 名前:k0 投稿日:2005/02/13(日) 02:17

また少しだけ更新しました。

こんな感じでやっていこうかと思います。
23 名前:七誌読者 投稿日:2005/02/16(水) 15:36
面白そうですね。更新楽しみです。

「安部→安倍」でお願いします…
24 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 01:36

夜が好き...。

なんで...?

キレイじゃない?

そうかな?

お月様とか...星空とかすごくきれい...。

そうかな...。星なんて見えないよ。

見えるよ...。

見えないから...。ビルの明かりで...。

それは見ようとしないからだよ...。しっかり見てごらん...。

きっと見えるから...。

25 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 01:46

美貴は店の裏口で清掃の時に出た排水を捨てていた。
夜になると外は寒い...。
息が白くなる季節だ。
美貴の白い息が夜空に昇っていく。
美貴はそれを追うように夜空を見上げる。
あいかわらずビルの証明や街灯で空は真っ黒だった。
美貴は今も星が見えない...。
見ようとしてないだけかもしれない...。あいかわらず...。

「お〜い。ミキティ〜。なにぼーっとしてんだよ。」
振り向くと裏の戸口で矢口さんは煙草をふかしていた。
「店の閉め終わったよ。あとは紺野が引き継ぎかくだけ。」
「あっ...。そうですか。」
美貴は空のバケツを持って店に戻ろうとした。
「ミキティってさ。なんか不思議だよね。」
すれ違いざまに矢口さんは煙を吐きながら美貴にそういった。
「え?どういうことですか?」
26 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 01:56

矢口さんは短くなった煙草を携帯灰皿に押し付けた。
「いや。性格がさ。なっちに聞いたよ。焼肉のこと。まるで別人みたい
だったって。普段は多少テンション高めだけどさ。礼儀も正しいし、つ
っこみするどいし。でも急になっちにたいして強くなったり、今見たく
一人のときはすっげークールだったり。バラバラだからさ。」
「なんか問題でもありますか?」
急に美貴はずけずけ言われてムッとした。
だけど、矢口さんは笑いながら、
「いや。わるいってわけじゃないよ。むしろおもしれーよ。ミキティ
サイコーだよ。ただ、普段のミキティはどんなやつなのかなって。」
と言った。
普段の美貴?っていわれて少し戸惑ったけど、
「普段の美貴ですか?見たいですか?でも高いですよ?ギャラ発生し
ますよ。」
なんて言ってあしらった。
「キャハハハ。ミキティやっぱサイコー。」
なんて矢口さんは笑い出す。
27 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 02:04

「まぁいいや。今日は歓迎会だからな。そこら辺じっくり解剖させても
らうよ。ミキティの秘密をね☆」
矢口さんはそう言って店に入っていった。
美貴もそれについて店に入っていく。
「今夜は無礼講だぜ!」
と矢口さんは美貴を見ていった。
「あたりまえですよ。美貴を誰だと思ってるんですか。」
「しらね〜よ。そんなの。っあ。オイラ初めてミキティにつっこんだ。」
矢口さんはうれしそうにはしゃぐ。
「それでつっこみのつもりかよ!」
美貴はビシッと手の甲で矢口さんの胸をたたく。

レジカウンターまで、そんなやり取りを繰り返し歩いていた。
レジカウンターではこんこん(さっきそう読んでと言われた。)が引
継ぎを書き終えていた。
「紺野。引継ぎ書き終わった?」
矢口さんが聞く。
「ハイ。完璧です。」
こんこんはニコッと笑ってこっちに向かってきた。
28 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 02:13

「よっしゃ〜。そしたら焼肉いくかぁ!」
矢口さんは小さい体をめーいっぱい伸ばして叫んだ。
「おう!」
美貴もキャラにもなく腕を振り上げて叫んだ。
今日は気分がいい。
「...。」
ふと隣を見ると上の空で半笑いのこんこんがいた。
「こんこん。こんこん。」
美貴はこんこんに呼びかけた。だがこんこんは、
「カルビ。ロース。タン塩。ビビンバ。クッパ。ユッケ...。アヒャ。」
なんて上の空でつぶやきながらありえない笑みを浮かべていた。
半笑いの口からは今にもよだれがこぼれそうだ。
「また始まった。紺野は食べること大好きだからさ。特に焼肉と焼き芋
なんて日には、トランス状態になっちゃうのさ。」
確かに、目はうつろだ。イカレたれぱんだの暴走は続く。
「上ミノ。Pトロ。レバさし。サガリ。ホルモン...。アヒャヒャヒャ。」
こんこんの暴走はとまらない。
見かねた美貴と矢口さんはいっせいに、
「紺野!」
「こんこん!」
と叫んで頭をどついた。
29 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/18(金) 02:19

「アヒャ!」
と言う叫び声と同時に、矢口さんがうずくまった。
「あれ?あっハイ。完璧です。」
こんこんは我に帰った。だが右腕は硬くこぶしが握られまっすぐ
矢口さんに向かって伸びていた。
「うぅ...。忘れてた。紺野。空手黒帯...。グフッ。」
瀕死の状態から絞りだした声で矢口さんはそういった。
...。もしかして2分の1で美貴に当たってた?
美貴の背中に冷たいものが走った。
「矢口さん..。ごめんなさい。あまりに私の条件反射が完璧
過ぎたために...。」
こんこんが申し訳なさそうに、矢口さんの背中をさする。
こんこん...。恐るべしたれぱんだ...。
美貴の頭にそうインプットされた。

そして、矢口さんの回復をまって、美貴たちは歓迎会の会場に
むかっていった。
30 名前:k0 投稿日:2005/02/18(金) 02:20

更新しました。少しずつでごめんなさい。

レスありがとうございます。安部→安倍。気をつけます。

ありがとうございました。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/23(水) 21:17
たれぱんだ強烈だなぁ…w他のメンバーのキャラも楽しみです。
32 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/26(土) 00:01

....。

さぁ問題です。
突然胸に突き刺さるような衝撃を与え、
心臓はもうバクバク!!
体温が一気にじょううしょ→して、
それ以外のことが考えられなくなるもの、
な〜んだ?

....。

ハ〜イ!藤本美貴さん。タイムアップ!
罰ゲームは....!!
『恋に苦しんで氏ね!!!』だぁぁぁぁ!!!

...。
......。
..........。
もう、苦しむ心なんて捨ててきたつもりだよ...。
33 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/26(土) 00:13

矢口さんの体調が戻り、美貴たちは店長から聞いた店に向かっていた。
やっぱり外は夜になると寒く、美貴たち三人の息は真っ白になって夜空
に昇っていった。

「ほんっとに寒くなったなぁ...。ったく飲み会じゃなきゃ車で来て
たのによぉ。」
矢口さんは空を仰ぎながら言う。
「車なんか持ってたんですか?帰りはいっつも地下鉄じゃないですか。」
そう、矢口さんは大体帰りは美貴と一緒に地下鉄に乗っていた。
「車。昨日修理から戻ってきたんですよね。」
こんこんが言った。
「そうそう。愛車のしげるちゃんが帰ってきたのよぉ。明日からまた車
通勤だぜ。ミキティも送ってやるからなぁ。」
矢口さんはとてもうれしそうな顔だった。

でも、矢口さんの身長で....。アクセル踏めるの?
実は前方がハンドルに隠れて見えませんから...。残念!!!
なんて、美貴は心の中で思った。

「ププ....。」
「おい、ミキティなに笑ってんだよ!!」
「ハッ!なんでもないです。完璧です。」
「おめーは紺野かよ!!」
矢口さんのつっこみも完璧です...。
34 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/26(土) 00:24

「そういえば、石川さんと後藤さんは。」
「あぁ。あいつらならなっちと一緒で先に店に入ってるよ。」
「そうですかぁ。後藤さん、私たち着くまで起きてますかね?」
「あぁ。ごっちんはね...。微妙だな。」

そうかぁ。そういえば今日はまだ謎の人物後藤さん。石川さん。の二人
も来るんだよね。
なんて思いながら美貴も会話に入っていった。

「石川さんと後藤さんって、どんな人なんですか?」
「ん〜。そうだなぁ。まず、ごっちんはすげ〜よな。なぁ紺野。」
「ハイ!後藤さんは完璧です。完璧の中の完璧。キングオブ完璧です。」
多少興奮気味のたれぱんだが暴走口調で説明してくれたのはいいが、
完璧だけしかわかんねーし。
「てか。完璧ってなにが完璧なんだ。そこのたれぱんだ。」
「たれぱんだ....。」
美貴の激しい突っ込みでたれぱんだはしょぼーんとなった。
これではだめぱんだ。
35 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/02/26(土) 00:37

そんなこんこん、だけど目を輝かせながら説明を続ける。
「そうですね...。たれぱんだの私と違って...。本当にキレイな
方です。スタイルよくて。仕事もできるし。なんというかキリっつとし
てて...。しかも、あんなに優しい人...。そこが完璧なんです。」
へぇ〜。べた褒めじゃん。まるでアイドルじゃん。教祖様じゃん。
ってか、後藤さんすげーな..。どんな神だよ。
「そうだよなぁ。ごっちんはかっちょいいよなー。」
なんて矢口さんもさらっと言うし。
「でもですね矢口さん。マニアとしては、そんなかっこいい後藤さん
よりもですね、休憩室ではいつもふにゃぁ〜っとしてて、くしゃ〜っと
笑っていて、んあ〜〜なところが一番たまらないんですよ...。
なんていうか、隙がある...。ハァハァ..。みたいな..。ハァハァ。」
ん?なんだ?ハァハァって。
そして暴走たれぱんだは続く、
「そんな後藤さんをですね..。ハァハァ...。いつかですね。後ろ
から..。後ろから..。ハァハァ..。抱きしめたらぁ...。」
美貴覚醒!!右手が振りあがる。
「やめんか!発情たれぱんだ!。」
スパコン!!!
こんこんは真っ赤な顔で後藤さんの話をしていた。
ここまでするなんて、後藤さん恐るべし...。

「キャハハハ。紺野の後藤好きが異常なだけなんだよ!」
っと矢口さんは一言。
矢口さんはそんな光景を煙草をふかしながら見て笑っていた。
36 名前:k0 投稿日:2005/02/26(土) 00:39

更新しました。中途半端なので、明日も多分します。

レスありがとうございます。

たれぱんだは癒し系です。使用上の注意を読んでから癒されてください。
37 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/30(水) 23:19
更新お疲れさまです。 紺ちゃんはごっちんに弱いですよね。 ツッコミミキティはいつでもどこでも炸裂です! 次回更新待ってます。
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 03:03
ハハハハ、おもしろい
つづき、お待ち申し上げております
39 名前:k0 投稿日:2005/06/10(金) 16:22

放置気味でしたが更新します。

読んでる方がいてくれたらうれしいです。

40 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:24

近づいてる。

近づいてる...。

近づいてる......。

近づいてる...........。

41 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:31

「いらっしゃいませ〜。3名様でよろしかったですか?」
ここは歓迎会が行われる焼肉屋。
煙の匂いがたまらない...。美貴の胃を刺激している。
ふと、横にいるこんこんを見たら、
「ハァ..。ハァ...。肉...。かぼちゃ...。」
トランス状態で目が上の空だった。
さっき聞いてみれば、今日の焼肉のために、朝からほとんど何も食べてないようで、
「焼肉を最高においしくいただくための準備です。完璧です。」
だそうだ。
「えぇ〜っと。安倍で6名で予約してたんだけど。」
ちっこい矢口さんは店員にそう伝えると、
「あっ。ハイ。それではこちらへどうぞ!」
と、店の奥に案内された。

42 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:37

店は結構大きいところで、予約してたのは個室のある2Fだった。
ちっこい矢口さんを先頭に美貴、こんこんと着いていく。
「あぁ〜。そういえば、梨華ちゃんについては話してなかったなぁ。」
矢口さんが、振り向いて話しかけてきた。
「梨華ちゃんって、石川さんですか?」
そういえば、後藤さんについてしか聞いてなくて、こんこんにつっこみいれてたら
すっかり忘れてた。
「最初はさ、おとなしくてかわいい子に見えるからさ。あと、人見知りであまり話
しかけてこないと思うからさ。ミキティからいっぱい話してあげてよ。」
っと矢口さんは美貴にそういった。
43 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:41

うわぁ。美貴の苦手なタイプじゃん...。
正直、めんどくせー。なんて思った。
「なぁ。紺野。最初は話し掛けなきゃだめだよな!!」
「....。」
「おーい。紺野!!」
「....。」
「話聞かんか!!たれぱんだ!!。」
ビシッ!
美貴のツッコミが入った。すると、こんこんは我に帰って、
「あっ...。はい。そのとおりだと思います。最初は...。」
と、慌てながら答えた。
...。最初は??
最初はってどういうこと??
「矢口さん..。最初はってどういうことですか?」
44 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:54

「ん〜〜。まぁ。そのうちわかるよ。がんばって話しかければさ。」
と矢口さんは意味深な発言をした。
そのうちわかるって...。
「おい。たれぱんだ!どういうことだ。」
「そうですねぇ...。」
こんこんは、考えながらゆっくり話し出す。
「私もはじめてみた時は石川さんはかわいくて、まじめで控えめな...。ん〜まぁ
お嬢様みたいな人だと思いました。黒いのを除けば..。」
黒い?
「ただ..。だんだん話すようになってくると...。人は見かけによらずというか、
超音波ボイスが、私の完璧な頭脳に響くというか...。見てて、痛いというか、まぁ
ストレートに言えば...。」
ストレートに言えば?
「おーっと。紺野。それ以上はストップだぞ。ミキティに梨華ちゃんのイメージを悪く
つけちゃだめじゃないか。」
と、矢口さんが割って入ってきた。
あぁっ!!もう、いいとこだったのに、このちびっこが!!
と心の中で思いながら、
「まぁ。あったら解りますね。」
なんて、笑顔で返す美貴だった。

「こちらのお部屋になりま〜す。」
店員さんがふすまの前で止まった。
そこには、スニーカーと白のサンダル。そして、どぎついピンクのミュールがキレイに
並んでいて。
「おおぉ。もうみんなきてんのか。」
矢口さんがちっこいサンダルを脱ぎながら言った。
「さぁ。お食事です。完璧です。」
こんこんの目がぎらついき、
「に〜〜〜〜くぅ〜〜〜〜〜。」
と叫んでいる美貴がルンルンでふすまを開けたのだった。

45 名前:1.空、暁に染まるころ 投稿日:2005/06/10(金) 16:56

うぇるかむ...。

ピンクの深い森に....。

この、門を開けたその日から、あなたはこの森から抜け出せなくなるのです...。

46 名前:k0 投稿日:2005/06/10(金) 16:58

更新終了です。
放置してる間のレス。ありがとうございます。
なんか、少しずつでごめんなさい。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/30(土) 18:15
いいんですよ おもしろいんですから☆
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/08(月) 04:29
ピンクの深い森…いいですねぇ自分も迷い込んでみたいですw
次回も楽しみにしてます
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/29(月) 14:27
このテンションいいですね
50 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/04(日) 15:45
更新お疲れさまです。
かなり遅めに拝見させて頂きました(汗
これからも焦らず頑張ってください。
次回更新マッタリ待ってます。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:17
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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